ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ (ネコ耳パーカー)
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プロローグ①

初めてネコ耳パーカーです。
ただの自己満小説ですのであまり気になさらないでください。それではよろしくお願いします。


「これが…SAO」

 

ログインして、まず出た言葉がそれだった。

俺の名前は兔沢優月。14歳の中学2年生だ。

抽選で当たったナーヴギアとこれまた抽選で当たったソフトを使ってログインした素人だ。ちなみにMMORPGはこれが初めてだ。

プレイヤーネームは【ツキノワ】。

姉でありベータテスターの兔沢深澄のプレイヤーネーム【ミト】を参考にさせてもらった。

「さてと、みす…ミトを探すか。でも姿がわからん…」

深澄に言わずにログインしたので実はどこにいるかどんな姿か知らないのだ。

そう考えながら周りを見ていると

 

「ん?なんだあいつら」

 

迷いなく裏路地に走り抜ける男とそれを追いかける男。何となくその2人を追いかけることにした。

 

 

追いつくとなんと赤バンダナの男が、黒髪の男にレクチャーを受けることになったらしい。

これに便乗させてもらおう。

そう思い声をかけることにした。

 

「すまない。俺にも色々教えてもらえないか?実はMMORPG自体が初めてで何からやれば分からないんだ」

 

素直にそう伝えると

 

「ああ、いいぜ。1人も2人も変わらないしな。俺は【キリト】だ。よろしく」

 

「おお!一緒に教えてもらおうぜ!俺は【クライン】だ!よろしくな!」

 

と2人とも快諾してくれた。

自分も名乗ってないことを思い出し

 

「ありがとう。俺はツキノワだ。よろしく頼む。」

 

そう返し、3人でフィールドに出ることにした。

これが俺の人生で大切な友達達との出会いだった。

 

 

「痛って〜!!!」

クラインの絶叫が響く

。青イノシシ【フレンジーボア】に突進され、蹲りもがく姿にツキノワは爆笑していた。

 

「wwwクラインwww漫画かよwww」

 

「ペインアブソーバーがあるんだから痛くないだろ」

 

キリトが呆れながら返すと

 

「そういえばそうだけどよぉ…分かるだろ?お前らだって」

 

などと情けない声で言うクライン。

 

「まあ、分からんでもないけど…そんなに難しいのか?ソードスキル」

 

そう、今ツキノワたちはキリトに教えて貰いながらソードスキルの練習をしていた。

これが以外に難航しているのだ。

 

「だから言ってるだろ? 大事なのは初動のモーションなんだよ」

 

「んな事言ったってよぉ……あいつ動きやがるしよぉ」

 

「何て言えばいいかな…グッて少し溜めて、スキルの発動を感じたらズパーンって撃つ感じかな」

 

「グッと溜めてズパーン…お?」

 

なにか掴んだクラインはそのまま向かってくるフレンジーボアに対してソードスキルを打ち込んだ。

綺麗に決まったそのスキルは一撃でフレンジーボアの体力をゼロにし消滅させた。

 

「うぉぉぉ!やったぞ!」

 

大喜びするクラインに

 

「おめでとう」

 

「おめでとうさん。スライム程度の敵だけどな」

 

と適当に褒めるキリトとツキノワ。

 

「え?俺はてっきり中ボスくらいだと…」

 

「な訳ないだろ…。さてと、次はツキノワだな」

 

「OK任せとけ。グッと溜めてズパーンだな」

 

そう言いながら剣を構えるツキノワ。クラインと同じ片手曲刀なので構えはクラインを見て覚えた。あとは冷静に狙いを定めて

 

「…!ハァ!」

 

気合一閃。フレンジーボアを一撃で倒した。

「…ふぅ。こんなもんか」

 

 

あっさりソードスキルを決めたツキノワに

 

「へぇ。1発で成功か。センスあるかもなツキノワは」

 

と驚くキリトと

 

「ちくしょう…あっさり決めやがって〜!」

 

と悔しがるクライン。

 

「何言ってんだか。そんな事よりどんどん楽しもうぜ!」

 

そう言って次の獲物に狙いを定めるツキノワ。

 

「そうだな!全力で楽しまねーとな!」

 

そうして彼らは夕方まで遊び倒した。

 

 

「いや〜遊んだ遊んだ!」

 

そう言うツキノワ。どうやらかなりハマったらしい。

 

「だいぶ遊んだが2人はどうする?」

 

そう聞いてくるキリトに対し

 

「もちろん遊ぶぜ!…と言いてぇところだがそろそろ宅配ピザが届く頃合いだからな。1回落ちるわ。」

 

「俺も1回落ちて休むわ。少し疲れた。」

 

2人とも1度休むという。

その後クラインの提案でフレンド交換した俺たちはまた後で会おうと約束し、ログアウトしようとした。

したのだが…

 

「「あれ?ログアウトボタンがない?」」

 

と俺とクラインが同時に呟いた。

これが俺たちの運命の始まりだった。

全てはここから始まったんだ。




という訳で記念すべき(?)第1話はキリトたちとの出会いです。頑張って書いていきます。蒸発したらごめんなさい。それでは失礼します。


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プロローグ②

第2話です。よろしくお願いします。


「「あれ?ログアウトボタンがない?」」

 

同時に呟くツキノワとクライン。そんな2人に

 

「はあ?そんな訳ないだろ?ちゃんとここに…ってない?」

 

キリトは自分のメニュー画面を見ても確かに存在しない事に疑問に思う。

3人揃って何が起きたのか分からず困惑している時、ゴーンゴーン、ゴーンゴーン、ゴーンゴーン

 

「これは鐘の音?はじまりの街からか?」

 

そうツキノワが呟いた瞬間、突然青い光に包まれるクラインとキリト。

 

「おわ!?何だこりゃ!?」

 

「これは…強制テレポート!?」

 

「キリト!?クライン!?って俺もか!?」

 

 

あまりの眩しさに目を瞑ってしまう3人。

次に目を開けた時見えたのは、やはりはじまりの街だった。

 

「ここは、はじまりの街じゃねぇか!」

 

「一体何が起こってるんだ?」

 

「2人とも、周りを見ろ」

 

周りには自分たちと同じ様に突然の事に困惑するプレイヤーがどんどん増えていた。

 

「まさか、今アインクラッドにいる全プレイヤーが集められてるのか!?」

 

「だとしてもよぉ、俺たちは一体何のために集められたんだ?」

 

そう呟くツキノワとクライン。

そんな2人にキリトは

「運営から何かアナウンスでもあるのか?」

 

そう考えていると誰が突然大きな声を上げた。

 

「おい!上を見ろ!」

 

反射的に上を見ると赤い字でWARNINGと書かれるシステムの案内。

そこ瞬間突然その文字が空を覆った。

その隙間から血のようなものが溢れ出すと、それがローブを纏った謎の人物を作り上げた。

そしてその人物は

 

「プレイヤーの諸君、私の世界にようこそ。私の名は茅場晶彦。今やこの世界を操作できるただ唯一の人物である」

 

と淡々と言い放った。

 

「何ぃ!?」

 

「茅場晶彦だと!?」

 

驚くキリトとクライン。

 

「茅場晶彦って確か…このゲームの開発者だっけ?そんなに驚く事なのか?」

 

ツキノワは驚く2人に聞く。

 

「茅場晶彦はあまりメディアには出てこないんだ。だからこんなアナウンスに出てくるなんて思ってなかったんだ」

 

教えてくれるキリト。

そんな間にも淡々と続くアナウンス。

 

「諸君らは今、メニュー画面からログアウトボタンが消えてる事にに気がついているだろう。そしてそれが不具合なのでは?という疑問を抱いているだろう。だがこれは不具合では無い。もう一度言おう。これは不具合では無く、ソードアート・オンラインの本来の仕様である」

 

「し、仕様だと?」

 

「何を言ってんだ…?」

 

掠れた声で呆然とつぶやくクラインとツキノワ。

 

「今後君たちプレイヤー諸君は、この浮遊城の頂を極めるまで自発的にログアウトすることはおろか、外部からの切断でもこのゲームから脱出することは出来ない。仮に外部からの切断が試みられた場合…諸君らの脳はナーヴギアから発せられる高出力マイクロウェーブにより、破壊され生命活動を停止する」

 

そう告げられる。

 

「はは…何言ってんだよあいつ。ナーヴギアはただのゲーム機だぞ。そ、そんなもんで人を、こ、殺せる訳ないだろ!?」

 

動揺するクラインに対しツキノワは

 

「いや…できる。ナーヴギアは原理的には電子レンジと一緒だ。だから暴走させれば…」

 

そうつぶやく。

 

「この事は外にも知られている。しかし残念ながら、この警告を無視したものたちの結果…213名のプレイヤーがアインクラッドおよび現実世界から永久退場している。」

 

「…マジかよ…」

 

声を震わせるツキノワ。

 

「諸君らが現実の身体に関して心配する必要はない。現在、あらゆるメディアを通じて私が話している内容は全国へと届けられている。ナーヴギアが外部から強制的に外される心配はほぼ無くなったと言っていいだろう。ナーヴギアを装着したまま回線切断の猶予時間のあるうちに厳重な介護の行われる施設へと搬送されることだろう。だから、諸君らは安心してゲーム攻略に臨んでほしい」

 

「な!?こんな状態でゲームを攻略しろ!?ログアウト出来ないこの状態で呑気に遊べと言いたいのかお前は!こんなのもう、ゲームでもなんでもないだろ!」

 

たまらずそう叫ぶキリト。

そしてそれを無視するように

 

「しかし諸君らには十分に留意して欲しい。ログアウト不可の状態では今はここが諸君らの現実に他ならない。今後このゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しなくなる。君たちのHPがゼロになった瞬間、諸君らのアバターはこの世界から消滅し…更に諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される」

 

誰もが黙り込む。

誰も信じられなかったからだ。

この目の前に広がる現実という名の絶望を。

そんな彼らに現実を突きつけるようにさらに続ける茅場晶彦。

 

「私から諸君にささやかながらプレゼントを用意した。アイテムストレージを確認するといい」

 

そう言われ確認するツキノワ。

そこには1つアイテムがあった。

 

「手鏡?」

 

疑問に思いながらオブジェクト化させる。

そして覗き込んだ瞬間突然また青い光が彼らを包んだ。

 

「ちょ!?またかよ!?」

 

驚くツキノワ。

瞑った目を開けると鏡に映る少し薄い紫色の髪と実は気に入ってる赤い目。

先程までと変わらない自分の姿だった。

 

「なんだったんだ?キリト!クライン!大丈夫か!?…って誰だあんたら?」

 

キリトとクラインの方を向くとさっきまでとは見た目が全く違っていた。

 

「誰って俺だよ。キリトだよ」

 

「そうだぜ。俺はクラインだぞ」

 

「いや、見た目変わってるから」

そう言いながら2人に手鏡を向ける。映る姿しばらく見たあと

「「うお!?現実の俺だ!?」」

 

ハモる2人。つまり2人は

 

「ほんとにキリトとクラインなのか!?」

 

「「だからそう言っただろう(が)!」」

 

またもやハモる2人。

 

「そういや、ツキノワは変わんねぇんだな」

 

クラインに言われたので

 

「VRショッピングのやつを間違ってコンバートしたんだよ。リアルと一緒にしないと参考にならんだろ?」

 

そう返す。納得しているクラインを他所に

 

「顔はマイクロウェーブで高密度スキャニングしてるから再現できるだろうけど体格はどうやって…」

 

「あれじゃねぇか?初期設定したから覚えてるが、確かキャブレーションとか何とかで身体中触っただろ?」

 

と考察するキリトとクライン。

 

「それよりもあいつは何でこんな事…」

 

とツキノワは考えてるとそれに答えるように

 

「諸君は、今なぜこのようなことをしたのか、と思っているだろう。大規模なテロでも身代金目的でもない。私の目的はすでに達成してる。この状況こそが私の最終目的なのだ。…以上で《ソードアート・オンライン》正式チュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の健闘を祈る」

 

そうして茅場晶彦は姿を消した。



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プロローグ③

第3話です。よろしくお願いします。


誰も声を出せなかった。

1万人近くいるとは思えないくらい静かだった。

聞こえてくるはじまりの街の呑気な音楽が妙に耳に残る。

誰もが突然の茅場晶彦のチュートリアル(デスゲーム宣言)を、信じることが出来なかったのだ。

 

「いや……いやーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

そんな空気を切り裂くような悲鳴が聞こえた時、全員が現実を認識し狂乱する。

場が騒然とする中

 

「ツキノワ、クライン、こっちに来い!」

 

突然キリトに腕を掴まれ裏路地に連れ込まれる。

 

「2人とも俺と一緒に来ないか?俺なら次の村までの安全な道を知ってる」

 

「どういう事だ?」

 

突然の提案にツキノワは困惑しているとキリトは細かく説明してくれた。

 

「この世界で生き残るには、ひたすら自分を強化しなければいけない。VRMMOが提供するリソースには限りがあるんだ。はじまりの街周辺のフィールドはすぐに狩りつくされる。効率よく進めるには、拠点を次の村に移動した方がいい」

 

「なるほど…」

 

確かにこれは現実的な提案だ。

ツキノワは自身が生き残るためにこの提案に乗るつもりだった。

でもクラインは違った。

 

「すまねぇ…一緒にログインしてるダチがいるんだ…。あいつらをほっとけねぇよ…」

 

そう、クラインは仲間がいる。

彼らを放ってこく事なんて出来ないだろう。

キリトもこれにはなんて返したらいいか分からなくなっていた。

正直なところ2人でさえ、かなりギリギリだった。

そこにさらに増えるのは、キリトだけでは守りきれない。

もしもの時の責任を考えて怖くなってしまったのだ。

 

「気にすんなよ。おめぇに教わった事をしっかり活かすぜ!これでもギルドの頭張ってたんだ!すぐに追いつくさ」

 

その事に気づいたクラインは笑いながら返した。

 

「…わかった。ツキノワはどうする?」

 

そう聞かれすぐに答えようとしだ、1つだけ確かめたい事があった。

 

「1つ聞きたい。その道はベーターテスターは誰でも知ってるのか?」

 

「コアなMMOプレイヤーなら知ってると思うけど、どうしたんだ?」

 

不思議そうに返すキリト。

それに対し

 

「実は姉もベータテスターでこのゲームにいるはずなんだ。だからまず少しはじまりの街の中を探したい。そこで見つからなかったら改めて一緒に行こう。姉もコアなプレイヤーだ。きっと知ってるはず」

 

と返す 。

その発言に驚く2人。

 

「わかった。30分だけ探そうそれでいいか?」

 

「助かる。ワガママ言ってごめん。」

 

「気にすんなよ!家族を探したいなんて当たり前じゃねぇか!」

 

励してくれるクライン。

 

その後フレンド交換し、姉のプレイヤーネームと特徴を教えて別れることにした。

 

「…じゃあな。行こうツキノワ」

 

「クライン、無事でいてくれよ」

 

ツキノワはキリトに付いて行くと決め、クラインに謝罪する。

キリトとツキノワは、クラインに別れを告げ、町の出口へと向かおうとする。

 

「…キリト!ツキノワ!」

 

すると、クラインが二人を呼び止め、二人は振り向く。

 

「キリト、お前って、案外かわいい顔してるんだな!結構好みだぜ!ツキノワもリアルもイケメンじゃねぇかよ、羨ましいぜ!」

 

クラインは親指を立てて、二人に笑い掛ける。

 

「「お前こそ、その野武士ヅラの方がずっと似合ってるよ!」」

 

そうして俺たちは街を飛び出した。

 

 

走って走って走っていると、2体の狼モンスターが出てきた。

 

「ツキノワ!来るぞ!」

 

そう切りかかるキリト。

だがツキノワは剣を抜いただけで、恐怖で動けなかった。

そんなツキノワに対し襲いかかるモンスター。

 

「うわ!?」

 

寸前で剣で守るも体勢を崩し馬乗りにされてしまう。

 

「ツキノワ!?何とか堪えるんだ!」

 

キリトの焦った声を聞きながらツキノワは恐怖していた。

 

(死にたくない…死にたくない…死にたくない!)

 

そんな事で頭がいっぱいだった時、

 

「ハァ!」

 

キリトの一閃がツキノワを救った。

 

「ツキノワ!?大丈夫か!?」

 

「キリト…ああ、大丈夫だ」

 

脱力しきってしまい動けなかった。

 

「…無理してついてくることはないぞ?」

 

そう優しく声をかけられるが

 

「断る。」

 

即答する。

 

「今のでわかった。人はいつか死ぬ。でもこんな状況だ、死に方なんて大層なものは選べない。…でも生き方なら、死ぬまでどう生きるか、それなら選べる!俺はこの世界に負けたくない!だから戦う!世界と!何より弱い自分と!!」

 

そう強く宣言した。

その目はさっきまでとは違い、強く燃え盛る炎のような光があった。

 

「わかった。なら生き残ろう!一緒に!」

 

そう言って拳を向けてくるキリト。

 

「よろしく頼むぜ、兄弟(ブラザー)」

 

「もちろんだ、兄弟(ブラザー)」

 

そうしてお互い拳をぶつけ合い、走り出す。

この世界に勝つために、生き残るために。




死ぬという結果を、どういう形にするかと考えたアスナ。
死ぬという結果を迎えるまで、どう生きるかを考えたツキノワ。
という訳で3話でした。


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4話

プロローグは終わりです。長かったですね、すみません。
それでは4話行ってみましょう。


休みなく移動し続けた結果、次の拠点であるホルンカの村に着いたのは、空が暗くなってからだった。

 

「やっと着いたな〜…疲れた」

 

「ああ…だいぶ気張ってたもんな…」

 

やっと一息と言わんばかりの2人の少年、キリトとツキノワ。

道中何度か戦った結果キリトはLv4、ツキノワはLv3になっていた。

 

「どうする?休むか?」

 

ツキノワがそう尋ねると

 

「いや、休む前に片付けたいクエストがある。だから装備とアイテムを揃えよう」

 

答えるキリト。

内心休まないんかい、と思いながら了承するツキノワ。

 

「どんなクエストなんだ?」

 

「【森の秘薬】というクエストだ。クリアすると3層位まで使える片手剣【アニールブレード】が手に入るんだ。クリアに必要なアイテムが中々ドロップしないからレベリングにもなる。ツキノワにはあまり美味しくないクエストだろうけど付き合ってくれ」

 

なるほど、それは欲しい。

確かに経験値と金以外、ツキノワにはメリットはない。だがついて行くと決めた以上文句はないし言う気もない。

 

「OK。強くなるためだ。なんでもやるさ」

 

「ありがとう。こっちだ、着いてきてくれ」

 

そう言われついて行くと1つの民家に着いた。

そのまま入っていくキリトについて行くと

 

「ようこそ。旅の剣士様。お水でも飲まれますか?」

 

と中にいたNPCに言われる。

 

「「ありがとう」」

 

そう言って受け取る2人。

すると

 

「ん?あれは?マーク」

 

頭に?マークが出た。

 

「クエストフラグが立ったんだ。質問してみろよ」

 

キリトに促されたので

 

「どうかしたのか?」

 

NPCに聞いてみた。

すると

 

「実は娘が体調が良くなく、苦しんでいるのです。【リトルペネントの胚珠】が必要なのです。もしよろしければ代わりに取ってきていただけないでしょうか?」

 

と説明される。

その内容の深さに思わず驚いてしまう。

 

「わかった。俺たちに任せろ」

 

そう返すと?マークが!マークに変わる。

 

「あ。また変わった。これでいいのか?」

 

「バッチリ!これがクエスト受けるまでの流れ。さあ、フィールドに行こう」

 

そうして俺たちのペネント狩りが始まった。

 

 

「お?レベルアップした」

 

「おめでとう。ツキノワ」

 

始めてから1時間ほど。

2人は10体ほど倒してツキノワがLv4になった。

 

「なあ、オススメスキルってなんかあるか?」

 

2つ目のスロットが開放されたため尋ねてみると

 

「俺なら索敵を選ぶ。ペネント相手に隠蔽スキルは効果がないんだ。ただ自分が納得いくものを選んだ方がいい。だから開けたまんまにするのも1つの手だと思うぞ」

 

と返すキリト。

 

「ん〜、わかった。とりあえず空けとくよ」

 

そんな話をしてる時、パチパチパチ、という拍手の音が聞こえてきた。

 

「「!?」」

 

咄嗟に剣を構えるながら音の方を睨む2人。

 

「ま、待って!?驚かせてごめん!?」

 

そんな2人の反応に慌てながら出てくる1人のプレイヤー。

 

「ご、ごめん。Lvアップのファンファーレが聞こえてたから、おめでとうって言おうと思って…」

 

「そうなのか、ごめん。ありがとう、Lvアップしたのは俺だよ」

 

そう謝りながら剣をしまうキリトとツキノワ。

 

「僕は【コペル】。ここにいるってことは君たちも森の秘薬クエスト?」

 

「ああ、そうだ。そういうあんたもだろ?」

 

「もし良かったら一緒にやらないかい?人手が多い方が効率的だと思う」

 

コペルは協力体制を敷かないかと言い出した。

「…どうするツキノワ?」

 

キリトに聞かれ、確かに効率を上げたいとは思う。

しかし何故か、何となくだが嫌な予感がした。

したのだがその気持ちには蓋をして

 

「キリトの欲しいアイテムだ。キリトの判断に任せる」

 

そう返事をした。

 

「そうか。ならその提案は受けるよ。そういや、名乗ってなかったな。俺はキリト。こっちはツキノワだ。よろしく頼む」

 

結果協力体制を受け入れたキリト。

 

「ありがとう!よろしく頼むよ2人とも」

 

そうして3人で狩りを再開しだした。

 

 

「「「いた(な)(ね)」」」

 

再開30分、やっとお目当てのモンスターが出てきた。

 

「あれが狙いのモンスターか」

 

「ああ、あれが花付きのリトルペネントだ」

 

「ふーん。で、あの奥にいる丸っこいのつけたやつは?」

 

「「え」」

驚くようにさらに奥を見るキリトとコペル。

 

「2人ともあれは実付きだ!」

 

警戒するように言うコペル。

確かに実に見える。

見えるがそれがどうしたのだろうか。キリトに尋ねようとすると

 

「ツキノワ。あの実付きには絶対攻撃するなよ」

 

先に警告された。

 

「なんで?レアキャラだろ?」

 

「確かにレアキャラだが、あの実を割ると周囲のペネントが一斉に集まってくるんだ。普通のゲームならあえて割ってレベリングっていうのもアリって言えばアリだけどこのSAOではただの自殺行為だ。だから絶対攻撃するなよ」

 

「…わかった。絶対攻撃しない」

 

考えただけで背筋が凍った。確かに絶対攻撃してはいけない。

そう肝に銘じておく。

 

「僕が実付きのタゲをとる。2人で花付きを倒して」

 

とコペルがタゲをかってでてくれる。

 

「え、でもコペルだって」

 

「僕は後でもいいから大丈夫。その代わりちゃんと手伝ってね」

 

困惑するキリトに対しお茶目に返すコペル。

 

「…わかった。ありがたく取らせてもらう。ちゃんと最後まで手伝うさ」

 

「乗りかかった船だしな」

 

そう返すキリトとツキノワ。

 

 

「よし!行こう!」

 

そう言って3人同時に飛びざした。

 

 

攻撃してくるペネントの蔦を切り刻みながら踏み込むツキノワ。

攻撃しようとした瞬間変な動きをするペネントに対し、咄嗟に横に飛ぶ。

避けた瞬間、腐敗液を吐き出す。

この腐敗液を浴びると武具の耐久値がガクッと落ちるのだ。

ここまでの経験で予備動作を見切っていたツキノワは冷静に避け、逆にその隙をついてソードスキル【リーパー】を放つ。

 

「シッ!」

 

クリーンヒットし大きく体制を崩すペネント。

 

「キリト!スイッチ!」

 

それを見てキリトと入れ替わる。

横を駆け抜けるキリトは間合いに入ると【ホリゾンタル】のモーションを取る。

 

「ハァ!」

 

そのまま横薙ぎに一閃。

ペネントを切り倒した。

 

「ふぅ、お疲れキリト。ドロップした?」

 

「ああ、お疲れツキノワ。しっかりドロップしたぜ」

 

お互い拳をぶつけながら健闘を讃える。

 

「コペルの手伝いに行こう」

 

「そうだな」

 

そう言いながらコペルの方を見る。

その時

 

(?目が合った?)

 

コペルと目が合ったのだ。

その目はどこか悲しそうな、覚悟を決めたような、そんな目だった。

そのままコペルはソードスキルのモーションに入った。しかしそのモーションは【ホリゾンタル】じゃなく縦切り技の【バーチカル】だった。

 

「ちょ!?コペル何してる!?」

 

ソードスキルを中断させようと踏み込もうとするツキノワ。

 

「待て!ツキノワ!逃げるぞ!」

 

慌てて止めるキリト。

その2人の行動より早く【バーチカル】が実を割った。

パーーーーン!!!ものすごい音ともに吹き出す煙。

その瞬間、一気に集まり出す。

 

「クッソ!間に合わなかった!」

 

「仕方ない!やるぞ!」

 

そう言って2人で大群に切りかかる。

 

「!?コペルがいない!?」

 

いつの間にかいなくなったコペルに驚くツキノワ。

 

「まさか、隠蔽スキルか!」

 

「隠蔽スキル!?でもこいつらには!?」

 

そう、隠蔽スキルはペネントには聞かない。

それを証明するかのように何体かのペネントがあらぬ方に向かっていく。

そして何かの砕ける音が聞こえた。

それがなんの音が理解してしまった2人は

 

「「… ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」」

 

恐怖を振りほどくように気合いを込めながら剣を振るう。

振って振って振り続ける。

奇しくもそれはまるで舞を踊っているかの様な光景だった。

 

 

「「ハァ…ハァ…ハァ…」」

 

どれだけ戦ってきたか分からないくらい戦っていたが、気づいたらペネントは軒並み全滅していた。

それを認識した途端砕け散るツキノワのスモールシミター。

それを感じながらかなりの疲労からか、思わず膝から崩れ落ちた。

 

「…生きてるか、兄弟」

 

「…お互い様だろ、兄弟」

 

お互いの生存を確認し合い肩で息をする2人。

どれだけ戦ってたか分からないがかなりやったのだろう。Lvもお互い7になっておりドロップ品もかなりの数あった。

 

「あ、胚珠が2つある。交換して売るか?」

 

「…いや、弔いとして1個はコペルの分に置いてやろう」

 

キリトがそう言った。その事に俺は困惑した。

 

「…なんで?あいつは俺たちを殺そうとしたんだぞ!?そんな奴になんで弔いをしてやらなくちゃいけないんだ!?」

 

そうだ、あいつがやったのはMPK【モンスター・プレイヤー・キル】と言われる、タゲをなすり付けて逃げる非マナー行為だ。

特にこのデスゲームでは非マナーではすまず、最悪やった人殺しのレッテルを貼られることになる。

そんな事した奴にしかも、被害者である俺たちにそこまでしてやる義理はない。

だがキリトは

 

「…それでも俺は、必死に生きようとしたあいつを心から怒る事が出来ないんだ」

 

そう俯きながら言う。

そんなキリトに俺はため息をつくと

「…ここで待ってるから行ってこい。お前の分は俺のドロップしたやつを使えばいい」

 

そう言ってしゃがみ込んだ。

 

「!?…すまない。ありがとう」

 

そう言ってコペルが死んだと思しき方に向かっていく。

 

(…キリトは優しすぎる)

 

その背中を見ながらツキノワは思う。

あの優しさは美徳だ。でもいざという時に足枷になるかもしれない。

キリトにそれが出来ない時、もしやらなくてはいけない時が来た時、やるのは恐らく俺だ。

だから俺だけでも覚悟は決めなくてはいけない。

 

(いざという時躊躇わないこと、その覚悟を持たないと)

 

失わないために、大切なものを護るために。

そう思いながら拳を握りこんだ。




第4話でした。ツキノワは基本ドライです。その分自分が大切だと思う人達はとても大事します。さてと中々ヒロインが出ませんが次回やっと出てきます。それでは失礼します。


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5話

タイトルがシンプルな理由ですか?
センスがないからです。
それではよろしくお願いします。
ここから少しづつ個人視点で書いてみようと思います。



sideツキノワ

 

デスゲーム宣言から1ヶ月がたった。

その間にひたすら牛を狩ったり、虫を狩ったり、亜人を狩ったり、時には人が死んだ瞬間を見たり、かなりハードな1ヶ月だった。

なんでも1ヶ月で2000人ぐらい死んだらしい。

ここまで数人の死を見てきたがそろそろ慣れてきてしまった。

その事に自分が怖くて仕方なくなって、あまり眠れず夜にこっそり狩りに行くことが増えた。

そして朝方には素振りや型の稽古みたいな事をしてずっと剣を握っていた。

そんな姿をキリトに見られ、1回睡眠毒で強制睡眠させられた事もある。

その時とキリトの顔は申し訳なさで泣きじゃくりそうだったため、少なくとも夜中のレベリングは少し自制し控えるようになった。

そんな俺は今、

 

「はぁ〜…癒される…」

 

農家の2階を割り勘で借りて、備え付けの風呂で朝風呂を堪能している。

何故って?稽古の汗を流しているのだ。

実は風呂好きの俺はこの1ヶ月ほど風呂という存在を諦めていた。

だがキリトのおかげでこうして風呂に浸かってられるのだ。

もうキリト様々だ。

 

「お〜い。まだか〜?そろそろ行こうぜ」

 

外から急かしてくるキリトにまったりとした声で

 

「あと5分… 」

 

と返すと

 

「そう言って30 分は出なかったろ!?早く行くぞ!」

 

怒られた。

その時の事を思い出しため息をひとつつく俺は

 

「分かった分かった。今出るよ」

 

そうして風呂から出て装備を整えてから風呂場を出る。

 

「ほい、準備完了。いつでも行けるぞ」

 

暇そうにするキリトに声をかける。

 

「よし!じゃあ行くぞ!迷宮区!」

 

「4時に中央広場で攻略会議だったな」

 

「ああ。そこまでに戻れる範囲でレベリングだ」

 

キリトと必要事項を確認し合い、

 

「今日も生きて帰るぞ、兄弟」

 

「ああ、絶対に帰るぞ、兄弟」

 

お互いの拳をぶつけあった。

 

outside

 

壁に引っ掛けられた松明がユラユラと揺れる不安定な影を生む。

その影はかなりの速さで駆け抜け、その後を鎧を装備した2体の人型モンスターが追いかける。

少し離れすぎたと思った途端、紫色の髪をした少年はピックを取りだし全力で投げつける。

的確に鎧の隙間を抜けたピックは、ピンポイントで中に当たりモンスターを仰け反らせる。

その隙だらけの姿を見て

 

「スイッチ!」

 

と叫ぶ。

その瞬間その横を通り過ぎる黒い影。

その影は黒髪の少年で先程の少年より小柄だが歳は近いだろう。

その速度を落とさずに剣を引き抜き構える。

その瞬間

 

「ハァ!」

 

まるで銃弾ように駆け抜けモンスターの一体をソードスキル【ソニックリープ】で真っ二つにする。

だが、モンスターはもう一体いる。

体勢を整えたモンスターは黒髪の少年に斧を振り下ろそうとする。

だが黒髪の少年はただ冷静に見てるだけだ。

何故なら

 

「シッ!」

 

紫色の髪をした少年が、剣線に入り斧を弾き飛ばしたのだ。

またもや大きく体勢を崩したモンスター。

そしてその隙を的確かつ冷静に

 

「…ザァ!」

 

ソードスキル【リーパー】で首を切り落とし消滅させた。

そして剣をしまいながら

 

「お疲れ、キリト」

 

「お疲れ、ツキノワ。そろそろコボルト戦も慣れてきたか?」

 

黒髪の少年キリトと、紫色の髪をした少年ツキノワはお互いを労っていた。

 

「ああ、だいぶな。俺が斧をかちあげた時点で本来スイッチをすればいいんだろ?」

 

「ああ、基本はそうだ。ただ今回みたいに自分でいける時はいってくれて構わないな」

 

「了解」

 

同時に戦闘分析をしつつ周囲の警戒をしていた。

 

「…少し少なくないか?」

 

「やっぱりツキノワもそう思うか?俺もそんな気がしてたんだ」

 

モンスターの少なさに疑問に思いつつ警戒していると何か音が聞こえてきた。

 

「?これは…戦闘音?」

 

「え?聞こえるか?そんなの」

 

どうやら聞こえるのはツキノワだけだったらしくキリトは不思議そうにする。

 

「こっちだ。行こう」

 

そうしてそっちの方に走り出すツキノワとキリト。

そして進むにつれキリトにも音が聞こえ出す。

 

「本当だな。急ごう!」

 

「ああ!」

 

お互い走り抜けたその先には、

 

「ハァァァ!」

 

まるで流星のように美しいソードスキルを使って戦う女性プレイヤーがいた。

コボルトの攻撃を的確に避け、その隙を正確無比のソードスキル【リニアー】で貫く。

その戦い方は美しく思わず

 

「「……」」

 

2人揃って見惚れていた。

ただツキノワは見惚れていただけではなく同時に疑問にも思っていた。

 

(この人…この動き…どこかで見た事ある様な)

 

そんな事を考えていた。そうして考え込んでいると

 

「今のはオーバーキルだよ。通常攻撃1発で倒せたはずだ」

 

気づいたら戦闘が終わってたらしく、キリトが話しかけていた。

「…それの何が悪いの?」

 

疲れ切っているのだろう、気だるそうな声だった。

その声に

 

(やっぱり聞いた事ある気がするぞ、この声)

 

ツキノワはそう思っていた。

さらに思考に沈んでいると

 

「悪くは無いけど、疲れるだろ?ダンジョンを抜けるだけでも1時間はかかるし、さらに最寄りの街まで30分はかかる」

 

デメリットを説明していると

 

「…なら大丈夫。私、帰らないから」

 

など言い出した。

 

「「はぁ?」」

 

思わず声が被る。無理もない。街に帰らないと言い出したのだから。

 

「いや!?ポーションとか武器のメンテは!?」

 

驚くキリトに対し

 

「当たらなければ回復する必要は無いし、武器も同じものを5本買ってきた。それよりももういかしら?そろそろリポップするだろうし」

 

そう言ってふらつきながらさらに進もうとする。

 

「ちょ、ちょっと待てよあんた!そんな状態で行ったら死ぬぞ!?」

 

慌てて腕を掴んで止めるツキノワ。

ここで初めてあちらはツキノワを認識したのだろう。

驚いてこっちを見ながら黙り込んでいた。

というより唖然としていたと言った方が正解なのだろうか。

ピタリと固まってしまった彼女に対し困惑しながら

 

「あの〜、大丈夫?」

 

顔の前で手を振って確認をとるツキノワ。

すると

 

「…優月君?」

 

掠れた声で本名を呼ばれた。

思わず

 

「は?」

 

とつぶやくツキノワ。

やがてフードの下の顔を覗き込むと今度は彼が固まってしまった。

それは想定外だった。

いるとは思ってなかった人物がそこにはいたからだった。

 

「…明日奈先輩?」

 

今度はツキノワが掠れた声で女性の本名を呼んだ。

そう、この赤ずきんの正体は姉である兔沢深澄の親友である結城明日奈だった。

そしてお互い正体が分かった途端

 

「…っ!優月…君!」

 

と言って泣きじゃくりながら抱き着いてくる明日奈改め【アスナ】。

その事に驚きながらもしっかり抱きとめるツキノワ。

 

「私…私!うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

ダンジョン中に響き渡るのではないかというほど大泣きするアスナ。その背中を

 

「大丈夫。大丈夫ですよ。俺たちがいますから」

 

そう言いながら優しく背中を撫でるツキノワ。

そして

 

「…俺、どうすればいいの?」

 

本気で困惑するキリトというカオスな空間が出来上がっていた。

 

sideアスナ

 

ミトに、親友に見捨てられた。

デスゲームが始まってからずっと一緒にいた親友のミトこと兔沢深澄。

ある時、リトルペネントを狩っていた時、突然

 

「1層じゃ滅多に出ないレアキャラがいた!レアアイテムをドロップするかもしれないからここで倒しておきたい!」

 

そう言い出した。

こっちも順調だったので

 

「分かった!こっちは任せて!気をつけてね!」

 

そう言って送り出した。

少しして戻ってきた時にはほぼ狩り終えていた。

そして目の前の敵を倒そうとした瞬間

 

「待って!ダメ、アスナ!」

 

突然止めようとするミト。

 

「え?」

 

その瞬間ソードスキルが暴発してしまった。

目の前の敵を倒した時見えたのは実付きのリトルペネントだった。

それを認識した時ミトの警告が頭をよぎった。

 

「実付きを攻撃したらダメよ。煙が吹き出して大量のリトルペネントを呼び寄せてしまうの」

 

そう言われたのを思い出したが、止められずそのまま実を貫いてしまった。

その瞬間、ブシューーー!!!と吹き出す煙。

そのまま大量のリトルペネントに襲われた。

 

「アスナ!!」

 

ミトも最初はアスナを助けようと懸命に鎌を振るっていたが突然

 

「あ!?」

 

崖から落ちてしまったのだ。

 

「ミト!?」

 

その事に驚きながらも目の前の大群に対応せざるを得なくされた。自分のHPが赤になった時、突然ミトがパーティを解散した。

 

「…え?ミト?」

 

何で?どうして?

そんな疑問を浮かべながらも分かったのは1つ。

1人でどうにかしないと死ぬ、という現実だけだった。

 

「…あぁァァァァァァ!!!」

 

そこからはがむしゃらだった。

ただひたすら目の前の敵を貫いた。貫いて、貫いて、貫いて、貫いて、貫いた結果、残り数ドットって所で何とか全滅させた。

そのまま命からがら村にたどり着き、気づいたら宿に転がり込んだ。

そのままベッドに倒れ込み考える。

何でパーティを解散したのか、何で助けに来てくれなかったのか。

 

「…ねぇ、何でなの、ミト…?」

 

そして見捨てられたという事実に泣きじゃくりながら気づいたら寝落ちしていた。

次の日、装備やアイテムを整えて外に出た時、2000人くらい死んだという話を聞いた。

その事がショックでしゃがみ込んでしまう。

そんな私に冷たい雨が降り注ぐ。

 

「…もう、生き方なんて選べない」

 

だってここから出られる訳ないんだから。

でも

 

「…でも死に方くらいなら選べる」

 

この世界には負けたくない。

最後まで私が私らしくいるために。

たとえその結果モンスターに殺されるかもしれないとしても、ここで腐っていくのはごめんだ。

そう思い装備を整えた。

そしてそのまま迷宮区に潜り込み狩りを始めた。

 

3日目か4日目がたった頃突然1人のプレイヤーに話しかけられた。

何でもオーバーキルだとか何とか。

 

「…それの何が悪いの?」

 

流石に疲れており気だるそうな声で返した。

そのまま何か理屈を捏ねていたがほとんど聞き流し、先に進もうとした。

その時だった

 

「ちょ、ちょっと待てよあんた!そんな状態で行ったら死ぬぞ!?」

 

誰かが私の腕を掴んで止めた。

どうやらもう1人いたようだ。

気づかなかったが今はそれよりその腕を掴んだ男から目を離せなかった。

何故ならその男の事を知っていたからだ。

ミトと同じ紫色の髪に赤い目。

この子はこの目を密かに気に入っていると言っていた。同年代に比べてかなり身長があり体格も見た目よりしっかりしている。

そう、この子はの名前は

 

「…優月君?」

 

そう、ミトの、深澄の弟の兔沢優月だ。

彼も本名を言われ驚いたのか、固まっていると突然こちらを覗き込んできた。

 

(あ、目が合った)

 

等と考えると恐る恐ると言った感じで

 

「…明日奈先輩?」

 

と言ってきた。

あぁ、ずっと張っていた気が緩んでしまう。

末っ子である自分にとって、まるで弟の様に可愛がってきた子がここにいる。

もう限界だった。

そのまま彼に泣きついてしまった。

そして恥も外聞もなく泣きじゃくり、穏やかな声と優しく撫でられる背中に導かれるように、そのまま気を失ってしまった。




という訳でヒロインアスナの登場です。
このままオリ主に向けていくのはかなり難しい予感がします。
そしてミトは中々出てきません。
中々出せなくてすみません。
次回あたりから出します。
次回あたりで1回オリジナル話を入れます。
そして戦闘描写難しいですね!


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6話

そろそろミトも出しますよ〜!
以外にモチベーション保つの大変ですね…
仕事が忙しくて…それでは6話、どうぞ。


sideキリト

 

「どういう関係なんだ?」

 

凄腕のフェンサーさんと出会って数分後、張り詰めていたものが切れたのだろう、気を失ってしまった彼女を背負うパートナーであるツキノワにそう尋ねる。

 

「どうと言われても、姉の親友。知り合って1年弱かな」

 

あっさりと答えるツキノワ。

そう話しながらも索敵スキルでモンスターを探りながら、時には迂回しつつ出口を目指していた。

 

「さっきその人が言ってた優月ってのがお前の本名なのか?」

 

「…そうだよ。兔沢優月、14歳だ。俺だけってのはフェアじゃないしそっちも教えろよ」

 

「…桐々谷和人。同じく14だ」

 

「なんだ、やっぱりタメか。そんな気がしてた」

 

「むしろ名前より同い年の事に驚いたよ俺は」

 

サラッと年齢を言われたが同い年とは思ってなかった。

俺より見た目がずっと大人っぽいし雰囲気を大人って感じである。

そう思ってると

 

「やっぱり老けて見えるのか?良く高校生とか大学生に間違われる」

 

少し悲しそうな顔をしながら聞いてくる。

 

「さ、さあ…?大人っぽいとは思うけど…」

 

思わず曖昧に答えてしまう。

そんな雑談をしていると、索敵スキルにモンスターの反応が引っかかった。

 

「待て、モンスターだ。…ダメだな避けられそうにない」

 

「なら戦うしかないな」

 

そう言ってそっとフェンサーさんを降ろすツキノワ。

 

「「行くぞ!」」

 

一気に飛び出し先手を取る。

何やらさっきより気合いが入ってる気がした俺は冗談半分で

 

「もしかして、好きなのか?」

 

そう聞いた。その瞬間

 

「!?!?」

ビックリして動きを停めてしまうツキノワ。

 

戦闘中に隙だらけの姿で固まってしまうと、当然モンスターが狙ってくる。

 

「うぉ!?」

 

反射的に躱して蹴りを入れて距離をとるツキノワ。

その目はこっちを睨み殺さんと言わんばかりに睨み付け

 

「お前、後で覚悟しとけよ」

 

怒っていた。

とても怒っていた。

 

「…はい…すみません…」

 

あまりの怖さに縮みこむ俺。

そんなトラブルを起こしつつも、何とか迷宮区を脱出した俺たちだったのだ。

 

 

sideアスナ

 

草木の匂いがする。

おかしい、あそこは少しカビ臭かった気がする。

それに妙に眩しい。

そう思い目を開けると

 

「おはよう、先輩。体調は大丈夫?」

 

心配そうに優月君が見下ろしていた。

でも何だろう、妙に近いような、何時もとは少し見え方が違うような気がする。

そしてアタマの柔らかいような硬いような感触はなんだろう。

人肌ぐらいに温かい。

そう思いまさぐると

 

「ちょ!?先輩!?くすぐったい!?」

 

身をよじる優月君。

少しずつ整理出来てきた。

人肌ぐらいの温かさにこの感触。

くすぐったる姿にこの距離感、まさか私…

 

「膝枕されてる?」

 

そう、噂に聞く男の子憧れのシチュエーション、膝枕されているのだ。

恐る恐る尋ねると

 

「ええ、してますよ?だって代わりになりそうなもの無いんですもん」

 

あっさりと言う優月君。

その事を理解すると一気に羞恥心が込み上げてくる。

 

「ごごご、ごめんね!?すぐにどくね!」

 

慌ててどくと

 

「べつに気にしなくていいのに」

 

そう笑われる。

その姿に少しムッとすると、突然の切り出される。

 

「先輩。どうしてここにいるんですか?あんな事して何がしたいんですか?」

 

すごく真剣に聞いてくる。

こっちも真顔にして聞き返す。

 

「お兄ちゃんのやつを興味本位で借りたの。そうしたらこうなった。優月君こそどうしてここに?」

 

「俺は近所の電気屋でやってた抽選会で当たったのでやってみただけです。あとこっちではツキノワですのでそうやって呼んでください。」

 

あ、そうなんだ。

 

「じゃあ、そうやって呼ばせてもらうね。私は本名のままだからそのままでいいよ。…2つ目の質問の答えだけど」

 

私はここで1度区切った。

改めて覚悟を決める為に

 

「…私は負けたくないの、この世界に。たとえモンスターに殺されたとしても私が私らしくいる為に」

 

そう言い切った。

その言葉に酷く驚いた後、泣きそうな顔をする優月君改めツキノワ君。

 

「…それじゃあ、ダメだよアスナ先輩。死ぬ為に戦うなんて間違ってる」

 

ハッキリと言いきられた。

 

「じゃあ、あなたはどうして戦うの!?どう頑張ったって死ぬのは決まってるの!?1ヶ月で2000人も死んだのよ!?こんなゲームクリア出来るわけないじゃない!?」

 

つい感情的になって言い返す。

 

「だからですよ」

 

その表情はとても穏やかで、その目はとても強い光を宿していた。

 

「人間遅かれ早かれいつか死ぬ、それは変わりません。でもどうやって死ぬかは誰にも分からないんです。だって未来は決まってないんだから。だから死に方なんて選べないんですよ!俺たちに選べるのは生き方だけです!どうやって生きるのか、それしか選べないんです!アスナ先輩だってそうでしょ!?戦い抜いて死ぬっていう生き方を選んだんです!だったら自分から死にに行く戦い方なんてしないでください!」

 

何も言い返せなかった。

彼の言葉がとても刺さったからだ。

そうだ、私は戦うという生き方を選んでいたんだ。

その事に全く気づいてなかった。

安全圏内で少しでも休んでる時はある。

本当に死にたいのなら休まないはずだ。

無意識に私は、生きる術を探して行っていたのだった。

 

「…先輩、何があったんですか?俺じゃ頼りないかもですけど話したら聞けます。どうしてそういう選択を取ってしまったんですか?」

 

優しく聞いてくるツキノワ君。

 

「あのね…」

気づいたら彼にこれまでの事を話していた。

少しでも溜め込んでいたのを吐き出したかったのだ。

そんな言葉の濁流を、彼は何も言わずただ静かに受け止めてくれていた。

 

sideツキノワ

 

「あのクソ姉貴!!」

 

思わず怒鳴った。

アスナ先輩がビックリしていたのでとりあえず謝っておいた。

話を纏めるとこうだ。

ログイン直後姉と奇跡的に合流できた先輩はそれ以降ずっと一緒だったらしい。

そんな中ペネントを狩っている最中に、レアキャラが出たらしく姉はそっちを追いかけた。

無事倒したのか戻ってきた時、ちょうどリニアーを放とうとしていた先輩を止めようと大声を出したらしい。

でも間に合わず暴発したリニアー。

その先には実付きのペネントがいて割ってしまった。

どうなるかは知っての通りペネントの大群が群がってきたのだ。

最初は姉も助けようと必死だったが、トラップに引っかかりバラバラになってしまった。

それから少ししてパーティを解散させて、行方をくらませたんだそうだ。

恐らくだが何となく姉貴の考えが分かる。

だが

 

「あのクソ姉貴め。絶対シバく」

 

理由が分かるのと理解出来るのは別問題である。

親友を見捨てるとか言語道断だ。

そんな事を考えてるとメッセが届く。

相手は意外な人物だった。

 

「クライン?」

 

疑問に思いながら開くと

 

『よう、元気してるか?こっちは何とか形にはなってきたぜ。突然連絡よこしたことに驚いてるだろうが知っておいて欲しい事があってな。お前の姉貴の件だ。恐らくお前の姉と思しきプレイヤーと会った。今日のボス攻略会議に出るそうだ。俺たちはレベルが足りねぇから無理だがお前達ならきっと大丈夫だろ。もし出るなら探してみろ。会えるといいな! クライン』

 

ちょうどいい、まさに渡りに船ってやつだなこれは。

クラインにお礼のメールを送ると先輩に聞いた。

 

「アスナ先輩、その命を戦いに使うなら強敵に挑みませんか?今日の午後4時、トールバーナの噴水広場で第1層ボス攻略会議があります。一緒に行きませんか?」

 

「…わかった。私も行く。」

 

そう強く返事が返ってきた。

そのまま俺たちは街まで色んな話をしながら歩いて帰った。

 

outside

 

「はーい!注目!少し遅れたけど会議を始めます!俺の名は【ディアベル】!職業は気分的にナイトやってます!」

 

街に帰ったあと先に帰って物資の補給をしていたキリトとツキノワ達は合流し、お互いの自己紹介をした後この会議に参加していた。

その主催であるディアベルは掴みはバッチリといったところだろうか。

茶化すような野次をやんわりたしなめつつ、話を進める。

 

「今日俺たちのパーティがボス部屋を見つけた!ここまで1ヶ月かかった…!だが!はじまりの街にいる人達に希望を届けなくちゃいけない!このゲームは攻略できるんだ!その事を伝えなくちゃいけない!それが俺たちの役目だ!そう思うだろみんな!?」

 

賛同する声がたくさん上がる。

ツキノワはそこまで考えてなかったが、だからこそすごい人だと尊敬していた。

そんな彼の気持ちを

 

「ちょお、待たんかい!!」

ダミ声の関西弁が冷めさせた。

 

「わいはキバオウってもんや。こんなかに詫びいれんとあかん連中がおるやろ!」

 

「詫びを入れないといけない連中というのは?」

 

ディアベルが静かに尋ねると鼻息荒く

 

「ベータテスターどもに決まっとるやろ!」

 

それまで乱入者にざわついていた広場の中にいた全員が黙り込んだ。

そんな中ふてぶてしく

 

「こん中にもおるはずや!こんクソゲーが始まった日、ビギナー見捨ててウマい狩場やらボロいクエストを独占したクズどもが!そいつらの貯め込んだ金とアイテムだして土下座せえ!そうしてもらわな背中を預けれんし預かれへん!」

 

いや、ほんと何言ってんだあいつ?

何様なのあいつ?

ツキノワは心底呆れながらそう思っていたが、キリトの方はそうは言ってられなかったらしい。

顔色は青く少し震えていた。

それを見たツキノワは

 

「異議あり!」

 

堂々と宣言した。

 

side???

 

キバオウの声が頭の中で木霊する。

違うと言いたかった。

でも言い返せなかった。

吊るし上げられるが怖かった。

自分の罪を言及させるのが怖かった。

結局私はただの臆病者だ。

そう思って俯いたその時

 

「異議あり!」

凛とした声が聞こえた。

その声が聞こえた時さっきまでの恐怖は消えていた。

正確には驚愕に塗り替えられた、という方が正解だろう。

だってその声を聞いたのは1ヶ月ぶりだった。

その声は聞く事が出来ないかもしれないと思っていた声だった。

だから顔を上げて声の主を確認した時、私は震える声で呟いていた。

 

「優月…?」

 

その声は本人には届いていなかった。

 

sideツキノワ

「異議あり!」

 

思ったより響いたからか、すごい注目を浴びた。

まあ、いいか。

 

「「ツキノワ(君)!?」」

 

キリトとアスナ先輩が小声で驚くという器用な事していたが無視して階段を降りてキバオウに向き合う。

 

「何が異議ありなんや!言うてみい!」

 

食ってかかるキバオウを鼻で笑い飛ばす。

 

「俺はツキノワだ。聞くがキバオウ、お前の言い分だとベータテスターを弱体化させると言っているがもし、そのせいでそのベータテスターが死んだ時、お前はそいつの命に対してその責任を取れるのか?」

 

「そ、それは…」

 

たじろぐキバオウ。

呆れた。

 

「人には責任を取れと言いながら自分は取れない。随分と都合がいいんだな」

 

黙り込むキバオウに対し、さらに畳み掛ける。

 

「大体、ベータテスターが自分の命を優先して何が悪い?彼らだって人間だ。お前だって自分の命は大事だろ。それと一緒だ。ただ1ヶ月テスターとしてプレイしただけでわざわざ10000人を導かないといけない義務はない」

 

そうだ、こいつは勘違いしてる。

彼らはただの人間だ。

神様じゃないんだ。

出来ることに限界はある。

それを無視して自分の都合だけを押し付けるなんて無茶苦茶にも程がある。

そう言い切ると

 

「俺からも発言いいか」

 

バリトンボイスが響いた。

正体は190ぐらい黒人だ。

彼は小さい本を出した。

あれは確か

 

「俺はエギルだ。キバオウさん、ツキノワ。この本を知ってるな。これは各町や村の道具屋で無料配布されていた。疑問に思わないか。情報が早すぎる」

 

そう、情報屋がまとめた攻略本だ。

キリトの情報との擦り合わせに使っていた。

 

「もろたで。それがなんや!?」

 

少しビビりながら返すキバオウ。

 

「これを作っているのはベータテスター以外にありえない。いいか情報はあったんだ!多くのプレイヤーが死んだのは、このゲームを他のゲームと同じように扱ってしまったからだと俺は思う。俺はそれを踏まえてどうやっていくのか、それを会議される場と思ってたんだが」

 

「キバオウさん、確かに俺もテスターに思うところはある。だが今は全員一致して戦う時だと俺は思う。もしそれが出来ないならすまないが帰ってくれ。」

 

そうディアベルが言うと荒く鼻息をするとそのまま席に戻った。

俺達も席に戻ると

 

「「ツキノワ(君)?」」

般若が2人いた。

みっちり説教されました。

そのまま会議が進み俺たちは取り巻き部隊のサポート役を仰せつかった。

そして会議終了後、俺はある人を呼び出した。

 

side???

 

ピコン!メールが来た。

誰からだろう。

そう開きメールを開くと

 

「!?優月!?」

慌てて中身を確認する。

そこには

 

『今夜9時、場所はここ』

 

だけ書かれていた。

恐らくアスナの事だろう。

何となくだけどそんな気がする。

そうして午後9時、私は舞台の上に座り込んでいた。

月も隠れ真っ暗の中突然声が響いた。

 

「ちゃんと来たんだ、チキンのくせに」

 

侮蔑に満ちた声。

声のした方を向くと誰がが降りていていた。

 

「…久しぶりね。優月」

 

そうして雲が切れ月明かりが優月の顔を照らす。

その顔は怒っているような泣きそうな顔していた。

 

「…久しぶり、深澄。随分探した。で?なんでアスナ先輩を見捨てたの?」

 

やっぱりか。

でも2つほど確認したい。

 

「何故アスナの事を知ってるの?後どうしてここにいるの?」

 

「近所の電気屋でやってた抽選で当てた。アスナ先輩の事は本人から聞いた」

 

いる経緯はわかった。

でも待って。

今なんて言った?本人から聞いた?

 

「アスナは…明日奈は生きてるの!?」

 

「そんなの後で直接確認しなよ」

 

切り捨てる優月。

いやツキノワ。

 

「それより俺はこっちが用事」

 

そうして何かを弄る。

そうした時自分のシステム画面にこう映し出された。

 

『決闘が申請されました』

 

「…本気?」

 

「どうせ口で言ってもやらないじゃん。だから決闘で決めよう。俺が勝ったら俺の言う事を聞いてもらう。ミトが勝ったら好きにしていいよ」

 

あの目は本気だ。

何を言っても止まらない。

昔からそうだ、あの子はあまりの自分の意見は言わない。

その代わりに1度言い出したら止まらない。

だから私に出来るのは

 

「…分かった」

 

決闘スタイルを初撃決着モードにする。

そうするとカウントが始まる。

お互い武器をかまえ静かに睨み合う。

ツキノワの武器は曲刀だ。

使い込んだしっかり強化された武器だ。

そしてブザーがなった瞬間、お互い飛び出した。

後に出版される【SAO記録全集】にはこう書かれる。

 

---SAO史上1番初めの決闘は何の変哲もない、ただの姉弟喧嘩だった。




という訳でなんかかなり難産でした6話。
文字数も1番です。
次回は姉弟喧嘩からボス戦直前まで行く予定です。(あくまで予定)
それではありがとうございました。


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7話

戦闘シーン、難しいですね…
それではよろしくお願いします。


outside

キン、キン、キン、ガキン!

夜のトールバーナの噴水広場、そこから剣戟の音が聞こえていた。

対峙するのは1組の男女。

お互い紫色の髪と赤い目をしていた。

顔立ちも似ており兄妹もしくは姉弟だと想像がつく。

そんな2人が何をやっているかと言うと

 

「この!バカ姉貴!」

 

「うっさい!アホ弟!」

 

姉弟喧嘩である。

姉のミトは鎌で力強く薙ぎ払い、弟のツキノワは曲刀を軽やかに切りつけていた。

姉の鎌を刃で滑らせて、いなしながらカウンターを入れるツキノワに対し、弟の連撃を全て防ぎ切り体勢を崩させた後、強力な一撃を叩き込む。

そんな攻防を繰り返す事10分、2人は仕切り直しを図るため、同時に距離をとった。

 

「ねぇ、なんでデュエルなんてやろうとしたの?」

 

正直な話、ミトとしては1ヶ月ぶりの再会なのだ。

もっと感動的になると思っていた。

そんな事言える立場ではないがそう考えていたのだが、現実にはこうだった。

そんなツキノワの答えは

 

「今のミトが1番嫌だろうやり方を選んだ」

 

ツキノワが嫌がらせをやる時は徹底的にやる性格だ。

確かにこんな事、実の姉弟でやるべきことでは無い。

そう思うが

 

「やりたくないのはあなたもでしょ?」

 

それはツキノワだって一緒だ。

そう見透かすと歯ぎしりしながら斬りかかってくる。

 

「…!うるさい!だいたい何でアスナ先輩を見捨てたんだ!?1番の親友だったろうが!!」

 

その速さはミトには辛うじて見える程度でしかなく、ガードが間に合わずクリーンヒットこそしなかったがまともに受けてしまう。

 

「それはっ!?」

 

そのまま連撃に持ち込まれ防戦一方になるミト。

必死に鎌で応戦するも先程の動きは無くなっており、少しずつツキノワの攻撃が通るようになる。

 

「どうせ!私が守るだとか何とか言ったんだろ!?自分がベータテスターだから先輩1人なら守れるって思ったんだろ!?」

 

そう言いながらさらに切り込む。

 

「ええ、そうよ!その通りよ!現に私は、私たちはあの時まで上手くやってた!でも出来なかった!出来なかったのよ!」

 

そんな叫びを上げながら強引に振り払ってツキノワを吹き飛ばす。

そしてそのまま切り込む。

 

「深澄がレアアイテムなんて欲をかいたからだろ!?何であんな状況でそんなの狙った!?どうして先輩の傍から離れた!?」

 

咄嗟に躱しながらミトを蹴り飛ばす。

その隙をついて正面からソードスキル【リーパー】を放つ。

 

「あのレアキャラは【ウインドフルーレ】っていう細剣のレアアイテムをドロップするのよ!それで喜んで欲しかった!もっと力をつけて欲しかったのよ!」

 

負けじとソードスキルで対抗しお互い鍔迫り合う。

STRではミトの方が上なため自然とミトが優勢になっていった。

 

「ばっかやろう!!それで目を離して危険な目に合わせてたら意味ねぇだろ!?じゃあ、何でパーティを解散したんだよ!?」

 

ツキノワは不利になってきた鍔迫り合いを止めるため、鎌を滑らせそのまま全力で剣を振り下ろした。

ガードは間に合ったものの体勢が不十分で倒れ込んでしまう。

そんなミトの喉元に、ツキノワは切っ先を突きつけ上から睨みつける。

 

「俺が1番聞きたかったのはその理由だよ。何でパーティを解散したの?」

 

さっきまでの激しさはなく、今はただ静かに聞いてくる。

そんな弟の反応にミトも静かに答える。

 

「…私は約束したの、アスナを守るって。でも出来なかった。アスナのHPがゼロになるのを見るのが怖かったの。だから逃げた。逃げて逃げて、今でもずっと逃げ続けてるの」

 

その声は震えており、ポタポタと涙がこぼれていた。

 

「…だと思ったよ。何やかんやで深澄は臆病だから。誰かに突き放されるのが怖い。でも自分のせいで傷つけるのも怖い。だから友達は作らない。だから明日奈先輩っていう友達ができた時は驚いたよ」

 

その時の事を懐かしむように話すツキノワ。本当に驚いた。家に姉の友達が来るなんて何年ぶりかと思い、思わず脅迫されてないか聞いたほどだ。もちろん折檻された。

 

「【行動には責任が伴う。その事を忘れるないで】…母さんがよく言ってたよね。ねぇ深澄、もう逃げないで。先輩にあって謝ろう?俺も一緒に謝るから」

 

「無理…無理だよ!今さらどんな顔して会えばいいの!?明日菜に突き放されたら私どうすればいいの!?」

 

泣きじゃくりながらそう言うミトに対し

 

「…だって明日奈先輩。あとは頼みます」

 

「…え?」

 

ミトが顔をあげた瞬間何かが駆け寄り強く抱きしめていた。

 

「ミト…ミト!」

 

sideアスナ

 

2人の喧嘩をずっと見てたし、聞いていた。

そしてミトの本心を聞いた時、我慢できず抱きしめていた。

 

「どうして…アスナが…生きて…?」

 

「うん、何とか生きてたんだよ。…ごめんねミト」

 

「何で…何でアスナが…謝るの?謝るのは「だって1人にしたもの」!?」

 

ミトの言葉を遮った。分かってたの。

本当はミトが臆病なんだって。

そしてとても優しい人だって。

 

「ミトが苦しんでるのに連絡できなかった。私もミトに突き放されるのが怖くて…」

 

「アスナ…アスナ!」

 

ミトからも強く抱きしめ返される。

 

「ごめんね!私こそ本当にごめん!あの時レアキャラを優先してごめん!明日奈を見捨てて逃げて本当にごめん!何も連絡をよこさなくてごめん!…本当にごめんね!」

 

「深澄…みすみぃ!」

 

「明日奈…あすなぁ!」

 

お互い強く抱きしめ合うと

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁん!!!」」

 

もうひたすら泣いた。

周りなんて気にせずに大泣きした。お互いのごめんねが聞こえなくなった時、私たちは仲直りできた、そんな気がした。

 

「もう大丈夫?2人とも」

 

泣き終わった頃、ツキノワ君が近づいてきた。

 

「うん、ありがとうツキノワ君」

 

「いえ、こっちこそ深澄を許してくれてありがとうございます」

 

そう言って頭を下げるツキノワ君。

そんな彼に

 

「優月」

 

優しくミトが声をかける。

そして優しく抱きしめた。

 

「ありがとう。私達のために。そしてごめんね、こんな不甲斐ない姉で」

 

そんな優しさに当てられたからかポロポロと泣き出し、そのままミトに抱きつく。

 

「俺…2人が仲良しなの…大好きだから…」

 

「うん」

 

「もう…こんな事しないで…」

 

「うん、約束する」

 

「バカ姉貴…」

 

その光景を見ていつと突然妙なモヤモヤと胸が少し痛んだ。

 

(あれ?何だろうこの気持ち)

 

その事の不思議に思ってると

 

「「アスナ(先輩)どうしたの(んですか)?」」

同時に聞かれる。

 

「何でもない、大丈夫だよ」

 

そう返すと

 

「そう、明日も早いしそれぞれ速く帰りましょ?」

 

そうミトが言う。

 

「そうだね、速く風呂はいって寝よ」

 

そうそうお風呂入って寝ないと…ちょっと待って?

