死神さまの大冒険 〜ゲームから転移しましたが、自分だけバグって最強です〜 (サンサソー)
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終わりこそ始まりにすぎない

安定の不定期更新


「それでは、私はもう帰りますね」

「は〜い、お疲れ様でした〜」

 

職場に残っていた最後の一人も、荷物を纏めて帰っていく。もう11時半、彼は明日から家族と旅行に行くらしい。羨ましいことだ。

 

彼を見送ると、自分はそばにあった機械を頭につけ、情報群の中へとダイブする。せっかくの最後なんだ、仲間たちとともに終わるのもいいだろう。

 

『接続中・・・』

 

画面には接続中の文字が映され、点が増えては消えてを繰り返している。地形やシステムにもかなり割いてしまったからか、繋がるのはどうやっても遅いままだった。

 

私の仕事はダイビングによる仮想世界での生活、その中の一つであるゲームを担当していた。

 

VRMMORPG【リベリオンスレイブ】

 

その名の通り、モンスターの奴隷である人間たちが反逆し自由を取り戻していくというもの。プレイヤーはモンスターか人間になることができ、世界の中心にある世界樹を人間が奪取できるか否かで勝敗がつく。

 

私が行ったのは主にバグなどを片付けること、そのためにゲーム内での人脈を広げるために様々なことを行った。ギルドに入ってみたり、仲間と共に冒険したり、イベントに参加したり、はたまた『世界BOSS』になってみたり。私は管理者として奔走する以外にも、純粋にこのゲームを楽しんだ。

 

そのサービスが、明日の0時に終了する。私の費やしてきた人生、その結晶もついに消えてしまう。寂しいが、みんなの記憶に少しでも残ってくれていればそれでいい。

 

そして、残り30分を切った今はお世話になったギルドメンバーたちに会うために機械を繋げたのだ。唯一無二の友たちとゲームの最後を迎えるために。

 

『接続完了。メモリカードをスキャンします』

 

……時間あるかなこれ。メモリカードスキャンして、サーバーにログインして、情報をアップデートして……話す時間は確保したいなぁ。

 

『スキャン完了しました。サーバーにログインするためにパスワードを入力してください』

 

キーボードと同じ配置で文字が表示される。目で2秒見つめると自動で入力されていき、7つ目の文字でやっと入力が完了した。

 

『パスワードを確認しました。現在の情報をアップデートします』

 

前回終了した後に変わったNPC等の位置、修正した部分の情報を古い情報と置き換えていく。世界自体が大きいために少し時間がかかるが、その分遅延も少ない。こういったプログラムを担当してくれた方々には感謝だな。

 

『アップデートが完了しました。ようこそ、リベリオンスレイブへ』

 

1度画面が暗転し、やがて視界が開けた。まずは私の姿を確認しよう。

 

赤い紋様の入った黒衣に身を包んだ骸骨。爪は赤く、長い骨のシッポもきちんと動かせる。メニュー画面を開き、正面からも確認してみる。眼孔は少し細くつり上がっており、瞳は縦に長い。口はキバと一体化させて目と同じように赤くしている。

 

「……よし、グリッチもないしちゃんと動かせる」

 

アバターの動作を確認すると、次は周囲を見渡し確認した。

 

最後にログアウトした場所、そこは私の所属していたギルド【黒鉄の翼】のギルドホーム【深淵に浮かぶ常闇の城】だった。

 

黄金の装飾などはあれど、城壁も内装も真っ黒の城だ。荘厳と言うよりも重々しく禍々しい。悪魔の像とかあるし。

 

巨大な門を開け、すぐ側に置いてある悪魔の像に触れる。

 

「【玉座の間】前へ、『転移(テレポート)』」

 

像の目から光が放たれ、私のアバターを包み込む。光がおさまると、私は数多の天使と悪魔が彫られた扉の前にいた。

 

ギルメンだけが知る秘密の転移方法。こういった仕掛けも良い発想だよなぁ。私はこういったロマンは好きでも思いつかない。

 

扉の前にいるだけでワイワイとした話し声が聞こえる。愛しの仲間たちに顔を出すために、扉をゆっくりと押し開けた。

 

「お、来たきた!Rキンさん!」

「やあ、遅くなってしまってすまないね」

 

真っ先に声をかけてきたのは龍人の男性。ネームは『りゅうおう』。3時間ぶっ通しで話し続けるほどのドラゴン好きだ。

 

「やぁっと来た〜。遅いよRキンくん!」

「クヒヒヒヒ!同僚全員が帰るのを待ってたんだろ?Rキンは基本は優しいからな」

「でも、早めに来て欲しいと思うのは酷かしら?」

「おいおい、こちとらしっかりと仕事してきたんだ。少しぐらい遅れたって仕方ないじゃないか」

 

難癖つけてくるのは私の2倍程もある巨大な魔人『きくらげ』と、2本の刀をさげた人間の女性『ハラショー』、フォローしてくれているのは筋肉モリモリマッチョマンの人間『とっとこ』だ。

 

「とーう!」

「うわっとっとっ!」

 

突然背中に衝撃が走る。飛び乗ってきたのは小さな妖狐『たまも』。しかしシッポは9本あり、ギルドの中でも指折りの実力者だ。そしてこのギルドを紹介してくれたリア友でもある。

 

「くふふふ、やっと定位置がこの手に」

「私の背中はお前さんの定位置じゃないんだが」

 

たまもさんが飛びついてくるのは今回に限ったことではなく、もはや恒例と化している。まあせっかくの最後だし、今回は振り落とさないでやろう。

 

「で、ギルマスは?」

「ギルマスちゃんはね、あそこ」

 

きくらげが指さしたのは玉座。そこには足を組み、ほほ笑みを浮かべながらこちらを見ている吸血鬼『常闇之王アバドン』さん。【黒鉄の翼】のギルマスであり、この【深淵に浮かぶ常闇の城】をたった1人で作り上げた怪物だ。

