命知らずが往く暗殺教室 (るーにー定食)
しおりを挟む

一学期
依頼の時間


修学旅行、律の転校のあとから始めていきます。
拙い文にはなりますが楽しんでいただけたら幸いです。


 

 全くといっていいほど装飾のない少し明かりが灯っているだけの簡素な部屋で、二人の男が机を挟んで話している。

 一人の男は、烏間惟臣。防衛省特務部に務めている男。今はある黄色いタコ型の異形生物が教師を務めるクラスで体育教師をしている。

 

 もう一人は、15歳ほどの少年。烏間から渡された資料を片手に、静かに話に耳を傾けている。

 

「君には、二つのことを依頼したい」

 

「二つ?」

 烏間の話に聞き返す少年。その反応は無理もない。なぜなら、事前に少年は依頼は一つと聞いてこの場にいたのだから。

 

「そうだ。一つは他の者と同じ暗殺対象(ターゲット)の暗殺。もう一つは他の殺し屋の暗殺計画で生徒に危害が及ぶ場合の護衛。この2つの仕事を君に依頼したい」

 

「……成程、まさに俺にピッタリの仕事というわけですか」

 

 目を通していた資料を閉じ、先程渡されたばかりの対暗殺対象(ターゲット)用のナイフを手で遊ばせ、重さや感触を確かめる。

 

「あ、そうだ。ところで、俺は依頼は一つだけだと聞いていたんですが、ここに来て護衛の依頼が一つ増えたということは何かあったんですか?」

 先程から感じていた疑問を少年は投げかける。

 

「……実は先日修学旅行があったんだが、そのときにE組の生徒が誘拐されるという事件が起きてな。このことを上と話し合った結果、護衛を付けたほうがいいのではないかという結論になった。そこで、ちょうど派遣されることになっていた君に白羽の矢が立ったというわけだ」

 

 その疑問に苦虫を噛み潰したような顔を浮かべて答える烏間。

 恐らく、教師の立場でありながら生徒を守れなかったことが悔しいのだろう。

 

「……成程。理解しました。あとそれとですね、烏間さん。俺の情報は護衛対象にはどれくらい伝わってるんですか?」

 

「新しく転入生が来ること自体は話しているが、君の正体までは伝えていない。恐らく生徒は誰も知らないはずだ。我々教員と、暗殺対象は知っているがな」

 

「……なら、そのまま俺の正体は伏せてもらったままにしてもらってもいいですか?そっちのほうがやりやすいので」

 これは少年の持論だが、護衛任務とは護衛対象に自分が護衛だと気づかれていない状態が一番難易度が低い。なぜなら、護衛対象たちに自分の正体がバレていると裏での活動がし難くなるからだ。そうなると殺し屋たちは当然裏の世界の住人なので、護衛対象たちを守りにくくなってしまう。だからこそ、少年はこういうケースの場合は必ず正体を隠す。

 

「……ふむ、了解した。部下や他の者にも伝えておこう」

 

「そうしてくれると助かります」

 

「では、俺はこの辺りで失礼する。次はE組の教室で会おう」

 

「はい。お疲れさまでした」

 その返事を受けると、烏間は静かに部屋を出ていった。

 

「さて、マッハ20の超生物の暗殺か……全く殺せる気はしないが、やれるだけやってみるか」

 少年は他に誰もいない部屋で、ナイフを右手で遊ばせながらそう呟いた。

 __________________________________

 

「ヌルフフフ、というわけでですね。今日は転入生の人が来る事になっています。どうぞ入ってきてください!」

 その言葉を聞き扉を開けて教室の中に入る。

 

「え〜、どうも皆さん。俺の名前は結城(ゆうき) (みこと)と言います。最近まで親の仕事の事情でイギリスにいました。一学期の半ばからという中途半端な時期からにはなりますが、一年間宜しくお願いします」

 教壇の前に立ち事前に考えておいた自己紹介をそつなく熟す。

 もちろん、親の事情うんぬんかんぬんは嘘である。適当に予め考えておいたのだ。

 

「「……チェッ、男かよ〜」」

 茶髪っぽい髪色をしている少年──―たしか事前資料では前原陽斗と──―と坊主頭の少年──―岡島大河──―の声が被る。

 どうやら、転校生が女子であることを期待していたようだ。

 

「……え〜と、なんか質問ある人います?」

 二人の反応を無視して、自己紹介を続ける。といっても、ここからは俺からなにかするわけではなく、質問に答えていくだけだが。

 

「はいはーい!質問質問!えっと、結城君は殺し屋なの?」

 活発そうな印象の緑色の髪の少女──―茅野カエデ──―が元気よく手を上げて質問をしてくる。

 

「いやいや、全然違うよ。転校そうそうこんな化け物殺せって言われてめちゃめちゃ驚いてるとこ」

 これは事前に想定していた質問。あらかじめ考えておいた答えを適当に返す。こんな中途半端な時期に来る以上、怪しまれるのは目に見えているからな。

 

「それじゃあなんで、こんな時期にE組に?」

 水色の髪の、一見男か女かわからない見た目の少年──―潮田渚──―が遠慮がちに聞いてくる。

 潮田渚が言うこんな時期、というのは中学三年の一学期という受験期真っ只中のことだろう。そしてこの質問もこの質問も事前に予想していた質問だ。

 

