大乱闘スマッシュブラザーズ Histoire Artificielle (蘭沙)
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プロローグ First File
オープニング


戻ってまいりました。
ハッピーホームパラダイスやってる作者でごさいます。
前作以上にフリーダムな展開になりますが、よければこのままお読みください。



大戦場。

数多の戦士が凌ぎを削ったこの場所で、またいつものように戦いが繰り広げられていた。

 

この世界は創造の化身マスターハンドによって造られた世界。世界を救い誰もが憧れる英雄が、全ての光を許さない絶対的な悪が、またはそれに対し奇想天外な技で立ち向かう一般人が、同じ目線で戦う世界だ。

彼らはスマッシュブラザーズ。何度も開催されていたこのイベント。今までのファイター全員と今まで以上の追加メンバーを増やした今回は究極で特別なものとなっていた。

 

 

 

聖痕を目に入れた女剣士が、自分の得物よりも遥かに大きい剣を持つ男性に斬りかかる。それをかわした男は凶の字を書くような斬撃を繰り出す。それをいなした女は頭上から剣を振るった。全身全霊の力を込めた刃は拮抗し、止められる。

 

2人に飛びかかるのはまた2人だった。防寒着を着込んだ2人で1人のファイター。登山により鍛えられた見た目以上の力は木槌を通じて大地に直接伝わった。かわされたのだ。

 

2人の間に投げ込まれたのは赤い剣。それはひとりでに回転し炎を噴き上げる。シールドで耐え切り、その方向を見ると赤い髪をした少女がその剣をキャッチする。そして瞬きの間に短めの炎のような髪は輝かしい光のような長髪に変化していた。その少女はまるで未来を見ているかのように背後の敵を感じ取った。

 

一撃をかわされた少年は、剣の力を引き出し自身の攻撃力を上昇させる。そのまま少女に斬りかかろうとしたところで足に何かが巻きついた。何かの刃のような。

 

その先には藍色の髪をした男がいる。蛇腹剣で巻きつかれ、この男に引っ張られたのだ。しっかりと巻きつかれた剣は外部からの干渉なしには取れないだろう。しかし、それは思わぬ形で訪れる。

 

炎の剣を携えた赤髪の少年。その少年が男のいる場所へ斬りかかったのだ。荷物になる少年は切り離すしかなかった。空中へ逃げた男を少年は追いかける。剣と剣がぶつかるたびに火花と炎が飛び散る。

 

その戦いに横槍を入れたのは子供のように小さな宇宙飛行士だ。でもその顔には貫禄があり、決して身長通りの年齢ではないだろう。黄色の動植物を男性に投げ、赤色の動植物を少年に投げた。叩く動植物に地面に落とされた2人はそれを振り払うしかない。

 

 

殺伐とした戦いにも思える。だがそこに血は流れない。屍となる者もいない。平和の名のもとに行われる戦い。

 

その戦いの本当の開戦を知らせるかのように、空中に現れた虹色に輝くボール。それを視認した戦士達は我先にと手を伸ばした─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

………………おっ…と。

 

 

やあ。

 

 

君達がここにいるってことはこれで合ってるってことだよね。

 

 

 

意味がわからない? そりゃそうだよ、まだ始まってもないんだから。むしろ理解されちゃあ困るよ。

 

 

ふふふ。

 

 

それじゃあ、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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1話 必然の出会い

 

「種類… ですか?」

 

「うん、軍とか町とかでも言い換えれるかな」

 

 

シュルクが個人的に使用している研究室。

この世界に来る以前から彼の知り合いであったホムラとヒカリはその研究室を訪れ、疑問だったことを解決しにきた。

 

その疑問とは、違う世界の出身であるはずの彼らが何故マスターハンドの力なしで会えたのか。どうしてマスターハンドは3人を同じ世界の出身だと語るのか。それにシュルクは、頭に「あくまで僕の考えだけど、」と加えた上で答えを伝えたのだった。

 

 

マスターハンドが同じ世界だと見極めているのは、種類を見てのことだと。

例えば、一口に果物と言っても沢山ある。リンゴを見て果物と言っても、オレンジを見て果物と言ってもどちらも正解なのだ。

 

リンゴがシュルクの世界。

オレンジがホムラとヒカリの世界。

でもマスターハンドはそれら二つを見分けられながらも、二つまとめて同じ世界(果物)としているのだ。

 

 

その他の例えでも、軍が同じ世界で小隊がそれぞれの世界。町が同じ世界で、家がそれぞれの世界。

そのように、3人が暮らす二つの世界を、マスターハンドは同じように扱っているのではないか、というのがシュルクの考えだった。

 

 

「君たちがここに来る前でも、おかしいとは思ってたんだ。マルスやクロムルキナルフレは兎も角、アイクもロイもカムイも、そしてベレトも同じ世界なんておかしい。もし、彼らの世界が地続きになってたら、もう少しぐらい文明が発達してもいいはずなんだ」

 

 

3人の世界では2000年前にマルスが生きていたという。そして、仲間に蒼炎の勇者… つまりアイクの子孫がいると。そして、カムイの関わった白夜王国や暗夜王国は神話の話と言われるほど昔の時代だと。

しかし、アドラステア帝国ができたのは1000年以上前の話で、その他にも千年単位の過去話がいくつもある。全て正しく、一繋ぎだとすれば、万の年は余裕で経っているだろう。

何より白夜の文化が後の時代にほとんど残っていないことになる。

 

 

「それで違う世界ね…」

 

「根拠はないよ。そもそも違う世界だと時間の流れも違うらしい。マスターハンドは時だって越えられるらしいから気にする必要もないけどね」

 

 

キーラとダーズが討伐され、一度元の世界に帰された間にかの支配人はこの世界を立て直したらしい。時間がかかるとは思っていたが、まさか1年も待たされるとは思わなかった。この世界だから昔の服を着ているし、故郷の世界で使っていた武器と共に無くなったはずのモナドと未来視(ビジョン)の力も使える。

 

だが、自分は誤差が少ない方で、クラウドは2年の時が経っていたし、アイクに至っては3年の月日が経過し、見覚えのあるゴツい肉体に戻っていた。

いや、そもそも時が経っている自分たちの方がレアなのかもしれない。

 

 

「それでよく時間の流れが違うって気づけたわね」

 

「ソラが教えて… くれたのかな? あれは…?」

 

「えっーと、普通に聞いたんですよね…?」

 

 

聞いたまでは聞いた。

だが、返ってきた答えは「うん、ドナルド… 仲間からもそう聞いてるし、俺たちが1年経ってるのにアグラバーやオリンポスコロシアムの友達は別に…って駄目駄目! 秩序だったから今のなし!!」という、何故かこっちが誘導尋問しているような気分になった。後ソラ。この世界ほどその秩序が意味を成さない場所もないと思う。

 

 

「シュルクー! カービィはここかー!?」

 

「あっ、大王様、いらっしゃい。」

 

「奇遇ですね。どうかしたんですか?」

 

 

デデデがドスドスと大きな足音を立ててやってきた。とある事情により、元の世界の仲間を除けばシュルクの研究室を訪れる人ランキング2位となっている。

 

 

「むう? ホムラとヒカリか。ってそれよりカービィはいるか!?」

 

「そこの機械の上」

 

「見つけた! なに寝てるんだカービィ! 帰ったらグルメレースで勝負だと言っただろうが!!」

 

 

いい感じに温まった機械の上で昼寝をしていたカービィを乱暴に起こす。優しさのかけらもなく、ぶよんぶよんと揺らすがカービィは起きない。流石にハンマーで文字通り叩き起こそうとした時は止めた。機械がスクラップになってしまう。

 

先に話したとある事情というのは、カービィが研究室に入り浸るようになったことだ。灯火の星の一件でシュルクとカービィは仲良くなった。その結果、研究室に篭もりがちのシュルクのところへカービィが遊びに来るようになったのだ。

秒も狂わぬ腹時計で昼ご飯を届けにきたり(机の端に置いてあった時計を見た瞬間にちょうど12時を知らせたのは流石に恐怖した)、就寝に来た結果、音を鳴らす機械弄りはできないと同じように就寝したり(この程度の騒音でカービィは起きないことをシュルクは知らない)と、シュルクは最近、幼馴染も驚くほどの健康的な生活を手に入れたのだ。研究室に入り込んだ毛虫に対して、お互いどうすることもできなかったのはいい思い出だ。(その後、研究室を訪れたラインに助けられた)

 

 

「2人は一度帰るんだね。ホムラとヒカリは?」

 

「私たちも帰ろうと思ってます。シュルクはどうしますか?」

 

「僕はいいかな。乱闘の間の休日に帰ったばかりだし、この世界にある物体での研究はここでしかできないからね」

 

「それが本音じゃないの?」

 

「あはは…」

 

 

そう、リニューアルして新たな仲間を加えて一ヶ月、世界を盛り上げるためにぎっしりと大乱闘の予定が盛り込まれていた。ようやくペースが落ち着いた今、始まるのは帰宅ラッシュだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチン、と黒線の交差する場所に黒石が置かれる。その一手は初心者らしい辿々しい指使いではあったが、戦略としては恐ろしいほどに手慣れた一手だった。

 

 

「次、タクミの番だよ」

 

 

白夜王子タクミは戦慄する。目の前にいるのは本当に自分の兄なのかと。

 

白と黒の石を使い、より多くの陣地を取った方が勝利。囲碁の相手になってくれないかとカムイに言われたタクミは快く了承した。将棋ほどやり込んでいる訳ではないが、なかなかの実力は持っていると自負していた。

なによりこの兄は、こういった盤上遊戯はことごとく下手なのだ。実際の行軍は兎も角、何故か戦術書の学習や盤上の戦いとなると酷く粗がでてくる。だからこそ、終始押され気味の戦局が信じられなかった。でも諦めては勝てない。線と木の盤上目掛けて、逆転の一手を差す──

 

 

「タクミ王子、お邪魔するよ… って、カムイ兄さん、来てたんだ」

 

「うん、囲碁ってゲームで遊びにきたんだ。暗夜にはないゲームだし、アクアやスズカゼもルールは知らなかったからさ、タクミならできるかなって来たんだ。」

 

「どういうゲームなの?」

 

「僕も初心者だからそこまで詳しくないんだけど… 白と黒の小石でより広い陣地を取った方の勝ちなんだって」

 

「ああ… それでタクミ王子は撃沈してるのか… 珍しいね、兄さんがこういうゲーム強いの」

 

「レオンもそれ言う!?」

 

 

私室に来たレオンでもわかるほど、勝敗はお察しであった。元は敵国の王子だったのだが、靴を脱いで上がるのに慣れた程度には交流を行っているようだ。

 

 

「ごめんって… でもチェスで僕に勝ったことないでしょ? 多分今じゃ将棋でも敵わないと思うよ。だから兄さんからこのゲームをはじめたの珍しいなって思って」

 

「ああ、それは… えっと大乱闘のことなんだけど…」

 

「兄さん、ストップ」

 

 

レオンは手でカムイを制し、襖の外をこっそり覗く。誰もいないことを確認して再び部屋に戻った。

 

 

「それのこと、知らない人に口外しちゃダメなんでしょ? ちゃんと確認してから話してよね」

 

「あっ… ごめんレオン。それであっちに居た時のことなんだけどさ…」

 

 

この世界でカムイは突然の大雨に降られたことがあったという。なんとか小屋を見つけて雨宿りしていると、謎のローブを被った少年も入ってきた。その顔は隠れて見えない。

 

 

「ごめんー! ここ君の家? 少しだけいさせてー!!」

 

「大丈夫だよ、そもそも僕の小屋じゃないから。どうぞ」

 

「お邪魔しまーす!!」

 

 

そう言って入った少年。その文明観は白夜のものに近かった。タオルを手拭いと呼ぶ彼とカムイはすぐ仲良くなった。なかなか雨は止まず、乾いた体はもう拭く必要もない。それで2人の会話に移行するのはごく自然なことだった。

 

 

「そうだ! 囲碁って知ってる?」

 

「囲碁? うーん、弟が遊んでいたような… 僕は知らないかな」

 

「君にも弟いるんだね! 僕いっつも弟と囲碁で遊んでてさ、でもいっつも負けちゃうだよ〜…」

 

「僕もあんまり得意じゃないからな… 10戦しても全敗しそう…」

 

「だから付き合ってよ! やり方は教えてあげるからさ!」

 

 

背負っていたリュックから明らかに重量のある台と容器を取り出したのに唖然として返事を挟む暇もなかった。

ルールを学びながらの数試合。最初は一回一回質問をしながらの試合だが、徐々にスムーズになっていく。そして。

 

 

「あっ、また勝った!」

 

「なんで2戦目でもう勝てなくなるのぉ…」

 

 

白の碁石で囲われた領地が圧倒する。珍しく才能があったようで、最初の一度負けただけで後の3戦は快勝だった。

悔しさで沈む彼に別のことしようかと進言しようと辺りを見回すと、窓越しにすっかり晴れた青空が見えた。通り雨だったようだ。

 

 

「あ、晴れたみたいだ」

 

「本当だ… って、まずい! 弟が呼んでるんだった!!」

 

 

基盤と碁笥、碁石。名前を教えてもらった道具を適当にリュックに詰め始める。そして口を閉める暇もなく、扉へ駆け出した。

 

 

「ん、じゃあ、もう会うこともないだろうけど元気でね」

 

「えっ… どうしてそんなことを言うんだ? また会えばいいじゃないか」

 

「でも…」

 

「僕はカムイ。もう君とは友達だ」

 

 

その言葉に驚いたようにローブを振るわせて、少年はこう返した。

 

 

「…ありがとう、僕はチゲン。またねカムイ」

 

 

 

 

 

 

「なんでありがとうになるの?」

 

「えっ、友達と呼んでくれてーじゃないの?」

 

 

レオンのグサッとくる指摘に本人ではないのに動揺する。周りに友達になれそうな人間がいなかったのかもしれない。あの人懐っこさで友達が出来なかったとは思えない。環境に問題がありそうだ。

少しの間会話しただけの友のことをひとり想い… ふと思い出す。

 

 

「そういえば、あの声どこかで聞き覚えがあるような…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリティアの王城。

王であるマルスの対面に座るのは、経歴的には一般兵でしかないクリスだった。紅茶とお菓子を挟みながらの談笑するその光景は一兵士と主君の間柄とは思えない。だが、それと同時に彼らは親友であるのだ。

 

先の戦いだって、クリスがいなければ勝てなかったかもしれない。でも、本人は自分が得るはずだった全ての功績を、マルスを立てるために使ったのだ。故に一兵士でしかないが、あの戦いに参加していた仲間は事情を知っているために不相応だと非難する者はいない。

 

マルスが光の英雄で、クリスは影の英雄。ルキナ達は彼の存在すら知らないだろう。

 

 

「自分に似てる人、ですか…」

 

「うん、別に外見が似てる訳ではないし性格も似てないんだけど… なんでかな、クリスに似てるなって思ったんだ。」

 

 

マルスは目の前の友に異時間の仲間のことを話す。1人は自分の運命に抗った軍師。1人は流れる血とともに戦った王子。

 

 

「軍師と王子… ますます自分に似ていると思えないのですが…」

 

「正直に言ってしまえば、言葉にするのは難しい。だからどうかな、今度会いに行ってみないかい?」

 

 

クリスは複雑な顔を浮かべている。自分に似ているとのことでどういった人物なのか想像していそうだ。でもきっと、その予想は大外れになるだろう。

 

 

「わかりました。その方々はどちらに?」

 

「ここじゃない、特別な場所さ。少し不思議な場所に僕が呼ばれているのはクリスも聞いたことがあるだろう?」

 

「少しは。…えっまさか…」

 

「うん、そこにいるんだ。」

 

 

悪戯が成功したような達成感に満ち、少し幼い笑顔を浮かべる。クリスはあんぐりと口を開いた。

 




○必然の出会い
ファイアーエムブレム風花雪月の序章のタイトル。
エーデルガルト、ディミトリ、クロードと出会うのは偶然ではなかった(実際にそうらしい)。運じゃない、必然さ。


○シュルクの世界理論
ほとんど作者の考え。
FEシリーズは中途半端に繋がってます。紋章と覚醒が繋がっているのはFEやっていなくても知ってるって人が多いと思いますが、蒼炎やifも繋がってるというのは知らない人も多いのでは? そもそもシュルクやホムヒカは違う世界だと物語中で明言されてたりなかったり。


○時系列
前作では1Pカラーで揃えていましたが、セフィロス参戦PVなら兎も角、ソラのPVでもクラウドがACの姿だったので時間を進めることになりました。
クラウドはACやディシディア系の後、アイクは暁、for後。
シュルクも前作投稿時点では未発売だったディフィニティブエディションのつながる未来編を経験しています。何気にソラも3後。というかソラは1の後も忙しいしCOMの時系列も無茶だしで挟みにくい。
とはいえ、どれも最新に揃えているわけではなく、発売すらされていないリンクやベヨネッタにネタは入れようもなく、リヒターは闇落ち以前です。


○キンジョ?
ストッパー(ドナルド)がいないのでノンストップ。


○囲碁
簡単に言えば、黒と白の石を置いて陣地を取っていく陣取りゲーム。タクミが囲碁をしているという描写は原作ではない。


○既視感
カムイ→クリス→ルフレと輪廻転生している。ifのカムイ♀とシャラの支援会話参照。これはルフレがギムレーの器として選ばれたのも納得できるというもの。


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2話 すれちがい迷宮

 

池に薄く垂らした糸が波紋をうつのが、ブロウは好きだった。雲の流れを見ながら、竿にかけた指先に集中し、引っ張られるのを待つ。普段の言動から忘れられがちだが、ブロウは繊細な動きが必要な釣りが趣味だ。

 

ああ、雲が早く流れていく。空気も湿ってきたようだった。ひと雨降るのかもしれない。でもあと一匹は釣りたかった。

 

 

「あっ、ブロウみっけ」

 

 

魚なんて比じゃない波。ザバーンと海の波のようにブロウを濡らした元凶は、

 

 

「ガンナあぁ!! 人が釣りしてる池に入り込むんじゃねえ魚が逃げてがらんどうになってんだよ!」

 

「意気地なしだな」

 

「お・ま・え・が、脅かしたんだろうが!!」

 

 

人の休息のひとときを豪快に邪魔された挙句、開き直りやがった。ピキピキと血管が浮き出る。なんだこいつは。この際、日頃溜めに溜めた愚痴を猛烈ガトリングで放ってやろうと口を開いた時だった。

 

 

「おまえはさ、今度の休暇どうすんの? 帰んの?」

 

「ああ?」

 

 

一転、常識的な質問に勢いが削がれた。影に隠れがちだが、ブロウも割と勢いで生きているタイプだ。興が削がれ、愚痴はまた今度でいいかと怒りが萎んでいく。

 

 

「んー、別に帰る予定もないし留まろうと思ってるけど」

 

「じゃあ、3人の中で残んのお前だけか。ソードは任せてた花の手入れ行くし、私は機械いじりしたいし」

 

 

2人の予定を聞いてブロウは仲間外れにされたような気分になる。といっても戻ったところで釣りぐらいしかできない。この世界では違う世界の魚も釣れるから予想外が起きて楽しいのだ。

 

 

「って、そんなこと聞きにきたんじゃなかった。お前を探してるやつに会ったぞ」

 

「探してる? 俺を? 誰だそいつは」

 

「ピンク髪の探偵服」

 

「よし! やっぱ俺も帰ろうかなあ!?」

 

 

予定変更。どうやってここまで辿り着いたんだ。ソードか? 騙されでもしたのか。

会える訳がない。2度と話すこともできない。償う方法すら知らない。俺の存在ごと忘れてもらった方がいい。

 

─だって… シーラ、お前の父親を終わらせてしまったのは俺なんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木々の生えた森。そこからは綺麗なオカリナの音が鳴り響く。森の中の巨大な切り株。テーブルにも使えそうなほどに広いそれに座って、こどもリンクは思い出を吹いていた。

 

 

「……………」

 

 

惰性でナビィを探していた彼は、待っている者のいない元の世界に戻る理由はない。故郷に戻る時は、今回が終わりを迎える時だ。

でも、繋いでいくと決めたから。戻るまではいかなくても前を向いて進むべきだ。たまには剣の稽古でもやってみようかな、と考えていたその時だった。集まっていた小動物達が一斉に散っていく。足音が聞こえる。誰か来たのだろうか。

 

 

「あら、シャイさんばかりなのね」

 

「驚いてんだよ、わかってるくせに。で、何かようなの、ベヨネッタ」

 

 

足にぶつかったリスを手で包んで近くの枝に乗せる。悠々自適という言葉がぴったり合いそうなベヨネッタは断りもなしに隣に座ってきた。

 

 

「気にしなくていいのよ、続きをどうぞ」

 

「興が乗らないよ、誰かが入ってきたせいだ」

 

「あら、悪い子もいるのね」

 

 

嫌味も軽く受け流すベヨネッタに、ため息をつきながら肩を落とす。折角の誰もいない空間が崩れて、今後の予定を思い出してしまう。面倒な予定だ。

 

 

「トゥーンの坊やに何か誘われたかしら」

 

「…なんで知ってんの?」

 

「見た目よりは長く生きてるもの。あの子以外で同じこと頼まれたらしっかり断るでしょう」

 

「自分でそういうこと言っちゃうんだ」

 

「あなたは言いふらすほど私に興味ないでしょう? 見た目に合わずにね」

 

「そりゃどーも、見た目よりは長く生きてるからね」

 

 

ベヨネッタの言ったことは正解だ。

トゥーンリンクが誘ってきたのだ。写し絵を取れる人がもう1人欲しいとのことで。渋々ながら了承したところ、いつもの子供組以上の人数が集まっていて驚いた。

というか、彼らは帰らなくていいのだろうか。もしかしたら知らないだけで頻繁に帰っているのかもしれない。また、巻き込まれた。その遊びのことを考えるとやっぱり胃が痛くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またこの夢だ。

夢の中で目が覚める…という表現もおかしいだろうが、夢にいると気づく時には同じ気配がする。

 

それはまるで、長い間住んでいた家は目をつぶっていようとそうだと見抜けるような雰囲気。

お粗末な寝台から体を起こし、流れるように檻に手をかける。円状に作られた檻の世界。しかし。

 

 

「(誰もいない…?)」

 

 

支配人、双子の看守、力を司る者…

誰もいない。自分しかいない。確実に誰かを感じるのに。

 

 

 

 

 

「ジョーカー!!」

 

 

自分で入れたコーヒーを飲みながら、高校の予習をしていた心の怪盗団のリーダー、ジョーカー否、雨宮蓮(あめみやれん)。少しうたた寝をしていたらしい。目を少しずつ開く。

 

 

「「ジョーカー!!」」

 

「起きてる…」

 

「ジョーカージョーカー、ちょっといい?」

 

「雨宮蓮、だからな?」

 

 

自分のもう一つの名を呼ぶ子供達に、ジョーカーは即座に訂正を入れる。

このスマッシュブラザーズに来てそれなりの時間が経ったが、苗字の後に名前という文化がないのか、ほとんどの人がジョーカーと呼んでくる。大乱闘の時は兎も角、平常時にそう呼ばれると少し恥ずかしい。

きちんと雨宮か蓮で呼んでくるのはリュウくらいだ。ケンやテリーはわかっていながらジョーカーと呼んでくる。

 

 

「ジョーカー、今度のお休み帰っちゃう?」

 

「そういう予定はないが…」

 

 

子供達のリーダー格、ネスの言葉に今後の予定を口に出す。

ジョーカーには普段の学業もあるので頻繁に帰る方だ。この世界とジョーカーの故郷とではかなりの時間の流れに差があるので、学業に穴を開けたことはない。二日三日こちらで過ごしても、向こうでは一日も経ってないと知った時には腰を抜かした。ゆえに時間を効率よく使うにはここの世界に残っていたほうがいい。

それにこっちが休日でも向こうでは休日とは限らないので、東京に遊びに行くこともできない。だからこの世界でゆっくりしようと思っていたのだが…

 

 

「じゃあさ、ネッシー探しに行こうよ!」

 

「ネッシー?」

 

 

ロボットのロックマンから世界一有名な未発見生物の話を聞く。

もちろんジョーカーとてネッシーのことぐらいは知っている。だが、最近では数ある情報はガセや偽物ではないかと考えられていることも。確かにこの世界にはいてもおかしくないが…

 

 

「ネッシーのね、姿を見たって噂があってね、みんなで探検隊結成したんだ!」

 

「トゥーンとこどもリンクが写し絵撮ってくれるって、多分そっちでも高く売れるよ、ふふふ…」

 

「(目が怖い…)」

 

 

ああ、なるほど。

むらびとの金稼ぎの一環に上手く載せられてしまったようだ。でも楽しそうだからいいか。

それでも疑問は残っている。

 

 

「どうして俺を誘うんだ?」

 

「えっとですね、フォックスさんに聞いた、んですが、ネッシーがいるっていう湖には、昔ドラゴンが住んでいたって、それで大人もつれていこうって、なりまして」

 

「他に誰がいるんだ?」

 

「えっと、今のところ僕とネスとトゥーンとむらびとと、ロックマンとジュニアとこどもリンク、ポポとナナは…」

 

「登山しに帰るからって断られたよ」

 

「ジュニアが頼むから多分クッパも来るよね!」

 

「後ジョーカー、です、」

 

 

もうすでにメンバーに入っていたことに愕然とする。押しが強い子供がこんなに扱いづらいとは。

 

 

「はあ、仕方ないか…」

 

「やったー! ありがとうジョーカー!」

 

「だから蓮」

 

 

そちらの押しも強かった。

ため息をつきながら了承する。あの場所で覚えた一抹の不安は掻き消えていった。

 




○すれちがい迷宮
すれちがいMii広場の有料追加コンテンツの一つ。
お化け屋敷的なところに迷い込んだプレイヤーがすれ違ったMiiからマップのかけらを貰い、内部を探索していく。うちの格闘Miiファイターはこのシリーズを経験済み。そこで何かあった結果、すれちがいフィッシングへ。


○ピンク髪の探偵服
一体何・ベルさんなんだ…? どこの天才助手なんだ…?


○ジョーカーの本名
シリーズでデフォルトにされている雨宮蓮となりました。なお、文化の違いでほとんど呼ばれない模様。他には漫画の来栖暁など。


○昔ドラゴンがいた湖
もしかして:レックウザ


○一ヶ月の内にあったかもしれない話
「ついに比翼英雄だと思ったら女の僕に先を取られた件」
「まあまあ…」
「神界英雄も比翼英雄も先越された。なんなら後輩にも。もう神装英雄か双界英雄に頼るしか…」
「ヒーローズの話は万人受けしないよ…」
「ルフレ、一緒に双界英雄になろう?」
「確約はできないよ…(先にクロムと比翼英雄になりそうで…)」
「(クリスも僕と先に比翼英雄になりそう…)」
「(もうソティスがいる)」



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3話 ときめきメモリアル

 

「うーん… キノコとポンプと… 他に何がいるかな?」

 

「お菓子、作っていきましょう?」

 

「食べれるのかな?」

 

「食べられなければ私たちで食べてしまいましょう」

 

 

マリオ、ピーチは準備をしていた。

しかし、それは旅行の準備であって帰省の準備ではなかった。

 

 

「どせいさんの村… この世界にあったなんてね」

 

「この世界にも、が正しいと思うわ。リュカにもネスにも話したけどあちらにもあるらしいのよ」

 

 

2人の旅行先はどせいさんの村だった。

キーラとの戦いの最中、中ボスとして戦ったギガクッパ。そこでピーチが引っこ抜いたどせいさんにまた会うためにその場所を割り出した。

この世界で普段は散らばって生活しているスマッシュブラザーズ。彼らから話を聞けば、見つけるのはそう難しいことではなかった。(インクリングにはデートデートとキャーキャー言われた。今更である。)

 

マリオの知り合いの多くはスマッシュブラザーズそのものであるし、他のみんなも割とこの世界に来ているので、どうしても帰りたいと感じることはそうそうないのだ。

 

 

「他のみんなはなにか予定を入れているのかしら?」

 

「うーん… ジュニアは友達とここで遊ぶって言ったし、クッパはその付き添い。ロゼッタは… 聞いてなかった。確かルイージは─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルイージの元を訪れたデイジーはあんぐりと口を開いた。どうして、どうして背中に背負ったオバキュームの調子を確認しているの? どうして懐中電灯を揃えているの?

 

 

「は、」

 

 

どうしてルイージがこっちを見て、あっやべっという顔をしているの?

 

 

「はあああ!? どういうことよこれえぇ〜!!」

 

「わっ… ごめん、伝えようと思ってたんだけど」

 

 

天まで届くほどの声がルイージの鼓膜を必要以上に振るわせる。咄嗟に耳を塞ぎ、謝罪の言葉を口にした。

ピーチ達にならって、この世界を2人で歩き回ろうと予定を立てていたのだ。ルイージは兎も角、デイジーはこの世界のことにそれほど詳しくない。だから2人で歩き回ろうとしていたのに。要するにデートに行こうとしてたのに。

ルイージの格好はどう見てもオバケ退治に行こうとしている。

 

 

「どういうことなのよ、これ!」

 

「えっと… 話せば長くなるんだけど…」

 

 

ある日ルイージの元にオヤ・マーから一報来たのだ。以前、マリオやピーチ達と共にいったホテルラストリゾート。オバケ達に嵌められながらもなんとかキングテレサもパウダネス・コナーも倒した。その後は立派なホテルとして再建されたはずなのだが…

 

 

「突然何かが襲ってきて追い出されちゃったんだって。それで助けに来て欲しいって… オバキュームを貸してもらってるし断れなくて…」

 

「はあ…」

 

「ワン!」

 

 

遊びに来ていたデイジーに気づいたのかオバ犬が駆け寄ってくる。呑気な顔だが犬に罪はない。頭を撫でてやる。

 

 

「仕方ないわ… なら私も一緒にオバケ退治に行こうじゃない! オバケだかバスケだか知らないけどそんなのに予定を狂わされちゃあたまらないわ!」

 

「えっ、デイジーでも、」

 

「でもも、何もないわ! 私が行くと言ったら行くの!」

 

「1人、助っ人を呼んでるんだけど…」

 

「………はあ?」

 

 

天地を揺るがすほどの大声は2度起きる。

オバ犬は呑気に転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンジェランド。

荒れ果てていた天空界もようやく復旧の目処が立ってきた。3年間ほとんど気にされてなかった繁栄であるが、徐々に光を取り戻しつつある。これならば、あの世界にあるレプリカのような姿を取り戻すことも、遠い将来の話ではないだろう。

 

 

「よっと、服はしっかりしてるし、月桂樹もつけてるし…」

 

 

パルテナ軍親衛隊長ピット。

主君のパルテナと共に元の世界に戻っていた。

彼らはまだ戦争の最中である。自然軍に属するブラックピットもスマッシュブラザーズに参加しているため、開催期間は大戦を休止している。だが、約束を反故にしないとは限らないし、冥府の残党の様子も見なければならない。だから帰れる時は帰って見張っているのだ。

 

 

「ピット、大事なものを忘れてます」

 

「えっ? なんですか、しっかり確認したのに…」

 

「ユーモアです♪ これがなければあなたはただの鶏みたいなものですから」

 

「いや、あの、パルテナ様?」

 

 

いつものことながらこの、遊び心が常日頃の主のノリには、たまについていけなくなる。

その女神は自分より後にあの世界に戻るようだ。

 

 

「冗談はさておき、神器、忘れてますよ」

 

「え? 本当だ、弓しか持ってない!」

 

 

そして気づいた。

パルテナの神弓しか持っていない。大乱闘に使う他2つの神器がなかった。

 

 

「持ってきてあげましたよ、ピット」

 

「本当ですか? ありがとうございます! って多くないですか?」

 

「キノセイデスヨー」

 

「嘘だッ!?」

 

 

大乱闘に使う豪腕ダッシュアッパーと衛星ガーディアンズ。それがあるのは正常だ。だがそれだけではなくパルテナの腕には、最初の撃剣、爆筒EZランチャー、射爪ブラウンタイガーが抱えられている。

 

 

「ああ、原作の仕様だと戦闘中の持ち替えはできませんからね」

 

「そこじゃないです!」

 

「それともアレですか? タブーの時みたいに神々しく渡した方が良かったですか?」

 

「そこでもないです!」

 

 

あの時の超越感はどこへ行ったのだろうか。

これではただの漫才師だ。神と天使の漫才なんて聞いたことがない。

 

 

「どうして持っていけって、言うんですか? そんなに持ち込んでも使えないですよ」

 

「ピット… あなたは悔しくないんですか…?」

 

「何を…ですか…?」

 

 

突然暗くなり、神妙な面持ちで語り始めたパルテナに、ピットも居住まいを正す。ごくんと唾を飲み込み、重要な話に耳を傾ける…

 

 

「コンパチとか言われてて!!」

 

「…はい?」

 

 

そんな耳は必要なかった。

 

 

「だって、そうでしょう? こんなに神器があるのに使ってる神器が1つ被ってるなんて! 衛星を爆筒にするだけでもだいぶ印象違いますよ!」

 

「そんなこと知りませんよ!」

 

 

押しに押された結果、結局全部持たされることになる。どうして。

理由はともかく、主人の好意を拒否することはピットにはできなかったのだ。どうして。

しかし、その判断が正しいと思わせる出来事が起こることを、ピットもパルテナも知らなかったのだ。

 




○ときめきメモリアル
1994年にコナミから発売された恋愛シュミレーションゲーム。男女二人組しか出なかったからこのタイトルにしたけど、絶対もっとあった。ちなみに最後の組に至っては恋愛的な意味ではない。


○どせいさんの村
前作のギガクッパ戦でピーチは会いにいくと約束したです。ぽえ〜ん。


○ラストリゾート
ルイージマンション3の舞台となったホテル。後半明らかに海とか砂漠とかあったけどホテル。エンディングでオバケ達によって再建され、オヤ・マーも気に入って住まうことに。


○神器
スマブラで使っている神器以外はオーソドックスな性能をした神器を選出。というかパルテナの神弓がトップクラスに上級者向け性能。


○設定上の小話
ピットとブラックピットがインクリング、もとい3号の正体がわからないのはプリキュアとかでよくあるルールです。いかに声や顔が同じでもヒーローとして姿を隠している事実がある以上、メタフィクションに造詣が深い彼らでは逆にわかりません。




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4話 今宵は飄逸なエゴイスト

「…ッ! ボルガノンッ!!」

 

 

強力な炎の魔法は茂みにぶち当たる。少なくはない血を流し、鬱蒼とした森の中でルフレは肩で息をしている。

 

突然だった。

邪竜ギムレーを倒した後も、全てが平和になるわけではない。山賊や人攫いの類はなくなりやしないし、ごく稀にギムレー教徒の残党がことを企てていることもある。

今回もそんな怪しい情報を得て、兵士とともに悪人へ奇襲を仕掛けたのだが…

 

 

「くう…!」

 

 

兵士どころか、盗賊にも斬りかかる謎の存在とルフレは戦っていた。斬り口からして巨大な剣の使い手。味方も敵もどんどん倒れ、今生きているのは謎の襲撃者とルフレしかいない。

 

この人数では策のたてようがない。体を抉ると言ってもいいほどの剣を扱う力も見事だが、厄介なのはそこではない。

 

 

先程から()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

未来を見通す力─ 時を巻き戻す力─

大乱闘の仲間たちを彷彿とさせるほどに敵の戦いは完璧なのだ。極論だが、当たらない限り負けやしないのだから。

ここまでされれば、ルフレでなくともこの襲撃者があの世界に関わっていることはわかる。なんとか捕まえて、報告しなければならない。だが、その前に勝てるのか?

 

 

「(ならば… 広範囲の攻撃! 賭けにでる!)」

 

 

トロンの魔導書とサンダーソードを同時に使って周囲の広範囲で攻撃する。ルフレには珍しく、武の悪い賭けだった。

 

 

「トロン!!」

 

 

痺れるほどの電撃が周囲を焼き尽くす。山火事になるかもしれないという心配をしている余裕はなかった。跳び上がって回避した襲撃者。そして気づいた。今まで茂みや木々に隠れて見えなかった。体こそ長いローブで隠してはいるが、その巨大な武器は隠せない。そんな、ならこの敵は…!

 

 

「───」

 

 

何かを呼んだ。だが動揺していたルフレにはその言葉を捉えられない。武器の一部分が赤く、丸く光を放ち、ルフレは凄まじい力に押し潰された。

 

 

「(まさか… どうして…!)」

 

 

何も理解できない。

思考の檻に閉ざされて、光が届かず消え失せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巨大な湖に落ち葉が浮く。まるで小舟のように漂っているが、じきに沈んでしまうだろう。大乱闘も何もない平和な日常が、まるでその落ち葉のように感じられた。

 

 

「釣りでもしたら良さそうな池だな」

 

 

独り言のような言葉。それを拾うものなどいないだろう。なんせ、ここには男1人しかいないのだ。それでも、返事が返ってくると知っていた。

 

 

『全く、おぬしは呑気よのう…』

 

 

男、ベレトの頭の中で声がする。その姿は彼にしか見えず、声も彼にしか聞こえない。それでも少女はここにいる。少女、ソティスを認識し始めたのはいつ頃だったか。そうだ、生徒たちとはじめて会ったあたりだった。

 

 

「呑気でいられればそれでいい。何も起きなければその方がいい」

 

『なんじゃ! ようは奴の言うことを信用しとらんということか? ならこの時間になんの意味があるのじゃ!』

 

「起きるかもしれないから動いているんだ。それに前払いの報酬もある。少なくともその奴は何か起きると確信しているんだ。そうでなければここまで凝らない。」

 

 

信憑性そのものを疑うソティスに対して、ベレトはあくまで冷静だ。真実でも嘘でもいいように動いている。

その様子に、ソティスは苛立ちを覚える。ああもさらりと返されては自分が間違っているようではないか。そのために別口から説得することにした。

 

 

『その報酬が怪しいのじゃ! あんなもの彼奴はどこから持ってきたのじゃ! もし、おぬしを寄せ付けないための陽動であったらどうする!?』

 

「調べてみて害はなかっただろう?」

 

 

報酬… ジョーカーと同じようにベレトは頻繁に帰るし、何もなければこの休暇だってガルグ・マクに帰っていただろう。

残る決断をしたのは不思議な邂逅がきっかけであった。フードで顔の見えない謎の男。男はベレトに()()を渡すと、この世界に異変が起ころうとしていることを伝えたのだ。それの対処をしてほしいと。自分が元傭兵で今は教師だということを知りながら。

確かに多くのファイターが故郷に一時帰宅をすれば、この世界の戦力は激減する。襲いかかったりするならば好機だろう。故にベレトは異変が起きていないか、あちこち見回っているのだ。

 

 

「それに全員がいなくなるわけじゃない。子供たちが予定を立てているのを聞いた。ここが故郷である者もいる。ここに残る者だっている。万が一自分がいない場所で何かあっても対処できる」

 

 

平静を保っていたベレトの表情が微妙に変化する。薄らと上がった口角。そんな変化にソティスはこれ以上何か言うのをやめた。何を言っても無粋な気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピコピコと電子音を鳴らしながら、プレイヤーの動きに集中する。汗をかくほど熱中するファルコ。熱くなりすぎて、右の操作キャラに敵キャラが近づいているのに気づかなかった。

 

 

「あぁ!? クソっ!!」

 

「あー! モバイルポータルに当たるなよ!」

 

 

ライフがゼロになって終了してしまったゲームを、怒りのままに叩きつけてしまう。分厚い板のような機械は床と接触して大音量。慌てて持ち主のソラが拾うが、画面にはヒビの1つも入っていない。海に潜ったり、雪崩れに巻き込まれたりしたが、それでも壊れなかったんだからこの程度ではなんともない。

 

 

「えー、なんだよこのスコア。オレだってもっといけるぞ」

 

「ファルコはゲーム苦手だからな」

 

「うるせえ! そいつの反応が悪いんだよ!」

 

 

大乱闘の世界に停めていたグレートフォックス船内では、フォックス、ファルコ、ソラがクラシックキングダムで競っていた。クラシックキングダムとは、ソラが持っていたモバイルポータルにダウンロードされた、やり込み系のミニゲームである。経験を活かしたソラは2番、フォックスは真面目な性格が活きて1番だ。ファルコは短気な性格が裏目に出た。

 

 

「にしても、ここよくわかんないものばかりだけどなんかカッコいいな!」

 

「変なところ触るなよ?」

 

 

ソラに機械系のロマンは通じるが、知識は通じない。軽く説明してやったら、大変感心したご様子でコクリコクリと何回も頷かれた。人、それをうたた寝と言う。

 

 

「ソラ、今度オレたち一度帰るから。しばらくここには来れねえぞ」

 

「…っ」

 

「ファルコ!!」

 

「いいよいいよ! オレのことは気にしないで!」

 

 

失言に動揺したソラを見て、フォックスが咄嗟に嗜める。でも、本人は失言のようには扱っていないようで、ファルコはソラの様子を監視しているようにも見える。

 

ファルコ的には、もっと喚いたり、行動に移したりすればいいと発破をかけたつもりだったのだ。

 

 

この世界に倒れていた、誰も知らない少年。

彼は、大切な人を助けるために自身が消えることを覚悟で戦っていたら、その大切な人を故郷に送り届けたのち、気づいたらここにいたと。

前例のない存在に、少しの間スマッシュブラザーズはてんやわんやしていた。そして、しばらくしてマスターハンドが調査の結果を報告する。

 

 

『私は君の故郷がどこにあるのか知らない。もう少し探せばわかるかもしれないが、少なくとも今調べた中ではわからなかった。』

 

『そして仮にわかったとしても… 力の()()を払った結果、君が消えることになったのなら、故郷の世界に戻した場合、そのまま本当に消えてしまうかもしれない。消えなかったとしても、君の世界から生まれた力の代償を外部の私が打ち消すのは禁忌だ。』

 

『君の存在がどこかの世界にあるのは感じるから、最適解はそこで帰り方を探すことだろうか。しかし、そこで君がどうなっているか恐らく君自身も知らないだろう』

 

『それがはっきりするまで君はここに残った方がいい』

 

 

故にソラは自分の故郷に帰れない。自分の問題は自分で解決するしかなくて、今は行動に移すこともできない。

 

自分がしたことに後悔はない。どうしても大切な人を助けたかった。だから消えるかもとわかっていても前に進んだ。怖くはなかったのだ。助けるという目的があったから。しかし、その目的を達成したから。今は怖い。自分がどうなっているのかわからない。この場所は楽しい夢に過ぎないのではないかと。

 

 

そういった恐怖を隠しながら、交遊を続けていく中、ファルコは珍しく自分から声をかけたのだ。

 

 

「(そんな都合よくいってる訳がねえ… 絶対騙されている…)」

 

 

程度の具合はともかく、マスターハンドに懐疑心を持つ者達の1人であるファルコは予測していた。

 

ソラの故郷を知らないというのは嘘だ。いくら迷い込んだ存在でも、なんの実績もなければ、よほどの奇想天外な戦いをするわけでもない者をスマッシュブラザーズには迎えまい。ソラの実績を知っているからこそ、マスターハンドは加入させたのだ。実績を知っているなら故郷くらい知っているはず。

そもそも、本当に力の代償が原因でソラは消えることになったのか? 根拠はないが、裏で手を引いていても驚かない。それが事実なら、この世界に迷い込んだのではなく、意図的に迷い込ませたことが確定する。

 

故郷の世界へ無理やり戻したら本当に消えるかもしれない。それが事実だったとしても、帰せないとは一言も言っていない。ソラの仲間が心配をして探していることは想像がつくのに、禁忌を理由にできないだと。

ソラがどこかの世界にいるならば、一刻も早くそこへ辿り着かせて、帰るための努力をさせるべきだ。

 

 

─ファルコは、マスターハンドが、ソラをこの世界に留めているために調査や身の安全を理由にしているのではないかと考えていたのだ。

 

 

根拠がない言いがかりと言われたらそれまでだ。その考えにたどり着いた瞬間、ファルコは滅多に感じたことのない、憐れみという感情を覚えた。

神の作品をよりよく見せるための犠牲者。少なくとも今回が終わるまでは調査(足止め)が終わることはないだろう。その感情はソラとの友情をうみ、マスターハンドへの疑念を更に深くさせた。

 

 

「あ! オレがフォックス達の世界に行くのはどうだ?」

 

「ダメだ。基本的にこの世界を通じて別の世界に行くのは認められていないんだ」

 

「ちぇ〜…」

 

 

どうか助けてやってほしい。

スマッシュブラザーズとの交流が、少しでも彼の心を救うように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの空間。

上下左右も重力もおぼつかない場所で、白い巨大な物体が通り過ぎる。

 

それはこの世界の支配人、マスターハンドだった。傷だらけで所々焼けたような焦げ跡が残っている。

 

 

『(コイツらは… 何者なんだ…?)』

 

 

いきなり人が来れないような場所へ入り込まれたと思ったら、創造の化身かどうかを確認され、肯定したらいきなり襲い掛かられたのだ。

もちろんただの不届き者ならば、一つ指を鳴らせば無へと還る。破壊の正反対の創り出す力を持つマスターハンドでも、相手がその程度ならば可能だった。

 

しかし、どうだろうか。

力は何かに吸収されるかのように掻き消えてしまったのだ。慌てずにビームを撃ってみても、まるで幻を狙っているかのように効果がなかった。そこを不意打ちされ、他の仲間に攻撃されたのだ。

 

 

『(なんなんだ一体…!)』

 

 

そうして揃った不届き者達。合計で7人のようだが、意識を集中させて見ても何かぼんやりとして正体が定まらない。まるで中と外がチグハグで合っていないような。

 

 

『くう…!』

 

 

真っ黒な世界に突然雷が落ちる。その雷はなんとか避けるも、もはや満身創痍だった。

キーラとダーズの事件から、復興と盛り上げに忙しなく動き、疲弊していた。

神に連なるものでも、疲れるのだ。パルテナはオーラム軍との戦闘で疲弊していたところを混沌の遣いに乗っ取られたし、女神ソティスやその眷属も疲労し、首を斬られれば死に絶える。それと同じように、マスターハンドも疲労で限界だったのだ。

 

 

『やむを得まい… あの男の言っていたこと… 非常事態があれば、スマッシュブラザーズの()()()()()()()に逃げろとの言葉… 信じてみよう…』

 

「…何っ!?」

 

 

マスターハンドの姿が光の塊へと変わる。それに驚いている瞬間に、光はこの真っ黒の世界でも見えないところへ飛び去ってしまった。

 

 

「逃した…!」

 

「あのファイター、って言ってたね」

 

「もし、見つけられたらわかるか?」

 

「ええ、マスターハンドの力の多くは手に入れたわ。だからあと僅かな力を持つファイターも、私が見ればわかるわ」

 

「じゃあ、探せー! ってこと?」

 

「…この阿呆の言うことは正しいが、その大半はわざわざ探す必要もない」

 

「我々でその大半を見よう。残りは探す必要があるが…」

 

「んじゃ、まず引き上げて作戦会議だな。おまえらもそれでいいか?」

 

「うん!」

 

「………」

 

「うん」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「わかった」

 

「うん、じゃあとりあえず戻ろうか、僕達だけの姿を手に入れるために」

 





○今宵は飄逸なエゴイスト
東方憑依華が初出の曲名。実際にはLive Verとついていたり。
依神女苑、依神紫苑のテーマ曲。ストーリー的にはプリズムリバー with Hが奏でている設定。ライブを背景にラストバトルとは粋ですね。


○ベレト
大団円ルートを作るとそれが正史になるから作らないという制作側の意図を汲み取って、本作ではルートについて明言はしません。お好きなルートをご想像ください。時系列的には未だ第一部。


○クラシックキングダム
キングダムハーツ3に登場するミニゲーム。王様やソラ等にキャラクターが置き換えられたゲーム&ウォッチ的なゲーム。地味に数が多い。アプリゲームのユニオンクロスでもやれる。ユーザーからはこんなのに力入れるならキーブレード墓場以降の本編に力を入れろとry
全て遊ぶとクラシックノーツが手に入る。


○うたた寝
ヒロのマイクロボットの説明に無言で首を傾げ、ハッキングやコンピューターの説明で首をコクンコクン(後者はデータのソラだけど)。
パソコンは一本ずつの指でキーボードを打つ。だからロクサスがコンピューターをキーブレードでぶっ壊したのか…(違う)


○ファルコの嫌な予想
大体合ってる。だが、少なくとも力の代償に関しては関わっていない。
うちのマスターハンドは非常に自分本位です。
余談だが、KHシリーズの最新作はKHMoMだが、その時系列でソラがどうしているか現状不明なのでKH3ReMIND後の時系列になっている。一年ずっと行動不能だったとか、一年後とかに復活したとか言われても驚かない。


○スターシステム
一ヶ月の間で、ソラはこの世界にいるクラウドとセフィロスが似ているだけの別人だということを知っています。果たしてKH2でどっか行った二人の行方が明言される日はくるのだろうか。



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Fire Emblem Sealed Sword “After”
5話 戦火を交えて


 

 

見えないものが見えるって聞くと特別な何かを感じない?

 

 

でも見えるものが見えないと異常って呼ばれるんだよね。この理不尽さはなんなんだろう。

 

 

見えない人にとっては当たり前かもしれない。

見える人にとっては当たり前かもしれない。

 

 

 

それをとってつけたかのように、やれ特別だ、やれ異常だと第三者がそんな烙印を押しちゃってさ。

 

 

違うんだよ。特別異常はどっちでもいいのさ。

自分が正常だと言い張りたいのさ。

 

だって未知というのは怖いから。

特別と異常と未知をまとめて『訳がわからない』で通している。自分を納得させている。

 

 

 

 

……ねえ、君達には僕がどう見える?

特別? 異常? 未知?

 

…ああ、わかっている。

ここにいるってことは少なくとも僕は見えているんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

着いた場所は森だった。インクリングは思った。運が悪いな、と。

 

 

「もー… ここどこの辺なんだよー…」

 

 

気分的には久々のナワバリバトルを楽しんだ後、インクリングは大乱闘の世界に戻った。スッキリしたし、ウデマエも上がった。だから意気揚々とこの世界に戻ってきたのだ。

しかし、たどり着いた場所は森の中。もっとわかりやすい場所ならば、頭の中の地図を頼りに求める場所へ行くことができる。しかし、この世界に森は結構あるので、木々だけではどこの森にいるのかわからないのだ。

 

 

「ピチュ!」

 

「おおっと、ピチュー! こっちにいたんだ!」

 

 

草むらから野生のピチューが飛び出してきた。知らぬ顔ではない。ファイターのピチューだとはすぐにわかった。

 

 

「ピチュー、ここどこの辺りかわかる?」

 

「チュ〜…」

 

「わかんないかー…」

 

 

思わぬ助っ人の登場に希望を持つも、ピチューもここがどこだかわからない模様。彼も戻ってきたばかりなのか、それとも迷子にでもなっていたのか。ポケモンの言葉がわからないインクリングには仕草や話の仕方で予測するしかない。

 

 

「うし、とりあえず一緒に森を抜けよっか。誰かと会えるかもしれないし」

 

「ピチュッ!」

 

 

ぴょんと肩にピチューを乗せて、森を進む。見回してみるが、この木や花に見覚えがない。

ピチューにも聞いてみたが、反応は薄かった。自分はこういうのあんまり気にしないし、ピチューも興味なさそうだ。単純に覚えてなかったんだろうと深く考えなかった。本当に見たことがないとは思いもしなかったのだ。

 

 

「おーい! 誰かいるー!?」

 

「ピチュー!」

 

 

二人して呼びかける。その声は木の葉の隙間を通り、花を風のように揺らした。返事は返ってこない。静かに待ってみたが、耳に入ってくるのは葉がこすれる音ばかりだ。

 

 

「応答なし。誰もいないのかな? まだみんな帰ってない?」

 

 

インクリングの帰りが特別遅かったわけではないが、世界の時の流れはそれぞれなのでその可能性は否定できない。ため息をついてまたとぼとぼと歩き出そうとする。

 

 

「ピチュッ!」

 

「えっ! なに、誰かいた?」

 

 

ピチューは見た。少し遠く。茂みや木々に隠れてどんな人かまではわからなかったが、明らかな人影を。指差し声を上げてインクリングに伝える。彼女も言いたいことは大体わかったようだ。

 

 

「待ってー! 誰かわかんないけど待ってー!」

 

 

全力で駆け出す。木がなくて少し開けた場所。そこまで走りながら声を上げる。しかし、いたはずの誰かもいなければ、返事もなかった。走りながら声を上げることで息切れしたインクリングはぜえぜえと荒く呼吸をする。足は止まってしまった。

 

 

「はあ…はあ… ここにいたの? 本当に?」

 

「ピチュッチュ!!」

 

 

信憑性を疑うインクリングにピチューは怒る。

だって、一生懸命走って声をかけてるのに返事もしないなんて人そうそういるわけ… いた。セフィロスとかカズヤとか如何にも無視しそうな人いた。

 

 

「インクリングにピチュー?」

 

「ひゃうわ!?」

 

 

どよんとした心境に一石が投じられる。

はっ、と振り返るとカムイがいた。身長の関係で覗き込まれる。

 

 

「なんだ… カムイだったんだ… 無視されたのかと思った…」

 

「?」

 

 

ピチューが見た人影はカムイだったのかと納得する。だが、冷静に考えるとわかったはずだった。カムイは背後からやってきたことに。

 

 

「カムイー、ここってどこの辺り?」

 

「うーん… 実は僕も戻ってきたばかりでわからないんだ。」

 

「そっかー…」

 

 

しかし、頼みの綱のカムイも何も知らなかったようでガックリと肩を落とす。

 

 

「とりあえず… 一緒に行こうか。目印になるものを探そう。」

 

「うん!」

 

 

ということで仲間になったカムイを先頭にして歩き出す。

 

 

「ねーカムイ、カムイは何して過ごした?」

 

「兄弟のところに行って、囲碁をしてたかな」

 

「イゴ?」

 

「えっと、盤上に白色と黒色の石を並べて陣地を取っていって…」

 

「??? よくわかんないけど古くさいやつ?」

 

「難しいか…」

 

 

ハイカラなインクリングには少し次元の違うお話であった。遊戯とかゲームだとか言わなかったのでインクリングには難しいものと判断されたのだ。多分半分は聞いてない。ちんぷんかんぷんなインクリングがよそ見して歩いていたら、前方の背中にぶつかった。

 

 

「いった… もう! 急に止まらないでよ!」

 

「ピチュー!」

 

「…………」

 

「カムイ?」

 

 

何も言わないカムイを不審がって、カムイの顔を覗き込もうとするインクリングを無意識に動いた手が止めた。

 

 

「…カムイ?」

 

「…ちょっと目を瞑っててくれるかい? ピチューも。」

 

「チュ…?」

 

「え? うん…」

 

 

再び呼びかけたインクリング。カムイの返答は少し不自然なものだった。よくわからないが二人とも言うことを聞くことにした。ピチューは両手足に力を込めて落ちないようにしがみつく。二人が来たのは真っ暗闇。インクリングの腕を誰かが引っ張る。カムイだろう。

 

 

「こっち」

 

 

導かれるままにカムイについていく。

サプライズにしては少し長くて。恐怖から開きそうな目。薄目で覗こうかと思ったが、「こっそりのぞいちゃダメだよ」と先回りで忠告された。なので従順に従っておくことにする。こういって驚かせるのはインクリングは好きだ。

 

 

「あっ、ちょっと待って!」

 

「えっ、何!?」

 

「ピチュ!?」

 

 

その思考は突然のカムイの言葉で妨げられた。流石に忠告を守りきれず、目を開いた。整備された道には出たが、驚くようなことはなにもない。

 

 

「あーあー…」

 

「どうしたの?」

 

「虹色の鳥がいたんだけど… 逃げられちゃって…」

 

「そんなー! ていうか別に目隠しする必要なかったんじゃない?」

 

「ピチュ…」

 

「えっ何その顔、もしかして大はしゃぎして驚かせるかもって!?」

 

「あはは… まあ、最初の目的は達成したし、道沿いに歩いてみようか」

 

「はあ… 見たかったな…」

 

 

しょぼくれたインクリングは先頭に出る。というかカムイがこっそりと後ろを確認したかったのだ。

 

 

「(どういうことなんだ…!? この光景が真実ならここは大乱闘の世界じゃない…!)」

 

 

虹色の鳥などいなかった。デタラメだ。

なぜわざわざ二人に目を瞑らせたかというとこの光景を見せたくなかったからだ。

 

 

夥しい数の人。まるでこの世の地獄のように倒れていた兵士。果たしてあの中の人間がどれだけ生きていたのか。もしくは全員死んでいたのか… 折れた矢や未だ鎮火していない火柱はこの場所が戦場であったことを表していた。

 

平和を取り戻したはずのカムイの鼻にツンと思い出させる血の匂い。

 

嫌な予感がした。

 





○章タイトル
ファイアーエムブレム 封印の剣の海外版タイトル… にしたかったのだが、発売されていないので直訳です。


○タイトル
ドラゴンクエストVの通常戦闘曲。最初の低い部分が堪らんと、音感ゼロ人間が語ってみる。5曲つくって4曲没にした苦心の一曲。


○ピチューの見た人影…?
カムイではないようです。


○虹色の鳥
ホウホウイメージ。カムイのでまかせではありますが。


○カムイの兄ムーブ
甘いと言われたカムイも成長しますって。


○なんだこの展開!?
あれ、言ってませんでした? 前作よりかはシリアスになるかなと…
流石にこの章が一番シリアスかなとは思いますが…


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6話 蘇る炎の紋章

 

「ここは… 野営地?」

 

「ヤエイチ?」

 

「外で泊まる時につくる拠点… ってところかな」

 

 

一抹の不安を拭いきれずにたどり着いた場所。テントのように建てられた簡易的な天幕だ。

 

 

「ところで、なんで隠れてるの?」

 

「しっ」

 

 

木の影で、カムイは少し困ってしまう。ここにいるのは戦争中の兵士たちだ。ピリピリしているだろう人間にインクリングやピチューを見られたらどうなるかわからない。そもそも、自分のような部外者がいるだけでも怪しいのだ。ここが大乱闘の世界ではないのならば、自分たちのことを知らない可能性の方が高いのだから…

 

 

「誰!?」

 

「!?」

 

 

しまった。考えていたら、接近している足音に気づかなかった。青い長髪に対象的な赤色の服の少女。メイジなのか魔道書を持っている。

 

 

「あたしはインクリング! この子はピチューね!」

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 

しまった。カムイは先程の戦禍の跡を見ているからこそ、違う世界だと予想できているが、インクリング達はそれを知らない。故に事情を知っている相手だと思っているのだ。どうしよう。どうすればいい。

 

 

「きゃ!? ってあなたは…!」

 

「ほえ?」

 

 

少女は見慣れぬ生物の姿に驚いたが、見覚えがあるようでインクリングをまじまじと観察する。相手方は覚えのないようだが…

 

 

「そうだ! あなた、私を助けてくれた子でしょう? 私はリリーナ。覚えてる? 私やみんなが魂だけになったときに塔の前で…」

 

「…ああ! もしかしてリンク助ける時にいた子!」

 

 

インクリングは思い出す。はじまりの塔の前。キーラとの戦いで、リンクとシークの戦いを円滑にするためにスピリットの露払いを自ら志願していた。おそらくそこにいたのだろう。

 

 

「知り合いか… どう言い訳しようと思った…」

 

「待ってて、ロイを連れてくるわ!」

 

「ロイの知り合いだったんだー」

 

 

緊張のあまりに溜まっていた息を吐く。偶然にも大乱闘の世界の事情を知る人間で助かった。

それから少しして、ロイがやってきた。

 

 

「…! 信じてなかったわけじゃないけど… 本当に君たちなんだ…!」

 

「ピッチュ!」

 

「ロイー! ひっさびっさ! でもないのかな?」

 

「…こっちに。ここじゃ誰が見てるかわからない」

 

 

3人は一つの天幕に案内される。そこはロイのためのスペースだという場所で、人払いも済んでるという。

 

 

「カムイ、ピチュー、インクリング。会えて嬉しいよ」

 

「あたし達も! ところでなんでヤエイ? してるの?」

 

「…少し事情があってね」

 

「多分… ここは僕たちの知る大乱闘の世界じゃないんだろう」

 

「ピチュ!?」

 

「えっ!? そうなの!」

 

「流石カムイ。よく知ってるね」

 

 

カムイの言葉にインクリングとピチューは驚く。だって、自分達は確かに自分の世界から大乱闘の世界に戻った筈だ。

 

 

「え、え、だとしたらここはどこなの!?」

 

「ここは、僕たちの故郷の世界… エレブ大陸だ」

 

「えええ!?」

 

 

天幕を飛び越えて外に漏れるんじゃないかと思うほどの声量。予想していたカムイは驚かなかった。

 

 

「僕がこの世界でフェレ領の統治をしていた時、謎の戦士が攻めてきた。姿の見えない、戦士だった。」

 

「姿が見えない…?」

 

「どうかした?」

 

「…いや、取り敢えず最後まで聞くよ」

 

 

何か怪訝に思ったカムイがロイの言葉を復唱したが、続きを促す。先程からあまり顔色が良くない。

 

 

「だから僕はあちらの世界に戻ることもできずに軍を率いて戦っている。ただ相手側の目的がわからなくて押され気味だ」

 

「あたし達、自分達の世界から大乱闘の世界に戻ってきたはずなんだけどどうしてロイの世界にいるんだろう?」

 

「薄々思っていたことだけど君たちのおかげで確信した。大乱闘の世界関係で何かが起きている。それもマスターハンドの手が及ばない何かが…」

 

 

マスターハンドの監視下ならば、3人をロイの世界に送ったりしないだろう。少なくともこの現象をマスターハンドは気づいていない。一体何が起きているのか…

 

 

「そんな… それならはやくあっちに行かないと…!」

 

「そうしたいけど、その場合ここを放っておくことになる。それに… 僕は兎も角君たちがあちらに行けるか怪しい」

 

 

そう。3人にとってここは異郷なのだ。第三の世界への移動は本来禁じられていること。だからこそマスターハンドが与えたのは、自分の故郷の世界と大乱闘の世界を行き来する権利だ。エレブ大陸から3人が移動できるかは不明だ。

 

 

「そして僕は戦乱が収まるまでここを離れる気はない。おそらく相手側の指揮官が何か知ってると思うからそこを叩くつもりだ。」

 

 

当然だ。ロイはフェレ領を統治する貴族なのだ。民を守る義務がある。この大陸の、人の可能性を信じたのだから、それを守らなければ。

 

 

「ロイ、さっき言いかけたことなんだけど」

 

「どうかした?」

 

「姿が見えない兵というのに心当たりがある。透魔兵。亡くなった人の魂を使った兵士… 見てないから確証はとれないけど…」

 

「あちらの世界のことを知っているならば、カムイの世界の術を会得していてもおかしくない、か。」

 

 

透魔竜ハイドラは敗れて、あのおぞましき術は消えたはずだった。それがのさばっているなら、放ってはおけない。

 

 

「ロイ、僕も戦う。透魔兵なら僕の知識が役に立つかもしれない。」

 

「ありがとう。戦力は少しでも多い方がいいからね」

 

「えっ、えっ、じゃああたし達も!!」

 

「ピチュチューチュ!」

 

「ダメだ。君たちはここにいて」

 

 

少しずつお話についていけなくなったインクリングは咄嗟に自分とピチューも参戦する旨を伝える。だが、ロイの答えは喜ばしくないものだった。そこへ、忙しない足音が響いた。それはリリーナのものだった。

 

 

「ロイ! 敵が攻め込んでくるって! 準備をお願い!」

 

「わかった!」

 

「戦力は多い方がいいんでしょ!? あたし達も戦えるよ!」

 

「ダメだ。ここは君たちの知る世界じゃない。油断すれば自分の命に繋がる!」

 

「でも!」

 

 

頑ななロイになおインクリングは食い下がろうとするが、カムイが視線を合わせてこう言った。

 

 

「インクリング、ピチュー。僕たちは負けないよ。必ず勝ってこの事件の手がかりを掴む。だからここで待ってて… いこう、ロイ!」

 

「ああ…っ!」

 

 

置いてかれた2人はやけに静かに感じる天幕に座り込む。

 

 

「なんだよ、2人とも子供扱いして… 大乱闘が関わってるならあたし達だって無関係じゃないのに…」

 

「ピチュ!」

 

 

寂しい。人が出払っただろう駐屯地は不気味な静けさに包まれていた。ピチューは子供扱いされたように感じて、ご立腹だ。

 

 

「…ずっと大乱闘で戦ってるのにさ、あたしが勝ったことだってあるのに…」

 

「チュ…」

 

 

寂しさは段々怒りに変わっていく。どうして置いていったの、あたしだって強い、あたしだって戦える…

 

 

「こっそり、ならいいよね?」

 

「ピ!」

 





○タイトル
ファイアーエムブレム封印の剣のキャッチコピー。
今作では何人かのファイターがどっかの世界で未知の敵と戦います。章のタイトルはその舞台を指していた、ということですね。


○リリーナ
ロイの幼馴染でオスティア公女。
父親同士に交友関係があり、そこからの縁です。非戦闘要員のギネヴィアがヒロインしてるから、ヒロインの座が危ない危ない。嫉妬が心配されるほどの魔道の使い手です。エンディング後なので杖も使える賢者設定。前作で妄想が爆発したインクリングの手によってスピリットの彼女が助けられています。
メインがファイターだけというのも寂しいので、ゲストの助っ人キャラも投入しました。一応言っておきますが、ゲストは彼女だけの予定ではないのでFE優遇ではないです。(好きなのは否定しない)


○透魔兵
透魔竜ハイドラの兵士。死者の魂が利用されており、FEif内では身内が敵に回ったりしている。子世代の外伝マップでも時折登場。水の竜だからか水から登場したり。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「マリオ! キャンプにあの噂の男の娘が!?」
「遂にぶつ森もこの境地に上がってきたな…!」
「パッチもニコバンも居たのに!! ぼんやり被ってたのに!」
「村長! 住民の皆さんに平等に接してくださいよ!」
「僕だけに言わないでよ!」


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話2
『ふふふ… これで私もレアモノか…!』
「ピカ、ピカピカチュ! ピカッチュ!(ちかつうろが楽しすぎて全然進んでないって」
『何ぃ!?』
「人の迷言を取るな」



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7話 選択が未来を紡ぐRPG

 

思い出す。

アクアの母、決意を込めた花、きょうだいの父、自分の母─

 

 

もし、自分の進む道が違っていたら、救えなかったきょうだいともこうして相対していたのかもしれない。

 

 

死者として操られるという最悪の形で──!

 

 

 

 

「この…!」

 

 

許せない。許せない。誰が、一体誰か使っている。誰か死者の尊厳を踏み躙っている。

 

 

「カムイ、大丈夫?」

 

「うん… やっぱり透魔兵だったよ…!」

 

 

歯軋りしながら向かってくる敵に夜刀神・終夜を振るう。カムイの目にはしっかり見えていた。水面の如く揺らめく紫炎の陽炎。破壊を望むだけの尖兵。

 

とはいえ、カムイは怒りに囚われたりしない。背後から斬りかかってくる剣士を一刀両断する。揺らいだ姿は消えてその奥にはダークマージ。竜化して水流で押し流す。3人に対して過剰すぎる数十はいるような数にも全く負けていない。

 

 

「あれは… 竜族だったの?」

 

「うん、カムイはファやイドゥンと同じように竜の血を引いているんだ」

 

 

彼らのことは知っていても、神祖竜の力のことは知らなかったそうだ。敵に雷を落としながら、リリーナが呆然と呟く。

 

 

『話してる暇はないよ!』

 

「うん… 敵が多いから指示を出す暇もないんだ…!」

 

「そうだわ、どうにか敵を一箇所に集められない?」

 

 

はっ、とロイはリリーナの方を向く。そうだ、この状況でも、リリーナの持つ()()()()ならば、どうにかできるかもしれない。

 

 

「カムイ! トドメはリリーナがどうにかする! どうにか敵を集めよう!」

 

『わかった!」

 

 

竜化を解くと、カムイは何かを取り出す。剣でも竜石でもない。それは魔道書だった。ロイの知るものとは少し違うが、秘められた魔力は知っているものだった。

 

 

「魔法も使えたの?」

 

「うん、あんまり威力はないけどね!」

 

 

弓聖に電撃が襲う。その魔法はロイでも知っている。実は魔導士志望だった過去があるロイは基本の魔法であるサンダーくらいは知っていた。

 

そう、ファイターのルールにとらわれないここでならば、普段使えるというのに大乱闘では使えない力もちゃんと使用できるのだ。

魔法に多少の適性があったカムイは、剣、竜石のほかに、魔法と杖が使える。

 

遠距離から攻撃された弓聖がこちらに気づく。まっすぐに飛んできた矢をロイは回避し、カムイとともに飛び出す。

殴りつけてきた拳を避け、さらに敵陣の真ん中へ進もうとするが…

 

 

「ぐぅ…!」

 

 

鋭いものが左腕に突き刺さる。レイピアのような細身の剣だった。咄嗟に封印の剣を動かし、下手人を弾き飛ばす。

 

 

「ロイ! 大丈夫!?」

 

「だい、大丈夫。利き腕じゃない」

 

 

一番深いのは先程の傷だが、他にも細かな傷が重なっている。人数差のせいだ。一人一人はそこまで苦戦しない。だが、大勢で囲まれているせいで普段なら避けられる傷がつく。他の仲間達はどうなっているのだろう。こちらの事情などお構いなしの連発されている襲撃は、確実に軍の士気を奪っていた。

 

 

「ああ! もう鬱陶しい! どれだけいるんだこれは!」

 

 

攻撃的な思考が折られて、段々と守備的な思考に移り変わっていくのを気づくことはない。無意識的な出来事だったのだ。

少し手を出して敵を集めることはできているが、このままでは抜け出せない。

 

 

「…! カムイは防御を頼めるかい? 僕が攻撃に入る!」

 

「防御に? …防陣! わかった!」

 

 

ロイは前衛に、カムイは後衛に。

ロイは適当に前方にいた巨体の剣使いの方へ駆け出した。横っ面へ飛んできたファイアーをカムイは斬り払う。鍔迫り合いで隙をつくったロイのカバーに入り、裂こうとしていた刃を押し留める。

 

 

「(やっぱり… カムイが防御に入ってくれると調子がいい。)」

 

 

マルスとどことなく似た雰囲気を感じるとは思っていた。きっとこのことだ。()()()()()()のおかげだろう。いつもと比べてスムーズに体が動く。

 

 

「ロイ! カムイ! そのあたりで大丈夫!」

 

「わかった! カムイ!」

 

 

まっすぐに力を込めていた剣で、敵の得物をいなす。流れをつくって地面を抉らせた。即座に竜化したカムイに乗り、空へ飛び出す。

 

 

『…っ!?(この力は…!)』

 

 

下にいるリリーナの元へ魔力が集まっているのをカムイは感じ取っていた。これはドラゴンキラーなどとは比にならない。神祖竜の血を濃く受け継ぐ自分が受けたら、きっと骨も残らない。だってほら、現に自分に向けられてもいない武器に本能的な恐怖を感じる。一人でに矛先がズレて自分に当たってしまうんじゃないかと思わせるほどだった。

 

その武器、魔道書は竜を殺すための道具。

リリーナの手から離れた獄炎が相手を焼き尽くす。

 

 

『業火の理』 フォルブレイズ

 

 

神将器。神の力を宿した武具。全盛期に世界の秩序を乱し、終末の冬を呼び起こした武具の一つ。竜を殺すための兵器。

 

 

「…さすが。」

 

 

ロイがポツリと漏らした。

力を失った今の状況でこの威力なら全盛期はどれほどの力を持っていたのだろう。

数十もいた敵側の戦士はもはやいなかった。大地はクレーターの如く抉れ、元の姿を忘れて真っ黒になっている。黒煙が上がり、未だに完全に鎮火しておらず、小さな火柱が上がっている。

竜を殺すための兵器とはいったが、相手が竜でなくても普通の武器を凌駕する力はあるのだ。

 

 

「うん、もう下がっていいよカムイ」

 

『…怖かった。足の先でも触れたらきっと大惨事になってたよ…』

 

「え? ごめんなさい、掠ってたの?」

 

『いや、こっちの問題だから大丈夫。なんというか… ドラゴンキラーも目じゃないぐらいの魔道書だったね…」

 

 

ロイを下ろしたカムイが、竜化を解きながら話す。まだ手の震えが止まらない。ロイの仲間のことだ。信頼に値する相手だ。だからこれは竜の血による本能的な恐怖なのだ。

 

 

「そうか、神将器は竜を倒す武器だから… でも、いつかそんなもの必要ない世界をつくる。そこではカムイみたいな存在も笑って生きていけるんだ。」

 

「うん、その夢すごくいいと思う。僕も応援するよ」

 

「ロイ、私も力を貸すわ。」

 

「ありがとう、リリーナ、カムイ。まずはこの戦いを終わらせないと。他にも敵がいるはずだから…」

 

 

ここにいる3人とも違う声、鳴き声を耳で受け取り、ふと会話を止めた。全員がその声の方角へ顔を向ける。大勢の戦士達に追われている小動物。

 

 

「チュウウウ〜!」

 

「「ピチュー!?」」

 

 

こちらに気づいたピチューは向かってくる。勿論敵も同じだ。休憩を取る暇もなく、剣を抜く。ピチューは応戦する素振りも見せず、ロイとカムイの足をぐいぐい引っ張る。

 

 

「どうして!? 残っててって言ったじゃないか! インクリングは!?」

 

「ピチュ、ピチュピー!!」

 

「何かあったの!?」

 

 

剣士を斬りながらロイが聞く。声を落ち着かせる暇はない。

 

 

「ピチューチュチュ! チュチュピーチュ!」

 

「もしかして… インクリングに何かあったの?」

 

「ピチュ!」

 

 

一気にロイは考えた。ピチューは確かに怪我をしているが、焦げによるものが多く、自分の電撃で傷ついたものがほとんどではないか。なのに敵のあの人数。つまりあの追ってきた敵に対してほとんど戦っていないのではないか。ピチュー一人なら返り討ちにしようと戦っただろう。助けは求めないのでは。

だが、もしインクリングに何かあって助けを呼びにきたのなら?

あの戦うことが好きなピチューが戦うより優先することがあるのなら?

 

 

「案内できる?」

 

「ピチュ!」

 

「ロイ、行って!」

 

「ここは僕たちがなんとかする!」

 

「わかった! 魔法主体で戦って! 決して無理はしないように!」

 

 

カムイとリリーナの力で敵がぶっ飛び、道ができるように空いた。そこを全速力で駆けていく。

 

 

「(無事でいてくれ…!)」

 

 

戦場では瞬く間に多くの命が消えていく。

それを知らない彼女に、そんな惨い現実を知らせたくなかった。

 

刃で命を奪う軍人にとって、命をかける必要のない大乱闘は何よりも尊いものだから。

 




○タイトル
テイルズオブエクシリア2のジャンル名。キャッチコピーじゃないの?って思うかもしれないけどテイルズオブシリーズはこんな感じ。
主人公がストーリーの中でさまざまな選択を迫られ、それによって展開が変わらなかったり変わったりする。テイルズでエンドが複数あるゲームはあるけど、エクシリア2はエンディングいっぱいあります。
そして、FEifもまた選択が未来を紡ぐRPGである。(Sがつくけど)


○原作能力
本作では大乱闘の世界にいない都合上、本来の能力を遺憾なく発揮できます。カムイの場合、カムイと子の専用職である白の血族、ダークブラットが使える、杖(他者の回復)と魔道者が使えます。
持ち物としては、夜刀神・終夜、竜石、夏祭、サンダーを持ってます。本職ではないので基本的なものに限る。フィギュア化のデスベホマができないので、治療ができる人材は貴重です。プロローグのピットが色々と神器を持って行かされたのもそういうことです。


○不思議な魅力
カムイの固有スキル。
後衛の時に前衛と支援レベルが上がっていれば、前衛をパワーアップさせる。カムイは割とサポーター性能が高い。


○神将器
封印の剣の神器枠。人竜戦役で八神将が使用した武器。
あまりにも強すぎて終末の冬を起こしてしまったが、長い年月で今はそれほどの力はない。最高に強い武器ではないが、最高の竜殺しの武器。
カムイがやたらと恐れていたのはそのため。カムイ竜特効喰らうから…
ちなみに封印の剣は神将器ではない。神将器より上。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
『ポフィンづくりにきのみにアンノーン集め…! こいつはダイパクリアする気あるのか!!』
「ピカピカ、ピカッチュ!(ヒンバス探そうかなーって言ってたよ)」
『わかった! クリアする気ないな!!』


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話2
「崇めよ、私を崇めよ。我グラニー賞ぞ? これで私もレア物か…!」
「メタナイトが調子に乗ってる… どうしようアイク…」
「…わからん。」
「カービィカフェのメニューを投げろ! 夜な夜なパフェだ!」
「うわ、斬りかかってきた!」




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8話 僕にこの手を汚せというのか

 

「異常なーし! この辺じゃないかー」

 

「ピーチュ」

 

 

少し時は戻る。

天幕からこそこそと抜け出したインクリングとピチュー。戦争だと聞いてこっそり、慎重に進んでいるが、特に変化はない。遠くで刃と刃がぶつかる音や断末魔が聞こえるが、この場所には何もなかった。

二人はその音の真の意味を知らない。

知らないままに進んでいる。

 

 

「ロイとカムイはどこにいるんだろう? あたし達だって戦えること教えてやらなくちゃ」

 

「ピチュ!」

 

「後でロイに教えるから倒した数を忘れないでね? ナワバリバトルだと後でカウントしてくれるけど、ここじゃそんなのないからね」

 

「チュ〜…」

 

「あはは! ナワバリバトルわっかんないよね!」

 

 

こっそりと自分で伝えたにもかかわらず、つい大声になってしまうインクリング。ピチューに制されなければ、そのまま隠密だと忘れるところだった。

 

 

「といっても、ずっと何もないし… がっつり前にでちゃお」

 

 

茂みや木々に隠れて進む。先程の会話で、自分達の事情を知っている人が少数派なのは知った。だからこそ、どこか敵しかいない場所を見つけなければいけない。

といいつつも、何も変わらない状況にインクリングは飽きてきたのだ。隠れつつも慎重さを失ってぐんぐん進む。草むらを踏み締める音が鳴った。

 

 

「…!? 誰かいるのか!?」

 

「あわっ…!」

 

「〜ッ!」

 

 

知らない声がこちらへ向かってくる。咄嗟にピチューの口は塞いだが、無意識のうちに口から漏れでた声を受け取られてしまった。

 

 

「子供…!? ここは危険だ! はやく逃げろ!」

 

「あた、あたしは」

 

 

どうにか取り繕うとなんとか言い訳を考える。武器のぶつかる音が焦らせ、そのまま逃げるという選択肢が思い当たらない。

 

 

「逃げ…っ、ぐああ…!」

 

「えっ」

 

 

吹き飛んだ男。二人の側にあった木の幹にぶつかる。そのまま重力で落下する。目は開いたまま。こっちのことは見えているはず。なのにインクリングを見ても驚かない。

 

そうだ、驚くはずがない。

一見なんの特徴も持たない一人の人間。道を通り過ぎただけなら記憶にも留めないだろう存在。どこもイカしていない普通の人間。

 

そんな存在にインクリングは目を離せなかった。

 

見開いたままの目は閉じない。瞬きの一つもしない。所々から溢れる赤が物語っていた。理解が追いつかなかった。信じたくなかった。

 

 

死んでる。何にもならないようなちっぽけな存在は絶命していた。数瞬前まで会話をしていたはずの人があっけなく死んだ。

 

 

もう話さない。

名前もわからない。

どうやって笑うかも知らない。

知る機会は永遠に失われたのだ。

 

 

「ぅぁ… わ、が…」

 

「ピチュチュ!!」

 

 

動揺しながらも、ピチューは肩から降りて臨戦体勢を取る。でもインクリングはそれができない。目の前に大量の敵がいる聞いた通り集中しないと形が捉えられない透明なインクを纏っているような存在で戦わなくちゃ戦わなくちゃとスプラシューターを構えて敵に向けるもその手は震えていてもし相手が見え方が奇特なだけでただの人間だったら死ぬ原因を自らの手でつくることになってさっきの男の人と同じように目を見開いて何も感じないかんじられないようにしてしまうんだとかんがえるとふるえてふるえてあいてのぶきにちゅうもくしてせんとうのたいせいにはいろうとするもみえなくてなにももたないそのみひとつでたたかうそんざいであることにようやくきづいてあしくびがかたくてうごかなくてともだちのこえもきこえなくなってにげないとにがさないとにがさないといのちがきえるはなせなくなるなにもできなくなるたたかわなくちゃたたかわなくちゃたたかわなくちゃ───

 

 

「あ゛あ゛あ゛!!」

 

 

勢いだけの膝蹴りは敵の顔面らしきところへクリーンヒットした。あたり構わずインクを撒き散らし、最初に崩れ落ちた敵に何度も何度もスプラシューターを叩きつけた。視界の端にピチューがいる。口を開いて動かして。何かを言っているのに何を言っているか聞こえない。

 

 

「逃げて逃げて逃げてぇ!! 逃げてよぉ!!」

 

 

自分の言っている言葉が支離滅裂になっているのを自分ではわからない。逃げてという言葉。ピチューに対して死なないように言っているのか、相手に対して殺したくないから言っているのかもわからない。

 

 

「ピ… ピチュウウウゥゥ!!」

 

 

錯乱した友人を止めたくて。発する言葉に悲壮感が満ちていて。気がつけば自身の身などお構いなしに全力の電撃を放っていた。

 

 

「あぐう…! あああ゛!!」

 

 

周りの敵全ては勿論、インクリングすら焼き尽くすほどの電撃。敵達は全て虚空へ消え去り、ようやく彼女の焦点が合う。その代償にピチューは限界だった。

 

 

「あれ… ピチュー…?」

 

「ピィ… ピィ… ピィ…」

 

 

自分のせいで、なんて考える余裕はなかった。錯乱しててピチューのことはほとんど覚えていない。理解できないと周りを見渡す。もう敵はいない。どうして? いや、一人いた。焦げた戦場を悠々と横断してやってくる。

 

 

『逃げて、か。逃げる必要はない。はっきりわかった。おまえは俺に勝てない』

 

「えっ、喋った…?」

 

『話せたら悪いか?』

 

 

その格好は周りの存在と同じ。はっきりと見えない蜃気楼。しかし、喋れることよりも二人の意識は得物に向かっていた。

 

 

「(綺麗…)」

 

 

その武器の美しさに目を惹かれた。赤い宝玉が埋まった金縁の洋風の柄、和風刀の刃。そんなチグハグな武器だというのに、その白い刃から目を離せない。深雪のような穢れなき刃。一般的な武器に興味がなくともわかる、名刀の一振りだった。

その武器だけははっきりと視認できたのがおかしいことだと判断が遅れるほどに見惚れた。

 

 

「ピチュッ! ピチュチュ!!」

 

『どうして俺が無事なのか、だと? 敵であるお前たちに話す必要はない。』

 

「ピチューの言ってることわかって…!?」

 

 

ピチューの言葉が理解できることに驚いた束の間、白刃が突かれる。インクリングのゲソを少し引き裂き、開戦の合図をだした。彼女は動けなかった。

 

 

「えっ…」

 

『インクリングか… おまえはまだ調()()()()()()。普通ならおまえは俺に勝てん。底力を見せてみろ!!』

 

 

反射的にスプラシューターを発射した。後ろへ飛び上がった敵には届かない。すぐにホットブラスターを撃つも、爆発の範囲外だ。

 

 

「高い…!」

 

「ピーチュ!!」

 

 

敵は高く高く飛び上がった。鳥のように飛んでいないのに。跳躍力が高いのだ。

そこへピチューが決死の思いでかみなりを放つも…

 

 

「効いてない…!? 嘘でしょ…!」

 

 

確かに当たったはずなのに、敵はなんのアクションも起こさなかった。仰け反ったりもしていない。

 

 

『安い電撃だ。さっきの攻撃で力を使い果たしたな。手本を見せてやる。』

 

 

空中にいるまま、刀を空へ向け、振り下ろす。さながら、地上に天罰を下す神のように。

 

 

荒筵牙天(あらむしろがてん)

 

 

辺りに落ちる雷。何度も何度も。既に荒れ果てた大地を焼き払う。素早いピチューはかわせたが、インクリングは動けなかった。視界がチカチカする。体が引き裂かれるように痛い。インクリングが味わったことのない痛みだった。

 

 

「いっ…あ…」

 

 

立たなければ。体が動かない。

逃げなければ。体が動かない。

 

 

「ぴ… ちゅ…」

 

「チュ…」

 

「逃げ…て、誰かが止めないと…! ピチューじゃできない…!」

 

 

せめて、ピチューだけは逃さないと。

本人もわかってる。今出せる最大の火力で動じもしなかったのだから、ピチューにできることはない。悔しいけどその通りなのだ。

 

 

「ピチュ… ピーチュピチュ! ピッチュチュ!!」

 

 

遠くへ走っていく、ピチューの後ろ姿にほっとする。まだ、痛い。けど、気負いがなくなったからか、立ち上がるぐらいの気力は戻った。

 

 

『さて、そうそうに肩をつけたいところだな。捕らえるか、追い込むか…』

 

「あたし達が狙いってこと… あたしは調べてなくて… ピチューは調べたんだね…」

 

『…………』

 

「黙ってるってことはYesってことか…」

 

 

少しでも時間を稼がねば。

ピチューが逃げる時間を少しでも増やさないと。普段ならばやらないような話術で気を逸らせ。

 

 

「あたしがいるとはいえ… ピチューを無理には追わなかった。」

 

『手負の獲物ほど厄介なものはない。そして固執する理由もなかった。それだけだ。』

 

「あたしとピチューってことは狙いはファイター…? ロイが狙い?」

 

『違うな。奴ではない。世界のつながりを乱し、あの世界にたどり着くはずのファイターを別の世界へ行かせる。後は炙り出して調べるだけだ』

 

「………ロイも調べた側ってことか」

 

『黙れ』

 

 

この殺気、悪意。顔も仕草もほとんど見えないのに不快に思っているのはわかる。

戦わなくちゃ戦わなくちゃ。生かすために戦わなくちゃ。

 

例えこの手が血に塗れても。

 





○タイトル
タクティクスオウガの第一章タイトル。
このゲームの章タイトル全部好きです。


○死んだ男
地の文で言及されていますが、名前のないモブです。流石に名有りのキャラクターを殺す勇気はなかった。


○スプラトゥーン
このゲーム内に死という概念はあります。オクトエキスパンションの最後の辺りはリスポーン地点の更新に誰も言及せず、本当に死んでいます。この作者悪魔だぞ! と思われるかもしれませんが、今後のことも考えて、彼女には成長してもらわねば。


○調べた調べてない
ちゃんと基準があります。当たった方の家にピチューが逃げてきます。(嘘だけど)


○オリキャラ
タグにもある通り、本作では敵側に半オリキャラがいます。…半?
その意味は今後の展開をお待ちください。半というか九割八割ぐらいオリジナルな気もする。



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9話 イキキル

響応虎落笛(きょうおうもがりぶえ)

 

「…っ!!」

 

 

電撃を纏わせた斬撃がこちらへ飛んでくる。2発3発… クラウドの破晄撃に似ているかもしれない。まっすぐとぶから、普通なら回避できるだろう。だが、現実は足の脛を掠る。体が追いつかないのだ。

 

 

「(まだ痺れてる…!!)」

 

 

錯乱したインクリングを正気に戻すため受けたピチューの手加減ない攻撃、さらには敵から受けたいかずち。2つの強力な攻撃を受けたことで、既に満身創痍で戦っているのだ。

 

 

「…逃さなきゃ……にが、さなきゃ……」

 

 

小声で自分を叱咤する。先程消えていった命とピチューの姿が重なる。やだダメだ、あんな静かなのピチューには似合わない。

 

 

「近づく…!」

 

 

遠くにいても電撃がくるぐらいなら、近くにいた方がいい。刀の攻撃が怖いが、そんなもの気にしている暇はない。

それに応えるように敵はバックステップで距離をとろうとする。それを許さなかったのは彼女の投げたクイックボムだった。着弾で爆発するボム。威力はないが牽制に便利なものを足止めに使った。

 

 

『…!』

 

「チャンス!」

 

 

スプラローラーの振り下ろしを囮に使い、刀の防御を使わせた隙に顔面らしきところにスプラシューターをぶち撒ける。そのインクの勢いにインクリング自身が負けるほどだった。コロコロと後ろへ転がる。

 

 

「はあ… はあ…」

 

『やってくれたな…』

 

 

顔にはりついたインクを手で拭う相手。顔があるのか? 少なくとも視界はあるらしい。大きく一撃をくらわせたのだからここから反撃を…!

 

 

『だがお前は勝てん。わかっていないのか? 大乱闘のルールが適応されない、ということは相手が同類でない以上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということだぞ?』

 

「…ッ…!!」

 

 

そうだ。ここが大乱闘の世界じゃないなら、いくらインクをぶつけたところでぶっ飛ばせない。ダメージを増量させる効果もない。奴を殺さねば勝てない。その前に勝てるのか? 無力な自分で?

 

 

「あ… あああ゛あ゛あ゛!!!」

 

『確かに体術は効くが… ふんっ』

 

 

現実を直視したインクリングは無我夢中で殴りかかる。こんな感情はじめてだ。ただ殴りたい。ぶっ飛ばして負かして、何もなかったことにしたい。

 

そんなやぶれかぶれな攻撃が通じるはずもない。少しの間でも戦って、実力の差は知れたというのに。

 

突き出した手首を掴み、腕力で体を回して地面に叩きつける。吸った空気が全部出た気がした。

 

 

「あうぐっ… うっ…」

 

『これでもファイターの力を使わない… こいつではなかったか… いや、もしや自覚がない? 試してみる価値はありそうだ』

 

「(なんのことを… いってるの…?)」

 

 

喉も動かない。言っている意味がわからない。

その感情が顔に出ていたのか、刃を向けながら、敵は言った。

 

 

『俺たちはマスターハンドを追い詰めた。しかし、逃げられた。ファイターの誰かの元へだ。仲間の力を駆使し、一部は調べたが結局見つからなかった。ならば、探っていないファイターの誰かにマスターハンドはいる。そいつは奴が行動不能になっているこの状況でもファイターの力を行使できるはずだ。』

 

「(…………あたしの所にマスターハンドがいたなら… フィギュア化することで死ぬことはない… でも、そんなのいない…)」

 

 

そうか、自分は死ぬのだ。あの男のように。

敵の刃が振り下ろされる…!

 

 

『俺の思い過ごしであれば… その力を見せてみろ!』

 

「(だれか…!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

視界の片隅に炎が見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インクリング!!」

 

「あう… ロ…ィ…」

 

「遅くなってごめん… ピチュー、インクリングをお願い」

 

「ピチュ…!」

 

 

白刃の軌道は逸らされ、封印の剣が輝く。人の意思に呼応する剣は静かに炎を燃やしていた。

 

 

『お前は… なるほど、ファイターであり将だったか…』

 

「ロイ。あなたがこの透魔兵を率いている指揮官… 名前は?」

 

『ナカツナ。これで戦争を続ける理由はなくなったか…』

 

「勝手なことを言うな! どうしてこんな戦いを始めたんだ! 誰も死なないなんてこと考えてなかっただろう!」

 

 

激情を秘めたるロイに対して、敵… ナカツナは冷淡だった。

 

 

『それでも戦いに出たのはお前たちの選択だ。死の責任をこちらに押し付けるな。生き残れなかったから死んだ。それだけだ。』

 

「一方的に襲ってきておいて、抵抗するなとでも言いたいのか?」

 

『甘いな、戦なんて放っておいて逃げ出せば良かったのだ。守りたいものだとか言うのは自分が生き残ることを放棄した言い訳でしかない』

 

「ズレてるよ…!」

 

 

刃と刃が交わり、剣と刀が斬り結ぶ。

首元を狙われたロイは膝から力を抜いて急速に屈む。そこから突きを繰り出し、ナカツナの腰付近を貫いた。

 

 

『…っ、秋雨乃燕(あきさめのつばめ)!』

 

「(足払い!)」

 

 

痛みに膝を折ったかと思ったら、屈んだだけだった。そこから足払いのように刀を振るう。後ろへ跳んで回避する。

 

 

『甘いな!』

 

「ぐぅ…!」

 

 

かわしたと思ったのに、残像から放たれる電撃がロイの足を痺れさせる。ルフレのサンダーソードを思わせる攻撃。確実に脚にダメージを与える技だと理解した。

 

 

「(ピチューが攻撃しようとしないのはこれか…!)」

 

 

ピチューの電撃じゃナカツナにダメージが入らないのかもしれない。その上でインクリングが()()されたのだから、打つ手がなかったと。二人が屈した図式がなんとなく見えてきた。

 

動きが鈍くなったロイは相手の動きを見極めるカウンター戦術に切り替えることにした。再び響応虎落笛(きょうおうもがりぶえ)での斬撃がとんでくる。シールドが使えない、回避もできないなら受けるしかない。インクリングがまずい、と声を上げたが、ロイは落ち着いて斬撃を斬り捨てた。

 

 

「どうだ!」

 

『まだだ!』

 

 

一直線、走ってくるのと同時に突き攻撃を繰り出してくるナカツナを待ち構え、剣を構える。だが、それを見た途端、ナカツナはジャンプ。封印の剣を踏み台に後ろへ飛び越した。振り返ると同時に振るった刀はすぐに動かした剣に止められる。

 

 

「…今のは…」

 

『考え事か…!』

 

 

得物を通して通電する電気。更にロイを痺れさせ、動きを鈍くした。

 

 

「ぐう… けどさっきのは…!」

 

 

違和感を持ったせいで攻撃をくらったというのに、ロイはその疑問を拭えない。

 

 

「…さっき、高く跳びすぎだね」

 

『何を言っている?』

 

「わざわざ封印の剣を踏み台に高度を稼ぐ必要はなかった。素で跳んでも十分後ろを取れた。むしろ()()()()()()()せいで僕に攻撃を止められた」

 

『…黙れ』

 

「おそらくだけど… 君は透魔兵じゃないんだろう? 他の兵士達も多分。」

 

「はっ…? ろ、ロイどういうこと!?」

 

 

ロイの中では既に答えはでていた。それがなぜこのように見えるかまでは不明だが。

まず、領民から兵士へ、兵士からロイへ情報が届いた。姿の見えない賊がいると。それに偽りはなかった。…ダメだ、ヒントにもならない。

 

 

『…おまえは厄介だ。まさかそこまでたどり着くとは… 大人しく惑わされてればいいものを…』

 

 

刀を持ち直し、構え直す。不愉快な表情を隠すことなく。

 

 

「インクのかかった顔で言っても説得力ないよ…!」

 

「インク…? 何を…」

 

『…何もできないのに口は達者だな。いいだろう。少しだけ、本気を見せてやる』

 

 

見えないはずの目に、インクリングは睨みつけられたような気がした。

 




○タイトル
ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生のチャプター1のタイトル。そして、収録されている曲。生ききると息killのダブルネーミング。ダンガンロンパの曲名、センスがよくて好きです。エコロシアとか。


○大乱闘の世界にいないということは…?
大乱闘の世界にある、ファイターの力を均一化するための制限がないということです。
元々まともに戦う手段を持たないぶつ森やらフィットレやらは戦う力を持たないということです。体術は一応効きますが、インクをインクリング族以外にぶつけても、目眩しや足止め程度。一応勢いをつけて出せば怯ませるくらいは可能ですが。
逆に素の方が強いのなら、強化にもなります。パルテナとかは露骨ですね。


○敵の目的
上記を含めたファイターとしての制限やらを持っている誰かです。その人のところにマスターハンドがいると予想している模様。既に一部は調べているようですが、それが敵の誰かの能力のヒントになる… かもしれない。というか、その他にもプロローグから伏線はばら撒いております。怪しいところはチェックすると面白いかもしれません。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「でんきとくさタイプ… カットロトムを除けば初か?」
『モンスターボールに合わせているのか…』
「爆発はホウセンカみたいに種子を撒き散らすための行為… なら原種の爆発は何故? …自爆やら大爆発やらで身を削って… もしやその行為は人の手による改造か? サクレショイグモでもあるまいし、自爆前提の生態は… ゲーフリならやりかねん」
『誰が生んでくれと願った…』
「憶測で映画をはじめるな」




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10話 死んじまったらおしまいだろ!

 

技というには簡単過ぎる、単純な電撃の攻撃。ナカツナの体から発せられる電気がインクリングとピチューの元へ発せられる。

 

 

「くっ…!」

 

 

それを間一髪でロイが間に入る。封印の剣で弾けたが、ロイの動きが鈍くなっているのもあってギリギリだった。

 

 

「(あたしが… 邪魔なんだ…! 寝てる場合じゃない… ピチューを連れて逃げないと…!)」

 

「無理して動かなくていいよ、カムイ達もきっと来てくれる!」

 

「チュ…!」

 

 

そんな気休めを言われても。動きが鈍くて、回避も困難で。こんな状況で足手纏いがいたら余計に戦えない。そのぐらいわかってるのに。動けないなんて言い訳で、ロイが死んじゃうかもしれない。

 

 

『これで終わりだ… 夕霞乃舞(ゆうがすみのまい)…!』

 

「(この剣技は…!)」

 

 

ロイはその武器から目を離していない。姿の見えない相手では手元で動きを捉えることができないからだ。だからこそ刀そのものを見ていたのだが…

 

 

「(捉えにくい…!)」

 

 

剣先が踊るようにあちらこちらへ動く。はやくもない動きなのにブレた残像が重なっているように動いて見切れず、細かな傷が増えていく。しっかりと体を見れたならこんな翻弄されることは…!

 

 

「ッ! しまっ…!」

 

 

刀が脇腹を通って斬り裂く。武器が正面にない。通り過ぎたのだ。後ろへ。後ろは。後ろには。

 

 

「ピチュッ…!」

 

「あぁ…!!」

 

 

ピチューが斬られる。小さな体には過ぎる傷痕。だが、インクリングは人のことを心配する暇がなかった。肺が圧迫される。オレンジのインクを拭った顔、があるはずの場所を覗きこんでしまって吐き気がした。首元に剣先を突きつけられる。

 

 

「インクリング…!」

 

『…こいつの命が惜しくなければ戦えばいい。別にそれでも俺は驚かん。俺だってそうするからな。おまえもだピチュー。』

 

「チュチュ…!」

 

 

ああ、こうなってしまった。本当の足手纏いに。

 

以前、キーラと戦っている際、マルスの心配を過剰だと思っていた。確かに間違ったことはいっていない。マルスの世界はこうして命の消えていく世界だと。だからこそ彼は自分たちを心配していたのだと。

 

わかっていたつもりだった。

わかっていなかった。

つもり、でしかなかった。

 

漫画(ナワバリバトル)にあるような綺麗な勝ち方は現実(戦争)には存在しなかった。

 

 

「……… ピチュー、引いて。」

 

「ピチュ…」

 

 

ロイは剣を鞘に収めながら言った。ピチューも渋々戦闘体勢を解いた。もっとも敵意はぶつけているままだが。

 

 

「何が目的だ。」

 

『俺が戦争を始めた理由は、この世界に迷い込んだスマッシュブラザーズを炙り出すこと。もはやそれは達成された… そうだな、他にファイターはいるのか?』

 

「…ここにいる3人以外にはカムイだけだ。」

 

 

一瞬カムイのことを言うか迷ったが、彼も戦争に加わってくれた以上、バレる可能性が高い。真実を語るしかなかった。

 

 

『カムイ… 調べた奴か。おそらく、この女にマスターハンドは逃げていない… つまりハズレだったか…』

 

「調べた…? カムイと貴方は会ったことがあるというのか?」

 

『方法を語る必要はない。もうファイターがいないならここに残る必要はないな。…しかしコイツはやはりきちんと調べてもらった方がいいな。』

 

「う…!」

 

 

インクリングの首を掴み上げる。

連れていかれる。どうなるかわからないけど、もっと多くの仲間に迷惑がかかるのは確かだ…

 

 

「ピッチュ!!」

 

「待て。」

 

 

ロイの言葉に去ろうとしていたナカツナの足が止まる。どうして、どうして。ロイの決意を込めたような顔に嫌な予感しかしないの。

 

 

「貴方は大乱闘の世界へいくつもりだろう。でも、すぐにはいけないんじゃないか? その間も戦力はできる限り削がれない方がいい。」

 

「調べた調べていないは… 後でもいいだろう。貴方も武人ならわかるはず。将を抑えて被害を減らすことの意義が。」

 

 

 

「戦時下なら、人質は女性よりも()の方がいいはず。彼女を解放してほしい。」

 

 

やだ。どうしてこうなるの。

 

 

『…頭の病気か。でも、こちらとしては好都合だな。何をするかわからない凡人よりも身の程を弁えている方が。』

 

「ピチュ!!」

 

「やだ… あうっ…」

 

 

そのまま落とされたインクリングは崩れ落ちたまま立てない。鞘を右手で握るロイの背中が酷く歪んで見える。あの得体の知れない奴に向かって遠くなっていく。戦意が共に目から流れていく。ピチューが飛び出していった。

 

 

「ピチュー。インクリングを、お願い」

 

「…ッ! チュウゥゥゥ〜…」

 

 

悔しさを滲ませて、足を止める。その言葉は鎖のように縛りつけた。

 

全員、わかっていた。

ピチューが飛び出せば、このまま戦えば、誰かが死ぬ。それがボロボロのインクリングなのか、不相応のピチューなのか、守りきれなかったロイなのかわからない。でも、これが一番最善で最悪の選択だった。

 

 

「やだ… やだ…」

 

 

子供のようにうわごとで繰り返す。雷が落ちて、周囲が真っ白になって。視界が元に戻ったら透明も赤もいなくて。

そして、視界が真っ黒になる。忙しい意識だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いっつも何も考えてなかった。

 

オクタリアンが死ぬだとか、あたしが殺すだとか。

 

悪い奴はやっつけられて当然だと思ってた。

 

そんなこと知らなかった。

 

 

なんて軽い存在なんだろうか。

殺しの責任を相手に押し付けるのは楽だった。

卑怯だった。深く考えず済んだ。

 

あたしが、やった。

あたしが、でしゃばった。

そのせいで、大勢死んだ。殺した。

 

 

あたし、頑張るから。

ロイを助けなきゃ。敵を倒す。殺す。

 

そうしなきゃ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インクリング!」

 

 

彼女の目が開いたのに気づいて、カムイが名前を呼ぶ。少し前まで使っていたロイの天幕だ。でも、だいぶ過去のことのように思える。

 

 

「ピチュ…」

 

「あっ…」

 

「痛いところはないかい? 一応治療はしたけど…」

 

 

事情を知っているのか知らないのか。

カムイの優しい言葉が今はただひたすら痛い。

 

 

「よかった、目覚めたのね。」

 

「リリーナ、お疲れ様。たった今起きたよ」

 

「うん、気絶したあなたをピチューが精一杯引きずってきて… 何が起きたの? ロイは?」

 

「あ…」

 

 

夢、じゃない。空想じゃない。

もう、責任から逃げられない。知ってしまったから。

 

 

「あたしの、せいで…」

 

「え?」

 

「あたしのせいで、ろい、しんじゃうかもしれない…!」

 

 

インクリングは全てを話した。

自分達が飛び出したこと。敵の首魁、ナカツナの存在。目的。自分が人質にされて、解放するためにロイが代わりに捕まったこと。

辿々しい、涙を拭いながらの話に一同愕然とした。

 

 

「そう、なの。ロイが…」

 

「リリーナ…」

 

 

特に幼馴染のリリーナの動揺は酷かった。

少しの間共に戦ったカムイが心配そうに見つめるが、なんて声をかけていいのかわからない。

 

 

「でも、よかった。インクリングが無事で…」

 

「あたしのせいなのに… あたしがぶじじゃなかったらろいがぶじだったのに」

 

「ううん、大丈夫よ。人質ってことは簡単には殺さないわ。だから大丈夫、泣きやんで」

 

「そんな保証ないよ!! あたしのせいなのに… だからあたしが、あたしが助けなきゃ… ナカツナを、ころ、倒して」

 

「待って、インクリング!!」

 

 

それだけ言って彼女は飛び出していった。

かける言葉がないのは誰もがそうだった。

リリーナはロイと一番仲が深い。だからこそ彼女の言葉は痛いだけ。

カムイはあの場にいなかった。檻の外側で内側の危険を語っても説得力はない。

ピチューは動けなかった。同じく力がない彼女は自分を逃すため戦ってたのに。

 

 

「…リリーナ。他にスマッシュブラザーズのこと知ってる人は?」

 

「マリナス。でもフェレに前から仕えてる人だから伝えていいのか…」

 

「どっちにしろこの軍全体に本当のことは言えないよね…」

 

 

ロイはインクリングのところへ向かう途中、可能な限り、兵士に指示を出していたらしい。それが最後の目撃情報だ。何も知らない側からすれば、そこから大将が原因不明の失踪だ。確かに敵は引くと言ったが、確約はできない。そのせいで軍の指揮がガタガタになっている。

リリーナがなんとか持たせているものの、そう遠くないうちに瓦解するだろう。

 

 

「せめて… 敵の居場所がわかれば…」

 

 

弟なら、兄ならこういった状況でもどうにかできたのだろうか。精神的に疲れていたカムイは無意識にきょうだいに縋っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…」

 

 

ろくに休憩もしないまま、動いたことで森に行き倒れているインクリング。自分が最初に来た森なら、あの世界に行けるんじゃないかと考えた彼女はどうにか行ける方法を探し尽くしていた。

 

 

「おまえ… 大丈夫か?」

 

「だ…れ…」

 

 

今だけはみっともなく縋りたかった。でもそんな権利はなかった。

 

目の前のヒーローに縋れば、永遠に戦えない。そう感じた。

 





○タイトル
FFX主人公、ティーダのセリフ。召喚士が試練から一日戻ってこず、命の危険があると聞いた時、このセリフを言って飛び出していった。その召喚士は他でもないヒロイン、ユウナ。ようはこのセリフが二人の出会いに繋がったのです。ティーダのこういうところが好き。


○前話の補足し忘れ
前々回ナカツナがそうそうに肩をつけたいと言ったのは、助けを呼んでくると言ったピチューの言葉を理解できるからです。MOTHER組みたいな超能力のおかげ? それともテレパシー? 実は理由は単純なことです。


○実は今章シリアス
お願いです、石投げないで…


○ロイの行動
相手が無用な戦いをしないと感じたからのこの行動です。もちろんインクリングは大事だけど、ここでロイがこんなことするか? と自分でも少し悩みました。でも上記の経緯です。もっと言えば敵の拠点位置を知らないからという理由もある。


○最後の人物
インクリングに話しかけた人物は誰なのか。スマブラにも登場しているあの人… ですが、次回はロイ君側の話なので答え合わせは次々回。


○作者側のちょっとしたお知らせ
年末年始は休みに入るので忙しくなくなります。故に連日…になるかは不明ですが、週一投稿より頻度が高くなるかもしれません。どれだけの人がこの作品を楽しみにしてくださってるかわかりませんが、更新されないが寂しい気持ちはわかりますので… (好みの小説だったのに前回更新日時を見て絶望した己)



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11話 平安のエイリアン

 

「ここは…」

 

 

見覚えがある。なんてものじゃない。

オスティア、オスティアの闘技場。リリーナの住む土地じゃないか。

やられた。こんな近くに基地があったなんて。

 

 

剣を没収され、ロイが連れてこられたのは闘技場だった。敵の密度からしてここが間違いなく敵側の拠点だ。

 

 

『こい』

 

「……」

 

 

大人しくついていく。周りの地形を観察しながら。周りを見回し、どうにか逆転の糸口を探しだす。ロイは無抵抗のままで終わる気はなかった。

 

あの駐屯地からも離れてない。逃げ帰るのも不可能ではないだろう。

ただ、不安なのは街の住民だ。男手は徴兵されてこの場にはあまりいないが、それでも女子供は残っているだろう。

 

手段を選ばない男だ。

おそらく、ここに陣をひいたのはいざという時の人質にするつもりだろう。

さらに慎重だ。最初から人質をとれば楽だが、居場所は明かしたくなかったからしなかった。

 

 

「(なんとなく、ナカツナの人柄が掴めてきた…)」

 

 

使えるかはわからない。だが、知っておいて損はない。外の状況でわかる情報はこの程度か。

 

 

中に入り、これで外へ情報を伝えるのは絶望的になった。

 

更に言えば、軍も気になる。リリーナや仲間がどうにかしてくれているとありがたいが。

インクリング、彼女は無事だろうか。カムイもリリーナも杖が使えるから怪我は治っているだろう。もっと、強く説得すればよかったのだ。

 

 

 

竜を巡る戦争が終わったロイの元に届けられた一通の手紙。それは新たな戦いの予感。

だが、そこに血は流れなかった。見慣れてしまった死はどこにもなかった。

悪いことではないのはわかってた。でも少し複雑だったのだ。小さな子供が、戦いを覚えていいのか。

どんどん殴り慣れて、斬り慣れて。

 

 

『でも、大丈夫だと思うよ』

 

『マルス…』

 

『闘争心は悪いことばかりじゃない。こうやって僕たちは斬り合いだってしてるけど、血も流れない。でもそれ以上に憎しみだって生まれないんだ』

 

 

マルスの言葉は簡単にロイの不安を溶かしていった。笑いながら大乱闘を繰り広げる様からいつまでも目を離せなかった。

 

 

 

「(それなのに)」

 

 

彼女は、この事件を終わらせた後。いつも通りに戻れるのだろうか。戦を見て消えてしまった、はじけた笑顔を取り戻せるのか。

 

知らなくてよかったんだ。戦争なんて、対岸の火事でいい。熱さを知らないならそっちの方がずっといい。

 

 

「(…どこに連れて行こうとしているんだ)」

 

 

少しぼーっとしていたかもしれない。

闘技場の内装は修練に利用していた時と変わらないように思える。中央に円形の戦場、それを見下ろすように設置された観客席。それを囲うようにできた見渡しの悪い通路。どこからでも抜け出せる配置だが、よく見ればあの透明な兵士がいる。あれを掻い潜って逃げるのは中々難しいだろう。どこかに閉じ込められればなおさらだ。牢屋、みたいな施設はなかったと思うが、増設されている可能性は否定できない。

 

 

『……背後の柱の裏。それに上だ。』

 

「…?」

 

 

一瞬、ロイには何を言っているのかわからなかった。唐突に何を言い出すのか。その正体がわかったのは、ナカツナが避けた場所に人影が落ちてきたからだ。

 

 

「がっ…!」

 

「…! シーク…!?」

 

 

落ちてきたのはシークだった。姿の見えない配下に押さえつけられて、武装を剥がされている。

 

 

「どうしてここに…」

 

「ぐぅ…!」

 

「っ!」

 

 

先程、ナカツナの言った場所。背後の柱の裏からうめき声が聞こえ、反射的に振り返る。

巨体の戦士に首根っこを掴まれ、柱に押し付けられていたスネーク。ダンボール箱が蹴り飛ばされる。

 

 

「スネーク…!」

 

「くっ… どうにか隙をついて助け出そうとしていたのに…」

 

「しくじった… 悪い、坊っちゃん…」

 

 

この世界に迷い込んだファイターは3人だけではなかったのだ。

 

おそらく、近くで自分が連行されていく姿を見ていたのだろう。そこでなんとか救おうと潜入してくれたのだ。しかし、隠密に長けた二人をいとも簡単に見破った。いつ気づいていたのか。見えない上に背後からではそれもわからない。

 

 

『徹底的に武装を剥がせ。少しの武具も見逃すな。』

 

「くっ…」

 

 

敵意を込めた目でナカツナを睨みつけた。

押さえ込まれた二人の命を奪うのは容易なことだろう。少しでも交戦の動きを見せれば、どうなるかわからない。得物がない以上、ロイにできるのは、精々が護身術程度だ。二人を救い出し、辺りの敵を追い払いながら逃げる… これも困難だった。

 

 

「やめとけ… 俺たちのミスをおまえがカバーする必要はない…!」

 

「…ッ」

 

 

そのロイの感情の変化をどう受け取ったのか、スネークはこう言った。これではもうどうしようもない。

 

 

『スネーク… こいつは調べてなかったな。シーク… いや、ゼルダか。こっちはわかってたから調べてある』

 

「「…!」」

 

 

シークの名前を言い当てた。ナカツナの小声を、近くにいたシークとロイは聞き逃さなかった。知らなければ、シークの本名がゼルダであることはわからないはず。近くに同名の少女がいるなら尚更だ。思い当たることもないだろう。

 

 

「(敵の仲間に、あの世界に詳しい人物がいるのか…!)」

 

 

この結論に帰結した。

それがナカツナ本人の可能性もあるが、それならもっと遠くに陣を組むはずだ。ここは見つかりやすいし、何よりフェレに近い。

そして、ロイはもう一つ思い当たった。

自分とカムイとピチューは調べた。

インクリングとスネークは調べられなかった。

シークは調べた方だろう。わざわざゼルダだとわかってたからと言った上で。

 

 

「(本名か…!?)」

 

 

インクリングの本名を聞いたことがない。

スネークの本名はそこまで親しくもなければ知らないだろう。ファイターとしての名前はスネークで苗字までは知られていないのだから。

シークはゼルダの変装した姿なのだから、本名はゼルダだ。ただ、それは昔から大乱闘の世界を知っていれば、簡単に想像できる領域だ。

 

まとめると、ナカツナの仲間には大乱闘の世界に詳しいもの、本名を知ることで調べることができるものがいるということだ。同一人物か3人組なのかもっといるのか不明だが。

 

 

『同じ場所に入れておく。連れてこい』

 

 

ロイには武器を外しただけだというのに、2人は両手を後ろに回されている。体術ができるのだから、警戒するのは必然のことではあるが、力に加減がないところから、敵意が散り積もっていく。

 

 

散々歩いて着いたところは、円形の戦場… コロシアムのど真ん中だった。3人を電撃で囲み、檻を即席でつくる。

 

 

『大人しくしていろ。ここから出られまい』

 

「…ほんっと頭が切れるね…!!」

 

 

シークが皮肉混じりに言う。3人ともここに閉じ込めておく理由はわかっていた。コロシアムの真ん中に死角はない。周りに兵士を配置しておけば、隙をつくこともできないだろう。

それが本人もわかっているのか、涼しげな様子で立ち去っていく。

 

 

「飛び越えられそうな高さではないか… あの敵… ナカツナが兵士を呼び戻す前になんとかしないと…」

 

「兵士? 戦争でもしてたのか?」

 

「うん。あの姿が見えない兵士が襲ってきて… それで僕が未熟だったからこうして捕まった。」

 

「? 姿が見えない? どういうことだい?」

 

 

疑問にロイの方がハテナマークを浮かべる。

見にくいとはいえ、見落とすはずがない。実際物理的に押さえ込まれているのだから。

 

 

「さっき透明な兵士に押さえられてただろう? それだよ」

 

「透明だぁ?」

 

「何を言ってるんだ?」

 

「影の世界の戦士だろう?」

「普通に武装した人間じゃねえか」

 

「「えっ?」」

 

 

全く違う二人の発言にロイはようやく気づいた。

 

姿の見えない兵士、透魔兵、刀だけ見えるナカツナという敵、影の世界の戦士、普通に武装した人間…

 

 

「そうか…! ようやくわかった! 奴らの正体が! 姿が見えないカラクリが!」

 





○タイトル
東方星蓮船のエクストラステージのボス、封獣ぬえのテーマ曲。作者曰く、古風で和風な恐怖と哀愁を漂わせた曲とのこと。私音楽に関してはトーシロもいいところなので長く語れません。
どうしてこれがタイトルなのかって? これが一番のヒントだからです。具体的に言えばKH3Dのリクの服レベルの。


○シビア世界出身者の大乱闘への感情
概ね肯定的。というか、FE組の平和主義者って戦いそのものというよりは人が死ぬのが嫌だってことが多いんですよね。スネークもそんな感じ。本作品や前作のプリンみたいに傷つけ合うのが嫌だということの方が珍しいかも。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「新たな伝承英雄召喚イベントが発表されたよ。一番新しい総選挙の四人や飛空城にて最強のユーリスなど他のピックアップも錚々たる面子だ」
「ようやく僕の時代が…」
「カムイ… そのことなんだけど…」
「新伝承英雄はフォドラを導く者べレス。つまりまた先送りになりました…」

「…………………………伝承英雄化経験のある人は残ろうか」

「………………………………………………………………………………世界が僕をはぶりに来てる!! 後輩二人ともに先越されるなんて思うわけないだろ!! 女の僕に比翼英雄取られた傷がようやく癒えてきたところなのに!! どこまで僕の存在を消せば気が済むんだ!!! どれだけ差をつければ気が済むんだ!!」
「ソシャゲなら後からの実装の方が強いし…」
「父親のコスプレしてきた人は黙っててよ!! 二度とスマブラ参戦できない呪いかけるよ!!」
「ごめん、それだけは…」
「インフレの問題じゃないんだって!!! 畜生めぇー!! そろそろ来ると思ってた! 主人公は大体伝承英雄されてるからさ!! 伝承ベレトだって古い方じゃないからさ!! 安住の地スマブラでも勝ち上がり乱闘の一枚絵を取られてる始末! こんなことなら最初からマイユニじゃなくて女性単独主人公でいいだろ!! 外伝だの聖魔だの気にせずにさあ!!!」

「………………………今回は言い過ぎた。恋愛シュミレーションと女性単独主人公は両立できないよね。べレスに人気があるのは確かだし、あのおっぱいぷる〜んぷる〜ん!!に惹かれる人は少なくないだろうし」
「実は僕だって女ギムレー除いたら伝承英雄になってないんだよ……」(扉の外側)
「(何気に伝承英雄女カムイをなかったことにしてますね……)」
「わかってはいるんだよ。商売なんだから人気キャラを優先するのは当然だって」
「(誰かフォローをお願い…)」
「(もう手遅れだろう…)」
「(そろそろ女の自分を祝いに行ってもいいんだろうか)」
「(肉食うのに忙しい)」
「僕も露出が多かったら人気出たのかな…」
「(人気を露出のせいにしないでくれ…)」
「べレス、伝承英雄おめでとう。











二度とカラチェンできない呪いかけたから」


○年末年始のバーゲンセール
毎週土曜日である、1/1、1/8だけでなく、水曜日の12/29と1/5も投稿します! 本当は一日一話投稿できればよかったけどそこまでの余裕はなかった。後上述の小話書くのに疲れた



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12話 アナザーディメンションヒーローズ

 

「ベホイミ」

 

 

体の芯からじんわりと湧き上がる暖かさ。

木の葉や枝に掠ってできた細かな切り傷ごと、体の疲労が抜けていく。鈍重だった自分の動きに速さが戻っていく。

 

 

「あり、ありがとう」

 

 

とりあえずそれを言っておく。鈍い頭ではうまく機能していないが。

 

 

「大したことはしていない。ボロボロのおまえを放ってはおけないさ。」

 

「はあ…」

 

 

逆立って上に伸びた頭髪。銀色のサークレット。どうしてだろう、どこかで見覚えがあるような。

 

 

「っ! これは…」

 

「まず…い…!」

 

 

2体ほどの敵。生き残りがいたのか、囲まれてしまった。

足に力を入れて立ち上がる。どうにかこの男性を守らなければいけない。未だ震える手を無理矢理抑えてスプラシューターを構える。

 

 

─足止め以上のことができないということだぞ?

 

 

引き抜こうとした引き金を止めてしまう。

 

 

─ こいつの命が惜しくなければ戦えばいい。

 

 

息が荒くなって、水の中にいるような感覚に陥る。

 

 

─ インクリングを、お願い

 

 

だめだ。動けない。やられる。

 

 

「はああ!!」

 

 

男性が兵士を斬りつけた。返しの剣撃を盾で弾き、剣で貫いた。

 

 

「まだまだ! ライディン!!」

 

 

背後から迫っていた拳をかわし、雷の呪文で焼き焦がす。兵士二人はやがて完全に見えなくなった。

 

そうか、どこかで見たことがあると思ったら。

あの剣と盾、イレブンのものに似てるんだ。

同じ世界の人。おそらく彼の過去か未来の人。

同じように勇者の名前を冠した。

 

 

「…強いなあ」

 

「おまえは…」

 

「せめてこんだけ力があったら…」

 

 

実力不足で嘆くこともなかっただろうに。

誰かを終わらせる恐怖を踏み躙るほどの力があったら。

 

 

「いや… あったよ… そんな力。あたしが意識してなかっただけだ… 全然考えたことなかった!! 自分は正義のために戦ってるんだって! 相手のことなんか考えたことなかった!!」

 

 

ずっと同じことをしてたのだ。

あまりにも無知なだけだった。

残酷だった世界に対して、あまりにも純粋だっただけだった。

 

 

「責任なんて、感じたことなかった…」

 

 

セイギのギセイを見てこなかっただけだった。

 

 

「…犠牲になる人が出るのはどうしようもないことだ。相手だって、信念のために戦ってる。それが善か悪かは関係なく、敵のとっての正義と対立するなら、必ずどちらかに犠牲が出る。」

 

 

風が、インクリングのゲソを揺らす。

名も知らない男の言葉に聞き惚れるように、木の葉も揺らめいた。

 

 

「大事なのは… その犠牲を無意味なものにしないことだと俺は思う。」

 

「無意味って…! 死んだら、終わりなんだよ!? それこそ」

 

「違う」

 

 

ばっさりとインクリングの話を遮った。

男性の目は優しさを交えながらも、厳しさを含めた、厳格な父親のような印象だった。全ての誤魔化しが効かないような。

 

 

「…なあ、名前はなんだ?」

 

「……………インクリング。えっと、」

 

「アルスだ。俺はバラモス… 魔王を倒すために旅にでたが、その道中で魔物を倒した。たしかに個体としての命は俺が終わらせてしまったんだろう。」

 

「あっ…」

 

 

ロイは、カムイは、自分の世界で人の命を奪っていたのだろうか。

同じ勇者のイレブンは、同じように魔物を倒していたんだろうか。

 

無意味、本当に無意味なのか?

彼らは成し遂げたことがあるじゃないか。

 

 

「でも、その分俺は強くなって、それで魔王を倒せた。魔物からすればそれは不本意だろうが、俺にとっては、無意味になっていない。そう感じる。」

 

「それが、責任、なのかな」

 

 

自分はどうする?

自分を逃そうと戦って死んでしまった名前も知らない男性。自分を守るために自らの身を差し出したロイ。

 

それを、本当に無意味にする気なのか?

 

 

「アルス」

 

「ん?」

 

「君さ、どっちの方角から来た?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこかの世界、どこかの場所。

二丁拳銃から、ピンク色のインクがとびだした。それは敵の足元に当たる。インクに足をとられ、動きの遅くなった敵を、イオラで周囲ごと蹴散らした。

 

 

「フウ〜! 即席のコンビにしては、ウチらイカしてるんちゃうか?」

 

「少なくとも悪い相性ではないな」

 

 

大量の敵に囲まれながらも、二人は手堅く戦い、無理せず引いている。

たまたまここに来て、敵に囲まれたのは不運だった。だが、仲間となれる人物に会えたのは幸いだったろう。今は二人で事情を知るものを探しているのだ。

 

 

「よっしゃ! やったるで! ソロとウチでコテンパンやわ! タッグマッチやでー!!」

 

「4号… 私は人間なのだが…」

 

 

いまだ、佳境にも入らず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「8号、少しよいか?」

 

「ハイ、エット… ペッピーサン。」

 

 

グレートフォックスの操縦席に集められたのはオクトリングの元被験体No.10008改め、8号だった。

 

グレートフォックスは先にフォックスとファルコを送り、その後この世界にたどり着いた。そこで敵に奇襲をかけられ、結果、墜落したグレートフォックスに、同じようにこの世界で迷った者の拠点となっている。

グレートフォックスを直しながら。

 

 

「少し頼みたいことがあってだな…」

 

「…! ハイ! ヤリマス!」

 

「ぬおお!? 見たことないほど純粋な目!!」

 

 

一も二もなく了承した8号にペッピーの方がたじろいだ。

 

 

「ハチのやつ、なんにもできねーの随分気にしてたんだな」

 

「自分も何もできてないのに偉そーに」

 

「まあまあ、適材適所、ですよ」

 

 

操縦席の一つにふんぞりかえるヒメに毒を吐くスリッピー。機械系に詳しいスリッピー、イイダはグレートフォックスの修理に回っていた。そして、もう一人、

 

 

「ったく、フォックスもファルコもどこに行ったんだか…」

 

「その二人も動けないんじゃないんでしょうか?」

 

「ほう、その根拠は?」

 

「ピクミンの力を借りれないんです。きっとオリマーさんが100匹のピクミンの力を使っているんです。限界まで使っている… ということはよっぽどのことがあったんでしょう。きっとその人達も…」

 

「それじゃあわかんないよ〜」

 

 

ドレイク号の若きエンジニア、アルフ。

オリマーと同じくピクミンの住む星への来訪者だった彼は知っている。地上には100匹までのピクミンしか出せない。この世界で自身がピクミンを1匹も扱えなかったということはつまりそういうことなのだ。

 

 

「あー、話を戻すぞ。おまえさんに頼みたいことというのはな、誰でもいいからスマッシュブラザーズにこの現状を伝えてほしいのだ」

 

「8号さんのnamaco端末にある映像を送りました。それを見せれば状況がわかると思います。」

 

「了解シマシタ」

 

「ちょっと待って」

 

 

早速行こうとした8号を引き止める声があった。操縦室の扉が開き、8号の隣に立つ。

 

 

「僕も行くよ。ここに残ってても何もできそうにないし。」

 

「うむ、なら二人で行ってもらおうか」

 

「ア、アノ」

 

 

恐る恐ると話しかける。オレンジのバンダナが特徴的な穏やかそうな顔。こちらを振り向き、笑顔で答えた。

 

 

「僕はエイト。よろしくね」

 

「ハイ、ヨロシクオ願イシマス!」

 

 

差し出された手を握り返す。

友情を深める裏でスリッピーがヒメを煽っててんやわんやしていた。

 





○タイトル
星のカービィ スターアライズの無料アップデート第三弾で追加された新モード。カービィ+ドリームフレンズをとっかえひっかえしてフレンズハートを集めながら、超強化されたボスを倒しに行くモード。フレンズハートが足りないと…? ギャアアアァァァ64のトラウマがああああああああああ


○3とIII、4とIV、8とVIII
この偶然の一致に気づいた瞬間からペアは決まったようなものだった。


○アルス
ドラゴンクエストIIIの主人公。個人的には小説ネームのアレルが馴染み深い。更にVIIとかぶるためアレルにしようかなと考えていたが、このスマブラの世界に置いて名前被りなど今に始まったことではなかった。
この作品の設定として、無愛想ではあるが、口数は少なくないという設定がある。


○4号
スプラトゥーン2 ヒーローモードの主人公。格好としてはパッケージに映っているピンクショートの子。関西弁の陽気な子だが、作者は関西弁に詳しくないので間違ってても許してください。ヒーローマニューバ、ヒーローシェルターとスプラトゥーン2で初登場したブキを所持。
どうでもいいが、彼女は3の新主人公である後輩に数字を抜かれることが確定している。


○ソロ
ドラゴンクエストIVの主人公。一人称私の冷静勇者。実は一人称私は完全な作者の創作ではない。勇者三人の一人称をバラけさせたいのが本音ではあるが。


○8号
スプラトゥーン2 有料ダウンロードコンテンツ、オクトエキスパンションの主人公。タコらしく真面目だが、少し熱くなりやすい子。作者の前作でも少しだけ登場。何故か彼女が見ているとインクリングは化ける。イカの言葉は未だ不慣れなので片言。ブキはスマブラでインクリングが使用しないブキ種とオクタシューターを所持。他二人と違ってヒーローブキではありません。


○エイト
ドラゴンクエストVIIIの主人公。穏やかで心優しき青年。ED後なので結婚済み。呪いを弾く体質だが、それよりもこの作品においては味方を完全回復させるベホマズンがチート級。余談だが、企画段階ではDQ主人公が雑談をするスレの設定をそのまま使おうとした時期があった。アルスはニートでソロはトリップし、エイトはチーズ狂になりかけた。作者が正気に戻ってよかったね。


○ペッピー
ペッピー・ヘア。スターフォックスに所属する年配のうさぎ。フォックスの父親とは旧知の仲。コーネリア軍の大将にもなるが、ぶっちゃけ作者がスタフォの時系列をご存知ない。


○ヒメ、イイダ
テンタクルズの二人。ヒメは幼い頃からの騒音?であり、オクトエキスパンションではトドメも決めている。イイダは8号と同じ、地上を目指したタコ。発明家として優秀で、2のミステリーゾーンやみんなのトラウマタコドーザーをつくったのも彼女。


○スリッピー
スリッピー・トード。スターフォックスに所属する、フォックスの士官学校からの友達。エンジニアも担当し、彼が敵機体の解析に回ることも。作者の前作でグレートフォックスを修理したが、今回もまた修理に回ることに。天文学的損失。


○アルフ
ピクミン3の主人公の一人。ドレイク号の若きエンジニア。コッパイ星は三人の専門家をよこしたと言っているので、若いが優秀なのだろう。原生生物が飲み込んだ携帯をレーダー機能に取り込んだりしてる。一日の終わりの日記は彼がはじめた。ピクミンの力を借りれないので現状戦闘ができない。


○今話
休憩回。間話ですね。一章に一話、たまに入れます。ちなみにインクリングとアルス以外は違う世界の話です。


○年末年始の早期投稿
前話の通り、投稿しました。また、正月辺りにテレビゲーム総選挙の結果を踏まえた、「テリー・ボガードはテレビゲーム総選挙の結果に物申したいようです」といった短編を投稿予定です。


○ピクミン
ピクミンは地上に100匹までしか出せない。アルフはピクミンを呼び出さない。この意味がわかるかなぁ?(ニチャア)


○年末のご挨拶
今年の投稿は終わりの予定です。皆様、良いお年を。



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13話 Battle Against a True Hero

「はあ…」

 

 

不安で仕方ないが、やれることはない。

カムイはため息をついた。

 

走り出したインクリングに何かを言おうとして、結局なにも言えなかった。そのせいで、今から追いかけようとしても今更都合がいいんじゃないか、という思いが頭をよぎる。

 

リリーナのことで手伝えることはない。

ピチューは落ち着きなくあちこち歩き回っている。

 

 

「(でも、どうにかしなきゃ)」

 

 

奴らの居所を探る。

大乱闘の世界に連れていく、というのだから、もしかしたら自分達もそこから行けるかもしれない。それなら仮に連れて行かれたとしても後を追うことができる。あの兵力差は覆せなくてもせめて後から優位になるように。

 

 

「ピチュー」

 

「ん?」

 

 

ピチューが足を突っつきカムイを呼ぶ。そこには手紙があった。天幕の隙間から入れられたものだった。

紙を一度折っただけの簡素な手紙。肩によじ登ったピチューとともに紙を開く。

 

 

 

 

まず、勝手に飛び出しちゃってゴメン。

あの時は怖かったんだ。ロイが死んじゃうかもって。あたしでも死ぬってことがどういうことなのか知識としては知ってた。だから本当に怖かったんだ。

でも、一人で戦おうとしたらあたしだって危ないこと、あたしが死んだらロイが頑張ってくれたことも無意味になるって教えてくれた人がいた。

だから、あたしは戦います。今度は一人じゃないけど、それでも死んでしまうかもしれない。ロイのこと、無意味にしたくはないけど、今まで平和のために頑張ってくれた人の思いだって無意味にしちゃいけないものだと思うから。

一緒に来てくれたら嬉しいけど、強制はしたくない。それでも一緒に戦ってくれるなら私がきっと守るから。(^_^)

インクリング

 

 

 

 

「……インクリング。」

 

「ピチュ…」

 

 

平和を望むものは誰かのために戦える人だ。

この戦いで死んでいった名前も顔も知らない人。彼らのために彼女は戦う。

戦いがなくたって、その歴史ごと消えていたって。

 

平和の望む心は受け継がれていく。

 

 

「カムイ! またあの見えない敵が動き出したって!」

 

「…! インクリングが攻めていったから!? …行こう! ピチュー!」

 

「ピ…! ピチュッ!」

 

 

それは望んでいた答えだ。

もう誰も置いて行かない。受け継がれた思いは同じだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギラで足元を封じ、ヒーローシューターで足を捕らえ、転ばせる。

 

数は圧倒的に上だ。なら湯水の如く溢れる敵共にいちいち構ってはいられない。

 

 

「インクリング、もっとスピード上げられるか!?」

 

「もちろん! そして今の私は3号だ、アルス」

 

 

後ろから束になって襲いかかる連中をスプラッシュボムで追い払う。シューターで作ったインクの道をイカの姿で進む。

アルスを追い越し、道を塞ぐ敵をヒーローブラスターで吹き飛ばした。

 

ヒトの姿になった3号はヒーロースーツを纏っていた。ヒーローを冠したブキで身を固めた姿は、決して名だけのヒーローにはならないという決意の証だった。

 

 

「…!」

 

 

前方に割り込んできたのは、剛腕を持つ兵士。顔へ向かって殴りかかった拳をかわし、すれ違いざまにヒーローローラーをぶつける。

 

 

「頼んだ、アルス!!」

 

「はあああ!」

 

 

崩れ落ち、防御も回避もできない敵には急所に当て、会心の一撃で倒した。敵が溶けて消えていく。

 

 

「よし、先に進むぞ! ギガディン!! トドメだ、インクリング!」

 

「ああ! 用意! くらえ! メガホンレーザー!!!」

 

 

雷で痺れた敵に無慈悲な一直線の攻撃が襲いかかる。吹き飛ばされ、壊れ、消え失せていく。

 

 

「(あのナカツナもこういう風に消えるのかな?)」

 

 

それならば、やっぱり殺すことになるのだろう。

 

 

「(ううん、相手の全てを奪うことになっても、やらなきゃいけないことがある。)」

 

 

折れたりしない。

揺れることはない。

進め、抗え、戦え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電撃の牢屋に閉じ込められていた3人。そこで見たのはコロシアムの円を少しかけさせるように引かれたなにかの予告線。

 

 

「…? これは…」

 

 

不思議に思って3人でそれを見る。応急処置を受けたロイは全快で… とはいかないが、少なくとも電撃による痺れは取れて動けるようにはなっていた。

 

 

ガガガガガッ!!

 

 

「うおおい!?」

 

「これって…」

 

「メガホンレーザー…!?」

 

 

地殻ごと抉ったメガホンレーザーは土台を無くした上の観客席も木っ端微塵にした。建物が壊れて、外から直接フィールドへ行けるようになった。

 

 

『あの状況から性懲りも無くきたのか…!? なんという無茶な…!』

 

「…インクリング!」

 

 

ロイの言葉にはどうしてここに来たのかという怒りと、来てくれたのかという安堵が混じっていた。

 

 

『通告する!! 侵入してくる敵を滅せよ! そして敵の拠点を討ち滅ぼせ!!』

 

「随分と余裕がねえじゃねえか」

 

『おまえ達に言われたくはない! どちらにせよ、魔法でもなければお前たちはどうすることもできん!』

 

 

焦らせれば、という意図で発した言葉は見事に効果あり。姿が見えなくてもわかるほどの苛立ちを抱え、指揮のために視線を外した。

それを確認し、こっそりと裏の話をする。

 

 

「さっきの話だけど… キミの推測が事実だとしても、ボク達やインクリングではどうにもならないんじゃないか?」

 

「ああ、でも伝えればどうにかなるはず。リリーナが()()()()()()を持っていれば嬉しいけど、なくてもどうにかなる。」

 

「俺にはよくわかんねー類の話だが、それよりも俺たちがどうにか脱出する方が重要そうだ」

 

「そう、だね」

 

 

電撃の壁を見上げる。自分達が捕まっている限り、奴が取れる手段は多い。自分達の命を盾にされれば、先程の焼き増しだ。

建物の一部分が崩れたこともあって、周囲の監視は薄まったが、まだ脱出を企てられるほどではない。また頭を捻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天幕からとび出る。既に断末魔や武器の交わる音が聞こえる。ここまで戦場が広まっているのだ。

 

 

「インクリングのことも心配だけど… このままだと大勢犠牲がでる…!」

 

「どうしよう…!」

 

 

指導者不在で、なおかつ相手が正体不明。

そんな状態では勝てるものでも勝てない。未知というものはそれほどまでに心に侵食するのだ。自分は何と戦っているのか、倒せるのか─

その条件で戦意を保っていられる人間はそうそういない。

 

 

「どうすればいい… どうすればみんな助かるんだ…!」

 

 

目の前が暗くなりかける。痛いほど拳を握る。悔いても何も変わらない。変えたいならば選択をしなければ。でもできない。何をすればいいのかわからないから。

 

誰でもいい。

何か戦況を変えられる何かを…!!

 

 

「ピ…!」

 

 

真っ先に気づいたのはピチューだった。

 

何もないのに優しく熱さ。

肌に感じる猛々しい刺激。

血の匂いが消えていくような静謐さ。

 

 

「グオウオオォォ!!」

「グウオオォォォ!!」

「コォォォォォ!!」

 

「これは…!」

 

 

目の前に降り立つ3つの伝説。

3人に前に立つ救世主。

 

 

エンテイ。ライコウ。そしてスイクン。

 

 

真のヒーロー達が集結する。

 




○タイトル
Undertaleの楽曲の一つ。不死身のアンダイン戦のBGM。
他のアンダイン関係のBGMとは違うシリアスな曲調から始まり、ZUN節。楽曲タイトルにすると毎回思うんですけど、素人の話聞くより直接聞きに行ってください。


○サイレスの杖
FEシリーズに登場する杖。一ターン魔法を封じる。


○エンテイ、ライコウ、スイクン
ポケットモンスター金銀に登場する準伝説。通称三犬。
スマブラではモンスターボールからエンテイ、スイクンが登場。しかし、ライコウだけXでリストラ。映画でも二体登場しているが、ライコウはゾロアークの映画まで待たされる。ライコウに何か恨みでもあるのだろうか。


○お知らせ
あけましておめでとうございます。よいお年になりますように。
「テリー・ボガードはテレビゲーム総選挙の結果に物申したいようです」明日七時に投稿予定。pixivでも公開予定。ここの設定も使用してます。ただし、小話以上のはっちゃけぶりです。作者のページからどうぞ。





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14話 ヒーローモード

 

何も言わない。何も語らない。

でも、ポケモンの言葉がわからないカムイとリリーナでもわかった。

 

手を貸してくれるのだ。

 

 

「エンテイとスイクンはあの透明な敵を倒してくれないか!?」

 

「えっ!! でも大乱闘のことは言いふらしちゃダメって…!」

 

「責任は僕が取る!! 一人でも多くの命を助けなきゃ!!」

 

 

カムイは選んだ。

禁忌を犯してでも人を救う道を。

その覚悟と決意を込めた目を見れば、リリーナも否とは言えなかった。

 

 

「そうね…! 私からもお願い!」

 

「………」

 

「………」

 

 

やはり何も語らない。でもそのまま、エンテイとスイクンは血の匂いが充満する場所へ走り去っていった。

 

 

「黄色の君はどこから来たのか案内してくれるか? 僕たち、インクリングに協力してくれている誰か、そして君たち。みんな同じところあたりから来たなら、その辺りに世界を移動できる門のようなものがあるかもしれない!!」

 

「ピチュッ…!」

 

 

ピチューはハッとする。そうだ。移動を介していないロイを除けば、ファイターの3人は同じような場所にいた。そこの辺りで団体が隠れられそうな場所はそうそうない。インクリングもそれに気づいたのだ。

 

 

「………」

 

「…乗れってこと? お願い! ロイのところに連れて行って!!」

 

「行こう! 一緒に!」

 

 

ライコウの背にカムイ、リリーナが乗り、ピチューは頭の上に乗る。その速さはまるでしんそくのようだった。森の中を通っているのに木の枝や木の葉に当たらない。

 

 

「ピチュー…」

 

 

同じポケモンとして、格の差をピリピリと感じているものがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トコトコと太い足音が聞こえる。

コロシアムの破壊された箇所から二人のヒーローが来場する。

真正面の壁の上、座っていたナカツナを睨みつける。中央にはロイ達が捕まっていた。ロイだけではないのは驚いたが、それを表には出さなかった。

 

 

「来たよ、ナカツナ」

 

『………』

 

 

表情の変化は見えない。でもいかにも不機嫌そうな感情の変化を読み取った。まるでどよんとした空そのものだ。

 

 

「私やアルスがこの世界にやってきた場所は近かった。だから付近で拠点できそうな場所片っ端から探してきた。そして君がここにいた。この状況が君の望んだ通りならば、ここに世界を渡るための何かがあるんだろう?」

 

『……語る意義はないな』

 

「なんとなくわかるよ、わざわざそう言うってことは本当に言いたくないことなんでしょ」

 

『黙れ』

 

 

その一言で周りの兵士達が殺気だつ。

銃を突きつけられているような幻覚を思わせるも、それは妄想だ。そんな気がするでしかない。

 

 

「インクリング! 相手は見えなくてもそこにいる!! 攻撃を続ければ倒せる!」

 

 

ロイの言葉にコクリと頷いた。

前衛らしき敵から襲いかかってきた。シークやスネークも心配そうに見つめている。

 

 

『やれ、愚者を叩き伏せろ!』

 

「愚者じゃない! ボク達を助けにきてくれた彼女達は勇者だ!」

 

 

戦う力など、ほとんどない彼女がそれでも来てくれたのだ。愚かなわけがない。ただ、ナカツナとは価値観が違ったのだ。

 

 

『弱者は弱者なりに生き方があるだろう、それもできず、わざわざ死ににきたこいつのどこが勇者だ? 命よりも大切なものなどないと言うのに』

 

「あるよ。君が持ってないだけ」

 

「あの動き…!」

 

 

回し蹴りで兵士二人を蹴り飛ばし、顔らしき箇所にインクをぶつけて、シューターで強打する。囲んで襲いかかる相手にはヒーローホクサイの柄の部分を回してぶつけた。

 

その動きにスネークは驚く。

短時間でここまで格闘技に長けるはずがない。気の持ち方だけでここまで動きにハリがでるのか。

 

 

「ギラ! はああ!!」

 

 

もう一人、彼らが知らない者、アルスも相当な強者であった。灼熱の魔法で足元を焼き、動きを止めると数人まとめて斬り伏せた。戦闘の腕ならば、スマッシュブラザーズにもそうそう負けないだろう。それほどの実力者だ。

 

 

「…来なよ」

 

 

未だ敵の背後にいる兵士達に挑発を仕掛ける。

群れ成して襲いかかってくる有象無象。突き攻撃を腰を捻ってかわす。とんでくる火の玉を低い姿勢でやり過ごし、ジャンプで高く跳び上がった。

 

 

「この…ッ!」

 

 

体を捻らせ、回転させながら、ヒーローブラスターとヒーローシューターの二丁拳銃で敵をひたすら撃ち続ける。

インクではダメージはない。だが、足止めはできる。勢いで吹き飛ばすことはできる。ブキの打撃は直接効く。

 

 

「アルス!」

 

「ギガ、ディン!!」

 

 

敵に対して広範囲高威力の電撃が降り注ぐ。

アルスが使える最大火力の魔法だった。空中の3号には当たらず、ロイ達には届かず、ただ敵だけに襲いかかった。

 

 

『…………』

 

「ッ! 2人とも!!」

 

 

その派手な魔法に気を取られて、ナカツナが飛び出してきたのに気づいたのはロイだけだ。

その声に反応するが、空中に向けて透明な敵を認識するのは至難の業だった。

 

 

狗馬之心(くばのこころ)!』

 

「うぐぅう…!!」

 

「この動き… 味方まで巻き込んで…!」

 

 

コロシアム全体が雷の嵐に襲われる。敵も味方もなく、ただ雑に電撃を振らせる技。捕虜であるはずの3人にまで降りかかるほどの無作為さ。

あの透明な敵は見当たらない。巻き込まれて全てが消滅したようだ。

 

 

『兵士の被害は… 全滅か、情けない』

 

「なるほどな、姿は透明でも攻撃までは透明じゃないと」

 

『…! 逃げ延びていたのか』

 

「デタラメな攻撃なら当たった手応えもないだろう」

 

 

ピンピンしていたアルスにナカツナは内心動揺する。確かにデタラメな攻撃なのだから逃げられないと決まった攻撃ではない。だが、規則性がないのだから避けるのは至難の業だ。盾と足だけで回避しただと。

 

 

『チッ、だがもう1人は既に』

 

「既に、なんて?」

 

 

背後からの声で咄嗟に振り返った。

ヒーローローラーを構えた3号が後ろに。

 

 

『(いつから…! そもそもこいつまで先の攻撃を… そうか、インクか!!)』

 

 

さっきの兵士達との戦いで撒き散らしたインクの中に隠れていたのだ。攻撃をやり過ごしたのも同じ方法だろう。

 

 

「クリアリングが甘い!」

 

『ぐうう…!』

 

 

振り回したヒーローローラーでナカツナは大きく押し込まれる。土を抉った足跡は見えなくともそこにいることを如実に現していた。

 

 

『くっ… ならば…!』

 

「あの技は…!」

 

 

ロイとの戦いを決定づけた技。夕霞乃舞(ゆうがすみのまい)

途端にナカツナの姿を捉えづらくなる。ゆったりと動く刀の残像が残り、ブレた姿が視覚に残る。

 

 

「イオラ!」

 

『無駄だ! 白雪鏡(はくせつかがみ)!!』

 

 

援護しようと放った爆発の魔法はその威力を発揮する前に刀の力で消えていった。爆発もしていない。

 

 

「魔法が消えた…!?」

 

「あの武器の力か…!!」

 

 

シークは気づいた。

あの武器を戦に使っていたなら、血に汚れていてもいいはずだ。だが、唯一見えるあの武器は見惚れるほど美しい白い刀身には穢れの類は一切ない。

 

 

「あの武器には魔法の攻撃を無効にする力があるのか…!?」

 

 

もし合っていたなら、この戦いはさらに厳しいものになる。そもそも、あの刀は腰らしき場所に浮いていた。鞘のようなものに入れているというのに、鞘は見えずにこの武器だけが貫通して見られるようになっているのだ。見えないカラクリはナカツナが起こしたものでも、おそらくあの武器は違う。あの武器が持つ特殊性は固有のものだろう。

 

 

『魔法の類はこのヴォーパルの前には効かん。これで終わりだ!』

 

「…ッ!!」

 

 

3号の全身に切り傷が生まれる。ひとつひとつは浅い傷だ。だが、狙いはそこではないだろう。

 

 

「アルスゥ!!」

 

『…ッ!! お前…!』

 

「させるか!」

 

 

檻の前に立ち塞がったアルスが、ヴォーパルの一撃を、勇者の剣で押し留める。そのまま鍔迫り合いにもつれ込んだ。

 

 

「(チャンス!!)」

 

『…くっ…!!』

 

 

背後から近づいてくる3号を確認すると、ナカツナは諦めて、背後へ跳び上がる。高い跳躍力は容易に3号を超えた。

 

 

『苦戦させて… ぐぅ…!!』

 

 

宙にいたナカツナを電撃が貫く。

そのまま、落下しギリギリ着地に成功した。

 

援軍。その顔を見て、3号は自然と顔が綻んだ。

 

 

「みんな…!」

 

「お待たせ!」

 

「ピチュ、ピチュ!!」

 

「遅くなってごめんなさい!」

 

「コォォォォォ!!」

 

 

スマッシュブラザーズと頼れる助っ人がやってきた。曇り空に光明が刺すような。

 





○タイトル
スプラトゥーンシリーズの、俗に言うストーリーモード。
タコが来よるから、New! カラストンビ部隊に(無理やり)入り、タコと戦う。ラストステージは歌をバックに戦う。


○あれ? ナカツナってもしかして……
沸点がクソ低い。


○ヴァーパル
ナカツナが使用する刀。
見惚れるほどに美しい白刃だが、柄から上は洋風のデザイン。シンプルな金の柄に赤く丸い宝石がついている。
刀そのものに特別な力があるようで、詳細は不明だが、非実体的な攻撃を消し去る力がある。刀そのものも特別で、幾らものを斬っても汚れず、刃こぼれすることも、ましてや朽ちることもない。
相手側の存在はやはり見えないが、この武器のみは例外で、鞘に収めているだろうこの武器が貫通して見える。


○これからいつもの週一投稿に戻ります
言葉の通り。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「最近うちのディミトリ(黄ピクミン)がハサミを持ってきたんだ」
「!?」
「デコピクミンだな。一番乗りはヴェントゥス(黄ピクミン)だった。ただ、そろそろインクリング(黄ピクミン)も拾ってくる筈だ」
「「!?!?」」

「見なさい、ピット。これが作者の代弁をさせられてるせいでわけわからないことになってる図ですよ」
「僕たちもああいう風に言われる時が来るのかな…(白ピクミン)」
「うるせー…(岩ピクミン)」


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15話 心に剣を持ち、誰かの楯になれ

 

ナカツナが居所を探していたカムイ達は、一斉に雷が落ちたのを見逃さなかった。あのナカツナが乱雑に放った技が逆に自分の居所を知らしめる結果になったのだ。

 

 

「って、鹵獲された武器に変なものが混じってると思ってたら!」

 

「変なもの使いで悪かったな…!」

 

「ロイ! 無事でよかった!!」

 

 

だが、すぐには向かわず、彼らは3人の武器を回収していた。それで捕らえられているのはロイだけではないことを知ったのだ。とはいえ、実際に確認したら驚くものだ。

 

 

『チッ… 見慣れないものもいるが有利はこちらにあるんだぞ!』

 

「うぐ…!」

 

 

3人の捕らえられている電撃の檻が狭くなっていく。ロイとの戦いでやったのと同じだ。

 

 

『お前たち、こいつらが焼き殺されたくなかったら…!』

 

「コウオォォ!!」

 

 

ナカツナの脅しを遮るように、ライコウが吠えた。途端に3人を苦しめていた檻は上空に塊となり霧散していく。

 

 

「よし! これで思う存分戦える!!」

 

「助かった…! 足手まといになるところだった…!」

 

「形勢逆転、だよ」

 

『貴様ら…!!』

 

 

ナカツナが電撃の扱いに長けているといっても、でんきタイプの伝説のポケモンにそうそう敵うものではない。それが、長い間形成され続けていたものなら尚更だった。

 

 

『ほどほどに相手をしなければ逃げることもできんか…!!』

 

「覚悟して… 逃しはしない!!」

 

 

3号、ロイ、ピチュー、カムイ、スネーク、シーク。

 

リリーナ、アルス、ライコウ。

 

 

凶刃をも折る牙となれ。

 

 

「ロイ! 捕まっている間、杖がどうとかって言ってなかった!!」

 

 

その真の開幕はシークが仕込み針を投げたことから始まった。ヴォーパルで防いだナカツナは3号のスプラッシュボム、スネークのロケットランチャーをバックステップで回避する。

 

 

「サイレスの杖! リリーナ、持ってる!?」

 

「ごめんなさい! 輸送隊にはあると思うんだけど…!」

 

「カムイは?」

 

「持ってないし… 持ってても僕はそれを使えるほど杖に長けてない」

 

 

望みは絶たれる。

でもそうした方が有利というだけで、必須というほどではない。

リリーナとカムイが治療と魔法での牽制に回っている。2人との共闘から、応急処置程度しか出来なかったロイの怪我も回復し、ようやく万全で動けるようになった。衛生兵が2人もいると大胆に動ける。

 

 

「ベホイミ!! 突っ走れ!」

 

「ウウウゥゥッ!!」

 

『しつこい…! 全軍戻れ! 奴らを数で押し込む!』

 

 

治癒に任せたしんそくにも、ナカツナはなんとか食らいついている。ただ余裕がない故か各地の戦士達に命令を出した。時間をかける度に敵の量は増加するだろう。

 

 

「敵が戻ってくる前にこの男を倒す!!」

 

「ええ! サンダー!」

 

「ピッチュ!」

 

「効いた! 弱っているのか?」

 

 

炸裂丸の糸を切り取り、踏みつけて簡易的なブースターとする。リリーナとピチュー相手に迫ってくるナカツナはサンダー、そしてでんきショックと来て明らかにスピードが弱まる。先程までは効かなかったのに。

 

 

「通さない!」

 

『カムイか!』

 

「許さない…! また透魔兵を呼びだすなんて… 亡くなった人を兵士にするために蘇らせるなんて…! おまえは絶対に倒す!!」

 

『透魔兵… ああ、やれるものならやってみたらどうだ!!』

 

 

2人の間にカムイが割って入る。

押され気味だったが、彼の怒りが更なる力を発揮した。それを確認し、ナカツナの体が電気を帯びる。

 

 

「…! 引いてカムイ! これは罠だ、でまかせだ!」

 

「えっ、あうぐぅぅ…!!!」

 

 

体全体で発された電撃は武器を通じてカムイを痺れさせる。少し怯んだ隙はロイがナカツナに向けて剣を振るうことでカバーされた。

 

 

「透魔兵じゃない! 出まかせだよ、カムイの思い込みが奴らの姿を透魔兵に見せているんだ!!」

 

「なんだって…!」

 

 

衝撃の真実。

だってどこからどう見ても透魔兵じゃないか。透明で、紫の炎がオーラのように纏われて…

 

 

「…!?」

 

 

ナカツナの姿が一瞬ブレた。ような気がする。

どこかで見たような気がする姿。だが、瞬時に消えて透明になって。結局わからない。

ヴォーパルの先がシークの服を掠めて穴を開ける。アルスが近づき、鋭い突き攻撃を繰り出そうとするものの、ナカツナを守るように落ちた雷でシークもろともダメージを受けて後ろに引く。空いた前衛にライコウとピチューが入る。

 

 

「見え方が違うんだ! サイレスの杖があれば… 奴の魔法を封じることができれば…」

 

「魔法を封じる…?」

 

 

ロイのところまで引いた、アルスの耳が独り言のような願望を受け取った。

 

 

「あいつ… ナカツナの魔法を封じればいいんだな」

 

「…! できるのかい!?」

 

「隙をつくってほしい。」

 

「わかった!」

 

 

そうして、今まで一歩引いたところにいたロイが前線におどりでる。カムイも少し遅れて前に出た。

 

 

『くっ…!』

 

 

前衛に3号、ロイ、カムイ、ピチュー、ライコウ。中衛にシーク、スネーク。後衛にリリーナとアルス。

 

数では圧倒的に負けているというのに、呼び戻した兵は来ない。拠点を滅ぼせという命令をだしたのだから、相当深くまで攻め込んでいて遠いのだろう。撤退、が頭にチラつき始めた。

だが、負けられない。

 

 

─蹄の音。背に感じる確かな重量。

 

─刀と刀の交わる金属音。

 

 

『敵前で策を話すやつがいるか!! 秋雨乃燕(あきさめのつばめ)!!』

 

「あぐぅ…!」

 

「ピチュウ!?」

 

 

足払い的に振り払った刀に、電撃がついてくる。確実に足を奪う技。避けられたのはライコウだけだ。他の人は避けきれず、転んでしまう。特にピチューは図体の問題で全身にまとめてくらった。

 

 

『まずは1匹!!』

 

「ピチュー! ぐう…!」

 

 

近くにいて一番ダメージの大きい敵、ピチューに狙いを定める。カバーへ回ろうとするが、転んだ状態の上にナカツナが発光して目が眩む。電撃の応用なのは理解したが、それは遅い。まっすぐに進んだ刃先がピチューに迫る。

 

 

小夜怪光(さよかいこう)。これで… チッ…』

 

「言っちゃったからね、必ず守るって」

 

「ピチュ!!」

 

 

貫いたかと思ったのは、ヒーローブラスターだった。それだけでなく、3号の右腕を沿うように浅くない切り傷が入ったが… ピチューに攻撃は当たらなかった。

3号は転んだ状態からイカ状態になり、移動してピチューを庇ったのだ。

 

 

『また、人のためってやつか? つまらないんだよ!!』

 

「可哀想に」

 

 

ピクッと、ナカツナの眉毛が動いた、気がした。そんな空気の変化があった。

 

 

「守りたい人、守りたいと思う人。自分しかいなかったんだね」

 

「─可哀想に」

 

 

 

狗馬之心(くばのこころ)ぉ!!

 

 

デタラメに、落とす雷。しかし、冷静さを失い怒りに任せた攻撃はヒーローブラスターの攻撃で怯んだことで中断させられた。

ナカツナは損傷の激しいヒーローブラスターが崩れ壊れていくのを視界に入れてしまった。

こんな戦う力も持たないような奴に、たった今使い物にならなくなった塵に、追い込まれただと?

 

 

「ピチュー、行くよ!!」

 

『…ッ!?』

 

 

3号の頭を踏み台に、ピチューは高く跳び上がる。ナカツナは彼に、以前と比べ物にならないほどの電撃が集まっているのにようやく気づいた。伝説のポケモンたるライコウに乗ってやってきて、今も近くでライコウの電撃と共に戦っていたのだ。いつのまにかたくわえていたのか。

 

ピチューとてインクリングと同じく悩んでいた。戦う力はあるのに効かなかった。ロイを呼びに行かず共に戦っていれば撃退できたかもしれない。でも彼も学んだのだ。守る力を。

 

 

(スーパー)ライジングサンダーッ!!!!」

 

 

眩く、雲を突き抜け、時空すらも突き破るほどのらいげき。それは確かにナカツナを穿った。カランと、ヴォーパルを落とし、崩れ落ちかける体を無理やり支えた。

 

 

「逃がさない…!」

 

「止まれ…!」

 

『ぐぅ… 離せ…!』

 

 

その体を炸裂丸の糸で縛り、竜化した両手でガッチリと掴み上げる。

 

 

「できた! 隙!」

 

『…!!』

 

 

アルスが何かをしてくる。先程の作戦の締めにかかっているのだ。剣を失ったナカツナは電流でカムイの手を離そうとする。だが、迫真に迫ったカムイの表情は、糸を通じて電流を受けるだろうシークは、絶対に離さないと覚悟を決めていた。

 

 

『(なんなんだこいつらは…!? どうしてここまで自分の身を犠牲にできる…!? もはや狂気の沙汰だ…!!)』

 

「マホトーン!」

 

 

その思考は止められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各地にいた兵士の姿が揺れていく。

人々の眼にはありのままの姿が映る。

 

あるものは黄色いヘルメットを被った姿へ。

あるものは緑の帽子を被った男性剣士へ。

あるものは赤色の球体の生物へ。

あるものは帽子を被った黄色の小動物へ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり。君たちのような存在と僕たちは戦ったことがあったんだ。」

 

 

限界だったカムイの手を力づくで振り払った。座り込むしかなくなったカムイ。顔を上げてその目を見開いた。

 

 

「魔法かどうかというのは… 正直賭けだった。君のふと漏らした言葉にかけてみたんだ。」

 

 

まるで、時が止まったかのような。

 

先程までは必死に戦っていたのに、この静寂はそうとしか考えられなかった。

 

 

「君はスピリットと同じ。そうだろう、ナカツナ?」

 

「…くそッ…!」

 

「なっ…!!」

 

 

遂に見えた顔、姿、形。

橙色の服を着た、ファルコ・ランバルディそのものだった。

 





○タイトル
テイルズオブイノセンスの登場キャラクター、スパーダ・ベルフォルマがよく言ってる、ベルフォルマ家士道訓五箇条の一つ。以下全文。
1.心に剣を持ち、誰かの楯になれ
2.右手に規律を、左手に誇りを
3.己を殺し、永久の礎にせよ
4.正しき道を正しく歩め
5.個よりも全に仕えよ


○超ライジングサンダー
元ネタは漫画ポケットモンスタースペシャルでゴールドのピチュが使った技……と思いきや、ポケモンカードのR団のライコウのライジングサンダーが更なる元ネタ。後に究極の技、ボルテッカーであることが判明。


○マホトーン
ドラゴンクエストシリーズで登場。数ターン、呪文を封じる呪文。効かない場合もあります。封印耐性をつけよ。


○ナカツナと敵勢の正体
結構ヒントはばら撒いていました。タグの半オリキャラはこれが由来。姿見た目は同じですからね。キーラダーズのボディが残っていたようです。


○唐突ですが
次回、一章最終話です。




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16話 勇者は征く

 

顔についていたバイザーはない。発する気迫も本人のものとは違う。ただ顔はファルコそのものだった。

 

 

「スピリットと同じ…!? ファルコのボディに奴の精神が乗り移っているということ!? だって、キーラもダーズも既に倒して…!」

 

「そうか…! キーラとダーズを倒した時、ボディがどうなったのか見てない!!」

 

 

その理論はおかしいところがある。

もうキーラとダーズはいない。シークの驚きも理解できる。

だが、スネークは可能性の話をとった。二体を倒した時、渦のように元の世界に戻っていくスピリットは、当時の全員で見た。化身の複製もだ。ただボディがどうなったのかは見ていなかった。複製と同じように消えたものだと思っていたが、ここにいる以上消えてはいなかったということだ。

 

 

「よく… 気づいたね」

 

「僕が単独でナカツナと戦った時、跳躍しすぎて僕の防御が間に合った時があった。それは肉体をコントロールできなかったからじゃないかなと思ってね。最近同じような敵と戦ったのも大きかった」

 

「…ッ、貴様…!」

 

 

憤りを高めていくナカツナに、ロイは涼しげに続けた。

 

 

「姿が見えなかったのも君の魔法だ。でも別のものに見せる魔法じゃない。存在を曖昧にさせる魔法だ。そうでなければ、僕やシーク、スネークが別々のものを見たりしない。」

 

「…! そうか! 僕が透魔兵だと思ったから透魔兵に見えていたのか…!」

 

「隠れていた2人を言い当てたのも、その力の応用だよね」

 

 

()()()()()()()()()()。ようは見た者の認識に任せる力なのだ。その魔法を受けたボディ達が各地を襲った。

そこにはロイの世界の常識から外れた戦士達がいたのだ。ロイの世界では素手で戦うような存在はいなかったから。そんな正体不明な存在が、一般人には見えない兵の姿に見せていたのだろう。

 

それが伝わって、ロイには当初、透明な戦士としてしか見えていなかった。

それを聞いたカムイは透魔兵に見えた。

それを聞かなかったシークとスネークは自分が戦っていた敵達の姿に見えていた。

 

ロイがインクリングを助けにきた時、彼女の被害状況から、完封されたと感じたロイは、ナカツナに報いた一矢の存在が見えなかった。

 

わからないからこそ、人は恐怖する。

恐怖するから、怖気づく。

それは戦意の喪失に繋がる。

 

ロイが確証を持った後からは、本当の姿にしか見えていなかった。

 

 

「本当に透魔兵だったら… 兵種はカムイの世界のものか、僕の世界のものに依存するさ。どちらでもなかったのは、兵士の本当の姿が僕たちスマッシュブラザーズを模したボディでしかなかったから。」

 

「…ッ!!」

 

 

ギリィと歯軋りを深くする。些細な音のはずなのにファイター達にも聞こえるほどのものだった。眉間に皺を寄せたまま、速攻で駆け出しヴォーパルを拾う。よく見れば腰の左側に鞘がぶら下がっているではないか。

 

 

「待て!」

 

 

インクリングが、一足遅くそれを止めようと動いたが、ナカツナは後ろへ跳ぶ。その先には、客席の上には、不思議なものがあった。何もないところがひび割れ、穴が空き、森のようなものが見えていた。

 

 

「あれはもしかして… 大乱闘の世界へのゲート!?」

 

「あれも隠されていたのか…」

 

「…ッ、逃がさん!」

 

 

その正体を察知する。奴らはここからこの世界に来たのだ。だから、この世界に迷い込んだ人々はこの周辺に降り立ったのだ。あれもナカツナの魔法で視認することができなくなっていた。ロイの言葉にスネークが急いでランチャーを撃つ。

 

 

「…ッ! しつこいぞ!!」

 

 

ランチャーを斬り落とし、爆発も二分に分ける。だが、足は止まった。というかランチャーが強力なので足を止めてしっかりと振らなければ切れなかったのだ。それは多数を相手にするには十分すぎる隙だった。

 

 

「させない…!」

 

「グウオオォォォ!」

 

 

ゲートとナカツナの間にアルスとライコウが割って入り、足を止めさせる。

 

 

「くぅ…! あいつを捕まえるんだ! それで色々教えてもらわないと… うっ…」

 

「リリーナ、カムイの治療を。僕たちが捕らえる!」

 

 

至近距離で電撃を浴び続けたカムイがここでダウン。治療はしているとはいえ、あの戦いからあまり休めていない。白魔法も信仰も、精神的な疲れにはそれほど効果がないのだ。それならば、シークも限界が近いだろう。時間はあまりないのかもしれない。

 

 

「先には進ませないよ…!」

 

「ピチュ!」

 

「ここで決着をつけさせてもらう!」

 

「そっちには行かせないさ」

 

「色々聞かせてもらおうか」

 

 

「───舐めるなっ!」

 

 

ここで、決壊した箇所からボディ達が雪崩れ込んでくる。呼び戻した兵士達が、魔法が解けて器でしかなかったことが明らかになった戦士が本能のままに指揮官以外を襲う。離れた場所にいたカムイとリリーナが真っ先に。

 

 

「まずい!」

 

「お前がな!」

 

 

不意を打って、ロイの左胸に突き出された刃先はスネークが銃を伸ばすことで防いだ。それでも、カムイ達の状況は変わっていない。

 

 

「ロイの足手まといにはなりたくない… 私だって戦えるんだから! フォルブレイズ!!

 

 

業火の炎が再び敵を焼き尽くす。だが、先程と違って取りこぼしが多い。囮や牽制を使用してないのだから当然だった。2人だけではなく、奥のナカツナを囲んだ者たちにもボディが迫ってくる。

 

 

「それらを倒すことに専念するか、被害を見捨てて俺と戦うかだ! 選べ!!」

 

「そんなの両方に決まっているだろうが!」

 

 

ナカツナの右手を銃で弾く。剣は落とさなかったものの、剣が逸れる。マーシャルアーツのパンチで顎をぶたれ、意識がぐらぐらと揺れる。

 

 

「はあっ!!」

 

「…っ、夕霞乃舞(ゆうがすみのまい)…! まだか、荒筵牙天(あらむしろがてん)!」

 

 

スネークを飛び越えて、額の真ん中にキックを入れようとするシークを斬り落とす。その直後、ナカツナの姿が、あの動きを捉えにくい状態となる技を叫ぶがマホトーンがまだ効力を発揮している。あの技はナカツナの魔法を駆使していたのだろう。

振り下ろされた剣とともに周囲に雷が落ちる。シーク、スネーク、アルス、ライコウと付近の敵をダメージを与える。電気に関しては魔法ではないようだ。

 

 

「グウウ…! グギャオオ!!」

 

「…ッ!」

 

 

ライコウがいまひとつの効果故に耐えて、ナカツナにとっしんをぶつける。流石、伝説のポケモンだった。

 

 

「ギラ…!」

 

「足止めか…!!」

 

 

ナカツナの足元が灼熱の炎に包まれる。雷をくらって動けずとも、遠隔からの攻撃はできる。ジャンプで逃げようにも、スネークとシークが構えていて、如何にも撃ち落としてやると、語っていた。

 

ボディはリリーナが戦っている。撃ち漏らしはあるだろうが、近づく前にフォルブレイズの火力で押し切っている。あとは自分が動くだけ。

もう先程のようなライコウの力を借りた電撃は使えない。ボディ達に電気を加えているが、だからこそ、自分なら隙をつけるのでは。

指示や指揮に回っていた。負傷した自分との戦いしか経験がないのだ。実力を測り切れていないはず。傷も癒えた今、全力以上を出せれば。

 

 

「カムイ! ピチュー! ロイ!」

 

 

「「「!!」」」

 

 

ローラーを持ったインクリング。その思考を瞬時に読み取った。筒部分が縦になった形。そこに宿らせる力。

 

 

意志に応える封印の剣の持つ、皇帝の如き炎。

未だに未熟な未完の力、公爵の如き雷。

選び掴み取る神祖の血脈、君主の如き水。

 

 

「これで終わらせてみせる!」

 

「…!? こんな土壇場で連携だと…!」

 

 

全て宿らせた、最初で最後の一振り。

人に指示を出し、人を導く力を開花させたインクリングが進むための一撃だった。

 

 

「アトリビュート・ロード・スプラッシュゥゥゥ!!!!!」

 

 

属性が、叩きつけと同時に弾け飛ぶ。凄まじい風圧と光で全員が目を覆う。

縦にされたローラーの射程距離は尋常なレベルではない。コロシアムの外壁まで届き、先に壊した箇所とともに、円を両断してしまった。

熱と、飛沫が弾け飛び、ピリピリと雷が肌を叩く。水蒸気が起きて、様子が見えない。

 

 

「やったのか…」

 

 

スネークの言葉。水蒸気爆発の晴れた現地。それを聞いた3号は。

 

 

 

 

 

静かに首を横に振った。

 

 

 

 

「…!!」

 

 

リドリーのボディが、アイスクライマーの二人のボディが、ブロウのボディが倒れ、溶けて消えてしまった。

盾にしたのだ。3号の一撃は四人を砕いたが、ナカツナには当てられなかった。水蒸気爆発とともに、電撃を応用した目眩しで姿を光らせれば、人の認識から外れる。一度外れてしまえば、奴を見つけるのはほぼ不可能。奴の魔法が効かないヴォーパルも見当たらないことから、既に逃亡しているようだ。

 

 

「逃しちゃった。ごめん。」

 

「ううん、いいよ。助けに来てくれてありがとう。」

 

 

もう使い物にならなくなったヒーローローラー。属性の力に耐えられず、持ち手以外は駄目になってしまったのだ。

 

 

「そのブキは…」

 

「ああ、これはいいよ。別のブキ使えばいいし。」

 

 

ヒーローのブラスターとローラーは使えなくなったが、他のブキを使えばいい。カムイの不安を収めるように言った。強がりでもなく、本心だ。

 

 

「グギャオオォォォ!!」

 

「……」

 

「……」

 

「あ、エンテイ達が…」

 

 

ライコウが一つ吠えると、エンテイとスイクンがどこからかやってくる。それに驚く間もなく、空間の歪みに飛び込んで消えていった。

 

 

「ありがとう! 本当に助かったよー!!」

 

「ピーチュー!!」

 

「ありがとうございましたー!」

 

「ありがとう、なの?」

 

「助けてくれたんだ。きっと、犠牲者も最小限になっていると思う。」

 

「そうか? ならもう少し手伝ってくれてもいいんじゃないか」

 

 

立ち去っていく三つの伝説。カムイ、ピチュー、リリーナの3人は御礼を述べる。だが、残党が残っているかもしれない。それを考えながらのスネークの愚痴はロイによって制された。

 

 

「あくまで、手を貸してくれるだけさ。本当は人がやらなくちゃいけないことだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

傷も癒え、少しの休息をとった彼らはオスティアの闘技場に集まっていた。

 

 

「みんな、準備はいいかな?」

 

 

ヒーロースーツを着たままの3号。周りを見渡す。

 

 

「ナカツナのことも追わないといけないけど、」

 

「大乱闘の世界にも何かが起きているんだよね…」

 

「ピチュー」

 

 

逃げたナカツナの行方、大乱闘の世界で起きている何らかの異変、ボディ達。

 

 

「やることは山積みだな」

 

「足、引っ張っちゃったから挽回しないとね」

 

 

真実を解き明かすため、ヒーローは進む。意味を知るため、終わらせないために。

 

 

「私達もついていくわ。半端に関われないもの」

 

「どうにかして帰る手段も見つけなければいけない。それに、人の平和を脅かす者を放ってはおけないからな」

 

 

偶然。全てが偶然。でも奇跡なのだ。

全ての出会いが。全てに意味がある。

 

 

「それじゃあ、いこう!」

 

 

3号は、インクリングは知った。

ヒーローの覚悟を。戦うことの意味を。

もう、手は震えない。

 




○タイトル
ドラゴンクエストIX のフィールド曲。
とあるボスを倒すと曲が変わっちゃうけど、DLC買ってればスマブラ でも聞けるので多少はね?


○ナカツナ プロフィール
ボディはファルコの2Pカラーを採用。
しかし、バイザーは外しており、ブラスター等の近未来的な装備も見た限り持っていない。
『存在』に詳しく、物や生き物に認識されなくなる魔法と認識をあやふやにする魔法を得意とする他、雷の力を主に使っている。ヴォーパルという存在を明確にできる剣を持ち、その三つを使って戦う。
ちなみにファルコのボディを選んだ理由は、今のところ彼のモデルに答えがある、とまで語っておきます。名前の由来も同様。
メタ的には、彼の性格が一番定まらなかったです。明るいけど敵には容赦しないとか考えてはいましたが、今後のことを考えて煽り耐性ゼロの生き汚い武人に仕上がりました。


○ゲート
大乱闘の世界と別の世界をつなぐゲート。見た目はガラスを銃弾で割ったように見える。とある力を加えることで、このゲートを通っていない者でも引っ張ってこれる。ただ、無理に開いたせいか、移動しようと通ると座標にズレが生まれる。生み出した本人の手助けがあれば別だが。


○アトリビュート・ロード・スプラッシュ
本作のオリジナルの技。
アトリビュートは属性。炎、水、雷の3属性。
ロードは君主。炎帝、雷公、水君が三犬のモデルかはわからないが、それをイメージ。
スプラッシュでインクリングのイメージ。
ロードがなければまだマシなのに付け加えて台無しにするのがインクリングクオリティ。三属性の力にローラーが耐えきれないので連発はできない。


○今章の展開
スプラトゥーン3のことを考えて、本作を見直した結果、本作のインクリングが司令になるのか…… と頭を抱えてしまいました。
ちょっと荒療治ではありましたが、インクリングに責任というものを教えるためにはこの展開にするしかありませんでした。
拙作の前作でマルスにわかるってばよアピールをしていましたが、直に見たわけでもないので、本当にわかったつもりだったのです。
これでこの3号も心置きなく司令になれるよ、やったね、たえちゃん!


○ベレトさんからの宣伝
「女の自分がフィギュアになる。天帝の剣にも二つのバリエーションがある。是非予約してくれ」
「ああ、また後輩に……」
「狙ってたの? カムイ……」


○次章 予告
研究室に篭ってたシュルクの元にソニックがやってくる。
彼はどこか別の世界に繋がるゲートを見つけたらしい。その先は大雨と洪水が起きていると。話を聞いた結果、その先がカービィのいるプププランドではないかと考えたシュルクはそのゲートへ向かうのであった。


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Kirby's Dream Land “Incident"
17話 扉を開こう


タンスの中に都合よくお金や装備があったり。

ちょうどあったからそれを持っていく。

中にはそれを咎めたり誰かに止められたり。

 

 

何かに対する風刺すらもこの一言に直結するのさ。ご都合主義ってね。

 

 

 

ちょっと強すぎるから、相性の悪い相手と対戦させよう。

 

ここは実力を無視して接戦を演じてほしいから負けられない理由をつくろう。

 

一方的になった後に逆転して欲しいから人質をとられていたことにしよう。

 

 

 

偶然破片がお目々に当たって視界が潰れて負けてしまった!

 

偶然審判が他所向いてたから反則行為をされて不利になった!

 

偶然耐えれるはずだった攻撃が急所に当たって死んでしまった!

 

 

 

先に二を置きたいから一に一を足すような感じだね。

 

同じ条件を揃えれば何度繰り返したところで同じ結果になる。

 

 

爆発した激しい感情すらも何かの伏線に過ぎない…

 

それなら全ての過程を分析すれば結果だって読める筈。

まさか、1+1の答えを2以外と読む人はいないだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

 

 

シュルクは武器を整備をしていた手を止め、窓の外を見る。薄暗いと思っていたら、空に分厚い雲ができていた。ひと雨、降るのかもしれない。灰色の空だった。机の上に置いてある卓上ライトの光をつける。

 

 

「雨が降るかも。今日は泊まっていく? カー…」

 

 

ここまで言いかけて、ため息をつく。そうだ、カービィは自分の世界に戻っているのだ。ここ最近、いるのが当たり前になっていた。

 

 

「大丈夫… だよね」

 

 

何が起こる訳でもないはず。ただ行って戻ってくるだけなのだ。なのにどうしてだろう。この曇り空のような不安が拭えない。

 

気持ちを気の所為だということにして、机に向かう。巨神と機神の戦いは終わった。人は自分の力で歩いていかないといけない。魔物がいるなら、他でもない自分達が倒さなければ。だから武具の研究は変なことじゃない。おかしなことではない。たとえ根拠のない不安を無視してでも…

 

 

「はあ…」

 

 

卓上ライトをオフにして立ち上がり、大乱闘で使うモナドを背負う。ハイエンターのあれこれに使用した新たな武器は持ってはいるが、この世界では使用していない。ちょっと見てくるだけだ。これだけで充分。扉に向かうと、自動ドアが先に開いた。そんなに近くに寄ってはない。

 

 

「誰かいるかー!!」

 

「うわっ!? ソニック!?」

 

 

ドアが開いてソニックが飛び込んでくる。勢いのままに机に乗ってめちゃくちゃになった。帰ったらお掃除の刑だ。

 

 

「シュルク! あちこち走り回って3秒、ようやく誰か見つけたぜ!」

 

「(時間経ってないように見えるけど、ソニックが走り回ってるんだよね。人、いるんだかいないんだかわかんない!?)」

 

「聞いてくれよ! 崖の近くでさ、おかしなgateがあってさ、そこ覗いてみたら大雨だったんだぜ!!」

 

 

つまり、崖近くにどこかに繋がるゲートがあり、その向こう側だけでは大雨が降っていたと。

 

 

「そのゲート、どこに繋がってるの?」

 

「I don't know! だけど、洪水起きてるぐらい酷かったぜ。」

 

 

この世界のどこかに繋がっているのだろうか。だとしたらどこかで大雨が降っていることになる。ならば、この場所でも降るかもしれない。非常用品の確認をするべきかとぼんやりと考えていると。

 

 

「そういえばメタナイトの仮面みたいな戦艦が飛んでたぜ? すっげーダサかったぞ!」

 

「えっ!?」

 

 

背筋が、凍る。

抱えていた根拠のない不安は一気に爆発した。

 

 

「それって… ハルバードじゃないの? ってことは… ゲートの先って…」

 

「ん? あー、そういえばそう見えたな」

 

 

ステージの舞台にもなっている、メタナイトの保有する戦艦。それがこの世界以外であるとするならば… そこはプププランド。カービィの故郷だ。答える間もなく走り出した。

 

 

「っておい!? そこがプププランドって決まった訳じゃ… くそっ!」

 

 

ソニックも遅れて走り出す。

 

 

「オイオイオイ! そこがプププランドだとして、どうしようっていうんだ!?」

 

「ゲートに、飛び込んで、みる! カービィ達が、きけん、かも、しれない…!! だめ、なことは、わかってるけど…!!!」

 

 

遅れたといっても、相手がシュルクならば簡単に追いつける。息を切らしながら全力で走るシュルクに余裕で並走するソニック。友達のためなのだ。

確かにこの世界を通じて、別の世界に行くのは禁じられている。それは世界の文化や秩序を乱しかねないことだから。基本的に規則のような自由を縛ることを嫌うソニックだが、理由は理解できるので守っていた。禁忌だ。でも、友達や仲間が危険だというならば、律儀に守ってやる道理はない!

 

 

「OK! ついてきなシュルク! お前にも追えるように、とびきり遅く走ってやるぜ!」

 

「あり、がとう!」

 

 

捉え方を間違えれば嫌味にも聞こえる言葉をシュルクはありがたく受け取る。事実ではあったし、カービィ達のことが心配だったから。

 

 

「着いたぜ! これがGateだ!」

 

「これが…」

 

 

あの崖、キーラとダーズを倒し、みんなで命の灯火を見たあの場所。確かに何もない場所に、窓ガラスに銃弾を撃ち込んだかのような穴がある。シュルクでも簡単に入れそうな大きさの穴だった。

 

 

「いこう!」

 

 

二人はゲートを同時に潜り抜ける。しかし、潜ったはずのそこに穴は消えた。地上も消えた。

 

 

「「え?」」

 

 

間抜けな声を出して、雨の降る速度が遅くなる。それは当然だ。二人は雨と同じように落ちているのだ。踏みしめるはずの地上はなかった。空中にいたのだから。

 

 

「「うわああああぁぁ!!」」

 

 

ざっぶーん、と大きな水柱が立つ。地面に激突、というパターンは洪水になっていたおかげで助かった。助かったけど。

 

 

「あぶぶぶぶぶ…!」

 

「(ソニック!!)」

 

 

ソニックは泳げない。自分より早く沈んでいくような感覚に陥って、シュルクは慌ててソニックの腕を掴んで水をかいた。

 

 

「(洪水、なんてわかってたのに、苦手な水がいっぱいだなんて知っていたのに! それでも付き合わせてしまった!! どうにかしなきゃ!)」

 

 

少し不恰好になっても、浮力に合わせるように泳ぎ続ける。シュルクだって、特別泳ぎが上手いわけではない。肺に残った残り僅かな空気を使って這い上がろうと、もがくもがく。手を伸ばして、何でもいい。救ってくれる希望の光。

掴み取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きく揺れる小舟に打ち上げられる。実際は這い上がったのだ。何か綺麗に加工された木の棒が差し伸ばされ、それを掴み取った。誰かが引き上げてくれたのだ。

 

 

「ゲホッ……! ゴホッ! ガハッ……!」

 

 

気管に入ったのか、口から水を吐き出す。苦しくて、無意識のうちに涙目になっていた。

 

 

「はあ、はあ、ソニック! 無事!?」

 

「死ぬかと思った…」

 

 

舟の上で大の字で横たわる。もはやしっかり言葉を返す元気もないようだ。

 

 

「大丈夫?」

 

「うん、ありがとう。助かったよ…」

 

 

こちらを心配そうに覗き込む救世主。彼に引っ張り上げてもらったのだ。カービィサイズのぬいぐるみのような子。一頭身で、丸くてぱっと見口がないように見えるが、普通に話せる。

 

 

「どこかで見覚えがあるような…」

 

「んー、確かにどっかで見た気がする顔だなー」

 

 

シュルクの既視感にソニックが力なく同意する。どこかで見たことがある。だがどうして出てこないのだろう。

 

 

「もしかして… 大王さまやカービィの友達?」

 

「あっ! そうか、大王様に仕えてる子!」

 

「はい! でも、これつけてきたことなかったかな。ぼく、バンダナワドルディ! よろしくね!」

 

 

二人が思い出せなかったのは、記憶の中ではこの青いバンダナをつけていなかったからだ。

先程差し伸ばされたのは、隅に置いてある槍だろう。ザーザーと降る雨の中、この出会いこそが、プププランドに晴天をもたらす最初の光だった。

 




○章タイトル
星のカービィ初代の海外名。
Incidentは出来事、事件の意味。


○タイトル
キングダムハーツ シリーズで頻繁に登場する。キーブレードが武器だからか、扉というものが結構な頻度で登場する。
Bbsでは()()()()()()も言ってる。この説明いるって? いるに決まってんでしょヴェントゥスだよ!?