 

「よく来たな、我が盟友よ」

「お〜う、お前さんも相変わらずだな」

 

そして厨二病である。言い回しもそうだし、見た目まんま魔王だし。しかもこの話し方、ロールプレイじゃないらしい。

 

初見のギルドホームとこの人には本当に驚かされたよ。

 

所持金上限の9999億9999万9999G(ゴールド)を使って最難関ダンジョンを買ったと思ったら、他のアカウントからまた所持金上限を持ち出してこの城を作ったもんだから。管理者の私でも目が点になったもんだ。

 

本人もかなり禍々しい姿をしてるもんだから怖くて怖くて……実際にギルドに入るとそんなこと気にしなくなったけど。なんせ他の人も一味も二味も違うんだ。

 

記念すべき最初のツッコミはなんだったか。

 

「『黒鉄の翼』とか飛べないじゃん、だね」

「ナチュラルに思考読むのやめてもらってもいいか?」

 

くふふふと笑いながらドヤ顔をするたまも。ムカついたからひっぺがしてとっとこにぶん投げてやった。突然飛んできたたまもを反射的に腕でホームランするとっとこ。哀れたまもは壁に埋まったのでした。ザマァ見ろや。

 

「ザマァ見ろや」

「心の中にとどまらず口に出しよった!」

「ははは……ん?」

 

ズボッと頭を壁から引っこ抜いたたまもに笑っていたら、ピロリン♪という音と共に通知が届いた。

 

「あ〜?……げっ」

「いかがした盟友。よもやもう別れるなどと言うまいな」

「……どうやらそうみたい」

『っ!?』

 

全員がこっちを向く。嘘だろお前という顔だが、こっちも好きで呼ばれたわけじゃない。

 

「呼び出しだ。なんか致命的なバグが見つかったらしい」

「致命的なバグぅ?よしんしゃい、もう終了するよ?」

「少しのバグも許さないんだよこの人。『最後ぐらいいいじゃん』、じゃなくて『最後ぐらい綺麗に終われ』の人だから」

「めんどくせぇ〜」

 

でも、今からじゃ絶対に間に合わんぞ。なんならログアウトだけで終わる。でもこのままログインしたままだとバレるだろうなぁ……そしてセッキョ食らうんだ。

 

「んじゃ、行ってくる。お前さんらとの活動は楽しかったよ。また別のゲームで会おう」

『お疲れ様〜』

 

メニュー画面からログアウトボタンを押す。視界がだんだんと白くなり、接続切断中という文字が表示される。

 

「致命的なバグ……たしかログインとログアウトの時に出るんだったか」

 

何か起こるかもしれんな、そう思っていると、接続切断中の文字がブレ、絶え間なく震え始めた。

 

「あ〜これか。問題なくログアウトできるとは書いてあったけど、これは流石に後味悪いなぁ」

 

一体なんだってこんなバグが発生してんのか……ログアウトしたら少し見てみるかな。

 

画面がブレ続け、プツッという音と共に画面が真っ暗になる。ログアウトは……まだできてないな。ちょっと不安になってきたぞ。

 

「真っ暗だな……文字も出てこない」

 

おいおい、本当に問題なくログアウトできるんだろうな。いや、アイツらもちゃんと強制ログアウトされているのだろうか。こんな状況に陥ってたらとっとこ辺りが泣くんじゃないか?

 

「……しばらく待つか」

 

そのうちログアウトできるだろうとは思いつつ、一抹の不安を抱えながら目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『誰かいないのか!?誰でもいいから答えてくれ!気がおかしくなりそうだ!誰か、誰か!』

 

 

 

 

 

 

 

 

土の匂いがする。鳥のさえずりが聞こえる。

 

目を開けると、木々の間に青空が見えた。

 

どうやら私は見知らぬ土地に放り出されているようだ。

 

「……は?」

 

どうなってんでーすかコレェ?

 



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現状確認したら大変なことになった

とりあえず書いてみる。これで他の作品の文章に影響出ないかだけが心配。作品ごとにちょっと違う感じに書いてるから……。


見渡す限りの木、木、木。

たま〜に顔を出すのは小鳥などの小動物たち。

 

ど〜なってんですかコレ。私はログアウトしようとしただけだったのに……変なステージに移動しちまったのかな。

 

それとも夢か?いや、さっきから感じる匂い、手ざわり……夢にしてはハッキリと捉えられる。これが本当に夢だったとしたら私の頭とんでもないな。

 

これ、まだゲームの中なのかな。だけど五感は実装してないぞ。何かわかりやすいもの……あ、メニュー画面開けるかな?

 

「メニューオープン……うわっ」

 

ブォンッ!という音とともに見慣れた画面が表示された。よしよし、ここはやっぱりゲームの中か……あれ?でも、もう【リベリオンスレイブ】は完全に停止してるはずだけど。

 

メニュー画面の端にある時刻表示は午前7時18分を指している。もう夜もあけてしまった頃だというのに……別のゲームにでも迷い込んだ?いや、接続されてない限りそんなことはありえない。

 

「姿は問題ないな。動かせるし……ステータスも見てみるか」

 

どうせなら全部確認するために、まず手始めにメニューを操作しステータス画面を開く。

 

 

プレイヤー名:Rキン

Lv:100

種族:ブラックリーパー

職業:覚醒錬成術士LvMAX

 

攻撃力:E

防御力:E

敏捷性:E

魔力:A(+)

技巧力:S(++)

運:A

 

装備

頭:怜悧のモノクル

体:覚醒錬成のローブ・死神の聖衣・黒鉄の翼

アクセサリー:神秘の腕輪・絶技の指輪・黒曜の腕輪・太陽の指輪

 

