Helpless (ZK)
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銀行強盗編

どうも。多分十中八九初めましてだとおもいます。初めて投稿させて頂きます。ちょっとふと描いてみました。なんか失踪しちゃったりするかもしれませんし、稚拙が過ぎるときもあるかもしれませんがどうか暖かい目で見て頂ければ嬉しいです。


広至3年10月下旬。

「親父さん、いつものをお願い。」

パトロールルート近くのいきつけのドーナツ屋の店主にそう注文する。

「おうよ。1人には慣れたか?」

そう返す親父さんに、

「えぇ、もうすっかり。」

と返すと、注文したドーナツを渡され、代金を支払う。

「毎度。気を付けてな。」

「・・・ありがとう。」

私は長谷川美夏。この世に生まれ落ちて22年のしがない1巡査。最近は警察は人員不足が深刻化して、パトカーの人員も2人という定数を割っているのも珍しくない。私の相方は3週間前の武器の密輸商人検挙の時に殉職した。でもそんなことはもう日常茶飯事だ。1ヶ月の間に顔見知りの誰かが殉職する。補充の警官も損害を埋めるので精一杯。そんな真実を並べつつ、パトカーへ踵を返す。

「・・・ん?」

向かいの銀行のホールに怪しい2人組が立っている。そしてその内の1人がこちらを指さしたと思うと、何か恐ろしい感じがしてすぐパトカーに隠れる、すぐさま獣の咆哮を思わす射撃音と風切り音が同時に襲いかかってきた。とりあえず応援を呼ばなければ。

「警視庁!警視庁!!こちら西35!」

「こちら警視庁!」

「四菱銀行西大通り支店に火器を所持した2人!こちらは軽機関銃と思しき火器にて射撃を受けています!至急マル援を要請します!!」

「警視庁了解。直ちにSATを送る。犯行グループと周囲の詳細を求む。」

よかった。SATは今動けるらしい。相手のリロードで銃弾の雨が止んだ隙に顔を出し、打ち返す。が、

「うわ。弾丸を受け付けない!?」

相手は防弾チョッキのような物を切り貼りした装甲を纏っていて、拳銃弾をものともしない。まさしく気分はガ〇ダムと遭遇したジーンの気分。しかし機関銃の相方がアサルトライフルで援護して、軽機関銃の猛射が再開される。

「警視庁!警視庁!!強盗犯は防弾チョッキを加工したと思われる防具を装備。こちらの拳銃が通じません!アサルトライフルと機関銃の射撃で身動きも取れません!」

と犯人達の詳細を送る。

「こちら警視庁了解。SATはたった今出動。到着まで犯人達を足止めしろ。奴らを好き勝手させたまま逃がすな!」

と返信がくる。

「に、西35了解!・・・できるか!」

盾となっているパトカーももう限界が近いらしい。エンジンに被弾していつ爆発して丸焼きになってもおかしくない。頼みのパトロールライフルも木っ端微塵だろう。とりあえず変則的にトランクやバンパーの影から反撃するがこっちが5発のシリンダーを撃ち切るまでに何倍もの数を撃ち返されている。しかしサイレンの音が遠方から響いてくる。待ち望んだ援軍だ。助かったと安堵の息を漏らすが、1発の弾丸がとうとう車体を貫通してきた。

「こちら西35!これ以上強盗犯を抑えられない!」

と無線に言うと

「西35、遅くなった。これより展開する。」

とSATが返し、短機関銃や散弾銃で鎮圧に掛かるが、強盗犯の装甲は丈夫で、有効な打撃を与えられていない。

「後ろだ!後ろに周りこめ!」

SATの隊長が部下に指示を飛ばしている。しかし相手は背面のも装甲がある。後ろからでもむずかしいだろう。しかしそんな時、軽機関銃を撃ち放っていた強盗の頭部に狙撃班の放った銃弾が突き刺さる。奴はそのまま赤い液体を撒き散らし倒れて動かなくなった。もう一人も、車に走ったが先に逝った仲間の元へ送られた。

 

ー四菱銀行西大通り支店強盗事件第1次報告ー

 

死者:2人(いずれも犯人)

負傷者:15人(警察官5人、民間人10人)

物的損害

PC:全損1台、小破2台

一般車両:全損3台、中破5台

 

四菱銀行西大通り支店に軽機関銃と突撃銃で武装した二人組の強盗が押し入り、現金5000万円を強奪しようとこころみるも向かいのドーナツ屋に西署勤務の長谷川美夏巡査のPCを発見。応援要請を恐れ発砲。しかし長谷川巡査は降車しており応援を要請、反撃するもこの後SATの到着まで機関銃弾の猛射をうけた。その後SATが到着し、短機関銃、散弾銃等で射撃を加えるも、防弾チョッキを加工した装甲服により有効な打撃を与えられず、やむなく狙撃班の狙撃により殺害。

 

なお、本件で強盗犯側が使用した弾薬は約1500発に及ぶ。今後は、警官の火力の拡充が必要との方針を固めさせた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「はぁ。生きてるのが不思議ね。・・・ありがとうね。」

すっかり大破しつつも私の命を救ってくれた相棒のボンネットに座って、そう呟いた。

 




この本編の事件のモデルは「ノースハリウッド銀行強盗事件」をモデルにしています。なんか"パトロールライフル"と調べたら出てきたので・・・。稚拙な文章でしたがありがとうございました。


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何この新人君と思ったら何この誘拐野郎は編

そういえば長谷川巡査のプロフィールを前回載せ忘れてたので置いときます。

長谷川美夏(22)
身長170cm、体重55kg、好物:麺料理、お菓子
丸メガネを掛けたポニーテールの一般婦警。父に自衛官、母に警官を持つ。自ら公務員を志して警官となる。射撃、格闘技能は親からの手ほどきをうけて中の上程。善良な国民や仲間を守るのを信条とし、自己犠牲すら厭わないが、凶悪犯は死んで償えという考えを持つ。


あの強盗事件から数日経った。少しPTSDになりかけな感じがするが、私の体は至って元気。今日もパトロールをしていた。変わった事といえば、新人の補充がきて、そいつが助手席にいることだろうか。

「なんで僕はこんな最前線に!?僕はコントロールセンター配属のはずだったのに!」

さっきからこんな調子でうるさい。

「署に帰ったら抗議して良いからとにかくパトカー内で騒がないで!」

と返しているが、一向にうるさいままだ。・・・さっきからすれ違う小学生達が歩道でこちらの様子を見て笑っている。大の大人が、更に警察官が駄々っ子のように喚いているのは傍目から見れば確かに滑稽だろう。どうしてこいつをこの状態でパトロールに出したのかコレガワカラナイ。

 

ー1時間前ー

「さて、行くか。」

独りでそう言ってエンジンをかけた時、数人の同僚が一人の見知らぬ顔の男性警官を雁字搦めにして運んできて、助手席に押し込み、警部補が

「悪いが新人研修を頼む。こいつは高取二郎巡査だ。頼む。」

と言って署内に退散していく。

「ヤダ!小生ヤダ!!前線勤務なんて聞いてない!!」

新人こと高取巡査とやらはこんな感じで暴れていた。

 

そして言動から読むに、どうやら配属先が違うと言っているらしい。どこのフユーリー号のノーマン君かな?でも高取はそのノーマンよりうるさい(*当社比)。このままだと禿げてしまう。そんな時、行きつけのドーナツ屋が目に入る。

「・・・背に腹は変えられないか。」

そうボソッと呟いてパトカーを降りてドーナツ屋に入る。

 

「ほら、これあげるからいい加減黙って。」

買ってきたドーナツを渡すと、ムシャムシャ食べ始め、全て平らげるとちゃんと静かになった。

「ふぅ。すみません。取り乱してしまいました。」

食べ終わると、高取は別人のように落ち着いた口調で話しかけてきた。

「え、えぇ・・・。まぁ・・・いいわ。」

と思わず返すが、正直ついでに買った昼飯も消し飛んだので良くない。

「僕、安全に出世したくて、110番センター配属を希望したんです。ほら、最近物騒なので・・・。」

彼が語ってくるが、安全に出世したいとか糸で刻まれてしまえと思ったが、それは心の中にしまっておく。ともかく、新人が静かになったからまぁ良し。パトカーを出し、パトロールを再開する。

 

「なんか、この前ヤバい銀行強盗が出たってのに静かですね。」

高取がそう言う。確かに、あの強盗事件で沢山撃たれた後は、特に危険な事にはなっていない。(事件が起きていないとは言ってない。)

「ホント。治安がいい時と悪い時の差が凄まじいわよ。」

 

広至になり、数ヶ月の南北朝鮮との衝突による治安の悪化に警察が追いつけなくなり、2年度に、銃刀法が改正され、講習と簡単な審査を受けさえすれば銃を持てるようになった日本でも、財布を落としても帰ってくることは未だよくあるらしい。だがしかし、長谷川美夏は、また貧乏くじを引いてしまうことになる。

 

「はえー。こんな静かな所もあるんすね。」

ここは倉庫が集まる地区だ。高取が言うように、あまり人気が無いのを良いことにヤバい取引が行われたり、物品の盗難も行われるのでパトロールの対象になっている。私は前を向いたまま答える。

「まぁ静かだけど犯罪の温床ぅわァァァーっ!?」

しかし右の角からパトカーの目の前に子供が飛び出してきた。急いで左にハンドルをきってブレーキを踏み込む。止まると、すぐに飛び出し、

「だ、大丈夫!?」

とすぐに安否を確かめる。どうやら手足を縛られ、猿轡を噛まされた小学校6年位の女児だ。こんな所に子供、更に手足を縛られた子供がいるのは見たこと無い。

「ハフケテ(助けて)・・・。」

と女の子はポロポロ涙を流しながら訴えてきた。

 

 

偶然飛び出した先にお巡りさんがいた。良かった。助かる。家に帰れる。

 

「行ってきまーす。」

何気ない挨拶。でもこれが、最期の言葉になっていたかもしれないと思うとゾッとする。

「ねぇお嬢ちゃん。学校なんかよりもっと楽しいことしようよ。」

いきなり車から出てきたよく分からない白仮面によく分からない話を持ちかけられた。声が不気味だったし咄嗟に逃げようとした私は、後ろから引っ張られる感覚と、頭をぶつけた痛みを最後に、意識が飛んだ。

