恋姫外伝~修羅と恋姫たち (南斗星)
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第一話
昔、他サイトで連載した物の修正版です。
基本恋姫を原作としますので、実際の歴史などとは異なりますのでご了承ください。
高祖が漢を起こして400年
王朝はすでに形を失い、国は乱れ、民は貧困に喘ぎ…
そして……この時代にも修羅の技を使う男がいた
――――――恋姫外伝~修羅と恋姫たち 第一章 疾風の如き男――――――
河東郡、郊外・・・
少年が歩いている。
街道からだいぶ外れた獣道である。左手に鬱蒼と茂った森、左手には崖がありその下には川が流れている。
季節は晩春、麗かな陽気の元、清流の涼やかな響きが聞こえる。
少年は変わった風体をしていた。
年のころは17,8歳だろうか。一見すると武人のように見えなくもない。
着古したであろう白い服は袖の所で千切れており、色あせた紫色の袴を穿いているのだが、それが変わっていて足首の所をキュっと縛ってある。
さらにこの男、裸足である。
一応刀も差してはいるのだが、これまた変わっている。鍔がなく、柄の所は紐状の革を巻いてあり、刀身の長さも見たところ2尺7寸(60㎝くらい)くらいだろうか。刀にしては短い。
それを白い晒を腰の所に帯状に締め、その後ろに無造作に突っ込んでいるのである。
その扱いかたがまるで‘こんなものどうでもいい’と言ってるようで面白い。
少年の足が止まった。同時に腹が鳴る。
「腹へった……」
そう言うと腹を抱えたまま大地に両膝をつく。
「いかん、いかんな…腹のやつ」
頬を指で掻きながらまるで他人事のように腹に言う。
ぐう……もう一度腹が鳴る。この腹、自己主張が激しいようで更に大きな音を出した。
少年は困った顔をすると今度は仰向けに大の字に寝転がる。
(参ったな。さすがに5日も何も食わないと動けなくなる…か。このままあと3日も寝転がってれば流石に死ぬ…かな)
ふとそんな風に思った後、少年は目を閉じた。
河東郡、とある村外・・・
関羽こと愛紗は戸惑っていた。
最近周辺の賊の動きが活発になったため、村の若者で自警団を募り周辺を警邏していた所、村から多少離れた山道で1人の少年が倒れているのを発見したのである。
最初は賊の仲間かと怪しんだが、賊の仲間ならばこのような所でただ眠こけているはずもない。ならば行き倒れかとも思ったがそれにしてはおかしい。何故ならこの少年、口元に笑みを浮かべているのである。
(死にかけてるのならば、笑みなど浮かべまい)
そうは思ったもの、ならば何をしてるかという疑問には答えられなかったので、取り敢えず少年を起こすことにした。
「おい、おい、起きろ…ええい起きんか貴様」
短気なのか、1,2度声をかけだけで、このままだと起きそうにもないと判断した愛紗は、今度は持っていた武器の柄で強めに小突いた。
愛紗は村で一番の強力である。村の男達が纏めてかかって行っても、太刀打ち出来ないほどである。その愛紗が『強めに』叩いたのである。普通なら骨の1,2本折れても可笑しくはないのではないか?と思えるほどだが、少年は気だるそうに振り向いただけであった。
「やっと起きおったか、貴様このような所で何をやっている」
いきなりぶっ飛ばしておいて、その言いようはないんじゃないかと周りの男たちは思ったが、決して口には出せないのである。
「寝てるんだ」
そう言うとまた愛紗に背を向け寝だした。
「ふ、ふざけるなよ貴様!!」
からかわれたとでも思ったか、愛紗はそう怒鳴ると偃月刀を男の近くに叩き付けた。
偃月刀に叩かれた地面はものすごい音と共に陥没したが、少年はさほど気にせず愛紗に向き直り
「問われたから答えたのに何をそんなに怒っているんだ?」
不思議そうな目で見返してきた。
「このような場所でただ眠こけてた訳があるまい。何の目的でここにいる、貴様まさか盗賊の一味か!?」
愛紗はさきほど自分で『盗賊ではない』と思ったことなどすっかり忘れ、そう問いただした。男の飄々とした態度に頭に血が昇り、冷静に判断などすでに出来なくなっていたのである。
愛紗の目が細くなる……眼光が一点に集中する。
少年を見据えるというより、射抜くといったほうが相応しいその眼には、物理的な力さえ感じる。
が、少年はその眼を笑いながら見返すと飄々と答える。
「腹が減ったが食うものがない、動けないしこのまま死のうかと思ってる」
「嘘を言うな。貴様さっき笑っていただろう。死にかけた者が笑えるもんか」
さきほどからの少年の態度を自身を馬鹿にしてると捉えた愛紗がさらに詰め寄る。
愛紗の額に険が寄り、同時に頬に朱が差した。
その愛紗の変化など気に留める様子もなく、少年は言葉を継ぐ。
「飯を恵んでくれるならありがたいが、そうでないなら構わないでくれないか」
「減らず口を…」
無論、愛紗の怒気はさらに高まる。
愛紗が前に出る。
「どうやら口で問うても答えんようだな…ならば」
言いざま、武器を向ける。
そして怒気が爆発しようかという瞬間。
ぐうううぅぅ~~
と、少年の腹が盛大に鳴った
「…………」
一瞬辺りを静寂が襲った
愛紗は少年を疑ってたことが馬鹿馬鹿しくなり、はあ~と溜息を付いた後武器を下ろした。
「もういい…疑って悪かったな。叩いてしまった侘びもある、村に来い食事くらい馳走してやる」
そう言って男を村に案内すると言ったあと、ふと思い出したように話しかけた。
「そういえば名を聞いてなかったな。私の名は関羽 字は雲長と言う、貴様の名は?」
男は立ち上がり愛紗の後に続き歩き出しながら、名乗った
