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地球連邦統合政府


連邦に居るUNSCとかってなんなのって方の為の物です。
少々分かり易いように解説しています。詳しく知りたい方は、Google神やウェキペディアでお調べください。

連邦軍陣営の募集でご参加する際は、ここをご確認ください。


 ここでは地球連邦統合政府について解説する。

 

 ヴィンデル・マウザーの手によって統合した世界にて、異星人や独立を掲げる分離主義勢力の連合勢力である自由惑星同盟*1に対抗する形で、人類の連合組織である地球統合連邦政府だ。

 融合してしまった世界の混乱で地球を惑星同盟に奪われ、更には太陽系内から追い出された人類が、地球奪還を目的にそれぞれの統一政権や地球国家群が同盟を結んで組織する。以降は連邦軍と呼称する。

 持ち帰った戦力や逃げた先での駐留軍を接収して軍の再編を行い、中立を掲げる惑星サンヘリオスよりエリートことサンヘイリ族よりアドバイザーを招き、統合宇宙軍並び宇宙海軍を組織して強化した。練度はアドバイザーのおかげで高く、ヴィンデルの暗躍もあって太陽系に帰ることに成功。地球に降下することに成功したが、惑星同盟軍の抵抗に遭い、膠着状態に陥る。

 

 地球奪還に向け、現状の戦力を更に増加するべく、連邦サイドの各コロニーや各惑星に強制徴兵礼を発令。職を持たない人々や家に引きこもる人々を強制的に軍に入隊させ、戦力の増加を図る。

*2

 

統合連邦宇宙軍

 広い宇宙の中で必ず主力となる連邦の宇宙艦隊を保有する軍。

 植民地惑星やステーション防衛、本土防衛、敵に対する反撃を目的としており、かなりの数の艦艇を保有している。

 だが、戦力の拡大の為に水兵たちの練度は低めであり、艦載機のパイロットの練度も戦時下であるためか、低い分類に当たる。

 

保有艦艇(標準艦艇は除く)

戦艦 マゼラン改級、ラー・カイラム級、ドゴス・ギア級、アオヤギ級、ネルソン級、ダーウィン級、ディーヴァ級、ディヤウス級、他多数

巡洋艦 サラミス改級、アイリッシュ級、アレキサンドリア級、クラップ級、スペース・アーク級、バルトーク級、他多数

駆逐艦 サラミス改級防空型、他多数

護衛艦 ドレイク級、レパルト級ミサイルフリゲート、他多数

空母 トラファルガ級 アンティータム級、ビーハイヴ級、アガメムノン級、他多数

強襲揚陸艦 ペガサス級、ペガサス改級

輸送艦 コロンブス級、コロンブス改級、コーネリアス級、他多数

 

保有兵器

戦闘機 セイバーフィッシュ、コア・ブースター、他多数

戦闘爆撃機 他多数

戦闘ポッド 133式ボール

 

保有機動兵器

PT 量産型ゲシュペンストMk-Ⅱ、量産型ヒュッケバインMkーⅡ、量産型ビルトシュバイン、エクスバイン

MS ジェガンシリーズ(J型から)、ヘビーガン、Gキャノン、ジャベリン、ドートレス、バリエント、ドートレス・ネオ、ストライクダガー、105ダガー、デュエルダガー、バスターダガー、ダガーL、ウィンダム、ジェノアスⅡ、アデルMk-Ⅱ、クランシェ

MA メビウス、ザムザザー、ゲルスゲー、デストロイガンダム

AT スコープドッグ宇宙戦仕様、スタンディングトータスMk-Ⅱ

 

統合連邦宇宙海軍

 宇宙軍と駄々被りであるが、こちらは攻撃と遠征が任務であり、惑星の海においての戦力を有していた。

 艦艇も広い宇宙を移動するために宇宙軍の保有艦艇より大きく、人員も装備も宇宙軍より質が良い。その所為か、宇宙軍の将校からは「宇宙のSS」と揶揄された。

 階級は宇宙軍とは違って旧来の海軍方式。中心となっているアメリカ海軍であるが、水兵ではなく航兵となっている。

 だが、練度の高いのはUNSC海軍や惑星戦略同盟(ISA)、その他諸々の精鋭のみであり、連邦宇宙海軍とコロニー連合軍(UCA)の海軍は宇宙軍以下である。

 

保有艦艇(艦艇不足を他の勢力が建造した艦艇で補っているが、それらは割愛する)

主力艦 インフィニット級スペースキャリア、連邦標準主力艦

巡洋艦 ハルシオン級軽巡洋艦、マラソン級重巡洋艦、オータム級重巡洋艦、ヴァリアント級超巡洋艦、UCA・ISA標準巡洋艦

駆逐艦 ゴルゴン級重駆逐艦、ハルバート級、ヒルズボロ級、ディリジェンス級、その他標準駆逐艦

フリゲート艦 パリ級重フリゲート、カロン級軽フリゲート、スタルワート級、ストライデント級

コルベット・支援艦 アオザメ級、チロプテラ級、レザー級電子戦闘艦

空母 フェニックス級コロニー船、エポック級重空母、オリオン級空母、ポセイドン級軽空母、ポエニ級超大型空母

 

保有装備

 詳細は地上軍の項にて説明する。同じであるため。

 

保有航空機

艦載機 ロングソード級迎撃機、セイバー級戦闘機、ブロードソード級戦闘機、ペリカン輸送機、アルバトロス大型輸送機、ポッド大型輸送機、他勢力の標準多目的戦闘機

 

保有機動兵器(宇宙軍と同じ。辺境や後方、二級戦装備について説明する)

MS ガンタンクⅡ、ジムⅡ、ジムⅢ、ハイザック、バーザム、バーザム改、ジェノアス、その他鹵獲機

 

統合宇宙海兵隊

 アメリカ海兵隊を基に組織された即応部隊。通称、殴り込み隊か先兵。階級はアメリカ海兵隊が基である。

 宇宙軍や海軍の艦艇に乗り込み、前線に対する事態を迅速に対応するのが彼ら彼女らの仕事。

 その戦闘力と練度は旧来の陸・海・空を統括した地上軍を上回り、戦局を左右する重要な局面では必ず海兵隊が投入される。

 当然、装備も地上軍より良く、数も多いはずの地上軍より嫉妬の目を向けられている。

 

保有装備

ライフル MA5シリーズ(全てD型に更新。カービンモデルのKは現役)、BR55シリーズ、BR85HB、パルスライフル

サブマシンガン M7系統

ショットガン M45シリーズ

ライトマシンガン M739

スナイパーライフル SRS99シリーズ

ピストル M6シリーズ

重機関銃 AIEー486、M247

ロケット・グレネード・ミサイルランチャー M41ロケットランチャーシリーズ、M19ーB対空ミサイルランチャー、M319グレネードランチャー、スパルタンレーザー

その他 フラググレネード、Cー7爆薬、煙幕手榴弾、その他多種の手榴弾、多種の地雷

 

保有兵器

戦闘車両 ワートホグシリーズ(タレットの種類は割愛)、スコーピオン戦車シリーズ(M820に更新)、ウルヴァリン対空自走砲

航空機 ペリカン輸送機、ロングソード級爆撃機、ショートソード長距離爆撃機、ホーネット、スカイホーク

機動兵器(地上軍や宇宙軍と同じであるが、海兵隊独自の改良が施されている) ガンダムタイプ(独立機動戦闘団ラッシュ・フィッシャーズ、独立機動大隊ハンターチームが所有)

 

保有艦艇

 ほぼ揚陸艦。ペガサス級も配備されているようだ。スペース・アーク級万能艦の配備も確認されている。

 

統合連邦地上軍

 地上戦の主力となる陸・海・空を三つの軍を吸収した軍。惑星の地上侵攻や防衛においては主力となる。数も海兵隊とは比べ物にならないくらい多い。

 だが、地球奪還が叶い、主戦が宇宙へと移行すると、扱いはかなり酷くなり、地上での仕事は殆ど海兵隊の物となっていく。辺境もこの地上軍に属すため、保有装備の種類は大変雑多である。

 機動歩兵もこれに属しており、その待遇は地上軍の自慢とも会って随一であり、他が文句を言うほど。

 

保有装備

 ほぼモリタ式ライフルかその系統。UNSC陸軍や空軍、ISA陸軍、UCAの陸軍、COG全軍も属していてかなり雑多なようだ。

 

保有兵器

戦闘車両 61式戦車、リニアガン・タンク、他

航空機 セイバーフィッシュ、フライマンタ、マングース、ジェット、コア・ブースター、スピアヘッド、コスモグラスパー、他

輸送機(大型を含む) ミデアシリーズ、ガルダ級大型輸送機、ベースジャンバー

保有艦艇 ヒラヤマ級空母、モンブラン級ミサイル駆逐艦、デモイン級巡洋艦、アーカンソー級巡洋艦、フレーザ級駆逐艦、タラワ級強襲揚陸艦、スペングラー級強襲揚陸艦、その他多数、潜水艦含む。

陸上戦艦 ビッグ・トレー級、ヘビィ・ホーク級、ミニ・トレー級、バンダール級、テンザン級、ハンニバル級 

 

保有機動兵器

 宇宙軍とほぼ同じであるが、地上専用機もあるため、この項目で記載する。

MS グスタフ・カール、ジェムズガン、アデルMk-Ⅱ地上戦用型、ジェットストライカー装備

AT スコープドッグシリーズ、バーグラリードッグ、スタンディングトータスシリーズ、ダイビングビートル

 

統合連邦特殊作戦グループ

 特殊作戦を担当する特殊部隊を指揮下に置いた軍。大西洋連合の非正規部隊ファントムペイン、UNSC自慢の強襲降下軌道部隊(ODST)や最強たるスパルタンもこのグループに属している。ついでに海軍情報局ことONIの実行部隊はここの所属。

 名前の通り、特殊作戦を実行する軍であり、外部に情報を漏らさぬため、装備も他の軍とは違って隠密性の高い物が多い。

 

保有機動兵器

MS ジェガンD型、ロト、ダークダガーL、105スローターダガー、ガンダムタイプ

AT ラビドリードッグ、ブラッドサッカー、スコープドッグ・ターボカスタム

 

保有艦艇

 名称不明ステルス艦、ガーティ・ルー級戦闘艦

 

スパルタン

 UNSCが統治に反抗する反乱軍を制圧するために計画した超人兵士計画の名称。反乱制圧のⅠ、対コヴナントで完成形のⅡ、安価なⅢ、戦後型のⅣの四つの世代がある。

 主な所属はONIだが、その戦闘力の高さから正規軍と共に作戦行動や戦闘行動を取ることも多いため、憧れの存在となっている。人員は主に非合法に拉致した子供たちで編成されていたが、次世代のスパルタンⅣからは志願者で構成されている。

 保有する機動兵器も特別な物が多く、主に少数生産やガンダムタイプだ。

 

保有兵器

MS ガンダムF90シリーズ、F91シリーズ、ネオガンダム、ガンダムX系統、GTAーXシリーズ、アクタイオン系統、AEGⅠ~Ⅲ

PT ゲシュペンスト・タイプS、ビルトシュバイン、ビルトビルガー、ビルトラプター、ビルトファルケン、ヒュッケバイン、エクスバイン、アルトアイゼン・ナハト、ヴァイスリッター

 

所属勢力一覧

 この項目では統合地球連邦に属する勢力を紹介する。

 主に地球を首都とする統一政権や国家の軍が参加しているが、それらを合わせても、総人口の大半は植民地惑星やスペースコロニー群の出身者であり、地球出身者は一パーセント程にしか過ぎない。

 地球奪還を主目標に同盟を結んだ各勢力であったが、その地球奪還のための将兵の大半は植民地惑星やスペースコロニー群出身者であって、参加した将兵らの殆どは人類発祥の惑星としか知らない地球奪還の為に疑念を抱く者が多かった。

 

地球連邦 スターシップトゥルーパーズ

 原作「宇宙の戦士」や実写映画並びCGアニメに登場する地球連邦。

 この軍事政権である地球連邦政府こそが統合地球連邦政府のリーダーと言っても過言ではない。理事国のような立場。

 参加勢力の中では一二を争うほどの戦力を持ち合わせており、特に陸軍の専用戦闘用スーツに身を包んだ歩兵科「機動歩兵」はMSに負けぬ程の戦闘力を有している。それでで最も数が多いモリタ式ライフルを装備した歩兵が主力である。

 海軍が保有する艦艇の数は連邦だけであって多いが、艦隊戦は苦手な様子である。だが、艦隊戦に長けた宇宙軍や海軍を保有する勢力が居るので、問題は無い。

 

機動歩兵

 連邦ご自慢の最強の歩兵科。専用の戦闘スーツを身に着けている。単独での戦闘力は戦車と戦闘ヘリ一個小隊分*3に匹敵する。

 専門の知識と戦闘訓練、基礎体力などを含め、育成には航空機のパイロット並に二年以上の月日を費やす。一人当たりのお値段も高く、戦闘スーツの整備や維持費、調達費を含めれば戦車や戦闘機並。一部からは機動歩兵一人に時間を掛けるより、歩兵や戦闘車両兵、宇宙兵、パイロットの育成に金を掛けた方が良いと言われている。

 戦争の際、育成に時間が掛かると言う理由で、訓練は一年半、もしくは一年に短縮された戦時型訓練に変更され、高い戦闘力は若干低下してしまった。

 アーマーの種類は三つある。

 初めのアーマー、通称フェーズ1は原作「宇宙の戦士」のスタジオぬえデザインの挿絵のアーマー。ライフルなどが確認できないため、武装はフェーズ2の物を転用。もしくは歩兵のモリタ式ライフル。

 二番目のOVA版に登場した実戦向きにリファインされたアーマー。フェーズ2と呼ばれている。武装は折り畳み式のHK G11に似たアサルトライフル。MG42のような機関銃もある。

 三番目はフルCGアニメ版のアーマー。軽くなった分、大分機動力が上がり、機能も幾つか省かれ、コストも下がり育成にもそんなに掛からなくなったが、防御力は最新式の防弾チョッキ以下になってしまった。今の機動歩兵は大体フェーズ3のアーマーを身に着けている。

 歩兵と分隊支援兵、狙撃兵の標準型、バックパックにロケットランチャーやチェーンガンを装備した火力支援型、機関砲やミサイルを満載した追加装備の強行突撃型の三つがある。

 マローダーも一応は機動歩兵に当たるが、大量のバグズに囲まれても、一掃できるので、機動兵器扱いを受けている。

 

地球連邦 宇宙世紀

 宇宙世紀の地球連邦。ガンダムの宇宙世紀を知る者ならご存じの地球圏統一政権。

 だが、ヴィンデルの手によって融合された時期が首都が月のフォン・ブラウンに移転し、地球が田舎と化し始めていた頃であった。軍事も宇宙戦国時代の最中であったが為に、十八番の物量も出来ず、その為、他の地球統一勢力より弱小勢力と見なされていた。

 かつての対戦国であるジオンに対抗して同じく作ったMSも運用力を上げるために建造した艦艇も、他勢力にライセンス生産されてしまい、形骸化が更に加速している。

 最近では一年戦争戦勝記念に、戦勝の立役者である主力MSであるRGM-79ジムの名を継ぐ新型のMS、RGM-179ジムⅣの開発に成功した。

 性能は今までの連邦軍機やコロニー国家軍の開発してきたMSより高性能であり、ビームサーベルやビームシールドを内蔵し、主兵装はボウワ社製ビームスプレーガンの形を網羅したビームライフル。全高は16メートルほどでジムと似ており、同じカラーリング。

 

新地球連邦 アフターウォー

 政府再建委員会によって再建された地球連邦政府。

 統一された直後からヴィンデルの引き起こした異世界融合によって融合され、混乱の最中に惑星同盟軍の侵攻によって地球より追い出された。

 武力で強引に地球を統一したことにより、その戦力は大きく、統合連邦内ではナンバー4に当たる。結束を高めるべく、同盟勢力に所有するMSや艦艇のライセンス生産を許可した。

 

大西洋連邦

 ガンダムSEEDに登場する地球連合軍の理事国。

 軍事面では負けるが、政治面で一国家とは思えない程に地球連邦を凌いでおり、地球出身者も多い。

 反コーディネイター団体であるブルーコスモスの構成員が多く、コーディネイターのみならず、地球に侵攻した異星人は全て根絶やしにすべきだと主張し、挙句に許可も無く核ミサイルを使うので、他の参加勢力からは危険視されている。

 地球奪還作戦では地球連邦と組み、中心となって作戦に全力を注いだ。その際に他勢力に保有MSや艦艇のライセンス生産を許可している。

 

ユーラシア連邦・東アジア共和国・南アフリカ統一機構・南アメリカ合衆国・赤道連合・汎ムスリム会議

 同じくガンダムSEEDに登場する国家群。一国家であってそれなりの戦力を持っているが、大西洋連邦含めて地球連合と呼ばれることが多い。

 

地球連邦 A.G.

 ガンダムAEGに登場する地球連邦。

 融合された時期がA.G.164年以降の軍備であるが、フリット・アスノが出て来ない為、弱体しており、勢力内では宇宙世紀の地球連邦と一二を争う弱小勢力と見なされている。

 こちらも保有機動兵器や艦艇のライセンス生産を許しており、それなりの地位を維持しているようだ。

 

ギルガメス連合

 アストラギウス銀河でバララント同盟と百年も争い、またも終わりの見えぬ戦争を始めた軍事通商連合組織。

 再開された戦争の最中にヴィンデルによって融合された。バララントが惑星同盟に組したのなら、ギルガメスは統合地球連邦に組して戦争を続けた。

 連邦軍内においてはナンバー2の立場であり、その保有戦力も発言力も高い。

 MSとは違う小型機動兵器であるATが主力で、生存性を無視した生産性の高さから各勢力でライセンス生産を許せば、百年戦争の三十倍以上もの生産数を叩き出した。

 

PS

 パーフェクト・ソルジャーの略称。

 人工的に生み出された完全なる兵士。ただし、計画は頓挫しており、一人も居ないらしい。

 

地球連邦 OG

 スーパーロボット大戦OGシリーズに登場する地球連邦政府。

 ヴィンデルの世界では最強のロボット軍団を操るOG勢は居ない。居れば、ヴィンデルの歪んだ理想郷は誕生しないのだ。

 所有する機動兵器であるPTは、統合連邦参加勢力の全てに運用されている。

 

UNSC

 United Nations Space Commandの略称。統一地球政府《United Earth Government》の指揮下にある軍事組織。FPS並びアメリカでは著名なゲームHALOに登場する組織、

 この統一政府の軍事組織は陸軍・空軍・海軍・海兵隊の四軍制であり、中でも海軍は宇宙での主力であり、その保有戦力は強大。海兵隊は迅速な作戦行動の為、遠征と地上戦の主力となっている。陸軍と空軍の役割は、惑星の陣地や基地の駐屯と防衛である。

 勢力圏が太陽系止まりの連邦と違い、移民船団での宇宙レベルの開拓を行っており、ギルガメス程とは行かなくとも、植民地惑星の数は多い。

 だが、統一政府の支配下に抵抗する反乱軍と呼ばれる分離主義勢力が発生する辺り、広がり続ける植民地の完全なる支配は上手く行っていない。

 そんな不安定な統治の中で異星人の宗教の軍隊であるコヴナント帝国の攻撃を受け、コヴナント戦争に突入する。これにより多くの植民地と治安維持に必要な戦力を失う。反乱軍との共闘もあり、地球に攻め込まれるまで三十年以上も耐えれた。理由はコヴナント軍が宗教上か種族間の問題で侵攻がグダッたからである。

 最後は地球に攻め込まれ、滅亡寸前にまで至ったが、コヴナント軍の種族間の問題で反乱が発生、内戦状態へと突入し、敵であったサンヘイリ族が人類の味方となる。最終的にコヴナント軍は自壊し、人類は辛くも勝利することが出来た。

 戦後は戦力回復に努め、元の状態に戻そうと無理をした結果、軍から続々と離反者が出てしまう。そんな状態でヴィンデルによって他の戦争状態の世界と融合される。

 戦力は戦後に完成した海軍のフラッグシップたるインフィニティ級スーパーキャリアと長距離の星間航行可能な大型艦艇、統一維持に生み出された超人兵士スパルタンのおかげで地位はナンバー2以上であったが、AIの大反乱によって混乱状態に陥り、ナンバー5まで低下する。それでも練度は回復し、大型艦艇建造はUNSCの十八番なので重要視される。

 連邦内では艦隊戦枠であり、スパルタンの存在で最強枠となっている。だが、AIの大反乱、スパルタンの存在でブルーコスモスから危険視されている。

 

スパルタン

 UNSCが保有する超人兵士の名称。

 初期は反乱軍制圧を目的としていたが、計画中に異星人の宗教同盟軍事国家コヴナント帝国が攻めて来たので、対コヴナントに切り替えた。

 最初のスパルタンⅠはコヴナント戦争後には戦死するか、退役して軍には誰一人居ない。

 

 次なるスパルタンⅡ計画はコヴナント戦争初期で初の異星人勢力との戦争で相当な被害を受け、慌てたUNSCは対コヴナントに計画を変更。非合法で選抜して集めた子供たちに複数の肉体改造を行い、訓練を施して生み出した。だが、成功した者は決して多くない。最終的には三十二名だった。

 スパルタンを象徴とも言える有名なミニョルアーマーはスパルタンⅡからであり、かの有名なマスターチーフはスパルタンⅡである。スパルタン英雄伝説と神話はⅡから始まったのだ。HALOの世界においてのスパルタンは、ガンダムのような存在なのだ。実際、UNSC軍全体の将兵たちはスパルタンをヒーローとして見ていた。

 戦闘力も高いが、終戦後に生き残ったのは極僅かであった。だが、意外なところで生き残っている者が居る。それと反乱軍に入った者も居る。

 

 その次のスパルタンⅢは超人兵士を大量生産する目的で計画された三番目。

 スパルタンⅡの英雄伝説に乗っかり、ONIは悪い宇宙人をやっつけるヒーローとして宣伝するか、非合法に集めて数を増やした。だが、そんな物はプロパガンダに過ぎず、前線に投入されたスパルタンⅢの任務の殆どは玉砕染みた物だった。三番目は消耗品だったのだ。

 最初は一個大隊規模の人数が居たが、三個中隊に分けて編成され、その殆どが特攻隊の如く敵陣に突撃し、大多数の敵の反撃を受けて全滅していった。終戦後に生き残ったスパルタンⅢはスパルタンⅡよりも少なかった。

 生き延びた一人が、戦後型スパルタン計画であるⅣの教官をしている。

 

 コヴナント戦争後に計画されたスパルタンⅣは非合法でも無ければ特攻隊でもない合法的な志願制であり、ODSTや色んな兵科から志願した者が多い。ついでに情報局からも志願してなった者も居る。

 ⅡやⅢで得たノウハウを活かし、強化はより安全で志願した実戦経験豊富な将兵たちや憧れて志願して来た新兵をスパルタンにすることに成功。戦争で失ったスパルタンを回復できた。

 このスパロボ世界において、ガンダム神話に続いて新たに誕生したスパルタン神話に興味を示した連邦参加勢力の将兵等は、ガンダムに乗れないならスパルタンになろうと思ってスパルタンⅣに志願する者も多く、戦時中よりも多いようだ。ブルーコスモスからはめっぽう嫌われている。

 だが、再び戦争に突入して数を減らしてきたので、連邦上層部は更なるスパルタンの増員を行うべく、計画初期に携わっていたハルゼイ博士抜きの新しい連邦流のスパルタン計画が実行されようとしていた…。

 

ISA

 Interplanetary Strategic Allianceの略称。惑星戦略同盟と言う。FPSゲーム、KILLZONEに登場する組織。

 コロニー国連合(UCN)*4の管理下にある植民地惑星の防衛と治安維持を行う軍事組織。即応性と効率面を突き詰めて誕生した。

 各ローカルコロニー政府から資金と人材を受け、UCNの軍事組織のコロニー国連合軍(UCA)から訓練と装備の支援を受けているが、UCAからの命令を受けない。

 訓練の予算をケチり、しかも装備をただで貰っているようで、ISAとUCAの仲が悪そうだが、意外と良好である。ちなみに、各コロニーでISAの司令部がある。大変ややこしい。

 ヘルガーンに住む人々がヘルガストと名乗り、惑星ヴェクタのコロニー政府に宣戦布告。ヘルガストのヴェクタ侵攻を切っ掛けに、ヴェクタ政府とヘルガストによる長い戦争状態に突入する。第二次太陽系外戦争と呼ばれている。

 ヴィンデルによって融合されたのは、第二次太陽系外戦争の最中である。ヘルガストが惑星同盟に組すれば、ヴェクタを始めとする各コロニー政府は連邦の武力鎮圧を恐れ、統合連邦に雪崩れ込むように参加した。それに伴い、ISA全軍は統合連邦軍の指揮下に入る。尚、UCNとその軍事は何の抵抗もせずに連邦に寝返った。

 

UCA

 United Colonial Armyの略称。コロニー国連合軍と言う。

 地球とローカルコロニーの関係を平準化し、ローカルコロニー間の内戦を避けるために組織された軍事組織。宇宙海軍が主力である。

 簡単に言えば、SEEDの地球連合軍と宇宙国家版。ISAとの防衛区域がどう扱われているかは不明。

 UCNが連邦の武力にビビって傘下に下れば、下部軍事組織たるUCAも自然に連邦軍の指揮下に入った。その際、戦力の半数が宇宙軍に取られ、海軍がやや弱体化した。

 大抵、宇宙軍や海軍として出て来るのはUCAの部隊である。拡大する戦力に伴い、保有していた大型艦艇が足りなくなり、他の勢力の艦艇で不足を補っている。

 

COG

 Coalition of Ordered Governmentsの略称。統一連合政府と言う。ギアーズ・オブ・ウォーに登場する組織。

 地球によく似た惑星セラの統一政権。当初は狂信的な社会主義団体だが、戦争で政党化し、地底からの侵略者ローカストの襲撃にいち早く反応してハシント高原を要塞化して絶対防衛圏とした。

 その最中にヴィンデルの世界融合に巻き込まれ、混乱の隙をつかれて滅亡寸前に追い込まれた。その際に連邦軍に助けられたので、セラ脱出後は連邦の傘下に入る。

 弱小勢力と見なされたが、将兵は良く戦うので敬意を表されている。

 

その他勢力

 世界融合の際、共に融合されてしまった国々やスペースコロニー国家、惑星国家。

 中立を保つのもあれば、連邦に組した国もある。無論、統合連邦に加盟したのは国を守るためであって、連邦の為に働いている訳ではない。

 

 連邦軍の部隊については、別の回にて説明する。

*1
以降、同盟軍と呼称。

*2
一応、保護者に金銭を渡している。現地の市民団体や反戦団体より当然の如く抗議を受けたが。

*3
戦車は三両、ヘリは三機と計算

*4
United Colonial Nationsの略称。




部隊とか、そう言うのとか別のでやります。


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自由惑星同盟

惑星同盟の設定です。

連邦に比べてこっちは多い…。


 ここでは自由惑星同盟こと同盟軍の詳細を説明する。

 

 自由惑星同盟こと惑星同盟、あるいは同盟軍はヴィンデル・マウザーによる世界融合の際、その融合世界で初めて結成された惑星国家間による多国籍軍である。

 融合世界により太陽系の惑星、地球を首都とする統一国家が混乱の渦中にいる隙に、地球、あるいは人類、統一政権の支配に対し明確な敵対の意思を持つ惑星国家、コロニー国家、様々な勢力が打倒地球、打倒統一政権、独立などの様々な思想を掲げて結集し、自由惑星同盟を組織した。

 

 思想や種族も違うバラバラな彼らであるが、彼らの共通の敵は地球を首都とする地球連邦や統一政権であり、そのおかげで同盟は揉めることなく結成できた。

 当初、地球側は思想や種族層の違いで烏合の衆と見なし、瓦解して互いに潰し合うと楽観視していたが、それは見誤った判断であった。共通の敵である打倒地球や統一政権の名の下で結集力は高く、想定を上回る同盟軍は破竹の勢いで太陽系に侵攻した。

 烏合の衆は地球側であり、碌に抵抗も出来ないまま地球圏より追い出され、更には太陽系からも追放される羽目となった。

 

 太陽系より地球勢力を追放した同盟軍は、地球圏の返還を条件に講和を支配星系に逃げ込んだ地球側に持ち込んだが、地球側もこれに対抗する形で統合地球連邦政府を結成しており、既に地球圏並び太陽系奪還のための戦力を回復しきっていた。

 

 徹底抗戦の構えを見える統合地球連邦政府こと連邦軍に対し、同盟軍は追撃を掛けたが、戦力を立て直していた連邦軍の前に大敗を喫した。

 更に太陽系の進出まで許し、挙句に地球圏にまで連邦軍の侵攻を許してしまう。講和条件に必要な地球の半分を奪い返されてしまった。そこで何とか同盟軍は持ち堪えていたが、反撃の際に連邦軍は味方諸とも自爆すると言う狂気の手段を使い、同盟軍の地球侵攻軍の戦力を奪い取った。

 同盟軍が混乱する中、連邦軍は温存してあった戦力を惜しまなく投入し、地球奪還を叶えた。戦力が低下した同盟軍は地球のみならず、太陽系まで追い出され、やがては自軍の領域内にも連邦軍の侵攻を許してしまう。

 

 地球や統一政権と言う共通の敵の打倒の下に集った種族も思想も違う勢力であるが、仮に共通の敵を倒しても、ヴィンデルの世界に平和は訪れるとは到底思えない。

 思想や種族間の対立で争いが起き、これを発端に戦争にまで発展し、最悪な場合、戦国時代のような国家同士による大規模な戦争にまで発展する事だろう。

 無論、これもヴィンデルの目論見通りであるが。

 

宇宙軍

 自由惑星同盟の主力となるのは、宇宙を主戦場とする宇宙軍である。

 この宇宙軍は各勢力が保持する宇宙軍を統括した統合宇宙軍であり、その保有艦艇の数を合わせれば連邦宇宙軍に匹敵するほどで、数々の要塞や設備、軍港、機動兵器まで保有している。

 だが、その勢力によって運用される艦類や兵器は違い、戦略も戦術も違うので、連邦軍のように統一性が無い。統一性の無い戦略や戦術の所為で、統制された連邦軍に苦戦するのは致し方が無いだろう。

 かつては宇宙において無敵に近い強さを誇ったコヴナント海軍も吸収しているようだが、そのコヴナント海軍と言っても残党であり、他の同盟勢力の宇宙軍の同程度である。

 機動兵器は連邦と同じくライセンス生産を行っている。

 

保有艦艇

フリゲート コヴナント・フリゲート、CAR級、ヘルガスト・フリゲート

駆逐艦 CPV級、ヘルガスト海軍駆逐艦

巡洋艦 CRS級軽巡洋艦、CCS級戦闘巡洋艦、RCS級装甲巡洋艦、ORS級重巡洋艦、ヘルガスト海軍巡洋艦、レヴェランス級、ムサイ級軽巡洋艦、ムサイ改級、チベ級重巡洋艦、チベ改級、ザンジバル級巡洋艦、エンドラ級、ムサカ級、RFムサイ、ローラシア級、ナスカ級

戦艦 コヴナント海軍戦艦、グワジン級、ヴェイガン戦艦、レウーラ級

空母 DDS級、CSO級、ドロス級、ゴンドワナ級

輸送艦 農業支援艦、パプア級、パゾク級

その他 DAV級軽コルベット艦、SDV級重コルベット艦、ミネルバ級

 

保有航空機

戦闘機 セラフ級宇宙戦闘機、タラスク級重戦闘機、バンシー級軽戦闘機、ヘルガスト海軍戦闘機、オッゴ

爆撃機 ギガス級戦闘爆撃機、ガトル、ジッコ

降下艇・輸送機 スピリット級降下艇、ファントム級降下艇、ヘルガスト軍降下艇

 

保有機動兵器

MS(余りにも多種すぎるため、宇宙において運用されている物に限る) カザシリーズ、量産型キュベレイ、ヤクト・ドーガ、クシャトリヤ、デナンシリーズ、ベルガ・シリーズ、バタラ、クラウダ、ジン長距離偵察複座型、ゲイツ、ゼダスM

MA クィン・マンサ、α・パジール、グランザム

AT ファッティー、チャビィー、ブロッカー

アーマードモジュール コスモリオンシリーズ

 

地上軍

 読んで字の如く、地上で活動する同盟の軍。

 これも同盟参加勢力の陸海空軍を一つに纏めた物であり、宇宙軍と同様に戦略も戦術も違えば、兵器の種類も多彩。これにアラクニドバグズや地底人種ローカストも加わり、更に膨大となっている。

 宇宙軍と同様、機動兵器をライセンス生産している。

 

保有地上並び航空兵器

戦車 レイス、マゼラ突撃砲、ザクタンク、パンツァー・ドーガ、マゼラ・アイン

戦闘車両 ゴースト、レヴェナント、ブルート・チョッパー、レイス対空自走砲、スカラベ、ヘルガスト陸軍装甲車、四輪機動戦闘車、キュイ、ギガン

戦闘ヘリ エイタック、ジオン戦闘ヘリ、アジャイル

航空機 ヴァンパイア級戦闘機、ドップ、ドダイYS、ルッグン、グゥル

輸送機 ガウ攻撃空母、ファット・アンクル、ザフト輸送機、ヴァルファウ

潜水艦 マッド・アングラー級、ユーコン級、ポズゴロフ級

陸上戦艦 ギャロップ級、ダブデ級、ピートリー級、レセップス級、コンプトン級

 

保有機動兵器

MS(地上専用機のみ) ギラ・ドーガ陸戦重装型、RFズゴック、ジュラッグ、ジンオーカー、ジンワスプ、ザウート、ガズウート、バクゥ、ラゴゥ、ケロべロス・バクゥ・ハウンド、グーン、ゾノ、ディン、バビ、アッシュ、グルジン、ゴメル、ウロッゾ

MA エレファンテ

AT ファッティー陸戦仕様

アーマードモジュール リオン ランドリオン、シーリオン

 

全領域軍

 惑星同盟軍には独自と言うか、場所を選ばない軍が存在する。それがこの全領域軍であり、宇宙、地上を問わず活動できる軍だ。

 この軍は連邦軍の海兵隊と同じく即応軍の役割を担っており、宇宙や地上で即座な展開が可能。運用兵器も機動兵器が中心であり、宇宙、地上の両方で運用できる汎用機を主に運用している。

 

保有機動兵器

MS(あまりに膨大過ぎるため、開発した陣営に分ける)

ジオン並びネオ・ジオン残党 ギラ・ドーガシリーズ、RFシリーズ

宇宙革命軍 ジェニス、セプテム、オクト・エイプ

ザフト ジン、シグー、ゲイツR、ザク・ウォーリア、ザク・ファントム・グフイグナイテッド、ドムトルーパー

ヴェイガン ガフラン、バクト、ドラド、レガンナー、ダナジン

アーマードモジュール バレリオン、ガーリオン、グラビリオン、ソルグラビリオン、レリオン、マスカリオン、サイリオン、量産型ヴァルシオン

 

保有艦艇

 大気圏内と宇宙で運用できる艦艇が使用されている。宇宙軍の大型艦艇が主に運用されているようだ。

 

保有装備(宇宙軍と地上軍も同じ物を使っているため、この項目に載せる)

ピストル プラズマピストル、ニードラー、モーラー、StAー18ピストル、StAー2バトルピストル、ジオン軍ピストル、ザフト軍ピストル、ヴェイガンピストル

サブマシンガン StAー11、LS57、ジオン軍サブマシンガン、ザフト軍サブマシンガン

ライフル プラズマライフル、ブルートプラズマライフル、スパイカー、コヴナントカービン、StAー14ライフル、StAー52アサルトライフル、ローカストライフル、ジオン軍ライフル、ザフト軍ライフル、ヴェイガンライフル

ライトマシンガン StAー3

スナイパーライフル ビームライフル、StAー14

対物火器 プラズマグレネード、プラズマ無反動砲、VC9ロケットランチャー

接近戦用武器 エナジーソード、グラビトンハンマー、名誉歩兵用槍、エネルギー・ガローテ

 

参加勢力一覧

 自由惑星同盟に参加している勢力の一覧。

 人間ばかりな連邦とは違って同盟は多種多彩な種族が多い。連邦打倒の名の下に集っているだけなので、前に述べた通り連邦打倒後の同盟が勝利した世界は不安定な物となろう。

 

アラクニドバグズ

 連星クレンダスの惑星に住む昆虫型生物。

 どうやって自由惑星同盟に入ったか不明。人間を殺すのは捕食の為では無く、人体を切り刻むだけ。

 種類によって役割が違う。同盟軍の地上軍では主力となっている。

 

ウォーリア・バグ

 最も多いバグ。軍隊アリのように侵略行動を取る。集団で襲い掛かって獲物を鋭利な前足の爪や顎で惨殺する。宇宙空間でも活動が可能。

 

ホッパー・バグ

 空飛ぶバグ。キリギリスみたいな形をしている。大きな羽を持っているが、長くは飛べない。

 

プラズマ・バグ

 バグの中でデカい奴。腹部の砲口よりプラズマ弾を発射する。その射程距離は凄まじく、大型艦艇すら容易く沈める程。弱点はプラズマ弾を発射する際に光る腹部。

 

タンカー・バグ

 地中を進み、頭部から有機酸を火炎放射の如く放つデカいバグ。頭部にもニッパーのような大顎を持っており、それで人体を切断する。背後が弱点。

 

ブレイン・バグ

 バグズの頭脳。凄まじく賢いバグであり、このバグのおかげで自由惑星同盟にバグズが参加できたとされている。

 

ジオン並びネオ・ジオン残党

 宇宙世紀に存在する残党勢力。地上ではジオン残党が活動し、宇宙ではネオ・ジオン残党が活動していた。

 世界融合の際、取るに足らない残党である彼らは連邦軍を打倒できる巨大勢力である自由惑星同盟に合流し、その指揮下に入った。

 所有していた機動兵器の殆どをライセンス生産してもらっていたが、所詮は敗残勢力でありテロリスト集団なので、同盟軍内での下の下。

 

宇宙革命軍

 アフタウォーで自分たちをニュータイプだと主張し、地球連邦と何度も戦争を行ってきたコロニー国家。

 戦争の最中に融合してしまったため、連邦と敵対する勢力の集まりである自由惑星同盟に参加し、保有していたMSなどの兵器のライセンス生産を参加勢力に許している。

 

ザフト

 コロニー国家「プラント」に住むコーディネーターたちの軍隊。だが、義勇軍であり、階級は存在しない。

 コーディネーターだけであって技術力は高く、それにブルーコスモスの影響もあって自由惑星同盟に参加した。

 ライセンス生産も許しているので、同盟軍が使うMSの殆どは、このザフトの物が多い。

 

ヴェイガン

 火星圏に移住した移民の集団であるが、時の地球連邦政府に見捨てられてしまった忘れられし者たち。

 彼らも連邦を敵としているので、自然と自由惑星同盟に参加し、MSのライセンス生産を許した。

 

バララント同盟

 アストラギウス銀河にて、ギルガメスと対峙する二大勢力の一つ。大バラン主義と言う同化思想を掲げている。

 先に自由惑星同盟にバララントが参加すれば、ギルガメスはこれに対抗する形で連邦に組した。

 バララントが開発したATなどは各同盟勢力でもライセンス生産がなされ、膨大な数のATが前線へと供給され続けている。

 

コヴナント残党

 かつては強大な軍事力を誇っていた多種族で宗教軍事同盟帝国の残党たち。

 だが、コヴナント戦争末期に内輪揉めで地球まで追い詰めた人類に大敗。終戦後、主力で反乱を起こしたサンヘイリ族ことエリートたちが母星に帰り、完全に瓦解してしまった。

 頼るべき指導者であるプロフェット(サンシェーム)族も、戦後の報復を恐れて全員が雲隠れしてしまい、残された者たちは勝手に後継者を名乗って海賊行為に明け暮れていた。

 母星の内乱で脱出して来たエリートを吸収して何とかやりくりし、どうにかして自由惑星同盟に参加した。扱いは海賊でテロ集団なので、ジオン残党以下。

 

サンヘイリ(エリート)

 コヴナント残党の主力と言って良いほどの種族。生粋の戦闘民族であり、かつてはコヴナントの軍事の中枢を担っていた。通称、顎割れ侍。

 終戦後、大部分のサンヘイリ族は母星であるサンヘリオスと帰ったが、長年コヴナントに属していた所為か、未だにコヴナントの信仰を捨ててない者たちも居て内部分裂を起こしており、やがては内戦へと発展した。

 コヴナント残党に参加しているのは未だに信仰心を持っている者か、内戦中のサンヘリオスに嫌気がさして脱出し、行き場を失くして致し方なく参加している者、あるいは人類に憎しみを抱いている者である。

 

レクゴロ(ハンター)

 コヴナント残党では大きな図体で艦艇に使われる装甲版を身体に身に着けているので、兵器に如く種族。通称、ツーミンチマシン。

 実は複数のワーム状の生物が集まって一体の形を取っている。機関砲レベルじゃないと貫けない馬鹿硬く、しかも一度に二体も出て来る。弱点は装甲に覆われていない背後。がっ、装甲の隙間が多く、腕の良い者は隙間を狙う。

 残党に参加している理由は、長年の友人とも言えるサンヘイリ族が居るから。尚、言葉は発しない。

 

アンゴイ(グラント)

 コヴナント残党において歩兵の役割を担う小柄な種族。通称、チビカミカゼ。

 人類との戦争以前よりコヴナント帝国に属し、数々の戦場を渡り歩いて来た。終戦後、母星も反乱の際に消滅させられていたので、行く当てもなく、サンヘイリの母星のサンヘリオスに行くか、コヴナント残党として活動するに至る。

 追い詰められれば、プラズマグレネードを両手に持って自爆攻撃を行う。その為、自爆攻撃隊と言う物もある。

 小柄で知能も子供以下と思われているが、語学力が異常なまでに高く、人類の言葉を一瞬にして覚えてしまうほど。艦艇でも通信手などを務めている。

 

キグ・ヤー(ジャッカル)

 こちらもコヴナント残党どころか、コヴナント帝国時代から居る種族であるが、傭兵である。通称、悪癖チビ傭兵。

 視覚・聴覚・嗅覚が優れており、それらを活かして偵察兵や狙撃兵を担当している。

 中距離から遠距離の装備を主に使うが、エネルギーシールドを発生させるガントレットを装備し、ピストルを片手に持って接近戦をする時もある。

 戦争時代では占領地域での治安維持を行っていたが、略奪や虐殺を行っていた。

 気性は荒いが、きちんとした知性を持ち合わせており、情報屋や人類の反乱軍と取引をしていた。残党では略奪目的で参加している。

 

ジラルハネイ(ブルート)

 コヴナントでは最も新しい種族。非常に暴力的である。母星は何度も内戦していて、全滅寸前に何度も経験している。通称、ゴリラ。

 サンヘイリとは犬猿の仲であり、戦争末期ではそれが原因で内戦に発展し、コヴナントは崩壊した。残党になってからも、行き場のないサンヘイリ達と似た理由で参加していた。理由は母星がまた内戦になったからである。

 またも内戦に発展しそうであるが、殺し合っても意味が無いので、地球連邦を共通の敵とすることで共闘している。

 稀に脱走者が発生しており、脱走者たちの行く着く先は、ジラルハネイで高度な知性を持ち、圧倒的な体格と戦闘力を誇るアトリオックスが総帥を務めるバニッシュト軍団である。

 

ヤンミー(ドローン)

 昆虫型の種族。通称、ハエ。

 喋れない為、羽音でコミュニケーションを取り、意志疎通を行っている。残党に居る理由は単に従っているだけのそうだ。

 

ハラゴック(エンジニア)

 コヴナント帝国が宇宙を渡って回収した超古代文明フォアランナーの科学力を吸収して生み出した人工生命体。通称、油クラゲ。

 繁殖は自身のコピーを2~3体ほど生み出し、本体のデータはコピーに引き継がれる。

 エンジニアの名の如く、メカマンを失職させるほどの修復力とチート染みた整備力を持っている。だが、どこぞの赤いアストレイに乗るジャンク屋の如く味方でも敵の物でもなんでも直す手癖の悪い修理屋。ついでに味方のシールド強化するデバフ要員でもある。

 常時油まみれなので燃えやすく、増殖するかって爆弾を括り付けられて爆弾にされてしまう。

 かなり便利な人口生命体であり、連邦では見つけ次第、鹵獲するように指示が出されている。爆弾付きの場合は爆弾解体または解除の工兵を呼ぶか、やむを得ない場合、その場で排除が命じられている。

 

ローカスト

 ギアーズオブウォーの敵。惑星セラで地底から突如となく現れ、指導者たる女王ミラの命令の下、人類に攻撃して来た地底人種。

 惑星セラより脱出した人類ことCOGを追う形で自由惑星同盟に合流した。

 人を容易く引き裂ける強大な怪力集団であり、無限の如く生み出されるようで、バグズと同じく地上軍の主力入りを果たす。

 大半は人語が真面に話せず、片言であるが、女王ミラとその側近たちは流暢に話せるので、難なく合流できたようだ。人間のことをグランドウォーカーと呼ぶ。

 

ドローン

 最も数が多いローカスト。歩兵のみならず様々な分野で活動しており、様々な武器を扱う。

 

ブーマー

 大型のローカスト。重装備担当で、様々なタイプが存在する。

 

カンタス

 ローカストの司祭。ローカストにしてはスッキリした長身であり、ヒーラー担当。

 