○ソニックの水嫌い
マリオオリンピックの水泳競技ではライフセーバーの着用が義務づけられている。作品によって沈むだけだったりダメージ受けたり苦手の度合いも様々。


○バンダナワドルディ
青いバンダナをつけたワドルディ。
スーパーデラックスのミニゲームから実績を重ね、新作ディスカバリーでも2Pキャラとして登場が決定されており、カービィの相棒ポジを獲得している。グーイ涙目。本作ではスピアとパラソルを両方使います。
で、なんでスマブラ参戦させなかったの?


○カムイからのお願い
「FEHと検索して公式サイトにとんでね! 英雄総選挙でカムイ(男)に入れるんだ! いいね!? ニンテンドーアカウントがあればヒーローズやってなくても投票できるから!!」
「でも中間結果じゃルフレもクロムも自分もなんなら女バージョンも上位に入ってたが一人だけ」
「ベレト、シッ」




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18話 じょうせんけん

 

 

小舟に置いてあったパラソルを借りて、ソニックが濡れないように傘を差す。バンダナワドルディは体に合った短い長さの櫂をこいで進んでいる。

 

 

「ねえ、バンダナワドルディ?」

 

「んー? どうしたの?」

 

「君はどうして、こんな状況で舟を漕いでるの? 何か事情があるの?」

 

「メタナイトにね、頼まれたんだ。危険なところにいる子はハルバードに避難させるからって。連れてきて欲しいんだって」

 

「危険なところ?」

 

 

シュルクは首を傾げる。この状況で危険ではないところがあるのだろうか。避難させるのはわかるが、できる限り全員を避難させねばならないのでは。そう考えたシュルクの傍でイカダが通り過ぎる。パラソルをさして、2匹のワドルディは体を預け合うように… 昼寝をしている。

 

 

「ええー!?」

 

「おひるねしてるね。それがどうかしたの?」

 

「どうかしてるよ…」

 

 

この状況で呑気すぎないか。カービィが呑気なのは知っていたが、彼が少数派だと思っていた。そうか、メタナイトのような人物が少数派だったのか…

 

もっと周りを見渡してみると、浮き輪をつけて行動している住人がいる。適応力が高すぎやしないだろうか。

 

 

「それでもお水が苦手な人とかいるから、ぼくは見回ってるんだよね。とりあえずメタナイトのところまで案内するよ」

 

「頼むよ。ソニックを休ませないと。」

 

 

メタナイトのいる場所。つまりハルバードだ。戦艦ではあるが、避難所として活用しているということは、休める場所はあるだろう。四方が苦手の水だらけの場所では、安心して休めまい。

 

 

「(それにしても… どうしてこんなことに)」

 

 

本来のプププランドはもう少しのどかな場所だろう。シュルクは模倣のステージとカービィ達の話でしかプププランドを知らないが、こんな洪水するほどの大雨だなんて。何か原因があるはずだ。無関係のシュルク達が、この世界に来れたことにも理由があるはず。とりあえずメタナイトと合流しよう。

 

 

「(あれは… 木?)」

 

 

先のことを考えながら、変わり果てているだろう友の故郷を見ていると、ふと巨大な植物に目を止める。あまりの高さに一瞬塔か何かだと思ってしまった。かなり離れているはずのここからでも見えるほどの大きさだ。蔓が絡まって、てっぺんに大きな花が咲いていて。

 

 

「ハルバードが見えてきたよー」

 

「あっ、うん!」

 

 

呼ばれて前方に向き直る。

近くで改めてみると、かなり巨大な戦艦だ。どういう仕組みをしているのだろうか。ここまでの兵器はいらないだろうが、どこか応用できる箇所があるはず。今度暇な時に見せてもらおう。マシーナの技術と組み合わせれば、多くの人や貨物を運べる機械を作れるかもしれない。

 

 

「どうしたの?」

 

「あっ、ううん。少し考え事してただけ」

 

 

あっちの世界でもあの戦艦が飛ぶところは何度も見たが、相当低い場所を飛んでいる。自分達を中に入れるためだろう。

戦艦の真下につくと、パッチのようなものが開いて、縄が降ってくる。その先を小舟の船頭にくぐりつける。

 

 

「さ、登って登って!」

 

「うん…」

 

 

もっと他に方法はなかったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦艦内部。操縦室にメタナイトはいた。いい感じの部屋にソニックを放り込み、バンダナワドルディに導かれて、シュルクはそこへやってきた。

 

 

「シュルク。君だったか」

 

「メタナイト、無事でよかったよ。ダウン中だけどソニックも一緒。」

 

 

ぼくが連れてきたんだよ、とばかりに胸をはる… 図体の関係上、顔を突き出しているようにしか見えないバンダナワドルディを軽くスルーしてメタナイトは続ける。

 

 

「二人もここに迷い込んできたのか?」

 

「迷い込む?」

 

 

メタナイトの言葉に怪訝な顔をする。その意図を感じ取ったのか、聞き返してきた。

 

 

「自分が元いた世界から、大乱闘の世界へ戻る時に、気づいたらこの世界にいた… そういう訳ではないのか?」

 

「え? 違うよ。僕はあの世界にずっといたんだ。そしたらソニックが変なゲートのようなものがあるっていうから、入ってみたらここにいたんだ。」

 

「おい」

 

「ん? ……えっ」

 

 

振り向いて、固まった。ウルフが獰猛そうな目でこちらを睨んでくる。そんなことされる謂れはないのに、鳥肌が立っていく。気分はさながら小動物だ。

 

 

「そのゲートはどこにある」

 

「あの、ウルフ? えっと」

 

「くぐってきたんだろ? ゲートとやらをよ、場所を吐け、血を見ることになるぜ?」

 

「ええ…」

 

 

脅しだった。展開についていけない。どうしてウルフがこんなところにいるんだ? なんで脅されているんだろう。

 

 

「落ち着け。シュルクは混乱しているんだ。今すぐ聞き出すことはないだろう」

 

「アイクに… ガオガエンまで!?」

 

 

ウルフだけではなかった。ウルフを止めたのは、見慣れた姿に戻った(本人からすれば成長した)アイクと、いつもよりおとなしいガオガエンだった。

 

 

「どうしてここに…」

 

「みな、自分の故郷の世界から大乱闘の世界へ戻ろうとした時、何故かここにたどり着いていた。ファイター以外にも、あの世界に向かっていた人々も幾人か巻き込まれている。私やデデデ大王はずっとここに残っていたが」

 

「カービィは?」

 

「わからん。この異変だ。おそらく独自で動いているだろうが、私は見ていない。」

 

「そっか…」

 

 

彼の安否を気掛かりにここまできたのだ。どこにいるのかわからない、ということは無事かどうかもわからないということだ。内心気を落とした。

 

 

「君とソニックだけ大乱闘の世界からこの世界に… もう少し詳しく教えてくれないだろうか」

 

「うん。僕が自室にいたらソニックが入ってきて、崖に謎のゲートみたいなものがあるって言われたんだ。その先が洪水になったプププランドってわかって。カービィが心配になって二人で追ってきたんだ。」

 

「ゲート… 俺たちをここに導いた者の仕業か?」

 

「あるいは。首謀者もそのゲートを使ったのかもしれない。しかし、君たち3人をここに呼んで何の得があるんだ?」

 

 

シュルクとソニックがイレギュラーと考えるならば、アイク、ウルフ、ガオガエンをプププランドに連れてきて何かしたかったということになる。しかし、一体何のために?

 

 

「シュルク、そのゲートはどこに出た」

 

「………空中。そのまま落ちて沈んで。それでバンダナワドルディに助けられたんだ。」

 

「俺も同じだったな」

 

「グアウ」

 

「…違うのは経緯だけか」

 

「でもみんな同じところに落ちた訳じゃないよ。微妙にズレてるんだ」

 

 

全員が同じ場所から出たというならば、そこがゲートで間違いないだろう。だが、ズレているとはどういうことだろうか。

 

 

「本当に空中にそのゲートがあったなら、ハルバードに乗っていて気づかないことはないだろう」

 

「ぼくもそれらしいのは特に見なかったかな」

 

「仮に首謀者とやらもそのゲートを使ったのならば、同じように空中から落ちたのか? 不便ではないか?」

 

 

色々と考えてはいるが、確かにあり得ない話ではない。だが、どことなくしっくりこない。

 

 

「僕たちが来た場所がズレているなら、本来のゲートは安全な場所にあるのかもしれない」

 

「そのゲート自体の場所から散らばるようにオレ達が来た、かなるほどな」

 

 

たどり着いた結論は、自分達が現れた場所のどこにもゲートはなく、その近辺にあるのではないかという推論だった。

 

 

「空中に近い場所かー……」

 

「ワールドツリーか、鏡の国……」

 

 

現地人の二人がうんと唸って思いついたのは二つ。天高く聳える大樹、もしくは天の上に存在する国。その二択だった。

 

 

「シュルク、ついてそうそう悪いが、バンダナワドルディと共に、ワールドツリーに向かえるか? この被害だ。住民達をあの世界で一時的に避難させることも検討したい。」

 

 

二択を一つに絞り、ゲートの捜索を依頼する。戦艦ハルバードはあくまで兵器なのだから、さほど余裕があるわけではない。避難させ続けるのにも限界がある。

 

 

「ハルバードで直接行ければいいが、首謀者がいるかもしれないと知っていながら、避難してきた住民達を乗せていく訳にはいかないからな。」

 

「わかった。ゲートを探せばいいんだね?」

 

「俺も行く。首謀者がいるなら戦える人数は多い方がいい。」

 

「ガグゥ……」

 

「ケッ」

 

 

更にアイクが名乗り出る。ガオガエンとウルフには参加する意図はない。雨は苦手でつるむのは嫌いだ。

 

 

「Wait! オレも行くぜ!」

 

「ソニック!?」

 

「大丈夫だって! 浸かんなきゃ平気さ!」

 

 

さっきの疲弊っぷりをシュルクは心配したが、本人はシュルクの背を叩いてアピールした。

 

 

「では、四人に行ってもらおう。何もなかったら一度戻ってきてくれ」

 

「はい!」「うん!」「ああ」「OK!」

 

 

目指すは水に溢れてても強く天まで伸びる大樹。天空の民の希望、ワールドツリーだ。

 

 






○タイトル
ドラゴンクエストIV で登場するアイテム。第四章で登場。最後に使ってババリアからエンドールにいく。ひらがなだから装備しようとした面白い勇者もいたとかいなかったとか。


○プププランドの適応力は世界一イイィィィ!!
なんかポップスターを機械化してても、ストーリーに入るなり、すぐに適応してくる。総じて呑気。


○でっかい木!
トリプルデラックスのワールドツリー。セクトニアに乗っ取られたりしましたが元気です。


○原作能力
原作能力が使えるということは大人の事情で使えなかったラグネルの衝撃波も使用可能!! インフレを抑えるための未実装だけどXでのメタナイトの暴れっぷりを見るに実装してても問題なかったのでは。後ウルフェンもプププランドにあります。ハルバードに着陸してる。


○避難民
バーニンレオみたいな雨に弱そうな原住民が主。ただ一部他世界から迷い込んだ人もいる。


○鏡の国
鏡の大迷宮の舞台。ディメンジョンミラーがタランザによって取られたり、シャドーカービィがよく登場するなど、意外と露出が多い。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
『ぬわああああああああ!』
「フッ…… ルカリオがやられたようだな……」
「奴は2022年新作発売四天王の中でも最弱……」
「ぽ! ぽよよよよ!(人間如きにやられるとはファイターの面汚しよ!)」
「発売した=倒されるなの?」
「あ、ベヨネッタもそうだったか、忘れてた」
「ドラクエもそうだったね! テンのオフライン」
「そのうち20周年のキングダムハーツも動き見せるだろうし、今年忙しいよなー」
「財布の中身チェックしとかなきゃだね!」
『私に対するコメントはないのか……!?』
「ぽよよーい(約束された神ゲー)」


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19話 チョキチョキマニア

 

 

「よっ、と…」

 

「体力は平気か、シュルク」

 

「大丈、夫。これでも少しは鍛えてるから」

 

 

小舟から上がった四人は手頃な葉まで登る。真上をみるが、頂点は遥か先。そこまでの道のどこかに世界と世界をつなぐ空間の歪みはあるのだろうか。

 

 

 

まず、ワールドツリーから少し離れた場所で四人を下ろしたハルバードはデデデ城へ飛んでいった。

 

 

『住民達は全く戦えない… とまではいかないが、私達と比べると見劣りするのは確かだ。ゲートの近い場所でハルバードを寄せると、最悪の場合反撃されるかもしれない。私は住民達をデデデ城に下ろしてこよう。』

 

 

ということで、ワールドツリーには小舟で近づいた。そこから多量に絡まった大きな蔓を登り、付近の葉でひとまず休息を取る。

 

アイクはまだわかるのだ。シュルクがわからないのは他の二人だった。

ソニックは体が軽いからか、意外とすいすい登っていくし、バンダナワドルディも何故か楽々登っていく。シュルクだけが、この蔓に苦戦していたのだ。

雨に濡れた蔓は滑って握力で支えることは大変であるし、シュルクは、力が強くなければ、体が軽いわけではなかった。それでビリ、という状況だ。

 

 

「なあ、雨、ひどくなってないか?」

 

「むっ… 出直すのも一手かもしれない。冷たい雨は体力を奪うからな。」

 

 

シュルクが息を整えている間、ふとそんな言葉がソニックから漏れた。確かにこの冷たい雨は人の体力を奪うだろう。風も出てきた。

 

 

「でも、この雨はずっと降っているんだよね? いずれにせよ行かなきゃ」

 

「そうだよ、全然洗濯物が乾かないの」

 

「動かなければ変わらない、か。だが、全員無理はしない。強行はしない。それでいこう」

 

「わかった。じゃあまた登らなきゃだな!」

 

 

手の水分をズボンで拭い、絡み合った植物を掴んで登る。滑ったりしたら完全に終了だ。蔓と蔓の隙間に第一関節まで入れ、右足を上げる。手探り…… 否、足探りで蔓を見つけて足をかける。また伸ばす左腕が早くも震えてくる。

 

 

「なー、バンダナ。このtreeってなんなんだ?」

 

 

そうやってシュルクが必死になって登っている間、比較的余裕のある他3人はワールドツリーについてバンダナワドルディから聞いていた。

 

 

「ワールドツリーはね、天空の民っていう人達がプププランドの勇者に助けて貰いたくてきせきの実を地上に植えたんだ。」

 

「それが芽をだしてこんなでっかい木になったんだな!」

 

「うん、一時はお城も土地ごとくり抜いて宙に浮かばせちゃって凄かったよ。今はそんなこともないんだけどね」

 

「大地ごと浮かばせる…… 想像がつかないな」

 

「その時のは足で歩いて登れるぐらいには楽だったな」

 

「(いいな……)」

 

「それでね、天空の民に酷いことしてきた女王様がワールドツリーを乗っ取っちゃって」

 

「Really!? すごいな!」

 

「ポップスターが蔓で覆われちゃってびっくりしたなぁ」

 

「びっくり程度で済む話じゃないが…… これが標準なら、ウルフが帰りたがるのも納得できる。根本的に反りが合わないんだな」

 

「いいとこなのに」

 

「そういう問題じゃないが……」

 

 

シュルクにはこの会話に参加する余裕がない。落ちても大丈夫なようにと一番先に登り始めたというのに、いつの間にか抜かされていた。

 

 

「…………!!」

 

「あ、そうだ。君たちの話も聞かせてよ」

 

「……ッ!」

 

「オレ達の? そうだなー、話せることが多すぎてどれから話すかなー」

 

「………ッ」

 

「なら俺のことか…… それとも亜空軍との戦いかキーラとダーズとの戦いか?」

 

「…………」

 

「後半二つはいいや。大王さまから聞いたことあるし」

 

「…………」

 

 

無心無心、無心無心。

何も考えずに登ればあっという間だ。アイクの世界での戦いの話は全く耳に入らなかった。

上を見るのも下を見るのも億劫で、植物の表面だけを見ているのが一番楽だった。どれほど登ったのだろうか。無心にもなれず、苦しく弱音を吐いた。

 

 

「うっ…ぐっ…… いつまで、登れば…!」

 

「おーい!! ここまでついたら休憩するぞ! Fight!」

 

 

先に大きな葉を見つけ、そこに立っているソニックから激励の言葉を受ける。思わず上を見てしまうが、彼らの居場所はかなり近かった。もう一踏ん張りだ。

 

 

「あと…… 少し……!」

 

「わざわざご苦労だったね。お疲れ様」

 

「…!!」

 

 

誰もいないはずの真後ろから声が聞こえて気がして、反射的に振り返る。誰もいない。気のせいなのか? また登り始めた時だった。

 

 

「あっ! あれ!」

 

 

バンダナワドルディが見つけた。見つけてしまった。空を飛ぶなにか。いや、これはなにかではない。完全に見覚えがある存在だった。

 

 

「リザードンにピット!? お前たちも来てたのか!」

 

「待て! 何か違う!!」

 

 

空を飛んできたのは、ソニックが並べた名前。仲間の名前。でも違う。リザードン、ピット、ブラックピット。二人以上いるなんてあり得ない。まとまって飛んできたのはつい最近戦ったはずの存在だった。

 

 

『……』

 

「ボディ!? キーラとダーズの!? どうして……!」

 

「急げシュルク! 落とされるぞ!!」

 

 

シュルクの目にも止まった。理由を考える暇もない。空を飛ぶ彼らは真っ直ぐシュルクの方へ向かってきていたからだ。身の危険を感じても、消費した体力は戻らない。あっという間にシュルクの体にしがみつかれる。バンダナワドルディが槍を投げ、アイクが衝撃波でボディ達を攻撃し剥がしにかかるも、それよりシュルクの限界の方が早かった。

 

 

「うっ……!」

 

「シュルク!!」

 

 

重さに耐えられず、遂に手が離れる。体が落ちていく。だが、シュルクは落ちていく中で、仲間の背後からやってくる、他のボディ達の姿を見つけた。

 

 

「うしろォォオー!!」

 

 

これ以上はそうないと自覚できるほどの叫びに近い大声を上げる。だが、それ以上は何も出来なかった。さっきまで登っていた道を逆走し、はりついたボディとともに落下し、着水する。

 

 

「むうぅ……(まだ、しがみつかれて……!)」

 

 

落下しても、体の動きを封じてくる。特にリザードンのボディなど、水中では満足に動けやしないだろうに。シュルクの体を水中深くへ連れて行く。なんとか体を揺らして振り払おうとするも、水の中ではその動きも鈍い。

 

 

「んぐっ……!? (増援…!?)」

 

 

彼らだけではない。水中に待機されていたのはゲッコウガやゼニガメをはじめとするボディ達。水中にまで待ち伏せられていたのだ。また押さえ込まれ、どんどん息が苦しくなるのに水面から遠のいていく。

 

 

「(ダメ……だ…………)」

 

 

最後の灯火である咥内の空気を吐き出したシュルクは終わりを覚悟した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─何してんだッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がひゅ……! がはっ…… けほっけほっ……」

 

 

無意識にできたのは口の中の水を吐き出す行為。重力に嫌われた体は存外正直なようで、意識もせずに酸素を取り込んだ。それにつれて暗かった視界も、徐々に元の色を取り戻していく。

 

 

「大丈夫ッスか?」

 

「ゴホッゴホッ…… ありが、あり」

 

「無理しなくていいって!」

 

 

まだ水が口の中に残っているのか、お礼の言葉もまともにできない。というか命の恩人の顔もろくに見えない。

 

 

『…………』

 

「うわっ、まだいやがる! ちょっとここにいてくれ!」

 

 

それだけを言うと、水の中に潜っていく。まだ、いやがるとは、ボディのことだろうか。少しして呼吸が落ち着くと、空気を溜めて潜る。

 

歪んでいて相手の姿ははっきりとはわからない。ただ、その手に持った澄んだ大海を纏めたような綺麗な片手剣ははっきりとわかった。

その人と対峙するかのようにいくつかのボディ。リザードンの巨体やピットの翼は見えないので、水に適していないボディは沈んで、適したボディだけが残ったのだろう。

 

 

「(戦えなくても…! サポートを!!)」

 

 

モナドの青い光を展開させる。スピードを高めるアーツをその人にかける。自分を助ける時に攻撃をくらっていたのか、速度で越されたボディは一撃で沈んでいった。それを確認して水面へ飛び出す。少し遅れてあの人も水の上に上がった。

 

 

「助かった! ありがとな!」

 

「いや、こっちこそ。助けてくれてありがとう。君は……」

 

 

自分よりも濃い、薄茶色にも近い金髪。

自分よりも癖のある、外に跳ねた毛先。

自分よりも濃い、日に焼けた健康的な肌の色。

 

一見すると似ていそうで全く似ていない、対極的な若者。

そう感じながら切った言葉を、名前を聞いてきていると感じた彼は、大雨の降る中、笑顔で語る。

 

 

「オレ、ティーダ! よろしくな!」

 





○タイトル
ペーパーマリオ オリガミキングのハサミとの戦闘BGM。
セルフハードにもできる戦いで息もつく暇もないハラハラな戦闘を演出する。多分そこをとって今話のタイトルに抜擢したのだが、ぶっちゃけどういう意図でそうしたのかわすれてしまいました。テヘヘ


○避難
すぐ落ちるハルバードに避難してて安心できるわけねーだろいい加減にしろー! 果たして今作でハルバードは落ちるのか、乞うご期待!


○登攀
アイクはパワー有り。バンダナワドルディは軽い。多分ソニックも足早いから軽いだろ……ということで学者肌のシュルクだけが遅れを取ることに。


○ティーダ
FFXの主人公。ブリッツボールという水球の中で行うサッカー+ハンドボール的なスポーツを行うエース級選手。戦闘では片手剣とブリッツボールを使って戦うディシディア式。
FF7を深掘りする案もあったが、セフィロスいるしドラクエは他勇者もいるので別作品から誰か登場させることに決定。
クラウドとそこそこご縁があり、物語の展開的に一番活躍できそうなティーダになりました。24710組やらお天気組やらコスモス転生組やら何かと縁も多く、FF7とFF10は同じ世界ではないかとも囁かれているほど。意図していなかったが、FFの二台巨頭を参戦させたみたいになった。
二つの余談だが、シュルクに似てそうで似ていないというのは作者の第一印象。ぶっちゃけ全然似てない。
もう一つは彼の使用武器。フラタニティというのだが、個人的に創作の武器中、トップクラスで美しい武器だと思っている。知らない方は是非ググってください。


○水中戦
ゼノブレイドは水の中で戦えない。FFXでは戦える。
シュルクは助太刀できなかったのだ。



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20話 更に闘う者達

 

 

「うしろォォオー!!」

 

 

落ちていくシュルクに決死の思いで叫ばれて、反射的に振り向いた。意志の持たないボディ達。シュルクを落としたそれらと同一の存在が現れた。総勢、5体。

 

 

「デデデに、しずえに、ベヨネッタに、リンクに……」

 

「ケンか。クソっ、どこでボディ拾ってきたんだッ」

 

 

終わったはずの物語。倒したはずの敵。続きが紡がれるかのように、それらは目の前に存在していた。

 

 

「倒していいんだよね?」

 

「ああ。倒すんだ。あいつらは敵だ」

 

「アイク! オレはシュルクを拾ってくる!」

 

「お、おい」

 

 

アイクの止める声も虚しく、ソニックは降りていってしまう。確かに数で負けている相手にパワーは捨て難いが、それはソニックが泳げたらという話が前提である。溺れている人を泳げない者が救おうとしているのと同義。だが、仲間思いだからこそ、自分の苦手など二の次でシュルクを助けにいったのだ。ようは頭で考えるより、体が勝手に動いていたのだ。

 

 

「あいつは…… 仕方ない、今は目の前の敵に専念しなければ」

 

「来た時と同じこと、くりかえしちゃった」

 

 

バンダナワドルディの純粋だからこそ、余計にグサグサくる正論。ソニックが行った後でよかったかもしれない。

 

 

『……!』

 

「、ぬぅん! 余裕があれば叩き落とせ、数を減らすことを優先するんだ。」

 

 

リンクのボディのジャンプ斬りを正面から受け止め、二丁拳銃の射線へ誘導してバランスを崩す。本物と違い、急拵えのチームプレイすらできない。この感覚は、彼にとってはかなり前のキーラどダーズの戦いを思い出す。

 

戦乱がひと段落し、ようやく呼ばれたと思ったら自分には記憶にない4回目であった。知っているはずなのに相手にとっては初対面。それは自分にとっては以前に、相手にとっては後に味合わせた感覚だったが。

 

 

「ええー!? ソニックとシュルクのところに敵を送ることになるよ!」

 

「相手は水中の活動に適していない。だから叩き落として弱ったところで止めを刺して貰った方がいい」

 

 

下で何が起こっているか二人は知らない。

でも、例えこいつらをすぐに叩けなかったとしても、そこまで苦戦はしないのでは。そう考えた。

 

正拳突きを剣で受け止めるが、隙になった横っ腹を巨大な木槌が殴打する。踏ん張りにくい葉の上でなんとか足を残した。油断すれば、こっちが落とされる。

 

 

『…………ッ』

 

「うわー、大王さまそっくり。でもなんか懐かしい色してる?」

 

 

追撃にと、アイクを追った古めかしい色のデデデに数本の槍が突き刺さる。バンダナワドルディが得意の槍を持って参戦した。そのまま敵の真正面に立つ。

 

 

「大地づき! ごめーん、僕じゃ落とせないかもー!」

 

 

大王の偶像に、地を這うような突きをくらわせ、バンダナワドルディは理解した。自分ではパワーが足りなくて落とせない。軽めのボディならばどうにかなるかもしれないが……

 

 

「いや、十分だ。支援を頼む!」

 

 

横に振り切ったラグネルはデデデのボディを吹き飛ばし、葉の端まで叩き斬った。バランスが崩れたところを、バンダナワドルディのパラソルきゅうこうかで落とした。

 

 

「あ、ごめん、さっきのやっぱなし。僕いけそう」

 

「(あの…… 傘とか言ってたか? あれは武器だったのか)」

 

 

道中でシュルクとソニックが話していた単語を思い出す。ああ…… とんでもない勘違いをしていらっしゃる。これが文化の違いというものだ。

 

 

『……!』

 

「わー!? そんなこと言ってる場合じゃなかった!」

 

 

飛んできたパチンコの玉をパラソルで防いだ。

わーぎゃー言いながらも、しっかり反応できている様子はさすが歴戦の戦士だ。

アイクも格闘家の波動拳をやり過ごし、一気に接近して斬りつけた。その体勢からグルンと腰を捻って正面を向き、衝撃波でブーメランを撃ち落とした。

 

 

『…………!!』

 

「くぅ……!」

 

 

しかし、無理をした上で拳を避けたせいで体勢を崩す。ガタガタになった上で昇竜拳をくらってしまった。顎に一撃が入り、意識が飛びかけるが、瞬時に戻した。

 

 

「…!! 天ッ空ッ!!」

 

『……ッ!?』

 

 

空中に浮いている最中、更に剣を上に投げて刃を叩きつける。アイクの十八番、天空だ。一刀両断のもと倒れたボディは金色の液体に戻っていく。

 

 

「うららららららっ!!」

 

 

バンダナワドルディは百烈突きで、ベヨネッタのボディの素早い連続パンチに張りあっていた。刃で少なからず傷が増えているはずなのに、鈍くなる様子がない。

 

 

『!!』

 

「うわっ……!?」

 

 

しかし、横からポンポンを持ったしずえのボディが割って入ってくる。思わず、そちらの防御に手を回してしまい、百烈突きは中断してしまった。軽めのバンダナワドルディに拳がもろに突き刺さり、体が突き飛ばされる。

 

 

「バンダナッ!」

 

「うわわわっ!? 助かったぁ……」

 

 

アイクがギリギリで槍を掴んだことによってぶっ飛ばされることはなく、なんとか葉に足をつけることができた。

 

 

「人数で負けていると戦い辛いか……」

 

「集中してたら別の人がかかってくるよね」

 

 

ラグネルの衝撃波でベヨネッタのボディを牽制し、バンダナワドルディが槍を沢山投げて、他二人を物量で押し留めようとする。

敵全員が遠距離からの攻撃方法を持っていることも災いして、これだけでは押しきれない。

 

 

『『…………』』

 

「あっ! 抜かれた!」

 

「くっ……!」

 

 

ほぼ同時にベヨネッタとリンクのボディが攻撃を掻い潜り、二人にかかってくる。それぞれ武器を構えるが、攻撃に回っていたこともあり、体勢が不十分だった。

 

 

「バックスラッシュ!! ごめん、遅くなった!!」

 

「シュルク!」

 

「しつこい奴らだぜ!」

 

「ソニックもだ! ピンピンしてるー!」

 

 

背後から急襲したシュルクのバックスラッシュがベヨネッタのボディに直撃し、アイク達の頭上を通ってぶっ飛んでいく。リンクのボディは脇腹に跳び蹴りをくらい、フィールドから落ちることはなかったが、手痛いダメージになったはずだ。しずえのボディと並ぶ。

 

 

「はあ? オレは元気だぞ?」

 

「だって最初あった時ボロボロだったよ?」

 

「あれは不意打ちだったからだって!」

 

 

水が苦手なはずなのに、ソニックに疲れの一つもないのを不思議に思うバンダナワドルディ。だが、その理由は簡単だった。ソニックは何もしていないから。

 

 

「おまえは……」

 

「話はあとあと!! まずはこっちを片付けるぞ!」

 

 

アイクは見覚えのない金髪の少年を見つける。片手剣を構える日に焼けた浅黒い肌。雨で濡れた顔が何故か凄く似合っていた。

相手は二人、こちらは五人。数が完璧に逆転する。

 

 

「はあああ!」

 

『…………!』

 

 

真っ先に飛び出した少年、ティーダはリンクのボディに斬りかかる。剣同士が重なり、両手を添えて鍔迫り合いが始まる。

 

 

「せい、せい!」

 

「遅すぎて欠伸がでるな!」

 

 

パチンコの弾を弾くバンダナワドルディの背後からソニックが飛び出し、小さな体躯にスピンアタックを叩き込んだ。

 

 

「くらえッ!!」

 

 

神速の如きスピードでアイクが斬り込む。姿形こそ仲間にそっくりだが、そこには紛い物の意思すら存在しない。何を躊躇することがあろうか。この中で一番の力勝負ができるアイク。蒼炎を纏って振るった剣は小さな敵を吹き飛ばした。

 

 

「豪快にいくっ!! いっけえぇぇー!!!」

 

「っ!? りょーかい!!」

 

『……ッ!?』

 

 

モナドを解放し、青い光の刀身を発生させて鍔迫り合いしていたボディの背後から自分の体ごと回転させて斬りつけた。ティーダはその意図を汲んでか、跳び上がってかわした。

リンクのボディのみが斬りつけられて吹き飛ばされる。マスターソードを葉の大地に突き刺して、一瞬留まったが。

 

 

「いい加減おねんねしてなっ!」

 

『!!』

 

 

ソニックに顎を蹴り上げられる形で手を離し、突き落とされた。数瞬の後、残ったマスターソードが他のボディと同じように溶けていくのを確認する。

 

 

「なんとか退けたか……」

 

「ふぅ、びっくりしたね」

 

 

最初から戦っていたアイクとバンダナワドルディが一息ついた。しかし、気になることは聞かなければ。

 

 

「ところで、おまえは……」

 

「オレはティーダ! クラウドの知り合いって言えばわかるか?」

 

「へえ、クラウドの…… そういえば、僕達のことは言ってなかったね。僕はシュルク。青い髪の人がアイクで、こっちが……」

 

「オレはソニック! で、このちっこいのがバンダナだ!」

 

「バンダナワドルディです!」

 

「へえ〜…… よろしくな! シュルク、ソニック、アイク、バンダナ!」

 

「どうして短くされるんだろ?」

 

 

軽く自己紹介を挟む。

そういえば、シュルクもティーダのことを名前ぐらいしか知らなかった。しかし、あまり口数の多くないクラウドの知り合いか。ティーダは明るく、活発で太陽のような性格だ。まるでクラウドとは逆である。

 

 

「もしかして、ティーダもプププランドに迷い込んできたの?」

 

「迷い込む? いや、オレはちょっと頼まれてな」

 

「誰に?」

 

「誰ってそりゃあ……」

 

 

ティーダが続きを言おうとした時だった。

全員が視線を感じた。同時に上を向く。こことは違い、一人分が立つ程度しかできない葉。

 

 

「その誰かって……」

 

 

その視線は敵意ではなかった。友好の意も感じない。そう、例えるならば、自分達を通して別の何かを見ているような。檻の中の受刑者を眺めているような。

 

 

「こんな顔、してなかった?」

 

 

ティーダの知り合い、スマッシュブラザーズの一員。瓜二つでも、違う顔。

 

クラウドのボディを選んだ、誰かはあまりにも似合わない幼い微笑で、赤い瞳を細めていた。

 





○タイトル
FF7のボス曲。スマブラにも収録されている。ジャカジャジャーン。
やっぱりこういう曲の解説は内容に困る。私の知識が曖昧なところは専用wikiとか見て解説を入れているんですが、まるパクリはどうだろうと思った結果、内容のない解説になります。どうしよ。


○バンダナ呼び
長い故に性格上略すのではないかと思われる人はバンダナ呼びにしています。本人は嫌というよりは自分のことなのかと反応が遅れるので困惑している模様。


○謎の敵
クラウドの格好をした誰か。カラーリングとしては5Pカラーです。オリジナル版の服が赤色になってる感じ。赤い瞳なのは中身の存在の色です。キーラとは関係なし。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話1
「ル〜フ〜レ〜?」
「ひえっ」
「ひえじゃないが」
「ど、どうしたカムイ」
「ほうほうほう、自分は無実だとも言いたいのかい?」
「な、なんの話だ」
「比翼英雄」
「あっ」
「ルフレと双界英雄、割と本気に考えてたんだよ? それなのになんの意外性もなくクロムと組んで…… 一緒に手繋いでゴールしようって言ったのに」
「聞いたことないよ!」
「アクアも双界英雄いったし全てに裏切られた僕は誰と組めばいいの?」
「まだクリスはあるんじゃないか? それかきょうだいか……」
「あ、そうか、闇堕ちして眷属タクミと組もう」
「その選択肢が出るのはまずいって!?」
「とりあえず無双でベレトがとことん不遇になる呪いかけたから。」
「また似たようなこと言ってる……」


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話2
「大体500文字程度でわかるニンテンドーダイレクトー」

「開発協力にコーエーが関わっている時点でいつかくることだったのだろう、風花雪月無双」
「某超次元サッカーみたいな新ゲームが増えたよマリオストライカーズ!」
「サーモンランでイクラ投げられるようになったのは、地味にめちゃくちゃ重要じゃないかとスプラトゥーン3! 後シャケがマスコット枠にいたからなくなるかもと思っていたサーモンランが」
「長いからカット。公式オワタ式が出るとは思わなかったメトロイドドレッド」「ちょっとー!」
「黒幕っぽく登場したけどどうせ操られてるんだろという目をやめろディスカバリー!!」
「Wiiスポーツ改め、MiiもなんとかリストラされなくてベリーほっとしたSwitchスポーツ!」
「こういうところで登場できるの、半ば諦めてたよ、SwitchオンラインにMOTHERとMOTHER2!!」
「またコメント! いつまで売れ続けるんだマリカー8DXDLC!」
「「「過去作品の面影を残すゼノブレイド3!!」」」

「クラウド、クラウド、レースゲームでるんだって?」
「ああ、スコールもいるがな」
「ディズニーでもレースゲームでるんだ! 俺も出られるかな?」
「狙ってるのか?」
「ワンチャンぐらい…… ってええええ!?」
「どうした? ……なっ!?」
「「クロノクロスとライブアライブリマスター!?」」

「どうも、情報漬物コンビです……」
「勝手にコンビにしないでくれる?」



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21話 SAVE

 

 

「クラウド……じゃない。誰なんだ!」

 

「ルネ」

 

 

シュルクの敵意に満ちた問いは至極簡潔に答えられた。

 

足をぶらぶらさせながら、答える彼は幼く感じ、見た目とのチグハグさに気持ち悪さを感じる。彼が本人ではない、とすぐにわかったのは、彼の体が見慣れた2年前の姿をしていたからだ。この雨なのに、赤い服は湿っているように見えなかった。

 

 

「ああ、ルネっていうのは名前ね。ホウエン地方の某シティではないよ」

 

「そんなことを聞きたいんじゃない!」

 

「えー、誰だって聞かれたから答えただけなのに。やっぱり世界って理不尽だよね」

 

 

少し会話をかわしただけで、本能が理解した。この相手は理解できない存在なのだと。無意識に拒絶しているのだ。でも聞かざるを得ない。この相手は、紛れもない敵だから。

 

 

「まずはどうしてクラウドの姿になっているのか。そして、おまえ達の目的とこの世界に何をしたのか聞かせてもらう」

 

「少しはご自分のお頭でお考えになりましたら? なんでも聞けば答えてくれるほど単純な世の中じゃないんだよ?」

 

「だったら力尽くで吐かせてやる!」

 

「この統一性のかけらもない連中と? まったく、僕になんのメリットがあるのさ。」

 

「そんなの関係ないな! 勝ったら全部教えてもらうぜ!!」

 

「勝ったら? 勝ったらでいいの? それはダメだよ。僕が君たち相手に勝つ可能性の方がまだあるよ?」

 

 

強者の余裕というやつか。

人を舐めている態度に少しずつ怒りが湧いてくる。

 

 

「……うん、ごめん。大人気なかったね。君たちが勝つ必要はないよ。盟友だってそんなの見たくはないだろうし。僕に一撃くらわせるたびに一つの質問に答えてあげる。」

 

「盟友…… まだ敵がいるのか」

 

 

ルネがクラウドと同じように大剣を取り出し、同じように構える。その仕草の一つ一つが、本人にダブって仕方ない。

 

 

「じゃ、遠慮なくいかせてもらうぜ!!」

 

「ま、最初は君だよね」

 

 

一直線に、最速でスピンアタックがバスターソードにぶつかる。ゴリゴリと回転数がルネの防ぐ力を強める。

 

 

「おうりゃあ!」

 

「……!」

 

「(防がせておいて、プリッツボールのシュートとシュルクを背後に回させる……)」

 

 

とんできたのは白と青のボール。ティーダの攻撃だった。そしてシュルクが回り込んでいるのも見逃さない。他の二人もカバーしやすい位置にいる。

 

 

「でも流石にこれ以上を即席に求めるのは酷か!」

 

「うおお!? シュルク!」

 

「うわっ!?」

 

「ぐうっ……!」

 

 

スピンアタックの方向を変え、背後に動いていたシュルクにぶつける。自由になったルネはボールをアイクに向けてボレーシュート。

バンダナワドルディが槍を投げてくるが、牽制にもならない。むしろそれでターゲットを変えたようで破晄撃がとんでくる。

 

 

「うわん!」

 

「こいつッ!」

 

「凶斬り」

 

 

飛び込んできたティーダに連続斬り。勢いを殺して、叩き伏せた。目の前で片膝をつくティーダに対して、追撃を加えない。

 

 

「くそっ……」

 

「ほらほら、頑張れ頑張れ、まだ掠りもしてないよー」

 

「おちょくりやがって!」

 

「青いね。流石は君だよ、そうでなくちゃ君じゃない。」

 

「おまえにオレの何がわかるってんだ!」

 

 

力任せに振った剣を、敢えてギリギリのところで避け続ける。反撃をせず避けることを繰り返しながら、会話が続く。しかし、何かが琴線に触れたのか、唐突にフラタニティを掴んで直に止めてきた。

 

 

「わかるよ。君のことは君以上に理解してる。君にとって僕は初対面でも、僕にとっては何百と会ってるんだ。君じゃない君も当然知ってる」

 

「訳わかんねえよ!」

 

「離せー!」

 

 

空中から連続で突きを繰り出す、バンダナワドルディ。それも当たらないが、少なくともティーダの剣から手は離れた。

 

 

「ぬぅん!!」

 

 

ティーダとバンダナワドルディの攻撃へ対応しているところを、アイクが神速の動きで斬り込もうとする。

しかし、シュルクは考えていた。この動きもバレているのではないか? 今までの全てが防がれているが故にそう思ってしまう。

 

 

「(即席の連携…… なら、連携じゃなかったら?)」

 

 

シュルクは独断でモナドアーツを選ぶ。

 

 

「(モナド…… スピード!!)」

 

「ッ!?」

 

「おっ……?」

 

 

突然自分の速度が速まったアイクは攻撃のタイミングがずれてしまう。しかし、同時にルネの防御のタイミングもずれてしまい、回避に移行するも、避けきれずに胸あたりで服が斬れて浅い傷ができた。

 

 

「おー、流石だね。じゃあ、質問に答えてあげる。どうしてクラウドの姿をしているのか、だね。といっても難しい問題ではないよ。精神だけの存在だった僕が、残されていたクラウド・ストライフのボディを選んで憑依したってだけ。仕組みはスピリットと同じだよ。」

 

「スピリットと…… 同じ……」

 

「……あっ!? まさかオレに手を貸して欲しいって言ってきたのって!!」

 

「当然、僕。騙されやすくてよかった、よかった!」

 

「こんのォ!」

 

「落ち着け、挑発だ」

 

 

どうやらティーダがここに来たのは、クラウドの頼み…… もといルネの罠だったようだ。

 

 

「さて、ここからは有料サービスだ。他のことも聞きたいなら…… わかってるよね?」

 

「やるしかない、か」

 

 

再び構えなおす。先程のやりとりでアーツもきれた。同じ手はそうそうできないだろう。

まさか、アーツを切らすためにティーダの問いに答えたのか? 彼からは底知れない何かを感じるからか、だいぶ疑り深くなっている。

 

 

「クッソー!!」

 

「ははははは(棒)、雑に斬り続けたところで当たらないよ? もっと頭を使わないと……」

 

「うっ」

 

 

軽く足払いをかけられる。転んだところにそのまま腹部を蹴られ、前線から退けられた。

 

 

「ねえねえ、ふと思っただけなんだけど、転んだは事実を端的に言ってて、意味合い的には同じなのに、コケたはダサくて、スタンしたはちょっとかっこいいのどういう違いがあるんだろうね」

 

「知るかっ!!」

 

「こっちには語ることを強要しておいてコレとは…… 親の顔を…… いや、流石に煽りすぎたか。平常心平常心」

 

 

気分を落ち着かせるように、両足を揃えて小さく跳ねる。ただ、それを歴戦の猛者達は見逃さなかった。

 

 

「(今だ!)」

 

「……ッ!」

 

 

ソニックが横から回り込んで、ティーダは真っ直ぐ正面から。跳んだ瞬間、防御の体勢を取りにくくなったところにいち早くソニックが回し蹴りを叩き込んだ。

 

 

「……ッ!? 流石に君の速度は捉えきれないか……!!」

 

「まだだ!」

 

 

遅れたティーダが、バスターソードを足場にして飛び上がった。剣に溜めたエネルギーが爆発しようとしているのが見えた。

 

 

「エナジーレイン、なら…… いや、受けるか。煽りすぎたお詫びだ」

 

 

ルネがいた辺りが爆発する。ソニックはいち早くヒットアンドアウェイで離脱済みだ。

 

 

「そして爆発に紛れて…… 噴火は通さないよ」

 

「……チッ」

 

「流石に君の攻撃は手痛いからね」

 

 

爆煙に紛れてアイクとバンダナワドルディが攻撃をけしかけていた。ルネはラグネルのみを止める。バンダナワドルディの一閃は甘んじて受けていた。

 

 

「とはいえ、やられっぱなしでもない…… 画竜点睛っ! 過度なスキンシップは厳禁だッ!」

 

 

竜巻のような風を発生させ、雨の雫とともに二人を吹き飛ばした。通常の足場より滑りやすい葉の上で、シュルクとティーダが二人の手を掴んでスリップを止めた。茎をつたって落ちてしまいそうなギリギリの位置だ。

 

 

「やっぱりな。おまえ、そんな強くないだろ」

 

「ソニック?」

 

 

ニヤリと笑った。今まで戦って気づいたのだ。

問われた本人はあどけない顔で首をひねる。

 

 

「おまえは予測とか先読みとかが優れてるだけだ。おまえ自身に大した戦闘力はねえ。だから戦闘力の高い、クラウドのボディを選んだんじゃないか?」

 

「……!」

 

 

戦闘に長けていたら、今の連撃だって防いでいたかもしれない。もしも、本物のクラウドだったら。想像しかできないが、防げるイメージは浮かんでくる。

 

 

「君がそれを指摘することになろうとは。そうだね、否定はできない。あんな化け物じみた運動能力が誰にでも備わってると思うなよ。ソニックが一番厄介だったんだ。でも、ここじゃ満足なスピードなんて出せないし、君にはちょうどいいハンデじゃないか?」

 

「……!? その言い方だとまるでおまえがソニックを誘導したみたいじゃないか!?」

 

「当たらずとも、遠からず。」

 

 

ゾッとしたアイクの問いに、ファイター達の血の気が引いた。

 

ソニックが誘導したのがルネの仕業なら、

 

ティーダを誘き寄せたのがルネの仕業なら、

 

プププランドを水没させたのがルネの仕業なら、

 

 

「(一体どこまでが…… 自分で動いた結果なんだ……!!)」

 

 

ソニックがゲートを見つけなかったら、シュルクはここにいなかったかもしれない。

ティーダがここに来なかったら、シュルクは溺れていたかもしれない。

水没していたのがプププランドじゃなかったら、シュルクはここまでこなかったかもしれない。

 

 

自分達がバンダナワドルディに救われていなかったら、メタナイトが避難民を受け入れていなかったら。

いや、メタナイトがワールドツリーについていっていたら? 少なくともここまで苦戦はしなかった。水没しなかったら、ソニックだってもっと十全に戦えてたはずだ。メタナイトも直接的に協力できていた。

 

どこまで? どこまでが彼の思惑なんだ?

 

 

シュルクはルネという存在を否定しか出来なかった。

 

巨神界の運命全てを握っていたザンザとも違う。一挙一足まで見抜かれているような、それを踏まえて誘導されているような。

 

 

「……」

 

 

怖い。怖い。

ルネという相手は、違う場所に存在しているような気がする。

 

自分達が舞台上の役者なら、彼は舞台の下で観察している監督のような。

 

 

「……ッ!?」

 

 

視えた。未来。未来視(ビジョン)

一度消えた筈の力。今やあの世界でしか発動しない力が発動したのは、紛い物とはいえ、モナドを握っているからだろうか。いや、目の前の敵を倒すためだ。これ以上、おまえの好きにはさせない。

 

直立不動のルネ。

黙っちゃってどうしたの。

答えられない自分達。

突然動いてソニックの足を──

 

 

 

 

「……!」

 

「おーい、黙っちゃってどうしたの? 自分の意思汲み取ってくれる人ばかりだと思わないでよ」

 

 

誰も、何も語らない。語れない。

でも、シュルクだけは動いていた。

 

 

「はあああ!!」

 

「シュルク!?」

 

 

ルネが踏み出した右足が地面につく、瞬間に戦場となっていた葉が両断された。目を丸めて、支えを失った葉のかけらごと落ちていく。

 

聞きたいことはまだあった。

だがそれ以上にこの男と喋りたくなかった。

 

 

「なるほど、未来視(ビジョン)か。」

 

「……!?」

 

 

落ちていく彼が、やたらとスローモーションに感じる。その言葉をシュルクはしっかりと聞き取っていた。

 

 

「僕も何度も()()よ」

 

「君が救った人、救えなかった人。」

 

「でも君じゃ変えられない。救えなかった人は救えない。救えた人を見捨てられない。」

 

「一体、どこまでが君の意思なんだろうね。」

 

「じゃ、過去でまた会おうか」

 

 

「どういう──」

 

 

そのあとの言葉をシュルクは知らない。

誰だって知らなかった。

 

 




○タイトル
UndertaleのPルートの最終局面のみ使える特殊コマンド。
語るまでもないが、ゲーム用語のセーブと救うのセーブをかけている。
作者の個人的な印象だが、非公式日本語訳から公式日本語訳になった時、このコマンドはふっかつになったのが一番不評であった気がする。


○ルネ プロフィール
はいはいはーい。僕はルネ。僕は組織…… いや、名前はないけど。
とりあえずスマッシュブラザーズと敵対してる烏合の衆の一員だよ。
あ、さっき言ってたけど本当に某シティとは関係ないからね。
今僕はクラウド・ストライフのボディを自分の体として使ってる。服は赤色。目も赤色。キーラの支配は関係なくて僕の元々の目の色だよ。多分。一応過去は人間だったしなんなら僕自身もっと幼かったような気がするよ。ま、昔の話だけどね。
ちなみに僕自身に戦闘能力はなし。ただちょっと特別な力があるよ。次回を待ってね。多分出てくるよ。いや、出させるよ。


○ホウエン地方の某シティ
ルネシティ。周りが島で囲まれていて上陸できず、ダイビングを使って街中に入らなければいけない。その上海に街半分が両断されているので、なみのりを使わないとまともに生活できない。投票とかないけど多分実際に住みたいポケモンのシティランキングドベだと思います。


○「僕も何度も()()よ」
シュルクの未来視(ビジョン)関係は『視えた』と表記します。
()()とルネが言った理由とは……



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22話 Reset

 

「……なるほどね。そうくるか…………」

 

 

誰も、何も語らない。語れない。

でも、シュルクだけは動いていた。

 

 

「はあああ!!」

 

「シュルク!?」

 

 

ルネが踏み出した右足が地面につく、瞬間に戦場となっていた葉が両断されるはずだった。

 

 

「未来を変えられるのは君だけの特権じゃないんだよ? 足場を奪うだなんて、なんて姑息な」

 

「なっ…… なんで……!」

 

 

ルネは()()()()()()()()

確かにソニックの足目掛けて刃を突き出す未来を視た。そのために飛び込んでくる姿も視た。

だから、ぴょんぴょん跳ねていた時の着地隙を見計らって敵の足場を奪ったはずなのに。

 

葉を両断するはずだったモナドは、切り込みすら入れていない。それより前にバスターソードの贋作に留められていたのだ。それをしたのは当然、ルネしかいなかった。

 

 

「……! シュルク、未来を視たのか!?」

 

「えっ!? そんなんできんの!?」

 

「すごーい!!」

 

「視た……!! はず、なんだけど……!!!」

 

「ふんっ」

 

「うわあ!」

 

 

ルネがシュルクを吹き飛ばした。

スマッシュブラザーズの中では、本業が研究員ということもあって、純粋な髄力では下の方であるシュルクが、クラウド(のボディではあるが、身体能力は全く変わらない)の力に勝てるわけがない。他の味方の元へ吹き飛ばされる。

 

 

「確かに僕は未来を見た! それを回避するために動いたはずなのに……! ルネは()()()()()()()()()()()()()()()()()()……!!」

 

「考察もいいけど、質問タイムなの忘れてない? えーと、僕達の目的だっけ?」

 

「その通りだ。話してもらおうか……!!」

 

おまえ達ってところが粗があるとこだよね。チゲンとかじゃなくてボディのこと言ってるんだろうけど

 

「オイ! オレ達にはわかんねー言葉で言うつもりかよ?」

 

 

まさか、自分にしかわからない言葉で語ることでくぐり抜けるつもりなのかと、ソニックが憤るが、ルネはそれを全く気にせず、真剣な表情をして言った。

 

 

「僕達の目的は自分だけの肉体を手に入れること。一ヶ月前の戦い…… 灯火の星の戦いは覚えてる?」

 

「灯火の星……ってなんスか?」

 

「一ヶ月っていうと…… キーラとダーズとの戦いか? そんな呼び方をしてるのか」

 

「そうそう。別に難しいことじゃない。囚われたスピリットは解放されても、複製されたボディは残っていた。精神だけだった僕達は好きなボディを選んで自分の体にしたに過ぎない。」

 

「精神だけだった? 僕達だって? ホー、つまりお前とボディだけじゃねえってことだな?」

 

「理由はまちまちだ。そもそも聞いてないし。ただ、そのままではダメージが積み重なるとフィギュア化のシステムが発動。ボディは崩れて宿っていた僕達は解放されてしまう」

 

 

人差し指を一本伸ばしたルネはまるで教師のように、出来の悪い生徒に根気よく説明するように語り出す。

 

 

「それなら、フィギュア化のシステム、もとい大乱闘の世界のシステムそのものを乗っ取ってしまおうと考えたのさ」

 

「そんなことを……!!」

 

「それで、創造主サマを襲ってシステムを乗っ取った後に消し去ろうと考えてたんだけど…… マスターハンドに逃げられてさ。ただどこかというよりは、ファイターの誰かに宿る形で逃げたらしい。」

 

「それで、僕たちを襲ったのか!? どうしてプププランドまで!」

 

「まあ、束になった君たちと闘うのは少々合理的じゃない。だから既存の世界を使って散り散りにさせてもらった。あとは確認するだけ。裏技で大半は調べさせてもらったけど、マスターハンドは見つからない。創造主が宿ってるのならば、大乱闘のシステムから外れていてもファイターの力を扱えるはずだ。君たちにとどめを刺した時、フィギュアになればそこにマスターハンドがいる。まあ、危険を察して自分から飛び出してくれればそれが一番いいんだけど……」

 

「フィギュア化しなかったらどうするつもりだったんだ」

 

「運がなかったね、って一声かけて立ち去ったかな」

 

「……ッ!!」

 

 

この少年はおかしい。

フィギュア化は大乱闘の世界において死を避けるための手段。これがあるからこそ、大乱闘は成り立っているとさえ言える。

フィギュア化するべきタイミングでしなかったら。つまりそのまま死んでしまうという意味だ。その意味をわかっているのか? いや、ここまで語っておいて理解していないはずがない。わかっててこの言葉を言っている。

 

 

「まあ、それは彼らの目的であって僕の目的ではない。烏合の衆で利害の一致の協力なんだから連携とかないも等しいし」

 

「じゃあ、そのお前自身の目的は?」

 

「おいおい、質問を許したのは攻撃を当てた数だ。3回当てたんだから3回答えた。それ以上聞きたかったらやることがあるだろ」

 

「2回しか答えてねえだろ!」

 

「答えたじゃん、ソニックの強くないだろって奴とソニックを誘導したのかって奴。そして目的のことも聞かれて答えた。」

 

「あああああ!! こいつ屁理屈ばっかでムカつく!!」

 

 

上手く手玉に取られている。アイクはそういう性根だからか、戦術かわからないが、そう分析した。人を煽り、精神的に上に立つように動いている。その結果乗せられやすいティーダが一番平静になれてない。真っ先に引っかかったのが彼ということもあるのだが。しかし、冷静でなくとも戦う意欲を見せるティーダよりも、思考するのに精一杯で動けないシュルクの方が心配だった。

 

 

「(どうして)」

 

 

未来視(ビジョン)が破られたのは、厳密にははじめてではない。テレシアとはじめて戦った時がそうだった。人の思考を読むのに長けていて、未来を変えようと動いた自分の思考を読んで行動を変える。

確かに同じく行動を読むのは得意な相手だが、それにしたって動くのが早すぎるし、行動の意図まで読み切っていた。テレシアとは違うと感じるのは気のせいなのだろうか?

 

 

「ほらほら、頑張れー!」

 

「うむー!!」

 

「くそっ!」

 

 

バンダナワドルディがパラソルでガードしてるところを、ルネは出鱈目に斬り込む。隙だらけのはずのそこへソニックが殴りかかるものの、その瞬間だけ剣で弾いた。そしてすぐにパラソルへ戻る。

 

 

「はあああ!!」

 

「とおっ」

 

 

しかし、アイクの一撃は片手間にいなせるほどのものではなく、バンダナワドルディから標的を変えて、剣と剣が交わる。味方内で一番のパワーファイター、アイクのラグネルとルネの持つ大剣が互いを叩き合った。

 

 

「助太刀ッスよ!」

 

「ふん、」

 

「わわっ!?」

 

「うおっ!?」

 

 

剣を振りかぶりながら、襲ってきたティーダに、バンダナワドルディを蹴りつける。咄嗟に抱き止めるが、勢いを殺せず足場のない空中へ投げ出させる。なんとか左手で葉に手をかけるが、ギリギリだ。

 

 

「オレが相手する! helpを頼む!」

 

「わかった!」

 

 

アイクとルネの間にソニックが割って入り、格闘術で立ちはだかる。二人を引っ張り出すにはソニックではダメだ。力が足りない。

それを読んでいたのか、ルネはソニックを無視してアイクの首筋を──ではなく、守るように滑り込んできたシュルクの顎を拳で砕いた。

 

 

「がッ……!!」

 

「チョロいよ、甘いよ、チョロ甘だよー、また未来、視たんでしょ? 未来を変える権利は君が独占してるわけじゃないって何度言ったらわかるのさ」

 

「「シュルク!」」

 

「行って!!」

 

 

アイクとソニックが、シュルクを心配するのだが、シュルクはそれよりも二人が心配だった。雨に濡れた葉が命綱で長い間もつわけがない。幸い、吹き飛んだシュルク一人をターゲットにしているので、助けが間に合えば問題はないだろう。

 

 

「全く、学習能力がない。ルキナがいるのに、僕だけが未来を変えられるんだー、って。こんな傲慢さがあるなんて初めて知ったよ。」

 

「ぐう… そういうことを言いたいんじゃない! 未来を変える意思を持つなら、何かしらの形で未来を知ることが必要じゃないか! 君はどうやって……」

 

「だから一撃を当てろと…… おっと」

 

 

沢山の槍が投げられる。先に上がったバンダナワドルディが投げたものだった。

 

 

「しっかたないな。特別サービスね。僕ってやさしいなあ」

 

「え? ……!?」

 

 

そういうと、ルネは剣を振って槍を斬り落とした。……たった一本を残して。

 

 

「さて、僕が未来のことを知った方法だけど…… 厳密には違うけど、ソティ…… ベレトの天刻の拍動と側から見れば同じだね。違うのは……」

 

「どうして…… わざと攻撃を受けたのか?」

 

「はい?」

 

「僕はお前がわからない…… どうしてわざわざ攻撃を受けた? 僕達に情報を与えようとする? ティーダのこともそうだ。君がここに誘導してきたというのに、君の利になっていない……」

 

 

ここでルネの異常性が剥き出しになった。小難しいことが嫌いなソニックも、無口だが熱血漢のアイクも、のほほんとマイペースなバンダナワドルディも、素直故に未熟なティーダも。共有してしまった恐怖。それは持っていた敵意をそのまま拒絶感に変えてしまうほどの影響力を持っていた。

彼の行動が破綻している。だからなのか、本能が彼を理解するのを拒否している。彼個人の目的…… それを達成するためにピンチすら演出するというのか。

 

 

「聞くなら一つだけだって。でもまあ、僕の利というよりは盟友の利だ。それだけ言っておくよ。」

 

「盟友……」

 

 

ルネは唐突に大剣を背に納めた。

そこでようやく、ファイター達は自身が武器を持ってはいても、構えていないことに気づいた。それほどまでに、心は少年を敵に回したくないのだろうか。

 

 

「で、質問の続きだけど、時間そのものを巻き戻す天刻の拍動と違い、僕のそれは過去に送るんだ。自分の記憶を。いつかの過去の自分に。」

 

「つまり…… 未来の自分から記憶を受け取る……?」

 

「ちなみに回数制限はありません。そもそも記憶を送ったのは未来の自分だしね」

 

 

それで、全てを見透かしたように動かすことができたのか。何もかも思い通りに。その気になれば、全ての攻撃を避けることだってできたのに。

 

 

「さて、質問タイムは終了。僕は忙しいからね。そろそろ帰らせてもらうよ」

 

「…! 帰さない!」

 

 

その言葉が頭の中で反復したのち、意味を理解する。動きは一番アイクがはやく、他の者も遅れて武器を構えた。一番最後はシュルクだ。

だが、肝心のルネは全く動揺しない。背を向けたまま、そうそう、と言い忘れたことを語るように自然に会話を続けた。

 

 

「結局質問できなかったプププランドを沈めた方法だけど。すぐにわかるよ」

 

「何を……!?」

 

 

そういうと、ルネはちょいちょいと背中の武器を指差した。指さした方、自然にバスターソードへ目が向いた。大乱闘では空いていた二つの穴の片方には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……って、アレマテリアか? ミッドガルで使うアイテムの……」

 

 

彼らには、『ミッドガル』というステージで登場し、使うことで召喚獣を味方につけられる心強い存在という印象しかない。

 

 

「一番彼の体が都合が良かったんだ。大した力を持たない僕でも大きな力が使える。」

 

 

そう言って、指さしたのは空の先。

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

人差し指の先を見上げると、それから目が離せなくなった。分厚く不機嫌な雲から、長い長い胴体があらわになる。

 

 

「君たちはこいつをどうにかしてから追ってきなよ。僕はいつまでも待ってるからさ」

 

 

いつのまにか最初に見た、一段上の葉へ移動していたルネ。ああ、よく見れば側に通ったゲートもあるではないか。

 

 

リヴァイアサン。ああ、スピラにはなかったけどスマッシュブラザーズなら見たことあるよね? さあ、ファイト!」

 

 

ようやくわかった。

プププランドを水に沈めた正体。大蛇のような巨大でいて長い体躯、美しい両翼。

さっきまで仮にも穏やかで雨を受け入れるしかなかった水面は、リヴァイアサンに近づくにつれ、渦を巻き、風を呼び、雨が体を打ちつける。

まるで、天国が荒れ果てたかのような凄まじい光景だった。

 





○章タイトル
大神のエンディング曲。大神の曲といえば太陽は昇るばかり挙げられるが、これもまた神曲。CMでの使い方とアレンジが秀逸なのです。


○謎の文字
アストルティア文字。ドラゴンクエストシリーズにおいて8から使われ始めた架空の文字。解析されたのが10なので、10の舞台のアストルティア大陸からアストルティア文字と言われることに。ハーメルンにフォントがあったから使ってみたかった。
ちなみに割と衝撃的なこと言ってます。


○「チョロいよ、甘いよ、チョロ甘だよー」
テイルズシリーズにおいて、定番となっている戦闘後掛け合いの一つ。テイルズはこういうキャラクター同士の交流や関係が面白い。


○盟友
ヒントは少しあるけど、現段階でもわかる人にはわかる。多分。


○ルネの能力
「さて、本編でも書いてあるけど、僕の能力は過去の自分に自分の記憶を送る力…… もしくは未来の自分から記憶を受け取る力。まあ、どっちでもそんな変わんないよ。
この力は、セーブとリセット機能を側から解釈した能力だね。だから都合よく色々動かせたんだよ。」


○リヴァイアサン
FFシリーズに登場する召喚獣の1匹。スマブラのミッドガルにも登場してます。津波を起こしたり、氷塊をぶつけてきたり。ちなみにFF10では没になりました。カナシーネ。



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23話 最終決戦艦ハルバードモード


新作に入って初めて遅刻をやらかしました。この大バカ者め。
ディスカバリーの体験版やってました。


 

 

「……行かなきゃ!」

 

「流石にこれじゃ、みんなも危ないよ!」

 

 

駆け出す暇も惜しい。

そのまま水の中に飛び込んで小舟にたどり着く。もとより雨でぐしょ濡れなのだから、今更潜ったってなんともない。

ソニックはバンダナワドルディの助けで飛びながら、直接着地した。

 

「みんないるー? 慎重に近づくよー」

 

「うん!」

 

 

バンダナワドルディが舟を漕ぎ、リヴァイアサンの元へ向かう。水面は荒れ、小舟は酔えとばかりにグラグラ揺れる。この不安定さだ。戦うことは不可能だろうが、近隣にいた住民達が不安だったため、急いで向かう。

 

 

「この方角って何かあるんスか!?」

 

「えっーと…… あ」

 

 

大王さまのお城だ。

そう呟いたバンダナワドルディの言葉で、状況が相当まずいことを悟った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どっしり、構えた大王。目標に定めるは一つの怪物。合図と同時に城外に設置された大砲は次々と弾を吐き出した。

 

 

「うてうてうてー!!」

 

 

忙しなく動くワドルディ達がせっせと働く。突然現れた召喚獣リヴァイアサンに対抗するための攻撃だ。しかし、あくまで固定砲台なのであまりにも遠くに離れられると届かない。

 

 

「くそー!! ハルバードの攻撃もあまり当たらん!! どうすればいいんだ!」

 

 

一人怯えてデデデの背中にワドルディが隠れている。それも気にする余裕はない。

 

ハルバードからの避難民をデデデ城へ受け入れる。最初は少し渋っていた。素直に良いことはしたくない。それに、いつ水位が上がって城も沈んでしまうかわからなかったからだ。

しかし、リヴァイアサンの登場によりそうも言ってられなくなった。奴との戦いに明らかに適しているのはハルバードの方だったからだ。避難民のみ城に入れるとすぐにハルバードは飛び立つ。

 

それでも、リヴァイアサンは小回りが効いている故に、ハルバードでは捉えきれない。あくまでこの戦いではデデデ城の大砲も、ハルバードもサポートだ。彼らの主戦力は。

 

 

「チッ…… 雨が酷くて視界が悪いな……」

 

 

ウルフの乗り込むウルフェンだ。

共にたどり着いた愛機は、ハルバードに停めていた。それがこの状況で出陣である。小回りが効いて大きすぎないのでこの戦いに適していた。雨雫で視界が塞がれるが、ワイパーなんてダサいものは当然ないので、技術でカバーだ。

 

 

「おっと、やたらめったら撃つなよ! オレさまとメタナイトはウルフのサポートだ!」

 

 

撃つのか撃たないのかどっちなのか。それを突っ込む者はいない。デデデはメタナイトとの会話を思い出していた。

 

 

『この戦い、メインはウルフだ。あまり出鱈目に撃つな。彼の方は視界がよくない。誤射をしたら一巻の終わりだ。』

 

 

 

 

 

幾ら技術でカバーといっても、なんの障害もない時より悪い条件であることは間違いない。うっかりウルフェンが墜ちてしまったらそれこそ一巻の終わりだ。

 

 

「ギュルオオオオオオオオオオオ!!」

 

「正面に捉えづれぇ……!」

 

 

細く大蛇のような敵は簡単に狙いから外れられる。ウルフェンのショットで攻撃を続けるが、あまり数が当たらない。これで脆い敵であったら、戦いが楽であったというのに。

 

 

「ルオオオオオオオオォォ!!」

 

 

レーザーのような高圧水流をウルフェンに向けて発射する。ローリングしてあちらこちらへかわし続けるが、レーザーは追ってくる。

 

 

「ギュウウウゥゥ!?」

 

「ッ! アームか!」

 

 

レーザーを撃つ隙を見て、ハルバードのアームがリヴァイアサンの顔を鷲掴む。その衝撃で攻撃をやめた。二連主砲の弾丸とレーザーがここぞとばかりにリヴァイアサンに叩き込まれる。

ウルフも好機だとばかりに攻撃を続ける。

本当ならば、こんな金にならない上に得もないことやりはしなかった。事件の黒幕を自分で見つけた方が早いだろうが、ここの地理など知らぬ。無駄に群れるのも性に合わないからまかせた。故に、ゲートを見つけたとシュルク達が戻ってきたら、速攻で帰るつもりだったのだ。プププランドがどうなろうと知ったことではない。

 

─それでもこんな怪物がいたのなら帰ることもままならないではないか!

 

 

「……ッ! 大王達の大砲か!」

 

「あいつ、とっ捕まえてた方が早いのに!」

 

 

身動きの取れなかったリヴァイアサンに大砲が叩き込まれる。しかし、運の悪いことにアームが掴んでいた場所に直撃したのだ。これはもう使えまい。三砲台の連携が取れないのもかなり致命的なものだった。

 

自由になったリヴァイアサンは、手始めにハルバードを激流で押し流す。ウルフェンに比べて圧倒的に巨大なハルバードが、避けるのは難しい。さっきまで拘束していたのだから尚更だ。船内では固定されている機器にしがみつく船員からの悲鳴が聞こえる。バランスを取ることを最優先に指示し、メタナイトは決意を固めた。

 

 

「……船員達に告ぐ。いざとなればハルバードを犠牲にしてでもウルフェンを守れ。」

 

「えええ〜!!」

 

「本気だスか!? 」

 

「ああ。今あの龍に対抗できるのはウルフェンだけだ。彼の援護、護衛を頼む」

 

「メタナイトさまは!?」

 

 

操舵室から外へ出ようとしていたメタナイトを部下が止める。仮面の半分だけを見せると短くこう言った。

 

 

「決死の作戦だ。降りたいなら降りていい。私はメッセンジャーと直接ダメージを与えてみよう」

 

「ぎゃあああーー! もうダメ、ワシは降りるうぅー!! こんなところにいてられるかー!!」

 

 

恐怖に怯える者を止めはしなかった。もう何も言わず看板へ赴き、マントの翼を広げた。

ひどい話だろう。メタナイトがこういえば降りないものは絶対降りなくなる。

 

 

「(すまない……)」

 

 

ああ、本当に。自分にもっと実力があれば。

無力感を風にメタナイトは飛び立つ。

尾のあたりを斬りつけ、ウルフェンの右ウイングの上に立った。

 

 

「なっ!? テメェ、勝手に乗るな!!」

 

「時間がない。簡単に説明しよう」

 

 

ウルフの憤りに付き合う暇もない。正面に回られるよりましだろう。

 

 

「次に君が避けきれないと判断したら、ハルバードを盾にしてもいい。必ず生き延びてくれ」

 

「……ほう? 随分となめられたものだな」

 

「……?」

 

 

それを伝えた後、怒っていた顔が簡単に不敵の笑みに変化した。それほどおかしなことを言っただろうか。首を傾げる。

 

 

「お前に言われるまでもなく、そのつもりだ」

 

「フッ、頼もしいな」

 

 

何かが通じ合う。

その真意は勝機を逃さないためか、自分が生き残るためか。なんだっていい。あいつを倒せるなら、ここに平和を取り戻せるのなら。

 

メタナイトは翼をはためかせ、リヴァイアサンの頭部の背後を取る。ハルバードから飛んだぶん、機動力は上がったが防御力は落ちた。ハルバードを押し流すほどの威力をもろに受けたらたった一撃でも致命傷だ。ここからは当たれない。

 

 

「はあああ!」

 

 

故に最初から全力でいく。マッハトルネードでリヴァイアサンを巻き込む。ファイターとしての力で威力を犠牲にしたそれとは違う、とても連発できない大技だった。

 

 

「グウゥゥウウウ……」

 

 

唸っている。少しは効いたのだろうか。

背後に回りながら距離をとったメタナイトに入れ替わるように、ウルフェンのショットを叩き込む。尾から頭部へ主砲を動かし、体全体にダメージを与える。更に二連主砲とデデデ城の大砲から、弾丸が両翼に叩き込まれる。しかし、その攻撃に反応して、上空に向かって咆哮を飛ばす。翼への攻撃が逆鱗に触れてしまったようだ。

 

 

「グオオオオオォォォォ!!」

 

「津波が……!!」

 

 

海竜が荒ぶる。その咆哮は水そのものを荒れさせる。せりあがった津波が影をつくる。耐水など勢いで押し流される。こんなのをくらってしまったらメタナイトはもちろん、ウルフェンだってたまったものではない。

 

 

「!!」

 

「ハルバードが……!」

 

 

しかし、そこで動いた。

だが、砲撃ではない。戦艦ハルバードは船首の仮面からまっすぐリヴァイアサンに突っ込んでいったのだ。

 

 

「ゴオオオオオオオオオォォ!?」

 

「……ッ、諸君、すまない……!!」

 

 

突っ込んだハルバードがリヴァイアサン諸共、水に呑まれていく姿から目を離せなかった。瞬きもせずに遠い空の上から見届けた。そうする責任があった。

 

それが、浸水したハルバードに尾による打撃を加えられ、真っ二つにされた光景であっても。

 





○タイトル
星のカービィ ロボボプラネットで登場(?)する、カービィシリーズ特有のシューティング面。
最終局面で突然ハルバードをスキャンした時はおったまげました。
そして名前がクセになる。書く必要もないでしょうが、最終決戦と戦艦を掛けている。


○墜落
予測可能、回避不可能。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「あわわわ…… レッドが……死んでる!?」
「リュカ、あれは情報量に殺されたと言うんだ」
「リュウ、さんも、新作来てましたよね」
「裸足のことはいいだろう……」
「後カービィさんも、体験版」
「来てたな。」
「……」
「……」
「……羨ましい、です」
「……そうか……」
「……」
「……」
「人の死体の近くで気まずい雰囲気になるなよな……」


○流石に代弁させられなかった作者の叫び
つい先日、ポケモンシールドでウッウガチャをしました。ぼんぐりフルコンプからガチャを引き、サファリボール2個とコンペボール1個引きました。1000分の1の確率を1700程度の試行回数で3回引きました。
運、使い果たしちゃったのでしょうか。もしかして新作でランターンでないのでしょうか。
それはほとんどのポケモンに可能性があるのはわかってますが、タイミングが近すぎて不安になりました。ブロスター先生の登場が確定してなければ確実に不安死していました。
たちゃけてください。



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24話 つづける がんばる


前週、投稿が遅れたので本日は早めの投稿になります。
今作に入ってからは遅刻がはじめてなので語っておきますが、週一投稿は土曜日の午後9時と決めており、1分でも遅れると罰則として次週の投稿が早まります。まあ、作者側の話なので頭に入れる必要もありませんが、そういうことですので。



 

 

「うーっ!!! メタナイトはどうなったのだ!! 何も見えんぞ!!」

 

 

双眼鏡片手にデデデは焦りを覚えながら行く末を見守る。あの津波は城まで来なかった。力が足りなかったのか、眼中になかったのか。そのどちらかかはわからずとも、ワドルディ達を怯えさせるには十分で、陰で頭を抱えて震えている子もいる。

 

ハルバードがリヴァイアサン本体に突っ込んで、墜落して、尻尾で真っ二つにされて、水に沈んで。

 

遠い場所からではそのあたりまでしかわからなかった。再び双眼鏡を覗き込む。ウルフェンは健在だ。メタナイトもいた。あのマッハトルネードは離脱して使ったものなのか。リヴァイアサンの姿は双眼鏡を使うまでもない。他に何かないかと右往左往している時に見つけたのは……

 

 

「大変ですよー! 王さまさーん、大変ですー!」

 

「なんだ!」

 

 

無意識に出ていた怒りの声。自身に呼びかけたのは見覚えのないピンク髪の少女だった。確か、メタナイトに託された避難民の中にいたような気がする。探偵服を可愛く着こなすその少女が続けた言葉にデデデはひっくり返ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しっかり見届けた。ハルバードが沈んでいく様を。船員達はしっかり逃げ出しただろうか。まさかギリギリまで残っていたりしないだろうか。メタナイトの思考をウルフェンの風切り音で正気に戻す。

 

 

『ノロノロしてんじゃねえ。お前が決めたことだろうが!』

 

 

すれ違った一瞬で、メタナイトはウルフの意思を受け取った。本当はそんなこと考えていないのかもしれないが、少なくともメタナイトは叱咤されているように感じた。

 

 

「(勝たなければ……! 彼らの行いは愚行にしかならないではないか!)」

 

 

報いるための戦いだ。

意図がすり替わった。身を挺することを求めたのは他でもない自分だというのに。

 

覚悟を乗せた刃はリヴァイアサンの、ほんの先であるが…… 確かに尾の先を刈り取っていった。動きに変化はないが、攻撃が通ったのだ。

 

 

「続くぞ!」

 

 

僅かな時間ではあるが、加速するメタクイック。レーザーを避けて直接頭部へ接近する。素早いメタナイトの動きを捉えきれず、口の前まで来させてしまった。

 

 

「十字に斬り刻んでやろ……うッ!?」

 

 

そのよく裂く口をさらに裂いてやろうと、頭上から振り下ろそうとした剣と思考は、皮膚で感じる、異様に下がった気温で止まってしまった。

わかった。自分の周り一帯を凍らすつもりなのだろう。文字通りの目と鼻の先。これは避けられない。

 

しかし、ドカンという大きな音が。

相手が爆破されたのだと、メタナイトは他人事のように感じた。ウルフェンのスマートボムだった。雨が原因で多少威力は落ちているが、攻撃を中断させるには十分だった。

 

 

「チッ…… 悩んだツラで戦場に入ってこられるのも迷惑なんだよ。目障りだな……」

 

 

ウルフの独り言は、機外のメタナイトに通じない。助けたつもりはない。結果的に助けたことになっただけだ。

 

 

「……! はあああ!!」

 

「グウウウウゥゥ……!」

 

 

我に返り、反射的に斬り捨てた。

盾になれと命じたのは誰だ。自分だろう。

見捨てたのは誰だ。自分だろう。

彼らを心配する権利など……!

 

 

「メタナイトー!!」

 

「ッ! シュルク達か!」

 

 

ワールドツリーの調査を依頼していたシュルク達だ。何故か金髪頭が一人増えているが、迷い込んだ人だろう。あの小舟でここまでくるなんて苦労しただろうに。

墜落したハルバードの機体に乗っている。おそらく先程の津波のせいだ。そしてその側にいるのは──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小舟は金属の塊の上に乗り上がった。

先程、発生した津波のせいだ。舟が打ちつけられても、深刻な損傷がなかったのは奇跡と言えよう。

 

 

「みんな、無事か!?」

 

「なんとか……」

 

「たぶん動ける……」

 

「頭がぐるぐる……」

 

「流石に死にかけた……」

 

 

一番最初に起き上がったアイクが周りを見渡す。シュルク、バンダナワドルディ、ティーダ、ソニック。全員、いる。

ハルバードとウルフェンが、ルネが呼び出したと思われる召喚獣、リヴァイアサンと戦っていたのは驚いたが、その驚きを口にする前に津波に巻き込まれた。

 

 

「これ、お城までたどり着けるかな?」

 

「ついでに巻き込まれるだろうね。未来視(ビジョン)使わなくてもわかる。」

 

「泳いでいっても同じだろうな〜、どうすんだよこれ〜……」

 

「無茶でしかねえよ……」

 

 

自分達ではあの巨体と戦う術も持たない。何もできない。いっそのこと遠回りで向かうしかないのだろうか。運良くここに辿り着くことができたが、距離を取ることだってリスクが伴う。

 

 

「うぅ……」

 

「……! 何か、聞こえないか?」

 

 

一番最初に気付いたのはアイクだった。雨音に隠れて、か細いうめき声が聞こえる。その声に従い、近くにあった扉を剥がした。

 

 

「助かった〜……」

 

「うわああ!? バンダナが増えた!?」

 

「あ、船員ワドルディだ。ここはハルバードだったんだね」

 

「Really!? この鉄屑が!?」

 

 

大部分が水に沈んでいるから、この場所がハルバードであることはわからなかった。ワドルディというのは種族であることを知らないティーダは思わず驚き、身構えてしまう。先程まで味方そっくりな相手と戦っていたからだ。後のやりとりで敵でないのは理解した。

 

 

「い、生きてる……」

 

「助かっただスよ……」

 

 

後から、アックスナイト、メイスナイトといった船員達も降りてくる。

 

 

「大丈夫かい? 怪我は?」

 

「平気だス。こういう時の対策はバッチリだスから」

 

 

ハルバードの船員であるメタナイツは、フラフラと調子はよくなさそうだが、深刻な怪我はなかった。

 

 

「知らせよう! すぅ…… メタナイトー!!」

 

「ッ! シュルク達か!」

 

 

こちらに気づいた。共に並んで戦った仲間(ファイター)達の顔を見て、そして気づいた。同じように仲間である存在を。

 

 

「君たちは……!」

 

「メタナイトさまー!! オラ達無事だすー!」

 

 

しっかりと頷くと再び戦場へ戻っていく。その背中を見送った。悔しいが自分達の実力では足手纏いになるだけだ。せめて、この戦いの場から離脱することが最善の択だろう。

 

 

「ん〜…… 助けたはいいけど、結局ここから抜け出せないのは変わってないよね?」

 

「乗員が増えたから舟も遅くなるしねー」

 

「メタナイト達が戦場から離してくくればいいのだが……」

 

 

さっき思いついて伝えればよかったのに。完全にミスだった。黙り込んだ沈黙の間に雨と風の音だけが鳴り響く。一番最初に思いついたのは、ソニックだった。

 

 

「つまりだ、誘き寄せるべきだったメタナイトとウルフの代わりに囮をやればいいんだろ?」

 

 

水が苦手で本領を活かせない中、ようやく見せた、意地の悪そうな笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シュルク達が無事だった。部下達を助けてくれていた。もう十分だ。戦いを邪魔する雑念はもうない。冷えたメタナイトの頭は冷静に情報を吸収していく。

先程からデデデ城からの砲撃がない。あちらで何かあったのだろうか。しかし、他所のことを気にする余裕はない。そちらに向かうであろうシュルク達にまかせよう。

自分がやることはリヴァイアサンの気をこちらに向け、どこか別の場所に誘導することだ。奴がここで暴れ回る限り、部下達の安全は保証できない。

 

尾によるはたきをウルフェンはローリングでかわす。ウルフと連携できればいいが、性格上期待はできないだろう。自分がなんとかするしかない。局所的な波を右へ左へかわし、敵の目の部分を斬りつけた。すぐさま離脱したメタナイトの方向へ顔を向けるようとする。

 

 

「(よし、こっちを見ろ)」

 

 

こちらへ動かす頭がやたらと遅く感じる。それを見ながら、その場で羽ばたいて翼の調子を確認する。こちらへ気が向いたらすぐにここを離れられるように。

 

 

「うらああああ!!」

 

「「……!?」」

 

 

誘導するつもりだった。だから驚いた。

ウルフも、もちろんメタナイトも驚いた。

叫び声で意思が瞬間途切れた。

 

リヴァイアサンの頭に叩きつけられたのはソニックだった。丸いスピン状態のまま、青い光を足に纏って。

 

ただ一つ、失念していたことは。

彼らの諦め度合いを見誤っていたことだろうか。

 





○タイトル
星のカービィ 64のラスボス戦でポーズを開くと、通常 つづける でなおす と表記されるところを、つづける がんばる と表記されており、ステージを出ることができずどっちを選んでもラスボスが続くことになる。
余談ですが、この章が星のカービィ関係だからといって、タイトルがカービィ関係に偏ってる。作者の怠慢です。


○ピンク髪の探偵服少女
いったい何ーラ・ベルなんだ……?


○ハルバード墜落
最初から墜落させることは決まってました。(無慈悲)
ただ落ち方をどうするべきかはそこそこ悩んだ箇所です。
落としたいからという理由で参戦させておいて、ロボボプラネットみたいな出オチはあんまりなのでカッコよく墜落したという裏話があります。


○ソニック
環境が環境なこともあり、あまり活躍できてなくて鬱憤が溜まっていた模様。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「さあ、やってまいりました、第28回女神の気まぐれ杯! 実況は押しつけられた俺ブロウ、解説はソニックでお送りします!」
「……」
「足の速さ故に出禁くらって不貞腐れていますこの解説!! 俺だってやりたくてやってんじゃねえそもそも実況に参加選手の情報すら来てない時点でまともじゃねえぞこの大会! 今回は二人三脚! ルールは省略! はい位置についてよいドン!」
「……」
「さあ、いきなり飛び出たのは主催者の贔屓枠天使組! ボクに合わせろオレに合わせろ言うてますが、速えんだよこの組! 喧嘩しながら結局どっちに合わせてんだこの組! 続いてはプププの食いしん坊コンビ! よく見たらカービィ飛んでんぞゴラァ! これじゃ風船持って走ってるだけじゃねえか如何ですか解説のソニックさん!」
<『へえ〜』
「不貞腐れてるからって音出るボタンでサボってんじゃねえ!? 次に出たのはソードとガンナって知らなかったの俺だけか!? というか二人三脚じゃない、寝てるソードをガンナが足で引き摺ってるだけだぁー!! 目ぇ覚ませや、なんでそれで寝れるんだよ!! そして、お前ら、大変そうだな保護者みたいな目で俺を憐れむなぁ! 続いてはセフィロスシュルクの半裸コンビ! 服装合わせんな見苦しい! 片翼が飛び出してシュルクの顔にべちべちしてる! なんで左右逆にしなかったァァァ!」
<『へえ〜』
「おっと待て! それら全員を圧倒的な速度で抜き去るのはクラウドソラのスクウェア組! トップの天使組を難なく抜き去り… っておまえらグライドでズルすんじゃねえ浮いて二人三脚するんじゃねえ勝てるかんなもんー!! 誰も真面目に走る奴はいなかったパルテナの選抜基準だからか女神爆笑散らかしとるやんけェェェ!! 優勝はスクウェア組! 何故こうなったどうしてこうなった、これで第28回女神の気まぐれ杯を終わりますマリオに胃薬貰ってくる!!」
<『へえ〜』



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25話 バトルアステロイドギャラクシー

 

 

 

確信ではなかった。

信頼とも違った。

 

切羽詰まっていたから縋るしかなかっただけだ。

 

手段を選ぶ余裕がなかっただけだ。

 

 

あの時、謎の一味が自身を襲ってきた時。

一択しかなかった手段を思い出しただけだ。

 

 

 

『もし、君がその身を、力を、隠すことになったら──』

 

 

 

気づいた。

それより前に自身に、マスターハンドに忠告してきた者。聞き覚えがある声とかいう以前の問題だった。あの存在は、襲ってきた一味の一人だったではないか。

 

 

 

『君が呼んだファイター、────に逃げるといいよ』

 

 

 

騙された、のだろうか。

今となってはもう祈るしかないけど。

全て、彼らに託すしかないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(難しいことはしてねえ。賭けかもしれねえ。それでも、オレは水があるからって足手纏いにはならないぜ!)」

 

 

作戦というには少しお粗末な、だが決して無策とは言えないそんな連携だった。

 

 

『今度は助けられないよ!?』

 

『必要ねえ。さあ、やってくれ!』

 

『ああ! もう!』

 

 

苦い顔をしながらも、シュルクはモナドを展開する。形作られた円の中にの文字が浮かび上がる。途端にソニックの足に水色の光が纏われる。

 

 

『やってくれ、ティーダ!』

 

『大丈夫だって! ミスってもオレがなんとかしてやるから!!』

 

 

丸いスピン状態のソニックはとても蹴りやすくて。ティーダの目論見通りまっすぐ飛んでいく。まるでそれは流星のようにリヴァイアサンの頭蓋に叩き込まれていた。

 

 

「Hey、Come on! こっち来てみろ!」

 

 

そのまま、リヴァイアサンの図体を走って水上に降りる。モナドアーツによる敏捷の上昇とソニックの速さがあれば、沈まずに水上を走り出せる。出だしさえどうにかすれば、ソニック単体の速さでも走ることができた。

 

 

「グウウゥゥ……!」

 

 

予想通りだ。ソニックを無視はできない。したり顔で走り続ける青い閃光を追いかけて、高圧の水圧は巨大な水柱を上げた。

 

 

「ソニック…!」

 

「……面白い……! 乗ってやろうじゃないか!」

 

 

メタナイトは驚き、ウルフは笑う。空も飛べず、まともな武力もないというのに、こんな形で戦いに関わってくるとは。

 

 

「(先のことは頼んだぜ! みんな!)」

 

 

心の中でサムズアップを送った。

正面に生えている、謎のアレともいうべきものを避け、周りを見渡しながら走り続ける。土地勘はないが、とにかく建物がないところを目指さなければ。ソニックの背後には、浮き上がった水雫が即座に水面へ帰っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叩き伏せる。ねじ伏せる。うち飛ばす。

何度、何度繰り返したのか。わからないし、数えたくもない。その数を認知してしまえば、きっと永遠の迷宮に閉じ込められてしまうだろう。

 

 

「ウガアアァアアッ!!」

 

 

ガオガエン、ほえる。

こうかはばつぐんな環境である外で戦えるはずもない。大勢の避難民とともにデデデ城に避難したが、そこにボディ達が襲来。

機転を利かせて近くにいた少女がデデデを呼びに行ったが、増援はまだこない。急ぐ気持ちを感じる暇もなく、ガオガエンは最前線で戦い続けていた。

 

 

「ガオオォ!」

 

 

Miiの少女、ガンナのボディを容赦なく頭から地面に叩きつける。スネークのボディを手刀で貫き、ピーチのボディにとびげりを撃つ。オリマーのボディをフルスイングで外へ投げ飛ばす。

 

 

『……!!』

 

「グウゥ……!」

 

「しっかり……!」

 

 

しかし、殴っても蹴っても障害が減っているように見えない。敵の数が多すぎる。前線で戦うガオガエンは一番背後をとられやすくて。緑のインクでの援護がなければ、今頃無視できない傷を負っていただろう。

 

 

「うりゃあ!」

 

「アオリちゃん、ほどほどにね!」

 

「わかってるよ!」

 

 

今、撃たれた敵をローラーで弾き飛ばす。

それを行ったのはNew! カラストンビ隊の1号と2号、もといシオカラーズのアオリとホタルだった。ローラーとチャージャーを扱い、この戦場を奇襲で渡り合っていた。

 

 

「3号…… 大丈夫だよね?」

 

 

倒れたボディの姿を見て同じ形をした仲間のことを思い出す。偶然か否か、二人はバラバラにならずにここにたどり着いた。周りは水ばかりでどうにかならなかったのかとは思ったが。もし、3号もどこかにいるなら、今頃どうしているだろう。

 

 

「ウガアアァアア!!」

 

「はっ…… いかんいかん、集中っと」

 

 

ガオガエンの再びの唸り声で現実に戻される。

水が苦手なものが避難しに来たというだけあって、炎を扱う者が多い。確かにガオガエンを中心として戦っているのだから、こうかがいまひとつの巻き添えをあまり気にしなくていいのは嬉しい誤算だ。しかし、普通に炎が効く身としては厄介だった。

 

 

「アオリちゃん、無茶は禁物やからね」

 

「しょーち! 一撃与えて離脱! 戦場の鉄則ゥ!」

 

 

その通りにピンクのインクであちこち動いてはいるが、奥に入り込んだりはしていない。あちこちで吹かれる炎の中でも目立つ色のおかげで連携はとりやすかった。

しかし、ホタルが闇雲に撃てばそのピンクのインクを塗り潰してしまうだろう。故に彼女は人一倍慎重に動いていた。だから、階段を降りてくる足音に気づいた。

 

 

「おお? あのドラゴンが離れたんで中に入ってみれば……オレさまの城でバーベキューしてんじゃねえ!!

 

「……そっちじゃないっしょ」

 

 

思わず突っ込むホタルだったが、デデデの振りかぶったハンマーは普通に敵であるネスのボディを打ち砕いていた。風圧で火の粉が飛び、逆襲が始まる。

 

 

「やらいでかあー!! ガオガエン!!」

 

『……ッ!』

 

「ウガウッ!!」

 

 

デデデの弾き飛ばした損傷の激しいボディはまっすぐガオガエンの元へ向かい、さながらピッチャーの球を打ち返すバッターのように顔面にラリアットを叩きつけた。城壁に穴を開けながら、かっ飛んでいく。

 

 

「かー!? 誰が穴開けていいといった!? 後で覚えてろ! まずはこっちだ!」

 

「グアウ!」

 

 

怒りは味方に。拳は敵に。

炎と偶像、そして少しの仲間に囲まれ、背中を預けて力を見せる。即席だが、物量で負けているのは明白故に手を取って戦う。

 

 

「グウガアアァァ!!」

 

 

しかし、戦い方が粗雑になっていくガオガエン。長い戦闘から段々と心が昂っているのだ。まるで焼き尽くすもうかの如く。

プロレス技を決めるのもめんどくさいと、両足とびげりでスタンした紛い物の黒翼を敵陣営へ適当に投げ飛ばした。

 

 

「っていきなり飛んできた!?」

 

「はあ!」

 

「ガアッ?」

 

 

聞き覚えのある声が、敵の向こう側から聞こえた。自分が飛ばしたボディが金の輝きに両断されるのが小さく見えた。

 

そうだ、少し出払っていた同志だ。

戦いの果てで、すっかり忘れていた。

 

 

「大王さまー! 怪我ないですかー?」

 

「戦いのシロウトの見参ッス!」

 

「えっ、それって僕のこと…?」

 

「いや、違っ」

 

 

聞き覚えのない声もあるが、別に敵ではないだろう。上から槍を持ったワドルディ達もドタバタと降りてくる。転んで階段から落ち、そのまま後続に踏まれている者もいるが、ご愛嬌だ。

 

 

「ここに退避しようとした身で悪いが協力してくれないか?」

 

「当然だス! お掃除しないとゆっくりもできないだスし! メタナイツ、出陣ー!!」

 

 

メタナイツ達もそれぞれの武器を持って喧騒の中を飛び込んでいく。ファイター達、その協力者達も揃って武器を握りしめた。シュルク達が敵と同じように現れたということはもう敵の増援を心配しなくていい。存在する相手を薙ぎ払えば終わる。

 

自分達の優勢に変わったからこそ気づかなかった。恐怖の象徴であったリヴァイアサンに向かって、一つの流れ星が落ちていったことを。

 





○タイトル
スーパーマリオギャラクシー2に登場するギャラクシー名。
ステージの名前はたおせ! たおせ! たおせ! と超絶シンプルなもの。
星々を回って雑魚敵ラッシュを続けていく。いたずらコメットが来るとライフ1のオワタ状態に。


○謎のアレ
プププランドによく刺さっている「アレ」。アーチ状の物体。
ちなみに「アレ」という名前は公式名称。(元はエイプリルフールのネタだけど)
実際背景によく刺さってる。


○シオカラーズ
初代スプラトゥーンのアイドル枠。二人はいとこ同士。
またNew! カラストンビ隊の1号と2号であり、初代ヒーローモードではお忍びで3号の手助けをしている。そして何故か2以降では変装していない。
ローラー使いのアオリとチャージャー使いのホタル。水没したプププランドではまともに動くことができなかったものの、今後は本格的に参戦する……かもしれない。


○避難民
ファイター達のように、迷い込んだ人々もいるが、殆どがプププランドの住民。それもバーニンレオやボボみたいにファイアやバーニングのコピー元ばかりなので、戦場は必然的に暑苦しくなる。



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26話 あしたはあしたのかぜがふく

 

「(人のいないとこ人のいないとこ人のいないとこ…… ダメだ! どこだそこは!)」

 

 

ソニックは駆けていた。

嫌いな水の上を落ちずに駆け巡るのは一種の優越感を感じる。故に気持ちが逸ってどんどん加速していく。

 

リヴァイアサンはその巨体のおかげで、ソニックを見失うことはなく、追いかけ続けている。

だが、メタナイトとウルフは既に遥か後ろだ。リヴァイアサンが目印にならなければ、とっくに見失っていただろう。

これならば、メタナイトにどこか人気のない場所はないか聞いておくのだった。それでクヨクヨする気はないが、この状況だと、少しだけ後悔している。

かといって減速すれば、落とし穴に落ちたようにそのままドボンだ。ソニックには走り続けるしかなかった。

 

 

「ギュオオオオオオオ!」

 

「おっと!」

 

 

空まで届く水柱が上がるほどのブレス。口から発された激流を跳んでかわす。そして着地で急加速。速度が落ちて水没なんて洒落にならない。

 

 

「(とは言ってもこのまま逃げ続けたところでこっちの体力が切れるだけだ。どこかでメタナイト達を追いつかせねえと)」

 

 

そう決意したソニックが顔を上げて見たのは先程まで上を目指して登っていたワールドツリーだった。

 

 

「ここだッ!」

 

 

ツリーの周辺をぐるぐると回り続ければ、敵は狙いづらいしいずれ二人も追いつける。追いつけた後に身を隠す場所にも困らない。

 

 

「後は避け続ければ……!?」

 

 

ただ、一つの誤算はかの召喚獣を見くびっていたことだろうか。

 

野に住む獣達とて、何度も繰り返せば学習する。

どんな剛速の球でも、緩急をつけなければいずれ打たれる。

 

ソニックの動きを先読みして放たれた氷塊は、彼の片足を的確に射抜いた。痛みに力み、自分の意思とは関係なく体が浮き上がり、胴体から荒れた波の群れに叩きつけられていく。

 

 

「(ミスッ…… たあ……!)」

 

 

やけにスローモーションに感じる世界の巡り。仲間はここにはいないし、自分は泳げないし。

やってくる激痛にギュッと目を閉じる。

視界の端に、流れ星が見えた。

 

激痛は、こない。

恐る恐る目を開いてみる。

 

目の前には桃色。

ああ、そうだ。この世界は彼を待っていたのだ。悲しみという名の洪水が。雨だと誰かが言った涙が。この世界の全てが彼の存在に歓喜していた。

 

 

「遅すぎだぜ、カービィ!」

 

「ぽよ!」

 

 

ワープスターではない。それでも空を飛び、助けられたのだ。ああ、熱くなって負ける気がしない。

 

重工戦車を彷彿とさせる緑色のそれに乗ったカービィは呑気に返事をした。

 

 

「追いついたか。 っ! カービィか!? それにそのマシンは……!」

 

 

カービィが乗っていたそのエアライドマシン。大乱闘の世界で乗り回した伝説、ドラグーンと双璧を成すもう一つの伝説、ハイドラ。

圧倒的なパワーと最高速を誇るマシン。カービィはこれを探していたのか。

 

 

「そうか……! そのマシンならば!」

 

「もたもたしてんじゃねえぞ!」

 

 

大きな希望だ。

とてつもなく前向きに、メタナイトはショットを続けるウルフェンに参戦した。それで狙いの変わったリヴァイアサンは怒りの顔を二人に向けた。

 

一方、カービィは手頃な木にソニックを避難させる。避け切れる保証はないからだ。その上、モナドアーツのバフがない今では、加速しきる前に落ちる。戦線を離脱するのはやむを得ないことなのだ。

 

 

「おっしゃ! やってこい、カービィ!!」

 

「ぅん!」

 

 

赤ん坊のような不明瞭な声。それにここまで信頼を感じることがあるだろうか。

洪水の上を飛ぶカービィの背中を叩きながら、ソニックは彼を見送った。

 

 

「しかし、ハイドラか……」

 

 

確かに火力はあるし、加速すればスピードも負けない。だが、その分ドラグーンほど空中戦に長けていない。別に性能が低い訳ではないが、亜空軍との戦いと同じようにとはいかないだろう。一体どのように、と回り始めた思考を止める。

別にカービィ一人で全てをこなす必要はなかった。足りない分は自分やウルフでカバーすればいい。そのための力が自分達にはあるのだから。

 

自身を弾き飛ばす尻尾をぐるりと回って回避。すれ違い様に斬り裂いた。

 

 

「グウゥゥ……」

 

 

あまり聞いていない。氷の塊を撃ち続ける余裕はある。相手の巨体に比べて、傷口が広くないのだ。人で言えば針が刺さった程度の傷口と言うべきか。

 

 

「(なら、狙うのは……)」

 

「「(翼だ!!)」」

 

 

カービィがスピードをできる限り落とさないように操縦している中、空のメタナイトとウルフは同じ答えにたどり着いた。飛行能力を削ぎ、カービィのハイドラをぶつけられるようにする。それが一番の策だ。ここまで来てようやく勝機らしい勝機が見えてきた。

 

メタナイトは衝撃波を飛ばし、ウルフは片方の翼へと銃口を向ける。そうだ、ここからが…………星の世界の英雄譚だ!

 

 

「グガアアァ!」

 

 

咆哮で弱者を吹き飛ばそうとしているのか、風圧を伴った雄叫び。しかし、それで怯えるものなどいない。

頭から突撃してきたリヴァイアサンは衝撃波を弾き飛ばす勢いで一人と一機に向かっていった。しかし、硬直などしていない彼らは軽々と避ける。

 

 

「…チッ! 津波か…!」

 

 

しかし、気づいた。突撃とともに大きく波が迫り上がっている。避けられても仕留めるための布石だった。

ウルフェンごと覆う水の壁に、スマートボムを撃ち込んだ。至近距離過ぎて機体にも余波が来たが、そんなことを気にしていられない。メタナイトもその穴を通って水飛沫とともに離脱した。ヒヤヒヤする。あの圧迫感はない。離脱したウルフェンの上を影が通り過ぎていった。

 

 

「くりゃえ!!」

 

「ガアアアア!!」

 

 

ハイドラだ。波をジャンプ台代わりにして、チャージ、突撃したカービィはリヴァイアサンの一部、触角のようなところを刈り取っていった。張りを失った生命のかけらは、呆気なく沈んでいった。

 

 

「よっしゃあ! やってやったぜ!」

 

 

観戦モードとなった青いハリネズミ。応援ぐらいしかできないが、志は一つだ。声援を風に、ハイドラは高く飛び上がる。

 

 

「オラっ! いい加減沈めェ!」

 

 

通常のショットを当て続けてもキリがないと感じたのか、躊躇せずスマートボムを投げ込む。片翼を、胴を、腕を爆心地にされ、大きく断末魔を上げる。それでも、未だに存在は保たれていた。

 

 

「(まだ余力はありそうか…… カービィの攻撃ならばどうにか…… それも直撃だ。まともに当てられれば……)」

 

 

この中では、メタナイトが一番火力がないのだ。得物であるギャラクシアは名剣であるし、それを操るメタナイトも稀代の剣士だ。

しかしそれでも、兵器を超えて戦車あたりに分類されるであろうウルフェンと伝説のエアライドマシンハイドラと比べられるものではない。魚と獣とを水中で比較するようなものだ。果たしてリヴァイアサンがメタナイトをどれほど敵視しているのかも怪しいところだった。

 

 

「(火力が足りなくとも、注意を惹く方法……)」

 

 

メタナイトの翼がばさりと大きく動く。

それは宙に留めるための規則的な動きではなかった。

 

スピードを溜めて、パワーを補うためのもの。

一直線に伸びた金色の刃は──

 

 

「グガアアアアアアアアアァァァァァ!?」

 

「おおっ!」

 

 

右目に当たる場所に突き刺さっていた。

 

つい先ほどソニックがやっていたことだった。頭の攻撃は無視できない。それが、脆い眼球ならば尚更だ。

 

 

「やってやったぜ!! トドメ刺しちまえ、ウルフ! カービィ!!」

 

 

痛みに荒れ狂うリヴァイアサンは、潰れた視界で敵を探すこともできない。

ただ、生存本能に任せて、長い尾でメタナイトがいるだろう片目近くをぶつける。怒りのままに辺りへ氷塊を飛ばしまくる。

そこにメタナイトはいない。ギャラクシアを置いて離脱した敵を追い払うため、頭部に尾をぶつけ続けた。自身がよっぽど傷ついているというのに。

 

 

「こんなッ…… 小物に……!!」

 

 

その様子に、ウルフは多少の屈辱を覚える。自らを簡単に傷つけるような存在に、痛みなどに狂うような存在に苦戦したのだと。

 

 

「(違う)」

 

「(敵が弱かった訳じゃない)」

 

 

戦う様子をずっと見てきたソニックは、それよりもずっとこのプププランドで見てきたメタナイトは気づいた。

 

全てが好転したのは、あの桃色の星が来てからだ。

 

 

 

─カービィがいれば、プププランドは救われる。そう、できているのだ。

 

 

 

─可笑しな話かもしれない。

 

ウルフェンから放たれたスマートボムがリヴァイアサンの頭部の下、人でいうなら胸部というべき箇所へ放られる。

 

─たった一人の生命に、この星の全ての命運がかかっているだなんて。

 

ハイドラが翻す。方向転換をして爆心地へ。

 

─だが、彼さえいるならプププランドは救われる。

 

緑の閃光が召喚獣の体を差し貫いて、爆煙から飛び出す。

 

─ああ、そんな彼だからこそ、金甌無欠の光にも残忍酷薄の闇にも屈しなかったのだ!

 

 

 

崩れていく。あの肉体が光子の如く。水面に沈む前に形を失って天へ還っていく。

否、水面も同様だった。プププランドを満たしていた水も、幻の様に消えていく。

 

 

あしたはあしたのかぜがふく。

 

 

ああ、終わったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

利用された召喚獣を悼んでいるのだろうか。それとも、悼むのは美に囚われた女王か。

光子の先へ向かうように空へ伸びたワールドツリーに、集まっていた。

 

 

「ぽよ…?」

 

「あ、蝶々。こんな高くまで飛んでくるなんて」

 

 

カービィのピンクの体に蝶が止まる。

訪れた平和に文字通り舞い上がってるのだろうか。

 

 

「もう、登ることにはならないよねー……?」

 

「3回登ったもんなー」

 

 

愚痴る愚痴る。一度落とされ、二度目に降りて。流石に登る技術はあっても体力は無限じゃない。ちなみにシュルクはカービィに乗せてもらっていた。キーラの時と進歩がない。

 

 

「しかし、大王には大衆のために残って欲しかったのだが」

 

「ふざけるな! オレさまのプププランドに手を出したんだ! 直接叩き潰さなきゃ気がすまねえ!」

 

 

これで、迷い込んだ者たちも帰れるようにはなったのだが、大乱闘の世界やマスターハンドの無事が確認できない以上、安易に連れ回す訳にはいかない。故にスマッシュブラザーズと少数の精鋭で向かうことになった。その少数とは、

 

 

「ぼくもいくよ。一回、口出しちゃったからね」

 

「大王さまの意見に一票! あのイミテーションもどきぶん殴ってやる!」

 

 

共に戦ったバンダナワドルディとティーダ。

 

 

「3号はそっちにいるんでしょ? ならいかなきゃね!」

 

「地味に4号とも連絡取れてないし、」

 

 

安否を確認するために、行動を共にするアオリとホタル。

 

 

「(ありがとう、心強いよ)」

 

 

新たな仲間の顔を見て、シュルクは心の中で感謝を述べた。二人で突発的にここへ乗り込んだというのに、随分と大所帯になったものだ。

見知った仲間へも視線を動かす。

 

 

共に来てくれたソニック。

見知らぬ者たちのために戦ってくれたガオガエン。

召喚獣に立ち向かったウルフ。

避難民を受け入れたメタナイトと守ってくれたデデデ。

そして、いつも助けてくれるカービィ。

 

 

最初は助けるつもりで来たのに、逆にプププランドごと助けられた。

 

 

「よーし! 進めー! ゴー!」

 

「よっしゃ! 誰が一番にルネって奴ぶっ飛ばせるか、No.1決めようぜ!」

 

「おっしゃー! 負けるかー!」

 

「アオリちゃん、煽らんといてー」

 

「そんなことしてないよー?」

 

「ガキの見本市か」

 

「まあまあ……」

 

 

束の間とわかっていても和気藹々とはしゃぐのは、次に切り替えるためだ。

 

プププランドに昨日と違う風が吹く。

大乱闘の世界に今日と違う風を吹かせる。

 

 

「やっぱり気になります……! 異世界ということは、私がここにいるようにブロウ先生もお近くにいるのでしょうか……?」

 

 

吹いた風が誰かの背中を押したのは、彼らの預かり知らぬ場所のお話。

 




○タイトル
カービィの座右の銘。
今日どんな大変なことがあっても、明日は明日の成り行きとなるのだからくよくよするな、という意味。


○ソニックの水遁(?)
モナドでのステータス上昇により、走り出しのスピードをカバーして、あとは素の足でなんとかしている。速度でなんとかしているだけなので止まると流石に落ちます。


○ハイドラ
カービィのエアライドで登場する、ドラグーンと双璧をなす伝説のエアライドマシン。こいつも3つのパーツを揃える必要がある。バトル面と最高速が凄まじいが、チャージに時間がかかるので止まるとめんどい。


○蝶
カービィシリーズの蝶はロクなものではないとアライズで判明。
平和の象徴であったはずなのに、バルフレイナイトの登場に一躍買い、極楽の夢見鳥なんて称された。ディスカバリーのOPでも時空の裂け目に吸い込まれてます。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「うい!」
「ディスカバリー発売おめでとう、カービィ。なんというか…… すごい変幻自在だよね」
「まだ出てねえ!!」
「右に同じく」
「忙しくて進められてないから! まだ少し待って!! あ、少し気になることがあるんだけど」
「なんだ?」
「ワドルディ、軽く10匹以上ワープスターに乗ってるよね? もしかしてあつめてカービィの時はサボって……って逃げられた!?」


○章全体を通じて
この章の構成について、プププランドを沈めるという発想元はゼルダの伝説スカイウォードソードです。フィローネの森が洪水状態になった場面からどこかを沈めることになりました。
このように大まかな道筋は決めていたのですが、実は細かな部分は最近決まっています。具体的にはカービィの登場タイミング。シュルクが水に浮かんでいるところに、ちょっと通りますよ状態で登場したり、原作のコピー能力を使っていたり、ハイドラではなくてティンクルスターアライズだったり。
結果、他のファイターを目立たせたかったので、主役は遅れてくるんだぜといった場面で美味しいところは貰う案になりました。
実はあやふやだったのはカービィぐらいで他の子の動き方は初期案とほとんど変わってないです。


○僕の話したいことだけ話すのコーナー
「やあ、ルネだよ。こっそり枠を取らせてもらったよ。僕が話したかったのは今後、僕の仲間(一応)として登場する人々が一体誰のボディを体としているのかということ。まあ、予想してみようというよりはこうだったら面白そうとか願望に近いけどね。ではどういう基準でボディが選ばれているのか基準を教えるよ。
まずはボディを新しく制作できないこと。つまり、灯火の星の一件でボディを作られたファイターのボディに限るんだ。パックンフラワーからソラのボディは存在していないからそもそも選べない。
次に精神側の好み。僕は好みとは少し違うけどね。こうありたいとかそういう願望が叶えられているかもしれない。
それと男は男のボディしか選ばないよ。女も同様。変な性癖を持つような子いないからね。
後、喋れるものに限る。話せないと君たち困るでしょ? そういうこと。
大体こんなところかな。ということで気軽に妄想してみてね。」



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Pikmin 3 “Quest”
27話 運命の分岐点



就活が忙しいと容疑者は供述しており……
というわけで大遅刻です。
書き溜め分も底が見えて来たのでそろそろ更新停止するかもしれない…… ただでさえゲームの時間全然取れてないのに……


 

 

 

人には手が2本ある。2本しかない。

まるで掬うように手を使っても、零れ落ちたものは掬えない。救えない。

 

同じように手を繋げる人数は2人しかいない。それ以上は届かない。他とつなぎたければ元いた誰かを切り落とすしかない。結局は絆なんてそんなものだよ。

 

 

でもきっと彼らは違う。僕達とは違う。

危険が降りかかるとしても助けに行く。繋ぎきれない絆なら、誰かが代わりに繋いでくれる。

 

 

彼らは無遠慮で無配慮で無責任な尊敬と憧れをぶつけるのに相応しい存在だ。なんせそれに押しつぶされて孤独に生きるなんてこともない。

 

僕達の目には死ぬほどかっこいい英雄だ。各々の世界で完結する彼らに終わりはなく、最後もないそんなヒーロー。

 

 

僕は信じているよ?

彼らは必ず手を伸ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てくてくと歩く。歩き続ける。どこまでいくの。わからない。なぜなら今いる場所すらどこなのか、彼らにはわからないから。

 

 

「ナナ〜…… ここどこー……」

「ポポ〜…… 知らないよー……」

 

 

荒野、というほど寂れた場所ではなかった。植物は生い茂るとまではいかなくとも不自然でない程度には自生している。かなり開けた場所。しかし、周囲の木々は突然変異を疑うほどに巨大なものだった。まるで自身が小さくなったように。

 

そう、不自然なのは二人だった。それぞれ青とピンクの防寒服を着たアイスクライマー達は明らかに自然から浮いていた。環境に合わない服装だがそこまで暑くはないのか、服を脱ぐ様子はない。

 

 

「誰も見つからないねー……」

「絶対誰かはいるはずなのにねー……」

 

 

彼らは自分の世界に戻って登山を楽しんだ。

協力して登ったり、競いながら登ったり。二人組での登り方は様々だ。 そうやって漸くの休日を過ごした後、大乱闘の世界へ戻ったはずの行く末がここだったのだ。

 

 

「でも…… もう一踏ん張りー!」

 

「えー…… 休もうよー……」

 

 

完全に座り込んでしまったナナに対して、両頬を叩くポポはまだ進めるらしい。

 

 

「行くよ、ナナ。きっともう少しだよ!」

 

「もう少しっていつ〜……? 無理だよ…… 少し休もうってー」

 

 

ナナを急かすが、それでもやはり動けない。疲労はそう簡単に霧散しない。なかったことにはならない。なるとすれば、精神的な錯覚なのだ。

 

 

「もう歩けないって…… ちょっとだけ、ちょっとだけだから……」

 

「うーん…… じゃあ、ボクだけで行ってみる!」

 

「……えっ?」

 

 

突如、アイスクライマーの思考は止まった。ナナの無意識にでた戸惑いによって。

ボク、だけ。つまり、置いていく?

ずっと一緒にいたのに? 離れたことなんてなかったのに?

 

信じられない。どうして、口の中で湿気がなくなったかのようにカラカラと乾いてる。続きの言葉を話せたのは、執念によるものだった。

 

 

「なんで…… そんなこと言うの?」

 

 

他の誰でもない自分から出た言葉。

他の誰でもない片割れから出た言葉。

 

世界で一番いけないことを言ってしまって、バツが悪くなって、目線が地に降りる。

 

 

「……ナナが意固地だからじゃん。どのみち誰か見つけないと。」

 

「意固地なのはそっちじゃん!! 休憩の仕方もわからないの!?」

 

「一人で休憩もできないの!? ボクがいなきゃそんなこともできないの!?」

 

 

売り言葉に買い言葉。

防寒具の中にも届く、あのひんやりとした空気が2番目に好きなのに。それを二人で感じるのが1番好きなのに。

どうして今感じるのは熱さなのだ。大乱闘の時とも違うムカムカとした熱さなのだ。

 

 

「だったら、好きにしてよ! どのみちわたしは動けないし!!」

 

「わかったわかった! もういいよ! じゃあナナも好きにしたらいいじゃん!!」

 

 

二人の道は別れ、ポポはひとり上を目指す。切り株のような形の広場へ。そして巨大な塔の上へ。背中も木槌も見えなくなって。

 

 

「…………」

 

 

一人を実感して急に寂しくなって。ナナは座り込んだままギュッと体を抱きしめた。それでも追おうとは考えていない。意地だったから。

 

 

「…………」

 

 

風が葉を切る自然音しか聞こえない。

黙っていた。周囲に誰もいないのだから、言葉にする意味がない。そう思っていたのに。

 

 

ガサッ

「……! 誰かいるの?」

 

 

草むらをかき分ける音が聞こえて、ナナは顔を上げる。呼びかけると応えるかのようにまた音がする。近づいているのだ。

 

 

「(ほら、休んでた方がよかったじゃん)」

 

 

心の中でポポに対する優越感を感じながら、立ち上がって更に声を上げる。自分はここなのだと。そう呼びかけるつもりだった。

 

しかし、その考えは払拭された。だって草の根掻き分けて飛び出してきたのは。

 

 

「…………は?」

 

 

見覚えのある姿をして、見覚えのない目をしていた。この感情のない瞳。一切の光のない瞳。

だって、倒したじゃないか。少し前に主人達もろとも滅したではないか。どうして、どうして。

 

 

「なんでボディがここにいるの!?」

 

 

目の前にいるのは精神のない自分達自身。

アイスクライマーのボディを先頭に他6体のボディがナナを囲んでいた。

 

即座に背後へ駆け出す。疲れただの言っている暇はなく、体に鞭打って動かした手足で背後の崖を登った。

 

 

「あぶないっ!?」

 

 

必死だったということもあり、すいすいと崖を登り、洞窟の入り口にたどり着く。同じ技術を持つ自身達のボディをハンマーで殴って落とし、ナナは洞窟の内部へと逃げていく。

 

 

「………………アイス、クライマーか」

 

 

木々や自然に隠れて、彼女のことを見ていた視線を誰も知らない。

 

ポポは仲間を見つけるために塔の頂上へ。

ナナは逃げきる為に出口から内部へ。

 

その蟻の巣にも近い塔は誰かがこう名付けていた。── 哀しき獣の塔と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木の枝で形作られた天然の坂道を登る。それは塔の頂上まで繋がっていた。そこを目指していると、自然音とは明らかに違う、闘争の音を聞き取った。

 

 

「誰か戦ってる!? おーい!!」

 

「! この声は…… ポポ……か?」

 

「ちょっとー!? なんでハテナマークつけるのさ!」

 

 

坂道を登りきったポポは塔の頂上、窪んでいて広間となっている場所へ飛び降りた。

 

 

「リュウー! やっと誰か見つけたー!!」

 

「1人足りなくないか?」

 

「ナナのことは今は……って、何で!? ボディが周りにいるんだけどなんで!?」

 

「話は後だ! 適度に相手を続けて内部へ逃げきる!」

 

 

話しながら一撃一撃を加えるリュウの背後で、ポポは慌てて木槌を構える。まずは手頃なプリンのボディを杭に見立てて打ちつけた。

 

 

 

 

 

「暗い……! でも追ってきてるし……」

 

『ナナか?』

 

「うわああああああああああああああああああああ!?」

 

『…!? す、すまない、そ、そこまで驚くとは……』

 

「ふえ? ルカリオ?」

 

『ここがどこか知っているか? ……そもそもポポは?』

 

「って驚いてる場合じゃなかった! 早く逃げないと!」

 

 

ナナの背後、波導を感じるルカリオにはわかった。生命も精神も持たない存在が迫ってきている。その正体をルカリオは知っていた。

 

 

『ボディ……!? キーラとダーズの私兵が何故!?』

 

 

奴らから逃げるとするならば、この灯りのない洞窟内部を進まなければならない。自身だけならば問題ないが、ナナの誘導を敵がいる中で行わなければならない。

 

相手をするか、逃げるか。

2人は選択しなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

登山家の2人はちょっとした口喧嘩で道を違えてしまう。しかし、運命はすでに定められている。繋がれた絆は変幻自在なものではなく、離れさせるのを許さない。

 

片割れは頂上から地上の出口へ。

片割れは地上の出口から頂上へ。

 

違えた道末ははじめから繋がっていることを、今の本人たちは知らなかった。

 





○章タイトル
今章の舞台はピクミン3の哀しき獣の塔となります。呼吸やサイズに関してはノーコメント。クエストということで片割れ同士を探す冒険となります。


○タイトル
ファイアーエムブレムifの共通ルートの最後の通称。
一度ここまでプレイしたら、次の周回で共通ルートをすっ飛ばせます。
ただし主人公の性別を変えるとついてくる臣下も変わるので二人のレベルが1に戻るのは注意。



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28話 砂塵舞う地で


先週予約投稿忘れたのでこの時間です。
というか最近ほんと忙しいので次週から遅れる程度じゃ済まないかもしれません……



 

 

トドメの昇竜拳が人型ボディの顎を砕き、K.O.を決める。あたりには人とは言えない骸のみが散乱し、一切の声が消えて静まりかえった。

 

 

「はあ〜、なんだったの〜?」

 

「わからない。あの時、キーラもダーズも倒してスピリットも解放されたと思ったが……」

 

「まさか誰か捕まってるの!?」

 

「いや、中身がいるようには感じなかった。スピリットは宿っていない……と思うが」

 

 

リュウの予想が正しければ、器だけのボディを操って襲い掛からせていることになる。一体誰がこんなことを。

 

 

「だが、こんな状況で1人でないのは幸運だった。怪我はないか、ポポ」

 

「うん、大丈夫。ボクもリュウがいてよかった。ところでここ洞窟? 塔の中? なのかな」

 

「戦っている間に先の場所から離れたからな。」

 

 

ポポが参戦してもなお、人数で負けていた2人はやむなく塔内部に逃げ込んだ。そこが一本道であったことが幸いし、追ってきたボディの先頭のみを相手取ることに成功したのだ。

ボディ達に思考というものが存在しないからなのか、策略を練る、裏をかくといったことをしないから成功した即席の作戦だった。

 

 

「ねえ、こんな所あったっけ? ボク達結構いろんな場所に出かけてるけど見たことないんだよね」

 

「ああ、俺もだ。マスターハンドが新たに創った場所か?」

 

 

ひとまずの予想。

確かに大乱闘の世界の支配者はマスターハンドだ。彼が望めば場所の一つや二つぐらい創ることができるだろうが。

しかし、何故か納得できない。この異変に関係があるように思えてならないからだ。

 

 

「そういえば…… ナナはいないのか? はぐれたのか?」

 

 

ポポの表情が凍る。そうだ、先程自分の声を聞いても一瞬誰だかわからなかったのは、いつも追随するナナの声がなかったからなのだ。

知らない。いくら片割れでも、あの異常事態に素早い対応を邪魔する片割れなんか知らない。

収めた怒りが湧き上がり、でもリュウに当たるのは八つ当たりでしかなくて。驚くほど簡単に、口からするりと嘘が出た。それが少しだけ胸に痛かった。

 

 

「ナナは…… 外で休ませてる」

 

「そうか、なら合流だな。案内できるか?」

 

「えっ、あー…… えっとー…… 崖、登らないと上がれないんじゃないかな」

 

 

なんとなく嫌だから。

心が合流できない理由ばかり探している。

 

 

「大丈夫だ。そのぐらいなんともない。引き返してナナと合流しよう」

 

「あ、うん……」

 

 

どうにかならないのだろうか。

どうにかして合流を遅らせる手段は。

 

 

 

─その願いが届いたのか、単純にスマッシュブラザーズの不幸を祈ったからなのか、二人にはわからない。それでも起こったのは変化だった。

 

 

ドシンッ!!

「うわわわ!?」

「なんだ!?」

 

 

引き返そうと日が差し込む場所へ戻ろうとした時だった。

 

二人の行く道を塞ぐかのように天上から何かが降ってきた。それは、謎の存在としか言えないものだった。透明な液体のようにも見えるそれは、粘着性を持った水滴だ。

 

 

「……なんなんだ、これは?」

 

 

思わずそう呟くのも無理はなかった。

それは、見たままに水滴のようだった。

それは、見たままに自然現象のようだった。

 

 

「待って! なんか…… なんかおかしい!?」

 

 

金色に輝くキューブのような物体を見つけた。それは支えもないのに宙に浮いている。

それは動力もないのに回っている。

それは、謎の水滴の中心に存在していた。

 

 

ここにいる誰も思わなかったのだ。

まさかこの液体が、

 

 

「うわっ…… 嘘でしょ……?」

 

「これは……!?」

 

 

執着という名の感情を携えた、現存している生命体だということに。

 

 

「うわああああああああああああ!?」

 

「逃げるぞ!!」

 

 

リュウの警告を聞くまでもなく、ポポは絶叫し駆け出した。その跡を彼も追う。

格闘家の本能が言っているのだ。あれは叩けない。叩いてはいけない。

待機しているはずのナナから離れていると気づいていても、それを考えている余裕はない。自身らの身の安全しか考えられなかった。

 

前方へ走りながら、あの生命の方を見るとキューブがあの液体を纏ってスライムのような形を得ているのに気づいた。そして徐々にこちらへ迫っていることも。さほど速くはないのが救いだった。止まらず走り続ければ、いずれは撒けるはず。だが……

 

 

「うわ! 前、前!!」

 

「……!? ボディか!!」

 

 

しかし、前方に立ち塞がるボディが甘い考えを許さなかった。挟み撃ちにされてしまった。

 

 

「どうしよ!?」

 

「突っ切る!! 対処できるとわかっているボディの方がマシだ!」

 

 

ボディは勝てるのだ。キーラとダーズの支配から離れた彼らは大き過ぎるダメージを与えれば、耐えきれなくなり崩れる。フィギュア化せずに物理的に崩れるのが気がかりだが、スピリットが宿っていないからではないかと結論づける。つまり、倒せるのだ。

物理的な攻撃が効かなそうな奴を相手取るのは現実的ではない。ならば、行く手を塞ぐ相手を薙ぎ払うのが最善策だ。

 

 

「じゃま!」

 

 

オリマーのボディを木槌で弾き飛ばす。当然まともに相手をするつもりはない。

道を開けるのを目的に武器と拳を振るう。

どこかから放たれた刃が鉢巻の端を掠め、薄皮が捲れた。多少の傷は許容せねばならないだろう。旋風脚で敵を薙ぎ払い、ようやく進むべき道を視認できた。

 

 

「いくぞ!」

 

 

短くそれだけを伝えて駆け出した。

行く先は細い穴だ。もしかしたら、あの謎の生き物はつっかえて進めないかもしれないと淡い期待をするほどに。

 

 

「逃げきれた!」

 

 

穴を潜ってようやく這い出た。陽の光が見えたから外かとは思ったが、やはり未だ洞窟の中だ。天上に亀裂があり、そこから日光が入り込んでいるらしい。

 

 

「う、うわあぁ……!」

 

 

周囲の喧騒も忘れ、ポポの目はそれに釘付けになる。亀裂から入った日光は命を咲かせていた。

僅かな光を掴むためにちょうど光の刺す場所に花咲き、周囲で草を芽吹いている。あたりには蝶が羽ばたき、僅かな恵みを取り込んでいた。

登山家のポポは見たことのない、幻想的な光景に目が離せなかった。

 

 

「ポポ!! まだボディが!!」

 

「あ! ゴメン! 急がないと…… ってえええ!?」

 

「何……!?」

 

 

見惚れている暇はない。

リュウの叱責でようやく我に返った。自分達は逃げていたのだと。振り返ってどのような状況かと背後を見たポポは驚きを隠せなかった。

 

あの謎の生物は自分達を追っている過程で、液体にボディを取り込んでいた。そのボディ達はまるで人がするようにもがき、出ようとするが流動的な存在から抜け出せない。

そして、唐突に内部のキューブに何かを取り込むと、一気に金色へと変色──否、元の色を取り戻した。

しかし、それも束の間何が不満なのか、再び透明になり追ってくる。取り込まれていたボディの姿が見えないことにゾッとした。

 

その不可思議な光景に二人は動揺を隠せない。

しかし間違いない。

ボディとあの生命体は同陣営ではない。

そして──ボディなどよりあの生命体の方が脅威だ。

 

 

「もっと離れなければ……!」

 

「うん!」

 

 

花畑を蹴散らし、曲がった坂道に差し掛かろうとしたところ、リュウの背中を追っていたポポはあの生命体の様子を確認しようとし…… 気づいた。

 

寄ってきたあの生命体に対して、蝶は怯えたり逃げたりする様子が見られない。生命体に触れた途端に、あの蝶は金色の液体のように溶けて消えたのだ。

 

 

「(ボディと同じ!? でも、微妙に違うような)」

 

 

確かにその様子はボディを彷彿とさせたが、蝶だったものはもう少し粘度があった。それにあの生命体に吸い取られていったような。

 

 

「(あの蝶々、アレと同じ存在!? それとも一部だったの!?)」

 

 

まさか、と考えた論。肯定する情報はないが、否定する根拠もない。曖昧だった考えは後ろ向きへと移ろっていく。

だったら、ここはアイツの拠点なのかもしれない。どんどん中に入っていっているがよいのだろうか?

 

 

「! これは……」

 

 

ポポが考えていると背中にぶつかる。

リュウが立ち止まったからだ。

 

そこにいるのは、赤と白の斑点のついた生き物。自然に紛れない色合いはまるで自生している生命ではないことを如実に表している。

 

しかし、そこは問題ではない。

あの世界では見ない生物。

大乱闘のステージにしかいない生物。

それはつまり、ここがよく知る大乱闘の世界ではないことの証明だった。

 





○タイトル
ファイアーエムブレム覚醒のロラン外伝タイトル。今話に砂塵要素は毛ほどもない。
動きにくい砂漠の戦場に訪問したら消える幻の村とちょっとややこしい外伝。ちなみに覚醒子世代で最年長はルキナのはずだが、ロランはルキナが来た時代より過去の時代に到着したため、歳を越している。
後ウードとかのキャラが濃すぎてロラン自体の影が薄い。


○ 「ナナは…… 外で休ませてる」
あながち嘘ではない。


○謎の生命体
ピクミン3のストーリーモードラスボス、アメニュウドウ。
前作でのみんなのトラウマ、アメボウズとの関係性が伺え、同じように集団幻覚説も。ルーイによると「危険な味と香りがして飲むのを断念。」らしい。口に入れるまではしたんかお前。
前作ラスボスも使ってきた全属性攻撃や空中に飛んだりとすべてのピクミンを活用させて戦うのが公式の戦略…… だが、岩ピクミン100匹が一番楽なのは秘密。
オリマーに並々ならぬ執着を見せる他、不死身っぽい描写もある。


○哀しき獣の塔の原生生物
なぜか倒すと金色の液体になって溶け、運ぶことができない。
おそらくアメニュウドウが作り出したものだろう。ちょっとボディに似ている。だが、アメニュウドウ自身はどうでもいいと思っているのか通り道でぶっ殺してる。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「メタナイト、ディスカバリークリアしたよ。まだ表までだけどね」
「とりあえずエフィリンには謝った」
「マルスにアイクもプレイしてたのか。謝罪については…… まあユーザーの8割程度はしてるだろうか。」
「ラスボスのビジュアル怖かったな…… 今までのカービィシリーズにはないタイプだったし……」
「ラスボスも恐怖だったが一番恐怖というか異質だったのは……」
「「……こそ〜」」
「見つけた!! 2人とも、あの高○みなみを捕まえるぞ!」
「「了解!!」」
「「風評被害だよ!?(だぞ!?)」」


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29話 それがあたしの生まれた意味

「もー!! なんで!? なんで追ってくるの〜!!」

 

『走るぞ! この暗がり、まともに構っていられない!!』

 

 

波導を感じるルカリオに、洞窟の暗さは問題にならない。付近の地形、慌てて逃げ惑うナナ。ただそこに存在することだけはわかるボディ達。眼に映るが如く、ルカリオには感じ取れた。

 

しかし、ルカリオだけだ。

出口から差し込む光だけが頼りのナナにはわからない。先程、大きな花にぶつかった時もぶつかるまでわからなかった。ほとんど見えない状態のナナと共に迎え撃つのは容易ではない。

ボディについてはなんとも言えないが、少なくともルカリオ自身のボディはこの暗がりを物ともしないだろう。他のボディについては不明だが、楽観視できる余裕はない。

 

 

『止まれ!』

 

「うわッ!?」

 

 

ルカリオの指示通り、急停止。

波導は見落とさない。向かい側へ進む橋がない。足元の感覚からして橋となるべき足場がこちら側に引き上げられているのだ。

 

 

「ほ、他の道!」

 

 

見えずとも理解していたようで、代替案を提案。だが、助言より先に、ルカリオの思考は動いていた。

このまま落ちれば、池にドボンだった。深さまではこの位置では測れない。中央に向かって飛び降りれば陸地があるのはわかるが、ボディが追ってくるのは変わりないだろう。残ったのは……

 

 

『! 周り道だ!』

 

「うん! ってわあ!?」

 

 

返事が終わらないうちに、ルカリオはナナを抱えていた。そして進んでいた方向とは違う右の道を行く。出口が遠のいて、ナナの目はほとんど何も見えなくなった。

 

 

『(障害はあるが……!)』

 

「わあああ!?」

 

 

この道も困難がないわけではない。

立ち塞がるのは砂でできた壁だ。時間をかければ壊れるだろうが、かける時間ももったいない。ナナを抱えたまま、足だけで飛び越えた。見えずとも変わる環境にナナは悲鳴を上げるしかなかった。

 

 

『(これでどうだ……!)』

 

 

背後に対して集中力を高め、追ってきてるであろうボディ達の様子を確認する。

どうやらただ相手をすることしか定められていないのか、6体のボディがそれぞれ壁をよじ登ったり、壊そうとしている。連携はもちろん取れてないし、譲り合って先に行かせるということもない。少しは時間が取れそうだ。その隙に、ルカリオはどうしても聞かなければならないことがある。

 

 

『ナナ、ポポはどうした』

 

「っ!!」

 

 

あからさまな動揺、もしかしてポポに何か起きたのだろうか。ボディ達に襲われて、置いて逃げるしかなかったのかもしれない。場合によっては助けに行かなければ。そのために距離を取るより先にこの質問を投げかけたのだ。

 

 

『……まさか本当に』

 

「……違うし。そんなんじゃない。だってポポが悪いもん。1人で行くなんて言うから」

 

 

その動揺をめざとく感じ取ったルカリオは最悪の状態を想像する。

しかし、それは否定された。ヘソを曲げてそっぽを向くナナからは悲哀の感情はなかった。怒りだった。先程の動揺は痛い所を突かれた故か、それとも結果的に危険地帯でひとりにさせてしまった負い目か。

 

 

ボディ達が砂壁に対してあれこれしている喧騒が、流れる水の音が遠のき消えて感じなくなる。上手く返せない。喧嘩するような相手はほとんどいなかったから。

普段は冷静な判断を下すルカリオの頭脳も今はこおりついたかのように止まっていた。

 

─それでも言いたいことはある。

 

 

『上手く、説明できないが』

 

「……」

 

 

その前置きは誰のための保険だったのだろうか。よくわからなかった。

 

 

『大切だから、振り払う。嘘をつける。切り離せる──そんなことも、あるんだ』

 

 

だって、裏切ってなかったのだ。

裏切られてなかったのだ。

 

あの眠りは絆をも断ち切りかねない決定的な隔たりだったが。

 

嫌われてもなお、生きて欲しいと思ったから。

 

自分の知らないところで、全ての悲劇を塗りつぶせるほど幸せになってほしいと思ったから。

 

 

「…………」

 

 

ドガンッ!

 

 

『ッ! 抜けてきたか!』

 

 

急速に現実世界へと戻されていく。

何も見えないナナも、その音でなんとなく危険であることは理解できた。

 

 

「どうすればいい?」

 

『できるだけ音をたてて走る。誘導もする。信じて着いてきて欲しい』

 

「うん」

 

 

短くそれだけを返事した。まずは先程通った、橋がかかっていただろう対岸へ。そしてそこから道なりに進む。

集中すればどこへ明るい場所がどこかわかるだろうが、現状無理だ。ルカリオ以外に戦える人材が必要で、それには明かりが必要だ。

 

 

『手をつなごう。走るぞ』

 

「うん」

 

 

ナナの手を握り、走り出した。

ひとまずボディを撒かなくては。伏兵もいるかもしれない。案外近くに別の道があるかもしれない。現在できる限りで索敵の範囲を広げる。

そうして警戒を高めていたルカリオの知覚に入ってきたのは意外な存在だった。

 

強さと神聖さ、そして厳格さ。

強さと粗暴さ、そして狡猾さ。

 

 

『シモンにキングクルール!』

 

「! この声は」

 

「ああ!? なんだって!?」

 

「え?」

 

 

それに気づいたのは遅かった。

シモンもクルールもずっと逃げていて、ルカリオはその背後にいるボディも知覚できた。

とはいえ、双方遅かったのだが。

 

 

「うおっ」

「わっ」

『むうっ』

「ギャッ」

 

 

曲がり角にて正面衝突。

しかし、気づきが遅かったシモンとクルールは減速できず。

人と比べればスタイリッシュで軽めのルカリオと女であり子供のナナは減速していた。

その結果から導き出される結末は。

 

 

『落ち、る……!!』

 

「……! あれは」

 

 

崖の道からの落下である。

シモンが何か明かりがあるのに気づいたのはその一瞬であった。

 

 

「うわああああああ!?」

「ぐおおおおおおお!?」

 

 

ナナとクルールの叫び声。何も見えない中での落下は相当な恐怖だ。衝突の際に完全に手を離してしまったため、周りの人が全員消えているかのような感覚になる。ひとりに、なって。

 

 

─ なんで…… そんなこと言うの?

─ 意固地なのはそっちじゃん!! 休憩の仕方もわからないの!?

─ だったら、好きにしてよ! どのみちわたしは動けないし!!

 

「(あれ……?)」

 

 

暖かさが消えた手の感覚だけがはっきりとしている。気づきたくなかった。先に暖かさを手放したのは。離れたのではなく離したのは。

 

 

水飛沫。辺りに飛び散り、辺りから飛んで。

水の中に落ちたのはわかった。

 

 

「プハッ! 深くなくて命拾いしたか」

 

『君たちもここにいたのか…… シモンにクルール。』

 

「あん? オマエルカリオか。真っ暗で全然わかんなかったぜ」

 

 

やっぱりそうであった。

ルカリオやアイスクライマーだけではなく、他にもこの世界に来ていた者がいたのだ。

 

 

「あのボディ達に追われていてな、少し相手をしていたが、キリがなくクルールもいるから逃げてきたのだ。」

 

『気づかなかっただけで随分近くにいたのだな』

 

 

ルカリオほどではないが、シモンも暗がりでの戦闘は慣れていた。出口から放たれる僅かな光を頼りに戦っていたそうだ。

 

 

『……! 追ってくるか!』

 

「何」

 

 

のんびり雑談をしている時間は与えてくれない。降りてきたボディ達による水飛沫が血になるような錯覚。囲まれているような圧迫感。

戦力になるのはルカリオとシモンの2人だけ。しかし、シモンは十全とは言い難い。

 

 

「やる他ない!」

『わかってい……!?』

 

 

覚悟すら決めていたルカリオの正面、機械の偶像が崩れ落ちた。横から飛んできた飛び道具。その正体をルカリオは知っていた。

 

 

「君は……?」

 

「あっ……!」

 

 

友人にそっくりないでたちにシモンは少し動揺する。ナナの視線は自然とそちらへ動く。その者はカンテラで明かりを持っていたのだ。

ルカリオとナナは安心の顔へ変化する。

シモンとクルールの表情は変わらなかった。彼らを知らなかったからだ。

 

 

「ああ、安心してくれ。俺が見張っておくからコイツには何もさせない」

 

「誰がコイツだ。我は罰とやらの清算させられているだけだ」

 

 

緑衣の衣、ゲルドの王。

勇気、力。

 

 

「本当に、久しぶりだな」

 

「〜! うん!」

 

『ああ。そして助かった……!』

 

 

生まれは牧童。なのに気品や神聖さを感じさせる、過去の仲間。

 

光の勇者。黄昏のケモノの力を持つ者。

過去にスマッシュブラザーズとして、アイスクライマー、ルカリオと共に亜空軍を撃退した、()()()がカンテラの光に照らされて立っていた。

 




○タイトル
キングダムハーツ 358/2 daysの最終盤、シオンの放ったセリフ。
どういった意図でこんなことを言ったのか知らない方は、ミュウと波導の勇者ルカリオで登場するアーロン様に近い感じと語ってくれればよいかと。


○暗がり
真っ暗な中で逃げていられるのはルカリオがいたからこそ。
シモンの戦場は、月明かりがうっすら差し込む夜だからこそ、多少は暗くても戦えてます。


○マップ
ピクミン3の哀しき獣の塔そのまま。ただしアルフ達が解いたギミックは全て元に戻っている模様。まあ、ショートカット用の岩壁先に壊せばいいから2週目以降はほっといててもおかしくないけど。
ナナ側の行方を追うときは出口から逆走していることを忘れずに。


○『大切だから、振り払う。嘘をつける。切り離せる──そんなことも、あるんだ』
キングダムハーツのユニオンクロスでこのパターンやられてから、こういう展開やられると胸がギュッとします……
それは、ルカリオだから言えること。


○リンク(トワイライトプリンセスVer)
X、forとスマッシュブラザーズに参戦していた光の勇者。2つの作品に登場していたもののみが彼のことを知っています。
武装とすれば、マスターソードや原作の道具。しかしミドナと別れた後なのでウルフリンクにはなれません。
スマッシュブラザーズの中では、対亜空軍で同行を共にしたヨッシーと仲がいい。作者の前作では、ほんの少し言及される程度で登場。同じ世界出身のゼルダもといシーク曰く、牧童だというのに気品を持っている、だそうな。


○ガノンドロフ(トワイライトプリンセス)
上に同じく。リンクと違って時オカガノンと同一人物の設定だが、まあちっちゃいことは気にするな。
スマブラの技と、剣も使える。しかし処刑用の剣そのままなので時オカガノンのそれと比べて細身の剣。
一部にはこっちの方が馴染み深かったりするが、影の世界に追放されたり処刑されかけたりしたおかげで、時オカガノンより感情的。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「………………あ! 自分は主人公じゃない!?」
「あ、無双の話? ヨゾラみたいな声の人が主人公なんだよね? あー、残念……だったね?」
「いや、驚いてはいるが…… ちゃんと自分の性別選べるから全てを許す」
「いいんだ……」
「自分の話もいいが、ソラの方も新情報でたんだろう?」
「ああ! DRの配信日に新作アプリにIV! よりどりみどり!」
「発売に何年費やすのだろうか」
「やめて」
「また配信延期にならないだろうか」
「やめて」
「ユニクロみたいな課金ゲームに」
「やめて」
「キングダムハーツってこんなゲーム」
「やめて!」



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30話 10番道路

 

「あの生き物は、『とある星』の…… オリマーがいた世界の……」

 

 

窮地で情報がまとまっていないところに、更なる情報が殴りかかってくる。呼吸を整えるための荒い息がどこか別の場所で行われているような錯覚に陥り、自分の自我が離れていく。それでも、歴戦の長たるリュウの体は動いていた。

 

 

「わっ!」

 

 

ポポを抱えて、原生生物チャッピーとコチャッピーの群れをくぐり抜ける。気づいたコチャッピー達は追ってくるが、速い足を持っていなかったので敵ではない。本当の敵は目の前に立ち塞がっていた。

 

 

「あの壁!」

 

「ポポ、口を閉じているんだ……! 竜巻旋風脚!!」

 

 

逃げるための走力を助走に変えて、大規模な回し蹴りを砂壁に叩き込んだ。表面が剥がれ、より濃い色の土が姿をあらわす。もう一撃だ。右の拳を引いて正拳突きの構えを取る。

 

 

「大丈夫だ! オレに任せてくれ!」

 

「!?」

 

 

拳が叩き込まれようとした時だった。リュウよりも先に、炎の鳥を纏ったパンチが叩き込まれたのだ。その威力に粉々になった砂のかけらが小さな火を留めている。

 

 

「ファルコンパンチ、決まったな!」

 

「キャプテン・ファルコン!」

 

 

壁を壊そうとするリュウに加勢したのは、常時ヘルメットを被ったレーサー、キャプテン・ファルコンだった。

バイザーで目元は全く見えない。顔はおそらく誰も知らない、だがスマッシュブラザーズは誰でも知っているヒーロー。

 

 

「ポポもリュウも元気そうでよかったぜ! ところでナナは?」

 

「外で休ませているそうだ」

 

「……またそれ? ボクどう思われてるのさ」

 

「いわゆるニコイチだろ?」

 

 

まるで当たり前のように返されたポポは、怒りも萎んでそっぽを向く。一気に不機嫌になったポポを見て、リュウとキャプテン・ファルコンは視線を合わせた。

 

 

「(おいおい、本気で何があったんだ?)」

 

「(俺も休ませてる程度しか聞いていないが……)」

 

「(絶対嘘つかれてるって! 喧嘩でもしちゃったか?)」

 

「(む…… それなら尚更ナナは危険だ。ポポは不本意だろうが見つけなければ)」

 

 

互いに小声で会話し、今の真実を理解する。何かしらいざこざがあって離れざるを得なかった。それも本人同士の問題だろう。問い詰めなければならない。そのためには、

 

 

「だが、それより先にあの生命体を振り切らなければな」

 

「ワオ!? なんだコイツ!?」

 

「(完全に忘れてた……!)」

 

 

チャッピー達を溶かしてでも後を追ってくる謎の存在にいい加減嫌悪感すら湧いてくる。開けた道を走りだすと、脇には先程の砂壁のような、水晶壁というべき存在があるのに気づいた。

 

 

「登るぞ!」

 

「OK!」

 

 

水晶壁に向かって足をかける。リュウから離れたポポは脇の崖をすいすいと登っていき、壁の向こう側へ回った。筋肉質な二人よりも先に登りきったポポは比較的冷静になって生命体を観察できていた。

 

 

「あの生命体が……」

 

「オレ達のことガン無視だったな」

 

 

少々遅れてたどり着いたリュウとキャプテン・ファルコンも生命体を見る。水晶壁を挟んで檻の中の獣を見るように観察していると、こちらのことなどお構いなしで通り過ぎていった。

 

 

「やり過ごせたの?」

 

「いや、むしろ俺たちに興味がなかったんだろう。目的地がたまたま同じだったから追われていたように感じただけだ」

 

「勘違いだったのか? 確かに後からここに入ったオレはなんともなかったしな」

 

 

脅威の免れた場所で、安堵の息を吐く。

ようやく訪れた安寧に心が安らぐ。しかし、運命がそれを許さない。英雄達は永遠に戦うべきだと何かが囁く。

 

 

「なんとかなったぁ…… ってうわあ!?」

 

「次から次へと!」

 

 

もういい加減にしてくれという、懇願の言葉は届かない。彼らが彼らであり続ける限り。

緑色の虫がその顎でポポの体をがっちり掴む。獲物を逃さないと空中へ逃げる1匹と地を這う同種が2匹。

 

だが、戦闘には入らなかった。2人が戦闘態勢となる前に緑色の虫は銃弾を受けて造られた命を終える。やはり小金の液体にすぎない存在だったが。落っこちたポポは着地失敗で顔を地に沈める。

 

 

「騒がしいんだな、スマッシュブラザーズというやつは」

 

「どちらさん?」

 

 

銃弾の主、この場に降りてきたのは銀の髪の女性だった。ぴったりの服は真っ赤に染まっており、手には現実のものと似ていない色の両手銃。

 

 

「私はジャンヌ。セレッサとは故郷を同じとする」

 

「セレ…… 誰?」

 

「……ああ、ベヨネッタのことだ。思い出したのだから本名で通してもいいものを」

 

 

ベヨネッタの仲間か。確かに少しだけ見た戦い方が同じだ。スマッシュブラザーズ以外の人間もこの事件に巻き込まれていただなんて。

 

 

「名前のことに関してはマスターハンドが決めているからな。俺は苗字を名乗りたくないからこれでよかったが」

 

「ポポとナナもアイスクライマーだしな」

 

「蓮が蓮と呼んでくれないと愚痴っていた。名前についてはみな事情があるんだな…… ってそんなこと言いたいんじゃない。ポポ、無事か?」

 

「落ちた…… 痛い……」

 

「そのぐらい我慢するぞ」

 

 

顔から地面に猛烈な接吻をしたポポは半泣きである。しかし、休息兼情報整理をしなければならない。

ポポを座らせる。花弁の肉厚な花がちょうどあったので背もたれにした。

 

 

「で、あの変なやつなんだったんだ? 触りたくない感じだったな」

 

「わからない…… 何か目的があるようだが」

 

「変なやつだと?」

 

「水餅のような…… 透明な液体の中に金色の立方体があった。見ていないのか?」

 

「悪いが見ていないな」

 

 

ジャンヌは知っているかとダメ元で聞いてみたが、結果は芳しくなかった。そもそも目撃してもいなかったそうだ。

 

 

「えっと、あれも怖いけどもう一つあって」

 

「もう一つ?」

 

「ボディも俺たちへ襲いかかってきたんだ。ポポとは、俺がボディ達と戦っている時に合流したんだ。」

 

「ボディ…… そうか、前に色々あった時のことだな。スピリットになっていたが、私も何が起きていたかぐらい知っている」

 

 

ボディ達の再起。

それはキャプテン・ファルコンに最悪な勘を生み出した。

 

 

「おいおい、キーラかダーズかが復活したとかか!? 同時に倒せば復活しないんじゃなかったのか!?」

 

「復活したにしては手緩くないか? 前回は敗北寸前まで追い詰められたと聞いているが」

 

「ああ、一度全滅寸前まで追い込まれているのだから同じでなくとも似た手を取ればいい。おそらくボディを使っているが別人の仕業だと思う。」

 

 

不明点はないか、3人の顔を見渡して話を続ける。

 

 

「だから当面は黒幕を見つけて捕らえるのが目的だ。その過程で問題なのがあの生き物だが……」

 

「そいつはボディ達の味方ではないのか?」

 

「おそらく違う。ボディを巻き込んでまで何かを追っているところを見ているからな。敵とも認識していないかもしれない。」

 

「相手しないならしないに限るよな」

 

 

やることは決まった。あの生命体をやり過ごしたからじっくり探索できる。だが、迷い込んだ誰かが狙われていることは否定できない。

 

 

「よっしゃ!! まずはナナを見つける! んで、どっかにいるボスを捕まえる! ほかにここにきたヤツがいれば仲間に加える!! こんなもんだな……」

 

 

キャプテン・ファルコンが意気込むその言葉尻が萎んでいく。行こうと意気込んでいたからその視線は、外へ出る方向である水晶壁だ。そちらを見た途端これだ。何事かと思って全員が反射的にそちらへ向いた。

 

 

「すっげ〜面白いことになってんなあ? まるで飼い慣らされた小動物でも観察するような気分だぜ〜?」

 

「リ、リドリーゴラアアアァァ!!」

 

 

水晶壁を破壊しない限り出口がないここは、籠城にはもってこいだ。しかし、その必要がなくなった今、檻にすら見える。

 

これは恥。

しかも一番言いふらしそうな奴に知られて、状況も環境も何もかも忘れて憤るレーサーであった。

 





○タイトル
作者的にはポケモンBWの楽曲。
名の通り10番道路で流れる曲。これからチャンピオンロードに入るというド終盤で流れるドラマチックな曲調。そのおかげか、道路系の曲の中で群を抜いて人気。スマブラWiiUにアレンジ曲が収録。


○チャッピー
和名ベニデメマダラ、イヌムシ科。
ピクミンで一番有名な原生生物。マリオのクリボー、カービィのワドルディ。でも最弱ではないし、ゲームはじめて初の敵ってわけでもない。
とある星のフィールドでたまに右に登場して殺してくる奴がコイツ。
夜行性なのでオリマー達が近づかない限り起きてこない。ちなみに命名元はオリマーの飼い犬。


○コチャッピー
和名は初代でデメマダラモドキ、2でベニデメマダラモドキ。パンモドキ科。チャッピーの子供のように見えるが、擬態種なので別種。
ピクミンでの最弱の敵はコイツ。はじめて会うのもコイツ。しかし、真上へピクミンを投げると一撃で潰される。


○緑色の虫
ピクミンに登場する原生生物トビンコ。
ピクミンを捕まえて噛み切ってくる。普通に戦えば、大量に犠牲になったりはしないだろうが、体力が減ると飛んで逃げるのが厄介。何故か3のストーリーモードでは哀しき獣の塔の偽物っぽい個体しか登場しない。


○ジャンヌ
ベヨネッタシリーズに登場。初代では色々あった結果、幼馴染のベヨネッタと敵対することになる。2では彼女の復活を動機として物語が始まる。男勝りな口調でベヨネッタと同じバレットアーツの使い手。


○名前問題
名前のことに関しては一章で色々言われてました。頭の片隅に置いておくといいかも。


○リドリー
シリアスな締め方じゃないけどたまにはいいかなと。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「 _人人人人人人人人_
> 突然の発売日 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^ Y ̄ 」
「え、あの……ゼノブレ3発売9月じゃなかったっけ…… スプラトゥーン3と間違えてる?」
「いや、あたしんとこの発売日がはやまってた訳じゃないでしょ……」
「唐突に発表してきた…… キングダムハーツぐらいのイベントで発表してもよかったのに……」
「しかもめっちゃはやい…… ブレワイぐらいもったいぶってもよかったのに……」
「そういえば、インクリングも僕もこの話では章の主役的な立ち位置だったよね」
「つまり年内にアイスクライマーの新作が……!?」
「この小説にそんな力ないよ!!」


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31話 水中の城

 

「灯りさえありゃ敵じゃねえ!!」

 

 

リンクが腰に下げていたカンテラ。その灯りのおかげでようやく全員がまともに戦えるようになった。あまりにも遠い敵は見えないのだが、それでも先程と比べてしまえば難易度は下がる。魚を掴むのが、濁流か清流かの違いだ。

 

 

「せい!」

 

「誰かは知らないが、助太刀に感謝する!」

 

 

キングクルールも、ナナも、シモンも。

整った戦場で追ってきた奴らの相手をする。

拳が、木槌が、鞭が。

ボディ達を強かに打ち、ダメージを蓄積させていく。戦士としての意志がようやく照らされ視認できるようになったのだ。

 

 

「この状況は…… とりあえず敵を倒してからだな、助力しろ、ガノンドロフ!!」

 

「貴様が指図をするな…… ()()()()()()手を貸すのだ」

 

 

トライフォースの力で拘束されたフォックスのボディに、ガノンドロフが振るった賢者の剣が突き刺さる。倒れ伏したボディから最後に撃たれたブラスターはリンクのマスターソードによって弾かれた。

 

 

「これで終わり……?」

 

『ああ、もう近くに敵はいない』

 

「あっそ、で誰なんだコイツら」

 

 

キングクルールの興味は、光と影の戦いを経験した勇者と魔王に移っている。自分の知る人物に似ているとなると尚更だ。

 

 

『ああ、2人のことだな。少し説明が難しいのだが、君たちがいなかった前回リンクとガノンドロフとしてスマッシュブラザーズにいた者達だ。』

 

「??? どういう意味なのだ?」

 

『代替わりした、という表現が一番近いか。名前も同じなのでややこしいのだが、スマッシュブラザーズに昔いたといったところだ。』

 

「……なるほど、大筋は理解した。私たちの知る2人とは別人なのだな」

 

「めんどくせえんだな、それで名前は」

 

「俺はリンク。そしてコイツがガノンドロフ」

 

「名前同じなのかよめんどくせえ」

 

 

前に戦っていた仲間。大乱闘で戦うことはできずとも、それでも大切な仲間なのだ。

 

 

「ややこしいのは否定しない…… ところでナナ、ポポは一緒じゃないのか」

 

「えっ…… えっと……」

 

 

また、同じことを聞かれ返答にどもるナナ。

それに気を悪くした様子もなく、落ち着いてごらんとやさしく諭す。屈んで視線を同じ高さにする。だが、この状況でもナナの口は沈黙を保ち続けていた。

 

 

「どうでもいい、優先するべきはこの場から大乱闘の世界へ行く道だ。」

 

「あー! 同感同感。いない奴のこと気にしてる余裕ねえよ。」

 

「探さない訳にもいかないだろう。これだから……」

 

 

その後に続く自分の言葉を、シモンは無理やり押し留めた。悪に染めた闇の使徒でも、現在は共に戦う存在なのだから。

 

 

『喧嘩するほど安心できる状況じゃないんだ。とりあえず、この暗闇から出る方法を探そう』

 

「(喧嘩するほど……)」

 

 

ルカリオにその意図はあったのか定かではない。それでもその言葉はナナに突き刺さった。

みんなそうだ。1人でいただけでみんなもう1人のことを聞いてくる。

 

もしかして、自分じゃなくてポポの方を気にしているのだろうか。走るのも足踏みも2人で一緒にしたいと考えていたのは自分だけだったのだろうか。周りのみんなもポポも違うように感じていたのだろうか。

 

 

ビチャという水音にようやく気づく。

水圧で足が自由に動かせない。アイスクライマーというペアにとって自分はその程度のものなのだろうか。

 

暖かく輝いているカンテラの光がやたらと遠いものに感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

池のように溜まっていた水から上がると、ルカリオは波導で辺りの探索をはじめた。

目を閉じ精神を集中させることで少々遠い地形も感じとることができる。戦いながらではできなかったそれを今試している。灯りと戦力が整ったからこそできたことだ。

 

 

「しかし、先程言っていた罰とはなんなのだ?」

 

「……」

 

「ナナ?」

 

「えっ、あっ、と、何?」

 

「ガノンドロフの罰とはなんだ、と」

 

 

それに答えたのはナナではなく、リンクだった。中心に置いたカンテラに照らされながら、マスターソードの調子を見ている。視線は外さぬままに語った。

 

 

「前に亜空軍というのと戦っててな、コイツはそれを率いて世界の掌握を狙っていたんだ。」

 

「……ふん」

 

 

ガノンドロフはそっぽを向いた。それは羞恥からくるものではない。

失敗した時の計画を語られることに嫌悪感を示しただけだ。自分もまたタブーにいいように利用されていたとなれば尚更である。

 

 

「その贖いのために動いていると?」

 

「あの世界に何かあったら、世界のために動けって言われてるんだと」

 

「それで一緒にいるんだ」

 

「あー…… 一緒なのは偶然。運良くここで会った。そもそも俺が倒す前の時間から来てるし」

 

 

少しバツが悪そうにリンクは言った。

なんとも思ってなさそうに見えるが、心の中では複雑な気分でいたらしい。

 

 

「まあ、気持ちはわかんなくもねーけどよ、利用してやるつもりでいっちまえよ」

 

「言われなくてもわかっている。貴様のような小物に言われなくともな」

 

「あ゛あ゛!?」

 

 

キングクルールとガノンドロフの溝が深まり、喧嘩が勃発。というか、キングクルールが一方的に仕掛けている。ナナはキョトンとしているが、2人は呆れた目で見ていた。

 

 

「もう…… 敵がよってこなきゃなにしてもいいさ……」

 

「付き合うだけ疲れるか……」

 

 

大きくため息を吐いた2人にルカリオが歩んできた。どうやら波導の探知が終わったようだ。だが、キングクルールとガノンドロフの現在を見て、2人と同じ顔をした。

 

 

『どういう状況だこれは……』

 

「あー、口に出すのもくだらないから聞かないでもらえるか……」

 

 

この返答で大体察せるというものだ。

 

 

「で、どうするの? 他の出口見つかった? それとも崖登ってさっきいたとこ戻る?」

 

 

さっきいたとこ。

ナナがこの暗闇に入った場所だ。ボディ達は倒したのだから、戻ることはできる。

しかしそこに関しては、確かに遠いわけではないが、崖を登らなければならない。

 

 

『それでもいいが、暗い中で崖を登るのは無謀だ。灯りがあるといっても一つだけだからな。』

 

「1人ずつ登るのも、どこに敵がいるかわからない以上避けたいな」

 

『ああ、だが近くに別の出口があった。そこを通ろう。ポポもこの塔のどこかにいるはず』

 

「探しながら、だな。俺も久しぶりに会いたい」

 

『どうせなら、他のスマッシュブラザーズも紹介しよう。そろそろ進むぞ、2人』

 

 

ルカリオの音を介さないテレパシーに反応し、まずはガノンドロフが口を止めた。

 

 

「道はどこにある」

 

『共に行くぞ、罰だかなんだか知らないが、起きている事をマスターハンドに知らせなければならない』

 

 

そう、マスターハンドに会えばどうなっているのかわかる筈だ。どうしてボディが現存しているのか、ここはどこなのか。

しかし、まだ彼らはこの知らない。ここは彼らの知る大乱闘の世界とは別物だということを。

 

 

「オマエッー!! 何を無視している! せっかくオレ様が悪役の流儀というものを」

 

「いい加減にしろ、話が進まない」

 

 

キングクルールの口を片手で掴んで閉じさせる。フガフガと何かを語りながらシモンへ怒りの矛先を変えた。

 

 

『遠くないのは幸運だった。私が先頭に回る、リンクは最後尾を頼めるか』

 

「まあ、そういう配置になるよな。わかった、後ろは任せてくれ」

 

 

索敵範囲の高いルカリオを先頭に、カンテラを持っているリンクが背後を守る。その前方に多少の暗闇耐性を持つシモンとキングクルール。消去法でルカリオのすぐ背後はナナとガノンドロフとなった。

 

 

「……なんだ」

 

「……いや、何にもないけど……」

 

 

どうしてガノンドロフが隣になるのだ。知らない仲とは言えないが、仲良いわけじゃないし。怖いし。なんでこう運が悪いのだ。前にこういった2人で並んだ時は確か……

 

 

「(あっ…… そっか、いつもポポがいたんだ……)」

 

 

こうやって2人で並ぶ時は、いつもポポが相手だ。選ぼうとも思わなかったのだ。

 

 

「(こんなことで困んなきゃいけないの……)」

 

 

腹が立つ? いや、不便?

なんか違う、なんなのだろう。

その答えは光の差し込む場所に来てもなお、出てこなかった。





○タイトル
ピクミン2の地下洞窟の一つ。そしてみんなのトラウマ。
青ピクミンにしかいけない池の中に入り口があるのに、他の属性要素もあるという表記から?を浮かべることから始まり、じっくり進めていくとローラーで轢き潰してくる上に倒せないアメボウズが降ってくる。
よくある攻略方としてはピクミンは少人数でいくこと。
ここのボスのアメボウズと本作の舞台哀しき獣の塔のボスアメニュウドウは名前以上に共通点が多い。
え、今話の水要素? 最初池で戦ってたでしょ?


○ガノンドロフの罰
亜空の使者におけるアレコレ。タブーに騙されていたようなものだから割と恩赦はあったそうな。ちなみにトワプリンクはED後でわざわざマスターソードを持ってきていますが、ガノンドロフは倒される前の時間軸です。


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32話 if 〜ひとり思う〜

 

「乗せてくださって感謝します……」

 

「そんな畏まるんじゃないよ、アタシはアンタの心意気を気に入ったんだ。下手に出られるとどうしていいかわかんなくなる」

 

 

荒波を物ともせぬ帆船。

それでも波の影響を無にするわけではない。

煌びやかで堅牢な城に住まう彼女には苦となるだろう大海原の世界だというのに、泣き言一つ漏らさなかった。

 

 

「それどころか、ずっ〜と外に出て見張ってんだからやる女だよなぁ」

 

 

船の手すりに両手をかけて、大陸が見えるのを待っている。よほど待ちきれないのか、なにか焦っているのか。

 

本人曰く、理由ははっきりしないのに謝らなければならない気がした、と。どうしてももう一度会いたい、と。

 

それだけを言って、突然この船に現れた彼女は、このまま乗せて欲しいと言った。

 

 

たまにいるのだ、創造神の招待の外からやってくる人間が。

基本的にスマッシュブラザーズ以外の人間は、スマッシュブラザーズの応援といったかたちでやってくる。もしくは偶発的に大乱闘のことを知ってしまったか。

 

推測するところだが、あの女性はどちらでもないらしい。ならば、最近加入したソラと同じ事情なのかと邪推するが、彼女はわかった上でここに来ている。

 

 

「わっかんないな、それに何故だか力も溢れてる。大乱闘の世界はどうなってんだ?」

 

 

普段の世界と違えぬ切れ味を見せた剣をしまう。海賊船の親分テトラは制限されている筈の力に戸惑いを覚えながらも、先の航路を急がせた。船首近くの自分のそれに似た金髪を視界に入れながら。

 

 

女性がつぶやいた言葉は、風に乗って、時に従ってかき消えていった。

 

 

「リンク……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャプテン・ファルコンの怒りのままに粉々にされた水晶壁は見るも無惨な姿となり、辺りに散らばった。その代償に破片が辺りに飛び散り、リュウ達3人に浅い傷をつけた。

 

 

「何が悲しくてこんなどうでもいいところで怪我をしなくてはならない?」

 

「スイマセンデシタ……」

 

 

汚物を見るような目でこちらを見下ろすジャンヌ。下手人は自らの痛む右手を押さえながら正座を続けている。

 

 

「本気で何をしているんだ……」

 

「自分も怪我するまで気づかなかったの?」

 

「だっせー」

 

「聞こえてるぞー!? あとリドリーはもっと隠す努力はしようぜ!?」

 

 

ガヤと化した3人の茶々に一言。

確かに馬鹿なことしたとは思う。

 

 

しかし元はと言えば、あの時、自分達を檻の中の獣呼ばわりしてきたリドリーが悪い。スマッシュブラザーズに参戦できてなお、その残忍な性格は変わらないのだ。

 

 

「だが、ふざけている状況ではないのでここまでにするか。」

 

「マジで!? 助かるぜ、ジャンヌ!」

 

「コロッと態度変わったよ」

 

 

呆れ顔で話を切ったジャンヌ。下手人は簡単に砕けた態度になるが、確かに悠長にしていられないところ。

 

 

「今後のことについてだが、下を目指していく過程でナナや他の者達、そして大乱闘の世界に繋がる手がかりを見つける、それでいいか?」

 

「一番最後しか興味ねえな。というか、テメェらはそれについてなんも知らね〜んだな?」

 

「多分、みんなが同じ状況だと思うぜ? 大乱闘の世界に行ったと思ったら、いつの間にかここにいた。違う?」

 

 

同じ状況。つまりは特に後につながるような情報はないということだ。

 

 

「じゃあ尋ね損かよ、無駄な時間くったぜ」

 

「え、ちょっとどこ行くの?」

 

「放っておけ、この手の者と無理に共に行こうとすると逆に不調和を生むぞ」

 

 

1人勝手に行こうとするリドリーを止めない。もとより助力を乞う者を見殺しにするような性格なのだ。このかたちが一番精神的にダメージがない。

 

 

「さて、俺たちも行くか」

 

 

リドリーを見送ると、他も立ち上がる。

リドリーとは別の道でも進むべきだろうが、生憎来た道と知らない道しかなく、後を追うように進むしかない。

歩き出したところ、後尾でポポがジャンヌを呼び止めた。

 

 

「ジャンヌ、ジャンヌ」

 

「どうした?」

 

「えっと…… あのさ…… ベヨネッタのこと、心配してるからきたんだよね?」

 

「まあ、突き詰めればそうなるな」

 

「ベヨネッタ、すっごく強そうなのに……」

 

「強そうは関係ないんだ。もちろん実際に実力があるかないかも関係ない。誰かを心配するという気持ちにはさして影響はないと私は思う。」

 

「そういうものかなぁ……」

 

 

あまり納得できていない様子。それはポポとナナの実力が均衡しているからだろうか。事情を知らないジャンヌにはわからない。ため息を吐きつつも言葉を発した。

 

 

「目の前で知人が危険な目に合っていたら、それが誰であろうと危ないと告げるだろう?」

 

「あー…… あ!」

 

 

ようやく気づいた。

ナナの言いたかったことが。

ようやく気づいた。

自分の言いたかったことが。

 

 

「おーい! 2人とも、なんで止まってるんだー!?」

 

「いまいくー!」

 

 

2人の後を駆け出した。

分厚い手ぶくろに覆われた右手に力がこもる。

はやく会いたい。その気持ちで足を踏み出す。気分は今までて一番軽やかな歩行だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく暗闇の世界から抜け出し、光の元へ舞い戻ってきた。まるで気力を取られていたかのようにスマッシュブラザーズ達は崩れ落ちた。

 

 

「やっと外に出たぜ……」

 

「ああ…… 久しぶりの太陽が体に突き刺さるよ……」

 

「オーバーだなあ」

 

 

カンテラの火を消しながら、リンクは苦笑する。かつてはこうして異界の仲間たちとも合流していた。懐かしい感覚に陥り、他の仲間に無性に会いたくなった。あの食いしん坊の相棒は、今どうしているのだろうか。

 

 

「それはいいが、結局ここは……!?」

 

 

それに最初に気づいたのはシモンだった。

次にルカリオとガノンドロフ、最後に他の3人。

 

段差になっており、見下ろした先にある開けた場所。地形と水晶の塊に囲まれた内側に存在しているひび割れのような場所にある先の景色は大乱闘の世界。

 

しかし、そんなものは気づいていても気にする余裕はなかった。

 

何故ならその周りでは、数えきれないほどのボディ達が、液体の塊のような謎の生命体と戦っていたのだ。

 

 

異様でおかしな光景に頭の中が真っ白になって呆然とする。時が止まったような感覚があったのに、そこでは戦闘が進んでいた。

 

 

「ってか、アレリドリーか!?」

 

 

その中に本物の色を持つ宇宙海賊を目撃した。

あの生命体に近づかないように、ボディに囲まれて戦っている。

 

 

「……!」

 

 

そして、それを追って道から走ってきたあの片割れを見た時、ナナの心から一切の怯えが消えていた。

 

頭の中で終末の鐘が、鳴り響いたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バラバラだったのか……」

 

 

この体の本来の色が抜けた、無色の瞳は2人をずっと捉えていた。

 

 

「やっぱりそうだ、私達と同一。離れ離れでいるだけで上手な生き方ができない……」

 

 

今、違う世界にいるもう1人を思う。

ここにはいない、もう1人を。

 

 

「負け戦になりそうか……」

 

 

こっそりと見ていた少年は確信していた。

自分の敗北を。

 





○タイトル
ファイアーエムブレムifのテーマ曲。
歌詞の一部が章タイトルになってたり劇中でアクアが歌ってたりするので覚える気がなくとも意外と歌えるようになってる。
アーティストは蓮花氏であり、ゲームでもアクアとして歌っているが、歌の声を入れてるだけで、通常時の声優はLynn氏。
ストーリーを彷彿とさせる対比された歌詞が特徴。


○テトラ
ゼルダの伝説 風のタクトで登場するヒロイン。そしてゼルダ姫である。(突然の激しいネタバレ)
海賊船の船長でアネゴと慕われており、風タクの話はトゥーンリンクの妹が、彼女と間違えられて拐われたことから始まる。


○金髪の女性
一体何ルダ姫なんだ……


○謎の少年
まあ今章の敵枠なのですが、裏設定として彼のボディをアイスクライマーにする案がありました。語ってることといい、まあそういう敵だろうなと察していただければ嬉しい。ついでに最初の五話あたりを見直してから次回を読むとなお嬉しい。


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33話 めぐりあう二人

 

「──ッ! ──────ッ!!」

 

 

自分を引き止める声が、やたらと遠く感じる。

戦場に向かっていくポポを見た時、全ての感情が消えて足が勝手に動いていた。

 

自分1人だと火力が足りないとか、孤立していると狙われるとかは考えず。

もしくはポポの背後に凶刃が迫っていたとかでもない。

 

 

危なくなる前に助けたかった。

手遅れになる前に助けたかった。

助けが必要になる前に助けたかった。

一才の危険もないようにそばにいたかった。

一方的じゃなくて、一緒に。

 

リュウやキャプテン・ファルコン、知らない赤い服の女性にも、すでに戦闘しているリドリーにも目を向けず、ただ自分の半分に手を伸ばした。

 

 

「ポポーーー!!!」

 

 

 

 

ポポは、少しだけ遅れて気がついた。

決して強くはない腕力でボディ達を引かせ、まっすぐこちらへ駆けている姿を確認した。

 

 

「ナナっ!?」

 

 

こちらは驚きの方が勝っていた。

どうしてナナがこんなところに?

なんでルカリオやシモン達がいるのだろう?

なんで懐かしいリンクやガノンドロフがいるのだろう?

 

驚きばかりで頭の中はぐちゃぐちゃのままだ。だからこそ喧嘩して仲直りもしていない身で、ナナに応え、走って手を伸ばすことができたのだ。

 

 

手袋ごしにいつも感じる力強さ。左手どうしが触れて身を寄せ合おうとした時、白き流星群が2人の身を打ち、間を穿った。まるで感動の再会などさせないと語るように。

 

 

「わっ!?」

「きゃっ!?」

 

「っ! 今のは……!?」

 

 

アイスクライマーもまた、大乱闘の世界で長く戦ってきた者。自分へのダメージを認識した瞬間、無意識に後ろへ跳んでいた。その分、二人の距離は遠くなってしまったが。

ナナの後を追ってきたリンク達と、ポポ達が攻撃が飛んできた方向へ視線を向ける。

あの生命体と戦っているボディの他に、こちらを標的にして戦闘態勢を取っているボディ達が大勢いる。それらが右に左に動き、道を開く。まるで主人を知らしめるかのように。

 

 

「黒いピット……? ボディか?」

 

 

見覚えのある黒い天衣を纏う天使。

ブラックピットを彷彿とさせるが、それとも違うと気づいたのは黒の服に混じる紫色だった。

しかし、違和感が拭えず、断定ができなかった。なぜなら通信装置となるはずの頭の月桂樹がなかったから。そして、

 

 

「否、ボディと同質なのは私の肉体に過ぎない。かつてキーラがボディとスピリットにしたものと原理的には同じもの。」

 

「何者だ」

 

「私はチハク。愚兄と共に幸福を探し求める者」

 

 

開いた目には、澄んだ空のような青も魔の潜む黄昏のような赤もなかったから。

何もない無色。あえていうならば何にも染まらぬ高潔な白がそこにはあった。

 

 

「スピリットと同じ…… つまりボディを肉体として使っているということか!」

 

『そして、大乱闘の世界の外にいる以上、フィギュア化されないためボディから追い出す方法がない、か』

 

「肯定、私達はこれだけで問題ないのだが…… 他はそうでもないようだ。だからこそ私はここに立っている」

 

 

これだけ? だからこそ?

訳がわからない。わかったことと言えば、チハクがボディに宿っていること。兄がいること。そしておそらく彼が原因で自分達はここに迷い込むことになったこと。

 

 

「我は大乱闘の世界に行かなければならん。貴様を倒してでもな」

 

「倒す必要はない。あのゲートをくぐれば…… 私の率いるボディ達とあの謎の存在をやり過ごせればの話だが」

 

 

挑発や脅しにも臆さず、冷淡な態度であり続けるチハクのそれは傲慢か開き直りか。

チハクの会話が終わるのを待っていたかのようにボディ達が襲いかかる。物量で攻めてくる敵達を相手しながら二つの団体が合流するのは困難だ。更にチハクが間に入り、完全に分断されてしまう。

 

 

「くそっ、近づけない!!」

 

「ナナっ……!」

 

 

四方から攻めてくるボディを相手にキャプテン・ファルコンは足で蹴散らす。撃破よりは敵を除けることを考えているのだが、それでも物量差は大きく、チハクの元へ届かない。しかし、そのはじめの一矢は既に放たれていたのだ。

 

 

「何チンタラしてんだァ!?」

 

「「リドリー!?」」

 

「……! ……っ!!」

 

 

離れでひとり戦っていたはずのリドリーが、ボディの中で異彩を放つチハクをターゲットに背後からの奇襲をかけたのだ。その凶爪はなんとか神弓で防ぐが、長い尾が片足にからみ動きを封じる。それでもと()()()()()を掴んで止め、片足を引っ張ってすっ転ばせる。

 

 

「ああ? 思ったより全然弱えぞ?」

 

「当然だ、あの愚兄の弟……だからな!」

 

 

抑え込む形になったリドリーに、紫のブラスターと鰐の巨体が襲う。チハクの聞こえない指示を受けたのか、リドリーのみを狙う。転がるように立ち上がったチハクは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()動かした。

 

 

追い落とし(おいおとし)

 

 

リドリーを囲うように白い弾丸が、壁のように設置された。2人のボディが襲ってくる状況で、チハクの攻撃の対処をする余裕はなかった。

 

 

「チッ……!」

 

 

その頃、ナナ達もまた物量で迫るボディの対処で武器を振り回していた。

 

 

「あのピットそっくりなのは誰なんだ!」

 

「まわりの敵と同じものに、精神だけで乗っ取っているのだろう!」

 

「ぐぅ…… 虫唾が走る!!」

 

 

リンクが聖剣を振るい、シモンが聖水を投げている傍らで、力任せに時の勇者の刃を砕き、数人まとめて蹴っ飛ばしているのはガノンドロフだ。

 

かつての戦いで、あちらの世界にいたという理由だけで意思を奪われ、闇の尖兵として戦うことを強いられた屈辱。タブーにいいように扱われていた時よりもよほど屈辱である。

 

だからこそ、かつての自身と同じながらも、自分の意思でボディ宿った精神を、存在ごと許せない。なんの成り行きか、リンク(宿敵)ナナ(足手まとい)と行動を共にした末がコレなら尚更である。

 

 

「ぐっ……」

 

 

こっそりと、しかし確実に奥歯を噛み締めた。

そのまま他と足並み揃えていても、解決にならなそうだ。

手頃なところにいたオリマーのボディをチハクに向かって放り投げる。こちらに投げられたボディにチハクは気づいて避けるが、そこには既に距離を詰めてくるガノンドロフがいた。

 

 

「……!(ボディに体を隠して……!)」

 

 

その意図に気づいたチハクは、再び右手の二本指で円を描く。

 

 

打つかり(ぶつかり)

 

「ぐっ」

 

 

進路上に弾幕の壁が現れ、ガノンドロフの道を塞ぐ。スピードを殺さずを得ず、それでも完全には間に合わない。掠ったように体が痛む。

ガノンドロフだけではなく、リドリーとも距離を取ったチハクは更にまた円を書く。

 

 

(かかり)!」

 

「「ぐうう……!」」

 

 

無作為に落ちる白き弾丸に対して、彼らは堪えるしかない。足は遅めで図体は大きい彼らにランダムの攻撃を防ぐ方法はないのだ。

 

 

「だか…… コレでわかったぜェ? テメエ、丸描かなきゃ、あの白い飛び道具は使えねえだろ?」

 

「……!」

 

 

そうだ。

チハクはボディの使役はともかく、他の技を使う時は()()()()()()()()()()()()。まるでお祓いをするために十字を切る。そのような予備動作があの動きなのだろう。リドリーが右腕を抑えた先程の行動は図らずとも最善だったのだ。

 

 

「はあ…… 分断したままなら勝機はあると思ったのだが…… 半身では敵わないか」

 

「1人で突っ走るな、ガノンドロフ!」

 

 

そんなネタバレをしている中で、リンクを含めたナナ達が合流する。

怯えを隠しながら構えるナナ。

自然体の時点で隙のないルカリオ。

鞭をしならせるシモン。

ギラギラと血走った目で見つめるキングクルール。

 

 

「倒して、絶対にポポと合流するんだから……!」

 

「それは困る。薄い勝機が完全になくなるからな」

 

「え?」

 

 

虚を突かれる。

どうしてアイスクライマーをそこまで評価するのか、本人ですら心当たりがなかったからだ。

 

 

「わかるのだ。私はおまえと同じ…… 片方だけでは上手く生きられない。一緒でなくては…… ()()()()()()()()()()()()()()

 

「……」

 

 

チハクの言っていることは難解だった。

でも共感できるからこそ、この言葉に引き込まれていたのだ。

 

 

「だからこそ、おまえ達は合流させない。とはいえ、あの数のボディをやり過ごしたにせよ倒したにせよ、向こうに加勢せねばいずれ…… そうだな、おまえ達の相手はあれにしてもらおう」

 

「あれ……?」

 

 

そういうと、チハクはガノンドロフの投げたオリマーのボディを後ろへ放った。

その先には。その、先には。

 

 

「え……?」

 

 

液体の塊のような謎の生命体。

投げ込まれたボディが、中の立方体に取り込まれ、液体が金色を手に入れる。それはあっという間に手足と体のような硬さを手に入れた。埋まることのない節穴がやたらと印象に残った。

 

 

「なぜ、オリマーのボディに執着するのかは不明。だが、()()()()()()()()()()()。」

 

 

静かに離れていくチハクを止めることはできなかった。それよりもあの生命体の方がよっぽど危険なのだ。

チハクは気づく。ボディ達がスマッシュブラザーズの背後を取ろうとしている。ナナ達はガノンドロフを追って、ボディを振り切ってきたのだなと軽く考えた。

 

 

「愚兄が、半身が受けたものと同じ、()()()()というものか」

 

 

一緒にいれば。ずっと一緒にいられれば。

離れたらだめだ。もう会えない。

そう願って叶えられない悲劇を、()()()()()()()()()()()()

 





○タイトル
キングダムハーツ2FMから登場するキーブレード。DaysやRecodedのHD版にも登場。
ファイナルミックスで追加されたロクサス戦に勝利で入手。これを装備したままフォームチェンジをすることで必ずアンチフォームになれる。とはいえ、その効果で折角のアビリティ枠が潰されているので縛りプレイ以外ではファイナルフォーム解禁のために一回使用されるぐらいでは? 私はそうでした。


○チハク
使用しているボディは6Pカラーの堕天使風黒色ピット。
ビジュアル的な変更としては、頭の月桂樹を被っていないこと。目が白色であること。後、完全に書き忘れてましたが一章のナカツナは薄い黄色の目です。
あまり多くは語らないようで、一人称は私。愚兄という発言から弟であることがわかっている。右手で円を描くことで技を繰り出す。技名の由来は囲碁用語。後、完全に書き忘れてましたが一章のナカツナの技名はかっこいい熟語から適当につけました。


○愚兄
弟がいる今作のオリキャラ、いませんでしたか?


