巻き込まれチート転生をして農村でいろいろやったけど、結局かわいい嫁さんができたことが一番だったよねと満足する男の一人語り (ウマ娘二次が怖くて書けない者)
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巻き込まれチート転生をして農村でいろいろやったけど、結局かわいい嫁さんができたことが一番だったよねと満足する男の一人語り

少し古臭い言い回しはご容赦ください。


誤字報告をいただいた皆様にお礼申し上げます。
誠にありがとうございました。

Lunor様、Paradisaea様、中島ゆうき様

確認作業にお時間を頂戴いたしまして申し訳ありませんでした。


分を超えて高望みしなければ、それなりの幸せは訪れるものである。

 

サラリーマンになって数年が経ち、世間の荒波に揉まれて、社会の歯車の一つになったと実感できるようになったころだ。

俺が一人で運転していた車に、1台の乗用車が突っ込んできた。

しかも山道での事故だったため、俺を含む2台の車は崖から転落。

俺は呆気無くその生涯を閉じることになった。

 

大きな衝撃が走ったのを最後に、俺の意識はブラックアウトした。

だが、それから間を置かずに、何やらフワフワ心持ちになった。

あんなに強い衝撃だったのに体に痛みが感じられない。恐る恐る目を開けてみると、やる気のない神様がこちらを見ていた。

そう、神様だ。

もしかしたら違うかもしれないけど、明らかに人とは違う感じだ。オーラが違うと言えばいいのか。一瞬で、俺の生殺与奪権はこの人に握られていることがわかった。

 

神様はつまらなそうに俺と、その隣でボケーっとしている制服を来た3人と保護者――教師だろうか――を見て、しばらくして話し始めた。

 

どうやら、この4人は俺の車に突っ込んできた車に乗っていた人らしい。そしてその高校生3人と、その保護者は世界を救う勇者らしかった。

世界と言っても地球とは別の世界で、よくあるファンタジー世界のようだ。魔王の登場により、滅亡の危機に瀕していて、その世界を救って欲しいのだとか

 

俺は? という疑問はあったが、どうやら本命は高校生たちらしく、俺は彼らのついでに死んでしまったらしい。本来はあの衝突事故は起きず、彼らの車がハンドル操作を誤って転落していくはずだったとか。もらい事故ってヤツだろうか。

なんだかバカらしく怒りも湧いてこない。

思わず鼻で笑ってしまった程度だ。

 

彼らは魔王と対峙する大国に生まれることになってるらしい。

俺はといえば、巻き込んでしまって可哀想だからチートをあげるけど、余計なことはしないように。と念を押される始末。

実に面倒な処理をしている感じが、神様からはしっかり伝わってくる。

もちろん、社会人経験のある俺は、長いものには巻かれろの精神で、2つ返事で快諾したのだ。

無駄に逆らうなんて愚かな行動は、社会の1歯車は望まないもんだ。

 

 

そして俺は政治や勇者なんて無縁の、辺境の農家に転生した。

 

 

決して栄えているとは言えない村の、村の中では平均的な規模の農家の3男。それが俺だった。

 

この村の近くにはそこそこの都市と、そこそこの漁村がある。だが、王都に比べれば人口は比べるほどもないらしいので、それらと関わる分には余計なことには入らないと信じている。

 

神様の助言に逆らえば、良くないことが起こるかも。そんな庶民じみた考えで、俺はこの村を生涯の生活基盤にすることを決めた。

 

 

 

そこそこの農地を持つ農家なので、家族で食べていく分には困らない。

だが、長男・次男・3男がそれぞれの家庭を持つようになったら、それぞれの家族を養うほどの余裕はない。3男である俺は大きくなれば新たな農地を開拓するか、別の仕事をするか、大きな都市に仕事を探しに行くか、それか婿養子に入らなければならない。

 