ティッカー

 ローカストで一番小さい奴。背中に爆弾を背負っており、高速で敵に突っ込んで自爆する。

 

レッチ

 ティッカーより少し大きいローカスト。鋭利な爪を持ち、集団で襲い掛かる。

 

セロン・ガード、パレスガード

 ローカストのエリート兵士。主に女王ミラの護衛を務めている。

 

ベルセルク

 デカかくて凄い怪力持ち。しかもメス。

 聴覚と嗅覚が異常に優れており、しかも馬鹿みたいに硬いので、ドーンハンマーでないと倒せない。だが、この世界においては機動兵器がドーンハンマーレベルの火力を持つ兵装を持っているので、硬いだけである。

 それでも、生身の兵士にとって脅威であることには変わりない。

 

ネーマシスト

 空飛ぶ超巨大なノミ。敵を見るや突撃してくる。

 

ブラッドマウント・リーバー・ブルマック

 ローカストの動物兵器。ブラッドマウントは四足歩行の猛獣で、リーパーは空飛ぶ触手を生やした奴。ブルマックは全高15メートルのデカさを誇り、両腕にガトリングガンとミサイルランチャーを付けている。

 この三つとも、ビーストライダーと呼ばれる騎手が操っている。

 

ヘルガスト帝国

 過酷な環境の惑星であるヘルガーンで建国された惑星国家。

 元々はヴェクタに最初に入植した人類であったが、戦争に敗北してヴェクタを追われ、惑星ヘルガーンに流れ着く。敗北者たちにとって地獄のような日々であった。

 やがてヘルガーンに肉体改造を施して適応し、進化した生命体が誕生すれば、彼らはヘルガストと名乗り、ヴェサリ老を指導者としてヘルガーンを建国した。建国と同時に大規模な軍隊を組織して、かつての故郷であるヴェクタ奪還を果たすべく、ヴェクタ政府との全面戦争に突入する。

 戦争の最中に世界融合に巻き込まれた為、自由惑星同盟に参加した。

 

 部隊については別の回にて説明する。



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特務航空魔導士大隊&フェアリー戦闘団

思い付かないので、二度転生のデグ様の部隊の詳細と隊員名簿を仕上げてみる。

ついでに戦闘団化も。


詳細

 特務航空魔導士大隊とは、神聖百合帝国の再建を果たさんとする帝国再建委員会の空軍にて、後方攪乱に破壊工作、隠密行動等の特殊作戦を目的に創設された部隊である。

 

 戦闘ヘリなどのVTOLや機動兵器の登場により、航空魔導士が空軍内で居場所を失う中、正規軍とは呼べない帝国再建委員会において、航空魔導士は航空機の不足分を補うための貴重な兵科であった。

 帝国軍時代からある航空魔導士であるが、その任務はもっぱら偵察か警戒であり、師団規模で編成されず、主に大隊規模で運用されていた。

 

 このイヴ人のロリータ族の変異種であるターニャ・フォン・デグレチャフ空軍少佐に率いられた特務航空魔導士大隊創設当初、イヴ人の兵員はデグレチャフ少佐と副官であるアーデルトラウト・ブラウトクロイツ空軍大尉ことアーデのみであり、他は任務の性質上、損耗を考えてか代えの効く人間の人員で編成されていた。

 人間の兵士の扱いは帝国時代から酷く、消耗品として考えられていた。航空魔導士適性を持つ兵士の扱いもそれほど変わらず、安価な演算宝珠しか支給されなかった。

 

 その為、創設当初の訓練途中に人間の兵士による師団規模の反乱が発生した際、兵員の大部分が反乱軍に寝返り、大隊長のターニャと副官のアーデを拘束した。極少数は反乱に加担せず、静観の立場を取った所為か、イヴ人らと共に拘束された。

 だが、反乱はターニャの機転か偶然か、それとも反乱軍に対する怒りか、拘束を解いた彼女は反乱の首謀者を殺害し、ブラウトクロイツを含める少数の部下で師団規模の反乱を制圧することに成功する。

 

 予期せぬ初陣にも関わらず、反乱を小隊規模で制圧したターニャの功績は認められ、勲章を授与された。

 昇進は無く、そのまま新たに人員を補充して帝国再建委員会の数々の特殊作戦に従事し、損害を受ければまた補充しての出撃を繰り返す。

 人間の航空魔導士たちにとって、ターニャの大隊に配属されると言うことは死刑や銃殺刑に等しかったらしく、脱走兵も出たようだが、敵前逃亡罪で大隊長か副官の手によって射殺された。反乱も起きたようだが、差ほどが十秒足らずで制圧された。

 

 流石に反乱が多発した所為か、人間や多種族との混血を含めるイヴ人の兵員を加え、ようやく真面な特殊部隊としての活動が出来たようだ。

 その甲斐あってか、数々の任務の成功をおさめ、時には失敗もあるが、成功の数は多く、上層部はイヴ人の種族の中で最も底辺であるロリータ族の変異種たるターニャの実力を認めざる負えなくなり、やがては帝国再建への駒と見るようになる。

 

戦闘序列 特務魔導大隊

・大隊本部中隊または第1中隊

 ターニャ・フォン・デグレチャフ空軍少佐とアーデルトラウト・ブラウトクロイツ空軍大尉を含めた大隊本部を兼ねた中隊。

 残り十名の中にはシュルツも含まれている。創設当初から居たようだ。ついでにフェリーチェ・バルボッサ曹長も含まれていた。

 

・第2中隊 兵員12名。

・第3中隊 同じく。

・第4中隊 同じく。

 大隊は大隊本部中隊を含め、四個中隊四十八名で編成されていた。

 主に人間の兵員で編成されているためか、損耗も激しく、三個中隊が入れ替わることもあった。大隊の名と表しながらも、二個中隊で出撃したこともある。

 ターニャの中佐への昇進と再編の際、人間の人員の反乱と脱走を警戒し、イヴ人の二個中隊を加えることで再編を行い、五個目の戦闘を主任務としない支援中隊を追加し、特殊任務へと向かった。

・イヴ人中隊

 名前の通り、イヴ人のみで編成された中隊。この中隊の指揮はイヴ人の空軍将校たるアーデが行った。

 最終編成の際、大隊には支援も含める三個中隊のイヴ人が組み込まれた。

・支援中隊

 その名の通り治療魔法や支援を主任務とするイヴ人の中隊。新たに追加された中隊であり、支援を目的としているために戦闘力は低く、主に大隊の後方に下げられて運用されていた。

 

フェアリー戦闘団

 空軍と帝国再建委員会の上層部がターニャ・フォン・デグレチャフ中佐の実力を認め、特務航空魔導士大隊を基幹に戦闘団の編成を命じた。

 人員はターニャの要望を聞かず、上層部の勝手で編成された。主な人員は壊滅した部隊からかき集めた物であり、事実上、敗残兵の集まりだった。

 陸軍や海軍、宇宙軍から部隊を引き抜くと言う意見もあったが、反対されてやもえずに空軍内の人員で編成された。創設当初の人員は六百人であったが、最終的には旅団規模の五千人まで拡大する。

 創設当初、基幹となった特務航空魔導士大隊を含め、航空魔導士大隊、MS大隊、バルキリー大隊、航空輸送大隊、整備大隊、工兵大隊、衛生大隊、偵察中隊、戦闘本部小隊で編成された。

 まだ明らかになって無いが、数々の激戦地をターニャの共に巡る事となっている。

 

戦闘序列 フェアリー戦闘団

・特務航空魔導士大隊

 戦闘団の基幹となった部隊。ターニャが戦闘団の指揮に集中する為、戦闘団本部小隊に移動し、大隊の指揮は少佐に昇進したアーデルトラウト・ブラウトクロイツが取る事となった。

 時に戦闘団本部小隊が随伴することもあったようだ。

・航空魔導士大隊

 名称不明な航空魔導士の大隊。人間の兵士で編成されている。時にはイヴ人で編成された大隊も組み込まれたようだ。

・MS大隊

 名称不明なMS大隊。主に飛行能力を持つガンイージやVガンダムと言ったMSを装備している。

・バルキリー大隊

 名称不明なバルキリー大隊。VF-31ジークフリード各タイプで編成されている。

・歩兵大隊

 元々は空軍基地の警備についていた人員や壊滅した部隊の生き残り。言うなれば空軍野戦師団である。

・対空大隊

 名の通り対空任務を担う大隊。対空機関砲やミサイルが主な装備。

・航空輸送大隊

 輸送を主任務とする大隊。大型輸送機が基本装備であり、戦闘など出来ないので、後方に下げられる。

・整備大隊

 整備が任務な大隊。輸送大隊と同じく後方気味。

・工兵大隊

 陸軍から取ったのではなく、空軍から壊滅した部隊から組み込んだ工兵大隊。半分は整備兵である。

・衛生大隊

 治療を主任務とする大隊。無論、戦闘は行わない。

・偵察中隊

 名前の通り偵察部隊。電子戦も担っていたようだ。

・戦闘団本部小隊

 ターニャが指揮に集中するために創設した小隊。人員はターニャ以外は戦えない通信兵で編成されている。

・ブリュンヒルデ級万能次元航空戦闘艦(バルキュリャ)

 どんな環境でも進める全長460mの強襲揚陸艦。ロボットアニメの主人公の母艦と同じような物。

 元々はワルキューレが全領域型用として建造していた物であり、それを帝国再建委員会が裏取引で入手した。時空管理局の技術も使われているので、次元航行も可能である。だが、一隻だけしか入手できなかった為、持て余してしまう。

 フェアリー戦闘団結成に伴い、空軍司令部はターニャにこの艦艇を押し付けた。

 揚陸艦と言っても、機動兵器は一個大隊程度しか搭載できず、歩兵にしても一個連隊程度しか乗せられないので、航空輸送大隊の輸送機数機を随伴機として使い、戦闘団本部用として運用されている。

 

戦闘序列 臨時追加部隊

・陸軍歩兵大隊

 壊滅した陸軍の歩兵師団から無断で指揮下に入れた歩兵大隊。他の師団や連隊より迷子兵を入れて、大隊規模にまで拡大した。時には海軍からも人員を奪って無理に人員に加えていた。

・砲兵中隊

 これも同じく敗走していた陸軍の歩兵師団より無断で戦闘団の指揮下に入れた部隊。名の通り砲撃担当。

・戦車大隊

 壊滅した戦車連隊よりはぐれていた大隊か中隊を無理に指揮下に入れた。主にレオパルド2A7主力戦車で編成されていた。

・装甲擲弾兵大隊

 これも陸軍の壊滅した部隊より無理やり指揮下に入れた部隊。主にプーマ歩兵戦闘車で編成されている。

・戦術機大隊

 名称不明。壊滅した陸軍の装甲師団の戦術機連隊よりはぐれた隊。無断で指揮下に入れた。主にEFー2000タイフーンか、不知火で編成されたようだ。時には中隊規模や小隊規模の混ぜ込んで大隊に再編した物もある。

・数々の機動兵器部隊 混成機動大隊

 帝国再建委員会の装備品にあるMSやAS、人機、KMF等の様々な部隊を指揮下に入れた物。空軍のみならず、元々は陸軍や海軍から無理に指揮下に入れた物もある。

・ガンダム ガンダムフレーム

 単独か小隊規模で作戦行動していたガンダムタイプを指揮下に入れた物。

 

隊員名簿

・将校

名前:ターニャ・フォン・デグレチャフ

性別:イヴ人

人種:スラヴ系イヴ人 ロリータ族 変異種

年齢:20歳?

身長:100センチ?

階級:少佐→中佐

所属:特務航空魔導士大隊 フェアリー戦闘団 指揮官

兵科:航空魔導士

概要:二回目の転生で、全く反省もしてないため、罰として存在Xによって生涯死ぬまで幼女であるイヴ人の合法ロリであるロリータ族として転生させられた前世がエリートサラリーマンな幼女。

 前世と変わらずのシカゴ学派の狂信者であるが、少し反省を踏まえてか、少しばかりは人を気遣っている。好物もコーヒーであることには変わりない。

 相変わらず地獄めぐりをしているが、少尉時代に神殺しのスキルを手に入れて以降、存在Xを殺す機会を伺いながら昇進して安全な後方に行くべく、奮闘している。フォンの称号は戦果を上げて手に入れた。

 戦闘力も高く、空軍司令官からは単独での戦闘力は高性能バルキリー一個中隊に匹敵するとの事。ワルキューレからは変異種と呼ばれている。命名はワルキューレ空軍の特務混成旅団のロー・スミス大佐。

 

名前:アーデルトラウト・ブラウトクロイツ

性別:イヴ人

人種:ドイツ系イヴ人 ミズ族

年齢:107歳

身長:178センチ

階級:大尉→少佐

所属:ワルキューレ空軍航空魔導士連隊→特務航空魔導士大隊 第1中隊副官 フェアリー戦闘団 副官兼大隊長

兵科:航空魔導士

概要:金髪で爆乳の副官。ターニャの少尉時代では彼女の上官であったが、気付かぬ間に追い抜かれ、挙句に副官にされると言う屈辱的な目に遭う。若干のマゾ体質。

 イヴ人至上主義者であり、人間の兵士を盾としか思っていなかったが、フェリーチェ・バルボッサとの出会いで改めつつある。戦闘力も前世の副官ヴィーシャにも引けを取らない程。非戦闘員はなるべく巻き込まないようにしている。

 ターニャからの評価は「性格が最悪でヴィーシャが懐かしくなるが、副官としては程よく優秀である」とのこと。

 元々の所属はワルキューレの空軍の航空魔導士連隊であるが、戦闘経験は無く、数々の上官の愛人や情婦をしており、そんな生活に嫌気が差して脱走し、帝国再建委員会に身を寄せた。イヴ人至上主義の発言は、帝国再建委員会に居るための方便であるが、様々な経験から来ている物でもある。

 初陣は帝国再建委員会から。

 

名前:ウィリー・アーメンガード

性別:人間の男

人種:アフリカ系アメリカ人

年齢:35歳

身長:188センチ

階級:創設当初は中尉→後に大尉まで昇進

所属:第7航空魔導士連隊→特務航空魔導士大隊 第1中隊(中尉時代)→第3中隊指揮官(大隊最終編成時・フェアリー戦闘団)

兵科:航空魔導士

概要:ターニャの前世においてヴァイスに当たる男。黒人男性で所帯持ちであるが、同じく常識的で生真面目な性格をしている。熟練の航空魔導士であり、ターニャが士官学校を卒業前から戦っていた。

 大隊創設当初からおり、小隊長で当時の上官から反乱に誘われていたが、断ってターニャ共々拘束された。結果的にこのウィリーの判断が正しく、ターニャに重宝される切っ掛けとなる。ターニャ曰く「ヴァイス以上に忠実な男で、大隊の指揮を任せたい」との事。

 

名前:ユーゴ・ブラウス

性別:人間の男

人種:ドイツ系

年齢:19歳

身長:176センチ

階級:少尉→中尉

所属:特務航空魔導士大隊 第1中隊

兵科:航空魔導士

概要:ターニャの前世においてグランツに当たる男。同じくお調子者でムードメーカーである。補充兵であり、実戦経験は余りない。ターニャ曰く実力はグランツと変わらぬ程。

 

名前:叢雲(むらくも)アヤメ

性別:イヴ人 ミズ族

人種:日系イヴ人

年齢:39歳

身長:172センチ

階級:少尉→大尉

所属:特務航空魔導士大隊 第2イヴ人中隊指揮官(フェアリー戦闘団から)

兵科:剣客→航空魔導士

概要:前世においてケーニッヒに当たる人物。髪型は似ているが、性別も性格も全く異なっており、侍のような性格をしている。腰に日本刀を差しており、剣術を得意としている。

 大隊に入る前は剣客として各地を渡り歩いていた。適性を認められ、航空魔導士としてターニャの下で戦う事となる。年齢が中年間近であるが、イヴ人であるため20代に見える。

 

名前:フェリーチェ・バルボッサ

性別:人間の女

人種:フランス系?

年齢:30歳?

身長:160センチ

階級:曹長→中尉

所属:第1航空魔導士師団隷下第2連隊第6大隊 特務航空魔導士大隊 第1中隊副官

兵科:航空魔導士

概要:前世においてノイマンにあたる人物。これも共通点は肥満体系と料理が上手い以外、共通点もなく、性格も口煩いが、彼とは違って熟練の航空魔導士である。

 ターニャからの評価は「前世でフェリーチェが居れば、直ぐに自分の指揮下に入れたい」との事。評価通り並々ならぬ実力の持ち主であり、敵からはその容姿と畏怖を込めて「バーバ・ヤーガ」と呼ばれていた。味方からは「お母さん(ムッター)」との愛称で呼ばれている。

 大隊の古株であり、反乱の首謀者からも一目置かれ、あわよくば味方にしようとしていたが、フェリーチェが断ったため、共に拘束される。無論、ターニャと共に拘束を解き、反乱を制圧した。

 

名前:シュルツ

性別:人間の男

人種:ドイツ系

年齢:40歳

身長:180センチ

階級:中尉→大尉

所属:特務航空魔導士大隊 第4中隊指揮官

兵科:整備士→航空魔導士

概要:熟練の航空魔導士。元々が整備士以外、経歴が不明な男。帝国再建委員会に身を寄せている理由も不明。大隊創設当初からおり、反乱軍に参加しなかった為に共に拘束された。

 ターニャ曰く「存在Xの使者かもしれない」とのこと。無論、無関係であるが。

 

名前:アラサ・ンディアエ

性別:人間の男

人種:アフリカ系

年齢:23歳

身長:187センチ

階級:中尉

所属:特務航空魔導士大隊 第1中隊 

兵科:航空魔導士

概要:ウィリーと同じ黒人男性であるが、アフリカ圏住人である。外見は黒髪ロン毛のイケメン。ユーゴと同じ補充兵。やたらノリが良い性格をしている。

 

他は随時追加する予定。



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オリジナルメカ一覧(順次追記予定)

オリメカ一覧となります。版権メカも含める。


艦艇

 

艦名:UNSCヌエ

艦種:パリ級重フリゲート機動兵器搭載型

大きさ:全長535メートル、全高199メートル、横幅112.3メートル

エンジン:重水素核融合炉、ショウ・フジカワ高速エンジン

武装:MACキャノン(艦首)、アーチャーミサイルポッド四十基、50ミリポイントディフェンスガン十二基

搭載機:UNSC運用機動兵器十二機

概要:コヴナント戦争中、UNSC海軍によって艦隊戦をメインにする目的で建造されたパリ級重フリゲートの一種。

 ヌエは戦後と世界融合後に建造された為、ロングソード級戦闘機用の格納庫の代わりに、MSやPTと言った機動兵器用の格納庫となっている。オリジナルのパリ級重フリゲートとの違いはそれだけであり、ザンジバル級機動巡洋艦のように機動兵器用のカタパルトが追加されたこと以外に変わりない。

 戦後に建造されたUNSCのどの艦艇も同じであり、地上用兵器や戦闘機の搭載数を減らすように機動兵器用の格納庫を追加している。

 

艦種:トラファルガーⅡ級機動兵器空母

大きさ:全長2000メートル、全高600メートル、横幅370メートル

エンジン:不明

武装:対艦ミサイル、対空ミサイル、対空砲多数

搭載機:通常兵器、機動兵器・他多数

概要:連邦軍の宇宙軍・海軍で運用される巨大宇宙空母。世界融合後に建造され、艦載機と共に宇宙艦隊の防空を担っている。

 機動兵器の運用を重点に建造された宇宙空母であるが、通常の宇宙航空機や地上兵器の搭載も可能。

 

艦種:ISA&UCAフリゲート

大きさ:全長400メートル、全高130メートル、横幅90メートル

エンジン:不明

武装:対艦ミサイル五基、多目的ミサイルポッド十基、対空機関砲二十ニ基

搭載機:脱出艇四機、機動兵器十二機

概要:ISAやUCA海軍で運用されている標準的なフリゲート艦。

 殆どの役割が巡洋艦や駆逐艦で済むため、惑星防衛か警備が主な任務であったが、世界融合後、急速な軍拡の為、巡洋艦の数が足りなくなり、その不足分を補うために機動兵器を搭載できるように改装され、前線に引き戻される。

 ISAやUCA海軍との違いは、巡洋艦と同じく変わりない。要するに一緒である。

 

艦種:ISA&UCA駆逐艦

大きさ:600メートル、全高150メートル、横幅116メートル

エンジン:不明

武装:対艦ミサイル十基、多目的ミサイルポッドニ十基、対空機関砲三十五基

搭載機:脱出艇数機、戦闘機二十機、機動兵器二十四機

概要:ISAやUCA海軍で運用されている標準的な駆逐艦。

 主に輸送船の護衛やフリゲート艦と同様に警備などで運用されたが、機動兵器搭載機能に改装され、前線へと復帰した。

 違いはフリゲート艦と同じく変わりない。

 

艦名:コロンブス号

艦種:コロンブス級超大型強襲揚陸艦(超大型惑星調査船コロンブス号)

大きさ:全長4869メートル、全高963メートル、横幅1012メートル

エンジン・不明

武装:デブリ排除用連装砲四十門、外付けミサイルポッド多数、外付け対空機関砲多数

搭載機:多数の兵器並び機動兵器

概要:未知の惑星を調査するための調査船。見た目は長方形の馬鹿でかい箱。

 長距離にある惑星を調査することを想定してか、かなり大きめな設計で、船内には未知の物質を調べるための実験や調査と言った科学施設を備え、調査員や乗員等のストレスにならないように移住性と娯楽施設を完備し、生産設備、それに加え多数の物資を備蓄できる広大なスペースを確保している。

 次の任務が決まるまで、惑星ヴェクタのコロニー船用ドックで長期間の改装作業を行っていたが、第二次ヘルガーン戦争の勃発と長期化、ISAヴェクタによる惑星ヘルガーンへの侵攻作戦の為、その搭載量に目を付けられ、ISA海軍に徴用された。軍籍となった後にコロンブス級超大型強襲揚陸艦として登録。陸軍の多数の地上部隊を載せ、ヘルガーン侵攻作戦に投入される。

 作戦開始後、コロンブス号は第二陣として惑星ヘルガーンに降下し、多数の地上部隊を展開。以降はその場に鎮座し、地上部隊の本部として機能していたが、思わぬ事態の連続が重なり、ヘルガスト軍の反撃によって破壊された。

 尚、コロンブス号は本作オリジナルの艦艇であり、フリゲートや駆逐艦も含め、原作KILLZONEには登場しない。

 

メカ

 

ザクⅣ(制式仕様)

 

ジムⅣ

 

順次掲載予定

 

オリジナルストライカーパック

 

スペースストライカー

 宇宙などの空間での戦闘力を向上させるために開発されたストライカーパックの一種。大量生産品。

 いわゆる宇宙版ジェットストライカーパック。見た目はX字のスラスターが特徴的なスコープドッグの空間戦用ミッションパックであるラウンドムーバーをMSサイズにした物。長期的に戦闘を継続させるためか、大容量バッテリーを内蔵しており、少し大きめになっている。

 空間上での戦闘でダガーLやウィンダムと言ったストライカーパックシステム搭載機の損耗率が高いことを受け、短期間で開発された。このストライカーパックのおかげか、僚機の損耗率は下がった。

 連合製ストライカーパックシステム搭載の機体なら全機装備可能。宇宙戦用であるため、大気圏内での戦闘には適さない。

 

ロケットランチャーストライカー

 スペースストライカー同様に宇宙空間での戦闘力を向上させるためのストライカーパックの一種。大量生産品。

 見た目は砲撃用ストライカーであるドッペルホルン連装無反動砲の二門の長身砲を円形の多連装ロケットポッドに変えただけ。

 重量が下がった事により、機動力の低下はかなり抑えられたが、地上での運用に適さないので、完全に宇宙用。主にウィンダムの主要パックとして運用された。105ダガーやダガーLでも装備可能。

 

ミサイルランチャーストライカー

 スペースストライカー同様の本作オリジナルのストライカーパックの一種。大量生産品。

 見た目はロケットランチャーストライカーを円形多連装ミサイルポッドに変えたように見えるが、ベースは核弾頭ミサイルを搭載できるマルチランチャーである。三分の一サイズにしたので、当然ながら核ミサイルは搭載できない。

 ロケット同様、火力を向上させるために開発されたストライカーパックで、地上でも装備可能であるが、重量と重力の問題で機動力が低下するため、主に支援担当機が装備している。

 宇宙空間の戦闘では主に機動力に優れるウィンダムが装備し、地上では105ダガーやダガーLが装備した。




随時、追加予定です。


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短編集
幼女、二度目の転生


対策として、ターニャ・フォン・デグレチャフことデグ様の主人公とした短編を上げまする。


 神よ、否、存在X。なんと残酷な仕打ちをしてくれる。

 

 信仰心を持たぬと言う理由で、私ことターニャ・フォン・デグレチャフをまたも幼女として異世界に転生させた。

 二度の転生でしかも幼女だ。あのロリコンめ、変なところで拘りおって。

 しかも今度は魔法が存在する第一次世界大戦のような世界では無く、剣と魔法の以下にも中世ファンタジーな世界だ。

 

 少し前世より難易度は下がったが、奴め、このイージーな世界なら私が信仰心でも持つとでも思っているのだろう。

 フン、持つ訳が無かろう! 魔王やら悪者を殺しつつ、数多のダンジョンを巡り回ってスキル神殺しを探し出し、貴様をぶち殺してくれる! 存在X!!

 

 と、最初は奴がミスでも起こしたのか、前々前世や前世の記憶を保持したまま私はまたしても幼女として平和で甘ったるいファンタジー世界に転生したが、十年経っても幼女のままだった。今度は両親も居る。前々前世のように行かなくとも、教育も備わっていた。

 少しは背が伸びても良いくらいだが、一向に伸びもしない。試しに私を生んだ両親に聞けば、私はロリータ族と呼ばれる生涯幼女の種族であるらしい。

 そう言えば、父親に当たる人物が幼女だった。しかも私の生まれた安定した平地にある村には女性しかいない。

 

 聞けば、イヴ人と呼ばれる女性、しかも美女やら美少女しか居ない種族であるそうだ。生まれて生涯幼女なロリータ族も、その三つあるイヴ人の派生の一つらしい*1

 

 存在Xめ、姑息な手を…!

 

 どうやれば成長できるのかと、両親のみならず、村の図書館で文献を漁ったが、何処にも無かった。

 まぁ、人間でなくとも、平和に暮らしていけるなら何とでも良いが。

 

 そうやって私は平和を満喫していた頃、祈りの言葉を発しない私に存在Xは痺れでも切らしたのか、刺客をイヴ人たちが平和に暮らす村に送り込んできた。

 その刺客は、私が前々前世で昔見ていたアニメの敵キャラであった…。

 

 

 

 二度目の転生を迎えたターニャ・フォン・デグレチャフが暮らす平和な村に無法者が現れた。

 その無法者の名は立浪ジョージ。彼はアルターと呼ばれる特殊能力者であり、具現型である浮遊して太くて硬いビッグマグナム。しかし、性格は残虐粗暴で下品、平然と外道な手を取る悪漢である。

 

「お、おい! 話が違うぞ!?」

 

「話ぃ? おい、誰がテメェら見てぇな下衆と話をするんだァ? この英雄、立浪ジョージ様がよぉ」

 

 そんな立浪はか弱いイヴ人しか居ない平和な村に、街のごろつきたちを使って村を先に襲撃させた。

 だが、それは村に自分が英雄に見えるようにする演出、マッチポンプだ。立浪はごろつきたちを自分のアルター、ビッグマグナムで吹き飛ばす為に呼び出し、最初に村を襲おうとしたごろつき数人を吹き飛ばした。

 一人のごろつきが話が違うと抗議するが、皆殺しにするつもりであった立浪は下品な笑みを浮かべつつ、ビッグマグナムの砲口をごろつきたちに向けた。

 

「畜生! 騙しやがったな!? 死ねぇ!!」

 

「この俺に死ねだァ? 死ぬのはテメェら悪党の方だよ! 俺の太くて硬いビッグマグナムで消し飛びやがれ!!」

 

 騙されていたことに気付いたごろつきたちは、一斉に立浪に襲い掛かったが、ビッグマグナムの二射目で吹き飛ばされた。

 尚、この世界にはアルターと呼ばれる特殊能力は存在しない。立浪ジョージは存在Xがこの世界に居るターニャに信仰心を与えるべく、送り込んだ刺客なのだ。

 

「あ、ありがとうございます! 助けて頂いて!」

 

「いや、良いんですよ。オレ、偶々通り掛かっただけだし」

 

「直ぐにお礼をお持ちいたしますね!」

 

 震えて隠れているだけのイヴ人たちは安全が確保されたと分かれば、何食わぬ顔で待っている立浪の下へ駆け寄り、助けてくれた礼を告げる。そんな立浪はまたも嘘を付き、彼女らを騙した。

 あのごろつきたちと立浪のやり取りは彼女たちに聞こえていないのだ。彼が手に掛けたごろつきたちは既に息絶えており、誰一人生きていない。全て立浪の目論見通りであった。

 礼の品を持ってくると言うもう一人が村へと戻っていく中、立浪は村に泊まって良いのかと問う。

 

「あの、俺ちょっとこのごろつき共を吹っ飛ばした後で疲れてましてね。おたくの村に泊めてもらえませんかね?」

 

「良いですよ! 村を助けてくれたんですから!」

 

「どうもどうも。立浪ジョージ、お姉さん方の村で、ゴチになりまーす!」

 

 この立浪の要望に、村人は満面な笑みで出来ると答える。美女の笑みを見た立浪は本性を隠しつつ、同じく笑みで応えて村に入った。

 だが、この村には立浪の標的であるターニャが居る。当の立浪は存在Xの指示など忘れ、この村のイヴ人たちを自分のアルターを使って脅し、手籠めにすることで頭が一杯であるが。

 ちょうど外に出て、学校帰りであったターニャは英雄として村に入った立浪の姿を見て、直ぐに前々前世の記憶の中にあるアニメの敵キャラクターであると思い出した。

 

「(や、奴はスクライドの立浪ジョージ! な、何故ここに居る!?)」

 

 直ぐに思い出したターニャは前世の記憶にある武器の無い格闘術による戦闘態勢を取り、下賤な本性を隠す立浪に警戒する。

 ただのそっくりさんかもしれないと思うターニャであるが、目前の男は紛れもなくビッグマグナムのアルター使い、立浪ジョージ本人である。

 警戒するターニャを見た立浪は先ほど村のイヴ人たちに見せていた笑顔から一変、元の粗暴な表情へと変わり、彼女を睨み付ける。これには周りのイヴ人たちも困惑していた。

 

「おい、何処の小娘だァ? この村の英雄である立浪ジョージ様に、ガン飛ばして拳法家見てぇな構えを見せてよぉ。おたくら躾がなってないんじゃないの?」

 

「ご、ごめんなさい。あの子はターニャちゃんって言って、時より変なことをしたり、変なことを言ったりするので…」

 

「へぇ、不思議ちゃんってわけだ」

 

「持ってきました! お礼の品を!」

 

 やや本性を見せた立浪にイヴ人たちは嫌な予感を抱きつつも、警戒態勢を取るターニャが変わった子だと言って宥める。そんな時に、立浪にお礼の品を届けに来た。

 お礼の品とは村の山菜であり、村の近隣の者たちやターニャも美味だと言うほどの物だが、最初から村を掌握するつもりであった立浪は自分が思っていたのと違う物が来たことに我慢できず、遂に本性を村人たちにも表してしまう。

 

「おい、このアマ。てめぇ、この英雄である立浪ジョージ様にそこらの草を献上するのか? あぁ!?」

 

「こ、この山菜はとっても美味しく、近隣の人たちにも大好評な…」

 

 本性を現した立浪は怒鳴り散らし、山菜を蹴飛ばす。これに再びイヴ人たちは警戒し、直ぐに立浪から距離を取り始める。

 残虐粗暴で面倒くさがりな性格であったために本性を晒してしまった立浪は、村の英雄としての顔では無く、元の自分のままに自分が欲しい礼を告げる。

 

「この村の英雄の立浪ジョージ様に献上すんのは、小汚ねぇ草じゃなくてテメェらの身体だろうが! 舐めてんのかァ!? 街のアホ共を誑し込むのに、この俺がどんだけ苦労したか分かってのかコラァ!!」

 

 完全に隠す気は無く、立浪は自分の願望を彼女らに伝える。

 要は助けてやったんだから、この俺に抱かれろと言うのだ。普通、それに応じる女性が居るのも怪しいが。自分の下品な願望が買わないと判断した立浪は自身のアルターであるビッグマグナムを召還し、その砲口を村人たちに向けて脅しを掛ける。

 

「俗に言う動くなって奴だ。さっきは怒り過ぎちまったな。俺の言うこと分かるよな?」

 

「(正真正銘、立浪ジョージだ。もしもの時に備えて、エレ二ウム九五式を持ってい良かった)」

 

 ビッグマグナムを召還した後、立浪は冷静さを取り戻してからあることを要求する。これにターニャは前世から何故か一緒に来たエレ二ウム九五式を持っておいて良かったと口にする。ターニャにとってはいらぬ物であったが、この立浪の襲撃にその存在を感謝した。

 だが、同時にこれが存在Xの自分に信仰心を持たせるためのマッチポンプであることに気付く。立浪はその為にこの村に差し向けられたのだ。

 

「お前ら良い身体してんなぁ。まずは全員服を脱げ! 下着姿を俺に拝ませろォ!」

 

「(ちっ、これも存在Xのマッチポンプか。立浪ジョージなんぞ、差し向けおって)」

 

 服を脱いで下着姿になれと言う立浪の要求に、存在Xの策略に気付いたターニャは苛立ちを覚える。立浪は自分がターニャの噛ませ犬にされている事に気付かないだろう。そうとは知らず、自分の要求通りに下着姿になるイヴ人たちを見て、下品な表情を浮かべて興奮する。

 

「おぉ~、こりゃあたまらねぇぜ! 俺の股下の太くて、硬いビッグマグナムが暴れ出しちゃいそうだぜ! 今度はぁ、今度はスッポンポンになって貰おうかァ?」

 

 興奮した立浪はイヴ人たちに全裸になるように告げる。無論、それが叶うことは無かった。何故なら、ターニャが立浪に挑む決心をしたからだ。憎い存在Xの力を借りる他、この状況を打破できぬからだ。

 

「おい、立浪ジョージ。幼女の前で下ネタを言うな」

 

「ちょっと、ターニャちゃん!?」

 

「あぁん、貧相な小娘がぁ、この立浪ジョージ様に楯突くだとぉ? このデカくて硬いビッグマグナムに勝てると思ってるのかぁ?」

 

「あぁ、勝てる。神に祈りの言葉を捧げればな」

 

「神様にお祈りだぁ? そんなんでなぁ、このビィィッック、マグナァァームに勝てるわきゃねぇだろうがぁぁぁ!!」

 

 ターニャが自分の目の前で下ネタを言うことを注意すれば、立浪はそれを挑発と捉え、自分のビッグマグナムに勝てるのかと問い始める。これにターニャが神に祈りの言葉を捧げれば勝てると答えると、立浪は苛立ちを覚えたのか、ビッグマグナムによる砲撃を行った。

 それと同時に、ターニャはエレ二ウム九五式の起動条件である神に対する祈りの言葉である詠唱を呟き始める。

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

「主よ、眼前に居る平和を乱す愚かな男を打ち砕く力を、この我に与えたまえ」

 

 祈りの言葉を呟く中、ビッグマグナムが放たれると知ったイヴ人たちは逃げ始める。下着であろうが、今は自分の命が欲しいのだ。そんなことを気にしている場合ではない。

 

「ビィィッック、マグナァァーム!!」

 

 立浪の叫びと共に、ターニャに向けてビッグマグナムが放たれた。詠唱を終えた頃には強大な魔法障壁が張られ、ビッグマグナムより放たれた弾頭を防ぎ切った。

 これには立浪も驚きであったが、彼は奥の手を隠していた。今までは通常のビッグマグナムの砲弾。次は使っていない立浪ジョージの必殺技である。

 

「ふ、防いだ!? この太くて硬いビッグマグナムを!? だが、次はねぇ! 俺の必殺技、スペルマ・インサーションでイっちまえェ!!」

 

 とてもでは無いが、立浪ジョージの必殺技は酷い名前だった。それを聞いたターニャは激怒し、エレ二ウム九五式の加護で出来る砲撃術式を立浪のビッグマグナムに向けて放った。

 

「だから幼女の前で、下ネタを言うなと言っているッ!!」

 

 互いの必殺技がぶつかり合う。そう思われていたが、ターニャの怒りの砲撃術式の威力はその酷い必殺技名を遥かに上回っていた。

 

「この俺が、この俺の太くて硬いビッグマグナムが…!? 折れるだとォォォ!?」

 

 撃ち負けた立浪はビッグマグナムを破壊されたことで精神が崩壊し、ターニャに敗北した。

 

「か、勝ったの…?」

 

「あぁ、勝ったよ。私の不本意な手でな」

 

 絶望していたイヴ人たちが勝ったのかと問えば、ターニャは勝利したと返した。

 だが、具現型のアルター使い、ビッグマグナムの立浪ジョージとの戦いは、二度目の転生を強制されたターニャの序曲にしか過ぎない。直ぐに存在Xは次なる手を打った。

 

「一大事! 一大事ィィィ!!」

 

 突如、馬に跨った甲冑を身に纏った騎士が慌てて村に入って来た。立浪を倒したと言うのに、何の騒ぎかと思って着替えながら一大事を知らせに来た早馬に跨る騎士を見る。

 

「な、何の用ですか? こっちは能力者の襲撃を受けて大変だったんですよ」

 

「これはかたじけない。だが、こちらも緊急に知らせばならぬ事態がある! 戦争である! 戦争が始まったのであるッ!!」

 

「っ!?」

 

 村の代表者の問いに、早馬を飛ばして来た騎士は戦争が始まったと大声で知らせた。

 この世界は戦争が全くないと言って良いほど、愚直に平和過ぎる世界なのだ。無法者は居るが、秩序を乱すほどではない。戦争が始まったと聞いたターニャは村人のイヴ人たちと共に衝撃を受ける。

 

「ど、何処と何処が…?」

 

「隣の領地で空よりモビルスーツと呼ばれる機械兵器のザクが雨の如く降り注ぎ、瞬く間に制圧したとのことだ。ここにも来るかもしれん。イヴ人の方々はこれから指示する場所に避難されよ!」

 

「ザクが空から雨のように降って来ただと…!?」

 

 存在Xが使った手とは、ターニャたちが住む別の貴族が治める土地にモビルスーツのザクの大群が出現させ、この世界で戦争を始めると言う物だった。

 それを早馬の騎士の口より知らされたターニャは天に向かって、存在Xを憎む言葉を叫ぶ。

 

「存在X! 貴様、何をやったか分かっているのかァァァ!!?」

 

 かくして、二度目の転生を強制されたターニャ・フォン・デグレチャフの安全な地を求める物語が幕を開けた。

*1
残り二つは戦闘力に長けたアマゾネス族。人間の女性と殆ど似ているミズ族。




元々やろうかと思っていた奴を急遽投稿しました。


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忘れられたバンカー
湖へ


連動式読者参加型SSです。不定期更新です。


 ある世界、それも剣と魔法の世界。そこにはかつて巨大な軍事国家があった。

 強大な軍事国家が世界の大部分を支配しており、独立国は支配されるか、抵抗するか、大人しく属国となる三択しか無い。その軍事大国は数百年前、ある転生者によって建国された。軍事大国になる前は、小国に過ぎなかったが、転生者は前世の知識を活かし、主に科学と軍事力を強化して軍事国家の支配者となる。

 周辺国を高い科学力と軍事力で制圧し、やがては大国となり、最終的には全世界を半分を支配する大帝国までに至る。

 

 なぜ軍事大国にまで至ったかは、ご都合主義の如く地下奥深くに軍事には必要な資源が大量に眠っていたからだ。剣と魔法が主流の所為で、転生者を除く誰もが不必要な物と思っていた。。それを転生者は自分の野望に必要な素材であり、その資源でこの世界では無敵の軍隊を作り上げる。

 

 だが、皇帝となった転生者は世界制覇を見ることなく二度目の死を迎える。皇帝亡き後も大帝国の世界制覇は停滞したが、無敵の帝国として君臨し続け、更なる発展を続けた。

 

 支配されていない諸国はいつ侵略されてもおかしくないと判断し、連合軍を結成したが、強大な軍事力を誇る大帝国にすれば烏合の衆である。

 いざ戦争が始まれば、真面な連携も取れない弱小国の集まりである連合軍は成す術もなく敗北し、大帝国の名声を高めるばかりで、大帝国の領土を広げるばかりだ。

 

 連合軍の敗北を聞き、諸国が戦わずして大帝国の支配を受け入れようとした先、救世主とも言える異世界からの侵略軍がその世界に攻めて来た。

 異世界からの侵略軍の名は「神聖百合帝国」であり、女性だけの種族、イヴ人を支配者とし、二十もの異世界を支配する大帝国であった。諸国はこの異世界からの侵略者たちを快く迎えた。自分らを脅かす大帝国と戦ってくれるのだ。漁夫の利を得る狙いを潜めて…。

 

 神聖百合帝国の異世界を行き来する科学力を有していたが、大帝国に比べれば十年も遅れていた。人口も多いはずであるが、軍事力は数にしては劣っており、二十もの世界を支配下に置いているが為に侵攻軍の兵力は大きく劣り、大帝国の抵抗により膠着状態が十年にも及んだ。

 この我慢比べの大戦争で先に折れたのは、侵略軍の神聖百合帝国だ。大帝国が大規模な反抗作戦を行えば、百合帝国は耐え切れず、侵攻軍の主力は壊滅した。主力の敗北を受け、大帝国に勝つことが出来ないと判断した百合帝国は現地の支援してくれた諸国の声を無視して撤退する。

 その後、この戦争が原因か、百合帝国は崩壊した。

 

 かくして、侵略軍を追い返した大帝国は初代皇帝が果たせなかった世界制覇を目指し、裏切り者たる世界征服を行おうとしたが、百合帝国との戦争で疲弊しており、既に息切れ寸前であった。

 とどめを刺すかの如く、ワルキューレと言う二つ目の異世界軍の侵攻が行われた。百合帝国とは比較にならない大規模な侵攻軍を前に大帝国は耐え切れず、諸国が願っていた大帝国崩壊が対に敵う事となった。だが、それもまた始まりに過ぎない。

 

 ワルキューレは世界を支配し、それに対抗するレジスタンスとの争いが続いた。百合帝国やワルキューレは、小国を世界の半数を支配する大帝国へと進化させた資源を狙って攻めて来たのだ。当然ながら、この魅力的な資源を渡すほどこの世界の者たちは愚かではない。今でも絶えず、その資源を巡って争われている。

 もはやこの世界では争いが耐えることは無いのか?

