自称凡人が参戦する血界戦線! (『 』を応援するテト)
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異次元から来た自称凡人。

彼の名は鍾離。何事においても凡人だと豪語する魔神にして岩の神であった男だが・・・

そんな彼だが愛する国璃月ではなく魑魅魍魎、超常犯罪あふれる元ニューヨークヘルサレムズロットへと飛ばされていた。

彼はいつもと変わらず往生堂の仕事を終わらせ帰宅するところだったが空間が歪みを認識したが術式は発動した後だった。

転移先不明の場所に落ちたらしいという事が解ったがそれがどこなのかは彼にもわからずあたりを確認していると、

この場所はテイワットどころか全く別の世界だとわかった。

鍾離「まさか別の世界に飛ばされてしまうとは…術式を一瞬見た限り召喚術式に見えたが…」

彼はいつもの用に岩元素を操ってみた。

鍾離「どうやら元素は変わらず使えるようだな」

鍾離(とりあえず使う分には不自由は無いだろう)

ここは何処かの街のようで様子を眺めてみると活気はあるのだが鍾離にはわからない構造物の街並みがあった…。

街全体が深い霧に包まれ空を見る事が出来ない。

人間とは違い過ぎる異形の姿をした異界人とそれに混じる様に歩く人類。

鍾離はテイワットとは違う理の世界に来てしまったと云うのに慌てる事はせず、自分の置かれた状況について考える事にしたのだった。

 

ーーー

レオナルド視点

レオナルドは現在裏路地を走って逃げている途中だった。

異界モブ「待てやゴラ〜金置いてけ〜!!そんで殴らせろ〜!!」

異界モブ2「チョットで良いからさぁ!!」

レオ「待つわけ無いだろが〜!!」

目が血走り興奮状態の異界人達からレオナルドは必死に逃げていたのだった。

彼はレオナルド・ウォッチ。世界の均衡を保つ為に暗躍する秘密結社ライブラの一員である。

今日もこのH.Lの街でバイトで稼ぎ終わりライブラのオフィスに向かう途中でフラフラしていた異界人達に絡まれてしまったらしい。

レオ「ハァハァ、もうちょいで振り切れそう…!!」

後ろを少し確認しながら路地の出口を目指していた。

レオ(うわぁもう今日は何事も無く過ごせるとか調子こいてた自分を殴りたい!)

ようやく裏路地から出る事ができレオナルドは安堵した。

レオ「ハァハァ…はぁ〜あいつら脚が遅くて助かった…。」

そうして一息着いたレオナルドはふと辺りを見渡すと、

道路を挟んだ向かい側に不思議な空気を纏った美丈夫が目に入った。

レオ(うわぁ綺麗な見た目の人だなぁ、アジア人かな?でもオーラが他の人類とは違う…黄色い色をした宝石見たいな形をしたオーラが出てる。見た目完全な人類だけど…後でスティーブンさんに一応報告を…)

そんな風に考え込むレオナルドだったが突如として街全体の画面上にある存在が電波ジャックした!

堕落王フェムト『やあ!人類代表の諸君?堕落王フェムトだよ!!また暇潰しに時空間術式をちょいといじって僕が作った合成生物1万体をエネルギーに異界の魔人を召喚してみたよ〜。ふっ、これで今年もまた退屈しなくて済むかもね〜さぁ諸君頑張って逃げてくれたまえ!ちなみに召喚陣は魔人の体の中に仕込んだから粉々に出来れば倒せるかもね〜。』

そうしてフェムトの電波ジャックは消えた。

レオ「んなぁ〜?!また何か出てくるのか!!」

レオナルドはすぐさまオフィスに急行しようとした瞬間直後地面が裂けるように穴が開き出現した何かを見た途端絶望した。全長20メートル越える存在。その姿は明らかに天災を引き起こす事が可能な異形の存在は一目瞭然だったからだ……。

ピリリリリリ!ピリリリリリ!

スティーブン『やぁ少年、今何処かな?』

レオ「スティーブンさん?!今丁度魔人のど真ん前ですよ!」 

スティーブン『なんだって!?とにかくそいつから離れてザップと合流してくれ。俺も今から向かうが出来れば君の目で魔人の召喚陣の場所を探し出しておいてくれ。』

「えぇ〜!わ、わかりました。なんとか逃げながら見てみます!!」

そうして魔人の無差別攻撃から逃げ始めた。

 

ーーー

鍾離は突如とて始まった放送と現れた魔神に少し困惑したが変わらず冷静だった。

鍾離(これはこちらの世界の魔物なのか?対処しなければ被害が出てしまうな…)

魔神を如何するか考えていた鍾離だが前方のビルが切断された影響で崩れてきていた。

ドシャン、ガチャン、ガラガラッ!

瓦礫が崩れてくる中逃げ遅れたレオナルドを鍾離は目撃した。

レオ「やばッ!!…これ死ぬ…!!」

鍾離「まずいな!『顕如盤石』!!」

鍾離は元素スキルを発動しレオナルドに玉璋シールドを張った。

キィン と激しい音を鳴らしながら瓦礫を防ぎきると、レオナルドはそのまま気絶していた。

鍾離「こちらの世界の魔物ではないようだが目の前で蛮行を働くのならば討伐するしかないな。」

 

鍾離『天道ここにあり』

 

空から鍾離の元素爆発である隕石が落下し魔神を石化させ、

魔神が自分で切断した瓦礫に押しつぶされ砕けて散ってしまった。

鍾離はレオナルドを抱えその場から離れるとしばらくすると目を覚した。

レオ「うぅ……ここは一体……」

鍾離「気がついたか少年。あの魔神は俺が倒したから安心しろ。」

レオ「あ、ありがとう御座います。てかえぇ!魔神を倒したって…召喚陣もろとも粉々にしたって事ですか?!」

鍾離「まぁそういう事になるだろう。しかし、ここは頻繁にこのような事が起こる場所なのか?」

レオ「え?そりゃここではよくあることですけど…。あ、それよりも助けてくれてありがとうございます!僕はレオナルド・ウォッチと言います。」

鍾離「俺は鍾離という。ふむ、では少年これからどうするか宛はあるか?」

レオ「とりあえず、ここに向かって来てるはずの先輩と合流したいですね…。」

そう話しているうちにレオナルドには聞き慣れた声が聞こえた。

ザップ「おい、レオ!まだおっ死んでねぇだろうなぁ!番頭にどやされるのは俺なんだから勝手に死ぬなよなあ!」

スティーブン「ザップ、お前はどうしていつもそうなんだ。少し黙れ。」ニコニコ

ザップ「う、うっす!」

(あぁ〜ここ最近異界過激派のテロとか超魔道兵器の撲滅とかあって、機嫌が超悪いんだよなぁ〜笑顔なのが超怖え…)

2人が会話しているうちに鍾離とレオナルドを発見した。

スティーブン「少年!無事だったな。」

レオ「はい、でも、その、色々起こってて実はまだわかってなくて……。」

ザップ「つかレオ、そこの無駄にムカつく顔のやつは誰だ?」

レオ「初っ端から失礼だな!?この人は鍾離さんと言って魔神の出現現場で助けて貰ったんです。どうもこの人が魔神を倒したみたいで…」

鍾離「はじめまして、俺の名は鍾離という。よろしく頼む。」

スティーブン「ご丁寧にどうも。俺はスティーブン、彼レオナルドの上司だよ。済まないがレオ達と話をさせて貰ってもいかな?」

鍾離「こちらは気にしない。」

スティーブン「どうも。」

そう言いザップとレオナルドを連れて鍾離から離れて会話を始める。

 

レオナルド「やっぱり鍾離さんに詳しく話を聞くべきですよね。」

スティーブン「彼があの魔神を倒したんだろう?、とんでもない再生能力を持つ神性存在を簡単に…」

レオナルド「はい。僕も気絶してて信じられないですけど…」

ザップ「おいおい、あんなお綺麗なやつが魔神を倒したってのか?

…神ご禁制の魔導具を持ってたりしたのか?」 

スティーブン「彼に直接問いただすのがやはり一番早いか…」

レオナルド達が離れて会話している頃…

 

鍾離(どうやらこの世界は超常的存在が蔓延っている混沌とした異界のようだな…神としての位は低いが簡単に神性存在を召喚するとは、俺を飛ばしたのも同じ召喚術式か?)

(彼らならこの世界の詳しい事情を答えてくれそうだが、こちらも対価を渡せねばならないか…)

鍾離は考えを纏めるとレオナルド達に声をかけた。

 

鍾離「少年、君達はこの街に詳しいか?」

レオ「はい、一応僕らのホームタウンなので……それがどうかしたんですか?」

鍾離「いや、実はこちらの世界の事は疎くてな。申し訳ないが案内してくれると助かるのだが…。」

スティーブン「この世界…貴方は異界側からやってきたと?」

鍾離「異界…いや世界軸そのものが違う。次元を超えて飛ばされてしまったんだ…。」

ザップ「は?じゃああんたは世界規模の迷子って事かぁ?www」鍾鍾離「まぁそういう事になるな。」

スティーブン「しかし、君はどうやってここに来たんだ。」

鍾離「それは、わからない。気づいた時にはもうこの世界に居たのだ……」

ザップ「そんなことあるわけねぇーだろぉw」

スティーブン「待てザップ、彼の言っていることは全て本当かもしれないぞ。」

ザップ「どういうことっすか?」

スティーブン「彼は嘘をついているように見えないし、何より常識外れの現象を体験したばかりだろう?」

ザップ「あ?それはここのデフォでしょ?滅多にないなら隕石が落ちてきた事…?」

スティーブン「それだよ。とにかく一度情報を整理しよう。ここじゃ話辛いから僕らのオフィスに行こうか。」

 

こうして幻想大陸テイワットから元岩王帝君の自称凡人がヘルサレムズロットに降り立ち、璃月に帰還する為に動き出した。



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自称凡人、ライブラと会合する…

超常現象、魑魅魍魎、魔道科学など異界の存在が跋扈する元ニューヨーク「ヘルサレムズ・ロット」

そんな異界の片隅に自称凡人の往生堂の客卿「鍾離」は飛ばされてしまった。ヘルサレムズロットで出会った「秘密結社ライブラ」の面々に自身の現状と契約を持ちかけるのであった…。

 

ライブラのオフィス内にて…

 

スティーブン「それで?あんたが言うには、突如発生した時空間術式によってヘルサレムズロットに飛ばされて来たと…」

鍾離「ああそうだ。俺は璃月で往生堂と呼ばれる葬儀屋で客卿をしている。仕事を終え帰路についていたところこの世界に飛ばされてしまったんだ。」

クラウス「ふむ……異世界からの来訪者か……俄かに信じ難いが、そうでなければ説明できない部分も多いな……。」

ザップ「へえ〜!その話って本当なのかよ?」

鍾離「ああ、嘘ではないぞ。」

レオ「でもどうしてヘルサレムズロットに……」

鍾離「その事だが、先程討伐した魔人だったか?その存在から俺を飛ばしたのと同じ術式を感じたんだ。」

スティーブン「術式を感知できるのか?!だがそうならあんたをここに飛ばしたのは堕落王フェムトになるな…また面々な事を。」

レオ「それなら魔人を鍾離さんが倒したなら自然と帰れてるんじゃ?」

クラウス「だが鍾離殿は自分の世界に帰還できていない…。」

ザップ「つか魔人をどうやって倒したんだよ!フェムトの野郎は簡単に倒せるような怪物を寄越したりはしないだろ?」

 

鍾離視点

 

(ふむ、元素の説明や神の目について話をしなければならないか…)

鍾離「それは俺の力で魔人を石化させたんだ。」

一同「「「!?︎」」」

レオナルド「ちょっ、ちょっと待ってください!僕は気絶してて直接見てないけどザップさんが言っていた隕石ってまさか!?」

鍾離「あぁ、俺の岩元素によるものだ。」

スティーブン「それはアンタの世界の技術か何かか?」

鍾離「それについてはテイワットの事と元素についての説明をしなければならない。」

 

鍾離はテイワット大陸の成り立ち、元素と神の目の説明をした…

 

クラウス「7人の神が統治する幻想大陸…そして願いが強い人間に与えられる神の目か…」

スティーブン「別の次元から来た来訪者…ただでさえ最近忙しいにってのに更に厄ネタが湧いてくるか…」

スティーブンはげっそりとした顔していた…。

(少年から彼がただ召喚された人間じゃなく強大な存在だって報告されてるからなぁ…目を離す訳にはいかない…)

スティーブン「魔人を召喚したのは堕落王フェムトというヘルサレムズロット稀代の怪人だ…おそらくアンタは魔人を召喚する術式に巻き込まれた可能性が高い…。」

鍾離「やはりそうなるか……」

クラウス「ならば我々ライブラが鍾離殿を保護させて頂きたい!」

スティーブン「は?」

(あぁまたクラウスのお人好しか、だが好都合かな?)

スティーブン「クラウス。君の人の良さは美点だけど異次元の存在をここに置いておくのは危険だと思うがね?」

鍾離「本人を目の前にして言うのだな?」

スティーブン「ああ、その通りだよ。俺はアンタを信用してないからね。」

クラウス「しかしスティーブン……迷い込んで来てしまった彼を放置などできないだろう?!」

スティーブン「だからと言って、はい分かりました。とはならないよ。」

鍾離「ではどうしようと?」

スティーブン「アンタにはライブラの協力者になって貰う。代わりと言ってはなんだけと俺達はアンタを元の世界に戻す方法、衣食住の提供をしよう。こっちはアンタの見張りとかできて丁度良いからね。」

スティーブンは凍えるような笑顔で鍾離に契約を持ちかけた。

クラウス「スティーブン、それだとまるで君が彼に取り入ろうとしているように聞こえるのだが……」

スティーブン「何言ってんだお前。そんなわけないだろう。そんなことしたら俺にだけしか利益がないじゃないか。」

クラウス「そ、そうなのか……」

その巨躯に見合わないほどクラウスはオロオロしていた。

スティーブン「鍾離、アンタはどうする?」

鍾離はスティーブンからの提案に少し思案していた。

鍾離(こちらから労働力を対価に契約を持ちかけ用と思っていたが、このスティーブンという男はかなり頭がキレるようだ…)

(リーダーはクラウスという男だがこの組織の頭脳は確実に彼だ…断るという選択肢は無い。)

鍾離「いいだろう、こちらとしても願い出たい提案なのでな。

この契約に同意する。」

鍾離はスティーブンにそう言った。

 

スティーブン「なんだ、断らないのか?まあいいさ、それなら早速働いてもらうぞ。契約書とか後で用意するから。」

鍾離「ふむ、何をすればいい?」

スティーブンは先程から話を聞くだけだったレオナルドとザップを見渡し、そして口を開いた。

 

スティーブン「レオ、ザップ。君達二人に今から任務を与える。」

その言葉に二人は顔を引きつらせる。

スティーブン「鍾離の監視を頼んだよ。」

「えぇー!!」

二人の悲鳴じみた声が響き渡った。

スティーブン「あと、この男は見た目通りの人間じゃない。戦闘力も未知数だし、どんな隠し玉を持っているか分からない。気をつけてくれ。」

「「……はい。」」

スティーブン「じゃあ、3人で鍾離の生活用品の買い出しに出てくれ。」

「「はい!」」

 

こうして3人は買い物に出かけた。

三人で街を歩きながら会話をする。

レオナルド「あの、すみません。鍾離さんは先程葬儀屋で働いてるって言ってましたけどな神の目を持つ人達って皆隕石落としたりできるんですか?」

鍾離「先程少し話したが神の目は7つの元素うち1つを扱う事ができる、俺は岩の元素を扱う事ができるんだ。」「簡単に言えば、元素を消費して岩を生み出すことができる。」

「例えば、こんな風に。」

そういうと鍾離の周りに浮遊する岩が生まれた。

鍾離「こうやって岩を操れるわけだ。」

レオ「これは、すごいですね……」

鍾離「それと、俺の能力はこれだけではない。岩を操る他にも岩に力を込めることで岩の形を変えることもできる。」

ザップ「岩を、変える!?」

鍾離「そうだ、だがこの町中でしてしまうと迷惑になってしまうのでな。」

レオ「ですよね〜」

そうして歩いていると、前から歩いてきた人影がレオナルドにぶつかる。

異界人モブ「おわっ!おいぶつかっておいて挨拶無しか!?」

レオ「あぁ、すんませ……うひょぉおおおっ!!!」

その人物は上半身裸の男だった。

その体には刺青のような模様と明らかに機嫌が悪い顔があった。

その男に謝ろうとした瞬間、その男の体が宙を舞い、吹っ飛んでいく。

一瞬の出来事で、何が起こったのか分からなかった。

ただ一つ言えることは、目の前の男が、殴り飛ばされたということだ。

それは、その拳を放ったであろう人物によって。

その人物はザップであった。

突然のことにレオと鍾離は唖然呆然としていると、今度はザップが蹴りを繰り出した。

反応できず、モブはモロに食らってしまった。

再び吹き飛んだ先で気絶した。

レオ「えぇ?ちょ、ちょっと待った!!ザップさーん!!!」

慌てて、ザップを止める。

レオ「ストップ!ストッォプ!!」

必死で止めに入る。

だが、それでも止まらない。

そのまま、モブに向かって突っ込んで行く。

ザップ「丁度いいところに絡んで来たな、今月もう金がねぇから巻き上げようと思ってな!」

レオ「あんたは本当に人間のクズだな!」

鍾離「ふむ、なかなかにザップは野蛮なのだな…まるで宝盗団のようだ…。」

ザップがモブから金銭を巻き上げようと近づいた時!横合いからの衝撃で、ザップも弾き飛ばされる。

その方向にいたのは……様々な重火器を構えたチンピラ集団だった。

どうやら気づかぬうちに包囲されていたらしい。

そして、一斉にザップに攻撃が始まる。

鍾離「なんだあれは?」

レオ「いや、多分またザップさん怨みを持ってる方々からの報復だと思います…。」

鍾離「なるほど、確かに先程の奴らは見るからに悪そうな顔をしていた。」

レオ「なんでそんな冷静で居れるんですか!?」

鍾離「俺は争い事は好きじゃないからな。それに、お前は俺が守る。安心しろ。ザップに関しては見たところ派手に暴れているようだからな。」

レオ「ザップさんの心配なんてしてませんよ!それよりも、早く逃げましょう!巻き込まれちゃいますよ!!」

鍾離「だが、あの者達は放っておくと面倒になりそうだぞ。」

レオ「だからと言って、僕らまで怪我をすることはないでしょう。」

その時、上空から音速で飛行する生物が現れる。

他の生物に追われておりレオナルド達の方に突っ込んで来た。

レオ「げえ!!こっちに来る?!」

鍾離「本当に何でも起こるのだなこの街は。」

そう言って鍾離はレオナルドの前に出て元素スキルを発動した。

 鍾離「揺らぐことなし!」

前方に岩柱が発生し飛行生物が激突し沈黙した。

おぉ〜周りの住人達から歓声が上がった。

レオ「うわぁ、凄いっすね。」

鍾離「まあ、この程度なら造作もない。しかし、街の中でここまで力を振るっても大丈夫なのか。」

レオ「いえ、それは問題ないです。ここじゃなければもっと大惨事になってますから。」

鍾離「そういうものか。」

レオ「はい、ここは色んなものが混ざりすぎてて、ちょっとしたことで爆発したりしますんで。」

鍾離「なるほど、理解した。」

レオ「とりあえず、安全な場所まで移動しましょう。」

鍾離「分かった。」

そうしてザップを放置してレオナルド達は移動し始めた。

レオ「にしても、さっきの技すごいですね。あんな事も出来るんだ。」

鍾離「ああ、岩元素で発生させた物だ。時間が経てば消える。」

レオ「へぇー便利っすねぇ。」

移動していた2人だが裏路地から異業種が現れた。

 

鍾離「ふむ、どうやら敵襲らしい。」

目の前には見たことのない形をした生き物がいる。

鍾離は異業種を観察して

鍾離「人型をしているが、原型が留まってないな。」

レオ「あれはスティーブンさんから渡された資料にあった違法改造種?!」

異業種はレオナルド達を確認すると奇声を上げながら突進してきた。

鍾離「ふむ、では、この場はこの俺に任せろ。少年は隠れていろ。」 

鍾離は槍を出現させて異業種に対応した。

鍾離「ハアァッ!!」

鍾離の攻撃で異業種が吹き飛びビルに激突する。

衝撃でビルの窓ガラスが全て割れ、地面のアスファルトを砕き陥没させる。

レオ「ひぃ!なんて威力だよ!!!」

だが異業種は何事も無かったかの用に体を起こした。

鍾離「これで終わりとはいかないようだな。」

その言葉通り、再び立ち上がった異業種が再度突撃してくる。

鍾離「このまま攻撃しても埒があかないか…」

レオ「あの違法改造種はコアがあってそれを破壊しないと止まらないんです!僕がコアの場所を探します!」

そしてレオナルドはゴーグルをつけると神々の義眼を使用した。

レオ「見つけた!!左胸です。そこが弱点みたいです。」

鍾離「了解した。」

次の瞬間、一瞬で距離を詰めた鍾離の槍が異業種の心臓部を貫いた。

 

そのまま壁に叩きつけられた異業種はピクリとも動かず絶命した。鍾離「よし、終わったぞ。」

レオ「え……?」

あまりの手際の良さに驚きを隠せないレオナルドだった。

その後、何事もなくライブラの事務所に戻った。

 

自称凡人の鍾離のヘルサレムズロットでの生活は始まった…。

 

その頃ザップは…

ザップ「あいつら俺を置いてきやがってあの陰毛頭とイケメンづら絶対ぶちのめすからなぁ!!」

大量のチンピラの相手をしたままだった…。

 

 



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自称凡人、ヘルサレムズロットに慣れてくる。

魑魅魍魎、超常犯罪、魔道科学などが跋扈する

     元ニューヨーク「ヘルサレムズ・ロット」

そんな異界文化あふれる町中を鍾離は散策していた…。

ヘルサレムズロットにやってきてから1ヶ月ほどたった頃の話…

鍾離「ふむ、この通りにある料理店は粗方巡ったな。しかしこの世界の技術力には関心するしかないな、フォンテーヌでもまだ長距離で連絡できる手段はないというのにこんな小さな箱でできてしまうのだから…」

鍾離はスマホを片手に持ち地図アプリを開いて関心していた。

彼のいた世界ではこのような機械など存在しなかったためだ。

鍾離「しかし……こうもあちらこちらで事件が起こるというのはどうにかならないものか?いくらなんでも多すぎるだろう?」

そうつぶやく鍾離だったが、異界同士が接触し混ざりあって維持しているのだというヘルサレムズロットに関して深く考えるのはよそうと思い直した。

鍾離「さて、そろそろ帰るか……」

鍾離が帰宅しようとした時、後ろから声をかけられた。

レオナルド「あ、鍾離さん奇遇ですね!今から帰るんですか?」

鍾離「ああ、そうだが。」

レオナルド「良かったらご一緒してもいいですかね?」

鍾離「構わないぞ。それにしてもこの街の住民は賑やかなのだな。俺の世界では考えられない事ばかり起きる」

レオナルド「まぁ、ここが特殊な場所ですからねぇ~。それで今日はどこに行ってきたんですか?」

鍾離「この世界の料理が食べたくてね、色々回っていたんだ。この世界の料理は素晴らしい物ばかりで驚いてしまったよ。この店は野菜のスープが美味しかった。あと、この店の揚げ餃子という物は絶品だった。」

レオナルド「へぇーそれは気になりますね。僕も食べに行こうかな」

そんな他愛もない会話をしていると、ライブラのオフィスに辿り着いた。ドアを開けるとギルベルトが出迎えてくれた。

ギルベルト「お帰りなさいませ、鍾離様、レオナルドさん。お茶の準備ができております。」

そう言ったギルベルトは鍾離達をソファへと通す。

鍾離「ありがとう、ギルベルト殿。」

レオ「ありがとう御座います、ギルベルトさん!」

ギルベルト「いえ、仕事なのでこれくらいは当然ですよ。それに私にとっては孫のような年齢の方々とこうして過ごすのは楽しいものでございます。」

ギルベルトは穏やかで優しい笑顔を浮かべながら言う。

すると書類をチェックしていたスティーブンが口を開く。

スティーブン「それにしてもこの前のは驚いたな。」

レオナルド「何があったんすか?」

スティーブン「実はな、3日前にHLPDからの極秘の通報が入ったんだ。曰く、『霧の中から突然隕石が降ってきた』ってな。そこで我々ライブラが出動することになったわけなんだが、

現場に行くとそこには大量のマフィア達と瓦礫と山ができてた。」

スティーブンの言葉にレオナルドは驚く。

レオナルド「え!?そんなことが?あれでも隕石ってもしかして…」

レオナルドの疑問にスティーブンは苦笑いしながら答えた。

スティーブン「そう犯人はそこの鍾離だよ。」

レオナルド「やっぱり!」

鍾離「いや、あの時は貴重な古美術品を入手できたのでオフィスに飾ろうと道を歩いていたところマフィア達に襲われたんだ。」

鍾離「最初はこちらも攻撃を避けながら気絶させていたんだか、マフィア達が魔術媒体を使って怪物をけしかけて来たので元素爆発で対応してしまったんだ…。」

鍾離が困ったように眉を下げながら答える。

スティーブン「そのせいで街の一部が吹っ飛んだんだよ、幸い人的被害はなかったけどな。後からわかったんだが鍾離が入手した古美術品が奴ら狙っていた魔術の上級素材だったんだよ…。」

お陰で追っていた案件1つ片付いたがね、と言ってスティーブンは紅茶で一服する。

レオ「はぁ鍾離さんって料理も美術品にも理解があるんですね〜。ところクラウスさんはまたプロスフェアーですか?」

パソコンに向かい集中するクラウスを見た。

クラウスは集中しているようでこちらを見ていない。

レオ「ところで鍾離さんの世界ってどんな所なんですか?」

ふと思いついてレオナルドは聞いてみた。

鍾離「そうだな……俺の住んでいる国、璃月についてならば話してやれるぞ。」そうして鍾離は璃月について語り出した。

 

ーーーー 岩王帝君の治める地、璃月。

そこは岩と契約の国。

岩神が地を治めるにあたり最も重視したのは「契約」だった。

 

岩神が契約を重んじる性質上、契約が破られることは許されない。

岩神モラクスは璃月の民たちから岩王帝君と呼ばれ民たちに信仰される。

岩王帝君が守る土地に住む人々は、何度か危機に見舞われたが仙人達の守護もあり何不自由なく暮らすことができていた。

年月が立つに連れ民たちも契約を重んじるようになり、やがて璃月は商売に関しての要所になっていった。

商売のやりとりが盛んになると岩王帝君は自らの血肉から金貨を生み民たちに普及した。この金貨は岩王帝君の名前にちなみ「モラ」と名付けられた。岩王帝君の血肉から生み出された貨幣である「モラ」は七つの国に流通することになる。

流通の中心となった璃月はテイワット1の貿易港として栄えている。

鍾離「だから璃月はあらゆる富が沈着する場所だ。」

 

こうして鍾離は長くなった璃月の説明を一区切りした。

スティーブン「なるほど。岩王帝君という神が君の国をおさめているのか。」

ゲームが終了したのかクラウスも話を聞いていたようだ。

クラウス「岩王帝君か、どのようなお方なのか一度会ってみたいものだ。」

レオ「なんかすごい神様ですよね。」

実はその岩王帝君、モラクスとは鍾離自身の事なのだがあくまでも別人の事として話していた…。

またしばらくお茶を楽しんでいるとザップが返り血塗れでオフィスに入ってきた。

レオ「うわぁ……また派手にやりましたねぇ……。」

ザップ「うるせぇ陰毛頭!なんかの薬キメたやつが襲って来たから頸動脈なで斬りにしたんだよ。」

ギルベルトからタオルをうけとりソファにドカっと座る。

ザップ「首掻っ切ったのにそれでも向かって来たんだよ!スターフェイズさんまたエンジェルスケイルみたいな薬物が出回ってるんすか?」

スティーブン「いや、今回はそういう噂は聞いていない。

僕が把握してないだけで出回っている可能性はあるけど、今のところは確認できていない。」

スティーブンは少し考えザップにそう答えた。

少しすると窓からザップ目掛けて足蹴しながらチェインが入って来て、ザップの顔を床に擦りながら着地した。

ギルベルト「おかえりなさいませ、チェインさん。」

チェイン「これ報告書です。あとはよろしくお願いします。」

ギルベルトは受け取った書類に軽く目を通してから スティーブンに手渡す。

スティーブン「ご苦労だったな、チェイン。」

ザップ「テメーこのクソメス犬!!わざわざ俺目掛けて足蹴しやがって!」

チェイン「うるさいわねSS(シルバーシット)、そんな事よりアンタ何日風呂に入ってないのよ? ちょっと臭すぎじゃない!?︎」

ザップ「あぁん!お前だって女捨ててんじゃんかよぉ! 臭いなら近寄るんじゃねぇ!!」

二人ともお互いの顔を近づけ睨み合う。

クラウス「そこまでにしたまえ。」

クラウスが2人をたしなめる。

チェイン「そうだ、追っていた魔道兵器事件の件足取りが掴めました。」

クラウス「それは本当かね?」

チェイン「はい、間違いありません。例の魔導書盗難及び兵器強奪事件がおきてから頻発しているんですが、 その現場付近で市民が突然凶暴化して襲い掛かってくる事件が起きているんです。襲った者は例外なく、体の組織が変化していて倒してもしばらく活動するみたいです。」

チェイン「暴走した市民がいた場所で必ず目撃されている情報があって何か奇妙な光を見たと。」

スティーブン「奇妙な光…魔導書は確か場所で起きた出来事を再生する術式だったな…」

チェイン「はい、そう言われています。なので、恐らく今回の一連の事件は……」

スティーブン「その術式を発動させた可能性がある。おそらくザップが関わった奴は魔導書の餌食になった人物だな。」

鍾離「ザップ殿が先程言っていた麻薬の件…同じ症状ならばその麻薬の情報が再生されているのでは?」

クラウス「ふむ……だとすれば厄介極まりない、また被害者が出る可すぐ能性もある。」

クラウス達の意見を聞きスティーブンがを出す。

スティーブン「よし少年はザップと鍾離を連れて現場に向かってくれ。現場の痕跡から足取りを更に追うんだ。」レオ「了解しました!」ザップ「へぇ~い。」鍾離「了解した。」

スティーブンの指示で3人は現場に急行する。

残されたメンバーは引き続き調査を続行する。

クラウス「さて、我々も行こうではないか。」

そしてレオナルド達3人は現場に到着した。

ザップ「ここだな今日ぶった斬った場所。」

レオ「まだ痕跡が残ってるといいんすけど…」

レオナルドはゴーグルをして神々の義眼で痕跡を始めた。

レオ「おっし!まだ痕跡残ってます!この方向…セントラル方面に向かってますね。」

鍾離はそんなレオナルドを見て関心していた。

鍾離(初めて見た時から思っていたが俺の元素視覚でも見えない痕跡を辿るとは…少年から聞いた神々の義眼について情報は驚きを隠せなかったな。)

レオナルドから聞いた神々の義眼…神性存在御用達の眼科技師が作った特殊な目で、普通の人間には見ることが出来ない物質やオーラを見る事が出来るらしい。レオナルドは妹の目を契約の対価としてなくしてしまい神々の義眼を無理やり渡された。だから妹の目を戻す為にこのヘルサレムズロットに来たという。そんな話を知り合ったばかりの鍾離に話してくれるのだからレオナルドはやはり相当なお人好しであると再確認したのだった。

レオ「スティーブンさん達には連絡しました、距離的に此処から近いので先行しろとの事です…」

ザップ「うんじゃさっさと片付けるぞ、今晩はロザリーとデートがあんるだよ。」

レオ「あんたはほんとに懲りない人だなぁ…」

3人が歩いていると目の前に霧が立ち込めてきた。

レオ「この先に奴らのアジドがあるみたいです。気をつけて行きましょう!」

 

そうして3人で慎重に進むとそこには異界生物の巣窟になっていた。??「「「「ギィヤァアアーー!!」」」」

異形の化け物達が奇声を上げ襲いかかってきた。

ザップはジッポを取り出し技を仕掛けた!

 

  「斗流血法 カグツチ 刃身ノ壱 焔丸!!! 大蛇薙!!」

 

ザップが向かって来た異業を斬り払うと鍾離が元素スキルを発動しレオナルド達に玉璽シールドを貼った。

鍾離「俺がサポートする、ザップはそのまま殲滅してくれ!少年、例の魔導書は何処にある?!」

レオナルドは辺りを見渡し、

レオ「恐らくあの本棚の奥に隠し扉があります、そこかと!」

と指を指した。

鍾離「よし、ではあそこに進むぞ!」

そういうと、3人は一斉に動き出した。

その頃アジト近辺では他のメンバーも戦闘を開始していた。

 

スティーブン「エスメラルダ式血凍道 

   絶対零度の地平(アヴィオンデルセロアブソルート)‼」

クラウス「ブレングリード流血闘術

       11式旋回式連突(ヴィルベルシュトュルム)‼」

 

スティーブン「少年達がアジトに突入したから自暴自棄になったか?!」

クラウス「ここで時間をかけてはいられない、早くレオ達と合流するぞ!」

クラウス達は怪物を殲滅しながらアジトを目指した。

一方、3人も無事に目的の場所へ到着した。

レオ「この奥の部屋です!」

そういうとレオの声に反応しザップが扉を蹴破った!

すると、中には禍々しい気配を放つ黒い本があり術者と思われる人物が息絶えていた。本のページが勝手に開き、そこから大量の触手が飛び出して来た!

ザップ「ウオ?!鍾離のシールドがあってよかったぜ。危うくミンチになるとこだ…」

触手が消えた後、部屋の真ん中に魔法陣が現れ、その中から巨大な蜘蛛が現れた。

その大きさは10メートルを超え、口からは毒液が滴っていた。

鍾離「まさかあの怪物を召喚する為に自分を生贄にしたのか!?」

レオ「そこまでして何がしたかったんだよ!?」

巨大蜘蛛が3人に襲ってくる。

ザップ「クソ!無駄に足が多いんだよ!」

    斗流血法「カグツチ」刃身の四 紅蓮骨喰!!

炎の斬撃で敵を焼き払う。

鍾離「魔導書を回収出来れば送還できるかもしれんが、近づけん!」

鍾離を槍を振るい攻撃をしているがレオナルドの守りの為離れられずにいた。

その時、突然壁が崩れ瓦礫が崩れそこからクラウス達が

合流した。

クラウス「ブレングリード流血闘術

111式十字型殲滅槍(クロイツヴェルニクトランツェ)!!!」

クラウスの攻撃は蜘蛛の異形に突き刺さった!しかし、その攻撃は障壁があるのか防がれてしまい、

そして、反撃をくらってしまう。

クラウス「ぐわぁああ!!!」ドサッ…………

スティーブン「くそっ、なんて硬さだ」

スティーブンは氷の壁を作り、敵の攻撃を防ぐ。

だが、敵の猛攻に耐えきれずに破壊されてしまう。

クラウスは敵に殴りかかるがダメージは通らない。

スティーブン「まずいな、このままじゃジリ貧だ…」

クラウス達が合流したが魔導書の守りが堅く攻めあぐねた。

鍾離「俺がやつの動きを止めるその間に魔導書を回収してくれ!」

そして鍾離は元素爆発を発動した。

 

      鍾離「天理長駆!!」ゴゴゴゴゴゴ!

 

頭上から降ってきた隕石の攻撃に異形は石化した。

ザップ「はぁ〜?!まじかよ、知ってたけどまじかよ!!」

レオ「実際に見るとやっぱりありえないですよ、これ!」

レオナルドは驚愕しながら魔導書を回収し事件は終結した…。

 

その後ライブラオフィスにて…

クラウス「ふぅー、今回の事件も大変だったな」

スティーブン「全くだ、まさかこんなことになるとは思わなかったぞ」

スティーブンはため息混じりで言う。

スティーブン「あの術者はエンジェルスケイルの記憶を再生して製法を再現しようとしたみたいだが場所が悪かったんだ…。そこは以前堕落王フェムトが合成生物を暴れさせた跡地でリソースが足りずに自分が生贄になったんだ…。」

そうしてスティーブンは話を締めくくった。

クラウス「そういえば鍾離殿達は何処に?」

スティーブン「あぁいつもの店に食事に行ったよ。」

 

ここは「ダイアー」レオナルド達の行きつけの店である。 

ビビアン「へぇ~レオにこんな顔がいい知り合いがいたなんてねぇ。」

レオ「いや知り合ったの最近なんすよ!ここを紹介しようと思って…。」

鍾離「鍾離という。食事はとても美味かった、また来させて貰いたい。」

鍾離はハンバーガーを初めて食べたがモラミートに少し似ていると思っていた。

 

こうして鍾離はヘルサレムズロットでの生活を始め璃月に帰る方法を探す前に異界の食事を楽しんでいたのだった…。

 



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自称凡人、楽しいお茶会を開く。

超常犯罪、魑魅魍魎あふれるヘルサレムズロット…

世界の均衡を保つ為に暗躍する秘密結社ライブラオフィスにて、

異世界テイワットよりやってきた客人、鍾離主催のお茶会が始まろうとしていた。

レオナルド視点

ハローミシェーラ! 元気にしてるかい?僕は今まさに絶好調だ!! 何せ今日は普段からお茶や食事に少しうるさいあの鍾離さん主催による、「美味しい世界のお茶を飲みながら楽しくおしゃべりしようぜ!」の会だからねっ!!!

