ありふれた幼馴染と暗殺教室 (孤独なバカ)
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始まりの時間

「そういやさ?冬夜って素行不良で来たんだろ?何でE組に来たんだよ?」

「ん?俺か?」

「そうだね。そういえば聞いたことないけど。どうしてE組にきたの?」

「俺はA組の生徒をぶん殴っただけだよ。まぁ、カルマと同じパターンってこと。」

 

と俺は小さく苦笑する。中学三年になってから二週間が経ったが、いつもの通りな日常を送っていた。杉野と渚は気になっていたらしい。

それに加え今回のメンバーには四月からE組に入った茅野カエデという少女が入って四人がいつものメンバーとなっていた。

 

「そうなんだ?でも意外だね。大島くんってそういうことするとは思わないけど。」

「……ん?まぁ普通に仲良い奴にはしないけど俺は結構多いぞ?小学校の時もちょっとしたことで手が出てたからかなり呼び出し喰らっていたし。」

「でも、八重樫さんや白崎さんとかと仲いいっていうよりいつも途中まで同じように通学路で話しているじゃん。」

 

八重樫雫と白崎香織、この学校で2代女神と呼ばれる美人でりお互いに俺の同じ小学校である。

ポニーテールで剣道部所属、小学生の頃から一度も女子剣道で負けたことがない雫と料理上手で明るく誰にでも優しい香織とは幼馴染といっても過言ではないだろう。

 

「ん。まぁ色々あるんだよ。幼馴染ってこともあるし、同じ道場に通う仲だしな。」

「道場?」

「そう。八重樫剣術道場。俺は剣道じゃないけど剣術を学んでいるからな。」

 

まぁ実際は別のことが重点なんだが俺は黙っていく。

あの先生は今は中国で麻婆豆腐を食べに行っているらしい。

 

「でも、そのお弁当も白崎さんが作って来たんだろ?お前本当に付き合ってないの?」

「ん?付き合ってない。つーか光輝や龍太郎も同じメンバーだからな。」

 

そして俺の幼馴染にはもう二人天之河光輝と、坂上龍太郎もいる。光輝は剣道で全国大会常連で才色兼備を持ち合わせたイケメンである。二大美人が周囲を囲っているとはいえ週に三回は告白されているのだ。もう一人は坂上龍太郎。空手部であり、今の主将である。三人とはクラスが違うが大柄で実は性格的には光輝以上にイケメンだと思っている。

 

「それでも、お弁当作ってもらうとか色々頼っているんだろ?介護ひどくね?」

「介護って。まぁ確かに弁当とかは作ってもらっているけどさ。まぁ俺の家裕福じゃないし。中学校はバイトできないしな。」

 

とある事情で色々と八重樫家と白崎家にはお世話になっている。

あの月が三分の二消滅した時から俺の生活は大きく変わっている。

そうやって昼食を食べながら雑談していた時だった。

 

「おい渚!」

「えっ?」

「ちょっと暗殺のことで話そうぜ。」

 

と大柄な少年寺坂が渚のことを呼び出す。

暗殺という用語があるが俺たちは驚くこともせずただそれを日常生活の一つになっていた。

暗殺という用語が日常になったのは今年の始業式終わりにさかのぼることになる。

 

 

 

「わたしが月を破壊した犯人です。来年には地球も破壊する予定です。皆さんの担任になりましたのでどうぞよろしく。」

「……は?」

 

俺が今年から入るようになったクラスで真っ先に挙げた声がこれだった。俺は中学三年生今目が飛び出そうなくらいに驚いていた

二メートル近く黄色いタコが俺の目の前に現れそんなことを告げたら誰だって思うだろう

まず色々と突っ込ませろと

 

「防衛省の烏間と言うものだ。まずはここからの話は国家秘密だと理解頂きたい。」

 

と渋めの男性が告げる。大柄で顔が整っている人は凛とした姿勢を保っている。

 

「単刀直入にいう。この怪物を君たちに殺して欲しい。」

 

どういうことだよっと思ってしまう。でも、俺は昨年の三月に月が破壊されていたことを知っている。

要約すると月を破壊した犯人が来年の四月に地球を破壊するとのこと。

世界各国が秘匿で暗殺を試みるが成果は出ていないこと。

そして何故か椚ヶ丘中学3-Eをやること。

政府は生徒に危害を加えないことを条件に許したこと。

 

……多分全員が何でと思っただろう。でもたった一言で俺も含め全員の思考が吹き飛んだ。

 

「成功報酬は百億円。」

 

その衝撃で俺はそれが事実であることを理解する。

本当に三月に地球が破壊されること、そしてこいつが本当に破壊するんだと。

 

「当然の額だ。暗殺の成功は冗談抜きで地球を救うことなのだから当然の額だ。」

 

と言われ俺は小さくため息を吐く。

朝から空に映る三日月が今後の不安を表しているようだった。



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短歌の時間

「お題に沿って短歌を作ってみましょう。ラスト7文字を触手なりけりで締めて下さい。できた者から帰って良し!!」

「えっ?」

 

短歌という言葉に少しだけ考える。授業中は暗殺をしないことがこの学校のルールだ。

実際に破っている生徒はいるが簡単な罰則で許されている。

 

「そういえば大島くんさっきから授業中集中しきれてないみたいですが?」

「ん?……いや、少しだけ不安事項があってな。」

「気になることですか?」

「そゆこと。まぁ短歌はできるから、気にしないで。元々自習はしているから。」

 

俺は短歌を適当な季語と組み合わせ完成させる。触手を関係なく書いていく。

さっき暗殺の作戦を立てると言っておきながら渚たちが暗殺をしていないこと。

そしてどこか渚が暗い顔をしていたことだった。

そんなことを考えながらも短歌を作成し見せる

 

「これでいい?」

「にゅや?いつからか 過ごす時間に 君がいて 届かぬ想い 触手なりけりですか?」

「一応失恋の一句かな。いつの間にかずっと隣にいた人に恋をしていたけど相手が鈍感であるからこそ、アピールしても触手のようにぬるぬると避けられて、その想いはこれからも届かないだろうってこと。」

「……どんな句だよ。」

「ん〜まぁ、適当に書いたけど趣旨はあっているだろ?」

「はい。よくできました!!」

 

とはなまるマークを作る先生に俺は苦笑する。

一息入れようと軽く背もたれにもたれながらみんなが苦戦している中でゆっくりしていると。

 

「先生!!質問!!今更だけど先生の名前ってなんて言うの?他の先生と比べる時不便だよ。」

「そういえばニックネームとかないのか?確かにあいつとか先生とかになってしまうから名前とかあったら教えて欲しいけど。」

 

茅野が手を上げて質問する。それ自身俺も思っていたことと気になっていたことなので追加する。

 

「名前……ですか。名乗るような名前は特にありませんねぇ。なんならみなさんで付けて下さい。ですが今は課題に集中ですよ。」

「は〜い。」

 

と茅野が告げる。まぁ確かにそうだけどどこか不思議だよなぁ。元々こんなに教えるのが上手いのに名前がないって変だと思うんだ。

……てか動きはないか。暗殺計画が少しだけ違和感を覚えたし俺の気のせいであってくれたらいいんだが…

すると俺は少しだけ油断した時だった。

 

渚が立ち上がり先生の元へと向かっていく。

 

「お。もう出来ましたか、渚君。」

 

短冊を持って立ち上がった渚君に先生が感心したような声を掛け、クラスの皆も渚君に視線を向けている。

ただ、皆が視線を向けているのは渚ではなく渚の手元に短冊と重ねるようにして隠し持っている対先生特殊ナイフである。

しかし、どこか渚は焦っているように感じている。

その冷たい目に俺はどこか嫌な予感を感じてしまう。

そして真っ正面からナイフを振りかぶると一瞬だけ見えた紐みたいなものに俺は瞬時に机から立ち上がると同時に走り出す。

それが丸くてよく訓練で見るものと同じだったからだ。

 

「…渚くん、もっと工夫を。」

「先生離れろ!!」

「えっ?」

 

俺の言葉に先生はどころかクラスメイト全員がキョトンしている。

その瞬間渚が先生に抱きついたと同時に俺は手首に隠してあった刃物で切り、勢いとともに出た手榴弾を手で掴むと瞬時に自分の制服で囲いこむ。その一秒後と爆発が起こり爆風が俺の体に襲いかかる。

体にかなりの衝撃を与え、大量のBB弾が俺の体に襲いかかるが痛みくらいで訓練で何度も慣れていることもあり、爆発が終わった後は制服が一着ボロボロになったくらいで周囲の変動はない。

 

「いつぅ……間に合った。」

「大島くん!?何で。」

 

渚は驚いたようにしていたが俺はボロボロな制服を整えながら服を正す。

 

「何でもクソもあるかよ。自爆テロなんて馬鹿げたやり方で地球を救っても後味悪いだけだ。ダチが傷ついて地球を救ったところで、もらえるのは金だけ。そんな屑にはなりたくないからな。」

「……」

「地球を救えるとか以前の人としてどうかの話だろうが。まぁ俺が庇わなくてもタコが何とかしそうだったけどな。まぁ俺は友達が傷つくことがあったら絶対に守るって決めていたしな。」

 

と苦笑していた時だった。

 

「寺坂、吉田、村松。首謀者は君らだな。」

 

声のドス黒さに俺と渚の視線は声の主に向けられる。天井に顔を向けると、そこにはキレて顔色が真っ黒になった先生が張り付いていた。

 

「えっ⁉︎ い、いや……渚が勝手に……」

 

先生の問い掛けに寺坂が誤魔化そうとした瞬間、突然ドアが開いたと思ったら表札を大量に抱えた先生が入ってくる。一瞬のうちに手には色々な四角いものをとって持ち帰ってきたらしい。おそらく表札だろう

何処かに行って帰ってきたらしい先生は抱えていた表札をその場にぶち撒けた。“寺坂”、“吉田”、“村松”……あ、これ皆の家の表札だろうな

 

「政府との契約ですから君達に危害は加えませんが、次また今の方法で暗殺に来たらーーー君達以外には何をするか分かりませんよ?家族や友人、いや君たち以外を地球ごと消しますかねぇ。」

 

かなり殺気で怯むけどそれをできるのがこの怪物だろう。今現状は猶予があるだけ、みんなは既に思い知らされただろう。

逃げられる道はないと。

 

「な、何なんだよテメェ……迷惑なんだよォ‼︎ 迷惑な奴に迷惑な殺し方して何が悪いんだよォ‼︎」

 

先生の脅しに恐れをなしたのか、寺坂君は腰を抜かして泣きながら怒鳴りつける。正直なところ迷惑なんてどころではない。俺は少しだけ同情してしまう。

だが寺坂の言葉を聞いた先生は真っ黒だった顔色を元に戻して更には明るい朱色の丸マークを浮かべていた。

 

「迷惑?とんでもない。アイディア自体はすごく良かったですよ。特に渚君。君の肉迫までのは自然な体運びは百点です。先生は見事に隙を突かれました。それと大島くんも恐らくですが渚くんの表情から何かあると思っていたのでしょう。ずっと渚くんを気にしていていつでも助けられるように普段なら対先生ナイフをしまってあるのでしょうが、今日の昼休憩以降はカッターナイフを腕に仕込んでました。」

「……気づいてたのかよ。」

「君の暗殺では基本的にナイフを制服の中に隠してありますからね。いつでもナイフが取り出せるように改良したのでしょう。ただし‼︎ 寺坂君達は渚君を、渚君と大島くんは自分を大切にしなかった。そんな生徒に暗殺する資格はありません‼︎ 殺るならば人に笑顔で胸を張れる暗殺をしましょう。」

「ん〜。いや。一応俺は護身術はならっているし、爆風の勢いを殺すことくらいはできるんだけど。」

「「「普通できねぇよ!!」」」

 

クラスメイトからのツッコミが入る。まぁ普通ならそうだろうけど、俺は八重樫流を習っている以上こういった場面に陥りやすいのだ。

 

「そういえば。大島くん大丈夫ですか?」

「大丈夫。大丈夫。武道をやっているから怪我には慣れているんだ。……まぁ雫と香織には怒られると思うけど、怪我はねぇよ。軽いやけどくらいかな。」

 

また喧嘩したとか誤魔化さないとなぁ。制服一着買わないととためいきをつく。

出費痛いなと思ったところで

 

「さて、では問題です。先生は皆さんと三月までエンジョイしてから地球を爆破します。それが嫌なら君達はどうしますか?」

 

先生から出された問題。しかしその答えは一択なので迷う余地はなかった。

先生の目の前に立っている渚がクラス全員を代表して回答する。

 

「……その前に、先生を殺します。」

「ならば今、殺ってみなさい。殺せた者から今日は帰って良し!!」

「……俺は短歌終わっているので早上がりしま〜す。お疲れっした。」

「えっ!ちょ、ちょっと大島くん!!」

 

俺はすぐボロボロの制服を羽織ると同時に教室から抜け出す。

まぁ、こういう学生生活もたまにはいいかもなと少しだけ笑いながら玄関に向かうのであった。

 

「……冬夜?その制服どうしたの?」

 

と帰り道に雫に怒られたのは言うまでもないことだったが。



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指令の時間

「おはようございます。」

「あら?今日も早いわね?」

 

雫の母さんである霧乃さんが朝早くから八重樫家の玄関で迎えてくれる。

 

「ん?道場借りていいっすか?学校前に少しだけ剣を振りたくて。」

「いいわよ。でも最近毎日朝練に参加しているわね。朝食ももう少しでできているけど食べるかしら。」

「本当にいつもありがとうございます。毎食お世話になっちゃって。」

 

俺は苦笑してしまう。俺の生活は今殆ど八重樫家でお世話になっているのもある。一応光輝とかに最初色々言われたが、今の家庭状況的に厳しいことは光輝自身わかっているのだ。

するとコツコツと足音が聞こえてくる。そのいつもの仕草に俺は小さく苦笑してしまう。

最近遠慮がちのポニーテールの少女に俺を見ながら少しだけいじけたように告げた。

 

「そういえば最近楽しそうね。」

「およ?雫おはよう」

「おはよう。冬夜。それで制服は届いたの?」

「学校の不手際だからなすぐに用意してもらったよ。」

 

一応殺せんせーとその後名付けられた怪物が俺の制服を直すと言ってあったが色々な仕掛けがバレると嫌なので防衛省の人に頼んで新しいものととある物の制作を頼んでいた

 

「そう。そういえばお父さんが冬夜のことを呼んでいたわよ。冬夜なんかしたの?」

「ん?俺?」

「えぇ。何やら学校のことで話があるということだけ。」

 

俺が少しだけ首を傾げるが俺は内心相変わらず情報早いなと苦笑してしまう。まぁそう仕向けた俺がいうことではないか。

 

「ん。まぁそれなら先に聞くか。」

「……本当にごめんなさい。私のせいでE組に。」

「雫。」

 

俺はきっぱり答える。

確かに俺がE組に落ちる暴力事件の原因になったのは雫に関連がある。いや関連というよりも被害者だ。

 

