ハジケリスト・オンライン (R-E)
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奥義1 リンクスタート

オーディナル・スケールを観た後、深夜3時に思い付いたお話。


 果てしなく続く草原のど真ん中にそいつは居た。

 人工物の少ない、機械など一遍も無い自然な平地に奴らは居た。

 緑色の草原をオレンジ色の暖色に染め上げんとする夕日を眺める彼らが居た。

 

 3人の…いや、人なのかは分からないが…3体の異物が…この世界の徹底的な異物がこの現実と遜色無いゲームの世界を眺めていた。

 

「いくぞ、首領パッチ、ところ天の助。」

 

 3体の中で飛び抜けて高身長でガタイも良い巨大黄色アフロのグラサン男が両隣に並ぶ手足の生えた太陽の化け物と青いゼリー状の人型怪物にそう告げ、歩み出す。全ては…このデスゲームを終わらせる為に…!

 

 

 

 ●●●

 

 事の始まりは十数時間前に遡る。

 

「おーい! ボーボボ! 手に入れたぞ〜!」

 

 とある目的の為に旅を続けている黄色アフログラサン野郎のボボーボ・ボーボボが泊まっている宿の一室に太陽に手足が生えた化け物の首領パッチが謎の機械を手に持ち、駆け込んでくる。

 

「首領パッチ! とうとう手に入れたのか!」

 

 駆け込む首領パッチと首領パッチが手にしている機械を目にするとボーボボは嬉しそうに1人囲碁を中断し、首領パッチへと駆け寄り…

 

 首領パッチを蹴り飛ばして機械を奪い取る。

 

「くくく…ついに手に入れたぞ…念願のナーヴギア!」

「ボーボボ? それなーに?」

 

 おおよそ主人公とは思えない表情でナーヴギアと呼ばれたヘッドギア型の機械を手にしたボーボボに対し、ボーボボ達と共に旅をしているピンク色髪の美少女、ビュティが不思議そうに尋ねる。

 

「これか、これはナーヴギアだ。世界最新鋭のフルダイブ型のVRシステムを搭載したマシンだ。」

「ふるだいぶ…VR?」

「まあ簡単に言えば…ゲームの世界に精神だけを送り込むゲーム機って事だ」

「へぇー! 凄い!」

 

 それじゃあさっそくと呟き、ボーボボはナーヴギアを電源に接続し…ナーヴギアを装着しようとするが…

 

「…ボーボボ、それサイズ合ってる?」

「……」

 

 ヘッドギア型である為、ナーヴギアは頭に被る必要がある…しかし巨大アフロであるボーボボは頭のデカさがとにかくでかい。どれくらいでかいかと言われればボーボボ自身の懐のでかさと同じくらいとにかくでかいのだ。

 ナーヴギアがそんな巨大アフロを想定した作りになってるはずもなく、彼の巨大アフロのてっぺんに鎮座する様な形となってしまった。

 

「くっそ…なんてアフロに優しく無い設計なんだ…! こうなったら!」

 

 ボーボボは懐からケータイを取り出すと番号を打ち込み、どこかに電話をかける。

 その時、ビュティはナーヴギアのクーリングオフかもしくは制作会社にクレームを入れるか、彼のサイズにあったナーヴギアを注文するのだろうか…と思っていたのだが…

 

「あっ、もしもし集〇社でしょうか? はい、ボーボボのキャラクターデザインについてなのですが…」

「そっちに電話かけるの!?」

 

 ナーヴギアではなく、ボーボボ自身の生みの親に文句を言おうとする奇行にビュティは酷く驚くがそんなツッコミを意に返さずボーボボは通話を続ける。

 

「そうなんですよ…まさかDr.Stoneにゴムゴムの実でまさかの卍解習得からの火影のヒーローアカデミアだとは思いませんでした…」

「何の話!?」

 

 結局なんの為に集〇社に電話をかけたのかビュティは分からぬままボーボボは通話を終わり、ナーヴギアをまた手に取る。

 

「聞いた話だと、アフロの中に入れてもナーヴギアは使えるそうだ」

 

 ナーヴギアを手に取ったボーボボは自身のアフロを上下に割って空洞となっているアフロの中にナーヴギアととりあえずでところ天の助を放り込む。

 