 

「・・・?」

目が覚めた私は何処か倉庫に運ばれたらしい。

さっきの白仮面は私に背を向けて何かしている。手足は縛られているが、何かに縛られている訳では無い。倉庫の扉も開いている。つまり、運動会で"ウサギ跳び障害物競走"で3連覇している私に不足無し!ゆっくり起き上がり、呼吸を整え、コースを見定める。良し!行ける。

「ん?あ、おい待てぇ!」

最初の1歩と同時に白仮面が気付く。だが私はそのまま倉庫を飛び出して・・・どうしよう。と思った時、

「・・・ぅわァァァーッ!?」

と素っ頓狂な声をあげて停まった第1車人はパトカーのお巡りさんだった。

 

「ファッ!?こんな所に警察かよ!?」

小学生が出てきた倉庫から白仮面を被った不審者が出てきた。

「ちょっとあなた、少し時間良いですか?」

私がそう言うと、

「え、わ、私は今その子が縛られているのを見つけたんです。話しかけたら逃げ出して・・・。」

怪しさは満点だが、だからといってそれだけで逮捕という訳にはいかない。とりあえず子供に聞くか・・・。そう思って女の子の拘束を解こうとした時、

「ぎぃやああ!!」

と高取の声が聞こえる。思わず仰け反った時、目の前を銃弾が掠めた。

「!?」

すぐに拳銃を抜き、犯人と相対する。しかし高取は、

「銃相手の訓練なんてしてない!こんな時は・・・逃げるんだよォー!」

と警官に有るまじき文言を吐いて全速で逃げて行った。

「こんな所で警察に見つかったのは想定外だが、婦警一人だったら、俺でも殺れる。」

と不審者は言い、

「思春期の前に、性の事に関して教えて差し上げようとしただけだが、見つかったのなら仕方ない。とりあえず、この婦警一人倒して、場所を変えるぜ。」

と言った不審者は拳銃を捨ててナイフを抜いた。

「生憎拳銃は当たった試しが無い。手合わせ願うぜ。」

と繰り出された素早い突きを身を翻して躱し、警棒を抜く。

「ヘヘヘ、怖いかポリ公。当然だ。元自衛官候補の俺に勝てるもんか。」

「試してみる?私だって現役警官よ。・・・ってか元候補生?試験落ちたんです?」

とつい煽ると、不審者は

「何をッ!?」

と怒り心頭の様子で斬撃のラッシュを放ってくる。下手に回避すると小学生に当たってしまう。なるべく警棒で受け流すが、額に受け流した余波を1発貰った。

「おっと、ごめんなさいね、顔は女の命だっけ?」

「アンタに言われたくないわ。色情魔。」

またラッシュが繰り出され、変則的に繰り出された突きやフェイント付きの斬撃でカスリ傷が増えていく。

「良い。良い!やっぱ必死に抗うも弱っていく姿は最っ高に勃〇モンだぜー!!」

その言葉に反発せず、同時に繰り出された突きを躱してナイフをそのまま犯人の拳から抜き取る。ナイフは勢い余って近くの電柱に巻いてあるカバーの根元に突き刺さる。後は背負い投げでもしてしまえば・・・。

「なっ!?」

ナイフはもう一本あった。とっさに左腕を盾に首への一撃を防ぐ。だがもう左腕に力が入らない。だけどまだ死ねない。奴を止めなければ小学生が危ない。

「ははは、かわいそーだぜ。弱い奴の為に命を張り、ズタボロ。なけるぜー。」

「はは・・・それが警官の使命よ。」

せめて時間を稼ぐ。痛みに耐えつつ、会話を紡ぐ。気休めだが、それに賭けるしかない。

「まぁ、そろそろ行かせてもらうぜ。」

奴がナイフを構え、突っ込んでくる。

 

生えた。

何が?

ナイフの先が。

誰から?

・・・お巡りさんから。

 

「グ・・・カハッ。」

「ヒヒヒ・・・。良い断末魔だぜ婦警さん。久々に良い気分だぜ。そう、干からびるギリギリに久々に水を飲んだような感覚だぜ。ま、もうお話も終わりだろうな。」

お巡りさんの手から棒が滑り落ちる。やだ。やめて。せっかく助けてくれようとしてくれたのに。おでこも左腕も、あちこち切られても助けてくれようとしてくれたのに。

「ハハハ。腰が抜けて立てないか?嬢ちゃん。大丈夫だぜ。後で相手してあげるからな。今はこのお巡りさんの最期を見届けてやりたいからな。そう、炎が、全て燃え尽きてしまう、どんどん冷たくなっていくあの感触。たまらないぜ。ヒヒヒヒヒヒ・・・。」

 

 

 

 

「ん?」

誘拐犯の腑抜けた声。見ると、お巡りさんの右手が、誘拐犯の襟を震えながらも掴んでいる。

「ほぉー。まだ生きていたか。まぁ良い。なんだ?最期に遺言くらいは聞いてやるぜ。」

「・・・。」

「あ?」

お巡りさんの口が誘拐犯の耳元へ行く。ナイフの先が少しづつ伸びていく。

「国の為に・・・死ね。」

直後お巡りさんは全力の膝蹴りを誘拐犯の股に叩きこんだ。

「ぎにゃああああああああああああああ!!!」

誘拐犯は白目を剥いてお巡りさんを突き飛ばす。バタリと倒れたお巡りさんの顔は、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁー・・・。こっ、このクソアマがぁぁぁ!!!」

この時誘拐犯から一切の余裕は消え失せた。殺す。殺す!はらわた全て引きずり出して、八つ裂きにして!電柱に飾ってやる!!もはや痛みは怒りで鈍感となっていた。しかしやはり歩くのが少し覚束無い。

 

「し、ここ、こ、今度こそ死にやがれぇ!!」

警官の腹のナイフを抜き、その顔面に突き刺そうとしたその瞬間。

「・・・あ"?」

銃声が聞こえる。傾ぐ風景の中見れば、あのガキが震える手で拳銃を構えていた。何か、怒りに震えるような目で・・・。

 

誘拐犯が倒れた。おでこに風穴を開けて、目も一杯に開いていた。私の手には、お巡りさんのポーチから飛び出た拳銃がある。後ろの電柱の所には、刺さったままのナイフと切れたロープが落ちている。

「ねぇ。お巡りさん。・・・お巡りさん。」

倒れているお巡りさんに近づき、揺する。お巡りさんの目はボーッとしていって、下に血の池がどんどん広がっていく。

「お巡りさん?やだよ。助けてくれたお巡りさんも死んじゃいやだよ。ねぇ。ねぇ!起きて!!・・・お願い・・・。」

そのままお巡りさんのお腹に突っ伏して大声で泣いた。

 

この後、実は高取がしていた増援要請によって西29が全速でドリフトすらかましつつ到着したのはこの30秒後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ、もう来たのか。」

暗闇の中、聞き覚えのある声が聞こえる。

「はっ!?」

見れば、カフェにいる。身体中にあった傷はない。向かいの席に、1ヶ月前死んだ相方。運転するパトカーの助手席で気付いたら頭をぶちまけて死んでいた佐藤がこちらを見つめていた。

「さ、佐藤・・・君?」

「まったく。こんな早く来るとは思わなかった。どうせあんたの事だ。人の為に命張ったんだろ。」

図星だ。確かに私は足止めをしようとして・・・?

「そうだけど、ここって・・・あの世?」

私が急に話を変える。しかし佐藤は、表情も変えずに

「さぁな。ホントに死んだらわかるんじゃないか?」

と言って私を指さす。

「え?」

私の体には傷が戻っていた。

「少なくとも会えて良かった。じゃあ。」

そう言って彼は立ち上がって去っていく。

「いや、待ってこれってどういう・・・。」

私が手を伸ばすが、届かない・・・と思ったら何か異様にツルツルした何かを掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわああああああああ!!!???」

「きゃああああああああ!!!???」

「ひゃああああああああ!!!???」

「どわああああああああ!!!???」

病室に4人分の悲鳴が響いた。

「・・・?あれ?あの時の・・・。」

ベッドを囲んで居るのは30代後半位の男女に、あの小学校6年の女の子が座っていた。というか手に持っていたのはリンゴだった。

「お巡りさん!」

女の子が抱きついてくる。

「いででで!」

傷が痛み、思わず耳障りな呻きを上げてしまった。

「こら、さやか。すみません。・・・娘を助けて頂き、ありがとうございました。」

母親と思しき人に続いて(多分)父親が

「どう感謝すれば良いのか・・・酷い怪我までされて・・・。」

と言って、2人で頭を下げてくる。

「いえ、いいんです。これが警察官の義務ですから。」

そうにこやかに返す。あの女の子、さやかちゃんが無事でよかった。彼女はとてもにこやかに笑っていた。聞けば、西29を初めとする増援が到着した時、彼女が私の腹部の出血部を突っ伏して抑えていたのが功を奏し、私は生きながらえたらしい。・・・つまり私は逆にさやかちゃんに助けられたということになる。今でも彼女は学校終わりにお見舞いに来てくれる。聞けば、将来は私と同じ、警察官を目指すらしい。うれしかった。でもこの子ホントに小学生6年生か分からない位しっかりしていた。ひょっとしたら人生2週目なんじゃないかとか思ってしまった。

 

ー鈴木さやかちゃん誘拐事件第1次報告ー

 

死者:2名

1名(犯人のみ)

負傷者:1名(重体)

 

西地区〇丁目付近にて小学校へ登校中だった小学校6年生の鈴木さやかちゃんが、誘拐された。学校や親の行方不明届けが提出されたのとほぼ同時刻に、西署勤務の高取巡査より報告が入り、付近のPC、西29、西16を向かわせた。さやかちゃんは自力で犯人の隙を突き逃走。偶然遭遇した西35、長谷川巡査に保護されるも、犯人と交戦。詳しい推移は不明であり、西29の報告では既に犯人は射殺。長谷川巡査は出血多量で意識不明状態で発見。さやかちゃんに怪我は認められなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