「やり方は最低だったとはいえ俺はあの時した行為に後悔はない。まぁ雫たちと学園生活を送れないのはちょっと残念だけどそれでも、絶対に雫も間違ってなかった。それに、俺は本校舎が嫌いだったからな。元々椚ヶ丘に残らない予定だったしE組に落ちたって別に変わらないさ。」

「でも…」

「……それに、俺が同じ立場なら雫が助けてくれてただろ?香織でも、光輝でも、龍太郎でも多分おんなじことをするだろうしな。」

 

俺はそういうと雫は少しだけ苦い顔をするが否定はしないだろう。多分俺は度がいきすぎているが全員退学紛れの事をする可能性はあるし怒るだろう。

 

「それに俺はE組で良かったって思っている。元々俺は自由奔放で進学校にはあってないんだよ。正直今の方が楽しいのは事実だよ。俺は前から学校の規則には疑問を覚えていたしな。」

「……そう。」

「……雫な。お前引きづりすぎだよ。endのE組?別にそんなの肩書きの囚われて自滅している奴ばっかりだからこそだろ?……俺は別に気にしてないし、これからも変わらないんだ。それに、雫は俺が終わったってとも言うのか?」

「それは違うけど…」

 

軽く圧をかけると否定する雫に笑う。俺がどう言う意味で言ったのか理解できないわけではない。

 

「ならそれでいいじゃんか。俺は雫の幼馴染であり身内の大島冬夜だからな。その関係性だけはこれから先も一生変わらない。……だから雫が今度は俺を助けてくれたらいいだけだ。それに、俺はあの時からずっと雫を守ることを第一に考えてきたんだから。」

「少しは冬夜も自分の幸せを願ってもいいのよ?香織みたいに好きな人ができてもいいのに」

「……」

 

こいつは。鈍感で俺の想いも届きやしない。あの時の短歌の通りまるで触手のようにぬるぬると避けられている。俺は小さくため息を吐く。

 

「まぁとりあえず、師範のところに行ってくる。先飯食べといて。」

「えぇ。……冬夜。」

「なんだ?」

「いつも助けてくれて、小学生のころからずっと味方でいてくれてありがとう。」

 

笑顔でお礼を告げる雫に俺は少しだけ苦笑してしまう。本当にずるいよな。

こういうとこが好きになったのだけど。

 

「別に、俺がやりたいことをやっているだけだだから気にするな。」

 

俺は雫に手を振ると師範の元に向かう

師範の部屋は和式のいかにも武家という襖に前につき正座する

 

「…失礼します」

「…あれ?冬夜くん?」

「おはなしがあるとのことなので」

「……人払いは?」

「雫は朝食で霧乃さんところに行っているので大丈夫かと」

「そうか。…入っていいよ」

 

と俺が隠し扉から入るとそこには師範である頬にある切り傷がトレードマークの中々渋いイケメン中年である虎一さんがいた

 

「……本当に大変なことになったね」

「…情報早すぎません?」

「それは君が三年になって二週間で腹部に火傷して帰ってきたらそりゃ調べるよ。…君が送ってきたサインに気づかないほど僕たちは甘くないから」

「いや。あれはクラスメイトが暴走して、友達を守った時にできた火傷なので」

「友達を守る?そういえば潮田くんとは仲がよかったから潮田くん繋がりかい」

「はい。一応。……それで俺はどうすればいいですか?裏の八重樫流を使うとなると、表にバレることになりますが」

 

元々剣術道場として有名な八重樫道場は裏の顔がある。俺は昔から雫を守りたいという理由だけでその裏に参加しているのだ

 

「…使うべきだとは思うけど、雫のことかい?」

「…」

「……君は本当に雫のことを好きなんだね」

 

優しい表情になる。俺が元々雫を守りたいということはこの道場の共通認識である。小学生の頃から揶揄われていたが、雫の鈍感さもあり生暖かい視線が送られている

そして裏を明かすとなれば、雫に裏がバレるということである。それだけは阻止したいと俺はずっと思っていたこともあるのだ

 

「……うす」

「父親としては少しだけ複雑だけど、でもいつも雫の味方になっていたのは君と面白い子の二人だからね。……今回は気にしないでいい。僕から命令するよ。……殺せんせーを八重樫の全てを持って暗殺すること。いいね」

「…ラジャ」

「それと、雫から聞いたよ。君がE組に落ちた理由も。……師範としては褒められたことではないけど、でも雫の父親としてお礼を言わせてもらうね。雫を助けてくれてありがとう」

 

虎一さんが頭を下げる

俺は苦笑し、小さく笑う

例え認められなくても、例え落ちこぼれになろうも、唯一の居場所であるこの場所だけは守りたいのだ

 

「…当たり前ですよ。俺は八重樫の身内なんですから」

 

俺は一礼して、部屋から退出する

そして雫たちが待っている食卓へと向かうのであった



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再開の時間

今日から新しい先生が体育教師を兼ねた副担任としてE組にやって来ていた。今はその先生と一緒にグラウンドで体育の授業をやっている

 

「八方向からナイフを正しく振れるように!!どんな姿勢でもバランスを崩さない!!」

 

ナイフを振りながら俺は他の誰かにみられたら教育委員会一直線だなぁと思いながら振る

小太刀やサバイバルナイフより軽い奴は思った以上に振りずらいのでもう少し刀身を伸ばしてくれると助かるんだけど

 

「酷いですよ。烏間さ…烏間先生。私の体育は生徒でもからも評判よかったのに」

「嘘つけよ。殺せんせー。身体能力が違いすぎるんだよ。反復横飛びをやる時なんて視覚分身からあやとりを混ぜるとか無理に決まっているだろ?」

「にゅや?でも大島くんは分身はできませんでしたがあやとりしながら反復横跳びしてましたけど」

「あの体力おばけとくらべんなよ」

「……みんな俺の評価辛辣すぎない?」

「「「普通あんなことできないよ!!」」」

 

実際できるし面白い訓練だと思って今も時々やっているのは俺くらいだ。手先の器用さと反復横飛びで今は東京タワーくらいなら作れるようになっている

まぁ、俺は結構訓練は組んでいるし、勉強に関してはいつも10〜30番台くらいだからどちらかといえば武寄りの人間だろう

 

「まぁ。俺ができなければ流石にクラスメイトもできないだろ」

「異次元すぎてねー」

「体育は人間の先生に教わりたいわ」

 

正論すぎて何もいえずショックで砂場で遊び始めている殺せんせー。……なんかこいつ子供っぽいよな

 

「でも烏間先生、こんな訓練意味あんスか?しかも当の暗殺対象がいる前でさ」

「それについては剣術を習っている大島くんが分かりやすいだろう」

「ん?まぁ基礎は大切だぞ?特に武道は一瞬の油断で勝敗が左右されるから油断ができない。基礎が練習で出来ない場合本番でもできないんだ」

 

イケメンでチャラ男っぽい前原の言葉に俺は返答する。事実勉強と同じで基礎ができないといけない

 

「勉強も暗殺も同じことだ。基礎は身につけるほど役に立つ」

 

先生も素振りを中断して真面目に答えているんだけど、その答えを聞いても前原君は疑問を拭えない

 

「例えば……そうだな。磯貝くんと前原くんそのナイフを当ててみろ」

「えっ?いいんですか?」

「対先生ナイフなら俺たち人間に怪我はない。かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい」

 

シャツを脱ぎ動きやすい格好になる烏間先生にジト目を送る

どう言う意図であるのか理解したら自然とそうなる

 

「えっ?そ、それじゃあ」

 

腰がひけながらナイフを出す学級委員長である磯貝だけど、簡単に避けられてしまう

 

「えっ?」

「さぁ」

「この」

 

前原も同じように突っ込むが避けられてしまう

 

「完全に見切られてるな。まぁ当然だけど」

「どういうこと?」

「視線や体制とかでどこからどうナイフ来るのか予測しているんだよ。それにナイフを当てると言っても他の絡み技を使ってもいいってことではないだろ?俺なら前原が烏間先生の動きを抑えて磯貝がナイフを当てるって感じの方が当てられる可能性は高いんじゃないかな?」

「…そっか。動きを止めるってことも必要なのね」

「ユッキー。よくそんなこと思いつくね」

 

速水と倉橋が俺と渚の話を聞いていたらしい

別に俺にとっては普通のことだけども、まぁ簡単にいえば

 

「相手に思った通りの行動をさせないってことが大事なんだよ。弱さを観察して、相手が思いつかないことをやる。それが喧嘩にしろ武道にしろ大切なことなんだ。まぁでもその前に基礎をしっかりしてないとその前提までいけない。武道にしろ勉強にしろ基礎っていう奴は一番大事なんだし、烏間先生に当てられないようじゃ、まず殺せんせーに当たるって考えづらいだろ」

「……なるほど」

「そっかぁ」

 

俺が告げると三人は少しだけ考える

するとあっち側も終わったらしく前原と磯貝が腰をついていた

引き起こしながら烏間先生は告げる

 

「クラス全員が俺に当てられる位になれば、少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる。それら暗殺に必要な基礎の数々を体育の時間で俺から教えさせてもらう」

 

その言葉に少しだけ頼りになるなぁと思いながら苦笑してしまう

 

「烏間先生ちょっと怖いけどカッコいいよね」

「烏間先生もだけどユッキーも結構カッコいいと思うなぁ」

「分かる!!大島くんが渚くんを助けてたところ本当にカッコよかった」

 

大声で言われると少しだけ照れるんだけどなぁ。まぁ友達を助けただけ

そしてその際に見た瞬間久しぶりに見る顔におっと声が出てしまう

ずっと後ろから遠目で見ていた赤髪の少年が俺たちの姿を捉えていた

 

「カルマ君……帰って来たんだ」

「おっひさ〜カルマ」

「久しぶり、渚くん、冬夜。つーか罰則冬夜早くね?」

「ん?証拠で警察に突き出したからな。停学にもなってないし、A組のやつを何人か書類送検にして過剰防衛の厳重注意を受けたくらいですんだぞ?まぁ学校の評判を落としたからかこっちに配属されたけど」

「……そういうところは容量いいよね」

 

カルマは少しだけ苦笑した後に殺せんせーの方をみる

 

「わ、あれが例の殺せんせー?すっげ、ホントにタコみたいだ」

「……本当に自然なことで」

「にゅや?」

 

多分見たことは防衛省から聞いていたしずっと見ていたことも知っている

そして今一度も手のひらを見せていない。すなわち手のひらに仕掛けがあると見ていいだろう

 

「赤羽業君、ですね。今日が停学明けと聞いていましたが……初日から遅刻はいけませんねぇ」

「あはは、生活リズム戻らなくて。下の名前で気安く呼んでよ。取り敢えずよろしく、先生‼︎」

 

薄い紫色のバツマークを浮かべて注意する殺せんせーと、苦笑いを浮かべて誤魔化すように手を差し出すカルマ

いたって普通の行動に、流石に殺せんせーは騙されたようだ

 

「こちらこそ、楽しい一年にしていきましょう」

 

と自然な流れになると同時に触手が切られる

 

「にゅや?」

 

そして横にナイフを振るカルマにあぁ戻ってきたんだなと苦笑してしまう

 

「へぇ、ホントに速いし、本当に効くんだこのナイフ」

「手に細かく付けていたな。やっぱり」

「あれ?冬夜にはバレてた?」

「まぁな、手のひらを隠すためにポケットに手を、ナイフを隠すためにジュース飲んでいたんだろ?まぁ単純な手だからこそ今まで使ってこなかったんだけど」

「そんな単純なことで殺せんせーはそんなところまで避けるんだ。もしかしてせんせーってちょろい人」

 

相変わらず口も騙しスキルも一つも二つも上だ。赤羽カルマという友達が挑発したことによりまたクラスに波乱も持ち込みそうだった



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乗っ取りの時間

ブニョンッ……ブニョンッ……

 

今は体育の後に行われている小テスト中……なんだけど、さっきからブニョンブニョンうるさいんだけど

 

「……ねぇ。何してるの?あいつ」

「さぁ?」

「カルマにおちょくられていじけてるんだろ?」

 

多分壁パンだろうけど触手が柔らかすぎて力いってない

 

「ブニョンブニョンうるさいよ殺せんせー!!小テスト中なんだから!!」

「こ、これは失礼!!」

 

まぁそうだよなぁ

実際うるさいことには変わりはないし

 

「よォ、カルマァ。あのバケモン怒らせてどーなっても知らねーぞー」

「またお家に籠ってた方が良いんじゃなーい」

 

まぁ事実寺坂たちはあれ以降暗殺を仕掛けていない。俺もどちらかと答えれば暗殺に消極的な生徒に入る

 

「殺されかけたら怒るのは当たり前じゃん、寺坂。しくじってちびっちゃった誰かの時と違ってさ」

「なっ、ちびってねーよ!!テメ、喧嘩売ってんのか‼︎」

「こらそこ!!テスト中に大きな音を立てない」

「お前が言うな」

 

みんながコクリコクリと頷くと同時にそういやと俺は一つだけ

 

「ん。ついでにテスト終わったし多分百点なんだけど、帰ったらダメ?」

「大島も自由だな!!」

 

俺はカルマの方を少し見る。面白そうなので俺も協力することにしたのだ

 

「んじゃさっきカルマからもらったジェラートでも食べとこうかな」

「にゅや?ダメですよ。大島くん。例えカルマくんからもらったものでも授業中にそんなもの。全く、何処で買ってきてーーーってそれは先生が昨日買ってきた奴!!」

「お前のかよ」

 

俺はつい突っ込んでしまう

一口食べると冷たく、サッパリとした甘味と酸味が伝わってくる

手が止まらないくらいに美味しく元々甘味好きであるために手が止まらない

そしてゆっくり食べてノーストップでジェラートを食べ終えた

 

「ご馳走様でした」

「……にゅや。先生のジェラート」

「…ん?…ってそういや先生の奴だっけ?」

「……本当甘いものを食べると人が変わるね」

「おいしそうに食べてたね」

 

皆からの生暖かい視線にそういえば今授業中ってことを思い出し少しだけ顔が熱くなる

 

「悪い。完全に美味しすぎて我失ってた」

「カルマくんの暗殺も完全に気にしてなかったしね。カルマくんも苦笑してだけど」

「忘れてくれ。本当に」

 

項垂れる俺に皆が苦笑してしまう。ついでにこの後茅野達女子達の甘いもの同盟に入れられ、甘味を食べに行くことが多くなったことは言うまでもない

 

 

「おはようってなんだこれ?…タコ?」

 

赤くてぬるぬるしたものがナイフに刺されている

 

「おはよう。カルマくんが仕掛けたんだけど」

「あータコから来たのか…」

 

「おはようございます」

 

それから少しして殺せんせーがいつも通り教室へとやってきた。先生がどういう反応をするのか分からないからか、皆は先生から顔を逸らす

その様子に訝しんでいた殺せんせーだったが、教壇でナイフに刺されているタコを見て動きを止めた

丁度いい機会だから仕掛けるか

 

「あ、ごっめーん!!殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ」

 

また、十分と挑発したなと思っていると

 

「……分かりました」

 

ようやく動き出した先生はタコをカルマの方へと持っていきー触手をドリルのように高速回転させ、何処からかミサイルと小麦粉をマッハでとってくる

 

 

