テイルズオブアライズ トロフィー「絶望の荊」獲得RTA レナ人チャート (完走したい天邪鬼)
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第1話 キャラ作成RTAはじまるよ

はじめてRTA走るので初投稿です。

じゃあ早速キャラ作成へGo!


今回はオリジナルレナ人で走ります。

なので容姿を作成する必要があるのですが、かなり自由に作成できます。なんせ、やろうと思えば歴代テイルズキャラにすることもできますからね。興味あるリスナー兄貴姉貴達はDLC導入してやってみてくれよな。

ま、今回はRTAなのでランダム生成なんですけどね初見さん。

 

 

 

おお、中々美形になったじゃないですか。運がいいですね。美形だと好感度上昇に補正が入るので得です。やっぱり世の中顔なんやなって。

まぁ仮にブサでも同じチャートで走るんですけどね。

 

容姿をランダムで生成したら各種素質の作成です。ここではいくつかの質問に回答していきます。これで素質だけでなく性格傾向も決まるので、よくある性格診断みたいなものだと思ってください。

星霊力の素質は高くしておきましょう。星霊術の素質がトロフィー獲得を左右すると言っても過言じゃないです。

というのも、今回の目標、「絶望の荊」はシオンからの好感度を一定まで上げた上でシオンの目の前でタヒぬ事で獲得できます。

 

このシオンの目の前でタヒぬというのが曲者で、アライズ世界では放っておくとシオンの知らない所であっさり死んでしまいます。アライズ世界の命は軽いからね仕方ないね。

ですが、領将(スルド)になればアルフェン達の目の前以外ではタヒぬことはありません。原作補正ですかね?

あ、でも原作の水の領将(スルド)のようにヴォルラーンにコロされることはあります(3敗)

 

なので星霊力の素質を高くして領将(スルド)になりやすくする必要があります。

さらに安定させるために性格傾向を"善人"、"知識欲旺盛"、"狂気的"、"無慈悲"、"一途"を狙います。

各傾向の説明は......文字通りなのでカットです。

 

 

・・・回答中・・・

 

 

回答終わりました。

結果は......まぁ及第点ですね。星霊力はシオンと同等。性格傾向は"善人"、"偏愛"、"好奇心"、"無慈悲"、"博愛"になりました。

"知識欲旺盛"が"好奇心"に格下げ、"狂気的"と"一途"が"偏愛"に統一されてます。"博愛"は......んにゃぴ。知らない子です。

"偏愛"と"博愛"で矛盾してる気がしますが気のせいです。

正直言えばもう一度やり直したいですが、"狂気的"と"善人"が両立するのは激レアなのでこのまま行きます。

最低限の傾向は満たしているのでいけるいける。

 

じゃあキャラ作成も終わったのでプレイしていくのですが......キャラ作成完了出来ませんね。

 

 

 

............あ、名前決めていませんでした。失念失念。

名前は入力速度と効率を重視してホモ......としたいところですが、好感度下降に補正が入ってしまうので、適当に"リィヤー"とします。

 

それでは今度こそ作成完了です。

我々が操作できるようになるのは物心がつく5歳頃からです。

生い立ちは作成完了後に流れるムービーで確認できます。ダナ人ならどの国で育つか、レナ人なら家名がわかります。

あと、ここで誰が親かわかるようになります。まぁつまりランダムです。親ガチャです。乱数によってはジルファの子になりロウと兄弟になったり、アルフェンとシオンの子として原作クリア後世界で遊ぶこともできます。ここは完全にランダムなのでレネギスに生まれることを祈りましょう。

 

──ここはレネギス。レナ人の──

 

勝ったな。レネギスに生まれたことを確認できたらスキップです。RTAなので必要ないムービーは全部スキップします当たり前だよなぁ?

 

あっ......どの時代に生まれたか確認する前にスキップしちゃった

 

ま、まぁ?このゲームでは原作キャラと関わりやすいように原作時代に生まれやすいですし?そもそも試走の時も原作前に生まれることは無かったし大丈夫大丈夫

 

でも不安なので操作できるようになったら親にでも話しかけて確認しましょう。

家名は知らなくても大丈夫です。シオン並の星霊力を持っていれば家の力が無くても領将(スルド)候補になれるので。

シオンも荊がなければもしかしたら領将(スルド)になってたかもしれませんね。

まぁシオンが領将(スルド)候補に上がらなかった理由は作中で語られてないので私の考察なんですけどね。さらに言えばシオンの星霊力の過半数は荊なので荊がなければ一般上流レナ人と同じくらいです。

領将や領将候補(トップ数%)ほどではないとは言え、荊が無くても上流レナ人級ってどういうことなの......

とかやってるうちに操作できるようになりました。都合よく目の前に母親らしい女性がいるので聞いてみましょう。

 

"お母様。次の領将王争(スルドブリガ)はいつ始まるの?"

 

──"スルドブリガってなぁに?お母さんに教えて?"

 

う そ で し ょ




リィヤーの性別は特に明言しません。
各々でホモ君にもレズちゃんにもしてください。


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第2話 ネウィリと同じ時代で生きるRTAはじまるよ

どうやらネウィリと同じ時代に生まれたらしいことがわかったRTA始まるよー。

 

え?なんでネウィリ時代だとわかったのかって?......言わせんなよ恥ずかしい。

という冗談は置いておいて、領将王争(スルドブリガ)が単語ごと存在しなかったからです。というのも、領将王争(スルドブリガ)はネウィリさんとアルフェン君による招霊の儀事件以降に構築されるお祭り()だからです。アライズ世界奴隷制は未来の救世主(アルフェン君)のやらかしが原因なんですよね(ネタバレ)

ひどいマッチポンプもあったものだ。

 

余談はともかく、もう既にチャートはボロボロですが一度走り始めた以上、最後までやり切ります。それが配信者ってもんだろうが!!!

それに、ネウィリ時代ならまだリカバリーは効きます。アルフェン君と同じように長期治療を行えば原作時代に合流できますからね。

なので招霊の儀事件が起きるまで幼少期を過ごしていきます。

 

オリチャーという程ではありませんが、ここで性格傾向を修正しておこうかと思います。

というのも、性格傾向は幼少期の過ごし方で各々補正が入るのです。例えば、人を治療したりお手伝い(クエスト)を熱心に熟すと善人に補正が、逆に人をコロコロしたり犯罪すると悪人に補正が入ります。

これを使って"好奇心"を"知識欲"まで上げていきます。"知識欲旺盛"まだ行けば万々歳です。

"知識欲"に補正を持つのはひたすら勉強です。学習です。研究です。そう、気になることを調べ続けていくのです。

招霊の儀事件がどれくらいで起きるかはわかりませんが、ひたすら勉強していきます。

 

 

・・・勉強中・・・

 

 

まだかな。まだだな。

 

 

・・・学習中・・・

 

 

もう少しかな?まだ足りないか?

 

 

・・・研究中・・・

 

 

そんなこんなで(ゲーム内時間で)5年が過ぎました。

(性格傾向の修正はできて)ないです。

中々補正が入りませんが、元々性格傾向の修正は骨が折れるのでこんなものでしょう。

勿論、勉強は今後も続けていきますが、一旦中断です。

 

5年経ったという事で、10歳になりました。そろそろ星霊術の練習をやっていきます。星霊力の素質が高くても星霊術を組めないと領将(スルド)にはなれません。じゃけんいっぱい練習しましょうね!

 

 

・・・練習中・・・

 

 

天才はいる。悔しいが。

というわけで半年で上位星霊術を行使できるようになりました。最上位も1種だけ組めます。ここまでできれば領将(スルド)になるには十分でしょう。

 

あ、ちなみに領将(スルド)になった際の属性ですが、基本的には得意属性が選ばれます。得意属性は完全なマスクデータでプレイヤー側で把握することができません。有志によると性格傾向で判別できるらしいですが私にはちょっと何言ってるかわかりませんでした。

なので属性は完全に運勝負..................というわけもありません。ただでさえランダム要素の強いゲームでRTAをやろうというのです。私がそんな部の悪い戦いをするはずがないでしょう。多少の誤魔化し方は心得ていますとも。

 

得意属性は星霊術を行使して誤魔化すことができます。試走の時は地属性が得意なホモ君で火の領将(スルド)になりましたしやり方は知っています。

その方法とは"特定属性の上位星霊術を複数使って戦う"です。察しの良いリスナー兄貴姉貴なら気づいていましたかね?まぁとにかくそういうことです。走者の経験上、3種類の上位星霊術を行使できれば誤魔化せます。最上位星霊術を1種類でも使えればほぼ確定です。だから星霊術の練習をする必要があったんですね。

 

ちなみにレナ人でも光属性が得意属性に選ばれることはあります。というか、レナ人もダナ人も得意属性になるのは地水火風光のどれかで共通しています。闇属性は闇堕ちシオン(一部の例外)を除いて得意属性に選ばれることはないのであしからず。どうしても闇属性を得意属性にしたい方はヘルガイムキルでキャラを作りましょう。ほぼ確定で闇が得意属性になりますよ。

そんなわけで、原作光の領将(スルド)であるガナベルト君の身代わりになりたい人は得意属性ガチャをやりましょう。領将(スルド)に選ばれるまで確認する術がないので地獄ですが(経験者は語る)

有志によると、地水火風の4属性で誤魔化せば光の領将(スルド)になれるらしいです。

今回は光以外ならどれでも構わないので完全に余談でした。

 

タイム的に火の領将(スルド)が最速だろって??ただシオンの前でタヒぬだけならそうですが、序盤(カラグリア)で「絶望の荊」を獲得するとシオンの心が折れてしまい原作がクリアされない可能性があります。ハピエン厨の私としては絶望ENDはもにょるのであまりやりたくないのです。まぁトロフィーのためにシオンは絶望させますけどね(畜生)

さらに言えばハピエンにこだわる今回のRTA的には地水火風の領将(スルド)になるとタイム的に対して変わらないんですよ。だからどれでもいいのです。

 

まぁとにかく最上位星霊術を行使できるようになりましたし、星霊術はもう良いでしょう。というわけで勉強を再開します。おら!早く知識欲に目覚めるんだよ!!

 

 

・・・勉強中・・・

 

"世界には知らないことがたくさんある。調べても調べても終わりがない。研究を続ける。世界を知るまで"

 

お、テキストが入りましたね。このテキストは"知識欲"を獲得した証です。後天的に性格傾向を獲得するとそれぞれ独自のテキストが入ります。性格傾向の中にはキャラ作成時にしか獲得できないものがありますが、基本全てに用意されてます。どれも良いものなので必見です。

ゲーム本編の称号のテキスト文みたいな感じです。あれも良いものだ。

このDLCを導入すると称号を確認できなくなるのが残念です。

 

さて、"知識欲"も獲得できましたしもう招霊の儀事件が来ても良いんですが......まだ来ませんね。

なら!"知識欲旺盛"になるまで!研究をやめない!!

 

 

・・・研究中・・・

 

 

──"リィヤー、当主様のお部屋に行きなさい。お話があるそうよ"

 

どうして止めるんですか??

まぁ良いです。お呼ばれしたのなら相判に預かりましょう。

ご当主様ー?呼ばれたので来ましたけど何の用ですかー?

 

──"おお、来たな。リィヤーお前には研究所に行ってもらう。なんでも星霊力の研究を任せたいとか。行ってくれるかい?"

 

こ、これは......!!〈王〉誕生実験への招待状!?

行きます行きます行かせてください!

フッフッフッこれで研究が捗りますし、招霊の儀事件のタイミングがわかりやすくなりました。

行かない理由なんてありません!!




リィヤーのステータス見たい?


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第3話 アルフェン改造RTAはじまるよ

アルフェン君を改造することになったRTA始まるよー!

 

アルフェン君改造ルートはネウィリ時代で性格傾向に"知識欲"があり、星霊力の素質に秀でていると稀に発生します。

RTA的にはあまり歓迎できない、早送りしづらいイベントですが、効果が激ウマなので通ります。

イベント内容をざっくり説明するとこんな感じです。

 

1.ゲーム内時間で約半年間、研究所外に出ることができなくなる。

2.星霊力に関する知識が深まる。

3.星霊力の運用効率が高まる。

4.性格傾向"知識欲"、"無慈悲"、"狂気"系列の補正が高まる。

5.ネウィリさんやアルフェン君とコミュれる。

 

今回のチャートでは特に234がウマ味です。

2は得意属性以外の星霊力を扱う方法を知ります。これでいろんな属性の星霊術が行使可能に......なったら良いな。どこまで理解できるかは運勝負なので上振れを期待しましょう。大丈夫だって成果がなくても既に行使できる星霊術で十分事足りっからよぉ。

 

3は読んで字の如くですね。星霊力の運用効率が上がります。具体的には星霊術の威力が上がったり必要な星霊力が減ったり詠唱時間が短くなったりします。良い事づくめってやつです。

ただ、この運用効率に関しては同じ術を延々使い続けて熟練度を上げる以外ではこの研究所イベントでしか上げることができません。だからこそ激ウマなんですね。

 

4は今までずっとやってきた性格傾向の調整。"無慈悲"と"偏愛"を獲得しているので恩恵に預かれるのは"知識欲"だけですが、それでも十分です。半ば妥協して諦めてましたけど、“知識欲旺盛"まで行けるんじゃないっすかね。

 

1と5は......まぁ基本研究漬けですし研究所外に出ないのはデメリットにはなりません。RTAなのでネウィリさんとアルフェン君とコミュする必要もありません。だからぶっちゃけ234さえあれば良いです。なんならネウィリさんやアルフェン君とコミュってしまうとイベントでタイムロスしちゃうので会いたくないまであります。

 

それに、領将(スルド)になる以上戦闘の必要がありますからね。23効果で強くなっておく必要があるのです。

じゃけんじゃんじゃん研究しましょうね〜。

 

・・・研究中・・・

 

──星霊力の扱い方を知った。

──自分の星霊力適性を知った。

──星霊力の属性について理解を深めた。

──適さない属性の星霊力を扱うための理論を構築した。

──星霊術の幅が広がった。

 

幸先いいですね!

初手でほぼ全属性の星霊術を扱えるようになったんじゃないですか?

うーんこれは上振れ。最高!

 

・・・研究中・・・

 

"世界は未知と神秘に満ちている。その愉しさに取り憑かれた私はもう止まれない。視えていた過去も視えない未来も双世界の総てを理解するまで"

 

このテキストは......んにゃぴ初見です。文面的に“知識欲"系列だと思うんですが、"知識欲旺盛"ではないっぽいですね。

後から性格傾向が見れないのが辛い......。

 

・・・研究中・・・

 

──星霊力を理解した。

 

.....................(宇宙猫)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

......ファッ⁉︎星霊力を......理解した......!!?ちょっと何言ってるかわからないです。

いえね、"理解を深めた"とか"知った"ならよくあるんですけど、"理解した"は文字通り理解したわけで......。

全属性の星霊力を扱えるのは当然として、ほぼ全ての星霊術を最高効率で運用できるって事なんですよ。だから原作で言うところの熟練度稼ぎが星霊術に関しては不要になったわけで。

つまり、リィヤー(うちの子)は天才って事です。

もう研究しなくていいんじゃないかな。でもまだやります。研究以外にやれることありませんし。

 

・・・研究中・・・

 

──"おいそこの君、研究の真似事も結構だが、たまには〈王〉の方も手伝え。〈巫女〉でもいいぞ"

──〈王〉と〈巫女〉の研究履歴と扱う星霊力からどういう術式か逆算した。

 

ちょっとリィヤー(うちの子)が天才すぎて怖い......。

逆算ってなにぃ?なにが起きてるのぉ??

この子終いにはヘルガイムキルの超科学まで理解するんじゃ......。

 

"ネウィリ・アイメリスさん......か"

 

おや?これはガバの予感がします。

変に理解を進めるよりは安心ですが(子の成長に恐怖する屑)

というか、ネウィリさんと名前を覚えるほど関わる機会はなかったような?というか、初対面では??

ままええわ。半年間の研究所イベントも終わりましたし、ネウィリさんが研究所にいるということはもう関わることはないでしょう。

早く帰宅して運動能力を鍛えないといけませんからね。

 

──"おお、探したぞ。君のおかげで〈王〉や〈巫女〉の研究が大きく進んだ。子どもなのに大したものだ。どうだ?君さえ良ければ研究を続けないか?"

 

研究所イベント継続ってあるんですね。知りませんでした。ですがまぁ今回必要なものは全部獲得しましたし、もう研究しなくていいんですよね。というわけで続けないっと。

 

──"そうか?だが、君のおかげで〈王〉や〈巫女〉の研究が大きく進んだ。君は優秀なんだな。どうだ?君さえ良ければ研究を続けないか?"

 

うん?おかしいですね。こういう選択肢って良くも悪くも挽回の余地がないのですが。研究所は聞き返してくれるんですね。RTAじゃなければ是非お願いしたいんですけどね。今回はRTAなので早くお家に帰ります。

 

──"そうか?だが、君のおかげで〈王〉や〈巫女〉の研究が大きく進んだ。君は優秀なんだな。どうだ?君さえ良ければ研究を続けないか?"

 

あ、これ頷かないとダメなやつだ!!チクショウ!

継続するしかないなら仕方ないです。ぶっちゃけ研究する必要はもう無いので、ここからは来る領将(スルド)選抜試験に向けてフィジカル鍛錬をしていきます。

研究所で筋トレとはこれいかに。

 

・・・筋トレ中・・・

 

"ネウィリさん............"

 

・・・筋トレ中・・・

 

"ネウィリさん......今なにしてるかな......"

 

・・・筋トレ中・・・

 

"ネウィリさん............"

 

ごめんこれどういう状況!?初めて見ますよこれぇ!!

ネウィリさんに執着しすぎじゃ無いですかねぇ。おかげで全く集中できてないじゃ無いですか。フィジカルがぁ......筋肉がぁ.......。

ただでさえ研究漬けで貧弱脆弱虚弱なんですから少しでも強化しとかないと絶対支配してやるマン(ヴォルラーン)にコロされかねないのですが!?

リィヤー(あなた)が生きるためだからよぉしっかりトレーニングしてくれよ頼むよォ!

 

・・・筋トレ中・・・

 

"ネウィリさん......"

 

うんダメみたいですね。原作キャラとはいえ、1個人にここまで執着したのは初めてですよ。なにが原因なの......。

 

ままええわ。こうなっては仕方ない(アルフェン君よりよっぽどマシな)ので心ゆくまでネウィリさんとコミュらせます。

ま、コミュに限っていえばAllスキップ安定なので実質研究所イベントをスキップします。

チャート?ああ、あいつは良いやつだったよ。

それでは、キングクリムゾン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──"リィヤー!リィヤー!しっかりして!"

 

"遠くでネウィリの声が聞こえる"

 

──"どけ!なんでこんな無茶を......!救護班!急げ!事は一刻を争うぞ!!"

 

"なんだかからだがかるい"

 

──"ダメです......。現状では治す術がありません。リィヤー本人の治癒力に期待するしかないかと"

──"そんな悠長なこと言っていてはこの子はすぐに死んでしまうぞ!この子が死ねばどうなるかわかっているのか"

──"しかし......。いや、長期睡眠機能を使えば......もしかすると──"

──"お願い......リィヤー......どうか諦めないで"

──"今できることはこれで全部か。ならこの子が残した理論で招霊の儀を──"

 

"ねうぃり。なかないで。わたしは──"

 

 

な に が お き た の ?




リィヤーが長期睡眠に入ったので失踪します。


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第4話 とある被験者の手記

一般ダナ人の手記を見つけたので初投稿です


レネギスに拐われてどれだけ経ったか。

レナ人による度重なる実験のせいで時間感覚も視覚も失って久しい時、()は俺たちの前に現れた。

 

まるで無垢な子どものような声で嗤う悪魔。ダナ人である俺たちを愛していると言い、感謝していると(のたま)うその口で俺たちを実験動物と呼称する。

 

歪んでると思った。目が見えない俺に変わって、仲間が言うには中性的な美の化身たる幼子(おさなご)。男児のように凛々しくも女児のように(はかな)(わらべ)。聞けばまだ10歳なんだとか。

 

そんな子が俺たちに実験を施すのだ。

淑やかに微笑みながら薬を飲ませて経過を見る。自分で飲ませた薬によって俺たちがどんなに痛み悶え苦しみ狂おうが慈しむように観察する。満足したら星霊術すらも使って治療する。そしてまた別の薬を飲ませる。とても正気とは思えない繰り返しだ。

 

だが、他のレナ人の研究のように切り開かれたり何かを埋め込まれたりせず、ただ薬を飲むだけな分まだ楽だった。切り開かれる痛みと投薬の苦しみは俺にとっては誤差だったからだ。それに、一度治療が終わったら大体3日間(3回眠る間)は休憩と称して実験されないし、嫌なら拒否もできる。

 

......まぁ拒否する度に酷くしょんぼりするのと、毎回必ず隅々まで治療してくれるから拒否することはあまり無かったが。

だからといって実験されるのを許容するのは自分でもどうかと思う。

いくら他のレナ人と違って治療してくれるとはいえ、俺もだいぶ(ほだ)されたかな。

 

 

 

 

 

 

もう何種類の薬を飲んだのか数えるのも馬鹿らしくなってきた日。

()は俺たちへの投薬(実験)をやめた。度重なる投薬(治療)のおかげかぼんやりと視覚が戻りつつある時だった。

 

俺たちを使って調べていたことが終わったのか?それとも子どもらしく飽きたのか?いよいよ()()されるのか?あるいは別の何かか?