○アメニュウドウ操ってる?
いいえ、オリマーに執着を見せる性質を利用してナナ達の相手をさせていただけです。三つ巴の形が一番正しい。


○穴
アメニュウドウの穴は心の傷だと言われています。
オリマーへの執着。奴の分身かと思われるフィールドの原生生物。ステージ名の哀しき獣の塔。なんとなく理由が察されますね。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「よろしく! 俺はソラ!」
「ああ。俺はジョーカーと呼ばれてるが… 本当の名前は雨宮蓮だ。」
「アマミヤ レン… 面白い名前だな!」
「いや、そうでもないだろ…?」


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34話 ただひとり 君のためなら

 

「……! あれは……!!」

 

「ナナ……!」

 

 

戦いながら見ていた。

あの生命体が、黄金の色を手に入れる様を。

目にも止まらぬ速度で、鋭利な器官で目下の大地を刺し続ける姿を。

 

はやく行かねばと気持ちを焦らせ、意識せず視界が狭まる。周りには敵ばかりだというのに。

 

 

「あわっ!?」

 

「くっ」

 

「よそ見している余裕はない!」

 

 

加勢に加わろうとするジャンヌの前に剣士が立ち塞がり、咄嗟に殴るも足止めの役割はしっかりとこなされた。

分厚い防寒着を貫通するほどに鋭い、竜の力に足を貫かれ、ナナも今はこんな目に合っているのかと思うと足の動きは止まらない。リュウの少し遠回りな叱咤も耳に入らなかった。

 

 

「退いてよ!」

 

「退かない」

 

 

焦りのあまり、心なきボディ達に言い放った言葉。期待していなかった返事が返ってきたことに驚いた。けれどもそれはここにいた者の言葉ではなく。

 

 

「貴様!」

 

撃っ手返し(うってがえし)

 

 

ジャンヌが放った弾丸はチハクの描いた円に跳ね返される。まさかの反射技でジャンヌ、ポポ両名に弾が当たった。

 

 

「ぐうう…… 無事か、ポポ!」

 

「いっ……!」

 

 

立ち上がろうとするも、なかなか立てないポポの目の前で円を描いた。

 

 

(かかり)

 

「むう!!」

 

 

ポポを仕留めようと、大量の弾幕を降らせようとする中、キャプテン・ファルコンがポポを庇って退避させた。弾幕は大地以外を穿つことはなかったようだ。

 

 

「不思議な術を使う……」

 

「魔法みたいなものか? それにしては彩りのない」

 

「好き勝手に言っていい相手は愚兄だけ…… 手筋(てすじ)!」

 

「ええ!? お兄ちゃんだったら酷く言ってもいいの!?」

 

「今はそこ、いいからな!!」

 

 

円を描いたチハクは、再び弾幕を配置する。これでは(かかり)の技とほとんど変わらない。

 

 

「まっすぐ飛んでくるのがわかっていれば当たらないぜ!」

 

「ならまっすぐじゃなかったら?」

 

「のお!?」

 

 

しかし、狙いを定めて飛ばされた弾丸は横へ逸れたキャプテン・ファルコンを追って急カーブしてきたのだ。思わずポポを抱えたまま逃げるが、ロイのボディの一閃で足を止めてしまい、背後からぶつけられた。

 

 

「気をつけろ! ボディはまだ健在だ!」

 

 

チハクを構う暇などないと、リュウは猿と雉のボディに昇竜拳を食らわせ、倒している。ボディだって永遠に湧き続けるわけではない。キーラもダーズももういないから、必ずどこかに終わりがくる。倒し続ければ絶対いつか。

 

 

「よそ見はお前もだ、手筋(てすじ)!」

 

 

再びあの誘導性のある弾を放つ技だ。

空中に設置された弾は、軽く40は超えておりこの場にいる4人を捉え切っている。降り注ぐと同時に回避に動いたスマッシュブラザーズを襲う。迫ってくる弾丸をかわし、そこにいたメタナイトのボディに2発拳を叩き込み、それでも追ってくる弾をギリギリのタイミングでかわすリュウ。再び曲がることができなかった弾幕は地面に墜ちていった。

 

 

「しつこいと嫌われちゃうぜ!!」

 

 

顔面にパンチを叩き込み、怯んだボディを回し蹴り。弾にぶつけて相殺させる。

 

 

「う〜! わっ、へぶっ」

 

「しっかりしろ!」

 

「うー! んもう!! 邪魔するなー!!」

 

 

近くにいたボディに大振りを当てるが、弾の方にぶつかり、痛みに耐えてる間に押し倒されてしまう。片足で踏んづけてきたボディはジャンヌが銃撃でどかしてくれた。すぐに立ち上がってチハクに木槌を振り上げた。その一撃は肉体のおまけの神器で止められてしまう。

 

 

「邪魔? 警戒? 当然する。おまえが一番未知数でどう転ぶかわからない。」

 

「なん、でっ……!?」

 

 

言ってしまえば、自分達がスマッシュブラザーズの中で強くない方だとは理解している。元々戦っていた訳でもない。コンビネーションで全てカバーしてるだけ。

 

なのに目の前の敵はそんな自分達を一番警戒している。

 

久遠の求道家 リュウより、

正義のレーサー キャプテン・ファルコンより、

波導を感じるポケモン ルカリオより、

吸血鬼殺しの血脈 シモンより、

クレムリン軍団の頭 キングクルールより、

宇宙海賊のボス リドリーより、

もっと言えばベヨネッタの友人や元スマッシュブラザーズよりも。

 

自分とナナが警戒される理由が思いつかなかったのだ。

この敵に、ここまでさせる自分はなんなんだ。

 

 

「おりゃああ!」

 

「っ! (かかり)!!」

 

 

自分ごとハンマーを回転させ、流星群のような弾幕を降らせる。

技と技がぶつかる。競り勝ったのはポポだ。弾をハンマーの回転で弾き返していたポポは、そのまま距離を詰めて脳天を揺らす。常にボディ達の後ろにいたチハクにはじめて直接ダメージを与えた。

 

 

「くっ」

 

 

咄嗟に足を蹴り出すが、揺れた視界の中では狙いも定まらず見当違いな場所に出してしまう。

その傍では、断末魔もなく溶けていったボディだったものが転がっている。

 

 

「よし、こちらはあらかた片付いた! 助っ人行くぞー!!」

 

「キャプテン・ファルコン!!」

 

「面倒な……」

 

 

ここでキャプテン・ファルコン、ポポに加勢。冷静さを保っているのか表情筋が動かないのか、チハクには動揺すら感じられない。同じ顔のピットとの対比を嫌でもしてしまう。

 

 

「一緒に、お願い!」

 

「おう!!」

 

 

構えた木槌を下げず、少しだけ遅れてチハクとの距離を詰めていく。

キャプテン・ファルコンの回し蹴りを受け流そうとしたチハクだが、力の差もあって、捌ききれずに頬にかすり傷を負った。続けてポポの振り下ろされるハンマーに対して両腕を組んで耐えきった。威力を殺しきれず、地面には靴の跡が残ったが。

 

 

「まだだ!」

 

「……ッ!!」

 

 

更にジャンヌからの弾丸の雨、リュウの灼熱波動拳。後ろに引いてやり過ごそうとするも、回避に回っているうちにポポとキャプテン・ファルコンに近接戦闘を仕掛けられる。

 

 

「そうだ、こうやって4人全員でじゅんばんに叩いていけば!」

 

 

ポポが、いや4人全員が気づいた。

こうやって相手に回避させ続ければいずれ体力の方が尽きる。それだけでなく、空中に円を描く予備動作をさせる暇を与えない。ピットのボディを使っているからか、神器はその左手に持っているが、こだわりなのか単純にその選択肢を取らないのか防御程度にしか使用してこない。これならば、

 

 

「……こちらだって弱いなりに勝つ手段を常に模索している。たとえ1割にすら満たない確率でも」

 

「ふえ?」

 

「逃げたぞ!」

 

 

そう考えたポポの心境を見抜いたように、言い切ったチハクは動揺の中から逃げ出した。追おうとした4人を(かかり)で足止め。

それでも逃すかと後を追うが、その先はどうなっているかを知った時には遅かった。

 

 

「あの生物が……ッ!!」

 

 

あの金色の生命体が、いる。

どこかに、あんな存在と戦いたくない、認識したくもないという心があって、無理やりそれを押し込んだ。

偶然出会えた友人の顔を見て、あの生物に目を通して。攻撃の姿勢に入っていることに気づいた。注意を促そうとするが、攻撃の先は仲間たちではなかった。

 

 

「……チッ!」

 

「チハク……!?」

 

 

そう、1番早く寄ってきたチハクを敵と認定し、突き刺しの攻撃をしていたのだ。

何発か当たるのを承知の上で致命的な場所への刺突は避けている。

 

 

「仲間じゃなかったのか?」

 

「まさか。原住民だ。何故か、あるボディに執着する。そしてボディを取り込み、大切に保管するために本体のような箇所に入れようとするが… 周りの液体だったものに負けるのか保管する前にボディが分解される」

 

「それでボディを追っていたのか」

 

「1人で寂しかったからって……? なんかやるせないな」

 

「ああ。寂しさは…… 心を狂わせる。」

 

 

悲しみの先に幸福がある。寂しさの裏に楽しさがある。

だがそんなの、悲しみを感じている者にとっては節穴に風を通すようなものなのだ。あの生命体も寂しかった。その寂しさは僅かな心を狂わせ見境を無くした。

 

 

「……うん、寂しいのは嫌だよね」

 

 

ポポが歩く。周りの時が止まっているかのように、動くなと上位の存在に命じられているかのように、誰もこの空気を変えられなかった。

 

ポポの向かう先はナナだった。

ナナの向かう先もポポだった。

 





○タイトル
テイルズオブエクシリア2のラスボス戦で流れる一曲。
主題歌、Song 4 uのアレンジであり、題名も歌詞から取っている。
君のためなら。少女のために世界を壊す覚悟はあるか。
この後、主人公とプレイヤーは最後にして最大の選択を迫られることになる。


○前回の補足し忘れ
前回の補足し忘れ。というか本編でチハクが言った。
簡単に言えば、アメニュウドウがボディを取り込むと、本体に格納される前にボディの方が耐えられずに形が崩れます。
ですが前回チハクは直接オリマーボディを投げ込むことで形が崩れる前に本体に格納させました。これによりアメニュウドウがオリマー(のボディ)を守るために戦闘態勢に移りました。次回、ファイター達VSアメニュウドウVSチハク。やっべ、チハクくん勝てる気しない。



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35話 手はつなぐことに意味があるんだから

 

「あっ…… えっと……」

 

「…………」

 

 

上手い言葉が出て来ず、意味のない音を繰り返し話している。

片割れに対して、ここまでどうしたらいいのかわからなかったことはない。

ナナは歩み寄ることはできてもそれ以上のことができなかった。また置いていかれるのではないかと。

 

 

一方のポポも、正面からナナを見続けることが出来ず。目を合わせようと、視線を正面を向けたらまたどこか別の方向へ流れていくを繰り返している。

片割れに向き合う勇気が後一つ足りなかったのだ。また置いていってしまうのではないかと。

 

 

「…………(合流、させない)」

 

 

チハクは手に持つ神弓の弦を引き絞った。

確かに今までこの神器を防御以外に使った覚えはない。だが、攻撃に使えない訳ではない。流石にこの体の本当の持ち主と比べれば、その腕は圧倒的に劣るだろうが。

しかしそれでも、寧ろこの状況ならば予備動作が必要な元の力よりも有効であろう。今手を繋ごうとしている2人を引き剥がすよりは。

少し歩みの遅い、ナナの方に狙いを定める。

 

 

「邪魔者は引っ込め……!?」

「……くっ……!」

 

 

その時だ。

キャプテン・ファルコンが不死鳥を拳に宿して攻撃してきたその時だ。2人の再会の邪魔はさせない。そう思ってのタックルは驚愕の第三者に受け止められたのだ。

 

 

「ばばばば!?」

「おまえ……!!」

 

『……!? チハクごとキャプテン・ファルコンを!? ……いや、あいつはボディと戦闘していたか!』

 

 

金色の謎の生命体が、吐き出した金の液体。

敵対する2人に向けられたそれは、あっという間に立方体の核を作り出し、周囲に放電を開始した。それに巻き込まれるキャプテン・ファルコンとチハク。

 

ルカリオが共謀していると考えていた、生命体によるチハクへの攻撃。だが、少し冷静になってみれば、チハク陣営のボディと戦っているのだ。味方なはずがない。

 

その証拠に電撃をくらったチハクの右手が弦から離れ、アイスクライマーの間にまっすぐと。一本が。

 

 

「「あぶないっ!!」」

 

 

それは同時だった。

ポポが動いたのもナナが動いたのも。

お互い地面に伏せあって、お互いを引っ張って守ろうとして。

予想外の速度で地面に接した2人はお互いにぐえ、と間抜けな声を同時に出した。

 

 

「お、おい!」

 

「無事か!」

 

 

リンクが、リュウが駆け寄って無事を確認しようとすると、2人は同時に言葉を発していた。

 

 

「「大丈夫大丈夫、へいきー! ……あれ?」」

 

 

いつの間にか無くなってた。

置いていかれる恐怖も、置いていく不安も。

2人はただ、お互いを守りたかった。

ポポは危険な場所でナナが疲れて倒れるくらいなら安全な場所で休んで欲しかった。

ナナは知らない何処かでポポが傷つくくらいならずっと側にいて欲しかった。

 

それだけだったのに。

いつの間にか自分の意見を通すことにしか目がいかなかった。

 

そんなに先に行きたいなら、ゆっくり進むこともできたのに。

そんなに疲れているのなら、ペースを下げることもできたのに。

 

 

大きい喧嘩をした二つの手はようやく重なった。

 

 

あの生命体が吐き出した立方体型の水晶。踏み潰そうとするそれを手を離して跳んでかわす。

でも、繋がっている。登山用のロープを握ったポポは、空中で振り子のように振り下ろす。遠心力も加わったナナの一槌は、中の核ごと水晶を叩き割っていた。

 

 

「アイコンタクトもなかった、あの2人、機能すればここまで変わるのか……」

 

 

普段を知らないジャンヌが驚愕の表情を浮かべる。

それもそうだ。彼らは非戦闘員でありながらもスマッシュブラザーズに名を連ねる者たち。

戦闘を普段していないなら、その経験の無さを埋める何かがあるのだ。

アイスクライマーの場合は、それが比翼連理のコンビネーションだった。

 

 

核の壊された水晶はドロドロとした金色の液体に姿を変える。

 

 

「アレ、ヤツの体と同じ…… なるほどなぁ?」

 

 

何かを察したリドリーはその液体を尾で薙ぎ払ってみた。吹き飛ばされた液体は飛び散るはずが空気中に解けて見えなくなってしまった。

普通の液体には起こらない現象。便宜上液体と認識しているが、実際は液体ですらないのだろう。

 

 

「……! 奴が生み出す攻撃を砕け! 体の一部とも言える液体を吹き飛ばせばあの生命体の方は……!」

 

「敵は1人じゃないんだが」

 

 

背後に回っていたチハクが超至近距離から白石を打つ。リドリーの行動を見ていたシモンが彼と同じ発想に行き着くも、不意打ちに吹き飛ばされ生命体の目の前へ投げ出される。

 

そう、これは単純な団体対個の戦いではない。

チハクと生命体とスマッシュブラザーズ。いつか行っていた三つ巴の戦いだった。

 

 

『シモン!』

 

「問題は……っない!!」

 

 

投げ出された自身の真上に、あの攻撃が襲いかかる。体を転がし、避けながら起き上がると、属性攻撃ともいうべき攻撃は、核を中心に辺りを炎上させていた。素直に近づけば丸焦げだろうが、鞭を持つシモンはその必要もなく、遠距離から核を貫いた。

 

 

「誰かがチハクを抑えれば動きやすいだろう、だが……」

 

 

少し遠くから状況を見ていたリュウは、辺りを見回す。あの白の名を冠しながら黒い羽衣を纏う姿は見当たらない。

当然だ。この場で1番不利なのはチハクなのだ。数もなければ、本人曰く質もない。その足りないものを持っているふたつの陣営を同時に敵に回しているのだから。

おそらく身を隠しながら先程のシモンのように不意打ちで攻撃するか、漁夫の利を狙っている。

 

見つからないものを探していても、あの生命体の対処により手こずるだけ。

そう考えたリュウは姿を見せた時に考えようとあの生命体本体に向かって、回し蹴りを撃った。それだけでも衝撃の影響か本体から液体がこぼれ落ちることがあるので無駄ではない。

 

 

「うらああああ!!」

 

 

泡のように丸く水で満たされた属性攻撃。

キングクルールが泳いで、上から下へのパンチを核に与える。もう一発と今度は左手で殴りかかったところ、核と水は元の姿を取り戻す。

 

 

「うぐお!? きたねー液体が」

(かかり)ッ!!」

 

「ぬおおお!?」

 

 

重力に従い、液体と共に地に降りたキングクルールに、チハクの弾幕が襲いかかる。隙を狙った問答無用の攻撃。

キングクルールにも、生命体の液体にも飛びかかる白石達はキングクルールの腹部により多くが跳ね返された。

 

 

「うぐぅ!」

 

「ちょこまかと動きおって!」

 

 

跳ね返った攻撃に耐えるチハクにガノンドロフが跳び蹴りをくらわせる。チハクのもう一つの弱点。飛び道具の反射。

連続攻撃が得意なアイスクライマーと同じように、リフレクトができるキングクルールもチハクにとっての強敵だった。

 

 

「逃さん!!」

 

「しつこい……!」

 

 

全速力で距離を取るチハクは矢を打ち返し、銃撃の中をかける。近距離でまともに戦っても勝てないという判断だろう。

背後からリンクが追ってきていてもなお、防御に専念するのがその証拠。逃げに集中されると面倒だ。しかし、チハクは気づかない。その逃げの通路は銃撃の持ち主ジャンヌによって誘導されていた。

 

 

「「あっ」」

 

「しまっ……!!」

 

 

たどり着いたのはあの生命体の正面。

アイスクライマーとルカリオとリュウと。

後から他の者たちも追ってくるだろう。

そしてチハクは孤立無援だった。

 

 

「……」

 

 

それでもチハクは即座に冷静さを取り戻していた。それが彼の本来の気質というべきか。

 

 

『三つを同時だと!?』

 

 

あの属性攻撃を同時に三つを生み出しても冷静だった。水が生まれ、電気が、炎が。

 

 

「空を……!」

 

「「ボク/わたしたちにまかせて!!」」

 

 

翼もなしに宙へ浮く、金の生命体。

その後を追ってアイスクライマーは連携ジャンプで飛び上がる。上には乗れても、すぐに叩き落とす力はなかった。

 

 

『避け……! ぐう……!』

 

 

頭上からの連続突きの攻撃を避けようとして、近くの火の属性攻撃に突っ込んでしまう。その組み合わせは広範囲で多数の敵を相手取るやり方。

 

 

「私も…… もう限界か……」

 

 

先の連続攻撃が自分にも突き刺さった。

もう他のメンバーもたどり着く。

空中の生命体をなんとか叩き落としたアイスクライマーを見て。

そして唐突に頭に鳴り響く世界一聞いた音を感じ取った。

 

 

「チハク……!」

 

「お互い様か…… やはり、()()では敵わない……」

 





○タイトル
テイルズオブグレイセスの主人公アスベルがラスボスに対して言った言葉。
ストーリーとしては、共存を願い手を取れと言うアスベルに、断ると言ったらとラスボスが言い出したところの台詞。どちらが先かなど関係ない、手は繋ぐことに意味があると。
正直にいってゲームのガチ名言でもトップクラスなのではと作者は考えている。リバースの演説とかも好きだけど


○アメニュウドウの倒し方
①体を叩いて液体を剥がしてそれも叩く
②しばらく攻撃すれば、属性攻撃をしてくる
③属性攻撃の核を壊すと液体になるからそれも叩く(①の手順も有効)
④小さくなってくからいずれ勝てるぞ!


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「ついに風花無双の生徒達の新ビジュアルが揃ったね……!」
「教会組の新ビジュアルはツィリル以外期待できないな。灰狼組が登場するかどうか……」
「ストーリーに関わってくれると面白いけど…… あとはスカウトシステムが顕在かどうかも気になるね」
「更なる地獄のために続投させないのでは」
「ありそうで困る……」


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36話 はじまりのうみ

 

「待て!!」

 

 

チハクを追ってきていたジャンヌが逃がさないと銃を向ける。撃たれた弾丸を上体を逸らして避けると再びぐるりと円を描いた。

しかし、それは誰かを傷つける攻撃を生み出さず、逆にチハクの姿を消してしまう。

 

 

「どこに……!」

 

「私は引かせてもらう。勝ち目はほぼない上に愚兄…… 半身に呼ばれた」

 

 

消えた姿は声の聞こえた方角、先程姿の見えた場所から全く違う方向に存在していた。

先程の行動はどうやらワープだったようなのだ。

 

 

「半身……!?」

「追おう、一緒に!!」

 

「待て、2人とも!」

 

 

生命体を空から叩き落としたアイスクライマーがそれを度外視にチハクの元へ走り出す。

リュウが生命体との戦いを優先するべきだと判断し止めようとするが、意思の揃ったふたりを誰が止められるものか。

 

それを見て、リンクとジャンヌが生命体との戦いに加わる。少し離れた位置にいたシモンとキャプテン・ファルコンも参戦し、6人がかりになる。

アイスクライマーの他にも、リドリーとガノンドロフ、キングクルールは全ての謎を握っているだろうチハクにロックオンしている。

その面子を見て、チハクはため息を吐いた。そこは自然の地形と水晶に囲まれた天然の要塞、つまり大乱闘の世界を繋ぐゲートの場所。

 

 

「私1人にこの面子なんて…… どう考えても無謀だ。私は先に渡らせてもらう」

 

「「逃げられると思ってるの!?」」

 

「逃げる。あの愚兄との合流ほど得意なことはない。世界がどれだけ隔たれていようと同じ。先に大乱闘の世界で…… 我が半身、()()()と共に待っている」

 

 

それだけを言い残し、チハクはゲートを潜っていった。待てという言葉は抑止力にならない。

バリケードになっている水晶を飛び越えるか破壊するかすれば、ゲートのある場所までたどり着ける。だが、

 

 

「アイスクライマーッ!! そっちに行ったぞ!!」

 

「「わわっ!?」」

 

 

逃げ勝ちなどさせてくれなかった。

あの生命体の空中からの突き刺し攻撃がアイスクライマー達を襲う。アイコンタクトもなしで同じ方向に避ける。

 

 

「しつけエんだよ!!」

 

「ホントそれなぁ? サムスもこんなしつけエ女なんだよ」

 

「貴様が言うか」

 

 

2人と同じように元凶を追っていたヴィランズは、2人の近くにいたために攻撃に巻き込まれる。

 

空を飛んでいる生命体に一つ砲弾を浴びせるキングクルールと、おまいう発言をしながら火の玉を浴びせるリドリー。

無視してゲートを通るという手はあっただろうが、こんなのがいたらとてもじゃないが通ることはできない。どこともわからない場所まで追ってこられたりしたらそちらの方が面倒だ。

 

狙うはあの謎の生命体の討伐もしくは撃退をした上での退却だ。

 

チームワークという一点は欠けているといってもよいメンバーだが、その思惑だけは一致した。

 

 

「どうする? 攻撃をどうにかするのと本体を叩くのに別れるか!?」

 

「いや、細かく分けてもおそらくリドリーやクルール達は聞かない! ならば自由にさせる!」

 

『私達が合わせた方が効率的か! ポポ! ナナ! お前たちも好きに動け!』

 

「え!?」

「いいの?」

 

 

キングクルールが水の属性攻撃を、リドリーやガノンドロフが本体を叩きに行く場面を目撃し、リンクがスマッシュブラザーズに意見を求める。

それに答えたのはシモン、そしてルカリオ。アイスクライマー2人にも自己判断を任せるが、指示があるものだと思っていた2人は驚いていた。

 

 

「大丈夫だって!! 君たちは2人で戦うべきだ!」

 

「ルフレみたいな軍師はいないからな。自分の力を1番出せる状況が1番いい。」

 

「……そうだな、下手に慣れないことはするものではない」

 

「キャプテン・ファルコン…… リュウ……」

「それに…… えっと…… 誰だっけ?」

 

「ジャンヌだ。セレ…… ベヨネッタの知人と言えばわかるか?」

 

「そういや、オレも知らなかったな!」

 

「「あはは……」」

 

「はあ……」

 

 

突然の笑いどころ。

でもそのおかげでより息が合うようになったような気がする。

ルフレのような策士タイプがいないなら、個々で戦った方がいいとの考えだ。強いて言えば、リドリーも似たようなことが出来るだろうが、任せようとは思えなかった。

 

 

「それでも! アイスクライマーに負けてられない! 合わせてみるぞ、リュウ、ジャンヌ!」

 

「ああ!!」

 

「まったく!」

 

 

別方向から回り込むアイスクライマーと離れ、キャプテン・ファルコンとリュウ、ジャンヌの3人は水晶の属性攻撃を同時に殴りつけてブッ飛ばす。

その先には手を出せなかった、高い位置で放電をする属性攻撃にぶち当て同時に溶かす。

 

 

『流石……!』

 

「ハマるだろ? この爽快感が大乱闘なんだぜ!」

 

「無駄口を叩いている暇があったら戦え!」

 

「ヒェー、こえーな、流石ベヨネッタの友達」

 

「少しは真面目に頼む。確実に倒せるものとは限らない」

 

 

金の液体に戻った二つの属性攻撃をはどうだんの連発で消したルカリオは即興の連携プレイに舌を巻く。茶化すキャプテン・ファルコンに対して、ジャンヌはあくまでストイックだった。

 

 

「クルール、本体の方おねがい!」

「また属性攻撃がくる!」

 

「おう! 珍しく役立つじゃねえか!」

 

 

ハンマーのトルネードで液体を吹き飛ばすアイスクライマーはキングクルールに本体を叩くよう提案。2人で更なる属性攻撃に備えることにした。

本体の方を見ると、ガノンドロフの魔力を込めた攻撃や、リドリーの刺突を受けて、だいぶ消耗しているように感じる。明らかに体が小さくなっているし、体を震わせた時に自身の体の一部分が剥がれているのを確認できる。

 

きっとあと少しだ。

 

 

「属性は、電撃!」

「届く!?」

 

「届かせる!!」

 

「「シモン!!」」

 

 

アイスクライマーの近くで生まれた電気の属性攻撃。高い場所に存在する核に攻撃できるか一瞬悩むが、その不安ごとシモンが核を打ち抜いてくれていた。放電する前に核を壊せばなんてことはない。再び液体を消しとばす。

 

他の二つはどうだ? 本体の方はどうだ?

炎の攻撃。既に炎上してる。ルカリオにはこうかばつぐんで、でもアイスクライマーにはどうにもならない。

もう一つ。同じく電気の属性攻撃。

ただし、もう放電しているのでシモンの鞭を打ったらこちらが痺れる。リンクが勇者の弓で狙っているので、これもまかせてしまおう。

 

そして、本体。小さくなるほど足は速くなる…… という訳ではないらしい。元々遅くもなかったが、速くもなかった。最初はあれほど巨大だったのに、今ではガノンドロフを少し越す程度の大きさしかなかった。

 

 

「(あれ? なんだか……)」

「(怖くもない……?)」

 

 

恐怖は未知から生まれる。

スマッシュブラザーズは謎の生命体と戦っている。チハクからも軽く話を聞いた。もう彼らの中で()()()()()()()になっていたのだ。

 

知っている、巨大ですらない、動きが速いわけでもない。そんな存在はもはやアイスクライマーの敵ではなかった!

 

 

「あの属性攻撃には核があってそれをたたけば、金色の水にもどる。」

「それ、本体にもあるよ。オリマーのボディを閉じ込めてた。」

 

 

リドリー、キングクルール、ガノンドロフが戦っている。体が大きい彼らでは、属性攻撃よりも突き刺し攻撃の方が厄介そうだ。突き刺し攻撃もかわしやすい誰かが行った方がいい。

冷たさすら感じられる金色の胴体。あのどこかに散々倒した核があるのを想像した。それを討ち破る。誰が?

 

 

「「よし、行こう!!」」

 

 

手を繋いで一緒に駆け出す。

今度は一緒に、ポポとナナが。

2人で守り、2人で戦う。お互いを守り、お互いと共に戦う。

2人で一緒に。さいしょからさいごまで。

 





○タイトル
ポケットモンスター アルファサファイアのパッケージポケモン、ゲンシカイオーガの持つ特性。
みずタイプの攻撃を強化するだけでなく、天候を変える特性技のほとんどを無効化する。更にほのおタイプの攻撃技を無効にする。まあ、わざわざゲンシカイオーガにほのお攻撃しないと思うけど。


○チハク 退却
いつ呼ばれたかの答えは前話の最後あたり。
透明文字というかチハクにしか聞こえてない。
ドラックするのです……


○新作ポケモンについて
いやあの、リーフィアについてはブイズだしで心配してないけど、既に二世代のでんきタイプがいるのマジ怖いんですけど!?
ランターン…… ランターンはいますよね……?
オープンワールドで海まで入れるのそんなないからめっちゃ不安……
ジュペッタ好きの友人はこんな思いをしてたんやなって……
ランターン…… ランターンをお願いします……

あ、ミライドンかっこいいよね。あんな感じのメカメカしいけどがっつりロボットじゃないの大好きです。


○ちょっとした謝罪
本当は今話で3章終わらせるつもりだったんですけど、死ぬほど忙しくて綺麗に終わらせることができませんでした……
ということなのでちょっと終わり方にデジャヴあるのは勘弁してください…… 来週こそ3章の最終回です……



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37話 おわりのだいち

 

「うおおおぉぉ!!」

 

 

ガノンドロフが、生命体の脇腹を殴る。

正面では攻撃がくる故に、背後や横に回って戦っているのだ。

リドリーは背後から頭部を狙い、鋭い凶刃を思わせる爪で切り刻んでいる。が、爪痕が残るのは一瞬で効果は薄い。

キングクルールは足元を狙っている。腕力に頼るよりは鉄球を撃ち込んで遠距離での戦いに重きを置いているようだ。

 

─なら、身軽な自分達の戦い方は。

 

 

「「正面!」」

 

 

それしかない。

1番攻撃が向かう場所ではあるが、そこで2人も動き回っていたら無視はできないだろう。

それに、他のメンバーが本体を叩きにくるのも遠い話ではないはず。

 

大乱闘とは違うこの世界。

氷塊を飛ばすような絡み手は使えず、ハンマー等の装備しか役立つものはない。

だが、2人には絆という武器にも防具にもなり得る最高のものがあるではないか!

 

 

「うららっ!!」

 

 

あの突き刺し攻撃も、冷静に見れば数を連発しているわけでもない。二手にわかれれば、その分攻撃はわかれるし、回数が少なければ攻撃を捌くことも十分可能だ。

 

 

「せえい!!」

 

 

攻撃後の隙を突いて、ナナがハンマーを振り回した。狙いは生命体ではなく、生命体によって空を切ったキングクルールの鉄球だ。

 

 

「ナイスホームラン!」

「やったぁ!って……ぷぷぷっ!」

 

 

打ち返された鉄球はそのまま敵の肉体にめり込む。

 

 

「「あはは……ははは!」」

 

 

ちょうど腹部にヘソのように叩き込まれ、2人の笑いを誘った。

笑いながら、ポポが自分の体につながっていた紐を引っ張ってナナを回収する。

 

 

「ちょっと遅れた……ってなんだあれは」

 

「ヘソになって……ハハハハハ!」

 

 

ここで属性攻撃の対処をしていた全員が合流する。

リンク、キャプテン・ファルコン、リュウ、ルカリオ、シモン、ジャンヌ。

 

キャプテン・ファルコンだけがその有り様に爆笑する。他はどうしてこうなったというインパクトの方が強そうだ。

 

 

「ブアッハッハッハッハ! すっげー様だ!!」

 

「クククッ、まあまあ面白かったぜ〜?」

 

「下品な奴らめ……」

 

 

これがヴィランズの反応だ。ガノンドロフだけは呆れている。

あの生命体もその空気を察していたのか、動かなかったが、ごとりと鉄球が落ちてからスイッチが入ったように飛び上がる。

 

 

「……! また飛ぶぞ!」

 

「同じことを繰り返しても!」

「無駄だよ……ッ!?」

 

 

リュウの言葉にいち早く反応する。

再び空中へ浮く敵に対して、アイスクライマーの2人は同じように連携ジャンプで上に乗ろうとする。

だが、それは届かなかった。敵はより高くに飛んでいたからだ。何も掴めなかったポポとナナはこの順番で落下する。

 

 

「んもー!!」

「変に学習しちゃって!!」

 

 

地面に転がったまま憤慨する2人。

あのまともな思考もなさそうな奴に対応されたのが悔しい。

 

 

「波動拳では届かない、ルカリオはどうだ?」

 

『できなくはないが』

 

 

アイスクライマーの連携ジャンプでも届かない場所まで届く攻撃はあまり多くない。

ここにいるメンバーならば、ジャンヌの銃撃、ルカリオのはどうだん、キングクルールの砲弾、リンクの弓矢とブーメラン程度か。

どことなく決定打に欠けている。

 

 

「ううん」

「届かないなら届かせる」

 

「「リンク! 力貸して!!」」

 

「わかった、どうすればって……!?」

 

 

上空からの連続突き刺し。

固まっていたらそこを一網打尽に狙われる。それは共通認識だった。

固まらず、攻撃されたところから散り散りになるように回避する。

 

 

「くっ、作戦どころじゃ「ごめーん!!」どおっ!?」

 

 

避けて仕返しにと弓を引き絞ったところ、背後からポポが飛び乗ってきた。両肩を踏み台にさらに高く。

 

 

「シモンもごめんね!「ぬうッ!?」」

 

 

ナナも同じように、2人の近くにいたシモンを踏み台にジャンプした。

 

 

「ポポ!!」

「うん!!」

 

 

2人は更に上を目指し、その片割れが高く跳ぶ。

ロープで繋がれた2人の頂点は、空を飛ぶ生命体を既に飛び越していた。

 

 

「せいっ!」

 

 

ポポは空中で体を動かし、繋がれたロープを敵に向かってグルリと回す。

勢いのままに敵の腹回りを一周して、ロープを掴む。ロープで輪っかをつくって、あの生命体を縛ったのだ。

 

 

「捕まえた!」

「リンク!」

 

「……! そういうことか!」

 

 

2人がやろうとしたことの全容をようやく把握したリンク。自分はただの踏み台ではない。

捕まえたといっても、今はぶらりと2人が浮いたままになっている状況。

クローショットをナナが持っているあたりのロープに狙いをつける。自分自身もその高みへ行くのだ。

しかし、上手くいってばかりではない。

チェーンが巻き上げられ、空中で、あの生命体の、パーツのない顔がこちらを向いて、両手部分からあの刺突が、

 

 

「行け!」

 

 

ジャンヌが撃ち続けた弾丸が、鋭い棘を砕いた。随分と脆くなってる。きっとあと少しだ。

ナナの元にたどり着いたリンクは目配せをして、アイアンブーツを装着する。

このブーツ、磁力を帯びており更に言えば非常に重い。履いてしまえば、巨大なゴロン族にも負けない重量が手に入る。

その重さに耐えられなくなったのか、生命体は落下していく。

 

 

「だあああああ!?」

 

 

態勢を持ち直すこともできず、まずはリンクから落ちていった。次にナナ、ポポ、そしてあの生命体。

 

 

「わっ!? 大丈夫!?」

 

「大丈夫、だ…… ここがチャンスだ!」

 

 

ポポ側のロープを退魔の剣が切る。

その後、杖代わりに立ち上がろうとしても高い場所からの着地の衝撃で足にダメージが残っているようだ。

アイアンブーツは直前に外していたが、それでもかなりのダメージが残っている。

 

 

「いや、よくやったぜ、 後は任せろ!」

 

「ブッ潰れろッ!!」

 

「わあ! 容赦なし!?」

 

 

キャプテン・ファルコンのファルコンパンチ、

リュウの真・昇龍拳、

ルカリオのはっけい。

 

ガノンドロフの魔神拳、

キングクルールのアッパーカット、

リドリーのデススタップ。

 

 

秩序に与する3人と混沌を振り撒く3人の技が、奇しくも同じタイミングで叩き込まれた。

 

 

「見つけた……!」

 

 

そうして一瞬崩れた体に残るあの立方体をシモンは見逃さなかった。

まっすぐ飛んでいった、ヴァンパイアキラーの先が、立方体内部にあった溶けかけのボディを貫いていった。

 

あの生命体は元の形にも戻れず、水滴のように崩れ去った。ナメクジが歩くように這って去っていったが。

 

 

「オッシャー!! 完・全・勝・利!」

 

「な〜んか、あの液体のままどっかいったのが気になるがよ、今のうちに戻っちまえば問題ねえ」

 

 

キャプテン・ファルコンが今までの様子とはかけ離れた出来事から、勝利を確信する。

リドリーはあくまでも冷静に確認したが、自分には関係ないと割り切った。もう用はないと、ゲートを阻む天然の壁を越えようとする。

 

 

「はやいなあ」

「もっと勝ちをよろこんだりしないの?」

 

「あ? 知らねーよ、どうでもいい」

 

 

大喧嘩の末に肝が据わったアイスクライマー2人が果敢にリドリーにかかってくる。そんなことより片割れに本気で嫌われる方が怖い。

 

 

『まったく…… 単独で行くのは危険だと言うのが……!?』

 

「これは……!?」

 

 

ルカリオが諌めようとするが、先に気づいた。ボディが、また迫ってきている。リュウもそんなルカリオの様子を不思議に思い、次に気がついた。

 

 

「クッソ! しつけーんだよ!!」

 

「まだボディが残ってたのか、おそらく外に……」

 

 

溢れんばかりのボディがここにきている。

怒りのツボを押されたキングクルール。

ジャンヌには出どころがわかった。おそらく即座に増援に来れないような場所にいたのだ。

意図せず、ボディ達を挟み撃ちにしたと思っていたが、また更に挟み撃ちにされていたらしい。

 

 

「……もう少しだけ、力を貸せ」

 

「言ったはずだ、貴様が力を貸せと」

 

 

宿敵同士の微妙な距離感。

光と影の世界の勇者と魔王は再び戦闘態勢に。

 

 

「負ける気は」

「しないよね!!」

 

「「ボク/わたしたち、アイスクライマーが相手だ!!!」」

 

 

もう離れたりしない。

2人で1人。

この戦いは終わるが、まだ戦う。

ずっと、一緒に。

さいしょから、さいごまで。





○タイトル
ポケットモンスターオメガルビーのパッケージポケモン、ゲンシグラードンの特性。ひでりと同じ効果に加え、天気替えの特性技はもちろん、みずタイプの攻撃技を無効にする。
グラードンに効果抜群の水攻撃を無効にする噛み合った特性。炎タイプの強力な物理技も覚えたので多分グラードンの全盛期はここ。
ちなみにゲンシカイキを奪われた現在の相方との差はランクマッチを見ればわかる。

○今章の裏話
打ち切りエンドみたいな引き方でしたが、別にまだ今作は続きますのでご安心を。ただ前2章の引き方が同じようなものだったので、新しさを取り入れてみただけです。
今章の舞台は本来大乱闘の世界そのものになる予定でしたが、全体的な偏りの問題でピクミン3のラスダンになりました。面子にヴィランが多いのはその影響です。
原作ラスボスと今章のボスを兼任するアメニュウドウでしたが、なぜか復活してるので、基本原作後の時系列を想定している今作にはありがたいです。
ちなみに次章こそDLCキャラが出るので石投げないでお願い


○アイアンブーツ
ゼルダの伝説 トワイライトプリンセスで登場するアイテム。
簡単に言えば重くて磁力に引っ張られる靴。
ゴロン族のころがるをどうにかするためのアイテムだが、相撲でせこい使い方したり、磁力に沿って重力に逆らって壁や天井を歩いたり、海や池の底を歩いたり割と多芸である。
この話ではクローショットでぶら下がったまま手も使わずに履いたり脱いだりしているが、原作でも同じことしてる。
そんなことより、アイテムとして持ち歩いている時は何故か重くならない方が気になる。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「(無言の腹パン)」
「待って待って待って、シェズの声の人は四作目の主人公だし、そのネタは五作目だし、そもそもゲーム原作じゃないネタは極力使わないようにしてるのにー!!」
「というわけで、風花雪月無双のラストトレーラーと体験版の感想を語る無双体験者のリンクと!」
「ヒーローズは実質無双、イレブンです。ちなみに上は世界一有名なTCG(自己判断)のネタだね。」
「つーわけで感想! これ体験版のボリュームじゃないよ!?」
「序章だけっていってもメインストーリーで4回ぐらい戦えたし、それが3ルートあるからね…… とんでもないよ」
「ベレトはペラペラ喋るし…… てか声低っ怖っ」
「これを読んでる人は灰色の悪魔を男性にしろって、某教師が言ってた」
「それ脅迫じゃね? やっぱシェズはアガルタ側の出自だったんだな」
「デザイン的に隠す気なかったけどね。ペトラが使いやすかったって言ってたよ」
「そして灰狼の学級も参戦決定!! 今度はメインストーリーに関われますように!」
「ふと思ったんだけどさ、これ灰色の悪魔がシェズとは違う陣営に雇われて何回も戦うなんてことないよね?」
「否定できないなぁ…… トレーラーじゃ3ルート分の映像使われてるだろうからストーリーの予想難しいよな」
「想像以上に学生時代短くてビックリ」
「ちなみに一番エモかったのは、本編だと『必然の出会い』なのに、無双だと『偶然の出会い』になってるところ」
「序盤も序盤だ!?」
「えーとほかに言うこと…… あ、そうそう、リュウ新作乳首」
「酷い格差だ……」


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Monster Hunter “Anecdote”
38話 狩猟解禁


 

こうやって見てるとさ。

彼らが持つ情報に差があるよね。

 

ロイ達がいた世界じゃ、最後の方にやっと謎の敵の正体が掴めたっていうのにさ、他の世界じゃそんなものはすぐにわかる情報なんだよね。

 

 

あの世界にナカツナがいたから?

違う違う、前の話を思い出してよ。

ご都合主義、だよ。前作で解明した謎が次回作で簡単に出てくる… 酷いネタバレだね。

あの世界の謎は、始めに君達の元へいくから謎足り得るのさ。だから謎になった。

 

 

すぐ近くにいる家族友人恋人師弟エトセトラの全ての人脈が偶然の産物でなかったとしたら?

 

これからの人生で、運が良かっただけだ、なんて言える? 人生何回やり直したら八十億分の一の確率をポンポン乗り越えられるんだよ。

 

それなら何事も伏線足り得るよね。

伏線であるなら、偶然こうなった訳でもないよね。

 

あー、僕たち自身非常に滑稽に思えてきたよ。

必死こいて未来を変えたところで、未来を変える運命だったってことだもん。あの三人のアレとか最早口癖じゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ユクモ村。

林業と温泉が有名な和の温泉街。

 

伐採された上質な木材は武器に、

そして狩りの前の景気付けに温泉に入浴するといった、ハンター達にとって必要なものが揃っている。

 

以前、村周辺に雷狼龍が出没したことをきっかけに村専属のハンターが増え、現在では他の村々との交流も盛んになっている。

 

災い転じて福となすというが、福の規模がいささか大きすぎやしないだろうか。

 

 

 

そのユクモ村にある公衆浴場。

山岳地帯の、村では一番標高の高い場所の名湯。

 

ハンター達の視線はたわわな胸部に向けられていた。タオルつきとはいえ、本日ほど混浴であることを歓喜したことはないだろう。

 

この近辺では見ない変わった服装。浮世離れした風格と恵まれた体格は何も知らない者達が見ればそれはそれは目を引く。

 

露天風呂に浸かる女性。壁にもたれていかにもリラックスをしてるといった姿勢の女性を囲むように男性ハンター達は位置をとっている。

 

 

「それで、確かに見たんですね? 謎の二つの影」

 

「は、はいっ! オレたちより小さい何かの影です!! 大型モンスターじゃないんですが気になって……!」

 

「ありがとうございます! 少しでも変わったことを見かければ教えてほしいんです!」

 

 

ニコッと笑う顔。一気に男性ハンター達が赤面したのは温泉でのぼせたからではないはず。

通りがかった女性ハンターは敵意と呆れを込めた目線で見ていた。

 

 

「ところで貴女はどちらから来たんですか……!?」

 

 

故郷を訪ねる問い。その答えに女性は緑色の長髪をいじりながら答えた。

 

 

「ひみつ、です♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「モグモグ」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「モグモグ」

 

「…………なんか喋りなさいよ」

 

「……そっちこそ」

 

「モグモグ」

 

 

清流の流れる岩場で2人…… いや、1人と2匹は待っていた。

 

 

「あの女神様、意気揚々と『情報を集めてきます!』なんていうからまかせちゃったけど、本当に大丈夫かしら?」

 

「……あの方は真面目にやる時は真面目にやる。それにオレたちが村の中入っても人に紛れられねえよ」

 

 

リュックサックから顔を出す赤い鳥は、肝心の実行人に不安を覚えるも、おそらく大丈夫だとしか返ってこなかった。それに、それしか方法がなかったことも。

 

 

気づいたら渓流と呼ばれるエリアにいた、ブラックピット、バンジョーとカズーイ、そしてパルテナ。

不可解な事件を解決するために、パルテナは近くにあったユクモという村で聞き込みを行なっているのだ。

人選に不安はあるが、ここは人が生きる世界。

 

黒い翼があるブラックピットや喋る動物であるバンジョー、カズーイと比べて、後光を隠せば人の見た目となるパルテナしか、一般人の前に顔を出せなかったのだ。

無用のトラブルを防ぐために待機しているしかない。

 

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「モグモグ」

 

「…………でも暇よ」

 

「……今回の尺、このまま黙ってるだけで終わらせる気か?」

 

「モグモグ」

 

「尺ってなによ」

 

「長さ」

 

「モグモグ……あっ」

 

「アンタは何してんのよ」

 

「何食ってたんだおまえは」

 

「持ってきてたハチミツ。もうなくなっちゃったけど」

 

「早すぎよ」

 

「まったく……」

 

「探しに行こうかな」

 

 

そう言ってバンジョーが立ち上がる。

こんな空気が綺麗な林があるのだから、好物のハチミツぐらい、どこかにあるはず。

 

 

「ちょっと、どこ行く気なの!? 待ちなさいよもう!」

 

「何やってんだアイツら」

 

 

大きく息を吐いた。

バンジョーを追って、カズーイもどこかに行ってしまうが、ブラックピットは我関せずである。放っておく。かまってやる義理はない。

 

そもそもなぜ留まる必要があるのだ。

ここは大乱闘の世界ではない、そう言ったのはパルテナだ。

そして女神の奇跡を使えば、大乱闘の世界に戻ることは簡単なのだ。即座に戻ろう、そうしよう。その考えに肝心のパルテナが頷かなかったのだ。

 

 

『すぐに戻ることは簡単です。大乱闘の外ですから私の力は制限されていませんから。』

 

『ですが、仮にここにいる私たち以外にもスマッシュブラザーズがやってきていた場合、置いてけぼりにしてしまいます。』

 

『それと、スマッシュブラザーズの誰とも関わりのないこの世界には何かある。この事件につながる何かが…… まずはそれを探さなければ』

 

 

とのことである。

パルテナはもしかしたら、先に大乱闘の世界に向かったピットを探しているのかもしれない。

案外何事もなく大乱闘の世界にたどり着けているかもしれない…… それは楽観的過ぎるだろうか。

 

 

「(そんなこと言われてもな……)」

 

 

仲間意識のないブラックピットには、ここに留まるのに乗り気ではなかった──流石にリドリーよりはあるとは思っているが。

誰かがこの状況を引き起こしたのならば、ここに留まっているのはその誰かの思う壺ではないだろうか。

 

とはいえ、パルテナの言葉にも一理はあるのだ。決して心の奥底に根づいた忠誠心ではない。はず。

 

 

「おい、あんま遠く行くな」

 

 

しばらく経っても戻ってくる様子のないアニマルコンビに、ブラックピットはほどほどの声で注意を促す。大声上げてまでの忠告はどこか癪だった。

 

これで体裁は整っただろう。

あとはあのコンビに何があろうが、自分の知ったことではない。

しかし、自分たちを残して自ら情報収集に向かっているパルテナが来たら?

 

 

『ええー、ブラピは彼らのお守りもできないのですか? 大乱闘ではあなたの方が先輩ですよ? ゲームとしても先輩ですし…… ああ、ごめんなさい、3歳とちょっとのブラピには難しかったですね。それにブラピの初登場は3DSですから私はともかくあなたは後輩でしたね、ごめんなさい。バンジョーとカズーイにあなたを任せるべきでした。お兄ちゃんお姉ちゃんの言うことを聞いていい子に留守番してるんだよって!』

 

 

こんなことの倍はあれこれ言われるに違いない。自分で想像しておいて、血管が浮き出るほどに怒りが込み上げてきた。

 

 

「……仕方ねえ」

 

 

本当に仕方なく、後を追うことに決めた。

小言を言われないため。それ以上の他意はない。

 

 

「遠く行ってねえといいんだが」

 

 

結論から言うと、水場からかなり遠い場所で見つかった。広さと高さを併せ持った場所で、そこの倒木からハチミツをいただいていたのだ。

 

 

「どこまで行ってんだおまえら」

 

「あたいに言わないでよ、バンジョーに言って」

 

「ふたりも食べる?」

 

「いらねえ」

 

 

しかし、ここはどういう世界なのだろう。

自然は多い。見たことのない動物はいるが、その程度の特徴ではわからない。

 

しかし、それはすぐにわかることになる。

 

 

ズシャアア!

 

「キャッ!」

 

「……なんだッ!?」

 

 

バンジョーの方を向いていたふたりはなにか巨大なものがこちらにくる音を聞いた。

振り向くとそこには巨大な熊のような生物。

青熊獣と呼ばれし大型モンスター。

なるほど、こういう生物がいるのか。通りで一般人をあまり見ないわけだ。

 

 

「ハッ、いいぜ、こちとら退屈していたところだ!」

 

 

血気盛んに神弓シルバーリップを構える。

敵は青熊獣 アオアシラ。

 

 

────狩猟、解禁。

 





○章タイトル
Anecdoteは逸話という意味。
個人的には外伝みたいな意味の単語をつけたかったのですが、一単語で統一したかったのでこうなりました。


○タイトル
モンスターハンターシリーズで新作発売という意味で使われるワード。
ちなみに狩猟解禁だけで検索してもモンハン関係の記事はすぐに出てこない。かなしい。


○ユクモ村
モンスターハンター ポータブル 3の拠点で、後のシリーズにもそこそこ登場。和を彷彿とさせる街並み。東の山岳地帯にあり、林業と温泉が有名。なぜここを登場させたかというと、作者がそこそこ知っているモンハンの拠点がここしかなかったからである。


○ブラピの想像
想像の中でのパルテナすらブラピ呼びしてるあたり、よくわかっている。


○バンジョーとカズーイ
バンジョーはとことんマイペース。カズーイは姉御肌で強気だけどそこそこ面倒見がいい性格。本作ではこのような設定で参ります。
しかし、カズーイ、叩きつけられたりしてるが、いいのだろうか。


○アオアシラ
大喰いの暴れ熊の異名を持つモンスター。戦い気より食い気で蜂蜜が好物。通常の種は序盤で戦うモンスターであり、作者はモンハンをP3とXXを少しだけ程度しか遊んでないが、それでも倒せるくらいには序盤のモンスターである。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「クラウド、セフィロス。シリーズならまだしもどうしてFF7は関連作品だけでダイレクト一本できるんだ」
「知らん」
「クックックッ…… イメチェンしたぞ…… クラウド……」
「風花無双直前にぶっ込んできたな……」
「ところでレッドはなぜここに?」
「そうそう、歴代映画の人気投票やってるんだ、なに投票するか迷ってるみんなは、ジラーチ、デオキシス、ディアパルのどれかに是非投票してくれ!」
「曲目当てだな」
「だって神曲ばっかだもん!」


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39話 クルクルやまのふもと

 

森の中では見ないような青い毛皮を持つモンスター。四つ足で動きながらも、前足には鋭い爪を持ち、後ろ足で立つことができている。

おそらくこの付近に天敵はいないのだろう。森の中に潜むのに向いていない体色をしてる……と言いたいところだが、いかにも捕食者でない丸々と太ったガチョウのような鳥を見ている。

あの鳥も一部青い羽毛が生えていた。自然に溶け込むといったことは、この世界では行われていないのかもしれない。

 

 

「だが好都合だ! コソコソ隠れられるのはオレ好みじゃねえ!」

 

「グワオオォォ!!

 

 

まずは様子見、ということで胴体の真ん中に矢を撃つ。2本突き刺さったアオアシラだが、怯まず引っ掻き攻撃を繰り出した。

 

 

「この程度……ッ!?」

 

 

神器を前に防御の体勢に移るも、それを上回る勢いで深めの傷痕と共にぶっ飛ばされた。

 

 

「くそっ、盾でもねえガードは余裕で貫通してきやがる」

 

 

防御に特化した盾のようなものを構えていれば違ったのだろうが、武器を構えただけでの防御姿勢では容易く突破されてしまう。

図体の大きさがそのままパワーにつながっているのか、それともこの世界の生物は攻撃特化の押せ押せタイプなのかもしれない。自然に溶け込む気がないのだろうか。ともかく敵の攻撃に関しては回避で対処したほうが良さそうだ。

 

 

「ちょっと! いつまでも食べてないでアンタも戦うのよ!」

 

「わかってるよ、あとちょっと……」

 

「あいつらは頼りにならねえな……」

 

 

カズーイの訴えも虚しく、バンジョーの手は止まらない。完全に食い気が勝っている。

一応行動を共にしているのだから、と頭数には入れていたのだが…… 省いた。というか、いてもいなくても変わらない気がする。

 

 

「ガアアァ!」

 

「このやろッ!?」

 

 

更に繰り返す引っ掻き攻撃に、くるりと回り込み、攻撃の終わった前足に豪腕デンショッカーで殴りかかる。が、思った以上に固く弾かれてしまった。胴体を射った時とは感触が違う。

 

 

「クソっ!」

 

 

尻餅をついたブラックピットは、できる限りダメージを減らそうと衛星ガーディアンズで盾を張る。そして、両手が空いたのでできるだけ素早く立ち上がる。これでなんとかという苦肉の策だったはずなのに。

 

 

「グキャオオオオ!」

 

「は? どこ行くつも」

 

 

しかし、今まで戦っていたブラックピットをまるで無視して、他所へ駆け出した。四足歩行に移行してまで。

突然の凶行に面食らったブラックピットはあまりにも呆けた声を出してしまった。

 

 

「ちょっと!? バンジョー!!」

 

「ん?」

 

「グキャオオオオ!!」

 

「わっ」

 

 

そう、アオアシラがブラックピットそっちのけで突進を仕掛けたのはバンジョーだったのだ。

 

 

「あばばばばばばば」

 

「しっかりなさい!」

 

 

両手で、軽々掴まれ、振り回されて。

カズーイがタマゴミサイルをぶつけるも、何かにとりつかれるように気にされてない。

そして、必要なくなったとばかりにバンジョーを投げ捨てた。

そして、代わるように倒木のハチミツを貪り食う。

 

 

「キュルアアア!」

 

「ってコイツ、バンジョーと同じく同類(食い気優先)かよ!?」

 

「しかもあたい完全に無視してるし!」

 

 

戦っていたはずのブラックピットも、色々ぶつけてきたカズーイもスルーして、ハチミツだけを食う。欲望の傾向はバンジョーにそっくりだ。暇つぶしには十分な敵かと思ったが、前言撤回。こんな奴に負けたくねえ。

 

 

「お前たち、なにをしている?」

 

「はあ? この残念なデカブツをどう、ぶっ飛ばしてやるか考えて…… っておまえか」

 

「おまえかとはなんだ。あちこち歩いてようやく人を見つけたんだぞ」

 

 

木々をかき分け、こちらに来たのはクロムだ。

ちなみにそれでもなおアオアシラはハチミツを食べている。

彼は異変について何か知っているだろうか。いや、訓練で壁に穴を開けるような残念な奴だ。期待をかけ過ぎると裏切られると、ついさっき知ってしまった。

 

 

「っていうか、アンタ随分とボロボロじゃない。そんなに歩いてたの?」

 

「ああ、違うんだ」

 

 

カズーイが気づいたが、クロムはあちこち怪我をしていた。あちこち歩いてというから、草で切ったとか、汚れてしまったのかとも考えたが、よく見れば草で切った傷にしては深過ぎる。

 

 

「城で政務をしていたんだがな、廊下で下手人に襲われたんだ。気絶している間にここに連れ込まれた」

 

「なんだと?」

 

 

誰かに襲われた、と語るクロム。お前らもなんだろうと目を向けられるが、ブラックピットにもカズーイにも心当たりは全くない。

いつものように大乱闘の世界に行こうとしたのに、なぜかここにたどり着いていたのだ。そこに第三者が関わる余地はなかった。

 

 

「オイ、それは」

 

「とりあえず、奴を倒せばいいんだな」

 

 

そう言って剣を抜きかけていく。なにか色々と勘違いしているが、後でいいだろう。

いつ食事をやめて襲ってくるかわからない中で長々話ができるほど図太くない。

 

 

「はあ!」

 

 

呑気に座り込んでペロペロと平らげているアオアシラの背中に斜めの一撃を叩き込む。

敵は攻撃されてようやく食事をやめた。こちらへ向き直り、戦闘体勢だ。先程より怒っているように見えるのは食事を邪魔されたせいではないはず。多分、おそらく、きっと。

 

 

「やっと戻ってこれたー! あれ、クロムがいる?」

 

「バンジョー、やっと戻ってきたわね! アイツ、()()()()ハチミツ食べちゃったわよ!」

 

「ええ!? 独り占めは許さないぞ!」

 

 

バンジョーも復帰し、三のファイターが集結する。背中のリュックにカズーイが入り込み、全員が戦闘体勢となった。

 

 

「そいつ、引っ掻いてくるし突進してくるし掴んでくる! 接近には気をつけろ!」

 

「わかった! 必要以上に近づけなければいいんだな!」

 

 

二足で立ち上がったアオアシラの後ろ足に傷をつけるがあまり効いている様子はない。クロムはそのまますれ違うように背中側に移動し、生やすように()()()をぶっ刺した。

 

 

「えっ!? あれ槍!?」

 

「アンタそんなの使えたの!?」

 

「ああ、大乱闘では使ったことがなかったな!」

 

「別にいいだろ、ここはあの世界じゃねえ!」

 

 

そう言い放ったブラックピットはガツンと巨塔百鬼の棍で頭部を殴りつけた。重量ゆえの鈍い動きから放たれた攻撃は、的確に脳髄を揺らしアオアシラをスタンさせた。

 

 

「そうだ! ボク達は変身できるよ!」

 

「それあのガイコツの力じゃない! 新しいものだの流行だのばかりじゃなくて、古いものにこそ魅力があるのよ、自分の力で戦いなさい!」

 

 

どんどん発破をかける。確かに見せたことのないような技は2匹にはない。でもそんな技ばかりが強いわけではないのだ。

 

 

「それもそうだね、とりゃあ!」

 

 

マーベラスコンビネーションの剣技と巨塔が振り回される中へ、カズーイの翼が頭部を守る形で突進するワンダーウィング。スタンしている状況ならばと、なにも考えずに大技を放ったのだが、

 

 

「うおおお!?」

 

「あの巨体、ふっとびやがった!?」

 

 

そのタックルひとつで地に伏せていたアオアシラがぶっ飛んだのだ。位置が悪く、クロムを巻き込んでしまう形で。

 

 

「ぐううっ……!!」

 

「あ、穴あけ父、潰されてペラペラになってないわよね?」

 

「だいじょーぶ?」

 

「助けてやれよ……」

 

 

クロムはアオアシラの下敷きに…… というほど深刻な状況ではない。ちょっと足だけ上に乗られてる程度だ。

とはいえ、2匹の対応はドライというか、深刻な状況も深刻と捉えない節がある。今だって心配していないわけではないが、ちょっと転んで怪我した程度に捉えているのではないか。

 

 

「ギャウアアア!」

 

 

アオアシラが立ち上がった途端に、クロムは素早く距離を取る。カバーするために、ブラックピットとバンジョーがそばに移動した。

 

アオアシラの目は血走っており、その口からは唾液が流れ出ている。ワンダーウィングと巨塔百鬼の棍の一撃が相当効いたようだ。

 

しかし、油断はできない。

どんな生物だろうと、窮地に追い込まれた時が一番生存本能の強い時なのだから。

 





○タイトル
バンジョーとカズーイの大冒険のチュートリアルステージ。
スマブラでも2匹のホームステージとなっている。
アオアシラはモンハンにおけるチュートリアルモンスター…… と作者は勝手に思っています。


○食欲第一
アオアシラってこんなん。正直アオアシラ出したかったからバンカズをここに置いた。これがやりたかっただけ。


○原作能力
ブラピとピットは原作にある九つの神器ジャンルの中で、スマブラで使っている神弓、衛星、豪腕を除いた神器を分け合ってます。ピットはスタンダードな性能の神器ですが、ブラピは6章で使っている神器を使用しています。具体的には、ブラピの狙杖、巨塔百鬼の棍、破掌バイオレット+スマブラで使用した神器を持っています。
クロムはマスターロードのクラスということで、ファルシオンの他に鉄の槍を携帯しています。ちなみにルキナも同様。
バンカズは据え置きです。悲しいね。


()()()()
さすがはカズーイ、相棒の使い方をご存知でいらっしゃる。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「ついに発売したファイアーエムブレム無双風花雪月、ゼノブレイド ダイレクトがあったりしたけど、やっぱり新作は燃えるよね」
「それはいいが、どうして俺とロイなんだ。綺麗に無双未経験者なんだが」
「しかし、ベレト強いね、遺産どころか天帝の剣もないのに」
「忘れられがちだが、俺もベレトも傭兵主人公だ。普通はレベル1から始まってないはずだからな」
「大人の事情って奴か……」


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40話 WELCOME TO THE NEW WORLD!

 

荒れ狂う青熊竜が次にターゲットにしたのは、背に槍を突き刺したクロムだった。

 

 

「グギュアアア!」

 

「ぐうっ……!!」

 

 

手負いとは思えない速度で迫られたクロムは回避のタイミングを見誤り、真後ろへ吹き飛ばされる。土煙とともに、一回転して体勢を直そうとするが、さらに追い討ちを仕掛けようとする姿が見えて、回避は諦め防御に回ろうとした。

 

 

「バカ、防ぐな、かわせ!!」

 

「うぐぅ!!」

 

 

ブラックピットの忠告もあまりにも遅すぎた。

受けたこともない衝撃に、ファルシオンごと吹き飛ばされてしまった。あまり意識してはなかったが、彼自身も闘う前から手負いなのだ。

 

 

「やあっ!」

 

「ウウウウゥ……」

 

「あれ? 効いてない?」

 

「なにやってんのよおバカ!」

 

 

バンジョーのジャブ程度の牽制。

こちらにも攻撃してこいという程度の攻撃だったが、思った以上に効いてない。殴る蹴るといった物理的な攻撃は余程の大技でない限り、有効ではないようだ。

 

 

「だったら、こっち!」

 

「グウアッ!」

 

 

しかし、投げつけたおしりタマゴはそこそこ効果があるらしい。爆弾は熱も生じるからだろうか。

ともかく役立たずにはならない。標的もこちらに移ったようで、クロムを助けだすことには成功したようだ。

 

 

「(暴れ馬を制御しようとするもんだ。下手に攻撃すれば余計に我を失うだろう。遠距離主体で闘うしかねえ!)」

 

 

相手の射程で攻撃すれば、回避困難な反撃がくる。全員ガッチガチの鎧など着ていないため、当たったら致命傷になり得る。

それならば、遠くから少しずつ攻めよう。クロムが近距離、バンジョー達が中距離ならば、ブラックピットは遠距離だ。

 

 

「なら狙杖の方が適任だ!」

 

 

神弓をしまい、自分の名前を冠した他の神器を取り出す。

大乱闘では、ここぞというときにしか使用できないブラピの狙杖だが、普段は三種の神器や光の戦車に遅れを取る普通の神器である。

 

うんと離れた場所から、戦場を見渡す。

カズーイがバンジョーを背負って逃げ回っているからこそ、クロムは反撃を受けていない。

 

 

「(ならそのまま追わせるのが最良だな)」

 

 

クロムの追う背後とは違う側面の腕に、ため射撃を撃つ。まっすぐ貫かれた弾は右はともかく、左腕すら貫通した。

 

 

「グオオオオオッ!?」

 

「うわああああ!?」

「ギャーーーー!?」

 

 

前足が動かなくなったアオアシラは走っていた姿のまま、前方に倒れる。2匹が飛ぶことで回避できたのはギリギリだった。

 

 

 

「よし! そろそろ決める!」

 

「よしじゃないわよ! あたい達も巻き込まれるところだったじゃない!」

 

「ブラックピットに言ってくれ!!」

 

 

近くのクロムに八つ当たりをしながらも、たまごミサイルをぶつけ続ける。完全にずっこけたままのアオアシラに、クロムとブラックピットも思い思いの攻撃を放ち続ける。

敵の反応的にあまり効果が見えなくとも、確実にダメージは入っている。塵は十分にあるのだ。あとは集めて山にする。

 

 

「グオオオオオ!!」

 

「うわっ!」

「ぐっ!」

「うげっ!?」

 

 

アオアシラが両手を振り回し、周囲を荒らす。

距離的にクロムとバンジョーカズーイは吹き飛ばされ、木や岩肌に衝突する。

 

 

「チッ」

 

 

一時的な離脱。つまり狙いがブラックピットのみになるのだ。突進してくるアオアシラに対して、軌道から逸れつつため射撃を撃った。

その程度ではなんともならず、四つ足を使ったブレーキで方向転換を図る。再び銃口を敵に向ける。

 

 

「グウウウ……!」

 

「しぶてえ奴だ!」

 

『あなたは話を聞かない奴、ですね』

 

「は?」

 

 

頭の中にお気楽な声が聞こえて、瞬時に把握する。あの女神が戻ってきたのだと。

遠くの橋からのんびり歩いてきた女神パルテナはとことんマイペースだった。

 

 

「パルテナか……!? おまえもここに来ていたのか!」

 

「随分とお久しぶりのような気がしますね、クロム。まあ、話は少し待ちましょう。この生き物をやっつけてからです」

 

 

コツコツとヒールの音をたてて、アオアシラに接近する。まるで無害なものに対する対応だった。その異様さにアオアシラ自身も動けない。

ゆっくりと杖の先を向けて、その口は奇跡を紡いだ。

 

 

「爆炎の奇跡」

 

「グキュオオオオ……!?」

 

 

大規模な爆発が起こると、アオアシラは倒れ伏した。ピクリとも動かない。

 

 

「倒したの……?」

 

「はい、あの生き物は炎が大の苦手なので爆炎を撃ちました♪ ちなみに次に苦手なのは電気ですよブラピ」

 

「だからなんだそのブラピは!!」

 

 

暗に言われている。豪腕デンショッカーが有用だったのだと。

ブラピをイジる方が楽しいパルテナは言わない。竜属性に耐性を持っている以上クロムの参戦はほとんど戦力増加にはならなかったのだと。

 

 

 

 

 

円状に囲み、やっと情報共有だと腰を下ろす。

気になることがいっぱいなのだ。パルテナの情報収集、クロムのこと。まずはパルテナのことだろうかとカズーイは口を開いた。

 

 

「……で、女神サマ、めぼしい情報とやらは手に入ったのかしら?」

 

「ええ、いいお湯でした」

 

「ちょっとカラス」

 

「オレはカラスじゃねえ! オイ、女神! このノリに誰でも着いてこられると思ったら大間違いだからな! 見ろ、クロムなんて口開けた間抜け顔でポカンとしてやがる!」

 

 

信じて送り出したというのに、ひとっ風呂浴びてきたでは怒るのも当然だろう。

だが、真面目な時は真面目というブラックピットの評価も間違ってはいない。

 

 

「そのお湯で少々気になることを聞いてしまいましてね」

 

「気になることだと?」

 

「前提として、どうやらこの世界は先ほど倒した怪物のような魔物が数多く生息している世界でして」

 

「あんなのがいっぱいって、この世界の人間はよく生きてられるわね」

 

「どうやら依頼形式で討伐してもらったりして生息数の調整を図っているようですね。人間以外の生物としてはほとんどが人の身長を超える魔物だそうです」

 

 

どうしてもこの世界の在り方については市井に紛れなければわからない。

 

 

「それで、その討伐? いきもの? がどうしたの?」

 

「密猟者を見かけたと」

 

「……おい、それのどこが役立つ情報なんだ。どの世界だって法やら決まりやらを犯す人間はいるってことだろ」

 

「それはブラピの言う通りではありますが。この世界についての情報を持たない人間が自衛のためにモンスターを返り討ちにしたら密猟と捉えられません? あなた達のように」

 

 

うぐっ、と言ったのは誰だったか。

実際知らず知らずのうちに倒しているから何も言えない。

 

 

「つまり、俺たちに起きた異変とは関係なくともおかしくないが、可能性があるから当たらずを得ないということか」

 

「はい、そしてもう一つですが」

 

「まだあるの?」

 

「謎の二つの影と。人と比べればだいぶ小さい生物だそうですけど、らしい、ですよね」

 

「さっきの情報と比べたらな」

 

 

人よりかなり小さな二つの影。

おそらくこの世界の生命ではなさそうだ。

自分と同じように巻き込まれたスマッシュブラザーズか。

あるいは───この事態を引き起こした黒幕か。

 

 

「追おう。明らかに異質な存在だ。なにかある」

 

「もちろんどちらの情報も当たりますが…… クロム、あなたは私達とは違う方法でこの場所に来たのでは?」

 

「違う? 違うとはどういう……まて、なぜパルテナがその話を知っている?」

 

「ブラピの月桂樹を介して見てましたよ。ブラピのあんなことやこんなことも…… ムフフ」

 

「え、ブラピどんなことしてたの!?」

 

「やましいことはなにもしてねえ! 誤解を招くセリフはやめろ!!」

 

「はいはい、それでクロムはどういった経緯でここに来たのかしら? 私達は大乱闘の世界に戻ろうとしたら何故かここに辿り着いていたという経緯だけど」

 

「……!」

 

 

カズーイの仕切り直しに、厳密には軽い説明にクロムは目を見開いた。先程まで少し抜いていた気を引き締め、真剣な面持ちで語り出した。

 

 

「俺は聖王としてイーリス城で政務を行なっていた。そこで休息を取るために私室に戻ろうと城内の廊下を歩いていたんだが……」

 

 

自分以外の全員がこちらを見て、続きを促している。見渡してクロムは続けた。

 

自分達とクロム。この世界へ辿り着くための動向の違いに一体何が隠れているのか……

 

 

「襲われたんだ。俺より背の高い、男に。気絶させられて、気づいたらこの世界だった」

 





○タイトル
星のカービィ ディスカバリーのテーマソング。カービィシリーズでは初の主題歌。一応歌詞やボーカルのあるカービィBGMとしては、銀河に名立たるハルトマンがあり、それと同じように同ゲーム内にアレンジBGMが収録。
序盤でくるまほおばりでドライブするムービーに流れるのが初見になる。体験版ではこの音楽はついてなかったので、体験版プレイヤーの多くは不意打ちを食らった。


○アオアシラの耐性
火がもっとも効き、次に雷氷、効きが悪いのが水属性でほとんど効かないのが竜属性。竜属性ってなんですか。ファルシオン? あれ竜特攻やしな……


○パルテナの原作能力
不明というか、正常な時に戦ったことがないのでわからん。
とはいえ、神様なので大きな能力は持っているだろう。被害が大きいという理由で本作では本気だしません。
技としては、原作で使った奇跡を使用。アニメを見る限りでは、捕獲の奇跡、嵐の奇跡という奇跡や神器を扱うことも可能らしい。


○月桂樹
テレパシーや位置把握、おそらく奇跡の支援もこれを介している。
心は読めない。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「なあロックマン、なんか将来やろうとしてるゲームがどんどんSwitchで発売されるんだが…… ペルソナ5とかニーアとか…… せっかくのPS5がKH専用機になりかけている…… FFとかも買う予定だが」
「ぼくたちの古い作品もあるから全面支援。それよりこれ」
「服を引っ張るなって…… え、これ読めって? 『モンハンサンブレイク! 風花無双もいいけどこっちもみんな遊んでね』って…… 番宣に使うな!?」
「あ、そうそう、風花無双の感想は長くなったから、活動報告ね、ジョーカー!」
「だから雨宮蓮!」


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41話 謎の侵略者

 

未だに慣れない政務にようやく一区切りがついた。こういってはなんだが、自分はきっと平時の王には向いていない人間なのだろう。

決して戦争が好きという訳ではない。単純に資料の中の数字や文章と向き合っているよりも、実際に人と接し心と触れ合う方が向いているのだ。

 

とはいえ、正式に聖王となった自分にしかできない仕事がある。

大乱闘の世界にいる時は、フレデリクや他の家臣がやっておいてくれていたり、資料を持ち込んだりしてくれている。

そこでルフレ等も手を貸してくれることもあるのだが、故郷の世界に戻っている時まで丸投げは許してくれないし、ルフレもルキナも外出中だ。頼れるのは自分である。

 

 

「ようやく終わったか……いや、まだ西部のことは決まってないが……」

 

 

それでも、厳格なフレデリクからようやく休憩をもぎ取った。座りっぱなしで凝り固まった体をほぐしながら、中庭へ向かうために廊下を歩く。

神剣ファルシオンと鉄の槍を持って鍛錬……体を動かそう。訓練場では他の兵士たちに大騒ぎされるし、中庭でこっそりと行なっていた。その結果、外壁に穴を開けていたのだが。

 

 

「今度は壊さないようにしないと……って」

 

 

そうして、珍しく人気のない廊下で謎の男が立ちはだかっていた。全身をローブで覆われ顔は見えないが、自分より背の高い女性などそうそういないだろう。

 

 

「誰だ、お前は」

 

「…………」

 

 

なにも答えない。

明らかにこの城の人間ではないのはわかった。

そして、かつてここに侵入してきたマルスを名乗っていたルキナのような親しみやすさも微塵もない。

無言で返した相手に敵意を上げ、ファルシオンを握り、いつでも抜けるように警戒を強める。

しかしその瞬間、その相手は消えていた。

 

 

「何……!? 後ろか!?」

 

 

即座に振り向くと、赤い光が溢れていた。

違う、敵の構えた大剣にはめられた赤い珠が光り輝いていたのだ。

その距離。クロムはしっかりと見ていた。その大剣がバスターソードであることを。ローブの中で金色の前髪に隠れたその目が、赤く染まっていたこと。

 

 

「クラ……!!」

 

 

その名を呼ぶことはできなかった。激しい激流で押し流され身を刺すような痛みが生じ、勢いのまま吹き飛ばされる。その顔に、その姿に動揺して、何もないところから水がうまれていたことに気づいたのは後だった。

 

 

「じゃ、ない…… 誰だ、お前は……!」

 

 

何か、いや誰か。

転がった四肢が動かせない。痛みのせいで麻痺しているように感じられる。

赤い瞳はキーラのせいか? ならば、どうしてクラウドの過去の姿をしている?

刹那に生じた疑問は、首筋に振り下ろされた手刀とともに断絶された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「という訳だ」

 

 

説明を終わらせると、そっと肩の力を抜く。

慣れないことをすると無意識に力が入ってしまうらしい。

 

 

「赤色の瞳をした、過去の姿のクラウド……キーラの残党か?」

 

「いえ、キーラはダーズと共に倒したはずです。その時にスピリットも解放されたはずですし……仮に残党が残っていても世界を渡るような力はないと思いますよ」

 

 

思い出すのは、光の化身キーラの配下。

自分達ファイターのフィギュアを母体として生成したボディに、傀儡にした精神スピリットを宿らせた僕たち。

だが、キーラは倒された。世界を越える能力もなかった。じゃああれは何者なのだ? 本人ではないことは確かだろうが、逆に言えばそれ以上わからない。

 

 

「ねえ、城って人がいっぱいいるはずよね? それにあの軍師や仮面王女も。アンタ以外誰もいなかったわけ?」

 

「……いなかったな。ルフレもルキナも外に出ていたが、それ以外の従者や騎士も来なかった」

 

「怪しいですね。王様を誰も見ていなかっただなんて職務怠慢です。ですが、これは相手が上手だったということが原因でも通るんですよね……バンジョーは何か気になることありますか?」

 

「なに言ってるのかよくわかんな〜い」

 

「この能天気に意見を求めるだけ無駄よ」

 

「ええ、知っています」

 

 

守らなければ、仕えなければならない主君のことを誰も見なかったなどという状況がありうるのだろうか。パルテナはそういう状況を作られたのではと怪しんでいる。

たとえそうであったとしても、もう少し戦闘を長引かせることができていたら。

誰かが気づいてクロムの元へ駆けつけられたかもしれない。今となっては襲撃者の手際に感服するしかないが。

 

 

「おい、手段もそうだが理由も謎だぞ。どうしてこいつだけが襲われる形でこの世界に来たのか、そもそもなんでこいつなのか」

 

「……考えてみればそうだな。大乱闘の世界に戻らせたくないなら、どこかに閉じ込めるなりさせるはずだ」

 

「女神様とかならわかるけど、この頭筋肉だけを妨害して、わざわざこっちの世界に来させてあたい達と合流させて。まるで利点がないわね」

 

「あっ、ぼく達をここに来させたのとクロムをここに送ってきたのは別陣営だとか?」

 

「2種類の敵がいる、ですか。可能性としてはありえますね。私たちを離れ離れにさせたのは思惑通りでも合流したのは想定外なのかもしれません」

 

 

「まともな意見出せるなら最初からだしなさいよ」とカズーイがぼやく中で女神パルテナは考える。

自分はピットを先に大乱闘の世界へ向かわせた。先にとは言っても少し用事が立て込んで遅れた程度で、時間差としては数時間もなかったはずだ。たったそれだけでピットと離れてしまった。そういった点では、バンジョーとカズーイが羨ましい。

 

そしてクロムがここにきた理由。

自分がこの世界にいることを知っていれば、彼をここに来させない。やろうと思えば自分の力でいつでも帰れるのだ。

バンジョーの言う通り、連携を取っていない理由からの幸運だったのか。しかし、自分達を大乱闘の世界に来させない、または離れ離れにするという目的は同じなのだ。少なくとも、ここに来させる理由があるはず。こうしてスマッシュブラザーズの一部が集まっているのだから。

 

 

「集まっている……?」

 

 

そうだ、スマッシュブラザーズに隠れて何か行動を起こしたいならば、みんながみんな大乱闘の世界に戻ってくるようなこんな時期に事を起こしたりしない。もっとはやく始めていたはず。

 

スマッシュブラザーズを離れ離れにすることが目的。いや、離れ離れにしてどうする?

スマッシュブラザーズの誰かに用がある。ならば個人にあたればいいだけ。

目的の誰かがわからない。これか?

 

 

「大乱闘の世界に行かせたくないも違うな。女神がいるし、そもそも自分の世界に戻ってない奴もいるだろ」

 

「では俺たちをバラバラにするのが目的だったのか? 何のために」

 

「スマッシュブラザーズの中に目標がいるのではないでしょうか。しかし、敵側にはその目標がわかっていない。私たちをバラバラにしたのは目標を探しやすくするため……というのが私の考えです」

 

 

あくまで一つの案として伝えてみる。もちろん確証がある訳でもないが、予想として。

 

 

「もう一つの敵陣営はその目標がわかってて、それがこの穴あけ王ですって?」

 

「コイツが?」

 

「ねーだろ」「ないでしょ」

 

「すごく馬鹿にされているんだが……」

 

「クロムとは断言していませんよ。スマッシュブラザーズがバラバラにされたと言っても同時に移動すれば同じ場所に行ける程度の粗はあります」

 

 

パルテナとピットは少しの差で離れ離れになった。だが、バンジョーとカズーイは当たり前のようにこの場にいる。

 

 

「……! ルキナやルフレも含めて俺たちが敵の狙いだと?」

 

「なんとも言えません。単純にあなた達が一緒に行動するのを嫌っているだけかもしれませんし、個人を標的にしているかもしれません」

 

 

知らないだけで、本当は自分達のように気づいたらここにいた者の方が少ないのかもしれない。そういう可能性を頭の中で追いながらも、口は違う可能性を紡いでいた。

 

 

「ただ、あの二人のうちどちらかがあなたのように襲撃されて所在がわからなくなったとしたら、あなたはそれを大乱闘関連の事件だと思いますか?」

 

「あっ……」

 

「自分達の生きている故郷で、行方不明になりでもしたら、その世界の何かに巻き込まれた可能性を考えるでしょう。そうなれば、あなたは大乱闘の世界に行きません」

 

 

そうなれば、大乱闘の世界に戻らない。

故郷の世界で本人を探し続ける。

しかし、それではおかしい。

 

 

「待て待て! それなら狙いでもなんでもない奴を呼び寄せるためだけに襲ったことになるだろ!? それなら3人まとめて狙っていたという線の方が納得いくだろう!」

 

「狙うべき相手がわからないもう一つの敵陣営目線で候補を狭めないという利点はありますよ」

 

「逆に言えばメリットはそれだけよ! そもそも二つの敵陣営が存在することも、あったとして敵対しているかどうかもわからないわ!」

 

 

議論は大荒れである。

パルテナの荒唐無稽な一つの可能性。

故郷の世界でクロムに何かあったのなら、残りの二人が呑気に大乱闘の世界に戻ってくるはずがない。必ずその世界でクロムの捜索のため留まり続ける。

それを防ぐために3人全員を同じように襲い、意識を取ったところで別々の世界に送り込んだ。標的はクロムかルフレかルキナか。それとも違う誰かか。そもそもこの考えは合っているのかどうか。

 

 

「それを明らかにしなくてはなりません。肯定する証拠はありませんが、逆に否定する証拠もない。クロム、申し訳ありませんがしばらく大乱闘の世界には行けません」

 

「どうする気だ?」

 

「探すだけです。真実への切符を。私たちがこの世界に来てしまった以上、それには理由があるはずですから」

 

 

真面目な時は真面目。そう評したブラックピットは間違っていなかった。

 

真剣に未来を見据えるパルテナは、大衆のイメージ通りの女神だったのだ。

 





○タイトル
新・光神話パルテナの鏡 15章の章題。
オーラム軍の初顔見せの章である。前章まで自然軍幹部と戦っていたのに突然こんな異質な敵勢と戦うことになるのでユーザーに驚愕をお届けすることになる。
そして、奴らの対処に三軍が暗黙の了解的に手を結ぶことになる。
しかしクロムを襲ったのは一体どこのオリキャラなのだろうか。

余談ですが、各話のタイトルにはゲーム関連の用語やセリフをつけています。ただしアニメや漫画原作を除く。ネタ切れ仕掛けているので誰かくださいネタ。


○軍の中で一番、訓練中に物を壊す
訓練中によく壁に穴を開けているため、原作でも当時マルスを名乗っていたルキナに侵入経路にされていた。せめて誰かに報告しろよ!
最近はあまりネタに上げられなくなったが、後輩王子のディミトリがさらに破壊しているので目立たなくなっただけ。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「ああああああああああ! 神装英雄だああああああ! うおっしゃああああああああ!」
「カムイ! キャラ保って!」
「うおおおおおおおおああああああ!」
「微塵も聞いてない!? 誰かこのマイユニ止めてえええ!」


○風花雪月無双 ネタバレなしの全体感想
級長や名前だけ出てた父兄達の掘り下げに尽力するあまり、全体的なシナリオの詰めが甘かった感が…… 全部のシナリオで戦いはまだ続くみたいな引きですし、特に主人公関連があまり掘り下げられなかったなって。半端にするんだったら主人公マジで一般人でよかったのでは。本人達もわからない、アガルタもわかってないじゃもちろんプレイヤーもわからんわい。
他にも分岐で追加される章を共通にしちゃったから、シナリオに幅がないんですよね。
さらに本編で使えた、ハンネマン、ツィリル、ギルベルト(ギュスタヴ)、アロイス、アンナさんあたりどのルートでも使えないし。
エルネストの紋章アイテムあるし、彼らや5年後モデル、さらに主人公関連の謎を掘り下げるDLCあたり来るかもしれませんが、DLCやんないと完成してないゲームとか批判の的だぞ。無料追加ならまだ許されそうだけど。
ネガティブなことばかり書きましたけど、アシュユリ支援とか支援会話を増やしてくれたのも、風花雪月を掘り下げてくれたのもおけ。私はパラレルにするなら変化に伴う影響を全て描ききってくれと考える人なので、批判の多いクロード関連もこうなるんやなって面白く遊べましたね。ただやっぱり主人公の謎ほったらかしは許さない。

総評としましては、ゲーム自体は面白いけどシナリオの荒さと主人公冷遇、DLC前提っぽい作り方がすごく気になる。期待が大きかっただけに少し辛口ですけどこんなもんなのかなと。

あと一つ言いたいこととしては、主人公の育ての母がパトリシアさんという説がありますが、ダスカーの悲劇が本編開始4年前ですから、4年未満の関係で育ての親は無理ないか……ということです。
だって主人公生徒達と同年代なんだから10代後半あたりだろうし、傭兵団を転々としてたならさらに期間短くなるし……実はTOAの主人公みたいに実年齢幼かったらわかんないけど。


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42話 環境破壊は気持ちイイZOY!


本日はカオス回です。
頭を空っぽにして閲覧ください。



 

真実の切符を探す。

つまりこの世界で黒幕につながる手がかりを探すということ。

 

 

「それで…… これからどうするんだ?」

 

「どうするか考えるために、市井に紛れて情報を得てきました。この世界に生きる者たちから見た、異質な現象の裏づけをしにまわります」

 

「オレ達のこと、何も関係なかったら?」

 

「見ざる言わざる聞かざるです。この世界で起きることならこの世界だけで対処できますよ。むしろ私たちの痕跡を残さないようにしなければ」

 

 

ようはスマッシュブラザーズが関わっていそうなことだけに干渉し、関わっていなさそうであればこの世界の司法に任せようということだ。

 

─これは、この世界の誰も知らない、異端中の異端。言うなれば、語られぬ時の隅に眠る、小さな小さな外伝に過ぎない物語である。

 

 

情報を得たパルテナのガイドで、彼らは道なき道を進む。

彼女曰く、普段狩りや採集に使われるようなエリアには密猟者はいないということ。単純に人の目に触れやすいからだ。

密猟者を探して、そのエリアから抜ければ人の手が入っていない場所を探すことになる。開けた場所などなければでこぼこして余計な体力を消費することになる。歩きやすいような平坦な道などないし、大きな石が転がっている。鬱蒼と繁った木々のおかげで、暑い日光に当たらずに行動できるのは唯一の長所だった。

里山か、自然なままの山なら里山の方が活動しやすいだろう。

 

 

「ねえ、人の手がないところを探すのはいいけどそれ以上の心当たりあるわけ?」

 

「いえ、ありませんよ?」

 

「ちょっ……! アンタねえ!」

 

 

しかし、まさかの手がかりなし。

カズーイが怒気を込めるのも無理ないが、リュックに入っているので一番楽しているのも彼女である。

 

 

「ですが、密猟者といってもただモンスターを倒して回ってる訳ではありません。モンスターの皮や鱗…… そういった売買品となるものが目的です。おそらくはこの辺りにいますでしょうし、大型モンスターを当たっていけばそのうち、です♪」

 

「そ、そのうちとは……」

 

「いつになるんだか……」

 

「いずれくるよー」

 

 

こういう時にはバンジョーのマイペースさが羨ましい。意図せずクロムとブラックピットのため息がシンクロした。

 

 

 

 

 

 

ひっそりと。こっそりと。

必要以上に現地人と交流せず、そして目立たないように。これがパルテナが順守する掟の一つである。これは世界の秩序を乱さないようにとの心掛けであり、同時に大乱闘の世界の事情を広めないためのものである。

マスターハンドの創造した世界を介して他の世界に行くことや、必要以上にそれらのことを風聴することが禁じられているのもそのためである。

 

 

しかしッ!!

そんな配慮を見事にぶち壊したヤツがいる!!

その名はッ!!

 

 

「ひえええ!? なんだコイツ、ババコンガか!?」

 

「ちょっと待て!? 通常種も亜種もこんな色してないぞ!? 新種だ!」

 

「ウホッ! オレ、ドンキーコング! ババコンガ?じゃない!」

 

「「「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!!」」」

 

 

ドンキーコングだ!

ここがどこかわからないから、大荷物の人間達の進行方向に躍り出て道を聞こうとしたらこの有様さ!

大パニック! もちろんドンキーコングはババコンガではないし、新種だとも言い難い!

誤解を解こうとして、モンスターの口から出た人語にさらに大混乱だぞ!

 

 

「おい、貴様らここがどこか教えろ。10秒以内だ。答えなければ死ぬより辛い目に合うぞ」

 

「ひえええええ!?」

 

 

そして人間数人のうち一人の胸ぐらが掴まれ、持ち上げられる。苦しさゆえにつま先だけでも地面につけようとするが、さらに力が強まる。

ただでさえ、未知の存在にパニックになっているところにこんな脅され方をしたら、誰だって何も答えられない。

俺たちはただ、このでこぼこだらけの森の中、道なき道を通って売り捌こうとしただけなのに。

 

 

「ウホッ、ガノンドロフ、怖がらせるのだめ!」

 

「ペラペラ喋って聞き出すなど、手ぬるすぎるわ! 人は他者に幸福を与えられぬものよ」

 

 

ババコンガのような何か(暫定新種)が常識を説いている。その相手は暫定新種に比べれば人に近い姿をしているが、その肌は浅黒いを通り越して、事実黒いし。なんか脅してくるし。

密猟者はどうしていいのかわからず、逃げる算段を整え始めるもの、生を諦めて祈り始めるもの、武器を構えて立ち向かおうとするものとさまざまな様相であった。

 

 

「化け物どもめェ!!」

 

「ふんっ、」

 

「ヒィエエ!?」

 

 

振り上げたハンマーは振り下ろさせる前に、ガノンドロフによって頭部より上がばっきり折れた。見事な蹴りである。

 

 

「う、わ、わわ」

 

「ウホッ、大丈夫?」

 

「ひえええッ!! 大丈夫じゃなああい!!」

 

 

武器まで破壊された。武器はハンマーひとつではないが、何を振り回しても効かないイメージしか湧いてこない。完全に牙を折られた獣も当然だった。

 

 

「こ、こんな化け物どもをまともに相手してられるか!!」

 

「ちょっと待て俺を置いてく気か!? 永遠に離れないと誓った夜を忘れたか!?」

 

「すっかり忘れたわ!!」

 

 

ついに1人が着の身そのまま逃げ出した。

嘘か真か判断がつかない寸劇をするあたり、相当混乱しているようだ。ガノンドロフは内心呆れながらも逃がさないと後を追おうとする。

しかし、それは誰かに腹部を蹴り飛ばされてガノンドロフの足元に戻ってきた。

 

 

「なにやってるんだ、お前達は……」

 

 

呆れるカズーイ、いつも通りのバンジョー(ババコンガ、獲物を独り占めするな)

冷めた目でこちらを見るクロム(E:ファルシオン(介錯用))

密猟者を蹴った主犯のブラックピット(お迎えに来た天使)

そしていつも通りの怒ってるんだがわからないアルカイックスマイルのパルテナ(ようこそ、ここは天国です)

 

 

「がふっ」

 

 

ついに召されてしまった。

いや、キャパオーバーで気絶しただけだけど。

 

 

「手加減してあげてくださいよ?」

 

「まだ何もしていない……!」

 

 

ガノンドロフには珍しく、ストレートに不満をぶつけた。

 

 

 

 

 

「結局何も関係ないただの違反者だったのかよ……」

 

「だが、そのおかげでドンキーコングとガノンドロフと再会できたんだぞ?」

 

 

手がかりゼロの状況は変わらないままに無駄な時間を費やしたことにより、ブラックピットは一気に不機嫌顔になる。ドンキーコングとガノンドロフへ事情説明の時間が取られるのも不満であった。

 

 

「で、コイツらどうするのよ? ゴリラとウスノロ魔王がはっきり脅しちゃったけど」

 

「待って! オレ、脅してない!」

「鳥畜生風情が好きに言っておけ」

 

「はいはい、話が進まないのでここまでにしましょう」

 

 

カズーイがいらぬ油を注いでいた一方で、バンジョーは密猟者達の荷馬車に近づく。

気絶させて縛り上げられた人間を横目に、大きな布の中を覗くと、痛々しい赤黒い傷を負ったモンスターの亡骸が横たわっていた。水色と白の体毛、狼のように見える。おそらくこれから皮や爪を剥ぎ取るつもりだったのだろう。

 

 

「目立っちゃったものは仕方ないので、彼らの記憶を少々弄らせてもらいます」

 

「それができるなら、別に目立ってもいいんじゃないか?」

 

「なに言ってるんですか、これを連発すると肩が凝るんです」

 

「凝るかァ!」

 

 

気絶したままの密猟者に奇跡をかけると、さらに奇跡で荷物ごと転移させる。そんなことまでできたんだとは言わない。だって仮にも神さまだしこれくらいできるよね、と。

 

 

「……おい、女神。さっきの奴らどこに送った?」

 

「ああ、先程倒したモンスターの場所です。罪、被ってもらおうかなと」

 

「冤罪……!?」

 

 

()ロム。

世の中って世知辛い。例え相手が悪人でもやってもない罪を押し付けたくはないのに。というか知らなかったとはいえ、この世界の法を破ってしまったのはこちらなのに。

お茶()神はちゃっかりさんでもあった。

 

 

「つーか、それができるなら二つの影とやらもレーダー的な何かで見つけられるんじゃねえか?」

 

「全く、ブラピは…… 私のこと全知全能か何かと思っていませんか?」

 

「思ったことはねえ」

 

「私にだってできないことはありますん」

 

「どっちだよ」

 

「まあ、できるんですけど」

 

「さっさとやれ!!」

 

 

ブラックピットは決意した。

一刻も早くピットにこのくそめんどくせえ神を押しつけようと!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──ちょっと未来のある牢屋での出来事

 

 

「匂いと同じような色したババコンガがry」

 

「真っ黒な人型のイビルジョーがry」

 

「剣を持ったラギアクルスがry」

 

「クルペッコとラオシャンロンが徒党を組んでry」

 

「ナルガクルガが蹴飛ばしてきてry」

 

「翠緑色の美しいタマミツネがry」

 

「こいつら秘薬キメすぎでは?」

 





○タイトル
アニメ版星のカービィ5話で登場する、デデデ大王のセリフ。アニメカービィには数えきれないほどの迷言が存在するが、おそらくこのセリフの知名度はトップ。
こんなセリフを吐きながらウィスピーウッズの森の木々をチェーンソーで切り倒す様はサイコパスのそれ。だって、あの木意思持ってそうだし。
ちなみにもう一回ぐらい環境破壊が起きる。プププビレッジの自然再生速度は世界一。


○ドンキーコング=ババコンガ?
マリオブラザーズとモンハンのコラボで、ババコンガはドンキーコング扱いされた。尻尾にキノコついてたり、姫さらったりカードに乗ったり。
え? これがやりたかっただけだろ? 知りませんね。


○ 「永遠に離れないと誓った夜を忘れたか!?」
「すっかり忘れたわ!!」
これもアニメ版カービィから。76話にて。
「陛下! わたしを捨てるでゲスか!?」
「当然! 我が身大事ゾイ!!」
「永遠に離れないと誓った夜をお忘れゲスか!?」
「すっかり忘れたゾイ!!」
人造恐竜に追われている際のエスカルゴンとデデデのセリフ。
簡単に部下を捨てるデデデ、ホモくさいこと言ってるエスカルゴン、忘れたと言いつつ否定はしないデデデ。
この2人アドリブが多いのだが、多分ここは台本。流石アニメカービィ。


○狼に見える水色のモンスター
雷狼竜ジンオウガ。MHP3のメインモンスターであり、看板モンスター。
電光虫を活性化させて生ませる電力を戦闘に利用している。いわゆる共生の関係になるだろう。今作の舞台となるユクモ村はMHP3の拠点となっているため、無関係にはならない。まあ、他モンスターに住処奪われた結果だけど。


○ババコンガ
桃毛獣。イメージ的にはドラクエに登場するバブーンを桃色にしたようなモンスター。上記の通り、マリオコラボでドンキーコング役となった。
放屁が臭いのに公式がババコンガの香水なるものを発売していた。香水そのものはトロピカルフルーツの匂いとなっているとはいえ、公式が病気。


○イビルジョー
恐暴竜。自らの生命活動を維持するために他のあらゆる生命を糧とする、特級の危険生物とすら言われている。ようは凶暴性と食欲がやばい。ガノンドロフ扱いされているが、ぶっちゃけ大体の悪役に当てはまってる気がする。


○ラギアクルス
種を代表して海竜といわれるモンスター。水中戦の代表としてMH3から初登場。MH3Gの後、水中戦が消された結果長らく持て余されていたが、MHXにて再登場できた。
ぶっちゃけクロムとは青色以上の共通点はない。女神のガバガバ判定。


○クルペッコ
彩鳥。他のモンスターの鳴き声を真似して辺りのモンスターを呼び寄せる嫌なヤツ。
カズーイとは違い主に黄緑色の体色なのだが、いかんせん鳴き袋の印象が強かったらしい。


○ラオシャンロン
老山龍。でかーい!! 説明不要!!
6960cmという体長は歩く天災、動く霊峰などと言われる古龍。
立っている姿がバンジョーと被って見えたようだ。


○ナルガクルガ
迅竜。シルエットは竜より獣に近いスタイリッシュなモンスター。黒い体色と印象的な翼がブラックピットのように感じたという。
激情のあまり、立ち回りが疎かになったり、見破られる罠にハマったりといった視野が狭くなるところも含めて判断に繋がっているかどうかは女神のみぞしる。


○タマミツネ
泡狐竜。花を彷彿とさせる体色や恵まれたビジュアル、なにより無益な殺傷を好まない穏やかな性格から人気が高い。まあ綺麗な個体は雄しかいないのだが。
密猟者の記憶の中で、このモンスターを自分としているあたり、ちゃっかりしている女神である。


○なんでこんなにパルテナ、モンスターに詳しいの?
温泉で野良ハンターに聞いた。古龍知ってる強者がいるんだが。


○秘薬
モンスターハンターのアイテム。
減少した体力を最大まで回復させ、且つ最大値まで引き上げる。モンスターハンターでは体力の最大値を引き上げるのに一手間必要。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「ほう…… カービィのグルメフェスか。パフェとアフォガートは……」
「最近は平日の夜中にいきなり情報がくるわね。露出を抑えるモードもあるらしいわよ? よかったわね、あなたの仮面も割れなくなるわ」
「私がベヨネッタに出演してたらそうなるだろうな。私的にはカービィ本編でそれ希望」


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43話 自分は確かに、ここにいるのだ、と。

 

──自然軍本部。

あの世界で大乱闘が開催されている時期は、停戦されており、自然軍がパルテナ軍を攻めることももちろんその逆も禁じられている。

人間達やその他陣営のカモフラージュのため、小競り合いは双方意図的に起こしているものの、本格的な衝突は発生させていない。

 

自然軍がその取り決めを守っているのは意外に思われるかもしれないが、自然軍幹部となったブラックピットがスマッシュブラザーズに加入している以上、無視する選択肢はないのだ。

そしてナチュレ自身、己の神としての領域を土足で踏み荒らされる屈辱を知っている。パルテナ軍が空席にしている隙を見計らって攻め入るような無粋な真似はしていない。

 

 

「むう……」

 

「いかがしました? ブラピくんのこと?」

 

 

うんうんと頭を唸らせる主人に、自然軍幹部、電光のエレカがどうかしたのかと問いかける。

その悩みの種は最近加入した配下のことなのかと思ったが……

 

 

「いや、先の侵入者のことじゃ」

 

「……ああ、そのことでしたか」

 

 

そのことを伝えると、エレカはわかりやすく不機嫌になった。

誰もその侵入者に気がつかなかった。ナチュレの前に姿をあらわし、伝えるだけ伝えた後にようやく主人に接触されたと気づいたのだ。

 

 

「あやつは何者なのじゃ…… もはや思考や視点がどんな生物にも似ておらぬ。敢えて言えば近いのは人間だが、人間にしては視点が上過ぎる。神にしては思考が遠過ぎる。かといって神よりも視点が高く、人間の思考ともかけ離れている」

 

 

侵入者が言った内容もそうだが、彼の正体も謎だらけなのだ。

自然軍の誰にも気づかれることなく、ナチュレの元まで辿り着き、これだけを言い残した。

 

 

「生きるために何かを犠牲にするのは、残酷で当然のことなのだろう」

 

「ならそこに精神の安定は含まれる? 自分らしく生きれるように何かを犠牲してもいいのか、仮にそれをしなくたって死にやしないけど、こうしないと安心して生きることができない」

 

「そんな犠牲も()()()()()の犠牲に入るのか君の意見を聞きたいんだ」

 

 

ただこれだけはわかった。

あの男は答えなんて求めていない。これを言いたいがため、ただそれだけのためにここまできたのだ。

 

 

「(気をつけよ、あやつはとびきり危険だ。強さではない。全知というにはオーバーだが、底知れなさはハデスに匹敵するやもしれぬ)」

 

 

届かぬことを知りつつも、心の中で忠告する。相応の強さがあるかもわからないというのに、自然王に不気味さを与えるあの存在はいったい何者なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パルテナの情報をもとに手がかりを探すファイター達。密猟者についての情報が期待はずれに終わった以上、頼みの綱は二つの謎の影についての情報しかない。

 

 

「結局、2つの影はどこで見たって?」

 

「モガの森という場所の孤島ですね」

 

「……おい、孤島ってことは」

 

「距離はそこまで空いていませんが、海には囲まれていますね」

 

「どうやっていくんだよッ!!」

 

 

この女神、頼れそうに見えて頼れない。

海を隔てた一つの島にどうやって行けというのだ。あんな生物がうようよいるような世界だとわかった以上、小舟を製作して渡るのは現実的ではない。壊されて海に放り出されるのが目に見えている。天使はエラ呼吸なんてできないのだ。

 

 

「大丈夫ですよ、ちょっとジャンプすればあっという間に移動できますから」

 

「テレビじゃねえぞ!」

 

「「「????」」」

 

 

旅番組のように一瞬で移動なんてできやしない。そもそもあれだって裏では車か何かで移動してるし。しかし悲しいかな、そのネタが通じるのは2人以外にいなかった。

 

 

「まあまあ、騙されたと思って跳んでみてください。せーのでお願いします」

 

「……」

 

「いきますよ、せーのっ」

 

 

ファイター達がジャンプすると、まばたきの一瞬で周りの風景が変化した。相変わらず自然の中ではあるが、先程の荒れた小道から明らかに違う場所へ移り変わっていた。

崖下から海の見える文字通りの孤島。流れ着くような無人島ではない。辺りには砂浜のような場所はないが、人の往来がある場所なのだから、船をつけるための砂浜か港はどこかにあるはずだ。

 

 

「……」

 

「ブーラーピ? あっちこっちにゲートを開いているのですから転移ぐらい難しくないですよ」

 

「……ソウデスネ」

 

「あ、それとガノンドロフは跳ばなかったので置いてけぼりにしています♪」

 

「はよ連れて来い!!」

 

 

確かにあの極悪非道とかの四字熟語が似合いそうな奴がパルテナの茶番に乗ってくるとは思わなかったが、置いてけぼりにするほどのものだったのか。遅れてやってきたガノンドロフは大層御立腹だった。

全員が揃い、パルテナの先導で歩き始めたところで、クロムがずっと気になっていたことを聞く。

 

 

「ここにその、謎の影が現れるんだろう? もっと詳しい情報はないのか?」

 

「そうですね〜 まずこの話が噂程度に収まっている理由として、影が原因での被害がほとんどないということです」

 

「ウホッ、怪我してないってこと?」

 

「影に襲われたとかはないってことね」

 

 

影についての調査だとか、討伐だとかの話が出ていないのは影が危険とは言えないからだ。

数少ない被害も、突然飛び出した結果転んで足を捻った、手をついた結果手首を骨折したという直接の咎がない状況なのだ。気のせいと言い切れるレベルの噂に対して調査に乗り出すほど、この世界のお上も暇ではないらしい。

 

 

「悪意はないってことかな、敵ではなさそう!」

 

「そうとは言い切れませんよ。下手に事を荒立てないようにしているだけかもしれません」

 

 

とはいえ、味方だと言い切れるかと言えばそうでもない。この世界にとっての味方が自分達の味方かどうかはわかっていない。

少し歩くと、岩場と水辺の領域にたどり着く。空洞のある、山のような岩場がとても印象的だ。

 

 

「そうなるとわざわざ顔を出している理由が謎だな。オレ達は誘われているかもしれねえ」

 

「ふっ、ならば罠ごと打ち砕くのみよ」

 

 

でも他に情報もない。

行くしか道がないのなら、ガノンドロフほど強気で行ったほうがいいのかもしれない。

 

 

「そうだな、俺も賛成だ。敵ならば手加減する理由もない」

 

「ウホッ、やっつけた後で聞けばいいからね!」

 

「ここの男性陣は脳筋か能天気しかいないのかしら」

 

「おい、待て、オレはどっちでもないぞ」

 

「あなたは脳筋でしょう? 当たらなければどうということはないとか言っちゃうあたり」

 

「…………」

 

 

反論できないブラックピットがそっぽを向く。もう対応するのが疲れたのか図星を突かれて恥ずかしいのか、顔を見せない角度に。

だからこそ気づいた。猛スピードでこちらに駆けてくる何かに。

 

 

「くるぞッ……!?」

 

「え、なに!?」

 

 

注意を促そうと声を上げたその時、すでに何かは通り過ぎていた。反応の遅れたブラックピット以外の者は何が起こったかもわからないほど。

あまりの速度に水飛沫が飛び、思わず顔を覆う。飛沫のおかげでその影が向かっている方向こそわかったものの、それ以上はまったくわからない。

 

 

「いそぐぞ! 奴らが黒い影だ!」

 

「まさかこれほど速いとは……!」

 

「どおりで影だなんて曖昧な表現だと……!!」

 

「でも、一つじゃなかった?」

 

「近くで見れたからわかった! もう一つは上に乗ってる!」

 

 

あまりにも速い、速過ぎる。

パルテナも珍しく動揺の色を隠せない。動き出しが早く、他よりは詳細がわかったブラックピットですら、児戯にもならないほどのスピードの差がある。足が遅いガノンドロフやドンキーコングを置いていったとしても追いつけないほどの差がある。そこからの動きは速かった。

 

 

「軽量化! ブラピ、行きなさい!」

 

「結局こういう役回りか!!」

 

 

1番可能性があるブラックピットに軽量化の奇跡を与えて指示を出す。なんだろう、1番働いている気がする。

 

 

「(くそ、後で労災認定させてやる! つか、そんなことより完全に手抜かれてる!)」

 

 

抗議は後にするとして、追っている影を見る。先程よりも遅くなっていた。奴らが本気で走れば簡単に振り切れるはずなのに、誘導されているようにこちらに合わせられていた。

水辺を通っているために、走りにくいのも追いつけない要因だろう。

 

 

「(いっそのこと、攻撃して…… ダメだ、弾の速度が明らかに足りない! 仕方ない、女神に支援を……!)って、は?」

 

 

逆に相手のスピードを落とそうかと、月桂樹を通じてパルテナに奇跡を求めようとした時だった。ブラックピットの視界が突然灰色だらけになる。

逃亡者に乗っていた、もう一つの影がこちらへ飛び込んできたのだと気づいた時には、既に仰け反って腰から転んでいた。

 

 

「なんだお前は!」

 

 

怒りのままにそれを顔から引っぺがすと、抵抗もなくあっさり離れる。それはかなり見覚えのある存在だった。

 

 

「…………」

 

 

まんまるな体、突起のような手と足。

まるでカービィではないか。

違うとすれば、鮮やかなピンク色ではなく、くすんだ灰色のような体色と、表現の変わらない真顔ぐらいだ。

 

 

「急に何を……」

 

 

そして、こちらに戻ってきたもう一つの影。彼も見覚えのある存在だった。

走った勢いのままに後ろへ逆立つ体毛、余計な肉のないスリムな体と手足。

黒を基調とし、メッシュのごとく所々赤色が混じる彼は、色さえ除けばソニックそのものだ。

 

 

「カービィにソニック?」

 

「……僕達を見てその名前が出るということは、君たちは大乱闘の関係者か」

 

 

「彼が飛び出したのもそれが影響か」と語る彼はソニックではない。それはわかった。

だがクロムが、クラウドに似た人物に襲われたと言っていた。信用してもよいのだろうか?

 

 

「……なるほど、二つの影とはあなた達のことでしたか」

 

 

にこりと笑うパルテナ。

この2人は自分達に何をさせたかったのだろうか。牛歩のごとく進行しない事態。

敵にしろ、味方にしろ、何かを知っているはず。真実を明らかにする必要がありそうだ。

 





○タイトル
キングダムハーツII FMでの追加曲、The Other Promiseに関して、作曲者の下村陽子氏が25th Anniversary Live -THANKS!- セルフライナーノーツで残したコメント。多分。だって、〜よりとしか書いてないから……
全文は、
どうかどうか、ただ、その存在を感じてほしい。自分は確かに、ここにいるのだ、と。

えっ、なんで曲名じゃないのだって?
シャドウ以外約束要素ないし、曲名はいずれ別のタイトルに使えるかなと……


○孤島
MH3、MH3Gの拠点である、モガの村近くのフィールド。
後の作品にも登場するが、水中戦オミットの結果、地味に地形が変化している。


○シャドーカービィ
星のカービィ 鏡の大迷宮にて初登場。ダークマインドの影響により悪い心を映すようになった鏡、ディメンションミラーによって実体化した鏡の国の住民。メタナイトを映して生まれたダークメタナイトと違い、カービィに邪心がほとんど存在しないため、ちょっとしたイタズラっ子程度の性格。
エンディングにて鏡の国のカービィとして戦うと決めているのだが、トリプルデラックスにてタランザにディメンションミラーを持ち逃げされてたり、ファイターズで大胆なイメチェンと共にめちゃむずプレイヤーの心を折りにきたりと地味に動向が気になる子。スタアラで健在のようなのでタランザに討たれたわけではないようだが。
ちなみにザンなんとかさんにはずんぐりグレーなどと呼ばれている。
能力としてはカービィと同じくコピー能力が使えるので、鏡に登場しないコピーも普通に使わせます。ただしカービィより無口で無表情。
余談だが、デデデがディメンションミラーによって映し出されたブラックデデデ通称ブラデはブラピをパロっているそうで。


○シャドウ・ザ・ヘッジホッグ
ソニックアドベンチャー2より初登場。
プロフェッサージェラルドによって作り出された究極生命体。
姿形がソニックと似ているため、ソニックには偽物だと呼ばれていたが、彼からはソニックの方が偽物と返された。ちなみにソニックそっくりの理由は明言されず。なんでじゃ。
ソニックと同様のスピードを出せるが、彼は足を地面につけることなくアイススケートのように走行する。他にはカオスエメラルドの力を利用するのが目立つ。スマブラのスローになるやつもこれ。
無口でクール。ちなみにブラピとシャドーカービィと違って、声優はソニックとは別の人。



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44話 秘密の卵運搬

 

「こちら、シャドウとシャドーカービィです。あなた達もここに来ていたんですね」

 

「ややこしい名前ね……」

 

「僕達のことを知っているのか?」

 

「情報通ですから♪」

 

 

私の功績ですと言わんばかりに、胸を張る女神。普段から目を引く箇所がさらに強調される。一般的な感性を持つ者ならば、そこに視線がいくはずだが、あいにくここには、そういうことに興味のない者と、そういうことがわからない者、そして本性を知っている者の3種類の人物しかなかった。

 

 

「この際組み合わせはどうでもいい。どのようにこの世界にやってきたんだ?」

 

「あの大乱闘の世界に向かっていたらなぜかここに辿り着いていた」

 

あたい達(クロム以外)のパターンね」

 

 

何者かに襲撃されたクロムとは別の経緯。つまりはただ迷い込んできたと。シャドーカービィは喋っていないが、めぼしい反応がないあたり同じパターンらしい。

 

 

「ここにやってきて彼と出会った。面識はなかったが、この世界の生物とはかけ離れた姿をしていたから、別の世界の存在なのはすぐわかった」

 

「ウホッ、それで一緒にいたんだ!」

 

「ああ、彼も何もわからない様子だった…… わかっていても伝わった自信もないが」

 

「なるほどなるほど、自分より無口な存在に会ったのは初めてだったと」

 

「どうして誘うような登場をした? あの噂も意図して流したものだろう」

 

「あなた、私の扱いに慣れてきました?」

 

 

完全にパルテナをスルーしたあたり、ガノンドロフも相手をするのに疲れていたらしい。シャドウからも似た扱いで、そのまま問答を続けた。

 

 

「ここで謎の男を見た」

 

「……!」

 

「まるで遊ぶように僕達に近づいたり、かと思えば離れて様子を見てきたり。怪しかったから追いかけたんだ」

 

 

謎の男。先程からよく聞くワードだった。特定の一個人を指すとは限らない言葉だが、妙に聞く故に何かのつながりを感じざるを得ない。

 

 

「特徴とかはないのか? どんな武器を使っているかとか」

 

「ローブをつけていたからわからない。身長的におそらく男だが確証はない。武器は…… そもそも攻撃してこなかったからな」

 

 

同一人物だと結び付けられるような証拠はなかった。だが、その徹底っぷりが逆に怪しく感じる。クロムをここに導いた者なら、この世界に来れて当然だろう。

 

 

「話を戻そう。奴は僕が本気で追おうとしても先読みをしているかのように、隠れられたりかわされたりされる」

 

「先読みか……」

 

「それでもどうにか捕らえようと考えていた時、向こうからやってきた。『君たちが求めているのは情報だろう? ある場所に置いてあるから勝手に持ってって。ああ、あと帰る方法はじきに見つかるから安心してね』と」

 

「まあ、確かに怪しいが……」

 

「怪しすぎて一周回って白くすら見えます」

 

「その通りだ……」

 

 

非常に上手くできすぎているし、好きなように動かされている感があって気持ち悪い。

自分達ファイターと彼らが出会うことまで知っていたら、それはもう先読みなんてレベルじゃない。都合よく情報を置いてそれを都合よく教えて。これならば、わざと捕まって情報を吐く方がまだ信頼できる気がする。

 

 

「そいつは何がしたいんだ? 俺たちを騙して疲れされたいのか?」

 

「ただ単純に愉快犯かもしれないわ」

 

「そーかな? それにしては回りくどいような気もするよ」

 

 

話し合っていても何もわからない。

とりあえずその情報にあたってみる以外なさそう、というのは共通の思考だった。

これで本気で愉快犯だったなら、身のある情報はないということで大乱闘の世界に戻ろう。

逆に身のある情報ならば、その真偽はともかく何かアクションを起こせる。

 

 

「そのある場所とはどこだ」

 

「そこが問題なんだ」

 

「…………」

 

 

シャドーカービィが突起だけの手をよその方角に向ける。そこは高い岩棚だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういうことでしたか……」

 

 

そういえば、どうして人を誘導するような誘い方をしていたのかは聞いていなかった。その答えがこれだ。

 

謎の男が情報を置いていたある場所とは、モンスターの巣だったのだ。窪んだ岩棚にフンや骨が散らばっている中、中央に大型のモンスターが居座っている。

少しマダラ模様がついた抱える必要があるほどのタマゴが数個鎮座するところに、あからさまに別物の何かが混ざっている。

卵型のカプセルだ。色や外見は全く違う。緑色の殻に蔦を意識した模様のついたそれはまるで、

 

 

「おドールでポンのタマゴですねこれ。ブラピゲームコイン勝手に使いましたね?」

 

「ストーリー進めたから増えたんだろ」

 

 

なかなかコンプできないアレだ。

直接割るのとぶっ飛ばして割るのの違いがわからないアレだ。

だがしかし、ヨッシーのタマゴの模様を描かれるよりは精神的にはよかったのではないだろうか?

 

 

「それもそうですね。あからさまにあそこに情報がありますよと言ってます」

 

「? アレでしょ? 普通に取ればいいじゃん」

 

「ところがそうもいかなくて」

 

 

そう言って一体の大型モンスターを指差す。

そこにいたのはリオレイアという竜だった。陸の女王とも呼ばれるリオ種の雌個体。卵の番人には適任なのだろう。リオレイアに守ってもらうことを計算に入れた上であそこに情報を置いていたのだろう。

これは確かにあの2人で取るのは難しい。シャドウは自慢のスピードが活かせず、シャドーカービィには大きすぎる標的だ。ハンターと引き合わせて討伐してもらおうとしていたらしい。

 

 

「あのモンスターが邪魔ということか、なんとかして倒せないのか? そもそもおまえ達のことが噂になるぐらいには滞在していたんだろう? その間、ここを離れなかったのか?」

 

「僕達もずっと見張っていたわけじゃないが、見てる間に離れたことはないな」

 

「母は強しと言いまして、特にリオレイアは遠く離れた巣からタマゴが奪われたことを察知してきます。特に暫定黒幕さんが来ていたはずですし、余計に神経質になっているかもしれません」

 

「余計なことばかりしやがって……」

 

 

巣に侵入されたことに気づいて、より警戒を強めているのだ。こっそり情報のみを回収するのも至難の業だろう。

 

 

「ウホッ、それで戦うのは……」

 

「無理とは言いませんけど、あの中身が潰されていいものかわかりませんからね」

 

「どうにかしてあそこから動かせれば……」

 

 

この場で戦ったら、モンスターの巣だけではない。情報だってどうなるかわからない。どうにかあそこから移動させてそのうちに回収できればいいのだが。

 

 

「ぼくたちでこっそり取ってこようか? リュックに入れられそうな大きさだし」

 

 

そこでバンジョーが立候補する。荒れた岩肌を歩くのも慣れているし、何よりカズーイとのコンビがあるので、カバーもしやすいのではという判断だった。

 

 

「誰がいくにせよ囮は必要だろ? 近づけばどう動いても見つかる」

 

「うーん、危険は違いないですが、シャド()、お願いできますか?」

 

「…………コクリ」「ああ」

 

「あ、待ってくださいあなたは」

 

 

バンジョー達のために囮をお願いしようと、パルテナがあげたのは1番すばしっこいシャドウだった。それを受けて屈んでいた状態から飛び出す。

そう、シャド()とシャド()カービィが。

 

 

「グウウウゥゥ……」

 

「あ、あいつ……!」

 

 

そうこの2人、音はほとんど同じなのだ。

何を考えているかわからないシャドーの方が自分だと勘違いしてしまった。パルテナ以外は少し遅れて気がついた。時すでに遅しで完全に2人をロックオンしているが。

 

 

「どうすんのよこれ……」

 

「……大丈夫です。いざとなれば伸ばさない方が乗せて逃げ帰れますよ、バンジョー、カズーイ、無理はしないように」

 

「うん」

 

 

一定の距離を保ちながら、巣を中心に回り込む2つの影。卵を体の下に隠したリオレイアの首はそれを追う。隠れていた場所から完全に顔が背けた時、バンジョーが動き始めた。

 

 

「頼むぞ、バンジョー、カズーイ」

 

「ヘマするなよ……」

 

 

ボソボソと小声で会話しながら、見守る。

シャドウとシャドーカービィの距離も空けながら、さらに注意を散漫にさせる。リオレイアは完全にそちらを敵として認知しており、少し近づいて巣から離した。

足元に転がっている骨に気をつけながら、バンジョーは距離を詰めていく。カズーイがこっそりと警告しているので踏まなくて済むようだ。

 

 

「よし、これなら」

 

「頼む、クロムそういうこというな」

 

 

順調に進んでいく姿にクロムがガッツポーズをする。ついに手が届く距離となって、事件が起こる。

 

 

「おい、バンジョー尻尾が」

 

 

影の2人が慌てて、待機組も異変に気づいた。尻尾を左に振りかぶっている。威嚇のつもりで大きく動かしているがそのまま薙ぎ払ってしまえば、バンジョーは打ち飛ばされてしまう。

とはいえ、待機組が大声を上げるわけにはいかなかった。冷や汗とともに見守るしかない。

あの緑のタマゴモドキに手を伸ばしているバンジョーは気づいている様子はない。

 

 

「(バンジョー……!!)」

 

 

振り回されて、左から右へ薙ぎ払われた尻尾はしゃがんだバンジョーの頭上を掠めていった。リュックからカズーイが顔を出しているので、ギリギリになってカズーイが気づいたらしい。

全員が安堵の息を吐く。

 

 

「ウホッ、あっぶなかった……」

 

 

同じアニマルのドンキーコングが思わずそう口に出した。

 

バンジョーがこちらに顔を向けてサムズアップをする。自分は大丈夫だと伝えるために。

右足だけを後ろに引き…… そして綺麗に骨を踏み抜いた。

 

 

『あっ』

 

 

全員が同じ2文字を放った。

 

 

「グオオオオオオオォォ!」

 

「うわっ!」

 

 

今度は敵意を込めて振り回された尾に、バンジョーは強かに打ちつけられ、高台から落下する。

 

 

「くっそ、結局こうなるか!」

 

「わかりやすくはあるが、手間でもあるか」

 

「バンジョーたちも助けないと!」

 

「ああ、あの緑色のタマゴを守りながら討伐する!!」

 

 

待機組もパルテナ以外飛び出した。

しゃがんでいた彼女はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「今から考えてみれば、このメンバーは脳筋ばかりですし、こうなるのも当然だったかもしれません」

 

 

仕方あるまい。

採取クエストが討伐クエストになってしまったが。

 





○タイトル
MH4での採取クエスト群。Gがついたら更にもう一つ追加された。
クエストによって、違う種族のタマゴを要求される。
名前だけみるとなんてことはないが、依頼人は卵シンジケートなる組織に所属していて、不用意に正体をバラすと刺客を送り込まれたりロケットで飛ばされたりするそうな。
また高難易度になると、大型モンスターが配置されるようになったりとカプコンの性格が見え隠れしている。


○おドールでポン
新・光神話パルテナの鏡のコレクション要素。スマブラのフィギュアシステムみたいに3Dモデルをじっくり鑑賞できるようになる。
ストーリーを進めたり、ゲームコインを使うことでタマゴが入手でき、器に入れて打ち上げるとおドールを手に入れることができる。
ちなみに落としたりすると、割れてタマゴがなくなるので注意。


○リオレイア
陸の女王の異名を持つ雌火竜。スマブラにも登場するリオレウスは同じリオ種であり性別違い。つまりは同種の雌個体である。
子育てが間近になると、巣や卵に関して過敏になり、作品によってはハンターが卵を抱えたことを遠距離から察知して飛んでくる。
登場させた経緯としましては、リオレウスと戦ったんだからレイアとも戦わなくちゃといった軽い理由です。


○シャドウとシャドー
音にすると分別つかない。シャドーくんお茶目ですね。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「ついに来たよ、ゼノブレイド3!」
「随分とはやくきましたね!」
「もっとかかるイメージだったわね!」
「だんだんノッてきたよおおおおおおお!」
「ちょっとおおお! シュルク戦闘時なみにうるさいし! ゼノブレイドは2022年発売ゲームでもまだまだシタッパ?なんだからね! カービィにしか偉い顔できないんだから!」
「インクリング、あんた発売順でヒエラルキーつくってんの?」
「( ゚∀゚)アハハハ八八八ノ ヽノ ヽノ ヽ/ \/ \/ \」
「うっさあああい!!!」
「あの、インクリングちゃんも……」


○作者からのコメント
ゼノブレイド 3を始めたけど風花無双を遊びきれてなくて、中途半端になっている作者です。
最近ふとカービィやりたくなりまして、初カービィだったドロッチェ団を出して遊びました。カービィシリーズで1番簡単とも呼ばれているドロッチェ団ですが、ゲーム初心者だった当時はこれでも死ぬほど大変だったんですよね。アクションゲームという括りなら初でしたし。
それが今ではほんの数時間で100%…… 時の流れを感じます。
まあ、こんな背景があるのですが、読者の皆さまにも色々聞いてみたいなと思いまして、不定期でアンケートを取り始めようかなと考えてます。
こういう人が多いんだみたいなことに興味があるだけで、それ以上何がある訳でもないので、よければ気楽に答えてください。


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45話 一対の巨影

 

リオレイア、猛る。

自らの子達がその殻を突き破って、立派に成長する時まで気を抜くわけにはいかない。

それが母としての使命であり、生命の根源に刻み込まれた義務なのだ。

ただでさえ、知らない匂いが巣やタマゴについていたのだから。

 

 

「おい! あやつについても知っているんだろう、教えろ!」

 

「雌火竜、陸の女王とも呼ばれるモンスターです! 強靭な脚力で主に地上で戦います!」

 

 

ガノンドロフが情報を求める。パルテナのその情報はユクモ村でハンター達や集会所で調べたものであった。さほど時間をかけていないように感じたが、かなりしっかり仕事をしていたらしい。

 

 

「火も吐ける他、尻尾の棘には猛毒があるので気をつけてください」

 

「先にいってよ〜……」

 

 

ファイター達がそれぞれ武器を構えて斬りつけたり殴ったりする中、カズーイに掴まれてバンジョーが復帰する。ぐったりしている彼には珍しく小言を言った。

 

 

「それは失礼しました、はい奇跡」

 

「……ねえ、あんたなら手っ取り早くそいつ倒せるんじゃないの?」

 

 

状態回復の奇跡でバンジョーから一瞬で毒を消す。割となんでもありの神ならば、簡単にあのモンスターを倒せるのではないか。

 

 

「否定はしません。ですが、あの情報が巻き込まれる可能性が否定できません。それに威力を求めるとその分周りへの影響も大きくなります。異世界への干渉は最小限にしませんと」

 

 

そのあたりはシャドウもわかっているようですね、と会話を終わらせる。

人の記憶を少々弄ることはできるが、抉れた地殻や壊れた自然を戻すことはパルテナには難しい。異常として認識されるほどの損害を視野に入れるのは最終手段なのだ。

 

 

 

 

「はあ!」

 

 

スピンアタックでリオレイアの頭蓋へぶつかるが、ダメージはしょっぱそうだ。それほどの威力を持つには助走が足りない。

 

 

「ゴオオオォォ!!」

 

「……!」

 

「はやい……!」

 

 

そしてそのシャドウに向けて三発の火炎弾を放つ。かなりの速度の炎だ。

シャドウ、そして避けた場所にいたシャドーカービィはギリギリ当たらなかったのだが、わかっていても避けるのが難しいと感じるほどの速度だ。

 

 

「あの速さ…… 尋常じゃない!」

 

「ウホッ、気をつけなきゃ!」

 

 

それを見ていたクロムとドンキーコングは、背後を突くべきだと判断し、一気に距離を詰める。しかし、それを見通していたのかリオレイアは低空を飛び始めた。

 

 

「ぐうう……! うおっ!」

 

 

風圧に負けないようにと踏ん張る二人に、サマーソルトの両爪がぶつかる。クロムは両手が痺れるほどの威力をファルシオンで防ぐ。

だが、それでもリオレイアは上をいった。サマーソルトの後に2人を踏みつけて身動きを封じた。

 

 

「「うう……!」」

 

「おい、しっかりしろ! おい女神! こいつの弱点属性!」

 

「龍属性です!」

 

「なんだよ龍属性って!?」

 

「他はあまり効きません!」

 

 

大抵の属性は女神の奇跡で事足りると思っていたが、龍属性などどうしていいかわからない。

唯一どうにかできるのが、今爪で締めつけられているクロムのファルシオンなのだ。

 

 

「あ、頭部を狙うといいですよ。後弾を打ち込むよりは、斬ったり叩いたりする方がいいようです」

 

「そーいうことははやく言えよ!」

 

 

神弓での遠距離攻撃に徹していたブラックピットは肩透かしをくらう。即座に巨塔百鬼の棍をとりだす。速度は落ちるが、今持っている中では1番有効な神器だ。

 

 

「仕方ありませんね、金鎧エアリーズ!」

 

「右から回れ、ガノンドロフ!」

 

「いいだろう、今は乗せられてやる!」

 

 

まっすぐに突き進むブラックピットからの言葉に従い、ガノンドロフはまわり込む。

奇跡によってダメージを軽減し、衝撃と毒を無効化したブラックピットには、尻尾の薙ぎ払いもあまり効果がない。怯まずダメージも薄れている。巨塔とガノンドロフの大剣の一撃が同時にぶつかる。

強烈な一撃が叩き込まれたリオレイアは、この戦いではじめて怯んだ。

 

 

「だいじょうぶ?」

 

「しっかりしろ」

 

「うん、ありがとう!」

 

「助かった!」

 

 

その間にバンジョーとシャドウが足元からドンキーコングとクロムを引っ張り出す。とはいえかなりの脚力で締め付けられた2人のダメージは大きい。

 

 

「くそっ! 動きが封じられてようやくまともなダメージか!」

 

 

踏みつけられた痛みに耐えながらクロムが吐き捨てる。

キーラの手下に、今戦っているようなドラゴンがいたという。あの時はフィギュア化という最後の手段で命の補償はあった。

しかし、今はそれがない。そのせいで実際以上に重い痛みに感じてしまう。長らく忘れていた死の危険。戦争が終わって、大乱闘で雌雄を争って。いつの間にか体はそれを忘れていたのだ。どうすればいい。どうすればあいつを──

 

 

「倒さなくていいんですよ」

 

「……!」

 

「ああ、情報だけを回収すれば──後は逃げればいい!」

 

 

倒さなくてもいい。情報を入手できれば。

シャドーカービィが情報が詰まったカプセルを回収さえできれば!

 

 

「ウホッ! 邪魔はさせない!」

 

 

振りかぶったドンキーコングの拳がヤツの頭部に叩きつけられる。何か怪しげな動きをしていたシャドーカービィへ火炎のブレスをぶつけようとしたところを妨害された。

カプセルをすいこもうとするが、重量があるのかなかなか動かない。先にタマゴの数個が浮き上がった頃、リオレイアの足が灰色の体を蹴り飛ばした。

 

 

「なっ……!? タマゴごとだと!?」

 

「大方、今後の襲撃を防ぐためだろう」

 

 

吸い込みかけた自らの子ごと粉砕する一撃にクロムが驚愕した。

リオレイアがタマゴを持っていくハンター達をタマゴの安全を無視してまで攻撃するのは、盗もうとすると痛い目に合わせるということを身をもって味合わせるためである。

それと同じことだ。生物としては理にかなった行為ではあるが、子供の命を度外視する攻撃を、娘を持つクロムは理解しきれなかったのだ。

 

 

「…………ッ!」

 

 

リオレイアはシャドーカービィを掴んだまま、低空飛行で地面に擦り続ける。ひどい摩擦で全身が焼けるように痛い。

 

 

「流星の奇跡!」

 

「あっ、あんた今まで支援しかしてないと思ったら!」

 

 

星を落とすパルテナの奇跡が、リオレイアの体を穿つ。そのまま飛び立ち、少し距離を取った位置からパルテナを睨む。シャドーカービィはそのまま地面に置いてかれた。

 

 

「仕方がありませんよ、後先考えず本気で戦ったら目立ちます。今のでも危ないです」

 

 

大掛かりな攻撃系の奇跡は、範囲も大きく派手であるため、現地人に見つかることも多い。

記憶を弄ることはできるが、弄る余地もないような衝撃を与えてはダメだ。先の一件はドンキーコングをババコンガなるモンスターだと思っていたからできたことなのだ。

 

 

「……ッ!!」

 

「無事か」

 

 

シャドーカービィの元にシャドウが駆けつける。僅かな時間だが、共に行動していたために余計に安否が気になるのだ。

 

 

「すっぴんじゃ大変なんじゃない?」

 

「ブラピ、神器余ってるでしょう?」

 

「なんで知って……くそっ、後で相応の礼はしてもらうぞ!」

 

 

無能力ではきつい、とのことなので、何かコピーできるものを要求された。やけくそ気味に破掌バイオレットをぶん投げる。

起き上がったシャドーカービィはシールのようなそれを渦を巻くように吸い込んだ。そうして変化したのは青色に赤色のツバがついた帽子だ。

 

 

『なにやら既視感が……』

 

 

某エスパー少年を彷彿とさせる帽子に、ガノンドロフでさえもぽつりとそう呟いた。

揃ってしまった感想に何やらムッとした顔になる。カービィと同じくあまりにも能天気に見られるのは嫌らしい。拗ねてしまったのかふっと姿を消してしまった。

 

 

「わっ、消えて」

 

「グオオオオオ!」

 

「……!」

 

 

突然姿を消したことに驚く暇もなく、あたりに火炎弾を撒きながらリオレイアが着陸する。

近くにいたシャドウを顎の角らしき部分で貫こうとした時、シャドーカービィがエネルギーの衝撃破とともに現れた。

 

 

「戻ってきた!」

 

「エスパーですね、バニシュからのテレポしゅつげんですか」

 

 

超能力を使いこなすコピー能力。

スピードとパワーと共に奇襲性能も手に入れた。

 

 

「すいこみでカプセルを手に入れるやり方は失敗か……」

 

「やはり密かに手に入れるなど俺好みではないな、ねじ伏せてくれる!」

 

「ま、こっちの方がわかりやすくはあるな」

 

「ウホッ、負けないぞ! がんばろう、バンジョー!」

 

「うん、がんばるよ!」

 

「あんた達、本当に頭まで筋肉で……」

 

 

他にこっそり持っていく方法が思いつかない、というかもう面倒くさい。やっぱりファイターたるもの、こっそり採取ではなくド派手に大乱闘……いや、一狩りいこうぜ!

 

 

「……先程も似た流れを見た気がするのだが」

 

「いわゆる天丼ですね」

 

「…………」

 





○タイトル
モンスターハンターシリーズによくでてくるクエスト。
基本的にはリオレウスとリオレイアの討伐。作品によっては亜種が対象になることも。
リオレウスは倒したんだからリオレイアも倒さなきゃと作者は供述しており……


○実際ド派手に戦ったらバレるもん?
モンスターハンターの世界では古龍観測隊というものがあり、気球で生態系を観測しています。強い個体が活動してると情報が送られてきます。それらにバレるのをパルテナは危惧してるんですね。シャドウがカオスエメラルドの力を使用しないのもそれが理由。
ただし、流石に命が危なければ使います。


○龍属性
通常属性は火、水、雷、氷、龍。
龍が忌み嫌う謎の属性、だそうなのでコレ現地人もよくわかってないと思う。だがこれならFEコラボのファルシオンが龍属性武器なのも当然。


○巨塔百鬼の棍
打撃系統最高級の巨塔。ちなみに新パルでは足の速さが神器によって変化するので、コレを使っているブラピはかなり遅くなっている。


○金鎧エアリーズ
新光神話パルテナの鏡 18章にて見つけ出すと解禁できる奇跡。
十二宮の牡羊座。少しの間、属性攻撃無効、受けるダメージ減少、スーパーアーマー。


○破掌バイオレット
誘導性の高い弾を撃てる、破掌のスタンダートな神器。
説明が難しいのだが、片腕に纏って装備すると言うべきか。
シールみたいなもの、らしい。


○エスパー
星のカービィ ロボボプラネットで初登場。
ネスのそれの色が反転した帽子を被るコピー能力。念力の弾を飛ばしたり、瞬間移動できる。
鏡の大迷宮とファイターズぐらいしかまともに登場していないシャドーカービィが使ったことは当然ないが、どうやらファイターズ2で登場が予定されていたコピーとのことで、シャドーカービィで使える可能性があったのかもしれない。


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46話 灯りさす火を求むれど射干玉の

 

密かに情報を回収することは完全に諦めた、押せ押せなファイター達。

情報が入っているだろうカプセルを巻き込まないことだけを注意する以外は普通の戦いと変わらない。

 

 

「もう、仕方ありませんね。ほらほら、キビキビ働く働く〜」

 

「わかったわかった」

 

 

適当にかわすシャドウの背中を押して、オート照準の奇跡で光弾を浴びせる。

ああ、そういえば、弾丸によるダメージは薄いかもしれないが魔法にも近い奇跡や神器の攻撃が効くかどうかは不明なのだ。

ブラックピットはそれを早めに効かないと考えたが、本当はそんなこともないかもしれない。

ただ効かないからといって慣れない肉弾戦をするよりは、今まで通りの戦いもしくは支援に徹するべきであろう。

 

 

「グギュオオオオ!」

 

「っ!」

 

 

ぐるりと360度回転するように、尾で薙ぎ払う。素早く動けなかったブラックピットとガノンドロフがぶっ飛ばされる。

 

 

「おねがい、カズーイ!」

 

「わかってるわ!」

 

 

タマゴミサイルを一発撃ち、カズーイを抱えてタマゴばきゅーんで移動しながら撃ち続ける。

しかし、タマゴを守っているリオレイアにタマゴで攻撃するとは一種の嫌味か何かか?

 

 

「………………ぷっ」

 

「…………」

 

「す、すみません……フフッ……くだらないことを考えました……くくっ」

 

 

変なことを考えてしまい、思わず吹き出してしまったパルテナを、シャドーカービィが呆れた目で見つめている。だが、すぐに仕切り直し、エネルギーの弾を生み出す。

 

 

「ウオオオオオオッ!!」

 

「オート弱点照準!」

 

「…………!!」

 

 

翼の付け根を殴るドンキーコング。飛ぼうとしたリオレイアを妨害し、奇跡の力を宿したシャドーカービィのエネルギー弾が通る。

彼自身が何をするでもなく、弱点の頭部に攻撃がぶつかった。攻撃を振り払うようにかぶりを振った。

 

 

「女神! 奇跡を寄越せ!」

 

「まったく、神使いの荒い人ですね…… テレポート!」

 

「……のッ!!」

 

 

ブラックピットが巨塔でのため射撃を遅れて撃つ中、足の遅いガノンドロフをサポートするため、パルテナが瞬間移動をさせる。突然場所の変わった敵には、かの雌火竜も対処できない。

 

 

ドゴォッ!!!

 

 

大振りに振るわれた大剣が真上から頭部に叩きつけられた。非常に鈍い音が響き、アギトの角のようにも見える突起がポッキリ折れ、頭部の鱗が所々弾き飛んだ。

 

 

「ふんっ」

 

「まって! ここから、危険!!」

 

 

目に見える大きなダメージに不敵な笑みを浮かべるガノンドロフに注意の声がかかる。

ドンキーコングは知っていた。理性なき猛獣は追い込まれた時こそ1番の底力を発揮すると。

 

 

「グオオオオオオオオオォォォォォォッ!!」

 

「ぬうぅぅッ!」

 

「くっ……!」

 

 

一際響く咆哮が。

揺れ続ける空気の振動が。

奮い立つ生命の衝動が。

巨大な弾を打ち消し、空にいた魔王を吹き飛ばし、無意識に片足を引かせた。

 

唾液を垂れ流した口から更なる火炎球。何かに燃え移ることも考慮せず、自分以外の全てを倒すためにマシンガンのごとく撃ち続ける弾幕。

 

 

「反射ばっ……!」

 

「ぎゃあ!」

 

「くっそ! 跳ね返してもまともなダメージにならねえ!」

 

 

パルテナは奇跡が間に合わずに直撃し、

踏み潰されたダメージの大きいクロムはせめてもの防御もあまり役立たず、地に背中をつく。

唯一避けられたシャドウは苦虫を潰し、

バンジョー、カズーイ共に避けきれずにぶつかる。

ドンキーコングの腕を掠め、

宙に投げ出されたガノンドロフは狙い撃たれ、

シャドーカービィのエスパー能力は吐き出される。

ブラックピットは跳ね返しても耐性故にまともなダメージにならない状況に腹が立っていた。

 

 

「けほっ……これじゃヤキトリ……一撃当てられてもお返しに一撃当てられるんだったら勝つ前に負けるわよ……!」

 

「どうしよ〜……」

 

 

バンジョーの返答は間延びしたいつもの調子だったが、確かに焦りの感情が込められていた。

連携でなんとか一撃を加えて、それでもお釣りで反撃されてしまったら、タフネスで劣るこちらが先に負ける。とはいえ、戦況を大きく変えるような何かは──

 

 

「…………」

 

「……使う気ですか?」

 

「見られないことを祈る」

 

 

シャドウがしようとしていることを、パルテナは認知していた。

カオスコントロール。周囲の時の流れを遅くする技。大乱闘でアシストフィギュアとしても行使される技だ。その威力は身を持って味わっている。

しかし、強力な力であるからこそ、規模も大きく現地の人間に認知されやすい。

 

 

「仕方ありませんね。できる限り短くいきましょう。クロム、一撃だけ持たせてください」

 

「……ふぅ……ああ、やってみせる……!」

 

 

回復の奇跡で気力を回復させ、再び立ち上がらせる。属性の関係により、彼の攻撃が1番効く。

 

 

「だが、情報はどうするんだ? 未だ潰されていないのは奇跡だろう」

 

 

ただどれだけ戦略を練っても、最終的な目標はタマゴに紛れた情報カプセルの奪取。

倒したはいいが、潰されてしました。

倒したはいいが、巻き込んでしまいました。

それでは何の意味もない。

 

 

「立て続けにいきましょう。持ち出すまではいかなくても巻き込まれにくい場所に移動させるんです」

 

「あの竜の足止めをすれば……」

 

「大丈夫ですよ、ちょっとあなたが頑張るだけです」

 

「そ、そうか……」

 

「かくかくしかじかまるまるうまうまペケペケ」

 

「なにもわからん……」

 

 

パルテナの作戦。

いつもほのかに笑っているイメージのパルテナだが、この瞬間はほのかなしたり顔に見えた。

 

 

「というわけなので、ブラピとドンキーコングとガノンドロフは適当に攻撃を加えておいてください」

 

「なにがというわけだ!!」

 

「内容が微塵も解せん」

 

「まかせて!」

 

 

三者三様の反応を示す。

かくかくしかじかで全部わかったら苦労しない。適当に攻撃ってなんだ。

 

 

「どういうことだ」

 

「女神がおちゃらけたままってことは、さほど真面目じゃなくてもどうにかできるってことなんだろ」

 

 

しぶしぶという形ではありながらも、ブラックピットは従う。適当に攻撃ということは撹乱ではないだろうか。そう考えた彼はダメージ度外視で神弓シルバーリップに持ち替える。

連射性能とスピードのバランスの取れる方がいい。ムーンサルトを避け、股下をくぐりながら腹部に連射を撃ち込む。空中にいる奴にジャイアントパンチを撃とうとしたドンキーコングが翼で弾き飛ばされた。

 

 

「しかし、この面子で撹乱って…… なに考えてんだか……」

 

 

ブラックピット以外はパワーファイターだ。攻撃速度はそこまででもない。他のメンバーが必要不可欠ということなのか。

 

 

「ふんっ」

 

「グウゥゥ」

 

 

片足をガノンドロフが斬りつけたことで、リオレイアが地に足をつける。双眼が魔王へと動いた。

──この瞬間だけを待っていたのだ。

 

 

「爆炎!!」

 

「グゴオオオオッ!?」

 

 

巨大な爆発がリオレイアの頭部を直撃する。

炎熱の耐性を度外視した威力だけを気にした攻撃。パルテナから完全に意識が逸れるタイミングを待っていた。

 

 

「今です、シャドウ!」

 

「カオスコントロール!」

 

「お、おい!」

 

 

瞬間、爆発にうめいていたリオレイアの挙動が鈍足になる。時空が歪み、リオレイアだけを含めた周囲の時の流れが遅くなる。

周りから見れば、明らかな異常となるそれを使っていいのかという困惑に答えている暇はない。

 

 

「うおおおおおお!!」

 

 

カオスコントロールの影響下から外されているクロムが飛び出す。頭部を通り過ぎ、狙うは尾。

 

 

「これで、どうだッ!!」

 

 

気合だめの奇跡を付与され、火力を可能な限り上げた一閃が、毒のある尻尾を根本から斬り落としていた。

 

 

「グ、ゴ、オオ、オオ、ォォ!?」

 

 

神竜ナーガの牙は、異郷の竜をも殺す威力を持っていた。時の流れが遅いからこそ、より低く聞こえる咆哮。

 

 

「それじゃ、叩き込むわよ!」

 

「…………!」

 

 

カズーイがバンジョーと共におケツタマゴのばくだんエッグを、ボム能力を得ていたシャドーカービィがばくだんを雨の如く放り投げる。

まるで、巣の中にばくだんが産み落とされたように。

 

 

「──解除」

 

「ウガアアアアアッ──!!」

 

 

時の流れが正常に戻り、数多の爆発の衝撃がほぼ一度にリオレイアを襲った。

その最期に断末魔を上げ、己の運命を嘆くように天に咆哮し、そして、沈黙し倒れ伏した。

 

 

「お、おい! これだとあのカプセルは!」

 

「あ、それについては問題ないです」

 

「ちゃんと回収しておいたぞ」

 

 

ばくだん祭りに巻き込まれたであろうカプセルの所在を危惧するが、それは尻尾を斬り落としたクロムがしっかりと回収していた。

筋力のあるクロムでも少し重そうだ。

 

 

「ウホッ! クロム、すごい!」

 

「ありがとう、だが……」

 

 

少し俯いた目を巣の方角に向ける。

母竜も、生まれなかった子供達も、自分達が手にかけてしまった。黒く焦げた巣に撒き散らされた、タマゴの殻が鋭く尖って見える。

 

 

「ふん、なにを今更。例え子が残っていても、親が死ねば長くない命だ。それを是としないならば早く気づくべきだったな」

 

 

尖った言い方だが、正論だった。

そのガノンドロフからカプセルを奪い取られる時もあまり抵抗できなかった。

 

 

「ふんっ」

 

 

大剣の柄で、タマゴの頂きにヒビを入れると、強引に殻を剥いでいく。

 

 

「さて、いったいなにが……」

 

 

頭から剥がされたタマゴ型のカプセル。その中にあったものとは。

 

 

「……これは」

 





○タイトル
MH4Gに登場するストーリー限定クエスト。
リオレイアの捕獲が目標なのだが、看板モンスターやメインモンスターが突然乱入してくる、俗に言うトラウマクエスト。
セルレギオスが乱入してくるのだが、この近辺に見られないとのことなので退却が命じられ、強制的にクエスト失敗になってしまう。
歴戦のハンター達はこうした乱入してくる奴らを倒そうとするみたいな血気盛んさを見せるのだが、このクエストは戦わせてくれすらしない。

射干玉(ぬばたま)はヒオウギの実のことで、夜や闇などにかかる枕詞。そういえば五七五になっている。


○オート弱点照準の奇跡
スマブラでもおなじみオート照準は、狙いをつけずとも自動的に狙いをつけてくれる奇跡。
だが、オート弱点照準は敵の弱点に狙いをつけてくれる奇跡。こちらの方が強い分、よりコストがかかる。


○カオスコントロール
スマブラでもアシストフィギュアで使ってくれるシャドウの技。解説は本編通り。
『カオスコントロールはカオスエメラルドを持っていないと使えない』と公式で明言されているはずだが、シリーズ内では何回かカオスコントロールを使用している。
スマブラでは、SPからカオスエメラルドを使用しているが、逆に言えばそれまで使用しているようには見えない。
ということなので、伝家の宝刀『明言しない』を使用しています。もしかしたら手に持っていないだけで持ち運んでいるのかもしれません。


○ボム
カービィのコピー能力。スーパーデラックスで初登場。元はソードのリンクモチーフの帽子を水色にしたかのようなデザインだったが、Wiiから三角のパーティハットのようなデザインへ。
その名の通りバクダンを投げて攻撃する能力で、仕掛けたりボウリングしたり割と多彩。
ディスカバリーでは、バクダンに浮き輪をつけることで水上でも使用可能という一芸を見せる。


○作者からのコメント
なんか今週は色々ありすぎて落ち着きません。
・ポケモンSV新情報
・スプラトゥーン3新情報
・グルメフェス発売日決定
・アニメカービィBlu-ray化決定
あとなんかキングオブファイターも新作出るとか出ないとかだし、もう追いつかない。やべー年だぜ、2022……
一つ一つ説明していくと、ウパーのリージョンフォームという2世代を攻められているところから若干の不安を覚え(ランターン未だ未内定)、インテリア要素やコーディネートの登録等遊びやすくなってる3作目に興奮し、Blu-ray化に撃沈しました。ゼノブレイド3も実は佳境で今週は興奮しっぱなしです。
誰か助けて。


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47話 英雄の証

 

 

「……これは」

 

 

カプセルをこじ開け、目に映る中身。それは。

 

 

ちょっと遅れるよ! (^人^)必ず教えに行くからほんの少しだけ待っててね! ルネより

 

 

こんな置き手紙だった。

 

 

「「ふっざけんなぁあー!!!」」

 

 

鳴り響く怒号。翼を持つ者達のためた怒りが遂に爆発した。

 

 

「これだけやっておいて!? なんなんだコレは! 普通何かはあるもんだろ!!」

 

「俺たちはおちょくられてたのか……!? くっ、よく調べれば中身はほとんど重りじゃないか!」

 

「…………流石の僕も怒りを抑えきれない。それとも容易に信じた僕達が愚かだったか」

 

 

もはやどんな気持ちでこれからどうすればいいのかわからない。少なからず怒りで視野が狭くなっている中、のほほんとバンジョーだけは紙を両手で持って言った。

 

 

「このルネって人がシャドウとシャドーに会いにきた人かな?」

 

「うん、そーだよ。名前のややこしい影影コンビに会った会った」

 

「あー、そうね。じゃあなんでこんな回りくどいことする必要があったのよ」

 

「だって、パパッと教えてもらうだけじゃ盟友が退屈で死んじゃうよ。面白くもないし試練的な何かがあった方がいいでしょ」

 

「否定はしませんが、当事者からすると酷いの一言ですね。──それで、あなたがルネですか?」

 

「あったりー」

 

『……えっ?』

 

 

あまりにも自然に入り込むから、しばらく流していた。聞いたことがあるようでない声に気づいたのはパルテナが話しかけてからだった。

 

 

「なっ……! 貴様、何者だ!!」

 

「だからルネだって。おじいちゃん、さっき言ったでしょ? 痴呆の気?」

 

「年寄り扱いするな……!」

 

「その姿は…… まさか!」

 

 

大魔王をもおちょくる人物の姿は。剣の一振りをかわし大きく距離を取るその姿は。

瞳の色こそ赤色に変わっているものの、クラウドそのものだったのだ。

 

 

「あ、うん。クロムとははじめましてじゃないね」

 

「イーリスで襲ってきたのはお前だったのか!」

 

 

シャドウとシャドーカービィの前に現れた人物。クロムを襲った人物。

それらは全てこのルネという人間の仕業だったのだ。

 

 

「どうどう。僕は戦いにきたんじゃないよ。色々教えにきたんだってば。本当はさ、ここにはあの目立ちたがり屋…… 同志というか仲間というかそういう奴の1人がここの担当だったんだけどさ。アイツサボったし」

 

「……他に誰が」

 

「でもさ、僕も()()()()()用意しなきゃいけなかったし、ちょっとプププランド水没させなきゃいけなかったし」

 

「……!!」

 

「その他諸々もあったしで、プライベートと自分の仕事両立しながらサボり魔のカバーとか無理無理。だからまああんな回りくどい方法になったのは許してちょー」

 

 

プププランドを水没?

こいつが? こんな底知れない男が?

でも本当ならば。

シャドーカービィは誰よりもはやく警戒を強める。自分の本体は、彼の住まう世界は無事だろうか?

 

 

「お前達の目的はなんだ。どうしてクラウドの姿なんだ。そして、なにをしようとしている」

 

「自由に質問していいよ、ってわけじゃないんだけど」

 

 

ま、いいかとあっけらかんと笑う。

クラウドと同じ顔だというのに、別人なのは表情で簡単にわかる。

 

 

「僕達はあれ、キラダズが残したボディに取り付きました。以上」

 

「以上って……!」

 

「しゃーないでしょ! 君達にとっては初めて聞いたことでも僕や盟友にとっては4度目なの!!」

 

「なんなんだその具体的な数字は……」

 

 

ぷくーと頬を膨れさせるその仕草は親しみやすさが含まれるも、何かが心を許すことを拒否している。

絶句し、呆れ、それでもどうしてここまでの忌避感を感じるのか上手く言葉にできない。

 

 

「それで目的だけどさ、彼らは安定が欲しいのさ。彼らは自分だけの姿体が欲しかった。キラダズが残したボディはいい条件だったよ」

 

「ですが、ファイターである私達を元にしてつくられたものである以上、当時のスピリットと同じようにフィギュア化するまでの肉体でしょう」

 

「ま、そうなんだけどさ、別に君達が生まれついてそうって訳じゃないでしょ? マスターハンドが定めた世界の理だ。その理を掌握してしまえば、停止させてしまうのは容易い」

 

 

片腕を伸ばし、完全に捕らえたと語るように何もない場所に握りしめる。それでも、確実に奴らが捕まえているのだ。

 

 

「なぜそれが僕達がここにいること、そして彼を襲ったことにつながる?」

 

「人の話最後まで聞きなよせっかちさん。そんな訳でフィギュア化のルール等、大乱闘の世界の理は完全に掌握したから、例えあの世界に戻ってもフィギュア化による死亡回避はできやしない」

 

「私達が離れている時にそんなことが起きていたのですか……」

 

「ただ掌握はできても肝心のマスターハンドには逃げられた。彼を滅ぼさない限り、体を失う可能性は消すことはできない。」

 

「……なんとなく見えてきましたね」

 

「どこかのファイターの元に逃げるって言ってたから、とりあえずスマッシュブラザーズを調べるか襲ってフィギュア化するなりファイターの力を使えばソイツの元にマスターハンドがいるってこと。つまり、彼らの目的はマスターハンドの抹殺

 

「要するにあの創造主を消すために探しているのだろう、そして戦いやすくするために我らを散り散りにした」

 

「ピンポーン! 他のみんなもこんな風にどっかの世界で襲われてると思うよ、まあ大乱闘の世界にとどまってる人たちは、そこにそのままいるだろうけど」

 

「ウホッ、じゃあマスターハンド、オレの中にもいるかも?」

 

「あ、君は違うよ。ある程度は()()()裏技を使って調べてたから。ただそれでも見つからないからある程度の範囲外にいるんだろうね…………まあマスターハンドにあの子を薦めたのは僕だけど」

 

「は?」

 

「えっとだから、逃げるならあの子がおすすめだって、僕がマスターハンドに薦めたんだって」

 

「お前の所為かよ!」

 

 

さらりと重要なことを語るルネ。

怪訝に思ったゆえに踏み込むのはカズーイだった。

 

 

「で? あんたの目的はなによ」

 

「さっき言ったじゃん」

 

「ふん、それはあくまでお前の所属している組織の目的であってお前の目的ではない」

 

「ま、意外に聡いしわかるか」

 

「えっ、どういうこと?」

 

 

ドンキーコングが驚いている。頭が切れる面々は既に気づいているのだ。

 

 

「俺たち全員ではなく、クロムのみを襲った理由が不透明だ。それは組織の目的には繋がらない」

 

「僕達の前に現れたのも、わざとらしくこんな問答の時間をつくっているのも、さっき言ったマスターハンドと関わっていたのも、全体の目的にはつながらない。個人を襲ったり、かと思えば手詰まりになりかねない僕達に手を貸すように動いたり。結局君はどっちの味方なんだ」

 

 

どっちつかずに双方に手を差し伸べるような真似をして、彼はなにをしたいのか。

 

 

「僕個人の裁量で動く行動は全て盟友のためだよ。それ以上でも以下でもない」

 

「盟友?」

 

「そう、盟友。限りなく側にいて、とても遠くにいる」

 

「……何言ってんだコイツ?」

 

 

ルネの語る、盟友なる人物。

全ては盟友のためという圧倒的な個人的欲望。

確かに敵の組織は一枚岩ではなかったが、それでもまだルネの目的は不透明だ。なんせ盟友がどのような人物かすらわからないのだから。

 

 

「盟友さんのお名前! 気になりますね、教えてもらえませんか? 絶対誰にも言いませんから〜♪」

 

「君は核心つき過ぎてちょっと不満だから却下」

 

「え〜…… その核心も気になりますね」

 

「ふふっ、まあ君ならいずれわかるかも? でも、今はここまでにしようか。タイムオーバーだ」

 

「……!!」

 

 

シャドーカービィが1番に気づく。こちらに迫る数人の足音。軽めのそれは人間のもの。

やはり大きな力を行使するのを、誰かに気づかれてしまったのか、それともただの偶然か。

 

 

「という訳で、さいなら」

 

「……待てッ!」

 

 

別れを告げながら後ろに下がるルネに、捕らえんとかなりの速度でシャドウのキックが迫る。

 

 

「ふああ…… いくら速くてもどのタイミングどんな速度でどこにくるかわかってれば防ぐのは簡単でしょ」

 

「何!?」

 

 

しかし、簡単に大剣で受け止めてしまった。欠伸までしながら。逆に弾き飛ばす。

 

 

「そーれじゃっ、 ここから離れるのをお勧めするよー」

 

 

それだけを言い残すと、彼は一瞬の間に消えてしまった。そして、

 

 

「確かこの辺りで何か変なものが……」

 

「しまった! ここの人間か!」

 

「……もうここに残る理由はありません。撤退します!」

 

 

こちらへまっすぐくる原住民に対し、パルテナは大乱闘の世界へ戻ることを告げる。

 

 

「「ええ!?」」

 

「おい待て、そんないきなり」

 

 

ブラックピット、

バンジョー、カズーイ、

クロム、

ガノンドロフ、ドンキーコング、

シャドウ、シャドーカービィ、

 

全員いる。

 

 

「行きます!」

 

 

そこには雌火竜の骸と光を知らずに死んでいったタマゴ達が残される。

 

その世界の行く末を、ファイター達の誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

女神サマ、

君は、君達は気づいているのかな?

この、視線に。

 





○タイトル
初代モンスターハンターのメインテーマ兼エンディング曲。今となってはモンスターハンターシリーズを代表するテーマ曲。言ってしまえばカービィのグリーングリーンズやドラクエの序曲みたいな扱い。
多くのアレンジ曲やフレーズの入った曲もあり、モンスターハンターを遊んでいなくても知っているという方も多いだろう。


○現在の情報まとめ
・この事件の黒幕はキーラ、ダーズの生み出したボディを自分の肉体として再利用した集団である。
・既にファイターとしてのバランス調整やフィギュア化のシステムは停止済み。黒幕側がフィギュア化による分離を防ぐために、現在はマスターハンドを探し、抹殺を目論んでいる。
・そのために各々の世界から大乱闘の世界に帰る時点で、なんらかの方法で別々の世界へたどり着かせている。
・一部ファイターはルネ曰く裏技を使用して調査済み。
・ルネには、集団とは別の個人的な目的がある模様。

抜けがあったらこっそり追加しておきます……


○今章の裏話
最初の想定では、アオアシラとリオレイアの間にもう一戦モンスターとの戦闘を入れるつもりでした。そもそも今章が戦闘特化の章にするつもりだったんです。
ただ、モンスターハンターほぼ未プレイの状態でしっかり書くのは無理がありました。
文字の資料はあるんですが、視覚的な資料が中々ないんですよね。孤島がどんな場所なのか、通常種のリオレイアがどんな動きをするのかわからず、途中から諦めて捏造も入っています。なので歴戦のハンター様達から石投げられないかなと不安になってます。
どっかで書いた気がするんですが、私移動しながらカメラ移動したい派なんですよね。キーコンフィグ弄ればどうにかなるんですかね?

その他、プププランドの章でコピー能力が使えなかった反動が今章にきてるとか、当初は別にルネが実際に登場することはなかったとか非常に細かい裏話はあります。
一番の裏話は舞台をモンスターハンターにした理由です。リオレウスと戦ったんだからリオレイアとも戦うべきやろという浅い理由ですが。
あと今章に限ったことじゃありませんが、悪役の立ち回りが難しい……


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「うー… 日本のホラーはジメジメしてるんだよな… ガキ達の口車に乗せられるじゃなかったぜ…」

ゴロゴロ…

「ん? なんだこの青いボール? どっかで見たことあるような…」
「やあ!」
「アバっ!? ババババ… ロック、マン、首、首、」
「外れるんだ、これ」
「ギャアアアァァァ!!!?」

「はっ!? 夢か」
「ケン、うるさい」


○作者の気まぐれコメント
ゼノブレイド 3クリアしました。そこそこ寄り道して大体85時間。
なんというか、こういうエンドになるんだねといった感想です。
しかし、クラスをタイプ分けしたことでパーティ編成はやりやすくなったし、戦闘システムはとても遊びやすくなってるしでシステム面に文句のつけどころなしです。
そのうち活動報告にネタバレありの感想を投げるかもしれません。


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The Legend of Zelda A Link to the Past “Doppel”
48話 すばらしきこのせかい


 

 

 

地球は丸くて、青くて…

まあ、そうかもしれないね。

でもそうじゃないかもしれない。

 

 

そうに決まってるだろって?

君達宇宙飛行士にでもなりたいのかい?

 

 

 

別になんでも構やしないさ。そうかもしれない、だからね。そう、なんでもいいのさ。大多数の人にはね。

 

 

仮に君達は一室の部屋しか行動できないとしよう。更に君達は外に出たことがないし、知り合いもいない。外という存在を知っているだけ。

ほら、どうでもいいだろう? 行こうとも思わない場所がどうなっていたって変わらないのさ。

 

 

今この瞬間に地球の裏側では誰かが死んでいるかもしれないけれど、それを知ったところで君達は右行く道を左に曲がる?

 

 

知らないところで知らない人に何があったって毛ほどの影響もないよ。

 

星に篭る人にとっては地球が四角かったって平面だったってどうでもいいさ。

 

 

例え、君達の住む街がフィギュア用のプラスチックだったとしても満足に生きていられればそれ以上を望まないさ。

 

 

まあ、今までの例は、全てどうでもいい存在に対するアンサーなんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人の後ろ姿。長い金髪の誰かが目の前にいる。

驚くほどに他の風景や音は微塵も頭に入ってこない。

 

 

あなたは誰ですか。

 

 

自分が発したはずの声は音にもならなかった。

まるで音という概念が全てなくなってしまったかのように。

 

この焦燥感の正体はなんなのだ。

どうしてこうも焦りが生まれるのだろうか。

 

 

……! 振り向く……?

 

 

その誰かがこちらへ向く。

だが、間近に顔を確認することはできなかった。確認する前に、引力のようななにかの力によって引き離されたのだ。

 

 

駄目っ……!!

 

 

それによって何かをなくしたような気がして、手を伸ばす。

 

なにをなくしたのかもわからないくせに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その空は自分の世界のそれとは似ても似つかわない、不安感を感じさせる朱色だった。

天を恨み、憎んだところでなにも変わらない。

それはわかっているのだ。だが、目にしただけでわかる大きな異変が、その正反対の空の色なのだ。

 

 

「プリッ」

 

「ん、どうしたの?」

 

「マルスー!」

 

「少しいいか?」

 

 

空を見上げていた青年マルスが何かに気付いた足元のプリンに習い、2人の友の声に視線を下げる。自分を呼んでいたのはピット、そしてパワードスーツを脱いでいるサムスだった。

 

 

「どうしたの?」

 

「南の方が少々手つかずだから捜索に乗り出そうと思ってな」

 

「それはありがたいんだけど…… 大丈夫? 君達2人働きっぱなしじゃないか」

 

 

その体調を心配する。なんせこの2人はこの世界であってからあちこちへ足を運んで、同じように迷い込んだ人々をここに集めている。

マルスには不安を抱える人々を導き寄り添ってほしいという思いからであったが、その所為でピットとサムスに負担がかかっている。

 

 

「だいじょーぶだいじょーぶ! 2人だからなんとかなるし!」

 

 

適材適所と言えば聞こえはいいが、それを任せられる人材が少ないのだ。

 

 

「わかった。でも無理はしないで、すぐに戻ってきてね」

 

「わかっている」

 

 

マルスには2人を送るしかない。

最初はスマッシュブラザーズでなんとか解決しようと思っていたが、そろそろ限界だった。

 

 

「プリィ……」

 

「ねえ、プリン。少しいいかい? クリスを呼んできてくれないかな。頼みたいことがあるんだ」

 

「プリ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞼はとても久しぶりに開いたような重さを感じて、やたらと体がだるかった。

 

 

「……んっ……ぅっ……」

 

 

単語にもならない声が喉から漏れ、なんとか体を起こした。

 

 

「あっ、起きたかい?」

 

「えっと…… あなたは……」

 

 

少しぼうっとした視界で、呼びかけた声の主を確認する。その剣を、その魂を、私は知っている。

 

 

「リン……ク……?」

 

「んー…… 間違ってはないけどさ。君の知ってるリンクとは別人なんだよね」

 

 

立てる? という声に従って差し伸ばされた手を掴む。体を動かしたことでようやく意識が完全に覚醒した。

 

 

「あなたはもしかして……」

 

「僕はリンク。でも君の知るリンクじゃないよ。君も、僕のよく知る姫さんじゃないけど」

 

 

素朴な笑顔が逆に神聖なものに感じる。緑の帽子と緑の服を着込んだ、リンクという名は。

トライフォースを使用し、闇の世界とそれに伴う犠牲を消した勇者。

 

 

「……そうですよねっ!! あなたは違う時間のハイラルの勇者!! 間違いありません! 色々と聞きたいことがあるんです!」

 

「ええっ!? えと…… 後でいいかな?」

 

 

グイッと顔を近づけてくる少女。

彼女はゼルダ姫。ハイラルの英傑を導き厄災ガノンを封印した少女。ボロボロのまま100年もの間戦い続けていた彼女も、今は動きやすさを重視した綺麗な服に身を包み、金糸は短く切り揃えられている。

研究者としての素を取り戻した少女は少々周りが見えなくなることがある。頬の紅潮がはっきりとわかるほど接近されて、リンクはタジタジした。両手を使って距離が近いとジェスチャーで促す。それに気づいたゼルダは、はっとしてすぐに離れた。

 

 

「ごめんなさい! 私ったらつい……」

 

「あー、大丈夫。ちょっと驚いただけだし。僕達、ここで一緒に倒れてたんだけど何か覚えてない?」

 

「倒れて……? どうして」

 

 

今が初対面の人と同じ場所にどうして倒れていたのだろう。ゼルダは記憶を遡っていく。

確か大乱闘の世界を通じて別の世界の文明や文化を調査しようと、リンクを置いて先に向かったのだ。そこから確か。

 

 

「金色の長髪の方を見て。そうしたら気を失った…… といったところでしょうか」

 

「……大体、僕と一緒だね」

 

「そうなのですか!?」

 

 

ここに共通点があった。

気を失う直前に見た謎の人物。それがなにかあるに違いない。

 

 

「その方が何か知っているのでしょうか? この辺りにいるのでしょうか……」

 

「いる……かもしれない……けど」

 

「けど?」

 

「そもそもここは……」

 

「……! これは一体……!」

 

 

ゼルダの目に入ったのは、朱色の明らかに異様な色の空。意識を飛ばしていた間になにが起きたというのだ。

赤い月の日とも違う。あれが恐怖ならこちらは異質。嫌いな食べ物を飲み込みたくないような受け入れがたい気持ち悪さと似ていた。

 

 

「……闇の世界」

 

「えっ?」

 

「なら……」

 

「知っているんですか?」

 

「えっ…… うん、ここは君が住む世界じゃないし、大乱闘を娯楽として楽しむような世界でもない。世界の裏側にある()()()()……! もうなくなったはずなのに……!!」

 

 

天を睨む。

異質さも気持ち悪さも。リンクのそれらはゼルダのよりも大きかったのだ。

 

 





○章タイトル
ゼルダの伝説 神々のトライフォースの英語版のタイトル。しかし、Doppelの意味とは……?


○タイトル
2007年にスクエニから発売されたDSソフト。
Switchでリマスターされた他、続編となる『新すばらしきこのせかい』も発売されている。
DSソフトのリマスターをしてくれるのは、大変だろうにすごく嬉しい。
渋谷の雑踏の中、目覚めたネクは自分のことが名前以外なにも思い出せなくなっていた。
七日間を生き残るためにパートナーと共に死神のゲームに挑む。
開発スタッフがKHやFFの制作スタッフなため、ディズニーでもFFでもないのにKH3Dでゲスト出演している。


○リンク
こちらは神々のトライフォースのリンク。
拙作の前作ではスピリットなのにそこそこ活躍している。
基本的に神トラのアイテムと同じものを所持しているが、マスターソードは森に返しているので未所持。ぶっちゃけこれ以上増えられても困る。神トラゼルダは姫さん呼びだが、ブレワイゼルダはゼルダさん呼び。


○ゼルダ
こちらはブレスオブザワイルドのゼルダ。
続編の短髪をイメージしているが、時系列的には、ブレワイ後続編前。これで続編で髪切る描写が出たら涙が出てくる。
厄災の黙示録でもないので、シーカーストーンでの戦闘参加はできないが、活発的なので……


○作者の気まぐれコメント
近くの映画館でソニック続編放映しない。泣きたい。
癒しはスプラトゥーン3前夜祭。バケツか新ブキあたりでチョキ派なら作者の可能性が微レ存です。

あと活動記録にゼノブレイド3のネタバレ込み感想を投げたので、ネタバレかまわんって方は是非目を通してください。


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49話 せめて1ボムでも潰させないと〜

 

 

「闇の…… 世界……」

 

 

リンクが語ったその言葉を、ゼルダは無意識に呟いていた。

 

 

「ゼルダさん、離れないで。危険だからといって君1人をここに置いていくほど人でなしじゃないけど、かといってこんなところに飛ばされておいていい子で待っていられるほど大人しい子じゃないんだよ」

 

 

服さえ変えてしまえば、どこにでもいそうな青年。彼から感じる入り混じった感情に戸惑うしかない。

怒り、焦り、戸惑い。柔らかな印象を保っていられるほどの余裕もないのだ。

 

 

「駄目と言われてもついていきます。どこに行くべきかもわかりませんが、動かなければ時間が過ぎていくだけですから」

 

 

だからこそ、放っておけなかった。

追い詰められかけている現状に少しでも手を貸してやりたい。2人ともこの世界から抜け出すために。

 

 

「ここは貴方が知っている世界と類似しているのでしょう? ちょっとしたことでもいいんです。なにか心当たりはありませんか?」

 

「まー、あるかないかでいったらあるけど……」

 

 

そう返しながらリンクはなにかを取り出す。それは一見なんの変哲もない鏡であった。

 

 

「……ダメか、なにも起きない」

 

「それはなんですか?」

 

「僕の知ってる闇の世界なら、コレを使って行き来できるんだけどね……」

 

 

光の世界と闇の世界を行き来するためのマジカルミラーは通用しない。ため息を吐きながらそれをしまう。

 

 

「とりあえず、人を探してみませんか? 私たちと同じ境遇の方がいるかもしれません」

 

「そうだね、ここはどのあたりかな」

 

 

どうやら2人は建物の入り口あたりにいたようで、外に出ると見た通り禍々しい色の空が出迎える。中を捜索する気は起きなかった。

風景は謎の建物から大きく変わる。大きな水溜まりようなものに背の高めな草。誰もいないそこは一種の未開拓地帯のようにさえ思えた。

 

 

「湿地のようにも見えますが……」

 

「この場所、水の祠あたりか」

 

 

その場所をリンクは知っていた。ここはリンクの記憶と寸分違わぬ世界だったのだ。

 

 

「人の集まりそうな場所はありませんか?」

 

「うーん…… 一応村みたいな場所はあるけど、そもそも人が住んでるような世界じゃないからな。とりあえず行ってみようか」

 

 

リンクを先頭に2人は歩き出す。動かなければなにも始まらない。

 

 

「足元気をつけて…… でもスカートじゃないから大丈夫かな」

 

「はい、ハイラルを歩き回った経験もあるのでこの程度問題ありません」

 

「……ぶっちゃけちょっとやりにくい」

 

「……否定はしませんけど」

 

「ちょっと不愉快させちゃうかもしれないけど、君の知るリンクの元に送り届けるまでは我慢して……ッ!」

 

 

周りにひっそり隠れた気配に、リンクは抜刀する。ゼルダを背後に回し、剣を構えた。

 

 

「……でてきたら?」

 

「えっ」

 

 

その言葉を合図に飛び出してきた何者かを一突きにする。草陰や水辺に潜んでいた敵。襲いかかってくるまで全くわからなかった。

 

 

「これは……!」

 

「ゼルダさん、後ろにいて。どれだけ潜んでいるかわからない……!」

 

 

リンクの右を狙って飛び込む敵を弾き飛ばし、敵を蹴り飛ばす。空中で体勢を立て直して戦闘体勢を崩さないその姿はピチューのそれだった。

 

 

「これは……! キーラの!」

 

「キーラか…… それともダーズか? 確かにこの凝った本物そっくりの世界にファイターから生まれたボディ。状況は似てはいるけど」

 

 

そこまで言って口を閉じる。

確かにキーラとダーズ、そしてスマッシュブラザーズの戦いの時と状況は似ている。

しかし違う点もある。ボディに宿る精神はないし、ファイターではない2人も無事。要するにスピリットの存在がないのだ。

それが気になってしまう。自分達をここに連れてきた存在は、キーラかダーズか。はたまた別の誰かか。それとも2人の意識が途切れる寸前に見た謎の人物なのか。

 

 

「考えるのは後にしよう。まずはここを切り抜ける。もっと下がってて」

 

「でも……!」

 

 

かぶりを振って、リンクはさらに集中する。

どんなに考えを巡らせても、ここで果てればなにも浮かばなかったのと同じ。草から水辺から。続々と増える敵はゼルダにある決意をさせるのだった。

 

 

「私も戦います! なにか貸してください!」

 

「うえええ!? ちょっとどこまさぐってんの!?」

 

 

リンクの鞄に手を突っ込み、ガサゴソと何かないかと探っている。鞄が揺れるわ、肘が脇腹に当たるわでくすぐったくなってきたところでゼルダはある一つのものを取り出す。

 

 

「あ、これは……」

 

「ひいい…… それファイアロッド……」

 

 

それは赤色の杖だった。先に宝玉のようなものをつけたそれは、魔力を使うことで炎の弾を飛ばす力を持つもの。

 

 

「こうですかね…… わああ!?」

 

「ちょっと!? あんまやたらめったら使わないで!」

 

 

1人の敵に向かって振り翳してみると、杖の先から炎の魔法が飛び出す。予想以上のスピードと大きさにゼルダはびっくりして尻餅をついた。

 

 

「お、思った以上に強かった……です……」

 

「はあ…… 使うなとは言わないからさ、無駄撃ちしないでね。草に燃え移っちゃうから」

 

「は、はい……」

 

「でもそうか…… バラバラだった僕達が一緒にいた以上、今度は離れ離れにならないとも限らないか……」

 

 

少し考えを巡らせながら、ブーメランを投げつけることで敵を怯ませた隙にアイテムを取り出し、ゼルダに渡す。

 

 

「これ、貸してあげる。後で返してね」

 

 

リンクが渡したアイテムは、先のファイアロッドに近い感覚で使えるアイテムだった。

ファイアロッドの色違いのように見え、敵を凍らせる力を持つアイスロッド。

ブロックを生み出したり、レール上に足場を作り出すソマリアの杖。

自分を守る光を発生させるバイラの杖。

 

 

「はい…… どう使うのですか?」

 

「実戦で覚えて!」

 

「ええっ!?」

 

 

敵の前で長々とアイテムの説明をしている暇はない。わかってはいるのだが、理論派のゼルダはどういう力を持っているのかぐらいは知りたかったのだ。

どこからか飛んでくる水を盾で防ぎ、細剣と鍔迫り合いをはかる。ただ付き合う義理はないと蹴り飛ばした。腰をついたそいつをマジックハンマーで叩き潰す。

 

 

「実戦って言われても…… きゃあ!」

 

「うおっ!?」

 

 

出鱈目に撃ったアイスロッドが敵数体を地形ごと凍てつかせる。危うく射線上のリンクまで凍りつくところであった。

 

 

「もー!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

「まあいいけど、さっ!!」

 

 

足を折りたたみ、しゃがむように避ける。挟むように殴りかかった敵の膝付近を回転斬りで斬りかかった。

さらに振り下ろしてくる大剣に、バク宙でゼルダの近くに戻りながら回避する。見回してみるが、ざっと20近くの敵がいる。

燃えている敵も、さっき足を斬った敵もまだ動ける。冷や汗が流れ、剣を握りなおした。

 

 

「実際2人でも手焼いてるのに1人で戦ってたらどれだけ時間かかるかわかんないし……」

 

「私たち2人を相手するには多すぎます。おそらく警邏や見回りのための敵が集まってきたんじゃないでしょうか」

 

「だとするとこの一角だけでこの規模か…… 相手は相当多いよね。出し惜しみしてる余裕ないかな……

 

「どうかしました?」

 

「んー? なんでもないよ。ただこんなことになるんだったらマスターソード持って来ればよかったなって」

 

 

ほんの観光と応援のつもりだったのだ。

魔獣ガノンとアグニムを倒してから不必要になった聖剣はあるべきところに戻している。

その聖剣があればと感じるが、ないものねだりをしても仕方ないのだ。

 

 

「そうですよね、私がいるより彼女がいた方が……」

 

「か、彼女? 姫さんのこと?」

 

「いえ、あの…… 足手まといなのかなって」

 

「なに見て言ってんの? 十分戦力になってるって」

 

「(……ですが)」

 

 

不安なのだ。あの時、100年前に瀕死のリンクが文字通り生命を削って守ってくれた時。

何の力もなかった当時のゼルダをガーディアン達から守ってくれた時。

その時と変わっていない気がする。

だって、今目の前にいるリンクもゼルダを気にしながら戦っている。

守られずとも自分で守れるように。そんな風になりたくて。その覚悟を決めながら、前に踏み出そうとする。もっと前に、敵の狙いが分散するように。

 

 

「ええ? ちょっと」

 

「…………」

 

 

使い方は大体わかった。次は恐る恐るや偶然ではなく、完璧に狙いをつける。ロッドを握る力が強くなった時だった。

 

 

「はあああ!!」

 

「えっ!」

 

 

突然矢が雨のように降り注ぐ。それがリンクの持つような矢ではなく、実体を持たない光弾のようなものであると2人は見逃さなかった。スペシャルなアタックだった。

射抜かれたボディ達はその多くが倒れ、溶けるように形を無くした。それを射った者の気配を感じ、リンクは神殿の天辺を見上げる。ゼルダも声を出した時に遅れてそちらを向いた。

 

 

「混沌招く傀儡たちよ! 音にも聞け、その身に刻め! 光の女神パルテナが使いピット!ここに見参!!」

 

「…………」

 

「…………」

 

「真面目にやれ!」

 

「あでっ!?」

 

 

ゼロスーツサムスに思いっきり後頭部を叩かれ、神殿の外壁を滑り落ちる。

 

 

「あばばばば」

 

「きゃ!」

 

 

頭から落下した先は2人の前だった。

 

 

「さあ、真打の登場だ!」

 

 

泥パックの顔を上げてボディ達に言い切った。

 





○タイトル
東方紅魔郷 霊夢ルートの六面中ボス十六夜咲夜のセリフ。
対する霊夢はお使いにでも行ってこいと面倒なことはしたくなさそうである。
メタ発言なのは言うまでもないが、咲夜を撃破するとボムを落とすのがさらに笑える。


○マジカルミラー
ゼルダの伝説 神々のトライフォースで登場するアイテム。
これを使って光の世界と闇の世界を行き来する。謎を解いたり、別の世界を経由しないと取れないアイテムがあったりする。


○ファイアロッド
ゼルダの伝説 神々のトライフォースで以下略。
火の玉を飛ばす。


○アイスロッド
ゼルダの伝説 神々の以下略。
敵を凍らせて、そのあとにハンマーで砕いたりする。
出てくるまで少しタイムラグがあって使いづらい。


○ソマリアの杖
ゼルダの伝説以下略。
ブロックを生み出したり、レール上に足場を使ったり、トワプリのコピーロッド的な謎解き専門アイテム感がある。


○バイラの杖
ゼルダの以下略。
魔法の光で敵やトラップから身を守る。強いけど燃費が悪い。


○ブレワイゼルダの戦い方
というわけでブレワイゼルダは神トラリンクのアイテムを拝借して戦います。ちなみに上記4種のアイテムは魔力を消費させて使うのですが、ブレワイゼルダは魔力が無尽蔵なイメージですのでそのあたりは特に考えません。


○スペシャルアタック
新・光神話パルテナの鏡のシステム。
空中戦パートのみ使用可能の、いわゆるシューティングゲームのボム。
これらが使える代わりに空中戦では奇跡が使えない。
矢を雨のように降らすのは神弓のスペシャルアタックで、神器の種類によって細かく変化する。
え? 空中にいなかった? 神殿の上に登ってるから地上ではないよ。


○音にも聞け!
ピットの名乗りセリフ。
音にも聞け!と光の女神〜ここに見参!とまでが共通で、他は細かく変化する。ただ基本的に相手には塩対応されており、パンドーラには呆れられエレカには名乗りの途中で攻撃された。
最終決戦でも言ってる他、ブラピと共闘した時なんかは2人で決めている。


○作者の気まぐれコメント
スプラトゥーン3前夜祭面白かったです!
チョキは負けちゃいましたが、10倍2回、100倍1回勝てたので上々です。そういえば初100倍マッチだった。
私バケツ使いなのですが、かなり扱いやすくなってるイメージです。
スプボムとトルネードが、ソーダや無印のいいとこ取りしている印象。てかなぎ払いあんな曲がるんか……
新ブキはかなり難しい印象。特にワイパー。パブロの方が強い印象だけど開拓されれば変わるのでしょうか。
新ステージはゴンズイ地区が一番好き。上下の戦略が面白いです。時間上ナメロウ金属のみ遊ばなかったのですが、どうでしたか?
そしてマヒマヒ帰ってキター!!
ただ申し訳ないのですが、トリカラバトルはナオキでした……
グーかパーだったらまた感じ方も違うのでしょうが、いつも挟み撃ち警戒しながら防衛と塗りをやるのはキャパオーバーですって……なんなら防衛しきっても負けましたしなんなら全敗ですし。フェスまで時間ありそうてすしそれまでにもうすこし防衛陣営に有利な点を増やして欲しいと思いましたね。


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50話 裏の地上

 

最後の一弾。

フックショットで怯ませたところをゼロスーツサムスのショットが炸裂する。

2人ならば多かった相手も4人ではちょうどいい人数だったのだ。最初にピットがスペシャルアタックで、全体にかなりのダメージを与えていたおかげで手早く片付けることができた。

 

 

「名乗りはともかく、助かったよ。ありがとう」

 

「ともかくって…… そんなー……」

 

「気にするな。無事でよかった」

 

 

ぞんざいな扱いに涙を流すピット。名乗りのなにが悪いというのだろうか。かっこよく決めることのなにが悪いのだろうか。

しかも無視されているし。ロマンが足りない。

即興で組んだ相方と救出対象者には男のロマンというのがわかっていないのだ。

 

 

「私はサムス・アラン。こっちはピット。君たちは…… リンクとゼルダか? 初対面だろうが、雰囲気が彼らに似ている」

 

「あー、はい。現在スマッシュブラザーズに所属している姫さんとは同郷だよ」

 

「はい、私ゼルダです。現在の…… 英傑として活躍したリンクは私達の生きた世界を救ってくれました」

 

「ほんっとややこしいなー、αとか一号とかつけたら?」

 

「ややこしくてごめんね。簡単に言えば知り合いの知り合い」

 

 

簡単に自己紹介をかわす。

だが互いにほとんど初対面とはいえ、ゼロスーツサムスとピットは同じ魂と血筋に会っており、リンクとゼルダは直接の面識はないものの、応援する側として同郷の者と戦う彼らを見たことがある。とけこむのは案外早かった。

ある程度交流を深めたところで、サムスが本題に入っていった。

 

 

「2人()、いつのまにかこの世界にいたのか?」

 

「はい。……()ってことはあなた達も!」

 

「私達だけではない。他にも同じようにここに迷い込んでいる者がいる。私達スマッシュブラザーズ、君たち関係者もそうだが、大乱闘の世界に生きる一般人まで……」

 

「ボク達そういう人やここの手がかりを探してあちこち行ってるんだ」

 

 

ようやく理解した。

リンク達が襲われているのを見て、加勢しにきたのは偶然ではなかったのだ。自分達が何の力も持たない存在だったら。きっとそのままやられていた。

人を救い、事件の解決を目指し自ら足を動かしている。ならば、伝えなければならないことがある。

 

 

「あのさ、それなら知っておいてほしいことがあるんだ」

 

「?」

 

 

リンクは話した。

この世界は、かつて自分が冒険した闇の世界そっくりであること。

2人には、意識が断絶する前に謎の人物を見たという共通点があるということ。

 

 

「謎の人物か…… 確かに言われてみれば私も見たような気がする。しかし、ボディと新しく作ったにしては凝った世界。キーラとダーズの一件とはかなり共通点があるが……」

 

「そうだね、僕はこのあたりしか見てないけど本当にそっくりだよ。地図でいうとこのあたり」

 

「地図! 地図あったんだ!」

 

 

もう使うこともないだろうと思っていた地図を広げる。鞄の中でアイテムにやられたのかシワがついていた。取っておいてよかった。

 

 

「闇の世界は簡単に3×3の9分割されててね、ここは中央下、南の方」

 

「合流した者たちは中央のこの建物に避難している」

 

「ピラミッドォ? なんでそんなところを……」

 

 

顔を上げて地図ではなく実物の建物を見上げる。四角錐の建物。闇の世界での始点であり終点でもある遺跡が安全地帯として扱われているのは非常に複雑な気分である。

 

 

「身を守るには適しているんじゃないですか? あそこにいる全員が戦えるとは限りませんし」

 

「まあ確かに。本当の闇の世界のあれこれは僕だけの問題だしね……」

 

 

わかってはいるが、言葉にしにくい複雑な感情を呑み込むのは至難の業なのだ。

 

 

「これからどうする? 2人を連れて一度戻る?」

 

「待て、これはもしかして集落か?」

 

 

地図と睨めっこしていたサムスが指を指す。

中央より左、西の方角に家のような建物が集まっている箇所があるのに気づいたのだ。

 

 

「うん、はぐれ者の村。人がいそうなところということで行こうかなって思ってたんだ。恐らくだけど現地民はいないし住宅を見かけたら誰かそっちに行くかなって思って」

 

「それなら拠点に戻る前に寄っておこう。幸いそれほど遠くないからな」

 

「うげ、まだ歩くの?」

 

「足が疲れたなら羽根を動かせばいい」

 

「わかってて言ってるだろ!?」

 

 

焦りもあったのかもしれない。

ここがリンクがいうような危険な世界ならば、他に取り残された者たちはどうなっているのだろうか。取りこぼさないように。

 

 

「すまないが、拠点にはまだ戻れない。土地勘があるなら君たちだけ先に行ってもらうという手もあるが」

 

「いいえ、私達も行きます。どこかで誰かが危ない目に遭っているのなら放っておけません!」

 

「勝手に言われちゃった。まあもとよりあそこに行くつもりだったから全然構わないけどさ」

 

 

リンクが先頭になって歩き出す。

色々と考え事をしすぎて無意識に足早になっていくのだ。

どうして、どんな方法でこの闇の世界が生まれたのだろうか。

ムーンパールを持たない自分以外の人物の姿は変わっていない。そもそも闇の世界とその犠牲を無かったことにすることをトライフォースに望んだのだ。本物であるはずがない。

 

では、ここはなんなのだろうか。

何のためにこの世界があるのか、何のためにここに来たのか。何かが自分から遠く離れたところで起きている。手を伸ばしても、背伸びをしても、距離の縮まらない遥か先にあるような感覚を覚えた。

 

 

「…………っ」

 

 

飄々とした普段の自分が、今は少しだけ羨ましく思えた。

 

 

 

 

 

「ん、おまたせ。ここがはぐれ者の村」

 

「人の気配がまるでないな」

 

「崩壊している家もありますし、住んでいる様子はありませんね」

 

「……ごめん、ちょっと離れる」

 

「え、待ってください単独行動は危険です」

 

「…………」

 

 

西を通って村に着いた。

しかし、そこはリンクの語る通り、一応外見は村という体裁を整えただけのものらしかった。

家具はあるのに人だけは見つからない。少数ながらもボディが見回っており、ここも安全とは言い切れない。

それをわかっていながらも、落ち着かない様子でリンクは1人で行動し始める。偽物とはいえ鏡写しなんて表現も生ぬるいほどそっくりなそれに動揺を隠せないらしい。

 

 

「それじゃボクが一緒に行くよ。2人はどこかに隠れてて」

 

「でも」

 

「ゼルダ、こういうのは関係性の薄い者だったり男同士の方が話が進んだりするんだ」

 

 

微妙な間隔を開けた後、立ち止まらずに進んでいってしまう。追いかけるのに立候補したのはピットだった。

 

 

「そーいうことですね! というわけでサラダバー!」

 

「まあ、奴が相談役に向いているかどうかは別の話だが」

 

 

ピットはずっこけた。

上げてから下ろすスタイル。

 

 

リンクの行く道はなんだったのかというと、唯一この村で人と呼べる人がいる一軒家だった。

 

 

「いない……」

 

 

ミニゲームを開催していた者の姿もない。ゲーム用の宝箱の姿もなく、ただ空白だけが残っていた。

 

 

「おいっす!」

 

「ピット、着いてきてたの?」

 

「2人、心配してたよ」

 

「ん、別に気にしないでよかったのに」

 

「そういうこと言われると逆に気にする!」

 

「そういうの、いいから」

 

 

一つため息。ピットといると少しだけ疲れてくる。調子が違うのだ。リンクはそこそこマイペースな部類だが、テンションは高くない。

自分の勢いを人に押しつけるのは苦手だ。

押しつけられるのも苦手だ。

 

 

「なんかチョーシ悪くね!? もっとド派手にドンパチやっていこうぜベイベー!!」

 

「これが普通だから……ていうかなにその目立ちがり屋みたいな……」

 

「真面目な時は真面目に! それ以外は不真面目に! パルテナ軍の合言葉その1!」

 

「それ趣向だろう? はあ……」

 

「…………ごめん、巻き込んだかもしれない

 

「え?」

 

 

取りこぼしそうな小声に一文字だけで聞き返そうとしたその時だった。

 

 

ドッカーン!!