きっかけはギルベルトさんと鍾離さんの試飲会からだった… 

ほわんほわんほわんレオレオ〜………

鍾離「ふむ……」

ギルベルト「どうされました?」

鍾離「いや、このお茶もなかなか良い香りだと思わないか?」

ギルベルト「えぇ、そうですね。私には少々物足りない気もいたしますが、他のお客様方の評判も良いようです。やはり鍾離様の目利きは確かですね。」

鍾離「こうしてこの世界産の数十種類の茶葉を用意してくれたギルベルト殿のおかげだろう。ありがとう。」

ギルベルト「いえいえ、これも執事たる私の務めの一つですよ。それで鍾離様にご相談なのですが……よろしかったら次の機会にもまた、このような試飲会をしてもよろしいでしょうか?もちろん費用はこちらで負担させていただきます。」

鍾離「こちらとしてもお願いしたいくらいだ。次回もまた頼むぞ。」

ギルベルト「はい、かしこまりました。」

2人の試飲会が一段落したのを見計らってK・Kが鍾離に話しかけた。

K・K「ねぇ、ちょっといいかしら、鍾離っち。」

鍾離「ん?なんだK・K」(以下Kと表示)

K「ちょっとで良いから鍾離っちの淹れたお茶飲んで見たいんだけど…駄目かしら?」

興味津々な顔をしたKKが鍾離にお願いをした。

鍾離「構わないが……。俺の淹れ方は我流だし味の保証はできないがそれでも良ければ。」

K「ありがとう〜♡」

鍾離はKKの頼みに片付けはじめていたお茶を淹れ直し提供した。

KKは前に置かれたカップに入った琥珀色の液体を一口すすり、感嘆の声を上げた。

K「美味しい〜!すごく美味しいわよ鍾離っち!」

鍾離「口にあったのなら何よりだ。」

ギルベルト「これは驚いた。まさかこれほどの腕前をお持ちとは。」ギルベルトも鍾離のお茶を一口飲み驚いた顔をした。

鍾離「俺は璃月では休みの日に講談を聞きながらお茶をするのが楽しみでな。璃月のお茶を再現したくて色々試していたんだ。特に中国という国の茶葉が入れやすい。」

クラウスも興味を持ったのか紅茶の入ったティーポットを手に取り、中の茶葉の匂いを嗅ぎ、ゆっくりとカップへ注ぎ、口に運んだ。

クラウス「うむ。確かに美味しい、素晴らしい腕をしているな鍾離殿。」

そのままクラウスは鍾離の入れたお茶を楽しみ始めた。

スティーブン「ギルベルトさんの紅茶しか飲まないクラウスがそのまま飲んでるとはね〜。」

スティーブンが驚き半分関心半分驚きの顔で言った。

K「そうだ!ねぇ鍾離っちこんなに美味しいお茶を淹れれるんだから美味しいお菓子も用意してお茶会しましょうよ〜!」

鍾離「構わないぞ。」

クラウス「それはいいな!すぐにお茶会の企画を立てよう!」

クラウスはウキウキした様子でパソコンで招待状を作り始めた。

ギルベルト「よろしいかと思います。ぜひ私にもお手伝いさせてください。」

スティーブンは苦笑いしながら呟いた。

スティーブン「相変わらずフットワーク軽いなぁ……」

執務室で書類仕事をしているスティーブンはお茶会を楽しみにしているリーダーの為に予定を立て始めた。

………そうしてお茶会の日程が決まって開催を待つのみだったんだけど案の定すったもんだがあったんです。

〜永遠の虚に少し近い所にある酒場〜

ザップ「おい、この情報マジなんだろうなぁ…」

異界の情報屋「ああ、間違いねえ。最近流れてるヤクはそいつらの縄張りで作られててな。宗教が利用してんだよ。」

ザップ「その薬を使ってる組織の名前は?」

異界の情報屋「『神溺教団』。奴らは人間を天使にする実験をしてやがるって噂だ…。」

ザップ「天使ダァ?!馬鹿馬鹿しいなぁ、人間が天使とかありえんだろwwwwww」

ザップは腹を抱えながら大笑いしていた…

情報屋「そこんとこはどうでもいい、俺は《あれ》さえ手に入れば良いからな。」

ザップ「おお笑ったwwwまぁ一応知りたい事はわかったからな。

これがお望みの情報料だ…。」

ザップは包みを情報屋に渡し、情報屋は中身を確認した。

情報を手に入れたザップは酒場を離れたが酒場からは「ウヒョー‼初回限定盤ウル〇〇〇ンフィギュア〜!!」と大声が聞こえた。

ザップ「あんなんで腕が良いんだから不思議なもんだよなぁ…。」

レオナルドが居たらツッコミをして「アンタが言うな‼」である……。

それから数日後、ザップが入手した情報を元にチェインが宗教団体の敷地に潜入し恐ろしい計画を突き止めてた。

オフィスに集まったライブラのメンバーは緊急会議をしていた。

チェイン「盗み聞きした計画によると生活用水に改造薬を仕込んで街中に広めるきみたいです。」

チェイン「しかも宗教団体の目的が人類の天使化とかふざけた内容なのにどう見ても薬を使ったバイオテロ起こそうとしてるって計画ですね…。」

チェインの報告にそれぞれ反応を示す。

クラウス「この街には大勢の人々が住んでいる。彼らの生活を危険にさらすわけにはいかない。我々の力で計画を阻止しなければ。」

スティーブン「計画書によれば改造薬はすぐに気化してしまうため浄水場を襲撃するつもりのようだね、宗教に入っていた人間はすでに改造薬の餌食で奴らの言う《天使》にされたようだ…。」

ザップ「ドラッグとしてばら撒いてたのも兵隊を増やすためってか?」

スティーブン「改造する過程で天にも登るような感覚に陥る為にドラッグとしても成立してるよ。ただ長期的に摂取しなければ効果が出ないからこんなバイオテロを企てたんだろうな。」

鍾離「天使を望んでおきながら実際は人を化物に変えている…歪んだ信仰の結果か…。」

K「んん??ちょっと待ってよ。こいつらが襲撃実行しようてしてる日って鍾離っちのお茶会の日じゃない!?」

スティーブン「あ~この宗教団体はかなり規模がデカイうえに信者の大半が《天使》になってるだろうから長期戦になる。日取りもあまりないし今回は中止になるかもな…。」

スティーブンの言葉にKKは怒り出した。

K「冗談じゃないわよ!鍾離っちのお茶会かなり楽しみにしてたんだから速攻でこいつら潰すわよ!!」

気合の入りまくっているKKを見てレオナルド達は引いていた…。

K「あんた達も気合を入れて速攻で片付けるわよ!!」 

そうして気合充分なKKを先頭に宗教団体撲滅作戦が始まった…。

 

数日の準備をし宗教団体の支部を潰し終わり、残すは改造薬の工場がある本部のみとなった。

スティーブン「まずはこの建物を管理してる管理室を叩く。

ザップとクラウス、鍾離は正面で暴れて警備の目を引きつけてくれ。少年はクラウス達の側で待機。チェインは管理室の無力化。KK、俺は管理室の無力化に成功したらしたら例の改造薬の生産施設を強襲する!」

各々返事をして配置につくために動き出す。

 

宗教団体の門番「なんだ貴様らは、新しい入信者ならばげろぶらっ!!」ザップが門番を問答無用で殴り飛ばした。

ザップ「こちとら宗教なんざ興味ねぇ!ただいけ好かねぇ野郎共を叩きつぶせればそれでいいんだよぉおおおっ!!!」

門番「襲撃だ!殺せっ!!」

ライブラの襲撃により《天使》となった信徒が襲いかかりライブラのメンバーはそれぞれ戦闘を開始した。

 

ザップ「斗流血法「カグツチ」…刃身ノ拾ニ《双炎焔丸》‼」

二振りの大刀を振るい敵を斬っていく姿はとても荒々しいものだった。

クラウス「ブレングリード流血闘術

     02式散弾式連突(シュロートンフィッシャー)‼」

クラウスも技を繰り出し羽の生えた異形となった信徒達を薙ぎ倒して行く。クラウスは目に見えると錯覚する程闘気が溢れていた。

ザップ(なんだか今日の旦那、気合入ってんな?……っまさか旦那も鍾離のお茶会楽しみにしてるからいつもよりヤル気満々なのよ?!)

そんなヤル気に満ちたクラウスの側でレオナルド達に玉璽シールドを貼った鍾離も槍を振るい好戦していた。

鍾離「はぁ‼」

地面に槍を刺し蹴りだす!蹴り出された槍は回転しながら信徒達を薙ぎ倒し鍾離はそのまま槍を回収し攻撃を続ける。

レオ「何もしないままだと思うなよ…僕に従え平眼球!《シャッフル》‼」鍾離の側で待機していたレオナルドは神々の義眼を使い信徒達の視界を混線させた、それにより信徒達はスキが出来クラウス達に次々に倒されていく。

その頃存在希釈で侵入したチェインは管理室の警備達を持ち込んた催眠ガスで眠らせ監視を無力化した。

チェイン「管理室の無力化に成功しました!」

監視を無力化したチェインはスティーブンに報告する。

スティーブン「よし、クラウス達も他の信徒を引きつけてくれている。今の内に製造工場を破壊するぞ。」

K「はぁ〜またあなたとコンビなの?最近多くないかしら…」

スティーブン「そう言わないでくれよKK…」

内部に侵入したスティーブン達は工場を破壊し始めた。

 

しかしそれを見逃すはずもなく武装をした信徒が押し寄せてきた。

信徒A「おい!お前等何者だ!?ここで何をしている?」

KK「あちゃー見つかったわね、どうしましょか?」

スティーブン「ここは俺に任せろ、君はサポートを頼む。」

K「OK、任されたわ。」

二人は武器を構え戦闘態勢に入った。

その時、戦闘中の教団員が何かを感じ取る

 信徒B「ぐぅ!!身体に力が入らない……何故急にこんなに疲れて……おガア?!」

体が膨れ上がり羽の生えた異形となった。

信徒C「なんだ?一体……うぁああ!!」

こちらも同様に異形となった。

スティーブン「これが《天使》…羽があればいいってもんじゃないだろ…」

K「無駄口叩くなら早くしなさい!」

スティーブン「ハイハイ…まぁ仕込みは終わってるからね。」

         エスメラルダ式血凍道!

    絶対零度の小針(アグハデルセロアブソルート)

スティーブンの技により天使化した信徒は内側から氷漬けになりKKの射撃で砕けちった。

襲ってきた信徒を倒した2人は工場最深部に辿り着いた。

そこには大きな培養槽がありその中には無数のカプセルが浮いていたのだ。

そして培養槽の側には豪華な衣装を着たおそらく司祭とフードを深くかぶったコートの男がいた。

司祭「貴方様のお陰で信徒達が皆天へと登る準備が進んでいます。」

フードの男「まぁ〜あんたの理想へ近づけて良かったねぇ〜だけど〜招かれざる客が来たようだよ〜?」

フードの男に指摘されて司祭は2人に気付いた。

司祭「んん?なんだ貴様らはこの神聖なる場所にどうやって入った?!信徒達は何をしている?!」

騒ぎ始めた司祭。

だがスティーブン達はフードの男の異様な気配を感じていた。

スティーブン「これは…KK、鏡の準備を。」

KK「もうしてるわよ…」

そして鏡にフードの男の姿は写らなかった。

フードの男「おやおや〜?もしかしてそこのお二人は牙刈りかなぁ〜?ありゃ〜司祭さん〜残念ながら〜君とのお遊びは〜終わりのようだ〜。」

司祭「それは一体どう…」

言葉を言い終わる前に司祭は切断されていた…

フードの男「フフ〜いいお遊びだったけど〜、そこの牙刈りさん達と〜遊ぶ方が楽しそうだ〜。」

喋るフードの男へ2人は攻撃を仕掛けた!

スティーブン「エスメラルダ式血凍道!

    絶対零度の剣(エスパーダデルセロアブソルート)‼」

 

    K「954血弾格闘技!Electriggr1.25GW‼」

 

2人の攻撃はフードの男をズタズタにしたが少しするとその瞬間2人に何かがぶつかり、衝撃で壁に激突してしまう…

スティーブン「ぐう…KK無事かい?」

K「無事よ…」

2人の前に無傷のフードの男がいた。

フードの男「いやいや〜いい攻撃だね〜でも〜もうちょい歯ごたえ欲しいなぁ〜?上で戦ってるのも牙刈りでしょ〜?なら上に出た方がもっと遊べるかなぁ〜?」

そう言ったフードの男は天井に破壊して上を目指す。

スティーブンは急ぎクラウス達に通信をした。

スティーブン「クラウス!!聞こえるか?!敵はブラッドブリード!それもエルダー級だ!其方に向かった‼」

通信を受けたクラウス達の前に大きな音を立てて地面に大穴が空きそこからフードの男が信徒達を吹き飛ばし飛び出してきた。

             ドカァ!!!

 ブラッドブリード「やあ初めまして牙刈り〜君たちには〜俺と〜遊んでもらうよ〜。」

そう言ったブラッドブリードはクラウス達目掛けて衝撃波を飛ばしてきた。鍾離の玉璽シールドがあった為に無傷で済んだがシールドは破れクラウス達にはかなりの衝撃が伝わり少し後ろに下がる。

          ピキピキ、パリン…。

クラウス「むぅ、鍾離殿のシールドが破られたか。エルダー級のブラッドブリードが教団に関わっていたとは…。」

ザップ「遊び相手とか随分舐めてくれんじゃねぇかよ!」

鍾離「血界の眷属ブラッドブリード…話に聞いていたが実際に目にすると厄介な存在だな…恐らく玉璽シールドを貼り直しても一撃で破られる可能性が高い、注意してくれ!」

そして鍾離はシールドを貼り直して、クラウス達はブラッドブリードとの戦闘を開始した。

レオ「鍾離さんのシールドのお陰で助かった…早くしないと!」

レオナルドは隠れてブラッドブリードの諱名を急ぎアプリ入力し始めた。

最初の攻撃を防がれたにも関わらずブラッドブリードはおお喜びしていた。

ブラッドブリード「おお〜!!どうやって〜俺の攻撃〜防いだの〜?無傷は〜驚きだよ〜!そこの〜キラキラしてる人が〜防いでるのかなぁ〜?」

ブラッドブリードは鍾離に狙いを定め攻撃を仕掛ける。

しかしまたもやその攻撃を受け止める事に成功。先程よりも力を込めているのか玉璽シールドは一瞬で壊れてしまう。

ブラッドブリード「んふっ〜♪やっぱりそうだよねぇ〜君は強いみたいだしぃ〜♫」

鍾離「生憎だか俺ばかりにかまけてる暇はないと思うぞ!」

鍾離はブラッドブリードに元素スキルの石柱をぶつけ距離を取る。

ザップ「鍾離にばっかりにかまけてんじゃねえよ!」

 

  斗流血法「カグツチ」刃身のニ 空斬糸!《赫棺縛》‼

 

ザップが血法によりブラッドブリードの動きを一瞬封じるとクラウスも続き攻撃する。

 

        ブレングリード流血闘術!

   15式狙撃式単突(スナイパーフォーメルシュナーク)‼

 

クラウス達の連撃に対してブラッドブリードはボロボロになりながら喜び、体を徐々に再生していく…

ブラッドブリード「いいね〜いいね〜♪やっぱり遊びはこうでなくちゃ〜♪それじゃ〜そろそろ〜本気で逝くよ〜♪」

ブラッドブリードが本気になり始めた時クラウスの携帯が鳴った。

            しゅーくほう!

それはレオナルドが諱名の解読を終えた音だった。

クラウス「ザバル・ゲトグルギルガ・ゼド・イルガグロギリカ」

びくっ

ブラッドブリード「どうして?どうやって俺の名前…」

クラウスは同様するブラッドブリードに急接近し…

 

クラウス「貴公を密封する!」

 

 憎み給え 許し給え 諦め給え  

           人界を守るために行う我が蛮行を!!

        ブレングリード流血闘術

 999式久遠棺固定(エーヴィヒカイト・ゲフェングニス)!!

 

ああああああぁ!ガキガキガキガキ、カチン…

ブラッドブリードはクラウスの攻撃を受けた後、小さな十字架に密封された。

そこに地下で戦闘していたスティーブン達が合流し殲滅作戦は終了したのだった…。

 

レオナルド視点

…そんなこんなで宗教団体+エルダーブラッドブリードなんて大きな案件をこなして翌日の今日、鍾離さんのお茶会は開催されたのでした。

いやまじで鍾離さんのシールド様々なんだよなぁ‥大きな怪我して入院する回数が減ったし…でも鍾離さんがいない場合は相変わらず怪我するので異界医療も様々だよなあ…スティーブンさんとKKさんはブラッドブリードの攻撃をモロに受けて重症だったのにあちこち治療中な傷はあるもののお茶会に参加してます…

特に気合入っていたKKさんとクラウスさんは大喜びしています…。

KK「ねぇレオっちそこのケーキ食べていいわよね?」

レオ「はいどうぞ。」

クラウス「鍾離殿、この紅茶も少し花の香りがあり楽しめる…とても美味しい…どこのメーカーを?」 

鍾離「ああ、璃月のお茶に近づけてみようとギルベルト殿が用意してくれた茶葉をブレンドしてみたんだ。」

ギルベルト「オリジナルブレンドですか…鍾離様今度はコーヒーに挑戦してみませんか?」

クラウス達は鍾離の淹れたお茶とギルベルトが用意した最高級のお菓子を満喫していた。

ザップ「姐さんも旦那も気合入ってたからなぁ…めっちゃ楽しんでらぁ…。」

レオ「でもほんとに美味しいですよ、鍾離さんのお茶。」

そんなお茶会を楽しんでいるライブラメンバーを見て鍾離は少し物思いに耽っていた。

鍾離(ヘルサレムズロット…テイワットとは違う異界…自然はあまりなく人工物ばかりだが、こうしてライブラのメンバーといる風景はあの頃見たものとあまり変わらない…璃月に戻ったなら魈達と絶雲の間で茶会を開いても良いかもな…。俺のここにいる時間は長くあるのかそれとも突然戻されるのか…)

KK「鍾離っち〜お茶菓子なくなっちゃうわよ〜。」

鍾離「ん?それは困るな。」

鍾離はまたお茶会を楽しみ始め、鍾離のお茶会は無事開催されました。



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自称凡人、ステゴロの魅力を勉強する。

今回のお話は血界戦線4巻の拳客のエデン沿いになっておりオリジナリティが薄く私の原神の独自解釈が入っております。ご容赦下さい。


ライブラのオフィスにてメンバーが団欒中の時…

水をグラスに注いでいたクラウスにザップが襲いかかった。

ザップ「往生〜せいやああああああ旦那アァァ!」

襲い掛かってくるザップに対してクラウスはグラスを空中に離すと、ドムドムドム‼

ザップ「へぷっ!ぶぺっ!ぶんっ!」

目で追うのが困難な連続パンチを繰り出してザップを沈めて足に引っ掛けるとグラスを持ち直す。わずか一瞬の出来事であった…。

クラウス「飲むかね?レオナルド君。」

レオ「…………いえ…。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レオ「…なあんて事が以前はよくあったんですよ。」

鍾離「俺がライブラと契約してから2回程目撃したが、もっと頻繁にクラウス殿にザップは仕掛けていたのか…。………ふむ、公子殿が強敵を見て笑顔で果敢に挑んでいる光景が目に浮かんだな…。」

レオナルドは鍾離の何気ない1言が気になった。

レオ「その《公子殿》って鍾離さんの世界の知り合いですか?

笑顔で強敵に挑むって…。」

鍾離「あぁ、彼は俺の良き友人だ。氷神が治める極寒の国スネージナヤ、そのスネージナヤの外交組織「ファデュイ」に属していて、ファデュイの中で最も位の高い11人の執行官の一人だ。正確な名前は《公子タルタリヤ》と言う。」

鍾離「公子殿とは仕事の一環で知り合ってな、璃月に彼が派遣されてからよく共に食事に行くんだ。」

そんな鍾離の紹介を聞いたレオナルドだがなぜそこでザップの話に繋がるのががわからなかった。

レオ「そのタルタリヤさんは他所の国の外交官なんですよね?

それなのに何で強敵の話に…。」

鍾離「それは公子殿が強敵との闘争を目的としている戦闘狂だからだ。ファデュイに入ったのもいろんな強敵との出会いを求めてとのことだと本人から聞いた。」

レオ「……えっ?!」

鍾離「彼は水元素の神の目を持っていてな、テイワットの中でも随一の武人だ。俺にも食事を奢るから代わりに戦ってくれと偶に持ち掛けてくる…だからザップとクラウス殿のやり取りを見て少し連想してしまったんだ。」

レオ(鍾離さんの友人関係って一体…。)

鍾離はほんの少しだけ懐かしそうにタルタリヤについて話したが、

レオナルドは鍾離の友人関係が気になった…。

レオ「ま、まぁ今度ゆっくり鍾離さんの世界についてまた教えて下さい…。」

鍾離「あぁ、ザップの話だったな。クラウス殿に《仕掛け》なくなった事について。」

2人の話を聞いていたスティーブン達も会話に加わる。

スティーブン「確かにそうだな…あいつも大人になったか。」

チェイン「心折れて諦めたに1票!負け犬ならぬ負け猿…あっははおっかしい‼」

鍾離「特に変わった所ははなかったが…。」

レオ「でもちょっと寂しいかな〜なんて」

スティーブン「おっ、云うじゃない少年。」

レオ「あ、すいません。でも無茶をして人に迷惑をかけなくなったのはいい事すよね!」

そんな話をしていたメンバーだったが…レオナルドの携帯が鳴り響いた。

         ピルルルルルル‼

ザップ「おおおおおおおおおおいいいいいいいいいい!旦那そこにいるか旦那ァァァ!」

携帯には武器に囲まれ泣き叫ぶザップが映っていた…。

ザップ「俺殺されちゃうよぉ〜!助けてくれってつたえてくれよぉ〜!ウアアアアアアアアアアァァァァァァ…」

メンバーの視線は名指しされたクラウスに集まっていた。

そしてクラウスは鍾離とレオナルドを連れてザップ救出に向かった。

レオ(行くんすか‼やっぱり!!!)

鍾離(明らかな罠だと思うが…。)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

とある地下の1室にて…。

ザップ「…………………。」

???「来るかね?騎士様は。」

ザップ「バッカヤロウ鉄板だ、旦那の実直さ舐めんじゃねえぞ。」

囲んでいた武器は降ろされておりやはり罠であった…。

ザップ「さあ娯楽に飢えたクズども!最凶ゲストとオマケの招聘はなった‼そのカリスマっぷり存分に味わいつくしやがれ!!!」 

そんなクズ丸出しのザップを救出に向かったクラウス達…。

道中銃撃戦が発生していたがクラウスの要望により真ん中を突っ切

り巨大チェーンソーに襲われるも鍾離のシールドにより回避。

そんな乱戦真っ只中を通り過ぎると再びザップ救出に向かいだした…。

クラウス「急ぐのだ‼レオナルド君、鍾離殿‼ザップが危ない‼」

レオ「いや明らかに危なかったのは僕です‼僕らです‼」

鍾離「(ーー;)…………。」

そうしてクラウス達は指定された場所に辿り着いた。

ーーー閑散とした倉庫街。

鍾離「ここか?」

レオ「みたいですね…。一見倉庫街に見えますがそれは表の顔、

見てぐださいヤバい連中がウヨウヨしてますよっ!」

クラウスはそんな事お構いなしに見張りに話しかけようとする。

レオ「ってオイ‼」鍾離「流石にそれは…?!」

クラウスは見張りに名刺を差し出して話しかけた…

クラウス「…私こういう者でして。」

見張り「あ?」

クラウス「友人を探しているのですが…」

見張り「ていうか何だオメェ…。」

レオナルドは乱闘が起きるのではと思っていたのだが…

見張り「どうぞこちらへ。」クラウス「ありがとう。」

ズザザザザザ‼レオナルドは頭から滑り、鍾離は少し溜息を吐いた。(尚レオナルドはヘルメットをかぶっていたので無傷。)

クラウス「どうしたレオナルド君、そこで待っているかね?」

レオ「行きます。」

クラウス達は奥に通されエレベーターに乗り、地下深くまで降り始めた。そこでクラウス達の目に入ったのは…

観客「ワァァァァァァァ!!!」

オラァァァ!イケぇ!殺せぇ!殺し捲り倒せぇ‼オォォォ!!!

レオ「こ、これは…地下闘技場です、ざっくり言うと賭けをして殴り合うんです。」

レオナルドはクラウスと鍾離に地下闘技場について教えた。

クラウス「ふむふむ…」鍾離「なるほど…興味深いな。」

リングに目を向けると異界人同士が素手で殴り合っていた。

ゴッ!ギャ‼ゴン!

レオ(うわぁ体格も種族もお構い無しのデスマッチ形式かよ…!)

「えげつないと言うか、分かり易いと言うか…。」

クラウス「…ザップは何処だろう?」

鍾離「何処かに監禁されているのでは?」

相談する2人とは別にレオは少し考えた…

レオ(でもここって、すっごくあの人向きな場所っぽい…。)

ーーーリングを一望出来るVIPルーム。

???「来たようだな。」

ザップ「…………。本当にこれで俺の借金はチャラになんだろうな。」

???「まぁそれは今夜の売上とお前の心構え次第さ。」

奥の豪華なソファには葉巻を吸い側に2人の女性を侍らせる闘技場のオーナーが座っていた。

オーナー「極上のダンスを踊るんだな、ザップ・レンフロ。今宵自らの命を賭けて…。」

ザップ「……ッケ。どこのケツ穴からそんな気障なセリフがでんだよこのデブが…しょうがねぇーー任せろ!」

その時リング付近にいた3人の中クラウスにスポットライトの光が降り注いだ。

3人「「「?!」」」

MC「レディィィィィィィースエンジェントルメン!!!」

「ディスイズTHEライブラァァ‼クラァァァウスラインヘエェェルツァ!!!」オオオオオオオオオオオオオ!!!

そのまま観客にクラウスはリングに連れて行かれる。

MC「ようこそ特別ゲスト‼ようこそ‼ステゴロの楽園へ‼ここがエデンだ!!!」

盛り上がりを見せるMCにクラウスは断ろうと声をかけたが…。

クラウス「いやお仕事申し訳ないが私は仲間を探しに来ただけでね。」

MC「そうかいそうかい‼」

クラウス「ザップ・レンフロという男をご存じないだろうか?」MC「ルーーーールは2つだ‼」

クラウスの言葉をスルーするMCにクラウスは困っていた。

MC「その1《武器は使うな》その2《1対1で闘え》」

クラウス「………。」

MC「そういうことだよ、首尾よくいけばザップに会える。」

クラウス「…………っ!」

MC「おっと…‼おっとおっとおっとおっと、ここで暴れてどうする?居場所も知らないのに?やつの脳みそに弾丸がめり込む方が圧倒的に早いぞ。」

MC「悪いがエモノを検めさせてもらう、数少ないルールは正確に運営されなきゃならん。」

クラウスはナックルをリングに落とした。ガシャ!

MC「ほう…?銃じゃねえのか、相当腕に覚えがありそうだな。

けっこうけっこう…さあ!始めるか‼」

MCが対戦相手を準備させている最中、会場の観客達はライブラの話しでもちきりだった、クラウスの容姿についても話していたようだが異界側の住人達の方がよっぽど顔が怖いので普通と判断されていた…。

そして準備が整いリングに現れた人類種の男、MCが対戦者の名前を読み上げた。

MC「グレゴォォォル・マキシマァァァ!!!」

人類種同士の対戦組合せに観客達は更に盛り上がる上に、賭けが開催され集金を始めていた。

オッズマシン「さぁ、張った張った!オッズはグレゴール1.05、クラウスが3.0‼5分後に発券は終了するよ?急げ急げ‼」

試合開始間近だがなれない状況にクラウスが少し戸惑っていると対戦相手のグレゴールが話しかけてきた。

グレ「ヘイ‼戸惑ってるな?無理もない。でも集中してくれ、命取りだ。」

グレ「ひと目で分かるぜあんた相当『使う』だろ?………魅せてやろうじゃないの、クリーブショウの住人に。ここはそういう場所だ。」

クラウス「………承知した。」

グレゴールの言葉にクラウスは眼鏡を外し構えた。

リング外では鍾離とレオナルドが今回の件について話していた。

レオ「うわぁ何だ何だこの流れるようなカタにハメられ感‼」

鍾離「恐らくザップが裏で糸を引いているだろうな。そうでなくても何かしら必ず関わっている…。」

レオ「ですよね、とにかく僕達の居場所を抑えなきゃ…あ、スミマセン、ミスタ・クラウスに20ゼーロ!後でシラ切られるのも癪だからなぁ…。鍾離さんはどうします?」

レオナルドの質問に鍾離は懐を調べると……

鍾離「………財布を忘れたようだ。」

レオ「あ……そっすか。」

そうこうしている内にリングでは試合が始まろうとしていた。

観客「オオオオオオオオオオオオオ‼」

MC「READY・FIGHT‼」

観客大興奮の試合開始のゴングを待っていると、皆が見ている最中グレゴール選手が乱入してきた異界人選手に殴り飛ばされ…

ドッ!!!ギっ、ドシャ…

リングロープに跳ね返され中央に落下した…。

異界人選手「人類種同士でチョロチョロやってんじゃねぇお遊戯か‼テメェらは俺らにブッ壊されてりゃいいんだよ弱小種族が‼」

ーーVIPルーム

ザップ「…オイオイ…ジャグラノーズの野郎が調子こいてんぞ…。」

オーナー「まだだ‼まだゴングは鳴らすな‼速攻で発券をやり直せ‼」

ザップはこの状況に不安を感じていた…。

ザップ「まずいぜこりゃあ…。」

オーナー「あ?」

ザップは急ぎスタッフに声を掛ける。

ザップ「ドクターと蘇生斑の準備を、今すぐにだ‼」

オーナー「何を慌ててる、大丈夫だよザァァァップ‼」

オーナー「ジャグラノーズだって素人じゃねぇんだ、ちゃんと手加減はするさ。つっても?ギリ死なねぇ程度にはだが。」

ザップ「そりゃそうだろうよ、ああ見えてあいつはプロだかんな。でも……旦那は違うーーー」

ゴキャゴキャゴキャゴキャゴキャ!!!

ザップ「ド素人だ。」

ジャグラノーズ「あ、お、え…。」

ドシャ…。

観客全員が唖然とした顔をしていた…。

(゜д゜)《………………………………………。》

そしてクラウスは左胸を叩き構えを解くと…

観客「ワァァァァァァァァァァァッ!!」

一気に観客から歓声が湧き上がった。

オーナーも興奮しておりザップと肩を組むが対象的にザップの気分は下落していた。

オーナー「おいおいおいおいおいやるじゃねぇの‼お前のボス‼」

ザップ「あ~あ関節がみんな面白おかしい方向に曲がってら…。」

オーナー「甲殻の接合部だけ狙う精確さと合理性のわりにえらく真っ直ぐな拳、気に入ったぜ!!!」

ザップ「人類から順繰りに教化しようと思ってたのによ〜、あのバカが……。」

オーナー「見ろよゴミクズ共(観客)の顔を‼歓喜で座りションベンだ‼」

クラウスは勝負が終わったのでリングを降りようとしていると…

MC「フゥ、エキサイティングだな。あいつあれでも…うちの看板なんだがね。」

クラウス「それは申し訳ない事をした。ともあれ…ザップの所へ案内して頂こう。」

観客《!?》

その言葉に観客は…BOO!BOO!BOO!BOO!…

MC「駄目だよ旦那、アンタの拳はここにいるゴミクズ全員の心を奪っちまった。」

クラウスの拳は観客全員の心を魅了してしまっていた…。

また観客の熱狂を見て鍾離達もクラウスが簡単には引き下がれなくなった事に気づいていた。

レオ「ヤバイじゃん‼いよいよ泥沼じゃん‼ザップさん見つけたっておいそれと帰れないじゃん‼ミスタ・クラウスに40‼」

鍾離「これ程までの熱狂とは…!」

リングではクラウスが何とか下がろうとしていたが…

クラウス「これでは埒が明かない…!」

MC「だ〜い丈夫、闘えばいいのさ。連中が腹いっぱいになるまでな。しかし…」

観客達《オイオイオイオイ何揉めちゃってんの?!マジかよ?!

冗談じゃねぇ〜ぞ!ここからが本番だろうが?!次だ…‼次の対戦者を出しやがれ!早く…》

クッラウス!クッラウス‼クッラウス!!!

観客のクラウスコールの中リング側を離れてスタッフ用口までレオナルド達は移動しようとしていた所、レオナルドは人にぶつかった。

レオ「あ、すみません!って…あれ?」

グレ「悪いね少年達、ここから先は関係者だけだ。と言うか……

年齢的に少年は店自体がまだ早いぞ。ん?」

ぶつかったのは先程異界人選手に殴り飛ばされたグレゴールだった。

グレ「ん?君達は確か…ミスタ・クラウスと一緒にいた…。」

レオ「はい…エヘヘヘ…。」

鍾離「先程の怪我は大丈夫なのか?かなりの怪我だったが…。」

グレ「これか?ああ…まあね、腕の良い医者が居るのさ。」

レオ(どんなレベルだ…。)

鍾離(やはりこの世界の医療技術はテイワットでは考えられない程進んでいる…。元素を用いない科学の力…。《あの国》が未だ健在であったなら現代で更に進んでいた技術力だったのかもしれないな…。)

2人が怪我の具合と治療技術に驚いているとグレゴールが2人がザップの知り合いだと気付いた。

グレ「……?!って事は君達ザップの知り合いか!」

2人《⁉》

レオ「その口調…‼やっぱあの人一枚噛んでますね?!」

グレ「う…、や…、あーそうか、あーしまったスマンスマン。まぁ色々あるが心配には及ばないよミスタ・クラウスは十分に頑丈だし

、腕の良い医者も居るからな。」

レオ「……。…そうですか…。」

グレ「あら、納得するのね。」

観客達のあまりの熱狂ぶりに鍾離達は何故こんなにも盛り上がるのか気になりグレゴールに問いかけた。

鍾離「……俺にはここに集まっている観客達がわざわざここまで来て血を見ようとする理由が理解できない…。無用であるならば血を流す必要は無いと思うが…。」 

ーーー

過去の魔神戦争での闘いでもモラクスが自分から闘いを挑みに行ったことは少なく、襲い掛かってくる魔神達や妖魔を相手にしても闘いを楽しいと思った事はなかった。何故なら魔神達との闘いは起こるだけで規模が大きくなる為にかつての彼にとって戦闘は民を護る為にあったのだから…。璃月を建国し守護する岩王帝君となり仙人達を率いて契約を交してからは更に大地に血を流す事は憚られた。

倒された魔神の恨み、怒りの血が魔物を狂わせ、更には仙人達をも蝕んだのだ…。神の座を降りてからの自称凡人の鍾離は闘いを楽しむ事をタルタリヤや旅人達と旅をする中で少しずつ学んではいるのだが…まだまだ凡人の考えを理解できてはいない。ーーー

レオ「鍾離さんの言うとおり、わざわざ見に来なくたってヘルサレムズ・ロットじゃ毎日何処かで物騒な事が起こってるのに。…違いますか?」

鍾離達の問いかけに対してグレゴールは…

グレ「いや全くだな。」

グレ「1歩出れば引き鉄1つで相手を致命傷にでき、ボタン一押しで何人も纏めて爆散されられる。世界はまこと効率のいい暴力のオンパレードだ。」

グレゴールの話の最中、リング内ではどんどん試合が進んで行く。

グレ「でも石斧で殴り合い、剣で斬り合い、銃で撃ち合い、魔術で呪いあい、ミサイルで狙いあう様になっても何故かひとつも進化できなくて居座る渇望がある…。」

グレ「素手、一対一、種族を越えてこの二つのルールに縋りつく大馬鹿ども。」

グレゴールの話を聞いていたレオナルドには何が言いたいのか理解できてきた。

グレ「そうだよ、血が見たいんじゃない。有史以前から男達には不治の病がかかってるのさ。」

クラウスの拳が対戦者の顎にクリーンヒットし観客達は更に盛り上がり、グレゴールは話を締めくくる。

グレ「《ステゴロ最強》という病気にな。」

 

ーーー再びVIPルーム内

観客達が沸き立つ中闘技場オーナーも大笑いしながら喜んでいた。

ゲハハハハハハ‼

オーナー「いやあ‼最高だぜぇェェェェェェェ‼こんなゴージャスな獣は見た事がねえ‼」

ザップは興奮しているオーナーにゴマすっていた。

ザップ「へっへっへ!お気に召して頂けやしたか先生‼」

オーナー「イナフだ‼今夜はよく踊ったぜザップ・レンフロ‼」

まだ試合が連続して続いている中ザップはクラウスが気に掛かった。ゴギィン‼バゴエン‼

ザップ(…ってか…ちょっと…やっぱそうか…?)

ザップ(案の定旦那…ノリノリになっちゃってますよね〜?!)

クラウスは連闘の中で試合を楽しみ始めていた…。

MC「勝負アリィィィィィィ‼」カンカンカンカン‼

観客達《ゴボウ抜きで現チャンプまで倒した‼前代未聞だ。スゲエよ〜‼スゲエよ〜‼もう完全にオケラだが俺ココに居れて良かった…‼》

その様子を見たザップはオーナーに話かけようとしたが…

ザップ「ふう…。…終わったか。想定外もあったけど中々イイ興業だったんじゃねぇの?さあて俺は出るぜ、金を用意してくれ。」

ザップが振り返った先にはオーナーは居なかった。

ザップ「って、ええ?!」

ザップがリングを見るとオーナーはリング内にいた!

MC「…オ…オーナー‼」

オーナーはクラウスに話かける。

オーナー「よく来てくれた戦士よ、まずは今宵の闘いぶりに賞賛と敬意を。いや震えたよそこそこの食材続きじゃ満たされないもんがあるのに気づかされちまった…。」

オーナー「こんなのは久々だぜ!今夜は腹いっぱいになりてぇ…俺にも食わして貰おうか極上のディナーを‼」

そのオーナーの言葉に観客は再び盛り上がった。

ウォォォォォォォォ‼

クラウス「いや私は…。」

MC「『いや私は』じゃねぇ受けろ!受けてくれ‼」

MCも興奮している様子でクラウスに試合を受ける様に言った。

MC「オーナーが挑戦したと言う事は…‼この闘技場の経営権を賭けた決闘なんだ‼」

MCの言葉が終わるとクラウスにオーナーが殴りかかった!

ドパッ‼ドンドンドンドン‼

MC「…か、開始…ッ‼」

MC「開始だアァァァァァ‼」

MCの開始のコールからクラウス達は更に激しく拳で殴り合っていく。

オーナー(思った通り…スピード、角度、パワー、タイミング、何をどう変えても完全に対応してくるわけか…。)

オーナー(防御一徹の左に常に最短距離を撃ち抜く構えの右…素手の人間の闘い方じゃない、盾と槍をで武装した重歩兵だ。素手の闘いにおいて蹴り掴み投げ極め無し、非合理にも程がある…。それでも打ち破れないシンプルで手の内が見えていてなお突き崩せぬ鍛錬とは…。)

オーナーはクラウスの戦闘スタイルを分析しながら拳の応酬を続けている…そんな一瞬にオーナーはクラウスを見てニヤリと笑う。

オーナー(いいねぇ正気を疑うよ、ますます…正面からかっ喰らいたくなるさ‼)

正面からクラウスに突っ込んたオーナーはクラウスの左腕を精確に狙い拳を放つ!それを見ていたザップは…

ザップ(捉えた。なんて対応力、集中力。空いたラグは一瞬だが十分…‼)

クラウスの顔面にオーナーの拳がヒットしてクラウスが一瞬ぐらつく。そのままオーナーは更にクラウスを殴り、クラウスも拳を繰り出していく。

ザップ「おお〜流石元エデン不倒チャンピオン『拳豪オズマルド』これはひょっとして、ひょっとするんじゃねえか?」

ザップの言葉にオーナーと一緒にいた女性はつまらなそうにザップに声を掛ける。

女性「…ふうん、それじゃまた彼の勝ちなのね…つまらないわ。」

ザップ「いやそれはねえよ。」

女性「え?」

ザップ「万が一にもな。」

女性「え?」

ザップ「旦那は不器用なんだ、集中してる時の1発1発を調整できない。だけど『こう』と決めたルールで自分を縛るのは得意。」

女性「…………。」

ザップ「俺がひょっとするつったのは…」

ザップ「『構え(フォーム)のスイッチ』のほうさ。」

クラウスはついに左の拳を振りかぶった。

オーナー(左ッ⁉なんてこった…こっちが本命か…‼)

クラウスの左拳はオーナーの顔面に突き刺さったが…

ズグボッ‼

クラウスの拳によりオーナーの男の顔は崩れ去り中から現れた細身の男に拳は当たっていた…。

ドシャ!ドチャドチャドチャ…。

???「き、きいたぁ〜ッ…!」ニタァ…。

辺り一面((((;゚Д゚)))))))

辺り一面は驚愕に静まりかえっていた…。

オーナー中から現れた男の姿にレオナルドの目は…

???「あれ?この空気…あ~あ一応死体を使ってるんだけどな〜しかも僕が殺したんじゃないやつ…。」

レオナルドは観客を掻き分けクラウスに注意を呼びかけるが…

???「こうでもしないと…僕ら《血界の眷属》は君達《下位存在》と遊べないのにね。」

???「お疲れ様、クラウス君。」

ブラッドブリードがクラウスに軽く触れるとクラウスの体はリングフェンスにかなりの勢いで吹っ飛んでいく!

ガシャン‼ギゴ、ガココゴ…

クラウスが突っ込んたフェンスが観客達に倒れてきたがギリギリで止まった。

観客『はぇぇ…危ねえ所だった…、ビビらせんなやもー、おい…みろ…‼』

観客達の視線の先にはもぬけの殻になったリングがあった…。

ーーーーーーーーーーーーーー

レオ(一瞬で、それこそ瞬く間もなくほんの一瞬で暴威は去った。ブラッドブリード《血界の眷属》は作り変えらざれしもの。もし彼が皆と同じ様に『ステゴロ最強に心奪われた、ただの男』だとしたら…誰と拳を交わす事も出来ない程強化された自身の身をどう感じるのだろう…。残像の様に残る彼の笑みが何処か寂しそうに見えたのは僕の思い込みなんだろうか…。)

ーーーーーーーーーーーーーー

地下闘技場を後にライブラのオフィスに帰る道中にて。

ザップ「いや〜しかし助かったよ〜旦那〜。悪いヤツラも旦那の闘いぶりを見て恐れをなして逃げてったしさ〜良かった〜。」

ザップはクラウスにゴマをすっていた…。

クラウス「無事で何よりだザップ…‼一時は如何なる事かと…‼」

クラウスは目頭を抑えているがザップはほくそ笑んでいた…。

レオ(もう有り得ないよ〜‼騙されてる方にも腹立ってきた

よ〜‼)

鍾離は後ろから付いてきており見守る事にした様だ。

今度はレオナルドに向かってザップは舐めた変な顔を向けた。

レオ(…何すか‼何なんすかその目やるっつうんすか。)

レオ「僕もう超言いつけるし、人の口に戸は建てられないし…。」

ザップ「違うんだレオ、行きがかり上ややこしい事になったが実はちゃんとこうならねばならなかった理由がある!」

レオ「始まったよまた何かテッキトーでやっつけ極まりない弁舌が。」ザップ「聞けって‼いいか良く見ろ旦那は今満身創痍だ。強豪との14連戦+ブラッドブリード戦でゴッソリ削られてる。」

レオ「…はあ…そうっすね…アンタ死んだらいいのに。で…それが?」ザップ「バカヤロウ!行くなら今しかねえだろうが!」

レオ「はあぁ?」

ザップ「取り敢えずどんな形でも一回勝利の味を知っておかねぇと俺はこの先一生前に進めねぇんだよ〜‼」

ザップは先頭を歩くクラウスめがけて走り出した!