「見せてあげましょう、カルマ君。このドリル触手の威力と、自衛隊から奪っておいたミサイルの火力をーーー先生は暗殺者を決して無事では返さない」

 

ミサイルは多分狙われた時に持ってきたものだろう。そしてそれらでなんやら何かを数分で作り上げる

 

「あっつ!!」

「その顔色では朝食を食べていないでしょう。それを食べれば健康優良児に近づけますね」

 

顔色から朝食抜きを見抜くのかよっとため息を吐く

 

「今日一日、本気で殺しに来るがいい。その度に先生は君を手入れする。放課後までに君の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」

「その前にソースで喉乾くだろ?水道水を組んできたけどいるか?」

「にゅや?大島くんありがとうございます」

「カルマもほれ」

「サンキュー…」

 

と殺せんせーはそれを飲んだ瞬間、急激に顔を変えた瞬間

俺は瞬時にナイフを振る

瞬時に避けられるが関係ない。カルマに注意を取られ、完全に油断していたタイミング

暗殺者として見逃すわけにはいかないだろ

 

「…にゅ、にゅや!!か、辛い!!」

「…そりゃ粉わさびいりの水だからな。死んで先生」

 

この怪物は味覚がかなり正常だ。だからこそ水溶性の粉わさび。味覚による正常性を奪う行為、それも絶対に殺気を出さない攻撃には弱いのだ

至近距離からの銃を周囲に放ちと逃げ場を塞ぎナイフを振るがそれは全て避けられる

避けられるのは知っている。だから

 

「皆手伝って!!」

 

俺は声を上げる。全員がその意図に気づき銃撃を加わる

 

「にゅ、ニュヤ!?」

 

明らかに動揺したような姿に俺はにやりと笑う。殺せんせーが本当に危ない時は真上に飛ぶ。それが一番追いつきにくいからだと思うがそれが癖になっているのだ

 

「……チェックメイト」

 

だからこそ真上に飛ぶことを予想していた。だけど俺は確実に殺せるように対先生弾ではなく、

 

「…!!」

 

殺せんせーの一つの触手に俺の銃を撃っていた腕から投げた鎖分銅が絡みつく

しっかりと抑えて俺は頭めがけて対先生用ナイフを投げる

そのナイフが先生の顔に届きそうになった瞬間

鎖分銅から重力によって落ち巻きつけていた感触がなくなった

 

「……にゅ、にゅや!?やってくれましたね。大島くん。まさか切り札をこんなところで使うことになるとは思いもしてませんでした」

「……マジかよ。これ避けられるのか」

 

俺は少しだけ苦笑してしまう。十八番の流れだったのに俺は流石に少しだけショックである。鎖分銅にはなにかタコみたいな形の黄色い皮を付いている

 

「…えっと、冬夜くん。……これって?」

「分かるわけないだろ。つーかこれ初見で避けられるか?」

「い、いえ。本当に危なかったです。完全に仕留めに来てましたね。カルマくんに暗殺してきなさいと言っていて皆さんに注意を薄れた瞬間をついてきましたね」

「…いや、暗殺ってそういうもんでしょ。つーかこれって?」

「実は先生月一で脱皮をするのです。この皮は例え対先生ゴムでも傷付けることはできません」

「……まだ隠し玉あったのか」

 

俺は少しだけ座り込む。完全に読み勝っていたのに、残念すぎる

 

「…しかし、鎖分銅ですか?それもいつ投げたんですか?」

「ナイフ振っている時だよ。反対の銃撃はあんたを狙わなかっただろ?だからこそあんたの優先度はかなり低くなったはずだ」

「……片手、それも利き手でナイフを振りながら反対の本当の狙いである動きを止めることを隠していた」

「……まぁな。でも避けられたのが辛すぎだろ。完全に決まったと思ったのに」

 

戦略も立てどう動いたのかをじっくりと観察した結果がこれだ。当分はまた息を潜めることになるだろう

 

「……まぁこれで打切り。今打てる手はないしなぁ。つーか疲れた。後はカルマにまかせる」

 

俺は机に寝転びだらける。ここから授業に入るのかと思うの少しばかり体が重く感じるのであった

この後授業中と休み時間も俺の暗殺方法の話題で持ちきりだった

なお、結局カルマもこの日は殺せなかったという連絡が渚から入った。俺も珍しく雫の家に行ってからも、雫の部屋でゴロゴロしながら何もせずにだらけ、師範や雫に呆れられるのであった




アンケートは次回投稿までにします


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イリーナの時間

「ファ〜」

「あくびって珍しいね。ユッキー」

「ん?倉橋おはようさん。いや、少しだけ小説読んでいたら寝不足で」

「小説?」

「ん。これ」

 

俺が見せる。それは有名なライトノベルであり、アニメ化もされている有名作だ

 

「へぇ〜ユッキーでもこんな小説読むんだ」

「いや。普通にヒーローものとか主人公が強い小説とかヒロインが可愛ければみるだろ。面白いし」

「なるほど。で?それ面白いの?」

「あぁ。コメディー小説だからな。シンプルに面白いぞ」

 

といいながら話しているとすると殺せんせーが仲に入ってくる

 

「……今日から来た外国語の臨時講師を紹介する」

「イリーナ・イェラビッチと申します。皆さんよろしく!!」

 

烏間先生に紹介された笑顔で明るい女の人は、スタイル抜群で金髪巨乳美人の外国人だった。その上で胸の谷間を強調しており、

何故か先生を抱きついていた

 

「……ん?そういえばさ。殺せんせーの恋愛事情ってどうなんだ?」

「うん?普通に戸惑うんじゃない?人間とタコだよ」

「でも満更じゃなさそうじゃね?多分色仕掛けに特化した暗殺者だろうし」

 

と俺とカルマが後ろで話している。正直に俺は告げる

 

「あぁ、見れば見るほど素敵ですわぁ。その正露丸みたいなつぶらな瞳、曖昧な関節……私、虜になってしまいそう」

「いやぁ、お恥ずかしい」

「……っ」

 

グッと突っ込みを堪える。内心笑いが止まらないがお互いにいい思いをしているらしい

 

「……そういやさ。英語の授業できるの?一応学校ってことだけど」

「教員免許取っているわけではなさそうだけど」

「まぁそうだろうな。また問題ごとの匂いがする」

 

俺はぐったりしてしまう。それでも

 

「まぁ面白そうだからいいや」

「冬夜も相変わらずだね〜」

 

俺とカルマは傍観に徹することにしたらしく何も言わずにホームルームを終えた

 

 

ざわざわ

休憩時間が終わりイリーナ先生の授業になると、俺は教室に戻るとみんなの様子がおかしかった

 

「あれ?なんかあったのか?」

「実は」

 

色仕掛けで殺せんせーに近づいたこと

と俺がいない間にイリーナ先生が渚に情報を吐かせる為に渚にキスをしたことなど多くカルマから説明を受けた

 

「へぇ〜面白いことになってるじゃん」

「笑い事じゃないだろ。大島」

 

俺がケラケラ笑うと前原が俺に呆れたようにしていた

でも面白いことは面白いのだ

 

「んで?授業って何するの?」

「さぁ。この調子だったら自習じゃね?」

「ふ〜ん、なら寝ようかな。どうせ失敗するし」

「は?」

 

俺はうつ伏せになり、目を閉じる

多分殺せんせーも気づいているだろうしな

俺はそうした中で安心して熟睡していた

 

 

イリーナ先生が倉庫に連れ込んでいく殺せんせーが入っていく

 

「……烏間先生。私達、あの女のこと好きになれません」

「……すまない、プロの彼女に一任しろとの国の指示でな。……だが、わずか一日で全ての準備を整える手際。殺し屋として一流なのは確かだろう」

 

片岡がほとんど全員の総意となる言葉に全員が頷くが烏間先生は目をそらし謝る

実際烏間先生も感じているのだろう

するとすぐさま銃撃が聞こえてくると同時にカルマが近づいてくる

 

「そういや、冬夜、さっきビッチ姉さん殺せんせーの暗殺が失敗するって言っていたよね。なんか根拠でもあるの?」

「ん?だって殺せんせーがそんな簡単なことに気づかないわけないだろ?」

「ま、そうだろうね」

「どういうこと?」

「俺もよく使うんだけど最初ってあえて何もしない時があるんだよ。基本的に相手にいい思いをさせて一番いい思いの時にどん底に落とす。まぁ一対多で使うことが多いんだ……思い通りに動いているって思っている奴ほど操りやすいものはないしな」

「「「「うわぁ!!」」」」

 

どす黒い笑いが出てしまう。ついでに昔はこれで光輝や龍太郎、香織のことを上手く操っていたこともあり、俺は雫から呆れ顔で見られた時があった

そう説明している時に

 

「いやぁあああ!!」

 

と倉庫の方から声が聞こえてくる

というよりも叫び声と同時にぬるぬると音が聞こえてくるんだけど、何してるんだ?

 

「めっちゃ執拗にヌルヌルされてる!!」

「行ってみよう!!」

 

俺たちが倉庫に駆けて行くとそこには倉庫から出てくる殺せんせー

 

「殺せんせー!!」

「おっぱいは?」

 

失礼すぎるが確かに今の評価はそれくらいがいいだろう

つーか俺に至っては暗殺の状況すら知らないし

 

「いやぁ、もう少し楽しみたかったですが……皆さんとの授業の方が楽しみですから。明日の小テストは手強いですよぉ」

「……あはは、まぁ頑張るよ」

 

渚が答えるとするとクラスはほんわかとした空気になる。嫌いな奴に殺されるよりかは十分マシなんだろう

そしてイリーナはなぜか体操服とハチマキ姿で出てくる

 

「……まさか、わずか一分であんなことをされるなんて……」

 

ヘトヘトで疲れ切ったようなイリーナはポツリと告げる

 

「肩と腰のこりを解されて、オイルと小顔とリンパのマッサージされて……早着替えさせられて……その上まさか、触手とヌルヌルであんなことを……」

(((どんなことだ!? )))

 

クラス全員がそう思っただろう。だから渚が純粋な疑問で答える

 

「殺せんせー、何したの?」

「さぁねぇ、大人には大人の手入れってやつがありますから」

「……絶対見せられないことしただろ」

 

俺はため息混じりで息を吐く

 

「あっ!そういや俺これからイリーナ先生の英語の時間さぼっから」

「「「は?」」」

「にゅや?」

「いや、受験生なのに毎回自習でイライラしながらタブレットだけいじる先生を見るだけとか嫌すぎるだろ。それなら別室で授業受ける方がいいしな。ちゃんと英語の時間になるまでは受ける意味なんてなさそうだし」

 

ボロクソだけど殺せんせーすら言い返せない。もちろん。烏間先生もだ

 

「ついでに俺はもし他の暗殺者が授業及び暗殺者転校生が授業の邪魔をしてこちらに理がないと思ったらさぼっから。最低限の暗殺環境を整えられないようじゃ、安心して暗殺できないし」

「……わかった。イリーナにはそう伝えておこう」

「カルマは?」

「もちろんふけるに決まってるじゃん」

 

まぁちゃんとどちらかの先生が上手くやるだろうけど

俺はそんな中で次の時間の小テストを安定の満点で切り抜け、次からのイリーナ先生の授業をサボり始めるのであった

なお、サボる期間は二回だけでよく、その代わりにイリーナ先生はビッチ先生と言い始められたらしい



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絆の時間

「おはよう!!冬夜くん!雫ちゃん!!」

「おはようさん。香織」

「おはよう香織」

 

いつも通りの日常に俺は少しだけ笑顔が溢れる。顔が整っており、雫と共に二代女神と呼ばれている少女の一人である白崎香織が俺の隣を歩く

 

「……なんか最近本当に笑うようになったわね」

「…んー。まぁ遺産相続とか面倒な事が終わったからだろ?光輝も最近は電話してるし、少し余裕は生まれたから」

 

遺産相続とあるように俺の両親は今年の三月、月が蒸発した次の日に亡くなっている。俺は光輝の両親が弁護士と繋がっていることもあり今までと比べるとだいぶ楽になっている

 

「本当に大変だったよね。でも落ち着いたってことは放課後も少しだけ余裕ができるの?」

「…できるけど昔みたいに頻繁に遊びにはいけないかな?バイトもできないからそこまでは我慢かな」

「……ねぇ。本当に私の家に住まないかしら」

「ん?住まないよ。つーかいくら幼馴染とはいえ男女が屋根の下一つで寝てたらダメだろ」

 

俺は少しだけ苦笑してしまう

雫は本当に両親が死んでから度が過ぎるように心配性になったのだ

 

「雫もう少しお前は美人なんだからそういうのを気にしろって。一応俺だって男子だぞ?襲われる可能性だってあるんだし」

「えっ?するの?」

「……いやしないけど」

「うん。雫ちゃんの嫌なことは冬夜くんは絶対にしないと思う」

 

確信に近い。ついでに俺が雫を好きなのは光輝にもバレているし、雫以外にはバレバレなのだ

だからこそ応援もされるのであるのだ

 

「最近物騒でしょ?月が破壊されたり、大規模な爆発事件が起こったりとか」

「心配してくれるのは嬉しいけど、流石に全部お世話になることはできないって。それに、家から離れたくない。…結構思い出があの家には詰まっているから」

「…そう」

 

残念そうな雫に俺はキョトンとしてしまう

珍しいことにかなり落ち込んでいる時の雫だ

 

「なぁ、雫どうしたんだ?」

「けっこうクラスが離れたのがショックらしいの。いつも冬夜くんは雫ちゃんの隣にいたでしょ?」

「香織!!」

「ん〜。まぁそれもそっか。まぁ今日は集会があるからマシだけど、少しだけ気持ちは分かるな。雫も俺もクラス別になったのこれが初だからな」

「…笑わないの?」

「笑わないさ。俺もそういう気持ちがないってことはないし、……いつも一緒だと思っていたけど、離れるとその大切さに気づくことなんて結構あるんだよ」

「……いつもあんただけは大人になっていくわね」

「大人って。大人にならざるを得なかったんだよ。俺はな。ゆっくり大人になる過程を全て無視したからな」

「……」

 

俺が答えると雫も香織も少しだけキョトンとしてしまう

新生活になり慌てる季節ももう終わる

俺は既に両親のいないのが日常になりつつあった

 

 

「急げ。遅れたらまたどんな嫌がらせされるか分からないぞ」

「前は本校舎の花壇掃除だったっけ」

「アレはキツかった。花壇が広すぎるんだよ」

「…あー俺サボったやつか」

「お前罰則については結構サボるよな」

「ん?だって理不尽な理由で罰則受けるのは馬鹿らしいしな。先生の弱みは結構握ってるし俺は別にE組に落ちたからって武器を緩めることはないぞ」

 

実際俺にとっては本校舎の人間は何とでもある。それに元々、俺はE組になる前からE組の生徒を庇っていたこともあるのだ

そうして歩いていると、とある少年の姿がある

 

「……珍しいな」

「冬夜…お前楽しそうだな」

「お前も雫達と同じこというんだな。光輝」

 

俺は少しだけ苦笑してしまう。そんなに変わったようには見えないけど

 

