ゲート 自衛隊 かの地にて異星人と遭遇せり (花火さん)
しおりを挟む

異星人の観察

原始文明観察日記 宇宙歴100年

観測チームリーダー ヴァル・サン・ム・ヴェンガ

我々エヴァンダール帝国が外宇宙へと乗り出してから既に五十年もの月日が経った。

これだけの時間が経ったのにもかかわらず開拓できた領域は直径10万光年ほどの半径1000光年に過ぎないと聞くと実に狭い。

更にこの狭い既知空間ですら人手不足により全く調査しきれてはいない、調査空間を見ればまるでスカスカのスポンジのように見えるだろう。

しかしながらその間にも多種多様な種族・文明がこの狭い領域においてすら驚くほど存在することが判明した。

既知銀河の領域に置いてすら我々は2万を超える文明が存在することを発見し、その内200ほどは既に恒星間文明へと到達していた。

宇宙は大きい、だが生命はもっと大きいとは誰が言った言葉だったか。

技術進歩の飛躍的進化は外宇宙に出てから凄まじく、宇宙開発当初は飛躍的だの画期的だのと言われた原子力エンジンは骨董品として既に歴史博物館に並んでいる。

我々は遂に究極のエネルギー、零点エンジンの製造配備に漕ぎ着けた。

それどころかかつてはSFでしかなかった恒星発電(ダイソンスフィア)すらもうすぐ完成する、まさに無限のパワーだ。

もしも100年前にタイムスリップして大学生に『貴方の生きているうちに恒星球の建設が始まり、十年以内には完成します』

などと言ったら物笑いの種になっただろう。

…話がずれた

我々調査衛星アウローラは現在惑星アウローラ3の観察任務についている。

名前の由来はこの星系の中心恒星を発見した天文学者のペットの名前に由来しているらしい。

この惑星は調査を始めてからまだ一年と経っていないが極めて興味深い生態系を有している。

惑星そのものは極々典型的な大陸型惑星であり気象的には特に可もなく不可もなくである。

特に希少資源が取れるわけでもなければ、重要な航路に接しているわけでもないために政治経済戦略的観点からの価値はほとんど無い。

テクノロジーレベルは地を這うごとくに低く、最も先進的?と思われる集団でもレベル7(原始的文明)の鉄器時代をうろちょろしているようだ。

この惑星における先進的集団は二本腕二本足酸素呼吸無毛の奇怪な生命体である、我々はこれを便宜上アウローラ種Aと呼ぶことにしよう。

種族Aには類似の?種族が見られるようで発見順に随時B,C、Dと分類を行っている。

これらの種族は交雑が可能な事から遺伝子的にも近似種であると認識されている。

この惑星の特異な点は極めて多彩な知的生命体の種類にある、確認されているだけでも数十種類の種族が存在し同時に共存しているという事例は極めて珍しい。

我々の知る限りでは一つの惑星に同時に共存しうる種族は原始文明では二種類程度である。

これは原始文明で知的生命体が同時に発生した場合、大抵は生存リソースの奪い合いになり生存淘汰が行われるためと考えられている。

これらの種族が一つの惑星上でそれぞれ別の種族から同時期に知的生命体へと進化し、更に交雑可能なまでに近い遺伝子系統を持つ可能性は0.0000(以下0が延々と続く

パーセント程度であり、明らかに遺伝子操作に長けた外部文明の介入結果である可能性が濃厚である。

これらの種族多様性は極めて貴重なものであり保存が望ましいが、種族Aの短慮さと知的能力の貧弱、および凶暴性さを見るに種族A以外を浄化する可能性が極めて濃厚である。

通常、このような種族が宇宙に乗り出した場合狂信的な浄化主義者となる可能性が極めて濃厚である。

そのためこの種族が宇宙に乗り出す前に

Aコロッサスにより惑星破壊

B神聖執行機によって教導した上で制圧することが望ましい。

我々調査チームとしては過剰な暴力行為は望ましく無いために人道的なプランBを推薦するものである。

しかしながら惑星の戦略的重要性の低さから海賊や犯罪結社、ギャングの拠点になることを防ぐためとあればプランAも止む無しと判断する。

最善と考えられるのは狂信的な平和主義者でありかつ受容的集団が惑星の代表となり我々の保護国となることである

 

我々がこの惑星を観察してから更に数年の月日が経った。

観測データによれば集団Aは帝国と名乗っているらしく原始惑星上で他種族の制圧と民族浄化を繰り広げている。

プランAの採用基準がますます強まり、観測チーム全員の表情に暗雲が立ち込める。

「なんて凶暴性だ。全く望みなしだ」クルー1がボヤく

「総督がどう判断するか目に浮かぶ」クルー2が肩を竦める

「まぁよくある話だ」クルー3が諦めたように言う

「この観測衛星も後ちょっとで撤収ですかね」クルー4が早くも荷造りを始めようとする。

おそらくこの惑星は破壊されるだろう、止むを得ない事だ。しかし…

「まだプランAだと決まったわけでは無い。もう少し粘ってみようじゃ無いかね」

私自身はいかに凶暴な種族とはいえ惑星後と殺処分などという判断はやはり反対である。

彼らは愚かかもしれないが、それは正しい導きがなかったためだ。

我々の身勝手な判断で可能性を閉ざすのはあまりにも傲慢に過ぎるのでは無いだろうか?