「これでOKだ」

「OKなの!?」

 

「待てよボーボボ! そのナーヴギアを手に入れたのは俺だ! 俺にも遊ばせろ!」

 

 その時、蹴り飛ばされていた首領パッチがボロボロになりながらも帰ってきた。

 

「首領パッチ…まだ生きていたのか!」

「あったりまえだ! 俺が死ぬのは太陽が登った時と太陽が沈む時だけだ!」

「1日に2回死ぬよ!?」

 

 部屋のど真ん中で首領パッチとボーボボが火花を散らして対立する。

 それを見ていた平和的解決を望むビュティは2人の間に割って入る。

 

「ねぇボーボボ…その機械、首領パッチくんが手に入れたんでしょ…先にやらせてあげなよ…」

「いや、確かに手に入れたのは首領パッチだがこのナーヴギアの情報をハレクラニから仕入れたのは俺だ!」

「ハレクラニさんから仕入れたの!?」

 

 数年前までバチバチに敵対して争いあった金の亡者ハレクラニからナーヴギアの情報を手に入れたという話に驚くビュティ…一応新たな敵を前にして何度か協力体制を結んだのでビュティ自身も悪だとは思ってないが…まさかボーボボにナーヴギアの情報を渡してくれるくらいの仲になってるとは思わなかった。

 

(連絡先とか交換してるのかな…)

 

 後でボーボボにハレクラニとの連絡方法を聞こうと考えたビュティであった。

 

「こうなったらボーボボ! 俺もその中に入れろ!」

「いいよ」

(いいんだ…)

 

 一方で首領パッチとボーボボのナーヴギアの取り合いは首領パッチがナーヴギアが入ってるボーボボのアフロの中に入る事で平和的解決となった。

 そして早速ナーヴギアの起動の為に説明書を読むボーボボ。

 

「なるほど、入ってるゲームはソードアート・オンラインという剣の世界だそうだ」

「ボーボボって剣使えるの?」

「俺は北海道派だ。」

「いや、県じゃなくて剣なんだけど…………北海道派って何!?」

 

 ナーヴギアにインプットされているゲームの説明や簡単なチュートリアルを読んだ後、ボーボボはナーヴギアの起動方法自体もちゃんと音読して読みこんだ。

 

「ナーヴギアに精神を送り込むと肉体は眠りにつくのか…この後は毛狩り隊の残党を潰したり、ヘッポコ丸との合流もあるから軽く1時間だけ遊んでくる」

「分かった! 終わったらゲームの世界がどんなのだったか詳しく教えてね!」

「ああ…それじゃあ、リンクスタート」

 

 ボーボボがナーヴギア起動の宣言をすると…ボーボボの意識が、薄れて…否、どこかへと飛ばされていく感覚に陥った。

 

 

 ●●●

 

 

 ソードアート・オンライン。

 剣を始めとしたハンマーやスピア、レイピア等を用いり、スキルを使い、浮遊城アインクラッド全100層を攻略するというVRゲームだ。

 VRゲームといっても、意識は完全にゲームの世界の中でゲームの世界の中の空間もクオリティが高く、一見現実世界と区別が付かない。

 そんな新時代の最高のゲーム…いくら高くとも売れない訳が無く、早々に色んな廃人ゲーマーから初めてゲームに触れた人までがナーヴギアを使い、このソードアート・オンラインに集った。

 そしてアインクラッドを攻略する為に剣を片手に第1層、始めの階層にてモンスターを狩っていた。

 

 そんな中、この女性…

 女性といっても一見すると少年に見えなくもない金髪のアバターの人は手馴れた手つきでナイフを第1層のザコ敵、青イノシシのフレンシー・ボアに突き刺してトドメを刺した。

 手つきが手馴れているのは彼女は…1度今日発売したばっかのこのゲームをやった事があるからだ。

 

 βテスト。簡単に言えばテストプレイの事、しかし行うのは運営ではなく実際のプレイヤーを抽選または立候補制で集め、体験版を遊ばせて問題点や改善点を見つけ出すテストの事。彼女はそのβテストの参加者であり、1度このゲームを遊んだ事があるのだ。その為、未だに操作が覚束無い初心者と比べて爽快な動きでモンスターを次々と倒してレベルを上げていた。