「つーかどうした?」

「どうせ飯食ってないと思っておにぎり買ってきたんだけど」

「…悪い。普通に貰っていいか?」

「あぁ。そのために買って来たからな。それで、楽しいのか?」

「楽しいよ。学校のE組に落とすぞとか毎度のように脅されたりしないでよかったからな。それに先生もいいし、何よりもクラスメイトがいいからな」

 

実際、本校舎に比べると環境も何もかも恵まれている。俺にとっては本校舎よりもE組の方が楽なのだ

 

「そういや、また龍太郎と香織勉強見てくれないか?いつも通り図書館で勉強会するんだけど」

「ん?まぁ余裕あるからいいぞ?いつ?」

「明日からテスト前日まで。終わったら雫の家に集合で勉強会しないか?」

「オッケー。てかあいつ今回も結構やばい?」

「やばいのはいつものことだけど、せめて座って食べたらどうだ。行儀悪いぞ」

 

俺は光輝の隣を歩きながらポカーンとしているクラスメイトを置いていく

劣等感も何もない。ただ友達と話しているただ一人の中学生だ

 

「ーー要するに、君達は全国から選りすぐられたエリートです。この校長が保証します。……が、慢心は大敵です。油断してるとどうしようもない誰かさん達みたいになっちゃいますよ」

 

今度は学校ぐるみでの差別が始まるだけだ。E組を見ながらの校長先生の言葉で体育館に集まったほとんどの生徒から嗤い声が上がる

本当に馬鹿みたいだな。この学校の仕組み

確かに社会の原理としては変わりがないが、こういった時にイジメとかで訴えられたらほぼほぼ学校側が負けるだろう

何しろ人間性には問題があるだろうけど

 

「こういったところがE組は居心地がいいんだけどな」

「?」

 

俺がポツリと呟くと隣にいた矢田が不思議と首を傾げる

汚れもない、純粋な少年や少女たちは俺とは違い綺麗な水しか知らない

 

「あれ?そういえば担任ってどうなっているんだ?」

「えっ?形式的には烏間先生ってなっているらしいよ」

「そうなんだ。つまり」

 

するとそういう噂話をしている際に烏間先生がやってくる

……まぁこういった先生が本校舎にはいないしな

存在感もあるし、何よりもカッコいいのだ。性格含め本当にできた人間なんだろう

 

「烏間先生!!見て〜」

 

と倉橋が何か烏間先生に見せた時慌てたように倉橋の元に駆け寄る烏間先生に俺はふと呟いてしまう

 

「……いい先生だよな。烏間先生」

「うん。私もそう思う」

 

どうやら隣の矢田には聞かれていたらしく俺は少しだけ頷く

最近甘いもの繋がりで俺との会話が増えてきた一人であるのと、若干雫に外見が似ていることもあり、話しやすいのだ

 

「ビッチ先生は?大島くんはどう思う?」

「イリーナ先生?…イリーナ先生は正直俺はあんまりわからないかな。いい先生なのかも分からないし、仕事の為に付き合っているのかが分からない。ただ烏間先生がいう通りにイリーナ先生は暗殺者としたら優秀だと思うけどな」

 

俺は少しだけ考えその答えを出す。矢田としては意外だったのか俺に首を傾げる

 

「暗殺者としては優秀?」

「だけど一日で仕事の準備を済ませ、イリーナ特有の殺し屋を連れてくる人望。そして美貌だってそうだ。ファッションだって肌の知識、女性って男性とは違ってケアって大変なんだろ?美貌を保ちながら暗殺者としてできるのは、本当にすごいと思うぞ?日本語だって完璧に話せているしな」

「……そういえば」

「どれだけの苦労をしたのか予想もできない。まぁ暗殺者として優秀って前に根っからの真面目な女性なんじゃないか?まぁ反応から少しだけ子供っぽいから殺せんせーにもからかわれているけど」

「わかるかも。反応を見たらついからかっちゃったんだよね」

 

笑ってしまう俺と矢田に他のクラスから視線が集めてしまう

そうしながら待っていると

 

「……はいっ、今皆さんに配ったプリントが生徒会行事の詳細です」

「え?」

 

誰が呟いたかは分からないけど、多分E組の皆が同じことを思っただろう。何故ならプリントを配ったって言っておきながら、そのプリントがE組には配られていないのだから

 

「……すいません。E組の分がまだなんですが」

 

磯貝君が手を挙げてそのことを主張するが、壇上の生徒はわざとらしく頭を掻くだけで行動しようとはしない

 

「え、あれ?おかしーな……ごめんなさーい。E組の分忘れたみたい。すいませんけど全部記憶して帰って下さーい。ほら、E組の人は記憶力も鍛えた方が良いと思うし」

 

その言葉で鳴りを潜めていた生徒達の嗤い声が再び体育館を占領した

 

「お〜い雫。プリント見せて!!ついでに後からクラス分コピーさせて」

 

という俺の声が響く。雫はキョトンと俺を見る

注意される前に俺は人混みの中移動し雫の隣に着くと雫は呆れた様子で俺を見ていた

 

「…見せるのは別にいいのだけど。いいの、E組の校則は?」

「だって生徒会がミスしたんだろ?さっきもE組の分を忘れたって言っていたらしいし、席の移動くらい見逃してくれるだろ。不手際があるのはあっち側だし、反論してないから全然オッケー」

「……本当にずる賢いわね。あんた」

「ねぇ?雫ちゃん。冬夜くん。何でみんな笑ってるの?でも浅野くんがミスするなんて珍しいね」

 

ここで香織の天然が発動し悪意に気づいている俺と雫はつい吹き出してしまう

すると真っ赤になってしまう生徒会に俺たちは追撃の言葉を告げるのであった

 

「そうね。仕方ないから私が後からコピー取らせてあげるわ」

「そうそう。放送部長と生徒会の尻拭いはE組がしてやっから」

 

するとさっきの笑い声が収まり変な空気になる

反対にE組から笑い声が漏れ、

 

「サンキュー。雫」

「えぇ。E組弄りは聞いていてうっとうしかったから。それに助けるって言ったのはこっちでしょ。約束は守るわよ。それで龍太郎のことだけど」

「図書館のことだろ?別に構わないさ」

 

と小さい声で話しながら今後の予定を話す

例え、いくら学校の制度があろうと、教室が引き裂かれようとも

俺たちの絆は決して変わるものはないのだから



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中間対策の時間

「「「さて、始めましょうか」」」

 

大量に分身した殺せんせーを見て俺たちはこう思っただろう

何をっと

 

「学校の中間テストが迫ってきました」

「そうそう」

「そんなわけでこの時間は」

「高速強化テスト勉強を行います」

 

あーテスト対策かぁ。それでも

 

「…先生俺、雫達と約束があるんだけど」

「にゅや?」

「そういえば言ってたね。幼馴染五人で勉強会するのだったよね?」

 

それが俺にとっての日常だ。俺、雫、光輝が龍太郎と香織を教えるといういつもの勉強パターンながあるのだ

 

「……そうなんですか?」

「授業中ならできるけど、放課後は図書館予約しているらしいし、その後は雫の家に集合するから」

「にゅや?でも、テストは」

「ん?俺基本的にいつも10番〜30番くらいだし社会に限ったら毎回トップから落ちたことないぞ?雫も基本的に10番以内だし、光輝に至っては毎回二位だから」

「白崎さんも50番以内には毎回入ってたよね」

「龍太郎もCだけど勉強は100番には入っているからな。まぁ教えることも勉強だし、何よりも勉強もちゃんとしないと俺は結構退学に近いことやってるから」

 

結構暴力沙汰まではいかないが、E組をかばっていることもあり俺たちは正直あまりいい印象を生んでない

実際勉強を教える立場としても明らかに劣っているといるわけではない。勉強も第二の刃を持っているから学校は追い出せないのだ

 

「元々俺たちはみんなでテスト対策をするのがいつも通りでルーティーンになっているんだよ。いつも通りやれば俺はできるから。それに暗殺を成功するにしろ他のやつが暗殺するにしろ、俺は学業をおろそかにするつもりはないさ。だから放課後は参加しないでいいか?」

「本当ですか?」

「本当だよ。それに、俺はE組で最後までいるつもりだし、俺は例え暗殺に成功しても、あいつらと通える最後の学校だと思うから」

「……あっ」

 

椚ヶ丘ではエスカレーター式で高校までいけるのだ。だけどE組は入るには外部試験を受けるしか椚ヶ丘に通える可能性がないのだ

 

「……そうですか。それじゃあ仕方ないですねぇ」

「よっしゃ」

「ちゃんと授業中のやつには参加してくださいよ。大島くんは数学が少しだけ苦手なんですから」

「……それでも70は取れるんだけど」

 

と苦笑しながら俺はノートに向かう

別に勉強をすることは悪くはないことなので別にいいだろう

 

 

「ということでここはAになるんだ」

 

と俺が歴史の雑学を加えつつ説明をすると全員が納得するように俺を見る

 

「本当に分かりやすいわよね。冬夜の説明って。特に日本史と地理は」

「うん。おかげで社会はもう何とかなりそうかな」

「数学は、まぁ冬夜が怪しいけどな」

「うっせ。これでも香織よりかは解けるから別にいいだろ」

 

テスト勉強をし始めてもう2時間にもなる。翌日テストを控えている中で俺たちは雫の家で復習をしていた

そんな中で疲れてお茶を飲んでいるときに龍太郎が声が

 

「そういえば。一つだけ気になっていたんだけど何でテスト範囲外のところやっているんだ?」

「あっそれ俺も気になっていた。確かテスト範囲ってもう少し少なかっただろ?」

 

大柄の龍太郎と俺は気になっていることを告げると雫と香織、光輝がキョトンとする。あれ?おかしなこと言ったか?

 

「もしかして二人とも知らないのか?二日前にテスト範囲が変更なったこと」

「ほへ?」

「は?」

「最近理事長が授業してたでしょ?もしかして二人とも寝てたってことは…まぁ冬夜はないと思うけど」

「あ〜そういえばそうだったか?」

 

俺は少しだけ疑問に思う。そしてクラスチャットにすぐさま書き込む。するとクラスの範囲がやっぱりそこは

 

「やっぱりE組は知らないっぽい。悪い。雫。テスト範囲教えて?」

「いいけど?間に合うの?」

「俺は間に合うと思うけど…他が厳しそうかな」

 

俺はすぐさま新範囲としてクラスチャットに送るとチャット欄がめちゃくちゃ荒れているのが分かる

元々殺せんせーに教わったところだから問題はないけど

もう夜の八時だし、ページ数的にも20ページくらいの大幅な変更。さすがに厳しいだろう

 

「…でも、冬夜は大丈夫なのか?」

「元々全教科俺は予習と復習は雫とやってたからな。まぁ本校舎側の妨害だろうけど」

「妨害って?」

「E組は底辺でいないといけないやつか?……赤髪や磯貝、片岡や冬夜がいる時点で違うだろうけど」

「赤羽な」

 

名前を間違える龍太郎に呆れつつ、俺は少しだけ息を吸う

そして雫と光輝を見る

 

「雫。今日泊まるから少し新しい範囲について教えてくれないか?」

「えっ?」

「少しだけ、イラついたから、せめてカルマと俺くらいは高得点ださないとな。……それに期末テストに繋がるし」

「それなら俺も雫の家に泊まろうか?」

 

すると光輝がおそるおそるだけど告げる

 

「いいのか?」

「どうせ、冬夜ならなんとかしそうだけどな」

「そうそう。冬夜君誰かのためなら雫ちゃん以上に頼りがいがあるもん。私は夜食作ってあげるね」

「はぁ、お母さんに聞いてくるけど……でも久しぶりねみんなで泊まるの」

 

俺は少しだけ苦笑してしまう。テスト前日になって気づいたことに俺は内心、少しだけ笑ってしまう

逆境こそ面白くなってしまう俺に雫たちは気づいていたのか少しだけ苦笑していたのであった



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中間考査の時間

テスト当日、俺たちは久しぶりの本校舎でテストを受けることになる

テスト問題を見てやっぱり雫の言っていたことは間違ってなかったと感じる

小さく要点を絞り的確に問題を取る

武道も暗殺も勉強も同じことだ

基礎を怠らず、そして適所を潰していく

問題文の重要なところを見極め、そして基礎を当てはめる

眠気があるがそれでも周囲には心強い味方がいてくれた

問題11以降新範囲の問題が多くなり、さらにその応用問題が多くなる

一日くらいで丸暗記したところで忘れる

クラスメイトは倒れていく中で既に立っているのは

 

「やっぱりカルマか」

「そっちも、殺せんせーの進み具合からここまでは俺らしかいけないだろうね」

 

俺とカルマだけ高得点争いに残ることになる

問題を見て時間配分は未だに残っているどころか余裕がある

 

「そういや、カルマは?どう?」

「まぁ90点は余裕かな。そっちは?」

「俺もかな」

 

見直しの時間もキッチリ残していたこともあり、俺は未だに自己採点は一問たりとも落としていない

本校舎の情報を俺はしっかり抑えてある

特に光輝と雫、香織のノートは分かりやすく、どこが大事か、どの辺りがでるのか予想が立てやすく、結果的に100ページある教科書の中から20ページ程度まで減らすことができていた

最後の問題は少しだけ外れたけどまぁ、三角程度は取れるだろう

 

負ける気がしないさ。……雫や光輝たちが背を押してくれるなら

 

そんな気がする。間違える気がしないで問題を解いていき、その十分後、テスト終了のチャイムがなるのだった

 

 

渚said

 

 

「……これはいったいどういうことでしょうか。公正さを著しく欠くと感じましたが」

 

烏間先生の声音が教室の片隅から聞こえてくる。スマホで話しているため会話内容までは聞き取れないけど、本校舎の方に抗議の電話をしていることは容易に分かる

だが僕たちも緊急の冬夜くんのメールが来るまで分からなかった。一応冬夜くんは幼馴染の白崎さんのノートを見せてくれたけど

 

「……伝達ミスなど覚えはないし、そもそもどう考えても普通じゃない。テスト二日前に出題範囲を全教科で大幅に変えるなんて」

 

どうしようもなかった。みんなのテストの結果は言うまでもなく完敗だった。学年五十位以内に入れた人は多分カルマくん以外は誰もいない。教室の空気がそれを如実に表していた

 

「……先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見過ぎていました……君達に顔向けできません」

 

あれだけ大丈夫だと太鼓判を押していたが、あのときの理事長はすでに手を打っていたのだろう

みんなが意気消沈、そして一人だけ熟睡している中で後ろの方から対先生ナイフが殺せんせーに向かって飛んでいった

 

「にゅやッ!?」

 

それを殺せんせーは驚きながらも振り向かずに躱してみせる

殺せんせーも含めて皆の視線が後ろに向けられる。そうしてナイフの投擲元を辿っていくと、そこには教壇へと歩いていくカルマ君の姿があった

 

「いいの〜?顔向けできなかったら俺が殺しに来んのも見えないよ?」

「カルマ君!! 今、先生は落ち込んでーーー」

 

と言った矢先にカルマくんはプリントを見せるとそこには高点数のカルマくんの回答用紙があった

数学は満点であり、すべてのテストで90点を超えている

 