そんな中、我々に更に追加の情報が入った。

「未知のサイオニック反応を確認」

この惑星の種族や動物はある程度のサイオニックエネルギーの利用に長けているらしい。

ある程度とは言ったが、極めて原始的であり全く取るに足らないものである。

技術的にいえばレベル6の原始的軽火器にすら及ばないだろうが、それでも我らと同じくサイオニック利用者であることは疑いようが無い。

彼らの間では魔法…(一同の失笑)と認識されているらしいが、

我らの間でもかつて超能力やシュラウドの認識は魔法や御伽話の類いだと言われていたことを若い世代は知らないのだろう。

それでも我々はドローンを通じて観測を続ける。

「これは驚いた」クルーは皆驚きを隠せなかった。

サイオニックによって開かれたのは忌々しくも有難い記憶であるゲートであった。

ゲート…Lゲートは災厄であると同時に祝福である。

どっかの誰かが開いたゲートによって破壊された星系は数しれず、だがナノクラスターを撃破した後に残ったナノマシン惑星から作られた大量の居住可能惑星はまさに無尽蔵の新天地だった。

「彼らは惑星上にLゲートを開けるのか、これは調査対象として…実に興味深い。サンプルを採取したいな」

「素晴らしい、だが危険でもあるな。」

「愚かな、好奇心はスラウグも殺すということを知らんのか」

彼らはマイクロLゲートを超えてどこかの惑星に軍団を送り込むようだ。

…軍団?

「未知のウイルスは?検疫は?」

「あのマイクロゲートはサイオニック工学的に見れば不安定極まりない。雑な仕事だな」

「接続先は?他の惑星?素晴らしい、興味が尽きないな」

我々はマイクロドローンを送ってマイクロゲート先の惑星を調査することに成功した。

現地呼称アルヌスの丘にこのような秘密があったとは…皇帝陛下の惑星破壊命令を思いとどまらせる材料になるかもしれないと私は期待した。

マイクロドローンを送った先は…どうやら別の原始文明惑星だったようだ。

「典型的なレベル6から5の原始文明のようだ」

「しかし見ろ…この連中のやる事と言ったら…やれやれこれじゃますます議会を説得する材料が少なくなるな」

画像から飛びこんで来たのは帝国人によるレベル5文明に対する破壊行為であった。

何の意味も戦略的必要性も感じられない…単なる凶暴性の発揮にしか見えない

その後、レベル5文明の反撃によりレベル7文明の集団は壊滅した。

「この惑星は多分破壊されるだろうが…まぁ新しい調査対象が見つかったから良しとしないとな」

「それは間違っている…あのマイクロゲートは調査する価値があると思うな…まぁ終わったら用済みになるだろうが」

私もそれには同意せざるを得ないが…

「だがこの惑星はともかくあのレベル5文明はまぁまぁ平和的文明のようだった。

それに限定的とはいえ宇宙進出を果たしている以上、惑星破壊はあの惑星にも悪影響を与える可能性がある」

その通りだ、この場合はコロッサスを止める強い動機になる。

「レベル5では呼びにくいな…」

「あの惑星は地球と呼ばれているらしい、典型的なレベル5程度の文明が混在する惑星らしいな」

地球はレベル5から7までの文明が含まれるらしい…あのニホンと呼ばれる地域はレベル5に属する。

我々調査チームは紛糾した。

調査は継続するが、我々の調査内容次第によっては破壊する惑星が一から2へと増えるだけになる可能性もある…

「調査は継続すべきだ。惑星破壊はあまりにも性急過ぎる」

「調査を今の消極的観察から潜入、啓蒙まで選択肢を増やすべきだ」

クルー一同からも様々な案が出るが…

「まだ情報は不十分だ。

こうしよう。我々の内の一名が遺伝子変容により原住民に姿を変えて現地調査へと送る。

その結果を受けた本国からの指示により調査内容は適時調整する」

結局は問題の先送りにしかならないことはわかっているが…

「遺伝子変容ですか?それの使用は調査に主観が入り過ぎるのでは…」

クルー一同が渋い顔をする、自分の遺伝子を弄り外見を醜い異星人(仕方ない、何しろ毛無し猿なんて!)に変容させるのはいかに科学者とはいえ忌避感が強い。

「わかっている、言い出したのは私だ。

故に私が行こう、実地調査こそ最高の調査だとアカデミーでは教わらなかったのかね?」

こうして私は自らの外見を変容させ眼下の惑星に潜入調査に赴くことになった。




Lゲート ナノマシンによって形成された謎のゲート。何が起きるか、開けてびっくりパンドラの箱
サイオニック いわゆる超能力
シュラウド 宇宙戦争的なフォースとかそんなの
ダイソンスフィア 要はでっかい太陽光発電機
零点エンジン いわゆる波動エンジン
コロッサス いわゆるデス・スター mod世界なので当然のことながらスターキラー基地も出てくる
テクノロジーレベル
HALOより
エヴァンダール帝国は成長中の2でもう少しでフォアランナーに追いつくくらい
エヴァンダール帝国 狐の住人の帝国 可愛い でもやってることは銀河帝国 厳しい

宇宙歴 初の宇宙居住地完成から数える本格的技術革命の時代
その50年後にワープを発明し外宇宙に乗り出し50年ほど
自我を持つロボットから反重力まで技術革命がどっと押し寄せて混乱の時代
ガトリング砲から原子爆弾まで100年すらかからなかった事を考えると遅いくらいか


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。