レオ「最低だ‼最低に糞尿ぶっかけてルーブルに飾って金取るくらい最低だ‼」

ザップ「往生せいや旦那ァァァ〜‼」

クラウスに襲い掛かって行ったザップだが…

ゴキッ‼「おぶ」ドグシャ‼「ばッ‼」ガッ‼「止めべ…ッ!」

バキャカーン!!!「がばらぼけかごろ‼」

レオ「うわ〜ウスラ寒くなる程いい気味じゃない…✦」

そんな光景を見守っている鍾離は…

鍾離(ヘルサレムズロット来てから改めて考えさせられるな。凡人から見るステゴロの魅力…公子殿も似たような感情で強者に挑んでいるのだろうか…?まだまだ俺も凡人として学ぶ事が多い様だ。この世界にいる間…学べる所は沢山学ばせて貰おうか。)

鍾離は一度見たものを忘れる事はない…。

ライブラとの契約は彼に凡人らしさを学ばせてくれているいい機会になっているようだった。



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自称凡人と包帯執事の電撃作戦。

前回に引き続き血界戦線の原作沿いになります。
内容はとある執事の電撃作戦です。



ザップが起こした地下闘技場事件から数十日後の事…

ライブラオフィスの通用口にて、

ギルベルトとレオナルドが食料品の荷受けをしていた。

配達員「ネメシスコーヒー2ガロ、ミストミルク4ギットル、ゼスタロパスタ1.8㎜6パック3ガロ、ギルティペッパーひと缶、眼球タマネギ1ガロ、鬼角人参1ガロ、髑髏ポテト3キロ、胎児キャベツ2ガロ、Dr.ゲロッパー1カートン、13UP1カートン、濃縮レバー18ガロ。」全ての品が揃っているのを確認するとギルベルトがサインをする。

ギルベルト「はい、お疲れ様。」

配達員「まいど~」

レオ「ギルベルトさん、これこっちでいいんスかね?」

ギルベルト「ああ大丈夫ですよレオナルドさん。それは私がやりま……」

ギルベルトがレオナルドに声を掛けている途中、ギルベルトが押している荷物に巨大なスカイフィッシュ?が激突する!

どぐしょへ!!!ギルベルト「す」『ポキ。』

レオ「ギ、ギルベルトさぁぁぁぁぁん⁈」

ーーーーーーーーーーーーーー

その頃鍾離はこちらの世界の骨董品や価値のあるものを見聞きする為に主にテイワットで見られない品を探していた。

鍾離「……。H・Lの品々は俺の理解が及ばない物もたくさんあるな。」

鍾離は店先に展示されているなんだかよくわからない造形の壺?瓶?を見ながらそうつぶやいた。

鍾離「この品…何らかの術に使用された形跡があるな、だが既に術に適さなくなって売りにだされたか…。こちらの置物は欠けてしまっているが強い氷元素を発生させている、異界産であるなら製造過程でなにか施したのだろうな…。この品が完全な状態であればかなりの価値になっているだろうに。」

異界人店主「兄ちゃん見る目あるなぁ~。兄ちゃんが指摘した商品は全部そんな感じの理由とかいわくつきの商品だぜ?特別高い品はうちは扱ってないってのに元々価値がある品しか手に取ってねえ。」

店主は鍾離の見識をみて驚いていた。店に並んでいる商品は大量生産品や中古品が多いうえに値段表記もされていない中、正確に高価な商品の元々の価値を言い当てていたのだ。

鍾離「俺は沢山の芸術品や書物を見てきたが、この場所では通用しない事があるからな。まずは勉強しようと思っているんだ。」

店主「あんたそんだけ分かるなら俺は十分だと思うがな…。で、買ってくれるのか?」

鍾離「この置物を貰おう。」

店主「んじゃ500ゼーロな。」(日本円で約6万程です。)

鍾離が代金を支払おうと財布を出そうとしたが…

鍾離「………?すまない財布を忘れたようだ。」

店主「うちはツケはやってねェぜ、それとも体バラして払うか?」

鍾離「……支払いはこれで頼む。」

鍾離はスティーブンに渡された魔法のカード(クレジットカード)は持っていたのかカードで支払う。

クレジットカードを渡された当初はなぜカードで支払いができるのかと思っていた鍾離だが、後から支払い請求がスティーブンに行くのだとレオナルドに説明された。一応現金も渡されたが相変わらず財布を忘れている…。

今までもモラを忘れては往生堂やタルタリヤが支配人をやっている北国銀行に支払ってもらっている鍾離。

まだ勉強中の為高い買い物をすまいと思っているようだが既に十分高い。

スティーブンが徐々に上がっていく金額について鍾離に問いただす時はいつか来るだろう…。

置物の支払を済ませた鍾離はライブラのオフィスへと向かった。

 

ーーーーーーーライブラオフィスにて

朝方の事故により首にコルセットをつけているギルベルトと言い合いをするザップ、レオナルドがいた。

ザップ「だからスカイフィッシュはカメラに映った残像なんだって‼」

レオ「そりゃアンタが肉眼で見てないから言えるんだよ~ウェ~ン‼」

ギルベルト「ご心配をおかけしましたね皆さん。何大した事はありません、私はこの通りウッ…‼」

2人「「あーあー、あーあーあー」」

2人が心配しているとギルベルトの携帯が鳴った。

ブブブブブブ、スチャ。

ギルベルト「…はい。」

???『お久しぶりですね、ギルベルト・F・アルトシュタイン。』

ギルベルト「これはこれはキャスリーン・ベイツメイド長、ご無沙汰しております。」

キャスリーン『聞く所によると貴方随分な大怪我を負われたそうね。』

ギルベルト「?はて何を仰っているのか私にはさっぱり。」

電話の向こうでキャスリーンは微笑んだ。

キャスリーン『下手な芝居はおよしなさい、クラウス坊ちゃまは隠し事の出来る方ではありませんでしょう。』

ギルベルト「…‼直接お電話をされたのですか⁉」

キャスリーン『ラインヘルツ家のメイド長として当然の事、勝手ながらヘルプの人材を派遣いたしました。』

ギルベルト「何と…‼」

キャスリーン『我々の仕事は完璧が旨、それでは宜しくごきげんよう。』

ギルベルト「………………‼」

話が終わったギルベルトが啞然としていると、鍾離がオフィスに帰ってきたが大怪我をしたギルベルトが目に飛び込んだ。

鍾離「⁉どうしたんだギルベルト殿その大怪我は…‼」

 

ーーーーーーニューアーク国際空港

ヘルサレムズ・ロットの目と鼻の先にある空港に一人の男が飛行機から降りてきていた。

???「嗚呼ヘルサレムズ・ロット、何と異様な街なんだろう…。」

???「うおおおおおおおおおおお‼やってやるぞおおおおおおお‼」

ラインヘルツ家特殊執事部所属ー

      『フィリップ・レノール』来日ーー

ライブラメンバーにギルベルトが派遣されてきたフィリップを紹介していた。

フィリップ「フィリップ・レノールです‼どうぞ宜しく‼」ズバ!

とても大きな声でフィリップは自己紹介をした。

レオ(なんか超声デカイ人来た…‼スゴイ圧の人来た…‼)

ギルベルト「レノール氏には補佐の形で入って頂きます、御用向きがある場合は従来通り私にウッ…!」

2人「「あーあー、あーあーあー。」」

クラウス達が心配してギルベルトに駆け寄る。

フィリップ「大丈夫ですかミスタ・ギルベルト‼」

ギルベルト「大丈夫です、大丈夫です。」

レオ「いや全然大丈夫じゃないですよね?程遠いですよね?」

フィリップ「ミスタ・ギルベルト‼補佐と言わず全ての業務をこのフィリップにドンとお任せを‼キャスリーンメイド長はそのつもりで私を派遣されました‼その為のコンバット・バトラー(以下C・Bと表記)です‼」

またも大きな声で喋るフィリップに近くで聞いたザップは少し耳を抑えていた。

ザップ「声でけえなー」

鍾離「かなり勢いのある御仁だな。」

フィリップが言ったC・Bについてレオナルドが聞き直した。

レオ「え?何…?」

フィリップ「何ってC・Bです。」

レオ「…戦うんすか?」

フィリップ「ええ、必要とあらば‼」

そうして派遣されてやってきたフィリップはギルベルトの代わりに日常業務を開始した。

 

クラウスがパソコンで業務をしていて一息つこうとギルベルトに声を掛けようとしたが、

クラウス「ギルベルト、お茶…」

フィリップはクラウスが声を掛ける途中に紅茶を準備してクラウスに提供する。

フィリップ「失礼いたします。」

クラウス「!………。」

用意された紅茶をクラウスが飲むと気に入ったのかそのまま一息ついた。

スティーブン「紅茶をか⁉あのクラウスが⁉ギルベルトさん以外のを⁉この前の鍾離の紅茶に引き続き2人目か⁉」

チェイン「………………!」こくりとうなずくチェイン。

スティーブン「…こりゃあ相当だぞあの男、さすがラインヘルツ家直接派遣。」

ドタドタドタドタドタ…バターーーーン‼

慌ただしい足音と共にドアが開き左腕に大怪我を負ったザップと心配するレオナルドとソニックが駆け込んで来た。

そんな大怪我を負っているザップを見たチェインはザップの頭目掛けてお盆を振った…。

チェイン「たあ~っ‼」パゴクン!

レオ「何で⁉」

チェイン「ゴメン‼今のは悪かったわ‼弱ってたから…つい…‼」

床に倒れこんでいるザップに駆け寄るレオナルドとソニック。

レオ「ザップさんしっかり‼」

(いやーもの凄いな何一つ理解できないぞ…‼)

そんなやり取りをしているとフィリップが救急箱を持って駆け寄ってきた。

フィリップ「医者を呼びました、到着まで応急処置をしますね‼」

てきてきぱきぱき。

レオ「お、おお~…。」

色々な事が起きながらフィリップは有能な仕事ぶりを見せていった…。

ーーーーーーーーーー

半ば休暇状態のギルベルトはザップ、レオナルドとモ○○ンをしていた。

鍾離はゲームのやり方がまだわかっていないので傍で見学している。

カチャカチャカチャカチャ。

ギルベルト「何と、それは素晴らしい。さすがはベイツメイド長、性格は少々強引だが仕事に対する目に狂いはありませんな。」

ザップ「何呑気な事を言ってるんすか、専属執事の座を奪われちゃうかも知れないんですよ?」

ギルベルト「はっはっは、それは困りますなぁ。」

レオ「全然困ってるふうに言ってないじゃないですか、穴しかけまーす。」

鍾離「む?先ほど見た場面と似ているなそろそろ移動するのではないか?」

ギルベルト「より良い仕事の為になるならそれもひとつの選択です。おっと鍾離様大正解です対象T-2に移動してます、宜しくお気を付けて。」

ギャキエエエオオン

ギルベルト「お、はい尻尾落としました、剝いじゃって下さい。」

レオ「おおお‼」

ザップ「いけいけいけいけ!ウヒョウヒョウヒョウヒョ!」

レオ(ギルベルトさんは不思議な人だ。何というか起こるがまま、起こされるがまま、何かと衝突した所を見たことがない。

もうそれは言っちゃうと存在感がないレベル。ホータイグルグル巻きなのに居ても居なくても分からないぐらいいつもスッとそこに居る。ホータイグルグル巻きなのに。)

 

ーーー翌日

レオナルドはフィリップを連れて街中の案内と注意点の説明をしていた。

ブシュァァァ、ぞろぞろ

レオ「あっちが『永遠の虚』方向です。グイグイ落ち窪んでく割には抵抗なく進めますが近寄り過ぎるのは禁物です。公共交通機関でも赤文字で行先表記されてる所は生還率33.33パー割るって事ですから乗らないで。」

フィリップ「凄いですねレオナルドさん‼H・L…聞きしに勝る場所だ、本当に今までよくぞ生き残られました!」

レオ「いやいやいやいや、言うてもどこもかしこもそこまで危険つー訳じゃないんですよ。路地一本入るとヤバいってのはゴマンとありますけどけっこうフツーの人も沢山暮らしてますし。」

移動しながらレオナルドはフィリップを行きつけの店「ダイアー」に案内した。

からーん

ビビアン「おーうレオ‼」

レオ「ね、ココなんかはフツーの店でしょ?コーヒー美味しいんですよ。」

ビビアン「何々?レオの会社の人?」

フィリップ「あ、私先日からライブ…」

慌ててフィリップの言葉を遮りレオナルドが喋る。

レオ「…パフォーマンスをはじめますよーブルース…。」

ビビアン「そうなの?」

レオ「え?何が?」

ビビアン「いいよ?するんでしょ?ライブパフォーマンス。」

レオ「あ~いえ…その…。」

ビビアン「何だよ、レオもとうとうこの街の瘴気にやられちゃったか…主に脳方面が。」

レオ「すいません全部聞こえてるんスけど。」

誤魔化す様に喋るレオナルドを見るフィリップ。

フィリップ「まずかったですか⁈」

レオ「すいません、ライブラの名前はあまり口にしない方が。」

コーヒー代を払い店を出るとフィリップに説明を始めた。

レオ「けっこう恨み買ったり鬱陶しがられたり警戒されたりしてるんですよね、やっぱり大人しくしていた方が無難です。」

そこへ異界人がレオナルドへぶつかり通り過ぎようとする。

異界人「おっと」

フィリップ「て、いや待ちたまえ‼」

異界人「…何でぇ」

フィリップ「何でぇじゃない‼今彼からスリ取った物を返すのだ‼」

異界人「あ?何を言ってるのかわからねぇな。」

異界人は銃を取り出しフィリップに銃口を向けるが、フィリップは素早く接近し銃を弾き飛ばし足払いをしかけ異界人を投げた。ダン!

腕を絞め上げられた状態の異界人は降参した。

異界人「ま…‼待てっ…‼わかった‼返す…‼返しますから‼」

異界人はレオナルドの財布を置いて逃げ出していった。

レオ「すいません有難うございました。」

フィリップ「いえいえ。」

レオ「いやしかし流石ですね、あの体裁きC・Bの呼び名は伊達じゃないですね。」

フィリップ「これは序の口です重火器の使用まで至らずラッキーでしたよ‼」

レオ「あー…あははは…。」

フィリップ「しかし大丈夫なのですか?あんな事がしょっちゅうじゃ財布と身が持たないでしょう実際。」

レオ「あ、それはですね。」

レオナルドは袖口、靴底、ポケットに縫い付けて隠していた紙幣をフィリップに見せた。

フィリップ「………………。」

レオ「色んな場所に分散させてるんですよ、ちなみに財布はブラフで小銭しか入ってません。」

フィリップ「…つまりレオナルドさんは…盗みに逢うの前提で?」

レオ「はい、トラブってもっと危ない話になっちゃうよりはマシかと。」

フィリップ「………………。」

レオ「ああっ!何か凄く理解出来ないという顔に…‼」

 

ーーーーーーーー

ライブラのオフィスでギルベルトは大量のモニターをコンソールで操作していた。

フィリップ「ミスタ・ギルベルト‼」

フィリップに声を掛けられたギルベルトはコンソールを隠し棚の中へ収納する。

カチャ、ズゥーㇺ。

フィリップ「また隙を見てお仕事されてましたね?お体に障ります、安静になさって下さい。」

ギルベルト「あはは、いや…ありがとう。」

フィリップ「✧……今のは⁉」

ギルベルト「ほっほっほ凄いでしょ?私個人の作曲用シーケンサです。」

フィリップ「まさか!隠さなくてもいいではないですか、ライブラの指令伝達システムですね?ニコニコ」

ギルベルト「……まあそうですが、そんなニコニコされてもこの仕事は貴方に任すことは出来ませんよ?」

フィリップ「何故ですか⁉すぐに覚えてみせます!」

ギルベルトは真剣な眼差しでフィリップに告げた。

ギルベルト「そうじゃなくて危ないんです。」

フィリップ「は?」

ギルベルト「ライブラの全貌を知れば貴方の脳に億単位の価値が付きます。人間人外問わず魑魅魍魎の犯罪者や私的公的機関が貴方を追い回すでしょう。」

フィリップ「ならば退ければいい!その為の戦闘訓練は受けています!」

ギルベルト「まさか、連中が本気になれば人界の技などほぼ通用しませんよ。重戦車の中の特殊部隊が心臓だけ抜かれて見つかる街です。」

フィリップ「……力不足…ですか。」

ギルベルト「いかにも。」

フィリップ「……理屈が通りませんね。」ギルベルト「?」

フィリップ「この町で私が力不足なら貴方はどうなのですか?レオナルド少年が出入りしている理由は?私を排除したければそう仰ればいい!現在の職にこだわって居る様にしか見えませんな!」

言葉を言い放ったフィリップはハッとした表情をしギルベルトに謝罪した。

フィリップ「…ッ‼あ…失礼しましたッ‼」

ギルベルト「いいんですよ、君のその真っすぐさは美徳だ。仰る事も理解できます。だが正面からぶつかる事が闘いの全てではない。」「レオナルドさんと一緒に行動してその様子はいくつか目にされたのではないですかな?そしてどうか信じて頂きたい、私とて単なる虚栄心でこの場に居座っている訳ではありません。見た目以上に厄介なんですよこの爺は。」

「‘’殺しても奪い取ろうとする者‘’に対しては特にね…。」

 

ーーーどこかのバー。

ダン!

フィリップ「全く‼」

女「

やだもー怖いー一体全体どうしちゃったんですかぁ?」

フィリップ「あ、いや…申し訳無い。」

女「きゃー何か真面目ーかっこいいー。でもあんまり溜め込んでもいい事無いんですよー?飲みましょう?あたしバカだからちょっとマズイ愚痴とか言っても大丈夫だよ、覚えてられないの‼」

女の言葉に気を良くしたフィリップは酒をどんどん飲んでいく。

フィリップ(ずっと憧れだった、伝説のC・B『ギルベルト・F・アルトシュタイン』。私がラインヘルツ家に召し上げられた時彼は既にヘルサレムズ・ロットに渡った直後だった、三男のクラウス・V・ラインヘルツ氏と共に。)

(世界の均衡を守る秘密結社ーーー侯爵の血を引くもの自らそんな現場の赴く事を疑問視する声もあったが、護らねばならぬものとそれを為せる者が限られている以上これこそがまさにノブレス・オブリージュ〈高貴に付随する義務〉だろう。

…手助け出来るものと思い込んでいた、だが現実は…)

フィリップ「…くそッ」

そのままフィリップは眠ってしまい酒場だと思っていた場所がどんどん形を変えていき終いにはフィリップを飲み込んでしまった。

???「やったか。」

???「…ああ。」

昼間の異界人「存外あっけなかったな、お前を使わずに薬で眠らせれば良かったか?」

飲み込んだ異界人「ケッ…シケた野郎だ。いいかボコボコにされた相手を指ひとつ動かさず拉致出来んだぞ贅沢を言うな。待っとけ今脳の中覗いてやる、一族野党までなぶり殺そうが自由だぜ。ケケケケ」

グチョグチョ

飲み込んだ異界人「…オイ…オイオイ。オイオイオイッ‼オーーーーイ!!!この男ライブラの関係者じゃねえか‼冗談じゃねえ俺は降りるぞ‼」

昼間の異界人「何だと…⁉どおりで…‼…いや…吸え‼もっと情報吸え‼」

飲み込んだ異界人「嫌だよヤバいよ‼」

昼間の異界人「ライブラに恨みを持ってる奴らはゴマンと居る、売っ払うんだよ‼高値で‼」

 

ーーー翌朝

フィリップ「お早うございます。」

スティーブン「…お早うございます。」

ザップ「チース。」

レオ「ざやーす。」

チェイン「……。」ぺこり。

鍾離「おはよう。」

そのままフィリップは奥の部屋へと進んでいった。

隠し棚のコンソールを操作しようとした時!

ギルベルト「お待ちを。そのコンソールに触れる事は許可していない筈です、今すぐ離れて下さい。」

ト…ト…トト…トト…

ギルベルトは声を掛けながらフィリップの背中に触れモールス信号で問いかけた。

ギルベルト『何かありましたね?何者かに脅されている場合は左手で顔を触って下さい。』

フィリップは覚悟を決めたかの様な顔をして左手で前髪を上げるとそこにはあるべき目が無く杜撰な手術痕があった。

ギルベルト『脳抜き…。これはまた厄介な技に引っ掛かりましたね、あなた自身(脳)はどちらに?』

『…といっても分かりませんか。…コンソールに座って今から貴方にアクセス権を与えます。』

フィリップ「…………‼」

ギルベルト『…自然に‼』

ズウーㇺ、スチャ。カチャカチャカチャカチャ…。

ギルベルト『構いません、慌てず文字を追って。』

 

ーーー某所倉庫街

そこに機械に繋がれた瓶付のフィリップの脳があった。

異界モブ1「ウッハァ!!来たぜオイ!!ライブラの情報〜!!」

モブ2「こりゃあ大事件だぞ、奴らが本当に怖えのは全体像が全く掴めえ事…!!それを俺らが握りゃあ売るも潰すも自由自在よ…他の勢力に流してイイ感じに殺し合わせれば二重に大儲けだ!カカカカカカカ‼」

ブン!フィリップ「カ!?」

突然フィリップから送られて来ていた映像が途切れた。

モブ3「…あ⁉」

モブ1「…何だァ⁉」

映像が途切れたのはギルベルトがフィリップ(体)を気絶させた為だった。そこには突然呼び出され冷や汗をかいているレオナルドもいた。

ギルベルト「…脳抜きの遠隔操作が途切れるのは珍しくない、その間本体脳に納められた情報も吸い上げる事は不可。お願いしますレオナルドさん『神々の義眼』で彼の脳を追尾して下さい。」

レオナルドはフィリップの顔を覗き込んだ。

レオ「うわぁ雑な手術だなぁ…、でも対になってる片方の目を残したのは失敗だったな。」

キイィィィィン。

クラウス「私が往こう✧」

ギルベルト「ご遠慮下さい坊ちゃま。」

クラウス「……‼」

ギルベルト「彼の立場になってお考え頂きたい。自らのせいで主の手を煩わせてあまつさえ危険にまで晒したとなれば、彼は一生その惜念と共に生きてゆかねばなりません。」

ギルベルト「ご心配なく彼は必ず奪還いたします、これは確定事項です。」

様子を伺っていた鍾離はクラウスと話し終えたギルベルトに声を掛けた。

鍾離「ギルベルト殿、俺は同行しても構わないだろう?彼には俺も世話になっているからな。」

ギルベルト「鍾離様…、お願いいたします。」

そうして地下にある車にフィリップ(体)を運び込み乗車しているとザップが割り込んできた。

ガチャ、バタン!

レオ「わ⁉ザップさん‼」

ザップ「水臭えな、こういう時は言ってくれねえとギルベルトさん。」

ギルベルト「…申し訳ありません、丁度お声をおかけしようと思っていた所です。」

レオ「なんだよ~‼カッコつけてるヒマがあるならフィリップさん運ぶの手伝ってくれよSS(シルバーシット)先輩~‼鍾離さんは何も言わずに手伝ってくれたんだぞ~‼」

ザップ「アレー?何だコイツ死にてえのかなコイツー。」

鍾離「二人とも俺を間に挟んで喧嘩をするのはやめてもらえないか…。」(座席の真ん中になってしまった)

そうしてメンバーを乗せギルベルトは車を発進させた。

ドギャギャギャ!

 

ーーー工場内

映像が長く途切れている事に異界人はキーボードを乱暴に叩いた。

ガチャン‼

モブ3「ダメだこりゃあ…‼おそらくバレてる…‼どうする!?コイツもう殺っちまうか…⁉」

そうしてフィリップ(脳)に銃を突きつける異界人。

モブ2「バカヤロウ一部でも虎の子のデータが入ってるんだぞ‼それに一体いくらしたと思ってるんだ…‼」

凄腕異界人「……大丈夫さ…『脳抜き』の遠隔操作はトレース不可だ、どうという事はねェ。」

フィリップは気絶している最中絶望していた…。

フィリップ(…もう駄目だ…。まさかこんな事が起こるなんて想像の外だった…、ミスタ・ギルベルトの言葉は正しかった。)(僕はこのまま放置されて化け物どもに殺されるだろう、文句は言えない。いやもしかしたらライブラそのものに消されるのかも…どっちにしろ『ジ・エンド』だ…。)

フィリップ「…う…う~ん…」

モブ1「目が覚め(回線が回復し)た‼」

目が覚めたフィリップの目には中指を立てるゴーグルをした

レオナルドが映っていた。

モブ2「なんだこのガキは?」

モブ3「おい!邪魔するとおまえ自身が吹っ飛ばされると言ってやれ‼」

異界人たちが騒いでいるうちにギルベルトが喋りだした。

ギルベルト『聞こえますか?荒くれもの(バットアス)達、貴方がたには3つの選択肢があります。』

①今すぐ彼の脳を開放してその場から立ち去る。

②我々と戦い彼の脳を奪還される、これは決着がつくまで貴方がたに犠牲者がでます。

③貴方がたが彼の脳を破壊する、その選択をした場合貴方がたは皆殺しになります。

異界人たち「「「「………。」」」」

ギルベルト『これは脅しではなく一人の例外もありません、全員探し出して八つ裂きにします。…私は①をお薦めいたします。』

ギルベルトの話を聞いた異界人達は一斉に笑い出した。

どっ!

モブ1「ひゃーーーっ‼…おっかねえーーー‼」

モブ2「こんなにデカイ口を叩いた奴は初めてだ!」

モブ3「お花畑にも程があるぜジジイ!返り討ちにしてやるから早く来い、来れるもんならな!」

ギルベルト『①番を捨てるのだな、愚か者どもが。』

普段聞いた事のない恐ろしいギルベルトの声が響いた。

ギルベルト『私は警告した、命乞いは聞かぬぞ…。いいか貴様らは私を怒らせている。』

『我が同胞拉致・改造した罪、貴様らの臓物と血で贖って貰う。繰り返すぞこれは脅しなどではない、確定事項だ。』

ギルベルトの宣戦布告を聞いた下手人達は部下たちに大量の武器を構えさせ待ち構えた。

レオ「あそこです!あの工場…!」

レオナルドの言葉に目標を定めたギルベルトは車の武装を展開させる。

バシャ!ジャキ!ジャキ!ジャカ!

レオ「…⁉マジ⁉ノーブレーキ⁈」

そのまま工場の扉へとノンストップで進んでいく中で、次々と武装が火を噴いていく!

 

ヴィセラルインダストリ製プラズマカッター!! 

 

こちらのカッターで扉を切断。

パギャン‼

工場内に突入すると、

 

ベセスダファイアアームズ製デスカリバー50!!

 

ガトリング砲から銃弾が手下達をハチの巣にする!

ドシャン!

ザップが血法をノズルを通して車外に出し巨大なブレードに形を変え、そのまま車体は旋回し周りにい手下たちを一刀両断する。

後ろから銃を撃ってこようとしていた手下たちに鍾離が元素スキルの石柱を横一直線何本も発生させて壁にする。

鍾離「気にせず進んでくれギルベルト殿。『難攻不落‼』」

ギルベルト「助かります…!」

ザップ「どっちだ…⁉」

レオ「右です‼」

レオ「あった…‼あそこです‼あの2階…‼」

ギルベルトはレオナルドが指示した場所へプラズマカッターを発射する。

ヒュヴパァン!!

プラズマカッターが命中し、部屋が崩れ落ちていく中フィリップ(脳)を発見したザップはブレード状にしていた血法を腕の形にして伸ばすがあと一歩の所で凄腕の異界人に奪われてしまう。

ザップ「くそッ‼」

そのまま凄腕は窓から飛び出し同時に出てきたトラックの上に飛び乗る。

凄腕「はははははは!」

異界人は高笑いしながら逃走しようとしてる。

ザップ「済まねぇ。」

ギルベルト「仔細ありません。」

フィリップは脳が入っている瓶を振り回されている為かなり息が上がり顔が真っ青になっていた。

フィリップ「はっ…はっ…はっ。」

レオ「大丈夫です、フィリップさん。僕ら地獄の底まで追いかけます、見失うことはありません。何より…こんなおっかないギルベルトさんを見るのは初めてです。」

バイクで追跡してきていた手下達にギルベルトは車を操作し一瞬標的を定め武装で撃ち抜いていく。

ドタタタタタタタ!ドガァアン‼

だがそれでも後ろから大量に追ってが来ていた。

鍾離「後ろからの追ってはそろそろ終わりにして貰おうか…。『天道万象‼』」

鍾離の神の目がひと際輝き追手に向かって隕石が落下していく…!

異界人たち≪ええええええええええええ!!!嘘だろう⁈≫

追手達に隕石は直撃し大量の石像が立ち並んだ。

ザップ「…えげつねェ、隕石…。」

レオ「…最近見て無かったけどやっぱりやべェ、隕石やべェ…。」

フィリップ「…………。」

鍾離(旅人とパイモンにも隕石やばいとよく言われているが、そこまでやばいのだろうか…。)

非常食『当たり前だろ⁉』旅人『どうしたのパイモン?急に叫んで…。まだ食べたりない?』

テイワットの稲妻城内にて団子牛乳を飲んでいた相棒兼非常食が何かの電波に反応していたとさ…。

ギルベルト「…ですがこれで後続は気にならなくなりましたね。」

だが前方で逃げている凄腕がトラックからミサイルを発射しようとしていた。

凄腕「まだるっこしいわ‼全弾発射だ‼」

レオ「何すかあれえええ‼」

レオ、ザップ「「わわわわわわわわわわわ」」

ギルベルトはハンドルを操作し車体を斜めに浮かせ飛来するミサイルの間を通り抜けた。

2人「「わわわわわわわわわわ」」

ミサイルは後方で大爆発を起こし車体は難なく着地した。

だが凄腕はさらにつんであったコンテナを崩し落下させて来た。

鍾離「これは⁉シールドで防御しては速さが落ちて取り逃がしてしまう…‼」

ギルベルト「…大丈夫です鍾離様、少し揺れます掴まって下さい。」

ギルベルトはハンドルを右左半分の形に変えると車体もまた変形を始め、

余分な武装や装甲を落としていき車体はスピードに特化したフォルムに変化した。

車はコンテナの僅かに残った隙間を走り抜けた。

ゴガガガガガガガン…。

前方を逃げていたトラックに追いつきプラズマカッターを放った。

パガン‼

レオ「やった…‼…て脳‼脳どうすんすか‼一緒に吹っ飛んで…‼」

レオナルドは視線を上に向けると凄腕が4本の腕で脳を抱えて刃を振り下ろしていた。

【⁉】

振り下ろされた刃はギルベルトを頭から縦に斬れ込みをいれてしまう。

レオ「ギ…ギギ…ギ、ギルベルトさああん!!!」

ザップ「!!…」

鍾離「‼…」

凄腕「カヒッ…」ニタリ

だが頭から斬られたはずのギルベルトはしゃべりだした。

ギルベルト「勝ち誇るな三流め。この程度で…私を殺ったつもりか、笑止だな。貴様の斬ったものはせいぜいがこの包帯ぐらいなものだ。」

凄腕「⁉」

凄腕は驚き後ろに飛ぶが、

ギルベルト「再生者〈レゲネラトーラ〉に挑んだ事、地獄で悔いるがいい。」

異界人は車の銃口に撃ち抜かれ落ちてきたフィリップの脳をザップが血法でキャッチした…。

これにて奪還作戦は終了したのであった。

ーーーーー翌日、病院にて

フィリップとギルベルトは入院していた。

フィリップ「そういう力〈再生者〉があるならそういう力〈再生者〉があると仰って頂かないと…。」

ギルベルト「はっはっは、いやすいませんね。」

フィリップ「では…背骨を傷めたというのも何かの芝居なので…?」

ギルベルト「いいえ、これは本当。致命傷の際かろうじての命を繋ぐ為休息再生するだけで後は老人です、じわじわと治るだけです。」

ギルベルト達が会話している横でまたザップ達がモ○○ンをしており、鍾離だけでなくクラウスも観戦していた。

ギルベルト「この街の総合裏医療が無ければ完治までもう何倍もかかっているでしょうなぁ。痛みは続くしそう便利なものでもありません……。でもね、私はこの体をけっこう気に入っていますよ。何故ならクラウス様のお傍で執務を全うできますからね。」

フィリップ「……今回は本当に勉強になりました。何というか強さというのは1種類では無い事を痛感したというか…僕はまだまだです。

ギルベルトはフィリップを優し気に見つめた。

ギルベルト「…時にフィリップ殿。」

フィリップ「はい?」

ギルベルト「貴方なかなかこの街向けの顔つきになれられた。」

フィリップの顔は手術痕を隠すため左半分に銀の仮面を付けていた。

ギルベルト「どうですかな?改めて正式にライブラの仕事に就くというのは。」

フィリップ「いえいえいえいえいえいえ、い~えッ‼」

こうしてフィリップ(脳)誘拐事件は本当に幕を閉じた。

その頃ギルベルトが入院中のライブラオフィスでは…

クラウスが楽し気に食器洗いをしていた、隣では鍾離がお皿を拭いている。

レオ(クラウスさんは誰も居なければそれなりに何でもこなすんだよなぁ…。)

 

ーとある執事の電撃作戦ー終幕。




如何でしたでしょうか?
今回のお話では鍾離先生にはゲーム内では出来ない元素スキルの使い方をしていただきました。
カッコイイと何処か抜けている鍾離先生が好きなんです…。


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自称凡人、斗流の師匠と弟弟子に出会う。

今回のお話も原作沿い”Zの一番長い日”のお話となります。


異次元からの客人鍾離はライブラオフィスにて、

レオナルドにある動画を見せてもらっていた。

鍾離「この携帯とやらもすごいがこんなに詳細に当時の記録も残せるのだから異界の技術力はやはり感服するな。」

レオ「いやいや、携帯とかパソコンはこの地球の技術力ですよ。まぁ異界技術も加わってすごいことにもなってますけど…鍾離さんの世界には確か写真はあるんでしたっけ?」

鍾離「あぁ、フォンテーヌという水神が治める国で開発されたものがあってな。あの国では色々な開発を進めている技術者が多い。」

鍾離がレオナルドと一緒に見ていたのはH・Lの3年前の映像だった。

そこにフライドチキンを食べながらザップがやってきた。とても気になる状態で…

ザップ「オウなんだ、随分懐かしいなぁ〜それ。」

レオ「でしょ?最近高画質版がアップされたんで鍾離さんと一緒に見てたんすよ。」

ザップ「おお〜細かく映ってんじゃんタコ足。」

鍾離「このヘルサレムズ・ロットの外にはこのような存在が住みついているのだな…。」

レオ「………………。」

レオナルドは鍾離と一緒に映像を見ているザップのある部分がとても気になっていた…。

 

元ニューヨーク「ヘルサレムズ・ロット」

一夜にして崩落・再構築され異次元の租界となった街。

地球上最も危険な場所にして異界の境界点となったこの場所には

ゲート以外の外からの侵入を拒むある種の防衛システムのような恐らく生物が存在しているのだった。

 

ザップは動画を見てからとてもユニークなタコの絵を書いてレオ達に見せていた。

レオ「いや、いやいやいやいや。古代インドか‼」 

鍾離「ふむ、とても個性的だな…。」

ザップ「いやでもよ〜?この街の周りって滝みたいになってんじゃん?つか底なしって話じゃん、そこからタコ足だぞ?」

鍾離「H・Lの外はそのようになっているのか?実際に見てみたい気もするが。」

レオ「いや鍾離さんいま気にするとこそこじゃないっす。」

ザップは書いた絵を持って力説している。

ザップ「あながちありえなくもなくねぇか?マジで!」

レオ「……………。この時代にいきなり紀元5世紀の世界観に揺さぶられるとは…。」

そしてようやくレオナルドはザップのある部分についてつっこんだ。

レオ「てゆーかヤバくねぇすかその腹!」

そう、ザップのでっぷりとした腹部に対して…。

ザップ「何がだ陰毛アタマ。」

レオ「いや何がだじゃなくて…。」

鍾離「気にはなっていたが、ここ最近かなり不健康な生活をしていたようだか…。」

するとザップのお腹の上にソファと挟み込む様にしてチェインが現れた。

ザップ「あだだだだだだだだだ!?」

突然現れたチェインに鍾離達が驚いているのをよそにチェインはザップのお腹の上から降り振り向いた。

ボイン!くるくるくる、スタっ。

チェイン「素敵メモその一。」

チェイン「ケンダッチーフライドチキンパークアベニュー店店員、アンジェリカ・ライアン。」

チェインはそのままプロフィールを読み上げているがザップが慌てていた…、そしてレオナルド達は察した。

レオ「……そっすか、そういう事すかその腹。」

鍾離「………貢いていたのだな。」

ザップ「テメェふざけんなよ、ストーカーか‼」

チェインに対してザップは叫んだが…

チェイン「失敬な、あたしは友達のアンジェリカから変なエロチンピラに絡まれてるって相談を受けただけだよ。」

ザップ「何!?」

ザップはチェインの言葉にかなり動揺していた。

ザップ「い、いいいいいい犬女、お前アンジェリカたんと知り合いなのか?!めっめめめめめめめメアド‼」

チェイン「教えるかバーカ‼」

興味を無くしたのか動画の続きをレオと見始める鍾離…

またそんな騒ぐ2人を尻目にクラウスとスティーブンは打ち合わせをしていた…。

ザップ「つれねえ事言うなよチェイン様よう〜、そうだそのチンピラ俺が追っ払ってやんよ!」

チェイン「ハァ?!どう考えてもあんたの事でしょうが‼脳みそかき出してグミでも詰めときなさいよゾウリムシ‼」

そんな時ザップは言いようがないような強烈な悪寒に襲われた。

ピキィィィィィィン…ゾクゾク…

ザップ「ん?!」

レオ「何すか?」

ザップ「オ、オウ。さっきから寒気がな…。」

鍾離「風邪でも引いたのか?」

レオ「いやいや、何とかは風邪を惹かないって言いますし。」

ザップ「喧嘩売ってんのか!?」

その側でスティーブンは緊急連絡を受けており驚いた顔をしてザップの方を見た。

ザップ「…?」

スティーブン「いや動物的勘ってやつか、お前やっぱり凄いなと思って。」

ザップ「え?」

疑問に思うザップにスティーブンは緊急連絡の内容を教えた。

スティーブン「たった今牙刈り本部から連絡があった。インドで血脈門の開放を確認との事だ。」

鍾離「血脈門?」

スティーブン「血界の眷属(ブラッドブリード)御用達の空間連結術式。」

その頃血脈門を越えて血界の眷属(ブラッドブリード)とある存在がヘルサレムズロットへとやってきていた…。

ーーー

要請を受けたライブラメンバーと鍾離は移動を開始していた。

スティーブン「目標は半身欠損状態まで追い込むも今尚交戦状態のまま移動中、断片情報のみだが精度は高い。」

ザップはバイクで移動しており通信でスティーブンに疑問を問いかけた。

ザップ「何で断片情報何すか、《牙刈り》本部から何でしょ?」

スティーブン「………最初のエンカウントはインド国軍グワーリヤル空軍基地、3時間前に封鎖された。中はグールだらけで手の付けられない状態だそうだ…。」

ザップ「はあ…。目撃者が皆《転化》しちまってんじゃ仕方ねぇか…、しかし基地丸ごとって…。」

スティーブン「あぁ、相手はかなり上位の存在らしいな。滅殺を諦めてクラウスによる封印を敢行するとの事だ。」

スティーブンの話を聞いていたザップはまた謎の寒気に襲われていた。

ゾクッ

ザップ「…?!…そんな大物一体誰が追ってるんです?」 

スティーブン「分からん。」

別に移動していたKKから通信が入った。

K「こちらKK、見つけたわ。フラットアイアンディストリクト南パーキッソスビルのカフェ《空中楼閣》よ。」

KKが発見した先ではビル上での激しい戦闘により大量の瓦礫が道路に降り注いでいた…。

ガガガガガガガドドドドゴガァァン!!

HLPD「退避‼退避ーッ‼」

HLPDの機動装甲部隊が一般市民を避難させていると上空から落下してきた物体が隊員の一人に激突し止まった。

それは大きな杖を持った骨の被り物をした恐らく人類種だったが、その人物に向かって襲い掛かってくる者ががおり避難の完了していない一般人とHLPDを巻き込んで戦闘を開始した。

ガン、ドカン、ゴン、バゴン!

K「…あーあ、ちょっとスティーブン先生早くしなさいよ。バケモン同士のじゃれあいだけでポリスーツ(機動警察)がバタバタ吹っ飛んでるわよ…ハッ⁉」

連絡していたKKの目に車内に取り残されて大泣きしている子供と頭を打ったのか気絶している母親がいた。

KK「ちッ!」KKは車に駆け寄り子供に声を掛け助けようとすると、

KK「ドアから離れて‼耳塞いでなさい‼」

ヒュウ!

KK「⁈」

戦闘していた化け物達がKKがいる場所まで接近していた!

戦闘の余波巻き込まれる前に何とか親子を助け出す事ができたKKだが、大量の吹き飛ばされた車が迫ってきていた。

ゴガギコギン!ドドドドドド!

鍾離が元素スキルで発生させた何本もの石柱とスティーブンの氷の壁がKK達を守った!

KK「ドンピシャ過ぎるよなんかムカツク。きっと陰でタイミング測ってたんだわそーなんだわ。あ、でも鍾離っちはナイスタイミングよ!」

スティーブン「あれ、おっかしいな。褒められこそすれ罵倒される流れじゃ無いと思うんだけど。しかもそれ差別だよ。」

鍾離「遅くなってすまない、KK。」

KK「鍾離っちは大歓迎よ‼だ・げ・ど、ま~た~あ~な~た~⁉」

スティーブン「だからそれ差別…。」

ドシャーンガシャーン!