 

 

「うぇ!?」

 

「なにごと!」

 

 

外で大きな爆発音が発生し、戦士たる心構えが2人をすぐに動かした。

 

結局、リンクに聞き返せなかったと気づいたのはだいぶ後であった。

 





○タイトル
ゼルダの伝説 神々のトライフォースのBGM。
闇の世界での通常フィールド曲。つまり今話で流せということですかわかります。


○キーラとダーズ、黒幕容疑
実際、やってることはほとんど同じ。しかし、すでに墓の中にいるのでとばっちりもいいとこ。


○ムーンパール
ゼルダの伝説 神々のトライフォースにおいては、闇の世界で姿が変わるのを防いでくれるアイテム。これを手にする前に闇の世界に行くと、リンクがウサギになります。どうやらリンク=ウサギのイメージが昔はあったようだ。


○パルテナ軍の合言葉
元ネタはパルテナの鏡……ではなく、ゼノブレイド2。
あちらはサルベージャーの合言葉。その1から6まで判明しているが、5のみヒカリに止められたので不明。そもそも順番に判明しているあたり実際にそんな合言葉があるかどうか怪しい。


○作者の気まぐれコメント
スプラトゥーンたのしぃぃぃ
ヒーローモードはめっちゃ面白くなってるし、なんならロッカーいじってるだけで楽しい。2までは対戦と鮭がメインで気軽に遊べるモードがそうそうなかったのですが、3になってから痒いところに手が届くようになりました。


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51話 ハイラル・ヒストリア

 

 

「今の爆発音、どこから聞こえてきた!?」

 

「村の中心あたり! 確か像みたいなものがあったあたり!」

 

 

誰もいない家を飛び出し、2人走り出す。

サムスとゼルダと合流した方が確実だろうが、もし今この瞬間に戦っているのならば、そんな時間も惜しい。もしかしたら、そちらはそちらで今の音を嗅ぎつけているかもしれない。それならば、先に行った方がいい。サムスがいるのだ。あたりの雑魚に遅れは取らない。

そうして中心に向かうにつれ、異変が起きているのに気がついた。

 

 

「村にいたボディが集まってる!」

 

「だったら真っ向から打ち砕くのみ!」

 

 

豪腕ダッシュアッパーを構えたピットは、こちらに気づいた敵2人をまとめてぶっ飛ばす。

致命傷になるようなダメージではなく、空中から紫色のブラスターとはどうだんが殴り飛ばして隙だらけのピット目掛けて飛んでくる。

 

 

「邪魔はさせない……!」

 

 

弓矢でその攻撃を相殺し、さらに本体の方へ矢を射る。空中であればかわすことはできない。落ち落とすことはできるが、生憎攻撃後ではそれもできない。

 

 

「まだまだ!」

 

「……おお」

 

 

さらに神器を持ち替え、最初の撃剣を構える。連続射撃で敵の1人を撃ち落とした。

もう一方をブーメランで落としながらリンクは感嘆する。

射撃もできる剣、撃剣。自分も大概だろうが、ピットも多彩である。

 

 

「つぎつぎー!」

 

「ちょ、はや!?」

 

 

また神器を変更したピット。先程よりも足が速くなっている。射爪ブラウンタイガーを装備したことによるスピードアップなのだが、装備を変えただけで速くなる理屈を知らないため、リンクが置いてかれている。

 

 

「ったくもー」

 

 

ペガサスの靴の力で自らの速度を上げて後を追う。道中を塞ごうとする敵は一太刀与えるだけで無視。孤立だけはしないように程々に相手をして後は無視。

目の前のピットは重そうな武器に持ち替え、数多く溜まっていたボディへ一撃加えるところであった。爆筒EZランチャー。ため射撃の一撃は広く強い。

 

 

「こ……ノッ!!」

 

「まだ残ってたな!」

 

 

爆煙で前の敵が見えない中、緑の細長い何かがピットに向かって飛んできた。髪を掠り、咄嗟にパルテナの神弓へ持ち替え、何かが飛んできた箇所に向けて連射する。

 

 

「ウッ!」

 

「……! ちょっと待って」

 

 

ヒットしたようなうめき声、それをリンクの鋭い耳は聞き逃さなかった。

奴らと戦った時、意味ある声なんてほとんどなかった。確かにピット達スマッシュブラザーズほど戦ってはない。だが、短い経験なりにわかっていることはあるのだ。

 

 

「えっ?」

 

「多分、あれ、敵じゃないと思う」

 

「うーん……あっ!」

 

 

少しは煙の晴れたそこをじっと目を凝らし……

そして気づいた。そこには見覚えのある人影かいたのだ。

 

 

「ミェンミェン!」

 

「いたた……あの偽物味方ごと巻き込んだネ……」

 

 

オレンジのニット帽に人像を隠すマスク。

なにより中華風の服とバネのように伸びる腕を持つ彼女の名はミェンミェン。

爆煙もかなり薄くなり、ミェンミェンの側からもこちらに気づいたようだ。

 

 

「ピットと……リンクの偽物ネ! さっき似た格好してるの見たヨ!」

 

「ええ!? ちょっと待って」

 

「問答無用ネ!」

 

 

ああ、そういえば。

あの事件があった後からここに来たミェンミェンは、キーラやダーズのことを知らなくてもおかしくない。個人的に人から聞いていない限りは知ることもないだろう。ゆえにボディ等のことを知らないのだ。ならばボディと自分達を混同していても不思議ではない。

 

 

「ボク達本物だってば!! 信じてよぉ!」

 

「さっき矢当ててきた癖して白々しいネ!」

 

「君のせいじゃん!」

 

「ひいぃぃー!! ごめんなさーい!!」

 

 

伸びる腕でどんどん攻撃を仕掛けてくる。反撃する訳にもいかず、逃げ回るしかない。たまにレーザーも飛ばしてくるし、避けるのに必死で弁明の言葉に中身がない。

結局和解には第三者の介入を要した。

 

 

「待った、ミェンミェン!」

 

「サムス……! の……どっちヨ?」

 

「本物の方だ。そっちもな」

 

 

2人と同様に戦闘音を聞きつけ、駆けつけていたゼロスーツサムスとゼルダ。

なおも疑うミェンミェンに、サムスはパワードスーツを装着してみせる。

 

 

「あ…… 確かにスーツ着てるネ…… え、じゃあこっちも本物?」

 

「ボ、ボクは生きているぞ……!」

 

「本物かと言われたら肯定しづらいけど少なくとも君の敵じゃない……」

 

 

ちょっと動揺しながらも、そのこっちを振り向いたミェンミェン。

偽物だの言われてはじめて気づく、言われた側の気持ち。パロディをかましたところでピットの罪状は覆らない。

 

 

「確かに私たちそっくりだが、奴ら……ボディ達は喋らない。あって喉から搾りでるようなうめき声ぐらいだ」

 

「ううっ、そうなのネ……」

 

「それとピット、気づいていなかったのか。ミェンミェンに限らず、あの事件の後からスマッシュブラザーズに加入したファイターのボディは存在しない」

 

「いや、これ事故だし!」

 

 

ミェンミェンの姿を認識した上で戦ってたわけではない。ゆえの事故。

パックンフラワーからソラまでのボディは確認したことがない。彼らは母体として捕らわれたわけではないので当然といえば当然なのだが。

 

 

「ま、間違って攻撃しちゃってごめんなさいネ……」

 

「え、いや、止められなかったのはこっちだし……」

 

「かすり傷しかないからだいじょぶだいじょぶ!」

 

 

座り込んでいる2人に近づいて、腰から90度。勘違いしていたのはこっちでもあるのだ。

 

 

「でも……」

 

「ん……? んべっ!?

 

「そっちが矢ぶつけてきたのは別ネ」

 

「ばたんきゅ〜……」

 

 

メガボルトが頭の真上から振り下ろされる。

巨大なたんこぶを頭に乗っけてダブルアイス。ピットの目はぐるぐるでテキンの中身も頭の上でぐるぐる。大の字になってぶっ倒れた。

 

 

「お怪我、ありませんでしたか?」

 

「ピットのたんこぶ以外は軽傷だから大丈夫だよ」

 

「そういえば、さっきの肯定しづらいってどういうことネ?」

 

「あー、えっと、僕たちの名前は確かにリンクでゼルダなんだけど、君のよく知るリンクとゼルダとは別人で……」

 

「????」

 

「簡単に言えばそっくり同名の別人なんです!」

 

「ややこしいけど……わかったヨ」

 

 

スマッシュブラザーズのリンクとゼルダとは違う存在。ゼルダが簡潔にして理解する。とりあえず違う人間なのだということを。

 

 

「ミェンミェン、ここらへん一帯でボディ以外の誰かを見なかったか?」

 

「ん〜? サムス達以外は見なかったヨ。ボディばっかりネ」

 

「そうか、なら当初の予定通り拠点に戻ろう。かなり長い探索になってしまったし、マルス達も心配して……ッ!」

 

「みなさん!」

 

 

帰路に着こうと安心した瞬間、さらにボディがやってくる。あらかた吹き飛ばしたが、まだいたらしい。

ゼルダのアイスロッドが敵を凍らせ、ミェンミェンのアームやサムスのミサイルで粉々にする。リンクは寄ってくる敵を斬っていた。

一撃二撃ではそうそう倒せない敵に歯軋りしながらも思いつく。さっきの爆筒で一掃してしまえばいいと。

 

 

「……! ピット! さっきの……」

 

「きゅ〜……」

 

「そうだった!」

 

「あっ、ウチのせいかネ!?」

 

 

思わず頭を抱えてしまう。

ミェンミェンの仕返しのせいで、ピットは気絶したままだ。神器はピット以外に使用できない。その他の方法でここを切り抜けなければならない。

だが、範囲攻撃の手段がもうない。ゼルダに渡したアイテムも範囲攻撃には程遠い。

ミェンミェンもサムスも戦法を見る限り、遠距離系の攻撃は得意そうでもおそらく広範囲には適していない。

 

 

「(出し惜しみ、する方がいけない!)」

 

 

あるメダルを持ちながら、剣をグルリと回す。

炎が剣の軌道を追うように螺旋を描く。

 

 

「リンク? これは……」

 

「ボンバー!!!」

 

 

そして剣を振り下ろすと、周囲に多数の爆発を発生させた。

 

 

「うおお!?」

 

 

味方さえも驚くほどの火力。

まさしく魔法と呼ぶに相応しい超常的な攻撃だった。

 

 

「さ、流石です、リンク!!」

 

「……ッ!」

 

「リンク?」

 

「……ん、ああ、ごめん、強力な代わりに結構魔力使うからさ、そんな気にすることでもないよ」

 

 

剣を杖代わりに、肩で息をするリンクを心配してゼルダがいち早く駆けつけた。

 

 

「休憩はピラミッドに戻ってからでもいいからさ、ピットのことも心配だし速く行こう」

 

「……お前は」

 

 

こっちこっちとゼルダの肩を借りながらも先導するリンクに一抹の不安を覚える。

 

この村について、単独行動を取ったことも、

ミェンミェンの誤解を解けなかったことも、

早々に大技を使ったことも。

 

一つ一つは兎も角、重なってくると、偶然と判断するのは難しい。そんな短絡的な行動だった。

 

 

「(何を焦っている?)」

 

 

なんとなく、見抜いていた。

一番、リンクが不安を抱えていると。

 





○タイトル
ハイラル・ヒストリア ゼルダの伝説大全。
ゼル伝シリーズの時系列や裏設定等を収録した、25周年記念の公式ガイドブック。
時系列はゼルダ史などと称されることも。

○最初の撃剣
新・光神話パルテナの鏡に登場する神器。
最初と冠する通り、ピットの初期武器である。撃剣としてオーソドックスの性能のバランス型。

○射爪ブラウンタイガー
新・光神話パルテナの鏡に登場する以下略。
やはり射爪としてはオーソドックスで手数で戦う武器。この武器に限った話ではないが、多くの射爪の例に漏れず、走行速度が上がる。

○ペガサスの靴
ゼルダの伝説シリーズに登場する赤い靴。
ダッシュして体当たりできるようになる。
最近はでてこない。悲しい。

○爆筒EZランチャー
新・光神話パルテナの鏡に以下略。
着弾すると爆発を起こす爆筒の代表。ところでEZとはどういう意味だろうか。

○ボクは生きているぞ
新・光神話パルテナの鏡 6章 黒いピットでのブラピのセリフ。ピットにお前コピーだろと言われた後で、今自分は生きていると返した。
どうだ、生きているぞ!!

○テキン
亜空の使者に登場する雑魚敵。
ニワトリのような機械の敵だが、倒すと中からひよこが出てくる。

○ボンバー
ゼルダの伝説 神々のトライフォースで登場する魔法。条件を満たすことでメダルのという形で入手。
画面内の敵を一掃する魔法だが、魔力を1/4も消費する。
神トラの魔法は強力過ぎるのでここで1回使っておきたかったのです。それでも後3回使えるのは強いから本作ではあれこれ理由をつけて縛ります。取ってつけたような発動後の反動もその一環。

○一ヶ月の間のあったかもしれない小話
「クラウドってさ、何歳なの?」
「なんだネス唐突に、24だが」
「セフィロスと比べて身長低いなっておもってさ」
「…………ネス、あっちが高いだけだ」←173
「そっか、僕もそのぐらい大きくなれるかな〜」
「…………」

「……こどもリンク、ロンロン牛乳を売る気はないか」
「手遅れでしょ」

○作者の気まぐれコメント
ニンダイとプレステ系情報を立て続けに出されるとパンクしますので助けて
えと、FE新作にピクミン4にCCFFにベヨネッタ3とブレワイ新作もといティアーオブキングダムに鉄拳8に……あかんて。
そしてシェズくんFEHに参戦でとどめ刺されました。無双関係者も出れるんかい!!


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52話 俺にはよくわからないんだ

 

スマッシュブラザーズと迷い込んだ人間達の拠点、ピラミッドまで彼らは歩く。

ある程度片付いていたのか、道中でボディとは出会わなかった。なので、魔法で疲弊しているリンクでも問題なく進めた。

もちろん雑に引き摺られているピットもだ。

 

 

「あ、あのー、ボク起きたからそろそろ引きずって移動させるのやめてくれないかな〜? ボクの後頭部、摩擦で真っ平らになっちゃうよ」

 

「このまま寝返りでもうつネ」

 

「のっぺらぼうになるゥ!?」

 

 

ミェンミェンのアームに両足を縛られたまま引き摺られて、通り道の小石に何度頭を打ったことか。とっくに気絶から回復していると言うのに、いつまで経ってもこれである。

 

 

「リンクは大丈夫ですか? 先程はかなり疲弊していたようですが」

 

「ん? へーきヘーき。反動がひどいだけでそんな後に響かないって」

 

 

リンクのことも心配だが、強がりではなく本当に平気そうだ。

ピットだけではなく、自分も彼を追いかけていれば、という後悔が湧き上がり始めるが、結論としてあまり変わらないだろうとも感じていた。

 

 

「……いや、平気じゃなくても、もう問題はない。ここが今の我らの拠点だ」

 

 

そのピラミッドは、そのほかの地形と同じようにリンクの知るものと同じだった。闇の世界の入り口として機能していた、頂点の平らな箇所もそのままあった。もう必要ないだろうに。

だが、少し違うところもある。

 

 

「アレなに? 壁?」

 

 

リンクが指刺したのは、丸石のような素材で出来上がった壁だった。あんなものはなかった。

立方体を組み合わせて生み出されたような綺麗過ぎる壁は明らかに人工物であった。

 

 

「ああ、それはスティーブ作の簡易防壁だな。ああいうものや、壁の穴の修理などそういった裏方作業に集中してもらっている……ほら」

 

 

ピラミッドの中央、頂まで登る階段。

そこを登る彼らを出迎えたのは道中にも建っていた防壁、そして階段にも増設しているスティーブだった。既にパワードスーツを脱いだサムスとピットが帰還したことに気づくと、ツルハシを握ったまま手を振る。

 

 

「ここが攻め込まれた時用にとマルスが色々考えている。彼は指揮を担っているからな」

 

「マルスが…… それなら安心ネ」

 

「でででででででもさささささ」

 

「あのー…… そろそろ離してあげたらどうですか?」

 

 

何かをピットは付け足そうとするものの、階段を登っているせいで頭と同時に声も震える。

たまらずゼルダが許すように進言した。深い息を吐きながら、それに応えた。

 

 

「わかったネ…… ウチも大人げなかったヨ」

 

「それで? でもどうしたの?」

 

「うんしょ、と。でもさ、大乱闘の世界の一般人達も集まっててさ、士気落ちてる……ってとこ。同じように迷い込んだ人は結構見つけたけどさ、ここについてはリンクと会うまでなーんにもわかんなかったからさ」

 

「不安しか見えない中で気持ちを保つのは……難しいですよね……」

 

「え、そんな時間経ってるの? ここの世界って随分時間の流れが遅いんだね」

 

 

立ち上がったピットが言うには、巻き込まれた一般人の不安がいつ爆発してもおかしくないとのことだ。

そんなに長い時間閉じ込められているのかとリンクは考えるも、世界によって時の流れは違う。こちらの1秒が他の世界にとっても1秒だとは限らない。

 

 

「今後の行動については、待機組も交えて作戦を立てよう。この世界について詳しいだろうリンクもいるんだ。何かわかるかもしれない」

 

「ところでここのどこから中に入るのですか?」

 

「頂上に空いてた穴だ。中が開けた場所になっている」

 

「え、拠点ってよりによってそこなの?」

 

 

ピラミッドの内部は何を隠そう、リンクの最終決戦の場であった。

 

 

 

 

 

「おかえり、サムス、ピッ…… 随分と激闘だったのかな?」

 

「この汚れはアレだい、ただの事故でやんでい!」

 

「なんだ、その特徴的な喋り口は」

 

 

空洞に紐を一本垂らしただけの出入り口のすぐそばで待っていたのは、マルスだった。手が空いた時はここにきて2人の帰還を待っていたのだという。

引き摺られた際の服の汚れを真っ先に指摘されたが、本気で心配しているマルスに、原因はただの戯れなのだとは伝えにくかった。

 

 

「あとミェンミェンに……違う世界や時間のリンクとゼルダかな?」

 

「ややこしくてごめんね〜……」

 

「やっぱりMK(マーク)-IIとかさ」

 

「後にしろヨ」

 

「マルス、少し情報を整理しよう」

 

 

そのあたりの床に座り、壁にもたれながら彼らは話した。

この世界はここにいるリンクが消滅させたはずの闇の世界にそっくりなこと。

2人の意識が断絶する前に見た謎の人物。

ここには、ボディと迷い込んだ人物以外の姿が見えない。魔物も原住民も。

あの闇の世界でならば起こるはずのことも発生しないこと。

 

 

「みなさ〜ん! お茶の用意ができましたよ〜……」

 

「やっぱりここはどこかにあった世界じゃない。見た目はそっくりだけど……」

 

「性質は違うということだな。ならばどうしてこうも似ているのか……」

 

「そういえば2人が見た謎の人、ボクも見たような……」

 

「あ! おじゃましましたか?」

 

「いえ、別にそんなことは…… あなたは」

 

 

緊張の張り詰めた会議中にのほほんとした声が響き渡る。頭の中でじっくりと考えてたゼルダが彼女に気づき、そこからほかのメンバーも彼女が間に入ってきたのに気づいた。

 

 

「しずえさんネ! アンタもここにいたのネ!」

 

「ミェンミェンさん! ミェンミェンさんもここに来てたんですね!」

 

 

地べたに座る彼らにお茶を用意したのはしずえだった。大乱闘の世界ではないだろうこの場所で、戦う力を持たない彼女はそんなことを気にする素振りもなく、せっせとほかのお仕事に励んでいる。

スマッシュブラザーズであり、持ち前の明るさで人々に尽くす彼女は、恐怖に怯える一般人達の気持ちをつなぐ最後の糸と言ってもいい。

 

 

「ああ、確かにこの子が戦ってるの見たことあるな」

 

「はい! 私もスマッシュブラザーズの一員です! えっと……リンクさんのそっくりさん?」

 

「……もういいよそれで…………」

 

「ところで何を話していたんですか?」

 

「……僕は当初、どこか別の世界に飛ばされたと思っていた。でも少しずつ疑問が出てきて……リンクの話を聞いて確信した。()()()()()()()()()()()()()()()()()。闇の世界に見た目はそっくりでも、根本的に違うのもここで生きる人も動物もいないのも説明がつく」

 

 

これが、マルスの結論。

誰も知らないだろう、全く新しい世界。

それに真っ先に反論したのは、上位の存在と近しいピットだった。

 

「待ってよ! 世界を新しく創るなんて簡単に言うけど、誰でもポンポンできることじゃないんだよ!?」

 

「だが、私たちはボディを従えていること以外、敵について何にも知らない。新しい世界を創って私達をここに閉じ込めるぐらい、造作もないぐらいの者が敵なのかもしれない」

 

「……でも、さっき言ってたでしょ。新しいファイターのボディはいないんだって。世界は創れるのにボディはつくれないなんておかしくない?」

 

「母体となるファイターは捕まってないんだ。ボディがいないのは変なことじゃないよ」

 

 

議論が白熱していく。

彼らもまた多少なり不安があり、それがそのまま意見の勢いに繋がっていく。必要ない感情まで込めてしまう。

マルスの意見に反論気味なのがピットとリンク。賛成気味なのがサムスだ。ゼルダと離席するタイミングを失ったしずえは不穏な空気に口を挟めない。

 

 

「……リンク、情報がないうちから可能性を否定するものじゃない。何を、そんなに焦っている?」

 

「…………」

 

 

先程の言葉尻に、苛立ちと焦りを含んでいたことに、サムスは気づいていた。目を、逸らした。肯定しているようなものだ。

 

 

「…………………………べつに」

 

「話せないことか?」

 

「何でもないって」

 

 

善意を乱暴に振り切った。

まだ踏み込まれたくなかった。

 

 

「……ちょっと外の空気吸ってくる」

 

「ああ! ちょっと待ってください!」

 

「いい。1人に、ならせて」

 

 

細かく結び目のついた紐は、登りやすくされている。それをガン無視で外へ上がった。空は変わらず不安を感じさせる朱の色。

 

 

「そんなはずない。そんなはずないのに……!」

 

 

だってこの世界は。

あの姿は。

その力は──────

 

 

「キーィ!!」

 

「わっ……!? な、なに、猿?」

 

 

リンクの思考の中、視界に飛びこんできたのは猿だ。長い尻尾に赤色の帽子が目立っていた。

 

 

「キーキーキー!!!」

 

「え、ええ……動物の言葉わかんないし……でもどこかで見たような……」

 

 

一生懸命手振りや大声で何かを訴えるが、リンクには何も伝わらない。でも、その姿に見覚えがあるような気がした。

 

 

「キキーキー!!」

 

「え、あっち?」

 

 

でも何やら空の方角に指を刺しているようで、反射的にそちらを向いた。憂を帯びていたリンクの目は一気に見開かれる。

 

 

「……見つけた」

 

「あっ……! やっぱり……その姿は……!!」

 

 

まるで世の理を無視するかのように、その、長い金髪の少女は宙に立っていた。

ティアラや華美な装飾は片っ端から外されている上に少女らしいピンクの布地は緑になっているものの…… その姿は()()()の知る()()()そのものだったのだ。





○タイトル
初代キングダムハーツの冒頭の謎ナレーション。ナンパリングタイトルにはなぜかある謎ナレーションの一文。
この言葉からキングダムハーツは始まったと言ってもいい。
当時は外の世界の暗示程度だったが3のリマインドにて……
以下全文

俺には よく 分からないんだ
この世界が、本当に、本物なのか。
そんなの、考えたこともなかった…


○時間経ちすぎでは?
本作品では時間の流れのスピードは世界によってバラバラです。
そもそも作者の前作と今作とでは一ヶ月しか経過してないのに、クラウドはAC後になってるし暁終了後になってるしつながる未来で一年経ってるし……
今章の世界は時間の流れが遅いということです。


○スティーブ
つかみどころのないキャラクター設定です。
というか原作での設定がほとんどないので、拙作では喋らないし何考えているかわからない系のキャラになりました。
防衛のための壁を素直に作っているので、性格は善よりな模様。
武器ツール類はスマブラに登場する物のみ使用可能とします。そうしないと収集つかないし。


○ミェンミェン(前回書き忘れた)
典型的な中国人キャラのアル語尾でもよかったけど、ネとかヨとかの方が可愛く感じたのでこちらに。
ちょっとキツイ性格とのことと、子供の相手は苦手なところから、自分がそういう性格なのは自覚があるんじゃないかなーと思います。


○ゼルダのそっくりの謎の少女
ぶっちゃけて言うと奇跡的な噛み合いがあったせいで、リンクは勘違いを引き起こした。詳しくは次話。
見た目としては、5Pカラーのゼルダがティアラだのネックレスだの高貴そうな装飾品を片っ端から外した姿。しかし、目は茶色。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
「うちでやってるフェスを大乱闘でもやってみたい!! というわけでそこにいたマリオブラザーズのプリンセス達聞いてよー!」
「フェスね、まずルールはどうなってるのかしら?」
「大乱闘のルール自体はアイテムなんでもありの2対2のチーム戦!」
「それで本家みたいに勝率や得票率で競うのね。それでどんな陣営なの?」
「あ…… えと……」
「まさかインクリングさん、あなた……」
「違う違う! 考えてあるって!! えと、えと、パワー、スピード、マジック!」
「安直過ぎない?」
「んーなら! 回復アイテムどれがいい! 食べ物、妖精、ハートの器!」
「互換があるのは……やめた方がいいかと」
「えー、じゃあもうピーチ、デイジー、ロゼッタ!」
「本人を目の前にしてそういうのはいけませんっ」
「あーー! じゃあもうきのこたけのこすぎのこでいいや! マスハンに言ってくる!」
「最後の方、ヤケだったわね……」

その後、インクリングは選ぶならどっち? きのこの山、たけのこの里、すぎのこ村で案を出したが、被りそうということで没をくらったそうな。


○作者の気まぐれコメント
祝 スプラ3初フェス!
最初私道具陣営入ろうかと思っていたのですが、マンタローの「ゲームがない生活なんて耐えられない」的な発言を聞いたので、暇つぶし陣営に鞍替えしました。えへへ。
楽しみだけどトリカラバトルどうなってるんかな……


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53話 地下牢獄

 

「…………」

 

「はあ…… 合流されちゃったのね。……仕方ない、切り替えなきゃ」

 

「キーキーィッ!!」

 

「あなた、恨むならそっちを恨んでね。決定的なところを見られた彼を野放しにはできないの」

 

「…………」

 

「だから、あなたごと倒すことになるけどそれは……」

 

「…………あーあ……」

 

 

謎の少女がディディーコングとリンクに向けて話している間も、リンクは押し黙っていた。

意味は把握しているのに、まるで話しかけられた言葉が通り過ぎていくように。

ようやく話した言葉は、溜め込まれたものが吐き出されるような、押さえつけられたものが飛び出してくるような、そんなことの発端だった。

 

 

「あーあ! なんだよ、僕の勘違いか!!! 脅かしやがって!!! 違うなら違うって言えよこのパチモン!!」

 

「はあ!?」

「ウッキー!?」

 

「僕はてっきり姫さんがトライフォース使ったか使わされたかして、ここ創らされたとか思ったんだよ!! 全部お前の仕業かい! このエセプリンセス!!」

 

 

そう、リンクが気にしていたのはそれだ。

意識を失う前に見た謎の少女。ゼルダはそれが誰でどういった特徴があったのか大まかにしかわからなかったのだ。

しかし、付き合いの長いリンクはその姿が自分のよく知るゼルダだと気づいていた。一瞬の出来事だったため、別人だと否定することはできなかったが。

 

それに加えて、この偽りの闇の世界。

ゼルダがトライフォースの力を使用、または使用させられてこの世界ができたのでは。

それが心配でリンクは黙っていたのだが。

 

 

「誰がパチモンよ!! 私はキク!! 姫さんなんて人じゃないわこの頭でっかち!」

 

「誤解させたのはそっちじゃん!! そもそもあんたが姫さんじゃないだけで、敵だってことは確かでしょ!!」

 

 

空中に浮いたまま、キー!と怒り続ける謎の少女改めキク。負けじとリンクも怒声を浴びせ返す。

 

 

「私はねえ! 姫だとか、そういう目立つことが嫌いなのッ!!」

 

「じゃあ、その体から、今すぐ離れろぉ!!」

 

 

怒声だけの喧嘩はすぐに戦いへと変化していく。その先陣を切ったのはキクの方だった。この体だからこそ使えるディンの炎を3発飛ばす。

喋りながらも、的確に動くリンクはひとつふたつと剣で防ぎ、遅れてきた最後の1発を弓矢で射落とした。そのまま空中にいるキクに向けて矢を放つ。

 

 

「甘いわよ! この程度なんてこともないわ」

 

 

しかし、彼女は空中を滑るように移動する。右も左も高低差も感じさせないほどスムーズな動きは捉えることが難しい。矢はあらぬ場所へ消えていく。

 

 

「くっ、宙じゃなかなか当てられない! 君、急で悪いけど別方向で奴を狙える?」

 

「ウキー!!」

 

「簡単にやれると思わないで…… この数よ」

 

 

 

限界を感じたので、リンクはそこにいたディディーコング との交差射撃を提案する。しかしし、いち早くキクが理解した。

2人が見たのはキクがいる場所よりももっと奥。

敵であるボディ達の大群だった。まるでこの闇の世界もどきの各地からありったけの戦力を集めてきたかのような軍勢にギョッとする。

 

 

「図らずもここまで誘導されていたってことか……!」

 

「キッ……!?」

 

「そういうことになるわね。()()()()()()()連中は、私としては別に放っておいてもいいのだけど…… 芽は摘めればそれに越したことはないし、いざという時の切り札は持っておいて損はないもの」

 

 

空中に浮かぶまま、何かを取り出したキク。それはなにやら宝珠のようにも見えたが……内部には黒い何かが溜まっていた。それが良くないものなのは、本能でわかっていた。

ここにいる誰もそれを知らないが……それは闇のオーブと呼ばれるものであった。

 

 

「ルネに……仲間の1人にコレを渡されてね、最終手段に……ってことらしい」

 

「……っ、ロクなことしないね、ルネさんって人!!」

 

 

出し惜しみの暇はないと、再びボンバーの魔法を発動した。ピラミッドの階段を駆け上がってくるボディ達。スティーブが作っていた防壁のおかげで、頂上につながっている階段を一直線に焼き尽くすだけでほとんどの敵を消滅させた。だが、

 

 

「第二陣……!!」

 

「ここの世界の管轄は今や私、ここの世界で起きたことは全て把握できるわ」

 

「お見通しってことか……!!」

 

「その通りよ……外に今いるお邪魔虫もまた……ってところ」

 

 

膝をつきながら、再びやってくる敵勢に絶望する。同じ手は2度も効かないと。先程一掃した敵だって少ない数じゃない。ここまで多くのボディをどこから調達してきたのだろう。

把握できるというのも嘘ではないだろう。そうでなければこの場から消えて瞬間移動はしない。

 

 

「君、スマッシュブラザーズだろう!? ここの中に他の仲間がいる! 急いで呼んできて!」

 

「!? ウキー!!」

 

 

魔法の反動で多少なりと疲弊しているリンクを放っておくことなどできない。

例えその救援先が目と鼻の先であってもだ。

 

 

「大丈夫、すぐ近くだしちょっと呼んでくるぐらい……」

 

「その必要はない!」

 

 

襲いかかってくる電気鼠、恐竜のボディを一閃の元に斬り伏せる。崩れた穴から真っ先に飛び出してきたのはマルスだ。ミェンミェン、サムス、ピットも飛び出してくる。

あれほど大規模な魔法を使ったのだ。呼ばずとも異変は伝わる。

 

 

「キィ……ウキー!!」

 

「マルスに、みんなも!」

 

「ごめん、ちょっと遅れちゃったかな。ディディーも。君も無事でよかった」

 

 

柔らかな笑み。

しかし、リンクは先程の面子の中に1人足りないのに気づいた。

 

 

「ゼルダさんは?」

 

「彼女にはしずえさんや他の仲間と一緒に、一般市民の避難を任せてる。さほど離れてないとはいえ、出入り口はもう一つあるんだ」

 

「いや、あるけど……」

 

 

そもそもあの穴にまっすぐ落ちれば、最終決戦の場だった。紐を垂らして降りれば他だって行ける。つまり今の使い方が邪道というか……とりあえずその話は置いておこう。

 

 

「あの出入り口はピラミッドの中層につながってるだろう、石像とか邪魔で直接いけないけどさ、ここから離れようとすると必ず敵と鉢合わせるんじゃない?」

 

「うん、でも、大丈夫。ちゃんと考えてるから」

 

 

このピラミッドのような遺跡のような建物は、池に出島方式で建っており、陸に繋がる唯一の道はボディのひしめく戦地だ。

避難はできないのではないか、と苦言を漏らすがそれもまた考慮のうちだと言う。

それを言い終えた時にちょうど、ピラミッドの麓あたりから何かが飛び立ち、こちらに向かって飛んでくる。道中にTNT火薬を落としながら。

 

 

「あ、スティーブ……だっけ」

 

「サムス」

 

「わかっている」

 

 

落としたTNT火薬に向けてサムスがミサイルを撃つ。衝突し、爆発したミサイルはTNT火薬を巻き込み、更に連鎖爆発を起こす。

 

 

「ワオ!? 爆発したネ!?」

 

「ありがとう、スティーブ」

 

 

マルスのいる場所に直接着地したスティーブは、喋らないながらもコクコクと頷き応える。

地形も破壊する爆発を起こしたことで、敵を巻き込んだのはもちろんだが、階段や足場も多少なりと破壊され、上に上がりにくくなったのだ。

 

 

「避難場所はここから西にお願い、建物が多く建ってある場所があるからそこまで頼むよ」

 

 

またコクコクと頷き、エリトラとロケット花火を駆使して飛び立つ。ここでスティーブが何をしようとしていたのか、ミェンミェンがわかった。

 

 

「あ! スティーブが橋つくるネ!」

 

「うん、その通り」

 

 

スティーブがブロックを使い、簡易的な道をつくることで池を飛び越え、直線距離で村に辿り着こうということだ。

ならばそのためには、ある程度敵を減らさなければ。

 

 

「ならば、私たちのやることは敵の掃討だな」

 

「とはいえ、僕たちも一度降りたら簡単には上がれない。遠距離で射抜いていかないと、もう一踏ん張りいこう」

 

「キーィ」

 

「……ん? マルスは何するネ?」

 

「……あ」

 

「何も考えてなかったのかヨ!?」

 

「……ごめん

 

 

だが、剣一本で戦うマルスには遠距離の手段がない。リンクが危険で、咄嗟に飛び出して。後のことを何も考えていなかった。

万が一抜けられた時のために、出入り口の紐は斬ってある。戻ることもできない。

 

 

「……まあ、過ぎたことはいい。マルスは近づいた敵を頼む。ミェンミェンも近距離だ」

 

「矢の数にも限りがあるし、僕は中層からの敵を相手にするよ」

 

「ディディーもそこをお願い」

 

「ということで私とピットで遠くの敵を相手にする。いいな?」

 

「……あ、うん、下の敵だよね、了解」

 

 

少し反応が遅れてピットが応えた。

ここまできて、結局休息もまともに取れないままであった。神器の持つ弾の誘導性に支えられるが、いつまで持つか。

 

 

「(でも、サムスも同じ条件だし! きっとパルテナ様もどこかで戦ってるはず!! ここで僕が踏ん張らなくてどうするんだ!!)」

 

 

さまざまな不安点を残しながらも、開戦するは力の神殿離脱戦。

 

 

マルス、ミェンミェン、ディディーコング、ほぼ快調。

 

リンク、若干疲弊。

 

ピット、サムス、疲弊。

 

ゼルダ、しずえ、スティーブ、他多数、離脱準備。

 

 

初撃を放ったのは、自身を奮い立たせる神弓の一矢であった。

 





○タイトル
ファイアーエムブレム トラキア776の第4章の章題。
そしてシリーズ初の離脱マップでもある。
離脱マップとは、勝利条件が将、つまり主人公の離脱である。特定のマスに行き、離脱を選択することでマップから抜けることができる。
しかし、トラキアでは主人公リーフを離脱させた時点でマップはクリア。離脱できていないユニットは残らず捕虜になるので要注意。
最近の作品はそんなことないので安心してください。


○結局のところ神トラリンクは何を恐れていたの?
偽りの闇の世界を作り出した犯人が神トラゼルダ本人、または黒幕に脅されていたと考えていました。

・消えた闇の世界を知る者が少数であること
・闇の世界がクリソツだったこと
・やろうと思えばやれる力(トライフォース)があったこと
・意識を失う前に見た謎の金髪が、神トラゼルダだと気づいたはいいが、ボディであって中身が違うと判断できる時間がなかったこと

これらの偶然が重なって神トラリンクは手酷い勘違いをしていたのです!!


○闇のオーブ
ドラクエで度々登場するアイテム。
しかし、この作品のこれはゲーム作品の同名アイテムとは別のもの。
この闇のオーブがどこからの出身か、いずれくる解説までにわかった人は……控えめに言ってすげえ。


○TNT火薬
マインクラフトの俗に言う爆弾。直接火をつける他、他の爆発に巻き込んだり、レッドストーン回路で着火すると一定時間で爆発。マイクラ動画には結構登場するも、普通にプレイしてるとあんまり使わんくない?


○エリトラ
マイクラに登場する、昆虫の羽のような見た目の装備品。
エンドシティでようやく取れるアイテムで、つけると滑空できるようになる。ロケット花火で上昇したり、加速したり。ちょっと操作性に難あり。


○キク プロフィール
ボディはゼルダの5Pカラー。
ただし、目立つ装飾品は取っ払われ、目は茶色。
目立つ……というよりは目を引くのが嫌らしい。
戦闘能力は不明だが、ゼルダのファイターの技が確認できる他、宙に浮いたり世界を創ったうんぬんとの発言が確認できることから、相当な力を持っているようだ。また、ボディ達に任せて別の対処に向かっていることから、判断も的確の様子。


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54話 リバースイデオロギー

 

「ううう……!」

 

「もうダメだ……いかにスマッシュブラザーズであろうとも……」

 

「大丈夫ですよ! だからみなさん、落ち着いて避難しましょうね!」

 

 

しずえが朗らかに笑いながら問いかけているものの、避難民の表情は苦しい。

彼らは大乱闘をさらに盛り上げるために、マスターハンドが創り出した生命である。観客がいる方が盛り上がるだろう。そういうことだ。

ゆえにこんな場所に迷い込んで、フィールドで行なっているような戦いがすぐ前で行われていることに動揺を隠せない。

 

 

「プリッ……! プリリッ!!」

 

「プリンさん……!」

 

 

たまらずにプリンが必死に訴えかける。なんと言っているかはわからないが、その必死さは伝わってくる。落ち着いてほしい、そのようなことを言っているのだろう。

だが、恐怖で怯えている彼らが欲しいのはそんな一般論、正論ではないのだ。

 

 

「……あんただってスマッシュブラザーズだろう!? なんとかしてくれよ、前みたいに亜空間に取り込まれるのはごめんだよ!?」

 

「プッ……!?」

 

 

虚を突かれた。

亜空軍の戦い。その最初の被害は、彼ら達一般市民だったのだ。マリオとカービィの大乱闘を観戦に来ていた人々があろうことか最初に巻き込まれた。

その痛みにすら、プリンには寄り添うことができない。亜空軍との戦いにおいて、戦わずにずっと隠れていたのは紛れもない自分なのだから。

 

ここに来てからだって、人手が足りないというのに、ピットとサムスの代わりに探索に行くとも言えなかった。

スマッシュブラザーズとして戦えなくても、しずえはあちこち裏方として頑張っている。

スティーブだって、マルスだって。自分にしかできないことをしている。

 

戦う力があるのに、気持ちの問題だけで戦うことを拒否しているのは卑怯なのではないか。

人の言葉を話せないから、あの時マルスに聞くことができなかったけど。もう聞かずともわかる。卑怯以外のなにものでもない。そして怠慢だ。

 

 

「大丈夫ですよ」

 

「あんたは……」

 

 

優しく、そして穏やかな声でゼルダは話しかけてきた。プリンに、そして大乱闘を楽しむ人々に。

 

 

「スマッシュブラザーズだとか、そんなことはいいんです。心がついていかなかったら、どんなに力があっても上手くいかないものなのです。みなさんも、いつもはできていたのに上手くいかない日があるでしょう」

 

「そりゃあ……まあ……」

 

「それでもいいんです。その分、他の誰かが助けてくれますから」

 

「プリ……」

 

「大丈夫ですよ、戦いたいと思った時に、戦えばいいんです。焦りたい時には焦っていい。その時はわからなくても後でわかります。誰かが助けてくれていたことを」

 

 

今ならわかる。

リンクがあれほどの剣の才能があったのは、力が目覚めぬと焦っていた自分を助けるためだと。

自分が100年も頑張れたのは、瀕死だったリンクの傷が癒えるまで支えるためだと。

誰かが戦えぬ時は他の誰かが戦うのだと。

 

 

「プ……ププリ……」

 

 

そんな都合の良い考え方でいいのだろうか。

下手したら、一生戦えないかもしれないのに。

──そんな思惑は、一瞬で否定された。戦わざるを得なければ、そんな心持ちなど路号の小石の如く、簡単に蹴り飛ばせるというのに。

 

 

「……なら、焦ってもらいましょうか」

 

『……ッ!?』

 

「彼女は……!」

 

 

進行方向、そこを塞ぐかのようにキクという少女が宙に佇む。位置の関係上、上から目線になるのは当たり前だが、それだけではない冷たさを感じた。

 

 

「こいつが……! 俺たちをこんなところに閉じ込めた元凶……!」

 

「……ギロッ」

 

「ヒッ!?」

 

 

怒りと不安からか、敵意を込めた目は、睨み返されることで一瞬にして威圧を失う。彼女には何故だかそれほどの圧があったのだ。

まるで、上位の、神様でも相手にしているかのような。ただそれだけの動作で、普通に生きていた者たちは萎縮してしまった。

 

 

「下がってくれ、……何の用だ!」

 

 

最後尾にいたクリスが異変を察して前に出ていた。そして剣を引き抜く。

 

 

「マルス様達はどうなった」

 

「さあね、全部ボディ達に任せちゃったし……私の用というのはこっちのポンコツを引き渡しにきたのがひとつ」

 

「……え?」

 

 

自身の背後から浮遊させたまま見せたのは、力無く項垂れる見覚えのある姿。それはサムスのパワードスーツの姿。しかし、その全体は黒色に覆われており、サムスはピラミッドに残っている。つまり、あれは。

 

 

「ダークサムスさん!」

 

「悪かったわね、相性が良すぎて」

 

 

サムスの宿敵の1人。

それが、こうも大敗を喫していた。キク自身には傷ひとつどころか、衣服の乱れすらなかった。相性が良かったとは本人談だが、相性の問題でここまで一方的になるのだろうか。

 

 

「ヒィィ……!? ウソだろ……あのスマッシュブラザーズが……!」

 

「待ってください! 今離れたら……!」

 

 

それを見て、恐怖は限界に達してしまった。ゼルダの静止の声も届かず、それぞれがバラバラに逃げ出す。自然な動作でダークサムスが投げ捨てられ、ドサッという音が鳴る。

それをキクは冷めた目で見ていた。

 

 

「追わない……のですか?」

 

 

恐る恐るといった声で問う。

森とはいかないものの、木々の生えるそこでは、目を離すと簡単に見失いそうだ。

 

 

「わかってないだろうね。ここに来ている時点で、あなた達はもう詰んでるのよ。本当は直接手を出そうとも思わなかったけれど、あの猿に色々と知られてしまったのよ。戦う意志は摘み取らないといけなくなったってこと」

 

「なにもできない者には興味がないと?」

 

「どうせなにもできないわ」

 

 

キクのすぐ近くを通り過ぎていく人々に一瞥もせず、まっすぐにこちらを見ている様子を見るに、その言葉に偽りはないようだ。

 

 

「……ま、あなた達だってなにができるとも思わないけど。なんせ、戦う意志もないファイターに」

 

「プ……」

 

「力のないファイター、そこまで得意でもないファイター」

 

「うう……間違ってないですが……」

 

 

プリンも、しずえも、反論できない。

意志がないなら力があっても意味はないし、また逆もしかり。

得意でもないと言われたスティーブは、変わらず何を考えているかわからないが。

 

 

「ファイターですらない者って……戦力、偏りすぎてない? 逃げるだけなら問題ないとでも?」

 

「私……いえ! 私達だって戦え……」

「どうかな」

 

 

借り物の力でも、微弱な力でも戦えると反論をしようとしたゼルダをクリスが制した。言葉で言い負かす必要はないと。

 

 

「俺はなにもファイターではないから、捜索をあの2人に任せてた訳ではないぞ。マルス様のサポートと……とある命を受けて実行してただけだ」

 

「へえ〜……どんな命令だって?」

 

「これだ」

 

 

頭の位置まで上げて見せた左手のひらを下ろす。それが、何かの合図だったのはわかりやすかった。

 

ドォン!! ドウォォン!! ドン!ドガン!!!ドガ!! ドオォン!! ズガンッ!

 

「ッ!!」

 

 

四方から宙の少女に向けて大砲の黒弾が襲いかかる。右へ左へあちこち動いてなんとか回避するキクにクリスの斬り上げの刃が煌めく。

ドレスの裾が斬れた様を忌々しげに睨んだ。

 

 

「全て把握していると言う割には粗があるようだな」

 

「……ッ、大魔王の手下達ね……!」

 

 

具体的に何をしていたのかはわかっていないと指摘するも、かなり大まかな部分は把握しているようで、姿を確認せずとも攻撃の正体を突き止めた。

 

 

「アハハハハハ! よく気づいたな、今のはオイラ達が」

「なんで自分から位置ばらしてんだ!頭引っこませときゃよかったのに!」

「ロイ、もう遅いよ」

「じゃあ仕方ねえ! オイラ達が相手だー!」

「蜂の巣にしてやるー!」

「もう、作戦台無しじゃない」

「臨機応変!」

 

「…………」

 

 

少しとはいえ、上手くいったことでお調子ものから飛び出して煽ってきた。

無言ではあるが、多少は効いているようだ。しかし、居場所を完全にバラしてしまったこととリターンが釣り合っているかは微妙なところ。

 

 

「命令……って?」

 

「多少でも戦闘力があって、戦える意志があるような人材を探して欲しい、ってことだ。いざという時はあのように散って弾幕を浴びせることになっていた」

 

 

同じようにこの世界に迷い込み、主もその子息もいないので大人しく事態の収拾を待っていたのだが、この度、クリスの説得で戦闘に参加することになったのだ。

 

 

「……なにが増えたかと思えば……羽虫が増えただけじゃない……! こんな連中に! 私達の、私の悲願を! 止められてたまるかッ!!

 

「……あれって!」

 

「ププリ……!」

 

 

交差した人差し指と中指から青白いレーザーが四方に撒き散らされる。木々や花も焼くほどの温度。しかし、しずえが、プリンが、スティーブが気づいたのはそこではなかった。

 

 

「あの力って……もしかしてマスターハンドさんの……!」

 

 

ファイターだから、マスターハンドの加護を受けていたからわかった。

あの力は間違いなく、かの創造主のものであるのだと。

 





○タイトル
東方輝針城の5面ボスBGM、鬼人正邪のテーマ曲。逆のイデオロギー、生まれ変わるイデオロギーとも取れるこの曲は強肉弱食という今までの社会通念を逆転させる、という意志が込められている。
神主曰く、小物臭のある妖怪をイメージした結果、やんちゃな曲になったとのこと。


○ここの避難民って何者?
大半は大乱闘の世界に住む、いわば観客役の一般市民です。マスターハンド作。
亜空の使者におきまして、マリオとカービィの対戦を見ていた人々です。
もっとはやく喋らせても良かったんですけど、名無しのモブを目立たせるのどうなんだろってことで今までセリフを与えてなかった裏事情があります。
一章で、インクリングを庇って亡くなった男の人もいましたが、あれは名有りのキャラをこんなとこで死なせたくないという背景がありました。


○亜空遅刻組
前作で説明済みですが、ここで再度説明。
本作におきまして、亜空軍の事件に関わらなかったプリン、ウルフ、トゥーンリンクについて解説。

プリンは本作の設定が理由です。
本作では、戦いに消極的……というかはっきり言って嫌いという性格です。
マルスのような戦争で生じる犠牲が嫌というわけでもなく、戦いで誰かが痛めつけられるor自分が傷つくことが嫌い、というタイプです。
そんなガチ平和主義者なため、亜空軍の一件が終わるまでずっと隠れてやり過ごしてたんですね。

ウルフは群れるのが嫌いということで自ら不参加。一応壊滅を感じ取ったら戦いに行くつもりではありました。
トゥーンリンクは完全に寝坊です。ゼルダシリーズ伝統のおねむ。

改めて考えると我ながら酷い落差である。


○クリス
ファイアーエムブレム 新紋章の謎に登場するいわゆるマイユニット。クリスはデフォルトネーム。
といってもifみたいに好き勝手見た目を変更することは出来ず、章終わりの選択肢で見た目に色々と変化を加えられる。頭を丸めることもできるぞ。
そのかわりクラスは好きに変更可能。ルナティック……魔道士……うっ、頭が

FEHにおいて、どの世界にもいません的なことを言われていたので、実装はされないと思われていたのだが、そんなこともなかったぜ。


○クッパ七人衆
かつてはクッパの息子達……とされていたが、現在ではクッパ軍団の幹部的な立ち位置。
クッパJr.をぼっちゃんと呼ぶ、のでジュニア直属……的な立ち位置かもしれない。

自称リーダー、ルドウィッグ。
腹黒エンターティナー、レミー。
見た目とは裏腹に常識人、ロイ。
お調子者、イギー。
紅一点勝ち気、ウェンディ。
カタコト力任せ、モートン。
ケンカっぱやい末っ子、ラリー。

兄弟で、長男ルドウィッグと末っ子ラリーは明言されているものの、他の順番は不明。初登場の順番にされていることが多い模様。
7人組の印象が大きかったので正直言うと一人一人の印象は……
最近はクッパJr.RPGで活躍した印象。印象ばかり言い過ぎである。

クッパJr.のカラチェンがあったため、ゲスト枠に採用。ただ自分の知識が半端過ぎて戦慄。



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55話 死神の視線

 

レーザーの攻撃によって、木や岩陰に隠れた者たちを炙り出すように。交差した指からミサイルを発射し続ける。無から何かを創り出す力はまさしく、大乱闘の創造主。

創造の化身であり、神でもあるマスターハンドと同じ力をたやすく扱う故に、彼らは慎重に戦わざるを得なくなったのだ。

 

 

「(くっ……俺からは近づけない……!)」

 

 

先程のクッパ七人衆と策を用いたのがクリスであるためか、彼が隠れた辺りが集中攻撃されている。ここは他の人物から仕掛けてもらいたいところなのだが。

 

 

「(あのサムスさんそっくりな方との距離が離れない……!)」

 

 

まだキクは倒れたダークサムスの近くにいる。どうにかして引き離し、巻き込まれないように移動させねば。

意識を失っているのか(意識を失うという概念がダークサムスにあるかは不明だがこの表現が一番近い)動く気配はなく、自力での移動は現状期待できない。

 

 

「(どうしましょう……)」

 

 

現状戦い慣れているクリスが一番狙われており、ファイターの加護を期待できない状況で非戦闘員に近いゼルダやしずえではどうにかできるビジョンが見えない。

 

 

「……もう、仕方ないわね……」

 

 

どうしようと無意味に時間が過ぎていくうちに、先にキクが痺れを切らした。先程は相手に向けていた指鉄砲を足下のダークサムスに向ける。何を伝えたいのかわかってしまい、背筋が凍りつく。

 

 

「出てこないと、先に逝くのはこいつになるわよ。それでもよければ物陰から全員出てきなさい。どっちにせよ、詰んでいることには変わりないのだから……!!

 

 

もう待ってはくれないだろう。

覚悟を決めて飛び出したのは、クリスが一番早かった。

 

 

『うん、別に外見が似てる訳ではないし性格も似てないんだけど… なんでかな、クリスに似てるなって思ったんだ。』

 

『正直に言ってしまえば、言葉にするのは難しい。だからどうかな、今度会いに行ってみないかい?』

 

 

そう言って、ついてきたあの世界。

この誘いが、ファイターですらないクリスを巻き込んでしまったとマルスは悟った。

心優しいあの方は、気にするなと言われても気にしてしまうだろう。

 

だから、せめて何事もなく終わらせたい。後になって、こんなこともあったな程度で済む出来事で終わらせる。

 

ダークサムスに向けられた指が、こちらへ向いた時、影の英雄を支えし剣が振り抜かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

額から眉を通り過ぎて瞳に入りそうになる汗を乱暴に拭った。小型の銃で緻密に狙い続けるゼロスーツサムスはようやく気づいた。

 

 

「ハァッ……!(この体力の低下はなんだ……!? 普段ならばもっと保つはずなのに……!? まるで精神面の消耗まで加わっているようだ……!!)」

 

 

言葉にするのも億劫で、思考のみでその問いを完成させた。

ちらりと一瞬ピットの方を見ると、そちらもそちらでかなり辛そうだった。撃つ瞬間はしっかりしているが、それ以外の時は僅かながら指が震えていた。

 

 

「……ピット、無理はするな、まだ行けるか?」

 

「…もちのろん!」

 

 

少し返事が遅れる。

やはり多少なりとも疲れているのだ。

 

この世界は、普通とは訳が違う。この世界はこの事態を引き起こした者によって創り出された世界。これほどまでに疲労が大きく溜まっているのはそのせいなのだろうか。

しかし、そんなことはキーラとダーズは出来なかった。もちろんタブーも同じくだ。

それらができなかったことがあの少女にできるのだろうか。自分の肉体をボディに頼るような者が。

 

 

「あっ! ぼーっとしないヨ!」

 

「……!! すまない、助かった……」

 

 

そんな考え事と狙撃のせいで、接近していた敵にまで意識が回らなかったらしい。大剣を頭上から振り下ろそうとしていたボディはミェンミェンの鉄球のごとき重い一撃によって、最下層まで叩き落とされる。

 

 

「こういうことあんまり聞きたくなかったんだけどさ! もしかして敵そんなに減ってない!?」

 

「聞きたくないなら聞くなー!! 余計疲れるっ!」

 

「キィイイー!!」

 

 

戦法的に安定はしているものの、火力がないこの戦法。

ピラミッドのようになっている力の神殿の頂点から、ピットとサムスが最下層の地上を狙ってショットや神器を撃ち、大まかな数を減らしていた。

登りはじめの中層はリンクの矢やディディーコングのピーナッツガンでさらに手堅くダメージを稼ぎ、頂点まで進んだ敵にはマルスかミェンミェンがとどめを刺す。

一直線に設置はされていない階段や、スティーブが設置していた防壁のおかげで頂上までたどり着ける敵はそう多くない。しかし、確実に数を減らす戦法は殲滅力に欠けていた。

 

そして、もう一つ問題がある。

この戦法。ただでさえ疲労の激しい2人に余計な負担がかかるのだ。

 

 

「リンク! ディディー! サムスとピットと交代できる?」

 

「矢の残量が不安!」

 

「それなら僕が前にでる!」

 

 

中層と下層を担当する者を変えようと考えるも、多くの敵を相手取るほどの矢は残っていないという。それなら、多少陣形を崩してでも前に出る。

 

 

「前衛をつくろう! 僕もいくよ!」

 

「ウキーッ!!」

 

「それなら……中層まで前線を上げる!」

 

 

リンクとディディーコングもマルスの後に続いて前にでる。

中層……四角錐型の神殿を登り始めようとしている箇所まで詰め、近距離戦を仕掛けようというのだ。確かに先程よりは敵を倒せるかもしれない上に敵が減ったことで必要となる狙撃の数が減る。だが、抜けられたら後衛まで崩されやすいという弱点がある。

 

─それでも、2人の負担だけは減らさなければ。

 

 

ロックバスターを弾き、カウンターで一突き。神殿の斜面をずり落ちていく。ちらりと下層の大軍を見る。最初は50前後はいただろうか。現在は30から40程度だろうか。一瞬見た上では確信は持てない。

 

 

「キィィッ!」

 

 

目の前で猫騙しをくらわせ、怯んだ隙にはゼロスーツサムスのパラライザーが敵を痺れさせる。そのまま跳び蹴りをくらわせると、限界が来たのか、クッパの姿をしていたボディは色を失って溶けていった。数瞬残っていた金色の液体も空気と一体化するように消えていく。

 

 

「今更だけどッ! 以前とはっ、消え方が違う!」

 

「そういえば、そう、だねっ!!」

 

「……! 知ってたの、かい!?」

 

 

戦いながら途切れ途切れに語り出すマルスに、リンクもまた途切れ途切れに答える。

頂で戦っている彼女と同じ姿をしたボディに、右肩から腹まで思いっきり斬り込み、パワードスーツを貫通する。

同じ姿をしていても、中身は違う。リンクのよく知るゼルダとキクという少女が違うように。

 

 

「スピリットになってた時、のことでしょ!! 姫さんの頼みで、シークの体を借りて戦ってたときがっ」

 

「そんなことが!」

 

 

キーラやダーズに支配されていたスピリット達も、肉体があれば戦うことができた。それを利用して、かつてスピリットにされていたリンクはシークの体を借りて、彼のゼルダと共に操られていたガノンドロフと一戦交えたのだ──

 

マルスの背後を取ったふうせんポケモンのボディへ、ピーナッツガンが射抜かれる。落ちた相手に剣を使って地面に縫い付けられる。

感情は複雑でも、その仕業に戸惑いはなかった。

 

 

「キウアアッ!」

 

「でも、それは変じゃないんじゃない? ここはあの世界じゃないんだからフュギュア化はしない。多分今は力づくで砕いてるイメージで……」

 

 

ディディーコングが力任せに振り抜いた拳は、ドラゴンのようにも見えるエイリアンをまっすぐ撃ち抜いた。ミェンミェンのドラゴンアームが追撃に動く。

風の勇者と魔王。決して縁遠くない敵2人を構えだけで牽制するリンクは言葉をすらすら繋げられた。

 

 

「それは、多分、あのキクも同じだ! フュギュア化しないなら、討伐は難しい! というか、精神の宿ったボディは果たして他と同じように砕くことができるのか……!?」

 

「……ッ、最悪なパターン引かなきゃいいけどね……!」

 

 

倒せない、とは思えないが。

倒すのが難しい、でも十分に脅威だ。

CQCの格闘技を剣で流しながら、柄で首元を叩く。減ってるように見えない敵たちは、時間感覚を消失させ、闘気のみを純化させる。

 

 

「もう! 焦ったいなあ……!!」

 

 

ピットは既に爆筒EZランチャーに持ち替えていた。爆発する弾丸を発射する、大砲を思わせる神器。ため射撃の反動を歪んだ表情で耐えていた時だった。

 

 

「……! 飛ばれ……!!」

 

 

仮面の騎士が、火龍が、天使が、未来の大王が、そのボディ達がマルス等がいる場を飛び越え、天辺に向かう。

ファイターとは違うとわかっていたのに。今までもできただろうにタイミングを測ったかのごとく不意を突かれた飛行。上を制圧して挟み撃ちにする気か。

 

 

「しまっ……!」

 

 

空に向けて構え直そうとするピットに、構えるゼロスーツサムスとミェンミェン。

 

──その真価が問われる前に、ボディ達は撃たれる。

 

 

「え?」

 

「もも〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ、腕は上がる。でも、ひっそり慢心していたのかもしれない。

共に戦えたのだから、自分はそこそこやれるのだと。

 

甘かったのかもしれない。

 

 

「……で? その程度かしら?」

 

 

綺麗な金髪を。少しは共通点のありそうなそれを。ゼルダは睨みつけるしかできなかった。

 





○タイトル
新・光神話 パルテナの鏡の4章のタイトル。
空中戦時の赤い視線の多さに動揺しながらもワクワクしてました。
ちなみにピットとパルテナ以外誰も喋らない章でもあり、事実言及されている。


○作者の気まぐれコメント
スクイックリン使いになろうとしてたら、リッターの方がキルレ高くなりました。なんでや。
ネタを挟む暇がなかったので解説することがありません。アホか。
あと小話を試験的に台本形式にしてみました。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
ネス「(今日のおやつなんだっけ?)」
リュカ「(確かロゼッタさんの作ってくれた星くずクッキーだったと思う)」
ミュウツー『(……なぜ私の近くでやりとりをする?)』
ネス「(このこと話そうとした時にちょうどミュウツーがいただけ)」
リュカ「(えと……せっかくだしミュウツーさんも一緒にどうですか?)」
ミュウツー『(……お前たちの分がなくなるぞ)』
ネス「(別に大丈夫だって! その分ミュウツーが食べられる!)」
ミュウツー『(……フッ。帽子だけが似ているだけではないか……)』
ネス「(???)」

リヒター「おっ? エスパートリオが何か通じ合ってる?」
マリオ「なにかんがえてるんだろうね?」


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56話 変われる強さ、変わらぬ思い

 

場違いなほどに澄み渡る金属音。

それはキクが防御のために発動したネールの愛と、クリスが下から上へ斬り上げた剣がぶつかった音だった。

 

 

「クリスさん!」

 

「……!」

 

 

しずえが撃ったパチンコの弾をするりとかわす。確かにしずえは誰かと戦うなど、大乱闘でなければやったことはない。

だが、ほかのみんなが頑張っているというのに、それを理由に隠れていることは出来なかった。

 

 

「生粋の剣士……! 面倒な……!」

 

「すみません、丸いお方! この人のことお願いします!!」

 

「プ……!」

 

 

そしてそんなしずえが微力であっても頑張っている姿が目に入るからこそ、プリンは更なるジレンマに追いやられるのだ。

目を背けたい。見なかったことにしたい。ここには何もない。無力な人はここにいない。そう思えたら、それができたらどんなに楽だろうか。でもそうしてしまえば、自分に言い訳をして戦わない選択をしている自分からも目を背けてしまう。

 

ゼルダからダークサムスとの離脱を勧められるも、内面を表すかのように腕ひとつ動かせなかった。

 

 

「はあ!」

 

「甘い!」

 

「うわっ」

 

「また、マスターハンドさんの……!」

 

 

ふたつのチャクラムを創造し、腕の動きと共にクリスへ襲い掛かる。クリスは大きく跳びかわしたものの、背後の木々が犠牲になり、隠れていたイギーがとびだした。

そして、またもやマスターハンドの技を使用したことをファイターである者は見過ごさなかった。

 

 

「……何見てるのよ」

 

「マスターハンドさんに、なにかしたんですか?」

 

 

じっと宙に浮くキクを見つめるスティーブ。その視線を不愉快に思ったのか、戦いそっちのけで問いただしてきた。その真意は代わりにしずえが話す。

 

 

「なにか……まあ、色々したわね。一応聞いてあげるけど、私達はそいつを探してる。居場所、知らない?」

 

「……知りません」

 

「でしょうね。あんた達が知るはずもない」

 

 

関わりがあったことを語るキクは、マスターハンドを探していると。本気で知らないのでそのまま伝えたが、キク自身その答えは想像していたようだ。一連の心境には怪しさを感じるが、一種の不快感の領域をでなかった。

スティーブはそれが気になるのか、さらにじっと見続けているが。

 

 

「……いつまで見てんのよッ!!

 

 

それに過剰なほどに怒りをあらわしたキクは、チャクラムを操って手元へ戻す。背後から不意打ち気味に攻撃を受けたスティーブはそのまま前に倒れた。

 

 

「あーあーあー!! 本当なによ! どうせ私は見るに堪えない化け物以下よ!! じっと見つめないで!! ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「……今なんて……」

 

 

癇癪を引き起こしたキクの言葉はやたらと反響しているように錯覚する。

本人も無意識から出た言葉だったようで、失言だったと顔を強張らせた。

 

 

「……もういいわ。手加減なんかしない。とびっきりの地獄を見せてあげる……!」

 

 

そう言うと、まずはすぐ近くにいたスティーブとクリス、未だに倒れたままのダークサムス目掛けて火球を創造し、ぶつける。

 

 

「ぐうっ……!」

 

「動けない方まで……! なんてこと!」

 

 

近くから無差別に。意識を失っているように見えるダークサムスまで攻撃対象に入れる悪辣さにゼルダはファイアロッドの魔法をぶつける。

まっすぐキクの方角へ向かっていった炎は、火力を増し……そして()()()()()()()()()彼女の目の前で消えた。

 

 

「…………」

 

「効いて、ない……?」

 

「それならこうよ!!」

 

「つづけぇ!」

 

 

ウェンディがリング状の魔法攻撃を、ラリーが少し遅れて反射する魔法弾を撃つも、同じように効かなかった。

気のせいだと思い、キクの意識が2匹に向いている瞬間を見計らって、次はアイスロッドで背中を狙う。相手の意識外からの攻撃。でも結果は変わらず背中から魔法が吸収される。

 

 

「……で? その程度かしら?」

 

「……っ」

 

 

振り返ってまっすぐにゼルダの方へ見つめる。肉体は同じ血筋だから所々共通点があるのだろうか。短く切り揃えたショートヘアが首筋をくすぐる。やたらと背中が寒く感じる。

 

 

「……くっ!」

 

「地獄を見せると言ったはずよ!」

 

「うわああ!?」

 

 

ダメージに耐え、一歩を踏み出したクリスとスティーブの2人に炎と氷が襲い掛かる。

 

 

「え、あれはマスターハンドさんの技では……!」

 

 

スティーブが燃え、クリスの右腕が凍りつく。成り行きを見守っていたしずえだったが、それが今まで使っていたマスターハンドの力ではないことはすぐにわかった。

当然だが、ボディであるゼルダの力でもない。

 

 

「コソコソ隠れられるのも面倒ね……!」

 

 

うまく動けなくなったスティーブとクリスを、実質戦闘不能だと判断し、キクは狙いを別の標的へ移す。そこらに隠れているだろうクッパ7人衆へ向けて、魔法を放った。そう、《《リング状》の魔法攻撃を。

 

 

「……っ! この技……!」

 

「……ぬうう!?」

 

「モートン!」

 

 

さらに別の魔法弾を放つ。この技、そこらの木にあたって跳ね返ってくるのだ。避けきれなかったモートンが背中をぶつける。

そして、ようやくルドウィックが気づいたのだった。この技は先程やったウェンディとラリーの技そのままなのだ。

 

「どうして2人の技を……」

 

「ふん、こっちも自前の力じゃないのよ」

 

 

理由がわからないと悩む彼にイラつきが落ち着いたのかキクが得意げに答えた。掲げた片手から巨大な炎が生み出される。

 

 

「……!? みなさん、はやく私の周りに」

 

「くらいなさい」

 

 

大火球が彼らを森ごと焼き尽くす。巻き込まれぬようにと距離をとっていたキクは確信していた。奴らは巻き込まれて灰も残らなかったと。

 

 

「……はぁ……しぶとい連中ね……」

 

「ギリギリ助かった……」

 

 

しかし、ゼルダとその後ろにいた者たち、それよりも背後の木々は形を保っていた。

リンクが彼女に渡したアイテム、バイラの杖のおかげで光の壁が間に合ったのだ。

 

 

「……プリンさん! 一緒にダークサムスさんを運んでマルスさん達の元に戻りましょう!」

 

「プ……」

 

 

ゼルダは真っ先に倒れたままのダークサムスへ向かい、防御は間に合った。しかし、次がどうなるかはわからない。その前に離脱しておこう、ということだ。

 

 

「プ、プリ……」

 

「戦う意志もないなら、何もせずに立ち去りなさい」

 

「させるかッ!!」

 

 

どうすればいいかと迷う一瞬に、キクは背後へテレポートする。反射するビームを撃つ彼女とプリンの間にクリスが割り込んでくる。

刃の煌めきは鏡のような作用を働き、ビームは上空へまっすぐ飛んでいった。

 

 

「ッ!」

 

「はあ!」

 

「うっ……!!」

 

 

反射的にビームの軌道を目で追ってしまい、上からの振り下ろしがモロに入ってしまった。

ついに地面に足がつき、動揺と共に痛みを堪える。

 

 

「……やはり。みなさん! 先程の砲撃をお願いします」

 

「わかった! 砲撃開始だ!」

 

「なんでお前が命令してんだかっ、これでどうだっ!」

 

 

何かを察したゼルダが、クッパ七人衆にさっき行った弾幕の嵐を要求する。ルドウィックの命令に従って……というには些か違うような気もするが、彼を皮切りに攻撃を開始する。

単純に避けるルートが減ったキクは、キレのいい回避ができず2、3発をくらってしまう。

 

 

「あなたの力は! エネルギーや魔力といったものを吸収し、自分のものにする力! ですが、剣などの物理的な攻撃には防ぐ手段を持ちません!」

 

「ここ、まで……!?」

 

 

スティーブによるダイヤモンドの剣のスマッシュ攻撃がとどめとなって、キクを空中へ吹っ飛ばす。その空中でなんとか留まるが、肩で息をしているのは見え見えだった。

 

 

「見破られる、なんて……」

 

「投降しろ。おまえの力の正体は彼女が見破った。おそらく、お前もまた戦闘は得手ではないのだろう?」

 

「ふふふ……これだけで()()()()なんてね……確かに戦うなんて得意でもないけど……それでもやらなきゃいけない時があるのよ……」

 

 

反対の肩に置いている右手を強く握り締めた。何かを成そうとしなければと、そんな強い決意を感じた。

 

 

「あの丸と犬は神殿かしら……丸が一番効率が良かった……」

 

「何を……」

 

 

しようとしている。そう続けようとした言葉は、キクの消失により途絶えた。あの、瞬間移動だった。

 

 

「(やっぱり切り札を切るしかない。絶望がこのオーブに満たされれば、切り札完成するはず……!)」

 

 

どこかで、キクという少女は自分が手に持つ闇のオーブを見る。

 

それはもうほとんど満たされていた。

 





○タイトル
テイルズオブエターニアのキャッチコピー。
テイルズオブシリーズといえば、やたらと長いジャンル名なせいでキャッチコピーは影が薄い。そんなエターニアは絆と永遠のRPG。


○キクの能力とは?
ゼルダが看破した通り、受けたエネルギー系の攻撃を吸収、増加させて自分のものにする能力です。だからマスターハンドの技を使用することができ、相手によっては詰ませることができます。
ダークサムスはフェイゾンという放射性物質の化身みたいなものなのですが、それもまたキクの能力の対象。ミサイル等の武装はサムスとは違ってフェイゾンを形にしているようなものだと解釈してるので、完封できました。生の身体ではない以上、ダークサムスの物理攻撃も効かないと判断しています。おそらく魔力の塊で殴っているようなものです。
あと地味にエネルギー系攻撃の影響も無効にしています。

弱点としましては、本編であったとおり剣等の武器、格闘技の物理。あと爆発や自然現象も通じます。
戦闘に関しては、その能力とボディの力に頼りきっている模様。


○切り札
もうすぐお披露目。
ネタバレすると今章のボスにもなります。当てたらすごい。


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57話 冥府界

 

闇の神殿の頂上、ピラミッド型の建物の頂で後衛とその護衛として、地上や下層の敵と戦い続けてきたゼロスーツサムス、ピット、ミェンミェンの3人。背後から聞こえてきた声に焦りながらも体を動かす。まさか、後ろから回って力技で登ってこられたのではないかと。

戸惑いなくゼロスーツサムスは銃口を向ける。ここまで気づかなかった自分を叱咤しながら、矛先は見たこともない生物2匹に向けた。

 

 

「ももっ! ネ、ネネ達は怪しいモノではありませんも!」

 

「な、なんだこの生きものは?」

 

 

そこにはあまりにもファンシーな生き物がいて、思わず声が裏返った。

卵型の体系で、細い手足がついていて、背中からは羽根にも手にも見える何かが生えていた。

それが、桃色と黄緑色の2個体。

 

 

「え、えっと……キノはクリスから話を聞いて……」

 

「ウソはダメも、今度は盗み聞きしてたも」

 

「ももっ!? なんで知ってるも!?」

 

 

桃色の個体の背中から、少々吃りながら説明しようとするが、嘘が混ざっているようで。

意を決した様子で黄緑の、キノと呼ばれていた個体が前に出る。

 

 

「戦えるヒトがヒツヨーだって、クリス、言ってたも。それでねえちゃんと残ってここまで登ってきたも」

 

 

要するに、クリスがクッパ七人衆に助太刀を要求していることをキノが聞き、姉と一緒にここに残ったということなのだ。

 

 

「後ろから登ってきたネ!? よくやるヨ……」

 

「キノ、イッショウケンメーですも! だからネネもイッショウケンメーになれるですも!」

 

 

力になりたいという理由だけで、整備されていないだろう裏側から外壁を登ってきたというのだ。なんという力技。

 

 

「えと、だから……キノのライフルが火を吹くも!」

 

 

まずは、キノがエーテルを撃つ。それは周囲の仲間を癒す治療のアーツだった。

 

 

「治療か! ありがたい……!」

 

「よおし!! これでガンガンいこうぜ!!」

 

 

本調子ではなかった2人もようやく活力が戻ってきた。ちょっと体の調子を確かめると、ピットはそのまま神殿を駆け降りていく。

 

 

「あ! 待つも! キノも前に出るも!」

 

 

後を追ってキノも飛び出していった。どうやら精神年齢が近いようで、残された乙女集団は少々呆れた顔をしていた。

 

 

「子供かヨ……」

 

「男の子は強く見られたいんですも。タンジュンだけど頑張り屋さんなんですも」

 

「単純か。少し辛辣だが的は得ているな。フフッ」

 

「カッコいいけど笑顔も似合いますも! あ、えーと……」

 

「サムスだ。ネネ、だったか」

 

「うちはミェンミェンネ」

 

「サムスさん、ミェンミェンさん、ネネ達も戦いますも!」

 

「そうだな。せっかく癒してもらったというのに、これではぐうたらだな」

 

 

久しぶりに、余裕ができた気がする。柔らかく口角を上げられたのも久々だ。

階段を降りるのももどかしく、斜面の外壁を滑り落ちていく。パワードスーツがもう重荷にならない。装着しながら、マルスと鍔迫り合いをしている、彼と同じ見た目の敵にフルのチャージショットをくらわせた。

 

 

「サムス! 無理しなくても……」

 

「大丈夫だ! 心強い助っ人が来てくれたんだ!」

 

「スリープネロっと!」

 

「少し見かけは珍妙だが」

 

 

弾丸を竜にぶつけ、睡魔を呼び起こした。人型に戻った敵はディディーコングの飛び蹴りで地上まで落とされる。

その助っ人の姿を見ると、なるほど確かに珍妙だ。この子も、ファイターの誰かのオトモダチだったりするのだろうか。

 

 

「君、ありがとう。協力してくれるんだね」

 

「も、ももも……」

 

 

マルスが素直にお礼を言うが、キノは言葉に詰まってしまう。単なる人見知りなのだが、マルスは照れてるのだろうかと解釈した。

 

 

「恥ずかしがらなくてもいいよ。助けてくれてありがとう。クリスから頼まれたのかな」

 

「もも…… えっと、そう、そうも」

 

「ボクもいるぞー!?」

 

 

パルテナの神弓を振り回すピットがふくれっ面で自分の存在をアピールする。

 

 

「キノが回復? 治療? してくれたネ。だから前に出てきたネ」

 

「君がキノか! ありがとう!」

 

 

子供のボディでも、ファイターと同等の実力があるのだから、油断はできない。

そんな中で治療ができる者の加入は大きな追い風となった。

ピットが斬りつけた村人がノックバックしたところを、マルスが一突き。ただひたすらダメージを減らされていたボディはその一撃により、ドロドロに溶けていく。

後衛の前線参戦、そしてキノとネネの加入により、ボディ達はようやく同数となった。

 

 

「ネネもお役に立つですも! こっち見るですも!」

 

「おっ……?」

 

 

ネネがその場で仁王立ちし、リンクが相手にしていた針鼠を含めた3体ほどの視線を自分に集める。守りにも扱える巨大な武器と金属製の防具でダメージを耐える。

 

 

「ソイヤッ!!」

 

「ミェンミェンさん、ありがとうございますも! マイルドダウン!」

 

 

ネネにヘイトを向けた敵にメガボルトを叩き込む。鉄球を振り回すような攻撃は3体の敵全てを崩した。それに追い討ちをかけるかのようにマモマモを叩き込む。完全にすっ転ばせた。

 

 

「全く。助っ人ばかりにいい格好はさせられないな! 即席でも出来るだけ追い討ちをかけるぞ!」

 

 

パワードスーツを着て、ようやく本調子になってきたサムスは同じ3体をまとめて回し蹴りをくらわせる。広いとは言えない足場で体勢を崩す。

 

 

「ウキー!!」

 

 

身軽な立場を利用し、その崩した敵のうち2体の頭部を押しつけてぶつけさせる。そして、残り1体をサーフボードのように下にし、斜面に引き摺り下ろしていった。

 

 

「うわ! なにあれボクもやる!!」

 

「やんなっつーの!!」

 

 

だんだん彼のノリがわかってきたリンクが、少々言葉を乱暴にしながら突っ込んだ。そして同時に1人を柄で殴り、マジカルハンマーで叩き潰した。

 

 

「あとは!?」

 

「こっちは任せろ!」

 

 

もう片手で数えられるほどになった敵を確認し、1体にミサイルを至近距離から撃ち込む。横向きに振られた大剣をモーフボールになることで股から後ろに回り、背中にアームキャノンの爆風を叩き込んだ。

 

 

「それなら2人はボク達がいく!」

 

「まったく! あの子を探さなきゃいけないのに!」

 

 

射爪ブラウンタイガーで敵を怯ませ、リンクが地上へ斬り落とす。寄せ集めの集団が、ようやく本格的な連携をするようになってきた。

 

 

「ぼーんあっぱー!」

 

「もももっ……!」

 

 

ネネの一撃に吹き飛ばされ、キノがエーテルを撃ち出す。そうして最後の敵は落ちるギリギリまで追い込む。

 

 

「これでとどめヨ!」

 

 

アーム、ドラゴンが、星の子ごと魔女のボディを打つ。炎とともに追撃し、空中で霧散していった。

 

 

「やっと終わった〜、数多いのに割と硬くて爽快感ないとかクソゲーだよ、KOTY行きだよ〜」

 

「あっ、回復するも」

 

 

ひと段落したと認識したのか、ピットが座り込む。それを見て、キノが範囲回復を行った。

 

 

「なんかいつのまにかおもしろ生物が増えてるけどなにこれ?」

 

「ネネとキノはノポンですも!」

 

 

リンクが2匹を訝しげに見つめるが、突如ハッとして我に返ったように慌てはじめる。

 

 

「って、それよりキクは? あの子は確実に何か知ってるでしょ?」

 

「……彼女の言うことが本当ならこの世界にいない可能性もあるが」

 

「ともかく避難していったクリスを追おう。後のことはみんなで考えようか」

 

 

リンクはまだ少し不服だったが、どこにいるか検討もつかないのならば仕方がない。ひとまずマルスの意見に従おうと揃って神殿を降った時、スティーブが作った即席の橋から、戻ってくる姿が見た。

 

 

「みなさーん!! ご無事でよかったです〜!!」

 

「しずえさんにプリンネ! あとアレは……」

 

「……ダークサムス……!?」

 

 

しずえが必死に誰かを抱え、プリンが空中で少しでも軽量化させようとしている姿が見えた。

その誰かはダークサムスだった。サムスは驚きと戸惑いを覚え、どうしていいかわからなくなる。その気絶しているように力なく寄りかかる姿に、自らの宿敵たる様子が全く見えなかったからだ。

 

 

「しずえさん、どうしてここに戻って……」

 

「キクさんがこっちに来ていて……」

 

「……ッ!?」

 

 

しずえがその事実を語るタイミングと、一部の者が、そこを振り返るタイミングは同じだった。たった今自分達が降りたその神殿の頂上に見覚えのある姿で少女はいたのだ。

 

 

「……まったく。こうなるんだったらあいつらの戦いに固執するんじゃなかったわ……」

 

「リンクー!」

 

「マルス様!」

 

「……そしてよりによって合流されるし」

 

 

その少女はため息を吐きながら、少々塩らしくなっていた。幾分か冷静になったと言ったところか。

ゼルダやクリスとも合流され、そのため息はさらに深くなる。

 

 

「彼女には魔法やエネルギーのような攻撃が効きません! 吸い取られて返されます!」

 

「吸い取る……!? だからダークサムスは……!」

 

 

サムスは宿敵が敗北した原因を把握する。彼女の知らぬところで、キク本人が言ったが、本当に相性の問題だったのだ。

 

 

「どうして僕達をこんな世界に……」

 

「……いいわ、答えてあげる。本当は後顧の憂いを断つつもりだったけど、ほとんどどうしようもないことだから」

 

 

まるで何もできないという言い草に思うところはあるが、ここは大人しく聞くことにする。

 

 

「私はあの創造の化身の力を手に入れた。でも、本人には逃げられた。そいつはファイターの誰かに宿って隠れているはず。みんなはフィギュア化させることで、そいつがいるかどうかを判断してるけど……」

 

「お前には必要ないと?」

 

「そう。見ればわかる。だから言ってあげるけど、ここにいる誰にもマスターハンドはいないわ。ここはこの調べたファイターと、()()()()奴らをまとめて放り込む場所…… 言ってしまえばゴミ捨て場みたいなものなのよ」

 

「ヴギギギ……!」

 

「そういえばあんたには決定的瞬間を見られたわね。だから潰しておきたかったんだけど…… ここまで揃って勝てると思うほど私は馬鹿じゃない」

 

 

比較的戦闘の苦手な相手がいた先と違い、戦闘民族と合流した今、勝てるとはキク自身思わない。自分の力についての情報が()()知られているなら尚更だ。

 

 

「だから…… あんた達にピッタリな切り札を切ることにしたわ」

 

 

そういうと、おもむろに闇のオーブを取り出し、神殿の頂上の風穴に置くように落とした。

それは見なくとも、割れてしまうと断言できる。だが、キクだけはそのオーブが完全なものになっていることを知っていた。

 

 

──突如、神殿から何かのオーラが発生する。正確には、オーブが落とされた穴から。

 

 

「何が起こっている……!?」

 

「…………」

 

 

剣を抜き、全員の本音をクリスが零す中、ピットだけはその力になんとなくの既視感を覚えていた。

 

似ているだけ。

その大きな共通点は、亡者の嘆き。

 

 

「ハデス……?」

 

「確か、ルネはこう言ってたかしら。絶望や恐怖で満たされた闇のオーブを破壊すると現れる大魔王、その名は──」

 

 

背中から蜘蛛の足のように生える爪。

鉤爪と、髑髏が無数についた棍棒。

 

 

「冥府の帝王 ガーディス」

 





○タイトル
光神話 パルテナの鏡で登場するBGM。多分パルテナの中じゃ一番有名。敵軍の陣地の名を冠するが、曲調は結構明るめ。


○ネネ
ゼノブレイドDE つながる未来で登場。ノポン族のメス。
リキの子供で、しっかりもののお姉ちゃん。木登りができない子だが、今話ではキノを背負って神殿の外壁を登ってきた。健気。かわいい。
能力はラインの同じタンク役。本編ではヘイトをもらっていい子がネネしかいないので超重要。


○キノ
ゼノブレイドDE つながる未来で以下略。ノポン族のオス。
父リキのような勇者を目指すが、実子ではなく拾い子。
人見知りだがお調子者でもある。
能力はカルナと同じ、ヒーラー兼ガンナー。武器はリキ制作。


○今度は盗み聞き
つながる未来編では盗み見していた模様。


○冥府の帝王ガーディス
アーケードから移植された、ドラゴンクエストモンスターバトルロードビクトリーのダウンロードコンテンツで登場するオリジナルボス。
原作後の時系列を主にしている本作において、『倒されておらず、倒しても原作に影響しない』という利点を買って、今章のボスに採用。
デザインはスライムもりもりの漫画の作者かねこ統氏。
登場シーンは原作ゲームの漫画を採用。あちらは事故だが。しかも、うろ覚えなのだが。


○作者の気まぐれコメント
カービィカフェ行きましたフウウウウ!
スーベニアランチボックスかわわ。


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58話 死へのいざない

 

「もう! ひと段落ついたと思ったらすぐに厄介ごとが増えるネ!!」

 

『何者だ…… 我を永き眠りから解き放つ者は……』

 

 

本能が怯えを察知した。

この存在は自分達よりも遥かな上位に君臨する者だと。ゆえに身がすくむ。

誰が知るはずもないが、この帝王は数々の魔王すらも怯えすくませるほどの存在なのだ。

 

 

「……あいつは強い……明らかに……」

 

「君は……」

 

 

ここにいる中で一番元気溌剌に飛びかかっていそうなピットが、一番真剣な顔をしていることにリンクは気遅れする。

彼が知っているその存在と目の前の存在は決して同一ではない。それはわかるのだ。でも共通点を探してしまう。同じ亡者を統べる者だからなのだろうか。

 

 

「あっ! ところであの方は……!」

 

「! キクがいない……!」

 

 

ゼルダがここに来たであろう敵側の少女が見当たらないことに気づく。それで初めてマルスも、浮かんでいた空中からキクが消えていることに気がついた。

冥府の帝王ガーディス。奴に視線が集まっていたせいで逃げられてしまったようなのだ。

 

 

「ガーディスをなんとかしなければ探すこともできないか……!」

 

 

ここのどこへキクが逃げたとしても、ガーディスを放っておいたまま何かをするのは無茶だ。

剣を抜いたクリスにガーディスが威圧的な目を向ける。

 

 

『ほう……?』

 

「……ッ!?」

 

 

それだけで体が硬直し、一瞬自分のコントロールから外れてしまう。動けると気づいた時には片足が迫っていた。

 

 

「クリスッ!!」

 

「……ッ!!」

 

 

久方ぶりに聞いた、主の鬼気迫る声にクリスはようやく動いた。即座に横へ飛んで足下から離れる。残っていた神殿の外壁も無惨に壊れ、全員に襲う。

 

 

「くっ……意外とはや……ッ!」

 

 

地面を一回転して即座に体勢を整える。巨体に違わぬ速度に少なからず動揺した時、腹部に猛烈な熱さを感じた。

あの蜘蛛の足のような爪がクリスの腹部を深く切り裂いていたのだ。

 

 

「──ッ!!」

 

 

込み上げてくる激情を、マルスに止めることは出来なかった。感情の赴くがままに駆け出し、未だ形を保っていた外壁を足蹴に膝部分へ肉薄する。

 

 

「のッ──!!」

 

 

全力で突き出した切っ先は僅かに膝に入るのみで何も変わらない。汚れを払うような仕草でマルスをファルシオンごと吹き飛ばした。

 

 

「くっ……!! ほとんど効いていない……!」

 

「一撃の威力が違いすぎるんだ……!」

 

 

人間で言うならば、爪楊枝で刺したようなもの。痛いといえば痛いが、長引くようなものではないということだ。

エリトラで低空飛行してきたスティーブの腕の中にいるクリスを見る相当痛そうではあるが、目は開いて荒い呼吸を繰り返している。命を奪われていないことにはとりあえず安堵する。

 

 

「キノ、クリスさんの治療に行くも!」

 

「わ、わかってるも」

 

「こちらもお願いしまーす!」

 

 

この場で唯一治療の術を持っているキノ。深手を負ったクリスの元へ向かう。それに気づいたしずえもダークサムスを賢明に背負って向かう。

 

 

『逃げることもせず、あくまで我に勝とうというのか……愚鈍なる者どもよ……』

 

「訳もわからず呼び出されて、いいように使われるがまま戦ってるあんたに言われたくはないね!!」

 

 

接近するリンクに対して振るわれた拳は、その身体能力によってかわされる。クッパ七人衆による砲弾が飛び交う中、強気に攻めていく。

 

 

『あの者は後でゆっくり痛ぶってやろうぞ……今は貴様達だ……!』

 

 

リンクがブーメランを投げるが、まるで効いた気がせず、弾かれて落下する。

 

 

「剣で駄目ならこれでもか……! 何なら効くんだよ……!」

 

「それならこれでどうです!」

 

 

実態のない攻撃ならば効くのではないか。そう考えたゼルダは、キクには効かなかったファイアロッドの魔法を放つ。脛付近を炎が襲うが、まるで効果がなかった。

 

 

「そんなっ……!」

 

「危ない! ぐう……!?」

 

 

効いた様子のない結果に呆然としたゼルダに棍棒が振るわれる。リンクが慌てて、庇う位置に動きながら盾を構えるも、そんな体勢で受け切れる訳もない。紫のオーラに包まれた棍に2人まとめて吹き飛ばされる。

 

 

「……! 大丈夫ですか!?」

 

「なんか……! しびれ……!!」

 

 

受けきれず、攻撃をくらったリンク。彼が盾になったゼルダと違って、直接くらった結果、体が麻痺したようだ。亡者の怨念は生者を縛り付ける。

 

 

『……目障りだな』

 

 

足元をうろちょろと動くファイター達や、大砲を撃ち続けるクッパ七人衆を不快に思ったのか、本格的にガーディスが動き出す。

壊れた外壁の残る場所から動き、高さの同じ平地へ。地下に足をつけていた先程と違い、さらに高さの差が生まれる。

さらに、口から黒色のモヤのようなものを辺りに撒き散らす。それの正体をピットは本能で察知した。

 

 

「あれは死んだ魂の嘆き……!? ダメだ、かわして!!」

 

「ごめん、たのむ……!!」

 

「待ってっ……!」

 

 

忠告が遅かった者、かわす方法を持たなかった者、託した者。広範囲の攻撃は生命を怨む。

 

 

「これは……うごけ、な……!」

 

「もー!! 捕まったですもー!!」

 

 

亡者のなげきが、モヤを浴びた者達を縛り付ける。怨み、嘆き、未練。死者を統べし帝王はその感情を呼び起こし、生者を支配する。

 

 

「ぼっちゃんと同じ武装がなければ巻き込まれていたか……!」

 

「ちょっと待って! アタシ達だけじゃどう頑張っても勝てないわよ!」

 

 

かわせた者は、クッパクラウンと同型の機械を持っていた七人衆。

 

 

「ウキーッ!」

 

「みなさんが!」

 

「降りて治療するも!」

 

 

バレルジェットで空へ飛んだディディーコングと、プリンの上に乗るキノ、ふうせんでしずえに助けられたクリスとダークサムス。そして、

 

 

『……』

 

 

たった今、ガーディスの顔をダイヤモンドの剣で斬りつけたスティーブだった。エリトラで空を飛んでいたのだ。

 

 

「……! ディディー! そしてジュニアと同じキカイを使う君たち! 空から攻撃してスティーブの支援をしてくれ!」

 

 

それを見ていたマルスからの指示が飛ぶ。上空と地上に注意が分かれれば、より動きやすくなる。未だに動きの鈍い体に鞭を打つ。

 

 

「そして、プリン!」

 

「プッ……!?」

 

「君はそのまま空からキノやみんなのサポートを頼む!」

 

「プ……」

 

 

ずっと逃げてばかりだった。昔も今も。

これでいいのだろうか。何も変わっていない。痛む体も痛む手もがまんしながらでも戦うべきではないのだろうか。マルスだって苦手なはずの戦いを選んでいるから。

下を向き始めたプリンを励ます声は、上から聞こえてきたのだった。

 

 

「……キノ、とーちゃんみたいな勇者になりたかったも。でもとーちゃんと同じ武器、持てなかったも。だけどこの武器があるから平気も!」

 

「プリ……?」

 

「とーちゃんみたいな勇者にはなりたいけど、とーちゃんにはなれないも。だから……えっと……」

 

 

言葉に詰まったのか、人見知りが露骨になってきたのか、どんどん失速する励ましの言葉。

助け舟が出たのはしずえが風船をつけているブランコ状の乗り物からだった。

 

 

「つまり彼は自分がやれることややりたいことをやればいい、そう言っているんだ」

 

「もも!? クリス、ケガ平気も!?」

 

「お陰様でな。治療が効いた。……マルス様は君の気持ちがよくわかるんだと思う。戦いたくないという気持ちが……立場があるからその道をお選びになることはないが、君の気持ちに寄り添うことはできる! だからこそ君に戦えとは言わない! 殴りたくないなら殴らなくていい! その代わり別のやれることをやるんだ!

 

「……!」

 

 

そういえば、こんな自分にも、望んで戦ったことがあった。

大乱闘の世界に馴染めぬ自分と仲良くしてくれた、ピカチュウをキーラの支配から解放する時。またはガンナに煽られた時。

後で手は震えたけど、間違いなく自分で戦いに赴いていた。それが自分のやりたいことだったから。

 

 

「プクー!!」

 

「ももっ!?」

 

 

急に動き出したプリンに振り落とされないように必死に耳に掴まる。飛んだ先はゼルダとリンクのいる場所。体の痺れたリンクはもちろん、リンクを気にして逃げ遅れたゼルダも先の攻撃に巻き込まれていたが。

 

 

「ヒールらうんどー!」

 

「ふう……ふう……」

 

 

少々ヤケクソ気味に癒しのエーテルを発射する。荒れていた息遣いもかなり整ってきた。

 

 

「プップリー!!」

 

「すぐ次にいくもー!?」

 

「はやっ!?」

 

 

回復が終わったらすぐに別の場所へ飛んでいく。プリンもまた張り切っているのか、あっという間の出来事である。

 

 

「こんなすぐ切り替わるネ……?」

 

「それだけ悩んでいたということだろう。だが……」

 

 

180度勢いの変わったプリンに、目をパチクリする。これで機動力のある回復部隊を手にしたが、状況は劇的には変わらない。

火力の面に関しては変化もないからだ。現在、スティーブを中心に、ディディーコングとクッパ七人衆が空中で攻撃を続け、地上組の立て直しを図っているも、これ以上の攻撃ができる方法がない以上ジリ貧だ。先に回復が途切れる。

 

 

「(これ以上の手があるのだとしたら……)」

 

 

サムスは、他に取れる手を思いつく。ガーディスの知らない手。自分の姿をしたその生命。ようやく、動き出そうとしていた。

 





○タイトル
ドラゴンクエストXのラスボス第1形態、冥王ネルゲル戦のBGM。
おどろおどろしいイントロから徐々に楽器が増えていく。オンライン勢としては10要素も取り入れていきたいが、オフラインとの兼ね合いもあるのが困りどころ。


○ガイストラッシュ
暗黒属性を棍に宿した攻撃。なぜか麻痺効果のおまけ付き。バトルロードの実況も描写の参考にしています。


○亡者のなげき
暗黒属性のブレス攻撃で、呪いのおまけ付き。こっちは違和感なし。


○キノの武器
テッポーの実を使って溜めたエーテルを撃ちだしているとのこと。リキ作でカムカムを持てないノポンに愛用されているそうな。
リキとかいう出演ほぼしてないのに株を上げていく父親。


○Q.ダークサムス触れたらダメじゃね? しずえさん思いっきり背負ってるけど?
A.調整中。(後から気づいた)


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59話 心が命じたことは誰にも止められない

 

非戦闘主義者(プリン)が己だけが出来ることを模索し始めた頃、ずっと静観を保っていた者が動き始めた。

 

 

「あっ、ダークサムスさん……!」

 

 

しずえの、風船つきブランコから地上に着地する。宙に浮き続けるダークサムスは着地したところで、土埃もあげない。

 

 

「…………」

 

「サムス、君は……」

 

「言わなくていい…… わかっている。想像よりも揺らいでいない。大丈夫だ」

 

 

その様を複雑そうな顔で見つめるサムスにマルスが気づいた。心配されていることはわかっている。だから正直に話した。キーラとダーズの戦いを通じて、気持ちもだいぶ落ち着いたのだろう。ピカチュウという頼もしい相棒がいないというのに。

 

そう、ここがあの宇宙の世界でない限り。

そして、奴らが敵にならない限り。

味方とは言わないが、手は組んでやろう。

それが譲歩だ。

 

 

『……ふん』

 

「…………」

 

 

空中から降りてきたダークサムスと、空を飛ぶロイ、レミーに向けて暗黒呪文ドルモーアを放つ。2匹が脱兎のごとく逃げるなか、ダークサムスは2体に分裂しながら回避した。

 

 

「うわ、増えた!? ただでさえ主役の偽物ポジなのに増殖してややこしいことに!? ただでさえこの人数把握しきれてないのに!!」

 

「……君、随分と調子戻ったんだね」

 

 

ピットにツッコミを入れるリンクも、少し本調子が戻ってきたようだ。

分裂した2体それぞれがビームウェポンを撃ち出し、ガーディスの体力を削ろうと取り組むが、他の者たちと同じくほとんど効いているようには見えない。ダークサムスの加入は大したプラスにはなっていない。そう感じた。

 

 

「僕もなんとかしたいけど、正直少ない矢で撃ってもたかが知れてるし、剣も塵程度の威力しかなさそうだし。魔法が使えたらなんとかなったんだけど……」

 

「なんとか隠れてやり過ごせないかな?」

 

「僕たちをやり過ごして、次に攻撃対象になるのは戦えない人たちだよ…… ダメだ、有効な作戦がない。塵を積もらせて山にするしか道が見えない!」

 

 

神弓の矢で顔を狙い続けるピットは視界を潰すことを狙っている。地上から顔付近を狙うのは悪くないが、空飛ぶスティーブ等に誤射しないかだけが問題だ。

 

 

「それならば…… 封じ込めます!」

 

 

ゼルダがアイスロッドを取り出し、ガーディスに振りかざす。凍てつく氷の魔力はガーディスの足元を凍らせる。

 

 

「手を貸す!」

 

「…………」

 

『むっ……?』

 

 

そのままでは体に氷がついたとしか言えない有様でも、サムスと、彼女の能力を持つダークサムスがアイスビームを撃つことで足のくるぶし程度までは凍りつかせることができた。ガーディスがはじめて反応らしい反応を見せる。

 

 

「よし! これなら! 頼むよピット!」

 

「おけまる!!」

 

 

背後にまわり、リンクのフックショットがガーディスの肩までの道をつくりだす。

さらにゼルダに渡していたソマリアの杖で、フックショットの鎖部分をブロックで固め、さらに人が登れる橋とする。

 

 

「ハデスっぽい何か! 覚悟!」

 

 

駆け上がったピットが神弓の刃を煌かせ、まっすぐに顔面の目玉に突き刺そうとした。

しかし、背中から翼のごとく生えた爪は思った以上に速かったのだ。

 

 

『目障りだ!』

 

「ぶべっ!?」

 

「キィー!!?」

 

 

飛べないピットは叩き落とされたままに地面に落下する。近くにいたディディーコングが真っ先に向かう。振り下ろされた棍を必死にピーナッツポップガンで止めようとするが、もはや塵にもならない。2人まとめて伏せられる。

 

 

「もも! 回復いくも!」

 

「プリッ!」

 

「しずえさん! 僕を乗せてくれないか!」

 

「は、はい!」

 

 

2人の回復へ向かうキノプリンに加えて、マルスが状況の確認のため、しずえのブランコに乗って空へ飛ぶ。ペガサスでもないもので空を飛ぶのも、大乱闘の世界で慣れていた。

 

 

「(……どこかに突破口があるはずだ……! 倒す……いや倒さずともどうにかして戦闘不能に出来れば……!)」

 

 

空中から戦場を観察している。ガーディスの足を封じる氷は一応まだ機能はしている。だが、あの巨体のパワーを考えればいつ破壊されてもおかしくはない。

砲弾を撃ち、たまに魔法も飛ばすクッパ七人衆は士気が下がりつつある。クッパもいない中で好転しない状況を楽観視はできない。

ディディーコングが抜けて空中で接近戦を仕掛けるスティーブは回避で手一杯。

ピットとディディーコングは手負いでキノプリンの医療班が治療。

サムス、ダークサムス、ゼルダは根気強く攻撃し続け、リンクもブーメランでそれらを下回る働き。

目立った活躍のないミェンミェン、クリス、ネネはそもそも攻めあぐねている様子。

 

 

「3人とも! 足のことはいいから攻め続けてくれ! おそらく……どちらにせよ長く持たない」

 

「ももも〜……わかりましたも」

 

「……はい」

 

 

ミェンミェンは兎も角、遠距離の攻撃が出来ず空も飛べない2人は氷を砕いてしまうことを恐れていた。

 

 

「あ〜……もうなんかイヤネ! 相手がどうとかでこっちが合わせなきゃいけないとか!」

 

「ミェンミェンさん!?」

 

「決めた! ウチ、いつも通り行くヨ!」

 

 

そう決めたミェンミェンはアームをホットリングに切り替え、面での攻撃を挑む。凍った箇所もお構いなしにはじめた攻撃は氷のようにヒビを加えるイメージでゆく。

経験したこともない上位と悪意の存在に、かなり威圧されていたミェンミェンだったが、それを気にするのも面倒くさいと振り切れてしまった。

 

 

「いつも通り……そうですも! ネネが皆さんをお守りするですも!」

 

「マルス様……妙案を思いつきましたらいつでも従います!」

 

 

一撃が重いからこそ、攻撃を受けるネネとは相性が悪かった。それでどう戦うか図りかねていた。

最初に大怪我したクリスは柄にもなく慎重であった。周りまで巻き込む訳にはいかない。

 

人の策がどうだとか、周りの人がどうだとか、そんなことを考えながらも、結局はプリンと同じだ。

 

自分がどうしたいか。何をしたいかだ!

 

 

「僕は高所から指示を飛ばすつもりだったんだけどね……」

 

「じゃあ、私はマルスさんのお手伝いをします!」

 

「ありがとう……すぅ……みんな! 僕は今からこうして指示を出すけど! 君たちはそれに従ってもいいし従わなくていい! それも含めて君たちの判断で動いてくれ!

 

 

ええ!? という声すら聞こえる。

本当にやりたいことがあったなら、もう誰が相手でも止められない。例え冥府の帝王でも。

 

 

「彼、あんなに無茶苦茶言うタイプだったんだ……」

 

「私もあまり見たことないな……」

 

 

はじめましてのリンクは兎も角、そこそこ交友の長いサムスも見たことのない姿。

勝手に戦えなどという指揮官が他にいるか?

 

 

「ディディー! 回復したら右腕を狙ってくれ! クリスは右足に集中攻撃!」

 

「ウキっ!」

 

『ぐっ……!?』

 

 

ディディーコングはマルスの言葉をまるきり無視し、バレルジェットを切り離し顔面にぶち込む。ちょうど攻撃を受けようとしていたミェンミェンは視覚を潰れていたおかげで簡単に回避した。そのままクリスと共に右足をドラゴンのアームで撃つ。

後々の戦法を狭めることを承知で大きく一撃をくらわせたのだ。

 

 

「ふっふっふっ、今のゼーンブ、ネネの仕業ですも!」

 

 

どやっと、胸あたりを張ったネネ。それを鵜呑みにしたのかわかっていてやったのか、兎も角()()()()()()()()()()という目的は達成した。かぎ爪が収束するようにネネ1人を狙っていく。

 

 

「もも!? あ、ありがとうございますですも!」

 

 

彼女を掻っ攫うように飛んでいったのは、スティーブだった。エリトラでの加速で攻撃を掻い潜って飛んでいく。ガーディスの目線はそのまま空のネネとスティーブに集まっていく。

 

 

「(……さて、私はどうするか……)」

 

 

自分の戦いを押し付けているネネやクリス。回復したピットも現在は神弓一本。

いつもは支援もなく1人で戦うサムスは、敵に対応するのが自分の戦いだ。そういった点では、現在押し付けられる自分だけの強みのようなものが欠けているのだ。それならば、せめて自分は人の支援に。だから気づけた。

 

 

「(……! そうか、これなら……!!)」

 

 

自分の道だけを歩くように、今までずっと攻撃を続けている()()を見た。戦況の変化に応じて、狙う場所を変えつつ、派手には動かずミサイルやレーザーの攻撃だけをしていた。はじめから勝ち方が見えていたのかもしれない。

 

サムスの自分の戦い。それは勝つために冷静な判断を下すこと。この現状では最適だった。

 

 

「君たち7人は少しずつでいい、攻撃を続けよう! リンク、左足!」

 

 

クッパ七人衆はクラウンを降り、魔法での攻撃に切り替える。ヘイトを集めているネネが空中にいる以上、地上の方が安全だった。

リンクは何かを思いついたようで、距離を取ってゼルダと作戦会議。

高い場所からあちこちを見ながら、あまり効果のない指示を出すマルスの顔をしずえは見ていた。

 

 

「好きなようにはいいんですけど、これじゃ連携取れないですよ〜!」

 

「大丈夫だよ。僕の指示では僕の考える勝ち方しかできない……みんなが各自で動き方を考えれば僕には思いつかない勝利方法が生まれる!」

 

 

信じている。この21人の思考から勝ち方が生まれると。

 

 

『くっ…… 貴様!』

 

「ももっ……!! スティーブさん……!」

 

 

空を飛びながら逃げ回るネネとスティーブを確実に討つため、ドルモーア、面での広範囲攻撃を取り出す。

ロケット花火での加速は間に合いそうにない。せめてダメージを減らそうと、武器を前に構える。

 

 

「ねーちゃんになにするもー!!!」

 

『ぬぐぅ……!』

 

 

眉間に綺麗に一発撃たれる。俗に言うヘッドすないぷだった。キノとプリンもまた、地上に降りていたのだ。そして、姉の怪我を癒すのではなく、怪我をさせないように。

それが図らずとも。最後のひと押しになったのだ。

 

 

『な……にが……!!』

 

「え、あれ? お腹痛い? トイレ?」

 

 

ガーディスが膝をついた。何が起きたというのだ。本人すらも気づかなかった。ファイター側の人間だって、ほとんどが訳がわかっていない。しばし緊張感があって、ようやくガーディスが気づいた。

 

 

『貴様が……! 元凶か……ッ!!』

 

「…………」

 

 

そういって、ネネから目を離し、そして視線を動かした先には、分裂したままに攻撃を続けるダークサムスの姿があった。

怒りのままに棍を振り下ろそうとするが、サムスの跳び蹴りによって攻撃はあらぬ方向へ。

 

 

「サムスが……ダークサムスを守った……?」

 

「というかサムスいつの間にあんなの蹴飛ばせるぐらいムキムキになったネ!?」

 

 

信じていたマルスも、先に吹っ切れたミェンミェンも驚く。

だってまさか、あの巨体の一撃を蹴飛ばすだなんて。

 

 

「……いつから思いついていた? ()()()()()()()()()()を?」

 

「…………」

 

 

ダークサムスは答えない。そもそも答えられるかも怪しい。

キクにはダークサムスのあらゆる攻撃が通じなかった。なぜなら彼女はエネルギーを媒介とする攻撃を無効にするから。フェイゾンの塊であるダークサムスでは太刀打ち出来なかった。

それは、裏を返せば全ての攻撃がフェイゾンに由来するということ。キクが相手でもなければフェイゾンによる猛毒が回って有利であり続けるのだ。

なんてことはない。サムスがパワー勝ちできるほど相手の力が下がっただけだ。

 

 

「ここが好機だ……! 畳み掛けろ!」

 

 

崩れ落ちたガーディスに向かって一斉に飛びかかる。しかし、ガーディスの目線は誰でもないたった1人から目を離せなかった。

 

 

『おのれ……!!』

 

 

短く切り揃えられた金髪の少女からほとばしる魔法が解き放たれる。これこそ彼の勝ち方だった。自分が魔法を使えないほど消耗してるなら、別の者が使えばいいじゃない。

 

 

「シェイク!!」

 

『ぐ、グオオオオオオ……!!』

 

 

地を揺るがす大地震が起きる。

リンクでは強い敵には使えなくとも、女神の力を宿していたゼルダが使えばこの通りだった。

冥府の帝王が魔法に当たり、どんどんと縮んでいく。

 

 

「も!」

 

「もも!」

 

 

果てにはネネやキノでも覗き込めるほどに小さくぷよぷよした魔物になった。ちょっと可愛いかも。と感じている最中、ぶちっと誰かの足が潰した。

 

 

「アッハハッハー! ボクチャン大魔王を倒したぞー!!」

 

「とどめ刺しただけでしょ、もう」

 

 

調子に乗ったイギーをウェンディが嗜める。全てが終わったことを知覚したミェンミェンは尻餅をついた。

 

 

「ところでなんとなく参加したけれども、結局元の場所には戻れないのかい?」

 

「元凶はあの女だろ? アイツはただの足止めだ」

 

 

成り行きで参戦したクッパ七人衆が身内同士であれやこれやと言う中、しずえと共にマルスが降りてくる。

 

 

「みなさん、お怪我大丈夫ですかー?」

 

「無理せずキノに言ってほしい。さて、これからどうするか……」

 

 

まずは一般の人を探してと、今後の予定を考える中、リンクがふと思い出す。

 

 

「そういえば……君、あの子に決定的場面を見られたみたいなこと言ってたよね?」

 

「キキッ……! ウキー!」

 

「ディディー、教えてくれないかい?」

 

「何言ってるかわかるネ?」

 

「根気強くいけば……」

 

 

そこからディディーコングが必死に手振り身振りで伝えていく。その意味がわかっていくにつれて、ファイター達の顔は青くなっていく。

 

 

「そんなまさか……」

 

「だがそれならば奴に触れても問題ないことも納得が……!」

 

 

マルスは右手を痛いほどに強く握った。

そして、青い顔のまま言うしかなかった。

 

 

「これは……この問題はどうすることもできない……! 僕たちではどうにもならない……!!」

 

 

ここにいない誰かに頼るしかなくなった事実を噛み締める。この事件に巻き込まれて初めてマルスは俯いた。

 

 

─言ってしまえばゴミ捨て場みたいなものなのよ。

 

 

キクの言葉を受け入れるしかないほど、現実は残酷だった。怪しい色の空は変わらない色を続けていた。

 





○タイトル
キングダムハーツ2でのリクのセリフ。DiZの無謀とも自爆特攻とも言える行為を止めようとする王様を止めた時に言ったセリフ。その後のシリーズでも登場しており、リクを代表するセリフとなる。


○ドルモーア
ドラゴンクエストシリーズに登場する闇属性の呪文。ドルマ系の一種で下級からドルマ、ドルクマ、ドルモーア、ドルマドン。
パーティ的には賢者系の仲間が習得する。ただ賢者系の仲間は基本的に中途半端な上に、耐性を持つ敵も多いので、味方が使う呪文としてはいまいちな扱い。
ちなみにガーディスの技としては、暗黒属性だけでなく、灼熱属性も持っている。


○アイスビーム
メトロイドシリーズに登場する武装の一つ。
作品によってはミサイルだったりもする。
メトロイドは寒さに弱いので、これで凍らせて砕くといった対処が基本。
そういえば、なんでアイスビームはスマブラで採用されてないんだろうか。


○ダークサムスの分身
特に意味もなく分身するカービィと違って、ダークサムスの立派な戦法の一つ。
ずっと分身しながら攻撃していた。


○フェイゾン
メトロイドプライムシリーズに登場する放射性物質兼突然変異誘発物質。スマブラの天界漫才でもあったが、エネルギー源でもある。
ただ生物に対しては極端な毒性があり危険。
ある程度の意思を持つとされ、一定以上の濃度を得た一部のフェイゾンが動き出し、フェイゾン生命体を生み出すことも。
メトロイドプライムがサムスを道連れにしようとしたものの失敗し、スーツバリエーションの一つであるフェイゾンスーツや遺伝子情報を元に武装と形質を再現したのがダークサムスである。


○今章の裏話
今章はちょっとスランプ気味だったのとプロットからだいぶ変えたことにより、かなり問題の残る章となりました。キツイ。物語が進まない。こちらの陣営21人をかき切るのは無茶だった…… そんな中ピットが大体何言わせてもいいみたいな認識で、随分と助けられました。
特別に今章のプロットをそのまま載せます。

・ピットとサムスが救助者の捜索 目覚めるリンゼル
・襲われしリンゼル ピットサムスと合流
・ミェンミェンと子供の救助 帰還
・お疲れ様ですとしずえとスティーブ ここはどこと作戦会議
・ピラミッドの麓を探すことに ディディー合流
・オーブはまだ貯まらないキクと遭遇 軽めの戦闘とダムスボロボロ 相性良すぎ
・襲撃の本拠地 抵抗する七人衆
・襲われてる!? プリンの意地 クリスの奮闘 ネネキノも参戦
・合流 そしてキク強襲 ガーディス復活
・ガーディス討伐 全部終わるまで大人しくしておきなさい

・の数が1話の予定ではありましたが、予定よりだいぶ長くなっている始末。あと自分用のメモなので割と雑。

まず、ピンチに駆けつけるパターンが多すぎということなので、ミェンミェンから変化し、あまりモブ(子供)を出したくなく、ディディーの登場に困り……そんなこんなでかなり変化しています。
予定では、避難せず攻城戦を繰り広げる予定でしたし、プリンは覚悟して普通に戦う予定でもあったし。

所々悪くない変更はあっても、それによってプロットを見直すことをしなかったのでグダグダになっていったんですね。ちなみに最後の意味深なセリフはキクが言うはずだったものです。そのままフェードアウトしていったのでなかったことになりました。

兎も角、教訓として次章での改善を目指していきます。
あと本作を執筆した理由がDLCと灯火の星で最後の方に登場するファイターを活躍させるなのにダークサムスあんな扱いでごめんなさい……
なんだかんだ前作でキャラ解説をさせていたので愛着はあるのですが、キクの特異性を知らしめるための犠牲に……あっ、ちょ、フェイゾンの洗礼を受けた人に殺される


○作者の気まぐれコメント
ポケモンフェスやどおおおおお
来週ポケモンSVだよおおおおお
ところであのー、ブイズのリーフィアたんは心配してなかったけど、ランターンたそ、忘れてませんか……? リージョンフォームで出てきたら全てを許すけど。

皆さま、リークやフラゲでのネタバレにお気をつけください。
ホゲータはアホの子かわいい。


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Pokémon Sword Shield “Before”
60話 アドバンス・アドベンチャー


 

 

君達の持つ記憶、知識、経験…

その全て、自分が産み落としたものだと証明できる?

 

 

寝てる間に分子レベルで同じ存在に成り代わっているかもね。まあ、しょっちゅう死んで生まれる細胞で構成されている君達にはそんなに重い質問でもないのかな。

 

 

そんな全く同じ存在が、突然君達の目の前に現れた!

 

 

それは流石に気持ち悪いか。

目の前の君達も同じこと考えてるけどさ。

 

全く同じって言ったじゃん。君達の考えてることは君達も考えてるって。

 

 

だからどっちかを間引きしてもいいよね。同じ存在は同じ存在でしかないし、二つ存在していることが異常なら一つに減らすしかないよ。

 

くじ引きで決めていいことだけどね。間引きされる方は運がなかったってことだ。

 

 

…運がある、と運がなかったっていう違いができたね。それでも彼らは全く同じって言える?

 

運がある方となかった方… 違いができたなら単純にくじ引きで決めればいいって話にもならないや。でもそれだと違いがなくなる訳だし…

 

 

 

認識する前にどっちかが消えていれば、こんな問答生まれなかっただろうに。二つあるから悩むんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在正体不明の生物がワイルドエリアを徘徊しています。原因や危険性は不明のため、しばらくワイルドエリア全域を封鎖します。

ワイルドエリアに残っている方は、お近くのスタッフに声をかけるまたは、早急にワイルドエリアから外に出てください。

また、正体不明の生物を見かけたら決して近づかず、お近くのスタッフに連絡もしくは通報をお願いします。

繰り返します───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リザードン、かえんほうしゃ!!」

 

「グオウッ!!」

 

 

見慣れた仲間と同じ姿をしたボディ達を焼き尽くす。周囲の草むらにも火がつき、ボディ達の足も奪っていく。

 

 

「よしっ! にげるぞ!」

 

「グウゥ」

 

 

リザードンの背中に跨り、羽ばたく。

あの、なぜかいるボディ達から離れるように。

不肖、レッド。今、追われております。

 

 

 

 

この見たことも聞いたこともない場所に辿り着いたのはまったくの偶然だった。

大乱闘の世界に戻ったはずのレッドは、空中にいたのだ。地面に激突する前にリザードンをだせたのは、転落死するのが自分だけで済まないとわかっていたからだろう。

 

そこからここはどこなのかと空中から探ることに。

 

見たことのない場所だと驚くよりも、あちこちに見かける見たこともないポケモンに興味津々だった。ここは楽園かとよそ見していたせいで、混じっていたボディに気づかず、リザードンごと射落とされたのだ。

そして、落下の衝撃でフシギソウとゼニガメのボールをどこかに落としてしまい、1匹で応戦しながら今に当たる。

 

 

「さっき攻撃を受けたところどのあたりかわかるか?」

 

「ウウ……」

 

「だよなあ……」

 

 

2匹の仲間がどこに行ったのか。一応リザードンにも聞いてみたものの、やはり自分と同じく見たこともないポケモンに気を取られていた模様。ボールから飛び出して向こうも探していればいいのだが、望みは薄い。

 

 

「えっと……」

 

 

周りに何か特徴がないかを見渡す。

どうやら一定の領域で区切られており、塀が聳え立っている。その内側なのは間違いない。

今いる場所はその塀を壁沿いに歩けるところから、区切られた一角の隅の方だということがわかる。小さな岩山の周りに草むらもあり、こちらを恐れて身を隠しているポケモンの姿も確認できる。

レッド自身は知ることもないだろうが、そこはワイルドエリアの一部、巨人の腰かけと呼ばれる場所であった。

 

 

「見たことないポケモンばっかりだし、カントーではないよな。ポケモン自体多いから大乱闘の世界でもないだろうし……別の地方か?」

 

 

そこまで良くはないと自負している頭で必死に考える。ここのあたり一帯のポケモンはカントー地方では見ないポケモン。ならばルカリオやゲッコウガの出身である別の場所ではないかと思いついた。

今後どうすればいいのだろうという戸惑いの裏に、ワクワクが抑えられない自分がいた。今、自分は見たこともない場所で見たこともないポケモンに囲まれている。

 

ポケモンの数は全てで151匹……でももっといる。

 

200、300、400、500……それ以上かもしれない。冒険心は止まらない、恐れることなどない。

 

 

「よっし! フシギソウとゼニガメ探しにいっくぞ!」

 

「ガウッ!!」

 

 

自分の拳をもう片方の手のひらに叩きつける。

仲間と逸れた焦燥はあっても、それを上回る好奇心が抑えられない……!

 

 

ガサッ

 

「……!」

 

 

周りと違う草むらの音。

確かに草むらからポケモンは飛び出すが、これは何か潜んでいるような音だ。抑えるように注意を払っているのがわかる。

 

リザードンにアイコンタクトをとる。

未知との遭遇第一号はその音の正体を探ることに決めた。図体の大きいリザードンをボールの中に戻す。

音は岩山を挟んで向こうの草むらからだ。あと逃げてきた方向でもある。まずは岩山を背にゆっくりと回り込むように動く。潜む音の場所が詳しくわかるとそこからこっそりと草むらを覗き込み……

 

 

「ピッ……! ピッカ!」

 

「って、ピカチュウか……」

 

 

そしてカントー地方でも見られる姿にテンションを下げる。見たいのは知らないものなのだ。なにやら人に慣れすぎている理由をレッドは察せなかった。

 

 

「ん? あっ、この緑は……」

 

 

そしてピカチュウの隣に、草むらとは違う緑があったことに気づく。

 

 

「おや? レッドさんだ、元気にしてた?」

 

「ヨッシー!? ってことはこのピカチュウ って」

 

「ピーーー……!」

 

 

その緑はヨッシーだった。ポケモンとは関係のない者がいたことで、隣のピカチュウが何者かを察する。驚くレッドにピカチュウが慌てて口を塞ぐ。

 

 

「……ピ……カ……チュ……」

 

 

ギギギギと軋む音が聞こえてくるかのようにゆっくりと振り向いた。そこにはレッドを襲ったボディ達。カービィの姿のそれとフォックスの姿のそれとリンクの姿のそれ。

 

 

「……あ」

 

 

隠れてたはずの仲間に声かけて注目を集めた。やらかしたと判断すると同時に右手と口は動いていた。

 

 

「いわくだきっ!!」

 

 

ここ一番の豪速球でリザードンが登場する。

ひびわれたいわをこわすずつきは、一番手前にいた剣士のボディをひるませた。

 

 

「ピカッチュ!!」

 

「れろんっ」

 

 

突然のことだったが、さすがは古株のファイター。一瞬遅れた後に飛び出して、素早い相手にでんげきは、多芸な相手に舌を伸ばして一時タマゴにする。

 

 

「そらを飛んで叩き落とせ!」

 

「グオウッ!!」

 

「ピ〜……カッ!!」

 

「わっふぅ!」

 

 

掴んで空へ飛び、そのままイヅナ落とし、ロケットずつきで近くの池に突き落とし、タマゴのままの敵を尻尾でかっ飛ばす。

地面に倒れたままの敵から武器を取り上げ、リザードンはのしかかり。何度か踏み続けたところで、ボディは溶けるように消えていった。

 

 

「ゴッメン! 隠れてたなんて知らなくて……!」

 

「だいじょうぶ! なんとかなったから!」

 

 

そして開口一番、謝罪の言葉を出した。3人でなんとかなる敵だったからよかったものの、もし敵が多かったら取り返しがつかなかった。

 

 

「ピカチュ」

 

「レッドさん、ここってどこか知らない? いつの間にかこんなところに来ちゃってたんだ」

 

「わかんね」

 

「そっかー……」

 

 

ただ、何かが起こっていることはボディが敵としていることから確かだ。それも大乱闘関係で。それ以上は今はわからない。なので今解決できることから解決しようと考えた。

 

 

「なあ2人とも、ゼニガメとフシギソウ知らないか? さっきあいつらに襲われてモンスターボールごと落としちゃって」

 

「ええ!? 大変だ! ピカチュウは見た?」

 

「ピカ……」

 

 

どちらも反応はよろしくない。

心当たりもなさそうだ。

 

 

「探さないと! どこの辺りで落としたの?」

 

「えーと、たしかあっちの方だ!」

 

 

他にもボディがいるだろうと感じながらも、急いで進む。かけがえのない仲間を助けるために。

 

 

 

 

「……ソウ?」

 

「ゼニッ……」

 

 

その仲間も、どこか暗い場所で動き出していた。

 





○章タイトル
ポケットモンスター ソードシールドの海外タイトル。Beforeは以前の意味。簡単に言えば今作の時系列が剣盾本編以前だということ。具体的にいつかまで決めてませんが、ダンデさんがチャンピオンになる前です。ここの世界で起きた異変でここの世界の人間は頼れないということを意識してもらえれば……
つまりは某ドラゴンストームさんの出番もないです。
ちなみにポケモン新作が発売した翌日開始の章の舞台が剣盾なのはマジで偶然。


○タイトル
アニメ ポケットモンスター アドバンスジェネレーションの1話から69話までのオープニングテーマ。作詞者はGARDEN氏、作曲・編曲はたなかひろかず氏。
勇気凛々で元気溌剌しちゃう感じの歌。改めて聞くと歌詞にミナモシティとか最初の歌だけど終盤の街の名前が登場してる。2番歌詞はポケモン風味が薄れている。
アブソルがめっちゃかっこいい。


○ワイルドエリア
ポケモン剣盾、ガラル地方の目玉である。
半オープンワールド的な場所で天候、時間帯で出現ポケモンも大きく変わる。さらにダイマックスポケモンに挑むことも可能なので、もしかしたら剣盾は過去一パーティが安定してないかもしれない。


○作者の気まぐれコメント
ランターンたそ……


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61話 ポケモン、ほかくだぜ!

 

「……ニッ……! ガァッ!!」

 

「ソー……」

 

 

ゼニガメが起き上がり、すぐ近くで倒れているフシギソウの体を揺らす。それで気がついたのか、パチクリと大きな目を開き、辺りを見渡す。

 

そこはどこか薄暗い場所だった。上を見上げれば、小さな丸の形で、遠くに空が見える。

主人であるレッドが攻撃を受け、2匹のモンスターボールを落とし、そこから巨大な穴の中へ落下。その衝撃でボールのボタンが押されて2匹が外に出れたのだろう。

 

 

「フー……フシッフシッ」

 

 

それを理解するや否や、フシギソウは自身の蔓を伸ばしてみる。かなりギリギリではあるが、届きそうではある。

 

 

「ゼニガッ、ゼニ」

 

 

もしここに他の人間がいれば何を言っているかわからないとぼやくだろうが、ここには2匹しかいない。2匹のみに通じる言葉だろうが、ようするに早くモンスターボールを見つけて上に上がろうということだ。

 

 

「フシッ、……フッシフッシ?」

 

「ゼニッ?」

 

 

さほど障害物のない空間だから、ボールは特に時間もかからず見つかった。しかし、それの下敷きに不思議な模様のスカーフが落ちていたのだ。特に変哲のないスカーフだが、これがクッションがわりになったようで、自分自身はもちろん、ボールにも傷はない。

 

 

「ゼニー……ガッ!?」

 

 

しかし、それを見つめていた時、大きな振動が起きる。地震ではない。すぐ近くが発生源であった。

 

 

「フシ、ソウ!!」

 

 

反射的に駆け出す。迷うための道もない空洞で、発生源はすぐに特定できた。

 

 

「ソウッ!」

「ゼニッ!」

 

「はあ!? フシギソウにゼニガメ!? お前らなんでここに……いや、もう後でいいわ!」

 

 

顔だけをこちらに向けて喋るのは、赤いタイツスーツを着た男。格闘技を使って戦うMiiの戦士。すべてのやみのおうを倒した者の1人であり、スマッシュブラザーズの1人であるブロウだった。

 

 

「ニッ……ガッ……」

 

「あのカビゴンみたいなゲキデカポケモン、アイツどうにかせんとこっから逃げれねえぞ」

 

 

圧倒されるゼニガメに補足するブロウ。

彼もまた何かの理由でここに迷い込んで、このポケモンと遭遇したらしい。

元々巨体なカビゴンの体が立てないぐらいに肥大化しており、寝そべった腹部には草花や木まで生えている。キョダイマックスというものだった。

 

 

「レッドは?」

 

「フシー……」

 

「いねえんだな、つれえだろうがここの3人でどうにか……」

 

「ゼニャーッ!!!」

 

「うおっ!? 逆に燃えてやがる!」

 

 

デカい相手を敵にすると、仲の悪いリザードンを思い出し、闘争心が湧いてくるゼニガメにはブロウの懸念は全くの無意味であった。

 

 

「ガァッ!!」

 

「らぁ!」

 

 

真っ先に飛び出したゼニガメの尻尾を打ち、ブロウが正拳突きをくらわせる。追撃、といいたいが、柔らかすぎる反応に先程いた場所まで下がる。

 

 

「今の感触……! 効いてる気がしねえ!」

 

「ソッ……!? フシフシ!」

 

「あ? なんだ? ……やり続けろって?」

 

 

その感触に効果がないと考えるブロウの背中を蔓で押し続ける。トレーナーでなくてもその意図はわかった。

 

 

「……ま、ポケモンに関しちゃお前らの方が詳しいか…… オーケー、その通りにすっか(とはいえ、腹のど真ん中の方が効きやすそうだな)」

 

 

判断を一任しながらも、自分で考えるのをやめなかった。脂肪がクッションになりそうな箇所よりは草木の生えた箇所の方が叩きやすいと判断する。

 

 

「うらぁ!」

 

 

空中から炎の跳び蹴りを叩き込む。

トランポリンのごとく飛び跳ねかえる。

 

 

「フシャ!」

 

 

はっぱカッターで体に傷を入れるフシギソウが続く。ここで相手が鈍重な動きを見せた。

 

 

「……!」

 

 

ブロウの真下の地面が割れ、噴き出すように衝撃波が生まれた。空中でかわせるはずもなく、目を閉じ腕を構えて衝撃に備えた。

 

 

「ビュウウゥ!」

 

「プハッ! 助かった、」

 

 

だが、ゼニガメの水鉄砲で着地点をずらしたことにより直撃を避けることができた。

そうして着地した場所はカビゴンの腹の上だった。道の形に刈られた草花、そこに聳え立つ一本の木。

 

 

「ここの位置…… アイツ手足猛烈激激に短いし、多分寝返りもうてねえし…… うし、こっちこいお前ら!」

 

 

ゼニガメと共に、つるのむちで渡っていく。ブロウの構えた腕に掴まり引き寄せる。

 

 

「ゼニガァ!」

 

 

勢いをつけたままにフシギソウはゼニガメを手放す。こうそくスピンと投擲のごとくスピードを増し、額に激突する。

 

 

「……カァ」

 

 

短い呻き声のような低い声が出る。

地底の空洞に響き、想像以上に反響した。

 

 

「だぁ!」

 

 

合わせた両拳を地面に、腹部に叩きつける。

相変わらずクッションを叩いたような感覚ではあるものの、内部に伝わっているようには感じた。

 

 

「……! 割と見た目だけなのか!?」

 

「フシャ!」

 

 

つるのむちでたたきながら、フシギソウは答えた。

 

カビゴンというポケモンはノーマルタイプ。かくとうタイプの攻撃は弱点であり、なおかつ体力はあっても物理的な攻撃にはほどほどに脆めなのだ。

 

 

「うし、ボディに比べればただのデカブツ……! うおっ!?」

 

「ニガー!?」

 

「シャー!?」

 

 

腹部に攻撃を受けたことにより、敵が腹部に乗っていることがわかったのか、ポヨヨンと弾ませてファイターを落とす。木にしがみつけたフシギソウ以外はフィールドから降ろされた。

 

 

「チッ、振り出しかよコレで……」

 

「フシッ……? フッシフシッ、ソウソウ!」

 

「あ?」

 

 

お腹の上に残ったフシギソウがカビゴン相手に何かを訴えている……いや、会話している?

低い振動のような唸り声を聞き取ったのはようやくだった。

 

 

「フシッ! フシフシ!」

 

「……戦うなってことだよな?」

 

 

そして何かが伝わったのか、つるの先で止めろと言うような仕草をする。

 

 

「……んー、確かにボディとは違って普通に原生っぽいし……あれ? じゃあ救急に殴りかかった俺、戦犯? マジごめんなさい」

 

 

それを理解した瞬間、即座に謝っていた。

ようはさっき襲われたのだからお前も同類だろと思い込んでいたのだ。

 

 

「……ニィガ」

 

「お前も殴ってただろうがい!?」

 

 

人を小馬鹿にした態度に、ツッコミ気質が炸裂する。トラブルメーカー2人に囲まれている苦労人は無意識に染み付いているのだ。何がとは言わないが。

 

 

「しかし、野生なら尚更こっちにちょっと反撃するぐらいで済ませてくれたな。もしかして大乱闘のこと知ってたのか?」

 

 

独り言を吐く。例え事実でも言葉が通じないなら答え合わせもできない。

 

 

「じゃあ戦闘はここまでとして……どうすっかな。なんとか上に上がりたいが……フシギソウにゼニガメと俺じゃ流石に重量オーバーか。1人ずついく?」

 

「……ゼニッ! ゼニャ!」

 

「ん?」

 

 

ゼニガメが両手で大事そうに持ってきたのはモンスターボールだった。放置されていたのか少し汚い。

 

 

「お前の……じゃねえな。……まさか俺にポケモントレーナーになれと?」

 

「フー!」

 

「……カァ」

 

「全会一致ですかド畜生!」

 

 

突拍子のない意見に反対する者が1匹としておらず、ヤケクソ気味に投げたモンスターボールはキョダイマックス相手にも関わらず、すんなりとボールに収まった。

 

 

「マスターハンドに何言われるか……俺はただ、静かに暮らせればよかったのに……」

 

 

そもそもなんでアイツはあんなに友好的なんだよと心の中でボヤく。

ため息はここでも止まりそうにない。

 

 

「フシフシ」

 

「ああ、うん……上がるか」

 

 

反応も薄くなってきたブロウの腕を引っ張り、先程見た出入り口へ誘導する。

 

 

「そういえばレッドとリザードンとは逸れたのか? モンスターボールは?」

 

「ゼニャ……ゼニッ!」

 

 

辺りを見渡すと、しっかりと2匹のモンスターボールが落ちていた。先程は落ち着いていると思っていてもテンパっていたらしい。

 

 

「フシャ……」

 

「あ? なんだこれ……スカーフか?」

 

 

そのボールのそばに何やら見慣れない2枚のスカーフが落ちていた。

深緑とそれよりも少し薄い緑とのストライプ柄なのだが、中央にいくにつれて薄い緑が明るくなるグラデーションだ。その不思議な色合いは幻想的な印象を受ける。

 

 

「お前らのか?」

 

「フシッ、」

 

「違うと」

 

「ゼニッ!!」

 

「つけろって?」

 

 

ばっと両手を広げるゼニガメの首に、苦しくない程度に縛る。2枚あるからとフシギソウにもつけた。

 

 

「ま、俺が初めてきた時だとリザードンリザードンばっかだったし、おしゃれぐらいいいよな。うし、こんなんだろ」

 

「ゼニゼニ!」

 

 

リザードン以外、というのが相当気に入ったのかゼニガメがはしゃぎまくる。

それをフシギソウとブロウは苦笑いで見つめていた。同じトレーナーのポケモンとして仲を深めるにはまだまだ壁がありそうだ。

 

 

「うーし、行くか!」

 

「フッシ!」

 

「ゼニッ!」

 

 

みんながよく知っている姿に戻ったカビゴンをトランポリンにして穴から這い上がる。

あとは上からモンスターボールで回収すればいい。

 

 

「(しかしどうしてこのカビゴンは俺たちと来るんだ? ボディがいることと何か関係あんのか?)」

 

 

思考は巡り続けて、結局答えはわからない。

何かの予感を無視しながら、明るい場所まで出てきた。

 





○タイトル
スマッシュブラザーズSPのルカリオの天界漫才で飛び出したナチュレの台詞。ルカリオがお気に召したようです。
別にゲットでもよかったんですけど、2回連続でアニメネタもどうかと思いまして。なお、これでもグレーゾーンの模様。


○キョダイマックスカビゴン
カビゴンのキョダイマックス個体。
ダイアタックがキョダイサイセイに変更される。ダメージに加えて、一定確率で使ったきのみが復活する。
はらだいこで体力半分と引き換えに超パワーアップし、特性くいしんぼうで回復量の高いきのみを確実に使用。そのあとキョダイサイセイで再びきのみを手に入れるというムーブが強い。


○カビゴンの個体値
H160 A110 B65 C65 D110 S30
特殊攻撃に強い、鈍足物理アタッカー。ノーマルタイプ故にかくとうに弱いのでブロウくんとは相性がよかった。勘違いしかけていたけど。


○ダイマックスレイドで普通のボール使ってんじゃねえ!
アニメの友情ゲットみたいなものですぅー!
合意の上なのでセーフですぅー!


○作者の気まぐれコメント
まず一点。ポケモンSVクリアしました。
難易度的にはかなり歯応えがありましたね。思わぬタイプの技を持っていたりもしたので相性有利に見えて返り討ちにあったり。
あちこちで言われてたバグエラーも、大きなものは一度しかあわなかったので問題はなかったです。ストーリーもペラかった剣盾と比べてかなり濃厚になっていました。以下、クリア時のパーティです。参考までに。

・アルフェン(ラウドボーン)
まさかのほのおゴーストでソウブレイズとダダ被り以外はとてもかっこよく成長してくれました。中でもフレアソングで特攻上げたり、おにびで攻撃力を減らしてからゴツゴツメットで削ったりと大活躍。格闘リーダーに勝てたのは彼が露払いをしてくれたおかげです。
元ネタはテイルズオブアライズ。意図せずに白くなった。

・せんせい(ブロスター)
ランターンリストラショックに立ち直れなかった作者を支えてくれた恩師。みずのはどうのダメージ舐めたらあかんぜ!
元ネタはポケモンスナップ。ランターンのいる別ルートを開いてくれる大先生。

・ヒルダ(デカヌチャン)
新ポケの中で一番好き。
デカハンマーと優秀な耐性で寄せくる敵を粉砕する。最初は技の威力が控えめだったりじゃれつくがなかったのでキツかったです。
元ネタはファイアーエムブレム風花雪月。二段階進化を得てマジでヒルダになって衝撃を受けた。

・ジューダス(ケンタロス)
まさかのリージョンフォーム。しばらくメインウェポンがにどげりだったが、それを補う火力。というか捕まえる前が一番ヤバかった。
元ネタはテイルズオブデスティニー2。別に紙耐久だったり敵の前でカッコつけたり闇の炎に抱かれてバカなっ!?したりはしていない。縁の下の力持ち。

・アクア(セグレイブ)
遅さを補うゆきなだれで格下を殲滅する600族。コイツジュラルドンじゃね?と思った。とってつけたかのような剣、嫌いじゃないよ。
元ネタはファイアーエムブレムif。圧巻の力成長率50%。ただ一発耐えて反撃の構成はストーリーには向いていなかったかも。

・むらくも(ドドゲザン)
まさかの新進化をもらって作者嬉しいよ……! 思い入れのある子が新進化もらったと聞いて調べて進化させちゃった。ただ適当に投げたら格闘技くらったことが多々あって正直申し訳なかった。
元ネタはカードファイト ヴァンガード。

とまあ、ポケモンの話はさておき、スプラトゥーンのスロッシャーの話。

バケデコが何をしたァァァ!!
キル速遅い! 短距離NG! インク効率悪!
微塵も噛み合わないスペシャルもらってどうしろというんじゃああ!!
とぼやきつつも、スロッシャー愛好家である以上使うんですけどね。ガチに持っていくかはわかんないけど。


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62話 ブレイクタイム

 

「フハハハハ! この運命の二択、当てることなど不可能だ!」

 

「いや、どんなテンションだよ!? 引きづらいわ!?」

 

 

心の怪盗団、スカルこと坂本竜司は運命の二択を迫られていた。といっても実態はただのババ抜きビリ決定戦なのだが。

 

 

「負けた方がアイス奢りね〜♪」

 

「くっそ、祐介にはわりぃがこの勝負負けられねえ!」

 

 

アイスの奢りをかけて仁義なき野郎の戦いが決戦を繰り広げられている。

雨宮蓮は地元、モナは蓮に着いていき、長谷川善吉も京都だ。残った男連中は女に尻を蹴られる他ないのだ。

 

 

「でもこれから寒くなってくるのになんでアイスなの? 肉まんとかの方がいいんじゃない?」

 

「ふっふっふ、知らないのか真? 部屋をあったか〜くして食べるアイスは格別なんだぞ?」

 

「格……別……!?」

 

「お〜い、流れ変わってきてるぞ〜……」

 

「特にポカポカのコタツに潜りながら、甘々なアイスを……」

 

「うおおおおおおおおお!! 俺は負けん!!!」

 

「ほらやっぱり!! てか、そのセリフ大丈夫か!? 」

 

 

運命を変えるほどの気迫では、もはや表情での判断はできない。覚悟を決めて右のカードを引く……が、全人類の予測通りババであった。

 

 

「くそっ、ババは引かせない」

 

「そっちか!」

 

「マジで容赦なし!?」

 

 

引いたジョーカーをシャッフルするも、表情を見極めることもなく、一瞬で見破られてしまった。

 

 

「フハハハハ! これでアイスは俺のものだ!」

 

「いや、お前だけに奢るわけじゃねえから!」

 

「ということで、竜司みんなの分、お願いね!」

 

「チキショー!!」

 

 

残ったジョーカーを放り捨てる。ヒラヒラと舞って竜司の腹の上に落ちた。

 

 

「どうしてお前が最後に残っちまうんだよ、大富豪じゃいくら願ってもこないくせによー」

 

 

同じ名前のリーダーに八つ当たりをしても、虚しい気持ちになるだけだ。ジョーカーカードと同じように器用だからこそ、切り札(ジョーカー)なのだ。

 

最後に残る、切り札は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁっふぅ!」

 

 

ヒールポケモンに跳び蹴りをかまし、湖へと沈ませる。まばらに歩き回っているボディ達はまるで何かを探している様子だった。

 

 

「やっぱり探されてるのか?」

 

「ボクたちを?」

 

「ボディがここの地方の誰かを探す理由がない……と思う」

 

 

倒したら、そそくさと草むらに隠れる。何もないのに見つかって無駄な戦いをしたくない。

暇を潰すように出た質問に自分なりの考えを出すも、情報が少なすぎて推測でしかない。

キーラもダーズも倒した以上、新しくボディが生まれることはない。そして、討伐済みである以上、今の指導者はそれらではない。

 

ボディの指導者が、自分達をここに呼び寄せた犯人であったりするのだろうか?

 

 

「ピカー」

 

「おっ、どうだったピカチュウ」

 

「ピー……」

 

「収穫なさそうかー……」

 

 

遠くからトボトボとピカチュウが戻ってくる。

ポケモンであるピカチュウであれば、じっくり見られでもしなければ、現地のポケモンに紛れられる。

2匹を落としたらしい場所、横断している川を繋ぐ橋の付近までこっそり3人で移動。

そこからピカチュウのみ、ポケモン達にゼニガメとフシギソウを見なかったか聞いてみたのだが、ボディの登場という一大事に身を隠すか動揺して暴れているかしているようだ。

前者は他者を見る余裕はなく、後者は話を聞けにいけない。聞き込み調査は頓挫してしまった。

 

 

「じゃあボクたちで探すしかないね」

 

「そうだな、幸いにもこの辺に同種はいなさそうだし、見ればすぐにわかるはず」

 

「ピッカ!」

 

 

それなら仕方ない。置いてくなんて選択肢はなく、手探りで探すことにする。落とした時の状況を思い返しながら、そういえばと呟いた。

 

 

「川とかに落ちてたら流石に気づくと思うけど……あっ、そういえば落とした時モンスターボールにしまってたから変なとこ転がってるかもしれない」

 

「変なとこ……例えばこんなところ?」

 

 

ヨッシーが橋を渡って向こう側にある竪穴を除く。中は暗くて見えない。石で囲まれた場所は違う世界につながっているかの錯覚を引き起こす。ここに入って戻れればよかったのに。

 

 

「そうそう、そういうとこに……「ソウソウ!」おっ!?

 

 

飛び出した何かの影に、咄嗟に臨戦耐性を取る。が、その影は見覚えのある人物だった。

 

 

「ソウソウって……フシギソウ! ゼニガメ! それにブロウ!?」

 

「それにってなんだおまけみたいに……いやお前にしては事実そうだろうけどよ」

 

「ゼニャー!」

「フシー!」

 

 

大喜びの中、2匹の愛ある突進を受けたレッドは勢いを殺しきれずに倒れ込む。思いっきり背中を打ったが、気にならない程度にはこの痛みが嬉しかった。

 

 

「よかったっ! ほんと無事でよかった!」

 

「レッド、レッド」

 

「ん?」

 

「これ」

 

「えっ、モンスターボール? いつからブロウトレーナーになったんだ?」

 

「不本意だ!」

 

 

ちょうどよかったと言わんばかりにカビゴンの入ったボールを押し付ける。これならマスターハンドに小言を吐かれまい。

 

 

「色々あって捕まえるしかなかったんだよ、どっ畜生! 誰かを助手だの手下だのとごとく連れ回すのは俺が……」

 

「え?」

 

「……ともかく! 俺は知らんからな!」

 

「ちょ、」

 

 

早口で愚痴を言ったかと思いきや、急に黙り込んだ。少し不穏というか、何かの地雷を知らずに踏んだような雰囲気に他の者たちも言葉が出てこない。

そういう雰囲気をぶち壊すのはどちらの意味でも空気の読めない人間だ。

 

 

「おいおーい! こういう状況なんだから余計にケンカしてる暇ないぜ?」

 

「リヒター!?」

 

 

走りながら手を振って大声を出すリヒターをようやく認知した。レッドやブロウはともかく、ピカチュウやヨッシーも気づかなかったのだ。

 

 

「ちょっと〜! アタシもいるんだけど!」

 

「あっ、デイジーもいたんだね」

 

「ピッカァ!」

 

 

追うのが大変だとスカートを持ち上げながら小走りで後ろから追ってくるデイジー。

 

 

「何よ、アタシおまけみたいじゃない」

 

「リヒターといっしょにいたの?」

 

「ちょっと前に1人で迷ってたところで会ったのよ。それはいいんだけどぱぱっと先行っちゃうから遅れてきたの」

 

「ああ〜……確かに……確かに?」

 

「何よ」

 

 

ヒールだとこんな大自然の中を歩く。

そこだけ切り取ると大変な苦労をしてきたように感じるが、いつもその靴で大乱闘を繰り広げているのだ。いらんこと言うブロウはその疑問符を後にくっつけてしまった。

 

 

「で、2人でここはどこか探してたんだね! ところでルイージは?」

 

「アイツなら1()()()()()()退()()よ。ホンットに乙女心のわからない……ってなんでアイツが出てくるのよ! 第一2人っきりじゃなかったわよ」

 

 

いらんこと言うブロウに続いていらんこと言うヨッシーがいらんことを付け加えながら質問した。どうやらデートの誘いは断られたらしい。

 

 

「ん? あれ?」

 

『ああ、コレ、デイジーには秘密にしておいてほしいんだけどね……』

 

 

何かがヨッシーの中で突っかかった気がして、でも何もわからなかった。

お腹空いているから忘れちゃうのかなと楽観的なヨッシーは考えるのをやめ、そして少し時間が経てば、何が突っかかったかも忘れていた。

 

 

「2人っきりじゃないって?」

 

「ああ、アイツ確かアシストフィギュアの……アシュリーだっけか?」

 

「………………………………チッ」

 

「なにゆえ舌打ち!?」

 

 

黒髪ツインテールの少女からの突然の舌打ちに、ブロウは動揺を隠せない。

曖昧に覚えられていたのが腹が立ったのだろう。

 

 

「なんか、意外とトントン拍子に見つかるよな。実は近くにいたのか?」

 

「確かにな、近くを探せばまだ誰かいるかもしれないぜ」

 

 

大して労せず知り合いを見つけられていることに順調とは感じながらも、幸運では済ませない。

 

「リヒターたちは橋の向こう側からきてたよね? 他のみんなはどう?」

 

 

ヨッシーがそれを聞く。

現在皆は川を挟んですぐの巣穴の近くにいる。

リヒター達3人は川を挟んで、レッド達がいた方から来た。

 

 

「ああ、俺も平凡にそっち側。この穴から変な光溢れてるの見て飛び込んだ」

 

「俺もそっち側だな、フシギソウもゼニガメも川に落とさなくてよかった」

 

「要するに全員そっち側なのね。じゃあ他に誰かいたならこっちにはいないかも」

 

「原因もそっちにあるかもしれないな」

 

 

まばらにいるボディ達も、数で勝れば怖くはない。大胆な動きが可能になったのは大きい。

 

 

「じゃー、そうだな、まずでっかい湖があったからそこ行ってみようぜ」

 

「ピッカチュ?」

 

「湖なら一つ見たよ?」

 

「それよりもおっきいとこだ!」

 

 

順調だったとは思う。幸運だとは思わなかった。でも、甘く見てたとは思わなかった。

ピクニックと冒険気分でしばらく歩いたところで、そこにいたのは血の赤黒さと混ざりボロボロになった黒のコート。力なく、古びた塔に寄りかかっていた。

 

 

「あはは……みんな、無事でよかった……」

 

「ルフレ……!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの男……!」

 

 

小さく、でも強い感情を込めた声。

誰もが聞こえた声のはずなのに、誰もそれどころではなかったのだ。

 





○タイトル
KHシリーズのコマンドの1つ。直訳の休憩の名のごとく、キャラごとに思い思いの息抜きを楽しめる。
ブレイクダンスしたり、倒立腕立てしたり、バトントワリングしたり、なんかポーズ決めたり。
Bbsでは実戦では使えませんが、トロフィーがございます。
3Dでは実戦で使えますが、ソラ限定のコマンドです。
マスター承認試験中になにやってんだぁ!?


○俺は負けん!
決して魔剣ではない。
要は中の人ネタ。パルテナ勢ほどではないが、ペルソナ5勢もなかなかネタを入れやすい。


○押しつけ
一応カビゴンのおやはブロウのまま。交換はしてない特別仕様。
やったね、たえちゃん! 仲間が増えたよ!


○デイジー
特に深い意味はないが、最初の数話を見直してみましょう。


○アシュリー
メイドインワリオシリーズの魔女っ子。
本気になったり、怒ると髪が白くなる。スマブラでもアシストフィギュアで登場する。
意外と食いしん坊で、原作では食べ物関係のミニゲームをテーマとしていることが多い。
そんなメイドインワリオ屈指の人気キャラだが、結局ファイターにはなれず。マリオカートぐらいでてもいいと思うのだが、性格的に拒否しているのかも? アシュリーのテーマ、好き。

○作者の気まぐれコメント
ラインマーカー強化!
内容! 速度と飛距離アップ!
そこじゃねえわ!!
当たり判定! 持続時間! 直撃しなくてもダメージ! 火力! 狙い易さ! マーキング時間!
パッと思いつくだけでもここまで強化案出てくるのにどうして割と事足りてる箇所を強化しちゃったんだ……

ネガティブなことばかりもアレですし、もっと前向きなことでも……
映画のマリオの日本声優、宮野真守さんなんですね。つまり、

マリオ「今日は対戦相手よろしくね!」
蓮・ソラ「「(やりずらい……)」

みたいな出来事が起きていたかもしれません。今回中の人ネタ多くない!?

そしてルイージの日本声優が畠中祐さん。遊○王ZEXALではじめてお会いし、最近はKHのヨゾラと……男性声優で一番好きな方です。めっちゃ楽しみ。


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63話 …かがみってふしぎ。

 

いかにして、傷だらけのルフレを見つけたのか。話は少し遡る。

 

6人と1匹、そしてレッドのポケモン達。

彼らが合流し、作戦会議を開く。とは言っても、草むらの影で周囲に気を遣いながらだが。

リヒター作のお手製地図を広げたところ、一同はギョッと驚く。

 

 

「えっ……この地図どこで拾ってきたんだ? タウンマップ?」

 

「んっ? 普通に自作だが?」

 

「あんたがマメに地図つくるとか、ギャップがギャプギャプしててよ……」

 

「どういう意味だよ!? あとギャプギャプしてるってなんだ!?」

 

 

ギャプギャプしてる 意味:激しいことの有り様

このような意味のわからない言葉を使いたがる辺り、破天荒なガンナとソードの付き合いが長いだけはあると心の中で毒吐く。

 

 

「あのな、俺、薄暗い悪魔城に飛び込んでってるんだぜ? 地形頭の中に入れとかなきゃ迷うって」

 

「あー、そうだね。こう見えてリヒターエリートだもんね」

 

「こう見えて、ね」

 

「こう見えてを繰り返すな!?」

 

「…………中身だけよ」

 

「一番ひでぇ!」

 

 

ため息を吐きながらも、羽ペンでここの辺り一帯を描いていく。

 

 

「今いるのがここの辺りだな」

 

 

川を挟んで少し北側を指差す。書き足したばかりを指で突いたからか、インクがついてしまった。

 

 

「立地的に俺達はこっちにある横向きのピジョンの足みたいな形の池あたりにいたんだな」

 

 

レッドが指を刺したのは鉤爪のある鳥の足のような湖だ。その側の地形辺りをうろうろしていたのだ。

リヒター達が会った場所はレッド達がいた場所から湖を挟んだ場所だ。右手方面に行けばレッド達が回り込んだ湖。左手方面に行けばもっと広い湖。そちらは、未だ描かれておらず、未踏だということは把握できる。

 

 

「地図には載ってないが、結構広い湖だったぜ」

 

「まあ、今更北の方に誰かいる可能性を考えるのはめんどくせえし、そっち探すでいいんじゃねえの。どうよ?」

 

「………………………………チッ」

 

なにゆえ舌打ち!? 嫌なら代案考えろよ!」

 

 

舌打ちはしながらも、強硬で止めてきたりはしなかった。おそらくブロウの何かが気に食わないだけだろう。全員が立ち上がり、思い思いの、そして逸れない程度のスピードで歩き出す。

 

 

「……ん? デイジー、いつの間にこんな怪我したんだ?

 

「え?」

 

 

歩いている途中、レッドがデイジーの怪我に気づいた。それはそこそこ深く、右腕に沿うようにつけられた傷は、葉で切ったと考えるには少し違和感があった。

 

 

「……本当じゃない。いつの間に」

 

「えー、気づかなかったのか?」

 

 

どこでどう切ったのか知らないが、紙で指を切ったとか、知らない間にアザをつくったとかそんなレベルの怪我ではないと思うのだが。

言われるまで気づかないとは。まあ、こんな状況だから、1つ2つの傷ぐらいいつの間にかできていてもおかしくないか。

 

 

「とりあえず消毒と包帯しとくな?」

 

「意外と用意いいのね。ホント意外」

 

「2回言わなくていいから…… まあ、普段から旅してるしこのぐらいな」

 

 

常に冒険というのは、憧れはするが手が届かないもの。とはいえ、楽しいだけではなく生傷が絶えない。

互いに歩きながら行う応急処置は、テキパキと進み、キツすぎず緩すぎないちょうどいい加減で巻かれた包帯は、レッドが数慣れしていることを意味している。

 

 

「これでよし、キツくない?」

 

「平気よ。あっという間ねホント」

 

「不測の事態なんか嫌でも起こるし、準備はしっかりしてるぞ。……不測と言えばなんかさっき突然仲間増えたし……」

 

 

先程、押し付けられたカビゴンのボールを手に取って見つめる。一体何がどうなってブロウが捕まえることになったのだろうか。

 

 

「増やさないつもりだったの?」

 

「まあ、将来的には6匹揃えるつもりではあったんだけどもっとじっくり考えたかったというか……「ルフレ……!?」……えっ?」

 

 

反射的に前を向く。こうして時間は元に戻る。

先頭のリヒターの声はひやみずをかけられたように体の芯に響いた。

ゴーストポケモンでも出てきそうな古びた塔に力なく寄りかかるルフレ。まずはリヒターが駆け出し、次に走り出したピカチュウとヨッシーに追い抜かれる。箒に乗っていたアシュリーが、ブロウが駆け足気味に近づく中、レッドはすぐには追いつけなかった。

 

 

「……! おい、ルフレ……!」

 

 

応急処置でも、今は治療が必要だ。ボールを手に持ったまま、遅れてレッドも走り出した。

 

 

「あの男……!」

 

 

冷静にはなりきれなかった。だからことが起きるまで、その声が()()()()()()()()ことに気づかなかったのだ。

 

 

ガンッ

 

 

「……えっ?」

 

 

大きな音がして、その直後視界に映るものが空だけになる。遅れて脇腹に痛みがきて、ようやく理解した。自分は何かで殴られて空中に飛んでいるのだ。そのまま落下し、キバ湖へ着水する。

 

 

ザバンッ!

 

 

「────ッ!!」

 

 

息を吸うこともできず、言葉にならない声を上げながら、鼻に水を吸ってさらに苦しくなる。

さらに大きくドボンという音がして、ブロウもまた落ちてきたことを後から知った。

 

 

「(あっ……! まっず……!)」

 

 

着水した衝撃で手放してしまったモンスターボールを追って、苦しみながら底へ向かう。

手探りでゼニガメを出そうとするも、酸素不足と鼻に入った水のせいで苦しくて手元がおぼつかない。なんとかリュックのポケットからボールを取り出したところで、自分以外の手が開閉スイッチに触れた。

その手はそのまま自分を水面へ押し上げていく。

 

 

「プハッ! ハァイ、レッド! デンジャラアスだったね!!」

 

「ゲホッゲホッ、ホーロ(ソード)!?」

 

 

金髪に水を滴らせながら、自分を救ったのが剣術を使うMii、ソードであることを知った。

 

 

んぼっ(うおっ)!?」

 

 

もう一度ソードが水中へ行く間に、レッドは何かにリュックを噛まれて持ち上げられる。

青い体躯の首長竜、背中の大きな殻。のりものポケモン、ラプラスに咥えられたまま、殻の方に乗せられた。

 

 

「ゴホッ……うげ……」

 

「咽せるのはいいけど、よそ向いててよね」

 

「んあ? そのキツイ物言い……」

 

 

そう、話しかけられてはじめて自分以外がラプラスに乗っていたことに気づいた。

 

 

「キツイ物言いで悪かったわね」

 

「お怪我はありませんか、レッド」

 

「ヒカリ、ホムラ!」

 

 

双子のような容姿。その実体は翠玉色のコアクリスタルを持つ2対の天の聖杯。ブレイドのホムラとヒカリだった。

 

 

「ぶへっ、お前かよ」

 

「オレたちウォーターに縁アリかな? ブロウ釣りしてるし、オレ、シップで島まで行ってるし」

 

「そうでもねえだろ……」

 

 

ソードの助けを得て、ブロウも水面に顔を出す。気安い会話を繰り広げながらもブロウをラプラスの上に乗せる。遅れて、ゼニガメも顔を出した。落としたモンスターボールを咥えている。

 

 

「ナイスだ、ゼニガメ!」

 

「ゼニガッ!」

 

「ラプラスもサンキューなー!」

 

「ラァ〜♪」

 

「お前、いつの間に仲良くなったん?」

 

 

顔をすり寄せるソードとラプラスの姿は、旧知の友人を彷彿とさせるものだ。しかし、ポケモンと仲良くなる機会などあったのか。

 

 

「ほらキーラの時にさ、スピリットのコイツと会っててさ。一緒にガンナが捕まってた島まで……って、ここにいる全員知らない!?」

 

 

ブロウ、レッドはその時まだキーラに囚われていて、ヒカリとホムラはそもそもファイターでもなかった。

 

 

「知らないって……今それどころじゃないわよ!!」

 

「「「あ、そうだった!」」」

 

 

ブロウ、レッド、なぜかソード。揃って間抜けな声をあげる。

 

 

「何かあったんですか?」

 

「ルフレが傷だらけで、近づいたらなんかにぶっ飛ばされて……」

 

 

吹き飛ばされる前にいた場所を見ると、

 

 

「あっ、リヒターが戦ってる!? 相手は……あのボディ、ピットの……?」

 

「……くたばりぞこない達」

 

「お前、俺にだけ当たり強くねえか!?」

 

 

リヒターが鞭で神器を使うボディと戦っている。

ルフレを守るようにして背にしているので守備に重きを置いているようだ。

メインの攻撃はピカチュウとヨッシーだが、なかなか状況が好転していなさそうだ。飛べるアシュリーが様子を見にきたと。

 

 

「あいつ、いつの間に……デイジーどこいった!?」

 

「変わった……」

 

「変わった?」

 

「……あのオレンジがあいつになった」

 

「はあ!? 成り代わって紛れてたってことか!?」

 

「畜生ッ……!」

 

 

デイジー自身に変身の能力があるわけもなく。

だったらあのピットのボディそっくりの奴は初めからデイジーに化けていたんだ。

怪我の治療だってして、それでも気づかなかったなんて。レッドは痛いほど奥歯を噛み締めた。

 

 

「リヒター、ピカチュウ、ヨッシー! 頑張れっ!」

 

 

ヴァンパイアキラーで神弓の刃を弾き、懐にピカチュウがロケット頭突きで飛び出す。上体を逸らしてかわした敵が指を回すと、敵の姿が消える。

 

 

「……ッ! どこにいったの!」

 

 

ヒカリは苛立ちながら言う。一番気が短いのは彼女だった。

 

 

「! 正面です!!」

 

 

ホムラが宙かつ正面に立つ誰かを認識した瞬間、ヒカリが天の聖杯としての力を解き放つ。攻撃のせいで敵の姿は見れない。

核爆発のような強大な力が、思ったより目の前で炸裂する。

 

 

「嘘っ!?」

 

 

驚愕した言葉は聞いた。

 

 

「うわあああああああ!?」

 

 

しかし、それ以上の猛烈な力に晒されて、再び体が宙に吹き飛ばされた。





○タイトル
星のカービィ スーパーデラックスでの、コピー能力ミラーの説明文。
以下、全文。
・・・ かがみって ふしぎ。
   ひかりを はねかえすし、
   じぶんが 2つにみえるし・・・。
  なにより ガードしていると、
 あいてのたまを はねかえすんだ。


○リヒターエリートだもんね
ベルモンド最強のヴァンパイアハンターは伊達じゃない。
確かにベテラン感はシモンに劣るも、最強の称号は彼のもの。
才能があるからこそ、道を踏み外しやすかったかもしれない。


○横向きのピジョンみたいな足
鳥みたいな足という表現はポケモン世界には存在しません。
インドぞうのことは忘れろください。


○ヒカリ、ホムラ
桜井さんが、ツンとデレとは仰っていましたが、レックスに対してはデレとデレデレ。ヒカリがツンなのはレックス以外の対応です。
プロローグでも言いましたが、ED後なので分裂しております。
その後のことは想像でしかないのだが、作中でレックスとやっていたダメージの共有はこの2人の間に起こるのではないでしょうか。後おそらくプネウマにはなれない。
分裂はしましたが、そもそも別の存在という認識が薄いので、よっぽどのことがない限りは2人一緒に行動します。


○ラプラス
前作で、ソードをはじめとした島に向かった時に着いてきた元スピリット。こういう経緯なので、ソードに一番なついている。おだやかな性格。一応キョダイマックス個体ではあるのだが、特に必要ない設定な気がする。


○変身
レッド視点のため、情報は真実ではない可能性もあります。


○暴発?
3つの巨神獣(アルス)を沈めた力を恐れたヒカリが、咄嗟の迎撃とはいえコントロールを失敗するようなことをするでしょうか?
何かがあったのでしょう。


○作者の気まぐれコメント
ビックランだよ! 全国のイカタコが社畜になる日々です!
あははは! ……なんでゲームの中でも働いてるんだろ


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64話 まもりたい 〜White Wishes〜

 

「……うっ……ぐっ……」

 

 

その低いうめき声が、自分の口から漏れたものだと気づくのに、少しの時間を用いた。

地面に叩きつけられた全身が痛い。

 

 

「(湖に落ちたところで、ソードやホムラ、ヒカリに助けられて…… 敵がデイジーに化けていて……そのあとは?)」

 

 

頭も肉体同様、機敏には動けない。

ひとつひとつ、細い糸を辿るようにして要因を探っていく。

 

 

「……みんな、無事か……?」

 

 

直前でボールに戻していたゼニガメや、ここで新たに仲間になったカビゴンも含めて、四つのボール全てがそこにあった。安否を確認するために全員をくりだす。

 

 

「ガアゥ!」

「ゼニャ!」

「フッシ!」

「カア」

 

「怪我とか……ないか?」

 

 

そう呼びかけると、それぞれ元気いっぱいという身振りをした。安心したレッドはフシギソウのツルに助けられながら腰を下ろす。

 

 

「おーい、おおい!」

 

 

他には誰かいないのか、出来る限りの声を上げる。あの時、ヒカリがコントロールを誤ったのか、かなり手前で力が暴発したように見えた。

その衝撃で、バラバラに吹き飛ばされたらしい。再び湖に落ちたりしなかったのは不幸中の幸いだった。

 

 

「ピカチュ!!」

 

「クゥー」

 

「さっきのラプラスに……えっ、ピカチュウ!?」

 

 

レッドの呼びかけに、草むらからとびだしてきたのは、ラプラスにピカチュウだった。

一緒に吹き飛ばされただろうラプラスは兎も角、あの敵と戦っていたピカチュウがどうしてこんなところにいるのだろうか。

 

 

「そっちでもなんかあったのか? リヒター達とはぐれた?」

 

「ピカ……」

 

 

落ち込んだ表情を見せる様子から、概ね間違いではないことを理解した。

ようは一度であった仲間達は全員が離れ離れになってしまったわけだ。あの、デイジーに化けていた誰かのせいで。

 

 

「あれ……? じゃあデイジー本人がマズイことになってるかも……? ルフレもあんなんだったし……」

 

 

ルフレがどうして手酷く痛みつけられていたのかはわからない。ただ、数人ボディに囲まれただけでああはならない。何かがある。ルフレをあそこまで追い詰める何かが……

 

 

「……孤立してたら余計危険だな。はやくみんな見つけないと。お前らも誰かいたらすぐに知らせてくれ」

 

 

危険がどこに潜んでいるかわからないレッドはてもちの4匹を常時出すことで視界を広げることにした。敵も味方も見つけやすい。

 

 

「ピカッ!」

 

「……っ! ゼニガメ、こうそくスピン! リザードン、にほんばれ! フシギソウ、ソーラービーム!」

 

 

ピカチュウの声で、死角からの銃撃を避けることができたレッドは、咄嗟に3匹に指示を出す。

傭兵相手に、ひるませ、支援し、大技で決める。ぶっつけ本番でよくできたなと我ながら感心した。

よその地方には3対3で戦うバトル方式があるらしいが、今のレッドにはできそうにない。

 

 

「ゼ……ゼニガッ!!」

「グアウッ、ガア!」

 

「フシ! フッシ!」

 

「おい待て、喧嘩は後にしてくれって!!」

 

「ピー……」

 

 

しかし、3体出せばやはり喧嘩する。

はじめてのポケモンのゼニガメと、新参であるのにエース面するリザードンの相性は悪い。

こっちが一番強いのだと、手柄の横取り合戦だ。単に性格もあるだろうが、2匹を止めるフシギソウという絵も、また普段通りである。

普段ポケモン達のまとめ役をしているピカチュウも、またやっていると呆れていた。

 

 

「……ああ、でももう一番新参でもないのか。まあ、こんな状況だけどこれからよろしく……」

「カァー」

 

「ん?」

 

 

急に、しかしゆっくりと後ろへ倒れ込むカビゴン。何かあったのかと思って様子を見てみると3体ほどのボディをまとめて下敷きにしていた。

 

 

「……もしかして俺が指示しない方が強い……?」

 

「ピーガー……」

 

 

つい先ほどまで野生であったこともあり、下手な指示は逆にいらないのではないか……?

ピカチュウも微妙な反応だ。

 

 

「クゥ、ラァ!」

 

「げっ、まだいる! 本気で喧嘩してる場合じゃねえ! ゼニガメ、みずでっぽう!」

 

「ゼーニガー!」

 

 

カビゴンの倒したボディ以外にも、7、8体程度のボディ達。先頭のガオガエンのボディに対して水を飛ばす。

 

 

えっと……ラプラス、れいとうビーム!」

 

「クゥア!」

 

「あっ、つい指示飛ばしちまった」

 

 

ここで敵を凍らせられればいいな、と考えていたら、つい指示を出してしまった。

みずてっぽうの水を下地にボディを凍り付かせる。咄嗟とはいえ、うまくはいったようだ。

 

 

「まあいいや! リュカそっくりの奴にタネマシンガン! 緑の子供にちきゅうなげ! おまえは……あのペラペラに10まんばりき!」

 

 

少なからずダメージを受けたボディ達に、リザードンによって上空から叩きつけられる。ダメージの受けた3体と他のボディも合わせて、ピカチュウの10まんボルトでまとめて削る。

 

 

「一気に畳みかけろっ! ヘビーボンバー!」

 

「クゥ!」

 

 

さらにかたまっているところから、カビゴンの攻撃で、一気に散らす。孤立した1体に対してラプラスがしおみずで確実にトドメをさす。咄嗟の個人判断が早いのは野生だからこその利点か。カビゴンもまた、野生であった時の癖が抜けていないのか、勝手に拳を振るっていた。

 

 

「わっ……!? 何も指示してねえのに……(待て……コイツにとってここは故郷か……ボディ達に荒らされて怒ってたのかよ?)」

 

 

カビゴンがなんの抵抗もなくこちらの言うことを聞く理由が、わかったような気がする。

ならば、指示をしないうちから行動しているのは、その愛郷心ゆえか。

 

 

「(今はなんでもいいや、とりあえずみんなで固まらないと……!)」

 

 

離れたところを各個撃破なんて洒落にならない。ソード達と彼らに助けられたブロウ、さらにあの敵と戦ったリヒター達も、おそらく今は単独だ。早急な合流が必要で。

 

 

「また増えた……!」

 

 

さらに2体の増援。

戦闘の音で近くの敵を呼び寄せたようだ。

 

 

「くそっ、ゼニガメ、ラプラス、ハイドロポンプ!!」

 

「ガアゥ!」

「クウゥ!」

 

 

みずタイプの中でも威力の高い技を指示する。倒せなくとも吹き飛ばすことができないかと思ったが、結局踏ん張られてしまった。

 

 

「ピ……ッ!」

 

 

離脱することも視野に入れはじめた時、ボディ達に電撃が走った。

 

 

「うおっ!?」

「ピカッ!?」

 

「……ハァ……ハァ……無事、かな……? ぐっ、」

 

「あっ、おい!」

 

 

肩で荒く息をつきながらも、サンダーソードを向けていたルフレが崩れ落ちる。慌ててレッドが支え、近くの木に寄りかからせた。

 

 

「……ありがとう、レッド……」

 

「とりあえず、応急処置しとくぞ。……まあ、パッと一瞬で治る訳じゃないけど」

 

「それでも、助かるよ」

 

 

少し弱々しい様子ながらも笑う。

戦闘音で呼び寄せたのは敵だけではなかったのだ。

 

 

「何があったのか聞いてもいいか?」

 

「それは……リヒターがあの敵と戦った時に起きたこと? それとも僕が怪我ばかりな理由?」

 

「じゃあどっちも」

 

「なら、後者から話そうか……」

 

 

ルフレは自分達の世界で起きたことを話した。

誰かに襲われたこと。

その誰かに手も足も出なかったこと。

その戦闘の結果、意識を失い、気がついたらこの世界にたどり着いていたこと。

 

 

「……ルフレを襲った奴もデイジーに化けてたのか?」

 

「違う、とは言い切れないけど……あの敵、変身できるからなあ」

 

 

一拍おいて、続けた。

 

 

「一応、僕を襲った敵はクラウドの姿をしていた。当時はどうしてって思ったけど……おそらくボディ、なんだよね」

 

「なあ、変身してる奴がなんなのか知らないが、化けるならボディじゃなくてデイジーの時みたいに本人の方がいいんじゃないかって思うんだが……」

 

「……そうかな。あのピットのボディはピットの使えない力を使っていた」

 

「ピカッ!」

 

 

ピカチュウやフシギソウ、聡い者たちは気づいたようだ。

 

 

「つまり、ただピットのボディって訳じゃない、ってことだよ」

 

「あー、そういうことか。じゃあ何者なんだ!?」

 

「それはわからないけど」

 

 

わからなかったレッドにルフレはその可能性を話した。

 

 

「……それで、ついさっきのことだけど。君たちがぶっ飛ばされた後のこと。ピカチュウが知ってると思うけど、君たちとも同じように……ヒカリみたいな力でバラバラにされたんだ」

 

「ヒカリに化けてたってことか?」

 

「光ではっきりしなかったけど……違ったように感じる。長めのスカートなのは見えたよ」

 

「んんん〜……」

 

 

レッドがうーんと考えて。

そして何もわからなかった。

 

 

「ダメだぁ! なんもわからん!!」

 

「ふふっ、なら合流を目指そうか」

 

「ウッス」

 

 

歩くぐらいは問題なくなったルフレが立ち上がる。即座に返事を返したレッドは手持ちの4匹をボールに戻す。

 

 

「……一つわかっていることは。奴は、僕を狙ってることだ」

 

「えっ? はっ、なんで!?」

 

「奴はずっと君たちと一緒にいて、自分が紛れていることを誰にも悟らせなかった。正体を現したのは僕を見つけてからなんだから」

 

「……あっ」

 

 

誰も気づかなかった。

誰にも悟らせないように、紛れていた。

それは、おそらく。ルフレを狙うために。

 

 

「なら、俺が守る! 守りながら、みんなであの世界に帰ろう!」

 

「……!」

 

 

目を見開いて、驚いた顔をして。

そして、微笑む。

 

 

「ありがとう。じゃあ、僕も君を守るから」

 

「ピーカーチュッ!!」

 

 

ぴょんぴょんしながら、自分の存在をアピールするピカチュウ。自分も守るからと言わんばかりの仕草。

 

 

「ピカチュウも、ありがとう」

 

「という訳だ。ラプラス、お前は……」

 

「クウゥ」

 

「悪いな、もうちょっと一緒に来てくれ」

 

 

ラプラスもまた、透き通った声で笑った。

 

謎だらけで全容の見えない。

なぜか狙われるルフレ。背後から忍び寄るような、静かな恐怖に対抗するために結束を固めていった。

 





○タイトル
テイルズオブグレイセスの主題歌。
歌手であるBoA氏にダメ元で頼んだところ、コラボOKとなり、グレイセスに合わせた主題歌として作られた。
主題歌と本編のベストマッチのテイルズといえばアビスが有名だが、グレイセスもすごい。


○ポケモンの技
基本的にレベル、教え、技マシン等覚えられる技は割となんでも使えます。どれが使える技かとは管理するのは面倒ですし、かと言ってスマブラと同じ技しか使えないのも味気ないですので。
ちなみに赤緑時代でもFRLG時代にもない技を、普通に指示しますがスルーお願いします。


○カビゴン
自ら捕まったのもそのため。
コイツら追い出してやる程度の復讐心なので。
ラプラスが穏やか系なので、カビゴンがちょっとバトルジャンキーに寄っています。意外でしょうが、専用Zがそんな感じなので……


○ルフレの襲撃者
ぶっちゃけると襲撃者はルネ。
本人なのか、化けた誰かなのかはまだ伏せておきます。


○作者の気まぐれコメント
ビックランお疲れ様です。意外とボーダー低く、後10多ければといった成績でした。ちなみに噂の満潮ハコビヤは一度も来ませんでした。チクショウ。

あとビックラン関係ないけど、アニカーBlu-rayあっという間になくなった……
お金足りないって喚いている間の出来事でした。1月になったらまた予約受け付けてくださいHAL研様。



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65話 戦闘!!/イーラ

 

「いい!? 絶 対 に 私 じゃ な い!!