「最近、ようやくイギリスでの親の仕事が終わってね。どうせなら設備が良い学校をということで椚ヶ丘に来たんだけど、うっかり理事長先生に挨拶するときに部屋にあった壺を壊しちゃって。それでE組に落ちちゃったんだ」

 その事を話した瞬間、教室の雰囲気が一気にドッと暗くなった。

 俺に向けられていた好奇の視線が、一瞬にして気遣わしげなものへと変わった。れだけでE組の人達が心優しいということが分かる。

 

「ヌルフフフ。ではでは、自己紹介はその辺にしておいて朝の挨拶を始めましょう。結城くんの席はあそこの赤い髪の彼の左の席です。黒板が見えにくいなどのことがあれば、遠慮なく言ってください」

 殺せんせーが両の触手をパンパンと叩き──―残念ながら出た音はポヨンという随分と間抜けな音だったが──―、俺に着席を促してくる。

 

「わかりました。でも取り敢えずは大丈夫そうです」

 その言葉に従い、教室の最後列の席に座る。

 

「俺の名前は赤羽(あかばね) 業(カルマ)。これからよろしく、結城くん」

 俺の右隣の席ということになった赤髪の少年──―赤羽業──―が挨拶をしてくる。

 

「さっきも言ったとおり結城 尊っていいます。一年間よろしく、赤羽くん」

 赤羽業、事前資料では個人主義がE組の中でも群を抜いて強く、騙し討ちなどといった手段が得意。

 護衛という観点から見れば、個人主義というのは厄介だな。何処で何をするかが分からないという奴が一人でもいるだけで、難易度は跳ね上がる。要注意人物だ。

 というか、赤羽くんの顔は笑っているが、目は笑ってない。どこか、胡乱げな目を俺に向けている。まぁ、この時期に転入するというだけで怪しさ満点だから仕方ないとも言える。この先の立ち回りで払拭出来ればいいが。

 

「はじめまして、結城 尊さん!私は自律思考固定砲台と言います!お気軽に、律とお呼びください!」

 今度は、俺の席から左に一つ間を挟んだ場所から挨拶が飛んで来る。

 自律思考固定砲台、ノルウェーから来た高性能AIを備えた新型兵器で、生徒側で唯一俺の正体を知っている。

 

「よろしく、律さん」

 

「はい、宜しくお願いします!」

 

「それでは出欠を取っていきます。呼ばれた人は元気よく返事をしてください」

 その言葉を皮切りに教室の雰囲気が一瞬にしてガラリと変わり、空気が冷え込んでいく。俺にとっては慣れ親しんだ殺気と緊張が入り混じった空気感。

 

「起立!気をつけ!」

 黒髪黒目のどこか大人びた雰囲気の少年、磯貝悠馬の号令と同時に皆が一斉に立ち上がり銃を構える。

 ちなみに、今回は俺は見学である。理由としては編入初日から、銃が使えるというのは不自然だからという当たり前のこと。

 

「れ────ーいッッッ!!!」

 その瞬間、教室中に鳴り響く銃撃音。全員がその顔を真剣なものへと変貌させ、殺せんせーを狙っていく。

 だが、恐るべき事にその教室中を飛び交う無数の銃弾の一発も殺せんせーに当たる気配は全く無い。27対1という圧倒的に不利な状況なのにもかかわらず、だ。しかも、律にいたっては筐体のサイドから機関銃とも呼べる大型の銃を出してぶっ放している。

 目にも留まらぬ速さで動く殺せんせーを見て、これが噂のマッハ20か、道理で世界中の殺し屋たちが挑んでも誰も殺せないわけだ、と一人納得する。

 

「結城 尊くん!」

 右の太い触手に出席簿を携えながら、殺せんせー俺の名前を呼んだ。

 

「はい」

 

「よろしい、次回からもその調子で返事をしてくださいね」

 俺の返事を受けヌルフフフと笑いながら満足そうに頷く殺せんせー。

 

 今までの始業の合図はほとんどが銃撃音だった。

 

 だけど、今日からの始業の鐘はどうやら少しはマシになりそうだ。

 




結城 尊

コードネーム 【???????】

出席番号 E−28

誕生日 3月10日

年齢 14歳

身長 168cm

体重 59kg

血液型 B型

得意科目 英語

苦手科目 国語

趣味、特技 戦闘 訓練 酒 たばこ

所属部活(過去) なし

宝物 家族四人が写っているロケットペンダント

好きな食べ物 日本食全般

弁当派or買い食い派 買い食い派

将来の目標 特になし

百億円獲得出来たら 貯金

暗殺実績 ??人


【個別能力値】(満点は5点)

体力 5点

機動力 5点

近接暗殺 5点

遠距離暗殺 2.5点

固有スキル【超直感】 5点

学力 2点


【作戦行動適正チャート】(満点は6点)

戦略立案 6点

指揮統率 2点

実行力 6点

技術力(罠.武器.調理等) 4点

探査諜報 5点

政治交渉 3点



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。