スティーブン「…。さあさあもう様子見も限界っぽいし行こうじゃないか‼ね?KK…‼」

3人の前には全身コートの人物と骨でできた被り物をした人物がいた。

骨の被り物をした人物は下半身が無いようだ。

KK「で…どちらが敵…?あんた半身欠損って言ってたわよね…‼だったら断然アッチでしょ。」

スティーブン「いやでもこの街において見かけで判断するのもどうかと思うんだよKK…‼」

2人がどちらが敵か判断しかねている時鍾離は元素視覚を使い敵を見ていた。

鍾離「…2人ともおそらくコートの男が敵だ。」

スティーブン「その根拠は?」

鍾離「元素視覚で観察した。あの被り物をした人物からはザップと似た元素反応を発している、関係者だと思うのだが。」

KK「う~んレオっち見たいにオーラは見えなくても似たものは見れるんだっけ。」

鍾離「属性が在るものならな、ザップも炎の血法を使うからか炎元素の反応を常に少し出している。かなり集中しなければ見えないレベルだが。」

スティーブン「それってまさか…後で詳しく聞かせて欲しいねその元素の話…。今はともかく…‼」

3人はコートの男に一斉に攻撃を仕掛けたが骨の被り物をした人物は別方向に向かってしまう。

ゴッ‼

スティーブン「え⁈」KK「は⁈」鍾離「何⁈」

ガガガガガゴギャァン‼

3人の攻撃でブラッドブリードは動きを封じられたが、もう一人の人物の向かった先にはザップがいた。

ザップ「ぎゃあああああああ!!!」

鍾離「ザップ⁈」KK「え~⁈」スティーブン「やっぱりそうなのか⁈」

その人物はザップの首元を掴み上げ空中に浮かせていた。

ザップ「カンベンして下さい師匠ォォォォォォォォ!!!」

3人がザップを締め上げている光景に気を取られている間に敵が攻撃機関を自切し脱出してしまう。

3人≪しまった!!≫

鍾離すぐさま2人の前に立ち元素スキルでシールドを張ろうとしていると、下半身のみで攻撃しようとしていた敵を攻撃した人物がいた。

どっん!シャアッ。パリッ!

???『斗流血法・カグツチ「刃身の百壱焔丸__三口」穿ッ牙七獄五劫(うがつがしちごくごこう)

ゴォ‼

KK「ヒューッ!!…お見事!!」

鍾離「…いやまだ再生している…!」

スティーブン「構えろ2人とも…‼もう数撃見舞うぞ…‼」

だが既に次の攻撃は繰り出されていた。

シャアァ。

???『斗流血法・シナトベ「刃身の弐、空斬糸」龍がらめ天羽織(たつがらめあまのはぶき)

ゴヴォッ!!!キイァァァァァァァァ!!!

鍾離(一人で炎と風の元素反応を…この御仁、相当な強者だ…。)

スティーブン「………伝説の2重属性使い…参ったな本物中の本物じゃないか…。」

ぎゅば!どさッ!

スティーブン「…これは…!?真胎蚕(ツェンタイダン)?」

???「シャシャァ

ザップ「いかにも、文献でようやく知るレベルだろう腐れ小童どもめ。これが血界の眷属の最終自閉形態じゃ、せいぜいその憐れな大きさの脳に刻み込んでおけ。」

大分ムカつく言葉を発した吊るされているザップにスティーブンとKKは睨みつける。

ザップ「違うんすよ‼俺は通訳してるだけっす‼何ひとつ盛ってないっす…‼」

ーーー

ひとまず他のメンバーも合流し挨拶をする。

スティーブン「お初にお目にかかります”血闘神”斗流血法創始者『裸獣汁外衛賤厳(らじゅうじゅうげえしずよし)』殿。」

(以下師匠と表記。)

師匠「ジャシャシャシャシャ

『世辞はいい、一瞬どちらを攻撃するか迷う未熟者どもに言われても価値は無いわ。』

師匠(…まぁ…もう一人いた小童…いや、おそらく見かけだけか…。そちらは気が付いて注意していたようだが…何故人の形をとっているのか…今は捨て置くか…。)

やはりムカつく言葉に思わず

ザップを睨みつける2人。

ザップ「なっ…!!!だから俺じゃないっすよ!!!」

それはさておきスティーブンは話を続けた。

スティーブン「今回の相手、汁外衛殿に於かれましても強敵でありますか。」

師匠『さあなあ、どうであろう。』

スティーブン(全く捉えどころの無い御仁だ。十年単位の行方不明はザラ、その間かなり高位の血界の眷属(ブラッドブリード)の滅殺跡が発見されるがそれが全てこの方の仕業とも言われる…。まぁ真偽は語っては貰えまいが。)

師匠はクラウスを見ると話しかけた。

師匠『貴様が滅獄の術式を付与されし血か。』

クラウス「はい。」

師匠『面構えは面白いが長としては未熟だな。』

クラウス「?」

師匠『これを見よ。』

そう言って師匠は血法でぶら下げているザップのでっぷりしたお腹を杖でツツきだした。

ぽいんぽいんぽいんぽいんぽいんぽいん…。

師匠『儂を師匠と呼ぶこの糞袋が鍛錬のタの字も掠らぬ生ゴミとなり果てとる。まるで浅黒く腐った猛毒の餅じゃ、忌々しさを固めて人型にして蛇蝎を埋め込んでもここまで不快なものになるまい。』

なおこの罵倒全てザップが自分で言わされている…。

師匠『節制とは程遠い自堕落な精神状態で日々を無為に過ごさせとるな?こうなっては目も当てられん、惨憺たる有様。ものを食い屁を垂れる分だけ潰された蟲の屍骸よりやっかいじゃ…。』

レオ(うわ~…。ここまでの面罵を自分で言わされてる画ってもの凄いシュールだなー…。)

師匠『という事でこいつは連れて帰る。』

ザップ「…って、ちょ…‼ちょ待てよ‼ジジイ…‼じゃなくて師匠…‼」

ザップのジジイ発言に怒ったのかザップの頭を血法で締め上げお腹を杖でどつく。

ギリギリギリギリ、ドスドスドスドス!

ザップ「ぎゃああああああ‼」

そのまま2人の言い争いが始まった。

師匠「シャアアァ‼

ザップ「誰が糞虫だ!」

師匠「シャシャシャシャシャシャ、シャアアァァ。」

ザップ「修行だなんてとんでもねぇ‼」

師匠「シャアアァァ、シャアアアアアア。」

ザップ「有難くなんか思わねーよ妖怪‼ボロ雑巾‼」

ざくざくざくざく。

ザップ「いだいいだいいだいいだい‼」

スティーブン「まあまあまあまあご老体。ザップは確かに度し難い人間のクズですが我々にとって欠く事の出来ない大事なメンバーです。」

ザップ「サラリと出るよね本心は、言葉に気づかず混じるよね。」

クラウス「どうか、お考え直しを。」

クラウスは師匠に深く頭を下げた。

その様子に師匠はなにか考え込むと…。

師匠「シャアァァア!!!

ザップ「…え?」

スティーブン「通訳しろザップ。」

ザップ「真胎蚕(ツェンタイダン)の攻勢解除を求めてます。試験と云うか…交換条件に。」

ーーー

卵の様な形をした真胎蚕に対して銃弾を連射するHLPDだが…。

ドパタタタ!くわっ、バクン‼

なんと装甲をまでを削り取る反撃をしてきた。

HLPD「うわッ‼」

師匠『今奴は内部で急速再生治癒に入っている、外界からの刺激に関しては超反射攻撃で反応。とてもじゃないが運ぶ事すら出来ない。』

ザップ「『このめまぐるしく動く眼球のような器官が6個同時に射抜け』ってアンタ…!」

師匠「シャキギクアア、シャキアアア。」

ザップ「それで大人しくなるって簡単に言うけども…コンマ1秒でもズレたら?」

師匠「シャシャシャキアアア、シャシャアアア。」

ザップ「良くて両腕切断、最悪足首しか残らない…。じゃねーだろ馬鹿かアンタ。」

師匠「シャアッ!」ピッ、バキン!

師匠によってザップと真胎蚕(ツェンタイダン)を囲む結界が張られた。

ザップ「⁈」

クラウス「血の薄膜の…結界…⁉」

ザップ「うう…。」

クラウス「お師匠、やはりどう考えてもこれは度が過ぎています!どうか…」

だが師匠から発生した気迫にぞっとさせられた。

スティーブン(全員が凍りついた、何という気迫…。まあ訳2名全く退かないリーダーと動じた様子のないお客人が居たが…。)

ザップ「…やるぜ、ここまで云うからには師匠にもそれなりの考えがあるってことだろう。」

スティーブン「ザップ…。」

ザップ「斗流血法・カグツチ〈刀身のじゅ…」

ばくん‼

ザップ「う」

ざわッ

ザップは反射攻撃を何とか体を反らし回避したが一気に大量の汗を噴き出した。

ザップ(やべえな、予想以上に…‼)

そうしてザップは今日の寒気の正体に察しが付いた。

ザップ(そうか…寒気の正体はあいつ〈師匠〉だったんだ…。あの野郎は自分の研鑽しか頭に無えから手足の一本や二本無くしても血法で何とかなるから良いとか思ってるし…実際そうしてるし…。)

ザップの心の中で師匠がやらせてきた修行風景が浮かんで来る。

ザップ(つか阿保か‼世捨てとかそう言うレベルを超えてんだよあのデス仙人!!!ああ…俺…またあのド秘境に拉致されんのかな…もうあんな悪夢の満漢全席みたいな修行の日々はゴメンだ…!)

ぐおおおお、やだやだやだやだ…

ザップ(落ち着け俺…‼集中しないと本当にやられんぞ馬鹿…‼)

やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ

やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだ

ザップ(あーゲシュタルト崩壊まで起きてきやがった…。)

そんな極限状態のザップの耳に電話の音が聞こえてきた。

ピルルルルルル、プ。

チェイン「はい、アンジェリカ?」

ザップは電話の内容に耳が大きくなる。

チェイン「うんうん、いや全然取り込み中じゃない。大丈夫ダイジョウブどしたの?え?何?体が火照って仕方がない?今すぐあの銀髪褐色にメチャクチャにされたいそんな状態で色々濡らしてる?」

そのままチェインは色々あれな内容の言葉を話していき…。

チェイン「うーんでも今ちょっとアイツ忙しいんだよいやマジでマジで。これから入院するか鬼籍に入るかするから諦めるっきゃないわ~ざ~んねん。う~んは~いバイバ~イじゃ~~~~ね~~~~~~」

チェインが電話を切ろうとしている瞬間、ザップの思考がとんでもない程の集中力を発揮した。

ドン!!!ブシュー!キイアアアア、しおしお。

ザップは見事に攻勢解除に成功した、あそこをおったてた状態で…。

師匠『見事なり、その集中力儂の熟睡時に匹敵する。認めざるを得ぬな我が一番弟子…。』

スタスタ。

師匠『⁉』

そうしてザップは師匠をスルーしてチェインのスマホに出た。

ザップ「アンジェリカ…今どこだい…?はっはっは、何だい?照れてるのかい?今何時かなんてそんな機械音声で言わなくても時間なんか関係ない世界まで僕らはこれから飛ぶんだ…。」

そうして事実に気づいたザップは拗ねた…。

スティーブン「オラ、拗ねてないで通訳しろ。結果オーライじゃないか、むしろチェインに感謝すべきだぞ。」

レオナルドは真胎蚕を神々の義眼で見たが諱名を読むことが出来なかった。

レオ「駄目っす、全く見える気配しないっす。」

スティーブン「なんだと?諱名が掴めなきゃエルダー級の封印は到底無理だぞ…。」

レオ「そうなんですが…。」

師匠「ギャギャシャシャシャギャキキシャキキ。」

スティーブン「あースイマセン師匠どの、何言ってるか全然分からないんです。」

クラウス「おそらく心臓がここに無いからだ。」

KK「!!なるほど…半身欠損の本体は行動中なのね。」

スティーブン「……おい、ちょっと待ってくれ…それじゃ…ただの千切れた体の一部が俺たちと正面から渡り合ったのか…?」

師匠はうんうんと頷きながらグットサインを出した。

鍾離「…どうやら正解のようだぞ。」

スティーブン「参るな~。」

クラウス「ではその本体は一体今どこに…。」

師匠「シャギキキキギアァ、カギギシャアァァ。」

師匠の言葉に拗ねていたザップが反応する。

ザップ「…⁉何だって?弟弟子⁉連れてくるって…どういう事だ⁉」

 

ーーー高度4万8千フィート上空。

戦闘機パイロット「防空識別圏の所属不明機に告ぐ!貴殿のコースは転針なき場合、領海侵犯の恐れがある。直ちに識別信号を出すか航路の変更を要請する!」

パイロット「ウォーハンマーよりオペラへまもなく目視距離へ到達……おい、何だあれは…!!」

管制室「オペラよりウォーハンマー、何を見た?報告しろ!」

パイロット「人間だ…。」

ゴォォォォォ…ギリ、ギチ。

パイロットが見た飛行機の先端には上半身だけの生身の男が何かに縛り付けられた姿だった。

パイロット(こ、こちらを見た…。高度4万8千フィート、外気温華氏マイナス67℃、速度900マイル毎時、下半身をもがれた普段着の男がこちらを見た…。縛り付けているあの赤い物は何だ?…血…?!)

飛行機の内部から伸びていると思われる血はある人影?に繋がっていた。

ーーーH・L高層ビル屋内

クラウス達は真胎蚕(ツェンタイダン)を持って高層ビルの屋上に向かっていた。

ザップ「弟弟子?」

師匠『左様、とは言っても斗流血法・シナトベの正統後継者じゃ。』

チンッ、ガコォン。

師匠『貴様の器が矮小でなければ不要な分派なのだがな。』

ザップ「馬鹿言え。火と風2つの血液を混ぜ合わせねぇで体内循環させ、機に応じて別の血法として遣い分けるなんてえのは人間様のやっていい領域を超えてんだよ。」

師匠『対象の目的は《永遠の虚》中心部への帰還。引き千切られた下半身の回収・合体ともすれば反撃も視野の内じゃろう。』

ザップ「合体?」

師匠『そんな事になれば今度両断されるのは貴様らのうちの何人かじゃ、腹から割かれて生き残る自身が無ければせいぜい頑張る事じゃな。』

 

ーーー空の上では…

飛行機をロックオンした戦闘機からミサイルが発射されたが血界の眷属により迎撃される。

ドクヮン!!

パイロット「…駄目だ…!撃墜不能…!!ヘルサレムズ・ロットに突っ込むぞ…!!」

ーーー

ザップ「突っ込むってェ!?縛り付けたまま…!?そんな事した飛行物体がどうなっか知ってんのかよ…!?」

師匠『無論、タコ足に叩き潰されよう。だが…そういう相手だ、使えるものは神性存在とて使わせて貰う。』

ザップ「死ぬぜ、その弟子がよ…。」

師匠『……手は打ってある。』

……

ヘルサレムズロットの外が見える被害予想区域ではHLPDが避難を促していたが…

ウゥゥゥゥ〜〜ウゥゥゥゥ〜

“当該区は被害予想区域に入っています。至急移動して下さい。警告無視の際の被害については一切の関知はしません。全て自己責任にて対応して下さい。”

HLPD「オラー!!早く逃げんか馬鹿共!!」

異界人達≪嫌だ‼タコ足が叩き落す所生で見てぇ‼≫

HLPD「……酔っ払いが続々と集まって来ています。」

ダニエル・ロウ警部補「そんなこったろうな。こっちも既成事実が必要なだけだ、ちゃんとムービー撮っとけよ?証拠にする。」

ゴォォ…

警部補「来るぞ…APC(装甲輸送車)に戻れ…‼」

ゴォォォオオオ

飛行機がヘルサレムズ・ロットに接近した次の瞬間!

ぺぎょむ‼

飛行機はタコ足に握りつぶされ先端部分がヘルサレムズ・ロットへ落下する。

クラウス「ブラッドハンマー、GO!」

クラウスの指示で一時釈放中のブローディ&ハマーが動き出した。

ハマー「血殖装甲‼」

飛び出したブローディ&ハマーは落下してくる飛行機先端部分をキャッチし、先端に縛られている血界の眷属(ブラッドブリード)を確認すると…

がつん。ハマー「…どうも‼」

 

航空機B2B(ベリートゥベリー)‼

 

高層ビルの壁面に思いきり叩きつけた!

クラウス「よし捉えた‼レオナルド君諱名は見えたか⁉」

レオ「まだっす半分しか…‼」

クラウス「そうか。」ガッ

クラウスはレオナルドを抱えるとザップ、鍾離と共に屋上から飛び降りた。

レオ「なっ、ちょ…ええええええ」

クラウスは技を使い壁に足場を作りザップもそれに続き鍾離は風の翼を使い滑空して来る。

クラウス達が穴の開いた壁面に到着すると敵が攻撃を仕掛けてきた。

ビュアッ、ドギンッ‼

敵の攻撃は先に鍾離がシールドを貼っていた為防がれた。

ブラッドハンマーの叩きつけによりミンチの状態になっているが既に再生を初めていた。

ズズ、ズズズ…。

ザップ「おおう…酷えな、潰れた頭蓋を再生しながら攻撃か。」

レオ「やめてくださいよ‼僕今からそっち見なきゃなんないんすから‼」

鍾離「…いや…もう見ても大丈夫だぞ少年、何度みても驚異的な再生速度だ。」

ザップ「逆再生の早回しかよ…。」

敵は再生が終わりクラウス達を見て挑発してきた。クイクイ…

ザップ「どう出る…?」

クラウス「うむ、まずは諱名。確認終了と同時にレオを安全圏へ。機内の”彼”は無事だろうか?」

ザップ「分からねぇ、血界の眷属(ブラッドブリード)の圧が強すぎる。」

血界の眷属の諱名を確認していたレオナルドは同時に機内に人物?のオーラも視認していた。

レオ(何だ、あのオーラの色は。中に居るのは人間なのか?)

クラウス「急いで慌てず確実にだ。」

レオ「…はいっ!」

ほんの少ししてクラウスの携帯から着信が聞こえた。しゅーくほう!

敵「?…その子供からか…。」

違和感を感じたのか血界の眷属(ブラッドブリード)はレオナルドに狙いを定め攻撃するも向かいのビルからKKの狙撃により眉間を撃ち抜かれ阻止される。

ドンッ!ピタ。

KK「…ビンゴ‼」

敵がKKの狙撃により動きを止めた瞬間ライブラメンバーが行動を始める。

師匠『ほう。』

ブラッドハンマーはレオナルドを戦場から離脱させ、残りのメンバーは戦闘を開始した。

師匠(ふむ…打ち合わせ無しの同時行動、互いの能力を熟知した上で最も効果的な役割を各自が選択するとは。なかなか…)

ザップは飛行機の残骸に向かい弟弟子を救出しようとしていた。

ザップ「待ってろ、今出してやる!」

ザップ(13時間も化け物とサシとか洒落にならねぇ、こいつもあのボロ雑巾の犠牲者だ。)

だが駆け寄った残骸から切れ込みが入っていく。

ザップ「⁈」

バカン、ガドシャン!

弟弟子「下がっていて下さい人類(ヒューマー)」

ブーーー!!

ザップはでできた人物?に向かって思いっきり吹き出した。

じと~。

ザップ「……いや済まねぇ。…半魚人それも闇雲にスマート。」

そして我慢できなかったのか大笑いし始めた。

ザップ「つかマジ半透明!あの質感…くず餅か、ジャパニーズスイーツくず餅か!やべぇツボったwちょまじやめてwww」

ガン!

弟弟子「失ッ…敬だな!!君は!!」

ザップ「…サーセン。」

ゴギン!ザザザザザ…。

敵「…残念、殺せなかったか。」

弟弟子「全く、余所見をしていたら命落としますよ。」

ザップ「そりゃこっちのセリフだ出落ち野郎。」

弟弟子(この刃の形…我が斗流…「彼」がそうなのか?)

ザップ(シナトベも刀身の基本は変わらねぇらしいな、綺麗な三叉槍だ…。三叉…さかなクンが…何突こうってんだ?パパとママか?)

ザップ「プフォw」

弟弟子「……。」じと~

そんなやり取りを見ていた血界の眷属はかなりの殺気を放ってきた。

ズヴ、ビリビリビリビリ…

弟弟子(下半身断裂、人間なら即死。そんな躰で「牙狩り」の精鋭相手に連続十数時間戦闘、さすがに「削れて」いてくれないものか今心からそう思う。)

ニヤリ

師匠『来る』

血界の眷属は天井に向けて膨大な力を放ちビル屋上まで貫通させてしまった。

屋上に待機していたスティーブンと師匠は貫通した竪穴に落下していく真胎蚕(ツェンタイダン)を確認、敵もそれを視認すると上に向かって飛んだ!

弟弟子(動いた…!!)

 

弟弟子「斗流血法・シナトベ『刀身の伍、突龍槍』_空斬糸

 

弟弟子(師匠…とどめです、どうぞ「劫火」を、完全体となる前に…!!早く…!!)

だが師匠は動かなかった。

弟弟子(…⁉師匠ーーー⁉)

そして血界の眷属は遂に合体を果たし完全体となってしまう。

弟弟子(駄目だ、全員、死…)

だが血界の眷属は突然凍り付いた。

バギン…キィァァアアア!

それはスティーブンが既に技を発動させていた為だった、そして…

ザップ「…チッそういう事か。」

ザップが血界の眷属に刀身を投擲する。

ザップ「先に言っとけ雑巾ジジイ!!」

ザップ(オラ…!!ボサッとすんな!!)

弟弟子(…言われなくても…‼)

 

ザップ「斗流血法・カグツチ『七獄(しちごく)』‼

弟弟子「斗流血法・シナトベ『天羽織(あまのはぶき)』‼

 

2人の攻撃は一気に血界の眷属を焼き尽くしたがまた超速再生していく中、クラウスがシールドを纏って突貫してきた。

攻撃をするもシールドによって阻まれクラウスは諱名を読み上げる。

クラウス「エルウエル・ルカンド・ロソ・ティエトカゥア・ギ・ムルムハヴァト」

 

         貴公を『密封』する‼

 

クラウス「ブレングリード流血闘術・999式久遠棺封縛獄(エーヴィヒカイトゲフェングニス)‼」

(…許し給え 憎み給え 諦め給え 人界を守る為に行う我が蛮行を。)

 

ーーー

ファンファンファンファン…。

スティーブン「ようし撤収だ。各自解散しポリスを攪乱した後『執務室』に集合、ザップお前はお師さんをお連れしてくれ。」

ザップ「ええッ⁉」

師匠『良い、儂はもう去る。』

ザップ「___みたいすよ?」

スティーブン「そうですか?十分おもてなしも出来ず申し訳ありません。」

師匠『気にするな端から期待してはおらん。だが貴様らは対”血界の眷属(ブラッドブリード)”戦において塵芥程度の見所がある。』

そう話ながら師匠はブローディ&ハマーと会話している鍾離の方を見た。

鍾離「初めまして、俺は鍾離と言う。」

ハマー「こちらこそ初めまして!ドグ・ハマーです。こっちはデルドロ。」

ドグの手首から血が噴き出して細長い小さい顔を形作った。

デルドロ『おい、ハマー勝手に自己紹介してんじゃねぇ!』

ハマー「でもデルドロ挨拶は大事だよ、僕たちは滅多に外に出られないんだから。」

鍾離「…失礼だが血液が意思を持っている、いや人間が血液にされてしまっているのか?」

ハマー「そうなんですよ、なんか偏執王アリギュラっていう女の子に僕ら改造されちゃって。」

デルドロ『お前この間襲われて迎撃したってのにもうそんな反応かよ…。』

鍾離「その様なことが…。」

師匠(あのような凡夫としての振る舞いをし紛れ込んでいるのはただの気まぐれか…?だがこちらに危害を加える気はないのなら干渉はすまい…。)

ザップ「師匠?」

師匠『合格じゃ。』

ザップ「…は?」

師匠『こいつを任せたぞ。』

弟弟子「え?」

師匠『ではな。』

そして師匠は音もなく消えた。

弟弟子「へ⁉」

唖然としている弟弟子にメンバーの視線が集まる。

弟弟子「…聞いて…ないです…。」

バタンッ!

ザップ「おわ!マジかコイツッ!」

スティーブン「過労とショックのダブルパンチだな、気の毒に…。」

 

ーーー翌日

ライブラの一室に新しく大きな水槽が用意され彼はそこにいた。

レオ(と、いうことでライブラに来た少々奇妙な仲間が加わりました。)

レオ「お名前は?」

ツェッド「ツェッド、ツェッド・オブライエン。」

レオ「まあまあ、元気をだして。」

ツェッド「はあ…ありがとうございます。」

ザップ「てゆーかお前何自然な感じで専用の家具に入ってるの?やっぱなっちゃうの?なるしかないの?そういう感じに。」

ツェッド「………」

ザップ「オイ無視すんな。」

ツェッド「…しかし昨日は色々あり過ぎましたね、間違いなく人生で一番長い日です。」

 

こうしてライブラに新しい仲間が加わった。鍾離とどの様に関わって行くのかはまた次の機会に…。

 

ーーーZの一番長い日_終幕。



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自称凡人、ランチをオススメする。

今回の内容は血界戦線原作『ラン!ランチ!!ラン!!!』を半分オリジナルなるっぽくした内容です。


一夜にして構築された霧烟る街『ヘルサレムズ・ロット』…。

魑魅魍魎、超常犯罪、魔導科学などが跳梁跋扈する街に召喚されやってきた異次元からの客人、鍾離。

本日はライブラオフィスにてにスティーブンに元素視覚について問いただされていた。

ーーーライブラオフィス。

先日の師匠襲来事件から数日後の事。

スティーブン「それじゃ鍾離、この前の元素視覚について聞こうか?」

鍾離「構わないぞ。」

スティーブンはソファに深く腰掛け鍾離も向かい側に座る。

レオナルドとザップ、新しく仲間に加わったツェッドも内容が気になるのか近くによって来た。

ツェッド「鍾離さんは本当に異次元から召喚されてやってきた方なんですね。」

レオ「そうっすよ、ツェッドさん。ちょっと前に鍾離さんの国の歴史とか少し話して貰いましたけど今回は元素視覚ってやつの話をするんすよね?」

ザップ「この間俺見て元素反応がどうとか言ってたアレか?つかそんなん出てんのかよ俺…そこの魚類は如何なってんだ?」

ツェッド「なぜそこで僕を引き合いに出すんですか…。」

鍾離はメンバーを見渡してからテーブルに自分の神の目を置いて説明を始めた。

鍾離「これは俺の岩元素の神の目だ。まず神の目を手に入れた者は7つの元素のうち1つを扱う事ができるがそれに元素視覚と呼ばれる元素を直接見る事が出来る視界も手に入れる、元素が付着した物や人の痕跡もたどれるが時間が経てば消えてしまうものが多い。視覚を切り替えれば七元素に関わる色として目に映るようになる。例に挙げるなら先日見たザップの体内の炎元素の色だが微かに赤い色を体に纏って居るんだ、血を属性に変える影響か常に体に纏っているのは俺もあの時初めて知ったよ。」

スティーブン「それで個人の判別もできるのかい?」

鍾離「元素は発生させた物の固有の物で同じ流派を使うザップ達だから分かったようなものだな、しかもかなり集中しなければ見れないほど薄い色をしている。じっとしていれば長く見れるが動くと見きれない。」

スティーブン「はぁ、それなら特に問題はないかな。」

鍾離の説明に神の目をまじまじと見つめるザップ。

ザップ「こんなガラス玉みてぇなの持っただけであの便利バリアとか出来るようになんのかよ…?」

レオ「便利バリアって…確かにメチャクチャ世話になってるけども…。」

ツェッド「これは他の人が持っても意味が無いんですか?」

鍾離「意味はないな、これは個人に与えられるもので奪ったところで使えない。」(それに俺から奪った所で意味は無いしな…。)

ザップ「なんでぇ、使えたらバ~リアッてして旦那に今度こそ勝てると思ったのによ…。」

レオ「あんた鍾離さんから借りるつもりだったのか…。ホントに天罰が下るといいのに…。」

ツェッド(そんな野蛮なことをしているのかこの人は…。)じと~

ザップ「…んだ魚類やんのか~今なら高値で買ってやるぞ~。」

スティーブン「やるならここでするなよ。」

鍾離は神の目をテーブルから回収すると再び身に着けた。

鍾離「それに神の目の所持者はあまり多くない。神の目を欲しいと願う人は沢山いるがただ欲しいと願っていても現れる事は無いようだ。」

鍾離(それに神の目を持つ事は1つの『契約』、何かの力を得るには対価が必要になる。この中で少年が一番身に沁みて分かっている事だろうがな…。)

レオ「そうなんすね~『グウゥゥ。』あ。」

レオナルドは話の途中でお腹が鳴った。

レオ「…アハハハハ…お腹すいちゃいました…。」

スティーブン「そういえばもうランチの時間か…鍾離の話も区切りがいいし俺はこれからクラウスと打ち合わせが有るから失礼するよ。」

そう言ってスティーブンは先に出掛けて行った。

レオ「あ、なら昼メシ鍾離さんとツェッドさんも一緒に行きましょーよ。」

鍾離「良いぞ。」

ツェッド「え、僕は」

ザップ「てめーレオてめー、何誘ってんだお前生臭くなんだろメシが」

レオ「じゃあいいです、僕ツェッドさん達と行きますから。そんな事言う人は死ねばいいです」

そう言ってレオナルドは鍾離達を連れて外に行こうとする。

ザップ「ちょ…!!待てよ…!!…いいぜ一緒に食おう」

そうして一緒にランチに出掛けたがザップが選んだのは回転寿司だった。

ドドン!

ザップはニタニタしておりレオナルドとツェッドは露骨な店選びに呆れており、鍾離は回転寿司を目の前にして顔色を悪くしていた…。

レオ「………」

ツェッド「………」

鍾離「ッ………。」

ザップ「いやーウマそうったらないなあ〜オイ」

だがツェッドは普通に暖簾を潜ろうとしていた。

ザップ「…って入るんかい…ッ!!」

ツェッド「え?何がです…?海にいる魚が普段何を食べてると思ってるんですか?同じ海にいる生き物達です」

ザップはツェッドに効いてない事に悔しがっている、別の人物には効果抜群だが。

ザップ「……ッ!!」

ツェッド「貴方の程度の低い嫌がらせは無教養からくる的外れも含まれるわけです。さ、理解できたらさっさと頂いてしまいましょう」

だがレオナルドが鍾離の様子に気がついた。

レオ「…ってあれ?鍾離さん顔色がめちゃくちゃ悪くなってるッスけどもしかして…。」

鍾離「………海産物は…苦手なんだ…。いや魚以外のを頂くから気にしないでくれ…」

ザップ「マジか!?良しッそれなら早く食おうぜ〜。」

レオ「いやいやいやいや有り得ないよ!鍾離さん無理せず別の所行きましょ!僕鍾離さんのオススメの店行きたいッス!!」

ツェッド「鍾離さんの方がお店を知ってるんですか?」

レオ「鍾離さん美味しいお店巡りをしてるっすから!ねっねっ!」

レオナルドは鍾離とツェッドの背中を押しながら別の店を探し始めた。

ザップ「鍾離が良いってつってんだからここで食えばいいじゃねぇか…ってオイコラ俺を置いてくな陰毛頭!!」

ザップもレオナルド達を追いかけ始めた。

 

ーーーとある場所。

スティーブンはクラウスと合流しある人物に合っていた。

スティーブン「レギオカ千兄弟?」

ダニエル・ロウ警部補「ああそうだ、新興のファミリーヤクザが一発逆転を狙ってる。ヤクザファミリーじゃねぇぞ、ファミリーヤクザだ。信じ難いが千兄弟ってのはガチ話らしい」

その人物はタバコを吸ってひと息つく。

警部補「先日中華製中古パワードスーツが千機輸出された、だが世界中どこを調べても荷受けの情報が出ねえ。ヴァーロー&ホーラー運輸のジャガーノート・スミスが持ち込んだ線が大だ」

スティーブン「『底なしブリーフケース』の仕業か、そんなに積込んで余命は大丈夫なのかね」

警部補「カバンとアイツの間の契約なぞ知らん。問題は推測が正しい場合追いつめられた異界ヤクザが近いうちに街中で巨大なパーティーをおっぱじめるだろうって事だ。奴らは『千人同時』に動く、挙げるには頭数が足りねぇ。」

人物はクラウス達を見てニタリと笑った。

スティーブン「で、俺達にも手伝えと」

警部補「そうだ」

スティーブン「…危ないなぁドサクサに紛れて後ろから手錠をかけられたりして」

警部補「順当な邪推だな、そうしてやりたいのは山々だ。だが考えてみろこれだけ大きな山だ耳聡い連中にはもう伝わってるだろう。ヘルサレムズロットの混乱が長引けばその機に乗じて他の厄介者共も動き出すぞ」

スティーブン(あ、ずるいそこ突くんだ)

スティーブンは横にいるクラウスを見るとヤル気に満ちていた。

ゴゴゴゴゴ…

クラウス「(`・ω・´)………」

スティーブン「( ¯ㅁ¯; )………」ガックシ

クラウス「?」

その様子を見たダニエル警部補は笑みを浮かべた。

警部補「……ボスの腹は決まった様だな、宜しく頼むぜ」

スティーブン「……これは貸しと言う事でいいのかな?ダニエル・ロウ警部補」

警部補「そうさ、だから今も逮捕してねぇだろ?」

警部補はそう言うと少し遠くを見た。

警部補「……ちなみにお前等んとこの片目の年増スゲエな。うちの狙撃班が右往左往してるぜ、絶対居るはずなのに見当たらねぇてな。胸は無くても能力は有る…」

ズドンッ!!シュ〜…バチチッ

警部補の斜め上を電撃を纏った銃弾が狙撃した。

警部補「……褒めたんだけどな」

警部補の頭は電撃の余波で少し焦げていた。

スティーブン「だとしたらKKのギリギリ残った理性に感謝しなくちゃね」

 

ーーー

レオナルド達は鍾離のオススメのお店を目指して移動していた。

レオ「でも鍾離さんにも苦手な食べ物があったんですね。いつも美味しいお店を探してるから好き嫌い無いと思ってたッス」

鍾離はまだ少し顔色が悪かったが話を始めた。

鍾離「…話すと長くなるから省かせてくれ、昔色々あって嫌いになったんだ。ああいう何というかつるつる滑るような感覚と洗っても消えない生臭さを見るだけで思い出してしまってな…。」

ザップ「それなら魚類も見ただけで駄目なんじゃねぇのかよ?コイツはつるつるヒンヤリの触覚くず餅だぞ〜」

ツェッド「貴方如何しても僕をイビりたいんですね…隠す気も無いとは…。」

鍾離「ツェッドは仲間だし見た目で海産物だと思わなければ大丈夫なんだ。」

レオ「見た目でわからなきゃいいんだ…。」

会話を続けていると鍾離の目的の店が見えてきた様だ。

鍾離「ああ、あの店だ。最近できた店で中国からの出店で新鮮な食材と料理人の腕が自慢だそうだ、俺もまた来たいと思っていたんだ。」

ザップ「へぇ〜、そんなに美味かったのかこの店。」

そうして4人はお店に入店した。

店員「いらっしゃませ〜」

店内は沢山の異界人、人類のお客で賑わっていたが、4人は運良く個室に通された。

レオ「僕達初めてだから注文は鍾離さんに任せてもイイっすか?」

ツェッド「確かに一度来ていますもんね。」

ザップ「何でもいいから早く頼んでくれよ〜腹減った〜。」

鍾離「俺の好みになるが、分かった。」

そうして鍾離が注文した美味しそうな料理が運ばれて来た。

ザップ「うお〜美味そうッ!!」

レオ「じゃ早速ッ!」

ツェッド「では頂きます。」

鍾離「追加があるなら言ってくれまた注文する。」

4人は鍾離オススメの料理を堪能していた。

レオ「やっぱり鍾離さんのオススメに間違いは無かったですね〜。」

ツェッド「本当に美味しいです。」

ザップ「鍾離オメェが頼んだのこれで全部か?」

鍾離「いや後頼んでいる料理が何点かあるがとても辛い料理が有るので注意してくれ。」

店員「お待たせしました〜。」

残りの料理を店員が運んで来たが一つだけ異様な料理があった。

見た目がぜんぶ真っ赤でありグツグツ煮えたぎった麻婆豆腐だった。

店員「うちの店長オススメ大赤山の麻婆豆腐ですー。」

3人「…ッ?!」

鍾離「ああ、ありがとう。」

その麻婆豆腐は『地獄の血の池』的な見た目をしていたが鍾離は普通に受け取っていた。

鍾離「さあ食べよう、冷める前にな……だがこの麻婆豆腐は見た目通り辛いから無理はしなくていいぞ。」

そうして4人で食事を再開した。

ザップ「なぁお前ら無理して食べなくてもいいとか言われたら気にならねぇか?」

ザップは地獄麻婆を普通に食べている鍾離を見て2人に話しかけた。

レオ「…まぁ気になりますけど見た目からして絶対に辛いヤツですよ。」

ツェッド「でも鍾離さんは普通に食べてますね…。」

ザップ「…やっぱりキニナルッ!鍾離俺らにもその麻婆豆腐くれ。」

鍾離「…構わないが本当に大丈夫か?」

鍾離はザップ達の前に麻婆豆腐を回した。

3人は同時に麻婆豆腐を食べたが…

パク…… 3人「辛ぁァアアッ!!!」

鍾離「……この店のメニューで一番辛い料理らしい。」

ツェッド「鍾離さんよく平然と食べられましたねッ……(泣)」

ザップ「お前の味覚どうなってんだよッ……!!(泣)」

鍾離「璃月には“絶雲の唐辛子“という特産品を使った料理が沢山あるんだ。だから辛い料理には慣れている。」

レオ「……ッ……ゴホ……ッ……水下さい……ッ……(泣)」

そうして美味しいランチを食べれたが最後に食べた麻婆豆腐の辛味が抜けずまだ悶えている3人がいた。

店員「ありがとう御座いました〜。」

ザップ「あ~あ酷でぇ目にあった…。」

鍾離「だから言っただろう?とても辛いと」

レオ「でも他の料理はホントに美味しかったですよ…まだ口の中痛いけど…。」

ツェッド「そういえば僕ら支払いしてませんけど…。」

鍾離「前にここの店長が料理に使う食材に迷っていたから偶々一緒に食材選びをしたらすごく感謝されてな、俺の事を覚えていたらしく今回の料理は店長が奢ってくれたそうなんだ。」

ツェッド「意外な所で縁が…。」

ザップ「でもよ〜口の中やべぇ状態のままだから口直しにコーヒー飲まねぇか?」

レオ「賛成〜」

こうして口直しの為に4人は「ダイアー」に向った。

 

ーーー貸し会議室内にて

警部補「中華製人体追随式起動歩兵『人民華星3型』、こいつが今回消えた機体だ。型番としては旧式も旧式だが信頼性ととにかく頑丈な事で一世を風靡大ベストセラー。まぁそうでなきゃ千機も用意できねぇわな」

ダニエル警部補の説明と共にスティーブン達も資料を確認している。

警部補「とにかく安かろう悪かろうの人海戦術には打ってつけのチョイスなんだが、問題はこれだけの数一斉稼働させようってんならこっそりとはいかねぇって事さ」

スティーブン「『調整屋』周りは張り込み済み?」

警部補「当然だ、人間用に作られたパワードスーツを異界人が使うなら必須だからな。『仕掛け屋ビリー、ジーン&サクソン、オペガレージ、ゴードンバイオメカニクス、アーマースミスカンパニー、ハッセルホッフGmbh』…出ねーんだわこれが」

スティーブン「大口の注文があれば隠し様がない筈だけどねぇ。…更に地下に潜った?リトルアキバの個人営業窟は?」

警部補「それも考えたが…千だぞ?」

スティーブン「精度がマチマチなのを飲むなら複数雇用でゴリ押すかも、何よりも格安で済むしね。こっちで調べよう」

スティーブンはチェインに連絡を取り始めた。

 

ーーー

ダイアーに向かう道中の4人は…何故か異界人マフィアの抗争に巻き込まれていた…。

レオナルドは鍾離の玉璋シールドに守られ、3人は周りのマフィアを蹴散らしていく。

レオ「ザップさんが悪いんスよ?!あそこで近道しようぜとか言うから!!」

ザップ「…ッチンたらしてたら何時まで経っても口ん中辛いマンマなんだよ!!」

ツェッド「というよりも何故辛味が全然取れないんですか!!」

鍾離「俺は何とも無いのだが…もしや…。」

ツェッド「心当たり有るんですか!?」

鍾離「俺が店主に進めた食材と唐辛子は食べ合わせがあって一緒に調理するとより辛味が増す方法があるんだが…」

襲い掛かってくるマフィア達を話ながら蹴散らしていく3人。マフィアと言っても下っ端集団の抗争なのかとても弱かったのだ。

それでも銃を乱射したりしているが玉璋シールドの強度を上回る威力では無く鍾離が時間切れ毎に貼り直しているので無傷だった。

鍾離「店主はその方法に更に改良を加えると意気込んでいたので、初めて食べた3人は辛さに耐性が無いので過剰反応を起こしているかもしれん…。」

レオ「えッ!?それって戻るンデスヨネ?!」

ザップ「……すぐには戻らねーよ。辛いの苦手な奴が辛いモン食うと余計にキツくなるのと同じ原理だろ。」

ツェッド「……ッ!!じゃあまだ暫くこのままなんですかッ!!」

鍾離「時間が経つのを待つしか…。」

3人の戦闘が終わり、鍾離達はようやくダイアーに向かった。

カランカランッ

ビビアン「よおレオってどうしたその顔?」

レオ「……ッ……ッ……ッ……(泣)」

レオはまだ口の中が痛むのか時折顔をしかめている。

レオ「実は……かくかくじかじかで……。」

ビビアン「成る程な〜。……ちょっと待ってな。」

そう言って厨房に入っていったビビアンが持ってきたのは小さな小瓶に入った蜂蜜色の液体。

レオ「……これは?」

ビビアン「ウチの特製ハチミツ水だよ。口の中がヒリヒリする時はコレが一番効くから飲んどけ。」

ツェッド「……ありがとうございます……。」

レオ「ゴク……ゴク……ぷはぁ〜美味しい〜♪」

ツェッド「……確かにこれなら飲みやすいですね。」

ザップ「……あ〜生き返った〜。」

鍾離「3人共すまない…。」

レオ「いや〜鍾離さんのせいでは無いッスよ〜。好奇心に負けたのは僕らなんで…。」

そうして4人はひと息ついた。

 

ーーー会議室内

プルルルルルル。

スティーブン「_スターフェイズ。チェインか、どうだった」

チェインは異界人オタクの顔を踏みながら電話していた。

チェイン『…シロですね、エロゲーやりながら寝落ちしてました。仲間に関しても仕事しに何処かへ泊り込んでる可能性はゼロだそうです』

スティーブン「何故わかる?」

チェイン『___なんだっけ?』

オタク(;//́Д/̀/)ハァハァ『「星眠りのスタシオンIV」の発売日だからです…っ!!取り敢えずレムリア司書ルートと風凪族サーシャルートとそして断崖宮の双子ルートを攻略するまで絶対休めませんから…!!』

スティーブン「……えーとゲームか!!」

チェイン『その様です』

スティーブン「分かった、戻ってくれ」

警部補「どういう事だ!?」

スティーブン「いや俺に聞かれましても、どうやら憶測が外れている可能性がありますな。意外と状況は待ったなしかもしれませんよ?」

………

チェイン「もう行くけど…これぐらいで大丈夫かな?」

オタク「…はいっありがとうございます…っ」

チェイン「それでは」シュタッ

オタク「何よりもご褒美でした…っ!!また何なりとお聞き下さいいいいい!!」

 

ーーーダイアーにて

鍾離は頼んだコーヒーを待ち、3人はビビアンが入れてくれたハチミツ水をカウンターで飲んでいた。

レオ「はぁ〜まさか食べ合わせで辛さが倍になるなんて思わないですよね。」

ツェッド「食べ合わせ次第で変わる味もあるんですね…勉強になります」

ザップ「俺は暫く辛いモンは見たくねぇぞ…。」

鍾離「一流の料理人は食材は良いものを選ぶのが当然だが作る料理によって様々な工夫を凝らす物だ。」

料理の話題に鍾離は璃月にある人気店『万民堂』のシェフ『香菱』の事が頭に浮かび話をし始めた。

鍾離「俺の住む璃月港には『万民堂』という人気店の『香菱』というシェフの娘がいてかなりの料理の腕をしているんだが、彼女は料理の腕を磨く為に自ら新しい食材を探しに出掛けたりしてレシピの参考にしている。その際に少し奇抜な材料を使った料理を考えたりするが味は確かだ。彼女の料理に対する情熱は自身の料理を美味しく食べてくれる人達の為に有るのだと料理の提供をしてくれた際に笑顔で語ってくれたよ」

ツェッド「お客さんに親身になれる良い方なんですね。」

ザップ「でもよ、その奇抜な材料ってのは何なんだ?食えるんだろ?」

鍾離「…討伐したスライムの体液等だな…。」

レオ「…えっ?聞き間違いかな?スライムって言いませんでした?」

ザップ「そんなモン喰うのか!?」

鍾離「ああ、彼女はそれ等を調味料として使う事でより一層味わい深い物に仕上げている。だから材料を聞かなければ確かに美味いんだ。たまに馴染みの客がわざわざ頼んでいる。」

レオ「そ、そうなんデスカ……。」

スライムを使った料理の話で盛り上がった4人にビビアンが頼まれていたコーヒーを提供しにきた。

ビビアン「はい、鍾離のコーヒーだよ。あとコレ口ん中ヤラレタ3人組に哀れみサービス。」

4人の前にビビアンはチョコミントアイスを置いた。

ビビアン「メニューにはないけど後で金払えよ〜。」

ザップ「お〜!よっビビアンちゃん商売上手!」

レオ「おっさん臭いッスよザップさん!」

ツェッド「いいんですか?」

ビビアン「いいのいいの。試作に使おうと買ってあって余ったヤツだからな」

鍾離「なら有難く戴くよ。」

4人はそれぞれアイスを食べようとした次の瞬間!!