 彼女…後にSAO最高の情報屋、《鼠》とも言われるプレイヤーアルゴはβテスト以来のソードアート・オンラインに慣れて、いざβテスト時と現在のソードアート・オンラインの情報の違いについて調べよう…とした時だった。

 

 とあるプレイヤー…見た事も無いアバター、βテストでも見た事も無い服装なのでもしかしたらNPCかもしれないが…とある1人のふんどし姿の金髪グラサンアフロがフレンシー・ボアと戦っていた…

 

 土俵の上で。

 

「西〜ボボの関〜、東〜イノシシ丸〜。見合って〜」

 

 土俵の上では行司の姿をした二足歩行太陽の化け物、首領パッチが相撲を仕切りだし、ボーボボとフレンシー・ボアが見合っていた。

 

「はっけよ〜い…のこった!」

 

 行司首領パッチが軍配を振り下ろすと同時にボーボボとフレンシー・ボアはお互いを土俵から落とさんと激しいぶつかり合いを繰り広げ始める。もはや剣の世界とは何なのだろうか?

 

「のこった! のこった! のこった! のこった! のこった! のこった!」

 

 本来なら行司が言うべき単語を何故か相撲取りであるボーボボが連発しながらフレンシー・ボアを少しずつ土俵外へと押していく。

 一方で押され気味で焦りが見えるフレンシー・ボアだが、彼の後ろにいる何故か女装しているところ天の助の応援が耳に入るや否や、踏ん張りを見せてボーボボの押し出しを耐え抜いた。

 

「のこった! のこった! のこった! のこった! のこった…残った?」

 

 ふと、そこでボーボボが何かに気づいた。

 そうそれは…昨日の夜の事である…

 

「昨日の夕飯のカレーライス残ってるよ! 食べる〜?」

「「食べる〜!」」

 

 そう、それは昨晩に残ったカレー!

 カレーは1晩寝かすと美味しくなる。これは皆さんも聞き覚えがあるだろう。これは迷信ではなく、実際に素材がうんたらかんたらで独特のコクやらなんやらが出てナントカカントカで美味しくなるという原理である。

 大きめの鍋を抱えたボーボボに行司の首領パッチも女性していたところ天の助もフレンシー・ボアも大はしゃぎでボーボボの元へと駆け寄る。

 

 それが罠だとは知らずに

 

「残念だったな、貴様らが具材だ!」

「「し、しまった!」」

 

 表情を豹変させ、魔女の姿となったボーボボから慌てて逃れようとするももう既に遅い。ガッチリとホールドされた首領パッチと天の助、フレンシー・ボアは抵抗虚しく大きな鍋へと入れられてしまった。

 

「イッーヒッヒッヒッヒッ! 練れば練るほど美味しくな〜る…」

 

 どこぞのねるねるなお菓子の魔女の様な台詞を吐きながらボーボボは首領パッチ達を鍋の中で溶かしていく。

 そしてある程度溶かし終えると、ボーボボは味見がてらにお玉で鍋の中身を掬うとそのまま口へと運ぶ。

 

「不味すぎるぅぅぅぅーー!!!!!」

 

 おおよそ人が口にして良い色合いをしていなかった鍋の中身を口にしたボーボボはあまりの不味さに七色に発光しながら空中へと垂直に飛び、発光が終了すると共に地面へと背中から墜落する。

 

「ま、不味い…もう一杯お願いします…ガクッ」

 

 そう言い残し、ボーボボは涙を流しながら美しき草原の中でその命を落としたのであった。

 

 めでたし、めでたし…

 

 

 

 

「…何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ何も見てナイ…ブツブツ…」

 

 見れば見るほど、考えれば考えるほど背筋が凍りつき、脳が壊死し、身体能力が著しく低下し、臓器不全を起こしそうな光景を目にしたアルゴは顔面蒼白になりながらブツブツと自己暗示を自分に掛けながら逃げる様に全プレイヤー最初のスポーン地点であり安全圏である始まりの街へと移動したのだった。




アルゴが鏡を使う前から少年の様な見た目は独自設定です。実際はどんな見た目だったのか分かりませんでした。

ボーボボの敵ってほとんどがボーボボと仲良くなってますよね。もし今でも作品が続いてたらツルツルリーナ3世、4世とも仲良くなってたのかな?


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