さっきも言ったとおり、この村で暮らす分には勇者くんらに悪影響を及ぼすことはないだろうから、別のところに移る気はない。

娯楽の少ない村だけど、村人は別に悪い人じゃない。良い人でもないのだが、悪さや迷惑をかけなければトラブルにも発展しないので、まあ及第点なんだと思ってる。

風呂やトイレなど、衛生的には面食らうこともあるけど、それは大きな都市でも同じ状況らしい。

 

だったら、神様の怒りを買うリスクを背負ってまで引っ越す必要はない。

幸いなことに、この村はまだ開拓村な面が強いので、なんと、開拓すれば自分の土地にできたりする。頑張れば家を継ぐ長男よりも大きな農地を持つことも夢ではないのだ!

 

まあ、そのためには、くっそ硬い木を切り倒して、死ぬほど面倒な切り株を取り除く作業が必要なんだけどね。なんでも、今、開拓が終わっている所よりも外側の森は、木が硬すぎて開拓を断念したところらしい。森とは逆の、隣の漁村や都市へとつながる道の方は、普通の硬さの木のようで、木こりはそっちを切って薪を作っている。森側は魔素溜まりがあって、その影響で木も硬くなるらしい。他の土地でも同じようなもので、開拓には苦労しているのだとか。

しかも、開拓して森側に面した土地を使うってことは、獣とか魔物の住処の最前線に位置することになるから、意外と面倒くさい。だからこそ、開拓できるのならば、村のみんなに大いに歓迎されるらしい。

そりゃあ進んで貧乏クジを引いてくれるなら、そうでしょうね。

 

でも、この村の状況は悪い面ばかりではない。

幸いなことに水には恵まれた土地らしく、畑用に使う川は十分にあるんだとか。

前世では、水利権のために農家が殺し合いをしていたなんて歴史を習っていたので、その心配がないことはメチャクチャ大きいと思ってる。

 

そうは言っても、木を一本切り倒すのに、成人1人が1カ月かけても満足に切れなくて、諦めて都会に移ったなんて話があるので、やっぱり開拓は人気がない。

上手くいかないものである。

 

 

 

そんな村で、10歳の俺が何をしているかといえば……狩りの弟子入りをしていた。

いやあ、本来は適当に幼少期を過ごした後、嫁さんを貰って、開拓しようかなって思ってたんだけどね。

数週間前に村の若者が村から逃げてしまったのだ。

 

まあ簡単にいえば、おらこんな村嫌だぁ、て成人した若い男らが一斉に王都目指して旅発ったんだよ。

で、その男たちはほとんどが実家の農地を継げない次男・3男だったんだけど、中には狩人の一人息子とか、木こりの跡取り息子がいた。

両者とも親に必死に止められたけど、最後は夜逃げするように仲間と消えていった。

 

幸いなことに木こりには生まれたばかりの子どもがいたから、その子が大人になるまでは頑張れるってことで落ち着いた。

問題は狩人の方だ。

奥さんに先立たれて、一人息子もいなくなってしまった狩人が、失意のまま狩りに出て、そのまま村に帰ってこなかったのだ。

 

この世界というか、この村での狩りは、けっこう重要な役割だったりする。

肉の確保という面はもちろんあるが、何よりも魔物の間引きという役割がある。

幸いこの村の周辺には手に負えないほどの魔物はいないが、それでも女、子どもでは勝てないくらいには魔物は強い。

強さだけで言えば、イノシシなんか中くらいの大きさでも、ヘタすれば成人の男だって倒せないので、魔物よりも獣のほうが強いくらいだ。だが魔物はすぐ増える。通常の繁殖行為ではなく、魔素溜まりから発生したり、スライムなどは分裂して増えていく。

そして、人を見境なく襲ってくる。

人を食べるでもないのに、襲い掛かってくる魔物は、村に入れるのはあまりに危険な生き物だったのだ。

しかも倒せば、その体は魔素へと還る。当然、落し物なんてない。ゲーム的な経験値は入るようだけど、ただの村人に取っては百害あって一利なし。それが魔物だった。

 