高取が逃げたのは正直腹が立った。でも、彼が曲がりなりにも応援を要請してなかったら私は生きていない。人生とは分からないものだなぁ。そう思いつつ、見舞い品の和菓子を頬張る。・・・。応援ならあの場で呼べたんじゃ・・・。やっぱ許さん。

 

 




前回から薄々
「あれ、文字数少なくね?短くね?長く詳細描けないワイ文才無くね?」
と勝手に思ったので2連戦です。出来れば最低2000文字以上描きたい所さん。(出来るとは言ってない)

ちなみに4人の悲鳴のとこは
長谷川巡査
女児母
女の子
女児父
の順番です。


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麻薬カルト宗教検挙!(設定も筆者の頭も)大混乱編

3話目です。万歳エディション面白いですよね(唐突+個人の感想)。感想ありがとナス!
あと、高取巡査のプロフィール乗せときます。

高取二郎(21)
身長168cm、体重60kg、好物:ピザ、タピオカ
次男坊であり、そのせいで兄や父から見下され気味で、高給取りになって見返して、唯一優しくしてくれた母には楽をさせたいという野望だけを持って警官になった人物。110番センター配属を熱望していたが人員不足で最前線に送られ半分ヤケクソ気味。長谷川に身長で負けているのが何気にコンプレックス。


警官にはなった。確かにそれで出世して見返そうとは思った。・・・だが、俺の配属希望は何故か通らず、よりによってパトカーのお巡りになってしまった。まぁ前向きに考えるなら、ここなら出世の機会も多そうだ。が、そんな考えは初日から脆くも瓦解。どころか木っ端微塵だ。半ば強引にペアを組まされた婦警、長谷川巡査と俺は、誘拐犯と偶然遭遇した。相手は銃を持っていた。怖かった。命の危機を感じて、俺は逃げた。直前に逃げてきた女の子も拘束状態なのにウサギ跳びで道路まで来たんだ。その子も長谷川巡査も逃げてきたと思っていた。・・・だが、しばらくして振り返った時、誰も居なかった。応援を要請して、応援と戻った時、長谷川巡査は、血の海にいた。瞳孔が開いて、呼びかけても反応しなかった。長谷川巡査の腹の上で泣いていた女の子は逃げた俺を歯牙にもかけないで、ただ長谷川巡査の横で泣いていた。多分だが、もう長谷川"警部補"だろうか?2階級特進して、動転してた時にくれたドーナツの礼すらできずに1日でサヨナラか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう思ってた時期(1時間)が俺にあった。チクショー!いや、正確には喜ばしいことなんだが、なんとどっこい生きていた。感傷に浸ってた俺の時間返せ!!代わりにドーナツの借りは無しという事にしてもらいたい。尤も、俺は警部hゲフンゲフン。巡査には合わせる顔が無い。彼女が負った傷は額、左腕、腹部、その他細かいかすり傷も含めれば13箇所の傷だ。だが運命とは非情な物で、退院してきた長谷川巡査とまたペアに戻された。あぁ、チクショウ。

 

「久しぶり。三途の川から舞い戻ったわ。」

久々に会った高取に挨拶する。正直逃げたのは叩きのめしたい気分だが、彼が応援を呼んでなかったらホントに2階級特進だったので大事にはしなかった。(だからドーナツ代返して)彼の顔は強ばっていたが、とりあえずパトロールへ出発する。

 

「なんかあの車フラフラしてんね。」

前方を走る青いセダンがフラフラ走行している。ヤクを打ってるか、飲酒運転か・・・その他。どちらにせよ、危険には変わりない。

「ヤクと飲酒運転の検査キット用意して。」

高取にそう言って青いセダンにスピーカーで、ついてくるように呼びかける。が、

「あ、逃げた。」

パトランプを鳴らし、セダンを追いかける。セダンは大通りをそのまま進み、次々車を追い抜いていく。しかし明らかにフラフラしながらの挙動でかなり危険だ。が、トラックを追い抜いた丁度その時セダンは勢い余って路肩に接触。公園横にスピンして停まった。

 

「なんか最近麻薬関連多いですね。」

結局セダンに乗ってた2人組からは麻薬が検出され、逮捕された。高取の言う通り最近は麻薬関連の事件が急増している。街中で幻覚を見て錯乱して保護されたり、そのまま通り魔になったり。その他にも密売の通報も増えている。今日は、市民の通報により、密売が行われるという情報がリークされ、刑事部が検挙に向かうらしく、刑事達の水先案内と万が一取り逃した時の追跡用に駆り出される事になり、翌日あるはずだった休日を返納するはめになった。いや、振替休日があるなら良いんだけどね。

 

「どうなってます?」

高取がタピオカミルクティーを片手に聞いてくる。

「配置についているらしいわ。」

そう返しつつ気にしている無線からは刑事達の声が聞こえる。

 

「総員、配置につけ。」

「「了解!」」

「「準備、完了しました!!」」

「目標を確認。確実に確保しろ。」

「ハイ、ワカリマシタ(^р^)。」

「今だ!突撃ぃー!!」

「「バンザーイ!!」」

何かどこかで聞いたような無線が聞こえる。どこの万歳エディションだろうか(困惑)。

「あれ?敵を見失ってしまいました。一体どこへ行ったんだ?」

「上空援護機(警察ヘリ)を要請する!」

「了解!」

「偵察機(警察ヘリ)からの報告です。目標は西進中である。」

 

あれ?

「これ僕らも加わるやつですね。」

「そうね。ってアレ?」

どうやら売人その他は黒塗りのバンで逃走中のようだ。が、それっぽい黒塗りバンが今まさに銃火器を乱射しながら大通りの向こうからこっちに向かってくる。

「いやぁぁぁぁあ!!(汚い高音)」

黒塗りバンの助手席からのピストル攻撃でパトカーが被弾し、高取が喚く。

「撃たれたら撃ち返しても文句はあるまい!」

もう死にかけてあっちに逝きかけた私は拳銃位では怯まない(はず)。そしてバンに向かってパトロールライフルのMini-14を構える。ライフルの射撃は元自衛官の父さんからの手ほどきで同期の中でも少し上位に君臨していた。

「撃って良いのは、撃たれる覚悟がある奴だけよ。」

そんな漫画で聞いたセリフを吐いて狙いを定めると、

「ヤメロォ!俺を撃つなぁ!同士討ちになるぞぉ!(にほんへボイス)」

と無線が怒鳴ってくる。確かに、バンの後ろに、チラリと2、3台のパトカーが追跡しているのが見える。

「ダメかぁ。じゃ、通せんぼといこうかしら。」

パトカーを道の真ん中に横向きに出し、バンの道を塞ぐ。バンは速度を上げてくるがそう簡単に突破はできまい!?

「ぎゃぁ!!」

「うあっ!?」

さ れ ま し た。後端に突進されたパトカーはそのままクルリと回転して中央分離帯にぶつかった。

「ボボボ・・・。」

高取が泡を吹いているが、なんかテンションがおかしかった私は

「撃たれたまま逃がせるかぁ!」

と、アクセルを踏んで追撃に加わった。

 

「ウグアッ!ヤラレター!」

「衛生兵ー!(当然いない)」

「敵が手強すぎる!」

黒塗りバンを追いかけていたパトカー、東19、東4、東2は苦戦を強いられていた。バンにいる4人の内、2人から突撃銃、助手席からピストルの射撃を受け、迂闊に近寄れずに、東4から負傷者が出た。バンは尚も西進中で、ピットマニューバもかけられず、逃げられてしまうか。そう誰もが思った瞬間、珍事は起きた。

 

体当たり。これに尽きる。横の路地裏から、中破したパトカーが、バンに体当たりして、中央分離帯とサンドイッチにした。バンはこれにバランスを崩し、横転して果てた。犯人達は逮捕され、新手のタイプの麻薬5kgが押収された。

 

「警察に捕まったようです。」

ある地区。とは言っても住人のほとんどが組織の構成員で、事実上の根拠地となっている。その中央部の一室にて、会議が行われていた。幹部からの報告を聞いて、首領と思しき厳かな男が立ち上がる。

「警察か。多少想定外だが、我々の敵ではあるまい。・・・そうだ。奴らに次の計画を手伝って頂こう。国家を転覆させる計画の余興には丁度良い。いや、その後にこの世紀末を生きる民を導き救済する計画だったな。」

彼は口角を吊り上げ、幹部達に指示を出しはじめる。

 

「今回の作戦は、麻薬の密売を行っているというこの暴力団組織、"金田組"への家宅捜索だ。市民の密告によって、ここが麻薬を取り扱っているという情報を得た。丁度クレジットカード偽造を起こし、礼状は出ている。」

西署。話しているガッシリした体型の人物は警部補こと、"馬場 要(ばば かなめ)"警部補(40)だ。

「ですが、そういったものは刑事達の仕事なのでは?」

そう質問すると、警部補は

「1つ、人員不足で、刑事達を殉職させる訳にはいかないから。

2つ、道案内だ。」

刑事達は方向音痴なのかと考えていると、

「3つ。君が1番ドンパチの経験があるだろうから。」

と言われた。

「え?、ドンパチって・・・?」

「軽機関銃での制圧射撃を生き残り、ナイフで刺されて死んだと思ったら生きてたり、良い意味でしぶとさに定評のある君が適任だと思うが。要は抵抗したらねじ伏せるんだ。以上!」

「・・・。」

 

高取曰く、この後しばらく私はフリーズした様に動かなかったらしい。

 

「警察だ!」

「開けろ!デトロ・・・警視庁だ!」

「はよせんか!」

金田組本部前は大騒ぎとなっていた。

「どっちがヤクザか分からないわ・・・(困惑)。」

「コレガ桜〇門組ト呼バレル由縁カー(白目)」

後方にいた私達はただ、あ然としていた。しかし新手の麻薬どころか普通の麻薬も見つからず、もう1つの目的は失敗した。

 