スキル

魂の掌握

常闇の儀式

死霊使役

死神の大鎌

超錬金術

超調合術

探知SP

武器錬成SP

防具錬成SP

エンチャント

収納魔法

 

 

改めて見てみると完全に拠点支援型だな。戦いには向かないステータス……一人ぼっちの状態である現状、この性能だとかなりマズイ。

 

一応ブラックリーパーという進化の果てには到達しているが、それでも覚醒錬成術士という職業のせいで大幅にステータスが変更されている。これじゃあ通常職の戦士とかに斬られても大ダメージだ。

 

覚醒錬成術士は、様々な武器防具やアイテムを作成できる生産系では最上位の職業だ。その代わりにステータスの攻撃力・防御力・俊敏性は著しく低下するが。それでも最低のFランクでないのは装備のおかげだ。

 

怜悧のモノクル・神秘の指輪・黒曜の指輪は魔力に、覚醒錬成のローブ・絶技の指輪は技巧力に、死神の聖衣は全ステータスに補正をかけ、太陽の指輪は全耐性を補強している。

黒鉄の翼は飾り。ギルマスから渡されて、アバターに合っていたので付けているだけだ。他のギルメンは持ってはいるが付けていない。

 

外見があまりにも禍々しい。こんな……まんま死神の格好したモンスターが人前に出るのは大丈夫なのだろうか。攻撃されないか心配だ。変身系のアイテムは全てりゅうおうに渡してしまったから姿を変えることもできないし……。

 

ええい、まずは問題を全て見つけないと!さてさて、次はスキルか。ブラックリーパーのスキルは使うの怖いから後回しでいいかなぁ。その辺のモブにしてみるのもいいかも。

 

なら他のスキル……って、使えるのは探知SPとぐらいかな。調合の材料を収納魔法で出すのもいいけど、先に周囲の情報を確認しなきゃね。

 

「スキル『探知SP』発動」

 

次の瞬間、頭が割れるように痛くなった。

 

「おっ!?おっおっ!〜〜〜っっ!!」

 

痛った!痛った!?ヤバい頭が逝く死ぬ死ぬ死ぬぅ!?

 

暴れ、転げ、のたうち回った。それはもう木にぶつかろうと岩にぶつかろうとゴロゴロゴロゴロ。

 

「あぶっ!おぶぅっ!す、スキル停止!停止ぃ!」

 

私の叫びに反応してようやくスキルが停止する。頭がズキズキと痛むが、十分すぎるほどこの辺りのことはわかった。なんならアリが何びきいるのかすら正確に言えるぐらいには。

 

まったく、アンデッドでも痛覚はあるの?骨なんだし無くても良くないかな!

 

「あぐ……気持ち悪い…」

 

痛みの次は吐き気まで…!頭がグラグラする…盲までしてきた…。

 

「と、とりあえず水……近くに湖があったはずだ……」

 

フラフラとした足取りで……いや、転がった方が楽だな。受け身も取らずに倒れ、そのまま湖へと転がる。

目は絶対に開けてはいけない。気持ち悪さが回転する景色によってさらに増すからだ。目を閉じれば何とかいける……あ、でもやっぱりキツいかも。

 

間に合え…間に合わなければオロる。虹色の流動体を見せることになってしまう!……あれ?骸骨なのに吐くものある?込み上げてくるものがあるということは、何か吐けるらしい。いや待て、間に合わないぞこれ。

 

転がるのをやめて、木に手をつく……ん?木にしては温かいような……まあいい。すまんな木、汚いが少しくらい栄養あるだろ。養分の足しにでもしてくれ。

 

「カハァァ……」

 

んん?固形物とかじゃないな。ドロドロでもない、水蒸気みたいなモヤモヤしてる感じ。でも目は開けられない。吐いてるもの見たらさらに気分悪くなりそうだ。耳鳴りも酷いし、早く頭冷やさないと……。

 

無事に吐き終わり、再び転がり湖を目指す。幸いなことに、すぐそばまで来ていたらしく、回転しながら湖へと入水。水の中を漂いながら痛みと熱に襲われている頭を冷やしていった。

 

あ゛あ゛〜気持ちいい〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少女は山賊に襲われていた。薬草を採取するために、住んでいた村から少し離れるだけのつもりだった。それが、まさか運悪く獣を追っていた山賊と鉢合わせるとは。

 

「朝飯を追いかけていたと思ったら、とんだ上物がいるとはなぁ!」

「こいつ巫女服来てやがるぜ!てことはまだ初物ってわけだな!」

「カシラぁ!売り飛ばしちまう前にたっぷりと楽しみましょうぜ!」

「あ〜?そうなると買値が少なくなっちまうじゃねぇか……ま、いいや!今回ぐれぇは目を瞑ってやらぁ!」

『ヒャッハー!』

「あ…ああ……」

 

善性の欠けらも無い悪意。産まれて初めて向けられているソレに、少女は震え何も出来ずにいた。逃げる様子のない少女に気を良くした山賊のカシラは、ニヤケながら手を伸ばし……突然首を掴まれた。

 

「おっぐ!?」

「え……っ!?」

 

首を掴みあげた者の姿を目にした少女は、まるで電撃に打たれたかのような感覚に陥った。

 

その者の姿は、荘厳なローブを纏った骸骨だった。その眼孔と口は赤に染まり、禍々しい雰囲気を纏ってはいるが……神に仕えている身であるからこそわかる、聖なる気配。

 

「は…ヒィ!?な、何が起こってんだ!?お前らぁ!助けろぉ!」

「か、カシラ?なんで浮いてんだよ!」

 

怯えた様子の山賊たち。どうやら骸骨の姿が見えていないようだ。骸骨は意に返さず、その口をゆっくりと開けた。中から溢れ出したのはどす黒い瘴気。それはゆっくりと山賊のカシラを包み込んでいく。中からは苦しむカシラの悲鳴が響き渡った。

 