「
PCが逝ってしまったため、他の小説の書きかけのデータが飛んでしまった。
ので、初心に帰りエタってたこの小説を再開させますw
週1くらいのペースで更新出来たら、いいかなーっと。
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第二話
仕事が忙しくて纏まった時間が中々取れない。
もっと執筆時間取れるといいのですが。
愛紗の屋敷である……。
屋敷というには少々小さいだろうか。
手入れは行き届いているのであろう。うら寂しいといった感じはしないが、活気にはかけている。
その一室……。
「うまい、うまい」
よく喰らう……しかも速い、飢えた猫のようである……。が、ちゃんと咀嚼し、味わっているようでもある。
その食いっぷりは実に美味そうで、心から幸せそうに見えた。
至福を感じている……そんなふうだ。たかだか塩と米だけの、何のおかずもない粥を食わせてやったにすぎぬのだが……。
愛紗は呆れていた。
腹が減って動けぬという少年を村に案内し、食事を振舞ったがこれがものすごい食いっぷりなのである。
最初は『余程腹が減っていたのであろう』と思って見ていたが、次第にそれは驚きに呆気にそして呆れに変って行ったのである。
『
だというのに、食べきるには大人が十人は掛かるであろうを量を、一人で食らいしかもその勢いはいまだ止まらぬのである。
「おかわり」
「……まだ食うのか」
求めに応じておかわりを差し出しながも、連れ帰るんではなかったかと溜息を漏らす。
よほど腹が減っていたのであろうが、さすがに、
「鈴々でもここまでは食わんぞ……」
愛紗も呆れて二の句が継げなくなる。
「まあよい食いながらでいいからこちらの問いに答えよ」
「うん、うまい、うまい」
「聞いておるのか」
疾風は聞いてない。飯にしか目がいっていないようである。
(全く、変なのを助けてしまったな)
疾風の中では飯のことしかないようだ……今のところは。
「貴様確か陸奥 疾風とか言ったな。変わった名だが、陸が姓、奥が名で疾風が字か?その身形では官職などには就いていまい。ならば疾風と呼べばよいのか?」
この国では官職などに就いている目上の者は姓に官職名を付けたものを、それ以外は敵対でもしないかぎり字を呼ぶのが通例となっていた。……あと一つ、心から信頼するものしか呼ばせない『真名』というものもあるが。
「うん?違う違う。陸奥が姓で疾風が名だ。字というものはもってないよ」
いってからまた飯へと手を伸ばす。
「呼び名は好きに呼んでくれ」
「ふむ……字がないとは、珍しいな。貴様どこの
愛紗は一つ頷いてから尋ねた。
「この大陸の東の海を越えた所にある小さな島国だ」
漸く満腹になったか、腹を撫でながら疾風は言う。……顔には満足げな笑みがある。
「海?なんだそれは?」
愛紗が聞く。どうやら海を知らぬらしい。
「でっかい水たまりだ」
そう言いながら、一つ欠伸を漏らす。どうやら腹が膨れて今度は眠気がきたらしい。
不作法なやつだと愛紗はついむっとした顔をした。
「俺はその
まるで他人事のように答える疾風を見て、愛紗は頭を抱えた。突拍子もない話しだし、到底信じられることでもない。だが疾風を見ていると嘘を言ってるとも思えない。結局愛紗はこのことは一先ず置いておくことにした。
「わかった、そのことはいい。だがこれから先どうする?行くあてでもあるのか」
そう問う愛紗に、疾風という男は腹を撫でながら満ち足りた顔をして
「特に考えていない」
悪びれる様子もなくそう言ってのけたのである。
先ほどまで死にかけていたというに、呑気すぎる態度に愛紗は肩から力が抜けていくように感じた。
(こやつ……ただの馬鹿か)
そう思った愛紗に異を挟む者は少なかろう。
「……そうかならばこの村に置いてやれるよう村長に口利きをしてやらんこともない」
愛紗としては折角助けた命だ。ここで放り出すのも少々気が引けた。
「そいつは助かるな」
疾風は目を細める。本当に嬉しそうにも見える。
「ただし!ただしだ、自分の食い扶持は自分で稼げ、……毎回あのように食われたのではたまらん」
そう漏らすと愛紗は心底嫌そうに顔を顰めた。
「住む家や仕事については、明日にでも皆に相談することにしよう。取り敢えずは今日はうちに泊まるといい」
疾風が頷くのを見た愛紗は腰を上げかけたが、ふと思い直し疾風に問いかけた。
「もう一つ聞きたいのだが、お前腕は立つのか?」
そう言って剣を振るうような恰好で腕を軽く振る。
疾風は……、
「俺か?俺はこの地上で誰よりも強い…よ」
クスリと笑う。
愛紗は一瞬呆然とし、左の肩を落とした。が……すぐに気を取り直すと、
「ふん…馬鹿馬鹿しい。冗談ならもっと面白く言え」
お前みたいなやつが、強いわけなかろうと呆れ顔で言う愛紗、……が、疾風は惚けた顔を変えない。
「そうかもな」
口の周りに付いた米粒を取りながら、疾風が言う……。顔は笑っている。
愛紗もさほど期待してはいなかったのだろう。ただ最近村の付近に賊が頻繁に出没するようになったので、万が一使い手なら使えるかも、と思って聞いてみたのである。ただあまりにふざけた回答に男の言をただの戯言と思い今度こそ腰を上げる。
(……こいつ本当の大馬鹿者だ)
そう内心に思いながら、部屋を後にする。
空は夕闇に変わりつつあった。
次回は早めに投稿出来るといいな。
誤字脱字報告、感想などお待ちしております。
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