ドゴォン!!

天井を突き破って巨大物体がレオナルド達を押し潰そうとしていた…

落下してくる一瞬の間にツェッドは隣に座っていたレオナルドを後ろに投げ飛ばし前方のビビアンも避難させたが、大きな破片がツェッドの背中に当たりツェッドは仰向けに倒れ込んでしまった。

ゴッ!!

ツェッド「!!」

ガンッ

助けられた2人がツェッドに手を伸ばしたが届かずザップと鍾離が動いた。

 

ザップ「斗流血法・カグツチ『刀身の弐•空斬糸』_赫綰縛!!」

 

ギシンッ…

ザップが放った血法の糸が落下物体を一瞬押しとどめた。

その間にツェッドは落下物体の下から脱出。

 

鍾離「岩山破蓄!!」

 

更に鍾離が元素スキルを発動し落下物体を下から押し返した。

ガゴゴゴ…。

ザップ「おお、わわ!」

下から石柱による支えができた為ザップは血法を解除しツェッドを見た。

ザップ「…手間かけさせるな魚類!!」

鍾離「怪我は無かったか?」

ツェッド「ありがとうございます、怪我は無いです。」

ザップに対して素直に御礼を言ったツェッドの返答に御礼を言われたザップ本人は困った顔をした。

そんなザップの顔を見たレオナルドは…

レオ「ぷ、ぷはははっ」

ザップ「(°罒°)……ッ!!」

ザップはレオナルドの頭に拳骨を落とし外に出た。

レオナルドは拳骨された頭を抑えていた。

レオ「イタイ……ッ!」

ザップ「おうおう何だオメェら…!?」

そこにはクラウス達が戦闘していた。

ザップ「へ?旦那…!?」

クラウス「丁度良かった…!!手伝ってくれ給え三人とも!!」

そこには大量の同じ武装、同じ顔をした異界人達がおり三人は状況を把握した。

ザップ「……あ~…」

ツェッド「…はい分かりました…」

鍾離「…承知した。」

こうして21時間にも及ぶ『レギオカ千兄弟』討伐作戦に鍾離達は参加した…。

 

ーーー討伐作戦終了後…

ファンファンファンファンファンファン…。

スティーブン「はい、撤収!!」

KK「おつかれさま〜ふぁ〜」

1日ずっと戦闘をしていた疲労は流石に3人には蓄積されたようで…

ザップ「け…けんかいた…っ!!いっほもうこけん…!!」

レオ(疲労のあまり濁点が発音出来なくなってる…)

ツェッド「……ぁの、ぜぇ、鍾離さんは、ぜぇ、何故、ぜぇ、まだ、ぜぇ、立ってられるので?ぜぇ」

疲労で地べたに倒れ込んでいる3人に対して鍾離はしっかり立っていた。

鍾離「俺も疲れてはいるが…ここで気を抜くつもりが無いだけだ。流石に少しは休みたいがな…」

鍾離は3人を見て少し考え…

鍾離「ここで少し待っていてくれ、すぐ戻る」

そう言って側の路地に行ってしまったが10分程で戻ってきた。

鍾離の手には4人分の「美味しそうなモラミート」があった。

ツェッド「それは…?」

鍾離「これはモラミートという料理だ、焼いた餅に味付けした肉を挟んだシンプルな品だが美味いぞ。少しでも食べられればまだ動けると思って用意したんだ」

鍾離は3人にモラミートを手渡した。

ザップ「たしかにくったほうかうこけるか…」

レオ「そうッスね…」

ツェッド「では頂きます。」

パクッ 3人はモグモグと食べ始めた。

ツェッド「……ん!おいしいですね!」

ザップ「うめえなこれ」

レオ「うま!うま!」

鍾離「口に合ってよかった。」

鍾離も4人の側に座って一緒に食べた。

4人はそのまま地面に座り込みながら食事を続けた。

ザップ「はぁー腹に貯まったら少し落ちついたわ…」

レオ「あ、発音戻った」

ツェッド「これなら執務室まで持ちそうですね…」

鍾離「ならそろそろ行こうか」

そしてようやく4人は帰路に着いたのだった

 

―――翌日。

ツェッドの水槽前でレオナルド達は会話をしていた。

レオ「いや〜鍾離さんのオススメを食べに行かなかったらきっとランチ食べ損なってたと思うんすよ!」

ツェッド「確かに無駄に意地を張って別の所を探そうとしたかもしれませんねこの人なら…」

ザップ「んだヨ、結果的にはランチ食えたじゃねぇかよ!」

そんな他愛もない会話をしていてふとレオナルドは思った。

レオ(そういえば鍾離さんは何処からあのモラミートを用意したんだろ?あそこら辺はあの回転寿司屋しか飲食店は無かった筈だ…それにモラミートって鍾離さんの世界の料理っぽい…何か鍾離さんの謎が一つ増えたような…)

 

こうして鍾離の気になる謎が増えたレオナルドだがそれは少し先に本人から語られるのである…。

―終幕―



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自称凡人、お高い骨董品を買ってくる。

今回はオリジナルのお話になります。自己解釈マシマシなのでご容赦下さい。


その日スティーブンは執務室である報告書を見て唸っていた…。

スティーブン「…うーん…。これほんとに如何しようかな…」

1枚の書類を見て悩むスティーブンにレオナルド達は声をかけた。

ザップ「んな書類とにらめっこして珍しいッスね。」

ツェッド「貴方と違ってスティーブンさんは色々考える事がありますから悩みもするでしょう?」

ザップ「おやぁ〜?この魚は三枚卸にされたいのかなぁ〜?」

ケンカは何時もの事なのでスルーするレオナルド。

レオ「その書類がどうかしたんですか?」

スティーブンは話しかけてきた3人を見て喋る事にしたようだ。

スティーブン「この書類、ちょっと見てくれ。」

3人はスティーブンから渡された書類を見る。

ツェッド「これは請求書の統計表?」

スティーブン「そうだ、しかもそれは鍾離に渡したカードからの請求書。」

レオ「ゲッ…これ、金額が少しずつ上がってる?」

ザップ「んあ?別に払えねえ訳じゃねえんでしょ?」

レオ「あんたは支給金を25分で全額ゴミに変えるッス、聞くのがそもそも間違ってる。」

スティーブン「うんまあそうなんだけどさ、問題はここだ。」

問題の部分を指差すスティーブン。

そこには『月額』の文字があった。

スティーブン「……1ヶ月分の数字がこれだよ。」

レオ「うわっ!何ですかこの金額!?︎」

スティーブン「最初はこんなんじゃなかったんだ……最初の頃は月に200ゼーロくらいだった……。それが今や1万7千ゼーロに……。」(日本円で約200万です)

ツェッド「そんなに使ってるんですか?!」

ザップ「なら鍾離のカード取り上げちまえば済む話っしょ?」

スティーブンはザップの答えに困った顔をした。

スティーブン「それができればね、悩んでないんだよ。鍾離のお金を使う理由って骨董品を買うか食事に使うかのどちらかなんだけど…食事はまぁいいんだ偶に少し高くなるくらいだから支給金の範囲内だし…問題は骨董品の方。」

ツェッド「骨董品?」

レオ「そういえば偶に何か持って帰って来てますね。」

スティーブン「買ってきた骨董品や美術品を鍾離は俺とクラウスに1回見せに来るんだ、何かあるかもしれないから。」

ザップ「何かある?ガラクタに?」

スティーブン「鍾離曰く価値がある物らしいよ。」

レオ「でも僕達には分からないんですよね?」

スティーブン「ああ、全く。」

ツェッド「では何故?」

スティーブン「少年にはさ鍾離が買ってきた骨董品が魔術媒体だったって話したよな?」

レオナルドは以前鍾離がマフィアに襲われた話を思い出した。

レオ「はい、確か鍾離さんが隕石落として騒ぎになったやつ。」

ツェッド「隕石って…」

ザップ「ほんとにアイツ落すからな、隕石…」

スティーブンはそれそうになった話を戻す。

スティーブン「ゴホンッ、問題は鍾離が買ってきた骨董品は高確率で後から再確認する羽目になる。邪神召喚用の重要遺物とか古文書の行方不明になってたやつとかとにかく俺達が探そうと思った品を鍾離が先に買ってるんだよ…」

ツェッド「それって高い買い物に注意したいけど後から必要になるかもしれないから注意しづらいって事ですよね?」

レオ「あ~確かに…それは悩む…」

話を聞いたレオナルド達にスティーブンはあるお達しを出した。

スティーブン「だからなお前達、鍾離が骨董品買いに行きそうならついていけ。」

3人「「「えッ?」」」

スティーブン「鍾離からの説明だとアイツ良いものなら店側の言い値で買ってるらしいからぼったくられてる場合があるんだよ。しかも鍾離がH・Lに来てから暫く立ったから業界で噂になってるんだ『貴重な品を一発で見抜くカモがいる』ってな…だからお前らは鍾離がカモられそうになったら止めるのがお仕事だ。」

レオ「でも僕ら骨董品の知識とかないッスけど…」

スティーブン「一言鍾離に注意すればいいんだ、ちょっとは値切れってね…」

3人「「「えぇ…。」」」

こうして3人は鍾離の買い物に付き合う事になったのだった…。

 

ーーーある骨董市

鍾離の買い物に付き合う事になった3人は鍾離の後について歩いていた。

鍾離は当初3人が何故付いてくるのか聞いたが変な対応をされたので気にしない事にしたようだ。

レオ「うぅ……緊張するなぁ……。」

ツェッド「大丈夫ですかレオ君?顔色が良くないですよ?」

レオ「いや……だってさぁ……。」

レオナルドは周りを見渡す。周囲には所狭しとアンティークショップが立ち並んでおり、そのどれもが高価な商品が置いてあった。

レオ「なんか場違い感半端ないよ……こんなとこ初めて来たよ……。」

ツェッド「僕もです、こんな雰囲気の場所は初めて来ました。」

レオとツェッドは初めての場所に戸惑っていた。

一方ザップは慣れた様子で歩いている。

普段からお高い店で女をハシゴしているので高級な雰囲気に慣れている様だ。

ザップ「おい魚類、レオ、シャキッとしろい!スティーブンさんに言われたろ?『鍾離が骨董品を買いそうだったら一言注意してくれ』ってよぉ。」

レオ「そりゃ分かってるッスけど……うぅ……胃が痛くなりそうだ……。」

そんな事を考えている内に鍾離はとある骨董品の店に入っていった。

そこは表通りとは違い、小さな店が数軒並ぶ路地裏にあった。

店の中に入ると天井まで棚があり様々な品が並んでいる。

客はおらずカウンターの奥で店主らしき異界人の男が新聞を読んでいる。鍾離は店内の本を眺めながら奥へと進んでいく。

そして一つのショーケースの前で立ち止まる。

そこには大小さまざまな品が置かれており、鍾離はその一つ一つを丁寧に見ていた。

ザップ「ほれ、さっさと声かけねえか?」

ザップは急かすように言う。レオナルドは鍾離に近づき小声で言った。

レオ「あの鍾離さん……今回あまりに高い物だったら僕らに一言言ってから買ってくれないっすか?」

鍾離は首を傾げる。

鍾離「ん?別に構わんぞ。」

レオ「ありがとうございます、じゃあ……えっと今回の予算はいくらなんですか?」

鍾離「?特に決めてないが?」

レオナルドは絶句した。

レオ「え?!決まって無いんですか!?︎」

ツェッド「何も考えずに買い物してたんですね……」

ザップ「だからぼったくられてんだな…」

そんな風に話す3人に鍾離は言った。

鍾離「俺は値段と価値が見合っていない物は買わないぞ。」

レオ「そ、そうなんですか?」

鍾離「ああ、例えばこの皿だが。」

鍾離は1枚の古びた皿を指差す。

鍾離「恐らく100年前の骨董品だろう、だが大した値段にはならない。」

レオ「え?何で分かるんですか?」

鍾離「この品には柄がついているからだ。」

ザップ「はぁ?それだけでわかるのかよ。」

鍾離「骨董品の価値は時代によって変わるがこの品は柄が無いものに後から柄をつけた量産品だろうだから価値が低くなる」

その話を聞いていた店の店主が興味を持ったのか話かけてきた。

店主「へぇお兄さん最近ここら辺でいい品を見つけては買ってく噂の人類だな?俺の店は見ての通り客が少ないがなんでこの店に来た?」

鍾離「そうなのか?それは偶然だ。たまたま入った店で良い物が置いてあったから来ただけだ。」

店主「ハハッ!嬉しい事いってくれるねぇ。なら兄さんには良いもの見せてやろうじゃないか。」

鍾離「ふむ……では見せてもらおう。」

店主はカウンターの下から大きな木箱を取り出した。

店主「こいつは年代物の茶器セットだ。」

鍾離「ほう。」

その品は白い陶器で出来たティーポットとカップが2つずつ入っており、他にも金縁のソーサーとスプーンが3本、銀のフォークとナイフが入っていた。

店主「保存状態もいいしかなり値打ちものだぜ。」

鍾離「なるほど……確かにこれはいい品だ。だが……。」

店主「だがなんだい?」

鍾離「これらにイミテーションが何個か混ざっているな?」

レオ「そうなんすか!?」

ザップ「全然わかんねぇ…」

ツェッド「僕も分かりません……。」

店主「ほぅ……なぜ分かったんだい?」

鍾離「まずは……。」

鍾離は一つ手に取る。

鍾離「このポットの取っ手の部分を見てみろ、少し歪んでいる。」

店主「!」

鍾離「次にこのカップだが、こちらの方が形が良い。」

店主「……。」

鍾離「最後に……。」

鍾離は残りの3つのソーサーとスプーンを見る。

鍾離「これらの食器にメッキが使われている。」

店主「……参ったよ。その通りさ。」

店主は肩をすくめながら言う。

店主「あんたが言ったとおりだ。ほんとに見る目あるなぁ、これなら奥の品を見せてやっていいぜ。」

店主はカウンターの奥に隠し扉を開ける。そこには様々なアンティークの品が置かれていた。

ザップ「奥にまだ部屋があったのか?!」

店主「ほんとに分かってて来た訳じゃ無いんだな、うちの店は表はただのガラクタと少ない高価な品を見せてるが見抜いた客は見る目がある。紹介でなきゃうちの店に一見さんは来ないのさ」

店主が案内した店の奥には表と違い数が少ないが貴重な品が置いてあった。

店主「こいつらは表に置けない代物さ、まぁ見てみな?」

鍾離「……これは。」

鍾離は一つのガラスケースの前に立つ。

店主は鍾離に品物の説明をする。

店主「うちの店は神性存在の息がちょっと掛っててな、貴重な品とか表沙汰に出来ない危険物とかを取引するのに使われる事が多いが、そんな関係でレア物も手に入りやすいんだ。」

鍾離「………この品は?」

鍾離は古くなった革に装飾が施されている古書の詳細を聞いた。

店主「そいつも中々のお宝だよ。なんでも昔魔術結社が禁術の研究をしてたらしくてな?だが魔術の研究内容で揉めて解散、その中の散らばった品のうちの一つだかなりの貴重品だせ。」

鍾離「ふむ、この古書を貰おうか。」

レオ「え、鍾離さんその本買うんすか?」

店主「その本は2万2千ゼーロだ。」(約250万円)

ザップ「はぁ!?たかが古本がか?!」

ツェッド「なんて高価な値段……」

鍾離は懐からカードを出す。

鍾離「これで頼む」

店主「まいどありー。」

店主は本を丁寧に包み鍾離に渡す。

レオナルド達は呆気に取られて値切る間もなく支払いが終わってしまい鍾離は足早に店を出てしまった。

レオ「って鍾離さん?!」

ザップ「おい待てよ!!」

ツェッド「失礼しました!!」

店主「またきなよ〜。」

 

ーーー

店を出た鍾離は何やら急いだ様子でライブラの執務室に向かっていた。

そこでスティーブンはクラウスと雑談していた。

鍾離「スティーブン殿は居るだろうか?」

スティーブン「ん?鍾離じゃないかどうした?ついていった3人は?」

3人も後から執務室に入って来た。

ザップ「おい俺らを置いてくな!」

ツェッド「如何したんですかそんなに急いで…」

レオ「ちょ…待って…」

鍾離は今購入してきた古本をスティーブンの前に置いた。

鍾離「この本を早急に調べて欲しい。」

スティーブン「この本は?」

鍾離「骨董品屋で見つけた品だ。」

クラウス「随分古い本だな……。」

スティーブン「確かに、表紙の文字も掠れてるし……なにより傷んでないか?大丈夫なのかい?」

鍾離「あぁそう見えるが、外見に術がかけられて隠蔽されている様でな…」

レオナルドは鍾離の指摘に神々の義眼を使う。

レオ「えっ?…うん?あっ本当です!本全体に偽装してますね……。」

ツェッド「隠蔽に見抜いて急いでいたんですね。」

スティーブン「わかった、調べてみよう。」

鍾離「頼んだ」

スティーブンはライブラのデータベースの照合と隠蔽解除の為動き出した。

 

ーーー 2日後、ライブラオフィスにて。

ライブラの事務所では全員が集まっており、スティーブンは例の古書について報告を始めた。

スティーブン「結論から言おう、あれは古書の形に隠蔽した『インドラの火矢』という魔導兵器の設計図の一部だ。」

ツェッド「インド神話の武器ですか……。」

スティーブン「ああ、その威力は都市を丸ごと焼き尽くす威力らしい…」

レオナルド「うわぁ……想像できないっすねぇ」

チェイン「流石はお手軽壊滅兵器沢山なインド神話産ですよね…」

スティーブン「元々は古代に造られた対魔神用の魔導兵器だったようだが、製作者が仲間割れで設計図が分割、それもいつの間にか紛失していて、今まで一部しか見つけられていなかったんだ。」

ザップ「一部しかって何冊か見つかってンすか…?」

スティーブン「2冊発見されていたよ…鍾離の買ってきたこれは3冊目の新発見だ。」

チェイン「1冊目は発見された時は只の本として図書館に寄贈されてたけど、2冊目を異界人学者が手に入れて発表した事でその価値が跳ね上がったってわけね。」

レオ「これ、あと何冊あるんだろう…」

鍾離「俺も中身を確認、解読した所全部で5冊の本に分割して偽装を施した様だ。これが気になったのは装飾の部分が本にしては派手だったからなんだが…よく見て見たら偽装されているのに気付いてな。」

レオ「それで急いでたんスね…何にかあると思って…」

スティーブン「この設計図は一部だけでも様々なマニア達が高値で取引してるんだ、3冊目が見つかった事が表沙汰になればこぞって手に入れようとして来る連中が騒ぎを起こして混乱が起きてただろうね。」

クラウス「鍾離殿が先に入手してくれたお陰で混乱は避けられたのだな…」

クラウスは今回は先に事件の芽を刈ることができたと喜んでいたのだが…スティーブンの携帯が鳴った事で事態が動く。

 

プルルルルルル…

スティーブン「_スターフェイズ、あぁ確かに調べていた件だが…え?マジか…?……分かった。」

スティーブンは電話を切り、メンバーに通達する。

スティーブン「……たった今近日オープン予定のH・Lライノーム博物館で4つ目の本が発見されたかもしれないと報告があった。」

全員『!!』

鍾離「…まだ本物と決まった訳では無いようだが、何故続けて発見が相次ぐ?…今までの設計図も全て偶然発見された物の筈だが…」

クラウス「…スティーブンからの報告通りなら設計図が表沙汰になった事で騒動が予想される、早急に対処する必要がある。」

チェイン「どう動きますか?」

クラウス「まずは設計図が本物か如何かを確認したい。」

スティーブン「それなら俺とクラウス、鍾離、レオで行こう。チェインは美術館の人間に調査。他の者は博物館付近で警戒態勢で待機してくれ。」

ライブラメンバーはスティーブンからの指示で動き出した。

 

ーーー H・Lライノーム博物館

博物館に到着したクラウス達は人気が無い館内を進んでいた。

クラウス「所で設計図は一体どの様に発見されたのだ?」

レオ「確かに。偽装されてるから今まで見つからなかったんですよね?」

スティーブン「この博物館はオープン前だが研究施設も兼ねていて検品をしている時に魔術の検査装置が反応したんだそうだ。で、俺が古書の調査を依頼したのがここに務める予定のうちの研究員だったからすぐに報告してくれたのさ。」

そうして館内を歩いている中鍾離とクラウスはゆっくり展示品が見られないのを残念に思っていた。

鍾離「……実に興味深い物ばかりなのだが……」

クラウス「うむ、緊急事態でなければ観覧していたい所だな。」

レオ「すみません、我慢してください……。」

スティーブン「まぁ仕方ないさ、騒動が落ち着いたらゆっくり見るといいよ。」

そうして設計図と思われる古書がある保管室に到着した。

そこには件のライブラ研究員が扉の前で待っていてクラウス達に声を掛けてきた。

ライブラ研究員「スティーブン!早く来てくれて助かったよ。君から調査依頼を受けてすぐに別の本から魔術反応が出るから怪しくて…」スティーブン「……その話は後だ。」

スティーブンは部屋のドアを開け、中に入る。

レオ「……うわぁ……すごい数ですね……。」

部屋の中には頑丈なケースに保管されている品が大量にありその中に一つ装飾が施された本があった。

スティーブン「……これがその古書かな?やはり俺が見ても只の本にしか見えないな…鍾離、レオ2人なら本物か如何かわかるだろうから確認してくれ。」

ライブラ研究員がケースから古書を取り出し鍾離に渡す。

鍾離「…同じ様には見えなくとも装飾に施された隠蔽魔術は同じ構成をしている…少年、神々の義眼で見れば中身にかけられている魔術が同じ物だとわかる筈だ。」

レオ「分かりました、見てみます」

レオナルドも神々の義眼を使って古書を確認する。

レオ「……これは……!?」

スティーブン「わかったか?」

レオ「はい、間違いありません。この本は魔導兵器の設計図の一部です。鍾離さんが買った古書と同じ隠蔽と術式があります」

スティーブン「……本当にこれで4冊目か……あと1冊何処にあるんだ……?」

クラウス「まさか5冊目も近くに…?」

その時、博物館の警報が鳴り響く。

ビー!! ビー!!!

全員『!!』

スティーブン「ザップ、ツェッド!!外で何か起きたか!?」

スティーブンが外にいるザップ達に通信をしている時、

外では大量のロボットが博物館に攻め込もうとしておりザップ達は応戦していた。

ザップ「くそっ……こいつらキリねぇぞ!!」

ツェッド「……どうやら博物館の警備ロボの様ですよ!」

2人は迫り来るロボット達を次々と破壊していく。しかし……

ドォンッ……

突如として爆発が起きて辺りは煙に包まれた。

館内にいたクラウス達も外に出ると吹き飛ばされてきた2人の姿があった。

レオ「ザップさん、ツェッドさぁん!!」

クラウス「2人とも大丈夫か!?」

ザップ達は爆発で少し傷を負っていた。

ザップ「足元から爆発されて吹っ飛ばされただけだ!!」

ツェッド「防御が間に合って傷は少しです。」

合流したクラウス達だが博物館を囲む様にロボット達が包囲していた。

鍾離「狙いはやはり設計図か…。」

???「その通りだよ、ライブラの諸君。」

声のする方を向くと全身に黒いスーツを着た金髪の男がおり隣には黒服の女と眼鏡を掛け、帽子を被った男が立っていた。

3人組の登場と同時に周りを取り囲むロボットが停止する。

ライブラメンバーに緊張が走る。

スティーブン「お前らは……何者だ……?」

???「お初にお目にかかるね、私はジェロニモ。この設計図を書いた開発者の子孫さ。隣の2人も同じ子孫さね、まぁ彼らは私が操ってるんだけども…。」

そう言ってジェロニモは笑う、そしてその手には5冊目の設計図の本があった。

ジェロニモ「今まで見つからなかった設計図の断片が次々と見つかるから不思議に思ってたろう?設計図は始めからマスターキーの様な物が1冊あり血筋が求めれば隠蔽が弱くなって集まる様になっているんだ…まぁ3人以上の血筋がいるから彼らを操ってるんだけども…。ここに来るまでに先に発見されていた2冊は回収したよ!」

ジェロニモがそう言うと隣にいる男女が同じ様に本を取り出した。

スティーブンは情報を次々と暴露するジェロニモに更に警戒を強めた。

スティーブン「随分ペラペラと喋ってくれるじゃないか…」

ジェロニモ「いやね、この博物館にある設計図は2冊の筈だったんだけど君達が邪魔してくれたみたいだからさぁ…デモンストレーションも兼て潰させて貰おうと思ってねぇ!あのライブラを揃っていない計図で作製された博物館の警備ロボットに偽装した魔導ロボット達に蹂躙されるのを知らないで死ぬのは嫌だろう?安心したまえ設計図は君達が死んでからゆっくり探すから!!」

ジェロニモが持っている本が操っているのかロボット達がまた動き出し、博物館ごと破壊するつもりか次々とミサイルなどの攻撃を発射してきた。

だが鍾離がクラウス達前に出て元素スキルを発動した。

鍾離『難攻不落!!』

石柱は等間隔で出現し博物館の前に障壁が発生、ミサイル攻撃を防いた。

鍾離「この博物館には貴重な展示物も多く存在している、破壊しようと云うのならば容赦はしない…!」 

クラウス「これ程の防御を…!!流石は鍾離殿…この機を逃す事はない!!」

クラウス達はロボット軍団に攻撃を繰り出した!

クラウス「ブレングリード流血闘術『02式散弾式連突』(シュロートンフィッシャー)!!」

クラウスの攻撃らロボット軍団を纏めて吹き飛ばす!

スティーブン「あ~あ~突っ込んで行っちゃって…」

スティーブンも呆れながらも攻撃を仕掛けた。

スティーブン「エスメラルダ式血凍道…『絶対零度の地平』(アヴィオンデルセロアブソルート)!!」

スティーブンの足下から氷結が広がりロボット達の足を凍結させていく。

スティーブン「これで動けまい……ザップ、ツェッド、一気に片付けるぞ!!」

ザップ・ツェッド『了解!!』

2人は次々とロボット軍団を破壊していく。

ジェロニモ「ほぅ……中々やるようだね……でもまだ序章だよ?」

ジェロニモの言葉と共にロボット達の動きが変わった。

ザップの背後からロボットが襲いかかるがザップが振り向きざまに刀を振るとロボットの首が飛び胴体が地面に落ちた。

ザップ「なんだ……こいつら急に強くなりやがったぞ!?」

ツェッド「一体どうなっているんですか……!」

スティーブン「恐らくロボットのプログラムを今書き換えたな……!」

ジェロニモ「ご名答、この設計図は魔導兵器の物だ。たとえバラバラになっていても残っている術でこの様な事も出来る!」

そう言ってジェロニモは本を掲げる。

するとザップ達に襲い掛かっていたロボット達はザップ達を無視して博物館に向かってきた。

ザップ「おい待てっ!!」

ザップ達は追いかけようとするがロボット達に追いつけない。

だが障壁を維持していた鍾離が今度は元素爆発を発動した。

鍾離『天道万象!!』

ロボット軍団に元素爆発が炸裂しロボット軍団は砕け散った。

スティーブン「やっぱり凄まじいなぁ……あれだけの数のロボットを一瞬とは……。」

クラウス「我々も負けていられない……行くぞ!!」

ライブラメンバーは残っているロボット達を撃破しながらジェロニモの元へと走り出した。

ジェロニモ「おやおや……私の可愛い人形達が簡単に破壊されてしまうなんて……仕方がない、私自ら相手をしてあげようかねぇ……!」

ジェロニモは控えていた2人の本を取り上げると何やら呟き出した、すると本はページ毎にバラバラになり一つの本に纏まった。

纏った本を使いジェロニモは残っているロボットを合成し始めた。

そしてジェロニモを取り込み出来上がったのは5mの巨大人型のロボットだった。

ロボットはゆっくりと歩き出す、その一歩ずつ歩く度に地面が揺れる。

レオ「こんなデカいのどうやって倒すんすか……!」

スティーブン「確かにデカすぎる…けどやるしか無いんだよねッ!!」

鍾離「ならばやれる事を試すだけだ、スティーブン殿とザップは交互にあの巨人の関節を攻撃。ツェッドとクラウス殿は敵の注意を引きつけてくれ、少年は俺が合図を出したら中にいるジェロニモの視界を遮断できるか?」

レオ「やってみます!」

クラウス「よし、ならば行こう!!」

作戦が決まりライブラは戦闘態勢に入った。

まずはクラウスの技でロボットを怯ませツェッドが追撃、ロボットの気を引いている間にスティーブンとザップが鍾離の指示通りに関節に攻撃をしていく。

ジェロニモ「無駄さぁ!!本来の『インドラの火矢』は都市を丸ごと焼き尽くす火災巨人を産み出すが3冊集まって出来たこの魔導ロボットも十分に強力なのだぁッ!!」

巨大なロボットは拳を振り回し攻撃してくる、しかしツェッドは攻撃を受け流し攻撃を繰り返す。

ツェッド「この程度ならなんとかなりますよ!貴方こそそんなデカブツでちゃんと戦えるんですか?」

ツェッドの言葉にジェロニモは不敵な笑みを浮かべた。

ジェロニモ「舐められたものだねぇ……これでも私は魔導科学者として名を馳せた男だ、君達のような武闘派と一緒にされては困るなぁ!!」

ジェロニモはそう言うとロボットに指示を出し、ロボットは腕を剣に変化させツェッドを攻撃したがクラウスが割り込み防御する!

クラウス「ブレングリード流血闘術『117式絶対不破血十字盾』(クロイツシルトウンツェアブレヒリヒ)!!」

ツェッド「助かりましたクラウスさん!!」

ツェッドは礼を言うと再び攻撃を仕掛けた。

クラウス「ツェッド君無事だな!……まだまだ行くぞ!!」

クラウスはロボットの攻撃を防ぎつつツェッドと連携を取る、それを見ていたスティーブンはザップに声をかける。 

スティーブン「流石だねザップ、連携もバッチリじゃないか?」

ザップ「当たり前っすよ、伊達に番頭の下で働いてないんでね!!」

ザップも動きのキレが増してきておりロボットの関節を狙い正確に攻撃している

そんな中、玉璋シールドを全員に維持しながら魔導ロボットを観察していた鍾離がレオナルドに合図を出した。

鍾離「そろそろだな…少年!ヤツの視界を奪ってくれ!」

レオナルドに合図を出した鍾離は魔導ロボットに向かって行く。

レオ「了解!!…『視界支配』!!」

レオナルドはジェロニモの視界を乗っ取り真っ暗な風景を映した。

ジェロニモ「なんだこれは!?何も見えないぞ!!」

動きが止まった魔導ロボットに鍾離は自分の足元に石柱を発生させ飛び上がった。

鍾離「お前にはスティーブン殿とザップが起こした溶解反応で貯まった元素が蓄積している、それを利用する!!」

魔導ロボットの頭部に上がった鍾離は槍を魔導ロボットに突き刺し大量の岩元素を魔導ロボットに送り込んだ、すると…

ビキビキ、バキバキバキバキッ!!

魔導ロボットの内部から次々と赤と青の結晶が発生していった。

レオ「ロボットの中から結晶が?!」

鍾離「岩元素の元素反応は他の元素に対して結晶反応を起こす。2人が攻撃して貯めてくれた元素を本来はシールドを貼る役割を起こす結晶を完全凝固させて内側から発生させた。」

ジェロニモ「私がいるコア内部にまで結晶が?!このままではエネルギーがコアに逆流して!?」

やがて魔導ロボットは内部から発生した結晶により爆発、バラバラに砕け散った。

ドカァーン!!

バラバラになったパーツは地面に落下し大きな音を立てて崩れ落ちた。

ザップ「あ~ようやく終わった…。」

スティーブン「はぁ…今回は最初から最後まで鍾離に振り回されたね…」

そうして事後処理の事を考えながらスティーブンはメンバーに撤収指示を出したのだった。

 

ーーー翌日のライブラオフィス。

レオナルド達は先日の魔導ロボットについて話していた。

ザップ「あのデカブツが爆発して中にいたやつと古本は真っ黒焦げになったんだよな?」

ツェッド「術者が死んだからか本も燃え尽きてしまい魔導兵器は永遠に完成しなくなったという事ですね。」

レオ「残った設計図はどうなるんだろ?」

そこにチェインがザップの頭の上に現れた。

チェイン「そこで追加ニュースがあるわよ。」

ザップ「オイコラメス犬…なに人の頭の上に遠慮なく乗ってんだコラ!!」

チェイン「そこに踏んでも良さそうないい足場があったからに決まってるじゃない!!」

ザップ「俺の頭は足場じゃねぇ!」

ツェッド「そんな事より追加ニュースってなんです?」

ザップ「そんな事ってなんだ魚類てメェ…(ꐦ°᷄д°᷅)」

ザップを無視してチェインは話始めた。

チェイン「5冊あるうちの3冊目が焼失してマニア達の間では更に高値がついて在り処が公表された博物館に押し寄せてるらしいわ、博物館はお陰で大盛況よ。」

チェインの話を聞いたザップは鍾離が購入した本について思い出した。

ザップ「じゃあアイツが買った古本も価値が上がったって事か?」

ザップの疑問に机で書類を捌いているスティーブンが答えた。

スティーブン「それね…鍾離がライブラの資金で購入した時の値段が2万2千ゼーロな訳だが今の界隈での値段は最低でも1700万ゼーロになってるよ…。」(約2億円です)

3人『ヒエッ!?』

ツェッド「そ、そんな値段に…?!」

スティーブン「設計図その物は血筋じゃなければ使えない事は分かってるからね、うちも追う必要無くなって超価値がある世界にたった2冊の骨董品になった訳さ。」

ザップ「よしアイツの本売っぱらおうぜッ!!」

レオ「駄目に決まってんでしょッ!!」

チェイン「はぁ…このSSはやっぱり死なないと厚生しないでしょうね…」

ツェッド「何処までも駄目な人ですね…。」

スティーブン「でも鍾離の買い物が高価な事は変わらないままか…はぁ…」

レオ「そういえば元々そんな話でしたね…。」

ツェッド「その鍾離さんはどちらに?」

ギルベルト「鍾離様でしたらクラウス坊ちゃまとH・Lライノーム博物館へ行かれましたよ。」

その頃の鍾離とクラウスは…

鍾離「………」( ー̀ ー́)⁾⁾

クラウス「………」( ー̀ωー́)⁾⁾

2人で博物館を満喫していた。

 

こうして鍾離の骨董品が呼び込んだ事件は幕を閉じた。

 

レオ(ちなみに僕が鍾離さんにDVDレンタルの映画をオススメしたらそちらに興味を持ってくれたのか骨董品の購入頻度が減ってスティーブンさんが嬉れしかったのかお高いお店を奢ってくれたのでした…。)

 

__古書の呼び声__終幕。



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自称凡人、マクロの世界を目撃する。

今回は原作沿い『マクロの決死圏』のお話になります。
ほんのちょっとだけオリジナルを入れてます。


本日のライブラオフィスでは少し珍しい光景が広がっていた。

レオ「おぉ〜!!如何したんですかこれ?」

レオナルドの目の前には鉱石で出来たと思われるソニックサイズの家具などがありギルベルトが布やクッションを貼り付けていた。

ギルベルト「いやはや、鍾離様が何か自分の出来る事を活かして仕事がないかと質問されまして。鍾離様は岩や鉱物に属する物を操れると仰っていたので何か作ってみてはと提案しました所この様になりました。」

奥のテーブルでは鍾離が鉱石を持っており岩元素を操作しているのか少しずつ形が変わっていた。

ソニックは自分サイズの家具を見てそわそわしている。

ソニック「……キキ」₍₍ (* ॑ ॑* ) ⁾⁾

鍾離「あぁ…これが気になるのか?まずはここにある家具をモデルに練習しているんだ。出来上がったらギルベルト殿に仕上げて貰ってお前にあげよう。」

鍾離の言葉に嬉しいのかソニックは小躍りしていた。

ソニック「(∩´͈ ᐜ `͈∩)˖*♬೨̣̥」

レオ「でもいいんですか?すでに売れそうなデキしてますけど…」

鍾離「最初に小型の家具にしようと思ったのはソニックを見て思いついたからなんだ、だから御礼だな。」

レオ「そうだったんすね、良かったなソニック!」

ギルベルト「ミニチュアの家具等は既に存在していますが鉱石を削りだす事なく形を変えて一から作られているのでいいお値段になると思っておりますよ。」

鍾離「俺も久しぶりに鉱石を使った物作りだ、色々な形の物を作ってみたいと思っている。」

それから数十分後ソニックサイズで作られた家具が完成した。

ソニック「(⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷ ⌑ ᵒ̴̶̷⸝⸝⸝)」

完成した家具を見たソニックは目をキラキラさせていた。

レオ「おっそれじゃ…ソニックこっち向いてっ。」

パシャッ!