「カハァァ……」

「た、助けで…だれがぁぁ……げげげ…」

 

骸骨が腕を下ろすと、カシラがドサッと崩れ落ちた。その顔は干からび、体は黒く変色していた。ピクリとも動かない、死んでいる。

 

「カシラ、カシラぁ!」

「なんだよ、何が起こってるんだよ!」

 

真っ先に離れ逃げようとした山賊たちは、次の瞬間にはただの死体へと変わっていた。

骸骨が消え、木々を薙ぎ倒しながら湖へ向かった衝撃に巻き込まれたのだ。自分は座り込み、少し離れていたために無事ではあったが……。

 

凄まじい水柱を上げた骸骨の姿は湖の中へと消え、後に残されたのは少女ただ1人。ふと倒れた木々で出来た道を目で辿ると、山の中腹辺りが大きく抉れ、そこから湖へと続いていた。

 

「……もしかして」

 

まだ小さい頃に、親に神について書かれた本を見せてもらったことがある。

神とは多種多様の存在だ。太陽を司る神もあれば大地を司る神もある。

 

そんな中で、誰もが嫌悪し恐怖する【死】を司る神もいた。【死神】と呼ばれるその神の姿は、鎌を持った骸骨がローブを被っている状態で描かれていた。

 

「死神…様……」

 

わかっている。自分を助けるために山賊たちを殺したわけではない。湖へ真っ先に向かったのが何よりの証拠だ。

 

でも、そうだとしても。仕えるべき主に命を救われたことが、どうしても嬉しくてたまらない。

 

「……行ってみよう」

 

いつの間にか足は湖へと向かっていた。せめて感謝を伝えなければ。何か捧げ物でもしなければ無礼だろうと。

 

本当はただ吐きそうになって慌てていただけなのだが。少女は死神の向かった湖をただただ真っ直ぐな目で見つめていた。

 



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泡沫の夢と出会い

お気に入り登録ありがとうございます。
他の作品もあともう少しで更新できそう。


暗い。

 

ただ暗い。

 

浮かぶのは数多のコード。まるで泡のように漂い消える。

 

それだけ。誰もいない場所にはそれだけしかない。

 

 

どこまでも静かで。

 

どこまでも暗くて。

 

 

辛いのに。寂しいのに。なぜだろう?

 

今はどこか心地良い。

 

それはとても悲しいことなんだろう。

それはとても憐れむことなんだろう。

 

でも、もういい。誰もいない空間にいるのに、誰がそれを期待する?

 

あるのは深い暗闇だけ。何もかもを包み込み受け入れてくれる。暖かい事なはずなのに、どこか冷たい。

 

矛盾が重なって、混ざって。

 

いつか無くなるまで。

 

なのに、なんで?

 

無くなる気配もない。積もり積もって、ゴミ溜めのように混ざっては溜まるだけ。

 

溜まれば溜まるほど虚しくなる。

空っぽになっていく。

 

生きてるのかすらも曖昧になって、なんの反応も得られない場所にいて、少しずつ少しずつ闇に溶け込んでいく。ズレて曲がって、グズグズに崩れていく。

 

私はもう諦めた。

 

こんな私に……お前は何を望むんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『わからんのか?背中に乗せろ!』

「っ!?ガボ、ガボボボ…!?」

 

んごぉ!?お、溺れ、溺れるぁあ!!

やっべ、寝てた!水中で眠るなんてバカだろ私!

 

勢いつけすぎたか!湖に飛び込むんじゃなかった……いやでも、骸骨だからワンチャン……。

 

「ごぶぅ!おぶぅっ!」

 

ねーわ。なんなら普通に窒息しそうだわ。オマケに水が骨の間に入ってきてるわ!そんなところはしっかり骸骨しなくていいと思うんだが!

 

マズイ、骨の手だと水をかけない!何かないか、スキル……収納魔法があったな!でもこんなに大量の水を入れてる時間はない!何か中に……これしかないか……。

 

「ガボボボ……(背に腹は変えれないか)」

 

収納魔法発動、対象は……【Rキン砲】だ!

 

目の前の空間が歪み、私の身の丈以上の大きさを持つ六角形の魔力板が現れる。その真上になんとか移動すると、スイッチを押して魔力板を起動させた。

 

よし、後は撃つだけだ!流す魔力は最小にしてっと……【リベリオンスレイブ】と同じ感覚で魔力が使えるのは助かる!

 

さて、Rキン砲発射!

 

魔力板が光り、電気を帯びる。それは徐々に魔力板の中心へと集まり、高密度の電気が蓄えられた……ん?

 

そうだった!これ少しの魔力でも威力がヤバいんだった!もっと別のものにすれば…!

 

無情にも発射されるビーム。哀れRキンは空高くまで吹き飛ばされたのだった、マル。

 

「……溺れたり落ちたり、散々なんだが」

 

雲を越えて……落ちる。撃つ方向が水面と並行ではなかったおかげで、地面には降りれそうだ。いや、着弾しそうだ。

 

「困った時のたまも印!」

 

収納魔法で取り出したのはもっふもふの大きな毛玉。通称【たまもボール】。たまもボールが地面と衝突すると、もっふもふの弾力で全ての衝撃を吸収してくれた。

 

ふぅ、何とかなったか。収納魔法でたまもボールとRキン砲を回収。1度収納したものはどこであってもまた収納できるのが素晴らしい。

 

「…………」

 

で、だ。この木々がなぎ倒されている道はなんぞや。こんな惨状は森林破壊でも見たことがない。

 

探知した時はこんなの無かったし、何か強大な怪物が暴れでもしたのだろうか。あれ?この道、湖にまで続いてる……え、まさかこの近くにいたりしないよね?

 

「……ちょっと待てよ?」

 

もしかしてこれ、私の転がってきたところじゃない?そういえば木々に当たったりしてもあまり痛くなかったし、そう考えると……え、でも私のステータスほとんどがEだぞ?