この村でも、狩人が一家族というのは心もとないと話題に上がっていたのだが、魔物が弱いこともあって、これまで何とかなってしまっていた。

そこで、この事態というわけだ。

 

結果、この村の次男、3男以下が狩人候補として集められたわけだが、15歳以上の成人男子は都会に旅立っている。成人女子はいるけど、女子に前線を任せるわけにはいかないってことで除外。

そもそも、嫁の貰い手が大量に消えて、彼女らはそれどころじゃない。

彼女らの親も、娘が男たちの後を追って都会に移ろうとするのを必死に止めてる。

 

で、成人よりも少し下の俺たちに白羽の矢が立った。

俺と同い年の男子……数人しかいないのだが、何人かは戦えるヤツがいた。

だが、最有力候補だった体が大きいワルガキは冒険者になりたいから成人になりしだい王都に旅立つと明言しており、女子に超人気のイケメン君も騎士に成りたいと王都行きを希望。他2人に劣るけど、やってやれないことはなさそうなノーテンキ君は、好きな子が農家の一人娘らしくて、婿入りして嫁さんの農家を継ぐことになると拒否。

残っているのは戦いには向かなそうなヤツら。そして俺。

 

黙っていれば、やり過ごすこともできたんだろうけど、ここで誰も手を挙げなければ、最終的に村に魔物が来る可能性がある。その結果、俺の家族に被害が出る可能性もあるから、仕方なくって感じだ。

将来的には開拓もするつもりだから、ここで貧乏クジを引いたって体にしておけば、いろいろと融通も効くようになるだろうって打算もある。

彼女もいるしね。

将来のことを考えて、有力者には良い顔しておこうってわけ。

 

その後は、今は農家をしてるけど、嫁さんと結婚するまでは行方不明になった狩人の仕事を手伝っていたって言う人に付いて行って、狩人の勉強をしてるってわけ。

とはいえ、始まって早々、俺のチートが炸裂して、魔物を一瞬で片付けているから、10歳にして弟子卒業間近だったりする。ていうか、最近はなんちゃって師匠のおっさんも本業が忙しくて顔すら見せに来ない。

 

少し前に会った時は、もうじきお前も一人前だな、的なことを言っていたので、次に会うときは卒業を言い渡されるのではと訝しんでいる。

 

まあ、一人で森を歩き回れるのはけっこう大きい。

魔法の練習もできるし、彼女とデートできる。

最近は村からちょいと離れた川辺に行って、土魔法で小さなプールを作って、水魔法と火魔法で温水を入れて、彼女とお互いの体を洗い合うのが流行っている。

小ぶりな獣とか魚を捕って、その場で処理して焼き肉、焼き魚で腹を満たす。

森での実地訓練として、狩人としての技術を勉強したり、魔法の練習をしたり、弓の練習をしたりする日がほとんどだけど、こうして頻繁に彼女とのデートに森を使っていたりする。

てか、数日おきにしてる。

 

やってみれば、なんでもっと早くやらなかったのかと悩むぐらい素敵な生活だった。

毎日たくさんの肉を食べてるおかげで、体もメキメキ大きくなって、今や体格の良いワルガキよりも一回り大きくなった。

彼女も元からロリの癖に出るところ出てる体型だったのに、最近は更に成長を遂げている。数日おきに温水に浸かりながら体を綺麗にしているので、可愛さにも磨きがかかっている。巨乳で可愛い子なんて性癖で仕方がない。

 

俺の彼女はくっそ可愛い子なんだけど、とんでもなくドン臭い。料理を運べばひっくり返す。水を運べば大人にぶちまける。友達と遊んでいれば、転んで友達を巻き込んで坂を転がり落ちる。しかも彼女はとても力がある子なので、一度ドジをすれば、割りと大きな被害が出たりもする。

そんなんで、ドジが過ぎるあまり、可愛い顔をしているのに、男からも邪険にされていた。女からも疎まれていたよ。すごく可愛いからね。

俺もそのドジに何度も被害に遭っているのだが、それでも前世で言うところのドジっ子を体現した彼女をほんわかとした視線で見守ることができた。そのせいか、彼女には小さい頃からすごく懐かれていて、いつの間にか2人でいるのが当たり前になり、お互いに将来は当然、結婚するものだと思っている関係だ。

だから、こんな感じで婚前交渉を致しているのも仕方ないし、全く問題ないのである。

同い年だから、なんの問題もないしね!