 

 これ以上、語っても答えは出ないだろう。話を変えよう。

 大帝国と百合帝国は現状打破の為、ありとあらゆる兵器を開発して来た。それは我々が思い掛けないような物や魔法、それにオカルト関連までを状況打破の為に兵器として使った。中には自分らにすら被害を与える物もあり、数多もの兵器が何処か人知れぬ所に封印された。

 それらの兵器は危険性故にか、公式には記憶されず、それを記した資料も全て残らず焼却されたようだ。今となってはどんな威力を誇ったかは、作った本人か見た者しか知らない。知らぬからこそ、魅力は増してしまい、あらぬ所まで発展してしまう。

 

 その因果か、湖の中央にある忘れられたバンカーの地下奥深くに眠る正体不明の兵器に魅入られた様々な野望や目的を持つ者たちが、ダンジョンへと集おうとしていた…。

 

 

 

 大帝国が崩壊して五十年余り…。

 

「おいコラ、ジジイ! なんで門を開けねぇんだ!?」

 

 正体不明の兵器が眠る忘れられたバンカーがある湖の出入り口にて、頑丈に閉ざされた門を開けない村の長老をAK-47等の銃で武装した男たちのリーダーが胸倉を掴み、睨み付けながら問う。

 湖は霧で覆われて薄気味が悪い。今にも何かの怪物が出て来そうだ。昔は大帝国軍と百合帝国軍との激戦区であったらしく、双方の大量の死体と兵器の残骸が片付けられずに残されている。残されている理由は不明。その理由と薄気味悪さの所為でか、近隣の村に住む村人たちは唯一湖に続く道を頑丈な門で塞ぎ、入って来られないようにした。

 門の理由は何もない事を願っての事か、それとも財宝を独り占めする為か。どちらにせよ、バンカーの噂の所為で一攫千金を企む者たちが集まってしまっている。現に銃で武装した男たちが来て、門を開けろと銃口を向けながら脅している。

 

「だ、駄目じゃ! ここを開けたら、開けたら怪物や悪霊共が村に入って来てしまう!」

 

「うるせぇぞクソジジイ! テメェら、そう言ってお宝を独占しようって魂胆だろうが!!」

 

 脅しにも銃口にも屈しない長老に、遂に武装集団のリーダーはブチ切れた。リーダーは怒りの余り素早く抜いたコンバットナイフで、長老の腹を突き刺したのだ。そのナイフを抜き、突き刺した速度は訓練しているので早く、老いた長老を確実に始末した。

 

「や、やべ…! 殺しちまった…!」

 

 リーダーのナイフを抜くのも早かったが、うっかりして手を出してしまったことを後悔する。

 元々武装集団は、ちょっと脅せば村人共は直ぐに門を開き、噂のバンカーがある湖まで行けると思っていたのだ。それが頑なに、銃を持っても開けようとしないので、あそこに金銀財宝があるから抵抗しているかと思い、ついカッとなって長老を殺してしまった。

 

「ちょ、長老を殺しやがったぞ!」

 

「奴ら、俺たちも殺す気だ! そして門を開け、怪物や悪霊共を解き放つ気だ!」

 

「あそこを開ければ、村は、いや、この辺り一帯に怪物が!!」

 

「奴らを殺せ! 殺すんだ! 長老の仇を取るんだ!!」

 

 長老を殺したことで村人たちは殺気立ち、農具や猟銃と言った武器を持って武装集団に向かって来る。男や老人だけでなく、女子供ですら長老の仇を撃とうと武装集団に襲い掛かる。

 これにAK-47突撃銃やRPD軽機関銃などの小火器で武装した男たちは狼狽えつつも、自分らの掲げる信念、かつてこの世界の半数を支配していた大帝国再建の為、総出で自分らを殺しに来る村人たちを迎え撃つ。

 

「く、クソっ! こいつ等、俺たちを殺す気だ!」

 

「村中が殺しに来やがる! 女も子供も、婆さんだって殺しに来るぞッ!!」

 

「畜生、分からず屋共が! 我々は大帝国再建のため、活動しているんだぞ!? そんな分からず屋共など、皆殺しだ! 皆殺しにしてしまえ!!」

 

 一丸となって自分らを殺しに来る村人たちに対し、大帝国再建を掲げる武装集団は手にしている小火器を発砲して射殺する。掲げている信念を口にしているが、本音はただ生き残りたいだけだ。彼らは軍事訓練を受け、ワルキューレの占領軍と交戦経験があり、そのおかげか雑多な武器で武装した村人たちなど相手にならなかった。

 それに武装集団は五十人編成の小隊規模だ。瞬く間に村人たちは彼らが持つ小火器の掃射の前に倒れるばかりだ。数十分もしない内に、村人たちは武装集団に被害を与えられぬまま全滅してしまった。残りと言えば、幼子や赤ん坊ばかりだ。

 

「敵影、ありません…!」

 

「クソが! 貴重な弾薬を浪費させやがって! 残りの幼子や赤ん坊も殺せ! この世界の再興の為に戦う我らの邪魔をした罰だ!!」

 

 貴重な弾薬を消耗させたことに腹を立てたリーダーは、残っている幼子や赤ん坊の始末まで命じた。流石にこれには部下が反対する。女子供まで殺しているのだ。第一にこれ以上、殺す必要性が無い。

 

「それは流石にやり過ぎでは…!? 第一、幼い子供や赤ん坊を殺す意味が分かりません! 再興のための人材として育成すれば…」

 

「黙れ! 神聖たる我らの目標を邪魔したのだ! それに貴重な弾薬を浪費させた! 根絶やしにせねば収まらん!!」

 

 最もなことを言う部下に、リーダーは正気とは思えないことを言って銃を向けて黙らせる。この状態のリーダーに何を言っても伝わらず、殺されてしまうと判断した部下たちは彼の指示に従い、幼子や赤子まで手に掛けた。

 かつて自分らの世界で栄華を誇り、一度は異世界の侵略者たちを追い返した大帝国の再興と聞き、夢と希望を胸に武装集団に参加した男たちであるが、今では単なる略奪と虐殺集団と化したことに絶望している。一応は新たに平和維持と表し、侵略しに来たワルキューレの駐屯軍と交戦はしているが、ここ最近は裏切り者狩りと補給部隊の襲撃に明け暮れているので、時より何をしているのか分からなくなる。盗賊団になってしまったのかと疑問に思うこともある。

 それにリーダーがスポンサーの武器商人の言いなりになって来ていることもあり、呆れて脱退するメンバーも居たが、裏切り者扱いされ、先週では見せしめとして公開処刑が行われた。

 武装集団はもう何をしているのか、分からなくなってきているのだ。あのバンカーへ行くことも、スポンサーの武器商人が命じた事だ。虐殺はリーダーの指示であるが。

 

「門を開きます!」

 

 証言など真面に出来ないであろう目撃者らの始末を終えた後、大義を失った武装集団は鍵を見付け、長く閉ざされて来た門を開けた。

 門が開かれたその先にあったのは、一寸先も見えない程の深い霧であった。




後日、募集する予定です。


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武蔵が来る!

巴武蔵
ゲッターロボに出て来る三番目。どの媒体でも死んで無いのが珍しい奴。ゲッター線の手先のクローンになって復活し、また死んで出て来る。
この作品ではバンカーに隠された物がゲッターに関する物では無いかと思い、調べに来る。
そして、マリオの無限残機の如く何回も死んで復活する。
服装は工事現場用ヘルメットに剣道の赤胴、褌、下駄、黄色いマントと言ったいつものコスプレ。
武器は真剣の日本刀。

活動報告にて募集中~


 門を開けることを拒否した村人たちを文字通り一人残らず虐殺し、湖へと向かった武装集団は、その薄気味悪さに身震いしていた。

 刺殺した村の長老が言った通り、怪物や悪霊が出てきそうな感じで、深い霧で五里霧中だ。地面には殆ど霧で見えず、うっかりと死体を踏んだ男が驚いた余り尻もちを着いてしまう。

 

「な、なんだ!?」

 

「死体だ! でも、死んでから日が浅いぞ…!?」

 

 踏んだ死体で男が思わず銃を向ける中、仲間は死体に触れて死んでからそれほど日が経っていないことに驚く。

 だが、その死体が身に着けている衣服や装備は、武装集団から見れば五十年前の戦争の物。こんな格好をしてあのバンカーへ行くなど考えられない。他の死体も同様である。つい先ほど、ここで戦闘があったかのように。

 

「さっきまで戦闘があったみてぇじゃねぇか…!? 破壊された戦車も、まだ熱いぜ…!」

 

 戦争が終わって今から五十年前だと言うのに、戦闘が終わってからまだ一日も経っていないことに、付近で破壊された戦車の残骸に触れ、まだ熱を持っていることに驚きの声を上げる。赤錆びても居ない。

 死臭や火薬の臭いはするが、死体の腐った匂いはしない。半世紀前にこの世界に攻めて来た百合帝国軍の将兵の死体や兵器の残骸もある。敵方も同様であった。これに武装集団は狼狽える。

 

「へへへ、まだ温けぇぜ!」

 

「や、止めろよ気持ち悪い!」

 

「どうしたんだ!?」

 

 こんな状態で自棄でも起こしたのか、武装集団の一人が百合帝国軍の迷彩ポンチョを軍服の上に羽織った兵士、それもイヴ人の兵士の遺体を下品な笑い声を上げながら脱がそうとしていた。どうやら死姦をやろうとしているようだ。

 当然ながら他の仲間たちに止められる。隊長クラスもこの獣のような行為を止めるべく、死体の衣服を無理やり剥がそうとするその兵士を止める。

 

「な、何をしている!? 貴様!」

 

「離しやがれ! 何が起こるか分かりゃしねぇんだ! 楽しんでも良いだろ! どうせ死体でも、侵略者なんだぞ!!」

 

 死姦をしようとする男を羽交い絞めにして止めるが、その男はこの異常な光景に自棄を起こしており、仲間らを振りほどこうとする。

 

「錯乱しやがって…!」

 

 規律と秩序を保つべく、リーダーはホルスターよりマカロフPM自動拳銃を取り出し、安全装置を外して自棄を起こした部下を始末しようとしたが、銃を持って周囲を警戒していた部下の一人が悲鳴を上げ、″何か″に殺された。

 

「わぁぁぁ!?」

 

「なんだ!?」

 

「て、敵襲か!?」

 

 即座に警戒態勢を取る武装集団であったが、数秒足らずで次々と男たちはその何かに殺されていく。武装集団も持っている銃で抵抗するが、何かは異常なまで素早く、一発の銃弾も当たること無く全て避けられる。そればかりか誤射まで起きる始末だ。

 

「うわぁぁぁ!? あぁぁぁ!?」

 

「止めろ! 乱射するな! 味方に当たる!!」

 

 RPD軽機関銃を持つ男が恐怖の余りパニックに陥って乱射するのをリーダーは止めようとしたが、銃弾を躱しながら高速で飛び回る何かに鋭利な刃で首を撥ねられ、機関銃を乱射する男も腹を裂かれ、内蔵を垂らしながら死亡する。

 他の者たちも腕を斬り落とされるか、足を斬り落とされるかして死亡し、この場に大量に転がっている死体の仲間入りを果たしてしまう。まだ生き残りが居り、ここから逃げようとしていたが、何かは一人も残さず、逃げる武装集団の残りを武器らしき鋭利な刃で次々と殺害した。

 

「わぁぁぁ!!」

 

 最後に残った一人は手にしているAK-47突撃銃を乱射したが、何かに当たるどころか背後に回り込まれ、鋭利な刃によって左右に両断されて息絶えた。

 

 

 

 武装集団が向かった忘れられたバンカーに眠る百合帝国の忘れ物は、正体を知らぬ故か強大な兵器かと思われていた。その所為か様々な勢力がそれを手に入れるべく、冒険者を初めとした傭兵、刺客、現地人をそこへ送り込む。各勢力には、忘れ物を狙うそれぞれの目標があった。

 

 ワルキューレはこれ以上イヴ人の武装勢力である帝国再建委員会の勢力拡大を阻止するため、エージェントを派遣した。

 ヴィンデル・マウザーは興味を示し、仮名666の損失を補うべく、正体も分からぬ物を刺客や現地人を送り込んで回収を目論む。

 マクギリス・ファリド率いるアグニカ・カイエル軍はヴィンデルと同じく刺客や冒険者、傭兵を使って回収しようとする。

 第四帝国、似たような理由だ。だが、送り込んだ刺客は一人で後は雇われた者たち。

 帝国再建委員会は忘れ物の回収だ。だが、人員は殆ど送り込んでいない。

 現地の大帝国残党や共産主義者、カルト教団は勢力拡大の為、自分らの世界にあるかつての侵略者の忘れ物を狙う。

 冒険者らは自分らの探求心ゆえに、バンカーへと向かう。

 

 各々が崩壊した百合帝国の忘れ物を狙う中、あらぬ所から忘れ物を狙う者が居た。無関係ではあるはずだが、もしかすればと言う考えの下に干渉を始めた。

 それはゲッター線である。人類を進化に導き、それ以外の種族を排除し続けるゲッター線は、人類ではないイヴ人が作り上げた忘れ物を、次なる人類の脅威と捉え、ある男を現地へ寄越した。

 その名も巴武蔵(ともえ・むさし)、かつては流竜馬(ながれ・りょうま)神隼人(じん・はやと)等と共にゲッター線を主動力とするゲッターロボを駆り、ゲッター3のメインパイロットだった。新型のゲッタードラゴンの完成のため、壮絶な戦死を遂げた男だ。

 死後にゲッター線と同化した武蔵はゲッター線の眷属となり、今も人類に仇なす種族や文明を強大なゲッターの力で滅ぼし続けている。そんな男を一人、ゲッターはこの世界へと送り込んだ。

 

「ここが、ゲッターが脅威となる物がある世界か…」

 

 背中に日本刀を背負い、工事現場用ヘルメットに剣道の赤胴、白の六尺の褌、下駄、黄色いマントと言う出で立ちで降り立った巴武蔵は、肌に伝わる周りの雰囲気で、即座にこの世界がただならぬ世界であると理解する。

 

「臭い、臭過ぎる…! 死だ、死の匂いだ。火薬や肉の腐った悪臭に混じって臭いやがる…! 全く、神に見放された地とは…この世界のこと言うんだろうな」

 

 神に見放された地に相応しい。武蔵の言う通り、この世界はまさに神に見放された土地だ。死と狂気、それと戦争だけが残された世界だ。

 

「本来であれば、この土地ごと吹っ飛ばしてやるが、人類が居るからな。全く、進化に値する奴が居るのか…?」

 

 進化に値せず、互いに殺し合う人類が居るこの世界をゲッターの力で滅ぼしている所だが、神が見放しても、ゲッターは見放さなかったようだ。そのゲッターの意思に、武蔵は疑念を抱きつつ、現地へ向かおうであろうトラックに向かう。

 

「あんたも冒険者け?」

 

「応よ。御覧の通り、冒険者よ。それにゴールド免許なんだぜ」

 

「乗んな! 送るばいね!」

 

「あんがとな」

 

 同じ冒険者らを荷台に満載したトラックの運転手に問われた武蔵は、冒険者であると答え、冒険者ギルドでは最高位である金等級のバッジを見せた。無論、このバッジはゲッターの力で作り上げた物である。運転手はそれなりの手練れと判断すれば、荷台に乗るように武蔵に告げる。

 武蔵を乗せれば、運転手はトラックを目的の場所へと走らせる。目的の場所とはあの忘れ去られたバンカーであり、そこに隠された忘れ物を狙う勢力が送り込んだ手先たちも来ているようだ。

 

「あんたも、あのバンカーに眠る宝が目当てかい?」

 

 荷台に揺られながら、他の冒険者が武蔵にバンカーに眠る忘れ物について問う。彼らはそれを宝だと思っているようだ。これに武蔵は笑みを浮かべつつ、そうであると答える。

 

「あぁ、そうだとも。一攫千金を狙ってな。お前もその口か?」

 

「まぁ、そんなとこだ。ある奴はここら辺を吹っ飛ばす兵器とか言ってるが。なんにせよ、現物を見なけりゃ分からねぇな」

 

「それもそうだな」

 

 返しに質問で返した武蔵に、冒険者は忘れ物が宝かどうかは現物を見て判断すると答えた。

 それから暫く、半世紀前の腐った死体や赤錆びた兵器の残骸で溢れる荒れ果てた大地の悪路をトラックが走る中、銃を持った野党の集団がトラックに目を付けて止めに掛かる。

 

「おっ、不味ぃ! 止まるべ!」

 

「止まることなく、突っ走りゃあいいもんを」

 

 野党の集団を見たトラックの運転手は、あろうことかトラックを止めた。これに荷台に居る忘れ物を狙う男たちは文句を言う。野党の集団が近付く中、トラックの運転手は笑みを浮かべながらある物を持って彼らの元へ向かう。どうやら通行料を払うようだ。

 

「やぁやぁ、野党の皆さん。通行料でしょ? ほら、持ってきたばいね」

 

 愛想笑いをしながら通行料を渡すトラックの運転手であるが、野党の集団はその手を払って手にしている古めかしいライフルの銃口を向ける。

 

「な、何すっとよ!? 通行料はちゃんと払っとるばい! 足りんと言うんね!?」

 

「う、煩い! 煩いぞ!! あのトラックを寄越せ! 俺たちは元の世界へ帰るんだ!!」

 

「か、帰る!? い、いや駄目かんね! 絶対にダメ! あのトラックは俺の商売道具ばい! あんた等に渡したらお飯も食えんと!!」

 

 野党は興奮しており、トラックを渡すように怒鳴るが、大事な商売道具であるトラックは渡せないと断る。だが、興奮した野党らは聞く耳持たず、銃を向けながらトラックを自分らに渡すように脅し掛けて来る。

 

「黙れ! 黙れぇ!! お前の事なんて知らない! 俺たちは帰るんだ!! こんな世界、こんな世界に居られるか!!」

 

 帰りたい。野党の集団はただそう訴えるだけで、運転手の話など聞こうともしない。荷台に乗る武蔵を始めとした冒険者らも問題を解決しようとしてか、荷台から降りて運転手の元へ向かう。

 

「おいおい、どうした? そんなど素人共、俺たちなら瞬きする間に皆殺しにできるぜ」

 

「あぁぁぁ!? 来るなァ! 来るとぶっ殺すぞ!!」

 

 冒険者らが制圧しようと向かえば、野党の集団は更に興奮して銃を向ける。殺し合いに発展しそうな状態に、武蔵は穏便に済ませるために間に割って入る。

 

「落ち着けよ、お前たち。ここで殺し合いなんぞ、全くの無意味だ。ここは平和的に…」

 

「煩いぞぉ!!」

 

 銃を向ける野党の集団を落ち着かせようと武蔵は説得を試みたが、これに錯乱した野党の一人が銃を発砲した。野党が持つ銃の弾丸は赤胴を容易く貫き、運悪く心臓を貫通してしまい、武蔵は射殺されてしまった。

 

「て、テメェ! 撃ちやがったな!?」

 

「なら、ぶっ殺してやるか!」

 

「う、うわぁぁぁ!? 殺すぞ! みんな殺すぞぉ!!」

 

 武蔵が殺されたことで、冒険者らはそれぞれの得物を取り、野党の集団を殲滅せんとする。これに野党の者たちは錯乱して銃を乱射しようとする。だが、殺し合いはある出来事によって阻止される。それは、突如となく現れたワームホールから来る人物であった。

 

「な、何かねあれェ!?」

 

「全く、殺す覚悟もない癖に銃なんぞ持ちやがって。おまけに殺せばこの様よ」

 

「あ、あんた…!? なんで生きてんだ!?」

 

 運転手が現れたワームホールより現れた人物に驚く。その人物とは、殺されたはずの武蔵であった。地に足を着けた武蔵は、死んでいる自分からヘルメットを取り、再び被って野党の集団を見る。

 

「お、お前!? なんで!? なんで生きているんだ!?」

 

「それに錯乱しやがって。さて、お仕置きせんとな」

 

 周りが混乱する中、武蔵は気にも留めずに自分を殺そうとしてくる野党の集団に、背中の日本刀を抜かず、素手で立ち向かう。

 銃を持った相手では、また殺されるのがオチ。そう思っていた一同であるが、武蔵は外見に合わぬ素早さであり、狙った一人目を素手で捻じ伏せた。

 

「わぁぁぁ! なんで!? なんでぇぇぇ!?」

 

 こちらが有利なはずなのに、武蔵は銃を持った相手を次々と素手で制圧している。彼は柔道部の主将であり、しかもゲッターチームの一員として数々の死線を潜り抜けてきた。

 高々銃を持った素人集団など、武蔵の敵では無いのだ。次々と素手で野党たちを伸した後、最後の一人となった男の身体を武蔵は掴み、自分の身体の中心を回転させながら振り回し、遠心力を掛けてから上方向へ向け、その技名を叫びながら投げ飛ばす。

 

「大雪山おろし!!」

 

 武蔵の大技に投げ飛ばされた男は地面に落下して昏倒した。素手で銃を持った野党の集団を制圧した武蔵に、冒険者らは彼が金等級の冒険者であると認識する。

 

「さ、流石は金等級だ…! 一度死んでいるが…」

 

「さて、先を急ぐとするか」

 

「えっ、あぁ…分かったばい!」

 

 死んでいる事を気にしつつ、武蔵がそれなりの実力者であると認識する。彼らが一度死んだ自分に驚いていることを気にせず、武蔵は先を急ぐと言ってトラックへ向かう。聞けば何をされるか分からないので、運転手はトラックに戻ってエンジンを掛け、再び目的の場所へと向かった。




これに出て来る巴武蔵は巴武蔵司令官などで、何度も死んで何度でもワームホールから出てきます。
ついでにあのヘルメットは、本編通り再生できない。


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罰ゲームじゃん

マリ・ヴァセレート
使い回し主人公兼ヒロイン。
ワルキューレの使い走りとして参戦。バンカーに眠る忘れ物を破壊するべく、このクソ溜めのような世界へ訪れる。

名前:セゴー・アラント
性別:男
年齢:25歳
武器:片手剣、中型シールド
概要:バンカーの地下ダンジョンに隠された秘宝を聞き、参加した哀れな冒険者。
力と勝利こそが全てなこの世界出身であり、偏見の塊。それでも性格は大分マシな方。だけどクズ発言と自己中心的な言動が目立つ。

名前:メンヘ・ラン
性別:男
年齢:30歳
武器:デザートイーグル自動拳銃、手斧
概要:名前の通りメンヘラな男。要は自分を好きにならない奴は邪魔。意見がちょっと違うだけで、自分を嫌いになったと思って殺しに掛かるかまってちゃん。
自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪のタイプであり、自分のやること成すことが正しく、間違いがないと思っている。
他人の意見は聞かず、自分を否定するものは絶対悪であり、肯定する者は無二の親友とする。
出自はすごいらしい。


 ゲッターの眷属、巴武蔵を含める冒険者らを乗せたトラックが件の忘れられたバンカーがある湖へと向かう頃、ある理由でワルキューレの手先となったマリ・ヴァセレートは、そのバンカーに眠るかつての自分の帝国の忘れ物を破壊する為、現地の街へと来ていた。

 

「最悪! こんな配慮も優しもない世界に送るなんて、罰ゲームじゃん!」

 

 集合地である街に入ったマリは、余りにも女性に対する扱いが酷いこの世界に送り込んだ上層部に怒りを覚えていた。

 マリにとっては罰ゲームである。ここに来るまで、何度も強姦に遭い掛けた。街は法も何もかも無い、無法地帯のようだ。支配者であるはずのワルキューレの軍が駐屯していない所為でもあろう。

 当然ながらマリは銃の携帯を許可されていた。銃と言っても自動拳銃のP226だ。最もここは無法地帯であり、取り締まるべき警官も当の昔に全滅してしまい、街の誰もが何処からか流れて来た銃を携帯している様だが。

 幾ら撃ち殺しても何処からともなく出て来る男たちは死を恐れず性欲のまま、不気味な表情を浮かべ、ゾンビの如くマリに向かって突っ込んでくる。

 

『待てよぉ! 女ァ! 女ァァァ!!』

 

「殺しても、殺しても湧いて出て来るなんて…! ゲームじゃないんだから!」

 

 襲い掛かる男たちから逃げる最中、彼女は追って来る男たちを撒こうと更に危険な路地裏へと入ってしまった。この街に来たばかりのマリは碌に地図を渡されておらず、土地勘なんて物は一切ない。

 そんなマリの背後より角材を持った中年男が息を殺しながら近付き、凶器であるその角材を彼女の頭上に振り下ろそうとしていた。

 

 この男、この世界の者ではない。マリと同じく異世界の人間だ。彼女ほど波乱万丈な人生を送ってはいない。全く戦いとは無縁の人生であった。

 五年ほど前、男は精神的な事情で自分の家に十数年以上も引きこもり、ネットから世間を呪っていた。動画サイトにはヘイト動画を投稿し、それなりの注目を集めていたが、投稿している動画の内容故か、団体に訴えられてしまい、我慢できなくなった両親に勘当されてしまう。

 

 家を追い出され、何もかも失った男は、自分の食い扶持を稼ごうと思って就職活動を始めたが、何処も四十代まで引きこもって働かなかった彼を雇う場所は無かった。

 職にも就けなかった男は、生きるために犯罪に手を染めようとしていたが、奇妙な男の甘言に誘われ、この地獄のような世界を自分の理想郷だと思い、彼は言われるがまま訪れた。

 当初、何もかも自分の思い通りになる物だと思っていた男だが、現実は非常であった。そこには理想郷も無かった。自分の思い描いた物など全く存在しない、あるのは暴力と理不尽だけだ。男は後戻りできなくなったところで、騙されたことに気付いたのだ。

 そして、以下に自分が嫌悪していた物に、守られていたこと身を以て知る。

 

 男がその世界に連れて来られた理由は、街の支配権を巡っての抗争の為の兵隊である。何も聞かされず、いきなり凶器を渡された男は、自分を連れて来た男たちに銃で脅され、自分と同じく騙されて連れて来られた者たちと共に敵陣へと突っ込まされた。

 銃か何かを持たされていると読んでいる諸君は思う事だろう。だが、男を初め、他の者たちは銃どころか、そこらの凶器となる物を持たされて突撃させられているのだ。

 男を含めた訳も分からずに連れて来られ、挙句に敵の弾を消耗させるための弾避けにされた者たちは銃弾の雨を浴びて次々と倒れた。中には逃げ出した者が居たが、敵は容赦なく機銃掃射を浴びせて射殺する。味方の陣地に逃げ帰った者も、味方の機銃掃射で射殺されてしまう。

 

 たちまち連れて来られた者たちは強行状態に陥り、逃げ出すか敵陣へと突っ込むが、銃で射殺されるだけだ。

 数十分もすると、敵陣から放たれる機銃掃射の音が止んだ。どうやら、連れて来られた者たちは敵を引き付けるための囮のようだ。運よく生き延びた男を含めた数名は安堵していたが、自分らを弾避けにした者たちは生かしておくはずが無く、射殺し始める。

 男も殺され掛けたが、運よく逃げ出すことに成功した。が、ここは自分の知る由もない世界。右も左も分からず、そればかりか自分を殺すような世界である。

 

 そんな世界で生き延びる方法はただ一つ。

 自分より弱い者、即ち女子供を襲い、全てを奪い取ることである。時には闇討ちを仕掛け、金品を奪った。もはや、前の世界で自分が毛嫌いしていた無法者その物だ。

 このやり方で男は世界に順応して適応し、今日まで生き延びてきたが、それは自分より弱いと思っていたマリを襲ったことで、終わりを迎える。

 

「…やった!」

 

 自分を強姦しようとしていた男たちから逃れ、安心しきっていたマリを持っていた角材で強打した男は、いつものように成功したことに喜びを感じる。

 頭部を強打されたマリが崩れ落ちるように倒れる中、男は彼女の持っている物を奪うべく、物色をしようとしたが、手を伸ばした右手は斬り落とされる。

 

「う、うわぁぁぁ!?」

 

 右手を斬り落とされた男は絶叫し、切り口から滝の如く溢れ出る流血を抑えようとするが、続けざまに振るわれた短剣で喉を切り裂かれ、完全に絶命した。

 

「ほんとこの世界、マジで最悪」

 

 男を殺したナイフを仕舞ったマリは角材で叩かれた後頭部を抑えつつ、集合場所とされる冒険者ギルドへと向かった。

 

「女だ! 一人だぜぇ!」

 

「わざわざ犯してくださいってかぁ? お望み通りにしてやっぜ!」

 

 路地裏を出れば、未だマリを狙って来る男たちが居たが、マントを脱いで古めかしい甲冑、それも十字軍の騎士のような恰好を晒した彼女は、腰に差し込んであるバスタードソードを抜き、背後より襲い掛かる男を両断した。

 

「な、なんだってんだ!?」

 

「ふざけやがって! 死姦してやらぁ!!」

 

「少し疲れるけど、突破していくしか無さそうね」

 

 一人を真っ二つに切り裂いても怯まずに数で突っ込んでくる男たちを殺しつつ、マリは殺しながら冒険者ギルドへと向かった。

 

 

 

 数十分後、マリは忘れられたバンカーへと向かう一団の集合地である冒険者ギルドへと辿り着いた。

 

「な、なんだあの女ぁ! 血塗れだぞぉ!?」

 

 返り血塗れの女剣士もとい、女騎士が入って来たことに、冒険者ギルドに居る冒険者らは驚きの声を上げる。当然の反応であろう。だが、慣れ切っているのか、数名は何の反応も示さない。

 忘れられたバンカーへ向かう一団を率いるリーダーらしき男もまた慣れているのか、名簿を見てマリの存在を確認する。

 

「どうやら、揃ったみたいだな。では、行くぞ」

 

「は…? 着いたばっかりなんですけど…!」

 

 名簿を机に置けば、リーダーはこれから忘れられたバンカーへ向かうと一同に告げる。これにマリが息を切らしながら、少しは休ませてくれないのかと文句を言う。

 

「こっちはレイプ魔共に襲われながらようやくここまで来れたのに、今から出発ってどういう事よ?」

 

「はぁ? 遅れた癖に文句言ってんじゃねぇよ。これだから女は嫌なんだよ。俺らの世界に入ってくんなっての」

 

 膝から崩れ落ち、得物のバスタードソード杖代わりにして何とか立っている疲弊して文句を言うマリに向け、忘れられたバンカーの探索グループに参加している冒険者、セゴー・アランドは彼女を見下しながら遅れた方が悪いと告げる。

 確かに遅れたマリが悪いだろうが、彼女の為に安全なルートや案内人、送迎車を用意しなかった冒険者ギルド側にも問題がある。

 だが、ここは力と勝利が全ての世界。底辺である力なき女に、そこまでするほど男たちは優しくは無い。

 その所為で出生率が下がり、肝心の新たな生命を生んでくれる女たちがワルキューレの勢力圏内に逃げてしまい、挙句に兵士となって殺しに来ているのだが。

 

 セゴーが放った発言に気にしないマリだが、大勢の襲い掛かる男たちを殺しながらようやく来た彼女は我慢できず、思わず自動拳銃を抜いて発砲してしまう。素早く引き抜き、安全装置をコンマ単位で外して発砲したが、マリが疲れている所為か外した。

 

「ほ、ほへっ!?」

 

「ちっ、外した!」

 

 スレスレで弾が頬を過った程度になったことにマリが苛立つが、セゴーを尻もちを着かせ、怯えさせて失禁までさせることに成功する。

 

「な、なんて女だ!?」

 

(チャカ)を持ってるぞ!」

 

「おいおい、問題起こすなよ。ヒステリー女」

 

 マリが行った感情的な行動に何名かは警戒していたが、少数の者は呆れていた。その中で一際危険なオーラを放つ冒険者、メンへ・ランは自分の手斧を手入れしながらマリを注意した。

 

「そうだぞ、殺し合いはこのバンカーの地下奥深くにある物を見付けてからにしろ。では、四十秒で支度をしろ。これより目的地へと出発する。遅れた者は置いて行くぞ」

 

 リーダーもメンへと共に注意し、これから出発すると告げて外へ出た。このリーダーの指示に応じ、冒険者らは目的地へ向かう車両がある裏口に出て行く。セゴーは遅れる訳には行かないと思い、着替えることなく後に続いて外へ出る。

 

「もう…! 本当に最悪」

 

 休憩する暇もなく、マリは拳銃を仕舞い、息を切らしながら一同の後に続いた。




なんか短い気がするが、キリが良いので投稿~。

次からは募集キャラを登場させようかと思います。


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湿地帯

名前:テック・リ・ア・シックザール(偽名はリア)
性別:女性
年齢:20歳
所属:フリー
武器:スパイクシールド、双剣
概要:様々な場所を転々とするフリーダムな女性。今回のバンカーへの探索は、彼女がふらりと立ち寄った場所で話を聞いたのがきっかけである。
キャラ提供はリン・オルタナティブさん

キナ
血塗れでぶかぶかの一級品冒険者装具を身に着けた謎の少女。
ある目的の為、忘れられたバンカーへと向かおうとしている。一級品な装備をしているが、真面に扱えていない。
五十年前の百合帝国統治時代で作られた兵隊のぬいぐるみを大事にしている。


 忘れられたバンカーがある湖の近くに位置する湿地帯まで来た武蔵を始めとした冒険者らを乗せたトラックだが、運転手は村の近くは危険だと判断してか、そこでトラックを止めた。

 

「おい、なんでここに止める? 村までは後もう少しだぞ!」

 

「もうわしはここまでじゃ! こっから先は、得体の知れん化け物が出ると言う噂がある! 後はお前らで何とかせい! 速ぅ降りィ! 降りんと、連れて帰るかんね!」

 

 荷台の冒険者らが文句を言う中、トラックの運転手が降りろと怒鳴り、彼らはその気迫に圧されてトラックの荷台より続々と降りた。

 

「そんじゃ、わしはここで! それと迎えに来んからね! 後は自分の足で帰ってちょ!」

 

 全員が降りたのを確認した運転手は即座にトラックをバックさせ、一目散に湿地帯より脱出しようとする。

 

「おい! 何をそんなに怯えている!? 何か出るのか!?」

 

「んなもん、見りゃあ分かるとね! 命が欲しくば、この湿地帯からずらかるがとよ!」

 

「あの様子だと、この湿地帯…何か出るな」

 

 理由を問う武蔵の言葉に、運転手は去り際に命が欲しければ湿地帯より逃げろと返し、元来た道を戻って行った。あの運転手の様子からして、土地勘の無い武蔵でも、この湿地帯は何かが出ると察した。

 他の冒険者らも武蔵と同様に余所者であったらしく、各々が得物に手を伸ばし、周辺を警戒している。武蔵も周囲に目を光らせ、他の冒険者同様に警戒する。

 

「ん? まだ片付けていないのか。五十年前の死体が土左衛門(どざえもん)になっちまってるぞ」

 

 周辺の警戒を他の冒険者に任せ、武蔵は自分の足に当たった死体に触れ、腐敗具合で五十年前の戦争で死んだ兵士と断定する。服装は水を吸って変色していたが、濃い灰色であることが分かった。

 

「ドイツ軍の兵士な、訳が無い。性別は女。百合帝国の兵隊って所か。向こうにも迷彩ポンチョを羽織った奴。みんなうつ伏せで射殺されてる。五十年前、敵軍から逃げている最中に、背中を一方的に撃たれたと見えるな」

 

「どうやらその様だな。でっ、なんで運転手があんなに慌てて逃げるんだよ?」

 

「俺もそれを考えていた所だ。ここの土左衛門が襲ってきたりな」

 

「はっ?」

 

 他にも迷彩ポンチョを羽織っている水死体、同じ服装の死体を見て、五十年前に敗走中に敵軍から後ろから撃たれて射殺されたと武蔵は断定した。

 だが、五十年前の水死体で運転手が一目散に逃げ出した理由が分からない。ここで武蔵はそこら中にある水死体が襲ってくると考えたが、動いた、あるいは動かされた形跡が無いので、無いと断定する。

 

「クソっ、気味が悪過ぎる! あの運ちゃんの言う通り、俺は降りるぜ! 後はお前らでやんな!」

 

「お、おい! 迂闊に動くんじゃあない! 何か襲ってくるかもしれんのだぞ!」

 

「だからこそだろ! お前らは勝手にやって…ぎゃっ!」

 

 一人が余りの気味の悪さにバンカーへ向かうのを止め、途中で帰ろうとして離れ始めた。一人がそれを呼び止めるが、彼は聞く耳を持たずに勝手に集団の中を離れる。

 そんな集団より逸れた一人の冒険者に、湿地帯の茂みに潜む何かがその冒険者を襲い、鋭利な爪でズタズタにする。切り裂かれた冒険者は悲鳴を上げ、助けを乞い始める。

 

「ギャァァァ! た、助けてくれぇぇぇ!!」

 

「待っていろ! 今すぐ!」

 

「待ってぃ! 奴は既に死んだも同然だ!」

 

「だ、だが!」

 

「それよりお互いの死角を補い、襲撃に備えろ! どうやらあの運ちゃんは、こいつ等を怖がっていたようだぜ!」

 

 惨殺されようとする仲間を助けに行こうとした冒険者に武蔵は無慈悲に見捨てるように告げ、襲撃に備えて互いの死角を補うように怒号を飛ばした。

 この残酷な武蔵の指示に、場慣れしている冒険者らは互いの死角をカバーし合い、敵の襲撃に備えた。

 

「っ!? 来たぁ!!」

 

 数秒後、集団の中を離れた冒険者を殺した何かの集団が冒険者の集団に襲い掛かった。一撃目を盾で防御し、即座に槍で反撃して襲ってきた何かを倒す。倒したのは、冒険者が知る種類の怪物であった。

 

「こ、こいつは…!?」

 

「集中しろ! 敵はまだ来る!!」

 

 その怪物は青い肌の半魚人であり、両手には鋭利な爪を生やしていた。これを見た冒険者らは驚くが、武蔵に気を抜くなと言われ、戦闘態勢を維持する。

 注意した武蔵は背中の日本刀をようやく抜き、続々と襲い掛かる半魚人を斬り続けるが、背後から迫る半魚人に気付かず、背中を貫かれた。

 

「スマンな、復活して」

 

 だが、武蔵は何度でも復活する。

 武蔵を貫いたと思っていた半魚人は、ワームホールより出現した武蔵に落ちていた赤錆びたMG42機関銃で殴られた。直ぐに武蔵は死んだ自分より工事用ヘルメットを回収して被り、驚愕する半魚人らに応戦した。

 

「ん、誰だ?」

 

 続々と襲い掛かる半魚人らに対処する中、武蔵を含める冒険者らに救援が現れた。

 救援に現れた人物は小柄な女性で、茶色のローブを羽織って太陽から肌を守っており、両手には短い片手剣を持ち、左腕にはスパイクシールドを何故か填めていた。

 そんな救援者は冒険者らを襲う半魚人らを慣れた手つきで切り裂いていく。時には防御にも打撃として使えるスパイクシールドで殴り、次々と半魚人らを倒していった。

 

「半魚人共が逃げるぞ!」

 

「深追いはするな! 今のうちに、この湿地帯より移動だ!」

 

 突如となく現れた救援のおかげで、半魚人らを撃退することが出来た。これに武蔵は追撃を仕掛けないように指示を出し、湿地帯から村の近くまで移動する。

 

「この辺なら良いだろう。お前ら、あの土左衛門共を知っているようだが?」

 

 安全な所まで来れば、武蔵は半魚人を見て驚いた冒険者に訳を問う。

 

「あぁ、俺たちの世界に居るドラウナーって水際に出て来る化け物だ。捨てられた奴が大繁殖でもしたのか?」

 

「こんな世界に別世界の怪物ね。で、あんたは何者だ?」

 

 冒険者の話によれば、あの半魚人の集団はドラウナーと言う水際によく出没する怪物なようだ。何故この世界に居ることは別とし、武蔵は救援車に何者かと問い詰める。これに冒険者らを助けた小柄で独特な戦い方をする女冒険者は、自己紹介を始めた。

 

「私、リア。フリーの冒険者。風の噂でここのバンカーの事を聞いて、来ちゃった」

 

「そんな理由で、こんな地獄がマシとも思える世界に来たのか。助けてくれたことは礼を言おう。だが、今すぐに元の世界へ帰れ。ここはあんたみたいな冒険好きが来て良い所じゃない。そのバンカーにあるのは、宝ではなく、危険な兵器かもしれないぞ?」

 

 リアと呼ばれる冒険者に武蔵は礼を言った後、純粋な彼女の身を案じてか、あのバンカーにある物は宝ではなく兵器かもしれないと告げ、危険過ぎるこの世界から元の世界へ帰るように諭した。これに少し沈黙していたリア、本名テック・リ・ア・シックザールはそれでも行くと告げる。

 

「ありがとう。でも、冒険者らがあんなに集まって探してる物って気になるじゃん。気遣ってくれるのはありがたいけど、私は行ってみたい。てか絶対に行く。勝手についていくから、気にしなくて良いよ」

 

「フン、肝っ玉のデカい姉ちゃんだな。まぁ良い、自分で何とかしろ。恩は返さんからな。お前たちも戻るなら今の内だぞ?」

 

 リアの決意は固く、勝手についていくから気にしないようにと武蔵に告げれば、彼は何を言っても無駄だと判断した。それから他の冒険者らにも帰るかどうかを問えば、大部分がトラックが戻った方向と同じ方へ行った。残ったのは武蔵とリア、三名の冒険者を含めた五人である。

 

「正しい判断だ。さて、運ちゃんが俺たちをこんな沼地に降ろした理由は…? なるほど、地元の奴らか」

 

 大部分の判断を責めず、正しい判断と表した武蔵は、取り出した双眼鏡を覗き、そこに映った光景で運転手が自分らを湿地帯に降ろした理由を知った。

 村へと続く街道には、武装した集団が闊歩していた。殆どが異世界より持ち込まれた武器などで武装し、忘れられたバンカーがある村へと通ろうとする車両を強制的に止めさせ、身包みを剥ごうとしている。

 

「地元の連中は恐ろしいなぁ。さて、俺たちは徒歩で向かうとしよう」

 

「うん」

 

 ドラウナーとの集団戦でやや疲弊しているので、武蔵等は街道を外れて村へと向かうことにした。武蔵等が去った後、村へ向かう他所や他の冒険者と傭兵らが武装集団と交戦を開始した。

 

 

 

「はぁ? 待ってよ!」

 

 一方、バンカーへと向かう現地冒険者の一団の集合場所にようやく辿り着いたマリは、ちょっと休んだだけで置いて行かれた。これに怒り、呼び止めようとするが、運転手や荷台に乗る冒険者らは聞きもせず、そのまま目的地まで走って行った。

 

「あいつ等、どういう教育を受けてんのよ」

 

 弱者に全く優しくも無い世界なのだが、今のマリには口にせずにいられなかった。そんな苛立った彼女に、声を掛ける人物が現れた。

 

「あ、あの…」

 

「はい!?」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 苛立ったマリは怒鳴り散らすように声がした方を見れば、一級品の冒険者装具を身に着けた小柄な少女がそこに居た。愛らしい外見であり、当たり散らすように当たったことをマリは後悔する。

 だが、この少女はかなり怪しい。身の丈に合わない装備、白い部分は血が滲んでいて、しかもサイズが合っていない。武器である剣を収めた鞘を吊るす位置は素人丸出し。これではいざと言う時に剣が抜けない。そればかりか少女には両手剣を振るえるほどの筋力が無いだろう。おまけに目の下に隈が見え、何日も寝ていないようだ。

 明らかに少女が前の着用者を殺害し、奪い取って来ている感が丸出しだ。そんな怪し過ぎる少女をマリはあろうことか何の疑いもせず、相手の右手を両手で掴んで謝罪した。

 

「ごめん、当たり散らしちゃって。貴方も冒険者?」

 

「えっと、はい! 冒険者です! キナって言います!」

 

 追い返されるかと思っていた少女だが、マリの予想外過ぎる行動にやや困惑しながらも自己紹介する。

 

「私はマリ。それじゃあ、あれで行きましょ」

 

 マリも自分の名を明かした後、バンカーへと向かう移動手段を見付けた。それは街のマフィアのボスが送迎の際に乗る黒いリムジンであった。偶然にマリの視線に入ってしまった。このマフィアのボスと護衛は死んだも同然だ。

 

「あれ、別の…」

 

「良いから! 行くわよ!」

 

 少女はマリが指差したリムジンに、駄目じゃないかと言いたげであったが、彼女は有無を言わさずにそこへ少女の手を引っ張って向かう。

 

「おっ? 何だテメェ!? 何処の鉄砲玉だ!?」

 

 当然、護衛に拳銃を突き付けられたが、マリは時間を止め、ホルスターより抜いたP226自動拳銃で護衛全てを撃ち、全員分を撃ったところで時間を動かした。時間が動いた後、ボスの護衛たちは訳も分からず、頭部を撃ち抜かれて死亡する。同時に外に居た護衛全員が死んだのだ。直ぐにリムジンの運転手がドアを開けて出て、懐から拳銃を取り出そうとする。

 

「なっ!? お、お前ら! なんで全員が倒れてんだ!?」

 

 全員が同時に倒れたことに運転手の男が動揺を覚える中、マリは車を貸せと告げる。

 

「その車、貸して」

 

「何だとこのアマ!? てめぇ、一体何して、あぁん!? お母ちゃーん!!」

 

「おっさん、運転して」

 

 当然ながら拒否される。そんな男にマリは下半身をバスタードソードで切り裂き、絶命させてから後部座席にいるマフィアのボスに運転しろと命令する。一瞬で自分の部下たちを文字通り全滅させたマリにボスは驚愕しつつもその実力を評価し、自分の組織に入れようと勧誘した。

 

「お、俺の組の連中を…! ぶ、部下の非礼を詫びるぜ。どうだい、俺の組に入らねぇ…ばっ!?」

 

「話聞いてた? 運転しろよおっさん」

 

「て、テメェ…! この俺を誰だと思ってんだァ? 俺は泣く子も黙る…ごはっ!?」

 

「良いから運転しろよおっさん。殺すぞ?」

 

 運転しろと命令したのに、勧誘してこようとするボスにマリはバスタードソードの柄を顔面に叩き込み、再度命令した。これにボスは怒って懐よりマカロフ自動拳銃を取り出し、発砲しようとしたが、もう一度顔面に柄を叩き込まれ、鼻を潰された。相手を恐喝するマリは声色を変えて命令する。

 

「ひょ、ひょへ~! 助けてくれぇ~!!」

 

 三度目は殺されると判断したボスはリムジンから飛び出し、マリから逃げようとした。だが、マリは時を止める術を使える。ボスがリムジンから出ようとしている所を戻すような位置につけ、更に運転席に向かわせる。

 

「ぎょ、ぎょえぇぇぇ!?」

 

 外へ出たはずなのに運転席に居ることに驚愕するボスはもう一度外へ出たが、またも時を止める術を使われ、運転席へと戻された。

 

「運転して」

 

「お、俺じゃなくて僕、運転はそこの…」

 

「関係ない。行って」

 

「ひゃ、ひゃいぃぃぃ!!」

 

 この女から逃げられない。そう判断したボスは運転は普段していないと言うが、マリに急かされてハンドルを握った。

 

「えっ…?」

 

「ほら、乗って」

 

 優しかった大人の女性が恐ろしいことをしているのを見た少女は震えたが、マリはそんな彼女に普通に話しかけ、自分の隣に座るようにシートを叩いた。これに応じて少女が自分の隣に座ったのを確認したマリは、ボスにリムジンを出すように命令する。

 

「出して」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 命の危機が迫っているために少女よりも怯えるボスはマリの命令に応じ、彼女の指示通りにバンカーへの方向へリムジンを走らせた。

 ボスは自分のアジトへ向かおうとしたが、マリはそれを予想しており、ハンドルを別方向へ切ろうとしたところで時間を止め、元の位置に修正してから時間を動かし、逃走を防止する。

 

「逃げたらどうなるか、分かってる?」

 

 何をやっても逃げられないことを悟ったボスは諦め、マリの指示に従事することにした。

 

「奴のリムジンだ! 焼き殺せ!!」

 

 暫く殺伐とした街の中を走っていれば、バイクに乗った集団、またの名を暴走族はボスのリムジンを見るなりバイクのエンジンを掛け、火炎瓶の紐に点火してから襲い掛かる。

 どうやらボスに恨みを持つ暴走族のようだ。それをボスは後部座席に座るマリに報告する。

 