 

「「今なんて言った?」」

 

今度は私とミトが被る。

 

「え?風呂はいって寝よだけど」

 

聞き間違えではないらしく

 

「風呂ってどういう事!?」

 

思わず聞き返す。

 

「俺とキリトの拠点は農家の2階なんだけどそこに風呂着いてんの」

 

「「…お風呂かして!!」」

 

「お、おう了解」

 

そして私たちは彼の拠点に向かいお風呂を入ることにした。

 

outside

 

初の姉弟喧嘩からの仲直りをした次の日、ツキノワ達はボス部屋への道のりを歩いていた。

 

「確認するぞ取り巻きの【ルイン・コボルト・センチネル】はフルプレートでポールアックスを持ってる」

 

「ああ、だから俺かキリトがパリィして」

 

「私が喉元を貫くのよね」

 

3人で確認をしていると

 

「おい、お前らはわいらの取りこぼしを相手するんやで。そこを忘れんなや」

 

キバオウが吐き捨ててくる。

それに対し

 

「だったらしっかり働いてくれ。その方が楽できる」

 

ツキノワは嫌味たっぷり返す。

キバオウは睨んでくるが、何も言わず仲間の方へ帰っていく。

 

「…何あれ」

 

昨日ミトから貰ったウインドフルーレの柄を撫でながら、不機嫌さMAXで呟くアスナ。

 

「調子乗るなってことじゃないかな」

 

苦笑いしながら返すキリト。

 

「気にするだけ無駄。俺たちのペースでやりましょう」

 

全く気にしないツキノワ。

それぞれバラバラの反応をしながらそのまま進んでいく。

 

「みんな、俺から言う事は1つだけだ…勝とうぜ!!」

 

「「「「「おう!」」」」」

 

全員の心が1つになっている。

ディアベルが扉を開ける。

そして全員がボス部屋に流れ込んだ瞬間、突然の部屋が明るくなりボスの全容が見える。

鍛えられた体、凶悪な牙、圧倒的な存在感。

手には斧と盾。

迷宮区にいるモンスター達の王、その名は

【イルファング・ザ・コボルトロード】

そいつの雄叫びに恐れるプレイヤー達に対しディアベルが

 

「戦闘用意!」

 

つよく呼びかけ全員が気を引き締め直す。

 

「全員!突撃!」

 

第1層ボス攻略作戦、運命の初戦が始まった。




何とか宣言通りに進めれました。


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8話

最近口調が迷子です。
それではよろしくお願いします


sideミト

 

「スイッチ!」

 

そう叫びながら前衛と入れ替わり鎌で一撃叩き込む。

仰け反った隙に仲間と入れ替わる。

下がりながら後衛の方をチラりと見る。

そこには可愛い弟である優月改めツキノワと、親友であるアスナがいる。

ボスに集中すべきだと分かってはいるがやはり気になっていると

 

「後衛が気になるのか?」

 

バリトンボイスが近くから聞こえる。

振り返るとB隊リーダーのエギルがいた。

 

「ええ、弟と親友がいるから」

 

そう答えながらもやっぱりチラりと見てしまう。

 

「ああ、あの時の少年か。確かによく似てるな」

 

顎を撫でながらそっちを見るエギル。

戦いぶりを見ている限り問題は無さそうだ。

 

「あの感じだと問題は無さそうだが、やっぱり気になるものか」

 

「ええ、どうしてもね」

 

そう、心配でならない。

ただそれだけだ。

 

「なら、さっさと終わらせて安心させないとな!」

 

「ええ!そうね!」

 

気合いを入れ直す。

そうしていると

 

「攻撃来るぞ!B隊!援護を!C隊!攻撃後A隊とスイッチ!D.E.F隊!センチネルを近づけさせるな!」

 

ディアベルから鋭い指示が飛ぶ。

 

「分かっとるで!」

 

「「了解!」」

 

それぞれから返事が返ってくるのを聞き流しながら鎌を強く握り直す。

そしてB隊がしっかり防ぎきった後

 

「スイッチ!」

 

その声に踏み込み

 

「はぁぁ!!」

 

気合いを込めて振りかぶる。

少しでも速く終わらせるために。

2人を守るために私は鎌を振るう。

 

sideキリト

 

「攻撃来るぞ!B隊!援護を!C隊!攻撃後A隊とスイッチ!D.E.F隊!センチネルを近づけさせるな!」

 

ディアベルから鋭い指示が飛ぶ。その声に俺は

 

「了解!」

 

返事をしてから

 

「ツキノワ!アスナ!行くぞ!」

 

パーティメンバーに声をかける。

 

「「了解!」」

 

力強い返事が来てそのまま【ルイン・コボルト・センチネル】に挑む。

最初に挑みかかったのはツキノワだ。

ツキノワは一気に加速するとそのまま間合いに踏み込む。

センチネルがポールアックスを構えたが、構えきるより早速く間合いに入り込まれ一瞬動きが固まる。

すかさずその隙を突きポールアックスをすくい上げるようにパリィする。

そして

 

「スイッチ!」

 

その掛け声とともに下がるとそこに今度はアスナが踏み込む。

その速度を一切落とさずそのまま

 

「ハァァ!」

 

気合いとともに【リニアー】を打ち込む。

正確無比ないその一撃はセンチネルの弱点を正確に貫き1発で体力の7割程削る。

そして

 

「スイッチ!」

 

その掛け声とともに下がるとまたツキノワが前に出て

 

「シッ!」

 

縦にセンチネルを両断した。

その様子を見届けると

 

「ナイスです。アスナ先輩」

 

「そっちこそナイスキル!ツキノワ君」

 

お互いの剣を軽くぶつけて健闘を称えあっていた。

その様子を見ていたキリトは

 

(アスナも凄いが、やはりツキノワも凄い!)

 

純粋に2人の実力に驚いていた。

まだデスゲーム宣言の前から一緒にいてキリトが思っていたのは、彼は決して才能溢れる人物ではないという事だ。

最初初めてでソードスキルを成功させた時は素質があるかと思ったがあの時は偶然だったらしく、これまで一緒にやってきて、最初の方はソードスキルが発動しない時もたまにあった。

そんなある日夜な夜な出ていくツキノワを尾行してみたのだが、そこで彼はひたすら剣を振るっていた。

ソードスキルの構えから通常攻撃の精度までひたすら反復練習していたのだ。

ひたすら振るいまた同じ動作を繰り返す。

それを続けていると突然動きが変わる。

防御したり躱したり、フェイントを入れたり追撃したり、色んな動きを加えだし、いわゆるシャドーを始めだした。

俺はそんな彼の努力を知っている。

だから強い。

圧倒的努力に裏付けされた叩き上げの剣士、それがツキノワだ。

一方のアスナは恐らく対極なタイプだろう。

彼女もかなりの手練だ。

既に先程のリニアーの剣先が見えない程の速さ。

流石に1ヶ月であそこまで努力だけでというのは無理があるだろう。

だからこその才能、つまり彼女は天才肌なのだろう。

才能に驕らず鍛えてきた剣士、それがアスナだ。

そんな事を考えてると次のセンチネルが出てくる。

 

「ツキノワ!行くぞ!」

 

俺はツキノワを呼ぶ。

 

「ああ!行くぜ!」

 

威勢のいい返事を聴きながら俺はポールアックスを弾き飛ばし

 

「スイッチ!」

 

兄弟分のツキノワを呼ぶ。

 

「フッ!」

 

ツキノワが連撃で畳み掛けHPを削りきる。

そんな様子を見届けてから

 

「GJツキノワ!」

 

拳を突き出す。

 

「ナイスアシスト!キリト」

 

俺達は拳をぶつけあった。

 

「2人とも!次来たわよ!」

 

「ツキノワは休んでろ!俺が出る!」

 

そう言ってアスナの元へ駆けつける。

そこでアスナがレイピアで弱点を突き態勢崩させた。

 

「スイッチ!」

 

アスナは1歩下がり道を譲ると

 

「おお!」

 

俺は全力のソードスキルで鎧ごと切り裂いた。

 

outside

 

ボス戦は順調に進んでいた。

的確なディアベルの指示と全体の士気。

センチネルの対応の速さも良かった。

ほとんどツキノワ達3人でやっていたのだが、それはともかく順調だったのだ。

あの時までは。それはコボルトロードのHPバーをラスト1本まで削った時に起きた。

 

「武器が変わるぞ!パターンの変更に気をつけろ!C隊援護を!タゲは俺がとる!」

 

ディアベルの指示に思わず全員がボスを見る。

その様子を見ていたアスナはあることに気づいた。

 

「ねぇ、タルワールってイスラム圏の曲がった剣よね?」

 

突然そんなことを聞いてくるアスナに

 

「そうだけど?」

 

不思議そうに聞くキリト。

そんな話を聞いていたツキノワが突然叫んだ。

 

「待て、ディアベル!武器が違う!」

 

その言葉に全員が武器を見る。

そしてその正体に気づいたのはキリトだった。

 

「ダメだ!全員後ろに飛べー!!」

 

その声はボスのソードスキルの音にかき消されてしまい、前衛の半分近くがスタンになってしまった。

 

「キリト!あれはなんだ!?」

 

「刀スキルだ!10層のモンスターが使ってたんだ!」

 

その事実に驚愕するツキノワとアスナ。

 

「10層ですって!?」

 

「どんな初見殺しだよ!?」

 

まずボスが目をつけたのは、リーダーのディアベルだった。

当然ディアベルもスタンが入っており動けない。

 

「クソ!」

 

助けようと動き出すツキノワ達だか、センチネルが邪魔をする。

 

「「「邪魔だ(よ)!!」」」

 

3人は一気に瞬殺するもその一瞬がディアベルの明暗を分けてしまった。

打ち上げられた後、さらに3連撃を受けてしまい吹き飛ばされる。

 

「ディアベル!」

 

慌てて駆けつけるキリトだが間に合わなかった。

そんなキリトの手を握りながらディアベルは

 

「頼む…ボスを…倒して…く…れ…」

 

最後の言葉を残し死んだ。

 

sideツキノワ

 

「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

ディアベルが死んだという事実がレイドを恐慌状態にさせてしまう。

更に畳み掛けるように6体沸くセンチネル。

 

「何で!?3体までじゃないのかよ!?」

 

誰もが不測の事態に混乱する中キリトは静かに立ち上がると強く剣を握りボスを睨んでいた。

そんなキリトの隣に立つと

 

「俺も行くぞ。キリト」

 

強く宣言した。

そして反対側には

 

「私たちはパーティメンバーでしょ。勝手はさせないわよ」

 

アスナ先輩がたった。

そんな俺たちを見るとキリトは

 

「よし!行くぞ!」

 

と気合を入れて飛び出した。

俺たちも並走しているとミトがセンチネルに囲まれてるのが目に入る。

そちらに行こうとすると

 

「ツキノワ君!私が行くわ!」

 

アスナ先輩がこっちを見ていた。

 

「わかった!ミトを頼みます!」

 

「アスナ!あっちは任せた!」

 

それぞれエールを送る。

 

「ええ!任せて!そっちは頼んだわ!」

 

そのままミトの方へと走っていく先輩を見届けると

 

「手順はセンチネルと同じだ!行くぞ!兄弟!」

 

「ああ、勝つぞ!兄弟!」

 

こうして俺たち2人だけのボス攻略が始まった。

 

sideミト

 

辛うじて躱しスタンを回避した私は突如大量に湧き出したセンチネルの対応に追われていた。

 

「数が多いすぎる!対応しきれない!」

 

そう言いながら目の前のセンチネルを、屠ると次のセンチネルに狙いをつけようとするとこっちを狙う気配がした。

 

(避けきれない!)

 

そう思い目を強く瞑った途端

 

「はぁぁ!」

 

強い声と速いリニアーが私を救った。

 

「アスナ!?」

 

そのままアスナはわたしと背中を合わせると

 

「ミト、背中は任せたわ」

 

そうハッキリと言いながら赤いフード付きのマントを脱ぎ捨てた。

その姿は見慣れている私ですら釘付けにさせるほど美しく、凛々しかった。

アスナからの信頼の言葉に、おもわず泣きそうになるが踏みとどまり

 

「今度こそ守ってみせる!」

 

そして鎌を構え直す。

不思議ともう負けないって気持ちが湧いてきて、戦う勇気をくれた。

 

「「行くよ!」」

 

同時に地面を蹴って動き出した。

私がポールアックスを弾き飛ばし

 

「スイッチ!」

 

入れ替わると

 

「はぁぁ!」

 

アスナが的確に弱点を突き消滅させる。

次にアスナが弱点を突き体勢を崩させる。

 

「スイッチ!」

 

その隙に入れ替わると

 

「やぁぁ!」

 

私が鎌で鎧ごと切り裂く。

その息のあったコンビネーションで次々にセンチネルを殲滅させていく私達。

 

後2体っていうその時

 

「キリト!?」

 

弟の焦りに満ちた声が聞こえてきた。

 

そっちを向くと、切られたのだろうか倒れて動けないキリトと、ボスの猛攻を1人で捌くツキノワの姿があった。

 

「「ツキノワ(君)!キリト(君)!」」

 

私たちは速攻で2体を倒すとすぐに応援に向かった。

 

outside

 

「手順はセンチネルと同じだ!行くぞ!兄弟!」

 

「ああ、勝つぞ!兄弟!」

 

まず切り込んだのはキリトだった。

ボスのソードスキルを同じくソードスキルでパリィする。

 

「スイッチ!」

 

すぐにツキノワに呼びかける。

 

その声に応じ一気に懐に入り込みソードスキルを発動した瞬間、ボスが体勢を立て直し斬りかかった。

 

「!?ツキノワ!!」

 

キリトはその立ち直りの速さに最悪を想像し声を張り上げる。

ツキノワも想定以上に立ち直りが速いことに驚いたものの、ソードスキルのモーションを残したまま腰を落とした。

 

(あ、あんな体勢でソードスキルが保てるのか!?)

 

キリトが驚いたのはその体幹だった。

ソードスキルは規定のモーションをとる事で発動する。正しいモーションをとらないと発動しないのだ。

その判定は意外にシビアで、初日にクラインが苦戦したのはこのシビアさ故である。

だが逆にソードスキルのモーションをちゃんととっていれば、体勢自体はさほど関係ないのだ。

そう例えば、極端に腰を落として姿勢を低くしても、ちゃんとモーションさえ合っていれば発動できるのだ。

 

「オォ!」

 

そのままスキルの動きに合わせながら重心を上に持っていく。

その勢いをブーストし強力な一撃を喰らわせた。

 

「キリト!次行くぞ!」

 

ツキノワの鋭い声にハッとしたキリトは直ぐに

 

「わかった行くぞ!」

 

気合いを入れ直し応戦する。

基本的に交互にパリィと攻撃こなすことでギリギリの均衡を保っていたが、数分ここで均衡が崩れてしまう。

 

「ハァ!」

 

キリトがパリィしようとしたソードスキルが突然軌道を変えた。

その変化にキリトはついていけずモロに受けてしまったのだ。

 

「ガァァ!?」

 

「キリト!?」

 

吹き飛ばさたキリトに駆け寄ろうとするも

今度はこっちに攻撃してくるボスの刀をギリギリ躱す。

 

「クッソ!」

 

悪態付きながら負けじと切り返す。

だが技後硬直のあるソードスキルが使えない今、自分の剣技だけでやるしかない。

だからパリィではなく

 

「…!そこ!」

 

しっかり見切って躱すことにした。

剣の動きだけでなく、踏み込みの位置、踏み込んだ足の向き、相手の体勢、それらなどからどの位置から攻撃が来るかをしっかり見極め、躱し、いなす。

その隙に

 

「ハァ!」

 

通常攻撃でしっかりカウンターを決める。

その無駄のない軽やかでしなやかな動きが、後にプレイヤー達から呼ばれる【舞闘家(ダンサー)】の2つ名の由来となることを彼は知らなかった。

いつまでやったから分からないが、そうは長くなかっただろう。

 

「あっ」

 

何とも間の抜けた声だった。

それは極限の集中状態だったからか気づかない間にスタミナが限界を迎えており、足がもつれたのだ。

そして避けきれなかったソードスキルが迫っていた。

 

(あぁ、ごめん3人とも)

 

ツキノワは死を覚悟し目をつぶる。

その時

ガキィーーーン!!!凄い衝撃音が聞こえた。

思わず目を開けると

 

「「アスナ!スイッチ!」」

 

それぞれの武器を振り切った体勢のキリトとミトそして

 

「ハァァァァ!!」

 

リニアーでボスの腹を貫くアスナの姿があった。

 

「っ!3人とも!」

 

ツキノワはその事に驚くと

 

「1人で任せてすまない!一旦下がれ!」

 

「よく頑張ったわねツキノワ!あとは任せて!」

 

「ツキノワ君!早く回復して!」

 

それぞれがエールを送りボスに斬り掛かる。

そんな3人の後ろから

 

「俺らも続くぞ!これ以上ダメージディーラーにタンクやらせるな!!」

 

回復を終えたB隊がなだれ込む。

 

「よくやったぞツキノワ!ここからは俺達も戦うぜ!」

 

そんな頼もしい声を聞きツキノワは笑う。

 

「3人とも突っ込んでいっちゃうから頼む!」

 

と言うと

 

「「「お前(あんた)(あなた)に言われたくない!!」」」

 

戦ってるはずの3人から怒られた。

 

「ハハ!面白い奴らだ!行くぞ!お前ら!!」

 

「応!!」

 

そうしてB隊が参戦した事でこっちが少しづつ有利になっていく。

 

「囲むと範囲攻撃来るぞ!」

 

キリトが戦いながら声を張る。

 

「ソードスキルはしっかりガードすれば問題ないわ!タイミングは私が教える!」

 

ミトも経験を活かした指示を出す。

 

「皆さん!回復終え次第参戦してください!キバオウさん!センチネルの足止めをお願いします!」

 

アスナが凛とした声で戦場全体に指示を出す。

そんな光景を

 

「早く!早く!」

 

HPバーを睨みながら見てるツキノワ。

そんな時

 

「馬鹿野郎!速くそこから移動しろ!」

 

プレイヤーの1人がもたつきうっかり囲ってしまった。すぐにプレイヤーのほとんどが避けたが一部のプレイヤーが置いていかれてしまい、スタンになった。

そんなプレイヤーに追い討ちをかけようと高く飛び上がるボス。

 

「ミトぉぉぉぉ!!!」

 

突然ツキノワがミトに向かって走り出す。

何がしたいか悟ったミトは

 

「正気なの!?」

 

と叫び返す。

 

「やるしかない!やって!」

 

負けじと叫び返すツキノワ。

 

「…あぁ!もう!やるわよ!」

 

そう言って鎌を低く構える。

そしてボスを睨みつけているミトとツキノワを見てキリトとアスナも悟った。

 

「「正気なの!?」」

 

その声を無視してソードスキルのモーションをとりながら鎌に乗るツキノワ。

 

「行っけぇぇぇぇ!」

 

そんなツキノワを全力で空中に投げ飛ばすミト。

そのまま空中でボスのソードスキルをツキノワはソードスキルで迎え撃った。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

地上でやったらまず押し負けたであろう鍔迫り合いは、ミトのパワーとシステムのモーションアシストの後押しとあり、バリィぃぃぃン!ツキノワの武器が壊れてしまったが、ボスは武器を手放し体勢をを崩したまま地面に落ちてきた。

 

「転倒(ファンブル)だ!今だ!畳み掛けろ!」

 

「このチャンスを逃さないで!全力で叩いて!」

 

「「「ウォォォォォォォ!!!」」」

 

キリトとミトの指示の元、全員が全力のソードスキルを叩き込む。

それでも完全には削りきれず、ボスは起き上がり武器を拾いプレイヤーを蹴散らしていく。

 

「ツキノワ!ミト!アスナ!トドメ一緒に頼む!」

 

「「「了解!」」」

 

4人は一気に加速する。

まずツキノワはナイフを取り出し投擲スキル【シングルシュート】を放つ。

 

「オラァ!」

 

しっかり勢いを乗せたその一撃はボスの片目を潰した。その隙にアスナが懐に入り込み

 

「ハァァァァァ!」

 

全力の【リニアー】を放つ。

吹き飛ばされたボスにさらにミトが鎌で追撃する。

 

「やぁぁぁぁぁ!」

 

4人の中で1番攻撃力に長けたミトの一撃にも耐えたボスにさらにキリトが斬り掛かる。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

その2連撃ソードスキル【バーチカル・アーク】でV字に切るとそのままボスのHPをゼロにし、消滅させた。

誰もが何も言わなかった。

この後は何かあるのか?そういう不安があったが、空中にでるCongratulation!!の文字とリザルト画面を見た瞬間

 

「や……やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

全員が歓喜の雄叫びをあげた。

初のフロアボスとの戦いはプレイヤーたちの勝利に終わった。




今回戦闘シーンが難しく難産でした。
今回は過去一長いです。
それではありがとうございました。


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9話

やっと1層が終わりました。長かった…
それではよろしくお願いします。


outside

 

「はぁ…はぁ…」

 

周りが歓喜する中キリトは肩で息をしながら座り込み、リザルト画面を見ていた。

その画面にはLAST ATTACK BONUSと書かれておりその下には【コート・オブ・ミッドナイト】と書かれていた。それを確認していると

 

「ナイスキル!キリト!お疲れ!」

 

後ろからツキノワが肩を組んで拳を突き出してきた。

 

「…ああ、お疲れツキノワ。ツキノワも凄い戦いぶりだったぞ」

 

お互いの健闘を称え合い拳をぶつける。

 

「ツキノワ君!キリト君!お疲れ様!」

 

「2人ともお疲れ。大丈夫かしら?」

 

「アスナ先輩もミトもお疲れ様です!」

 

「お疲れ2人とも。俺たちは大丈夫だよ。そっちも大丈夫か?」

 

そこへアスナとミトもやってくる。

4人でそれぞれの心配をしつつも話していると

 

「いいもん見せてもらったぜ!Congratulation!この勝利はあんたらのもんだ!」

 

エギルがツキノワとキリトの肩を叩きながら賞賛する。それに礼を言おうとした時

 

「なんでや!!!」

 

そんな悲痛な叫び声が響いた。

 

「何でディアベルはんを見殺しにしたんや!?」

 

「…見殺し?」

 

その目はキリトを睨んでおり、その視線にキリトは困惑した。

 

「そうだろ!?だってお前はボスの攻撃パターンを分かってたじゃないか!?」

 

その言葉に場の空気が凍りつく。

そして静かにだが動揺が広がっていく。

 

「確かに…」

 

「なんでだ?」

それぞれがそんな疑問を口にして、キリトを見ていると

 

「俺知ってる!」

 

そんな声が響く。

 

「こいつは元ベータテスターだ!だからボスのパターンを知ってて隠してたし、美味い狩場やボロいクエストをいっぱい知ってるんだ!!」

 

耳障りな声でそんな事を言う。

ツキノワはそんな声を聞いて眉間に皺を寄せていると

 

「でもベータの情報はボス戦前の攻略本に乗ってだろ?だったら知識量は同じはずだぜ?」

 

エギルの仲間の1人がキリトを擁護する。

そう、彼らはボス戦が始まる前に新刊が出た攻略本を読み込み、ボス戦の情報を頭に叩き込んでいた。

だからベータ時代の情報は皆知っていたのだ。

 

「だ、だったらその情報が嘘なんだ!あの鼠がタダで情報を渡すわけないんだ!」

 

(ま、まずい…!?)

 

この時キリトは焦っていた。自分が1人ならと思っていたが、アルゴにまでいや、他のベータテスター達にまで被害が及ぶ。

 

「おい!お前ら!」

 

「ちょっと!あなた達ねぇ!」

 

「黙って聞いてれば!」

 

アスナやミドだけでなくエギルまで反論しようとしている。

このままではまずい。

何とかしなくてはと考えいた時

 

「はぁ…くっだらない」

隣から心底冷めきったツキノワの声が聞こえた。

その声は決して大きくはなかったがヒートアップしそうなこの場において、とても響いていた。

 

sideツキノワ

 

「はぁ…くっだらない」

 

心の底から呆れ返っていた俺の一言は思ったより響いており、みんな黙り込んで俺を見ていた。

 

「く、くだらないって何だよ!お、お前のこいつの味方か!?」

 

まだ騒ぐ猿…いや、ブンブンうるさい小バエに対し

 

「うるせぇな、黙れよ虫けら」

 

冷たく、残酷に睨みつけた。

 

「っ!?」

 

その目に恐れ黙り込んだその男を冷たく見ながら

 

「おい、俺たちにとって情報は命だ。だったらその情報を扱う情報屋にとって、1番大切なものはなんだと思う?」

 

「し、知るかよそんな事!そんな事なんの関係があるってんだ!」

 

呆れた、そんな事も分からないのか。

 

「答えは信頼だよ。どれだけ情報を集めようがそれを買うやつがいなければ成り立たない。それに1層には1ヶ月もいたんだ。もう情報なんて出尽くしてる頃合いだろう。そうなってくると売れる物が無い。だったら無料でもボスの情報を流し俺たちに次の層を開けてもらう。その方がよっぽど自分の利益にも繋がるし効率的だ。何か反論は?」

 

そこまで言い切る。

男も何も言えず黙り込む。

当然だ、俺が言ったのは少し考えれば分かる正論で間違ってる事なんて何も無い。

ただリーダーを失ったディアベルの仲間たちは冷静さをかけていた。

 

「それでもそいつがボスのスキルを知っていた事には変わらないじゃないか!?そこはどうなんだよ!?」

 

と言われる。

それに答えようとした時

 

「私も元ベータテスターよ」

 

ミトが突然参戦してきた。

 

「ミト!?」

 

ミトの参戦に驚いていると

 

「弟が頑張ってるのに見てるだけって訳にはいかないでしょ?」

 

俺の頭を撫でながらウインクしてくる。

その手を振り払って1歩下がる。

その様子を優しく笑いながら見ていたミトはディアベルの仲間たちと向き合った。

 

「私はベータ時代第10層まで登ったわ。今回ボスが使ってた刀スキルは、そこで初めて出てきたのよ。ベータ自体のコボルトロードは刀なんて使ってなかった。私たちが対応できたのは、10層で散々戦ってきたからなの。」

 

自分たちの仲間であるミトの言葉にディアベルの仲間たちも黙り込む。

そんな沈んだ空気を俺は手を叩いてかき消した。

 

「今回俺たちはベータテストの情報を鵜呑みにしすぎた。その結果ディアベルを死なせた。これで分かったはずだ。俺たちにテスターだのビギナーだの言ってる余裕はない。全員で力を合わせないとまた誰かが死ぬ。これからはしっかり協力しあって進んでいくしかないんだ」

 

「せやな。まだ先は長いんや、今いがみ合っとる場合やなかったわ。ワイが余計な事したせいやな。すまんかった」

 

そうキバオウが謝罪したところで

 

「ところで2層には誰が上がる?俺としてはMVPのこいつらがいいと思うんだが」

 

エギルが俺たちを指さして言い出した。それに対し答えたのはキリトだった。

 

「元々俺たちから名乗り出る予定だった。主街区までフィールドを歩かないといけないから初見のMOBの相手をしないといけないしな」

 

テスターの事を隠す必要が無くなったキリトが遠慮なく言い切った。

俺達も特に反論はなかったためそのまま頷く。

 

「…そうか。なら頼む。だがその前に」

 

ディアベルの仲間である【リンド】がミトに向き合う。

 

「ミトどうするんだ?そのままそいつらと行くのか」

 

そう、ミトもディアベル達とおなじC隊なのだ。

仲間として確認したかったのだろう。

 

「…ええ、彼らと一緒に行くわ」

 

ミトはリンドの目を見ながらハッキリ言いきった。

 

「…分かった。好きにしろ」

 

そう言って去っていくリンド達。

 

「ほなお前ら、頼むわ」

その後に続くキバオウ達。

そのままどんどんと部屋を後にしていき気づいたら俺たちだけだった。

 

「…はぁ、疲れた」

 

そう呟いて振り向くと

 

「「「ツ〜キ〜ノ〜ワ〜(く〜ん)!!!」」」

 

「…はい」

 

鬼が3体程いました。

そのまま正座すると

 

「お前はバカか!バカなのか!」

 

「そうよ!あんな喧嘩売るような事して!かなりギリギリだったのよ!」

 

「もう!昔っからあんたはそうなんだから!お願いだから無茶しないで!」

 

「はい…善処します…」

 

むっちゃくちゃ叱られました。

解せぬ。

 

「そうだキリト。聞きたいことがあるんだけどちょっと見えもらっていい?」

 

「なになに…?SPECIAL BONUS ITEM ?こんなの見た事も聞いた事もないぞ?」

 

そう表記された内容を確認するとそこには【曲刀:イビルファング】と書かれていた。

 

「曲刀イビルファング…知らないな、俺は初めて見た。ミトは?」

 

「私も初耳だわそんな武器。とりあえずオブジェクト化してみたら?」

 

そう言われとりあえずやってみたら、とんでもない武器が出てきた。

他の曲刀より一回りは大きく、刃は幅広い。

デザインも過度な装飾はなく武骨というより、ただ何かを切る為の武器、というイメージを与える。

何よりその剣は重く、必要STRは俺の現在のSTR値のギリギリ下くらいだ。

俺よりキリト向けの剣だなと思いつつもステータスを確認する。

 

「うわ、すげぇステータスだこれ。ほらキリト見てみろよ」

 

「どれどれ…!?な、何だこの武器!?強化可能回数が10回!?しかもこのステータスなら5層までなら全然使えるぞ!?」

 

「はぁ!?何その性能!?見せなさい!?…うわぁ、これちゃんと強化すれば7,8層位まで行けるんじゃない?」

 

キリトとミトが凄い騒ぐ。

なるほどそんなに凄いのかこの武器。

イビルファング…邪悪な牙か、これからはこいつが俺の相棒か。

そう思いながら刃を軽く叩く。

 

「これからよろしくな」

 

そうやってひとしきり騒いでいると

 

「みんな!早く2層に行かないと!」

 

アスナ先輩が俺たちを急かす。

 

「そうですね。速く行きましょう。2人とも!いつまで騒いでんの!?速く行くぞ!」

 

そうして2人を急かし次の層の扉を開ける。

その先に広がっていたのは無限に広がる草原だった。

その光景に

 

「「「「綺麗…」」」」

 

俺たちは全員見蕩れていた。

 

「…ほら、みんな行くぞ。俺とツキノワが前を見るからミトはアスナと一緒に後ろを警戒しててくれ」

 

いち早く立ち直ったキリトが隊列を決めると俺達もそのまま主街区目指して歩き出した。

 

sideアスナ

 

「ねぇミト、ツキノワ君って昔からあんな感じなの?」

 

私はあの時の事を思い出しながらミトに聞く。

いつも私が見てきた彼は優しくも凛々しく、ちょっとミトに素直じゃない、けど姉想いの男の子だった。

だからあの時のあんな彼は初めて見たし少し怖かった。ミトは私の話を聞くと少し気まずそうに答えてくれた。

 

「まあ、昔からそうよ。あの子は怒ると淡々となるのよ。元々あまり他人に興味を示さない子だし。表向きは装ってたからよく言えば八方美人って感じかな」

 

(そうなんだ、じゃあ私と仲良くしてくれるのも…)

 

と考えていると

 

「ねぇアスナ、初めて家に来た時のこと覚えてる?」

 

突然ミトがそんな事を聞いてきた。

 

「?うん。覚えてるよ。ツキノワ君に会ったのもその時だし」

 

そう、彼と会ったのはその時が初めてで、それ以降の付き合いだ。

 

「そうよ。他人に興味を示さないあの子が自分から関わってきたのはあなたが初めてなの。だから…」

 

そう言ってミトは1歩前に出ると私と目を合わせる。

 

「だからあの子の事を信じてあげて。あの子は、優月は明日奈と仲良くなりたくて、あなたを慕ってるのよ?今まで明日奈に見せてきた優月は全部、優月の本当の気持ちなの」

 

その言葉に思わず優月君を見る。

キリト君とふざけながらも周囲を警戒いるその背中は大きく、頼もしく感じられた。

 

「それにしても、そんな事気にするなんて、もしかして明日奈、あなた…」

 

ニヤニヤしながらこっちを見るミト。

その先の言葉を想像し、顔が赤くなる。

 

「そ、そういうのじゃないの!?これは… あれよ!?もう1人の姉としての心配よ!!そう、心配なの!!」

 

慌てて取り繕うも未だにニヤケ顔が止まらないミトに対し

 

「もう!知らない!」

 

と先を歩く。

 

「あ、待ってアスナ!?」

 

慌てて追いかけるミトをさらに突き放すように走る私。そのまま男子2人も追い抜かし

 

「ほら!街まで競走よ!負けた人は何か奢りね!」

 

そう言い残し走り出す。

 

「「「アスナ(先輩)!?待って!!」」」

 

慌てて追いかけてくる3人を見て

 

「アハハハハハ!!」

 

心から笑う。

こんな事になってるけどそれなりに楽しくなってきたと思う。

私達の戦いは始まったばっかりだ。

でも今だけは楽しもう。

そう晴れ渡った心で思う私なのだった。




という訳で1層突破です。
今更ながら彼のプロフィールを出します。

プレイヤーネーム:ツキノワ
本名:兔沢優月
年齢:14歳
身長:165cm
体重:50kg
好きな物:肉料理、甘い物
嫌いな物:茹でたor煮た卵、トマト、虫全般
特技:料理、喧嘩
弓道部所属の中学2年生。周りからはよく大人っぽく見られる。勉強は1桁をキープしている秀才。運動神経は姉よりいい。実は格闘技をやっていて喧嘩も強いがあまりしない。だが大切な人達を守る為ならなんだってする。

好物に関しては自分の好き嫌いで決めました。
それではありがとうございました。


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閑話休題①

今回はおやすみ話です。
よろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「ねぇ…まだ?」

 

「ちょっと待って。もう少しよ」

 

「ツキノワ君。動かないで、じっとしてて!」

 

どうも、ツキノワです。突然だが今俺は両サイドを美女2人…具体的には姉のミトとその親友アスナ先輩に挟まれて、髪をいじられている。本当に何故こうなったかとため息をつきながら経緯を思い出す。

 

 

数時間前、俺たちは第2層主街区【ウルバス】に着いた俺たちは一旦男女で別れ、そのまま先にいい宿をそれぞれ確保してから転移門のアクティベートを行った。

一気に流れ込んでくる人波を避けて宿に戻ると、ミトからすぐにこっちに来るようメッセージが届いた。

キリトに断りを入れを入れてから宿に着くと、突然部屋に連行された。

何事かと驚いていると

 

「ツキノワ、出掛けるわよ」

 

ミトが宣言しだした。

 

「え?俺も?」

 

聞き返すと

 

「当たり前じゃない」

 

呆れられた。

ではなぜ部屋に連行したのかと聞くと

 

「久しぶりにお揃いにしましょ!」

 

と言われる。

リアルで出掛ける時とかはたまにお揃いのコーデで出掛けていた俺たちなのだがここでもそれがしたいらしい。しかし、今の俺たちにそんな服はないので無理だが、どうするのだろうか?そう思ってると

 

「ツキノワ君!こっち来て!」

 

ベットに腰掛けてたアスナ先輩がポンポンと隣を叩きながら呼ぶ。

 

「何ですか?」

 

呼ばれるままにそちらに向かい座ると

 

「「動かないで!」」

 

と両脇を固め髪を触り出す。

ここまで来てようやく何をお揃いにするのか理解した。

 

「まさか…俺も2人の髪型にするの?」

 

2人はクラウンハーフアップという三つ編みにした髪を後ろでまとめる髪型である。

ミトはそこに上からポニーテールにしているが俺にはそこまでの髪の長さはない。

 

「三つ編み出来るほどの長さはないけど?」

 

「だから普通のハーフアップにするのよ」

 

即答するミト。

 

「そもそも何で突然そんな事言い出しだよ」

 

恥ずかしくてつい、ミトを軽く睨みながら言うと

 

「私がしたくて提案したんだけど…嫌だった?」

 

反対側のアスナ先輩から、上目遣い+甘えるような声のダブルパンチを受けた俺は、一瞬で心の壁は崩壊した。

 

「…別に嫌ではないです。恥ずかしいだけなので。…もう好きにして下さい」

 

これが惚れた弱みというやつか。

そこ、チョロいとか言うなほっとけ。

 

「うん!ありがとう!」

 

キラキラの笑顔に顔が熱くなる。

 

「あら?ツキノワ、顔真っ赤よ」

 

ミトにからかわれ

 

「うっさい!」

 

つい立ち上がってしまう。

 

「あぁ!ツキノワ君!」

 

アスナ先輩から怒られた。

 

「…すんません」

 

解せぬ。

隠すどころか動くことも出来ない俺は、ずっと姉にニヤニヤされながら髪をいじられることとなった。

 

「よし!それじゃあ行こう!街探索!」

 

妙に元気なアスナ先輩とそれを優しく見るミト、そして既に疲れた俺。

 

「それで?どこから行くんすか?」

 

アスナに尋ねると

 

「決まってない!」

 

元気よくノープランと返ってきた。

まあ、そりゃそうか。俺もアスナ先輩も初めて来たんだし。

そこはテスターのミトに聞こう。

 

「ミト?ここのオススメは?」

 

「私も攻略一筋だったからあまり詳しくはないの」

 

マジかガイド無しかよ。

どうしたもんかと考えてると

 

「せっかくだし端から全部見ていこうよ!」

 

まあ、それもありか。

 

「そうね。知らない街の探索もこのゲームの」

 

「「醍醐味でしょ(だろ)?」」

 

アスナ先輩とハモリながらミトの言葉を遮る。

その事に先輩と目を合わせ、吹き出す。

 

「「アハハハハハ!!」」

 

「もう!2人に揃って私のセリフを取らないでよ!」

 

「「ほら!速く行くよミト!!」」

 

そう言いながら歩き出す俺たち。

 

「待ちなさい!私を置いていかない!」

 

慌てて追いかけてくるミト。

そんな騒がしい俺たちの休日が始まった。

 

「腹が減りました」

 

美味そうな匂いにつられて腹が鳴る俺。

戦闘して間もない俺達は飯をまだ食べてないので、腹が減っているのだ。

 

「そうね、まず腹ごしらえからね。こっちにいいNPCレストランかあるわ。こっちよ」

 

ミトが心当たりがあるのか先導する。

 

「へ〜、何がオススメなの?」

 

楽しみで俺が聞くと

 

「この2層は牛がメインなの。だから通称【モーモー天国】。ツキノワが大好きなお肉料理が多いのよ」

 

「おお!楽しみ!」

 

期待値の高い答えが返って来る。

 

「フフ、そんなに楽しみ?」

 

隣を歩くアスナ先輩が優しい笑顔で聞いてくる。

 

「はい!肉料理好きですから!」

 

「そう、向こうに帰ったら何か作ってあげるね」

 

「本当に!?楽しみにしてます!」

 

「あなた達!こっちよ。はぐれないでね」

 

アスナ先輩と話してるとミトに急かされる。

慌てて追いかける俺たち。

だからこの時、アスナ先輩が顔真っ赤だったのには、気づかなかった。

 

「さあ着いたわ。ここよ」

 

歩いて数分、だいぶ入り組んだ所にあったその店は外観はとてもオシャレで女性受けが良さそうな印象だった。

 

「わあ!可愛いお店!」

 

「でしょ?私も気に入ってたの」

 

現にミトとアスナ先輩はウキウキであり俺も楽しみだった。

 

「いらっしゃいませ」

 

お店に入り人数を伝えてそのまま席に着く。

 

「何にしようかな〜」

 

「どれもオススメだけどアスナはこれとか好きそうじゃない?」

 

ワイワイと楽しそうにメニューを考える2人に対し

 

「俺は決めた」

 

速攻で決める俺。

 

「「はや!?」」

 

それに驚く2人。

 

「ツキノワがそんな即決なんて珍しいじゃない」

 

普段外食する時大体家族で1番メニュー決めに時間かかるのが俺だ。

だからミトが珍しいそうに言うと

 

「食べたかったのがあったから見つけてすぐそれにした」

 

そう話してるとアスナ先輩も決めたらしい。

 

「すみません!」

 

NPCを呼びそれぞれのメニューを伝えて金を払う。

ミトとアスナ先輩はビーフシチュー、俺はハンバーグセットとご飯大盛りが来た。

それぞれの頼んだ物が来た所で

 

「「「いただきます!」」」

 

食べだした。

肉汁たっぷりのハンバーグはジューシーで噛めば噛むほど肉の旨味が広がる。

 

「うまい!」

 

思わず大きい声が出るが咎める人はいない。

2人も自分の食べ物に集中しているのだ。

 

「うん、やっぱりここは美味しい」

 

「美味しい!コクがあって味にも深みがある!」

 

それぞれの反応を見せながら舌鼓をうつ俺たち。

そのまま食べ進め

 

「「「ごちそうさまでした!」」」

 

見事に全員完食した。

 

「あ〜食った食った…」

 

「美味しかったぁ!また来ようよ!」

 

「ベータ時代より美味しかったかも…さてと、2人とも?デザートは?」

 

「「食べる!」」

 

まさかデザートまであるとは。

 

「本当は違うやつがオススメなんだけど、大きいからそれは今度ね。代わりに違うやつを頼むわ」

 

そう言うミトはNPCを呼び止め 、注文を始めた。

 

「ミルクゼリー3つとブラックコーヒー3つ」

 

まとめてミトが支払うと

 

「ミト!?自分の分は払うよ!」

 

慌てて止めるアスナ先輩。

 

「せっかくだもの。私が奢るわ」

 

「でも…」

 

まだ抵抗があるアスナ先輩だが俺は遠慮しない。

 

「じゃあ、ゴチになりまーす!」

 

そんな話をしていると注文したやつが来た。

それは真っ白でプルプルなゼリーだった。

 

「「「いただきます」」」

 

商品が来たことで観念したアスナ先輩も素直に食べだした。

 

「!!うまい!」

 

牛乳本来の甘みにハチミツだろうか、それが牛乳の匂いと味にいい感じにマッチしている。

そのままコーヒーを流し込むと、コーヒーの苦さとゼリーの甘みが見事に調和されていて更に旨味が増した。

女性陣に関しては、最早感想をなく目をキラキラさせながら黙々と食べていた。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

手を合わせ大満足した俺たち。

そのままひと息ついた俺たちは次の行動を開始した。

 

「さて、次は何があるかなっと…」

 

キョロキョロしていると後ろから

 

「アスナ?」

 

とミトの呼び声が聞こえた。

振り払るとアスナ先輩がある店を見ていた。

そこはアクセサリー屋だった。

 

「じゃあ、次はあそこに行きましょうか。行くわよアスナ」

 

「あ、ミト!ちょっと待ってよ!」

 

2人して入っていくので俺も続くことにした。

中に入るとオシャレなアクセサリーが所狭しと並んでおり男の俺には少し居づらかった。

適当にブラブラしていると2人がある所で立ち止まっていた。

 

「2人とも?どうしたの?」

 

不思議に思い尋ねると

 

「「な、なんでもない!」」

 

と言って他のものを見に行った。

2人の様子に首をひねりながらも俺もブラブラしてると、あるものが目に止まった。

幾つか種類のあるそれを俺は2つほど速攻で買った。

ついでにキリトに買ってやると2人は外にいた。

 

「買い物は終わった?」

 

「終わった。お待たせしたみたいでごめん」

 

「買い物はこういうものでしょ?気にしないでいいよ?」

 

そう言われたので気にしない事にして俺たちはそのまま街に向かって歩き出した。

 

「う〜ん!遊んだね〜!」

 

「ええ、これで大体街のことは分かったわね」

 

2人とも満足したのか楽しそうに話してる。

そんな2人を見てそろそろか思っていると

 

「じゃあ、そろそろ一旦解散しましょか」

 

ミトが言い出し

 

「そうね、また明日から頑張りましょ!」

 

アスナ先輩が便乗した。

 

「その前に少し待って」

 

ここだと思い俺は2人を呼び止めた。

 

「「なに?」」

 

2人とも立ち止まって聞き返してくる。

 

「これ。今日の記念に」

 

そう言ってトレード画面を見せる。

それを見た2人はオブジェクト化する。

それは雫の形をしたネックレスだ。

恐らく何らかの石を雫の形に削ったのだろう。

色は薄ピンクと紫で2人の色をイメージしたものだ。

特に特殊効果はないが記念にと思い、買っておいたのだ。

 

「ツキノワ君!ありがとう!大切にするね!!」

 

「ありがとうツキノワ。大事にするわ」

 

そう言って笑う2人。

喜んでくれた様で何よりだ。

ほっとしていると目の前にトレード画面が出てきた。

 

「実は私達もあそこで買ってたのよ」

 

「良かったら見てみて」

 

言われるままにオブジェクト化するとそれはリングチェーンだった。指輪には赤色の石がはめ込まれており、シンプルで男らしいデザインだった。

 

「それはSTR値を上げる効果があるから使ってみて」

 

「ありがとう2人とも。大事にしますね」

 

そう言って有難く受け取る。

その時突然アスナ先輩が顔を真っ赤にする。

 

「どうしたの?」

 

突然だったのでビックリして聞いたら

 

「なんでもない!」

 

と言って顔をそらされた。何で?

 

「ハイハイ、明日も早いし解散するよ」

 

ミトに急かされ解散することにした。

 

「じゃあ2人とも。また明日」

 

「ええ、また明日」

 

「ま、また明日!おやすみツキノワ君!」

 

そう言って別れる俺たち。

帰り道あるものをオブジェクト化しながら貰ったものを見る。

 

「まさか、キリトにやるものの違うやつを選ぶなんてな」

 

そう、2人がくれたのは俺がキリトに選んだやつの色違いバージョンだったのだ。

キリトのは黒でVIT値を上げるやつだ。

 

「ま、いっか。とりあえず明日から頑張るか!」

 

そう言いながら俺は帰路に着いた。

 

sideミト

 

我が弟ながらにくい事をする。

そう思いながらずっとニヤけてる目の前の親友を見る。手には貰ったネックレスがあり、それを大切そうに撫でているのだ。

 

「はぁ…アスナニヤけすぎ」

 

呆れながら言うと慌てたように返してくる。

 

「に、ニヤけてなんかないよ!?」

 

「ここでは感情がオーバーに演出されるから顔に出っぱなしよ」

 

「うそ!?」

 

慌てて顔を触って確認するアスナ。

そして気付いたのか顔を真っ赤にして唸りながら枕に顔を埋める。

優月、あと一押しよ。

頑張りなさい。

そして明日奈、あと一歩よ、自覚しなさい。

そう思いながら私は寝る用意に入る。

 

「じゃあ、私は寝るわね。おやすみアスナ」

 

「私も寝る。おやすみミト」

 

そう言いながら電気を消す。

明日からも頑張ろう。

そう思える充実した1日だった。




ありがとうございました。
ツキノワがミトを呼び捨てにするのは自分が兄を呼び捨てだからです。
姉貴と呼んだり姉系の言葉で呼ぶ時は甘えてる時か精神的にも弱ってる時だけです。
それでは失礼します。


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10話

中々ネタが進まなくてすみません。
それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「全くこんな所で何やってんだよあいつは」

 

昨日の観光から一夜明け、俺はある山を登っていた。

目的は昨日帰ってこなかったキリトを探すためである。フレンドリストから生存確認と場所確認を行った俺は、反応を元にこの山に向かった。

そして登りだして20分ほどしたところでやっと山頂が見えてきたのだ。

 

「やれやれ…やっと着いたか…って何してんだあいつ」

 

山頂に着いてすぐにキリトは見つかったが当の本人は馬鹿でかい岩を素手で割ろうとしていた。

訳が分からんがとりあえず呼ぶことにした。

 

「おい!キリト!何やってんだ連絡もせずに!心配したんだぞ!」

 

「っ!?ツキノワ!?どうしてここに!?てかこっち見んな!」

 

気づかなかったのだろうすごく驚いてこっちを見たキリトの顔には髭が生えていた。

 

「…ブハッ!!何それ!?キリえもんか!!」

 

思はず大爆笑してしまった。

 

「だから見るなって言ったんだよ!」

 

顔を真っ赤にしながら怒るキリトに迫力はなくむしろシュールさから来る面白さに更に笑えてくる俺。

その時

 

「…試練を受けに来た者か?」

 

突然奥に建ってた道場から仙人みたいなじいさんが出てきた。

 

「試練?何の試練なんだ?」

 

とキリトに聞き返すと

 

「…エクストラスキル【体術】のクエストだよ」

 

「体術!?そんなスキルがあるのか!?」

 

この剣の世界にまさか体術なんてスキルがあるとは思わなかった。

 

「そうだ。その内容がこの岩を割ることなんだ。」

 

「へぇ…面白そうだな!いいぜ!受ける!」

 

「おい!ツキノワ!」

 

慌ててため止めようとするキリトを無視し話を進める。

 

「…修行は厳しいぞ?」

 

「上等、やってやる」

 

「…そうか…それでは、修行者の証を付けよう。」

 

「…証?」

 

そう言いながら筆と墨を取り出したじいさんは目にも止まらない速さで俺の顔に何か書いた。

 

「それでは我が弟子よ、それは修行が終わるまで取れんぞ。修行が終わるまでこの岩山から出ることは一切禁ずる。試練はこの大岩を割ることじゃ。健闘を祈る。」

 

そう言って建物の奥の方へと消えていった。

 

「キリえもんの正体はこれか」

 

そういいながらアスナ先輩達へ攻略に行けない事と、命に別状は無いことを伝えた。

 

「そういう事が。こんな顔、人に見せられたいだろ?」

 

「確かに…早く終わらせよう!」

 

そう言って早速この岩を割り始めた。

何回か叩き硬さを確かめてから、思いっきり殴った。

ゴン!という鈍い音がなり手応えも確かなものが返ってくる。

 

「…今のどうやったんだ?」

 

驚きながら聞いてくるキリトに中心、核の捉え方のコツを教える。

割と直ぐに感覚を掴んだキリトはそのまま打ち続ける。俺も負けじと続けた結果、俺たちは同じ日、俺的には2日目で終わらせ、キリト的には3日目で終わらせた。

 

outside

 

ツキノワ達が下山した次の日、フィールドボスの攻略戦が行われる事になった。

少し遅れて集合した彼らの目に飛び込んだのはキバオウとリンドの言い争いだった。

 

「何あれ」

 

「ディアベルさんの後継者争い兼フィールドボス戦の指揮権争いよ」

 

呆れたように呟いたツキノワにこちらも呆れたようにアスナが答えた。

 

「リンド率いる【ドラゴン・ナイツ・ブリゲード】とキバオウ率いる【アインクラッド解放隊】が揉めてるのよ」

 

そこにこれまた呆れた様子のミトが更に付け加える。

 

「へ〜俺らが山篭りしてる間に随分変わったな」

 

キリトが何気なくそう呟く。

その途端、ミトの目の色が変わる。

 

「ツキノワ、どこかに行くならちゃんと連絡しなさいと言ってあるわよね?」

 

「いや、ガキじゃないんだしいいだろ。ちゃんと問題なしの連絡は送ってたし、フレンドリストから生存確認と場所確認は出来るだろ?」

 

「そういう問題じゃないでしょ!」

 

「へーへー」

 

「ツキノワ!」

 

今度は姉弟喧嘩を始めるミトとツキノワ。

 

「おいおい」

 

「2人とも!」

 

慌てて止めるキリトとアスナ。

その時

 

「全員注目!」

 

リンドの声が届き全員がそっちを見た。

どうやら今回はリンドが仕切るらしい。

ふと見慣れない集団に気づくツキノワ。

騎士の様な格好した人達だ。

 

「ミト、あいつらは?」

 

「あいつらは急に出てきた人達よ。レベルは低いけど装備がいいからとりあえず参加させるらしいのよ」

 

「ふーん、名前は?」

 

「えっとギルド名は【レジェンドブレイズ】。リーダーの【オルランド】に、【クフーリン】、【ベオウルフ】「ちょっと待って!」何よ?ツボったの?」

 

突然止められて何かと思えば肩を震わせて笑いを堪えるツキノワ。

 

「いや、ごめん…クッ…センスが…面白…ハハ!」

 

「そこはちゃんと噛み殺しなさい」

 

そんな弟を呆れた目で見るミト。

そんな事をしながらも話は進み、今回も取り巻きを狩ることになった。

 

「また取り巻き?」

 

復活したツキノワが聞くと

 

「ウインドフルーレの強化に取り巻きの素材が必要なの」

 

アスナが答える。今回は利益を重視した結果の担当らしい。

 

「分かってると思うけどハチ型モンスターだから飛ぶし毒針も使う。全員気をつけろよ」

 

キリトが再確認し、全員が頷いた所で

 

「それでは!作戦開始!」

 

2層フィールドボス戦が始まった。

 

 

「28!」

 

アスナが突然カウントしだした。どうやら数えてたらしい。

 

「え!?数えてたのか!?」

 

驚くキリトを他所に今度はミトが数をカウントした。

 

「私も!28!」

 

「30」

 

「「「なに!?」」」

 

ちゃっかり1番倒してるツキノワにみんなが驚く。

 

「!みんな!競争しましょ!」

 

ミトがムキになって提案する。

 

「はぁ?ミト何言ってるんだよ!?」

 

キリトが止めようとするもそれでもミトは止められず

 

「男子VS女子よ!負けた方が【トレンブル・ショートケーキ】を奢りよ!」

 

「「トレンブル・ショートケーキ?」」

 

「トレンブル・ショートケーキ!?」

 

首を傾げるツキノワとアスナに対し本気で焦った声で返すキリト。

そんなにヤバいのか?とツキノワが疑問に思ったところで

 

「よーいドン!」

 

一方的にミトが宣言をした。

鎌で一気に薙ぎ払うミトと正確無比なレイピア捌きでどんどん数を増やしていくアスナを見て、男2人は焦る。

 

「なんてコンビだよ…」

 

「まさに広域爆撃と精密射撃だなあれ」

 

奮闘ぶりに引き攣る2人。

だがその光景が2人の男の闘争心に火をつけた。

 

「やるぞツキノワ」

 

「ああ、あっちがああならこっちは…」

 

そう言って一気に踏み込むツキノワ。

ソードスキルである程度ダメージを与えてから、すかさず体術スキル【閃打】を打ち込んで爆散させる。

ソードスキルで生じる技後硬直を体術スキルのモーションで打ち消したのだ。

一方的のキリト同じようにモンスターの攻撃を躱し、ソードスキルを打ち込んだ後閃打を打ち込んで倒す。

 

「「こっちは連続射撃だ!」」

 

そう宣言して一気に速度を上げて狩っていく。

 

「あの2人、山篭りしたと思ったらあんなものを!」

 

「負けられないわよアスナ!」

 

「ええ!行くわよミト!」

 

一方の女性陣も更に効率をあげる。

アスナがモンスターを1箇所に集めさせた所で

 

「スイッチ!」

 

「ハァァ!!」

 

ミトがまとめて薙ぎ払う。

その隙を狙うモンスターを

 

「セァァァ!!」

 

アスナが一撃で弱点を貫き倒す。

そうして団体戦は膠着状態にもつれ込んだ。

その時キリトがある事に気づいた。

 

「なんだあいつ?」

 

キリトが見つけたのはボスの後ろを飛ぶ取り巻きだった。

ツキノワも疑問に思っていた時突然取り巻きがフィールドボスの尻を針で刺したのだ。

 

「ヴモォォォォ!!!」

 

突然大暴れするボス。

当然も本隊は巻き込まれ

 

「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」

 

一気に包囲網を突破しこっちに突撃してくる。

 

「げ!?こっち来る!?」

 

「ミト!アスナ!前足を攻撃してくれ!!」

 

「「了解!」」

 

すぐに指示を出すキリトに従う3人。

 

「ツキノワ!あれやるぞ!」

 

「あれか!OK!やるぞ!」

 

何かを打ち合わせながら走り出す2人。

先行したミトとアスナがボスと接敵する。

 

「アスナ!関節を狙って!同時に行くわよ!」

 

「分かったわ!いっせーのーで!」

 

「「セァァァ!!」」

 

同時に関節を切られたボスはその速度のまま倒れ込む。

 

「「スイッチ!」」

 

そう言って避ける2人の横を影が2つ走り抜ける。

 

「やるぞキリト!」

 

「3カウント!3,2,1!」

 

「「ハァァァァ!!」」

 

キリトとツキノワが一気に飛ぶ。そのまま空中で突進系ソードスキルを発動する。ソードスキルのアシストモーションを利用して空中を駆け登り、弱点を貫きボスを撃破する。

 

「「はぁ!?空中でソードスキル!?」」

 

その光景に驚くミトとアスナ。

そんな2人を無視しながら着地したツキノワが振り向きながら走り出す。

その理由にすぐ気づいたミトも一気に走り出し

 

「「ハァァ!!」」

 

最後の取り巻きに同時に攻撃を仕掛ける。

その結果は

 

「よし!私の勝ち!」

 

「くっそぉ!負けた!」

 

武器のリーチと位置関係的にミトの攻撃が先に当たり、取り巻きを倒したのだ。

結果は一体差で女子チームの勝ちになった。

 

「じゃあ、罰ゲームよろしくね!」

 

ニコニコと笑いながら言うアスナに

 

「「ハァァ…」」

 

深いため息で返事するキリトとツキノワだった。

 

sideアスナ

 

私達は前にも来たレストランに来ている。

隣に座るミトも楽しみなのか笑顔を浮かべていた。

 

「とりあえず注文しましょうか。ディナーはこっちが出すわ」

 

ミトがそう言い出し、ディナー分は私たちが出す事になった。

 

「じゃあ、頼むか…トレンブル・ショートケーキ2つ」

 

と言ってキリト君が払う。

 

「金送るわ。えっと…は!?7000コル!?馬鹿なのかこの金額設定!?」

 

ツキノワ君が驚きの声をあげる。

7000!?そんな高いの!?

その事に驚いてるとため息をつきながら送金するツキノワ君。

 

「あ、キリト。渡す暇無かったからこれも今あげるわ。この間のおみやげ」

 

そう言って何かをあげる。

それはこの間私達があげたやつの色違いだった。

 

「お、サンキュー!これはチェーンリング?」

 

「そ。これの色違い。これは2人から貰ったやつでSTRが上がるんだけど、そっちはVITが上がるんだよ」

 

「そうなのか!ありがとう!大事にするよ!」

 

「へー!お揃いになるなんて偶然ね!」

 

ミトはそう言うが、確かにツキノワ君のは最終的には私が選んだが、ある程度絞ったのはミトだ。

まさかと思いミトを見ると目が合い、そのままミトはウインクしながら口元に指を当てる。

その仕草で私は悟った。

きっとミトはツキノワ君がキリト君に選んだものを知ってたのだろう。

その上で私に選ばれるように仕組んだのだ。

流石は姉と言うべきか、ツキノワ君の事は何でもお見通しなのだろう、そう思うとまた胸が少しモヤッとする。

 

「アスナ先輩?どうしました?」

 

向かいの席に座るツキノワ君が心配そうに聞いてくるので大丈夫だと返すと

 

「おまたせしました」

 

とNPCのウエイトレスがケーキを持ってくる。

 

「来た…来てしまった…」

 

「来た!来たわよ!」

 

キリト君とミトが対称的な反応をしている。

そのケーキが目の前に置かれその全容が見えた。

大きさは半径約25cm、厚さは約10cm、上にはクリームが乗っており高さはもう約40cmを超えるものだった。

結構なクリーム量、というよりほとんどがクリームだった。

 

「「うわ〜!大きい(デカい)!」」

 

私とツキノワ君は全く同じ反応をしてしまう。

でも凄く美味しそうだ。

ミトと2人で手を合わせ

 

「「いただきます!」」

 

切ろうとした時向かいから凄く羨ましそうな視線を感じた。

そういえばツキノワ君って甘いもの大好きだったよね。そう思ってると

 

「ツキノワ、はしたないからそんな目でアスナのを見ないの」

 

「だって美味しそうだし…」

 

「はぁ、仕方ないわね。私のあげるからお皿取りなさい」

 

「っ!ありがとう!」

 

嬉しそうにお皿を取るツキノワ君とそれを優しい目で見るミト。その時またモヤっとしてしまい

 

「ミト。私のやつあげるからいいよ?」

 

ついそんな事を言ってしまった。

驚く2人。

 

「そんな!?アスナ!悪いわよ!」

 

「いいからいいから!はい、ツキノワ君!」

 

「ありがとうございます!」

 

嬉しそうに受け取るツキノワ君を見てると胸が温かくなってくる。

隣ではミトが仕方なさそうにキリト君に分けており4人でケーキをシェアして堪能した。

 

outside

 

「「「「美味しかった…」」」」

 

すっかりケーキを堪能した4人。

そんな4人は街を歩いていた。

 

「ベータの時より美味しかったかも…」

 

「ああ、しかもこんなバフも無かったしな」

 

そう言うキリトには四葉のクローバーマークが着いていた。

これは幸運判定ボーナスであり4人ともに着いていた。彼らはこのままアスナの武器を強化することにしたのだ。

 

「どこでやります?強化」

 

ツキノワがアスナにそう聞く。

 

「そうね、折角なら鍛冶屋さんに行きましょうか」

 

「鍛冶屋?もう出てきたのか」

 

そう、この2層に来て直ぐにプレイヤーの鍛冶屋が出てきたのだ。

その噂を聞いていたアスナはそこでやろうとい言い出したのだ。

 

「じゃあ、探しますか。その鍛冶屋」

 

そう言って街を歩く事数分後、無事に目的の鍛冶屋を見つけたので早速強化する事にした。

 

「いらっしゃいませ、メンテですか?買取ですか?」

 

「強化でお願いします。種類は正確さと丈夫さで」

 

「…分かりました。強化素材は?」

 

「これです」

 

「…それでは始めます」

 

必要事項を終えて、強化が始まる。

カンッカンッと音が鳴り出すとアスナはミトとツキノワの手を握り出す。

 

「「アスナ(先輩)?」」

 

突然の事に驚くと

 

「…2人の幸運も分けて」

 

と言うので2人は笑って

 

「「了解」」

 

優しく握り返した。

 

「じゃあ、俺も」

 

と言ってキリトがツキノワと肩を組む。

 

「なぜ俺と組むんだよ?そこはアスナ先輩だろ」

 

「俺がアスナに触るとハラスメ『バギーーーーーン!!』ん?」

 

キリトとツキノワが寸劇始めるまさにそのタイミングで何かが砕ける音がした。

全員がそっちを見ると

 

「「「「…え?」」」」

 

ウインドフルーレが粉々に砕け散っていた。




という訳で2層攻略開始です。
3層ぐらいまではやりたいなと思っております。 それではありがとうございました。


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11話

全く話が進みませんがよろしくお願いします。


sideアスナ

 

「「「「…え?」」」」

 

今、何が起こったの?砕けた?

私のウインドフルーレが砕けたの?

あまりの光景に何が起こったか分からず呆然としてしまう。

 

「すみません!すみません!手数料とかは全て返します!本当にすみません!」

 

「ち、ちょっと待ってくれ!武器の強化失敗はプロパティの入替、強化素材のロスト、最悪プロパティ減少、この3つだろ!?これはどういう事なんだ!?」

 

いち早く正気を取り戻したキリト君が何か喚いてる。

だけどほとんど耳に入ってこなかった。

 

「先輩!?大丈夫ですか!?」

 

「アスナ!しっかり気を持って!」

 

ツキノワ君とミトが両方から私を支えてくれる。

でも凄い喪失感が身体中を包む。

どんどん身体が冷たくなって沈んでいくような感覚に襲われる。

あの子とならどこまでも行ける気がした、なのにここにはもういない。

剣士で無くなった私はどうなるのだろう?

みんなに置いてかれるのだろうか。

そう考えて、あの1人で絶望していた時の感覚が思い出された。

 

「…いて…いで…」

 

「…キリト。話はどうなった?」

 

「とりあえず手数料は返してもらった」

 

そう話し声が聞こえて、私の前にトレード画面が表示される。

私は機械的にそれを受け取りそのまま呆然としている。

 

「先輩、1度宿に行こう?」

 

そう言って優しく手を引いてくれるツキノワ君と背中をさすってくれるミトに宿まで連れていってもらう。

部屋に入る前にツキノワ君が私の両手を強く握った。

 

「先輩!俺は先輩を置いて行かないから!ずっと傍にいるし、先輩にはずっと傍にいて欲しい!俺はどれだけ遠くに行っても、必ず姉貴と明日奈先輩の所に帰ってくるから!だから…」

 

ここまで言って一息つくと

 

「行ってきます!明日奈先輩!」

 

その言葉が私を温かく包み込んでくれる。

彼の握ってくれている手から温かい熱が伝わってくる。彼の優しく強い目が私を見てくれている。

その事が凄く嬉しくて仕方なかった。

 

「…うん。いってらっしゃい優月君」

 

きっと彼はまた無茶をするのだろう。

それでもきっと大丈夫。だって約束してくれたから。

 

「じゃあ深澄、行ってくる。明日奈先輩をよろしく!」

 

「分かってるわ。いってらっしゃい。優月達こそ気をつけない」

 

「それこそ分かってる!」

 

そのまま飛び出す優月君。

それを見届けてから私達は部屋に入った。

入った途端ミトが顔を覗き込んできたと思ったら、突然ニヤニヤしだした。

何やら嫌な予感がしたが聞かずにはいられなかった。

 

「…何?」

 

「いや〜?顔色が良くなったどころか、顔が真っ赤よアスナ、多分過去一で!それに凄いニヤケ顔!そんなに嬉しかった?」

 

そう言われ思わず手鏡で確認してしまう。

そこには自分とは思えないくらい乙女の顔をした自分がいた。

 

「〜っ!深澄!見ないで!」

 

そう言って布団を頭まで被って隠れる。

そんな私の背中を優しくさする深澄。

 

(やっぱり私は優月君が好きなのだろうか?)

