それでも、世界は生きている。 (ケイオース)
しおりを挟む

世界は終わり…

これはリハビリも兼ねているので(リハビリするぐらい文章力は無い)文が疎い所はご容赦下さい。


ザァー……

 

……雨が降っている。

空が灰色に毒されて、陽の光すら入らない。

植物は、水だけを受けて歪に栄えていた。

 

暗く、ジトジトした空気。粘りつく様な土壌。そして何も無い地上。

 

……価値も無く、静かに澱んでいた惑星に、足を踏み入れる者がいた。

 

カチャリ……カチャリ……

 

「……ここが?」

 

「……ああ、そうみたい……だな。」

 

歪な形をした不恰好な宇宙船から、二体の異形が歩を進めて出てきた。

 

一体は両腕がハサミ状になっている異形。

もう一体は背中に羽の生えている、蜂の様な異形。

 

そのどちらも体に鉄を纏っており、少しは文明的に見える。

 

二体は、雨で腐った土壌に足を運んだ。

 

粘着質な泥が足を絡め、直ぐに動けなくなる…かと思えば、それは違った。

 

「……確かに、このブーツが無かったら不味かったかもな。」

 

「ああ、そうだな。この雨じゃあ、飛ぶ事も出来ん。」

 

土壌に足を置いた瞬間に、鉄のブーツが青く光り、足が止まる事を防いだ。

 

その事を二体の異形が確認した後、動き始めた。

 

……森の奥へ。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

……暫く、二体の異形は黙々と歩き続けた。

 

しかし、それにも限界が来た。

 

「……あるのか?本当に。」

 

腕がハサミ状になっている異形が沈黙を破った。

既に、声に疲労が滲んでいた。

 

「……しらねぇよ。……お前も分かっているだろ?オレ達はパーツか何かなんだよ、きっと。」

 

それに蜂のような異形が返す。

その声には、諦めとも怒りとも聞こえる感情が乗っていた。

 

しかし、それでも。

二体は歩くことしかできなかった。

 

「……くそっ、雨がブーツを侵して気持ち悪りぃ。」

 

蜂の様な異形が、もう片方の異形に返答を期待したのか、少し大きめの声で愚痴る。

 

でも、もう返す気力もなく、頭を少し俯かせたぐらいだ……。

 

ぴちゃり、ずぶ、ぴちゃり、ずぶ….

 

ひたすら虚しい音が響く……。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

キュ、キュキュ……

 

機械音があたりに響く…前に雨に消される。

レンズは、しかと彼らを捉えていた。

 

そして回路が情報を伝え、大元へと向かう。

曲がりくねりながら伸びていた回路は、腐った土壌を突き抜け、人工的な空洞へ出る。

 

そして、そこに鎮座していた大きな黒い球体に繋がっていた。

その球体に、情報を乗せた電流が吸い込まれると、それは蠢いた。

 

球体の一部分が開放され、巨大な眼球が露わになった。

球体は、その眼球を虚空へと向け、ぽつりと呟く。

 

『……本当に、本当に。……これで良かったのか?』

 

機械音が哀しげに響く。

…しかし、それを聞くものはいない。

 

『なぁ、レディー。』




いわゆるセ○トラルユニット紛い。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

一歩踏み出す。

こっちはあくまで気まぐれ&リハビリなので多少不恰好だと思います。そんな物、しかもたった一話の話を多くの人が読んでくれて嬉しいです。ありがとうございます。


昔に、小説を読んだ事がある。

勿論軍の中で購入したり、正規ルートで入手したわけでは無いが。

 

たまたま任務先に落ちていた、煤けた本。

データファイル状になってすらいない、古風ということすらできないぐらい昔の産物。誰にも目を止められていなかった物。

 

それをたまたま手に取った。

幼少期なのにも関わらず、娯楽すら与えられない様な下級兵士の俺は、それに癒しを求めた。

 

しかし、中には読んだことのない言語しか載っていなかった。

自分のどの知識にも当てはまらない、奇異な文字列。

 

そんな紙の集合体は、上官の目に留まることもなく持ち帰ることが出来た。

 

就寝部屋に皆と入り、辛うじて動く体を動かして、データベースへと接続する。

翻訳用の情報は解禁されていたのだ。出来るだけ多くの言語を覚えれば、それは武器になる、という上の考え方のお陰で。

 

そして、本に書かれている文字列と合致した言語を特定できた。

 

残念ながら発音が載っていない為、発音はわからないが、文字の意味は詳細に記載されていた。

 