「俺、問題変わっても関係ないし。ま、あんたが成績に合わせて余計な範囲まで教えたからだけどね。まぁ一番頑張っていたのは何も知らない冬夜だったけど」

「にゅや?」

「あいつ。学年順位を上げて学年8位だよ。数学だけやまが外れたって言っていたけどそれでもあいつ満点3つ取ってきてるから」

 

とその上から冬夜のテスト問題を広げると驚くべきものが書いてあった

三つのテストの点数が100と書かれ、すべての点数で90を超えている。数学がやまを外したと言ったとはいえ十分高得点を叩き出していた

 

「……すげぇ。国語、社会、理科で満点かよ」

「英語も98で数学も90?」

 

この点数だったら確実に学年上位に食い込んでいるだろう。つまり本校舎の生徒達に見劣りしないどころか凌駕する実力を示したことになる。E組を出るための条件は満たしたってことになる

 

「だけど俺はE組出る気はないよ。……で、そっちはどーすんの?このまま尻尾巻いて逃げちゃうの?それって結局さぁ、殺されんのが怖いだけなんじゃないの?」

 

すると磯貝くんや前原くんが目線で合図を送る 

 

「なーんだ、殺せんせー怖かったのかぁ」

「それなら正直に言えば良かったのに」

「ねー、“怖いから逃げたい”って」

 

クラス中じゅ煽りにミキミキと音を立ててあお青筋を浮かべる殺せんせー

 

「にゅやーッ!!逃げるわけありません!! 期末テストであいつらに倍返しでリベンジです!!」

 

顔を真っ赤にする殺せんせーにクラス中からわら笑い声がこ溢れるだか。中間テストで僕たちは大きな壁にぶつかった。でも僕は胸を張った。このE組であることに

 

「…でも、前から気になっていたんだけど、大島って何でそれならE組に落ちたんだ?」

「…えっ?」

「素行不良って言うけどカルマと比べて運動もできるし人望もそれなりにある。勉強だってできるのになんでE組に落ちたんだろって」

「それは冬夜が去年卒業する予定だったA組の卒業生を警察にぶち込んだんだよ。E組を庇っていた八重樫さんが代わりに犯されそうになったから」

 

カルマくんがそう告げる。クラス中から驚きの声が上がる

 

「……皆は冬夜の恐ろしさを知らないから知らないと思うけど、冬夜が怒るとどんな手段でもだれであろうと、殺しにかかるよ。実際にその当時のA組の担任は理事長から首になっているし、そいつらは実際に社会的に殺したから」



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修学旅行の時間

「そういえばさ、修学旅行の班決まった?」

「ん?……班?」

 

俺はキョトンとし

その様子に渚と茅野が俺に苦笑してしまう

 

「…忘れちゃったの?来週の修学旅行」

「……そういや、そうだったか?」

「うん。やっぱりわすれ忘れてたの?」

「まぁな。最近中間テストの打ち上げとかとかしてたから」

 

ついでに光輝は相変わらずの2位、雫は9位、香織は53位、龍太郎は98位と皆そこそこの順位に落ち着いたのだ

ついでに光輝は498点という点数を取っており、トップの浅野と2点差である

 

「全く……三年生も始まったばかりのこの時期に総決算の修学旅行とは片腹痛い。先生あまり気乗りしません」

 

そう言う殺せんせーの横には人の身の丈を軽く超える巨大リュックに目一杯詰め込まれた荷物と、その巨大リュックにこれまた目一杯詰め込まれた状態で幾つものリュックが括り付けられていた。

 

「「「ウキウキじゃねーか!!」」」

「どんだけの荷物を持っていくつもりだよ。つーかこんにゃくとかいらないだろ」

「……バレましたか。正直先生、君達との旅行が楽しみで仕方ないです」

 

まぁ、その気持ちは分からないことはない。雫たちと同じく回れないがそれでも修学旅行で京都は結構楽しみだった

 

 

「知っての通り、来週から京都二泊三日の修学旅行だ。君らの楽しみを極力邪魔はしたくないが、これも任務だ」

 

体育の授業後、烏間先生が告げると俺たちは首をかしげる

 

「……てことは京都でも暗殺?」

「その通り。京都の街は学校内とは段違いに広く複雑、狙撃手を配置するには絶好の場所だ。既に国は狙撃のプロ達を手配しているらしい」

 

あぁなるほど。その理屈も言えるな

元々京都の街は複雑ながら歴史的建造物が多くあるのもあり、いいスナイパー位置があるのには違いない

 

「成功した場合、貢献度に応じて百億円から分配される。奴は二日目と三日目の班別行動時に君達と一緒に京都を回る予定だ。暗殺向けのコース選びをよろしく頼む」

 

と烏間先生が告げ終わると俺たちは班分けになる

すると渚が近づき俺の方に向かってくる

 

「ねぇ。もしよかったら僕たちの班にならない?」

「ん?いいけど後は?」

「カルマくんと茅野と奥田さんと杉野と神崎さん」

 

俺は少しだけ驚いてしまう

クラスのマドンナと言われクラスの人気が高い少女の俺は少しだけ驚くが、そういえば杉野が神崎を憧れていることを思い出す

 

「神崎か。結構倍率高そうだけだけどな」

「意外だった?」

「いや?全然。杉野あたりが決めてそうな雰囲気ではあったしな」

 

俺は苦笑してしまう。実際神崎はどちらかといえば補助に入ることが多いから俺は結構満足だ

 

「よろしくな。神崎」

「うん。よろしくね大島くん」

「暗殺と考えるとやっぱ人が多い場所か拓けた場所しかないのかなぁ?」

 

と俺たちがワイワイ話しているとビッチ先生がつまらなそうに見ている

 

「……フン、皆ガキねぇ。世界中を飛び回った私には旅行なんて今更だわ」

「じゃ、留守番しててよビッチ先生」

「花壇に水やっといて〜」 

「何よ!!私抜きで楽しそうな話してんじゃないわよ!!」

「あーもー!! 行きたいのか行きたくないのかどっちなんだよ!!」

 

とクラスが賑わっていくクラスメイトを見ながら雫たちはどこにいくんだろうなぁって思ってしまう

俺は少しだけ何か足りない修学旅行の話に少しだけ受け身で聞くのであった

 

 

 

修学旅行当日、俺はいつもの通りに普通席に座るつもりが

 

「結局こうなるんだな」

「まぁ、E組が一番集まりやすいから仕方ないでしょ?」

 

と俺の付近には雫、香織、光輝、龍太郎が自分のグリーン座席からこっちにきていた

当然もごとく身内で盛り上がるのでクラスのことになる

 

「つーか、修学旅行くらい自分のクラスで過ごせばいいのに」

「あの集会以降教室がギスギスして居づらいのよ。しかも香織がまた天然発動しちゃって」

「なるほどなぁ。まぁ、誰もが龍太郎や光輝、香織みたいに何でも突撃するバカじゃないだろうし」

「おい。それ俺が龍太郎や香織みたいに何も考えずに物事を突っ込むみたいじゃないか!!」

「光輝?お前目の前で失礼なことを言っているの気づいているか?」

「お前らのせいで雫と俺が何回尻拭いしたと思っているんだよ。まぁこの学校に来てよかったのは光輝が自分よりも上の人がいるって自覚してくれたことだけど」

 

とお菓子を食べながら俺の周りで雑談している

すると当然の如くE組のメンバーもこっちに来るようで

 

「あの?八重樫さんとかって私たちと前から態度あまり変わらないよね」

「えぇ。それがどうしたの?」

「それが不思議なんだろ。本校舎の奴らって基本的に俺らを下で見てるから」

 

すると納得がいったのか雫は少しだけ説明を始めようとしたところで龍太郎が告げる

 

「別におかしいことじゃないだろ?冬夜がいいやつって言えば多分いいやつってことだろうし」

「そうそう。冬夜くん両親を亡くしてからずっと落ち込んで居た時期があったけど、最近じゃずっと楽しそうだったから、E組があっているんだなぁって思って」

「「「「えっ?」」」」

 

香織余計なことを言ったな

クラスメイトには気を使わせような真似はしたくなかったんだけど、まぁ知られたら仕方ないか

俺は小さくため息を吐くと雫は何か察したらしい

 

「もしかして話してなかったの?」

「ん。まぁな。気を使われちゃこっちに取ってやりづらいんだよ」

「…ご、ごめん」

「別にいい。どうせ先生には懇談で師範がくるからどうせ知られるし」

「息苦しい雰囲気お前苦手だからなぁ」

「お前や香織もだろ?」

「私も無理よ。だから冬夜のところに避難してきたのに」

 

まぁ向こうのクラスよりはこっちのクラスの居心地の良さは明らかにいい方だと思う

元々弱者とはいえ身内は見捨てないっというのが八重樫の教訓であり、純粋に弱者がかわいそうだという立場があるのだろう

 

「ん〜。でもお前ら基本的に交友関係狭いからなぁ。特に光輝って特に親しいのはこのグループしかなくないか?」

「……お前が広すぎるんだよ。元々Aに入る前にもE組のやつとは結構繋がり持ってただろ?」

「ん。まぁ磯貝や片岡、渚たちも連絡先は残ってたしな」

 

元々何かと縁があるのだ。そのうち26人中10人は連絡先を持っていた

 

「でも、大島くんの話は興味あるかも!」

「俺?」

「うん。大島くんって昔のことって滅多に話さないから」

 

あ〜確かにそうだな。

俺が小学生の話はしたことなかったか

 

「いや。基本的に道場くらいしか通ってなかったし、あんまり人付き合いも少なかったからな」

「そうね。元々剣道の方に通っていたけどお父さんとお爺ちゃんに気に入られて剣術道場に移転になったのだったかしら」

「…あーそういえば雫にはそういういうことにしてたか」

「えっ?違うのかしら」

「元は俺は雫を守りたくて師範に頼み込んだのが原因だよ」

 

元々隠していたけど今更隠す機会ではないだろう

雫は完全に初耳なので明らかに動揺している

 

「えっ?」

「いいの?話して」

「いいかな。少し本人に話すのは恥ずかしいけど。元はといえば雫が虐められていたのがきっかけだったかな。雫って昔は結構地味で、小さいころって可愛い子が人気だっただろ?光輝って今でも一週間に三回は告白されることが多いけど小学校の時ってもっと人気が高かったんだよ」

「そうだったなぁ。光輝って昔からヒーロー属性だったから女子にかなり人気だったよな」

 

龍太郎も記憶があるのか苦笑している。

実際俺も女性からの人気はそこそこある方だし、龍太郎は完全にその波に引かれている

 

「……だからこそ、その当時から大人っぽかった雫はやっかみを受けた。こいつは幼いころから剣道をやって居た分女子の話題にはとことん疎かったんだよ。それも俺と光輝がいないところでやるもんだから俺も光輝も気づくのが遅れたってどころか、光輝は結局雫が虐められたところって結局見てなかったんだっけ?」

「えっ?あぁ。そうだったけど、雫から相談は受けたかな……でも、俺はあの時はその女子の善意を信じてしまったんだ」

「……まぁ、その正義感の強さも人の信じる力も光輝の良さだから仕方ないさ。元々俺は剣道は雫や光輝、いや門下生で一番弱かったんだよ」

 

するとE組からざわざわと声が上がる

それは烏間先生やビッチ先生も同じことだったらしく思わず俺を見る

まぁ俺が暗殺で見せる運動神経は察しているだろう

 

「……だからこそ俺にとっては雫が憧れだったんだよ。雫の剣って綺麗で鋭かったし、今でもそれは変わらない。剣術でいえば雫の方が強いだろうな。でも生活面でいったら俺は幼稚園くらいの時から雫の憧れがお姫様だったこととか、今もだけど雫の部屋が動物の人形だらけとかって知っていたんだ」

「ちょ、ちょっと」

「だからこそ、憧れな人が泣いていたのが、女の子として扱われていなかったことが許せなかった」

 

雫も恥ずかしい秘密を暴露されて俺を止めようとしたが次の言葉を聞き、言葉を止める

この話をする時俺は少しだけ怖がらせることが多いらしく殺されるかと思ったとの香織がいっていた

 

「まぁ、後はお察しの通りだよ。その女子をボコボコにして俺は生徒指導室にぶち込まれたけどな。それでも、あの時からだな。師範に土下座して強くなりたいって頼んだのは。雫を、大切な友達や家族を守れる強さが欲しいって」

「だから、毎日休みなく剣を振り続けたの?」

「まぁな。剣だけじゃなくて護衛術とか八重樫家って警察や防衛省とも繋がりがあるから小学校の頃から習えたから。努力しないと俺は本当に最初は最弱だったから雫を守りたいって思ったらかなり努力しないといけなかった。それだけのことだよ」

「手が早いのは小学生のころから変わってないんだね」

「うっせ。カルマだって同じだろうが」

 

俺は甘いお菓子を一つとり口に入れる

チョコレートの甘さとサクッとしたクッキーの感触を舌で味わう

 

「でも、今でも雫を第一に守るってことには違いはない。今でも守れているかは分からないけどな」

「十分よ。でも、前にも言ったけど少しは冬夜も自分の幸せを願ってもいいのよ?私を守ってくれるのもいいけど冬夜って結構モテるのに誰かと付き合ったりしないの?」

「「「「……」」」」

 

するといつものメンバーも、クラスメイトすらその一言に同情の視線を向けられる

これだけ言って、想いが伝わらないのは本当に重症だろう

その後居た堪れない空気の中、結局殺せんせーは一回も新幹線内に入れずに、俺たちの黒歴史公開合戦が行われていたのであった



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修学旅行の時間②

「にゅや!!大島くんのせいで先生新幹線の外でずっと居たんですよ!!」

「いや。俺のせいじゃないだろ。雫たちは仲良いからこうなるわけで修学旅行中は殆ど新幹線の中しか居られないんだぞ?」

「まぁ、どれだけあのメンバーが仲がいいのか分かったけど。でもいいよね。こっちに来てもちゃんと信頼してくれるんだなって。」

 

俺が殺せんせーに愚痴愚痴文句を言われていると矢田が苦笑気味に告げる。

実際羨ましいと思っているクラスメイトが多いらしく、普段馴染みのない寺坂までもが頷いていた。

 

「まぁ、大島くんは少し可愛そうだったけど。」

「もう慣れたから。てか神崎見つからないなら俺の予備渡そうか?」

「えっ?」

「しおり見つからないんだろ?一応俺コピーでまとめたものの予備持っているから渡そうか?」

「にゅや?二人ともしおりを、纏めていたって真面目ですね〜。ですが大丈夫。先生の作ったしおりがあればもう安心。」

「「「それを持ち歩きたくないから纏めているんだ!!」

 

俺は苦笑しながらしおりを探そうとしたところで通話アプリの着信がなる。

誰からかと思えば雫の文字が見える。

 

「ん?どした?」

『あんた最初の一言目で一言掛けなさいよ。』

「いや、なんか急用だろ?流石にこんなに早くにかけてくるって思わないしそっち夕食前だろ?」

『まぁそうなんだけど。ごめんなさい。新幹線の落し物にしおりなかったかしら。』

「ん?しおり?」

 

俺は少しだけ疑問に思ってしまう。雫もしおりをなくしたのか?