考えたところで意味のない推測が浮かんでは消えていく。

どうやら俺は随分()を気に入っていたらしい。

 

なにも知らされず、ただ()が来ない日が続いた。仲間の中には元々の研究者に連れて行かれた奴もいる。いっそ全員が元鞘に戻るのかとビクビクしながらただ時間が過ぎていった。

 

部屋に残っている人数が俺を入れて片手で足りる程になった頃、()はまた姿を表した。

 

随分減ったね。と相変わらず無垢な子どものようにカラコロと嗤いながら。

次はどんな薬だろうか。()が来なくなる直前に飲んだ、身体が粒になって(ほど)けていく薬は嫌だなと思いながらハタと気付く。

()の実験なら受けてもいい。と考えていることに。

苦笑を溢す。

 

どうやら俺はもうダメらしい。あんなに実験は嫌だ早くダナに帰りたいと思っていたのに。完全に(ほだ)されてしまった。

失った光を薄ぼんやりとはいえ取り戻してくれたからだろうか。

まぁどうでもいいか。どんな実験にしろ(ほだ)された俺に断ると言う選択肢はない。

それに、どうやら(ほだ)されたのは俺だけじゃなかったらしい。部屋に残っている全員が同じような声音(かお)()に声をかけていた。

 

 

 

でもまぁ、友達の作り方なんていうどこまでも子どもらしい悩みを相談されるのは想像もしていなかったが。悪魔のように見えても子どもなんだと少し安心したのは内緒だ。

 

 

 

それからは実験とは名ばかりのお友達相談を繰り返した。

会話術に始まり仕草から感情を推測する方法、好意的に感じる声音、気軽に遊びに誘う方法。俺が教えられる対人能力はほとんど教えたと思う。

知識ばかり増えたせいか、無理に活用しようとして逆効果になったことも数多い。だが順調に距離は縮まっているらしかった。

部屋に来る度に嬉しそうに話す()をみて、レナ人(こいつ)も人間なんだと思った。

 

 

 

 

 

 

 

だからこれは仕方がないことだ。

人間なんだから大切な人が死んだ時、例えそれが事故にしろ何かに責任を持たせて憂さを晴らしたくなるのも仕方がない。

それだけレナ人にとっても()は大切だったんだろう。

 

この研究所で()と一番関わっていたのは()がゾッコンだったネウィリとかいうレナ人じゃなく俺たちだった。

だから()がせいれいりょくを非活性状態で保存する実験に失敗し長期睡眠を施さないと死ぬ状態になったのは、俺たちの仕業。

 

八つ当たりにも程があるし、せいれいりょくってのが何かはサッパリだが、気持ちはわかる。

誰だって大切な人の死は乗り越え難いものだ。それが有望な子どもなら尚更。例え自殺めいた方法を用いた自業自得の事故だったとしても。

 

 

だからまぁ俺たちが()()されるのは別に良い。これは俺だけじゃない。部屋に残れた数少ない仲間全員の総意だ。どのみち()に会わなければとっくの昔に()()されていたしな。

 

だが強いて悔いがあるとすれば、せめてお前のお友達に会ってみたかった。

初対面の時、無慈悲で冷淡な悪魔に見えたお前があんなに綺麗に笑う人間になったんだ。さぞや良い奴なんだろう。

 

俺たちに墓ができるかは知らないが、できることなら紹介してくれよ。お前が完治するように双世界の果てから祈ってるからよ。リィヤー。




現時点で公開可能なリィヤーのステータス↓

ネタバレ注意!







極>上>並>微>劣

Lv.1
HP : 300/300

身体能力: 劣
星霊力 : 極
信念 : 並

性格傾向
"偏愛"、"探究者"、"無慈悲"、"博愛"、"善人"

"善人" :善良な者。"善"系統の傾向のうち、上から2番目。善行を積んでいると獲得。
"人に寄り添う心。たとえそれが利己であろうと救われる者はいる"

"偏愛" :ひどく歪な愛を持つ。"狂気"系列と"情熱"系列の傾向を持っていると統合して派生される。
"偏愛する者は愛しい誰かを思ってどこまでも昏い愛の底へ沈んでいく"

"探究者":世界の心理を覗いた証。"知識欲旺盛"系列と"狂気"系列を持ったうえで条件を満たすと統合して派生。
"もう止まれない。視えていた過去も視えない未来も双世界の総てを理解するまで"

"無慈悲":慈悲を持たない証。"慈悲"と"冷徹"系列を持っていると統合して派生される。
"すべてを利とし無駄を排する。それこそが最大の救いである"

"博愛" :あまねくすべてを愛する者。キャラ作成時、特定の条件で獲得。
"例え世界に否定されても愛するのだ。善も悪も変わらずただ在るだけで貴いのだから"


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第5話 シオンとコミュするRTAはじまるよ

リィヤーが目覚めたので初投稿です


シオンと仲良くなるRTAはじまるよ!

 

前回は何故かコミュ中に長期睡眠に入ってしまいましたが、狙いとしては間違っていないのでOKです。

傷の状態によっては領将戦争(スルドブリガ)終了後に目覚めるなんてあり得ますが

 

傷の調整が出来なかったのが怖いですが、とりあえず目覚めるまで出来ることはないので良い感じに目覚めることを祈ります。

リセットは嫌だリセットは嫌だリセットは嫌だ

失礼、取り乱しました。

 

 

 

 

"ここは......?"

"私はたしか......星霊力を抑えられず内側から弾けたはず"

 

お、目覚めましたね。さて何年眠っていたんでしょうか。近くに人影は......見えませんね。

誰か見つけるまで適当に散策しましょうか。それにしても物騒な理由で眠ってたんですね。招霊の儀の真似でもしたんでしょうか?

とりあえず気になるのは今の時代なので置いておきましょう。

 

──"ようやくお目覚めか。約290年ぶりに目覚めた気分はどうだい?"

"誰?"

──"起きて早々申し訳ないがさっそく君の頭脳を使ってほしい。君が得意な星霊力に関してだ。ついてきなさい"

 

 

 

 

"......ネウィリ?"

 

ネウィリはもう亡くなっていると思うのでおそらくシオンですね。ネウィリに似ているのは大勢の子孫の中でシオンのみなので。

とすると、無事に原作時代に合流できたようですね。(とうの昔にボロボロになった)チャート通りです。よかったよかった。

 

──"シオン・アイメリスよ。間違えないで"

"......ネウィリ(シオンさん)"

 

それではシオンの好感度を稼いでいきましょう。やり方はチャートにちゃーんと書いてますから安心しろって(激ウマギャグ)

 

──"詳しいことはシオン君に触れるとわかる。握手でもしてみたまえ"

──"......私に子どもに危害を加えろっていうの?"

 

"握手は避けられてしまうのでハグをした。眠る直前に感じた、星霊力の暴走に近い痛みが触れている肌を中心に広がった"

 

"......これは"

──"我々は〈荊〉と呼称している。君にはこの〈荊〉について調べてもらいたい"

 

シオンとかかわる口実ができましたね!これで研究と称してあれやこれやができます!(下衆)

まぁ本当にあれやこれやして研究しない場合は普通に嫌われるんですけども。

あ、シオンとのコミュはスキップしません。ここで好感度しっかり上げておかないとトロフィー獲得できないのでね。

 

 

 

・・・研究中・・・

 

"終わりだよ。気分悪いとかはない?"

──"......大丈夫よ"

 

・・・研究中・・・

 

"今日はここまで。どう?"

──"......なんともないわ"

"そっか。なら良かった"

──"......"

 

・・・研究中・・・

 

"面白いことがわかった。〈荊〉の正体は莫大な闇の星霊力だ。しかも()()()()()ネウィリ(シオンさん)の身体に保存されている"

"私が眠る前に実験し失敗した事象の成功例だ。どうにか仕組みを理解したい"

"ネウィリ(シオンさん)も〈荊〉で苦しんでいるみたいだし、治したら褒めてくれるかな"

 

褒めてほしくて〈荊〉に触れるとか健気すぎて涙が出ますよ(ドライアイ)

それにしても"シオンさん"にシオン以外の意味が含まれているような気がするのはきっと気のせいですね!

私は気づかなかった、それで良いんだ

 

──"......ねぇ。一つ聞いても良いかしら"

"なに?"

──"その......あなたはどうしてそこまでしてくれるの?"

"それは......"

──"あなたが300年も前に事故にあってずっと眠っていたことは聞いてるわ。私と同じくらいの歳なのにって思うこともある。だから尚更わからないの。あなたが自分のリハビリよりも〈荊〉を優先する理由が"

"............"

 

それにしてもこのシオンさん、やけに饒舌ですね。いやコミュしやすくて結構なんですが。アルフェン君と旅する前は荊の女の文字通りツンツントゲトゲしてるイメージがあります。

リィヤーが美形だからですかね?やっぱ世の中顔なんやなって(二度目)

 

"そういえば私には〈荊〉を研究する理由がない。ネウィリ(シオンさん)の役に立ちたいのは間違いじゃない。むしろそれが全部だ。でもそれを伝えるのは多分良くない。眠る前に会話術を教えてくれたダナ人のおじさんたちもそう言っていた気がする"

 

──"......ごめんなさい。変なことを聞いたわ。忘れて"

“そっか"

 

なぁんかコミュ失敗してるんですけど??何がダメだったのか。

信念のステでも足りないんですかねぇ。リィヤーに領将(スルド)としての表向きの目的でも与えますか。

そうですね......。星霊力の素質による序列制度を撤廃させるなんてどうでしょう?

これなら星霊力の研究を続けていたことも〈荊〉の研究をするのも辻褄は合うんじゃないですかね?(テキトー)

裏の目的?シオンを絶望させて目の前でタヒぬことです。当然でしょ?(畜生)

 

"星霊力の素質を左右する要素を探すことにした。これならネウィリ(シオンさん)に言っても問題ないはず"

 

・・・研究中・・・

 

"これで終わり!おつかれさま"

──"わかったわ"

"ネウィリ(シオンさん)"

──"なに?"

"この前、答えそびれた質問。まだ覚えてる?"

──"......それはね。まだ疑問に思ってるわ"

"より大きい星霊力を安全に扱う方法を知るため"

──"え?"

"それが私の答えだよ。星霊力を簡単に扱えるようにして素質による上下関係を無くす。そのために莫大な星霊力の塊である〈荊〉を調べている"

──"......そう"

 

これでコミュ失敗のリカバリーになりますかね?いや、なれ!

こういう些細なところでしっかり誠意を見せていく、それが好感度アップのコツなんですね。

 

──"わかったわ。ありがとう"

 

"伝えられることは伝えたけど、これで良いのだろうか。ネウィリ(シオンさん)はまだ暗い顔をしている。会話術って難しい......"

 

 

・・・研究中・・・

 

 

"ネウィリ(シオンさん)の中に〈巫女〉の術式が展開されている。たしかに〈巫女〉を使えば活性状態の星霊力を抑え続けるのも簡単だ。となると〈荊〉を抑えるためには〈王〉の術式を使って星霊力を移すしかない"

 

"ネウィリ(シオンさん)、〈荊〉を消す方法だけど"

──"!なにかわかったの?"

 

"びっくりした。胸が跳ねる(ドキドキする)から急に近寄ってこないでほしい。顔赤くなっていないだろうか"

 

"うん。〈荊〉を構成している星霊力を移すと消せると思う"

──"〈荊〉を移す......ということは"

"器がいる。レナス=アルマのような"

──"......レナス=アルマ。たしか領将戦争(スルドブリガ)の勝者が持つとされる主霊石(マスターコア)"

──"ありがとう。そこまでわかれば後は私がなんとかするわ"

"そう。でも星霊力を移すときは声かけて。危ないから"

──"わかったわ"

 

"褒めてくれた。まだ〈荊〉を消したわけではないけど。方法がわかっただけなのに嬉しそうだ。微笑みが眩しい"

 

──"そういえば、私を呼ぶとき、'さん'は要らないわよ。シオンって呼んで"

"わかった"

 

名前呼びを許されたことですし、シオンとイチャつきながら領将(スルド)を目指していきましょう。

ま、星霊力の素質のおかげで領将(スルド)選抜は出来レースなんですがね初見さん。

 

"私がレナス=アルマを用意したらまた褒めてくれるだろうか。領将戦争(スルドブリガ)......起きた時に会った人に聞いてみよう"

 

イチャつくといってもまずは些細な気遣い(アルフェン君スタイル)で会話していきましょう。

あんまりガツガツ行くと警戒されてせっかくの好感度がなかったことになるのでね。

DT流コミュ術は嫌われるってそれ一番言われてるから。

 

まぁでも名前呼びを許された時点で好感度が下がることはそう多くはありません。人との触れ合いに飢えてる擦り切れ少女はこういうところがチョロいですよね(下衆)

 

なのでここからのコミュはスキップします。悪いがこれはRTAなのでな、好感度を上げすぎてもダメなんだよ。

勿論、スキップせずにコミュを続けてパーフェクトコミュニケーションを連発し、ドロドロに依存させることも出来ます。気になる方は自分の目で(ry()

それでは領将(スルド)選抜までスキップです。




原作時代ってRTAと各キャラ、どっち側から見たい?


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第6話 領将として頑張るRTAはじまるよ

シオンからの好感度が規定値を超えたので初投稿です


領将(スルド)に任命されるRTAはじまるよ

 

領将(スルド)選抜に参加するには他者の推薦が必要です。本来なら家の当主様にお願いするつもりだったのですが、空白の過去(290年間の治療睡眠)があるせいでリィヤーは研究所の面々とシオンしか面識がありません。

じゃあ誰に推薦してもらうか。答えはリスナー兄貴姉貴の推測通り、ヘルガイムキルにやってもらいます。

 

え?リィヤーはレナ人だからヘルガイムキルを認識できないだろって?

たしかにそれはその通りです。

ですが、こちらから認識出来なくても向こうからは認識出来ます。

そして、ここはヘルガイムキル主導の非道実験が日夜繰り返される研究所。つまり、アピールの機会はいくらでもあるんですね。

 

なので、領将王争(スルドブリガ)に参戦したい旨を誰かとの会話で口に出します。その後、星霊力の素質を見せつければアピール完了です。研究所ルートの場合はこれが一番確実に領将(スルド)推薦を得る方法になります。

 

"領将王争(スルドブリガ)領将(スルド)になれば参加できるらしい。領将(スルド)には強さが必要らしいから星霊術を練習しよう。起きてから一度も使ってなかったし"

 

というわけで、アピールがてら星霊術の練習をしましょう。既に最上位星霊術を1種使えるのでそこまでガッツリやる必要はないです。

まぁ、新しく習得できたらラッキーくらいの気持ちで行きましょう。

 

・・・練習中・・・

 

はい。特に変化なくですね。今までがハイペースだっただけで普通はこんなもんです。それに、空白の過去(290年間の治療睡眠)以前に星霊力を理解した(の核心を掴んだ)結果、やろうと思えばどの術も使えるので何も問題ありません。

さらに言えば、今は亡きチャートに(のっと)って、星霊術の習得は領将(スルド)任命後から原作開始までの約7年間でやる予定ですし。

 

やろうと思えばできるなら習得する必要ないだろって?それはそう。でも、習得した状態としてない状態で発動時間が変わるからやっぱり習得はします。

 

──"リィヤー。領将(スルド)選抜は1週間後だ。登録されているのを見たから教えておくぞ"

"わかった"

 

よし、狙い通り参加できましたね。

じゃあシオンとコミュりつつ時間が来るのを待ちます。

 

え?フィジカルはどうするんだって?......お子様ボディをたかだか1週間鍛え抜いた程度でつよつよボディに進化すると思いますか?つまりそういうことです。

それに、鍛え抜かれた肉体よりも研ぎ澄ました星霊術の方が強いってそれ一番言われてるから安心しろよ〜。

まぁ領将(スルド)選抜は何度も言うように出来レースなのでスキップするんですけどね初見さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"風の領将(スルド)になった。これでネウィリ(シオン)にレナス=アルマを用意できる"

 

お、今回は風の領将(スルド)でしたか。悪である自覚があるだけまだマシオバサン(アウメドラ・カイネリス)との入れ替わりですね。

ということは少し工夫しないとリンウェル加入フラグが折れてしまいますね。シオンの前でタヒぬ都合上、アルフェンパーティから戦力を減らすわけにはいきませんからね。

リィヤーには彼女の憎しみの的になってもらいましょう。悪く思うな、これも全て葦名のため......。

 

 

領将(スルド)になった後は他の領将(スルド)挨拶だけして(かるくコミュって)ダナに移動です。

領将(スルド)と仲良くなっても意味ないからね仕方ないね。

じゃあなぜ挨拶したのかというと、レナ人は少数しかいないせいか一体感が強く同族にはとても協力的であり、いざという時に協力を得やすくなるからです。

まるで島国の民みたいだ。まぁレナ人は星国の民なんですけどね。

協力を得るのは、ガナベルト君からダナの魔法使い一族のことを教えてもらう時とかですね。あくまでも例ですが。

 

ダナに到着したらまずはレベリングです。風の領であるミハグサールはアライズ世界でも唯一、漆黒の翼(レジスタンス)による革命が成功した場所です。

実際はアウメドラの奸計(かんけい)の一部だったんですけどね。

それを抜きにしても度重なる領将王争(スルドブリガ)のせいで領将(スルド)は全ダナ人から憎まれていますからね。初期ステ(レベル1)だと容易くコロされてしまいます。ただでさえリィヤーは貧弱脆弱虚弱ぼでぃですしね。

じゃけん溢れんばかりに野生化したズーグルでレベリングしようね〜。大丈夫大丈夫、こちとら星霊力を理解している(の核心を掴んでる)からよ。

 

 

・・・レベリング中・・・

 

 

よし、見える範囲内の野生化ズーグルは殲滅しましたね。お子様ボディだからか成長が早い早い。もうLv.20は上がってるんじゃないですかね。

星霊力を理解した(の核心を掴んだ)上でLv.20なら大抵の相手には負けません(勝てるとは言ってない)

 

なので主霊石(マスターコア)に星霊力を貯めていきましょう。

とはいえ、ただダナ人に風車を回させるだけです。1日5時間の強制労働3交代のシフトです。休日はありませんが年季の入った奴隷生活とリィヤーの実力が合わされば文句は出ないでしょう。というか言わせません。こちらも慈善でやってるわけではないのでね。

1日24時間で余る9時間は睡眠の時間です。監視するレナ人だって夜は眠りたいでしょう?

 

人体の構造上、肉体労働は5時間が一番効率がいいんですよね。それ以上は注意力散漫になって事故死してしまいます。ヘルガイの果実が無いうちにタヒなれてももったいないだけなので出来るだけ生かします。

 

強制労働以外でダナ人に干渉しません。武器を作ろうが絵を描こうが身体を鍛えようが食に工夫を凝らそうが好きにさせます。

強いて言えば領将(スルド)としての表向きの理由である、星霊力の素質に関する研究に協力してもらうくらいです。ですがこれについてはオート操作にします。RTA的には何の必要もありませんからね。

 

あと領将(スルド)としてやることは一緒にダナに移動したレナ人の部下達に力関係を教えて、強制労働以外でダナ人に干渉しないよう教育することです。

リィヤーはどう言い繕っても貧弱脆弱虚弱フィジカルのお子様ボディですからね。実力主義のレナ社会に生きるレナの精鋭である部下達ならワンチャンあってしまうので、ここでしっかり上下を叩き込んで差し上げましょう。

 

内政に関しては以上です。あとは日々増える書類仕事等を済ませばどうにでもなります。

じゃあ後は現地人とテキトーにコミュりながらダナの魔法使い(リンウェル)一族についての情報が出てくるのを待ちましょう。




現時点で公開可能なリィヤーのステータス↓

ネタバレ注意!













Lv.25
HP 1800/1800

極>上>並>微>劣

身体能力 : 劣
星霊力 : 極
信念 : 並

性格傾向
"探求者"、"偏愛"、"無慈悲"、"善人"、"博愛"

探求者 : 研究欲が高まる。また、研究中操作を受け付けないことがある。マスクデータ知力の成長に極補正。

偏愛 : 特定の個人に執着する。執着している間、ステータス信念の成長に微補正。執着した状態で対象の死を認識すると"妄執"に変化する。

無慈悲 : 言動の無駄が少なくなり、乱数イベントで高効果を得やすくなる。マスクデータ敏捷の成長に補正。

善人 : 言動が善良になる。他者からの好感度上昇に補正。

博愛 : 悪感情を抱かない。他者からの好感度上昇に上補正。一部キャラからの好感度下降に補正。


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第7話 原作時代に突入するRTAはじまるよ

風車を回すダナ人の監視が1番のブラック業務になったので初投稿です。


原作時代に突入するRTAはじまるよ?