「あ、あの! 火炎瓶を持った暴走族が…!」

 

「アクセル全開。突破しなさいよ」

 

「そ、それをやったら…」

 

「死にたいの?」

 

「うひゃぁぁぁ! 死にたくないですぅ!!」

 

 ボスの報告に対し、マリは殺気を込めて突破しろと命じた。その殺気に当てられたボスはアクセルを強く踏み、火炎瓶を投げ付けるために接近してくる暴走族に突撃した。急に速度を上げたリムジンに暴走族等は対処できず、バイクごと撥ね飛ばされる。

 

「は、速過ぎる!? のわぁぁぁ!!」

 

「わっ!? わぁぁぁ!!」

 

 一人が撥ね飛ばされれば、もう一人は右手に持っていた火炎瓶を自分に落としてしまい、火達磨となって転倒した。それからも続々と暴走族を撥ね続けたが、リムジンは特注で装甲車以上の防御力を誇り、人と単車を撥ねても血塗れになる程度であった。

 それを運転するボスは余りの恐ろしさに失禁していたが、マリは表情一つ変えず、ただボスを睨み付けている。少女も怯えていたが、マリが優しく抱擁して安心感させる。

 数十人と数十代を撥ねたリムジンは少しへこんだものの、走行には支障はない。そのまま街を出て、忘れられたバンカーがある村へと目指した。




DIO「歩道が広いではないか…行け」

実はマリのモデルにした一人の中に、DIOが居るんですよ。


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なにか

名前:キルノートン
性別:男
年齢:不明
所属:闇商人
武器:鎖鎌
概要:死体から持ち物を剥ぎ取って闇市に流す悪党
キャラ提供はケツアゴさん

名前:ジェディ・フレイクス
性別:女

年齢:21歳

所属:帝国再建委員会

武器:鉤爪付きロープ
概要:委員会に雇われた一匹狼の冒険者であり、あらゆるダンジョンを単独で攻略してきた凄腕の女傑。
鉤爪付きロープをあらゆる場所に引っ掛けることによって縦横無尽に飛び回れる体術を会得しており、そのアクロバットな技術を活かして多くの罠を切り抜けてきた。自分の実力には絶対の自信を持っている。
黒髪のボブカット、男勝りでクールな美女であり、白い柔肌と抜群のプロポーションも備えている。
キャラ提供はオリーブドライブさん

名前:シモーナ・ハユハ
性別:女
年齢:17歳
所属:帝国再建委員会
武器:九九式短小銃初期型及び三十年式銃剣。携行弾数は80発。
概要:私物のライフルを携えて参加したイブ人少女で本職はただの狩人。
戦闘スタイルはスコープを付けずに狙撃を行うというもの。しかしながら同じ狙撃スタイルを採る某フィンランド軍狙撃手と比べると狙撃の腕は少し落ちる程度の腕前なので一応チートでは無い筈。
キャラ提供はG-20さん

名前:リンチェ
性別:女
年齢:24
所属:第四帝国
武器:MP28
概要:第四帝国に雇われた元フリーの冒険者。18から戦うそこそこのベテランで腕も立つが、如何せん臆病で小心者なのが玉に瑕。
口では強がりを言い周囲に不安を与えないなどのことはできるが、無理して言っているのがバレッバレな声の震えがあったりする。
キャラ提供はただのおじさんさん

名前:張三李四(ジャンサンリースー)
性別:男
年齢:55歳
所属:冒険者ギルド金等級(アグニカ・カイエル軍)
武器:中国拳法(通背拳)
概要:鬼哭街のようなサイバネ武術家が幅を利かせる世界からの漂流者。
元々黒幇同士の抗争に敗れ行き場を失った後に流れ着いており、本名を捨てて今の名を名乗っている。
サイバネ武術家としての腕っぷしによる暴力で現在の立場にのしあがっているが、環境ゆえボディの本格的なメンテナンスが出来ず、自己整備にて騙し騙し無理をしていたが、この度アグニカ・カイエル軍よりバンカー攻略とその対価(ボディのフルメンテナンス)を呈示されて、依頼を請け負う。
金等級に恥じない暴力の化身になっている。だが、先払いで爆弾を仕込まれていることに気付かない。
キャラ提供はリオンテイルさん

名前:ビッキー・イザヤン
性別:女
年齢:18歳
所属:帝国再建委員会
武器:ナックルダスター、四肢用金属製防具一式(籠手、脛当、甲掛)
概要:容姿は『レッスルエンジェルス サバイバー2』の「十六夜美響」だが、衣装は黒パンツ(?)の尻側をTバック型では なくさせつつ金属製の籠手と脛当と甲掛を追加したような物。身長176センチ。
リップと整髪剤でメイクしているので其れによって20代っぽく見えなくもないが、メイクを落とすと本来の年齢相当にも見える感じとなる。
ついでに、SとMの両方の気質を兼ね備えている。
キャラ提供は俊伯さん

名前:トバルカイン
性別:女
 
年齢:不詳
所属:第四帝国
武器:祝福受けとルーンを刻んだ魔剣ロングソード
。
概要:アーネンエルベと言う研究機関所属の神秘考古学者。
名前の通り先祖に旧約聖書の鍛冶の始祖がいる。容姿は魔道をモノ独特の妖艶な気配を漂わせた眼鏡スーツ姿の男装の麗人。今は冒険者として潜入している。
キャラ提供は黒鷹商業組合さん

名前:メトル・ガラセード
性別:男
年齢:35
所属:冒険者ギルド鉄等級(ヴィンデル軍)
武器:小型ガトリングガン、その他現地人と同等の各種装備品
概要:ヴィンデル軍から派遣された兵士の一人。
性格が不真面目だったため、現地活動の裁量権の大きい戦闘員という名目でこの世界に左遷された。
現地に紛れての活動が主目的だったため、外見上違和感を持たれる装備は持っていない。
簡易ながら身体改造がされており、小型のガトリングガンを普通の突撃銃のように取り廻すことができる。
キャラ提供は秋音色の空さん


「オラぁ! 誰の許可を得てこの世界に来てんだァ!? この余所者共!!」

 

 バンカーのある村へと向かっていた他所のグループの冒険者らは、もう少しの所で街道に検問を敷いた排外主義者たちの集団に足止めされていた。

 冒険者らを乗せるトラックの運転手は現地人であるが、排外主義者からすれば余所者に手を貸す裏切り者である。直ぐに罵声を浴びせて来た。これにトラックの荷台に乗る異世界よりやって来た冒険者らは苛立ちを覚える。

 

「さっきから何騒いでんだ? あいつら」

 

「どうやら、私たちのことが気に入らないようね」

 

「あぁ、災厄が…」

 

 荷台の冒険者の一人、キルノートンが苛立ちながら言えば、黒髪のボブカットの女性冒険者ジュディ・フレイクスが自分らが気に入らないから騒いでると返す。

 この状況にビッキー・イザヤンと言う女性冒険者は顔を赤らめている。これに他の者たちは若干引き気味であった。

 そんなビッキーの顔を見てか、排外主義者は通過条件に荷台の女性冒険者らに性行為を強要する。

 

「ここを通りたきゃな、荷台に乗っている淫乱共とやらせろ! そしたら…」

 

 性行為を強要する排外主義者に対し、これに怒りを覚えてか、シモーナ・ハユハと言う女性冒険者は手にしている九九式短小銃で眉間を撃ち抜いた。構えて安全装置を外してから一秒足らず。何とも素早い狙撃だ。しかもスコープも付いていない。おかけで隣に座っているビッキーが驚いていた。

 

「お、お前…!」

 

「その狙撃、俺じゃなきゃ見逃してたね」

 

 排外主義者らが狙撃されたことに動揺する中、小型ガトリングガンを使う冒険者であるメトル・ガラセードはシモーナの狙撃を褒める。

 一発の銃声が鳴ったところで、排外主義者らは冒険者たちが攻撃した物と判断し、手にしている銃を撃とうとする。

 

「や、やりやがったな!? 死ね…」

 

「喧しいサル共だ。皆殺しにするか」

 

 銃を撃とうとした排外主義者であったが、武術家の張三李四(ジャンサンリースー)に目にも止まらぬ速さで近付かれ、強烈な蹴りで首を跳ね飛ばされる。彼は中国拳法の使い手であり、サイボークである。その名もサイバネ武術家と言う。

 

「こんな奴ら、私一人で!」

 

 小柄な女性冒険者であるリンチェは、戦闘に素人な排外主義者たちなど自分一人で倒せると数名をMP28短機関銃の掃射で射殺した後に言うが、その声は震えていた。

 

「デカい事を言うが、声が震えてるじゃないかい」

 

 それを見抜いたジュディはロープを排外主義者に投げ付けて首に巻き付けた後、指摘しながら鉤爪で腹を裂いて殺害した。背後から来る棍棒による攻撃をバク転で躱し、喉を掻き切る。

 シモーナの方は喋ることなくスコープ無しの小銃で次々と頭を撃ち抜いており、既に十名を狙撃していた。ビッキーはナックルバスターを駆使して一人の排外主義者を殴り殺している。殴り殺していると言えば、張三の方が殺しているが。

 

「所詮は女だ! あんな剣が振り回せるわけがねぇ!!」

 

 トバイルカンと呼ばれる眼鏡スーツの女性冒険者が持つロングソードを見て、三名の排外主義者らはあんな物を振り回せる訳が無いと高を括って襲い掛かるが、それは大きな間違いであり、彼女が軽々しく振るった斬撃で三人纏めて惨殺された。

 

「しょんな!?」

 

「万死に値するぞ、劣等人種(ウンターメッシュ)共」

 

 三名を一振りで惨殺したトバイルカンに、残りの排外主義者たちは彼女らに敵わないと悟り、怯え始める。だが、彼らは排外主義者らを誰一人生かしては帰さない。

 

「オラオラ! これが文明人だぞ! サル共!!」

 

 メトルは手にしている小型ガトリングガンをライフルのように扱い、浮足立って逃げようとする排外主義者らを次々と射殺と言うか、引き裂いていく。あっと言う間に街道は血で真っ赤に染まった。

 

「う、うわぁ~! 助けて!!」

 

 まだ残っている排外主義者らは一目散に逃げ始めたが、全く戦闘に参加していなかったキルノートンの鎖鎌による攻撃を受けて数名が殺害され、後の残りのは他の冒険者らに皆殺しにされた。

 ここまで掛かった時間はわずか五分足らず。四十人は居た排外主義者らは瀕死の一人を残して全てが死体、もしくは原形を留めない死体となっている。

 

「あの排外主義者だっけ…? あいつ等に取って私たちは災厄だったようね」

 

 排外主義者らを壊滅させたところで、ビッキーは彼らに取って自分たちが災厄だと得意げに言う。事実、排外主義者らに取って冒険者たちは災厄であった。何せ異常なまでに一人一人が強いのだ。たかが武器を持って粋がる素人集団の排外主義者たちなど、プロの集団である冒険者たちの敵ではない。

 そんな自分らを五分足らずで壊滅せしめた冒険者らに対し、瀕死の排外主義者は最期の罵声を浴びせる。

 

「こ、このふざけた野郎共が…! テメェら、まさかアニメとか漫画とか言う堕落しきった世界より来た者じゃねぇだろうなぁ…? あんな物を見てる奴らはクズだ、ゴミだ…!」

 

「何言ってんの? こいつ」

 

「死に掛けて幻覚でも見てんだろ」

 

 死に掛けの排外主義者が急に変なことを言って罵声し始めたので、リンチェが何を言っているのかと問えば、メトルは幻覚を見て喋っていると返す。白い目で見る冒険者たちを他所に、排外主義者は尚も自分の思想を永遠と語る。

 

「去勢だ…! いい年齢(とし)こいてアニメや漫画、ゲームなんぞに夢中になる奴は去勢すべきだ…! 特に美少女だとかそういうのが出るアニメや漫画、ゲーム、グッズを見ている奴はな…! それを見て興奮する奴は異常って証拠だ…! そいつ等は人間じゃねぇ…! 社会から排除しなくちゃ…」

 

「うるせぇぞ、速く死ねカス。さっきから何言ってんだ?」

 

 そんな永遠と語る死に掛けの排外主義者に苛立ってか、キルノートンは頭を蹴飛ばして完全にとどめを刺した。それから罵倒し、売れる物が無いかポケットを漁った。だが、この排外主義者は大したものは持っていない。

 

「碌な物も持ってねぇな。ゴミめ」

 

 完全に息絶えた排外主義者に対し、キルノートンは八つ当たりの蹴りをお見舞いする。今度の蹴りはとどめの一撃より強力であり、完全に頭が潰されていた。

 

「ゴミ掃除は終わったな? 行くぞ」

 

 それから冒険者らはトラックに乗り込み、村を目指した。

 

 

 

「ここが…件の村か?」

 

 冒険者たちが排外主義者らと交戦を終える頃、武蔵たちは先に村へと到着していた。

 村は既に壊滅しており、大量の村人の死体が積まれている。やったのは先にバンカーへと向かった武装勢力であるが、件の虐殺を行った者たちは誰一人残っていない。様子を見に行って、武装勢力を全滅させた“なにか”に殺されたようだ。

 

「うわぁ…! 何これ…!?」

 

「あんまり見るな。しかし胸糞の悪いことをするなぁ、先客の奴らは。女子供どころか、赤ん坊まで殺してやがる。どうやら、突撃銃や機関銃で皆殺しにしたようだな」

 

 リアが積まれた大量の死体を見た衝撃で思わず口を覆う中、武蔵は見ないように注意して、地面に転がっている大量の空薬莢で、銃などで皆殺しにしたと判断する。

 

「あ、あれじゃないのか? バンカーに向かう道って…!」

 

 異常すぎる虐殺現場について来た他の冒険者らも思わずショックを受ける中、一人が湖へと続く門を見付けた。当然、先客らがそこを通ったので開いていたが、不気味な雰囲気が伝わって来る。

 

「この不気味さ、あれだな。先客の奴ら、向こうに行ったきり、帰って来ないようだ。どうする? 今なら引き返せるぞ?」

 

 その不気味さで直ぐに武蔵はあの門の先が、バンカーへと続く道であると分かった。幾らゲッター線の加護があるとはいえ、その武蔵でさえ緊張させるほどの不気味さ。これに武蔵はリアを含める他の冒険者らに帰るように告げる。

 

「お、俺たちはもう限界だ…! あんたの言う通り、引き返すよ」

 

「あぁ、それが賢明な判断だ。お前らにはまだ早過ぎる」

 

 ドラウナーとは比べ物にならない物が待ち受けているのだ。ここまで勇気をもってついて来た冒険者らは、このただならぬ不気味さに折れ、リアを除く四人が帰ってしまった。

 

「それで、なんでお前は残ってる? 比べ物にならない危険が待ち受けているんだぞ?」

 

「言ったでしょ? 最後まで行くって」

 

「そう言えば、頑固者だったな。勝手にしろ。それに、他の連中もご到着のようだ」

 

 額に汗を浸らせるリアに帰るように論す武蔵だが、彼女の頑固さに呆れる。それに他の冒険者たちも今し方この村に到着した。

 

「なんだ、村人が皆殺しにされてるぞ? やったのはお前らか?」

 

 着いたのは排外主義者らを皆殺しにした冒険者たちと、マリが合流するはずであったセゴーとメンへが属するグループであった。

 

「おい、村人共を皆殺しにしたのは…お前らか?」

 

「そんな訳ないだろ。ミニガンがありゃあ別だが、そんな大層な物は持っちゃいないぜ。それにこの姉ちゃんは別だ」

 

 セゴー等のグループのリーダーが村人たちを皆殺しにしたのはお前かのと問いに対し、武蔵は怒りを覚えて怒鳴り返そうとしたが、冷静になって自分じゃないとハッキリと告げた。ついでにリアは別だと付け加えて。

 これにリーダーは納得し、何処のグループかと武蔵に問い詰める。どうやら、街より来た者たちはバンカーへ向かのが自分たちだけだと思っているようだ。

 

「そうか。見ない顔だな、何処のグループだ? 俺たちだけだと思っていたが」

 

「俺だけさ。みんなあの門から溢れ出る尋常じゃねぇ雰囲気にやられて帰っちまった。この隣の女は勝手について来た物好きだ。そこの血塗れの連中は?」

 

 この問いに武蔵はみんな帰って自分だけだと答え、またもリアを勝手について来た奴だと言った。次に武蔵はジュディ等のグループは何者かと問う。これにリーダーは血塗れの彼らを見て、知らないと返した。

 

「知らんな。あのバンカーの噂を聞き付けた他のグループだ。やけに殺気立ってるが」

 

 リーダーは殺気だっていることに気付き、臨戦態勢を取っていたが、ジュディ等は排外主義者等を殺してきたばかりで疲れているのか、敵意はない事を張三が代表して告げる。

 

「こちらに敵意は無い。この返り血は道を塞いでいた馬鹿共を皆殺しにした時に着いた血だ。探索は、多いことに越したことは無い。そうだろ?」

 

「確かに一理あるな」

 

「物騒だがな。では、バンカーへ行くとしようか」

 

 張三の言葉にリーダーが納得すれば、武蔵も物騒であるが納得し、代表して門の先にあるバンカーへと向かった。その後を合流した冒険者らも続く。

 

「つ、着きました…」

 

「え、着いた? ありがと」

 

 一方、武蔵等がバンカーへと向かった頃、マリとキナも村へ到着した。彼女らを乗せるリムジンを運転していたボスは既に限界であり、血反吐を吐きながら着いた事を報告すれば、マリは平気で礼を言いながら車を降りた。

 

「ど、どうも…いたしまして…」

 

 これにボスは狂った表情を浮かべながら返礼して息絶える。ここに至るまでリムジンはボロボロであり、幾ら防弾仕様とは言えど、貫通力が高い徹甲弾は防げなかったようだ。対してマリとキナは全くの無傷である。それはマリがキナと自分の周りにだけ魔法防壁を張っていた。

 こうして、他人に理不尽を敷いていたマフィアのボスは、自分を遥かに上回る理不尽に晒されて息絶えた。自業自得とはいえ、マリのボスに対する仕打ちは非道に等しい。当の彼女は全くボスに対する罪悪感など無かったが。

 マリはボスが死んだことも気にも留めず、村へとキナの手を引っ張りながら向かう。彼女にとってマフィアのボスなど、利用するか殺す以外に価値が無いのだ。

 

「あ! あいつ等! ちょっとここで待っててね」

 

 村へと入れば、丁度その時に門の向こう側へと向かう自分を置いて行ったグループを見付けた。ようやく辿り着いたのに、無慈悲にも置いて行く彼らに怒りを隠せないマリは、キナに待つように言ってから追い掛ける。

 

「あっ、あいつは…? いっ!?」

 

 これに気付いたセゴーは直ぐに振り向き、追って来るのが自分を殺そうとしたマリであることに気付き、思わず武器を手に取りそうになったが、武器を振るよりも先に顔面を殴られた。

 

「良くも置いて行ってくれたわね…!」

 

「あの女、追ってきたのかよ。しつこい女は嫌われるよぉ」

 

 セゴーを殴り飛ばした後、武蔵やジュディと合流したグループらにマリは怒りをぶつける中、メンへは全く悪気も無くしつこいと返した。

 

「この女、知り合いか?」

 

「そんな訳ねぇだろ! なんで俺を殴るんだ!?」

 

「一体何が起こってんの!?」

 

「ち、これ以上は殺し合うな。探索に差し支える」

 

 キルノートンはマリを知っているのかと問えば、セゴーはなぜ自分を殴るのかと問い詰める。リアは何が何だか分からなくなる。

 この問いにマリは答えることなく拳銃を抜き、一人を殺害しようとしたが、リーダーは一人でも人数が多いと言って殺し合いを止めさせた。その判断を武蔵は褒める。

 

「まぁ、一人でも多い方が良いな。そこのお嬢ちゃんは帰んな!」

 

「えっ? 私も冒険者…」

 

 勝手について来たキナに気付いた武蔵は、彼女に帰るように告げる。好奇心旺盛で勝手について来たリアとは違い、彼女はまだ十四歳だ。そんな彼女を危険すぎるバンカー周辺に来させるのは不味い。

 

「餓鬼が来て良い場所じゃない! いい加減に…」

 

 無理にでも帰らそうとする武蔵に対し、リアはキナを守ると告げた。

 

「まぁ、おじさん。あの子は私が守るから。それで良いでしょ?」

 

「ぬ? そうかい、それなら助かるな。良かったな、お嬢ちゃん!」

 

 これに武蔵はリアがキナを守るため、勝手に前に出ることは無いと思ってそれを許した。上手く収まったところで、一同はあのバンカーへと向かう。

 

「さぁ、行こうか。人数は多い方が良い」

 

 リーダーの指示で一同は門を通り抜け、バンカーがある湖へと入った。

 先の死臭に溢れた村とは違い、ここはそれを遥かに上回るほどの死で満ち溢れていた。気味の悪さも尋常ではない。少しでも気を抜けば、恐怖心に囚われ、いずれはパニックに陥るだろう。

 

「ここも死体だらけだ…! どうやら先客の奴らは、みんな死んじまったようだ」

 

 先を行く武蔵は道端に転がるゲリラの死体、それも武装勢力の死体を見付け、彼らが先客であることを見抜いた。

 

「おまけに抵抗した痕跡がある。空薬莢もまだ暖かい」

 

 大量に転がっている空薬莢を一つ拾い上げ、熱を持っている事から撃ってからまだ時間はそんなに経っていないと分析する。キルノートンはその死体を漁り、金目の物を取っていた。武蔵はこれに気付いており、古めかしい軍服の死体に手を付けようとしたキルノートンに触るなと怒鳴る。

 

「触るんじゃねぇ! そこの大戦中の仏さんの死体はな! おかしい、この世界じゃ戦争が終わってから五十年は経っている…! なのに、死んでからそんなに経っちゃいねぇ…! 不用意に触れるなよ!!」

 

 武蔵に怒鳴られたことで、キルノートンは舌打ちして死体より離れる。その武蔵は五十年ほど前の死体がどれも腐敗していないことに驚き、何かあるかと思って全員に触れないように告げる。物珍しさに五十年も前だと言うのに、腐敗が進んでいない死体に触れようとした者たちは武蔵の警告に従い、伸ばしていた手を引っ込める。

 

「(ここじゃ五十年? 二百年じゃないの?)」

 

 一方でマリはかつての自分の帝国の軍隊、神聖百合帝国軍の将兵の死体に触れ、この世界では次元戦争が五十年前のことだと言うことに驚く。自分の記憶では二百年以上前の戦争なのだ。だが、世界によって時間の流れが違うこともあるので、マリは今いる世界の時間がかなりズレていると思って無理にでも納得する。

 

「ん…? 全員、警戒…」

 

 そんな時に、武装集団を全滅させた“なにか”が侵入者である武蔵等を発見し、彼らの目にも止まらぬ速さで襲い掛かった。

 なにかの微かな殺気でその存在に気付いた武蔵は警戒を呼び掛けたが、既に鋭利な刃で首を切断された後であった。切断された武蔵の首が宙を舞う中、一同は自分らの前で姿を晒したなにかに注目し、戦闘態勢を取る。

 

「こいつは…! 生体兵器か!?」

 

 サイボーグである張三はなにかの正体を見破る。

 その姿は半裸のやせ細ったスキンヘッドの男であり、バイザーらしき物を目元に埋め込んでいる。右手には武蔵の首を切断した鋭利な短剣が握られていた。




排外主義者が変なこと言ってごめんね。


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バンカーへ

前回のあらすじ

「武蔵がまた死んだ! この人でなし!」

生体兵器
本編に登場した神聖百合帝国が末期に製作した仮名666と同一系統と思われる死体を使った生体兵器。
イヴ人の死体?を使った仮名666とは違い、こちらは成人男性の死体を使っている。主な改造は頭部と身体内部。内部に加速装置でも内蔵されているのか、異常なまでに速い。それと時間停止系攻撃を無効化する能力を秘めている。
仮名666より先に製作された生体兵器であるらしく、最初に製作された生体兵器なので、仮名111と呼称する。
命令かどうかは不明だが、忘れ物が眠るバンカーを守っている。
武器は日本刀の如く切れ味抜群の短剣一本。服装はズボン。半裸でやせ細った裸足。

ちょっと不快になる台詞があるかも…。


 遂に正体を現したなにかこと生体兵器は、湖のバンカーを目指そうとする冒険者らを敵対者と見なし、右手に持った短剣を構え、目に留まらぬ速さで斬りかかる。

 

「なんて速さだ! 前任者の俺が死んだことにも気付かないなんて!」

 

「あ、あんた! 死んだんじゃ!?」

 

 それと同時に武蔵がワームホールより復活し、刎ね飛ばされた自分の首よりヘルメットを回収してから驚く。無論、武蔵が復活することを知らない者たちは驚いていた。

 

「ぐぇっ!?」

 

「な、なんだこいつ!?」

 

 生体兵器は早速一人を切り裂いて殺害し、もう一人目を血塗れの短剣で殺害しようとする。だが、マリの時間止めの攻撃を受けて動きを止められてしまう。

 

「こういう厄介な奴は、速く倒さなきゃ」

 

 時間を止めたマリは、この技を使うほどの脅威である生体兵器を速めに排除するために右手に握られたP226自動拳銃で頭を撃ち抜きに向かったが、相手はそれを無効化する機能を持っていたらしく、標的を彼女に切り替える。

 

「嘘…!?」

 

 自分以外は動けないはず。

 最長で一分は止められる時止め攻撃を敢行したマリは、生体兵器がそれを無効化した事に驚き、そのまま喉を裂かれて絶命する。彼女が死んだことで、時間は再び動き出し、いつの間にかマリが死んでいることに一同は驚き、思わず逃げ出したくなる。

 

「あ、あの女! いきなり死んだぞ!?」

 

「クソっ、何がどうなってやがる!?」

 

 混乱する一同を他所に、生体兵器は排除するために光の速さの如く接近し、三人目を殺害する。三人目を殺されたところで、シモーナは九九式短小銃で狙いを定めようとするが、生体兵器はそれが分かっているかの如く躱して次なる標的をシモーナに定めた。

 

「っ!?」

 

「危ない!」

 

 リンチェは生体兵器が持つ鋭利な短刀がシモーナに触れる前にMP28短機関銃を撃ち込み、接近を阻止した。そこからメトルの小型ガトリングガン、シモーナの連続射撃も加わるが、生体兵器は銃弾が見えているかの如く全て躱し、何処かに身を隠す。

 

「はぁ! あいつなんなの!?」

 

「お、お前が何だ!? 喉を掻き切られて死んだんじゃないのか!?」

 

 死んだはずなのに、生き返ったマリに武蔵を除く一同は驚く。それを見ていたセゴーは、マリと武蔵を囮にして自分たちだけバンカーへ向かえば良いと言い始めた。

 

「なぁ、あの二人不死身だし、俺たちだけバンカーへ行けば良いんじゃないか!?」

 

「あんた馬鹿か!? 奴が何処から来るか分かんないんだぞ!?」

 

「良い提案だな! 奥底の物は俺たちの物だ!!」

 

 このセゴーの提案に、警戒するジュディはこの状況で動けばあの生体兵器に狙われると言うが、彼の提案に賛同した数名の冒険者らが一同を離れ、バンカーへと向かう。

 

「馬鹿やろう! 離れるんじゃない!!」

 

 生き返ってヘルメットを被った武蔵も呼び止めるが、その冒険者三名は聞かずにバンカーへと全力疾走で向かう。当然、生体兵器が逃すはずが無く、三人共々切り裂かれた。

 

「ちっ、言わんこっちゃない!」

 

「周囲を警戒しろ! 互いの死角をカバーだ!!」

 

 ジュディが先に向かった三名が死んだことに舌打ちする中、リーダーは周囲警戒を行えと指示する。これに他の冒険者らも応じ、互いの死角をカバーした。全方位警戒だ。近接武器を持つ者たちが前衛を務め、後衛が銃を持った者たちが務める。マリはバスタードソードを抜き、前衛に努めていた。

 これに生体兵器は一番脆い部分を探し、そこを突いた。狙われたのは盾を持たない冒険者だ。鋭利な刃で胸を突き刺された冒険者は死亡する。次第に脆い個所だけが狙われ、犠牲者は増えるばかりだ。

 この現状に、メンへはただ怯えるばかりのキナに目を付ける。

 

「これ以上は死ぬばかりだなぁ~。こういう時は、役立たずが役に立つ時だなぁ!!」

 

「痛い! あぁぁぁ!?」

 

「キナちゃん!」

 

 そう言ってメンへはキナの髪を掴み、防御陣形の外へ放り出した。これにリアは投げ飛ばされたキナを救おうとしたが、既に手の届かない距離にまで放り出されていた。躊躇もなくキナを囮に放り出したメンへにリアは正気なのかと問い詰める。

 

「あんた! 正気なの!?」

 

「煩いなぁ! これが正解なんだよ! 第一あの中古品は役立たずだろうがぁ!!」

 

「本当アンタ最っ低!」

 

「間違ってんのはお前だろうがぁ! あぁッ!? この場で殺してやろうかぁ!?」

 

 防御陣の外へ放り出されたキナにマリが救出に向かう中、この状況にも関わらず、リアとメンへは口論を始める。それを武蔵は怒鳴りつけ、殺すと脅して止めさせる。

 

「いい加減にしろぉ! 言い争っている暇があったら襲撃を警戒しろぉ! まずは貴様ら二人から殺すぞ!?」

 

 武蔵がドスの効いた声で脅して止めさせる中、マリは倒れ込んだキナの元へ駆け付けて起き上がらせる。直ぐに防御陣の中へ戻ろうとしたが、生体兵器がそれを逃すはずが無く、鋭利な刃で斬りに掛かる。

 武器を持っていようが、持っていまいが関係ない。

 標的が少女であっても、生体兵器は機密が眠るバンカーに近付く者は、例え作ったイヴ人であろうと無差別に抹殺するように命じられており、容赦なく短剣の刃を突き刺そうと迫る。自身を作り上げた帝国の元女帝であっても、バンカーへ近付く者は何者であろうが抹殺する。全く無抵抗な少女でも容赦しない。全てはバンカーに眠る帝国軍の機密を守るため。

 生まれ持った使命に従い、生体兵器はキナを庇うマリに向けて短剣を突き刺す。なぜマリが生きているか分からぬ生体兵器であるが、もう一度殺せばいい。生き返ろうとも、何度でも殺してやるまでだ。そう思って生体兵器はマリに鋭利な短刀を突き刺した。

 

「あぐっ…!?」

 

 背中を深く突き刺されたマリは、痛みに耐えながらキナを自分の胸を貫く刀身から守るために突き放し、自分を突き刺す生体兵器の腕を掴む。短剣を持つ右腕を掴まれた生体兵器は空いている細い左腕で自分の腕を掴むマリの左手を払い除けようとするが、その手は決して離れなかった。そればかりか右手も加わって抜けない。

 

「あがっ! 今よ! 直ぐにやって!!」

 

「今だ! 総員、目前の痩せっぽちに集中攻撃!!」

 

 想定外の事態に戸惑う生体兵器に対し、マリは今のうちに攻撃するように血反吐を吐きながら一同に告げる。その指示に武蔵は応じて一斉攻撃を命じた。

 シモーナの頭部への狙撃から始まり、リンチェとメトルと言った銃を持つ冒険者らの掃射。次に近接要員のリアが双剣を突き刺す。直ぐに抜けばジュディの鉤爪による切り裂き、トバイルカンのロングソードの斬撃、ビッキーのナックルバスターによる打撃、それからセゴーの片手剣、キルノートンの鎖鎌による追撃が加わる。最後に張三の強力な蹴りが生体兵器の頭部に繰り出された。

 その蹴りを受けた生体兵器は吹き飛び、マリの身体を貫いていた短剣から手を離した。あれほどの攻撃を受けたにも関わらず、生体兵器はまだ立ち上がろうとする。

 

「あいつ、まだ動くぞ!」

 

「あんだけ撃ち込んでも、まだ動くってのか!?」

 

「だったら!」

 

 まだ生体兵器が生きていることに一同は驚きの声を上げる中、武蔵はとどめの一撃を刺すべく、凄まじい速さで接近し、相手の身体を掴んだ。大雪山おろしを繰り出すのだ!

 

「大雪山、おろし!!」

 

 生体兵器の身体を掴んだ武蔵はやせ細った身体を回転させ、付近の戦車の残骸に向けて投げ飛ばした。大雪山おろしを受け、凄まじい速度で投げ飛ばされた生体兵器は戦車の残骸に激突する。激突の衝撃で生体兵器の細い手足はあらぬ方向へ曲がり、背骨も折れて悍ましい姿となる。

 

「まだ動いているぞ!?」

 

「なんと言う執念…! 奴は生まれてから与えられたたった一つの使命に従い、自らの命が尽きようとも、その使命を全うしようと立ち向かって来る…! それには敬意を表するが…」

 

 かなりの総攻撃を受けた生体兵器であるが、残る力を振り絞り、バンカーへと入ろうとする侵入者らを排除しようと立ち上がる。これには流石の武蔵でも敬意を表する。

 

「もう限界だ。五十年、よく頑張った。創造者が与えたたった一つの使命を守り、見事に番人の使命を務め果たした。創造者も鼻が高い事だろう、先に行った創造者の元へ向かうが良い」

 

 だが、もはや生体兵器には人を殺す力どころか、動ける力は残されておらず、立ち上がれぬまま地面に横たわり、遂に力尽きた。これに武蔵は動かなくなった生体兵器に五十年よく頑張ったとねぎらいの言葉を掛けた。

 他の者たちは自分らを殺しに来た相手に敬意を表す武蔵に冷たい視線を向けていたが、リアと張三は生み出され、自分の創造主の使命に従っていた生体兵器を哀れむ。もう少し、生体兵器に考えることが出来れば、仲間になっていた事だろう。マリも両名と同じく哀れんでおり、ここで倒されて良かったと思う。

 

「はぁ? んな化け物にねぎらいの言葉とか、頭湧いてんの? おっさん。俺たちを殺しに来た奴によぉ、労いもクソも無いだろぉ?」

 

「こいつに同意見なのは嫌だが、こんな存在しちゃならねぇ怪物に敬意を表すなんてどうかしてる! 奴は俺たちをただ殺すだけだぞ? 今までだって、何人も殺してる! なのにそんな怪物に労いの言葉を掛けるなんて…! 異世界の奴らはどうかしてる! あんた頭がおかしいんじゃないか!?」

 

「そうだぞ! そんな化け物なんぞ、バラバラにしちまぇ!!」

 

 この男とこの世界の者たちだけは違った。

 メンへは武蔵が自分らを殺しに来た生体兵器に敬意を表したことに対して腹を立て、挙句に死体蹴りのように近くに落ちていた石を敵の亡骸に向けて投げ付ける。そのメンへの行動に賛同するかの如く、セゴーは武蔵を罵る。現地の冒険者らもこれに続いて罵声を浴びせた。異世界組の冒険者らは敢えて黙った。現地人のキナも黙っていた。

 これにマリは何も言わず、自分の背中に突き刺さった短剣を力一杯に引き抜き、出血多量で死亡したが、彼女は不老不死だ。直ぐに蘇り、自分の血で真っ赤に染まったサーコートを見て、着替えたくなる。

 

「着替えないと…」

 

 そう呟いた後、自分の背中に刺さっていた短剣を武蔵に向けて投げる。これを武蔵は取ってだけを掴んで受け止め、足元の地面に突き刺した後、罵声を受けながら生体兵器の墓を掘った。

 それから最初に罵声したメンへに殴りに向かい、セゴー等を含めた現地の者たちの罵声を止めさせる。

 

「何すんだこのアマぁ!?」

 

「そうだぞ! なぜ殴る!?」

 

「いい加減にしろ、お前たち。これ以上はこの俺でも許さん! それよりバンカーへ行くぞ」

 

 マリが無言で殴ったところで、メンへは懐からデザートイーグル自動拳銃を取り出し、彼女を殺害しようとする。無論、リーダーもこれを了承せず、メンへの拳銃を掴んで止めさせ、バンカーへ向かうのが先だと諭する。

 メンへが危険なのは現地の者たちが良く分かっており、それぞれの得物を彼に向けていた。これにメンへはマリを射殺したところで、自分が直ぐに殺されるのを理解してか、不満気に大きな拳銃をホルスターに仕舞い、リーダーの命令に従う。

 

「はいはい、分かりましたよ。殺し合いは見付けてからだったけ? それまで我慢するよ」

 

 全く反省の意思を見せず、メンへはバンカーへと向かう一同に加わった。武蔵もあの生体兵器を埋葬し終えた頃なのか、先にバンカーへと向かおうとしている。これにマリはキナの手を繋ぎ、共にバンカーへ向かう者たちの後へ続いた。

 

「さて、この俺がバンカーへ一番乗りに…ん?」

 

 バンカーへと意気揚々と向かう武蔵は、自分が一番乗りと言いながら進んだ。一歩足を踏み入れた瞬間、何かが作動する音が聞こえた。これに武蔵は音が鳴った足元を見れば、地雷を踏んでいることに気付く。

 

「そりゃあ、そうだな…」

 

 数秒後、武蔵は地雷を踏んで死亡した。その衝撃でヘルメットは吹き飛び、一同の足元へ転がる。

 これで武蔵は死んだ…ではなく、ワームホールから再び新たな武蔵が現れ、足元に転がるヘルメットを拾い上げて被る。

 

「あんた、一体…?」

 

 流石に復活することを知らない者たちから驚かれるが、武蔵はいちいち気にしてては身が持たないぞと返し、何の警戒も無しにバンカーへと入ろうとした前任者を責める。

 

「一々気にしてたら、身が持たんぞ? それより前任者の俺は間抜けだなぁ。地雷があることに気付かないなんて」

 

「もう一回踏めば?」

 

「俺は二度と同じ間違いはせんのだ。地雷原を突破するには、こいつが適任だ」

 

 地雷を踏んで死亡した前任者を責める武蔵に対し、マリはもう一度踏めばいいと不機嫌な表情を浮かべながら告げる。これに武蔵は二度と同じ間違いはしないと答え、百合帝国軍の兵士の死体のベルトに挟んであるM24柄付手榴弾を取り、地雷原を突破するにはこれが適任と告げる。手榴弾で地雷を爆破処理するのだ。

 台尻の安全キャップを外し、紐を引っ張って作動したのを確認すれば、直ぐに地雷原へと投げる。五十年ほど前の手榴弾が作動するかどうか不安であったが、正常に作動して付近の地雷を爆風で吹き飛ばした。

 

「どうやら、ここは時の流れがおかしいようだ。今ので使い方は分かったな? 周辺に投げ込んで地雷を撤去しろ!」

 

 正常に作動することで、この辺り一帯は時の流れがおかしいことが分かった武蔵は、柄付手榴弾の使い方を理解したか確認し、二つ目を投げ込んで道を作った。

 

 こうして武蔵等は、門番である生体兵器と地雷原を退け、件のバンカーへと入ることに成功した。バンカーに侵入すれば、今度は地下のダンジョンが待ち構えている。

 まだ序盤の内であり、ここからが冒険者らにとって本番である…。




次回からはバンカー内部に入り、地下のダンジョンへ…。

ネタバレするとすれば「なんで武蔵すぐ死んでまうん?」


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地下のダンジョン

名前:フェロン(重罪人)
性別:男

年齢:50
所属:共産主義者(トロツキスト)
武器:RPG-7、AKMS(ドラムマガジン付き) MP-412 REX。近接用のスコップとハンマー。
概要:スペツナズの衛生兵。伍長。
容姿は大柄で銀髪。首から下の全身にロシアンマフィアの刺青を入れている。強姦と人身売買以外の重犯罪は大体やった刑務所育ち。
刑務所仲間から軍に入る事を勧められ入隊後、スペツナズ。裏社会に精通。
キャラ提供は黒鷹商業組合さん

リオンテイルさん、久しぶりに誤字報告並び修正サンクス!