 

「お前小さいポケットの中入れてなかったか?」

『確認したけどないのよ。香織にも確認してもらったけど。』

「ん〜まぁ聞いてみるけど期待すんなよ。」

『えぇ。』

「どうした?」

「雫のしおりも無くなっているからこっちに落ちてないか確認してほしいって。」

「いや。落し物はなかったはずだが。」

 

烏間先生が最後に確認しているから多分見落としはない。ということは

かなりきな臭くなってきたな。

 

「もしもし、雫。ダメっぽい。」

『……そう。それなら高校生とぶつかった時に落としたのかしら。』

「高校生?」

『えぇ。新幹線の時に一回行きしなにぶつかっていたのよ。その時かしら。』

 

雫の会話はもう少しだけ続けたあとに雫サイドは夕飯もあり電話を切ったあと神崎に聞いてみる。

 

「神崎、お前って高校生とぶつかってなかった?」

「えっ?うん。見えていたの?お茶買う時に一度ぶつかったけど。」

「了解。とりあえずこれしおり。」

「ありがとう。大島くん。」

 

と俺は神崎に話を終えたあと一つだけダイアルを入れる。

ほぼ黒だろうな。これ。

 

「もしもし龍太郎?明日の自由時間について話があるんだけど。光輝にも後から電話する予定だけどちょっと時間とってもらっていいか?」

 

と俺は最初の予定から大きく切り替え荒事の準備をするのであった。

 

 

 

「……やっぱりここって」

「そういえばここだっけ?坂本龍馬の暗殺地。」

 

二日目の俺たちは本当に暗殺旅行ということを実行していた。

 

「元々本能寺とか二条城とか暗殺と関連することも多いから俺が行きたかったんだよ。まぁ、昔の暗殺の跡地くらいの寄り道くらいはいいと思ってな。」

「へぇ〜。よく覚えているじゃん。でも二条城?」

「二条城は暗殺っていうよりも時代の移り変わりかな。元々京都という街は歴史が動きやすい土地だしな京都御所もあっただろ。」

「京の都で京都だからねー。以下にも冬夜が好きな地形だよ。」

 

まぁまぁ、暗殺の多さでではなく歴史が動いた土地として京都は有名だったからじっくり見たかったんだけど、そんな余裕は無さそうだしなぁ。

そんなことを考えながら歩いていく。しばらくは歴史的建築物を見ていたが昼食をとった後は神崎が、指定した場所に向かう。

恐らくそこが犯行現場になるだろう。

しばらく歩くと祇園街に着く。

ここは元より人が通りにくいことで有名であり、昼間はあまり人通りが少ない。

つーか。もういいか。

 

「おい。さっきからついついてきてるやつ付いてきてるやつ出てこいか。どうせいるんだろ?」

「……えっ?」

「へぇー、気づいてたんだ。お前。」

 

すると予想していた通りにその場所から人が出てくる。予想していた通りにその人物は顔を出した。

 

「高校生か。…制服を見るにあんまりいい噂を聞かない学校だな。」

「俺たちの高校を知っているもんで。」

「よくない噂だけどな。んで。その高校生が何の用?」

「あっ?女を攫いに来たに決まってるだろ?男連中には関係ねぇ。少しお寝んねしてもらうぞ。」

「ふ〜ん。カルマどうする?」

「どうするも何も。全員潰すに決まってるでしょ。」

 

そしてカルマは一人の頭を掴み思いっきり電柱に叩きつける。

…相談しといて何だけど容赦ねぇな。こいつ。

 

「ほらね。渚くん。目撃者いないとこならケンカしても。」

「カルマ油断するな!!」

 

背後にいる高校生がカルマの背後から鉄パイプで殴りつけようとしていたので俺は手を引きカルマを庇うと腹部にかなりの強い衝撃を受け座り込んでしまうと同時に四方八方から殴る蹴るなどの暴行が始まる。

そしてしばらく暴行を加えられたところで俺は意識が暗くなるのだった。



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修学旅行の時間③

「いっつ。」

「大島くん!?大丈夫ですか?」

「大丈夫。予想はしてたから。やっと去ったみたいだな。」

 

暴行を加えられていても普段からの組手に比べたらどうってことはないので、俺は小さく苦笑してしまう。

 

「予想していたってどういうことですか?」

「昨日の神崎と雫のしおりをなくしたって言った時、一度だけ心当たりがあったんだよ。わずかに神崎のかばんが空いていた時があってな。覚えてるか?お前らか高校生にぶつかったの。」

「えっ?はい。」

「あの時に盗まれたのは大体予想通りだった。まぁあの程度だったら全員潰せるだろうしカルマと一緒に金づるとして潰しても良かったんだけど、それが見事に雫のしおりも盗まれたからな。生憎俺は雫がどのルートを通るのか知らなかったし同じタイミングで盗まれたからな。」

「もしかして、八重樫さんも同じ状況になってるのですか!?」

「おそらくな。まぁ予想してたから対処できるけどな。」

 

俺は素早くダイアルを打ちあるところに電話をかける。

すると小さく電話先のやつにはため息を吐かれ了承の声が聞こえ電話が切れると

 

「奥田。少しだけ離れるぞ。」

「えっ?あの大島くんは?」

「…当然奪われたものを取り返しに行くに決まってるだろ。」

 

 

俺はスマホで色々と話をしながらスマホによる位置共有アプリのGPS調査によって示された場所に走る。

もうそろそろカルマも起きてるだろうし後続も早いだろう。

とりあえず制圧からだろうな。GPSの示す先にあるのは古びた大型施設だ。

すると京都の友達からメールが送られる。そこにはもともとの施設の地図情報が送られてくる。

それをすぐにデータを他のやつに送ると俺はすぐさま準備をし始める。一時間程度しか効かないものの即効性睡眠薬付きの眠り針をサイレンサー付きのエアガンにセット靴も仕事用のものへとシフトする。全員を眠らせるというのは流石に無茶だろう。人数も恐らく20〜50人程度と予想がつかない。

だから突破だけを意識し単純に速さだけを求める。

天井へと壁をよじ登り移動し空いた空間から潜入、重力に逆らいながら確実に通らないといけないルートだけ見張りの高校生の首元目掛け天井から狙撃する。大広間に突入すると、縄にくるくる結びにされている四人の姿と十人程度の高校生の姿があった。服の様子も、綺麗だし貞操も大丈夫だろう。

 

「おっ。まぁ、予想通りか。」

「「大島くん!!」」

「「冬夜(くん)!?」」

「てめぇ。何でここが分かった?」

 

俺が入ってくると既に雫と香織も予想通り、捕まっていたらしい。

 

「昨日の夜神崎と雫の両方のしおりがなくなったら当然警戒するだろ?元々俺は雫の家で一緒に準備をした時にしおりをまず先に入れていたのを見てたからな、だからこそ落としたか、誰かに取られたかの二択になる。」

 

俺と雫が一緒に準備した際に入れていたのは知っていたので雫一人だったら落としたのかわからなかっただろう。

でも神崎もなくしたとなれば違う。

 

「それに神崎たちと雫たちは一度他校の生徒と不自然なぶつかり方をしている。明らかに不自然だろ、ぶつかった二人がしおりをなくすなんて明らかにできすぎているんだ。だから神崎に渡したしおりにGPSを仕込んだ。」

「えっ?」

「罠にかかったふりをしていれば簡単に犯人なんてすぐにおびき出せる。つーか喧嘩慣れした俺がいくら高校生の鉄パイプで一つで倒れるわけがないだろ。」

 

俺は笑みを消しそして睨みつける。拳を鳴らし、そして相手を威圧的に見下す。

俺しか見えてないようだけどさっきからその周りには軽く雑音が聞こえてくる。

もう負ける要素は存在しない。……後は詰めに持っていくだけだ。

 

「俺の大切に手を出そうとしたんだ。お前らタダで済むなと思うなよ?」

「はん。中坊一人で何ができる。」

「ん?誰が一人って言った?」

 

そう言った瞬間すると扉が開き伸びている不良と龍太郎の姿が見える。

 

「お〜い。冬夜?雫たちいたか?」

「「龍太郎?」」

「光輝も後々来るぞ?今俺たちの班も時間がきたら来るだろうよ。…数でも武力でももう問題ない。既に詰みだ。」

「チューボーが粋がるなよ。てめぇら。」

「だから遅いって。」

 

言葉が発する前に腕の中から鎖分銅を振るうと同時に周辺の高校生を蹴散らす。

悲鳴をあげる暇なく俺は分銅を腕に巻きつける。

雫たちは初めて見たのかポカーンと口を開けた何が起こったのか分からないのだろう。

 

「だから詰みって言っただろ?既に射程内だ。」

「ヌンチャクなんてまた物騒なもんを。」

「知るか。卑怯も汚いもないからな。……雫たちを傷つけようなら俺が絶対に潰す。」

 

呆れる龍太郎。色々突っ込みたいこともあるだろうけど今は我慢できるようになったのはいいところだろう。

まぁ鎖分銅ってバレなければいいしな。

 

「ケッ。てめぇらも俺たちのことを肩書きで見下しているんだろ?馬鹿学校ってことで見下しやがって。」

「見下してたらこんなことにはならないだろ。GPSを持たせたっていうことはこういうことが起こることが分かっていたってことだろ。俺にも前日には通知来てたしな。」

「まぁな、他にも無力化させる方法はいくらでもある。まぁ、使い所は考えるし使うまでもない。それに肩書きなんて堅苦しいもんは勘弁だ。自分がどうやって生きたか、どのように歩んで来たのかその過程が何よりも俺に取って大切なことだ。自分自身が肩書きに囚われて自分がしたいことを自ら削っているだけだろ。」

 

すると後ろから近づいてくる人影に俺は苦笑してしまう。少しだけ早すぎる登場に苦笑を隠しえないけど。

 

「まぁどっちにしろ俺が手を出すほどじゃないからな」

「どういうこ」

 

すると不良の頭を大きな本で殴られる。その後ろには渚たちが控えていた

つーか先生のしおりを持って来ているのって渚くらいじゃないかと思ってしまう。

 

「ナイス渚。つーかお前そのしおり持ってきてたんだ。」

「まとめるの苦手だから…。拉致対策について完璧なマップがあったから、そのおかげで早めに着くことができたけど…。」

「つーか冬夜、ここに来る前多くの高校生伸びてたけど。」

「特製の睡眠薬針、一応エアガンに装着できるように改造してあるけどな。元々はあいつに使う予定だったやつ。」

「俺は冬夜に聞いていたけど、本当に制圧まで10分かけなかったんだ。」

「カルマくんも知ってたの?」

 

茅野が驚いたようにしてるけど、それなら納得がいくことがいくつもある。

 

「まぁね。まぁ白崎さんと八重樫さんは二人が攫われてなければ、冬夜一人でもあの盤面は制圧出来てるって。場所が分からなかっただろうからね。この後の抹茶大福班分奢りってことで手を打ったけど。」

 

元々予想はしてたことだけどな。とりあえずそれくらいの出費くらいで許してくれるんならって感じだな。

そうやって俺は龍太郎に向かって折りたたみ式ナイフを投げる。

 

「龍太郎。ほれ。」

「なんだよってあぶねぇな。」

「ロープ切るぞ。カルマ。女子が落ち着くまで俺のリュックの中にあるお楽しみ袋で遊んでいていいぞ。」

「えっ?いいの?」

「いいぞ。ついでにこいつらの仲間いないか吐かせようぜ。警察にも連絡済みだしな。」

 

するとニヤリと笑う。お楽しみ袋いわゆる味覚や視覚などの拷問道具だ。

なお蠍とかゴキブリとか生きた地獄まで入っている。

なお一度使ったさいにはカルマはどん引いていたし、開いた瞬間生き生きとした顔で拷問を始めるカルマ。

 

「……あんた、何で本物のナイフを二つも持っているのよ。」

「ん?まぁ元々予想できたし、ナイフ一応持っていると便利なんだよ。山の中だったら。」

「ここは京都だよ、冬夜君。」

「雫はトラブルに巻き込まれやすいからな。万が一だよ。」

「ちょっと、って言えないわね。こんなことに巻き込まれてしまったし。」

 

ナイフでロープを切った後呆れるような二人に無視し龍太郎の方のクラスの女子に振り向く。」

 

「そっちも無事か?悪いな囮に使って。」

「本当だよ!!」

「大丈夫です。」

「……ん?なんか神崎前よりもスッキリしたように感じるんだけど……」

「ううん。なんでもないよ。それと、ありがとうみんな。助けに来てくれて。」

「えぇ。本当に危なかったわ。みんなありがとう。」

「別に。いつものことだから。」

 

俺がそういうと完全に呆れている龍太郎と驚いているクラスメイトと雫。

 

「いつものことって」

「いつものことだろ。雫が困ったら助けに行く。普段どうりじゃないか?」

「……そう考えるとそうだね。」

 

香織が苦笑しているとすると暴風が吹き俺らの前に見知った黄色いタコが現れる

……そういえば先生にも連絡が行くってことはこいつにも来るってことか。

 

「皆さん無事ですか!!」

「殺せんせー。」

「…えっ?」

「な、何?」

「は?」

 

雫と香織、龍太郎が明らかに動揺したようにしている。俺は呆れてしまい殺せんせーを見る

まぁ黄色いタコが歩いていてそれも話していたらそうなるか。

 

「なんのつもりだよ。」

「ヌルフフ。ちゃんと烏間先生の許可はとって来ましたからねぇ。それにE組の新しいクラスメイトに担任からの挨拶をしようと思いまして。」

「……?どういうことだ?」

「白崎香織さんと八重樫雫さん。坂上龍太郎くんですね。天之河光輝くんは居ませんが。」

「……そういうことよ。お互いに説明はお互いにしないとならないでしょうけど。」

 

俺は未だにどういうことか分からない。

未だに呆然とする中で俺はその場で立ち尽くしていた。

 

 

俺が宿舎で事情を話し終え、そっちの事情を聞いていた。

クラスメイトも集まっており、既に窮屈と言えるくらいには人が集まっている。

そして光輝から全てを聞き終わると俺は驚くことになった。

 

「外部受験希望?」

「えぇ。元々私たちはこの学校の理念には疑問を覚えていたでしょ?高校は冬夜も違うからそれならみんなで進学先を変えようって思って。ついでにお父さんには言ってあったのだけど……聞いてなかったようね。」

「元々あんまり聞かないようにしているからな。んで本当の理由は?」

「集会の時に学園長から目をつけられていたらしい。テスト範囲の変更点を教えたのもよくなかったらしい。」

「一応定義上は受験による授業範囲の変化らしいな。」

 

外部受験する生徒は椚ヶ丘の本校舎には殆どいないがいないことでもない。それはここよりも優秀な国内最難関高校に行く人たちのことだ。

そうなってないのは学校の方針に逆らっている俺たちが関係しているのだろう。

恐る恐る雫が俺を上目づかいで見ながら俺に告げる。

 

「怒ってるかしら?結局私たちもE組にきてしまって。」

「いや。何となくだけどそんな気がしてたから驚きは全然ないんだけど。こんなに早くこっちにくるとは思わなかった。」

「そっちこそ……よくバレないわね。こんな怪物が先生だなんて。」

 