 

原作時代までにやる事で残っているのは大きく分けて以下の3つです。

1.リンウェルから憎しみを買う。

2.万が一の時の保険を用意する。

3.沢山の星霊術を習得する。

 

優先度も変わらず123なので、順番にやっていきます。

 

──"ああ、そういえばリィヤー様。あなたの研究に役立つかわかりませぬが、昔ダナにも魔法使いがいたって噂は知っておりますか?儂が若い頃に聞いた噂ですが、その末裔が今もシスロディアのどこかにいるそうじゃ。ジジイの与太話で済みませんが、研究に役立てば幸いですじゃ"

 

というわけでオート操作(5倍速)にしていた研究の際に、現住ダナ(じい)からダナの魔法使い(リンウェル)一族のことを教えてもらいました。

これでガナベルト君に伝えて調べてもらい、シスロディアに向かうとリンウェルフラグ完了です。

では行きましょう。

 

──"ふむ、わかりました。それではこちらでも調べてみましょう。処分はこちらでやっても?"

"だめ。研究に使うからこっちに渡して"

──"たしかに私があなたの研究に期待しているのは事実ですが............ふむ。あなたならわざわざ(にが)すなどと無様はしないか。良いでしょう、また連絡します"

"引き受けてくれてありがとう。それじゃあ"

 

ガナベルト君への連絡ヨシ!

ダナの魔法使い(リンウェル)一族については後はもう待ってるだけで良いです。ガナベルト君は勤勉ですからね。どんなチャートでも期待通りの働きをしてくれて助かってます。大好き。愛してると言っても良い。

まぁ特に救済とかはしませんけど(無慈悲)

 

1は一段落ついたので、2に取り掛かりましょう。

万が一の保険、それはズーグルの作成です。まぁ要はオリジナルズーグル(メズメルド)を作ろうって話です。

ヴォルラーンがミハグサールに来なかったり、リンウェルが憎しみから解放されて(原作通りに)リィヤーを殺さなかった場合の自決用です。後リィヤーの肉盾。

 

作り方は簡単。その辺のズーグルを捕まえてきて好きな因子を埋め込み成長させるだけ。ズーグルは星霊力を注ぐと成長を加速させることができるので、あっという間に成体までもっていけます。

 

埋め込む因子はマスクデータの知力によって増えます。知力の上げ方は"知識欲旺盛"系列の性格傾向と同じく、ひたすら勉強し学習し研究する事です。

だからこそ、ただひたすらに研究する必要があったんですね。

 

今埋め込める因子は......ダナの魔法使いとヘルガイムキル以外の因子を網羅していますね。つまり、知力がカンスト手前だということです。リィヤー、恐ろしい子......!少し研究しすぎたかしら。

 

因子を自由に組み合わせられるとわかったところで、作っていきましょう。

作るズーグルは2体、メナンシアに送りつけるカメレオン君とリィヤーの肉盾にするメズメルド君です。

それ以上作る必要はありません。もちろん作りまくってメズメルド軍団を編成することもできますが、これはRTAなので(ry()

気になる方は(ry()

 

いくら星霊力による成長加速ができるとは言え、無意味なコミュ(Allスキップ)はおろかオート操作の研究(5倍速)よりも遅いのでマズ味です。

なので作るのは最小限の2体にします。こんなに因子があるんだから大丈夫だって見てろよ見てろよ。

 

 

・・・カメレオン成長中・・・

 

 

原作カメレオンよりちょっと強くなってしまいましたが、大丈夫でしょう多分。

具体的には、HPと物理攻撃力が下がった代わりに毒と麻痺を併せ持ち()魔法を使いこなすカメレオン君です。

状態異常ラッシュかな?みんなーパナシーアボトル(万能ひょうたん)持ってきてー。

 

まぁカメレオンは練習ですよ練習。

本番は肉盾(メズメルド)ですから。こっちで狙い通り行けばいいんです。

 

今回作るメズメルドは特別頑丈にします。満身創痍でヴォルラーンと戦闘できるくらいがベストです。戦闘力は要りません。生存特化です。歩く要塞くらいが及第点です。

 

ちなみに自決と言っても自刃やミハグサール勢(メズメルド達)によるタヒだと意味がありません。たしかにシオンの目の前でタヒねますが、このチャートの好感度ではタヒねば無条件でトロフィー獲得できるほど絶望してくれません。

だからこそ、キチンとアルフェン達の手によるタヒを迎える必要があるんですね(ヴォルラーンでも可)

 

そのためにも幻惑能力も持たせましょう。持たせることによって幻惑と踊ったシオンによってリィヤーがコロされる世界線が生まれます。

ま、どんなタヒを迎えるかはその時が来ないとわかりませんが。

とにかく、幻惑能力をもったひたすら頑丈なメズメルド君を作りましょう。

 

"ガナベルトから連絡が来た。魔法使い一族の居場所に目星がついたらしい"

 

お、タイミングが良いですね。幻惑能力はダナの魔法使い因子があると獲得しやすいですからね。メズメルドを作る前に憎まれに行きますか!

 

 

・・・シスロディア出張中・・・

 

 

"1人子どもを逃してしまったけどこれだけいれば十分だ。ダナの魔法使いとレナ人、ダナの魔法使いとダナ人の違いを調べていこう"

 

よし、首尾よく襲撃終わりましたね。アウメドラと違ってリィヤーはリンウェルの事にも気づいていたみたいですが、気づいたところで特に働きかける事もないので放置です。リンウェルちゃんは是非憎しみを胸に強くなってリィヤーに会いに来てね(外道)

シオン曰く、憎しみは力をくれますからね(無情)

 

とにかく、これで研究が進みます。

先にリィヤーの好きなように研究させた後にメズメルド君を作りましょう。ここは焦らずダナの魔法使い因子を扱えるようになるのを待つのです。

 

・・・研究中・・・

 

そろそろですかね?じゃあ一旦因子を確認して......あれ?操作が効きませんね。なんで???

 

・・・研究中・・・

 

え、操作が効かない!?なんで!?こんなイベント知りませんよ!?ああ、いけませんお客様!(もうズタボロの)チャートが壊れてしまいます!!

 

・・・研究中・・・

 

いや本当になんで?想定外にも程があるんですが?

コントローラー壊れたかな......おかしいなぁ買ったばかりなんだけど

......どうやらコントローラーが壊れたみたいです。交換したら操作できました。ゲーム関係ないとこでガバ起きるのやめて欲しいですね。

 

それはそれとして、ダナの魔法使い因子が使えるようになりましたね。

これで幻惑能力が獲得しやすくなります。じゃけんメズメルド君を育てていこうね〜。

今更ですが、メズメルドは原作アウメドラ戦に出てくるドラゴン系ズーグルのことです。

 

 

・・・メズメルド成長中・・・

 

 

よしよし。それなりにいい感じですね!

攻撃力0耐久極振りメズメルド君(とりのすがた)の完成です。幻惑能力は当然として、飛行能力もついてきたのは嬉しいですね。

これでメズメルド君を肉盾にし(に乗り)ながら星霊術をマシンガンする戦法が取れます。それをするとどうなるかって?相手はタヒぬ。

 

メズメルドには好かれすぎないように注意しましょう。

好かれすぎるとアルフェン達との戦いで、自滅覚悟で守ってくれます。しかし、幻惑と踊った(メズメルドに踊らされた)シオンに撃たれるタヒをワンチャン狙いたいので、リィヤーより先にタヒぬのはただ迷惑なだけなんですよ(非情)

 

原作時代までにやる最後の一つ、星霊術の習得はオート操作(5倍速)で問題ないので、アルフェン達(原作時代)を待ちましょう。




原作時代までまだ数年あるので失踪します。


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第8話 とある実験に関するレポート

レポートの閲覧制限が解除されていたので初投稿です


当計画は当研究施設局長と主任技術者両名による監督の下、実行された。

理論に置いては特殊顧問リィヤーによる"星霊力の属性別傾向と特性"を踏襲している。

 

◇目的

失われたレナス=アルマの再作成または代替品の作成。

*レナス=アルマ消失については別項"招霊の儀計画"を別途参照すること。

 

◇方法

レナス=アルマ作成の技術を用いて地水火風光闇の6属性の力場を作り、合成する。

力場の作成については星霊力を集中させることで行う。その際、星霊が顕現しないよう非活性状態で星霊力を集めること。

星霊力の属性については回収方法によって操作するものとする。

例 : 火属性ならば燃焼によって抽出する。

 

力場を作成するために必要な莫大な星霊力は星から回収する。その対象は惑星ダナとする。

*惑星レナの星霊力は消失したレナス=アルマ作成時に枯渇したと考えられるため。

また、効率を高めるため現住のダナ人を起用する。

星霊力は集霊機を用いて可能な限り広い領域で抽出を行う。

 

星霊力を非活性状態にするため、レナス=アルマの技術を応用し、星霊力の器を作る。*器は主霊石(マスターコア)と呼称する。

主霊石(マスターコア)は全部で6個作成し、それぞれ地水火風光闇に特化させる。

規定量の星霊力を主霊石(マスターコア)内に貯蔵後、闇の主霊石(マスターコア)を軸にレナス=アルマを作成する。

*闇属性を軸とする理由はレナス=アルマの構造を熟知しているヘルガイムキルが最も扱いやすい属性であるため。

 

 

◇計画開始5年目追記

 

有志を募って協力を得る方法では限界があると判断。

現住ダナ人を奴隷として起用し効率を高める。

またその際、レナ人の戦闘能力検証も兼ねて惑星ダナの征服を行う。

*戦闘能力検証結果については"惑星ダナ征服計画"を別途参照すること。

 

ダナ人を奴隷として起用したことで星霊力抽出効率の向上を確認。

 

◇計画開始7年目追記

 

現状のシステムで星霊力抽出を進めた場合、規定量が貯蔵されるまで約1000年かかることが試算により判明。

更なる効率向上が求められる。

 

試策としてダナ人から直接星霊力を抽出できるよう霊石(コア)を埋め込む。

霊石(コア)主霊石(マスターコア)の技術を応用し、作成する。

主な機能は対象が含む星霊力を強制的に放出させること。

霊石(コア)の埋め込みについては食事等の自力での星霊力回復手段をもつ生物に適応する。

 

なお、放出された星霊力は集霊機の影響下にあるため主霊石(マスターコア)に集中する。

 

 

霊石(コア)埋め込みの効果として、強化生物(ズーグル)の制御の簡易化に成功。

そのメカニズムについては"強化生物(ズーグル)生産による人手不足解消計画"を別途参照すること。

 

 

◇計画開始24年目追記

 

レナ人側からの効率向上を試策。

地水火風光の各主霊石(マスターコア)を星霊力の扱いに長ける5名に持たせ、競争を行わせる。

闇の主霊石(マスターコア)についてはレネギスに住むレナ人と惑星レナの残滓から抽出することとする。

*惑星ダナから闇属性を抽出するのは困難な上、コストに見合う量を抽出できないため。

 

主霊石(マスターコア)を受け持ったレナ人を便宜上領将(スルド)とし、第3等権限を付与する。

また、領将(スルド)による星霊力抽出競争を領将王争(スルドブリガ)と呼称する。

 

今策を実施することで規定量貯蔵までの期間を短縮、試算の結果約350年で達成できることが判明。

 

*試算は"星霊力の属性別傾向と特性"で使用された数式を使用している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇計画開始290年追記

 

"星霊力の属性別傾向と特性"の検証に用いられた薬を使用することで摂取したダナ人を星霊力に変換できることがわかった。

変換効率は高く、霊石(コア)による長期的抽出より遥かに多くの星霊力を瞬時に放出される。

その際、星霊力を放出し切った摂取対象は惑星レナ同様〈虚水〉化する。

 

瞬時に〈虚水〉化することを防ぎ、かつ霊石(コア)による抽出も継続して行うため、当薬の効果を和らげると共に摂取しやすい形に変更する。

 

 

◇計画開始297年追記

 

薬の効果を和らげることに成功。

霊石(コア)との併用で、より多くの星霊力放出に成功。

なお、長期摂取により〈虚水〉化することは変わらず。

 

また、摂取しやすいよう果実にすることに成功。

1本の苗木を刺し木することで量産を行う。

果実はヘルガイの果実と呼称する。

 

ヘルガイの果実の検証は原案の薬製作者であり現在の領将(スルド)である特殊顧問リィヤーに一任する。



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第9話 エンディングを迎えるRTAはじまるよ

原作時代に追いついたので初投稿です。


炎の剣御一行を熱烈に歓迎するRTA始まるよ

 

──"リィヤー様、エルデ・メナンシアから領将(スルド)テュオハリム卿がお見えです。現在ニズにて歓待しており、まもなくリィヤー様の元に来られるかと"

 

相変わらずオート操作(5倍速)中ですが、いよいよ原作時代に突入です。いや、突入しました。

 

とりあえずコミュはスキップします。あれから性格傾向は変わってませんので無慈悲(マッド)狂気的(偏愛)(マッド)なままです。さらに言えば、少なくともリンウェル一族で人体実験をしているのに"善人"のままとかいう異常性があります。

 

なのでテキトーに研究していればアルフェン達と敵対できるはずです。目論見通り敵対した場合はコミュが終了時、戦闘開始です。

敵対していなかったら?リンウェルさんの憎しみを利用して敵対します(非道)

結局第一回コミュで戦闘に持っていくのは変わらないんです。だってこれRTAだもの。

 

・・・研究中・・・

 

 

 

 

 

──"ダナ人は実験動物じゃない!"

"ならばどうする?他領のように力に訴えるか?幸いにも今此処には君の気にする実験動物はいない。君は好きに暴れることができるだろう"

 

うーむ......これは少し弱いですかね。なんかリィヤーに言いくるめられているというか、最後の一線を超えるきっかけが必要な感じがします。

ここで敵対しておかないと後が面倒なのでリンウェルちゃんに気づいてもらいましょうか。

 

"その場合、仮にも3人の領将(スルド)を下した君たちが相手だ。こちらもそれなりの全力で対応しよう"

──"その紋章......ッ!とうとう見つけた!父さんと母さんの仇!!"

──"ちょっ'"

──"リンウェル!?"

 

よし、しっかり手を出させましたね。これで敵対完了です。もう和解の機会はありません。だってタヒぬので。これでも支配者だからね仕方ないね。

 

──"術が逸れた......?"

"この術構成はダナの魔法使いか。となると、君はあの時(のが)した子どもか"

 

"中々の練度の術だ。もし風で逸らしていなければ傷が出来ていたかもしれない"

 

"君の一族のおかげで私の研究は大いに進んだ。感謝の言葉を尽くしても足りない。ああ、安心してほしい。行使してくれた星霊術も(こぼ)れた〈虚水〉も、一雫も無駄にしていない"

──"ってことはリンウェルの家族は......"

──"殺す......!!絶対に殺す!!"

 

ここまでいけばスキップして大丈夫です。

ロウがリンウェルを引き止めるムービー(原作イベント)が終わり次第戦闘が始まります。

原作と違うのは恐竜ズーグルを作っていないのでリィヤーを操作して戦う点です。

 

手動操作だと普通にノーダメ勝利できてしまうのでオート操作(5倍速)です。絶対にコロされてあげますが、まだタヒぬには早いのです。だからここでは舐めプをします(後でまともに戦うとは言ってない)

オート操作(5倍速)だとタイムも短縮できますしね。

 

・・・戦闘中・・・

 

──"ロウ!"

──"襲爪!"

──"雷斬!!"

 

よし、HP半分削らせましたね。それではここで手動操作に切り替えて最上位星霊術を行使します。

ほどほどにダメージを与えて仕切り直すというやつです。

使う術はそうですね......。最初に習得したサイクロンでいいでしょう。

 

"風よ逆巻け。嵐の夜。吹き(すさ)べ。サイクロン"

 

おお、星霊力の核心を掴んでいるおかげか詠唱速度が段違いですね。

まるで上位魔法のように(三節詠唱で)行使できるのは玄人の証。威力はお察し、戦略級です。

 

──"負ける......わけには......"

"君たちは気にしないのかもしれないけど、この森は研究施設。故にこれ以上やるなら場所を変える。もし続きをご所望なら来なさい"

 

よし、原作にはなかった負けイベ演出もできたのでメズメルド(とりのすがた)に乗って移動します。というのも、水辺の無いエストルヴァの森で戦っていてもヴォルラーンが来ない可能性が高いです。折角リィヤーのタヒ因になるかもしれないキャラの1人なので登場する可能性は上げておきましょう。

 

なので無人島に移動する......つもりでしたが、いつのまにかアウメドラ・シップが出来ていたので乗り込んで沖で待つことにします。

それにしてもなんで船作ったんですかね?研究に必要だったのかな?(ずっっとオート操作(5倍速)だったので把握しているわけ)ないです。

そういえば、どこで待ってるか伝えてない......

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──"リィヤー様、炎の剣が艦内に侵入しました。我々で対処致しますのでズーグルの使用許可を"

"いつも通り死なないようにいざとなったら逃げること。それと私は3層の甲板で彼らを待つ。巻き込みたくないから立ち入らないこと"

──"かしこまりました"

 

よし!狙い通り船に来ましたね!

ま、まぁ?多分ダナ人が船作ってますしバエフォンあたりから伝わったんでしょ多分......助かったぜ

後はアウメドラ同様、甲板で最終決戦といきましょう!その間にやること?部下のレナ人に仕事丸投げしてますし大丈夫大丈夫。いやぁ部下が優秀で助かりますねぇ!(ブラック上司の鑑)

 

さて、それじゃあこのRTA最期の戦闘がはじまりますが、当然リィヤーには負けてもらいます。

そして負けた後に入る領将(スルド)タヒ亡イベントにてタヒんでもらいます。

 

タヒ亡イベントは領将(スルド)キャラを操作している時にアルフェン達に敗北すると確定で起きる操作不可のイベントです。実質エンディングですね。イベント突入時の状況からタヒ因が決められ、確実なタヒが贈られるイベントです。弱い領将(スルド)を絶対に生かさないという強い意志を感じる......。

まぁ、テュオハリムのようにタヒを回避してパーティに加わる場合もありますが

 

とはいえ、ただ負けるだけではダメです。

降参や戦闘で棒立ちする(操作しない)と、タヒ因が決定する条件である、敗北時の残りHPが100未満を満たせずタヒねない可能性があるからです。アルフェン達は優しいので無抵抗だと戦意無くしちゃうんですよね。その結果、タヒ亡イベントでタヒなないという頭痛が痛い状態になります。

じゃけんきっちり領将(スルド)らしく戦って全身ズタボロになりましょうね!

 

ただし、まともに戦ってはいけません。なぜなら肉盾メズメルド(ひこうタイプ)+星霊術チート(リィヤー)の組み合わせだと、上空を飛び回って星霊術をブッパしていれば完封出来てしまうので。

 

そこで星霊術を下位術式のみに限定(再びの舐めプを)します。星霊力の核心を掴んでいる以上、無詠唱高威力術式になってしまいますが仕方ありません。

領将(スルド)プレイの場合、秘奥義を封じる事はできないので、もし秘奥義の星霊術が発動したらアルフェン達の生存力に賭けましょう。

なぁに相変わらずの貧弱脆弱虚弱フィジカルな上に、他の領将(スルド)よろしく発動準備に時間が必要なので大丈夫大丈夫。詠唱中にHP削り切られて戦闘終了ですよ。

 

後は手動操作だろうがオート操作だろうが戦闘結果は大して変わらない(敗北しかない)のでオート操作(5倍速)でタイム短縮します。

 

 

・・・戦闘中・・・

 

 

──"シオン!"

──"星霊力全開!"

──"いけえぇー!!"

"ネウィリ(シオン)......なぜ......"

 

──メズメルドと共に甲板に墜ちる。

 

よし、しっかり負けましたね。それじゃあムービースキップしてタヒ亡イベント(エンディング)を迎えましょう。タヒ因の詳細はクリアデータになったときに確認できますので安心してスキップしましょう。リスナー兄貴姉貴が気になる(であろう)部分はトロフィー獲得(RTA終了)後にじっくり紹介するので安心しろよな。

 

 

 

 

 

 

 

 

"ヴォルラーン・アングサリ......なぜネウィリ(シオン)の命を狙う?"

──"未だ答え無き問いのため"

"またそれか。君たちの術式は体系化した。答えは変わらない"

──"ならば、刃で問うのみ"

 

なんか戦闘が始まった(操作できる)んですが??

ど ぉ" じ で だ よ" ぉ" ぉ" ! !



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第10話 「絶望の荊」獲得RTAはじまるよ

未知のヴォルラーン戦がはじまったので初投稿です。


ヴォルラーンをボォゴボォゴにするRTAはじまるよ!!