 

そんな事を悶々と考えながら、私達は何も言わず、2人を信じて待っていた。

 

sideツキノワ

 

「キリト!いるんだろ!」

 

フレンドリストから場所確認をして路地裏に来た俺は、どこかにいるであろうキリトを呼んだ。

そしたら奥にある角から手が出てきて、手招きしていた。それに従いそっちに向かうとキリトともう1人、見慣れない女性プレイヤーがいた。

 

「キリトおまたせ。そっちが噂の情報屋の鼠か?」

 

「オウ、オレっちが鼠こと【アルゴ】だヨ!ヨロシクなツキノワ!」

 

初対面の人にいきなり名前を呼ばれて驚く。

なるほどこれが情報屋か。

 

「俺なんかの名前を知ってるなんて流石だな」

 

「何言ってるんダ?ツー坊は有名人だゾ?世界でたった1つのユニーク武器を持ち、防戦とはいえボスと1人で渡り合った剣技の持ち主だしナ!それにアーちゃんに続くニュービー期待の新星だしナ!」

 

何やらもの凄く恥ずかしいこと言われた気がする。オマケにへんなあだ名までつけられたがもう気にしないことにした。

 

「それで?状況は?」

 

「まずアルゴの調べた結果を聞くぞ。アルゴ、どうだったんだ」

 

お互いの自己紹介が終わりキリトが先を促した。それ途端急に真面目な顔に変わったアルゴにつられ俺も真剣に聞く体勢をとった。

 

「まず同様の事件がないか調べた結果、既に7件起きていたヨ」

 

「7件も!?」

 

「マジか…」

 

俺もキリトもこれには驚いた。

それだけ起きていて何故表立ってないのだろうか?

そのままアルゴの話は続く。

 

「それと、強化した時に武器が壊れる現象だか、1つだけ条件がある事が分かったんダ」

 

「その条件って何だよ!?」

 

思わずアルゴに詰め寄ってしまう。

そんな俺をキリトが慌てて止める。

 

「落ち着けってツキノワ!それでアルゴ、その条件って?」

 

「お、オウ…その条件っていうの八…【エンド品】を強化した時なんだヨ」

 

聞き慣れない言葉が出てきたのでキリトに聞いてみた。

 

「エンド品って何?」

 

「エンド品っていうのは強化可能回数を使い切った武器の事を言うんだ。例えばツキノワのイビルファングの強化可能回数は10回だろ?だからMAXで +10って事になるんだ。だが失敗も1カウントされる。そういうのも含めたのが、強化可能回数なんだ」

 

なるほど分かりやすい、でもおかしい。

 

「先輩のレイピアはまだ回数は使い切ってないだろ?」

 

「ああ、つまりこれは…」

 

「エンド品とすり替えての強化詐欺事件って事ダ」

 

俺たちにとって剣は相棒であり、半身と言っても差し支えない。

そんなものを騙し奪い取るなんて言語道断だ。

拳を握りしめ、頭に血が登るのを必死に抑えていると

 

「鍛冶屋が動いたぞ」

 

キリトの声にハッと顔を上げ、3人で後をつけていくと、普通の居酒屋に着いた。

なんて鍛冶屋が向かったのはある集団だった。

 

「あいつら、今日のボス攻略にいた連中だ。確か…」

 

「レジェンドブレイズだ!あいつら急に出てきた連中だとは聞いたけど、そういう事かよ!」

 

あいつらのご大層な装備を見ていると、ある事に気づいた。

 

「なあ、壊れたのはエンド品なんだよな」

 

「ああ」

 

「て事は先輩のレイピアは壊れてないって事だよな」

 

「ああ、それが?」

 

「所有権はどうなるんだ?」

 

そう、装備は落としたり盗まれたりしても、1時間以内なら所有権は残っているのだ。

 

「…!そうだ!所有権はまだアスナにある!まだ取り戻せる!」

 

「でも後10分ぐらいだぞ!どうするんだよ!?」

 

「【コンプリートリィ・オールアイテム・オブジェクト】だ!それならギリギリ何とかなる!」

 

そう言いきってから一気に街を駆け抜けるキリト。

 

「俺も行く!アルゴ監視を頼む!」

 

そう言って俺も近道の為に裏路地に駆け出す。

色々ごちゃごちゃした路地裏だったがパルクールをやっている俺はどんどんペースを上げて駆け抜ける。

宿の前に着く時にはちょうどキリトも着いたらしく

 

「速!?どこから来た!?」

 

などと大袈裟に驚くキリトを無視する。

 

「速く行くぞ!時間がない!」

 

2人で階段を駆け上がり部屋に飛び込む。

突然の俺達の帰還にミト達は凄く驚く。

 

「あなた達!?突然何!?」

 

「ごめんミト!話は後!ツキノワ!時間は!?」

 

「後5分!ギリギリだぞ!」

 

「分かった!アスナ!今は俺の言う事を聞いてくれ!」

 

そう言ってどんどんメニューをいじる。

そして

 

「それだ!イエーーーース!!!」

 

ポチッとタップする。

 

「何してるの?キリトは」

 

「【コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェクタイズ】だって」

 

「コンプリートリィ?」

 

「コンプリートリィ!」

 

アスナ先輩の疑問にキリトが元気に答える。

 

「オールアイテム?」

 

「オールアイテム…っ!」

 

ミトの疑問に俺が答え時その意味に気づいた俺は、慌ててキリトの襟首を掴み部屋を出ようとする。

 

「キリト!早く部屋を出るぞ!ミト!後でメッセージ送るからあと頼む!」

 

「ぐぇ!?ツキノワ!何すんだよ!」

 

「いいから大人しく出なさい!このバカキリト!」

 

俺達の姉弟の連携に、強制退室させられるキリト。

 

「何すんだよ!ツキノワ!?」

 

「バカかお前は!?オールアイテムって事は服とかも出るって事だろうが!」

 

「…あっ」

 

やっと意味を理解したキリトは顔を赤くする。俺はミトにメッセージを送りながらため息をつく。

 

「はぁ…差し入れでも買いに行くぞ」

 

俺はキリトを連れてそのまま差し入れを買いに出かける事にした。

 

outside

 

コンコンッ

 

「ツキノワとキリトだけどもう大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

アスナから返事を受け部屋に入るツキノワとキリト。

アスナとミトはベッドの上に腰をかけており、2人ともご機嫌そうだった。

 

「2人とも、本当にありがとう!」

 

「一時はどうなると思ったわよ…二重の意味で」

 

ジト目で男子2人を睨むミト。

 

「俺は言葉しか知らなかったし」

 

「時間が無かったから焦ってたし」

 

「仲良く言い訳しない!」

 

ツキノワとキリトは言い訳するものの、ミトにまとめてバッサリ切られる。

 

「まあまあ、ミト…それより一体何がどうなってるの?」

 

ミトを宥めながらアスナがもっともな疑問を口にする。

「その説明はアルゴが来てからするとして、まずはこれ食べましょう!」

 

ツキノワがそう言って出したのは肉まんみたいものだった。

 

「何これ?ベータにこんなのあったっけ?」

 

「いやなかったぞ。次の街の名前にもなってる【タラン饅頭】だとよ。きっと肉まんじゃないか?」

 

キリトがそう言いながら、食べようとした瞬間

 

「うにゃぁ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「んん!?」

 

3人の悲鳴じみた声が聞こえ何事かと見た瞬間、

 

「ん…んゅう…」

 

「何…クリーム?」

 

「アッツ…」

 

それぞれ左からアスナ、ミト、ツキノワである。

顔にベッタリ着いているのはクリームなのだが、妙に色っぽい景色に思わずフリーズするキリト。

その時ガタンッ!!と何が落ちた音がする。

音の方に振り向くと

 

「あ、アーちゃん達に…き、キー坊のガ…!?一体何が…いや待って本当に何がどうなってるの??」

 

アルゴが口調を変えるのを忘れるくらい動揺していた。

 

「待てアルゴ!?ちゃんと説明するから!?するから話を聞いてーーー!!」

 

 

アルゴが合流したところでツキノワ達は事情説明に入った。

 

「なるほど、そういう事ね。随分手の込んだ事をしてるのねあいつら」

 

それを聞いたミトが吐き捨てるように呟く。

 

「アルゴ。あの鍛冶屋の名前は分かる?」

 

「ああ、あいつの名前は【ネズハ】ダヨ。スペルはNezhaダ。他にもナーザという読み方もあるんダ」

 

「ナーザ…ナタクの事だな。立派なレジェンドブレイズだ」

 

ツキノワ達の予感は当たりらしい。

問題はその手口だ。

 

「あのカーペットって何なんだ?」

 

まずツキノワが目をつけたのはカーペットだった。

何もヒントがない以上手当たり次第に探るしかない、そう考えていたのだ。

 

「あのカーペットは専用のメニューがあって、カーペット上にあるアイテムをそのメニューに一気に入れられるのよ」

 

「うーん、それにしてもかなり敷き詰められてた様な…」

 

「確かにかなりあったな。あれじゃあ、カーペットそのものも見えない気が…」

 

「…カーペットそのものが見えない…?」

 

 

「カーペットの機能を使って搾取する事は出来ないの?」

「多分無理だゾ。あれは全部収納しちまうからナ。その中からすぐに1つのアイテムだけをすぐに取り出すのは至難の業だゾ」

 

みんながあれこれと議論する中ただ1人、ミトだけは最初以外黙り込んでずっと考え込んでいた。

 

「…ミト?どうした?」

 

その様子に気づいたツキノワが声をかけ、それに全員が注目しているが、それでも思考を止めない。

やがて

 

「…すぐに…取り出す…あぁぁぁぁ!!分かった!」

 

突然大声をあげるミトに全員が驚く。

 

「あったわよ!武器をすぐに変える方法!」

 

「お、おうその心は?」

 

「【クイック・チェンジ】よ!!」

 

「「…!そうか(カ)!そういう事か(カ)!」」

 

キリトとアルゴも理解したらしいが、ビギナーであるアスナとツキノワには全く分からなかった。

 

「ちょっと待った!テスター同士で話を進めるな!」

 

「そうよ!クイックチェンジって何よ!?」

 

「ああ、すまないナ。クイックチェンジっていうのは簡単に言うと、予め登録しておいたアイテムをすぐに装備するスキルの事ダ。例えばツー坊が曲刀を弾かれた時、すぐに別の武器に変えれたら便利だロ?それを可能にするのがクイックチェンジなんダ」

 

「なるほど…でもそれがどう関係するんだよ。システム的に武器を手に入れた訳では…」

 

「ところがそうじゃないんだ。ネズハは客から預かったものをアイテムストレージに入っていなくても、手にすることで一時的に自分の物として扱えるんだ。もちろん所有権は客にあるんだけど、戦ってる最中に仲間の武器を使えるのと同じで、クイックチェンジを使うことも出来るんだ」

 

「でもその操作画面はどこにあるの?」

 

「それは恐らく敷き詰められた武器の下よ。そうすればこっちからは見つけにくいわ」

 

1つ分かれば後はトントン拍子で解決していく。彼らの推理はどんどん現実味を帯びてきて仮説として充分なものとなって来ていた。

 

「後は誰が囮をやるかだけど…頼む!キリト!」

 

「はぁ!?なんでだよ!?」

 

「私は分かってても、もう勘弁よ…」

 

「私とツキノワは武器が特殊すぎてすぐにバレるわ」

アスナは心情的理由、ミトとツキノワは装備的理由で目立ちすぎるのだ。

つまり消去法でキリト以外にいないのだ。

反論の隙がないことを唸っていたキリトはやがて

 

「分かったよ…俺がやるよ…」

 

諦めて囮役を引き受けた。

ちなみにキリトは既にクイックチェンジを取得している事も1つの理由である。

 

「強化を頼む。種類は丈夫さ。素材は持ち込みだ」

 

フルプレートの男が自身の武器を鍛冶屋に突きつけた。

 

「かしこまりました。…それでは始めます…」

 

カンッカンッカンッと鉄を打つ音が10回ほどなった時剣が、砕け散った。

 

「す、すみません!すみません!」

 

「…いや、謝罪は結構だ」

 

そう言って装備を全て一瞬で入れ替えた。

そこには1人の少年の姿があった。

 

「…!あなたは…!」

 

「驚くことは無い。あんたがやった事と一緒の事をしただけだ」

 

その時鍛冶屋の後ろに何かが落ちてきた。

慌てて振り向くとそこには紫色の髪をした少年がいた。

 

「そういう事だ。さて鍛冶屋ネズハ」

 

「「署までご同行願おうか」」

 

そうして2人の少年、キリトとツキノワは犯人に対し強く宣言した。




後2話くらいで終わらせたいですね…
アスナが少しづつ自覚してきました。今後どうなるやら。
ありがとうございました。


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12話

すみません。前に後2話くらいって言ったけど、まだ続きます。それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「さて、話を聞かせてもらうか」

 

俺達いつもの4人+アルゴの5人はネズハへの事情聴取を始めた。

 

「…僕達レジェンドブレイズは他のゲームで出来上がったチームなんです。ランキングでは常に上位にくい込んでいた実力派ギルドなんです。そんな時です。SAOの話を聞いたのは」

 

ポツポツと語り出すネズハだがキリトはそこには触れず、もっと核心的な部分に触れてきた。

 

「何故、こんな事をした。何故こんな犯罪に手を染めた!?」

 

「ちょっとキリト!落ち着きなさい!」

 

ミトが慌てて制止しようとするもそれでもキリトは止まらない。

 

「落ち着いてなんかいられるか!もし犯罪に手を染めても何とも思わない連中が、トップギルドになってみろ!誰も手を出せなくなるぞ!そうなれば何もかもがこいつらの「「キリト(君)!」」ってなんだよ!?」

 

キリトの言葉を強引に止めたのは俺とアスナ先輩だった。

 

「キリト、多分それは違うと思うぞ」

 

「はぁ?どういう意味だよ!?」

 

「あいつらの装備を見て思い出したんだけど、前にミトから聞いたんだ。あいつらはレベルは低いけど装備がいいって。で、実際ボス戦の戦ってる所を見たけど連携もいいんだ。つまりあいつらは、装備と連携に対してレベルが追いついてないんだ」

 

「それと、ネズハさんこれ」

 

先輩がテーブルに見慣れないナイスを突き刺した。

 

「アスナ、それは…あの時の?」

 

「そう、ミト2人でレベリングしてた時に見つけたやつ。…ネズハさんこれ、取ってもらえない?」

 

先輩はよく分からない事を言い出した。

ネズハは恐る恐るナイスを取ろうとして…その手は空振ってしまった。

 

「「「「な!?」」」」

 

先輩以外全員が驚くなか、先輩だけは分かっていたのか冷静だった。

 

「やっぱりあなた…目が…」

 

「…見えない訳ではないんです…。ただ…奥行きが…掴めなくて…」

 

それって…まさか…

 

「っ!FNCカ!?」

 

アルゴの声に頷くネズハ

。先輩はその言葉が分からなかったのか俺に意味を聞いてきた。

 

「…FNCって何?」

 

「【Fulldive・Non・Connecting】の頭文字の略です。意味はフルダイブ不適合。フルダイブする際、五感のどこかに何らかの障害が発生してしまうんです。最悪の場合、フルダイブそのものが出来なくなります。彼の場合、恐らく目の異常で奥行きが掴めないって所でしょうね」

 

2人で話しているとちょうど同じ所を話していたネズハ達が先の話の続きを話していた。

 

「最初は僕も戦闘職を目指したんです。そのために投擲スキルを鍛えたんですけど…」

 

「あれはあくまで、戦闘中のサポート的な役目のスキルだから、メインには向かないのよね。それこそ戦闘中のボスの目玉にナイフを投げつけるなんて、ツキノワ以外には出来ないわ」

 

「あれは俺も驚いた…」

 

「…あれってそんなに難しいんだ」

 

「さ、流石弓道部だね…」

 

「お前たチ、話が脱線してるゾ」

 

話が脱線しだした俺たちをアルゴが引き止める。

 

「…凄いですねツキノワさんは。ミトさんの言う通り、とても実戦向けのスキルじゃなくて、2週間で諦めてしまったんです。その時には既に攻略に乗り遅れていて、かなり険悪な空気だったんです。そんな時です。あいつが声をかけてきたのは」

 

「…あいつ?」

 

思わず俺は聞き返す。

ここで第三者が出てくるとは思ってなかったのだ。

他の4人も驚いたのか一気に場が引き締まる。

 

「どんな奴だ?」

 

「黒い雨合羽みたいなのを着ていて、顔は見えませんでした。いや、刺青みたいなのがほんの少し見えた様な…後凄く綺麗な笑顔で笑ってました。まるで映画見たいな…」

 

黒い雨合羽に顔には刺青有りかも、綺麗な笑顔か…特徴をしっかり記憶しておき、先を促した。

 

「話の続きを」

 

「『そいつが戦闘スキル持ちの鍛冶屋になるなら、すげぇクールな稼ぎ方があるぜ?』そう言ってこのやり方を教えてくれたんです。その後何も見返りを求めずに、ただ『GOOD LUCK』って言い残して消えたんです」

 

「…それで言われるがままに手を染めたのか」

 

「最初はみんな否定的でした。でもあいつと話してからかどんどんみんなのり気になりだして、誰かが言ったんです。『ここはネットゲームの中だ。やっては行けない事は初めから出来ないようになってるんだ』って。僕自身もみんなのお荷物になるくらいならって思えてきて…」

 

「ふざけないで!!そんなの詭弁よ!!」

 

「そうよ!その理屈だと圏外で人を…っ!!」

 

アスナ先輩の言葉が詰まる。

その先の言葉を口にしたくないのだろう。

 

「…初めて教えてもらった通りに詐取をした時…すり替えられたエンド品が砕けた時のお客さんの顔を見てようやく気づきました…。こんなこと、たとえシステム的に出来ても絶対にしてはいけない事だって…そこで剣を返して、何もかも打ち明ければよかったんですが…そんな勇気もなくて、せめてこの一回限りで、そう思いながらみんなの所に戻ったんです。そうしたら、みんなが僕の騙し取った剣を見て凄く…褒めて…くれて…僕は、僕は…!」

 

頭を強く打ち付けるも圏内なのでHPは減らない。

それを繰り返していると

 

「僕にはもうこれしか…償う方法は無い…!」

 

ネズハがそう言って窓に向かって走り出した。

俺たちは慌てて追いかけて、比較的AGI値の高いアスナ先輩と俺が、ギリギリで追いつき何とか足を掴んだ。

 

「ふっざけんな…お前はそのまま、そんなクズで終わる気か!?死んで逃げようなんて甘いんだよ!!」

 

「あなたも勇者になりたいんでしょナーザ!!だったらこんな所で、こんな風に死ぬんじゃなくて」

 

「「戦って、戦場で死になさい(死ね)ナーザ!!!」」

 

そう言って2人がかりで全力で中にぶん投げる俺たち。

中のテーブルに当たったのか鈍い音が聞こえたが気にしない事にした。

肩で息をしながら座り込ん出るとミトが俺達の肩を叩いて労ってくれた。

 

「お疲れ様、2人とも。よくやったわ」

 

「…ミト達がやってよ。私達よりSTR値は高いんだから」

 

「だって間に合わなかったんだもの」

 

「脳筋め」

 

そんな風に悪態ついているとキリトはある物を取り出した。

 

「ネズハ、今あんたのスキルはなんだ」

 

「【投擲スキル】、【所持容量拡張】、【片手武器作成スキル】です…」

 

「そうか…なら勇者ナーザよ。もしお前に使える武器があると言ったら、【片手武器作成スキル】…鍛冶スキルを捨てる覚悟はあるか」

 

outside

 

事情聴取から3日後、ツキノワとキリトは2層フロアボス戦に向かっていた。

 

「あいつら、ムキになりやがって…」

 

「まあまあ、キリト落ち着けって」

 

勝手な行動でムスッとするキリトとそれを宥めるツキノワの元に1人の人物が近づいてきた。

 

「おう、お嬢たちはいないのか?」

 

「エギルさんどうも。まあちょっと諸事情ありまして…」

 

1層のボス戦の時に手伝ってくれたエギルに穏やかに対応するツキノワ。

その様子にキリトが驚いており、それを見たツキノワがキリトに尋ねた。

 

「…なんだよ」

 

「いや、お前が俺達以外にツンケンしてないの初めて見たから…」

 

「俺だって最低限の人は選んでるわ!エギルさん達は信頼出来る人達だからな」

 

「目の前でそう言われるのは少し気恥しいな…お前たち2人だけなら俺達とパーティ組まないか?」

 

エギルの突然の提案に驚く2人。

 

「え?エギルさんは既にパーティメンバーMAXじゃあ…」

 

「実は諸事情あって2人出られなくてな。ちょうど空いているんだ」

 

「…その2人がいいって言うなら」

 

キリトが遠慮がちに聞いてみたがその2人は快諾してくれたので、ツキノワとキリトはエギルのパーティに入れてもらう事にした。

そんな中、ボス戦の最終確認が行われる。

今回の指揮権もリンドだ。前回のエリアボス戦の後、キバオウとリンドの間に取り決めが出来ており、その取り決めに従っての人選だ。

ボスは2体、【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】と【ナト・ザ・カーネルトーラス】だ。

彼らH隊はG隊と共に【ナト・ザ・カーネルトーラス】、通称ナト大佐の相手を務めることになっていた。

 

「今更だけど、2パーティで中ボスとかハードすぎね?」

 

「全くをもって同意だな。骨が折れるなこれは…ところでG隊ってどこだ」

 

「ああ、それならあいつら…って向かってきたな」

 

キリトの疑問にエギルが指を指して答える。そこにいるのはレジェンドブレイズだった。

 

「私はG隊レジェンドブレイズのリーダーオルランドである。H隊のリーダーはどなたか?」

 

「俺だ。エギルってもんだ。よろしくな。こいつら2人は今回だけの臨時パーティだ。黒髪がキリト、紫の髪がツキノワだ」

 

「「…よろしく」」

 

「よろしく頼む。卿らは既に2つ名があるのだとか。確か…【ブラッキー】と【舞闘家(ダンサー)】とか。よろしく頼むぞブラッキー殿、ダンサー殿」

 

「「…はぁ!?2つ名って何だよ!?」」

 

余りにも突然のカミングアウトに驚く2人。

自分たちがそんな有名人とは思ってなかったのだ。

 

「やれやれ…今更かよお前らは…。全身黒づくめの格好からブラッキー。ボス戦で見せた立ち振る舞いからつけられたダンサー。これらが密かにつけられてたんだぞ」

 

驚きのあまり完全にフリーズしていると

 

「それではしゅ「待ってくれ」なんだエギルさん?」

 

出撃しようとしてるリンドをエギルが止める。

 

「前回、俺達はベータの情報を鵜呑みにしてディアベルを失った。まさか同じ事を繰り返す気はないよな?」

 

「…当たり前だ。攻略本と違う点が出た時点で即撤退。これで行くつもりだ」

 

「分かった」

 

「…よし!それじ「ちょう待ってんか」今度はなんだ!?」

 

今度はキバオウが止める。

 

「エギルはんの言う通り、攻略本を鵜呑みにするのは危険や。せやから…ここに1度ボスと戦った奴がいるならそいつの話を聞く手はないやろ。百聞は一見にしかずってやつや」

 

そう言ってキバオウはキリトを見る。

みんなの視線がキリトに集中する。

キリトはその視線にかなり緊張しながら話し出した。

 

「あくまで参考程度に留めてくれ。ベータ時代とは、全くの別物の可能性もあるからな。…まずボスのパターンはMOBと大差なかった。ただし、ナミングを2連続で食らうのは避けてくれ。スタンが麻痺に変わる。麻痺ったやつの最後は…」

 

そこまで言って言葉を止める。

みんなその先が分かったのか誰も何も話さなかった。

 

「ナミング2連続は絶対受けたらあかん。そういう事やな。…それだけ分かれば充分や。みんなちゃんと聞いとったな!ほな 行くで!」

 

キバオウはキリトの話を話をまとめて突撃指示を出した。

 

「お、おい待て…!全員突撃!」

 

慌ててリンドが号令を出してボス部屋に突撃する。

第2層フロアボス戦の始まりだった。




次回はボス戦を書けたらなっと思ってます。
3層どうしよう…かなり時間がかかりそうだな〜これは…


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13話

2層ボス攻略開始です。
今回曲刀ソードスキルはホロウフラグメントを参考にしました。よろしくお願いします。


outside

 

「ヴモォォォォォォォォ!!!」

 

「3連撃来るぞ!」

 

キリトの指示が戦場に木霊する。

その指示をしっかり聞き、3連撃をやり過ごすパーティメンバー達。

3連撃を終えたナト大佐は技後硬直で動けなくなる。

 

「今だ!」

 

キリトの声に1番速く飛び出したのはやはりツキノワだ。

 

「フッ!!」

 

この2層でその力を遺憾無く発揮させてきた愛刀イビルファングで、突撃系ソードスキル【フィル・クレセント】を叩き込む。

 

「シッ!!」

 

更に技後硬直を打ち消すために体術スキル【閃打】を打ち込む。

 

「ハッ!!」

 

その後ソードスキル【リーパー】を発動する。

 

「オ…ラ!!」

 

踏み込んだ足を軸に今度は【水月】を放つ。脇を蹴り飛ばしたところで技後硬直が終わり、ツキノワに狙いをつける大佐。

 

「また3連撃来るぞ!」

 

キリトの声にツキノワは、バックステップで距離をとる。

その瞬間またも放たれる3連撃。

3撃目が終わるのと同時に着地するツキノワ。

ふわりと着地したと思えばまた踏み込もうとする。

 

「1人で終わらせるなよ!」

 

「そうだぜ!俺らもいることを忘れるな!」

 

「流石ダンサー殿だ。我々も負けられない!レジェンドブレイズ!出撃する!」

 

そう言いながら飛び出す面々に、思わず苦笑いを浮かべる。

 

「ハァァ!!」

 

キリトが速度を乗せてソードスキルを放つ。

 

「おおお!!」

 

それを受け体制を崩したところにエギル達の強烈なソードスキルをくらう。

 

「ヌン!!」

 

反撃に出た大佐の攻撃をレジェンドブレイズが全て防ぎ、

 

「隙あり!!」

 

硬直した所をツキノワが畳み掛ける。

そういう流れを続ける事十数分、3本あったHPバーも最後の1本の半分を切ったところで大佐がバーサクモードに突入した。

 

「ヴモォォォォ!!!」

 

「バーサクしたぞ!気をつけろ!」

 

「我らが引き受けよう!」

 

ツキノワの声にレジェンドブレイズが反応しタゲをとる。

 

「こっちはあと一息だな」

 

「ああ、即席パーティだが上等だな。問題は…」

 

キリトとツキノワは現状を確認し、本隊に目を向ける。そこでは【バラン・ザ・ジェネラルトーラス】、通称バラン将軍に苦戦する本隊の姿があった。

 

「か、回避ーー!回避ーー!」

 

リンドの焦った指示が聞こえるが、何人かが逃げ遅れ、スタンする。

他のメンバーが慌てて安全圏に引きづって行き回復させている。

 

「…ちょっとまずいか…?」

 

「キリト、撤退を進言してきてくれ。俺だと余計な事を言いそう」

 

「…了解。ここは任せたぞ。兄弟」

 

「OK。しっかりやっておくぜ兄弟」

 

拳を合わせながらキリトを送り出すツキノワ。

振り返って大佐を睨む。そろそろ大暴れが終わりそうな大佐に、全身をリラックスさせ、腰を落とした。

 

「エギルさん、行ける?」

 

「当たり前だ。行くぞ!」

 

「3カウント!3…2…1…スイッチ!」

 

ラッシュが終わった瞬間H隊とG隊が入れ替わる。

ツキノワが先陣を切って駆け出す。

振り下ろさせる大佐のハンマーをサイドステップで軽やかに躱し、

 

「はぁ!!」

 

ツキノワはその腕に通常攻撃を放つ。

左逆袈裟・正面に切り下ろし・突き・突いた剣をそのまま右に薙ぎ払いながら、踏み込む。

ただの通常攻撃でも桁違いの性能を誇るイビルファングなら、ダメージ量はかなりある。

目に見えて減るゲージ。

 

「オラァ!!」

 

そこに続いてエギル達のソードスキルが大佐に放たれる。

エギル達を振り払おうと攻撃する大佐を後ろから

 

「シィ!!」

 

ソードスキル【ファラント・フルムーン】で攻撃して中断させる。

その衝撃でタゲをツキノワに向け、そのまま【ナミング・インパクト】を放つもツキノワは、先読みしあっさりと躱す。

今度は回復を終えたレジェンドブレイズが突撃し、タゲをそちらに集めさせる。

その隙にツキノワ達が回復を行っているとキリトが帰ってくる。

 

「後1人スタンしたら撤退するって」

 

「了解こっちは変わらず順調だ」

 

「…なあ、お2人さん。ちょっといいか?」

 

キリトの話を聞いてるとエギルが深刻そうに尋ねてくる。

 

「どうしたの?何か問題でも?」

 

「問題というか疑問だ。第1層ではロード…つまり君主だろ?何故2層になって将軍と大佐に格下げされたんだ?」

 

その疑問に答えるように突然ガコンッと大きな音がした。

何事かと3人が振り返ると中央の床突然下にズレだした。

少しして今度は上昇しだす。

そこにはエギルの質問に対し、最悪の形で答えが出てきた。

 

「…【アステリオス・ザ・トーラスキング】…」

 

これまでで最も大きい、トーラス族の王がそこにいた。

 

sideツキノワ

 

「クッソが!悪趣味にも程があるだろ!!」

 

思はず汚い言葉で悪態つく。ここに来て大本命、3体目のボスとかシャレにならない。

 

「マズイぞ!本隊が挟み撃ちだ!速く助けに行かねぇと!」

 

「違う!大佐が先だ!先に取り巻きを倒す!」

 

エギルさんが慌てて本隊を助けようとするも、キリトがそれを止める。そうだ、逃がすためにも先に余計な障害は排除しないといけない。

 

「G隊、H隊!全力攻撃!!!」

 

「回避不要!防御不要!要するに」

 

「「ゴリ押せ!!!」」

 

俺とキリトの号令によりそれぞれが最大火力のソードスキルで一気に大佐のトドメを刺す。

 

「すぐに本隊に合流!このまま将軍を倒す!」

 

そのまま止まらずにすぐに本隊に向かう俺達だったがその時俺は王が変な行動をしているのに目がいく。

 

「何してる、あいつ…?」

 

仰け反り、胸を張る。まるで何かを溜めてるような…

 

「…っ!まさか…!?」

 

嫌な予感がした瞬間、白い光がが本体に向かって放たれる。

それはモンスター専用の遠距離攻撃。

俺達ではどう頑張っても出来ない技。

それは

 

「ブレス攻撃!?」

 

キリトも同じ考えなのか、あまりの衝撃に動きを止めてしまう。

そんな仲間達に俺は声を張り上げて発破をかける。

 

「ぼさっとするな!!エギルさん、スタンした連中を助けて!残りは将軍を倒すぞ!」

 

「…っ!了解!レジェンドブレイズ!行くぞ!」

 

「了解した!全員突撃!」

 

「shit!すまねぇ!俺とした事がビビっちまった!!おら、お前ら!タンクの意地を見せるぞ!」

 

それぞれが己の役目を果たすために動き出す。

 

その時王がまた同じ予備動作をする。

 

「…っ!クッソ!!キリト!将軍を頼む!」

 

「待てツキノワ!?1人で行く気か!?ツキノワ!!」

 

キリトの静止を振り切り、王に切り込む。

仰け反ることで足に登る道ができる事に気づいていた俺は、そこを登り一気に頭まだ駆け抜ける。

 

「くらえ…っ!!」

そこにある冠に【ファラント・フルムーン】を全力で打つ。

そこが弱点だったのが大きくHPを減らしながら膝を着く王。

 

それはそのまま飛び降りて正面で構える。

 

「キリト!タゲは俺がとる!その間に倒してくれ!」

 

「…絶対に死ななよ!ツキノワ!!」

 

そんな話をしていると立ち上がる王。

俺はその様子を静かに、油断なく見ていた。

 

「…おら、来いよ」

 

「ヴモォォォォ!!!」

 

その挑発が聞こえたのか大きな雄叫びを上げながら腕を振り下ろしてくる王。

それを容易く避け、通常攻撃を食らわせる。

それを食らいながらニヤリと笑う王。

確かにHPは減っているが、総量が大佐の倍ある6本。

トータル的に見ると微々たる量なのだ。

そんなことを解析しながら確実に削っていく。

そんな時王の腕が刺さって抜けなくなった。

その隙にソードスキルで連発させる。

更に後ろに回り混んで攻撃しようとした瞬間

 

「…え?」

 

突然視界が高くなる。

背中に違和感を感じながら宙を待っている事を自覚する。

ボスの方を見るとしっぽがユラユラ揺れていた。

 

「…しっぽ…」

 

ふと上が暗くなったので上を見ると、ボスの平手が俺に迫っていた。

 

「…っ!?」

 

咄嗟にソードスキル【フィル・クレセント】で少しでも逃げようとするも、間に合わずそのまま床に叩きつけられた。

 

「ガッハッ…!!」

 

すざましい衝撃に呼吸が出来なくなる。

そのままバウンドしながら吹き飛ばされ、HPもグリーンだったのが一気にレッド半ばまで減る。

しかもスタンが入ってしまい、身体が動かせない。

 

「ツキノワ!?」

 

慌ててキリトが俺を回収してくれるが王がこっちに向かってブレスの予備動作をとる。

このボスのブルスは横には狭いが縦には長いから、この距離でも充分射程圏内だ。

キリトをつき飛ばそうにも身体が動かないから何も出来ずキリト共々巻き込まれるしかない。

そう思っていた時だった。2つの閃光が王の眉間を貫いた。

 

「ヴモォォォォォォォォ!!!」

 

「…何が…?」

 

思わず呟くツキノワ。

喋れるようになってる事にも気づかなかった。

その閃光の方を睨む王に対し

 

「「この…!見るな!!」」

 

空中サマーソルトをお見舞する2人の女性プレイヤーがいた。

その姿を見て俺達は何者かを確信する。

 

「あれは体術スキル【弦月】!って事はまさか!」

 

「姉貴!!アスナ先輩!!」

 

「「ツキノワ(君)!キリト(君)!おまたせ!大丈夫!?」」

 

outside

 

アスナ達はツキノワたちの前に降り安否を確認する。

 

「俺は大丈夫だけど、ツキノワが!?」

 

「俺ももう大丈夫だ。スタンも解けたし体力もある程度回復した。俺もすぐ王の所に戻るから速く将軍を「ダメだ!!」!?」

 

ツキノワは黄色まで回復したHPを確認しつつ、速くタゲを取りに行こうとするツキノワをキリトが強く止める。

 

「今まで死にかけてたんだぞ!?必要な事だったとはいえ、これ以上は無茶だ!!」

 

「そうよ。ここからは私達に任せて!」

 

「貴方は回復に専念して!…私は貴方の姉なのよ?ここからは私に任せなさい」

 

キリトには肩を強く握られ、アスナには頭を撫でなれ、ミトには頬を撫でられるツキノワ。

体の力が抜けてしまい、つい腰を落としてしまった。

 

「…ごめん、出来るだけ速く戻るから任せていい?」

 

「「「当然!」」」

 

3人に託して安全圏で休むことにしたツキノワと、それぞれ託された3人は自分達のやるべき事を確認する。

 

「俺は将軍を倒すから2人は王のタゲを頼む」

 

「「了解!」」

 

そう言ってそれぞれ飛び出した。

 

sideキリト

 

「エギル!ブレイズ!一気にカタをつけるぞ!」

 

「「「「応!!」」」」

 

俺は支えてくれていたエギル達に合流すると、

一気に指示を出す。

 

「俺が引きつけるからブレイズはタンクを頼む!エギル達は合図したら最大火力でソードスキルを打ち込んでくれ!」

 

「承った!」

 

「何時でも行けるぜ!」

 

俺はそんな威勢のいい声を聞きながら、一気に目の前まで駆け抜ける。

そんな俺に気づいてハンマーを振り下ろそうとする将軍の股をスライディングで躱すと、ソードスキル【ホリゾンタル・アークを】を背中におみまいした。

大きくHPを減らしながらよろめく将軍に畳み掛ける。

 

「はァァァ!!」

 

気合いを込めて放つ斬撃を気にもとめずそのまま攻撃しようとする将軍に対して

 

「スイッチ!」

 

ブレイズとスイッチして後ろに飛ぶ。

 

「ぬぅん!」

 

オルランド達が必死に食い止めてくれる中、焦りそうになる気持ちを抑える。

俺達は速く、ミト達の援護に向かわないといけないのだ。

回復しているとブレイズがボスをパリィして体勢を崩させる。

 

「今だ!エギル!」

 

「おおお!!」

 

エギル達に指示を出し、一気に突撃させる。

当然俺もそれに混ざり将軍のHPを一気に吹き飛ばした。俺はそれを確認してからすぐにアスナ達に合流しようとした時

 

「アスナ!?」

 

ミトの悲鳴が聞こえてきた。

 

sideミト

 

「アスナ!一気に近づくわよ!そうすれば多分ブレスだけでも防げるはず!」

 

「分かった!」

 

私達は王に一気に接近を試みる。

先程の動作的に恐らくブレス攻撃があるが、近づいてしまえばブレスは来ないだろう、という定石を信じて進む。

その予想は当たっていたらしく、ブレスではなく叩きつけ攻撃を行ってくる。

 

「ミト散ってから周囲を回って!」

 

「…!了解!」

 

アスナからの指示に一瞬何を言ってるか分からなかったがその意味をすぐ理解する。

アスナは王の股をスライディングしながら通り過ぎ、私達は対角線上に王の周りをグルグルと回り出した。

アスナが王の前に来た時、

 

「ハァァ!!」

 

叩きつけ攻撃をする王を後ろから鎌で切り裂く。

今度は私にタゲを向けた王の攻撃をしてる間に、

 

「やぁぁぁ!!」

 

後ろからアスナがレイピアで貫く。

倒す為ではなく時間稼ぎが目的だから、与えるダメージは少ない。

それでもしっかりタゲを取れているのでこのまま同じ事を繰り返す。

その時ツキノワが何かを叫んでいるのが見えた。

 

「…ト!…っぽ…きを…ろ…!」

 

衝撃音で掻き消されてしまい、声が聞こえない。

聞き返そうとした時パンッ!!という何か乾いた音が響いた。

音の方を向くと

 

「っ!?アスナ!?」

 

アスナが空高く打ち上げられていた。

思わずアスナを受け止めようと走る。

でもその前に、ボスがこっちに攻撃を仕掛けてくる。

連続の叩きつけ攻撃に捌ききれず、吹き飛ばされてしまった。

 

「この…!邪魔しないで!…キャッ!!」

 

「ミト!」

 

キリトが受け止めてくれて、回復させてくれる。

 

「わ、私よりアスナが…!?アスナ!?」

 

「っ!?まずい!ブレスだ!!」

 

スタンにかかり動けないアスナに対しブレスを放とうとする王。

私はすぐに立ち上がり、ボスに突貫する。

キリトもそれに続いて走ってくるが私達ではとても間に合わない。

嫌、駄目…ダメ…

 

「やめてぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

叫ぶも無慈悲に放たれるブレス。

その眩しさに思わず足が止まり、目を隠してしまう。

静かになった時、恐る恐る目を開けると

 

「残ってる…アスナのゲージが…残ってる…」

 

何故かアスナのゲージが残っていて、体力も少し減ったぐらいだった。

訳が分からないでいると

 

「ツキノワ!?」

 

キリトの大声が聞こえる。

反射的にアスナの方を向くとアスナを抱いたまま倒れて動けないでいるツキノワの姿があった。

改めてアスナのゲージを見ると

 

「麻痺!?」

 

「ツキノワもだ!?」

 

2人ともボスの目の前で麻痺で動けないでいる。

万事休すの状況にまた走り出そうとした時突然

 

「お前達!行くな!巻き込まれるぞ!!」

 

私達2人をエギルがまとめて押さえ込んでいた。

 

sideアスナ

 

眩い光を見た時、私はあぁ、死ぬんだって思った。

あの時の絶望とは違う、諦めに似た感情。

そう思ってたのに

「…な…んで…」

 

「…言った…でしょう…?…傍に…いるって…」

 

ツキノワ君は麻痺で動かない体を、強引に動かして私を守るように包み込む。

その温かさが心地よくて、もっと感じていたくて

 

「やだ…死にたくない…死にたくないよ…」

 

泣きながら抱きしめてしまう。

ツキノワ君も優しく抱き締め返してくれる。

その時不意に影が私達を覆った。

そこには王がニヤケ顔のまま見下ろしながら拳を振りかぶっていた。

 

「クソが…」

 

そう言いながら震える手で剣を上に構えるツキノワ君。私も強引に腕を動かしその手を優しく握る。

 

「わた…しも…一緒…に…」

 

「はい…いっ…しょに…」

 

2人で王を睨めつける。

精一杯の強がりを見せていると

 

「「アスナァ!!!ツキノワァ!!!」」

 

こっちに手を伸ばしながら走り出しそうなミトとキリト君、そして2人を抑えるエギルさん達がいた。

 

「離して!!離してよ!!アスナ!!!ツキノワ!!!」

 

「エギル!!離せよ2人が!!!2人が!!!」

 

「ダメだ!!もう間に合わない!!お前達まで死ぬぞ!」

 

更にその奥にはオルランドさんがギルドメンバーに抑えられていた。

 

「オルランドさん!やめてくれ!」

 

「離せ!離さぬか!戦友と姫君の盾となるのは騎士の本懐であろう!!」

 

彼らと根っからの悪人ではない、それが分かっただけでも良かった。

それとミトにはまた辛い思いさせちゃうかな…ごめんねミト。

キリト君、ミトの事よろしくね?

 

「ねぇ…ミトと…キリト…君。お似合い…じゃな…い?」

 

「どう…でしょ…?ミト…は、とし…うえ…好きだし…」

 

初めて知ったなそんな話。

いつか親友の彼氏を見たかったけど、それはあの世からかな…。

だってほら、振り下ろしてきたし。

 

「「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 

拘束を引き離し、仲間を押し退けて3人が駆け出す。

 

「「間に合えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」

 

「真の勇者なれば、今こそ立ち上がる時だぁ!!」

 

「その通りです!オルランドさん!」

 

全くの第三者の声がボス部屋に響き渡って、コーーーンと何かを弾く音が聞こえた。

 

「ヴモォォォォ!?」

 

突然大きく仰け反って体勢を崩す王。

その声を私達は知っている。

ミトも気付いたのか、その人の名前を叫んでいた。

 

「…遅い…ですよ…」

 

「「ネズハ(さん)!」」

 

「皆さん!僕がボスを牽制します!その間に回復を!!」

 

そこには、レジェンドブレイズ最後の勇者、ナーザことネズハさんがいた。

 

sideツキノワ

 

突然のネズハの登場に唖然としてると、背中から誰かに引っ張られてから

 

「ほラ、これ飲んどケ」

 

隣の先輩同様、解毒ポーションをがぶ飲みさせられた。

 

「ゲボ!何すんだよアルゴ!!」

 

「助けてやったのにその言い草カ?」

 

いつの間にいたのかアルゴに助けられていた。

 

「アルゴさん!?いつの間にここに?」

 

「ネズハと一緒に来ただけだヨ。いきなり修羅場なのは驚いたけどナ」

 

そんな話をしていた時

 

「アスナ!!優月!!」

 

ミトがこっちに突っ込んできて、そのまま抱きついてきた。

 

「「ちょっ!?ミト!!」」

 

「良かった…よがっだ…」

 

そのまま泣きじゃくって動かないミトを俺達は優しく抱きしめた。

 

「大丈夫、私達はここにいるよ…」

 

「ほら、まだ終わってないんだ!行ってこいよ!深澄」

 

そう、まだボスは倒してない。

ミトの火力は絶対必要になるのだから、速く行ってこいと発破をかける。

 

「うん…!2人とも休んでて!行ってくる!」

 

泣き止んだミトは力強く宣言して飛び出していく。

HPもまだ回復してない俺達はただ座り込んでいるだけだった。少し話をしようと先輩の方を見ると

 

「先輩、大丈夫で…先輩?顔真っ赤ですよ!?」

 

「ふぇ!?だ、大丈夫だよ!?心配しないで!?」

 

何故か顔を真っ赤にして俯いているアスナ先輩がいた。どう見ても大丈夫じゃないだろう、そう思いながらも特に言及はせず、そのままにしておく。

その時場が動き出した。

王がネズハにタゲをつけたのだ。

そのまま拳を振り下ろしており、マズいと立ち上がった瞬間

 

「ぬん!」

 

レジェンドブレイズがネズハを守ったのだ。

だけどその盾にはヒビが入っていて、いつ砕けてもおかしくない状況だった。

 

「アスナ先輩!」

 

「ええ!行くわよ!」

 

先輩も見てたらしく、すぐに動き出した。

でもそれより速く、キリトやエギル達数人のプレイヤーがオルランドを支えだした。

 

「…ッ!ハハ!ここには勇者ばかりだな!皆の者!弾き飛ばすぞ!」

 

「「「「「応!!!」」」」」

 

そのまま男達は一気に王をパリィして弾き飛ばす。

その瞬間俺とアスナ先輩は一気に走り出す。

 

「先輩!やりますよ!」

 

「分かった!行くよ!」

 

そのスピードを活かしたまま飛び

 

「「ハァァァァァァ!!!」」

 

ソードスキル【フィル・クレセント】とソードスキル【シューティング・スター】が、ボスの頭を冠ごと貫く。

その瞬間王の体がポリゴン状に砕け散り、

 

「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

第2層フロアボス攻略は犠牲者0で収め、成功に終わった。




過去最高を記録しました。本当はふたつに分けようかと思ったのですが、なんか文字数が微妙だったので繋げたらすごいことになりました…
ミトのタイプは勝手に決めました。
何故って?それはそのうち分かりますよ…えぇ、珍しく行き当たりばったりではなく、考えて決めました。


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14話

この迄で14話…結構話が進まなくてビックリです。
今回は3層に入った所までです。
よろしくお願いします。


outside

 

「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」

 

全員の勝利の雄叫びがボス部屋に木霊する。

それぞれ、様々な喜び方をしている。

そんな中この4人は

 

「おい…キリト泣くなよ…」

 

「ほ、ほら私達無事だから?ね?」

 

「な、泣いでない…!」

 

「どう見ても泣いてるじゃない…」

 

キリトがツキノワに泣きついてるのを必死に宥めている最中だった。

キリトとツキノワは1層からずっと一緒だった。

デスゲームが始まったあの日、彼らはお互いの事を兄弟と言い合うぐらい近しい存在になったのだ。

そんな片割れが死にかけたのだから当然、キリトはかなり怖かったのだ。

 

「俺だぢは…兄弟…なんだぞ…かっでに…いぐなよ…」

 

「分かった分かった、俺が悪かったよ。だから泣くなって。せっかくの空気が台無しだぞ」

 

「全く仕方ないわね…ほら、おいでキリト。ツキノワと兄弟分なら私の弟よ。お姉さんが慰めてあげる!」

 

「ぞれは…いやだ…」

 

「何でよ!?」

 

「あ、アハハ…」

 

そんな漫才をしている4人の元に

 

「Congratulation!!4人とも!ナイスコンビネーションだったぜ!!」

 

エギルが4人を労いに近づいてくる。

 

「エギルさん達もお疲れ様です。皆さんにはかなり助けて頂きましたし」

 

ツキノワがそう言って労い返す。

 

「おう!お互い様だ。気にすんな…ってこれだけで終われたら良かったんだが…」

 

それまでの穏やかな空気はエギルの硬い声と表情で掻き消える。その目線の先にはネズハがいた。

 

「あんた、この前まで鍛冶屋だったよな」

 

「…はい」

 

「何故、突然戦闘職に変更した?しかもそんなレア武器まで引っさげてきて。鍛冶屋ってのはそんなに儲かるのか?」

 

「…」

 

「別に恨み言を言いたい訳では無いんだ。ただ俺達と似た境遇の奴らがここにも何人かいる。そして、そいつらは全員同じ懸念を抱いてる様だからな」

 

その言葉にツキノワが周りを見渡すと、確かに疑いの目線がいくつかネズハに向いている。

 

「待ってくれ!このチャクラムは俺が「キリトさん」っ!」

 

キリトが必死に弁明しようとした時、ネズハがそれを止めた。

 

「いいんです、キリトさん。皆さんの想像通りなんですから」

 

そう言って皆の前で土下座するネズハ。

 

「僕は皆さんの武器をエンド品とすり替えて詐欺を行いました」

 

「それは金に替えたのか?」

 

「はい、全て高級レストランやホテルに使いました」

 

エギルとネズハの淡々としたやり取りがボス部屋に響く。そんな中、1人のプレイヤーが遂に我慢の限界を迎えた。

 

「お…、お前!!わかってんのかよ!?大事に育てた剣失くして、俺達がどんな思いだったのか!?」

 

1人が爆発してしまえば後は連鎖的にどんどん広がっていく。

 

「俺も…もう前線に出られないと思って…。でも仲間が必死に助けてくれて…迷惑かけまくってよ…!」

 

「それをお前!その金を高級レストランに使った!?高級ホテルに使った!?挙句に自分はレア武器使って、ボス戦で英雄気取りか!ふざけんな!?」

 

口々とネズハへの不満が爆発していく中、遂に1人が剣をぬこうとした。

キリトとツキノワはそれを見て慌てて止めようとしたその時

 

「待たれよ。貴殿らの剣を汚す必要は無い」

 

オルランドがその集団に割って入っていった。

 

「この者は我らの…いえ、俺達の仲間です。こいつに強化詐欺をさせてたのは俺達です」

 

そしてオルランド達レジェンドブレイズは装備を床に置いて、ネズハ同様、その場で土下座していた。

 

あまりの光景の連続に誰もが理解が追いつかなかった。ただ1つ分かったのはネズハはレジェンドブレイズの一員である事、それだけだった。そんな混乱した空気を

 

「そんなんで許される訳ねぇだろ!?」

 

1つの甲高い声が切り裂く。

それは1層でも騒ぎを起こしたプレイヤーの声だった。

ツキノワはその声を聞いてまた眉間に皺を寄せる。

 

「金の問題はそいつらの装備を売ればどうにかなるかもしれねぇがな!?死んだ人間は戻らないんだよ!!!」

 

その瞬間、空気が凍りついた。

キリトも、睨んでいたツキノワも驚きに目を開く。

アスナとミトは口を手で覆っている。

 

「死んだ…人間…!?どういう事だよ!?」

 

プレイヤーの1人が聞き返す。

 

「お、俺は知ってるんだよ!!こいつらの詐欺の被害者の1人が店売りの武器でフィールドに出て、MOBに殺されたんだよ!!」

 

「ち、ちょっと待てよ…それってそんなのって…!?」

 

「そうだよ!?こいつらのやった事は、間接的はPKなんだよ!!」

 

決定的な一言をそいつは言い放った。

その一言が言い放たれてから、場が騒然としだす。

 

「おい!さすがにその理屈はやばいだろ!第一層のベータテスターの時とはワケが違うんだぞ!?」

 

「でも犯人が認めてるなら…」

 

「おい!?何言ってるんだよ!?」

 

どうするべきなのか場が混乱する中、騒ぎを起こしたプレイヤーがまたも爆弾を投下する。

 

「死んで償えよ。人殺し」

 

詐欺師ではなく人殺し。

そう表現した途端、全員が目の色を変える。

そうだ。死んだ奴に詫びを入れてこい。

このクソ野郎共が。殺せ、殺せ、殺せ!

そんな暴動が今にも、起きそうになっている。

キリトも、アスナも、ミトも、エギルもどうすればいいか分からなくなっている中、ただ1人ツキノワだけは冷静に

 

「証拠は?」

 

たった一言、騒ぎの中心にいるプレイヤー声をかけた。

sideツキノワ

 

はぁ、どいつもこいつも。

単純にも程がある。

そう思いながらまた騒ぎだしたクソ虫野郎に声をかける。

 

「証拠は?」

 

突然話しかけられて驚いたのだろうが、俺だと認識すると忌々しそうに怒鳴ってきた。

 

「またてめぇかよ!!てめぇもこいつら「だから!証拠は!!」っ!」

 

ベラベラ喋りだしそうだったので大声で強引に止める。その声に周りも俺らの事に気付いたのか、静かになる。

 

「こいつらが狙ったんだから、フロントランナーなんだよな。だったら俺らの誰かが、知っててもおかしくないだろ。おら、言ってみろよ、どこの誰だよ…言えよ!!!」

 

そこまで言っても口を噤んだままだった。

そりゃそうだろうな。

 

「はぁ…アルゴ、まだいるか?」

 

「ああ、いるヨ」

 

俺の呼び声に反応してアルゴが出てくる。

突然のアルゴの登場に全員驚いた。

 

「アルゴ!?いつの間に!?」

 

思わずキリトが皆の気持ちを代弁するように叫ぶ。

 

「ネズハと一緒に来たんだヨ。…それよりツー坊、要件ハ?」

 

「前に頼んどいたやつ、終わってるよね?」

 

「ああ、終わってるヨ。みんな!悪いけど今から名前呼ぶやツ、返事してくレ!もしくはここにいない奴がいたら、誰かのフレンドリストからどこにいるか確認してくレ」

 

そう言って1枚のスクロールをオブジェクト化させ、そこに書かれた名前をどんどん読み上げる。

その場で返事がある奴も居れば、フレンドリストで何処にいるか確認された奴もいる。

 

「…最後、アスナ」

 

「私よ」

 

先輩が手を上げる。

それを確認しアルゴが高々に宣言する。

 

「…以上、強化詐欺にあったプレイヤー計8名。その全員の生存が確認されタ」

 

この一言を聞いて、周りはざわめき出す。

その視線はネズハではなく、1番最初に騒いだプレイヤーに向けられていた。

 

「さて、これでお前の嘘が露呈した訳だが、1つ聞いていいかな?お前さっきこう言ったよな。『こいつらがやった事は間接的なPKなんだよ!』って。でも結果はどうだ?誰も死んでない。お前は今、死人が出たという嘘をついて、こいつらを殺そうとした。…だったらお前がやろうとした事も…『間接的なPK』だよな?」

 

俺はわざと笑顔を浮かべながら、言い放った。

その顔を見たそいつは顔を真っ青にさながら後ずさる。

 

「お前らも無視してんじゃねぇよ!このクソ虫野郎に便乗して殺せって言ってただろうが!!だったらここでも、そう言うべきなんじゃねぇの!?」

 

今度は周りをそう煽る。

どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。

散々偉そうにほざく癖に、自分からはやろうとしない、群れなきゃ何も出来ない。

大人がこんなのとか呆れてくる。

 

「で?どうすんの?お前は。自分で吐いた唾は飲み込めねぇぞ?どうやって落とし前つけるんだよ!?自分だけ屁理屈並べて逃げられるなんて思うなよ!!!」

 

そういって睨みつける。

更に後ずさるそいつを見て

 

「逃げんじゃねぇよ!!おら、速く腹を「ちょお、待たんか!!!」…なんだよキバオウ」

 

そんな俺達にキバオウが割って入ってくる。

 

「確かにこいつがやったんは許されへんことや。せやけどな、こいつはわしの仲間や。勝手にどうこうするのは認められへん。まずわしを通してからにせぇ。これは筋の問題や」

 

ふーん、確かにこいつの部下がやらかしたことは、上司であるこいつの責任だ。

 

「だったらどう落とし前つけるんだよ。こんなクソ野郎が一緒とか、背中預かれないし預けられないぞ」

 

いつか言っていたキバオウの言葉をそのまま返した。

 

「それもお前さんが口を挟むことやない。そこをどうするかはそいつらとこいつで決めることや。とりあえず【ジョー】、お前は謹慎や。ホームでじっとせい…今出来るのはこれくらいや。これ以上は、そっちの被害の話し合いが成立してからや」

 

「…ちっ」

 

ここまで言われては流石にゴリ押せないだろう。

そう思いここは引く事にした。

 

「おい、クソ虫野郎。これからは考えてからものを言うんだな。後便乗した阿呆ども!お前らも少しは頭を使え。こんな事してる暇なんてねぇのにくっだらねぇ…3人とも、先に3層をアクティベートしに行こう」

 

そのまま俺は3人に声をかけ、そのまま3層までの階段を登りだした。

 

sideキリト

 

気まずい空気の中、俺達は階段を上がっていく。

理由は俺の目の前を歩くツキノワの纏う空気だ。

ハッキリ言ってめちゃくちゃキレてる。

前にミトにキレると口調が変わるとは聞いていが、これ程とは思ってなかった。

その時突然ツキノワが振り返ってきた。

 

「ミト、アスナ先輩、ちょっと浅慮だったんじゃない?」

「「…」」

 

は?何を言い出すんだツキノワは?

 

「えっと…ツキノワ?」

 

「はぁ…。その様子だとキリトは気づいてなかったか」

 

「何に気づいてないんだよ?」

 

「政治の基本は情報と根回し、後は演出だぞ?多分、エギルさんやキバオウ、リンド辺りには今回の件、言ってあったんじゃないか?」

 

「え!?そうなの!?」

 

思わず2人の方を見ると気まずそうに頷く2人。

マジか…全く気づかなかった。

 

「ていうか、ツキノワは知ってたのか?」

 

「いや、2人ならやりそうだと思っただけ。後はキバオウがやけに冷静に俺の相手をしたから、まさかって思ったんだよ」

 

そこまで読んでいたなんて、ツキノワも凄いなぁ…。

俺にはサッパリだよ…。

 

「ツキノワはあそこまで読んでたの?」

 

「当たり前。あんな阿呆がいるんだからそこまで考えるのが道理だろ?」

 

ミトの質問にあっさりと返すツキノワ。

 

「…じゃあ、あの時の言葉も演技なの?」

 

「…いや、言い方とかはわざとらしく煽る為に芝居を打ちましたけど、言ったことは本心です。人の命に手を出すんだから、自分も手を出される覚悟をしておくべきです。因果応報、人を呪わば穴二つってやつですよ」

 

淡々と告げるツキノワ。

そこまでの覚悟一体どこで…ふと俺達は1度殺されかけた時の事を思い出した。

 

「コペルの時か…お前がそこまでの覚悟を決めたのはあの時なのか!?」

 

「…まあ」

 

「キリト、なんの事?」

 

「…俺達は1度、MPKされかけたんだ。結局、仕掛けた本人だけが死んだんだけど…」

 

その事に2人の顔色が青くなる。

 

「…あの時気づいたんだよ。この世界は無法地帯だ。ネズハの言ったことはある意味事実だよ。この世界は出来ないことは予め決まってる。裏を返せば決まってない事は、やっても何も罰はないって事だ。そんな世界で大事なものを守るには、どんな事でもやる覚悟をする必要がある。そしてやるからには、やり返されるかもしれない。そのリスクを覚悟した上で、守るしかないんだ」

 

俺は自分が恥ずかしくなった。

俺はまだこの状況を、ゲームとしてしか見ていなかった事を。

ゲームであっても遊びではない、その意味をやっと理解した。

ここは現実なんだ、俺達がやってるのは極論、殺し合いだ。

それがいつかプレイヤー同士で、剣を向け合う可能性があるという事から、目を背けていた。

 

「…ま、本当に殺す気は無かったんけどね!!」

 

「…へ?」

 

突然、おどけるツキノワにアスナはポカンとする。

 

「そもそも俺にその権利はないから!」

 

「…も、もう!驚かさないでよ!!」

 

確かに言ってしまえばそうなのだが、きっとこれは嘘だ。

ミトもアスナも気づいてるだろうが、気づいてないふりをしているのだろう。

そして気づいてないふりに気づいてるだろうツキノワも、それを見て見ぬふりをしている。

その様子を見て俺も向き合う覚悟を決めた。

その時

 

「キリト、踏み込みすぎてはダメよ」

 

ミトが突然静止させる声をかけてくる。

 

「確かに、必要な覚悟なのかもしれない。でもだからこそ、傍に引っ張り上げる人が必要だわ。あなたとアスナにはそういう人になって欲しい。…踏み込むのは私でいいわ」

 

「ミト!?何言ってんだよ!?」

 

ミトの宣言に慌てて止めようとする。

そのミトは優しい目しながら、ツキノワを見ていた。

 

「だって姉だもの。弟を1人放っておく事なんてできないわ」

 

…ああ、ダメだ。

俺も兄だから、気持ちが分かってしまう。

だから止められない。

もし妹が、直葉が同じ事を言ったら俺も同じ事を思うだろうな。

 

「…はぁ…分かった!お前らの戻るべき場所は俺が守る!」

 

「ええ、そうしてちょうだい」

 

そんな兄姉談義をしていると

 

「ミト!キリト君!速く!」

 

「キリト!ミト!遅いぞ!」

 

「「分かった分かった!ちょっと待って!!」」

 

慌てて2人を追いかけて扉の前に並ぶ。

 

「さあ、みんな覚悟はいい?ここから真のSAOが始まるよ」

 

「真のってどういう意味だよ?」

 

「それは…お楽しみってやつだ」

 

そう言いながら扉を開ける。

そこには一面樹海と言っても差し支えない光景が広がっていた。




キレると不良スタイルに変わる主人公。
口調に意外に悩みました。
コペルの時に抱いた思いがここで少し顔を出します。
ラフコフ戦では多分、1番暴れまくるであろう人物です。その辺は今後の展開として待っていてください。
ありがとうございました。


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15話

漫画版プログレッシブを読み直して見ました。
ここから少し漫画版にはよっていくと思います。…多分
よろしくお願いします


sideツキノワ

 

「樹海?」

 

初めて見る第3層の景色は、一面森林だった。

 

「樹海って…ツキノワ君、もうちょっと何か表現なかった?」

 

「何と言うか、富士樹海思い出したんでつい…そんな事より霧が濃くないですか?」

 

「ツキノワはあそこで迷子になりかけたもんね…ここは【迷い霧の森】(フォレスト・オブ・ウェイバリング・ミスト)と、呼ばれるエリアだから霧が濃いのよ。みんな、出来るだけそれぞれの傍から離れずに、固まって行動して」

 

「今サラッと凄いこと言わなかった!?」

 

「ツキノワって以外と武勇伝多いよな…」

 

「俺のことはいいんだよ!それよりモンスター出たぞ!?」

 

ミトが余計な事を言ったので誤魔化すように戦闘体勢に入る。

 

「【トレント・サプリンク】よ!弱いけど厄介なやつだから気をつけて!」

 

「注意点1!奥に誘い込もうとするから立ち位置には気をつけろ!」

 

「「了解!」」

 

キリトとミトが枝を伐採してタゲをとってる間に、俺と先輩は裏をとって奇襲をしようとする。

 

「「もらった…!!」」

 

「あ、注意点2…前後が入れ替わるから背後は取れないわよ?」

 

「「え…?」」

 

そう言われた瞬間、トレントと目が合う俺達。

 

「「…そういう事は先に言え(言ってよ)!!」」

 

あっさりとトレントを伐採した俺達は先を進んだ。

 

「ところでキリト、さっき言ってた『真のSAOの始まり』ってどういう事だよ?」

 

「ああ、その事か…。実はこの層から人型MOBが出てくるんだよ」

 

ん?人型MOB?

今までも出てたよな?