 湖のバンカーの番人として立ちはだかっていた生体兵器を倒し、地雷原を手榴弾で突破してバンカーへと入った武蔵一行であったが、ここに来て新たな問題が発生した。

 

「おい! 何をしている!?」

 

 マリが一人でバンカーの将校用の部屋を見付けるなり、入って百合帝国軍将校の死体を外へ引きずり出す。それからキナの手を引っ張り、その部屋に閉じこもろうとしたのだ。

 理由はただ疲れて眠い。それだけである。なんとも自分勝手な理由であるが、キナを連れて入ろうとしている辺り、彼女の身を案じている。一方でキルノートンはマリが引きずり出した将校の死体を漁り、勲章や金目の物を分捕っている。

 直ぐに武蔵はキナを連れて閉じこもろうとするマリの手を掴み、探索に戻るように説得する。

 

「疲れただと? 我々も少し疲れている。休むのは出入り口に着いた時にしろ!」

 

「煩い! 私は疲れたの! 疲れたのにあいつ等に置いて行かれて、着いたら着いたで面倒な目に遭ったし! あんた等が先に行けば良いじゃん! 私たちは後から行くから!」

 

「なんだその餓鬼のような言い訳は!? 良いから黙って…」

 

 後から行くと言って聞きもしないマリに対し、武蔵は無理やりにでも連れ出そうと彼女の細い手を掴んで引っ張ろうとした。

 手を掴まれたマリは時間を止め、その手を振り払って武蔵の喉元にナイフを当て、時間を動かしてから脅し掛ける。

 

「私なら、ここに居る全員三十秒で皆殺しに出来るけど?」

 

「い、いつの間に…! どうやら、離脱のようだな」

 

 マリをこれ以上怒らせれば、ここに居る全員が皆殺しにされると判断した武蔵は、大人しく従って彼女より離れた。

 

「災厄だわ…! いや、それよりヤバいかも」

 

 他の者たちもマリがいつの間にか武蔵の喉元にナイフを突き立てていたことに、恐怖を覚えて離れていく。守られているはずのキナも、マリに恐怖していた。

 

「さぁ、危ない事はあいつ等にやらせて、私たちは…」

 

 邪魔者が居なくなったところで、マリはキナと共に部屋で休もうとしたが、彼女は部屋の外へ出てリアの近くに寄り添う。どうやら一行と共にダンジョンへと向かうようだ。

 

「何? 危ない事はそいつ等に…」

 

「私、この人たちと一緒に行きたい…! そうしないと、駄目な気がする…!」

 

「はっ? なんで? 貴方、外で自分が何されたか分かってるの? あいつ等、絶対また…」

 

「あの、キナちゃんは私が守るから。貴方はそこで休んでなよ」

 

 メンへに何をされたか分かっているのかと言うマリに対し、キナは思い出して何も言い出せなかったが、リアが守ると言って彼女の手を引いて離れた。

 これにマリは何も言わず、過ぎ去っていくキナの背中をただ見ているだけであった。それから硬いドアを閉め、部屋の中に籠った。

 

「ふざけやがって! あの女! 俺たちを露払いさせようってか!? 何が三十秒で皆殺しだ! 身体で分からせてやる!!」

 

「止めろ! あの女はそれが出来る!!」

 

 自分らにダンジョンの露払いをさせるつもりのマリに対し、怒りを覚えた現地組の一人は、武蔵の静止の声を聞かず、強姦するためにドアを開ける取っ手を握り、開けようとした。だが、取っ手は微動だにせず、全く動かない。

 

「な、なんだぁ! 回らねぇぞ!?」

 

 動かないことに酷く動揺する中、ビッキーはその男に直ぐ取っ手から手を離すように叫ぶ。どうやら魔術の罠が仕掛けれていると見抜いたようだ。

 

「直ぐに離しなさい! 今すぐに!!」

 

「うるせぇぞこのアマ!! テメェも…!?」

 

 既に遅く、男の両手は引き千切れていた。引き千切れた両手は取っ手を強く掴んだまま残っている。これを見た男は、自分の両手が引き千切れたことに気付き、余りの痛みで絶叫する。

 

「あぁぁぁ!? あぁぁぁっ!! 腕が!? 腕がぁぁぁ! 俺の腕がぁぁぁ!!」

 

 両手が引き千切れたことで絶叫する男の姿を見て、この場に居る一同はマリに対する更なる恐怖を覚えた。あの女に逆らえば、何をされるか分かった物ではない。現に彼女に危害を加えようとした男が、マリが仕掛けた魔法の罠で両手を引き千切られた。数々の修羅場を潜り抜けてきた張三でさえ、戦慄を覚えていた。その男でも、マリと戦えば確実に死ぬと分かってしまったからだ。

 メンへもマリに恐怖を覚える中、キルノートンは死体から取ったルガーP08自動拳銃の安全装置を外し、撃てるかどうか確かめるべく、両手を引き千切られて喚いてのた打ち回る男に向け、発砲した。

 

「どうやら、時間の流れが止まってるらしいな。ここは…!」

 

 乾いた銃声がバンカー内に響き、喚いていた男が静まり返った後、一同はこのバンカーを含める湖一帯が、時の流れが止まっていることを認識する。武蔵も銃が錆び付かず、発砲できることを確認したところで認識した。

 

「そのようだな。では、ここに収容されている銃は使えると言う証拠だ。全員、拳銃か短機関銃を取れ。弾切れが心配だが、便利なことに変わりはない」

 

 銃が使えることが分かれば、武蔵は全員に銃、それも拳銃や短機関銃で武装するように告げた。

 シモーナは落ちているMP40短機関銃を予備弾倉が入ったポーチごと回収する。狭いダンジョンでは、九九式短小銃は余り役に立たないと判断してだ。ジュディも同じ短機関銃を持ち、安全装置を外す。

 リンチェはMP28の予備弾倉が無いか武器庫や弾薬庫を漁り、リアとビッキーもMP40で武装する。キルノートンはMP40であった。殆どの者たちも同様である。武蔵は木製ストックモデルであるMP41を何故か持っていた。トバイルカンは所属先としてか、Stg44突撃銃で武装した。メトルもStg44を持つ。

 張三は己の拳が頼りになると言って、銃で武装する気は無かったが、ワルサーP38自動拳銃だけはもしもの時に備えて持っていく。

 

「これ、君でも使えるよね?」

 

「う、うん…」

 

 一番の足手纏いであるキナに、リアは将校の死体より回収したワルサーPPk自動拳銃を手渡す。小柄なキナには拳銃が精一杯であった。

 セゴーは武蔵の言うことを聞かず、MG42汎用機関銃で武装した。以外にメンへはMP40だった。

 

「全員、銃を持ったな? よし、行くぞ!」

 

 各々が気に入った銃で武装し終えれば、パーティ内では最強とも言えるマリが離脱した一行は、武蔵の掛け声と共に封印が解かれたまま開いている地下ダンジョンへと入った。

 

 

 

 武蔵一行が地下ダンジョンへ突入する頃、湖のバンカーに遅れてやって来た一団が居た。

 それはこの世界の進駐軍であるワルキューレを悩みの種の一つである共産主義者等であった。現実の東側装備で武装した集団は、周囲を警戒しながらバンカーへと向かう。

 

「どうやら、先客がいたらしい。それも我々の露払いまでしてくれたようだ。同志諸君、先客は既にバンカーに入っている頃だ。警戒しろ」

 

はい(ダー)、同志」

 

 AKS-74突撃銃を右肩に担ぎ、警戒しつつ進めと言うリーダーにフェロンと言う大柄で銀髪のロシア系の男は応じ、RPG-7対戦車火器を背負いながらAKMS突撃銃の安全装置を外し、AKS-74u突撃銃やPPsh-41短機関銃を持つ数名の部下を引き連れ、先にバンカーへと突入する。

 既に武蔵たちはダンジョンへと入った後であり、両手をドアの取っ手に引き千切られた男の死体と、それよりも前にある百合帝国軍の将兵の死体ばかりだ。ただ、武器庫や弾薬庫を漁った後が残っていた。それを外で待つリーダーに、フェロンは知らせる。

 

「同志、先客らは既に地下に続く階段を下りた後だ。罠は無い。先客らが全部取っ払ってくれた。それにここじゃあ五十年前の腐ってない死体が幾つか。両手がドアの取っ手に引き千切られた男の死体が真新しい。先客のようだ」

 

「先客らに感謝するが、五十年前の死体と、その先客らしい死体は気になるな。調べよう」

 

 フェロンの知らせで罠が無い事を確認すれば、リーダーらは全員を連れてバンカーへと入る。軽機関銃や分隊支援火器を持つ者たちを弾薬運搬係と共に銃眼に着かせれば、バンカー内の探索を始めた。

 十数名でやったので、マリが眠っている部屋以外は直ぐに終わる。その彼女が居る部屋の前に、何名かが集合し、開けるか開けないかと相談する。

 

「どうするこの部屋、開けるか?」

 

「男の両手が取っ手を握ったままだ。何かしらの罠があるかもしれんな。開けない方が良さそうだが」

 

「俺は開けるに賛成だ。罠はそこに倒れている間抜けが解除してくれるかもしれん」

 

 それぞれの意見を出す中、フェロンが割って入り、俺なら絶対に明けないと相談する者たちに告げる。

 

「同志たち、俺なら絶対に開けない。あの取っ手に触れれば、そこに転がってる間抜けの二の舞だと、俺は思う。だが…」

 

 この中では実戦経験が豊富なロシア系の男の意見に、一同は真実味を感じて納得する。だが、中に居るものが出てくるかもしれないと思い、見張りを付けるように指示を出す。

 

「見張りは付けておいた方が良い。殺す気ならとっくに出て来るはずだが、不気味な程に出て来ない。出て来ても、いつでも殺せるように見張りを付けるんだ」

 

 指示を出した後、フェロンは人選まで行った。選んだのは若い男女だ。このグループに入って数ヵ月と言った所の新米である。

 

「新米二人、お前たちが交代であのドアを見張れ。出て来た瞬間、その機関銃でそいつを射殺するんだ。訓練通り頭を撃つんだ」

 

 新米らに見張りを任せ、二人が持つPPS短機関銃を指差し、自分の額にその指を当てつつ、ドアから出て来るであろうマリの頭を狙うように指示を出す。二名が応じてドアの見張りを行えば、フェロンはダンジョンへ入ろうとする一団に合流した。

 

「行くぞ、同志諸君。先客の後を追うぞ」

 

 リーダーの指示に応じ、武蔵一行の後を追うべく、フェロン等は地下ダンジョンへと入った。

 

 

 

 共産主義者らが後を追っていることを知らず、ダンジョンへと進む武蔵一行らに第一の罠が立ちはだかる。

 

「良いか? こんなところは大変な兵器を隠すには打って付けだ。それにどんな罠が仕掛けられているか分からん。警戒して進め…」

 

 ダンジョン内を進む冒険者らの前に出て、このダンジョンにはどんな罠が仕掛けられているか分からないと力説している最中に、武蔵は驚くべき速さで罠にはまった。

 最初の罠は左右の無数の穴が開いた壁より出て来た槍だ。仕掛けの発動は床に仕掛けられた巧妙に偽装されたスイッチを踏んで発動する。それに武蔵は串刺しにされて死亡した。だが、武蔵はゲッターの力で蘇る。直ぐに新しい武蔵がワームホールより現れ、串刺しにされた自分の死体からヘルメットと銃を取り上げ、ヘルメットを被ってポーチを付け直す。

 

「前任者の俺は馬鹿だな。とにかく、ペラペラ喋りながら進むなと言うことだ。特に足元に注意しろ。うっかりと、何を踏んだか分からんからな」

 

 常に警戒、足元にも注意しておくようにと言ってから武蔵は飛び出した槍を全て圧し折り、道を作ってから前に進んだ。シモーナは猟師なので、直ぐに意味を理解した。

 一同は死んでも復活する武蔵が代わりをしてくれたので、これからは楽が出来ると思い、敢えて前に出させた、そうとは知らず、武蔵は警戒しながら一行の前を行く。

 尚、メンへとセゴーを初めとする現地組が、キナを生贄にするような行動を取りかねないので、リアとシモーナ、ビッキー、リンチェは守る形で陣形を作る。張三もそれに応じてキナの前に立っている。ジュディ、トバイルカンは応じていない。キルノートンとメトルも然りである。前を歩く武蔵は気付いていない。

 そんな武蔵は前を歩きながら壁にも注意するように告げる。

 

「壁にも注意しろよ? 壁にも罠が…」

 

 言った瞬間、武蔵は壁のある仕掛けに触れてしまった。

 

「今度は落とし穴か!?」

 

 その罠は落とし穴であり、武蔵は何故かヘルメットを残して足元に開いた落とし穴に落ちていった。唯一残ったヘルメットは武蔵の近くに居たメトルが回収し、再びワームホールより現れた新たな武蔵に手渡す。

 

「全く、壁にも罠があるとは。こんなダンジョンの上にバンカーをおっ建てた奴の気が知れん」

 

 メトルが回収したヘルメットを被った新たな武蔵は、このダンジョンの上にバンカーを建設した百合帝国軍の考えが理解できないと言葉を述べる。

 それからは武蔵はダンジョンに仕掛けられた数々の罠に掛かった。トラバサミを初め、足元から飛び出す杭、火炎放射、酸、上から落ちて来る岩、ピアノ線、etc…。

 時にはバラバラになったことやドロドロに溶けた事もあったが、何故かヘルメットだけは無事であった。持っている銃は紛失してしまったが。

 

「これ、楽だなぁ」

 

 一人の現地組の冒険者は、武蔵が馬鹿の一つ覚えにダンジョンの罠に引っ掛かって自分たちの身を守ってくれるので、楽が出来ると口にする。これに武蔵は癪に触ってか、次は全員が危ないかもしれないと背後の一同に警告する。

 

「次は俺だけでなく、お前たちまで罠に掛かるかもしれんぞ? 気を付けることだ」

 

「へいへい」

 

 その警告に対し、リーダーを除く現地組は生返事をして何の警戒もしなかった。

 少し進んだ直後に、武蔵が言ったパーティ全員を巻き込むような罠が一同に襲い掛かる。

 

「っ!? ネズミの大群だ!!」

 

 それは大量の鼠であった。開いた壁より出て来た鼠の大群は、武蔵等を見るなり噛み殺そうと襲って来る。大量の鼠が移動する足音を耳にした武蔵は叫び、全員に戦闘態勢を取らせた。

 

「災厄だわ! と言うか最悪!!」

 

 無数の鼠を見て鳥肌を立てたビッキーは、手にしているMP40短機関銃を撃ち始める。他の者たちもそれぞれが手にしている銃を撃ち、喰い殺そうと大群で迫る鼠を迎撃する。張三はサイボーグであり、己の拳と蹴りで喰い殺そうと飛び掛かる鼠を蹴散らしている。

 

「大きな鼠とは戦ったことあるけど、こんな大群は論外!」

 

「喋ってないで撃て!」

 

 鼠のような怪物との交戦経験があると言うリンチェであるが、人食い鼠の大群と戦うのは初めてであったようだ。これにメトルは喋ってないで撃てと小型ガトリングガンを撃ちながら叫ぶ。武蔵は途中で拾った棒切れの先に火を点けて松明にし、苦手な光で追い払おうとする。

 

「後ろからも来た!?」

 

 人食い鼠の大群は前だけでなく、背後からも津波の如く現れる。これに再装填に手間取った現地組の冒険者の一人が呑み込まれ、数秒足らずで全身に喰らい付かれた。

 

「助けてくれぇ! 誰かァ!!」

 

 必死に助けを乞うが、誰も自分が生き残ることで精一杯であり、その冒険者は一瞬にして全身に噛み付いた大量の鼠に喰い殺された。

 これを見ていたキナは震え、メンへが助かるために、自分をあの鼠の大群の中に放り込むのではないかと松明を握る両手を震わせる。そうさせない為にリアが居るのだが、彼女も前と後ろから迫る大量の鼠の排除に追われている。

 

「う、うわっ!? この鼠共が! 離れろぉ!!」

 

 二人目の犠牲者となった現地組の冒険者は、懐に入っているライターを点けて追い払おうとしたが、大量に取りついた鼠はそんな小さな火で追い払える物ではない。

 そんな鼠に取り付かれた冒険者に、メンへは懐から何故か持っていた火炎瓶を取り出し、先に火を点けてその冒険者に投げ付けた。火炎瓶を投げ付けられ、全身に火を浴びた冒険者は火達磨となり、鼠らは離れる。

 

「ギャァァァ! アァァァ!!」

 

「お、お前…!?」

 

「もう終わりだよ、あいつ。俺は常に正しいんだ。ほら、鼠が退いてる」

 

 もう終わりだと言って、鼠に取り付かれた仲間を火炎瓶で火達磨にしたメンへにセゴーは責めるが、彼は悪びれることなく、挙句に火達磨となっている男をデザートイーグルで射殺し、自分は常に正しいと返す。その証拠に明かりを嫌う鼠が退いている。認めたくないが、メンへの言う通りであった。

 

「鼠が退いていくぞ!」

 

 群れの大部分を倒されてか、津波の如く押し寄せて来た鼠たちは退いた。普段は戦わない鼠の大群相手に、一同は疲弊していた。だが、また鼠が波状攻撃を仕掛けてくるかもしれないので、武蔵は松明を片手に先を急ぐと告げる。

 

「休んでいる暇は無いぞ? 鼠共は態勢を立て直すか、応援と合流して襲い掛かってくるかもしれん。今のうちに進むぞ」

 

 鼠に喰い殺された死体を見て、一同は先へ行く武蔵の後に続いて前に進んだ。

 あの鼠の大群が最後の関門だったのか、何もない上に罠も無かった。だが、用心に越したことは無い。警戒しながら進めば、広い場所へと出た。

 

「何だかやけに広い空間だな。何かあるかもしれん。全員、警戒しろ」

 

 その場所へ出れば、武蔵は全員に警戒するように告げてから前に出る。入口との反対側には、あそこに何かあると誇示するようなドアがある。そこへ警戒しながら武蔵が進むと、真上から何かが落ちて来る。

 

「あぁ、やはり…」

 

「うわぁぁぁ!」

 

 真上から巨大な物が落ちて来るのを見て、一同が急いで離れる中、既に退避不可能な位置に居る武蔵は、この広い空間にやはり何かが出て来ると察し、振って来る巨大な物体に潰された。何故かヘルメットだけは潰されず、退避した一行の足元に転がる。

 数秒後、ワームホールより新たな武蔵が召喚され、足元に転がるヘルメットを拾い上げて被り直してから、真上より現れたダンジョンの奥底に眠る何かを守る門番を見る。

 

「やはり、最後の関門はこいつか。そう易々と通してくれるわけが無いな」

 

 百合帝国軍の忘れ物を守る番人を兼任するダンジョンのボスは、不気味な出で立ちの巨大な(カエル)であった。蛙は侵入者である武蔵等を見るなり、その長い舌を伸ばした。




鼠の大群はプレイグテイルを参考にした。

次回はダンジョンのボスである巨大蛙と戦います。また武蔵が死ぬな。


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ダンジョンの主

~前回のあらすじ~

武蔵がまた死んだ! この人でなし!

巨大蛙
馬鹿でかい蛙。蛙をそのままデカくしたのではなく、ウィッチャー3のDLCに出て来る気持ち悪い巨大蛙。口は裂けてないが、衝撃的な外見をしている。
毒性で人体を溶かすほどの強酸を吐く。おまけに舌も長いし、ぴょんぴょんと跳ねる。

すんげぇ速く書けたので投稿。


 バンカーにある地下のダンジョンに隠された百合帝国軍の忘れ物は、もう手の届く範囲であったが、それを守る番人である巨大蛙に武蔵たちは阻まれた。

 侵入者である武蔵一行を排除すべく、巨大蛙は口を開いて舌を伸ばす。

 

「全員、対蛙戦闘だ! グワっ!!」

 

 武蔵は一同に戦闘態勢を取るように指示した後、弾丸の如く速さで来る舌に捕まれ、そのまま蛙に食べられてしまった。それに何故かヘルメットだけは飛んでいく。

 

「どうせ直ぐに出て来ると思うが、どうする?」

 

「とにかく撃て! 撃つんだ!!」

 

 武蔵が蛙に食べられるところを間近で見ていたメトルがリーダーに問えば、彼は手にしているStg44突撃銃を構え、目前の巨大蛙に討つように命じる。

 それに応じ、MP40短機関銃やMP41短機関銃、MP28短機関銃、MG42汎用機関銃が火を噴いた。雨あられの弾丸が巨大蛙に浴びせられるが、皮膚が異常に硬いのか、全く通じない。銃弾を物ともしない巨大蛙はジュディに向けて強酸を吐いた。

 

「おっと!」

 

「ワァァァ!!」

 

「ギャァァァ!!」

 

 ジュディが鉤爪のロープを近い壁に引っ掛けて強酸を躱せば、彼女の背後に居た浴びた三名は強酸を浴びてしまい、悶え苦しむながら死亡する。それと同時に新たな武蔵がワームホールより出現し、銃弾が余り効かないと分かって撃つのを止めさせる。

 

「撃つんじゃない! こいつに勝つには接近戦だけだ! 得物を持つ奴はそれで戦え! 銃を持つ奴は誤射に注意しつつ、援護射撃だ!」

 

「そうなるか。なれば!」

 

 状況を理解し、巨大蛙を倒すには接近戦しかないと説き、それに応じた張三と共に素手で立ち向かう。

 

「無謀過ぎるぜ」

 

 無謀に素手で挑む二人に、メトルは侮りながらも小型ガトリングガンで援護射撃を行い、巨大蛙の注意を引き付ける。無数の銃弾を浴びた巨大蛙はメトルに向け、強酸を吐き付ける。無論、強酸が飛んでくるのは承知の上であり、メトルは裂けて武蔵と張三より巨大蛙を逸らした。

 

「大雪山おろし!」

 

 メトルが引き付けてくれたおかげで接近で来た武蔵は巨大蛙を掴み、大雪山おろしを行おうとするが、相手が重すぎて持ち上げられず、挙句に後ろ足で蹴飛ばされた。

 

「ぐわっ!」

 

 後ろ足で武蔵が蹴飛ばされて吹き飛ぶ中、張三のサイバネ武闘の拳をお見舞いする。武蔵とは違い、サイボーグ武闘家による打撃はダメージを与えたが、決定打にはならず、吹き飛ばされた。

 武闘家二名を吹き飛ばした巨大蛙は飛び跳ね、次なる標的を狙う。狙う相手はリアに守られたキナだ。

 

「危ない!」

 

「きゃっ!」

 

 これにリアはキナを突き飛ばし、得物のアビスとフォティアの柄を合わせ、パルチザンにして落ちて来る巨大蛙を躱してから突き刺した。だが、相手は銃弾を弾くほどの皮膚を持つ巨大蛙だ。直ぐに出した舌による振り払い攻撃を行う。凄まじい速さであるが、リアは持ち前の身体能力で躱す。

 

「ハァァァ!」

 

 次に仕掛けるのは両手にナックルバスターを填めたビッキーだ。素早く接近し、凄まじいラッシュを巨大蛙の胴体にお見舞いする。

 

「これでも効かない…?」

 

 強烈な連続した打撃だが、張三同様に余り効果は無い。直ぐに体当たりで吹き飛ばされる。

 

「がはっ! 災厄その物ね…!」

 

 壁に叩き付けられ、吐血したが、ビッキーは痛みに耐えつつ追撃の強酸を躱し切った。

 そんな巨大蛙の側面よりトバイルカンは全力疾走で接近し、ルーン文字が刻まれた魔剣ロングソードで張三やビッキーが与えた打撃部分を斬り付けた。

 蓄積されたダメージで皮膚が弱っていたのか、切り傷を与えることが出来た。深くは無いが、殺せるという確証は得た。即座にトバイルカンが離れる中、食い殺してしまおうと、巨大蛙は舌を伸ばそうと口を開いた。

 そこにシモーナの狙撃が炸裂する。彼女はこの瞬間を狙っていたのだ。九九式短小銃より放たれた弾丸は舌に当たり、余りの痛みで巨大蛙は思わず舌を口に戻した。

 舌が切れた所為か、強酸は吐かず、シモーナを踏み潰そうと高く飛翔する。落下地点を予測しているシモーナは、即座に回避行動を取って躱す。

 

「あの女が居ればな…」

 

「無い物強請りは止めろ、コソ泥め」

 

 戦いに参加せず、ドロドロに溶かされた現地組冒険者三名の死体を見ているキルノートンは、マリが居れば巨大蛙など造作もないはずだったと愚痴を言う中、巻き込もうと思って近付いたメトルは彼をコソ泥と罵り、こちらに注意を引き付けようと小型ガトリングガンを掃射した。

 武蔵、リア、張三、ビッキー、トバイルカンの一撃離脱戦法に翻弄される巨大蛙は、再び雨のような弾丸の掃射を受け、メトルの方へと飛翔する。

 

「巻き込みやがって!」

 

 一秒間掃射したメトルが場所を移動する中、そこに居合わせていたキルノートンは文句を言いつつその場から離れた。

 

「気持ち悪いけど、接近するしかない!」

 

 巨大蛙の風貌に戦闘に参加していなかったリンチェであるが、この状況を打破するには小柄な体格を生かした得意の接近戦しかないと覚悟し、果敢にこのダンジョンのボスに挑む。彼女の接近に巨大蛙は武蔵等の波状攻撃を受けており、混乱状態に陥っている。

 そこにリンチェが開いた巨大蛙の傷口にMP28短機関銃の弾倉全弾分のフルオートを叩き込み、大量に出血させた。拳銃弾と言えど、開いた傷口に三十発以上もの弾丸を受ければ一溜りも無い。即座に反撃する巨大蛙だが、リンチェは素早過ぎて逃げられてしまった。

 そればかりか、巨大蛙は大量出血の所為で意識が朦朧としている。元気に飛び跳ねることもままならない。とどめを刺すチャンスだ。

 

「蛙野郎め、血が出過ぎて意識が朦朧としているな。一気に畳み掛けるぞ!」

 

 武蔵の号令と共に、異世界組の冒険者らはとどめの攻撃を仕掛けた。まずは武蔵が大雪山おろしを見舞う。

 

「大雪山おろし!」

 

 そう武蔵は叫んでいるが、相手が重過ぎる所為で実際はただ転ばしただけだ。

 そこにシモーナの狙撃が巨大蛙の目に炸裂した。右目を潰せば、今度は左目を潰し、巨大蛙を失明させた、最初に銃弾を雨あられと撃ち込んだが、狙ってないので当たるはずが無い。それに動き回るので、大量出血させて動きを鈍らせることで、狙撃を成功しやすくしたのだ。

 

「てやぁぁぁ!!」

 

 失明した巨大蛙にリアのパルチザンによる刺突が入る。刺突した個所は血が噴き出ている傷口である。そこへ追加のダメージが入れば、巨大蛙は更に出血する。

 

「はぁ!」

 

 リアが素早くパルチザンを引き抜けば、ビッキーのアッパーが巨大蛙の顎に炸裂した。

 

「加勢してやるよ!」

 

 殴られた衝撃で巨大蛙は思わず舌を出し、顔が上を向いてしまう中、強酸を避けるために何処かに隠れていたジュディが姿を現して鉤爪で飛び出た舌を斬った。斬り付けた個所がシモーナの狙撃した位置であった為に、舌は斬り落とされた。

 直ぐにビッキーとジュディの両者が離れる中、開いた口に向け、リンチェがMP28のフルオートを叩き込む。

 

「いい加減に、くたばれ! この気持ち悪いデカ蛙め!!」

 

 怒りに任せたフルオート射撃は古い短機関銃の精度故、何発かは逸れてしまうが、確実に口内に損傷を負わせることに成功した。そこへメトルが隠し持っていた爆薬を投げ付ける。

 

「秘蔵の爆薬だ! 持ってけ!」

 

 そう言って爆薬を投げ付ければ、Stg44突撃銃を構え、爆薬が痛がる巨大蛙に当たったところでフルオート射撃を浴びせ、爆薬を爆発させる。

 

「こいつ、まだ生きてやがる!」

 

 あれほど攻撃を受けたにも関わらず、巨大蛙はまだ生きていた。しかし既に瀕死の状態、それにまだトバイルカンと張三が残っている。キルノートンとキナを含める現地組の冒険者らは、この戦いをただ傍観していた。

 

「これでいい加減に!」

 

 トバイルカンはロングソードで血達磨と化している巨大蛙に渾身の一撃を見舞い、顔を叩き切った。顔が割れても尚、巨大蛙は生きていたが、張三の一撃で遂に力尽きる。

 

「アチョーッ!!」

 

 その叫びと共に放たれた一撃は、強烈な飛び蹴りであった。助走をつけたサイボーグの飛び蹴りの威力は凄まじく、尚且つ弱り果てた巨大蛙は真っ二つに割れた。夥しい血と酸が巻き散らされる中、張三は即座に真っ二つに割れた巨大蛙の死体から離れ、強酸より身を守る。

 武蔵等はこのダンジョンのボスである巨大蛙を倒すことに成功したのだ。後は百合帝国軍の忘れ物がある部屋に進むだけである。

 

「犠牲は出たが、何とか倒せたな」

 

 真っ二つに割れた巨大蛙の死体を見て、武蔵は自慢げに告げる。彼はほぼ役に立ってないが、指示だけは役に立っていた。

 

「ボスは倒せたけれど、まだ災厄が残って…」

 

「これ以上言うんじゃないよ。さぁ、速く拝みに行こうや」

 

 ビッキーはまだ違和感があると言うが、ジュディに黙らされ、シモーナと共に連れて行かれる。彼女らは帝国再建委員会に雇われた冒険者たちである。

 

「これで裏ボスとか居たら今度こそ全滅だよ…」

 

「それ、マジで勘弁だわ。てか、言わないで!」

 

「今度言えば、テメェをハチの巣にすっからな!」

 

 異世界組全員は疲弊しており、更なるボスが居れば、次は全滅するとリアが言えば、リンチェを始めとする者たちはその発言を咎めた。

 

「さぁて、宝は何かなと」

 

 巨大蛙との戦闘を異世界組に任せていた現地組は疲弊している彼らを他所に、忘れ物がある部屋へと意気揚々と入って行った。

 彼らが罠やボスと言った障害を排除した後より、フェロンを始めとする共産主義者等が迫っていることを知らずに。

 

 

 

「そろそろ頃合いね」

 

 一方、武蔵等を先にダンジョンへ行かせたマリは、既に目標の場所まで彼らが辿り着いた頃だと予想し、ベッドから起きてトラップを解除してから自分が施錠したドアを開けようとした。

 だが、ドアの向こう側には共産主義者らが居り、マリはあろうことか気付いていない。彼らがバンカーに来たのは、マリが疲労で熟睡している時だ。外で自分を見張っている事など知らず、ドアを開けてしまった。

 

「えっ、誰?」

 

 何気なくドアを開けたマリは見張りの男女二名と目を合わせ、思わず誰なのかと尋ねてしまう。

 

「う、うわぁぁぁ!?」

 

「ちょっ、まっ!?」

 

 全く普通にドアから出て来た金髪の女に驚いた二人の新米は錯乱して手にしている短機関銃を乱射した。これに驚いたマリは時を止めようとしたが、既に自分に向かって引き金が引かれた時であり、放たれた十数発の弾丸は回避不可能な距離まで来ていた。

 一発目が腹部に命中すれば、二発目、三発目、四発目と次々とマリの身体に命中。十発以上が命中して何発かが貫通すれば、吐血したマリは死亡した。そのまま硬い床に倒れれば、彼女の青い瞳から光が失われ、赤い血が広がり始める。

 PPS短機関銃の全弾を撃ち尽くした新米二名は倒れ込み、驚愕する余り、思わず射殺してしまったマリの死体を見て茫然とする。

 

「じゅ、銃声がしたぞ! なんだ!?」

 

 いきなり難十発もの銃声がバンカー内に響いたので、銃眼に着いていた機関銃班の内、目出し帽を被った弾薬運搬係がAKM突撃銃を持って駆け付けてきた。

 

「お、お前ら!? それにその女の死体は!?」

 

「わ、分かりません同志…! その女が、その女がいきなりそのドアから出て来て…!」

 

「ま、まだ生きてますかね…? そこの女の人…」

 

 新米二人は人を殺したのは初めてか、かなり動揺している。自分等が撃ったマリがまだ生きていないのかと、女の方が問えば、運搬係は銃紐で突撃銃を肩に掛け、既に息絶えている彼女の脈を調べる。

 読者の方々にはご存じの通り、マリは不老不死で蘇るのだが、共産主義者らは知らないことだ。

 

「死んでいる…お前ら、童貞と処女、卒業だな」

 

 この時点でマリはまだ死んでいるのか、脈拍は動いていなかった。それを新米二人に知らせれば、若い男女は人を殺したことを実感した。

 

「そう気を病むな、こんな所に居るこの女が悪い。それに最初に言ったな? 殺した奴の顔など覚えるなと。俺だって最初はそうだった。一々殺した奴の顔なんて覚えてたら、おかしくなっちまうぞ」

 

 殺人の罪悪感を感じる二人に対し、運搬係はそこに居たマリが悪いと告げ、殺した人の顔を覚えていたらPTSD、即ち戦闘ストレス障害になると警告する。

 茫然とする二人の肩を軽く叩き、運搬係は銃眼の方へ戻ろうとすれば、マリは生き返ったのか、手を使って起き上がる。それを見ていた二人は驚きの声を上げる。何せ自分たちが殺した女が起き上がったからだ。背後で起きていることが分からない運搬係は、何故そんな顔をしているのかと思わず問う。

 

「おい、なんだその顔は?」

 

「う、後ろ…」

 

「私たちが殺した女が…! 生きて、生きて…!」

 

「ショックの余り、幻覚でも見てるのか? あの女は死んで…」

 

 背後でマリが生き返っていることを驚きながら二人に、運搬係は殺したショックで幻覚を見ているのかと思い、振り返れば、血塗れの彼女がそこに居た。

 

「ない…だと…!?」

 

 新米の乱射で死んだはずのマリが生きていることに驚愕し、運搬係は思わず腰のホルスターに収めてあるマカロフ自動拳銃を引き抜こうとしたが、既に彼女が右手に握るナイフが顔面に突き出された後であった。




この為に不老不死のマリが居るかと思う。

次回は仲良しごっごは終わりだヨン! 忘れ物を賭けてのバトルロワイヤルだヨン!(イメージCV飛田展男さん


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仲良しごっこは終わり

応募内容を見て思うんですが、応募キャラを殺して大丈夫だろうか…?


 マリが目覚め、バンカー内に残った少数の共産主義者等と交戦している頃、武蔵たちは百合帝国軍の忘れ物がある部屋へと辿り着いた。

 そこは忘れ物とされる装置が中央に置かれ、その周りに機器が配置されていた。それを操作していたとされる白衣を着たイヴ人の遺体が幾つか転がっている。

 軍服や古めかしい銃を持った死体も、二個小隊分はあった。どうやらあの装置を起動させようとして、何らかのトラブルがあり、敵のみならず、自分たちも全滅してしまったようだ。

 

「なんだ、金銀財宝じゃねぇのかよ」

 

 キルノートンがあれほど苦労したのに、そこで待っていたのが期待していた金銀財宝ではなく、奇妙な装置だったことに落胆する。武蔵は周囲の外傷の無い死体を見て、何らかのトラブルがあったと見抜いた。

 そもそも帝国軍がダンジョンの上にバンカーを建てている時点で、何らかの手段でダンジョンを攻略し、金銀財宝は既に本国がある世界に持ち込まれた後であるのだが。

 

「この様子からして、装置に何らかのトラブルがあったようだな。外の時間の流れがおかしいのは、あの装置が原因みたいだ」

 

 トラブルで発生した異常事態は、外の時間の流れが止まったかのような現象があの装置にあると推測する。

 その問題を解決するために、一同は百合帝国軍の忘れ物である装置を破壊するのが流れであるが、それぞれの勢力に雇われた冒険者や出向者が応じるはずが無かった。

 

「貴様ら、なんのつもりだ?」

 

「なんのつもりって? 雇い主の要望さ。仲良しごっこは終わりってことだよ」

 

 ジュディが懐から持っていないはずのワルサーP88自動拳銃を取り出し、安全装置を外して武蔵に向けた。ジュディだけではない、ビッキーは拾い上げていたMP40短機関銃を構えており、シモーナも同じ短機関銃を周辺の男たちに向けている。

 銃口をなぜ向けているのかと問う武蔵に対し、ジュディは雇い主の命令で動いていると答えた。

 

「本性を現したな? イヴ人の手先共め。いや、一人イヴ人が混じっていたな」

 

「お前たちもそうなのか?」

 

「うん、私たちの雇い主はそいつ等とは別だけどね」

 

 先に本性を現したイヴ人の手先、即ち帝国再建委員会の手先だと明かしたジュディ等に続き、リンチェとトバイルカンも自分らの雇用先を明かし、銃を向ける。二名が属しているのは第四帝国、即ちナチスであった。

 

「おいおい、どっちが優勢か分かってんのか? 俺たちだぜ」

 

 メトルも続けて正体を明かした。何故なら、メトルが属しているのはヴィンデルの息の掛かった組織であるからだ。リーダーを初め、セゴーやメンへの現地組冒険者らもそれに属しており、バンカーで手に入れた銃を向けている。

 

「チビデブ野郎にナチ公、イヴ人の手先共よぉ。どっちが優勢か、見りゃあ分かるよな?」

 

「あぁ、無所属がキツイってことが分かるさ」

 

 小型ガトリングガンを向けるメトルの問いに、武蔵は無所属である自分が厳しい立場にあると答える。現に同じ無所属のキルノートンが現地組に組し、自分らに銃を向けている。

 

「私は…どうしようかな…?」

 

 武蔵と同じ無所属であるリアは、どっちに組しようか迷っていた。彼女はただバンカーの噂を自分の世界の冒険者ギルドで聞いて勝手に来ただけで、こんな状況になるだなんて思いもしなかった。

 現地組と言うか、何らかの目的で来たキナは、自分が崇拝する神聖百合帝国を作ったのがイヴ人だと思い出し、その帝国を再建を目指す帝国再建委員会に組した。

 

「キナちゃん…」

 

「私は! 私はイヴ人さまに手を貸します! 私たちを解放してくれるのは、イヴ人さまの百合帝国だけだから!!」

 

 リアが帝国再建委員会に組したキナに失望する中、崇拝するイヴ人が居る勢力に属した少女は、護身用に持っていたワルサーPPk自動拳銃を向けた。

 これにビッキーは安心する。何せ一番の不安要素であるマリを止められる、否、利用できる手段がこちらに頼まずとも着いたのだ。マリはキナにだけは危害を加えようとしない上、そればかりか自分の身を挺して守るほどである。

 

「(ふぅ、良かった。これであの女は封じられるわね)」

 

 幾ら時間を止める能力があっても、キナに殺さない程度の重傷を負わせれば、マリは彼女の治療を優先する為、自分らを攻撃しないとビッキーは読んでいた。

 不安要素と言えば、現地組の誰かがキナを殺すことだが、バンカーで披露したマリが感情的になって自分らを脅したので、身に染みたのだから殺すことは無いはずだ。それにキナが居ればマリを利用できる可能性もあり、一気に形勢を逆転できるかもしれない。

 そう睨んでビッキーはキナを自分らのパーティに向かえたのだ。熟練の冒険者であるジュディもそれを理解し、自分を撃った際にキナに当たるようにワザと近付いた。

 

「誰かの手駒なのは、お前たちだけでは無いぞ」

 

「っ!?」

 

 無敵だと思われていたマリを攻略出来たと思っていた帝国再建委員会組であるが、ここで何故か黙っていた張三が口を開いた。彼もまた忘れ物を狙う勢力に属していた。凄まじい速さでキナに接近し、ジュディに右手の手刀を向ける。どうやら張三も、キナがこの状況を打破できる鍵であると見抜いたようだ。

 

「俺も手駒だ。俺を修理してくれた条件で受けた依頼だがな。それにお前たちはこの娘を使い、あの女を利用しようと企んでいるのだろう。気付けないと思っていたのか? これは俺の流儀に反するが、俺もあの女が怖い。だから俺もこの娘を人質に使う」

 

 自身がこのバンカーのダンジョンに来た理由を明かせば、キナの首筋に左手の手刀を当てる。

 彼はマリを恐れており、殺されたくないと思っていた。その為に流儀に反する人質を取り、受けた恩も返すことも含め、マリを利用すると言う手段に出た。

 

「全く、ここに来て災厄を引き寄せてしまうなんて…!」

 

「ちっ、サイボーグ野郎め…! 武闘家が人質を取るなんざ、恥ずかしくないのかい!?」

 

「何とでも言え。俺は生きてここを出て、修理してくれた者たちに恩を返す。安心しろ小娘、お前を決して殺したりはしない」

 

 人質と言う手段に出でた武闘家である張三をジュディは責めるが、彼は生きて恩を返すためだと返し、キナには危害は加えないことを約束する。属しているグループでは、マリが敵に回ると分かったキルノートンは、節操も無く現地組から張三の方へ着く。

 

「畜生が! 俺たちが不利じゃねぇか!!」

 

 張三がマリをキナと言う鎖で封じ込めたことに成功し、形勢が逆転して不利になってしまったメトル等は地団駄を踏んだ。武蔵とリアは何も出来ず、ただ動けないでいる。

 だが、この場に居る一同は気付いていない。新たな参加者である共産主義者らが迫っていると言うことを。

 それに現地組であるはずのメンへ・ランは、何故かほくそ笑んでいた。この状況で何を企んでいるのだろうか?

 

 

 

 時間は数分前に遡り、バンカーで目覚め、一度殺されて生き返ったマリは、残っていた少数の共産主義者らを皆殺しにしている頃だった。

 血は両手を引き千切られた現地組も冒険者一人だけだったが、今のバンカーは共産主義者らの血で真っ赤に染まり果てている。

 最初の犠牲者である弾薬運搬係は眉間にナイフを突き刺されて即死し、新米男女はマリが良く使うバスタードソードで切り裂かれて絶命していた。銃眼の出入り口で死んでいる男は柄で顔面を殴られた後、腹を深く突き刺されて殺され、機関銃班は狭い場所では取り回しの悪いPK軽機関銃からMP-443自動拳銃に切り替え、何発か撃ったようだが、避けられて腕を切り裂かれるか、突き刺されて全員死んでいる。切り裂かれて飛び散った血が天井にまで届き、銃眼は真っ赤に染まっていた。

 他にもバンカーに残っていた者が居たが、銃を持つ自分らに劣るはずの剣を持ったマリに敵わず、全員が切り倒されている。中には首を撥ねられた者も居た。その所為で通路は血塗れであった。

 

「なんだ…!? この女…」

 

 まだ息のある者は這いずりながら通信機へ向かい、マリの存在をダンジョンに向かった本体へ知らせようとしたが、とどめの一撃を突き刺されて絶命した。

 刀身から血を吹き払い、腰の鞘に戻せば、洗面所へと向かい、付いた返り血を洗い落とし、自分の血だらけな衣服を魔法で動き易い冒険者風味に着替え、ダンジョンの出入り口へ向かう。

 この時、守るべきキナは張三が人質に取り、マリを利用しようとしていた。無論、そんな状況になっている事は、マリは知らない。

 

「あいつ等何よ、いきなり撃って来て。まぁ、そろそろ終わった頃かしら」

 

 いきなり自分を撃ってきた共産主義者らに悪態を付きつつ、マリはそろそろ武蔵等がダンジョンの奥に辿り着いている頃だと思い、奪った携帯食を食べながらダンジョンへ入った。

 一方でバンカーに待機させた少数の部下と機関銃班が全滅しているとは知らないフェロンを含める共産主義者の本隊は、武蔵等が開通した道を楽々通り、目当ての装置がある奥底で揉める一行の背後まで迫っていた。

 自分らに気付かず装置がある部屋が暗い事を言い事に、リーダーはフェロンに命じ、出入り口に立つ現地組冒険者二名の殺害させる。一人目をスコップで頭部に突き刺して殺害した後、二人目をハンマーで頭部を二回ほど殴打して撲殺する。そこから闇に紛れて部下たちを展開させる。

 既に包囲されていることを知らず、張三はキナを連れ、キルノートンと共に装置へと近付いていた。そこへ来たところで、共産主義者らは奇襲を仕掛けた。

 

 

 

「貴様…!」

 

 現地組のリーダーが張三を睨み付ける中、銃声が鳴り響いた。リーダーは思わず振り返ったが、既に頭部を吹き飛ばされた後であった。そこから共産主義者らの奇襲攻撃が始まる。

 

「奇襲だ! みんな伏せろ! 伏せ…」

 

 奇襲攻撃を受け、現地組の冒険者らは背後から来る銃撃に次々と射殺されていく。武蔵が伏せるように叫ぶが、飛んでくる銃弾で眉間を撃ち抜かれて死亡する。リアも伏せて銃撃を躱した。

 

「ちっ、あたい等は露払いをさせられたってことかい!」

 

「ここに来て災厄がまた…!」

 

「それは良いから、この状況に付け込んで、あの装置をかっぱらうよ!」

 

 同じく銃撃を受けたジュディとビッキー、シモーナは床に伏せ、遮蔽物まで這って移動しつつ、この状況を利用して装置の奪取を目論んだ。

 

「畜生が! 誰だ!? 誰だテメェら!!」

 

 現地組の冒険者らを次々と射殺され、セゴー等が武蔵の言う通りに伏せる中、同じく伏せていたメトルは小型ガトリングガンで奇襲を仕掛けた共産主義者らに反撃する。伏せ撃ちから来る掃射に、AK系統の突撃銃やPPS-h41短機関銃を持つ数名の共産主義者らが銃弾で引き裂かれた。

 

「と、トバイルカン…!?」

 

「狼狽えるな! 反撃しろ!!」

 

 遮蔽物となる機器に隠れたリンチェは、震えながらトバイルカンにどうすべきかを問えば、彼女はStg44突撃銃を構え、反撃するように叫んでから一人を単発で撃ち殺す。トバイルカンの指示に応じたリンチェは遮蔽物から飛び出し、小柄な体型と身体能力を生かして手近な距離に居る共産主義者らに近付き、一気に一人、二人と射殺していく。

 一番装置に近い距離に居る張三とキルノートンは、フェロンと数名より銃撃を受けていた。フェロンは分隊支援火器を持つRPKを持つ者と共にドラムマガジンのAKMSを連射し、張三とキルノートンを装置に近付けないようにしている。これに張三はマリに対する切り札であるキナを守るべく、彼女を庇っていた。キルノートンは反撃せず、ただ遮蔽物で震えている。

 

「どうすんだよ!?」

 

「あの女に奴らを始末させる! お前は奴らを近付けないように反撃するんだ!」

 

「無茶言うな!」

 

 銃撃からキナを守る張三に問うキルノートンに対し、サイボーグ武闘家は手にしている銃で反撃するように告げた。これにキルノートンは旧式の短機関銃ではどうにもできないと怒鳴りながら返す。

 そんな口論を続けている内に、分隊規模の共産主義者等が装置に接近しつつあった。現地組であるはずのメンへであるが、あろうことか共産主義者等と行動を共にしている。何を隠そう、彼が共産主義者等をここに手引きしたのだ。

 その証拠にリーダーが近付き、現地冒険者ギルドに潜入していたメンへに労いの言葉を掛ける。

 

「潜入ご苦労だったラン同志。あの装置が何であれ、共産主義世界の第一歩だ」

 

「えぇ、同志。夢まで後一歩です。自分は装置に向かうので」

 

 それに受け答えした後、メンへは装置へ向かうと告げた。既に数名が向かっているが、どさくさに紛れて装置の奪取を企むジュディとビッキー、シモーナの銃撃で全員が撃ち殺される。

 

「フェロン! 鼠が居るぞ!! 同志メンへ、数名を引き連れてお前は行け! 援護する!」

 

 先行した分隊が全滅すれば、フェロンに帝国再建委員会組を抑えるように指示した。次にAKM突撃銃を持つリーダーは第二陣の指揮をメンへに任せ、張三らを抑えるために銃撃を行う。

 

「あぁ、俺を愛する世界を創るためにな」

 

 これに聞こえない小声で本音を漏らしたメンへは中国製AK-47である56式自動歩槍を受け取り、安全装置を外して自分が潜り込んでいた現地冒険者ギルドに属する者たちを射殺しながら、数名を引き連れて装置の元へ向かう。

 

「野郎! ぐっ!」

 

 属している組織を裏切っていたメンへに対し、遮蔽物に退避していたメトルは射殺しようとしたが、リーダーらの援護射撃で封じ込められる。その間にメンへは部下を引き連れ、装置に近付いていく。

 

「やらせるか! ぬぁっ!」

 

 背中の真剣を抜いた武蔵がメンへに斬りかかり、奇襲の効果もあってか、コピーモデルの突撃銃を破壊することに成功した。

 

「ふっ!?」

 

「また出て来るなぁ」

 

 だが、メンへにはデザートイーグルと言う大口径自動拳銃がある。それを直ぐに抜き、頭を撃ち抜いて武蔵を射殺した。また出て来るが、それまでに時間がある。

 

「きゃっ!」

 

 リアも向かおうとしたが、メンへに続くRPK軽機関銃やAK系統の突撃銃を持つ共産主義者らに妨害され、遮蔽物へと引っ込む。

 

「あいつ等、装置を! 援護するから邪魔な奴らを狙撃しな!」

 

 フェロンの制圧射撃で抑えられている帝国再建委員会組は、ジュディがメンヘラが装置に向かっていることに気付き、シモーナにフェロンの狙撃を命じた。それに応じ、シモーナは得物の九九式短小銃に切り替え、ジュディとビッキーが再装填を終えたMP40をフェロン等に向けて滅多やたらに撃ち込んで黙らせ、彼女に小銃を構えさせる。

 直ぐに二人が遮蔽物へ頭を引っ込める中、シモーナは小銃を構え、身を乗り出して銃撃を再開しようとする共産主義者等を狙撃する。一人、二人とスコープ無しの小銃で撃ち抜き、ボルトを素早く動かして空薬莢を排出からの押し込んで次弾を薬室へ送り込み、一気に五人目であるフェロンを狙った。

 

「ちっ、銃が!」

 

 だが、当たったのはドラムマガジンのAKMSであり、軽傷のフェロンはMP-412リボルバーをホルスターから抜く。シモーナも既に小銃の再装填を終えており、再び狙撃を再開し、更に三人の同志の頭を撃ち抜いた。

 

「見てろ、スナイパーめ」

 

 今度はリーダーを狙っていたが、フェロンはそれを狙っており、シモーナが集中している所をリボルバーで狙いを定め、引き金を引いた。放たれた弾丸は頭部に当たらなかったが、シモーナの顎に命中して彼女は床に倒れる。

 

「シモーナ!?」

 

「ちっ、やられたのか! あいつめ、報酬は渡さないよ!」

 

 大口径拳銃弾で顎を撃ち抜かれたシモーナが倒れ、ビッキーが応急処置の治療魔法を施す中、ジュディは既にメンヘ達が装置に近付いていることに気付き、短機関銃を乱射しながら接近する。