 

1度確認してみるか……ステータス画面ステータス画面…。

 

 

プレイヤー名:Rキン

Lv:100

種族:ブラックリーパー

職業:覚醒錬成術士LvMAX

 

攻撃力:E

防御力:E

敏捷性:E

魔力:A(+)

技巧力:S(++)

運:A

 

装備

頭:怜悧のモノクル

体:覚醒錬成のローブ

アクセサリー:神秘の腕輪・絶技の指輪・黒曜の腕輪・太陽の指輪

 

スキル

魂の掌握

常闇の儀式

死霊使役

死神の大鎌

超錬金術

超調合術

探知SP

武器錬成SP

防具錬成SP

エンチャント

収納魔法

 

 

うん、やっぱりEだよな。ならこれは私の責任では……ん?

 

 

プレイヤー名:Rキン

Lv:010

種族:

職業:覚醒錬 成術士LvMAX

 

攻撃力:E001

防御力:E001

敏捷性:E001

魔力:E001

技巧力:E001

運:E001

 

装備

頭:怜悧のモノクル

体:

アクセサリー:絶技の指輪・黒曜の腕輪

 

スキル

 

魂の掌握

常闇の儀式

死霊使役

死神の大鎌

超錬金術

超調合術

探知SP

武器錬成SP

防具錬成SP

エンチャント

収納魔法

 

 

な〜にこれぇ?ステータスがバグってる?レベルも種族も何もかも……え、なんでこんなことになってるの?そもそも私の操作してるアバターにバグがあったのか?

 

もう一度見てみ……あれ、元のステータスに戻った。怖いんだけれど。今までこんなホラー展開経験したことないからちょっと新鮮…!

 

さて、まずはどうするか。このバグのせいでまともに動けなくなった。下手に動いてこんな大災害撒き散らしてたら……あ、そういえば1日だけレベルを下げるアイテムあったな。でも妨害アイテムだから相手がいなければできないし…。

 

「こりゃ参ったな……せめて誰か人がいればな〜…」

 

もう一度探知……いやでも、またあんな痛みは経験したくないぞ。いくら湖が近くにあるとはいえ……やるしかないのかぁ。

 

チラッと湖を見てみる。綺麗な青空が水面に映り、さっきまで溺れかけていた人物がいたとは思えない静けさがあった……ん?んん!?

 

手前の水面を覗き込んでみた。雲ひとつ無い青空がそこにある……つまり。

 

「私……映ってない?」

 

え、これもバグ?水面に映らない……もしかして、私の姿が他の人には見えてない可能性があるってこと?

実際に確認してみないことにはわからないな……腹を括るしかないか。

 

だがまた吐くようなことはしたくないんだが……あ、そういえばこのスキルって、探知する範囲とか決めれるんだろうか。対象も選択できるなら、情報量にオーバーヒートしないかも。

 

「スキル【探知SP】発動、半径10キロ、対象『人間』」

 

……お、おお?痛くない。やった成功だ!あれ、私って実は天才だった?……自分で言って気持ち悪くなってきた。こんなの私のキャラじゃない。

 

え〜っと、反応は沢山あるな。どうやら近くに町……と言うのには少ないな。村があるのかな?あとは私の後ろに1人か……ん?

 

「あの……」

 

小さめの声が真後ろに聞こえた。

 

「うわっとっとい!?」

「キャッ…!」

 

ビックリしたぁ……心臓が口から飛び出るかと思ったぞ。骸骨だから心臓ないけど。こういうホラーな展開は望んでないです。

 

「あ〜…すまないな。突然後ろから話しかけられたからつい驚いてしまった。立てるか?」

「は、はい。こんな情けない姿を見せてしまい、申し訳ありません…」

「気にしないさ」

 

いたのは巫女服を着た白髪の少女だった。こちらの驚き様に驚いてしまったのかしりもちをついている。引き上げてあげようかと思ったが、それよりも早く立ち上がり砂を払ってしまった。

 

この子は私をしっかりと認識しているな。これは私の姿が見えないなんて事は起きていないのか。

 

「死神様、常人には姿を見せず、私にだけ見せてくださるのはなぜでしょうか?」

「……え?」

「え、あの……先程の山賊たちは貴方様の御姿を見ることができなかったようですし…」

 

前言撤回、私はどうやらこの子にしか見えていないらしい。それよりも死神?山賊?なんの話をしているんだ。

確かに種族はブラックリーパーだから死神というのもあながち間違いではないのだが……でもただのモンスターの種族名だし。

 

「私は神などではないよ。ただのモンスターだ」

「ですが、言葉を話す魔物なんて聞いたこともないです…」

「そうなのか?私は最近この辺りに来たばかりだからよくわからない」

「そうなのですか……あ、申し遅れました。私はこの近くにある【フルトの村】にて巫女をしております。サヤと申します」

「ああ、これはご丁寧に。私は……」

 

そういえばどっちで言えばいいのか。ゲームの中といっても明らかにプレイヤーみたいに反応してくるし……でもプレイヤーにしてはNPCの要素が強すぎる。これ、現実…だよな?でも本名をこの姿で言うのもどうかと思うし……。

 

私のアバターには【Rキン】という名を付けている。簡単に錬金の錬をRに変えて金をカタカナに変えただけの簡易なものだ。こんな不自然な名前なんておかしいだろ。

 

「……?どうなさいましたか?」

「あ〜……」

 

待たせるのも酷だ。ここはもうRキンで行くしかない。

 

「私の名は【Rキン】だ」

「え…ええと、あ〜う?」

 

かわいい……じゃなかった。小首を傾げながら舌っ足らずに言うのは反則だろ。アルファベット言い慣れてないのかな。

 

「Rキンだ……言いにくいのであれば自分で好きに呼ぶといい」

「すみません……では、キン様と」

 