レオナルドはデジカメでソニックと鍾離特性ミニチュア家具を撮影した。

 

ーーー翌日の公園にて

レオナルドとソニックは公園で異界人の友達、リールに先日の写真を見せていた。

リール「へぇ〜良かったねぇソニック、君専用の高級家具だ。」

ソニックはリールの顔に登る。

リール「うひひ、うひゃは」

レオ「こら、やめろってソニック。珍しいなぁこいつがこんなに慣れる事なんて殆ど無いすよ。」

リール「そうだよねぇ『絶対に捕まらない』事が音速猿の生存戦略そのものだもんねぇ。まぁホラ僕、見るからに戦闘力低いから…。」

リールはソニックを頭に乗せたまましょんぼりした。

リールは体がとても細かった。

レオ「待ってくださいよリールさん、何でそういう方向に行っちゃうんすか!!」

ソニック「Σ(°Δ° )!!」ヒュッ!

話をしている途中ソニックは何かに気づき何処かに行ってしまった。

2人「「え」」

突然伸びて来た手に捕まり2人は裏路地に連れ込まれた。

ドサッ!

レオ「ぐげっ」

リール「ぎゃん」

チンピラはレオナルドから財布を取り上げ中身を確認していた。

異界人モブ1「……おいおい……これっぽっちな訳無ェだろうが…!!もっと貸してくれや…!!」

レオ「いやいやこれが限界ですってホラホラ!!」

異界人モブ2「ああん…?」

モブ1「マサドがこの間見たんだよ、お前この間カツアゲされた直後パン買って食ってたらしいじゃねぇか。」

レオ「ええっ!?」

ヌズルバ「とぼけるな…!!」

レオ「いやカツアゲって自覚してた事に驚いたんすよ。」

3人『!!』

ヌズルバ「いやあくまでもこれは友人からのちょっとした協力のお願いだ。」

そう言ってヌズルバは巨体から生える腕の更に手の形をした指で2人を殴ろうとしたが…

ドスンッ!!

ヌズルバ「避けるなよ!!」

レオ「避けるよ!!」

ヌズルバ「お前なー優しいヌズルバ様が殺さねえように『小指』使ってやっ手んだろうが、分かれ人の気持ちを!!」

レオ「ワーイ気遣いありがとう〜って馬鹿!!僕からしたらそれ全部腕だから!!」

ガッ、ぐぐぐぐぐ。

ヌズルバは『小指』でレオナルドの胸倉を掴み持ち上げてしまう。

ヌズルバ「ナマこいちゃっ手んじゃねぇよォ、レオ君よォ首もいだら死んじゃうんだろう?人類は。『外』じゃあどうだか知らねえけどH・Lじゃあもう少しわきまえ手貰わねえとさ。」

レオ「……か…!!ゴホッケホッ…!!」

ドサッ…

危険が無いのを確認したソニックがレオナルドに駆け寄って来た。

レオ「ちっくそ〜。ぐすっ………いや落ち込んでる場合じゃない、こんなんいつもの事だいちいち凹んでどうする…!立ち上がれ…立ち上がるんだ、レオナルド…!!」

ゴッ!!ビターン…

コロコロコロコロ、カチン。

レオナルドの前に後頭部にぶつかったと思われる丸い物体が転がった。

レオ「…何?どういう事?僕今天から降ってきた何かに後頭部を直撃されたって事?え?それ何億分の一?カツアゲされて絞め落とされてその直後に?それ何兆分の一?ないわー受け入れがたいわー、あー凄い凄い無理久々にこんなにボッキリ行った感じだわ…。」

転がった物体を見ていたソニックは…

ソニック「(汗)」

ピクッ!

ソニック「Σ(゚д゚)」

レオ「あ~もうこんなシュールなん絶対無理ィィィ!!」

???『ウオオオオ、ハイベルグラグギガザムドウォメガバルスオンォォォ!!』

カシャ、ゴウン…。

???『…いや取り乱した申し訳無い、取り敢えず命に別状はない様だ。気分は大丈夫かねマイクロギガンティックな少年よ。』

レオナルドは丸い物体から聞こえてくる声の主を見ようとしたが見当たらない…。

レオ「……。」

リ・ガド『私は「機装医師リ・ガド」様々な超兵器をもって病理に対抗するハイパードクターだ。あーそっちじゃないそっちじゃない、こっちの移動タラップの方だ。』

リ・ガドが機械を使って操作している野球ボール程の丸い物体…そこからかなり細いタラップらしき物があるが…どう頑張っても肉眼では見えない…レオナルドは少し神々の義眼を使って拡大した。

ゴゴゴゴゴゴ…

そのタラップの上にいたのはミジンコだった…。

リ・ガド『どうした?』

レオ「…いや…今までも色々あったけど今回はまたとびっきりだなと思って。」

 

―――某美術館にて

美術館に人気は無くそこには絵画を閲覧している保釈中のブローディー&ハマーとパンドラム・アサイラムのアリス獄長、クラウスの3人の姿があった。

 

アリス獄長「…全く…一体何をしているのだ私は…ッ!!」

クラウス「アリス獄長、館内ではお静かに。」

アリス獄長「…分かっている!!だが八つ当たりぐらいさせて貰うぞ。」

クラウス「彼はキュビズム大好きですから、セザンヌが来るとなれば外せないでしょう。」

アリス獄長「アサッテの議論をするな!!奴は弩級監視体制下のクラスSS囚人なんだぞ、こうホイホイ外に出ることが赦されて良い訳がない!!」

クラウス「獄長のお立場理解しております、なのでこうして特別体制で人払いを…」

アリス獄長「対外的にはそれでいいだろう、だがこの状況は私の職責に障るのだそれが我慢ならん。」

クラウス「申し訳ありません、何卒彼の普段の行いを鑑みて頂ければと。」

アリス獄長「模範囚だとて例外ではな…!!」

アリス獄長の視線の先ではハマーがニコリと笑顔で笑っていた。

クラウスは手を振りアリス獄長は少し照れていたのだった…。

 

―――とある公園

カツアゲから逃げたリールはベンチに座り震え泣いていた。

 

ふるふるふるふるふるふる…

リール(逃げ出してしまった…っ!!友達がやられるのを横目に…っ!!そりゃ確かにヌズルバには一発で全身骨折させられた事あるけども…っ!!そういう事じゃないじゃないか…っ!!)

ザアァァァァ…

リール「僕の体が大きくてもっと力が強かったら…こんな目に遭わずにすんだかもしれ」

???「そうなんじゃね?」

シーン…

???「そう、なんじゃね?」

リール「君は…誰だ!?」

 

―――一方、レオナルドの借りてる部屋では…

レオ「病原菌テロ?知ってますよそれぐらい。生物兵器を使った恐怖活動の1種でしょ。」

リ・ガド『違う逆逆、テロリスト病原菌!!奴の名はゲムネモ。意思を持ち積極的に活動する超危険「菌」物だ!!』

レオ「……うう馬鹿な話だなぁ…でもなぁ…現に今僕流暢な英語喋るミジンコと会話してるしなぁ。」

リ・ガド『ミジンコ?ああ、これか。これは外気遮断用の強化スーツだ。』

レオ「え!?じゃあ何本体はもっと小さいの!?」

リ・ガド『そう、私も細菌だからな。とにかく一刻も早くゲムネモを見つけ出して拘束しなきゃならん、奴は菌類初の魔導科学まで習得した天才だ。最新の情報では細胞組織の超強化加速分裂術式の開発に成功したとか、手遅れになれば未曾有の災禍は避けられん…しかし頼みの綱の超巨大破壊兵器ハイベルグギガラムドウォメガバルスオンQがこれではな…』

レオ「僕の後頭部に当たってアッサリ砕け散った奴っすか」

ピンポーン。

大家「こんにちは、レオナルド君」

レオ「…何でしょう大家さん」

大家「ちょっといい?」

大家さんはレオナルドをビルの屋上に連れてきた。 

 

ミーミー

 

どうやらネコがビルの底から上がってこれなくなったようだ。

大家「またパトリシアが上がって来れなくなってるっぽいのよ、お猿さんにお願いできないかしら?先月の家賃もうちょっと待ったげるから」

レオ「やります!!ソニック頼むよ…!!」

ソニック「(* . .)’’コクッ」

リ・ガド『大丈夫なのか?ここのビル同士の隙間なんてのは迷路そのものだろう?』

レオナルドはソニックに命綱がついたジャケットを着せる。

レオ「何度か落とし物拾った事があるんです、僕がナビすれば何とか…」

リ・ガド『ナビするって…?』

ソニックはビルの間に突入、レオナルドは地図を広げ神々の義眼で自身とソニックの視界を連動させた。

 

………

 

ミーミー

大家「ありがとう」

レオ「いえいえ」

大家さんはパトリシアを抱え先に屋上から降りて行った。

リ・ガド『成る程秘密は君のその「眼」にあるな?』

レオ「うぇ」

リ・ガド『…そうなんだろう?』

レオ「…はい。」

リ・ガド『何らかの方法で視界を共有して行くべき方向を注視していると見た。』

レオ「鋭いッスね、正解です(汗)』

リ・ガド『…全く、ビックリする事だらけだなこの街は。』

レオ「えぇ〜…それを貴方が言うんですか…」

 

………

飲食店でリールがが食事をしていると見かけたザップが隣に座り声を掛けてきた。

ザップ「お、ええと…確か…リールだっけ?」

リール「あ、レオ君の先輩の…」

ザップ「あっれ何か前あった時と雰囲気変わったね」

リール「え?そうですか?」

ザップ「いや鍛えちゃってるでしょ明らかに、全然逞しくなってるじゃん」

ザップはリールの肩に手を置くとお金をねだり始めた…。

ザップ「それはそうとさ〜20ゼーロばかし貸してくれねぇかな」

リール「え」

ザップ「レオに返しとくから後から受け取る感じで…」

リール「いや…」

ザップ「なーなー頼むよなー」

ゆっさゆっさゆっさゆっさ

リール(レオ君が言っていた…この人は良い所もあるけれど基本絶対信用しちゃならんと…)

リール「だ、だめですぅぅぅッ!!」

リールはザップを突き飛ばしてしまい…

パリーン…キキーッドシャァァァン…

ピーポーピーポー…

突き飛ばされたザップはそのまま交通事故にあってしまった。

リール「う、うわぁぁぁぁっ!!ご、ごめんなさいィィ!!」

 

………

走り去ったリールは路地を歩いて少し前の事を考えていた…

ゲムネモ『そう、なんじゃね?結局世の中は力だ。踏みつけにされる方は地べたを鼻先に、踏んでる方は人数ぶん見晴らしのいい景色を享受してる。残念ながらお前さんのその群を抜いた虚弱さでは絶望的だ、這い上がるなんて夢のまた夢だろう。どうすんだ?聞かせてみろ、見ずに終わるのか?征服者の風景…』

そうしてリールはゲムネモの話に乗った…。

リールは考え込んでいて前方から来る体格が良い異界人2人にぶつかった。

どん。

異界人「おいテメェ挨拶もなく行こうってのか」

リールに異界人2人が殴りかかりそして…

異界人「イテェイテェよぉ…」

リールの体が強化されて異界人2人を返り討ちにしてしまった。

リール(くだらん連中だ…)

ぞくっ…

リール「ブルルルル…」

リールは自身を踏みつけてきた者たちを返り討ちに出来た事に高揚していた。

ガタッ

???「うわっ」

物音に気づいたリールの前にはヌズルバ達がいた、そしてリールは…

 

………

リ・ガド『完・成だッ!!ウィルス攻勢型術式破壊砲フルドララドリクトヒューベイザーガノン7000AR!!これでゲムネモの脅威は99%無効化出来る、おお!!世界を救う正義の豪槍よ!!』

レオ「凄い名前だなぁ、見た目凄く精緻なプラモ同様なんだけど」

リ・ガド『プラモ言うな!!…だがいかんせん今使える部品ではここまでの修理が限界だ…』

レオ「マジっすか、どうすんすか」

リ・ガド『本部への打電はしているんだが従来機グラグギガラムドヴェーダバルスオンの修理がまだ終わっていないらしい。我々だけで何とかするしか無い…我々だけで…』

レオ「………?何で僕巻き込まれる事確定何すか?」

リ・ガド『え?違うの?言ったろ!?世界の命運を左右する一大事なんだぞ?何でそんなにテンション低いんだ!!』プンスカ

レオ「いやだってね?その最終決戦兵器が僕の後頭部タンコブ作るくらいの威力しか無い訳ですよ、それで世界の命運とか言われましてもねぇ…」

リ・ガド『全く…これだからデッカい奴は駄目なんだ、物の見方が雑すぎる』

レオ「…でっかい?…そんな事言われたの初めてです。僕なんかいつもチビスケ言われて小突かれたり、パシらされたり、ロクな目に遭って来なかったっすよ」

リ・ガド『…それを雑だって言ってんだよ。物理的攻撃力で勝てねぇのは仕方ねぇが、その尺度一個で世界を判断するんじゃねぇ』

 

ーーーライブラオフィス

ライブラオフィスではスティーブンに鍾離が作った品物の代金が入る様に手続きをしていた。

スティーブン「ホントにいいのかい、全額こっちに入金しちゃって?これは正真正銘鍾離が稼いたお金だけど?」

鍾離「流石に高い買い物ばかりしているので少しは足しに為ればと思ってな。」

鍾離が作った鉱石の小物はギルベルトによってオークションに出品されたのだが想定していたより高く落札されたので結構稼げていた。

鍾離「俺がライブラと結んた契約は衣食住の保証と提供及び情報だ。見返りに俺はライブラに協力する事だが、協力ついでに何かに関わっていそうな古美術品等を積極的に探してはいるが必ず見つかる訳ではないからな…契約に過不足があってはいけない。」

スティーブン(偶然じゃなくて狙って持ってきてたのか…いや役に立ってるんだけど…複雑だ…)

鍾離「もし返しきれたのならそのまま俺が使う分に回してくれ。それに繊細な品物を作るには集中しなければならないからあまり作れないしな。」

そこにリ・ガドを連れてきたレオナルドがオフィスに来て状況を説明した。

 

スティーブン「___でここに連れてきたと」

鍾離「肉眼では確認できない小さな御仁もいるのだな…」

レオ「何か情報ありますか?HLでの不穏な動き的な」

スティーブン「さあなあ…イザコザはこの街のBGMみたいなもんだしなぁ、最新といえばさっきザップが入院したぐらいかね」

レオ「え、何かあったんですか?」

スティーブン「小競り合いからの交通事故だそうだ」

レオ「何すかそれ」

スティーブン「まぁ、あいつのやる事はよくわからん」

鍾離「リ・ガド殿、その『細胞組織の超強化加速分裂菌術式』というのはどんなものなんだ?」

リ・ガド『大づかみに言うと生物の肥大化・強化の仕掛けです、手下の菌に術式を掛けて植え付け増殖させる。ゲムネモの事だ、単に体組織の強化・増大だけでなく骨格含む体構造の自動進化まで視野に入れているでしょう』

 

ーーー

レオナルド達が情報を聞いている頃、ゲムネモの術式をかけられたリールはヌズルバ達を叩きのめし…

ボキッ…

ヌズルバ「ぎゃああああああッゆるひ手…!!ゆっゆ、ゆるひ手くだひゃい…っ!!」

リール「まだだよヌズルバァ…小指1本で何音を上げてるの?俺何か全身複雑骨折だったんだぜェ…?」

ヌズルバ「ひぃぃぃぃぃ」

リール「お前に殴られた奴がどんな気持ちだったかとことん味あわせてやるよヌズルバァ…!!」

ドシャッ!!

リール(こいつらもだ…さんざん威張り散らしていたかと思えば結局もっと強い奴の前では土下座、特別でも何でもない。………俺は今までこんなのにビクビクさせられていたのか…)

ゲムネモ『どうだい?これが強者の視点だ、今まで見えなかったものが見えてくるのは堪らないよなぁ』

ウウウーウーウー

サイレンが聞こえ警察がリール達の所に駆けつけてきた。

HLDP「警察だ、全員両手を壁につけ!!」

警官達はヌズルバ達の状況を見た。

HLDP「…酷いな…おいッ!!貴様…ッ!!」

リール「酷いって何だよ、こいつらが僕にしてきた事の方がもっと……」

HLDP「止まれ!!」

警官がリールに対してスタン銃を発射した。

バシッ!!バリリッ!!

リール「ぐわッ、ギ、ガ、があああッ」

リールは警官からの攻撃に我を忘れて殴りかかり術式により更に体が強化された。

警官「なっ…!?巨…」

ドッ!!

一般人「あっちだ!すげぇ音がしたぜ!!」

 

………

現場の近くでクラウス達を乗せた車が走っていた。

デルドロ『いや良かったな』

アリス獄長「!?!?!?!!」

デルドロ『そんなに驚くこたねぇだろ…囚人はせいぜいエロ写真ぐらいにしか興味ないとでも思ったか』

クラウス「絵画について何か語ったりするのかね?2人で」

デルドロ『まぁ好き嫌いの話程度さ分かんだろ?コイツは議論に向くタイプじゃねぇただちょっと描かせると才能はあるな』

クラウス「ほう…実に興味深い今度画材を差し入れるとしよう」

ハマー「ホント!?やった!!」

デルドロ『クレヨンの中にに葉っぱ巻いたのも頼むぜ』

アリス獄長「…」ギヌロ

デルドロ『…冗談だよ』

クラウス「!!」

クラウスは窓から腕を出し血闘術で車を急停止させた。

ヒュッ、ビュバッ、ガ、ドン!!キキキキ…!!

クラウス達を乗せた車が急停止した横にリールに飛ばされたHLDPが降ってきた。

ゴッドシャ!!

一般人「うおおスゲェ!!」

野次馬していた一般人達の頭上にまたHLDPが降ってきていた。

一般人「?…!!うわあああッ」

 

ハマー「_血殖装甲!!(エグゾクリムゾン)キャッチ&リリース!!」

 

ブローディー&ハマーが降ってきた警官を掴み別の方向に投げた。

ドシャガシャァン!!

アリス獄長「何があった!?」

デルドロ『はははポリスーツが降ってきやがるとは』

ハマー「とんだ悪天候だね」

クラウス「気をつけろ!!1.1トンの強化外骨格だぞ!!」

 

バババババババ

HLDP「…畜生ッ化物めッ…!!」

路地から出てきたのはHLDPの攻撃により更に巨大化したリールだった。

 

………

スティーブンの携帯にクラウスから着信が入った。

プルルルルル、カチャ。

クラウス「私だ、新三番街通りで未確認の巨大「人」物が機動警官隊と交戦中。念の為警戒態勢(デフコン)は2、緊急出動に備えよ。」

 

ズン、ズズン。

 

ハマー「うーんクラウス兄ちゃんこれは僕ら行くべき?」

デルドロ『バカヤロウバカ止めんなよ?バカヤロウ』

クラウス「……獄長」

アリス獄長「…許可する、最短で拘束しろ」

クラウス「了解」

ハマーに付けられていた手錠が獄長許可により解除された。

ガシャン!!

デルドロ『イヤッホォォォォ』

クラウス「あ、それとスティーブン。ギルベルトに伝言を__私の夕方の予定は全てキャンセルしてくれ給え」

リールの前に出たブローディー&ハマーは戦闘態勢に入った。

 

ハマー「血殖装甲(エグゾクリムゾン)」

 

………

スティーブン「巨大人物?13フィート!?準人型でそれとは随分デカイな。この街でも珍しいんじゃない?」

通話中のスティーブンにクラウスはリールの写真を取り送信する。

ピロリン。

スティーブン「…これか…ようし検索する」

送られてきた画像を見たレオナルドが驚愕する。

レオ「え…!?リールさん!?」

スティーブン「!?なんだ知り合いか?」

レオ「いや…でも…え!?彼は僕より体重ないんすよ」

鍾離「もしや…」

リ・ガド『それだ!!』

ゴンッ!!

レオ「………ッ!!」ごろごろ

レオナルドの側頭部に丸い機体がぶつかった。

ピョンピョン

リ・ガド『まず間違いない!いいかレオナルド恐らく80%以上の確率で君の友達が菌テロリストゲムネモの術式がかけられている。細胞組織の超強化加速分裂、負荷によって千切れた筋繊維が更に太い筋肉を形作り、折れた骨が更に頑強に繋がっていくように、瞬時かつ無限にそして驚異的に繰り返される爆発的ボディビルだ!!』

鍾離・スティーブン「……」

レオ「ええと…てことはつまり…!?」

リ・ガド『ぶん殴るのも捻じ伏せるのもまずい!!何もかもが倍返しで戻ってくるぞ!!』

 

………

巨大化したリールとブラッドハンマーが取っ組み合いをしている中ブラッドハンマーがリールの腕をへし折るが…

リール「ぐあっ」

 

ボグン!!

 

リールの筋肉が更に肥大化しブラッドハンマーよりも体が巨大化してしまう。それにより吹き飛ばされそうになったブラッドハンマーをクラウスが血闘術でキャッチした。

スティーブン『クラウスその対象は要注意の可能性がある、無闇な攻撃は控えろ』

クラウス「今確認した、拘束を試みる」

リール「があああぁぁ!!」

 

クラウス「ブレングリード流血闘術『39式_血楔防壁陣』!!(ケイルバリケイド)」

 

ギャギャギャギャギャギャ、ガキン!

クラウスの血闘術がリールの体を押さえつけた。

クラウス「獄長…!!ハマーを連れてここから離脱を…!!」

アリス獄長「貴様はどうするんだ!?」

クラウス「残って周辺被害を食い止めます」

クラウスはスティーブンに詳細を確認しようとするが…

クラウス「スティーブン、この対象の特殊能力は初めて見るものだ。情報を掴んでいるなら更に詳細な…」

ギギギゴン…

クラウス「?!!」

ぶづ、ばりッ!!

クラウス(これは…表層の筋肉を無理やり剥がしたか!)

筋肉を無理やり剥がしたリールはクラウスに飛びかかった。

ハマー「クラウス兄ちゃん危なーーーーい!!」

 

ハマー「僕の百烈拳!!」

 

ハマーはリールを思い切り殴り飛ばしてしまった、そして…

 

ズン!!

 

リールが飛ばされた辺りに報道のヘリコプターが集まってきた。

バラバラバラバラバラバラ…

カメラマン「カメラスタンバイ、到着と同時に中継開始だ。」

報道員「マイクチェック1.2.1.2…OK!!」

操縦士「現場上空に到着…視界に入ります…!!」

そこには高層ビルを越える大きさにまで巨大化したリールがいた。

報道員「巨…ッ!!巨人…ッ!!イーストリムに突如現れた巨人に町の人々はパニックに襲われています…!!」

大量の野次馬《うおおおー!!すげええーー!!壊せ壊せー!!》

ズンズン…

報道員「……!?あれは…!?」

すると霧の中からギガ・ギガフトマシフと戦闘機が現れた。

報道員「ギガ!!!!ギガフトマシフ!!!!現存する世界最大の『個人』!!HLの平和の為に立ち上がったァー!!」

野次馬達《おおおおお、いけええええ!!》

戦闘機パイロット「Fire!!」

ドシュドシュドシュドシュ…ゴッ!!

戦闘機からミサイルが発射され巨人リールに深手を負わす物の…

 

ぼごっ、ぎゅるッ!!

 

ダメージに比例して急速に回復、更に巨大化してしまった。

クルリ、ズーン、ズーン、ズーン…

野次馬《逃げた!!この腰抜けエエエ!!》

わあああああ………

野次馬《………どうすんだ?…アレ……》

リールの大きさは高層ビルを軽く見下ろせる程になっていた。

 

ーーーリールの意識内…

リール(ハッ…!!…何も…何も聞こえない…警官隊に撃たれた所までは覚えてる…その時…カッとなって…)

ぬっ…

意識体のリールの側にゲムネモが現れた。

リール(うわぁっ!!)

ゲムネモ『スゲエなお前』

リール(へ?)

ゲムネモ『まるで限界まで引き絞られた弓だぜ、限界まで貯めた負の感情と俺の術式の相乗効果。予想を上回る結果を出したぞ、ほらその眼で見てみろよ…頂上の風景を!!』

そしてリールは本格的に目を覚した、リールの眼前には自分の胸下よりも下にある高層ビル群が広がっていた。

リール「ひっ!!ひいいいいいいいい!!」

ゲムネモ『いい眺めだろう?流石の馬鹿連中ももう遠巻きに逃げ散ったぜ。お前を踏みつけ気にもしてなかった中途半端な強さのクソども、お前は今や上の上の上の上だ。一歩踏み出すだけで百人単位ですり潰してやれるぞ』

リール「………」

ゲムネモ『…どうした?まさか高所恐怖症か?』

リール「…違う!!僕は…こんな事臨んじゃいない、何が頂上の風景だよ…誰も見えない、声も聞こえない、一人ぼっちの世界じゃないか!!」

ゲムネモ『静謐と取れよバカヤロウ!!他人の雑音が届かない高みだろうが!!寂しいのか?もしかして。テッペンが孤独なのは当たり前なんだよ、同じ風景見てる奴なんか存在しないからな』

リール「…元に…戻してくれ…」

ゲムネモ『………嫌だね』

リール「……!!」

ゲムネモ『こんなにデカくなったのは奇跡中の奇跡だ、お前を選んだ俺の天才ぶりに総毛立つぜ。このままトコトン成り行きを見てえ、どうなるんだよ一体よお。この街を壊滅させて霧のキノコを突き抜けて大気圏から頭が出てもお前大丈夫か?』

リール「(汗)」

ゲムネモ『…お前はお前の身の丈から見える世界を放棄したんだ。でもいいじゃねーか、そんだけ辛かったんだろ?戻ろうなんて小せえ事言ってないで後はパーっとあばれて終わろうや』

ゲムネモの言葉を聞いたリールはレオナルドの事を思い出していた。

………

公園でレオナルドとソニックが昼寝をしていてリールはぼんやり景色を眺めている時、近くで野球をしていたボールがソニックに向かって落ちてきた。

カキーン…

リール「ハッ」

バッシ!!

ソニック「!!」

ボキャ

リールはボールをキャッチしたが腕が折れてしまった。

リール「わわわわわわわわわわ」

レオ「おわー!!」

異界人「悪イ悪イー」

レオ「悪い悪いじゃねぇでしょ、気をつけて下さいよ!!」

異界人「…プッえ?マジ?どうやったら野球のボールでそんなに派手に折れるんだよ、わははははは」

レオ「……謝れ」

異界人「ハァ?」

レオ「ボールがたまたま大当たりしてぶつかりかけたのはまだいい、そういう事もあるだろう。だけど人の怪我を…体質を笑うのは許さない!」

異界人「……で?許さなかったらどうするの?チビスケ?」

ゴン!!

レオナルドは異界人の顔に頭突きした、そしてダッシュで逃げた。

リール(意気地なしの僕の代わりに誰よりも先に怒ってくれたレオ君…僕の大事な友達。あの時君を置いて逃げてしまった自分が心底許せなくて許せなくて許せなかっただけなのに…ごめんよ…こんな事になるなんて…僕はなんて大馬鹿なんだ…ここからはもう見えないけど…君は怪我をしてたりしないかい?…ぐすっ…助けて…!!レオ君…!!助けてよ…!!)

 

ーーー

助けを願っていた巨人リールの側にレオナルド達を乗せた小型ヘリが接近した。

ギルベルト「オイレ1より地上斑、配置に着きました。これより接近を開始する、作戦通り陽動を開始されたし」

スティーブン「ようし行くぞ!!」

スティーブンの掛け声でメンバー(ザップ除く)が一斉に攻撃を開始した。

 

ドドドドドドドッ!!キィィィィン

 

それぞれ足の指先を攻撃するのに対し鍾離は反対の片足全体を囲む様に元素スキルの石柱を発生させ元素爆発のエネルギーも動きを封じる為の結界生成に回していた。

鍾離(流石にこの規模の大きさの結界を維持するのは今の俺では少しキツイな…)

スティーブン「済まない鍾離!!そっち大丈夫かい!?」

クラウス「無理はしないでくれ給え!!」

鍾離「今の所は問題ない!」

 

リール「わ…わわわ!!…何だ!?何か…チクチクする!!それに片足がガッチリして動かない!!

ゲムネモ『まだ抵抗してる連中が居るようだな』

リール「ええッ!?」

ゲムネモ『馬鹿馬鹿しい…早く蹴散らせ』

リール「…」

ゲムネモ『…どうした!?早くしろ』

リール「い、嫌だ…!!」

リール(体格差どころじゃない…こんな化け物みたいな僕に怯まない人達が居るんだ…動くもんか…!!絶対…!!)

 

ギルベルト「……接近完了、察知された気配なし」

レオ「いいですか?視覚情報…繋ぎます」

レオナルドは神々の義眼を使ってリ・ガドにソニックの視点を繋いだ。

ヴォン…

リ・ガド『うお!!俺が見える。猿くんの視点か、凄いな君の眼はまるで中継局だ』

レオ「早くしましょう、僕こんな荒業やった事ないしいつ限界が来るか分かりません」

リ・ガド『…限界?』

レオ「熱を持つんす、眼球が温まって頭がボワンとしちゃう」

リ・ガド『それは急がねばならんな、では突入だ…!!』

ソニックはリールの耳穴から脳内に侵入した。

リ・ガド『侵入完了』

 

ゲムネモ『何だよツマンネーなー、今更大人しくしたって意味ねぇだろ』

リール「うるさいッ黙れ…!!」

 

リ・ガド『ゲムネモは自我肥大、全てをコントロールしたがる。きっと体内からリール君に接触を図っているはず。あ…そこを右登って』

レオ「はい」

リ・ガド『だとすれば方法は…脳幹への直接接触だ…!!』

 

KK「鍾離っちが片足抑えてくれてるとはいえ…動き出したりしないでしょうね」

スティーブン「君は離れていろよ、遠くからでも攻撃出来るだろう?」

KK「……こんなデカけりゃどこだって同じよ」

 

ソニックはリールの体内を凄いスピードで移動していた。

リ・ガド『……凄いな音速猿、何という身軽さだ…スピードに付いていけん』

シュウ…

レオ「……!!」

リ・ガド『どうした…!?』

レオ「…大丈夫です、映像乱れてませんか?」

リ・ガド『ああ問題ない』

レオ「…続けましょう」

 

脳幹ではゲムネモが我慢できなくなってきていた。

ゲムネモ『…ふうん、じゃあもういいや。手を出し過ぎるのは無粋だが仕方ねえ』

リール「!?…何をするつもりだ!!」

ゲムネモ『聞いても無駄だぜ?お前の意思なぞここからは関係ねぇ……クク…運動中枢に侵入してお前の身体を直接操作してやるん、だ、よ』

 

レオ「……ぐあっ!!」

ギルベルト「レオナルドさん!?」

ジュウ…ジュウ…ジュウ…

リ・ガド『…おい…この音…!!眼ェ焼けてるんじゃねえのか!?』

レオ「いいから…!!進んで…!!」

 

リール「やめろ…やめてくれ…!!」

ゲムネモ『やかましい、知覚は残してやるよ。何百万人も潰す感触と悲鳴をたっぷり味わえヘタレ小僧!!』

リール「わああああああ」

ゲムネモ『オラオラ!!神経接続!!』

リール「ぎゃああああああ」

ゲムネモ『拒否反応無化術式注入!!運動神経エミュレータ起動!!完全専有まで4!!3!!2!!』

リール「やめろおおおおおお!!」

そこ時ソニックがゲムネモを発見しリ・ガドの超兵器を構えていた!!

バジッ!!ババババババ

リ・ガド『…やったか…!?』

レオ「ソニック!!戻れ!!急いで…!!」

 

………

レオ(リールさんはこの街の中央『永遠の虚』へと落ちて行った。一瞬誰もが激突音に身構えたが巨大な穴は静かに全てを飲み込んでしまった…)

ブロォォォ…パッパー…

レオ(術式解除プログラムが成功したのだと彼は言う、あんな巨体が地面?にぶつかる前にそこまで小さくなるものだろうか…やっぱり底無しと考える方が自然だろう。何がなんだか分からないや、全然受け止めきれない。ただ今リールさんが生きているとするなら心細い思いをしてないか心配だ…)

ぐにょぽき。

レオ(……?ぐにょぽき?)

レオナルドの足の下には何と小さくなったリールがいたのだ!

レオ「って、うわああああああ!!」

リール「た、ただいま」ゴブッ!!

レオ「ぎゃああああああああ!!」

 

ーーーライブラオフィス

リ・ガド『知るか!!あの山脈みたいな図体を何とか出来ただけでも御の字なんだぞ!!そうそうドンピシャで同じ大きさに戻せるものか!!』

リール「まぁまぁレオ君そう焦らずに行こうよ」

レオ「…はあ」

リール「色々迷惑かけたしこれが今の僕の『背丈』だって事で、それにここから見える景色もそう悪いもんじゃないんだよね」

野球ボールより少し小さくなったリールの眼にはライブラメンバーの姿が見上げる形で映っていた。

レオ「……変わりましたね、リールさん」

リール「そうかな?へへへ。やっぱり人間体の大きさじゃな…」

バサバサ、パクゥゥゥ!!

レオ「あーーーーー!!!」

それから少しの間室内でレオナルドはリールを咥えて飛んでいる鳥を追いかけ回していた。

鍾離「ソニック、今回はお手柄だったな。」

ソニック「(*´꒳`*)」

ソニックは鍾離特性ミニチュア家具のソファに座って皆からのご褒美バナナを堪能していた。

レオナルドは何とかリールを保護してバナナに囲まれてご機嫌なソニックを見た。

レオ(うーん今度はコイツが調子にチョーシにのるターンか…)

その横で退院してきたザップが不機嫌そうにしていた。

スティーブン「…どうしたザップ?」

ザップ「…いや…ちょっと思ったんすがね?今回のこのかなり世界の命運を分けかねなかったチョ〜大事件にこんな頭から陰毛が生えちゃってる地味糸目と」

レオ「ん?何だ何だ?」

ザップ「コイツよりは若干頭の中身マシですが所詮は畜生の分際のエテモンキー投入ってのは」

レオ「おうこりゃ嫉妬か?見苦しいぞ?」

ザップ「ちょ〜っとリスクが高すぎやしませんでしたかね」

レオ「ウラ〜こいや〜」

レオナルドがザップに向かっていくが頭を抑えられ前に進まない…

ザップ「ちげえよ、どっかに潜り込むにゃ適材が居たろうって話」

リ・ガド『まぁ実際の話猿君でも通れない道があったら一巻の終わりではあったな』

ザップ「だしょ!?そういう時こそ出番なんじゃないの!?ウチの自慢の壁抜けステルス何でもござれ式潜入特化型スーパーグレード超絶能力者様のさァ!!」

ザップの後ろではチェインが落ち込んでいた。

チェイン「ご、ごめんなさい…っ!!」

ザップ「謝って済む問題じゃないでしょおおおお!?」(#゚皿゚)

クラウス「ううむ、落ち着き給えザップ」

ザップ「何でい旦那、肝心な時に役に立たねぇ奴にその理由を聞いて何が悪いんでい」

クラウス「しかし皆の前での糾弾は如何なものか、彼女は十分反省している」

ザップ「い〜や納得いきませんねぇ〜ちゃんとコレ!!何やっとたのか!!説明して!!貰わんと!!」

ザップの問い詰めにチェインは縮こまってしまう。

チェイン「それは…」

ザップ「女子会!?人狼局特殊諜報部の!?」

スティーブン「地下のワイナリーをほぼ完全に空にし、レス・ハレスは1週間営業不可能になったそうだ」

ザップ「…ッ…化け物…」

鍾離(あの呑兵衛詩人でもそこまで飲まない…彼女達人狼は酒が特別飲めるのだろうか…)

………

モンド城内、エンジェルス・シェアにて…

吟遊野郎「はクシュッ!!うーん誰かウワサしてるのかな?」

若旦那「それよりそろそろツケを払ってくれないか…」

吟遊野郎「ええ〜もうちょっと飲ませてよ〜歌ここで披露するからさぁ〜」

………

チェイン「…反省してるよ、皆がそんなに頑張ってた頃に自分だけ酔いつぶれてたなんて恥ずかしい」

ザップ「当たり前だ!お前ちょっと自覚足んな過ぎじゃねぇのか、俺達の仕事はいつ何時世界の命運を__」

レオ「いや、全然関係無いっしょ。だってこの怪我はまぁ寸借詐欺未遂の果ての自業自得っつーかだし」

ザップ「バカ!!シー!!シーーーッ!!」

レオ「今回一切現場に居なかったザップさんに何の迷惑がかかってるっつんです?」

ザップ「アハハハーコイツちょう面白い事言う奴だな〜」

ザップはレオナルドに足でちょっかいだすがレオナルドは喋るのをやめない。

レオ「入院中3人の看護師に手ェだして軽く修羅場っちゃってただけの人が…」

 

ーーー5日後

鍾離「…そういえばザップは?」

クラウス「見かけないな」

スティーブン「中央病院」

クラウス「!?またかね」

鍾離「…今回は心当たりがあるな…」

スティーブン「今度は頚椎にヒビが入ったとの事だ、三倍に膨らんだ顔にキッチリ5種類の平手の痕が残った状態で発見されたよ」

ーーーマクロの決死圏_終幕_



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自称凡人、懐かしい景色を思う。

今回のお話は血界戦線の原作を少しとオリジナルの内容になっています。
原神の『魈』の伝説任務のネタバレが少しあるのでご注意ください。


テロリスト病原菌が起こした事件から何日か立った頃。

ライブラオフィスがあるビルの鍾離の部屋にて、

鍾離はテーブルの上に黄金色をした龍が描かれた壺を用意していた。

 

鍾離「最近は『洞天』に入っていなかったからな…霧ばかり見ているから少し気分転換にはなるか」

鍾離はオフィスに向かいギルベルトに声をかけた。

鍾離「すまないギルベルト殿、今日は部屋に籠もるので夕食の時に声を掛けてくれないか?」

ギルベルト「それは構いませんが、何か作業でもされるのですか?」

鍾離「ちょっとした気晴らしさ」

ギルベルト「そうですか、かしこまりました」

鍾離は自室に戻り、壺に触れた。

???「ようこそお帰りなさいませ、帝君」

 

………

鍾離が自室に籠ってからしばらくしてあと少しでランチの時間という頃、スティーブンは書類処理をしながらザップとツェッドにお遣いを頼んでいた。

スティーブン「なぁに簡単な仕事だよ。単なるお届け物、君ら二人なら文字通り朝飯前だ帰りにサブウェイでサンドイッチでも買ってきてくれ」

ザップ「えーと楽勝なんですよね?だったら…」

スティーブン「二人で行け、これは命令だ。」

スティーブンの有無を言わさない圧がありザップは黙った、そして手紙を差し出された。

スティーブン「はいこれ、三番街のブーリーロマノフに届けてくれ」

ザップ「ゲッ‼ブーリー‼」

スティーブン「ついでにツェッドの紹介も宜しく、あいつは初めての人間には絶対合わないからな」

ザップは行先を聞いてかなり焦っていた。

ザップ「…ブーリー…あのスターフェイズさん?おお、お遣いと紹介だけなら誰か他の…」

スティーブン「それがな?ご指名なんだよザップ君。君と彼女との間にどれだけの金銭貸借関係があるのかは知らないが、あの剣幕を見ると詳細を聞くのも憚られるな」

 

そうしてザップとツェッドは二人でお遣いに出かけて行った、人込みの中を2人は進んで行く。

ブロォォォォォ、パパーー。

ザップ「…何だよ!!」

ツェッド「何も言ってませんよ」

ザップ「言いたいことが山程ありますギョギョギョ~って顔してんだろがこの魚人間!!」

ツェッド「どんな顔ですか、貴方の類まれなる呆れを通り越して憐憫にまで届く救いようの無い素行の悪さなんて興味ありませんよ」

ザップ「全部言ったなコノヤロウ!!」

ツェッド「聞きたいのか聞きたくないのかどっちなんです?煩わしい」

こうして二人は進んでいったがこの先でまさかピタゴラスイッチのごとく偶然の連鎖に巻き込まれて命の危機で疲れ果てるとは思いもしていなかった…。

 

ーーーライブラオフィス

2人を送り出したスティーブンは変わらず書類を片付けていた、そうして1時間がたった頃…。

スティーブン(…ん?…そういえば今日はまだ鍾離の姿を見てないな…いつもならこの時間帯にランチに出かけていくのに…)