 この思い切りのジュディの突撃に三人が倒れた。走りながら弾切れになった銃をすぐに捨て、得物の鉤爪を着け、自分を撃とうとする一人を放ったワイヤーで打ち倒した後、一番近い距離に居る男が持つ突撃銃の銃座による殴打を持ち前のアクロバティックな動きで躱し、鉤爪で顎を切り裂いて殺害した。

 それから一人、二人と鉤爪で切り裂いて殺害していく中、メンへが振り払った手斧の斬撃を防いでから一旦距離を取り、相手の隣にいる共産主義者にワイヤーで引き寄せ、銃による反撃の盾にした。

 

「ま、待て同志! 撃つな!!」

 

 ジュディの盾にされた共産主義者は同志であるはずのメンへに撃たないように告げるが、冷酷非道な彼が仲間のことなど気にするはずが無く、躊躇いも無くデザートイーグルの引き金を引いた。

 

「お前、正気か!?」

 

「正気も何も、そいつが悪いんだろうがぁ!」

 

 盾にされた仲間を何の躊躇いも無しに射殺したメンへにジュディは正気を問えば、自分勝手な男は盾にされた奴が悪いと返し、貫通するまで何度でも大口径自動拳銃を放つ。二発ほどは耐えられるが、流石に何発も食らえば貫通し、ジュディの左肩に一発が命中した。

 

「このキチ野郎がぁ!!」

 

 倒れたジュディはワルサーP88を乱れ撃って反撃するも、メンへは既に距離を取っており、装置の起動装置の方へ向かっていた。何故そちらに行くのかを、随伴する残った者たちに問われる。

 

「ラン同志、装置の回収が優先じゃないの…」

 

「これ以上は行かせんぞ!」

 

「うわっ、来るのかよ」

 

 問い詰めた男は言い終える前に、飛んで来た張三の蹴りを受けてバラバラになった。これにメンへは厄介な相手が来たと判断し、デザートイーグルの再装填を終え、装置の起動装置のスイッチに触れる。

 

「なぜ装置を動かす? 回収が目的ではないのか?」

 

 起動装置はまだ生きているのか、起動する音が聞こえて来る。張三はメンへになぜ起動させたのかを問うた。これにメンへは答えることなく拳銃の発砲で返し、張三と交戦を始める。

 放たれた弾丸を張三が避け、一気に距離を詰める中、メンへは手斧の間合いに入れば即座に振るが、サイボーグ武闘家はそれも避け、強烈な裏拳を叩き込もうとする。これでメンへも終わりだろうと思っていたが、彼はこれに対抗する防御魔法を自身の身体に掛けていたのだ。メンへは魔法を使えることを、この状況に至るまで黙っていたのだ。

 

「何っ!?」

 

「俺さぁ、魔法が使えないとか、言ってないけど?」

 

 裏拳を魔法で防いだメンへに対し、張三が彼が魔法を使えたことに驚愕する。そんな張三にメンへは魔力で威力を高めた蹴りを見舞い、吹き飛ばした。吹き飛ばされた張三は付近の壁に激突し、床に倒れる。

 

「死ねっ!!」

 

 弾切れになった拳銃を投げ捨て、死体を退けてからワイヤーで背後を見せるメンへを捕らえようとしていたジュディであるが、既に気付かれており、右手でワイヤーを掴まれた。

 

「なっ、なんだと!?」

 

「読めちゃってるんだよねぇ!!」

 

「うわっ!?」

 

 自分のワイヤーを掴んだことに驚きの声を上げるジュディに対し、メンへは強く引っ張って引き寄せ、手斧を飛んでくる彼女の身体に叩き込んだ。

 

「がはっ…!?」

 

 強く手斧を腹に叩き込まれ、深く突き刺されたジュディは血反吐を吐き、叩き込まれた位置で床に落ちる。ジュディの瞳から光が失われる中、メンへは深く突き刺さった手斧を引き抜き、血を払い落としてから回収予定の装置に近付く。

 

「奴を装置へ近付けるな! 何が起こるか分からんぞ!!」

 

 再びこの地に現れた新たな武蔵の指示で、リアがメンへに接近して二振りの得物で切り裂こうとするが、間合いを読まれており、腹に強烈な蹴りを入れ込まれて吹き飛ばされる。

 

「キャァァァ!」

 

「とらぁぁぁ!」

 

「邪魔だよなぁ」

 

 リアが蹴飛ばされたのと同時に武蔵が飛び掛かるが、メンへには敵わず、手斧で首を跳ね飛ばされた。

 

「奴め、何をする気だ!?」

 

 武蔵の首を跳ね飛ばしたメンへが装置に触れようとするのを見たトバイルカンはStg44で数名の共産主義者を射殺し、弾切れになれば捨ててからロングソードを抜いて向かう。

 

「これ、私一人で抑えろって事!?」

 

「うりゃぁぁぁ!」

 

 一人装置の方へ向かって行くトバイルカンを見て、リンチェは自分一人で共産主義者等を抑えろと言うことなのかと動揺しながらも、フェロンのスコップとハンマーの攻撃を避ける。MP28の掃射による反撃をここ見るが、フェロンは手放さないことからそれを理解しているのか、その隙を与えずに攻撃を続ける。

 

「ぐぇあ!?」

 

共産主義者(コミュニスト)! 貴様にそれは渡さん!」

 

「邪魔するな、よっ!」

 

 フェロン等をリンチェ一人に抑えさせ、邪魔な共産主義者を斬り殺したトバイルカンはメンへに斬りかかるが、手斧で受け流され、膝蹴りを腹に食らい、デザートイーグルで頭を撃ち抜かれて即死した。

 頭を撃ち抜かれたトバイルカンが完全に事切れる中、メンへは装置へと再び歩み始める。装置に近付いたところで、潜んでいたキルノートンが鎖鎌による攻撃を行う。流石のメンへでも防ぎ切れず、左腕を刺され、手斧を手放してしまう。

 

「死ねぇ!」

 

 相手の左腕に鎖鎌の鎌を突き刺したキルノートンはルガーP08自動拳銃を抜き、安全装置を外してメンへを射殺しようとした。だが、メンへは痛みを感じていないかのように左腕を引き、キルノートンを引き寄せる。

 

「お、おわっ!?」

 

 思わぬメンへの行動にキルノートンはバランスを崩し、誤って自分の顔を撃ってしまう。キルノートンは死体より手に入れた銃の暴発で死んでしまったのだ。これにキナはただ見ているだけであった。邪魔者排除したメンへはキナに目も暮れず、起動寸前の装置に向かう。

 

「何、これ…?」

 

 ここに来て、マリが遅れて激戦区となっていたダンジョンの奥地へと辿り着いた。自分が知らぬ間に共産主義者等と武蔵等が交戦していることを知り、茫然としていた。

 

「なんだこの女!?」

 

 いきなり入って来たマリに気付いた二名の共産主義者が手にしているPPS-h41で射殺しようとしたが、彼女が素早く抜いたP226自動拳銃の早撃ちで射殺される。

 

「おほっ、チート来た」

 

「う、動くな! 動くと撃つ!!」

 

「フフッ、イキって出て来たねぇ」

 

 装置に近付いたメンへは出入り口を見て、マリが辿り着いたのを確認した。この状況を打破できる彼女が来たのが分かったキナは、勇気を出して遮蔽物より飛び出し、小型の自動拳銃をメンへに向けた。

 だが、それはメンへの思惑通りであった。マリの目線が装置と自分に向いたのを見たメンへは不気味な笑みを浮かべ、銃口を向けて警告するキナにデザートイーグルを向け、即座に発砲した。キナは拳銃の安全装置を掛けたままであった。それを見透かされたキナは腹部に大口径拳銃弾を撃ち込まれ、床に倒れ込んだ。

 これに付近に居る張三と復活した武蔵、リア、顎を撃ち抜かれたシモーナを治療するビッキー、メトル等が驚愕する。メンへがマリを怒らせるような行動に出たのだから。

 

「ちょっと…! 何よこれ!?」

 

 そのキナがメンへに撃たれる光景は、乱戦越しにマリにも見えていた。なんとメンへは、ビッキーと張三がやろうとしていたマリを利用する手段を見抜いていた。キナに瀕死の重傷を負わせれば、マリは彼女の治療を優先するので、そちらに向かうことを理解していたのだ。

 予想通りマリは時間を止め、キナの方へと急行する。一分以上の時間止めの解除の際に来る疲労を回避するため、五秒ごとに時間を止めてキナの元へ急ぐ。進路上に共産主義者や生き残った現地組冒険者が居たが、斬り殺されるか吹き飛ばされる。

 自分らの仲間である共産主義者らが殺されるか吹き飛ばされていることを他所に、メンへは完全に起動した装置に手を振れた。




全然バトルロワイヤルじゃねぇな。

それとオリーブドライブさん、黒鷹商業組合さん、ケツアゴさん、ごめんなさい。


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メンへ・ラン

史上最強のメンヘラ、爆誕!
今回はメンへばっか。

それと観覧注意かな。


 メンへ・ラン。

 神に見放された世界の住人で、冒険者兼共産主義系テロ組織に属する男だが、この世界では珍しくも無い大多数の男の一人だ。

 何故、彼が半世紀前の異世界より責めて来た敵国の忘れ物である装置に興味を示し、それを手に入れようと思ったのは、自分を愛してもらいたいからである。

 まずは、メンへが自分を愛してもらいたいかは、彼の生い立ちから語らなくてはならない。

 

 時は彼が生まれた時代へ遡る。

 世界征服を成し遂げようとしていた大帝国がワルキューレの攻撃で崩壊していたが、大帝国の残党が新たな国家と多数の諸国を無理やり併合して建国することで立て直し、異世界より来た新たな侵攻軍を食い止めていた。

 この大帝国の残党が築き上げたワルキューレに対するレジスタンス国家の名は「アシュラ」。大帝国の残党が集まり、大規模な軍事力を有し、そればかりか有能な参謀らや指揮官らに指揮され、実に四十年以上もの間、ワルキューレの侵攻を食い止めたのだ。

 恐るべき軍事力を誇るアシュラの国家元首は恐ろしいほど優秀であり、その男の存在の所為でワルキューレはアシュラを制圧できなかった。

 

 だが、アシュラの国家元首は致命的な欠陥を抱えていた。自己中心的で他人のことを考えられなかった。自分以外の人間を人として見ておらず、道具として見ていない。神の領域に匹敵する能力による代償の所為か、自分の妻子ですら愛情すら抱いておらず、自分しか愛せない男だったようだ。

 現在において侵略軍を四十年以上寄せ付けなかったアシュラが存在せず、広大な国土が隣国含めて無法者たちの楽園と化したのは、この自分しか愛せない国家元首の所業と言っても過言ではない。

 

 アシュラは今から五年以上前に崩壊したのだ。ある男の手によって…。

 

 その男の名はメンへ・ラン。

 メンへはアシュラの国家元首が数十人いる妻との間に誕生した数百人の息子の一人であった。

 母がメンへを生んだのは十歳。アシュラが男尊女卑思考の軍事国家であったが為に女体の体質を全く理解できておらず、偏見に塗れていた。そう言った環境を含め、多大なるストレスにさらされたメンへの母は様々な病に掛かり、挙句鬱病による疲労により、彼を生んで十年でこの世を去った。

 そんな重体な母に国家元首である父は時間に余裕があるにも関わらず、全く見舞いにも来ず、挙句に死んでも顔を出さない始末だ。

 

 母を失ったメンへのメンタルケアなど全くは無かった。アシュラは強さを美徳とする国家なのだ。母親を失くして泣きじゃくる弱い男など必要ない。何事にも冷静に力強く対処する男こそが必要とされる強者至上主義の国家なのだ。

 ワルキューレの侵攻から最大規模のレジスタンスであるアシュラが四十年も世界を守り続けたのは、異世界を行き来し、武器を売り捌いて多額の利益を上げる武器商人の支援とこの力に固執する考えであり、崩壊の原因も力に固執し、一人の狂気に気付けなかった原因でもある。

 

 そんな国家で生まれ育ったメンへの教育はもはや虐待であり、彼の歪んだ人格や思想、父に認めてもらいたいと言う拘りを形成させるには十分に良過ぎる環境だ。否、アシュラ中の少年がメンへのような虐待染みた教育を受けていた。薬物まで投与され、身体もかなり大きくされていた。

 全ては一滴の涙や躊躇も見せず、力で敵を粉砕する悲しみや敵に対する慈悲も無い冷徹残忍な強者を生み出すために…。

 

 力こそ全てなアシュラで成人を迎えた男がまず就職するのは軍隊だ。軍事国家であるアシュラで軍人になるのは、大変名誉で強い男の証だ。アシュラの偏見に満ちた殺人教育で立派に歪んだ大人へ成長したメンへも、自然な形で軍に入隊した。

 彼が戦うのはもちろんのこと資源を狙う侵攻軍であるワルキューレ。女性ばかりな軍事勢力であるワルキューレが幾ら圧倒的な物量を誇ろうとも、人道に反する教育と訓練で怪物に達したアシュラ軍に大敗し続けるばかりだ。

 無論ながらメンへも活躍し、まさに英雄とも言える成果を上げた。一人で一個中隊を撃退し、戦車小隊、更には戦闘ヘリ小隊まで壊滅させたのだ。そんな大戦果を挙げたメンへの理由はただ一つ、父に認めてもらい、愛してもらうこと。

 

 それ程の後に語り継がれるような英雄的成果を上げたメンへに、国家元首である父はあり得ない仕打ちを行う。なんとそれは「女如きに男が勝って当然」と言う短い文章が記載された書類一枚を贈るだけに済ませたのだ。理由はワルキューレを舐め腐っており、これほどの成果を上げて当然と言うのが理由である。何とも酷い理由だ。

 

 多数の敵を相手に命懸けの成果を上げたと言うのに、相手が女と言う理由だけで渡されたのが勲章でも無ければ、労いの言葉でも無く、極短い文章が書かれた紙切れ一枚が贈らない父にメンへは殺意を抱いた。

 今は我慢したが、負傷するほどの激戦区で英雄を上回る鬼神の如く戦果を挙げ、戦争をアシュラ有利に進めても、父は忙しいさを理由どころか「我が国の兵士として当然」とまた紙切れ一枚を寄越すだけだ。

 

 これはメンへに限っただけでなく、前線で戦う将兵全体に向けられた言葉である。戦死すれば女如きに殺されたクズでゴミと罵り、最悪の場合、最初から居なかったことにされる。

 ワルキューレとの戦いでアシュラ側に戦死者どころか戦傷者が一人もいないのは、これが理由だ。背中を預ける戦友と祖国の為に命懸けに戦った将兵等に対し、国家元首であろう者が、あり得ない程に大変失礼な態度である。侮辱と言っても過言ではない。

 

 命懸けで戦っていると言うのに、勲章どころか、労いの言葉一つ寄越さず勝って当然と宣う国家元首に将兵等は我慢していたが、メンへだけは違った。唯一の肉親である父親が褒めてくれないことに怒りが頂点となったメンへは、重装備で国家元首の元へ乗り込んだのだ。

 アシュラの中心人物等と共に戦勝への祝杯を挙げる国家元首の元へ、単身重装備で突っ込んだメンへは、実戦経験では劣る中隊規模の近衛兵を一掃した後、戦勝会場に居た国家元首を除くアシュラの重鎮と異母兄弟、妻たちを皆殺しにした。

 

「ねぇ、パパ。どうして俺を認めてくれないんだい? あれだけ頑張ったのに、労いの言葉も掛けてくれないなんて俺は悲しいよ」

 

 父である国家元首と二人きりになるため、邪魔者を全て排除したメンへは父親になぜ自分を認めないのかと銃口を向けながら問う。これに齢七十の父親は尻もちを着き、初めて感じる死の恐怖に怯えながらメンへに謝罪した。

 

「すまない! わしは、わしがお前を認めなかったばかりに! い、今からでもお前を認めよう! 一体どんな位が欲しいのだ?」

 

 十年ぶりに面と向かって父が発した言葉は苦し紛れの謝罪だった。あろうことか、名前で呼ばず、自分のことを覚えてもいない。これにメンへは失望し、ゴミを見るような目で命乞いをする父を見下す。

 だが、それは父とで同じ。こんな馬鹿なことをする奴に、今重大な局面において必要不可欠な自分が殺されてたまるか。国家元首はそう思いながら、メンへに見えないように利き手を隠し、隠し持っていたナイフを掴む。油断しきったところで、刺し殺すつもりだ。

 自分の子供の名前すら憶えていない。むしろ覚えるつもりもない。自分の身内でさえ、国家元首は道具としか見ていないのだ。目前に立つメンへの事を、実の父親はただの狂った奴としか見ていなかった。これにメンへは実の父が利き手の右手を背中に隠したことを見抜き、自分を全く愛していないどころか、殺そうとする態度で、息子として見ていないと判断した。

 

「申せ! 直ぐに用意させよう! 欲しい物は何なのだ?」

 

「欲しい…? 違うよ、俺が欲しいのは地位でも名誉でも無いんだ。パパの命だよ。パパを滅茶苦茶に動かなくなるまで殴って、それから身体を滅茶苦茶に引き裂くんだ。あぁ、頭だけは残して置くよ。後でスイカみたいに叩き潰すんだ」

 

「うぅ!? こ、この、基地外めがぁぁぁ!!」

 

 目前の息子を名乗る男が自分を生かすつもりが無いと判断した国家元首は体当たりを仕掛けたが、アシュラ一の戦士となっていたメンへは躱し、有言実行と言わんばかりに自分の父を殴り続けた。それも笑いながら。

 

「アハハッ! ねぇパパ。痛い? 痛いかい? 僕の心はそれよりも痛かったよ! 僕に殴られているパパのようにねぇ!!」

 

 両目からは涙が零れていたが、愛に飢えたメンへは笑いながら自分の父親を殴っている。それに自分がどれ程に父親に愛してくれたかったと言う気持ちを、今殴り続けている父親にぶつける。何度も強く殴っていれば顔は原形を留めない程に潰れ、七十代の国家元首は瀕死であった。

 そうなればメンへは人体を切断できるほどの鋭利な刃を取り出し、まだ息のある父親を解体し始める。その解体の仕方は異常なほどに滅茶苦茶だった。メンへは言った通りのことを実行しているのだ。ただし、頭部は最後に潰すために残して置く。

 

「さよならパパ。俺はこの国の人たちを解放するよ」

 

 最後に残した頭部を別れの言葉を告げてからハンマーで潰した後、メンへはアシュラの人々を解放すると口にした。それから首都へ向かい、アシュラ全体に自由と解放を宣言する。

 解放。アシュラの人々に自由を与えると言う意味に当たるのだが、メンへの解放と言った意味は違う。

 それは国家と言う束縛から解放し、真の意味でアシュラの者たちを自由にすることであった。何者にも従わず、己の考えや力で生きていく事である。否、メンへの言う個人の自由はそうではない。己の本能や欲望に従い、その手で欲しい物を力尽くで奪い取り、逆らう者は誰であろうと殺す。

 それこそ、メンへの言う自由であった。

 

 メンへの言葉で国家と言う束縛から解放されたアシュラの人々、いや、歪んだ環境で育った男たちは胸の内に潜ませていた本能を解放させ、上官を含める自分の気に食わない者や嫌いな者を殺し、欲しい物を奪い、気に入った女を犯し、壊したい物を壊し始めた。時には徒党を組んだ集団もあったが、考えややり方の違いだけで殺し合い、幾つもの徒党が生まれては消えた。

 

 こうして、四十五年以上も強大な異世界軍より守り続けた軍事大国アシュラは崩壊した。自らを守るため、育て上げた兵士たちの手によって滅んだのだ。アシュラが支配していた広大な地域は一気に無法地帯と化し、別の世界から来た無法者たちが持ち込んだ技術によって正規軍のワルキューレですら手を出せない程の地獄と化した。もしかすると、地獄の方が生温いかもしれない。

 

 真の意味で自由となったアシュラの男たちは欲望や本能のままに行動し、今日もまた欲しい物を手に入れるために暴力を振るい、壊したい物を壊して女を捕まえては犯し、殺したい奴を殺した。アシュラ崩壊後に異世界より来た者たちの存在もあるが、利害が一致すれば協力して気に食わねば殺し、自由を謳歌した。

 アシュラを崩壊させた張本人であるメンへはランの姓名を名乗り、異世界の技術や体術を身に着け、着々と力を蓄え続けた。全ての人々に自分を愛してもらう為、否、愛するようにする為に。

 

 皆に愛してもらいたいがため、強大な力を欲するメンへは鍛錬に並行し、この世界にある強大な破壊力を持つ兵器の調査に乗り出す。

 そして鍛錬と捜査を続け五年、かつての敵国、百合帝国軍の忘れ物である装置を見付けたのであった…。

 

 

 

「さぁ、どっちだぁ?」

 

 装置を起動させ、マリの足枷であるキナを撃ったメンへは、どちらの方向へ来るのかと、時を止めながら迫る彼女を見ながら賭けに出る。

 もしマリが自分の所へ来れば、確実に死ぬこととなる。何故ならキナを撃ち殺したからだ。だが、そんなことは百も承知。メンへは敢えてギリギリ死なない程度に、キナの腹部にデザートイーグルを発砲したのだ。大口径拳銃弾でも少女の身体を撃っても、心臓であらぬ限り死ぬには時間が掛かるだろう。

 現にキナの手は動いている。まだ息があると言う証拠だ。キナがまだ生きていることを確認したマリは、メンへの予想通りに無視して治療を施すため、瀕死の彼女の元へ向かう。何処からともなく医療キットを取り出し、野戦治療を始めたのを見れば、メンへは自分の勝利を確証した。

 

「俺の勝ちだぁ!」

 

 メンへは読み通り、マリは自分を無視して役にも立たないキナの治療を行った。勝利したメンへは叫び、装置から流れて来る不気味な力を全身に感じる。この光景に、殺し合いを行っていた者たちはそれを中断し、光るメンへの方に視線を集中させた。

 

「あ、あんな奴の手に、訳も分からぬ力が…! 今からその装置を壊せ! 何が起こるか分からんのだぞ!?」

 

 起動した装置がメンへの手に渡ったところで、出て来た新しい武蔵は何が起こるか分からない為に壊すように説得するが、装置から流れて来る力に酔いしれている彼の耳には届いていない。共産主義者等もこのメンへの行動には予想がついていなかったのか、リーダーが止めるように命令する。

 

「何をしている同志メンへ!? 装置を止めろ! これは我らが物なんだぞ!」

 

 銃口を向け、必死に止めるように叫ぶリーダーであるが、本性を現したメンへにはどうでも良く、共産主義を馬鹿な夢だと罵る。

 

「あのさ、共産主義ってみんなで共有するってことだよね? 俺はみんなに愛してもらいたいんだよ。それだと、みんなが俺のこと愛して貰えないじゃないか!!」

 

「な、何を言って…!?」

 

「つまりお前らは夢見がちな馬鹿ってことだよ。革命やら何やら自分がカッコいいこと言ってるって感じで酔い痴れやがってよ、見てるこっちが恥ずかしくなるよ」

 

「貴様、粛清してやる! 同志諸君、裏切り者を撃て! 撃つんだ!!」

 

 自分らすら騙して自分らの思想を侮辱したメンへに対し、怒りを覚えたリーダーは部下らと共に一斉射撃を行う。フェロンはリンチェを蹴り飛ばした後、背中のRPG-7対戦車火器を取り出し、安全装置を外して装置に照準を定め、引き金を引いてロケット弾を撃ち込んだ。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

 射線上に居た武蔵は巻き込まれ、一気に蜂の巣にされて床の上に倒れる。起き上がった張三は射線上から退避していた為に無事で、キナの手術を行うマリは自分と彼女の周りだけに魔法のバリアを張っている為、流れ弾の心配は無かった。リアやリンチェは伏せ、ビッキーは顎を撃ち抜かれて瀕死のシモーナを庇う形で頭を伏せる。メトルとセゴーは隙を見て、現地組の生き残りたちと共にこの場から脱出していた。

 

「なん、だと…!?」

 

 この場に居る共産主義者全員の一斉射と最大火力であるRPG-7の対戦車榴弾の弾頭を受けた装置であるが、メンへ共々全くの無傷であった。リーダーを含めるフェロン等がこれに驚愕する中、マリを上回るような力を得たメンへは、これでみんなが自分を愛してくれると実感し始める。

 

「す、凄い! 俺チートだ! チートだよぉ!! これでみんなに、これでみんなに愛してもらえるぞぉ!! アッハッハッハッ!!」

 

 数百発の銃弾とロケット弾を装置から来る謎の力で耐え抜いたメンへは高笑いし、目前の共産主義者等に向けて攻撃を始めた。なんとメンへの背中から無数の触手が身体を貫いて生え、その全てが目前に居た共産主義者等を貫いた。

 

「ギャァァァ!!」

 

「こ、これが、装置の力だと言うのか!?」

 

 数十人が一気にメンへの背中より生えた触手で串刺しにされる中、ワームホールより出て来た武蔵は、これが百合帝国軍が闇に葬った装置の力だと驚愕する。

 

「ウヒヒヒッ! しゅ、しゅげぇ! 力が溢れる…! 高まるゥゥゥ!!」

 

 装置の力はそれだけでない。メンへの身体は見る見る内に身体は膨張し、装置を吸収して全高全長とも三十メートルはある巨大な彼の顔だけの姿を変え、その周りに十数人の共産主義者等を串刺しにした触手が手足となり、歪さと不気味さを強調した不気味な怪物へと変貌を遂げた。

 

「ば、化け物だ…!」

 

「災厄その物だわ…!」

 

 幼子が見ればトラウマになりかねない巨大な怪物へと変貌したメンへは、自分の姿を見て驚愕する一同を他所に、一体化した装置によって内から湧き出る力に酔い、不気味な笑みを浮かべる。その笑みは怪物と化したメンへの不気味さを余計に際立たせ、見る者に恐怖を与える。

 キナの手術を行うマリ以外の者たちがメンへの姿を見て畏怖する中、怪物となった彼は悲願で最大の目的である皆に愛してもらう自分を実行すべく、手始めに自分を嫌悪な眼差しで見るフェロンを含める残りの共産主義者たちの始末を行う。

 

「それじゃあまずはぁ…お前たちの始末だぁ!」

 

 標的を残りの共産主義者等に定めたメンへは、全身に生えている手を触手に変えて攻撃を始める。これに共産主義者等は銃を撃ちながらこの場から脱出しようとするが、自分らを殺す触手に捕まり、引き裂かれていく。

 

「ワァァァ!!」

 

「キャァァァ!!」

 

「うわぁぁぁ!!」

 

 辺り一面が引き裂かれた共産主義者等の飛び散った大量の血で辺りが真っ赤に染まる中、リーダーは触手に捕まれ、まだ捕まっていないフェロンに助けを求める。この悍ましい光景を見て、リアとリンチェは思わず嘔吐してしまい、武蔵と張三は戦慄する。

 

「同志フェロン! 助けてくれぇ! このままでは、奴に引き裂かれて…!」

 

「共産ごっこは終わりだ!」

 

 助けを求めるリーダーであったが、フェロンは無視して自分だけ逃げた。その姿を見たリーダーは絶望し、引き裂かれるような感覚を味わいながら涙ながらメンへに命乞いする。

 

「同志ラン、止めてくれ! 頼む! お前を、お前を崇拝する! だから殺さないでくれ!!」

 

 涙ぐんだ必死の命乞いをするリーダーであったが、メンへは応じず、巻き付けた触手に力を強めた。

 

「ダーメぇ、君の言ってることは嘘だもんねぇ!」

 

「や、やだ! 止めてェェェ!!」

 

 リーダーは絶叫しながら触手に引き裂かれた。引き裂かれた肉片が内蔵と共に辺りにぶちまけられる中、メンへは逃げたフェロンに追撃の触手を放つ。誰一人逃す気は無さそうだ。

 

「逃がさないよォ…!」

 

 逃げるフェロンの位置を掴んでいたメンへは、触手を高速で向かわせ、一気に大男のロシア人を引き裂こうとする。だが、相手は元特殊部隊所属の男。向かって来る触手を戦闘用スコップで切り裂き、身を守ろうとする。

 

「クソっ! クソォォォ!!」

 

 だが、触手の波状攻撃が防げるわけもなく、スコップを握る右腕を鋭利な刃となった触手に切断され、挙句に両足も斬り落とされ、最後に残った左腕も切断されてしまう。メンへはフェロンを嬲り殺しにしたのだ。

 

「うわぁぁぁ! アァァァッ!?」

 

 四肢を削がれたフェロンは驚いたことにまだ息があり、痛みと恐怖で絶叫していた。そんなフェロンにとどめを刺すべく、メンへは触手をギロチンの刃の形に模させ、絶叫する大男の上から振り下ろす。ギロチンの刃を振り下ろされたフェロンの身体は真っ二つに叩き割られ、大男は絶叫した表情を浮かべたまま左右に真っ二つになって息絶えた。

 共産主義者を全て始末したメンへは触手を自分の身体に戻し、次なる標的を武蔵等に定める。彼らもまた、メンへにとっては邪魔者なのだ。

 

「次ぁ、お前たちだァ!」

 

「ひ、ヒィィィ!? 殺されるぅ!!」

 

「もう、これで…最期かもしれない」

 

 標的が自分らに向いたことで、リンチェは絶叫して出入り口へと走り、ビッキーは絶望するあまり死を覚悟する。リアと張三も死を覚悟する中、武蔵は奥の手を使うことにした。

 

「無駄な保険になれば良いと思っていたが、使うほか無さそうだな…! ゲッターの力を!!」

 

 この場に居る全員を守るため、奥の手を使う覚悟をした武蔵は褌からある端末を取り出し、そのスイッチを押す。スイッチを押されて端末が起動すれば、ワームホールから全高二十メートルの下半身がキャタピラで長い腕が特徴なロボ、ゲッター3が現れた。

 この不格好な巨大ロボットの登場に、手術に夢中なマリ以外の者たちは驚愕する。だが、ゲッター線の僕であり、ゲッターの意思その物であるゲッターエンペラーの記憶によって何度でも復活する武蔵なら問題は無い!

 

「な、なんだぁ! このロボットはぁ!?」

 

 流石のメンへも驚きであり、全員を殺そうとした全体攻撃を思わず中断してしまう。その隙を突いてゲッター3に乗り込んだ武蔵は乗機の伸縮する両腕でメンへを絡め取り、遠心力を付けるために書い天使、天井へ向けて投げ飛ばす。

 

『大雪山おろし!!』

 

 ゲッター3に乗り込み、初っ端から怪物と化したメンへに仕掛けた技は、武蔵の必殺技である大雪山おろしだ。驚いている状態で大雪山おろしを受けたメンへは天井を突き破り、上に建っていたバンカーまで突き破って外へ放り出される。

 巨大な物体が外へ放り出されたことによって、ダンジョンは崩壊し始める。これに武蔵はまだ残っている者たちを脱出させるべく、ゲッター3に捕まるように拡声器で指示する。

 

『全員、俺のゲッターに掴まれ! そこの女、手術(オペ)は安全な場所で続けろ!』

 

 マリに対しては自力で脱出できると見込み、キナの治療はここを脱出してからにしろと告げた。マリとキナを除く全員がゲッター3に掴まり、それを確認した武蔵がゲッター3のスラスターを吹かせてダンジョンを脱出する。崩壊するダンジョンへ残されたマリは、ここではキナの治療は困難だと判断し、彼女を抱えて空を浮遊し、脱出した。

 

「クソぉ、何なんだよ! あのふざけたロボットはぁ!?」

 

 外へ放り出されたメンへは空中を浮遊し、突如となく現れた武蔵のゲッター3に対して悪態を付く。バンカーは一度吹き飛んで地面に落ちて潰れ、湖には巨大な穴が開き、汚れ切った湖の水がその穴へ土砂と共に流れ落ちている。

 吹き飛ばしたメンへによって出来た穴からゲッター3が空飛ぶマリと共に現れ、付近に着陸する。マリは安全な場所に退避してからキナの治療を続行し、武蔵のゲッター3は張三たちを降ろしてから巨大な怪物と化したメンへと交戦を開始した。

 外はメンへが装置を吸収して巨大化した所為か、霧が晴れており、外と同じ時間帯に戻っていた。霧は晴れた周辺には、装置を拐取する為にそれぞれの冒険者たちを雇っていた勢力の回収部隊が展開し、互いに交戦して乱戦状態と化していた。




黒鷹商業組合さんのキャラ、全員やっちまったな…。

これは、故石川賢さんの漫画みたいな展開…?

ラスボスはキナにする予定だったけど、せっかくのイカレキャラであるメンへが勿体ないので、メンへをラスボスにした。

次回はマリ以外の者たちがロボットに乗って、巨大化したメンへと戦います。


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ゲッターVSメンへ・ラン

前回のあらすじ

ドワォ!

えぇ、最初に謝っておきます。秋音色の空さん、ごめんなさい。


 装置を起動させ、吸収して膨張したメンへが巨大な怪物に変貌し、武蔵が奥の手であるゲッター3を召還した頃、それぞれの冒険者たちをバンカーのダンジョンへ送り込んだ各勢力は回収部隊を現地へ送り込んでいた。

 武蔵等がダンジョンへ入ってそんなに時間は経っていないが、外の時間では三ヵ月も過ぎていた。一向に報告も無ければ成果を回収した装置を持って来ない冒険者らに業を煮やした勢力は、回収部隊を差し向けたのだ。

 

「な、なんだこいつ等は!?」

 

「う、撃て! 奴らに取らせるな!」

 

 だが、各勢力が同時に回収部隊を差し向けた為、鉢合わせしてしまう。お互いの素性も知れず、そればかりか互いに敵対していたので、互いに砲火を交えた。

 無論、互いが同盟を結んでいるわけでは無いので、たちまちバンカーのある一帯は乱戦場と化した。

 

「出遅れたのが良かったらしいな。たかがトレーラー一両と一個大隊を借りるのに、駄々を捏ねた師団長に感謝せねば」

 

 ここに戦っていない勢力がある。それは出遅れたマリを手駒としているワルキューレであった。無数にある部隊の中で回収を担当するのは、ロー・スミスが率いるミッシングリンク隊でと陸軍の輸送部隊と機械化歩兵大隊ある。

 護衛の為に陸軍の機械化歩兵師団より一個大隊を引き抜いたが、手続き上のトラブルに見舞われ、出遅れて他の勢力に先を越されてしまう。そのおかげか、ミッシングリンク隊は乱戦に巻き込まれずに済んだ。

 

「どうします大佐? あれでは忘れ物の回収が出来ません。突撃しますか?」

 

「馬鹿者、他の連中は機動兵器を持ち込んでいるんだぞ。うちの機動兵器は半ダースのジンクスⅣだけだ。後は俺を含めた航空魔導士二個中隊に陸軍の機械化歩兵一個大隊。輸送のためのトレーラー一両。おまけに護衛の機械化歩兵大隊は対機動兵器の訓練を受けていない。あの乱戦場にこの程度の戦力で突撃など、自殺行為だ」

 

 同じく双眼鏡で帝国再建委員会、ヴィンデルの手先や現地勢力、共産主義者、第四帝国ことナチス、アグニカ・カイエル軍の乱戦状況を見て、副官は乱戦している戦場に装置を回収する為、突撃するのかと問えば、現状の戦力での突撃に、スミスは自殺行為と言って却下する。

 乱戦状態の各勢力は大隊規模であり、手っ取り早く忘れ物の装置を回収しようと思ってか、五つの勢力が投入した大隊の装備は全て人型巨大兵器であった。

 自分の部隊が連隊規模、それも機甲連隊なら突撃を行っている所だが、借りる予定だった戦術機大隊の引き抜きは師団に断られ、機動兵器と戦ったことも無い機械化歩兵大隊しか借りれなかった。機動兵器はあるにはあるが、幾らジンクスⅣが高性能機とは言え、空も飛べる太陽炉型MSで突撃などすれば、六機しか無いので返り討ちにされるのがオチだ。

 

「それにあのデカ物が見えないのか? 共産主義者(アカ)め、あんな物を武器商人共から買ったと言うのか。次元武器商人と言う連中は恐ろしい奴らだ」

 

 それにスミスは、共産主義者が投入したどの勢力よりも巨大な兵器を見るように告げる。

 共産主義者が旧百合帝国軍の装置回収に投入したのは、超巨大ロボット、否、超重量級のスーパーロボット「パゾロフ8000D」であった。スミスの言葉通り、あんな物を何処を売りつける次元武器商人の恐ろしさが垣間見える。それにワルキューレのデータに無い機動兵器である。

 超巨大なパゾロフ8000Dは、巨体と馬力、強力な電撃で他勢力の機動兵器を寄せ付けず、圧倒していた。

 

「な、なんて馬鹿でかいロボットなんだ!? ライフルどころかミサイルもビームも効きもしないぞ!」

 

「無理だ! あんな物を相手するなんて!」

 

 圧倒的な大きさと頑丈差、強力な電撃による攻撃で共産主義以外の勢力は湖一帯から後退し始める。

 

「見たか、軍国主義者に無法者共め! このデカ物を資本主義者より大枚叩いて買った甲斐があったな! 全く、異世界の科学は大したもんだ! これなら世界革命も夢では無いわ!!」

 

 パゾロフの操縦室内で、次元武器商人より購入したこの機体の性能に、操縦している共産主義者等は異世界の科学力に舌を巻き、自分らが掲げる世界革命も夢では無いと断言する。

 この頃、既にメンへが共産主義者を裏切って自分の仲間たちを虐殺しており、湖に発生していた霧が晴れていた。

 メルトやセゴーも逃げ出しており、武蔵が呼び出したゲッター3で怪物となったメンへが投げ飛ばされ、もうじき吹き飛ばされるバンカーより飛び出してくる。それを目撃した先行している隊より、パゾロフに乗る共産主義者の首領らに知らされた。

 

「同志、先遣隊より報告! 目標のバンカーより人が出てきます!!」

 

「例の物を奪取したのか! 直ちに回収しろ!」

 

 バンカーから出て来るメルトらを味方と勘違いし、回収するように命じたが、次の通信手の報告で違うと分かる。

 

「あっ、いえ、バンカーに向かった同志たちではありません! 無法者共です!」

 

「なんだと!? 失敗したと言うのか! ならば消し去ってしまえ!」

 

「はっ! バンカーより脱出する集団に照準を定めます!」

 

 出て来るのが自分らの仲間では無いと分かれば、バンカーに送り込んだ隊は全滅したと判断し、首領はメルトらの抹殺を命じた。指示に従い、砲手は電撃の照準をメルトらに定め、放とうとするが、ここに来てメンへが武蔵のゲッター3によって放り出される。

 バンカーが下から空高く吹き飛び、巨大な畏敬の怪物と化したメンへが外へ放り出されたところで、パゾロフの砲手は思わず電撃を中断してしまう。

 

「な、なんだあの怪物は!?」

 

「分かりません! 急にバンカーの下から現れて!」

 

「う、うぅ!?」

 

 ダンジョンから外へ放り出されたメンへの姿を見たパゾロフの操縦者らは思わず驚きの声を上げる。あの姿を見て、驚かないのは無理もない。他の勢力の者たちも異形のメンへの姿を見て驚愕する。

 

「あ、あれは…なんだ!?」

 

 双眼鏡で高みの見物を行っていたスミスらも驚愕し、その不気味な姿に思わずたじろいでしまう。

 

「なんだぁ、こいつ等ぁ? まぁ良いや、全部吹き飛ばせば!」

 

 地上へ放り出されたメンへは、周囲に装置を狙う複数の勢力が送り込んだ回収部隊が展開していることを知れば、鬱陶しいと感じて吹き飛ばそうと、口から強力な破壊力を誇るビームを吐く。

 狙ったのは帝国再建委員会やヴィンデルの手先たち、現地の極右勢力、ナチス、アグニカ軍であり、メンへが口から吐いたビームで消し炭にされる。その威力を見たスミスらと共産主義者等は驚愕し、戦慄した。

 

「あ、あいつ…メンへだよな?」

 

「あぁ! 現地の冒険者ギルドに潜り込んだ同志メンへだ…! まさか、例の物を奪ったのか!?」

 

「う、裏切ったのか!? あいつ! ならば、このパゾロフで粛清してやる!」 

 

 メンへを知る共産主義者等は驚愕するが、装置を奪ったことで裏切ったと判断し、パゾロフの電撃による攻撃を開始する。

 

「バンカー周辺に展開する各勢力の部隊、共産主義勢力以外が全滅です…!」

 

「なんて威力だ…! あれが、百合帝国の忘れ物だと言うのか…!?」

 

 怪物と化したメンへが吐いたビームで、共産主義以外の勢力の派遣部隊が消し去られたことに、スミスは百合帝国の科学力の高さを痛感する。それにマリを送り込んだのはスミスであり、あれだけの能力を有しているにも関わらず、失敗したマリを責めた。

 

「あれが出て来たとすれば、あの女、どうやら失敗したようだな。全く、自分の帝国の尻拭いも出来んのか!」

 

 まだ危険な現場にいるマリに罵声を浴びせた後、スミスはあろうことか、空軍に反応弾による爆撃を要請する。マリが不死身なので妥当とも言えるが、後で殺される羽目になるだろう。

 

「あんな怪物に暴れられては、こちらは大損だ。直ちに空軍に反応弾による爆撃を要請しろ!」

 

「しかし、まだマリ(ハイブリット)が居ますが」

 

「奴は不死身だ、反応弾程度では死にはせん。元の形に再生するには、数週間ほど掛かるだろうがな」

 

 マリがまだ居ると言う副官にスミスは不死身だから問題ないと返し、巻き込まれないように退避を命じる。

 

「さて、巻き込まれん内に退避だ。あの女が、あれを倒せるとは思えん」

 

 退避を命じれば、随伴の隊も含めて直ぐに従い、即座に元の場所へ戻っていく。スミスはマリが幾ら強くても、怪物と化したメンへに勝てないと判断し、暫し見送った後、退避する部隊の後に続いた。

 

 

 

「どうやら、もう始まっているようだな」

 

 放り出したメンへの後を追い、外へ出たゲッター3を駆る武蔵等は、外へ放り出した怪物が、ダンジョンへ冒険者等を送り込んだ各勢力の回収部隊と交戦しているのを目撃する。

 既に共産主義とワルキューレの部隊以外は全滅であり、メンへは古巣と言うか裏切った共産主義のロボット部隊と交戦している。共産主義にはパゾロフ8000Dがあり、巨体と馬力のおかげで何とかメンへと互角に渡り合っていた。だが、他のロボットはメンへの触手で玩具の如く叩き潰されている。

 

『うわぁぁぁ!!』

 

「ち、あんだけデカい図体をして! 木偶の坊か!」

 

 全員がゲッター3から離れる頃には、パゾロフはメンへに吹き飛ばされて地面に転倒していた。これに武蔵はパゾロフを木偶の坊と罵り、生き残った張三らに、ゲッターロボに乗せて戦わせるしかないと判断する。

 

「俺だけじゃ、どうにもならんな。ゲッター軍団を呼びたいところだが、今呼んだところで間に合わん! お前たちにも、あの怪物と戦ってもらうぞ。既にお前らの為に、ゲッターロボを用意している!」

 

「急過ぎるんじゃないの?」

 

 ゲッターロボに乗って戦えと言う武蔵にリアは急過ぎると言うが、問答無用で付近の広い場所に四体のゲッターロボが召喚される。ゲッター1やゲッター2、ゲッターライガー、ゲッターポセイドンだ。何故かマリの分は無い。

 

「あの、あの人の分は?」

 

『あの女は人間ではない、目前の奴と同じ化け物だ。それにゲッター線が守るのは人類だけだ。それ以外の種は、残念ながら滅んでもらおう』

 

「お前が守るのは人間だけか。まぁ良い、奴に一泡吹かせるなら!」

 

 ビッキーがマリの分は無いのかと言う問いに、武蔵は彼女が人間じゃないからと返し、ゲッター線の意思を伝えた。これに張三は武蔵が守るのは人類だけだと分かって嫌悪したが、あのメンへに一泡吹かせるために、敢えてゲッター線の僕の言うことを聞き、ゲッターライガーに乗り込んだ。

 張三がゲッターライガーに乗れば、リアはゲッター1に乗り、リンチェはゲッター2に搭乗、ビッキーはゲッターポセイドンに乗り込む。どのゲッターも、ワルキューレならギリギリ倒せる程の性能しか有していない。ゲッタードラゴンも出す予定であったが、乗れる人間が居ないし、人間ではないマリを乗せれば暴走したり動かない可能性があるので、武蔵は断念したのだ。

 

「ゲッターロボは本能で動かす物だ! 貴様たちはただ本能でゲッターを動かせば良い! 武器は音声入力となっている! お前たちはただ本能でゲッターロボを操り、奴と戦うのだ!!」

 

『本能で戦えって…まぁ、そう言うのは得意だけど…』

 

 ゲッターロボは本能で動かす物と武蔵は告げ、操縦方法も教えず、ただ本能で戦えと各ゲッターロボに乗る者たちに告げた。これに何名かは不満を漏らしたが、ビッキー以外は本能で戦うことに慣れており、直ぐにゲッターロボの感覚を掴んだ。

 

「なんだぁ、急に四体も増えたぞぉ? みんな纏めてスクラップにしてやるぅ!」

 

 ゲッターロボの出現に、メンへは五体のゲッターロボをスクラップにしようと口からビームを吐いた。強力なビームに対し、武蔵等が駆る五体のゲッターロボは散会して躱す。最初に仕掛けるのは、武蔵のゲッター3だ。

 

「手本を見せてやる! ゲッターミサイル!」

 