 

「人型なら今までも出てたじゃない」

 

アスナ先輩も同じ事を思ったらしく、不思議そうに尋ねる。

それに答えたのはミトだった。

 

「コボルト達は亜人種と呼ばれる分類よ。二足歩行だけど人には見えないでしょ?これから出てくる人型は、ソードスキルの使い方も上手いのよ」

 

「つまり強くなるって事か?」

 

「そういう事。今まで以上に気を引き締めないと殺られるわよ」

 

ミトの物騒な物言いを聞いているとキン!キン!という戦闘音が聞こえてきた。

 

「戦闘音だ…。こっちだ!!」

 

「見つけたか!よし、行くぞ!」

 

「キリト、これって…そういう事?」

 

「ああ、そういう事だ!!」

 

「どういう事よ!?」

 

キリトとミトが何やら勝手に納得しているので、当然アスナ先輩は理解していない。

まあ、俺もなのだが。

とりあえず置いておき、音の方に向かうと2人のNPCが戦っていた。

 

「NPC同士が戦ってる?」

 

「選択肢は…変わってないわね」

 

「ああ、そうみたいだな」

 

「何よこれ?どうなってるの?」

 

俺とアスナ先輩は、何が起きてるか訳が分からなかったので、2人に説明を求めた。

 

「これが9層まで続くSAO初の大型キャンペーンクエスト、通称【エルフクエスト】だ。あの2人をよく見てみろ。耳がとんがってるだろ?」

 

…本当だ。

あれはエルフだ。

耳とんがってるし。

 

「ここではあの2人のどっちに味方するかで、話の展開が変わってくるのよ。黒と紫の方が黒エルフ【ダーク・エルフ】で、白と緑の方は森エルフ【フォレスト・エルフ】よ」

 

「2人はどっちにしたんだ?…いや、キリトはいいや、想像つく」

 

「お前も同じだろ絶対!?」

 

「私は黒よ」

 

「なら黒にしましょう」

 

よし、決まった所で飛び出そうとした瞬間

 

「「ち、ちょっと待て(待ちなさい)!」」

 

突然、俺の襟首掴んでキリトとミトが止める。

 

「ゴヒュッ!?!?」

 

「大丈夫!?」

 

今までで1番、死を覚悟したかも。

マジ危なかった…

 

「ゴホッゴホッ…何すんだよ!?」

 

「す、すまん…慌ててつい…」

 

「考え無しに飛び出そうとするからでしょう…あのエルフは7層のエリートクラス並の強さだから、私達じゃ、勝てないわよ」

 

…勝てない?

 

「勝てないってどうするのよ!?」

 

「大丈夫よ。こっちのHPが半分を切ったら、奥の手で助けてくれるわ」

 

奥の手ねぇ…そういう割には

 

「あまり使いたくないって顔してるぞ」

 

「まあ…自爆攻撃だからな…」

 

「そんな…!?」

 

アスナ先輩が悲鳴じみた声を上げる。

確かにあまり気分のいい話ではない。

でもゲームとはそういうものだ。

 

「…先輩。多分これからこの手の話はどんどん増えます。だから割り切った方がいいと思います」

 

その言葉にアスナ先輩は少し黙っていると

 

「…わかった。要するに…私達があいつより強ければいいのね」

 

「「「…え!?」」」

 

逆に開き直った!?このタイミングで!?

ていうかもう飛び出した!?

 

「「「ちょ!?待って!?」」」

 

sideアスナ

 

「割り切った方がいいと思います」

 

確かにそうかもしれない。

でも、やっぱりそんなの嫌だ。

あの時システムに抗って、剣を構えた君みたいに私も抗う。

だから

 

『人族がこの森で何をしている!?』

 

『邪魔立て無用!今すぐ立ち去れ!』

 

「日本語を喋った!?」

 

「アスナ、そこなのね」

 

2人の前に飛び出したら日本語で怒鳴られてビックリした。

 

「ここで敵対するエルフに剣を向けたら、クエスト開始だ」

 

「そう…恨みはないけれど…ごめんなさい」

 

そう声をかけながら森エルフに切っ先を向ける。

 

『!…愚かな…黒エルフ如きに加勢するなど…』

 

『人族にも道理が分かる者がいるという事だ』

 

『…よかろう。ならば全部まとめて、我が剣の錆にしてくれる…!!』

 

突然オーラが変わる森エルフ。

さっきまでとは違うプレッシャーに飲まれかけた瞬間、

 

「…!?アスナ!?」

 

目の前に森エルフの剣が迫っていた。

ミトの声に反射的に避けようとした瞬間、ミトが割って入ってくれて、鎌で受けて止めてくれていた。

 

「ッ!重い…!!アァ!!スイッチ!」

 

強引にはじき飛ばした瞬間、私はミトの後ろから出てリニアーを放つ。

しかし

 

「ヌン!」

 

「ぐっ!?」

 

盾で私を吹き飛ばす森エルフ。

想定外の攻撃に体勢を崩され、技後硬直で動けない私を追撃してくる森エルフ。

その背後から

 

「「…シッ!!」」

 

ツキノワ君とキリト君が襲いかかる。

しかし驚異的な反応速度で防がれてしまう。

 

「「スイッチ!」」

 

「やぁぁ!!」

 

今度は2人の後ろからミトが鎌を振るう。

鎌の形状から変則的な軌道を描くミトの攻撃を、まともに受けた森エルフはたたらを踏んで、体勢を崩す。

その隙を

『はぁ!!』

黒エルフのお姉さんが3連撃を叩き込んで更にダメージを与える。

それぞれが距離をとって体勢を整えるが、みんな肩で息をしているほど、疲れていた。

 

「強いな…あいつ…」

 

「だから言ったじゃない…」

 

「キリト君、何かヒント…」

 

「…じゃあ…盾は遮蔽物って事…」

 

「「…ああ、なるほど」」

 

「あれで分かるのね…2人とも…」

 

作戦会議が終わった所で、全員の準備が整った。

さあ、ラウンド2の開始よ。

 

私とキリト君が駆け出す。

こちらに気づいた森エルフはキリト君のフェイクにつられ、盾を構える。

その瞬間私は盾の影に隠れて、背後を取る。

そのまま思いっきりレイピアで貫くけど

 

「…ッ!硬ぁ!?」

 

森エルフはこちらを睨みつけ剣を振り下ろしてくる。

それをキリト君がソードスキルで相殺してくれる。

 

「ハァ!!スイッチ!」

 

「やぁぁ!!」

 

次にミトが斬りかかるけど、盾で全て防がれて、反撃を受ける。

 

「…くぅ…!?」

 

辛うじて防いではいるが、遂に弾かれて隙が出来てしまう。その時、ミトは笑っていた。

 

『終わりだ!人族の女鎌使い!!』

 

「ええ…あなたがね!!」

 

『「ハァァ!!」』

 

『グッガァァァ!?』

 

トドメを刺そうとする森エルフの後ろから、ツキノワ君と黒エルフのお姉さんが十文字に切り裂く。

 

『キッサマラァァァァ!!』

 

「…ぬるい」

 

森エルフの苦し紛れの一撃を、ツキノワ君が鮮やかにいなして

『フッ!』

 

黒エルフのお姉さんが貫く。

そこをツキノワ君が思いっきり振りかぶって

 

「オラァ!」

 

全力で殴り飛ばす。

あと一息。

ツキノワ君が私達に檄を飛ばす。

 

「みんな!このまま押し切るぞ!!」

 

「「「了解!」」」

 

『ふっ…やるな人族のつがい達よ!!』

 

「「「「…つがいじゃない!!!」」」」

 

この人、突然何言い出すのよ!?

 

outside

 

「はぁ…はぁ…」

 

「へ…どんなもんだよ…」

 

「すげぇ…本当に倒しちまった…」

 

「…でも…ここからは…」

 

「ああ、何が起こるか俺達にも分からないぞ」

 

「…何よ…少しは喜びなさいよ」

 

「そうだぞ、ゲーマーコンビ。血が騒ぐだろ」

 

「いや、こんなにデタラメなベータ破りは初めてだからな…」

 

「…まあ、血が騒ぐのは否定しないわ」

 

4人がそんな会話をしていると、死にかけていた森エルフが訳分からない事を話し出した。

 

『実に…無念だ…』

 

『!?それは!?』

 

懐から何か取り出した。

それを見た黒エルフは走ってそれを盗ろうとするも、その前に突如現れた大鷹がそれを奪っていく。

 

『貴様なんぞに…功を…譲ることになるとはな…!』

 

『やれやれ。どうして騎士というのはこう、気位だけは高いのでしょう…。ですが、この通り秘鍵は私が預かりましたので、ご安心あれ』

 

こちらもいつから居たのか、突如現れた森エルフの元に届けてしまった。

 

「あいつは…!!」

 

「【鷹使いの森エルフ】(フォレストエルブン・ファルコナー)!」

 

新手の強敵が現れた。

 

しかも多数の部下を率いており、頭数を一気に覆させられる。

どうするかとツキノワが悩んでいた時

 

『そうか…貴様か【鷹使い】』

 

黒エルフから放たれる尋常じゃない殺気に思考が止まりかける。

キリトが呆然と呟く。

 

「殺気…?NPCが…?」

 

そんな殺気に当てられても当の鷹使いは飄々と

 

『はて?何処かでお会いしましたかね?敵方とは言え、これ程の美人を忘れるはずないんですが…。そういえば、これを奪った時に殺した薬師があなたに似ていたような…』

 

そう呟いた瞬間、一気に斬り掛かる黒エルフ。

 

『おっと…すみません。あの時もそうでしたが…まずは1番弱いのからと決めているんです』

 

そう言って鷹と共にアスナに襲いかかる鷹使い。

鷹がアスナを捕まえようとした瞬間、

 

「「シッ!!」」

 

鷹の足を切り裂きミトと、鷹使いに斬りかかるツキノワ。

堪らず距離をとる鷹と、そのまま鍔迫り合う鷹使い。

 

「アスナ!大丈夫!?」

 

「ありがとう!!ミト!ツキノワ君!」

 

「…お前、覚悟を出来てるんだよな…」

 

『おやおや、怖い人族ですね…一体なんの事でしょうか?』

 

「なら、その身に教えてやるよ!!!」

 

刀身を滑らせ、ツキノワは下から切り上げ、鷹使いは上から振り下ろそうとした瞬間

ワオォォォォン!!!

犬の遠吠えと共に1人の黒エルフが飛び出す。

 

『喜べ義弟よ…悲願は今日果たされるぞ』

 

『我妻の仇【鷹使い】!ここで斬る!!!』

 

ツキノワ達の間に入って、森エルフに襲いかかる。

 

「今度は何なんだよ!?」

 

突然の乱入者に驚きを隠せないツキノワとアスナ。

 

「そうか!森エルフの鷹使いが来ているならこっちは!」

 

「【黒エルフの狼使い】(ダークエルブン・ウルフハンドラー)ね!」

 

黒エルフ側の増援は狼使いだった。

そのまま動物同士と使い手同士で戦い中、ツキノワ達と女黒エルフはなし崩し的に、他の森エルフ達と戦う事になった。

 

「もう!何がどうなってるの!?」

 

「わかんないですよ!」

 

「諦めろ2人とも!もうとっくに巻き込まれちまったんだ!」

 

「何に!?」

 

「決まってるでしょう!?…彼らの物語によ!!」




さあ、エルフクエスト開始です。
キヅメル綺麗でかっこいいですよね…実は好きなキャラの1人です。
それでは失礼します。ありがとうございました。


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16話

森エルフ戦後半戦に突入です。やっぱりミトが1番難しい…
それではよろしくお願いします。


sideミト

 

「スイッチ!」

 

「ハァァ!」

 

ツキノワの声に私は鎌を思いっきり振り下ろした。

思えばこうしてツキノワと2人で共闘って初めてかも。向こうではアスナとキリトが戦ってる。

あの2人も中々のコンビネーションだけど、私達は実の姉弟。

相性なら負けない。

 

「ツキノワ!どんどん行くわよ!」

 

「OK!あっちに負けられないよな!」

 

どうやらツキノワもあっちの事を意識してるらしく、珍しくノリノリだ。

そんな事はさておき、私は斬りかかってくる敵の剣を防ぐ。

そのまま鎌の内側まで落とさせ、鎌を支えにハイキックを打ち込む。

ふらついた所をすかさず切り上げ

 

「スイッチ!」

 

ツキノワと交代する。

 

「おぉぉぉ!!」

 

ツキノワがソードスキル【ベア・ノック】を放ち吹き飛ばす。

その隙に右から他の森エルフが襲いかかるのを、鎌を振り回し牽制する。

その振り回しの隙間からツキノワが飛び出し、蹴り飛ばす。

たたらを踏む森エルフを【リーパー】で斬ると

 

「スイッチ!」

 

こっちに声をかけ、入れ替わる。

 

「ハァァ!!」

 

私もソードスキルでエルフを鎧ごと切り裂き、1人倒す。

するとさっき吹き飛ばされたエルフが戻ってきてツキノワと斬りあっていた。

 

『仲間をよくも!』

 

…やはりNPCにしてはかなり人間味がある、ありすぎると思う。

そう思っている間に、ツキノワが【ファラント・フルムーン】で斬り伏せる。

 

「ミト、終わったぞ…ミト?」

 

「え、えぇ…お疲れ様。強くなったわねツキノワ!」

 

「…何考えてたの?」

 

どうやら筒抜けらしい。

 

「隠すことでもないしね。ただNPCがすごい人間味があるなって思っただけ」

 

「確かに…まるで本物の…いや、そうか彼らにとってここが現実なんだ」

 

…そうか。私達にとってはゲームの世界でも、彼らにとってはこの世界こそが現実世界なんだ。

そう考えれば違和感が無くなってくる。

そう考えてると

 

『貴様の相手はこっちだ!鷹使い!人族の女!邪魔だから下がってろ!』

 

狼使いの声が聞こえ、そっちを向くと鷹使いにしつこく狙われるアスナがいた。

 

「ミト!」

 

「ええ!行くわよツキノワ!」

 

私達はアスナに向かって走り出す。

その時大鷹がアスナに狙いを定め、急降下してくる。

 

「私が行くわ!」

 

私は鷹に向かってソードスキルを放つ。

当たりはしないものの、牽制にはなる。

距離をとろうしたところに狼が襲いかかり、私達を守ろうとする。

 

「あなたもアスナを守ってくれるの?」

 

ワフッと返事するのでアスナと共に頭を撫でてあげてると

 

「邪魔だ!狼使い!」

 

『貴様がどけ!人族!』

 

ツキノワと狼使いが言い争っているという訳分からない自体になっていた。

 

『戦っている最中だと言うのに…余裕ですね〜…!』

 

その隙にアスナを殺そうと動く鷹使いだが、その前に2人が剣を振るい、足を止めさせる。

 

「…まずこいつからだ。お前は後回し」

 

『…そうだな。敵討ちが先だ』

 

どうやら仲直りというか、休戦するらしい。

そのまま斬りかかる2人。

お互いの事をまるで考えてないその動きは、何故か調和がとれており、隙がなかった。

このままだとマズいと思ったのか撤退を宣言しだした鷹使い。

 

『はぁ…やめやめ!犬臭くって今日が削がれるったらない…。また今度にしませんか?』

 

『我々が貴様を逃がすとでも?』

 

『そっちはその気でも…ほら、秘鍵は手に入れましたし…ね?』

 

そう言って秘鍵をチラつかせる鷹使い。

 

「ねぇ、あれってなんなの?」

 

アスナが小声で聞いてくる。

 

「秘鍵は文字通り、このクエストのキーアイテムよ。あれをとられると、どうなると分からないわ…」

 

「…つまりあれは黒エルフの物って事?」

 

んー、どうなるのだろう。

少なくとも私達にとってはそうなのだろう、一応肯定しておく。

 

『ここで質問です。これを…こうしたらどうするでしょう?』

 

そう言って鷹に秘鍵を持たせ、飛ばす。

 

『このままですと我々の野営地までひとっ飛びですよ?さあ、私怨か任務か…どちらを優先しますか?』

 

嫌らしい奴…そう思い歯を噛み締めていると

 

「させるもんですか!!」

 

アスナが突然飛び出し、木を登って空高く飛んだ。

 

「「「アスナ(先輩)!?」」」

 

そのままソードスキルで鷹を攻撃し、秘鍵を奪い返すけど

 

「わ、わわ!?」

 

怒った鷹がアスナを掴まえて急降下しだした。

 

「まさか!?地面に叩きつける気か!?」

 

「「アスナ(先輩)!」」

 

私とツキノワは同時に走り出した。

けれども他の森エルフが道を邪魔してくる。

 

「「どけぇぇぇぇ!!」」

 

私がまとめて力技で薙ぎ払う。

そこに出来た道をツキノワが全速力で駆け出し、包囲網を突破する。

更に私達を抜いて狼が駆け抜け、鷹にタックルする。

そしてそのままアスナをスライディングキャッチするツキノワ。

 

「大丈夫ですか!?先輩!」

 

「う、うん…ありが!?ツキノワ君!」

 

その隙を鷹使いが狙い澄ましたかのようにツキノワに斬りかかる。

剣をしまった状態のツキノワには抵抗できず、切られてしまう。

そう思った瞬間、

 

「「…え?」」

 

狼使いが2人を庇って切られていた。

 

sideツキノワ

 

『愚かですねぇ…人族の出しゃばり娘の為に身を呈して庇うなんてねぇ…!』

 

『ぐおぉぉぉぉぉ!!』

 

俺達を庇って切られた狼使いはそのまま鷹使いに斬りかかる。

そしてその後ろから狼が襲いかかるが、更に後ろから鷹が爪を向けていた。

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

アスナ先輩の悲鳴も虚しく

 

『往生際の悪い…さっさとそこをどきなさい』

 

1人と1匹はそのまま地面に伏してしまった。

 

俺はそれを見てる事しか出来ず、悔しくて堪らなかった。

 

『さて、それを渡してくださいませんかね?人族の女剣士よ』

 

そう言って手を差し出すその男に俺は斬りかかった。

 

『…危ないですね〜。当たったらどうするんですか〜?』

 

腹が立つ言い方をするそいつに、俺は何も答えずただ剣を構えた。

全身を脱力させ、右手は剣を握る最低限の力だけ。

切っ先を下げてただ静かに敵を睨む。

 

『おや…怖いですね〜そんな目をされては!?』

 

お喋りを始める前に逆手に持ち替え、右逆袈裟に斬りあげる。

それは防がれたので、そのまま左袈裟で切り返すも、それも躱される。

だからその勢いのまま、剣を捻りながら水平に構え直し、突きを放つ。

剣で防ごうとしたのでインパクトした瞬間、一気に力んで吹き飛ばす。

ゴロゴロと転がっていく鷹使いを追いかけ、起き上がった所を首めがけて、横に薙ぎ払う。

鍔迫り合っていると後ろからアスナ先輩が、がら空きの腹に【リニアー】を打ち込んでいた。

更に吹き飛ばしたが、その勢いを利用し木の上に飛び乗った。

 

「「アスナ!ツキノワ!」」

 

ミト達が追いついてきて、俺達に並ぶ。

 

『うちの一個分隊が全滅とは…敵ながら見事。

それに比べて…うちの連中はどうしてヘナチョコの役立たず連中なんでしょね!?』

 

突然そう喚き散らしたと思えば、ため息ついて、頭を切り替えたらしい。

 

『ま、仕方ありません。厄介者を1つ片付けただけで良しとしましょう』

 

『待て!このまま終わらせてなるものか!!』

 

『もちろん、秘鍵は頂戴致しますよ?ですが仇討ちごっこに付き合う気はありません。…なにせ、私は貴女方に興味はありませんので』

 

そう言って鷹に飛び乗って去っていく鷹使い。

女黒エルフの慟哭だけがこの場に響き渡った。

 

sideキリト

 

俺達は狼使いの最期を看取っていた。

 

『義姉さん…』

 

『安心しろ…秘鍵は取り返したぞ。そして奴は必ず私がこの手で仕留める。だから…』

 

『今度は…』

 

そうして狼使いは何故かアスナを見ながら

 

『今度は…間に合いましたよ…義姉さん…』

 

そう言った。

何故アスナを見ながらかは分からなかったが、狼使いはアスナ越しに誰かを見ている気がした。

 

『…そうだな…胸を張って逢いに逝け…』

 

そう言って狼使いは息を引き取った。

 

(これがNPCなのか?確かに前もって設定しておけば、リアルな感情表現が可能とはいえ、余りにもリアルすぎる…これは一体なんなんだ?)

 

そう思いながらミトを見ると、ミトも困惑していた。

彼女も重度のゲーマーだ。

だからこそ、このNPCのリアルさに戸惑っているのだろう。

 

『叶うならそなた達も覚えていて欲しい…私の無二の戦友であり、我々(リュースラ)随一の狼使い、そして…亡き妹の最愛の男だった』

 

そんな主人を弔うように狼が遠吠えをした。

その声は森中に響き渡った。

 

『秘鍵を…その包みを渡してくれないだろうか』

 

「は、はい!」

 

アスナが黒エルフに秘鍵を渡す。

 

『ありがとう。おかげで秘鍵は守られた。司令から褒賞があるだろう。すまないが野営地まで着いてきて貰えないだろうか』

 

(クエストは問題なく進むらしいが…)

 

俺はアスナとツキノワを見る。

2人ともかなりキてるだろう。

このまま進んでいいのだろうか…

 

「キリト、まさか降りるとか言わないよな」

 

突然ツキノワが話しかけてきた。

その目は強く、引かないだろうというのが、目に見えて分かるくらいだった。

 

「私も降りないわよ」

 

アスナも続いて強く宣言する。

 

「アスナ…ツキノワも…大丈夫?」

 

「ありがとうミト。でも大丈夫だよ」

 

「当然。全然行けるぞ」

 

ミトも2人が心配だったのか不安そうに聞くも、2人ともしっかり返事を返す。

 

「それじゃ、お言葉に甘えます」

 

『結構。野営地はこの森を南に抜けた先だ。着いてこられよ。』

 

その後ろ姿は肩を落としてるように見える。

こうして俺たちは黒エルフの野営地に向かった。

 

outside

 

野営地に着いた5人はそのまま司令官に会い、褒賞を受け取った。

 

『…考えてみればまだ名前を聞いてなかったな』

 

「ああ、俺はキリト。」

 

「ツキノワだ。よろしく」

 

「ミトよ。よろしく」

 

「アスナです。よろしくお願いします」

 

それぞれ名乗ったところで、黒エルフは改めて彼らの名前を呼び、発音を合わせた。

発音調整シークエンスと呼ばれるものだ。

 

『人族の名前は複雑だな…よろしい。』

 

そう言いながら両踵を合わせ、心臓のある部分を拳で叩いた。彼らの敬礼である。

 

『私の名は【キズメル】。リュースラ王国近衛騎士団が1つ、【エンジュ騎士団】の末席に名を連ねるものだ。以後、よろしく頼む』

 

あまりの高貴さに4人は反射的に

 

「「「「よろしくお願いします!」」」」

 

敬語で頭を下げていた。

 

『ふむ。まずは天幕に案内しよう。4人だと手狭だろうが余裕がなくてな』

 

「「あ、ありがとう…!?」」

 

「「4人一緒!?」」




ツキノワ君、実はあまりソードスキルを使っていません。
一気に力むとか、出来るだけ力を抜くとかどこの消力かと…バキ、ぶっ飛び具合が結構好きです。
それではありがとうございました。


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閑話休題②

天幕での話です。ツキノワ君、シスコンですね。
それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

驚きのまま案内された天幕は俺達4人でも充分な広さではあった。

 

「まさか…今日ここで…」

 

「4人一緒に…?」

 

呆然と呟くキリトとミト。

 

「危険よ!!野宿より危険だわ!!」

 

「「失礼な」」

 

あまりの言われように、ついキリトと共に突っ込んでしまう。

 

『すまないが客用の天幕は用意できなくてな、ここは私のなんだ』

 

「なら良かったー!」

 

「先輩、いいんですかそれ?」

 

『ああ。夜警の際は十分な時間戻らないから安心しろ』

 

「「「「いや、ほんとそういうの結構なので」」」」

 

口を揃えて否定する俺たち。

 

「とりあえず、両端はアスナとキリトね。その隣に私とツキノワでいいわね」

 

「OK。それが1番安牌でしょ」

 

「それとも、お姉さんと一緒に寝たいかしら?」

 

「…ハン」

 

思わず鼻で笑う。

 

「あんた鼻で笑ったわね!?」

 

適当にやり過ごしていると

 

『ミトとツキノワは姉弟なのか?』

 

とキズメルが尋ねてくる。

 

「ええ、そうよ。私が姉なの。毎回弟の無茶ぶりには、冷や汗をかくわ」

 

『ふむ…私も妹の行動に何度冷や汗をかかされたか…』

 

突然、姉談義を始める2人。

 

「キリト、何故そこで頷く?」

 

「俺も兄だから、一応な。2人の気持ちも分かる」

 

「へぇ、意外ね。どちらかと言うと弟みたいだけど」

 

「失礼な!失礼な!大事な事だから2回言ったぞ」

 

姉談義を見ながら話す俺達。

 

『さて、陣中ゆえ大したもてなしは出来ないが、この天幕は自由にしてくれ。食堂に行けば何時でも食事は摂れるし、簡素だが風呂もある』

 

「!お風呂もあるの!?」

 

へぇ、マジか。

それは驚いた。

 

『当然だ。野営地とはいえ、浴場用の天幕は常に用意している。』

 

「…1つだけだが」

 

「1つってどういう…」

 

「…要するに混浴よ。…後天幕だから鍵も無ければ扉も無いのよ…」

 

ミトが恥ずかしそうに呟く。

なるほど、それは女性陣には恥ずかしいだろうな。

 

「俺達が見張りするよ?」

 

「そっちの方が危険よ!?」

 

「キリトは前科あるでしょ!?」

 

…は?

 

「おい、キリト…どういう事だ?」

 

「つ、ツキノワ…ちょっと待て…落ち着こう!落ち着いて話をしよう!」

 

「ああ、俺は落ち着いてるぞ?落ち着いてるからほら、話してご覧?俺が席を外した間に一体何があったんだ?」

 

「剣をしまえ!剣をしまってくれ!アスナ!ミト!助けてくれ!」

 

「「…」」

 

「キリト…オハナシシヨウカ」

 

「頼むから落ち着いてくれーーー!!!」

 

sideアスナ

 

「わぁ…!本当にあった!」

 

「…2人とも、しっかり見張ってなさい」

 

「へいへーい」

 

「…了解デス…」

 

そう言って風呂に入っていくミトと私。

 

外にキリト君やツキノワ君がいることを恥ずかしく思いながら、メニューを操作して服や髪型を変えていく。

ふとミトの体を見ると、スラッとしていて無駄な所が一切なく、まるでモデルみたいに綺麗な体つきをしている。

 

「…何、どうしたの?アスナ」

 

「ミトって綺麗な体してるよね」

 

「ちょ、ちょっと何言ってるの…!アスナだって出るところは出てて引っ込んでるところは引っ込んでるじゃない。理想的な体型してるわよ」

 

「は、恥ずかしいよ…!ミトだって無駄なお肉は一切無くて、スラッとしてて、まるでモデルさんみたい!」

 

「ふふ…ありがとうアスナ。でもここまでにしましょ?」

 

と言いながら指を刺すミト。

そこは天幕の入口でここが布で囲まれただけの空間である事を忘れていた。

 

「〜ッ!2人とも!!聞いてた!!」

 

「え!?あっ!?何を!?」

 

キリト君の返事はきたがツキノワ君からは返事はない。

 

「ちょっと!?ツキノワ君!」

 

更に問いただそうとした時

 

「ツキノワ?もしかして寝てる?」

 

キリト君の声が聞こえてきた。

 

「え?寝てるの?」

 

「あちゃ〜あの子どこでも寝れるから…それに色々あって疲れたのかも。キリト、そのまま寝かせてあげて。これ使っていいから」

 

そう言ってメニュー画面から毛布を取りだし、入口に投げるミト。

 

「うお!?ありがとうミト」

 

「気にしないで。こっちこそごめんなさい。弟が迷惑かけるわ」

 

「それこそ気にすんなよ。こっちは大丈夫だからゆっくり入ってくれ…キズメル?」

 

『邪魔するぞ』

 

そう言ってキヅメルさんが入ってくる。

 

「キズメルさんも今からですか?」

 

『さんは不要だ。失敬するぞ』

 

そうして装備を解いたキヅメルを見て

 

((男が作ったファンタジーだ))

 

その規格外のプロポーションにそう思う私。

きっとミトも同じ事を思ったのだろう。

2人でボーッと見ていると

 

『2人とも、感心せんぞ。掛け湯をしろ』

 

「「あ、はい」」

 

まさかエルフに入浴マナーを言われるとは。

そう思いながら掛け湯をして、湯船に浸かる。

 

「「はぁぁぁぁぁ…」」

 

気が緩んだ私達の声と顔を見られる。

 

『妹を思い出していた。あの子も湯浴みが好きだったからな』

 

「妹さんって…狼使いのお嫁さんっていう」

 

『うむ。見かけによらず気の強い嫁と腕に似ず少年のような旦那でな。そぐわぬようでなかなか似合いの夫婦だった…キリトとツキノワとは長い付き合いなのか?』

 

「キリトとは数週間、ツキノワはまあ、姉だから」

 

「同じくキリト君とは数週間、ツキノワ君は1年弱です」

 

『ほう、アスナもツキノワとは長いのだな。あの連携は納得だ。キリトとも中々の息のあいようだったぞ2人とも。まあ、アスナの場合はキリトや周りが合わせてる節があるがな』

 

そう言われ、今日の事を思い出す。

確かにそうだ、みんな私に合わせて戦ってくれていた。

 

『そなたが存分に無茶が出来るのは、常に傍で見守る者がいるからこそだ。その献身を軽んじる事の無いようにな』

 

そうだ、私のせいであの人は…

 

「ごめんなさい…」

 

「アスナ…?」

 

「私が調子乗って出しゃばったばっかりに…」

 

『違う!そうでは無い!…人族も苦しい戦いを強いられていると聞く。背中を任せられる相手は、大切にな。後は早めに素直になっておく事だ。…すまない。余計なお世話だったな』

 

「いえ、善処します…」

 

いなくなってからでは遅い。

きっとそういう事を言いたいんだろうなって思った。

確かに、たまにツキノワ君が何処か遠くに行っちゃうのではと思う時がある。

帰ってくると約束したとはいえ、それに甘えすぎたかな。

そう考えていると

 

『ミトよ。そなたも無茶が多い闘い方だったぞ。ツキノワという上を行くものの陰に隠れていたが、そなたも危ういぞ。何があったかは分からんが、己が命をかけてできることなぞたかがしてているぞ。生きてこそだという事を忘れるな』

 

「…はい」

 

そのまま私達はゆっくり浸かった後、お風呂場に入ってきた狼を洗ってあげてお風呂を出た。

そこにはびしょ濡れのキリト君と、ぐっすりと眠ったツキノワ君がいた。

 

「ツキノワ、起きなさい。ツキノワ!」

 

ミトが肩を揺らして起こす。

 

「んん…」

 

少しづつ目を開けるツキノワ君。

 

「ほら、ツキノワ君。速くお風呂入ったら?キリト君、悪いんだけど付き添ってあげて?」

 

「このまま入ったら溺れそうだもんな…ほら、行くぞ。ツキノワ」

 

そう言ってキリト君に先導されながらお風呂場に入っていく。

寝ぼけてたツキノワ君、可愛かったな〜そう思ってると

 

「アスナ、ツキノワの事考えてたでしょ」

 

「み、ミト!?何言ってるの!?」

 

『なるほど、アスナはツキノワが好きなのか?』

 

「ちが!?私は!?」

 

『ああ…そういう事か…』

 

「ええ…そういう事よ…」

 

2人に生暖かい目を向けられる。何、なんなの!?

 

「2人揃って何なのよ!!!」

 

outside

 

夕飯を食べ、キズメルの天幕に戻った俺達は最初に決めた順に寝たが、ツキノワは寝れないでいた。

さっきまで寝てたのと、色々あって考えていたからだ。

そのまま剣を腰に差し外へ向かう。

フラフラと森を歩いていると、そこには無数の剣が突き立てられていた。

 

「…まるで、墓標だな…」

 

『まさにその通りだ』

 

いつの間にか後ろにキズメルが立っており、手には皮袋と剣が握られていた。

その剣の柄には2つの指輪がチェーンで繋がれており、そのデザインはまるで、婚約指輪みたいだった。

 

「…狼使いの剣か?」

 

『ああ、そうだ。あやつらの剣と指輪だ』

 

そう言って木の真下に剣を突き刺し、皮袋を煽った。

 

『飲むか?』

 

「ありがとう…辛!?苦!?お酒かこれ!?」

 

キズメルから貰った袋の中身はワインらしきもので、ツキノワには刺激が強すぎた。

 

『月涙草のワインでな、妹の好物だったんだ…本当はあやつらの祝いの席で振舞おうとしたやつなんだが、あの時以降は、仇をとったら義弟と飲もうと思ってたんだが…今やそれも叶わない』

 

そう言ってそのワインを剣にかける。

 

『ミトとお前の話をした。昔からよく無茶をするらしいな。少し姉の気持ちも考えてやってくれ。下に無茶されると、上は不安でしょうがないんだ』

 

「…善処する。」

 

2人は静かに月を見上げる。

 

『そろそろ戻るといい。体を冷やすぞ。…ちゃんと送り届けてやるのだぞ』

 

「わかってるよ…ほら、行きますよ?アスナ先輩」

 

「…気づいてたんだ」

 

「キズメルもね。それでどうしたの?」

 

「…ミトとキリト君に言われたわ。割り切っておけと。…でも私にはできないよ。たとえ作られた存在だとしても、あの時言葉を交わし、その存在を感じて、私の為に大切な何かを失ったんだよ!?だから私は私自身の手でケリを付けたい。これは…私の物語なんだから!」

 

アスナは強くそう言い放つ。

ツキノワは全部聞いて

 

「いいんじゃないですか?先輩がしたいのなら」

 

あっさりとそれをいいと言った。

 

「…え?」

 

「俺達にとってはここはゲームの世界です。でもこの世界の住民からすれば、ここが現実なんです。だから…無理にこっちの常識に合わせる必要なんてないんですから」

 

穏やかに告げるツキノワ。

どっちも正しい。

その終わりをどうするのか、ただそれだけだった。

 

「…そうだよね!私が物語を作るんなら、私の思い通りにやればいいんだよね!」

 

アスナは元気を取り戻したように言う。

そんな様子にツキノワは微笑みながら、上着を被せる。

 

「さあ、速く天幕に戻りましょう?ミト達が心配しちいますし」

 

「そ、そうだね…ありがとう…」

 

(わー!わー!ツキノワ君の上着を被された!暖かいし!いい匂いする!)

 

思わず赤面させるアスナ。

ツキノワは寒いからかと思いそれをスルーしていた為、気づいてなかった。

そうして、幻想的な夜の森を、2人は歩いて天幕に向かった。




ありがとうございました。
さて、ネタが尽きたのでまた少し時間がかかります。
まあ、基本行き当たりばったりなのですが(笑)
それではありがとうございました。


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17話

どうも。ネコ耳パーカーです。
とりあえず3層終わる分位は貯めました。
それではよろしくお願いします。


outside

 

「「もう一度いってもらえるかしら」」

 

ニッコニコの笑顔、ただし目は笑ってないミトと、苛立ち剥き出しで、睨みつけるアスナ。

纏うドス黒いオーラ以外全く真逆な反応を見せる2人にタジタジのリンドとキバオウ。

そしてその様子を

 

「…どうすんだよ、あれ」

 

「…どうしような、あれ」

 

困った様に呟くキリトとツキノワがいた。

 

話は少し前に遡る。

お礼がてら、クエストがてらで野営地周りのデカい蜘蛛を狩り尽くした彼らは、アスナとミトの新しい武器である【シバルリック・レイピア】と【シバルリック・サイス】を片手に、全体会議へ参加する為、3層主街区【ズムフト】にやってきた。

そこでキバオウ達から

 

「パーティを解散して欲しい」

 

と言われ、2人がブチ切れて冒頭の台詞になる。

 

「この3層で俺達はようやくギルドを立ち上げた。俺が率いるDKB、キバオウさん率いるALS。今後はこの2大ギルドは互いに切磋琢磨しながら攻略を進めていくと思われる。そこで大事になるのが両ギルドの戦力の均衡だ。そこでだ…4人にはパーティを解散してもらいたい。」

 

 

リンドの説明を聞く限り、知った事じゃないと思うツキノワ。

その遠回しの説明に辟易している中、リンドの釈明は続く。

「ミトとツキノワに関しては、実の姉弟という点を考慮してコンビでも構わない。ただ4人の戦力は突出している。全員をまとめて引き入れる事は出来ないんだ…分かってくれ」

 

リンド達の言い分は決して的外れでは無い。

彼らの実力はかなり高い。

それこそボス戦の勝敗を左右させる程には大きいファクターのだ。

だが、それらは彼らの事情を考慮しない結果の話だ。

そもそも2人のギルドに入る気などない彼らにして見れば、ありがた迷惑もいい所だ。

 

「それは何か?つまりどっちかに入らないと締め出されるって事かよ?」

 

「…いや、そういう訳じゃない」

 

「だったら無所属でいいじゃないか!」

 

「…ほなおどれは当面の間、ギルドに名を連ねるつもりは無い…そういう事でええんやな?」

 

「…お、おう…?」

 

「「「はぁぁぁぁぁ…」」」

 

何とも気の抜けた返事をするキリト。

それに対して露骨なため息を着く他の3人。

 

「これだから人族は…」

 

「アスナ先輩、気持ちは分かるけど貴方も人族ですから…」

 

アスナの発言に同意しながらも宥めるツキノワ。

 

「貴方も鈍い、鈍すぎるわキリト。この人達は薮蛇したくないみたいだから、私が翻訳してあげる。ねぇキリト…貴方、ギルド作る気ない?」

 

「は、はい?…ギルド?…俺が?」

 

ミトの翻訳にさらにツキノワが続ける。

 

「そう、DKBでも、ALSでもない。第3のギルド」

 

「いや、ないない!俺なんかが立ち上げたギルドに入るやつなんて…」

 

そう言いながら周りを見ると、意外に乗り気な意見がほとんどなので少し焦るキリトは

 

「…いや、無いな。俺はソロが性にあってる」

 

ひよって逃げに入った。

 

(逃げたな)

 

(逃げたね)

 

(逃げたわね)

 

3人揃って同じ感想を抱いてジト目でキリトを見ていると

 

「つ、ツキノワはどうなんだよ!?第3のギルドならツキノワだって作れるぞ!?」

 

「はぁ?俺が?ムリムリ!集まっても仲いいヤツしか来ないって!」

 

キリトはそんな目に耐えきれなかったのか、ツキノワに話を振ったが、ツキノワもあっさりと断った。

 

「では、アスナさん、ミト。2人はどうだろうか?」

 

「「嫌よ」」

 

即答。

あまりの早さにみんな唖然としていた。

 

sideツキノワ

 

森に戻って数日後、俺達はとある野営地まで来ていた。

目的はこの森エルフの野営地にある、作戦司令書を他のプレイヤーより前に回収するためである。

 

「ここだな」

 

「よし!やる…!?」

 

行こうとした俺は突然人の気配がした方へ振り返った。

 

「キリト!」

 

「ああ、誰だ!?」

 

キリト気づいていたらしく、気配の方へ声を張り上げる。

 

「いや〜すっごいな〜この隠蔽率で看破されたのは初めてですよ〜」

 

この声、何処がで…まあいい。

 

「こんな所で何してる?」

 

「何ってそりゃ、野営地の警備…ってうわぁ!キリトさんじゃないですか!?」

 

突然キリトを見て興奮しながら詰め寄る不審者。

キリトはかなり困っており、俺もその熱狂ぶりにドン引きしていた。

 

「それにそちらはツキノワさんッスよね!?」

 

おっと、俺にも飛び火してきやがった。

これは早々に鎮火しよう。

 

「なあ、お前は森エルフ側っぽいけど俺達行っていい?」

 

「別にかまいませんよ?」

 

「「は?」」

 

こいつ何言ってんだ?

そんな事したらクエスト失敗だろうに。

 

「まあ、ただお通ししたんじゃ面白くないんで…決闘で決めませんか?」

 

…なるほど。剣で解決しろってことか。

面白い、やってやる。そう思い受けようとした瞬間

 

「いいね…ベータ時代とは違って【完全決着モード】が出来ないのは、ちょっとヌルいけど」

 

キリトさんや、何故そんなにノリノリで悪者ムーブしてるんだ。

実はそういうの好きだろお前。

 

「そういう訳だから…ツキノワ、後は頼む」

 

「はいよ…無理すんなよ」

 

俺はキリト達の元を離れ、指定の位置まで移動した。

そこには何時もの2人とキズメル、そしてアルゴだった。

 

「4人ともおまたせ。こっちは手筈通りにキリトが誘導した」

 

『よろしい、では参ろう。これより敵本陣への吶喊を開始する!!』

 

「「「違…ッ!?潜入!」」」

 

「チッ…DKBの連中か…」

 

「多いわね…」

 

陣の中にはDKBが警戒しており、中々動けないでいた。

 

「キズメル…もし人族との戦闘になったら、お願い。命だけは奪わないで」

 

ミトがキズメルに懇願する。

確かにそれは避けたいところだ。

この先に行くにはあんな連中とは言え、必要不可欠なのだ。

 

『異なことを言う。彼の者らへ手を貸すのなら、我らに弓を引いたも同然。ミト、如何にそなたらと同族であっても、それでは道理が通らぬ』

 

悔しいがそれは正論だ。

極論、味方以外は全て敵。

それらに情けをかける必要は無い。

キズメルの言い分は最もすぎて、俺達は言い返せない。

 

「そうよね…。それはそちらも一緒だものね…。私達もそのルールに従うべきなのかもしれない…。それでも」

 

「それでもお願い。上層を目指す私達には彼らの力が必要なの。ここで失う訳には行かない。だから」

 

「「お願いします」」

 

そう言ってミトとアスナ先輩は頭を下げた。

その2人を見て、キズメルはため息を着くと、何処か懐かしむように笑いながら言った。

 

『…昔、狼の群れに襲われた時、妹に子狼の助命をせがまれた事があってな…昔からその目には弱い。分かった、人族との戦闘は極力避けよう』

 

「「…!ありがとう!」」

 

こうして俺達4人の潜入任務始まった。

 

俺達は、俺・アスナ先輩・アルゴ組とキズメル・ミト組の2手に別れて、別々の旗付きの天幕を目指した。

どうやら俺達が当たりを引いたらしく、酒に酔って潰れてる司令官の机の上に置かれていた。

こっそりと盗ろうとした瞬間

 

「侵入者だー!!!」

 

外からの声に飛び起きた司令官は指示書を持ったまま外に出てしまった。

 

『これを取られる訳には…そうであった!鷹使い殿!鷹使い殿はおられるか!?』

 

鷹使い、だと?

俺とアスナ先輩は目の色を変え外を見た。

その時

 

『こっちも取り込み中なんですがねぇ…』

 

その嫌味ったらしい声のした方を向くと

 

『おおぉぉぉぉ!!!』

 

キズメル達が天幕の中から戦いながら飛び出してきた。

俺達はすぐに飛び出そうとするが

 

「ああ!?邪魔も大概にせんとシバくぞワレ!?」

 

キバオウ達ALSと、リンド達DKBが一触即発状態だった。

 

「クッソが…こんな時に!」

 

「これだから人族は…!」

 

俺達は先にそちらを片付けようとすると

 

「貴方達はあっちを優先して!」

 

ミトが走りよってきた。

 

「私がベータ時代の話をしながら時間を稼ぐわ!その間にあの作戦指示書を奪って!そうすればこの場所に意味はなくなる!アルゴ!貴方は私を手伝って!」

 

「ああもウ!しょうがなイ!やってやル!」

 

「ミト!お前は!?」

 

ミトは俺と違ってあまり精神的にタフでは無い。

恐らく戦うのと一緒くらい、人に悪意を向けられるが怖いはずだ。

 

「…大丈夫よ。私は姉だもの。たまには姉が後ろを支えてあげるわ」

 

そう言って俺の頭を優しく撫でる。

その温かさに肩の力が抜けてきて、頭がクリアになってくる。

 

「…姉貴、頼んだ」

 

「ミト!行ってくる」

 

「行ってらっしゃい2人とも。無理はダメよ」

 

その言葉を受けながら俺達は走り出す。

 

「先輩!2手に分かれて!俺が先に切るますから、反対からぶっ飛ばしてください!」

 

「了解!全力でやるわ!」

 

こうして俺達は隙を伺うため、姿を隠しながら戦場へと向かった。




ありがとうございました。
ミトの武器は適当に名前をつけました。
オリ主1人+ミトの2人入るだけで大変ですね〜。


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18話

改めて思う。NPCドン引きとかすごいよアスナさん。
それではよろしくお願いします。


sideミト

 

2人の背中を見送った私は、弟の成長への嬉しさと誇らしさ、そして一抹の寂しさを感じながら、アルゴと共に仲裁に向かった。

 

「姉も大変だナ、ミーちゃん」

 

走りながらアルゴが話しかけてくる。

確かにあの子の姉は大変だ。

昔から目を離すと、すぐに何処かへ消えている落ち着きのない子だ。

毎回両親共々、探し回っていた記憶しかない。

その為、私は絶対にあの子の手を放さなかった。

そのツキノワ…優月の手を初めて離した気がする。

 

「…大丈夫よ。あの子は強くなった。心も体も。だから、私はあの子の戻る場を守る為に戦う。それが姉の務め。さあ、ここからが私達の戦いよ!アルゴ、やるわよ!」

 

「…参ったナ。これじゃ姉なんて自称出来やしないナ。OKミーちゃん!姉の意地見せるゾ!」

 

その言葉を受けながら私は、鎌を思いっきりぶん投げた。

リンドとキバオウの間に向けて投げたそれは狙い通り、真ん中に刺さった。

私はその上に飛び乗り

 

「そこまで!ここは私が預かるわ!!!」

 

強く宣言した。

 

「なるほど…つまり俺達が聞いた情報は…」

 

「全くのデマ!!100%デマ!そんな事実は一切なイ!」

 

「このエルフクエストの報酬は確かに金と経験値、後素材よ。確かに品質はいいだろうけどボス攻略に直接関係するものはないわ」

 

私達はベータ時代の話を全部話して、何とか諍いを治めていた。

 

「言い切りよったで…こいつら…」

 

「し、信用できるか!2層のボスの情報だって隠してたじゃないか!」

 

またこいつね。学習してないのかしら?

いえ、してないのね。

 

「あれもベータとの変更点よ。あんなヤバい奴隠して何のメリットもないわよ。考えて物言ったら?」

 

私は呆れながら言い返した。

悪いけど、貴方に付き合う気は無いわ。

 

「今回もその変更は?」

 

「その可能性は否定しきれなイ。だったら代表を立てて調べさせればいい話ダ」

 

「その誰かってのも「悪いが、これ以上の御託は無しダ」!?」

 

「この口が顧客を欺くと思う者は前にでロ!!」

 

アルゴが堂々と大見得を切って言い放つ。

誰もその言葉に反応する者はおらず、場は丸く治まる。

 

「結構、そういう訳でエルフクエはミーちゃん達に任せてほしイ。もし何らかの情報が出た場合、アルゴの名に懸けて、全体に共有すると約束すル」

 

アルゴとキバオウ達の話を聞きながら、私は振り向く。

そこには多勢に無勢な戦況にも関わらず、一切怯まない3人の勇姿があった。

 

「ミーちゃん、こっちはオレッちに任せて行ってこイ!」

 

「…!ありがとう!アルゴ!行ってくる!」

 

そう言って私は走りながらツキノワの元へ走り、構えた。射程に入った瞬間、ツキノワはわざと空けておいてくれた剣線に沿って、全力でふるい、鎧ごと両断する。

 

「おまたせ!ここからは私も行くわよ!」

 

outside

 

激しい剣戟の中、鷹使いの一撃がキズメルの胸部鎧を捉える。

その瞬間、鎧が砕け散る。

その様子を片や全身を脱力させながら、片やじっと睨みながら構える2人の剣士。

 

『おや、失礼…それにしても何とも嘆かわしい!音に聞こえし我らが仇敵!リュースラ王国のエンジュ騎士団が!貴方のような美しくか弱い女性を前線に送るとは!…どうです?こちらに寝返りませんか?厚遇しますよ』

 

『フン、案ずるな。最近見込みのある見習いを仕入れてな。我が騎士団は益々隆盛になるだろう』

 

『それはそれは。是非1度ご挨拶申し上げたいですねぇ』

 

『ほう?今すぐにでも紹介したいのだが。はて…こういう時なんと言ったかな…ああ、思い出した』

 

ジリッ…ザッ…2人は今だと、静かに剣をぬく。

 

『すいっち』

 

『は?何を言っ』

 

ズザンッ!!!!!それ以上鷹使いの言葉は続かなかった。

右脇から全速力・全膂力で、イビルファングに斬り込まれたからだ。

 

「…ッ!!!」

 

剣士ツキノワはそのままバットでも振り抜くかの様にソードスキル【フィル・クレセント】を放った。

鷹使いが吹き飛ばされるその直後、今度は真反対の左脇から衝撃が走った。

ズドンッ!!!!!とこちらも全速力・全膂力で、シバルリックレイピアで貫かれたからだ。

 

「…ッ!!!」

 

剣士アスナは体を更に拗らせ、まさに銃弾の原理で鷹使いを吹き飛ばす。

 

「…ねぇキズメル?見込みがあるって本当?」

 

アスナはキラキラさせた目でキズメルに尋ねる。

 

『…ウム、大いにな…』

 

(人の事言えないけど、NPCが引いてるの初めて見た…)

 

ツキノワはそんなキズメルを見て、自分達の規格外っぷりを再確認していた。

 

『やれやれ、前にも思いましたが、人族には過ぎた業物ですねぇ。それにそちらの女人族のものも、すぎた業物のようですね』

 

そう呟きながら、立ち上がる鷹使い。

その周りに集まる6人の森エルフ。

 

「ひーふーみー…6人か…」

 

『多勢に無勢か…?』

 

「雑兵でしょ」

 

「余裕でしょ」

 

キズメルの警戒する声に、軽く一蹴するツキノワとアスナ。

キズメルは驚いた様に2人を見る。

 

『…そなたらがいてくれて本当に良かった。お陰で仇敵を前にしても、平静でいられる。さて、見習い騎士達よ。かような戦況の際、とるべき戦術は?』

 

2人を確かめるように見るキズメル。

その視線に2人は笑うながら、まずアスナが答えた。

 

「もちろん!まずは…一時撤退!」

 

そう言って3人は身を翻して逃げる。

ついでに煽るツキノワ。

そのまま天幕に滑り込んで、勢いで反対に出る。

次はツキノワが答える。

 

「からの、敵の分散!最後は…」

 

逃げる際、天幕を支える柱を斬って天幕を崩させる。

3人を追いかける為、中に入っていた3人の森エルフを中に閉じ込め、崩れた天幕を超えながら、アスナとツキノワは高らかに宣言する。

 

「「各個撃破!!!…でしょ?」」

 

『正解!』

 

そのまま外にいた3人を斬り払い、蹴り飛ばす。

慌てて出てきた3人は、ツキノワがまとめて相手する。

1人には逆袈裟で斬り、隣にいた敵にはそのまま振り下ろす。

鍔迫り合っている内に、後ろから襲われそうになるが、正面の敵の胸ぐらを掴み、足を払ってこかさせようとする勢いのまま持ち上げ、後ろに投げる。

慌てて受け止めたエルフを2人まとめて【リーパー】で吹き飛ばす。

最初に斬ったエルフが襲いかかるがそれも読んでいたのか、体を捻りながら躱し、その遠心力を利用しながら首を斬り落とす。

 

「…残り2人」

 

呟きながら2人に斬りかかる。

正面から右袈裟に斬りかかり、それを盾で防がれる。

その隙に左からもう1人が突きに来るも、それをスウェーで躱しそのまま腕を掴み、投げる。

一旦距離を取ろうとバックステップするも追撃するエルフ。

それに舌打ちを打ちながら下がっていつと、視界の端に何かが映る。

それを確認するとわざと膝をつきながら攻撃を受け止める。

それを隙とみたもう1人のエルフが一気に距離を詰めて、突きを放つ。

当たるその瞬間、そのエルフに大鎌が襲いかかる。

鎧ごと切り裂くと、もう1人にも斬りかかり、吹き飛ばす。

 

「おまたせ!ここからは私も行くわよ!」

 

プレイヤーを説得しに行ったミトだった。

 

「…遅いぞ。このまま全部斬るところだった」

 

そう軽口を叩きながら、立ち上がりミトの隣で構えるツキノワ。

 

「サクッと終わらせるよ」

 

「OK」

 

そのまま一気にエルフを倒し、アスナ達に加勢して雑魚を倒す4人。

 

『みんな。ここからだぞ』

 

そうキズメルが呟いた直後、大鷹と鷹使いが同時に襲いかかる。

鷹使いはキズメルが、大鷹はミトが相手する。

そして残る2人はまだ残っている森エルフの相手をする。

 

『鷹使い殿に加勢しろ!』

 

そんなエルフ達の前に立ちはだかり、地面に剣を突き立てる2人。

 

「悪いわね。ここから先は…」

 

「通行止めだ。大人しく引き返しな」

 

『ミト!アスナ!ツキノワ!』

 

「振り返らないで!」

 

「俺達は俺達のやる事を引き受ける!だがら!」

 

「貴女は貴女のやるべき事を為しなさい!」

 

そう言って各々、戦うべき相手に挑みかかる。

 

『おやおや、随分と威勢がいいですねぇ。いいんですか?人族如きに背中を預けて〜。正直背中が気になって仇討ちどころじゃないでしょうに?今ならまだ降参は受け付けますよ?』

 

鷹使いがねちっこい言葉でキズメルに話しかける。

しかしキズメルは獰猛に笑いながら弾き飛ばす。

 

『侮るな!我が背中を護る者達こそ、人族きっての剣士たち!後顧の憂いはとうの昔に絶ったのだ!』

 

そのまま堂々と名乗りあげる。

 

『今はただ、我が名を刻め鷹使い!!!リュースラ王国先遣筆頭騎士、近衛騎士キズメルが、その首を貰い受ける!!!』

 




キズメルカッコイイですよね〜
乳でっか!
ありがとうございました。


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19話

ストックを溜め込んでたらだいぶ空いた気がする…
それではお願いします。


outside

 

『…鷹使いよ。言い残す事はあるか』

 

『チックショョョョョョョウ!』

 

キズメルと鷹使いの戦いはキズメルの勝利に終わった。

それをプレイヤー達はただ見守るだけだった。

 

「なあ、キバオウさん。そっちのエルフクエってあんな感じなのか?」

 

「アホ言うなや。こんなんアイツらだけや」

 

「やっぱりなあ…どんなチート使ったんだあんたら」

 

リンドとキバオウは回復しつつ、成り行きを見守っていたが、気になったのか今頃やってきたキリトにそう聞かずにはいられなかった。

 

「してねぇよ。つかどういう状況だよこれ。俺だって最初のハロウドナイト倒せちゃってから戸惑いっぱなしだわ」

 

「あれを倒したんか!?エリートMOBやぞ!非常識な…!?」

 

キリトの発言にキバオウや周りは驚きに包まれていると

 

『ふざけるな!今更…命乞いだと!?』

 

キズメルの大声に何事かと振り向く。

そこには短剣を差し出し、頭を垂れる鷹使いがいた。

 

『貴様それで、貴様らが奉ずる白の大聖樹に!死んで行った同胞に!祖先に!どんな顔で会うというのだ!?慙愧の念は感じないというのか!?このような者に…妹は…義弟は…!!!』

 

それでもその姿勢を変えない鷹使いに深く溜息をついて、剣を引いて後ろを向いた。

 

『分かった、もういい。リュースラの騎士は下り首は取らない。ゆけ』

 

その瞬間、その背中に襲いかかる鷹使い。

誰もが唖然とした瞬間、

 

『そうだ、お前なぞ…狼(イヌ)の餌だ』

 

大狼が鷹使いの喉元に噛み付いて、食いちぎった。

そして、主人の弔いをするかのように遠吠えをした。

 

sideツキノワ

 

そんなこんなで3層迷宮区は2大ギルドに任せ、俺たちはエルフクエを進めつつ、ボス攻略を行っていった。

3層以降も基本の攻略は任せて、俺達はエルフクエを最後まで進めた。

途中、リンド暗殺疑惑事件だの、ギルドフラッグ事件だの、色んな事件が起きた。

10層攻略以降は4人で、どんどんと攻略に精を出した。

途中で俺がアインクラッドで初めて刀スキルを見つけ、習得した。

1番衝撃だったのがALSの壊滅だ。

25層、通称クォーターポイントのフロアボスを単独撃破しようとしたALSが、返り討ちにあい壊滅した。

その後ヒースクリフというプレイヤーが率いる【血盟騎士団】が台頭、クォーターポイント攻略に大きく貢献する。また、そのギルドにアスナ先輩とミトが勧誘され、2人は副団長としてギルドに入る事となった。

俺とキリトはそれぞれの理由でその話を断り、ソロを続けている。

そんな俺は今、ある場所にいた。

 

ここ、27層の迷宮区はトラップばかりで、しかも毎日マップが変わるという鬼畜仕様であり、アスナ先輩達もマッピングを諦める程だったのだ。

俺はそこにあるモンスターハウスと言われるジャンルのトラップをわざと開けて、レベリングを行うという、かなり無茶苦茶な事をしていた。

今日もそれを行い帰ろうとした時、前から団体客が来た。

最前線では見た事もない連中で、物見遊山にしてはここは危険すぎる。

警告しようと急いだ時

 

「おお!隠し部屋だ!」

 

と言ってそのまま部屋に入ってしまう。

 

「馬鹿野郎!!」

 

ここのトラップにはたまに【結晶無効エリア】がある。

もしそれを引いたらかなりマズイ。

そう思い、彼らの元へ走る。

 

「やめろ!それを開けるなーー!」

 

聞き覚えのある奴の声が聞こえたと思った瞬間、ビー!ビー!ビー!とやかましいブザー音が鳴り響く。

ドアが閉まりそうになるが、滑り込んでギリギリ侵入する。それと同時にPOPしだすモンスター。

 

「1番近いお前!箱を壊せ!そうすればこれ以上は増えない!破壊次第、全員角に集まれ!そっちの方が守りやすい!」

 

ハッとした連中は俺の指示通りにして角に固まる。

その時俺の隣にキリトが並ぶ。

 

「キリト!?もしかして最初からいた!?」

 

「いたよ!今はそれよりここを終わらせよう!みんな!転移結晶は!?」

 

「だ、ダメだ!?使えない!?」

 

キリトが誰かに結晶を使おうとするも使えない。

恐らく結晶無効エリアなのだろう。

舌打ちする俺達はそのままモンスター達に斬りかかった。

 

何とか全て倒した俺達は、彼らをホームに帰したあと、俺はキリトに事情を聞く事にした。

 

「それで?お前は何をしてたんだ?」

 

俺はキリトからここまでの経緯を聞いた。

たまたま10層に降りた時に助けた事。

成り行きで彼らのギルドに入る事になった事。

その時レベルを嘘ついてしまった事。

リーダーがギルドホームを買いに行く間に、家具を買う為の金を稼ぐ為に、あんな所にきてしまった事。

そして、あわや大惨事になる前に俺が助けられた事。

一通り話を聞いた俺は

 

「バカかお前は!!」

 

全力でキリトを叱り飛ばした。ここで誰もが優しくするのだろう。

でもそんな事しない。

もしそれをしてしまえば、キリトの自責の念は一体どこに向ければ良くなるのか、わからなくなると思ったからだ。

そうなってしまえば、きっとキリトは廃人になってしまう。だから俺は怒る。

キリトの心を守る為に。

 

「そもそも、いくらマナー違反としても素直に理由を言えばまだ、情状酌量の余地があっただろうが!もしちゃんと言っていれば、あんな事起こらなかったかもしれないだろうが!お前の下手な言い訳が、結果的に4人の命を危険に晒したんだぞ!?」

 

「…」

 

キリトは黙って俺からのお叱りを受ける。

大分長いことキリトを見てきたが、少しミトに似ている。

要はコミュ障だ。

人との関わり方に関して臆病なのだ。

最初は保身の為の嘘だったのだろうが、途中で嫌われなかったのだろう。

 

「…俺」

 

やっと話し出したか。

涙堪えられてないし。

 

「…おう」

 

「…おれ…さいじょば…こわぐで……じぶんを…まもるためで……でも…とちゅうがら…さけられだぐながっだんだ…」

 

「…おう」

 

鼻まで垂らしちゃってこいつ。

本当に世話のやける兄弟だぜ。

 

「でも…きょう…ダッカーが…だからばご…あけるの…どめられなぐて…すごぐ…ごわくて…」

 

「…そうだな。怖かったよな。でも、ひとつ聞いていいか。あいつらはお前の秘密を知って離れてくような、そんな奴らなのか?」

 

「ぢがう!!そんなこと…ない!!」

 

そうだろうな。

じゃなきゃ俺がこいつを連れ出した時、あんな心配した顔しないよな。

 

「じゃあ、全部話そうぜ。お前の隠し事も、今の気持ちも。もしダメなら俺も謝ってやるよ。俺ら兄弟だろ?」

 

折れそうなら肩を貸してやる。

間違ってんならぶん殴ってでも止める。それが兄弟ってもんだろ?

 

「…ツキノワ…」

 

「ほら、さっさとその顔何とかしろ。すげー顔してるぞ?」

 

そんな話をしてると、リーダーが帰ってくる。

俺達はキリトの事情を全部話した。

 

「…そうか。正直、キリトがすごく強い気がしてたけど、やっぱりそうなんだ。何か手加減してた気がしてたし」

 

「き、気づいてたのか…?」

 

「これでもリーダーだからね。これぐらい出来ないと」

 

なるほど。流石リーダー。

素質は十分って事か。

 

「それで今後の事だけど…キリトがいいなら俺達【月夜の黒猫団】にいて欲しい」

 

「…え?」

なんだ、やっぱり杞憂じゃないか。

これなら俺はいらないな。

そう思い、こっそり部屋を出た。

その後のやり取りは知らないが、みんなに言う事があるとするなら、キリトは月夜の黒猫団に所属したという事。

そして、近い将来、彼らが最前線に来て攻略組に仲間入りする事。

これくらいだ。

 

 

さて、ところで何故俺がこんな事言い出したと思う?

それはな

 

『つ、捕まるわけにゃ、行かねぇのさ!!』

 

「待ちやがれ!こそドロ!!」

 

SAO開始から1年以上たった今、2番目のクォーターポイント、50層に着いていたのにも関わらず、俺は泥棒NPCを追いかけて、この10層に降りて来ていたからだ。




ありがとうございました。
いや〜すみません駆け足気味で。
月夜の黒猫団編は本当にザックリですみません!
関わりすぎると、キリトにあの恐怖を与えずにすんじゃいそうといいますか、個人的にあそこはキリトにとって必要な事件だったんではと思い、残しつつどうするか考えた結果、最後の最後だけ関わって助ける、そういう展開にする必要があったのです。
だからかなり短く片付けました。
さて、次はオリジナル話です。
それではありがとうございました。


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20話

お久しぶりです。猫耳パーカーです。
仕事が忙しくて…
それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「待ちやがれ!」

 

赤いロングコートに黒い袴を履き、腰には【送刀:天狐(おくりかたなてんこ)】を指した1人の男。

俺だけど。

俺は目の前を走る盗人を追いかけていた。

その速さ、身軽さはアルゴみたいだと思いながら、こっちも負けじと追いかける。

 

「何でこんな事を…!」

 

話は数時間前に遡る。

 

 

50層主街区【アルゲート】でとある依頼を受けた。

内容は盗まれた家宝を取り返して欲しいという内容だ。

これを軽いノリで受けたのが、そもそもの間違えだったのだ。

盗人自体は直ぐに見つけたのだが、こいつが滅茶苦茶速い。

しかも身軽なのだ。

屋根から屋根へ飛び移ったりとか路地に逃げたかと思えば、今度はすぐ後ろにいるわ。

【追跡】スキルがなければ諦めてた。

しかも転移門まで利用する始末。

幸い、行先は聞こえたのですぐに追いかけてきたのだか…

 

「!?あいつフィールドに!?」

 

何とフィールドに逃げ込みやだったのだ。

しかもご丁寧にモンスターまでけしかけてきた。

 

「はぁ…やるか」

 

俺は溜息をつきながら、一掃した。

その後も追いかけ続けた先は、見た事の無い洞窟だった。

 

「ここは…この依頼専用か?」

 

俺は慎重に進むことにした。

仮にも最前線の依頼だ。

それ専用の場所なら高難易度のモンスターがいてもおかしくない。

しばらく進むと、祠をみつけ、その手前には盗人がいた。

見つけた。

 

「おい!大人しくそいつを返せ!」

 

『嫌だ!これはオイラのもんだ!』

 

「違ぇだろ!?いいからさっさと…!?」

 

突然、祠が開いた。

俺も盗人も何事かと見ていた瞬間、突然祠から何か出てきて、盗人の口から体内に入っていく。

 

『な、何カボッ!?ゴボゴボゴボ!?』

 

「…は?」

 

何事だ?いきなりどんなホラーに、ジャンルがシフトした?