「なんかさー、私が"しぶとい"ってどう思う?」

帰路に着き、高取にふと聞いてみる。いや、私は構わないんだけど、女性に言う言葉じゃないってよく漫画とかも言ってるから・・・。

「いや、妥当だと思います。」

と高取は表情1つ変えずにグサリと回答してきた。アンマリダ。

「や、ま、まぁ、わ、私は、構わないんだけどね!」

あれ、目から汗が・・・グスン

「・・・というか、なぜあの時逃げなかったんです?ほら、誘拐事件の時。女の子と逃げることは出来たはずですが?」

高取が少し空気を読んだのか、少し話をズラした。

「何言ってんのよ。私は警官。善良な国民を守るのが警察の義務だと思うから。その為になら命すら賭けるわ。」

私の家は代々自衛官か警察官になっていた。そして国家に尽くし、子供を残したまま殉じた祖先も居る。私はその家の長女として生まれ、警官を目指した。親は、好きな仕事に進んで良いと言っていた。でも私は警官を目指し、ここまで来た。

「あと、あんな奴に1歩でも退いたらカッコ悪くて実家にもあの世にも行けないと思ったってのもあるかな。・・・なんて、ちょっと先輩っぽくしてみたりして。」

一方の高取は、ただ黙って、反省するようなしょげた顔をしていた。

「そういえばさ、あの時訓練云々言ってたけど、訓練期間は?」

と聞くと、

「・・・5ヶ月です。僕大卒なんです。」

と答えた。

「・・・!1ヶ月短くなってるじゃん!?」

 

結局、金田組の言うことには、最近湾岸部の岸区にて、ヤバイ薬が出回っているらしく、1種のカルト宗教になっているらしい。そして、その"真の世紀末救世主の会"という名前の組織であり、数ヶ月前、クーデターにより会長を追放された初代会長が協力を申し入れ、証拠が集まった(by刑事部)。

 

「(色んな意味で)なんか雑じゃないですか?」

高取がこの前の新手の麻薬関連事件に関する説明の後パトロール中に呆れたように言う。

「まぁ、下に回ってくる情報なんてそんなもんよ。」

と返す。今回は駆り出されずに済んでホッとしていた。この前はあんなことを言ったが、私も怖い。なによりあの手の事件は刑事部の管轄で、コチラは関わらないはずなのだ(多分)。と思っていると、

「西署より岸区周辺のPCへ。刑事部が武装勢力と交戦中。付近のPCは援護に向かえ。」

と無線が来た。結局こうなるのか・・・(困惑)。

「えぇい!行くよ!」

そう言って現場に向かう。

 

「最終戦争だ!」

そう叫び教会の様な建物とアパートから銃撃を繰り出す武装勢力と、パトカーを盾に踏ん張る刑事達の所に、パトカーで飛び込み、パトカーを盾にして刑事達の所に合流する。

「うおおおお!!」

Mini14の援護射撃のもと、高取が刑事達と合流し、自分も連射しながら飛び込む。

「あ。長谷川氏やん。」

見慣れた四角いメガネの警官が話しかけてくる。

「お、黒岩氏ジャマイカ。」

彼は黒岩巡査(22)。同期にあたり、お互いメガネなのと国に忠誠を誓うあたりで意気投合した同僚であり、友人でもある。彼は応援として呼ばれたらしい。

「さて、教団員に制圧されてるが、アンタが来たからにはもう大丈夫そうやな。」

黒岩がMini14にマガジンを差し込み、ボルトを引く。

「どうする?まずは手前のアパート?」

私が確認すると、

「おっ、そうだな。皆さん、アパート片付けるので援護射撃を。」

と黒岩が他の刑事や警官に伝達する。彼はいつもは物静かだが、こういう時には少しアクティブになる。

「SATはまだか?このままでは全滅してしまう!」

「現在SATは道中にて抵抗を受けている模様。到着予定時刻は未定。待機せよ。」

刑事と無線のやり取りを聞いた黒岩は、丁度弾幕が切れたのを見ると、

「いいや、限界だ!征くねッ!」

「今だ!」

刑事達の射撃の元、パトカーの盾を出て、アパートの外壁に取り付く。

「なんや?高取巡査も来たのか?」

黒岩が高取に問いかける。彼は高取のヘタレ具合に不信感を持っていたが、この反応はただ単に意外だったらしい。一方の高取は、何かこの前から打って変わって真剣な顔で、

「僕だってもう警官です!・・・覚悟は決めました!僕は、責務を全うします!」

すると黒岩は、

「よく言った!それでこそ日本男児だ!」

と感激といった様子だ。日本男児とか言ってるが彼は22歳である。まぁ私が言えたことじゃあないだろうけども。(蘇る心当たり)

「このアパートを制圧するよ。銃を向けてきたら容赦なく撃ってよし!殴ってよし!突撃!!」

「はい!」

「ガッテン承知の助!」

高取と黒岩の返事の後、階段を降りてきた教団員に1発。

「階段制圧!」

階段を上り、刑事達を撃ち下ろしている教団員の側面に出る。

「後ろ見張ってて。」

高取にそう指示すると黒岩と、通路の教団員に掃射する。

「政府の犬共を殺せ!」

「そこにヤツらがいるぞ」(^р^)

残った教団員達2人がハンドガンで反撃してくるが、どうも何かの薬をやっているのか、精度はそれほどない。

「そしてリロードに入って弾幕が途切れた時に、

「今だ!」

黒岩が壁から身を出し、1人、通路に飛び出し残った奴を仕留める。

「助かる。反対側のアパートも頼めるか!?」

下で踏ん張る刑事達から無線が入る。

「了解。」

黒岩が答えると、反対側の、何も気付いていない様子の教団員に狙撃を試みる。刑事達も、たまに1人、また1人と、リロードの合間を縫って外壁に取り付いている。黒岩の射撃は正確に刑事達を妨害する教団員を無効化していく。

「その狙撃の腕は相変わらずね。」

「なぁに。中距離以遠だけさ。」

黒岩は近距離はからっきしだが、中距離以遠での射撃なら一級だ。

「こちらも制圧!助かったぜ。あとはあの教会みたいな悪趣味な建物だけだ。」

「了解。」

刑事達の無線にそう返事をして、道路の突き当たりの建物へ向かう。

「俺たちは車庫の方から回る。逃走経路を断つ。正面を任せたい。」

合流した刑事達にそう言われ、正面扉の前に陣取る。・・・よく考えればこれは囮にされたような物だろうか?

「SATの奴らまだですかね?」

高取の疑問に、黒岩が答える。

「途中で襲撃されて足止め喰って弾薬欠乏だってよ。」

この時SATはシンパと思われる武装勢力に襲撃されて足止めを喰らい、弾薬と時間を浪費していた。

「なんか呆気ない・・・呆気なくない?」

思わずそう言うと黒岩は、

「まぁ、聞いた話だと練度の低下が凄まじいらしいぞ。なんでも、損耗が酷いとかで。」

と返す。SATから弾薬が切れたというセリフは聞きたくなかった。

「この国の未来はどっちかしら・・・。」

思わずため息が出るが、つまるところ私たちでなんとかしなくてはいけない。

「さぁ、行くよ。」

そう言って、扉を開ける。

 

「警察よ!動かないで!」

広がっていた礼拝堂のような空間の奥には、現首領だと情報があった男が、平然とした様子で佇んでいた。彼は私たちに語りかけてきた。

「君たち、今のままで良いと思っているのかい?」

「動かないでと言っているのよ。」

私の制止を聞かず彼は続ける。

「この国はどうなっている。不景気!戦争!治安の悪化!この国は変わってしまった。銃社会になり、常に脅威に怯えるような国になってしまった!」

「何が言いたい!」

高取が怒鳴るが、彼は冷静を保ったまま、

「望まず変わった物は、戻さなければならない。革命だ。この国を戻すには、革命が必要だ!そして、我々が元の日本へと、この国を導いていくのだ!!」

彼がそう言ったが、この組織は新手の麻薬を振りまいている。

「何が革命だ。麻薬をばら撒く奴に国がどうとか語る資格があるのか!」

黒岩がそう言って銃を向ける。

「この国が衰退したのは国民に自由を与えすぎたのが原因!ではどうするか。これを使えば、自ずから目上を敬い、国を纏め上げられる!君らもどうかい?救済の為に我々と志を共にしないか!?」

彼はそう問いてきた。

「・・・そんなモノに頼った国家なんて願い下げよ。 断るわ。」

そう答えると、高取や黒岩も頷いた。

すると首領の男は

「そうか・・・。」

と言って指を打ち鳴らした。

「うぉっ!?」

黒岩の近くを銃弾が掠め、彼は遮蔽物に身を隠す。私もライフルを構えようとしたその瞬間に、何かテグスのような物が落ちてくるのが見えた。

 

「い"え"ッ!?」

いきなり長谷川が短くも素っ頓狂な声を上げた。

「どうした!?」

振り返った先には、後ろから首にワイヤーのような物を引っ掛けられ、首を締められている長谷川がいた。

「カハッ、カハッ!」

長谷川は手足をジタバタさせて抵抗するが、状況は改善しない。すぐライフルを構えるが、

「ドルァ!!」

と、最初に撃ってきた教団員が肉弾戦を仕掛けてきた。視界に入った高取は特にないらしい。

「高取!撃て!」

ライフルで攻撃を防ぎ、そう叫ぶが、高取は拳銃を構えたまま、震えていた。あぁ、そうだ。ワイと長谷川は最初から密輸業者との銃撃戦を経験したが、彼、高取はその"人を撃った経験が無い"。いや正直無いほうが良いんだが、これには覚悟が必要だ。

 

まただ。また、あの誘拐事件の時と似た状況だ。"その気になれば逃げられる"状況。拳銃を構える手は震えてる。このまま逃げても、誰も引き止められない・・・だけど逃げちゃダメだ。また逃げてしまったら、今度こそ誰にも合わせる顔が無くなってしまう。

「高取!覚悟を決めろ!!」

教団員に抑え込まれている黒岩巡査の声が聞こえる。そうだ。僕はもう覚悟を決めたんだ・・・!やってやる!