複雑に入り乱れた文字。その一つ一つが違う意味と知り、挫折しかけるほど覚えることがあった。

 

それでも、その分達成感があった。特別感があった。

 

段々と紐解かれる物語にワクワクしたし、普段の生活とは違う日常描写に驚き、最後の結末に涙が溢れた。

 

残酷な性格の種族でも、色々な初めてに感情が溢れた。

同期達が殺戮マシーンの様になっている間も、俺は物語に想いを馳せた。

 

でも、あくまで物語だった。区別は出来ている。

 

だから…

 

 

 

 

これは夢だ。そうなんだ。

 

ーーーーー

 

「……本当にあったのか。」

 

腕がハサミ状の異形…ゼーベス星人が声帯を震わす。

睨みつける様にしていている先には、明らかにこの場所に不相応なエレベーターが設置されていた。

 

「……いつも当たらない俺の勘も、たまには役に立つな。」

 

蜂の様な異形…キハンター星人がぼんやりと顎を擦らせる。

疲れているからか、受け答えも雑であった。雨に濡れた羽を、寒そうに震わす。

 

「そうだな、任務達成には貢献できた。……だが、ここにあるとわかってしまえば、どう足掻いても調べなければならない。」

 

小さな口から息をふっと吐き、連絡端末をバックから取り出す。

発見報告と、一応調査免除を確認するためだ。

 

ゼーベス星人は、一言二言端末へと声をかけ、その後首を振りながら端末の電源を落とした。

 

「調査しろだとよ。」

 

諦めの感情が滲んだ声で、キハンター星人に報告する。

体が乾いてきたキハンター星人は、冷水をもう一度ぶっかけられた様な気持ちになった。

 

「……分かってはいた物の、いざ宣告されると苦しいな……

 

 

 

 

 

……連邦の遺伝子保管所へ向かえだなんて。」



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

役者は揃い、

コツ、コツ、コツ……

 

無機質なブーツが遺伝子保管所の床を踏む。

周りには何かの機器や、崩れた生物の死骸が散らかっている。

 

腐臭もせず、自分達の足音以外何も音が無いからか、おかしな気持ちになってくる。

 

恐怖心を抑える訓練は履修させられたし、今までの任務に恐れを覚えたことも無い。だが…ここは拒否感がある。

 

……まぁ、それでも奥へと行かないとな。

 

ーーー

 

「……恐らく、ここだろう。」

 

「っけ、大事に大事に取っておいているんだろうよ。警備も無かったし、銀河の果てにある……惑星GB-3207、だったか?を見つけるなんて思ってなかったろうな、ちくしょう。」

 

「……おい、あまり騒ぐな。何かに見つかったらどうする。ここは遺伝子保管所だぞ、何が現れてもおかしくはない。」

 

「あいあい。」

 

認証システムらしきモニターが付いているゲートを確認した。

かなりのアナログ式のようで有り、簡単にハッキングができるものの様だ。

 

この保管所が建てられた時には最新式だったのだろうか?

もしそうなら、『ブツ』の保管方法はまともなのか心配だ。

 

核が壊れていたら、何の成果も無いことになってしまう。

 

『認証システムサポート:問題無し ゲートロック:解除中』

 

「……おっ、ハッキング成功。……内部データが驚くほど少なかったぜ。」

 

シュー……

 

圧縮していた空気を噴出し、ゲートロックが解除。

灰色のカバーがスライド、青色のゲートが姿を表す。

 

「……なぁ、『ブツ』って、一体何の遺伝子なんだろうなぁ。あんなに上層部が執着するってことは、やっぱりリドリー……様?の遺伝子なのかなぁ。」

 

「……お前さっきから喋りすぎだ。……リドリー……様の遺伝子といえども、こんなに捜索させるか?それに、それだったら鼓舞の為おおっぴらにするだろう。」

 

「喋りすぎだぁ?……お前、この異様な雰囲気を感じないのか?」

 

「感じているからこそ、黙っているほうが身のためだ。おしゃべりな奴はすぐ死ぬ。よく見ていたよ。」

 

「……そうか。はぁー……、進むか。」

 

来た道にあった切れ気味の灯りすらもないゲートの先に、足を踏み入れる。サーモバイザーを使っても、中の全容は分からない。

 

……何故だか無性に怖くなり、身を寄せ合う。

肌が合わさっても不快感しか生まれないのだが、それでもそうしてしまった。

 

まるで二人三脚の様に前に進む。

奥に一歩、進むごとに恐怖心が高まる。

 

死自体は恐れない。だが、本能的にここから先は行ってはならないという警報がなっている。

 