な〜んか変な感じがする呼び方だが……まあいいか。

 

「それでいい。さて、先程にも言ったが私はここに来て日が浅い。この土地のことをよく聞かせてくれないか」

「わかりました。まずは村に行きませんか?ささやかではありますがおもてなしがしたいので…」

「そうか……では、お言葉に甘えようかな」

「では、ついてきてください」

 

サヤさんは、探知の反応があった方向へと歩き出す。何もわからない現状、彼女だけが唯一の命綱だ。そう思うと、その小柄な背中がたくましく思えてくる。

 

『くふふふふ!Rキン、覚悟ー!』

 

いや、重ねてしまっているだけかもしれない。性格は大人しそうだし、恐らく正反対の性質ではあるだろうが。それでも、私にとってはとても安心するものだった。

 



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フントの村の巫女

お気に入り登録ありがとうございます。

よければ感想・誤字報告もお願いしたいです。どういうところがダメなのか、どの辺が面白かったのか反応を確認したいので…。


【フントの村】

ランドール地方の小さな村。比較的に農業が盛んなこの地方ならではの景色と作物が旅人を迎える。

 

 

アイテム【ライブラリ】を開き情報を確認する。1度開けば、自分のいる場所や周囲の生物などの情報が書き加えられる不思議な本。ダンジョンの設定やどういう町なのかを知れるため、多くのプレイヤーが最初期から配布されたこのアイテムを捨てることはほとんどなかった。

 

私はこの地の情報を何も持っていない。今のところ情報源で頼れるのは、私を見ることができるサヤさんとこのライブラリだけだ。

 

サヤさんの少し後ろに付きながら村に入ってみる。こんなモンスターが村の中に出現するなど普通は大事件だ。そう、普通は……。

 

「おやサヤちゃん、薬草は十分に集まったかいねぇ?」

「はい。1度家に帰ったあとに納品します」

「そうけぇ、んだら炭も少しだけ持ってきてくれや。ひさぁしく柿を仕入れたでよ、焼いて食わせたる」

「柿っ!……あ、ありがとうございます」

 

おばあさんがサヤさんと楽しそうに会話している。その目は私の姿を映していない。周囲を通りかかる村人たちもサヤさんを見はするものの私に目を向けるものは誰もいなかった。

 

これで私を見ることができる人間は限られていることが証明できたわけだ……そう考えると寂しく思えてくるな…。

 

「キン様、すみません、待たせてしまいました」

「気にしなくていい。それにしても、柿の話になると目を輝かせていたね。好きなのかい?」

「え、いや……その、久しぶりなので……この村は見ての通り小さな農村で、甘味とかも少ないので…」

「ああ、なるほど」

 

そんなに豊かな生活ではなさそうだ。柿も大事な甘味、ちょっとした贅沢なのだろう。それこそ、表情の変化に乏しい、控えめなサヤさんが目を輝かせるぐらいには。

 

「着きました。ここが私の住んでいる小屋です」

「ほう……」

 

サヤさんが立ち止まったのは小さな小屋前。人一人くぐるのがやっとの鳥居があるおかげで、かろうじて神に関する建物なのだとわかる。この……世界?にも鳥居はあるのか。

 

「どうぞ、狭いですが」

「ああ、お邪魔させてもらうよ」

 

中は小さなちゃぶ台と布団、編まれた藁などがあった。掃除が行き届いているらしく、クモの巣やホコリなどは見られない。

 

「ん…んしょ……」

 

サヤさんは藁を束ねて手早く編むと、ちゃぶ台近くの床に置いた。どうやら椅子代わりのものらしい。

 

「どうぞ」

「ありがとう」

 

ふむ…少し硬いが悪くない。骨が束ねられた藁の間に挟まりそうになるが、そこは我慢。

 

「さて、早速で悪いがこの地について聞かせてくれないか」

「ここに来てまだ日が浅いんでしたよね。では、まず地方についてから……」

 

 

サヤさんはこの地について、とても丁寧に説明してくれた。纏めてみると、大きく分けて次の3つ。

 

・地方は全部で8つ。

・このランドール地方は農業が盛んで自然も多い。

・地方はそれぞれ8つの国が治めており、ランドール地方はランドール帝国の支配下に置かれている。

 

う〜む……ランドールなんて国名も知らない。携わったゲームにもそんな名前は出していない。ということはつまり……ここは私の知る世界とはまた別のもの?

 

「あの、お役に立てましたでしょうか…?」

「ああ、とても貴重な情報だった。なにかお礼をしたいんだが……」

「そんな、お礼なんて恐れ多い…」

「私は施しを受けない。それに見合った対価を出すだけだ。物々交換とでも思ってくれ」

 

さて、何を渡そうか…… あ、そうだ。この村では甘味が少ないんだったな。おばあさんと話している時のあの目の輝き、かなり甘い物が好きなんだろう。

 

村まで連れてきてくれたことのお礼もしてなかったし、1つプレゼントしてあげようか。

 

収納魔法を発動し、1つのアイテムを選択する。空間の歪みに驚いたサヤさんは、歪みから出てきた小さな丸い物に目を見開いた。

 

「そ、それはまさか……」

「そのまさか、アメ玉だ」

 

これほどの田舎では、しかも山々に囲まれているこの村では、砂糖は高級品。滅多にお目にかかれない甘味だ。柿でさえ久しぶりだったのだ。アメ玉ともなればその価値は私の思う以上に高いだろう。

 

「これはキミの物だ。売るなり食べるなりするといい」

「あ、ありがとうございます…!」

 

サヤさんはあたふたしながらアメ玉を手の中に収めた。しばらくサヤさんはアメ玉を見つめ、それを口に……ではなく、私へと差し出した。

 

「ん?どうした、気に入らなかったかな?」

「いえ、そうではなく……その、こんなことを頼むのも、それも頂いたもののすることではないのですが……割って、くださいませんか」

「割る?……別に構わないが」

 