 

彼女は料理をすると2~3割の確率で食材を無駄にする。上達すればもっと減ると思うけど、それまで食材を無駄にするわけにはいかないと、実家では料理の手伝いをさせてもらえない。

だからこそ、俺と一緒に川辺で簡単な調理をするときも嬉しそうに動いてくれる。もちろん失敗することもあるけど悪気があるわけじゃないし、肉ならすぐにでも取ってこれる。野草も割りと決まった位置に生息しているので、取り過ぎないように採集すれば、定期的に確保できる。簡単な料理しかできないけど、良い練習だった。

彼女が頑張って料理をしてるのを、イノシシの皮を処理しながら、ちょいちょいと眺める。

彼女がわちゃわちゃと動くと、彼女の豊満な体も揺れる。女性らしさ満点で、鼻の下も伸びる。そうでなくても、本当に可愛い彼女だ。眺めてるだけで幸せで、少し待てば料理もできあがる。

とても幸せな時間だった。

 

とにかく、寝耳に水の狩人就任だったが、なんだかんだで生活環境が劇的に改善されたのだ。

魔物をちょいちょい倒しているので、レベルっぽいのもガンガン上がっていると思う。魔法を何度も使っても疲れないし、威力もバンバン上がっている。

魔物は倒しすぎても問題はない。唯一、獣が増えるという側面があるのだが、増えたら増えたで備蓄の肉を増やすだけなので願ったり叶ったりだ。

 

 

 

そうこうして5年を過ぎる頃には、俺は一端の狩人として定着していた。

魔物の間引きを立派にこなし、大きな獲物を取った時には、村の人と肉と野菜の物々交換をしたり、安定した品質の毛皮を捕ることができるようになって高い人気が出たり、彼女に保存食作りをお願いしたりと、村で欠かすことのできない存在として地位を確立できた。

時折、村にやって来る行商にも保存食や毛皮は高い評価をもらっていて、野菜ではなく、俺の毛皮を目当てに村に来てくれることもあるくらいになった。こっちとしてはいずれ農業を始める時に必要になるであろう外貨を獲得できてホクホクであった。

 

そう、農業だ。

 

同い年のワルガキやイケメン君が親の説得も虚しく、都市へと旅立ち、ノーテンキ君が予定通り農家に婿入りしていくのを見送ったあと、俺も成人になった。

タッチの差で彼女も成人になり、それと同時に結婚をした。

いつもよりベッタリとくっついて離れない彼女――嫁さんを愛おしく思いながら、その日は早めに就寝した。

でも、この村で一番遅く寝たのも俺たちだったと思う。

 

結婚して、新しい家に移った。村の外れに大きな新居を設けた。

たくさん肉を獲って、それと引き換えに村の人に手伝ってもらい作った新居は、子どもが10人できても余裕のある広さの家だった。

村長には、こんな村の外れで良いのか? と聞かれたが、狩りに出やすいし、魔法で開拓するつもりだから、この場所で良いと返した。

5年のうちに俺が魔法を使えることは村中に知れ渡っていた。そりゃあ10歳の子が一瞬で魔物を葬って、森を自由気ままに歩き回るのだから、村の人たちも何かしら秘密があると思っていたようで、わりとすんなりと納得してもらった。

というか、魔法を使える人が村どころか、隣の漁村や都市にもいないらしく、なんかすごい力としか思ってないらしい。

すっごい強くて便利なんだけどね。

 