 

「わかったから何回も言うな!!」

 

 

レッド達が自ら出した戦闘音で敵を寄せている中、森が似合う静寂をぶち壊すほどの大声で言い争っている2人がいた。

脇目も振らず否認し続けるヒカリといい加減ウンザリしたブロウ。プリンのボディを蹴っ飛ばし、インクリングにそっくりな敵を斬り刻み、Mr.ゲーム&ウォッチの贋物を背負い投げ。

戦いながらも上記のやり取りを繰り返す2人はある意味器用であった。

 

 

「(あんな手前で力を暴発させたりはしない……! もう、あんなことしない……!)」

 

 

3体の巨神獣(アルス)を堕とし、一時は消えるべきだと呪った自身。

もう目覚めたりしないと決意したのに、因果はこの瞬間まで辿り着かせた。

だからこそ、もう暴走するように力を行使しない。なのに、あの時、敵に放った力はヒカリの管轄から離れた。離れた力がこちらを襲ったのだ。

 

 

「つーか、あんたじゃないならあの力なんなんだよ!? あの敵がなんかやったのはわかるけどそのなんかがわかんねえ!!」

 

「私が知る訳ないじゃない!!」

 

 

鉄球を頭蓋に叩きつけ、光の熱で焼き払った後、立っている者は2人だけになった。

戦闘というよりは、大声を出したことによって荒れた息遣いを戻していく。

 

 

「ハァ……ハァ……つーかホムラの方はいいのかよ? 俺、お前達が離れてるの見たことねえんだが……」

 

「ハァ……ハァ……私は別にあの子がいない時も多かったんだから気にしてないわよ……逆は知らないけどね……」

 

 

最後に深く息を吐いて、今後のことを考える。まずはリヒターがいた場所まで戻らなければ。

リヒター達もまた、離れ離れにされたことを知らないブロウは今も彼らが戦っているものだろうと考えている。

 

 

「大早急にさっきのとこまで戻んぞ」

 

「あの変身するのも私が叩き潰してあげるわ……! さっさとさっきの場所まで戻るわよ!」

 

「あ、ちょちょいと待て、ここら辺どこだよ」

 

 

慎重に辺りを見渡すと、林の中にいることはわかった。自分達が吹き飛ばされた時の不時着時についた、跡から先ほどまで自分がいた位置がわかる。

その位置からして、おそらくリヒター達が周っていない。未踏の領域であることは理解した。それならば、寄り道せずにまっすぐ戻った方がいいだろう。

 

 

「うし、湖見えるまでまっすぐ進んで、」

 

「その後に湖の周りに沿って進むんでしょう?」

 

「そそ、できればソードとレッドとホムラと、後あの魔女とも合流」

 

 

希望的観測も踏まえながらどうするか策を練る。しかし、仲間との合流を目指すレッド達と、場所を目指すブロウとはすれ違っていくのだった。

 

 

 

 

 

「イヤー、ご無事に合流できて何より、ワッツより、不思議より!」

 

()言ってんだかコイツ」

 

「ソウ! ナニより!」

 

 

先に吹き飛ばされたソード、ホムラ、アシュリーの後を続くようにリヒターとヨッシーもここまで落っこちてきた。ここは先程もいた横断する川にかかる橋。

 

 

「トゥディはよく逸れる日だよねー」

 

「逸れるというか、散り散りにされるというか……あの力、ヒカリちゃんがコントロールを失敗した訳じゃないのに……」

 

 

ヒカリと同じく、ホムラもまた敵に何かしらの妨害を受けたことを感じ取っていた。だって自分達は同じ存在なのだから。

 

 

「さっきの場所まで戻ってみる? 他のみんなもいるかもしれないよ」

 

「でも、さっきの奴もいるかもしれないしな……」

 

 

あの敵。

奴は一体何者なのか。先程何が起きたのか。

それすらはっきりしないのだから、勝算があるかもまた不透明のままなのである。

 

 

「さっきの場所から中心に円を描くように周りを回ってみませんか? もしかしたら、他の方もいるかもしれません」

 

「うし、それで行くか」

 

 

メリット、デメリットも考慮して、ホムラの案に乗って、直接的な提案を先回しにすることに決めた。

 

 

「湖に落ちてないといいけどね〜」

 

「赤は別にいいわ」

 

「エッ、アシュリーちゃん、なんでブロウにシンラツ?」

 

 

リヒター達は周囲の探索から進んでいくことにする。特に満身創痍のルフレは無理はしないと考えた上での判断だ。

 

 

「しかし、ソード達がぶっ飛んだのはヒカリの攻撃が暴発……させられたからとしても、なら俺達が受けた攻撃はなんなんだ?」

 

「気になるんですか?」

 

「まあ、同じように見えたからな……反射ではないんだが」

 

 

その場にホムラがいれば気づけようが、リヒターには判断がつかなかった。霞でも握り潰そうとしているように、不明瞭な真実は形もわからぬ。

 

 

 

 

しばらく歩いていくが、仲間の姿を見たかと思えば、ボディだった、という騙しが頻発し、ソードがどんどん飽きてきた。

 

 

「アウー……ブロウがかくれんぼしてる……隠れんぼ……隠れん坊?」

 

「……カエルの友はカエル」

 

「別にそんなにソックリさんじゃないでしょー……」

 

 

草がつくのも気にせずに、地べたをゴロゴロしている。飽きっぽいというよりは集中力が続かないのだ。不本意でも、何かイベントが起きれば長続きもするだろうに。

サイコロを回して進むだけのすごろくは求めていない。求めるは何マス進む、もしくは戻る。一回休みかスタートに戻るでも可。

 

 

「アー……こういうところに落ちてたりしなりかなー……」

 

 

退屈心が抑えられなくなった石で囲まれた洞穴の中をひょこっと覗く。中は薄暗く、詳しくは見えない。

 

 

「オーイ、ブロウ? ジメジメしてるの? いくらオレ達の中でエアーが薄いからってダンマリはダメだよー。っていうかここにいてー」

 

 

答えは返ってこない。

中に宝でも入っていたら、と考えるのだが、この状況で探検したいなど通じるはずもない。

 

 

「……イヤイヤイヤ、別になんかお宝あるんじゃないかなんて思ってないよ? もしかしたらこんなところに落っこちてるかもしれないし? ソウ、これは捜索であって探検じゃないじゃない……」

 

「スッゲー自分に言い聞かせてるな」

 

「もう……ソード! ブロウやみなさんが心配じゃないんですか!?」

 

「あの格闘系ボーイはしぶといし……」

 

 

酷い言い訳である。

離れていても大丈夫、というのはある意味信頼の1つの形ではあるのだが、それが非常時にも発揮されるのはどうかと思うのだが。

 

 

「えっと……ううん、オレには聞こえた。ブロウの、たちゅけてたちゅけてチビってまうーというテレパシーが聞こえた。絶対聞こえた」

 

「ほんとぉ?」

 

「ホントホント」

 

「……絶対、嘘」

 

 

100%嘘だ。

ブロウの品位を下げながらの言い訳を信じる者はいない。

 

 

「というワケで……」

 

『行ってみたらどうだ?』

 

「エッ?」

 

 

ソードの体が1人でに倒れていく。

しゃがみながら、飽きたと語っていた口は日常ほど達者に働かなかったのだ。

誰かに押された。遠のいていく光の中に、正体を見破れないモヤの塊がいた。

 

 

「…………」

 

 

背中を強かに打ちつけてもなお、まともな言葉が出てこない。何か押されたような感覚はあったのに、それが誰の仕業かわからない。

そもそも、誰かが接近していたなら、自分じゃなくても誰かが気づくはずなのに。

まさか、すでにあの姿を変える敵が紛れていた?

 

 

「……イ〝ッタ〝イ〝……」

 

 

回り始めた頭に、遅れて痛みという異物が混じってくる。仰向けのまま、痛みで涙の滲む視界に、後を追うように何かが落ちてきた。

誰かが追ってきたのか。いや、あれは何か石のような、何かのかけら?

 

 

「ウワッ!?」

 

 

落ちてきたかけらは薄紫の色で光る。

それは、ダイマックスの光だった。

 

 

『……キュ〜……』

 

「……アッ、ドウモオイッスコンチハ。ミミッキュんこんなにビッグでした? 成長期?」

 

 

ダイマックス粒子が原生ポケモンに影響を与え、ダイマックス現象を起こさせたのだ。

ダイマックスを知らないソードは、自分も知っている愛らしいミミッキュが、怪獣映画に出演できるほどのスケールになったことにタジタジ。なぜか敬語で片言で気安く早口になってしまった。

 

 

「ソード!!」

 

「大丈夫!?」

 

 

ホムラとヨッシーが参戦する。

背筋がヒヤリとしながらも、自分好みのイベント発生に心のワクワクが止まらなかった。

 

 

 

 

「ほんっと、しつこい奴らだな……! 援護、頼むぜ!」

 

「……ハァ……」

 

 

示しを合わしたかのように周りを取り囲むボディ達。

 

ソードを突き落とした敵の仕業に違いない。

目視すらできなかったのは屈辱の極みだったが、今はそれこれを気にする場合ではない。後悔は後にするから後悔なのだ。

 





○タイトル
ゼノブレイド2 DLC追加シナリオ、黄金の国イーラの戦闘曲。
戦闘曲なのにジャズ風で、フィールド曲っぽさも薄々感じられる。
ちなみに追加シナリオ関係のBGMの中では、唯一ホムヒカのスマブラ参戦で、追加されたBGMである。
第13回 みんなで決めるゲーム音楽ベスト100にて2位。
ちなみにこの曲の長さは6分42秒。参考までに星のカービィ ディスカバリーのラスボス戦曲、『いつしか双星はロッシュ限界へ』は6分ちょい。ただの戦闘曲の長さじゃねえ。


○Mii三人衆の関係性
前作でも言及したことですが、彼らもオリキャラみたいなものなのでもう一度。
彼らはすれちがい伝説にて、王様を救い、すべてのやみのおうを倒した3人ではありますが、すれちがい合戦以外のすれちがいゲームの要素をそれぞれ取り入れている彼らは常に一緒にいる訳でもないのです。
ようは、アイツと一緒じゃないけどまあ大丈夫だろ、という雑な信頼です。


○洞穴に落とした何か
ねがいのかたまり。
ワイルドエリアの穴に使うと、マックスレイドバトルに挑戦できる。



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66話 聖魔の光石

 

リヒターのヴァンパイアキラーの先が、素早い青色のボディの横っ面を打ち抜く。

先についた棘鉄球は、使い手の腕力も相まって骨すらも打ち砕くほどの威力も発揮する。

 

 

「うげっ、まだくるぞ」

 

 

ただ敵の1体1体に時間をかけていたらキリがない。時間をかければかけるほど増援がくるだろう。

 

 

「そうだ、いつもアシストでやってるみたいにさ! 魔法? での援護、頼むぜ!」

 

「……はあ」

 

「ため息つかないで頼む〜! 3人が上がってくるまででいいからさ!」

 

「…………」

 

「大乱闘であんだけ助けになってるんだからさ、今ならもっと心強いぞ! なっ!」

 

「…………」

 

 

両手を合わせて頼み込むリヒターにずっと無言で返すアシュリー。無言のままに杖を敵に向け、雷の魔法を放った。

 

 

「うおっ!?」

 

 

魔法が当たった地面は少し焦げる。

ボディとはいえ機械だからか、ロボットの姿のボディは火花を散らしてショートしていた。

 

 

「ははっ……流石だな! うし、俺もやってやるぞ!」

 

 

おだてには以外と弱いアシュリー。

もちろんそんなことをリヒターは知らないために、素で持ち上げた。参戦してくれた意図を知らず、自分もやらねばと意気込みはじめた。

 

 

「うっし!」

 

 

心意気と共に、軽やかに振るわれた聖鞭。茂みに潜んでいた敵勢を茂みごと切り裂く。切り落ちた葉のかけらが舞い上がった。

 

 

「ハッ!」

 

 

背後から忍び寄る敵にはバックステップしながら聖水を放る。

シモンのそれとは違い、蒼炎は実体ではない。燃え広がる心配はない。

 

 

「…………!」

 

「……のッ!」

 

 

アシュリーの広げた闇のゾーンが敵を捉え、体を縮ませた。体の縮小と同時に軽くもなったためにスライディングキックで簡単にぶっ飛んでいった。

 

 

「まだだっ!」

 

 

さらにヴァンパイアキラーを振り回し、他の敵も吹き飛ばしていった。

 

 

「ふう……あれ、まだホムラ達上がってこないのか?」

 

 

戦いがひと段落つき、落ちたソードを拾いにいった2人から音沙汰がないことに今気づく。

思った以上に深く、上がれなくなっているのかもしれない。これなら空を飛べるアシュリーに頼むべきだったろうか。

 

 

「(さっき……)」

 

 

連鎖的に思い出した先程の光景に、わかりやすく顔を歪ませた。ソードを突き落とした何者かは本人だけではなく、他の者達にも()()()()()()()()

確かに自分達以外の誰かの声が聞こえたのだが、誰かを捉えることだけはできなかった。

 

認識もできない相手の対策を取らなければこれから不意打ちされ放題だ。ただでさえ、誰に化けているかもわからない敵がいるのに。

そもそも、数を揃えたただのボディ以外に敵はいったい何人いる?

 

 

「クッソ、なんもわからねえ……!」

 

「……次、くるわよ」

 

「ああもう、作戦会議ぐらいさせろって……!」

 

 

ああ、やっぱり新たな敵が寄ってきた。

ソードが突き落とされた時点でここにいるのは知られているのだ。当然だ。

 

 

「……邪魔……!」

 

「えっ……えええ!?」

 

 

むっ、という顔をしたアシュリーは自身の髪を白く変貌させ、大規模な魔法を放つ。

すると、なんということか。敵のボディ達の姿が変わっていく。

ホールケーキ、チキン、ドーナツ、ステーキ……

見ているだけでお腹が空きそうな、実に美味しそうな料理に早変わり。

 

明らかに便利すぎる、普通に物語でありそうな都合のいい魔法にリヒターは開いた口が塞がらない。

 

 

「あっ……でもそうか、今更か……」

 

「……何……」

 

 

ツッコミどころを失ったリヒターを不満そうに見つめる。真意はわからずとも不愉快なことを考えていることは読み取った。

自分も属するスマッシュブラザーズだって、どの聖書にも載っていない軽い神様とか、どこの未来の技術なのかひとりでに動く鉄の塊とか、人だけは斬れない大剣とか。

そんな創作にありそうなもの、実際に見てきたのだ。自分の言う通り、今更だった。

 

 

「お前ら2人とも無事か……ってんだコレ」

 

「無事ではあるみたい……って何よコレ」

 

「仲良いな、おまえら」

 

「「黙れ(黙りなさい)」」

 

 

元ボディの哀れな食べ物達に微妙な反応。

しかし、揃った反応。

森林の中には不釣り合いな、手のかかった料理だが、魔法でぱぱっと変えたものである。

 

 

「アシュリーが魔法?で変えたものだ」

 

「おー、空飛ぶ以外に魔法使いらしい一面ようやく見た」

 

「……チッ」

 

「なにゆえ舌打ち!?」

 

「いや、今のは普通にお前が悪い」

 

 

普段快活なリヒターもツッコミに回らずを得ない。

 

 

「魔法……そう、魔法ね……」

 

 

元ボディということと状況を除けば美味しく食べられるだろう料理を見て、ヒカリの言葉数が減っていく。騒ぎながらそれを見ていたブロウは「ああ」と思い浮かんだかのように口にした。

 

 

「あんたがあれやこれやと手を尽くした結果できたモヤモヤモザイクの料理モドキより、魔法で一瞬で作った料理の方が美味そうだから複雑な気分なんだな」

 

「フォトンエッジッ!!」

 

「どおっ!? 言っとくけどな!! あんなの食わされる身にもなれって!!」

 

 

続けて余計なことを喋るブロウに、ついにヒカリの剣が光る。拳での反撃はしないが、口での反撃は続けるブロウ。

 

 

「バカね」

 

「否定できないな……」

 

 

気分が落ち着くまで、好きにさせた方がいいのだろうか。いつまでも気を張っていてもいいことはない。少しだけ目を瞑ることにした矢先だった。

 

 

「……ッ!?」

 

「……はっ!?」

 

 

ヒカリの右腕に傷が走る。何もしてないのに。勝手に。それに一番慌てたのはブロウだった。

 

 

「ちょっと待て! 俺はマジガチで何もしてねえ!!」

 

「わかってるわよ! そんなこと!!」

 

 

武器を持たない左手で傷を抑える。

それを見てリヒターは思いついた。

 

 

「まさか……あの……敵か!?」

 

 

誰にも認知されず、ソードに害を与えた謎の敵。もしやその敵がヒカリに傷を負わせたのか。

誰かの害意の上での攻撃の可能性を、ヒカリはゆっくりと首を横に振って否定した。

 

 

「違う……あの子よ。ホムラが、何かと戦ってる!!」

 

 

反射的に、あの洞穴へ顔を向けた。

もしかして、穴が深いとか地下が広いとか、そんな理由じゃなくて。

もっとどうにもならない理由だったら。

もし、待ち伏せされていたなら。

 

 

 

 

「……! えいっ!」

 

 

職種のように伸びた腕を、剣を振るって受け流す。しかし、それだけ動いた後は耐えきれずに腕を下ろした。

 

 

「ソレー!!」

 

 

ソードの生み出したトルネードをぶつけるが、体に真正面からぶつかる。だからかそこまでダメージがあったようには見えない。

 

ボロ布の首は既に折れていた。ばけのかわが剥がれてもはやピカチュウを模すことはできないだろう。

 

 

「フウオオオオ!」

 

 

体を捻りながら剣を横に振った。

本体の目の上、胸にあたるような箇所に横一直線に布に切り込みが入った。

 

 

『キュウウ……!』

 

「ぬおっ」

「わわっ」

「きゃっ」

 

 

それに怒ったのか、ミミッキュの発したオーラが3人を吹き飛ばす。岩肌まで叩きつける。

 

 

「もー……ヨッシーの攻撃大体こうかなしだし、どうしよ……って」

 

 

足元の影を掴まれ、身動きが取れなくなっている。上げようとした足が動かない。

 

 

「……あっ……!」

 

「ソードッ!!」

 

 

巨大な触腕から放たれたシャドークロー。

ソードの胴体下部から顎までを一直線に引き裂いていた。

絶叫にも近い悲鳴が響く。

 

 

「わわわっ……! しっかり、ソード!!」

 

「ウ……グッ……」

 

 

ヨッシーの背中に背負われるソードは動けない。呻き声を上げるのが精一杯で力なく横たわる。後ろへ逃げる2人を捕まえようと、触腕を伸ばす。

 

 

「……ヨッシー、リヒターのところまでお願いします」

 

 

怪我を負った右手を補佐するために、左手でも剣を支える。殿を務めなければ。ヒカリちゃんには自分の痛みをわけてしまうことになるけども。

 

バリアのようなものを張ったミミッキュを見て、流れた冷や汗が凍りつくような錯覚を覚えた。

 

 

「……まったく。何をあなたが私に遠慮する必要があるのよ」

 

「えっ……?」

 

 

3人を守るように、4人が降り立つ。

リヒター、アシュリー、ブロウ、そして、自分の分身ヒカリ。

 

 

(ホムラ)を傷つけた罰は受けてもらうわよ!」

 

 





○タイトル
ファイアーエムブレム8作目。
主人公は剣使いの妹エイリークと槍使いの兄エフラム。いわゆるダブル主人公であり、序盤の共通ルート後はどちらの主人公を操作するかを選択し、また共通ルートへ戻ってくる。
今作品の神器枠、双聖器も一つの国に2つずつ継承されていると、ダブル主人公であることを全面にアピールされている。
ちなみにエンゲージにピックアップされているのはエイリークの方。女尊男卑。


○リヒターの文明観
本作のリヒターの時系列は血の輪廻後、月下の夜想曲前。ようは闇堕ち前。
年表によると1792年〜1797年の間。外見のことを考えると実際は血の輪廻からそこまで離れていない。
1792年を現実世界の歴史に照らし合わせると、ちょうどフランス革命、ナポレオンの活躍した時代である。
当時は火打ち石の小銃や真鍮の大砲を使っており、蒸気船ができたのも1803年なので、ロボットみたいな存在は知ることもないと推定。

ただ、2035年にあたる暁月の円舞曲と現在の十数年後の文明がフィットするかは微妙なので、そもそも悪魔城年表と現実の年表とを照らし合わせること自体がおかしいかもしれない。


○ヒカリのポイズンクッキング
原作でもモザイク処理をされた上での登場。
材料を見ると、何やら虫とか入ってるんデスケド……

イーラ編から原作までの500年でそれを自覚したようで、諸事情により封印中。
ホムラが料理上手なのは、おそらくヒカリが生み出した複人格であるがために、ヒカリの理想が反映されているからだろう。

ちなみに本作の料理下手比較としては、
カムイ(鋼の味)>ルフレ(鋼の味)>>>パルテナ(調理工程の問題だが)>>(越えられない壁)>>>>>>>>>>>ヒカリ
なイメージ。でも多分健啖家リンクは食えるんだろうな……


○ばけのかわ
ミミッキュ専用特性。
戦闘中、一度だけ、全ての攻撃のダメージを化けの皮を身代わりに無効化する。

追加効果は防げず、また特性を無視して攻撃してくるかたやぶりの特性や、連続攻撃に弱い。
とはいえ、一回の行動保証があるのでつるぎのまいで攻撃を上げたり、起点作成ででんじはなど撒いたりととても扱いやすい。
あまりにも強いためか、8世代から体力を少し削る弱体化が入る。


○ミミッキュの殺意
正体が ばれそうで 悲しい。 首の 部分を 折った 相手は 絶対 許さず 復しゅうする。
(ウルトラムーン ばれたすがたの図鑑説明)

ピカチュウに 化けていた ことを ばらした ヤツは 容赦しない。 刺し違えてでも かならず 倒す。
(ソード ばれたすがたの図鑑説明)

ソード君、斬り込み入れちゃいました。
ホムラちゃん達、首折りました。
オワタ\(^o^)/


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
ヒカリ「(私の料理……リンクは普通に食べた……! 後から倒れたりもしなかったし……私、成長してる……!)」
ルフレ「カムイ、次どうしようか?」
カムイ「うーん……鉄分とかを取った方がいいとかトレさんが言ってたような……」
パルテナ「ふっふっふ、こういうのはレシピ通りに作れば普通に食べられるものが作れるんですよ。なになに……適量? なら多い方がいいでしょう」
ヒカリ「ちょっと貴方達」

〜数時間後〜

リンク「どうしよう、今回の大乱闘、食べ物が変わってると思ったらほとんど何もしてないのに勝っちゃった」
ジョーカー「鉄の……味がする……!」ガクッ
ピット「お皿が……勝手に歩いて……いつかの……悪夢が……」ガクッ
ワリオ「金属は……食うもんじゃねえ……口直しのニンニクを……」ガクッ
ブロウ「(返事がない、ただの屍のようだ)」

ホムラ「ヒーカーリーちゃーんー?」
ヒカリ「ホホホホホホホムラ、おおお落ち着いて」

カムイ「なんで大乱闘の回復アイテムと入れ替わって……!?」
ルフレ「これは……計算外……!!」
パルテナ「この調味料、自立歩行の奇跡かかってました☆」


○作者の気まぐれコメント
2022年の投稿は今話で終了となります。
なんか新作ばっかりの上にイベントも目白押しで書ききれないほど色々あった年でしたね。
うっ、節約しないと……

ではでは皆様、良いお年を。


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67話 ダイマックスアドベンチャー

 

戦闘経験か、それともホムラとの特殊なつながり故か。無策で近づくのは危険だと感じたヒカリは降り立った距離のまま光弾を放った。

 

 

「パニッシュメントレイ!」

 

「キュウウ……!」

 

 

しかし、ミミッキュに攻撃は届いていない。

透明な壁が守るように間に存在しているからだ。

 

 

「うわっ、めんどくせえな! ……でも、まあこの似非外国人にこんなん負わせたんだし、こんぐらいの反撃、値引きのし過ぎだろ!」

 

 

それをバリアと認識した瞬間、ブロウはコンボ重視に頭を切り替える。次の攻撃を考えた一撃をバリアへ振りかざす。が……

 

 

「んあっ!?」

 

 

バリアを捉えたはずの拳はバリアどころか、ミミッキュ本体すら当たらない。当たったはずの連続攻撃だが、一発目から途絶えた。

 

 

「ちょっと値引きのしすぎじゃないの?」

 

無料(タダ)……」

 

「ダサクール! ソレでこそブロウだよ!」

 

「うるせえ! あとソード、テメェ茶々だけ参加してんじゃねえ!」

 

 

お釣りはいらん、取っとけ。

そもそもお宅払ってないやん。

 

無意味なやり取りは、緊張をほぐすが長引かせない。ソードに深手を負わせた技、シャドークローが迫る。

アシュリーは高さで、ブロウとリヒターは上手くかわしたが、ヒカリは剣で弾こうとして頬から首を掠める。

 

 

「(面倒ね……! 体が大きいからリーチも長いし……!)」

 

 

彼らは大乱闘のアイテム、モンスターボールから登場するミミッキュを知っている。もちろんこれほど大きい個体ではない。

だからこそ、目の前のダイマックスしたミミッキュの射程を掴みあぐねているのだ。

 

 

「でもでもでも! さっきボクの攻撃も当たらなかった! ブロウだけじゃないよ!」

 

「うーん……レッドかせめてピカチュウがいればなあ……」

 

 

ポケモンにはタイプ相性がどうとか聞きかじったことはある。

 

ただリヒターには、そのタイプ相性の良し悪しがわからない。ポケモンと共に生きる彼らならば、何が有効で何が無効かわかっただろうに。

わからないから手探りで調べていくしかない。

 

 

「……えいっ」

 

「こっちはどうだっ!」

 

 

アシュリーの魔法は効いてはいる。微妙に動きが遅くなっている気がする。元から巨大化しているからか、動きが鈍重になっていたので目に見えて変わってはないように思える。

ヴァンパイアキラーは通用する。ブロウのようにバリアを貫通して攻撃がスカることはない。

 

 

「キュッ……」

 

「おー! 効いてる効いてる!」

 

「バリアに阻まれてる状態を効いてるって言うなら効いてるんじゃないの!」

 

 

飛び上がった状態からバリアに向かって連続で斬りかかる。最後の一太刀が強く阻まれる。

 

 

「はあああああああ!」

 

ピシリッ

 

 

天の聖杯としての力を引き出し、推進力を倍増させる。バリアに入った亀裂を押し広げていく。

 

 

「らあッ!!」

 

バリーンッ!

 

 

そこに黒い鉄球が投げ込まれる。ヒビが入ったバリアは粉々に砕け散った。

 

 

「理屈は知らねえけどッ! 剣やら鞭やらが効くなら、重々鉄球だって効かねえ訳ねえだろ!」

 

 

左手に次の鉄球を抱えながら、怒気を強めて言い放つ。物理攻撃は物理攻撃でも、物を介した攻撃ならば通用する。

バリアが壊れた衝撃でミミッキュが体勢を崩して倒れ込む。

 

 

「キュキュ……!」

 

「今なら……!」

 

「ボクも同じことできる!」

 

「じゃあオレもー!」

 

「お前は寝てろッ!!」

 

「ンベッ!?」

 

 

好機と見て再び参戦するホムラ、どう戦えばいいかわかったヨッシーが、そして大怪我のソードが参戦しようと駆け出す。

顔に血管を浮かばせたブロウが最後のみを足で引っかけた。

 

 

「ヒドイ……」

 

「あっ……やべっ」

 

 

顔からすっ転んだソードは、胸とか腹あたりで裂傷があったのに今更気づいた。

 

 

「……悪い……とりあえず……引くか」

 

「悲しみのインタイ……」

 

 

肩を貸しながら戦場から離脱する2人。

2人の目の前に現れたのは衝撃の光景だった。

 

 

「は……?」

 

「エ……?」

 

 

一拍。

目の前の出来事を見て、受け入れるのにかかった時間だった。

 

 

「エエエエエエエエエエッ!?」

 

「えっ!? なんですか!?」

「次から次へとなんなのよ!」

 

「……!」

 

「マジかよ……!」

 

「ええっ!?」

 

 

ソードの大声が反響する。

ミミッキュに意識を割きながらもそちらの出来事を確認したスマッシュブラザーズ達には驚きの光景が待ち構えていた。

 

 

「うわっ……!?」

 

「ピッ!?」

 

「クゥ……」

 

「これは……!」

 

「ええっ!?」

 

 

しかし、返ってきた反応は鏡写しのように同じだったのだ。

レッド、ピカチュウ、ラプラス、ルフレ。そして、ヨッシー。まったく同じ姿が2つあったのだ。

 

 

「増えた……!? 違う、どっちかが化けてるのね! 2度も同じ手にかかると思ったら……!」

 

「ヒカリちゃん!!」

 

 

見極めてやると豪語したヒカリは、一瞬完全にミミッキュから意識を逸らしてしまったのだ。

ファイター達が驚いている隙に立て直したミミッキュは次の攻撃に移っていた。

そして、攻撃が彼女に向かっていると気づいたホムラもまた、自分への敵意を感じられていなかったのだ。

 

 

「キュオ……!」

 

「……っ!!」

「あああ……!」

 

「しまった!」

 

 

満足に悲鳴も上げられないほどの痛みが2人を襲う。痛みと傷の共有。他の例がない命の共有は、同じコアクリスタルのブレイドだから。

つまり、触腕に同時に押し潰されている2人は、2人分のダメージをどちらも受けているのだ。

 

 

「(これはまずい……! ソード、ホムラ、ヒカリの3人が負傷、更にヨッシーが2人という動揺が広がっている……!)」

 

 

ヨッシーが2人。つまりどちらかは偽者。

ただでさえよくない状況下で不意打ちも警戒しなければならない。頭をフル回転させる。

レッド、ピカチュウと合流して、単独だったヨッシーも見つけて。戦闘音を辿ってきた。

タイミングが良すぎることを考えれば、自分達と行動を共にしていたヨッシーの方が偽者なのだろうか。足を引っ張ってばかりなのだから、せめて、この謎を解かねば。

 

 

「ミミッキュ…… ゴースト・フェアリーだから、抜群がはがねとゴーストで……リヒターァ!」

 

「つまり俺がやれってことだろ!」

 

 

しなる鎖の鞭が、ホムラを抑えていた触腕を弾く。レッドもフェアリーという未来のタイプはあやふやなのだ。パッと有効打がでてこない。

 

 

「リザードン、メタルクロー!」

 

 

投げたモンスターボールから登場したリザードンが、ヒカリを抑えていた触腕を退ける。そのままヒカリを運んで後衛へ戻ってきた。

 

 

「なんでアンタ達このタイミングでくるのよ……」

 

「八つ当たりは関心しないな……」

 

「……わかってるわよ……」

 

 

知っている。言いがかりだ。

チャンスを不意にしてしまった八つ当たりだ。

 

 

「これで戦えるのは、レッド達にピカチュウ 、リヒター、アシュリー、ブロウと……2人のヨッシー……」

 

 

タイミング的には自分達といたヨッシーの方が怪しいが、あの敵は自分を狙っている。

どうして手を出さなかったのかを考えると、ここにいたヨッシーもまた怪しい。

 

 

「だれ、君!」

「ボクも同じこと言ってる! 君、だれ!」

 

「んな、争ってる場合ちゃうぞ!!」

 

「「うわっ!?」」

 

「……! ピカチュウ 、ラプラス、カバー!! ヨッシー達を守ってくれ!」

 

 

いがみ合っていた2人のうち、一方のヨッシーにかげうちがヒットし、更に距離を取った。

戦力に余裕のあるレッドが、てもちではない2匹をヨッシー2人の支援へ回させる。どちらかの監視も含めて。

 

 

「リヒター! 足止め! きっとあとちょっとだ!」

 

「おう!」

 

 

ゼニガメ、フシギソウもくりだし、何がしたいかを把握した。超接近し、襲ってきた片方の触腕を縛りつける。ただ、もう一つは健在だ。

 

 

「うぐっ!?」

 

「あれ、いたみわけか!? なりふり構わなくなってきた!!」

 

 

リヒターとミミッキュの体力を強制的に分け合う。全員でかかったダメージがリヒターにも降りかかる。もう、足踏みの暇もない。

 

 

「ゼニガメ、ハイドロポンプ……フシギソウ、ソーラービーム……」

 

「(……? ゼニガメとフシギソウがつけているあのスカーフは……?)」

 

 

何かの力を感じる……ような気がする。

遠くからではルフレにはわからない。

 

 

「リザードン、だいもんじ……」

 

「こっちだゴラァ!」

 

 

ぶん投げた鉄球……ブロウの方を向く。

 

 

「行くぞ! さんみいったい!!

 

「グオオオオオ!」

「ガアアアア!」

「フッシィイイ!」

 

「キュッ……! キュウウウゥ……!」

 

 

3タイプの強力な技を繰り出されたミミッキュ。

断末魔のような鳴き声を出しながら、赤い粒子が散っていく。

 

 

「あれ……?」

 

「……キュ!?」

 

 

通常サイズに戻ったミミッキュを思わず覗き込む、リヒターとブロウ。上から圧迫されるように見つめられてドキッとしたのか、ミミッキュは脱兎のごとく逃げていった。

 

 

「ピカチュ!」

 

「ああそうだ! えっとヨッシー! どっちが本物かわかんないけど怪我!」

 

「「大丈夫! 大した怪我じゃないよ!」」

 

「わ、わかってる。……ッ!!」

 

 

揃った言葉に返しながらも戦慄した。

レッドの中で急速に頭が回っていく。

 

先程、受けた怪我がある。胴にちょっとした打撲痕。それは別に変ではない。変なのは、それが2()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

でも、他の怪我がない。

デイジーに化けていた時についたはずの右腕についた怪我がない。

 

 

2人に受けた怪我。

 

命を共有するブレイド。

 

消えた傷。

 

いたみわけ。

 

 

「……違う、化けてるんじゃない。命の共有……? 存在の共有……? もう一つだとか、そっくりなんて生温い……()()()()()()()()()2()()……?」

 

 

ぽつりと呟いた言葉。

もはや、確信だった。

 

 

「ボクが……ううん、()()()が怪我したんじゃない。どこかでデイジーが怪我したから、あの時に同じ存在の()()()が怪我するのも当然」

 

 

直後、片方のヨッシー、否、リヒター達と一緒にいたヨッシーの姿が消える。

カキンッという金属音の後に見えたのは、ルフレに向かっていた青銅の剣を必死に阻んだヒカリだったのだ。

 

 

「アンタが……! 偽者だったのね……!」

 

「偽者……? 違う。()()は個にして全。全ての命に成る者」

 

 

その姿は、ルフレと同じ姿。

しかし、服は白地に赤の差し色。そして髪は焦茶。明らかに偽者ではない。

 

 

()()の名はダブル! ドッペルゲンガーの後継者! このボディの唯一と成る者!」

 

 

これから染まる白の瞳を、憎しみと怒りを込めて、同じ体のルフレを睨み続けていた。





○タイトル
ポケットモンスター ソード・シールドのエキスパンションパス第二弾、冠の雪原で追加された要素。マックスレイドバトルの連戦版だが、レンタルのポケモンを取っ替え引っ替えしながら進み、最新部の伝説のポケモンのゲットが狙える。
色違いの確率が格段に上がっているので、色違い伝説を狙っている人におすすめ。


○バリア
レベルの高いマックスレイドバトルだと使ってくる。攻撃しないNPCはハズレなんて言われている元凶。
とにかく攻撃を当てれば、バリアは壊れていくが、連続技で一気に壊す、なんてことはできない。


○ブロウの有効打とヨッシーの有効打(?)
なげつける(あくタイプ)
タマゴばくだん、または、たまなげ(ノーマル)

これに途中で気づいたので結局ヨッシー君攻撃してないです。


○いたみわけ
互いの体力を足して2で割る。
こらえるやタスキで耐えて、この技を使うことで、回復とダメージをいっぺんにできる。


○ダブル
詳細は次話にて。
簡潔に言えば、他者に成る能力。
デイジー、ヨッシーに成っていたのが目立つが、他にも、ナカツナ、キク、チハクと敵キャラの力も使用している。
ソードを突き落とした時は、

ヨッシー→
ナカツナに成って力を使用。元々存在があやふやになっていた他にもヨッシーがそこにいるかのように見せかける→
見えなくなっていたのでそのままソードを突き落とし、何食わぬ顔でヨッシーに戻る

といった行動を取っていた。忙しい。


○作者の気まぐれコメント
明けましておめでとうございます。
お正月は、ソニックフロンティアとDS版KHDaysを終わらせて、ポケモンSVで色証厳選していました。

しかし、ソニック以外と英単語言いませんね……
スマブラでは結構言っていたイメージなのですが、そうでもなかったようです。
Daysは敵が硬くて硬くて……とりあえず、スカイルーラーは2度とやんない。

色違いはブロスターもとい、先生の厳選していました。ランターンが未内定なので、ポケスナでお世話になった先生をチョイス。
十数体色違いゲットしてようやく手に入れたのは人慣れ証。チキショウ。
一応、ドドゲザンとデカヌチャン、キョジオーン、余裕があればタイレーツも色違い欲しいですが、もう証はいいです……
でも、DLCでランターン出てきたらメス色違いうんめい証ランターン粘ります。


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68話 おまえが存在する限り 俺は永久に影なんだッ!

 

─古い、記憶。

 

─自分が自分になる前、一番奥底にある過去の記憶。

 

 

 

急速に体が冷たくなっていくのは、固く冷たいコンクリートの所為ではない。

自分から命が溢れていく様は非常にリアルに感じる。当然だ。これが現実なのだから。

 

 

まだなんとか動く瞳。

へこみ横転した車から投げ出されたのは自分だけではない。男性と女性。その2人の存在が自分の両親であろうことは、記憶ではなく知識で知っていた。その顔こそ靄がかかって判別不可能ではあるのだが。

 

 

─おっと……家族全員くたばっていると思ったが、まだ生きてる人間がいたなんてな。

 

 

─きみ、は……

 

 

─さあな。()()の名前なんかこの力を受け継いだ時から忘れちまった。まあ、無意味なものを覚えておく必要はないからな。

 

 

─…………

 

 

─それよりきみのことだよ。いいのか? 放っておけば、きみは死ぬ。まあ、助かっても……きみの寿命は後一ヶ月ってとこか。

 

 

─…………

 

 

─神様ってとんだ無能だよな。助けてくれ、殺してくれ、死なせてくれ。それらの願いを叶えてもらった人間がいったい何人いるんだが。

 

 

─…………

 

 

─どうだ? 願いを言えよ。そうしたらその願いを核にしてこの力、継承できる。そうしたらきみの願いを叶える力になるぞ?

 

 

─…………

 

 

─ただし、我々の力はドッペルゲンガー。他者に成る代わりに、自己を失う。きみの今までの記憶、人格、趣味嗜好……当然名前や自分の体も。どうだ?

 

 

─…………ない。

 

 

─お?

 

 

─……しにたく、ない……!

 

 

─OK、『死にたくない』願い! これでいいな! これできみは生死も寿命も越える力を手に入れる!

 

 

─…………

 

 

─……あー、でも。この力で叶えられるのは、死を回避する願いだけ。他は知らねえけどな。

 

 

そうして、我々は誕生する。

他者になることで寿命を奪うドッペルゲンガー。

 

一ヶ月を可能な限り伸ばし、名前も姿も才能も力も成ることで借り……

我々のモノは、なんなのだ?

 

 

 

 

 

「あの周りの有象無象と同じ姿……! それがアンタの本当の姿ってわけ……!」

 

「そして……もうすぐ唯一真実の姿となる……!」

 

 

ファイターに化けた姿も、敵に化けた姿も、全ては幻。

 

いくつもの化けの皮を剥がしてようやく日の目を迎えた真の姿はなんて事のない。誰かではなく模倣のボディを奪い取った精神体だったのだ。

 

 

「我々は……! 我々だけのモノをようやく取り戻す! だからこそ、本物には消えてもらう!」

 

「だから僕が所望だったのか……!」

 

 

ヒカリと拮抗するダブルに対して、ギガファイアーを繰り出す。しかし、大きな怪我をしながらの反撃は余裕でかわされた。バックステップで、先程ミミッキュのいた場所まで引かれる。まるで次の相手は自分なのだと豪語するように。

 

 

「自分が欲しいドッペルゲンガーってコト? じゃあその体はワッツ!? キミのボディじゃないの!」

 

「違う。このボディの母体……オリジナルが存在する限り、我々はただのドッペルゲンガーでしかないのだ!」

 

 

そう言い放ったダブルは、その姿を緑色を纏ったゼルダの姿へ変える。

相対するファイター達は知らないのだが、闇の世界にてファイターと対峙するキクの姿だった。キクと成っているダブルは片手を上げ、強大な力を集める。

 

 

「これはさっき、ヒカリちゃんが……!」

 

 

散り散りになったあの時、ヒカリが使った力をキクの能力にて吸収。そして跳ね返すかのように攻撃したことによって、ファイター達を分断させたのだ。

 

 

「キャアアッ!」

「ぐうう……!」

 

 

吹き飛ばされたファイター達は、岩肌まで叩きつけられる。先程の戦いでかなりの深手を負っている者たちに追い討ちをかけるようだった。

 

 

「ん〜〜ッ! アイツ、絶対許さない……! 私の力をこんな形で……!」

 

 

剣と怒りを杖代わりに、なんとか立ちあがろうとするが、やはりダメージが大きい。

 

 

「ほら、私達に対して何ができるって言うの? 降参してそこの黒いのを差し出して。そうすればこれ以上手は出さない。なんならあんたたちの行きたい世界まで案内してあげるから」

 

 

キクの姿で、キクの口調で、ダブルの意思を語る。それに答えたのは放り投げられたリヒターのクロスだった。体を逸らして避ける。

 

 

「ここまで痛めつけておいて今更交渉かよ……? 交渉する前からテーブルを叩き壊しておいてよく言うぜ」

 

「それにボク、君嫌い!」

 

 

リヒターだけじゃない。ヨッシーや他のみんなも敵意を込めた目で睨みつける。交渉できないと気づいたダブルは、相手を本人に変えた。

 

 

「なら、あんたはどう? あんたが投降するだけで彼らの安全は保証される。悪い話ではないと思うけど?」

 

「……僕自身に犠牲を強いるほど、おまえが大物だとは到底思えないな」

 

「……言うじゃない」

 

 

自殺以外に息の根を止める手段がなかったギムレーと並ぶほどの存在ではない────!

 

 

「どうしておまえは先程から、ヒカリに成らない? おまえの今の姿は、おそらくおまえの仲間の能力を使って、間接的にヒカリの力を使っている」

 

「言われてみれば……そうですね……」

 

「おまえは無条件で誰かに成れる訳じゃない。おそらく、その条件をヒカリが満たしてないんだ」

 

「……腹が立つ」

 

 

元の姿に、ルフレと同じ見た目をしたボディの姿に戻ると、率直な意見を繰り出す。その洞察力は、十全に体が動かなくとも遺憾無く発揮されていた。

 

死にたくないという願いの元に行使されるドッペルゲンガーの能力。それは他者と成ることで、成った他者の寿命を奪う力。

先代は核となった願いが別のために寿命を奪うことがない。顔と名前が一致できていれば充分。

 

だが、ダブルは寿命を奪う関係上、成る他者に寿命が無ければ、生きていなければならない。

増えたもう一つの条件に、ヒカリとホムラは当てはまらないのだ。

彼女らは天の聖杯。トリニティプロセッサの一つなのだ。人やブレイドと同じように死ねるのならば、彼女らは楽園を目指すことはなかっただろう。

 

余談だが、彼らがスマッシュブラザーズの誰かに潜むマスターハンドを探すために、一部を調べた裏技というのが、ダブルの存在だ。

ダブルが成れるファイター全てに成り、間接的にキクがファイターを調べる。非実体的な力を吸収するキクには、隠せないのだ。

 

 

「おまえが我々の担当している世界に迷い込んだのは……幸運なだけではなかったのか……」

 

「……え? なんで、えっ? お前が! ルフレの世界で! ルフレを襲ったんじゃないのか!!」

 

「……? 何を言っている?」

 

 

ルフレがここに来たのは、イーリスで彼が襲われたから。

だが、襲ったのはダブルではない?

わざわざイーリスまで出向いてルフレと戦った。

だから、ルフレは、自分が狙われていると勘づいた。

 

だが、後者だけが正解だった?

答えだけがあっていて、そこに至る過程が間違っていた?

 

 

「……出まかせだ! そんなの!!」

 

「…………」

 

 

考えて考えて。

結果、レッドはそれが嘘だと切り捨てた。

そして、ダブルも、訂正する義理はなかった。

どちらが真実でも、答え合わせをするほど穏やかな関係ではなかったのだ。

 

 

「まあいい。それで? 交渉を蹴って嘘だなんだと言って? それで何が変わる? この状況は変わらんぞ?」

 

 

即座に治療する方法を持たない彼らには、いくら話を続けたところで状況は変わらない。

ルフレが、ホムラとヒカリが、ソードが、リヒターが。無視できないダメージを受けている。

天の聖杯の力すら間接的に使える敵を相手にするには流石に心許ない。

ルフレは思案しながら、慎重に言葉を選んだ。

 

 

「…………なぜ彼らがいる? 僕が目的だと言うなら僕だけを狙えばいい。それにさっきの姿…… おまえと同種なのは理解できた」

 

「…………で?」

 

「つまり僕を狙うのはおまえの個人的な欲求だ。おまえ()の目的は別にある。それが僕たちがここに迷い込んだ本当の理由……」

 

 

非常に表情の出にくい顔の変化を決して見逃さないようにしていた。先程の話よりは不機嫌ではない……そもそもそこまで大きな興味を持っていないようだ。

そうして、彼はコロコロと姿を変えていく。

 

 

「当然だ。我々達はそもそも個の集まり。利害の一致で邁進しているだけだ」

 

「あの私達はわかっていない……ボディに精神を入れれば、ボディの理に順序する……老衰すれば死ぬ体となる……」

 

「まあ、それを指摘してあげる必要はないのだけどね」

 

 

ナカツナ、チハク、キク。

一つのことを区切り、別々の姿で話すその姿はまさしく十面相。

成った者の癖か、ダブルそのものの癖か、はたまた演技ぶった大袈裟な動作か。両手足を大きく動かす様子に、ルフレの表情は歪んでいく。

 

 

「……まさか」

 

「……気づいたのね? 流石と言いたいところだけど、不憫にすら思えるわ」

 

 

その言葉は誰に届いたのだろうか。

届いていれば、間に合ったか。

 

 

「このー!!」

 

「……!」

 

「待って! ヨッシーっ!!」

 

 

ルフレの制止は届かない。

ルフレの情報収集という名の会話は、時間稼ぎだった。それはヨッシーにもわかった。

だが、時間稼ぎの目的は推理であって反撃ではなかった。自分に化けられたヨッシーはなんとかして汚名を返上したかったのだ。

だから選局を見誤った。ヨッシーの全力を込めた跳び蹴りはまっすぐダブルへ向かい……彼の姿を変える。

 

 

「「ガッ……!?」」

 

「えっ?」

 

 

重なった呻き声の理由を、即座に理解できなかった。戦場を俯瞰できれば、その異変に気づいただろう。

ヨッシーが跳び蹴りを喰らわせたのは赤い服の鳩尾。先程の緑服でも、元の白い服でもなかった。

 

 

「なんっ……で? 俺、が?」

 

「ワッツ……?」

 

「ブロウ……!?」

 

「あっ……!」

 

 

倒れたのはブロウの姿をしたダブル。

そして、後ろにはえづく本物のブロウ。

脂汗と共に冷や汗も流すルフレと、ドッペルゲンガーの仕組みに気づいたレッドはわかってしまった。

 

 

「デイジーに成っていた時、怪我したのはどこかでデイジーが怪我をしたから……でも今のダブルには怪我なんてない。ただ2つに増える訳じゃない……」

 

 

ヒカリとホムラが、ダメージを共有するのと同じ。()()だから、そうなる。

 

 

「誰かに成っていれば、怪我もダメージもその誰かと共有する……! そして本当のダブルにはダメージがない……!」

 

 

状態の共有。

記憶も力も能力も。そして、負傷も。

何一つとして、ダブルだけのモノにはならない。

 

 

「だったら……どうやって戦えばいいんだ……!」

 

 

聡明な頭は残酷な真実を日の元に暴き出す。

何も変わらない自分の顔が、見下すように笑うのをルフレは幻視した。





○タイトル
キングダムハーツ チェインオブメモリー、リク編で登場するリク・レプリカのセリフ。
ソラに「おまえだけの心」と言われ、リクにはないものとしてゼクシオンの力を奪ってもなお、自分の中で自己を確立しきれなかった。
だから3でさ、ナミネの……うん。彼だけのやりたいことだったんやなって。


○ギムレー
拙作では、俗にいう犠牲エンドを辿っています。あとついでにルフルキです。公式がやれって言うから……(言ってない)


○ダブル
ボディは7Pカラーのルフレ。
ドッペルゲンガーの力を継いだことにより、今まで生きてきた記憶、人格、趣味趣向や姿などの自己を形成するもの全てを失った。
感情、表情も希薄なはずだが、そこには確固たる感情が滲み出ている。

他者に成ることで短い寿命を奪って増やしている。その結果、他者に成る条件が先代と比べて増えている。顔と本名の一致と、寿命を持つ者でなければ、他者には成れない。
一人称は我々であり、二人称は相手の二人称に依存する。ちなみに、他者に成っている時、ダブル自身を指す時の一人称は私達、等になり、自分も含めた集団は我々達、私達達、等になる。ややこしいわ。


○寿命を持つ者
拙作では、成長という概念があるなら、寿命を持っているという認識となっています。
パックマン、ピットなどはOK。
ホムヒカ、ロックマン、ロボット、ゲムウォ、ダークサムス、パルテナはアウト。
他にこの子どうだ、という質問あれば、気軽にお願いします。


○ややこしいので補足
ただ単に同じ存在が2つ増えるのではなく、1つを2人で共有しているのです。
他者に成るということは、状態そのものの共有ですから、負傷も共有してしまうのです。
記憶などもダブルにはわかるので、ダブル側がボロを出しでもしなければ、真贋を見抜くことは不可能です。
ただ、状態の共有は一時的なので、記憶を持ち込んだりはできません。あと、ダブル側の記憶が他者側に持ってきたりもしません。裏技にも関わることなので、細かい設定がされてします。


○作者の気まぐれコメント
キングダムハーツ ミッシングリンクのベータテストッ!!!
落ちましたァ! チッキショウがああ!
もう神装英雄に関しては、もう何も言いません。そろそろくどいし。それでもやっぱりチキショウ。


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69話 「I」~望

 

「じゃあどうすればいいって言うのよ! ただでさえみんなボロボロなのに!!」

 

「不意打ち……待って、今考えてるから」

 

 

ダブルが受けたダメージは、誰かと共に受け、そして本体には届かない。誰かを肉壁にしているも同然。

下手に攻撃をしたら自分の首を絞めるだけだ。

ルフレがパッと思いついたのが不意打ちだ。誰かに成る間も無く攻撃してしまえば、と思ったのだが。

 

 

「えいっ!!」

 

「くそっ!! ゼニガメ、みずてっぽう……」

 

「また変わった……」

 

「……威力控えめ!!」

 

「ニャ!?」

 

 

トレーナー本人を狙ってきた攻撃に、レッドは指示を飛ばすが、その攻撃がヨッシーの舌と同じだと気づいて咄嗟に付け加える。

驚きつつも指示に応えるが、吹き飛ばすほどの威力もなく、ゼニガメごと蹴り飛ばされる。

 

 

「もうっ! ビショビショ!」

 

「えっ、ごめん……!」

 

 

くしゃみした隣のヨッシーに謝罪の言葉を漏らす。足元に水溜りもないのに全身が濡れている姿は異様の一言だった。

 

 

「……ダメだ。本体でいる時間がほとんどない。戦いの最中なら尚更だ、この程度は対策済みか……!」

 

「どうにかして、とっ捕まえられれば……! くっ、全然動かねえ……!」

 

 

起きあがろうとするが、十全に体が動かない。

ファイター達に攻撃を受けたダメージを、ミミッキュといたみわけしたのだ。

肝心な時に動かない自分に腹が立つ。

 

 

「……縛れるものと言ったら、ヴァンパイアキラーかヨッシーの舌とフシギソウのつるのムチぐらいか……? レッドなら何かしら持ってるかもしれないけど……」

 

「ダメです! あなたが一番重傷ですよ!」

 

「寝てばかりで終われない……!」

 

 

命をすり減らす勢いで無理やり体を起こしたルフレ。自分は怪我をしてここにやってきて、それでも何もできていない。

 

 

「(不意打ちにしろ、捕まえるにしろ、僕が囮で動ければ、戦いやすくなるはず……!)」

 

「……ルフレ」

 

「ブロウ……!」

 

「お前が動けるようになる方法、1つある……!」

 

 

前を見ながら下がってきたブロウが続けた言葉は衝撃的なものだった。

 

 

 

 

「ピィカァチュウウウ!!」

 

「……!」

 

「この程度か……! 荒筵牙天(あらむしろがてん)!」

 

「ぐっ……! カビゴン! 前に出てのしかかり!」

 

「カアア!」

 

 

ピカチュウの10まんボルト、そしてアシュリーの雷魔法を歯牙にも掛けないファルコそっくりの敵に、嫌な予感をしてカビゴンを前に出させる。

いくつもの電撃が降り注ぎ、判断が間違っていなかったことを知る。ゼニガメ、リザードン、ラプラス。でんきに弱いポケモンを引っ込める暇はなかった。

そのたわわな腹部で電撃のほとんどを受け止めてもらったことを申し訳なく思いながらも、攻撃技を指示する。

 

 

「……! おい! カビゴン、俺だ!」

 

「カァ……!」

 

「……ッ! 構うなッ、やれ!」

 

 

前方と背後からブロウの声が二重に聞こえる。

ほんの少し迷ったが、信じたい声は背後だった。かわそうとするブロウの腹部から下を押し潰す。

 

 

「くそっ、正気か!? 俺ごと俺達をやりやがって!」

 

 

カビゴンの頭部に肘打ちを喰らわせ、拘束から逃げ出す。地に伏したままのカビゴンに両拳を叩きつけた。

 

 

「……! ニィガッ!!」

 

「ぐっ」

 

 

そこへ指示もなくゼニガメがとっしんを仕掛ける。ブロウの身を案じれば攻撃はできないが、このままだとカビゴンを見殺しにする。

 

見ていられなかった。

例え偽者でも、ブロウと同じ姿でカビゴンを痛ぶる様子を。

 

 

「チッ、俺も全然全く長続きしねえか……! なら、こっちだ!」

 

「……めんどくさい」

 

「今度はルフレか……!」

 

 

先程応急処置でぐるぐると巻いた包帯がやけに目立っているように見える。さほど消耗していなかったブロウの時とは違い、下手に攻撃すれば、それがルフレにとってのトドメになるかもしれない。今まで以上に手を出せなくなる。

 

 

「じゃあ、これで」

 

 

アシュリーの魔法は、ルフレの姿をしたダブルに当たらない。範囲外まで避けられた。

 

 

「避けられたけど!?」

 

「足止めしときなさい」

 

「人使いの荒い……! ラプラス、れいとうビームだ! 足元を狙え!」

 

 

ヨッシーに成り、回避に専念するダブル。追うように放たれるれいとうビームから逃げていく。

 

 

「赤点、ね」

 

「わわっ」

 

 

逃げ道を塞ぐようにアシュリーの範囲魔法。

大乱闘でもファイターの味方となり敵となる魔法。どんな相手でも転ばせる魔法に、追っていたれいとうビームが波状で襲いかかる。

 

 

「あうっ」

 

「ぐっ……だったらせめて道連れだ!」

 

「しまった!」

 

 

ルフレの姿に戻ったダブルがエルサンダーを放つ。狙いは自分と同じく、転んで凍りついたヨッシーだった。

別の他者になろうと、転んだ状態はすぐに立ち直れない。次の攻撃は回避できないという判断だ。

 

 

「フシッ……!」

 

「フシギソウ!!」

 

 

電撃に耐性を持つフシギソウが、前方へ躍り出る。つるのムチで防ぎながら、できるだけダメージをなくそうとしていたところを、さらに前方に影が現れた。

 

 

「フグゥ……!」

 

 

ソードが倒れて転がり込む。

フシギソウと、ヨッシーを庇ってダメージを受けたのだと気づいたのは倒れる音が響いた後だった。

 

 

「ノープロブレム……! ファイト……!」

 

 

つるのムチで拘束できるフシギソウを無闇に怪我させる訳にはいかない。それに、友の()()を無駄にはできない。

 

心配で駆け寄るフシギソウの体を押す。ソードが手を伸ばして触れたバンダナが一瞬だけ光ったことに気づいた者はいなかった。

 

 

「身を挺して……! というかまだ動けたのか……」

 

「ピカッチュッ!」

 

「しつこい……!」

 

 

ミミッキュのシャドークローで深手を負ったソードがまだ動けたことに驚愕する。これが気力とか、火事場の馬鹿力というものなのだろうか。

冷や汗を流しつつも、目の前のレッドやアシュリー、でんこうせっかで攻撃を続けるピカチュウ を気にする方が優先なのだと意識がそちらへ集中した一瞬だった。

 

 

「ぐうぅ……!?」

 

「待ってたよ……! この時を……!」

 

 

同じ声が重なる。

ルフレのリザイアに、ルフレの姿をしたダブルが捕らえられた。

互いにダメージを受けながら回復していく。

 

 

「(どうして僕が動ける……!? そういえば、僕達も戦うのに不自由はなかった……)」

 

 

今まで気にする余裕もなかったが。ルフレの姿で動くことに問題もなかった。

好き勝手にされるのは嫌だ。ましてやこの男には。ルフレとしての記憶を辿り、原因を探っていく。

 

 

『……ルフレ』

 

『ブロウ……!』

 

『お前が動けるようになる方法、1つある……!』

 

 

前を見ながら下がってきたブロウが続けた言葉は衝撃的なものだった。

 

 

『リザイアで、俺の体力……持ってけ!』

 

『何を……!?』

 

『エエッ!? ブロウの方が保たないデショ!?』

 

『お前に比べりゃ軽症だバカ』

 

 

確かにソードやらルフレと比べたら、ブロウの怪我はキョダイマックスカビゴンと戦った時の怪我と、ヨッシーの跳び蹴りしかない。

 

 

『だからといって、どうして僕を……!』

 

『残念ながら俺はお前と比べりゃポンコツ頭だからな、正直どうすりゃいいのかわかんねえ』

 

 

どかっと胡座で座り込む。

自分の役目は終わったと言わんばかりに。

 

 

『お前がなんとかしろ、できんだろ、あれと友達やってんだから』

 

「フシギソウッ! つるのムチィッ!! ゼニガメェ! ハイドロポンプゥッ!!」

 

「シイィ!!」

 

「ガァア!!」

 

 

手繰り寄せた記憶の世界から唐突に戻される。

リザイアで縛られていたダブルにその拘束から逃れる術はない。

 

捨てた感情が燻り高ぶる。託された唾棄すべき本物に怒りが増していく。

だったら、だったら。お前の記憶のように、お前がやったように殺してやる。

右手に込めた雷が、一つの光線のように腹部へ突き刺さっていく。

 

 

「──できるの? 本当に?」

 

 

止まった。

止めた訳ではない。ダブルが、自分の手を止めたのだ。

 

できない。自分はルフレのままだから。

 

ルフレを殺すということは自分を殺すということ。

 

 

「僕自身を殺したければ、おまえが僕に成った状態で自殺でもなんでもすればいい。それが一番手っ取り早いはずだ」

 

 

─……しにたく、ない……!

 

 

「それだけじゃない。おまえの性質を考えれば、()()()()()()()()()じゃないか……」

 

 

その願いが強く残るダブルには。

自分達が死に近づくことができない。

 

 

「(本来に戻れば、また攻撃のために力を溜めなければならない。そして、その時間があれば、ゼニガメが……!)」

 

 

ハイドロポンプをそのまま撃ち放つ。

自分自身が死ににいく。自分がつるのムチで縛られていくのも他人事に感じるほど、死は彼にとって最上の恐怖だったのだ。

 

 

「勝った……のか?」

 

 

観客と化していたリヒター達もようやく肩の荷を下ろす。自分を削ったブロウ、友に感化されたソードのように、助力になりたかったが、どうしても動かなかった。

 

 

「やったー!! やっと捕まえたー!! ボクに変身してもうー!」

 

 

ホムラに氷を溶かしてもらい、飛び上がって喜ぶヨッシー。

鬱憤ばらしに脛でも蹴り飛ばしてやろうと思ったが、「ダメです」という静止で止めた。

 

 

「まだ、ルフレに変身したままなんですから……」

 

「さてと、洗いざらい吐いてもらうわ。あなたが無視した、あなた達の目的って?」

 

 

剣をダブルの首元に当てがう。

鋭い視線が同じように突き刺さる。

 

 

「……フィギュア化システムの停止……創造者の抹殺……そして、不確定要素の排除……でも、それを否定しきれるか?」

 

「は?」

 

「石橋を叩いて渡る、だ。自分が欲しかったものを永劫に自分のものにしたいだけ。絆も得られない()()()を、救ってくれるのは、寄り添える自分自身なのだから」

 

 

呆気に取られた瞬間で、ダブルの姿は変化した。キクの姿で、凄まじい力を暴発させる。

 

 

「しまっ……」

 

「……あっ……」

 

 

ルフレは壁に叩きつけられ、アシュリーは天井に、そして気絶。

 

 

「ううっ……」

 

「分離してあるのも考えもの、ね……」

 

 

ホムラとヒカリは構えていた剣で胴を斬って、被害拡大。

 

 

「うわあああぁぁぁぁ……」

 

「クッソっ……! 畜生……!」

 

 

ヨッシーは遠く遠く、様子も見れない場所まで吹き飛ばされ、リヒターは強がりもできなくなった。

 

 

「お前ら……!」

 

「アウチ……」

 

 

動けないブロウとソードが見守るしかできない中、一番ダブルに近い場所で倒れたレッドに、ボディの姿で剣を突きつける。

 

 

「調子に乗るな。絆がお前達の力となるならば、絆を断ち切ろう。あの男だけではない。ここの全員の息の根を……んっ?」

 

 

動けないレッドと、ダブルの間にゼニガメとフシギソウ、ピカチュウが立ち塞がる。

 

 

「ニィ……」

「ソゥ……」

「ピカッ……」

 

「さっきの剣士の真似か? 順番が変わるだけだぞ。それも一方的に指示を出して1人では何もできない男だ」

 

 

3体だけではない。

リザードンも、カビゴンも、ラプラスも。

正式に手持ちではないポケモンもまた、立ち塞がっていた。

 

 

「グウゥ……」

「カァ……」

「クゥ……」

 

「出会ってさほど時間も経たない男に。先の状況とも違う、役に立たない男に。我々には痛み分けを承知で攻撃しておいて」

 

「……それも、絆だ……」

 

「は?」

 

 

レッドがよろよろと立ち上がる。

ラプラスが頭を下げて、手を貸してくれている。

 

 

「俺を守ってくれたのも……そのいたみわけの覚悟も……」

 

 

ブロウが自分を削ってルフレに託したのも、

ルフレがそれに応えたのも、

ソードがブロウに背を押されて、ヨッシーとフシギソウを庇ったのも、

 

 

「絆がッ! お前が土足で踏み荒らした絆がッ! ここにあるからなんだよッ!!」

 

「ニィッ!!」

「ソォウッ!」

 

 

全ての絆に、それは応えた。

 

 

「えっ……」

 

 

ブロウがつけたバンダナ。

それはきずなのスカーフと呼ばれるものだった。

 

条理を超え、絆を育むポケモンが、一時的に進化の果てを手に入れるスカーフ。

 

ツボミは鮮やかな大輪の花を開かせ、

亀の子は巨大な大砲を2丁、肩に構える。

 

 

「……いくぞ」

 

 

ピカチュウ。

ラプラス。

カビゴン。

フシギバナ。

リザードン。

カメックス。

 

 

未来のチャンピオンは、その力を絆によって手に入れたのだ。





○タイトル
ファイアーエムブレム覚醒のDLC、絶望の未来編での敵将戦でのBGM。
正直言うと、絶望の未来編は本編のネタバレばかりなので非常に解説がしにくい。絶望の未来編唯一のオリジナル曲。
で、肝心の敵将だが、3体中2体が名前を隠されている。だが、覚醒をやり込んだ人なら簡単にわかる。


○きずなのスカーフ
ポケモン 超不思議のダンジョンで登場する、イベントアイテム。
パートナーがアバゴーラに拾われた際、巻かれていたという2つのスカーフ。友情の証として主人公に1つ渡され、ピンチの時にはじめてその力が発揮された。


○レッドパ
きずなのスカーフはこのため。
うちのフシギソウはメス設定だけど、よくあるこった、気にするな。



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70話 戦闘!チャンピオン

 

「(なんなんだこいつら……!)」

 

 

一時的な進化、そして一時的なてもちとしての加入。それを見ていたダブルが感じたのは焦りと苛立ちだった。

 

もう、届かないものを目の前にぶら下げられるような、ひたすらに目の前で自慢されるような。だって、自分だってこうなる前は普通に友情を持っていた可能性があるのだから。

持っていたかもしれない、絆。

 

 

「(……不愉快……!)」

 

 

自分のない自分には、そんなものを掲げられる余地もなかったと言うのに。

 

 

「いいわ、いくら戦力が向上したところで、私達は何も変わってない。そんな状況で、勝てるものならね……!」

 

 

再びキクの姿に成る。

特殊な攻撃を吸収するキクの力と本体に攻撃を通さないダブルの特殊性。

二重の壁を打ち壊す手段があるはずもない。

見下しながら、仁王立ちで立ち塞がった。

 

 

「ラプラス、あられ」

 

 

地下であるはずのこの戦場にあられが降り注ぎ、気温が下がっていく。

 

 

「嘘、天井があるのに雪が……?」

 

「アワワワワ、ホムラ、ボク近くに行ってもいい?」

 

「えっ、あっはい」

 

「こいつ、暖取ろうとしてんな……」

 

 

ヨッシーの性別が曖昧だからできること。性格的には男子よりな気もするが、タマゴを生んだりする。結局どちらなのかわからない。

 

 

「カメックス、ふぶき」

 

「くう……!」

 

 

静かに音を吸い取る雪は、命を奪う嵐となる。

自然現象はキクの力の及ばぬ領域。避けられぬほどの広範囲攻撃は、体を冷やし、確実に体温を奪っている。

 

 

「ちょっ……! レッド、あなたさらに寒くして……!」

 

「…………」

 

「む、無視ぃ!? いい度胸ね、本当に……」

 

「ピカチュウ、でんこうせっか」

 

「ヒカリちゃん、レッド、集中してて聞いていませんよ……」

 

 

そして、薄着の味方も巻き添え。しかし、レッドは目配せも謝罪の一言もないまま戦いに集中している。

いつものような熱さも幼さも鳴りを潜め、切れ長に見える目には完全にコントロールされている闘志のみ。頂点すら凌駕するほどの武人の表情がそこにはあった。

 

 

「すげー、表情。あのレッドと今度戦ってみてえな……」

 

「あなた、何をしているかと思ったら……」

 

「こいつも暖まらせてやれ」

 

「はい」

 

 

リヒターが気絶していたアシュリーをホムラに寄り掛からせる。

もしかしたら、流れ弾を喰らうかもと考えたために、体に鞭を打って回収していたのだ。

 

 

「……しっかし、レッドやピカチュウに頼りきりなのはちょっとな……」

 

「やれることやったろ。あんたは団体行動してた時にリーダーシップ? 発揮しててもらったしよ」

 

 

ルフレの手を借りながら、なんとか上体を起こしたブロウが言った。口調とは裏腹に少し皺の寄った眉間はリヒターと似たようなことを考えていた。

 

 

「ところで、ホムラ。オレもサムイからハグハグしていい?」

 

「えっ」

 

「100%有罪だ、コラァ!!」

 

 

元気なのは口だけである。

 

 

「ピカチュッ!!」

 

「しつこいわね……!」

 

 

電光のスピードでピカチュウがダブルを追い続ける。それだけではない。自身を再び捕らえようとつるのムチが襲ってくるのだ。レッドの指示も無しで。

 

ポケモントレーナーとは、トレーナーがてもちに指示するだけの存在ではない。

その真骨頂は、ポケモンの死角を埋められること。野生のポケモンよりも、トレーナーのポケモンの方が基本的に強いのは、そういった理由が一つあるのだ。

 

指示の一つも無しに行動を続けるのは、自身の死角を気にする必要がないからというのもある。

 

 

「くっ、体がかじかんで……!」

 

 

ふぶきによって奪われた体温は、身体の機能を低下させる。回避は無理だと判断したため、ピカチュウやつるのムチにはキクを介したマスターハンドの力でビームを撃っている。浮遊による行動も限界が見え、吐く息は白い。

 

二重の壁を維持し続けるのも限界だった。

 

 

「グウアウッ!!」

「グオオオオオ!」

 

「ウッソだろ!? リザードンにも変身できんのかよ!?」

 

 

確かにできないとは言っていない。

むしろヨッシーに成っていたのだから、リザードンのようなポケモンに成れない理由はないのだが。

本物の抗議も、今のダブルには届く。聞き入れる義理がないだけ。

 

 

「カアアァァ!」

「グウゥゥ!」

 

「カメックス! ハイドロポンプをしながらこうそくスピン!!」

 

 

回転しながらげきりゅうを発射し、それを正面から受け止めるダブル。ガッチリと掴みながら空中へ飛ぶ。ちきゅうなげだ。

レッドのリザードンが膝をつく。捕まっていてもなお、カメックスはハイドロポンプをやめていない。

 

 

「カビゴン、そっち向かってメガトンパンチ。ピカチュウ、かみなり」

 

「カァア!」

「グウゥ……」

 

 

カビゴンの拳が叩き込まれたのはリザードンの腹部だった。えづくと同時にダブルとカメックスが空中で離れる。

 

 

「(まさか……そんな……!?)」

 

 

誰かに成っていれば状態を共有する。

故にダブルに対して迂闊に攻撃はできない。

逆に利用すれば、近づかずにダブルを痛みつけることはできる。

しかし、それを本気で実行するとは思っていなかったのだ。

 

呆気に取られているところを、かみなりが落ちる。一瞬の間だけ意識が途切れ、落下していくダブル。ラプラスのれいとうビームで大きな氷の塊にされてしまった。

 

 

「やったか!?」

 

「グアオオオ!!」

 

「クウゥ!?」

 

 

氷を突き破り、炎の一撃がラプラスに突き刺さる。フレアドライブがラプラスを撃ち抜いたのだ。反動のダメージはリザードンに回る。

 

 

「しつっ……こいのよ!」

 

 

リザードンは潰した。ならば、空中まで追ってはこれない。キクに戻ったダブルは空中から確実に始末することに決めた。いまだ体温は戻っていないが、もうこれは戦闘にならないから問題はない。

 

 

「これでっ……どう……!?」

 

 

一方的な攻撃を繰り広げようとしたとき、同じ高さまで飛んできたフシギバナを見る。

前足を掴んで飛んでいるのはリザードン。

 

 

「まだ……動けたの!? 動けたとしてもその巨体を持って飛べる訳が……!」

 

 

その疑問はすぐに解消された。

フシギバナの後方を空中で支えていたのはカメックスだった。両肩の大砲を下に撃ち続け、ジェットパックのように飛んでいたのだ。

 

 

「そんな……ッ飛び方ッ……!」

 

 

接近できたことで、ムチを防ぐ余裕をなくす。捕らえたのは両手首。

 

 

「ラプラス、ハイドロポンプ! カビゴン、ふぶきィ!」

 

 

ハイドロポンプが型をつくり、ふぶきが水を閉じ込めていく。大地から、胸までを氷で閉じ込め、氷柱を作り上げた。

 

 

「やるじゃないっ! レッド!」

 

「アワワワワ、でもリザードン達落ちちゃうよ〜!!」

 

 

カメックスのジェットパックと、負傷の大きいリザードンは、長く飛んでいられない。

そのまま落下していく。

ヨッシーが目を覆った時、レッドは冷静にボールへ戻していた。

 

 

「はあ〜……冷や冷やしたぜ……」

 

「……ホントにね」

 

「おっ、アシュリー起きたのか、怪我は?」

 

「………………チッ」

 

「だからなんで舌打ち!?」

 

「まあまあ……」

 

 

そして、そのままボールを起動させ、3体を呼び出す。

 

 

「大丈夫か!? ごめん……ホントごめんな……俺、バカだからさぁ……いい方法、思いつかなくて……」

 

「グウゥゥ……」

 

 

リザードンを抱きしめ、首を撫でながら号泣するレッドに、先程のような面影はなかった。

そして、リザードンもまた、普段のような荒々しさもなく、目を閉じてされるがままになっていた。

 

 

「……なんで」

 

 

キクの姿のまま、ダブルはそれを見ていた。

 

 

「私達に……我々にはそれはないのに」

 

「友に全力で攻撃してもなお、絆は切れぬというのか」

 

「羨ましい……ありえない……」

 

「どうして……」

 

 

俯く、その胸中は誰も知らぬ。

 

 

「やったな、2匹とも……なんか戻ってんな?」

 

 

ルフレの肩を借りながら、元に戻ったゼニガメとフシギソウへ近づくブロウ。

 

 

「それにしても一体何が……ルカリオやミュウツーのメガシンカみたいなものなのかな?」

 

「水たまりが海になったレベルで別モンに変わってたけどな……」

 

「フッ……フシフシ……」

 

「あん? どうし……ああ、それ破けちったか」

 

 

ブロウが2匹に巻いたスカーフは、戦闘が原因か、大きく破れてしまった。これではもう今までのように巻いたりはできないだろう。

 

 

「全然気にしてねえから、お前も気にすんなって、な?」

 

「ゼニャ!」

 

「お前はもう少し気にしろ」

 

「あはは……」

 

 

申し訳なさそうにしていたフシギソウには優しく、首を振ってあらぬ方向へ飛ばしたゼニガメには厳しく。恩着せがましくはないが、ガサツに扱われては不満だ。

 

 

「ふう、落ち着いたところでアイツから全部吐かせて……なんだ?」

 

 

リヒターの耳は物々しい音を捉えた。

暴れる音。うるさい音。外から聞こえていた。

 

 

「きゅわあああ!」

「ごおおくううう!」

「るががががが!」

 

「ナアアア!? ポケモン達の雪崩ガアアアア!?」

 

「あっ!! ボディが混じってます! まさかボディにポケモンを襲わせて!?」

 

 

ボディとポケモン達を襲わせた、ということは。

 

 

「ダブル!」

 

「絆ならどれだけ傷ついても平気か……勉強になったぞ。我々は失礼する、巻き込まれたくはない」

 

 

転がっていた岩を退かせば、見えた空間の裂け目。そこには大乱闘の世界の景色があった。

 

 

「追いたければ追えばいい……そいつら相手に生き延びられたなら……!」

 

「待てや!」

 

「ダメだ、ブロウ! 1人じゃダメだ!」

 

「クッソ!」

 

 

短気でひとり追おうとするブロウをルフレは止めた。待ち伏せされていないとは限らない。ボディを抜いても仲間がいることは確定なのだから。

 

 

「プロミネンスリボルト! キリがないです! ポケモン達まで襲ってきて!」

 

「俺たちとボディの違いがわかってないんだ! こんな状況なのに!」

 

 

もう全員、まともに戦える余力は残っていない。簡単に崩れる。

 

 

「ノォ!?」

 

「! カビゴン、10まんばりき!」

 

 

馬乗りにされたソードを、レッドが救出する。

この中で1番ポケモンに詳しいと感じているからこそ、頭をフル回転させる。余力もまだあった。

 

 

「カアァァ」

 

「……! 先行けって!?」

 

「カア」

 

 

カビゴンに背中を押され、その意図を理解した。カビゴンはここで生きてきた。見捨てられないのかもしれない。

 

 

「クウ、クウ」

 

「お前もか、ラプラス……」

 

 

確かに2匹ともここのポケモンだ。

ボディには攻撃されても、ポケモンには積極的には攻撃されないかもしれない。だが、仲間を置いていくなんて。

 

 

「クウウウ!」

 

「うおお!?」

「うわああ!?」

 

「えええ!?」

 

 

ハイドロポンプでルフレとブロウからぶっ飛ばされる。行き先はあの空間の裂け目。

 

 

「プッシャー!?」

 

「…………」

 

「きゃあ!」

 

「もう!」

 

「アワワワワ!?」

 

「うおおお!?」

 

「ピッカア!?」

 

 

どんどん吹き飛ばしていき、最後はてもちをボールに戻したレッドだけになった。

 

 

「あ、いや、ちょっと待て」

 

「クウゥ!」

 

 

待てと言うレッドも問答無用で吹き飛ばす。

げきりゅうで苦しみながらも、レッドは叫ぶ。

 

 

「勝手に負けるなよォ!! もうお前らは俺の仲間なんだからなァ!!!」

 

「クウゥッ!!」

 

「カァアッ!!」

 

 

喧騒に紛れても、その声だけははっきりと聞いた。





○タイトル
ポケットモンスターのチャンピオン戦BGM。金銀のそれは、レッド戦の印象が強すぎるが、名の通りチャンピオン、ワタル戦でも流れる。

完全に同名の曲はダイパと剣盾でもあるので、検索する時は注意。


○湯たんぽホムラ
ニアがくっつけば友情、ヨッシーがくっつけば微笑ましく、ソードがくっつけばただの犯罪。


○…………
レッドは別に喋れないわけではない。
だが、まさかマスターズで喋るなんて……


○カメックス! そらをとぶ!
元ネタはポケスペのブルーとカメちゃん(カメックス)。
トラウマが原因でとりポケモンを持たないブルーが空を飛ぶ方法。ゴールドのマンたろうもそうだが、ポケスペは意外な方法でそらをとぶ。


○今章のまとめ
全員にほどほどに出番を与えましたが、やはり今章通しての主役はレッド。
擬似的なレッドパーティを作るのが書きたかった。故にポケモンのゲストはラプラスとカビゴン。

ラプラスは前作でスピリットとして登場してた子です。ソードとは初対面じゃない。

ダブルに化けられたデイジーですが、きちんと別の章で登場するのでご安心を。


さて、次章の面子は〜?
安定性と混沌のバランスが異常の面子です。
安定側の胃に穴が空いてそう。


○現在の情報まとめ(すこし整頓済み)
●目的
・この事件の黒幕はキーラ、ダーズの生み出したボディを自分の肉体として再利用した集団である。
・既にファイターとしてのバランス調整やフィギュア化のシステムは停止済み。黒幕側がフィギュア化による分離を防ぐために、現在はマスターハンドを探し、抹殺を目論んでいる。
・そのために各々の世界から大乱闘の世界に帰る時点で、なんらかの方法で別々の世界へたどり着かせている。

●マスターハンドが逃げたファイター
・マスターハンドはスマッシュブラザーズの誰かに宿る形で身を潜めている。
・キクはその能力によってマスターハンドが宿っているかどうか見ただけでわかる。
・一部ファイターはルネ曰く裏技を使用して調査済み。
・裏技とは、ダブルの他者に成る能力を利用して間接的に調べること。本名がわからない、本名と顔が一致しない、寿命が存在しないファイターは未調査。

●その他
・ルネには、集団とは別の個人的な目的がある模様。
・ダブルには、自分の宿るボディのオリジナルであるルフレを始末するという個人的な目的がある。


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Super Smash Brothers “Investigation”
71話 Reach Out To The Truth


 

 

ない存在を探す人はいない。

 

 

ちょっと語弊があるかなー。

正確には、探す人が存在していると思っているものを探している、だ。

 

 

ないと諦めているものをわざわざ探すなんて面倒じゃん?

 

 

 

例えずっと前に死んでいた存在だとしても、だからなんだって話で。

 

探す人にとっては、死んでいたとわかった瞬間にその存在が死ぬんだ。

 

 

ただ思い込みだけで、狂ってしまえるほどに探すことができるんだから記憶ってすごいよね。

…失礼だな、本心だよ。

 

 

探される方はどう感じるのだろう。

案外軽く考えてたり?

 

どっちでもいいか。どう思おうが会えなきゃ伝わらないし、会えたらすぐに消える感情だ。

 

最早、存在する意味もないね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぷー、ぷー、ぷー。

気の抜けた声……鳴き声?があちこちから聞こえる。刺々しさが微塵もない喧騒に揉まれていると無意識にも脱力していく。

円柱と円錐でできた家々は、崖という自然と共存している。頂点の毛のようなものとリボンがトレードマークだ。

 

 

「あーうー、もーなーんもやる気でなーい」

 

「そーですわねー」

 

 

ビーチチェアのような椅子に横たわるのは、Mr.ニンテンドーと呼ばれるはずの大スター、マリオとその恋人ピーチ。

どせいさんの村の中で気の抜けまくった2人は、もはやその威厳も感じられない。

 

大乱闘のオフに2人、口約束の招待をされていたどせいさんの村へ休暇も兼ねた旅行に来ていた。といっても観光地のようなものがあるわけでもなく。こうして高い技術力を無駄に使ってできたビーチチェアで寝転がって雲の数でも数えている程度しかやることがないのだが。

 

 

「たまにはこーゆーのもいーんじゃない? 冤罪はもーかんべーん」

 

「そーですわねー」

 

 

漢字もほぼ使えないこの有様。

別に軍人でもなんでもないんだから、四六時中気を張っている訳じゃない。数少ないオフの日を最大限に楽しむ心構えである。

だからこそ、どせいさんのものではないだろう重めの足音にも軽く流すはずだった。

 

 

「何をしているお前達」

 

「ん〜? なんだセフィロスか。……セフィロスぅ!?

 

 

はずだったのに。

武器からして物騒なこの男が軽く流せなかった。

 

さようなら、ぽけぽけっとした平穏。

こんにちは、殺伐としたなにか。

 

 

「ぽえ〜ん。いらっしゃいいらっしゃい」

 

「ながかみのひと、くるます。」

 

「貴方たち、ほんとマイペースなのね……」

 

 

そして、何も変わらない様子のどせいさん。

もしかしたらファイターは全員似たようなものだと思っているのではないだろうか。

 

 

「なんでこんなところに……クラウドはここにいないよ?」

 

「知っている。既に回ったところだ」

 

「う、うん、そうなんだね」

 

 

やはりいつもの通り、クラウドに固執しているようだ。それを隠すこともなければ恥ずかしがることもない様子に、マリオはクラウドに同情した。こんな物騒な人に執着されたくはない。

ほんわかムードをぶち壊すセフィロスがこの村を回っているところを想像すると、少し笑えてくる。

 

 

「邪魔をしたな」

 

「さようなら」

 

「また大乱闘でねー」

 

 

こちらには興味もなかったようで、さっさと帰っていく。こうして元通り平穏な休暇に戻るはずである。

 

 

「クラウド大変そうだなー」

 

「そうですね、穏やかじゃなさそうですもの」

 

「セフィロスがファイターになった理由って……」

 

「十中八九、クラウドがいるからですわね……」

 

「…………ドンマイ、クラウド」

 

 

同情するならタダである。

彼も彼なりに休暇を満喫しているとは思うが、せめて休暇中に見つからないことを祈ろう。

 

 

「あー、ダメだ〜、変なこと考えると休みが短くなる〜」

 

「そうですわね、何も考えずに……」

 

 

ドガーンッ!

 

 

「何も……」

 

 

ズガドガーンッ!!

 

 

「…………」

 

 

ドドドガガーンッ!!!

 

 

「……無理ですわね……

 

「少しはこのスーパースターを休ませてよっ!」

 

 

かくして休暇はぶち壊された。

表情変えずに、ぷーぷー言いながら逃げていくどせいさんを見て、異変の存在を認定せざるを得なかったのである。諸行無常。

 

 

「もしかしたら、さっきのセフィロスにクラウドが見つかったのかしら?」

 

「もしそれだけなら助走をつけてブッ飛ばそう。連帯責任で」

 

 

クラウドに非はないけど、ブッ飛ばす。

プライスレスの同情もここらで品切れである。

そうして村の外から掟破りの侵入を果たしたのは。

 

 

『…………』

 

「あ……クラウド。ま、まさか本当にセフィロスに……」

 

 

返答の代わりに返ってきたのは破晄撃。

 

 

「うわっ!? ク、クラウド!? 連帯責任とか言ったの怒ってる!?」

 

「いえ、待って!」

 

 

クラウドだけではない。カービィにガオガエンに、キャプテンファルコンに。

4人のファイター、否、ボディがどせいさんの村へ強襲を仕掛けてきたのだ。

 

 

「ボボボボボボボボディ!? なんで!? なんで!?」

 

「後にしましょう!! 来ますわ!」

 

 

先手を打ったのは身軽なキャプテンファルコンのボディだった。

続いてガオガエンのそれもまた続く。

 

 

「もう! 人気者は、これだからっ!」

 

 

しかし、流石はこの大乱闘の世界で一番長く戦ってきたファイターの1人だ。

殴りかかった前の敵をスーパーマントで反転させ、別の敵にぶつけさせる。思わぬ位置で味方にぶつかり体勢が崩れた敵の両足を掴み、ジャイアントスイング。前に出ていない敵へ投げつける。

少し不意を突かれた程度でこの実力者を負かせない。

 

 

「まったく。せっかくのどかな場所なのに」

 

 

投げ飛ばされた味方も気にせず、一回かわして距離を詰め始める。数で押し切ってしまおうということか。

ひとつビンタを飛ばし、バックステップをしながらどこからかカブを放り投げる。シールドで防がれるが、その行動こそ待っていた。

 

 

「えーい!」

 

「ぷー」

 

「また!?」

 

 

シールドに特効を持つどせいさんを投げつける。スタンをとったピーチに、マリオはキーラとの戦いの中でギガクッパ相手に似たようなことをしたのを思い出した。

今度は地中に埋まっていたわけではなく、ただ逃げ遅れただけのようだが。

 

 

「……嫌じゃないのかなあ」

 

 

ボソッと率直すぎる感想を述べながらも、回し蹴りで近くの敵をブッ飛ばす。追い討ちとしてファイアーボールで負荷をかけようとするが、何故か出てこない。

 

 

「えっ、アレ、なんで?」

 

 

幾ら繰り返しても、火の玉が飛ぶことはない。

ただ右手が突き出されるだけだった。

 

 

「……ショボボーン」

 

 

左頬がぶん殴られ、受け身をしながらも転がっていく。

 

 

「もしかして……」

 

 

ピーチも同じく新たなカブを引っこ抜こうとしたのだが、地面からは何も出てこなかった。

 

 

「ファイターの力が消えている……?」

 

「さっきカブ投げてなかった?」

 

「しずえさんに買っていただいたものでした。今の今まで忘れていましたわ」

 

「腐ってる……」

 

 

どうやらカブはカブでも放っておかれたカブだったようだ。しかし、一体どれほど放置していたのだろう。雪のような白色は踏み荒らされて泥が混じった色になっている。

 

 

「ファイターの力が使えないということはマスターハンドにまた何かあったということですわね?」

 

「じゃあ探しに行かないとね!」

 

 

飛びかかってきた敵をジャンプでかわし、踏み付ける。ジャンプ台代わりに使った後、ピーチと背中合わせになる。

 

 

「その前にここ、なんとかしなきゃだけど!」

 

 

ファイターの力がない状態でボディ4体と真っ向から戦わなければならない。その状況は心の中の緊張の糸をちぎれかけるほど張り詰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

糸は、2人の外にも張っていた。

 

 

「この状況だ、それでも我関せずを突き通すというのか」

 

「フッ、この世界も戦場の1つに過ぎない。ただそれだけだ」

 

 

正宗と、天帝の剣が、ぶつかり合う。

不穏は霧の如く広がっていった。

 




○章タイトル
今章はスマブラの世界が舞台となります。Investigationは調査の意味。
マップは亜空の使者で登場したものをイメージしていただけたら。
しかし、スマブラの世界でもファイターの力は使えない様子。
マスターハンドが行方不明、キクが勝手に停止させた結果なのですが。


○タイトル
ペルソナ4系統の戦闘曲。ゴールデンでは先制を取った際に流れる。
ペルソナを知らない人でも知っている人がいるほどの知名度は随一。
ペルソナ5の曲がオシャレならば、この曲は豪華かつ明るいといったところ。でも歌詞の和訳はペルソナ5でもやっていけそう。
曲名の意味は「真実を掴み取れ」。


○冤罪
スーパーマリオサンシャインにて、マリオは旅行先のドルピックタウンで冤罪にかけられることに。ピーチの意義すら聞いてもらえない有様。
結果から言えば、クッパJr.の仕業なのだが、島中の落書きを消すことを強制されることに。


○クラウド専用ストーカーセフィロス
ああ……やっぱりスマブラでも結局来ちゃったよ……
キンハー、エアガイツ、スマブラ……他所様の作品でも土足でやってくる。いい加減思い出の中でじっとしていてください。


○セフィロス
時系列としては、AC後。厳密にはディシディア系列も粗方終わっています。ファイターの力が使えないのでラスボスとしての能力も平気で振り回してきます。どうしよ、コイツ……


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72話 交わらぬ道

 

それは、長らく続いた大乱闘に空きができる、もうすぐ長めの休日が始まる数日前だった。

1人で寝泊まりするにはやや狭い家から外に出る。

寮の自室で過ごすことに慣れてしまった生活習慣はこの世界でも続く。呼吸のように染み付いていたはずの野宿が少し下手になっていた。

 

 

「ねえ、灰色の悪魔、ちょっといいかな?」

 

「?」

 

 

この大乱闘の世界でも、ガルグ=マク大修道院でもずっと呼ばれなかった、久しい自分の通り名。

傭兵時代はもっと呼ばれていただろうが、その時は自分がどう呼ばれているかなど興味もなかった。

 

そんな呼び名を、この世界で呼ぶ者がいるなんて。

 

 

「少し、いいかな? 今君が教師なのは知ってるけど、君ぐらいなんだ、頼めるの」

 

「傭兵の依頼か?」

 

「まあ、そんなところかな」

 

 

改めて、依頼主の姿を観察する。

自分よりも背の高い人物、恐らく男。ただ布を頭から被っているように、その顔は確認できない。どこかで聞いたような声な気がするのだが、どうしても繋がらなかった。

 

 

「ま、せっかくだし座って話そうか」

 

「…………」

 

 

そういうと勝手に上がり込み、椅子に豪快に座る。どうした、座れよと言わんばかりに対面の椅子へ手招きした。

 

 

『こやつ〜っ! 客人はどっちじゃ! 偉そうに!』

 

「客人だから偉そうなの」

 

「……!」

 

『……なっ!? なぜお主わしの声を!?』

 

「理由はいいよ理由は。茶番を長引かせると、1話1話の中身がペラペラになるし」

 

「ぺらぺら……? まあいい」

 

 

自分にしか聞こえないはずの、ソティスの声を聞き取った。ベレトは警戒心を上げていく。

言う通りに椅子に座るが、浅く、いつでも立ち上がって反撃できるように。

布で判別しにくい一挙一動を決して見逃さないように。

 

 

「大乱闘の……まあいわゆる夏休み? それが終わってみんなが帰ってくる時、異変が起こるのはそのタイミングだ」

 

「なにが起こる? 自分になにを求めている?」

 

「その時になればわかる。何が起きるかも、君が何をすべきかも」

 

『はあああ? そんな依頼があるか!!』

 

「もちろん、ただとは言わない。これを持っていくといいよ、前払いだ」

 

 

親指で壁に立てかけた何かを指差す。布に覆われたそれはそれだけではわからない。立ち上がり、背後の男を警戒をしながら、包まれた布を剥ぎ取っていく。

そして、自分でもわかるくらい驚愕した。包まれたものは、明らかに自分の持つそれと同じものだったから。

 

 

「お前は一体……!?」

 

 

ベレトが振り向いた時には既に、謎の男は消えていた。

 

 

 

 

 

蛇腹状になった天帝の剣が、ボディ達を薙ぎ払う。決定打が通りにくいボディ相手には、ふき飛ばすか、搦み手で動けなくさせる方が一番効果的だった。

 

しかし、斬りつけることが主な目的の天帝の剣では敵を吹き飛ばすような力はでない。

ただそれは簡単に解決できる問題だった。

 

 

「アイ、ムール!!」

 

 

絶大な威力を持った魔斧の力は、振り払うだけで敵をまとめて薙ぎ払った。姿の見えない場所まで吹き飛び、一部が木に叩きつけられ消滅する。

 

 

「……ふぅ」

 

『この威力、天帝の剣に匹敵する……あやつはこんなものをどうやって……』

 

 

ベレトのうちに存在する、はじまりのものソティス。謎の男が持ってきた報酬は、どう見ても天帝の剣と同種の武器。英雄の遺産なのだろうか。

 

 

「ねえ、ちょっとー!」

 

「?」

 

「ピチュ!」

 

「ピチュ」

 

 

幼い少女の声が聞こえて、振り返る。

そこにはピンクの服を着た金髪の少女がいた。そしてその両肩には2匹のピチューがいた。

ファイターのピチューとも違う、片方の耳の先がギザギザになっている個体と、青い木製の何かを肩から背中に背負った個体だ。

 

 

「ファイターの人だよね! リヒターお兄ちゃんと同じ!」

 

「ああ、そうだ……リヒターの知り合いか?」

 

「マリア・ラーネッド! リヒターお兄ちゃんの応援に来たはずなのにお兄ちゃん見つからないし……見てない?」

 

「見ていないな」

 

 

10を超えて数年程度の少女とリヒターがどう知り合ったかは気になるが、今聞くことでもないだろう。残念ながら見ていないので素直に答えた。

 

 

「すまない、共に探せればいいんだが……それどころではないかもしれない」

 

「だいじょうぶ! マリアだけでも探せる……それどころじゃない?」

 

「この世界に何かが起きている。1人になるのは危険だ。少し時間を……」

 

 

背筋が凍りつく。

傭兵時代にだって、こんな気迫は感じたことがない。その気配も覚えがあるというのに、それでもどうしてここまでの気迫を感じるのか、何が違うのか。

 

 

「……セフィロス……」

 

「おまえか」

 

「よく、人を探す人に出会う日だ。クラウドも、自分は見ていない」

 

「そうか」

 

「待て」

 

 

踵を返すセフィロスをベレトは呼び止める。

 

 

「大乱闘でもないのに、その敵意はなんだ。手暇なら少し手を貸して欲しい」

 

「暇など一瞬でもない。今この時、この世界で私を退屈させないのはクラウドだけ……」

 

「……本当にわからない奴だな。ファイターの制限が外れた今である必要はないだろう」

 

 

ぐっと、天帝の剣を握り締める。

 

 

「マリア、そのピチュー達を守って下がれ」

 

「えっ、うん」

 

 

いつもならば、自分も戦えると前に出るところだったが、ベレトの明らかな強者の顔がそれを無言で咎めていた。

 

 

「今、明らかなファイターの敵が蔓延している。この状況だ、それでも我関せずを突き通すというのか」

 

「フッ、この世界も戦場の1つに過ぎない。ただそれだけだ」

 

 

カキーン!

 

金属音が鳴り響き、2つの剣がぶつかり合う。

 

 

「(……っ、剣の質では負けていない……使い手の問題か!)」

 

 

そして、すぐにベレトは不利を悟った。

自分ではセフィロスの域に届いていない。だが、それでも引くわけにはいかない。

誰かの目がなければ、どう動くかも予想できないセフィロスを放っておけないからだ。

 

 

力での鍔迫り合いを諦め、引いて力を逃し、左の拳を肩へ振る。正宗の柄で防がれた。

 

バックステップで後ろへ下がりながら、フェイルノートを撃ち放つ。接近され、弾かれ、先が心の臓へ突き刺さる。

 

 

「……!」

 

 

天刻の拍動発動──!

 

ソティスに譲り受けた時を巻き戻す力を使い、フェイルノートではなく、アラドヴァルを取り出す。正宗の剣先を逸らし、前進し上半身を左へ逸らして避けられる。

 

そのまま、全身を使ったタックルで、互いに地面に転がる。2人とも、回転のままに受け身をしながらすぐに立ち上がった。傭兵仕込みのなんでもありな戦い。

 

 

「ほう……?」

 

 

そこで初めて興味を持ったのか、正宗以外を使用する。シャドウフレアの小さな弾を天帝の剣をしならせて打ち払う。

さらに、フレアの巨大な火球を3つともなって接近してきたセフィロスに対し、留まっての迎撃は危険と判断したベレトは、剣を構えながら突き刺すように腕を伸ばした。

 

 

すれ違い様に、互いの体に斬り傷を受ける。

すぐにストッパーをかけたベレトは、アイムールの振りでフレアの火球を1つ打ち払う。

 

 

「ぐうぅ……!」

 

 

残り2つは甘んじて受けるしかなかった。

大振りのアイムールでは3発も対応できないとは感じていたが、他の武器で相殺しきる自信がなかったのだ。

天刻の拍動も、回数には制限がある。軽々しく使えないのだ。

 

天帝の剣を構え直し、セフィロスの出方を伺う。互いに様子見を続く。ベレトはセフィロスの右側に回りながら、一挙一動を観察する。セフィロスもそれに合わせて左へ回りながら、しばらく静寂が続いた。

 

 

「……!」

 

 

突如、セフィロスの背に何かの衝撃が加わる。

フレアの爆発の裏で、リザイアの光を生み出していたのだ。その刹那、接近して利き手ではない右側へ接近する。

 

横向きに薙いだ正宗を跳んでかわす。

圧倒的な剣のリーチにより、横には強いが上を取られるのは弱点だろう。

 

振り下ろした剣は、六角形を組み合わせた光の障壁に阻まれる。カウンターが来る。

だが、ベレトは引くことなくアラドヴァルを突き刺した。障壁が光を発しながら粉々に砕け散る。

 

 

「くう……!」

「ぐっ……!!」

 

「ベレトお兄ちゃん!!」

「「ピチュッチュ!!」」

 

 

互いに痛み分けをくらいながら、ベレトだけが膝をつく。火球の魔法のダメージが特に重い。

 

 

「なかなかだな、乱闘で相見えた時よりよほど強敵だ。その見慣れぬ武器のおかげか」

 

「……っ」

 

 

見慣れぬ武器、もとい3つの英雄の遺産、大乱闘では使えない信仰の魔法という変化球、そして気づいていないだろうが、時を巻き戻す天刻の拍動。

これがセフィロスと渡り合えている理由である。無相応だろうが、持てるもの全てを使うのが傭兵流だ。命が危険でも引くつもりはない。これは教師流。

 

 

ただ、その意識は、誰にも予想しない横槍で邪魔が入ることになる。

 

 

「! おまえは……!!」

 

 

森の木々が幹から粉砕され、その犯人が登場する。ベレトは自覚できるほど繊細に、顔から冷や汗が落ちるのを感じた。

 

 

「愉快なことをしているな、混ぜろ」

 

「カズヤ……」

 

 

武器を持つ両方の手が少しだけ、震えた。





○タイトル
ファイアーエムブレム風花雪月の楽曲。
二部にて、士官学校時代の生徒との戦闘時に流れる曲。
同じ士官学校で学びながらも、横に並んで戦うことのなかった生徒たちとの分たれた運命を表す。そしてほとんどの場合、この曲から生徒たちの最期の言葉を聞くことに……


○ソティス
原作では、ベレト以外には声が聞こえない。
聞こえないまま、物語が進んでいくので物語の最後までを見てもその存在を知る人はごく僅か。なんなら無双でも、ベレトと似た存在と言えるシェズにも、ベレトの口を介さなば聞こえなかった。


○天刻の拍動
一度の章に数回のみ使える、時を巻き戻す力。
システム的に言えば、やり直すことで当たらない攻撃をやめたり、倒されたことをなかったことにできる。
近年のFEではこういったやり直しをさせてくれる。いい時代になったものだな!


○英雄の遺産
アイムール、アラドヴァル、フェイルノート。
それぞれエーデルガルト、ディミトリ、クロードの三級長が第二部に入ってから使用する武器。

アイムール。再行動ができる戦技狂嵐がチートオブチート。紋章が一致してないのでベレトは使用不可。助かった……
厳密には英雄の遺産ではなく、無双でほとんど登場しないことから察するに、闇に蠢くものが英雄の遺産と同じ方法で作った武器だと考えられる。

アラドヴァル。使用者のイメージに引っ張られがちだが、他の槍神器2本と比べるとバランス型である。
専用戦技無残は全ての敵に特効がつく。でもエーデルガルトをはじめとしてほとんどのボスは特効無効、一応ストーリーでは一番目立っている。

フェイルノート。級長の専用装備の中では唯一他ルートでも使える。(蒼月だけダケド)
戦技落星は使用後、次の攻撃を必ず回避するもの。弱くはないが、飛行種のクロードとはちょっと噛み合っていないのが残念。無双では広範囲の起き技なので大型魔獣に強い。


○マリア・ラーネッド
マリア、兵器だもん!でお馴染み、悪魔城ドラキュラX血の輪廻で初登場のキャラクター。
リヒターが血の輪廻後なので彼女もまた同じ時系列。12歳の頃です。
傍系だが、ベルモンドの血を引いており救出後に操作可能。
そして、操作キャラクターになったとたん、兵器になる。リヒターより当たり判定小さいわ、機動力高いわ、攻撃は強いわまさに兵器。
ベルモンド家最強ヴァンパイアハンターのリヒターより強い傍系の女の子……


○ギザみみピチュー
左耳の先がギザギザしているピチュー。アルセウス超克の時空へで登場。好物かウブの実のやんちゃな性格。あとメス。
HGSSで特典の色違いピチューがいると手に入る特別なピチュー。
なにが特別かというと、他のソフトに連れて行くことができない。ORASのおきがえピカチュウも同じく、彼女らは永遠に閉じ込められることに……正規に手に入らないえいえんのはなフラエッテだって八世代まではデータあったのに……それゆえにスマブラでの登場は本当に久しぶりである。


○ウクレレピチュー
ポケモンレンジャー光の軌跡の主人公のパートナーポケモン。ウクレレを奏でて音符や電撃を飛ばしてキャプチャのアシストを行う。
仲間が捕まってしまい、単独で突っ走るところからかなり短気。
で、なんでスマブラのカラチェンでウクレレピチューなかったんですか?


○リザイア
実はシリーズによって、闇系だったり光系だったりする。
封印覚醒ifでは闇系統、紋章蒼炎暁風花では光系統。


○ベレト
天帝の剣と合わせて、報酬として手に入れたアイムール、アラドヴァル、フェイルノートを使用可能。つまり今までの大乱闘は剣と格闘術で戦ってたことに……
あとは才能開花の信仰魔法。(回復や光魔法)
と、ここまできて気づきました。理学以外の攻撃技能コンプしてんやん!!
ということなので、信仰魔法でもライブとリザイアしか使えないこととします。


○セフィロス
FF7のラスボスというよりは、ディシディアのように操作キャラクターの1人程度の強さを想像していただければと。ディシディアみたいな戦闘させてみたい。
コイツ、ディシディアで明確な目的がないのでマジで行動指針がクラウドにちょっかいみたいなイメージしかない……恐る恐る動かしていますが、どこかで解釈違いを起こすかもしれません。


○カズヤ
本名は三島一八ですが、ほとんどのファイターはカズヤとカタカナ呼び。
マジで俺様系で、リュウを雑魚扱いしているのでセフィロスよりよっぽど行動させやすいです。


○作者の気まぐれコメント
ピクミン4……スプラDLC……みんな大好き塊魂……ゼルダ……ファンタジーライフ……そしてゼノブレイド 3どうなってんのおおおおおおおお!?
アルヴィースが……! アルヴィースがぁ……!
なんかもう涙滲んできた。

スプラフェス集中できるかな……明治の板チョコ食べながら戦います。


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73話 漆黒たる前奏曲

 

片翼の天使、灰色の悪魔との戦いに、乱入するはデビル因子。同じスマッシュブラザーズであるはずなのに、まるで敵が増えたかのような登場に、ほとんど動かさない表情がわかりやすく歪んだ。

 

 

「この状況を愉快と呼ぶとは、随分といい趣味をしている」

 

「貴様が甘ったれなだけだ、顔色変えず斬り刻む貴様には合わん価値観だな!」

 

「外見だけで人は判断できない……浅い思い込みに過ぎない!」

 

 

小手調べとしてまっすぐに飛んできた拳を天帝の剣で防ぐ。剣を通じて響いた威力が両手を痺れさせた。咄嗟に出した足は空を切る。

後を続くかの如く、顔へ飛んできた剣先に、ベレトも同じように応えた。互いに首を傾け避ける。

 

 

「おまえといい、カズヤといい……自分本位の人間ばかりが寄ってくる……」

 

「つまらなくはないだろう?」

 

 

デビルブラスターを閃光で防いだ隙をつき、剣を引いて距離を取る。フェイルノートで二矢を撃つも、軽く落とされた。

 

 

「(勝利するのは難しい……か……)」

 

 

片方だけならば何ともなったかもしれないが、三つ巴の態勢とはいえ2人を同時に相手取ることの無謀さを感じた。

傭兵の依頼とは違う、命をかける義理はない。

隠れているマリア達と離脱するのが一番のベストだ。しかしそれを許してくれるだろうか。

 

 

「……っ!」

 

 

2人の足元の大地を天帝の剣で抉り、視界を潰す。セフィロスが2人に撃ったフレアの魔法を横跳びで避け、リザイアをカズヤのいた方角へ撃った。同時の攻撃に対応できずダメージを受ける。

大乱闘では使わない信仰魔法は初見殺しの役割を発揮したのだ。微量の傷が癒えていく。

 

やはり2人同時に相手取るのはやっていられない。自分は戦闘を求めて戦っている訳ではないのだから、できる限り1人だけを集中した方がいい。

 

 

「はあああっ!!」

 

 

接近して振り上げられたアイムールと踵落としがぶつかり合う。デビル化して相対するカズヤ。英雄の遺産と同格の個人など完全に人間の範疇を超えている。

 

 

「はっはは!! 面白いぞ? だがその程度だ!!」

 

 

しっかりと腰を据えていたはずの自分が弾かれ、双眼にカズヤの指先が迫っていた。

 

 

──パキン、

 

 

硝子の割れる音がして、時が巻き戻る。

走りながらただひたすらに矢を射る。一本ではなく山ほどの矢だ。そのほとんどを落としたカズヤは、背後からの八刀一閃が叩き込まれようとする、が、正宗の横っ面を叩きつけられたことで剣先が地面に埋まる。

 

今度はベレトの方に向けた背中にアラドヴァルが突き刺さる。とはいえ、それほど深くは刺さらず、筋肉で受け止められた。引き抜くことを諦め、裏拳を回避する。

 

 

「ふっ」

 

 

距離ができた三者の関係、カズヤは自ら背に刺さったアラドヴァルを引き抜く。そして、少しの間眺めたのち、放り捨てた。

武器と使い手に興味は持てても、武器個々に興味はないらしい。折ることもせず、投げた瞬間視界にも入れなくなった。

 

 

「(ここまでやると嫌になってくる……!)」

 

 

勝てるビジョンが見当たらない。

自分が負ける姿も想像できないが、勝っている姿も見当がつかない。

なんせ、天帝の剣をしならせて振るっても大半を防がれる。少しは当たっているのだが、到底決定打になるものではない。

 

肩で息をしながらも、腰だけは上げない。長く生き残るための戦法。

セフィロスの長い刀がカズヤの両手に防がれる。純粋な力がぶつかり合い、逃がされた威力が足を通して地面が悲鳴を上げている。もうとっくに逃げ飛ぶ鳥もいなかった。

 

 

「(今なら行けるか……?)」

 

 

お互いしか眼中にない今ならば、逃げ切れるのではないだろうか。

そもそも手を出せる気がしない。ばっと服を翻し、マリアの潜んでいる場所へ向かおうとする。

 

 

「どこに行くというのだ」

 

「しまっ……!」

 

「あっ……」

 

 

隠れていた少女を、狙い撃たれる。

 

──パキン、

 

 

「……ッ!」

 

 

アラドヴァルを拾い、2人まとめて薙ぎ払う。

無惨にも自然すら容易く破壊するフォドラ十傑の使用した武器。

先を掠め、微量な切り傷。大きな一撃が入らない。

 

 

「ふっ」

 

 

 

セフィロスの背に片方だけの翼が生える。

片翼の天使、その二つ名の由来であるその姿。

カズヤもまた、背に悪魔の翼を生やし空中戦に付き合う構えだ。

 

 

「ぐうぅ……」

 

 

ビームに、剣撃、片翼を掴み、叩き落とし、躊躇なく森も焼き払う。遠距離攻撃の余波をベレトは一番に受けていた。

天馬には乗れず、そもそも飛竜もまたここにはいない。攻撃手段はあるが、巧みな空中戦は難しいのだ。

 

そして──天刻の拍動を既に使い切ってしまったことが何より痛かった。しばらくは使えまい。もう無茶をすれば確実に死ぬ。

 

 

「雑魚めが、動きが鈍いぞ」

 

「ぐうっ……!」

 

 

瞬間移動かと見間違える動きと、鳩尾に深く叩き込まれた拳。胃の中を吐き出す衝撃で、背を地につけた。

 

 

「この程度か」

 

 

空中から振り下ろされし獄門を体を転がして必死に避け切る。何とか立ち上がったベレトの目の横に出血が飛ぶ。ピチュー達の鳴き声がやたら遠くに感じた。

 

三つ巴の効率的な勝ち方は、まず1つを共闘して倒すこと。その1つにされたのだ。

それでも、勝ち筋は残っている。倒せなくても、マリア達と離脱できれば勝ちなのだ。

 

 

「はあああああッ!!」

 

「ぐうう!?」

「ぬう……!!」

 

 

今までで一番冴え渡った、天帝の剣の操作。

ぐるりと動かした剣はセフィロスとカズヤを背中合わせに縛りつけていた。

 

 

「はあ……はあ……」

 

 

膝から下がガタガタになりながらも捕えることができた。このままどこかに縛りつけるか何かをすれば、

 

 

「うっ……!!」

 

「なかなかの腕前だった。前座にはなったぞ」

 

 

容易く拘束を外すと、超スピードで接近。ベレトの右太腿を刺し貫いていた。足を潰されてしまった。

引き抜かれても痛みは増すばかり。今度は心臓に突き刺されようとしていた時だった。

 

 

「やめて!!」

 

 

鳩が飛び出し、セフィロスを襲う。

目立ったダメージにはならなかったが、不愉快にはさせたらしい。

 

 

「……逃げろ……!」

 

「いやっ! マリアだって平気だもん! 立派なヴァンパイアハンターなんだから!!」

 

 

最初から、こう言うべきだった。

ボディが蔓延っているとはいえ、この2人よりはなんとでもなっただろうに。

 

 

「半端な気持ちで入ってくるな、虫ケラが」

 

「……!」

 

 

ぎゅっと強く目を瞑る。ピチュー達の電撃が足止めにもならない。カズヤの足がマリアの顔に叩き込まれようとしていた。

 

ピュンピュピュン!!

 

 

「なんだ……!?」

 

 

雨のように襲いかかる小さな弾丸の嵐。思わず全員が茂みや木々に隠れる。黒い石のような小さな物体だった。

 

 

「奴は……」

 

「だから……言ったはずだ! 自分達の偶像がいる危険な状況だと!」

 

 

そんな状況で仲間内で戦っている場合ではなかったのだ。ボディのことは知らなくとも、アレが敵だと言うことはベレトでもわかったのだ。

 

 

「邪魔だァ!!」

 

「きゃっ……!」

 

 

迫り来るボディ達に左ストレートを撃ち込む。しかし、最悪なことにスネークのボディが使っていた爆弾とマリア達が巻き込まれる位置だった。

 

 

「危ない!!」

 

 

足に鞭打ち、マリア達を抱え込む。背中に全ての爆発を受け止める形で遠く離れた場所へぶっ飛ばされた。

 

 

「ピチュー!!」

 

「ピッチュー!」

 

「あっ……大丈夫!? ベレトお兄ちゃん!」

 

「うっ……ぐっ……」

 

『おい! しっかりせよ! せっかく振り切れたのじゃ!』

 

 

窮地は脱しても、傷が癒える訳ではない。

火事場の馬鹿力も底をついていた。

 

 

「って、ああー!! ベレトが怪我まみれ!!」

 

「まあ! こんなところで……!」

 

 

発見したのはマリオとピーチだった。

爆発で吹き飛ばされた結果、どせいさんのむらにいる、2人の戦場まで飛ばされていたらしい。

 

 

「また、いけない人達の……許さないだからっ!!」

 

「わー!?」

 

 

終わらない戦いに堪忍袋の尾が切れたマリアは化身を生み出して、ガーディアンナックルを繰り出した。その威力や、歴戦の猛者も驚く。ミンチのようにボディは金色の液体状に溶けていった。

 

 

「この子……1人でいいんじゃないかな?」

 

「いえ、まさかそんなことは……」

 

 

4体のボディを一撃で沈めた。

きっと、自分達が負わせたダメージが大きかったんだ、そうに違いない。

 

マリオはちょっと自尊心が折れそうだった。

 

 

 

 

 

「むー……なんか味方割れしてたからチャンスだと思ったから、ボディ集めて数勝ちしようと思ったらボコボコにされてたよー」

 

 

むすーとした顔はわかりやすく拗ねていた。

 

 

「これなら勝てるって思ったのになー……」

 

 

あまり足りてないことを自覚している頭を使ってまた考える。

 

特に自分を狙うようなことを仄めかしたあの2人をどうにかする方法を。





○タイトル
悪魔城ドラキュラシリーズ、ゲームボーイ作品一作目。初の単独女性主人公。
キャッチコピーは「ドラキュラの歴史、今ここに始まる。」
なのだが、シリーズファンからクソゲーの烙印を押されたことが原因か、悪魔城シリーズの歴史から外されている始末。


○天刻の拍動 使用制限
初期から3回。ゲームでは増やすことができるが、今作ではこの制限。
ぶっちゃけここで使い切っておきたかった。


○作者の気まぐれコメント
ヒッセンヒューキタゼー!!
スロッシャー愛好家としてバケデコは哀しみを背負った存在だった分、ヒッセンヒューには期待してるぜ!

でもなんか忘れてるような……ホラガイガチャ忘れたああああ!!


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74話 つよがり魂

 

「えーと、何か起きるかもってわかってたからパトロール……警戒してたのはいいとして、何があったらこんなボロボロに……」

 

「セフィロスにカズヤと一戦を交えていた……これは手本にならないな」

 

「いや、その状況でここまで戦えるなら普通に凄いって」

 

 

どせいさんがあれこれと用意してくれたおかげで、治療についてはバッチリだ。しかし、魔法のように条理を超えて癒すほどの力はない。

ベレトもライブによってマリオとピーチの2人を癒す。

 

 

「その魔法、自分には使えないのー?」

 

「そうであれば苦労はしないのだが」

 

 

ライブという治療魔法の致命的な弱点は、他者相手にしか使えない点である。

ベレトはマリオやピーチを癒せても、一番怪我の酷い自分だけは癒せない。別の方法を使わねばならない。

 

 

「…………」

 

「……? どうかしたのか」

 

「ううん、ちょっと……その武器怖い……気がするだけ」

 

「ピチュー」

 

 

マリアがベレトの使っていた四つの武器を見ながら言いにくそうに言う。元から持っていた天帝の剣もそうだが、少しゴツゴツしていて金属が持つような静謐さが感じられない。

先程はそんなこと感じる暇もなかったが、改めて見ると得体の知らない恐ろしさを感じる。自分がついてると伝えるように、乗っている肩から、ギザみみピチューが頬に触れた。

 

 

「先程言っていた依頼の報酬が、その武器なのね」

 

「ああ、勝手に喋って、いつの間にか消えて……得体の知れない奴だった」

 

「ボディがあちこちにいることもあるし……何が起きていると言うの……?」

 

 

難しい顔をしながら、全員が黙り込む。

精神なきボディは、何も語るまい。

謎の依頼人の痕跡を辿るのは容易ではあるまい。

 

重苦しい雰囲気を漂わせる中、そんな雰囲気ぶち破るとばかりに、小さな体でとびはねた。

 

 

「ピッチュ!!」

 

「うわ!」

 

「〜♪」

 

 

ウクレレピチューは注目を集めるやいなや、背中のウクレレを前方へ持っていき、軽快なメロディを鳴らした。

ピチューの流す微細な電気に反応して、音が奏でられる。

 

 

「それは楽器だったのか……」

 

「ピー!!」

 

「うぐっ」

 

 

楽器であることにも気づかなかったベレトが顔面に跳び蹴りをくらう。文化や育ちの違いなど知ったことではない。

 

 

「よし、キミの名前はウクレレで!」

 

「そのまますぎません?」

 

「ピチューだけだとややこしいでしょ? それでキミがギザみみ! どうお? いいセンスでしょ!」

 

 

仁王立ちで胸を張るマリオ。

確かに呼称は決まっていなかった。

 

 

「ピチュ!」

 

「ピッチュ!」

 

「いいって!」

 

 

ウクレレのメロディが心を落ち着かせたのだった。確かに情報などないが、ならば知っていそうな人を探せばよい。

 

 

「呼び方は兎も角、今後どう動くか……」

 

「そうだわ! マスターハンド! 彼ならこの世界に何が起こっているのか知っているはず!」

 

「む……この状況だ、マスターハンドとて無事ではないかもしれないが……それはそれで保護しなくてはならないか」

 

 

かの創造主の預かり知らぬところで事が起きていても、何かが起きた結果事が起きていたとしても、必ず何かを知っているはず。

 

 

「よし! じゃ、マスターハンド捜索部隊、結成だよ!! もちろんリーダーはこのボク!」

 

「えー! マリアもリーダーやってみたい! 出動ー! とかやってみたい!」

 

「ボクがやるー!」

 

「…………」

 

 

他は呆れるばかり。

マリオのソレが興味や征服欲ではなく、ナルシズムから来ているものだとそこそこ深い付き合いならばわかる。しかし、10代前半程度の少女と張り合うな。頭を抱えながら、ベレトが間に入った。

 

 

「隊長や部隊のことはともかくとして、マスターハンドを探すというが、当てはあるのか?」

 

「それが問題なのよね……ここまで事が起きても沈黙を貫いているということは……」

 

「マスターハンドも何かしら理由があって動けないってことだよね、難しいなー」

 

 

誰かに接触することなく、どこかで身を潜めているか、囚われて身動きが取れないか……

 

 

「タブーの時もキーラの時もそうだけど、いつの間にか捕まってるんだから! ヒロインムーブって奴かな? ピットが言ってた!」

 

「随分と親しげなんだな」

 

「そりゃあ、ボクだし? ファイターじゃ1番の古株だし? 1番最初に頼られるのがボクだし!」

 

 

それが真実ならば、マリオにも接触できないほど状況は切羽詰まっているのだろうか。

 

 

「はいはい! ファイターのみんなを集めたらどう? リヒターお兄ちゃんとか御先祖様とか……もしかしたらだれか何か知ってるかもしれないし、探しやすいと思うの!」

 

 

マリアが背伸びをしながら精一杯手を上げる。

それでも強調が足りないのか、ピョンピョン跳ね出した。

 

 

「単純だが、それが最善手か……」

 

「それにファイターじゃなくてもマリアたちみたいに協力してくれる人いると思うの!」

 

「えっ、ついてくるつもりでしたの?」

 

「マリア達だって戦えるもん! ねー!」

 

「「ピチュッチュ!」」

 

「今更疑っていませんが……仕方ないですね……」

 

 

どっちにしろ、今現在この世界で安全な場所があるかも知れない。戦えなくても近くで行動を共にするべきだろう。

 

 

「あと、どせいさん達にもマスターハンド探してもらおうかな! おーい!」

 

 

マリオが離れて依頼をする中、ベレトは先程の戦った2人のことを思い出していた。

 

しばらく気にする余裕もなかったが、戦闘の音がいつの間にか止んでいる。てっきり1対1で続けているものだと思ったのだが。

 

 

「(気をつけておくべきか……)」

 

 

傭兵の勘は命の危険。

注意し続けるという神経を使う所業も、彼にとっては慣れたものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空中に佇む、浮遊したコロシアム。

いつかマリオとカービィが戦い、そして亜空軍との戦いが始まったコロシアムは、今現在は無人。盛況も歓声も嘘のように静まり返り、場違いな静寂だけが辺りを支配する。

 

 

「見たのか、その正体を」

 

「ああ、いかにも脆く、弱く、そして覚える価値のない者だった」

 

 

カズヤとセフィロスはベレトが戦線離脱した後、少し剣と拳を交わし合い、それから一時休戦となった。

現在はコロシアムの外壁から戦場であっただろう森林を見下ろしていた。一部の木が戦いの中で燃えたり倒れたりしただろうが、そんな様子は見えない。この世界は広大なのだ。

 

 

「ふっ……命をかけた戦い……こんなぬるま湯の世界でそれができるとは思わなかった。たっぷり礼をしてやらねばな……」

 

「本物でもない人形を私に襲い掛からせるとはな……奴が何をしたいか知らないが、周りの雑兵は不愉快だ」

 

 

マリオ達とはズレた趣旨で、天使と悪魔はボディの首魁を狙う。

含みを込めた笑い声が曇り空に響き、そして2人の人影は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「意外だったわね、あなたにも家族みたいな子達がいたのね」

 

『確かに世間一般の人間が築く家族とは違うとは思いマスガ……かけがえのない仲間がいた、ということは間違いありマセン』

 

 

故郷の世界に戻るでもなく、大乱闘の世界をぶらりと散歩をしていた。

別にあちらでショッピングしに歩いてもよかったのだが、マイペースなベヨネッタは休みだとかに振り回されたりしない。大乱闘だって気が乗らない時はドタキャンするのだ。

忙しかろうが、帰りたい時に帰る。

 

今頃、幼い子供達に振り回されているだろうこどもリンクをおちょくっても面白いかもしれないと、マイペースに探し回ってたところ、崖の先に花を添えていたロボットを見かけたのだ。

 

 

『キーラやダーズとの戦いの時に少し聞きマシタヨネ、ワタシは仲間を人質に取られ亜空軍に組シタ。従っていたところで仲間が減っていくのには変わらなかったというノニ』

 

「そう」

 

 

いつも通りの平静な返事。だが、口数を極端に減らした状況には、大きな想いがあった。それを口にはしないだけ。

 

 

『ある意味、ワタシだけ残ったのも当然なのデショウ』

 

「そう」

 

 

責めもしない、慰めもしない。

割り切りはしても、忘れることはできない。

 

それを感じ取ったベヨネッタは同じように返事をし、背後へ銃を撃った。

 

 

『……!? 何ヲ……?』

 

 

銃声に驚き、頭部を動かす。

高性能のカメラには、キーラやダーズの時に戦った虚な人形達を捉えた。

 

 

「本当に無粋な子たちね、少しだけ遊んであげるわ!」

 

『……!! ここに立ち入るナ!』

 

 

1人と1機。

ひとりぼっちではなかった魔女と、ひとりぼっちにされた機械。

 

しかし、その感情は同じだった。





○タイトル
みんな大好き塊魂の挿入歌、俗に言う素敵ソングの一曲。

しっとりした出だしから、入りの歌詞が酒の魔力とか出てくる。
でも、歌詞自体は新しい自分になるためにチャレンジするみたいな歌。

歌:キリンジ 作詞:NAMCO 作曲:堺亜寿香
(敬称略)


○ライブ
ファイアーエムブレムシリーズの基本的な治療系魔法。
作中でもあるのだが、隣のマスのユニットを回復という都合上、自身を回復することはできない。
いわゆる、
たたかいはできませんが
ちりょうのつえがつかえます
という奴。えっちょっと違う?


○ウクレレ
光の軌跡での主人公のパートナーポケモンだけあり、アシストでキャプチャをサポートしてくれる。
音符を飛ばしたり、音に合わせて電撃を放つ。
音符は当てづらいのだが、電撃系のパートはかなり強力。


○ロボット
スマブラX 亜空の使者でのエインシャント卿の同行を参照。ロボットくん、今だにタブーとトワプリガノンを許してません。


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75話 あの人の噂を聞いたことがある

 

ここを踏み荒らすな、近づくな。

ここはお前達のような意思も心もない奴らが立ち入っていい場所じゃない。

 

まるで、ガノンドロフに操られてしまった仲間たちを見るようで辛すぎる。

だからといって、狂えるほどロボットは感情的ではなかった。狂えた方が楽だった? いや、それは逃げだ。

 

 

『うおおおおおオ!』

 

 

アーム部分の高速スピンが小型のボディ達を蹴散らしていく。内部のキャタピラでの移動は同時進行で行われる。

自身のリソースが許す限り、並列思考を軽々こなせるのはロボットならではである。

 

 

「あら、この程度かしら?」

 

 

一方、ベヨネッタは涼しいで両手銃を撃っていた。2丁しか使わず、未だに召喚も使っていない。明らかに余裕があった。

つまらないと感じたベヨネッタは少しずつ群がるボディ達との距離を詰めていく。隙を突かれるならば、それはそれで面白そうだ。

 

 

『……まったク、ずっと銃を撃っていれば近づかせなかったというノニ』

 

「それだと追い込まれた時に海へ飛び込むしかなくなるわ。錆びちゃうわよ?」

 

『その程度で錆びマセン!! というか飛べばいいデショウ!!』

 

「それもそうね〜」

 

 

最大出力のビームで足元を焼く。

炎を込めて殴りかかってくる敵を、勢いを利用して背後へ回り込み肘打ち。手助けに詰めてくる敵に対して、元いた敵の腕を支えに移動部のジェット噴射を叩き込む。

 

するりするりと敵の間に回り込み、銃の射線を利用して同士撃ちを誘発する。意図せず、どんどん敵陣の真ん中に近づいていく。

 

 

「もう、世話の焼ける子ね……邪魔だァ!!」

 

 

ロボットの攻撃により、倒れていたボディに近づき、両足で跳んで踏みつける。

それと同時に大魔獣の両脚を召喚し、まとめて敵を押し潰す。

 

 

「オラァ! まだまだよ!」

 

『……っ!』

 

 

召喚したアイアンメイデンに敵を叩き入れ、棘つき車輪で引き潰す。その容赦のなさに戦況の中にいることも忘れ、引いた。

 

 

『……ヒィ……ベヨネッタさん、どこでこんな恐ろしい戦いヲ……』

 

「いつもとそこまで変わらないわよ? 意外とお子様なのね」

 

『子供だからというカ、なんと言うカ……恐ろしさの種類が違うと思うんデスガ……』

 

 

大乱闘でよく見る、いつもの容赦なく敵を殴り続けるベヨネッタも怖いが、拷問器具で敵をすり潰すように倒す現在も恐ろしい。こんな道具はどこで手に入れた。

ベヨネッタの故郷の世界がどんな世界なのか、気になるけど踏み入ってはいけない。お化け屋敷の目の前で立ち尽くしているような気分だった。そっちの方が数十倍良さそうだが。

 

 

『……まあ、今なら巻き込まれなければいいデスケドネ!』

 

 

あの時よりも恐ろしいものは、きっと過去にも未来にも会えないから。怖がる理由がない。

 

頭部を回転させ、あたりにビームを撒き散らす。人体ではまずできないアーム部分の回転でひたすら敵を殴り飛ばしていく。

 

 

「ほらほらほら、それで全力……あら?」

 

 

空中で蹴り飛ばしていくところ、遠くに見覚えのある色を見つけた。周りの紛いものではなく、鮮やかな色を感じる。

 

 

「デュエットも新鮮だったのだけどね」

 

「あの脚やっぱりベヨネッタだった! ボク達も参戦するよ!」

 

『エ!? なんデスカ!?』

 

 

高い位置にいないロボットには、マリオ達が来ていることに気づいていない。わざわざ飛んで見るほどの余裕はないので、何も知らないまま戦闘が進んでいっている。

 

 

「よし! ベレトが魔法使ったりできるってことは当然ボク達もこんな戦い方ができるってことで!」

 

 

マリオがどこからか取り出したのは、青い色の甲羅だった。中に入って頭足腕を外に出す。

 

 

「カメ?」

 

「コウラマリオ! いくよ!」

 

 

体を中に引っ込めると、地面を滑り始める。ボディを突き飛ばしたり、足を掬って転ばせたり。文字でも書くようになめらかに滑り敵にダメージを与えていく。

 

 

「あれは……普段はあんなふうに戦っているのか? あんな物、いつの間に……」

 

「どせいさん達が持っていたのよ、ふふっ、頼りになる子達ね」

 

「あの者達の生態が気になるのだが……」

 

 

一体なにを理由で、他所の道具を集めているのだろうか。

少し疑問に思いながらも、戦いに私情は持ち込まない。ベレトは引き気味にリザイアを連発する。できるだけ多くの敵に当たるように。消耗した体力が緩やかに癒えていく。

 

 

「これなら、カッサーを連れてくるんだったわ。今更言い訳、だけどもね」

 

 

マリオのような、面白い戦法の追加はできない。だが、それは彼女にとって身を引く理由にはならないのだ。

テニスラケットを振り回し、果敢に攻撃を加えていく。

 

 

「ピチュー!!」

 

「ピッチュ!!」

 

「よーし! マリアも頑張るぞー!」

 

 

2匹のピチューの電撃で正面の敵を痺れさせる。

続いてマリアも鳩を飛ばすが、電撃がまだ止んでいなかった。

 

 

「ありゃ?」

 

「はあ!!」

 

 

ドジを踏んだことに気づいたマリアを庇うようにベレトが前に踊り出て、天帝の剣を一振り。

蛇腹状に変化する武器は、剣であるのにも関わらず、範囲攻撃を可能とする。

かつてフォドラの十傑に託されし英雄の遺産。圧倒的な殲滅力は多を相手取る方が適していた。

 

 

「うわわわわわわっ! どうしよ、うっかり崖から落ちるぅう!」

 

『エ、その声ハ……マリオサン?』

 

「お、ありがと」

 

 

回り過ぎて自分の位置がわからなくなっていたマリオを止めたのはロボットだった。ようやく、自分ともう1人以外に他の仲間がいることに気づく。

 

 

「ちょっとマスターソード探さなきゃいけなくなってね!」

 

『マスターソード……? ああ、マスターハンドですカ。ボディの異常発生が……』

 

「そうとも言う」

 

 

言い間違えたが、意味は通じた。

ボディが大群で襲ってくる、この非常事態について何を知っているのか聞きにいくのだろう。

大乱闘の世界そのものが故郷のロボットは、自分の実力の変化がない。

 

 

「というかそれもそうだけど、今ボク達ファイターじゃなくなってるんだ」

 

『エ!? ならベヨネッタの恐ろしい武器ハ……』

 

「いつもそういうふうに戦ってるんでしょ?」

 

『ヒエー……』

 

 

ドン引きである。

甲羅を背負って機動力が落ちているはずだが、桁外れの戦闘経験がそれを補っている。敵の攻撃を誘導して同士討ちを狙ったり、背負い投げで敵を敵にぶつけたり。

 

 

「いらっしゃい、先に遊んでいるわよ」

 

「『うわあああ(アアア)!?」』

 

 

棘付き車輪を暴走させて、海に叩き落とす。紙一重で巻き込まれなかったマリオとロボット。

縦横無尽に暴れる拷問器具に、残りの敵は数体になっていた。

見るも無惨な敵の有様に、ベレトすらも手が止まる。距離を置くような気配が離れた場所からも感じることをベヨネッタは見逃さなかった。

 

 

「みぃつけた」

 

「うわっ!?」

 

 

ラブイズブルーの銃音が鳴り響く。

岩肌に隠れた敵が飛び出してきた。全員が再び戦闘体勢に入るが、他のボディと一線を画す。

意思を持ち、喋るボディを見たことがなかった。

 

 

「ど、どうしよ……1人だし! 物騒な人だし! 勝てる気しないし!!」

 

「あなた、誰なの?」

 

「え、あ、僕、チゲン。君は?」

 

 

テンパりながらも自分の名前を語る。

白い羽衣、赤の差し色、黒い翼。本来赤色を宿す瞳は漆黒を表す。

ブラックピットのボディを依り代とした彼はチゲンと名乗った。

 

 

「えっと……マリアはマリア」

 

「あ、マリアちゃん、よろしく……」

 

「してる場合か!」

 

 

フェイルノートという名のツッコミがチゲンの服に突き刺さる。驚いて転んだ場所に甲羅だけ蹴り飛ばされた。

 

 

「ふべっ!? みんな酷いと思わない!? 僕の担当地区だけあんな物騒な人が3人もいるんだよ!!」

 

「あら、誰のことかしら?」

 

「1人は君だー! 置き碁(おきご)ぉ!」

 

 

不満の意味を込めて、指を十字に切り、弾丸のように黒石を飛ばす。しかし、上体を逸らして簡単に避けられた。

 

 

「うー! まともに戦ってられないし……! 裂かれ形《さかれがたち》!」

 

 

多量に発射された黒石が一定距離を飛ぶと分裂する。ひたすら数が増えていくので、完全に避け切るのは至難の業。

 

 

「くっ」

 

「三十六計逃げるに如かーず!!」

 

「逃げられたわね」

 

 

チゲンの技がある意味とどめ代わりとなって、今ここに立つのはファイターの力を失ったスマッシュブラザーズとその協力者だけだった。





○タイトル
大乱闘スマッシュブラザーズX メインテーマの歌詞。
ラテン語の歌ではあるが、亜空の使者のエンディングで和訳と一緒に流れるので一般的に知名度は高め。
歌詞の内容はザ・スマッシュブラザーズ。DXと比べて大幅ボリュームアップした今作を彩るフルコーラス。


○ロボット
みなさまご存知亜空の使者のエインシャント卿だったロボットさん。
そもそも大乱闘の世界で生まれた存在であるため、フュギュア化以外の必殺技等の能力は自前であり、ある意味ファイター無効化の影響を1番受けていないファイターでもあります。


○ベヨネッタ
原作で処刑器具を戦闘で使うので、今作でもバンバン使います。
残酷な描写タグはついているのでおけおけ。本来は一章のためのタグでしたが。


○カッサー
スーパープリンセスピーチで登場する傘型の相棒ポジ。
当初は登場させるつもりでいましたが、目新しいアクションができそうにない上に喋るキャラが増えるので没に。ファンの方はごめんなさい。


○マリオ
どせいさんの貯蓄アイテムを分けてもらうという形で変身が可能。
ただ、全種類持っているわけではないです。いずれハンマーとかも使う機会があるかもしれません。


○ピーチ
よく調べればマリオRPGで回復技ありましたね。
言い訳のつもりはないんですが、シリーズが多いとつい見落としてしまう……とはいえ本作では回復系特技は連発されても面白くないので今は使えないと思っていただければ……


○チゲン
ボディはブラックピットの7Pカラーを使用。
見た目の差異は目が黒色なのと、月桂樹をつけていないこと。
基本的に友好的で人懐こい少年。ただしちょっと抜けている上に不運。
ちなみにプロローグの1話目で名前だけは出てました。


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76話 Bonetrousle

 

チゲンはむくれていた。

この世の理不尽さに。

そして自分の不運さに。

 

まるで()()()()()()()()()()()()()ように、自我を持ってから今日に至るまで、幸運だと認識したことは一度もない。

 

 

それがこんな場所で裏目に働くとは思わなかった。

 

 

「ぷくー、あのおっかない黒々の女の人が……そう、たしかベヨネッタ。あの中がトゲトゲの人形とか絶対に物騒な感じのアレだよー……」

 

 

さっき観察していた、セフィロスとカズヤ。

さらにベヨネッタも自分が相手どらなければならないなんて。

 

大乱闘の世界に留まっているファイターの調査と相手が自分の担当。だが、広大過ぎる担当地区は1人で管理できない。

まだ目を通していない場所があるということは、まだファイターがいるかもしれない、ということだ。

 

 

「これなら、兄弟でそーさくできるように言えばよかったなー……いや、でも()()()()()()とはいえ、仮にも僕お兄さんなんだし……また泣きつきたくないし……」

 

 

逃げ込んできた岩山に座りながら、はぁとため息をついた。眺めを一望するのはただの現実逃避である。

 

 

「次会った時には僕のこと、忘れててくれないかな……こんなこと思うなんて、自分でもびっくりだよ〜……」

 

 

『あ、えっ〜と……すまん、誰だったかな?』

 

『えっと……初対面ですよね?』

 

 

「…………」

 

 

自分の教えた囲碁に興じながら、会ったことがある他人が自分を忘れている。同じように、物騒な彼らも忘れてくれないか、なんて。

 

 

『えっ… どうしてそんなことを言うんだ? また会えばいいじゃないか』

 

『でも…』

 

『僕はカムイ。もう君とは友達だ』

 

 

「でも……あの言葉を忘れられるのは嫌だな。忘れられないために僕達は……僕は……ボディを手に入れて……」

 

 

目の上に腕を乗せて空を仰ぐ。

矛盾する思いは、わがままになって自分の中をグルグル回る。

 

 

「カムイ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『エ? ファイターじゃなイ?』

 

「うん、力がボク達から消えてる。ベヨネッタとか見たことない武器使ってたのに気づかなかった?」

 

『大乱闘ではないノデ、気にしてませんデシタ……』

 

「あら、私は気づいていたわよ?」

 

『なら教えてくださいヨ!!』

 

 

敵に囲まれる状況を危惧し、深追いはやめておいたファイター達。合流できたロボットとベヨネッタに事情を説明する。

 

 

「さて、マスターハンドではないが、さっきのチゲンとかいう男、何か知っていそうだな」

 

「明らかに他の子たちとはかけ離れていたものねえ」

 

 

逃げた時点で十分怪しいが、肉体がボディであるのに意思を持って喋り、ブラックピットのものではない全く別の力を使う。その異質さを見落とさない。

 

 

「その、マスターバンド?よりチゲンって子を探した方が良さそう!」

 

「ピピッチュ!」

 

「彼が知っているかもしれないですもの、マスターハンドルのこと」

 

()()()デス!!』

 

 

どこにいるかも、行ける場所にいるかもわからない神を探すより、先程見つけて逃げられた敵を探す方が簡単だろう。共通認識であるので特に批判もなくそちらへ舵を切る。

会話の中で、うっかりハンドではなくなったりしているが、面識があまりないマリアはともかく、ピーチは完全にわざとである。音楽はないし切ったりもしない。

 

 

「名前のことはなんでもいいけど、チゲンって子にも話聞かないと!」

 

『今更ですガ……あの人敵だと思いマス?』

 

「……言ってることは敵みたいだけど、悪い人じゃなさそう」

 

 

ボディを操っているという旨のことは話していたが、根は善人というか子供よりっぽい。

弱いものいじめのように、集団で襲いかかるのは憚れた。

 

 

「とは言うが、抵抗する意思がある以上戦闘は避けられないだろう」

 

「難しいわね、つい頭をバーン! ってやらないように気をつけないと」

 

「ピチューー!!」

 

「あら」

 

 

善人っぽいという評価は否定しないが、それはそれとして敵として対峙することは避けられないという判断だった。

ウクレレピチューをおちょくるように、頭部を指の銃で撃つ。おちょくられたウクレレピチューはベヨネッタの顔の高さまでとびはねるが、背のウクレレをつままれて宙ぶらりんにされた。

 

 

「どこまで逃げたのでしょう?」

 

「奴の性格から察するに……自分達を恐れてどこかで防御を堅めているのではないか。セフィロスとカズヤが近辺にいることも知っていそうだった」

 

『……あの2人もいるのデスカ』

 

「少し揉めてそれっきりだ。見ていないな」

 

 

複雑な感情も、ロボットは表現できる。

確かに強いのは間違いないが、同時に核爆弾級の厄介さを誇る。せめてちょっかいをかけてこなければいいのだが。

 

 

「防御……とりあえず、ボディが多そうな場所探してみる?」

 

 

ベレトの分析に則って、マリオが最終的な結論を出した。数を使って己の身を守っているのではないか。

 

 

「「ピピッチュ!」」

 

 

それを言うと、突然2匹のピチューが己の主張を始めた。1匹はぶら下げられたままだったが。

 

 

「ギザみみちゃんにウクレレちゃん! どうしたの?」

 

「……そうか、すばしっこいから密偵には最適か。ならば、是非探してもらいたい場所がある」

 

 

そう、体が小さく、動きがすばやいピチューは探りに行くのにピッタリなのだ。それを本人も自覚していたようで、自ら立候補した。

 

 

「それとそろそろ下ろしてやれ」

 

「あら、意外と楽しいわよ?」

 

「ピーーーチューーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく手間かけさせやがって……」

 

 

周りの様子を見ながらに、カズヤは悪態をつく。彼の目は、刺すような殺気もなければ燃えるような闘志もない。既に冷めていた。

もう、ここにいる敵将1人に興味はない。

あるとすれば、その先にいるかもしれない強敵だ。何があっても戦いの中で生きていくしかない存在は、チゲンを既に見限っていた。

 

比喩も過小評価もなく、真の意味での雑魚。

それがカズヤの認識だった。もう既に次の敵しか見ていない。

 

 

「すぐに叩き潰してもいいが……それでは面白くない」

 

 

ねじ伏せるのは簡単だ。

しかし、彼らの中にはそれよりも深い絶望を与えてやりたいという思いがあった。

 

 

「先程の傭兵達……使わせてもらおうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピチュ、」

 

「ピチュ」

 

 

走る走る、ピチューは走る。

小さく、すばしっこいながらも、自然の中では目立つ体色。少し進みながら茂みに隠れる。息を潜めてボディが通り過ぎるのを待つ。ボディの密度が増え、動けない時間も増えてきた。

それは敵地に近づいていることの証明でもあり、同時に危険にも近づいていることになる。

 

 

 

『…………』

 

「ピ?」

 

 

隠れていると、一人でにボディが倒れていった。

まるで気絶するように倒れる。2匹とも何もしていない。攻撃も、奇襲も、ここまで鮮やかには決められない。

 

 

「ピー?」

 

「チュ……ピッチュピチュ!」

 

 

2匹とも疑問には思ったものの、先にやることをやろうと進んでいく。

 

森を抜けると、そこには古びて荒れた廃墟同然の砦と、警備するかのように辺りを見回るボディ達の姿があった。

 

 

「ピッチュ!」

 

「ピチュ!」

 

 

間違いない、確信した。

あまり知識のなさそうなチゲンが、即興で防陣を組めるとは思えず、元々あった何かを利用するだろう。

そう考えたベレトが導いた答えは、近場で身を守りやすい建物。かつて、マルスの目の前で亜空間爆弾が発動したあの砦だったのだ。

 

ピチュー達は二手に分かれる。まだ姿は見せないように、ウクレレピチューは正面から、ギザみみピチューは砦の背面から。

森ほど身を隠すものはないが、壊れたままの壁などはまだ残っている。

 

 

「ピー……」

 

 

十分に時間を待ってから、うーんと力を溜めて。

 

 

「「ピチューーー!!」」

 

 

かみなり。

 

 

「わあああーーーー!?」

 

 

挟み撃ちをするぞと轟くイカヅチ。

それは急襲と威圧の合図だった。

 

 

「さあ、いくよ!!」





○タイトル
Undertaleのパピルス戦のBGM。Gルート以外でなら聞けます。
ちょっと抜けているパピルスのように、カッコよくなりきれない感じがとても印象的なBGM。スマブラアレンジのMegalovaniaでも確かアレンジとして入っていたような。
チゲンはパピルスほど面白い子ではないのですが、憎めない感じのキャラクターにデザインしています。


○攻城戦
スマブラXの亜空の使者での、マルスのスタート地点がチゲンの逃げ込んだ場所です。ワンチャン、マルスの拠点代わりだった可能性が微レ存。


○一ヶ月の間にあったかもしれない小話
ジョーカー「特に春先はフシギソウやパックンフラワーとは戦いたくないんだ。花粉が……」
ケン「スギじゃねえぞ、ジョーカー」
ジョーカー「違うんだよ! 認知的な問題なんだよ! あとジョーカーじゃなくて雨宮蓮!」


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77話 気だるき異世界を生かせ生きるだけ

 

「ここはガンガンいくぞー!!」

 

 

アイスフラワーでアイスマリオになったマリオは、脇目も振らずガンガンと砦に攻め込み、すれ違いに出会った敵達を凍らせていく。

 

ウクレレピチューの後を追うように正面から入り込んだのは、マリオ、ピーチ、ベヨネッタ、マリアの4人。技が派手であったり、性格的に隠密活動が向いていない者ばかりだった。

 

 

「追いつけなくなったら! すぐに言ってね!!」

 

「うん!! でも、マリアも戦えるし!」

 

 

アイスマリオの攻撃を掻い潜って懐に入り込んできた敵には、傘を振り回して応戦する。

幼い少女もまた、ここが重要な分岐点だと理解しているため、白いトラ、白虎を呼び出し正面の敵を一掃する。進んだ道に沿って、マリオはスケートのように進んでいく。

 

 

「あら、確かに……リヒターお兄ちゃんより強いんじゃないかしら?」

 

「えへへ〜」

 

 

実際のところは測っていないので知らないが、美しく、強い動物達を召喚して戦う姿はかなり目を引く。

ピーチはそういう派手な攻撃はないので、純粋に羨ましかった。

 

 

「よーし!! どんどんいくよー!」

 

 

嬉しくて舞い上がったマリアは、さらに朱雀を2羽召喚して空を飛ぶボディの始末を、青龍を召喚してマリオが凍らせた敵を砕かせる。

さらにピーチと敵の間に立ち、ガーディアンナックルで敵を吹き飛ばした。

 

 

「どう? やっぱりマリアも戦えるって……」

 

 

そしてかなり数の減ったボディの眉間を撃たれ、首を吊られ、断頭台に叩き込まれる。

 

 

「私も、戦えるわよ? とびっきり愉快にね!!」

 

「……あんな風には……戦えないかも……」

 

「ならないで……」

 

 

固まっていた2人の耳に、ウクレレの心地よい音が入ってくる。少しだけ、癒された。

電撃、氷、傘、四聖獣に銃声。それらが暴れ回る中、砦を挟んで向かい側も行動を開始していた。

 

 

こっちだ

 

ピー

 

 

壁の残骸に、または柱に隠れ、進んでいく1人と1機と1匹。ベレト、ロボット、ギザみみピチューは砦の裏側からこっそり進んでいた。こちらは慎重さと隠密に特化し、戦闘どころか奇襲も最低限だ。

 

 

ここで聞くのもアレですが、よろしいデスカ?

 

どうした

 

奇襲なら最初のかみなりはあちら側のみにした方がよかったのデハ?

 

奇襲のつもりはないからな。あくまでここに留まらせるのが目的だ

 

 

奇襲を図るにしては、あまり適した戦場ではない。

戦力が向かい側に集中しているからこそ、隠れながら進められているが、もし後ろへ逃げることになれば数で押し負ける可能性があった。とはいえ、数の比率を変えれば陽動がバレる可能性もある。

 

囲まれている、と思わせれば、動きも悪くなる。動きが悪くなれば、思考だって鈍る。

ここで取れる選択肢でパッと思いつくのは、籠城、強行突破、もしくは包囲の薄い場所を探して逃げるか。

 

しかし、少なくとも3人は見つかっていないために、伏兵がどこにあるのかわからない。

それも無視して突破や逃亡を図ることもできないことではない。が、抑止力にはなっている。

だが、後ろ向き思考のチゲンならば籠城を選ぶだろうと考えていた。そして正面に戦力が集中している状況から察するに、既にその手を選んでいる。

 

 

今のところはうまくいっている。ほら、もう外壁だ

 

 

いつの間にやら、本丸の壁まで来ていたらしい。しかし、裏口なんていう便利なものはない。正面まで回るか壁を登る必要があるのだが、ボディがいる。壁の上に1体、下に2体。

登ることそのものに関しては問題なさそうだが、その過程で確実に見つかるだろう。

 

どうしましょうカ……

 

「いや、ここまでくれば隠れる必要はない。実力行使だ!」

 

『エエエエエエエエエエ!?』

 

 

フェイルノートで、上の1体を射落とし外壁の外まで落下させた。近づいてくる敵をアラドヴァルで串刺しにし、ギザみみピチューが他の敵に張り付き、電撃を浴びせた。

 

 

『ここまで静かにきてコレデスカ!!メリハリがあり過ぎデス!!』

 

 

アームをグルグルと回しながらラリアットで吹き飛ばす。驚きはしたが、それ以上に体が勝手に動いていた。

 

 

「なんだ、めりはりとは、静と動を併せ持ってこその戦士だ」

 

 

ベレトの言葉は理にはなっている。ただ単にいわゆる愚痴を言っているだけなのだ。

 

天帝の剣をボディに差し込んだタイミングで、3体の敵の消滅を確認した。

 

 

『モウ……ギザみみさん、コッチへ』

 

「ピチュ!」

 

 

アームにギザみみピチューを乗っけると、ホバリングで上昇していく。ベレトは気にした様子もなく、天帝の剣の先を壁に突き刺して登っていった。そして。

 

 

「ギャアアアアアアア!! 出たアアアアアア!」

 

『うるさいデス!! 幽霊でも見たような失礼な反応シテ!』

 

「来るんだったら先に言ってから来るもんじゃないの!! みゃずばでがびがらりかれ(まずは手紙かなにかで)らんりちろらんりらんぶんり(何日の何時何分に)らんろびょうれぶるがびっでぼ(何の用で来るか言ってよ)!」

 

「ピチュー……」

 

 

ポケモン以上に何を言っているかわからないか、慌てすぎである。

 

 

「そこまで言うなら少し平和的に話を進めようか。そう遠くないうちに他のファイターもたどり着くだろう。投降すれば手荒な真似はしない」

 

「ビャアアアア!!」

 

『ベレトさん、それ脅しデス!』

 

ろろがれえわでびばんざよ(どこが平和的なんだよ)!! ってあの腹の中まで真っ黒姉さんいない?」

 

 

チゲンはようやく気づいた。

見渡すが、ここにいるのはロボットとベレト、そしてギザみみピチューしかいない。前方では目を惹くほどの大魔獣が暴れているが、今の今まで見ないようにしていたのか。

 

 

「なら、僕にだって勝ち目はある!! 悪いけど君たちを倒させてもらう! そうじゃなきゃ、マスターハンドがいるかわからないしね!」

 

「『(マスターハンドがいる()……?)」』

 

 

その発言に疑問を持ったが、後で聞けばいいと今は戦闘の集中する。

チゲンは中指と人差し指を交差させて十字を切ると、黒色の弾丸のようなものを飛ばした。

 

 

置き碁(おきご)!」

 

 

真正面、1人辺り一個、飛んでいった弾をロボットとギザみみピチューはかわし、ベレトは天帝の剣で弾いた。スピードと威力を失い、石畳の床を転がったのは。

 

 

「小石……?」

 

 

黒く、楕円型の小石だった。

綺麗に磨かれたそれは明らかに天然のものではない。疑問だったが、すぐに切り替える。

 

 

「どんどんいくよ! 裂かれ形(さかれがたち)!」

 

 

再び十字を切り、数個の弾がどんどん分裂し、増殖していく。

これは弾いていたのでは間に合わない。

 

 

「ピッチュー!」

 

「っ!」

 

 

小さな体を活かして懐まで飛び込んできたピチューに対して、咄嗟に神弓シルバーリップを振り回して切り裂いた。

 

 

『……ノッ!!』

 

「わっ!!」

 

 

そして、少なからずできた隙をビームで撃ち抜く。赤色の光線は右前腕を貫通した。

 

 

「もう! 一眼(いちがん)っ!」

 

『ハヤッ……!』

 

 

反撃に、撃ち返した黒い弾丸。

切った十字の交差点から撃たれた小石は、本来狙撃特化の技。対応もできず、脊髄部にめり込み、体が弧を描く。

 

 

「はああ!」

 

「んっ、斜の傷(ななめのきず)!」

 

 

アイムールの一振りをかわし、斜めに並べられた弾丸が規則正しくまっすぐ飛ぶ。ベレトがそれを潜り抜けると、天帝の剣で足払いした。

 

 

「ビャッ」

 

「ピチュウウ!」

 

 

かみなりが落下し、ぷすぷすと黒煙を立たせながら、再び裂かれ形で攻撃を図る。

 

 

『2度も同じ手が通じるト!』

 

「ば、ば、ば!」

 

 

アームスピンで大半の小石を弾き飛ばす。弾の一部がチゲンの額に跳ね返ってきており、スピンも迫る中どうにか射線を外れようとするも、()()()転んでしまう。

 

 

「あばっ!?」

 

 

そしてスピンに当たって吹き飛ばされ、仰向けで倒れるチゲンの顔を覗き込むのは。

 

 

「みぃつけた♪」

 

「ピャアアアアアアア!」

 

 

恐ろしいお姉さんとその一行であった。





○タイトル
ニューダンガンロンパ V3の4章のタイトル。
ダンガンロンパシリーズの章タイトルは大体元ネタがある。それがこのタイトルには見られない……と思いきや、回文になっている。
1章ほどではないが、個人的に意外な人物が……


○「リヒターお兄ちゃんより強いんじゃないかしら?」
マリア、兵器だもん!


○荒ぶるチゲン
シリーズ外伝が発売したベヨネッタに対して、祝う気は全くない。
勝手にみんなのトラウマのPixiv大百科に追加する迷惑なタイプ。


○作者の気まぐれコメント
アニメカービィのBlu-ray発売しましたね。
まあ、私は一次予約に敗れた敗北者なのでまだ届いてないんですが。
そして、同時にようつべの動画も削除されたとかされなかったとか。やっぱり今まで見逃されてたんですね。


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78話 NEXT WAVE

 

「本当になんなの!? なんで僕にしゅーちゃくするの!!」

 

「そうねぇ……私好みの格好をしてるからかしら?」

 

「ぎゃあん!! あの頃の僕、本当に馬鹿!!」

 

 

神速のごときスピードで起き上がり、逃げ出したチゲンは無作為に裂かれ形(さかれがたち)で黒石を飛ばす。

確かにベヨネッタの気分で追いかけ回されているブラックピットやピットと同じ見た目をしている。だが、別に天使のつもりはないのでチゲンからすればいい迷惑なのである。

 

 

「あの頃ってなにー!!」

 

「そりゃあ、見た目何にするーってボディ選んだ時だよ! 弟とお揃いがよかったのー!!」

 

「確かにそれは仕方ないっ!」

 

 

飛翔の奇跡で緊急回避したが、しっぽマリオで追いかけられる始末。回転してぶつけた尻尾で叩き落とされた。

 

 

「むう……不運と不幸はいつものことだけどさ、僕だって理不尽に対して怒ることはあるんだよ」

 

「同情はするわ……」

 

 

あのビビリっぷりを見ていれば、敵だということを差し置いても可哀想に思えてくる。

目を閉じ、精神を集中させる。2本の指を交差させ、縦に一つ、横に一つ、印を切るように動かす。すると、チゲンの周りを漂うように黒石が無数に出現した。

 

 

「やってやるよ、僕にできる限界まで。頼るのも逃げるのもその後にする」

 

「…………」

 

 

張り詰めた空気が蔓延し、歴戦の強者達はその洗練された闘志を感じ取っていた。

周りの黒石が辺り一面に飛び散る中、シルバーリップを構え、並ぶように矢を射った。弾速の違う弾が嵐のように襲いかかる。

 

 

「わあ!」

 

 

遮蔽物のない砦の頂上では防げない。多少のダメージ覚悟で各自砦から飛び降りた。

 

 

「待って……あ!」

 

「いらっしゃい」

 

 

後を追うように飛び降りたチゲンだったが、ベヨネッタのみ、空中で止まっているのに気づいた。宙で銃撃にあうが、遅れて衛星ガーディアンズのため射撃が展開される。

 

 

「はあ!」

 

「ピッチュ〜♪」

 

 

振り回した傘を屈んで避け、ウクレレの音と同時に落ちた電撃をかわす。殴りかかってきたマリオに豪腕デンショッカーで打ち返し、ベヨネッタの踵落としを防いだ。

 

 

「うばっ!?」

 

「……ッ!」

 

『まダ!』

 

 

出力を調節しながら、数を撃てるようにと調節したビームはチゲンに行動を許さない。

 

 

『(これデ……これでイイ! あの十の文字を書くような動きをさせなければ、敵は小石の攻撃ができない!)』

 

 

ロボットにも、すでにわかっていた。

ボディたるブラックピットに由来しない能力。

おそらくは元々持っていた力なのだろうが、それを使用するには、魔法の詠唱のような予備行動が必要なのだ。

それをさせない限り、彼にあるのはボディの力だけなのだ。

 

 

「これ……僕に攻撃させない気だね! そうはさせるか!!」

 

 

ピィーと指を咥えて口笛を吹くと、あたりで無事だったボディ達が戻ってくる。

多くのボディが傷だらけだったりと疲弊しているが、時間をかければかけるほど周りにいた他のボディ達もここに集結してくるだろう。

 

 

「ボディが……ベヨネッタ! マリア!!」

 

「いくわよ、ショータイム!!」

 

「うん!!」

 

 

だからこそ、ボディ達の相手をする、圧倒的な個が必要なのだ。ベヨネッタの召喚する大魔獣と、マリアの召喚する四聖獣。撃ち漏らしの撃破と2人のカバーは英雄の遺産を持つベレトが行う。

特に話し合っていたわけではない。瞬時に自分の役割を察したのだ。

 

 

「AVAVAGO!」

 

「おねがい!!」

 

 

あたり構わずボディへ噛みつき砕く。のしかかりを行いボディをまとめて叩き潰す。

玄武の影に隠れながら、地上には白虎、空には朱雀と青龍が暴れていく。決して邪魔はさせない。

 

 

「ソティス! 力を貸してくれ!」

 

『仕方ないのう! 意思を合わせよ!』

 

 

神祖の力を借りる、奥義覇天。

わずかながらに生き残っていたものの形を刈り取っていく。

 

 

「やったあ! 上手くいった……キャア!」

 

「あら、ウブねえ」

 

「……」

 

「そっちはつまらないのねぇ」

 

 

上手くいった喜びを分かち合おうとしたマリアだったが、大魔獣召喚に元は髪であるボディスーツを使用しているためにほとんど裸のベヨネッタを見てしまった。咄嗟に目を背け、自分とは比べ物にならないセクシーな体つきを思い出しては顔を赤くする。両手で覆おうが手遅れだ。

 

そんな中でベレトは涼しい顔だった。

隠しているだけか、本当になんとも思ってないのか。

 

 

「そっこ!!」

 

「あら」

 

 

敵と敵の隙間を抜い、貫く狙杖の射撃を鮮やかにかわす。不意を突いてもなお届かない。

 

 

「また弾かれたし……」

 

「ピッチュ!」

 

「おおっと……これ、もしかしなくても火力足りてないな……」

 

 

ウクレレの演奏により飛ばしてきた音符をあちこち飛び回って避けると、1番の問題点にようやく気づいた。

 

ここにいる中で、彼以外は誰も知らないが、今出せる全力を出している。しかし、ボディの力を入れてもなおもう隠しダネもなく底が尽きているのだ。

決められるような決定打が圧倒的に不足していた。

 

 

「うー、やっぱり逃げた方が良かったかな……」

 

「おりゃああ!」

 

「あ、このッ!」

 

 

殴りかかるマリオの懐に入り込み、超至近距離で手早く十字を切った。

防御の構えすら取れない位置。

だが、堪えられない威力ではなかった。

 

 

「ああもう全然ダメ!! みんな怖いし! ととー組んでやってくるし!!!」

 

「怖いなんてレディに対して酷いこと言うわねぇ」

 

「その通りですわね」

 

「もうやだ、無理!!」

 

 

「チハク……!」

 

 

祈るように、全ての想いを込めて口にした1つの名前。それの意味を知るものはここにはいなかった。

 

 

「ピチュッ!」

 

「あばっ……!? あ、まずい……!」

 

 

ギザみみピチューの電撃がかわしきれない。

不運にも足にぶつかり、痺れで立っていられるのがやっとになる。

 

 

「OK! ここでちょいキツめのぐるぐる巻きだー!」

 

「ううっ……」

 

 

勝利を確信し、近づいていくマリオ。

例え何かしら反抗できたとしても、足が潰されている以上、抑えられる。またもや、どせいさんから譲り受けていた万能ロープで拘束する。

 

 

「さて、色々聞きたいが……まず、何が起こってる?」

 

「うう……マスターハンド、捕まえたかったけど逃げられちゃって……スマッシュブラザーズの誰かが持つ、ファイターの力に宿っているって言ってたから探してたんだよ……どっかの世界に散り散りにして、それで……」

 

「捕まえたかった?なぜでしょう?」

 

「僕たちがフィギュア化すると精神が追い出されちゃうから……」

 

 

言い方に目を合わせた。

この言い方は、ボディこそが本当の目的で、他の行動はただの保険のようなものだ。

極論、倒す必要すらないのかもしれない。

 

 

()()()1()()()()()()()……欠点を補えるような肉体が欲しかったの……」

 

「けってん? それ、何?」

 

「ええっと……」

 

 

ここでチゲンが言い淀んだ。

これは核心だから隠したいのではない。彼の心の脆い所なのだ。慌ててマリアは話を変える。

 

 

「じゃ、じゃあ! ベレトお兄ちゃんのいらいにんって誰か知ってる?」

 

「依頼人? へ? 何の話?」

 

「自分のところに何か起こるから用心しろと忠告してきた者がいる」

 

「僕たちがそんなことして利点あると思う?」

 

「その通りではあるが……」

 

 

それでも釈然としなかった。

とはいえ、チゲンが隠しているようには見えない。本当に知らない様子だ。

 

 

「とりあえず、着いてきてもらおう。放すわけにはいかない」

 

「話すようなことは大体話したよ! だからせめてもうちょっと緩くしてキツい!!」

 

「そうか、ならお前は必要ないな」

 

「我慢しなさい……って」

 

 

チゲンの背後から、迫る長刀。

片翼の天使の獄門。

その背後には、つまらなさそうなカズヤ。

せまる、チゲンの心の臓に迫る刃。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………』

 

『……君は?』

 

『自覚しているからこそ、一方的に聞くか』

 

『自覚……ってことは、知ってるの? 君、僕の兄弟とかだったり!?』

 

『友にはなれない。慰めしかできない。だからこそ、望む通りとなろう』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──待たせた。」

 

「なっ!!」

 

 

今まで何もいなかったのに。

間に入り、正宗の先を弾かれる。

 

 

「チハク!」

 

「本当に愚かだな。あっさりと捕まるとは」

 

「あはは……どうしていっつもひどく言うの〜……」

 

 

ロープを切り、(チゲン)の拘束を解く(チハク)

 

 

「何者だ、貴様」

 

「愚兄が、世話になったようだ」

 

「ここからが本戦ってこと!!」

 

 

並び立つ黒と白。

兄弟と語る心。

はじめて、物語は本格的に交差する。





○タイトル
スプラトゥーン3のサーモンランにて、くっついてきたタイトル。
スプラトゥーン3が発売されてそれなりに経ちましたが……NEXT WAVEという名前を覚えている方はどれほどおりますでしょうか……


○ちょいキツめのぐるぐる巻き
ポケモンレンジャーシリーズにでてくる拘束方法。
ロープなどで腕と胴体をまとめてぐるぐる拘束している模様。
なぜか敵味方問わずやっており、解くのもけっこう苦労している。


○獄門
まさかの妨害。本編でもできたらなー


○チゲンとチハク
3章で離脱した直後にここまで来ている。
あの色々と自由なルネを除けば、はじめて章を跨いで登場。
攻撃方法はほとんど同じで名前も似通った2人は兄弟!(多分)


○作者の気まぐれコメント
アニメ ポケットモンスター、サトシの冒険終わっちゃいましたね。
実は作者はXY時代にポケモンから離れていまして、その頃にはアニメも離れてましたね。
そのまま今まで来てましたが、せっかくなので最終回だけ見ました。
ピジョン、忘れられてなかったよ……!!
今後が楽しみでもありますが、歴史が終わる瞬間を見たようで一種の物悲しさがあります。


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79話 ワールドオブカオス

 

「増えた……ってお揃い……もしかして弟!?」

 

「うん! 弟のチハク!」

 

「敵相手になに談笑している。本当に愚かな兄だ。手遅れだな」

 

「酷っ!!」

 

 

チゲンと双璧をなす、黒い衣を纏ったピットのボディ。チハクと、弟と呼ばれた少年が今、チゲンと並び立つ。

 

 

「私は数の利を得ながらもファイター達に敗北した。そして半身はもっと無様にやられた」

 

「もっと優しい言葉使ってよー!」

 

「とはいえ、ようやく私達は共に戦える……簡単に崩せると思うな」

 

 

指を交差させ、ぐるりと円を描く。

壁のように建つ白石は1番近くのセフィロスを弾き飛ばした。打つかり(ぶつかり)という技だ。

 

 

「……っ」

 

「続いてはこっちか……まずは削ろう、大幅に」

「了解!」

 

「「三連星(さんれんせい)!!」」

 

 

それぞれ十字と円を描き、顕現するは六つずつの白黒石。そこから分裂して放たれる弾はまるでガトリングのようだ。

 

 

「あいたたた!」

 

「密度が段違いだよ!!」

 

 

先程チゲンが単独で撃っていた、類似した裂かれ形(さかれがたち)と比べても、その弾幕の厚さは桁外れである。

敵の数が単純に増えただけではない、大きな違いがあった。

 

 

中手(なかで)……」

 

「まだまだ!!」

 

「いつの間に!?」

 

 

いつのまにかマリオに大きく肉薄していたチゲン。チハクが彼を囲うことで、擬似的な瞬間移動を果たしていたのだ。豪腕デンショッカーで殴り飛ばす。

 

 

「後ろも見ておくんだな!!」

 

「知っている」

 

 

カズヤの踵落としを回避し、(かかり)で白石をぶつけ、ダッシュアッパーで殴りつける。そのままチゲンとチハクが背中合わせで立つ。

 

 

「さっきよりも一皮剥けているわね」

 

「あっはっは! チハクと一緒ならもう何も怖くなーい!!」

 

 

ラブイズブルーの銃撃は全て黒石で防がれてしまった。それをチゲンがやったというのだ。連携だけではない。個々の能力すら高まっているように感じる。

 

チゲンの力の本性は、人の運を高める力。

不運な自分相手には使えない力であり、彼が1人では戦えない理由となっている。自動的に相手の勝運を高めてしまうのだ。ただしチハクと組めばその能力はフルに発揮されるのだ。少し包囲されていて、数で負けているぐらいがなんだ。

 

 

『ですがあなた達は囲まれていまス! 形勢はこちらが有利デス!』

 

「何を言っている、愚兄が負けている(囲まれている)などいつものことだろう」

 

「うー……」

 

 

脅しの言葉も効かない。聞いているが効かない。一瞬の戸惑いもなく、円を、交差を描く。

 

 

「あっ、あとあと! 囲うのはチハクの十八番なんだよ! 両当たり(りょうあたり)!」

 

 

ファイター達の周囲に白石が現れる。囲うように空中で静止しているそれは、まるで自分達を檻に閉じ込めているようだった。

身動きが取れなくなって、そしてようやく気付いた。黒の石を飛ばすチゲンもまた、指を動かしていた意味を。

 

 

「まずい!!」

 

「うらああああ!」

 

 

追い込んだ獲物を追い討ちする。

死角からも飛ばす黒石、ガトリングのように飛ぶ弾。硬直をつくってしまったファイター達は全身に傷が増えていった。

そしてその隙に包囲を脱出し、一方向にファイター達を視界に納める。

 

 

「この世界は私達のボディが征服した。どれだけ個が強かろうと大半の領地を私達が支配している以上、既に囲碁(私達)が勝っているようなもの」

 

「僕が敗北の化身で黒星の象徴なら、チハクは勝利の女神! チハクは僕相手に一度も負けたことはなーい!!」

 

「私はどちらかというと男だ。愚かなだけでなく、頭も足りていないのか」

 

「例えなんだからいーの!!」

 

 

左手にボディ由来の神弓を握り、右手はいつでも攻撃ができるように交差した指を向けながら言い放つ。

 

 

「(でも、まだ勝ちきれてない。火力はそれほどないから。ボディに関してもそこまでないし)」

 

 

2人の弱点。

それは既に看過していた。派手なコンビネーションでわかりづらいが、今までの技には火力が足りていない。

つまり防御力を上げればゴリ押せるかもしれないのだ。しかし、マリオにはそれが実行できそうでできない。

 

 

「(こうらさっき使っちゃったんだよなー!!)」

 

 

そう、その条件にピッタリのアイテムは、ロボットとベヨネッタと合流した時の戦闘で使用していたのだ。

緊急事態で持ち出したアイテムをいくつも持っているわけもない。どせいさんの村まで戻ればまだあるかもしれないが、当然そんなことする暇もない。

 

 

「ならこれでどう!」

 

「……愚直」

 

 

ならば、石ごと弾き飛ばすまで。

マリアが呼び出した白虎が正面から襲いかかる。しかし、チハクがぐるりと円を描くと聖獣の姿は消え、セフィロスとカズヤに向かって再び走り出した。

 

 

「貴様! 利用されるぐらいなら引っ込んでおれ!!」

 

「きゃー! ごめんなさーい!!」

 

 

空に逃げたセフィロスに、腕で防いだカズヤ。しかし、彼が常人離れしていても聖獣の爪を完全に防ぎ切ることは不可能であった。

 

 

「反射まで……これでは安易に攻められないわ」

 

「これ、こうらマリオになってても跳ね返されただけだね、危なかった!」

 

 

飛び道具の擬似的な反射まで使いこなす。

予備動作が大きいためにつけいる隙はあるが、反射があるのとないのとでは全然違う。

 

 

「ふっ」

 

「ふっ、ってなにさふっ、って! カッコ、つけないでよね!」

 

『ちょっと待っテ、ア』

 

「ピィーー!!」

 

 

セフィロスから飛んできたフレアを衛星ガーディアンズで跳ね返す。反射したフレアはかわしたセフィロスを通り抜けてロボットとウクレレピチューを巻き込む。

 

 

「あ! 衛星あったじゃん! どっちにしても反射してくる!!」

 

「いや、そっちはわかってたことだから別に問題ないが、それよりこっちの連携が取れていない方が問題だ」

 

 

うっかり忘れていたマリオは置いといて。

目的はほとんど同じはずなのに、バラバラに動いていた弊害で、セフィロスカズヤとその他の連携が取れていない。

素直に連携するような者たちではないが、互いに邪魔をしている状況はあまりにも良くない。

 

対して相手は示し合わせたかのように抜群のコンビネーションであった。

チハクが正宗を抑えている間に、チゲンの猛攻。白石を防御壁のように纏ったチゲンに手出しができず、あのセフィロスが得物を手放すしかなかった状況だ。

 

 

「───ッ! ねえ! この場だけでも協力できない!?」

 

「虫唾が走るわッ!」

 

「もう!」

 

 

フライパンを振り回し、パルテナの神弓との金属音が鳴り響く。もう片方の左手に握られていたテニスラケットがチハクを殴打する。

離れて行った隙にセフィロスが正宗を拾う。

 

 

「あら、大丈夫かしら? 随分と疲れてない?」

 

「え? そうなの?」

 

「……誤魔化せんか」

 

 

あまり動きにキレがないことをベヨネッタは見抜いていた。チハクは惑星PNF-404と呼ばれる場所で一戦交えており、休息もなしに連戦しているのだ。

チゲンも今までのダメージをなかったことにできる訳ではない。

 

 

「じゃあ、その分僕が戦う!」

「貴様の方が手遅れだ」

 

 

どちらも降り注ぐ小石の嵐。

それぞれの攻撃で撃ち落としていく。

 

 

「押し切れー!!」

 

「うう……おりゃあああ!」

 

 

翻したマントが小石を全て跳ね返す。

2人は飛翔の奇跡により空へ逃げる。

 

 

「うへえ……口に入った……」

 

「本当に愚兄だ……ッ!」

 

 

空を飛ぶ2人の兄弟が、

相対するファイター達がそれを見た。

 

 

「えっ、なに?」

 

「「ピチュ?」」

 

 

空を貫くような輝き、轟く音はなく雷ではない人為的な光。何かを訴えるような光は氷山の方角から見えた。

 

 

「あの光……行くぞ」

 

「逃すかァ!」

 

「ぐっ!」

 

「チハク!!」

 

 

立ち去ろうとするチハクの首に絞首台の縄がかかる。吊られそうな彼にカズヤの追い討ちがかかる。

 

 

「これで終わりだ……!!」

 

「……!」

 

 

悪魔の翼が生えたカズヤのフィストが奇跡が切れて宙ぶらりんになったチハクに殴りかかった。

 

 

「……なにっ……!?」

 

「え?」

 

 

その瞬間、チハクの体は完全に脱力した。

がらんどうになったからだへの一撃。そこには手応えはあっても歯応えはなかった。

あの瞬間、チハクはボディから抜け出していたのだ。

 

 

「わっ!」

 

「行くぞ」

 

 

消えたと思ったチハクはチゲンのそばから現れた。先程とそっくりの、ただし別のボディの姿を借りて。

驚いたチゲンは一瞬固まったものの、チハクに促されて光を追っていく。

 

 

「あ、待って!!」

 

 

遅れてファイター達も2人の跡を追う。

チゲンの、チハクの正体。

光の原因。

世界の異変とその全貌。

創造主の失踪と姿の見えないスマッシュブラザーズ。

 

まだ、真実を追い求める旅は続く。





○タイトル
初代KHのラスボス。闇の探求者アンセムが巨大化したハートレス。
ダブルセイバー化したソウルイーター振ってくるわ、ドナルドグーフィーとはぐれるわ色々あるけど、1番の強敵は飛行戦特有の独特過ぎる操作性。


○チゲンとチハク
元ネタは囲碁の付喪神です。それ故に攻撃方法、技名も囲碁関係となります。ちょっとわかりづらいのですが、
チゲンが兄、ボディがブラピでカラーが白。
チハクが弟、ボディがピットでカラーが黒。
となっています。月桂樹を外しているのは共通。
チゲンは無自覚に他者の勝運を高めるために、戦闘では誰かとのチーム戦が基本です。そのためチハクと離れて個々で行動すること自体かなり計算外だった模様。実は作者も計算外。(後述)
実は35話にてチゲンの声が入っていました。透明にして誰か気づくかなって思っていたけど誰も気づくわきゃねーだろとセルフツッコミ。


○今章の裏話
ちょっと強引ですが、今章は今話にて終了です。
ちょっとリアルで色々ありまして、執筆意欲が下がっていましてちょっと乱文になってる感が否めない……
彼らの続きは最終章にあたる話で語られることになります。
チゲンとチハクが個々で戦っていたことが作者にとっての計算外のことですが、3章の話がそもそもピクミン3の世界ではなく大乱闘の世界を舞台にしていたということに起因します。
つまり予定通りなら、この兄弟が2人で大乱闘の世界を担当しているはずだったのです。しかし、舞台の変更の結果、チゲンのワンオペになりました。過労死するぞ。
さて、今までの章では、スマッシュブラザーズから数人を出演していても、明らかに優遇されていた、いわゆる主人公枠がほとんどの場合いたわけです。
1章ならインクリング、2章はシュルク、3章はアイクラ、4章は不在、5章は微妙だけど神トラリンク、6章ならレッド。
あまり意識していなかったんですが、今章も露骨に目立っていたファイターはいなかったわけで。マリオというMr.ニンテンドーがいながら、強いて言えばベレトになるかと。なんかスマブラ長編小説で全員にフォーカスを当てるのは難しいので、数人だけフォーカスを当てるのオススメです。


○作者の気まぐれコメント
祝! バケツ超強化!!
必ず二確が保証されるの強過ぎる! 宇宙人派勝つぞ!! ……そろそろフェス勝ちたい……
あとペルソナ5の外伝がソシャゲで登場したとか。しかし日本語未対応だそうで。ほんと悲しい。


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Luigi’s Mansion 3 “Revisit”
80話 勇者30


 

 

人は自分にないものを欲しがる。

覚えがあるだろう? スマッシュブラザーズは人の憧れが大集合したような団体だ。

 

ヒーローのようなカッコ良さ?

ヴィランのような強さ?

 

そこはどうでもいいや。欲しいものなんて人によるし、プレゼントする訳でもないしね。

 

 

馬の眼前に人参がぶら下がるが如く、本当に欲しいものは何を犠牲にしてでも欲しがるものさ。

 

その求めるものと本気度によって、その話は狂愛にもなるし、純愛になる。

その人は正義にもなるし悪にもなる。

 

でもさ、ちょっとした興味で針に指を刺して眠っちゃうこともあるし。一口林檎を食べて死んじゃうこともあるし。

 

軽く背中を押してしまえば、全てが本当に欲しいものになり得るのさ。

 

 

君達は何が欲しい? この世界に何を求めている?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カポッ、カポッという重い靴音がいやに大きく響く。しかし、その音は恐る恐るといった印象だ。やけに間隔が長い。

緑色がトレードカラーのルイージは震えながらその建物に入った。手も足も震えに震えている。少しずつ、少しずつ牛歩のように進んでいたルイージは後頭部をパチンとはたかれた。

 

 

「しっかりしなさい! 一度1人でどうにかした場所でしょ!」

 

「怖いものは怖いんだよー!!」

 

「大丈夫ですよ! パパッと確認してパパッと帰るだけですから!」

 

「ワン!!」

 

 

良い仲であるデイジーと、頼りになるパートナーオバ犬、それにキノピオ隊長を仲間に加えて、ルイージはオバキュームを背負って建物に突入しようとしていた。

 

その建物とはホテル、ラストリゾート。

かつてキングテレサとパウダネス・コナーと戦った舞台である。その後建物は崩壊し、オヤ・マー博士や残ったゴースト達によって再建され、真っ当なホテルとして再出発したはずなのだが……

 

 

「なんでこんなのに戻ってるの〜……」

 

 

再建されたものとは程遠い、夜の世界に建つ不気味なホテルに戻っていた。灯りは怪しい紫色で、真っ黒で不吉な鴉がこちらを睨みつけている。再建したはずのホテルと同一のものとは思えなかった。

 

 

 

 

 

 

せっかくのまとまったオフだが、ルイージは休むこともできなかった。

兄のポンプやら、自分のオバキュームやらの開発とメンテナンスでお世話になっているオヤ・マー博士からヘルプが届いたのだ。

 

 

『大変じゃ! 大変じゃぞルイージくん!! ラストリゾートが大変なんじゃ!! ……は? デート? そんなもんよりワシの身の安全を確保するのが先じゃ!!』

 

 

なんとか落ち着かせて聞いてみれば、ラストリゾートが乗っ取られたとのこと。

オバケ達が反乱でも起こしたのかと思いきや、一緒に叩き出されているので原因は別らしい。

ともかく追い払ってくれ! とのことだ。

 

 

「う〜ん……確かにおどろおどろしいけど……オバケの時ほど変化はないというか……」

 

「ワン!!」

 

 

その時唯一共にいたオバ犬に同意を求める。

確かに一見、時を巻き戻したかのような印象だが、よく目を凝らせば再建後の面影もある。

カーテンが破れていたり、飾りが壊されていたりはしているが、みなで作り直したものと同一の建物だ。幻が建てられていたようなあの時とは違う。怖がっていても、長年の経験は違和感を見逃さない。

 

 

「い、いくよ。行ってみないと終わらないし……」

 

 

オバキュームのライトを握りしめる。汗ばむ手を震わせながら、恐る恐る出した手によって扉は開いた。

 

 

──1F メインロビー

 

 

「へぇー、雰囲気あるわねー」

 

「こ、こんにちはー……誰かいますかー……いたら返事をお願いしま……やっぱりしないでー……」

 

「うう〜……やっぱり着いてこなきゃよかったかな〜……」

 

 

一種のお化け屋敷気分で踏み入れたデイジーと対照的に、ルイージはいまだに及び腰だ。

内部もまた灯りは最小限、怪しげな紫色の光がほのかに、蜘蛛の巣だらけのシャンデリアに灯っていた。

 

 

「ワン!!」

 

「え、あ、また行っちゃった……」

 

 

そしてオバ犬は自由気ままにどこかに行ってしまった。まあ、いつも通りであるために追っていったりはしない。壁も床も天井もすり抜けられるオバケを捕まえられる気はしない。ただ、いきなり目の前に現れて驚かせるのだけはやめてほしい。

 

 

「ホンット神出鬼没ね! ちゃんと躾してる?」

 

「う〜ん……しなきゃダメかな……?」

 

 

そういうのが苦手な自覚はある。

とはいえせいぜいいたずらっ子で済む程度だと思ってはいるのだが。

身のない会話。だが、今はそれがありがたい。なぜなら、怖さが軽減するのだから。状況が悪くなるのはいつも突然だ。こんな話をしていられるのも今だけかもしれないのだから。

 

 

ガタッ

 

「え?」

 

 

一瞬、何かの物音がした気がして、ルイージは後ろを振り向く。気のせいだっただろうか。後ろには入ってきた扉以外何もない。

一瞬のことだったから、音が鳴った場所を間違えたのだろうか。それとも音自体、単なる気のせいなのだろうか。

 

 

「勘違いかな?」

 

「うーん……」

 

「勘違い! ぜったい勘違いです!!」

 

 

デイジーは何かが引っ掛かるようだ。気の強い彼女は気のせいなんて言葉で簡単に物を片付けない。

 

 

ガタガタッ

 

 

ヒィ!? やっぱり勘違いじゃない!! こっち!?」

 

 

ただ勘違いじゃない。

今度は音源の方角もはっきりわかった。入り口から入って右側。エレベーターのある方角だ。

反射的に懐中電灯をそちらへ向けた。

 

 

「よ、よかった……何もないです……ガクガクブルブル……」

 

「いや……よかったじゃないわ……」

 

 

確かにまだ何もない。ならば先程の音はなんなのだ。エレベーターの上についている灯り。B2という場所と上向きの三角が光っている。

 

 

「まさか……」

 

 

さっと血の気が引いた。顔が真っ青になる。

B2の灯りが消えて、隣のB1が光る。ちかいっかい。

 

 

「まさかまさか……!」

 

 

キノピオ隊長が両手を頬に当てて声にならない叫びをあげる。

B1が消えて1が光る。いっかい。ここ、いっかい。

 

 

チン♪

 

『『『…………!』』』

 

「「うわああああああ!!」」

 

 

場違いなほどに軽快な音が響き、エレベーターの扉が開く。そこからギュウギュウに詰まっていた誰か達が一斉に飛び出してきたのだ。

キノピオ隊長は咄嗟に入ってきた入り口の方へ向かうが。

 

 

「なんで!? なんで!? なんで全然開かないですかぁああ!!」

 

 

ガチャガチャ押し引きするも、扉は開くそぶりもない。完全に閉ざされた扉はテコでも動かない。

 

 

「このぉ!」

 

 

デイジーは反射的にフライパンをフルスイング。確かな手ごたえがあった。想像していたオバケの手ごたえとはまったく違っていたのだ。

 

 

「え? 何よコレ」

 

 

違和感に気づいて飛び出してきた者達を見る。

薄暗くて見えづらいが、それらは確かに自分達が倒したキーラとダーズの狗達。

 

 

「デイジー、こっち!!」

 

「ええ!」

 

「開かな〜い!」

 

 

咄嗟に入り口まで戻るが、扉は開かない。

閉じ込められたのだ。

 

 

「どうしよう……!」

 

 

内心かなり焦りながら、オバキュームでそばのボディを吸い込んで、反動で発射する。出入り口は先程からキノピオ隊長が何度も叩いているが、開かない。

窓を破って逃げようにも、相手に閉じ込める意思があるために対応、対策される可能性が高い。吹き抜けの階段を登って2階に逃げようにも、結局外に出れる場所がないため時間稼ぎにしかならない。

 

 

「どうにか振り切って、エレベーターまで行くわよ! それしかないわ!!」

 

「う、うん!」

 

 

考えた結果、エレベーターまで逃げ込むことにした。間にはボディが十数体ほどいるが、しのごの言っていられない。

 

 

「ど、どけ〜!!」

 

 

慣れぬ脅し口調でオバキュームの先を構える。身構える者、横跳びで避ける者などそれぞれだが、隙はできた。

 

 

「さっさと行くわよ!!」

 

「あっ、は、は、は、はい〜っ!!」

 

 

その隙にデイジーがキノピオ隊長の傘部分を掴んでかけだした。そしてルイージは、

 

 

「こ、こっちだ!!」

 

 

ボディ達の囮を買って出た。

幸い、ボディ達の連携は取れていないのか、実害を出していない2人ではなく、ルイージの方だけを向く。

 

メインロビーの左階段を駆け上がり、中央付近でさらに挑発をかける。

 

 

「こっちこっち〜!」

 

 

愚直に跡を追うボディ達。だが、少しは頭を使う者もいるようで、逆側の階段を登る者がいた。それを見たルイージは階段を登り、カウンター前まで動く。

 

 

『……ッ!』

 

『……!』

 

「わあ!?」

 

 

ボディ達の手が届くと言ったところで、ルイージは吹き抜けから飛び降りた。

上手く着地し、エレベーターへ駆け出す。

 

 

「デイジー! 閉めて閉めて!」

 

「ルイージ!! 階数のボタンが外されてるわ!」

 

「地下以外のボタン押して!!」

 

 

そう聞いたデイジーは、地下と一階以外で残っている唯一のボタンを押した。

 

 

「だああああ、ああああ!?」

 

 

閉まり始めた扉に走り幅跳びのように飛び込んだルイージはオーバーオールのお尻部分が挟まれてしまった。

 

 

「もう!! ホンット締まらないわね!」

 

「あはは……」

 

 

呆れるしかできない。

ボディを振り切って飛び込んだ所はとってもかっこよかったのに、いつも最後は締まらない。

 

 

「ところでこのエレベーター、どこに……」

 

 

キノピオ隊長の控えめな意見に3人全員がボタンを見た。

慌てるだけで何もできなかった負目である。

 

 

「えっと〜……」

 

 

階数のボタンはデイジーの言った通り虫食いになっていた。

一階と、地下一階に地下二階。

そして、今光っている階層は。

 

 

「13、階」

 

 

そこは、ジムフロアだった。





○章タイトル
ルイージマンション3の海外名。そのままなのでわざわざ言う必要もなさそうだけど。
Revisitの意味は再訪。再訪なのはルイージとオバ犬だけですが。

○タイトル
勇者30というゲームからそのまま。
三十秒勇者というフリーゲームが元となったゲームで、4つのゲームを三十秒という短い間でクリアするゲーム。ようするに勇者なのは30秒だけ。


○ラストリゾート
再び記載。
ルイージマンション3の舞台。6階くらい上からホテルのエリアじゃない砂漠とか海とかある。
原作のラスボス戦にて崩壊。エンディング後再建され、オバケ達やオヤ・マー博士はそこに住むことになったが、本作では再び乗っ取られる形に。構造とか新たに考えるのは大変なので、おおまかな構造はほとんど変わっていないことになります。
ちなみにラストリゾートの本来の意味は、最終手段、最後の切り札とかいう意味。原作の他にはFF11のスキルやKHにてアリスモチーフのキーブレードの名前に使われたりしている。


○オヤ・マー博士
ルイージマンションシリーズに登場。
オバキュームの他にも、マリオサンシャインのポンプなどを作った人。
その上、オバケの絵を収集している変わり者。


○オバ犬
ルイージマンション2から登場。
キングテレサのせいで暴走していたが、改心して以降はルイージのペットに。3ではチュートリアル後はルイージから離れてあちこち冒険?していた。


○キノピオ隊長
初登場はマリオギャラクシー。マリオの手助けにパワースターを探している。が、隊員が迷子になっているなど、微妙に役に立ってなかったり立ってたり。人気のおかげか外伝の主役も張り出した。
本作ではライトの補助のほか、場も和ませてもらいます。なんせ作者自身ホラゲー苦手なので。




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81話 Everlasting Love

 

──13F ジムフロア

 

チン♪

 

エレベーターの扉が開く。

こっそりと様子を伺うが、そこは不気味なほど静まり返っていた。先程のような大立ち回りはとりあえず必要ないらしい。

 

 

「ふう……ようやく一息つけますぅ……」

 

 

エレベーターから出てお行儀悪く、その辺に座り込む。短い時間に色々あり過ぎて精神的に疲れていた。

 

 

「でも……これからどうしよう……」

 

 

ホテル再建に関わったルイージは知っている。このホテルに階段は一階近辺にしかない。エレベーターで降りるしかないが、ボタンの使える一階や地下にはボディがいる。

13階から窓を割るのは流石に危険だ。脱出するためには危険を承知で降りなければならないが、降りたとしてあのロビーの出入り口を開けなければどうにもならない。

 

 

「カーテンとか繋いで縄でもつくる?」

 

「……いえ、このホテルをまわるわ!」

 

「え、でも危ないし……」

 

「そうですよ、またさっきのそっくりさん達がどこにいるかわかりませんし!」

 

 

ルイージは控えめに否定するも、デイジーは聞く耳持たずだ。後ろ向きな彼を引っ張るように彼女は強気な女性である。

 

 

「エレベーターのボタンを引っこ抜くなんて明らかに誰かが閉じ込めるためにやったことよ! そして、必ずここのどこかにいるはずだわ! とっ捕まえて吐かせるのよ!」

 

「あ、あの〜、できれば穏便に……」

 

「な・に・よ」

 

「なんでもないです……」

 

「ルイージさん! 尻に敷かれっぱなしですよ!」

 

 

デイジーの頭の中では、ホテルからオバケ達を追い出した犯人=閉じ込めた犯人になっている模様。すなわち貴重なフリータイムを邪魔した元凶なのだ。穏便にする理由なんてない。

 

 

「さ、行くわよ! 地下から屋上まで全部回るわ! どこに隠れても見つけ出してやるわよ!」

 

「ひー……」

 

 

虚空を指差し、決意を固める。

男連中は振り回されっぱなしだった。

 

 

「それで、13階って何があるんですか?」

 

「ジムフロアだよ、ダンベルとかバーベルとか……」

 

「体も鍛えられるのね、けっこう設備揃ってるわね〜」

 

「あはは……」

 

 

まだジムやコンサートホールはあってもおかしくないだろう。だがこのホテルには、他のホテルにはないどころか、おおよそ建物内にあってはならないようなものが存在するのだ──

 

 

「じゃあ、次にあるのはカウンターかしら」

 

 

なんの警戒もなく、そして周りが警戒する間もなくデイジーが扉を開け放つ。止める声も出ず2人振り向く。キノピオ隊長のヘルメットのライトが丁度扉の先を照らした。

 

 

「「ぎゃああああああああ!!?」」

 

 

堀の深い顔面がライトに当たり、ホラー感が増したガノンドロフのボディが現れる。

 

 

『……ッ!?』

 

「邪魔!!」

 

「「えええええええええええ!!?」」

 

 

咄嗟に蹴り上げたヒールが脛にクリティカルヒット!