呆れる雫に俺は苦笑する。確かに色々やりたいことやっている割にはこいつバレないよな

黄色い巨大なタコなのにバレないって結構変装が上手いわけ……ないか。

 

「まぁ慣れるもんだよ。ちゃんと先生はしているし正直本校舎の先生より分かりやすい。」

「慣れるってお前な。」

「それに今のE組が明るく前を向いているのは知っているだろ?マッハ20で色々はちゃめちゃだけど先生をやっていて、生徒には慕われている。だから殺し辛くなっているのも確かだ。俺も含めてな。」

「そんなにいい先生なの?」

「いい先生だとは思うぞ。ウザいしお節介だけど。」

 

俺は軽く苦笑してしまう。実際いい先生なのだ。

いい先生だけど暗殺者や他の国々にとって最高の暗殺場所になると思っていたこともあり雫だけには入ってほしくなかったけど。

ちょっとだけ嬉しい気持ちが勝っている。

雫も、光輝も、龍太郎も香織も同じクラスってことは言い換えれば間近で守れることもできる。

それにいろんな行事を参加することだってできるのだ。

 

「……まぁ、結果オーライか。」

「何がよ。」

「別に何でもない。」

 

少しだけ笑ってしまう俺に首を傾げる幼馴染たち。

どんなに危ないことがあっても、どんなに厳しいことがあっても乗り越えていける。

そんな気がしていたのであった。



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男子の時間

「そういえば、暗殺って今どうなんだ?」

「ん?うまくいっているはずないだろうが」

 

俺は旅館の風呂に浸かりながら今までの暗殺について光輝と龍太郎に答える。ゆっくり入っている分体も温まる

 

「まぁそうだね」

「実際一番良かったのは冬夜のカルマの隙をついた粉わさびと鎖分銅を使った暗殺だからな」

「お前何を使っているだよ。でも粉わさび?」

「ん。昔めちゃくちゃ辛い歯磨き粉を龍太郎に仕掛けたことあっただろ?あの時の奴。無臭に近いし仕込みやすいから」

「お前昔はそういういたずら結構好きだったな」

「小学生のころはな。流石にできるタイミングがないだろ。まぁ時々E組の奴らに今度少しだけ仕掛けるか。……カルマと一緒に」

「いいね〜。みんなの面白い反応が見れそう」

「「「「鬼か!!」」」」

 

と風呂に浸かりながらグテ〜とうつ伏せになる

でも少しだけこういうのも久しぶりだな

 

「そういやさ、冬夜って剣術のほかに八重樫で何習っているんだ?」

「ありふれた剣術とちょっとした雑技かな」

「……どういうことだよ」

「教える気は無いってことでしょ。ただ俺は少しだけ予想はつくけどね」

 

カルマはやっぱりわかりそうだな。鎖分銅を使えるのは少ししかいない

元々カルマは妙に勘がいいのもありだいぶ八重樫の正体については分かっているのだろう

 

「察するのはいいけど、雫にはいうなよ」

「流石にそこまでは分かるさ。……多分隠してきたんだろ?八重樫さんのご両親も」

「まぁ、本当に数人くらいしか通ってないからな。暗殺がなければ一生知らなかっただろうけど、流石に地球の危機となったらさすがに使わざるをえないだろう」

 

師範からも言われているし、暗殺のタイミングを見はからってやるしかない

お風呂は結構長風呂なのでくつろいでいると龍太郎がふと気づいたように俺に告げる

 

「でも、やっぱりでかいよなお前」

「ん?何が?」

「失礼だぞ龍太郎。いや、まぁ確かに大きいけど」

「?」

 

俺は首を傾げると全員がある一点に向けられる

その部位が下半身の一部であることに気づき俺は龍太郎と光輝にお湯をぶっかけるのであった

 

 

「全くこどもかよ」

「あはは。あの二人もそんなこと気になるんだね」

「まぁ男の子ってことだよ。あいつらも」

 

と俺は渚と杉野と一緒にゲームセンターに来ていた。小さな旅館のゲームコーナーなのでレトロなゲームがいくつかある

そんな中でどうやら先客がいるらしく騒がしい音が聞こえる

どうやら同じ班の女子組だったらしく神崎がゲームをしているのだが

 

「うおお!!どうやって避けてるかさっぱり分からねぇ」

「すげぇ。これ結構難しいゲームとして有名だぞ」

 

弾幕ゲームの難易度がえげつないものをいとも簡単に避けている神崎に俺と杉野が驚いている

 

「すごい!!意外です。神崎さんがゲームが得意なんて」

「黙っていたの。遊びが出来ても進学校じゃ白い目で見られるだけだし」

 

まぁゲームは結構そういう目で見られやすい。特に勉強だけとかで決めているこの学校では特に

 

「でも大島くんの言葉で少しだけすっきりしたの」

「俺?」

「肩書きなんて関係ない。自分がどうやって生きたのか、その過程が大切なんだよね」

「…俺にとったらな。渚の自爆特攻の時と同じだよ。もしかしたらあの時殺せんせーを殺していたかもしれない。でも友達が傷ついて地球が救われたって俺にとって前を見てその後生きれるかといったら別だろ」

「まぁな。確かに気分がいいことじゃないし」

「…本当にごめんねあの時」

 

人としてどうかってことだろう。例え成績がよかろうが殺せんせーを殺そうが変わらない

クズはクズだし、ダチはダチだ

 

「だからありがとう。大島くん。あの時助けに来てくれたことも、含めて」

「ん。つーか攫われるって分かっていたからな。囮にした方が悪いだろ」

「それは冬夜がどれだけ八重樫さんを想っていたのか俺たちは知っているしな」

 

俺は小さく苦笑する。まぁバレてない方が難しいと思うし隠すつもりはない

それに少しずつだけど自信がつき始めてる

 

「そういえばその雫たちは?結局こっちで泊まるんだろ?」

「今倉橋さんたちとお風呂なんじゃないかな?話したいことがあるって言ってたから」

「倉橋?」

 

ちょっとだけ意外な組み合わせに俺は少しだけ首を傾げる

まぁ気にしないでいっかと俺は近くのゲーム機に100円投下するのであった

 

 

「なぁ、大島って結局八重樫さんとはどうなんだ?」

 

前原と磯貝が俺の近くに寄ってくる。大部屋に入りトランプをしている最中だった

 

「別に、未だに何も変わらないよな」

「進展どころか、今年に入ってかなり積極的になってはいるけど全く気づく気配すらないからな。あいつ」

 

自分で言うのも何だけど、今年結構せめている。

まぁ、まだ時間があるのだから焦る必要はなくなったんだけどそれでもここまで気づいてもらえないのはさすがに結構くるものがある。

 

「つーか前原や磯貝とかじゃどうなんだよ?磯貝は聞くまでもないけど、前原だってモテるんだろ?」

「俺?」

「そうそう。このクラスって本校舎よりも可愛いやつが美人なやつ多いだろ?だから結構人気になるやつも多いだろうし。」

「……あ〜確かに神崎とか白崎とか?八重樫も綺麗だよな。」

「ん?それじゃあ匿名で投票アンケート取ってみるか?雫と香織以外で。」

「「えっ?」」

「いや、安定策とるだろ?俺に限っては雫になるし、少し話す時間もあっただろうからE組で誰がタイプか光輝と龍太郎はどの女子と友達になりたいかでいいから。香織と雫以外で決めようって。」

「へぇ〜面白そうじゃん。やろうぜ!!」

 

俺の提案に全員がメモを取り出す。やっぱり修学旅行の時って恋バナだよな。

俺も少し考えに一名の女子生徒を書き出す。

 

「オッケー。んじゃ集計するな。」

 

俺は簡単に集計する。そしたら

 

「やっぱり矢田と神崎人気だな。」

「まぁ妥当だろ。三位は倉橋か?」

「一応香織とかも混ぜるか?」

「いいだろ。そうすると白崎さんがほぼトップだろうし。」

 

まぁ学校一の人気があり、クラス分け隔てなく優しい香織は本校舎時代も先輩後輩分け隔てなく人気だった。

 

「ついでに大島は誰入れた?」

「俺は倉橋。正直速水とは迷ったけど。」

「言うのかよ。」

「つーかお前胸小さくてもいけるの?」

「……俺胸目当てで雫が好きなわけじゃないから。まぁ雫とタイプはめちゃくちゃ違うけど、なんだろうな。一番話しやすいし倉橋が近くに居てたら楽しいからな。」

「……まぁ分かる。でも速水は?」

「速水はなんというかデレた時の破壊力がえぐいぞ?中二だったかな?雫も動物が好きだからよくペットショップに寄っていくんだけど、その時に速水に結構あったんだよ。あの時の速水やばいぞ。つーかいつもクールな奴がデレデレしてたら、…本当に破壊力がやばい。」

「お前ギャップに結構弱いのか?」

「弱いな。意外性のあるしある女子って結構ドキッとするし。」

 

俺のことで話すとするとカルマが障子を開け入ってくる。

 

「お、面白そうなことしてんじゃん。」

「カルマか?気になる女子っているか?」

「皆も言ってんだ。逃げらんねーぞ。」

 

と囲まれ少しだけ考え始めるカルマ。

 

「……うーん、奥田さんかな。」

「あー悪戯で相性良さそうだな。」

「そうそう彼女、怪しげな薬とかクロロホルムとか作れそーだし。俺の悪戯の幅が広がるじゃん。」

「絶対くっついて欲しくない二人だな。」

「まぁ、言うまでもなくこれは男子の秘密ってこと…」

 

と俺が周囲を見たら、殺せんせーがメモっている。視線の方向に気づいたのかクラスメイトもその方向を見つめる

そして襖を閉め殺せんせーはどこかに行った。

 

「メモって逃げやがったっ!!殺せっ!!」

 

即座に対先生ナイフや銃を取り出した皆は、殺せんせーを殺すべく一斉に大部屋を飛び出していく。

 

「……なぁ、これが普通なのか?」

「これが日常だよ。面白いだろ?」

「……俺は頭が痛くなってきた。」

 

呆気に取られる二人に苦笑しながら俺もナイフを取り出す。

 

「さて、どうせ殺せないだけど殺しに行きますか。」

 

俺はナイフを持って俺もその後を追いかける。

既に俺もE組として馴染み切っていた。



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女子の時間

冬夜がゲームセンターにいる時、岡野、矢田、倉橋、香織、雫の五人はお風呂につかっていた。

 

「……ってことで今までこんな暗殺があったんだ。」

「一番殺せそうだったのは冬夜くんだった。鎖分銅で動きを止めてナイフみたいなものを投げていたから。」

「冬夜ったらまた、無茶して。」

「でも、ユッキーかっこいいよね。訓練でも烏間先生と互角以上に戦っているし。」

「渚くんを庇った時も本当に凄かったんだよ。」

 

暗殺の話がいつのまにか冬夜の話になっていく。暗殺においても成績においてもかなり好成績であるのだ。

 

「冬夜って中学入って本当に笑わなくなったから。」

「そうだね。私も一年生の時大島くんと同じクラスだったけど、渚くんとカルマくんくらいと話す時以外は結構怖かったよね?」

「そうだよね。本当E組に来た時びっくりしちゃった。」

「そうね。でも、小学校のころは多分一番はしゃいでいたのよ?わんぱくさであれば冬夜が一番だったわ。確か小学生6年だった時に無理矢理冬夜が私をお姫様役にした事もあったわね。」

「そういえばあったね。雫ちゃんやりたいって顔に出てるのにクラス中から私がいいって推薦されて。でも、雫ちゃんにやりたいって言わせて結局王子様役に冬夜くんやることになったんだったよね?」

「そうそう。冬夜が似合わねーと言いながら王子様役の衣装着てたけど、かっこよかったわね。」

 

雫と冬夜の主役の劇は冬夜のクオリティの高さと元々美人よりの雫のコンビと香織が雫の衣装にこだわり、普段香織推しの男子生徒でさえ5秒はフリーズするという破壊力を生み出す結果になった。もちろん大成功で終わっている。

 

「雫ちゃんと香織ちゃんってユッキーのことどう思ってるの?」

「えっ?」

「そうそう。二人って色々噂あるから。」

「冬夜くんと私は多分男子の中では一番のお友達、……ううん。雫ちゃんと同じで私の大親友だと思う。」

「冬夜も同じこといいそうね。私は…ヒーローかしら。」

「ヒーロー?」

 

全員が首を傾げる。雫は嬉しそうに笑いながら告げる。

 

「だって昔から困っている時に毎回のように助けてくれたのよ。光輝に相談しても解決しなかったことも、冬夜が怒って、その女の子たちを追い払ってくれたから。困った時は私を助けてくれたわね。」

 

本当に困った時は冬夜がいた。少しだけ厳しいって時は手伝ったり、勇気が出ない時は後押ししたり、助けたり冬夜の話をする時は少しだけ明るくなる雫を香織は気づいている。

雫がその感情に気づいてないことに。

 

「でも、冬夜って色恋沙汰の一つもないのよ。昔から結構告白もされてたはずだけど。」

「……大島くん。本当に大変そうだね。」

「……雫ちゃんこういったことにはとことん疎いから。」

「…えっ」

 

全員がため息を吐く中で雫だけが困惑する。結局このお風呂が上がるまで雫は少しだけ胸が痛みながらお風呂の時間は過ごした。

 

 

「えっ?気になる人?」

「そうそう。修学旅行といえば恋バナでしょ?」

「はーい私ユッキー。」

「即答かい!!」

「でも、烏間先生と訓練してる時とか、暗殺している時とか渚くんを守った時とかカッコいいよかったよね。」

「友達を見捨ててまで地球を救いたくないって。やっぱりあぁいうことをさらっといえちゃうからなぁ。」

 

するとクラスの女子は恋バナというより男子の評価になっていく。

 

「うちのクラスで他にマシなのは磯貝と前原くらい?」

「そうかな?」

「そうだよ。まぁ、前原はタラシだから残念だとして、学級委員の磯貝は優良物件じゃない?」

「あ、顔だけならカルマ君もカッコいいよね。」

「あー素行さえ良ければね……」

「「「そうだね……」」」

「あっ天之河くんは?」

「あー確かに天之河くんはアリかも。」

 

というところで傍観していた雫はふと気づく

クラスで彼氏にしたいランキングでずっと冬夜が一位になっているこのに。

 

「光輝より、冬夜の方が上なの?」

「本当だ。珍しいね!」

「えっ?そうなの?」

「光輝くんは何でも出来て誰にでも優しいから。冬夜くんって時々怖い時があるから。」

「あー。でも私はユッキーがいいな〜。ユッキーって本当に大切な人になったら何が何でも守ってくれそう!!」

「分かる。八重樫さんみたいに守られてみたいなぁ。」

 

香織と雫は少しだけ驚いたようにE組の女子を見る。今まで人気はそこそこあったが光輝以上に人気が高いのは二人にとっては衝撃的だったのだろう。

すると急に障子が開き数人は驚きその方向を見る。そこにはイリーナがお酒を持って立っていた。

 