親しくなった行商のおっちゃんには、隣の都市や、村の男連中が行った王都に行けば大出世できると言われたが、そんなことをすれば、毛皮を用意できる人間がいなくなるよと丁重に返した。

現金なもので、行商のおっちゃんも、そりゃあ困ると言って、このことは他には内緒にしておくと言ってくれた。なんでも、魔王軍の被害を埋めるために、強い人は積極的に騎士に取り入れているらしい。

王都に行ったイケメン君が職にあぶれることがないなら、なによりである。

 

そんなわけで、村長に開拓は切り取り次第を再確認して、新生活が始まった。

これまでどおり狩りはするけど、森でのゆったり時間は控えめにした。大きな獲物をできるだけ獲って帰るようにして、数日は狩りを休む。今までは森で呑気に過ごす方がメインだったから、こんなゆったりの日程に変えても成果は変わらない。

逆に、俺はどれだけダラダラ仕事していたんだと笑ってしまった。

森にいる時間の代わりに、嫁さんと一緒に畑づくりを始めた。

やろうと思えば、風の魔法で手当たりしだい、目に付く木を切り倒すことはできるけど、そんなに早くやっても驚かれるだけだし、処理に困る。切った木も薪にしないといけないので、木を乾燥させる場所とかが必要になるのだ。まあ、火と風の魔法で乾燥した温風を送り続ければ、数時間でカラッカラにできるんだけどね。そんなことをする暇があるなら、嫁さんとイチャイチャしたいからパス。

結局、1日に多くても1本ずつ木を切ることにして、嫁さんとどうやって畑を広げていこうかと話し合った。

 

少しずつ、少しずつ開拓を進めていった。

行商から農具は購入していた。種は俺のところと、嫁さんのところの実家から分けてもらう。

農業知識なんて家庭菜園程度のものしかない。しかも間違いなく、にわか知識だ。なので基本的には実家のやり方をそのままやるだけ。ただ、アルカリ性がいいとかなんとかは覚えていたので、行商から漁村で貝類を買ってきてもらって、中身を食べた後に、殻を砕いて畑にまいておいた。

水の量なんて、どのくらいがベストなのかわからないから、区分けして、何日おきに水をやるか試してみた。

そんな感じで、うろ覚えの農業知識で試行錯誤しながら、農業を開始した。

ぶっちゃけてしまえば、農業なんてしなくても食べていくのに全く困らないので、この余裕があるうちに、いろいろと試したいのだ。

 

とはいえ、忙しいってほど農地を確保できていないので、引き続き少しずつ開拓を進めていく。

それと最近はちょっとだけ狩ってくる獣を増やして、保存食を大目に作り始めた。

というのも、嫁さんが妊娠したのだ。

まあ成人を迎える少し前から、いつ孕んでも大丈夫かなと思って、自重しないでやっていたので、当然といえば当然の結果だ。

もう既にお腹が目立ち始めている。

嫁さんはドジっ子なので、できればジッとしていて欲しいのだが、俺のために料理を作ることが嬉しくて仕方がないらしくて、無理はしないからと譲らなかった。

あと、2人で考えた畑の手入れも楽しいようで、何かと理由を付けては畑仕事を手伝ってくれる。あなたと少しでも長くいたいから、なんて言われたら断れないって。

ドジと言っても、長年の練習の成果か、料理でのドジも最近は頻度が1割程度に下がっている。

本当に頑張っていたから嬉しい限りである。

このまま日常の1つとして繰り返していけば、失敗もほとんどなくなるんじゃないかなって思ってる。

まあ、そうならなくても可愛くて仕方がないんだけどね。

とりあえず、次に行商が来たら、子供用の服とかを頼んだほうがいいのかな?