さ〇子か?〇だ子なのか?

呆然としているといつの間にか、盗人は落ち武者に変わった。祠の中にあった刀を取りだし、構えた瞬間、HPバーが2本出てきた。

そのレベルがわかった途端、俺はゾッとした。

 

「こいつ!?50層のフィールドボス並か!!」

 

流石に1人で最前線のフィールドボスクラスは無理だ!

そう思い直ぐに撤退を選んだが洞窟から出れなかった。

 

「クソ!倒さないと出れない仕組みか!」

 

もう退路はない。後ろに退けない以上、やる事は1つ。

 

「…やってやる」

 

前に押し通る。

それだけだ。

こうして俺は、落ち武者と対峙した。

 

outside

 

雄叫びを上げながら、落ち武者は刀を振り下ろす。

ツキノワは刀身で滑らせながら一回転させ、その勢いを乗せて振り下ろす。

それは躱され返す刀で下から切り上げられる。

ツキノワもそれを躱し所で、落ち武者は全力で振り下ろす。

直撃こそしなかったものの、剣圧で後ろの壁まで吹き飛ばさせるツキノワ。

 

「ガッ!?馬鹿力か…よぉ!?」

 

咄嗟に身を翻すツキノワ。

そこに落ち武者が突きを放ちながら突撃する。

壁に刀が刺さるも、そのまま壁をえぐりながらツキノワに迫る。

 

 

「わとととととっ!?止まれ!!」

少し距離をとったツキノワはソードスキル【絶空】で、落ち武者の胴を横に切る。

やっと動きが止まると思ったが、

 

「な!?ガッ!」

 

動きは止まったものの怯むことはなく、技後硬直で動けないツキノワの首を掴み持ち上げる。

そのまま切っ先をツキノワの心臓部分に向ける。

 

「ギ…グ…こ、こんのぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

ツキノワは咄嗟に剣を振り上げ、掴んでる腕を切り落とす。流石に効いたのから奇声を上げながら後退する。

ツキノワは呼吸が上手くいかず、蹲っている。

 

「ゴホッ…!ゴホッ…!グホッ!?」

 

蹲っているツキノワを落ち武者は蹴り飛ばす。

ツキノワは転がりながら、メニュー画面を弄り、何かをする。

そのまま背中を向きながら、嘔吐く。

その隙を落ち武者は飛びかかり、トドメを刺そうとする。

その瞬間

 

「はぁぁぁ!!」

 

振り向きざまに放つツキノワの斬撃。

その一撃は落ち武者の体を深く切り裂き、壁まで吹き飛ばした。

複数のポーションをあおりながら、ツキノワは立ち上がる。

そして、切っ先を落ち武者に向けると

 

「さあ、第2ラウンドだ」

 

強く宣告し、斬り掛かる。

 

sideツキノワ

 

「なんだこれ?」

 

俺がそのスキルを見つけたのは数ヶ月前だ。

趣味でとってる【料理】スキル熟練度を調べようと、メニュー画面を見ていた時初めて気づいた。

 

「【剣豪】スキル…ダメだ。覚えがない」

 

俺は不思議に思いながら詳細を確認する。

 

「これはまあ、何とハイリスクハイリターンな…とんだじゃじゃ馬だなこいつは」

 

その余りにもピーキーなスキルに逆に感心していた。

これを一言で表すなら

 

「完全プレイヤー依存型スキル…かな?」

 

システム的補助はあっても補正はない。

まさに使い手を選ぶスキルだ。

俺はこれを公表するか迷ったが、考えた末、黙ることを選んだ。

理由は

 

「これって【ユニークスキル】だよな…多分」

 

【ユニークスキル】とは、このアインクラッドにただ1つしかないスキルを指す。

ヒースクリフが持つ【神聖剣】がそれだ。

発生条件一切が不明のこのスキルはいつしかそう呼ばれるようになった。

これもその1つなのだろう。

 

「ま、余計なリスクは負う必要は無いしな」

 

そうして俺は今までこっそりとレベリングと同時にスキルの強化に詰めてきたが、今回等々、お披露目となった。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

俺は一気に近づきて射程圏内に収めると剣を振った。

その斬撃は落ち武者まで飛んでいき、直撃する。

それを走りながらどんどん放つ。

そう、このスキル最大の特徴は攻撃が飛ぶこと。

斬撃、刺突、打撃、この3種類に分かれていて、それぞれに射程、勢い、特性に差がある。

例えばこの斬撃は射程10m、勢いはソードスキル並、特性は連発可能だろうか。

1番オーソドックスな攻撃方法である。

そうやって畳み掛けていた時、突然奇声をあげる落ち武者。俺は咄嗟に耳を塞ぎ動きを止めてしまう。

そこで改めて様子を確認すると

 

「は!?デカくなった!?」

 

さっきよりかなりデカくなった。

そのまま襲いかかってくる落ち武者。

俺はその攻撃をいなしながら、至近距離で斬撃を放つ。

体勢を崩した所に俺は刺突を放つ。

手で防がれるが、この刺突の特性は貫通。

いくら防ごうが貫くが、落ち武者は俺の刀を掴んで離さないようにする。

 

「この…放せ!」

 

俺は体術スキル【弦月】で顎を蹴りあげ、力が緩む隙に剣を抜き、着地してから剣を峰に持ち帰る。

そのまま

 

「ぶっ飛べ!!」

 

打撃を放つ。この打撃は射程は短いがその分威力は最強。

その威力で吹き飛ばす。

数メートル吹き飛ばして、俺は更に斬撃で畳み掛けるが、その斬撃が弾き飛ばされる。

目の前に落ち、砂煙が上がる。

その瞬間

 

「…え?」

 

宙に浮いていた。

その時、ディアベルがよぎった。

正確にはディアベルが死んだ時だ。

俺は下を向くとあの時と同じ構えをしていた。

 

「間に合え…!」

 

俺は何発も斬撃を放つも止めるには至らず、俺は空中で対応せざるを得なくなった。

一撃目は躱し、二激目は【弦月】で側面を蹴り回転しながらいなす。

三撃目は力技だ。

打撃を放ち相殺させる。

その反動で俺は地面に叩きつけられる。

 

「体力は…ゲッ…残り2割…」

 

俺はポーションを飲みながら、立ち上がる。

落ち武者も技後硬直が解けたのかこっちを向く。

瓦礫が落ちた時、俺達は3度目の衝突をした。

 

 

sideアスナ

 

「ツキノワ…ツキノワ…」

 

「大丈夫、大丈夫だよミト。ツキノワ君は強いもん」

 

ツキノワ君…どこにいるの?

連絡がとれなくなって、もうすぐ一日が経つ。

ミトを励ましながら、アルゴさんに聞きに行ってくれたキリトくんを待つと、丁度帰ってくる。

 

「戻ったよ」

 

「キリト!ツキノワは!?無事なの!?」

 

「ミト!落ち着いて!」

 

ミトがキリト君に詰め寄るのを慌てて止める。

 

「ツキノワの名前はまだ線は引かれてなかった」

 

その言葉にへたり込むミトを慌てて支える。

 

「アルゴが言うには何らかのクエストをやっていて、10層で行方が分からなくなったって」

 

え?10層?

 

「それってどういう…?」

 

「恐らくインスタンスマップに入ったんだと思う。それなら追跡出来ないのも納得出来る」

 

そういう事か。

つまりツキノワ君はまだ生きていて、クエストから抜け出せなくなっているという事。

そして、今私達に出来るのは

 

「ツキノワ君を信じて待つしかないってことね」

 

「そういう事だ。だからミト!シャキッとしろ!俺も兄だから気持ちは分かる。でも俺達兄姉はそれを弟妹に見せる訳には行かないだろ!!」

 

キリト君はミトの肩を掴みながら言う。

そのキリト君を見て、少しずつ目に光が戻る。

 

「…ごめんなさい2人とも。もう大丈夫よ」

 

「ミト…大丈夫?」

 

「正直、大丈夫じゃないけど姉だから」

 

そう言いながら立ち上がるミト。

そのまま私達は団長率いる本体に合流する。

 

「…アスナ君、ミト君大丈夫かな?」

 

「「大丈夫です。行けます」」

 

「ふっ…いい目だ。それでは諸君、行こうか」

 

団長の一言で、私達は行軍を開始した。

 

sideツキノワ

 

「つ、疲れた…」

 

俺は何とか洞窟から出て、俺は家宝と祠にあった刀を持って、依頼主の元まで戻ってきた。

ポーションは尽きた。

刀も壊れた。

溜息をつきながら俺はフラフラと歩いて戻ってきたのだ。

 

「取り返したぞ」

 

『剣士様!ありがとうございます!!?その刀は!』

 

「知ってるのか?」

 

『この家宝はかつて、その刀の持ち主の戦装束なのです!』

 

「そうだったのか…」

 

あの祠に逃げたのは偶然ではなかったらしい。

 

『もしよろしければそちらもお預かりしてとよろしいでしょうか?』

 

「ええ。どうぞ」

 

刀を渡していなくなる。

少しして家宝と刀を手に戻ってきた。

 

『お待たせしました。こちらをどうぞ』

 

「これは…凄いな」

 

黒と赤の柄に赤い鞘。刃は少しそっており、綺麗な刃紋。その輝きはまるで斬るものでも求めているような美しさがあった。

 

『そちらの刀【和泉守兼定:真打】とこの家宝は貴方様に差し上げます』

 

「いいのか!?」

 

『きっとこれもなにかの運命。どうぞこれらと共に戦ってくだされ』

 

そういう事ならばと有難く頂くことにした。

戦装束は鎧かと思ったが、綺麗な着物で今の服より性能が段違いだったので着替えることにした。

真紅の着物は袖や襟が黒、白、金のトリコロールで縫われている。

袴は同じ黒だが、性能は段違いだった。

靴は編み上げるタイプの黒いブーツ。

そして最後に羽織があった。

白をベースに裾や袖が黒くなっている。

俺はそれらの装備に着替えてから出た。

アイテムを買い直していると

 

「つ、ツー坊!?いつの間二!?その格好ハ!?」

 

アルゴと出会った。

 

「おうアルゴ、クエスト報酬だ。どうよ、似合ってる?」

 

「う、うん…似合ってるよ…?」

 

アルゴよ、語調が変わってるぞ。

 

「そ、それよりリ!!攻略組がもう出発したゾ!」

 

「マジか!?行ってくる!」

 

そう言って俺は腰に差した、【和泉守兼定:真打】を支えながら、走り出す。

 

「間に合ってくれよ…!」

 

俺は全速力で少しでも速く追いつけるように、ボス部屋まで駆け出した。




ありがとうございました。
最初の服のイメージはBLAZBLUEのラグナ=ザ=ブラッドエッジです。
最後の服のイメージは刀剣乱舞の和泉守兼定です。
あくまでイメージ。大まかの形だけ寄せてます。
それでは失礼します。


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21話

お気に入り100件突破しました。
皆さんの応援のおかげです。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。


sideアスナ

 

「それでは突入前に最後の確認をします」

 

私は突入前の部隊の前に立ち、最後の確認をしていた。

 

「ボスの名前は【Asura the Jack of All Trades】。三面六臂の阿修羅像です。それぞれ片手剣・槍・両手棍を持ち、体力ゲージは6本。最初は素手で叩きつけるだけですが、2本減らすと三体に分かれて、それぞれの武器でソードスキルも使ってきます」

 

私の言葉に続いて今度はミトが話を続ける。

 

「私達は攻撃隊A,B,C隊、タンク隊D,E,F隊、遊撃隊のG,H,I隊の9つの隊に別れています。これらを3つの班に分けて、行動する事を基本とします。片手剣持ちにはA,D,G隊の通称【α班】、槍持ちにはB,E,H隊の通称【β班】、両手棍持ちにはC,F,I隊の通称【γ班】の3班に別れて対応します。それぞれ各班私、アスナ、キリトの指示の元、各個撃破して下さい。団長は全体の取りまとめを行ってもらいます。」

 

「承知した」

 

「何か質問は?」

 

みんなからの質問はなく、沈黙だけが続いた。

 

「みんな質問はないようだね。それでは行こうか諸君」

 

そう言って団員がボス部屋の扉を押し開ける。

そのまま剣を向いて、剣を部屋に向けた。

 

「突撃!」

 

その言葉を受け私達は部屋に突入した。

部屋は真っ暗で何も見えなかった。

全員が入った瞬間突然部屋の松明が火が灯り、部屋が明るくなる。

その部屋の真ん中には巨大な阿修羅像があった。

あまりの大きさに息を飲んでしまう。

 

「各隊!戦闘配置!」

 

団長の声に全員がハッとしたように動き出す。

全員の配置を確認した団長が

 

「行動開始!」

その宣言をした事で、50層フロアボス戦が開始された。

 

「【γ班】!【α班】とスイッチ準備!【β班】は回復させる用意!」

 

団長の指示は従わざるを得ないのという感覚を抱く、これがカリスマの一部かと思う。

それに団長の指示も明確でわかりやすい。

 

「いい調子だな。ここまでは予定通りだな」

 

キリト君が話しかけてくる。

確かに流れは順調だし、このままの勢いで行きたい。

そう考え、全体を見ていると、体力ゲージが2本目を削りきったところだ。

ここからだ。

 

「各班、手筈通りに」

 

そう団長から声掛けがかかる。

全員が配置を着いた瞬間、

 

「は?」

そこには3体の各武器を持った阿修羅像ではなく、先程よりは少し小柄な2体の三面六臂の阿修羅像が、3つの武器を持って襲いかかってきた。

想定外の事態に固まってしまったプレイヤー達の中で、それぞれ1番近くにいたプレイヤーにソードスキルを放つ。

片方は遊撃隊、片方はタンク隊の人でタンク隊の人はギリギリ残りましたが、遊撃隊の方は…一撃で死んでしまいました。

 

「一…撃…?」

 

誰が呟いた瞬間、雄叫びをあげる阿修羅達。

その声を聞いて、攻略組は一気に恐慌状態に陥ってしまいました。

 

outside

 

「うわぁー!?逃げろ!?」

 

「一撃だと!?冗談じゃないぞ!?」

 

「落ち着いて!冷静に対処して!」

 

アスナのそんな声は周りの悲鳴にかき消されていた。

恐慌状態になった攻略組は一気に戦線崩壊。

各々が逃げるだけであとはボスの格好の的になるだけだった。

最初より小柄だが、その分素早く、攻撃力はそのままだったのだ。

 

「来るな!助け…ガァ…!?」

 

「ヒィ!?また死んだ!?」

 

「逃げろぉ!!」

 

1人、1人と死んでいく光景を見て、キリトが叫ぶ。

 

「クソ!アスナ!俺達だけでもやるしかないぞ!」

 

「キリト!僕達【月夜の黒猫団】も行くぞ!」

 

「俺達【風林火山】も戦うぜキリの字!」

「ケイタ!クライン!頼む!」

 

攻略組に途中参加する形でキリトとツキノワに追いついたクラインは、【風林火山】というギルドを率いて立派な攻略組の戦力の一翼となっていた。

 

「こっちは俺達が戦うぜ!」

 

「私達も加勢しよう【血盟騎士団】戦闘態勢!」

 

エギル達通称【アニキ軍団】とヒースクリフ率いる【血盟騎士団】がもう一体と戦う。

しかし、相手はクォーターポイントのフロアボス。

幾ら凄腕のプレイヤー達でも、僅か2ギルド分の戦力では抑えきれず、押し負ける。

 

「グアッ!!」

 

「キリト!…クッ!」

 

「キリト!ケイタ!大丈夫かお前ら!?」

 

「団長!ガァッ!?」

 

「ぬ!?いかん!」

 

「あんたら!?大丈夫か!」

 

彼らが隙ついて狙ったのは…他のプレイヤーに落ち着く様声をかけていたアスナとミトだった。

 

「アスナ!ミト!」

 

キリトの声に反応して2人はすぐに散開する。

 

「アスナ!一撃も貰ってはダメよ!」

 

「ミトだって気をつけて!」

 

彼女らは必死に武器を振るい、戦う。

途中キリト達が合流し、戦いもやはり戦力が足りず、攻めあぐねる。

 

「クソ!あと一手!足りないか!」

 

「やむを得ない、撤退の準備を!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

ヒースクリフが撤退を宣言し、少しずつ下がろうとした時、突然不可解な挙動をとるボス達。

 

警戒していたのだが予想だにしない行動に出た。

 

「「アァァァァァァァァ!!」」

 

突然の叫び声に全員が耳を塞ぎ、動きを止める。

しかも、最悪な事にスタンがかかる。

僅か3秒だがボス達には十分すぎる時間だった。

ボス達が狙ったのは、1番近くにいたアスナだった。

 

「「「「「アスナ!」」」」」

 

みんながアスナの事を呼ぶ中、アスナはふと

 

(前もこんな感じ…あったなぁ…)

 

2層の時もこんな感じだったかな?

少し違うか。

まあ、何でもいいけど…死ぬかなこれ?嫌だな…

会いたいな…ツキノワ君…怖いよ…だから…

 

「助けて…!ツキノワ君…!」

 

届かない懇願をしていると思っていた。

だから目の前の光景を信じられなかった。

それは周りのプレイヤー達も同様だった。

それは紫色の髪をなびかせ、白い羽織を肩にかけ、真紅の着物、黒い袴を履いた侍だった。

その侍の一撃で2体の阿修羅像は、纏めて吹き飛ばされる。

静かに着地し、アスナを見る赤い瞳。

その姿を見たアスナは、嬉しさから泣いていた。

 

「お待たせしました。アスナ先輩」

 

「ツキノワ君…ッ!!」

 

sideツキノワ

 

「大丈夫ですか?」

 

俺は膝をついて先輩を起こす。

ポーションを取り出して、渡してから敵に目を向けた。

 

「あいつ、情報と違いません?」

 

「ええ、偵察戦の時とは違うの」

 

そんな短時間でパターンが変わるか?

何かフラグがあったのか…?

 

「「ツキノワ!!」」

 

「キリト!ミト!無事か!?」

 

「それはこっちのセリフだ!馬鹿野郎!」

 

「そうよ!どれだけ心配したと思うの!?」

 

ミトとキリトがそれぞれ説教を始めようとした時、エギルさんがそれに待ったをかける。

 

「お前達!説教は後だ!来るぞ!」

 

先程吹き飛ばした阿修羅像達が起き上がってきたか。

さてと、どうするかな。

 

「これ、回廊結晶です。転移門広場に繋いであります。10分間、その間俺が殿を務めます。アスナ先輩たちは攻略組をまとめて、体勢を立て直してください」

 

「ツキノワ君!?何言ってるの!?」

 

「そうだぜツキの字!お前1人なんて無茶だ!」

 

アスナ先輩とクラインが止めてくる。

だが、

 

「この中で1番余裕があるのは俺だ。だから「ならば私も出よう」!?ヒースクリフ!?」

 

突然ヒースクリフが名乗りをあげる。

 

「私が1番頑丈なのでね」

 

「…団長、ご武運を」

 

「俺も残るぜ」

 

次に名乗りをあげたのはキリトだ。

 

「キリト!無茶だ!」

 

「悪いケイタ。ツキノワ、文句は受け付けないぞ」

 

「ハァ…勝手にしろ」

 

…ダメだな。こうなったらこいつは聞かないし。

 

「…ッ!なら、【月夜の黒猫団】のリーダーとして命令する。…絶対に死ぬなよ!サチを泣かしたら許さないからな!」

 

「了解!リーダー!それは死ねないな!」

 

「なら当然、私も残るわ。纏めるのならアスナの方が向いてるし」

 

最後にミトが名乗りを上げた。

正直、ミトは来る予感があった。

 

「ミトまで!?」

 

「アスナ。みんなをよろしく!クライン、エギル!アスナをお願い」

 

「…OK!しっかり俺達が支えてやる」

 

「ミトの嬢ちゃん。無理すんじゃねぇぞ!」

 

「…!ありがとうクライン」

 

おや?ミトの反応が少し、女っぽいぞ…まさか!?

 

「「ミト!?まさか!?」」

 

俺とアスナ先輩が声を揃えてミトに聞く。

ミトは顔を赤くしながらそっぽ向く。

はは〜んなるほどぉ。

 

「じゃあ、先輩。行ってきます!…ミトをいじる為に」

 

「…いってらっしゃい!みんな!絶対に死なないでね!…ミトをいじる為に」

 

「あなた達!何言ってるの!?」

 

ミトの言葉は聞き流して、俺たち以外は回廊結晶を手に部隊へ合流する。

 

「さて、準備はいいかな?」

 

「ここは言い出しっぺが号令かけろよ」

 

「そうね。気合い入るやつよろしく」

 

全員軽いな〜!しょうがない。

 

「総員抜刀!!!行くぞ…戦闘開始!!!!!!」

俺達4人による絶望のボス戦が始まった。

 




ありがとうございました。
2層で言ってたミトの年上好きは発言は、実はこのやりとりの為です。
これはマジの話なのですが、
「ミトとクライン絡みありそうだなー」って思ってた次の日、アリブレで2人のイベントがあってこれは使わな!って思いました。
それでは失礼します。


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22話

ツキノワの剣豪スキルで初のボス戦です。
今まであまりソードスキルを使用してこなかったのは
実はこのスキルの適正を得るためです。
それではよろしくお願いします。


outside

 

4人は2体の阿修羅像に突撃する。

まず先手をとったのはツキノワだった。

走りながら斬撃を何発か放ち、牽制する。

それを受けながらも両手棍を構え、振り下ろしてくる。

 

「散開!」

 

ヒースクリフの声にそれぞれ散開する。

だがヒースクリフだけはそれを真正面から受け止める。

鉄と鉄がぶつかる轟音を響かせながら押し勝ったのは

 

「ぬぅん!!」

 

ヒースクリフだった。

そのまま弾き飛ばし、体勢を崩させる。すかさずミトが鎌で追撃する。

 

「いやぁぁぁぁぁ!!」

 

胴を大きく切り裂き、さらに吹き飛ばす。

一方、ツキノワとキリトはもう一体と対峙していた。

槍でソードスキルを使い、2人を貫こうとするもそれを難なく躱すと

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

キリトがソードスキルでパリィする。

 

「スイッチ!」

 

キリトがツキノワと入れ替わる瞬間、阿修羅像も片手剣持ちにシフトする。

そしてすぐにソードスキルを放ってくる。

 

「っ!?シィ!」

 

至近距離で斬撃を飛ばしながら武器を弾く。

武器を持つ腕を、かちあげられた阿修羅像のがら空きの腹に、

 

「オラァ!!」

 

打撃を飛ばし、吹き飛ばす。

さらにその体に、

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!」

 

キリトが追撃する。

さらに攻めようとツキノワが前に出た時、ミトが警告する。

 

「ツキノワ!避けなさい!」

 

その声に慌てて身を翻すと、ミト達が相手をしていた阿修羅像がツキノワを襲い、もう一体を守っていた。

 

「マジか…」

 

「協力プレイしてくるのかよ!?」

 

「それだけじゃない。面を変えることで技後硬直をキャンセルしてるぞ」

 

「団長、どうしますか?」

 

「…何とかして2体を引き離すべきだ。組合わせはさっきの組み合わせでよかろう」

 

作戦会議を終え、改めてツキノワ・キリトのコンビと、ミト・ヒースクリフのコンビに分かれて攻撃を仕掛ける。

まず2体の間に、ツキノワが斬撃を飛ばす。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

避けた隙を突いて、キリトがさらに押し広げる為に攻め立てる。

その後ろに攻撃してくる阿修羅像は、ヒースクリフが防ぐ。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

ミトが攻撃してタゲをとる。狙われるミトをヒースクリフが前に出て守る。

こうしてお互いが少しずつ距離を空けさせる事10mほど来た時だった。

 

「っ!?また行こうとしてるのか!?」

 

キリト達が相手していた、阿修羅像がミト達の方へ合流しようと動き出す。

 

「させねぇよ!」

 

ツキノワが斬撃を、乱れ打ちして足止めを図る。

何発か当てていた時、槍を持っていた顔が割れた。

 

「顔が割れた!?」

 

しかも動きを止め、膝をつく。

 

「!!チャンスだ!!」

 

「畳み掛けるぞ!!」

 

ツキノワとキリトが一気に攻める。

ひたすら攻撃を続ける。

こうしてやっと体力を半分削った所で阿修羅像は立ち上がる。しかし、槍を持っていた顔は割れたままだ。

 

「ミト!ヒースクリフ!顔は割れる!割れればダウン取れるぞ!」

 

「了解!」

 

「承知した」

 

こうしてミト達は堅実に戦い、ヒースクリフが弾いた時、ヒースクリフはミトに肩を貸す。

 

「ミト君!」

 

「お借りします!団長!」

 

そのままヒースクリフの肩を使い、高く飛ぶ。

そのまま、全体重をかけて顔面にソードスキルを放つ。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

こうして両手棍の顔を割ってダウンをとる。

 

「団長!」

 

「ミト君!畳み掛けよう」

 

こうしてミト達は袋叩きする。

それを助けようとする阿修羅像をキリトとツキノワは必死に防ぐ。

 

「クソ!?こいつ止まらない!」

 

「勘弁してくれよ…ッ!?しまった!?」

 

「ツキノワ!?ミト!ヒースクリフ!逃げろ!」

 

キリトの声を聞きミトは距離をとり、ヒースクリフは盾で防いだ後、距離をとる。

 

「ツキノワ!?大丈夫!?」

 

「大丈夫!問題ない!」

 

「すまない…止められなかった」

 

「気に病むことは無いキリト君。そもそも、この人数で戦おうというのが無茶なのだ」

 

ゆっくりと立ち上がり、体勢を整える2体の阿修羅像。

それを見て、4人も武器を構え直す。

 

「キリト。あいつ…顔は治らないな」

 

「ああ。それに槍は使ってなかったな…まさか!?」

 

「壊れた面の武器は使えないって事!?」

 

「可能性はある。あくまで希望的観測ではあるが」

 

1つの特性を見つけた事で希望が見えてきた。

そう思った時、今度は阿修羅像から攻めてくる。

 

「みんな!!今まで通り!出来るだけ顔を狙って!」

 

「「「了解!」」」

 

戦いが始まって約10分。

今の戦況は

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

「クソ…ゲホッゲホッ…」

 

キリトとミトはスタミナの限界を迎え、動けなくなっていた。

 

「ウォォォォォォォォ!!!」

 

「ぬぅん!!」

 

ツキノワとヒースクリフがそれぞれ1VS1で、戦っていた。

キリト達とツキノワ達の差は、ユニークスキルという規格外を持っているか否か、そこだった。

そのジョーカーを持つ2人はそれぞれ攻撃と防御で、絶対的な実力差を生んでしまい、ツキノワ達にキリト達が追いつけなくなったのだ。

 

「ツキノワ…!団長…!」

 

「クソ…!動け…!動けよ…!」

 

キリト達は必死に動こうとするも、体は震えるばかりで動かせなかった。

 

「2人とも!無理すんな!そんな状態だと死ぬぞ!」

 

「そこでじっとしていたまえ」

 

ツキノワ達は目を離さないまま、こっちのことを心配する。

阿修羅像がそれぞれ、両手棍を振り下ろし、槍を突いてくる。

流石のヒースクリフも2体まとめては防げす、回避を選択する。

ツキノワは逆に前に出て、降ろされる武器を足場に高く飛ぶ。

顔の高さまで飛ぶと、両手棍を持った阿修羅像の顔を飛ぶ斬撃で切り裂き、槍を持った阿修羅像には刺突を飛ばし、顔を貫く。

 

「よし!両方壊れた!」

 

「体力もそれぞれ残り1ゲージだな」

 

着地し、1度体勢を整えるため、距離をとる。

その間に2体の阿修羅像が輝きだし、ひとつになった。

 

sideツキノワ

 

「また…1つに戻った…?」

 

「片手剣だけを持っているな」

 

「2人とも大丈夫か?」

 

「キリト!ミト!まだ休んでないと!」

 

「私達も動けるわ。問題ないわよ」

 

「フッ…では期待しているよ2人とも」

 

それぞれ武器を構えると、目が光りだし、ソードスキルの構えをとる阿修羅像。

 

「私が受け止めよう。各自攻撃の準備を」

 

ヒースクリフが前に出て攻撃を受け止める。

轟音がなった瞬間、ヒースクリフの姿が無くなった。

 

「「「…は?」」」

 

俺達が恐る恐る振り向くと、ヒースクリフが吹き飛ばされており、地面に伏していた。

【神聖剣】のおかげでダメージは少なかったが、普通のタンクでは死にはせずとも、ダメージは少なくないだろう。

軽装の自分たちが当たってしまえば…

 

「〜ッ!!避けろぉ!絶対に当たるなぁ!!」

 

1番最初に正気に戻った俺が、悲鳴じみた声で呼びかける。

その言葉に2人はハッとし、慌てて行動を起こす。俺は切り込んで斬撃を放ちながら進む。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

阿修羅像の攻撃を刀で滑らしながら回転し、遠心力を乗せて斬撃を放つ。

胴体を逆袈裟に斬り、体勢を崩した所で返す刀で袈裟斬りを放つ。

 

「スイッチ!」

 

今度はミトが飛び出して、力ずくで鎌を薙ぎ払う。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

胴を切られるのを、たたらを踏んで耐えた阿修羅像は、そのままミトにソードスキルを放つ。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

技後硬直で動けないミトを庇うようにキリトと俺がそれぞれ、ソードスキルと飛ぶ打撃を発動し、受け止める。

 

「「ぐぅぅぅぅぅ!?」」

 

「2人とも!はぁぁぁ!!」

 

しかしその重さに押し負けそうになる。

技後硬直の解けたミトが参戦した事で一瞬浮いた隙に、それぞれ、散開して避ける。

キリトと俺は体力を確認すると

 

「「は?」」

 

キリトは残り5割、俺が4割だった。

 

「いなして防いだだけだぞ…」

 

「マジで一撃も受けられないな…」

 

「3人とも。すまない」

 

「団長!無事ですか!?」

 

ヒースクリフが復活し、戦線に参加する。

 

「さて、ヒースクリフの防御力も当てにならないとなるとどうするか」

 

「すまない、タンク失格かな」

 

「いや、【神聖剣】が吹き飛ばされるなんて、想像してなかったしな」

 

「でも、私達にできるのは避けるだけよ…。せめて何か弱点でも見つけないと…」

 

俺が作戦会議をしていると、走って俺達を追いかける阿修羅像。

 

「「「走れるの(かよ)!?」」」

 

「それほど速くはないがね」

 

慌てて俺達は戦闘用意をし、それぞれ避ける。

阿修羅像が狙いをつけたのは俺だった。

 

「こんの!!しつこい!」

 

俺は刺突を飛ばし、目を潰そうとする。

しかしそれは防がれ、そのままソードスキルが発動する。

舌打ちしながら横に飛んで躱す。

阿修羅像は、地面に突き刺さる剣を、そのまま横に引いてくる。

 

「嘘だろ!?」

 

慌てて転がって避けて、振り返るのと同時に、斬撃を飛ばし攻撃する。

 

「こっち向け!」

 

「がら空きよ!」

 

「フッ!!」

 

3人がソードスキルを発動するも、意に返さず俺を狙い続ける。

そうする事数分がたった頃、阿修羅像がまたもやソードスキルを発動する。

 

「全員、散開!」

 

それぞれの方向に散開した後、次に狙われたのはミトだった。ミトもそれに気づき躱そうとした瞬間、なにかに足を取られた。

 

「え?」

 

「ミト!?」

 

「ミト君!?」

 

ミトが足を取られたのは、この戦いで生じた地形の変化、窪みだ。

 

「ミトォ!!!」

 

俺は全力走ってそのままタックルした。

 

「ツキノワ!?」

 

俺はその攻撃に対し、斬撃を何回も放ち、最後に打撃を発動した。

それでも止められず、クリーンヒットは免れたが、掠めてしまい吹き飛ばされてしまった。

 

「「ツキノワァ!!!」」

 

キリトとミトが走ってくるのが見えた。

あぁ…俺ってよく飛ばされるなぁ…。

ていうかヤバいな。ただでさえ、体力回復しきってないのに…。

これ叩きつけられたら死ぬな。

受け身取ろうにも体が動かねぇし、間に合わない…。

キリト、ミト…アスナ先輩。

ごめん、後はよろしく。

俺が全てを諦めかけたその時何が俺の下に入ってクッション代わりになってくれる。

それにより体力が数ドット残った。

 

「ヒール!ツキノワ!」

 

直後、体力が結晶により全回復する。

 

「良かった…。間に合った…!間に合ったよ…!神様…!」

 

「アスナ…先輩?」

 

そう、俺を受け止めてくれたのは、アスナ先輩だった。

先輩は泣きながら俺を抱きしめてくれる。

 

「後は私達に任せて、休んでて?」

 

そう言って、レイピアを抜いて阿修羅像に切っ先を向ける。

後ろにはクラインやエギルさん達を始めとする攻略組の全戦力が並ぶ。

そして堂々と言い放つ。

 

「攻略組!!!!出撃!!!!!!」




このボス最初はIFと同じにしようかと悩みました。
でも、せっかくだからオリジナルボス戦を書いてみようと思いこうなりました。
それではありがとうございました。


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23話

これにて50層攻略戦は終了です。
それではよろしくお願いします。


sideアスナ

 

「注目してください!ここに回廊結晶があります!これは転移門広場に繋がっています!今から10分以内に体勢を整え、再度出撃します!」

 

私の言葉に誰も答えなかった。

どうして?どうして誰も、何も言わないの?

 

「皆さん…?」

 

「無理だ…」

 

誰が呟いた。

それはまるで、全員の気持ちを代弁するように続けられる。

 

「あんな、無茶苦茶なやつどうやって勝つんだよ!?勝てる訳ねぇだろ!?」

 

「そんな!?それでも勝たないと戻れないんですよ!?」

 

「それでも無理だ!一撃で攻略組を殺すような連中、勝てる訳ねぇだろ!?」

 

そうだ、そうだと続く声。

これが今の攻略組なのかな…。

 

「あいつらだってもう持たない!あんたやあいつらは、規格外の強さだから戦えるんだ!」

 

違う。

そうじゃない。

私達は必死になってるだけなのに…。

戻るために戦っているだけなのに…。

ツキノワ君…ミト…キリト君…私…どうしたら…?

 

「もういいか?お前ら」

 

「ああ、これ以上は聞くに耐えん」

 

心が砕けそうになるその時、クラインさん達【風林火山】の皆さんと、エギルさん達【ツーハンデッド・ビルダーズ】の皆さんが、私を庇うように立っていました。

 

「ど、どういう意味だよ!?」

 

「今よぉ、あそこで戦ってるやつはまだ10代半ばのガキ達だ。アスナもそうだ。俺達大人は本来、こいつらを守ってやらねぇと行けねぇんだぞ!!」

 

「それを寄ってたかって…恥ずかしくないのか?お前らは。俺達はここに立っていることが恥ずかしい」

 

クラインさんとエギルさんがそれぞれ、みんなに語りかけてくれる。

私には無い重みを、感じられた。

 

「確かにこのSAOで年齢なんてほぼあってないようなもんだ。けどよぉ、そういう問題じゃねえだろ!?」

 

「あいつらは強い。俺達よりずっとな。しかし、俺達は大人で、あいつらは子供だ。もし自分の子が産まれた時、お前達は同じ理由で子供達を盾に使うのか?お前達は父親としていられるのか?」

 

「「お前達はこの先、男として、大人として、胸を張って生きていけるのか!?」」

 

2人の怒声が響き渡る。

その言葉を受けて、みんな沈黙したまま、俯いてしまう。

そんな時だった。

 

「…いい訳ねぇだろ…」

 

「え?」

 

「いい訳ねぇだろ!そんなダサいまね、するくらいなら、死んだ方がましだ!」

 

そんな声に少しずつそうだ、そうだ、と声が上がる。

 

「だったらこんなところでグダグダ言ってる場合か!!」

 

「やるって決めたなら支度しやがれ!!」

 

一つ一つの熱が伝播していき、やがて攻略組全体が立ち上がった。

 

「…皆さん…」

思わず泣きそうになる。

必死に涙を堪えているとクラインさん達から声がかかる。

 

「アスナ!早く回廊結晶を!」

 

「は、はい!コリドーオープン!」

 

私は慌てて回廊結晶を使いました。

そしてそこに流れるように攻略組の皆さんが入り込み、アイテムをひたすら買い漁っていました。

 

「アスナ!うちの店の在庫のポーション、全部出すぞ!」

 

「俺達もだ!マサムネ!頼む!」

 

「【青龍連合】も倉庫を開けるぞ!」

 

「今からサチに連絡入れる!」

 

各ギルドがアイテムを持ち寄って物資をかき集めてくれていました。

 

「分かりました!ダイゼンさん!副団長権限でうちも開放します!」

 

「了解です!クラディール!手伝ってくれ!」

 

「しょうがない…」

 

こうして各ギルド必死にアイテムを調達していると

 

「「アスナ!」」

 

「サチ!リズも!」

 

そこには【月夜の黒猫団】のサチと、友人のリズこと【リズベット】がやって来ました。

 

「どうしてここに!?」

 

「ケイタから連絡を受けて、ホームからアイテムを持ってきたの!」

 

「それにボス戦なら武器の耐久値もマズイでしょ!だから簡易キット持って来たのよ!戦えないけど、武器のメンテなら出来るわ!」

 

「2人とも…ありがとう…!」

 

2人の気持ちに思わず泣いてしまいました。

だって…嬉しくって…

 

「あ、アスナ!?泣かないで!?」

 

「ほらもう〜泣かないの!これからでしょ?」

 

こうして約10分後、体勢は整いました。

 

「よし!全員準備できたぜ!」

 

「皆さん…ありがとうございます!行きましょう!」

 

「「「「おう!」」」」

 

私達は再び回廊結晶を使い、ボス部屋に乗り込みました。

そこで見たのは、再び一体に合体した阿修羅像だった。

 

「おいおい…また合体したのか?」

 

「しかし、ゲージはラスト1本。むしろやりやすくていいじゃないか」

 

私はみんなの方を見て、声をかけようとした時、

 

「皆さん!行きま「ミトォ!!!」!」

 

突然、ツキノワ君の声が聞こえてきました。

慌てて振り返ると、ツキノワ君が吹き飛ばされていました。

 

「ツキノワ君!?」

 

一気に加速して体を滑り込ませてギリギリキャッチした私はすぐに回復結晶を使って回復させました。

 

「よかった…。間に合った…!間に合ったよ…!神様…!」

 

「アスナ…先輩?」

 

私はしっかりと抱きしめ、ツキノワ君が生きている事を実感していました。

そして優しく壁に寄りかからせて

 

「後は私達に任せて、休んでて?」

 

そう言って、私はレイピアを抜いて阿修羅像に切っ先を向ける。

後ろにはクラインさんやエギルさん達を始めとする攻略組の全戦力が並んでくれる。

大丈夫、1人じゃない。

みんながいる!

そう胸に刻み、私は阿修羅像に対し宣戦布告した。

 

「攻略組!!!!出撃!!!!!!」

 

outside

 

「「「「「「「おおーーーーーーー!!!」」」」」」」

 

一気になだれ込んでくる攻略組。

その勢いにキリトとミトは唖然としていた。

 

「何だ、この士気の高さ…?」

 

「みんな、何が…?」

 

思わずつぶやく2人にそれぞれの仲間たちか声をかける。

 

「キリトー!無事だな!【月夜の黒猫団】参戦する!」

 

「ケイタ!ササマル!ダッカー!テツオ!」

 

「外にサチも来てるぜ!」

 

「サチが!?」

 

キリトはサチが来ていることに動揺する。

戦いが苦手な彼女は、今は生産職としてギルドを支えているはずなのだ。

 

「あいつも【月夜の黒猫団】って事だ!」

 

「キリトは下がって休んでくれ!」

 

「そうだぜ!キリの字!ミトの嬢ちゃんもだ!」

 

「「クライン!【風林火山】の皆も!」」

 

「おっと…俺達を忘れてないだろうな?」

 

そこにクライン達とエギル達が合流する。

 

「団長!ミト副団長!ここからは我々【血盟騎士団】も出ます!」

 

さらに【血盟騎士団】がやってくる。

 

「では頼むとしよう」

 

「…すまない!直ぐに戻る!」

 

「みんな聞いて!さっきより攻撃力が高くなってるわ!ソードスキルは基本回避!通常攻撃も必ずタンク3人以上で防いで!」

 

「「「「了解!」」」」

 

キリト達が外に出ると、先に休んでいたツキノワが武器のメンテを行っていた。

 

「キリト!」

 

「サチ!」

 

「ミト!無事?」

 

「リズ。ありがとう」

 

それぞれが再会を喜びあっていると、ツキノワが2人の声をかける。

 

「2人とも無事か?」

 

「「それはこっちのセリフ!」」

 

そして、3人の武器をメンテしてる間、ひたすら説教されるツキノワだった。

 

「さあ!3人とも!終わったわよ!」

 

「キリト、ツキノワ。これ」

 

「「これは?」」

 

サチが2人に渡したのは防具だった。

 

「2人の戦闘スタイルに合わせて、軽くて丈夫な素材を使って作ったの。良かったら使って!」

 

キリトのはチェストプレートで、ツキノワのは鎖帷子だった。

 

「ありがとう!サチ!使わせてもらうよ!」

 

「サンキューサチ!早速装備するよ」

 

お礼を言って早速、装備してステータスを確認する。

防御力が最初より上がっている事を確認し、

 

「「「行ってくる!」」」

 

3人は戦場に飛び出していった。

 

攻略組はしっかりと連携を取り合って、少しずつだが阿修羅像を追い詰めていて、あと一息まで来ていた。

 

「エギルさん!スイッチ!」

 

集団の中を一気に駆け抜けるツキノワは、ちょうど攻撃を行ったエギルとスイッチする。

 

「ぶちかましてやれ!」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

一気に懐に入り込み、斬撃を何発も放つ。

剣を振るうその姿はまるで舞のように、それでいて一切の隙がなく、まさに【剣豪】の如く美しさがあった。

その隙に力を貯めていたミトが大声を張り上げる。

 

「全員どきなさい!!」

 

その声にみんなが反応すると、ミトが持つ鎌が、強く光輝いていた。

 

「スイッチ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

鎌最上位ソードスキル【魔女狩り】を発動する。

HPを吸い上げるほど、攻撃力が上がるその技をミトは最大まで貯めて、放つ。

その絶大な攻撃力を受け、たたらを踏む 阿修羅像にさらにアスナが追撃の為に、全速力で駆け抜ける。

 

「スイッチ!」

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

攻略組トップクラスの速度を上乗せさせた、細剣最上位ソードスキル【フラッシング・ペネトレイター】が、阿修羅像の腹を深く抉る。

悲鳴をあげる阿修羅像に、キリトが走り出す。

 

「スイッチ!」

 

「キリト!俺達に乗れ!」

 

【月夜の黒猫団】を足場代わりに高く飛び、

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

片手剣最上位ソードスキル【ノヴァ・アセンション】で顔を10連撃に切り裂く。

最後の10撃目を食らわせた時、悲鳴をあげながら爆散する阿修羅像。

Congratulation!!の文字とリザルト画面が出てきた事で、

 

「「「「「「勝ったーーーーーーー!!!!!!」」」」」」

 

無事50層のフロアボスを倒し、アインクラッドの半分を踏破したのだと確信したのだった。




ありがとうございました。
完全オリジナル展開になりましたこの50層。
めっちゃくちゃ苦労しました。
ここからしばらく投稿出来ないかもです。
リアルが繁忙期に突入してしまったので…
それでは失礼します。


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閑話休題③

お久しぶりです。
やっと一区切りです。
それではよろしくお願いします。


outside

 

「それでは!50層突破を記念して!かんぱ〜い!」

 

「「「「かんぱ〜い!!!」」」」

 

50層のレストラン。

ここにはボス攻略戦を終えた攻略組が、打ち上げを行っていた。

死者への弔いを行ったあと打ち上げをしようと【青龍連合】のリンドが提案したのだ。

全員乗り気で、普段こういう事には出てこない、ヒースクリフすら出てきていた。

あちらこちらでギルドの垣根を越えてワイワイしている中、ある一角では攻略戦の立役者である、ツキノワ・キリト・アスナ・ミトの4人が集まっており

 

「「「さあ、ツキノワ(君)。話してもらうぞ(わよ)」」」

 

ツキノワを尋問していた。

 

「3人とも?ちょっと落ち着こう?な?」

 

「「「落ち着いてるよ(わよ)(ぞ)?」」」

 

「絶対違うだろ!?」

 

何とか切り抜けようとするツキノワを前からミトが、斜め前からキリトが、隣からアスナが逃がさないように囲っている。

更にはキリトの後ろから

 

「そうだよツキノワ。私達にもちゃんと説明して」

 

サチ達【月夜の黒猫団】とリズが。

 

「そうだぜ!ツキの字!隠すことねぇだろ!」

 

ミトの後ろからクライン達【風林火山】が。

 

「ま、諦めて話す事だな」

 

ツキノワの後ろからエギル達【ツーハンデッド・ビルダーズ】が囲っていた。

逃げられないと悟ったツキノワは溜息をついて説明する事にした。

 

「わかったよ…」

 

まずクエストの事を説明した。

 

「最前線のフィールドボスクラスだと!?」

 

「1人でやったのか!?」

 

「何でそんな無茶したの!?」

 

クラインとエギルが驚き、ミトが怒る。

 

「いや、俺だって逃げようとしたけど、逃げれなかったんだよ!」

 

脱出不可能の状態だった事を説明する。

 

「装備はクエスト報酬だったんだろ?」

 

次にキリトが聞いてきたのは装備の事だった。

 

「そう、この【真紅の戦装束】と【和泉守兼定:真打】はクエスト報酬だったよ」

 

「私メンテした時、ビックリしたわよ!それ魔剣クラスの装備じゃない!」

 

その言葉に全員が驚く。

ドロップ品で落ちるならともかく、それがクエスト報酬だとは思いもよらなかった。

 

「そのクエは俺達も受けれるのか!?」

 

1番に食いついたのは同じ刀使いのクラインだった。

 

「いや、アルゴに試してもらったけど無理だって」

 

「そんな〜…」

 

「て事はあんただけのユニーク武器って事!?」

 

「そうなるな」

 

リズの言葉に肯定すると皆がおお〜と言う。

 

「それはそうとどうよ?似合ってる俺?」

 

そう言ってツキノワはその場に立って一回転する。

 

「あんたって本当に何でも着こなすわよね…」

 

「サンキューミト。アスナ先輩!どうですか?」

 

「う、うん…に、似合ってるよ!」

 

ミトはいつもの事なのかあっさりと返すが、アスナは顔を真っ赤にさせながら答える。

その顔を見てツキノワは心配そうに覗き込む。

 

「先輩?顔赤いですけど、大丈夫ですか?」

 

「だ、大丈夫!?大丈夫だから!」

 

更に顔を赤くさせ、手をバタバタと振るアスナ。

 

「…ミト?あれってワザと?」

 

「…いや、あの子は天然よ」

 

「それは逆に恐ろしいね…キリトみたい」

 

「何故に俺?」

 

「…キリトのにぶちん」

 

「サチ?」

 

前の席で何やらごちゃごちゃとやっているのを、不思議そうに見るツキノワ。

 

「てめぇら!!当て付けか!?」

 

「「何が!?」」

 

クラインの男泣きに困惑するツキノワとキリト。

そんな混沌とした場をエギルがまとめる。

 

「お前ら…目的から脱線してるぞ…。ツキノワは最後に聞くが、あれはなんだったんだ?」

 

その一言で全員がツキノワを見る。

その視線に居心地悪そうに目を逸らしてから答える。

 

「…エクストラスキルだよ。【剣豪】」

 

「…その入手条件は?」

 

「不明。気づいたらあった」

 

「つまり…ユニークスキル!?」

 

アスナが驚きながら、核心をつく。

 

「…まあ、そうなります」

 

またどよめきが上がる。

 

「何か効果はあるのか?」

 

キリトが尋ねる。本来マナー違反だが、ここに咎めるものは居ない。

 

「…クリティカル発生率500%アップ、クリティカル威力500%アップ。後はステータス大幅アップ。後は…飛ぶ斬撃かな。パターンは3種類、それぞれ特徴があって、無制限」

 

「ご、500%アップ!?どんな規格外スキルなの!?」

 

「それに飛ぶ斬撃って…それ遠距離攻撃だよね!?」

 

ツキノワの説明にリズとサチが驚く。

他のメンバーも同様で、目を見開いていた。

 

「…でも、デメリットもあるだろ?」

 

「そうね、決定的なのが1つありそうね」

 

しかし、キリトとミトだけは違って険しい顔をしていた。

 

「デメリット…?ツキノワ君あるの?」

 

「あるよ。1つだけ」

 

「それは?」

 

代表してアスナが尋ねる。

 

「…ソードスキルが使えない。正確には【剣豪】スキルに適応したソードスキルがない、って感じかな」

 

その言葉に違う意味で黙り込んだ。

このSAOにおいて、ソードスキルは必殺技でもある。

そのソードスキルが使えないという事はつまり

 

「つまりこのスキルは、完全プレイヤー依存型スキルって事」

 

そう、使い手の力量がそのままスキルの強さになるという事だ。

そんなピーキーなスキルを実践レベル、ましてやボスに通用させるレベルにまで高められた剣技、まさに剣豪だ。

まるでツキノワの為のスキルではないか、そう錯覚させる程の衝撃が走った。

 

「よし!聞きたい事は聞けたからな!後はパーッとやろうぜ!!」

 

「そうだな!!よし!食うぞー!」

 

クラインがそう騒いで、キリトがそれに便乗する。

なんとも言えない空気がそれで流され、彼らもまた、パーティに参加していくのだった。

 

sideツキノワ

 

「はぁ〜食った食った…」

 

俺は腹ごなしに外に出ていた。

理由はそれだけ。

のんびり店の周りをブラブラしていると

 

「ツキノワ君!」

 

「アスナ先輩?」

 

アスナ先輩が走ってきた。

何かあったのか?

 

「どうしました?」

 

「ううん、ただ外に行くのが見えたから、追いかけてきたの」

 

なんだ、そういう事か。

ちょっと…いや、かなり緊張するけど少し勇気を出そう。

 

「じゃあ、ちょっと歩きませんか?」

 

「うん、そうしよっか」

 

こうして俺達はフラフラと歩き出した。

特に会話もなく、当てもなくブラブラしているだけだったが、突然アスナ先輩が立ち止まった。

 

「アスナ先輩?」

 

「…ツキノワ君!!」

 

突然アスナ先輩が抱きついてきた。

その目には涙がチラリと見えた。

 

「アスナ先輩!?どうしたの!?」

 

「すごく心配した…!心配したんだよ!?もし何かあったらって怖かったんだよ!!でも、無事で良かった…!あの時、間に合って良かった…!」

 

かなり心配かけたらしい。

俺は申し訳なるのと同時に、泣くほど心配してくれていて、嬉しくもなっていた。

 

「…心配かけさせて本当にごめんなさい。でも、前にも約束したでしょ?『どれだけ遠くに行っても、絶対に帰ってくる』って」

 

「うん…!うん!そうだよね!約束したもんね!守ってくれたもんね!」

 

そう言って嬉しそうに笑う先輩を見て、とうとう我慢できなくなった。

 

「先輩、俺がなんであんな約束したと思います?」

 

「…どうしてなの?」

 

「…好きだから。俺はアスナ先輩が、結城明日奈さんが大好きだから。だから俺と付き合ってください!」

 

俺は勢い任せに、頭を下げて人生初の告白をした。

顔は真っ赤だし、緊張がヤバい。ボス戦より心臓が爆発しそう。

 

「ツキノワ君…顔を上げて」

 

そう言われ顔を上げると、目に前に先輩の顔があって、唇に柔らかいものが当たる。

今のって…。

 

「せ、先輩…?」

 

「私もツキノワ君が…兎沢優月君が大好きです!だから!これからよろしくお願いします!」

 

マジか…?マジなのか!?

 

「…本当に…?」

 

「フフ。本当に!」

 

理解がやっと追いついてきて、感情が爆発した。

 

「やったーーーーーー!!!」

 

「きゃ!?もうツキノワ君!」

 

思わず抱きついたけど抱き締め返してくれる先輩。

俺達はそのまま少し抱きしめあってから、どちらからという訳でもなく、キスをした。

 

「…これからよろしくお願いします、アスナ先輩」

 

「うん、よろしくねツキノワ君」

 

そう言って俺達は店に戻った。

その瞬間

 

「「「「「「「2人とも!おめでとう!!!!!」」」」」」」

 

「「…は?」」

 

何故か店にいた全員に祝服された。

その時1人だけニヤニヤした奴がいた。

その正体は

 

「「ミト!!!見てたでしょ!!!」」

 

「最高に良かったわよ!2人とも!」

 

ミトだった。

どうやらつけてたらしく、俺らが戻る前に戻ってわざわざ言いふらしたらしい。

 

「2人とも奥手すぎるんだもの。じれったい事この上ないわ!でもおめでとう!親友として、姉として嬉しいわ」

 

「ツキノワ!アスナ!おめでとう!」

 

ミトのにやけ顔とキリトの純粋な祝福のギャップに少し目眩がする。

その時、先輩という目が合う。

恐らく同じことを思ってたのだろう。

俺達は敏捷性をフルに活かしてミトを捕まえる。

 

「へ!?2人とも!?」

 

「そういや、ミトを弄る約束してたっけね先輩?」

 

「そうね。してたわね。ウッカリしてたわ」

 

「へ?2人とも?」

 

「ところでミト。意中の殿方とはどうなのかな?」

 

「確かクで始まってンで終わる人だよな!」

 

ワザと大きな声で言う。その瞬間、場が一気に変わる。

 

「「ツキノワ!アスナ!詳しく!!」」

 

女性陣は身を乗り出し、男性陣はざわめき出す。

 

「ち、違う!彼の事はそういう風には!?」

 

「「またまた〜!あんな女の顔しといて〜!」」

 

「変にシンクロするな〜!」

 

こうして俺達は無事ターゲットの擦り付けに成功して、ミトを弄った。

それはミトがパンクするまで続いた。

こうして俺達のパーティは更に盛り上がっていったのだった。

次の日、新聞に俺の【剣豪】スキルの事と、俺と先輩の交際報道が一面を飾ったのは言うまでもない。

 

「「アルゴ(さん)!!」」




今ロクアカが暗くなってるので、こっちは幸せ全開で行けたらなって思ってます。
また明日から仕事が忙しいです。
多分年明けまで無理かな〜…
それでは良いお年を


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閑話休題④

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

朝7時、俺はタイマーの音で目を覚ました。

ボンヤリした頭で今日の予定を考え、思い出し途端、一気に目が覚めた。

 

「今何時だ!?…7:03。約束は…9:00にアルゲートの転移門広場だな」

 

よし、予定に間違えはないし時間も余裕がある。

俺はまず朝飯を用意しながら、同時並行であるものも用意する。

こういう時、手間がかからないからここは楽だ。まあ、味気なさすぎるのも如何なものかと思うが。

 

「よし、こっちはOKっと!」

 

サクッと朝飯を食べて俺は何時もとは違う服に着替える。

黒のブルゾンにモスグリーンのオーバーデザインのトレーナー。

スキニージーンズに茶色のハイカットシューズ。

全体的に飾りっけがないのでいつものネックレスをつけ、髪を結う。

ハーフアップに整えた所で、ストレージ内を確認する。

 

「よし、準備完了!時間は…8:17か。少し早いけど行くか」

 

こうして俺は自分の拠点にしてる安宿屋を出た。

何するのかって?

それは…先日付き合うことになったアスナ先輩との初デートである。

 

「8:32…まあ、流石にいないか」

 

わざと早めに出た俺は思ったより速く着いたので、ストレージを弄りながら待つことにした。

10分後、

 

「ツキノワ君!」

 

アスナ先輩の声のする方へ顔を向けると、走りよってくる彼女の姿を見つけた。

黒のジャケットに薄ピンクのブラウス、白のフワッとした感じのロングスカートと茶色のブーツ。俺が前にあげたネックレスもしてくれている。

滅茶苦茶可愛い。

 

「おまたせ!ごめんね、待たせちゃった?」

 

「大丈夫ですよ?さっき来たところですし」

 

実際に10分ぐらいだから、全く気にしてない。

 

「あれ?ツキノワ君。髪型変えたんだ」

 

あ、流石先輩。早速気づきてくれた。

 

「せっかくなんで、先輩とペアルックにしようかと…似合います?」

 

「ウンウン!似合うよツキノワ君!じゃあ、今日はよろしくお願いします!」

 

アスナ先輩からのお願いに俺はまたドキドキする。

それを上手く隠しながら

 

「うっす!よろしくお願いされました!精一杯エスコートさせて頂きます!」

 

俺は先輩に手を差し伸べた。

意図に気づいた先輩は顔を赤くしながら、手を差し出して、俺と手を繋ぐ。

もちろん、恋人繋ぎだよ。

 

「それと今日の先輩、いつも以上に可愛い!よく似合ってます!」

 

俺はちゃんと女性の服は褒めるし、褒め方にも気をつける。

効果覿面だったのか、褒めた瞬間、顔を真っ赤にする先輩。

こういう所も可愛いんだよな〜、この人。

 

「あ、ありがとう…!つ、ツキノワ君も…何時もとは違う印象だけど…似合ってて…か、カッコイイよ…!」

 

ほら動揺しまくってる。

単純に女子高育ちだから男慣れしてないんだろう。

ミトの方がまだ慣れてるかな?

ゲーセン通いで男ともある程度親交あるし。

 

「とりあえず朝飯食べて、それから51層の街開き行きませんか?」

 

俺は直近の予定を発表する。

今回俺が計画を立てた為、先輩は知らないのだ。

 

「わかった!そうしよっか!」

 

こうして俺達のデートが始まった。

 

 

「流石に凄い人でしたね〜!」

 

「うん、でもすごく整ってる綺麗な街だね!」

 

俺とアスナ先輩は朝飯を食べたあとこの51層の主街区に来ていた。

そこで色んな店を見たり、食べ歩きしたりと結構楽しんだ。

多分お互いに攻略の時はこの店使おうとか考えてたんだけど、そこは言わないのが花。

せっかくのデートでそんな事を話したくない。

 

「そろそろお腹減ったね〜」

 

「じゃあ、そろそろお昼にしましょうか。こっちです」

 

そう言って俺が連れてきたのは転移門広場だ。

 

「転移するの?」

 

「そうですよ。転移!【フローリア】」

 

そうして俺達は47層主街区【フローリア】通称【フラワーガーデン】にやってきた。

ここはフロアが一面花畑で、人気のデートスポットなのだ。

 

「うわぁ!何回みてもここは綺麗だね!」

 

「そうですね〜。先輩こっちこっち!」

 

そう言って俺は先輩を圏内ギリギリにある秘密の場所にまで連れていく。

そこには1本の綺麗な桜の木があり、他の花とも相まってすごく美しい場所なのだ。

 

「…凄い…綺麗」

 

「実は攻略中に、たまたまこの穴場を見つけたんです」

 

そう説明しながら俺はストレージを弄り、中からレジャーシートと、朝作ったものを出す。

 

「それって…まさか、お弁当?」

 

「そういう事です。今日のお昼はツキノワ特製手作りお弁当です!ジャジャーン!」

 

そう俺が朝作ってたのは、お弁当だったのだ。

中身は至ってシンプルな唐揚げとか、玉子焼きとか、おにぎりの代わりのサンドイッチだったりとまあ、普通の、どシンプルなお弁当だ。

 

「ツキノワ君【料理】スキル取ってたの!?」

 

「知りませんでした?この間コンプしましたよ?」

 

「コンプ!?」

 

俺はドヤ顔を決めながら、報告する。

その報告に先輩はすごく驚いていた。

 

「そういえば、ミトがツキノワ君は料理上手って言ってたっけ…」

 

「ウチは共働きですしね〜。お手伝いさんとかもいないし、基本俺が作ってミトが片付けとか洗濯とかですね。そういう先輩だってするんですよね?料理。ミトから聞いた事ありますよ?」

 

先輩も料理するって話聞いて、いつか一緒に作りたいとか思っていたりする。それはまたいつか話してみようかな。

 

「確かにするけどたまにだからね〜…」

 

「ま、その話は置いといて、早く食べましょ!」

 

そのまま俺は木ノ下のレジャーシートを敷き、弁当を広げる。

 

「うわぁ〜!美味しそう!」

 

「よし!それじゃあ」

 

「「いただきます!」」

 

そうして俺達はサンドイッチから手をつけた。

 

「!美味しい!しかもこれってマヨネーズ!?」

 

「お口にあって何よりです。その正体は…これ!」

 

そう言って俺はあるデータを公開する。

 

「SAOの味覚エンジンを全部解析して、それぞれの味を解析してあるんすよ!」

 

それは俺が色んな素材の組み合わせを解析して、リストアップしてあるデータだ。

これ結構骨が折れたんだよね…。

 

「嘘!?私もやってるんだけど…。中々上手くいかなくて…」

 

「俺もめっちゃ大変でしたよ。失敗しまくってしまくってやっとって感じですし…はいコレ。舐めてみてください」

 

俺は先輩の手に少し液を垂らす。

その正体は…

 

「嘘…これ…醤油!」

 

「正解です♪」

 

これ以降も俺達はグダグダと話したり、花見をしながら弁当を食べていた。

 

「フゥ…ご馳走様でした」

 

「はい、お粗末さまでした」

 

どうやら満足して頂けたらしく、ニコニコしている。

 

「美味しかった〜!今度は私が作るね!」

 

「楽しみしています!…それにしてもミトには驚きましたね」

 

「だよね!だよね!まさかクラインさんに惚れてるなんてね!」

 

このまま話はミトの恋バナに移る。

というのもこの間の打ち上げの時、女性陣+俺の4人に追求されまくった結果、クラインに惚れている事が発覚したのだ。

まあ、年上好きなのは俺にはわかっていた事だしなんて事ないのだが…

 

「クラインな〜。良い奴なんだけど、クラインな〜」

 

「心配なの?クラインさんは普段はアレだけどしっかりしてる頼りがいのある大人だよ?」

 

「だからこそだよ。ミトをそういう風に見れるのかなって、クライン側が」

 

そう、クラインが意外にしっかりしてる大人なのは知っている。

だからこそ、ミトをそういう風には見ないのでは無いか?、という疑念を抱いてるのだ。

 

「それにあいつ料理下手だし。クラインは典型的な女性像を想像しちゃってるし」

 

「ああ〜…そっちの問題もあるんだ…。そういえば何でミトとクラインさんは呼び捨てなの?」

 

「ミトは親が名前で読んでたからですから。姉系の言葉で読んでたのは昔だけですし、今もたまにしか出てこないですよ?クラインは…多分最初に会ったからそのまんまって感じです」

 

「ふーん。まあ、ミト次第、クラインさん次第かな〜…ふぁぁ〜…」

 

ん?随分大きなあくびだな。

 

「眠いんなら寝ちゃってもいいですよ?ここ圏内ですし」

 

「でも、せっかくのデートが…」

 

「気にしない気にしない。ほら、ゆっくりしよ?」

 

そう言いながら先輩の頭を撫でてると、徐々に瞼が落ちてきてそのまま寝落ちする。

俺は膝枕しながら優しく撫で続けた。

 

「…おやすみ、先輩」

 

 

「ん…。ん?」

 

あれ、いつの間に寝てたんだ?俺。

何か柔らかいものが、頭の下に…

 

「あ、起きた?おはようツキノワ君」

 

上から声がして上を見ると、優しい顔でこっちを見てるアスナ先輩の顔があった。

正確には半分ぐらいはその豊満な…って!?