そして、その気持ちが最高潮に高まった時…

 

ブ、ブブブッブ……

 

「「カヒュ?!」」

 

あたりに、光が灯る。

ぼんやりとした光が、奥までの長い道のりを照らす。

 

自分の心臓がバクンバクンと音を鳴らす。

この恐怖心を表すなら…そう、何十年もじっくり煮込んだかの様な濃厚な恐怖・嫌悪感。

 

「……はは。なんだ、灯りかよ。最初からつけておけよ!……なーんて、な。」

 

隣にいるキハンター星人が乾いた声で呟く。明らかに虚勢であった。

でも、自分は虚勢を張ることもできなかった。

 

「はは……っておい、置いていくなよ!」

 

黙って進む私を追いかけてくるあいつ。

……私達は情けなかった。

 

ーーー

 

夢中で進み、どれだけ前進したかも分からなくなった頃。

終わりが見えた。

 

小さなプレパラートの様な何かが、一際明るく照らされていた。

一本道を進んだ先に、確かにあったのだ。

 

「……ようやく、ようやく。」

 

自分は、生きていることを確かめるかの様にそう呟いていた。

 

『……そう、ようやくだ。』

 

その呟きに、機械音声が返ってきた。

落ち着きかけてきた心臓が一気に跳ね上がる。

 

バッ、と前を見ると、そこには。

 

こちらを見据える目玉があった。

何を考えているのかわからない、赤い眼だ。

 

『……やぁ、歓迎するよ。』

 

『私は……アダム。』

 

『ただのアダムさ。』

 

私達ではない何かを見て、目玉は…AIは噛み締める様にそう言った。

 

『……少し話をしようではないか。』



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

物語の始まり

『…そうだな、まずはお前らも知っていることから話そうか。』

 

目玉が突出した丸い機械…アダムは俺たちの微かな頷きを視認して話し始めた。

 

恐怖心は鳴りを潜めた。しかし緊張感はまだ感じている。

 

『コスモ暦21XX年。銀河の英雄サムス・アランが死んだ。』

 

『その事実は宇宙に大きな影響を及ぼした。』

 

『パイレーツ達は活性化、連邦内の過激派達の残党共も動き出し、一時混沌と化した。』

 

『しかし、時間はかかったが他のバウンティハンター達が殲滅・破壊工作を行ったことによって自体は収まった。』

 

『これがいわゆる第三次宇宙変動戦争だ。』

 

これは、俺たちスペースパイレーツがある意味転換した事件だ。

 

小規模な集団だった俺たちが、混乱に乗じてクローン技術や武器製造工場などを奪取して、勢いを増すことができた。

 

かなりの数撃破されたが、奪取した物で今も牙を研ぐことが出来ているのは、この事件があったからと言える。

 

……しかし、もう1()0()0()()()の出来事を持ち出したのはどういう事だ?

 

『……訳がわからないかもしれないが、これが前提知識として知っておけ。』

 

『これからが本題だ。』

 

『……そう、サムス・アランの死体。…つまり遺伝子の事だ。』

 

その言葉に、心臓がドクンとはねる。

 

『最強の戦士、宇宙の英雄。そんな人物の遺伝子があると聞いた時、どう思うだろうか。』

 

『それは、遺伝子の採取、その事が真っ先に浮かぶだろう。』

 

『遺伝子を解き、中に入っているメトロイド細胞を採取、兵器としてメトロイドを復活。鳥人族の遺伝子を抽出、人類に移植。或いはクローンを作り、宇宙最強の兵団を築く事もできる。』

 

『それを入手しようと躍起になるのは至極当然だと言えた。』

 

アダムは目玉を虚空へと向け、一息入れてもう一度話し始める。

 

『パイレーツ、過激派、はたまた銀河の果てからやって来た種族。皆が遺体を探して戦った。』

 

『しかし、結局遺体は見つかる事はなかった。』

 

『それどころか、以前連邦が採取していた細胞や体組織なども消失していた。』

 

アダムの纏った空気が変わる。淡々としていたものが、何処となく懐かしむものに。

 

『そもそも、サムス・アランの死因は何だと思う?』

 

不意に問いかけてくる。基本的な知識は方針によって知っていた。

しかし、少なくとも俺達は知らない。

 

おろおろと情けなく互いに見合っていたが、アダムは気にせず話しを再開した。

 

『まぁ、期待はしていない。どうせ洗脳教育か戦闘訓練しか受けてないだろう。』

 

『……そして死因だが……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『メトロイド細胞の暴走だ。』

 