「うらぁあああああ!!!」

1発の銃声。それは長谷川巡査の首を締めていた教団員の体を撃ち抜き、その教団員を無力化した。長谷川巡査は前に倒れ、直後彼女はライフルで黒岩巡査と取っ組みあってる教団員を撃ち抜いた。

「オラァ!警察じゃぁー!!」

丁度、車庫から回ってきた刑事達が、首領の男をとっ捕まえた。長谷川巡査は咳き込んだり息を切らしていたが、

「初めてにしては、上出来ね。」

と言うと、間髪入れずに

「良いセンスだ。」

と黒岩巡査が続けた。仲良しか。

 

ー"真の世紀末救世主の会"テロ事件1次報告ー

 

死者:35名(警官3人、犯行グループ32名)

負傷者:33名(警官11名、犯行グループ20名、一般人2名)

 

物的損害

PC:全損2、中破3

一般車両:全損2

 

真中区において麻薬の密売の情報を掴んだ捜査2課が、売人を確保しようと試みるも失敗。付近の東2、4、19、西35が確保。新型麻薬5kgが押収。この後、関与が疑われた金田組にも家宅捜索が入るが、誤報であった。その後、真の世紀末救世主の会が捜査線上に浮上。家宅捜索に向かうも、拳銃で武装した勢力からの抵抗を受けるも、応援として駆けつけた警官達の支援もあり、首領の男を逮捕した。これからはパトロールの強化が求められる。

ーー

「いよぉし!出来てなかった高取の歓迎会やるぞ!」

署に戻った時、馬場警部補はそう言って歓迎会をおっ始めると言い出し、居酒屋を予約した。えぇ・・・(困惑)

 




0時投稿に遅れましたすみません。色々頭がごちゃごちゃしてしまって・・・。黒岩巡査と馬場警部補のプロフィール載せとくので許して下さいお願いします。

黒岩 幸助(くろいわ こうすけ) (22)
身長175cm、体重62kg、好物:豚骨ラーメン
四角いメガネがトレードマークの警官。長谷川とは同期で、思想に似通った所(主に正義感)があった為意気投合。スコープ無しの狙撃に関して秀でるが、近距離はからっきし。

馬場 要(ばば かなめ)警部補(45)
身長183cm、体重90kg、好物:食べ物ならなんでも
ガタイの良い警部補。脳筋だったりポカをやらかす事もあるが、部下想いの所もある為、何だかんだ愛されている上司。柔道で右に出る者は居ない。

次は日常回にしたいです(願望)


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広至日本パトロール編

今回は銃撃戦とかはお休みです(戦闘が無いとは言ってない)。そうしないと警察が人員的な理由で壊れちゃーう(多分)と思って。(討死するドンパチ系タグ)
死人が出ない回にしたい(願望)


「あーあ。今月金欠かぁー。」

馬場警部補がいきなり高取の歓迎会と称して飲み会を開き、参加する羽目になった。使えるお金が減って節約しなくてはいけない。

「僕もですよ。まぁ、まだ仕送りは来ていますが。」

高取がそう返事をしてくる。まぁ彼はそこそこの名家の出らしく、食の局限はしなくても良いのだろう。・・・羨ましい。いや、国の為に命を賭けてきた家系に生まれたのが不満とかじゃない。ホントに。と思っていると、

「にしても、お酒入ると変わりますね。」

と高取が言ってきた。

「え?」

「いや、なんか、こう・・・」

 

ー昨夜ー

 

「高取巡査を歓迎して、乾杯!」

警部補の掛け声の後、歓迎会が始まる。とは言っても、居酒屋でワイワイするだけ。まぁ、楽しかったから良いけど。最近お酒を飲まなかったせいでお酒に弱い事を忘れていた。・・・実は解散までの記憶が曖昧だったりする。

 

「で、警察学校落ちたら社会科の教師やろうと思ってたんスよー。」

もう酔ったのか、上体がふらついている長谷川巡査がそう言って手にしているビールを飲む。

「因みに、嫌いな教科って何だったん?」

黒岩巡査が口を開く。彼も少し目が泳ぎ始めている。2人とも酒に耐性のたの字も無いのか・・・(困惑)。

「そりゃぁもー数学ッスよ。あれは鬼畜ッス。」

「あー。俺もいつも分からんかった。ハッハッハ。」

酒には強いらしい馬場警部補も続いたその一言に、つい、

「え、そんなですか?」

と言ってしまった。長谷川巡査は少し僕を睨むと、

「だってさー、あれテストでいきなり変化球投げてくるやん。分かるわけないやん。」

と言ってきた。数学者の家系の血が、高校数学テスト学年1位3連覇の血が騒ぐ。

「えー、楽しいじゃないですか。橋造って向こうに渡る感じで。」

「でもさ、公式覚えても訳分からん問題でてくるからさ、やっぱさー、覚えればそのまま点数に繋がる社会科の方が至高よ。」

そう言って長谷川巡査はまたビールを飲む。

「「うはー!」」

丁度近くの座敷のオッサンと長谷川巡査のが被る。酒入るとオッサン臭いなこの人(驚愕)

「ですが、数学って・・・。」

そう言いかけたとき、

「論理的思考力を養うってんなら、戦略ゲームでも良いと思うんス。」

と被せてきた。

「でも覚えるだけって誰でも出来るんじゃ・・・。」

と反撃として言うと、

「えぇそうよ!でもね、私ぁこうして警官になれたわよ!」

と返された。が、

「・・・あれ、私何の話ししてたっけ?まぁ、良いや・・・。」

と、いきなり寝始めた。

「グゴオオオ、グゴオオオ」

という女性のイビキとは思えないイビキをたてて。

 

「・・・って感じでですね・・・。」

「・・・///」

昨夜の話しを聞いた長谷川巡査は、まるで真っ赤な梅干しみたいになっていた。

 

高取に秘密にしてほしいとお願いすると、学校に向かう小学生達が見える。私が入院していた時(2話目参照)に、学校周りもパトロールのルートに入っている。

「・・・?あれって・・・。」

高取が指さす先には、塀の影から顔を覗かせる男性がいる。

「まさか・・・ね。一応職質するよ。」

そう言って2人でパトカーを降りてその男性に近付く。

「・・・あの、少しお時間頂けますか?」

恐る恐る話しかけると、男性が振り返る。あ、あの時のトラウマが。やめて、今出ないでお願い。

「え?あぁ、何でしょう?」

男性は少しビクついたが特段抵抗せず職務質問に応じた。

「え、えーと、ここで何を?」

トラウマを触発されて私も思わず固くなる。男は、

「あぁ。いや、気になったもので・・・。」

と答える。

「小学生達の何が気になったんです?」

高取が口を開く。今度は肝は据わっている顔だ。男は、ゆっくり向こうに居る小学生の一人を指差し、

「あの子、息子なんです。ちょっと、学校での様子が、気になってしまって・・・。」

と言った。本当かは確認出来ないが、一応身分証を見せてもらう。

「本部、本部。この方の照会求む。」

「了解。・・・大丈夫だ。特に怪しい事はしていない。」

まぁこの人目の中で誘拐しようとは思わないはずだが、と思っていると、さっき男性が指差した男の子がこっちを見て、走ってくる。

「パパ?なんでここに居るの?」

と彼は男性に話しかける。どうやら本当に親子らしい。

「すみません。御協力感謝します。」

そう親子に言ってその場を離れる。と、見慣れた顔が話しかけてきた。

「あ!美夏さん!」

そう、あの誘拐事件の時に保護した女の子だ。今もちょくちょく署まで会いに来てくれている。

「あら。さやかちゃん、元気そうね。」

そう返すと、さやかちゃんと一緒に居た他の子供が、

「行こ。お金取られちゃうよ。」

と囁いたのが聞こえた。

「ん?ごめん。何だって?」

高取が真っ先に反応したが、子供はすぐさま立ち去ってしまった。首を傾げていると、さやかちゃんは、

「ごめんなさい。実はあの子達・・・。」

その後の彼女の言葉に、私達は耳を疑った。最近警官を名乗る人物が、当て付けのような理由で罰金を課しているという。

「・・・どこで見たとか聞いた事ある?」

私達は聞いたその場所へ向かった。

 

「にしても、警官に成りすますとは、クレジットカードの詐欺位でしか聞いた事ないですけど。」

高取がそう言うのに、

「まぁ、最近は拳銃が私物でも可になって、拳銃が違う型式でも怪しまれないのもあるのかしらね?分からないけど。」

と答えると、パトカー・・・の様な車両が現れ、中から制服姿の警官が現れる。そして通行人の一人に話しかけると、何かを話し始める。

「あの警官、警察手帳を出さなかったわ。」

本来なら、制服警官でも警察手帳と携帯と提示は必須であり、この警官は少しばかり怪しい。

「そしてよく見るとあれ、西35(・・・)ですよ。」

高取が言う通り、あのパトカーの番号はこの車両と同じだ。

「・・・決まりかな。よし、尻尾引き抜いてやるわ。」

そう言って、応援を要請し、その現場に向かう。

 

「ですから、一時停止しなかったので罰金7000円です。今ここで払って下さい。」

そう言って詰め寄る制服警官に、

西35(・・・)、現着。」

と言い、割って入ると制服警官は

「・・・え?」

と顔を真っ青にする。

「あれ、顔色が悪いですよ?大丈夫ですか?・・・えーと?」

高取が聞くと、

「う、宇曽です。」

と相手は答える。

「因みにパトカー見ると、西署所属ですか?あーいや、お会いした事が無いなーと思いまして・・・。」

すると

「わ、私は秘密裏に動く部署で・・・。」

「それでは、何故制服を?秘密裏なら、私服とかじゃないと。」

少しの沈黙の後、

「・・・全く。勘のいい警官は嫌いよ!」

その言葉と共に拳銃を抜いた偽警官に、ほぼ同時に拳銃を構える。周りの市民は蜘蛛の子を散らす様に逃げていく。

「・・・銃を捨てて。こっちは2人居るのよ。」

そう命令すると、

「・・・チッ。」

と、銃を捨てる時、視線が銃に向いているその時、下からの攻撃に襲われた。

 

「ハウァッ!?」

長谷川巡査が凄まじい声を上げて倒れ、物凄い形相でのたうち回る。僕の股にも悪寒が走った。

「長谷川巡査がやられた!?この人でなしー!」

「ひ、人でな、ブッ!?」

そう言って放った飛び蹴りは、見事命中。偽警官は2、3回転がって気絶した。そのまま確保し、長谷川巡査を向くと、

「(´×ω×`)」

といった顔でうずくまり、小1時間動かなかった。

 

「「・・・。」」

パトカーの中は静寂に包まれていた。

「・・・お手柄だったわね。」

まだ顔が薄ら青い長谷川巡査が口を開く。

「え、あぁ、どうも。・・・先輩大丈夫ですか?」

それとなく聞いてみると、

「・・・あの事黙っといてよ?」

長谷川巡査はそう呟く。実際、拳銃の騒ぎで逃げていった市民には見られずに済んだ。しかし応援としてやって来た内の黒岩巡査だけは、知ってしまっている。

「・・・ワイは何も見てない。誰にも話さない。」

そう黒岩巡査は言っていた。以心伝心かよ。・・・でもよく考えると、目があった瞬間、二人とも顔が少し赤かったような、そうじゃないような・・・?