 

領将(スルド)タヒ亡イベントが発生したはずなのに何故かアルフェン好き好き大好きマン(ヴォルラーン)との戦闘が始まりましたが......久しぶりに......キレちまったよ......。

 

いやね、ここで操作ができないならいいんです。ヴォルラーンにコロされる(タヒ亡イベントの一貫な)んだなで終わるので。それはそれでスキップできないのは謎ですが。

 

ところが、操作ができてしまっている。しかもシオンを守るように戦闘している......。

つまり、タヒ亡イベント......回避しちゃった......という事なんですね。

しかも下手するとこのままアルフェンパーティに加入です。ますますタヒねなくなりますね!(ヤケクソ)

 

 

はい。この時点で最速はもう目指せません。次タヒねるのは多分レネギス行った後になるので、最速は夢の中に消えます。

はっきり言って、まだかろうじて輪郭を成していたチャートが粉微塵に大喝采した瞬間です。RTA終盤でこれは私じゃなかったら発狂してますよ多分。

 

とはいえ、一度走り始めた以上完走するのが配信者というもの。

なのでRTAは続行します。これでも配信者なので。

ですが、その前にこの一瞬で溜まったストレスをアルフェン好き好き愛してるマン(ヴォルラーン)にぶつけようと思います。

そう、八つ当たりです。

アルフェン達に負けている都合で全身ズタボロな上に疲労困憊(残りHP1、CP0)ですが、問題ありません。RTA走者が一番PS(プレイヤースキル)高いってそれ一番言われてますからね。さらにいえば治癒術も使えますし(使うとは言ってない)

 

リィヤー(うちの子)ならただ星霊術をブッパしてれば勝てます。ただでさえ星霊力の核心を掴んでいる(チート)にも関わらず主霊石(マスターコア)に接続できる領将(スルド)になった弊害です。

 

〈王〉の術式を使えば炎の剣よろしく風の剣を(かたど)れると思いますが、フィジカルよわよわ(もやしぼでぃ)なのでやりません。絶対に。それでもタイムを延ばしてくれたヴォルラーンは私の全力でもってきっちり撃破します(八つ当たり2回目)

 

具体的にはインフレ星霊術のオンパレードです。

リィヤーは星霊力を理解している(の核心を掴んでいる)ので、六属性全ての術を扱えます。練度も素晴らしく秘奥義以外では最長三節詠唱です。

さらに、残りHPが半分未満での戦闘開始なので、任意でOVLに入ることができます。

 

つまり、今回取る戦法は、星霊術を複数浴びせた後に秘奥義でフィニッシュ、これに尽きます。それだけRTAのタイムを伸ばした彼の罪は重い(八つ当たり3回目)

自重はしません。光属性の術だろうが、このDLCで追加される術だろうが、使えるものは使います。お構いなしです。

チートによるチートのためのインフレ星霊術をお見せします。

 

 

さあ蹂躙のお時間です。

 

ヴォルラーンは戦闘が始まるとダッシュ突き→袈裟乱撃の順で行動します。把握する動きは初手のこの動きだけで十分です。以降は行動させないので。

 

乱撃を回避しきると次の攻撃が来るまで一瞬間が空きます。このタイミングで星霊術を当てましょう。術式はどれでも構いません、なので発動速度と命中精度を考慮して風の下位術式(エアスラスト)を行使します。

 

"エアスラスト"

──"〈王〉のクッ"

 

命中しました。やっぱ発動速度において無詠唱は最高やな!

 

命中させるとカウンター判定が入り、ノックバックしながら怯みます。復帰するまでに三節詠唱分の時間ができるので好きな術を詠唱します。当てるとまた怯みます。怯みは術が上位な程、時間が長くなるので、最上位術式一択です。

 

"氷よ(いだ)け。終焉の鼓動。刹那に沈め。インブレイスエンド"

 

──"誰よりグッ"

 

はい。一度でも最上位術式を当てられればこちらのものです。術を当てた怯み時間にまた詠唱して術を当てる。この繰り返しだけで完封できます。

わかりやすくいうと、この先ずっと俺のターン!!

君が!泣くまで!!術を止めない!!!ってことです。

 

一種のハメですね。星霊力の核心を掴んだからこそできる技。やっぱり研ぎ澄ませた星霊術が最強ってはっきりわかります。

ここまできたら簡単です。HPを削り切るまで好きな術を好きなように撃ちまくります。

あ、でもヴォルラーンがOVLに入ると怯まなくなります。なので同じタイミングでこちらも秘奥義を撃っ(OVLに入っ)てしまいましょう。

 

ちなみに、星霊力の核心を掴んでいない状態だと最上位術式を三節詠唱できないので間に合いません。その場合は順当に上位術式を使いますが、結果は同じなのでやっぱりハメですね。

 

 

"大地よ(ほころ)べ。大地編纂(へんさん)。打ち砕け。ビ・ナトゥラエ"

 

──"あれって大将の術じゃなかったか?"

 

"出でよ神雷。天光満つる。虚空に沈め。インディグネイション"

 

──"あれ、光の星霊術だよ"

──"ああ、確かガナベルトが使っていたな"

──"レナ人がどうやって......ありえん!"

 

ヴォルラーン、意外とHPありますね。その分派手派手な術をたくさん使えるので構いませんが。むしろドンと来い。

というか、アルフェン達の声が聞こえてくるってことは完全に仲間認定されていませんか?気のせいであってくれ......。

 

"闇よ(むしば)め。静謐なる浄化。断罪せよ。フラッターズ・ディム"

 

──"これほど強力な術は見たことがない"

──"相変わらず、とんでもない術ね"

 

──"この程度で終わってくれるな“

 

お、ヴォルラーンがOVLになり、詠唱(秘奥義の準備)を始めました。じゃあこちらも秘奥義をぶっ放してトドメです。ただでさえ三節詠唱でここまで弄ばれているのに、秘奥義詠唱を始める(デカイ隙を見せる)とか......自滅願望でもあるんですか?(失礼)

 

"始まりの時を教えよう"

 

"星に満ちる地水火風"

"双世(そうせ)(あわ)せて光と闇"

"占めて()属性、我が元に"

"(かたど)るは(うつろ)の牢獄"

"顕現するは原初の(かい)"

"虚無と永劫を()かし"

"弾けて潰せ"

 

"イベント・ホライズン"

 

 

 

 

 

 

 

はい。戦闘完了です。終わってみれば呆気ないものですね。

やっぱ八つ当たりは何も産まないんだなって(賢者)

 

──"剣を取れ"

"必要がない"

 

生き残ってしまったものは仕方ありません。どうせアルフェンパーティに加入すると思うので、順当に攻略します。タヒ亡イベントを回避してしまった以上、次にタヒねるのは当分先な上アルフェン達に同行する(下手にスキップやオート操作ができない)のでタイムは情けない記録になると思います。

 

──"ならば、死ね"

 

無様な結果なことには変わらなくともせめて最速を目指します。なので、見たことないイベントだろうが全部スキップして駆け抜けていきます。一応RTAだからねこれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──トロフィー「絶望の荊」を獲得しました。

──トロフィー「王の意義」を獲得しました。

 

──クリアデータを参照可能です。参照しますか?

 

ファ!?勝ったのになんでタヒんでいるんですか。ヴォルラーン戦後のイベントスキップしただけなのに......。まさか、ヴォルラーン戦そのものが領将(スルド)タヒ亡イベントに組み込まれていた......??

 

まぁとりあえず「絶望の荊」は取れたのでタイマーを止めます。記録は、ゲーム内時間で21年+290年。プレイ時間で10時間8分ですね。「絶望の荊」RTAは私しか走者がいないのでこの記録が最速です。

 

 

 

さて、とりあえずRTAも終わりましたし、wikiを確認します。

ええと......wikiによると、「王の意義」の獲得条件は、〈王〉の術式を獲得したうえでヴォルラーンとのイベント戦闘で勝利すること。らしいです。

 

ということは最後のヴォルラーン戦は「王の意義」獲得可否の戦闘であって、領将(スルド)タヒ亡イベントとは何も関係ないみたいですね。

ならヴォルラーン戦をオート操作(5倍速)した方がタイム短縮になった......??くっ一時の感情に身を委ねなければ(八つ当たりさえしなければ)......!!

 

 

まぁいいです。

まったく釈然としない上に納得できませんが、今回のRTAはクリアということになります。

完走した感想?......強いて言えば、ランダム性が強すぎてチャートが息できず大変でした(楽しかったです)

 

もし今回のようにテイルズオブアライズDLCをプレイするときはRTAではなく、まったり解説をやりたいですね。その方がいろんなイベントを確認できますし、紹介できていない要素もたくさんあるので。

例えば、他の走者様のように、試走時のデータをマスクデータに登録してプレイするモードとか。

 

 

それでは最後にクリアデータを載せて、テイルズオブアライズ トロフィー「絶望の荊」獲得RTA レナ人チャートの完了といたします。

 

長くなりましたが、ここまで見ていただきありがとうございました。

縁があればまたどこかでお会いしましょう。お疲れさまでした。




打ち切りエンドではありません。信じてください。

それはそれとして、RTAの目的を達成したので失踪します。


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四方の風集う谷
第11話 ニズ


テイルズの小説パートが難しすぎたので初投稿です。

導入話と言えど、あまりにも難しかったのでこれから更新ペースが落ちると思います。何卒


「ここがミハグサールの首府、ニズか」

「ここが......」

「ヴィスキントみたいな雰囲気だよな」

「ああ。皆表情が晴れやかだ」

「装甲兵が1人もいないのは気になるがな」

「それにズーグルが街を徘徊してるよ」

 

ディアラ山を抜けてようやく着いたニズは活気に溢れていた。

人々は様々な服装をして思い思いに笑顔を浮かべている。

レナ人の姿が見えないだけで、その様はメナンシアを彷彿とさせた。

 

「本当だ。結構なズーグルがいるな」

「ズーグルの割りには随分大人しいみたいだけど」

「よく懐いているようだ。珍しいな」

 

強化生物(ズーグル)は文字通り強力な存在だ。元が戦闘用だった事もあり凶暴だ。凶暴さには個体差があるとはいえ、決してペットにできるような存在じゃない。

しかし、ニズの人々はまるで犬猫に接するような気軽さでズーグルに接している。

 

「懐いてるったって、凶暴なのは変わらないだろ?」

「そのはずだが」

「......」

「見た感じ、暴れる様子はないな」

 

額に傷のあるダナの壮年男性が近づいてきた。

見たところ武装はしていない。

 

「ようあんたら。ズーグルが見慣れないか?」

「あんたは?」

「俺はバエフォン。あんたらみたいな他領から来た奴の案内をやってる」

「あのズーグル達は?」

「襲ってくることはないさ。気構えちまうのはわかるがな。他にもいろいろ教えよう。着いてきてくれ」

 

バエフォンについて建物に入る。ちょっとした喫食店と言ったところか。

 

 

「ここは宿屋も兼ねていてな、もし必要ならそこの受付に行ってくれ。さて、それで何から聞きたい?」

「レナの装甲兵を見かけないが、追い出したのか?」

「レナ人ならいるさ、装甲を着てないだけでな。街中じゃ装甲を着てるレナ人を見る方が珍しい」

「そんなことがあり得るの?メナンシアでさえ装甲を着ていたのに」

「ここの領将(スルド)の方針でな。俺たちダナ人にストレスをかけないためだそうだ。他にもあるかもしれないが、詳しくは分からない」

「ここの領将(スルド)は途中で見えた城かね?」

「どうかな。あの方はあまり姿を見せなくてな。気になるなら行ってみると良い」

「誰でも入って良いのか?」

「入るだけならな。会えるかは別だ」

「そうか。ありがとう」

 

とりあえず城に行こう。会えないにしてもわかることがあるだろう。

 

「今更だが、あんたらの名前は?」

「アルフェンだ」

「アルフェン......。炎の剣のアルフェンか?」

 

バエフォンは酷く驚いて......いや、恐れているように見える。

会話が聞こえたのか、周りの人々も会話をやめて注目している。

瞬く間に賑わっていた店内が静かになる。ひそひそと話す声がなければ時が止まったように思えただろう。

 

──炎の剣ってあの?

──たぶんな。リィヤー様を倒しにきたのかも。

 

──リィヤー様に伝えた方が良くないか?

──どうやってだよ。レナ人でさえ居場所が掴めないお方だぞ。

──とりあえず執政官に伝えてくる。

 

「そうだが......剣を見せようか?」

「いや、それには及ばない。ただ......頼むから騒ぎを起こさんでくれよ。俺たちは今に満足しているんだ」

 

 

 

 

 

 

 

「バエフォンの言ってた事、どう言う意味だろうな」

「さあな。案外ヴィスキントと同じ理由かもな」

「すでに共存出来ているから......か。あり得るな。ニズでは搾取はされていないみたいだ」

「まずは城に行こう。ここで考えていてもわかることは少ないぞ」

「そうだな」

 

谷を跨ぐ大きな風車に被さる城に向かう。

入り口に向かう途中装甲兵を見かけることはなかった。

ズーグルも荷物を運んでいたり子供と戯れていたりと非常に友好的だった。

ここには壊す壁はないのかもしれない。

 

「炎の剣だな」

「誰だ」

 

城の前の広間に着くとフードを被った男がすれ違い様に話しかけてきた。

 

領将(スルド)について話がある。街を出る時、奥の民家に来い」

 

 

 

 

城は部屋というものがなかった。外観が整っているだけでその実、大きな広間しかない。

城というより闘技場だった。屋根がない点を除けばヴィスキントの闘技場によく似ている。

中は多くの人で賑わっている。多くの露天が構えられ、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。

 

「武器を売っているのか?」

「武器だけじゃないよ。陶器も装飾品も、食べ物もある」

「レナのものではないな。おそらくはダナ人によるものだろう」

「俺の狼もあるぜ。色は違うけど」

「これは......市場か?」

 

──店主、良い皿だな。

──だろう?今回のは良い出来だ。リィヤー様に腰を治してもらったからな!

 

──そこの兄ちゃん!このペンダントなんてどうだい?

──良い色だな。見せてくれ

 

──この服......

──お、見る目あるねあんた!リィヤー様に頼んでメズメルドの抜け羽を貰ったんだ。織り込んであるから頑丈だよ?

──そんなの、恐れ多くて着れないわよ!

──だよねぇ......。ま、私の自慢用だからね!

 

圧倒されていると1人の女性が近づいてきた。

 

「貴方がアルフェン殿ですか?」

「ああ」

「私は領将(スルド)リィヤー様から執政官を任されている者です。リィヤー様は不在なため、代わりに私が対応します」

 

 

 

「ここの領将(スルド)領将王争(スルドブリガ)を放棄したのか?」

「お戯れを。リィヤー様は放棄していませんよ」

「その割にダナ人に苦役を強いていないようにみえるが?」

「搾取するだけが領将王争(スルドブリガ)の勝ち方ではありません。そうですね、詳しく説明しましょう」

 

ミハグサールではダナ人は奴隷のまま変わっていない。むしろ労働の見返りがない分、他領よりも厳しい待遇だ。

労働時間は一人当たり5時間、生活品等は自給自足。

そのかわり、レナ側からダナ人に干渉することはない。武器を作っても体を鍛えても構わない。

星霊力をより多く抽出し人口を増やせど減らさないようにストレスの原因を排除。

1日5時間の労働+霊石(コア)による星霊力の回収。それだけでは当然、回収できる星霊力は微々たるもの。

しかし、ミハグサールの主な星霊力源は地形の影響で吹き荒れる自然風であり、ダナ人の労働はあくまでも自然風に方向性を持たせ、抽出効率を高めることにある。

これによってダナ人を虐げることなく他領と同等以上の星霊力を回収している。

 

「つまり、支配ではなく効率を求めたと?」

「その通りです」

「なら、わざわざダナ人に労働させる理由はなんだ?聞いてる感じだと無くても変わらないように聞こえたが」

「あくまで上下の関係でいるためです。自然風で効率よく星霊力を抽出できるとは言え、いきなりダナ人を解放すれば何が起こると思いますか?」

「......反乱ね」

「ダナ人には領将王争(スルドブリガ)によって長年溜め込んだ憎しみが、レナ人には領将王争(スルドブリガ)を放棄したことによる不満が。それぞれ反旗を翻す理由はありますからね。ダナ人レナ人両方からの反乱の芽を摘むにはこの形が最適なのです」

「ケルザレクのように......か」

「ズーグルが徘徊しているのは何故なんだ?」

「?ズーグルは元々人手不足を解消するために開発されています。きちんと躾ければこの上ない労働力になります」

 

ズーグルは本来、戦闘用ではなかったのか?

だが今まで見たズーグルは皆襲ってきた。ここのズーグルが特殊だと思った方がいいか。

 

「そんなことはどうでも良いの。領将(スルド)はどこにいるの?」

「今は城にいませんし、おそらくはエストルヴァの森にいらっしゃるかと。行くなら止めませんが、くれぐれもいきなり斬りかかったりしないようにお願いしますね」



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第12話 漆黒の翼

特に小説パートは、投稿後に細部を修正したりしなかったりしてます
キャラ再現を上手くできない私を許して
(○○はこんなんじゃない!と言う部分があれば指摘していただけると嬉しい)


フード男が言っていたのは、たしか奥の民家だったな。

 

「んじゃあ早速、エストルヴァの森に向かうのか?」

「いや、その前にあの民家に行ってみよう」

「そういえば、呼ばれてたね」

 

家の中には数人のダナ人がいた。

一番奥には何かの紋章が、黄色布に黒で描かれた旗が飾られている。

その旗の前にいる眼帯の男がここの長だろうか。

 

「やっときたな。待ちくたびれたぜ炎の剣」

「あんたは?」

「俺は漆黒の翼のデダイムだ。炎の剣、お前は領将(スルド)を倒しにきたんだろう?女や子どもはともかく、光り目まで一緒とは思わなかったが......」

 

デダイムはじとり......とシオンとテュオハリムを見る。

その目には憎悪とも怨嗟とも呼べないナニカが渦巻いているように感じた。まるでシオンとテュオハリムを通して別の誰かを見ているようだ。

 

「まぁいい。今必要なのは炎の剣、お前だ。この街から光り目どもを追い出すために俺に従ってもらう」

「お前......!何言って」

「ガキがでしゃばるな、すっこんでろ。なぁにお前たちが戦う理由なんざいくらでもあるさこの国にはな」

 

これを見ろとデダイムが取り出したのは一つの果実だった。

ヘルガイの果実だ。

 

「その様子だと知ってるみたいだな。こいつはここの領将(スルド)が薬として患者に食わせてるもんだ。そうやって星霊力を集めているのさ」

「薬だと?いったい」

「光り目と口を聞く気はねえ!......なぁ炎の剣、不思議だと思わないか?なんで地形だけで他の光り目共が納得できるだけの星霊力を集められる?なんで俺たちダナが何の苦役もなく自由に生きていられる?答えは一つ。奴隷を星霊力に変えちまうからさ」

「なっ......あの子がそんなこと」

「そんなことは許せねえよなぁ?炎の剣。ニズを見れば俺たちは奴隷から解放されたように見えても光り目共が上にいるなら実態は変わらねえ。だから奴隷の解放は俺たちダナ人がやるべきだ。そう思わないか?」

「仮にそれが本当だとしてもバエフォン達はどうなる。今に満足している人もいるんだ」

 

デダイムの目が変わる。ビエゾの目に似ている。支配欲が全面に押し出された目だ。

 

「どのみちこのままじゃあ果実を食わされる連中は増えるばかりだ!いいか、今がチャンスなんだよ!俺たちも武器を手に入れた!炎の剣もある!領将(スルド)はニズにいない!街中じゃあ満足に戦えないだろう?......それともそこの2人が心配か?なら安心しろ。お前のお気に入りのそこの2人は見逃してやる」

「お前ッ」

「デダイム!」

 

入り口を見るとバエフォンがいた。

痛ましそうにデダイムを見ている。

 

「声が表に漏れていたぞ。まだ続けていたのか。前にも言ったな?もうこんなことはやめよう。いいか、いくらリィヤー様が寛容でも犯罪者は許されない。叛逆なんて以てのほかだ」

「たかだか数年、仮初の自由で満足した軟弱者に用はねえ!今のまま行けば次の領将王争(スルドブリガ)が始まれば元の木阿弥だ!!」

「そうしないためにリィヤー様が研究しているんだろう」

「何のためになる、レナはレナだ!光り目に支配されるのは変わらないだろうが!いいか、ダナ人はダナ人が統治するべきなんだよ!」

「だとしてもお前である必要はないだろう」

「他に誰かいるか?他に統治できる奴が。炎の剣に頼むのか?ああ良いさ、ずっとこの街にいるならな。だが無理だろう。ガナスハロスもあるし事が終わればカラグリアに帰るだろうさ。だからこの国は俺が統治し俺が導く!この漆黒の翼のデダイムがな!」

「それはお前が上に立ちたいだけだろう!」

「落ち着け。2人とも熱くなりすぎだ」

 

見ていられず間に入る。デダイムは舌打ち一つ、バエフォンはため息で会話を終わらせた。

もう話すことないと言わんばかりにバエフォンは外に出て行く。

 

「......とりあえず話はわかった。これから領将(スルド)に会いに行く。話してから決めても遅くないはずだ」

「フン好きにしろ」

 

 

 

外に出るとバエフォンが待っていた。

こちらに気づくとバツが悪そうに声をかけてきた。

 

「あんたら、さっきは悪かったな」

「あんたが謝る必要はないだろ?」

「あいつとは腐れ縁でな。それに俺も叫んでしまった。......あいつも昔からああだったわけじゃないんだが......レジスタンスとして活動する間にな。わかるだろ?」

「そりゃあ.......。でもよ」

 

ロウが渋顔で答える。思うところはあるが納得できないという感じか。

 

「あんたらの言いたいこともわかる。今の領将(スルド)に代わってからずっとああなんだ。どうにか宥めているんだがな」

「同情するよ」

「ありがとう。まあ俺たちのことはいい。エストルヴァの森に向かうんだろう?だったら忠告をと思ってな。リィヤー様に会うなら、研究の邪魔だけはしない方がいい」

「研究?」

「ああ......っとそうか。リィヤー様は研究者でな。普段は寛容なんだが、研究の邪魔をされることを一番嫌う。だから声をかけられるのを待って話した方が後腐れがないぞ」