ふと思ったところにレオナルドがバイトを終えたのかオフィスに入ってきた。

レオ「ちわ~す。あれスティーブンさんだけっすか?」

スティーブン「ああ少年、あの二人なら少し前にお遣いを頼んだから今はいないぞ」

レオ「あーそうなんですか…すれ違いになっちゃったか…」

スティーブン「ランチに行く気だったんだろ?今日は鍾離をまだ見てないから部屋にいると思うぞ」

レオ「それなら鍾離さん誘って行こうかな?」

レオナルドが鍾離の部屋に行こうとした時、鍾離の伝言を聞いていたギルベルトが声を掛けた。

ギルベルト「ああレオナルドさん、鍾離様でしたら今日は一日お部屋に籠るそうですよ?夕食の時に声を掛けて欲しいとお願いされました」

レオ「そっすか……じゃあランチどうしようかな……」

スティーブン「俺はザップ達にサブウェイ頼んだからなぁ…でも、少し遅いか?」

 

………

そんな噂をされている二人だが、現在ライブラの武器調達調整担当の『「武器庫」パトリック』の探していた超威力の範囲限定アンプル型極小爆弾を発見、戦闘になったが偶然に偶然が重なり吹き飛ばされ何故か蜘蛛型の魔獣と一緒に飛んできた金庫に閉じ込められていた。その金庫を空を泳いでいた巨大大空亜虫が飲み込み上昇していく…金庫内ではザップとツェッドが中にいた蜘蛛型魔獣を倒したが糸に絡まっていた。

 

ツェッド「落ち着け…落ち着くんだ…」

ザップ「落ち着けよバカ落ち着け!!魚野郎!」

ツェッド「落ち着いてますよ!!黙ってください!!!……これ上昇…してますね…」

ザップ「ああ…落ちたなミンチだなこの感じ」

そういったザップは倒した蜘蛛型魔獣の糸に絡まり逆さまになりながら爆弾のアンプルを血法で巻いていた。

ツェッド「…それ…やっぱり…例の爆弾ですよね?」

ザップ「ああ…咄嗟にキャッチしちまったが、まあ多分ビンゴだわ」

ツェッド「両手疲れるでしょう、震えてるじゃないですか」

ザップ「いや、それがよ。どうやら少し割れてるっぽいのさ」

ツェッド「…いつ⁉」

ザップ「多分俺らが飛ばされたショックで」

ツェッド「そこから今まで⁉ずっとその薄ガラスをずらさない様に保持してたっていうんですか⁉」

ザップ「声がでけぇよバカフィッシュ!今もっかい巻き直してんだ集中させろ!!」

ザップはアンプルに慎重に血糸を巻き直していく。

ツェッド(……凄い…本当に天才なんだなこの人)

ザップが血糸をアンプルに巻き終わり、蜘蛛型魔獣の糸を切断してからツェッドが金庫を風で斬って開けようとするが少しの傷しか入らなかった。

ヒュパカアン…。

ザップ「ぎょぎょぎょぎょ~?使っかえねぇなぁ」

ツェッド「何でいちいちそんな言い方するんです(汗)」

今度はザップが金庫壁を燃やそうとするが無傷だった。

ボウォ…。

ツェッド「お話になりませんね」

ザップ「『耐火金庫』って言葉知ってるか?」

ツェッド「失笑モノです」

ザップ「(# ゚Д゚)」

ザップは八つ当たりで炎を金庫壁にぶつけていく…。

ボッボッ、ボボッボボッ、ボウワ…。

ザップ「畜生‼畜生‼畜生畜生畜生畜生ッ!!!」

ツェッド「やめて下さいよッ‼ああーッ‼魔獣‼燃えてる‼消して消して消して‼」

そして燃えた魔獣を2人がかりで鎮火した。

ザップ「…暑い…」

ツェッド「当たり前でしょう」

ザップ「…ケムイ…」

ツェッド「誰のせいですか‼」

ザップ「………頭痛がいてぇ…」

ツェッド「そうなんですか?……実は僕もです…」

ザップ「はッ⁉」

ツェッド「当然ですよ…‼こんな密室で火を燃やせば酸欠になるに決まってる…‼」

ツェッドの言葉にザップは不思議そうな顔をしていた…どうやら理解できていないようだ…

ザップ「(´・ω・`)・・・?」

ツェッド「燃焼っていうのは酸素と物質が結びつく科学反応じゃないですか‼」

ザップ「………???」はなほじり…

ツェッド「ウワ~~~~‼この人炎を使う資格無いわ…‼(汗)」

ツェッドはため息を吐いた…。

ツェッド「はぁ…どっちにしろ別の手を…」

ザップ「いやそれがそーも言ってられねー様だぜ?」

ツェッド「へ?どうしてです?」

ザップ「いや何だかさっきからエライ吐き気がする上に…どうも指先の感覚も無くなって来てのんさ…‼」

ツェッド「ええッ!!?」

確かにザップの手は震えていた。

ザップ「こりゃもう全賭けで突っ込むしかねぇな。いいか俺がカグツチを使って最高温度で発火させるから、お前はシナトベでそいつを限界まで一点に集中させてガンガンに酸素を送り込め」

ツェッド「…ッ即席のエアプラズマカッターって事ですか⁉この状況でぶっつけでそんな精密作業…!!」

ザップ「出来るに決まってんだろがーい!!」

ザップは何を当然の事を聞くのかという顔をしていたのでツェッドは驚いた。

ザップ「マジ何言ってんだ?お前。___俺たちは斗流だぞ?いいか__こんなハコ一つぶっ壊せずまとめておっ死んだらあの雑巾ジジイにどんな罵詈雑言で笑われるか知れねえぜ…‼」

ザップの言葉の終わりと共に二人でエアプラズマカッターを作り出し…。

ジッ、ジジジジジジジ

二人はそれぞれの修行中の出来事を思いだしていた。

 

………

ザップ『師匠!!今の技…風が操れんのかよ⁉ヤベエじゃんそれ!!当然教えてくれるんだよな⁉』

ツェッド『我が師よ、カグツチを伝授頂ければ我が血法はより戦闘力を増します。何卒…!!』

師匠『愚昧が、己が器も図れぬか。次に貴様と儂を並べて語らば耳鼻を削ぎ落とし野良犬に食わせるぞ。万謝を以って自らの技を研鑽せよ、何処までも深く鋭く。貴様の敢え無き一生などそれで終わる、二兎なぞ追えば何にもなれはせん。何にもなれぬのならこの先貴様を待つのは陰惨な死のみだ、ならば今ここで儂が楽にしてやるがどうだ?』

ザップ「あのクソジジイがああああ!!!」

ツェッド「師匠見ていて下さいィィィ!!!」

 

ボッ、ビュアァァァァ!!ガギギギギ、ドガ、ガチャーン…。

 

二人は無事に地上に戻ってこれ、ザップは血糸でネットを作って引っかかていた。

ザップ「……ズルイぞお前、軽く滑空出来るなんて聞いてねぇ」

ツェッド「聞かれてませんでしたから。あっ!!もうこんな時間ですよ!!」

ザップ「えーーー今日はもういいだろうもう~」

ツェッド「何言ってるんですか特に怪我も無いんですから行かないと…‼何があったか話しても絶対信じて貰えないですよ‼」

ザップ「うううううう」

 

ーーー

レオナルド達が噂してからしばらくして二人は無事お遣いを終えてオフィスに戻ったが…

スティーブン「なンだよ、そんでサブウェイ忘れたのか。意外と使えないんだな君達」

ザップ「うおお…キビシーナー…」

レオ「アハハハ…(汗)」

スティーブン「こんな事なら少年と一緒にランチ行けば良かったよ」

ツェッド「…?レオ君はランチ食べてないんですか?」

レオ「お二人と行こうと思ってたのでまだっすね、鍾離さんも今日は部屋から出ないつもりみたいですし」

ツェッド「そうなんですね…」

スティーブン「まあ一応ご苦労だったな。」

しょぼくれていたザップがこの場に居ない鍾離について少し文句を言い始めた。

ザップ「ちくしょう~今日は俺たち散々な目にあったのにあいつは部屋でお休み中ってか~」

ツェッド「鍾離さんは全然関係ないじゃないですか…あれは本当に偶然おきた事件ですよ」

ザップ「い~やこうなったらあいつにも俺たちの苦労話引っ張り出して聞かせてやる!!」

レオ「完全に八つ当たりじゃないっすか!!やめましょうよ…!!」

レオナルドの静止を無視してザップは鍾離の部屋に向かい扉を開けた。

バタンッ!!

ザップ「鍾離~おい話聞けッ…て、あ?いねえじゃねえか?」

鍾離の部屋にはテーブルに少し豪華な壺が空中に浮いていて鍾離本人は居なかった。

ザップ「つか…なんだこの壺…浮いてる?」

続けてザップを止めようとレオナルドとツェッドも鍾離の部屋に入ってくる。

レオ「え?鍾離さん居ないんすか?ギルベルトさんの話だと今日は部屋に籠るって…」

ツェッド「…ギルベルトさんに出かけていないか確認してきますね」

ツェッドは確認しに部屋を離れたがレオナルドも宙に浮いている壺に気づいた。

レオ「…壺?」

ザップ「またあいつが買ってきたガラクタか?」

レオ「鍾離さんは価値のある物し買ってませんよ…でもなんで浮いて…」

レオナルドが壺に近づき確かめようとすると壺から声が聞こえた。

鍾離「すまないが少年、そこをどいて貰えるか?」

ザップ「壺から声⁉」

すると壺の近くに鍾離の姿が現れた。

レオ「えええええええ⁉鍾離さん⁉今壺から⁉」

鍾離「はぁ…まさかノックもせずに部屋に入ってくるとは…ザップの短慮さを考えておくべきだったか…」

ザップ「はぁ⁉喧嘩売ってんのか~⁉」

そこにツェッドがスティーブンを連れて戻ってきた。

スティーブン「ツェッド…鍾離は部屋に居るみたいだが…」

ツェッド「何がどうなっているんです?」

メンバーが混乱してきたので鍾離は『塵歌壺』について説明する事にした。

 

ーーー

クラウス「…皆そろって何かあったのかね?」

スティーブン「俺も何が何やら…鍾離が説明してくれるみたいだけど…」

クラウスもオフィスに集合し鍾離は『塵歌壺』について話し出した。

 

鍾離「この壺は『塵歌壺』という璃月の仙人の道具だ、まあ実際に見てもらった方が説明も早いだろう」

そう言った鍾離は壺の前に立ち…

鍾離「この場の者たちの『洞天』への立ち入りを許可する」

??「かしこまりました」

メンバー『⁉』

メンバーは一瞬景色が歪むのを確認したが次の瞬間見たことがない風景が広がっていた…璃月の琥牢山、奥蔵山をモデルにした小島に竹林、璃月港の建物に稲妻の温泉をモデルにした建物など一部違うが鍾離が住む璃月の景色を切り取ったような光景だった。メンバーがガラリと変わった場所に驚いていると…

??「ようこそ、鍾離様のお客様方」

そこには宙に浮かぶ鳥?のような生物がいた。

鍾離「彼はマル、この『洞天』を管理をしてくれている壺の精霊だ」

スティーブン「壺の精霊って…ここはさっきの壺の中なのか…?」

鍾離「そうだ、仙術と霊石を使って作られた壺に『洞天』という小さな箱庭を作っているんだ」

鍾離の『洞天』には五つの空中に浮かぶ島が存在している。

レオ「これ…小さいっすか…?」

ザップ「…全然小さくなんかねぇだろ…」

ツェッド「…スケールが違いすぎますね…」

マル「では私から改めて自己紹介させていただきます。私はこの『洞天』の管理をしているマルと申します、以後お見知りおき下さい」

クラウス「うむ……ではこちらも……私はライブラのリーダーを務めているクラウス・V・ラインヘルツと言うものです、よろしくお願い申し上げる」

スティーブン「俺はスティーブン・A・スターフェイズ。よろしく頼む」

ツェッド「僕はツェッド・オブライエンと言います」

レオ「レオナルド・ウォッチっす」

ザップ「……ザップ・レンフロ」

マル「はい、皆さん宜しくお願いします」

一通り自己紹介を終えると鍾離は大きな建物の中へメンバーを案内した。建物内には部屋が沢山あり今まで鍾離がテイワットで購入してきた美術品や骨董品、書籍や巻物が置いてある部屋、食事を作るための台所、珍しいお酒や食材が保管されている保管庫などがあり、リビングにあたる部屋にメンバーを座らせた。

レオ「かなり広いっすね……」

スティーブン「……さっき一瞬見えた部屋は鍾離が集めたコレクションルームか?凄いな……」

クラウス「…後ほど中を見せて貰えないか確認しよう」

鍾離が人数分のお茶を用意して部屋に入ってきた。

鍾離「待たせてすまないな、では話を再開しよう。この『洞天』は持ち主の意思次第で景色や建物を自由に変換できる、今皆が見た景色は俺が住む璃月の物を再現した物になる。実は霧ばかりの景色を見ていて気分転換をしたくなってな…一日ここでゆっくりしようと思っていたんだ」

クラウス「先ほどの景色が鍾離殿が住む国の風景の一部か…確かに恋しくなるのも分かるな…」

スティーブン「でもこの壺は君の世界の仙人の物なんだろう?よく手に入ったね?」

鍾離「この『塵歌壺』は俺の古い友人が作ってくれたんだ」

レオ「作ってくれたって…その人が仙人なんすか?」

鍾離「そうだ」

ツェッド「じゃあかなり長生きされている方なんでしょうか?」

鍾離「まあ長く生きている仙人ではあるな」

レオ「はぁ~仙人ってすごいんですねぇ……術式とか全然見えなかったのに壺の中にこんな空間を作っちゃうなんて…もしかしてこの間のモラミートって…?」

鍾離「ああ、ここで作って外に持っていったんだ。そうだ昼食に用意してた俺が作った料理があるんだが食べるか?」

レオ「いいんすか⁉実はまだランチ食べてなくてお腹すいてたんっすよ~」

スティーブン「一人で食べるつもりだったなら用意しているのも少ないんじゃないかい?」

鍾離「時間が少しかかる料理なので多めに作っていたんだ問題ない、今持ってくる」

鍾離は台所から『とろ火で煮込んだ腌篤鮮』『美味しそうな絶雲お焦げ』『美味しそうな明月の玉子』を人数分用意してきた。(調理時間約8時間以上…。)

鍾離「熱いので気を付けてくれ」

レオ「おおー!!美味そう!!」

スティーブン「これはまた…本格的な味だな」

クラウス「うむ…素晴らしい味付けだ」

ザップ「はふッあつッうまッ!!」

ツェッド「…熱くてなかなか食べられませんね…ハフ…モグモグ……ゴクン…とてもおいしいですね」

メンバーは鍾離の作った璃月料理を堪能した。

クラウス「鍾離殿とても美味しかった、ありがとう」

スティーブン「ごちそうになった、本当においしかったよ鍾離」

レオ「すっごく美味しかったっす!」

ツェッド「ごちそうさまでした」

ザップ「サンキューな」

鍾離「喜んでくれたようで何よりだ」

食後のお茶を入れて少しゆっくりしたクラウス達は『洞天』の中を見学したいと思っていた。

クラウス「鍾離殿、出来れば屋敷の中を見せてもらいたいのだがいいだろうか?」

スティーブン「俺もクラウスとあのコレクションルームを見せてもらいたいね」

鍾離「そうか、なら案内しよう。少年たちはどうする?」

レオ「僕は外の景色をもうちょっとゆっくり見たいっすね」

ザップ「俺もだな~」

ツェッド「僕も景色を見たいですね」

鍾離「そうか、ゆっくり見てくると良い」

 

………

3人はクラウス達と別れて洞天内の散策を始めた。屋敷のある一つ目の島から渡ると二つ目の島には軽策荘をモチーフにした竹林と段々と連なる花畑に小さい納屋と沢山の魚が泳ぐ池があった。

ツェッド「この池は……観賞魚を飼っているんですかね?異界産の魚とも違う綺麗な種類が多い…」

レオ「え?どれっすか?……ホントっすね、泳いでる魚の種類が違うみたいっす。これが鍾離さんの世界の魚か~」

ザップ「…こいつら後で料理に使われんのかな?」

レオ「ちょ、夢の無い話しないで下さいよ!」

 

三つ目の小島は琥牢山と奥蔵山をモチーフにしているのか高い崖から滝が流れ落ちあちこちに巨大な琥珀がある、中央には大きな岩がそびえたち清心と流璃袋があちこちに自生している。

ツェッド「ここは鍾離さんが言うように自然をそのまま再現した場所なんでしょうね……」

レオ「なんか……仙人の世界って感じの場所っすね……」

ザップ「滝まであんのかよ、この壺ん中…」

四つ目の島は木々に囲まれ守られるように沢山の"天然の流璃百合"が咲き誇っていた。

 

レオ「おおー!凄い景色っすね」

ザップ「お前ほんっとこういうの好きだよなぁ」

ツェッド「……確かに幻想的な風景ですね」

最後の五つ目の島には今までの璃月の風景と少し違い稲妻の建物が建ち、近くには石でできた椅子やテーブル、一番奥にはとても大きな銀杏の木と周りに咲く沢山の霓裳花があった。

レオ「あれ?この建物だけ雰囲気違くないっすか?」

ツェッド「そういえばそうですね…」

稲妻の建物には暖簾が出ており温泉マークが付いていた。

ザップ「…まさか…ジャパニーズ温泉ってやつか!?」

レオ「まあわかりやすくマークついてるし、多分…温泉っすね」

ツェッド「…温泉…」

ザップ「おや〜?な〜んか入りたそうだなぁお魚ちゃんよ〜。でもお前が入ったら煮魚になっちまうんじゃねぇの?」ε⁃(˃᷄ε ˂᷅ ๑))

レオ「…アンタがいつか釜茹でにされるべきだと思うっすよ…」

ツェッド「…同感ですね」

そんな風に3人が『洞天』を探索している一方で…

 

………

最初の島の屋敷に残り鍾離が集めてきた璃月の書籍や色々な貴重品をクラウスとスティーブンは見聞していた。

スティーブン「…うーん予想はしていたけど、書籍は鍾離の世界、テイワットで使われている文字だからまァ読めないよね…鍾離は俺達の世界の文字は最初から読めていたのかい?」

鍾離「いや、言葉は聞こえるし話せていたが文字は分からなかった。なのでギルベルト殿に協力してもらい文字を覚えたんだ」

スティーブン「短時間で覚えたって…簡単に言うね…」

鍾離「記憶力はいい方なのでな…」

クラウスは2人の側で品物をじっと観察していた。

クラウス「…この品達を見ていると地球によく似た文化があるのはよくわかる。これらの品は古代の中国文化の品に似ている…。」

スティーブン「相変わらず、君も大分博識だよね。俺がわかるのは西洋文化の品くらいだよ」

2人は壺や小物、石泊や夜泊石が収められた宝石箱などを見ていると、クラウスはあるモノを見つけた。

クラウス「…?…これは……」

本棚の近くに出しっぱなしになっていた本で挿絵が入ったページが開かれていた。

クラウス「鍾離殿、ここに置いてある本は…」

鍾離「その本は…出しっぱなしにしていたか。その本は『護法仙衆夜叉録』という本だ。璃月の過去に起きた妖魔を払う『仙衆夜叉』達について書かれている。」

スティーブン「『仙衆夜叉』?仙人について書かれた本なのか…読めるなら自分で読みたい所だけど…」

クラウス「私も興味があるのでぜひ読み聞かせて欲しいのだが……良いだろうか?」

鍾離「ああ、構わない」

鍾離は『護法仙衆夜叉録』の内容を話始めた…

 

___

太古の昔…璃月は瘴気に満ち魔に溢れていた…。七神が国を統治する前に起こった『魔神戦争』によって敗北した魔神の残骸は怨嗟をまき散らしやがて妖魔となった…妖魔は疫病、怪異そして動植物の変異を引き起こした…やがて岩王帝君は仙人の夜叉を招集し魔を滅する事にした。彼らは護法の為殺生し悪を滅する事を岩王に誓った…しかし長い決戦の中、『業障』に囚われ魔神の憎悪に染まってしまう…恐怖に支配され発狂する者…同士討ちで死に至るもの…精神が壊れ魔物となる者…最も強かった5人の『仙衆夜叉』の内3人が悲惨な死を遂げ、1人が行方不明となった…幾千年の時を超え生き残ったのは『降魔大聖』ただ1人…そして彼の姿を覚えているのは孤雲閣に照らされる月明りと荻花州の笛吹だけとなった…。

___

鍾離は『護法仙衆夜叉録』の内容を語り終えた。

クラウス「…強大な力を持った仙人達『仙衆夜叉』が蝕まれた『業障』…そしてたった1人残った『降魔大聖』…その彼は今も鍾離殿の国を守り続けているのだろうか…?」

スティーブン「仙人なら今も生き続けているはずだろう?」

鍾離「彼の噂なら聞いている、だが彼は滅多に凡人の前に姿を現すことはない。先ほどの本の内容通り彼は岩王帝君との契約を守り璃月を飲み込まんとする闇と戦う事が役割だ、姿を見たとするなら生と死の瀬戸際に立たされる程の危機に陥った者達だな…そんな危険を救ってもらった者達が彼の話を後世に繋いでいるんだ」

(…俺はもう、神の座を降りた。魈…お前もずっと俺の事を慕い続ける事はないんだがな…俺がHLに来てから大分時間が経過しているがテイワットの時間とHLの時間の流れが同じとは限らない、あまり時間が経っていない事を願うしかないな)

鍾離は望舒旅館に今も居るだろう少年仙人を思いながらクラウス達に説明をした。

鍾離「さて、少し長くなってしまったな」

スティーブン「いや、こっちも興味深い本の内容が聞けたからね。」

クラウス「是非とも他の本の内容も知りたいものだ…本格的に鍾離殿の世界の文字を覚えるか…。」

クラウスが本気でテイワットの文字の勉強をしようとか悩んでいるとスティーブンが呆れた顔をしていた。

スティーブン「ハイハイ…でもそんな暇もないし、ここに来るには鍾離の許可がいるんだからナンセンスだよ」

クラウス「むう……」(´。_。`)

スティーブンの言葉を聞いて残念そうな表情をするクラウスだった。

鍾離「ははは。そうだな今度はギルベルト殿達皆を連れてこようか。今の形態の『洞天』には旅人から貰った設計図で作った温泉があるから、時間がある時にゆっくりしていくといいぞ」

スティーブン「そんな物まであるのかここは…マジで至れり尽くせりな場所だな…」

クラウス「時間があれば是非とも…!!」

こうして外を探索していた3人も戻り鍾離達は『塵歌壺』を後にするのだった…。

鍾離達が出て行って少したった後…。

マル「この『洞天』に沢山の方々を帝君がお連れしたのは何百年ぶりでしょうか…。帝君も肩の荷を降ろして凡人としての生活と今の世界を楽しんでいらっしゃるようですし、マルは嬉しいです」

壺の精霊マルは自分の主を思い嬉しそうにしていたのだった。

 

ーーー連鎖的事件後の壺で見る石泊の思う景色__終幕__



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自称凡人、異界病棟を発見する

今回は血界戦線の原作「幻界病棟ライゼズ」のお話になります。


HLのとある昼下がり…一機のヘリが重傷患者を緊急搬送していた。

患者はザップ・レンフロである。

 

ババババババババ…

救急隊員1「多発外傷、血圧90の60、脈拍140で微弱、意識レベルは?」

レオ「ザップさん聞こえますか?自分が今何処に居るか分かります?」

救急隊員2「…駄目だ…!!どこの救急もマキソン橋崩落の患者で手一杯で空きが無い…!!」

レオ「ザップさん!!ザップさあああん!!」

救急隊員1「うるせぇ!!黙ってろクソ餓鬼!!これ以上騒いだらデメロール見舞うぞ!!」

ヘリの操縦をしていたパイロットが何かに気づいた。

パイロット「おい…!!あれ…」

救急隊員1「…何だ…⁉」

ヘリの目の前にはそこには無かったはずの病院が表れていた。

救急隊員1「…なんだこりゃあ病院か?」

救急隊員2「そう…みたいっすね」

救急隊員1「なあ、俺は毎日この51番街上空を飛び回ってるがこんな所にこんなものがあるとは知らなかったぜ」

救急隊員2「俺もッス。てか20分前にここ通ってます」

救急隊員2は病院のヘリポートで受け入れ準備が出来ているのを確認する。

救急隊員2「……受け入れ準備万端っすね」

救急隊員1「ヤバ過ぎだな~ヤバ過ぎだろ~…だがどの道このままじゃ患者はおっ死ぬ…降ろそう」

レオ「え⁉え⁉」

そしてヘリは病院のヘリポートに着陸した。

救急隊員「「1・2・3ッ」」

ガシャッ!

救急隊員1「ザップ・レンフロ24歳、重武装トレーラーと正面衝突、何故か人の形を残したまま頭蓋骨陥没、右大腿骨複雑骨折、現場で大量出血、止血と固定は施した、グラスゴースケール8点、後は宜しく…!!」

バタタタタタタ…

そう言って救急隊員達は慌ただしく飛びったっていった。

???「あらあら」

ビクッ

レオナルドは目の前にいる白衣を着て眼鏡をかけた女の子がいた。

???「嫌われちゃったものね」

レオ「あの…貴方が…先生?」

???「そうよ」

レオ(そうよって…!!まだ子供…!!)

病院の者がザップを乗せたストレッチャーを病院内に運ぼうとして咄嗟にレオナルドは掴んだ。

レオ「あ!ちょっと…!!」

ガシャッ

???「手を離しなさい、患者を殺すつもり?この病院の敷地内に入ったからには安心して、必ず治すわ」

そう言って子供女医は病院内にザップを運んで行ったがレオナルドのキャパシティーは限界だった。

レオ(ヤバイヤバイ!!完全に僕のキャパ超えた…相談だ、とにかく助けを呼ぼう)

レオナルドはスマホでスティーブンに連絡をして…スティーブンは呆れた声で返事をした。

スティーブン『またか』

レオ「…はぁ…僕もそう思います…でも今回は痴情のもつれとかじゃなくて純粋に恨みを買って…あ、はいそですよね変わんないっすよね、ええ、ええ、…お願いします…!!」

レオナルドから連絡を受けたクラウス、スティーブン、鍾離はその病院へと急行した。

 

クラウス達は病院前に到着したがクラウスとスティーブンは病院を見て驚いていた。

スティーブン「ど…どういう事だ⁉」

鍾離「どうしたんだ、スティーブン殿?」

レオ「僕に聞かないで下さい~!!小一時間前まで存在しなかったこんな奇妙な病院の事なんて分かりません~!!」

スティーブン「……どういう事だ…クラウス…」

クラウス「うむ、あの時のままだ」

レオナルドはクラウスとスティーブンの様子を見てわけがわからなくなり鍾離は2人に質問した。

レオ「え?え???」

鍾離「何かこの病院について2人は知っているのか?」

スティーブン「……3年前の大崩落の時にな…俺たちはこの建物に居たんだ」

レオ「……え?」

鍾離「…何?」

 

ーーー

3年前…紐育が謎の霧に包まれてから17時間が経過…

建物や車、瓦礫が宙に浮かびあがり巨大な四角い柱が上空と地面から伸び繋がっていく光景が広がっていた。

ゴン、ガン、ゴン…

そんな中でクラウスとスティーブンはジープに乗り移動していた。

スティーブン「まだ持ってるのかそんなの、なにもかもが入れ替わっちまって約になんか立たないだろう?」

クラウスの手にはニューヨークのガイドブックがあった。

クラウス「建物の形状が手掛かりになる、さっき頭上を通り過ぎたのはGEビルの先端だ」

スティーブン「照らし合わせてるのか…!!一つ一つ⁉」

スティーブン(何て記憶力とマメさだ…!!)

クラウス「…南からの銃声は止んだな…」

スティーブン「ああ…これでマンハッタンの武力は殆ど底をついた」

スティーブンはジープの運転をしながらクラウスにこれからの事を聞いた。

スティーブン「…どうなる…?これから…」

クラウス「?」

スティーブン「…仮に…世界が…世界全体がもう既に霧に覆われてるとしたら…?」

クラウス「……分からない」

スティーブン「今まで相手にしてきた血界の眷属と次元が違うぞ、こんな風にニューヨークをレゴブロックみたいに組み替える存在相手に俺達の技は届くのか⁉」

ばッ!!

スティーブン「!!」

クラウスは手を伸ばしスティーブンに静止を促した、すると2人の耳には赤ん坊の鳴き声が聞こえた。

おぎゃあぁ、おぎゃあぁ

赤ん坊の傍では母親が崩落からかばったのか亡くなっており、クラウスは赤ん坊を抱きあげた。

クラウス「___スティーブン、何も分からない内に判断するのは早計だ。まずは全力をもって生き残る、その過程で情報を収集。だが何よりも先にこの子を安全な場所へ届けよう」

そうして2人は病院にたどり着いた。

クラウス「ブラッドベリ総合病院…の中央棟のみだ」

スティーブン「………」

ブラッドベリ総合病院へと向かう道はかなり削られて細い崖の上に立っているような状態だった。

スティーブン「信じたくないね、まさかこの細くなった地面だけで支えてる訳じゃあ無いんだよな?」

2人が病院に近づいていくと銃を構えた複数の民間人がいた。

民間人「止まれ…!!」

スティーブンは両手を上げクラウスが呼びかけた。

クラウス「赤ん坊が居る…保護して頂きたい」

病院内に入った2人が見たのは慌ただしく動きまわる病院職員たちと沢山の患者だった。

「脈触れない、心臓マッサージ開始‼」

「ルート確保と採決お願い」

「エピ1アンプル静注」

「輸血4単位オーダー!」

「挿管するぞ、0.5ミリの気管内チューブをくれ…よし入った」

ビューア、ビューア、ビューア

「波形VFです!!」

「除細動だ200から始めるぞ、下がれ!!」

バッコンッ

「……戻りません」

「250でもう一度だ」

バッコンッ

「バイタル安定」

「よーしCT行こう」

そんな光景に2人は立ち尽くしていたが、1人の初老男性医が声を掛けてきた。(以下先生と表記)

先生「…はて、こんな大男がこの病院に居たかな?」

クラウス「外から来ました」

先生「何と」

クラウスは赤ん坊を先生に見せた。

クラウス「この子を拾いまして、保護して頂けないかと」

先生「手配しよう、おい君」

先生は近くにいた看護師を呼びクラウスは赤ん坊を預けた。

先生「外の様子はどうだね」

スティーブンは先生に外の様子を説明しようとしたが何と説明したらいい分からず声が出なかった。

スティーブン「………」

先生「筆舌に尽くし難いか…さっきエンパイア・ステートビルの展望台が目の前を横切ったとの話を聞いたよ」

看護師「先生、2番の患者が痛みで眠れないと…」

先生「ああ、モルヒネを5ml 、緩下薬と制吐薬を忘れるな。…こっちはぶっ続けでこの調子さ、この歳になると流石にきつい」

ふと先生が廊下に立っている黒髪ショートヘアで眼鏡をかけた女医が目に留まった、彼女はかけている眼鏡に蝶が止まっているのに気づいていないようだ。

先生「起きろ!!ルシアナ君!!ベッドは一杯だが控室のソファは空いているだろう」

ハッ!

ルシアナ「____先生…やだ私寝落ちしてました?」

先生「ああ立ったままな」

ルシアナ「あら⁉…確かに心なしか体が軽いわ」

クラウス「熟睡されていた様ですな、あそこまで優雅な立ち寝姿は見たことがありません」

ルシアナ「あらお上手、こんな時でなければ健康診断一回分オマケする所だわ偉丈夫さん?」

クラウス「クラウス・V・ラインヘルツです」

ルシアナ「…ルシアナ・エステヴェス、ようこそ当院へ」

2人は握手を交わした。

クラウス「…大変な事になりましたね」

ルシアナ「ええ、もう私も何が何だか…私も『仕事』に没頭するお陰でおかしくならずに済んでいる様なものです」

廊下を歩いていた4人だがクラウスは物陰に隠れている小さな女の子に気づいた。

びくっ、バタバタバタ

女の子は見つかった事に驚いて部屋のベッドの陰に隠れてしまう。

ルシアナ「あらあらあら」

ルシアナは隠れた女の子に声をかけた。

ルシアナ「このお兄さんが怖い?良かったわね、クラウスさんは貴方の味方よどんな怪獣も近寄って来れないわ」

じっと見ている女の子にクラウスは近くによりしゃがんだ。

スティーブン「あ、あ~」

スティーブンは止めようとしたが少し遅かった。

クラウス「大丈夫、私が君を守ろう」

にごお…。

クラウスの笑顔は元々強面なのもあってとても怖かったのだ…。

女の子「うえ~ん!」

ルシアナ「いや、笑うともっと迫力が増すんですねちょっとビックリしちゃって…」

クラウス「?」

スティーブンは分かっていないクラウスを見て顔を抑えた…。

 

ルシアナ達と別れたクラウス達は先生にある物を見せて貰っていた。

そこには解剖した後の異形生物があった。

先生「御覧のとおりだ、皆目分からん。地球上の分類から尽く外れた生物群だ…そう多くはない個体を解剖した結果に過ぎないが何かの悪ふざけとしか思えんよ、今の所全て全く違った体構造だからな。ただ…ひとつ気になるのはこの奇怪な存在とともに行動する『人間』の姿が目撃されてるんだ」

先生の言葉にクラウス達は目を合わせた。

 

病院の外では民間人が再び銃を構えていた。

民間人「…止まれ!!…何者だ…⁉」

そこには見たこともない生物に首輪とリードを繋いだ『人間』が立っていた、そして…

ドパタタタタタタタタタタッ!!!

きゃーッわーーッ

男性「みんな!!建物の奥へ移動しろ、窓から離れて…!!」

避難誘導をしている男性の目の前をクラウス達は通り過ぎた。

男性「おい…!!あんた達…!!」

スティーブン「大丈夫、それよりここを護るのに集中してくれ」

クラウス「宜しく」

クラウスは振り返り男性にグッドサインをした。

 

2人が外に出ると変わらず『人間』と謎生物がそこに居た。

スティーブン「英語…通じると思うかい?」

クラウス「私と君で9ヵ国語までは試せるな」

スティーブン「…驚いた、君がそんな冗談を言うなんて」

クラウス「ああ…緊張している様だ」

クラウスは持っている手鏡を前に立っている『人間』に向けた、そしてその姿は手鏡に映らなかった。

クラウス「いや違う__あれは__血界の眷属…‼」

???「…ははあ、観光がてら愛犬と散歩に出てみれば…何だ、君たちは『牙狩り』か。」

(以降飼い主と表示)

飼い主「こんな『特別な日』に『外』と同じ争いを繰り返すのかい?」

クラウス「貴殿らが行ったのか?」

飼い主「これを?違うよ、君僕らのことを神様か何かかと勘違いしてないか?だが薄々は気づいているはずだ、この霧の世界はずっとあった。君等の世界のすぐ隣に存在し時折噴き出すように繋がっていた。伝承の怪物、掻き消えた航空機、万里を超える人間、存在する筈のない宝物、復活する聖者。今日はね元旦なんだよ、それも1月1日。紀元を書き換えても良い位特別な日だ」

動植物犬「ガウルルルル!ヴァキッヴァオ!!」

飼い主「…おっとゴメンゴメン…お喋りが過ぎるかい?僕もさすがに興奮してるみたいだ、柄にも無かったな勘弁してくれ。さてそんな訳でそろそろ…うちの子に餌をやりたいのだがそこをどいてくれるかな?」

血界の眷属は凄まじい殺気を放つが臆する事なく2人は構えた。

クラウス「ブレングリード流血闘術」

スティーブン「エスメラルダ式血凍道」

2人「「推して参る」」

構えた2人に対して血界の眷属は笑っていた。

飼い主「全く、恐い恐い。こんなものを持っていては闘えないほど恐いよ」

そしてリードを手放してしまった。

動植物犬「ガウ!!」

病院に向かうペットに気を取られて飼い主から一瞬目を離してしまい…そのスキに一瞬で距離を詰めて来た。

飼い主「余所見をするな」

そして攻撃を繰り出してきたがクラウスが防御しスティーブン上に飛び上がりが攻撃に出た。

 

スティーブン「『絶対零度の槍』‼」(ランサデルセロ・アブソルート)

 

スティーブンの攻撃は飼い主の左腕を凍結させ砕いた。

飼い主「…ははッ‼やるな‼牙狩り…!!」

クラウスとスティーブンが両脇から飼い主を攻撃するが…飼い主の砕いた左腕は既に形まで再生していて防がれてしまった。

ダン!!!

飼い主「だが…人間に我々血界の眷属は止められない…この霧に蝕まれていく紐育の様にな…!!」

飼い主はクラウス達に猛攻撃を仕掛けていき、2人も攻撃しているが…。

ぎゅばッ

スティーブン(…なんて再生スピードだ…‼過去の記録にもここまでのものは無いぞ…‼)

クラウス「スティーブン‼」

スティーブン「駄目だクラウス!どちらか一方になった瞬間食い破られる!後ろは…諦めろ‼我々は今君を失うわけにはいかないんだ…‼」

クラウス「………目を凝らすのだスティーブン、光はある。」

スティーブンはその言葉に目を見開き、クラウスは拳を固く握る。

ギュッ…

クラウス「諦めて引き返すにはもう半歩ある。たった半歩だと思うか?違う、我々が全身全霊を賭ける半歩だ…‼」

スティーブン「……全く、ずるいぜそれ…」

クラウス「1分40秒、その間にあの獣を斃し戻ってくれ」

スティーブン(いい数字だ、奢りも謙遜も無い君の性格そのものだな。世界の何よりも盤石の100秒だ)

クラウス「3・2・1・GO!!」

クラウスのカウントと共にスティーブンは病院に走りだした。

ガゴガガガガガン

病院にあと少しという距離でスティーブンは足元に巨大な影ができているのに気付いた。

スティーブン「⁉」

頭上から巨大な柱が迫って来ていた…あと少しで潰されてしまうという距離で…

ガゴォン…

スティーブン「…と、止まった…⁉」

その様子を見ていた飼い主は…

飼い主「……ふん、どうやら今回はここまでの様だな。人界にも桁外れの術者は居るらしい…」

霧に飼い主が紛れていく中2人は意識を失ってしまった…そして…

通行人「だ…大丈夫…ですか?」

ガバッ!!

起きたクラウス達が見た光景は今のHLと変わらない物だった。

 

ーーー

クラウスとスティーブンは3年前に起きた大崩落の時に起こった出来事を鍾離達に語り終えた。

クラウス「意識が戻った時そこには今と同じHLの風景だった、『再構築』は終了していた。それ以来我々は何度もこの病院の姿を探したがついぞ見つける事は出来なかったんだ」

クラウス達が病院を眺めているとすぐ後ろで猛スピードで走る車があった、そして…

ドシャン!ドシャン、ガシャン、ズシャン、ゴン、キキキキキ、バゴシャン!!!

レオ「わあ‼わあ‼わあ‼」

突然の大事故に驚いたクラウス達は急いで救助をしようと駆け寄った時、病院内から次々と救助隊が現れて怪我人を救出し始めた。

てきてきぱきぱき…

レオ「おおおおおお…!!」

鍾離「凄い手際だな…」

そこに救助隊に声を掛ける初老の男性医が居た。

先生「急げ、順番に助けるぞ!」

そしてその人物はかつてクラウス達が出会った「先生」であった。

先生「⁉おお…‼君達は…‼生きていたか…‼」

クラウス「先生‼そちらこそ…‼」

先生「…と、積もる話もあるが御覧のとおり今手が離せん。程なく終わるから待合室に居てくれ給え」

鍾離「……この大人数を程なく…?出来るものなのか?」

クラウス「いや…こちらも分からない…」

病院内に入ると急患と防護服を着た異界人医療従事者が沢山いた、その中にはレオナルドが見た子供女医の姿もあった。

ワイワイワイワイ…

子供女医「首、背中、腹部に損傷。赤タグ付けて外棟2号へ、こっちは黄色カーテンの4番。CT空いたらすぐに回してオペ4号室へクロスマッチ6単位大至急‼急いで‼」

そして後ろを向いていてクラウスに気が付かずぶつかってしまった。

子供女医「きゃ」

クラウスはぶつかった子供女医の姿を見て驚き、子供女医もクラウスの姿を見て驚いていた。

子供女医「わっ…!!わわわわわわわわわわ、わっ私忙しいのでこれで…‼」

子供女医は逃げるように走って行ってしまった。

スティーブン「…おい、見たか今の。こいつは一体…」

ドン

また人がスティーブンの背中にぶつかり振り返るとそこには走り去って行ったはずの子供女医の姿が…

子供女医「わあ‼わあわあわあ‼あーすいませんちょっと急いでるもので、はいすいません、はーいすいません」

鍾離「??…先ほど走って行ったはず?」

レオ「何が何やら…?」

次にクラウス達の後ろの治療室から声が聞こえてきた。

「おい…マジかよ、ここは…どこだ…‼何だガキ‼テメェ何縫合してやがんだ…ってあれ?…うめぇな」

バターン!

