ポッキーゲーム (LUNA)
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ポッキーゲーム

_魔法都市メフェルフィア、教会前

 

「こんにちは、シスター」

 

「こんにちは、今日も聖獣と聖女のご加護がありますように…」

 

なんてない日常を毎朝ここで道行く人に祈る、それは他者の為であり、また、自身の為でもある。

紺色の髪に一部赤い前髪をしたシスターは日が昇ってきた午後に、そう祈りながら、それが私にできる事でもある。

 

「よっす、相変わらずつまんなそうな顔してるねぇ、シスターキサラギ」

 

「…おはようございます、シスターキリテ…任務帰りですか、ご苦労様です」

 

黒い髪に褐色の肌、エメラルドの瞳に魔力反射の赤ふち眼鏡をしたダークエルフ、キリテが手をヒラヒラさせながら背に銃を担いでやってきた、相変わらず飴を常時口に含んではすぐさまかみ砕いている。

 

「ま、そんなとこ、そんなことより面白いものやってるからさ、ちょっとお付き合いお願いしたいね」

 

「お断りします、貴女の誘いはろくなことがないのは明白ですし私は創作に忙しい身なので…ってちょっと、はなしなさい」

 

あっという間に肩を組まれ、にぃっと笑うときっぱり断っているはずなのにそのままずるずるとひきづられていってしまう…女性とはいえ種族も鍛え方も違う悪魔祓いの彼らに体力では通用しないとこを悟りながらついていくと。

 

「おーおー、まーだやってるわ、飽きないねぇ」

 

「…いったい何をしているんですか…」

 

キリテがケラケラ笑いながら見やるとそこには景品付きの催事らしい、しばらくは困らなさそうな食料の引き換え券が一位として飾られているのだが…概要を聴くとどうにも、棒状の焼き菓子の両端を咥えて食べ勧め先におった方が負け、判定としてどのくらいどちらかが食べ進んだかも入る為割とシビアらしいのだが…そんな競技だからか、交際しあっているものや夫婦の参加が多い、たがいに照れながらする者、特に気にせず完遂する者…しかしながらそんな甘ったるい空気の中、若干空間が空いているペアが一組いた。

 

「あ、あのおー…」

 

一般の司会であるシスターがそーっと声をかけようとするもその声は届かない、一方は空の様に青色の髪をしてハーフツインテールで髪をまとめた紫色の眼をしているシスター、もう片方は金色の短い髪に緑の眼をしている柄の悪そうなハーフエルフの男性だった、互いに額を付けてにらみ合い手を組んでミシミシ言いそうな競り合いながら焼き菓子を食べ勧めている、恐ろしく見覚えがある2人にため息をつきながらシスターキサラギは観察に入ることにした。

 

_パキ

その二人の合間で焼き菓子が軽い音を立てて割れる、そして同時に2人は司会へを顔を向ける。

 

「「(俺&私)の勝ち(だろ&でしょ)!」」

 

言いながらそれを口に放り詰め寄ると司会は怯えながらおずおずとゲイルの方に指をさすと、ふふん、としたり顔をしてトリスを見る。

 

「~~っ!まだ私のほうが2勝多いんだから!ぜ-ーったいさっきのも1mm私のほうが少なかっただ・け・で!」

 

「おーおーよく言うぜこのお転婆じゃじゃ馬娘、シスター様が言ってるんだ素直に従った方がいいぜ?」

 

「a-hn??うっさいわよとっくにご老体の癖して!あと私もシスターよ!」

 

思わず手が出そうになるもぐっと抑えながら手の代わりに焼き菓子を出すと煙草の要領でシスターは口に咥える、これが少し恥じらいがあれば可愛かったのかもしれない、が、残念なことにその視線には殺意しかない。

大抵1,2箱のはずの焼き菓子の箱が彼らの周りにはそれ以上の空き箱が転がっている、言うまでもなく参加的なあれで優勝は彼らなのだろうが、このままだと焼き菓子が都市から消えてしまうのではないかと司会のシスターがキリテに泣きついてきた。

 

「いっしし、マ、アタシに任しておきな」

 

そういいながら機嫌よく飴をかみ砕きながら新しく焼き菓子の箱を開けるとチョコレートコーティングされた部分にポケットから出した瓶から2,3吹きかける、キサラギはため息をつきながらその様子を眺めると再び喧嘩している2名に視線を映した、どうやら今度はトリスの勝ちらしい。

 

「よーし最後の一戦!って空なのね、あたらしいのある?」

 

と言ってば、っと手をトリスが出すとそれに答えるようにキリテがほい、とテンポよくそれを手渡すと何の疑いもなくそれを手にして咥えた、反対にゲイルが咥えるも…。

 

 

「…にっが!ナニコレ…!ちょっとアンタ…ってキリテじゃない、あんた何渡したのよ!」

 

食べ進める前にだんだんとトリスの表情が変わっていく、これ以上食べられないといったように加えていた焼き菓子から口を離す、口に溶けた苦味がまだ抜けないのかうぇ、といった表情で渡した本人に苦情を言うと。

 

「あのままやってたらアンタら食いつくしてたみたいだからね?思し召しってやつさ」

 

「っく…ってこんな時間じゃない!やっば、またグランマに怒られるわ!キサラギ!キリテ!いくわよ!」

 

そう言いながら時計を見るとトリスは、げ、と声を漏らして走っていく、その後をやれやれと言った様子でついて行くキサラギとニヤニヤ笑ってついていくキリテ。

 

「おいお転婆これ_!」

 

「嗚呼、景品はアンタにあげるわ!たまにはおいしいもの食べさせてやりなさいよ!」

 

「あ”あ?…ったくあのじゃじゃ馬は…そっちじゃねえっつーの…」

 

そう後ろでで手を振りいうと嵐のように去っていった、ゲイルは肩を竦めて焼き菓子を口に入れようといったん手に持って普通に食べようとするも咥えただけでおられてはいない反対側を見やる、司会のシスターがそーっとゲイルの手に引換券を渡すも無意識に受け取り、背を向けて歩き出す。

 

トリスにとっては苦味があるらしかったが、自分にはこのくらいがちょうどいいらしい、誰に言い訳するわけでもなく呟いてそれを咥えた彼の顔は少し赤かったかもしれない。

 

__

 

「で、あれは何だったのよ」

ギリギリ間に合いはしたがやはり噂になっていたのかトリスは掃除を命じられながらキリテに問いかける。

長椅子に座って飴を齧る彼女はああ、と口を開いて。

 

「なあに、ちょっとしたいい気持ちになれる薬だよ、少量じゃ効果がないからアンタは大丈夫だろうけど」

 

エメラルドの瞳を楽しそうに輝かせて後日談を楽しみにしているエルフであった。



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