『惑星ZDRにて覚醒()()()()()()メトロイド細胞。暫くは安定し、順調に使用できていたのだ。』

 

『だが、ある任務の時だ。どう足掻いても勝てない強敵が出たらしい。』

 

『……メトロイド細胞を暴走させ、エネルギーを吸収し、撃破。』

 

『しかし、細胞を安定させる方法が無く、エネルギーを常に吸収してしまう状態へと移行してしまった。』

 

『そこで……彼女は惑星ごと滅びた。……自分が吸収エネルギーでな。』

 

『そして、それに呼応するかの様に、全てのサムス・アランの細胞が砕け散った。』

 

『そう、全てだ。』

 

そこまで言い終わると、アダムは目玉を下へと向け、こう言った。

 

『この一つを除いては。』

 

ガラスの筒に覆われたプレパラート。それをアダムは見ていた。

プレパラートの中には、砂の様な小ささの細胞が一つあった。

 

『……彼女が、最後に送ったポッドの中に、この細胞一つと、メッセージが添えられていた。』

 

『この銀河の果てにある、ここに細胞を封印してほしいと。そして、最初にここにくる奴らに、自分の細胞を渡せと。』

 

ギョロリ、と俺達を睥睨する。背骨が凍りつく様な、そんな感覚が襲う。

 

『本当なら、お前達の様なゴミどもに、レディーの形見などを触れさせたくもない。…だが、何故だか彼女はそう言ったのだ。』

 

『誰がくるかもわからないのにも関わらず。』

 

『お前達を決して信用はしない。しかし、彼女の事を信用しよう。』

 

プレパラートを覆っていたガラスの筒が下へと降りる。

 

『持って行け。そして逃げろ。』

 

よろよろと近づき、プレパラートへと手を伸ばす。しかし、最後に聞こえた言葉を聞いて振りかえる。

 

「……何から?」

 

「……逃げるんだ?」

 

そうだ。ここはバレてないはずだ。

 

『私は連邦製のAIだ。今まで起動してこなかったおかげで、通信などを遮断していた。』

 

『しかし、起動してしまった。情報は漏れただろう。』

 

『だから逃げろ。この世界の命運はお前たちスペースパイレーツにかかっている。』

 

『実に皮肉だがな。』

 

アダムがそう吐き捨てると同時に、保管所にレッドアラートが鳴り響く。

 

『この惑星ごと存在を消す。目眩し程度にはなるだろう。タイマーは1:00:00。さっさと行け。』

 

そんな言葉を背後に、アラートの鳴る保管所へと飛び出す。

…隣を走るキハンター星人に思わず愚痴る。

 

「ちくしょう!何でこんなことになったんだよ!銀河の命運を任せんじゃねぇ!後お前プレパラート離すなよ!」

 

「本当だぜ!ふざんけんな!あぁっ?そんなことわかってらぁ!」

 

ザッザッザッザッ…

 

急いで地上へと向かう。

 

ー鬱屈とした雰囲気は無く、生き生きとした風が彼らを押していた。

 

「あーっでも」

 

「任せられたら」

 

「「やるしかねぇよなぁ!」」

 

鉄を駆ける。退屈を背に、彼らは進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なぁ、レディー。物語が始まってしまった。……君も見てるか?』




息抜きなりにアンケート。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

オーバーヒート

文自体は短め。ごめんなさいね。


……ピー!ピー!ピー!ピー!

出力127%:エンジンの融解の可能性を確認 直ちに速度低下の操作を遂行する事を推奨します

 

 

繰り返します 出り……

 

ガン!

 

「分かったらぁ!そんな事!さっさと進めよ!いつ来るかわかんねぇんだぞ!」

 

「おい!叩くんじゃあねぇ!宇宙の藻屑となりてぇのか!」

 

生体金属で作られた宇宙船の中で怒号を飛び交わす。

 

私もキハンター星人も、こいつの操作に四苦八苦だ。

 

「……ちぃ、発電炉βがイカれてやがる!この勢いで供給すると約10…8時間後に燃料が切れるぞ!」

 

「くっ、何か無いか……仕方ない、迎撃用の内蔵兵器の燃料を持ってけ!あっただろう!何に使うかわからん高火力のやつ!」

 

配給された宇宙船はかなりのポンコツだったらしく、内部機構が劣化しているせいで急速な航海が難しい。

 

その上、重い兵器や無駄な構造もあるなんてな。本当に頭を抱えてしまいたい……。

 

「ちゃんと無駄なもん叩き落としとけよ!後早く操作に戻れ!」

 