治療室から出てきたのは生死の境を彷徨っていたはずの治療され車いすに乗ったザップだった。

4人『⁉』

レオ「ザップさん⁉ありえない…‼」

スティーブン「少年!確かこの男は生死の境と…」

そして治療室から出てきたのはまたしても同じ姿をした子供女医だった。

子供女医「そうよ、元の形に戻してるだけ。あんまり動くと傷口が片っ端から開くかんね?」

そしてまた子供女医クラウスとスティーブンに気づいて逃げようとした。

子供女医「あ、わ、わわわわわわわわわわ‼」

クラウスは子供女医の腕を掴み止めた。

クラウス「待ち給え…‼ミス、エステヴェス…‼…ですな?」

むにゅん。

4人『!!?』

なんとおそらくルシアナである子供女医は分裂し腕を掴まれた方は残り別れた子供女医は廊下を進み指示を出していく。

スティーブン「え?えっ⁉」

レオ「( ゚Д゚)」

鍾離「…こんな事が…」

クラウス「………」

ルシアナ「…ええ、御無沙汰しています。ミスタークラウス」

よく見ると院内にはルシアナと思われる同じ姿をした子供女医が沢山おりそれぞれが治療や指示を行っていたのだ。

ルシアナ「…もう3年も経ってしまったのですね、何もかもがあっという間でしたわ」

クラウス「…何があったのです、病院と…貴方に…‼」

???「それは私が答えよう」

声を掛けてきたのは何と『本』だった。

???「…お初にお目にかかる。院長のマグラ・ド・グラナだ。猜疑の色は隠せないか、無理もない。人間の医療に異界存在が絡むなど私が君達だったら同じ表情をしている」(以下院長と表記)

だが4人が驚いていたのは院長が本で喋る事だった…

レオ「本が喋った…」

スティーブン「本が喋っている…」

鍾離「…今度は本が喋っている…流石に一気には理解出来ないないぞ…」

クラウス「本当に何があった…」

そして院長は3年前異界側であった出来事を話し始めた…。

 

院長「3年前のあの日はこちら側にも相応の混乱があってね、助けを求める者が続出した。治療を続けながら彷徨っているうちに崩れ落ち取り込まれたこの建物を発見したのだ。中には植獣動植物に食い散らかされたと覚しき夥しい数の人類、どうしていいものか途方に暮れた時彼女を見つけた」

………

ルシアナ『…⁉』

院長『怖がらなくていい、と言っても無理かね?』

ルシアナ(本が喋った…)

ルシアナ『あなたドイツ語を?』

院長『ああ。君達の世界の医学書を手に入れて解読した事がある、もう何十年も前の話だが…』

ルシアナ(本が本を…)

ルシアナ『というか貴方お医者さん…なの?』

院長『うむ、君達の概念だとそれが近い』

ルシアナ『……私を治療して…出来ない?』

院長『…いや…君達の体の構造は把握している』

ルシアナ『…お願い…まだ間に合うなら一人でも救いたいの』

院長『…非効率だ』

ルシアナ『⁉』

院長『君一人で治療にあたった所でたかが知れている』

ルシアナ『………』

院長『………だが一つ方法がある、全員を救う道だ。しかし一度これを使えば君は人類ではなくなり別の存在へと変貌する。融合式思念直結医療機具「ファーデムトリガ」残酷な選択肢とは思うが時間がない。10分待つ、その間に決だ』

ルシアナ『使って、早く…‼』

院長はルシアナを手術台にのせ「ファーデムトリガ」を取り出した、そして…

ぎゃああああああッ……

………

院長「手術は成功した。己自身を複数の個体に分裂させて同時高速処置を行う…彼女の意思はそれだったとういうわけだ」

ルシアナ「まあね~ほらこの仕事って人数頼みの瞬間あるから」

クラウス「……改めてお詫びする、我々があなた方を護れてさえいれば…‼」

ルシアナ「やめましょうよミスタークラウス、どんな相手だったかは貴方の表情で分かります。あの時の我々では及ばない出来事だった、それだけです。加えて結果手に入れた新しいこの躰、私は満更じゃないと思ってますよ」

ルシアナは4人をある部屋に案内した。

ルシアナ「そしてあの時あの場に居た247名に関してはまだ終わってません」

ゴゴン…

クラウス「……これは…‼」

そこには沢山の人型の繭が存在していた。

ルシアナ「殆どの患者を人繭状態にして『延命』しています、ただあと一歩の所で完治・退院まで及びません。あの食獣動植物が放った『種子』は患者の体内に留まり融合し今もまだ生命エネルギーを吸い取り続けています。それが分かったのが13時間前、だからこちら側に浮上したの。栄養素の転送なんて思ってもみなかったわ、衰弱していく患者の生命維持経費に幾らかかると思ってんのよ…‼あのクソ犬野郎にはきっちり落とし前付けさせて貰わないと…‼」

ルシアナが説明を終えた時…

ズンッ…

繭状態の患者達からエネルギーが吸い取られ始めた。

ルシアナ「……来たわ…‼」

ブラッドベリ総合病院の玄関口には3年前は四本足で立っていた食獣動植物が二足歩行をしていた。

ルシアナ達「何あれ」「チョー進化してるんですけど」「腹立つなー」

食獣動植物が病院の玄関口から院内に入ってきた。

動植物犬「…何だ、攻撃して来ねぇのか…」

院長「…当院は医療機関、遍く生物の治療がその目的だ」

動植物犬「あ、そ。まあ、俺とあんたんトコの患者は繋がってるから何かあったらタダじゃ済まないかもだけどね」

食獣動植物が大きく息を吸うと繭状態の患者達からのエネルギー吸収が酷くなった。

動植物犬「……ふう…」

ルシアナ「…一つお願いがあります、患者の治療の為貴方の協力を…」

動植物犬「あのさァ、この病院いつ『向こう』に戻るの?腹減って仕方ないんだけど」

ルシアナはその言葉に強く手を握りしめる…

院長「駄目だエステヴェス君、奴が栄養素を吸い取っているという医学的確証は無い。それを調べるには今は任意協力を願うしか無いのだ」

動植物犬「まさかこんな人類臭い場所で今後やってくつもりじゃないよねェ?悪いこた言わないから早く元」

ザップ「おいコラ」

いつの間にかザップが食獣動植物の足元に来ていた。

ザップ「さっきから聞いてりゃデッケェ態度だなコノヤロウ、犬畜生如きが吹き上がってっと命落とすぞこのシャバ僧が」

ザップの悪態にライブラメンバーは呆れていた…

鍾離(…あの怪我の状態でよく悪態が出るものだ…逆に関心する…)

ザップ「二本脚で立てたのをハシャいでる様なら教えてやんけどそりゃチンチンっつー芸だ、おやつジャーキーくれてやるからさっさと赤い屋根の小屋に戻って昼寝してろボケカスドッグ。なんなら今から棒に当てて泣か」

ボガッ‼

動植物犬「うるさい」

食獣動植物がザップを殴り飛ばしてしまうがルシアナはニタリと笑った、そして次々と分身ルシアナが集まり食獣動植物に向かいメスを取り出し切り刻むそして…。

キィィィィ‼

 

ルシアナ「ファーデムトリガ『幻界執刀』‼」

 

ルシアナ達が一人に合体し黒髪ロングの女性が現れた、食獣動植物はすれ違いざまにメスと糸でバラバラに縫合されたいた。

動植物犬「ぎゃああああああ!!!おおお俺のててて手がああああ脚があああああ」

ルシアナ「大丈夫だ命に別状はない、そのように縫合した」

動植物犬「ててて…てめぇ…‼ここここ…こんな真似をして許されると思ってるのか…‼」

ルシアナ「許す?ならば私の患者に手を出した事は許されるとでも?」

ぞくっ…

動植物犬「はひっ…‼ひぃ…‼」

ルシアナ「いいか?この病院内で我々の医療を邪魔するものに人権は無い、貴様は今ただの被験体だ。247名を救うため存分に腑分けさせてもらうぞ」

動植物犬「…や、やめろ…やめてくれ…」

ルシアナ「大丈夫、統合した時の私の技術は正確無比だ命に別状はない」

動植物犬「ひいいいいいい‼」

ガシャァァァァン‼

病院入り口を割って『飼い主』が乱入してきた。

飼い主「うちの愚犬が失礼した、それでは…死ね」

 

鍾離『顕如盤石‼』

 

ゴン、ガガガガガガガッ‼

飼い主の攻撃がルシアナに当たる直前鍾離が元素スキルを発動し間に石柱を発生させ攻撃を防ぎ、クラウスがルシアナを庇う為前に出た。

飼い主「これは…私の攻撃をこの石柱が防いだ?それに…お前か牙狩り」

飼い主はクラウスを見てニタリと笑った、スティーブンは病院の者達に避難を促す。

スティーブン「さあ走って…‼全力で‼ここから先は…とばっちりじゃ済まないぞ‼」

鍾離はさらに石柱を発生させ通路を塞ぎ壁にしクラウスの玉墇シールドの上に岩元素で発生した結晶を操りシールドを追加した。

鍾離「クラウス殿…‼3年前の決着を付けると良い‼守りは任せろ‼」

クラウス「鍾離殿…感謝する‼」

そしてクラウスは飼い主に向かって攻撃を繰り出した。

ガオッガガガガガガガガ‼

飼い主「ははははッまるで同窓会じゃないか…‼本当に昨日の続きのようだ…‼」

飼い主の攻撃はクラウスの体を次々に掠っていくが鍾離のシールドが効いている為まだ無傷だった。

飼い主「ほう?先ほどもそうだが3年前には居なかったそこの男が君をサポートしているのか。だが攻撃に関しては変わっていない…‼何故学ばん私の再生能力は確認済みの筈、続けようにも技の為に先に失血で闘えなくなるは貴様の方だぞ‼」

だが飼い主はクラウスが諦めないのに疑問を持った。

飼い主(何かある…守りを担っているあの男の他に、3年前とは違う何かが)

飼い主は攻撃しながら辺りを見た。

飼い主「____そこか」

飼い主はレオナルドを見つけ攻撃を仕掛けたがスティーブンにより凍らされた。

スティーブン「やるじゃないクラウス133秒ももったよ、鍾離のおかげで無傷のパーフェクト達成だ」

レオナルドは諱名を読み終わりアプリ入力を済ませていた。

ポチッ、シュークホウ‼

クラウスのスマホが鳴り諱名を確認した。

クラウス「ザメドル・ルル・ジアズ・ナザムサンドリガ」

ドクン‼

飼い主「!!?今何をした、何故私の名前を…‼」

飼い主はクラウスに攻撃をしたが先に懐に潜りこむほうが早かった。

 

クラウス「貴公を『密封』する 憎み給え 赦し給え 諦め給え 人界を護るために行う我が蛮行を‼ブレングリード流血闘術『999式_久遠棺封縛獄』‼(エーヴィヒカイト・ゲフェングニス)」

 

ガガガガガガガ、カチン…

クラウス「人間の3年を侮った、それが貴公の敗因だ」

クラウスとスティーブンは3年前のやり残しに決着をつけた。

ルシアナ「血界の眷属固有名詞打ち込み専用アプリ⁉何とまあ…千年生きてきて散々人類の技術革新を見てきたでしょうけどまさかスマホにしてやられるとは、さすがの超存在でも想像の外だったでしょうねぇ」

レオ「えへへ」

クラウス「…ミスエステヴェス、感謝する貴方のお陰で私は刺さり続けていた刺を抜く事ができた」

ルシアナ「水臭いこと言いっこ無しですよ、お互い3年よく粘りました。さっき守ってくれたしこれでチャラということで…あっでも鍾離さんにも守って貰ったんだった‼」

鍾離「ルシアナ殿、気にする事はない。だがもしよければ医療の心得を少し教えて貰えればそれでいいぞ、覚えるのは得意なのでな」

ルシアナ「鍾離さんがそれでいいなら…でも医療の心得って言っても、簡単な応急処置とかで良いなら…それで」

ジリリリ!

受付男性「院長‼地下鉄ブリターニャ駅構内で魔法陣暴発事故発生、人類型重症18名軽傷29名、異界存在重症4名軽傷33名、現場に力場が残っていて救助が難航中、負傷者数は更に増える模様です」

院長「…よおし、今日3回目の嵐が来るぞ、急げ‼総員第一体制で待機だ…‼」

こうしてブラッドベリ中央病院での事件は終わった…ところでザップはと言うと怪我が増え全身包帯巻きになっていた…

レオ「…鍾離さん以外みんな忘れてますけどぼかぁ今回のMVPはザップさんだと思いますよ」

ザップ「ウルセェあの犬野郎どこに行きやがったバラバラにしてやらぁ‼」

レオ「もうなってます」

ザップ「ハァ⁉」

 

ーーー幻界病棟ライゼズ__終幕__



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自称凡人、ケモミミが生えた??

今回はオリジナルのお話です。


ブラッドベリ総合病院の1件から数週間後、鍾離とツェッドはスティーブンからお遣いを頼まれ再び病院を訪れていた。

 

院内は今は落ち着いており鍾離は待合室でルシアナから書類を受け取っていた。前回の件でブラッドベリ総合病院が浮上している間はライブラのメンバーを速やかに治療の為に受け入れてもらえるようスティーブンからの打診があった為だった。

鍾離「では、確かに書類は受け取った」

ツェッド「早急なご訪問ですみません…」

ルシアナ「いや〜ミスタースティーブンは仕事熱心ですね、私も人の事は言えませんけども…」

鍾離「ルシアナ殿は医者として最善の仕事をしているさ」

ツェッド「僕はその場に居ませんでしたが話は伺って…コホッ」

鍾離「ツェッド…やはり休んでいた方が良かったんじゃないか?」

ツェッド「大丈夫です…」

ツェッドの顔は少し赤く染まっており見るからに風邪を引いている様だった。責任感の強いツェッドは風邪ぐらいで休む必要はないと思っていたので、本人が大丈夫と言うので鍾離も無理強いはできなかったのだ。だけども…

ルシアナ「まぁ!医者の前でそんな強がりするなんて…ホントは自分から申告して貰ってから診断したかったんだけど…」

ガシッ

ツェッド「…え?」

ツェッドは異界看護師に抱えられた。

ルシアナ「診察室まで直行で運んであげますね!」

そう言うと異界看護師がツェッドを抱えたまま診察室に移動し始めた。

テッテケテ〜

ツェッド「あのホントに大丈夫ッケホッ……ああ……」

鍾離「もう強がりをするな、熱もあるだろうし無理をするのは良くないぞ?俺はここで待っているから診てもらって来るといい、ルシアナ殿よろしく頼む」

ルシアナ「言われなくても任されましたよー!」

そう言いながらルシアナとツェッドは診察室に入っていった。

鍾離は待合室で待っていると患者の異界人の人達が咳き込んでいるのが多く見えた。

鍾離(……今日はやけに異界人が咳き込んだり具合が悪そうなのを見かけるな…)

それからしばらくするとルシアナが出てきた。

ルシアナ「とりあえず風邪引いてるみたいだから薬出しときますね〜」

鍾離「……ただの風邪か、それなら良かった」

ルシアナ「彼、ここに来るまで何とも無かったって言ってたけど最近流行ってる異界風邪にかかちゃったみたいね。一度もかかってないと問答無用でかかるけど薬飲んでれば数日で治るわよ、安静にしてればだけども」

ルシアナの後ろからマスクをつけたツェッドが出てきた。

ツェッド「ケホ……ご心配をおかけしました」

ルシアナ「じゃあ私は仕事に戻るわね!お大事に〜」

そういうとルシアナは待合室を出て行った。

鍾離「ではオフィスに戻ろう、キツイようなら言ってくれ」

ツェッド「…ホントにすみません」

こうして鍾離達はオフィスに戻ったがまさかこの流行っている風邪から大騒動になるとは思っていなかった…

 

ーーー翌日、レオナルドの部屋

レオ「ふぁ〜」

レオナルドはベッドから起き上がり顔を洗おうと洗面所に向かうと寝ぼけながら鏡を見た。

レオ「……ん?アレ…なんかまだ寝ぼけてんのかな…変なのが鏡に写ってるような…」

シャージャバジャバジャバ、ゴシゴシ。

レオ「………んんん!?」

ガシッ!!

レオナルドが鏡を掴み近くで見ると自分の頭に犬耳がついているのに気が付いた。

レオ「な、な、な…なんじゃこりゃああああああ!!!」

レオナルドは急いで着替えようとすると尻尾までついているのに今気が付いた。

レオ「………叫ぶの後にしよう…とりあえず…」

そうして大急ぎでライブラオフィスに向かった。

ドタタタタタタ、バダン!!

レオ「たッ大変なんすよ!!僕に犬耳尻尾が生えて…えッ!?」

オフィスに慌ただしく入ったレオナルドの目に飛び込んだのはメンバー全員に生えたケモミミ尻尾だった。

スティーブン「おはよう少年…やっぱり君もか…」

狐の耳と尻尾が生えたスティーブンが話しかけてきた。

レオ「えええェ…み、皆さんにも……生えてたんすか!?」

スティーブン「ああ…朝起きたらな…生えてた」

クラウス「うむ…」クマ耳尻尾

チェイン「私も…すごく違和感あるんだけど」狼耳尻尾

ザップ「朝スーザンに見られて爆笑された…誰得だよ…こんなん…」猿耳尻尾

鍾離「…」猫耳尻尾

ギルベルト「レオナルドさんこちらのニュースをご覧下さい」梟の尾羽

プツン

ニュースキャスター『今朝のHLでは異様な光景が広がっています!人類型、異界人型問わすケモミミ尻尾や羽、鱗が生えています!』

ニュースではHL中で人々にケモミミ尻尾が生えている様子を伝えていた。

レオ「…これって街中で広がってるて事スッよね」

鍾離「だが症状が出ていない者も居るんだ」

鍾離達はツェッドの水槽があるクラウスの温室に移動した。

ツェッド「…ケホッ皆さんどうしたんです?その耳と尻尾は…」

ツェッドは自分の水槽の中で水に浸かりながら喋っていた、具合はまだ悪そうだ。

レオ「アレ?ツェッドさんは耳と尻尾生えてないっすね、具合は悪そうだけど」

ツェッド「はい、僕は特に変化はありませんが……一体これはどういうことですか?ごほッ」

鍾離「先日ブラッドベリ総合病院に行った時異界人型の患者が妙に沢山咳き込んでいるのをみてな、もしやと思いルシアナ殿に連絡をしてみたらその患者達には耳と尻尾は生えていないそうだ。改めて検査をした所異界風邪菌の他に妙なウイルスも潜伏していたらしい。因みにツェッドにはウイルスは確認されていない、ただの異界風邪だけだ」

スティーブン「その異界風邪を引いてる患者達を経由して俺達にウイルスを感染させてる奴がいるようなんだ…」

レオ「これっ原因ウイルスなんすか!?」

クラウス「今の所症状としては我々には耳と尻尾が生えてその動物の特徴が少し出るだけの様だが感染経路にされた患者のウイルスがこれからどんな変異が起こるか分からない以上早急な原因究明が必要だ」

 

………獣化ウイルス発生から3日後

レオ「なかなか足取り掴めないっすね…」

ザップ「つか俺らは耳と尻尾生えただけだからな、一部のオタク共が狂喜乱舞してる以外何も害が無ぇ」

ザップは生えた猿の尻尾を器用に使い飲み物を取っていた。

チェイン「あんたは正真正銘の猿に進化出来たんだからそりゃ害は無いでしょうね、こっちはバランス取るのが大変よ」

ザップ「ああん!?クソメス犬も特に変わってないだろうが!」

ザップがチェインを捕まえようと絡んで来るのを飛んで回避しているとふとチェインは鍾離に眼が行った。

鍾離「……お茶が熱い…( ᐡ. ̫ .ᐡ )」

鍾離もソファでお茶を飲もうとしているがウイルスの影響で猫舌になっているのか直ぐに飲めずに猫耳がしゅんとしていた。

チェイン(鍾離の耳、しゅんとしてる…なんかかわいい)

レオ「まぁ確かに今はザップさんの言う通りですけども、でもなんか僕は色んな臭いが分かるようになって来たんだよなぁ…やっぱり怖いですよ…」

ツェッド「余り被害が少ないのは人類だけで街中は大騒ぎですよ、ニュースでは異界人型は元々ない器官が出来て体調不良になる人達が続出しているそうです」

ツェッドはすっかり具合が良くなっていた。

鍾離「ツェッドは風邪が治って良かったな」

ツェッド「はい。ルシアナ先生からもらった風邪薬が効きました」

レオ「でも何でツェッドさんだけはただの風邪だったンすか?」

鍾離「ルシアナ殿の話では異界型の者たちが罹った異界風邪のみがウイルスに変化するようなんだ」

ザップ「コイツは半魚人だからただの風邪で済んだって事か」

レオナルド達が話をしていると扉からスティーブンが電話をしながら入って来た。

スティーブン「__ああ、直ぐに向かう」

スティーブンが電話を切るとレオナルド達の方を見た。

スティーブン「揃ってるな?今クラウスが獣化ウイルスが酷くなった異界人と交戦中だ、至急現場に向かうぞ」

スティーブン達は車に乗り現場に急行した。

スティーブン「クラウス!!」

クラウス「スティーブンか!済まないが数が多いので応援を頼む」

スティーブン「聞いてた通りに酷い状況だな、異界人型が軒並み理性を失ってる…」

現場に到着したスティーブン達が見たのはゴリラの腕が生えてしまった異界人達や蛇のが混じった様な見た目になっている異界人など様々だが周囲にいる他の異界人達に向かって暴れている光景だった。だが暴れている中に人類は混ざっていない。

レオ「うわっ…何すかこれ…何で皆暴れて!?」

鍾離「あのウイルスが原因だろう…それにしても暴れているのは異界人だけなのが気になるな…」

スティーブン「調べるのは後だ鍾離、とりあえず今は鎮圧して拘束する!!」

スティーブン達は暴れる異形化した者達を制圧すべく戦闘を開始した。

ザップ「おらァーッ!!ええいッ!このッ!落ち着けッ!」

ツェッド「これ以上暴れるなら怪我をしますよ!!」

斗流の2人は血糸を使って暴れる者たちを拘束していく。

レオ「わわわわッ!!」

鍾離「ハァ!!」

鍾離はレオナルドに向かってくる暴徒を槍を使い下あごを狙って失神させ、スティーブンは片っ端から凍らせて行った。

 

戦闘開始から数時間、漸く事態は収束した。

クラウス「ふぅ…拘束完了だ」

スティーブン「はぁ…やっと終わった…怪我させずに拘束だけってのがまた疲れた」

ザップ「うぇ〜何か無性にバナナ食いてぇ…甘いもんが欲しい…」

ツェッド「本当の猿みたいな反応してますね…」

ザップ「うるへぇ魚類!」

ダニエル「ようライブラ御一行、ご苦労さん」

そこに現れたのはダニエル・ロウ警部補率いるHLDPの警官隊であった、ちなみに警部補にはダルメシアンの耳と尻尾があった。

レオ「ダニエル警部補……どうしてここに」

ダニエル「HLPDにも感染が広がっていたんでな、HLPDは異界人も多いから変異しちまった奴らを隔離するのに護送してたらお前らに先越されたって訳だ…全く何なんだこのとち狂ったウイルスはよ…」

レオ「そ、そうですか…」

ツェッド「護送している皆さんは大丈夫なんですか?」

ダニエル「こいつらはまだ軽いからな、お前らが無力化した市民もこっちが運ぶんで、眼ェ瞑ってやるから早くうせろ」

スティーブン「相変わらずな対応だね、貸し1つだよ」

ダニエル「それがわかってるからサッサとうせろって言ってんだよ!!」

イライラしているダニエル警部補を背にライブラメンバーは撤収した。

 

………ライブラオフィス

鎮圧に出ていたメンバーが帰るとチェインとギルベルトが待っていた。

ギルベルト「お帰りなさいませ皆様、先程ブラッドベリ総合病院からウイルスの詳細データが送られて来ました。」

チェイン「こっちの調査も進んだので同じく報告します」 

クラウス「ああ、頼む」

メンバーはテーブルの周りに集まりギルベルト達の報告を聞く。

ギルベルト「まずウイルスの調査結果ですが、獣化ウイルスは最初は異界風邪によく似た症状を発症します。この変化する前の獣化ウイルスは異界風邪菌と全く同じ形をしている為初期検査では分からなかったそうです。次に感染者内で変異した後に飛沫感染などで感染者を増やす、厄介なのはナノマシンと同じ性質がある為に異界風邪から変異した獣化ウイルスにかかると文字通り獣化してしまうというのが最初の症状です」

レオ「最初って事は進行するって事ですよね?それ絶対今日暴れた人達と関係してますよね…」

ギルベルト「その通りですレオナルドさん、獣化して何日か経過すると発症した動物の性質をウイルスが再現しようと増殖します。ですが人類型や準人型は動物の特性が強く出るだけですが異界人型特に異業種に属する人達はそのウイルス変異に体質が合わず獣化部位の増加による事で脳内麻薬が異常分泌されて個体差はある様ですが凶暴化してしまうそうです」

スティーブン「それが今日の暴走の原因か…ギルベルトさんワクチンの報告は無いのかい?」

ギルベルト「ワクチンを開発するには2ヶ月程かかるそうで…ですが変異する前の原種の獣化ウイルスがあれば直ぐにできるそうです」

クラウス「やはりウイルスをばら撒いた者を特定する必要があるな…」

チェイン「そのウイルスをばら撒いたと思わしき人物ですが足取りが掴めそうです」

狼耳をピコピコさせたチェインが報告する。

鍾離「ばら撒いた人物が分かったのか?」

チェイン「ええ、HLに来て直ぐに地下に潜った奴がいたの。しかも以外な情報元で教えてくれたのリトルアキバのオタク達なのよ…」

クラウス「なぜそこで以前の改造屋が出てくるのだ…?」

チェイン「私が丁度近くで調査している時に偶然見かけたそうで…ダメ元で情報提供をお願いしたらヒットしたんです…」

スティーブン「それで…そいつの情報は?」

チェイン「オタク達の仲間の知り合いに人間にケモミミを生やす事ができないか熱心に研究している女がいたようなんです。オタク達の間でもかなりの変人扱いをされていていつも高圧的な態度を取るから幾つもサークルを追い出されてる。そして1ヶ月前に消息を断ったとか…調べを進めていくうちにその女の名前が『ジェニファー・クロケット』って言うナノマシン開発の研究者で地下に潜った後にあの偏執王アリギュラに接触した様なんです」

レオ「あのアリギュラに…!?」

ザップ「あのキチガイ迷惑公害女がよく契約に乗ったな…」

スティーブン「だがこれで犯人は分かったな…その女は偏執王アリギュラに恐らくナノマシンの改造を契約で頼んだんだ」

ツェッド「あくまでも機械であるナノマシンをウイルスレベルに改造するなんて…」

スティーブン「それを簡単にやってのけて作った玩具で遊ぶが如く災害を起こすのが奴らだからなぁ…」

スティーブンの狐の耳と尻尾がへにゃりとなる。

チェイン(こんな時に不謹慎だけど何かこう…ギャップがかわいい!!)

顔には出さないチェインだか狼の尻尾は皆の見えない所で嬉しそうに振られていた。

鍾離「それで契約者の足取りは?」

チェイン「Σ(°꒳° )ハッそうそう、獣化ウイルスをばら撒く為に人通りの多いかつ人目につかない場所が良いはずだから候補を絞ったわ。パークウェア通りを外れた先の廃棄工場街跡地よ。その場所は普段余り人が寄りつかないけど広場の使い勝手が良いから異界人商人が大量の荷物を移し替える為に人を集める日がある。その日が1週間前にあったのよ」

クラウス「獣化ウイルスの発症時期を考えるとその場所の確率が

高いな…」

スティーブン「そうだな…それでは総員準備ができ次第突入するぞ!!」

 

―――2日後

ライブラメンバーは2つの建物に別れている廃棄工場にクラウス、スティーブン、ツェッドの班と鍾離、レオナルド、ザップの班に別れて突入した。クラウス班が工場内に入り目にしたのは恐らく実験体にされてしまったと思われる大量の動物の死体がありその姿は歪な変形をしておりカラカラに搾り取られたミイラになっていた。

クラウス「なんと酷い事を…!!」

スティーブン「…獣化ウイルスに学習させる為に細胞を吸収させたのか…?」

ツェッド「……」

ギリ…

ツェッドは拳を強く握っていた。

スティーブン「…どうした?ツェッド」

ツェッド「いえ、何でもありません。先に進みましょう」

 

………工場内、一番奥の部屋

その部屋は沢山のケーブルやコードで埋まっておりそこにパソコンを見ていた1人の女?がいた。

???『ん〜?…招いていないお客さんが来たわね?…でも…アラぁ?…ウフフ…なんて好みのケモミミさん達がいるのかしら!!是非とも近くで愛でたいわぁ!!』

ウフフ、ウフフフ、アハハハ…

室内には不気味な笑いが響いて行き、室内のコードやケーブルが蠢き始めた。

 

………ザップ班が入った工場内部

ザップ班が侵入した工場では無人の状態で工場が稼働していた。

レオ「誰も居ないのに機械が何か作ってる…?」

ザップが機械が作っている者を確認する。

ザップ「何だこりゃ…?」

機械は次々に何かの鉱物を砂状に分解している様で鍾離は分解される前の鉱物を手に取った。

鍾離「これは…確か精密機械などに使われるレアメタルの1種だ、余り高価な部類で無く比較的手に入りやすい物だか…」

レオ「ならこの砂って…ナノマシンの元!?」

鍾離「その様だな…この建物は只の生産区域か」

ザップ「んじゃコッチは外れかよ…」

レオ「……いえ、まだ地下に空間が」

ガーーー、ガシャンッ!!

工場のシャッターが閉まり完全に閉鎖された。

鍾離「気づかれ閉じ込められたか…」

ザップ「オイオイ、熱烈歓迎ってか?」

レオ「そんな呑気な…僕らの事どっかで見張ってるんすよ!」

シュー…シュー…

換気扇から何やら煙が入って来た。

レオ「これは明らかにヤバイやつ!!」

ザップ「毒ガスで仕留めようって魂胆か?甘いんだよ!!」

鍾離「…?!少し待てザップ!!」

 

ザップ「斗流血法カグツチ『刀身の壱_焔丸』!!」

 

ヒュン……ボォオオオッ

ザップの一撃が壁を切り崩して穴を開けるとそこから一気に空気が流れて来た。

ザップ「ケッ!!ボロ工場なんざの壁なんて豆腐以下だっキ!」 

ザップ「!??」

ザップは自分の口を抑えた。

レオ「…?!ザップさん、今語尾がおかしかったワン…!?」

ザップ「ブフッwお前もおかしいぞっ!!ウキッ」

鍾離「…やはり先程散布された煙…獣化ウイルスだったか…ニャ」

ザップ「ブアハハハ、ヒヒヒヒ!!マジ!!鍾離の語尾!!無理だっキ!!笑いが止まらん!!ウキキキキッw」

レオ「そんな笑ってる場合じゃ無いワン!!」

鍾離「…語尾以外に症状は出ていない様だニャ。先に進むニャ…」

ザップ「( ゚∀゚)ウキャキャキャキャʬʬʬʬʬʬʬʬʬ」

ウイルスを追加感染されてしまった鍾離達は語尾がおかしくなりザップは暫く笑いが止まらなかった。

その頃クラウス達は…

ドガァン!!ピキィン!!

同じ様に獣化ウイルスを散布されたがクラウスが床を叩き割地下に逃げスティーブンが穴を塞いだ為に追加感染を免れていた。

クラウス「2人共、先程の煙に触れていないな?」

スティーブン「ああ、大丈夫だ」

ツェッド「危なかったですね…」

クラウス達が周囲を確認すると壁一面にケーブルが張り巡らされていた。

クラウス「これは…!?」

???『はぁ〜い♡そこのイケてるケモミミさん達〜♡』

そこには金髪の美女が居たが体の半分以上がケーブルに埋まっていた。

スティーブン「…ジェニファー・クロケットだな」

ジェニファー『アラヤダぁ〜イケメンに名前を知ってて貰えるなんて、照れるわぁ♡そのもふもふもとっても素敵♡でも私なんかよりも生産工場に入って来た黒猫様とのお喋りをしてて欲しいわぁ…♡その方が萌えるから♡』

ツェッド「萌える?何を言っているんだこの人…」

スティーブン「…情報元がオタクだって聞いた時点でちょっとは予想はしてたけどやっぱりかぁ…しかもかなり腐ってる…」

クラウス「スティーブン、彼女は腐敗していないが…」

スティーブン「違うんだ…クラウス…そう言う意味じゃないんだ…」

スティーブンの耳と尻尾がへにゃりと落ち込んだ。クラウス達のやり取りを見ていたジェニファーはケーブルに埋まっていない上半身をくねらせて悶えていた。

ジェニファー『ちょ、マジの天然のやり取り!?これは薄い本が厚くなる〜♡やっぱりアリギュラ様との契約は間違ってなかったわ〜!!あの方のお陰で長年夢見てたイケメンケモミミBLGLが生で見れる!!ナノマシン研究ではケモミミを生やすことはできずHLには醜い異界人ばかりでガッカリしていたけど…これで醜くて萌えない異界人の奴らを一掃出来る〜!!』

ツェッド「醜い異界人の排除って…!?彼らも歴とした人です!なぜこんなウイルステロを起こしたんですか!!」

ジェニファー『ん〜綺麗なお魚さんねぇ?貴方は変わった変異をしたのかしら?でも〜萌えをすっごく提供してくれてるからお答えしちゃう♡あのドギツイ怪物達をアリギュラ様に改造して頂いたケモミミウイルスの媒介にしたのは私の命令で最初にあいつらの遺伝子情報をケモミミウイルスが記録して次からの感染者に異界人が罹れば変異増殖のスピードが倍速になる様にしているの♡だから人類種は単純にケモっ子になるだけだけど醜い奴らは暴走するってわけぇ♡私の好みのケモミミイケメン美女のみのパラダイスを作る、これがぁ私の萌え萌えパラダイスの計画よ〜♡』

ジャリ、ピキ… 

スティーブンの踏みつけた床が少し凍りつく。

スティーブン「理解したくたくないけど理解したよ…あんたのくだらない妄想の為の獣化ウイルスなわけだろ?こんな複雑な事例えナノマシンから改造されたウイルスでも望む変異を起こすには司令塔が必要だ」

クラウス「その姿を見るに貴女自身が獣化ウイルスの司令塔に改造された。ならば…」

ツェッド「貴女を倒せばウイルスの活性化が遅くなる!」

3人はジェニファーに武器を構えた。

ジェニファー『ふーん?イケケモでも悪さをするならそのまま固めてお人形にしてあげるわぁ♡』

壁一面にあるケーブルが蠢き出しクラウス達に襲いかかった。

ザシュ、ズルンッ!!

ツェッドが切断したケーブルの断面から新たにケーブルがが生えクラウス達が直接ジェニファーに攻撃しようとすると大量のケーブルに阻まれてしまう。

ドガガガガガッ、シュウ…ズルズルン。

クラウス「強くは無いが次々と…」

スティーブン「凍らせても量が減らないのが厄介だな…」

ツェッド「寧ろどんどん増えている様です!!」

ジェニファー『む〜だ♡ここ一面にあるケーブルはアリギュラ様に改造してもらったナノマシンの超強化版♡契約の支払いとしてお金だけじゃなく私自身もナノマシンの集合体に半分改造されたけどそのおかげでこんな素敵な触手を手に入れたわぁ♡これがあれば…ンフフ♡あ~妄想が捗るわぁ〜♡』

一方ザップ達は再度工場地下に進むとナノケーブルが生えている沢山のゾンビキメラに襲われ闘っていた。

ザップ「ウキィイ!!燃えつきろやオラァア!!」

鍾離「…テニャ!!」

ドゴォオオン!!

ギシャァァァァ!!

ドドドドドッ…

レオナルドは戦闘に巻き込まれないように部屋の隅に避難していた。

レオ「ガチのバイオハザードだワン…」

ガラガラ…バチッ…バチッ…

レオ「…わふ?なんか物が焦げる臭いがする様な…」

レオナルドが物陰を調べると鍾離達の攻撃によって空いたと思われる

穴があり中にはケーブルが通り断線して火花が散っている。

レオ「うわッ危ないなぁ…漏電してるワン…これもしかしてこの工場のメイン電力ワン?」

ゾンビキメラを片付けた鍾離たちがレオナルドの所に来た。

鍾離「少年、怪我はないかニャ?やはり語尾の違和感がすごいニャ…」

ザップ「ウッキキwもうお前あんま喋んなブフッ…wようやく笑いが収まってきてんのにw」

レオ「わふぅ…あんだけ笑ってまだ笑えるっすか…それよりこれ見てください。多分これこの工場の電力ケーブルだと思うワン」

鍾離とザップは壁の穴を見た。

ザップ「さっきのやつで空いたキャ?」

鍾離は漏電している箇所を見て元素視覚を使った。

鍾離「確かにかなりの量の雷元素が流れているニャ…流れを見るにどうやら1ヶ所からこの工場全体に供給しているようだニャ」

ザップ「なら流れの元を断っちまえば工場は止まる訳だなッキ」

レオ「絶対敵が待ち構えてる展開だワン…」

道中大量のゾンビキメラが襲ってきたが鍾離達にあっという間に倒され

電力の供給元にたどり着いた。

バリリリリ…

そこにいたのは体に大量のケーブルを繋がれもがいている異界人だった。

異界人『ウゴァ…あ、あ、助けて…』

どうやら彼の話ではアリギュラに捕まり人体実験された後ジェニファーにより獣化ウイルスの影響で強力な電気を発生できるようになり発電機として繋がれてしまったらしい。

レオ「酷い…なんて事をするワン…」

異界人『…ガ、ガ、お願いします…俺を助けてくれぇ…』

ザップ「助けるってもお前がビリビリしてちゃ触れねぇだろッキ」

異界人『あが、が、自分じゃ…止められなくて…でも1番太いケーブルが…あの女に繋がってる…ギ、ギ、それを切ればあいつは強力なナノマシンを操れなくなる…HL中の獣化ウイルスを自分で…制御してるあいつは…強化ナノマシンまで手が回らない…電力で自分を強化してる…』

鍾離「なるほど…分かったニャ」

レオ「必ず助けるワン!!」

そして異界人の背中から伸びている一際太いケーブルがあった。

ザップ「ウッキ、コイツだな…さっさとぶった斬るぞ!!」

ケーブルを守ろうと大量のゾンビキメラがが襲い掛かってきたが鍾離の元素スキルに防がれ…

 

鍾離『難攻不落ニャ!!』

 

ザップ「斗流血法・カグツチ『刀身の四_紅蓮骨喰』ッキ(ぐれんほねばみ)!!』

 

ズバン!!バリリリリ…

ジェニファー『え!!?何で!?』

ジェニファーの操るケーブルの動きが鈍り始めた。

ツェッド「動きが遅くなった!」

クラウス「恐らくザップ達が上手くやってくれた様だな!!」

スティーブンはクラウス達の前に出て攻撃をした。

 

スティーブン「エスメラルダ式血凍道『絶対零度の風』!!(ヴィエントデルセロアブソルート)」

 

シュウゥウウン…パキィィィン!!

スティーブンの技で周囲のケーブルは完全に凍り…

 

ツェッド「斗流血法・シナトベ『刀身の拾_双翼刃、天羽鞴弐連』

!!」

 

ツェッドの技で凍ったケーブルを巻き込みジェニファーに強力な風をぶつける。

ガガガガガガ!!

だがまだ近くのケーブルでジェニファーは身を守った。

ジェニファー『うううぅ!!でもまだ強化ナノマシンは残って…』

スティーブン「よそ見したな」

ジェニファー『!!』

ジェニファーの背後にクラウスが既に構えていた。

ジェニファー『そ、そんな…ケモミミ達の楽園がぁ…』

 

クラウス「ブレングリード流血闘術『111式十字型殲滅槍』(クロイツヴェルニクドランツェ)!!! 」

 

ドォオオオオン…きゃああああああ…

こうして獣化ウイルスを撒き散らしていた犯人を確保できた。

 

ーーー

獣化ウイルスをばら撒いたジェニファー・クロケットは逮捕され、捕まって改造されてしまった異界人もブラッドベリ総合病院に搬送された。ルシアナいわく『アリギュラの改造は戻せないかもしれないけど…獣化ウイルスで起きてる電気はワクチンが完成すれば治るはずよ。あなた達のおかげで原種のウイルスが入手できたからね〜』

それを聞いた被害者の異界人は泣いて喜んでいた。

 

で、ライブラメンバーはと言うと…

チェイン「アハハハハハꉂꉂ(˃᷄ε ˂᷅ ๑))あんた達何その語尾あっはははwww」

事務所に戻り報告する為に喋ったらチェインに大笑いされていた。

ザップ「ちっくしょ〜メス犬め〜俺も大笑いしたから人の事言えねぇッキ…」

レオ「ルシアナさんからはワクチンが出来るのは2日後らしいのでそれまでこのままみたいワン…」

鍾離「……。」

ツェッド「クラウスさん達のチームで良かった…」

スティーブン「同感だね…あれはもっと嫌だな」

クラウス「私は気にならないが…」

こうして獣化ウイルス事件は解決したのだった。

 

ーーーアニマルでパニック!?__終幕__



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