 手本を見せると言った武蔵はゲッター3の両肩部からせり出している二発の大型ミサイルを発射した。二発のミサイルが発射された後、ゲッター線の力で新しいミサイルがまだせり出してくる。発射されたミサイルは命中するが、メンへに対しては効果は無い。だが、怯ませることに成功する。

 

「クソぉ~、この俺にミサイルを当てやがってぇ!」

 

「基本は分かったよ! ドリルミサイル!」

 

「グェェェ!? 痛いっ! 痛いィィィ!!」

 

 ミサイルが当たったことにメンへが怒る中、武蔵の手本にコツを掴んだリンチェは、乗機のゲッター2の左腕のドリルを発射した。発射されたドリルミサイルはゲッターミサイルと同じく命中し、ドリルであるためにメンへの頬を抉った。続けざまにゲッター1に乗るリアがゲッタービームの存在に気付き、即座にメンへへ向けて発射する。

 

「この機体の射撃兵装は…これか! ゲッタービーム!!」

 

「ブェェェ!?」

 

 ドリルミサイルに続けて撃ち込まれたゲッタービームにメンへは更に苦しむ。まだ攻撃は続く。今度はビッキーが駆るゲッターポセイドンの背部に装備されたストロングミサイルを撃ち込まれる。

 

「災厄級の物よ。ストロングミサイル!」

 

 音声入力でやると教わってか、ビッキーはストロングミサイルの名を叫んでミサイルを発射した。撃ち込まれたストロングミサイルはメンへに命中し、更なるダメージを与える。

 

「グェァァァ…! 調子に、乗りやがって!!」

 

 ゲッターのミサイル攻撃で顔面の一ヵ所が破壊されたメンへは怒り、触手による連続攻撃を行う。

 

『来るぞ! 対処しろ!』

 

「くっ、ゲッターソード!」

 

 武蔵の掛け声と共に、各ゲッターロボは触手攻撃を防ぐ。ゲッター1を駆るリアはゲッター1の両肩より二振りのゲッターソードを出し、それで飛んでくる触手を斬り続ける。

 

「そう言ったって!」

 

 対処する術が回避しかないゲッター2に乗るリンチェはただ避けていた。ゲッター3の武蔵は伸縮性の二つの腕で触手に対処している。

 

「ちょっとコツを掴んだかも」

 

 ゲッターポセイドンに乗るビッキーは、得意のパンチで触手に対処していた。

 触手攻撃にゲッターロボ等は防ぐことしか出来なかったが、張三が駆るゲッターライガーだけは違った。機体の特性を直ぐに掴み、ライガーの機動性で全て躱し、左腕のミサイルを撃ち込んでから接近する。

 

「機体の特性は掴んだ。俺向きのゲッターだ」

 

 ライガーは自分向きの機体だと言いつつ、張三は左腕の傘状のパーツをチェーン付きで発射し、メンへの巨体に突き刺した後、巻き戻してから至近距離まで接近した。それから右腕をドリルアームに変形させ、一気にメンへの巨体に高速回転するドリルを突き刺す。

 

「ウェェェアァァァッ!?」

 

「おぉっ! これなら倒せるぞぉ!」

 

 高速回転するドリルを深く突き刺されたメンへは余りの激痛に絶叫する。これを見た武蔵は倒せるかもしれないと言ったが、現実はそう甘くは無かった。メンへは衝撃波を出し、張三のゲッターライガーを吹き飛ばしたのだ。

 

「なんてしぶとい奴!」

 

『あれでも倒せないのか!?』

 

「このガラクタ共がぁ! 俺を愛さない癖しやがって! 大人しく俺に殺されろよぉ!!」

 

 武蔵があれでも死なないのかと叫ぶ中、メンへは更に攻撃を強める。そんなメンへに対し、機能を停止したと思われていたパゾロフが起き上がった。乗っているのは、逃げたはずのメトルであった。

 

「アカ共め、こいつを上手く扱えねぇとな! こいつから血が出るとなりゃあ、殺せるはずだ!」

 

 乗っていた共産主義者等を殺害し、パゾロフを奪ったメトルはこれに乗った経験があるのか、手足のように機体を動かしてメンへに掴み掛った。

 

「クソ共産主義者共ぉ、まだ生きていたのかぁ!? クゥゥ、ぬぅぅぅん!!」

 

 巨大な両手がメンへを掴み、馬力でメンへを抱き潰そうとする中、メンへが身体から巨大な針を出してパゾロフの巨体に穴を開ける。頑丈な装甲を誇るパゾロフに穴が開き、挙句に貫通されたことにメトルは驚愕する。

 

「ば、バカな!? こいつは大陸間弾道ミサイルに耐える装甲なんだぞ! こんな気持ち悪い化け物が出した針なんぞが貫通できるはずがねぇ!!」

 

 パゾロフの装甲が怪物のメンへが出した針に貫通されたことに、メトルは動揺を覚える。そんなメンへにメトルは至近距離からの電撃攻撃を行う。

 

「クソったれが! これでも食らいやがれぇ!!」

 

「グェアァァァ!?」

 

「効いてるぞ! そのまま一気に感電死しちまぇ!!」

 

 この至近距離からの電撃にメンへは躱せず、強烈な電流を身体に浴びて苦しみ悶える。効いていることを確認したメトルは更に電流を強め、怪物メンへを感電死させようとする。怪物であるメンへにも生きる渇望がある。パゾロフに突き刺している針から更に多くの針を生み出し、巨大ロボの動力源に突き刺さり、内部で爆発を起こし始める。

 

「な、なんだァ!? パワーが上がらねぇ! それに爆発が!?」

 

 急に内部爆発し、電撃のパワーが低下したパゾロフの操縦室内でメトルは動揺を覚える。そんな針を突き刺したパゾロフに、メンへは針の長さを伸ばして敵機を内部から破壊しようとする。

 

「死ねぇぇぇ!!」

 

「い、一体どうなって!? ぐへぁ!?」

 

 もはやパゾロフが使い物にならないと判断したメトルは、燃え盛る操縦室より脱出を試みようとしたが、必死のメンへが生み出した無数の針が操縦室まで届いており、足元から突き出て来た針で全身を串刺しにされた。

 

「こ、こんな所でぇ…終わるなんて…よぉ…!」

 

 床から突き出た無数の針で全身を串刺しにされながらも、メトルは脱出用のハッチに手を伸ばしたが、その手は届くことなく、本人の不本意なこの世界で人生の幕を下ろすこととなった。全身を針で串刺しにされたメトルの遺体は操縦室内の燃え盛る炎に焼かれ、黒焦げの焼死体となる。

 やがてメンへが針を引き抜くころにはパゾロフは爆発し、巨体から剥がれ落ちた破片は地面に続々と落下していく。メトルの死は無駄に思えたが、ゲッター軍団の反撃の隙を作る時間を稼ぐことには成功した。

 

「行くぞぉ! ゲッターアタック!!」

 

 ゲッター3の武蔵の掛け声と共に、予期せぬメトルの攻撃で稼がれた時間でゲッター軍団は攻撃を仕掛ける。先に仕掛けたのはリアのゲッター1であった。両手に握るゲッターソードの柄同士の下部を装着し、ゲッターセイバーを作り出す。

 

「ゲッターセイバー! そんでゲッターウィング!」

 

 声を出してゲッターセイバーを作り出せば、ゲッター1の背部よりマント状の翼を音声入力で展開させ、メンへに突撃を仕掛ける。これにメンへは無数にある触手の先端を鋭利に尖らせ、串刺しにしようと放つが、本能でゲッターロボを駆るリアはそれを全て避け、ゲッターセイバーで巨大な怪物の全身を切り刻む。

 

『ハァァァ!!』

 

「クェェェッ!?」

 

「まだまだ! ゲッタードリルアタック!!」

 

 全身を切り刻まれたメンへの巨体から大量の血が噴き出す中、リアのゲッター1が即座に離脱してから、リンチェのゲッター2のドリルアタックが炸裂する。巨体にドリルを突き刺したリンチェは、更にゲッター2の必殺技であるドリルストームを叩き込んだ。内部で竜巻を発生させられたメンへの巨体の一部が砕ける。

 大量の血と肉片が巻き散らされるが、まだまだ攻撃は続く。次に仕掛けたのはビッキーのゲッターポセイドンによる竜巻攻撃だ。技名を叫んだ後、首周りの装甲が展開し、その中にあるフィンガ高速回転して暴風を生み出す。

 

「ゲッターサイクロン!」

 

 放たれた暴風はメンへを襲い、更なるダメージを与えた。全身から血が噴き出し、一部が欠けているが、メンへはまだ生きている。

 

「て、テメェらァ…! いい加減に…」

 

『ドリルアーム!!』

 

 まだ生きているメンへは直ちに反撃を試みるが、次は張三のゲッターライガーによる攻撃が来る。光の如く一気にメンへに接近し、ドリルアームで一気にその巨体を貫く。貫かれたメンへの巨体に大きな穴が開き、メンへは瀕死の状態となる。

 

「とどめは俺だ! とりゃぁぁぁ!!」

 

 そんな瀕死状態のメンへに畳み掛けるように、ゲッター3を駆る武蔵は操縦桿を強く動かし、必殺技である大雪山おろしを仕掛けた。伸縮する両腕を伸ばしてメンへの巨体を絡め取り、振り回して空に向けて投げ飛ばす。相手が空中高く投げ出されれば、武蔵は一同に射撃兵装による攻撃を命じる。

 

「今だ! 総員射撃武器であの怪物を攻撃しろぉ! ゲッターミサイル!!」

 

『ゲッタービーム!』

 

『ドリルミサイル!』

 

『ストロングミサイル!』

 

『ライガーミサイル!』

 

 この掛け声に合わせ、各ゲッターロボに乗る者たちは機体の射撃兵装を一斉射をメンへに放った。凄まじい大爆発が起こり、大量の焦げた肉片が地面に降り注ぐ。

 

「やったー! これであんな奴ともオサラバだね!」

 

『本当に気持ち悪い奴だったわ! 清々した!』

 

『まだ終わってない気が…』

 

 怪物とかしたメンへをようやく倒したと思い、皆が喜んでいた。だが、キナの治療を終えたマリは、メンへがまだ倒し切れない処か、逆に進化していると呟く。

 

「あんだけ撃ってもまだ死なないっての…? それに進化してる…!」

 

『何っ!? 奴が進化しているだと! 馬鹿な! 進化はゲッター線に選ばれた者しか出来ぬはず!!』

 

 マリが倒したはずのメンへが進化していると呟いたので、それを耳にした武蔵は動揺する。マリの言う通り、爆風が晴れた先に居たのは、地面へ落下する巨大な怪物の死体ではなく、何かの力に進化したメンへの姿であった。

 あの巨体から随分と違って随分と小さくなっており、体格は衣服を纏わぬ人型に戻っているが、外見は神々しくて大柄だ。だが、あの怪物の頃より不気味さは更に増しており、全てを呑み込んでしまうほどだ。

 人の姿に戻ったメンへは左手の掌を広げ、全身に伝わる底知れぬ力を感じ、これなら自分の願望が叶えられると口にする。

 

「力が高まる、溢れる…! これで俺は…みんなに愛される…ッ!!」

 

 メンへが感じている力は、マリを遥かに上回る物であった。否、時間を止められるマリすら敵わない物だろう。ゲッター線に近いと言って良い。

 そんな力を宿すまでに進化したメンへは、地上に居るゲッターロボ軍団とマリを見て不気味な笑みを浮かべた。




次回で最終回に、なる予定…。


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自己愛の怪物メンへ

ごめん、後一話必要。


 空を浮遊する神々しく進化したメンへは、地上に居るゲッター軍団とマリを見て笑みを浮かべた後、その姿を消した。

 

「逃げた?」

 

 リンチェはメンへが姿を消したことに、もう戦いたくない彼女は逃げたと思い込んでしまう。だが、あのメンへが自分をここまでにした武蔵等を前に逃げるはずが無い。

 それを理解しているマリは、念の為に治療を終えて寝ているキナとシモーナの周りに防御結界を張り、メンへが何処から攻撃してくるか確かめるべく、時間を止めた。

 

「嘘っ…!?」

 

 時間を止め、メンへがどこに居るか確認すれば、自分の方へと近付き、既に攻撃の体勢を取っている所だった。進化したメンへは光の速さで移動できるようだ。それに時間を止めている自分に気付いている様子がある。

 これにマリは驚きつつも、時間を動かせば確実に蹴りによる攻撃を受ける距離に居るため、罠を張ってからそこから離れる。

 離れたところで時間を動かせば、進化して恐ろしい存在となったメンへはマリが放った罠を蹴る。罠は爆弾であり、通常の者なら爆弾に蹴り込んだ足が吹き飛ぶところだが、メンへが撃ち込んだ右足には一切の傷もない。

 

『い、いつの間に!?』

 

『なんて速さ!? 災厄どころじゃない!!』

 

「ちょっと、最悪じゃんこれ!?」

 

 魔法の爆弾ですら傷付かないメンへにマリは驚愕し、武蔵等ゲッターロボに乗る一同はいつの間にか後方の彼女の元へ来ていた神々しい怪物に驚愕する。

 それだけでない、メンへはなんと蹴り込んだ右足から斬撃を放ったのだ。それを受けたマリの身体から血飛沫が上がる。メンへの攻撃はそれだけで終わらず、神速でビッキーのゲッターポセイドンの背後に姿を現す。

 

『う、後ろだ!』

 

「えっ? キャァァァ!!」

 

 武蔵がビッキーのゲッターポセイドンの背後に現れたメンへの存在を知らせたが、既に蹴りを打ち込まれていた。

 その蹴りを受けたゲッターポセイドンは重装甲とスーパーロボット特有の重量があるにも関わらず、遥かに小さいメンへの蹴りで吹き飛び、挙句に上半身と下半身に別れて破壊された。

 これ程の破壊されても、ビッキーは生きており、奇跡的に気絶した程度で済む。だが、後頭部を強く打って出血し、それにメンへの存在もあるので油断はできない。

 

『このぉ! ゲッタービーム!』

 

 次にメンへが標的にしたのは、リアのゲッター1であった。自身に向けて放たれたゲッタービームを神速で躱し、一気に目前まで接近して右手を手刀にして胴体を切り裂く。通常なら全く無意味な動作であるが、神のような力を持ったメンへならゲッターロボの胴体を切り裂くほどの斬撃を撃ちだせるのだ。

 

「嘘ッ…!? そんなことが!?」

 

 彼が手刀で放った斬撃でゲッター1の胴体は切り裂かれ、地面に倒れた。リアは驚愕する余り動けず、落下の衝撃で頭部を強く打って気絶する。

 

『こっちも速いんだよ!』

 

 リアのゲッター1が倒れる中、リンチェのゲッター2がメンへにゲッターアームによる攻撃を仕掛けた。マッハ越えの速度を出せるゲッター2なら追い付けると思っていたリンチェであるが、メンへは高速で突き出されたアームを余裕で躱し、挙句に破壊した。

 

『だったら、ゲッタードリル!』

 

 ドリルで抉り殺そうと放つリンチェであるが、メンへは不気味な笑みを浮かべながら左手の人差し指で迫るドリルを突いた。メンへの指が先にドリルの高速回転で引き千切れそうだが、逆にゲッター2のドリルが粉微塵になって潰れた。

 

「そんな…」

 

 ドリルでさえ破壊するメンへにリンチェは絶望する中、神の如く進化した男はドリルを潰した左手の人差し指からビームを放ち、ゲッター2を破壊する。無論、リンチェは無事である。メンへの存在の所為で無事とは言い切れないが。

 

「ば、バカな…! ゲッターが、ゲッターロボがあんな訳の分からん奴に破壊されるなど…!」

 

 立て続けに三機のゲッターロボが破壊されたことで、ゲッター線の僕である武蔵はゲッター3のコクピット内で呆けていた。無理もない、神にすら対抗できるゲッターロボが、訳の分からない存在にガラス玉のように破壊されているのだ。これを見て正気でいられるのは、かつて武蔵と共に肩を並べて戦い、ゲッター線に選ばれた流竜馬か戦闘狂くらいだ。

 そんな呆けた武蔵に気にせず、あのメンへを放っておけば取り返しのつかないことになると判断し、我が身を犠牲にしてでも殺す覚悟を決めた張三は、ゲッターライガーの操縦桿を強く握って無謀にも挑んだ。

 

『ライガーミサイル!』

 

「フフッ!」

 

 手始めに牽制としてライガーミサイルを連発する張三であるが、メンへは全て見えているように全弾を躱し切る。次にチェーンを打ち込み、メンへを拘束しようと試みるが、逆に手刀で破壊されてしまった。

 

『ドリルアーム!!』

 

 だが、それらは全て動きを止めるための牽制。本命のドリルアームをメンへに叩き込んだ張三のゲッターライガーであったが、ゲッター2のドリルと同様に破壊されてしまった。

 

「なん、だと…!?」

 

「馬鹿だな、同じ攻撃はね…通じないってんだよぉ!!」

 

 ゲッター2よりも速いゲッターライガーのドリル攻撃すらメンへに防がれたことに驚愕する張三に、メンへは嘲笑いながらゲッターライガーの懐に瞬間移動し、強烈な蹴りを入れ込んだ。

 この蹴りを受けたゲッターライガーはゲッターポセイドン同様に真っ二つに叩き割られた。そこからメンへは追撃の二発目の蹴りを前に割れた胴体に叩き込み、張三を殺そうとする。

 

「う、うわぁぁぁ!!」

 

 だが、そうするまでもなく、張三は修理の際に密かに仕掛けられた爆弾が爆発した。

 

「あれぇ、なんか爆発したぞぉ? まぁ、良いか」

 

 ゲッターライガーの上半身が爆発したことにメンへは疑問に思うが、直接殺す手間が省けたと喜び、気にも留めなかった。

 爆発して地面に落下していくライガーの残骸の中に、張三の頭部が混じっていた。無論、メンへは気付いていない。

 

「なんと恐ろしい奴…! もはや、この惑星諸とも破壊しなくてはならんようだな!」

 

 四機のゲッターロボを破壊したメンへに、武蔵はこの惑星諸とも自分のゲッター戦艦「ベアー号」による主砲で破壊するしかないと判断する。ゲッター線の僕である武蔵をこれ程までに追い詰めることから、それ程にメンへは危険な存在と言うことだ。

 

「むっ、あれは反応弾! しかも既に発射態勢! まずは、反応兵器で消せるかどうか試そう…!」

 

 その前に反応弾を搭載したワルキューレ空軍所属の可変戦闘機が現場に到着したのか、既に発射体制に移っていた。これに気付いた武蔵は撃墜もせず、反応兵器でメンへが消せるかどうか見定めるために母艦への転送帰還を止める。

 

「嘘でしょ!?」

 

 復活したマリも気付いており、キナとシモーナの近くに向かい、反応弾を受けても守れそうな魔術防壁を周囲に張る。その頃には反応弾を搭載したミサイルが発射された後であり、今から逃げても間に合わない程だ。自分に向かって飛んでくる反応弾に対し、メンへは余裕の笑みを浮かべ、右手で向かって来るミサイルを指差す。

 

「奴め、何をする気だ? ここで迎撃したところで、反応弾の爆風から逃れられんぞ」

 

 逃げることなく指差すメンへに武蔵は疑問を抱く。何故ならここで迎撃したところで、反応弾の爆風に呑み込まれてしまうからだ。そんなことも気にせず、メンへは指差しからビームを発射し、反応弾を迎撃した。

 

「馬鹿な奴め、自滅しろ! ゲッターシールド!」

 

 反応弾を迎撃したメンへに対し、武蔵は死んだと断定して爆風より身を守るため、ゲッター3に搭載しているゲッターシールドを展開した。だが、爆発は起こらない。そればかりか爆発は最小限の範囲で抑え込まれてしまった。これに武蔵とマリは驚愕する。

 

「ば、バカな…!? 反応弾の爆発を最小限で抑えただと! 一体奴は…!」

 

 反応弾の爆発を最小限の範囲で抑え込んだメンへの所業に武蔵が驚愕する中、そのあり得ない行為をやってのけた存在がゲッター3の目前まで瞬時に来た。

 

「うっ…!?」

 

 一瞬で目前まで来たメンへに、武蔵は蛇に睨まれた蛙の如く動けなかったが、攻撃を受ける前に何とか分離するボタンを押すことは出来た。中央のイーグル号、下のジャガー号は破壊されてしまったが、武蔵が乗っているベアー号は無事に上空へと脱出していた。

 これにメンへは武蔵が逃げたと判断し、負傷者らを守るために魔術防壁を張っているマリに襲い掛かる。当然、マリもバスタードソードを構えて迫り来るメンへに対処するが、幾ら時間を止められる能力を有する彼女でも、今は力が半減しており、神に近い存在となった彼には敵わなかった。一方的に攻撃を受けるだけで、マリの斬撃が躱されるばかりだ。

 

「どうしたぁ? 時間を止めて見ろぉ。じゃなきゃ勝てないぞ、チート女」

 

 一方的に加減して殴って来るメンへはマリを挑発する。これにマリは空いた左手で衝撃波を地面に放ち、メンへと距離を取ってから自分の背後に無数の武器を召還させ、それを標的に向けて撃ち込む。

 

「面白い手品だ。でも、俺には効かない」

 

 自分に向かって飛んでくる無数の武器に、メンへはそれを手品と表し、全てを防ぎ切った。マリがメンへに向かって放った召喚武器は、歩兵が持っていそうな飾り気のない槍や剣と言った物であり、容易く腕の振り払いで破壊されるばかりだ。これにマリは種類や数を増やして対抗するが、メンへを止めるには至らない。

 

「これなら!」

 

「ミサイルか。君、チート過ぎて学習能力が抜けたんじゃないの?」

 

 余裕で歩きながら近付くメンへに対し、マリはミサイルなどの召還して攻撃を行ったが、先の反応弾を搭載したミサイルが迎撃されたことを知らないのかと問われる。無論、命中しても全くメンへには傷一つ付いていない。そればかりか瞬時に近付かれ、腹を右手で貫かれた。

 

「がぁ…!?」

 

「全くつまらないな。そんな中古品共を守ってるから、こうなるんだ」

 

 メンへはマリを腹で貫きながら、彼女が全力を出していないことを見抜き、キナたちを守るのに力を割いたから負けると告げ、腹部から右手を引き抜き、更に頭を掴んで顎に膝蹴りを打ち込む。蹴られたマリが血を吐けば、更に殴り続ける。マリを殴るメンへの顔は笑っており、彼女が痛がる様を楽しんでいた。

 ただメンへに殴り続けられるマリを見て、武蔵はキナとシモーナを守るのに使っている魔法障壁を解けば、勝てるかもしれないと思ったが、彼女はそれをしない辺り、もう勝ち目はないと判断する。もっとも、マリが全力を出したところで、装置を吸収して恐ろしく進化したメンへに勝てるかどうかわからないが。

 

「反応弾でも倒せない奴に、あの不死身が取り柄だけの女が勝てる訳も無いか。やはり、ゲッターの力を…」

 

『待つのだゲッター線の僕よ。あの者に勝つチャンスはある』

 

「神だと…? 神様が何の用だ? 今頃になって出てきやがって」

 

 碌に反撃も出来ず、嬲り殺しにされているマリを見て、武蔵はやはりゲッターの力でこの惑星諸ともメンへを消すしかないと思ったが、その選択は出来なかった。なんと、ベアー号のコクピット内の前に神であるライデンの幻影が現れ、待ったを掛けたのだ。

 神であるライデンがこの世界に来たと言うことは、それ程に究極の怪物に進化したメンへが危険な存在であると言うことだ。

 まだチャンスは残っていると言うライデンに、武蔵は今さら出て来た神に苛立ち、何をしに来たのかと問い詰める。それにライデンの幻影はキナに指差し、彼女が逆転のチャンスであるとジェスチャーで告げる。

 

「あの嬢ちゃんが逆転の鍵だと? フン、迷っている暇は無いようだな。時間を稼いでやる」

 

 キナが逆転のチャンスだと言うライデンの言葉に、武蔵は疑念を抱きつつも迷っている時間は無いと思い、時間稼ぎをすると言って操縦桿を動かし、メンへの方に機首を向けた。

 

 

 

 マリを嬲り殺しにしているメンへに、武蔵は機銃掃射を仕掛けた。ベアー号の機銃掃射でマリは数十発を身体に浴びて死亡する。当然、究極の怪物に進化したメンへには全く効かず、飛び回るベアー号を睨み付ける。

 

「鬱陶しいなぁ」

 

「もっと鬱陶しくなるぞ」

 

「あぁん、誰だお前?」

 

 鬱陶しいベアー号に乗る武蔵から血祭りに上げようとするメンへであったが、突如となく現れ、声を掛けてきた拳法家の男に苛立ち、誰なのかと睨み付けながら問う。

 彼の名はリュウ・カン。神のライデンに仕える戦士で、炎を操る中国拳法家である。時間稼ぎをするためにメンへに挑むのだ。

 

「リュウ・カン。お前はこれから倒される運命にある」

 

「いきなり出て来てふざけたこと抜かしやがって…! 死ねぇ!!」

 

 自己紹介をしたリュウはメンへに向け、お前は倒される運命にあると啖呵を切る。これに腹を立てたメンへは、右手を翳して強烈なビーム攻撃を見舞う。その攻撃をリュウは紙一重で躱し、龍の頭の形をした飛び道具を飛ばす。

 

「どうした、強いんじゃないのか?」

 

「てめぇ、俺を愛さない奴だなぁ…! だったら殺す!!」

 

 放った飛び道具は全く効いていなかったが、リュウは気にすることなく挑発する。これにメンへは更に激昂し、攻撃を続ける。上空からは武蔵のベアー号が襲い、地上からはリュウの拳がメンへの動きを止める。立派に二名は時間稼ぎを果たしていた。

 完全にメンへの注意が武蔵とリュウに向く中、ライデンは再生したマリを抱えてキナの方へと運ぶ。彼女が目を覚ませば、魔法障壁を解くように説得する。マリが張った魔法障壁は、神であるライデンでも解けない代物なのだ。

 

「ゴットスレイヤーよ、この結界を解いてもらいたい」

 

「一体何よ? どういうことなの?」

 

「あの少女が、この絶望を希望に変える力を秘めている。君ではあの怪物には勝てない」

 

 勝てないと言うライデンの言葉に、マリは苛立ってバスタードソードの剣先を向けた。これにライデンは怖気ることなく、マリに向けて頭を下げて頼み込む。

 

「時間が無い。そうでなければ、この世界どころか、君も死ぬ」

 

 神が頭を下げたことに、マリは思わず動揺を覚える。だが、ライデンは時間が無いと言うので、直ぐにマリはキナとシモーナを守る魔法障壁を解いた。

 武蔵とリュウが全力でメンへを抑え込む中、ライデンは寝込んでいるキナを起こし、懐よりある物を出した。それは古めかしく、何か神秘的なデザインをした小物だ。ライデンは膝を地に着けて視線を近付け、キナに世界を救って欲しいと告げる。

 

「誰…?」

 

「唐突に済まないが、君に世界を救ってもらいたい」

 

「えっ? 何言ってるの?」

 

「…やもえんな」

 

 起きて早々に流石に世界そ救えなどと言われ、動揺し無い者は居ないだろう。キナは動揺する中、武蔵とリュウはメンへに苦戦しているようだった。これを見たライデンは、やもえずに禁断の手を使う。

 

「いきなりではあるが、君は罪を犯し過ぎた。この世界で致し方ない事であるが、君の犯した数々の罪状、天界では許される事ではない」

 

 それは、死ねば地獄行きは確実であると言う事実を突き付ける事であった。地球を守る神とは思えぬ強硬手段だ。それ程までに、メンへが危険な存在であると言うことだろう。

 事実、キナはここに至るまで数々の犯罪を行っている。具体的に述べれば、窃盗、殺人、売春と言った所だろう。窃盗と売春、殺人に関しては、この地獄のような世界で生きるために仕方がないのだが、自分より幼い子供や売春の客より金品を奪ったこともある。だが、彼女は客との間に出来た子供を二人も殺している。

 

「君は生きるために罪を犯し続けた。この世界の境遇を考えれば、それは仕方が無い事で、誰しもが行う行為だ。だが、天界は君に同情せず、悪童として地獄へ送り込むだろう。このままではあの怪物に殺されるか、ゲッター線の意向で死ぬ。さすれば地獄行きは確定だ。これを取るか取るまいか、君次第だ」

 

 神の力でキナの頭の中を覗き、彼女が犯してきた罪を知ったライデンは、地獄行きは確定であるとキナに突き付け、小物を取るか取らないかの選択を迫った。

 この選択肢を突き付けられたキナは動揺し、どうすれば良いかマリの方を見る。だが、ライデンは彼女が介入するのを恐れてか、聞こえないように結界を張っていた。そればかりかリュウが突破され、マリはメンへの対処に追われている。キナ自身の意思で決める他ない。

 

「雁首揃えてそんな使い古された中古なんぞ守りやがって…! なんで俺を愛さないんだよぉ! そんなにその中古品が大事か!?」

 

 自分が卑下するキナを必死に守る三名にメンへは理不尽に怒り、立ち上がって飛び蹴りを食らわせに来たリュウを衝撃波で吹き飛ばした。上空から武蔵が駆るベアー号が機銃掃射を仕掛けるも、躱されて指から発射されるレーザーで追い払われるだけだ。

 そんな自分を愛さないと言って怒るメンへに向け、ようやく全力を出すことが出来るマリは封印魔法を唱えながら自分勝手だから愛さないと告げる。

 

「あんた見たいな暴力的で自分勝手な奴、好きになるわけ無いでしょ。みんなに愛されるように努力しなさいよ」

 

 メンへの四肢を封印魔法の鎖で封じたマリは正論を告げたが、火に油を注ぐ結果となった。正論を言われたメンへは泣きじゃくりながら激怒し、可哀想な自分を愛さない奴らが悪いと喚き散らす。

 

「っ!? ンンンーッ! 僕ぁ! 僕は可哀想なんだよォ!! ママは僕を愛そうとしないまま死んで、パパは僕が必死に頑張ったのに褒めてくれないッ! そればかりか殺そうとしたんだッ!! こんな可哀想な僕なのに、誰も共感して慰めもしない上に愛そうともせず、挙句に嫌うなんて…! 僕を愛さない奴はクズだ! 僕を嫌う奴は生きる価値が無いゴミだ! 僕を好きにならない奴は絶対悪だ! 正義その物である僕こそがみんなに絶対的に愛される存在なんだ!! 消えろカス共ぉーッ!!」

 

「なんて自分勝手な!」

 

 自分の感情と屁理屈を喚き散らしながら、メンへはマリの封印魔法の鎖を怒りの力で引き千切り、右手からビーム砲を発射した。これにマリは驚き、リュウは余りにも身勝手過ぎるメンへの言い分に驚愕する。

 飛んでくるビームにマリは魔法障壁を張って防ぎ、リュウは身を挺してでも、恐ろしいほどに身勝手なメンへを殺させねばならぬと思い、究極神拳(フェイタリティ)を仕掛ける。

 

「この男、ここで殺さねばならん! ウォォォッ! 激地真龍尾拳(げきちしんりゅうおけん)!!」

 

 メンへに側転蹴りを喰らわせ、大男の首をも吹き飛ばすアッパーカットでトドメを刺そうとしたが、究極の怪物の首は飛ばなかった。

 

「何ぃっ!?」

 

「邪魔だァァァッ!!」

 

「ぬわっ!!」

 

 全く効かなかったことに驚愕する中、メンへは怒りの拳をリュウの顔面に打ち込む。その強烈な右拳を打ち込まれたリュウの顔面の骨にヒビが入り、鼻の骨は完全に折れる。強烈なパンチを顔面に受けたリュウは、当然ながら地面に倒れた。

 リュウが倒れたことで、次のメンへの標的は自分に正論を叩き付けたマリであった。恐ろしい速さで迫り、彼女が対処するよりも前に蹴りを喰らわせ、殴りの追撃を加える。マリが崩れれば、最後の砦はライデンとなる。

 

「退けぇ! ビッチがぁ!!」

 

「がぁぁ…!」

 

 だが、マリは耐え切れず、血反吐を吐きながら吹き飛ばされた。これにキナは動揺する。ライデンも額に汗を浸らせ、焦りを見せた。

 

「ちっ、もうやられたか! あの嬢ちゃんは何をしてるんだ? やはり俺が腹を括るしか無いな」

 

 リュウに続いてマリも倒されれば、ベアー号に乗る武蔵はあの手しかないと覚悟を決める。それはベアー号による特攻であった。ゲットマシンの特攻なら、キナの決断するには十分の時間は稼げると判断してのことだ。

 

「この俺が奴に特攻するんだ! お前も腹括れよ、嬢ちゃん!!」

 

 覚悟を決めた武蔵は迷わずメンへにベアー号の機首を向け、特攻を仕掛ける。同時にキナに決断を迫れば、メンへの攻撃を受けながらも操縦桿を強く握り、真っ直ぐと標的を目指す。

 

「わ、私の為に…!」

 

 武蔵のベアー号が特攻する光景はキナにも見えており、散々罪を犯してここに居る自分が決めるか決めないかの為に、特攻する彼を見た彼女は茫然とする。やがて武蔵のベアー号がメンへに特攻すれば、大爆発を起こし、メンへは大ダメージを受ける。尚、ヘルメットは何故か無事だった。

 

 この武蔵の特攻のおかげでかなりの時間が稼がれ、キナの決意も固まった。生きるために他者から金品を盗み、騙し盗り、奪った。時には人を殺め、寝込みも襲って殺したこともあり、生まれたばかりの我が子を二人も殺めた事もあった。

 

 そんな自分が出来る事はただ一つ、全ての罪を認め、罪を償うこと。死にたくないや死んで地獄へ行きたくないのが本音だが、こんな自分でも守ってくれたマリや武蔵、リュウに対する恩やチャンスをくれたライデンに報いるためでもある。

 武蔵の特攻で覚悟を決めたキナはライデンが差し出した小物を取り、両手でそれを強く握った。その瞬間、キナの全身は眩い光で包まれた。




一万字越えなので、切りが良い所で投稿~。

最終話は近日中に上げる予定です。


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償いの戦士

これで最終回です。


「クソぉ、あの復活野郎…! 特攻なんかしやがって…!」

 

 キナが覚悟を決め、ライデンの申し出を受け入れた後、武蔵の特攻で大ダメージを受けたメンへは再生していた。かなりのダメージを負ったが、僅か数秒足らずで不老不死なマリよりも速く元の状態へ再生する。

 

「まぁいいや。特攻なんかした馬鹿は二度と出て来ねぇし。この世界の奴ら全員ぶち殺してから、別の世界へ行って愛してもらおうかな」

 

 そんなメンへは気にも留めず、特攻した武蔵を馬鹿にしつつ、この世界の人間を皆殺しにすると口にした。だが、それは叶うことは無い。何故なら、止める者が居るからだ。

 その存在を知らず、自分を止められる者は誰も居ないと思っているメンへは、まだ再生しきっていないマリをいたぶろうとビームを撃ち込む。これに当たれば、マリは肉片と化すはずだが、上がったのは土煙であった。

 

「あ?」

 

 これにメンへは首を傾げ、思わずマリを探す。金髪の女は目立つので、直ぐに見付かった。だが、誰かに抱きかかえられている。その何者こそ、メンへを止める存在であった。

 容姿はやや禍々しいが、メンへとは違って全身に正義に満ち溢れたオーラが見られ、不思議と安心感を覚える。

 また邪魔をする者が出て来たことに、メンへは苛立ちながら何者かと問う。

 

「またか。誰だよお前?」

 

「お姉ちゃん、ありがとね」

 

「まさか、キナちゃん…?」

 

 メンへの問いに何者かは答えず、腕の中に抱えているマリに礼を言う。正義の怪物にマリはその正体と悟った。この自分を抱えている怪物こそ、あのキナであると言うことを。

 キナはライデンより手渡された小物を握り、正義の怪物に変身したのだ。自分が犯してきた罪の数々に対する罪悪感と後悔、それに対する償おうとする覚悟。こんな自分でも助けて守ってくれた人々に対する感謝の気持ちと助けたいと言う思いで、彼女は正義の心に目覚め、戦える身体に変身した。

 

「キナちゃん、貴方なの…?」

 

「そうだよ。こんな私でも、守ってくれた人たちを助けるために生まれ変わった。だから安心して。あいつは私がどうにかするから…」

 

 マリに問われたキナは、償いと助けたいと言う思いで生まれ変わったと答えた。

 

「無視してんじゃねぇぞ! ゲテモノ野郎!!」

 

 一方で無視されたメンへは怒り、ビーム攻撃を仕掛けたが、来ることが分かっているキナはマリを抱えたままライデンの元へ瞬間移動する。彼女を地面に優しく下ろせば、ライデンにマリを守ってくれるように頼み、追撃を仕掛けようとするメンへに立ち向かう。

 

「お願いします」

 

「承知した」

 

 キナの頼みを受け入れたライデンは防御結界を張り、メンへの尋常じゃ無い攻撃を全て受け流す彼女の背中を見守る。地面に降ろされたマリはバスタードソードの剣先を再びライデンに向け、キナに何をしたのかと問い詰める。

 

「あんた、キナちゃんに何したのよ? 無理やりしたんじゃないでしょうね?」

 

「あの者が望んでしたことだ。お前と自分を気に掛けてくれた者たちを守りたい一心でな」

 

 マリが強制したのかと問われたライデンは、キナが望んだと正直に答えた。事実、キナは望んで正義の怪物に変身した。そして今、この世界と自分を助けてくれた者たちを守るために、世界を滅ぼす存在であるメンへと戦っている。

 

「止せ、帰って足手纏いだ」

 

「どうしてよ?」

 

「キナが償いの戦士となった時点で我らの勝ちだ。最後の仕上げは、宇宙に居るゲッター線が完遂する…!」

 

 キナに加勢しようとするマリであるが、ライデンはそれを止める。何故なら既に勝利のビジョンが見えているからだ。キナが正義の怪物、否、償いの戦士としてなった時点で勝利していたのだ。

 最後の仕上げは、武蔵もといゲッター線が宇宙で行うと天を指差しながら告げた。どうやら、ライデンは武蔵らゲッター軍団に最後の片をつけさせようとしているらしい。

 つまりキナではメンへを倒せないことだ。現にキナはメンへの攻撃を全て受け流し、カウンターを入れているが、大したダメージは与えていない。

 

「クソぉ! なんで攻撃が当たらない!? あいつの攻撃は効いていないのに!」

 

 大したダメージは与えられないが、精神的なダメージは与えられていた。自分の攻撃が当たらないことに苛立つメンへの反応を見たキナは、変身直後に言われたライデンの言葉を思い出す。

 

『成功だな。内から漲る力を感じているな? しかし、速さと守りは自己愛の怪物(メンへ)と同等であるが、力の方は及ばん。だが、勝つ見込みはある』

 

 償いの戦士として覚醒し、変身したキナであるが、はっきりと勝てないとライデンは告げた。これにキナは落胆しそうになるが、ライデンはそれを見越してか、勝てる見込みがあると告げる。それは、ゲッター線に頼る事であった。

 

『巴武蔵、その男は知っているな? あの者はゲッター線の僕。あの者が属する軍団であれば、自己愛の怪物など一捻りだ。しかし、それはこの星の死を意味する。自己愛の怪物は、宇宙で倒すほかない。今の君なら、それが可能だ』

 

 ライデンが言う勝つ見込みとは、先ほど述べた通り、メンへを宇宙へ飛ばし、そこに待ち受けている武蔵率いるゲッター軍団の分遣隊に排除させる物だ。

 問題は以下にしてメンへを宇宙へ飛ばすことだが、キナは飛ばし方を知っていた。武蔵が何度も自分に披露した「大雪山おろし」である。武蔵が柔道で生み出した技の一つであり、相手の力を利用して体勢を崩し、自分の身体に引き込んで回してその遠心力の利用で投げ飛ばす荒技だ。

 だが、幾らキナが強くなっても、ゲッター3に乗った武蔵でさえ宇宙に飛ばすのは無理だ。やるにはメンへを激昂させ、自分に突っ込ませる必要がある。それをライデンに告げれば、直ぐに答えは返ってきた。

 

『なれば煽るが良い。彼奴は強いが、精神は幼子に等しい。ゴットスレイヤーの正論に動じ、逆に激怒し、冷静さを失って感情的に襲い掛かった。犯した罪に後悔と罪悪感を覚える君の挑発なら、必ずや冷静さを失い、激高して殺しに掛かるだろう。その時がチャンスだ』

 

 ライデンはメンへの精神が幼い事を見抜いており、正論を言ってやれば逆ギレして突っ込んでくるとキナに告げた。どう煽ればよいかも、今のキナなら出来ると告げる。

 この言葉を思い出したキナは自分の攻撃が当たらないことに苛立つメンへに向け、怒らせるために自分の懺悔を始める。

 

「私は今まで罪を犯してきた。生きる為には仕方がないと思ってた。けれど、その度に後悔した…」

 

「あぁん? なに自分語りしてんだよ化け物が…!」

 

 突如となく自分の罪を懺悔したキナに、メンへはより苛立ちを覚える。相手が苛立った反応を見て、キナはさらに続ける。

 

「物を盗んだ、人を殴った、殺した。自分の生まれたばかりの子供を二人も殺した…! 自分が生きる為なら仕方がないって割り切ろうとしたけど、無理だった。なんであんなことしたんだろうと、後悔してる」

 

 だが、自分の非道と言うべき行為を後悔していると言えば、メンへの苛立ちは白けた所為で消え、懺悔するキナを笑いながら下品に罵倒する。

 

「アッハッハッ! 何を言うかと思えば、後悔だぁ? それにお前あの中古だったのかよ! 通りでクソ見てぇな人生送ってるわけだなッ! しかも自分が生んだ餓鬼を、産んで早々に殺すとか、テメェの方こそ人殺しじゃねぇか! だったら目の前で自殺しろよぉ! ほら、今すぐ責任取って自殺しろアパズレ!!」

 

 自分を棚に上げ、罵声してくるメンへにキナは反応しなかった、怒りは覚えた。次に下品に笑うメンへに向け、挑発ではなく説教を始めた。

 

「貴方は可哀想な人。でも、自分を可哀想だと思って相手が勝手に慰めてくれると思ってる」

 

「あっ? 何言ってんだテメェ。責任取って自殺しろよ」

 

「お母さんやお父さんに愛されてない自分は可哀想で、何をしても許されると思ってる。絶対に自分は好かれる存在だと思ってる。でも、それは間違い。貴方からは後悔も罪悪感も感じられない。自分のすることがすべて正しいと思ってる。だから何も感じないし、間違いも無いと思ってる。批判されても、間違いを指摘されても相手が悪いと思ってる。そんな貴方を誰も好きにならない。むしろ嫌われる一方」

 

「おいコラ、中古の分際で説教垂れてんじゃねぇぞカス…! 俺はテメェ見てぇな性欲処理玩具とは違って、みんなに愛される存在なんだよ…!」

 

 手を叩いて自殺しろと迫るメンへは、キナに自分の絶対的な考えを間違っていると否定される。これにメンへは暴力的な言葉で反論する。

 確かにメンへは何をしても、自分が可哀想だから許され、誰にでも愛されると思っている。だが、こんな男を誰も愛するはずが無い。そればかりか嫌われる一方だ。それを指摘されたことに、メンへは怒りを覚える。

 そんなメンへに、キナは更に畳み掛ける。

 

「みんなに好かれたいなら、自分から歩み寄ろうとすれば良いのに貴方はそれをしない。愛そうともしない。何故なら、自分が一番大好きだから。自分が一番好きだから誰も愛さない。ただ自分の心地良い言葉だけを耳にして、それ以外の物は耳を塞いで聞こえないようにしてる。そんな自分勝手な貴方を誰も愛さないし、嫌いになって排除する」

 

 このキナの指摘はメンへに全て当てはまっていた。メンへが一番愛しているのは自分自身であった。皮肉にもメンへは、憎んでいた父である旧アシュラの国家元首と似てしまったのだ。

 内心では薄々分かっていたが、我が身の可愛さ余り自分が全否定されていると思い、それを指摘する相手が全て悪いと決め付けて聞きもせず、自分に逆らう者は誰であろうと全て殺してきた。殺してきた末に自分のやること成すことが全て正しいと思ってしまい、間違いを犯しても省みず、ただ己を否定する者こそが間違いだと思い込むようになり、遂には怪物と化してしまった。

 更にキナは、メンへに向けお前は孤独であると告げる。

 

「だから貴方は孤独。もし、私が誰にも出会わないでこの力を手に入れていたなら、貴方のように誰彼構わず殺し、脅して従わせていたかもしれない。けれど、あの人たちが居たからこそ、私は自分の罪と向き合え、力に呑まれずに済んだ。貴方はどう? 力に呑み込まれて暴走しているだけ。そんな貴方に誰もついて来ない」

 

「だからこそ自分は愛されてるって言いたいのか…!? ふざけやがって…! 自分は特別だって言いたいだけじゃないか! この絶対的な力を手に入れた俺こそ、正義その物なんだぞ!?」

 

 止めてくれる存在が居ないお前は孤独だと言われたメンへは激怒し、自分が特別な存在だと誇示してるだけだとキナに反論する。キナの言うことは最もであるが、メンへは決して認めようともしない。先に述べた通り、自分こそ正義で、逆らう者は何であろうと悪なのだ。

 己こそ正義その物であると誇示するメンへに向け、キナはそんな考えを抱くからこそ、誰からも愛されるどころか、嫌われると突き付ける。

 

「その姿は貴方その物、いや、貴方がお父さんを殺した時点から怪物だった。もう誰も貴方を愛さない。例えそれを口にしても、恐怖で従っているだけ。心から好きだとも思わないし、むしろ嫌いになる。いや、世界中が貴方の事を嫌いになって排除しに来る。だから貴方は皆に嫌われる醜い怪物その物」

 

 もはや全てキナの言う通りであった。メンへは装置を吸収しなくとも、父を殺した時点から人の姿をした怪物である。

 

「テメェ…! テメェ、テメェテメェテメェェェッ!! ふざけるなァ! 醜い怪物だとォ!? 僕はこの世界で一番可哀想でみんなに愛される存在なんだァ! その俺を性処理道具の分際で全否定しやがってェ!! 殺してやる! 殺す殺す殺すゥゥゥッ!!」

 

 キナの言葉はメンへを怒らせるには十分であった。激昂する余り我を忘れ、怒り心頭となったメンへは全力でキナに突進していく。

 マリとライデン、起き上がろうとするリュウが固唾を飲んで見守る中、突進してきたメンへをキナは両手で掴み、その力を利用して自分の方へ引き寄せ、ぐるぐると回して遠心力を作り、空高く投げ飛ばした。キナの見よう見真似な大雪山おろしが決まったのだ!