 

「俺寝てた!?」

 

ビックリして体を一気に起こす。

 

「う、うん。私が起きた時船漕いでたから、寝ていいんだよって行ったらそのまま寝落ちしたよ?覚えてない?」

 

「…何も」

 

本気で覚えてない。

そんなに寝ぼけてた俺?ていうか、日が傾いてきてる。

 

「俺、どんなけ寝てました?」

 

「ん〜2時間くらいかな。私もそれくらいだったし大丈夫だよ!」

 

そう言われても、エスコートしなくちゃいけないのに寝落ちとかダメだろ…。

よし!プランBに変更!

 

「先輩、先に夜ご飯食べませんか?」

 

「夜ご飯?今から?」

 

「実はここ夜はライトアップされてるんですよ!すごく綺麗なんで良かったら見ませんか?」

 

これはリサーチしてる時に分かったのだ。

アルゴに詳しい時間を確認とったのでほぼ間違えないと思う。

 

「ライトアップ!?いいね!見たい!」

 

「じゃあ、そうしましょう!オススメのレストランがあるんですよ。こっちです!」

 

sideアスナ

 

今日は1日中ツキノワ君に、エスコートして貰っちゃったな。

朝ごはんのお店から、【フローリア】の穴場、お昼のお弁当、ライトアップの情報、おすすめのレストランの場所。

全部調べてくれたんだよねきっと。

特にあの穴場なんて、攻略では絶対に行かない場所だもん。

それをわざわざ、嘘ついてまで隠した。

きっと見栄なんだろうけど、いっぱい調べてくれた。

だから私も一つだけ調べた場所がある。

問題はそこにどう誘導するかだけど…ここは勇気を出さないと!

女は度胸だもんね!

 

sideツキノワ

 

レストランのご飯も美味しかった。

ライトアップされた夜景もロマンチックで最高だった。

そろそろデートも終わりの時間。

名残惜しいがまた明日からは、お互い攻略だ。

 

「じゃあ、アスナ先輩。そろそろ帰りましょうか」

 

「…」

 

「先輩?」

 

何で何も言わないのだろうか?

何かあったのだろうか?

そう思っているの先輩が、突然抱きついてきた。

 

「せ、先輩!?」

 

「…今夜は…もっと一緒にいたい。離れたくない…」

 

「先輩…」

 

アスナ先輩は、耳まで真っ赤にしながら俺に抱きついてきた。

その意味が分からないほど、俺も鈍いつもりは無い。

 

「…着いてきて」

少し予想外だったのはアスナ先輩が手を引いて、俺をエスコートしてくれたこと。

行き先が俺も一応、調べておいたホテルだったこと。

俺達は無言のまま、チェックインをして、部屋に入った。

そして入ってすぐ、俺達はキスをした。

 

「…ツキノワ君。優しくしてね?」

 

「アスナ先輩…頑張ります」

 

こうして倫理コードを解除した俺達の夜は、さらに続いた。

その夜は今までで最も熱く、激しく、愛おしい夜になった。




さて、かなり甘々な展開でした。
さて、少しずつまたストックを貯めてかないとヤバいです。
頑張っていきますのでよろしくお願いします。


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24話

お久しぶりです。
ストックが尽きかけて来ました…。
ヤバいですね☆


outside

 

【迷いの森】。

アインクラッド35層にある森林のフィールドだ。

細かくエリア分けされたここはマップがないと、まともに進むことすら叶わない、かなり複雑なエリアなのだ。

そんなエリアに

 

「くっ…!」

 

1人の少女が迷い込んでいた。

まだ幼いこの少女は、中層では人気者で【フェザーリドラ】というモンスターを、【飼い慣らし(テイム)】した【ビーストテイマー】なのだ。

しかし、少し前までパーティを組んでいたメンバーと衝突。

そのまま1人でこの森に入ってきてしまったのだ。

 

「ここ…何処なの…?」

 

戦闘しながらだったため、タダでさえ迷子になるこの森で更にどこにいるか、分からなくなってしまったのだ。

【ファザーリドラ】の【ピナ】を不安そうに撫でながら進むと、突然ピナが威嚇し出す。

 

『キュルル!』

 

「!?3体?」

 

テイムモンスターには索敵能力がある。

現れたのは【ドランクエイプ】というゴリラ型のモンスターだった。

この辺りでは1番強いモンスターであり、幾ら安全マージンを持っていても、疲労困憊でアイテムも消費している彼女には3体は、危険だった。

しかし、逃げることも叶わず戦闘を余儀なくされた。

 

「やぁぁぁぁ!」

 

少女は短剣を抜き、ソードスキルで攻撃する。

一撃で半分以上減らすも、後ろにさがられ、代わりに別の個体が出てくる。

追撃は叶わずそちらの対応を余儀なくされた。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

またもや半分以上削ると、後ろに下がろうとする。

その前に一気にカタをつけようと追撃に動いた瞬間

 

『キュルル!!!』

 

ピナの声に咄嗟に身を翻す。

そこには2体の無傷の【ドランクエイプ】がいた。

 

「え!?増えた!?」

 

周りを確認するも数は3体と変わっていない。

訳が分からずにいると、奥の1体が持っていた瓢箪の中身を飲んでるのが見えた。

その時、そのモンスターのHPは回復したのだ。

 

「!?嘘!?回復するの!?」

 

これまではパーティで、回復する隙を与えないくらい素早く倒したので、その事を知らなかったのだ。

それ以降も猛攻は続く。

疲労と焦りで空振ってしまった彼女の隙を【ドランクエイプ】は見逃さなかった。

 

「きゃぁぁ!」

 

攻撃され吹き飛ばされる少女。

その一撃は3割も彼女のHPを削った。

それを見た時、背筋が凍った。

これを後3回も喰らったら…そう考え、死を明確に意識してしまったのだ。

アイテムは尽きた。

体は恐怖で動かない。

振り上げられる棍棒に目を瞑る。

何時までも衝撃は来ない。

恐る恐る目を開けると

 

「!?ピナ!?」

 

主人を守った使い魔が地面に伏していた。

 

「ピナ!しっかりしてピナァ!!」

 

『キュルル…』

 

少女の叫びも虚しくピナはポリゴン状に散ってしまう。

 

「…ピナ。置いてかないで…ピナ…」

 

泣く事も出来ない少女を前にしても、モンスターに感情は無い。

無慈悲に棍棒を振り下ろすその瞬間、【ドランクエイプ】達は細切れにされていた。

 

「…え?」

 

ポリゴン状に散っていく奥にいるのは、1人の男だった。

 

「…大丈夫か?」

 

その男は赤いコートをはためかせ、紫色の髪をしていた。

少女を見る赤い瞳は心配の色を浮かべていた。

 

sideツキノワ

 

間に合わなかったか…。

俺は索敵スキルで引っかかった方に走ったが、相変わらずの複雑さに手間取ってしまい、着いた時には既に何か起きた後だった。

 

「私は…でも、ピナが…」

 

彼女は羽状の何かを握りしめながら俯く。

 

「君は…ビーストテイマーなのか…。それ名前あるか」

 

少女はタップして詳細を確認する。

 

「…【ピナの心】…」

 

アイテム名を見て、また泣き出す少女。

 

「泣くな泣くな!?落ち着けって!心アイテムならまだ間に合う!3日以内なら蘇生可能なんだ!」

 

俺はたまたまこの間デートの際、調べてたらついでに出てきた情報を教える。

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ、47層にある【思い出の丘】にある【プネウマの花 】を使えば、復活出来るんだ」

 

少女の顔は明るくなるも、一瞬で暗くなる。

 

「47層…」

 

35層で苦戦する彼女では、47層は厳しいのだろう。

ふむ…丁度いいか?

俺はストレージから幾つかの装備を引っ張り出した。

 

「これとこれと…あとこれと…あ、これも。これだけあれば大丈夫だろ。ほら、やるよ」

 

「へ?ま、待って!待って下さい!こんなの受け取れません!」

 

そうは言われても、こっちも事情がある。

 

「君が来ないと意味が無いんだ。それに何時までもタンスの…違うか、ストレージの肥やしにしておくのも勿体ない」

 

最もらしい理由を答えながらトレード画面に出す。

「あの…お金は…」

 

「要らない…その代わりに君には…命を懸けてもらう」

 

「…え?」

 

俺はここに来た理由を話す。

彼女は酷く驚いていたが、俺は気にしない。

 

「もちろん君の命は、俺が命を懸けて守る。ただそのリスクは背負ってもらう。自分の命か、テイムモンスターの命か。好きな方を選べ」

 

俺は冷酷に2択を突きつける。

心は痛むが、それでも俺は心を鬼にする。

彼女ならきっと…

 

「…ピナは、命を懸けて、私の命を救ってくれました。今度は私がピナを助けます!命を懸けても!」

 

やっぱり。

彼女ならそう選ぶはずだと思った。

そんな気がしていた。

 

「分かった。なら俺は君の命を守る。 たとえ俺の命を懸けてでも。俺はツキノワだ。君は? 」

 

「…【シリカ】です。よろしくお願いします。【剣豪】のツキノワさん」

 

「…その二つ名は止めてくれ。恥ずい」

 

主街区【ミーシェ】に戻った俺達は宿屋に向かっていた。

 

「何処かオススメはないか?」

 

「私もあまり…私の泊まってる風見鶏亭には下にレストランがあって、チーズケーキが美味しいですよ?」

 

「何!?チーズケーキ!?」

 

マジか!?知らなかった!?

もっとリサーチしとけよ俺!

…しまった。ついテンションが…。

 

「…好きなんですか?チーズケーキ」

 

「…というより、甘い物が好きなんだ…ほっとけ」

 

ヤバい、さっきより恥ずい。

顔どころか耳まで真っ赤なのが自分でも分かる。そんな俺の耳に、笑いを噛み殺す声が聞こえる。

 

「…おい笑うな」

 

「だって…さっきまでと…アハハハ!!」

 

「わ〜ら〜う〜な〜!!」

 

「アハハハ!!」

 

全く不届きな奴だな!

…まあ、笑ってくれるならいいか。

シケた面されるよりよっぽどマシだ。

 

「「シリカちゃ〜ん!」」

 

ん?誰か来た。

 

「シリカちゃん!遅かったけど大丈夫!?」

 

「心配したよ…誰あんた?」

 

おや?俺を睨んで何事?

 

「あの…私この人とパーティ組むので…」

 

俺の腕を掴みながら、苦笑い浮かべるシリカ。

 

「あんたな〜!横入りすんなよ!みんな順番待ちしてるんだぞ!」

 

いや知らんわ。

そんな事情。

 

「ふ〜ん…明日には47層行くけど、着いてくる?」

 

「「よ、47層!?」」

 

行く階層を教えるとビビり上がる2人。

そりゃそうだ。

 

「お、お前は大丈夫なのかよ!?」

1人が声を震わせながら聞く。

俺は鼻で笑って一言で切り捨てる。

 

「余裕。…行くぞシリカ。早くチーズケーキ食べたい」

 

「あ、はい!それでは失礼します!」

 

シリカは律儀に頭を下げて、俺に着いてくる。

 

「はぁ…シリカ。これが終わったら俺の彼女と姉を紹介するから、男のあしらい方を教われ。律儀に全部を相手したら、絶対に面倒事になるぞ」

 

「彼女と姉って…【閃光】のアスナさんと【狩人】のミトさんですか?」

 

「そう…やっぱりあのニュース、ここでも広まってるか…」

 

「むしろアインクラッド中に広まってると思いますよ」

 

「アルゴメェ…」

 

あのネズミどうしてやろうか…そう思ってると

 

「あらぁ?シリカじゃなぁい!」

 

妙に甘ったるい、耳にベタっと残る声が聞こえる。そこには赤い髪のおばさんがいた。

 

「…ロザリアさん…」

 

…なるほど…こいつが…シリカには話てあるからこいつの事も知っている。

 

「あら?あのトカゲは…まさか」

 

「確かにピナは死にました…ですが!生き返らせます!」

 

「へぇ、【思い出の丘】に行くのね。でも貴女程度で大丈夫なの?」

 

ロザリアはシリカをねっとりとした視線で見る。

 

「余裕だよ。あの程度なら簡単だ」

 

俺はシリカの前に立ち塞がる。

 

「へぇ…いい装備してるけど、あんたも誑かされたの?…あら、よく見るといい男じゃない。そんなちんちくりんより、私と来ない?」

 

…うわ…気持ち悪い。

俺こういうの無理。

 

「悪いけどお前みたいな気持ち悪い、厚化粧ババアこっちから願い下げだよ。お前なんかよりシリカの方がよっぽどいい女だ。まあ、俺は彼女いるけど」

 

「厚…!?ババア!?」

 

「いい女!?」

 

ん?2人揃って何を赤く…いや、ババアの方は挑発したし、当たり前か。

 

「とにかく、邪魔」

 

そう言って俺はシリカの手を取り、先を急ぐ。

後ろで何かヒスってるが気にしない気にしない。

 

「どうして…あんな酷い事言うのかな…」

 

宿屋に着いて、飯を食べてる時にシリカが呟く。

 

「シリカはMMOはこれが初めて?」

 

「はい…ツキノワさんは?」

 

「俺もだ。…兄弟分と姉貴曰く。こういうゲームでは性格が変わる奴が多いんだと。かくいう姉も元は性別偽ってやってたしな」

 

見た事は無いけど、きっとあの格ゲーみたいなおっさんなんだろうな。

そんな気がする。

 

「逆ネカマって言えばいいのか?」

 

「そ、そうなんですね…」

 

「ま、小難しく考えるな。要は自分がどう生きていくか、それだけだ。さて、そろそろケーキ食べよう!すみません!」

 

俺達はケーキを食べて解散した。

ケーキの味?美味かった…!

 

sideシリカ

 

不思議な人。

最初はすごく冷たい人だと思った。

でもケーキの話をした時、目が輝いてた。

その後すごく顔を赤くしながら恥ずかしがってた。

ロザリアさんには、冷静だったけど怒ってた。

ご飯食べる時は優しかった。

きっと本来のあの人は感情豊かな人なんだろう。そんな彼と付き合ったらきっと凄く楽しいのかな。

彼女さんのアスナさんは会った事ないけど、きっと楽しそう。

お姉さんのミトさんにも会った事は無いけど、心配になりそう。

きっとあの人は信頼出来る…。

今まであまり大人の男性は信用出来なかった。

求婚までしてくる人もいた。

だから上辺だけの付き合いをしてきたけど…あの人ならきっと…。

そう今日の事を振り返ってるとノック音がする。

 

「は、はい!?」

 

「ツキノワだけど、明日の説明し忘れた。入っていい?」

 

「あ、はい!少し待っ…!?」

 

私は普通に部屋に入れようとして、自分の姿を思い出した。

下着以外、全部装備を解いてた事を。

 

 

「す、少し待っててください!?」

 

「お、おう…?」

 

あ、危なかった…!!

 

慌てて身なりを整えてからツキノワさんに入ってもらった。

危うく大惨事なるところだった…。

 

「シリカ?どうした?」

 

「な、なんでもありません!?それより、そのアイテムは?」

 

何やらツキノワさんが、ツボのようなものを取り出した。

お香でもたくのかな?

 

「【ミラージュスフィア】ってアイテムだよ」

 

そう言って何やら操作すると、アインクラッドのホログラムが飛び出してきた。

 

「わぁ…!綺麗!」

思わず感嘆の声を呟いてしまう。

でもでも、綺麗だったんだもん!

その様子に穏やかに笑いながら、47層をピックアップして、説明してくれる。

 

「ここが主街区。でこっちが【思い出の丘】。この道を真っ直ぐ…」

 

突然、説明をやめてドアの方を見る。

 

「ツキノワさん…?」

 

私の声は無視して、いきなり扉を乱暴に開ける。

 

「誰だ!?…チッ!逃げられたか。て言うか、聞かれてたな」

 

聞かれてた?この部屋の話を?

 

「で、でもノックしないと声は…」

 

「【聞き耳】スキルがあれば別だ。まあ、そんなスキル上げてるやつは中々いないけどな…」

 

「…これもあの人達の仲間なんでしょうか?」

 

「そういう事」

 

私は怖くなった。

ここまでする人達が本当にいるなんて…。

体が震えだす。

その時、ツキノワさんが優しく肩に手を置いてくれた。

 

「俺が言ったリスクはこういう事だ。君はそのリスクを背負うと、自分で決めたんだ。そこに俺は同情はしない。その代わり、俺は君を守ると約束した。だから俺を信じてくれ」

 

…ああ、そういう事か。

この人は私を子供として見てる訳じゃない。

1人のプレイヤーとして対等に見て話してくれているんだ。

だから冷たい訳ではなく、私を甘やかさないんだ。

 

「…はい。確かに怖いですけど、私は止まりません!ピナを救うって決めたんです!」

 

「…その意気だ。さて今日は休もう。明日の事は現地で説明するよ。それじゃあ、おやすみ」

 

「はい!おやすみなさい!ツキノワさん!」

 

そうして彼は部屋を出た。

私はそれを見送ってベッドに寝っ転がった。

あんな人初めて会った。

大抵私を子供扱いするか、マスコットみたいに扱う人が殆どだ。

中には求婚する人もいたが、それは忘れる。

だけどあんな風に対等に見てくれる人は初めてだった。

だから信頼出来る。

 

「…おやすみ、ツキノワさん」

 

そうして私は明日に向けて寝る事にした。

夢で彼と背中合わせで戦ってる夢を見て、いつかそうなるといいなって思ったのは別の話。




シリカと会うのはツキノワでした。
ちなみに、シリカをヒロインにはしません。
良き兄的な存在を目指します。
それでは失礼します。


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25話

ここで最初に着ていた服はラグナをイメージした服ですよ。
よろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「転移【フローリア】」

 

次の日、俺とシリカは47層に来た。

シリカは行った事ないそうだが、これは驚くだろうな。

 

「うわぁ…!夢の国みたい!!」

 

「この層はフロア一面が花畑なんだよ…って聞いてないなありゃ」

 

目を輝かせて、花畑に突っ込んでいく。

まあ、いっか。

すると周りを見渡して顔を赤くする。

 

「ここはこういう場所だからな。デートスポットとして有名なのさ。ほら行くぞ、こっちだ」

 

「あ、待って下さい!ツキノワさん!」

 

俺はシリカを連れて、圏内の端まで来ていた。

 

「さて、行く前にこれを渡しておく」

 

俺は転移結晶をオブジェクト化して、シリカに渡す。

 

「もし何か不測の事態が発生して、俺が逃げろって言ったら何処でもいい。…欲を言うとグランザムにある【血盟騎士団】の本部がいいけど。とにかく、これを使って逃げるんだ。分かったな」

 

「…分かりました」

 

「良し。行くぞ」

 

俺達は【思い出の丘】を目指して出発した。

黙って歩いているとシリカが何か言おうとする。

 

「ツキノワさん…あの…!?」

 

突然シリカが足を取られ、吊るさせる。

そこには大型だが、かなり弱いモンスターがいた。

でもいきなりの事で動揺してのだろう。

スカートを抑えながら必死に俺に助けを求める。

 

「ツキノワさ〜ん!助けて!」

 

「落ち着けシリカ!そいつ滅茶苦茶弱い!」

 

ダメだなあれ。

聞こえてない。

 

「速く見ないで助け下さい!」

 

「それは…無理だな…」

 

そんな無茶苦茶な…。

一通り慌てて冷静なったか、もしくはヤケになったか、あっさりとモンスターを倒す。

 

「…見ましたか?」

 

スカートの中はたまたま見えなかったが、ここはいじった方が面白そうだ。

 

「おう!ナイスキル!!」

 

「〜ッ!ツキノワさん!」

 

ほら、やっぱり面白い。

 

「そういや、さっき何を聞こうとしたんだ?」

 

さっきの事で少し怒ってるシリカに聞く。

 

「…ツキノワさんはどうして、ここまでしてくれるんですか?」

 

その顔は真剣で、さっきまでとは全く別だった。

 

「?理由は昨日話したろ?」

 

「確かにそうです。装備は安全性の為。お金は命を懸けるから。その辺りは納得はいくんです。でも、そもそもどうしてあの話を受けたのかが、分からないんです」

 

ああ、そういう事。

んーそうだな…。

 

「大切な人達がいる。もしそうなったらって思うとな…。ま、そんなありきたりの理由さ」

 

そんな話をしながら、モンスターをあしらいつつ、先に進む。

トドメはシリカに刺させ、レベリングもついでに行う。

やはり高層だからだろうか、面白いくらいレベリングが進む。

やがて目的の【思い出の丘】にたどり着く。

 

「ここが…【思い出の丘】…」

 

「そう。目的の物は1番奥だ。ただし、この辺りのモンスターは、今までとは比較にならない。俺が戦うからトドメだけ任せた」

 

「…了解です」

 

そうして、俺達は戦いながら、最奥を目指す。

 

「あった。あそこだ」

 

「あそこに…!」

 

「おいシリカ!」

 

慌ててシリカを追いかける。

 

「俺の傍から離れるな!まったく…!」

 

シリカに少し説教する。

 

「ごめんなさい…」

 

「はぁ…ほら、出てきたぞ」

 

俺は咲いた花を指さして見せる。

シリカはその花を見て嬉しそうに採った。

 

「【プネウマの花】…!」

 

よし、採ったな。

 

「じゃあ、戻るぞ。ここは危険なモンスターが多い。ちゃんと落ち着ける所で復活させてやろう」

 

「はい!」

 

outside

 

ツキノワとシリカは花を摘み、街の前にあるレンガで出来た橋まで来ていた。

そこで突然、ツキノワがシリカを止めた。

 

「シリカ、さっき渡したやつ持ってるな?」

 

「は、はい…」

 

「ならいい。そこのアンブッシュしてる奴、出てこいよ」

 

「…あら、私のハイディングを見破るなんて、中々の索敵スキルね剣士さん」

 

木の影から現れたのは、ロザリアだった。

 

「ロザリアさん…」

 

シリカは驚いた様に呟く。

 

「首尾よく【プネウマの花】を手に入れたようね…じゃあ、それを渡してくるかしら」

 

その顔は邪悪な笑みを浮かべていた。

 

「そうは行かねぇな。なぁ、オレンジギルド【タイタンズハンド】のリーダーさん♪」

 

そんなロザリアに、もっと黒い笑みを浮かべながら、返すツキノワ。

その笑みに少し後ずさるロザリアだか、まだ強がる。

 

「へぇ…それを知ってるのね」

 

「グリーンが獲物を見繕い、オレンジが奇襲をする。単純だが効率的な手だ。昨晩の盗み聞き野郎もお前の仲間だな」

 

「で?それを知っていて、わざわざそこまで知っていて、その子に付き合うなんて、あんたバカ?まさか本当に誑かさたのかしら?」

 

ロザリアはツキノワをバカにしたように笑うが、それをツキノワは鼻で笑って一蹴する。

 

「ふん…シリカは知ってたよ。お前ら事教えたし」

 

「…何ですって?」

 

「そして、俺もお前に用があったんだよ。お前、10日前、【シルバーフラグス】ってギルドを潰したな。リーダー以外が全員死んだ。そのリーダーがな、最前線でお前らを投獄してくれって頼み込んでたのさ。…お前にあいつの気持ちが分かるか」

 

その声は底冷えするような冷たい声だった。

あまりの迫力にロザリアは勿論、聞いてるだけのシリカすら、恐怖で震えていた。

 

「し、知らないわよそんな事!?実際に死んだ証拠なんてないんだし、そんな事にマジになっちゃってバカなの?それよりも…あんた達は自分の事を気にしな!!」

 

ロザリアが何らかのサインを出すと、周りから7人のオレンジプレイヤーが出てくる。

 

「つ、ツキノワさん…数が多すぎます!」

 

「ん?大丈夫だぞこの程度?それよかクリスタル、ちゃんと用意しとけよ」

 

ツキノワは片手でクイックチェンジの操作をしながらシリカの頭を撫でる。

そして何時もの服装に替えて、歩き出す。

 

「ツキノワさん!!」

 

「ツキノワ?…!?真紅の着物に、黒袴。白の羽織に…赤鞘の刀!ロザリアさんこいつ!?ソロで前線に挑んでる、2人目のユニークスキル持ちだ!【剣豪】のツキノワ!!攻略組だ!!!」

 

ツキノワの正体が分かったところで、彼らに動揺が走る。

文字通り格が違う強さを持つ相手に恐れていると、ロザリアが発破をかける。

 

「こ、攻略組がこんな所にいる訳ないじゃない!ほら、とっとと始末して身ぐるみ剥いじまいな!!」

 

その声に応じて7人は一気にツキノワに襲いかかる。

何発ものソードスキルを受けるツキノワ。

それでも彼は何もせずにただ立っているだけだった。

 

「つ、ツキノワさん!!!!?」

 

シリカが助けに入ろうと思わず短剣を握る。

その時

 

(…あれ?)

 

シリカがある事に気づく。

それはツキノワのHPだった。

何発も受けている筈なのに、一向に減らず、減っても直ぐに回復していたのだ。

 

「何で…?どういう…?」

 

「何してんだいあんた達!?さっさと殺しな!!」

 

ロザリアもその異変に気付いたのか、仲間に再度声をかけるが、彼らも何が起こってるのか全く分かってなかった。

 

「ふぁ〜あ、どうした?ボーナスタイムは終わりでいいか?…10秒あたり400って所だな」

 

そんな中、ツキノワだけが退屈そうにしていた。

 

「お前達が俺に与えるダメージ総量だよ。俺のレベルは79、総HPは15200、自動ヒーリングが10秒で1000だ。要するにお前らじゃ一生俺を殺せないって事」

 

その衝撃的なカミングアウトに誰もが言葉を無くす。

あまりの絶望的な差に思わず、1人が呟く。

 

「そんなのアリかよ…」

 

「アリだよ。それがレベル制MMOの理不尽さなんだよ」

 

そう言いながら懐からある結晶出す。

 

「こいつは回廊結晶だ。黒鉄宮が設定してある。全員ここに入ってもらう。…ああ、別に入らなくてもいいぞ。その代わり…ここで死ぬとどうなるか、実際に体験してもらう事になるが…?もし、いつか会った時教えてくれ。それがこの世かあの世かは知らねぇがな」

 

そう言いながらツキノワは1番の殺気を叩きつける。その殺気にロザリア以外は武器を捨てて、投降する。

 

「も、もし私に攻撃すればあんたも!?」

 

それ以上言葉は続かなかった。

ロザリアの足元をツキノワの斬撃が、切り裂いたからだ。

 

「だから?言っとくが俺はソロだ。1日2日オレンジなった程度、なんの問題もないぞ?」

 

ついにロザリアも折れて、全員監獄に入っていっ

た。

 

「…さて!速く行こうか。シリカ」

 

「は、はい!」

 

sideシリカ

 

私達は宿に戻り、ピナを復活させました。

 

「ピナ…ピナァ!!!」

 

泣きながらピナを抱きしめて、改めてツキノワさんにお礼を言った。

 

「あの!本当にありがとうございました!」

 

「気にすんなよ。こっちも巻き込んだし、お互い様って事で。後、その装備あげるよ。いらないし」

 

「そういう事なら!有難く貰います!」

 

そういう話をしているとノックする音がする。

 

「はい!誰でしょうか?」

 

「昨日言ったろ?俺の彼女と姉を紹介「「ツキノワ君(優月)!!開けなさい!!」」…やっぱナシにしよっか?」

 

「開けますね」

 

「シリカァ!?」

 

すごく怒ってます。

一体何したんでしょうこの人?

 

私がドアを開けるとズカズカと部屋に入り込んで

 

「「貴方ねぇ!!なんなのよあのメール!!」」

 

メール?何の話?

 

「お、落ち着いて2人とも?後姉貴、本名は止めて」

 

「口答えしない!!最初はいいわよ!問題は後!『ついでにオレンジギルド潰してくるね〜♪』って何よ!!何がどうなったらそうなるの!?何であんた何時もそうなのよ!!」

 

「ツキノワ君!!何でそんな危険な事ばっかりするの!?もっと周りの事も考えて!!心配かけさせないで!!」

 

「…はい。はい。すみません」

 

「本当に弟なんだ…」

 

私の前では頼りになるお兄ちゃんって感じだったけど、2人の前では姉に怒られる弟だ。

 

「…はぁ、2人ともかなり心配してたしな…」

 

「きゃぁぁ!?」

 

ビックリした!!凄くビックリした!!

 

「わぁ!?驚かせてごめん!俺はキリト。ツキノワの兄弟分みたいな関係の奴だよ」

 

キリト…じゃあ、この人が【黒の剣士】。

 

「全く…それで?会って欲しい子ってこの子の事?」

 

どうやら説教は終わったらしく、紫色の髪をしたお姉さんがこっちを見る。

 

「そう。この子はシリカ。シリカ、こっちが姉のミト。こっちが彼女のアスナ先輩。2人にはシリカに男のあしらい方を教えてあげて欲しいんだ」

 

ツキノワさんが私の現状を説明してくれる。

 

「…分かったわ、出来るだけ教えてあげる。改めて私はミトよ。この愚弟が世話になったわね」

 

「アスナです。よろしくね。私からもツキノワ君がご迷惑おかけしちゃったみたいで…」

 

あまりに優雅なお辞儀に思わず見とれてしまいました。

 

「い、いえいえ!むしろ私の方こそお世話になりましたし!」

 

そうして私の対人マナー講座が始まりました。

その後、私達はフレンド交換をして、今では他の女性プレイヤーさん達と、たまにお茶をする仲になっています!

本当にツキノワさんに会えて良かったです。

ツキノワさん!私のお兄ちゃん!

ありがとうございました!!




ユニークスキルも相まって、実はアニメの時のキリトのステータスより少し強いです。
数少ない兄貴面出来る数少ない相手として、今後シリカには少し甘くなります。
それではありがとうございました。


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26話

圏内事件突入です。
それではよろしくお願いします。


outside

 

攻略組は56層パニで、フィールドボス攻略会議を行っていた。

 

「フィールドボスを村に誘導します」

 

血盟騎士団、副団長のアスナが作戦を発表する。

その瞬間、場がざわめき出す。

それに待ったをかけるのは、彼氏であるツキノワだった。

 

「ち、ちょっと待って下さい!それじゃ村の人達が…!」

 

「それが狙いです。ボスがNPCを殺してる間に攻撃、殲滅します」

 

「NPCはオブジェクトじゃない!彼らだって…」

 

「生きていると?…彼らだってオブジェクトです。殺されたってまたリポップするのだから」

 

確かにその通りだ。

言い分としての道理は通ってる。

 

「その意見には反対です」

 

しかしツキノワはそれを良しとは出来なかった。

今まで多くのNPCを見てきた。

この世界は、彼らにとっての現実なのだ。

それをよく知ってしまった故に、その作戦には乗れなかった。

 

「今回の作戦は私、血盟騎士団の副団長アスナが指揮をとる事になっています。それに従えないのなら…」

 

その瞬間、ツキノワは初めてアスナに怒りを覚えた。

 

「ならもういい!このボス戦は降りる!それでいいんだろ!」

 

そう怒りながら出ていこうとするツキノワ。

またもや周りはざわめく。

攻略組、ひいてはSAO内でもかなり仲良しカップルだった2人が、喧嘩を始めたのだから無理もない。

 

「…え?」

 

「ちょ!?ツキノワ!?待ちなさい!」

 

呆けるアスナと慌てるミト。

2人を一番理解しているミトだが、こうなるとは想像もしてなかったのだ。

普段、大体はツキノワが折れる形でアスナの意向に沿っていくのだが、今回は初めてツキノワが曲げなかったのだ。

 

「うるさい!ミトは黙ってろ!…アスナ先輩。お疲れ様でした。攻略頑張って」

 

そう言って出ていくツキノワ。

その背中を何も言えずにただ見つめるアスナ。

こうしてなんとも言えない空気のまま、フィールドボス攻略会議は終了した。

 

 

sideミト

 

「アスナ大丈夫?」

 

「…グスッ…みすみぃ…」

 

あ、大丈夫じゃないわねこれは。

思いっきり泣いちゃってるし、本名で呼ばれちゃってるし。

 

「ほらアスナ、泣き止んで?ツキノワだって怒っちゃっただけだから?ね?あっちだってすっごい落ち込んでるはずだから」

 

「…でも、あんなに…怒った優月君…初めてだし…」

 

「それは、いつもアスナの事を尊重してたからあの子も。私達が喧嘩すると大体あんな感じよ?それにそろそろ頭も冷えて、自己嫌悪しだす頃合いね」

 

私達が喧嘩すると大体、優月はどっか行く。

そして話し合いも無く、ある日突然謝ってくるのだ。

こっちも謝ってお互い和解する。

兎沢姉弟の喧嘩は大体こんな感じ。

まあ、いつかのデュエルみたいな例も、無くはないけど。

 

「あの子が珍しく意固地になったのも悪いけど、アスナの言い方も少し悪かったと思うわよ?少しあの子に甘えすぎだったんじゃない?」

 

「…何だかんだで、優月君は着いてきてくれるって思ってた…」

 

「…なんにせよ、ちゃんと謝るんだよ?多分あの子から謝ってくると思うけど、それでもちゃんと謝らないと解決しないからね?」

 

こうして私は親友のフォローをした。

仲直りのキッカケになることを祈って。

しかし、それから約1ヶ月たった今59層。

ここに来てもなお、仲直り出来ていないこの2人はどうすべきだろうか?

 

 

sideツキノワ

 

…足音が聞こえる。

芝生を踏みしめる音だ。

 

「何してるの?」

 

次に聞こえてきたのは、俺が1番好きな人の厳しい声だった。

 

「…アスナ先輩」

 

「攻略組のみんなが必死に迷宮区の攻略をしてるのに、何で君は呑気にお昼寝してるのよ?」

 

どうやら昼寝してるのが気にいらないらしい。

とはいえ、何もしなかった訳では無い。

 

「…夜の内に未踏破エリアを開けてきた。マップが出てたでしょ?あれは全部夜にやったやつです」

 

「!?あれだけの量を一晩で!?」

 

周りを気にせずにやるには深夜が一番なのだ。

その影響もあって寝てないので、すごく眠かったのだ。

 

「だから寝てました。これならいいですか?」

 

「う、うん…」

 

流石にちゃんとやっていたので、先輩も強くは言い返せず、どもってしまう。

 

「…この間はすみませんでした。…先輩の気持ちも考えずに…」

 

俺はこの1ヶ月間、ずっと言えずにいた事を言った。

あの後、直ぐに謝りたかったのだが、タイミングと、意地が邪魔して中々切り出せなかったのだ。

 

「…私の方こそごめんなさい。ツキノワ君は着いてきてくれるって甘えてた。ツキノワ君を傷つけた。ごめんなさい」

 

先輩は俺の上に膝をついて、俺の頬を撫でながら謝ってくる。

 

「じゃあ、お互い様って事でもう終わり。それより先輩寝てますか?顔色悪いですよ?」

 

「それは…」

 

やはり寝てないらしい。

ミトと2枚看板で副団長を務めているけど、その内容はまさに激務なんだろう。

ミトはゲーム事の要領はいい。

一応、レベリングとかは上手いことやってるらしい。

しかし、アスナ先輩はその辺はまだ慣れてない。

それでもなお、俺達と同等のレベルを維持しているのだから、それこそ寝る暇を惜しんでるのだろう。

 

「先輩!一緒に寝ましょう!」

 

俺は強引に休ませる事にした。

今1番必要なのは息抜きだ。

 

「ダメよ!そんな暇は!?」

 

「ダーメ!はいゴローン!!」

 

「きゃあ!ツキノワ君!?」

 

「暖かい…おやすみ〜…」

 

俺は強引にアスナ先輩を抱きしめそのまま寝っ転がる。

先輩を離さないようにしながら俺は、そのまま寝落ちした。

 

「ん…」

 

俺が目を覚ましたのはそれから1時間後くらいだ。

ふと目を開くと、目の前にアスナ先輩の寝顔があった。

 

「…ホント綺麗な人だな。なのに…すごい隈」

 

これはちょっとやそっとじゃ起きないな。

俺はゆっくりと体勢を変え、膝枕をした。

 

「いい夢を見てますように…」

 

そう祈りながら、俺は先輩を護衛を務めることにしたのだった。

 

 

sideアスナ

 

「クチュッ!」

 

寒い…なんでだろう。

それに何故か眩しい。

でも頭の方は暖かい。

 

「あ、起きました?」

 

その時、1番愛おしい彼の声が聞こえる。

まだ夢でも見てるのだろうか。

だったらまだ甘えてもいいかな?

 

「…ゆづ…き…君…大…好き…」

 

「ん!?そ、そういうのはちゃんと目を覚ましてから言ってください!!///後、外で本名呼ばないで!」

 

「…ん?」

 

ん?何かリアルな対応された気がする。

ていうか、すごく近くから聞こえるような…?

私は気になって目を開けると

 

「…おはようございます///」

 

顔を真っ赤にしながら、こちらを覗き込むツキノワ君がいた。

 

「…おはよう?」

 

なにか掛けられている。

これは、彼の羽織?

しかもこの体勢は…またもや膝枕?

という事はさっきのは夢じゃない?

徐々に意識が覚醒してきた私は、先程やらかした事を少しずつ思い出していき

 

「~~~!?///」

 

顔が燃えるのではと思うほど熱くなる。

私は立ち上がって思わず睨んでしまう。

何とか気持ちを落ち着かせてから、彼にある提案をする。

 

「…ご飯1回」

 

「へ?」

 

「ご飯1回!何でも幾らでも奢る!これでチャラ!」

 

我ながら、何て可愛げのない提案なんだろうか。

 

 

sideツキノワ

 

アスナ先輩に誘われ、57層のレストランに来た。

周りのヒソヒソ声が気になる。

まあ、有名税として諦めるしかないか。

 

「…ガードしてくれてありがとう」

 

少し気まずそうにお礼を言うアスナ先輩。

 

「気にしないでください。彼氏として当たり前です」

 

「でも…あんな態度とっちゃって…」

 

ん?もしかして誘ってきた時のこと気にしてんの?

何を着にしてるかと思いきや。

 

「むしろ先輩の可愛い寝顔とテレ顔が見れて役得です!」

 

「大きた声でそんなこと言わないの!!」

 

いや、先輩の方が声でかい。

周りの視線に気づいたのか、顔を赤くしながら席につき直す。

 

「…街の中は安全な圏内だから心配ないけど、寝てる時は別だから…」

 

「デュエルを利用した睡眠PKですね」

 

本来、腕試しや賭け的な使い道をされるデュエルだが、その間はHPは減る。

それを利用し、寝てる相手に勝手に操作して承諾させて、一方的に嬲り殺す。

そういう事件が実際に起こっているのだ。

 

「うん…だから…」

 

「先輩。言ったでしょう?彼氏として当然です。むしろ他の誰にもさせたくありません。…まあ、ミトは例外的に認めます」

 

「…フフ!」

 

「な、なんで笑うんですか!?」

 

「2人はやっぱり仲良いなって…妬けちゃうな」

 

そう言われてはこっちも照れてしまう。

まあ、やっと笑顔になったならそれでいっか。

そう思った瞬間

 

「きゃあーーーーーーーーー!!!」

 

外から女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

「!?先輩!」

 

「行くわよ!」

 

俺達はすぐに店を飛び出し声の方へ走っていく。

角を曲がったところで向かいから知った顔が飛び出してきた。

 

「キリト!黒猫団のみんなも!?」

 

「ツキノワ!アスナ!2人も聞こえたのか!」

 

「ええ!急ぐわよ!!」

 

俺達8人は一気に走り出して、声の方へ向かう。

 

「…!あそこだ!!」

 

そこには胸に槍が突き刺さったフルプレートの男が、ロープでつられていた。

まだHPがあるのか、槍を抜こうとしている。

 

「アスナ先輩!中をお願い!キリト達は下で受け止めて!俺が縄を切る!」

 

「「了解!」」

 

俺はすぐに指示を出して走り出す。

遠すぎて斬撃が届かず、刺突は狙いづらいのだ。

先に走ったキリト達のセットが完了した所で俺は壁を走り登って、斬撃を飛ばして紐を切る。

しかしその瞬間、何かを呟いて砕け散るプレイヤー。

 

「…間に合わなかった…」

 

目の前が真っ暗になる。

助けられたかもしれないのに、間に合わなかった…。

 

「みんな!WINNER表示を探してくれ!!」

 

キリトが場にいる全員に呼びかける。

 

「中には誰もいないわ!」

 

中からアスナ先輩の声が響く。

俺も切り替えて必死に探すも見つからず

 

「クソ!!30秒たった!」

 

こうして表示時間も過ぎてしまった。

 

「…圏内殺人…だと?」

 

恐らくSAO史上最も謎の殺人事件が発生した。




ありがとうございました。
という訳で痴話喧嘩させてみました。
この章では、久しぶりに戦闘描写を書くつもりです。
難しいですが、頑張ります。


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27話

最近真面目に運動を始めたネコ耳パーカーです。
よろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「…どういう事だ?これは」

 

キリトの呟きはここにいる全員の気持ちだった。

安全なはずの圏内で殺人事件が起きた。

この事実がもたらす衝撃は、計り知れなかった。

 

「…普通に考えれば、デュエルの相手が被害者の胸に槍を突き刺して、ロープで縛って、窓から突き落とした…。これしかない」

 

ケイタがポツっと呟く。

その呟きにキリトが返す。

 

「でもデュエルのWINNER表示がどこにも出なかった」

 

「でも!け、圏内でダメージを与えるには…」

 

「そう、デュエルしか有り得ない」

 

キリトの言葉にサチとアスナ先輩が反論する。

 

「…なんにせよ、このまま放置はできない。先輩、悪いですけど攻略は…」

 

「分かってるわ。それどころじゃ無くなっちゃったし。しばらくパーティ組みましょう?言っておくけど、お昼寝はさせないからね?」

 

「…よろしくお願いします。後で寝たのは先輩でっ痛ってぇ!?」

 

思いっきり握りつぶされた…、メチャ痛い…。

まあ、ペインアブソーバーがあるんだけどな。

 

「さてと、とりあえず私達はこの部屋をもう1回漁るから、キリト君達は目撃者を探してきて」

 

アスナ先輩が場を仕切り出す。

流石は血盟騎士団の副団長、様になる。

 

「?俺達も手伝うぞ?」

 

キリトがそう名乗りあげるが

 

「キリト!速く行くよ!」

 

「お前達も!行くぞ!」

 

何故かサチとケイタがみんなを手早く部屋から押し出す。

訳が分からないまま、部屋は俺達以外いなくなるった時だった。

 

「ツキノワ君。もう無理しなくていいんだよ」

 

そう言いながら、アスナ先輩に抱きしめられる。

…気づかれてたか。

 

「…俺、目の前にいたのに…助けられなかった…」

 

そう、あと一歩、あと一手速かったら助けられたかもしれなかった。

俺の剣豪スキルなら、十分間に合ったかもしれないのに。

 

「そんな事ない。あの状況、あれが最善、あれが最速だったよ。それでも間に合わなかった。ただそれだけ」

 

「でも…でも…!」

 

「もしかしての話は意味ないよ?今すべきなのは背負い込む事じゃないよ?次の被害を出さないようにする事。それが大事」

 

先輩の言葉が少しずつ俺の体を軽くしてくれる。

先輩の気持ちが少しずつ心を明るくしてくれる。

 

「例え、この世の誰が君を赦さなくても、誰よりも君が君自身を赦せなくても、私が貴方を赦します。だから、今は泣いていいんだよ」

 

「…ッ!!先輩…!!」

 

俺は遂に我慢しきれず、先輩の胸を借りて泣く。

もう、同じ事は繰り返さない、そう決意しながら今は泣き続けた。

泣き止んでから、俺達は黒猫団と合流して、情報共有をした。

黒猫団が調べて分かったのは

①発見者は【ヨルコ】というプレイヤー。

悲鳴も彼女のもの。

②死んだプレイヤーは【カインズ】。

スペルはKainz。

③2人は元同じギルド。

今晩、会う約束をしていた。

④広場ではぐれて、探していた所に出くわした。

⑤その際、後ろに見た事ない人影があった。

なお、恨まれるような事に覚えはないらしい。

 

「分かったのは、あの時の状況だけか」

 

「そうだな、次はこの槍だ。さっきサチが鑑定してくれた」

 

そうか、サチは生産職だから【鑑定】スキル持ってるんだったな。

 

「うん、これはプレイヤーメイドで名前は【ギルティソーン】。直訳すると罪の茨かな。作成者は【グリムロック】。少なくとも一線級の鍛冶屋じゃないよ。ちなみにロープも市販品」

 

なんと、殆どサチが調べてくれたのだ。

この事に俺とアスナ先輩は、呆れ半分にため息をつく。

 

「さっきの話もサチが聞いてくれたんだよな?」

 

「男子は何してたのよ?…まあいいわ、みんなはグリムロックって人の線を漁って。私達はシステム的な線を漁るわ」

 

「システム的な線?どういう事だ?」

 

「…とりあえず、今日は解散。俺達は明日、プレイヤーの中で、最もSAOに詳しそうな人に話を聞いてくる」

 

 

outside

 

「ツキノワ君、今回の件、君はどう考える?」

 

次の日、ツキノワとアスナは、50層の待ち合わせの店に着くまでの間、見解を纏めていた。

 

「…大きくわけて3つです。1つ目は正当なデュエル。2つ目は既存のシステムを使ったシステムの抜け道。3つ目は未知のスキル・アイテムの存在。でも3つ目は正直ないと思います」

 

「その心は?」

 

「フェアじゃないからです。このゲームは基本的にフェアネスを貫き通してます。ここに来てこれを覆すなんて無茶苦茶です。」

 

「なるほど…」

 

「…ところで本当にこっちなんですか?待ち合わせの店って」

 

「ええ。…どんどん奥に入ってってるけど…。」

 

「ちなみに指定したのは誰?」

 

「…ミトよ」

 

「…そんな気がしてたけど…本当にあいつは…」

 

ミトが指定した店と言うだけで、2人の顔は優れない。

というのも、ここでもリアルでも彼女の選ぶ店は割とピンキリなのだ。

 

「変の所でチャレンジ精神豊富っていうか、なんて言うか…」

 

「…ちなみにお店の事話したら、キリトも推してた」

 

「ダメなやつじゃない!?彼もチャレンジ精神は大概でしょ!?」

 

思わず大声でツッコミを入れるアスナ。

2人揃ってため息をついてると

 

「ツキノワ!アスナ!大丈夫!?」

 

前からミトが走りよってくる。

 

「ミト。いきなりごめんね」

 

「…ううん、気にしないで。流石に無視できないから圏内殺人なんて。それより…無事仲直りできたのね。良かった」

 

ミトは胸を撫で下ろす。

2人の事が、ずっと気が気じゃなかったのだ。

 

「う…それは…ごめん。心配かけた」

 

「もう大丈夫よミト。心配かけてごめんね」

 

「うん!さて、本題に入らないと。団長!お待たせしました!」

 

「うむ、どうやら2人の仲は無事元通りになったようだね」

 

そう言って奥からやってくるのは

 

「久しぶり、ヒースクリフ」

 

「ああ、久しいねツキノワ君」

 

血盟騎士団団長、ヒースクリフだった。

 

「…ふむ、圏内で殺人事件か。確かに不可解だ」

 

ここは50層の料理屋。

そこに、ツキノワ達とミトとヒースクリフはいた。

 

「そもそも圏内ではHPゲージを1ポイントも減らすことは、元々出来ないはずなんだ」

 

「団長、どう感じますか?」

 

「…その前に、ツキノワ君、アスナ君。君達はどう考えているのかな?」

 

ヒースクリフは自分の意見からではなく、ツキノワ達の見解から聞く。

その姿はまるで学者のようだ。

 

「…先輩にも話したけど、大きく分けて3つ。1つ目は正当なデュエル。2つ目は既存のシステムを使ったシステムの抜け道。3つ目は未知のスキル・アイテムの存在。でも3つ目は正直ないと思います」

 

「その通りだ。3つ目の可能性については除外して良い」

 

ツキノワが3つの可能性を言った直後、彼は即座に3つ目の可能性を否定した。

その事にミトが質問する。

 

「団長、どうしてですか?」

 

「よく考えるといい。君たち自身がこのゲームを作るとしたら、そのようなスキル、武器を作るかね?」

 

「…無いですね」

 

「理由は?」

 

ヒースクリフの言葉にミトは渋々といった感じに、理由を話す。

 

「理由は1つ。認めるのは癪ですが、このゲームはあの日から基本、公正さ…フェアネスを貫いてきています。それを急に覆すのは考えられません。例外的に【ユニークスキル】を除いては」

 

ミトは話しながらヒースクリフとツキノワを見た。

ツキノワは気まずそうに視線を逸らしたが、ヒースクリフの表情からは何も伺うことは出来なかった。

その言葉にアスナが続く。

 

「流石に今の段階で3つ目の可能性について討論するのは無理があるかと……なので今回は1つ目の正当なデュエルによるPKについてから検討しましょう」

 

「よかろう……しかし、この店は料理が出てくるのが遅過ぎないか?」

 

やはりヒースクリフも気になったようだ。料理を頼んでかなり時間が経っている。

 

「私はここのマスターがアインクラッドで1番やる気のないNPCだと確信してます。まあ、そこも含めて楽しみましょう。はい、氷水」

 

「ありがとう」

 

「はい、アスナも」

 

「あ、ありがと」

 

「ミト、水の飲みすぎで、腹いっぱいなるぞ?これで3杯目だし…」

 

露骨にため息をつくツキノワに、ミトはムスッとするように言った。

 

「これしかないし、しょうがないでしょ」

 

ツキノワは仕方ないと言った感じで口を潤して、自らが見たことを説明し始めた。

 

「圏内でプレイヤーが死んだんなら、それこそデュエルの結果が常識だ。でも…これは断言する。カインズが死んだ時、WINNER表示はどこにも出てなかった。そんなデュエルあるか?」

 

「そもそも、WINNER表示って、どこに出るものなの……?」

 

アスナの疑問にヒースクリフはすぐに答えた。

 

「決闘者同士の中間位置、あるいは決着時2人の距離が、一定距離以上離れている場合は、双方の付近に2枚のウィンドウが表示される」

 

「なんでそれ知ってんだよ。まさか何回もデュエルして調べたのか…?」

 

唖然としながらツキノワがヒースクリフに突っ込む。

 

「そもそも広場でウィンドウを見た人はいなかったし、アスナも教会の中でWINNER表示を見なかったのね?」

 

「ええ」

 

「じゃあ、デュエルの結果…とは言いづらいよな。ってことは…」

 

「…ねえ、ミト。店の選択を間違ってない?注文してから10分は経ってるよ?」

 

「…まあ、首がキリンになるまで気長に待ちましょう」

 

「それはそれで困るんだけど!?」

 

真面目な話の合間に行われるコントに、少し笑うヒースクリフ。

 

「気を取り直して…残るは2つ目…システム上の抜け道、だな。まあ、そうだろうとは思ってたけど…」

 

「…私、引っかかるのよね」

 

「何が?」

 

「【貫通継続ダメージ】よ。あれ、公開処刑の演出としてってだけではないと思うの」

 

「でも、貫通継続ダメージが圏内で続かないのは、さっきも試したから分かったことですよね?」

 

サラッと言われた言葉にミトが思わずストップをかける。

 

「ちょっと待って。ツキノワ、試したって何?」

 

「こっち来る前にモブの剣を刺したまま、街に出入りしてみたんだよ」

 

「…何してるのアンタは!!」

 

実はここに来る前、少し検証してから来たのだが、その事でミトに説教されることになった。

 

「でも、あれを転移結晶や回廊結晶で試したらどうなるのかしら…?」

 

「無論、ダメージは止まるとも」

 

アスナの疑問に再び鋭く答えを返すヒースクリフ。

 

「徒歩や回廊などのテレポートであろうと、あるいは誰かに投げ入れられたとしても…つまり街の中に入った時点でコードは例外無く適用される」

 

「…じゃあ、上はどうなるんだ?例えばプレイヤーが落下ダメージで即死する高さからテレポートとしたら?」

 

純粋なツキノワの疑問に今回は少し考えるような仕草を見せたが、ものの数秒で答えた。

 

「…厳密には【圏内】は街区の境界線から垂直に伸びる次層の底まで続く円柱状の空間を指す。故に即死に値する高さからのテレポートであっても、落下ダメージは発生しないことになる。」

 

「「「へぇ〜」」」

 

すべての疑問に答えてみせたヒースクリフに感嘆の声を漏らす3人。

 

「なら、こういうのはどうだ?」

 

「「「ん?」」」

 

またもやツキノワが何やら思いつく。

 

「物凄い威力のクリティカルヒット食らった時って、HPバーってどうなる?」

 

「ごっそり減るわね」

 

「違うよ。俺が言ってるのは減り方。このSAOは他のゲームと違って、ダメージを受けた瞬間とHPゲージが減るのにはちょっとしたタイムラグがあるわけだ」

 

2人の推理に耳を傾け、ヒースクリフも目を閉じ静かに聞いている。

 

「例えば、圏外でカインズのHPをあの槍の一撃で全部吹き飛ばとして。カインズはおそらくタンクだ。HPの総量を考えれば、HPが全て無くなるまで…約5秒。その間に…」

 

「手法としては不可能ではない。だが、無論君達を知っているだろう。貫通属性を持つ武器の性質を」

 

ツキノワの思いつきをヒースクリフが、真っ向から否定する。

 

「リーチと装甲貫通力に特化している武器ですね」

 

貫通属性を使うアスナが、ヒースクリフの言葉に答える。

 

「その通りだ、アスナ君。打撃武器や斬撃武器には単純な威力で劣る。重量級の大型ランスならともかく、ショートスピアなら尚更ではないかね?」

 

痛いところを突かれたな、とツキノワは渋い顔をする。

 

「そのショートスピアが高級品ではないのだとして、ボリュームゾーンの壁戦士を一撃で即死させようと思えば…そうだな、現時点レベル140はないと不可能だろうね」

 

「140!?私達でさえレベル100になってまだまもないのに…!?」

 

140という誰も到達しえないであろうレベルにアスナが震えながら呟く。

因みに攻略組のトッププレイヤー達は殆ど90、ツキノワ達に至っては少し前に100に到達したところだ。

 

「十中八九そんなプレイヤーはいないだろうね。…私もここまでレベルが高くなるとは思っていなかったのだよ」

 

ヒースクリフも同意見のようだ。

最後何かを呟いたが、彼らの耳には入らなかった。

 

「ならレベルじゃなくて、スキルって線はどうだ?……2人目の《ユニークスキル》の使い手が現れたってのは?」

 

「そんなプレイヤーがいたなら、私が即座にKoBに勧誘しているだろうね…ツキノワ君、君も」

 

「入らないからな」

 

全ての推理を真っ向から全否定されたツキノワ。

そんなツキノワを勧誘するヒースクリフだが、それを真っ向から否定するツキノワ。

 

『…お待ち』

 

すると店の奥からおぼんに丼を4つ乗せて運んできたこの店の店主が現れた。

いつも通りの接客態度を見せ、安心した様子のミト。

 

「あっ、キタキタ」

 

「15分もかかるってどういうことだよ…?」

 

「知らないわよ」

 

ツキノワの疑問にミトは遠い目をしながら答えた。

 

「…これは…」

 

「…ラーメンなの…?」

 

「正確にはラーメン、のような何かね」

 

4人は一斉にラーメンのような何か……通称【アルゲードそば】を啜る。

勿論味はミトの台詞を肯定するかの如く、なんとも微妙な味だ。

常に表情が崩れないポーカーフェイスのヒースクリフも流石に顔をしかめた。

 

「さて、ヒースクリフ。何か閃いた?」

 

「…ふむ」

 

五、六分後。

そのラーメン擬きを完食したヒースクリフは顰めた顔の状態で、答えた。

 

「一つだけ言えることは…これはラーメンでは無い」

 

「全面的に同意見だけど、違うそうじゃない」

 

大真面目に答えるヒースクリフに思わずツッコミを入れるツキノワ。

意外にもヒースクリフは、天然なのかもしれないと3人は思った。

 

「ではこのラーメンもどきの味の分だけ、答えることにしよう」

 

そして、彼は割り箸を丼に置き、答えた。

 

「今揃っている材料のみで何が起きたか、それを断定することは不可能だ。だが、これだけは言える。この事件に関して唯一確実と言えるのは、君らがその眼で見た事、その耳で聴いた事のみである」

 

「「「ん?」」」

 

難し過ぎて何を言っているか分からない。

意味不明な説明だった。

 

「つまり、ここで直接見聞きするものは、デジタルデータであり、そこに幻覚や幻聴が入ることは無いという事だ。だがしかし、その他のデジタルデータでない情報には、常に幻や嘘が入る可能性がある。この事件を追いかけるのならば、己の目や耳、つまり己の脳が直接受け取ったデータだけを信じることだ」

 

彼はそう言い残し、ご馳走様とだけ言って店を後にした。

 

「なぜこんな店があるのだ…」

 

そう言い残して。

 

「…どゆこと?」

 

「多分、自分たちがその場で見て、聞いた事だけを信じなさいって事じゃないかしら」

 

「他から入手した情報は虚偽が入り込んでいる可能性がある、ということね」

 

「分かりやすく言ってくれよ……」

 

テーブルに突っ伏しながらツキノワは帰ってしまったヒースクリフに愚痴を零した。

 

「あとこの店は二度と来ない」

 

「何でよ!?」

 

「逆に来ると思うの!?これなら私達は自分で作るわよ!」

 

ミトのオススメは絶対に来ない。

改めてツキノワとアスナは誓ったのだった。

 

「…ん?キリトからだ…へ?」

 

キリトからのメッセージを受け取ったツキノワは、その内容を見て、絶句した。

 

「…どうしたの?」

 

アスナが尋ねると、震える声でこう返した。

 

「…ヨルコさんが…死んだ…?」




ミトのお店チョイスの悪さを勝手に決めました。
だって、彼女何やらキリトみたいなところあるんだもん…
ゲームに対する態度とか。
ありがとうございました。


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28話

話が全然進まない…。
まとめるのと、個人視点が大変で…。
それではよろしくお願いします。


outside

 

「キリト!何がどうなった!?」

 

ヒースクリフと別れたツキノワとミトとアスナは、キリト達の元へと集まった。

そこには顔を真っ青にしたサチの背中をさするキリトと、震えているプルプレートの男の宥める黒猫団の姿があった。

 

「ツキノワ…2人も…」

 

「…キリト。サチは私達が引き受けるわ。ツキノワに事情を説明して」

 

「サチ。大丈夫?私達がいるから」

 

「ミト…アスナ!」

 

そのままサチを優しく抱きしめながら宥めるアスナとミト。

 

「…キリト、説明して」

 

「ああ…」

 

そのまま距離を取り、キリトから事情を聞くツキノワ。

槍の作成者であるグリムロックの事をヨルコに聞いた所、何でもグリムロックと彼女は【黄金林檎】というギルドに所属していたらしい。

ある時、偶然レアアイテムをゲットし、その処遇に揉めたらしく多数決を取った。

その結果、売却する事になり、リーダーの【グリセリダ】が競売屋に行った。

しかし行ったっきり帰ってこず、後になって死んだ事がわかったらしい。

そのままギルドは空中分解したのだ。

 

「…で?あいつは?確か【シュミット】だよな。青龍連合のディフェンダー隊リーダーの」

 

「ああ、彼もギルドのメンバーだったらしい」

 

売却に反対していたのが、ヨルコ、シュミット、そしてカインズだったのだ。

そのヨルコが、シュミットに会いたいと申し出たらしく、話し合いの場を設けた結果

 

「殺されたと…どうやって?」

 

「窓の外からダガーを投げたんだ。あの辺から」

 

キリトが窓の外を指さしたのは、少し離れた場所の屋根だった。

 

「少し遠くないか?」

 

「ああ、中々の上手さだぞ。そっちは?どうだった」

 

「ああ。俺達はヒースクリフと会って…」

 

今度はツキノワがヒースクリフと話した事を説明した。

結局のところ、何も進展はないどころか、余計に事件が増えただけだった。

 

「進展なし…どころじゃないか」

 

「キリト…少しいいか?」

 

突然ツキノワが声を小さくして話しかけてきた。

 

「…どうした?」

 

「ヒースクリフは自分が見聞きした事だけが真実だと言った。その事なんだが、実はカインズが死ぬ直前、何か言ってたんだ。最初は今際の際の言葉だと思ったが…」

 

「なにか裏があると?」

 

ツキノワは頷く。

キリトはその言葉に思案した。

もしヒースクリフの言葉に則るなら、そういう事は大事になると。

 

「生命の碑に行ってみよう」

 

「そうだな。皆!今日は解散してくれ!アスナ先輩とミトはサチをお願い!黒猫団はシュミットを頼む!俺とキリトは一度生命の碑を見てくる!」

 

そう言って2人は飛び出した。

 

 

sideキリト

 

俺達は生命の碑まで来ていた。

 

「カインズはkだよな?」

 

「ああ」

 

ツキノワと確認しながら、kainzを探した。

 

「…あった」

 

俺はその文字を見つけ、死因と時間があってる事を確認した。

 

「キリト、これを見ろ」

 

ツキノワは全く違うところで別の文字を探していた。

 

「ツキノワ?そこはcだろ?」

 

「ああ、念の為な」

 

そう言いながら指を刺したのは

 

「cainz?」

 

cから始まるカインズだった。

 

「そう、kから始まるって聞いてずっと違和感だったんだ。カインズならcからな気がしてな」

 

なるほど、ツキノワは意外に頭回るよな。

 

「今失礼な事考えたろ」

 

「まっさか〜…」

 

勘もいいよな…

 

「まあいい。次はヨルコだな。表記は?」

 

「ローマ字だ」

 

そう言いながら、2人で探すと直ぐに見つけた。

 

「これは…」

 

「何で…?」

 

そのヨルコの文字には線は引かれてなかった。

 

「どういうことだよ…?ヨルコさんはあの時!?」

 

「死んでないって事なんだろうな…。理由は分からんが」

 

俺は訳が分からず、混乱していた。

ツキノワの冷静な言葉が、拍車をかけていた。

 

「ツキノワ?予想してたのか?」

 

「そんな訳あるか。ただ…本当に死んでるか自分の目で確認しに来ただけのつもりだ。…俺もビックリしてる」

 

ツキノワも驚いてるのか、ときどき言葉が詰まっていた。

 

「…この事はアスナ先輩達に共有しておこう」

 

「分かった。なら戻ろう」

 

ツキノワがメッセージを送りながら、俺達は来た道を引き返した。

 

 

sideツキノワ

 

「メールの件、どういう事!?」

 

合流して開口一番、先輩に問い詰められる。

 

「い、今から話すから!?」

 

「アスナ、落ち着いて」

 

ミトが制止させてくれたおかげでやっと落ち着ける。

 

「俺から説明しするよ」

 

そう言ってグロッキーになった俺の代わりに、キリトが説明してくれる。

 

「ヨルコさんは生きている…」

 

「て事は、えっと…カインズさん?って人も生きてるかもって訳ね」

 

「そういう事。次はどうやってって事だけど…」

 

その時、キリトの腹が鳴った。

 

「腹減った…」

 

「結構盛大に鳴ったな。でも確かにいい時間だしな。俺も腹減った」

 

男2人は腹を抑えながら、空腹を訴えている。

だって食べ盛りだもん。

 

「あんた達2人揃って…もう、しょうがないわね」

 

「じゃあ、ご飯にしよっか!はいツキノワ君!」

 

ミトは呆れながらストレージを漁り、先輩はウキウキでストレージからサンドイッチを出し、俺にに渡してくれた。

 

「おお!あざっす!アスナ先輩!」

 

俺はめっちゃ嬉しくて、思わず大きな声が出る。

 

「ツキノワ君!もう…!」

 

そんな俺を恥ずかしそうにしながら、それ以上に嬉しそうに見てくる先輩。

 

「つ、ツキノワ…」

 

「やらねぇからな!」

 

キリトめ、何を期待してるのか。

俺がアスナ先輩の手作りを譲るわけ…

 

「ね、ねぇ…」

 

「ミトもか!?お前は料理スキル取っとけって言ったろ!?」

 

「だって…」

 

このダメ姉貴…。

本当にクラインオトすきあんのか?