実家にあるやつを使うって手もあるけど、それは次男一家が使うだろうから、新調したほうがいいよな。

こういうのは女連中が夢中になるやつだと思うから、嫁さんも連れて行こう。

 

 

 

16歳になるころには、無事、1児の父になっていた。

嫁さんは体が丈夫なので、母子ともに体調に問題はなかった。我が子は今日も元気に泣いている。

 

1年も経てば、開拓状況もずいぶんと進んだ。

これ以上の農地は一家では扱い切れないので、最近は木を切り開くのは自重している。新しい作物を興味本位に植えたり、ちょっと作業場が欲しいなって時に少しずつ開拓している感じだ。最近は果樹を植えてみたりしている。

そんなこともあって、面積だけで言えば、既に村で一番の土地を持ってる状況だ。

ただ、全ての土地が農地に適しているかといえば、そんなことはない。何かを植えるには少し急な傾斜があったり、日当たりが少し物足りないところもある。

では何故、そんなところを開拓したのか。

それは鶏を飼うためである。

 

肉や野菜が確保できているので、次は卵と牛乳だ。

そんな安直な考えで鶏を飼いたいと思ったのだ。牛乳はコストが掛かり過ぎるんだろうなってイメージがあるので、他の農家もやっている鶏に目をつけた。とはいえ、他の農家のような犬のように数匹を放し飼いするわけではない。鶏を多めに飼って、開拓地に適当に放牧するのだ。卵を採ったり、肉にしたりと有用性は言うまでもない。しかも、開拓地は木と石を取り除いただけだから、放牧中にその辺の草を餌として食べてくれる。たしか蛋白質とかも必要ってのを聞いたことがあるから、補足として古くなった穀物とか、料理のあまりとかを与えれば良い。うちの料理は肉がたくさん入ってるからね。

専用の穀物を用意するほど村全体に余裕が有るわけでもないので、あまりものを与えるつもりだ。

卵を産まなければ冬前に肉にすればいいだけだから、気負うこともなかった。

 

一番、手間だったのは小屋作りだ。

木はたくさんあるけど、金属は行商頼りだ。それでも釘とかはあるけど、蝶番とかは専用に発注するものらしいから、汎用品がない。

仕方なく、扉は持ち上げて移動させる式にして、夕方には鶏を移して、獣に襲われないようにした。

それ以外の手間はほとんどかけてないけど、上手くいくといいなって思う。

長男は鶏を気に入ったようで、嫁さんが長男を背負って鶏の近くに行くと、キャッキャと喜んでいる。

まだ視力も整ってないだろうに、なにがそんな面白いのだろうか。

子どもは不思議なものである。

 

そして嬉しくて悲しいお知らせが一つ。

嫁さんが2人目を妊娠したのだ。

半年以上に渡るお預け期間を終え、待ってましたとばかりに嫁さんに襲いかかって、日が昇るまで夢中になった結果、一夜で見事に命中してしまった。

もちろん嬉しい話なのだが、再びお口の生活に戻ると考えると、悲しさはやはりある。

まあ、半年以上、毎日のようにやってくれていたから、メチャクチャ上手いんだけどね。前世のピンなサロンと比較しても、嫁さんの方が上手いんだけどね。

それでも悲しいものは悲しい。

でも2人目はすごくおめでたいので、嫁さんを抱きしめて喜びを分かちあった。

間にいた長男がギュッと押されて泣き出した。

嫁さんと思わず笑ってしまいながら、2人で頑張って長男をあやした。

 

 

 

そして時は流れて20歳になった。

あっという間だった。

次男、長女、次女と立て続けに子どもが生まれ、次の子が既に嫁さんの中でスタンバイしている。

子どもの世話に、農業の試行錯誤、思った以上に成功してしまった鶏の始末などに奔走していた。

しかも、最近は魔王の動きが活発になってきているようで、魔物が生まれる速度が早くなった。

この村は、魔物が増えたとしても、俺が森の深いところで見つけた瞬間、刈り取っているので全く問題ないが、他所の村では魔物の急増に対応しきれず、已む無く村を放棄したところもある。しかも集団で襲ってきた魔物から女・子どもを守るため、稼ぎ頭の男が殿になり、けっこう死んだらしい。