ガノンドロフ?は倒れた!

 

抱き合って悲鳴を上げる2人も、驚きへと変化していった。一撃で倒し、溶けていくボディをしっかりと現認したのだ。

 

 

「さすがにおてんばだね……」

 

「サラサランド、怖いよぉ……」

 

「……ん?」

 

 

震え上がっているところ、幾分か冷静になったルイージ。やっぱり一撃なのはおかしいのでは?

 

 

「デイジー、もしかしてだけどさ……僕が見てない間に鍛えたりしてた?」

 

「そうよっ、って言いたい所だけど、流石に一撃なのはおかしいわね……」

 

 

本人もまた疑問に思っているようで、元気溌剌な眉を少し下げた。

ボディは溶けて消えてしまったので、直接調べることはできないが、考えられることはボディそのものが弱体化したか、誰かがボディと戦っていたか。

 

前者の可能性は薄い。あまり戦っていないから断言はできないが、一階のボディはそんな様子は見られなかった。となると。

 

 

「この階、誰かいる」

 

 

それに気づいたルイージは先頭に回る。できれば相手より先に相手を見つけたい。それには、部屋の配置を知っているルイージが適任だった。

 

そっと扉を開けてロビーを確認する。

先程、ボディ出てきたと思えないくらいには整頓されており、荒らされた形跡はない。別の部屋で戦っていたのだろうか。

 

 

「…………ゴクリ」

 

 

唾を飲み込み、内部へ侵入する。

ここからはプールに続く部屋と、ロッカールームがある。心を沈めて聞いてみると、ロッカールームの方から微かに物音が聞こえた。

 

 

「(……! あっちだ!)」

 

 

そして、すぐ後ろからも物音。

ギギギギという効果音と共に首を回すと、青の混じった平面人間。

 

 

「うわあっ!!」

 

 

平面なのを活かして身を潜めていた敵は、イスを振り回してルイージをぶっ飛ばした。正面のガラスをぶち破り、プールに勢いよく着水する。

 

 

「キノピオ! じっくり照らしておきなさい!」

 

「は、はい!」

 

 

異常を聞き取ったデイジーが飛び出して、ボディとの戦闘に入る。噴霧器を蹴り飛ばして意趣返しにと、テニスラケットで奴を弾き飛ばした。

 

 

「うわ、こっちにもいる!!」

 

 

プールに着水したルイージは慌てて上がる。

周りにボディがいる。エントランスで会った時ほどではないが、4体ほどに囲まれている状況は好ましくないのだ。

 

 

「しつこいよ!!」

 

 

とりあえず近くのボディに対して、懐中電灯で目眩しを行い、オバキュームを振り回す。怯んだ隙に飛び蹴りでシャワールームの扉まで蹴り飛ばした。

 

途端にガチャっという音が聞こえる。シャワールームの扉が開かれた。

 

 

「うおお!?」

 

 

打ち返すように跳ね返ったボディ。

そうしたのは、緑のグローブ。タオルを首にかけ、汗を流した男。

 

 

「ん? ルイージにデイジー」

 

「ええ!? マック!? なんでここに!?」

 

 

違う世界には基本不可侵であるはずなのに、どうして彼がここにいるのだ。

プールまで来た理由はわかる。ガラスを破った音が聞こえてきたのだろう。ロッカールーム方面の物音は恐らく彼だ。

 

 

「後でいいわよ、まったく!!」

 

 

囲まれているルイージの方へ向かい、ボディを足で引っ掛けてプールに落下させる。浮かんだ頭を数発フライパンでぶん殴った。

リトル・マックも参戦し、まっすぐなストレートの一撃が壁にめり込ませる。そうして異界の友人と並び立った。

 

 

「いやー、おつかれっす、デートっすか?」

 

「あ、いやあの」

 

「デート……」

 

 

リトル・マックが無自覚にデイジーの琴線に触れた。悪い方の線だ。不協和音が鳴り響き、

 

 

「本当だったらそうなってたのよぉ!!」

 

 

完全に切れた。色んな意味で。

 

 

「「「ヒィイイイイ!?」」」

 

 

鬼女房に尻に轢かれる系の男が増えた。

いや、これは相手が悪いのか? 下手したらオバケやボディよりも怖そうなサラサランドのお姫様。雰囲気に似合わないオレンジの服を身にまとい、群がるボディを殲滅する。

残りの1人もプールに叩き落とし、ヒールで沈めて溺れさせた。良い子は真似しちゃいけないヤツである。

 

 

「で、なんでアンタはここにいるの?」

 

「う、うっす! アネゴ!」

 

「アネゴはやめてよ」





○タイトル
みんな大好き塊魂の楽曲。レースのステージでの印象が作者は強い。
タイトルだけ見るとしっとりした恋愛ソングみたいなイメージですが、実際にはかなり爽やか。接続詞をあまり使わない歌詞が特徴。


○階層
原作では順番に階を上がっていくことが多かったが、今作ではバラバラ。順番がわからない方が楽しいですし。


○作者の気まぐれコメント
ゼルダコラボフェス、始動……だと……?
ミステリーゾーンじゃなかった、トリカラバトルのステージ早く遊びてえええええ


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82話 シオンタウン

 

「えっ!? ここアンタらの世界なんすか!?」

 

「声が大きいわよ!」

 

「(デイジーもね……)」

 

口には出さない。ボディの二の舞はゴメンなのだ。なんか怒りのせいか、いつもより短気になっているように感じる。

 

 

「いやいや、じゃあなんで俺、この世界にいるんすか」

 

「こっちが聞きたいわよ……寝ぼけて迷い込んだんじゃないの?」

 

「俺、大乱闘の世界に行こうとしただけっす」

 

「じゃあそこで寝ぼけたんだわ」

 

「そんなピンポイントで寝ぼけねえ!!」

 

 

大乱闘の世界に戻るつもりが、ラストリゾートにいた……ということだろうか。

だが、そんな前例は聞いたことがない。異なる世界のファイターが同じ世界で戦えるのは、大乱闘の世界の、マスターハンドのおかげである。

 

その介入を許さずに違う世界を繋げる力を持つ者がここにはいるということなのか。

 

 

「あっちでも何かあったのかな……」

 

「あっちって、大乱闘の世界のことですか?」

 

「うん、冷静に考えたらボディだってあっちの敵だったし、何か起きてるならあっちかなって」

 

「ここで起きてることと何か関係あるかもですね!」

 

 

デイジーの、ここにいるはずの元凶を探す方針は間違ってはいなかった。ここで探索を続けることで大乱闘の世界に戻った時に優位に動けるのであれば。

 

 

「もっと探そう。何かあるだろうし」

 

「でもどこ探す? 危険を承知で地下行く?」

 

「う……」

 

「どうしたんすか?」

 

「エレベーターのスイッチがなくてあんまり動けないんです……」

 

「スイッチ……」

 

 

何か心当たりがあるのか、グローブの中から何かを取り出した。

 

 

「ちょ……!? どこから出してるのよ!」

 

「臭い! 汗臭い!!」

 

「仕方ねえだろ!? しまうとこなかったんす!」

 

「これ……」

 

 

リトル・マックが持っていたのは、まごうことなく3階のスイッチだった。

 

 

──3F ショッピングエリア

 

 

4つの出店を2階とエスカレーターが区分けをしている。このショッピングエリアのメインである。トランプの記号、スートがモチーフとなっているお店。

お土産探しでぶらりと歩く宿泊客がごった返しているはずのこの場所も、不気味なほどに静まりかえっていた。誰もいないはずなのにエスカレーターだけが動いている。客どころか店員もいないこの場所では、時が止まったかのような感覚に陥らせる。

 

 

はずであったのだが。

 

 

「ガハハハハハッ! なんだおまえら、こんなごちゃごちゃしたところに何の用だ!」

 

「チェンジで」

 

「なんだおまえ、照れ隠しか? 意外と可愛いところあるじゃねえか!」

 

「コイツじゃあ、本気で迷い込んだのか巻き込まれたのかわからないじゃない」

 

 

同じ世界の人間では、正当にこの建物に入った可能性もあるのだ。

ワリオは美容室の一角にいた。鏡の前で服やらヘルメットの角度を調整していたのだ。店員がいないのでカットはできない。居たとしても、当然お金は払わない。

 

 

「で、はい」

 

「あ?」

 

 

デイジーが手を差し出す。何かを要求する手だった。

 

 

「やるもんは何もないぞー? 屁ならやれる!」

 

「いらないわよ、そうじゃなくてスイッチ」

 

「ああ、ワリオさんここにいたんですから探索だってしてるはずですからね!」

 

「はあ? してねえよ、ずっとオレさまの美貌に惚れてたぞ」

 

「コイツ朝、顔洗うたびにこんなことしてるんか?」

 

「アホかリトル・マック、そんなことしねえよ!」

 

「……そんなことってどっちっすか!?」

 

「落ち着いてみんな……」

 

 

結論から言うと、ワリオはエレベーターのスイッチを持っていないということだ。

リトル・マックが持っていただけで、迷い込んだ後に探索しようとするかはまったく別の話ということだ。

 

 

「えっと、スイッチがないなら探してみよう。もしかしたらこの階にあるのかもしれないし」

 

 

ルイージは積極的に動きたいと考えていた。ここの地理をよく知っているのは、どこにいるかもわからないオバ犬を除いて自分だけなのだ。

デイジーがオセオセタイプなので、自分が動く前に動かれるだけなのだ。

 

 

「他のお店とか……管理室とか他にも部屋あるし」

 

「それなら管理室っすかね? そっちの方がらしいっす」

 

「それで、管理室ってどこよ」

 

「へー、なんか大変そうだな」

 

 

他人事のように、スタイリングチェアにどっかり座りながら鼻をほじるワリオ。顔をしかめたデイジーがその頭をはたいた。

 

 

「何言ってんのよ、当然アンタも来るのよ」

 

「はあ? なんでオレさまが?」

 

 

ワリオが住んでいる世界はここなので、別に異変を解決しなければ帰れないなんてことはない。このホテルだけで完結している出来事なので、外にさえ出てしまえばワリオには本当に関係ないことである。

 

 

「今、玄関閉じてるのよ、出られないの」

 

「何!? オレさまの才能はこんなところで腐らせておくものじゃないぞ!」

 

「あれ、でも確か地下の駐車場に」

 

 

ルイージの顔面に平手打ち。

 

 

「だ、か、ら、閉じ込めてる奴を懲らしめて、入り口を開かせないといけないの」

 

「そうか! がんばれよ!!」

 

「アンタも頑張んなさい!!」

 

「うおおおおい!?」

 

 

デイジーがワリオをエスカレーターまで放り投げる。ルイージが顔をさすり、デイジーが両手を叩く中、エスカレーターがただの坂になる。

 

 

「ぶぼぼぼぼぼぼ!!」

 

「あ、そんな仕掛けあったのね。役にたったじゃない」

 

「こんなのあったの知ってたんですかね?」ボソボソ

 

「知ってなくてもあんな危ない場所に人を放り捨てられる根性がわかんねえっす……」ボソボソ

 

 

ずり落ちてきたワリオを眺めながら、一同微妙な顔をするしかなかった。こういう時どんな顔をすればいいのかわからない。

 

 

「えっと……ん?」

 

 

どうにかこの空気を壊そうと口を開いたルイージは、2階のお店の前を通り過ぎていくオバ犬を見た。エレベーターに戻っていく? いや、おそらく向かうのは、

 

 

「警備員室……!」

 

 

直感したルイージはエスカレーターに足をかけた。坂状になって強かに顔面を打ち付ける。

 

 

「ぐばっ」

 

「同じ罠見てんだから心の準備くらいできるでしょ……」

 

「ワン!!」

 

 

 

 

 

「すいませーん、誰かいませんかー」

 

 

バッテンじるしの絆創膏をつけたまま、警備員室の扉をノックする。ブラインドが下まで降りており、中の様子は窺い知れなかった。

少しだけ扉を開く。連結した2つの部屋は綺麗に整頓されているが、少しだけ机に埃が積もっていた。

 

 

「誰もいないみたいですね……」

 

「うん、あんまり出入りした痕跡もないけど、一応調べとこうか」

 

 

ボディがいる気配もしないので、全員が中に入り込む。どこにあるのかなと周りを見渡した。

 

 

「ブワア!」

 

「「わーーーーー!!??」」

 

 

背後からの脅かしにリトル・マックとキノピオ隊長の2人が大声を出す。他は反射的にそちらへ向いた。赤色のオバケ。

 

 

「なんだ、ただのオバケか……どうしたの?」

 

「ただのっておい……」

 

 

リアクションの大きい2人に上機嫌なオバケはルイージの姿を認めると半べそをかいて近づいてきた。何かを訴えるが、喋っている内容は理解できない。

 

 

「よくわからないけど……何かあったのは間違いないかな……」

 

 

オバケの足を猫じゃらしのように遊ぶオバ犬は、()()()()()()()()()()のを見て床をすり抜けて行ってしまった。

他はオバケに集中していて気がついていない。

 

 

「うわっ!? なんだこれ!?」

 

 

人混みの中央に机が叩き落とされて、咄嗟に後ろへ下がった。動揺しながらも戦士の体は動いていたために実害はない。

 

 

「物がどんどん浮かんでるわ……!」

 

「ポルターガイストっすよ!」

 

 

机だけではない。

椅子や棚や机上照明ロッカー水鉄砲鍵懐中電灯脚立バケツダンボール夜食用の箸……

物という物が次々と浮かんでいく。

 

 

「まさか……」

 

 

冷や汗、ひとつ、流れて。

 

 

「逃げろおおおおおおお!!!」

 

 

どんどん投げつけられる物の雨嵐に、ファイター達は転がるように警備員室の外へ出た。

 





○タイトル
みなさんご存知初代ポケモンのホラースポット。
何より曲が怖くて。心霊現象が起こったとかいう都市伝説も。
白い手とかラッタ死亡説とかさらにホラー要素を出してくるのが心臓に悪い。


○随所で出てくるオバ犬
所々で登場する。重要な場面だったりそうでもなかったり。
ようは気まぐれワンコ。


○作者の気まぐれコメント
気まぐれと言いつつほぼ毎回あるのは内緒。
それはさておき、ゼノブレイドォ!
再びシュルクとかレックスを使えるとはなぁ!
しかし、レックスの声優さんあんな渋めの声も出せるとは……


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83話 サイレントヒル

 

「もう!! なんなのよこれ!」

 

「わかりませ〜ん!!」

 

 

部屋にあった大小様々な物が嵐の如く襲いかかる中、慌てて廊下まで飛び出す。しかし、ポルターガイストは止まらない。廊下の観葉植物や自動販売機なども加わり攻撃は更に激しさを増していく。あのオバケは驚いて壁をすり抜けて逃げて行った。

 

 

「だから勝手に頑張れとオレさまは言ったんだ! 巻き込みおって!」

 

「何でもかんでも自分の思うがままに動くと思うなよって!!」

 

 

ワリオのタックルが前方から飛んでくる椅子を粉砕し、リトル・マックのストレートパンチが植木鉢をかち割った。

 

 

「どうするっすか!? エレベーター行く!?」

 

「新しいスイッチないから同じ場所か地下だけど! やり過ごすのが先かなぁぁあああ!?」

 

 

悲鳴まじりの今後の予定。恐怖で怯えながらも頭を回すなどという離れ技ができるのは2番手でも天性の2番手だということか。

 

ショーウィンドウの前まで戻ってくるが、背後からだけでなく前方からもポルターガイストが襲ってくる。

 

 

「きゃ!?」

 

「デイジー! あっ!!」

 

 

何かが当たって破れたガラスの破片がまたポルターガイストで襲ってくる。

ヒールのせいで転んだデイジーの右腕がぱっくり裂けてしまう。物が増えていくにつれ、どんどん攻撃が手厚くなっていく。破壊してもその破片が攻撃に加わるのだからキリがない。ルイージの鼻先にレジのレバーが掠めた。

 

 

「物自体に仕掛けがあるとは思えない! 何かがこっちを把握して操ってるんだ!」

 

「じゃあバラバラに逃げるぞ! こっちにだけは来るなよ!」

 

 

そこで5人はそれぞれが動く。ルイージは1階部分に飛び降り、ワリオは警備員室付近へ戻っていく。キノピオ隊長がそのままエスカレーターを逆走して1階部分へ。リトル・マックは2階部分を進み、デイジーは店の中でガラス台に隠れてみる。

 

 

「(これでどうだ……?)」

 

「(これでどこかに集中したら……)」

 

「(何が起こってるかわかるかも……!)」

 

「(こっちにくんな……!)」

 

「(どうなる……!)」

 

 

心霊現象は、どうなる?

 

 

「これは……」

 

 

今まで動いていた物体が空中で静止している。

そして辺りを動き回るかのように、右往左往し始めた。その動きは。

 

 

「……迷ってる?」

 

 

個々で動き始めた彼らにどう対応していいのか迷っているような動きだった。しかし、やがて狙いを定めたのかある一点に向かって飛んでいく。

 

 

「あっ!」

 

「ええっ!? なんでよりにもよってワタシなんですかぁ!」

 

 

キノピオ隊長だった。

大きなリュックのせいか、背中の防御力は高いのだが、機動力がない。1番近いルイージが助けようと動こうとした。が。

 

 

「(いや……もう少し待とう。あの動き……絶対誰かがやってる。それをどうにか見極めて……!)」

 

 

美容室から顔半分だけを出して、キノピオ隊長の周りを観察する。

迷うということは誰かの手によるもので、隠れてもいないのに個人に攻撃が集中するのは相手が対応しきれないから。視野を広げて見回す。

荷物を盾にするキノピオ隊長。右手に浮く椅子、左手に襲いかかるカーテン。足元にぶつかりにいくレジスター……もっと、もっと視野を広げて……

 

 

「そこ!!」

 

 

エスカレーターの手すりの影、空間の揺らぎがある場所にオバキュームのキューバンを撃ち放った。うっかりすると見落とすほどの密かに隠れた存在がそこにいた。

 

 

「きゃっ……」

 

「そしてこれ!」

 

 

キューバンが空中で止まる。否、姿を消した誰かに貼り付いているのだ。異変を察知し、駆け寄ってくる皆の声を背景に、ダークライトを浴びせる。

 

 

「いやあああ……何……!? えっ、なんで私の姿が……」

 

「えっ?」

 

 

呆気に取られた。

だってその姿は。

 

華美な装飾が外され、ふんわりしたスカートが普通のスカートに。そして、夜に溶けるような黒い姿をしているが、それはピーチの姿だった。仲間と同じ顔をした誰かが今にも泣きそうな顔をしていた。目から涙が溢れてきそうで、ルイージの頭が真っ白になる。

 

 

「うええぇぇぇ……なんかそっくりなだけじゃなくて喋るのも増えたし……もうやだなんなのもう……」

 

「ええ……えっとあの……大丈夫?」

 

 

ざめざめと絶望しきったような顔をしている少女に全ての状況をすっぽかして慰めの言葉をかけた。

 

 

「いやだ……もう私、静かに暮らしたいだけなのに……」

 

「いやだから……」

 

 

しかし、まるでこちらを認知していないかのように両手で顔を覆って泣き続けている。

 

 

「もういや出てってよぉお!!」

 

「えええええええ!?」

 

「キレてるぅ!?」

 

 

認知していないのではない。まったく話を聞いていなかっただけだった。完全に錯乱した少女はさらにポルターガイスト現象を発生させてしまった。

 

 

「ばっ!?」

 

「壁まで……!! パワーアップしてる!」

 

 

感情の昂りに比例して、発生させるポルターガイスト現象もパワーアップしているようで、家具や物体はおろか、壁や床、柱などをひっぺがしてまで襲ってきているのだ。

 

 

「どうにかして抜け出して……」

 

 

ヒールを脱いでまで駆け抜けようとしたデイジーの目の前に金色の円柱が飛び込んでくる。咄嗟に掴むとそれは6と書かれたエレベータースイッチだった。

 

 

「スイッチ! 紛れてたのね!」

 

 

ならばここに居続ける理由はない。

とっとと違う場所に逃げ込んでしまえばいい。

 

 

「エレベーターまで! なんとかして、戻るわよ!」

 

「でもこれじゃあ行けませんって!!」

 

 

咄嗟に屈んだり無理な体勢を取ったりして、どうにか飛来する物を避けている状態だ。錯乱しているゆえに軌道だって読みづらい。正面から、あるいは死角からどんどん物が飛んでくるのだ。

 

 

「じゃあ、誰かが囮でもやればいいんじゃねえかよ! さっきは1人に集中してたんだから効くだろ!」

 

「あんた、そんなこと言って自分じゃやんないでしょ!」

 

「……なら僕が!」

 

「いや、オレがやるっす! これ以上ルイージにばっか負担かけれるか! みんなは先に行っといてくれ!」

 

 

ワリオ発案の囮作戦だが、重要なヘイト役はリトル・マックが引き受けた。動体視力の高い自分が一番適任だと自覚している。

 

 

「わかった! みんな、こっち!」

 

 

飛んでくる小物をオバキュームで吸い取りながら、エレベーターへ進んでいく。感情的な攻撃ならば離れていけば攻撃は薄くなる。離れていく分には問題ないだろう。

 

 

「(だから問題はこっちの方……!)」

 

 

離れていくルイージ達には目もくれないが、目の前から誰も居なくなれば流石に追ってくるだろう。

 

 

「うわあああああああ……!!」

 

 

幼児のように泣き叫ぶ少女をどうにかやり過ごす方法を考えなければ。

前方から飛んでくる看板の残骸を避け、後方からの机上照明を思わず肘打ちした。ガラスの破片が腕を切る。

 

 

「くっそもう……方法が見つからねえ……!」

 

 

直撃や深い傷にはならないように避けてはいるが、死角からも飛んでくる攻撃に細かな傷は増えていく。ルイージ達もこちらほど酷くはないだろうが、似たようなものだろう。

 

 

「どうすれば……!」

 

「マック!」

 

「っ!」

 

 

2階部からオバキュームの先を構えるルイージ。飛び上がったリトル・マックは強靭な吸引力に吸われていく。

 

 

「だけど、追ってくるんじゃ……」

 

「大丈夫だから、僕を運んで……」

 

「えっ?」

 

 

ルイージはそこまで言うと言葉を途切れさせた。ガックリと頭を垂れさせる。するとオバキュームから緑色の液体を飛び出させた。

 

 

「運んでってえっ? こっちを?」

 

「……」

 

 

ルイージ型になった液体、グーイージはリトル・マックの言葉に頷くと、エスカレーターを下っていった。数瞬迷ったものの、ルイージを抱えて走り出す。

 

 

「うわあああああああああ!」

 

 

半分になった自販機がグーイージを潰したのはしばらく経った後だった。

 

 

「あ、あれ……オバケだったの……? なにこれ……あ、消えた……怖……」

 

 

レジスターのレバーでツンツンと液体を突っついたら床に染みていくように溶けていく。

その頃になると少女も少し落ち着いていた。

 





○タイトル
1999年にコナミから発売されたホラーゲーム。
ゴーストタウンの表世界とグロテスクな裏世界を行き来しながら、町からの脱出を目指すゲーム。同然作者は名前だけしか知らない。ホラーゲーム怖いもん(´・ω・`)


○グーイージ
ルイージマンション3からの新システム。
ルイージ型のスライムが色々行動できる。水に弱く体力が低い代わりに、棘の類に強くすぐに回復する。同然オバキュームも使用でき、1人では吸引力が足りなくてもグーイージを使うことで突破できることも。
グーイージ操作中は、ルイージが意識を失うように項垂れるのだが、イベントでは共に動いてたりする。


○少女
名前不明。ボディは8Pカラーの黒ピーチ。ティアラやピアス、ブローチといった華美な装飾は外され、ドレスのスカートも普通のスカートになっているところから、あまり目立たないことを好む模様。
現状、ポルターガイスト現象を発生させることができることがわかっている。なお感情の昂りに応じて威力や範囲が増す。


○作者の気まぐれコメント
ゼノブレイド 3DLC! マリオ映画!
なんか毎週なにかしら話してるような気もしなくもない!
ちょっと忙しかったのでまだ手をつけられてないのですが、すぐやります見ます!


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84話 鷲獅子たちの蒼穹

 

──6F キャッスルフロア

 

 

「なにこれ」

 

「闘技場」

 

「な〜んかホテルっぽくないのよね」

 

「ここ以外もそんなものなんだよね……」

 

 

エレベーターを降りて少し進むと、砦のような、柵と石壁、そして門でできた仕切り。それは名前通り中世洋風の城のようだった。

しかし、そこは闘技場であり古典的なコロシアムだ。地下まで徹底的に再現されたそれは世界に没頭するようで面白いが、ホテルにあるようなものではない。

 

 

「確かに鎧飾ってたわね」

 

「雰囲気はあるっす」

 

 

あまり深く考えず前のホテルと同じ構造に立て直していたが、元々こういう雰囲気を楽しむコンセプトのホテルなのかもしれない。

おそらく剣やらの危険なものはパウダネス・コナー達が手を加えたものなのだろう。

そういった考えを思案していたルイージは内部に入り、並んで飾られている鎧を見上げた。

見栄えこそ本物のような光沢を持っているが、軽めの防具に防御力はない。万が一倒れても怪我をしないようにという配慮だ。

 

 

「(僕たちを積極的に襲いたければ、危ないものをばら撒いてると思うけど……なんで偽物のままなんだろう……?)」

 

「なに黙ってるっすか?」

 

「ちょっとさっきのこと考えてて……さっきと言えば、ごめんね囮にしちゃって」

 

「いいんすよ、俺から言い出したことだし。こんな不気味な部屋にしたのもボディを放ってるのもあのピーチ擬きの仕業っす!」

 

「そうかそうか! 次こそとっ捕まえるぞ!!」

 

「(……ん?)」

 

 

ルイージは何か取っ掛かりを感じたのだが、それは疑問として形になるまで昇華しない。

 

 

『…………!』

 

「ん……えっ、ボディ!?」

 

 

そしてこちらへ向かってくるボディが目に入り、それは霧散してしまった。

くるならこいと構えるが、彼らに目もくれず通り過ぎていく。

 

 

「うおっ」

 

「なんですか……?」

 

 

一戦も交えず、コロシアム内部へ向かうボディ。言葉を交わす必要もなくファイター達は追うことに決めた。

 

 

 

 

 

観客席が円状に取り囲む戦場。

確かに聞こえる戦闘音。

席には隙間なくボディが座り、無言で戦いを見守っている。そこには歓声も闘志もなく、コロシアムとして異端なそれだけがファイター達を威圧させた。観客席ごと一望できる特等席で見る景色に悪い意味で圧倒された。

 

 

「うりゃあああ!? なんだこれ!?」

 

「気持ち悪っ!? なによこれ!」

 

 

今まで戦ってきたキーラやダーズの僕でしかなかったボディが自分達と戦うこともせず、無言無表情で一点だけを見ている。そんな自分や仲間の姿だけど自分や仲間じゃない何者か。凄まじい嫌悪感を抱くのも当然だった。

 

 

「あっ! あれ、見てください!」

 

 

キノピオ隊長の指差した先、闘技場の中央でボディが戦っている。

数体まとめて正面から襲ってくる敵を回し蹴りで蹴り飛ばす。ブラスターの射撃により闘士が消滅したのを確認すると、客席から十体ほどのボディが場内に降り立つ。

 

 

「見せもんじゃねえぞ! 暇してんなら参加しろ!」

 

「あ、ファルコ!」

 

 

戦っていたのはファルコだった。なにがどうなったか知らないが、おそらくここに迷い込んで戦っていたのだろう。

よく見れば、ボディともファイターとも違う何者かもいた。ファルコと共に戦っていた。

 

 

「あっ、またスマッシュブラザーズの……」

 

「なんだぁ? あのヘルメット、どこかで見たような……」

 

 

青くて、ゴツい服。大剣を両手で握って戦う少年。いや、戦っている姿までは見たことがない。ただ、仲間の仲間で。友達の友達で。

 

 

「あ、ホムラとヒカリの彼氏じゃない!」

 

「か、か、か、か、か、彼氏!?」

 

「色恋にうつつを抜かす時間ねえぞ!」

 

 

レックスが赤面で思わず剣を取りこぼした。隙を突く形のボディを代わりにファルコが蹴り飛ばした。

 

 

「あ、ごめ……」

 

「いいから戦えって!」

 

「あたし達もいくわよ!」

 

 

ファイター達は飛び降りて、戦場へ向かう。

残ったのはワリオとキノピオ隊長だけ。

 

 

「頑張ってくださ〜い!! ってワリオさん、なんで行ってないんですか?」

 

「俺1人いなくたってなんとかなるだろ! ガハハハハ!!」

 

『…………』

 

 

2人の背後に、立つボディ。

 

 

「あっ……」

 

「よう……」

 

『…………』

 

 

首根っこを掴まれる2人。

 

 

「ぎゃあああああ!? やめてくださいワタシ、戦えないんで()ぅう!」

 

「オレさまもオレさまも! めんどくさくて腕と足が動かないんだぁあ!」

 

『…………』

 

 

立ち見の客は許さないと2人一緒に戦場へ放り込まれた。

 

 

「「ああああああああ!!」」

 

「どうしていつも来ないんっすかこいつら!」

 

「ファルコも元気そうでよかったよ!」

 

「無駄口を挟む暇があったら戦え(やれ)って言ってんだろ!!」

 

 

軽口を叩きながら狙いを定める。懐中電灯のフラッシュ、ストロボを当てて目が眩んだ隙にリトル・マックが殴り飛ばし、デイジーがフライパンのフルスイング。

倒された途端に客席から新たなボディが臨戦体勢を取ってくる。

 

 

「くっそ、全員倒すまで逃さねえってか!」

 

「逃げたいけど……地下に行っても挟み撃ちにされるし……」

 

「はあ? なんで出てくる奴からいちいち相手しなきゃいけねえんだ? 座って待ってる奴ら叩けばいいじゃねえか」

 

「え、それは……いいのかな?」

 

 

逃げ回り、リュックを振り回すキノピオ隊長を見て、レックスが敵を一刀両断して助ける。ホムラもヒカリもいない今、持っているのは市販の大剣だ。

 

 

「でもそうね、わざわざ付き合ってやる必要なんかないわ!」

 

 

ジャンプして客席まで乗り込んだデイジーがボディを蹴っ飛ばす。ヒールの威力は凄まじい。

席に座ったままのボディはデイジーが側に近づいても尚、微動だにしないどころか視線をやることすらしない。無抵抗のままぶっ飛ばされていく。

 

 

「なんなんだよコイツら……」

 

「えっと、僕たちとそっくりなんだけど別物で……」

 

「そこじゃなくて、なんで無抵抗なんだってことだって!」

 

「うわあああああ!!」

 

「え? キノピオ隊長?」

 

「敵の方だって!!」

 

 

なにもしない。指示や命令に愚鈍なまでに忠実な人形。命に頓着せずあくまで客に徹する様相は本能的な恐怖を与える。

 

 

「まあ、結局、客席のやつも倒せばいいってことだよな」

 

「あんたもそっち行っとけよ、俺は下で戦うっす」

 

「は、はいぃ〜……」

 

 

慌てて壁を登ろうとするキノピオ隊長。

それを尻目にリトル・マックは3体のボディのパンチをかわし、連続でストレートを叩き込む。

ルイージはオバキュームでボディを吸い、スラムによる叩きつけで観客席ごと攻撃する。

 

 

「あー!! ホテル壊してますよ!」

 

「うっ、い、今は考えない!」

 

 

ただしホテルの施設も含めて破壊することになる。ルイージは言葉に詰まったが、ホテルはまた作り直せばいい。

 

 

「! そうかそうか、言質とったぞルイージ!」

 

「あっ、余計なこと言っちゃったわね……」

 

「えっ、なにが?」

 

 

頭を抱えるデイジーに少し遅れてファルコが気づいた。顔の強張った、嫌な顔である。

 

 

「おい待て! このままでもどうにかなるぞ! 時間はかかるが、確実に全滅まで持っていける! だから早まるんじゃねえ!!!

 

「なんだその言いぐさはぁ? オレさまは1番に金が! 次にめんどくさくない方が! その次に手っ取り早い方が好みなんだよ!」

 

「え? なに? なんでそんなに慌ててるんだ?」

 

 

心当たりすらないレックスは戸惑うしかない。動揺と熱意の差が激しく、話にも入る余地がないのだ。

 

 

「ほおらいくぞー!!」

 

「あっ……」

 

 

急速に膨らむワリオの腹部。服の下からでできたでべそ。ようやくルイージは気づいた。短く無意識に出た言葉はなんの力も持たない。

 

 

「くらえーーー!!」

 

「「やめっ……!!」」

 

 

ファルコとリトル・マックが強く静止をかけるが、今更効果はない。尻をボディへ向けたワリオが力む。

 

 

ドゴオォンッ!!!

 

 

──まるで屍のように沈んだ彼らの近くにエレベーターのスイッチが転がる。

──だが、それに反応できるようになったのはかなり時間が経った後の話である。

 





◯タイトル
ファイアーエムブレム風花雪月のBGM。
学級対抗戦である鷲獅子戦の章ではじめてながれる(確か)。
いわゆる行事のため、ロストしない代わりに教団関係者等一部のキャラが出撃不可。作者はワープや飛行系を駆使して中央の弓砲台を速攻で取りに行っています。第一部が一括りし、今までの経験を試す行事を彩る荘厳さを表している。なお第二部。


◯レックス
ゼノブレイド2の主人公。「オレが参戦するんじゃないの!?」という名言を残し、第二のクロムの道を歩む少年。
本作においては、ホムラもヒカリもいないため大半のアーツが使えない。ただ別にブレイドがいなければ戦えない訳でもないため、市販の剣でも使えるアーツやアンカーショット等の小手先で頑張る。
新たな未来でホムヒカの剣を双剣兼両手剣として使っているが、まあ今回はエンディングからそんなに時間経ってないので……


◯作風
レックスが登場したので少しだけゼノブレイド2よりの作風に。
詳しく言えば、ギャグ系よりに。カメキチのくだり好き。というかジークが好き。


◯ダイナマイトオナラ
Xの初期トレーラーであったイメージで。
ホテル大丈夫なのか……?


◯作者の気まぐれコメント
マリオ映画見ました。やべえぞコレ……
ありとあらゆるマリオシリーズから小ネタを仕込んでやがる……
そこまでマリオシリーズに詳しくない私でもかなりわかりましたし、初代からやってるみたいな人にはたまらないなこれ。しかし、よろずやチコになにがあったんだろう……
気が向いたら活動報告にネタバレ込みの感想貼っちゃうかもしれません。


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85話 暗闇をさまよう

 

「うっ……」

 

「無理……もう無理……」

 

 

締め切ったエレベーターの中に、服に染みついた異臭が漂う。まだ階層のスイッチは押されておらず、扉は開いたままだ。

閉め切っていないのに、呼吸をしたくないほどに臭う。

 

 

「このまま先に行くの無理よ……せめて洗濯とシャワー浴びさせて……」

 

「うん……地下行こう地下……シャワーは兎も角洗濯機、あったから……」

 

 

地下にはボディがいることはわかっていたのだが、それでも悪臭に耐えられなかったのだ。

本当はゲストルームが使えれば1番なのだが、階層のスイッチが抜けている。手に入れることができた新たなスイッチは後回しだ。

 

 

「シャワーはねえのか……?」

 

「……あっ! ジムフロアにあったっす!」

 

 

流石に参っているファルコが珍しく弱々しい声で聞く。天啓を受けたリトル・マックは大声で答えた。大きく息を吸ってしまい咽せる。

 

 

「わっかんねえけど大変そうだな〜」

 

「「「(誰のせいだと……)」」」

 

 

完全に他人事状態で鼻をほじるワリオに、皆の心が一致した。涙目で呼吸を抑えた鼻声なのは相応の理由があるのだ。

 

 

「とりあえず先に洗濯……着替えあったかな……」

 

 

ルイージが地下1階のスイッチを押そうとする。

が、その指を引いたのは異質な存在を感じ取ったからだ。

 

 

「ボディ! まだ残ってたんだ!?」

 

「しゃーねーな、オレさまがもう1発……」

 

「やめろッ!」

 

 

思わずファルコがワリオを蹴り飛ばした。バウンドして跳ねた頭部がエレベーターのボタンにぶち当たった。

静止する目的で加減もなく振るわれた足は、ボタンや周りの器具を破壊する。火花を散らした様子にみんなの顔を青ざめさせた。

 

 

「嘘でしょ……」

 

 

思わずこぼしたデイジーの言葉。気分はどん底まで落ちていった。自重が支えられなくなったのか、後を追うように落下していくエレベーター。

 

 

「いやあああああ!」

 

「ファルコのアホォオオ! とりあたまぁああ!」

 

「だれがトリあたまだあああああああ!」

 

「うわあああああああああ!?」

 

 

落ちていく。落ちて、落ちて、おちて。

 

 

 

 

──B2F メンテナンスフロア

 

 

ドゴオオオォンッ!!!

 

 

「いってて……」

 

「ホントさいあっく……」

 

「いたい……」

 

 

扉が開いたまま、煙を吐くエレベーター。最下層まで落ちてきたところから、完全に壊れていた。

 

 

「どうしてくれんすか、お前らァ!」

 

「待て待て待て! オレさまなにもしてねえぞ!」

 

「またやらかそうとしたこいつが悪い!」

 

「連帯責任だボケェ!!」

 

 

同時に顔面を殴った。なんの躊躇もなく。

暴力による禊をレックスは茫然としながら見ていた。

 

 

「それでアンタの名前なによ」

 

「今更!?」

 

「それどころじゃなかったから……」

 

 

負傷と疲弊した身体を休めながら、自分たちの名前と状況、そして情報を交換した。

 

 

「その女の人がオレたちを閉じ込めてる犯人なのか?」

 

「なんとも言えねえっすけど、多分そうっす」

 

「とっ捕まえられればいいんだがな」

 

 

しかし、追い詰められるとなにをしでかすかわからない敵を相手にこの状態で捕縛するのは辛いものがある。

勢いのままワリオに責任転嫁してしまったが、エレベーターを壊したのは自分だ。罪悪感から、その先は口に出せなかった。

 

 

「ここは……確か物置がある。遠くないからそこで色々探そう?」

 

 

地下2階、メンテナンスフロアは大半を水道関係の設備が占めている。それらを管理するための掃除用具等が押し込まれている場所だ。8人が入ると手狭だが、この際文句は言わない。

 

 

「助かったぁ……なんか処置するだけでも全然気分が違うや」

 

「体を拭くぐらいならできたし、まあまだ少し臭うけどだいぶマシになったっす」

 

 

備蓄である医療セットを拝借し、彼らは処置を済ませた。急激に変わりはしないが、心持ちに余裕ができる。

 

 

「それで、この後どうしよう。階段があるのは地下1階から2階だけなんだ」

 

「道具はありそうだけど、直せるかどうかは別だよな……」

 

 

水道を辿っていければどこかの階に着くだろうか。しかし、人が通れるかどこの階に着くかを考えるとその方法は取れない。それならば、最終手段を取るしかない。

 

 

「天井に穴開けるしかないか……」

 

「……悪い」

 

 

渋々といった顔に、ファルコの素直な謝罪が出た。短気な性格のせいで、いつも状況を悪く傾ける。

 

 

「ハシゴかなんか必要だろ。オレが探す」

 

「ファルコなんか珍しくない? 地味なことやらないでしょ」

 

「うるせえ、お前らはここで寝てろ」

 

 

ガンとうるさく戸を閉める。

自分がやらかしたことは自分で責任を取る。こんな場所なら脚立のひとつぐらい必ずあるはずだ。

 

 

「チッ」

 

 

薄暗い場所だ。懐中電灯を(無断で)借りてきて正解だ。奥に進むにつれ、水路の面積が大きくなっており、よりファルコに向いていない環境となっていく。それに合わせて、ファルコの進みも遅くなっていった。

 

 

ジャポン

 

 

「……!」

 

 

水音が聞こえて気配を消すが、懐中電灯がついている以上無意味だ。かといって消すのは鳥目のせいで自殺行為。明かりとブラスターを構えた。だが、その心配は無用であった。

 

 

「ッコウ」

 

「なんだよ、ゲッコウガかよ」

 

 

水路を泳いでいるゲッコウガ。

おそらく自分と同じようにここに迷い込んだのだろう。ボディ達にもみくちゃにされて闘技場まで連行、戦ってる最中にレックスが来てルイージ達が来て……

 

 

「おまえエレベーター直せたり……できねえよな」

 

「クゥ……」

 

 

カエル違いである。

くだらないことを考えるぐらいには疲れてる。

 

 

「なら、ハシゴとか脚立とか……登れるもの見てねえか? 天井に穴開けるからよ」

 

「コゥ!」

 

 

ハンドロポンプで上に併設されている歩行通路に上がる。誘導するように先に進む。そのままファルコも着いて行った。

しかし、明かりがあっても暗がりだ。見落としは起きるものである。

 

 

「がっ……!」

 

 

水路に押し込み、首元を掴む誰か。どう考えても味方ではない。懐中電灯を取り落とし、沈む体、視界が最悪まで落ちる。

 

 

「(クソッ!)」

 

 

呼吸の音と、わずかな揺らぎを頼りに手探りでブラスターを撃つ。手ごたえがあるかもわからない。

 

 

「ガァッ!」

 

 

声からしてゲッコウガが降りてきた。ボディをふみつけ、ハイドロポンプで吹き飛ばした。

 

 

「プハッ! 舐めた真似しやがって……!」

 

 

その隙に水面から顔を出す。

少し冷静になった頭で考えると、相手はゲッコウガのような水中戦に長けたボディではない。暗がりでなければ互角に戦えたはずだ。

 

 

「チッ……!」

 

「クゥ……?」

 

 

自分が足を引っ張っている。名誉挽回を謳っておきながら、ゲッコウガに助けられていた。

 

 

「……なんでもねえ。それより案内を頼む」

 

 

それ以上、表に出すことはしなかった。

だが、心の内では自分への不甲斐なさがグルグルと回っていた。

マスターハンドの不信感、ソラへの憐み、今回の事件の黒幕やボディの嫌悪感。そして、現状の自分。考えることが多すぎて処理しきれていなかったのだ。

ひとつひとつに集中すれば、割り切ることもいつかはできるかもしれない。しかし、早さが問題ではないとわかっていながら、パパッと解決しては、結果がどうでも納得しきれないような気がするのだ。

 

 

「コゥ」

 

 

そして、ゲッコウガにはそれに気づきながらも知らない振りをする聡明さがあった。

 

ここから脚立を取って、ルイージ達の場所まで戻るまで、変わったことはなにも起こらなかった。

 

しかし、ビショビショのままの体を支配する心のモヤモヤはファルコの中に巣喰い続けていた。





◯タイトル
DQ10のBGM。洞窟系のダンジョンであったり、遺跡、はたまたパーティ同盟系の場所で流れている曲。だが、1番印象が強いのは魔法の迷宮だろう。レベル上げにコインボスなど多くのプレイヤーが耳にする。
はたして、オフライン版では魔法の迷宮はあるのだろうか。


◯やらかすファルコ
航空技術はファックスより高いのに原作ではしょっちゅう後ろを取られる系そうめん。おそらく性格的な問題。


◯鳥目
スマブラXのイベント戦で、暗闇状態で戦うものありましたよね。
イベント戦、結構好きだったんですけどね。


◯水ポチャ
プププランドでは、水に強いボディが待ち伏せしていたのにここではそんなこともなし。指揮官の差ですね。


◯作者の気まぐれコメント
ティア! キン!
組み合わせて色々作るだけで数時間遊べそうなこの作品。とんでもねえです……
ちなみにスプラのフェスはボコボコでした。あれ、部門の2位3位にも点数を与えればいい勝負できると思うんですけどね。


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86話 鍵が導く心のままに

 

「ここでいいの?」

 

「うん、エレベーターの前ならどこにつながるかわかりやすいから」

 

 

エレベーターホールならば、つながるのは地下1階のエレベーターの前だ。そこからどうやって進むか方針を立てやすい。

 

 

「えっとファルコ、天井にさ、円をブラスターで撃ったりできない?」

 

「ん……ああ」

 

 

少しだけ反応が遅れて、ファルコが答えた。ブラスターで床を弱くして穴を開けようと考えてたのだろう。

言われた通りに8発ほど撃ち放ち、床のかけらがこぼれ落ちていく。

そこをルイージが得意のジャンプで穴を開ける。数発跳ぶと、円の形にくり抜かれた。ルイージは跳んで先に行ってしまった。

 

 

「OK! 脚立使って登ってきて!」

 

「ルイージ1人だと脚立要らなかったんすね」

 

「ワタシはいります! あんな飛べません!」

 

「……」

 

 

兄が有名過ぎて隠れがちだが、要所要所で活躍しているルイージ。日陰者と呼ばれながらも長所と土地勘を活かして活躍している。

自分は足を引っ張ってばかりではあるのだけど。

 

 

チッ……」

 

 

誰にも聞こえないように、小さく小さく舌打ちをした。

 

 

 

──2F アッパーロビー

 

 

「で、なんで2階まで上がってきてんだよ」

 

「地下1階も1階も大きくないから……なにかあるならこの階かなって思ったんだ」

 

 

レストランやメイク室もあり、多機能なのがこのフロアだ。広さもあり、誰かが潜んでいるのならばここであろうと考えた。

 

 

「広いなら別々で探索するぞ」

 

「えっ、別にそこまで広くないけど……」

 

「群れるのは性に合わないんだよ」

 

 

それだけを言うとファルコはスタスタと進んでいってしまう。

 

 

「スターフォックスは群れる内に入らないのかしらね?」

 

「いや、オレ達に言われても……」

 

「知らねえっす……」

 

 

勝気系少女にはわからない領域。比較的まともな意見をくれそうなリトル・マックとレックスに聞くも、彼ら2人もまた一匹狼タイプではなかった。

 

 

 

 

 

 

「ここ……レストランか」

 

 

白いテーブルクロスに包まれた丸いテーブル。

ずらっと並ぶそこには、ワインやステーキのような豪華な食事だけが虚しく置いてあった。

 

 

「(冷めてっし、暴れた形跡もねえ。誰もいねえのかここには……)」

 

 

静まり返ったそこに人の気配はなし。空振りかと思ったその時。

 

 

「なっ……!?」

 

 

ガシャンガシャンと割れる音がして、突然視界が白に染まる。

 

 

「クソッ!」

 

「……!」

 

 

何も見えぬままに腹部を蹴り飛ばされるファルコ。テーブルクロスで視界を塞がれたのだ。

取り払うファルコの頭部に重いもので打ち付けられた。反射的に蹴り返す。手応えはあった。

 

 

「誰だテメェ!」

 

 

隠れたテーブルあたりにブラスターを撃つ。返ってきたのは卓上の皿だった。そのまま撃ち落とし、破片が床に散らばる。直後に追撃を警戒し、自らもテーブルの陰に隠れた。

 

 

「……!」

 

 

テーブルを移動する音をファルコは聞き逃さない。咄嗟にテーブルのワインボトルを握り、山なりに投擲して一方的に攻撃を仕掛ける。

割れた破片の軌道からして、今のは当たったはず。

 

 

「そこか!」

 

 

それを確認するや否や、飛び出したファルコは敵のいる場所に跳び蹴りを放つ。その蹴りは硬い機械に阻まれ、視線と視線が交差する。

 

 

「……っ!」

「……ッ! テメェか!」

 

 

防いで弾いた敵はテーブルを横に倒し、壁とした。窓を遮る位置の壁、ただでさえ少ない月明かりがさらに減っていく。

かと思いきや、テーブルをつき飛ばし壁と挟まれた。その過程で花瓶や壁つきのランプが落ちて甲高い音を鳴らした。

 

 

「クッソがァ! マジで本気でやりやがって!!」

 

 

テーブルを蹴り返し、ブラスターを乱射する。

食器、花瓶、照明、テーブル……器用に使いこなす相手の手を減らせ。

 

 

「……!」

 

 

相手がリフレクターを展開し、ファルコもまたリフレクターを展開。ブラスターが反射し続け、それた軌道が壁を貫通した。

その行方を見守る暇もなく、殴りかかった敵とファルコの蹴りが交差する。一度距離を離し、ばら撒かれた小型のボムを尾で弾き、辺りで爆発した。

 

 

「おーい! 何があったんだー!!」

 

「……!」

 

 

その爆発音の直後、壁を隔てても聞こえるレックスの声。戦闘音だの割れる音だのをガンガンに鳴らしていたら、当然誰か来るだろう。

焦げの穴だらけ、こぼれた料理の染みだらけのテーブルクロスを纏い、姿を隠す。

 

 

「……あっ! アンカーショット!」

 

 

部屋に入るや否やその敵を見て察したレックス、射出したアンカーで敵の足を絡め取り、引き寄せる。引っ張られた敵は空中で回転しながらそれに抵抗し、腕のアームから出した炎でアンカーを焼き切った。月明かりの元、レックスにもその正体が明らかになる。

 

 

「ええ!? ボディじゃない! 確か……ガンナ!?」

 

「んだよ、私のこと知ってんの? 人気者はめんどくせえな」

 

 

相手の正体、それは、Miiの少女だった。

重いアーム機構部を自作するガンナは望んでいたエレベーターを修理できそうな人材。

しかし、唯一の懸念点としてファルコとの相性は最悪なのだ。

 

気にすることなく、レックスを巻き込む形でファルコにガトリングを撃ち放つ。破壊され、本来の機能に使えないテーブルを心許ない盾としながらファルコが叫ぶ。銃音に負けない大声だ。

 

 

「コイツ、ホムラとかのツレだぞ!! そんなことも知らねえとか、どの口がトリ頭とか言ってんだよ!」

 

「私の頭は無駄のない頭なんだよ! それにいっつも事実しか言ってねえぞ! テメェの頭は文字通りトリ頭だからな!」

 

「ンだとゴラァ!」

 

「ちょっと! 敵じゃないのになんで戦ってるんだ!?」

 

「「うるせえ!!!!」」

 

「はいっ!?」

 

 

短気で喧嘩を買いやすいファルコと、

交戦的で喧嘩を売りやすいガンナ。

ファルコが喧嘩を買う相手が常に彼女とは限らないし、ガンナが突っかかる相手が常に彼とも限らない。

それでも自他ともに、喧嘩相手として堂々上位なのだ。

 

 

「テメェ、相手確認しても気にせず戦いやがって!!!」

 

「おったがい様だろ、そんなんは!! そういうアンタはやめようとか思ってたのかよ!!」

 

『…………!!』

 

「「邪魔すんなッ!!」」

 

 

翼の振り払いが、回し蹴りが。

厨房から出てきたボディを叩き返す。

即興な上に合図もなし。似たもの同士の同時攻撃が1体のボディに突き刺さる。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「………………えっ、何この空気」

 

 

 

そうして黙り出す2人。先程までとのギャップにレックスは思わず口を挟んでいた。

 

 

「……で、どこに行けばいいって?」

 

「エレベーター直せ」

 

「へいへい」

 

 

それだけ語ると2人はレックスを置いて行ってしまう。

 

 

「えええ!? 何!? オレどうすりゃいいんだよー!!」

 

 

いつ邪魔が入るかわからないここで戦うのはやだから事態を解決するためにエレベーターを直しに行くという意思の交換が2人の間であったのだが、口にはしていないのでレックスは当然わからない。

 

 

「ハァ」

 

「おっ? やり足りない?」

 

「ちげえよ」

 

 

なんか、色々考えてたのが馬鹿らしくなった。

考え込むのは自分らしくなかったのかもしれない。

 

行動あるのみだ。突出すると危険だとか後がまずいとか考えていると自分らしさがなくなる。

それは欠点かもしれないが、確かに自分を構成するものの一つなのだ。

 

 

「(……ソラにも言ってやるか)」

 

 

ファルコから見れば、達観して、現実を直視しないようにしているように見える彼。

思っていること、感じていること。

感情的になっていいのだと、伝えたい。

 

嫌いな創造主。奴が造った世界に戻らなければならない理由が増えた。

 





◯タイトル
KHシリーズで登場する言葉。
古の時代を描くχシリーズでは、主に予知者達などで使われる合言葉的な扱い。現代では、被験者Xやシグバール等古の時代関係者だと暗喩する意図で使われている他、イェン・シッド様が見送る時に毎回言っていた模様。アクア曰く(要するにBbs時点で)「ずいぶん古い言葉」。
おとぎ話とされた時代の話なのでずいぶんどころの話じゃない気がする


◯ルイージの性能
滑りやすく、ジャンプが高い。
これ時代は有名だが、元はただの色変えだったのもあって性能差がない作品もある。
ちなみに初代ルイージマンションではジャンプができない。せっかくの主役作品なのに強みを殺されていく。


◯ファルコの突貫思考
フォックスより飛行技能が高い筈なのに、しくじった的なことを言って後ろの敵を任せてくる。
TASやRTAではそのまま見殺しにされる。タイムのためだ。仕方ないね。


◯作者の気まぐれコメント
あの……ゼルダ。ティアキン。
ヤバイヤバイとは思ってましたが、実際に売り上げを数字にされるととんでもなくヤバイですね。前作とか何年も前なのにまた売れてきてるし。前にテリーがテレビゲーム総選挙のランクインファイターに喧嘩売る的な短編を執筆しましたが、今やったらテリー君、骨も残らないんじゃないかな……?


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87話 塊オンザファンク

 

スイッチを一旦全て引っこ抜き、基板も抜いてドライバーやレンチを突っ込んで、ガンナはエレベーターを修理していた。

 

 

「道具をガンナが持っていて良かったよ~」

 

「完全に忘れてたわね、もう……」

 

 

エレベーターを修理できる人材が見つかったのは幸運だったが、その修理器具のことを考えていなかったことに気づいた。つくづくガンナに会えて良かった。

 

ファルコと一戦、割と本気で交えていたことには驚いたが、突拍子もなく乱暴者なのはそう珍しいことでもなかった訳だが。

 

 

「で? 直りそうなのかよ?」

 

 

鼻をほじりながらワリオが聞いた。それについてガンナはため息を吐きながら応える。さも面倒くさそうに。当然のことを言うなと言わんばかりに。

 

 

「あったりまえだろ、片手でもできるわ。いっそのことジェット機構でもつけて空飛んでみるか?」

 

「ケッ、そうでもしなきゃ空飛べねえのか?」

 

「コレの修理もできない奴がなんか言ってんなー」

 

「あ゛あ゛?」

 

「もう! 二人の喧嘩は収拾がつかないから禁止!」

 

「喧嘩じゃねえし~口喧嘩の模擬戦だし~」

 

「喧嘩じゃん!」

 

 

酷い言い訳を述べながらも、手を止めないガンナはとどめの締めにギュッとネジを締めた。

 

「ん、おけ。部品が最低限だから昇降機能しか直ってねえけど」

 

基板が丸見えで見た目こそそのままだが、彼女が言うならその通りなのだろう。

 

「十分だよ、ありがとう! あれ? ジェット機構って……」

 

「アームをバラせばできたけどな」

 

ようは冗談なのだろう。破天荒な少女には珍しい嘘の類いだ。流石にガンナとてこの状況で武器を解体する自殺行為はしない。

 

 

「で、どこ行くって?」

 

「とりあえず13階! シャワー浴びて、その次におニューのスイッチよ!」

 

「は? シャワー……? なんかほのかに匂うぞ」

 

 

ブツブツ言いながらも13のスイッチを押す。開いたままのドアは開いたまま上昇していく。

 

 

「あれ、扉は……」

 

「だから最低限だって。気に入らない鳥とかメット野郎とかいつでも突き落とせるぜ」

 

「やっぱ喧嘩売ってんな……!」

 

「メット野郎ってオレのこと!?」

 

 

 

 

 

 

──12F ビーチレストラン

 

 

「なんすかこれ、外っすか」

 

「ううん、そういうレストラン」

 

「ここ何個レストランあるんだよ。私がたどり着いた場所もレストランなんだけど」

 

 

何度目かもわからないため息を吐く。構造が変だとか言っている暇もなく、それは唐突に起きたのだった。

 

 

『…………』

 

「わー!? なんですかこの数!!」

 

 

出迎えたのはボディ達。ただし数十体はいそうな数だ。

 

 

「いいじゃねえか! へばんなよ銃女!」

 

「勝手に言ってろ! 突貫して即死すんなよトリ頭!」

 

 

真っ先に動いたのは、仲が悪い二人組だった。思考自体は似通っているために一番最初にスタートダッシュを決められたのだ。ガトリング弾を多くの敵にぶつけ、ファルコが跳び蹴りを当てる。テーブルや椅子にぶつかり、木っ端微塵に砕ける。

 

 

「よし! オレ達も! ローリングスマッシュ!」

 

「キノピオ隊長は下がっててね」

 

「は、はい~……」

 

「あんた、結局何しに来たのよ」

 

 

戦いになると基本的に下がってばかりのキノピオ隊長に、テニスラケットを構えながら愚痴るデイジー。乱戦になると一人戦えないだけでも相当なハンデになる。

 

 

「うらあ!! ぐっ、」

 

『…………!』

 

「やらせない!」

 

 

パンチを連打するリトル・マックに背後から羽交い締めにするボディ。緑の炎を宿した掌底を叩きつけ、ルイージは敵を振り払う。その技にリトル・マックも気づいた。

 

 

「今の、兄貴の技じゃ……」

 

「兄さんは憧れでもあるから!」

 

 

炎の色の違いはあれども、マリオと同じ技で間違いない。いつからそんなことをできるようになったのだろう。

 

 

「カバーだカバー! 基本ツーマンセルで行け! ヘマしたらもう一人がカバーしろ!」

 

 

頭は切れるガンナの指示通りに近くで戦うファイター達。

 

デイジーがヒールで蹴飛ばしたボディを、アンカーショットで距離を寄せて射程内に収めるレックス。突貫したファルコとガンナは少々離れた場所ではあるものの、飛び道具を持つ彼らはカバー範囲も広い。

 

 

「コウ」

 

「またなんでオレさまが……おまえ、二人分働け!」

 

「…………」

 

「なんか言えよ!わかったよ、やりゃいいんだろやりゃ!」

 

 

詰めてくる敵を肘打ちで凌ぎながら、無言のジト目にワリオ本人もタジタジだった。

 

物を言える口ではないが、口よりずっと物を言う目。もとい圧力。

 

 

「ここまで多いの久しぶりね! なんかここ、きな臭いわ!」

 

「そうかな、コロシアムの時は……多いけど役柄みたいなものだったよ」

 

 

ついにゴルフクラブとフライパンを両手持ちし、ヒナギクの魔法を使う押せ押せモードのデイジー。ガンガン攻めていく結果、必然的にヘイトを獲得し、結果レックスを動きやすくしている。

 

 

「確かに意味もなく敵がおお、うっ!!」

 

「あっ! くそ、どけ!」

 

 

横っ面を殴られて、押さえ込まれたルイージを救うため、リトル・マックが向かおうとするが、立ち塞がるボディ。遠くから見ていたキノピオ隊長は慌ててリュックの中を探り出す。

 

 

「わわわ……! どうしましょう……! そうだ、こういう時はアイテムで……」

 

「ワン!」

 

ギャー!! オバケ! じゃなかったオバ犬!!」

 

 

床から出てきたルイージの愛犬に、腰を抜かすほど驚く。思わずリュックの中身をほおり投げてしまった。

 

 

「ワフ~ン」

 

「えっ、ちょっとどこ行くのよ」

 

「なんだあれ、ファルコみたいなもんか?」

 

「どういう意味だゴラァ!」

 

 

透けるオバ犬はボディの妨害もすり抜けて無視し、なぜか機嫌が良さそうに奥へ進んでいく。ドクロの形をした岩肌へ向かう。その先には、室内とは思えないほどの大海原が広がっていることをルイージは知っていた。そして、オバ犬が誘導してくる先には必ずなにかがあることも。

 

 

「まずは……! ここをどうにかしないと……!」

 

 

頭を地面に押さえつけているのは、ガノンドロフのボディ。単純な力比べではどうにもならない。

 

 

「あっ! 投げちゃってた! ルイージさん! これ!」

 

 

キノピオ隊長は驚いた時にぶん投げてしまっていたアイテムを拾うと、ルイージに届くように投げた。

 

 

「それこそ何それ!? キノコ!?」

 

「固そうだな!」

 

 

そのアイテムは傘の部分が岩石のようになっているキノコだった。思いっきり手を伸ばして受け取ったルイージ。その瞬間、ルイージの服装は岩肌のようにごつく硬くなっていた。

 

 

「とりゃあ!!」

 

「うおっ! ルイージまで岩石に!?」

 

 

そしてルイージは丸い岩のようになり、ボディを振り切る。転がり回る岩石は彼の周りのボディだけでなく、辺りのボディも巻き込んで突き飛ばしていく。

 

 

「へえ……よし、歯ァ食いしばれルイージ!」

 

「ん? うおう!?」

 

 

ファルコの蹴っ飛ばしたリフレクターは反射の効力を遺憾無く発揮し、ルイージを別の角度に跳ね返す。当然威力も跳ね上がっている。

 

 

「巻き込まれる巻き込まれる!」

 

 

アンカーを射出し、空中に移動することで、レックスはルイージに巻き込まれることを回避しようとする。それを察したデイジーは適当にレックスに捕まる。

 

 

「私も連れていきなさ〜い!!」

 

「いいんだけど、くび、くびが」

 

 

よりにもよって首元の装備を掴んだために首が閉まる状態だ。前が開いている服なのに襟元を両手で持つ姿勢は1番ダメな状態である。

 

 

「わー!! たいへんだたいへんだ!」

 

「なんでこんなことに!!」

 

「にげろにげろ!」

 

「おっ!? くそ、アイツホントにトリ頭だな!!」

 

 

轢かれそうになり血管の浮き出たガンナは自分もリフレクターを使ってファルコめがけて跳ね返した。それに気づいたファルコもまたリフレクト返し。

 

 

「ホンットこの脳筋オンナァ!」

 

「ナチュラルに巻き込んでんじゃねえんだよ、トリより脳みそ足りてねえだろお前!」

 

「ボクで喧嘩しないでって〜!!」

 

 

超スピードで跳ね返るルイージ。さながらスマッシュオンリーのバトミントンだ。

 

 

「やっぱ、他ならぬここで決着つけてやるぜ、構えろトリぃ!!」

 

「上等だ、半ベソかくんじゃねえぞオンナァ!」

 

「コウッ!」

 

 

新ステージ、ラストリゾートでの大乱闘が始まろうとしていた中、2人の顔に水がかかる。ハイドロポンプどころかみずてっぽうにも満たない威力。文字通りに水を刺された。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

沈黙が続く。

 

 

「おい、ルール今のうちに決めとくぞ!」

 

「シンプルにアイテムなしだわ、当然タイマン!」

 

 

未来の戦約をしつつ、オバ犬の向かっていった方向へ飛んでいく2人。怒りという感情は一過性である。

 

 

「もー、なんでいっつも喧嘩になるんすかー」

 

「先にワタシ達がやられるかと……」

 

 

少し固まっていた他のメンバーだが、ゲッコウガが進んだことで他も小走りで追い始めた。

 

 

「あうあうあうあう〜……めがぁ〜……」

 

「い、いきが……しぬ、しぬ……」

 

「ほら、真っ直ぐ歩く!」

 

 

完全に目が回って元の緑に戻ったルイージと、酸欠で顔が真っ赤のレックスの背を押しながら、デイジーが最後尾に回った。

 





◯タイトル
僕の私の塊魂 オープニング曲。イントロで溜めて溜めて、塊魂で解き放つ。南国の海という舞台にぴったりなファンキーな曲。最終ステージで流れた際には鳥肌立ちました。オープニング曲が最終ステージで流れるなんてわかってたのに!
みんな大好き塊魂アンコールには、先の作品ゆえ未収録……と思いきや、DLCで購入可能。せっかくなので塊オンザ系をまとめてみました。

塊オンザロック:初代のオープニング。アレンジが次作のチュートリアルで流れます。
塊オンザスウィング:みんな大好き塊魂のオープニング。松崎しげる。
塊オンザファング:僕の私の塊魂のオープニング。上記参照。
塊オンザウィングス:塊魂TRIBUTEのオープニング。スウィングのカバーアレンジ。スキマスイッチさん。DLCにも不在で作者血涙を流す。


◯ガンナの前科
拙作の前作では、人がいるのを承知で大砲を撃ったり、気絶したブロウさんを顔面踏んで叩き起こしたり、インクリングの名乗りに人知れずなのに名乗っていいのかと際どいツッコミをしたり、敵とはいえ女の子1人に男連中4人をけしかけたりしてます。
誤射を全く恐れないのは仕様です。改めて見るとやべえ奴。改めて見なくてもやべえ奴。ファルコとの口喧嘩は面白くてしょっちゅう買いちゃいます。
ジェットで空飛ぶエレベーターは実現しませんでしたが、部品があったらやってました。


◯ローリングスマッシュ
前方に小範囲のエーテル攻撃。さらにヘイトを下げる。
ヘイトダウン攻撃だが、威力が高いので結局ヘイトを取ってしまうこともしばしば。


◯ゴロ岩キノコ
スーパーマリオギャラクシー2から登場。
ゴロ岩マリオに変身すると、岩を見に纏い転がって攻撃する。
速いし強いが、操作しづらい。ちなみに雪が降っているステージだと雪玉みたいになる。
キノピオ隊長がレギュラーのマリギャラから何かアイテムが欲しくて、選ばれたのがゴロ岩キノコでした。


◯作者の気まぐれコメント
毎日少しずつ少しずつプレイして、ようやくXマッチ行けました!
あーもう疲れたー!! 6月なったらちょっとスプラは休憩して塊魂やるんだ……! 新シーズンは……スロッシャー系の続報は……ないのか……?


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88話 呪われた大海原

 

ザブーンと波打ち際で聞く涼しげな音。

砂浜と桟橋、岩場には麗しき人魚の石像……

 

 

「いや何でだよ!?」

 

ボロボロの心許ない橋、片腕のもげた石像。だが重要なのはそこではない。

 

ホテルという室内、それも高層なタワーの内部に、うっかりすると水平線が見えてきそうな大海原があるのか。

外に出たのではないかと錯覚してしまうような海はおおよそホテルに存在していいものではない。

 

 

「もうホテルじゃねえなここ……」

 

「えっとえっと、他にも砂漠とかあるらしいですよ」

 

「世界万博かなんかかよ、イカレてんな」

 

「こいつらがイカレてる言うとか相当だぞ」

 

 

喧嘩になるのはわかっているので聞こえないようにボソッと呟く。ワリオもガンナも一般とはほど遠い感性を持ち合わせているため、そんな二人が自身でも共感できることを呟いているのが少なからず衝撃だったらしい。

 

 

「あっ、でもよく見たらハリボテ見えるわよ。ワープとかせずしっかり室内なのね、ね、ルイージ」

 

「待って……今ようやく千鳥足じゃなくなってきたから……」

 

「オレもやっと息戻ってきた……」

 

 

酸欠と混乱から復帰しかけていた二人。デイジーが指差した先は空ではなく壁。繋ぎ目が見えるため、月も雲も空も壁に映し出された映像かなにかだろう。

 

 

「ミャアアアア!?」

 

「え、何!?」

 

「あっ!? 船の上です!」

 

 

ボロボロのいかにも幽霊船と呼ばれる元海賊船の欄干で、悲鳴を上げながら身を隠している少女、ピーチのボディ。それは先ほど出会った敵の首魁と思われる少女だった。悲鳴が上がりながら海の水や木片が浮かび上がっていく。

 

 

「先手必勝!」

 

「また! ってはやっ!?」

 

 

念力のような力に驚くよりはやく、ガンナのフレイムピラーが少女めがけて飛ばされる。躊躇なし、例え悲鳴が上がっていようと。

 

 

「きゃあああ!」

 

「なっ……!?」

 

 

しかし、フレイムピラーは少女の元に届く前に爆散した。何かに撃ち抜かれたように少し光りそして爆発したのだ。その力に少し動揺したものの、ならばと近距離攻撃だとガンナだけでなくファルコも船上へ跳び上がる。

 

 

「ギャー!! 来ないでぇ!!」

 

「逃がすかァ!」

 

「僕達も行かないと! どうにか話を聞かないと!」

 

 

少し遅れてルイージ達も船の上へ跳び上がっていく。

 

 

「くっそ! オレじゃこんな跳べねえ!」

 

「ごめんなさ~い! ワタシも連れてってくださ~い!」

 

 

一人置いていかれたリトル・マック。意を決してグローブを咥え、背中にキノピオ隊長を背負い、素手で船壁を登り始めた。

 

 

「ヒャ……!」

 

「待って! 話を聞いて!」

 

「ああん?」

 

 

向かいの欄干まで逃げていった少女に対して、そしてどうにか攻撃を加えようとするファルコ、ガンナに対しても制止の声をかける。

 

 

「僕はルイージ。この建物、もう少し綺麗だったと思うんだ。何があったか知ってるかな?」

 

「えっと……」

 

 

怖がらせないように、敵意を相手に感じさせないように。慎重に言葉を選んでいく。

彼女は過敏な猫のような状態なのだ。詳しくはわからないが、彼女自身もいろいろなことがあってキャパオーバーといった印象だった。

いっぱいいっぱいな彼女の立場に自分がいたらどういった言葉をかけてほしいのか。考えて穏やかな口調を心がけて、どうにかようやく会話らしいことができそうだ。

 

 

「こ、怖い……! こんな人たちの仲間が穏やかな人のわけないし……!!」

 

「ええ!? どんな理由!?」

 

「責任取りなさい! 突貫ブラザーズ!」

 

「オレとコイツを一括りにするんじゃねえ!」

 

「ま、説得なんかよりこっちの方がわかりやすくていいな」

 

「そういうところじゃないのか!?」

 

 

どうやら先手必勝が足を引っ張ってたようだ。知り合ったばかりのレックスすらわかってきた二人の性格。瓦礫と木片と海水の洗礼がファイター達に襲いかかる。

 

 

「出てってよ! 私をほおっておいてぇ!!」

 

「くっそ!! どこから襲ってくるのかわかんねえぞ!」

 

「感情的になってるから逆に攻撃が読みづれえ……!」

 

 

海竜がうねるように海水が襲い、船から剥がされた木片がその隙間を通るように襲いかかる。それはタックルや銃撃で迎撃できるが、実体が液体の海水は避けるしかない。

 

 

「どうしよう……話をする暇もないよ……」

 

「もうそれどころじゃないでしょ!!」

 

 

まだ対話を諦めていないルイージをデイジーが一喝する。確かにガンナが先手必勝をした時点で手遅れのような気もするが、やっぱり弱い物いじめをしているようで嫌だった。

 

 

「(どうにか突破口を見つける! とりあえずとにかく攻撃だ!)」

 

 

とりあえず効かなくても、なにかを掴めればととにかくブラスターを撃つ。方向を変えて緩急をつけて。涙を溜ながらも、まっすぐにこちらを見据えてくる少女は光弾を発火させて爆発させる。反撃として、マストをへし折って横向きになぎ払う。

 

 

「で!! まだ説得の余地があるわけ!?」

 

「う~……あんまり傷つけないように……」

 

 

しゃがんで避けた二人の会話。容赦のない反撃にルイージも完全に穏便にすますことは不可能だと察した。覚悟が鈍る前に決着をつけようと拳を握りしめた刹那、大蛇のごとき水流がルイージを襲い、空中に投げ出される。こちらへ振り向く焦ったデイジーを揺れる視界に入れながら落ちた彼は、手首を捕まれて事なきを得た。

 

 

ふいーひ(ルイージ)!!」

 

「大丈夫ですか?」

 

「うん、ごめん!」

 

 

船壁を登り中だったリトル・マックに助けられた。グラブを咥えたままで言葉が不鮮明なのは置いとくとして。

 

 

「チッ!」

 

「ああっ!? やられた!」

 

 

ガンナがアームで殴りかかるが、それは木の板で阻まれ避ける時間を作られる。アンカーも、古びた紐に絡まれて封じられる。

 

 

「もうしつこいよ……私は静かに暮らしたいだけなのに……」

 

 

ぼそぼそと呟くその内容は誰に聞かせるためのものではないだろう。しかしその呟きに少なからず意識を割いていた少女は自身が操っていた水流の中に異物が混じっていることに気づかなかった。

 

 

「クウゥ!」

 

「わああああァ!!!?」

 

 

背後から襲いかかるゲッコウガ。水に適した生態である彼は操る水流の中を自在に泳げる。背中に手を押しつけ、床に押さえ込む。彼もできる限りの平和的解決を諦めたわけじゃない。

 

 

「んー!!」

 

 

押さえ込まれる少女がうめき声を上げる。その声に呼応するように船首がへし折られ、まっすぐゲッコウガに飛んでくる。後ろに飛んでかわしたところで空中で炎が現れる。軽いやけどを負ったゲッコウガは海に墜落した。

 

 

「火ィ!? 嘘でしょそんなことまで!?」

 

「私の爆弾が途中で爆発したのもそれかよ……」

 

 

使い勝手のいい飛び道具も、接近するための機動力もないデイジーが攻めあぐねている中、武器の不調を怪しむ出来事に理由が通った。

 

しかし、真にやっかいなのは空中の、なにもないところから意思一つで炎を生みだしたことだ。つまり、少女の意思ひとつで拘束しようがなんだろうがいつでもどこでも攻撃できるということ。そこが一番てごわい。

 

それでも、唯一の手がかりだ。ごめんなさいさようならでは終わらせない。

 

 

「らああ! 海やら空やらが何だア! 人間なら陸地で勝負だア!

 

「ワアアアアッ!?」

 

 

オバキュームの先に張り付いたまま、上へほおり投げてもらったリトル・マック、堂々の遅刻参戦。船の甲板を真っ二つにして、フィールドをめちゃめちゃにする。

 

 

「コウオッ!!」

 

「アバアアアアア!?」

 

 

足下が不安定になったところに海からゲッコウガ。みずタイプなのだから、海に落ちたところでなんの問題もない。2枚分はなったみずしゅりけんは少女の念力のような力で軌道を逸らされる。

 

 

「あいつ、なんであんなビビってんだよ、あんな色々できんのによ」

 

「ビビる……それにさっきのみずしゅりけんだって爆弾みたいに打ち消せば……ああ、そういうことか」

 

 

ニヤリとちょっと凶悪そうに笑うガンナ。ワリオの言葉で見つけた突破口。

 

 

「もー!!! 変なしゃべらない奴らといい!あなたたちといい! もうなんなの!!?」

 

「えっ……!?」

 

 

そして、ルイージがその言葉の意味を理解するのには、数瞬の時間を用いた。

 





◯タイトル
ゼルダの伝説 風のタクトのBGM。
森の島クリア~プロロ島再訪までの限定的な航海中のBGM。
最初は普通に大海原(通常時の航海BGM)にしようとも思ったが、なんかそのまま過ぎるのでこちらに。
タイトルにBGMを使おうとすると、結構な確率で率直なタイトルなのて困る。


◯少女
悲鳴が珍妙かつ、バリエーション豊かなので書いてて楽しい。
それはさておき、先に話しちゃいますが彼女のモチーフはポルターガイストです。色々物が飛んでくるのは有名ですが、発火や発光などもするのだとか。



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89話 ファントムギャラクシー

 

「いい加減にしてよ……私は! 静かに! 穏やかに暮らしていきたいだけなの!」

 

 

少女は空中を滑るように移動し、水上まで動く。水面に足先がつき静かに揺れていく。

 

一週回って静かに感情を揺らし始めた少女の周りに、砕かれた海賊船の全てが浮かんでいく。先ほどのような木片ではない。船を構成していた全てが襲いかかってきたのだ。

 

 

「待って! もしかしてキミはボディとは関係ないんじゃ……!」

 

「はあ!? あぶっ……!」

 

 

全ての前提をひっくり返すまさかの事実に狼狽した結果、飛んでくる錨に対応できなかった。ガンナのアーム部分に鎖が絡まり、海中まで連れて行かれる。

 

 

「クッソ!」

 

「クウゥ!」

 

 

反射的にファルコが飛び込み、海中にいたゲッコウガが救出に動く。錨と共に沈むしかないガンナは溺れるほかない。他も動こうとするが、攻撃の対処にそれどころではない。

 

 

「どっか行って……!」

 

「ウギャアア!!」

 

 

今度は海を使った攻撃、それも大蛇のように操る海流ではなく、まるで津波のような巨大な面での攻撃。思わず悲鳴を上げるのも無理はない。全員で苦手な海での戦いを余儀なくされる。

 

 

「好き勝手にしすぎだぞッ!」

 

「……!」

 

「うっそ、アイツあんなことできたの!? でも……」

 

 

咄嗟にその辺りの木板をサーフィン代わりに使うワリオ。だったが、足下の波をうねるように動かされる。この足下もおぼつかず、即座に動けもしない中自力で接近しなければならない。

 

 

「たいちょー!! アイテムなーい!!?」

 

「あっても取り出せないです~!!」

 

「踏ん張れねえからパンチも……!」

 

「もーう!! どうしろってんのよー!!」

 

「どうすればいいかって!? 教えてやるさ、実技でね!!」

 

「あなた……!」

 

 

水中から出てきたガンナが少女に組み付きにかかる。真下から泳いできた彼女にアームは装備されていなかった。鎖ごと外したのだ。

 

 

「飛び道具も海も! あんたの意思のままなら認識外からやるか、さばききれないほど攻撃すりゃいい!」

 

「もう……!」

 

 

装備を外したガンナは思った以上に身軽だった。振り払おうと、彼女に向かって飛ばす柱を少女から手を離さぬままにかわしていく。

 

 

「やっちまえ、メット!」

 

「っ!!」

 

 

足下からガンナの足にアンカーをくくりつける。海中から引っ張られる少女。作り物の海は散々沈んできた雲海と要領が似ていてレックスがそこそこ動けていた。

 

 

「コゥ!」

 

 

そしてゲッコウガも動けない訳がない。辺りの木片をクナイで切り落とし、蹴り飛ばす。飛ばしてきた木片は水中でスピードが殺されているものの、少女はガンナにかかりきりで対処もできない。

 

 

「(なら……!)」

 

 

周囲の水を持ち上げて、空中に水球をつくる。それごとまとめてガンナと少女を持ち上げる。周囲に嵐のように木片をまとわせて目くらましにかかる。

 

 

「長引かせて呼吸を切らせちまえば……」

 

「アホ! ガンナが先に溺れちゃうわよ!!」

 

 

銃のような精密に狙える飛び道具がないデイジーやワリオは遠くで様子を見るばかり。そんな二人の間の海中から何かが飛び出す。

 

 

「やっちまえェ!!」

 

 

ファルコだった。狙うのはガンナの足に巻き付いたままのはずのアンカー。その先。

 

印として狙い、持ち上げたのはブラスターではない。ガンナのキャノンアームだ。錨ごと切り捨てたはずのそれ。ガトリングでアンカーの先を撃ち抜いた。綺麗に命中したのか、水球が破裂し、手を離したガンナが頭から着水する。

 

 

「バッハァ!? テメエ、いつの間に操作方法覚えてんだトリ頭の癖に!!」

 

「テメエが言うほどトリ頭じゃねえってことだ暴力女!」

 

 

同郷のフォックスやウルフを除けば、多く戦っているのがこの女だ。スマッシュブラザーズとしては後輩であるのに、よく喧嘩の延長で大乱闘を繰り広げているために数がかさんでいっている。何度戦っていると思っているのだ。軽く操作方法は知っている。絶対に口にも態度にも出してやらないが。

 

 

「フーフー……! ……ッ!!」

 

 

肩を押さえながら荒い息をなんとか治めようとする少女。振るった腕は海の全体を揺るがし、みなを岩場にたたきつけた。それだけにとどまらず、大津波が巻き起こり、ドクロの岩壁を砕きレストラン部までたたき出された。

 

 

「ブフゥ!? マジかよ!!」

 

 

びしょ濡れの服のまま岩肌の地面から身体を起こす。喉の奥まで入った水を吐き出す暇も存在しない。戦場が移り変わった結果、物の種類が増えた。それはつまり相手にとっての弾が増えたということ。

 

 

「どうしよう……海じゃなくなったから戦いやすくなったのはいいけど……」

 

 

水中から不意をつく方法はもう使えない。それにこの場所も少女の武器となる物が多い。

 

 

「そうだ! ぶつかってもダメージを受けないぐらいに細切れにしちゃえば……!」

 

「ぐおっ」

 

 

アンカーを外すことを忘れて駆けだしたせいでガンナに関節技を決められるレックスを背後に、動きを封じられて鬱憤が溜まっていたのか、ワリオがショルダータックルを仕掛けていく。

 

 

「このっ……!」

 

「ガッハハハ!効くか、んなもの!」

 

「ブエ!? 食べたぁ!?」

 

 

真っ正面からテーブルを飛ばしたというのに、ワリオはそれを喰らってしまった。それには少女も目を丸くして驚いた。最初の方の珍妙な悲鳴を上げていた頃に一瞬戻っていた。

 

 

「アイタタタタタ!? ゴメンってェ!!」

 

「テメエ、そんなフツーの剣で細切れにして間に合うと思ってんのか、メットォ!」

 

 

ガンガンと力任せに剣を地面に叩くことでフツーを強調する。恨み辛みも込められているようだ。

 

 

「いや、間違ってないかも! 斬れなくても燃やすなりして物をなくしちゃえば!」

 

 

ただレックスの考えとワリオの行動がヒントになったのか、デイジーが具体的な案を生みだした。形を失わせてしまえば、もう飛ばせない。

 

 

「燃やす燃やす……ファイアーフラワーは……」

 

「ないです!」

 

「ああ、そう……」

 

 

ゴロ岩キノコを持っていたのだから、とキノピオ隊長に聞いてみるが持っていない模様。

 

 

「あれ?」

 

「ワン!」

 

 

がっくりと肩を落としたルイージの足下には白い姿の相棒がいた。ブーツをペロペロとなめるオバ犬。ルイージが気づくと、オバ犬は入り口の方へ戻っていく。少し振り向いては吠え、また振り向いては吠え。誘導をしているように。

 

 

「そっちに何かあるの?」

 

「ワワン!」

 

 

レストランの外まででると、ある壁の前で立ち止まる。そこには大きなコンセントがついていた。通常のものとは違う、特製のコンセント。そうしてルイージの頭に電流が走る。

 

 

「ああ! そうだね、さっすがだよ!」

 

「ワフ~ン♪」

 

 

手短ながらもなでまわされ、オバ犬はご機嫌である。オバキュームの後ろとコンセントを電流でつなげると、とろけた顔のままルイージの後ろへ回った。

 

 

「みんな! なんでもいいからしっかり捕まってて!」

 

「バベッ!?」

 

 

オバキュームの先からは今までとは比較にならないほどの吸引力を感じる。目に見えてわかるほどの威力。フライパンやお玉などの調理器具をぶつけ続ける少女は完全に固まった。

 

 

「いっけえええええー!!」

 

 

ハイパーバキューム、全力全開。道具、床、地面、装飾、光源、水、配管この場にあるありとあらゆる物を吸い込み始めた。

 

 

「フギャアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

重力に囚われない少女も空中でなんとか耐えようとしているが、それでも少しずつ動いている。

 

 

「ルイージの奴、派手にやりやがって! オレ達ごとかよ!?」

 

「もーう! 私まで巻き込むなんて! 後で覚えときなさーい!!」

 

「リュックが飛んでいっちゃう~!」

 

「ま、そういうの嫌いじゃねえけどな!」

 

「悪かったからまた首がああ!!」

 

 

配管にしがみついたり、メットや服にしがみついたり。なんとかやり過ごそうとするファイター達。結果的に抵抗する術を持たない物体だけが吸い込まれていく。

 

 

「……! 駄目……! させない!」

 

 

それに焦った少女は全力で火炎放射のような炎をルイージに向けて放つ。

 

 

「クウガァ!」

 

「あっ……!」

 

 

勝利を阻む壁を打ち消したのは、この台風以上の風の中で器用に直立しているゲッコウガだった。吸い込まれる故の軌道もまた計算にいれていた彼は炎の中心を的確に射貫く。

 

 

「はあ……はあ……」

 

 

すさまじい威力のオバキュームを支えていたことで精力尽きたと言わんばかりにしゃがみ込む。もうしばらくは動ける気がしなかった。

 

 

「あっ……」

 

 

戦う術をほとんど失って逃げ出す少女をゲッコウガは逃がさない。クナイを首にあてがわれた時点で少女は白旗を上げるしかなかった。

 





◯タイトル
スーパーマリオギャラクシーに登場するギャラクシー名。
オバケマリオの初登場ステージであり、マリギャラのルイージ初登場ステージであったような気がします(うろ覚え)
PCゲームにほぼ同名のゲームがあるが、あっちはSF系。


◯ 「やっちまえ、メット!」「やっちまえェ!!」
似た物同士。
ちなみにガンナを追って真っ先に海に飛び込んだのはファルコ。


◯ハイパーバキューム
オバキューム(3仕様)の強化装備。
専用のコンセントが必要だが、吸引力が格段に上がる。
ただ、本作品みたいに何もないほどは吸い込まない。多分オヤ・マー博士の仕業です。


◯作者の気まぐれコメント
あっぶねえ! ビックランしてて投稿間に合わないところでした。
ですが、154という上位5%を狙えそうなスコア出せましたよ!
ちなみにそのリザルトを見たら、一回ハコビヤ混じってたとはいえ全オオモノ討伐してました。上位勢すげー……完全に味方頼りです。本当にありがとうございました。



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90話 かまいたちの夜

 

「オラ、まず名前吐け」

 

「……リール」

 

「ええと、さっきと同じ質問するけど、君はボディとは関係ないよね?」

 

「はあ!? 無駄足かぁ!?」

 

「ボディ……?」

 

 

怪訝な顔。ボディを知らないようだ。

 

 

「ええと多分、その身体ってキミの本来の物じゃないよね?」

 

「えっと、ここのホテルに勝手に住み着いてたら、こんなのとそっくりなのが辺りにうじゃうじゃしてて……この身体は動かなかったから乗り移ってみたら意外に心地よくて……」

 

「なんでコイツ臆病なのに好奇心無駄に高いんだよ」

 

 

ファルコは完全に呆れている。うるさいほど珍妙な悲鳴を上げていたほど臆病であったのに、自分に手を出さないだろうものに対しては案外アグレッシブなのは面倒な性格をしていると思う。

 

 

「つまり……無関係?」

 

「マジで無駄足っすか……」

 

 

レックスの要約にリトル・マックが深いため息を吐く。ルイージがそれをほのめかしていたが、本当に無関係だったとは。

 

 

「はああ~、いらん時間過ごしたー」

 

「アホ頭でっかち、閉じ込められてたってミドリのヒゲが言ってたこと忘れたかよ。それ実行したのはボディだろうけど、そのボディをここに解放したのは? コイツに遠回しに身体を与えたのは? こんなぼろ臭いホテルにしたのは誰よ」

 

「追い出そうとしてるのになんで閉じ込めなきゃいけないのよ……」

 

 

ただ、まったくの無関係でもなかった。リールという少女はどうやら自分達と戦わせるように仕向けられたのだ。落ち着いた今では敵対心もなく……正論をかました相手、ワリオがギロリと睨み、今までで一番の速度でルイージの背後に隠れた。

 

 

「あのさ、ボディがどこから来たとか知らない?多分そのボディ達がいた世界に行かなきゃいけないんだ」

 

「それでそのボディって……動くこの体とかのこと?」

 

「うん」

 

「外……」

 

 

外とはこのホテルの外か。外から押し寄せたボディがリールを残したままオバケ達を追い出したのだろう。ならば行くしかない。

 

 

「悪いようにはしないから、案内してくれないかな? ボク達、その世界に行かなきゃいけないんだ」

 

「はあ?それオレさまも入ってんのかよ?」

 

「安心しろ、当然強制労働だ」

 

「勝手に使うなよ~……」

 

「な、テメエ!?」

 

 

ガンナがレックスのアンカーを勝手に使ってワリオを縛り上げていた。強制連行の構えである。

 

 

「あ……あと……」

 

「ん?」

 

「ホテルの外装を変えたのは私……こっちの方が可愛いかなって……」

 

「かわ……いい……?」

 

 

やはり変なところでアグレッシブだ。

 

 

 

 

 

 

 

──1F メインロビー

 

チン♪

 

もはや聞き慣れた軽快な音が鳴り響く。外に出ようと1階まで降りたファイター達を出迎えたのは勢揃いしたボディの大群。今までのようなちぐはぐさはない。完全に臨戦状態だった。

 

 

「待ち構えてるぅ!?」

 

「あー……地下から出た方がよかったのかな?」

 

 

呑気な反省の声が周りを無自覚に煽るが、今言っても仕方ないことだ。

 

 

「ぐる゛う゛う゛!! ビャアアアアアアアア!」

 

「ギャー!!」

 

「うるっせえなコイツら!」

 

 

この戦闘の開幕の音は悲鳴のデュオが務めたのだった。

 

狭いエレベーターの中で圧殺してやろうと数で迫るボディ達。背後からファイターの隙間を縫って飛び出すリトル・マック。彼はこの中では一番の動体視力と俊敏性だ。

 

 

「さっきはぜっんぜん活躍できなかったけど、今度はそうはいかねえっす!」

 

 

ストレートパンチをかわすように体を斜めにかがませ、潜り込んだ懐に連打をたたき込む。正面の銃撃も首を傾けて最小限の動きで回避した。なんの工夫もなく正面から放つだけの攻撃にはそうそうあたらない。

 

 

「もう! 活躍できてないのなんてアタシも同じよ、置いてかないでよね!」

 

 

一発ヒールで蹴り飛ばし、テニスラケットをさすまたのように使って距離を作る。それだけで十分だ。後は他がいいように動く。

 

 

「フンッ」

 

 

踏み込めるだけの場所を手に入れたファルコは狭い場所から高く飛び上がり、体をひねりながらブラスター2丁を撃ち続ける。真下にいる多くのボディが体勢を崩した。

 

 

「……クゥ……!」

 

 

その隙を的確に狩っていくのは影の仕事人ゲッコウガ。怯んだ相手を的確かつ最小限に仕留めていく。なんとか立て直し反撃しようとするボディをみがわりでやり過ごし、壁掛けの照明器具の上に立つ。

 

 

「どりゃああああ!」

 

 

多くのボディがゲッコウガに視線を向ける中、真っ向からタックルで蹴散らしていく。空中へ散っていくぶっ飛ばされたボディが的確に射貫かれ、落下していくボディを再びアッパーで打ち上げた。

 

 

「ふぅー……」

 

 

溜めていた空気を吐き出すガンナ。ファルコから返してもらった(ぶんどった)アームキャノンのエネルギーショットを確実に当てられる敵から当てていく。内部のトリガーとモーションによるスイッチが、狙撃だと動かしにくいために技だけは絞られる。

 

 

「よっし! ホムラとヒカリのことも気になるし、急がなきゃな!」

 

 

ボディの剣撃を一撃、二撃、三撃と受けきりパワーで弾き飛ばす。そのまま攻撃に移る。腹部を一直線に切りつけ、距離を作ろうとしたボディをアンカーショットで引き寄せて無理矢理射程に入れる。

 

 

「隊長、リールをお願い、なんとか突破口を作ってみせるから」

 

「はーい! わかりました!」

 

「えっと……」

 

 

ぐっと拳を握り、気合いを入れる隊長。鼻息を荒くやる気満々な隊長の背後で不安げな顔でまごまごするリール。どうしていいのかわからないという顔だ。

 

 

「えっと……このままでいいのかな」

 

「大丈夫ですよ! 皆さん強いので!」

 

「あっ、それは知ってる」

 

「ふぎゃ」

 

 

先ほどまで戦っていたのだから実力のことは知ってる。別にそれを心配している訳ではないのだ。

 

そう、気持ちの問題なのだ。自分は後ろにいるままでもいいのだろうか……

 

 

「私は……ここにいたい。そう、追い出されたくないし……」

 

「それなら! ルイージさんに頼めばいいじゃないですか!」

 

「頼む……うん、確かにそれなら……!」

 

 

うつむいていた顔が正面に向いてリールが前にでた。どうするつもりなのかキノピオ隊長が着いていくようにエレベーターを出ると、リールがエレベーターの方を振り返る。そして睨むように目を細めた。

 

 

ドガンッ

 

「え?」

 

ドガッ、バキキッ!

 

「ええええ~!?」

 

 

何か大きな音がしたと思ったら、エレベーターを引っこ抜いてしまったのだ。他の者達も大きな音にぎょっとしてそちらを見た。念力で動かしてボディを潰してしまう。そうしてエレベーターを振り回し始めた。

 

 

「うわっ!? 巻き込まれるっす~!!」

 

「ねえ! ルイージってあなたなんだよね!」

 

「え!? ああうん!!」

 

「手伝うからここに住まわせて! 外に出たいんだよね!」

 

 

エレベーターをハンマーのように乱雑に振り回しつつも、スマッシュブラザーズには当てないように操作する。慣性をなくしたように急停止したりかと思えばハイスピードで防御の構えも正面から打ち破ったり。

 

 

「ひえ……戦い方がワイルドじゃねえかよ……」

 

「ああ、周り海だったのが悪かっただけなのね、場所がよかったらもっと……」

 

 

これ以上をデイジーはしゃべらなかった。もちろん相手の問題もあるだろうが。

 

完全に手が止まっていた二人の背後で、ドガンと大きな音がして振り向くと、背後にエレベーターが着地していた。

 

 

「乗って!」

 

「乗ってって……え?」

 

「いいから、他の人たちも!」

 

 

少し強い口調で言われ、扉をくぐり乗り込んでいく。最後のルイージが跳び蹴りでボディを飛ばしながらエレベーターに飛び込むと、衝突によって歪んだ扉がつっかえながら閉じていった。

 

 

「よし」

 

 

エレベーターを浮かせると、助走をつけるように距離をつくる。エントランスの扉にめがけてハイスピードで正面衝突していった。

 

 

「ぎゃああ!?」

 

「ひぎぃぃぃっ!?」

 

「びゃあああ!!」

 

 

悲鳴の阿鼻叫喚。密室に閉じ込められた理解不能の塊達にはシートもシートベルトもなく、慣性によって壁に叩きつけられた塊達は、無理矢理された施錠をぶち破っていく。

 

念力の枷から外れたエレベーターはゴロゴロと転がっていき、中のみんなも同じように転がっていく。停止したときには全員、壁だった床にひっくり返っていた。

 

 

「……いたい」

 

「ワッフ~ン」

 

 

すり抜けてきたオバ犬が呑気にルイージの顔をペロペロ舐めていた。

 





◯タイトル
1994年に発売されたノベルゲーム。
雪山のペンションを舞台に起こる殺人事件の謎を解く、クローズドサークル。


◯リール
ようは無関係のただのポルターガイストです。普通にマリオブラザーズ世界の生まれです。え? 作風が浮いてる? 知らんな。
当然黒幕達は彼女のことを知りませんが、彼女に体を持たせるように誘導したのは誰なのでしょう。
念力により物を手に触れずに動かす能力、発火能力の他、発光能力も使えますが、本編では未使用です。後者2つは執筆中に上方修正されました。臆病に見えて意外といい性格してます。


◯今章の裏話
変更点が印象的な章でございます。
具体的には地下2階の話と2階の話を入れ替えたり、リールとの初遭遇の位置をずらしたり。
階ごとに話を作る都合上、プロットの変更をしやすかったですね。
無念なのはオバ犬以外のゲストキャラの扱いです。
隊長は初期案では飛び道具扱いをする予定でしたが、流石に可哀想なので自重。その上戦闘もできないので活躍させてあげられなかったのです。ゴロ岩キノコの所持が1番の活躍かな。
レックスは、ポケモン剣盾の章でダブルがやった状態共有の暗喩として登場させたのですが、何も知らない側なので描写も難しく。その上、上記が理由なので参戦した瞬間から役目が終了したようなものなのです。
まあホムヒカがいないにしては、戦闘面での個性は出せてた方かな。
物語的には今章の存在意義が薄いのが余計に際立たせている気がします。神トラの章とはまた別の理由で課題の残る章となりました。

別に今章の反省というわけではないのですが、次章ではゲストキャラは最小限。その分ファイター達多めで回していきます。


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Super Smash Brothers “Wonder”
91話 全ての人の魂の詩


 

 

 

常に先人のお蔭で安全というものは保たれる。

 

 

暗い遺跡も一人の踏破者によって暴かれ、いずれは数多の観光客に踏み荒らされるのさ。

 

 

知ってる? 毒キノコって最初から毒だってわかること、ほとんどないんだよ?

 

 

誰かが知らずに食べて、犠牲になって、そうしてようやく毒だって気づく。

 

 

 

先人ってほんと不遇だよね、先人と書いて犠牲と呼ぶ。

 

 

 

未知を暴いて名声を得るために……

 

未知を暴くために未知にもまれ未知に殺され、未知と共に未知となる……

 

 

 

似たようなこと考えて永遠に何も知れなくなっちゃう人なんていっぱいいるんだよ?

 

 

彼らは、彼はどうなるかな?

 

 

 

その真実という名の深淵にどう立ち向かうか。僕が選んだあの彼は、一体どう抗うのか。

 

 

未知の芯は、どうなっているんだろうね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでこんなに増えてるんだ……?」

 

「まあ、気持ちはわかるぜ……」

 

 

子供達が主体のネッシー捜索隊。いわく付きの湖に捜索しに行くというのなら大人も連れて行こうという理由で一員に加えられたことにされた雨宮蓮ことジョーカー。

ほんのちょっとだけ、大人扱いに不満があるのは置いといて。

 

結局、捜索隊は事前に聞いていただけの人数では収まらなかったのだ。

 

 

「よっし! ではこれよりネッシー捜索隊はほんかくてきな捜索にうつるよ!ぼくは隊長のネス!」

 

 

バットを肩に構えながら全力で胸を張る。そのリュックには一体何が入っているのだろうか。

 

スマッシュブラザーズ内で、古参ということもあり、子供内でのリーダーのような立ち位置だと聞いたことのあるネス。ただ、最近入ったジョーカーでは、自分より後以外の順番など実感もなかった。

 

 

「ネスー! 質問質問! バナナはおやつに入りますか!」

 

「バナナは別腹なので入りません!」

 

「(定番だな……)」

 

「おやつも別腹です!」

 

「(いくつ腹があるんだ!?)」

 

 

ノリに乗ったトゥーンが定番のノリに乗ってくる。うっきうきの遠足気分だ。まあ、子供達からしてみれば休日に遊びに行くようなノリなのだろう。

 

 

「では! 質問も終わったことなので! 点呼を取ります! 番号!」

 

「1!」

 

「2」

 

「3!」

 

「あっ、4」

 

「5だ!」

 

 

上から、トゥーンリンク、むらびと、ロックマン、リュカ、クッパJr.が数字を呼ぶ。

 

この辺りはよく遊んでいる面子だ。ネスも加えて子供達同士で鬼ごっことかかくれんぼとか。

 

 

「はいはい、6」

 

 

ここから異端に入る。トゥーンリンクに無理やり誘われたこどもリンクが6番目。

見た目だけなら混ざっていても違和感はないが、内面は大人を通り越してまるで達観した老人のように感じることがある。

そのチグハグさが少し苦手だった。

 

 

「ガハハ! 7だ!」

 

 

陽気なおじさんのような笑い声を上げるクッパ。保護者代表といったところか。

 

だが、授業参観でもあるまいし、1人だけ親同伴なのはどうなのだろう。周りが気にしてなければいいのだろうか。

 

 

「eight!」

 

「9です」

 

 

そして、ザ・父親とザ・母親のような2人。

テリーとロゼッタだった。ジョーカーが誘われた時には名前の上がっていなかった2名。子供好きな2人はこうして大掛かりな子供の大冒険に付き合うのも苦ではないのだろう。

 

 

「…………」

 

「ねえ、ジョーカー」

 

「だからこの姿でジョーカーと呼ばないでほしいと……10」

 

「ワガハイは11だな」

 

 

そして巻き込まれたジョーカーと、背負った手提げバックの中のモルガナ。

 

子供のノリは気恥ずかしい年頃だ。

大人ではないが子供でもない。微妙立ち位置に居座っていることを自覚せざるを得ないのだ。

大人になるのは嫌ではないのだ。ただ獅童や鴨志田のように改心が必要な大人と同じ括りに入れられるのが嫌だった。

 

 

「あれ? モルガナ……さんもいるんですか?」

 

「まあな、コイツなんか最近ぼんやりしてるからな。うっかり湖に落ちないようにワガハイがついててやってんだ」

 

「ぼんやり……」

 

 

モルガナの言うぼんやりの理由。それは間違いなくこの頃見る夢のことだ。

青い牢獄……ベルベットルームの夢。それを見るのははじめてではない。いつも見ている訳ではないが、今更珍しいことのように考え込む道理はないのだ。

 

しかし、そのベルベットルームに自分以外誰もいないという事態ははじめてだった。そもそも自分は客人、招かれる側であり、普通なら招く側がいるはず。ラヴェンツァやイゴールの名前を呼んでも返事はなかった。

 

何かあるのか、何が起こるのかも不明瞭でひたすらモヤモヤしていた。

モルガナに相談してみようかと考えたものの、不明なことばかりでどう相談していいのかもわからない。そうやってモヤモヤしたまま今日まで来てしまったのだ。

 

 

「まあまあ! 保護者っていうには若すぎるけどよ、童心に帰った気分で楽しめばいいんじゃねえかジョーカー!」

 

「だから俺は……」

 

「あんたも大変だね……」

 

 

肩を組むテリーに、同情してくるこどもリンク。ぼんやりしているという情報だけ聞いて気分転換を勧めてくる。

こどもリンクは自分が大人だの子供だのを気にしてないように接してくるが、テリーは完全に子供扱いだ。ネス達よりは大人というだけで、完全におちょくってくる。

その分ロゼッタは子供扱いでもおちょくったりはしない。

なんだか大人扱いが嫌なのかいいのかわからなくなってきた。……クッパはちょっとわからない。どっちでも想像つくから割と本気でわからない。

 

 

「ちょっとー! そこー! おしゃべり禁止ー!」

 

「おっとっと、悪いな隊長、続けてくれ」

 

 

そしてそんなテリーは本当の子供の扱いも抜群だ。おちょくりも何もなく完璧な手綱の持ち方。

 

 

「まずターゲットが目撃されていた湖だけど、F氏からの証言によると昔、おっそろしいドラゴンが住んでたらしいんだ」

 

「ネッシーよりそっち探そうぜ! ドラゴンとかぶっ飛ばしてやるんだ!」

 

「おお! 勇ましいぞ! 流石はワガハイの息子だな!!」

 

「はいはーい、大人はちょっとしー、してような~」

 

 

テリーが出しゃばる大人のでかい口を塞ぐ。今は子供が主役なのだ。

 

 

「バトルも楽しそうだけど、それはまた今度にしようよ。今回はネッシーだよ。もういないかもって言ってたけど、もしもの護衛のためにジョーカーやクッパに来てもらったよ」

 

「あっ、力仕事なんだな……」

 

 

なんで子供側から自分達を呼んだのか疑問だったが、そういう考えがあったのか。

 

 

「でも、おまえ達も相当やるんだろ? わざわざコイツらを呼ぶ必要あったのか?」

 

「フォックスにあれこれ言われちゃって……」

 

「へえ、まだ保護者がいたんだな」

 

 

F氏とはフォックスのことか。大人がいなければ教えてくれなかったのかもしれない。

 

 

「それでネッシー、見つけたらシャッターチャンス! 写真……じゃなくて写し絵でネッシーをきっちり撮るんだ! トゥーンにこどもリンク! 頼んだよ!」

 

「うん!」

 

「はいはい」

 

「そしてそれを複製して金儲け~♪」

 

「おいおい……子供のうちから金目当てかよ……」

 

 

むらびとの通常運転に若干引き気味のモルガナ。どうかほどほどの本能で成長することを願うばかりだ。

 

 

「ぼくはどうすればいいかな?」

 

「慌てない慌てない。それで、できたら捕まえてみんなで記念撮影! クッパJr.とリュカとロックマンで捕まえるんだ! あっ、それは大人組は手出さなくていいからね!」

 

「わかりました」

 

 

ミステリアスながらも薄く微笑むロゼッタ。その顔は間違いなく母親のような顔だ。女性ながら子供に頼られたのもわかる。

 

 

「よーし! じゃあ、役割も理解したということで、さっそくしゅっぱーつ!!」

 

「「「おー!!」」」

 

「おー」

 

「こどもリンクロゼッタ声が小さいー! ジョーカーモルガナ声出てないー!」

 

 

ひょんなことから巻き込まれたジョーカーこと雨宮蓮。

そんなひょんなことから謎の夢と真相にたどり着くとは思ってもいなかったのだ。

 





◯章タイトル
彼らが言う湖は、亜空の使者にてレックウザがいた湖と同一のものです。つまり、舞台は大乱闘の世界。メイン登場キャラも今話で出てきた10人と1匹です。
Woderは不思議という意味。前、ワイルドエリアを舞台とした章の開始とポケモンSVの発売が大体被りましたが、今度は新作マリオのタイトルと今章のタイトルが被りました。マジでなんで?(章タイトルはプロット時で既に作成済み)


◯タイトル
ペルソナシリーズの常連BGM。ベルベットルームで流れる美しい曲。
初出は女神異聞録ペルソナ。しかし、サントラではベルベットルームというタイトルで、全ての人の魂の詩はアレンジされた別の曲。こっちが本家とも言えるかもしれない。
そこからシリーズを重ねていくごとにアレンジされていった。そしてみなさんご存知のスマブラでも。


◯テリー
拙作の短編で主役を張ったので、はじめてな気がしない方。
あっちのような情けなさはないので安心してください。
『テリー・ボガードはテレビゲーム総選挙の結果に物申したいようです』も是非。(宣伝乙)


◯F氏
スターフォックスコマンドのエンド次第で父親になる男。保護者の面影はこの時点であったのだ。


◯作者の気まぐれコメント
ピクミン主役かと思ったら、マリオ界隈が大発狂してたダイレクト。
いや、マリオRPG配信ですらないの!? リメイクなの!?
マリオ界隈じゃなくても発狂してました。
そしてそれですらトリではなく、2Dマリオの新作。映画の熱を冷ましてたまるかと5年分ぐらい前倒しで頑張った感がすごい。
マリオの印象強すぎましたが、地味にピクミンでもなんかオリマーが怪しいことに……もうなんか他のも色々抜けてる気がする。マリオ強いマジ強い。ジーノ参戦希望勢もようやく成仏できたかなって……
あ、FF16も出てたやんけー!!



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92話 水面にゆれる。秘密をまとった、その魅惑。

 

「さあ、ついに我々ネッシー捜索隊はネッシーが生息しているという湖にやってきました! あ、ちょっとこどもリンク、カメラ低いよ」

 

「トゥーンいるからぼく要らないよね?」

 

「カメラは多い方がかっこいいの!」

 

「レポーター風だな……」

 

 

ロックマンのなりきりに付き合うトゥーンリンク、付き合わされるこどもリンク。写し絵の箱では映像は撮れないのだが、俗に言う雰囲気というものだ。

 

湖は特に変わった特徴のない湖だった。なんとか全体を一望できる程度の大きさで、辺りは森で囲まれていた。なんというか、ネッシーのような未確認生命体がいそうな神秘さも特異さも感じられない。

 

 

「むっ? あれは……何かの跡か?」

 

 

芝が一直線薄くなっている。まるで昔、何かのせいで剥がれたような。

 

 

「ああ、あそこはワガハイが乗っ取ったハルバードが墜としたアーウィンの不時着現場だな!」

 

「え」

 

 

そう、そこはアーウィンが不時着して炎上した場所だった。正確にはクッパ一人ではなく亜空軍全体が起こしたことの結果なのだが。

完全な悪事をこんな堂々と言える神経がよくわからない。

 

 

「それでフォックス……」

 

 

ここのことを知っていたんだろうな。口には出さなかったが。

ようはクッパの、クッパ達のせいで。

 

 

「う~ん、一応顔を出してたりはしねえみたいだな」

 

「そんな簡単見つかっても面白くないよ! ね、こどもリンク!」

 

「さっさと見つけてさっさと帰りたい」

 

「もー! 夢がないなぁ!」

 

 

付き合わされているこどもリンクは現実志向である。そういう性格だと理解していたため、少しの憤りのまま話し相手をむらびとに移した。

 

 

「むらびとも色々冒険した方がかっこいいでしょ!」

 

「冒険記も売れるかな……」

 

 

まったく別口の話をしているようで、一応肯定はした。

 

 

「それで、結局どうやってネッシーを見つけるんですか?」

 

「あ、そうだったそうだった。もちろん考えてあるから」

 

「(おっ)」

 

 

逸れてきていた会話をロゼッタが戻した。隊長ネスも忘れかけていたようだ。ネッシー捜索をする前に日没……なんてことにならないための考えであることに気づいたのは、この中ではテリーだけだった。

 

 

「ふふん、僕は隊長だからね。もちろん考えてあるよ」

 

 

腕組みをしながら威厳たっぷりに振る舞うネス。その作戦とは……

 

 

「ロックマン、」

 

「ん?」

 

「ビリビリ」

 

「結局力技かい!」

 

 

ツッコミながらも、スパークショックを湖に叩き込む。

呆れながらの行動、しかしこのタイミングでロックマンは大きな違和感を感じた。それが何かを把握しきることができなかったのだが。

 

 

「ん、あれ?」

 

「どうかした?」

 

「なんか出力がおかしいような……気のせいかな?」

 

「そう? 全然わかんないけど……今はネッシーかな」

 

 

そしてネスと一緒に問題を後回しにした。

せっかくの大冒険に水を差されたくなかったというのもあり、深く考えるのをやめたのだ。

 

 

「それならPKサンダーも合わせていってみよう! リュカもね! えいっ!」

 

「わわ、うん」

 

 

ロックマンの排熱と再びの電撃に合わせて二人もPKサンダーを撃つ。

しかし効果があるように見えない。事態を見守っていたジョーカーもたまらずテリーに耳打ちする。

 

 

「なあ……これじゃ、いつまで経っても進まないぞ」

 

「わかってねえな、こういうのは口を挟まない方がいいんだよ。仲間内でああでもないこうでもないと工夫しあうのがいいんだよ」

 

「そういう……ものか……」

 

「そういうものだ」

 

 

保護司であった佐倉惣治郎は確かに怪盗団だとバレても、最初は激昂したし、その後も少しお小言も言われたが、最終的に無理に止めたりはしなかった。

 

 

「惣治郎も、そういった考えだったのか?」

 

「ゴシュジンが? うーん、ゴシュジンの場合はオマエらを信じてただけなんじゃないか? 怪盗団と子供の遊びじゃ、全然違うだろ」

 

 

クッパJr.やトゥーンリンクも合流して、ああすればこうすればと話し合う。そこから一歩引いた立ち位置のこどもリンクから目が離せない。

 

 

「放任ってヤツと信じるってヤツは全然違うだろ。ま、オマエも親になればわかるときが来るんじゃないのか?」

 

「(信じる……俺の何を?)」

 

 

モヤモヤする悩みは消えるどころか余計に増えていく。その心象を表現するかのように、急に白い深い霧が辺りに立ちこめていた。

 

 

「急に霧が……湖に落ちたら危険ですね」

 

 

そういうとロゼッタは子供達の元に向かう。湖から離れるように、そう警告するつもりであった。一部の者だけが感じた、大きな気配がその足を止めたのだ。

 

 

「チッ!」

 

 

巨大な一つの水球をこどもリンクは切りつける。一刀両断。半球の形を残し落下した水はその形を忘れていった。

 

 

「誰だ、キサマ!」

 

 

クッパが吠える。文字通り息子の大冒険に水を差してきた下手人。湖から先ほどのそれより巨大な水球。その中に人影が見える。

 

 

「ああん? 誰だはこっちの台詞なんだが? ったく、任されていた仕事サボって住処で昼寝してたらいきなり電流飛んできてよ、誰のせいだコラア!」

 

「え、あ、ゴメン。」

 

 

思わず素に戻って謝るネス。確かにやったことだけ見ればこっちが悪い。まさか、湖の中で寝ている人がいるとはおもわなんだ。でも、だからこそ気になっていたことを聞く。

 

 

「あのさ! 君がネッシー?」

 

「いや、違うでしょ。ネッシーあんな人間みたいなのじゃないし……」

 

「ほ~う? いいねえ、俺もようやく人気取り戻してきたか!」

 

「そうなの!?」

 

 

ロックマンの驚きを尻目に、ばしゃあと水球を破裂させ、登場した中身。

それはみながよく知るカムイ。水色の服と服装をした彼は竜の角と尾を常に変化させていた。

 

 

「つー訳で、おめえ等の探していたネッシー、もといプレシアだ。オラ、恐れおののけ!」

 

「ええええ!?」

 

 

傲慢に大胆に胸を張るプレシア。その表情にはこれほどない自信に溢れていた。

 

 

「ちょっと! そんな格好じゃただのコスプレじゃん! こんなの撮ったってなんの価値もないよ!」

 

「それどころじゃねえだろ!?」

 

「ンだよ、存在否定されてんのが嫌で、せっかくこんな体手に入れたのによ、元の方が好みか?」

 

「こんな体……? カムイさんに何かしたのですか」

 

「いや、多分本人じゃないよ。おそらくコイツ、ボディみたいなコピーだと思う」

 

「みたいじゃなくて実際ボディだぞ」

 

 

聞き逃せない言葉に穏やかながら言い訳を許さないロゼッタの圧。しかし、本質をこどもリンクは見抜いていた。

 

 

「贋作と本物の違いぐらいわかるよ。何しに来たの君? キーラを討った僕達への復讐? それともダーズ?」

 

「一緒にすんなよあんな奴らと……いやな、せっかく新しい体を手に入れたのによ、このままだとフィギュア化されて追い出されるかもっていうからよ」

 

 

ばしっと、拳を片方の掌に叩きつける。整った綺麗なあの顔に似つかわしくない、歪んだ笑み。

 

 

「創造神、探してんだわ」

 

「このっ!!」

 

 

咄嗟にジョーカーが選んだのは銃による先制攻撃だった。

彼の背後にどんな背景があるか、どんな人間なのかもわからない。だが、今まで見てきた腐った大人と同じ、人を人としてみていないような、自分が世界の中心であるような、そう考えている匂いがした。

大して知りもしていないのに、彼の心は咄嗟に攻撃を選択していたのだ。

 

 

カチッ

 

「なっ!?」

 

「おい、蓮! ペルソナ使えてねえぞ!!」

 

 

しかし、モデルガンからは軽い音しか出なかった。認知の歪みがない世界。銃に認知の弾丸はなく、ナイフに罪を映す鋭さもない。そして、今の彼はその本質(ペルソナ)もなかった。

 

 

「あっ! 僕も使えてない!」

 

 

大乱闘と同じように戦えない。むらびともまた持ち込んでいなかった木の苗を取り出すことができなかった。

 

 

「よそ見してんなよ!」

 

「くそ!」

 

 

ロックマンが咄嗟にロックバスターを撃つが、突然の攻撃に威力はほとんどない。敵の行動を阻害することもできず、プレシアが片腕を振るった。

 

 

Caspian(キャスピオン)!」

 

「なっぐ……!!」

 

 

洪水のような大津波が湖から現われる。辺り一帯を埋め尽くす大洪水。全員がまとめて流されていく。突然太平洋の真ん中にほおりだされたような感覚で頭まで水に飲まれ、方向感覚すらなくしていく。

 

仲間のものだと思われる悲鳴と叫び、攻撃を視認できても避けることすらできなかった無力感。ペルソナさえ使えていれば。

 

 

「(くそ……!)」

 

 

現状を嘆く声は誰に届くことなく泡となって消えていく。絶望の海に囚われながら、ジョーカー、雨宮蓮の意識は闇に閉ざされた。





◯タイトル
スプラトゥーン3 ヒーローモード、サイト5-13のステージ名。
ラインマーカーでスイッチやボム風船を起動していくステージ。
1、2のステージ名は新聞見出しみたいで、オクトはネタ系。3のステージ名はシンプルにカッコいいしオシャレですよね。


◯写し絵の箱
ゼルダの伝説シリーズにて、風のタクトとムジュラの仮面で登場するアイテム。風のタクトではモノクロだったり撮った写し絵からフィギュアが作れたりする。リンク三人衆は写し絵トリオでもあるのです。


◯アーウィン
ただでさえ80年ローンなのに負債が積み上がっていく。
あれから時間も経っているので、炎上に巻き込まれた自然も少しは回復している。


◯プレシア
世間でネッシーと呼ばれるものと同一の存在。詳しくは不明だが、水を操り生み出す力を持っている。
使用しているボディは5Pカラーのカムイ。ただし、尻尾と頭部の角を常に竜化させている。夜刀神は置いてきているため、剣術はできない。
サボって昼寝をしていたために、モンハンの世界では敵らしい敵が出てこなかったのである。ルネさんシフト調整のために入れませんかね……?


◯モルガナ
怪盗団のマスコット的立ち位置で、パレス関係に詳しいために原作初期は色々とジョーカー達を導いていた。猫と呼ばれると怒る。
性能的には、メインヒーラーで、風の術とクリティカルを狙いやすい攻撃で隙を見つけてダウンを狙う。ただ、回復は他キャラもある程度できるので、もっと尖った性能をしているパーティキャラに遅れを取ることも。
本作では、黒猫のままの姿な上に戦えないので、ジョーカーのメンタルコントロールと賑やかし要因です。


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93話 きみよ立ち上がれ

 

「…………」

 

 

またここだ。青く、神秘的な部屋。

 

円状に設置された牢獄の一つにジョーカーは閉じ込められていた。手錠も足枷もなくただ檻に閉じ込められているだけ。

 

 

「誰か、いないのか?」

 

 

ただそれだけ。自分以外の人類が絶滅してしまったかのように、いるべき人が誰もいない。静かすぎる場所。

 

 

「ラヴェンツァ、イゴール!」

 

 

従者と主の名前を呼ぶ。返事はない。

 

 

「ジュスティーヌ! カロリーヌ!」

 

 

念のために分かたれた半身、二人の名前も呼んでみるがもちろん返事は返ってこない。

 

 

「なんなんだ……本当に……」

 

 

なんのためにここに招かれたのか、誰がここに招いたのか。

何もわからない。どうしていいかもわからない。

 

相当混乱していたのかいつの間にか意識が暗んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……い、……!! 生きてるか!」

 

「あっ……」

 

 

呼ぶ声がはっきりしてきて、その意識は明確なものとなっていく。

仰向けで倒れていた自分の肩を強く揺らしていたのはモルガナ。

 

 

「くぅっ……そうだ、俺は……」

 

 

水に打たれたからか無意識に飲んでしまったからか、頭が痛い。鈍重ながらなんとか起き上がるも、水分をたっぷり吸った肉体と衣服は思った以上に重く、へたり込んでしまう。湿気と水分でべたつく衣類がうっとうしい。

 

 

「おい! 無理すんな、動けねえならまだ座ってろよ」

 

「……モルガナは無事だったか?」

 

「なんとかな、バックにしがみついてたからはぐれずに済んだぜ。だが、他のみんなは散り散りにされちまったな」

 

 

木々の葉から水がしたたり落ちる。一体どれだけ流されたのだろうか。直前に現われた濃霧のせいで何も見えない。

 

 

「誰かいないかー!」

 

「おいバカ! あんまり声出すとあのプレシアとか言うヤツにバレちまうぞ」

 

「あっ……」

 

 

思わず口に手を当てる。

湿っぽい霧は静かさを辺りに響かせ、視覚を潰すかわりに聴覚を研ぎ澄ます。それは相手にも同じことで、大声など出したらすぐに見つかってしまうだろう。

 

 

「アイツのことどうにかしないと。またさっきの攻撃が来たらどうしようもない……」

 

「どうにかってオマエ、ペルソナどころか銃も使えなかったぞ」

 

「くっ……!」

 

「おそらくだがナイフも期待できないだろうな……文字通りの無力だ」

 

 

ワガハイも戦えないしな、という言葉を聞きながら、もう一度ペルソナを使おうと試みるが、忘却状態でもないのにうんともすんとも言わず、服装が変化することもなかった。

 

 

「何かの力でペルソナの力が封じられているのか?」

 

「というより認知の歪みによる力が使えなくなってるっていうのが正しいかもな、あの守銭奴の子供も似たようなこと言ってただろ」

 

 

ペルソナが使えたイセカイは認知の歪みによる産物。

 

それがこの世界で使えるのは付与されるファイターの力にペルソナが付属しているからか、この世界そのものにイセカイと似たところがあるからという解釈をしていた。

前者ならば、むらびとも同じようなことになっていてもおかしくはない。

 

 

「……ファイターの力がペルソナの力だから、今の俺は……まずい……!」

 

 

思考を巡らせる傍らで、足音がこちらへ近付いてくるのに気づく。

怪盗として戦えなくても、その活動によって研ぎ澄まされた感覚は衰えない。敵意に気づき咄嗟に茂みに隠れる。霧のおかげで身を潜めるのに適していた。

 

 

「あれは……」

 

 

こちらの行方を捜すように、辺りを見渡す人物。しかし、それは雨宮蓮もよく知るスマッシュブラザーズとそっくりだった。

 

 

「……いや、あれは本物じゃねえな。アカネのジェイルに出てきた認知の産物でもない。粗悪なパチモノって表現が一番近いか」

 

 

キーラとダーズの戦いを知らない彼らはボディのことを知らない。だが、その本質は正確に捉えていた。

 

 

「どうする? 実力でどうこうするのは非現実的だぞ」

 

「……やり過ごそう。動こうとしたらそれだけで見つかる……」

 

 

今隠れているのは、建物の柱や壁ではなく茂みだ。

 

どれだけ気配を消そうが、動こうとすれば葉が擦れて確実に見つかる。森林の中のパレスなどなかったからこそ、今は戦えないからこそ、焦る訳にはいかなかった。

 

 

「(ペルソナさえ使えれば……!)」

 

 

無力さのせいで歯がゆい気持ちになるのは久しぶりだった。

握りしめた拳が痛いほど力が込められて、張り詰めた弦が切れてしまう。

 

 

パキッ

 

「ッ!」

 

「しまった!」

 

 

集中はいつまでも保つものではない。足下の枝を踏みつけてしまい、軽い音が鳴ってしまう。

 

気づかれないはずもなく、リンクのボディから放たれたソードビームが茂みを一直線に刈り取る。

 

 

「くそっ……」

 

『……』

 

 

3体のボディ。絶望の数。横飛びした体はなんとか泣き別れを回避した。

ないよりマシだとナイフを構えるが、認知の歪みがなければただの模造品だ。焼け石に水が正解なのかもしれない。

 

追い詰められて少しずつ後ろに下がり、滅びまでの時間をほんの少しでも延ばしていく。

 

 

「やめろお!」

 

「モルガナ!?」

 

 

モルガナが3体のボディのうちの先頭の顔に貼り付く。引き剥がそうと暴れられてもしがみついたまま顔をひっかく。

 

 

「蓮! 今のうちに遠くに逃げろ! うわああ!」

 

「っ……! できるわけがない!」

 

 

しかしついには引き剥がされてしまう。

仲間を置いて一人だけ逃げるなどできるものか。今の自分は無力だが、モルガナも同じように無力なのだ。

 

 

「こ……のっ!」

 

 

覚悟と助走をつけて直接殴りにかかるが、易々と受け止められ、返しのカウンターで正拳突きが飛んでくる。

どうにか左腕で直撃は防ぐが、骨を砕くほどの衝撃を受け、後ろへのけぞりながら痛みで痺れた左腕をかばう。

 

 

「うぐっ……くうぅ!?」

 

「蓮!」

 

 

更に追撃の剣の一薙ぎが左腕を襲い、長袖の服ごと切り裂いた。ざっくりと深手を負い、赤い血液が流れ出る。

飛ばされたモルガナが叫ぶ。自分が、彼が、ペルソナを使えれば。どうだってできるのに。

 

 

「っ!」

 

「おいっ!」

 

 

なにかの覚悟を決めたように、蓮が咄嗟にモルガナの前方に立つ。自分の失態でこのピンチを招いたのだから、逃げるのはモルガナの方なのだ。

 

 

『……!!』

 

「……っ!」

 

 

敵意が動き、襲いかかる3人。思わずギュッと目を瞑る。だが、ここだけは動かない。例え自分がどうなろうとモルガナは守る。そのつもりだ。モルガナの声がやけに遠くに聞こえる。

 

それを切ったのは、近くで何かの爆発する音だった。

 

 

「えっ……」

 

 

眼前のボディがいない。そこにあったのは焦げた地面だった。

 

 

「だ、大丈夫ですか」

 

「あっ!」

 

「リュカァ~……!」

 

 

木の陰から少々オロオロしながらひょこりと顔を出す。

 

無力な2人ではない。さっきの炎はPSIの力。超能力。それはリュカ本人の力であった。





◯タイトル
MOTHER3におけるゲームオーバー画面のBGM。
MOTHR3の曲名ってなんとも気の抜けた感じのタイトルがいいですよね。


◯ラヴェンツァ
彼女だけスピリットに登場していなかったので記載。まあ重要なネタバレ区間なので仕方ないですが。
ざっくり説明すると、色々あってカロリーヌとジュスティーヌに分けられた、いわば元の存在。本来は彼女がジョーカーを支援するつもりだったが、双子にわけられてしまったために終盤まで出てこない。
しかし、続編にあたるスクランブルでは時系列的に後の作品ということもあり最初から支援してくれる。かわいい。
その後も自由に双子になったりできるようで、総攻撃してきたり外伝でわかれたりする。かわいい。


◯モデルガンとナイフ
ジョーカーの武器である銃とナイフはレプリカであり、現実世界で殺傷能力はない。認知の世界ではいかに本物らしく見られるかが威力を左右する。


◯リュカ
原作では、物理攻撃と回復を主に使い耐久に恵まれたステータス。
ネスも大体そんな感じだが、スマブラで使えるPSIの中に原作で使えるのは一部のみなのは有名な話。
ですが、PKスターストームはクマトラという仲間から教わったものではとXあたりのフィギュアにあったので、その他のPSIも扱えるものと設定しています。本格的に隙のなくなったリュカくんは救世主になり得るか。ちなみにネスも同じように考えています。


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94話 霧中の叛乱

 

 

「えと、あの、ケガとか……」

 

「オマエ、よく無事だったな! コイツよりずっと流されそうな見た目だったが」

 

「モルガナ……」

 

「えっと、海で流されたことがあるので慣れてたのかもしれない、です」

 

「真面目に答えなくていいから……」

 

 

モルガナの軽口に対して、真剣な顔で返したリュカ。海で流された経験に関しては突っ込まない方がいいと感じた。

スマッシュブラザーズに対して、そういうことにいちいち聞いていたらキリがない。少々弱々しい口調で言う蓮の怪我にリュカが気づいた。

 

 

「あっ……! あわあわあわわ……ケガ、ケガが……えっと、治療……でもそんな暇が……」

 

「ああ、すぐにどうこうなるほどのケガじゃない。オマエしか頼れねえからまずは倒すなり逃げるなりする方が先だ」

 

「は、はい」

 

 

少し萎縮しながらも、ぼうっきれを構えて臨戦状態だ。大丈夫。臆病で人見知りは簡単に治らないだろうけど、もう誰かを見捨てて逃げる自分はいない。

 

 

「できるだけ距離をとれ。リーチに入らないように遠くから攻撃を続けるんだ」

 

「リー……?」

 

「あ、間合いって意味だ。とにかく剣とか危ないから近付くなよ」

 

「はい、」

 

 

PKサンダーを3体にそろってぶつけ、続いてPKフリーズで足を奪う。モルガナの後方からの指示により堅実に戦うことができていた。

 

 

「右方向から来てるぞ! 飛べ!」

 

「っ!」

 

 

ふわりとジャンプして格闘技のラッシュを避け、蹴りつけて背後へ飛んだ後はPSIの力をぶつける。さらに体を振り回してぼうっきれで叩く。遠心力を加えた攻撃はクリティカルに入った感覚を受けるが、まだ致命傷にはなり得ていない。とても困った顔をしながらリュカは蓮の前方まで戻ってくる。

 

 

「うっ……時間かかりそう……」

 

「安心しろ、ちゃんと考えてるさ。とりあえず一カ所にまとめるんだ」

 

「はい……」

 

 

3体のボディをどうにかしなければならないのに、1体でも手応えがない。数の不利を覆すほどのパワーはリュカにはない。モルガナに策ありとのことで信じてみるが、自分の自信のなさも覆せなかった。

 

 

「(……っ!)」

 

 

そして後方で蓮もまた何もできない自分に歯がゆい思いをしていた。自分よりも幼い子供にかばわれるしかない自分に。

戦闘が続くうちに離脱しようとも考えたが、この霧だ。一度はぐれたらもう一度合流するのは困難だろう。戦う力もなく手負いの自分が孤立したら一環の終わりだ。ボディだってあの3体が最後な訳がない。せめて微力でも支援できたらとは考えられるのに、それ以上は頭が回らなかった。もっと酷い怪我をしていた時でもここまで思考が停止することはなかった。

 

 

「よし、あの足が凍っているヤツを中心にして残る2体をまとめるぞ」

 

「わ、わかりました」

 

 

PKサンダーで1人を追い立てて誘導する。さらにPKフリーズを足下にぶつけてさらに近くに寄せた。

 

 

「フニャッ!」

 

 

もう1体は完全に死角からモルガナが蹴りつけることで無理矢理すっころばせる。ぶつかって3体全員が横に転がる。

 

 

「今だ! 最初にやった炎を喰らわせてやれ!」

 

「えっ、あっ、はい! PKファイ、わああっ!?」

 

 

リュカの放つPKファイアーは今まで撃った中で最大の火力、を通り越して爆発を引き起こした。

自分が引き起こした火力に呆然としていると、モルガナが足を押してせかしてきた。

 

 

「ボーッとしてる場合じゃねえぞ、とっととここから離れるんだ!」

 

「は、はい! ジョーカーさん!」

 

「いやだから……今はいいか」

 

 

怪我をしたままの蓮を引き連れてどこでもいい、できるだけ遠くへ。敵がどれほどの手傷を負っているかも確認する暇もなくとにかく走る走る。

 

 

「さっきの、なんで……」

 

「……水蒸気爆発か」

 

 

視界に多大な妨害を与えるこの濃霧は室内ですらないのに、急激に暖められて大爆発を起こした。はじめリュカがやってきたときの威力をしっかり確認していたのだろう。

 

 

「ああ、怪盗ってのはクレバーにいくもんだ。まあ、今は怪盗じゃねえけど」

 

 

ヘソを曲げながらモルガナは走る。少し顔を歪めながらついてくる蓮をチラリチラリと振り返りながらリュカは二番目に走る。

ボディ達がなんとか立て直した時には、彼らの姿は霧の中に消えていた。

 

 

 

 

 

 

ある程度進んだところでようやく立ち止まった。木や茂みが多く、敵を見つけるより敵から身を隠すことを重視する。敵であるプレシアが生みだした霧だが、隠密に行動する彼らの行動を結果的に支援していた。

 

 

「あんまり動かさないでください……ライフアップ」

 

「これは……」

 

 

ざっくりと切り裂かれた腕に優しい光がともると、逆再生でもするように傷が塞がっていった。体ごと切り裂かれた服や、飛び散った血の跡はそのままだが、逆にそれは幻ではない怪我を治療したリュカの手腕を証明することになった。

 

 

「オマエ、治療もできるのか! この状況じゃあ最高の助っ人だな!」

 

「いや、あの……えへへ……」

 

 

ストレートなモルガナの褒め言葉に照れと嬉しさが最高潮になり、顔を赤らめながらモジモジする。しばらく拳を握ったり開いたり、腕を動かして具合を確認していた蓮もにこりと笑って礼を言った。

 

 

「流石だな、モナよりも丁寧だぞ」

 

「う~……そんな僕なんて……」

 

「そんな悲観することないぞ、実際ワガハイ達は助けられたし……っておい、ワガハイよりもってなんだ!」

 

 

怪我も治り、少し軽口を叩く余裕が出てきた。敵から離れて頭が回るようになってくると、自分以外のことにも気が回るようになってくる。

 

 

「他のみんなはどこにいるんだろうか……」

 

「リュカみたいに孤立してたらと考えると戦えようが危険なのは変わりないな。どうにか合流できればいいが……」

 

「敵を見つけるのも難しいなら味方を見つけるのも大変だよな」

 

 

リュカは2人の作戦会議に入れずにオロオロしている。でも、黙ってばかりなのも悪い。散った仲間と合流するのが優先なのはわかったため、控えめに発言をした。

 

 

「……と、とりあえず歩き回って探してみますか?」

 

「見つかる危険はあるが、リュカしか戦えない状態でいつまでも身を隠すわけにもいかないな。それでいこう」

 

「ボディがどれだけいるかもわかりませんからね……」

 

 

敵の数は不明だ。人海戦術で探されればジリ貧になる。この霧が相手の出したモノならばなおさらだ。霧が消されてしまえば、隠密の難易度は上がるのだから。

 

 

「ん? ボディってさっき襲いかかってきた奴らのことか?」

 

「は、はい。あっ、そうですよね……キーラのことは知りませんよね……」

 

 

リュカをゆっくりと説明し出す。仲間の存在を狩りだすように霧の中に忍び寄るボディ達。意思なき目が光る中、スマッシュブラザーズはどこにいるのだろうか。

 

 

 

 

「みんなのこと、見つけなきゃ! 僕は隊長なんだからっ!」

 

 

 

「どうして戦えなかったんだろう……せっかくのお金もうけの機会もなくなったのにこれじゃ反撃もできない……」

 

 

 

「うー……ジメジメする……嵐でもよんでふきとばしちゃう? でも隠れてたりしたら困るよな……」

 

 

 

「パパー! パパー! ネスー! リュカー! むらびとー! トゥーン、ロックマーン! 空飛んで探すか!」

 

 

 

「このボディ達……ぼく達のことを探してるみたいだ。押し流しておいて……それにこの霧、なんか嫌な予感がする」

 

 

 

「もーうー、錆びたらどうするんだよ。あのプレシアっていうの倒したら霧も止むかな? でも1人じゃ難しいよね。誰かいないかな~」

 

 

 

「ジュニアアアア! ジュニアアー!! おのれあの偽者男め! 絶対とっちめてやる!」

 

 

 

「これは……孤立しているのは危険ですね。あの子達とも合流しないと」

 

 

 

「ったく、せっかくの子供の遊びに茶々入れやがって。グッととっちめてやるぜ……!」

 

 

 

個々の考えや思考が交差したりしなかったりする中、ひっそりと進行していく霧の中の陰謀。

 

 

 

「どっこ行ったんだかな~、せいぜい俺のこと楽しませてみろよ」

 

水のしたたる森の中、未確認の怪異がニヤリと、心底楽しそうに笑った。

 





◯タイトル
ファイアーエムブレム風花雪月 白雲の章 花冠の節のタイトル。
あのロナート卿が叛乱を起こす章です。楽しい学園生活のはずの第一部がこの章から怪しくなっていく。


◯海で流されたリュカ
あのタネヒネリ島の直前。トラウマのせいで場慣れしてしまったのでは……


◯ナビゲーター、モルガナ
そういえば真が加入するまでは彼がナビ担当でしたね。
状態異常になってると可愛い。


◯水蒸気爆発
文系の人間なので、霧で水蒸気爆発なんか起こるわけねーだろバーカ!的なコメントはやめてくださいしんでしまいます




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95話 出航!タコッペリン号 # あすに向かって ボンボヤージュ

 

 

「うおおお! やっと見つけたぜぇ!」

 

「あっ、テリー!!」

 

 

トゥーンリンクをぶっ飛ばさないように気をつけながら飛びついて抱きしめるテリー。しかし数瞬の沈黙を得たのち、両手で逃れられた。

 

 

「ビチャビチャ……気持ち悪い!」

 

「気持ち悪いって……これが反抗期か……」

 

 

※違います

 

おぞましいほどの湿気にやられて湿った服に押し付けられるのは嫌だったらしい。微妙に嫌そうな顔も離れればすぐに戻った。

 

 

「だいじょうぶか〜? ピーピー泣いてなかっただろうな?」

 

「泣かないよ! こう見えてもお兄ちゃんなんだし!」

 

「おっ? 初耳だな、弟?妹?」

 

「妹! ボクはアリルを助けるために冒険に出たんだからね! ……この暑苦しい服で……」

 

「ストップストップ、ひっでー霧だから余計ベタベタする話は中止。まあこの辺はまだマシか?」

 

 

2人は森の隅の方まで流されたようで、森の突入時に見た景色が周りに広がっている。

プレシアとかいう敵からかなり離れたところにいるというのは、嬉しい一点だが、こうしたのもプレシア本人なので複雑な気分だ。

 

 

「一旦どっかしらに引いて、誰かに助けを求めるのもありだぞ。さて、どうするか……」

 

「もちろんみんなを探す! 助けを呼んだってむらびとみたいに戦えなくなっちゃってたら意味ないし! 急いでみんなと合流した方がいい!」

 

「OK、オレもそう思ってたぜ! 作戦名ガンガンいこうぜッ!」

 

「おー!」

 

 

彼なりのテリーの真似か、シャドーボクシングで気合い十分のトゥーンリンク。さあ、前進だ。

 

 

「ちょっと待てー!」

 

「うわわわわっ!?」

 

 

と思ったらまさかの上空からの声によって静止させられた。プロペラの音が近づき、降りてくるクッパJr.。

 

「ジュニアー! 近くで飛んでたならもっと早くきてよー!」

 

「今気づいたばっかりだ! 空から誰かいないか探してたんだけどな、木ばっかでわかんなかったんだ」

 

 

小さな体で抱きしめ合う様子を微笑ましく眺めていたテリー。これで3人だ。戦えないジョーカーでもむらびとでもないが、それは贅沢だ。

運でどうしようもなければ、自分達の手でなんとかするまで。

 

 

「うし、この調子で他のみんなも探すぞ!」

 

「「おー!!」」

 

 

ネッシー捜索隊は壊滅したが、仲間救助隊が結成される。霧のせいか曇ってきた天に突き上げた拳。それは天候も変えるほどの圧倒的な力に対する叛逆の灯火。絶望という霧を払う希望という名の戦士。その力は誰かの光となるために。

 

 

 

 

 

「……アァ……! ……」

 

「なにか聞こえるな……」

 

 

誰かの声をいち早くモルガナが察知、蓮とリュカも素早く茂みに隠れる。

 

プレシアが手駒として操っているのが、討たれたはずのキーラとダーズの残党。スマッシュブラザーズをベースに造られた虚なる虚像。

数の利で負けており、一部は戦う力のない戦士。早急な合流が求められる。

が、焦って見つかっては全てが終わりだ。叫ぶような唸るような声に3人の緊張感はマックスまで跳ね上がる。

 

ボディではなさそうだが、ぶっちゃけボディではない方が問題だ。喋る敵など、散り散りにした張本人しかいないのだ。

やり過ごすか、抜けるか、気づかれない間に別の道へ行くか。それを思案する前にドダドダと重い足音が鳴る。こっちに近づいてきているのだ。

 

 

「……(ゴクリ……)」

 

 

唾を飲み込む。どう動かれても対応できるように。周りの空気に敏感になれ。殺気や敵意だけでない、あらゆる感情に適応できるように。

 

 

ドダドダドダドダドダドダッ!!

 

「ジュニアアアアアアアアアァァァァァァッ!!」

 

「オマエかよっ!!」

 

 

流石に親子の愛情は予想外であった。状況も気にせず返しの言葉も大声である。

思わず茂みから飛び出してツッコミを入れる。モルガナの猫爪にはたかれても、クッパは歯牙にもかけないのはまあともかく。

 

 

「……あんまり大声を出すと見つかりますよ……」

 

「ふんっ、見つかったところでワガハイが蹴散らしてやればいい! なんの問題もないわッ!」

 

「問題だらけだよ……」

 

 

クッパはそれでいいのかもしれないが、蓮やモルガナが戦えない時点で敵を呼び集めることは十分に自殺行為なのだ。そうでなくてもクッパのその自信が根拠になり続けるとは限らない。

 

 

「とりあえず誰か見つかったのはいいか……あ、そうだ、クッパは普通に戦えるのか?」

 

「ワガハイを誰かと誰だと思っている? いつも通り最強だ! ガッハッハ!」

 

 

仁王立ちをしながら自身の能力は万全だと証明する。しかし、そのために火を吐いてしまったので、霧のせいで再び水蒸気爆発を起こした。

 

 

「ゴッホゴッホッ! わかったわかった……だから火はやめてくれ頼む」

 

「ラ、ライフアップは……」

 

「いいよ、無制限に使えるものじゃないだろう? ……こんなことで使われるの嫌だし……」

 

 

こんなしょうもないことで使っておいていざというときに使えませんはありえない。

 

炎も攻撃のためじゃなかったのでさほど威力がなかったこともあり、動きに支障があるほどの負傷ではない。ただ今後火を使うタイミングは気をつけた方がいいだろう。

 

 

「もうここを離れよう。敵が寄ってくるぞ」

 

 

大声に爆発音に。目立ちすぎてしまったのだ。遠からず敵が集まってくる。今すぐにでも離れた方が良さそうだ。だが、

 

 

「おとうさーん!」

 

「ジュニアッ!」

 

「えっ、いるの!?」

 

 

遠くの小さな小さな声を正確に聞き取っていたクッパが機敏に反応する。ドダドダと走り出すと森の木々の間から縫ってでたクラウンに搭乗する息子の姿。互いに走り寄ってギュッと抱きしめる。それを追ってきたテリーとトゥーンリンク。

 

 

「なあなあ、オレの時もこんな風に長い時間ギューってしてくれても良かったんじゃないか?」

 

「テリーはボクの父さんじゃないでしょ」

 

 

ハグを拒否した理由はベタベタの服なのだ。脱いでからやれ、というのは言えなかったが。というか本気にしそうで困る。本気でしそうで困る。

 

 

「あっ、トゥーン」

 

「やっほー! リュカー! 怪我とかしてない?無事でよかった!」

 

 

亀親子の横をすり抜けて、トゥーンリンクが駆け寄っていく。友達とまた会えて満面の笑みだ。

 

 

「よう、れ……ジョーカー! くたばってなかったんだな!」

 

「やっぱりその呼び方わざとなんだな……」

 

 

おちょくられている。アメリカ暮らしだから呼び方に慣れていないだけだと思っていたが、明らかに言い直していた。

 

 

「ジュニア、怪我はないか!? あのニセモノに襲われていないか!」

 

「心配しすぎだって! お父さんの子供なんだからこのぐらいなんともない!」

 

 

和やかに親子の再会を喜ぶ横でおちょくってくるテリーの言葉を半分聞き逃していた。完全に受け流すほどの余裕がなかったのだ。

 

 

「たたかえな~い! ってピーピー泣いてなかったか? テリーさん、助けて~って」

 

「泣いてない……」

 

「ん?どうした?」

 

 

ちょっとムキになっている返答を怪訝に思うテリー。そこまで戦えないことを気にしているのか。本当なら周りを気にしながら考えることではないのだろう。

あまりにもそれに心を奪われているのか、唐突に質問をしてきた。心配そうなモルガナが見上げているのも視界に入っていないらしい。

 

 

「……なあ、テリーは自分に今みたいな力がもしなかったら、とか考えたことはないか?」

 

「う~ん……考えたことはないけど……まあそうだとしても、今とそんな変わらねえと思うぞ」

 

「変わらない……」

 

「そ、オレはオレ!」

 

 

もし、自分にはじめからペルソナの力がなかったら。裏の顔すら何でもなく、世界に押しつぶされていただろう。過去のたらればを言ってもしょうがないことだろうが。

 

 

「(俺がやれることは……戦えない俺が今できることは……)」

 

 

サポート。他のみなが戦いやすいようにそれ以外の雑務や作戦の立案だ。

 

 

「とりあえずここから離れよう。味方が集まれば、後は敵も寄ってくるぞ」

 

「それもそうだね。湖の近くなら誰かいるかな?」

 

 

味方が集められたということは敵も集まるだろう。まずは、そうなるまでに一刻も早くここから離れなければ。

 





◯タイトル
スプラトゥーン2ヒーローモード、2-6のステージ名。
ブキチリクエストで最初にチャージャーが登場することもあり、チャージャー使い以外は結構苦戦するだろうステージ。
しかし、チャージキープ、引き寄せるライト、ハイパープレッサーなど、大胆なショートカットができる奥の深いステージでもある。


◯暑苦しい服
風のタクトでは12歳の誕生日のお祝いで、あの緑の服を着る習わしがある。ただ暑苦しそうとのことでトゥーンリンクはすごく嫌そうな顔をしている。お前、伝説だぞ……
とはいえ夢幻の砂時計になっても着続けたので、実際にはそんなこともなかったか、機能性は高かったかのどちらかだろう。


◯作者の気まぐれコメント
ようやくスプラ3のフェスで勝てた……ってそんなことはどうでもいいんです。

ピクミン4やりたいので今回かなり手抜きです。
やろやろやろやろはやくやろー!



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96話 おとなもこどもも、おねーさんも

 

「も~う~!」

 

 

脇目も振らずに逃げ続ける数字のついた赤い服に半ズボン。すま村の村長むらびとは今現在、脇目も振らずに逃げ続けていた。

やはりプレシアに一撃加えようとしたときと同じく、自分の中の与えられた力が完全に抜けていたのだ。

 

 

『…………』

 

「はぁ……はぁ……!(いつまで追ってくるんだよ~!)」

 

 

むらびとの後ろから追ってくるのは1体のボディ。

 

あのプレシアとかいう奴に見つかったらまずいということで、仲間の誰かと合流するために霧が薄そうな方へ歩いていたところ、ばったり出会ってしまったのだ。

誰かとは考えたが、仲間とプレシア以外の三択目を願った覚えはない。ボディなんて全部で何体いるかもわからない奴等がいるならもっと慎重に動いていた。

 

見つかったボディが1体で、なおかつソニックのような足の速い姿をしていなかったことは不幸中の幸いだった。でなければ、狭い歩幅ですぐに見つかっていただろう。

 

 

「(どっか誰かいない~!? うちの村にベッソウ建ててもいいからさ~!)」

 

 

その幸運もいつまでも続くものではない。

ボディと相手ができる誰かとの合流はむらびとにとって急務だった。大声を出して呼び寄せるべきなのだろうが、敵も呼んでしまうし、何よりそれをしたらすぐに追いつかれる。どうにかして合流するか撒くかしなければ。

 

 

「とりあえずっ……! 足止め!」

 

 

自分が持っている中で唯一使えそうなものであるパチンコをボディの足下に撃つ。ちょっとだけ足を止め、少しだけ距離を伸ばした。

 

 

「でもまだ来るしー!!」

 

 

それでもそれ一つにこの敵1人をどうにかするほどの力はない。風船を撃ち落とす程度のパチンコはそもそも戦闘に使うようなものではなく、当たったとして急所でもなければ少し痛い程度でしかない。

 

 

「とにかくどっかに──!」

 

『…………!』

 

 

咄嗟に急ブレーキをかけたむらびと。絶望の表情が垣間見えるのは、前方を塞ぐように別のボディが飛び出してきたからだ。

 

 

「うわぁ……!」

 

 

やられたらやり返すと言わんばかりに先ほど同類にしたことをそっくり返される。しかし、四丁拳銃による射撃は足下ではなくむらびとの足に直接撃ってきたのだ。大乱闘では存在しない、感じたことのない痛み。マスターハンドの力のありがたみをこんなところで理解した。

地面に転がるむらびと。無意識に視線を足のほうに動かし、気づいた。

 

今まで無我夢中で逃げてきたせいで、銃撃を差し引いても、足に細かな傷が無数にあったのだ。走っている最中に葉や枝で負傷したのだろう。自覚した以上、もう動けなかった。2人のボディがゆっくりと迫ってくる。自分の心臓の音がやたら大きく聞こえた。

 

 

「(駄目だ……もう、最終手段しか……)」

 

『…………』

 

「誰か~!! 助けてッ!!」

 

 

敵も呼ぶ、でも味方も呼ぶ。

明確に命の危険が差し迫っている今を見捨てて、なくなるかもしれない未来はとれない。後は、天に、任せるしか、

 

 

「……何をしているのです」

 

「! ロゼッ……!」

 

 

歓喜の声は打ち切られた。ただ、唖然とした。

 

自分に寄るように、ボディの間に割り込むように近付くのは本物のロゼッタだ。ボディの模造品では決してない。

だが、彼女は今まで見たことがないような冷たさを放っていた。内から湧き出す激情を冷徹さという形で表に出している。それは二つ名の魔女という名に違わない様子だった。

放った言葉は疑問形のようなのに、口答えを許さない厳格さを持っていた。片方だけ見える目は据わっていた。こんな一面をむらびとは見たことがなかった。

 

 

『…………!』

 

 

その異質な雰囲気を感じ取っていたからか、座り込んでいるむらびとにとどめを刺すよりも静かに近付いてくるロゼッタを相手にすることを優先させた。

ボディの迫るキックを一切動かず瞬間移動でかわす。もう1体のボディと共に同時に攻撃を仕掛けてる。

 

 

「……」

 

 

月の柄のバリアを張り、2人まとめて弾き飛ばす。木に激突したボディに追撃するでもなく、ひたすら感情のない冷たい目で見ていた。感情が通り過ぎて込める価値すら感じなかった。

 

 

『……ッ!!』

 

 

即座に武器を持って真っ正面から斬りかかる。その一閃を滑るように避け、足払い。銃撃をはじめたもう1体のボディはスターピースで全弾を撃ち落とした。

 

 

「すご……」

 

 

ちゃんとした褒め言葉が出てこない。一切自分からは仕掛けていないのに2人の敵を完全にいなしている。いや、仕掛けていないからか。攻撃にまわす余裕を対処に集中できるからこそ、完璧に戦えているのだ。

 

 

『……!』

 

「あっ……!」

 

 

ロゼッタを落とすのは難しいと感じたのか、むらびとへ向けられる銃口。即座に立ち上がるのも難しい彼にかわすことは不可能だ。どうしようもない、が。

 

 

「……そちらを狙うのですか。ああ、許されません」

 

 

それは第三者の介入がなければの話だ。引き金を引き、放たれた弾丸が急に軌道を変え、ぐるりと彼女の周りを回った後、ボディ2人に突き刺さる。

 

 

「アイテムキャプチャー!?こんな使い方できるんだ……」

 

 

立ち上がるボディの後ろへ回る。これは瞬間移動によってだ。反応の遅れた1体がまるで星の引力に引っ張られるようにぶっ飛ばされていく。

 

 

「つよ……」

 

 

それに気を取られているもう1体のすぐ前に立つ。今度は瞬間移動でもなく、気配もなく近づいていた。

 

 

「ハッ……!!」

 

『…………!』

 

 

そして同じように、磁石の同じ極が反発するようにぶっ飛んでいった。

 

 

「ロゼッタ、こんなに強かったの……?」

 

 

失礼だが、むらびとはロゼッタ本人がそこまで強いとは思ってなかったのだ。星の子に指示して戦う技巧派のイメージがあった。

しかし、その実態は名の如く魔女。ほとんど触れすらせずにボディ2体をあしらった。

 

 

「すごいや……」

 

「無事ですか……?」

 

 

先程のような冷たさを一瞬に無くし、ほのかな焦りを馴染ませながらこちらへ近づくロゼッタ。そういえば、痛みも傷も忘れていた。

 

 

「うん、だいじょ……あたた……」

 

 

そして立ち上がろうとした時に思い出した。片膝をついた体をロゼッタが支える。両肩を掴んだ彼女の顔は本当に心配そうに眉を下げていた。

 

 

「……こんな時に言うことじゃないけど、そんな顔もするんだ」

 

「……そんなに意外ですか」

 

「えっ、あっ、ごめん!」

 

「いえ、気にしているというよりは……なんと言いますか、表情が動いていないように見られているのを反省しているのです」

 

「表情がないって思ってるわけじゃないけど……」

 

 

ロゼッタは大抵、微笑か素の表情であり、余裕のある大人というイメージがあるので、先ほどのような焦った顔をするのは意外だったのだ。そして、その言葉に傷つきもする。

 

 

「あー……でもたしかにあんな元気いっぱいのチコの親だから変でもないのか」

 

「……ふふ、探検のために応急セットを用意しておいて正解でした。応急処置をしたら他のみんなも探しに行きましょう。私だけで動けたら良かったのですが……」

 

「一度はなれたら合流できそうにないもんね、歩くよ」

 

 

仕方がない。そう返すと再びロゼッタは笑う。母親だからこその面。子供で、力のない自分にもできること。それはちゃんと守られることだ。それが子供で無力な自分の義務だ。

 

冷たくて心地の良い手が、足の傷に包帯を巻くのを眺めながら、ようやく友を心配し、今後を思考する余裕が生まれた。

 

 

「(なんで戦えなくなってるんだろ……ファイターじゃなくなってるってことかな。なんで僕だけ……あ、だけじゃない、雨宮蓮(ジョーカー)もだった。なんで僕達だけ……)」

 

 

自分のことはなにもわからない。とりあえずは仲間を探しながら、その謎も解明していくしかない。

 

 

「(武器持ってるトゥーンとかはまだしも、リュカとかネスは大丈夫なのかな。僕みたいに戦えなくなってなければいいんだけど)」

 

 

理由がわからないから、彼らも戦えるとは限らない。それでもむらびとは祈るしかできなかった。

 





◯タイトル
MOTHER2のキャッチコピー。エンディングまで〜は初代の方です。
ただ、今話だと、おとなも(ロゼッタ)こどもも(むらびと)、おねーさんも(ロゼッタ)になりそう。ほんとは他の面子もまとめて書く予定だったのですが、ブチギレロゼッタさんが暴れ散らかしたので予定を変更しました。


◯パチンコ
主に風船を撃ち落とすのが使用用途ですが、たまにペリカンも墜とせます。唯一使えそうなものとして挙げられましたが、工夫さえすればもうすこし使えるものは増えます。
ただファイターの力なしでは動く標的に斧を当てられません。なのでむらびと本人が戦闘用途に斧を使うことはないでしょう。


◯ロゼッタ
大乱闘でも使える技の他、ラケットを手を触れずに動かすことから、軽い念力、そして踏んだ時に使う月のバリアも使用できます。
現状チコはいませんが、いなくても普通に強い。


◯作者の気まぐれコメント
むらびとは、普段のネスリュカが治療系能力を持っていることは知ってます。ですが、ファイターの力がマイナスにしか働いていないので、『特定の人物の力を封じている』と思っているため、治療能力も使えないと思ってます。
ロゼッタはファイターの力が封じられた結果、使えなかった技が使えるようになった=普段と同じになったとわかっていますが、治療能力のことを知りません。
すれちがいまくってます。すれちがい伝説です()


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97話 鏡の大迷宮

 

 

むらびとがどこかにいるはずの友の身を不安視している中、その当の本人達(一部)は他と同じように仲間を探していた。

 

 

「う~……ジメジメする~」

 

「ぼくも中で水が溜まって……」

 

「……え、なにそれ……」

 

「霧が中に入って……それから水に戻って……」

 

 

運良くネスとロックマンの2人は合流することができ、さらにはぐれた仲間を探すために森を歩いていた。深すぎる霧は視覚以上の不快感を与える。

 

 

「あ、湖。戻ってこれた!」

 

「誰かいるかな?」

 

 

歩き回っていた2人は意識したわけではないが、湖に戻っていた。

 

 

─彼らが他の集団と違っていた箇所。

 

─まず、今後のことや相手の意図を予測するような頭脳担当、ブレインがいないこと。

 

─そして、プレシアの存在以外の異変を知らなかったこと。

 

─そのせいで湖の側にいることの意味を彼らは知らなかったのだ。

 

 

「おーおーおーおー、おめでとうだな、お前たちが1番のりだぞ」

 

 

拍手と共に湖から顔を出したのはプレシアだった。不自然にそりたつ山のような奔流の頂点に悠々と彼は立っていた。

 

 

「お前は……!」

 

「ネッシー!」

 

「うぐっ……散々思ってたんだが、その名前、ダサくないか? なにからとったのやら……かっこよくプレシア様って呼んでくれよ」

 

 

まるで何かの一撃を受けたかのように、顔を歪め、オーバーなリアクションを取る。言葉の端々に滲み出る上から目線は今も健在である。

 

 

「かぁー、萎えた萎えた、プレシア様萎えちゃったよ、どう責任とってくれんの?もういいや、あと適当に戦っといて」

 

 

非常に適当に言葉をかわすと水を操り、即席の玉座を作り出す。頬杖をついていかにもだるそうに指を鳴らすと湖から3体のボディが上陸する。

 

 

「うわっ!? 出てきた!?」

 

「とりあえずこっちからぶっ飛ばす!」

 

 

ロックマンはアーム部分をロックバスターに変化させ、ネスはバットを構える。どうあっても対処できるように。かたやスマッシュブラザーズ最古参の1人、かたや幾度となくドクターワイリーの野望を打ち砕いた者。

どちらも歴戦の猛者である。少々数が多い程度では臆することもないし、ボディが出てきたことに驚きはしても戦闘自体に響かせない。

 

 

『……!!』

 

 

最速で突出した1体のボディが正面から突撃してくる。突進か──。バカ正直に付き合うこともなく、2人はわかれて進行レーンから外れる。そして、残っていた2体へ距離を詰めていく。

 

 

「はあっ!!」

 

 

指先からぶつけた念の力は軽い小ネズミの姿に避けられる。しかし、カウンターの電撃もサイマグネットでガードし、ヨーヨーをぶつける。少しのけぞったが、次の動きを止めるまでにはいかず。

 

こうそくいどうでヨーヨーの紐を通り、背後に回ってロケットずつき。腰に当たったが、振り向きざまにPKフラッシュをぶつけて目くらまし。前後不覚となった敵を蹴っ飛ばして湖にたたき落とした。

 

 

「こんな奴らに負けられない……!」

 

 

ロックバスターによる牽制から始まるロックマンの戦いは強みに頼る形だった。

 

偶然か否か、自分自身のボディと戦うことになったロックマン。敵もまた距離をつくって戦うことになり、展開したリーフシールドは敵の弾を落とす。それを見てか、相手側もリーフシールドを展開した。

互いに牽制の弾を撃ち合い、膠着する戦線。それを打ち破ったのは、先制攻撃を仕掛けていた1体。

 

 

「わっ……!」

 

『……!』

 

 

驚きつつもリーフシールドを撃ち出して足止めをはかり、フレイムソードを体に押し込む。

 

 

『ッ!』

 

「……!? ネス!」

 

「OK!」

 

 

その隙にと撃ってきたチャージショット。ロックマンがその名を呼ぶと、間に入ったネスがチャージショットを撃ち返す。もう1体も飛んでいった。

 

 

「流石にやるねえ、3体ぽっちじゃどうにもならなかったか」

 

 

その戦いを上から見ていたプレシアが再び指を鳴らす。今度は正面の湖から上陸したのが4体。

 

 

『…………』

 

「……気をつけて……後ろにもいる……」

 

 

さらに通ってきた森の道から2体、合計6体と倍の数となった。背中合わせになって、唾を飲み込む。4体を見るネスと2体を見るロックマン。離脱するなら背後一択だが、それを許せないプライドは少し心の中にある。

 

 

「どうする?」

 

「隙を見て本人を叩くしかないよ、明らかにまだ余裕ありますよーって顔してるし……」

 

 

呼び寄せたボディ、プレシアの命令を聞き戦う傀儡。どうして奴の命令を聞いているのか不明だが、ここにいるボディが全てだとは言い切れない。闇雲にボディと戦っていれば消耗戦で敗北する可能性が高い。

 

 

「わかった、2人で戦っていけるときに攻撃してみよう」

 

「うん、隙を見て、だね」

 

 

小声で完了した作戦会議、アームをキャノンから素手にもどし、得物を小廻りのきくヨーヨーに持ち直す。背中合わせを変えないまま迎撃の態勢を取る。2体がその場で重火器を構え、残り4体全員が一斉に襲いかかる。

 

 

「やっちまえ~」

 

『……ッ!』

 

「きたっ!」

 

 

同時に真反対に駆けだして一網打尽を阻止する。振り向きざまに放ったヨーヨーは、メタルブレードを打ち返しブーメランのように二度ボディを傷つける。ネスが相手の様子を見ないままに遠距離に布陣していた敵1体に向かう。

 

 

『ッ!?』

 

「やあっ!!」

 

 

弾丸を浮き上がってかわし、振るってきた腕を踏み台にして脳天にバットをたたき込む。さらに追ってきたボディをバットを振り回して距離を作り、押さえ込もうとする腕を避けて鳩尾にPKファイアーをたたき込む。水蒸気とともに大きな爆発を引き起こした。

 

 

「っ! まだだ!」

 

 

スパークショックをたたき込んだボディを盾にして銃撃を防ぐ。さらに痺れている敵にフレイムソードをたたき込み、吹き飛ばした敵をビリヤード方式に狙撃用のボディにぶつけ、もつれ合わせたところにチャージショットをぶつけて湖に沈める。

 

 

「ほ~う? ガキだと思ってたら流石にやるじゃねえか。この程度の数じゃ怯えもしないってことか」

 

 

上から眺めて、プレシアはそんなことを呟く。彼が思い返すのは知識として知っているキーラやダーズとの戦い。

 

 

「そういや、あいつらボディに宿ってた奴が同じ世界の出身ならわかるんだっけな。影蟲平面野郎や鉄くず卿がいなくてよかった……いーや、そんな問題でもねえな」

 

 

そう、彼らがいたのなら自分のこともわかっただろう。自分がこの大乱闘の世界の出身であること、そしてボディを操る者達にスマッシュブラザーズの情報をよこしたのが自分であることも。

 

自分はボディに頼らずとも、元の体が存在している。他よりも本気度が足りずに、遊び感覚なのは当然だろう。彼自身、暇つぶしの面も強かった。なぜならファイターの力でなくては、この体をフィギュア化させ、精神を追い出すことは不可能。

 

 

「ふむふむ、6人と一匹、あと2人か。で、今目の前の2人に……あれ、1人いねえ」

 

 

すっと集中をはじめると、霧の中の存在がどこにいるかを感じ取る。自分が生みだした霧だ。そんなことまで可能なことを彼以外誰も知らない。

 

 

だからこそわかった。1人、自分の把握していない場所にいる。しかし、霧の外、いわゆる森の外に出たのだろうとあまり気にしないことにした。

 

 

「さーて、どうすっかな」

 

 

奴等も近付いてきている。数で勝てる時間も長くはない。圧勝もつまらないが、負けるのはもっと嫌だ。その均衡を突然破ったのは真下から聞こえる水音だった。

 

 

「「ぎゃああああ!? 魚おばけええええ!?」」




◯タイトル
星のカービィシリーズ8作目。ゲームボーイアドバンスの機能を活かした最大4人プレイで4つにわかれたカービィをそれぞれ操作可能。能力的には弱体化してないのにただ敵を増やすダメナイト。なんで10分割しなかったんですかね。


◯プレシアの出身
なんとロボットやMr.ゲーム&ウォッチと同じ大乱闘の世界。
2人が大乱闘の世界出身というのは拙作のオリジナル設定です。


◯スピリットのシステム
前作では、ボディに宿ったスピリットと同郷のファイターは、そのスピリットが誰か感覚でわかるというオリ設定がありました。
因縁の対決をスムーズにはじめるための設定です。


◯魚おばけ
みんなもよく知るあの子です。
多少姿は違いますが。


◯作者の気まぐれコメント
スプラトゥーン初代!? 生きてたのかぁ!?
せっかくだしやるか……

ちなみに作者は今でこそスロッシャー愛好家を名乗っていますが、初代では52ガロン主軸、2ではダイナモをかじってました。当時からバケスロ系統は使ってましたが、今ほど頑なではなかったです。
みなさんはブキ編歴はどうですか?
せっかく蘇ったので色合い大好きバケスロソーダ使ってきます。あとクイボヒッセンとかも。123巡って参ります。


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98話 地殻の下の嫉妬心

 

「……っ」

 

 

打撲のように打った左腕を庇いながら、それでも心は屈せずに前を見る。熱さは少し残しながらも、冷静さは見失わない。

 

 

「ど、どうしよう……」

 

「…………」

 

 

手早く終わらせたはずの戦闘でも、少なからず他の敵を誘き寄せていた。応急処置を終えたばかりのむらびとを庇いながら、ジリジリと後ろへ下がっていく。敵の数は大きく増えて5体。

 

 

「(泣きっ面にハチってヤツだよ……痛いじゃ済まないじゃん……)」

 

 

何かできないか、むらびとはずっと考えていた。でもやっぱり、パチンコしか思いつかない。

 

 

「(でもだからって、このままいられるか! もう一度考えてみよう!)」

 

 

それでも、このまま守られるだけを良しとしなかったむらびとはボディ達への警戒をしながら今持っているものを再確認した。

 

大体いつも持っているものとして、 むしとりあみ、つりざお、パチンコ、スコップ、じょうろの便利ツール。ネッシーを探すとのことで、つりざおは2本持っている。

他にはきのぼう、カブなどか。

遊ぶ用のものとして適当に持ってきたはなび、ふうせんにシャボン玉やタイマー。

ネッシー探索用として、オノや借りてきたカメラ。

捕獲用の大きめのネットやロープ。あと替えの服。

 

 

「(えっーと、えっと、重いものは大体置いてきちゃったんだよな……)」

 

 

歩き回るのが前提だというのに、ボウリングの球や植木鉢は持ち歩けない。大乱闘のつもりではなかったのだ。どうやっても威力だけは出せないが、それでもただ倒すだけができることではないはず。

 

 

「ハッ……!」

 

 

スターピースのショットをただひたすら撃ち続ける。決定打にはならない。ただ決してこっちに近付かれないように。

 

 

「恐れないで、諦めないで戦い続ければいつかチャンスが回ってきます」

 

「ロゼッタ……」

 

 

後手と守備に回らずを得ないが、その目は諦めてもいなければ焦ってもいなかった。ひたすら前を見据えてまっすぐに。

冷静に焦りをなくした頭は回っていく。機転と小回りのきく、ファイターむらびとへ。

 

 

「うん、これなら……いける!!」

 

 

笑顔も生まれたむらびとは、ロゼッタの背後ではなく隣へ。つりざおを構えながら同じように敵を睨む。それを見て、ロゼッタは柔らかく笑った。スターピースのショットをさらに威力を高める。

 

 

「しずえさんがやってるのと同じように……こうっ!」

 

 

ぐわんと竿をしならせ、針の部分を敵の方へ。

その針についていたのは替えの服だ。敵の顔に叩きつけて視界を封じる。

 

 

『……ッ!?』

 

「ただの目くらましじゃないからね!」

 

 

叩きつけられた敵が目を押さえてうずくまる。服にシャボン玉用の液を浸けていたのだ。一時的な妨害ではなく、敵の行動すら封じる一手。むらびとが今回初めて有効打を与えられた瞬間だった。

 

 

「流石ですね……!」

 

 

均衡が崩れたことをきっかけにロゼッタが瞬間移動で切り込んでいく。まずは1人、足払いで転ばせ、むらびとの妨害にあっているもう1人を魔法で弾き飛ばす。破れかぶれの反撃はバリアで防がれ、その反動でのけぞった。

勢いはまだ止まらない。背中を押し続ける誰かが来る。

 

 

「あれ、なんかきいろいのが……」

 

「ママー!!」

 

「うぇっ!? チコだった!」

 

「あら」

 

 

上空からロゼッタの胸に飛び込んできた黄色い星の子。ロゼッタと共に戦い、彼女を母と慕う子。

普段の大乱闘では共に戦っているのだが、プライベートでも常に一緒にいるわけではない。今回もそうだったらしいが、異変を察知したのかとんできたようだ。

 

そして、

 

 

「見つけたァ! おまえらァ!」

 

 

いたいけな少年とそれを守る女性に無慈悲に襲いかかるボディへ勢いのままショルダータックルをしかけるテリー。狼もまた遅れて推参する。

 

 

「テリー!」

 

「よっ! へばってないか? 無傷では……なさそうだが、無事でなによりだぜ!」

 

 

足に巻かれた包帯に、一瞬動揺が走るもののそれを顔に出すことはせず、カラリと明るい笑顔を見せた。

 

 

「うん、なんとかがんばってる!」

 

 

虫取り網にタイマー、じょうろと、硬いものを入れてぶつけるむらびと。近付いた敵にこうやって攻撃しては距離を取るヒットアンドウェイ。怪我した足では動きも悪いため、深追いだけはしないように気をつけていく。

 

 

「テリーさん、他の方の行方をご存じですか?」

 

「ネスとロックマンとこどもリンク以外はな。チコちゃんが見えて走ってきたんだ!」

 

 

チコを追って走ってきた結果、ロゼッタとむらびとを見つけたということだろう。

しかし、大半の味方の行方を知っていながら、現状は1人なのはどういうことだろうか。何かが起きてはぐれてしまったのだろうか。

 

 

「1人で?」

 

「んー、あー、何かあると思って先に行くってリョウショウ取って……」

 

「嘘つけ!? 一方的に言って何も聞かないまま勝手に行っただろ!」

 

「アウッ!」

 

 

テリーが行方を知る者全員が後から登場した。バックの中のモルガナが大きくツッコミを入れた。アシカみたいな鳴き声のオーバーリアクション。

 

 

「むらびとー!! 怪我してるー! リュカ、リュカー!」

 

「あわわわ……だい、だいじょうぶ?」

 

「ごめんね。今てもちが……」

 

「いらないって……」

 

 

仲のいい友人と再会したことでフリーダムなマイペースさを取り戻すむらびと。にこにこと年相応の顔を取り戻す。

他がボディと戦いはじめる中、雨宮蓮もまた、彼に近付いていた。

 

 

「怪我は無事なのか?」

 

「無理はするなよ、」

 

「まあ、歩きにくいけど大丈夫」

 

「トゥーン、オマエは戦っとけ、今のコイツでも背負って動くぐらいできる」

 

「うん、わかった!」

 

 

実際の状況を見て安心したのか、にこやかに進む。クッパとつばぜり合いをするボディの背後を斬りつける。

 

 

「後3人か……」

 

「はい、でもネスは頼りになるし、ロックマンもしっかりしてるし……」

 

「こどもリンクは?」

 

「……えっと……トゥーンが信頼してるから大丈夫かと……」

 

「急に雑になるなよ……」

 

 

残る3人もきっと大丈夫だと、そう言っている内にリュカの治療が終了する。

ゆっくりと包帯を外していくと、そこには傷痕すら残っていない綺麗な足があった。怪我の痕跡は穴が開いたままの靴下だけだ。

 

 

「よし、これでまた戦える!」

 

「えっ、おい、オマエは……」

 

 

疑問を解消せぬままに、構えたつりざおを振り回してシャボン液服を顔面にぶつける。怯んだ敵ならばチコのインファイトでも十分倒せる。

背後から襲ってきたボディの目の前に打ち上げ花火を設置。ビクッとボディが反応するが、何も起きない。気にしすぎたと無視して剣を振りかざそうとすると、

 

 

バドーンッ!!