「あの事広まったら私には社会的な死が待ってるわ。いわゆる"お嫁に行けない"って奴。」

「大丈夫ですよ。・・・多分。」

「・・・多分?」

 

ーー西南区偽装警官詐欺事件1次報告ーー

損失:人員、車両共に無し

西南区において、偽の警官が罰金として金銭を詐取する事件が横行しており、犯人は全ての犯行の関与を自供。同一犯と分かった。市民からの通報を受けた西35が、西35に偽装した乗用車を発見。銃撃戦に発展する1歩手前だったものの、高取巡査が犯人を確保。なお、犯人の供述では、四菱銀行強盗事件にて西35が大破したのを偶然発見、欠番になると踏んで西35に偽装したとの事。

 

「・・・ワイは何も見てない。誰にも話さない。」

そう言って現場を後にしたが、なかなか変な絵柄だった。股を抑えてのたうち回る長谷川、困惑する高取、なんかゴメンみたいな顔をして連行される偽警官。・・・詐欺師が蹴っておいてそんな感情を抱くのかは置いておく。連行していった仲間は何故か気付かなかった。秩序を守り、母国に貢献したい一心で警官になり、出会った時に、(人間関係的な意味で)上手くやっていけそうと思った、初めての気がおけない異性の友人だからか、罪悪感を感じた。今度コンビニのケーキでも買うか。そんな事を考えつつ、パトロールに戻った。

 

蹴りあげられたのは痛かった。でも1時間半もすれば平気になった。でも、(痛恨的な意味で)もっと痛かったのは、同僚に見られたことだろうか。でも黒岩だったのは不幸中の幸いか。彼は(戦闘中を除けば)紳士だから言いふらされる事はないだろう。出会った時、意気投合して、気が置けない初めての異性の友人となった。多分彼の事だろうから罪悪感を感じているに違いない。今度何か買っておこう・・・。

 

暗くなり、会社帰りに酒を飲み、酔っ払いが出始める時間になった。

「さて、今度は平和だと良いんだけど。」

そう言った直後、

「西署よりパトロール中の各車へ。居酒屋にて大規模な喧嘩が起きている模様。周囲のPCは直ちに向かえ。」

と無線が入る。

「西35了解。・・・なけるわ。」

パトランプを鳴らし、現場へ向かう。

 

「それ!そこだ!」

「いけー!!」

「頑張れ頑張れ絶対出来る!」

居酒屋の一角。この店には、ゲーム機"ス〇ッチ"が置かれており、ス〇ブラでは最大8人で対戦が楽しめる。今日この店に集っている25人の客は近くの工事現場で働く犬飼組と猿飼組の作業員が10人ずつ、一般会社員が5人。その作業員達は交流の為遊んでいたゲームは白熱していたが、

「ゲームセット!!」

「何でや!今のは判定おかしいやろ!」

と誰かが言い、それがきっかけか、口論があちこちで芽吹き、それらは大きくなり、

「オラァ!」

「グエッ!?」

「あの野郎!やりやがった!!」

ある作業員が相手方の作業員を殴った事で、組対抗の大喧嘩が始まった。

 

「西35、現着。」

通報があった居酒屋に駆けつける。

「まずは現状をしらべましょう。」

高取がそう言って店のドアを開けると、中で作業員達が椅子や机、皿、素手で乱闘を繰り広げていた。

「おい!警察だ!騒ぎをォブェッ!?」

高取が声を張り上げるも、皿の流れ弾を顔面に食らって追い出された。

「高取!」

高取は目を回していたがいたって大丈夫そうだった。

とそこへ、

「高取?と、長谷川氏!」

黒岩とその相方が合流し、黒岩の相方に高取を運んでもらい、逃げてきた一般会社員4人、ゲーム機を抱えた店主を保護した。新たに応援にやってきた西24の警官達と共に、パトカー常備の盾と警棒を構え、突入する。

「動くな!警察だ!」

黒岩が叫ぶが、

「うるせぇ!!」

「サツは引っ込んでろ!」

と、何人かがこっちに向かってきた。

「佐藤!エンゲージ!」

「田中!エンゲージ!」

西24の2人も、この空気に呑まれたのか、前進し、暴徒に挑む。

「しゃあない。銃撃戦よりはマシかしら?」

「さぁ?袋叩きに遭うかも。」

そう言いつつ、私と黒岩氏も西24の二人に加勢する。が、数が多い。

「ドギャス!!」

田中の方は蹴りによって体勢を崩された所を、椅子で殴り飛ばされて窓の外に出された。

「田中!?くそ!助けてくれ!」

一方の佐藤の方は、

「行くぜ!奥義!塩砂嵐!!」

と、塩をばら撒く相手に目くらましを喰らい、田中の方と同じく、訳もわからず窓から外に落ちた。これピンチ?

「麻秋!瑠手!警官にジェットストリームアタックをかけるぞ!」

と言って向かってくる3人がいる。ジェットストリームアタックって黒い3連星のあれ?

「く、来るのか!?」

と黒岩も乗り気だった。

「オラッ!」

黒岩が盾で先頭の男にタックルをかます。その右から現れる2番手の放った皿を盾で防ぐ。

「喰らえ!」

1番手の左から現れた3番手に、黒岩が時計回りに周り、遠心力を乗せた警棒攻撃で殴りつける。

「ゲフ!?」

3番手が倒れた時、黒岩の背後に塩砂嵐の男が立つが、

「そい!」

と蹴り飛ばす。

「パーフェクトだ長谷川氏。」

黒岩が不敵な笑みを浮かべる。私は黒岩が何を言いたいのか理解し、

「感謝の極み。」

と礼をする。そう、H〇LLSINGのあのワンシーンである。彼と私は色々共通の趣味を持っている。

「なんだこのお巡り!?ジェットストリームアタックと塩砂嵐を破りやがった!?」

喧嘩をしていた両勢力は、この一言を聞くと、なぜか休戦してこちらに向かってきた。何で?

「来る奴は叩く。行きまっせ、長谷川氏!」

黒岩が警棒を構えて言う。モードに入っているらしい。

「えぇ!合わせるわ!」

そう言って背中合わせになって互いの背中を守るように陣取る。

「「「うおー!!!」」」」

2、3人規模の小集団で波状攻撃をしかけて来る。

素手で殴り掛かる相手を盾でいなし、椅子を盾で防いでそのまま警棒で制圧、皿を躱し、四方八方からの攻撃を2人で防ぎ10人あまりの相手を制圧(気絶での無力化)した。しかし少なからずダメージは負っていた。

「黒岩氏。生きてるかしら?」

「あぁ。なんとか。」

息を切らしつつも、会話する。が、

「フフフ。所詮は作業員。この元全日本戦闘格闘技決勝戦敗退のこのワシには勝てぬか・・・。」

と言う60歳位の中年男性が、拳を鳴らしながら言う。

「悪いが、ちょっと相手になってくれんか?」

中年男性からは溢れ出るオーラは正に鬼神のそれだった。しかし、そんな時、

「警察だ!騒ぎをやめるんだ!!」

と、馬場警部補が乱入してきた。

「け、警部補!」

そう言うと、中年男性は、黒岩を踏み台にして警部補に向かっていく。

「わ、ワイを踏み台に!?」

しかし警部補は、その中年男性の襟を袖を的確に持つと、

「どぉうりゃああああああああ!!!!!」

と、綺麗な一本背負いを決め、そのまま確保してしまった。

 

ーー西北区居酒屋喧嘩事件1次報告ーー

損失:負傷者26名(警官4名、民間人22名)

死者無し

 

西北区居酒屋"遊戯屋"において、ゲーム絡みと思われる喧嘩が生起。西35、西34、西24が鎮圧に当たるものの、3名の負傷者を出す。しかし突入した長谷川巡査と黒岩巡査が両勢力の大半を無力化。この喧嘩に参加したほとんどの作業員達は逮捕された。

ーー

 

「あー。疲れた。」

黒岩にそう話すと、

「そうですな。さっさと帰りましょう。」

と返される。しかし、

「いや、まだだ。」

と、馬場警部補が現れる。

「え?何でです?」

聞くと、

「確かに君らの行動は果敢であった。だが、片っ端から警棒や盾で殴るのはエレガントでは無い!よって、今からみっちり仕込んでやる!」

と言われた。

「いや私はどうすれば・・・?」

「行くぞ!!」

・・・どうしてこんな事に・・・。

 




来週は忙しいので執筆をお休みさせて頂きます。すみません。


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「コマンドー、繰り返します、コマンドー。」前編

タイトルから、あっ(察し)した方もいますかは分かりませぬが、はい。


「あー疲れた。ちくせう。」

報告書を書き終わり、ペンを机に放る。

「ワイも1日休みが欲しいべー。」

黒岩もため息をつく。何故かと言えば、結局喧嘩事件の後に馬場警部補に柔道を仕込まれる羽目になったから。筋トレ、その後犯人に見立てた等身大のただのカカシを投げる。これを半日ずつやって疲れない訳ない。交代勤務制の勤務後の休み?・・・良い奴だったよ(血涙)。