「わーかってる!何度も言わなくていい!さっさと集中してろや!」

 

ホログラムを操作しながら、ふと傍に置いてあるプレパラートを見る。

中には何の変哲のない細胞が浮かんでいた。

 

しかし、何処と無く力が沸いて来る感じがする。

 

「……おい!ぼーっとすな!それは自爆ボタンだぞ!」

 

キハンター星人の呼びかけにハッと前を見る。

爪の先にはご丁寧に『自爆』と書かれたボタンがあった。

 

慌ててコマンドを消し、ワープホールの調整に戻る。

 

異空間転移を可能とする『リバイアサンシステム』。

 

オリジナルは自動調整だったらしいが、この船に乗せられていたのはそれの劣化。

 

ワープホールを維持する精密な調査が求められる。

一応履修済みだが……本当に使う時が来たとはな。

 

「……おい!お前さっきからどうしちまったんだ!この熱気で頭イカれたのか?!考えるのは後にしろよ!」

 

2回目の発破がかけられる。

首を振り、考えを消し、数値とメーターを確認。

 

 

目標:564系銀河惑星ボルボイド

緯度:x15687y456930z2410

チャージ:⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬜︎

空間安定予想:悪

 

 

……本来、こんなギャンブルはしたくない。

だが、どうせ捕まるぐらいならディメンションのチリとなった方がマシだ!

 

《決定》

 

 

ピー!ワープホールへと突入します 対ショック体勢をお取りください

ワープホール展開:状況不安定

 

突入まで3……2……1……GO!

 

 

機械音声が響くと共に、景色が暗黒色へと染まる。

 

狭間のディメンションを住処とする生物たちが此方へと向かって、その牙を剥こうと追いかけて来る。

 

不安定な推進、十分に張り切れていないバリア。

この時ばかりは、何もできずに目を瞑った。

 

このまま餌となるか、それとも抜けられるか。

 

生か死か。

 

勝者か敗者か。

 

 

 

運が導いたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奴らの方だった。

 

バリア……異空間ロードを突き破り、襲いかかって来る化け物。

機体にヒビが割れ、ゆっくりと落ちて行く。

 

隣で滑り落ちていくキハンター星人に手を伸ばすも、空を切った。

 

自分の存在が不安定になり、意識が解けていく。

 

……消えゆく意識の中で、何かに触れた。

しかし、それを確認する事も最早出来なかった。

 

 

 

 

 

……嗚呼、自分が……無くなる



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

束の間の休息

まぁーた少なめ、というか長い文を作るのって難しいんだね。



ピッ、ピッ、ピッ……

 

規則的な音に、意識を引き上げられる。

うっすらと開けた眼には、よく見ていた天井が映った。

 

「……んお?起きたのか?」

 

身を起こし、聞き慣れた声の主を探す。

 

いつもなら、ここから見て右にある、背もたれ付きのちょっとお高めな椅子に腰掛けているはずだ。

 

そして今回も、ボペットの野郎がそこに座っていた。

 

「ったく、しっかりしてくれよな?傷はねぇのに、気付け薬でも起きやしないんだからよ。」

 

……気だるそうに両腕を上げ、欠伸を一つ。

 

こんなのでも、誰でも一度はお世話になる重要な職に就いている事を、未だに信じられないな。

 

……軍医ボペット。

素体をクローンNo.3504769としているトゥルーパー。

 

クローンの洗礼を受けた時に、才能が開花したと囁かれている天才軍医だ。まぁ、性格は難があるが。

 

「……色々聞きたいことがあるが。まずは……637は何処にいる?……マーズ隊の奴だ。」

 

「ああ、お前の相方か?それなら機械弄りでもしてるんじゃねぇか?シップも中々にぶっ壊れてたし、修復でもしてるんだろ。」

 

珍しくまともに受け応えてくれてはいる。取り敢えず、戦友の無事が取れた。短い間とはいえ、一緒にいた奴の心配をするぐらいの優しさは持ち合わせているつもりだ。

 

……まぁ、ちょっとどころでは無いアレだが

 

そして、それに続く言葉に目を剥く。

 

「……ちょっと待て。あの状態の宇宙船をまだ使うのか?あれはもう鉄クズ同然だぞ。」

 

「……シラネ。それは上にでも聞いとけ。」

 

完全に真っ二つに割れた宇宙船をまだ使いまわ……

 

……そうだ。

何故ワープホールに入って、その後バリアが突破されて異空間ロードに落ちたはず。

 

まともに帰れるはずが無い。

 

「そういえば、俺たちはどう帰ってきたんだ?」

 