アメ玉を受け取り、ちゃぶ台に置く。そのまま指圧をかけると、アメ玉はパキッという音を発して複数に割れた。

 

「ありがとうございます。すみません、少し外に出てきます」

「ああ……」

 

サヤさんは私に一礼すると、戸を開けて外へと出て行った。何をするつもりなのだろうか……ついて行ってみるか。

 

後をこっそりと、物陰にかくれながらついて行ってみる。傍から見ると完全な不審者だが、私を見ることが出来るのはサヤさんだけ。少しだけ心が痛むが、それよりも好奇心が勝っていた。

 

サヤさんは別の家の戸を叩く。中から出てきたのは先程のおばあさんだ。

 

「ああいらっしゃい。サヤちゃん、薬草は持ってきてくれたかぁ?」

「はい、ここに」

 

サヤさんが薬草を渡すと、おばあさんは隅々まで薬草を観察し、ひとつ頷いた。

 

「いい薬草だぁ、これならじいさまの腰も治るだよ。あんがとぉなサヤちゃん」

「いえ、お礼には及びません」

「ほんに、謙虚な子だぁ。お上がり、柿を馳走しましょ」

「柿…!」

 

やはり目を輝かせながら、サヤさんは家の中に入っていった。私は足音を立てずに家に近づくと、通気口の隙間から家の中を覗き込んでみた。

 

「ほれ見てみい。おっきな柿じゃろぉ」

「すごい……こんなに大きな柿は初めて…!」

「そうけぇそうけぇ、これはサヤちゃんのにしようけぇな」

「ありがとうございます…!」

 

おばあさんが焼いた柿を、サヤさんは勢いよく頬張った。あつあつ、と言いながら食べるサヤさんは、表情はそこまで変わってはいないものの本当に美味しそうな食べっぷりをしている。

 

「じいさま、じいさまや。柿を焼いたでな、ほら起きぃ。久し振りの甘味ですよ」

「ぬ…おお、サヤちゃんもおったんか。すまんなぁ、ワシのために山まで」

「ふぁいひょうぶへふよ。ふぉれふあい」

「これこれ、口にもの入れて喋るでねぇや」

「ふぁい」

 

もきゅもきゅと食べ進めるサヤさん。おばあさんたちとのんびり食べている光景は、なかなかホッコリとする。

 

「んくっ………おばあさん、おじいさん。実は2人にあげたいものが……」

 

柿を食べ終わったサヤさんが、手の中にあった物を出そうとした時、外が急に騒がしくなった。

 

「やれやれー!奪えるもんは全部奪え!」

 

下卑た声のする方へ向かってみる。そこには山賊と思しき男たちが家々を壊し、人を攻撃し始めていた。

 

「これは……止めっ!?」

 

山賊たちへ進もうとした時、違和感を感じた。自分の足に込められている力がかなり大きい。もしや……まさかこんな時に!?

 

「メニューオープン!」

 

メニューを操作しステータス画面を開く。案の定、そこには……。

 

 

プレイヤー名:Rキン

Lv:101

種族:ブラパー

職業:覚成術LvMAX

 

攻撃力:E001

防御力:E001

敏捷性:E001

魔力:E001

技巧力:E001

運:E001

 

装備

頭:

体:

アクセサリー:

 

スキル

 

魂の掌握

常闇の儀式

死霊使役

死神の大鎌

超錬金術

超調合術

探知SP

武器錬成SP

防具錬成SP

エンチャント

収納魔法

 

 

バグったステータスが映っていた。

 



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生産職の苦難

誤字・脱字があれば、報告機能か感想にてお願いします。できるだけこちらも減らす努力はしていますが、もしも見つかった時は、よろしければお願いします。

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プレイヤー名:Rキン

Lv:101

種族:ブラパー

職業:覚成術LvMAX

 

攻撃力:E001

防御力:E001

敏捷性:E001

魔力:E001

技巧力:E001

運:E001

 

装備

頭:

体:

アクセサリー:

 

スキル

 

魂の掌握

常闇の儀式

死霊使役

死神の大鎌

超錬金術

超調合術

探知SP

武器錬成SP

防具錬成SP

エンチャント

収納魔法

 

 

これはマズイ。ステータスがバグると、少し暴れただけで周りが吹き飛んでしまう。先程までは普通に動けたのに、今では少し進もうとすると足に予想以上の力が入る。これは、まともに歩くと建物にツッコミそうだ……。

 

というか、喧嘩もからっきしな私にどうにかできるとも思えない。ステータスが元通りになったら無理矢理引っ張ってでも村人たちを村の外に出さないと!

 

そうやって私が動けない間に、山賊たちは村人たちを襲い、家々を破壊していく。

 

「おいおい、しけてんなぁ!どこも大したもんがねぇじゃねーか!」

「わけぇ女も見当たらねぇし、もう焼いちまうか!?」

 

どうやら奴らはこの村を焼く気らしい。果敢にもクワなどの農具を持っている男たちもいるが、数は山賊たちの方に分がある。

 

「キン様!これは…!」

「っ!?来るな!どこかに隠れて……」

「お?おいお前らぁ!こんなところに上物が隠れてやがったぞ!」

 

最悪のタイミングで出てきてしまったか!荒縄を持った山賊が数人、サヤさんへと迫る。くそ、もう被害そっちのけで動くか!?いや、サヤさんまで巻き込む可能性が高い。たが、このままでは……待てよ?