「そうか。わかった」

「だが、くれぐれも」

「わかってる。いきなり斬りかかったりはしないさ。執政官にも言われた」

「ならいいが。必要なものがあれば言ってくれ。用意する」

「ありがとう」

 

食料や装備を見直す。

ニズは他領と比べて質のいいものが揃っていた。

これも領将(スルド)リィヤーの施策の効果なのだろうか。

奴隷(ダナ人)に干渉しない。たったそれだけでダナ人はここまで成果を上げる事ができる。

 

それにしても領将(スルド)リィヤーは何故こんな施策を実施したんだろうか。

かつてのテュオハリムのように悲鳴を遠ざけたいのであれば、強制労働そのものを廃止すれば良い。

領将王争(スルドブリガ)に勝ちたいなら他領のように苦役を強いればいい。

わざわざ5時間に限定している目的があるはずだ。効率以外の目的が。

エストルヴァの森でそこを聞けると良いんだが。



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第13話 ミハグサール

そろそろ独自設定/独自解釈タグが火を吹いてきます
ご留意の上で13話以降の物語をご閲覧ください


「んじゃ改めて、エスト......の森に行くってことでいいんだよな」

「エストルヴァの森ね。さっきは覚えてたのに。しっかりしてよ」

「わりぃわりぃ」

「忘れ物はないか?」

「......」

「シオン?何か忘れ物か?」

「......え?いえ......大丈夫よ」

 

 

 

ニズの街を出て見えたのは荒野だった。

カラグリアのものとはまた気色が異なる荒野はまるで風に削られているように見えた。

 

「四方の風集う谷って言うだけあって、風が止まないね」

「ああ......うわっ砂が目に入りやがった!」

「止まない上に強いからな。気をつけろ」

「口の中までジャリジャリする......」

「フルル、飛ばされないでね。......フルル?」

 

フルルが風に乗っていた。いや、飛ばされていた。

不安に揺れる声が砂が舞う荒野に虚しく響いて消えた。

 

「フルルー!!」

 

 

 

 

 

 

「いくら風が集うったって、こんなにビュウビュウ吹いててニズの皆は平気なのか?」

「ここではこれが当たり前なのだろう。風のミハグサールだからな」

「残るガナスハロスは水よ」

「地水火風光闇。闇がレナで、残る5つを五領で分担か」

「やっぱり土地によって集めやすい属性があるのか?」

「それもあるだろうが、恐らく領将(スルド)同士の衝突を避けるのが、分担の主目的だろう」

「自分達の〈王〉を選ぶために、同族で戦うわけにはいかないからか?」

「数で劣る我々の同士討ちは無意味どころか危険だ。(もっと)も、不干渉が建前に過ぎないのは、メナンシアで見た通りだが」

 

ケルザレクが従えていた大トカゲとヘルガイの果実の事か。

アウテリーナ宮殿でメナンシアとミハグサールの交易記録を見つけた。

メナンシアからは食料、ミハグサールからは武器や工芸品、この双方で主に取引されていた。

何故食料なのか疑問だったが、ミハグサールの荒野を見れば納得だ。

風に擦り切れたこの土地ではニズの全員の食料は賄えないだろう。

 

工芸品に紛れるように持ち込まれたものが、ヘルガイの果実の苗木と大トカゲ。

キサラやテュオハリム曰く、それと知らなければ気づけないほど紛れていたとか。

 

ヘルガイの果実自体が持ち込まれたこともあったらしいが、最初は薬と一緒だったらしい。それがいつしか果実のみになり、やがて苗木を求めた。

 

大トカゲに至っては運搬用に連れてこられたのが勝手に住み着いたらしい。まあ十中八九こじつけだろう。

丘のような身体に加えて衰弱毒や麻痺毒などの複数の毒を扱い、水の特に凍結系の星霊術に優れ、風景に溶け込んで星霊術士を真っ先に狙う知能を持つ。

このズーグルと戦闘になった時は何度か死を意識した。シオンの治癒術やテュオハリムの救援がなければ、おそらく俺たちは......。

明らかに戦闘用、それも領将(スルド)の護衛に使われるような強力なズーグルを運搬に使うわけがない。

 

これらの推移は果たして、ケルザレクと領将(スルド)リィヤー、どちらが仕向けたのか。

仮に領将(スルド)リィヤーが仕向けたのなら────。

 

「アルフェンはどう思う?」

「──え?」

「え?じゃなくて、300年前のレナ人が馬鹿でかい機械を使ってダナの星霊力を歪めた理由だよ。やっぱり領将王争(スルドブリガ)のためかな?」

「......そうだな。俺もそう思う」

「だが、今のレナは優れているとはいえ、そこまでの力があるようには見えない。それともレネギスやレナ本国には可能なのですか?」

「私もレナの全てを知っているわけではない。これほどの規模のものを見たこともない。だが、それを可能にする人物に心当たりはある」

「それは?」

「300年前の研究者、リィヤーだ」

「......まさかとは思いますが、これから会う領将(スルド)ですか?」

「流石にそれはないだろう。私が読んだのは300年前の論文だ。偶然名前が一致したと考える方が自然だろう。論文には星霊力の特性について書かれていた。理論上は星を割ることができるらしい」

「星を!?」「割る!?」

「あくまで理論上は、だ。どのような過程を辿れば可能なのかは私も疑問だ。論文の全てを理解できたわけではないのでね」

「......ただの妄言だと思いたいな」

「......とにかく、それをやってのけることができる連中を相手にしているってことは覚えておいた方が良さそうだ」

 

「......」

 

 

 

 

 

 

 

 

そういえばミハグサール(ここ)にはズーグルがいない。

いや、正確には襲いかかってくるズーグルがいない。

出会うズーグルすべてが友好的だ。

 

「ズーグルが......襲ってこないね」

「ああ。野生化したズーグルまで躾けているということだろう」

「よくやるよなぁ。一体躾けるだけでも大変そうなのに」

「案外そうでもない。ズーグルの躾は埋め込んだ霊石(コア)と星霊術を利用する。ある程度術に長けたレナ人なら容易いことだ」

「それだけここの領将(スルド)は星霊術に長けていると言う事だな」

「そう考えると、全部躾けるのは簡単......なのか?」

「一体一体の手間は少ないかもしれないが、この数だ。相当時間がかかるのは変わらないだろう。大変なのは変わらないと思うぞ」

「だよなぁ.......」

「なんにせよ、安全に通行できるのは心強い」

 

ズーグルが襲ってこないからか、往来が盛んだ。

これも街が賑わっている要因になっているのだろうか。

 

「君たち、ズーグルも連れずに危ないぞ。どこまで行くんだ?」

 

通りすがりの装甲兵が声をかけてきた。街の外ではしっかり着込んでいるらしい。

 

「エストルヴァの森だ」

「リィヤー様の元か?徒歩だと少しかかる。良かったら俺のズーグルに乗っていくか?」

 

そう言って勧めてきたのは狼型のズーグルだ。荷車に繋がれている。

メナンシアで見かけた牛車のようなものだろうか。

 

「他の個体より小柄だが、ズーグルだけあって力は強い。君たちくらいなら十分運べるぞ」

「必要ないわ」

「おい、シオン」

「そうか。この国に野生化ズーグルはいないが、それでも旅に危険はつきものだ。気をつけろよ」

「すまない。せっかくの好意を無碍(むげ)にしてしまった」

「いや気にしなくて良い。レナ人が従えているズーグルを警戒するのは当然だ」

「行くわよ」

「待てってシオン」

「ああそうだ、エストルヴァの森は治療施設も兼ねている。もし道中で怪我をしたら治してもらうといい」

「わかった。ありがとう」

 

先に進むシオンを追う。

今までもこんな感じはあったが、少し急ぎすぎではないだろうか?

今までは少なくとも、人の話を遮って進んでいくことは無かった。

焦っているのか?だとしたらなぜ?

シオンにとって領将(スルド)を倒すのはそんなに大きいものなんだろうか。



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第14話 ニョッキ

食事描写していたら長くなったので分けました


日が高くなってきた。エストルヴァの森に着く前に一度食事にしよう。

 

「ここなら煮炊き出来そうだ」

「そうだな。ここで一息入れよう」

 

今日の昼の食事当番は......シオンだったか。

なら料理ができるまでに軽く腹をすか(運動)しておこう。きっとまた量多めだ。

手頃な岩を探して素振りでもするか。ロウも同じ考えなのか一緒に岩を探した。

 

「そういや、ここの領将(スルド)ってどんなやつなんだろうな」

「バエフォンは研究者と言っていたな」

領将(スルド)である前に。ともな」

 

どうやらテュオハリムも軽く運動しにきたらしい。

というか、気づけばシオン以外の全員が集まっているな。......シオンが当番の時は大体皆で運動して(こうなって)いる気がする。

腹一杯食べられるのは良い事なんだけどな。奴隷だった時からは考えられないほどに。

 

「そういえば、テュオハリムはリィヤーと面識はあるのですか?」

領将(スルド)になった時に少しな。あの時は挨拶程度だったが」

「どんな人物なんだ?」

「浅い付き合いでしかないが、己の目的のためなら手段を選ばない、あれはそういう人間だ。が、話が通じないということはない」

「手段を選ばない......か。話が通じる分マシと見るべきか」

「目的はやっぱり〈王〉かな?」

 

バエフォンや執政官から聞いてる話だと、テュオハリムのようなダナとレナの共存だと思うが......。

いや、テュオハリムは特殊か。少し楽観し過ぎているかもしれない。

領将王争(スルドブリガ)を放棄していないとも言っていたし、〈王〉になるのが目的だと見た方が良いか。

 

「さてな。リィヤーが研究者だと私もここで知ったのだ。詳しいことはわからない」

「会って話をしてみるしかありませんね」

「だね。素直に答えてくれるとは思えないけど」

「バエフォンから聞いてる話だとおっかない奴じゃなさそうだよな」

「だがデダイムの話もある。一概には言えまい」

「ヘルガイの果実を薬として使う、か。そんなことが可能なのか?」

 

「出来たわよ」

 

今日の昼はニョッキか。キサラが知っていたジャガイモと小麦の団子を炒めたシンプルな料理だ。レシピを教わって自分で作るほど気に入っていたらしい。

 

「悪くない出来だと思うんだけど、どう?」

 

微かに焦げたクリームソースが食欲をそそる香りを運び、口に入れれば味付けに使われたクリームソースのまったりとした旨味が口の中に広がる。

歯を立てれば、最初に炒めたことによるカリッとした食感を感じ、やがてジャガイモと小麦の団子特有のもっちりした食感が顔を出す。

噛むほどにジャガイモの甘みとクリームソースの旨味がからんでいき、柔らかな味を楽しめる。

また、クリームソースのおかげか冷めにくく、風が強いミハグサールでも完食するまでずっと温かい。

 

俺は刺激(辛味)が使われていないから好物とは言えないが、しっかりと美味い。

皆の様子を見る限り、美味いと感じているのは俺だけではないだろう。

 

「悪くないどころか、かなり良い出来なんじゃないか?」

「そう?それなら良かったわ」

 

ジャガイモや小麦ならミハグサール(ここ)でも自生しているから気軽に作れる。しかも腹に溜まるから体力もつく。

ミハグサールの荒野を進むには最適な料理かもしれない。

クリームソースは牛がいないと難しいかもしれないが、味付けが決まってるわけでもない。香辛料で炒めるのも良いだろうし、シンプルに塩でも良いだろう。

香辛料も自生していたのを見かけたし、ミハグサールには海があるらしい。塩は岩だけじゃなく海からも取れるらしいから、塩には困らないだろう。

団子自体はシンプルな味だから飽きも来ない。

 

とは言え......量が多い。腹に溜まるのもあって満腹までが早いな。あらかじめ腹を空かせておいて正解だった。

 

 

 

 

「13皿目......新記録じゃない?」

「だな。相変わらずすげえ食いっぷり」

「平気だとは言っていたが、心配になるな。胸やけとかの」

「ご飯は別腹......らしいからな。そういうのは問題ないんだろう」

「やっぱりレナって理解できない......」

「シオンが特殊なだけだろ。......だよな?」

「健啖家のレナ人もいるにはいるが、この量を平らげるのは滅多にいない」

「食欲がないよりはずっと良いさ」

 

「ごちそうさま」

 

後片付けしてさらに進む。

食事を摂った場所が森の目の前だったらしく、あっさりと到着した。

 

「ここに領将(スルド)がいるんだよな」

「星霊力がざわついている。気をつけて。なんか変だよ、ここ」

「いつも思うけど、よくわかるよな。星霊術が使えるおかげなのか?」

「普段はそこまでわからないが、たしかに妙な感覚だ」

「落ち着かないわね......」

「研究施設と言っていたな。治療施設を兼ねているとはいえ、何があるかわからない。皆、気をつけて行こう」

 

森の地下に遺跡がある。地上には昇降機があったが、新しい。最近設置されたものだろう。遺跡を作り替えたのだろうか。

全員で乗ってもまだ余裕がある。20人くらいは乗れそうだ。

 

昇降機の操作盤を見る限り、全部で4層あるらしい。

上層から順に見て回る。

1層には箱が押し込められていた。倉庫だろうか。鳥型ズーグルが一箱掴んで降りていった。

2層と3層には寝具が並んでいた。患者を寝かせるためのものだろう。

そして4層には白衣を纏った男性にも女性にも見えるレナ人がいた。

そばにある寝台には、声を噛み殺しながら星霊力を放出しているダナ人がいた。左脚を〈虚水〉に変えたダナ人が。




上手く描写できる気がしないのでネタバレしちゃいますが、リィヤーは
シオンからは女性、テュオハリムからは男性だと思われています

1話の後書きでも伝えましたが、リィヤーの性別は明言しません
お好みでリィヤーくんにもリィヤーちゃんにもしてください


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第15話 エストルヴァの森

まさかさらに分けることになるとは思いませんでした



「何をしている!」

 

考えるより先に体が動いた。

患者を背に庇うため、白衣のレナ人に駆け寄る。

剣を抜かなかったのは我ながら良い判断だった。

おそらくこのレナ人がミハグサールの領将(スルド)リィヤー。

仮に剣を抜いていれば間違いなく戦闘になっただろう。そうなれば、後ろの患者は守れない。

 

「......話は後だ」

 

リィヤーがこちらを流し見ると、風に弾き飛ばされた。

まるで風が爆発したかのようだ。

 

「大丈夫か?アルフェン」

「ああ......すまない」

 

キサラに支えられなかったら、昇降機にぶつかっていただろう。

 

「少し痛むよ。耐えて」

 

噛み殺した苦悶の声が響く。

堪えられないという様子でロウが駆け出すが、俺と同じように弾き飛ばされる。

 

どうするか思考を巡らせている間に変化が起きた。

〈虚水〉になっていたはずの脚に色が戻っていく。

 

「どういうことだ......?」

「〈虚水〉化が治っていく......!」

 

ミキゥダの身に起きた〈虚水〉化の時間が巻き戻っているようだった。

〈虚水〉化は治すことができるのか?

やがて脚に色が宿る。〈虚水〉化していたとは思えないほど健康的だ。

 

「お疲れ様。ついでに背骨の歪みも直しておいたよ」

「ありがとう......ございます......」

「体力を消費しているだろう。ニズまで運ぼう」

 

メズメルドと、リィヤーが声をかけると鳥型ズーグルがやってきた。

先ほど箱を下ろしていた個体とは別だ。箱を下ろしていたズーグルとは大きさが違う。

今来たズーグルの方が二回りほど大きい。

背に患者を乗せ、リィヤーに固定されると昇降機周辺の吹き抜けから飛び去って行った。

リィヤーは飛び立ったことを見送ると、近くにあった椅子に座りこちらを見た。

 

「さて、お待たせしたね。カラグリアの炎の剣御一行、君たちの話を聞こうか」

「お前がミハグサールの領将(スルド)か?」

「自己紹介が遅れたね。私はリィヤー・ウィルフィリス。研究者であり、ミハグサールの領将(スルド)でもある」

 

正面から見ると、どこかで会ったことがあるように感じた。

シオンに最初にあったときの感覚に似ている。

だが、シオンに会ったことがないのにまさか領将(スルド)と会ったとは思えない。

いや、ミハグサールで育ったのならあり得るのか?......街並みには見覚えがなかったが。

 

「先程の治癒術、どういう仕組みなのだ?星霊力が放出されていたが、ヘルガイの果実を使ったのか?」

「当然さテュオハリム卿。果実をメナンシアに送る際に使い方は教えたはずだが」

 

ヘルガイの果実が治療用だと?ダナ人から星霊力を放出させ〈虚水〉に変えるだけのものではないのか?

 

「ヘルガイの果実はダナ人を星霊力に変えるものではないのかね?」

「......驚いた。苗木すら求めていながら正規の使い方を知らないとは。.......改めて説明すると、ヘルガイの果実は研究用に開発した薬の効果を和らげたものだ。効果は摂取対象の星霊力均衡を崩すこと。種族による効力の差はない」

「ダナ人にしか効かないんじゃないのかよ?」

「見かけ上、ダナ人によく効くのは事実だが、それは星霊力を扱う術がなく抵抗できないからだ。そも、摂取対象を星霊力に変えるだけなら元の研究薬を使った方が効率が良い。あの中途半端な効果を考慮すれば、使い道は治療以外にないと思うのだが」

「ヘルガイの果実を開発したのはあなたではないのか?」

「あれは3年ほど前にレネギスから送られたものだ。開発者を知りたいならレネギスに問い合わせたまえ。ダナ人の君でも、テュオハリム卿を通せば容易いだろう」

 

それにしてもリィヤーが俺たちを見る目が気になる。俺たちも、さっきの患者も、ズーグルにも同じ目で見ている。温度を感じない目。だが無価値と見ているわけではないと思う。

ただすべてに対して平等なのだ。人も動物も植物にすらも。

目が合うと、心すら見透かされているようで少し怖い。

 

「研究について教えていただくことは可能かね?」

「勿論だとも。だが相応に長くなる。君たちは私の研究について基礎すら知らないだろう?」

 

そうしてリィヤーが語ったのは星霊力に関する研究の推移。

星霊術の扱い方に始まり星霊力の特性や物質の構成、星霊力を扱う素質に〈虚水〉と多岐にわたる。

星霊力の研究、かなり広い範囲の話だと思っていたが想像以上だ。

 

──なるほど。いい傾向。

 

なぜか、カラグリアで名前を思い出した時に見た夢が脳裏をよぎる。

 

「──つまり〈虚水〉とは......っと、少し話しすぎたね。研究のことになると止まらなくなるのは私の悪癖だ」

「その研究で今までどれだけ人の命を犠牲にした?」

 

見るもの全てが無価値だと言いたげな冷め切った瞳。嗤うという形容が似合う狂気が(にじ)む微笑み。

冷静に考えれば、会ったことがあるはずがないとわかっている。だが、それでも。どうしても夢の人物と重なって見える。

目の前の人物は、どちらも持っていない(見せていない)というのに。

 

「炎の剣、君は少し勘違いをしている。君は死を悪だと認識しているね?たしかに命を無為にするのは罪だが、自ら命を捧げることは美徳だ。そも、私の研究に対する協力は彼らが自分から望み出ている。いわば献身だ」

「殺しているのは変わらないだろ」

「穏やかではないことを言うね、少年。たしかに、彼らの献身のおかげで実験が(はかど)り、結果として随分研究が進んだのは事実ではあるが」

「実験......だと?」

「そうとも。先ほど見せた治癒術も献身あっての成果だ。彼らには辛い役回りをさせてしまったが、その献身によって(もたら)された叡智(えいち)は多い。大切な隣人であり、実に有益な実験動物だ」

「仮にそれが本当なのだとしても、実験されて体を変えられて良い理由にはならない。命を脅かされるなんて(もっ)ての(ほか)。ダナ人は実験動物じゃない!」

「ならばどうする?他領のように力に訴えるか?幸いにも今此処には君達が気にする実験動物はいない。君は好きに暴れることができるだろう」

 

そう言うと、立ち上がり俺たちに向き合う。

武器らしいものは見えないが、いつでも戦闘できるということか。

 

「その場合、仮にも3人の領将(スルド)を下した君たちが相手だ。こちらもそれなりの全力で対応しよう」

 

額に紋章が輝く。詠唱もなくあれほどの突風を起こせる星霊術の使い手だ。

主霊石(マスターコア)から星霊力を引き出せばどれだけの脅威になるか。

 

「その紋章......ッ!」

 

リンウェルの声が響く。押し込めた感情が爆発するのを堪えているような苦しい声だ。

 

「......とうとう見つけた!父さんと母さんの仇!!」

「ちょっ」

「リンウェル!?」

 

憎悪に塗れたリンウェルの声が聞こえると同時に光の星霊術が肩を掠めていった。

不意打ちに近いリンウェルの攻撃はしかし、リィヤーの肌で滑るように逸らされ後方の壁に当たって爆ぜた。

よく見るとリィヤーの体に風が渦巻いているのが見える。あの風で逸らしたのだろうか。

 

「術が逸れた......?」

「この術構成はダナの魔法使いか。となると、君はあの時(のが)した子どもか。ありがとう。君の一族のおかげで私の研究は大いに進んだ。感謝の言葉を尽くしても足りない。ああ、安心してほしい。行使してくれた星霊術も(こぼ)れた〈虚水〉も、一雫も無駄にしていない」

「ってことはリンウェルの家族は......」

「殺す......!!絶対に殺す!!」

「リンウェル!」

「邪魔しないで!私はこのために今まで生きてきたんだ!邪魔するならあんたも殺す!!」

 

逸らされた術より強力な術が打ち込まれる。しかし、リィヤーに当たることはなかった。

ロウが身をもって術を止めたからだ。

だが、あの一撃はやはり重いのか、大きく後ろに弾かれた。



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第16話 領将

どの視点が良いか何パターンか書いた結果、長くなりました。
2回分割してるのにね。不思議だね。

*ちなみにロウ視点です。


上手く受け流せたか......?