「ガキ共ー一応就寝時間だってことを言いに来たわよー」

「一応って。」

「どうせ夜通しお喋りするんでしょーあんまり騒ぐんじゃないわよー」

「そうだビッチ先生の話でも聞いてみない?」

 

と言ったところで話し始めるクラスとイリーナに雫達は驚いてばかりだ。先生と教師の仲がいいのもEの特徴なんだが。

 

「「「えぇー!?まだ二十歳!?」」」

 

とE組のクラスメイトが声を上げる。

 

「経験豊富だからもっと上かと思ってた。」

「ねー毒蛾みたいなキャラの癖に。」

「それはね濃い人生が作る毒蛾のような色気が――誰だ今毒蛾つったの!」

 

ノリツッコミが遅いイリーナがそして饅頭を食べながら忠告する。

 

「女の賞味期限は短いの。あんたたちは私と違って危険とは縁遠いところに生まれたの。感謝して全力で女を磨きなさい。」

「ビッチ先生がなんかまともなこと言ってるー」

「なんか生意気ー」

「なめくさりおってガキ共!」

 

事実だけど本気で怒っているわけではない

その証拠に次に矢田の言葉にイリーナはすぐに方向転換することになる。

 

「じゃあさじゃあさ。ビッチ先生が落としてきた男の話きかせてよ。」

「興味ある~」

「ふふっ。いいわよ子供には刺激が強いから覚悟なさい。」

 

と周囲に興味津々のクラスメイトたちとそれに戸惑う二人。

どこから突っ込んだらいいのか分からないのだろう。

イリーナの話を女子達と、殺せんせーは固唾を呑んで聞こうとしていた。

 

「おいそこぉ‼︎さりげなくまぎれこむな女の園に!!」

 

イリーナはしれーっと、女子の中にまぎれる殺せんせーを指差す。

 

「いいじゃないですか、先生色恋の話聞きたいですよ。」

「そーゆー殺せんせーはどーなのよ?」

「自分のプライベートはちっとも見せないくせに。」

「そーだよ人のばっかずるい‼︎」

 

そして広がる女子生徒の殺せんせーへの恋バナへの関心に耐えきれなくなったのか殺せんせーは部屋を飛び出す。

 

「逃げやがった!」

「捕らえて吐かせて殺すのよ!」

 

というやりとりを香織と雫は見ることしかできなかった。

 

 

 

冬夜side

 

「ん?女子も合流してるじゃん。」

 

俺が追いつくころにはなぜか女子も合流し暗殺が始まっている。

すると女子側から少しだけ足取りが重そうに歩いてくる。

さっそくギャップにやられた人がいたか

 

「雫。香織」

「えっ?あっ冬夜。」

「最初じゃ結構困るだろ?こういうの。」

「困るどころじゃないわよ。暗殺を一種の腹いせみたいにやっているのだから。」

「あはは。賑やかなクラスってことは分かるけど。」

「まぁな。光輝も龍太郎もかなり戸惑っていたな。」

 

俺は少しだけ苦笑いしてしまう。二人も同様に困惑していたらしい。

 

「明るいクラスとは思わないか?去年のE組とは違って劣等感も何もないって。」

「……えぇ。少しだけでもよく分かるわ。ちゃんとあの殺せんせーだっけ?」

「なれなかったらタコって呼べばいいと思う。あいつ結構気に入っているし。」

「でも、旅館で暗殺していいのかしら。もう就寝時間も過ぎてるけど。」

 

おかんみたいなこと言い始める雫に俺は少し吹いてしまう。

少しジト目で見られるが真面目すぎるんだよなぁ。

 

「いいんじゃね?まぁみんなもほとんど殺せないって分かっているだろうしな。てかさ、聞き忘れていたけど何でこんな中途半端な時期なんだよ。修学旅行の二日目って形で。」

「元々修学旅行終了後に学級集会を開いてE組改正委員会だっけ?それを発表するのが本校舎に残る一つの方法だったのよ。今回光輝に至っては浅野くんと行動してたのもあるんだけど。」

「……相性悪すぎだろ。リーダーシップのある奴にリーダーシップの塊みたいな奴はあかんって。」

 

だから来るのが遅れたのか。光輝直々にこっちに落ちたって言ったのは驚いたけど。

いわゆる本校舎の良さを伝えようとしてたのだろう。

 

「まぁ遡行もよく、成績それに人望もある生徒が本校舎から抜けていって欲しくはなかったんだろうけど、光輝あたりがブチギレそうな奴だな。」

「えぇ。相変わらず光輝も香織も怒っていたわよ。龍太郎もだけど。」

「……必死だな。最近理事長。」

「それが今のE組ってことでしょう。差別の対象が力をつけ始めたらね。」

 

下に見ていた人たちが上に上がってくる恐ろしさも学校理念が壊れる点についても理事長はあんまり好意的ではない。

だからこそ落とそうとしていることは明らかだろう。

 

「それと明日ってどうするの?」

「俺たちは暗殺はおしまい。軽く班で自由行動しておしまいってことじゃね?俺は折角だし班から抜けてみんなで回ることにしたけど。」

「いいの?」

「折角だし最後はみんなで回りたいからな。……もしかしたら最後の旅行になるかもしれないし。」

 

来年この地球があるか分からない。だからこそ、俺は今の瞬間を楽しみたいのだ。

 

「あんた本当に私たちのグループが好きなのね。」

「ん?好きに決まっているだろ?龍太郎も光輝も香織だってそう思っているって。小学校のころから少し加わり抜けることがあってもこのメンバーが変わることがなかった。それに、俺が落ちた時だって態度もいつも通り、結局は一緒になっただろ?……嫌いなはずがない。あんまりこう言うの恥ずかしいけど……俺にとって何よりも大切なグループだよ。雫は違うのか?」

「……そうなのかも。あんまり考えたことがないのだけど。」

「雫ちゃんも結構好きだと思うよ。冬夜くんが抜けただけでも元気なかったから。」

「香織!!」

 

いつものやりとりに俺は苦笑してしまう。でも、俺は否定はしなかった。

 

「…それでいいかもな。俺は暗殺教室に入っては考えることは多くなったよ。これで最後になるって最近は少なくなったけど思う時はある。さすがに俺はこの三ヶ月で失い続けたからな。」

 

大切な家族を、大切な恩師を、大切な居場所を無くしかけていたからこそ分かる。

失う恐怖を俺はずっと恐れているんだと。

 

「だからさ、この一年間はずっと笑って、怒って、泣いて、悔いのない一年間にしたいんだ。例え殺せなくて地球が爆破されても、俺はこの一年間、この教室で良かったって思えるくらいに。」

「できるのかしら。」

「できるだろ?俺たちなら。」

 

俺は少しだけ空を見る。

星空と三日月が俺たちを照らし肩を並べ影を作る。

 

「例えば二人とも。」

「何?」

 

二人を引き寄せ一枚パシャリとシャッター音がなる。スマホのカメラ機能を使い一枚写真を撮ったのだ。

少し頰を赤らめ驚いた雫と驚いたようにしている香織を笑っていたらフラッシュがたかれた。

今度は香織が一枚写真を撮ったらしい。

 

「えっ?」

「写真って結構レアだろ?せっかくだし旅館に来たし、一枚くらいいいだろ?」

「…別にいいはずかのだけど、急に撮ったのって。」

「いや、普通に知らせたら笑顔作るだろ?自然な写真を撮りたかったし。」

「まぁいいけど。私も送ってくれないかしら。冬夜の写真って少ないでしょ?」

「あっ私も!!」

 

そうだっけ?…まぁたしかに撮る方が多いから俺の写っている写真は結構少ない。

というよりも他人に撮ってもらう写真になると妙に照れ臭いからあんまり写りたくないのだ。

 

「ん。ほれ。まぁ明日は楽しもうぜ。」

「そうね。せっかくだから冬夜の行きたいところに行ったらどうかしら?」

「俺?まぁいいけど歴史もんばっかだぞ?龍太郎とかつまんないと思うけど。」

「あはは。否定できないや。」

 

そんな中で話し合いが少しだけ行われる。

少しだけ楽しみになりつつあることが少し嬉しかった。



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進む時間

修学旅行が終わり、日曜日に剣を触っていなかったこともあったので日頃の自主練をするために道場を訪れた際、暗殺教室について師範に呼び出されていた。

 

「ってことがあったんですけど。」

「雫は毎回何かに巻き込まれてるね。」

「そうっすね。まぁ来週からも転校生が来ますし、もう一波乱はあるかと。」

 

俺が少しだけ苦笑しながら報告している。俺は特定の人物を一切答えてないことで暗殺教室のことだと伝える。

 

「でも、ショックは少ないみたいだね。雫部屋でずっと笑っているらしいから何か修学旅行でいいことがあったのだろう。」

「また覗いているんですか?でも確かにショックは少ないみたいですね。朝に会った時は鼻歌歌ってましたしね。」

「君と学園生活を送れることが嬉しいのだろう。元々あの時からずっと雫の隣には君がいたからね。今回も君が真っ先に来てくれたって言っていたが。」

「やり方はあまり褒められた方法ではないでしたけど。」

「やり方を言ってもきりがないだろう。それに君はいつも救ってきた。何かある前に雫を救ってくれたのはずっと君だから。」

 

助けてきたのは俺ってことだけど、俺だけではない。

雫の隣には未だに立てないのだ。ずっと笑っていられるわけではない。

 

「雫ってもう少し自分のことを魅力的な女性だと理解してくだたら嬉しいんですけどね。光輝ももう少しモテるって自覚しないと色々なトラブルを持ってくるんで。」

「冬夜くん。結構苦労しているんだね。」

「ホントっすよ。つーか基本的に俺が比較対象になるんで、まぁ香織もですけど紹介しろとか本校舎の時大変だったし。」

 

元々小学校のころの奴がいないので、香織や光輝も当然だけど雫においてもかなり人気なのだ。

まぁ完全フリーだったから少しだけ焦っていたのもあるけど、それでも今の立場を俺は完全に使っている。

渡すつもりはない。これからも雫の隣という場所だけは自分は有利に使わせてもらう。

軽く雑談をした後に師範の部屋を出るとそこにはいつもと違う髪型の雫が歩いてきていた。

 

「ん?」

「あっ!」

 

さっきまで剣を振っていたこともありお風呂上がりなのか髪は解いてありまた違う魅力がある。

…如何しようも無いな。

雫のこと好きすぎてどの仕草でも魅力的に感じるのは本当に病気だな。

すると珍しく雫は軽く頰が赤くなると同時に軽くぼーっと俺の方を見ている。

 

「ん?どした?」

「へ?」

「いや、なんか付いてるか?」

「い、いえ、お父さんと何を話してたの?」

「修学旅行についてだよ。一応連れ去られたことは報告しないとダメだろ。てか雫は部活に……って雫ももう部活には参加できないのか。」

 

E組の校則的に部活動禁止というルールを思い出す。

杉野みたいに外部で活動を続けるのもありだけど基本は部活動ができないのが学欲の低下に繋がっている。

 

「えぇ。でも団体戦に参加できないのであって道場から少しは大会にも参加できると思うわ。」

「つーか雫と光輝は確実に推薦取った方が良さそうだけどな。龍太郎も推薦には入れるくらいには秋大で無双してたし。」

 

流石に学校側も前年全国大会で女子剣道優勝した雫と出場した光輝をほっとくわけには行かないだろう。でも今大会は元々二人がメインだった剣道部、そして龍太郎がレギュラーだった空手部はかなり厳しくなっただろう。

そう考えると俺の周りって結構すごい奴ばっかりなんだよな。

 

「冬夜は?」

「俺?俺は成績だけなら最難関以外は余裕で入れるだろ。つーか香織に合わせるつもりだし。」

「へ?」

「高校卒業後。俺は八重樫を継ぐから。」

 

俺の言葉に雫は驚きを隠せない。元々師範と話し合っていたこともあったが上手く隠蔽していたらしい。

 

「道場を?」

「あぁ。雫が継ぐなら別だけどな。と言うより中学校一年の時から師範には伝えていたし、元々考えていたんだよ。ここがみんなの帰れる場所になればって思って。いずれ俺たちって道は別れるだろ?多分幼馴染ってことや暗殺で今まで以上に絆は強くなると思う。だから何か会った時みんなが助けられるようにしたいんだ。」

 

雪村あぐり先生。E組の前の担任であり、今は亡き人になっている俺のもう一人の恩師だ。元々両親が同じ大学で、その後の研究所に婚約者と一緒にいたらしくて、去年両親と同じ研究所で亡くなっている。

 

「それに弱い人をこれからも守り続けたいって思うんだ。光輝もあいつ弁護士になりたいって言っている。この学校に入ってから俺も光輝も同じで弱い人を守りたいって気持ちが強くなったかな。だから俺も警察とかそっち側を目指しながら、ここを継ぎたいんだ。」

「……凄いわね。もう二人ともそこまで考えていたの?」

「考えていたって元々近くに憧れな人がいたからこそ俺と光輝はやりたいことを思い浮かぶのが早かったんだよ。」

「そうかしら?」

「あぁ。雫や香織だって、龍太郎だってそう。つーか雫や香織は将来的に旦那さんを貰うんだろ?俺たちのようにすぐ決めることではないさ。俺だって暗殺資金があれば大学に行けるし。」

「賞金出るのかしら?聞いてなかったんだけど?」

 

そういや詳しい話はしてなかったな。ついでだし俺から説明すればいいか。

 

「出るぞってそういや説明してなかったか。賞金は100億出るらしいぞ。まぁ、正直もう賞金目当てじゃ無くなって来てるけどな」

 

100億って言葉で雫は少しだけ驚く。まぁ、話してなかった方が悪かったか。

 

「賞金目当てじゃないの?」

「俺はな。……多分あの先生は本気で俺たちを良くしようってしてくれるんだ。変態でゲスで間抜けでうざいけど。」

「あんた褒めてるの?けなしているの?」

「どっちも。だからこそ殺しやすいし、殺せんせーは親しみやすいんだ。例え世間にとったら悪かもしれない。でも……あそこまで完璧な教師を俺は見たことない。だから殺したい。殺して全てを知りたいんだ。殺せんせーが何で教師になったのかとかな。」

 

素直に疑問なのだ。地球を滅ぼす超生物が何で教師をやっているのかとか。何であんなにも楽しそうなのに地球を滅ぼすことになったのとか、……殺せんせーの人間だった時の姿は何者だったのとかな。

雫には話さない。クラスメイトも多分気づいてはいけない何かがあることを。でも、殺したら全てを知る権利がある。

 

「好きなんだよ。殺せんせーが。あの教室が。雫たちにはまだ分からないだろうけど、誰にも邪魔されたくない。やるんなら俺たちが殺したい。」

「……あなたがいうのであればそうなんでしょうけど、どうするのかしら。」

「ん?当分は潜伏するよ。俺は暗殺を仕掛けない。とりあえずは観察かな。自分の武器を知らせるわけにはいかない。集中が削がれた隙を狙っての暗殺はダメだったからな。……本当に殺せるタイミングを見て殺すよ。」

 

俺は少しだけナイフを隠し持っていたものを見せる。

例えそれが俺が今求めている未来を目指して



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