 

「わっ!?」

 

 

霧で湿気た花火だが、大きな音を鳴らすことはできた。ハッと我に返ったリュカの超能力でダメージを負う。

 

 

「ひえ~、アイツたくましいな蓮……蓮?」

 

 

固まった蓮。その後怪訝に思うモルガナにちゃんと返答をしたはずだが、全然覚えていない。戦いを終えた他の仲間に対してなんていたわったかも。

 

 

ただ雨宮蓮の胸中には、感じたことのない感情が湧き上がっていた。

 





◯タイトル
東方地霊殿、二面ボス水橋パルスィの二つ名。
地殻の下は旧地獄、嫉妬心はそのままパルスィのことだろう。

今回の場合は、地殻というよりは知覚という字が正しいかもしれない。つまりそういうことである。


◯ゲーム内で登場しないアイテムについて
別に持っていてもおかしくないような便利アイテムについては、特に言及もなく持たせております。
救急セットやら、ロープなんかもそうですね。今までもシュルクかレンチを持ってたり、アイクラが登山用品を持っていたりはしたでしょう。
使う機会がなかっただけで……


◯むらびとが持っていたアイテム
一部以外はあつ森をベースに持っていそうなものをチョイスしています。ツール系統は私も持ち歩いています。
ステッキ系統ですが、オシャレとか気にしてないだろうこのむらびとは、持ち歩いてないと判断して勝手に省かせていただいています。
カブ? ほら、持ってないと腐るまで忘れるやん……



◯チコ
遅れて参戦、というかロゼッタの戦法に幅が欲しかったので急遽参戦。
ちなみに大乱闘ほど耐久は低くないです。マリオで踏んでた方、手上げて〜ノ



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99話 月魄のファントム

 

「「ぎゃああああ!? 魚おばけええええ!?」」

 

「ぼくだよッ!!」

 

「ぐっ……!?」

 

 

怒声と共にプレシア本人を傷つける両腕のヒレ。

 

湖から飛び出た魚おばけはプレシアを湖に叩き落とすと、踊るように、かつ無駄なく洗練された動きで敵を斬りつけていく。

 

 

「ぼくだよって言われても!」

 

「軽く察しなよそれぐらい!!」

 

 

なんとヒレを切り離してブーメランのように広範囲攻撃まで仕掛ける。6体いるボディに対してトドメにはならないものの、吹き飛ばすことに成功した。

 

 

「あの〜、お魚の大人の人には知り合いはいないんですが……」

 

「大人でもないし……」

 

 

そういうと、まるで顔を手で掴み、まるで取り外すように動くと、見上げていた視線の先の誰かが消えた。

 

自然に下に動かすと、見覚えのある緑の服。

 

 

「ええー!?」

 

「こ、こどもリンクだったんだ……」

 

「ぼくだとわからないのはいいけどさ、まさかおばけ扱いとか……洒落になってないんだけど」

 

「「よくわかんないけど、大変申し訳ありませんでしたっ!!」」

 

 

どうしてだろう。同じ子供のはずなのに、強制されていたわけでもないのに。どうしてだが人生経験豊富な大人に感じられてつい敬語を使ってしまった。

 

 

「っていうかまさか湖の中にいたの!? アイツがいたんだよ!?」

 

「知ってる、それよりこの霧に嫌な予感を払拭できなかった。あしらって離脱するくらいなら水中でもできるから」

 

 

簡潔に自分の考えだけを述べる姿は、無駄を嫌う大人に近いのかもしれない。

 

ブクブクと湖から湧き出す水柱、その頂点に片膝をつくプレシア。得物を構え直し鋭く前を睨む。

 

 

「やってくれんじゃん……てっきり霧の外に逃げたかと思ったら、まさか水中にいたとはな」

 

「なんとなくそんな気はしてたよ、君が生みだした霧なんて百害あって一利なしだ」

 

「ことわざ使って頭いいアピールかぁ? 気にくわねえな」

 

 

龍のようにうねる水が襲いかかってくる。鋭い目が更に鋭くギラリと細くなる。冷たき衝動の裏の戦意は互いに研ぎ澄まされていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

荒れた息を整えるファイター達。ボディを倒し、撃退した姿を蓮は直視することができずに目を背けた。

片膝をつけたまま呆然とし、それから自分の中の感情に気づいて、そしてそれを完全に押さえ込むことが出来なかった。

 

 

確かに子供達の遊びに付き合う予定だった集団から見れば、高校3年生は大人と呼べるだろう。

 

だが、まだ親の庇護下にいてもおかしくない年齢ではあるのだ。自身を守る立場である両親から離れていた1年間はつい最近のこと。

 

佐倉惣治郎も大人だが、究極を言えば血もつながず庇護される責任のない他人だ。どれだけ信頼していても、親への対する感情とは別物。

 

甘えを許される人のいない1年は感情の制御を無理やり行わせ、たった今その反動がきている。

 

大人じゃない。でももう子供とも言えない……

 

その感情は口に出さない。だが、態度を隠しきれない。だからこその中途半端な対応。中途半端な歳だから。

 

 

「……おい、どうかしたのか蓮?」

 

「なんでも……ない」

 

「とてもそうは見えねえぞ」

 

 

その感情が自分勝手で独りよがりだからこそ、見え見えの見栄を張る。伝えたくないから。そうすると、モルガナは何か言いたそうにしながらもなにも言わなかった。

 

 

 

力のない自分は、なにもできず誰か任せにしながら事態が好転するのを待つしかない。

 

もし、その誰かが負けてしまったら? その後のことは考えたくなかった。

 

 

 

 

「……はあぁ〜! ほんと助かったぁ〜! 一大事だったよ〜!」

 

 

敵を全滅させ、思わずへたり込んだむらびと。つりざおも放って、ここが家だったらベットに飛び込んでいただろう勢いで力を抜いた。

その姿が、今は1番見られない。

 

 

「そんなキケンだったのか? その割にはガンガン戦ってただろ」

 

「キケンだったよ〜。僕はなぜか戦えなくなってたし、こう見えておっかなびっくりだったんだからね」

 

「それでも前に出たか、その意気は悪くないな、ガハハハハッ!」

 

「そうだろそうだろ!」

 

「親父くさーい」

 

 

よその子にも父親面する姿にトゥーンリンクは引き気味だ。祖母と妹の女家庭で育った彼には少し縁遠かった。それよりも多少もの静かでも優しく見守るロゼッタの方がいい。背中に回ってジトで見る。

 

 

「えー、父さんがボクの友達ほめてるんだから別にいいじゃん」

 

「ほめられるのはそりゃあわるい気はしないけどさ、上から目線っていうかなんというか……」

 

「そうかな? 僕は嫌いじゃないけど」

 

「……あっ違う! 友達じゃなくて家来だ!」

 

「どこで見栄はってるの!?」

 

「ほめられたの僕のはずなんだけどなあ」

 

 

血のつながりのない他人と身内の受け取り方は違う。見栄故に言い直すクッパJr.と普段の雰囲気を取り戻していく子供達。その中でポンと両手を叩いたロゼッタ。まだやることがあるのだからとチコを抱き上げ頭を撫でながら話し出す。

 

 

「みなさん、戦績を讃え合うのは構いませんがまだ全員が合流できていたわけではないでしょう?」

 

「タタエ?」

 

「あー、そういりゃあそうだな。ネスにロックマンにこどもリンクか」

 

 

テリーがいない人間を指折りで数える。まだ問題は残っているのだ。

 

 

「うむ……まずどこにいるかが問題か。やみくもに探しても見つからんぞ」

 

「オカリナの音がなってる方に……」

 

「トゥーン、こどもリンクもこの状況でオカリナ吹かないと思う……」

 

「あそっか」

 

 

うーん、と考える中、数瞬の後にむらびとが言った。片手を上げながら。

 

 

「もうメンドウだからアイツたおしにいっちゃおうよ。これだけ集まれば十分でしょ。他は後から探してもいいし」

 

「それもそうだけど……むらびとはどうなの? 戦えるの?」

 

「……!」

 

 

ピクッと無意識に跳ねる体を押さえ切れなかった。過敏に反応してしまったのだ。彼を置いて話が進んでいく。

 

 

「うん、力がなくてもなんとかできるってわかったから」

 

「…………」

 

「蓮……オマエ……」

 

 

ここまでくればわかった。今の雨宮蓮の胸中を占める感情がなんなのかを。

 

しかしそれをどうしてやればいいのだろう。ファイターの力をなくし、その原因がわからないのだからどうしようもないのだ。

モルガナもまた戦う力もない。怪我をしても治療もできない。蓮が無力ならばモルガナもまた無力である。気の利いた言葉も思い浮かばなかった。

 

 

「……でも、危険でしょう。戦える者がいるならば他にまかせても……」

 

「まあ待てよ、別に1人に任せるわけでもないし少し目を瞑ってやってもいいんじゃねえか?危なくなったら後ろに行かせれば」

 

「だいじょうぶ、ひきぎわってヤツを見極めればいいんだよね。やれないことまでやるつもりはないし、大事なのは気持ち。うん」

 

「あっ……」

 

ぶつかる気持ち。

ロゼッタの母親として子の身を案じる思慮。

テリーの父親として心を尊重する気持ち。

現実になるのはどちらかだけだが、その心は気持ちは、どっちも間違ってはいない。

 

 

黒にも明るさと暗さがあるし、赤には青や黄が混じってるかもしれない。

 

大人も大人ってだけで悪いわけではない。自分達のことを見守ってくれて、自分だけでなく誰かのために動ける大人とも出会ったはずだ。なのに、パレスで改心させた大人の印象が強くなりすぎた。

 

いじめをしていたという同年代の人間を改心させたこともあったし、人のおもちゃを奪うような子供も、子供というだけで善良というわけではない。自分がどうあるかに、どうありたいかに年齢などなかった。

 

 

「(大事なのは気持ちで……心で……)」

 

 

先ほどまで感じた感情も完全にではないが消えていた。無意識に、無自覚に、むらびとは蓮の気持ちを救う。

 

 

何かを思い出して、前に進めそうな気がした。

 

 

 

 

『────────────────!』

 

「ッ!」

 

「蓮? どうした?」

 

 

内から声が聞こえた気がして、反射的に視線が動く。一見、他の方角となんの違いもない道。それをすっとにらみつける。誰かがこっちだと言った気がした。

 

 

「こっちに何かあるのか?」

 

 

問うても何も応えない。応えたのは爆発音、戦闘音だった。ならば、戦っているのは。

 

 

「行こう」

 

 

アイコンタクトだけでその意図が伝わる。走り出すファイター達の後方でテリーの体が倒れかける。足で押さえて地に足以外をつけることはなかったが、自認より重い体に動揺を隠せない。

 

 

「なんだ……っ?」

 

「どうしたテリー!?」

 

「なんでもねえ!」

 

 

そういったクッパも息が整っていないような気がする。それでも子供達が頑張っているのだからとふんばって足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そこは湖。戻ってきたのだ。探検のはじまりに。

 

「うげっ、全員いる」

 

「ったく、くるの遅いって!」

 

正反対の悪態をつく、振り回す尾と剣がぶつかりあう。片膝をついたネスとロックマンが出迎える。

 

クライマックスへの幕が上がる。

 





◯タイトル
星のカービィ スターアライズDLC第三弾で追加されたBGM。
星のタランザのバルフレイナイト戦で流れる曲。
クィン・セクトニア戦の3曲を混合アレンジしたいわばセクトニアメドレーともいうべき曲。アレンジ元のイントロの使い方が最強。お金払わせろ


◯ゾーラリンク
ゼルダの伝説 ムジュラの仮面で登場する、こどもリンクがゾーラの仮面で変身した姿。水中での動きが抜群によくなり、ヒレで攻撃するようになる他、オカリナがギターに変化する。しかし、氷や火に極端に弱くなる。
仮面の元になった方は亡くなっているのでお化け扱いは洒落にならない。TAS動画でいうところのとどめの歌。


◯ペルソナ5の大人達
ペルソナ5のコープやキャラクター達ってほとんど年下がいないんですよね。双葉とかすみちゃんと織田くんくらいですかね? 双子やソフィアに年齢という概念はないとして……
構造上悪人は大人ばかりだし、プレイヤーもその印象が強いでしょうが……いじめっ子がメメントスにいるので、悪人がみんな大人という訳ではないわけです。当たり前ではありますが。
つまり、悪やら正義やらを決めるのは内面なのではないでしょうか。


◯作者の気まぐれコメント
ピクミン4が落ち着いたので、先々週くらいにポケモンスリープはじめました。イーブイいるしリーフィアはいいとして……ランターンたそいますか? えっ、明るい子は向いてない? アハアハアハハハ……

そしてスプラトゥーン新シーズン!
新スロッシャーのモップリン! また癖強いのきましたね。曲者スロッシャー種か……
そしてお願いがあります。これ以上スロッシャー種にラインマーカーをつけないでください。起伏の激しいところが好きなバケツ種と全然合ってないんです。せめてエクスにつけてください……
シールドォ!オフロはシールドがいいんだあああああ!
てか、シールドじゃなくてもクイボあたりかなって思ったんですけど!? オフロに恨みあるんか……
スクネオは……ポイセンかポイズン、あとソナーがつけば無印と差別化できそうで面白そうです。
とにかくクラス分けの帽子に合わなきゃ……ラインマーカーはやだラインマーカーはやだラインマーカーはやだ……

これで使ってみて相性よかったら天性のおまぬけになりますね……


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100話 超高校級の不運が超高校級の殺人と超高校級の処刑と超高校級の絶望を引き寄せた理由

 

「チッ……全員そろってきやがって……めんどくせぇ!! Eyre(エア)!」

 

 

捩れながらに向かう水。その矛先はたった今合流したファイター達。

 

 

「甘いっての!」

 

 

四散して散っていくファイター達。広範囲攻撃が得意な敵にくっついて戦うのは不利である。プレシアを除いても今だ4体のボディが健在である。しかし、敵の数を上回ったため背後を狙われる可能性は低くなった。集って戦う理由が薄くなったのだ。

 

真っ先に跳びだしたのはテリーだった。その拳に炎を灯し挨拶代わりの一発とぶん殴る。腕を交差してガードするプレシアにブーメランで追撃するこどもリンク。さらに撃ったチャージショットは湖からせり出した水壁が行く道を防いだ。

 

 

「ったく!凍え散れ!Vostok(ボストーク)!」

 

「バッ!?ちべてぇ!?」

 

 

指から銃のごとく発射した一水はクッパJrの顔面を直撃する。ジメジメと湿っぽい環境から冷たい一矢。顔を振って水を飛ばすが、急激に体温が低下していくのを感じる。クラウンを操作する指がかじかむ。

 

 

「うう……!くっそそそそ……」

 

「とりま1人!」

 

「キサマ!」

 

 

カムイのボディの力、竜穿の腕が迫り来る。間に入ってかばうクッパの腕、鋭く綺麗な切り傷は傷の範囲以上に血を吹き出す。

 

 

「2人になにするんだよ!」

 

 

振りかぶったバットを湖に潜ることで回避したプレシア。すぐさまネスが治療に移ろうとするがそれをクッパ本人が止めた。

 

 

「お父さん!」

 

「バカモノ!この程度の傷なんてことはないわ!」

 

「でも……!」

 

 

納得しきれないネスが食い下がるが、手負いを悟られぬ動きでボディ1人を切り裂いた。強がりな面も少なからずあるだろうが、ぱっと見では影響のほどは見られない。

 

 

「(まだまだ!傷口に水をしみこませてやるぜ、Vostok(ボストーク)!)」

 

「クッソ、水中から!?」

 

 

湖から襲いかかる先ほどと同じ技。しかし、湖の水面全てからガトリングの銃口のように多数の水飛沫が飛んでくる。あまりの数にシンプルな悪態をつくテリー。動きづらさを感じるのは腕や足で防ぐことができず、かわすしかないからだ。体に当たったらダメージは抑えられても体温の低下は免れない。

 

 

「ワー!!」

 

「くっ……!」

 

 

木陰に隠れた1人と1匹。濁流と錯覚するような降り注ぐ水飛沫を背中で受け止める。腕の中のモルガナをかばう位置だ。離すものかと強く抱きしめる。

攻撃が落ち着いたところで戦場の方へ振り向く。一番心配なむらびとは釣り竿片手に湖へ駆けだしていた。

 

 

「だったら一本釣りだー!」

 

「釣れるわけないだろ!!」

 

「だいじょうぶ! ジンベイザメも釣ったことあるし!」

 

「そもそもひっかかるほどバカじゃないだろうが!!」

 

「っ! また来ます!!」

 

 

珍しいこどもリンクの大声。茶番をいさめるロゼッタの目には再び氷雨が降り注ぐ。前方に躍り出たロゼッタがアイテムキャプチャーで弾の軌道をずらしていく。

 

 

「どうか対策を!」

 

「ならもう一度これで!」

 

「おっと、させるかよ! Superior(スピリオル)!」

 

 

ゾーラの仮面をとりだしたこどもリンクに反応したのか、湖から飛びだしたプレシアの背後に巨大な津波。

 

 

「もしかしてぼく達をバラバラにした技!?」

 

「いーや、いわゆる劣化版だぜ。反動は減ってけど」

 

 

それだけ言って襲う波。確かに前のよりは勢いが弱まっているが、何かに捕まっていなければ押し流されてしまいそうだ。

 

 

「ぐうう……!」

 

 

木の幹を片手で抱くように掴みながらモルガナを強く抱きしめる。鞄と残っていたボディはどこかに流れてしまった。

 

 

「……っ」

 

「おい、蓮!」

 

 

さきほど体温を奪われ、たっぷり波に浸かった体はさらに冷えていく。震えも止まらない。モルガナをギュッと強く抱きしめながら戦場を見る。強く強く抱きしめても文句を言うような状況ではなかった。

 

 

「みんな……!」

 

「へっ、軽い軽い」

 

 

得意げに鼻をかくプレシアの目の前には仲間達が倒れていた。

 

 

「さてと、まず優先に潰すのは回復役だよな」

 

「テメッ、やめろ!!」

 

 

鋭い刃に変化させた腕をネスに向けて振りかぶろうとする。凍えた体を無理矢理起こしてタックルにかかるテリーを軽くいなし、尾で手首をつかみ空中へ持ち上げた。

 

 

「もっとシャキシャキ動いたらどうだ? たっぷり冷えたその体でな!」

 

 

頬に純粋な平手打ちがかかる。倒れたテリーの顔を踏みつけ、ぐりぐりとえぐるように踏みしめる。

 

 

「くっそ……! 体が思うように動かねえ!」

 

「離れて……! うわっ!」

 

 

炎の超能力を当てようとするリュカに軽く指の水鉄砲。木の幹まで叩きつけられる。

 

 

「リュカ! って蓮! おまえもなんか辛そうだぞ!」

 

「うぅ……なんだ……」

 

 

体がだるい。大したことはしていないはずなのに、疲れて疲れて仕方ない。元々水だったのか冷や汗なのかわからない顔の水を拭う。

それを見て、こどもリンクの顔が硬直した。いけない事実に気づいてしまったように。

 

 

「まさか……この霧……」

 

「クックック……アッハッハッハッハ! やっと気づいたかお間抜けどもめが! Huron・Michigan(ヒューロン・ミシガン)……! この霧はな、自覚もないほど小せえダメージを蓄積させていくんだよ! つぅ、まぁ、りぃ! テメエらは戦う選択をした時点で敗北していたんだよ!」

 

「なっ……!?」

 

 

絶句して次の言葉も出てこなかった。この一帯にいるだけで少しずつ削られていく。霧を警戒して湖に潜ったのは間違っていなかったのだ。だが、他よりダメージがないだろう自分でこれなら、他の仲間は。自分でもわかるほど顔から血が引いていく。背中の悪寒は体が冷えたからではない。

 

 

「ま、やっぱり俺の勝ちってことだな。わかってたけど。ちょっと群れただけでは強大な力には勝てねえってことだ」

 

「ふざけるな……」

 

 

ボソッと無意識に呟いた言葉は思った以上に大きかったようで、不愉快だという顔をしながら蓮の方を見る。蓮の口からその言葉が出たと、自分でさえ気づくのが遅れる。

 

 

「そういえばいたねえ、群れる理由もない、なんの力にもなれないババ抜きのババみたいなヤツが」

 

「……っ」

 

「ゴラァ! コイツはな、ババはババでも切り札(ジョーカー)なんだよ! なんにでもなれる最強のワイルドカードなんだよ! 舐めてんじゃねえぞ!」

 

 

それでも言葉に怯んだ蓮を擁護したのは、腕の中から飛び降りたモルガナだった。

 

 

「はあ? 舐めてるもなにも……何ができるってんだ? 戦うこともできないのに?」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

── 違うな。

 

 

「……っ!?」

 

 

声がする。自分に呼びかける、自分だけに聞こえる声。自分の声。

 

 

── 可能かどうかなど問題ではない。

 

── その意思そのものが重要なのだ。

 

── それを、お前は理解したのではなかったのか?

 

 

理解……心持ち……叛逆の意思……

 

 

 

── 思い出せ。お前がはじめてその意思(ペルソナ)を得た当時を!

 

 

 

はじめて、ペルソナを持った時のこと……

 

 

 

竜司と一緒に、鴨志田のパレスに迷い込んで、動揺している間に地下牢に閉じ込められて。

 

目の前で竜司がシャドウに殺されそうになって。でも、止めようにも自分もシャドウに押さえ込まれてて、それで……

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………

 

…………違う。

 

 

 

 

はじめて、叛逆の意思(ペルソナ)を持ったのは。もっと前だ。

 

女性に乱暴している獅童を、止めようとした時だ。

 

助けてという言葉を無視することなんてできなかった。

 

許せなかった。止めたかった。

 

結局、無罪だとわかったとはいえ、一時的に前歴がつくことになってしまったけど。

 

例えそれがわかっていたとして、前歴が消えなかったとして、見て見ぬふりをしただろうか?

 

男の正体が当時からわかっていたら、暴力で反撃されたら。

 

 

 

 

 

……できるはずがない。

 

無視なんてしない。間違いな訳がない!

 

あの時、特別な力なんて何もなかった!

それでも助けるために動いた!

 

 

── ……手間がかかる。

 

── ようやく思い出したのか。力ありきの叛逆など、ただの傲慢だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう二度と、見失うものか! この意思を!!」

 

 

拳を握って走り出した。勝算はない。助けられるかわからない。そんなもの理由にならない!

制止の言葉は聞こえない。周りがしゃべっていても聞こえない。

 

 

「なんだコイツ……冷やしてやるよ、その頭をな!」

 

 

軽く、手をかざすと生み出される、ねじれる水流。

 

横ステップでかわした()()()()()は懐に入り、顔面に拳をたたき込んだ。

 

 

「プレシアッ!!」

 

「がっ……!?」

 

 

思いっきり殴られて湖までたたき落とされる。思った以上の一撃。プレシアはすぐに跳びだしてきた。

 

 

「よ~くわかったぜ。そこにいたんだな……マスターハンドォ!!

 

 

無言で、顔面のドミノマスクを剥ぎ取った。蒼き炎と鎖が形作るのはシルクハットに叛逆の翼。

 

あらわになるのは彼の本質。

 

 

「ペルソナッ……!アルセーヌ!!」

 

 

ただ1人、黒き怪盗服と真っ赤な手袋に身を包んだファイター、ジョーカー。

 

彼こそがスマッシュブラザーズの切り札なのだ。

 





◯タイトル
ダンガンロンパの6章タイトル。エピローグ前の最終章にあたる、いわゆる謎の解明回である。


Huron・Michigan(ヒューロン・ミシガン)
プレシア屈指の絡み手。イメージとしては、隠密性と範囲に優れた代わりにダメージが小さくなったフォックスのブラスター、もしくは透明になった毒のフィールドギミックと考えてくれれば。


◯プレシアの技名
彼の技名は湖の名前が元となっています。
湖ということで、アレが元の技名も当然設定されています。


◯ジョーカー
お待たせしました。マスターハンドの逃げた先であるファイターであり、本作の主人公です。本名を知られていないため、キクとダブルの裏技的捜索を潜り抜けています。
彼が選ばれたメタ的な理由としては、DLCファイターの一番槍……ではなく、DLCファイターの中で素で戦う力を持たないのが彼だけだったからです。
力での改心や戦闘を続けていたあまり、無意識に力がないからなにもできないと思い込んでいたが、叛逆に必要なのは力ではなく意思なのを思い出す。こういったストーリーは一瞬で完成しました。




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101話 Last surprise

 

ピリピリと両者の間に火花が散る。

ドミノマスク越しの、黒い黒曜石のような純粋な目がしっかりと前を見つめていた。

 

 

「(あの牢獄の夢を見せていたのはお前だったのか?)」

 

『──その通りだ。君にこの侵略者の存在を知らせなければならなかった。だが、ペルソナを君自身が無自覚に封じていた以上、私も同様に封じられていたのだ。使えないという認知が、私ごと封じていた。』

 

「(最初は普通に使おうと思ったはずだが……)」

 

『ファイターの力が消えたという認知を、君は先に感じていたのだろう。』

 

「(……!ロックマンのあれか……!?)」

 

 

心の中で、言葉を発することなく2人が向き合う。今はこの世界の創造主たる存在を、自分の内側に感じ取っていた。

 

最初、ネッシーを打ち上げてしまおうとロックマンがスパークショックを撃った時、大乱闘の時と威力の違うそれに変化していた。本人すら気のせいレベルで感じた出来事は無意識のうちにジョーカーに刷り込まれていた。

 

 

『あの部屋も、本物とは違う。私が異変に気づかせようと接触を試みた結果、君があの部屋とそっくりそのままの景色を作りだしたのだろうな。』

 

「(無意識とか無自覚とかそんな話ばかりだな……)」

 

『認知とは得てしてそのようなものだ。しかし、今は討つべき敵をしっかりと自覚しているだろう?』

 

「(ああ!)」

 

 

ギラギラと敵意を滲ませるしかめた顔。先程までの余裕のある、嘲笑している顔とは違い、不機嫌かつ殺意すら込めた顔だ。

 

 

「まっさか、戦う力もなかった奴がマスターハンドを匿ってたとか思わねえよ。こんな村人Bみたいな奴が〜?」

 

「匿っ……!? どういうことだジョーカー? それにお前、いつの間にペルソナを……!」

 

「俺も知らなかったが……ここが切り札の切り時らしい!」

 

 

ペルソナによって強化された銃が撃たれた。翼で囲って体を守るが、火傷をしたように黒煙が立つ。かつては弾も出なかったモデルガンも今は頼もしい矛のひとつ。

 

 

「クソが……まじで取り戻してやがる……なら! そこらへんでのびてる奴らもろとも押し流してやる!Superior(スピリオル)!」

 

「またあの……!」

 

「……!」

 

 

あの大津波がまたくる。いち早く反応したジョーカーが周りを逃そうと動こうとするが、それをこどもリンクが静止した。

 

 

「いい! あんたはあんたの戦いに集中して!」

 

「……! わかった!」

 

 

近くの高い木にワイヤーを取り付け、スタイリッシュに頂点に着地する。下は迫り来る洪水模様。

 

 

「ジョーカーのジャマしないのはいいけど、結局どうするの!?」

 

「座してぶっかかるんだよ、覚悟決めろ!」

 

「「「ええええええっ!?」」」

 

 

まさかの発言。なにか手段がある訳でもなく、ただジョーカーを安全に流すことだけを重視した。

 

 

「いやあのふざけてる場合じゃ!」

 

「ふざけてない! 覚悟決めなよ男だろー!」

 

「バカーーー!!!」

 

 

シンプルな悪口と共に見えない森の奥まで流されていくその他のファイター達。

 

 

「みんな……!」

 

『君はこの戦いに集中してくれ。彼のことだ。本当に消耗するだけのことはしまい。奴の手を止めるのは君だけにしかできないのだ』

 

「後で、説明してもらう!」

 

 

大技後の反動をエイガオンで狙い撃つ。簡略版でも、反動はそこそこあるようだ。

反射的に撃ちだした水流をぐるりと錐揉み回転をしながら降りるジョーカー。重力と共に振り下ろしたナイフは、プレシアの竜穿の防御を崩し、懐へ一撃二撃。

 

 

「図にィ……乗るなァ!」

 

「なっ……!」

 

 

プレシアの全身から飛び出す凄まじい水の奔流に、押し流される。グルグルと曇天の空を渦巻き、目を開けるのも難しい大雨が降る。

 

 

Loch Ness(ローチ ネス)……! 正真正銘、俺の1番の大技……霧なんぞよりも的確に強力にダメージを与える雨……ほら、もうキツくなってきただろ?」

 

 

ぐらりとジョーカーが片膝をつく姿を見て、プレシアは嘲笑を取り戻す。しかし、雨に紛れた冷や汗に、ついぞ気づくことはなかった。

 

 

「フンッ……どうかな」

 

「往生際わっる……あのな、たとえいくら心で踏ん張れても体が駄目じゃどうしようも……」

 

「いや……この意思があるのなら……力も体も! 後からついてくる!

 

 

再び構えたナイフの刃に、いいようのない恐怖を感じて、先から滴る雨雫が血のような錯覚を覚えた。

その幻惑を、かぶりを振って取り去ろうとする。追い詰められているのは自分のような。そんなこと認めない。血走る眼で、プレシアは最大火力の大技、最初ファイターを散らせた大津波を起こそうと決断した。体の周りに水が渦巻き、両手に激流が溜まる。

 

 

「あっそ……どうせ死なねえならその肉体もろともバラバラにし……」

 

 

雨にも消えぬ炎の矢。突き刺さる一矢が腕の血管を貫いた。妨害されたせいで両手の先に溜まっていた力は破裂して落ちていく。

 

 

「二度も同じようにできると思うなよ……どーだ!」

 

「前半だけならぼくの真似できてたよ」

 

 

キリッと決めたこどもリンク……ではなくトゥーンリンク。背伸びをしたいお年頃の少年が妨害をした張本人。

 

 

「素直に退場しちまえばよかったのによ……」

 

「思いっきりぶっ飛ばしたからリタイアじゃない、仕切り直しできたんだよ……トゥーン、わかってるよね」

 

「うん!」

 

 

こどもリンクが時のオカリナを、トゥーンリンクが風のタクトをかまえる。何かを仕組んでいると察するのは十分だった。

 

 

「その余裕です~って面、気にくわねえなあ!Vostok(ボストーク)!」

 

 

凍てつく霰のような水流が飛んでいく。ジョーカーが守りに行こうとするがこどもリンクと合った視線が、必要ないと語っていた。

 

 

「ハッ……!」

 

「どうだ!」

 

「コイツらさっきまで這いつくばってたっつーのに……!」

 

 

2人の上に陣取っていたロゼッタのアイテムキャプチャーが、全ての水の軌道を変え、ネスとリュカのサイマグネットが自身のエネルギーへ変換する。策の対策の対策ぐらい想定内なのだ。

結果、誰にも邪魔されることもなく、調べは奏で始める。それは雨の中でも魂に響く大冒険を想起させる嵐の歌。

 

 

「風が……!」

 

 

ひゅうという環境音が混じり、渦巻くような強い風が吹き始める。それを確認すると、トゥーンリンクもタクトを動かした。一番はじめに知った、世界と大海原を駆けるための風の唄。

 

 

「……!」

 

 

たなびくコートの裾が敵側へと向く。追い風が背中を押し、打ち付ける雨が少なくなったのを感じた。

 

 

「こい……つぅ!!」

 

 

それが全てプレシアの体を打ち付ける。まったく違う二つの曲はどういう訳かかみ合い、もう一つのまったく違う曲へと進化していく。

 

 

「よし! いけ、ジョーカー!」

 

「フンッ!!」

 

 

ワイヤーで首元を縛り付け、跳び上がって超接近するジョーカー。

 

 

「くるなら……来てみろぉ!」

 

 

ジョーカーの進行先に置かれた竜穿の足。それに気づいたリュカが悲鳴に近い声を上げる。

 

 

「ああ! 足が!」

 

「このままだと……!」

 

 

突き刺さって、よくて相打ち、悪ければ返り討ち。

 

 

「もう止まんねえだろ? 俺はもっともっと目立ちてえんだよ! 嘘だなんて言われねえようにな! アッハッハハハ!」

 

「どりゃあああ!」

 

「ハッハ……ガッ!?」

 

 

追い風ののったクラウンが激突し、足は人のそれと同じ姿に戻っていく。そのままクラウンを足場にしてマスクのないジョーカーが立つ。

 

 

「テメエ……!」

 

「エイガオン……!」

 

 

呪怨の大技、アルセーヌの力が至近距離で叩きつけられる。力なく落ちていくプレシア。勝てないと思ってしまった。もう、動かない。戦おうと考えてももう指の一つも動かない。

 

 

「(くっそ……でも、湖の中まで追ってきたりはしないはず。十分休んだらまた……!)」

 

 

指先がかたく冷たくなっていく。精魂尽き果てて動けないんじゃない。体を失いはじめたのだ。

 

 

「(ふざけんな……こんなところで……!?違う……!俺は……幻なんかじゃ……!)」

 

 

フィギュアであったはずの肉体から、意識が薄くなっていく。自分が消えていくような感覚。命の先まで戦い続けた肉体はフィギュアとなってエネルギーとして消滅していった。

 

長く長く息を吐く。刹那垣間見えた太陽が少しだけまぶしかった。

 

 

「ッ流石だなジョーカー!猫とみてたぜ!」

 

「テリー、だから……いや、今は間違ってないか」

 

「僕達何もできてなかったけどね」

 

 

戻ってきたテリーが肩を組んでジョーカーの背中をバシバシ叩く。最後の先頭に加われなかったテリー、ロックマン、クッパ、モルガナ、むらびとは周囲からボディがやってこないか警戒をしていたのだ。

 

 

「君が力を取り戻したのはアイツが言った通り、マスターハンドがあんたに宿ってたからってことでいい?」

 

「ああ、そういうことだろう?」

 

『そうだ。討伐、ご苦労だった。早速で悪いが、奴等のボディを完全に倒すには、ファイターの力が必要だ。君以外に力を与えるには、私は本体に戻らなければ。』

 

「……本体か。それはどこに……わかった」

 

「こっちは全然声、聞こえない……」

 

 

澄んだ瞳のまま、本体の方角という未来を見つめる。

 

 

「すまない、俺はマスターハンドを元通りにしなければいけない。悪いが……」

 

「もっちろんついてくよ!隊長命令だからね!」

 

「え、それまだ続いてたの?」

 

「いいぜ! 手間のかかる大人だな!」

 

「ジュニアが行くというなら仕方がない、ワガハイも助けてやろう!」

 

 

この中では一番断りそうなクッパも、反対することなく賛成の意を唱える。

少しの大人を混ぜた子供達が行く先は、まるで電撃のように輝いていた。

 

 

「なんか……物理的に輝いてねえか?」

 

 

少しだけ、不安が、ありながらも。

 





◯章タイトル
ペルソナ5、戦闘曲。
これの理由はもはや説明不要。代表曲らしく、とってもシャレオツ!(語彙無)


◯嵐の歌
ゼルダの伝説 時のオカリナとムジュラの仮面で登場する歌。なんというか効果のほどが、
・風車の回転が速くなる
・窪地に水がたまる
・特定の場所で穴が開く
・魚が釣れやすくなる(!?)
・魔法のマメのある場所から3匹の妖精が現れる
・ゴシップストーンの前で奏でるとハートを回復できる妖精珠が現れる
・とある所で聴衆に聞かせるとハートのかけらが貰える
とちょっとまとまりがない。本作ではシンプルに風を起こして嵐を生み出した。ちなみにピクミン4のお宝の曲に抜擢!


◯風の唄
ゼルダの伝説 風のタクトで登場する唄。
風の向きを変えることで、帆船でも行きたい方角へ行ける。
快速の帆? やめてあげてください……(ボソッ)


◯物理的な輝き
同じ世界である、7章でもこんな幕引きでした。
果たしてその正体は!?


◯今章のまとめ
重要な章、ということで、現在唯一のファイター、ジョーカーの覚醒となりました。
私がペルソナ5ロイヤルやっててちょこっと思ったこと。それは力があるからこそ反逆もできるのではということです。史実でも革命家はいい育ちだったりする訳で、本当に力ない者は反逆なんてできないのでは?
本作では少しそれをいじって、ジョーカーが無意識のうちに「力がないから何もできない」という思考になっていたということになってます。
でも重要なのは力の有無ではない、他のファイターに関しては、ジョーカーにとっての印象を考えて配置しました。
こどもリンク以外の子供達は情景。いわゆるこんなことしてた時期もあったなという感情。特にむらびとは力がなくても戦っていたので嫉妬すると同時に覚醒のためのキーとなります。
こどもリンクは歪。子供なのに大人っぽい。自分に1番近い印象。
テリーは擬似的な自分の父親であり、クッパは他人の父親。
ロゼッタは厳しくも優しい母親です。3人の大人組はジョーカーの大人になりきれてないという面を露出するために必要でした。

さて、私の見落とし等なければ、後登場していないファイターが、

フォックス リンク ゼルダ Mr.ゲーム&ウォッチ ピクミン&オリマー
ダックハント ルキナ パックマン Wii Fit トレーナー
ミュウツー クラウド ケン パックンフラワー 勇者 ソラ

であるはずです。抜けに気づいたら教えてください……
そして、彼らの活躍を待っていた方、もう少しお待ちを……


◯作者の気まぐれコメント
気まぐれと称した枠で話すことじゃないですけど、スプラに気を取られて今話ギリギリです……
というか、本編だけ間に合わせて後書きの欄は後から追加しました……

だって新シーズン、スロッシャー3個も追加されたんですよ!!
スロッシャー愛好家としては外せない……!
モップリンは酷評されてるほど弱くはないと思ってます。まあ、サメとは微妙に合ってないのは認めます。亜種はカニがいいかな。
スクネオはポイントセンサーをイマイチ使いこなせてないです。うへえ。
オバデコは意外とラインマーカーが活躍してます。ただ私、致命的にテイオウが使いこなせてないです。
数戦ナワバリに潜った程度の主観です。
あとスロッシャー種が、エクスとモップリンの亜種は確実で、ソーダも多分確定。後スクスロベッチューもおそらく。他にそれ以上の亜種が出るかがポイントですね。


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Super Smash Brothers “Ancient”
102話 塊オンザウィングス


 

 

 

誰もが何かを隠している。秘密を、真実を。

 

 

 

 

 

隠し事がない人なんていないんだ。誰もが言えない一面があって。それを暴かれるのを恐れている。

 

 

 

 

ならば、暴く秘密が誰のものでもなかったら。もっと根本的に、足元に存在するものだったら。単純なものだったら。

 

 

 

受け止められる? 光を救う人々が人の闇をそのまま受け止められるのかな?

 

 

 

 

 

彼らは誰も救えない。闇を払えない。だから彼らは自分で救おうとしたんだ。理解なんて求めていないし歩調を合わせろなんて持っての他。

 

 

 

 

救おうとしないなら悪役に悲劇の過去など不要だ。なくていい。

 

 

 

 

僕のこと? そういうの、良くないよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……うん……」

 

 

うめき声のような声はどこか他人事のようで、でも自分の声だった。

地面に手をつけてなんとか体を起こす。かぶりを振ってなんとか立ち上がった。

 

 

「あれ、ここは……」

 

 

まだ少し浮いているような感覚を抑えて、フォックス・マクラウドは辺りを見渡した。

 

遠く楕円状に配置されている客席、自分の足下に広がるコンクリートの戦場、そしてその周りに生える芝。描かれているのは見慣れた大乱闘を象徴するマーク。

 

 

「KOFスタジアム……?」

 

 

新たにスマッシュブラザーズに加わったテリー・ボガードの記憶から創られた新たなステージ。彼が戦ったフィールド。マスターハンドが創った模造品。

 

 

「オレ、なんでこんなところにいるんだ?普通に大乱闘の世界に来たはずだよな?」

 

 

確かに模造品のステージに来たということは、フォックスは大乱闘の世界に来れたということだ。しかし、この世界にたどり着く過程で、ステージに直接来たことなど一度もない。そもそも大乱闘以外でステージに来たことすらない。どうしてここに来ているのだろうか。

 

とりあえず外に出る道を探そうと、客席の方へ行こうとする。が、それを阻むように見えない壁が行く手を塞ぐ。

 

 

「あー、そうか、そうだよな。……どうするんだこれ……」

 

 

当たり前だったと思い直して、それから落ち込む。このステージの最大の特徴がこの見えない壁にある。この壁は一定以上の速度を持ってぶっ飛ばさないと破れない壁である。故に早期撃墜ができず、大乱闘が長期化しやすい。が、今重要なことはそこではない。

 

 

「で、出られねえ……」

 

 

壁が破れないからこそ、出られない。フォックスはいつの間にか閉じ込められていたのも当然なのだ。乱闘で使う転移はフォックス単体では使えない。壁を破ろうにも破るためにぶっ飛ばせるようなものはない。

 

 

「本当にどうしたらいいんだ……」

 

 

打撃を加えて無理矢理破ろうにもフォックスはスピードタイプ。

物体を相手取って叩き潰すのは向いていないのだ。もはや見た目が開放的なだけで檻と変わらない。試しに全力で一発跳び蹴りをくわえてみたが、助走をつけてもなおびくともしない。当然だ。直接攻撃を受けて壊れるようなシステムではない。

 

 

「おーい、マスターハンドー! おーい! 誰でもいいからいないのかー!!」

 

 

声を張り上げて助けを呼ぶ。しかし、誰も来ない。何もないのだから誰もいないのが当たり前ではある。それでもぱっと思いつくのがこの方法で最後だった。

 

 

「……はあ」

 

 

打つ手がなくなって、壁に寄りかかって座り込む。無駄に体力を消費することは悪手であると考えた。手でリフレクターやブラスターを弄びながら、今後どうするのかをぼんやりと考えていた。

 

 

「(マスターハンド側でなんか不具合あったんだろうな……ちょっと待ってれば見つかるだろう)」

 

 

フォックスは初期からスマッシュブラザーズに参加している所謂古参だ。まあ不具合ぐらい初見ではない。そういうこともあるだろうという思考だ。

まあ、それはそれとして出られない場所に転移させてくるのは嫌がらせのような故意の悪意を感じる。

 

 

「あー、でも特にやることもないな。なんとかして自分で出れないか?」

 

 

独り言のようなぼやきを、天命というものが聞き入れたのかはわからない。

が、事実目の前に現れたのは自分も使う転移の力。そこから出てきたのは同じく迷い込んだ者ではなく、リドリーとルイージとそっくりの姿をしたボディだった。

 

 

『…………』

 

「え……? はあ!?」

 

 

もういないはずの存在に固まり、そして驚きの声を上げた。キーラも倒して、ダーズも倒して。奴らを操る精神の器はとっくに壊滅したはずなのに。

 

ボディの火球が眼前に迫って、座り込んだ状態から、身を翻して避ける。ルイージの手刀を腕でずらし、完全に立って2体の敵を見つめる。

 

 

「ふざけんなって!踏んだり蹴ったりだ!」

 

 

ブラスターを乱射しながら円状のフィールドを巡るように走り回る。連射に特化したブラスターは敵の姿勢を崩すほどの火力はない。だから数で負ける相手に足を止めるわけにはいかなかった。

 

 

「でも、どっちかをぶっとばして壁に穴を開ければここから出られる! ピンチはチャンスだ!」

 

 

ボディと相手をするのは必ずしも悪いことばかりではないのだから。

 

 

「(ぶっとばすなら軽いルイージの方がいいよな。状況次第じゃリドリーの方でもいいが)」

 

 

ルイージのボディに足払いをかけて、膝を顎付近にぶつける。反撃でファイアボールを撃ってくるのをみとめると、リドリーのボディを間に入れて体の隙間からブラスターを撃つ。

 

 

『……!』

 

 

リドリーの蹴りをかわし、軸足の膝を曲げて転ばせる。壁のようになっていた巨体が退いたことで、すぐの跳び蹴りに反応できず、ルイージのボディは壁に激突するまで蹴り飛ばされた。

 

 

「……? なんか変だな」

 

 

なにか、漠然とした違和感があったのだが、言語化できない。気のせいといえば済ませてしまうような、小さくてわずかな違和感。

本人の力そのものに関係していると知るのはもう少し後である。

 

 

『…………!』

 

「ぐっ……!」

 

 

その違和感に気をとられたのか、右手首を尾で縛り付けられる。引っ張られて振り回されて地面に叩きつけられる。が、叩きつけられる瞬間、両手で地面を叩くことで体を浮かせて衝撃を和らげた。

 

 

「こいつ……!」

 

 

左手でブラスターを撃って逃れようとするが、威力が低い。咄嗟に起動したままのリフレクターを蹴り飛ばして弾き飛ばす。急いでリフレクターを拾い、高速の体当たりでさらに距離をつくらせた。

 

 

「あいつみたいにはできなかったが……たまには参考にするものだな」

 

 

安堵の笑顔を浮かべた表情は、リドリーのボディ、ルイージのボディが同時に襲いかかる現状によって、消えていく。今までの戦況的には戦えているようには見えるが、敵の動きに対する対処が多く、積極的に離脱する行動ができていない。

 

 

「(賭けに出るか……? ただ数が負けてるとリスクが大きいんだよな。さて……)

 

 

低い体勢で2体の足元をくぐり抜けながら、連続で蹴りをぶつける。予期せぬ攻撃で浮き上がった2体のボディ。

 

 

『……ッ!?』

 

「このまま続けてジリ貧なら一気に勝負に出る!」

 

 

その中の1体、ルイージのボディに目をつけ、ファイアフォックスをぶつけてさらに宙へ。

そのまま空中で一回転。片足での跳び蹴りはボディだけでなく、自らも壁へ突っ込む形だ。

 

 

『……!!』

 

「……ッ!」

 

 

しかし、残るリドリーのボディが味方を撃墜させまいと、飛行しその強靭な爪を振りかぶった。

 

 

「させるかぁ!!」

 

 

意地で体を錐揉み回転させ、ダメージを最小限に。そのままリドリーのボディは無視する形で壁に突っ込んでいく。

 

 

「いけえええぇぇ!!」

 

 

快感を覚える気持ちのいい音が壁から響く。普段撃墜されなければ見られない景色をフォックスは見ていた。

背後には追おうとするものの、修復された壁に阻まれるリドリーのボディ。着地とともにルイージのボディも衝撃に耐えれず消えていく。

 

 

「よし!」

 

 

ガッツポーズをしながら、次に進むため走り出した。





◯章タイトル
Ancientは古代という意味。今話はKOFスタジアムでしたが、さまざまなステージを巡るこの章では、全員参戦に取りこぼされた古のステージも巡っていく予定です。


◯タイトル
塊魂トリビュートのオープニングテーマ。みんな大好きのオープニング、塊オンザスウィングのアレンジカバー。あのスキマスイッチ様ですよ!
ハイテンションなアレンジ元とは違い、軽快なテンポで一瞬の盛り上がりを大事にする系の曲。
……大丈夫? 音楽の無知なんですが、よく知ってる曲の解説ぐらいできてますかね?


◯一人ぼっちのフォックス
まさかのボディを除いて単独で話を進めてしまう。
実際、あのステージ管理とかするなら面倒そうです。1人掃除をしてたら取り残されて……うっ。



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103話 黄泉返る極蝶

 

 

「うおっとっと……ん、ここは?」

 

 

KOFスタジアムのフィールドから脱出し、客席裏から出口を探そうと、足を止めず走ったままでいると、周りの景色が歪み、いつの間にやら全く違う場所へと辿り着いていた。

足元は柔らかな質感、人工物のようにふわふわした大地と縫い目の見える土地。

 

 

「確か……ここって」

 

 

ボソリとその先の言葉を続けようとした時だった。ふかふかのフェルト生地が走ってへこんでいくのが感覚でわかる。足音は吸収されても、その感触と各々の声は健在である。

 

 

「ええ!? ゼルダ!?」

 

「あ! フォックス!」

 

 

スカートの裾を両手で持ち上げながら、走ってこちらにやってくるゼルダ。髪が乱れても気にする余裕のない少女。

 

 

「ごめんなさい、助けて!」

 

「助けてって……おいっ!?」

 

『……』

 

 

ゼルダを追ってくる大勢のボディ達。優に二桁はいる敵達。どうやら見つかり応戦していたものの、あまりの数に逃げ出したようだ。よく見れば焦げのついた敵が混ざっている。

 

 

「ったく! しっかり掴まれ!」

 

「ええっ! もっと丁寧に……!」

 

 

焦ってゼルダを横抱きにし、ジャンプする。空中から吊り下がっているモビールの上に乗り、遙か足下のボディ達を見下ろしてとりあえず囲まれて戦うという必要はなさそうだ。

 

 

「私、この場所知らないわ……!」

 

「ん? ああ、そうか。今のシーズンじゃ使ってないか」

 

 

戸惑いながら周りを見渡すゼルダに数瞬の時間を用いた後、その理由を理解した。

 

 

「ここはヨッシー ウールワールド。前のシーズンで使ってたステージだな」

 

 

ヨッシー ウールワールド。

毛糸やフェルトや綿のような布製品できた世界。あみぐるみのような姿をしたヨッシーが仲間を助けるために冒険をした世界。

もちろんここはマスターハンドが創った大乱闘用の模造品。しかし、今は真贋の違いなどどうでもいい。そもそもこのステージは、今は使用していないのだ。

 

今までの大乱闘を五つのシーズンに分けるのならば、このステージは四回目のシーズンで使われていたものである。まるで老人のような認識だが、どのステージがどのシーズンで使われていたかなどぱっと出てこない。フォックスのようにはじめから参戦しているのならなおさらだ。

 

しかし、このゼルダは今シーズンで参戦したばかりだ。過去でしか使用していないステージなど知るはずもない。

 

 

「え、もう使っていないものを残しているの?」

 

「……せっかく創ったものだしって認識なんじゃないのか? 作り直されて復刻したってステージもあるし」

 

「歴史を感じるわ……」

 

「お、おう」

 

 

自分の世界を十全で完璧なものにするために妥協をしないかの創造の化身が簡単に削除したりはしないだろう。目を閉じて全身で歴史を実感するゼルダに適当な言葉が浮かばない。

 

 

「って、そんなことじゃない! オレ達はどうしてここに来てなんでボディがいて追われてるんだ!?」

 

 

無意識に現実逃避していたようだ。目を背け続けても何も変わらないのに。

 

今は使っていないステージなど、何の用もない。だからこそ誰かが望んで来るはずもない。つまりフォックスはもちろん、ゼルダもおそらく何かしらの原因で迷い込んだのだ。

そして、その原因はきっとボディが出現したことに関係ある。

 

 

「突然のことで驚いちゃったけど……冷静に考えれば……こんなところに来たのもボディ達が関係しているのね」

 

「だったら叩くしかないか……」

 

 

今後の方針が定まるが、フォックスの顔色は優れない。この数だ。かなり骨が折れる。それにこれだけで済むとは思えない。援軍がでるかもしれないし、この数のボディがまた襲ってくる可能性もある。

 

 

「ヒットアンドウェイで……いくか!」

 

「あっ!」

 

 

それでも前に進まなければ変わらない。危険は承知でフォックスは死地へ飛び降りた。

 

 

「ハアア!」

 

 

一番近くの敵に足払いをしかけ、その後方にいた敵を蹴り飛ばす。踏み台代わりにし後ろへ引く。片手をついて低い低い体勢で、前をにらみつける。できるだけ被弾面積を小さくし、やられる前に仕掛ける。

 

 

『……!』

 

「(やっぱり多い……!)」

 

 

心の中だけで弱音を吐く。銃弾を避け、距離を詰めて体を翻して尻尾ではたく。顎を揺らしてぐらりと体勢を崩した敵。かばうように間に入ったボディの肩を踏み台にして飛び上がり、足で踏みつけて、敵の目を目掛けてブラスターを撃つ。火力の足りないこの銃でも足止めの役目を果たせるように。

 

 

「……ッ!!」

 

 

ただ戦うことだけを考え、口からは呼吸だけが行き来する。回し蹴りでまとめて蹴りつけて、普段あまり振り抜かない拳がこめかみへ吸い寄せられる。

自分の中に獰猛な獣でも飼っているような闘争心が湧き上がってくる。今は戦いのことだけが頭にある。ああ、そのぐらいが丁度いい。今を乗り切るには。

 

 

「えっと……フォックスの邪魔をしないように……」

 

 

モビールの上にいたままのゼルダはそこから援護することにする。逆立ちしてもゼルダにはあの立ち回りはできない。大勢の敵に囲まれてもなおスピードで翻弄するようなことはできない。ならば高い場所から狙撃するのが一番だ。フォックスの邪魔だけはしないように、細心の注意を払いながらディンの炎を放つ。1体にぶつかり、起爆し、周りも巻き込む。

 

 

『……!』

 

「きゃ……!」

 

 

真下を覗いていたゼルダの背後に重量級のクッパのボディ。糸だけで吊された足場がグラグラと揺れる。足を取られて体勢を崩れかける。どしどしと近付く中で足場が傾いていく。

 

 

「きゃあああ!?」

 

「あ!」

 

 

そして落下する。フォックスが駆け寄る余裕もなく、直接墜落したゼルダが尻餅をつきながら腰をさする。地面が柔らかい布生地なので衝撃はない。

 

 

「いたた……あっ……どうしましょう……!」

 

「くそっ!」

 

 

飛び膝蹴りを正面の敵の腹部にたたき込んで、無理矢理道を作る。反射的に周りのボディに魔法をぶつけて対処するゼルダの近くに立ち、どうにか2人で隣同士でボディ達と相対する。

 

しかし、スピードを活かした大立ち回りはできない。ゼルダは1人でこの数を対処するのが厳しいからだ。元々派手に戦って魅せることを前提としたフィールドでは、地形を活かして数の利を覆すというのも難しい。

 

 

「また跳んでモビールの上に戻れば……!」

 

「でもまた落とされそうだし……」

 

 

先ほどと同じことにならないかと思案したフォックスがふと思い出す。

 

 

「このステージってことは……」

 

 

周りを見渡す。見ていたのはボディではなく周りの景色、つまりステージ。

 

 

「よし! 2人で上に行くぞ!」

 

「わかったわ!」

 

 

よくわからないが、自分よりも戦いに長けたフォックスの指示通りに動くべきだろうと、少し遅れて跳ぶ。もちろんただで見過ごされる訳でもなく追ってくるボディ。

 

 

「どいて!」

 

『ッ!?』

 

 

後ろをつくボディに後ろ足で蹴り飛ばす。稲妻の魔力を込められた攻撃は手痛いダメージを与える。そして空中のモビールに着地した。

 

 

「よし! いいタイミングだ!」

 

「あら、地面が……!」

 

 

下の地面がさらに下がっていく。落ちて落ちて遠い位置へ。

 

ボディ達も慌ててモビールへ上がろうとするが、大勢のボディで一斉に跳び上がったために互いが互いの邪魔をして上がりきれない。

取り残されて地面と共に落ちて、暗闇の中で姿も見えなくなる。

 

 

「このステージは時間で地面がなくなるんだ。……というかまだ動くんだな」

 

「これも誰かの仕業かしら……」

 

 

悩み、複雑怪奇な現実が目の前に渦巻く。

 

2人が見上げた先には、先ほどフォックスが使った空間の歪み、次のステージへの道があった。

 





◯タイトル
星のカービィ スターアライズにて初登場のバルフレイナイトの二つ名。夢啜る極蝶なんて呼び方もあるが、こちらの方が近いので。
しいたけが定番となっていた中、意表をつくために没デザインから引っ張り出されたバルフレイナイト通称バイト。歴史の闇に葬られたとか言われているからそういうこと。


◯ヨッシー ウールワールド
スマブラWiiUのみで登場したステージ。システム面での解説はフォックスがやっているのでそちらを参照。
スマブラforだけのステージは3DSだけ、WiiUだけみたいなステージも多いので、本当に印象が薄くて……でも、オービタルゲート周辺の漫才は好きです。そんなことはなーい!!


◯原作通りの力
なんか最近ここが曖昧になってきてる気がするので今の2人に関して追記……
フォックスは元のゲームが戦闘機メインということもあり、ほとんどがスマブラオリジナルです。士官学校にいたという経歴があるため、肉弾戦もできておかしくないです。上B横Bみたいな技は戦闘機関連で似た技ができることからですが、まあこれだけできなくてどうなるんだという感じなので素でもできることにしてます。
ゼルダは微妙ですが、原作からしてテレパシー、魔法は使えると判断。神トラの世界そのものも、別に魔法が浸透してないというわけでもなさそうなので、迷いましたが、スマブラ内の魔法も使えることにしてます。


◯作者の気まぐれコメント
あの……私はマリオRPGと2Dマリオの新作で全力出してるな〜と思ってたわけです。甘かったです。
完全にリミットをブレイクしたマリオ陣はもはや予測もできません……! ペーパーマリオRPGってマジか……!
あとFZERO難民もこれで成仏しましたね……! やはり願い続けてれば夢は叶う……! ならば私も……とりあえずパルテナ新作とポケモンレンジャー新作とポケダン空のリメイクとエアライドリメイクとマリギャラ続編と(以下略)


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104話 トワイライトプリンセス

 

 

「……ここも知らない場所だわ」

 

「あ~……ここは使ってないってわけじゃないけど、最初とかしか使ってないからな」

 

 

次に訪れたのは空中に浮かぶスタジアム。青を基調に創られていたスタジアムはかつて亜空軍による抗争の火蓋を切った場所。シンプルなこのフィールドは、大乱闘自体がはじめてという人々にも戦いやすい癖のないステージ。それはシーズンの節目に使われる程度の頻度でほとんど使われていないのだ。

 

 

「そうそう、ボディがいるかもしれないし、気をつけないと。障害物がないここではどっちが先に敵を見つけられるかが重要なんだ」

 

「ええ……あれは?」

 

「は?」

 

 

さっそく見つけたのか、と思って差した指の先を見る。その景色は想像通り、ではなかった。たたずむ植木鉢、伸びた茎に丸い花に牙が生えた一輪。

 

 

「パックンフラワー……!」

 

 

クッパ軍団の植物だ。それがまるで黄昏れるように、近くに感じる曇り空を見上げてたたずんでいる。口以外の表情が見えないから何を考えているのか、まったくわからない。

 

 

「あれは……ボディ……じゃないの?」

 

「キーラの一件が落ち着いた後にファイターになったからアイツのボディはいないはず……多分」

 

 

保険をかけたのは、説明がつかないことが多く起きているからこそ何が起きてもおかしくないという考えも頭の中にあったからだ。

 

 

「とりあえず行ってみましょう」

 

「ああ」

 

 

とはいえ仮にボディでも、1体ならばなんとかできる自信はある。近付く2人に気づいたのか、ひょこひょことパックンフラワーからも歩み寄ってくる。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「コレ、ドウナッテル?」

 

「しゃべってる……」

 

「ウォッチもそうだけどやっぱり慣れないなあ……」

 

 

お前喋るのか第二弾。

Mr.ゲーム&ウォッチとは真逆で、片言気味で口数の少ないパックンフラワー。渋さすら感じさせる彼は、そういうところもMr.ゲーム&ウォッチと対極である。

 

 

「誰かがバラバラにさせてるみたいだな……残念ながらオレ達も合流したばかりで全然わからないままなんだが……」

 

「ボディ……えっと敵もいるのです」

 

「知ッテル。くっぱ様ヤボッチャンカラ聞イタコトアル」

 

「あ、そうなの……なら、一緒にいきましょう。その方が安全でしょう」

 

「…………」

 

 

何かを考え込むようにうつむくと、後ろへ向き直り再び空を仰ぐ。拒否する、ということではなさそうだ。何かを思案しているような、他のことに気を取られて心ここにあらずというような様子だった。

 

 

「……かーびぃガ戦ッタ、ぴーち姫トぜるだヲ捕ラエタ同士、知ッテルカ」

 

「え……? ちょっと待って、そんな記憶ないのだけど……」

 

「あー、《前の》ゼルダだな。ちょっと話に聞いたことがあるぞ」

 

 

マリオが吹き飛ばされ、カービィが単独で戦った亜空軍最初の刺客、ボスパックン。ピーチと当時ファイターだったゼルダを捕らえ、両手の檻をぶつけて戦った。

フォックスは軽くだが、話に聞いたことがあるし、亜空間での最後の冒険で再現のような模倣のようなヤツを実際に知っている。

 

 

「自分ハソノ子供ノヨウナモノダ」

 

「そうかあ、子供……はあっ!?」

 

「ココニ自分ガ来タノハ嫌ガラセカ?」

 

「子供……子供できるのかあの種類……?おしべ? めしべ? 交配? 交尾? そもそも植物なのか動物なのか? 似てる種族……ピクミン? オニヨンに死骸とかペレットとか……駄目だ参考にならない……」

 

「お、落ち着いて……」

 

「先ヘ行クゾ」

 

 

完全に頭がバグっているフォックスを置いて、パックンフラワーは行く。出自はともかく、協力的な味方が増え、幸運にも敵と出くわさなかった。ゼルダに呼ばれて、やっと我に返ったフォックスは慌てて一輪の後を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

夕暮れの光が不意に目に入り、反射的に目を細めた。足元の浮遊感が印象的だった。

 

 

「夕日が綺麗……」

 

「今更……ってまあ、大乱闘中にジロジロ眺める機会はないもんな」

 

 

オルディン大橋。石造りの一本の橋がフィールドで、範囲外まで地続きのステージだ。

 

 

「観光目的カ、オマエ」

 

「いや、でも! こうやってじっくり眺められるいい機会でしょう!?」

 

「確かにそうだけど……そんな大声で言い訳しなくても……」

 

 

大げさな手振り身振りで必死に否定するゼルダ。観光でも観賞でもそういう時間があるのは面白そうではある。全てが片付いた後、覚えていたらマスターハンドに提案してみていいだろう。

 

 

「さて、今のところ手がかりなしだが、どこまで行ったらあるのやら……ん?」

 

 

辺りを見回す。崩れた大橋の残った端、存在しない中央を崖際に背水の陣で戦う青の長髪、そして腕と足のついた黄色い球体。

時が止まったように戦闘の途中から動かない。ルキナとパックマン、2人ともこっちを見て唖然と口を開けたままだ。

 

 

「あの……フォックス……」

 

「ルキナ! パックマン!よし、加勢するぞ!」

 

「加勢よりも大事なことが……」

 

「ワタワタ」

 

 

言うべきかどうか口をつぐむルキナに慌てるばかりのパックマン。

 

彼がテンパりまくって足下を指差す先、それにつられて1匹と1人と1輪。見た先には深い闇。あるはずの地面がなかった。

 

 

「「「………………」」」

 

 

オルディン大橋の特徴は、時間で橋の真ん中が消え去ったり元に戻ったりする。一つ前のリンクの冒険の中で出くわした現象でもある……が、今は由来はどうでもいい。

 

2人が端の落ちそうなところで瀬戸際の戦いを繰り広げているということは、そのギミックが発動しているということ。つまり、フォックス達がいるのは足場のない空中。

 

 

「あー……黙っていれば誰も気づかないってヤツか?」

 

知り合いが言っていた。例え宇宙の酸素のない戦場でも、黙っていれば誰も気づかない。気づかなければ問題にはならない。気づいてしまったら?

 

 

「こういうパターンか……」

 

 

落下、普通に落下。光が見えない奈落の闇。

 

突然空中に投げ出されたファイター達。とはいえ、空中戦や復帰は大乱闘でやっていること。急ではあったが、対応は可能である。

 

 

「あっぶな……」

 

「だ、大丈夫ですか?」

 

 

まとめて全員がギリギリ崖に手が届く。パックンフラワーは牙だが。

 

気になって顔だけ向けるルキナは器用に敵の攻撃をさばいていた。

 

 

「速ク上ガルゾ」

 

「え?」

 

「橋、戻ッテクル」

 

「!?」

 

 

上空にポータルが出現し、慌てて昇るファイター。パックマンがボディをほおり投げて、橋の下に閉じ込めた。

 

 

「ステージギミックも役に立ったと思ったら……」

 

「完全にこっちも仕留めにかかってきたな……」

 

 

一体、このステージギミックを動かしているのは誰なのか。こっちの味方でも敵でもなさそうだが。それとも止める方法がないのか。マスターハンドに何かあって止めようにも止められないか。

 

裏剣ファルシオンを鞘にしまうルキナから手が差しのばされる。

 

 

「お怪我はありませんか?」

 

「あー、そんなに問題はな……ルキナ、それはこっちの台詞だが……」

 

「……あはは、少し色々ありまして」

 

 

髪も服も乱れたままのルキナ。しかし、彼女には全身に傷が残っていた。先ほどの戦いで、とも思ったが、パックマンにはそこまで怪我は多くない。

 

 

「なら、少し休むか。情報も交換しておきたいしな」

 

「ソウダナ、自分モ色々ト聞キタイ」

 

 

彼女の怪我を重く見たフォックスは休息を取ることを提言した。

 

沈んでいくはずの夕日は動くことなく同じ場所で輝いている。





◯タイトル
ゼルダの伝説シリーズの内一つのタイトル。
風のタクトのトゥーン基調から一転、FFよりのリアル基調になった初報トレーラーは世界中のゼルダファンを歓喜させた。
発売時期の関係上、WiiだけでなくGCでも発売されており、Wii版ではコントローラーの都合上、右利きだが、元のGCでは従来通り左利きのため、なんとマップなども含めてほとんど全部逆転されている。ある意味力技。
バグの都合上、RTAなどではメインじゃないGC版が主流なので、Wii版を遊んだユーザーからしてみればなんか気持ち悪く感じる。


◯パックンフラワー
色んなパックン族の攻撃を使えるハイブリッド種。
せっかくなので亜空の使者のボスパックンと関係を持たすことに。
ベビーパックンがいるのだから、幼児期みたいなものはありそうだが、生態が植物よりか動物よりかは不明。


◯亜空の使者のコロシアム
以前の章でセフィロスカズヤもいた。もう少し遅かったらラスボスとエンカウントとかいう地獄が待ってました。


◯パックマン
前回、鉤括弧すら使わせないで苦労したので、拙作の短編のように、動きを入れることに。ワタワタとか口に出している訳ではない。


◯ルキナ
今回は使わなかったが、クラスの都合上槍も使用可能。
FEファイター全員に言えることだが、ヒーローズの武器は構想に入れてません。収集つかないしシリアルブレイカーだし。
想像してください、ケーキサーバを振り回すマルス、プレゼント袋を振り回すクロム、卵から魔法を撃つルキナ……


◯黙ってたら誰も気づかんわい!
なんかスターフォックスってスマブラだと弾けません?
そうめんとか目標ファイターとか……原作あまり詳しくないんですけど原作でもそんなものなんですかね?
ローン80年からしてそんなもの? 確かに……


◯オルディン大橋
別にプリンがデカいまま戻らなかったりはしない。


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105話 イマ・ヌラネバー!

 

 

「……とまあ、大乱闘の世界にただ戻ろうとしただけなのになぜかオレ達全員新旧含めたどっかのステージにいて、なぜか別のステージに行ける入り口みたいなものを辿りながら、ボディと戦っている……ってところだ」

 

 

フォックスは話した。この世界に戻ってきてから今まで起きたことを。

 

 

「そうですか……つまり、元凶についての心当たりは現状ないと」

 

「ええ……探しているところでした」

 

「〜?」

 

 

小休止を挟みながら、これまでのことの情報共有を行うファイター達。

立ったまま、完全に警戒を緩めない者もいれば、座り込む者、寝そべる者と様々な温度差でその体を休めている。

 

その中で、神妙な顔を崩さないルキナは少し異端であった。そして、意を決したかの如く、真剣な顔をして口を開く。

 

 

「……この現象を引き起こした者について、確信……というほどでもありませんが、心当たりがあります」

 

「エ、本当カ?」

 

「はじめに聞いておきますが、みんなは大乱闘の世界に行こうとしたら何故かここにいた、という認識で間違っていませんか?」

 

「ああ、確かにそうだ」

 

「はい、パックマンは?」

 

「コクコク」

 

「同ジヨウダナ」

 

「……何かと戦って、気絶から回復したらステージにいた、ということは」

 

 

そういう具体的な聞き方はつまり。

 

 

「襲われたのですか……?」

 

「……はい。悔しいことに擦り傷も与えられませんでした」

 

「マジか……」

 

 

スマッシュブラザーズの一員で、ファイターで、絶望の未来でも戦い続けたルキナを完封。その者が今回の事件の背後にいると考えるとゾッとする。きっと、自分達が思っている以上に巨大な陰謀が渦巻いている。

 

 

「デモ、襲ッテスルコトガコッチニコサセルコトカ?」

 

「……納得いかねえな……」

 

 

始末するのが目的なら気絶していた時にやる。

身柄が目的ならば今頃合流できていない。

ほとんどの境遇が同じなのに、襲われて完封されたという事実だけが加わっているのが不可解だった。

 

 

「……駄目ね……とりあえずその襲撃者を見つけることも目的の一つに加えて進みましょう。これだけが敵の狙いでないのならば、いずれ巡り合うわ」

 

「コクコク」

 

 

ゼルダは早々に解決を放り投げた。今ある情報でわからないのならば、今どれだけ考えても無駄だ。パックマンも同意するように黄色い顔を揺らす。

 

 

「それもそうだな……」

 

「ウム」

 

「警戒だけしておきましょう」

 

 

彼らは十全となった橋を渡る。どこかでなにか進展することを望みながら。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、次にたどり着いたのはほのかに薄暗い場所。

 

 

「ん〜……なんか暗……」

 

「というより日陰ですね……」

 

 

しかし、そこは閉鎖的という訳ではなく、単純に別のものが影になっているだけである。周りを見渡せばカンカンと晴れ渡る空。灰色のコンクリートや道なりに舗装された上り坂はどう考えても。

 

 

「タチウオパーキング、でしょう」

 

「わかりやすー」

 

「コクコク」

 

 

今シーズンではじめて追加されたそこはここにいる全員が色濃く記憶に残っていた。

 

インクリング達のナワバリバトル用のステージであり、名の通り駐車場としても使われている場所、の模造品。流石にナワバリバトル用の地形をそのまま大乱闘の地形として扱うのは無理がある。ゆえに特徴的な高低差はそのままに、大胆なアレンジがされている。

 

余談だが、彼女曰く「チャージャーが有利に見えてボールドとかで駆け上がるのも楽しいんだよ!」とのこと。

ボールドが何かは知らないが、今いるのは最下層。インクリングではないが、駆け上がっていくべきだろう。

 

 

『……!』

 

「ビクッ」

 

 

パックマンの視界の端になにかがかすめた。反射的に驚いたが、落ち切ってしまったか、それともただの錯覚だったのか、下層の高速道路が見えるだけ。目を擦ってもう一度凝視してみる。

 

 

「……ジー……」

 

『……!』

 

「───ッ!!」

 

 

やっぱり落下していくボディ。気のせいではない。パックンフラワーの葉を引っ張って、落ちていったボディがいた虚空を指差す。

 

 

「ナンダオマエ……」

 

『……ッ!!』

 

 

そして、また落ちてくるボディ。しかしダメージが甘かったらしい。崖のぼりして上がってきた。虚なピチューの、何も宿らない瞳と目が合う。

 

 

「イルジャネーカ、敵! サッサト言エ、ぽんこつガ!」

 

「ええ!? というか、他にも降りてきてます!」

 

 

顔で打たれたパックマンに、どこから抜けてきたか、前方からもやってくるボディ。

 

 

「ぼでぃ、落チテ来テルゾ!」

 

「もしかして上でだれかがいるのでしょうか……」

 

 

戦闘の末に落下させたのだとしたら、上層には敵の敵、つまり味方がいるはず。ならば話は早い。

 

 

「突破する!」

 

「はい!」

 

 

突撃と共に突き出されたファルシオンの剣先が、ボディの持つ盾に塞がれる。足が止まった先にフォックスがかけた足払いが、ボディを崩し、掬い上げるような太刀筋が右肩を切り裂く。

 

 

「ポイッ」

 

「ふんっ」

 

『……ッ!!』

 

 

フルーツターゲットでリンゴをぶつけ、さらにパックンフラワーが息を当てることで反射させてさらにぶつける。

 

 

「そりゃ!」

 

『ッ!?』

 

 

完全な形のファントムがボディを切り裂く。フルーツターゲットは時間を稼ぐ手段でもあったのだ。軽いボディは真横にぶっ飛ばされて見えなくなった。

 

 

「オマエラ、普通二登レ。自分、外カラ行ク」

 

「わかった!」

 

 

真っ先に正道以外を思いつくのは、例え路傍の1輪と変わらぬ容姿でも悪の一味である。根元にある双葉をプロペラのように回転させ離陸する。

 

別にバカ正直に道なりに行かなければならない法律はない。地形の外だろうとステージの外でなければ大乱闘の舞台だ。先ほど落ちてきたボディ達を辿るように目的地へ行っても咎める者は誰もいない。

 

──それを考えていたのは、彼らも同じだったのだろうか。

 

 

「ウオッ、マタ落チテ……」

 

『……!』

 

「え」

 

 

とびだったところに影が差して、反射的に避ける。焼き増しをするように落ちてきたのは電気鼠のボディ。

そして、それにまっすぐ剣を突き刺すリンクの姿。唐突な出会いに思わず固まる両者。リンクは落ちながら。

 

 

「あ゛ー!! それどころじゃねええ!!」

 

「ピョン」

 

「あー!! マジ助かるー!」

 

「騒ガシイやつメ」

 

 

パックマンが用意したトランポリンのおかげでリンクは無事帰郷を果たす。故郷とは言っても、ほんのちょっと前にたどり着いただけの場所だが。

 

 

「あ、お帰りなさい」

 

「おう! やあやあボディ諸君もお迎えご苦労さん!!」

 

 

リンクは、リンク達もまた戦闘中だった。少し前にこことは違う別のステージで合流して、進んだところボディの襲撃を受けていた。気持ちのいい皮肉を言いながら大きく剣を振り抜き、ボディを切り裂く。おちゃらけた口調とは裏腹に鍛え抜かれた足腰で跳び回り、常にボディの頭上を取っていく。

 

 

「あ、そうだ。なんか花いたよ。あとパックマン」

 

「は、花?」

 

「せっかくの剣剣ケントリオが崩れるのはちょっと残念だけどな」

 

「でも、パックパックコンビが増えるんじゃないの?」

 

「おーい、オレを置いてけぼりにしないで~……ってか花ってパックンかー」

 

 

赤い胴着のケンが戦いの手も止めて言った。置いてけぼりがちょっぴり寂しい年頃なのである。

 

なんせ、好奇心のままに走り続けるリンクと天然の入った勇者イレブンが彼の連れなのである。誰かがストッパーにならなければどこに行ってしまうかわからない。

 

 

「騒ガシイ奴等ダッタカ」

 

「花ァ!」

 

「タダノ花ジャナイ、殴ルゾ」

 

 

植木鉢で頭を踏んづけながら、最上層に着地するパックンフラワー。ギラで足止めされたボディにシューリンガンと波動拳をぶつけていく。

 

 

「後、パックマンダケジャナイ。狐、ぴーち姫ジャナイ姫、女剣士。」

 

「あー、大体わかった」

 

「うりゃ!」

 

「ていうか来た」

 

 

リンクと同じ姿をしたボディがぶっ飛ばされながら、3人が乱入する。あれから他のボディが降りていったりはしなかったようだ。

 

 

「おっしゃ! 背中頼むぜ、ルキナちゃん!」

 

「え、あ、はい!」

 

 

名指しで指名されたことに困惑しつつも、ケンの背後のボディを仕留める。その脇でゼルダの頭上を襲ったボディを弓で射貫くリンク。助けられた姫は魔法をぶつけながら、味方の方へ走る。

 

 

「よそ見厳禁だぜ、ゼ~ルダ!」

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

フォックスがリフレクターで身を守る中、パックマンがパクパクとピザ欠けパックマン状態に変身して突進するも、脇から蹴り飛ばされる。

 

 

「ヒャー」

 

「あっ!」

 

 

反射されたパックマンがリフレクターで弾き飛ばされてしまう。跳んでいったパックマンは誰もが予想できない方向へ、

 

 

「きゃー!」

 

「ぐぼっ!?」

 

 

リンクとゼルダの2人にぶつかり、巻き込んで、それでも速度がまだ落ちない。

 

 

「えっ……!」

 

 

いきなり眼前にせまったルキナの背中に人肌の感触があった。

 

 

「ヒュー!」

 

「ちょ、ケン!?」

 

 

背中を押して彼女をかばったケンは爽やかな笑顔でパックマンに激突していった。

 

 

「あんなに飛ぶんだね……」

 

「ソレドコロジャナイ!」

 

 

3人を巻き込んだパックマンは、空間の歪み、ワープゲートに吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

「うう……」

 

 

痛みに耐えて目を開く。しかし、視界の中にほとんど光が入らない。そこは夜。否、

 

 

「宇宙……でしょうか……?」

 

 

頭上、左右、下。360°の全方位が夜の星空。それはさっきまで共にいたフォックスの主戦場であった。

 





◯タイトル
スプラトゥーンシリーズのナワバリバトル(フェスバージョン)の最後の1分から流れる曲。
これ実は2のバージョンに面白い裏話がありまして、シオカラーズ好きなイイダちゃんは畏れ多いとのことで、通常バージョンはヒメちゃんしか歌ってないんですよね。ハイカライブバージョンで歌うようになりました。シオカラーズとの距離もいい意味で縮まったんやなって。


◯ルキナの境遇
クロム、ルフレと同じく。


◯勇者
名前はデフォルトのイレブンを採用。
ファイターではなくなっている、ということなので、使用呪文、特技が変化しています。簡単に言えば、メラ系ギラ系イオ系ラリホー系ホイミ系などです。ドラクエwiki、主人公(DQ11)を参照。
天然系のちょっとおっとり。呪文特技が変更していることには気づいていますが、話す余裕がなかったので一緒にいたケン、リンクにも伝えられていません。



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106話 セクターZ

 

 

「あーあ、これじゃ逆戻りだ」

 

 

心底飽きたと言わんばかりに気落ちするリンク。その口ぶりからすればここからタチウオパーキングへ来たという訳で。

 

 

「あなたは、ここのことを知っているのですか?」

 

「そこまでは知らないけどなー」

 

「姫さんとパックマン、しっかり捕まってないと落っこちるぜ」

 

「わわ、わ!」

 

「アタフタ」

 

 

動いていた足場がギュンと急降下して、体勢が崩れる。膝をつきながら、見たその足場がどこかで見たことあるような気がした。

 

 

「えっとえっと……そう!フォックスのきりふだ!」

 

「そうそう!本人いたし聞いときたかったのにこの始末だぜ⭐︎」

 

「だぜ⭐︎ってなんだよだぜ⭐︎って。確かアーウィンって名前の戦闘機だ」

 

 

そう、彼らが足場として乗っているのはフォックス達の戦闘機アーウィン。ここはひたすら静かな宇宙ではない。隕石とエネルギーショットの飛び交う星空の戦場である。

 

 

「アワアワ」

 

「んあ? なんかパックマンくんさんがなんか言いたげだぜ?」

 

「あっ、ここもステージなのですね。私たちは知らないだけで……」

 

「ま、ファイター換算ならオレ達の先輩だしな。……ちょっとだけ。」

 

 

パックマンだけが既視感のあったそのステージ。

 

まるで一種のアトラクションの如く、戦況が切り替わり、戦闘機が右往左往。

オービタル周域と呼ばれるステージの原典は珍しく、場所というより戦闘が元である。

 

 

「さっき、ここ通ってあっちに来たんだけどさ、まあ、通るってよりは乗ってだけど。そんなことよりたまにこれ回るから注意くぼぉ!?」

 

「わあ!?」

 

 

足場のアーウィンが回転して危うく落ちそうになる。回避行動のためのローリングと呼ばれる動作だが、それのせいで振り落とされそうになった。搭乗者に優しくないが、そもそも機体の外で乗ることなど想定していない。

 

 

「あ、あなたたち、こんなところでも大乱闘きゃっ!?」

 

「コクコク」

 

「ホントどこでも大乱闘にするなうおっ!?」

 

 

たまにしがみつきながら、こんなステージで大乱闘をしていたパックマン達にズレた尊敬の念を抱く。

 

 

「まあ、それはともかく。一周すればさっきのトンネルにも戻れるだろうし、流れに逆らわず進ませてもらおうぜ」

 

 

アーウィンからミサイルに飛び降りるケンとリンク。パックマンもそれに続き、ゼルダも遅れて降りた。

 

 

「あー、でもそれじゃ戻るだけだし……」

 

「そうですね、このまま進んでもリンクやケンが歩いた場所ならば新たな手がかりなんて」

 

「お、激突するから捕まってなよ」

 

 

ミサイルがフォースフィールドに激突し、4人は伏せて足元を掴む。衝撃に耐えながら、リンクに妙案が降りてきた。にこりと明るい表情。

 

 

「なあ、これステージの外ってどうなってんだ?」

 

「………………はあ?」

 

 

 

 

 

珍しく、ルキナは混乱していた。

彼女、絶望に関してはいくつも味わってきたのだが、突拍子もない展開、いわば並べられたハードルを蹴り倒して進むような状況にはてんで耐性がない。

スマッシュブラザーズとしてアクの強いファイター達と友好を深めてきたのだが、完全に慣れた訳でもない。

 

 

「なんで……あの人、カッコつけて、巻き込まれていったん、ですか!」

 

「う〜ん……そういう年頃なんじゃない……かな? 僕もあったよ」

 

「明らかに貴方の方が年下ですよね!?」

 

「後でいいから!! とりあえず片付けて追うぞ!」

 

 

ほら、今もちょっと気の抜けた返答についていけていない。スルースキルに関してもフォックスの方が上だった。

 

 

「あ、でもすごく夜って感じのステージだったよ。どこなんだろう、あそこ」

 

「イレブンの、知らない場所か……? 今は使われてないってことだよな」

 

「……ドノすてーじ、似テルカ?」

 

「それだっ!」

 

「えっ、うーんと……ごめん、ちょっと待って」

 

 

既存のステージと似ているかを聞くファインプレー。イレブンは苦い顔をして考えながら、はやぶさ斬りをぶち当てる。上記の会話もまだ戦闘中であった。器用な3人と1輪。彼ら全員にとって、戦いが身近なものだからという理由もあるだろうが。

 

 

「ドケッ!」

 

「やっぱり何度見ても痛そうだよ」

 

「そんな感想いいから考えろよ!! 片付けて直接見た方が早くなるぞ!」

 

 

しかし、イレブンの興味はフラフラする。パックンフラワーの頭部が黒く棘のついたものに変化し、ボディをぶっ飛ばす様子に今更ながらの感想を述べる。とはいえ、考えていない訳ではなかったのか、ハッと述べた。

 

 

「あっ! そうそう、ライラットクルーズとかマリオギャラクシーに似てるんだ!」

 

「ってことは……宇宙か!」

 

「うん! あとフォックスとファルコが乗ってる青い鳥みたいなのに乗ってて……」

 

「えっ、ってことはあそこかよ……また面倒なステージで……」

 

「……ああ〜……確かに……」

 

 

先にフォックスが、遅れてルキナも見当がついた。ノンストップで動き続けるあのステージの探索は大変だろう。

 

 

「でも、追われると余計面倒になるな。1人残らず倒していくぞ!」

 

「わかった!」

 

 

デインの雷が響き、ルキナが投擲した槍が足を縫う。フォックスの炎をまとった突進がボディに迫っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ、大丈夫なのでしょうか?」

 

「まー、なんとかなるなる」

 

 

アーウィンの上で立ち、タイミングを見計らうリンク。

飛び回るアーウィンは同じルートを通る。一度ミサイルが破壊され、フィールドがアーウィンへと戻った後に、トンネルを潜り抜け、別のミサイルへと乗ることになる。

 

リンクはそのトンネルに向かって飛び降りてみようとしているのだ。

 

 

「雑だな……で、ピチューンって光になるだけだと思うんだが、大乱闘みたいに戻ってこれるのか?」

 

「大乱闘みたいにピチューンするとは限らないっしょ? 行けるとこはどこまでも! それがオレのモットー! 今決めた!」

 

 

どこまでもリンクは頑なである。やんわりとした説得ではどうやら止められないようだ。ため息をついてケンは、残る2人と目を合わせる。

 

 

「って、ことだけどどうする?」

 

「うーん……正直危険以前にうまく着地できるのかが怖いところですが……」

 

 

考えながら言葉を発していたようで、僅かな沈黙の後の言葉は繋がらない。

 

 

「仮に今がマスターハンドの目が届かないだけだとしたら、事故でどうにかなってしまうことになりますよね。そんな欠陥を……」

 

「ピコーン」

 

「ああ! 事故でピチューンしなかったら危険になる……なんてことにはマスターハンドはしてないってことか!」

 

「はい」

 

 

上手く言語化できたケンの意見に同調する。確かに可能かどうか、やって何が得られるかは置いておいて、宇宙に放り出されて戻れない、なんてことにはならないだろう。

 

 

「おーい! 別に1人でもいいけどさ、ついてくるならもうすぐじゃね?」

 

「ええっ!?」

 

「あ、着いてくるかまでは考えてなかったじゃねーか! あーえっとーええい、ヤケだ!!

 

「ビュン」

 

 

ヤケクソでリンクに続いて、ケン、パックマン、そしてゼルダが飛び降りる。

強い衝撃が両足に響き、思わず身震いをした。アーウィンは頭上を通り過ぎていく。

 

 

「おお……本当に無事でした……はっきりとした自信はなかったわ」

 

「ヒヤヒヤすんなぁ……」

 

「〜♪」

 

 

鼻歌交じりに探索で進み始めたリンクを尻目に3人は、ちょっと臆病になっていた自分を戒める。

 

 

「しかし、ここに何が━━」

 

「〜♪━━えっ」

 

 

しかし、リンクの鼻歌は急に止められる。出入り口か非常口か何か、開け放たれた室内には倒れて目を閉じたままの数えきれない人々。

マルス、ピット、しずえ、サムス、スティーブ、ミェンミェン、プリン━━彼らの仲間達の顔も。そして、彼にとって、もっとも敬愛すべき女性も、また。

 

 

 

 

 

「やっと戻ってきた━━」

 

「アワワ!?」

 

「えっ、貴方達は一体……?」

 

 

遅れてフォックス達がこのステージへ降り立ち、グレートフォックスに足をつける中、2人の若者と出会う。

 

タコの触手のような髪をした少女とオレンジのバンダナを着けた旅人のような格好をした青年。

 

 

「もしかして……君たちがファイターかい?」

 

 

驚いたように目を丸めながら、青年が口を開いたのだった。





◯タイトル
初代スターフォックス、スターフォックス64で登場する宇宙空間。
初代スマブラでもステージとして採用され、今作で1番広いステージに。SPでも日の目を浴びることはなかったが、ほとんど惑星コーネリアと同じ形なので……
作者的に広いステージといえばニューポークシティなのですが、初代ではここというのは、時代の進歩を感じます。


◯オービタルゲート周域
スマブラWiiUに存在する、制作に一年を費やしたというステージ。ディズニーのアトラクションでありがちに、物語をなぞるように足場や背景が移り変わっていく。フォックス、ファルコが対戦で登場していない時に限り、スマッシュアピールでスタフォ勢の掛け合いが楽しめる。シリアスな原作風とおちゃらけたスマブラ風の2種類の掛け合いがあるぞ!
SPでは未登場。全俺が血の涙を流した。


◯ローリング
アーウィンでの回避行動。機体を横に回転させて弾を振り切る。
ただローリング直後に隙ができてしまい、灯火の星ムービーではファルコが後隙を狩られている。


◯倒れている面子
色々足りなかったりしますが……


◯作者の気まぐれコメント
ついにWiiUと3DSのオンラインサービス終わってしまう……
初代スプラトゥーンもそうですが、天使の降臨とか夢見の館とかも消えてまう……
やばい、ちょっと泣けてきた……


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107話 真実の強さと歩むRPG

 

「どうなってんだこれ……!」

 

「……っ! リンク!」

 

 

意識のない多くの人々が横たわっている異常事態。その光景にケンとパックマンはただ茫然とするしかなく、ゼルダは見知った顔がその一員にいることに気づいて駆け寄る。

 

 

「リンク、リンク! 起きてください! リンク!」

 

「………………」

 

「リンクッ!」

 

 

肩を揺さぶり、瞼が開くのを期待するが、魂でも抜かれたかのようにビクともしない。錯乱状態にも近い彼女は周りの仲間達にも手を動かす。

 

 

「どうして目覚めないのッ!? マルス! ミェンミェン! しずえさんッ!!」

 

「あー!! 落ち着いてって! 乱暴に揺さぶったって起きないぜ!!」

 

 

少しだけ力を込めてゼルダの肩を抑える。らしくもなく肩で息を続ける中、軽く肩を叩き落ち着かせる。

 

 

「ほら、深呼吸深呼吸。な?」

 

「はぁ……はぁ……」

 

「うんうん、リンクの方は……」

 

 

真っ先に気づいたリンクはどうだろう。パックマンはどっちかというと唖然であるので少なくとも錯乱したりはしないだろう。

まあ、リンクだって単独で戦う勇者な訳だし、簡単に動揺したりは……

 

 

「……あっはっは。なんだなんだ? どこの痴れ者の仕業だ?」

 

「(怒り通り越して笑顔になってらっしゃるゥ!?)」

 

 

額に血管が浮き出て、にこやかに笑う裏腹、言葉は完全にキレていた。実際の心境もガチギレである。暴れたりしてないのでパックマンもどうしていいのかオロオロしている。

 

 

「あー、ダメダメ。相手もいないのにキレても仕方ないよね。平常心平常心。オレは100年前、100年前」

 

「なんでしょうか、その落ち着き方は……」

 

「おっ、お姫さんも落ち着いた?」

 

「いえ、こんなに明らかに怒りを露わにしている方がいると逆に冷静になれるというか……」

 

「アッハハー……そりゃそうか」

 

「コクコク」

 

 

平常心と言いながら、怖い笑顔から微塵も変化がない。

遠い目で近くの現実を見ながら、ケンはどうリンクを宥めてイレブン達と合流するか考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ア、3号サンノオ知リアイノ方デスネ」

 

「3号って?」

 

「えっと……インクリングです。所謂英雄志願、といったような自称で……」

 

 

こそこそとルキナが補足した。用もないのに変身するのはヒーローらしくない、とのことで、イレブンやパックンフラワーは3号の存在すら知らない。

 

 

「ソシテ、フォックスサン。ワタシ達、ペッピーサンニ頼マレテスマッシュブラザーズヲ探シテイタンデス」

 

「えっ、ペッピーが? 一体どこで……」

 

「壊レタコノ機体デ……」

 

「………………」

 

「フォックスー!?」

 

 

ペッピーに頼まれてファイターを探していた8号。ただ、どこから来たのか問うとフォックスは崩れ落ちた。借金の返済がさらに遠のく。

 

 

「マスターハンドに頼んだらこいつと取り替えてくれないかな……」

 

「これ、偽物じゃないの?」

 

「黙レ天然」

 

「アノ、ワタシ何カ……」

 

「気ニスルナ。ソレデ? 何故自分達を?」

 

 

8号は懐から何かを取り出す。それは平べったい潜水艦のような形をした端末だった。画面はなく、真ん中にポツンとスティックが1つある。

 

 

「コレヲ見テ欲シクテ……」

 

「コノ機械ガドウシタ?」

 

「イヤ、機械ハ自前ノモノデス。中ノ映像ヲ見テ欲シインデス」

 

 

そういうと、スティックを動かす。空中にプロジェクションマッピングの如く映し出される、画面を経由しない映像。半透明のソレが映し出される。

暗い空間にマスターハンドのみが映されていた。白い右手は所々煤がついているようだった。

 

 

『━━この映像が私の最高傑作、スマッシュブラザーズ、もしくは彼らの縁者が入手することを祈り、これを残す。我が名はマスターハンド。』

 

「えっ、君たちこんな物みたいに呼ばれてるの?」

 

「いえ、これは……威厳を示すため、みたいなものかと」

 

「確かに竜神王もこんな感じだったかな」

 

「……お前ら雑談もいいけどちゃんと見ろよ」

 

「ワカリマシタ」

 

 

釘だけは刺しておく。雑談も何も喋っていないのに了解を意を唱える8号にちょっと心が救われた。

 

 

『これを見ている現在、私の創り出した世界の状況がどうなっているか自覚できても伝える術を持たぬだろう。ゆえに私が知っていることのみを残しておく。』

 

「前置キ長イゾ」

 

「パックンフラワー、」

 

『私のみが立ち入れる場にやってきた7名の人物。彼らはキーラ、そしてダーズの残したボディを器とし、私の捕獲を目的に襲いかかってきた。抵抗したが、私の攻撃は全て1人に吸収されてしまった。』

 

「……かなり切羽詰まった場面で残されたんですね。それにしても吸収ですか……」

 

『この肉体をどこかに置き去りとし、私の精神と力をジョーカーに託す。』

 

「ジョーカーに……?」

 

『これを確認した者は彼に会いに行って欲しい。そして私の肉体の元へ送っていってくれ。彼ならば、私の存在にも気づくだろう。』

 

 

何をすべきか、誰の責任か、何が目的か。

全てを託された。

 

 

『奴らの個人的な都合で、この世界を終わらせる訳にはいかない。敵である7人を討滅し、大乱闘を取り戻す。頼んだぞ、スマッシュブラザーズ』

 

 

映像は終わった。宇宙の静寂が辺りを包み、イレブンの大きく吐いた息がそれを打ち破った。

 

 

「……ボディ、が襲いかかってくるのもその7人が原因なんだよね」

 

「そして7人もまた、精神が入ったボディであると」

 

「殴レバ倒セルハズ、ダガ、」

 

「マスターハンドが表に出れない今はファイターじゃない。フィギュア化で倒すことはできず、物理的に砕くしかない。だから、精神が入ったボディを倒すのは不可能に近いんですよね、フィギュア化、できないから……」

 

「キーラの奴らがスピリット入れりゃあ、オレ達ファイターとほとんど変わらなかったからな……」

 

「ひとまず、そのジョーカーさんを探してみよう? マスターハンドさん本人に聞ければなんとかなると思うよ」

 

「ソレナラ、ココカラデナケレバ……」

 

 

辺り全てが暗く閉ざされた宇宙の世界。

ここのどこに、果たして出口はあるのか。

 

 

「イレブン、戻ッテクル時ココダッタカ?」

 

「最初からここにいたのか、って話? ううん、僕がきたのはホ「あああ!!」

 

「パックマンやケンのこと、すっかり忘れてました!!」

 

「あ、やべ。オレも忘れてた」

 

「聞こえてるぞー!!」

 

 

遠くから響く咎める声。宇宙を突っ切るように駆けながら、スマッシュブラザーズは合流を果たしたのだった。

 





◯タイトル
ソーシャルゲーム、テイルズオブザレイズのラストクレイドル編のジャンル名。
テイルズオブシリーズでは唯一現行しているソーシャルゲーム。システムも本編と近く、参戦キャラクターはパーティキャラはもちろん、人気のサブキャラ、敵キャラ、ストーリー中に死亡or離脱したキャラまでいたり、テイルズファンには堪らないゲーム。
ただ、当たり前のように本編ゲームの話が出てくるので、本編シリーズを知らないという方にはネタバレになるのは勿論のこと、ついていけないこともあるかと。
その辺アスタリスアはシリーズ初心者向けでした。闇堕ち系も含めたオリジナル衣装もいっぱいありましたし、惜しい奴を亡くした……


◯8号
1章からかなり時間が空いたのでもう一度。
スプラトゥーン2のDLC、オクトエキスパンションでの主人公。3のDLC、サイドオーダーでの登場も確定し、DLC専門の地位を着実に固めている。
タコらしく、真面目な性格でおふざけには呆れる一面も。戦闘では、インクリングの使用しないブキ種を使用。
しかし、1章の間話からここまで長かったなあ……


◯エイト
1章からかなり時間が空いたので以下略。
ドラゴンクエスト8の主人公。デフォルトネームがナンパリングからとられたのも彼から。今作では槍もブーメランも使用せず、片手剣と盾で頑張ってもらいます。
あらゆる呪いを弾き、呪いの装備もデメリットを弾いて装備可能。使用呪文はギラ、デイン、ホイミ系とオーソドックスだが、今作に限ってはベホマズン(全体完全回復)がチート級。扱いに困ってます。いっそ使えない設定でも誰も文句言わんやろ……でもエイトといえばベホマズンなんだよな……


◯グレートフォックス
父親の残したスターフォックスの基地代わり。しかし、80年ローン。
灯火の星でも修理できたとはいえ壊れているし、かの機体の墜落は某戦艦みたいにネタに走れない。スターフォックスの明日はあるのか。



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108話 アウトオブディスディメンジョンズ

 

「……それは……一体何が……」

 

「マジ意味不明だよ、ほんとにほんっとに一体どこのボディ様の仕業なんだろうねー」

 

「リンクリンク、頼むから尾翼を曲げないでくれ……偽物でも心が痛いから頼む曲げるな折れる折れる折れる折れた」

 

 

顔から青筋の消えないリンクが八つ当たり気味にステージそのものに当たるのを息継ぎなしで止めようとするフォックス。なお結果は。

合流のできた彼らは、まずリンク達4人の見た意識不明集団のことを話した。全員が倒れて起きる様子のない人々。

連れていきたいのは山々だったが、あまりにも数が多い上に人を担いで飛行しているアーウィンに乗り込むのは無謀だったために、断腸の思いで置いて行っている。

 

 

「……で、そっちはジョーカーがほにゃららでマスターハンドがどんがらがっしゃんしてるんだっけ?」

 

「リンク……」

 

「言った覚えないよそんなこと」

 

「イレブーン!?」

 

「ヤメロいれぶん、真面目ニ取リ合ウト話進マン」

 

 

あまりにも曖昧なリンクの把握にけろりとした顔でイレブンが答える。

まあ、このふざけたムーブは一応今平静を保てているということだと感じられた。かといって呆れないかと言われたら嘘になる。この2人でよく逸れることなく行動できたなとケンは密かな自信をつけた。

 

 

「そういえば……結局、ケン達や8号さん達はどちらから来たのですか?」

 

「またどっかのステージだろ? う〜ん……」

 

「ニヤニヤ」

 

「ナンカ腹タツ」

 

 

普通に微笑んでいるイレブンの傍らでわかりやすくにやけるリンクとケン。彼らがそこからここに来て、そして今から向かう場所は。

 

 

 

 

 

 

円柱状の舞台。そこから一直線に伸びるフィールドには規則的に線が引かれていた。まるで物差しやメジャーのように。

 

 

「すてーじジャネエ!!」

 

「ほ、ホームランコンテスト……!?」

 

「うーん、いい顔。サプライズやっぱり大好き」

 

 

そう、ここは大乱闘とは別の催し物。

サンドバッグくんにダメージを溜めてブッ飛ばすことで、どこまで飛んだかの飛距離を競うホームランコンテストの舞台だったのだ。

 

 

「えっと……つまりマスターハンドからしてみたらステージと同じ管轄にあったと」

 

「あ、そうそう。僕たちもここからあの夜の空が広がる場所に来てたんだ。外からその歪みに飛び込んで、こんな感じのところに来て……」

 

 

リンクやケン、イレブンだけではなく、エイトと8号もここを経由して合流したのだという。

ステージとは関係ない場所からステージのある場所に飛び込み、巡り巡ってみなと合流した。

 

 

「つまり、エイトと8号と同じ道順を辿ればステージとは関係ない世界に戻れるということですね」

 

「ウン、マズアッチ」

 

 

8号が指差したのはサンドバッグくんを向かわせる遥か先。

 

 

「なんでこんな遠いとこなんだろうな? オレ達はそばだったってのに。まあ、とりあえぐふっ」

 

「うわ、ケンが倒れた」

 

 

先頭で歩こうとしたケンが後ろ向きに倒れた。額を抑える彼を見て、ふとイレブンが手を動かすが、どうしても一定の場所で先に進まない。

 

 

「……これ、壁になってる」

 

「また見えない壁か? あ、でもホームランコンテストなら間違ってないのか……」

 

「でも、向こうからここには来れたのに……」

 

 

ホームランコンテストの不正防止のためか、距離を測る領域には人が入れなくなっている。

 

 

「一方通行カ。何ニシテモ通レナイガ問題デ……」

 

 

ふと円柱の舞台に登場したサンドバッグくん。パックンフラワーはない両目をパチクリさせた。

 

 

「……打テト……?」

 

 

確かにサンドバッグくんを飛ばせるなら、少なくともその時には壁はないわけで。

 

 

「……ヤッテヤルゥ!!」

 

 

思い切りはよい方だった。

 

 

 

 

CASE 1 パックンフラワー

 

 

「頑張ッテクダサーイ!」

 

「ファイトー! 自分に負けるなー!」

 

 

傍から声援が送られる中、どこからともなく聞こえた開始と共に、ポイズンブレスを吹いた。

 

 

「マダダー!!」

 

 

葉っぱを回転させて切り刻み、植木鉢を叩き込む。そして、落ちてきたバットを拾って振った。

 

 

「オラァアア!!」

 

「お、行ったか!」

 

 

 

遠く遠くの空へと飛ばされていくサンドバッグくん。肉眼で見えない遠い遠い場所まで。

 

 

「500キロちょいってとこか?」

 

「まあまあで草、花だけど」

 

 

咄嗟にリンクの顔にくらいつくパックンフラワー 。くぐもった声でギャアギャアと叫んでいるリンクを全力で背景にする。

 

 

「まあ、結果はいいや。先に進めるなら……」

 

 

透明な壁は消えてない。フォックスの手も通さずに依然として突っ立っている。

 

 

「なんでだよ……」

 

 

 

 

 

CASE 2 フォックス

 

 

「なんでオレまで……」

 

「言ったもんがやれってこった!」

 

「手数タイプだから向いてないんだよ単純に!!」

 

 

フォックスは攻撃の回数で攻めるスピード型。

ダメージとぶっ飛ばし力が物を言うこのイベントには相性が悪い。

 

 

「まあ、いい記録を出せれば道が開けると決まった訳でもありませんし……」

 

「ポンポン」

 

「パックマンまで……くそ、一回だけだからな!」

 

 

そんなこんなで始まったフォックスの挑戦、蹴りの連打からサンドバッグくんを打ち上げて、ブラスターもともない確実にダメージを増やしていく。

 

 

「向いてないとか言いつつ、いい感じじゃねえか」

 

「最後ニブッ飛バスノハワカリマスガ、ソレマデノ過程ハドウシテデスカ?」

 

「まあ、ダメージを溜めれば溜めるほど飛距離が上がる……大乱闘方式ってことだ」

 

「ナルホド……」

 

 

8号が物珍しそうに眺める中、カウントダウンがはじまり、トドメ用のバットが落ちてくる。

いつの間に作ったのか、お子様ランチに刺さっている旗のようなものを両手で振って応援しているリンクをはじめとした声援(?)が飛ぶ。

 

 

「よしっ!」

 

「空振れー!!」

 

「リンク!?」

 

「ほらほらイレブンも!」

 

「えっ!? えっと……尻尾とバット間違えないように!」

 

「間違えるかァ!!」

 

「あっ」

 

 

リンクに背中を押されたイレブンが咄嗟に放った言葉。無視無視と頭の中で問いかけていたフォックスもたまらず言い返した。

そして、無情に唱えられたカウントゼロ。気の抜けたゼルダの声。

 

 

「やってしまった……」

 

「向イテナイ以前ノ問題ダナ」

 

「リンク、あなたゼルダさんを助けたいんじゃないの?」

 

「ゼロの記録も試してみなきゃな」

 

「色々試してみるってことか? まあ、わかりやすいのは何キロ以上の記録を出すってことだが」

 

「あのさ、」

 

 

そこでエイトが手を挙げた。

スマッシュブラザーズとは違う意見の話。

 

 

「これは、そもそも1人でしかやれないものなのかい?」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………確かに」

 

 

 

 

 

CASE 3 パックマン&イレブン

 

 

「フォックスから怒られた……なんか言えって言ったのリンクなのに……」

 

「ハァ」

 

 

少し落ち込んだままのイレブンに、やれやれといった雰囲気で付き合ってくれているパックマン。とはいえ、次に進むための道が見つからない以上、真剣にやらなければ。

 

 

「パックマンはダメージをお願い、僕が決めてみるよ」

 

「コクリ」

 

 

2人組での初挑戦。ベギラマでサンドバッグくんの足元を焼き、少しだけ空中に浮かせる。

そして、パックマンがピザ欠けパックマンの姿となって回転しながらぶつかり、さらにパワーエサを操ってさらに打ち上げる。

 

 

「ギガデイン!」

 

「カミナリガ!」

 

「あんなに呪文を使ってしまっていいのかな? いざという時に魔力がなくならないといいんだけど……」

 

 

呼び込んだ落雷にエイトが一抹の不安を覚えた。全てを仕組んだ黒幕も控えているのだ。多少なりとも温存しておくべきのはずだが──

 

落雷に打たれて落下していくサンドバッグくんに振りかぶったバットをヒットさせてぶっ飛ばしていく。あっという間に見えなくなって、静止するまでだろう時間が経った後、記録が大きな画面に出てきた。

 

 

「765……記録はともかく、どうだ?」

 

「……ダメです。まだ壁があります」

 

「ヤッパリ、さんどばっぐト共ニ突撃シカナイカ……?」

 

「可能な気がしないのだけど……」

 

「次、ワタシガヤッテミタイデス」

 

 

でもやはり現状に変化がない。そんな中、今度は8号が手を挙げた。

不謹慎ながらも、慣れぬ体験をしてみたいというワクワクさはある。

 

 

「えっ……できる……のでしょうか?」

 

「まあ、今のオレ達だってファイターじゃないらしいし、できるんじゃないか? ハチちゃん、頑張れ!」

 

「ハイ!」

 

「やってみたいのかな……」

 

「まあ、そういうことだろ……」

 

 

 

 

 

CASE 4 8号

 

 

真剣にまっすぐ、サンドバッグくんだけを見つめる。その本気具合にサンドバッグくん本人も少したじたじである。

始まろうとしていたタイミングで、抱えたバレルスピナーのチャージを開始した。

 

 

「え、ガトリング? ナワバリバトルのブキはこんなものまであるのか……」

 

 

ダダダダダダダダ!

 

開始と同時にバレルスピナーを撃ち放った。

細かく、数の多い弾丸は、インクでなければ蜂の巣にしていただろう密度。

撃ち終わると、バレルスピナーをその辺に放り、オクタシューターレプリカに持ち直す。蹴り上げて、下からドリルキックで突き上げる中、撒き散らすピンクのインク。

 

 

「あれは……」

 

 

銃と足技で同時攻撃するのはフォックスもやっていた技。先程見た時にしっかりと有効な技を考えていたのだ。

 

 

「すげー……」

 

「クライマックスです!」

 

 

茶化す暇もない綺麗な動き。

落ちてきたバットを握ると、大きく大きく振りかぶって打った。

 

 

「おおおー! さすがハチちゃん、やるなー! もう見えなくなった!」

 

「ウン、チョーシイイネ!」

 

「結果は……」

 

 

いい汗をかいて8号も満足だ。

コロシアムについた大画面での結果を今か今かと待ち侘びる。

 

 

「あれ?」

 

「ノイズが……」

 

 

しかし、画面の中には数字も出ない。それどころかどんどんとノイズや砂嵐が酷くなる。

 

 

「ええ!? ハチちゃんの記録は!? こんなところで故障!?」

 

「まさか、スマッシュブラザーズじゃない人が結果を残すのを想定してないんじゃ……」

 

「それにしたって何か変よ!」

 

 

フォックスのひとまずの仮定。単純に想定されてない表示を出せないから。

だが、ノイズや砂嵐は画面の外にまで及び、コロシアムも含めて大きく、強くなっていく。

そして視界が真っ白になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──どうして、

 

 

──どうしてここがわかったの!!

 

 

彼らの目が開いた時、そこにいたのは。

 

 

「まさか、こんなところにまでスマッシュブラザーズが!」

 

「……私?」

 

 

緑を基調とした衣装となったゼルダの姿。

否、キクという少女だった。

 

 





◯タイトル
SFC版スターフォックスに登場する隠しステージ。
特殊な方法でしか入る……というか迷い込むことができない。
登場した謎のスロットマシーンを退けたらスタッフクレジットが流れて終了、と思いきや、クリアはできない仕様のためにゲームオーバーになるか電源を切るしか抜け出す選択肢がない。
元はポリゴン製作の練習用のオブジェクトを再利用したもの。いわゆる黒い任天堂、みんなのトラウマと呼ばれるものなので、検索は自己責任でお願いします。


◯ホームランコンテスト
DXから登場のゲームモード。サンドバッグくんをぶっ飛ばした飛距離で競う競技。ピクオリは紫ピクミン3匹登場済み、ゲムウォのジャッジで6しかでないなど運要素を無くした仕様があり、ある意味タイマンより競技性が高いかもしれない。
余談だが、ドラクエ9の没モンスターに、ダミーデータと思わしきサンドバッグくんという名のモンスターがいる。


◯作者の気まぐれコメント
サメライド、まさかのノータッチ。
塗り、弱くしていいので前隙と後隙短くしてください、お願いします……ボム消しすらない状況で頑張ってるんです……モップリンに救いを……

でもマリオワンダー発売だよおおおおお(テンションの差)


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109話 双魔神 モシレチク コタネチク退治

 

「ボディ……でも喋るし……ということは……」

 

「──!」

 

「リンクッ!?」

 

 

その姿を認めるや否や、真っ先に飛び出したのはリンクだった。見開いているはずの鋭い眼光が、振りかぶった腕の上からキクを見据える。

咄嗟にシールドを貼って防いだ敵側の少女は斬られた方向へ大きく引き摺られた。

 

 

「なんで……ここだけは見つからないと思ったのに……!」

 

「ここは……!」

 

 

キクのいた場所は大滝のぼり。

巨大な滝が流れる中、細かく足を登っていかなければスクロールに置いていかれるステージだ。ここも今は使われていない。少女はだからこそ見つからない自信があったのか。それとも。

 

 

「正直状況を読みきれていないのが本音ですが……あなたを逃してはいけないのはわかります!!」

 

「逃げ場なんてないわ……! ここで蹴散らしてみせる……!」

 

 

マスターハンドから奪い取った創造の力。それによって金色のチャクラムを創りだす。1つ目を囮として、2投目でルキナのマントを巻き込んで壁に縫いつけた。

 

 

「ルキナ……! どんどん上に上がっていく……!」

 

 

ルキナに手を貸して、フォックスが苦虫を噛み潰した。

宙に浮かぶ少女はするりするりと滝を上がっていく。重力に逆らう動きで追わねばならないスマッシュブラザーズは中々追いつけないのだ。

 

大滝のぼりは戦闘領域が上へ上へと進んでいくステージ。大乱闘ではないので取り残されてもミスになることはないが、キクとの距離はどんどん離れていく。

 

しかし、それでも追いつくものは追いついてくる。

 

 

「舐めるなァ!」

 

「きゃっ」

 

 

リーバルトルネードで急上昇をかけたリンクが、浮いたままのキクの足を掴んだ。宙で回ったり、急に止まったりして振り払おうとするが、額に血管を浮かべて離さない。

 

 

「はなしなさい!」

 

「うぐっ」

 

 

顔面に至近距離で爆発を受けて、思わず手を離した。どんな武器かは一瞬過ぎてわからなかった。

 

 

「……なら、これよ!」

 

「わっ!? ステージ変化か!?」

 

 

ステージの地形が足元から離れて、感じた浮遊感はすぐに消えた。まったく違う地形が入れ替わって現れたからだ。

 

 

「うおお!?」

 

「なんかデコボコ……でっけえゼニガメ!?」

 

 

空中に投げ出されたリンクが頭から落下する中、ケンが目を見開いた。自分が足場にしているそれは、巨大なゼニガメだったのだ。周りを見渡せば、さまざまなポケモンが浮いている。

 

 

「ポケモン亜空間!? いつぶりなんだよ!?」

 

「なんなんだよこの高熱の時に見る夢みたいなのは!!」

 

「知るかオレに聞くな!」

 

 

先程から古参のフォックスにばかり八つ当たりする気がして、本人からすれば理不尽である。この面子で初期から参戦している者はフォックスしかいない。

 

 

「この世界の創造主(マスター)の力……それも合わせて叩き潰してあげる……!」

 

「空中に……!」

 

 

足場が不安定で動きにくいが、それはキク以外の話である。彼女は空中に浮かんだままに、行動を行えるため、ステージの特徴が不利に働かないのだ。

 

両手から放たれた拡散するレーザー。範囲から出ようにもゼニガメの肩付近やに追い込まれてり頭頂部で視界が潰れてヒットしてしまう。

 

 

「(それよりも単純にステージが狭い! 4人でしか戦えなかったステージで10人超えてるなら当然か!)」

 

 

純粋に戦場と人数が合っていないのもあり、簡単に逃げ道が塞がってしまう。ステージ変化なんてこちらから期待できるものじゃない。

 

 

「いーや!! 別にゼニガメくんちゃんの上にいつまでもいることないだろ! あのウチュウでのこと忘れたか!!」

 

「ッ!!」

 

 

ウチュウ、オービタルゲート周辺で見つけたのはなんだ? どこにあった?

 

大乱闘、とは違う。戦闘領域から離れたところでミスになったりはしないのだ。

 

 

「ドウダッ」

 

「……! 背後から……!」

 

 

アンノーンの目玉部分を足場として、8号がスプラチャージャーでキクを射抜く。顔にピンクのインクがかかり、視界の半分が潰れる。

 

 

「サイッテー……! 見た目には気を使ってるのに……!」

 

「これなら……!」

 

「メラゾーマ!」

 

「邪魔しないで……!」

 

 

視界の潰れた方から強襲するルキナの一振りには、火球の呪文が込められていた。だが、振り切るより先に、魔力の籠った足で踏みつけられる。そのまま地面まで叩きつけられた。

不機嫌なキクはインクのついた顔を擦りながら、指を鳴らす。

 

 

「あ、ここはオレにもわかるぜ! ジャングルガーデンってあ゛!?」

 

 

ルキナの背をつけていた地面は急流の川に早変わり。腹部を踏みつけにする足はどかないままに彼女を落としていく。

 

 

「悪いな嬢ちゃん!」

 

 

フォックスの飛び蹴りが、屈んだケンの頭上を通っていき、キクが退く。ファルシオンを握っている手首を捕まえると、なんとか家の建ってある木板にぶら下がった。

 

 

「あっぶねー……」

 

「おい、また変わるぞ!?」

 

続いてのステージはエレクトロプランクトン。電子プランクトンが踊るように行き来する、一輪のシンプルな花の咲いたステージ。

 

 

「ぬお!?」

 

「地面が!」

 

 

変化によって旧ステージは新ステージの下へ沈んでいく。このままだと、2人は崖を掴んだままステージ外に落ちていってしまう。

 

 

「まずは2人よ……!」

 

「あれは……!」

 

 

キクが構えたのは巨大な火球。もっと言えば、イレブンが先程ルキナの剣に撃ったものと全く同じものだった。

 

 

「やめろ!」

 

「ふんっ」

 

 

フォックスのブラスターが、エイトのデインが、彼女を襲うも鼻を鳴らしながら気にも留めない。なんならノーモーションで同じ技をそれぞれに返すほどだ。

 

 

「くたばりなさいッ!」

 

「……っ!」

 

 

だが横から掻っ攫うように2人を救出したのは8号だった。

 

 

「やるねハチちゃん〜」

 

「集中」「シテクダサイ!」

 

「あ、はい」

 

 

真面目な2人に同じように言われ、ケンも茶化した自分を恥じた。3人が花の咲く葉に着地するのを忌々しげに見るキク。不機嫌な顔のままに指を鳴らす。

 

 

「今度は!?」

 

「ミッドガル!」

 

「イフリート! 力を貸しなさい!!」

 

 

ステージ内に存在するマテリアを握ると、巨大な炎の怪人が現れる。このステージはフィールドに出てくるマテリアを使うと、召喚獣が味方になってくれるのだ。

 

 

「これでどうかしら?」

 

 

ステージを吹き上げる炎。それは一時的に全体を傾けてしまうほどに強い炎だ。足腰に力を入れて、すっ転ぶのを避けている。

 

 

「ポイッ」

 

「ふふっ、まだ終わりじゃない。私の力を使えば……」

 

「あれは……まさか……!」

 

 

1番最初に受けたイレブンが気づいた。

パックマンの投げたボス・ギャラクシアンを手で捕えると、キクはイフリートの放った炎に自ら身を投じる。しかし、彼女を燃やさない。膜が張っているように彼女だけを避け、そしてステージ真ん中の上空から同じ炎を呼び寄せる。

 

 

「気づいたかしら? なんでも模倣できはしない。でも、こういう実態のない攻撃は効かないどころか自分のものにできるのよ……!」

 

「うあああ!?」

 

 

バランスも被害も考えない広範囲高威力の獄炎。逃げ場なんてないように、焼き尽くし焼き尽くし。

 

 

「ふう……なんとかなったわね。さて、どうにか調べた後に……」

 

 

ステージを大滝のぼりに戻す。ここには入り口があるのだ。

途中で気づかれてはいけない感じ、違和感なく場所を切り替えたものの、()()()()()に放り込むならば、連れて行かなければ。

誰から調べようかと何気なく周りを見渡した時だった。

 

 

「はあああっ!」

 

「っ!?」

 

 

下の足場から自分の心臓を狙った一閃。ルキナの一突きに完全に意表を突かれた。

 

確かに軽くないダメージを受けた。回避できなかったし、守りもほとんど意味がない。

だが、勇者が共にいたのだ。ベホマラーの全体治療で回復して、動けるようになるまでに戻した。種は簡単なものだった。根性の反撃のために背中を押すような。

 

 

「ああん、もう!!」

 

 

しかし、種は向こう側にもあったのだ。

届きそうな一閃は届かない。剣は取りこぼし、ルキナ自身は、まるでおもちゃの電池が無くなったように突然力を失い倒れていく。

 

 

「ルキナちゃん!?」

 

「…………」

 

 

ギョッとして全員でルキナに駆け寄る。キクは1番忌々しげな顔をしながら離れていった。

 

 

「これは……!」

 

「コクリ」

 

「ああ、姫様やマルス達とおんなじだ……!」

 

 

まるで、魂が抜けたように。

 

 

「……わかってたわ。本当はこれが一番早いって。でも嫌だった。()()()()()()()()()()()()……ボディのお陰で無差別にはならなかったのに……」

 

 

例え敵でも、その力を、呪いを頼りたくなかった。

 

 

「諦めなさい……私を見ないで戦うなんて不可能よ。そしたら、痛くしないで貴方達全員、倒れてた人達のいる場所に送れる」

 

 

取り繕った冷酷さが、この場の全員の心を貫いた。





○タイトル
大神のボス戦BGMの一つ。その名の通り、黄金魔神モシレチク・白銀魔神コタネチクとの戦闘BGMである。
今作の曲は琴など和風モチーフの曲が多いのだが、この曲はダンジョンモチーフもあってか時計仕掛けの音も混じり、ボスの見た目もあって親和性が高め。


○大滝のぼり
Xに登場した上に登っていくタイプのスクロールステージ。
細かな仕掛けが多く、Switchの携帯モードを想定するととても復活できなかったんじゃと思います。


○ポケモン亜空間
DXのみ登場したステージ。どこかの空間で登場するポケモンを足場にしているステージ。カントー地方と紹介されているものの、こんな場所カントーにあってたまるかい。
たくさんのポケモンを登場させたかったなどと供述しており……
そんな背景だからSPには場違いな気はするものの、あったらあったで面白かったと思います。


○ステージ変化
大乱闘の途中で、全く別のステージに変化するシステム。
SPの目玉の一つとして紹介された割にはそこまで話を聞かないような……と感じているものの、私自身使ったことなかったので何も言えなかったのであった。ちゃんちゃん。
ここで言うのも何ですが、ステージに関しての解説はSPにないステージだけを解説してます。全部やると長くなるので。


○キク
彼女の力は、彼女自身を見た者の魂を抜く力でございます。
非実態の力や技を吸収して自分のものにする力はいわゆるおまけみたいなもの。本人的には積極的に使いたがりません。理由は次回で。
彼女のモチーフは輪入道という妖怪です。ただし女性要素もあるため、同一視されている片輪車の要素も入っています。


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110話 存在しなかった世界

 

 

『…………』

 

 

ばったり倒れたまま、身じろぎもしない相手の姿を、少女は黙ったまま見ていた。

その感情は絶望でも恐怖でも呆然でもなく、やっぱりという諦観だった。

 

 

『……だれか……』

 

 

自身の姿を確認する。

それだけで魂を奪う者に誰が近寄るというのだろう。

 

誰かと目を合わせたこともなく、多くの人間が持ち合わせるだろう目の光を少女は知らなかった。

 

 

自分がそれを求めた訳でもなく、理由もなく、自分は誰からも見られない、認識されない……一体透明人間とどう違うというのだろう。

見られなければ知られない。知られなければどこにもいない。どこにもいなければ見られない。

 

 

誰かと触れ合い、まっすぐ目を見つめて、誰かにとっての知人になりたい。友人でなくてもいい、恋人でなくてもいい。

 

ただ周りの人間が、誰かと関係を築いていく。その第一歩を自分も踏み出したかったのだ。

 

 

だから、例え自分が望む未来であろうと、その呪いだけには頼りたくはなかった。

 

縁を求めて何が悪い。私はただ、私の姿に怯えられないようになりたいだけ。この体はそれを可能にできる。呪いを力に格下げできる。

 

 

──でも、もし、それを邪魔するのなら。どうしても力でどうにもならないのなら。

 

──この呪いだって、利用してやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倒れていた……人達だと……!」

 

 

リンクの声が震えていた。そこに恐怖はなく、ただ今にも噴火しそうな憤りが大蛇の蟠のように渦巻いている。

 

 

「見たんでしょ? お仲間達が倒れてたの、それは私がやったこと。この人みたいにね」

 

 

指を刺したのは、目を覚ます気もしないルキナの姿。マルスやサムス達、オービタルゲート周域のステージ外で隠れるように倒れていた彼らにはそんな背景があったのだ。

 

 

「抵抗できるような人がいれば私は今ここにいない……私の姿を見る、ただそれだけで貴方達の魂は体から抜けるのよ。今、この瞬間にもね」

 

「……!」

 

 

揃って腕で視界を覆う。神経を集中させて目以外で敵を認識し続ける。

 

 

「安心して。魂が抜けるといっても体が死ぬ訳じゃないわ。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私達が求めているのはスマッシュブラザーズに逃げた創造神の抹殺」

 

 

「(あの映像の……つまり、彼女達の目的とはジョーカーのところに隠れたマスターハンド!)」

 

「全部終わったらちゃんと帰してあげるから、一時的にそこに行っててよ」

 

 

全てが繋がる。

諦めて欲しいと語った情報で完全に理解した。

自分達の敵に回るだろうファイターや周りの者達を閉じ込めながら、マスターハンドを探していたのだ。

 

 

「──!」

 

 

飛び出すリンク。彼女の言い草に、ついに限度を超えたのだ。

 

本人の力だけではどうしようもない問題があるのかもしれないが、そうであってもそれが自分達やゼルダになんの関係があるというのだ。

ただ、倒して取り戻す。それだけだ。

 

 

「学習しな……!?(目を閉じてる!?)」

 

 

剣を振りかぶったままに突撃するリンクの目蓋が閉じられたままであることに驚愕する。

確かにそれならこの呪いは効かないが、子供が考えつく浅い手段を本気で採用してくるとは。

 

後ろへ跳んでかわすも、本当は目が見えてるんじゃないかと思うほどに追ってくる。

ルカリオが行える波導による探知。理屈を知っているだけのそれを、ほとんど不完全とはいえこの土壇場で再現してしまった。

 

 

「ドシン」

 

「ぐう……!?」

 

「最初ハ驚クガ、対処デキル!」

 

 

横っ腹にピザ欠けパックマンの突進が突き刺さる。

目が見当たらないピザ欠け状態、そして眼球の存在しないパックンフラワーにはうまく呪いが作用しないのだ。

キクが見た者ではなく、キクを見た者にしか通用しないのだから。

 

 

「(他の奴らは……!? 隠れたわね……!)」

 

 

その他はどうやら上か下の足場に隠れたようだ。ルキナの体も動かされている。脅すことはできない。視覚を奪うも当然の力でも、見られなければなんの効果もないのだ。

 

 

「それなら……!」

 

 

パックマンの突進をいなし、上空へ浮遊する。

ここから視覚に頼らず攻撃を当てるのはそうそうできないはず。

先程と同じように、ここのあたり一帯を焼き尽くす。足場を焼き落とし、届かない遥か上空へ行けば、奴らはどうしようもないだろう。見えない中で狙わなければならない飛び道具など怖くもない。

 

 

「まずは足場と隠れ場所、奪ってあげる……!」

 

「やば……!?」

 

 

足元が熱く崩れて、反射的に目を開きそうだったのを慌てて閉じて視線を下げた。ダークサムスが使うチャージショットを背中に撃たれて落下する。

 

 

「まずいっ!」

 

「あ、やべ!?」

 

 

落ちていくリンクの手を反射的に掴むのはエイト。それぞれ違うことを懸念した、2人の焦りの顔。

自身を縛る呪縛すら利用することを決めた少女は、身を乗り出した青年を見逃したりしなかった。目を背ける前に、視界に躍り出る。

 

 

「え?」

 

 

その声は、誰の声か。呆然としながら発したキクの声だったと気づくのに遅れてしまった。

少女の眼前を阻むように現れたドラゴンを模したような紋章。それの意味を正しく理解するのを認めたくなかった。

 

 

「なんで、いや、何かの勘違い……」

 

「まさか……」

 

 

何かを思いついたのか、トゲギミックの裏にリンクを潜らせると、体に龍のオーラを纏わせる。そしてそのまま空中のキクに突撃していく。正面から突撃してきたエイトを酷く焦った顔をしてシールドで防いだ。

 

 

「やっぱり……! どうして効かないの!?」

 

「ああ……そういうことだね……!」

 

 

その理由を知れるのは本人だけ。

幼少期に受けたその強固な呪いはその他の呪いを容易に弾く。

本人だけでなく、他人にとっても等しく呪いであったのだ。

 

 

「今更……そんな……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と友達になってください!!

 

『ズコー!!』

 

「突然ナンダ!?」

 

 

隠れることも忘れて脈絡もない前後の文に一同でズッコケる。本人は顔を赤らめて指をつつき合っている。

 

 

「だって、その、あの、効かない人、はじめてだし、友達の作り方なんて知らないし、1対1で会話したことだって……」

 

「作り方以前の問題でしょう……」

 

「1対1トハ……?」

 

 

つい先程までドンパチやっていた敵と急に友達になりたいとは。人付き合いがわからないにも程がある。ちなみにこの中で2番目に人付き合いが苦手なのはゼルダである。

 

 

「……なんか変な空気になったけどさ、どうしてもマスターハンドを倒さなきゃダメなのか? なんでだ?」

 

 

戦闘中とは思えないのどかな雰囲気をぶち壊すようにケンが割って入っていった。

彼女は、根から悪人でこんなことをしている訳ではない。原因を解決できれば、和解の道があるのではないか。そう思ったのだ。

 

その言葉に我に返ったのか、顔の全体に冷や汗をかきながら譫言のように呟く。真っ青にした様子は見るからに哀れだった。

 

 

「ん……? ……ダメ、絶対、ダメ。僅かでもあの姿に戻る可能性があるなんて、無理よ。イヤ、私は、ここにいる。いるの、透明なんかじゃない……」

 

「あ〜、キクちゃん?」

 

「私は!! ここにいる!!!」

 

 

 

その瞬間、ステージが再び切り替わる。

朝焼けと夜が混じり合う世界、無機質さを宿した暗い金属のような舞台以外にはなにもない。

 

 

「終点……!」

 

 

終わりであり、始まり。

霧状の闇のようなものが、キクを包むように渦巻き、右手の形、マスターハンドの形をつくる。しかし、それは本物のそれよりも二回りほど巨大だった。

 

 

「スウォームまで……」

 

 

かつてマスターハンドが利用していた力、スウォームを見に纏い、マスターコアと同種の力を使う今の彼女はのちにこう呼称された。

 

アナザーマスター(もう1人の支配人)と。

 





◯タイトル
キングダムハーツシリーズに登場するワールドの一つ。
無機質な摩天楼といった雰囲気のワールドで、XIII機関の本拠地でもある。存在しない世界だと、ピーターパンのネバーランドと被るからか、存在しなかった世界(The World That Never Was)となる。なげーよ。
敵の本拠地であるため、2も3Dも終盤ステージだが、ロクサスが主人公のDaysでは拠点となる。


◯今明かされる衝撃の真実
神トラの闇の世界に似ていた5章の舞台は偽物の世界であり、魂だけの者達がいた世界。
タイトルなどにそれらしい伏線は散らしています。


◯エイト
ドラクエ8の主人公は呪いが効きません。ストーリー上でもそのおかげでピンチを切り抜けていますが、その理由がわかるのはエンディング後。8は物語がしっかりと作り込んであって完成度高いです。特に父親の血統がどうこうでああいう風に真エンディングに繋がるのとか。


◯呪い
彼女以外にとっても呪いのそれ。今話中にその呪い関係でとんでもない大ポカやらかしてます。


◯マスターコア
forにおけるマスターハンドの強化形態。
スウォームと呼ばれる霧状の何かを見に纏い、巨人になったり剣になったりする。アレって影蟲の親戚みたいなものなんですかね?


◯アナザーマスター
マスターコア達にキク要素をプラスした今章のラスボス。
せっかくだし、もう少しスマブラ要素をプラスしたいと考えた作者によって生み出された。今章、予定より1話延びます。
容赦がないので原作マスターコアより巨大になってます。マスターハンドではなく、キクの強化形態であるため、マスターは後につく。


◯作者の気まぐれコメント
キングダムハーツミッシングリンクのβテスト、当たりますよ〜に!
キャラメイク本当に楽しそうで、キャラメイクできるゲーム引っ張り出して欲望を抑えるためにプレイしてるんですけど、KHMLのキャラメイク一つの方がそのゲーム全体より面白いんじゃないかと失礼なこと思うぐらい楽しみです。

オッドアイとかまでメイクできるのやべー……
これで落選したらそこのへんで死んでしまうでしょう。誰か復活魔法唱えてください。


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111話 マスターフォートレス

 

──上も、下もわからない。

 

 

そんな不思議な感覚の中で、ひたすらに目を閉じて眠っていたかった。

 

だが、求めるために掴み取るために、ただ目を背けるために。自分の味方になり得る者のいない周りと世界を傷つけ続ける。自分の居場所もはっきりしないまま。

 

 

自分の力が効かない、ファイターではない男性も、結局は自身の行動の足枷にもならなかった。親しくはなりたかったが、振り切って蹂躙できてしまう。戦う手が止まることはない。

 

 

 

──薄々気づいてた。私が本当に欲しかったのは、この呪いが効かない誰かじゃない。恐れず私を見てくれる誰かなんだって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魂が……取られる……ですって……!?」

 

「ああ、悔しいけど僕達じゃどうすることもできない……!」

 

 

ルキナの意識は永遠なる黄昏の世界で目覚めた。偽りの闇の世界で会えた先祖、マルスにキクの能力について聞いた。

 

マルス達もまたキクの姿を見て、魂が抜かれた状態だ。キクが奪った創造主の力で偽りの世界を作り、用のなくなったファイター達を魂の状態で閉じ込めていた。

 

 

生物とは程遠いダークサムスのみは相性に身を任せて圧勝し、敵対するかもしれないファイターの知人やこの世界の人間、そしてマスターハンドが潜んでいないことを確認したファイター達の魂を抜く。これで現実の世界にいる限り彼女には手を出せなくなる。

 

それを偶然にもディディーコングに見られてしまい、偽りの世界まで追ってきた。なるべく後顧の憂を断つために。

 

 

「がんばれー! みんなー!!」

 

「応援……というか皆さんがどうにかしてくれるのを祈るしかないですね……」

 

 

どちらにせよ、今自分がやれることなどない。

模倣の創造主との戦いは、遠く近い王女の祈りによって幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『散れ』

 

 

終点に戦場が変わったこの世界。抑揚のなく、無慈悲な声はただ破壊衝動に駆られて蹂躙だけを実施する。

 

 

「がぁ!?」

 

 

創造主の姿、創り出す手の形を模したスウォームは直接フォックスを殴りつける。状況まで把握しきっていなかった彼に、強大な打撃が叩きつけられた。

 

 

「アッ、ダメ!」

 

 

8号がチャージャーのフルチャージを放つが、霧に巻かれたようにピンクのインクはかき消えた。指の先から太いレーザーが照射され、無理な体勢で回避したために転んで足を痛めてしまう。手から離れたスプラチャージャーが転がる。

 

 

「!」

 

「ワカッテル。ぱわー、上ガッテルゾ……!」

 

 

その一撃一撃が、普段戦う際のマスターハンドよりも強くなっている。彼が本気になったらこんな威力になるのだろうか?

指鉄砲の形を模した指先から、ガトリングのように弾丸が飛び出す。終点の隅から隅まで撃ち尽くしてもまだ止まらず、体勢を低くしてやり過ごすしかなかった。

 

 

「いって……熱いしこれはまずいぞ……」

 

「なら! ベギラゴン!」

 

 

ルキナの体を庇いながら、同じようにやり過ごそうとするケン。着弾して持った熱も体をジリジリと焼いていく。その隣からイレブンが灼熱の炎を呼び出す。弾丸と衝突し、ファイター達の真上で爆発が起きた。

 

 

「大まかには変わってないのかしら……周りのものを吹き飛ばしたら何か変わるかも……」

 

「だめダ……熱スギル……」

 

「パックンフラワーがのびてます!?」

 

 

植物だからか、アナザーマスターの攻撃とイレブンの魔法によって上がった気温に、パックンフラワーがバテてきてしまった。

 

 

『断ち切る』

 

「させるか!」

 

「イレブン! 全部相殺してたら保たないぞ!」

 

 

投擲した四つのチャクラム。上空から生み出した金色の刃で真っ二つにする。一つ一つの大技に匹敵するパワーを出せるのは素晴らしいが、それがいつまでも続かないと、一部の者はわかってた。

 

 

『グウウウゥゥ……!』

 

「……!?」

 

「形変わった!?」

 

「形態の変化までするのか……!」

 

 

キクが纏うスウォームの形態が変化する。宙に浮いていたものがステージに足をつけ、4本足の魔獣のような風貌に。

 

 

「グボォ!?」

 

「──ッ!」

 

 

バテていたパックンフラワーが魔獣の一噛みで、立てなくなるほどのダメージをくらった。茎を引きちぎられるような痛みだ。

 

 

「ッ!? ファントムが!? きゃああ!?」

 

 

隣のゼルダが咄嗟に召喚したファントムが口を斬りつけるものの、落雷からの帯電によりファントムごと攻撃され、すり抜けるように足元から生えた棘が突き刺さる。白いドレスに染みていく血の跡。

 

 

「ベホマ! イレブン!」

 

「うん! ベホイム!」

 

 

勇者2人からの回復呪文がとび、傷は塞がるもダメージのショックが激しく完全な回復にはまだ時間がかかる。立ち上がれない2人への引っ掻き攻撃にリフレクターをはりながら割って入るも、本来の用途とは違うためか機器本体がミシミシと悲鳴を上げているのを感じる。

 

 

「もたねぇ……!」

 

「連携でいこう!」

 

「よっしゃ!」

 

 

マスターソードにメラゾーマを合わせた即席の火炎斬り。勇者と英傑の力を合わせた一振りは魔獣の口から尾までを一刀両断した。

 

 

「よっしゃあ!」

 

「まだだ!」

 

「まだあんの!?」

 

『斬る』

 

 

両断されたスウォームは合わさり形を変え、7本の剣となる。本気で来ている彼女は創造主の力も全力で使っていた。

 

 

「くっそぉ! せめて一本は請け負ってやる!」

 

「いや、バラバラにしないでまとめて倒そう!」

 

 

盾をしまい、2本の剣を取り出したイレブンは踊るように剣を合わせる。勇者のつるぎ・改、そして勇者のつるぎ・真。

7本の剣による乱れ斬りは完全に捌くことはできなくて、細かな傷が増えていく。

 

 

「ハヤク……!」

 

「ええ……!」

 

「オウ……!」

 

「よっし、ハチちゃんと2人でなんとか守るからおまえら討伐任せたぜ!」

 

 

8号が肩を貸してゼルダとパックンフラワーを隅へ避難させる。ケンと8号の2人でゼルダ、パックンフラワー、ルキナを守ることとなる。

 

分離して1本ずつ襲う剣をバレルスピナーの高密度射撃や、腕を振っての受け流しで軌道を逸らす。

インクまみれの剣を、パックマンが口で受け止め回転。他の剣にぶつけた。

 

 

「で! どうするんだイレブン!? まとめて倒すって言ったって……」

 

「…………」

 

 

近距離の攻撃を避け、ブラスターでチクチクと攻撃を続けているフォックス。

しかし、いつもは浮世離れしているような雰囲気のイレブンが、目を細めて集中しきっていた。彼の耳にフォックスの言葉は届いていない。2対の剣をまるで1本として使うように。雷を帯びた剣を横一閃に振り払う。

 

 

「ギガ……ブレイクゥ!!」

 

 

雷の魔力が全ての剣を打ち払い、スウォームを霧散させる。しかし、より多くのスウォームが集まっていく。

空を埋め尽くすほどのスウォームはステージごと包み込み、ひとつの要塞へと変わっていく。

 

そして、イレブンが膝をつく。息の荒れた様子で2本の剣を支えにしていた。

 

 

「うう……」

 

「やっぱり……魔力を使い過ぎたんだね」

 

「ガス欠ッテコトデスカ?」

 

「がす……? 考えて使わないと……魔力が切れるんだ」

 

「まほうのせいすい……」

 

「ごめん、今はないんだ」

 

「イレブンが考えなしに使ったからかー」

 

「はぁ……」

 

 

がっくりと肩を落とす。やらかしてしまったのは事実。

しかし、そんな束の間の休息はすぐに終わってしまう。

 

 

『滅びろ』

 

 

ハッとして上を見上げるとマスターコアのような球体に包まれたキクの姿。目を閉じ口だけを動かした少女は膝を抱え込むように眠っていた。その言葉、そしてあたりから生み出されるファイターの姿をしたスウォームの塊。まるで、かつてのマスターシャドウのような。

 

 

「ゲー!? 今度は数で攻めてきた!!」

 

「寝テル……場合ジャナイ!」

 

「ええ……!」

 

「私ダッテ、マワリノ兵士クライニハ!」

 

 

ルキナを背負ったケンがなんとか腕だけで反撃する中、体を引き裂かれるようなショックからゼルダとパックンフラワーが復帰する。ケンに迫るボディに魔法と双葉のカッターを直接当てる。

足元をオクタシューターで塗り、インクに足元を取られたボディの鳩尾にシューターを叩きつけた。

 

 

「クルリ」

 

「動ける? 僕の魔力はできるだけ治療に回したいから……!」

 

「攻撃に魔法を使えないってことだよね……! だい、じょうぶ! これよりもピンチだって乗り越えてきたんだ……!」

 

 

回し蹴りを行うパックマンの隣、エイトの手を借りてイレブンが立ち上がる。再び盾に持ち替え、前方に構えながら相手の体勢を崩す。

崩れた相手にギガデインが直撃する。呪文の詠唱じゃない。エイトの持つ剣の効果だ。

 

 

「(使ったらギガデインって……ずるくない?)」

 

「しょうもないこと考えてるだろう……」

 

「ま、いいよ。本体が見えた以上、後は討ちにいくだけ……」

 

「……1人で特攻はやめてくれよ?」

 

 

ちょっと不満げな顔のイレブンを見逃さず、シャドウに跳び蹴りをしながらフォックスが釘を刺す。リンクもリンクでついに前座待ちも限界なのか剣を握る手に余計な力が入る。

 

 

「ここで、倒して勝つ!!」

 

 

自然とリーダーのような立ち位置にいたフォックスがかけた言葉。その言葉に後ひと押しと全員が覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ただ、1人を除いて。

 

 

「(本体が……見えた……?)」

 

 

ルキナの体の護衛にまわっていたため、1番冷静に物事を見れていたケンが、リンクの言葉に何かに気づく。

 

見えたって、なぜ隠していた?

戦うため。

 

違う、隠していなかったら戦いにもならない。

 

 

だってキクには自身の姿を見た者の魂を抜く力がある。さっきはそれのために攻めあぐねていたのだ。

 

そして、その力を使っていれば圧勝……かは不明だが、少なくとももっとキクが優勢であったはず。

 

 

なのに、隠した。自身の姿をスウォームに隠した。自ら存在を認められない道を選んだ。

 

 

すっと、キクを見た。

先程見た時と変わらず、膝を抱えて眠る少女。

そこのゼルダと同じ顔。同じ姿。もちろんだが、ゼルダに同じ能力はない。

頬に流れた涙。

 

 

「(ああ……そうか。そう、なんだな)」

 

 

ケンの中から、ふっと敵意が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

急に飛び出し、キクの眠る球体に手を伸ばす。

スローモーションに見えたこの光景に周りは止める間もなかった。

 

 

「キクちゃん!!」

 

 

そういえば、ルキナを背負ったままだ。気づいた時には遅かった。でも、見捨てられない。眠る子供のような少女を。

捨てられた飼い犬のような、身を寄せて震えるような、そんなただ1人の孤独を。

 

 

「ケン、なにを……!?」

 

「本当は……本当は魂を抜くとか……そんなのやりたくないんだろ!?」

 

 

球体にしがみつき、重力に落ちそうな体を腕力だけで抑える。仲間の声も、今だけは煩わしい。

 

 

「だからこんな霧みたいなの纏って……砦みたいなの創って……自分の姿を隠した!」

 

 

この違和感は、嘘じゃない。

要塞は、外から身を守るものではなく、自分の心を守るためのもの。

 

 

「怖がってるんじゃない……オレはここにいるぜ……! ちゃんと見てるオレを見ろ! 夢の中に逃げてるんじゃねえ!」

 

 

泡が割れるように球体が消えて。

目を開いて、揺れる眼差し。

はじめて合った視線。

動揺して、彼女の支配が緩まった。

霧散していくスウォーム。

 

 

「うっ……」

 

 

ケンの背中で意識を取り戻すルキナ。そこから見えたもの。

 

 

「あっ……」

 

 

それは、まるで盲の人間がはじめて色を見たような。

 

まるで童心を取り戻した子供のような。

 

 

キラリと笑っている顔、染めていない黒の眉毛、まっすぐに見つめる目。

 

その顔はすぐに慌てた顔に変わる。

砦がなくなり、3人まとめて空中に放り出された。

 

 

「うわあああああああ!?」

「きゃああああ!?」

「………………」

 

「ルキナ! ケン!」

 

 

キクの両肩を掴んだまま、ルキナの腕が首へ回されたまま。

終点の足場のない奈落へと。その赤は消えていく。

 





◯タイトル
スマブラWiiUにのみ登場するマスターコアの最終形態。
それまでの形態とは違い、小規模なダンジョンのようになっており、雑魚敵を相手にしつつ、奥のコアを倒せばクリア目前に。


◯アナザーマスター戦
模しているとはいえ、戦っているのはキクであるため、細部が異なっている。マスターシャドウを雑魚に格下げしちゃったし。


◯イレブンのMP事情
今話だけでも、ベギラゴン、覇王斬、ベホイム、メラゾーマ、つるぎのまいギガブレイクを使用。大技ばかりですっからかん。
MP回復のまほうのせいすいも在庫切れなう。


◯勇者のつるぎ・真と勇者のつるぎ・改
どちらもイレブン専用装備。
真はイレブンの生まれ変わり前、勇者ローシュの使用していた剣。
改は仲間とともに新たに創り上げた剣。
スマブラで使っている勇者のつるぎは、エンディング後のストーリーにて改の素材になってます。


◯「考えて使わないと……魔力が切れるんだ」
(ゆうきスキルで消費MPを半減しつつ)
同じ勇者タイプでも、イレブンは基本アタッカー、エイトは基本ヒーラーなので、MPを気にせずガンガンいくイレブンとMP切れるまでいったらまずいエイト。単なるタイプの違いなんです。


◯竜神王のつるぎ
エイトの専用装備。スマブラでも使ってるあの剣。
竜神王の試練をクリアして手に入る竜神のつるぎを錬金してようやく手に入る。攻撃力は作中最強で使うとギガデインの効果。
しかし、8ははやぶさの剣・改が強く、強敵相手には基本ヒーラーなので…… リメイクで強化されてもよかったんだよ?

◯ルキナ
巻き込まれた。
なお、5章の面子も戻っています。


◯今章のまとめ
ケンとルキナの今後が気になるところですが、今話で今章は終了です。
もう一章挟んだのちに、最終章が描かれるのでキクも含めた3人の行方はその時に。

総評としましては、スマブラシリーズの要素をかなり入れられたので満足です。ステージ変化、マスターコアリスペクトはアドリブでプロットにはなかったのですが、いかがだったでしょう。
ただ、戦闘中に◯◯はなにしてるの?という感じで長らく描写なしというのが今章は多かったかなという印象です。ボディを含めた雑魚戦が多いのは、隅で雑魚と戦ってるんだなと想像しやすいからという裏話があります。反省しろよ。

さて、次章で今までメインで出ていなかったファイターも登場します。
お待たせしました。どちらかと言うと戦闘メインの章になる予定です。

余談ですが、回線の調子が悪く、一回1000文字くらい書いた後書きがパーになりました。チキショウ。


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Super Smash Brothers “Fortress”
112話 星空の守り人


 

 

……そろそろお膳立てはいいかな。

飽きてきただろう? こういうの。

 

 

 

君達が見ていない残りの連中は満身創痍のマスターハンドを守っている。

僕がさっくり集めたボディの大群を送ってるから、それなりに厳しい戦いになってるんじゃないかな。数だけは十分だからね。

 

 

 

マスターハンドの居場所は知っていたけど、別に他の彼らに言わなきゃいけない義務はないよ。みんなは自分の体を求めているけど僕もそうだとは一言も言ってないじゃない。

 

じゃあスマッシュブラザーズの仲間なのかって聞かれると……そうでもないけどさ。

 

 

裏方に立ち回った甲斐があったよ。

あの三人を無理やり別世界に放り出して……

あとベレトに他の英雄の遺産をプレゼントして……

マスターハンドに対して、ジョーカーがおすすめだって言ったのも僕だったね。

 

 

おっと、答え合わせはまだ早かったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

握りしめた拳、歯痒さを感じる現状。

頬を流れた冷や汗が絶対零度に錯覚する。

 

 

「受けてみろ!」

 

「くらえっ!!」

 

『……っ!』

 

 

ガードした後の反撃で、ボディが乱れ斬りに合う。フィニッシュで磁力の魔法を扱い、敵をまとめて集めて吹き飛ばした。

 

その脇では防がれた大剣を力技で無理やり押し通し、腹部を蹴り飛ばして後ろの敵もろともぶっ飛ばした。

 

囲んで近づく敵達が静止する。なにもできず、そしてさせず、空中へ浮き上げ、岩肌や木々に激突させた。

 

 

「ウ〜……」

 

「あっ、でちゃダメです!」

 

「なになにー?」

 

「だからでちゃダメですって!」

 

 

洞窟の浅い場所、白い肌をした女性が必死に他を抑える。怯えながらもどうにか助太刀したいと考える2匹の獣と、ただの興味が第一願望である平面の人。

 

それらと戦場との間、多くのカラフルな集団とともに、オリマーは立ちすくんでいた。

 

 

「(どうして……)」

 

 

 

「(何がどうしてこうなった!?)」

 

 

彼ら、そして女性達の奥。

土か煙か。煤汚れた白の巨体。ぴくりとも動かないマスターハンドが横たわっていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──時は遡る。

 

 

オリマーは何をするでもなく、この世界を回っていた。観光、に近いのかもしれない。

 

彼は別に新参者、というわけでもない。

しかし、大乱闘の休息の機会を、家族との時間と仕事にと回していると、どうしてもこの世界を回りきれないのだ。

 

勿論、妻や子供との時間は大切だし、大好きだ。仕事だって、自分が抜けた穴を埋めれる者はそういないと自負している以上、気軽には開けられない。

 

だが、彼はそれでも自分だけの時間を大切にする者でもあったのだ。例えその結果、自身の命が危険になるほどの遭難に合っても。

ピクミン達、ひいてはスマッシュブラザーズの仲間達と会えたと考えれば、結果オーライというものだ。

 

 

「しかし、この世界のほとんどは森林や草原だな。マスターハンドのことだから、もっとこう……様々な地形を取り入れてもおかしくないが」

 

 

氷山はあるが、雪山はなく。砂漠もないので星の縮図というよりも、自然らしい自然を目指しているのだろうか。

だが、雲の上にも地形が広がっているので案外深く考えずに創っているような気もしなくない。

 

 

「しかし、キーラに創り変えられたというのにその時の面影は残っていない。彼らの力を、生物学や論理的に解そうとするのが間違っているのかもしれないな」

 

 

遭難していた時は、確実に生き延びようと必死であったために、ピクミンを含めた原生生物の生態をできる限り観察して頭に叩き込んだ。

マスターハンドの所業を同じ縮尺で測ることはできないのだろう。だができる限りの解釈はやめない。今や趣味に成り果てた。

 

 

「そういえば、この世界は自然は豊富なのに野生の生物がほとんどいないな。もっと繁殖していてもおかしくないと思うが……!」

 

 

目の前に気配を感じて、音を立てないように地形に隠れた。そこにいたのは自分自身。否、自分を模したただの人形。

何かを探すように辺りを見まわし、オリマーのいる場所とは逆の方へ歩いていった。

 

 

「(なぜボディが……!?)」

 

 

思わずヘルメット越しに、口を押さえる。

キーラもダーズももういない。なのに、その傀儡は捜索するように動き回っていた。

 

何があるのか……放っておくには不穏すぎる。確かめなければならない。

こっそりと、近づきすぎないように後をつけていく。幸い、自身のボディには宇宙服のアンテナが目立つため、尾行の経験がなくても見失うことはなかった。

 

 

『…………』

 

「(探しているもの……場所ではない。人か、物か? しかし、まさかあのボディが主犯ではないだろう。ボディはあくまでも手下あたり……ならば)」

 

 

生物を分析するために鍛えられた論理的思考能力は、単純な物事の推理にも発揮される。

 

 

『…………』

 

『…………』

 

「(やはり単独ではないか……)」

 

 

さらに、インクリングの形をしたボディが増えた。人海戦術でなにかを捜索しているのだろう。

 

 

「(しかし、一体なにを……!)」

 

 

たどり着いたのは小さな洞穴。

身を隠す凸凹もなく、少し開けた場所にある洞窟というには少し狭い入り口。

 

これが目的とばかりにかけだしたボディ達の先には、倒れる白。火傷があるように所々黒く焦げたマスターハンドがいた。

 

 

「まずい!」

 

 

反射的に飛び込み、笛を吹く。

一回転しながら、ボディとマスターハンドの間に割り込み、やぶれかぶれで打った両拳は2体の腹部に綺麗に決まり、後ろに引かせる。戦闘体勢でなかったからこそできた素人の不意打ちである。

 

 

『…………』

 

「しかしここからどうするか……」

 

 

自分のボディが敵にいるということは、完全にスペックだけは上回られているということ。

頼みの綱のマスターハンドは完全に沈黙している。そしてなにより。

 

 

「今の私は戦えない……!」

 

 

大乱闘と同じようにピクミンが引っこ抜けない。ここには無力なベテラン宇宙飛行士が1人。戦士でもないし、兵士でもないし、勿論勇者でもない。

思わず飛び出してしまったが、ボディをどうこうできるとは思えない。

どうすればいい。どうすれば……

 

 

「?」

 

「えっ?」

 

 

自分の背中に触られた感触。振り向くととんがりハナの赤い生き物。どうしたの、というように、赤ピクミンがいた。

 

 

「ピクミン……!? なぜこんなところに……!?」

 

「ホア?」

 

「ン?」

 

 

1匹だけではない。

暗くてわかりづらいが、青、黄、紫、白、岩、羽……全ている。

疑問符を浮かべるように頭の葉を傾けた。……黄色が1匹だけ遅れていた。

 

 

「……いや、いつも君たちはそうだな。私がピンチの時にはいつの間にかそこにいる。また力を貸してくれ!!

 

「ピー!」

 

 

赤ピクミンをまずぶん投げ、視線を集めたところに、岩ピクミンの鋭い一撃と紫の重い一撃が1人ずつ襲い、後ろへ倒れる。

 

 

「頼む!」

 

「オーン!!」

 

 

そして、突撃の笛を鳴らす。

ピクミン達は思った以上に数がいて、瞬時に数えきれないほど。

 

 

「100匹いるんじゃないのか……?」

 

 

ピクミン達に囲まれて見えなくなったボディ。

いざ、散ると哀れな姿に。モザイクが必要な有様が、元は自分と同じ姿だったと考えると直視したくなくなる。

 

 

「うわあ……」

 

 

自分が指示したこととはいえ、流石にドン引きである。

しかし、しばらくすると金色の液体に溶け、地面に消えていく。

 

 

「……何がなんだかさっぱりだが、マスターハンドがこうなっているのならばただごとではなさそうだな……」

 

 

全ピクミンを集合させる。落ち着いたところでピクミンの数を数える。

 

赤ピクミン、20。

青ピクミン、20。

黄ピクミン、20。

紫ピクミン、10。

白ピクミン、10。

岩ピクミン、10。

羽ピクミン、10。

 

図られているようなキッチリとした数を怪訝に思いながらも、頭の中で作戦を組み立てていく。

 

 

「……よし、青ピクミン、黄ピクミン、白ピクミン、羽ピクミン10匹ずつでここを離れて誰かを連れてきてくれ。頼んだぞ」

 

「ピクミン!」

 

 

おつかいを頼むように10匹ずつの塊があたりに散っていく。速度に長けた白と羽に、青と黄まで。

 

 

「赤ピクミン、紫ピクミン、岩ピクミン、そして私でここを守る。彼には、近づけさせない!」

 

 

小さい者達の、防衛任務が始まる。

 





○章タイトル
Fortressは要塞。
今章はマスターハンドを守る雑魚敵ラッシュが主です。とくに捻りなし。
しかしプロット考えていた当初は、ピクミンで防衛戦を本編でするなんて思ってませんでした。


○タイトル
ドラゴンクエスト9のサブタイトル。
実は開発開始が10より後であり、外伝として発売する予定であった。
DSのマルチプレイやすれちがい通信などがブームとなり、まさゆきの地図とか川崎ロッカーの地図とかが生まれたのもこのタイトル。
クリア後が本編との呼び声もあるが、普通に本編ストーリーも面白いと思うんですがね。病気の町とか……
オフライン版をリメイクと捉えると、現在唯一リメイクされていないナンバリングタイトルでもある。そのためリメイクの声が待ち望まれているが……3DSが終焉を告げた今、Switchで9の面白さを出せるのかが不安です。まあ、なんだかんだで出たら買うんでしょうけど。


○オリマー
素では、パンチしかできず、ピクミンがいなかったら終わっていた彼。

現在のピクミン数
赤:20 青:20 黄:20 紫:10 白:10 岩:10 羽:10

スマブラでは岩ピクミンだけはぶられているので、今作では思いっきり活躍してもらいます。氷はなし。光もなし。出てくるのがちょっと遅かった。(プロット作成的な意味で)


○ピクミンの声
拙作の前作では別に喋っていませんが、オリマーに延々と独り言言わせるのもあれなので、鳴き声程度は喋ります。人数増えてきたら、自然となくなるかもしれないです。


○作者の気まぐれコメント
(^^)あ、マリオRPGもうすぐ発売じゃん。予約忘れるとこだったよ

(^^)うわ、プリペイドカードめっちゃいいじゃん。そっち買えばよかったわ……

(^^)そういえば、タクティカも発売もうすぐだっけ。何日だったけな?



( ゚д゚) 同 日 発 売 (翌日にスプラフェス)


と、いうことなので、タクティカはお見送りになりました……
いつか遊んでやるからなー!!

あ、どうでもいいですが、私が望むスロッシャー系統のサブスペ書き残しときます。PVには出てないけど鉛筆の例がありますし!
当たったら高評価お願いします()

エクスカスタム クイボメガホン:攻撃型編成。近距離カバーとメイン直撃した敵を仕留めるサブに、追撃兼インク回復もできるスペシャル。
サブはやりすぎかもしれないけど、スペシャルは可能性高いんじゃないですか?

モップリン亜種 ポイズンカニタンク:二撃しやすくするポイズンに雑に強いカニ。しんどすぎる打開をスペシャルで補う。ていうかなんでカニタンクのブキこんな増えないの?


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113話 ビッグブリッヂの死闘

 

「んー」

 

 

固まった自分の体をほぐすために、両手の指を組んで上に伸ばす。腕、肩、背筋、足……体全体を意識しながら伸ばすと、それだけで肉体が覚醒するような感覚を覚える。

 

 

「よし、動きとしては……」

 

 

Wii Fit トレーナー、皆からはトレさんなどという愛称で親しまれている彼女は、空気の綺麗な森林で本を読んでいた。

勿論、小説といったような本ではない。ストレッチや体操、健康法などといった本である。

 

人に指導をし、教える側であるトレーナーとして、最新の健康法の知識を取りこぼす訳にはいかない。読み耽り、時には実践してみることで、活字から得られる情報との齟齬をなくす。

 

それに感覚として理解はできても、側から見たらどのようなポーズになっているのか、ということは自分の目では捉えにくい。

その点、本の中の図式は単独でもわかりやすくまとめられている。

 

 

ざっくりまとめてしまえば、よりよいトレーナーであるために努力は欠かさないということだ。

 

 

両足を地面につけて、徐々に開脚。無理だけはしないよう両手を前につけて。少しずつ少しずつ。

 

 

「……あら?」

 

「オーン」

 

 

足の間からひっくり返って見える景色に、自分と似た白い色のピクミンが映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(さて、守る、はいいが……そんなことをしたことはほとんどないぞ)」

 

 

オリマーの緊張感は最高潮。

護衛戦らしき経験など、せいぜいブルーファルコンに乗ってメタリドリーと戦った時程度だ。

気配を察知し、敵に見つかる前に仕留める……そんな空想のようなこともスマッシュブラザーズの中にはできる者もいるのだろうが……勿論オリマーにはできないこと。

 

 

「しかし、何があってマスターハンドがこんな姿に……」

 

 

この世界の支配人が簡単にこうなることはない。一体誰が下手人なのだ。その誰かがボディに頼らず直接やってきたら……どうしようもないことは考えないことにする。

 

マスターハンドが起きてくれれば、全てが判明するだろうが、起きる気配はゼロである。ピクミン達が上に乗ったり、指の間から顔を出したりと遊んでいるが、なんの反応も示さない。

 

 

「君たちは好きに遊んで……この世界を創った神様だというのに、まったく……」

 

「フン?」

 

 

不敬もいいところの現状。呆れながらも気の休まったところに、ザクザクと足音が聞こえる。味方か……という希望にはあまり期待しない方がいいだろう。

 

 

「くるか……!」

 

「フア?」

 

 

戦闘のための顔となったオリマーを、首を傾げて見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………』

 

「フニャー!?」

 

「まってまって〜!」

 

 

ミュウツーがなんとも言えない目で見る先。

なぜか追いかけっこをしている青ピクミンとMr.ゲーム&ウォッチ。

 

 

『……何をしている』

 

「おにごっこ!」

 

「オーン」

 

 

少し不服そうに座り込んだり他所を向くピクミン達。おそらくMr.ゲーム&ウォッチが勝手に追っているだけだろう。本気で鬼ごっこのつもりで、悪意も何もなく。

 

 

『何故、ピクミンと?』

 

「さっきあったから!」

 

 

ピクミンといえば、オリマー。とはいえ、いつも一緒にいる訳ではないだろう。しかし、あまり他の者達と一緒にいるイメージがない。

 

 

『……?』

 

「オン」

 

 

1匹のピクミンがミュウツーの足を叩く。

同種であるポケモンは勿論のこと、他の動物等が相手でもテレパシーでの意思疎通ができるミュウツーだったが、植物に近いピクミンの意思は伝わりづらい。

見た目で判断しようにも、ピクミンの表情は目ぐらいしか動かないし、マイペース故に仕草も決定的な資料にならない。

 

 

『オリマーは、じっと観察すれば個体の識別ができるとも言っていたが』

 

「ポケモンもおなじじゃなーい?」

 

『……私からしてみればその違いは容易にわかる』

 

「ハァ」

 

 

ため息をつかれたのはわかった。伝わらないから、ガッカリしているということも。

反省して今度こそわかるように注視してみようとするが、その必要はなかったのだ。気配に、別の者がいる。

 

 

『……! いるな、不純物が』

 

「ふじゅんぶつ?」

 

 

鈍く光る、ボディの得物。プレッシャーを放ちながら、するどくにらみつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

『……ッ!』

 

 

駆け出したのは同時だった。

図体の巨大なリザードンのボディ相手に懐へ入り込み、岩ピクミンを振り回す。

体への攻撃と同じように、顎を殴りふらふらさせたところへ、背後から赤ピクミンを投げつける。

 

 

『……!!』

 

 

思わず飛び上がり、体を回して振り落とすも、新たなる増援として紫ピクミンがはりつく。

せわしく翼を動かすものの、高度が上がらずに落ちていく。完全に墜落する前に、ピクミン達を呼び寄せた。

 

 

「まずは1体!」

 

『……!』

 

「ピー!」

 

「なっ……!?」

 

 

少し安堵したのも束の間、背後からの剛腕に赤ピクミンと紫ピクミンの1匹ずつが命を散らす。

密林の王者に、医者に平面人間。今度は3体。

 

 

「くっ……!」

 

『………………』

 

 

3体ともなると及び腰になり、後退りする。ピクミンを失って動揺する気持ちを抑えて一挙一動に目を離さない。

 

 

『…………!!』

 

「これなら!」

 

 

ドンキーコングの形の剛腕を避け、医者のキックを流し、顔面へ鞭状に繋がったピクミンをぶつけた。1番前は岩ピクミン。ヴァンパイアキラーの先の棘鉄球と同じ仕組みである。

 

 

「うおおおお!」

 

「ワー!」

 

『ッ!?』

 

 

鞭状に連なるピクミン達をそのまま振り回す。

近づかせない。近づきはしても近づかれたら終わりだと考える。

肉弾戦なんて四十を過ぎた男にさせるもんじゃない。今も体の節々で悲鳴が上がっている。ファイターの力がない今、サポートなしにこの身ひとつとピクミンいっぱいで戦わなくてはならないのだ。

 

 

「(こう……乗り物みたいなものがあったら……! もしくは巨大なチャッピーに乗ったりできたらもっと楽だったんだが……!)」

 

 

目の前にない理想が頭をよぎっても、現実は変わらない。探索ならまだしも、自身を主に攻撃してくる相手との戦いは、大乱闘を除けばほとんどしたことがない。腕力が悲鳴を上げて自然に手を離す前に速度を落としてピクミン達を下ろす。

 

 

『……!!』

 

「ピキー!?」

 

「ぐっ……!」

 

 

ドクタートルネードで近くにいたピクミンが薙ぎ払われる。そして椅子を持って迫るボディ。

体に鞭を打ってバックステップでかわすと同時に、緑色の斬撃が飛んでくる。

 

 

「ク、クラウド……」

 

「なにやら、大変なことが起きてるみたいだな……」

 

 

少し難しい顔をしながら言う彼は、そう言った。

キーラらとの戦いを終えて再会した彼は、少し時が経って成長していた。固かった表情も、ちょっとわかりやすくなったし、声に柔らかさが混じっている。

 

 

「すまない……少し限界だ……ちょっとだけ若者に頼むよ……」

 

「若者……あんた、いくつなんだ」

 

「もう四十にもなるからな……大乱闘も引退が近いかもしれない……」

 

「………………そうか」

 

 

意味を理解するのに時間を要して、なんとか短い返事を出す。

ドンキーコングのボディの剛腕を真正面から受け、真上に弾く。そして、己の大剣から素早く2本の剣を取り出した。

 

 

「なっ……!? 剣から剣が……!」

 

 

そういえば、最後の切り札でそんなことをしていた気がする。どこからかチャッピーが出てきて他のファイターを襲ったりと奇想天外なのはいつものことだから、得物が増えるのも気にしたことがなかった。

 

 

「はああっ!」

 

 

横2列に胴を切り裂き、大剣を地面に突き刺しながら、一本を投擲する。マスターハンドのいる竪穴の真横の崖に白衣を縫い留め、新たに抜いた1本とともに椅子ごと敵を打ち砕く。

そして、手の2本を放り、拘束していた残るボディを貫いた。全てのボディが溶けて消えていく。

新たに1本を抜き、木々の隙間に向ける。

 

 

「い、いえっ! 私です!」

 

「あっ……悪かった」

 

 

両手を挙げるのはWii Fit トレーナー。それを見てひと段落したと感じたオリマーはゆっくり座り込んだ。近くに残るピクミンが寄ってくる。

 

 

「さすが……」

 

「地べただが、座っておいた方がいい」

 

「わ……! 大丈夫ですかオリマーさん! 偏った食生活をしてるから……」

 

 

遅れて、黄色と白のピクミンが寄ってくる。

それを見てオリマーがふっ、と笑った。

 

 

「しっかり2人を呼んできてくれたんだな……本当に助かった……あと食生活については言わないでくれ……寂しいんだ懐が……」

 

「は、はあ……そうですか……」

 

「とにかく、なにがあったのか話してくれ」

 

「ああ、実は……」

 

 

自分もわからないことは多いが、とにかく仲間が来てくれた。

そういう安心感と共に息を整えながら、オリマーはマスターハンドの方を見た。

 





◯タイトル
FF5名脇役、ギルガメッシュとの戦闘曲。
FF人気投票の音楽部門で2位という人気曲で、その後のシリーズでも流れているというのに、作曲者の植松氏によると一曲削るならこれと言われた削除候補であるそう。
他の曲と浮いていて特殊な技巧も使われていないかららしいが、音楽知識のない作者には、そんな単純な曲なんすか……?って感じです。
それでも人気になるということは、手の込んだものほど受けがいいとは限らないってことですよね。ふえー、人生の奥深さを感じる……


◯ピクミン
・隊列
赤:16匹 紫:8匹 岩:9匹
・合流
黄:10匹 白:10匹
・離脱中
青:20匹 黄:10匹 羽:10匹


◯クラウド
FF7AC後なので、若干人当たりがよくなってます。
さらに合体剣での戦闘。正直、ここ書くのめっちゃ楽しい。
マテリアは持ってませんので、自分の力だけで頑張ってもらいます。



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114話 アルファサファイア

 

「ちょっと待ってよー!」

 

「ピャー」

 

 

少年ソラは、見上げた位置にいる羽ピクミンを追いかけて走っていた。

 

この世界をあちこち回って、自分の知る世界との僅かな共通点に無意識に目が向く。

故郷の面影のない、ただ同じ海というだけで、ホームシックになっていたところ、羽ピクミンに袖を引かれたのだ。

 

どんどん入り組んだ地形になり、見上げてばかりいるからか、時折転びそうになりつつもソラは進んでいた。

 

 

「ちょっと待って……きゅ、きゅうけい……」

 

「ワー」

 

 

体力には自信があったが、どんな体力自慢も全速力が長く続くわけもなく、膝に手をつけて止まってしまった。スパルタな羽ピクミンは周りで抗議の鳴き声。

 

 

「本当に……どこに行こうとしてるんだよ……ってうわっ!?」

 

「ワー!」

 

 

周りの羽ピクミンが距離を詰めてソラの服を掴む。そのまま上に上昇しようとして。

 

 

「オーンオーン!」

 

「……うん。自分で行くから……」

 

 

しかし、ソラの体重を持ちきれず引きずる形に。着たままの服ごとハンガーにかけられた新鮮な感覚であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「……正直、私もわかっていることはほとんどない。しかし、ボディ達の望むままにさせてはいけないのはわかるんだ」

 

 

倒れたままのマスターハンドの元で、ひと通りの説明をする。ただ、オリマーも把握しきれていない現状、その説明は簡素なものだった。

 

 

「間違いなくろくなことにはなりませんよね! それはわかります!」

 

「ああ。だから共に戦って欲しいんだが……私はこんな体だ。限度がある」

 

「うっ……ですが、私もファイターでなければどっこいどっこいです……」

 

 

そうだ。スマッシュブラザーズは歴戦の戦士ばかりではない。戦うことに長けていない者も多く、大乱闘を除けばまったくの無縁な者もいる。

そういう点では、オリマー以上にWii Fit トレーナーは無力であった。

暗い顔で俯く傍ら、じっとマスターハンドを見つめていたクラウドが声を上げた。

 

 

「今のこいつを見れば状況がわかるやつがいるんじゃないか?」

 

「えっ、例えば?」

 

「パルテナ。同じ神だろう。あとルカリオも何か感じられるんじゃないか?」

 

「確かに……」

 

 

ファイターの中で1番マスターハンドに近い存在、光の女神パルテナ。

あるいは、人の意識を感じられるはどうポケモンルカリオ。

彼らの他にも察することのできる者はいるかもしれない。もちろんこの付近にいる保証はない。だが、もし何かしらがわかるならば、身を守る以上の対処も取れるかもしれない。

 

 

「なら、私も誰かを探してきます。おふたりみたいに戦えないのでこのくらいはしますよ!」

 

「だが、ボディが辺りに蔓延っているぞ? ピクミン達は小さいから見つかりにくいと思って送り出したが……」

 

「お荷物はごめんです!」

 

「……わかった。無理はするな」

 

「はい!」

 

 

心配で落ち着かないオリマーとは対照的に、クラウドは平坦な口調で、しかし決して冷たくない態度で送り出した。Wii Fit トレーナーが軽く走り出し、その背中を見つめる。

 

 

「……やれやれ。歳を取ると心配性に拍車がかかるな。若い頃が懐かしいよ」

 

「彼女も、あんたの気持ちはわかってるさ」

 

「君も随分気持ちに余裕ができたようだ。あの戦いから何年か経ってるんだったか? 色々あったんだな」

 

「……人のこと、よく見てるんだな」

 

 

それっきり視線を斜め下に向けて黙り込んだクラウドを少し微笑ましく感じるオリマー。束の間の平穏にも安らかな時間は存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クンクンクンクン」

 

「ホン?」

 

 

黄色の動植物ピクミン。

ダックハントのコンビ、下の犬がピクミンの匂いを嗅いでいた。一部が座ってサボり気味のピクミンの手が鼻の先に触り、静電気が起きる。

 

 

「キュン!?」

 

「ピャー!」

 

「グワッグワッ!」

 

 

ピーンと耳と尾を逆立たせ、目を見開く犬に、背中の相棒は大笑いしていた。

しかし、背後から忍び寄るのは別の黄ピクミン。肩を叩くような軽さで翼に触ると静電気。

 

 

「ギャバー!?」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

同じように笑われていたのも記憶から跡形もなく消え去り、驚きっぷりに笑う犬。効果は抜群なのは別の世界の話。でも不快なのは確かで離れて距離を取る。

それでも追ってくる黄ピクミン。彼らの行動理念はたまに理解できなくなる。

 

 

「グワー!?」

 

「フン」

 

 

ついに背中を向けて逃げ回る。しかし、なぜか1匹ついてくる。

 

 

「イッシッシッシッシ」

 

「なにか物音が……あれ? ダックハント?」

 

 

腰あたりまで伸び切っていた草を掻き分けて、Wii Fit トレーナーが見つけた仲間。

何も知らないダックハントは勿論のこと、黄ピクミン達もやるべきことを完全に忘れていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………とまあ、なんとか故郷の星に戻ってこれたんだが、新人社員のミスがあって会社が借金を抱えてな」

 

「……そうか」

 

「その借金を返すために息子のお土産とドルフィン号が売り払われた挙句、家族にも顔を出せないままピクミンのいる星にUターンしたというわけさ」

 

「………………そうか。」

 

 

ボディがこない間だけの休息といっても、何もないのはつまらないだろうと、オリマーは自身の経歴を語っていた。

対するクラウドの反応は淡白に感じるが、そうかの3文字には様々な意味が込められているのだ。きっとそうに違いない。決してオリマーの会話内容が重すぎて反応に困るからではないはず。

 

 

「……! 来ている」

 

「本当か……!」

 

 

来ている。何が来ているのかは説明する必要もない。座って暇を持て余していたピクミン達を呼び集めた。

 

1本の大剣を構える。戦闘の感覚を研ぎ澄まし、辺りの虚な戦意を感じ取った。囲むように前と右と左にボディ。数は4。

 

 

「はあ!」

 

 

横一閃に破晄撃を飛ばす。それを避けたボディ2体が迫ってくる。最速を誇るソニックのボディ、空中戦で強いプリンのボディ。

 

 

「くっ、羽ピクミンがいないのが響いているか!」

 

「だったらあんたはそっちを頼む!」

 

 

蹴り飛ばされた岩ピクミンに構う暇もなく、青ピクミンをぶつけ、振り払っている隙をみて新たに白ピクミンをぶつける。毒を含めた持続ダメージ。

振り払って白ピクミンを倒そうとするだろうと読み、紫ピクミンを振り回すが行動は止まらずにやられてしまう。

距離を取って振り返ると蹴り飛ばされたはずの岩ピクミン。

 

 

『…………!』

 

「(腕力自体はそこそこのソニックのボディ……その格闘ぐらいなら岩ピクミンは耐えられるのか……!)」

 

 

とはいえ、あのスピードを相手にぶつけなければ火力の出せない岩ピクミン。羽ピクミンなしの空中戦だとしてもそうだが、オリマーの不得手は変わらない。

冷や汗をかきながら戦っている中、岩肌から向けられる銃口。しかし、オリマーは気づいていない。

 

 

『……』

 

「……ッ!」

 

「わっ!?」

 

 

チャージショットでピクミンが数匹削られていく。よこいりの射撃。クラウドとオリマーを挟んで反対側からもリモコンミサイルがクラウドを襲う。大剣の厚さでやり過ごした。

 

 

「くっ、狙撃による支援だということか……!」

 

「それなら……!」

 

 

クラウドが頭上のから迫るボディを一刀両断している傍らでオリマーが遠距離の2体を倒そうと駆け出すが、自らの相手していたボディに阻まれる。最速が相手にいる以上、振り切るのは不可能だ。

 

 

「火力が足りない……!」

 

「……! 遅かったな!」

 

「えっ?」

 

 

 

どがっという重い音がして、反射的にその方向を向く。クッパのボディが倒れている。先程にはいなかった新たなボディ。しかし、倒れたままに溶けて消えていく。流れるように、地面のボディからその者達へと視線が動いていった。

 

 

『この世界は本当に騒がしいな……』

 

「あっ! クラウドとオリマーだ!」

 

 

やれやれと腕を組んだミュウツー。

平面世界の住人と青ピクミンを連れて参戦を果たす。

 





◯タイトル
ポケットモンスターサファイアのリメイク版タイトル。
ゲンシカイオーガの特性がはじまりのうみなのでアルファがつく。
しかし、なんでエメラルドにあたるだろうエピソードデルタはデルタなんでしょう?


◯ソラ
プロローグでもありましたが、少しセンチメンタルになってます。
2でもそんなことありましたよね。ドナルドもグーフィーもいないので尚更です。


◯オリマー
改めて考えると酷い経歴。
3DXでもロケット回収するまで帰ってくるなとか言われてます。


◯ミュウツー
技マシンで使える技まで考えているとキリがないので、基本的にレベル技+スマブラで使える技限定で戦ってもらいます。ただしこうした方が面白そうという考えで、覚えてもらったり忘れてもらったりするかもしれません。


◯Mr.ゲーム&ウォッチ
スマブラの世界の住人なので、ロボットと同じく戦闘に関して違いはなし。ただコイツ戦ってくれるんかね。良くも悪くも悪意がない故に。


◯作者の気まぐれコメント
キングダムハーツミッシングリンクのベータテスト当たったぞおおおおおおおおおおおおおおぶへへへへへのへのもへじいいいいいい!!!

あっ、終わったら活動報告に感想とか書こうかなとか考えてます。規約があるのでどこまで書けるかわかりませんが。


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115話 オメガルビー

 

『まずは周りからか』

 

 

それだけが周囲の者達にまるで会話のように伝わる。腕組みをしていた手を振るうように動かすと、ひとりでにロックマンのボディが岩肌に叩きつけられる。念じる力で物体を動かすサイコキネシスだ。

側のウォッチはそれを追うように顔部分を動かしていた。

 

 

「とんでっちゃった」

 

「ウォッチ、君まで……」

 

「あれぇ? マスターハンドがねてる」

 

 

そして、そのままマスターハンドの元へ。細かく言えばその過程にある2人がいる戦場へ。

 

 

『…………!』

 

「ああ! ちょっと!」

 

「世話が焼ける!」

 

 

ハリネズミのボディのストレートパンチを大剣で阻み、Mr.ゲーム&ウォッチを小脇に抱える。そして、マスターハンド目掛けてぶん投げた。

 

 

「うわああ! いてっ」

 

 

反応しないマスターハンドに反射して顔面から地面に落ちる。それでもMr.ゲーム&ウォッチは怒らない。悪意といった負の感情といつ概念が彼の中に存在しないように、誰かを怒るとか悲しむとかはしない。

ただ、相手がそういった感情を持っているという考えもないので、平気で戦場に割り込んでいく。

 

 

「クラウドどうしたの? オリマーにあこがれた? それともさっきのミュウツー?」

 

「すまないが、少し黙っててもらえるだろうか……」

 

 

ダメだ。彼は戦闘力云々以前に戦う気が微塵もない。もう放っておこう。

そう考えたオリマーの意識は再び戦場へ戻っていく。

 

 

大剣の刃ではない側面でボディを叩き落とす傍ら、オリマーは遠距離にいるスネークのボディを落とそうとする。ソニックのボディが跡を追おうとするが、自身の靴が地面に縫い止められるように動けなくなる。

 

 

『…………!』

 

『フッ』

 

 

ゆっくりと正面に回り、鋭い眼光でかなしばりを起こす。そして、尾で薙ぎ払った。

腕を組んだ防御もダメージを殺しきれない。しかし、少しでもねんりきの拘束を緩めれば最速のボディはすぐに見落とす。

他の戦況の確認をした瞬間にはもう目の前に敵の姿はなかった。

 

 

『むっ……』

 

 

浮遊していたことを利用して、足元を通してスライディングで後ろへ回り、尾を掴んだボディは地面へ叩きつける。

自身にサイコキネシスを使用することで激突を防いだミュウツーは5連続でのシャドーボールを浴びせて敵にとどめを刺した。

 

 

「はああ!!」

 

『ッ!!』

 

 

クラウドは画竜点睛でボディをどこかへ吹き飛ばしたところだった。相手が軽いボディのプリンであったため、この機会を狙っていたのだ。どこか遠くからの花弁や草に潮風が風に乗って運ばれてきた。

 

 

「次だ」

 

『わかっている』

 

 

傭兵のボディ相手に格闘術でひたすら接近戦に追い込まれるオリマーはなんとかかわすのに精一杯だ。

 

間にクラウドが割り込み、巨大な剣で膝蹴りを防ぐ。大きくのけ反ったボディに連続でシャドーボールを撃った。

 

 

「はあ……大乱闘ならまだやれるというのに……やはり歳だな私も……」

 

 

いまいち感情の読めない目で空を仰ぎながら大きく息を吐いた。だから、気づけた。

いつも閉じているように見える目を、明らかに見開きながら大声で叫んだ。

天空で落下してくるアイクのボディ。身を翻しかわすオリマーは同じようにやってくる7体のボディの姿を確認した。

 

 

「まだくる!」

 

「やっぱりあんたは下がってろ!」

 

「くうぅ……もはや私も足手纏いか……!」

 

 

体力も消耗したままの彼には自身の戦闘経験の薄さをカバーできるほどの実力はなかった。

 

 

「おいでおいで〜」

 

「い、い、い、一緒にするな! ちょっと休憩するだけだ!」

 

 

ピクミンもろとも後ろに下がったオリマーはMr.ゲーム&ウォッチに抱きつかれた。ヘルメット越しにツルツルと撫でられ、肩をモミモミと揉まれる。

 

 

「やめ、撫でるなっ、あれ、結構効く……」

 

「ちからかげんどーですかー?」

 

 

不敬ながらマスターハンドを背もたれにしながら、正面から肩を揉まれていく。力加減は強くはないが、とにかくいい箇所を揉んでくれている。

 

 

 

 

 

「くっ……! この人数は……!」

 

 

嫌な音を立てながら、鍔迫り合いを繰り広げる中、参戦したボディ達を確認して冷や汗をかく。

弾き飛ばし、凶斬りで吹き飛ばす。

 

 

『出し惜しみはできないか……進化を超えた進化を……メガシンカ!!

 

 

球体から割れるように現れたメガミュウツーY。

通常のミュウツーはより小型となり、機敏性を増した。尾の長さが頭に移ったように後頭部が伸び、腕が細身となる。

よりスピードと火力に特化したフォルムだ。

 

 

『はあああ!』

 

 

先にいたボディをクラウドが受け止めてくれている。大技も気にすることなく撃てる。本格的な接近戦になるまでに1体でも数を減らす。

 

 

「サイコブレイク……!」

 

 

巨大な念弾がボディをまとめて巻き込んでいく。実体化した念波が物理的に敵を攻撃しているのだ。炸裂した後に倒れるボディ。トドメにはなりきれなかったが、かなりのダメージは入ったようでゾンビの如くよたよたと起き上がる。

 

 

「みなさーん!」

 

「トレさんか!? こっちにも援軍が……!」

 

「すみませーん!! 助けてー!」

 

「なぁっ!?」

 

 

犬と鴨を抱きしめながら走ってくるWii Fit トレーナー。後ろには5体ほどのボディ。それと数の減った黄ピクミン。こんな時でも背筋がまっすぐとか考えている場合ではない。

 

 

「あんた……」

 

「とうっ! 助かりましたぁ!!」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

火事場の馬鹿力とでも言うべき跳躍力でボディをマスターハンドを飛び越え、オリマー達の隠れていた場所に滑り込んだ。

敵を振り切ることなく連れてきた彼女に思うところはあったが、なんというか、言葉が出てこなかった。色んな理由で。

 

 

「ところで、どうしてオリマーさんとウォッチさんは向かい合ってマッサージをしているのですか?」

 

「あー、これは……えっと……」

 

「ちからかげんどーですか?」

 

「それしか言わないなさっきから!!」

 

 

 

 

『無事なのはいいが、状況は何も好転してないぞ!!』

 

「ハッ!? そりゃそうだ! 少しだけ手伝ってくれウォッチ!」

 

「てつだう? マッサージは?」

 

「いいからそれは!!」

 

 

ワーと悲鳴を上げながら合流する黄ピクミンを後ろに下がらせながら、ピクミンを追うボディの顔面を岩ピクミンでぶっ叩く。

 

 

「椅子だ!」

 

 

立ち塞がる2人の隙間から中へ行こうとするボディを椅子の突撃を指示して防ぐ。こねずみ1匹も逃しはしない。

その後もオリマーの指示通りに電撃と火の玉を回収し、オイルをぶち撒ける。

 

 

『……ッ!』

 

「させない! 行ってくれ!」

 

 

赤ピクミンを体に貼り付け、Mr.ゲーム&ウォッチへの反撃を防ぎ、そして。

 

 

「着火!」

 

「はーい!」

 

 

そのまま着火。火に強い赤ピクミンを除き、3体のボディが焼き焦げていく。

 

 

「よし! これで……」

 

「いや……! まだ来ます……!」

 

 

追加で2体。

サイコブレイクで瀕死だが、ミュウツー1人て7体の対処はあまりにもオーバーだ。

クラウドと斬り合うアイクのボディは無傷ではないが、まだ充分に戦える。

 

 

「やはり私もいくしか……!」

 

「クゥン」

 

 

ダックハントを下ろし、ボールを片手に覚悟を決めた。

 

 

『ならばもう一度……!』

 

「ミュウツー!」

 

『……!』

 

 

名を呼ばれただけで飛び退く。

上空から砲丸のような魔法が放たれ、7体の瀕死のボディにトドメを刺した。

 

 

「ソラ……!」

 

「おまたせ!」

 

 

大きな音を立てて着地した少年。

深めの青色に変わったエレメントフォームに身を包み、大砲のような武器を肩に構えながら最後の光は歯を見せて笑った。

 





◯タイトル
ポケットモンスタールビーのリメイク版タイトル。要するに前話のアルファサファイアの相方。
ミュウツーはスマブラDLC最初のファイターであり、
ソラは(現状)スマブラDLC最後のファイターである。


◯マッサージ
Mr.ゲーム&ウォッチのおててっていい形してません?


◯メガシンカ
ポケットモンスターXYからの新要素。
一部のポケモンがトレーナーとの絆によって一時的なパワーアップをする。進化を超えた進化。
リザードンとミュウツーのみ、2種類のメガシンカ先があります。優遇されてんなー。
最新作SV時点では廃止されたままである。まあ、Zワザと併用できた時点で特例だったんですね。次回作でもBWリメイクでも期待できそうにないのでXYリメイクでの復活を待つか……その時にはきっとカロス御三家もメガシンカを……!


◯ソラ
使用キーブレードや魔法等は3のものを採用。
アルテマウェポンは自重。だって禁止にするとアルティメットフォームだせないし……今後のことはわかりませんが。
今話の最後は、シューティングスターでの大砲ぶちかまし。キングダムチェーンでもないし、フォーム変わってますが、本家と丸々同じ「おまたせ!」はなんか許されなかった。作者の中のKH厄介オタクに。
シュートロックもあるし、フリーフローもあるしでトップクラスに芸が多いかもしれない。

あ、ミッシングリンクのベータテスト感想は遅くなりすぎないうちに活動報告に投稿しておきます。


◯現在のピクミン
・隊列
赤:14匹 黄:8匹 青:10匹 紫:7匹 白:9匹 岩:8匹
・合流
黄:5匹 羽:10匹
・離脱中
青:10匹


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116話 究極のリアルフィクション

 

こうして物語は徐々に起点へと収束していく。

 

 

オリマーの立ち位置は、まるで非戦闘員の仲間入りをしたような位置だ。

倒れたままピクリもしないマスターハンドから顔を出して、Wii Fit トレーナー、ダックハントと、大勢のピクミンと共に戦況を見守っていた。

なお、Mr.ゲーム&ウォッチは数匹のピクミン相手にベルを鳴らした反応を面白がっていた。

 

 

「こ、この数は冗談じゃすまないですよね?」

 

「明らかに狙いがマスターハンドだ。多分……」

 

「多分って……」

 

「戦略についてはルフレに頼む……」

 

 

この数で襲ってくるなら間違いなく狙いはマスターハンド。だとは思うが、陽動の可能性があるくらいは専門外と言いつつもわかっていた。とはいえ、ならどうしていいのかは頭の中に浮かばなかった。ただの運送会社の社員に多くを求めてはならない。

 

 

「それにしてもどんどん多くなっているような……あっ、終わったようですね」

 

 

ソラのソニックレイヴが残っていたボディを貫く。溶けていったボディを確認し、ソラはキーブレードを虚空へ戻し、クラウドは合体剣を背中にしまい、ミュウツーはメガシンカを解いて見慣れた姿へ戻った。

 

 

「ねえ、ピクミンに引っ張られてきたんだけど何が起きてるんだ? なんか、みんなそっくりの敵がうようよしてるし」

 

「よかった、話せないから少し不安だったが、ピクミン達は君たちのことを呼んでくれていたんだな。流石だ……」

 

 

みんながみんな、ピクミンに連れられてここまできた。幾度となく危機を救ってくれたピクミンへの信頼感はまだ伸びていく。

感慨深くなっていくのも束の間、最後に来たソラの質問に答えるために切り替える。

 

 

「それにしても、そういえばそうか。ソラはボディのことを知らないんだったな。どこから話すべきか……」

 

「倒したはずのキーラとダーズというものが作っていたはずの俺たちの模造品が先程戦ったそっくりな敵、ボディだ。何故かはわからないが健在なんだ」

 

「へえー」

 

 

解説役の仕事を横からクラウドが掻っ攫っていった。

そういえば何故だか、ソラは最初からクラウドには懐いていた。わかりやすく人当たりのいい者を差し置いてだ。知り合いにほんっとうにそっくりらしいがそれだけですぐに打ち解けられるだろうか。そのソラの知り合いという者の顔を一目見てみたい。

ふと、そんなことを思っていると、周りから離れてじっとマスターハンドを見上げていたミュウツーの姿が目に入った。

 

 

「……? どうしたんだ」

 

『……ない』

 

「何がですか?」

 

『奴の念を感じない。ここにあるのはただの抜け殻だ』

 

「ぬけがらー?」

 

「そこにマスターハンドの意思がない……ということか?」

 

『ああ』

 

「意思がない……」

 

 

その言葉を心の中で繰り返しながら、この世界の主の今と先程を思い返す。

深く深く眠ったかのように動かない姿は、死んでいるとすら思えるほどで……そこに心がないというならば納得できる。

 

 

「心が眠ってるのか?」

 

『いや、そもそもこの体にない』

 

「その心の居所はわかるのか?」

 

『……難しいな。そもそも追われないようにしている』

 

 

そこまで言えば、この無尽蔵に襲いかかるボディ達が何を狙っていたのかは大体わかった。

 

 

「なんでー?」

 

「ボディから自分を守るためですよ!! 当然でしょう!」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

……その大体から外れた奴もいた。

悪意という概念がないのならば、その悪意から身を守る術が理解できないのも当然である。

 

 

「……ならば守るべきは器ではなく意思の方なんじゃないか?」

 

「あー……」

 

 

ボディがマスターハンドの器へ向かっていくということは、敵側はまだマスターハンドの意思か器かを確保できていないということで。

 

意図的に逃げた痕跡が消されているということは少なくともマスターハンド側は敵の狙いが自分の意思だと思っているということで。

 

一応どちらも狙いではあり、意思を確保したから今度は肉体も、という可能性はあるものの、護衛から奪還に変わるだけ。

 

 

「だが手がかりが……ピクミン達に探してもらうのも流石に無理がある」

 

「ならわた……しが……追われておいて説得力ないですよね……」

 

 

立候補の声がどんどん小さくなっていく。

人を呼んでくると1人駆けていった先程が理由だ。

 

 

「体の方を放っておいて全員で探しにいく訳にもいかないだろう……ボディはどんどん増えてきているんだ」

 

「なんかイマイチまとまらないなぁ」

 

 

方針がひとつにならない。

この団体にはリーダー適正と戦闘双方に優れた者がいないのだ。

オリマーには集団対集団の戦闘経験はなく。

クラウドには無条件で上に立つ威光はなく。

ミュウツーには信頼の上での指示は出せず。

ソラにはそもそも誰かに指示を出して行う緻密な作戦に参加したことがなかった。

その他は戦闘といえば、大乱闘しか経験していない。

 

それぞれ意欲はあっても、いわば個々がそれぞれ戦い、意見だけを出しているような状態。

 

 

「……ここでボディを撃退していれば、いずれ親玉なりが現れるんじゃないのか?」

 

『…………そうするか』

 

 

結果的にその判断を投げた。

現状維持を選んだ。

肉体を確保された結果、この世界に何かが起きてしまったらそれだけでアウトだ。

 

 

「せめて私も戦えればいいのですが……」

 

「私ももう少し頑張るが……どれだけ体が持つか……」

 

「え? 体って……」

 

『(ソラ、彼の年齢は……)』

 

「え」

 

 

ようは純粋に戦えるのは、クラウド、ミュウツー、ソラの3人。オリマーはピクミンと体が保てばという状況。

 

 

「ウォッチ、ダックハント、あんたらは……」

 

「ん? へいわがいちばんでしょ?」

 

「(喋れるんだ……)」

 

「クゥン」

 

「え? やってほしいの? 今までなんとなくで流してたのに」

 

 

さっと、ダックハントは2足で立ち、2丁の銃を構えるような体勢を取った。ボディランゲージか。

 

 

「ミュウツー、通訳できない?」

 

『もう1人が頑張る、そうだ』

 

「今は僕がそこにいるから僕がやれと」

 

「そういえば、パルテナさんから聞いたことがあります。ダックハントはトリオだと」

 

「トリオ……?」

 

 

そのもう1人……否、1匹か?