リンウェルの術に割り込んだが、相当な衝撃に襲われた。

なんとか後ろに跳んで倒れずにこらえたが、正直ギリギリだ。

雷の術だったのか、術に直接触れた腕が痙攣(けいれん)している気がする。

 

「......なんでよ。なんで......邪魔するのよ」

 

困惑と怒りと寂しさ。その他いろんな感情が混ざったリンウェルの声が静まり返った遺跡に響く。

 

「あんただって自分の父親の復讐したくせに、なんで私の邪魔すんのよ!!」

 

へへっ......まったくだ。俺だって自分で何やってるかわかっていない。

でも、なんでかな。このまま放っておいたらダメな気がする。

声を出そうにも(かす)れて音にならない。流石の威力だぜまったく。

 

「......どいてよ。でないと、またふっ飛ばすから」

 

リンウェルの手に光が集まる。

動かない体に鞭打ってどうにか全身で領将(スルド)をかばう。

 

「リィヤーがやってきたこと、あんたも聞いたじゃない!まさか許せるっていうの!?」

 

領将(スルド)を守るつもりはない。ダナ人を実験動物なんて言ってのけるやつが許されて良い訳がない。

しかも犠牲にした命を本人の献身だと言い切るとか最悪だ。

でも、それでも。

憎しみに呑まれるどころか、あんな苦しそうな顔であの女を殺させたらだめだ。

うまく説明はできないけどそう思う。

多分このまま殺させてしまうときっと後悔する。復讐が終わっても囚われ続けてしまう。

だから、ごめん。ごめんな。

声は相変わらず出ないけど、ここを退()くわけにいかないんだ。

音になっていないけどなんとか伝わってほしい。

 

「......そんな目で見ないでよ。声に出さないとわかんない......わかんないよ!!」

 

リンウェルが術を放つ。さっき受けた術に負けないくらい光っていた。

......次は受けきれないかもな。

 

 

 

 

 

 

リンウェルが放った術は俺の1歩右の地面を焦がした。

俺は動いていないから、リンウェルが外したのか。

光に(くら)んだ目に視界が戻ってくるとリンウェルが地面に座っているのが見える。

 

「......なんでよ、なんで......」

 

なにを呟いているのかは聞こえないが、すすり泣いているのは分かる。

......泣かせちまったな。後で謝らねえと。

 

ふと気づけば温かい光が身体が包み、傷が治っていた。

 

「これは......?」

「興味深いものを見せてもらった礼だ。治療だけでは対価として足りないけれどね」

 

星霊術には詠唱ってのがいるんだよな。リンウェルも戦闘中ぶつぶつ呟いているし。

治癒術だってシオンや大将がぶつぶつ呟いているから変わらない......よな?

今の治癒術......詠唱してたか?

 

「礼っていうなら一つだけ聞いても良いか?」

「一つと言わずいくらでも。答えられる範囲では偽りなく答えよう。それが君たちへの礼になるのなら」

 

シスロディアの連中みたいに嘘を言ってる感じはしない。にしてもいやに殊勝だな。

そんなに"興味深いもの"ってのが良いものだったのか?

 

「お前の目的はなんだ?」

「より多くの星霊力を扱う方法を知ること」

 

......嘘じゃない。けど本当でもないな。

嘘に事実を混ぜて誤魔化そうとするシスロディアの連中と同じ目をしている。

 

「......知ってそれで、どうするんだ」

「レナの序列制度を撤廃させる。......まぁ、ダナの君にはあまり関係がないことだよ」

 

......これは本当だが、まだ隠してやがるな。腹の底は見せないってことかよ。

こいつもガナベルトと同じか?ダナはレナのための道具だと割り切って、人間だと見ちゃいねえ。

 

「つまらない話ですまないね。他にあるかな?」

 

ニズを見てテュオハリムみたいなダナ人を人として扱ってくれるレナ人がまだいるのかと思った。

......そうだよな。レナ人だって人だもんな。自分達のことで精一杯だよな。

 

「......ああそうだ、彼女は家族に会いたがっていたね。なら家族の元に送ってあげよう。うん、我ながらいい案だ」

 

......は?こいつは何を言ってやがる?それはリンウェルを殺すってことかよ。

ニコニコしながらリンウェルに近づいていくのを遮る。

 

「......行かせるかよ」

「ふむ、君も一緒に送って欲しいのかい?それならついてくると良い。なに、対して手間は変わらない」

 

リィヤーの目が光る。体を風が包み、抵抗できずに浮いてしまう。

自分で跳んだのとは違った感覚で、うまく体を動かせない。

戸惑っている間にリィヤーはゆっくりとリンウェルに近づいていき、手を伸ばす。

やべぇ!殺られる!!

 

銃声が響く。

リィヤーの手が大きく弾かれる。それと同時に俺も地面に落ちた。

 

「......リィヤー、もうやめて。もう誰も犠牲にしないで」

 

シオンが震える声で銃を向けていた。

よく見れば銃も揺れている。今まで防がれることはあっても外すことがなかった姿からは想像できない状態だ。

まさか、こいつと知り合いなのか?

 

「炎の剣にも答えた通りだよ、シオン。8年前、君に言われる前からもずっとね」

 

リィヤーがシオンを見る目はなんというか、うまく説明はできないけど、少なくとも俺たちやさっきの患者への目と違う。

優しげな目をしている訳でも、睨んでいる訳でもない。強いて言えば、親父が俺を見ている時の目に似ている気がする。

 

「とはいえ、もうすぐ研究は終わる。領将王争(スルドブリガ)が終わる頃にはシオン、君を救える」

「まさか、全部私のために大勢......」

 

シオンが銃を取り落とす。

嫌がる子どものような、受け入れられない事実を伝えられた人の仕草。

シスロディアで嫌というほど見た、親がいなくなった子どものそれに似ている。

 

「7年も待たせてしまった。だが、あと一歩だ。もうすぐ誰もが莫大な星霊力を扱える方法がわかる。そうなれば君を縛るものはなくなる」

「そんな......」

 

見ていられず振るった拳は見えない壁に阻まれた。

風でも固めてんのか?防御は完璧ってことかよ。

 

「お前とシオンの関係は知らねえ。でも、お前の責任を他人に押し付けるんじゃねえよ」

 

ゴーレムを相手にする要領でもう一度殴ると、壁が砕けて本人に攻撃できた。

 

「ロウ!」

「リンウェルにも今のシオンにも近づけさせるわけにはいかないだろ」

「そうだな。あの2人に今戦えというのも酷だろう」

「俺たちで守るぞ!」

 

アルフェン達が駆け寄ってくる。

丁度リンウェルとシオンをかばうようにリィヤーと向かい合う。

 

「君たちがそれを望むなら、相手をしよう」

 

リィヤーの目が再び光ると同時に大量の風が襲ってくる。

 

「エアスラスト」

 

どうやら詠唱しなくても術を扱えるらしい。星霊術はリンウェルや大将より上ってことか?

詠唱が星霊術の腕に関係するのかは知らないけど、詠唱をしないって結構すごいことだよな?

実際、風が通り抜けた床や壁はズタズタに斬られているし。......石って食材みたいに斬れるもんなんだな。

 

風を潜り抜けてもう一度殴る。壁を砕く感覚が返ってくる。

やっぱり壁を直してやがったか。だが、もう一度砕いたからしばらくは大丈夫だろう。

攻めるなら今だ。

アルフェンが炎の剣を片手に距離を詰める。

 

「氷よ舞え。フリーズランサー」

「倒れろ!」

 

剣の間合いに入る前にリィヤーが吹雪を起こす。

アルフェンは吹雪をものともせずに突っ切って炎の剣を叩きつける。

大抵のズーグルなら体勢を崩す一撃だ。

 

「ロウ!」

「ああ!襲爪!」

「雷斬!」

 

アルフェンに作ってもらった隙に渾身の蹴りを叩き込んだが、壁に阻まれた。

もう一度防御壁を崩そうと拳を握ると、リィヤーを中心に吹き荒れた暴風に吹き飛ばされた。

エアスラストみたいに斬れる風だったら今ので戦えなくなってたかもしれない。

 

「風よ逆巻け。嵐の夜。吹き(すさ)べ。サイクロン」

 

詠唱している隙をつこうと近づくと、部屋を埋めるほどの竜巻に呑まれた。

エアスラストで斬れた石や吹雪いていた氷を巻き上げて吹き荒れる。あまりにも強い風でまた体が浮く。

竜巻に乗ってアルフェン達にぶつかる。アルフェン達も浮いてしまったのか、一塊になって竜巻に乗り、全方向から石や氷に殴られる。

 

 

竜巻が止む頃には満身創痍になっていた。正直、立っているのでやっとだ。

アルフェン達も剣や棍や盾、自分の武器で体を支えている。

いつか〈蛇の目〉の先輩が言ってた鎧袖一触ってやつか。

 

「負ける......わけには......」

 

リィヤーは竜巻で散った紙を集めていた。風を使ってその場から動かずに集めている。

集め終わったあたりで患者を乗せていったデカい鳥のズーグルが戻ってきた。

焦っているような、怒っているような気配を感じる。

 

「メズメルド、私は大丈夫だ。落ち着いて。......君たちは気にしないのかもしれないけど、この森は研究施設。故にこれ以上やるなら場所を変える。もし続きをご所望なら来なさい」

 

そういうと鳥のズーグルに乗って飛び去って行った。

領将(スルド)だけでも圧倒されたのに、次戦う時はこのズーグルも一緒か。

今までも大概だったが、ここの領将(スルド)も驚異的だ。簡単には勝てる気がしねぇ......




ここ3-4日でたくさん感想いただいて驚きました。
何が起きたのかわかっていませんが、ありがとうございます。


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第17話 それぞれの夜

あけましておめでとうございます。
年末年始のゴタゴタを片付けていたら小説の書き方を忘れた馬鹿邪鬼(ばかのじゃく)です。
どれだけ時間がかかっても完走するのでご安心を。投げっぱなしにはしません。

それでは本年もよろしくお願いします。


「シオン.....ちょっといいか?」

 

リィヤーに会う前に食事を摂った場所で一夜を明かすことにした。

夜番も兼ねて少しシオンと話しておきたかった。

 

「なにかしら?」

「その......」

 

たき火を囲む。

リィヤーとシオンは知り合いだったみたいだから、少しリィヤーについて聞いておきたい。

だがあんなことがあった後だ。思い返すのもつらいだろうし、どう切り出したものか......。

 

「リィヤーのことね?」

「......ああ。だが」

「別にいいわよ、気にしなくても。そうね。どこから話そうかしら」

 

そう話すシオンの顔には怯えや不安は残っていなかった。

 

「そうね.......改めて言う必要はないでしょうけど、あの子は研究者よ。今も昔も変わらない」

 

そうして始まった話はある意味ではありふれた話だった。

 

「私がレネギスの研究室にいたって言う話はしたわね?」

「ああ。〈荊〉のせいで色々あったって聞いた」

「私がリィヤーに会ったのはその〈荊〉研究の一環だったわ。10年前かしら」

 

「実験して研究して、また実験して。とても正気とは思えない環境だったけど、それでも私にとって大切な時間だった」

 

触れる者を無差別に傷つけてしまうが故の孤独の中で、それでも寄り添おうとしてくれる人物。

共感はできないが、理解はできる。きっと大きな救いになる。

 

自分の事が何もかもわからなかった俺にそれでも良いと言ってくれたドクがどれだけ救いになったか。

きっとシオンにとってのリィヤーは俺にとってのドクなのだろう。

......戦えるという点ではジルファの方が近いのだろうか?

 

「大切な友達だったんだな」

「そうね。あの子だけだった。〈荊〉に触れても恐怖しなかったのはあの子しかいなかった」

「〈荊〉に?」

「研究のためと言って激痛を感じているはずなのに何度も何度もね」

「それは......」

「もちろん何度も止めたわ。でもどれだけ止めても無視して触れて、そのたびに"一歩進んだ。まだ触れられた"って嬉しそうに話すの」

 

〈荊〉がどれだけの痛みを与えるのか、痛覚がない俺にはわからない。

だが、シオンに触れた時のネアズの反応を見る限り、相当なものだろう。

それこそそのまま死んだとしてもおかしくない程かもしれない。

 

「でもおかげで〈荊〉を消す方法もわかった」

「レナス=アルマ......だったか」

「ええ。領将王争(スルドブリガ)の勝者に与えられる究極の主霊石(マスターコア)。作るには5つの主霊石(マスターコア)が必要だけどね」

「......だからシオンは」

「まさかあの子が領将(スルド)になっているなんて思ってもなかったけどね」

 

〈荊〉から解放されるために恩人と戦う......。〈荊〉から解放されたい。でも恩人に銃を向けたくない。両方大切だからこその葛藤か。

たしかに、何かの間違いでドクやジルファと敵対した時、躊躇いなく剣を向けられるかと聞かれると難しいな。

 

「なぁ、シオン」

「心配しなくても次は私も戦うわ。そしてあの子を止める」

 

そう話すシオンは覚悟を決めた人間の顔をしていた。

 

「あの子が目的のためならどんな無茶もできることは知っていた。知っていた上で私は止めなかった。だから、もうこれ以上誰も犠牲にしないように何をしてでも止める。リンウェルみたいな子を増やさないためにもね。それが私の責任よ」

 

そういうとシオンはいつものように夜食を用意し始めた。

メナンシアでミルクを入手してからよく作っている、たしかクッキー......と言ったか。

 

「それに、あの子に聞きたいこともあるし」

「......シオンは強いな」

「あら、ここまで一緒に戦ってきて知らなかったの?」

 

私よりリンウェルの方が危ういわよ。気にかけてあげなさい。

そう言って微笑む彼女の姿は、まるで張りつめた糸のようで。

なぜか心の奥のどこかがざわついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リンウェル?」

「あ......ごめん。起こしちゃった?」

 

なんとなしに目が覚めてうまく寝付けなかったから夜風を浴びに行く。

するとリンウェルが1人で小さなたき火を静かに眺めていた。

フルルの気配もない。

 

「眠れないのか?」

「うん......まあね」

「......リィヤーのことか?」

 

無言でうなづくリンウェル。

なんとなく放っておけなくて一緒にたき火を囲む。

ただ静かにたき火を眺める。

 

「その......ロウは.....さ」

「おう」

「なんであの時、止めたの?」

 

思わずリンウェルを見る。迷子みたいな顔で火を見ている。

......あの時ってリィヤーに会った時だよな。

 

「なんでって......うまく言えないけど、あのままじゃまずいと思ってよ」

「あんたは自分の父親の復讐をしたのに?」

「そりゃそうだけどよ。その......後悔しそうだったし」

 

寂しそうな顔で泣きそうな目になった。

 

「別に復讐するなとは言わねえよ。あいつは悪だ。なにがあっても人を実験動物扱いするなんて最低だ。しかも犠牲にした命を本人の献身だと言い切るとか最悪だ」

「なら」

「それでもバエフォンはリィヤーの研究は希望だって言ってた」

 

それがどうしても引っかかる。

本当に今まで大勢殺しているなら、ニズの人々がわからないはずがない。

〈漆黒の翼〉だってデダイム入れて3人しかいなかった。ほかにも抵抗組織があるとしても、3人は少なすぎる。

 

「復讐して殺すにしても、その辺を知ってからでもいいんじゃないかって。そう思った」

「そっか」

 

とりあえず、俺が答えられるのはこれくらいだ。

後はリンウェルが自分で答えを見つけるしかない。

 

「......私は......わかんないよ。今まで復讐だけで生きてきたんだ。もし本当にバエフォン達の言う通りだとしたら、私はどうすればいいの?」

「リンウェル......」

「もしまたリィヤーと戦うことになったらどんな顔して戦えばいいの?わかんないよ」

「憎いなら憎いままでもいいんじゃねぇか?」

「え?」

「俺はお前を止めたけど、憎むなとは言わない」

 

きっちり復讐を終えている俺が、復讐を否定したら意味わからないしな。

 

「それに、シスロディアで親父が殺されたときさ。シオンが言ってたんだ。憎しみは力をくれるって」

 

いまでも思い出せる。レナのくせにそんなことって怒った記憶と一緒に。

 

「あの時は意味がわからなかった。いや、今でもシオンが何であんなこと言ったのかわかんねえ。でも、心の支えは必要だろ」

「......」

「復讐を支えにするなら、その後を考えておくといいぜ。別に仇と一緒に死のうってわけでもないだろ?」

「復讐の後......」

 

もしかしたら俺も今のリンウェルみたいになったかもしれない。

親父の死に際でもし言葉を交わせなかったら。想像もしたくないが、今ここにいなかったかもしれない。

 

「そっか。......そうだね」

「そろそろ夜明けだ。キサラたちも起きてくるし、みんなにも話してみるのもありだと思うぜ」

 

こんな時に上手く力になってやれない自分が情けなくて。

アルフェンやシオンなら力になれたと思うと悔しくて。

リンウェルの顔を見ることができなかった。

 



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第18話 襲撃

お待たせ、待った?


夜も明けてニズに向かう。

リィヤーはエストルヴァの森から大鳥のズーグルに乗って去っていった。

追うにしても足跡すらわからないんじゃ所在の予想もできない。

だから、一度バエフォンに話を聞くことにした。ロウがバエフォンに聞きたいことがあると言っていたしな。

 

「なぁ。なにか燃えていないか?」

「確かに煙のにおいがするな。風上は......ニズか!」

 

急いでニズに向かう。

確かに煙が数本立っていた。

黒い煙だ。たき火という感じではなさそうだ。

 

1日振りに見たニズは賑わっていた様子が嘘のように荒れ果てていた。

家屋は倒れ、あちこちで煙が上がっている。

怪我人も多い。死体が見えないのは誰も死んでいないからか、あるいは──。

数は少ないが装甲兵の姿が見える。ズーグルと一緒にがれきを撤去していた。

がれき撤去に動く人の中にバエフォンもいた。

 

「......何があったんだよ?」

「まさか反乱が起きたのか?」

「昨日までの様子を見るに、ここまでの事態に陥るとは思えないが......」

 

カラグリアのウルベゼクが装甲兵に襲われた時のようにいたるところに怪我人がいる。

医者と思われるダナ人とレナ人が手を合わせて治療しているが、手が足りていない様子だ。

 

 

──俺よりも先に子供たちを......。

──馬鹿を言うな。お前の方が重傷じゃないか。

 

──クソっ包帯が足りない......!

──ひとまず止血を優先しましょう。すぐに取ってくるわ。

 

──こっちにも治癒術を頼む!

──勿論だ、すぐに行く!

 

──っち......こうなるならリィヤー様から治癒術を学んでおけばよかったぜ。

──気持ちはわかるが、がれき撤去にも星霊術は必要だぜ?

 

「リィヤー様達はまだ戻られないのか?」

「どうやらな。せめて執政官だけでも戻って来たら......」

「バエフォン、何が」

「アルフェン!リィヤー様が今どこにいるかわかるか?」

 

(あったのか、聞きたいんだが......。街がこの様子じゃ仕方ないか)

 

「......ああその。じつは──」

 

エストルヴァの森で起きたことをバエフォンに話す。

勿論リンウェルとシオンに関することは伝えない。

 

 

 

 

「──そう、か」

「すまない。まさかニズがこんなことになっているなんて」

「横からすまない炎の剣。確認するが、リィヤー様は紙束を持ってメズメルド──大型の鳥ズーグルに乗ったんだな?」

「え?あ、ああ」

「そうか。おかげでリィヤー様の場所が分かった。ありがとう」

「やはり執政官様の予想通りになったな」

「まったくだ。さすが執政を任されているだけある。あと1日もすれば少なくとも執政官は戻るな」

 

俺は皆に伝えてくる。そう言うとバエフォンのそばにいた男がズーグルを伴って城の方に歩いていった。

連れていた狼型のズーグルを見る限り、エストルヴァの森に向かう途中で気にかけてくれた装甲兵かもしれない。

 

「......今のでわかるのか?」

「ああ。紙束──研究データを持って飛んでいったなら行き先はリィヤー様の城だ」

「城?ってことはニズにいるのか?」

「いや、ここから西の断崖の地下港にある大きな船だ。研究のためと言ってミハグサール中をフラフラするリィヤー様に怒ったレナ人達が主導で2年前に作ったものだ。リィヤー様の研究所になっている。もっとも、完成した日に出航したきり港で見たことはないが」

「広大な海に阻まれ近づけない領将(スルド)の居城か」

「城だなんて、誰が言い始めたかはわからないがな。まぁとにかく、既に執政官様もリィヤー様を探しに船に向かっている。時期に戻ってくるだろう」

 

──バエフォン、悪いが手を貸してくれ!