 

『ワァァァ! アァァァッ!!』

 

「駄目だ…! 届かん!」

 

 だが、武蔵率いるゲッター軍団の分遣隊が居る宇宙にまでは届かない。今は勢いよく飛んでいるが、いずれかは限界が来て、地面に落ちて来るだろう。

 

「まだ生きてる…! これなら!」

 

 それを見越し、マリはゲッターポセイドンの残骸に近付き、まだストロングミサイルが無事であることを確認する。これをメンへの真下で爆発させ、その衝撃波で大気圏を突破させようと言うのだ。

 

「何?」

 

「君のやろうとしていることは理解した。こう言う事なら、俺の方が適任だ!」

 

 直ぐにマリは魔法でストロングミサイルを浮かせ、飛ばされるメンへの方へ飛ばそうとしたが、起き上がったリュウが彼女のやろうとしている事をその行動だけで理解し、自分が適任だと言って爆発させない程の力量で浮いているストロングミサイルを飛ばす。

 

「はぁ!!」

 

 リュウの放たれた波動で、ストロングミサイルは勢いよくメンへの方へ飛んでいく。リュウはライデンにストロングミサイルを破壊させるために飛ばしたのだ。

 

「なるほど、衝撃で一気に宇宙まで押し上げるか。こういう時こそ、雷神たる私の出番だ」

 

 同じくマリがやろうとしていることを一目で理解したライデンは、メンへの真下にストロングミサイルが到達したのを見計らい、雷神の異名の通り、右手を翳して電撃をそれに向けて放った。雷神の右手より放たれた電撃は吸い込まれるようにストロングミサイルに命中し、見事に大爆発を起こした。

 ストロングミサイルの大爆発により発生した衝撃波で、メンへは更に押し上げられ、天高く飛ばされていく。雲を突き抜け、成層圏も突破。遂には大気圏も突き抜け、メンへは宇宙に放逐された!

 

 

 

「やぁぁぁ!? いィィィ~!!」

 

 キナ、マリ、リュウ、ライデンの決死の攻撃により、メンへは遂に宇宙まで飛ばされた。宇宙にまで飛ばされたメンへは無重力に掴まり、勢いは止まった。宇宙にまで飛ばすことに成功したは良いが、まだ引力がある衛星軌道上である。

 

「こ、この僕を宇宙に叩き出しやがって…! この星ごとぶっ殺してやるゥ!!」

 

 そればかりかメンへは宇宙空間でも生存可能であった。このままでは、衛星軌道上から放たれるメンへの惑星全土の生命体を皆殺しに出来る攻撃で、四人は惑星に住んでいる住人諸とも殺される事だろう。

 だが、これほどまで必死でメンへを宇宙に飛ばしたのは、そこで待機している武蔵のゲッター軍団に片をつけさせる為である!

 宇宙に飛ばされたメンへを待ち受けるゲッターエンペラー参戦艦「ベアー号」の艦橋にて、この軍団の長である巴武蔵は、レーダー手の部下より報告を受ける。

 

「目標、視認!」

 

「ようやくここまで飛ばしてきたか。ダークデス砲発射用意! 照準はあの自己チューのクソ野郎だ!」

 

 報告を受けた武蔵は、星の全てを腐らせる兵器であるダークデス砲をメンへに撃ち込むように指示を出す。この時の武蔵の服装は少年の時では無く、将軍らしい軍服であった。だが、あの工事用ヘルメットは被っていない。代わりに軍帽を被っている。

 

「なんだぁ、あのダセぇ馬鹿でかい宇宙戦艦は? この一撃でぶっ壊してやるぜェ!!」

 

 自分に星を腐らせる兵器の照準が向けられていることも知らず、メンへは視認できるくらい見える武蔵のエンペラー参戦艦に向け、惑星を死の星に変える程の威力を持つビームを撃ち込んだ。だが、ゲッター線の力は強大と言うか、恐ろしい物であり、メンへの星を破壊する力など、ゲッター線の前では無力であった。

 

「う、嘘だろ…!? 僕は正義その物なんだぞ!? なんであんかダサい戦艦に正義の攻撃が効かないんだ!?」

 

 全くの無傷なことにメンへは酷く動揺する。何発も撃ち込むが、エンペラー参戦艦には傷一つ付かない。おまけにバリアすら使っていないのだ。

 そんなメンへを嘲笑うかの如く、武蔵はパイプを咥えながら滅ぼされる運命にあると告げる。

 

「フン、そんな小便みてぇな攻撃なんぞ、バリアを使うまでもない。力を手に入れたお前は自分を神様や仏様と勘違いし、人類を支配しようと企んだ。その時点でお前は負けていたのだ。そんな悪の塊であるお前など、誰が愛する物か! 虫けらの如く人を殺すような奴をな! そんなクソったれで生かしておく価値の無いお前は、じわじわと腐りながら死ぬのがお似合いだ」

 

 聞こえても居ないであろう相手に説教を述べた後、ダークデス砲の発射準備が整ったと部下より報告が来る。

 

「ダークデス砲、発射準備完了です!」

 

「照準は目標に固定しております!」

 

「ウム。ダークデス砲、発射!!」

 

 報告を受けた武蔵はダークデス砲の発射を命じた。何か撃ち込まれる事を理解したメンへは、久方ぶりに思い出した死の恐怖に駆られて逃げ出す。

 

「う、うわぁ~! 嫌ダァァァ!!」

 

「ハッハッハッ! 尻尾巻いて逃げ出しやがった! だが、逃がさんぞ。化け物め!」

 

 無論、この光景は武蔵にも見えており、その恐怖に駆られ、逃げ出すメンへの背中を見て笑うが、ダークデス砲が発射された直後には、真剣な表情になった。

 発射された星の全てを腐らせるダークデス砲は、吸い込まれるように逃げるメンへの背中に命中。星を腐らせる兵器の直撃を受けたメンへの身体は腐り始め、彼の全身に凄まじい激痛を与えた。

 

「あぁぁぁ!? 痛い! 痛いィィィ!! ママ、パパァ! 助けてェ!!」

 

 腐り溶けていく自分の全身を見て、メンへは居もしない両親に助けを求めた。だが、助けに来るわけがない。ただ身体が腐り溶けていくだけだ。

 

「何を言ってるか分からんが、どうせ父ちゃんと母ちゃんに助けを求めてるんだろ。もしくは、罪を後悔して謝罪するから助けてなんぞほざいてるんだろ。フン、今さら遅いわ」

 

 その様子はエンペラー参戦艦の艦内からも見えており、腐り溶けていくメンへを見て、謝罪は間違っているが、武蔵は言っている事を大体は当てた。

 

「嫌だ…死にたくない…! 僕は、僕はみんなに愛されるべき存在なんだ…! こんな醜く腐って死ぬなんて、あり得ない…! 僕は絶対正義で…最強なんだ…この僕がこんなところで死ぬのは…間違いなんだ…!!」

 

 この期に及んで、メンへは自ら犯して来た罪を後悔するどころか、未だに自分は皆に愛されるべき絶対正義と宣い、自分が死ぬのは間違っているとさえ口にする。余りの身勝手さに呆れるどころか、寒気さえ覚える程だ。

 

「僕だけが、僕だけが勝者なんだ…! 誰も僕に、僕に勝つことは許されないんだ…! お前らの方が敗者…」

 

 やがて生命機能も腐り果てれば、メンへは断末魔を上げながら腐り溶けて息絶えた。メンへの細胞の破片一つ残さず腐り溶けて消え去れば、部下はそれを司令官である武蔵に報告した。

 

「目標、腐り溶けて無くなりました。一片の細胞も確認できません」

 

「綺麗さっぱり無くなりやがったか。清々したぜ。あぁいう世界が自分を中心に回っていると思っているクソ野郎は、再生できぬよう細胞の一つ残らず消すに限る」

 

 報告を受け、武蔵はメンへのような強大な力を持ち、己を絶対正義と宣い、恐怖で人々を支配する者は、二度と蘇らぬように細胞の欠片一つ残さず消すに限ると口にする。

 

「さぁて、忘れ物を取りに行くか。ゲッターロボの部品一つも忘れるなよ! この世界の連中に、例えネジの一本でも一つも渡すんじゃないぞ!」

 

 忘れ物である大事なヘルメットを取りに行くため、武蔵はあの星に送り込んだゲッターロボ四機の残骸の回収も兼ね、回収部隊を引き連れて転送装置に向かう。転送先はメンへとの決戦場となったあのバンカーがあった湖周辺だ。連隊規模の回収部隊と一触即発に備えた戦闘部隊と共に、武蔵は現場へと転移した。




次回はエピローグでございます。


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忘れ物を取りに

ケツアゴさん
オリーブドライブさん
G-20さん
ただのおじさんさん
リオンテイルさん
リン・オルタナティブさん
俊伯さん
黒鷹商業組合さん
秋音色の空さん

今回の企画にご参加いただき、ありがとうございました。


 自己愛の怪物、メンへをゲッター線で討ち滅ぼした武蔵は、回収部隊と一戦交える覚悟の戦闘部隊を率いてマリ等の元へ戻ってきた。

 目的は当然、メンへに破壊された四機のゲッターロボの回収である。

 奇跡的に無事だったリア、リンチェ、ビッキーは叩き出され、シモーナが寝ている方でただ回収作業を眺めていた。無論、ゲッター軍団の兵士たちの監視の元である。マリとキナ、シモーナ、リュウにライデンもゲッター軍団に監視されていた。

 ゲッター軍団が現地に送り込んだ戦闘部隊は、イスラエル軍のメルカバ戦車やAH-64戦闘ヘリと言った地球の現代兵器で構成され、歩兵が持っている火器もFN社のSCARを装備している。

 この装備なら機動兵器を擁するワルキューレと戦えば一溜りも無さそうだが、彼らにはゲッター線の加護があるため、例え一個師団が来ようとも、容易く撃退せしめる事だろう。

 

「急げ! ゲッターロボのネジ一本も残すな! 奴らがもう来ているぞ!!」

 

 武蔵は忘れ物の工事用ヘルメットを取り、それを被ってから回収作業を急かす。これに応じ、ゲッター軍団の回収部隊は破壊されたゲッターロボの残骸の回収を急ぐ。

 

「貴方、キナちゃんなの? 一体どうやって…?」

 

「自分の罪と向き合って、反省して、償おうと思ったらこうなった」

 

 監視される中、アルビノ体質の為に日除けのポンチョを被っているリアは、キナが償いの戦士に変身していることに驚き、どうやって変身したかと問えば、彼女はぎこちなくありのまま変身した時のことを伝える。

 

「あのキナちゃんがこんな強そうな姿に…もう何言って良いのか…」

 

 同じく驚いているリンチェは、役に立ちそうにないキナが頼り甲斐がある正義の戦士になったことに驚き、何を言って良いのか迷う。

 

「その姿は災厄…じゃなくて救世主って感じかしら?」

 

「私は、そうは思わないかな…」

 

 ビッキーはいつも思う災厄ではなく、キナの事を救世主その物と表した。これにキナは恥ずかしくなり、両手で顔を抑える。これまで、自分が褒められたことなんて一度も無いのだ。シモーナも驚いており、何を言って良いのか分からず、ただキナを見ている。

 そんなキナの変貌ぶりに花を咲かせる彼女らの元に、張三の首を持った武蔵が訪れる。

 

「おぅおぅ。あの怯えてばかりの嬢ちゃんが、随分と一皮剥けたと言うか、脱皮しちまったようだな。随分とたくましい姿になっちまったじゃねぇか! ハハハッ!」

 

「あんた、特攻したんじゃ…あぁ、復活ね」

 

「ご明察よ。まぁ、ここへ来たのは忘れ物を取りに来ただけだがな」

 

 自分の特攻で償いの戦士に変身したキナを一目見て、あの震えてばかりの少女が随分と立派になったと武蔵は彼女の肩を叩く。余り驚いてない様子で、親戚のように原形を留めない程に変貌したキナと接する。

 マリからの問いに関しては、復活したと答え、聞いても居ないのに忘れ物を取りに来たと、大事なヘルメットを指差しながら告げる。

 本来の目的は、ワルキューレや他の勢力に、ゲッターロボの技術を渡さないためだが。

 

「回収が済み次第この世界から出て行くつもりだ。地元の連中と事を構える気は無いからな。それとこいつを渡して置くぞ」

 

 それから本来の理由も告げた後、キナに張三の首を渡した。その首を渡されたキナは、利用されたとはいえ、身を挺して守ってくれたので、何処で埋葬するのかと尋ねた。

 

「何処で埋葬すれば…」

 

「おっと、そいつはまだ生きている。ゲッターライガーの残骸の中で見付けた。身体を拵えて、引っ付けてやれば元気になるさ」

 

「サイボーグなのか。こちらで預かろう」

 

「まぁ、あんたら神様なら大丈夫だ。ところで…」

 

 張三が首だけになったにも関わらず、まだ生きていると武蔵が告げれば、ライデンはその首を預かると申し出た。これに武蔵は安心してライデンに預けた後、ゲッターロボに乗っていたリアやリンチェ、ビッキーの方を見る。

 どうやらゲッターロボの特性を直ぐに掴んだ彼女らに、適性を見出してゲッター軍団に勧誘しようと言うのだ。

 

「お前たち、良いセンスをしているな。ゲッター軍団に入らないか? お前たちが操縦した旧式のゲッターロボよりも、現用装備のゲッターロボは遥かに凄いぞ! それに意義はある! お前たちはゲッターロボを短期間で扱い熟した! つまりゲッター線がお前たちを認め、宇宙に蔓延る悪を一掃する進化の為の聖戦に参加する条件を満たしたと言うことだッ!!」

 

 この武蔵の熱弁染みた勧誘に、三人は互いに顔を合わせ、どうすべきか迷ったが、入らないことにした。

 やたら現役のゲッターロボの凄さを強調する為、直ぐに前線送りにされるのでは無いかと思ってのことだ。それにゲッター軍団の戦士として、ゲッター線による無限の進化の為に戦うつもりは無かった。

 

「あの、断ります。私、戦いたいんじゃなくて冒険がしたいので」

 

「そうかい。まぁ、死なないようにな」

 

 リンチェは冒険者として、色んな場所で冒険がしたいので、ゲッター軍団に参加して進化の闘争をする気は無いと告げた。リンチェとビッキーも同じ理由で勧誘を断る。

 

「私のクライアントはヤバいけど、なんかゲッター軍団の方もヤバそうだからやめとくわ」

 

「随分な好条件に見えるけど、ゲッターに乗ってるときに災厄の比じゃないのを感じたから」

 

「そうかい、せっかくのチャンスを不意にしちまったな。もう二度とこのチャンスは訪れんぞ。それで良いんだな?」

 

 せっかく適合者を三人も見付けたのに、その三人に断られた事に武蔵は不機嫌になり、それで良いのかともう一度問う。彼女らはゲッター軍団に参加する気は無く、改めて武蔵の誘いを断った。これに武蔵は三人がゲッター軍団に興味が無い事を理解し、リアやリンチェ、ビッキーの勧誘を断念した。

 

「誘ってくれて悪いけど、進化とか聖戦とか、そういうのに興味ないから」

 

「右に同じく」

 

「災厄越えって言う理由で」

 

「フン、聖戦を断るか。まぁ、無理強いはせんさ」

 

 断った理由は武蔵の言うことに狂気を感じたからだ。武蔵は自分らの戦いを、宇宙に蔓延る悪を一掃する聖戦と表した。つまり侵略や虐殺まで正当化するほど、ゲッター軍団は狂気じみた集団と三名は察してしまったのだ。

 

「武蔵司令官、ゲッターロボの残骸の回収を完了しました!」

 

「終わったか。ネジ一本も見逃してないな?」

 

「はっ、すべて完了です!」

 

 適合者の勧誘に失敗した武蔵の元へ、彼の部下がゲッターロボの残骸の回収作業を終了したと報告に来る。もうこの世界に居る理由が無くなった武蔵が、部下等に撤収を命じる。

 

「ならばこの世界に残る理由は無いな。では、我々の世界へ帰るとしよう。お前たちとの冒険、楽しかったぜ! もう会うことは無いだろうがな!」

 

 撤収作業を命じれば、マリやリア等に別れの言葉を告げる。ゲッター線の僕である巴武蔵とは、もう二度と会うことは無いだろう。

 二度と会うことは無い彼女らに向け、武蔵は共に冒険できたことが楽しかったと返し、部下等を率いてこの世界から立ち去った。何の痕跡も残さず、最初から居なかったように武蔵たちゲッター軍団は消えた。

 

「ゲッターの者たちは立ち去ったか。我々も行こうか」

 

 武蔵等ゲッター軍団がこの世界より立ち去ったことで、ライデン等も帰る場所へ帰ろうとする。

 

「そうですね。この者の身体も作らねばなりませんし」

 

「左様。では、共に行こうか」

 

 リュウもそれに同調し、張三の首を見ながら、彼の身体を作らねばと口にする。これにライデンは頷きつつ、キナに手を差し伸べる。

 彼女は償いの戦士となった時点で、神に仕える戦士となったのだ。これからは秩序の為、己の贖罪の為に戦い続ける運命にある。その意味を理解したキナは迷わずライデンの元へ向かう。

 

「あの、キナちゃんはそれで良いの?」

 

 ライデンの近くへ行こうとした際、マリにそれで良いのかと呼び止められた。これにキナは償いの戦士になる際、もう覚悟を決めており、後悔は無いと返す。

 

「…私は凄い悪人だし、これくらいしないと、天国へ行けないから。最初に会った時、毛嫌いもせず、優しくしてくれてありがとう。それにみんなも、守ってくれてありがとう」

 

 マリや四人に礼を言ってからキナはリュウと共にライデンも元へ向かい、別れの挨拶を行う。

 

「みんなに出会わなければ、私は今頃あの路地裏で殺されてたか、餓死してたかと思う。みんなと出会えたから、私は今ここに居て、償いの機会を得れた。とても感謝してるし、これからも忘れない。ありがとう」

 

「無報酬にも関わらず、見ず知らずのこの少女を守って頂き、感謝する。諸君らが居なければ、この星はゲッターの力に酔って滅ぼされていた事だろう」

 

「私も君たちの善意に感謝する。これからの冒険に、君たちに幸あらんことを」

 

 最初にマリと出会わなければ、自分は生きていないし、リアやリンチェ、ビッキーにシモーナを始めとした冒険者たちのおかげで生き残れ、償いの機会を得れたことも感謝し、キナは皆に礼の言葉を述べ、ライデンやリュウと共にお辞儀した。

 

「また何処かで会いましょう。それじゃあ…!」

 

 それから別れの言葉を述べれば、張三李四(ジャンサンリースー)の首と共にライデンやリュウと共に神の神殿へと転移した。

 キナがライデン等と共に秩序を守るための戦いに向かった後、五人もそれぞれの場所へと帰ろうとする。

 

「さぁて、次の冒険へ行きますか」

 

「クライアントとか来てないよね? 冒険者ギルドに戻らないと…」

 

「私も、次の冒険へ行こうかしら」

 

「ライフル探さないと」

 

 リアこと本名テック・リ・ア・シックザールは次の冒険場所へ向かうと口にした。これに続き、リンチェは不安になりながらも、冒険者ギルドへ戻ると言ってリアと共に去って行った。

 ビッキー・イザヤンもリアと同じようなことを言って何処かへ去って行く。シモーナ・ハユハは無くしたライフルを探すため、あのダンジョンへと戻っていく。

 

「さぁ、私も帰ろう」

 

 一人残されたマリ・ヴァセレートは、自分の帰る場所へと帰ろうとしたが、狙ってたかのように、セゴー・アラントを始めとする現地組冒険者等が彼女を包囲した。

 

 

 

「クエスト失敗だが、お前を差し出せば、採算が取れるぜ!」

 

 何を思ってか、仲間たちを使ってマリを包囲したセゴーは、彼女を差し出せばクエスト失敗の採算が取れると言い出す。

 どうやらこの世界の冒険者ギルドでは、クエスト失敗は死を意味するらしい。だが、拉致した女性か子供を差し出せば、死を免れることは出来るそうで、四人が立ち去った後、彼女を拉致しにノコノコと現れたようだ。

 

「凄い上玉だ…! 味見と行きたいが、このままで出せば採算どころかお釣りが来るぜ!」

 

 なんとも目の付け所が悪過ぎる。あのマリの戦いぶりを見て、彼女が自分らで抑えられるとでも思ったのだろうか?

 そんなセゴー等を手っ取り早く皆殺しにしようと、マリは時間を止めようとしたが、ここでスミス等が一個師団を率いてやって来た。遅れて到着したスミス等の隊は、直ちにマリを包囲しているセゴーたちを攻撃した。

 

「お、おい! ワルキューレだ!!」

 

「な、なんだと!? さっき帰ったんじゃないのか!?」

 

 仲間の一人が航空魔導士の攻撃で人体を切り裂かれる中、セゴー等が慌てふためく。どうやら武蔵が率いるゲッター軍団を、ワルキューレの部隊と勘違いしていたらしい。

 直ぐに逃げ出すセゴー等であったが、一人、二人と最初に到着した航空魔導士のライフルとAH-64アパッチ戦闘ヘリの機関砲で引き裂かれていく。マリも巻き込んでいるようだが、彼女は魔法障壁を自分の周りだけに張り、攻撃を全て防いでいた。

 

「クソっ! クソったれェ!! こんな依頼受けるんじゃなかった!!」

 

 やがて現地組冒険者はセゴー一人となる。最後の一人となったセゴーは、バンカーの探索依頼を受けるんじゃなかったと後悔したが、遅れてやって来た中型多目的ヘリコプターであるUH-60ブラックホークの兵員室に居るスミスが持つSG550突撃銃で頭部を狙撃された。

 頭部を狙撃されたセゴーの頭部の上半分は無くなり、舌だけを残して胴体は地面に倒れ込んだ。邪魔者を全て排除したスミス等は広い場所へと着陸し、マリの方へ向かう。率いている師団は周辺に展開し、バンカー周辺に防衛線を構築する。

 

「お前たちはバンカーを捜索しろ! なにかの手がかりでも見つけろ! さて、任務失敗のようだな」

 

 部下等に指示した後、スミスは労いの言葉も無しに任務の失敗を責めた。これにマリは無視して、スミスが乗って来たヘリに乗り込もうとする。

 

「フン、自分の尻拭いも出来ん女め」

 

 何も言わず、ただ帰ろうとするマリの背中を嫌悪な目で見つつ、スミスは現場へと向かう。

 ライフルを探しにダンジョンへ降りようとしていたシモーナはスミスが寄越した探索部隊に拘束され、地面に座らされていた。彼女はイヴ人であったが、要注意な武装勢力である帝国再建委員会の者では無かったので、殺されずに済んだ。

 師団より借りた余剰戦力である一個歩兵連隊規模の人員と工兵大隊でバンカー周辺やダンジョンを捜索しており、直ぐに瓦礫と残骸の撤去は済み、周辺に転がる死体の回収作業に移っていた。

 

「この世界では、百合帝国の崩壊は五十年か」

 

「はっ。この世界、我々の並行世界とは違って時間の流れが四倍以上も遅いようで。ですが、今は我々と同じ時間軸となっているようです」

 

「ここに眠っているのがぶっ壊れた所為で、戻ったと言うわけか。これで行方不明者の戦死が確定したって事だ」

 

 この世界では時間の流れが遅かったらしいが、メンへが吸収した装置が壊されたことで、時間軸は他の世界と同じになったとスミスは部下より報告を受けた。これにスミスは何の興味も示さず、ただ旧百合帝国軍の行方不明者となった将兵の戦死が確定したと、大量の認識票が入った箱に手を突っ込み、ある程度を取ってから口にする。

 彼らの目の前では、装備を外された数千人もの百合帝国軍将兵等の死体が山のように積まれていた。軍隊手帳や認識票、その他所持品も含めて全て回収されている。後は戦闘で出来たクレーターの中に放り込み、埋めるだけだ。大帝国の将兵の死体も同じように装備や所持品を全て回収され、山のように積まれていた。

 

「五十年前の衣服を着ていない死体もあります」

 

「手駒だな。そいつ等からも所持品や装備品を取って埋めて置け」

 

 無論、回収された死体の中には各勢力が送り込んだ冒険者や刺客、共産主義者等の死体もあった。これを部下より報告されたスミスは、手駒だと気付いて五十年前の戦死者たち同様に、山積みにしてから土に埋めるように指示する。各勢力が回収に寄越した部隊の戦死者等も同様に残骸より引きずり出され、山積みにされた。

 

 名前が判明している死亡した冒険者並び刺客、共産主義者らは以下の通り。

 キルノートン

 ジェディ・フレイクス

 トバルカイン

 フェロン

 メトル・ガラセード

 

 以下の者たちは他の死者や先ほど殺されたセゴー等と共に装備品や所持品を取られ、山積みにされた。

 

「ある程度は回収しました。ですが、資料の損傷が激しく、解読するにはそれなりの時間が掛かるかと」

 

「上出来だな。よし、後は陸軍の奴らに任せ、我々は撤収だ!」

 

 それから数時間、ダンジョンの奥にある資料を回収できたところで、スミス等は後の処分を陸軍に任せて撤収した。

 拘束されていたシモーナは、奥で見つかった自分の得物である九九式短小銃を渡され、拘束を解かれて解放され、自分の世界へと帰って行った。

 

「死体の処分を! ここを前哨基地とする!」

 

 残された陸軍の師団はここに前哨基地を作るため、山積みにされた死体の掘った壕やクレーターに向け、ブルドーザーで落として行く。あの名前が分かっている五名の死体も、大量の死体と共に壕へ落とされ、そして埋められた。彼らの持っていた所持品や装備品と言うか遺品は軍のトラックに積まれ、後方へと送られていく。

 

 こうして、忘れられたバンカーで起きた物語は、大勢の死者と破壊をもたらして幕を下ろした。




さて、次は無限戦争だ。


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オムニバス
氷魔の蒼弾(ひょうまのそうだん)


ガリウス・ブリゼイド
惑星同盟軍のパイロット。階級は中尉であり、艶やかな銀髪と凍てつくような青い瞳を持つ青年。
氷魔の蒼弾(ひょうまのそうだん)という異名で連邦軍から恐れられるエースパイロットであるが、何度も部下を失っていることから味方では死神と恐れられ、揶揄の意味を込めて呼ばれることが多い。
それに貴族出身であることから、同盟の一部参加国からは無能の烙印を押されている。本当は味方を逃すために戦っているのが、本当の意味を理解しない者は多く、彼の事を知り、敬意を払う者は身内か教官だけである。
搭乗機はグフイグナイテッド(JP536XギガランチャーDR1 マルチプレックス装備)
キャラクター原案はオリーブドラブさん。

※このキャラクターはオリーブドラブさんより使用許可を頂いて書いております。
設定の一部が無限戦争に合わせて変わっていますが、外見並び性格はオリジナルのままです。


氷魔の蒼弾(ひょうまのそうだん)? なんだ、そのバンドの曲のタイトル見てぇな名前は?」

 

 宇宙にて、目的地に向けて航行する統合連邦の傘下勢力の一つ、惑星戦略同盟(ISA)の宇宙艦隊の内、とある巡洋艦のパイロット用待機室に居るパイロットたちは、氷魔の蒼弾と言う詩のタイトルのような言葉を話題にしていた。一人がそれについて尋ねれば、それを最初に口にしたパイロットはそれについて語り始める。

 

「宇宙軍の奴らが恐れてそう呼んでいるらしい。ヘボな奴らがビビッて付けた名前かもしれんが」

 

「俺は情報部にコネがあんだ。そいつ曰く、部下を何人死のうが、自分の戦果に拘る無能で自分勝手なご貴族様だそうだ。名前は確か、ガリウス・ブリゼイドって言ってたな」

 

「話が違うぞ。コロニー連合軍(UCA)の巡洋艦を一機で轟沈させのが、そのガリウスとか言う奴だ」

 

 どうやらISAのパイロットたちが仕入れた氷魔の蒼弾の異名を持つガリウス・ブリゼイドの情報は、疎らであったようだ。連邦軍の参加勢力内ではガリウスの情報は錯綜しており、一部ではプロパガンダや臆病者の戯言と見なされている。

 情報部も戦局を優先してか、ガリウスについてはあれだけの損害を与えたにも関わらず、ただの一介のパイロットとして見なし、碌に情報も仕入れていない。よって一介の連邦のパイロットたちに回って来る情報は、正確性に欠け、根も葉もない偏見や憶測ばかりだ。

 

「おいおい、そんな奴は居ねぇよ。いるとすれば、エイリアンのエリート族程度だろ、そんな芸当が出来るのは。そいつは顎割れ野郎(エリート)なのか?」

 

「巡洋艦を撃沈した? 冗談は止せよ」

 

「連中のプロパガンダって事か? 無能呼ばわりされる理由が分からんな」

 

「とにかく、実物を見なきゃ分からん。奴はどの戦線に出て来たんだ?」

 

「俺たちがこれから向かう戦域だよ。そこに奴が現れるって噂だ」

 

 とにかく彼らはガリウスに対する偏見や想像でイメージを膨らませ、一人が何処の戦線に出て来たんだと問えば、自分らがこれから向かう戦域に現れると答えた。

 前情報も無い相手に少しばかり緊張する連邦のエリートを自負するISA海軍のパイロットたちであったが、一人が茶化すような言葉で緊張が解れる。

 

「そうかい、見付けたらみんなでボコってやろうぜ。どうせ奴は一人だ。幾らエースでも、俺たちISA海軍の敵じゃねぇ」

 

「そりゃそうだな! よし、出撃まで準備運動と行くか」

 

 幾らエースでも自分らISAの敵ではない。

 そう自負して敵に対して何の敬意も持たず、嫌悪のみを抱く彼らは、ガリウス・ブリゼイドを舐め腐っていた。

 

 

 

『オラオラ、エリアン共が逃げるぞ! 追い掛けてファックしろ!』

 

 数時間後、宇宙における同盟軍との戦線に辿り着いたISA海軍の艦隊は、友軍艦隊と共に同盟軍艦隊を圧倒していた。

 高い練度を誇るISA海軍の艦隊は戦線に展開する同盟宇宙軍艦隊を次々と撃破し、敗走を始めた敵艦隊の追撃を始める。駆逐艦二隻とフリゲート四隻で編成された戦隊の旗艦を務める巡洋艦の艦長は、下品な言葉で傘下の戦力と艦載機に追撃を命じる。

 

『今日はエリアン狩り日和だ! 逃げる奴らのケツに、ありったけぶち込め!』

 

「へっ、氷魔の蒼弾って奴はいるのか? 何処にもいねぇじゃねぇか! 宇宙軍のヘボ共の戯言か?」

 

 交戦もせずに逃げる同盟軍機を容赦なくビームライフルで撃ち抜いたスペースストライカーを装備したウィンダムを駆るISA海軍のパイロットは、噂のガリウスが出ないことで、単なる噂話では無いかと疑い始める。

 

「どれが氷魔の蒼弾(アイス・ブルーショット)だ? こいつか?」

 

『そんな奴、何処にも居ねぇよ! エイリアンやヒグスだけだぜ!』

 

 ふざけながら逃げる敵機の背後をビームライフルで撃つウィンダムのパイロットに対し、別のウィンダムに乗る同僚がビームサーベルで背後を串刺しにしてからガリウスは居ないと告げる。

 士気が瓦解した同盟軍は、押し寄せるISA海軍から逃げるばかりだ。士官が乗るザク・ファントムが戦意を失って逃げる敵機にライフルを向けて戦闘に戻そうとするが、そんな者を聞く兵が居るはずもなく、追撃してくるISAのジャベリン数機が放つビームライフルを何発も撃ちこまれて撃破される。

 一機、また一機と撃破を現す光が何度も怒る中、後退しながら艦砲射撃を続ける数隻の艦艇も、対艦ミサイルや機動兵器が装備する対艦武装で撃沈された。その光景はまさに虐殺であった。

 

「けっ、少しは楽しめるかと思ったが、とんだ期待外れだったな!」

 

 肩に撃墜(キル)マークを描いているウィンダムに乗っていた腕の立つパイロットは、四機で編隊を組む飛行形態の可変MSのクランシェとドートレス・ネオ数十機が同盟軍機を追撃するのを眺めつつ、ガリウスが出て来ることを期待していたが、出て来ないことに腹を立て、投降した同盟軍機をライフルのビームで撃ち抜く。

 戦時条約違反であるが、ISA側は誰一人も注意するどころか咎めもしなかった。戦争が長引くにつれて、両軍に戦時条約を守らない将兵が増えているのだ。

 だが、噂は本当であった。宇宙に漂うデブリの上に一機のドムトルーパー用のバズーカを右手に担いだグフイグナイテッドが、撤退する同盟軍を過剰なまでに追撃するISA海軍を見ていた。

 

 

 

『こちら、第6機動部隊! 敵の猛追が激しく、離脱できず! 救援を乞う! 救援を…』

 

『誰かいないのか!? 置いてかないでくれ! 頼む!』

 

『味方が! 私以外の友軍機が!? 誰か居ないの!? 誰っ…』

 

 デブリの上に立つグフイグナイテッドのコクピット内にて、無線機から次々と聞こえて来る救援要請を、濃い青色の宇宙用パイロットスーツを身に纏う青年が聞いていた。

 ヘルメットのバイザー越しに見える艶やかな銀髪を初め、凍てつくような青い瞳がモニターを眺めていた。モニターに映るのは、先のISA海軍に蹂躙される味方の同盟軍だ。味方が落とされ、味方艦が撃沈される光景を青年は悔しさを覚えてか、操縦桿を握る両手を握り締めている。

 

「…これ以上はやらせん」

 

 撤退する味方を守るべく、青年は操縦桿を強く動かし、ペダルを強く踏んで乗機であるグフイグナイテッドを友軍を追撃するISA海軍に向かわせる。

 

『ん? 十一時方向より新手だ!』

 

『一機だぁ? けっ、殿にしては中々のガッツだな! リンチするぞ!』

 

 スラスターを吹かせ、単独で向かってくる青年が駆るグフイグナイテッドに対し、ISA海軍のパイロット等は鼻で笑いながら乗機のウィンダムが持つビームライフルを撃ち込む。飛んでくるビームを巧みな操縦桿さばきで躱しつつ、バズーカの下部の砲身よりビームを撃ち込んだ。

 

『うぉ!? 野郎!』

 

 これをシールドで防御する方にキルマークを描いているウィンダムのパイロットは直ぐに反撃するも、自分らの攻撃を見えているかの如く躱していく青年の操縦テクニックに驚きを隠せないでいた。

 

『な、なんだこいつは!? 当たらねぇぞ!』

 

『俺たちの動きでも読んでんのか!?』

 

『ふざけやがって! ぶっ飛べ!!』

 

 こちらを攻撃を躱しつつ尚且つ高速で接近して攻撃してくる青年のグフイグナイテッドに、多連装ロケットパックを装備したウィンダムに乗るパイロットは、小隊より離れて多連装ロケット弾を一斉に放つ。飛んでくる無数のロケット弾に青年はバズーカを一旦手放し、両腕の四連装ビームガンで全て迎撃した。これを三機のウィンダムのパイロット等は、発生した爆発の煙で着弾したと勘違いする。

 

『へっ、どうだ! ざまみやが、わぁぁぁ!?』

 

『キッド!? クソったれ! 奴は生きてるぞ!!』

 

 煙の中より来た撃ち込まれたビームガンの連射で、一機がハチの巣にされて撃破された。煙の中から現れたグフイグナイテッドは止まることなく、左腕に装備したシールドから物理やビームによる斬撃が可能な専用ソードを引き抜き、ビームを展開させてから一気に出遅れた敵機に接近し、素早く立てに振り落としてそのウィンダムを切り裂いた。

 

『畜生が! ぶっ殺してやる!!』

 

 味方を二機も撃破した青年のグフイグナイテッドに対し、牽制にバルカン砲とシールドのミサイルを撃ち込み、同じく腰のビームサーベルを抜いて斬りかかるウィンダムのパイロットであったが、圧倒的な技量を持つ青年に接近戦を挑んだ時点で負けであり、渾身の一撃目を躱されて胴体を切り裂かれて撃破される。

 ウィンダムの小隊を撃破した青年のグフイグナイテッドはソードをシールドに仕舞ってから右腕に内蔵されたウィップを射出し、それでバズーカを回収してから味方を追撃するISA海軍に攻撃する。

 照準が合い次第に躊躇うことなくバズーカのビームを撃ち込み、逃げ惑うしかないRFザクを追うドートレス・ネオを撃破した。それから間髪入れずに、友軍を執拗に追撃するジャベリンを次々と撃破していく。

 

『あいつが噂のアイス・ブルーショットか!? よくも仲間をやりやがって!』

 

 味方のジャベリンやドートレス・ネオ、ウィンダム、量産型ヒュッケバインMk-Ⅱを立て続けに撃破していく青年のグフイグナイテッドに対し、編隊を組んだ四機のクランシェがビームバルカンやドッズライフルを撃ちながら接近する。

 このビームの嵐を青年は操縦桿を巧みに動かし、ペダルを巧みに踏み込み、必要最低限の動きで躱し切る。手近な距離に居る敵機にバズーカのビームを撃ちつつ、進路を変更させれば、一気にスラスターを吹かせ、そこから接近して真上を取って張り付き、バズーカのロケット弾の砲口を向けた。

 それから変形される前にバズーカを撃ち込み、張り付いたクランシェを撃破する。僚機をやられてか、残り三機のクランシェは旋回し、再びビームの嵐を浴びせるも、青年はそれら全てを操縦技術で躱し切る。

 

『なんだってんだ! 畜生が!!』

 

 怒りに燃える三機のクランシェは飛行形態からMS形態へ変形し、ドッズライフルを撃ちつつ左手でビームサーベルを抜いて接近戦を挑む。これに青年はその攻撃を躱しつつ、バズーカで一機を撃破した後、接近してくる二機目のクランシェにウィップを打ち込み、高圧電流を流して動きを止め、背後から接近して来た三機目に、その二機目を蹴り付けてぶつけた。体勢を立て直せる前に両腕のビームガンを連発し、クランシェを二機とも撃破する。

 そのグフイグナイテッドを駆る青年、氷魔の蒼弾の異名を持つガリウス・ブリゼイドの獅子奮迅ぶりに撤退中の友軍機であるザク・ウォーリアのパイロットは見惚れていた。

 

「す、凄い! あのグフイグナイテッドのパイロットはエースなのか!?」

 

『あ、あいつは氷魔の蒼弾だ! 俺たちも死んじまうぞ!』

 

「で、ですが隊長! 彼に加勢すれば味方をより一機でも多く…」

 

『馬鹿野郎が! 奴は死神だ! 俺たちも死にたくなければ、速く撤退することだ!』

 

 そのパイロットに対し、隊長機であるザク・ファントムに乗る隊長はガリウスを死神呼ばわりし、彼をおいて撤退するように伝えた。これに部下であるパイロットは異論を唱えるが、隊長の気迫に押され、共に撤退を始める。

 一機で殿を務めるガリウスは、邪魔な量産型ヒュッケバインMkーⅡを通り際に撃破しながら敵の士気を挫くために単機で巡洋艦に接近していた。護衛の駆逐艦やフリゲートが離れ、サラミス改級巡洋艦二隻しか居ない敵巡洋艦であるが、その大きさは別世界の巡洋艦だけであって千メートルはある巨艦だ。単独での行動していても、容易には接近できないだろう。

 二隻のサラミス改級の弾幕をすり抜け、バズーカのロケット弾で容易く二隻とも撃沈、もしくはブリッジを破壊して戦闘力を奪ったガリウスであるが、UCAでも運用される大型巡洋艦の対空弾幕は、サラミス改級よりも凄まじい。

 

「流石にUCAやISAが使う巡洋艦は違うな。だが…!」

 

 それでも味方を一人でも多く脱出させるには、この危険な巡洋艦を沈める他にない。そう決意したガリウスは少しばかり被弾するも、戦闘機と言った護衛機を片付けながらバズーカをダメージが大きい部分に撃ち込みつつ、弾切れになればビームを撃ち込んで出来る限り巡洋艦に被害を与える。

 やがてバズーカが邪魔になって来れば、重量を軽くする事と目晦ましを行うために投げ付け、敵にワザと破壊させた。バズーカの爆発で一瞬だけ対空砲火が止む中、ガリウスはその隙を逃さず、一気に巡洋艦に取り付き、艦橋を目指す。

 甲板に取り付いたガリウスのグフイグナイテッドに対し、巡洋艦はATのスコープドッグやMSのアデルマークⅡを差し向け、撃破を試みようとするが、彼を止める事は出来ず、挙句にソードやビームガンで撃破されるだけだ。時にはウィップを振りまき、進路上の邪魔となるスコープドッグの集団を引き裂いたこともあった。

 

「ハァァァッ!」

 

 艦橋へ近付いた後、ガリウスはソードの刀身を艦橋へと突き刺す。その自分のグフイグナイテッドを見て艦橋内のクルーたちの驚く表情が見えていたが、ガリウスは一人でも多くの味方の逃すために容赦はしない。操縦桿を強く押し込み、刀身を艦橋内まで突き刺せば、爆発が巻き起こり、爆風で乗員たちだった物体が暗くて冷たい宇宙に放り出される。刀身を引き抜けば、吸い出される数は増えていた。

 

『戦隊旗艦がやられた! 撃沈はしていないが、指揮能力を失っている! 本当に氷魔の蒼弾は実在したんだ! 再編の為、一時後退する!!』

 

『それは本当か!?

 

 敵巡洋艦は巨体の為に撃沈は出来なかったが、敵を後退させることには成功した。まだ数は多いので、再編して再び追撃してくるだろう。

 

『敵部隊、再編の為に後退確認。友軍の損耗率は想定の半数を切った』

 

「了解。こちらブルーアイス、補給と修理の為に母艦へ帰投する」

 

 オペレーターからの報告で、ガリウスもそれに備えるべく、補給を行うために母艦へと帰投した。艦橋を失ったISA海軍の巡洋艦は、機能をサブブリッジに切り替えたが、追撃せずに後退ポイントまで下がり始める。追撃していた戦隊の艦載機部隊も、指揮系統の混乱の為に同様に後退を始めていた。

 

 これを持って、ISA海軍はガリウス・ブリゼイドこと、氷魔の蒼弾の実在を、戦隊旗艦の艦橋と戦力の一割損失と言う犠牲の上で知った。

 単独で多数の敵部隊を相手取り、数十機の敵を撃破し、サラミス改級二隻の無力化に戦隊旗艦の敵巡洋艦の指揮能力を奪ったガリウスであったが、与えた損害は微々たる物であり、再編したISA海軍は再び追撃を仕掛けて来るだろう。

 ガリウスの戦いはまだ終わらない。所属する同盟軍が撤退命令を出すか、攻撃するISA海軍を撃退するまで続くのだ。

 母艦へ帰投したガリウスはヘルメットを脱ぎ、艶やかな銀髪を露にした後、右手でボルトを取り、水分補給を行って僅かながらの休息を取った。




オリーブドラブさんから許可を貰ったし、こっちの方が早く終わるのでやることにしました。

結構、ISAの奴らがガリウスを馬鹿にしている所がありますが、そのツケを払わせましたが。これで許してもらえるかな?

ガリウスの乗機がグフイグナイテッドなのは、オリーブドラブさんの要望。流石に両腕のビームガンとウィップ、剣だけじゃ心持たないので、ドムトルーパーのビームも撃てるバズーカを持たせることにした。
ガリウス専用のグフイグナイテッドの最初の登場は、初代ガンダムのグフに乗ったランバ・ラルの登場シーンを参考に。
それからは宇宙世紀のガンダムのアプリゲームであるジョニー・ライデンの高機動型ザクが豪快に暴れ回るシーンをオマージュしつつ、洋ゲー特有のマクロス級レベルのデカい巡洋艦を撃破と言うか、艦橋を潰して後退させた。
なぜ宇宙で暴れ回ることになったかは、アプリのアニメでジョニー・ライデン専用高機動型ザクの暴れっぷりを見た所為かな。それをイメージして書いた。
オリジナルの方のガリウスは地上で暴れてたが、自分は考えもしなかった(汗)。

取り敢えず、ガリウス登場が後半で遅めと口数が少なめ。オリーブドラブさん、わざわざ許可も頂いたのにごめんなさい(汗)。

それとガリウスの使用許可を出して頂いたオリーブドラブさん、ありがとうございます!


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