「……ん?ああ、そうか。お前たち気絶してたか。でも普通に……では無いか。まぁ、堕落してきたんだとよ。……あんなに機体が断絶しても帰って来るとは、何ともしぶてぇな。」

 

何の偶然か、我々の母星にワープできたようだ。

 

しかし操作のない上に、身を守るものが無い状態で大気圏を突破出来たとは、にわかに信じ難いが。

 

「本音を言えば、さっさとくたばっちまえば良かったと、俺は思うんだがな。こんな軍に付き合わせられるだけつれぇだろ、タイプCT:965さんよ。」

 

「……いや、逆に放っておく事で何を仕出かすかわからないからな。下っ端といえども、目に入れといた方がいいと思っているよ。」

 

少なくとも、こいつで荒れる事だろう。

 

ジャケットの内ポケットにある、プレパラートを取り出す。

……?そういえば、こんな所に入れていたか?

 

……まぁいい。細かいことは、これから起きる騒動が終わってからだ。

生きていれば。

 

 

硬質なベットから腰を上げ、傍に置いてあった装備を装着する。

 

今回のことで少し傷が付いてしまったが、まだまだ体を覆える。

……今度鉄でも購入するか。

 

「……ッケ、もう二度と来んなよ。」

 

「……それをお前なりの優しさと受け取ろう。」

 

「勝手にしやがれ。」

 

ブルーゲートを開き、廊下へと出る。

見慣れた光景とはいえ、やはり風景は最悪と思う。

 

歪な構造、治されてない穴ややっつけで治した跡。

他にも挙げればいとまがない程、不具合がある。

 

でも、それでもここが故郷だ。

 

……さて、キハンター星人……637を探すか。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「……で、それは何だ?」

 

奇妙な格好をした637を発見した。

結局、見当の付けた所には居なかった。……ボペットの野郎、適当な事を言いやがったな。奴を信じた俺が馬鹿だった。

 

「おっ、起きたのか。あんまりにも起きないから死んだと思ったぜ。」

 

ふざけた事を抜かしやがったが、服装の事で言及する為今は無視だ。

礼装のような格好でいる637は……正直物凄く見苦しい。

 

「んで、この格好の事についてか?俺はな、お前が呑気に昼寝してる間、上層部に任務達成を報告したんだ。……ちょ、蹴んなよ。おい、悪かったって!」

 

相も変わらず、クソみたいな煽り文句を言うもんだから、本当にため息が出てしまう。

 

いくら底辺のマーズ隊同士とはいえ私はリーダーである。

……この調子だと上層部にすらタメ口を吐くのでは無いか疑ってしまう。

 

しかも、たった3回の任務の間一緒なだけで、そのような未来が見えるなんてのは、こいつがある意味本物だからだろう。

 

「……たく、お前はホントによ。初めて会った時から変な奴とは思っていたが……。惑星SR388跡の定期巡回の時も、()()()Z()D()R()のボーリング調査の時だってそうだ!」

 

「たたっ……同じ底辺じゃ無いか。別にそれぐらい……」

 

「一応俺たちは軍属だ!軍は上下関係が大事なんだ。だから形だけでも示す必要があるんだ。……という話を何回すればいい!今回の任務は目を瞑るが……その前は!全然!辛く無いだろう!」

 

これが本当の『糠に釘』というやつか。

コイツは何回も叱咤しているにも関わらず、のらりくらりとかわし続けている。

 

ほら、今回も。

 

「そう、それだよ!今回の任務で分かった事を直々に言うように、って言われて礼装を購入したんだよ!」

 

此方を全く見ずに明るくそう言う。

……本っ当に遺憾だが、また今度にしよう。

 

「……(何が、それだよ!だ。)そうか。なら任せた。早く帰って来るんだぞ?色々あるからな。」

 

「……?何言ってんだ。」

 

コイツに、軍とはどうやって成り立っているかをみっちり教えている未来を思い描いていた。

 

しかし、コイツから放たれる言葉にそれは霧散してしまう。

 

「お 前 も く る ん だ ぞ ?」

 

……。

 

 

 

くそったれぇ!