 

「フフ、はいミト」

 

そう言いながら、アスナ先輩がミトにサンドイッチを渡す。

どうやらミトの分はあったらしい。

 

「アスナ〜!ありがとう!」

 

「アスナ!?俺のは!?」

 

「キリト君の分はないに決まってるでしょ!?あとミト!抱きつかないで!食べれない!」

 

「そんな…ん?」

 

見るからに落ち込むキリトが、突然なにかに気づく。

 

「…サチから?」

 

どうやら、サチからなにか来たらしい。

開いてるのを見ると、何やら出てきた。

包みを開けると、中身はおにぎりだった。

 

「お、おお!!」

 

「良かったじゃんキリト。ちゃんと礼言えよ?」

 

「ああ!嬉しい!直ぐに伝える!」

 

そう言いながら意気揚々とメッセ打つキリトを、温かい目で見る俺達3人。

 

「アスナ知ってたの?」

 

「まあね」

 

そんな話をしてるミトと先輩を尻目に、俺はかぶりつく。

 

「ん!美味しい!アスナ先輩美味しいよ!」

 

「ありがとう!落ち着いて食べてね!」

 

俺達はそれぞれの食べ物に舌鼓を打っている時、俺はふと耐久値の気になる食材を思い出し、オブジェクト化して耐久値を見ようとした。

その時、限界だったのか、そのアイテムは砕け散ってしまった。

 

「あ…」

 

「ツキノワ君?どうしたの?」

 

「…」

 

アスナ先輩の心配する声が聞こえるが、俺は思考に没頭する。

 

(今のエフェクト…そっくりだ…。ていうか、今までもそうだったよな。アイテムと人の砕け方はよく似ている。その事に忌避感を覚えてたはず。慣れすぎて忘れた…。いや、それよりもこれは…まさか!?)

 

「ツキノワ君?大丈夫?」

 

「ちょっとどうしちゃったのよ?そんなにショックだったの?」

 

「おーいツキノワ!ラグってるのか?」

 

その時、一気に色んな事が分かった。

全て繋がって、全てが理解出来た。

 

「あ、あぁーーーーーー!!!」

 

「「「うるさっ!?」」」

 

思わずデカい声が出てしまった。

どうやらすぐ側にまで来ていた3人は耳を、一斉に抑えながら距離をとった。

 

「分かった!そういう事だったんだ!!」

 

「うるさい!分かったって何が!?」

 

ミトに怒られるが、今はそれどころでは無い。

 

「この事件のトリックだよ!俺達はまだ何も見えてなかったんだ!!」




名探偵ツキノワ!事件の謎が解けた!
という訳で、次回は謎解きと戦闘です。
それではありがとうございました。


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29話

圏内事件も佳境です。
最近寒いですね〜
雪はもう勘弁です。
それではよろしくお願いします。


sideミト

 

「基本的にプレイヤーの圏内ではHPは減らない。でも、オブジェクトの耐久値は話が別だ。さっきのアイテムみたいにね」

 

ツキノワはそう言って謎解きを始めた。

 

「あの時、あの槍はカインズのアーマーを貫通していた。あの時削っていたのはHPではなく、カインズのアーマーの耐久値だったんだ」

 

「じゃあ、あの時飛び散ったのは…」

 

アスナの言葉にツキノワは頷きながら答える。

 

「はい、カインズのアーマーです。そしてアーマーが砕けるまさにその瞬間、結晶でテレポートしたんです」

 

「そうか!」

 

突然キリトが、納得いったと言わんばかりに、手を叩く。

 

「ヨルコさんの時も同じだ!あの時彼女は誰にも背中を見せなかった。ケープの耐久値を確認して、砕ける直前で、いかにも今刺されたみたいな演技をしたんだ!」

 

「じゃあ、キリト達が見た黒いローブの男は…」

 

「十中八九、グリムロックじゃない。カインズじゃないかな。2人はこの方法なら死を偽装出来ると踏んだんだろう。圏内殺人という最高の演出を加えながら。そしてその目的は…」

 

「指輪事件の犯人を見つけ出すこと、ね」

 

私の言葉に、ツキノワは頷く。

タネが割れれば、なんて事ないわかりやすいトリックだ。

でもそれを実際にやるのは、かなりシビアな事だと思う。

 

「彼らは自分の殺人事件を偽装し、幻の復讐者を作りあげた」

 

「おそらく、シュミットの事は、ある程度疑ってたんだろうな…」

 

「ああ、狙いがピンポイントだったしそうだろうな。キリト、ヨルコさんとフレンドにはなってないのか?」

 

「なってるぞ。調べてみる」

 

メニューを立ち上げ、少し調べているとすぐにわかった。

 

「いた、19層の主街区の外れの方だな」

 

「そうか…まあ、ここまでだな。後は彼らに任せよう」

 

これでこの事件は終わり。

分かってしまえば、呆気ないものだった。

30分前までは、そう思っていた。

 

「間に合って…!!」

 

 

sideツキノワ

 

「2人はレアアイテムがドロップしたらどうする?」

 

近くのレストランで一休みしていると、突然先輩がそんな事を聞いてきた。

 

「ん〜、そうだな…。俺はそういうのが嫌で、ソロやってるのがあるしな」

 

「俺も同じくです。もしギルドに入っていたら…俺は直ぐに言って、俺のだってアピールします。言ったもん勝ちです」

 

俺達はそれぞれの理由を言う。

 

「あんたらしいわねツキノワ…。うちはドロップした人のもの、そういう風に決めてるのよ」

 

ミトが血盟騎士団のルールを教えてくれる。

 

「このゲームでは何が出たかとかは、自主申告しないと分からないでしょ?だからその手のトラブルを避けるには、そうするしかないのよ。…でもだからこそ、この世界の結婚に重みがあると思うの」

 

アスナ先輩のしみじみとした顔に俺は不思議に思う。

 

「どういう事ですか?」

 

「だってストレージ共有化ってある意味、身も蓋もないじゃない。それまで隠せた事が、隠せなくなる。ストレージ共有化って、凄くプラグマチックだけど、同時に凄くロマンチックなシステムだと思うの」

 

アスナ先輩のそのウットリとした顔と声に、俺は真剣に結婚について考えた。

 

「プラグマチック?」

 

「実際的ってことよ。それより…2人はいつ結婚するの?」

 

ミトが爆弾を落としてきた。

 

「「な、何言ってんだよ(るのよ)!!?」」

 

2人揃って顔真っ赤にしてるのがわかる。

 

「俺達に結婚なんて!?」

 

「何言ってんのよ!男らしくしゃんとしなさい!」

 

「ミトこそ何言ってるのよ!?ツキノワ君はこの前だって凄く男らしかったわよ!」

 

…このおバカ。

これはヤバいやつだ。

 

「この前?この前ってもしかして初デートの時?貴方達、あの時何をしたのよ?」

 

「…あ、あの…えっと…そのぉ〜…」

 

「…貴方達まさか!?」

 

思わず2人揃ってミトから視線を逸らす。

その逸した先には、キリトが難しい顔で考え事をしていた。

 

「キリト?どうした?」

 

何やらミトが騒いでいるが、それは無視してキリトに話しかける。

 

「…もし片方が死んだ時、死んだ相手のアイテムはどうなるんだ?」

 

急になに物騒なことを言ってるんだ?

えっと、ストレージは共有化してる訳だし…

 

「…もう1人に全部行く?」

 

そう答えた瞬間、場が一気に静かになった。

 

「それって…指輪は盗まれてなかったって事?」

 

「いや、この場合…盗まれたって言った方が正解です。まさか、グリセルダを殺したのは…グリムロック!?」

 

「もしそれをレッドギルドに依頼していたら…シュミットが危ないわ!!」

 

「そんな事引き受ける奴らは【ラフィン・コフィン】しかいない!」

 

【ラフィン・コフィン】とは、犯罪者ギルドの代表格だ。

リーダーのPoHを始め、奴らに殺されたプレイヤーの数は多い。

 

「キリト!19層には馬がいたよな!」

 

「いたけど…まさか!乗れるのか!?」

 

「なりふり構ってる暇ない!」

 

「無茶苦茶!」

 

「速く行くぞ!!」

 

「アスナ!貴女は1度ギルドに戻って数を揃えて!いざとなったら突っ込んできて!」

 

「わかった!パーティ申請して!何か異常があったら突撃するわ!」

 

アスナ先輩の提案を受けいれた俺達は、直ぐに店を飛び出して、19層に向かった。

そのまま馬を借りて、森を駆け抜ける。

 

「ツキノワ!このまま突っ込むわ!」

 

「わかった!接敵まで3,2,1!今!」

 

俺達は一気に突っ込み、3人のプレイヤーを蹴散らした。

そこには黒いローブを着た3人組と、ヨルコ、カインズ、シュミットがいた。

 

「あんた達…どうして…?」

 

「間に行ったな…何とか」

 

「久しぶりだなPoH。相変わらず暑苦しそうな雨合羽だな」

 

「てめぇの黒づくめには言われたくねぇぜ、【黒の剣士】。それに【剣豪】に【狩人】とは…随分大盤振る舞いじゃねぇか」

 

キリトとPoHが軽口を叩きながら、睨み合う。

 

「【剣豪】…オ前ハ…俺ガ…殺ス…!」

 

「俺をご指名か?【赤目】の【ザザ】。いいぜ、こいよ」

 

俺とザザはお互いの得物を抜きながら、構える。

 

「俺はお前だな!どうしようかな!?どうされたいんだ【狩人】!!」

 

「一々煩いわよ【ジョニーブラック】。その煩い口、閉じさせてやるわ」

 

ミトとジョニーブラックが、挑発しながら、隙を伺っている。

誰かが身じろいだ時、俺達は一気に踏み込んだ。

 

 

outside

 

「シッ!」

 

「フッ!」

 

1番最初に接敵したのは、ツキノワとザザだった。

 

「ハァ!」

 

ツキノワは、1度たりもとザザの攻撃を、喰らう訳にはいかない。

その剣先には、きっと毒がある。

故に、動き続け、狙わせないように、しなくてはならない。

 

「シッ!」

 

一方のザザは、1度たりとも受け止められない。

その破壊力の前では、武器ごと両断されかねない。

故にザザは、止まらずに動き続けて、躱し続けなくては行けない。

2人の戦いは、次第に攻防の切り替えが、速くなっていく。

ザザが突きを放つも、それは横に弾かれる。

その反動を利用し、ツキノワは横一文字に斬ろうとするも、回転しながら躱される。

ザザは回転した勢いを利用し、顔面を狙うもそれは剣の腹で、逸らそれる。

お返しと言わんばかりに、ツキノワも突きを放つも、躱され、腹を蹴られ体勢を崩す。

ザザがその隙を突こうとした瞬間、ツキノワの斬撃が彼を吹き飛ばす。

お互いに距離を取り、体勢を整える。

彼らには一つだけ、ある共通点があった。

それは、互いに技を磨き続けてきたという事だ。

その2匹の剣鬼は、奇しくも同じ感情を抱いていた。

 

((タノシイ…!!!))

 

お互いに笑みを浮かべながら、再び衝突する。

その笑みはまさに、修羅の笑みだった。

 

sideミト

 

私は鎌をしっかりと構え、油断なく周囲を警戒していた。

ふと、風を斬る音が聞こえ、そちらに鎌を振ると、金属同士がぶつかる音が聞こえた。

 

「勘がいいな!狩人!」

 

「そういうあんたは分かりやすいわね」

 

ジョニーブラックは毒使い。

こいつの毒で死ぬ事はないだろうけど、何されるかわかったもんじゃない。

だがら、攻撃を受ける訳にはいかない。

 

「というか、一体何本目よこれ?持ちすぎじゃないかしら」

 

嘘だ、本当は知っている、15本目だ。

私が知りたいのはそこじゃない。

 

「さあな!?何本だろうな〜!!」

 

…見つけた。

3,2,1…今!

 

「そこね!」

 

私は弾いたナイフの1本を拾い上げ、投げつける。

 

「なにぃ!?」

 

慌てて茂みから、ジョニーブラックがでてくる。

その隙、この好機、逃さない!

一気に接近戦に持ち込む。

 

「てめぇ!?さっきまでの無駄話は!?」

 

「あんたの位置を炙り出すためよ。バカみたいに声がデカいから、思ったより簡単だったわ」

 

さらに挑発する。

この手の輩には、こういうのはよく効く。

 

「このクソアマァァァァァ!!!」

 

ほら、すぐにキレる。

本当にバカで助かるわ。

 

「隙あり…フッ!ハァ!!」

 

私は一気に攻めてきたジョニーブラックの腕を、切り落としてから、忍ばしていたこいつのナイフで、麻痺状態にさせる。

そのまま紐で縛りあげて、拘束する。

 

「ジョニーブラック、拘束完了」

 

sideキリト

 

「ハッ!」

 

「シャァ!」

 

俺の片手剣と、PoHの包丁型のダガーがぶつかる。

PoHが使う武器【友切包丁(メイト・チョッパー)】は、俺の50層フロアボスLAボーナスの【エリュシデータ】と同じ、魔剣クラスの武器だ。

そんな武器を十全に扱うこいつの技量は、本物だ。

 

「考え事か?」

 

「!?しま!?ガァ!」

 

一瞬の隙を突かれ、蹴り飛ばされる。

 

「まさか、剣だけで戦うのでも思ってたのかよ!?」

 

その隙に襲いかかってくるPoH。

しかし、すぐに身を翻した。

その直後、後ろから斬撃が飛んでくる。

 

「…何ボサってしてる。まだやれるだろ、兄弟」

 

気づくと、すぐ後ろにツキノワがいた。

その言葉と背中に感じる熱が、俺に力を与えてくれる。

俺はゆっくりと立ち上がり、剣を構え直す。

その剣の輝きは増し、黒により深みが出た気がした。

 

「…やっとヤル気になったか?黒の剣士」

 

「ああ…行くぞ」

 

俺は一気に近づき、正面から斬り掛かる。

それを防がれた瞬間、俺は剣を手放した。

 

「…あ?」

 

「おぉぉぉぉ!!」

 

惚けてるPoHの顎に、全力のアッパーカットを打ち込む。

 

「はァァァ!!」

 

すぐさま逆の手で剣を掴み、斬る。

イメージはツキノワの動きだ。

腹を斬り、下から斬りあげ、一気に切り落とす。

その連撃を受けて、吹き飛ぶPoH。

 

「ハァ…ハァ…」

 

少しやっただけでこの集中力だ。

これをボス戦でやってのけるツキノワは、やっぱりイカれてる。

改めて、兄弟のぶっ飛び加減を理解した。

 

outside

 

「ハ、ハハハハハ!!!やっぱり最高だぜ!!黒の剣士!!もっと殺ろうぜ!!…って言いてぇが、時間だな。あばよ」

 

突撃、PoHが何かを懐から取り出して、投げつけた。

1番速くキリトがその正体に気づく。

 

「煙玉だ!みんな気をつけろ!!」

 

その瞬間、瞬く間に煙が吹き出して、一体を包む。

 

「次ハ…確実ニ…殺ス…!!」

 

「逃がすか!?」

 

すぐに追撃しようとしたその時

 

「きゃ!!」

 

「「ミト!?」」

 

ミトの悲鳴が聞こえ、すぐにそっちに向かう。

そこには麻痺状態になって蹲ってるミトがいた。

 

「ミト!?大丈夫か!?」

 

「えぇ…麻痺ってるだけだから…それよりも…」

 

煙から晴れたそこには、3人の姿はなかった。

 

「ジョニーブラックに…逃げられた…!!」




ありがとうございました。
久しぶりの戦闘描写にかなり苦労しました。
実は最近走り出したんですけど、すんごい筋肉痛です。
なれないことは大変ですね…
この小説と一緒に頑張って続けていこうと思います。
それでは、失礼します。


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30話

30話突入。
それと今回は、謎解きの時間です。
それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「とりあえず、アスナ先輩に連絡しよう」

 

そう言って俺は、先輩にメッセージを送った。

ついでに、道中である事をお願いしておいた。

 

「さてと…まず、また会えて嬉しいよ、ヨルコさん」

 

「そっちは初めましてだな、カインズ」

 

俺とキリトが2人にそう言うと、ヨルコは申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「すみません、全てが終わったら皆さんには改めて謝罪に向かうつもりでした。信じてもらえないでしょうけど………」

 

キリトは苦笑いを浮かべる。

俺は、シュミットに声を掛ける。

 

「麻痺はもう大丈夫そうか?」

 

「ああ、なんとかな………キリト、それにツキノワ。助けてくれたことは礼を言う。だが、どうして奴らがここに来ると分かったんだ?」

 

分かって言うか…

 

「分かったって言うより、あり得ると推測したのよ。ヨルコさん、カインズさん。2人はグリムロックに武器を作ってもらう時、今回の計画の事を全部話したんじゃない?」

 

ミトが尋ねると、二人は頷いた。

 

「 最初、グリムロックさんは気が進まない様でした」

 

「でも、僕らが必死に頼み込んだら、ようやくあの武器を作ってくれたんです。届いたのは、僕じゃない方のカインズさんが亡くなった日の、3日前です」

 

ミトが言いにくそうに、彼らに告げる。

 

「残念だけど、貴方達の計画に反対したのはグリセルダさんの為じゃないわ。圏内PKなんて派手な事件を演出し、大勢の注目を集めたら、いずれ誰かか気づいてしまうと思ったのよ。結婚によるストレージ共通化が、離婚ではなく死別で解消された時…その中のアイテムがどうなるか」

 

「…え?」

 

「…どういう事ですか?」

 

「詳しい説明は、役者が揃ってからにしよう」

 

俺は2人を待たせる。

その時、ちょうどいいタイミングでアスナ先輩が、ここに着いた。

 

「おまたせ。皆無事で何よりだわ。それと…見つけたわよ彼」

 

「アスナ先輩、お疲れ様です。そして…やっぱ来てたか、グリムロック」

 

そう、アスナ先輩にお願いしていたのは、おそらく来ているであろう、グリムロックの確保だった。

 

outside

 

「やあ、久しぶりだね、皆」

 

アスナに剣を突きつけられながらも、薄ら笑いを浮かべるグリムロック。

 

「キリトさん…何がどうなって…」

 

困惑するヨルコ達にキリトは、自分達の仮説を説明する。

その仮説に、一切否定をしないグリムロック。

 

「何で…何でなのグリムロック!?グリセルダさんを…奥さんを殺してまで指輪を奪ってお金にする必要があったの!!?」

 

「…ふん」

 

この時、初めてグリムロックの顔色が変わる。

 

「金…金の為だって?…そんなものの為じゃない。私はね、どうしても彼女を殺さなくてはならなかった。彼女がまだ私の妻でいる間に!」

 

「…どういう事?」

 

皆が困惑する中、ミトが代表して聞く。

 

「彼女は現実世界でも、私の妻だった」

 

「何!?」

 

思わずツキノワは声を出してしまうが、この場にいる皆が驚いていた。

それは同じギルドだったヨルコ達も同様だった。

 

「彼女は理想的な妻だった。可愛らしく、従順でね、ただの1度も夫婦喧嘩すらした事無かった。だが、このデスゲームに囚われて、彼女はは変わってしまった。強要されたデスゲームに怯えていたのは私だけだった。現実世界にいた時より、遥かに活き活きしていて、充実していた様子だった。…私は認めざると得なかった。私の愛したゆうこは消えてしまったのだと!」

 

その歪つな懺悔は続いた。

 

「なら!ならいっそ合法的殺人が可能なこの世界で、ゆうこを永遠の思い出の中に封じてしまいたいと願った私を、一体誰が誰が責められるのだろう!?」

 

その顔は狂気に染っていた。

 

「お前は…そんな理由で愛した人を殺したのか…」

 

「君達にもいずれ分かるよ探偵諸君。愛情を手に入れ…それを失おうとする時にね」

 

キリトが呆然と喋った呟き、尚狂った笑顔で言うグリムロック。

 

「「「いいや(いいえ)、間違ってるのはあんただ(貴方よ)グリムロック(さん)」」」

 

ツキノワとアスナとミトは同時に否定した。

 

「貴方が抱いていたのは、愛情じゃない。ただの所有欲だわ!」

 

「何故自分の手で殺らなかった?あんたが本当に愛を抱いていたなら、せめて自分の手で終わらせるべきだった。俺ならそう考えると思う」

 

「貴方の愛した奥さんが消えたんじゃない。貴方の愛、そのものが消えたのよ」

 

3人がグリムロックの愛を否定する。

その言葉を受け、グリムロックは膝から崩れ落ちた。

 

「皆さん。この男の処遇は私達に任せていいですか?」

 

「わかった」

 

代表してキリトが答える。

 

「…さあ皆、帰りましょう」

 

ミトが声をかけ、主街区に向かう。

道中ボソッとアスナが、ツキノワに話しかける。

 

「ツキノワ君」

 

「うん?」

 

「もし私の隠れた一面を知った時、君はどう思う?」

 

「んー…まあ、人様に迷惑かけなければ、いいと思いますよ。俺に迷惑かける分には、気にしなくていいんで」

 

あっけらかんと告げるツキノワ。

その顔は、本当に気にしてないような顔だった。

 

「どうして?」

 

「だって、それを含めてアスナ先輩ですよね?だったら俺は好きになりますよ、絶対に」

 

「もし…それが人様に迷惑かけるものなら?」

 

「その時は…ちゃんと話します。話してそれでもダメなら、その矛先を俺だけに向けて貰います。だって、他の人に目移りされるのは嫌ですし、そういうのでも、俺だけであって欲しいんで」

 

そのツキノワの少し怖い思考に、思わず少し笑うアスナ。

 

「もしかして…少しヤンデレ?」

 

「俺病んでるの!?」

 

「フフ…アハハ!!」

 

その大袈裟な反応についに堪えきれず、大笑いするアスナ。

そのアスナを笑い声に、何事かと振り返るキリトとミト。

 

「ちょ!?笑わなくてもいいじゃないっすか!」

 

「アスナ?どうしたの?ツキノワが何かした?」

 

「うん、ツキノワ君がね「アスナ先輩!」ダメだって〜!」

 

そう騒ぎながら、彼らは暗い森を抜けていく。

その後ろ姿を優しい笑みで女性が見守ってるように見えたのは…きっと気のせいだろう。




今回少し短いですが、区切る場所がここしかなかったんですよね〜。
そして、少しヤンデレ要素が入ってしまったツキノワ君。
これは書いてて想定外でしたね自分でも。
でもそのままにしました。
アスナもかなり重い部分があるので、重いもの同士のカップルにしちゃいました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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閑話休題⑤

遂に2人が…!
それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

圏内事件から約2ヶ月が経った。

 

『ありがとうございました!』

 

NPCからある物を俺は受け取り、店を出る。

受け取ったそれを見て、

 

「…覚悟を決めろ、男だろ」

 

俺はホームへと帰っていく。

明日はアスナ先輩との久しぶりのデートだ。

今回は、アスナ先輩がエスコートすると言って聞かなかった。

一応色々調べたし、その為の用意もした。

後は…俺の度胸次第だ。

今回のデートスポットは、61層の【セルムブルグ】だ。

この街は全体的にとても綺麗で、住んでみたい街として有名だ。

まあ、その分かなりお高いのだが…。

そんな事を考えながら、明日の用意をして俺は就寝する。

 

「クッソ…!寝過ごした!!」

 

緊張のあまり、少ししか寝れず、気づいたら家を出るギリギリの時間だった。

 

「アスナ先輩!お待たせしました!」

 

俺は待ち合わせ場所に5分前にギリギリ着いた。

あっぶね〜…

 

「ツキノワ君!大丈夫!?すごい汗だよ!?」

 

「全力疾走…して…きました…から…ハァ…ハァ…」

 

「もう…まだ時間間に合ってるのに…!」

 

そう言いながら、俺の汗を拭ってくれるアスナ先輩。

顔近い…!恥ずいって…!///

 

「フフ。ツキノワ君顔真っ赤!珍しいね!」

 

「だ、誰のせいだと!?///」

 

「さあ?誰かしら?」

 

白々しくからかってくるアスナ先輩に、更に恥ずかしくなったため、急かした。

 

「は、早く行きましょう!ほら先輩!」

 

そう言って俺は手を差し出す。

一応、手汗はかいてないのは確認済みだ。

 

「そうだね!今日は私が案内するよ!それじゃあ、レッツゴー!!」

 

そう言って俺の手を引っ張るアスナ先輩。

もしかして…かなりテンション上がってる?

 

 

「本当に綺麗な街ですね」

 

「そうだね〜!ここに住みたくなるのも分かるよ」

 

朝から遊び倒して、既に夕方。

昼には手作り弁当を食べて、凄く美味かった。

俺達はドリンク片手にブラブラしていた。

 

「アスナ先輩、行きたい所あるんですけど、いいですか?」

 

「うん?いいよ。どこ?」

 

「こっちです。少しフィールド歩きますよ」

 

俺はある場所に、先輩を連れていくことにした。

それが俺の調べたこと。

少し街から離れた丘の上。

そこは…

 

「綺麗…」

 

夕焼けと海を一望できる絶景スポットだ。

その幻想的な光景に先輩はウットリしながら見てる。

 

「…先輩」

 

俺の呼び掛けに振り向く先輩。

 

「圏内事件の時、先輩言いましたよね。SAOの結婚って、ロマンチックでプラグマチックだって」

 

「…うん」

 

「俺は…先輩の事が好きです。愛してます。先輩にとっての1番になりたい。ずっと…リアルにいた時から、そう思ってました」

 

「…うん」

 

「そして…ここでも、リアルでも、ずっと一緒に居たい。そう思ってます。だから…結城明日奈さん!!俺と結婚して下さい!!!」

 

そう言ってストレージから、ある物を取り出して渡した。

それは前日に受け取った、婚約指輪だ。

ハート型のピンクゴールドが埋め込まれてる指輪は、かなり前からずっと考え続けて、選んだものだ。

緊張で手が震える。

心臓が張り裂けそう。

まず間違えなく、過去一緊張してる。

 

「…優月君」

 

いきなり本名で呼ばれ顔を上げると、そこには涙を流しながら、左手を差し出すアスナ先輩。

 

「私でよければ、不束者ですがよろしくお願いします」

 

「…アスナ先輩じゃなきゃ嫌ですよ」

 

そう答えて俺は、指輪を左薬指につけてあげる。

 

「…綺麗。一生大事にするね」

 

夕焼けに照らされながら、それを掲げて見る姿は、凄く綺麗で神々しさすら感じた。

我慢できず俺は

 

「明日奈先輩」

 

先輩にキスした。

先輩はビックリしてたけど、そのまま俺を受け入れてくれた。

何秒、何分しただろう、俺達はそっと離れた。

 

「…先輩。一緒に暮らしませんか?」

 

「…喜んで」

 

そうして俺達は街まで降りて、内見をしてから、住む部屋を決めた。

こんな時間でも、内見できるのはゲーム様々だな。

とりあせず、リフォームは明日以降にし、俺達は熱い夜を過ごしたのだった。

 

 

sideアスナ

 

私は自分の左手を眺める。

そこには、数日前にツキノワ君がくれた、指輪がしてある。

それをじっと見ていると、

 

「アスナ…ニヤニヤしすぎ。もうすぐ定例会よ」

 

「に、ニヤニヤしてない!!」

 

ミトから突っ込まれる。

ミトには後日報告したが、やっとかと呆れられただけだった。

 

「あの子もやっと覚悟決めたみたいだし…ま、末永く爆発しなさい」

 

「褒め言葉として受け取っておくわ」

 

そんな雑談をしていると、団長が入ってきて、場が引き締まる。

 

「それでは、定例会を始めよう。まずは…アスナ君、君から報告があるようだね」

 

「はい。…この度、私アスナは、かねてからお付き合いしているツキノワ君と、結婚しました。それと同時に同棲も始めてます。事後報告ではありますが、よろしくお願いします」

 

淡々とただ事実のみを報告する。

一部を除き、皆祝福してくれた。

 

「うむ、この難しい状況の中、このようなめでたい話は純粋に嬉しく思うよ。アスナ君、結婚おめでとう。後で御祝儀があるから、部屋に来てくれ」

 

団長から…御祝儀!?

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「うむ…さて、次の話だが、今日より、幹部には護衛をつけることになった。その人選を発表する」

 

そう、前回の定例会で幹部には護衛を付けることになった。

必要ないと言ったのだが、多数決で押し切られてしまった。

 

「ミト君には【セン】君、君に頼もう」

 

「はい!よろしくお願いしますミト副団長!」

 

「ええ、よろしく、セン」

 

センちゃんは数少ない同年代の女性プレイヤーで、きっとミトへの配慮だろう。

 

「さて…最後だかアスナ君。君にはある人物に依頼した。入って来てくれたまえ」

 

「依頼?」

 

一体誰だろう?

奥のドアから出てきた人物に私は、ビックリした後、嬉しくて笑みがこぼれてしまう。

その人は真紅の着物に黒い袴、白い羽織を纏った紫の髪に赤い目をした少年だった。

 

「それでは、アスナ君の護衛頼むよ。ツキノワ君」

 

「分かってる。他の奴には任せない」

 

そう、私の護衛はツキノワ君だったのだ。

 

outside

 

「ちょっと待って下さい!団長!」

 

黒い髪をした細い男が、ヒースクリフに声をかける。

 

「何かな【クラディール】君」

 

「私はこの人事は反対です!そもそもそいつはうちのギルドの者ではないでしょう!そんな奴にアスナ様を任せるなんて、出来ません!」

 

クラディールはヒースクリフの決定に不服なのか、怒ったように反対意見を述べる。

 

「先程も述べた通りだが、アスナ君は彼と結婚している。そんな彼女に他の者をつけるなど、流石にどうかと思うがね」

 

「…!!そもそも、アスナ様!このような何処の馬の骨ともしれない輩と付き合い、ましてや結婚など、何を考えておられるのですか!?」

 

「「…は?」」

 

今度はアスナに矛先を向けるクラディールだが、その瞬間、アスナとミトがブチ切れた。

 

「何処の馬の骨って、私の実の弟よ。それを何よあんた。ここで初めて知り合った程度の男に、この子のことをとやかく言われる筋合いはないわ。口には気をつけなさい」

 

「彼と私は付き合ったのは、こっちに来てからですが、知り合ったのはリアルからです。何処の馬の骨は、私はよく知っています。貴方の事よりも、何倍も私は彼の事を知ってるわ」

 

「うっ…グッ…!?貴様ァ!?貴様のような雑魚にアスナ様の護衛は務まらん!!さっさと辞退しろォ!!」

 

2人にキレられ、遂には、ツキノワ自身に噛み付く。

その様子にまた怒ろうとするミト達を、ツキノワは軽く止める。

 

「まあまあ、2人とも。俺は別に気にしてないから」

 

「ツキノワ君!?何言ってるの!?」

 

「だってキャンキャン吠えるしかない雑魚なんて、気にかけても仕方ないでしょ?」

 

その発言はクラディールに、ニトロを放り込むだけだった。

さっきまで怒っていたアスナとミトですら、唖然とせざるを得ない事になっている。

誰もが凍りつく中

 

「貴様…本気でいってるのか…?」

 

1周回って冷静になったクラディールが、呟く。

その言葉にツキノワ首を傾げながら言い放った。

 

「は?逆にお前程度で、俺に勝てると思ってるの?」

 

その一言が、クラディールの怒りを頂点にさせた。

 

「き、貴様ァァァァ!!!上等だぁ!!今すぐ下の訓練場に来い!!格の違いを教えてやる!!!」

 

「…ふ〜ん。いいよ、格の違いを教えてあげる」

 

こうしてツキノワVSクラディールの決闘が決まった。

 

sideツキノワ

 

俺はいつも通り、リラックスした状態で始まるのを待っている。

 

「ツキノワ君…ごめんね。こんな事になって」

 

アスナ先輩が泣きそうな顔をしながら、俺に謝ってくる。

 

「別に気にしないで下さい。正直こうなる気はしてたんで」

 

「それはともかく、あんたから挑発してどうするのよ?」

 

今度はミトから呆れたように頭を軽く小突かれる。

 

「ミトだって怒ってたじゃんかよ…あ、準備出来たみたい。じゃあ、行ってくるわ」

 

「「行ってらっしゃい」」

 

背中に声援を受けて、俺はフィールドの中央でクラディールと対峙する。

ルールは勝った方の主張を通す、というもの。

クラディールから決闘申請が来て、俺は初撃決着を選ぶ。

俺達の間にカウントダウンが始まる。

 

「ご覧下さいアスナ様!私以外に護衛が務まる者は居ないことを証明致しますぞ!」

 

ああ、自分がやりたかったんだ…呆れた、分を弁えろよ、お前。

俺はそんな事を思いながら、構えもせずに、無駄に豪華な両手剣を見ていた。

狙いなら…あそこか?

それとあの構えは…あれだな。

そしてカウントがゼロになったと同時に、突進系ソードスキルで攻撃してくるクラディール。

俺はその攻撃を最小限の動きで躱して

 

「シッ!!」

 

両手剣を居合切りで両断した。

【武器破壊(アーム・ディストラクション)】と呼ばれる、高等テクニックだが、俺は力づくでそれを実現させただけ。

 

「馬鹿な…私の剣が…!?」

 

ポリゴン状に砕け散る両手剣を呆然と見つめるクラディール。

 

「…で?何を教えてくれるんだっけ?もう1回言ってくれねぇ?」

 

しっかり煽る事も忘れない俺。

ダガー持ち替えて、襲いかかっくるクラディールを投げ飛ばしてから

 

「フッ!!」

 

一気に刺突を連発する。

【閃光】の2つ名を持つアスナ先輩ほどでは無いが、俺もそれなりに剣速には自信がある。

あっという間に体に風穴を空けさせ、吹き飛ばす。

更に追撃しようとした時

 

「ヒィ!!降参だ!!降参する!!」

 

クラディールが降参を宣言する。

 

「…他に文句ある奴は?」

 

誰も何も言わない。

俺はそれを確認してから、中央ではっきりと宣言する。

 

「改めて、副団長アスナの護衛を依頼されたツキノワだ。よろしく」




という訳で、ツキノワとアスナが結婚しました。
また、74層でのクラディールとの決闘はここでやってもらいました。
ありがとうございました。
それでは失礼します。


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閑話休題⑥

ストックが溜まってきたので、久しぶりの投稿です。
今回は初めて出会った時の話です。
それではよろしくお願いします。


side優月

 

それはまだ、リアルにいた頃。

明日奈先輩と知り合う前の話だ。

俺はいつも通り、部活を終えて、家に帰ってきた。

家は高級タワーマンションの最上階。

セキュリティもしっかりしてて、オートロックだ。

だからだろう、エントランス前にスマホ片手にオロオロした、綺麗で可愛い人が困り果てていたのは。

この時、自分の心臓が高鳴った気がした。

俺は何故か緊張しながら、彼女に声をかけた。

 

「…あの、どいてもらっていいですか?」

 

「あ、す、すみません!」

 

…緊張しすぎて、感じ悪かったかな。

少し後悔しながら、鍵でオートロックを開けた。

 

「あ、あの!少しいいですか?」

 

声をかけられたのはその時だった。

 

「…何ですか?」

 

「あ、あの…兎沢深澄って女の子知ってますか?ここに住んでる私ぐらいの女の子なんですが…」

 

「…深澄?深澄の知り合いなの?」

 

聞き馴染みのある名前に、思わず聞き返した。

いや…マジか?あのアイツに?友達?

 

「は、はい!今日お呼ばれしたんですが、部屋番号聞き忘れてしまいまして…スマホも出ないですし…」

 

「ハァ…。あのバカ。聞いてないぞ、そんな話」

 

あのバカはきっと寝てる。

ゲームで徹夜してたから、ほぼ間違えなく寝てる。

 

「着いてきてください。案内します」

 

俺は彼女を招き入れた。

 

「へ?そ、そんな!?いいんですか!?」

 

「いいんです。…実の姉なんで」

 

「…姉?」

 

何も言ってないのか!?アイツは!?

ハァ…あのダメ姉貴。

どうしてくれよう。

 

「初めまして、俺は兎沢優月。深澄の弟です」

 

「…お、弟!?深澄に弟いたんですか!?」

 

「やっぱり言ってなかったんですね。俺にはタメ口で大丈夫です。年下ですし。えっと…?」

 

「ゆ、結城明日奈です!よろしくね優月君!」

 

「結城…明日奈…先輩。よろしくお願いします、結城先輩」

 

綺麗な名前だな。

この人のぴったりな名前だと思った。

 

「フフ、名前でいいよ?私も勝手に呼んじゃってるし、気にしないで。こっちこそ、いきなり名前で良かったかな?」

 

「大丈夫です。苗字だとどっちか分からなくなるので」

 

そんな差し障りない会話をしながら、俺達は部屋まで着いた。

 

「どうぞ、いらっしゃいませ。親は仕事なんで好きにして下さい」

 

「お、お邪魔します」

 

玄関で一礼し、靴を脱いで整える。

そんな当たり前の姿でも、すごく綺麗に見える。

その所作から品の良さも伺える。

きっといいとこのお嬢様なのだろうな。

そう思いながら、スリッパを用意し、リビングまで連れてくる。

ソファーに腰掛けさせて、お茶を出す。

 

「すみません、ちょっと深澄起こしてくるので。…後、かなり煩くなります」

 

「う、うん…?」

 

そのまま俺は彼女を置いて、深澄の部屋にノック無しで乗り込んだ。

案の定、ダラしない姿で爆睡こいてる深澄に俺は、大きく息を吸って

 

「起きろ!!!バカ姉貴!!!」

 

全力で怒鳴りつけた。

その声でリビングから驚く声が聞こえるが、それは無視。

目の前のビックリして、ひっくり返っている人物に、非難の目を向ける。

 

「…おはよう優月。後、勝手に部屋に入らないで」

 

「やかましい!!!友達待たせといて、何言ってる!!!」

 

「…あ、あぁぁぁぁ!!!?明日奈来るんだった!!今何時!?」

 

「1時前!!とっくに来てたし、もうリビングにいる!!ちゃっちゃと用意せい!」

 

「嘘!?本当に!?明日奈ごめ〜ん!!」

 

リビングから大丈夫だよ〜、と声が聞こえる。

俺は1度部屋を出て、自分の部屋に行き、着替えを用意して、洗面所に放り込む。

 

「はぁ…うちの姉が本当にすみません」

 

「いやいや!?大丈夫だよ!?気にしないで!」

 

「あの人、休みの前の日の夜とか、休みの日ってずっとゲームしてるから…よく徹夜するんですよ」

 

学校の方はよく分からないが、多分家とは違う感じなのだろう。

 

「あの…すみません。実は部活で汗でベタベタで…申し訳ないんですけど、シャワー浴びてきていいですか?」

 

ずっとそれが気になって仕方ない。

臭いとかも気になるし、あまり近くには行かないようにしてるけど。

 

「うん!大丈夫だよ。わざわざごめんね」

 

良かった、許可が出た。

 

「すみません、それでは」

 

「行ってらっしゃい!」

 

そのまま俺は、風呂場に直行してシャワーを浴びた。

汗が流れていくのを感じながら、体や頭を入念に洗う。

お客さんが来てる以上、身なりはしっかりしないと。

風呂から出ると、リビングで明日奈先輩と、深澄が仲良く談笑していた。

何故か、深澄は俺のスウェットを着ていたが。

 

「…深澄。なぜに俺のスウェット着てる?」

 

「楽なんだもん。それにお古なんだからいいでしょ?」

 

本当に家だとズボラなんだから、この人は。

俺はため息をつきながら、キッチンに立ち、材料を確認する。

 

「2人とも?お腹は?」

 

「減ってる!明日奈は?」

 

「確かに減ったかな〜。優月君、料理出来るの?」

 

「家は共働きですから。深澄以外は作れます」

 

「余計な事は言うな!」

 

深澄から怒られるが、それはスルー。

 

「明日奈先輩、嫌いな物は?」

 

「大丈夫だよ〜! 」

 

「それじゃあ、少し待っててください。チャチャッと作ります」

 

これなら…これが出来るな。

 

 

side明日奈

 

初めて見た時は、綺麗な人だって思った。

男の人にそんなに評価は変かもしれないけど、きっと佇まいが大人っぽくて、凛としてたんだと思う。

身長は170~180あるかないか位かな。

体格もしっかりしてる。

世間一般的に見ても、個人的に見ても、かなりイケメンだ。

というか、深澄に似てる?

思い切ってここに来た理由を話してみると、なんと弟だと言った。

深澄に弟がいたんだ、というか、兄じゃないんだ、と驚きながら、私はリビングで待っていた。

さっき煩くしますって一体…

 

「起きろ!!!バカ姉貴!!!」

 

「ヒャァ!!!? 」

 

うん、煩くなった。

凄くビックリした。

そのまま深澄を叱りつける声と、ドタバタと用意する音が響く。

深澄の謝罪の声が聞こえたので

 

「大丈夫だよ〜」

 

そう返しておく。

暫くして、優月君が帰ってくる。

 

「あの…すみません。実は部活で汗でベタベタで…申し訳ないんですけど、シャワー浴びてきていいですか?」

 

そっか、妙に物理的な距離感があった理由は、それか。

気も効くらしい彼は、中々高評価だった。

すぐに行ってらっしゃいと告げ、彼が消える。

入れ違うように深澄が、リビングに入ってくる。

 

「おはよう〜。明日奈ゴメンね!」

 

「おはよう。もう!ずっとゲームしてたの?」

 

「あはは…」

 

気まずそうに頷く深澄を見て、私はため息をつく。

 

「連絡はつかないし、部屋番号分からないし、かなり困ったんだよ?」

 

「ウッ…ごめんなさい…」

 

落ち込む深澄を見て、そこまでにしておく。

 

「まあ、いいわ。さて!始めましょうか!」

 

ここに来た目的、学校の課題を終わらせようとすると

 

「あれ?そういえば優月は?」

 

深澄が優月君の行方を尋ねてくる。

 

「優月君ならシャワー浴びるって言ってたよ」

 

「そっか。まあ、部活上がりだったしね」

 

そう言えば大きい荷物持ってたような…

 

「何部なの?」

 

「弓道よ」

 

「中学に弓道部があるんだ!」

 

「既に選抜にも選ばれてるんだって」

 

「へぇー!凄いんだね!」

 

そんな話をしていると、いつの間にか優月君がシャワーから出てきていた。

 

「…深澄。なぜに俺のスウェット着てる?」

 

「楽なんだもん。それにお古なんだからいいでしょ?」

 

それ優月君のお古なんだ…。

通りで大きいと思ったのよ…。

優月君はため息をつきながら、キッチンに立ち、材料を確認してる。

 

「2人とも?お腹は?」

 

「減ってる!明日奈は?」

 

「確かに減ったかな〜。優月君、料理出来るの?」

 

男の子が料理ってなんか意外!

 

「家は共働きですから。深澄以外は作れます」

 

「余計な事は言うな!」

 

深澄は出来ないんだ…。

何となく想像つくけど。

 

「明日奈?」

 

「ナ、ナンデモナイヨ?」

 

この子、勘がいい… !

 

「明日奈先輩、嫌いな物は?」

 

「大丈夫だよ〜! 」

 

「それじゃあ、少し待っててください。チャチャッと作ります」

 

そう言って料理を始める優月君。

その様子をぼんやりと見つめていた。

手際もいいし、問題なさそう。

でも、誰かが料理してる姿は初めて見た。

 

「明日奈?どうしたの?」

 

「ううん、何でもない。ただ、誰かが料理してる姿初めて見たから」

 

その言葉に深澄は少し顔を暗くする。

私の家の事を知ってるからか、その空気を払拭しようと、深澄はわざと大きな声を出す。

 

「優月の料理は美味しいから!きっと満足できるわ!」

 

「…フフ!!じゃあ、楽しみだね!」

 

「コラー!ハードルあげるな〜!」

 

聞こえてたのか、キッチンから悲鳴が上がる。

 

「「アハハ!!!頑張って!!!」」

 

私達は笑いながら、優月君を応援するのだった。

 

 

side優月

 

「お待ちどうさま、カルボナーラです」

 

俺はプレッシャーを受けながら、余り物で作ったカルボナーラを出す。

一応他人に出すものだから、見た目にも気をつけてみた。

 

「わあ!美味しそう!!」

 

「本当に好きね、これ。パスタ作る時いつもこれよね」

 

「ほっとけ。嫌なら食うな、自分で作れ」

 

「有難く頂きます!」

 

この姉貴は本当に…アレだなぁ。

 

「2人とも。冷める前にどうぞ」

 

「「頂きます!」」

 

2人は同時に手をつける。

俺も遅れて食べ出す。

うん、美味い。

今日も問題なく出来てるな。

 

「うん、安定の美味さね」

 

「美味しい!美味しいよ!優月君!」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

初めて他人に褒められたので、嬉しかった。

 

「私も料理やろうかな…」

 

「その時は家でやってもいいですよ?一緒にやります?」

 

俺は無意識に次の約束を勝手に取り付けていた。

気づいたのは深澄の驚いた目を見た時だ。

だが、そこには気づきてないのか

 

「いいの!?その時はよろしくね!」

 

キラキラした目でこっちを見る明日奈先輩がいた。

 

「え、えぇ…よろしくお願いします…」

 

「やったー!!」

 

何故か大喜びしてる先輩を尻目に、俺達はヒソヒソ話をする。

 

「あんた…何してるのよ?」

 

「なんか…無意識につい」

 

「2人共?どうしたの?」

 

「「いや、なんでも」」

 

先輩が俺達の様子に気づきたのか尋ねてくるが、そこは2人ではぐらかす。

 

「ふーん…それにしても、よく食べるね優月君は」

 

そこには言及せずに、俺の皿を見て驚く先輩。

 

「まあ、1人前では足りませんので。2人前は欲しいです」

 

「た、食べ盛り…」

 

「こいつこんなけ食べても、太らないのよ。羨ましいわ…」

 

「深澄も十分細いだろうが」

 

そんな話をしながら、俺達は完食して、洗い物に入る。

 

「そういえば、明日奈先輩は、今日何で家に来たんですか?」

 

疑問だったことを聞くと

 

「あ!そうよ深澄!早く課題終わらせるよ!」

 

「えぇ…今?」

 

何やらゲームの配線を弄っている深澄に向かって言う。

なるほど、課題が出てるのか。

それなのにゲームの配線を準備してるし…。

 

「ゲームは後!先に課題!ほら。早く用意して!」

 

怒られてるし…何してんだが。

 

「先輩、深澄の事頼みます。やる気さえ出れば、問題ないので。強引にスイッチ入れてあげて下さい」

 

「了解!任されました」

 

そう言って深澄の元へ歩いていく先輩を見送る。

その仲睦まじい光景に、俺は感慨深いものを感じた。

それはまだ小学生の頃、姉はよくゲーム機片手に外に出ていっていた。

いつも会う友達がいるとか。

なのにその日はすぐに帰って来て、部屋に閉じこもったまま、出てこなかった。

後々話を聞くと、ゲームの腕の差で誰もついていけず、つまらないと言われたのだとか。

そしてそのまま、友達は離れていったらしい。

俺はせめて、俺だけでもって思いながら、深澄のゲーム相手を努めてきた。

今では何回かに1回なら勝てるようになった。

でも、それでも偶に寂しそうな顔を深澄はしていた。

でも今は、すごく楽しそうな顔をして、先輩と話している。

 

「…き。…月!」

 

それがすごく嬉しくて、でも少し悔しくて…

 

「優月!!」

 

「へぁ!?何!?」

 

「何じゃない!手は止まってるし、何度呼んでもぼ〜としてるしどうしたのよ?」

 

気づいたら、すぐ真隣に深澄がいて、洗い物の手は止まっていた。

 

「…いや、何でも」

 

「なくないでしょ。そんな顔して丸わかりよ」

 

「…そんなに顔に書いてある?」

 

「姉なんだから、当然でしょ」

 

姉の勘らしい。

なんか腹立つな、そのドヤ顔。

 

「優月。私は大丈夫よ。大丈夫。優月がいるから、怖くない。明日奈がいてくれるから、寂しくない」

 

そう言いながら、俺の頭を撫でる深澄。

その顔はさっきまでのドヤ顔ではなく、優しく、慈愛に満ちた姉の顔だった。

 

「…いいから速く行けよ。先輩待ってるんだろ。ほら、お茶ならここ。後でお菓子も用意しておくから 」

 

「ありがとう!明日奈、おまたせ」

 

そう言いながら、先輩の元へ歩いていく深澄。

俺は手早く残りの洗い物を済ませ、お菓子作りを始めた。

残り焼くだけのところまで来たので、1回手を止め、時間を確認する。

 

「深澄、少し寝る。キッチンそのままにしといて」

 

「分かったわ。おやすみ」

 

「おやすみなさ〜い」

 

「はい。失礼します」

 

俺はそのまま、部屋に戻り昼寝をする事にした。

割と眠かったのか、直ぐに落ちていた。

 

sideツキノワ

 

「…うん?」

 

気づくとそこは俺の自室ではなく、見慣れない天井だった。

その天井は、これから2人で暮らす新居の天井だ。

 

「…懐かしい夢だったな」

 

どうやら夢を見ていたらしい。

あの後、お菓子振舞ってからゲームして、先輩の帰る時間になったんだよな。

それ以降も会って遊んだり、勉強見てもらったりどんどん仲良くなっていって俺は…

 

「惚れたんだよなぁ…」

 

そっと隣を見ると、そこにはまだ寝てるアスナ先輩がいた。

俺はそっと抱きしめて、額にキスを落とした。

 

「…好き。大好き。愛してる」

 

そう言いながら俺は、額に何回かキスした後、二度寝してしまった。

だから気づかなかった。

 

(起きてる!!///全力で起きてるから!!!///)

 

アスナ先輩が起きてて、俺の胸元で真っ赤になっていた事に。




という訳で、過去(の夢を見ていた)回でした。
この時の彼はツンデレです。
これが…ちょいヤンデレにシフトしていんですね〜!
怖いな…。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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31話

こっちの更新が久しぶりです。
最近ロクアカにばっかりメンタルが向いてしまう。
今回はアスナより、ミトの方にスポットが当たってます。
それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

かなり重い空気が会議室を包む。

何時もなら、緊張感はあるものの、情報交換など、しゃべり声が絶えないのに、今日は別だ。

無理もない、今日の会議は

 

「これより、【ラフィン・コフィン】討伐会議を始める!」

 

シュミットが、宣言する。

そう、俺達はこの会議後、殺人ギルド【ラフィン・コフィン】と、正面衝突するのだ。

事の発端は約2週間、突然アルゴに呼び出された俺は、指定の店に来ていた。

 

「で?そっちからなんて珍しいじゃん」

 

「まあナ。まず結婚おめでとウ。おねーさんは嬉しいゾ!」

 

…妙に緊張してる?

珍しいな、アルゴが緊張するなんて。

 

「そりゃあ、どうも。また派手に記事にしやがって…。で?わざわざ、御祝儀って訳じゃないだろ?」

 

「…【ラフィン・コフィン】のアジトのタレコミがあっタ」

 

「…何?本当か!?」

 

思わず、聞き返してしまった。

今まで、構成員とは何回か戦ってきて、牢屋にぶち込んではいるが、アジトは分からずじまいだったのだ。

 

「あア。だから、ツー坊には裏取りを手伝って欲しイ」

 

「分かった。すぐに用意しよう」

 

俺の返事を聞いて、突然顔色を暗くするアルゴ。

 

「すまないナ、ツー坊。本当はアーチャンの為にも、こんな危険な事させたくはないんだガ…」

 

「バカ野郎。アルゴがそんな危険な事を、1人でやる方が心配だ。早く終わらせるぞ」

 

「…そうだナ」

 

こうして1週間かけて、入念に調べた結果、情報は本物だという結論が出た。

そして、俺とアルゴで各ギルドに報告し、有志で討伐隊を募集して1週間、遂に今日突撃するのだ。

奴らのアジトは低層の特殊なダンジョンだ。

そこは索敵スキルが効かず、かなり苦戦した苦い思い出のある場所だった。

 

「…深澄。ごめん、俺…」

 

「分かってるわ、気にしないで。むしろ…私を優先したら、そのケツ蹴り飛ばすわよ、優月」

 

俺は隣を歩くミトに思わず、本名で呼びながら、謝るも、先に止められる。

やはり姉には…敵わないな。

そう苦笑いしてから、俺達はすぐに背中合わせで武器を構える。

 

outside

 

「ミト!来るぞ!!」

 

「分かってるわ!総員、戦闘用意!奇襲よ!!」

 

ツキノワとミトがそう叫んだ途端、上から飛び降りてくるラフコフのメンバー。

ツキノワは直ぐに斬撃を飛ばし、3人の足を纏めて斬り飛ばす。

 

「「ギャァァァア!」」

 

「足がァァァァァ!?」

 

喚いているうちに紐で縛り上げる。

 

「ま、まさか…作戦が…漏れてたのか…!?」

 

愕然としてるシュミットに、ツキノワが叱りつける。

 

「ボサっとすんな!!元々罠の可能性も言っていあっただろ!!それよりシャキッとしろ!!!直ぐに立て直せ!!!」

 

「皆落ち着いて!!目の前の敵を確実に対応して!!!」

 

ミトの鋭い指示が、討伐隊に響く。

その声を受けて、無事建て直した討伐組は確実に捕獲していく。

その時、2人に悪寒が走った。

2人は直ぐに飛び退く。

そこに投げナイフが2本の刺さる。

 

「ヒャッハァァァァァァァ!!!久しぶりだなァ!!狩人ォォォォ!!!」

 

「喧しい!!今度こそ黙らせてやるわよ!!ジョニーブラック!!!」

 

そのまま、ミトがジョニーブラックと戦闘に入る。

その時、いやらしい笑みを浮かべるジョニーブラック。

 

「…!?ミト!後ろだ!!」

 

直ぐに追いかけようとするも、下っ端どもが邪魔する。

 

「…チッ!邪魔だ!」

 

ツキノワは纏めて、腹を薙ぎ払い吹き飛ばす。

その内1人が死んだが、今は気にしてる暇はない。

ツキノワは投げナイフを打ち落とそうと、刺突を放つ。

幾つかは落とせたが、全ては無理で、何本かがミトに刺さってしまう。

突然、膝から崩れ落ちるミト。

その隙を3人の下っ端が襲いかかる。

 

「間に合え…!」

 

一気に加速し、ツキノワは前に躍り出る。

 

「フッ!!」

 

纏めて首を切り裂く。

その結果、3人の下っ端の首がハネ飛ばされる。

ポリゴン状になって消える下っ端。

更に俺を追いかけてきた4人を、2人は刺突で纏めて貫き、1人は縦に両断した。残り1人は斬りかかってきたのを、いなして、首を跳ね飛ばす。

 

「優月…」

 

「…俺は…大丈夫だから、ほら」

 

ツキノワは直ぐにミトに解毒ポーションを飲ませて、治療する。

8人を斬ったその刀は、すごく重く感じる。

 

「ヒ、ヒャハ!ヒャハハハハハハハ!!!殺したな!8人も殺したな剣豪!!」

 

「うるせぇぞ。だから何だ?てめぇらだって散々殺ってきただろうが」

 

ジョニーブラックの耳障りな笑い声に、感情を殺したような声で返すツキノワ。

 

「てめぇも、俺らと同類になったってことだよォ!!」

 

何が可笑しいのか、とてつもなく楽しそうに笑うジョニーブラック。

そんな様子を見ても、ミトとツキノワは冷静だった。

 

「…ミト、任せていいか?」

 

「ええ、行きなさい」

 

ツキノワはジョニーブラックを無視して、悲鳴がした方へと、一気に駆け出す。

 

「待ちやがれ!!」

 

「あら、行かせないわよ」

 

追いかけようとするジョニーブラックを、鎌で牽制して止めるミト。

 

「今度は逃がさない。ここであんたを捕まえるわ」

 

「上等だぁ!てめぇから殺してやるよォ!!クソアマァ!!」

 

 

sideミト

 

あの時と同様、私はジョニーと戦っていた。

その戦い方はこの間と一緒で、あいつは常に動いて、私の射程圏外から、チクチク攻撃してくる。

違うのは

 

「あら?殺すんじゃないの?ジョニーブラック」

 

「ああ!?うるせぇ!!」

 

挑発しても、一切乗らないところだ。

前はすぐに乗ったので、割と簡単だったのだが、今は喚きはするが、挑発には乗らない。

少し…厄介ね…。

私は鎌を振って、投げナイフを弾く。

投げ終えた直後に距離を詰めるも、直ぐに次のナイフが飛んでくるので、中々詰めなれない。

 

「おいおい、俺を黙らせるんじゃねぇのかよ、狩人ちゃんよォ!」

 

逆に挑発される始末。

一体幾つナイフ持ってるんのよ。

そろそろ無くなってもいい頃合いでしょうに。

…あれ使ってみるか。

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

私は一気に距離を詰め、ソードスキルを地面に叩きつけて、土煙を起こす。

その隙に、ある仕掛けをする。

その煙が晴れるまでに、奇襲を仕掛ける。

縦横無尽に鎌を振るうけど、上手く躱されて当たらない。

距離を取った瞬間に、私はナイフを投げる。

 

「おわぁ!?危ねぇなおい!?…あん?」

 

ナイフに何か付いてるのに気付いた瞬間、それが爆発する。

 

「ギャアァァァァ!!!?」

 

それは27層で採れる、爆発する石だ。

私は紐でそれを縛り、投げつけたのだ。

それがあいつが弾いた衝撃で、爆発したのだ。

その隙に、私は一気に駆け寄り、鎌で両手両足を切り落とし、落ちてきたところを、紐で縛り上げた。

 

「…ジョニーブラック、捕縛完了」

 

私は今度こそ逃がさないように、しっかりと縛り付け、仲間に預けたのだった。

 

sideツキノワ

 

俺は悲鳴がした方へ走っていく。

そこにはボロ雑巾みたいな格好したやつが、キリトと鍔迫り合っていた。

俺は一気に近づき

 

「シッ!」

 

首を跳ね飛ばした。

 

「大丈夫かキリト?」

 

「ツキノワ…ああ、すまない。俺…」

 

キリトは俺に斬らせた事を気に病んでるのだろう。

 

「今更だ。それよりまだやれるな」

 

「…ああ!こっちは任せろ!」

 

俺とキリトは二手に分かれて、どんどんラフコフメンバーを無力化していく。

斬りかかってくる奴の動きに合わせて、腕を切り飛ばして、思いっきり回し蹴りで蹴り飛ばす。

峰で打撃を飛ばし、纏めて吹き飛ばす。

投げナイフを躱し、突きを飛ばして纏めて貫く。

そんな中、ふと悪寒がして首を捻ると、そこにエストックが通り過ぎた。

 

「…今度コソ…最後マデ…殺シ合オウ…剣豪!!」

 

「…速攻で終わらせてやる、ザザ」

 

俺とザザはまたもや、殺し合いを始めた。

 

「フッ!」

 

「シャ!」

 

俺達は、直ぐに剣戟を始める。

右袈裟は躱され、2連撃の刺突は逸らした。

こっちの刺突はいなされ、後ろから狙われるが、横薙に払って弾き飛ばす。

追いかけるように、斬撃を放つがそれはソードスキルで相殺される。

技後硬直を狙い斬りかかるも、計算されていたように、ちょうど技後硬直が解けて、防がれる。

だが、力技でそれを押し切ろうとするも、その衝撃を利用し、後ろに飛んで距離を取られる。

 

「…やっぱ強ぇなお前は。ラフコフなんて勿体ないぜ」

 

「ソウイウ…お前コソ…流石ダ。ソノ剣技…尊敬ニ値スル」

 

俺達はそれぞれの剣技を褒めつつも、隙は見逃さないように、睨み合う。

そして、俺達はまたぶつかり合う。

俺が縦一文字に切り裂き、ザザが俺の肩を貫く。

今度は毒は塗ってないらしく、一瞬ひやってした。

今度は横一文字に斬ろうとするも、ザザが俺の力が乗る前にソードスキルで、相殺してくる。

 

「チッ!」

 

俺は直ぐに体術【水月】で、ボディに撃ち込む。

 

「グッ!」

 

ふらつくザザを俺は脱力させながら、構える。

それを見てザザも刺突の構えを取る。

 

「「ふん!!」」

 

同時に攻撃して、お互いノーガードで攻撃を受ける。

しかも、インパクトした瞬間、一気に力んでお互いを吹き飛ばす。

 

「ガハッガハッ!!」

 

「フー…フー…」

 

お互いにノーガードだった為、かなりHPが減っており、レッドゾーンに突入しかけていた。

 

「…お互い考える事は一緒かよ…」

 

「極メタ…者ノ…行キ着ク先ガ…同じジ…トイウ事ダロウ…」

 

極みたとか…恥ずいこと言うなよ…。

 

「まあいい、最後まで付き合ってもらうぜ」

 

「望ムトコロ…!」

 

俺達はこの戦いの行く末なんて、頭には無かった。

ただコイツとケリをつける、それだけだった。

そんな事を永遠に続くと思った…その時

 

「ジョニーブラックが捕まったぞー!!」

 

その声を聞いた瞬間、ザザの動きが止まる。

…今だ、俺はエストックを握る腕を切り落とした。

 

「…ガァ!?」

 

「隙ありだぜ」

 

直ぐに、サブウェポンを取り出して対応するが、その程度で止められほど、俺は弱くない。

そのまま、両腕、両足と跳ね飛ばして転がす。

そのまま縛り上げ

 

「ザザ。捕縛完了」

 

ラフコフの幹部2名を確保した俺達だった。

その後、ラフコフは戦線が崩れた。

そのまま烏合の衆と成り下がったこいつらを、捉えるのは容易だった。

しかし、リーダーのPoHはそもそもこの戦場にはおらず、その結果もお世辞にもいいとは言えなかった。

この戦いで、討伐組からは10人近く死人が出た。

ラフコフのメンバーで投降せず、死んだヤツらは20人以上。

そのうち9人を斬ったのは…俺の刀だった。




という訳で、ラフコフ戦でした。
ツキノワ君…容赦なさすぎ。
ですが、これくらいの覚悟ないと、人と斬り合い出来ないと思います。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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32話

久しぶりに投稿します。
ネタはあったんですが、ロクアカ熱が再発しまして…。
こっちが疎かでした。すみません。
今回から74層です。
それではよろしくお願いします。


outside

 

「ふぅ…疲れた…」

 

ここは74層迷宮区入口。

そこから出てきたのは、和装の少年ツキノワだ。

攻略を切り上げ、街へ帰る最中なのだ。

森をのんびり歩いていると、モンスターの反応を検知する。

 

「数は3…それにしても、妙に小さいな…」

 

反応のする方へ向かうと、そこには兎がいた。

 

「あれは…【ラグー・ラビット】…!!!しかも3羽!?」

 

S級食材【ラグー・ラビット】。

SAOで最も美味しいとされる食材の1つだ。

その出現率は超激レアで、それが3羽となると、最早夢なのかと、錯覚するほどだ。

 

「よし…そっと…そっと…」

 

音を消し、気配を消した彼は、ゆっくりと近づき…そのまま…

 

 

sideツキノワ

 

「さぁて、どうしようかな〜♪」

 

ウキウキ気分が止まらない。

それもそのはず、何と【ラグー・ラビット】を3羽、全部確保したのだから。

 

「今日の晩飯は俺だし…やっぱシチューかな。ragoutだけに」

 

確か…フランス語だったかな?