 

メニューを開ける。スキルも使える。そうだ、現実でのやり方で対処しようとしていたが、ここはゲームの要素も使えるわけで。ということは……な〜んだ、動かなくても良かったんだ。

 

「おら、大人しく…!?」

 

山賊の眼前に何かが飛来し、地面に刺さる。突き刺さったのは立派な大剣。目を丸くした山賊たちはサヤさんから完全に注意を外した。

 

空間が歪み、様々な武器が顔を出す。これらは全て私が作ったものであり、そのストックは999個。

 

覚醒錬成術士などの、収納魔法が使える生産職は基本的に戦いを苦手とする。武器を振るうことはもちろん、使える()も自作しなければならない。武器・防具・アイテム、その全ては私たちにとって投稿武器になりうる。

 

1度生産職のみでの大戦が起こった時は、互いが収納魔法を利用して弾を放ち、互いに避けられず全滅したこともあったなぁ。

 

なぜ生産職だけこんな戦い方に落ち着いたのかというと、ステータスの低さから近接は論外、遠距離は弓術士系、魔法は魔術師系、罠は盗賊系の職に劣りほとんど戦闘に参加できないからだ。特にプレイヤーを相手にすると、威力も補正も無い生産職の攻撃は歯が立たない。

 

PKの標的になるのは、ステータスが低くレアな武器防具を所持している可能性のある生産職たち。武器集めのためにギルドへと特攻をしかけ、手強そうな戦闘職には目もくれずに生産職を攻撃。倒して持ち物を奪ったら即座に帰還アイテムや転移アイテムを使うという方法もザラだった。

 

どれほど注意して守ろうとも、ギルドメンバーの最高人数は10人まで。奇襲でもされれば必ずと言ってもいいほど生産職は死ぬ。

 

【黒鉄の翼】を例にあげるならば、他のギルメンが今までの被キル数が数十の中、唯一の生産職である私は数千にも及ぶ。そんな事情から生産職の絶対数が減り、需要と襲撃頻度が爆上がりするという負のループに入ってしまった。

 

流石に修正を入れるべきか迷ったが、被ダメージを減らすなどしても生産職のステータスでは焼け石に水。ステータスを上げようものなら、ゲームのバランスが崩れるほどの強さになる。超火力の遠距離攻撃、倒そうにもステータスが邪魔し倒しきれないなんてことになったら目も当てられない。

 

なら第二の職業はどうか?これもダメだ。生産職を取った者にだけこれを適用しても、状況に合わせて武器防具を変えたりできるというバケモノキャラが跋扈するゲームになる。逆に全員がほかの職をとれるようにしても、それはそれで強すぎる。

 

そこまで個人個人が強くなってしまえば、ログインしてない間に攻め込まれるなどでほとんどのギルドは崩壊、プレイヤー激減待ったなし。

 

戦法一つ、職業一つでこんなにも悩ませられるとは、開発初めは全く思わなかったぞ。

 

「おい……なんだよアレ」

「し、知るかよ。あの女がやって…っ!?」

 

状況に頭が追いついていない山賊たちの足元から、突如鈍く光る黒い粘体が生えた。それらは山賊たちを拘束し、地面に転がした。

 

【無尽蔵スライム】

私が作成したアイテムの一つ。自由自在に動かすことができ、伸縮自在で体積も増減可能。モンスターとしてのスライムの性能を模した三つのモードがあり、武器を射出しながら地面や壁に潜ませて相手を攻めるのが常套手段だった。

 

これのせいでゲームでは遠距離の撃ち合いしながら地中でのスライム合戦までするはめになった。生産職が戦うには、他の職との差を埋めるために頭を使うが、二つや三つ戦いを同時進行させるのは流石に難しすぎた。

 

これも生産職が少なかった理由の一つ。他の職との差を埋めるために強いアイテムを実装しても、使い勝手と作成素材などなど、強い分の難易度も設定しないといけなかった。

 

こういった理由から生産職自体を消すべきかどうか会議で悩んだこともある。

 

「サヤさん、ここは私に任せてキミは村人たちを避難させなさい。山賊たちはできる限り迅速に対処する」

「は、はい。お願いします…!皆さん、村の外に!」

 

サヤさんが周囲に声をかけながら走っていく。隠れていた村人たちも、巫女であるサヤさんについて行った。その顔は何が起こっているのかわからないという表情を浮かべていたが……説明のしようもないしな。まずは山賊たちを拘束しよう。

 

村人を襲う、または家々を荒らそうとしている山賊たちを、見つけ次第武器を射出して牽制。その隙にスライムで捕縛していく。怪我をして動けない村人には、回復のポーションを振りかけておいた。

 

サヤさんがいない今、私では何も伝えられないからな。見つけた村人は怪我をしていない限り無視して山賊の捕縛にあたる。

 

「ぎゃっ!?」

「ヒィッ!?なんだよコレ!」

「……ふう、これで……20人ぐらいか?だが指揮を執る者が見当たらない……いや、そもそも統制のとれた動きではなかったな。長はいないのか?」

 

それならそれで楽なんだがな。そうだ、探知SPを山賊だけに絞って発動してみようかな?

 

少し体が震える。トラウマになりつつあるあの痛み。来ないだろうとはわかっているのだが、いざまた発動させようとするのも少し勇気がいるな……。

 

いよいよ発動させようと口を開いたその時、甲高い悲鳴が響いた。これは……サヤさんの声か!?もしやあっちに山賊の残りが行っていたのか…!

 

「どうすれば……そうだ、スライム!私を運ばせれば……」

 

スライムが私を包み、ウニョウニョと動く。スライムではあるが、魔力を流せば滑るように地上を移動できる。これならばサヤさんのところに着くのはそうかかるまい。

 

スライムが動きを止め、私から剥がれていく。どうやら目的地に着いたらしい。スライムから顔を出し、そこで見たものは……体から血を流し、老夫婦を背に倒れているサヤさんの姿だった。

 




な〜んか愚痴回になっちゃいました。思ってたのと違う。

下の3つから題名を選んで投票お願いします。来週の日曜日に締め切りたいと思います。

1・2番目、3・4番、5・6・7番で一つの題名です。


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