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

腐敗

やっぱ、小説は書きたい時に書くのが1番。追い込まれるものでは無い、と思う。


「……はぁ、ここか。」

 

思わずため息が口から漏れる。

 

いくら自分達が見つけたからといって、いきなり、しかも直接出向く形での報告はきつい。

 

俺なんて起きがけだし、相方には不安しか感じない。

 

それに、姿すら見たこともないのだ。一応、最高司令官がいないのに準最高司令官と名乗っている、という噂を知ってはいるが。

 

 

……まぁ、いい。現実逃避をしても何にもならない。

 

手の平をパッドでスキャンさせ、ゲートロックを解除して中へと入る。

 

中は廊下とあまり変わらない歪な風景が広がっていた。

 

「……フヒッ。ヨウヤク、ヨウヤクダ。コノトキガキタノダ。」

 

そして、そこの中心にあるポツンとしたデスクに、1人の……なんだろうか。何の種族だ?

 

……鳥の出来損ないの様な頭に、細く丸まりきった背中、ジュクジュクと波打っている体。

 

どこからどう見ても、俺たちの最高司令官は怪物だった。

 

「……ン?あア、なんだ。キテイるならイエよ、全く。まァ、大メに見てやルよ。」

 

怪物……最高司令官は、ガサガサな声で此方へと話しかけてきた。……俺たちの任務が成功して余程嬉しいのか、その声は気色が滲んでいた。

 

「マ、ソコに立ッてな。気ハ楽にしていてイイゾ。」

 

「ンン……ソれデ、どの様にシて、そイツを持ちカえったノか、聞カせてもラオウジャないカ。」

 

俺たちは一瞬視線をかわし、覚悟を決める。

……正直、あまり期待は出来ない。でも、アダムに言われたからな。やるしか無い。

 

「……先ずは、何処からこれを持ってきたかについて。」

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「……という訳で、この遺伝子を惑星GB-3207から回収してきた訳です。」

 

「ふーム。成ル程。そんな銀河ノハテにあルとは思ッていなかっタな。ゴクロうだったナ。」

 

長めの話を聞いて、最高司令官は疲れたのか、息を整えている様子だ。

そして、襲撃に関しての情報について悩んでいる様子だった。

 

「……全く、ゴみが。もウ少し、敬意ヲ払えヨ、クずドモ。」

 

ハァ、とため息を付き、もう一度話して来る。

 

「少シ、水を飲む。ノドガがらがラでナ。」

 

少し申し訳なさそうに、ウォーターサーバーへと水を取りに行った。

……デフォルトだと思っていた。

 

「……ふむ。まぁまぁ、マシになったな。」

 

水を飲み終え、随分見違えた。……最初から飲めば良いと思ったのだが。

 

「それじゃあ渡してもらおうか。」

 

その言葉で、胸ポケットにしまっていたプレパラートを取り出そうとした。

 

……しかし次の言葉に、また。ズレる。

 

()()()()()()()()()()。」

 

「……え?」

 

思わず、声が出てしまった。

何で勘違いをしているのか?戦争の話もしたし、丁寧に話したはずだ。……だから気付くものだと思っていた。

 

このプレパラートに入っている遺伝子が

 

「……サムス・アランの遺伝子ですよ?」

 

銀河の英雄のものだと言う事を。

しかし、現実は残酷だ。自分の預かり知らない所で、こんなにもギュルギュルと運命の歯車は回っていた。

 

あっ?

 

先程の、此方を気遣うかの様な雰囲気は霧散。

空気が張り詰め、刺すようなプレッシャーが俺たちを包む。

 

「……お前らなんて言った?はは、よりにもよってクソの遺伝子を回収した訳ないよな?」

 

「なぁ、答えろよ。リドリー様を、復活できなくなるまで滅ぼした、アノ怨敵、サムス・アランの遺伝子を持ってきたのか?」

 

「おい」

 

答えてみろよ

 

戦場での死線なんかより、はるかに身の危険を感じる。

俺は、完全に萎縮してしまって、答えられなかった。

 

しかし、横にいるコイツは、絞り出す様な声で、確かに答えた。

 

「……そうです。おれ……いや、私達は、サムス・アランの遺伝子を回収しました。」

 

正直、どうもならないと思っていたが、今の行動で今までの事は全部帳消しに成る程、本当に助かった。

 

「……そうか、なーんだ。期待して損したわ。じゃ、おつかれさま、君たち。」

 

「……いや、それじゃあ気が済まないな」

 

「君達に、最期の任務を与える」

 

絶対零度の空気が奴を取り巻く。

長い舌から発せられる、絶望の言葉は。

 

「そのガラスを追ってるんだろ?クソどもが。それだったら、お前らそれ持って逃げろよ」

 

「大丈夫、宇宙は守られるさ。引き付けるだけ引きつけて、後は自爆、よろしく」

 

「たくさん逃げられる様に、いい船あげるわ」

 