そして、そういった人が都市に集まり、やがて都市から溢れた人たちが俺たちの村にまで来るようになった。

 

新参の、子どもが居る、夫がいない女が数組も来たのだ。

当然、村は彼女らを持て余した。

土地をただで与えることなんてできないし、女・子どもじゃあ狩人にも木こりにもなれない。男であれば、数年前の男連中の引っ越し騒ぎで、まだ未婚の女が残っている状態だから需要もあったろうけど、女では厳しい。

とはいえ、都市で暮らしていけないから、ここを頼りにしてきた女たちだ。

ここで見放せば早晩、餓死や凍死で死に至ることは目に見えている。

どうしたもんかと、村の男連中が集まって頭を悩ますことになった。

で、再び俺に白羽の矢が立った。

今や俺は農地だけでも村一番だし、更にその上に多くの鶏たちが、ポンポコ卵を生んでいる。魔物が増えたってことで狩りの仕事も忙しいのに、嫁さんは吉報続きで同じく多忙。

だったら、俺の仕事を手伝わせてはどうかってことになった。

 

正直に言ってしまえば、俺と嫁さんと子どもたちの愛の巣に、どことも知れぬヤツらを招き入れる真似なんて御免被りたい。

だけど、せめて子どもだけでも! と必死の形相で頭を下げる頬がやつれた女たちの姿を見てしまうと、断るには勇気が足りなかった。

 

結局、嫁さんの生活を台無しにする真似をしたら、即刻、追い出すという条件と、彼女らの家は村全員で協力しようってことで、話がまとまった。

 

で、再び開拓を始めた。

これでも俺だって考えて農地を開拓してきたんだ。嫁さんとイチャイチャすることもできないようなら、余計な仕事なんてしたくないって思っているから、無理なく対処できる範囲で土地を広げていたんだ。

だから刈り入れ時期とかの繁忙期ならともかく、1年を通して数組の女・子どもを食べさせてやれるほどの仕事はない。

なので、再度、畑を増やしたのだ。

 

女だけだとキツイ仕事もあるけど、その辺は適当にフォローすればいいだろう。

畑も俺のところからは少し離れているが、行き来に不自由するほどではない。

小作として彼女らを使い、贅沢はできないが食うには困らない程度には報酬を与える。それで当場は凌いで欲しい。

子どもらが大きくなれば都市に行ってもいいし、どこか適当な家庭に母親同伴で上がり込んでもいいし、このまま小作を続けても良い。

子どもが成長して働けるようになれば、また状況も変わると思うしね。

 

 

 

そうやって、ようやく生活が落ち着いた。

 

気がつけば長男が10歳になり、次男とともに立派に鶏を小屋へと追いやっている。

最近では一丁前に俺の狩りに付いてくるようになった。

正直に言うと、俺の狩りはチート前提のやり方なので、パンピーの長男には参考にならないだろうって思ってた。

ところがどっこい、長男が魔法を使い始めたのだ。

 

魔法を教えた記憶は一切なかったので、目を白黒させながら、森の中で初披露をかました長男に、魔法をどこで覚えたのか聞いてみた。

すると、俺が魔法を使うのを見て、自然と覚えた、とのこと。

 

思わず、長男も転生者かと疑ったが、5歳になっても寝小便をかまして、俺と嫁さんの夜のプロレスごっこに元気よく割り込んできてたことを思い出し、その考えは消え去った。

 

狩りを適当に切り上げて、昔、森で嫁さんと逢引していた川辺に行って、長男に魔法を使わせてみた。

するとどうでしょう。10歳にして、長年、魔物を狩り続けていた俺と同等の魔法を使用するではありませんか。長男は魔物を倒した経験なんてないはずだから、レベル的なものも俺より圧倒的に低いはず……。

ヤバい。俺の子、天才かもしれん。

 