 

「そういえば、何か聞きたいことがあったんだろう?悪いが、明日でもいいか?」

 

俺たちが頷いたのを確認すると先に戻ったレナ人の元に歩いて行った。

バエフォンを待つにしても、他にやれることもなし、瓦礫撤去や怪我人の治療を手伝うことにした。

 

 

 

数刻後、唐突に破裂音が響いた。

 

「手の空いている治療班はこっちに来てくれ!早く!!」

 

焦燥に満ちた声が響く。

シオンと一緒に声の元に向かう。

 

「おいおい、何が起きたってんだよ!?」

「尋常じゃない音がしたぞ」

 

どうやらロウとステラの方が先に来ていたらしい。

 

「まだ爆薬が残っていたんだ!頼む、手を貸してくれ!」

「勿論だ!」

 

散らばった瓦礫を片付けながら治療していく。

怪我人の中にバエフォンもいた。

 

「なんで爆薬なんか......」

「デダイムだ......。執政官様が......街を、離れた......時に......」

「バエフォン、今は喋るな。傷に障る」

「......頼む、アルフェン......。リィヤー......様を......」

「おい!目ぇ開けろよ!おっさん!」

「ロウどきなさい!」

 

すぐさまシオンが治癒に入る。

一命は取り留めるだろうが、気絶したようだからすぐには目を覚さないかもしれない。

それに......

 

「デダイムが爆薬を仕掛けた犯人......なのだろうか?」

「バエフォンの言葉を信じるのであれば、だがな」

「あの野郎......!!なんでこんなことしやがったんだ」

「今はとにかく怪我人の治療が優先だ」

 

 

 

 

治療後、宿屋に狼ズーグルのレナ兵が訪ねてきた。

 

「街の皆は?」

「ひとまずは大丈夫だ。これもお前達のおかげだな。ありがとう」

「それで、リィヤーは戻ってきたのか?」

「......まだ戻られてない、執政官も同じだ。バエフォンの様子はどうだ?」

「ひとまず命は無事だ。今は部屋で眠ってる」

「そうか、良かった」

 

バエフォンの無事を伝えると心の底から安堵したように笑みを浮かべた。

レナ人がダナ人の安否を気にするとは思わず呆気に取られていると、慌てた様子で表情を引き締めていた。

 

「......炎の剣、恥を承知で頼みがある。リィヤー様を助けに行ってくれないか?」

「"助けに"とは、穏やかではないな。どういうことかね?」

「デダイム......この騒動の下手人がリィヤー様を狙っています。卿達が街に戻られる少し前にニズを発っていました」

 

デダイムはニズを爆薬で破壊した後、西に向かったらしい。

 

「この様子では我々は暫くニズから離れられません。まだ怪我人もいるし爆薬も眠っている可能性がある。だが、バエフォンがやられた今、ダナを纏めて俺達と話が出来る人がいない。情けない話ですが、リィヤー様か、せめて執政官様がいないとレナとダナで連携が取れないのです」

「執政官の代理はいないのか?先日すこし話した程度だが、備えを怠らない性格だと感じたぞ」

 

キサラの言う通りだ。特定の個人がいないと回らない状況を嫌っているように見えた。

リィヤーもそうだ。執政官に領将(スルド)の仕事を肩代わりさせているように思えた。それは、自分が好きなように動ける状況を作るためじゃないのか?

 

「残念ながらいない。ミハグサールの運営はもとより、レナとダナ両方をまとめられる人がいなくてな。それは君たちが今まで見てきた他の領と変わらない。そのせいで代理が立てられないんだ」

「むしろあの2人が特別、か」

「そうだ。どちらがいないだけでも今のミハグサールは無かっただろう」

「そう、か......」

 

「それにしたって装甲兵が少なくねえか?前来た時はもう少しいた気がするぜ」

「執政官と領将(スルド)親衛隊が出払っているからだろう。定期的にリィヤー様を探し出して報告しているんだ。デダイムは彼らがニズを離れた直後を狙ったいたんだろうな、不在を隠していなかったのが仇になった」

「治療や瓦礫撤去の人手が足りていなかったのはそれが理由か......」

 

「さらに言えば、今回の襲撃のせいで一部のレナ人がダナ人を危険視し始めている。"奴隷として星霊力を回収するための道具にした方がリィヤー様の身の安全が確保できる"ってのが言い分だ。しかもそいつらはダナを治療する必要はないとも言っている」

 

厳しい顔で呻く。

どうやら彼はダナを奴隷にしたい側ではないらしい。

 

「メナンシア以上にレナとダナ、双方の調和が進んでいたこの国で、か......」

「火種はまだ残っているってことだ。知っての通り、ダナとレナの溝は深い。今はなんとか宥めているが、暴発するのは時間の問題だろうな」

「そうなる前にリィヤーをニズに連れ戻せば良いってことか」

「そうしてくれると助かる。星霊術士にはまだ当てはあるんだが、今の状況じゃ火に油を注ぐようなものだ」

 

親衛隊がいないことで、戦力が減っているのも宥めることができている要因か。

確かに、今はニズにいない他のレナ人がさらに集まれば監視もしづらいだろう。

そうして監視から逃れた一部が暴走してダナに危害を加えれば、もう抑えは効かない。ミハグサールのダナ人もカラグリアと同じか、それ以上に酷い状況まで追い込まれるだろう。

カラグリアと違って、領将(スルド)の居城を"ダナ人が"爆破したんだからな。

 

「わかった。俺たちでリィヤーを連れてこよう。ついでにデダイムも止める。ここから西だったか?」

「悪いな、ミハグサール(俺たち)の問題に巻き込んで。研究レポートを持ってメズメルドに乗ったなら、リィヤー様はおそらく沖にいるはずだ」

「沖というと......海か。船が必要だな」

「ここから西の断崖にガナスハロスとの交易のために作った港があります。デダイムが破壊していなければ、まだ使えるはずです」

「西だな。それでは諸君、行くとしようか」

 

海?

 

「「......海ってなんだ?」」

「......ロウ」「......アルフェン」

 

シオンとリンウェルの目が痛い......。

 

「しょうがないだろ!わかんねぇんだからよ!」

「道すがら教えよう。今は時間が惜しい」




1年以上かけた上に繋ぎ回でごめんね?
久しぶり過ぎて説得力皆無ですが、せめてRTAで描写した分は更新するから安心してね


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第19話 アダン遺跡

リィヤーを連れ戻すにしろ、まずはデダイムを止めないといけない。

正直、リィヤーが負けるとは思えないが、万が一があり得る。

シオンが言うには、リィヤーは星霊力が無ければ子どもに負けてもおかしくないくらい弱いらしい。

......流石にそれは言い過ぎだと思うが、冗談を言っているようには見えなかった。何か事情があるのかも知れない。

 

「しっかし、あの装甲兵が言ってた星霊術士の当てってなんだろうな」

「ニズ以外に出かけていたりするんじゃない?いくら荒野とはいえ、街がニズだけとは思えないし」

「ならなんでニズに呼ばなかったんだ?あの状況じゃあ人手はあった方がいいだろ?」

「ダナを奴隷に戻したい一部のレナ人から目を逸らさないためだろうな。人が多いと監視する範囲も増える」

「人がいれば復興は進むでしょうけど、復興のために奴隷に戻しては意味がないわ。ニズの共存が領将(スルド)直々の指示なら尚更ね」

「メナンシアのように不満を溜め込んでいるレナもいるだろう。この機会にケルザレクのように爆発するやつがいても不思議じゃない」

「実際、奴隷に戻そうとする動きもあったことだしな」

「なら呼んだ奴らにも監視させればいいじゃねぇか。それなら人手も増えるし、ヤバいことにはならないだろ?」

「あるいは、戦えるレナ人を増やさないためか」

「......どういうことだ?」

「力はそこにあるだけで威圧する。彼らにその気はなくとも、戦力を集めれば今度はダナ人が暴走するやもしれん」

「デダイム達がいなくてもか?」

「俺たちがいないからこそさ坊主」

 

前方にある遺跡の陰から男が出てきた。

漆黒の翼の小屋で話した時、デダイムの側にいた1人だ。

 

「直接レナを攻撃した俺たちがいれば、俺たちを差し出して許しを乞える。だが、俺たちがいなければそれも出来ないだろ?」

 

反対側から別の男が姿を見せた。

どうやら、デダイム達に追いつけたらしい。

 

「レナは戦力を集めている()()()()()()。自分たちは何もしていないのに、痛めつけられる()()()()()()領将(スルド)がリィヤーに変わってから直接暴力を振るわれる事はなかったから、ニズの皆はさぞ怯えているだろうね」

「状況考えれば治療や復興のためだってすぐわかりそうなもんだけどな」

「普段なら、な。知ってるか?不安は人を浅慮にするんだぜ?」

 

不安......か。

 

「だが、憶測で行動するほど追い詰められるとは思えないが?市場で売っていたくらいだ、自衛のための武器も簡単に手に入るだろう」

「わかっていないな、女。不安ってのは自由の付属品なのさ。今までに無いほどの自由を与えられて、初めてそれを失うかもしれない。俺たち元奴隷にとっちゃ初めて経験する巨大な不安だ。押しつぶされないように必死だろうぜ」

 

ダナの不安を想定しているからこそ、増援を呼べないのか。まさか、ここまで計算した上でニズを爆破したのか?領将(スルド)も執政官もいない隙を狙って。

しかもニズ復興の時、ダナ側の指揮を執っていたバエフォンもやられている。

 

「そんな状況で支配者たる領将(スルド)は不在と来た。混乱に乗じて俺たちが街を出る程度たやすい」

「デダイム......!」

「炎の剣、お前達がリィヤーを海に移動させてくれたおかげで手間が省けた。もう用はねぇ。とっととこの国から失せろ」

「そうはいかない。これから領将(スルド)を追うんだろう?」

「おいおい。ダナの解放者がレナの領将(スルド)の心配とは、一体どんな冗談だ?......光り目と組んでいる時点で今更か」

 

(あざけ)るように呟くと武器を向けてきた。

あれも銃なのだろうか?シオンのそれとは違い、片手で構えられた大きな銃口が俺たちを見つめている。

デダイムが武器を構えると他の2人もそれぞれ斧と槍を構えた。

 

「それで?どうするんだ。俺たちと組むのか、組まないのか。光り目を殺すのか、庇うのか。......エストルヴァの森に行ったなら虚水も見たと思うが?」

「俺たちはダナを奴隷から解放する。だが、レナだからと言って、殺したりなんかしない」

「ああそうかい、そういうと思ったぜ。来いよ。変節者め!」

 

デダイムは(ののし)ると同時に引き金を引いた。

弾丸を躱しながら近寄るが、左右の2人に阻まれる。

俺も剣を抜いて槍を受け、足下を狙う斧を躱す。

炎の剣は使わない。いくら攻撃してきたとはいえ相手は生身だ。

ロウやキサラが駆け寄るも、デダイムの弾丸で上手く近寄れていない。

弾丸が大きい分、一撃が重く衝撃がでかいみたいだ。

テュオハリムがいつものように最小限の動きで躱しながら近づくも、俺を上手く盾に使われて攻撃出来ていない。

......連携のためにも、一度退くか。

そう思い一歩を踏み出すと後ろを遮るように斧と槍が振るわれる。

ただその場で縛り付けるような攻撃を躱し続けられるわけもなく、足下を掬われ転倒してしまった。

急いで起き上がるが目の前に覗く暗い銃口。思わず硬直してしまった時、銃声が響いた。

 

 

 

 

 

 

シオンだ。俺を上手く躱してデダイム達の武器を撃ち弾いたらしい。

武器だけを撃ち抜いて、手や指に怪我はさせていない。

......器用だな。正確だと常々思っていたが、まさかこれほどとは。流石だな。

 

「いいこと?あなた達に構っている暇はないの。大人しくしていなさい」

「レナの女風情が......!」

 

会話に気を取られた隙を突いてテュオハリムとキサラがデダイム達を気絶させた。

 

「俺が......ニズを......」

 

......なんとか、なったか。思わず一息つく。

勝つじゃなく守るでもなく、ただ足止めさせるための戦い方。ああいう戦い方もあるんだな。

正直、最後の瞬間は危なかった。

 

「アルフェン。油断禁物よ」

「悪い。助かった」

「......こいつらどうする?とりあえず縛っとくか?」

「縛ると言っても縄や紐なんて......」

「あるぞ」

「あるの!?」「あんのかよ!」

「以前買った骨董に使われていた包装の残りだ」

「ガラクタも使いようだな......まぁいいや。さっさと縛っちまおうぜ」

「いや、リィヤーや執政官の復興を邪魔しなければ良いんだ。縛る必要はないだろう」

「アルフェンの言う通りだ。武器を破壊するだけにしておこう」

 

武器を破壊......破壊か......。

勿体な.....いや、誰も扱えないし、仕方ない。

でもせめて持って行くとか......。

 

「そうね。持っていくにしても嵩張(かさば)るし、私たちに使える武器もないもの。埋めていきましょう」

 

武器としての斧は初めて見たんだけどな......。珍しい模様もあった。

 

「どうした?アルフェン」

 

......テュオハリムの琴線(きんせん)には触れなかったらしい。

リンウェルも特に気にした様子がないし、仕方ないか。



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第20話 船上

アライズ追加コンテンツが発表されたので初投稿です
発表は2ヶ月前で来週発売?......楽しみですね!


隠し港にいた操舵手マハバルの協力で無事に出航することができた。

初めは船を借りて俺たちだけで行くつもりだったが、俺たち全員、船の操縦なんてやった事がない。素人だけでは港を出る事も叶わないというマハバルの忠告を聞いたアルフェンの判断だ。

 

マハバル曰く、2日前に海原(うなばら)でリィヤーの船を見たって話だ。

風と波次第だが、大体1日程度で到着できるらしい。

海の上ともなればやることも限られるし、ぼんやりと見慣れない波を眺めてみる。

こんなにでっけえ水たまりがあったなんてなぁ。

シスロディアの雪やメナンシアの緑も凄かったけど、スケールが違えや。

シスロディアにも凍った湖があったけど、遥かに大きい。

......風のミハグサールなのに圧倒されるのが水の要素でいいのかわかんねぇけど。

 

そういえば、アルフェンについていくって決めてからこうしてぼんやりすることもなかったっけ。

レナ支配からの解放。そのために色々慌しかったからなぁ......別にそれが悪いってわけじゃねぇけど。

支配といえばメナンシアじゃ驚いたな。まさかダナとレナが共生出来るなんて本当に思ってもみなかった。

それが大将にとっては恥ずかしいことなんだとしても、救われたやつは絶対いるよな。いるからこそ、俺たちと一緒にケルザレクと戦うレナ人もいたんだし。

キサラもその1人か。ミキゥダが虚水になった時は取り乱してたけど、今じゃ母親みたいになってるし。

 

そういやリィヤーも大将と似てるタイプだったな。

ニズを最初に見た時は、メナンシア以上に驚いたな。まさかダナ人がダナ人のためにレナが管理してる資源を使えているなんてよ。武器や工芸品を溢れるほど作るなんてダナの力だけじゃ無理だ。

......メナンシアの時は疑いばかりで驚く暇が無かったってのが本当のところだけど。

"風で擦り切れた土地"ってアルフェンは言ってたが、その割に米とか麦みたいにある程度地力が必要な作物が育ってるんだよな。

案外、痩せてはいないんじゃないか?メナンシアには負けるだろうけど。カラグリアやシスロディアみたいに暑すぎたり寒すぎたりするわけじゃねえし。ちょっと......いや、かなり風が強いだけなんだからよ。

見た感じ星霊力集めるために無茶苦茶やってる感じは無かった。

 

「考え事か?」

「まあちょっとな。っと、そうだ。さっき一通り船の中を調べてみたけど、特に怪しい所はなかったぜ」

「そうか。助かる」

「......アルフェン、世界って広いな」

「そうだな。俺もカラグリアの壁を壊して、その向こうを見た時そう思った。だが」

「ああ。この海ってやつは、なんというか......桁が違うな。親父が見たらきっと驚いただろうな」

 

あのいかつい顔をマヌケに変えて言葉失うのが目に浮かぶぜ。

......いや、まぁマヌケ面になっていたのは俺の方なんだけど。リンウェルに笑われちまったし。

 

「親父が、死ぬ時なんであんなこと言ったのか、ずっと考えてんだ。癇癪で飛び出て領将(スルド)の手下になってて、そのせいで自分が殺された。恨み言でも良かったはずだ」

 

そうだったら、どれほど楽だったか。

 

「ロウ......」

「ああかもしれない、こうかもしれない。でもそれって俺の願望でしかないかもだろ?そう考えちまうと、今度はああしとけばよかった、こうしとけばよかった。そんなことばかり浮かんできてさ」

「......」

「リンウェルの事だってそうだ。思わずやっちまったけど、話をややこしくしただけな気がしてさ」

 

馬鹿な俺がなによりも疎ましい。

 

「俺は時々、ジルファならどうしただろうって思うことがある。リンウェルの事も、シオンの事も、ジルファなら止めないと思うか?」

 

......いや。

 

「親父は絶対に止めると思う」

 

そのはずだ。

親父が触れたら壊れそうな人を放っておける筈がない。

放っておけるような性格なら、俺は今アルフェン達と出会っていなかっただろうしな。

 

「そして、お前は同じことをした。ジルファはきっと誇りに思っている」

 

そうなのかな。

でも親父は......。

 

「お互い、ジルファに胸を張れるよう頑張ろう。俺達にできるのはそれだけだ」

「......そう、だな。ありがとう。アルフェン」

 

......ビエゾがテュオハリムやリィヤーみたいなやつだったら、俺も親父と笑えたのかな。

──良かった。

「わかんねぇよ......親父」

 

理解できるほど、あんたと話せていないんだから。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

リィヤー・ウィルフィリス。

その名が示す人物は二人いる。

一人は、現在のミハグサールの領将(スルド)。稀代の星霊術士にして研究者。

もう一人は、現在から300年前に存在したとされる"天災"。

奇しくも両者ともに研究者であり、偶然名前が一致したにしては奇妙なことが多い。

 

例えば、ウィルフィリス家の存在。

星霊術の素養は血筋に因る部分が大きい。したがって、領将(スルド)を輩出する家はレナの実力社会において上流階級に分類されることがほとんどだ。

当然、我がイルルケルス家も上流階級に分類される。だが、ウィルフィリス家はそうではない。よくて中流階級の家系だった。しかも、記録によれば子息に恵まれず、250年前に断絶している。

今となっては、王や領将(スルド)を除いて、過去の記録を保持している上流階級の者にしかその存在を確認する術はない。

過去の栄光を連綿と語り継いでいると仮定しても、領将(スルド)に選出された以上、現在の家名を名乗らない理由はない。

 

例えば、ヘルガイの果実。

領将(スルド)リィヤーの言を信じるとして、治療目的の代物であればなぜ本国は全領将(スルド)に配布しなかった?

ニズの民から話を聞けば、四肢の欠損すら完治するという。そのようなものが正式にレナ本国から配布されていればアルフェン達の旅はカラグリアで終わっていただろう。

当然、私もこうして現体制に反旗を翻すこともなく。暗澹と現実から目を背け、本質を見ることもなくいつの間にか王に担ぎ上げられていただろう。多くのダナの命を犠牲にしたことを知ることもなく。

 

例えば、シオンとの関係。

エストルヴァの森でのやり取りを見るに、浅からぬ仲と見えた。領将(スルド)リィヤーの研究は彼女のため、と取れる発言もあった。

聞けば、シオンは幼少の頃より研究施設で過ごしていたらしい。そんな彼女にとって、人と関係を構築する時間がなかったことは想像に難くない。

リィヤーも研究施設にいたのであれば辻褄は合うが......その場合、リィヤーはいつ、どこから研究施設に入った?