「おはようございま・・・す。」

と、高取がやって来た。こっちの顔を見て何か気まずそうだ。そんなに酷い顔だろうか?まぁ休日の話をされるよりはマシ。だって無かったんだし(2回目の血涙)。

「おおっと!もうこんな時間だ!それじゃ!」

時計を見た黒岩はそう言って駆けていった。

「いや私達もじゃん。」

そう言って、二人で大急ぎで支度を済ませてパトカーに飛び乗った。

 

「西署より各車。住宅街にて死体が発見された。直ちに向かえ。」

暫く走ると、無線が飛んでくる。

「死体・・・。西35了解!」

ふと呟き、ハンドルを切って続報で知らされた現場へ向かう。まさかこの後何かヤバいことに遠巻きに触れてしまうとは思ってもいなかった。

 

「おーい!待ってくれ!」

そう言いながら、ゴミ袋を両手に持った男が寝巻きのまま走ってくる。体の芯がブレていないのは、やはり元特殊工作隊員なだけある。

合図を出し、発進しかけている収集車を停めさせる。

「行ったかと思ったよ。」

彼はそう冗談混じりに言ってくるが、俺たちの仕事はゴミ収集では無い。収集車の中に隠しておいたサブマシンガンを取る。

「飛んでもねぇ。待ってたんだ。」

構えられたサブマシンガンを見て男は逃げようとしたものの、直ぐに蜂の巣となった。

「よし。官憲が来ない内にずらかるぞ。」

と運転手に言って、さっさとトンズラする。そう。俺達の目的はコイツの抹殺だ。

 

「西35現着。」

そう無線に言って降りると、寝巻きの男性が体中から血を流していた。生死を確認したものの、既に亡くなっている。ごみ捨てに来たのか、ゴミ袋が近くに転がっていた。

「・・・南無三。」

と、言って手を合わせていると、

「・・・一体ここで何が?」

高取が聞いてくる。

「多分これは銃撃されたんだと思う。とてもナイフとかで刺せる傷の数じゃない。」

と、推論を述べる。そして、拳銃でもこれは中々難しいだろうけど。

「西35から西署。遺体には数十箇所の傷あり。」

「西署了解。刑事部と鑑識が向かっている。そのまま現場を保存せよ。」

とやり取りをすると、丁度良く刑事達を乗せた車両が何台か到着した。

「お疲れさん。全く凄まじい死体やな。」

刑事や鑑識達がそれぞれ仕事道具を手に出てくる。後は彼らが引き継ぐというので、パトロールに戻る事にした。

 

「モルカーがお好き?なら結構。ますます好きになりますよ。さぁさ。軽自動車のニュータイプです。」

ある自動車販売店。セールスマンに促され、なんかモルモットみたいなデコレーションがされた良く分からん車に試乗を勧められる。

「快適でしょう?あぁ、おっしゃらないで。シートがもふもふ。でも夏は暑いわ洗うのは大変だわロクなことが無い。天井もたっぷりありますよ。どんな長身の方でも大丈夫。どうぞ回してみてください。」

そうセールスマンが鍵を指したので、かけてみる。エンジンの音も聞かせるのが彼の流儀らしい。流石隊のエンジニア専攻だっただけある(謎理論)。

「良い音でしょう?余裕の音だ。馬力が違いますよ。」

セールスマンはそう言って得意げだ。

「1番気に入ってるのは・・・」

「なんです?」

「値段だ。」

そう言ってギアを入れ替え、後進。セールスマンは、止める為に前方に回り込む。

「あー!ここで動かしちゃダメですよ!」

そしてアクセルを踏み込む。ロケットのように急発進した車は、

「待って!止まれ!」

と近付くセールスマンにシュート。

「うあああ!!」

奴を跳ね飛ばし、道路に飛び出した。

 

「西署からパトロール中の全車へ。車販売店にて車強盗が出た。跳ね飛ばされた販売員が意識不明の重体。」

と無線が入る。オマケにまたこっちの近くだ。

「逃走中の車は・・・も、モルカー?みたいな車。」

と、困惑したオペレーターの声も聞こえる。と、前の丁字路をモルモットの様なカラーリングの車が走っていく。

「あっ!アレじゃないですか?」

高取がそう言う。

「こちら西35。逃走車両と思われる車を発見!追跡します。」

無線にそう話し、パトランプを稼動させ、アクセルを踏み込み、速度を上げる。

「そこの軽自動車、停止せよ!」

高取がスピーカーで呼びかけるが相手は逃走をやめない。法定速度以上で走る相手も私達も車を次々縫うように避け、追い抜く。この中では、ピットマニューバもかけられない。元より自信が無い。そんな膠着状態が続いたが、動いたのはアッチだ。運転席から伸びる腕、その先で黒光りする何か。これが何を意味するかは明白だった。

ー左だ。

「ぬおっ!?」

乾いた発砲音と、フロントガラスに入った弾痕。フロントガラスを貫通した弾丸は私と高取の間を通り抜けていった。

「撃った!撃ち返して!」

動揺した高取に言うが、

「無茶言わないで下さい!こんな状態で当てられますか!?」

と返事が来る。

「・・・確かに。」

今は法定速度以上で、クネクネ他の車を避け、弾丸も避けて、一般市民に当てないというのはそれこそ至難どころか難である。と思った時、踏切が見えてくる。丁度遮断機が降りてきて、流石に逃走車両もこれで止ま・・・

ら無い。速度を上げて、停車する車の間をすり抜ける

「ファッ!?」

「何だこのオッサン!?」

との声が聞こえる中、進む。だが、ふと右を見ると電車が走ってきていた。

「あぁ右から電車があああ!?」

高取が絶叫するのに反応して思いっ切りハンドルをきり、ブレーキを踏み込む。

「・・・ま、間に合ったぁ。」

電車の轟音の中、蚊の様に呟く。逃走車両は踏切をギリギリ渡りきってしまったようだ。

「・・・どうします?」

「応援の西24が追っかけてるらしいわ。他のPCも向かってるからお任せしましょう。」

鏡で見た私や高取の顔は暫く真っ青のまま治らなかった。

 

「・・・ガラスとか穴空いたままなのに大丈夫ですか?」

窓を閉め切ったままでも風が吹き込むパトカーの中で高取が言う。

「しかたないわ。私たち以外のPCが群がっても捕まえられず、事故で3両失ったらしいから。」

それで穴を埋めるべく、拳銃弾数発の被弾で済んでいるこのパトカーは後退を許されなかった。

「船・・・。」

ここは沿岸部。船が舳先を並べ、躰を休めている。そのほとんどは漁船だ。

「私もなー。暫く休日があれば船乗って旅行したいなー。」

そう言うと、

「旅行ですか・・・どこへ行くんです?」

と高取が聞いてくる。

「そうねぇ。・・・ドイツとか?」

そう答える。その瞬間、爆発音が響き、漁船の一隻が爆煙を上げる。

「うわ!?」

思わずバランスを崩す。

「まだ大丈夫まだだいじょ・・・」

ハンドルを握る私の目に写ったのは、こちらに向かって飛んでくる破片だった。

 

「どわぁぁぁ!?」

世界が回った。横方向に思いっ切り回った。長谷川巡査が飛んできた破片を避ける為ハンドルをきってスピンし、止まったのはガードレールの数cm前。これを突き破った暁には魚礁になっていただろう。

「あの、この後から運転変わります。このままじゃ幾つ命があっても足りませんから。」

そう長谷川巡査に言う。彼女は肩を落として、

「わった・・・。」

と言った。結局この時爆発したのは漁船の1隻で、所有者の漁師が中にいたという目撃情報があったが、死体は見つからなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 




すみません思ったよりも忙しく、急遽前後編で分ける構成となります。


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「コマンドー、繰り返します、コマンドー。」後編

1週間に1話が息切れしてきた今日この頃(ガバ)そのための不定期更新タグ

↓前編から少し経ってます。



「ハンドルの握り心地はどう?」

運転手を交代し、ハンドルを握る高取に話しかける。彼は

「握り心地とかあるんですか?」

と返してくる。いや、確かに私もハンドルの握り心地とか言われても良く分からないけど。

「まぁ強いて挙げるなら、最初触った時先輩の手垢と乾いた汗でベトベトだったことですかね。」

と言い放ってきた。えぇ・・・(困惑)

「西署より西35!銃撃されているとの通報あり。直ちに向かい、状況を確認せよ。」

と無線が入る。そして現場は近かった。

「マジすか。手入れしたコイツの出番かな?」

後ろの座席を振り返り、Mini-14を取り出す。

「そーいえばそれ何で自分に支給されないんですかね?」

と高取が聞いてくる。パトロールライフルを持てるのは、追加の研修を受けたパトロールライフルオフィサー(PRO)だけだ。周りの知り合いで言えば、私や黒岩等西署の大体の警官が含まれる。・・・馬場警部補?「俺の柔道と、それに基づく回避術をもってすれば拳銃程度訳ない!」とか言って参加していない。

「今度探してみます。っと、・・・居ませんね。」

高取の言う通り、銃声は聞こえない。

「誤報かな?ま、少し周ってみよう。」

と指示を出す。少し行くと、林の道から2、3台の車が出てくる。と思った刹那、窓から発砲炎がきらめく。

「どわー!?」

高取がハンドルをきり、道のガードレールに衝突する。

「頭下げて!」

と高取に言うが、私はMini-14で何発か撃ち返しながら、パトカーを降りる。しかし撃ち返した10倍位の猛射を受け、地面に突っ伏す。この、遮蔽物の無い中突っ伏して弾丸が当たらない様に祈るのはとても怖い。が、あちらもこれ以上の戦闘は望まないようで、さっさと走り去っていった。

「頭下げてろって言ってましたよね?」

高取が呆れたような顔でパトカーから這うように降りてくる。エンジンブロックのお陰か、傷は見えない。

「何?逃げるとでも思った?」

「え、いえ。」

私は高取の先輩。後輩を置いて逃げられる訳がない。もちろん先輩や上司も置いていかないけど。

「またパトカーが死んでおられる。」

ふと呟くと高取が、

「もう先輩はパトカーの疫病神じゃないですか?」

と言ってくる。

「うるさい。」

 