父のアイデンティティーが奪われてしまう喪失感と、無事に成長していることの嬉しさとで感情がごちゃ混ぜになりながら俺と長男は仲良く家路に就いた。

 

途中、長男から更に衝撃のニュースが入ってきた。

 

どうやら次男は斧で、あのくそ硬い硬い木を切り倒すらしい。

俺? 俺は魔法でやるよ。斧なんて使ってたら、1日全力でとりかからないといけないからな。

どうやら次男も1日くらいで切り倒すらしい。

でも、勝手に木を切り倒したことがバレると怒られるかもしれないから黙っていたのだとか。

……まあ、いいだろう。今日は次男ともじっくり話し合う必要があるけど、まあ、うん、成長を祝おう。

 

嫁さんは長男と次男の力のことを知っているらしい。

 

……これはアウトじゃないか?

お前ら、俺から嫁さんを取るとどういうことになるか、一度、体に教える必要があるかもしれないな。

 

俺がそう言うと、長男は慌てて距離を取った。

すっげえ早く反応するじゃん、とか思いながら、長男に冗談だと告げる。

 

ホッとする長男に、他に隠し事はないかと聞いてみた。

長男は、言うかどうか少し迷った後に、長女について話してくれた。

どうやら長女は回復魔法が凄いらしい。

 

マジか。

俺、子どもの前で回復魔法を使ったことないはずだぞ。

ていうか、俺が回復魔法を使うのって、嫁さんと夜のプロレスごっこをするときか、嫁さんのクーパー靭帯を回復してやるときだけだ。

え、なに? どっちか見られてたってこと?

マジかよ。だから最近、長女が俺と顔を合わせないようにしてるんだな。

たしか……1カ月前くらいから避けるようになったから……うん、たぶん間違いない。ちょうど今、嫁さんのお腹にいる子の種付け時期と一致するね。

防音魔法使っていたはずなのになんでバレた?

 

てか、この流れだとあるだろ。次女、三男と、ほかのきょうだいにも秘密あるだろ。

なかば確信を持って長男に問いかけると、長男は冷や汗を流しながら後ずさった。

それを見て、俺もいつでも飛びかかれるように腰を低くする。

流石にまだ経験で負けられんと、長男が動くのをどっしりと待つ。

長男の体がこわばり、我慢できずに飛び出すかと思われた。

しかし、そこに哀れなイノシシが迷い込んできてしまった。

俺は反射的にイノシシに一撃を入れて仕留めた。

そして、長男はその隙を逃すことなく、一瞬の内に逃げ去ってしまった。

 

思っていた以上のスピードに、既に地力で負けている気がした。

子どもってヤツは、いつの間にか親が思っている以上に成長してしまうものなんだな。

イノシシを担ぎながら、そんなことを思ってしまう。

 

でもまあ、とりあえず今日は帰って嫁さんを問いただすとしよう。

悪意はないんだろうけど、俺に隠し事をしていたのは気になる。子どもができるまでは、どんな些細な事でも相談してくれて一緒にどうしようかって悩んでいたのにな……。

まだ妊娠初期だし、数年前から後ろも開発済みだ。

浄化魔法を駆使すれば、衛生面でも問題ない。

 

さあ、お父さん頑張っちゃうぞー!!

 

 

 

 

 

 

数年後、勇者3人とその従者が魔王に敗れ、悲惨な死を遂げた。

この重大さに気づいた王族・貴族らが、もはや世界はお終いだと嘆いたころ、とある辺境の農村から彗星の如く現れたきょうだいが、見事、魔王を討ち滅ぼし世界を救うことになる。

だが、そんな未来の話は農村の1家族には今は預かり知らぬこと。

仲の良い夫婦は、農作業が一段落して、大きな家の軒下に仲良く腰をかけ、鶏を元気よく追い回す子どもたちをのんびりと眺めていた。

 




気を付けたところ:ロリ巨乳にすべきか、恵体にするか悩んだあげく、どっちでもいけるように整えました


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