レネギスに研究施設と呼べる場所は多々あれど、シオンの言う人体実験を行う場所は私の知る限りどこにもない。唯一王のみが入れる禁領と呼ばれる区画やレナ本国であれば可能性はあるが、領将(スルド)はレネギスに住むレナ人から選出される前提が、レナ本国である可能性を否定する。

禁領にあるのだとすれば、シオンはもとよりリィヤーは王の身内ということになるが、歴代の領将王争(スルドブリガ)の勝者にウィルフィリスの家名はいない。

 

極めつけは、"天災"リィヤー・ウィルフィリスの享年。

300年前に確かに存在していた人物であることは論文等の記録から確定とみていいだろう。

星霊力の特性に始まり、発動した星霊術の恒久的な運用方法や人が一度に扱える星霊力の許容量など。

領将王争(スルドブリガ)以前に、現在のズーグルなど様々な分野の根幹を築く研究成果を残した、紛れもない偉人。私としては軍事利用ばかりされているのが気に障るが、まあいい。

そんな偉人たる彼に関する記録は何一つ残っていない。残っているのは各研究を記した論文と、名前のみ。

容姿はともかく、各論文を発表した際の年齢、享年その他、"生きていた"という痕跡が残っていない。

まるで、何者かが意図的に情報を封鎖しているような──。

 

「いちいち絵になるな。あんたは」

 

アルフェンか。さしずめ船上で手持無沙汰といったところか。

そういえば、アルフェンも領将(スルド)リィヤーに対峙した際に様子がおかしかったな。

まるで怯えを察されないように強がっているように見えた。

まさかアルフェンの失われた記憶にもリィヤーが関わっているのだろうか。

アルフェンの顔に残る鉄仮面。

記憶を封じ、猛将(ビエゾ)の膂力ですら半壊で留まった代物。十中八九レナの物だろう。

痛覚がないのも仮面の影響だろうか。

ニズに到着する寸前、アルフェンを中心に瞬間的に可視化するほどの星霊力が乱れたあの星霊術。あれも〈ヘルガイの果実〉同様リィヤーの研究の一環なのだろうか。

鉄仮面に彼、あるいは彼女が関わっているのであれば、あり得る話だ。

 

「テュオハリム?俺の顔に何かついているか?」

「いや、失敬。思索に耽ってしまった。見る側の主観までは責任を負えんのでな」

 

どちらにせよ、領将(スルド)リィヤーに対峙すればわかることの方が多いか。

リンウェルとシオンがどのような結論を出すにせよ、問答の時間はあるはずだ。



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第21話 移動艦艇クレーディア

年が明けたので初投稿です。あけましておめでとうございます。
クリスマスに間に合わなかったのは正直すまんかったと思っている。
だからというわけではないけれど、今話は少し長めです。
キサラ視点難しい......難しくない?


霧が多い夜明け頃に追いつき、乗り込んだ領将(スルド)の城は前情報通りの大きさを誇る船だった。

昇降機を見る限り、全部で四層あるらしい。

今は第二層で防護壁の解除装置を探している。

探索中、ミハグサールで初めてズーグルと戦闘になった。

おそらく、リィヤーと戦闘になった事が伝わったのだろう。ズーグルは当然統制されているようで、傍にはレナの装甲兵もいた。

どうやら私たちもデダイム達同様、リィヤーの命を狙う刺客だと思われているようだな。

 

「ったく、ニズが大変だって時に」

「無理もあるまい。我々にその気がないとはいえ、彼らにとって見れば万が一にもリィヤーを害されるわけにはいくまい。況してや、漆黒の翼には一杯食わされたばかりだ」

「だが妙だな。カラグリアやシスロディアと違って劣勢になったらすぐに撤退しているような......」

「そうね。かなり連戦になっているのにズーグル1匹死んでいない。本気で守る気があるのかしら」

「あるいは、死なないよう厳命されているか、だな」

「ヘルガイの果実の件といい、治癒術を使えないはずがない、か」

「テュオハリムと同じように、死を避けてんのかね?」

「せめて気絶していてくれれば、数が減るのだが。こうなっては全力で押し返すしかないな」

「でもよ、この調子じゃリィヤーは俺たちと戦うことになるだろ?戦う前にわざわざ消耗するようなことするか?」

「それだけ軽く見られてるってことだよ。万が一にも負けないってね」

「あるいは、治癒術程度消耗にもならないか」

 

テュオハリムが呟いたと同時に解除装置を見つけた。

これで防護壁の先に進む事ができる。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

防護壁の先の部屋は全体が煌びやかに飾り立てられていた。

壁や灯りなど至る所で金の装飾が輝き、中央には集霊機が鎮座している。

おそらく領将(スルド)の部屋だろう。

 

「この部屋だけ妙に立派だな」

「この部屋は......」

「集霊機といい、これ見よがしな贅の尽くしぶりといい、リィヤーの私室で間違い無いだろう」

「それにしちゃ、ちと散らかりすぎじゃねぇか?」

「ニズでバエフォンがレナ人主導で作った船だと言っていたな。おそらくリィヤーの趣味ではなかろう」

 

ロウの言う通り、折角の豪奢な部屋も大量の紙束や本で散らかっている。

足の踏み場がない程だ。

今までこんなに散らかっている部屋を見た事がないが、こう......片付けたくなってしまうな。

いや、そんな事している暇はないのだが。

そう言えば、エストルヴァの森で集めていた紙束もここにあるのだろうか?

 

「だが、もぬけの殻のようだな」

「たまたま外しているって感じじゃなさそうだ。逃げ出したか?」

「どこかで実験している可能性の方が高いでしょうね」

「装甲兵たちの様子を見るに、この船のどこかにいるのは確かなんだ。他を捜そう」

 

アルフェンの言う通りだが、昇降機の鍵がないことには捜しようがない。

散らかり放題の部屋を片付けるついでに鍵がないかを捜す。

そう、あくまで鍵を探すのが目的だからな。別にこれ幸いにと片づけるわけではない。

 

「......!これ、論文だよ」

「まさか、これら全てか......?」

 

リンウェルの呟きに釣られて、傍にある1枚を手に取る。

タイトルは"詠唱簡略化の影響"。

これって......!

 

「テュオハリム。これは......」

「......なるほど。術の規模に対して詠唱が短いとは思っていたが、そういうカラクリか」

「どういうことですか?」

「リンウェルが扱っている詠唱妨害の技術を発展させているらしい。どうやら、根本は同じ技術のようだ」

 

それは、つまり。

 

「内容を見る限りではリンウェルの一族、ダナの魔法使いとの実験による産物だ。だが......」

「虚水に変える前に奪った......」

「そう考えるのが自然だな。惨い事を......」

 

とてもリンウェルには知らせることはできない。

虚水化によって死の尊厳が奪われただけでなく、一族が誇る全てを貪られたなんて。

いつかは知らせる必要がある。でもそれは、復讐に揺れ不安定な今では無い。

 

クシャリ

 

紙が潰れる音に釣られると、リンウェルが持っている紙を握りしめていた。

 

「なんで、こんなことができて......なんで私達を......」

 

同じものを見ているのかと思ったが、顔つきを見るに憎悪が煽られているわけではなさそうだ。

何が書かれていたんだろうか。

 

「あったぜ。昇降機の鍵」

「よく見つけたな。そんな隙間から」

「昔取ったナントカってやつだよ。探し物は得意だからな」

「行きましょう」

「行くっつっても、リィヤーのやつどこにいるんだ?」

「艦橋という可能性はあるが、我々を待ち構えているという方がありそうだな」

「いえ、むしろ我関せずで実験か研究しているかもしれないわ」

「自分の部屋にいなかったのなら、思う存分戦える場所か......あるいは別の実験場か?」

「一層二層でそのような部屋はあったがいなかった。少なくとも3層より上にいることは間違いなさそうだ」

「......気を付けて。あいつは魔法使いだった私の一族を皆殺しにしたんだ。......たった一人で。悔しいけど、物凄い星霊術の使い手だよ」

「星霊術に限れば領将(スルド)の中でも最強だと謳われていたが......疑う必要はなさそうだな」

「風を操るのに長けているのは当然として、次はあのメズメルドも襲ってくるかもしれないな」

 

エストルヴァの森では風と氷の術を扱っていた。

2種類の属性を扱うのはリンウェル達を見ていれば違和感はない。そこは気にしてなくとも大丈夫だろう。

でも。

そう、致命的な何かを見落としている気がするのは私だけだろうか。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

昇降機で上った三層目には装置による障壁が張られていた。

流石のロウでも破壊できないらしい。障壁の向こうにリィヤーがいるのだろう。

解除装置を捜すべく四層に向かう。

 

 

四層は本来積み荷を置く場所なのだろうか。

吹きさらしの甲板に出る。

そこには()()()()()を来た女性が一人待ち構えていた。

 

「青い装甲服だと?」

「やはり来ましたね。それほどにリィヤー様を殺したいのですか」

「その声......執政官殿か?」

 

髪の結い方ひとつで印象がまるで変わるとは知っていたが......まさかここまで変わるなんて。

執政官だと全然気づかなかった。

だけど。

 

「だったら話が早いな。私たちは貴女への伝言を預かっている。それを伝えに来ただけなのだ」

 

そう、我々がここまで来た目的はリィヤーか執政官をニズに帰し、復興を進めること。

リンウェルがどんな答えを出すかによるが、リィヤーを殺す必要はない。

 

「爆薬でニズが大変なことになっているんだ。あんたかリィヤーの力が必要で「仮に」」

 

アルフェンが伝言を伝えようとするも、言い切る前に遮られてしまう。

 

「仮に、ニズが大変だということが正しいとして、その事態の収拾にリィヤー様か私が必要なのだとして。それは今ここで貴方達をリィヤー様の元へ行かせる理由にはなり得ません。違いますか?」

「ニズで爆薬が使われた。怪我人が大勢いるのだとしてもか?」

「私はリィヤー様と違います。何時如何なる時でもニズの情報を得ることはできません。故に、貴方達の言葉が虚偽であるという可能性がある限り、絶対にこの先を譲るわけにはいかない」

 

執政官は言葉を切ると、(おもむろ)に兜を被り、剣を抜く。

剣と盾を構えた姿に隙はまるで無かった。

強い。今までの装甲兵とはまるで違う。

 

「だからこそ、私は私の役目を果たす。貴方達という脅威を排除した上でニズに戻ればそれで済む話です」

 

近衛を務めていた身からすると、紛れもない正論だ。

 

「正論だな。だが、こちらとしても『はいそうですか』とやられるわけには行かなくてな」

 

応えるや否や、床を滑るように蹴って距離を詰め剣を振る。

今まで相対した中で一番速い。あのニズの手前で襲ってきた謎の襲撃者に並ぶほどだ。

半ば反射で構えた盾で受けると、剣を受けたとは思えない、鉄塊でも受けたかのような重さが伝わってきた。

 

「チクショウ、結局こうなるのかよ!」

「脚は私が絡め取る!その隙に」

「ああ、一気に畳みかける!」

 

私が受けた瞬間、彼女の動きが止まったのを見逃さず、テュオハリムが植物を操り縛る。

一瞬の隙を大きな隙に変えるその手腕は、やはりレナの選りすぐりである領将(スルド)なのだと思い知る。普段自分のことを何もできない姿からは想像できな......くはないな。うん。

 

「動きを止めた、だけで私に、勝てるとでも?スプレッド!」

 

詠唱を!?まさか彼女も詠唱を短縮できるなんて。

足元から湧き上がる水流を紙一重で躱し、攻撃を続ける。

気を抜けば、やられる。




アンケートよろしくね


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第22話 執政官の独白

この閑話は先に読んでいただきたかったので初投稿です。
RTAパートを投稿していた時の感想を読んでニマニマしているときに思いついた話でもあります。

ちなみに、曇らせパートの雰囲気はこんな感じです。お気に召すといいな。


剣を交えながら、きっと私は彼らには敵わないのだと悟った。

渾身の斬撃も、研鑽を積んだ星霊術も、有効打にはなり得ない。

英傑と呼ばれるであろう存在に、凡夫はどうあがいても勝ることはないのだと。

覆しきれない事実を、譲れない戦いの中でまざまざと突きつけられ、噛み締める。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「貴様は強い。女だからと侮る程儂は驕っていない。だが、だからこそ貴様は儂に勝てん」

 

その言葉とともに私は領将(スルド)選抜で敗北した。

その後、私は水の領将(スルド)の従属としてダナに降りた。

元より領将(スルド)の座への執着はなかった。成りたい者がなれば良い、そう思った。

 

従属に選ばれるのは初めてだが、護衛として領将(スルド)とともに行動することが多かった。

ダナが虐げられるのも、領将(スルド)が横柄に接するのも、どうでもよかった。

私はレネギスにはないダナの自然を肌で感じることができればそれで良かったのだ。

私を下して領将(スルド)になった男が度々(ねや)に誘ってくるのは、まあ、うんざりするほど面倒だったが。

ヒルドリス卿も娘がいるのだから全く靡かない私を誘うのを辞めてくれ。趣味じゃないんだ。察して欲しい。

 

そんな生活が変わったのはレネギスから星舟が下りてきてから。

土が存在しないレネギスでは貴重であるはずの大量の生の果実と、たった一人の男が乗った舟だった。

装甲服も着用せず、ただ一振りの刀を持ったその男は。

()〉と、名乗った。

 

その日、ガナスハロスに君臨する水の領将(スルド)は挿げ変わった。

驕りが過ぎる、不敬であると激昂した領将(スルド)は一太刀で斬り伏せられた。

護衛たる私達には目もくれず、私達では目で追うことすらできなかった一撃で以てガナスハロスの最強を下したその姿に、私たちはただ粛々と主の変更を受け入れるしかなかった。

 

それからは地獄のような支配が敷かれた。

ダナは当然として我々レナも漏れはなかった。

まず言論の自由を奪われた。

定められた事以外を口にすると容赦なく罰せられた。

次に言動の自由を奪われた。

定められた場所以外に訪れると容赦なく処分された。

最後に情動の自由を奪われた。

自己矛盾と自己嫌悪によって心を壊された。

反発は圧倒的な暴力によって黙殺された。

前任があえて泳がせていたダナの抵抗組織は所在を暴かれ囚われた。

死を望んだ者には惨憺たる強制労働が施された。

生を望んだ者には尊厳のない死が齎された。

漏れがないように相互監視を義務付けられた。名実ともにガナスハロスから自由は亡くなった。

今にして思えば、相互監視はただの体裁だったのだろう。水に塗れたこの領で、領将(スルド)の目が届かない場所はないのだから。実際、リィヤー様も風からすべてを識ることができていた。領将(スルド)とはそういうものなのだろう。

拷問のような日々が続けば人は容易く壊れていく。

一人、また一人と壊れていった。私も例外ではなく、記憶も意思も殺された。

壊れたレナ人には青の装甲服を着せられた。見せしめだろうか。この鎧は支配の象徴となっていった。

そして、絶対的な恐怖だけが残った。

 

 

幾年月か経った頃、私はミハグサールにいた。

ミハグサールに果実を運ぶという命令を受けたのだ。

曖昧な記憶と意志のまま大量の果実を運ぶ。見上げるほどに積み上げた台車を引く。

装甲服があるとはいえ、一人で運ぶには重すぎた。

首府ニズへ向かう途中で力つき、倒れ込む。

壊れた心のどこかで『ここで死ぬのだ』と、漠然と思っていた。

立ち上がろうにも指先一つ動かせない。

ただ静かに死への恐怖(解放される安堵)に震えながら意識を手放した。

 

 

 

気がついた時、私は診療台に乗っていた。

野戦病院の体を成していたガナスハロスのそれとはまるで違う。

清潔で清廉で洗練された病室だった。

仰向けで横になる私を覗き込む人は、おそらく医者だろうか。

 

「脈に異常なし、瞳孔も正常。星霊力にも異常はなし。ふむ。空腹かな」

 

何事かを呟くと医者は私と目を合わせて微笑んだ。

その微笑みが美しかったのは覚えている。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

痛烈に叩きつけられた剣を盾で受けて距離を取る。

何度目かの小休止。

流石は英雄。私では刺し違えるのも無理そうだ。

炎の剣と領将(スルド)だけでも厄介なのにさらに手練れが3人。そのうち1人は魔法使いで、残り2人は噂に名高いメナンシアの親衛隊だろうか。そんな5人に合わせてアイメリスも加わっている。

全く忌々しい。護られるだけのお姫様が一丁前に治癒師の真似事をしちゃってさ。

お陰でこっちは満身創痍だって言うのに彼らの消耗は無いに等しい。戦闘中に菓子(グミ)を食べる余裕がある始末だ。

 

「これ以上戦っても無意味だ!ニズの復興にはあんたの力が必要だし、俺たちはリィヤーを殺すつもりはない!信じてくれ!」

「それはできないと言ったはずです」

 

少しは整った呼吸に合わせて剣を振り術を練る。

私が勝てないのは分かっていた。

分かっていたが、私にも譲れないものがあるのだ。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「リィヤー様。こちらがレネギスより送られた、リィヤー様宛の物資になります」

「また抜け出したね?まだ快復しきっていないだろうに」

治療期間が延びて困るのは君だ。と苦笑混じりに呟く姿を覚えている。

 

 

「ヘルガイの果実......ね。......ふむ。治療用の劇薬か」

未知の果実を躊躇せず摂取して効能を確かめる姿を覚えている。

 

 

「そろそろ治療が終わるわけだけど、ガナスハロスに戻れる?」

ガナスハロスに戻ると聞いて動けなくなった私を静かに見つめていた姿を覚えている。

 

 

「ヴォルラーン。彼女は今治療中だ。治療が終わっていない患者を帰すわけにはいかない」

あの恐ろしい男を術式一つで追い返した姿を覚えている。

 

 

「さて、君は暫く私の配下として働いてもらう。そうだな......私の研究補佐。いや、執政の補佐か」

研究していたら執政の時間がなくてね。とバツが悪そうに笑う姿を覚えている。

なんと呼ばれたい?という問いに名前を思い出せないと答えると、執政官という呼び名をくれた。

名前じゃないのはいつか思い出せた時のためだそうだ。

 

執政の補佐という話だったはずがいつの間にか執政が私の仕事になった。

リィヤー様の肝入りだからか周りの人間は協力的だった。まさかダナ人まで協力的だとは思わなかったが。

自意識が希薄で己の名前すらわからない私はさぞ不気味だったろうに。

これもリィヤー様の統治の成果なのであれば、それを崩すわけにもいかない。全霊を以て仕事をこなした。

 

リィヤー様が首府の様子を知らないのは拙いと、定期的に謁見し報告を挙げていた。

皆はリィヤー様の所在がわからないと言うが、私はなんとなくわかるのだ。どうしてわかるのかと聞かれたが、勘としか答えようがない。

最初から君がミハグサールに居てくれればあんなデカい船を作る必要がなかったのに。と嘆かれたが、私に風の適性は皆無だ。諦めて欲しい。

 

幾度目かの報告の際、聞いたことがある。

リィヤー様はなぜ研究しているのかと。

レポートを読む限りでは莫大な星霊力を誰でも扱えるようにする研究だ。全領将(スルド)を一度に相手にしても有り余る、容易く世界を滅ぼす程の力の研究。

それを求めている理由を知りたかった。

まさか、たった1人を救うための研究だとは思いもしなかったけれど。

理由を知ってからは報告の度にネウィリ・アイメリスという女性の話を聞かされた。

惚気のような話もあったが、リィヤー様は結婚はされていないのだという。ということはリィヤー様の片恋慕になるのだろうか。

それは、少し、面白くない。

 

リィヤー様が女性好きだと言うのなら。

私が狙っても良いはずだ

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「万物粉砕く!」

 

ダナの少年の一撃を受けた剣が半ばから叩き折られる。

 

「灼熱の」「バーンストライク!」

 

数舜の隙をつくように、アイメリスの放った弾丸を叩き込まれる。

盾はかろうじて間に合ったものの、受けた盾は砕け、鎧は半壊。

ならばと術を練ろうにも魔法使いに詠唱を妨害され完成しない。

つまり、詰み。私の負け......か。

ついぞ傷の一つもつけられなかったな。

リィヤー様に相応しくあるよう磨いた全て。その全てを持って抗って、結果がこれか。

 

結局のところこの戦いは私情だ。炎の剣が善性の人間なのはニズで話した時に分かっていた。

おそらく彼が訴えているニズの事件も本当のことなのだろう。

執政官であるならば、今はニズに戻り復興を進めるべきだった。

リィヤー様は最強だ。あの恐ろしい水の領将(スルド)すら術式一つで追い返したのだ。私ごときに護られるような存在じゃない。

現に炎の剣がこの船に乗り込んだ時、リィヤー様が出した最初の指示は逃走だった。

リィヤー様は死を避けている。だからこそ炎の剣達に敵わない私達が殺されないよう逃げろと指示したのだ。

それを拒否したのが私を含むこの船に乗るレナ兵で、だからこの結末は自業自得。死んでいないだけマシなのだ。

おそらく私の前に戦った同胞はリィヤー様に治療された後、メズメルドに乗せられニズに戻されている。

私達が近くにいるとリィヤー様は全力で戦えない。私達を巻き込めないからだ。

つまり、私達がやったのは護衛とは名ばかりの自己満足。むしろ護りたい相手を消耗させ、採れる選択肢を狭める悪手も悪手だったのだ。

 

なんという愚かな女。リィヤー様のためを思って行動した結果、リィヤー様が殺される。全ては私が合理ではなく私情を優先したせいだ。

 

炎の剣と共謀し、同胞(レナ)に弓引き領将(スルド)を殺して回る裏切り者の名こそがアイメリス。裏切り者の名は家名しか覚えていないけれど、きっと彼女がリィヤー様の心を独り占めしている女。

リィヤー様の心だけでなく命まで奪おうとしている忌々しい女。

リィヤー様を慕う者として、せめて一太刀、せめて一撃、取り戻した心のままにぶつけたい。

その願いは、どうやら間違っていたらしい。

 

それならば、せめてメズメルドが戻るまでの時間をほんの僅かでも稼ぐために死力を尽くす。

動かない身体に鞭打って、アイメリスに触れた途端。

身体が内から弾けるような激痛に襲われ、愚かな私は悲鳴を上げる間もなく気絶した。




閑話とは :
無駄話のこと。
転じて、創作における本筋に直接関係しない話を指すこともある。


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