まあ、それはともかく俺は今50層のエギルさんの店に向かっていた。

その時、店から誰か出てきた。

 

「あれ?キリト?サチも。どしたん?こんな所に」

 

「お!ツキノワか。久しぶりだな」

 

「久しぶり、ツキノワ。私達はエギルさんの所に納品に来たの」

 

「納品…?ああ、そういや、ここで売ってるんだっけか」

 

サチの作るものは主に防具、回復アイテムだ。

それ故にサチの商品は、ここエギルさんのお店か、48層【リンダース】にある、リズのお店【リズベット武具店】で、販売しているのだ。

当初は仲間内だけにしていたらしいが、ギルドの為にとサチ自身が、売り込んで置かせてもらっているのだとか。

 

「あの2人はそういうの妥協しないタイプだろうに…。よくやってるよ、サチは」

 

「ああ、サチのおかげで本当に助かってる。ありがとうな、サチ」

 

「そ、そんな…!///」

 

サチは慌てるように手を振るが、顔は隠しきれてない。

 

「そんなサチにはこんなプレゼントだ!」

 

そう言って俺は、【ラグー・ラビット】を1つあげる。

 

「こ、これ…!?【ラグー・ラビット】!?」

 

「な、なにぃ!!!?おま、これどこで!?」

 

「たまたま捕まえたんだよ。3羽いるから1羽やるよ」

 

「「さ、3羽!!!?」」

 

2人の動揺も仕方ないだろう。

何せこんなレア素材2度と手に入らんだろうし。

 

「ほ、本当にいいの…?」

 

「おう、サチは料理スキルコンプしてるよな?なら大丈夫だろ」

 

キリト…ヨダレをしまえ、ヨダレを。

 

「じゃあ…有難く貰うね!ありがとうツキノワ!」

 

「どういたしまして。美味しく食べろよ〜」

 

そのまま別れた俺は、そのままお店に入っていった。

 

「こんにちは〜」

 

「おう、ツキノワか。いらっしゃい」

 

「さっきそこで、サチ達と会いましたよ。どうですか?」

 

「ああ、完成度はドンドン上がってる。売れ行きもまあまあだぞ」

 

「へ〜そうなんですね。なら良かったです」

 

「そういや、アイツらが来る前にアスナ達が来たぞ?」

 

「え?アスナ先輩達が?」

 

今日アスナ先輩は、ミトと2人で、女子会とか言ってたけど…。

 

「女子会でここに来たんですか?」

 

「…それは俺も疑問だったな…」

 

女子会…よく分からん。

俺はフレンド機能で先輩の位置を調べると、まだこの層にいるらしい。

 

「まだいるみたいなんで、声掛けていきますね。それと…これ買取お願いします」

 

「分かった。どれどれ…」

 

こうして俺は当初の目的を達成してから、2人を探し始めた。

転移門広場で、直ぐに見つけた。

 

「先輩!ミト!」

 

「あれ?ツキノワ君?」

 

「どうしたのよツキノワ」

 

それぞれの反応を受けながら、俺は挨拶した。

 

「いや、素材売りきたらこの層にいたから、声掛けに来た」

 

「そうなのね」

 

「ところで…ミトにこれあげる」

 

俺はミトに【ラグー・ラビット】をあげた。

 

「?…【ラグー・ラビット】!!!?どうしたのよこれ!?」

 

「【ラグー・ラビット】!?」

 

先輩もトレード画面を覗こんでくる。

 

「3羽捕まえたからあげるよ。俺達用には確保してあるし」

 

アスナ先輩が、慌ててストレージを確認する。

結婚している俺達はストレージは共有されてるので、直ぐに確認出来るのだ。

 

「本当に入ってる…!ツキノワ君!!」

 

キラキラした目でこっちを見る。

 

「今日はシチューですよ。ragoutだけに。だから早めに帰ってきてくださいね」

 

「やったぁ!!!楽しみにしてるね!!!」

 

ニッコニコの笑顔で笑いかけてくるアスナ先輩。

可愛すぎて、心臓が辛い。

 

「私はどうしようかな…?」

 

ミトは肉を見ながら、メニューを考えている。

 

「じゃあミト!クラインさんに食べて貰ったら!」

 

「あ、アスナ!?何言ってるのよ!?///」

 

アスナ先輩の爆弾発言に、ミトがかなり顔を赤くする。

 

「そういや、どこまで進んだんだ?最近聞いてないな」

 

「ツキノワまで!?どこまでも何も…///」

 

こいつ…さてはチキってるな?

 

「…先輩」

 

「…ツキノワ君」

 

「あ、貴方達?どうしたの?顔が怖いわよ」

 

「「お話、しよっか」」

 

こうして急遽女子会は終了、これからは如何にクラインを堕とすか、の会議が始まった。

 

 

outside

 

「じゃあ、直ぐに用事しますね」

 

「お願いしまーす!」

 

ここはツキノワとアスナが同棲する部屋。

61層【セルムブルグ】にあるマンションの一室である。

部屋そのものも然ることながら、家具もいいものが揃っている。

基本的なレイアウトはアスナのセンスであり、テーブルや照明はツキノワのセンスである。

そんな2人のセンスの結晶でもあるこの部屋を、アスナは見渡しながら、ニコニコしていた。

 

「…何してんですか?」

 

そんな様子をツキノワは呆れた様子で聞く。

 

「早いね!もう終わったの?」

 

「はい、後は待つだけなので…SAOの料理は簡略化されすぎてつまらない。そんな事より、何してんですか?」

 

「ううん、ただ、これが私とツキノワ君の部屋なんだなって…嬉しくって!」

 

そんな事を嬉しそうに話すアスナに、ツキノワは顔を赤くしながら、そっぽを向く。

 

「い、何時までもそんな事言ってるんですか…!///ほら!もうできますから、早く用意手伝って!///」

 

「ふふっ、はーい!!」

 

そんなツキノワをアスナは優しく笑いかける。

そこにはとても平和な、愛おしい日常があった。

 

 

「美味かった…過去一かも…」

 

「はぁ…今まで頑張って生き残ってて良かった…」

 

シチューを完食した2人は、至福の一時を過ごしていた。

 

「ミトはちゃんとやったのかなぁ〜…」

 

「分からないわ…でも…不思議ね…」

 

突然、アスナがそんなことを言い出した。

 

「不思議って何が?」

 

「何か、この世界に生まれてずっと暮らしてきたみたいな…そんな気がする」

 

「…確かに。俺も最近、あっちの事を思い出さない日がある気がします」

 

そう言われて、初めてそんな事にも気づきたツキノワ。

それが、少し…寂しく感じたのか暗い顔をした。

 

「それに…最近はクリアだの脱出だの、血眼になるやつが減った気がする」

 

「ええ…今最前線で戦ってるプレイヤーなんて、500人いないんじゃないかな…」

 

2人はいつの間にか、飲んでたお茶のカップを置いてしまっていた。

 

「でも、私は帰りたい」

 

その言葉にハッと顔あげるツキノワ。

 

「だって向こうでやり残した事いっぱいあるもの」

 

その瞳は強くて、美しい輝きを持っていた。

 

「…そうですね。俺もやり残した事沢山あります。それに…先輩と行きたい所もいっぱいあります!何より…このアバターじゃなくて、本物の先輩の暖かさを感じたいです」

 

そう言ってツキノワは優しく、アスナの手を取り、自分の頬へ持っていく。

その目はどこか…甘えるような色をしていた。

 

「優月君…」

 

「明日奈先輩…」

 

そして2人の影は重なった。

 

 

「…明日は、一緒に迷宮区行きましょうか」

 

夜も更けてきた頃、アスナが同じベッドに入っているツキノワに、そう提案した。

 

「了解。先輩の為なら例え火の中水の中ってやつです。…一緒に最後まで頑張りましょう。そして…向こうでも、ずっと一緒にいましょうね」

 

「…うん。ずっと一緒だよ」

 

こうして、2人はキスをして、就寝したのだった。




ツキノワ君のラックが炸裂です。
S級アイテムが3つとか、エグイですね☆
ま、創作物って事で許して下さい。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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33話

久しぶりにこっちの投稿します。
よろしくお願いします。


sideアスナ

 

「フッ!」

 

私の目の前にはボーンゴーレムが一体。

ゴーレムが、【ホリゾンタル・スクエア】で攻撃してくる。

1撃目は迎え撃ち、2撃目はバックステップで躱し、3撃目は仰け反って躱し、4撃目は飛んで躱す。

 

「ハァ!」

 

私は着地後、直ぐにソードスキルのモーションに入る。

フェイントを挟んでから、まずは3連撃を胴に当てる。

 

「シッ!」

 

体勢が崩れたところで、足を狙って2連撃。

 

「フッ!」

 

さらに上へ飛んで、がら空きの胸元に2連撃。

 

「ヤァ!」

 

トドメの一撃で、盾の上から吹き飛ばす。

8連撃ソードスキル【スター・スプラッシュ】。

この技で、大きく削った私は直ぐにツキノワ君と、スイッチしようとした瞬間、斬撃が飛んできて、私の真横を駆け抜ける。

そのすぐ後ろを、白い羽織をはためかせながら、走り抜けるツキノワ君。

 

「オラァ!」

 

斬撃を受け、更にダメージを負ったゴーレムにトドメの一撃に峰打ちを飛ばす。

骨が砕け散り、そのまま、ポリゴン状に砕け散るのを確認して、私達は武器をしまった。

 

「お疲れ様です、先輩」

 

「お疲れ様、ツキノワ君」

 

私達はハイタッチをしながら、お互いの健闘を称えた。

 

「やっぱり手練が1人いるだけで、だいぶ違いますね」

 

「…ツキノワ君、うちのギルドに入らない?」

 

私はツキノワ君に聞く。

団長みたいに、力をって理由ではなく、純粋に心配だから。

最近モンスターのアルゴリズムに、イレギュラー性が増してきている気がする。

ソロの場合、想定外の事態に対応出来ない時もある。

 

「…先輩には悪いけど、入る気は無いですね。今の立場があるのは、ソロやってるからですし」

 

そう、今彼が私の護衛でいられるのは、彼がソロだから。

もし何処かのギルド、ないし血盟騎士団になってしまえば、一緒にはいられなくなるだろう。

 

「そっか…でも、あまり1人で行かないでね?私、ツキノワ君にもし何かあったら…」

 

「しっ。何が来る」

 

突然、ツキノワ君が私の口に手を当てる。

その時、索敵スキルに反応が出る。

プレイヤーが…6人?

 

「結構な速さで来るな…?」

 

「警戒しましょう」

 

私達がお互い武器を手に取った時、

 

「「「「「「ぎゃあァァァァァァァァァァァァ!!!」」」」」」

 

すごい悲鳴と共に、何やら見覚えのある6人の男女が、一気に駆け抜けて行った。

あまりの速度に、2人揃ってポカーンとしている。

 

「…ハッ!?今のって…キリトか!?」

 

「それにサチ達…月夜の黒猫団よね!?」

 

私達は顔を見合わせながら、皆を追いかける為、来た道をダッシュで戻って行った。

 

 

sideツキノワ

 

「「「「「「アハハ!!!」」」」」」

 

6人の笑い声が聞こえたのは、安全地帯の中からだった。

俺達は直ぐに入って皆の安否の確認を取った。

 

「キリト!皆!大丈夫か!?」

 

「何があったの!?」

 

でも、6人とも俺達の顔を見て、ポカーンとしてるだけだった。

 

「…ツキノワ?アスナ?何でここに?」

 

「何でって…お前達が俺達を、追い抜かして行ったんだろうが!」

 

「そうよ!すごい悲鳴を上げながらだったから、ビックリしたじゃない!」

 

「あ、アハハ。実は…」

 

ケイタが説明を始めた。

俺達より先に進んでいたケイタ達はボス部屋を発見。

顔だけ拝んでいこうと扉を開けた。

そこにいたボスの名は【The Gleam Eyes】。

ヤギの顔に大きな牙、巨体に蛇のしっぽ。

まさに悪魔みたいな見た目をしたボスだったらしい。

 

「それを見て、ビビって逃げてきたと…」

 

「あ、あれは本当に怖いんだぞ!見てみろよ!」

 

「分かった分かった…」

 

ダッカーが喚くがとりあえず無視。

それより気になるのは

 

「なんでサチがいるんだ?生産職だろ?」

 

そう、彼女は戦闘は苦手なはず。

なのに幾らキリト達がいるからって最前線は危ない。

 

「ん?知らなかったのか?サチは最近一緒に戦ってるんだぞ?」

 

「え?そうなのか?」

 

知らなかった。

まあ、あまり前線ではこいつらとは会わないからな〜。

 

「う、うん…やっぱり皆が戦ってるのにって思って…それに…き、キリトもいてくれるし…///」

 

最後のは小さく言ったな。

まあ、俺達には聞こえてるが。

 

「サチ?なんか言った?」

 

「な、何でもない!!///」

 

何でよりによってお前が聞いてないんだキリト!

俺達全員聞いてたんだぞ!?

キリトとサチ以外の全員が、頭を抱えながらため息をつく。

 

「み、皆…どうしたんだよ…?」

 

「「「「「「「何でもない!!」」」」」」」

 

「そ、それより!?ご飯にしよっか!?」

 

サチが話題変えようと、ご飯の用意をしだした。

 

「待ってました!!!あ、ツキノワ。昨日はありがとうな!」

 

「そうだった!昨日ありがとう!美味しく頂いたよ!」

 

「それは何より」

 

昨日の【ラグー・ラビット】の事だろう。

そう思いながらも、こっちもご飯を待つ。

今日はアスナ先輩の当番なので、楽しみだ。

 

「はい、おまたせ」

 

「ありがとうございます!頂きます!」

 

今日のお昼はバケットサンドだ。

 

「ん〜!美味い!美味しいです!」

 

「ふふ、ありがとう」

 

そう言いながら俺達はゆっくりと食べている。

キリト達は皆でワイワイと食べている。

あの勢いの中では、サチは大変そうだな。

そんな時、団体が入ってくる。

すぐに警戒するも、その集団を見て警戒を解く。

 

「おお!キリトじゃねぇか!」

 

「ツキノワ!アスナ!貴方達もいたのね!」

 

クライン率いる風林火山と、ミトだった。

 

「よう、クライン。まだ生きてたんだな」

 

クライン達がキリトに絡みに行ってる隙に

 

「おっすミト。元気そうじゃん」

 

「ミト!どうだったの!?」

 

俺と先輩はミトに問い詰める。

 

「昨日…ちゃんとクラインを誘ってご飯したわ」

 

「「それで!?」」

 

「それで…今日この約束して…」

 

「「して…?」」

 

「…終わりよ」

 

「「終わりかい!?」」

 

思わず、2人揃ってツッコミを入れてしまう。

 

「何チキってんだよ!?そこはアタックしろよ!攻めの一手だろ!!」

 

「自慢の攻撃力はどこ行ったのよ!?私には守る事ばかり意識しすぎって言ってた癖に、自分はガッツリ守ってばかりじゃない!」

 

俺達はミトに詰め寄りながら、グイグイ行く。

 

「で、でも…」

 

「でもじゃねぇよ…」

 

「ミト〜…勇気出して!」

 

俺達も思わず、ため息が出てしまう。

この姉貴…どうしよう…

そんな事、幾つかの鎧の音が聞こえてくる。

あのエンブレム…それに深緑を基調とした、あの連中は

 

「【軍】だと…?」

 

【アインクラッド解放軍】、通称【ALF】。

25層で壊滅したALSが、【ギルドMTD】に吸収されたものだ。

当時はともかく、今は黒い話しか聞かず、かなり荒れ果てたギルドだ。

確か下層の治安維持と組織力の強化に方針転換したはずが…なんで今更…?

 

「ギルドの定例会でもあったわ。軍が方針転換したって」

 

「ええ、でも本当に来てるなんて…」

 

2人がそんな話をしていた。

なるほど、血盟騎士団は知ってたのか。

 

「私はアインクラッド解放軍、【ゴーバッツ】中佐だ」

 

階級まであるんだ…

 

「キリト、月夜の黒猫団所属」

 

「ケイタ、月夜の黒猫団リーダーです」

 

代表してキリトとケイタが、話を聞くらしい。

 

「君達はこの先までマッピングしているのか?」

 

「ええ、ボス部屋の前まではしてありますが」

 

「では、そのマッピングデータを提供してもらいたい」

 

「「「「「「「「「!!?」」」」」」」」」

 

俺達に動揺が走った。

こいつ…今何いいやがった!?

 

「た、タダで提供しろだと!?テメェら、マッピングの大変さ分かってんのかよ!?」

 

クラインが怒ったように言う。

マッピングするって事は、未知の領域に踏み込むって事だ。

この死と隣合わせの世界で、何があるか分からない場所に行くって言う事が、どれだけ勇気がいる事か。

最前線を張るフロントランナーの俺達だからこそ、わかる恐怖だ。

それと戦いながら、進んできた道をこいつら…!?

 

「我々は一般プレイヤーに、資源や情報を平等に分配し、秩序を維持すると共に、一刻も早くこの世界から、プレイヤー全てを解放するために働いているのだ!故に、 諸君らが我々に協力するのは、当然の義務である!!」

 

…アホらし、知らんわこんな連中。

 

「誰がてめぇら何かに頼んだよ、あぁ?」

 

俺は相手にもしたくないが、イキがられても腹が立つだけだから、仕方ないから相手する。

 

「君は…【剣豪】か」

 

「ツキノワ、ソロだ。テメェらみたいなチンピラ崩れのゴロツキに、そんな事頼んだ覚えはねぇよ」

 

「何…!?貴様!?」

 

「失せな。ここは本物の戦場だ。テメェら雑魚が出てきていい場所じゃねぇ」

 

俺は刀の柄に手をかけながら言う。

これ以上は言葉じゃない、と言外に忠告しながら、殺気をぶつける。

その殺気にゴーバッツも、後ろのへばってる連中も震えている。

 

「…分かりました。マップデータは提供します」

 

ケイタが突然、そんな事を言い出した。

 

「元々、街に戻ったら公開する気だったしな。これで金儲けはしない、うちのルールの1つだよ。な?リーダー」

 

「ああ、そういう事です。クラインさん。だからツキノワもそこまでにしてくれ」

 

「…チッ」

 

「全く…人が良すぎるぜお前ら」

 

持ってるこいつらがいいって言うなら、俺達には何も出来ない。

大人しく下がる事にした。

 

「…うむ。協力感謝する」

 

そう言いながら、仲間の元へ向かうゴーバッツ。

 

「ボスにちょっかい出す気なら辞めた方がいいぞ」

 

「それは私が判断する」

 

キリトの警告も無視して、無理やり仲間を立たせて、先へ進んでいってしまった。

 

「大丈夫かよアイツら…?」

 

「流石に今からは挑まないと思うけど…」

 

クラインとミトが心配する中、

 

「一応、様子だけでも見に行くか…?」

 

キリトがそんな事を言い出した。

はぁ…本当にお人好しがすぎるぞ、アイツは。

皆も乗り気だし、仕方ない。

 

「…すまない、ツキノワ。俺のわがままに巻き込んで…」

 

キリトは俺が乗り気じゃない事に、気付いていたらしい。

 

「…別に。もし皆に何かあったら嫌だから付いてってるだけ。アイツらの事なんてどうでもいい」

 

すごくツンデレっぽい発言だが、皆俺の本心を知ってるからか、何も言わず、笑ってるだけだった。

 

「ツキノワ、アスナ…ちょっといいか」

 

移動中、突然クラインが俺達に話しかけて来た。

 

「何ですか?」

 

「その…ミトの嬢ちゃんの事なんだが…えっとぉ…」

 

あ〜、なるほど…。

流石にキリトじゃあるまいし、気付くか。

 

「うん、クラインの思ってる通りだよ。よく気付いたな」

 

「あ、当たり前だろ…キリの字じゃあるめぇし…」

 

ここでもキリトはバカにされている。

 

「…で?クラインはどう思ってるの?俺はそこが大事だと思うよ」

 

「クラインさん。ミトは…あの子はクールなんじゃなくて、ただ不器用なだけなんです。ただの寂しがり屋なんです」

 

「アイツは…根はすごく優しくて、誰かの為に泣ける奴なんです。自分が誰も傷つけないように…そうやって自分を犠牲にして、誰かを守れる奴なんです」

 

あの日、あの時の涙を知っている。

自分のせいだって思い込んで、誰も近づけないようにしてる。

でも本当は寂しがり屋で、友達思いで…そんな優しい人なんだ。

だから

 

「だから…クラインさん。お願いします。ミトの事、ちゃんと見てあげてください」

 

「どんな結論でもいい。真剣に向き合ってくれ。姉貴の事を、1人の子供ではなく、1人の女性として、そして1人の大人ではなく、1人の男性として…考えてあげて下さい」

 

俺達は真剣にクラインに頭を下げた。

クラインがどういう結論を出すかは知らない。

でも願わくば、対等に見てから、決めて欲しい。

 

「…分かった。俺も腹くくる時って事だな」

 

そう言って俺達の頭を軽く撫でてから先に進むクライン。

その背中は何時もより、凛々しく、頼りがいがある気がした。

 

「それにしても…全然見えねぇな…」

 

「ああ、追いついててもいいのに…」

 

姿形どころか、影すら見当たらない。

皆諦めかけたその時、ふと何か聞こえてきた。

それは…悲鳴だ。

 

「…クッソ!!!」

 

「「「「「ツキノワ(君)!?」」」」」

 

「急げ!あのバカども、早まりやがった!!」

 

俺の言葉で、理解したのか。

皆一斉に走り出した。

パラメータ的に、俺と先輩、次にキリトとミトが飛び出した時

 

「くっそ!こんな時に!?」

 

後ろでモンスターがリポップしてしまった。

 

「おめぇらは先に行け!ケイタ!切り抜けるぞ!」

 

「了解です!サチは下がってて!」

 

「皆!無理はするなよ!!」

 

キリトが心配そうにしながらも、走り出す。

 

「あそこだ!」

 

そして、俺達がボス部屋に着いた時、そこには

 

「「「「「ぎゃあァァァァァァァァ!!!?」」」」」

 

『グルアァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

地獄が広がっていた。




出来るだけ違和感ないように絡ませてみました。
ミト…守りすぎ。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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34話

お久しぶりです。
すっかりロクアカばっかりでしたが、こっちもやってかなといけないですね。
それではよろしくお願いします。


sideキリト

 

軍の連中が、The Gleam Eyesと、戦っている。

いや、あれは…蹂躙されていると言った方が、正しいか。

だからやめろと言ったのに…!

ツキノワが、ある事に気付いた。

 

「…おい、人数足りなくないか?」

 

俺達は慌てて数を数えると…

 

「…2人いない」

 

ここで2人いなくなった…つまり…

 

「…馬鹿野郎」

 

思わずそう呟いてしまった。

そのまま、為す術なくやられていく奴らに

 

「何してる!?転移結晶を速く使え!」

 

思わずそう叫ぶが

 

「ダメだ!結晶が使えない!」

 

な、まさか…!?

思い出される27層の時の事。

あの時もあそこは…

 

「【結晶無効エリア】!?」

 

「そんな…ボス部屋にそんなギミック…!?」

 

ミトとアスナが、驚愕のあまり、口を押えている。

後ろから足音が聞こえる。

 

「おい!どうなってる!?」

 

ケイタ達が追いついてきたらしい。

 

「…ここでは結晶は使えない。俺達が踏み込めば奴らは逃がせるだろうが…」

 

その後、俺達がどうなるかは…分からない。

 

「…帰ろう」

 

その時、淡々とツキノワが言う。

それはつまり

 

「このまま見捨てろってことか!?」

 

思わず、掴みかかる。

だが、それ以上に強い力で腕を掴まれる。

 

「じゃあどうするってんだよ!?あいつらを逃がすのか!?お前の忠告も聞かず、勝手に乗り込んだバカ共をか!?あんな奴らの為にお前達を…アスナ先輩を、危険な目に晒せってのか!?冗談じゃねぇぞ!!そもそも俺達は、たかが2パーティ半だぞ!?一体何が出来るんだよ!?」

 

ツキノワの目は…本気だ。

今俺達と軍の奴らの命を測って…俺達を選んだ。

ツキノワの言い分も一理ある。

これは単純に…彼らの自業自得だ。

それをわざわざ、助ける義理はない。

でも…でも…

 

「例えそうだったとしても!見捨てていい理由にはならない!!だったらあの時、なんで皆を助けた!?なんで黒猫団の皆を助けたんだよ!?」

 

その言葉に、唇を噛み締めるツキノワ。

こいつは決して、冷血漢では無い。

ただ、現実主義…リアリストなだけだ。

そうやって俺とツキノワが言い争っている時、

 

「我々解放軍に撤退の文字はない!戦え!戦うんだ!」

 

「ゴーバッツ…!」

 

まだ戦おうとするゴーバッツに、思わず悪態つく。

 

「全軍、突撃ー!!」

 

「「よせ!やめろ!」」

 

思わず俺とツキノワが同時に叫ぶ。

その時、The Gleam Eyesがブレス攻撃とソードスキルで、軍を蹴散らしてから、誰かを打ち上げた。

飛んできたのは、ゴーバッツだった。

兜が砕け

 

「有り得ない…」

 

そう言い残して、死んだ。

 

「有り得ないのは…お前の馬鹿さ加減だ」

 

そう呟いたツキノワの目は…とても冷たく、泣きそうだった。

 

 

sideツキノワ

 

まだ、軍の連中は生き残ってる奴もいる。

でも俺には助ける気は無い。

どんな汚名を被ろうが…それこそ、アスナ先輩に嫌われようが、俺はアスナ先輩の生き残る道を選ぶ。

そう思っていた…だから…

 

「ダメ…ダメよ…もう…ダメーーーーー!!!」

 

「「アスナ(先輩)!!!」」

 

アスナ先輩が飛び出した時、俺とミトはつい駆け出してしまった。

 

「おい!2人とも!…クソ!!クライン!ケイタ!みんなで軍のヤツらを下げさせてくれ!サチはそこで回復させてくれ!」

 

「「分かった!!」」

 

「どうとでもなりやがれ!」

 

キリトがみんなに指示を出す。

アスナ先輩が、空中で、【カトラドル・ペイン】を発動、背後から攻撃して、タゲを取る。

しかし、体勢が悪く剣での反撃は防いだが、パンチには間に合わず、吹き飛ばされてしまう。

 

「「はぁぁぁぁ!!」」

 

俺とミトは、同時に剣を弾き飛ばし、追撃を止める。

 

「先輩!大丈夫!?」

 

「アスナ!下がって!」

 

ミトの声に反応して、一旦下がる先輩。

ボスの後ろでは、クライン達による救助が、行われていたが、それに気付いたボスが、ブレス攻撃をしようとする。

 

「ぜりゃぁぁ!」

 

それをキリトが背後から攻撃する事で止める。

 

「ツキノワ!ミト!耐えるぞ!」

 

「「了解!」」

 

そして、なし崩し的にボス攻略が始まった。

 

 

「おぉぉぉ!!」

 

ボスの振り下ろしを、俺は打撃で吹き飛ばす。

 

「やぁぁぁ!!」

 

ボスのすくい上げを、ミトがソードスキルでいなして、かち上げる。

 

「はぁぁぁ!!」

 

ボスの水平切りをキリトがソードスキルで浮かせて、躱す。

 

「タンク!前に出て!」

 

ボスのブレス攻撃は、先輩の指示で、風林火山と月夜の黒猫団のタンク勢が防ぐ。

地道にやってきたが、案の定泥沼化してきた。

数は少ない、情報も少ない。

作戦も行き当たりばったり。

しかも…少しづつだが、俺達前衛も消耗してきている。

このままだと…でも、俺のアレはまだ実戦投入はした事ない…!

隣にいるキリトを見る。

キリトも、アレを使うか躊躇っているな。

 

「ツキノワ!キリト!」

 

ミトの声に2人して咄嗟に剣を掲げて、ガードする。

 

「キリト…!」

 

「ああ…躊躇ってる暇はない…!」

 

俺達はすぐに下がって、メニューをいじる。

 

「みんな!ごめん!10秒だけ持ち堪えて!」

 

「「「了解!」」」

 

「ツキノワ君…やるのね?キリト君も何かあるみたいだけど」

 

俺達はそのまま頷く。

 

「分かった。行ってくるね!」

 

そのまま走り出す先輩を見ながら、俺は腰に2本目の刀を差した。

 

「お先!」

 

そのまま俺は駆け出して、クラインに声をかける。

 

「スイッチ!」

 

クラインがスイッチして、俺は前に出る。そのまま、2本の刀で、斬撃を飛ばした。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

雄叫びをあげるボス。

二刀流の実戦投入…しかもボス戦。

右の【和泉守兼定:真打】で受け流し、左の新しい刀【菊一文字正宗】で、目を貫く。

 

「オラァ!!」

 

よろけるボスに両方で、打撃で腹に打ち付ける。

 

「くら…え!!」

 

更に振り下ろしてくるので、左で弾き、右で斬撃を飛ばす。

 

「スイッチ!」

 

キリトがやっと来る。

俺は突きをクロスして防いできた刀で、一気に弾き飛ばして、キリトと入れ替わる。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

そうして戦うキリトは…二刀流で戦っていた。

 

「【スター・バースト・ストリーム】…!!」

 

そうして放たれる16連撃ソードスキル。

その軌跡はまさに、星の煌めきの如く。

 

「なんなんだ…あのスキルは…!?」

 

クラインが呆然と呟く。

俺の擬似的な二刀流ではなく…真の【二刀流】。

一切の防御を捨てた、攻撃につぐ攻撃。

反撃を受けながらも、目にも止まらない速さで、剣戟が駆け抜ける。

しかし15撃目が、掴まれる。

そのまま振り下ろされる剣を

 

「おぉぉぉぉ!!!」

 

俺は2本の刀で斬撃を飛ばして、弾き飛ばす。

そしてがら空きになった胴に

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

キリトの渾身の1突きが…ボスの体を貫く。

そしてポリゴン状に砕け散るボス。

空中に浮かぶ、Congratulationの文字が、74層フロアボス攻略が完了した事を告げる。

 

「終わったのか…?」

 

そう呟いてキリトは、気を失ってしまった。

 

「キリト!?」

 

1番後ろにいたサチが、1番速く駆け寄る。

俺達は…喜びの声すら上げられなかった。

 

「…何人死んだ?」

 

「…ゴーバッツと2人。計3人よ。私達が参戦してからは…1人も死んでないわ」

 

「ならいい…。さてと…先に言うぞ、俺のはただのパクリ。剣豪スキルの穴を突いただけだ」

 

「剣豪スキルの穴?」

 

クラインが不思議そうに聞いてくる。

 

「ああ…剣豪スキルには、ソードスキルとかのモーションがないから、モーションエラーとか起きない。右でも左でも反応するから自由度も高い」

 

「なるほど…モーションの縛りがない事を利用した、擬似二刀流って事ね」

 

さすがミト、話が早い。

 

「ん…?」

 

どうやらキリトが、目を覚ました。

 

「ここは…!?俺…どれだけ気を失ってた?」

 

「数秒から数十秒だな」

 

「…キリトのバカ!無茶しないで!」

 

そう泣きながら、キリトに抱きつくサチ。

そんなサチをキリトは、優しく撫でながら言う。

 

「あんまり強く抱きしめられと、本当にHPが0になっちゃうよ。…何人死んだ?」

 

「3人。俺達が参戦からは0だって」

 

俺はキリトにそう伝える。

 

「…攻略で死人が出たのは、67層以来か…」

 

「こんなのが攻略って言えるかよ!ゴーバッツの野郎…死んだら意味ねぇだろうが…!」

 

クラインの悔しそうな声が、ボス部屋に響く。

 

「…それはそうと、何だよおめぇさっきのは!?」

 

クラインが強引に話を逸らす。

 

「…言わなきゃダメか?」

 

往生際が悪いぞキリト。

 

「あったり前だ!!見た事ねぇぞあんなの!?」

 

「…エクストラスキルだよ。【二刀流】」

 

どよめきが上がる。

 

「しゅ、出現条件は!?」

 

「分かってたら、もう公開してる」

 

「つまり…ユニークスキルって事か!?」

 

そう、二刀流は俺達のと同じユニークスキルだ。

だから、この事は月夜の黒猫団と、スキルレベル向上に付き合っていた俺しか知らない。

 

「そういう事だったんだ…だから夜中に…」

 

「言ったでしょ…会ってるのはキリトだって…」

 

実は1度だけ、アスナ先輩に浮気を疑われた事がある。

その時は、キリトの用事に付き合っている。

キリト個人の事だがら、教える事は出来ない。

その代わりに、フレンドの追跡機能で探せば分かる。

と告げて、確認してもらったのだ。

その後、キリトと口裏を合わせて、何とか乗り切ったのだ。

 

「…ごめん、先輩。話せなくって…」

 

「そういう事ならしょうがないよ…それよりごめんね?。あの時ビンタまでしちゃって…」

 

「それは…もうやめて欲しいかな…かなり…イタカッタ…」

 

それに、ネットゲーマーというか、人の妬み恨みは怖い事が、この世界でよく分かった。

だから黙っていた訳だが…。

 

「ま、アクティベートは俺達に任せろ」

 

「キリト、サチ。2人は先に戻ってて。俺達も行ってくるから」

 

そう言って、風林火山と月夜の黒猫団は、上に登っていく。

 

「…今回の件、私達血盟騎士団は、貴方達の軍に厳重抗議します。上層部にはそう伝えなさい。…アスナ、私は団長に報告してくるから先に帰っていいわよ。ツキノワ、アスナの事、よろしくね」

 

そう言ってミトも帰っていく。

 

「ツキノワ君、帰ろっか」

 

俺達もゆっくりと帰り道を歩く。

しばらく歩いて、俺は先輩の手を掴んだ。

 

「…先輩。もう…あんな事しないで…!先輩に何かあったら…俺…!」

 

俺は今になって、体が震えてきた。

もしあの時、俺とミトが間に合わなかったら…!

思わず、少し涙が出る。

 

「ツキノワ君…ごめんね。心配かけさせちゃって…。私、しばらくギルド休む」

 

「は?休むって…大丈夫なんですか!?」

 

また突然だな…。

 

「…色々、考えたい事が出来たの。それに…ツキノワ君を泣かせちゃったし」

 

それは…言わないで…!///

でも…少し…疲れたな。

 

「…俺も…一緒にいたい…」

 

そうして、これを機に俺達は前線を退くつもりだった。

つもりだったっていうのは…

 

「ツキノワ君!大変な事になっちゃった…!」

 

涙目のアスナ先輩からの話で、急展開を迎えたからだった。

 




二刀流はロマンですね。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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35話

お久しぶりです。
ストックが溜まったので、投稿します。
よろしくお願いします。


sideツキノワ

 

「久しぶりだね、ツキノワ君」

 

「ああ、久しぶり。ヒースクリフ」

 

ここは55層【グランザム】にある、血盟騎士団本部。

その会議室。

 

「君とこうして話すのは、アスナ君の護衛を依頼した時以来かな?」

 

「いや、67層の攻略会議後に、少し」

 

すっとぼけやがって…本当は覚えれるだろうに。

 

「そうか…あれは辛い戦いだった…。我々も危うく死者を出すところだった。最強ギルドなどと呼ばれていても、戦力は常にギリギリだよ。…なのに君は、我がギルドの貴重な主力メンバーを、引き抜こうとしてる訳だ」

 

「別にヘッドハンティングしてる訳じゃない。少しの間、休暇をくれと言ってるだけだろ。そんなにブラックか?ここは」

 

ハッキリ言えば、血盟騎士団の戦力なんて知らない。

それより…このところ、色んな事があった。

正直…俺も先輩も疲れてるんだ。

だから、休ませて欲しい。

 

「…よかろう。ならば…剣で奪い取りたまえ。君が勝てば、君達の要望通りにしよう。ただし…君が負ければ、君には血盟騎士団に入隊してもらう。もちろん、好待遇にしてあげよう…どうかな?」

 

剣で奪い取れ…ね…。

上等だ、やってやる。

 

「…いい加減、ウンザリなんだよな…。【剣豪】と【神聖剣】…どっちか強いのかって噂。…その賭け乗ってやる」

 

こうして俺は、ヒースクリフとの決闘を挑む事になった。

 

 

outside

 

「やってくれたわね、ツキノワ」

 

開口一番、ミトがツキノワに対して、そう言った。

 

「本当だよ!も〜バカバカバカ!何であんな事言うのよ!?」

 

「ごめんごめん。でも…俺も無鉄砲に受けた訳じゃないですよ」

 

アスナからのお叱りに、流石にツキノワも焦ったように、弁明する。

 

「…どういう事?」

 

ミトが不思議そうにツキノワに聞く。

 

「…ごめん。言えない」

 

ツキノワの顔は、苦虫を噛み潰したような、何ともいない顔だった。

その顔を見たミトは、それ以上の追求はせず、話を変えることにした。

 

「…ツキノワの【剣豪】も大概だけど、団長の【神聖剣】も大概よ?」

 

「ええ。攻防自在…特に防御力は桁違いよ。団長が黄色ゲージになったのを見た事ある隊員はいないわ」

 

アスナとミトの説明を聞き、深く熟考するツキノワ。

 

「…ま、考えても仕方ないか。やるだけやってみるしかないって!」

 

「あのねぇ…」

 

「どうする気なの!?負けたら休むどころか、ツキノワ君まで…!」

 

呆れるミトと、焦るアスナ。

 

「それはそれでアリかも。合法的に先輩と一緒にいれる訳だし」

 

「つ、ツキノワ君…!///」

 

「あんた達!そんな惚気させないわよ!」

 

2人の反応に、ミトが呆れたようにツッコミを入れる。

 

「よし!行ってくる!」

 

そう言って会場に歩き出すツキノワの背中を、ミトとアスナは不安そうに見る事しか出来なかった。

 

 

sideツキノワ

 

会場は、75層にあるコロシアム。

もの凄い人だかりと歓声に、思わず眉間に皺が寄る。

 

「…どういうつもりだよ」

 

俺は半分呆れたように、ヒースクリフを睨む。

 

「済まなかったな、ツキノワ君。まさか、こんな事になってるとは、知らなかった」

 

よく言うよ、絶対知ってたろ。

 

「…まあいいや、ギャラは貰うし」

 

「いや…試合後は我がギルドの一員だ。任務扱いにさせて貰おう」

 

そう言ってデュエル申請を出してくる。

俺はモードを選択し、構える。

既に、手には2本の刀。

カウントダウンが始まる中、俺は集中を深めていき、ヒースクリフ以外の情報をシャットアウトする。

そしてカウントがゼロになるのと同時に

 

「シッ!」

 

一気に詰め寄り、突きを放つ。

しかし、涼しい顔で受け止められた。

 

「チッ!…フッ!」

 

そのまま、一気に連撃を叩き込む。

右袈裟、左逆袈裟2連撃、左で斬り付け、右で突く。

 

「ハッ!」

 

ヒースクリフがシールドバッシュで突き飛ばそうとするので、その勢いを利用し距離取る。

そのまま、攻勢に出るヒースクリフに構えると、突然、左腕が動き、俺は咄嗟にガードする。

その手には…盾。

 

(盾でも攻撃出来るのかよ…!)

 

俺は転がりつつ、膝で勢いを吸収して、一気に駆け出す。

その勢いを乗せて、右の刀で突きを放つも、盾で受け流される。

 

「まだ!」

 

俺は左に体を捻りながら、斬撃を飛ばす。

これも読んでいたのか、ソードスキルで相殺される。

 

「…素晴らしい剣技だ」

 

「そっちこそ…硬すぎるだろ」

 

そんな俺達に観客は更に盛り上がるが、ほとんど聞いてない。

 

「「…フッ!」」

 

俺とヒースクリフの踏み込みは同時だった。

俺の右の刀と、ヒースクリフの剣がぶつかる。

左の刀を、盾で防がれる。

ヒースクリフの剣を、左の刀で受け流す。

ヒースクリフの盾は、右の刀で受け止める。

そんな激しい攻防を繰り返す俺達。

それでも…抜けない。

俺は至近距離の斬撃や、刺突を織り交ぜているのに、通用しない。

 

(まだ…まだ速く!強く!上手く!)

 

頬を剣が掠めるが、無視して貫く。

十字型の盾の隙間を縫うように、刺突が駆け抜け、ヒースクリフの頬を切る。

その事に、動揺したヒースクリフ。

 

「ここだ…!」

 

俺はボス戦では使わなかった技を解放する。

 

「【偽:スター・バースト・ストリーム】…」

 

俺はキリトが使った【スター・バースト・ストリーム】を再現して、ぶつける。

俺は一撃事に斬撃を込めて、至近距離で放っていく。

1発1発では抜けなかったが、高速の16連撃には、耐えきれなかったか、やっと盾をこじ開けられた。

 

「これで…!?」

 

俺は有り得ないものを見た。

先程弾いた盾を持ったヒースクリフの腕が、有り得ない速度で戻ってきたのだ。

 

(は?何だよそれ…!?)

 

マズいと悟った俺は、直ぐに体勢を戻そうとしたが間に合わず、目の前で隙だらけの姿を晒してしまった。

 

「がはぁァ!?」

 

俺はガードが間に合わず、クリティカルヒットしてしまう。そのままHPが減っていき、半分切ったところで、勝敗は決まってしまった。

こうして負けた俺は、血盟騎士団に入る事になった。

 

 

outside

 

「制服はこのままでいいよね?」

 

「はい、こっちの方が性能いいし。ヒー…団長から許可も貰ってます」

 

アスナとミトとツキノワは、控え室で今後の話し合いをしている。

ツキノワの顔は、悔しさと何か怪しんでいる曖昧な顔をしていた。

 

「よし!ツキノワの仕事は副団長補佐官。要は私とアスナの手伝いよ」

 

「基本的に私達のどっちかと常に一緒だよ」

 

「それは心強い。よろしくお願いします。アスナ副団長、ミト副団長」

 

ツキノワは茶目っ気に2人にそう言うと、2人とも微妙な顔をする。

 

「やめて…気持ち悪いわ」

 

「少し…寂しいな〜…」

 

「よしミト!表出ろ!」

 

「まあまあ…」

 

ツキノワがミトに食ってかかるので、アスナが仲裁する。

 

「…ごめんね。巻き込んじゃって…」

 

「別にいいですよ?そろそろソロも限界かなって思ってましたし」

 

ツキノワは全く気にしてないのか、アッサリと言う。

 

「何で今までソロだったの?」

 

「え!?えっと…」

 

アスナの素朴な疑問に、急に焦り出すツキノワ。

代わりにミトが答えた。

 

「基本的に集団行動が苦手なのよ。何でもハッキリもの言うでしょ?それでトラブルが絶えないのよ」

 

「み〜す〜み〜!」

 

ツキノワが顔を赤くしながら詰め寄るも、ミトは素知らぬ顔で口笛を吹く。

吹けてはいないが。

 

「相変わらず下手な口笛だな!リアルボッチ!」

 

「何ですって!精神的ボッチ!」

 

「2人とも!!」

 

姉弟喧嘩が勃発する前に、アスナが仲裁する。

 

「もう!喧嘩する前にみんなに挨拶!行くよ!」

 

「「はい…」」

 

 

sideツキノワ

 

「訓練?」

 

「そうだ、私を含む3人パーティーで、ここ55層のフィールドダンジョンを突破して、迷宮区前まで行ってもらう」

 

翌日、俺達を待っていたのは【ゴドフリー】というプレイヤーだ。

血盟騎士団では、フォワードの指揮を執っているプレイヤーだ。

 

「ちょっとゴドフリー!そんなことしなくても、ツキノワの実力は、私達が保証するわ!」

 

「そうよ!彼の強さは、攻略組なら誰でも知ってるわ!」

 

「アスナ副団長、ミト副団長。規律をないがしろにされては困りますな。それに、入団する以上、一度はフォワードの指揮を預かるこの私に実力を見せて貰わねば」

 

「そんな必要ないぐらいツキノワは強いわよ!」

 

ミトがキレながら怒鳴るが、ゴドフリーはそれを気にせず、街の西門に30分後に集合と言って笑いながら出て行った。

 

「はぁ……ごめんね、ツキノワ。ゴドフリーは、一度言い出したら聞かないから」

 

「悪い人では無いんだけど…」

 

「まあ、いいよ。さっさと終わらせる」

 

ツキノワは、肩を回しながらストレッチをする。

 

「先輩、待ってて下さい。ミト、先輩をよろしく」

 

「…うん、分かった。待ってるよ」

 

「当然よ。そっちこそ気をつけなさい」

 

30分後、西門にカイが向かうとそこには、意外なプレイヤーがいた

 

「お前は…クラディール」

 

そこに居たのは数ヶ月前、決闘して、ボコボコにしたクラディールがいた。

 

「君達は何やら揉めららしいからな!ここで仲直りしておこう!」

 

(いや、本当に脳筋だなこのバカは)

 

俺はゴドフリーを呆れた目で見るが、それには全く気付いていない。

その時、クラディールが、頭を下げてきた。

 

「…あの時はご迷惑をおかけしました。二度と無礼な真似はしませんので…」

 

「あ、ああ…。俺こそ煽りすぎた…。ごめんなさい」

 

ぺこりと頭を下げ、ボソボソと謝罪するクラディールに、驚きつつ、改めて俺も謝罪する。

あの態度から一変、ここまでさせるなんて、一体何があったのやら。

 

「よし、これで一件落着だなぁ!!」

 

ゴドフリーが笑いながら、俺とクラディールの背中を叩いた。

 

((どこがだよ))

 

同じ事を思ったのは、きっと気のせいだ。

 

 

「ふむ!噂以上の腕前だ!素晴らしい!」

 

「うるせぇ。お前も働けよ」

 

何もしてないくせに…偉そうに。

それに、進みが遅すぎる。

1人ならとっくに着いてる時間でも、やっと半分だ。

 

「よし!ここで休憩にする!」

 

やっと休憩か…。

コイツらのペースに合わせすぎて、逆に疲れた。

俺はストレージから、自分で用意した昼飯と果実水を取り出したのと同時に、ゴドフリーから何か包みを渡させる。

 

「…これは?」

 

「我々が用意した昼飯だ。こちらを食べたまえ」

 

はぁ?何言ってんだこいつ?

 

「いらない。俺は自分で用意した」

 

「折角クラディールが用意したのだぞ。食べないのか?」

 

ウゼェ。

ただでさえ、イライラしてるのに勘弁してくれ。

 

「知るかよ、誰が用意したかなんて。店売りよりも、自分で作ったやつの方が美味い。それとも何か?飯まで規律で決まってんのか?あぁ?」

 

俺が殺気を出しながら凄むと、ゴドフリーが、たじろいだ。

俺はそれを鼻で笑ってから、渡してきた分を押し付けて、自分のを食べ出す。

その味は…酷く味気なく、美味しくなかった。

 

「はぁ…」

 

ため息をついた途端ふと、クラディールと目が合った。

その目は…憎らしいと言わんばかりの目だった。

 

「グッ…!?これは…!?」

 

突然、ゴドフリーが倒れ伏し、動けなくなる。

 

「ゴドフリー!?大丈夫か!?」

 

パーティメンバーのHPバーを確認すると、そこには

 

(麻痺!?食べ物に仕込まれてたのか!?)

 

これを用意した奴は…

 

「何のつもりだ…クラディール」

 

「ヒ…ヒャハハ…ヒャハハハハハハハハハ!!!」

 

突然、イカれた笑い声を上げながら、ゴドフリーに向けて走り出す。

結晶はここに来る前に、ゴドフリーに全部没収されている。

チッ…ここからじゃ攻撃も間に合わない!

 

「速く結晶を使え!」

 

「させるかよォォォォ!!」

 

しかし、それより速くクラディールが、ポーチごとゴドフリーを貫く。

 

「ガァ!?く、クラディール…これは…何の…くん…れん…!?」

 

「ゴドフリーさんよぉ!バカだバカだとは思ってたが、ここまで脳筋だったのはなぁ!!」

 

そのまま何度も突き刺して…ゴドフリーを殺した。

俺は余りにも突然の事で、固まっていた。

 

「いいか〜!?俺達はなぁ!荒野でぇ!オレンジプレイヤー共に襲われぇ!抗戦するもぉ!俺以外はみんな戦死しましたぁ!!っていうシナリオだったのによぉ…何でてめぇはピンピンしてんだよぉ!?ツキノワァァァァァァ!!!」

 

煩いな、喚くなよ。

 

「…見え透いてんだよ、バカめ。テメェにはラフコフの方がお似合いだぜ」

 

俺は鼻で笑いながら、ゆっくりと構える。

 

「ハッ!いい勘してんじゃねぇか!」

 

そう言いながら、腕を見せつけてくる。

その腕には…

 

「【笑う棺桶(ラフィン・コフィン)】のエンブレム…!?お前が内通者か!?」

 

あの作戦が漏れた理由がわかったと思ったが

 

「あぁ…違ぇな〜。俺が入ったのはあの後だ。精神的にってやつだけどな」

 

(違うのか…?)

 

どうやら、嘘はついてないらしい。

コイツと内通者は無関係…って事か?

 

「それで?一体なんの目的だよ?」

 

「目的ぃ?それはなぁ…あの女どもだよ」

 

「…あぁ?」

 

どこの誰の事かは、すぐに分かった。

 

「…今すぐ訂正して失せろ」

 

「あぁ?何言ってんだよ?安心しろよ…。お前の大切な副団長様達は、俺がしっかり可愛がってやるからよぉ…」

 

…上等だ、コイツは…殺す。

 

「…人の大切なもんに、手を出すんだ。死ぬ覚悟は…出来てんだよな」

 

「はっ!殺れるもんな殺ってみろよ!!剣豪ォォ!!!」

 

そう叫びながら、振りかぶってくるクラディールの腕を、切り落とす。

そのまま胴を薙ぎ、胸を貫き、足を切り落とした。

 

「ギャアアアアアアアアアア!!!!?」

 

「喚くな、痛みはないんだ」

 

俺はダルマになったそいつの髪を持って、岩場に引き摺りあげる。

そのまま仰向けにして首を固定し、剣を振り上げる。

 

「ま、待ってくれ…!?頼む…!?命だけは…!?」

 

「命乞いはあの世でやってろ」

 

問答無用、言外にそう言うと、俺は剣を振り下ろした。

 

「ダメだ!!」

 

その剣は…キリトの剣に阻まれてきた。

 

「ツキノワ!落ち着きなさい!」

 

「ダメ!!戻ってきて!!ツキノワ君!!!」

 

気付けば、後ろからミトに腕を捕まれ、アスナ先輩に抱きつかれていた。

 

「…どうしてここに?」

 

俺は淡々と、疑問をぶつける。

 

「…フレンドリストのゴドフリーの名前が、黒くなったのよ。そこであんたの場所を探して…ここだってわかったのよ」

 

「俺はここでしか採れない素材を取りに来たんだ」

 

「…前も似たような理由だったよな、キリトは」

 

俺はキリトに溜息をつきながら、ゆっくりと睨みつけた。

 

「どけ。そして離せ。コイツはここで殺さねぇと、ダメだ」

 

「ダメ。離さない」

 

「ダメだ。どかない」

 

先輩とキリトが、俺の言葉を聞かない。

何も言わないが、ミトも同様だろう。

 

「…どけよ。…離せよ…。じゃねぇと!コイツは!先輩と!姉貴を殺す!そんな事させねぇ!!だからここで!!」

 

「殺したらコイツと一緒じゃない!!!」

 

先輩の鋭い悲鳴が言葉を遮る。

 

「…ツキノワ君が、私達の為なのは知ってるよ。でもダメ。そんな事しちゃダメよ…」

 

「…俺は…あの時、お前に余計な人を斬らせた。俺が躊躇ったから、お前がアイツを斬った。今度はそんな事させない。お前に…人は斬らせない」

 

「…弟がバカしようとしてるなら、それを止めるのが姉ってものよ。だから…戻ってきなさい」

 

先輩の祈りが、キリトの覚悟が、姉貴の優しさが…。

俺をゆっくりと、人の道に連れ戻してくれた。

 

「…みんな…」

 

「大丈夫…大丈夫だよ…」

 

優しくアスナ先輩が俺を抱きしめてくれる。

その腕の中で…俺は…泣き続けた。

 

 

outside

 

その後クラディールは、キリト達の手によって監獄行きになる予定だったが、それより速く、欠損ダメージによるHP減少により、死んだ。

結果的にツキノワが殺した訳だが、彼自身がこっそりと持っていた録音結晶により、彼の無罪が証明され、ツキノワは退団する事になった。

更には、アスナとミトの一時退団も認められた。

本当なら、ミトは正式に退団するつもりだったが、ヒースクリフからのお願いにより、貸1という事で、一時退団に留まった。

 

「…先輩。少しいいですか?」

 

「うん?どうしたの?」

 

同棲している部屋で、ツキノワはある提案をアスナにしていた。

 

「実は…前から目をつけてる家があって…良かったら、内見してみませんか?」

 

「内見はいいけど…何処なの?」

 

「10層主街区の端っこ」

 

「10層!?」

 

アスナは想定より下層の話で驚いた。

 

「…ダメですか?」

 

(ウッ…その目は反則…!!///)

 

普段お願い事や、ワガママを言わないツキノワ。

自身がソファーに座り、ツキノワがその足元にいるので、必然的に上目遣いになっているのだ。

そんな彼からのお願いとなると、アスナとしては喜んで、ゴーサインを出してしまうのだ。

 

「いいよ!行こっか!」

 

「!うん!行きましょう!」

 

意気揚々と自室に向かうツキノワの背中を眺めながら、優しく笑うアスナだった。

 

「ここです!」

 

「うわぁ!綺麗な日本家屋ね!」

 

そこは少し小さいが、2人には少々広すぎる、平屋の日本家屋だった。

庭には、大きな桜の木があり、それが満開となって咲き誇っているのだ。

 

「この桜はシステム上、何時までも、咲いてるらしいですよ」

 

「へぇ〜…立派ねぇ…」

 

思わず唖然とするほど大きいこの桜は、システム的保護を受けている。

お値段もこの規模にしては、かなり安い。

普段あまり使わない自分達なら、問題無く払えるし、家具も今のやつを持ってくればいい。

 

「先輩…」

 

「…引っ越しちゃおっか!」

 

「…はい!!!」

 

こうして、ツキノワとアスナは、引越しをする事になったのだった。




彼らが住む家のイメージは、ぬら孫の家のイメージです。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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36話

気づいたらSAOのストックが溜まりました。
しばらくは大丈夫かな…。
それではよろしくお願いします。


sideツキノワ

 

引っ越してから暫く、色んな人が来た。

キリト達月夜の黒猫団を始め、エギルさん達、クライン達風林火山、リズやシリカなど。

そんな中、やっとキリトとサチが付き合う事になったらしい。

 

「長すぎでしたね…」

 

「本当に鈍いんだから…」

 

その話を聞いた俺達は、祝福と共に、キリトへのため息を送った。

ちなみに2人は今、22層の湖畔にあるログハウスで、暮らしているらしく、攻略もお休み中だとか。

 

「後はミトだけだね…」

 

「ですね…本当に今がチャンスだぞ…!」

 

俺達は密かにミトを、応援していた。

ゆったりとした日常を過ごす事、約12日、それは突然だった。

 

「…ん?キリト?」

 

キリトからのメッセージが来た。

 

「キリト君?どうしたの?」

 

「今すぐ来てくれって…?なんだろ?」

 

「行ってみよっか」

 

「ですね」

 

俺達はすぐに用意をして、22層のログハウスへ急いだ。

 

「キリトー!来たぞー!」

 

「しっ!…入ってくれ」

 

ノックをして呼ぶと、何故か静かにしろされる。

言われるがままに奥に行くと、そこには

 

「…女の子?」

 

「…SAOって子作り出来たっけ?」

 

「「ち、違う!///」」

 

サチに膝枕された、黒髪の女の子がそこにいた。

 

「静かにしろよ。冗談だ…それで?」

 

「実は…」

 

何でも湖畔を散歩中に出会ったらしく、記憶喪失なんだとか。

名前だけは名乗れたらしく、【ユイ】というらしい。

自分達のことをパパとママと呼び、懐いてる。

そして1番不可解なのが、カーソルが無い事と、彼女のメニュー画面に【MHCP-01】と出てきたらしい。

 

「【MHCP-01】か…」

 

「ああ、それがよく分からいんだ…」

 

全く心当たりが無い。

何かの商品番号みたいだが…?

 

「…ねぇ、はじまりの街に行ってみない?あそこって確か、児童養護施設みたいな場所あるよね」

 

「アスナ先輩ナイスです!そこに行きましょう」

 

1つ問題があるとするなら、軍の存在だが、まあいいか。

邪魔するなら蹴散らせばいい。

 

「…んん?」

 

「あ、起きちゃった?おはよう、ユイ」

 

サチの声が聞こえてきた。

どうやらユイが起きたらしい。

 

「おはよう、ユイ」

 

「おはようございます…パパ…ママ…」

 

「…本当にパパとママなのね…」

 

「ですね…ビックリです」

 

俺達はその様子をヒソヒソと話しいていると、こっちに気付いたのか、不思議そうに俺達を見ている。

 

「ああ、ユイ。紹介するよ。俺達の友達のツキノワと、アスナだ」

 

「ツキノワだ。よろしくな、ユイ」

 

「初めまして、アスナです。よろしくね、ユイちゃん」

 

俺達は腰をかがめて、出来るだけ目線を合わせてあげる。

こう見ると…2人によく似てるな〜。

 

「つゅきにょわ…あしゅな…?」

 

ああ、言いにくそうだな…特に俺の名前。

なんか猫みたいだし…。

 

「フフ、好きなように呼んでくれていいよ?」

 

その様子を可愛らしく感じたのか、アスナ先輩が嬉しそうに頭を撫でる。

 

「…お兄ちゃん?お姉ちゃん?」

 

あ、今キュンって来た。

これは…俺達にかなり効くぞ…!

 

「…!うん!お姉ちゃんだよ〜!」

 

「アスナ先輩、落ち着いて。離してあげて」

 

先輩もキュンって来たのか、それとも末っ子だから姉呼びされて嬉しかったのか、思いっきり抱きしめて、よしよししてるし。

俺の声にハッとしたのか、ゆっくり離すが、その勢いにすっかりビックリしたのか、先輩から離れて、俺の後ろに隠れてしまった。

 

「…ユイ。お姉ちゃんは怖い人じゃないからね?お兄ちゃんの1番大切な人なんだ」

 

「…?お兄ちゃんの…ママ?」

 

そう言われると、マザコンに聞こえるな。

 

「えっと…ユイのパパとママの関係って言って分かるかな…?」

 

そう言って2人を見ると、ベットに腰掛け、ユイを優しく見ている。

何となく察したのだろう、黙って頷く。

 

「いい子だ。俺の事はお兄ちゃんでいいからな?よろしくね、ユイ。ほら先輩、いつまでしょげてんの?」

 

「うぅ…ユイちゃんに嫌われた…」

 

はぁ…この人は何してるのやら…?

 

「…ユイ。お姉ちゃんの事、許してあげて?」

 

そういうと静かに近づいて、アスナ先輩に抱きつくユイ。

 

「…ごめんなさい。お姉ちゃん」

 

「…!ユイちゃん!」

 

先輩は嬉しさのあまり抱きしめるが、今回は暴走してなかった。

 

「とりあえず、明日1層に行こう」

 

「そうだね。2人共ごめんね?巻き込んで」

 

「ま、乗りかかった船ってことで。先輩!そろそろ帰りますよ!」

 

そうして俺達は明日、1層に行く事にしたのだった。

 

 

次の日、1層に来た俺達だったが、あまりにも閑散としていた。

 

「…妙だな」

 

「ああ、ここにはまだ大勢のプレイヤーが、いるはず」

 

俺とキリトが、あまりの静けさに首を捻っていると

 

「子供達を返してください!!!」

 

突然、悲鳴じみた声が響いた。

 

「「「「!」」」」

 

俺達は慌ててそっちに駆けつけると、軍の連中が、子供に寄ってたかって何かしていた。

 

「あんたら相当上納金、滞納してたでしょ。こいつらの持ってた金だけじゃ足りないね〜」

 

「だから、こいつらの武器も取り上げさせてもらった」

 

…どこまで腐ってやがんだ、コイツら。

 

「…先輩」

 

「ええ、キリト君とサチはユイちゃんを」

 

俺と先輩は、一気に駆け出して、集団をまとめて飛び越える。

 

「もう大丈夫よ。武器を戻して」

 

後ろの子供達は先輩に任せよう。

俺は目の前のバカ共を、シバく。

 

「おいおいおい、何なんだお前ら!?」

 

「我々軍の任務を妨害する気か!?」

 

チッ…雑魚共が、よく吠える。

 

「…はぁ」

 

俺はため息を1つつくと

 

「シッ!」

 

全速の抜刀術で切り払う。

 

「ギャア!?」

 

圏内戦闘特有のノックバックが、そいつを吹っ飛ばす。

 

「…安心しろ、圏内戦闘は死なない。ノックバックが発生するぐらいだ。だから…地獄の恐怖を教えてやるよ」

 

そのまま俺は、全員を細々に切り刻んだ。

もちろん比喩だが、あいつらは本気で死ぬほど怖かっただろうな。

まあ、知った事じゃないけど。

そのまま俺達は施設まで来たのだが、手掛かりはなく。

それどころか、何故か軍の【ユリエール】から持ち込まれた、面倒事を片付けていた。

 

「なんでこんな事に…」

 

「いいから!ほら来たぞ!」

 

ここは黒鉄宮の奥にあった、ダンジョンだ。

そこに嵌められた【シンカー】というプレイヤーを助けに来たのだ。

そのダンジョンで待ち受けていたのが、【スカベンジ・トート】というカエルの大軍だ。

まあ、相当弱い。

一撃で倒せるぐらいなのだが…

 

「とにかくキモイ!あとうるさい!」

 

俺は叫びながら、キリトと共に何とか殲滅したのだった。

 

「何だよこの【スカベンジ・トートの肉】って…カエルの足じゃんか。気持ち悪い。やるよ」

 

「いいのか!?ありがとつ!」

 

「おう、カエルの肉押し付けて喜ばれるとは、思わなかったぞ」

 

そう言って俺は全部キリトにあげた。

あ、キリトとサチがアホな事してる。

 

「笑った!お姉ちゃん、初めて笑った!」

 

よく見ると、ユリエールがその光景を見て笑っていた。

それを見てもっと嬉しそうに笑っているユイ。

俺達はそんな2人を見ながら、先に進んだ。

程なくして、シンカーがいると思しき場所に着いたのだが

 

「シンカー!」

 

「ユリエール!来ちゃダメだー!!!」

 

来ちゃダメって何が…!?

何だ、何が来る!?

 

「「クソ!!」」

 

俺とキリトが駆け出し、俺がユリエールを引っ張り寄せ、キリトが鎌の一撃をいなす。

 

「ッ!?サチ!ユリエールさんとユイちゃんを!」

 

「う、うん!さあこっち!」

 

すぐにアスナ先輩も駆けつける。

そこにいるのは、大型の鎌を持った黒衣の死神。

識別スキルで、ステータスが見えない。

おそらくは90層クラスの化け物。

そいつの名は【The Fatal Scythe】。

 

outside

 

ツキノワとキリトはすぐに決断した。

叶わない…逃げる。

 

「アスナ先輩!先に転移結晶で、皆を連れて逃げて!」

 

「そんな!?ツキノワ君達は!?」

 

「俺達は時間を稼ぐ!!速く!!」

 

アスナは一瞬迷った後、逃げるのでなく、ツキノワ達の元へ向かった。

大振りの一撃を放つモンスターに、3人がかりで、防いだが

 

「「ガアァァァァァ!?」」

 

「キャァァァァ!?」

 

攻略組きっての実力者3人が、まとめて吹き飛ばされる。

そのHPは、半分近く減らされていた。

 

「嘘…!?」

 

「クッソ…!」

 

「マジ…かよ…!?」

 

いよいよ絶体絶命かと思ったその時、

 

「ユイ!ダメ!」

 

「お2人共!?行っては!?」

 

ユイが突然、彼らの前に立つ。

 

「ユイ…ちゃん…!?」

 

「馬鹿野郎!?早く戻っ」

 

「大丈夫だよ、パパ。ママ。お兄ちゃん。お姉ちゃん」

 

そう言って振り下ろされた鎌が当たった瞬間、表示される【IMMORTAL OBJECT】の文字。

 

「破壊不能…オブジェクトだと?」

 

そこままユイは、巨大な炎の剣を生み出して、【The Fatal Scythe】を、鎌ごと両断してみせた。

 

「「「「…」」」」

 

あまりの光景に、誰も何も言えなくなる。

 

「パパ、ママ。…全部思い出したよ」

 

そんなユイは、今までにないくらいしっかりとしていて。

その顔は、とても悲しそうな笑顔をしていた。




前から思っていたのですが、ユイってアスナよりサチに似てる気が…。
ですので、ここではツキノワとアスナではなく、キリトとサチにしました。
まあ、あくまで個人的感想ですので、気にしないでください。
それでは失礼します。
ありがとうございました。


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