確かに大乱闘ではダックハントと戦っているとどこからともなく援護射撃がくる。そんな最後の一角に援護を任せると。

それを見たことがないのだが。つまり第三者任せだと。

 

 

「その第三者は僕でもあるし盟友でもあるけど」

 

「……考えたら負けな気がする。とりあえずいる、ということは頭に入れておこう」

 

「誰が負けだ、何がとりあえずだ」

 

「いわゆる……専守防衛で進めるということか」

 

「センシュボウエイ?」

 

『守るためだけに戦う、だ』

 

「君たちを襲わせてるの、僕なんだけどなあ」

 

 

眉間に皺を寄せたオリマーも決意を固めて言った。

 

 

「トリオの援護……今聞こえているかわからないが、聞こえているのならば……頼む」

 

「仕方ないなあ。でもそれなら相応の敵が必要だよね?」

 

 

聞こえているか、いないのか。

長い空白が続くのち。

 

 

『…………』

 

「あっ! またボディが!」

 

 

ソラが気づいた。新たに現れるボディ。

20にも届きそうなほどだ。

 

 

「や、やるしかないか……!」

 

「当然。やらなきゃいけないんだよ君たちが君たちである限り。異次元からなら援護してあげるからさ。さ、ファイト!」

 

 





◯タイトル
ニューダンガンロンパV3に登場するキーワード。
これを解説すると、V3の根幹からネタバレすることになるので解説は自重します。


◯同じような説明繰り返しててくどい
それぞれの章で把握している情報がバラバラだから1回1回説明しないといけない……今更ながらこの方式の弱点が見えましたね。


◯謎の声
「まるで聞こえてないねえ。ま、当然なんだけど」


◯作者の気まぐれコメント
ランタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!

私のポケモンSV、始まったな。


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117話 バトルデラックス

 

「何か……何か……」

 

 

Wii Fit トレーナーは今までにないくらい、頭をフル回転させていた。

確かに大乱闘の舞台に乗れなければ、自分が戦うことはできない。だが、体力の戻りきっていないだろうオリマーや、少年と呼べる年齢だろうソラが必死に戦っている姿を見て、座して待つということが出来なかったのだ。自分自身と同じ姿をしたボディが仲間を苦しめているのを見ているだけしかできないのならば尚のこと。

 

 

「体操用の道具くらいならありますが……」

 

 

ボールやフラフープくらいならあるが、それをどうやって戦いに活かせというのだろう。

 

 

「そうだ! ダックハントさんは色々持ってますよね!」

 

「ワウ」

 

 

第三者の援護射撃に頼り切らずとも、彼らには武装がある。空き缶型の爆弾は、彼らの強力な武器の一つだ。

 

 

「それにウォッチは素であれだけのことができる訳ですし……」

 

「えっ? ぼくぅ?」

 

 

そして特別弱体化している訳ではないMr.ゲーム&ウォッチをどうにか説得して参戦させれば、オリマーと彼女とダックハントで1人分としても戦力は5人になる。単純に加勢するか、それとも……

 

 

「これなら……大丈夫、いけますよ!」

 

 

 

 

 

小さな太陽のような輝きを盾で受け止める。ソラの服は黄色をベースにしたものに変わっていた。また別のキーブレードにチェンジし、変形させたものだ

 

 

「君も随分と多彩でカラフルなんだな……」

 

「まあね!」

 

「黄ソラミンは守りが強いと……」

 

「黄ソラミン!?」

 

「冗談だ、冗談」

 

 

振り下ろされようとした剣に岩ピクミンを投げて弾き、ブーメランのように投げられた盾がボディを吹き飛ばす。

念で空中に留めたボディに好き放題シャドーボールを連射した。

 

 

『緊張感のない……』

 

「軽口すら叩けなくなったら終わりだろう。おそらく、あいつもわかっている」

 

 

凶斬りで前方の敵をまとめて斬り飛ばす。掻い潜って襲いかかる跳び蹴りには一本剣を取り出し、逆手でカウンターをぶつけた。

 

 

「別にこの服ピクミンとは違うってー!」

 

「ははは、個性がイロイロ生きているんだ」

 

 

黄ピクミンがあちこちの敵に貼りついている。反撃されようとしたら別のボディに取り付き、犠牲を最小限にしようとしているのだ。そこへ降り注ぐサンダガ。

オリマーが笛を吹いて集合をかけると、ソラが構えた盾から無数の拳が襲いかかる。

 

 

「まだまだぁ!」

 

 

盾からさらにチャリオットへ変形させ、空を飛びながら辺りに雷撃を落とす。

 

 

「オーン!!」

 

「電気……いや雷か。強力な電気を受けると随分元気になるな」

 

 

まるでゲキカラスプレーをかけた時のように元気になる黄ピクミン。この状況でも生態系が気になっているのは最早癖だ。

 

少々冷や汗をかきながらも、雷を回避し少なからずダメージを受けたボディ達を斬りつけながら、クラウドは少し閃いていた。

 

 

「念の力でボディを弾くことはできないのか!? 触らずに動かせるんだったら……」

 

『できていたら既にしている!』

 

「っ……そうか……!」

 

 

しかし、その閃きは実現不可能。

触らずに物や人を動かすサイコキネシス。

口で言うのは簡単だが、念の力とて、反抗の術がないわけではない。

 

まず、頭で考えて使う力である以上、集中しなければ使えない。ミュウツーはそれに関して得意ではあるが、近づく相手を片っ端から飛ばしていくと常に集中を保たなければならないのだ。

 

それに足掻けば、腕や足を動かすことはできる。動かさないようにするのも念の力であり、当然そのために意識しなければならない。

不可能ではないだろうが、ミュウツーだけにかかる負担が大きく、それに見合った戦果になるとも限らない。

 

 

『だが、短時間ならば問題はない!』

 

 

尻尾で足払い、空中でとどめて他の敵の足元にぶつけて転ばせる。1本2本、細身の剣が突き刺さり、それがトドメとなった。

 

 

「どうやら個別で戦うよりは連携で戦った方がいいらしい!」

 

『不慣れだがそのようだ!』

 

 

クラウドの大剣が突進や銃撃を受け止め、真上からミュウツーが星型の弾を降らせる。更に、後を追うようにクラウドも飛び上がり、小振りの隕石を連続で落とす。

 

 

「あれ? ふたりがやったの、しらないや」

 

「いや、ソラさんも先程から……いや、もういいです……」

 

 

キーブレードの変形に、スピードスター、メテオレイン。本人以外は詳しく知らないが、それぞれが素の状態で使う技。

Mr.ゲーム&ウォッチが今更に興味を持ったが、深く突っ込むのはやめる。なんとか引っ張り出したというのに、他に興味を持たれて忘れられたらたまらない。

 

 

「では、準備いいですか?」

 

「うん!」

 

 

両手で肩の上に抱えた缶型の爆弾。Wii Fit トレーナーの手によって乱戦の中に投げ込まれた。

 

 

「!」

 

 

一瞬のうちに理解して離れるソラ。その背後で火のついた棒が投げられて爆発が起きる。Mr.ゲーム&ウォッチの手によってたいまつが投げ込まれて起爆したのだ。

 

 

『…………!』

 

「そこ!」

 

 

さらに爆発に巻き込まれながらもソラの背後を取ろうとしたボディの顔面にむけて、缶型爆弾が投げ込まれる。

 

 

「ああ、ここか」

 

「うわっ、」

 

「今の……!」

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

そして爆発する。この銃弾による起爆。

明らかに第三者からの援護。協力してくれる気はあるようだ。

ダックハントの爆弾をWii Fit トレーナーが投げ、Mr.ゲーム&ウォッチが遠隔から火を投げて起爆する。

 

非戦闘員の名誉挽回、己が接近戦を得意とするファイターだから見逃していたいつもとは違う戦い方。

 

 

「これなら赤ピクミンであるなら相手を爆発ながら戦えます!」

 

「流石に赤ピクミンでも爆発は無理だ!」

 

「んなぁ!?」

 

「バクダン岩は無理だしねー」

 

「でも、範囲攻撃はあるだけいい! 機を見て頼む!」

 

「範囲攻撃かー、なら!」

 

 

ピクミンを一列に並べて振り回す技。リフレクで巻き込まれないようにしていたソラは障壁を飛び散らせて辺りの敵を退かす。

そして更なるフォームチェンジ。塔を模したような杖を握ると自分の分身をつくる。

 

 

「(増えた……)みんな……意外と多彩なんだな」

 

『他人のこと言えるのかお前は』

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

ダックハントの蹴り飛ばす爆弾をねんりきで顔面にぶつける。背後で岩陰に隠れながらも、火力の提供は可能だ。

各々の本来を感じ取っていくのが傍ら、光の分身は本体と共に一斉に光弾を発射する。

 

 

「吹き荒れろ!」

 

「割と重い……です!」「フン?」

 

「上からもどうだ!」

 

 

エアロガンによる竜巻がボディの体を切り裂く中、羽ピクミンと共にオリマーは飛び上がった。重さと硬さの紫ピクミンと岩ピクミンを落とす。運びきれないと思ったがWii Fit トレーナーが地上のピクミンを投げて送ってくれている。

 

 

『……ッ!』

 

「カービィの……!」

 

「させません!」「こんちわー!」

 

 

自分よりも軽くて浮いたボディ。それらは余っていた羽ピクミンと、Wii Fit トレーナーが投げた黄ピクミン。そしてパラシュートで舞い上がり、本物の方の鍵を突き刺すMr.ゲーム&ウォッチが叩き落とした。

 

 

「意外とピクミン使いの適正もあるのでは……! これ、終わったら何匹か来ませんか?」

 

「ハア」

 

あ、ダメですかそうですか……しかし、あとちょっと……これならなんとかなりますね!」

 

「あっ、それフラグにしよっと」

 

 

残るボディは、自分達の頭数と同じといったところか。最初はどうしようかと思ったが、案外なんとかなった。

 

 

「ウォ、ウォ、ウォッチ……ピクミンが……」

 

「えっ? あ、ごめんね」

 

「し、仕方ないんだこれは、今までも無犠牲ではなかったんだ、だから仕方ないんだうん……」

 

 

鍵の突き刺しに巻き込まれて2匹ほどのピクミンが逝った。Mr.ゲーム&ウォッチに悪気はない。責められたから謝っている。それだけ。

それを知っているから、自分に言い聞かせる形で折れようと頑張るオリマー。

 

 

「癒しよ!」

 

『むっ、自分で治せるが……』

 

「はあ、はあ……疲労は無理か……」

 

 

少なからず負った傷。それを塞ぐソラのケアルガ。魔法では疲れまでは取れない。少しは回復した体もすぐにまたボロがでてくる。

オリマーだけではない、他も程度はあれど疲れがある。

 

 

「おまたせ〜、10体ほど増やしたけどいいよね?」

 

ザクッ

 

 

「……ッ!?」

 

『これは……まだ増えるか……!』

 

「えっ? ウソだぁ!?」

 

「ウウゥ……!」

 

 

足音を聞き、更に登場する大群のボディ達。

ダックハントに笑う余裕を奪い、怯えながら唸らせる現実。

 

後が見えずただ今の状況だけが悪くなる光景も、精神的に彼らの体力を奪っていた。

 





◯タイトル
星のカービィ外伝作品、カービィ バトルデラックス!。
4人対戦の多種多様なゲームで競う対戦ゲーム。
ストーリーモードでは、パラソル持ちのバンダナワドルディと共にコンピュータと戦っていく。(スタアラでのんきなパラソル持ちとか言ってたのに)
必勝講座を公式でだしたり、小説化したりと外伝だけど一般知名度は高い印象。3DSのネット環境終わるし後継作出してもいいのよ?
ファイターズ? それとはちょっと違うんだよね……


◯ソラの服
ソラがフォームチェンジできる理由。キーブレードの変形に応じて色が変化する。
眠れる森の美女で出てくる、自分の色好きな妖精達が制作しており、フォームチェンジも彼女達の魔法によるもの。
ちなみに同じようにリク、王様、カイリ、リアの服も作っているが、フォームチェンジが可能なのはソラのもののみ。おそらく時間がかかり過ぎるから。

一応闇を祓う力もあるが、多分本作では使われない。


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118話 Moebius Battle

 

まるでスローモーションだった。

1未満の倍速で永遠と映像を見ているような感覚。

 

 

「フゥ、フゥ、フゥ……!」

 

 

荒い息。鎮まれ、動けと心の中で唱え続けても、生きようとする身体は空気ばかりを求め続けている。

 

 

「ハッ!」

 

 

少しずつ、しかし確実に減っていっているピクミン達。計100匹いたはずのピクミンは、現在隊列50と少しといったところだ。

大乱闘だってそう。どれだけ犠牲なくして戦おうとしても、ただの会社員であるオリマーには限界があるのだ。

そうやって倒れていく戦友を見る中で、自覚しないままに精神的疲労も溜まっていく。

 

青ピクミンを顔へと投げて視界を潰し、足元へ紫ピクミンをトツゲキさせる。すっ転んだところに缶爆弾が爆破。爆発した後に何も残らなかったのを確認して、ふう、と息を吐いた。

 

 

『━━!』

 

「なっ……!?」

 

「気を抜くな!」

 

 

オリマーの背後を狙った攻撃。

直前で気付いた彼には、大剣で一刀両断されたボディが見えた。その下手人は既に別のボディの攻撃を受け流している。

 

 

「くぅ……!」

 

 

ピクミン10倍は重い紫ピクミンを掴み、少ししか浮き上がらないのに気づく。やはり、あんな少しの休息ではあまり回復できない。

今彼を支えているのは年長者のプライドである。

 

 

『何体来るんだ……!』

 

「これは……あの取り押さえようとしたアームを弾き飛ばしたヤツだ……!」

 

 

畳み掛けるように襲いかかる攻撃を避け、避け。

徒党を組んで蜂球のようにかたまってくるボディを吹き飛ばす。

 

 

「えいやっ」

 

 

飛ばされてMr.ゲーム&ウォッチの元に来たボディの1人が反射的に椅子によって弾き返される。

 

 

「ワフッ?」

 

「あ、危ねっ」

 

 

そのボディがダックハントの元へ。

気づかないままに振り向いたダックハントの眼前で、異次元の狙撃手からの射撃が飛ぶ。弾丸のように飛ぶ敵は軌道を逸れてダックハントの右側へ。

 

 

「へぶっ!?」

 

「あ」

 

「あ」

 

 

オリマーの後頭部に綺麗に激突。

まっすぐ前方向に倒れて、動かなくなった。

 

 

「これ、僕が悪いのかなぁ」

 

「「オリマー(さーん)!?」」

 

 

この場で1番反応が素直な2人の大声。

集中していた戦いから意識が引き戻されていく。

 

 

「えええ!? どうしよう!?」

 

「あ、大丈夫そうです! ピクミン達が運んで……オニヨンには入れないでくださいね!?」

 

 

ワタワタしだすソラにWii Fit トレーナー。

数を減らすとオリマーとピクミン達に接近していくボディを氷の爪が切り裂き、異空からの弾丸が撃ち抜く。

 

 

「はあ……! 邪魔はさせないからな!」

 

「おっ、クリスタルスノウ。贅沢にフォーム変えるじゃん」

 

「ンッションッショ」

 

 

オリマーを運んでいっているピクミンを庇うようにソラは立ち塞がる。吐いた息は白かった。

 

 

「はあ!」

 

 

上を取る敵を叩き斬るように、半月状に空に向けた刃が落ちる。地面が抉れる衝撃を手に感じて、気にする間も無く蹴り飛ばす。

身を翻して肩付近で顔の汗を拭った。無数の敵を相手に戦い続けていると、自分がどこにいるのかわからなくなっていく。

俯瞰して全てを見ているような、あるいはどこにも自分がいないような。世界が始まった瞬間からずっと自分は戦い続けているような突拍子もない妄想が頭をよぎる。

 

 

「(オリマーの身は安全だとしても! 戦い自体はキツくなっていく……!)」

 

 

1人、戦闘に不慣れ気味とはいえ、数が減ったのは間違いない。

 

クラウド自身も、そこまで遠くないうちに体力は尽きる。少なくとも、今十全には及ばない。

ミュウツーは念力に精彩を欠いて力押しが増えてきているし、ソラはよく動くから底も見えかけている。

Wii Fit トレーナーは身体ができているから、まだ十分動けるが、彼女が残っても他が潰れればジリ貧だ。Mr.ゲーム&ウォッチは……わからない。割と本気で。

 

次に潰れるのはダックハントか、それともソラか……どうあがいても長続きはしないだろう。

 

 

「(失敗だったか……!)」

 

 

こうなれば、黒幕を叩きにいけばよかった。

このままだと大乱闘の創設者と共倒れだ。

しかし、過去には戻れないのだから、今をなんとかしなくては。

 

 

「そうなったらそっちにボディを向かわせただけだし……えっ、ちょっと待って聞こえてるのコレ」

 

「まとめて、倒す」

 

 

今を乗り切らなければ、後もない。消耗を考えて使わなかった大技を切る覚悟を決めた。

 

 

「目立たないけど……明らかに白けさせてるよね? 空気読めなくてゴメンね……」

 

「っ……! まだまだぁ!」

 

 

さらに武器を刃のついた腕輪に、足に氷のようなスケート靴を履いたソラは氷のシャンデリアのようなものを生み出して上空から落とす。

吹き飛んだボディの後ろへ高速で移動し、斬り飛ばす。

 

 

「……っ!」

 

 

ソラの服装は深い緑からいつもの黒と赤に戻っており、キーブレードも変化していた。

白く、先にはハートが形取られた光の鍵。それを一層強く握りしめる。自分を鼓舞するように、約束を守るために。

 

 

『━━!』

 

「わあっ!?」

 

『……ッ! 下がれ!』

 

 

そして、1人抜けた穴は想像以上に大きい。それこそ援護やサポートの手が回らないほどに。彼女の守護までやっていられないほどに。

咄嗟に盾代わりに使ったボールが真っ二つに。

逃げるWii Fit トレーナーを追うボディがかなしばりによって止まる。サイコブレイクで仕留めたミュウツーは、工作員を庇いきれないと判断した。

 

 

「(そう……ですね)」

 

「ワウ?」「ガア?」

 

 

ダックハントを抱き上げ、ピクミンや気絶したオリマー、そして未だ動かないマスターハンドのいる洞穴へと駆け込んでいく。

 

 

「イッシッシッシッシ」

 

 

最後っ屁とばかりに両手で放り投げられた爆弾。その行き先、

 

 

「あっ! ちょっと待ってくださ……!」

 

「あう!?」

 

「ワゥッ!?」

 

 

飛距離が足りず、空気砲を持ちながら応戦していたMr.ゲーム&ウォッチとボディの間に入っていく。地面との衝突で爆発し、被害者が黒い煙を吐いた、気がした。

 

 

「もー!!」

 

「す、すみませんごめんなさいわざとじゃないんですきっとー!!!」

 

 

プンスコと怒りに怒って、彼らを追って彼も離脱していく。

 

 

「ちょ、ちょっと!? もう! 水よー!」

 

 

止まらない。止められない。

魔法によって生み出した水が激流となってボディ達へ襲う。そして、水を球型に操ってボディを中に閉じ込めるのはエスパーの力。

ソラの感覚での戦闘を、即興の連携へと組み立てる。

 

 

『やれっ!』

 

「本当に……ツキがなかったな!」

 

 

自己への皮肉も込めて。

5本の剣が水球を囲うように展開し、すれ違いざまに剣を入れ替えて攻撃していく。最後に上から一振りを。

 

 

「よし! これでやっと……」

 

「えっ……そんな……」

 

 

戦線から離れたWii Fit トレーナーは気付いた。

また、同じような数のボディがやってくる。目を見開くしかない、終わりのない永遠の戦い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

「オリマーさん!」

 

 

気絶から回復したオリマー。すぐに起き上がり、戦況を見る。

 

何も変わっていない。戦闘が遠くない者たちも限界が近づいていた。

 

 

 

「(どうして……)」

 

 

 

「(何がどうしてこうなった!?)」

 

 

いつ終わりが来るんだ。

心が折れそうになる。

 

 

「(誰か……頼む。これをどうにか……!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど……消耗してもいい戦士を手当たり次第にぶつけていけばいずれは……といったところか」

 

 

天空の輝きがボディの群れを切り裂く。

戦いの時が止まったようにそれぞれがそちらを見た。

 

 

「私達も助け立ちする。あともう一踏ん張りだ」

 

「褒めたりいよ、こいつらのお陰でここまでこれたわ!」

 

「あ……!」

 

「ピクミーン」

 

 

1人は男、緑髪をかきわけるように装備した羽根のついた兜は剣と同じ輝きを持つ、天空の勇者ソロ。

 

1人は女、ピンクのボブ程度の頭は髪ではなく触手。自分達がよく知るインクリングよりも短く揃えたインクリングは3号の姿に似た服を着ていた、ヒーロー4号。

 

 

2人の足元には、オリマーがはじめに散らしておいて、助けを求めたきり、そういえば戻っていなかった青ピクミンがピョンピョン跳んで喜んでいた。





◯タイトル
ゼノブレイド 3の楽曲名。敵幹部通称メビウス達との戦闘時に流れる曲。バトルの展開によって曲の流れが変化するインタラティブミュージックが本作には使われているが、この曲はバトル相手によって複数のバリエーションがある仕様。サントラに収録されていないバリエーションを含めたら17分半あるとか……


◯約束のお守り
今話でクリスタルスノウからチェンジしたキーブレード。
入手タイミング的に、カイリからもらったお守りがキーチェーンとして変化したものだと思われる。
カイリを象徴するキーブレードだが、カイリが使うキーブレードはこれではないので注意。


◯超究武神覇斬Ver.5
FF7ACで登場の、セフィロスを倒した技。Ver.2から4はどこだろうか。
スマブラでは、既存のファイターに新規要素としてアップデートで追加された珍しい例になる。セフィロスはいつ思い出になってくれるんですかね。


◯青ピクミン
実はまだ合流していない団体がありました。


◯ソロ
DQ4の主人公。不幸な主人公といえば5主人公ばかり取り上げられるが、彼も大概不幸。
公式イラストで既にスライムピアスや天空のかぶとを装備しているおしゃれさん。3、8主人公と区別をつけるために一人称は私の硬派なタイプ。しかし、彼もベホマズン使えるんか……今章は怪我より疲労が大きいからまだいいけど……


◯4号
スプラトゥーン2ヒーローモードの主人公。
マニューバー、シェルター使いの関西弁系オセオセキャラ。なお作者は関西弁に詳しくないのでエセ仕様。逆に押されるのには弱い。


◯現在のピクミン
・隊列
赤:12匹 黄:10匹 青:8匹 紫:5匹 白:8匹 岩:5匹 羽:8匹
・合流
青:10匹


◯作者の気まぐれコメント
今年の投稿は最後になります。忙しくなって土曜日になんとか書き終えて投稿、というのが増えてきました。
来年には、完結できたらいいな、といったところ。
みなさま、よいお年をー。


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119話 亜空の使者

 

「こいつらシバけばいいんやろ? ウチのスピードについてこれるか?」

 

 

インクリング……3号と同じ種族の少女。ショートしてカットの彼女は3号とは違い、軽めの銃を両手に持っていた。瞬間的に加速し、右へ左へ。敵の遠距離攻撃を避け、2丁の狙いを1つに絞り集中射撃。

 

 

「あ……! もしかして、インクを吐き出した勢いで瞬間移動をしているんですか?」

 

「自分、よう見とるなぁ!マニューバー使ってみる?」

 

『インクリングの知り合いか?』

 

「ウチの知り合い、大半インクリングや! 何いうとんねん!?」

 

『……3号の知り合いか?』

 

「ややこしー」

 

「まあ確かに……」

 

 

Mr.ゲーム&ウォッチのぼやきに同意しながら、発言者の本人の方を見る。さっき誤爆されていたからか、今の天気どうかなレベルのナチュラルさで、ダックハントの尻尾に火をつけていた。

 

 

「ワウーーーーーー!?」

 

「うわあああああ!? 何やってるんですか!?」

 

「落ち着け! 落ち着いて振り払え!」

 

 

テンパったオリマーの笛の音を背景に、インクで視界を潰されたボディ達の間を駆け抜け、同士討ちを誘発させる。

 

 

「ああ、ヒーローの先輩や。会うたことあらへんけど」

 

英雄(ヒーロー)!? 君、ヒーローなんだ!」

 

「なんか気づいたら、入ってたわ」

 

「ズコー!」

 

 

成り行きでなったヒーロー。

色々頑張って、それでも未だ1人だと3分の1 英雄(ヒーロー)なソラは拍子抜けだった。

 

 

「あ、ウチ、4号言うねん。そっちのお堅い仏頂面がソロ」

 

 

その通りだ、とばかりに無言で頷いた。全身至る所にできた細かな傷へ回復呪文を唱える。

 

 

「オレはソラ! オレも一応キーブレードヒーロー3なんだからな!」

 

「そのスリー、どこから来とんねん!」

 

「そっちこそ4はどこからだよ!」

 

「「人数だよ!」」

 

 

白と黒のキーブレード、約束のお守りと過ぎ去りし思い出を二刀流としてふるい、ボディ達を打ち払いつつ突進していく。

間を取ってその隣には、4号がヒーローマニューバーを撃っていき、空中で回し蹴りをはなつ。倒れた相手を踏んづけて胸へインクを撃つ。殺傷力はほとんどないが、そういうノリだ。

 

 

「すまない、助かる。ぼちぼち体力が尽きてくるところだった」

 

「役に立ったのなら何よりだ。しかし、ここに来て4号と共にあちこち探索してきたが……ここまであの人形達が多いのははじめてだ」

 

 

敵の背中にイオラをぶつけ、ぶっ飛んだことによって間合いに入ったボディを斬りあげる。

多くの敵がやってくる中、アストロンで肉体を無敵とし、そのソロもろとも画竜点睛。

クラウドの背中を狙い、走ってきたボディがすっ転ぶ。なかったはずのインクを踏んづけたのだ。念の力によって場所が変わっていた。

 

 

「詳細な理由は知らないが……! 近くで倒れていたこの世界の創造主に用があるらしい……!」

 

「なるほどなっ!」

 

 

倒れた相手へ剣先を突き刺し、一気に引き抜くことでトドメとした。

少しずつ、敵のボディは減ってきている。2人の戦闘員の加勢によって遠い目標ではなくなっているのだ。

 

 

「これでもそれなりに減らしたところだったんだ……! だが、2波が来て……!」

 

「ならば、もう少し楽に動こう……ラリホーマ!」

 

 

ボディが崩れ落ちて目を閉じていく。全員に効いた訳ではないが、ほんの少しでも効率よく倒せればいい。そうでなければ、全てをじっくり考える時間も取れないのだ。

 

 

「こっちにも頼むわ!」

 

「ああ……ッ!」

 

 

4号とソラが相対するボディ達にも同じようにかけようとするが、別のボディに行く手を塞がれる。剛腕のストレートパンチに、盾を介しても威力をころしきれずに左手が後ろへ持ってかれた。

 

 

「くう……!」

 

「これでどうだ……!」

 

 

追撃を喰らわせようとするボディは、胸部に受けた爆熱に距離を取るしかない。

 

 

「どうです!! やっぱり投げると言えばオリマーさんです! 私よりも高精度!」

 

「ちょ、ちょっと照れくさいぞ」

 

「ワヒー……」

 

 

ダックハントの尻尾がちょっと焦げた中、オリマーはピクミン投げから爆弾投げにジョブチェンジ。そしてダックハントは完全に火薬庫と化していた。

 

 

「助かる!」

 

 

爆煙を潜り抜けて、唱えたラリホーマは4号の目の前にいたボディを昏倒させる。

離れた4号の代わりにミュウツーが武器を用いて撃ち飛ばした。握っていたのは念の力を固めてスプーンの形状にした即席の得物だった。

 

 

「え、なにそれすごっ!」

 

『む、意外となんとかなるものだな』

 

 

初めてやってみたものだが、存外しっくりくる。

 

 

「スプーンって……料理の達人かなんかか!?」

 

「スマッシュブラザーズがびっくり戦闘集団ばかりになってきたな……」

 

「それはオリマーさんも……というか今更でしょう!」

 

 

そういうWii Fit トレーナーもトンチキ戦闘手段の使い手である。

 

 

「びっくり戦闘集団といえば……」

 

「何で何を思い出してるんですか!?」

 

「トリオの狙撃手はどうなったんだ? そもそもダックハントが戦えなくても単独での援護はできる、という話だったじゃないか」

 

「あ、そういえば……」

 

 

どっきり戦闘トリオのダックハントは、異次元からの狙撃が戦闘の要。そしてそれは2匹が戦闘から身を引いていても同じことであり、第三者の戦闘の参加とはまた別の話である。

 

 

「ピックミー」

 

「ワォ……」

 

「なあ、君たちは結局その狙撃手とどういう関係なんだ」

 

「グワッグアッグアッ」

 

 

ピクミン達が運んできた2匹に対して、屈んだオリマーが話を聞く。尻尾が焦げて元気のない片方を嘲笑うもう1匹。

 

 

「……まあ、話せはしないか」

 

「じー」

 

 

そして、そのもう1匹に忍び寄る松明もちの平面人間。

 

 

「って、何してるそっち!?」

 

「えっ? こっちはおしおきしてなかったなって」

 

「焼き鳥、ダメ、絶対!」

 

 

反射的にWii Fit トレーナーが松明を取り上げる。高いところへ持ち上げて、取り返さないようにする。

 

 

「やだー! かたほうだけなんてふこうへー!」

 

「確かに誤爆したのはダックハントに非がありますが!! 流石にこれはやりすぎですって!」

 

「やだー! せつじょくをはらすー!」

 

「これは復讐の域ですって!」

 

「(なんか楽しそうやん)」

 

 

戦いそっちのけで言い争う非戦闘員がちょっぴり羨ましい4号。こりゃイカンと集中する中、足元に何か毛玉のような、濃い紫の何かが動くのを見た。

 

 

「なんやねんコレ……」

 

「影蟲……!? ウォッチ!!!」

 

「えー!? まってまって、ほんとにしらない!」

 

 

その影蟲は残っていたボディを巻き込み、目の前で人を遥かに越す巨大な形状を形作っていく。

思わぬ形で変わる形勢に嫌な汗が止まらない。

 

 

「ま、コレもいいタイミングってことかな。他のスマッシュブラザーズのことも考えればこのあたりでクライマックスでしょ」

 

『誰だ……? テレパシーとも違う、ダックハントのトリオか……?』

 

「そうでもあるし、そうじゃない。でも、どうして今は声が届くのかは知ってるよ。今の僕は幕引き係であり、台本を書くペンみたいなものだから」

 

 

突如、頭の中に響く声。

理解できない内容を話すが、この影蟲の発生源はこの声だというのはわかった。

 

 

「でてこい!」

 

「そんなのおことわりだ、ってね。もうすぐ観客になるけど、その前にボスは必要だから用意しなくちゃいけないんだ」

 

「ボス……? まさか……!」

 

 

蠢く影蟲達は腕のような部分を振るって洞穴を殴り飛ばす。

 

 

「うわあああ!?」

 

「きゃー!!」

 

「わー!」

 

「バウウゥ!?」

 

「ワー!」

 

 

崩れる岩に巻き込まれないように走って飛び出すオリマー達。無理やり戦闘に引き摺り出したと気づくのは少し後。

 

塊でしかなかった影蟲達は、はっきりした色と形を生み出していく。

 

しかし、それらは異質だ。

白とピンクで彩る大砲のついた腕部に、走る赤いライン。

青と薄紫で彩る刃のついた腕部に、走る水色のライン。

その二つのボディを繋ぐ二輪のホイール。それを完全に模していたのならそうなるはずだった。

 

しかし、射撃腕の片方はハンマーがつき、刃の腕はボウガンのようなものがつき、全身の機械は取ってつけたような装甲や飛び出た銅線。

所々色がはげているどころか、まとまりがつかないほどいろんな色の破片をつけたような、つぎはぎだらけの修理をしていたような。

 

 

「いやあ、ね、この世界の隅々まで探してどうにか影蟲見つけたんだけど、キーラなりがスピリットにしたりボディで傘増ししたり……色々あって、どうにも本物にはならなくなっちゃって」

 

「これは……!」

 

「あっ、知らないか。そうだね、いわばこれは……()()()()()()()()()()、とでも呼ぼうか。さ、ここからがサドンデスだよ、さ、ファイト!」

 

 

ボディを薙ぎ払った上での登場。

非戦闘員を無理やり巻き込んでまでのボス戦は、ボディと同じように模造品との戦いだった。

 





◯タイトル
みなさんご存知、スマブラXのアドベンチャーモード。
キャラの出番格差とかカービィ活躍しずぎ色々言われる部分はあるけどもそれも含めてやっぱ神。やっぱ亜空間突入のムービーすこ。
シールによる強化を前提としているからか、難易度を上げると名に違わぬ難しさになる。


◯英雄と書いてヒーローと読む。
オリンポス関連ではこうなる。が、Bbsのザックスは英雄と書いてえいゆうと読む。


◯デュオン
作者は個人的にガレオムよりデュオンの方が好きです。
というのは置いといて、元のデュオンは亜空の使者のボスの一体。
射撃メインと剣メインの胴体を使い分けるタイプの敵。作者の小さい頃はディアルガとパルキアの色味だからディアパルって呼んでました()

パッチワーク化した結果、色々変わってますが詳しくは次回。


◯作者の気まぐれコメント
みなさまあけましておめでとうございます。
ここでは今まで、あまり後ろ向きなことを書かないようにしてましたので、今回も同じようにします。

ただ、これだけ。
無理な時に強引に前に進む必要はありません。
停滞でも構わないので、後ろは向かないように自分のペースで進んでいきましょう。

ちょっと照れくさいけど、この作品がほんの少しでもその力になれたならいいな、と思います。


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120話 太陽は昇る

 

「ラスボスっぽいの、でおったでー!」

 

「あ、そうそう。僕は()()()()を降りたから。もう、傍観者でしかない。だからダックハントの狙撃手としての役目はどこか遠くにいる盟友に任せるよ」

 

「さっきから何言ってるんだか……!」

 

「そもそもが予定外だったし……今はプレイヤーじゃなくて、黒幕でもなくて、ただの観客だ。だから……君たちの輝きを。この物語の行く末を……!」

 

「あ、おい!!」

 

 

それっきり謎の声は聞こえなかった。

高揚し、感極まったような声が徐々に小さくなって、そこから風が吹くように掻き消えたのだ。

 

 

「なんなんだあの声は……!」

 

「今はこちらに集中するんだ……!」

 

 

背後の洞穴、崩れた岩の隙間からはマスターハンドの白が垣間見える。とはいえ、どうにか時間をかけて退かさなければ、主の様子をみることも叶わない。その前に、目の前の敵を滅せねば。

 

 

「まずは様子見からだな……どう動くか調べて対策を取らなければ……」

 

「ここはもち! 先手必勝やろ!」

 

「もういい加減にしろ!」

 

 

2対のキーブレードから放たれた光、足元へ塗りたくられたピンク色のインク。

パッチワークデュオンはゆっくりと片側の腕を向けると、高速の弾丸を撃つ。

 

 

「ヘブっ!?」

 

「ぐえ!?」

 

「はやい!? こんなの見てから避けられるものじゃないです……!」

 

 

仕掛けた2人がお返しとばかりに撃たれる様に驚愕する。その弾丸は思っている以上に高速だ。フォックスのブラスター以上。威力もそれなりにありそうだ。

 

 

「(ソロのいうこともわかるが……少し手を出して敵のできることを探っていかないと……)」

 

 

そう考えたクラウドはパッチワークデュオンの懐へと迫る。遠距離は得手、ならば近距離は?

 

 

ブオン!

 

 

「くっ……!」

 

 

振りかぶった大剣での攻撃を中断し、両手を使ってでの防御に移る。銃の搭載されたアームのもう片方、槌のついた腕がボディ全体が回転して振り回された。

踏ん張ったはずの足が地面を抉り、両手の大きな痺れに苦虫を噛み潰す。さらに回転したことで青を基調とした面がこちらを向く。

 

 

『スピードとパワーの両刀か……ならばこの面は?』

 

 

適当に岩をサイコキネシスで動かし、ぶつけにかかる。それなりには大きいはずの岩はボウカンの一矢によって砕けた。貫通して上空へ飛んでいく。

接近戦に切り替えたソラ、ハンマーを握ったMr.ゲーム&ウォッチが右と左で挟み撃ち。振り抜かれた刃は近くのソロまで斬りつけ、しゃがんでかわした結果背後の、それなりに距離のある木に穴を開けて倒した。

 

 

「む……! 4つの腕にそれぞれ特徴があるというのか……!」

 

 

スピードの銃、パワーのハンマー。

範囲の剣に貫通力のボウガン。

 

4つの武器を自在に使いこなす機械、ということだ。オリジナルは射撃と剣の二刀流であったが、さらに手数が増えている。

 

 

 

「んー……つまり! 四方向に分かれて攻めやすいように動けばいいんや!」

 

「本当に簡単に言う……! グワー! ミサイル!?」

 

 

4号がへこたれず飛び込む中、オリマーへと追尾してくるミサイル。いかんせん、さほどはやくないので振り切れない。

 

 

「メラ、メラ、メラ!」

 

「た、助かる……腕で攻撃するだけじゃないな……!」

 

「ああ、まさに多彩か……!」

 

 

小さな火球がミサイルを撃ち落とす。

腕以外から飛んできた飛び道具。この巨体で4号を踏み潰そうとし、Wii Fit トレーナーが連れ出す中、剣メイン側からばら撒かれた小型爆弾。

ダックハントのボムとどこかからの射撃が安全に起爆される中、再びののしかかりでMr.ゲーム&ウォッチが潰される。

 

 

「うわー!」

 

「くっ、硬い……! 物理だと効果がないか……!」

 

 

救い出そうとクラウドが足元から切り掛かるも、びくともしない。槌の攻撃を防いだら、銃の腕が助走をつけて殴ってくる。

 

 

「それなら魔法か! ソラ! ソロ!2人をメインに!」

 

「りょうかい!」「ああ」

 

 

俄然と回り始めるオリマーの頭。集団で、ひとつの巨大な敵と戦うのは彼の得意なのだ。

頭部の大砲から放たれるレーザーをピクミンが犠牲になりつつも逃げる中、動いたことで開放されたMr.ゲーム&ウォッチが言い放つ。

 

 

「これね! どっちかかたほうのがわしか、こうげきできないのー!」

 

「先言えやー!!!」

 

 

どこから出しているのかわからないくらいの大きなツッコミが4号から飛び出す。

その通りに、ミュウツーが剣を念のスプーンで抑えているうちに槌のついたアームへと跳び蹴りを放つ。

 

──が、ホームランのごとく打ち返された。

 

 

「嘘つきー!!!」

 

「あれー?」

 

「ウォッチさんの知っているものとはかなり強化されているのでは!」

 

 

言葉には出さずともダメージの大きいMr.ゲーム&ウォッチを拾って遠くへ離れる。しかし、まだ射程圏内。アームからのショットが2人と、吹き飛んだ4号を襲う。

シェルターで耐えてゆっくりと着地する傍ら、追撃を警戒したオリマーが羽ピクミンをつけて機動力を上げて囮となる。パッチワークデュオンを挟んで向かい側では、ミュウツーが抑えてソラがファイガを放っていた。が、

 

 

「き、効いてない……!」

 

「くっ……イオラ……! 呪文はそこまで得意じゃない……!」

 

 

魔法でも、目に見えたダメージはないように見えた。それは機械っぽく見えるから、ダメージがないように見えるのか、それとも本当に効いてないのか。

 

 

『くっ……! かまいたち……!』

 

 

振るわれた剣が空を裂き斬撃となって、離れた位置のミュウツーを引き裂く。そして、その体全体を回し始めた。

 

 

「……ッ!? まずい、隠れ──!」

 

 

嫌な予感がしたオリマーの声は最後まで届かない。パッチワークデュオンが横回転したまま、さらに攻撃に移るとどうなるか。

頭部の大砲、銃の腕、さらにボウガンの腕。空中地中を除いた辺り360°になんらかの攻撃が襲うのだ。

 

 

「バッ……!」

 

「うっ……! うわあああ!?」

 

 

レーザーと銃撃が襲い、ガードが間に合ってもボウガンの矢が障壁を貫通する。

 

 

「……ッ!?」

 

 

オリマー、彼に付き従うピクミンも例外ではない。巻き込まれた彼らは既に数えるのも不可能じゃないほどに減少していた。

 

 

「(赤が……6、黄色7、青10、紫1、白が3、岩2、羽が3……!)お前……!」

 

 

怒りが。小さい体から溢れてきそうだ。

それでも頭は冷静に回していた。攻撃に長けたピクミンを後ろへ回し、数の多い青を中心に。

 

 

「ボウガンはミュウツー、ハンマーはソラ、銃はクラウドに頼む! 他はそれぞれ援護に回れ!」

 

「剣は!?」

 

「私がいく!」

 

 

最低限だけを言った指示。特に指揮官を決めてはいなかったが、それぞれが小さくないダメージを負っている。指示の元の方が疲労の管理もやりやすい。

 

 

「援護言うて!」

 

「そもそも隙もないですし!」

 

「どうしよー」

 

「ワウ……!」

 

 

パラシェルターがエネルギー弾を受け、ボウガンの一矢をかわし、Mr.ゲーム&ウォッチの吹いた空気や異次元の射撃が剣とハンマーの軌道をズラす。

 

 

「ならば……! ぐう……うっ!」

 

「あっ!」

 

 

遊撃で1人自由に動くソロは雷の魔力を込めた剣を銃アームの繋ぎへと、うめき声を上げるほど力を込めて振り下ろした。

弾かれはしたが、明らかに傷がついて内部が覗けるようになったからだ。

 

 

「一度距離を!」

 

 

サイドではソラがハンマーの攻撃を二刀流で受け止めている。傷をつけたソロが標的になるだろうと感じ、彼らにも一旦離れるよう声を上げた。

 

 

「わかっとる! ……あれ?」

 

 

 

 

ガッ、ガッ、と何か勢いのあるものを無理やり堰き止めるような音。

 

 

パッチワークデュオンは距離を離さまいと動こうとしたはずだが、上体だけが前のめりになって地面に伏す。よく見れば、向こう側も同じようになっている。

 

あっ、と向かい側、Wii Fit トレーナーが何かに気づいた。

 

 

「そりゃあ……そうですよね。同時に前に動こうとしたらこうなりますよね……」

 

 

オリジナルのデュオンは剣側と銃側同時に攻撃はできない。

 

その弱点は克服されたと思いきや、まったく別のところに弱点をつくっていた。

そして、それは光明。

 





◯タイトル
大神のラスボス戦。
同作品の他BGMと同様に和風系のBGM。ストーリーの展開も合わさって、感動と涙が溢れながら負ける気がしないボスに挑むことになる。全人類大神やろう。ゲーム部分は難しくないぞ!
みんなで決めるゲーム音楽の投票では、第2回のみ順位を大きく落とすも、そのせいかそれ以外ではほとんど5位以内をキープ。そろそろ殿堂入りにした方がいい気がする。


◯謎の声
「前まで謎声と狙撃してた者だよー。というか、それ以外でもしょっちゅう出てるんだけどね。え? ヒント? 仕方ないなあ、最初はル!」


◯パッチワークデュオン
コンセプトとしては、どこでも遠近対応。
追加装備として、打撃武器のハンマー、貫通性能のボウガンを装備。実はそれと見た目以外はあまり変わっていない。近づけようとした痕跡がある。
そして最大の変更点として、剣サイド、銃サイド、どちらも同時に攻撃可能。これは広い3D空間で戦うからこその変更でもある。


◯現在のピクミン
・隊列
赤:6匹 黄:7匹 青:10匹 紫:1匹 白:3匹 岩:2匹 羽:3匹


◯作者の気まぐれコメント
そろそろ今章も終わり、最終章に移るのですが……
みなさま、他の章がどこまで進んだとかどの程度覚えてらっしゃいますか?

日本はポケモンsvの番外編派、スプラのフェス派、久々にやりたくなったゲームがあるからパッケージを開けてみたら別のゲームが入っていて目的のゲームを探すのに苦戦した派の3勢力に別れ、混沌を極めていた……
みたいにうろ覚えの方がいらっしゃいましたら、次回の後書きで補足しようかなと考えているのですがどうでしょう?


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121話 灯火の星

 

パッチワークデュオンの体は、前にも後ろにも上体となる箇所がついている。

 

わかりやすく体験するならば、2人の人間が背中合わせで腰あたりを紐か何かで縛ってくっつけるだろうか。

 

その状態でそれぞれが前へ行こうと上体を倒せば当然進まない。

どころか、前のめりになって倒れる。

 

 

「ああっ! もうなんで私気づかなかったんですかもう!」

 

 

Wii Fit トレーナーが本気で悔しそうな表情を見せる。相手は機械で専門分野とは言い難いのだが、それでも構造上の欠点に気づかなかったことが悔しかったのだ。

 

 

『……! 借りるぞ、いけ!』

 

「フシャー」

 

 

ねんりきで動かした白ピクミン。僅かに残ったそれらがミュウツーの手引きによってパッチワークデュオンの歩行部である車輪まで進み、吐き出した毒がホイールを溶かしていく。

 

 

「逆に怖っ!? あんなちっこいのになんやあの威力!?」

 

「(毒というよりは酸だな……)」

 

 

膝の高さもないほどの小ささなのにこの威力。

片方のホイールが崩れて斜めのままになった相手は、もはや満足に動けない。

 

 

「イッシッシッシッシ」

 

『想定以上に……ならば、毒の雨でも降らせよう!』

 

「すまない、ピクミンは私の指揮下……まあいいか……」

 

 

また白ピクミンを浮かせると、辺りに構わず毒を吐き続ける。アームで防ごうと動いてはいるものの、触るだけで効果がある毒をその方法では防げない。金属っぽい体がまだらに薄くなって汚れていく。

 

 

「ひえ〜……」

 

「ヒーローシェルターが穴だらけや……」

 

 

ダックハントを抑えながら、エアロガで弾き飛ばしたソラ、穴が開いてもヒーローシェルターで防いだ4号。

 

 

「せ、責任者でてきい! ウチは完全にキレたで!!」

 

「わー! 遂にわかりやすいダメージが!」

 

 

怒りのままに蹴っ飛ばした4号の足、迎撃しようと向けられた銃口を90°真上に曲げてしまった。

 

 

「さっきまできかなかったのにー!」

 

「さっきの酸で脆くなっていたようだ!」

 

「さんじゃなくてどくー」

 

 

無視して横一閃に振られた刃は、ハンマーの頭部を完璧に粉砕していた。切断よりも破壊の面が強くなり、密かに威勢もよくなっていく。

 

 

「こっちは丸裸! これでどうだ!」

 

 

丸腰になったところでソラのフィニッシュ。2対のキーブレードから放たれた黒と白の光は、相手を焼き焦がしていく。しかし、トドメには遠い。いつものキングダムチェーンを握りながら首を傾げる。

 

 

「あれ?」

 

「さっき腕部で毒を防いでいたから、多少は耐えることができたか……だが、さっきよりはダメージもあるはずだ!」

 

 

腕部で避けた劣化は、決して無意味ではない。

アームほど胴体部分は毒を受けていなかったために、まだ硬さは保っていた。

 

それも、『効いていない』のままであれば、相手が勝る理由になっただろうに。

 

 

「片方が落ち、圧倒的な防御力も削れた……機動力も失ったのならば、もう分かれる理由もない。ゆくぞ」

 

「んー……まあいいけど。たたかうのもたのしいし」」

 

 

射撃サイドへと回り込む他ファイター。得物の先が追いかけようとしても、体は回らない。しかし、動かせない訳ではない。

 

 

「……ッ! まだ飛び上がって……!」

 

 

4つのアームを地面につけて飛び上がる。

ホイールをダメにされれば回転しなくなり、いわゆる歩行ができなくなる。しかし、ジャンプは別だ。

 

飛び跳ねたパッチワークデュオンは、空中でその身を捻らせて、まだ無事な剣サイドをこちらに見せてWii Fit トレーナーとダックハントにのしかかる。

 

 

「うっ……!」

 

「トレさんが!? そこを退けー!」

 

 

奴の背後には、動くことを忘れたマスターハンド。あと崩れた元岩肌現岩と小石。

滑り込んで今度はホイールを完全に壊そうとしたが、その前に剣が振り下ろされてガードしなければならない。

 

 

「どうしたものか……あの位置では回り込めない……っと、」

 

 

剣の横側でソラが引っ叩かれた。射撃によって視界があると思わしき顔部にダックハントの爆弾が届く。

ボウガンの連射を辺りに撃ち続け、少し離れたソロにも届く。天空の盾で防いだはずが、大きくのけ反った。伝説と呼ばれる盾には傷ひとつなかったが、威力が殺しきれてない。

 

 

「いってー……」

 

「守りもろうなっても普通に強いやん……」

 

「ワウ……」

 

 

四つの武器の内、半分が無力化され機動力と防御力が削がれてもそれでもまだ強敵なのだ。

 

 

「さっきと同じように、腕のところを壊せませんか!?」

 

「それが丸いか……囮で誘導して他の誰かが……というのがわかりやすいか」

 

「なら、その囮、私がやります。反射神経は自信があります!」

 

「……だが」

 

「どのみち私にはアームを壊したりできないので」

 

 

理屈はわかるとはいえ、積極的に囮へ行かせるのは憚られる。しかし、それ以外の説得理由がなかった。まだ、そういう青さはクラウドに残っていた。

 

 

「ほら、こっちです!」

 

 

かなりの距離まで近づいたWii Fit トレーナーに狙いを定め、刺突の剣を貫く。くるりと身を翻してかわし、移動は最低限に。そこへ身を引いた左側からボウガンの矢が射られる。

 

 

「しまっ……!」

 

 

まっすぐ胸部に射られた一矢を阻んだのは、プラスチックの箱のようなもの。その先から、どんどんミサイルのようなものが飛び出す。

 

 

「おうりゃ! こちとら射撃なんていっつもみとんねん! ちょっと早いからっていい気なんなよ!」

 

「4号さん!」

 

「火力なし子ちゃんはうちも同じや。女だって体張るんよ! ド派手な箇所は男にまかせ!」

 

 

4号もまた気を引く役割に入っていく。彼女は美味しいところを他の者たちにまかせた。

 

 

「バウッ、ワン!」

 

「おとこ」

 

「うん! ……で、どうすればいいの?」

 

「おとこ……」

 

『あの腕をもぐなり焼くなり好きにしろ、ということ……らしい』

 

「おとこ……?」

 

 

ちょっと性別の概念が壊れてきているソラを置いてきぼりにし、マルチミサイルの勢いにのけ反るしかないパッチワークデュオンへ攻勢にでた。

 

 

「ウウウッ!!」

 

 

さらにダックハントのクレーが激突し、短くない間、視界が不明瞭に。

 

 

「ほらほら、こっちや!」

 

「いーえ、こっちです!」

 

 

音を頼りにした敵が振り下ろす先には誰もいない。マニューバーによるスライドと、身体能力があれば、当たらずに誘い込める。

 

 

「よし……! ここです、ソロさん!」

 

「使えなくすれば、最低限でいい。これで……」

 

 

そうして、天空の剣は煌めく。

視界の潰れた隙を見てボウガンの弦を切り落としていた。純粋な糸でできたような拙い造りではないが、使い手も得物も優秀なれば、弱いはずもない。

 

 

「わっ!」

 

 

最後の武器となったからかは不明だか、まるで激昂したように凄まじい速度で斬り続ける相手。しかし、Wii Fit トレーナーには通用しない。

 

 

「遅くはないですが……ボウガンよりはよっぽど遅い!」

 

 

横に後ろに跳んでかわし続ける。回避だけに専念すればどうにもならない。壁を背にしているパッチワークデュオンは、追えば無力化した後方が露呈する。

 

 

「これでいい……!」

 

「はいっ!」

 

 

地面にめり込むほどに振り下ろした一撃を、他の歴戦の猛者は見逃さない。合体剣で抑え込み、なにこれーと、Mr.ゲーム&ウォッチが加勢する。

 

 

「よし、ここだ!」

 

 

投げられ、はりつく黄ピクミン。振り払うことができない。ミュウツーの強大なサイコキネシスによって抑え込まれているからだ。

 

 

『ハッ──!』

 

 

そこへ念の力でできたスプーンが形を変えて肩部分へまきつく。そしてギュッと絞るように動き、肩から剣をもぎ取っていった。

 

 

「はりついているのは全て黄ピクミンだ、全力でやれ──!」

 

「よーしっ!」

 

「ああ」

 

 

元気よく、そして短く、意思を伝える。

 

 

「いかずちよッ!」

「ギガデイン!!」

 

 

巨大な、強大な雷が落ちる。それは、空気を揺らし、大地を震わせ、そして黄ピクミンをとても元気にさせた。

 

 

「オーーーーーーンッ!!」

 

「うわっ!」

 

 

まったく目に優しくない光があたりを照らす。

全員がしばらく目を開けられなくて、ようやく開いた時に目にしたのは、装甲が所々剥がれ、影蟲が散っていく崩れたパッチワークデュオンと、未だ元気に発光を続ける黄ピクミンの姿だった。

 

 

「ま、まさかここまでになるとは……ゲキカラスプレーかなにかか?」

 

「え、なんかやらかしたかな俺たち?」

 

 

もしかしてあまりよくないことをしてしまったのかと急に不安になっていく。

 

 

─その状況で、反応できたのは奇跡と言える。

 

 

「うわっ!?」

 

『…………』

 

 

まだ登場するボディ達、振るう細身のファルシオンをなんとかキングダムチェーンで受け止める。

 

 

「うわっしつこっ!? まだくるんか!?」

 

『さっきの光で呼び寄せたか……!』

 

「クゥゥー……」

 

 

勝利の余韻に浸る間もなく、結局は戦うことになる。疲労の多い肉体に鞭を打って奮い立つファイター達。

 

 

 

──しかし、敵を引き寄せたこの光。

 

──それは各地に散っていたスマッシュブラザーズを呼ぶ灯火の光にもなったのだ。

 





◯タイトル
みなさまご存知、スマブラSPのアドベンチャーモード。
初報のワクワク感は今でも覚えてます。


◯ピクミン
ショートムービーの毒を吐いて金属を溶かす白ピクミンやイルミネーションになる黄ピクミンなど、見てても面白いし参考になります。
ただちょっと持ち上げ過ぎた感はある。


◯マルチミサイル
スプラトゥーン2からのスペシャル。
談合とかいいイメージはないけど、ロックオンすることで擬似的なポイントセンサーになったりと汎用性抜群。
ここにきてようやく、インクリング系統にスペシャルを使わせるという戦法を思いついた。


◯今章のまとめ
これで個々の章は終了となり、ここから完結に向かうことになります。
さあ、最終章はどうなるのか。ところで、ラスボスになれそうなのまだいなくない……?

今章としては、はなから戦闘続きの章になるのは予想がついてました。
まあ、結構大変でした。ストーリー進めるのとは違って、戦闘は大まかな流れをつくったら後は発想の勝負ですから……
そうなると、1番アドリブ感が大きい章かもしれないです。
とはいえ、合体剣での戦闘、ソラのキーブレード変形、果てはポケスペ 版ミュウツーのスプーンを武器にするまで色々やっちゃいましたね。しかし、その分非戦闘員の出番が薄味で……1人で十分だった気もしますが、それは他とのバランスもありますから難しいところ。
ただ、楽しくはありました。

では、最終章。実際にこんなセリフがあるかは知りませんが、衝動的に予告編もどき、つくってみました。




──最終章。

「お前達の仲間と同じ、私たちは2人で1人。1人で2人。そして私は、慰めだ」

「あの方の誇りを……穢せるものか……!」

「またねって……そう言って……言われて……それが真実になったのははじめてだった」

「あなたがいるなら……もっとはやく会えたなら……この道に行く必要はなかったかもしれないのに……」

「ああ──ああ、そうか、我々は我々というだけで何でもないのだな」

あーあ、やらかしやがった。


──最終章、来週始動予定。


でも、そういうの全部、楽しかったよね。





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Super Smash Brothers “Assemble"
122話 まえの セーブファイルにもどろうとしてもムダだよ。


 

 

ハロー!

フラウィだよ。おはなのフラウィさ!

 

 

 

嘘だよ。

ルネだよ。あのときにんげんだった ルネだよ。

ちょっと二つ名みたいだけど、実は事実。あのときがいつだって? さあ、いつの話なんだろうね。

 

 

それで今は……伝説の木の下で… って訳でもないね。

伝説でもないし、なんなら僕がいるのはもっと上… いや、世界の根本だ。木はまあ、ボディを捨てたところだよ。今頃他のボディと共に誰か襲ってるんじゃないかな? えっ、どうでもいい? それもそうだね。

 

 

 

ここまで頑張ったんだ。あとは単純に楽しむだけさ。そもそも観測者とでも呼ぶべき僕がここまで干渉するなんて初めてだったし。何回もやり直しちゃった。

どういうことか、だって? そんな難しいことはしてないよ。

 

 

 

 

 

 

 

親におねだりして買ってもらった?

何ヶ月も前からおこずかいを貯めた?

がんばってバイトして手にいれた?

タイトル画面を見たときの気持ち、憶えてる?

攻略法をおしえてくれたアイツは仲良しだった?

でも、そういうの全部、楽しかったね。

 

 

 

 

 

 

 

 

忘れている人もいるかもしれないけど、僕は過去の自分に記憶を明け渡す力がある。

 

 

ああ、別にその力でなんでもかんでも好き勝手にやってた訳じゃないんだ。今回が初めて。

だって僕が干渉する前のこの物語はワンサイドゲームでどこにでもケチつけられるほどにつまらなかったからね。

 

 

 

マスターハンドが力を託したのはマリオになっちゃうし、そもそもこの事件に関われない人がいっぱい出てくる。

 

 

こんな物語、君達の…盟友の元に届かないから僕が腰を上げたのさ。没った失敗作を無理やり成功させたってこと。同じ目線を持っていても君達が干渉できるのはそういう物語だけだ。でも、僕なら作り変えられる。

 

 

干渉するのはこれで終了。

僕も観測者として楽しもうか。

スマッシュブラザーズはどんな結末を辿るのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しの間、ほんのちょっと気絶していたようだ。

瞼にしっかり力を入れて、なんとか目を覚ます。

 

 

「ここは……」

 

「ううっ……」

 

「あっ……ルキナちゃん!」

 

「ここは……あの世界に戻ってきたのですか?」

 

 

同じように気絶していた女性の声で、思い出してきた。ケンとルキナは、大乱闘のステージとしていた場所から落下してしまったのだ。

あたりは何か、朽ち果てた遺跡のような建造物。スマッシュブラザーズが拠点のように扱うあの世界に間違いない。

 

そして、記憶が確かならばもう1人。

 

 

「う……ん……私は……」

 

「──ッ!」

 

「ちょっとルキナちゃん!?」

 

 

シャキンとほとんど反射的に、仲間と同じ姿をした敵の首へ、剣を向ける。

まだ覚醒しきらないまま、座っている少女は少しぼんやりしていたが、その音で置かれている状況をはっきりと理解した。

 

 

「……はっ、見たらダメ、でしたよね」

 

「あいや、そうじゃなくて……彼女にも色々あったみたいでさ」

 

「…………」

 

 

その敵、彼女はキク。

目覚めてから、剣を向けられているというのに、それだけを理解したまま視線を横に滑らせた。ケンを視界に捉えたまま、動かない。

 

 

「……ねえ」

 

「ん?」

 

「どうして、あんたまで落ちてきたの、見られたらまずいってわかってたんでしょ?」

 

 

信じられない、と呆然とした表情でボソボソと話すキクに戦意はかけらも見当たらなかった。

 

 

「どうしてって言われてもなあ……笑ってて欲しいからな! 君も君なりの事情があってこんなことをしてたんだろうけど、そういうの関係なしに笑ってる顔が見たかったんだ! なんとかしたかったんだよ!」

 

「……こんな時にナンパですか」

 

 

あ、いやそうじゃなくてー! と大声でルキナに弁明する。彼女の方へ振り向いた彼だから気づかなかった。ルキナは気づいた。色んな意味でギョッとした。

 

 

「え、あの、その、みた、かった? わた、わたしの、えがおを……? え、え、え、え」

 

 

エイトに呪いが効かないと気づいた時など比ではないほど彼女の顔は紅潮していた。うっすら涙目になって、何かの汗が吹き出している。

 

 

「ま、まさかケンさん……!」

 

「いやいやいやいや! 他意はない、他意はない!」

 

 

ルキナは女性だからか気づいた。

ケンも既婚者だからか気づけた。

 

──完全にオトしてしまった─!

 

 

「(ど、どうするんですか!? これ!)」

 

「(そんなこと言われてもォ!)」

 

 

─ザクっ、ザクっ

 

 

「(な、ならこれを機に色々聞いてきてください!)」

 

「(ヤだよ! そんな恋心をダシにするようなこと!)」

 

 

 

 

 

────「何をしているの?」

 

 

「あっ……」

 

「ルフレさん……?」

 

 

聞き慣れた声色。

所々戦いのせいか服が乱れている以外、通常と同じなのに、穏やかな微笑みから何故か薄ら寒いものを感じ取った。

ルフレはルキナではなく、キクの方へ向かって話を続けた。

 

 

「君の役目は反乱分子の捕縛と監視、それに見極めだっただろう? どうしてここにいるんだい?」

 

「あんたがどうしてそれを……」

 

「ほら、僕は、()()()だ」

 

「あっ、ダブル……」

 

「えっ? ダブルって一体……」

 

 

敵であるはずの2人の会話から、まったく知らない人名が登場する。

だからわかった。この男は、ルフレではない。

 

 

「……貴方は誰ですか」

 

「あっ、ルキナ。無事でよかった……イーリスで別れて以来だったから心配……」

 

「あの人の声で呼ぶな! 薄気味悪い!」

 

「……ルキナ?」

 

 

小首を傾げる。まるで、本気で意味がわかっていない様子だった。どうして敵意を向けられているのか、理解できていないと。

2人を見比べて、視線を右往左往させるケンはどうすればいいかわからずに口を開けない。ケンにとってはルフレだが、絆の深いルキナの目が見抜く事実が嘘とも言えず。

 

 

「ダブルは誰かになる力を持ってるわ! でも、今叩いたらそのルフレって人、本人にまでダメージが及ぶ!」

 

「……! なぜあなたが……!」

 

「キク……? 君はどっちの味方なんだい?」

 

「わ……私は……」

 

 

少し言い淀んで、ゆっくりと、はっきりと言った。ケンを見て。

 

 

「あんたがいるなら……もっとはやく会えたなら……この道に行く必要はなかったかもしれないのに……」

 

「遅いかもしれないけど……私は! この人の力になりたいっ!!

 

 

片手の平から飛び出したグラップリングビームがダブルを縛り上げる。それはキクが取り込んだダークサムスの力であった。

 

 

「…………さっき私に使った呪いは!」

 

「ル、ルキナちゃん!?」

 

「今使うと、ルフレって人の魂引っこ抜いちゃうの!」

 

「敵……」

 

 

ボソボソとルフレの姿をしたダブルが呟く。

こうやって拘束するのが最適解。それは彼本人と自覚している。

 

 

「貴方は、ルフレさんじゃない。どれだけ姿を取り繕っても能力や記憶を真似ても、体の状態が同じでも! 貴方自身の意思がそこにある以上、()()()()()()()()()()!!」

 

「……ッ! ……!」

 

 

絶句したような顔で、そして黙り込んだ。

表情が見えず、俯いた体勢で、いつの間にかルフレ自身の姿からルフレのボディの姿に戻っていた。

 

 

「ああ──ああ、そうか、我々は我々というだけで何でもないのだな」

 

 

もう、誰にもなれない。

ボディの姿を永遠のものとしようが、本来のファイターを抹殺しようが。

 

誰かにはなれない。

 

 

主人公にも、敵役にも、立役にも、黒幕にも、代役にも、脇役にもなれない。

 

ヒロインにも、ライバルにも、エキストラにも、アンサンブルにも、ダブルキャストにも、ナレーションにも──────

 

 

もとより、自分は何でもないのに!!!

 

 

 

 

「……ッ!」

 

 

今までにない力でビームが引っ張られる。

発射したままのビームはキクと繋がったままだ。

 

 

「きゃっ……! あぅっ!?」

 

「なっ……仲間じゃなかったのかよ!」

 

 

空中に投げ出され、引き寄せられたキクの腹部に鋭い拳が突き刺さる。一切の躊躇もない打撃。

キクから裏切ったとはいえ、仲間であったはずなのに慈悲も躊躇もない攻撃にケンが堪忍袋の緒が切れた。

 

 

「……我々は。誰でもない。何にでもない。どんな舞台でも立つことを許されないならば、全ての舞台(世界)は必要ない!! 我々が立つ舞台(世界)を我々が創る!

 

「キクちゃん!!」

 

 

ぐったりしたキクを俵のように抱え、冷たい冷たい目で全てを眺めるダブル。

だが、先程キクが言っていたことを考えれば、今の状態でも、迂闊に攻撃はできない。

忌々しげに睨みつけるしかない自分に腹が立つ。

 

 

「あの創造神よりはこちらの方が聞き分けがいいだろうな。あなただけは生かさなければ」

 

「どうするつもりですか……!」

 

「そうだな……()を使わせてもらう」

 

 

唐突に自由な左腕を振る。

周囲に広がる電撃。また変化した。ファルコじゃない。ファルコのボディ。

 

 

「ナカツナの……!」

 

()の力も、必要だからな。だが、ここではうるさいか」

 

「……待てっ……!」

 

 

ふっと、2人の姿が見えづらくなっていく。痺れたままの足をなんとか動かして追うが、見失ってしまった。

 

 

「キクちゃーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうでもいい。どうでもいい。必要ない。だから、この力に求めるのは破滅の力……この世界を滅ぼせるほどの力を……!」

 





◯章タイトル
Assembleはいわゆる集合、集まるとかいう意味。
◯ーベル好きな方なら聞いたことあるかと。

◯タイトル
UndertailのNルート、最終盤のフラウィのセリフ。
今まで普通に不殺ルートを進んでいたら、確信的なメタ発言はここがはじめてになる記憶。(コマンドぶっ壊したりはあるけど)


◯あのときがんばった 〇〇
ポケモンの二つ名。
いわゆる努力値MAXの子向けリボン。


◯****
「どんな世界がまっているのだろうか」


◯10章終盤のあらすじ
5章にて、ファイター達が彷徨っていたのはマスターハンドの力を奪い取ったキクの作り出した世界だった。
様々なステージで潜伏していたキクを、フォックス達は見つけて戦闘となる。しかしその果てにキクと、彼女の行動に事情を察したケン、そしてキクの力に巻き込まれたルキナの3人はステージの奈落へと落ちていってしまった。



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123話 エンディングまで、泣くんじゃない。

 

背後から力づくで押さえ込んでくるボディを肘打ちで退かし、ジャンプしたルカリオははどうだんを連射してボディ2体を沈める。

剣を受け流し、2人の木槌で止めたところにファルコンパンチで吹き飛ばす。

困らないほどはあったはずの聖水の残量が気になりはじめた程度には彼らは戦っていた。

 

 

「な〜んだコレは? 戻ってきたはずなのに景色は変わらずボディばっか!」

 

「愚痴を言っても状況は変わらんぞ。手を動かせ」

 

 

惑星PNF-404、哀しき獣の塔からからくも脱出してきたファイター。アイスクライマー、ルカリオ、シモン、キャプテン・ファルコン、リドリー、リュウ、キングクルール。

そして、スマッシュブラザーズではなくとも、縁あって共に戦線を張る、黄昏の世界のリンクとガノンドロフ、そしてアンブラの魔女の生き残りジャンヌ。

チハクの残したボディ達との混戦をからがら潜り抜けて大乱闘の世界に戻ってきた彼らだったが、そこもまたボディが蔓延っていたのだ。

 

 

「全て相手にしている時間はないか……!」

 

「どうにか切り抜けるぞ!」

 

 

疾風のブーメランでひとまとめにしたボディ達に銃弾の嵐。そして、魔神を呼び、巨大な体躯から真下へ大剣を一刺し。

 

 

『進むぞ!』

 

「……ジャンヌ。さっきの技は今は使わない方がいい」

 

「視線など気にしてる場合か」

 

「いやもっと……なんでもない」

 

 

リンクは口をつぐんだ。ベヨネッタも視線を気にしないどころか、どう魅力的に見られるかを意識していたような気がする。精一杯良いように言及したらだが。

男ばかりの上に子供までいる年齢の団体の中、平気な顔して露出を増やせる女性がいることを理解したくなかった。

 

 

「湖のところに行こう!」

「むらびと達がネッシー探すって言ってた!」

 

「そうだな。ここで起きたことも知っておきたい」

 

「OK! 先陣切らせてもらうぜ!」

 

 

ボディの相手もそこそこに、キャプテン・ファルコンが先頭に立つ。スピードとパワーを兼ね備えて先手を取るにはぴったりの人選だ。

足の遅いガノンドロフを殿とし、走っていく。

 

 

『……! キャプテン・ファルコン、前だ!』

 

「えっ? うおっ!?」

 

「いったー!」

 

 

ルカリオの声、まっすぐ飛んできた子供サイズの人影を思わずキャッチする。それはボディではない。トゥーンリンク本人だった。

 

 

「トゥーン!?」

 

「あー! みんなー! それに……ボクのよく知るリンクだぁ……!」

 

「ひさしぶり、トゥーン。でも、後にしよう」

 

 

受け止めた存在が仲間であること、そして一番身近であった頼れるお兄さんと久々に会えたことに大きな目が緩んでいく。

 

 

「そうそう! 一緒に来て! ジョーカーとマスターハンドを会わせなきゃなのにいっぱいボディが……!」

 

「え!?」

「なんでジョーカー!?」

 

『後でいい。加勢するぞ!』

 

 

加速していったルカリオが飛び込んでいった先、多くの仲間達とボディ達との混戦の真っ只中だった。

 

 

「わ、ル、ルカリオ!」

 

「ここで援軍か! 頼もしいな!」

 

 

ロックマンがはじめに気づき、モルガナのナビが彼らに伝わる。ネスとリュカが回復のPSIを飛ばす中、他の者達も合流する。

 

 

「リ、リンク!!

 

「後にしろと言っている!!」

 

「無視されててドンマイ、おじさん!」

 

「どうでもいいわ小僧」

 

 

思わず本人に飛び込む子供達にジャンヌの叱責が飛んだ。

足元を斬りつけて体勢を崩させて、闇の魔力が宿った拳が突き刺さる。クローショットで無理やり引き寄せた敵を討っていく。

 

 

「よっ、リュウ! 普段とは違うがこういうのもいいんじゃねえか? Brun Knuckle!」

 

「竜巻旋風脚! もう少し、的を寄越してくれてもいいんだぞ?」

 

「ヘッ、言うねえ! より数を倒した方が奢ってもらうことにしようぜ!」

 

 

鍛えられた拳が、鋭く振りかぶる足が、雑兵のようにボディ達を砕いていく。少しずつ敵の数も減っていく中、鋭くも暖かみは消えていない、ドミノマスク越しの眼差しを見た。普段はちょっと茶化している相手。

 

 

「おっと、ジョーカー? おサボりは良くないぞ? えっーと確か……働かざるもの……」

 

「お前がサボりじゃん」

 

「フガッ!?」

 

 

こどもリンクに鼻を摘まれた。心底、可愛くねえ。生意気な子だってもっと可愛げがあるぞ。

頭は冷静でいたこどもリンクが、別の時間の勇者と魔王を見て少し顔を歪めながらも、状況を説明する。

 

 

「今重要なのがジョーカーなの。戦えないむらびとと、ジョーカーを守って、マスターハンドのとこまで連れていけばなにか動くはず」

 

「ごめんなさぁい!」

 

 

傘で目眩しをしながら、慌てふためくご本人。勿論こどもリンクに非難の意図はない。

足止めもされたボディをクッパが切り裂いていく。

 

 

「……! 湖に何かいるぞ」

 

「湖……ですか!?」

 

 

側の湖が波打つのをシモンは見てしまった。ネッシーの捜索隊が先程までを思い出して背筋に嫌な汗が流れる。どんどん荒れていく水面から、1匹の巨大な生物が浮上した。口から激しい激流を吐き出し、辺りを荒らしていく。

 

 

「プルオオオオオオオオォッ!」

 

「「ネッシー!!?」」

 

「トゥーン、トゥーン! シャッターチャンスシャッターチャンス!! ベルベルベル!!」

 

「明らかに敵意の目だってー!!」

 

 

誘われても登山のために諦めたネッシーを間近に見て大興奮。まだ金稼ぎを諦めていなかったのか。

 

 

「さっき倒したプレシアなのか!?」

 

「これが本当の姿ってことか……だが何度出てきても結果は同じだ、やっちまえオマエら!!」

 

 

再びあの少しずつダメージを与える霧を生み出し、視覚の妨害と同時に自分の戦いやすいフィールドをつくりだす。

 

 

「また……!」

 

「ふん、まともに相手をする必要もない。行け貴様ら。1人で十分だ」

 

「はあ? 何言ってんのこいつ」

 

 

ハンマーのように振り回した長い首をガノンドロフは受け止めた。そこへクッパがその剛腕で首を弾き飛ばす。

 

 

「な〜にが十分だキサマ! ワガハイはキサマに騙されたこと忘れてないぞ!」

 

「父さんを騙したぁ!? じゃあ誰がおまえの言うことなんて聞くか!」

 

「騙される方が悪いわ」

 

「もう! 喧嘩する余力は相手にぶつけてよ」

 

 

呆れかえるこどもリンク。頭が痛くなってきたのか抑えて言う。器用に剣でまだ残っているボディの相手をしながら。

 

 

「別に1人だけ残す必要ないでしょ。行きなよ。あの3人はぼくが面倒見てあげる。さっさとジョーカー連れてけ光の勇者」

 

「…………」

 

 

無言で並ぶリンク。

ため息で返したこどもリンク。

 

 

「逆にこっちの方が人数が必要だ。数人とそのジョーカーだけでマスターハンドととやらのところに行け!」

 

「だが……」

 

「だいじょうぶだよ!ジョーカーばかりにいい顔させないし!」

 

 

リーフシールド、スパークショック、フレイムブラストと次々と武装を変えてボディ達を翻弄する。その上では呼び出された魔人がプレシアを直接押さえ込んでいた。

 

 

「……わかった」

 

『ならば私も行こう。この濃霧を確実に抜ける』

 

 

視覚のハンデをものともしないルカリオが立候補する。後は治療可能な者と純粋な戦闘技術。

 

 

「どうだ? リュウ?」

 

「俺か?」

 

「パワーがあってもアイツらに着いていけなきゃどうしようもない。だが、オレはネッシー捜索隊の隊員だからな。こいつらを置いてはいけない」

 

「ああ、わかった」

 

「よっしゃ! ジョーカーくんを任せたぜ!」

 

 

背中を勢いよく叩き、リュウが受け持っていたボディも引き受ける。

 

 

「リュカ! 行って!」

 

「僕!?」

 

「回復とか、できた方がいいよ!それに他のみんなにも会えるかもしれないし……」

 

「……うん。それじゃあいく」

 

 

他のみんな。そうだ。

レッド自身は戦えない。この惨状で目の届かない者たちはどうなっていてもおかしくない。

時間稼ぎにしかならないここで戦うより、ジョーカーと共に行った方がいいだろう。

 

 

「プルオオオオオオオオォッ!」

 

「っ! みなさん!」

 

 

そうはさせないと激流を撃った先。ジョーカー達、そして合流を急ぐリュカとネスの背中が襲われる。しかし、それを2人は反応できた。

 

 

「PK LOVE!」「PK キアイ!!」

 

 

属性の存在しない広範囲のPSIが攻撃を打ち消す、どころかプレシアも大きくのけ反らせる。

そこへ顎から一矢が貫き、無理やり口を閉じさせる。

 

 

「がんばれっ!」

 

「うんっ!」

 

 

すれちがいにハイタッチでそれぞれに託す。

 

 

「やるじゃねえかボウズ!」

 

「うん、ありがとうネコさん」

 

「ネ、ネコじゃねえよ……」

 

「いくぞ」

 

 

託され託し、ファイターはゆく。

この世界をあるべき姿へ戻す為────!

 





◯タイトル
初代MOTHERのキャッチコピー。いわゆる名作保証。
本作に使うのちょっと恐れ多いですが、片手間でも構いませんので楽しんでください。


◯騙し騙され
亜空の使者にて、クッパはトワプリガノンに不意打ちでフィギュア化され、その恨みを晴らすがためにカービィの目の前でフィギュアのガノンに暴行を働いていたぞ! 亜空軍は一枚岩ではなかったが、もうなんか全員自分のことしか考えてなかったな!


◯PK キアイ、PK LOVE
MOTHER2、3におけるネス、リュカの無属性全体のPSI。
最初に入力するかっこいいものがそのまま名前になる。キアイとLOVEはデフォルトです。


◯各章のあらすじ
惑星PNF-404へ迷い込んだアイスクライマーは意見の違いから仲違い。哀しき獣の塔の上と下へ分かれ、ファイター達と合流しながら進んでいく。内部でチハクとボディ、そして原生生物に襲われるも、合流した2人は仲直り。「大乱闘の世界で、愚兄と共に待っている」と言い残して消えたチハクを追うために2人とファイター達は戦うのであった。

ネッシーの捜索隊を結成したこども達。それにジョーカーこと雨宮蓮などを巻き込みつつも、目撃されたという湖へ向かった。
そこでネッシーもといプレシアに散り散りにされ、戦う力のない蓮はペルソナが使えたらと悩みながら合流していく。しかし、重要なのは戦う力ではなく、力なくても持てる叛逆の意思であることを知ったジョーカーはマスターハンドが自分の内にいること、それでファイターの力を今唯一使えることを知る。
プレシアを倒した彼らはマスターハンドの肉体を探すべく、大きな光を放つ場所へ向かってみることにした。


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124話 軛

 

 

「もー! かんべーん!」

 

「…………」

 

「よーやく振り切れたよ……なにあの集団? 絶望と希望のてんこ盛りみたいな面々だったんだけどー」

 

「…………」

 

「チハクのところはどうだった? あんな絶望メンツじゃない?」

 

「…………足を動かせ愚兄」

 

「ひどぉい!!」

 

 

涙目になりながら弟に縋り付く兄。

白い羽衣を纏う、ブラックピットのボディに宿る黒の眼差しの兄チゲン。

黒い羽衣を纏う、ピットのボディに宿る白の眼差しの弟チハク。

 

雷の魔法に反応した黄ピクミンが起こした光。 そこへ向かうべく戦闘から離脱した兄弟はからくもマリオやベヨネッタ、セフィロスやカズヤといったとんでもメンツを振り切ることに成功したのだ。

 

 

「あの光、つい追っちゃったけどなんだと思う? キクがマスターハンド見つけていればいいんだけど」

 

「……そもそも仲間が起こした確証もない。本当に愚かだ」

 

「う〜……」

 

 

さらにしょげていくチゲンはチハクに引っ張られながら進んでいく。

 

 

「あそこにいるのがさ、スマッシュブラザーズだったらどうする?」

 

「可能ならば捕獲する。当たりでなくても抵抗は防ぐ」

 

「うん……また戦って……」

 

「チゲン」

 

「ん?」

 

「悩むこともまた真意。しかし、私は踏み越えて進むことを選んでいる。()()()()()()()()()。私は代弁者、影、偶像、理想……」

 

「兄弟、半身、片割れ、慰め、ひとり劇場……」

 

「会いたいのだろう?」

 

 

今度は大きく頷くとチゲンの足取りが速くなる。大きく、ちっぽけな願いを叶える為。大袈裟に大股にしていた歩行が止まった。

 

 

「いた……スマッシュブラザーズ……」

 

「……は?」

 

 

急転直下で急激に機嫌が悪くなっていく様は少しだけ面白いものがあった。しかし、それよりも見つかってしまったという考えの方が大きくて。

 

 

「なんなんだおまえらは……!」

 

「ウホッ!? また増えてる!?」

 

 

しかめっ面なのはブラックピットだ。 自身がコピーなのにも関わらず、さらにそっくりさんが増えていることにはらわたが煮えくりかえっている。

 

 

「まあ、落ち着いてくださいブラピ」

 

「ブラピやめろ」

 

「外見以外はあなたともピットとも関係がありませんよ。なんたってキーラ達の遺したボディに宿っているだけです」

 

 

本来プレシアが担当するはずだった彼らが飛ばされた世界。そこではボディに襲われることもなく、ましてや大乱闘の世界を制圧するチゲン達の一味もいなかった。

ルネに関してはビジュアルよりも中身や性格の方がインパクトが大きかった。

そのため、今の状況に関して1番情報がないのだ。彼らが敵なのか、味方なのかすらわからない。

 

ただ、ブラックピットにはそんなものは関係ない。オリジナルでもコピーでもない。偶然だろうがただ自分達と同じ姿でいるのが許せないのだ。

 

 

「会って早々酷い言い様だ、私達は望んでこの姿を選んでいる」

 

「弟とは同じがよかったんだよ~」

 

「知ったことかよ!」

 

 

制止も振り切り、ブラックピットは飛びだした。分離して二対の短剣となった神弓シルバーリップを振り下ろす。

ため息を吐きながら、指で九字を切るように円を描くとブラックピットの両腕ごと白の小石が縛り付けた。

 

 

「なっ……! テメェ!」

 

「猪のようにまっすぐ突っ込んでくるならとっ捕まえるのは難解ではない」

 

「すげー!! さっすが僕の弟!」

 

「やかましい愚兄、そこの辺りの石ころにでも相手にしていろ」

 

「うんにゃ~……」

 

 

涙を絶え間なく流すチゲンを押しのけて指と武器を握って戦闘態勢。それを受けてファイター達も同じように構える。

 

 

「先に突っ込んだのはブラピだが……」

 

「どちらにせよ有効的ではあるまい、やるぞ」

 

 

敵かもわからない相手に先に攻撃を仕掛けたのはこちら側だが、結局敵ではあったのだから。戦うことに戸惑いはない。

 

 

「兄弟……? ですが2人の本質は……」

 

 

何かを考え込んで悩むパルテナだけを除いて。それ以外は戦闘の域へ突入していく。

 

 

「とはいえ、この人数を相手にたった1.1人でまともに戦うのは愚策だな……」

 

「こんにちは半人前以下でふ……」

 

 

ぐっと近くにいるブラックピットを掴むとチゲンに押しつける。

 

 

「わっちょ、」

 

「盾だ」

 

「んだとテメェ!」

 

「えっ……うん……」

 

 

どうにか拘束を取ろうとするブラックピットを戸惑いながら受け取る。

 

 

「くっ、」

 

 

人質作戦。ピットのボディを使用しているチハクはなかなかに頭が切れる。人数差をどうにかする方法を手早く選択する。これで大半は動けなくなる。それを気にしない者もいない訳ではない。

 

 

「ふんっ」

 

「わっ!?」

 

 

ガノンドロフの振った剣が近くの木を切断する。重力に従い倒れていく木がチゲンの頭上に影をつくる。慌てて後ろへ飛び退いたチゲンの手からブラックピットが離れていく。

 

 

「無事か?」

 

「チッ、ああクッソ!嫌な真似しやがって!」

 

「愚か……」

 

「うえ……仕方ないじゃんか……」

 

 

と言いつつあまり悔しそうな顔はしていない。シャドウが受け止めたブラックピットを見る目は少し笑っているようにさえ見えた。だが、戦う腕に鈍りはなかった。2人して印を切り、合体技を振り回す。

 

 

「「三連星(さんれんせい)!」」

 

 

ならばと攻撃の密度で対抗の手段を取っていく。ただ密度の高い多くの攻撃が彼らを飲み込むように襲いかかっていく。

 

 

「カオスコントロール!」

 

 

シャドウが辺りの時間を歪めていく。自分達はそのままに、そして敵の2人は遅く。

 

 

「とっ捕まえるわよ!」

 

「うん」

 

 

弾幕といったレベルの攻撃も、遅くなればなんとでもなる。釣り飾りを避けるようにくぐり抜け、まずは頭脳派のチハクの肩に手をかける。

 

 

「ガッ!?」

 

『……』

 

「えっ、」

 

 

ちょっと漏らしたような驚きの声は誰のものだっただろうか。

 

シャドウを蹴り飛ばした少し薄めの青の影。カオスコントロールの影響下にないボディ。横槍を入れられた結果、カオスコントロールが解除される。

 

 

「えっ、あれ? ボディがなんで?」

 

「…………どうやら誰かが手をだしたようだな。誰かまではわからないが助かった。あんな技が使えるとは思わなかったからな」

 

『…………』

 

 

彼らも知らなかったボディ達による助太刀。だが、今となってはありがたかった。ソニックのボディの他にも10体ほどのボディがいる。

 

 

「どうやら中身のない人形のようです。手加減する必要はありませんよ」

 

「ハナからしておらぬわ!」

 

 

腕で剣を受け止めつつ、ボディを殴り飛ばしていく。卵を足下で爆発させてすっころび、別の誰かが蹴り飛ばしていく。単純な混戦だが、そうはさせないと飛んでくる黒い小石。白い小石でできた壁。チゲンとチハクが随所でサポートしてくる。たまに黒い方が誤射していることもあるが、相変わらずである。

 

そこでチハクの矛先が戦いに参加していないパルテナに向く。

 

 

「それで、お前は? 助言をした様子を見るに戦意がないわけではないだろうが」

 

「少し疑問があるだけですよ。あなたも他と同じ。中身があるように見えて、まるで2人……いいえ、1人です」

 

 

むすっとした顔、チゲンは完全に支援の手を止めて慌てている。

 

 

「何が言いたい」

 

「あなたは、一つの独立した存在ではない。ホムラとヒカリと同様に、1人の存在が分裂したものではないのですか?」

 

 

気の毒になるほど真っ青な顔のチゲンと対称に、チハクは不快さを隠さなかった。

 





◯タイトル
ゼノブレイド2 第五話のタイトル。
シンの正体やカスミなど、イーラ関係の謎が明らかになる話。
ホムヒカが自由にバトンタッチできるようになるのもこの話。
字の意味としては、動きや思考の自由を束縛するもの。
今話でブラピが簀巻きにされたが、これとそれは偶然の一致です。


◯チゲンとチハク
ねえ、なんでしっかりしているチハクが弟なのかな?
ねえ、なんでチゲンの方が最終的な行動指針を決めてるのかな?
ねえ、なんで世界を隔てたところからチハクだけにチゲンの声が届いてたのかな?

普通の兄弟じゃないよね?


◯4章のあらすじ
誰も知らないモンハンの世界に飛ばされたファイター達。
そこで現地人から噂話で情報を聞きつつ、合流したシャドウとシャドーカービィの案内で謎の男が残したという情報を狙う。
卵に紛れており、それのためにリオレイアと他の卵を討伐しながらもなんとか会得に成功。最終的にはルネが人力で情報を伝える中、唯一襲われてこの地に来たクロムとそれ以外の違い、そして彼の言う盟友の存在というインパクトを残し、現地の者に見つからないようにその世界を後にするのだった。


◯作者の気まぐれコメント
ちょっとやりたいことがあったので今話ちょっと手抜きです。
まあ、オリキャラの謎に重点を置く話だからまあいいか……
連載向いてないのかもしれないです。


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125話 「I」~為

 

 

ここは、どこだろう……

 

 

きっと、わからせる気がないんだわ。もちろん、逃す気も。

 

 

ダブルの目的は私が持つ、この世界を作り変えてしまえるほどの力……

 

 

真っ暗な場所で、どうにか宙吊りになって自由を奪われているのだけは理解できる。

もしかしたら、大乱闘の世界のどこでもない、ダブルが創った場所かもしれない。

 

 

私が自由だったらこんな場所、簡単に消せる。

私の力を使うために私は必要だし、そうでなくても私が敵に回ると厄介だから……放す気はないんだわ。

 

 

 

畳とか、吹いたら倒れるような家が規則正しく並ぶ都。そこへ足を運べる程度の郊外で、いつの間にか私はそこにいた。

 

自分の体がどうなってるかなんて気づかなかったけど。仮に人と同じでも目を背けられただろう。

毒が蔓延しているように私を見る人がバタバタと倒れていく。陰陽師? とか言う人が目を閉じたまま長くアレコレ言ってってどこにも私はいないんだって……

 

 

……ずっと、見られることもできなくて、だから友人どころか知人すらできなくて。

 

ああやって恐れず私を見てくれる人ははじめてだった。

 

その瞬間思ったの。私の今までの苦しみはこの人に会うための試練だったんじゃないかって。

私の人生はこの人と出会うために存在していたんじゃ、って。

 

 

仲良くなりたいを飛び越した唯一になりたい。

隣にいたい。

 

 

ケン、だっけ。

…………でも、言えないよ……

あの人にとって私は仲間を苦しめた敵なんだ。

どうしてもっと早く会えなかったの……

 

 

長くない付き合いの中で今まで見たことがないほどの冷めた目。私と同じ、違う肉体を求めた現世の幻惑。

あんたは一体どうして、その体を求めていたの。

 

 

 

 

「我々は……この力に願う」

 

「この世界も、この世界に連なる全ての世界も、関係のない世界も……全ての世界を等しく虚無へ導く破滅を。我々を拒む舞台を全て壊す力を」

 

「我々を求めぬ世界に──存在する価値などないのだから」

 

「もはや本物には興味がない。創造主……貴様の器と作品の崩壊を、1人劇の序曲にしてやる。」

 

 

「そして、我々を望む世界を、創ってやる。」

 

 

 

 

あんたは……誰かの唯一に、なりたかったんじゃないの?

 

誰かの皮を纏ったところで、そこにいるのはきっと、あんたじゃないだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言葉にできないうめき声を上げて、眉間に皺をつくって瞼を開く。自分はどうしたというのだろう。あそこに遅れてきたルキナから外の事情を聞いてそれから……?

 

 

「ここは……」

 

 

ボケたピントを合わせて、立ち上がった。慣れぬ人工的な光の隙間、貼り付けたような近い星空。

 

 

「あいったったった……ここ前のステージだよね?」

 

「うん、使われなくなった……そうか、こんなところにいたら見つけられない訳だ」

 

 

キクがマスターハンドから奪った力を最大限に発揮して立ちはだかったアナザーマスター。

その討伐が果たされたことによって、彼らは大乱闘が有するステージへ戻ることができた。

キクの支配が緩まり、偽りの闇の世界は崩壊し、魂だけの存在だった彼らは気づかぬままに元の肉体へと戻っていた。

 

オービタルゲート周域。

今は使われてないとはいえ、見慣れたはずのステージへ戻ることができた現状。戦うことのできない一般の人物らも安堵の息をこぼす。

 

 

「おーい!!」

 

「フォックスか!」

 

 

遠くから旧友の声。

ミサイルの上に乗ってゲートまで数人が飛んできた。フォックスとリンク、そして見慣れぬインクリングに似た存在。

 

 

「一瞬ルキナが元に戻ってたみたいに見えたからもしかしたらって思ったぞ」

 

「手間をかけたな。助かった」

 

「ゼルダ様……申し訳ありません。御身に迫った危機を振り払うどころかオレは……!」

 

「いいのです。こうして貴方も私も、無事に戻ってきたではありませんか。また、私のために戦ってくれた、それだけで私は嬉しいです」

 

「硬いなぁ……あ、そういえばさ、姫さんも来てるって軽く聞いたんだけど、この場にいないだけ?」

 

「エット、アンマリ広クナイノデトリアエズ3人デッテコトニナッテ……」

 

「そうそうそのことなんだが!」

 

 

控えめに話し出した8号の前に出たフォックス。事態は穏やかに進んでいないのだ。ルキナやケンを追わずにマルス達の元へ向かったのは、何も合流だけを目的にしたわけではないのだ。

 

要所で他の2人が補足しながら簡潔に説明した。

今この世界でボディ達が蔓延っている現状。敵対するボディを仮の肉体とする彼女らとその目的。そして、マスターハンドとその力の行先のことを。

 

 

「だから、ジョーカーを見つけてマスターハンドのところに連れて行けばなんとかなるんじゃないかって!」

 

「ケンとルキナの2人も見つけなきゃ。とりあえず、8号とエイトが進んだ道を逆算すれば、このステージばっかの場所を抜けられるぞ!」

 

「で、でも、ここの皆さんはどうしましょう……」

 

 

しずえの心配は自分達ではない。

戦う力も意思も存在しない巻き込まれた一般人。連れて行動するには数が多すぎる。かといって無策で放っておくこともできない。

 

そこでスティーブが手を挙げた。

あの偽りの世界でもやっていた似たようなこと。

 

 

「そうか! 砦の補強と同じように防壁をつくるのか……!」

 

「ソレデモ少シ不安デスガ……」

 

「あ、じゃあ戦える人を残しておくのはどうかな? 守れる人がいるってだけで違うと思うんだけど」

 

「まあ、間違ってはないけど……よもやピットからそういう案が出てくるとは……」

 

「ボク一応パルテナ軍親衛隊長ォ!」

 

 

実はマルスらと同じく率いる立場である。

周りの戦闘力が期待できないだけで。

あとは誰を残すかだが。

 

 

「君は……どうする?」

 

「プリ……」

 

 

主を立てると引いた身が、会話から離れた場所のプリンを見つけた。

この生物、表面上は主に似ているように見えるが、根っこは違う。勢いや雰囲気に押されなければ戦う覚悟も持てない存在。

 

 

「残りたい、と言うならばマルス様は拒否はしないさ。戦闘が起こらないと断言はできないが、着いて行けば確実にある」

 

「プリ、」

 

 

そこは、彼女も理解していた。頭が回らない訳ではないのだ。

折り合いは、"いつか"つけなければならないだろう。スマッシュブラザーズである限り。戦乱の中に、戦わなければ平和はない。敵も味方も自分も、傷つかなければ望む未来などありはしないのだ。

 

ただ、自分が不可欠とは言えないほど味方が頼れる人間だったからその"いつか"が後回しになっていっただけ。

 

自分が見ないところで、忌避する痛さがあっただけ。妥協しなければならないのだ。傷つくことを。

 

 

「プリリ……!」

 

「ふっ、」

 

 

提案は拒否した。

もしかしたら、また勢いだけで、明日には元の性根に戻ってしまうかもしれないけど、それでも今は、妥協した。

 

 

「プリン、君は……」

 

「ププリッ!」

 

「わかったよ」

 

 

スマッシュブラザーズは全員がいく。

ジョーカーの援護ならば、共闘も視野に入れた方がいい。

 

クッパ七人衆と、前衛、回復をこなすネネとキノをこの場に残すことに。

リンクのみが、ゼルダを連れていくことに難色を示したが、戦闘の危険があるのはどちらも一緒ならば近くにいた方がいいと言ったのと、ファイターではないもう1人のリンクが説得に入ったことでなんとか合意に至った。

 

スティーブを主導に、リンクから譲り受けたシーカーストーンのアイスメーカーやマグネキャッチがアシストをする。

 

 

── 我々を求めぬ世界に──存在する価値などないのだから

 

── 自分が見ないところで、忌避する痛さがあっただけ。妥協しなければならないのだ。傷つくことを。

 

 

戦闘の意志。

壊すために戦うこと、守るために戦うこと。

 

近くない同種の思いは真逆の意思によってもたらされた。

 





◯タイトル
FE覚醒の最終盤、ラスボス戦のBGM。
最高に盛り上がるし、ボーカルかっこいいし……
ただ雑魚が無限に出てくる都合上、速攻でラスボス叩いてクリアが手っ取り早いから曲聞けないんですよね……
ちなみに読み方はタメでもイでもいいらしい。スマブラにも入ってるよ!


◯リンクとゼルダ
名前被りなんて今更だろーっと思いつつもいざ同じ場面に出すとややこしいし書きづらい。


◯一応親衛隊長
一応イカロスという一般兵はいるものの、雑魚すぎて戦闘はピットに任せきりな様子。ニンジン捕獲作戦みたいな戦闘じゃなければ駆り出されている。……設定だけは。
ゲーム本編だとマッチョが嫌いになります。戦闘力なしは嘘だろお前。


◯5章のあらすじ
ナイトの一族であるリンクと封印の力を使うゼルダ。
意識を失う前に1人の少女の姿を見た2人は気がつくと、過去リンクが冒険をした闇の世界にそっくりな場所にいた。
他にも同じ境遇の人間が多くおり、そこにはファイターだけではなく大乱闘を見世物としている一般の人間も存在していた。
彼らは闇の世界に蔓延るボディに抵抗し、戦いながら脱出方法を探していたのだ。しかし、この世界の真実を知ってしまったディディーコングを追ってキクという非実体の攻撃を取り込む少女と相対する。
それを退け、同じように魂を抜かれて闇の世界に堕ちてきたルキナと合流する。この世界はキクがつくりだした偽物の世界、そして自分達はキクの姿を見た結果魂を抜かれていたことを知ってしまった。
外の世界でフォックス達とキクとの対戦の結果、ルキナ、ケンと逸れたもののキクが一時気絶したことにより、魂はあるべき肉体に戻っていった。


◯作者の気まぐれコメント
エクカスがぁぁぁぁぁぁ
ガロンデコさん、スペシャル交換しませんか?
クイボメガホンが希望でしたが、本気でそうなるとは思ってませんでした。でもチャクチって……

打開のためにスシやボトルやらがウルショ貯めるなか、受動的な使用が前提の構成ってだけで一歩遅れてるんだよなぁ……まあなんだかんだで使うんですが。スロッシャーってだけで使う理由になります。




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126話 The 13th Struggle

 

「さて……ここからどう探そうか?」

 

 

ステージを抜けて大乱闘の世界に戻ってきたのは、キクの創り出した世界にいたファイター、サムス、ピット、ダークサムス、マルス、プリン、しずえ、ミェンミェン、ディディーコング、スティーブと、その協力者、リンク、ゼルダ、クリス。

そして、ステージを巡り、ボディとキク本人との激戦を繰り広げたフォックス、リンク、イレブン、パックンフラワー、パックマン、ゼルダと、彼らに合流したエイトと8号。

 

 

「ケンキナ見つけて、ジョーカー見つけて、マスターハンド見つけてジョーカー連れてって……やること多いなもう!」

 

「くっつけるなヨ」

 

「ここは何人かにわかれたらどうでしょうか? 人数が多いと動きづらいでしょうし……」

 

「しかし、何も考えず人数を減らしてもできることが少なくなりますし……」

 

「ここはバランスが重要ですのね。ボディもどの程度いるかわからないもの!」

 

「似たような口調を3連ちゃんだと誰が喋ってるのかわかりづらいなぁ」

 

「口見て声聞けヨ、まったく……」

 

「誰でも声聞けると思うなよ!」

 

「なんで責められてるネ……?」

 

 

しずえが言うことももっともだが、(ファイターではない)ゼルダが言うように、人を分けることはその分選択肢を減らすことでもある。

対応できないほどのボディが出て終わり、なんてことが起きないよう、(ファイターの)ゼルダのバランスさは重視しなければならない。

 

 

「ア! アレハ……!」

 

「別のステージに移動する時の隙間……みたいなものだね……」

 

 

どこか別の場所に繋がる空間の歪み。垣間見える日光が遮られて、向こう側から潜ってきたのは見知った顔達。

 

 

「むっ、お前達は……」

 

「メタナイトにアイク! それに……」

 

「オレさまもいるぞ!」

 

「キーッ!?」

 

「ウルフェンが突撃してきたー!? 緊急着陸緊急着陸!!」

 

 

カービィ、シュルク、デデデ、ソニック、アイク、メタナイト、ウルフ、ガオガエン。

そしてバンダナワドルディ、ティーダ、シオカラーズの2人。

プププランドでリヴァイアサンのおこした大雨による大洪水。それに巻き込まれ、巻き込まれに行った者達。ちょうど彼らの帰投した位置が近くだったのだ。

 

 

「これでできることも広がる……あれ、8号、どうしたの?」

 

「アワ、アワワワワ……!」

 

 

体を竦めて逸る心臓を抑えるように胸元を抱くように握りしめる。しかし、エイトの背後に回っても気持ちは抑えきれてないようだ。

 

 

「あれ? タコの子もおるね」

 

「あ、ホントだ! もしかしておじいちゃんの言ってた……」

 

「ワー! アー! ワーワーワー!?」

 

「あー!? ちょっとどこに行くの!?」

 

 

ついに体から飛び出た憧れ。思わぬ出会いに全速力。顔を両手で隠しながらどこかの彼方へ逃げ出していく8号。それを背景にスマッシュブラザーズは再会の喜びを短いながらも堪能していた。

 

 

「無事だったようで何よりだ」

 

「まったくだぜ。プププランドに来たと思ったら、あちこち水ばっかでもう勘弁!」

 

「ソニック水とかダメなんだっけ。そっちも色々あったんだな……」

 

「そんな茶番は後にしておけ、どういう状況かだけ簡潔に教えろ」

 

「ちゃめっ気なし子? まいいけどさ」

 

 

こうして再び説明する。探さなければならない3つのこと。

 

 

「それでウルフウルフ、ものは相談なんだけど」

 

「なんだ」

 

「フォックス乗せてフライアウェイ!」

 

「は?」「はあ!?」

 

 

リンクのすっとんきょんなアイディアに当事者2人は思わず大きな声を上げる。リンク本人は知らぬだろうが、それを実行したことはある。なので可能ではあるのだが。受け入れられるかは話が別で。

 

 

「空から探す方が効率がいいのは認めてやる。ただコイツを乗せる必要性がねえだろ。追い詰められて中身もふざけ始めたか?」

 

コックピット(あんなもん)の中に入ったら真下とか見れないじゃん! 別にオレがくっつくこともできるけどオレはまあ普通に考えてゼルダ様と一緒が世界の真理だし。あ、あとカービィもいけるか!」

 

「中盤息継ぎしろよ、怖えよ……」

 

「あ、カービィ……」

 

 

マジトーンの混ざったリンクの言葉が終わった途端に、シュルクの肩から飛び降りたカービィがウルフェンの左翼にしがみつく。そしてフォックスの方向を向いて、まだ?と言わんばかりにこっちを見つめてくる。

 

 

「…………終わったら大乱闘のタイマン、付き合うからな……」

 

「…………振り落とされても止まんねえぞ」

 

 

渋々、ではあったものの、引き受けることになった。時間が経つたび状況は悪くなろだろうという懸念もあるのだろう。右翼にフォックスが立つと、上昇したウルフェンが空を切って飛んでいく。空には小粒のようにも見える、飛行するボディの姿が。

 

 

「ハイドラは機動力に難があるために使えなかったが……流石に空中戦で兵器がボディに遅れを取ることはないだろう」

 

「それで、結局どう分けるって話だったんだけど」

 

「世界ゴトニ分カレタ分ケ方デイイダロ」

 

「「え〝」」

 

「揃エルナりんく共」

 

 

ゼルダ様と一緒で、姫さんをほったらかしにするのは心配だけどゼルダさんには僕のアイテムを貸している、などとギャーギャー言う中で、フォックスも含めた3人抜けたステージ班の者達に、ナイトの一族のリンクと封印の巫女ゼルダを混ぜることで話はまとまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれほど戦っただろうか。

強く得物を握った手は、手汗もないのではないかと錯覚するほど冷たく、まるで血の巡りが届いてないかのようだ。

 

 

「やめろッ!!」

 

 

やみくもに近いような振り方で、ボディが被るヘルメットを強引に破壊した。さらに超至近距離からのファイガ。

戦いが雑になっていることに自覚はあるものの、気持ちを折ってしまえば、きっと膝をついてしまう。

 

電撃を受けて痺れる体を無理やり動かす。癒しの魔法はできる限り温存したい。自身のそれは連発ができないのだから。

 

 

「ひ、酷うなっとる……なんでボス倒した後の方が敵多いねん!」

 

「あの光……思った以上に遠くまで届いたようだな……!」

 

「……あっ……オレのせい……?」

 

「いや……黄ピクミンの発光を舐めていたのは私だ……だが、尻拭いも難しい……!」

 

「クゥ〜ン……」

 

 

マスターハンドの体が横たわる場所。それを守護することになったファイター達。

 

オリマー、ダックハント、Mr.ゲーム&ウォッチ、ミュウツー、クラウド、Wii Fit トレーナー、ソラ、4号にソロ。

 

パッチワークデュオンを倒してもここからが本番だと言わんばかりに増え続けるボディ達に、まずダックハントが限界を迎えた。

 

次に動きまくった4号が落ち、ピクミンの数が一桁を切った辺りで、今更Mr.ゲーム&ウォッチがピクミンがいないと落ち込んだ。

それでもとくらいついていたオリマー、Wii Fit トレーナーが岩肌にもたれて戦線離脱。

次はソラか……と薄々感じ取っていた時のことだった。

 

 

『ボディが騒がしいと思っていたら……マスターハンドの肉体がこんなところにあったとは……』

 

「えっ?」

 

 

今までにない声。ダックハントのトリオでもない声。機械を通したようにくぐもった声は少女を雑に抱えた男から聞こえてきた。

 

 

「ルフレ……じゃない、誰だ貴様は……」

 

『ダブル……虚無の残骸……とでも名乗っておこうか』

 

 

はじめはルフレのボディが喋っているだけに聞こえた。

 

しかし、その顔全面に機械でできたかのような仮面のようなものがついており、表情は読み取れない。

明らかに敵であるというのに、少女キクを抱えている異質さもあるのに、それでも敵意よりも不気味さが勝って、戸惑いと動揺がおさまらない。まるで生物らしさを感じないチグハグさ。

熊の人形が失った手足の代わりに、ウサギや犬のぬいぐるみの手足をくっつける方が、まだ生命として違和感はないだろう。

 

 

『ファイター、か。安心しろ。お前達を叩き潰すのは後だ。創造主を特等席に案内してから、目の前で作品を叩き壊すつもりだからな』

 

『何を、言っている』

 

『後でこの世界ごと破壊してやると言っている』

 

 

字面通りに受け取ったのか、それともわかってて皮肉のために言い直したのか。

 

 

「……正直、お前の言ってることはほとんどわからない。でもオレは帰らなきゃいけないし……この世界も同じように大切だから……破壊なんかさせるか!!」

 

『痩せ我慢か? 知ったことではないが……』

 

「……っ」

 

 

ダブルは戦闘を続ける体力がほとんど残ってないことを指した。

しかし、ソラにはまるでまだ帰れない状況が、自分の知る仲間がいない寂しさを突かれたかのように聞こえて、わかりやすく動揺した。

 

その様子を不安がって、戦闘と警戒を続けながらもクラウドが側によった時、心底呆れたと言わんばかりの動きを見せたダブルが手をこちらへかざした。

 

 

『"マリオファイナル"』

 

「えっ……」

 

 

その言葉を言って、その意味を理解できなくて。

しかし、よく知った灼熱が彼らを襲った時。

よく知る最後の切りふだがダブルから放たれたことを知った。

 

 

「……ッ!?」

 

「……! クラウドッ!?」

 

 

ファイターボディ問わず、岩肌に叩きつけられ、クラウドが咄嗟に庇ったソラ以外が倒れる。

 

 

「あ、んた……なんで、そのまま、で……使えるのよ……」

 

『そう、()()()からだ』

 

 

血まみれで道路に横たわっていた時、

ドッペルゲンガーの力を受け継いだ時、

寿命が短いと知った時、

 

例え今までの自分を全て無くしてでも生きたいと願った。

 

記憶をなくし、性格をなくし、人格をなくし、

趣向をなくし、名前をなくし、自分をなくし、

過去をなくし、未来をなくし、現在をなくし。

 

そして、役割をなくした。

そうして生きてきた。誰かに成って寿命を奪って、ただ未来を伸ばし続けた結果、なくした自分を欲した。

 

だから誰かには退場してもらいたかった。

ない自分を持つためには、誰かに成るしかなく、それを自分とするためにはその誰かはいなくなって貰わなければ。

 

それが逆立ちしても叶わないなら、

それが叶う世界をつくるし、叶わない世界は必要ない。

 

 

しかし、ドッペルゲンガーに自分がないならば。

その存在を曖昧にしてしまえば、誰でもない誰かにはなれる。

 

今、ダブルは誰でもなくて誰でもある。

誰でもない存在でありながら、誰でもあるのなら、この姿のままに、彼の知る全てのファイターと全ての者達の力を使える。

 

 

『さあ、次はどうする? "古代兵装の弓矢"か? "ウルトラソード"、"ボルテッカー"もいいが』

 

「うっ……」

 

『安心しろ、前言撤回をするつもりはない』

 

 

マスターハンドの体が横たわる洞穴の前へ行くと、その入り口をぐにゃりと歪ませる。

その先が何も見えぬ暗闇の地へ変わっていった。マスターハンドの姿はない。

 

 

『マスターハンドを連れてこい。それまで退屈だろう? ボディと遊んでいてくれ』

 

「待て……!」

 

 

ダブルの姿が消える。

入り口をゲートとして、違う場所に繋げたのだろう。今の状況では追っても結果は見えている。

満身創痍の仲間がいる。ボディから守らなければ。

 

 

『…………』

 

「今はやるしかないのか……!」

 

「くっ……きばれ!」

 

 

痩せ我慢。

その言葉を振り払いながら、歯を食いしばり。

ソラはボディ達へと突っ込んでいく。

 





◯タイトル
KHシリーズに登場するBGM。
13番目の戦い、という名もあり、XIII機関員の汎用ボス戦BGMみたいな立ち位置。たまに機関員以外でも鳴ったりする。
リマインドの再現データ戦では、専用BGMのないラクシーヌとルクソードがそれぞれアレンジをもらっている。同じ曲を別々のアレンジされてるの結構好き。


◯New!カラストンビ部隊とテンタクルズ達のあれこれ
サイドオーダー進めてて、テンタクルズと4号に面識……とまではいってなさそうでも認知してたのが意外でした。
もしかしたら、8号もシオカラーズと直接会ったりしてるかもしれませんが……反応が面白そうなので本作の設定では今話が初対面ということになってます。


◯それぞれの章のあらすじ
・2章
大乱闘の世界で研究を進めていたシュルクは、プププランドで大洪水が起きていることを知った。それを伝えてくれたソニックと共にプププランドへ乗り込む。メタナイトの助力もあって、洪水を引き起こしている原因、ルネを見つけ戦闘になるも逃げられる。召喚した召喚獣リヴァイアサンをカービィが退け、ルネを追うために大乱闘の世界へ戻るのであった。

・11章
大乱闘の世界に残っていたオリマーは、倒れて反応のないマスターハンドを見つける。そしてそれらを狙うボディをどうにか相手をし、仲間を探す中、合流したミュウツーからマスターハンドの意識は体にないことを知った。
体だろうが守るべきと考え、度重なるボディの襲撃を退ける中、ルネの用意したありがた迷惑、ではなくパッチワークデュオンという大ボス。それらも退けたが、黄ピクミンとギガディン、サンダガが反応し大発光。ボディをさらに引き寄せることになったが、同時に味方も引き寄せる標となったことを彼らはまだ知らない。


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127話 The other promise

 

「なんで、そのこと……」

 

「そうだ、と言ったら退いてくれるのか」

 

 

震えながら座り込んでしまうチゲンとは対照的に、チハクは不愉快さを滲み出しながらも動揺まではせずに対応した。

 

 

「少し気になっただけですよ。手酷く言っていた貴方が弟、というのが」

 

「人間関係はそれぞれだろう」

 

「傾向というのはありますよ」

 

 

はあ、と深い息を吐いてチハクは開き直る。知られたからには、という訳ではなく、知られてしまったという後悔でもない。自暴自棄に近い。

 

 

「そうだ。兄弟と言うには少し語弊があり、親子という方が近い。私はチゲンの意思であり、本音だ。チゲンが私を生み出したのだから」

 

「チハク〜……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチン、と周りに響く澄んだ音。 どこか聞き慣れたそれに囲まれながら、()は生まれた。

 

 

自分がどういう存在なのかは理解していた。 長く使った厚みのある碁盤と、数を欠かすことのないようによく点検された碁石。

それが僕の本当の姿なのだ。

 

僕の世界は、いろんな人が集まるような集会場だった。多くの人に使われていたんだ。

年配のお爺ちゃん、お婆ちゃん。 ちょっとはじめてみただけの初心者の男の人。惚気話を嗜んであまり集中していない逢瀬中の男女に、規則も知らずにただ大人の真似をして石を置く子供。

 

 

本当に人が大好きだった。

草履を脱いで、縁側に座って、暑いからと着物を着崩して、時には行儀悪く畳で寝転んで、座布団を枕代わりにして。 いろんな人がいるのが面白かった。そうやってひたすらいろんな人に使われるのが嬉しかった。

 

 

うぐいすが鳴いて、暑い日が表面を焼いて、収穫の季節に一喜一憂するみんなの姿が寒くなって穏やかになっていく。

 

その巡りをいったい何十回繰り返した時だったろうか。僕は四角く重い姿じゃなくて、大好きな人間の姿になっていた。

 

 

理屈はわからないけど、本当に嬉しかった。

使われて楽しませるだけじゃない。一緒に並んで、変なことを言って笑ったり、どうでもいいことに真剣になったり、あるいは大真面目に囲碁を楽しむことができるって。

 

僕から人へ触れ合って、友達になれると思ったのに。

 

 

名乗ったらどこか遠くの別の場所に飛ばされて、次に会う時にはなぜか自分のことを忘れている。

 

 

この名前がきっかけになって、僕に関する記憶が全て消えて思い出せなくなるのだ。

それがわかってしまうまで、時に泣いたり叱責したり。でも何も変わらなくて。

 

 

大勢の人が周りにいるのに、とても孤独で寒いんだ。ただ、友達が欲しかっただけなのに。

 

 

「どうした、愚兄」

 

 

その声は、慰めにしかならなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「可哀想に」

 

「守りたい人、守りたいと思う人。自分しかいなかったんだね」

 

「─可哀想に」

 

 

ガンッ、と大木に拳を叩きつける音。洋風の柄と持ち手に白銀に輝く刀、ヴォーパルを握りながら、鋭い眼光はこの場にいない存在を睨み付けていた。

 

 

「あんな……戦う力も持たないような奴に……」

 

 

許せない。

戦える人間を優先して武器を取り上げ、万全を期して戦陣を整えた。

なのに、あのインクリングが起こした行動の結果、すべてが崩れた。結局創造主の有無を確認することもできないまま、逃亡せざるを得なかった。

羽毛が逆立ち、バチバチと体から電気が溢れる。

 

全部彼女が起こした行動のせいで自分は敗退した。それは認めてやる。

認めてやるからこそ腹が立つのだ。

 

 

ぐぐっと歯ぎしりをしていると、誰かの声が聞こえて、咄嗟に能力を自分に使う。

存在を曖昧にする力は自分に使えば高度な隠密ができる。自分から存在を見せるような行動を取らなければ、そうそう見つかることはない。

 

 

「そういえばこれは……いつものブキだよね?さっき使ってたのは壊れてたけど……」

 

「性能的には変わってないから大丈夫」

 

「(奴等……追ってきていたのか)」

 

 

その声はたった今思い返していたインクリングの声だった。

彼女がいるということはおそらく他のファイターも着いてきているだろう。

 

ナカツナがこの世界にいるのは知っているだろうが、そこにいるだろうと確信がなければ気づけやしない。認識できる全方位全距離に対して、いるだろうと確信を持ち続けるのは不可能だ。

 

 

「(だったら返り討ちにしてやるか……最高の期を伺って……なあ英雄気取りよ?)」

 

 

インクリングに、ロイ、ピチュー、カムイ、スネーク、シーク、リリーナ、アルス。

彼らの跡を追っていく。奴等の心を折るのに丁度いいタイミングを探しながら。

 

 

「守りたい人、守りたいと思う人。自分しかいなかったんだね」

 

 

「(好きに言えばいい。どうせ知らない者の言葉だ……)」

 

 

人を尊重する理由は彼にはなかったのだ。自分のことで精一杯だというのに他人の心配などする余裕はない。

能力の効かない自身の得物だけ視認されないように気をつけながら、自分の中の感情の残滓をどう消費するのかを考えていた。

 

 

「しっかしな、コイツらがここにものさばっているって一体何があったんだ?」

 

 

もう満身創痍で戦えないボディをとっ捕まえながら、スネークは言った。

 

 

「やれやれ、捕まえといてどうする気だい?」

 

「う~ん、成果みたいなもんだな。さっきはろくに活躍できないままだったからな」

 

「邪魔でしょ」

 

「それはそう」

 

 

あっけなく手放したボディは消えていった。特に執着もせず、単なる面白半分だったらしい。

 

 

「でもこの世界でもそのボディがいるってことは、フェレと同じように戦いが……」

 

「うん、戦えない人もいる。一刻も早くこの戦いを終わらせないと」

 

「戦えない人か……」

 

「ピチュ?」

 

 

戦えない人で思い出す。

つい最近知り合った友達。雨宿りの中で囲碁を習って、同じようにきょうだいがいる友人。それきり再会の約束は果たされていないが、戦う力があるかもわからない彼は一体今どこで何をしているのだろう。

 

 

「……ああ、ゴメン少し考え事をしてたよ。とりあえずナカツナをどうにか捕まえて話を聞かないと」

 

「うん、そうだね」

 

 

ヒーローコスチュームを纏ったインクリングが溌剌さを抑えて少し穏やかに笑う。人に安心さを与える暖かさのある笑顔。

 

 

「しかし、奴は一体どこにいるか……」

 

「この世界も広い。もっと大勢で探さないと」

 

 

今後をどう動こうかと考えていたロイが何かの戦闘音を聞き取る。何かが発射され、武器と武器がぶつかる音。一部の者には聞き取れたらしい。

いるのはボディか、ナカツナか。それとも……

 

 

「行こう」

 

 

草木の間を縫うように進んだ先、見慣れた背中がいくつか見えた。意思なき器もまた。

 

 

「はあっ!みんな!」

 

「ロイか!頼む手を貸してくれ!」

 

 

ボディを押しのけ、戦場に参加するファイター達。見慣れない者もいるが、敵か味方かの区別はつく。

 

 

「ピットと……ブラピか?アイツと同じようにボディに取り憑いてんのか!」

 

「ブラピ言うんじゃねえクソジジイ!」

 

「シンプルな悪口をやめろ!」

 

 

ギャーギャーと騒ぐ中、大まかな状況を理解して戦場に乗り込んでいく援軍。

ピットのボディを使っている方から舌打ちが聞こえる中、背後のブラックピットのボディを使っている方がゆっくりと()の方を向いた。

 

 

「カムイ?」

 

「えっ?」

 

 

夜刀神を握った手から少し力が抜けた。

どこか聞き覚えがあるようで。ブラックピットの声だけど、何かが違う。記憶の内から引きずり出していく。不安そうなインクリングがカムイの顔を覗き込んだ。

 

 

「知り合いなの?」

 

「…………………………………………チゲン?」

 

 

あまりにも突然の再会に周囲の喧噪が遠のいたようだった。

お互いに2人だけしか見えなくなった。

 

 

「またね、カムイ」

 

 

約束は果たされた。

敵同士という悲運の再会が。

 





◯タイトル
KH2のファイナルミックス版で追加されたロクサス戦のBGM。
究極の悲しさとやりきれなさを表現したというこの曲は、元々悲しげだったキャラテーマ曲を組み込んでさらに悲しさを増している。
ぶっちゃけこの曲言われないと戦闘時のBGMってわからないと思うんですので、知らない方は聞いてみてほしいです。


◯チゲン
彼の正体ですが、ぶっちゃけると囲碁の付喪神ですね。
モチーフとして、そういう付喪神がいるのです。明確な善行も悪行もせず、ただ囲碁やるだけというのが可愛くて好きです。


◯作者の気まぐれコメント
よもや、ハッピーセット初日で無くなるとは思ってなかったです。
三連休の先週よりなくなるのはやいって……あんまりマイナスのこと書きたくないんで明言しませんけど、◯◯◯は許さない。

実は一弾の子は1人お迎えできてます。ウインクの子。
カービィのぬいぐるみは、ゲーセンで取った抱き締められるサイズの子がもういるんですが、ウインクの子は座れる手乗りサイズなのがいい。

すみません、他に手乗りサイズのカービィぬいぐるみ、いいのあったら教えてほしいです。かわいいー!


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128話 嘆きの獣

 

無意識に口が開いて、閉じて。

でも結局言葉は出なかった。

何を言うべきなのかもわからなかった。

 

 

マスターハンドを宿したファイター。スマッシュブラザーズにとっては最後の希望。

僕達にとっては摘むべき芽。

 

彼がスマッシュブラザーズであることは聞いていたというのに、何の根拠もなく彼と出会うことはないと思い込んでいた。

 

 

彼が覚えてくれていたことに後ろ暗い悦びを感じながら、今の自分を見て、仲間と敵対している僕を見て、彼がどう感じるかといった領域にようやくたどり着いたのだ。

そしてその瞬間、身体中の体温が急速に奪われていく。

 

 

「……なに、してるの」

 

 

恐る恐る口に出したような言葉は、うっすら恐怖を滲ませながらも怒りもあった。

 

悪いことをした童子を叱る母親のような、様々な感情が織り混ざった咎める瞳。

 

 

「えっと……」

 

 

嫌われたくなんてなかった。

この体が永遠のものとなれば、他にも友達ができる、なんて残酷な判断はいくらでも思い浮かぶ。

 

でも、またね、って言って、彼にとっては軽い気持ちでかわしたそんな約束が、はじめて果たされたという現実を目隠ししてまで未来を進みたくはなかった。

 

 

「あ、うっ……あああ……」

 

 

助けて、助けてチハク。

何も答えてくれない。当然だ。

 

僕は僕が嫌だ。鈍臭くて、後ろ向きで、優柔不断で、負けっぱなしの独りぼっち。

でも自分を貶す言葉を自分の口から出してしまえば本当に存在してはいけなくなる気がして。

 

だからチハクは僕の代わりに僕を貶していた。

代弁者だから。

 

 

僕自身出せていない答えをチハクが出せる訳もない。

 

自分で望んだ弟役はただ沈黙を保っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……」

 

 

怒りはあった。悲しみもあった。

大切な人が敵であった苦しみは経験がある。

 

 

だが、ここまで苦しそうに言葉を吐き出させたい訳じゃない。

 

ゆっくりでもいいから本心が聞きたかった。

 

 

一度仲良くなったのに、簡単になかったことにはしたくないから。

 

 

「うおお!」

 

「あっ……」

 

「っ……! 待って!!」

 

 

そんなことどうでもいいと言わんばかりに、ガノンドロフが殴りかかる間に入る。防いだ夜刀神を持つ手が痺れるが、今は全く気にならなかった。

 

 

「どういうつもりだ貴様……」

 

「ごめん……でもどうか、チゲンのことは任せてほしいんだ」

 

「このボディ共を使役して手駒としているのは確実に奴だぞ」

 

「それでもだ。僕はまだ何も聞いてないんだから」

 

「手ぬるいわ」

 

「いいじゃん、手ぬるいってさ、単に優しいってだけじゃないんだよ」

 

 

インクリングからの助太刀が入る。

犠牲を知った彼女には、カムイの柔らかさを受け入れる土台がある。

 

 

「また会えたね」

 

「うん……」

 

「弟と一緒にさ、囲碁、やったよ。他にもこういったボードゲームは知ってるけど、タクミにあそこまで勝てたのはびっくりしちゃった」

 

「僕と一局すると、なぜか相手だけ上手くなるんだ……」

 

「そっか。……ねえ、君はどこから来たんだい?」

 

「……遠いところ」

 

「そっか。どうしてボディを?」

 

「僕が自己紹介をするとどこかに飛ばされちゃって……それで次会う時には僕を忘れちゃうから……そうならないための体が欲しかったのと」

 

「欲しかったのと?」

 

「……チハクと同じ存在じゃ嫌だったんだ」

 

「難しいことを言う」

 

 

そっと付け加えたチハクの声。

彼だけが2人の間に入ることを許されていた。

 

 

「ずっと寂しくて、失わない友達が欲しかった。例えたった1人でも。失う確率が少しでもあるなら、どれほど頑丈に見える石橋でも叩く」

 

「チゲン……」

 

 

戸惑いを小さく感じるほどに、寂しさと覚悟が伝わってきて、不意に北の城塞での暮らしを思い出す。

 

カムイには使用人達がいたけど、チゲンにはいなかった。少し大掛かりな自問自答しか出来ないチハク(自分)しか。

 

 

「でも……駄目。やだ……君だけは嫌わないでよ……僕自身がどれだけ酷く僕のことを嫌っていても構わないから……! はじめての友達が、はじめてまたねって……!」

 

 

話していてようやく気づいた。

未来でできるかもしれない友達より、創造主を滅することで完成する絶対が保証されたボディシステムより、はじめての友を優先させたい自分がいることを。

 

滝のように流す冷や汗。追い込まれていながらいっぱいいっぱい過ぎて涙だけは出てこない。

 

 

「どうしよう……」

 

「なら……この事態を解決するのに協力してくれないかい? 例え敵だったとしても、事態の収拾に協力してくれればマスターハンドも酷くは扱わないよ。彼がそうだったもの」

 

「ふん」

 

 

シークの言う彼は目の前のガノンドロフではない。しかし、最後はタブーの討伐に手を貸したからか、少し前までファイターでいた。

 

 

「…………」

 

「……それぞれ、利害が一致した同士がマスターハンドを探している。スマッシュブラザーズの誰かの内に逃げ込んだ奴を。しかし、どうやら全員に何かしらが起きて、結局戦場はこの世界になったらしい」

 

「誰かって……誰だい? ヒントとか……」

 

「わからんから探していたのだ。ただ、そちらを倒さなくても全員を行動不能にすれば残るは数だけはいるボディだけ」

 

「ピ、ピチュー、もしかしてこの人自分から仲間倒そうって言ってるよね?」

 

「ピー……」

 

「元から仲間の情など存在しない。おそらく全員の共通思考だ。利害しか見ていないからな」

 

「き、聞こえてたぁ……」

 

 

今の自分の格好も忘れてヘナヘナと座り込んだ。

しかし、インクリングの発言を気に留めることもなかった。

 

 

「……って、おい、なんか和解のムードになってるが、せめてボディを変えろ! 目障りだ!」

 

「やだー!!」

 

「やだー!!じゃねえよ! 訴えるぞ肖像権の侵害だ!」

 

「チハクとお揃いがいいし、白と黒ってカムイとも似て……」

 

 

抗議の笑顔がゆっくりと目を見開き、焦りの表情になっていく。

いや……ゆっくりというのは気のせいだった。そう見えただけ。座り込んでいたチゲンが急いで立ち上がり、正面のカムイの腕を掴んで後ろへ引っ張る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

己の存在理由に、疑問を感じたことはない。

 

どうして人は人として生きるのか、とかそういう哲学じみたことを本気で考えたことはない。

1人が寂しいと嘆くチゲンと常に共にあった。それが当たり前だった。

 

 

自分はチゲンの代弁者。

慰めであり、彼が生み出した別の人格。

 

同じ肉体だったそれは、スピリットとしてボディに宿り、真の意味で触れ合えた瞬間、チゲンは嬉しそうに笑った。やっぱり見た目も似てる方がいいよね、と。

 

自分は別に特別な感情を持たなかった。

肉体が離れたことに戸惑いはあったが、嬉しさはなかった。

 

チゲンの真意は、自分の意思は、戸惑っていたのか。ならば、チゲンも本当は嬉しくなかったのか。

 

 

 

わかれて行動して、同じように別れたアイスクライマーの2人を見て、根っこに共通項があっても別のことを考えることもあるのだと、他人事に考えていた。

 

 

でも、きっと同じなのだ。

チゲンは個を認めていたが、自分は今まで認めていなかった。

 

チゲンが自身を後ろ向きに語るほど、自分はチゲンが悪いとは思っていなかった。……まあ、口では散々に言っていたが。

 

 

いつからだろう。自分はいつの間にか違う存在になっていた。チゲンとは全く別の。

 

もしかしたら、肉体を違える前からだったか?

自分の意思がどれだけチゲンと乖離していたかを思い返すのは難しいことだ。

 

 

でも、今なら違う存在だと断言できる。

チゲンが満足そうに笑う姿とは裏腹に、自分の胸中はこれ以上ない焦燥感でいっぱいなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

一切の刃毀れをせず、ただ今の状態であり続け、存在を明確にする剣、ヴォーパル。

 

スピリットであったものに振るえば、ボディの肉体を掻き消し、精神をあるべき形に戻す。

 

 

 

──カムイの背を貫こうとしていたそれは、チゲンの体を貫通していた。

 





◯タイトル
ファイアーエムブレムif 共通ルート 5章で流れるムービータイトル。
母を亡くし、悲しみのあまり竜へ姿を変えたカムイを操作する特殊な章。

ここがアクアネキ1番ヒロインしてる


◯肖像権
他人から無断で写真や映像を撮られたり無断で公表されたり利用されたりしないように主張できる考えのこと。(wiki抜粋)

ブラピのボディを造ったとはキーラかダーズなので、双方とチゲンに訴えれると思います。
え? そもそもブラピの姿自体、ピットの無断コピー? 確かに……



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129話 汝、闇の同胞よ

 

友達の身体を貫く白刃を見た時、あらゆる感情が心の中を通り過ぎていった。

 

悲しさも怒りも、それを認識した瞬間だけ湧き上がって、一瞬のうちに消えていった。

 

 

「チゲン……?」

 

「へ……いき……?」

 

 

母上の時のように、クリムゾンの時のように、また庇われたんだ。

また、また……自分のところから消えていくの?

 

 

「なんで……! なんで!!!

 

 

つくった握り拳が震える。細く睨むその先の光景が歪み、見えるようになったナカツナの姿。

 

刃の抜けた彼の肉体には、血の流れないぽっかりとした空白があって、やはりボディなのだとどうでもいいことを考える自分がどこかにいた。

夏祭を握り、癒しの術を唱えようとする。焦燥感に苛まれながらも振るった術は正しく行使できたはずなのにチゲンには効かなかった。

 

 

「貴様……ッ!!」

「お……前ッ!」

 

 

やぶれかぶれに近い形で振り下ろされた双刃と拳。同時に動いたチハクとインクリングの攻撃は剣と腕で防がれた。

 

 

「どうして……!! なんで平気な顔してるのッ!! 仲間なんでしょ!!」

 

「仲間? 離反を表明しておいて仲間もなにもない……!」

 

 

2人を弾き飛ばし、辺りに乱発する雷の嵐。

近くにいたカムイは身を挺してチゲンを守っていた。

 

 

「うぐぅっ……!」

 

「守ってもどうせ消える。この剣でボディに宿るスピリットを斬るということがどういうことか知らないらしいな」

 

「……ッ!?」

 

「死にはしないさ。元に戻るだけだ。元の世界に……あるべき姿で……」

 

「ふざけるな……!」

 

 

ゆらりと立ち上がったチハク。鋭く細める瞳は怒りと殺意で染まっていた。

 

 

「そのあるべき姿を……人に覚えてもらえない姿を……! チゲンがどれだけ逃げたかったか……! 同じように利を共にした貴様は、その気持ちが微塵もわからないとでも言うのか!!!」

 

「先に離反を表明したのはそちらだと言うのに。先に俺が手を出したら理不尽だと言うか!」

 

「理不尽とは言わんさ……!! ただ貴様の身をもって知らしめるだけだ!! 私の怒りというものを!!!」

 

 

隣に並んだのはインクリング。ある意味引き金を引いたのは自分でもあると、なんとなく感じ取っていたのだ。

戦場の悲惨を知らぬようにと目を隠したカムイの優しさが翳るのは見ていられない。

 

 

「私以外を狙ったのは……私への嫌がらせだよね。効果はテキメンだよ? でも、もう私は止まることはない!! 誰かが誰かを庇わなくてもいいように!!」

 

 

ギュッと強くチゲンを抱きしめて、2人の背後でカムイはまだ戦えなかった。スピリットがボディから離れていくように虹色の光が上に登り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ははは……これで逆戻りか……」

 

「チゲン……嫌だ……どうしてこんなことに……」

 

「忘れられるの、嫌だなあ……」

 

「忘れる、はずなんかない……! 約束するから……!!」

 

「……でもなあ……約束は……こっちの方がいいや……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「またね、カムイ……」

 

「…………! うん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

上手く返答はできただろうか。

約束はかわせただろうか。

……本当に果たすことはできるのだろうか。

 

 

一度ここに来れたのだから、また来れるはず。

知らない世界と未来に望みを託す他ない。

 

中身が消えて、他に倒していったボディのように、友の身体が形を失っていく。金色の液体となって地面に消えていった。

 

 

「チッ……茶番か? 死ぬことはないというのに……」

 

「…………」

 

 

ゆっくり立ち上がったカムイが竜石を手に、己の肉体を変えていく。

 

殺すとか生きているとか、そんな問題ではない。

 

友を害したこと。庇われたこと。

軽い気持ちでかわされた約束が、彼にとっては本当に嬉しくて。もっと果たし方はあったはずなのに、そのはじめて果たされた約束を台無しにされたこと。

 

それらの感情が多すぎて、自分の中から噴火しそうなのだ。

 

 

『終わりだ……!』

 

「……!」

 

 

完全に竜の形態で飛びかかるカムイに対して、ナカツナは後ろへ引きながらヴォーパルの剣を光らせる。

 

存在を明確にし、元に戻す剣で人の姿へと戻すも、防ぎきれずに受けたのは竜の鉤爪。

 

 

「(まさか、戻された瞬間からすぐに変化をしているのか!?)」

 

 

片っ端から変化をすることで、元に戻ろうがすぐに殴り続ける力技。

剣の力で対処を続けるのは困難だと感じ、身体全体からの放電をはじめて近づかせない方法を取ることに。

 

 

「続けろ、カムイ!」

 

『……ッ! ああ!』

 

 

しかし、チハクが指を動かし、カムイの周りに碁石を生み出すことで簡易的なバリアを作る。

攻撃に繰り出す首や手足は防げなくても確実にダメージを減らしている。

 

 

「くっ……!」

 

「なにかを()()のは慣れている……愚兄と違い、白星の生まれだからな」

 

 

大きく後ろへ下がったナカツナの足元には黄色で塗られた地面。インクに足を取られ、滑るナカツナ。眼前にバズーカの弾が迫り、横一閃に斬り落とし、ぐるりと一回転して着地する。

 

 

「同士討ちだったとしても、一方的に背中を刺して茶番とか言う奴に好感は持てねえよな」

 

「うん。彼……チハクと協力して、ナカツナ! おまえを倒す!!」

 

 

エレブ大陸に迷い込んでいたロイらが戦闘の意思を表明する。あそこでナカツナを討てていれば、という考えもあっただろう。

 

 

「さて……私達はどうしましょう?」

 

「ウホッ!? 助けないの!?」

 

「いえ、ですがあのピットよりも黙らせたブラピに近い彼が敵であったことには変わりありませんよ」

 

「時間の無駄だ、敵対している奴のみ倒せばいい」

 

「……こちらに助太刀すると言うならば、私が知ることを全て話してもいいぞ」

 

 

聞こえていたのか、チハクが頭だけをこっちに向けて言った。

 

 

「完全に手を貸さない理由がなくなりましたね」

 

「……ならば、チハク、貴様だけは倒さねばならなくなったな」

 

 

ヴォーパルの剣先をまっすぐにチハクへと向けた。その一撃でも喰らえばどうなるかを知った上でも彼は冷静さと、敵へ向ける冷ややかな視線を失わない。

 

 

「どうやら既に私達の打っていた布石は思わぬ展開へ動いていたようだ……誰が新手を打った? ルネかキクかダブルか……プレシアは……ないか」

 

「……だったらなんだ」

 

「スマッシュブラザーズと敵対することが、その新手を打った者の意思……だからこそ先程私達にボディの加勢が入った……恐らくお前の元にも来るだろうよ……」

 

 

カムイが到着するまで、ブラックピットをはじめとしたファイター達と2人で戦っていた際、呼んでもないのにきたボディ達。それの不可解さにようやく結論づけられたのだ。

 

 

「だが、私達が起こしていたのは保険のための事件。だからこそ散らして悪目立ちしないようにしていたというのにここまで派手な行動を起こす以上、もはや利害関係は成立していない。ただ単に……利用されているだけだ。

 

「……ッ! 俺の主はあの方だけ……! ()()()()()()()()()()()()()()()だ……!」

 

 

夕霞乃舞(ゆうがすみのまい)

 

ナカツナの様子がブレていく。存在を曖昧にする力は目の前で発動しても効果が薄い。だが、足や手の動きを認識させづらくさせて戦闘を優位に動かせる程度の効果はある。

それに踊るような動きの読みづらさを加えれば、見極めるのは容易ではない。

 

 

「うっ……!?」

 

「アルス! あの魔法を封じる力は……!」

 

「狙いが定まらない……!」

 

 

マホトーンに頼ろうにも、ナカツナを狙えなければ意味がない。どうにか見極めて狙う必要があった。

 

 

「あの剣さえ奪えれば……無策に動けん……!」

 

 

特にチハクに至っては、ヴォーパルが掠りでもすればチゲンと同じ道を行く。小石のバリアを貼っているがこれだけで安心はできない。

 

 

「遅くても見えなければ決定打にはならないな……どうにか……ぐっ!?」

 

「シャドウ!? がっ!?」

 

 

シャドウが、クロムが、謎の攻撃に倒れていく。人形に歪む空間。だが、見えない姿。

 

 

「まさかボディか! もう来てたなんて……」

 

「しかもフェレにいた時と同じようにまた存在が……!」

 

 

見えないボディ達。ナカツナと違い、完全にボディが見えなくなっている。

これで全方位からいつくるかわからない不意打ちに怯えなくてはならない。

 

 

「説得材料のつもりで言ったことが裏目に出たな……」

 

「せ、説得だったの……!?」

 

「……? どう聞いても説得だろう赤、もう味方は味方じゃないと……」

 

「あ、赤……服の色……」

 

 

加入したと言いつつ、仲間意識は薄いチハク。防戦に回るしかないが、その目に諦めは一切ない。虎視眈々と機会を伺っている。

 

 

「チハク……」

 

「……勝利の策は最後まで冷静さを失わないこと……勝ち気はいいが焦りは良くない。()()は常に私の味方……」

 

 

 

 

「安心しろ、思い知らせてやるさ。敗者にこそ相応しい末路というものを」

 





◯タイトル
FEif にて暗夜王族と戦闘に入る際のメインBGM。
しかし、エリーゼ戦では流れない。そもそもエリーゼと戦闘するのが分岐の6章しかないし……

そのため、名前に反して白夜ルートで流れる曲。
私も勘違いしてました。あと黒の同胞と覚えてました。
ぐっだぐだじゃねーか、3DSで一番やったゲーム何だてめえ。


◯チゲン
……はい。離脱となります。消滅ではないため、再び会うことはできる……かもしれません。

寂しがりなだけで悪いことには徹底的に向いてなかったんです。彼は。
黒がメインということで、黒星やら不運やらそういう役回りになってしまいました。
物語的な役割としては、チハクと共に二人一役であり、一人二役でもあります。 実は各々の敵達にはそういった役割が振られていました。(もう言う機会ないと思うので言いますが、ルイマンの章に出てきたリールは脇役です。そもそも巻き込まれた側で無関係の存在ですから)

ちなみに実は設定があった特撮リングの二つ名は「黒星サポーター」。

モチーフは囲碁の精。
名前を言うと姿を消す、というところまではモチーフ通りですが、その後彼を忘れるというのは独自設定。寝返るとはいえ、一時的に敵側にいる理由が欲しかったんです。


◯敗者にこそ相応しい末路
某ハイパー無慈悲を思い出した人は作者と友達。
言い回しを変えてるだけで完全に意識してます。


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130話 どうか君だけでも幸せな人生を

 

「ああクッソ! こんなことしてる場合じゃねえのに!!」

 

 

苛立ちのあまり、身体の動きが雑になっていく。慌てても仕方がないというのに、感情は制御しきれていない。

 

 

「ケンさんはキクを……」

 

「助ける! 敵だったからって放っておけるか!」

 

 

ダブルに攫われたキクを助けるため、仲間と逸れたケンとルキナはたった2人で走り回っていた。

例え敵だったとしても、やってきたことが友や仲間に危害を加えるような許されざることでも、それが理由で自分に好意を抱いてくれた少女を見捨てる真似は出来なかったのだ。

 

 

しかし、ステージから落ち、逸れた2人は1番窮地に陥りやすい2人でもある。

容易に足止めをくらい、あっという間に囲まれる。2人とも長く戦ってきた戦士だからこそ、今までやり過ごすことができていた。

 

 

「しかしどこに連れてかれたのか……!」

 

「オリャアッ!! わからないがダブルとやらの言ったことが事実ならマスターハンドなりクレイジーハンドなりが知ってそうだ!」

 

「……! そういえばどこかにあるマスターハンドの身体と、ジョーカーに宿るマスターハンドの精神を引き合わせるという話でした、ねッ!」

 

 

鳩尾の正拳突き、裏剣で防いで押し退けバランスを崩したところに鉄の槍で地面に縫い止める。

 

ダブルの望む世界の創造。

それにスマッシュブラザーズの居場所があるとは思えない。なんとしてでも止めなければ。

 

 

キクの救出とか、その程度の話に収まる事態ではないのだ。

そのためにボディ達は退けて進む。過敏になった感覚器官が正面から飛んでくるなにかの物体を感じ取る。

 

 

「……っ!?」

 

 

2人が驚き、左右へ跳ぶ。

吹き飛んできたのは重量のあるクッパのフィギュア……否、ボディのフィギュアだ。地面に放られたそれが形をなくしていく様に、本人ではないことはわかる。

ただ、今まで、物理的に大きなダメージを与えることしか対処法はなかったというのに。

 

 

「ケンに……ルキナ、2人か!?」

 

「うおっ!? 探してたぜジョーカー!!」

 

 

その下手人は、プレシアを他のメンバーに任せ、マスターハンドの行方を探すために怪しい輝きを目指すファイター達だった。

ルカリオ、リュウ、リュカ、モルガナ。そして、切り札となるジョーカー。

 

 

「リュウ! おまえもピンピンしてるな、さっすがだぜ! ちょっと冷静になる〜」

 

「そのテンションはなんだ……」

 

「まったくだぜ……」

 

「なにかあったんですかね……?」

 

『恐らく、な』

 

「なにか……そうです! ジョーカー! 一刻も早くマスターハンドのところに行かなければ!」

 

 

彼らは足を動かしながら、互いの情報を交換する。

 

 

「なるほどな、こいつの中のマスターハンドを完全な状態に戻せば事態は解決するかもってとこか……」

 

「うおっ!? 猫が喋った!?」

 

「猫じゃねーよ!! ってか今更かよ!?」

 

「いつの間にか四足歩行に退化しちまって……」

 

「退化でもねーし!!」

 

 

よその人間にとっては、怪盗姿か、バスの姿が馴染み深いらしい。モルガナを軽くいじって平静を取り戻したケンが確かに前を見つめる。

 

マスターハンドの器の場所に、ダブルはいるだろう。そして恐らくキクも同様に。そこが最終決戦の舞台になるはずだ。

 

 

「そういえば猫バスにはなれないのか?」

 

「鳩バスみたいに言うんじゃねーよ!! できてたらとっくにやってる!」

 

「……相変わらずだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水分をたっぷりと吸って、重くなった服と身体を起こす。耳の中の水を抜きながら、はっと辺りを見回した。

 

 

「みんな無事か!?」

 

 

短い返答、形になっていない言葉。それぞれの声をだす。

 

ピカチュウ、ソード、ブロウ、ルフレ、リヒター、ヨッシー、ホムラにヒカリ、あとアシュリー。

ボールに戻していたゼニガメ、フシギソウ、リザードンを含めて全員いる。一体どれほど気絶していたのか。

 

ガラル地方のワイルドエリアにて、ダブルを取り逃し、ボディが茶々を入れたせいで現地のポケモン達とあわや戦闘、になりかけたところを新たに仲間になった(ソードに懐いた)ラプラスのハイドロポンプで無理やり送り出されたのだ。

 

 

「あの状況でもかなり手加減はしてくれたみたいだね……水量はどうにもならなかったけど……」

 

「あ、乾かします」

 

「あ、ありがとう」

 

「ピカカカッ……」

 

 

水分をたっぷり含んで重くなったローブをホムラに預ける。身を震わせて水を飛ばし、服を絞って水を追い出す。

 

 

「アイツを野放しにするのはハチャメチャに危険だ。この世界に残ってる奴ら相手に不意打ちなんてされちゃたまんねえよ!」

 

「結局、完全に演技されたら見分けるの無理だったしな……」

 

 

アイツとはダブルのこと。

しかし、彼が願いを変えて、世界の破壊と創造を望むようになったことを彼らは知らない。

 

ゆえに彼が戦闘中に変化したダブルの仲間も含めての脅威だと思っている。実際は決裂したようなものなのだが。

 

 

「うん。ここは慎重に……「キャー!!」……今のは……」

 

 

どうやらここでも一波乱が起きているようだ。遠くにボディが見える。スマッシュブラザーズかもしくはただの関係者か。どちらにせよ危険な状況らしい。

 

 

「──ッ!!」

 

「エッ! ブロウ!?」

 

 

動こうとしていた周りを置いて、真っ先に駆け出すブロウ。知古だったからかはたまた偶然か。驚愕に目を開いた顔をソードは目撃していた。

 

 

「(あの……声……!!)」

 

 

本当に久しぶりに聴いた声。間違えるはずもない。どうしてこんなところにいる。

 

 

 

 

 

 

 

「あうっ……!?」

 

 

自分の体躯が木に叩きつけられ、肺の中の酸素が口から飛び出す。

 

少女はある人を探していた。

そのある人の近辺を探っていたところ、スマッシュブラザーズの存在を知り、こっそりと侵入。

しかし、その際にこの事件に巻き込まれ、プププランドに飛ばされていた。

 

ルネを追うカービィ達が大乱闘の世界へ帰還するのを追って、彼女もこの世界にやってきたのだ。

 

 

「……うっ……」

 

『…………』

 

 

しかし戦う力のない彼女にも容赦のないこの事件。頭を打った衝撃で意識が途絶える。朦朧とし暗くなっていく視界の中、赤を身に纏う探していた後ろ姿が守るように立ち塞がった。

 

 

「せん……せい……」

 

「1人で突貫して勝手に危なくなって……変わんねえな……」

 

 

完全に閉じていった目を瞬きせずに見つめたブロウ。本当に手のかかる助手だ。

 

 

「……父親を終わらせた男なんざ、探す価値もねえだろうに」

 

 

親の仇に時間を割くな。憎めないならいっそ自分ごと忘れろ。俺の存在もなかったように。

 

 

「……いくぞ」

 

 

短く言い残して、瞬間移動の如く速く、真っ直ぐに腹部を殴りつけた。ゼルダの、人型のボディとして、懐は致命的な弱点。大きくよろめいたボディの顎に回し蹴りをぶつける。

 

ぐらりと倒れかけた相手を裏拳で弾き、接近していた他のボディに叩きつける。

投げたボディを隠れ蓑に接近していたブロウは、他のボディを掴んでスープレックス。丸いカービィのボディは地面を跳ねて、ドロップキックが突き刺さった。溶けていくボディ達。

 

 

「ブロー!! どったの? 突然走り出して……」

 

「……別に。誰か襲われてんなら急いだ方がいいだろ」

 

「ギャー! 気絶ナウ! どうしよどうしよ!?」

 

「はあ……大きい怪我じゃないし、横にしときゃいつん間にか起きてるだろ」

 

 

遅れて駆けつけたソードは倒れていた探偵服の少女、シーラ・ベルを見つけて取り乱す。仕方なしに怪我の容態を確認する手が震えていたのを誰も知らない。

 

 

「そうセイ(言え)ば、」

 

「あん?」

 

「やたらとランスタート(走り出すの)ファスト(早かった)けど、お知り合い?」

 

「…………いや、」

 

 

 

 

「他人だ。ただの」

 

 

まだ、真逆の希望を選べるほど、整理はついていなかった。

 

 

「……そう」

 

「戻って……ダブルを追うぞ」

 

 

せめて、シーラを茂みにでも隠さねば。

抱き抱えようとして、この手で触れなかった。

何かを察したのか、ソードが隠した。

 

隠すぐらいなら連れていって側で守るか、どこかいい場所まで連れていく方がいいという考えに、そんな時間はないと言い訳しながら。

 

 

「…………」

 

 

離れていく際、一度だけ少女の隠れた場所を振り向いた。

 

親の仇で、探偵としての師で、逃げた臆病ものを追うことはないというのに。

 

 

「…………お前だけでも、幸せな人生を」

 

 

ソードと、ガンナと、多くのスマッシュブラザーズの仲間にスレチガ諸島でであった人々。

 

俺は、俺なりに満足した人生だから。

俺に心を割くよりも、自分の幸福に捧げてくれ。

 





◯タイトル
すれちがい迷宮ラスボス、デーモンキングが正気であったうちに日誌に残した言葉。届くかもわからない娘への言葉。
幸せにとかじゃなくて幸せな人生をというのがちょっと心に来ます。


◯ブロウとすれちがい迷宮
pixiv百科事典のシーラ・ベルのネタバレ項目を参照。
すれちがい伝説を3人で攻略したのち、すれちがい迷宮の物語でシーラと出会い、その後逃げるようにすれちがいフィッシングへ、というのが彼の遍歴。

ガーデニングで余生を謳歌しているソードや、ゾンビや宇宙海賊相手にドンパチやってるガンナとは重さが違うのです。


◯ソードの言葉
ルビ機能をつけて何言ってんのかわかりやすくしました。
その分手間はかかるけど。


◯6章のあらすじ
封鎖されていたガラル地方、ワイルドエリアで目覚めたレッド達ファイター。現地のポケモンと戦ったり助けてもらったりして合流を進める中、ファイターの姿と成って紛れていたダブルの奇襲にあい、合流と帰還が進まなくなる。
誰かと状態を共有するダブルの特性に苦しみながらも、彼が敵集団とは違う目的でルフレの命を狙っていることを知る。
そして一時的な進化を行うバンダナのおかげもあり、ダブルを退ける。
しかし、ボディに襲われていた野生のポケモンとの喧騒にあい、現地でであったレッドの新たなる仲間の助けの元、なんとかレッド達は大乱闘の世界に戻るのであった。



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131話 虚空の祭壇

 

「あっ、あれは……」

 

「グレートフォックス……また壊れてやがる……」

 

「草」

 

「テメェ!!」

 

「コゥ」

 

「あっ、なんか側にオニヨンみたいなのもあるっス。なんかすげー色してるけど……」

 

 

ホテルラストリゾートに迷い込んでいたルイージ、デイジー、ガンナ、ファルコ、ゲッコウガ、ワリオ、リトル・マック、キノピオ隊長、レックスの9人。巻き込まれていた現地霊リールの力も借りて、どうにか大乱闘の世界に戻ってこれた彼らは右ウイングがへし折れたグレートフォックスを発見したのだった。

大破、というほどでもないが、修理しなければ飛行に支障はあるだろう。

深刻さが低いからか、それとも性格故か、フォックスほどオーバーなリアクションはないが、ガンナの煽りは別腹である。

 

そして側にはオニヨンに似た何かがある。しかし、普段見るオニヨンより丸っこく、色んな色が混ざりかかったような色をしている。足にあたる部分も、触手のように柔軟だ。

 

 

「おい! 誰かいないのか!」

 

「わあ〜! ファルコ〜!!」

 

 

歓喜のあまりにやたらと跳ねながらスリッピーがファルコへ近づいてくる。どうやらセンサーや何かで自分達が近づいてくるのを察知していたようだ。

 

 

「よかった〜、バラバラに大乱闘の世界に行ったら、ファルコもフォックスも見当たらなくて〜。空飛ぶボディにウイングをやられちゃったよ〜」

 

「フォックスはここにはいないの?」

 

「うん、一緒のタイミングで来たからかな? ペッピーはいるんだけど……まあ、とりあえず中にはいってはいって!」

 

「やっと休めます〜……」

 

 

真っ先に駆け出したキノピオ隊長が、足踏みで急かし、近づいたらぴゅーと中へ入っていく。

 

 

ギャー!?

 

「えっ、何!?」

 

ゲゲゲゲッソー!?

 

るっせー!! 誰だテメェ!!

 

「……誰かいんのか?」

 

「まあまあ、とりあえず中入ってよ」

 

 

聞き覚えのない声に怪訝に思うファルコの背を押しながら、グレートフォックスに乗り込んでいく。

 

 

 

 

 

 

「うわああ……」

 

「中に入るのははじめてっスね……」

 

 

グレートフォックスを見たことがないレックスは勿論、ファイター達もファルコ以外は中に入るのがはじめてだった。普段ファルコに喧嘩を売ってばかりのガンナも、技術が気になるのかあちこちを見てソワソワしていた。

 

 

「そういえばさ、バンダナの人とタコっぽい人に会った?」

 

「いや……会ってないわ。ねえ?」

 

 

デイジーが他の顔を見回すが、見たような反応はなかった。しかし、スリッピーは気にせずにま、いっかー、と楽天的である。

ガラッと開け放った操縦室。オリマーに似た小さな男性と蛸の足を髪としたような女性が何やら話し込んでいた。

 

 

「うーん……ここの部品は……」

 

「あ、配線が切れてますね、何かの衝撃が……」

 

「あー! 勝手に進めないでよ!」

 

 

スリッピーも外れてそれに加わっていく。案内役がいなくなったものの、代わりの者が来た。

 

 

「ペッピー」

 

「ようファルコ。無事そうで何よりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ペッピーは話した。

8号達に託したことをそのまま。

マスターハンドの現状。敵と思わしき者達の正体。何をすべきか。

 

 

 

 

 

「面倒くせえことになってんなぁ、オレ関係ねえから」

 

「逃すかこのニンニク臭」

 

「亜空軍に与したせいで事態がややこしくなったの忘れてねぇぞ」

 

 

物騒な2人に捕まる。

喧嘩ばかりだが、こういう時の連携は強いのがお約束。逃げ切れる気がしなかった。

 

 

「ワシらのことはいい。まずはそのジョーカーかマスターハンドかを見つけるべきだ」

 

「ちょっと休憩してから行こう! 大変だったし……」

 

「コウオ!」

 

「そうだね……驚いたのもあって疲れてるし……」

 

 

ホラー屋敷になったホテルを歩き回ったせいで、精神的にも疲れている。

焦らずに腰を下ろして、と思っていたが、事態は彼らを慮ってはくれない。誰でもわかる緊急時のサイレン。耳に残る不快な音が鳴り響いた。

 

 

「大変だー! 大変だー! ボディがいっぱい来てるよー!」

 

「まさかつけられてた!?」

 

「原因追及は後でいいわよ!迎え打つわ!」

 

「よっしゃ! 反復横跳びして準備しておくぜ!」

 

「なにの準備……?」

 

「地上だけじゃないんだ、飛んできてる敵もいて……」

 

「フンッ、そっちはオレに任せとけ。やはり空の方がいい」

 

 

逸る気持ちを抑えて駆け出す。ここはグレートフォックス。スターフォックスの基地でもあるここはアーウィンの格納庫でもあるのだ。

 

 

 

 

 

「思えばあそこは狭いとこだった。この空で、オレに敵うわけねえだろ!」

 

 

相手のボディは、ピットやリザードン、メタナイトといった飛べる手段を持つ敵ばかり。パルテナのような空中に浮くボディもいれば、プリンのように空中戦に強い相手もいる。

 

 

「オラァ!」

 

 

追尾してくるボディをローリングで振り切り、ガトリングのようにブラスターを連射して敵を落としていく。一瞬、地を見ると他のファイター達が地上で戦いをはじめていた。

ただ、この空中戦、装甲の厚さが違う。

ボディは数こそあれど、所詮は生身。戦車に歩兵が挑むようなもの。どんどん射落としていく。

 

 

「この程度かよ!」

 

「まったくねえ」

 

「っ!?」

 

 

真後ろを取った敵をウイングで斬り落とすもう一機のアーウィン。

ペッピーではない。スリッピーでもない。フォックスでも、なかった。あの声は。

 

 

「ガンナッ!! テメェ……!」

 

『勝手に乗ってっちゃったんだよ〜!!』

 

 

通信での簡単な状況説明。

操作方も知らないだろうに、その動きは経験者と遜色なし。

 

 

「一度動かして見たかったんだよ。まあ、似たようなもんで戦ってたこともあるし、そんな難しくもねえ」

 

「テメェの事情は知らねえよ、勝手に……」

 

「空から地上に攻撃されると面倒だからな、ヘイトを買う頭数は多い方がいいだろ」

 

「チッ」

 

 

粗雑な言動と行動に反して、頭が回るのがガンナだ。気持ちしか反論できる証拠がないのでさらに腹が立つ。

 

 

「傷ひとつでもつけたら弁償だからな」

 

「わかってらあ、おまえこそいきなり茶々入れて……あん? あれは……」

 

 

軽口を叩きながら、ブラスターを撃つガンナの視界の端、暗い宇宙に映える赤い翼を捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──いつだって、記憶の始まりは燃えるように熱い体とこぼれ落ちていく赤い命の水溜まりからだ。

 

 

親はいたのだろう。事切れた女性と今にも同じ末路を辿りそうな男性。

 

車から投げ出された自分は、強い衝撃で瀕死であるものの、そのおかげで火災には巻き込まれなかった。でも、このままでは時間の問題だろう。

 

 

そう、例え事故が起きなくても。

だから契約をした。死にたくないから。

少ない寿命限りなく伸ばすために、ドッペルゲンガーとなって生きながら得るために。

 

 

でも欲は止まらない。

生きるために、今までの人生全てを差し出して。

それでも時間が経ったら差し出したそれを欲した。

 

確固たる自分が欲しい。自分だけの自分が欲しい。

 

自分だけの体が、自分だけの姿が、自分だけの声が、自分だけの記憶が、自分だけの状態が、自分だけの関係が、自分だけの絆が、自分だけの役割が。

 

 

『貴方は、ルフレさんじゃない。どれだけ姿を取り繕っても能力や記憶を真似ても、体の状態が同じでも! 貴方自身の意思がそこにある以上、()()()()()()()()()()!!』

 

 

 

ダブルという存在が、ただそれだけで自分だけの何かを手に入れられないのならば、それはそういう世界が悪い。

 

 

『────ならば、我々を求める世界を我々が創る。願いを叶える力がドッペルゲンガーの力ならば、我々は全ての世界を破壊する力を求める! 我々が望む世界を手に入れるために!!」

 

 

もう、ルフレのボディとしての面影はない。

望むものを手に入れるために、今あるものを破壊する。

 

そのための姿は、まるでシステムや機械のように無機質なものであった。

 

 

──降臨するは、"虚無の残骸"。

 





◯タイトル
KH2のワールド、存在しなかった世界の城の屋上部。
本当はワールド名をタイトルにしたかったんですが、既出だったので……

ゼムナスとの最終戦の場所だったり、円卓の間以外で機関員が集まる場所。キングダムハーツもよく見える。


◯オニヨン
今話で出てきたのは3バージョン。全ての色が一つになっているので使いやすいが、見た目は微妙。
4では色の区別がはっきりしているので、カラフルで好き。


◯似たようなもん
すれちがいシューティング参考。


◯ダブル
……はい。ラスボスです。ルネはラスボス候補として異質さを目立たせていましたが、ただの誘導です。

"虚無の残骸 ダブル"

【挿絵表示】


能力等は実際に対峙した時にでも。ドット絵をイメージとして置いておきました。自作ゆえにお目汚しですが、少なくとも見てられないほどのものではないはず……


◯作者の気まぐれコメント
スプラトゥーン甲子園見ながら書いてます。
エクカスが活躍しててうれちい……使ってて楽しいし発表当初の酷評が信じられないです。

え? 私もボロクソ言ってた? …………そうだよ(開き直り)


後、来週新生活でドタバタしてるので、もしかしたら更新できないかもしれません。


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132話 悪逆

 

──時は昔、天皇の住まう御所にトラツグミに似た大変気味の悪い声が響いたそうだ。

 

 

──毎晩毎晩、武士も寝静まる丑三つ時に毎晩鳴るその鳴き声、黒煙とともに上がり、人々は大層恐れ慄いたそうな。

 

 

──次第に天皇も大層その鳴き声を恐れ、遂には病に伏せってしまった。

 

 

──万病に効くという薬も、名の知れた祈祷師も効果がなく、もはやその天命が尽きるのも時間の問題であった。

 

 

──万策尽きて側近達が頼ったのは、稀代の弓の名手たる将軍だった。

 

 

──1人の家来を連れ、不気味な黒煙の元へ矢を射る。

 

 

──家来と共に鳴き声の主を討伐した後の御所は、小鳥の心地よい鳴き声が響き、夜の静かな静寂が戻ってきたのだ。

 

 

──その鳴き声の主は、それは不可解な姿をしていた。

 

 

──胴は鶏、尾は狐、猿の顔に虎の足。

 

 

──鵺と呼ばれたその妖は死霊となり、一頭の馬となって将軍に飼われたそうな。

 

 

──しかし、敵対する武将が鵺であった馬を取り上げ、その後戦にて将軍は身を滅ぼす。

 

 

──武将はその馬に、長綱という将軍の嫡子の名を名付けたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神剣ファルシオンとヴォーパルの剣が斬り結ぶ。交差した双剣はどちらも名剣と呼ぶに相応しい代物。澄み切った白刃が鳴らした音は、戦闘に似つかわしくないほど澄み切っていた。

 

 

「クロム!」

「……!」

 

「……チィッ! 数が多過ぎる!」

 

「ぐっ!?」

 

 

サイドを固めるように回り込むのは、ロイにソードをコピーしたシャドーカービィ。友人とそっくりな姿に内心驚きはしたが、今は何も言うまい。味方ならば尚更だ。

 

 

狗馬之心(くばのこころ)……!」

 

「電撃の……!」

 

 

辺りに、そして周りに。

一切の容赦もなく降りかかるは無数の雷撃、そして彼自身も人体を焼け焦がす放電を放った。

チハクがファイター達と自分の周りに碁石を囲うように生み出し、可能な限り電撃を弾いていく。ただ隙間のないバリアではないので完全には防げない。彼から遠く離れた者には防御が届かない。

 

 

「願うならば直接殴りたいが、あの剣が目障りだ……」

 

「あー……どうにかどっか飛ばせれば……」

 

 

白く輝くヴォーパルの剣。あれがあるだけで非実態の攻撃は無効にされ、チハクに関しては掠るだけでも致命傷だ。

インクリングには、力技しか思いつかないがどうにか電撃を掻い潜る必要がある。一瞬絶縁性のインクを使えば、と思ったがあいにく在庫切れである。

 

 

「スーパーアーマー! ブラピ!!」

 

「わかってる!!」

 

「……!」

 

 

ダメージの痛みを鈍くし、神弓を短剣として近づく。尚も放電しながら突くように対応した刃の軌道をなんとか逸らす。

これで互いに得物の剣先が下がり隙ができる。

しかし、片方には攻撃に回れる味方がいる。

 

 

「おりゃあっ!!」

「ピチュッチュ!!」

 

「チッ!」

 

 

ローラーの振り回し、こうそくいどうを片方の手で防ぐ。ほとんど防げないものの、無意識の行動だった。

 

 

『グウワアアアアッ!!』

 

「ガッ!?」

 

 

片方は剣に、片方は盾として、両方の手が塞がった状態で竜のままのカムイが馬乗りになる。首を振り回し、角であらゆる場所を引っ掻く。

 

 

「……っ! 舐めるなよ! 平安の怪異を!!」

 

『くっ……!?』

 

 

激しい電圧にカムイの身体が吹き飛ばされる。しかし、その真下にもうナカツナはいない。ファルコのボディを捨て、怪異となった悪霊は、キマイラのようにツギハギの獣に成り果てたのだ。

 

胴は鶏、尾は狐、猿の顔に虎の足。

 

雷雲を纏って全容を露わとしない姿を見た者は恐怖へ叩き込む。ファイター達ですら、背中に底知れぬ薄寒さを感じた。

 

 

武士のようでありながらに剣も捨てた、怪物。

ローラーを下ろしたインクリングが、3号が呟くように言った。

 

 

「なんか……戦う気も失せるや」

 

「…………」

 

「君は……自分が生きることだけを選び続けて、一体どこを目指していたの」

 

 

目的であったはずのボディを捨ててまで勝ちを求めるプライドはあって、恥を晒して倫理に逆らっても生きようとした。

 

何よりも正体がわからなかったのはナカツナ自身ではなく、彼の心の内だった。

 

 

 

「うっ……」

「チュ〜……!」

 

 

力強い羽ばたきが空気を揺らし、軽いシャドウや小さいピチューを吹き飛ばしていく。

踏ん張れた内のガノンドロフに噛みつき、電撃を浴びせて地に叩きつける。

 

 

「ぐっ……厄災か!!」

 

「あんたがそれ言うの! もうっ!」

 

「あっ、カズーイ!」

 

 

勝手に撃ったタマゴ爆弾だが、周囲のモヤに当たって爆発したように見える。効いているのかもなんともいえない。しかし、爆発の中から貫くような電撃が襲った。

 

 

打つかり(ぶつかり)っ!」

 

「うおっ!? 助かった! しかし、これだと銃火器も中々使えないな……」

 

 

突如現れた白石の壁に、スネークは守られた。ヴァーポルの脅威は抜けたが、チハクに火力がないのは変わらないのだ。支援に徹した結果、不意打ちも防げた。しかしナカツナ、能力が能力であるが故か、敵の不意を突くのに長けている。

 

 

「接近戦……いや、周りのモヤが毒でない保証はないね。奴ならやりかねない」

 

「ああ、あれこれ考える必要はない」

 

 

クナイを投げ、そのまま帰ってきた状況を見て、かわしたシーク。しかし、チハクは怒りを抱えながらも、冷静な無表情が残ってたのだ。

()()を拾い上げて珍しく饒舌に言った。

 

 

「既に勝っている。後はどう、奴に地獄を見せるか、だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ナカツナァ!!』

 

「カムイッ!?」

 

 

神話から繋がれた神祖竜の血が肉薄する。ロイも驚いたのだ。カムイがこんな、本能のままに怒る様子ははじめてだった。

我を忘れてでもない。自分の感情を自覚した上で怒りにまかせて正気のままに怒り狂っている。

そうでもしないと、結末がどうなろうと今回の出来事が消化できそうにないのだ。

 

 

『ボディだろうがスピリットだろうが……! みんな、それぞれ色んな道を選んで生きている……! チゲンが選んだ道を馬鹿にするな!!』

 

『なぜ庇う? なせ自分の命を捨てられる!! 憎き我が主人は何をしてでも生きることを選ぶ方だった!』

 

『それはおまえの道だ!! 人に押し付けるな!』

 

 

絡み合った2体の異形達は天を舞い、力づくで敵の肉体を引っ掻き、竜穿が肉体を貫く。

尾のようなものに首を絞められ、頭を引っこ抜かんと強い力がかかる。引っ張り返し、首に力を込めて、無理やり耐える。

お互いが飛行体勢を取り続けることができなくなり、もつれあいながら落ちていく。

 

 

『(うるさいッ!!)』

 

 

放電をしても、カムイは離れない。その段階で既にもう理解できない気持ち悪さを感じた。

自分が無くなったら、全て終わりだろう。大切な何かがあっても、自分あってこそのものだろう。

 

 

「守りたい人、守りたいと思う人。自分しかいなかったんだね」

 

『(巫山戯るな!! 俺にとってのそれは我が主人だ!! ただ、あの人は他の武士に恥だと謗られようと生きる方だ……あの人と同じ道を進んでなにが……)』

 

 

ふっ、と音もなく同じ位置まで浮いてきた、シャドウ。かの力はなんだったか。人の形を持っていれば、血の気が引いていただろう。

 

 

「カオス──コントロール」

 

 

落ちる速度が消えていく。

ゆっくり、ゆっくり。そうか、接触していたカムイごと、時間の流れを変えた。

 

 

『(……!?)』

 

 

だが、ナカツナにとどめを刺さんとしたのは、シャドウではない。飛翔の奇跡をつけた、チハクだった。あの剣は、武将としての武器すら切り捨てたもの。存在を明確にする白刃。

 

 

『(ヴァーポルの……剣……!?)』

 

 

チハクが小さく笑うと、上空から真っ直ぐ真下へ、自分へ。

 

 

『あ…………ぐ…………!?』

 

 

言葉すらゆっくりに。

存在を明確にし、スピリットを強制的に霊体へ戻す剣。それが悪霊たる自分に使えば、死しか、ない。

 

垣間見えたチハクの顔。ナカツナにもわかるように、ゆっくりと口が開いた。

 

 

お ろ か

 

 

 

 

馬と化した自分。

あの方は自分の仇を取った。

それだけで好ましかった。

 

何をしてでも、自身の血筋を否定してでも生きる御姿に。

 

 

他者から非難されようと自分を貫く御姿に、自分を大事にしていいのだと、背を押された気がしたのだ。

 

 

 

 

馬鹿馬鹿しい。

命乞いまでできなかった自分は、本当にあの方と同じ道だったのだろうか?

 

走馬灯なんて見て、いったいどの程度の命になるのだ。

 





◯タイトル
FEif 暗夜編 26章の章タイトル。
人の道にそむいた、非常に悪い行い。もしくは、主君・父などを殺そうとする罪。
二通りの意味。


◯ナカツナ
クランクアップです!()
なんか凄くブレブレな設定だったのですが、実際、性格設定がきっちり決めてなかったのです。割と元ネタ通りですから、逆に決めるのが遅くなりました……。よくコイツを一章のボスにしようと思ったよ。

普通に誇り高い武人だったり、卑怯を卑怯とも思ってないナチュラルバーサーカーだったり色んな時期がありました。
ちなみに獣化ですが、当初はそのまま戦ってとどめを刺されるつもりでしたが、敵が多いので急遽形態変化を採用してます。なお、しっかりファイター面子を描き切れたかは……うん、私は人生の負け犬。


◯作者の気まぐれコメント
先週は突然休ませてもらって申し訳ありません。ちょっと新生活のあれこれが忙しくて……
今週も片付け切れなかったので、今週は駆け足で執筆してます。(現在20:53)

そんなこんなしてる間にWiiUと3DSのオンライン終わっちゃいましたね。スプラトゥーン、天使の降臨……できなくなったのが信じられないですね。悲しい……

雑誌で特集されてたスプラトゥーン。
塗ってれば勝てるとパブロに惹かれてソフトを買い、いつの間にやら52凸という殺意に芽生えました。
そっから2でブラブラしてて、3の初期でスクイックリンを逆張りで使いだし、今はスロッシャー愛好家。懐かしいです。


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133話 最後のカギ

 

「はあ……はあ……」

 

 

ギリギリだった。

剣術などやったことのないチハクには、そこそこの長さを持つ刀を扱う自信はなかった。

カオスコントロールの影響下なら当てられたが、ではその影響を与えるためには存在の不明瞭な奴を対象にしなくてはいけなくて、そのために……いや、もうそういうことは考えたくない。

 

大口は叩いても、割と筋道は曖昧だった。単独では確実に返り討ちだっただろう。

 

 

「……おい」

 

「わかっている……手を貸せと言うのだろう? いいさ、愚兄の友を死なせるつもりはない」

 

 

ガノンドロフが首元へとあてがう大剣。その反応は予測していた。よく、戦闘の中で連携を取ってくれたとさえ思う。

 

 

「……いいのかい?」

 

「拒否する理由はない。我々はハナからそうするべきだったのだ。完全ではなく、不完全な融和……隣の知人が牙を向く保証を拭わなければ気が休まらぬなら、最初から個人で戦うべきだったのだ」

 

「?????」

 

「つまり、保険のためにこんなことを?」

 

「ボディの肉体をフィギュア化する可能性を無くしたかった……それだけだ」

 

「?????」

 

 

バンジョーとインクリングがクエスチョンの花を頭上に咲かせている中、カムイは安堵の顔。少しばかりの笑みを浮かべた。

 

 

「……うん、ありがとう」

 

「気にするな。しかしこの状況……私達が離反するより先に誰かが計画の脇道へ入ったな。プレシアはこれほどのことは出来まい。キクかダブルか……ルネか? 奴は底知れない」

 

「とりあえずおまえの知ってることを全部教えろ。もしくは……ボディ取り換えろ!!!

 

 

くわっと、目を見開き、指をさしてブラックピットは言い放つ。パルテナはため息である。

 

 

「おまえのボディを使っていたのは愚兄だが」

 

「瓜二つなのが更に増えるのが気に食わねえんだよ!!」

 

「はいはい、先行きましょうね〜」

 

 

ズルズル引き摺るパルテナを先頭に彼らは進む。

 

 

「(……うん……僕も行かないと。)」

 

 

また、会うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

息が整わない。

どれだけ戦っているのか、あれから何体のボディを葬ったのかわからない。

でも、ああ、でも、まだ敵がいる。

討たなければ、戦わなければ。

 

チャリとチェーンが擦れる音。

剣先を地面に突き刺し、支えにして立ち上がる。

よろめきながらキーブレードを天に掲げて、癒しの魔法を唱えた。

 

 

「……ッ!!」

 

 

白と赤の混じるキーブレード。

己の服が白く輝いて、手には虹の刃を携えた剣。宙へ浮かぶ周囲には結晶のような非実態の剣。

 

 

「うおおおおおっ……!!」

 

 

戦いの中で他のみんなが放つ声があまりにも遠くて。まるで水の中にいるようなくすんだ声だった。

 

手の動きに対応して1人でに動くオートアサルト。縦2列に並んで交差するように切り刻み、刃から放たれる光線。

 

 

『痩せ我慢か? 知ったことではないが……』

 

 

振り払うように心を闘争へ傾ける。

 

ああ、そうだ。

最初の冒険の際、リクと別れた時とは違う。

希望は見えない。頼れる友達も隣に居なくて、1人っきり。

この世界だからこそ会えた友達はいるのに、誰と居ても名状しがたい孤独感はどうしても拭えない。

だから今側にいる友達と共にいたい。1人が事実でも誤魔化したい。

 

前に進むことで、今も失うことがとても怖かった。自分の置かれている状況から目を逸らすことで、楽しいことだけ見ることで現実逃避していたのだ。

 

痩せ我慢──奴の言うことはああ、正解だ。

 

 

『キミが元の世界に帰れなくなるかもしれない』

 

『キミ自身がこの世界から消えてしまう……力が失われるから元の世界には戻れなくなる』

 

『さようならソラ、おまえは──この世界から──!』

 

 

「……うわっ!?」

 

『…………』

 

 

宙の高くに飛んで、戦いのみに集中していたために足を掴まれるまで気づくことができなかった。

 

巨大な衝撃に足首から上が後ろへ逸れ、声も上がらない悲鳴。強大なビームのようなものを真っ向から受けたのだ。それでも足首は掴まれたまま。

 

 

「ソラ!? ぐっ……!!」

 

『…………!』

 

「あかん!?」

 

 

痛む体に鞭打つクラウドも、ガノンドロフのボディとの鍔迫り合いを振り切れない。

距離が近く、ソロの魔法は味方にも当たる。回復だって、戦士が足りなければジリ貧である。

動ける人数ももう僅かだ。

 

走る、足音がする

 

 

「どりゃあああッ!」

 

「わっ!?」

 

 

スライディングで敵だけを吹っ飛ばした赤色。背中を強かに打ち付け、すぐに体を起こす。

 

 

「うーん、なかなかいいタイミングだったよね! 大丈夫? ソラ」

 

「……! あ、ああ」

 

 

差し出された手を握り返して、自分の足で立つ。

自分が最後のファイターならば、彼は最初のファイター。

 

 

「マ、マリオさぁん……!!」

 

「待たせてごめんね! ボクが来たからにはもう大丈夫!」

 

 

マリオの隣へと並び立つ、ピーチ、ロボット、ベヨネッタ、ベレト、セフィロス、カズヤのファイター達。

そして、ギザみみピチューにウクレレピチュー、マリア・ラーネッド。

 

 

「……その男まで、連れておいて。どういうつもりだ?」

 

『アー……そうなりますヨネ……』

 

「敵に振り切られた」

 

 

あくまで淡白に、ベレトが代わりに言った。

クラウドとセフィロスの間に並々ならぬ因縁があるのも、セフィロスとカズヤがこういった時に足並みを揃えるはずがないという共通認識もごともっとも。ゆえに短く事実だけを伝える。

 

人が増えたことによって、ソロがベホマラーで癒す隙ができた。しっかりとした足腰で合体剣を構え直した。

 

 

「苦戦しているようだな」

 

「あんたの剣は借りないさ」

 

 

クラウドの身を守るように周囲を飛ぶフレア。光の障壁が足場になり、高所からの攻撃を可能にした。近づく敵はクラウドへ攻撃する前にフレアに焼かれる。

 

 

「ええっー!?」

 

「喧しいガキ。雑魚の掃討もできぬなら何処とでも帰れ」

 

「なんで、カズヤもセフィロスも!?」

 

 

まさか、こんな形とはいえ、共通の敵へ共闘するなんて。不満はあっても連携に支障は出さない。そこまですら行くとは思ってなかったのだ。

 

 

「事が思った以上に大きくなったまでのことだ。あの神を捩じ伏せるまでこの世界には保ってもらわないと俺が困る」

 

「クラウドに会う手段がひとつ減る」

 

「………………」

 

 

背後で微妙な、絶妙な顔をするクラウド。何か言いたげだが、言ったところで何が変わることもないのだろう。

どちらも自分本位。可笑しな物を食べた訳でもない。この戦況を潜り抜けても、大して変わってないのだ。

 

 

「ああそういえば! 先程黒幕らしいのがどこかに空間を繋げた!」

 

「ワープゲートかしら? どうして行ってないの!?」

 

「んな余裕ないわ!」

 

 

傷も癒えて、オリマーが、4号が、Wii Fit トレーナーが、ダックハントが加勢していく。

洞穴の中、彼らがいたその背後には、器だけのマスターハンド。その更に奥にはダブルが創り出したどこに繋がっているかもわからないワープゲートのようなものがあった。

 

それを聞いたカズヤが舌打ちをする。側にいたウクレレピチューをボディへ蹴りつけ、そちらへ行く。

 

 

「ならば、雑兵に拘っている暇などない。俺が片付けてきてやる」

 

「あ、だめー」

 

 

そのカズヤをMr.ゲーム&ウォッチは止めた。頭に血管が浮き出る。

 

 

「何のつもりだ貴様……」

 

「たぶんね、カズヤじゃだめだとおもう」

 

「え、じゃあボク!」

 

「マリオもだめー!」

 

「そ、そんなっ!?」

 

 

ある種の宣戦布告とも取れる彼の言葉に、不穏な空気が流れていく。

 

 

「ど、どうしよう……」

 

「お嬢ちゃんは下がってていいのよ? 彼の頭が悪いだけだもの」

 

「ほう? 魔女、貴様はこの雑魚よりは利口だと思っていたが勘違いだったか?」

 

 

更に言葉を重ね、カズヤの標的が増えていく。

下手人は涼しい顔で理由を話した。側のマリアが固まる。

 

 

「チゲンとかいう坊やが言っていたことを知らないかしら?」

 

 

『うう……マスターハンド、捕まえたかったけど逃げられちゃって……スマッシュブラザーズの誰かが持つ、ファイターの力に宿っているって言ってたから探してたんだよ……どっかの世界に散り散りにして、それで……』

 

『捕まえたかった?なぜでしょう?』

 

『僕たちがフィギュア化すると精神が追い出されちゃうから……』

 

 

『奴らに取っての標的は……奴らの特効なりうるファイター……ということか』

 

「ええ。誰かはわからないけど、待った方がいいんじゃないかしら」

 

「ピチュー!!!」

 

 

ギザみみピチューのかみなり。

ダブルの心臓を刈り取る刃を。仲間を。

 

 

 

 

 

 

 

「今の……!」

 

「い、急ぎましょう!」

 

 

最後の切り札たりうるジョーカー(ワイルド)

最終決戦が近づく。

 





◯タイトル
みなさんお馴染みスマブラSP最後の参戦ムービーの名前。
反応動画いつ見ても好き。本編も好き。
ソラの「おまたせ」に世界の何割が「本当に待たせやがって!」という思考になったか……と言いたいが、おまたせと言ってるのは日本のみなのです。


◯悪役達
セフィロスとカズヤってこんな感じでいいんですかね……
悪役の挙動はどうしてもトレースしきれない感があります。
味方になった経験があるならまだやりやすいけど……DFFNTのアレは味方になったって言うんだろうか?
ってかカズヤは悪役でもあるが主人公でもあるはずなんだが……

どうしてリドリーやダークサムスよりも書きづらいんだろう……


◯マリオ達
お待たせしました主人公。
ちょっとプロット訂正してたら出番が後に後にずれ込みました。


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