「目は覚めたかね?」

目を開くと、見覚えのある人物が立っていた。見れば俺はベットのような物に縛られている。確か俺はさやかを助ける為に、エンジンもブレーキすら壊されていた車で奴らの車に体当たりをしようとして、失敗。そうだ。殺されたはずの米根戸に麻酔銃を撃たれた。

「まさか警察が来るとは思わなかったが、お互い無事で何よりだ。」

そう続けた人物。モン"元"大統領。統一朝鮮にて徹底的な半日を推し進め、対馬付近での日韓戦争を引き起こした張本人。結局の所俺と、俺が率いる特殊工作隊による作戦と反戦団体により大統領の椅子から引き摺りおろされた人物だ。

「君にここまでしたのはある頼み事をしたいからなんだ。・・・現大統領、銀大統領を暗殺してもらいたい。」

そんな元大統領は、短刀直入に言ってきた。

「そんなに戦争で人を殺したいか。」

と言い返すと、

「人聞きの悪いことを言わないでくれよ。これは領土回復の為の聖戦だ。君らに盗られた対馬や、数十年前の侵略戦争の反省を促す為のね。」

「お前が今更戻って政権を握れるのか?」

「なに、朝鮮に日本人を嫌ってる奴は多いが、金を積んでも転ばない奴は少ない。君が大統領を殺しさえしてくれれば私の集めた愛国心溢れる部下達がやってくれる。」

「・・・断ったらどうなる?」

「君の娘のバラバラ死体が届く。だが、果たしてくれれば皆五体満足で返す。」

その言葉には嘘が見える。戦時中、あれだけ日本人に対する侮蔑を叫び、「クソ日本人共が1億死のうが10億死のうが知ったことか!」と国際法を無視するように訓示した彼が、マトモだとは思わない。だが、断れば即刻殺される。ここは嘘でも俺が従うフリをした方が得策だろう。そう思い、癪だが首を縦に振った。

 

「手荷物は?」

キャビンアテンダントが聞くのに、

「いや、これだけだ。」

と、監視役の奴を指さす。

「今度余計なこと言ったら口を縫い合わすぞ。」

とソイツが怒るが、何とかしてここから抜け出す必要がある。

「おふ。」

隙を見て、監視役に肘打ち、

「おぶ!?」

そのまま跳ね返ってきた首を掴み、静かに引き抜く。ポキリという音がしたが、飛行機のエンジン音でかき消された。すまん。さやか。もう少しだけ人殺しに戻させてくれ。・・・あの婦警さんに助けは求められないな。

「頼みがあるんだが、連れを起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる。」

と、帽子で偽装した後キャビンアテンダントに念を押して、飛行機の前輪格納庫から滑走路すぐの海へ飛び込む。

 

「ブエックショイ!?」

「・・・なんか凄まじいクシャミしますよね。」

「うるさい。」

「っていうかなんですぐパトカーが支給されるんですか?」

高取が呆れたように言ってくる。

「そりゃ、今この世の中でパトカーとかの損耗が激しいからって、様々な所で最優先で生産されてるとかなんとか。」

そして様々な車種でパトカー型の試作も進んでるとかこれもう訳がわからない。

「そういえば、腹減らないですか?」

ショッピングモールの付近で高取が言う。丁度腹の虫が鳴りそうだ。

「じゃあ、ここで何か買いましょ。」

と言って、軽食屋を探す。

 

「ありがとうございましたー。」

ハンバーガー屋でハンバーガーを注文し、持ち帰り用の袋を持って出る。

「あー、この匂い。たまらねぇぜ。」

と高取が何か言っている。私は金欠のせいで安めのセットだ。・・・羨ましい。が、ここで悲鳴が聞こえる。見ると、電話ボックスを持ち上げ、ひっくり返し、警備員3人を一撃でノックアウトする男がいた。

「止まれ!」

高取が拳銃を構え、制圧しようと近付くが、男は垂れ幕を掴み、ターザンの要領で、吹き抜けを飛び越える。見れば、小柄な男を追いかけているようだ。

「こちら西35。ショッピングモールにて不審者!応援を請う!」

無線に怒鳴り、返答すら待たず不審者を追いかける。不審者達は駐車場にでる。車に乗るのだろうか?

「ウオッ!?」

不審者の方が横から出てきた車に跳ねられた。が、すぐに立つと、何事も無かったように走り出す。私も通路を横断しようとした時、

「グエッ!」

私も車に跳ねられた。

「イテテ・・・。」

全身を打ち付けて痛む。あの不審者は余程受け身が上手いのだろうか。

「あぁ!長谷川巡査が死んだ!?この人でなしー!」

高取の声が聞こえるが、勝手に殺されてたまるか。痛みがひかないまま後を追う。幸運にも骨とかは折れていないようだ。しかし、2両の車が、さながらカーチェイスの様に飛び出していき、取り逃した事を悟った。

「・・・今日って厄日?」

思わず呟いた私に、追い付いた高取は、

「いや、悪夢でしょう。」

と答えた。でも、あの男どこかで・・・。

 

「お前は最後に殺すと約束したな。」

「そ、そうだ一佐。た、助け・・・。」

「あれは嘘だ。」

「うわああああああああああああああぁぁぁ。」

危うく一味の1人に通報されかけたが、何とかなった。にしても、ショッピングモールでまさかあの婦警さんに会うとは思わなかった。車に跳ねられていたが大丈夫だろうか?流石に死んではいないはずだが。とにかく、今の奴から得た情報で、もう1人の一味がいるらしい。拝借した車はおシャカになったが、今の奴の車を使うことにする。奴にはもう必要ない。

 

「オラァ!」

「ナニッ!?」

一味の1人が泊まっているモーテルにカチコミを入れる。拳を構え、相対する。

「怖いかクソッタレ。当たり前だ。元特殊作戦群の俺に勝てるもんか。」

「試してみるか?俺だって元特殊工作隊だ。」

結果、奴は確かに腕が立つ奴だったが、ひっくり返ったテーブルの脚で胸を貫かれる憂うべく目に遭い、死んだ。これで連絡役は全て死んだ。後は奴が持っていた情報にある水上機で奴らの所へカチコミを入れに行くのみ。だがその前に、武器が無くては戦えない。近くで武器が手に入りそうな場所・・・。

 

「西署より各車。銃砲店にて強盗が入った。直ちに向かわれたし。」

そう通報を受けると、その銃砲店が軍放出品も扱う店だと知った。

「ヤバないですか?応援を待ちましょう。」

高取が不安げに言うが、

「でもさ、逆に言えばその応援達は敵情を知れるじゃん。」

と言う。

「まだ死にたくないです!」

高取が食い下がるので、銃砲店の手前で私が降りて、私が肉袋になった時の保険になってもらうことになった。パトロールライフルを背負い、備え付けの盾を持ち、銃砲店へ、遮蔽物を巡りながら向かった。本来なら室内であればショットガンが好ましいが、生憎無い。パトロールライフルは援護役の高取に渡すべきなのだろうが、彼はコッキングすら知らなかった。えぇ・・・(無茶振り)。しかしセミオートなのである程度は使えるだろう。

 

「動かないで!武器を静かにおろして。」

ジャキリとした音と同時に止められる。武器を片っ端から漁っていれば通報されるのは当然だろうが、やけに早い。近くにいたのだろうか。しかし、この声は・・・。

「もしかして、長谷川さん?」

そう言うと、

「え?・・・えぇ。」

と返答される。

「やっぱり。娘がお世話になりました。」

と言う。やっぱりこの警官はさやかを命を賭けて守ってくれた婦警さんだ。

「・・・何やってたんです?こんな凶悪な方だとは思えないのですが?」

しかし長谷川さんは声を低く、聞いてくる。仕方ない、一か八だ。

「娘が、さやかが誘拐されて人質に取られてます。・・・助けて下さい。見逃してくれるだけで良いです。」

「駄目です。」

早い。こうなったら、気は進まないが強行突破・・・

「私たち警察が何とかします。だから、自ら突撃しなくても良いんですよ。」

と言ってくる。正直時間が無い。飛行機が目的地に着くまでにさやかを助けなければいけない。

「・・・そうするとどれくらいかかりますか?」

「えーと、場所にもよりますが、1、2日・・・」

間に合う訳ないじゃないか(呆れ)仕方ない。

「あ。」

「え?」

と、窓の外に視線を誘導し、その隙にカゴを持って裏口へ逃げる。

「あっ!?」

と言う長谷川さんだが、直後に明後日の方向に銃撃をし始める。

「こちら西35。犯人と交戦中!応援を要請する。」

と無線に言い出す。多分ワザと逃がしてくれたのだろうか?

「・・・。」

何はともあれ、急いで敵地までの足を確保しなければいけない。しばらく路地を進み、道路に出ると、水上機が目に入る。

「よし動け!」

最初こそ燻ったものの、エンジンを点火し、敵地へ向かった。

 

ーー駒戸島爆発事件1次報告ーー

損害

負傷者:1

死者:10より多いので沢山です80

駒戸島の施設の大部分が原型を留めておらず、何かしらの爆発物が原因と推察。この島のオーナーと連絡が取れず、数時間後に死体で発見された。なお、オーナーはモン元大統領と判明。施設の残骸から多数の銃火器、装甲車両が押収。何かしらのクーデター、もしくはテロを計画していた可能性がある。(検閲済み)後の捜査は自衛隊に引き継ぐ。

ーー

 

「・・・それでね、パパが米根戸とかいう奴にね、「銃なんか捨ててかかってこい」って言ってね!」

翌日。私の元に遊びに来たさやかちゃんは昨日の父親の武勇伝を語っていた。だが聞いた話だとヘアピンで監禁部屋の鍵をこじ開けたのもどうかと思うが。・・・もしかしてあの時ウサギ跳びで逃げてきたのも、犯人を射殺できたのも、親の遺伝?・・・まさか、ないよね?

 

長谷川美夏は目の前の小6とその父親に畏怖を覚えた。




ちょっと筆が鈍ってきたのでしばらく失踪します。


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