「……サムス・アランも、自分を出汁にして仲間が死ぬのを見たら、どんな表情をするんだろうナァ」

 

「……あっ、そうだ。いつも名前考えてやってたよな。リドリー様も、そうしてたし、お前たちの勇姿にも名前をやるよ。ンー、そうだな」

 

「鉄花火なんてどうだ?いや、これから消える奴らに勿体無いか?……ま、せいぜい良い囮になれよ

ゴミども

 

そう吐き捨てられると共に部屋から蹴り出される。

 

……サムス・アランの遺伝子にも興味がない。

本当の、『詰み』だな。

 

……は、はは。

 

 

……。

 

 

……どうするかぁ。




昨日、めっちゃいい小説読んで泣いた。
こういう風に人を感動させるものを書ける人は凄いなって。

7。7秒。それだけでも、本気になりたいなって。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

旅立ちの刻

あけましておめでとうございます!新年も体調におきをつけて下さい!


「……はは。どうすりゃあ良いんだよ。」

 

掠れる様な声が喉から零れ落ちる。

ただ悪用をしたいと望む者なら、やりようも有った。しかし、あれはダメだ。妄執と狂気に取り憑かれてどうにもならない。

 

しかもチャンスすら徹底的に潰し、この遺伝子を消すつもりだ。……だが、何故俺はこれを守ろうしているのだろうか?

 

 

……今考えれば、不自然なことばかりだ。こんな事、それこそーー

 

 

……はぁ、こんな事を考えるのも最後なのかよ。せめて最後は派手にちりてぇなぁ。

 

 

 

足下を見てぼんやり考えながら進んでいると、視界に影がさした。

 

「よぉよぉ、辛気臭せぇツラして俺の前歩いてんじゃねえよ。しゃんとしとけって言ってんだろおおん?」

 

顔を上げそのアホヅラを拝んでやれば、よく知った顔がニヤついて俺たちを見ていた。

 

「……ボペットよ、お前に構ってやる精神的余裕が無いんだ。悪いが、別のやつにしてくれ。」

 

「ああ、全くそのとうりだ。一昨日来やがれってんだ!……一昨日なら相手出来たんだがな。」

 

これから死にに行くというのに、ふざけた奴の相手などしたいわけが無い。胸の支えと共に吐き捨てる。

 

そしてそれを受けたボペットは虚をつかれた様に目を見開く。

 

「……おいおい、連れねぇ奴よのぉ!……いや、お前。今『別の奴にしてくれ』って言ったな?」

 

神妙な表情に顔を切り替えて、こちらをもう一度見据える。

 

「いつも『後にしてくれ』って、お前は言うはずだが……それが『別の奴にしてくれ』だぁ?……少し話してみろ、左遷ぐらいは握り潰してやるよ。」

 

奴にしては妙に真剣で、そう…… ()()()()()()()()()()()()()の様で。

 

そして、いくら()()()()()とはいえ、コイツが権力を使おうとするとは……相当執着されているのか。

 

「……俺たちが長期の捜索任務を任された事は、流石に分かるだろう?」

 

「……まぁ、新隊のお前たちに遠征を二度もさせたことで薄々わかっていたが……(よりによって捜索任務か。)」

 

相方が話してもしょうがない。俺が話すか……。

はぁ、顎が重くなる経験なんてしたくなかったな……。

 

「んで、そのブツを持って帰還した訳だ。そしたら報告するだろう?」

 

「……今回は直々に呼ばれたんだが、ブツがお気に召さなかった様でな。」

 

「一つの任務を任されたんだ。……ごくごく簡単で、単純な任務がな。」

 

「それの名前はミッション:鉄花火だとよ。ブツで連邦を引きつけて……バーーーン、だとよ。」

 

正気を保つために落ち着いて話そうとした。だけど、やっぱトゲトゲしさはぬぐめない言い方になってしまった。

 

こんな奴とは言え、一応何度もせ「クソが」

 

「クソがクソがクソがクソが!奴め、そんなにもリドリーが大事か?!いいだろう!そっちがその気なら、俺にも考えがある!」

 

普段の飄々とした態度を完全に崩し、憎々しげに怒鳴る。

 

「よしわかった。大体お前らが何を持ってきたのか把握した上でだ。……何も言わずに俺について来い。」

 

肩を怒らせ、ドシドシと床を踏み鳴らしながら先へと進んでいく。俺たちは顔を見合わせて、ボペットについて行った。

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「……どうせ、奴が用意するのは補給船だろ?バカにしやがって。そんなゴミ船に乗る必要はない。……お前たちが乗るのは、これだ。」

 

シップ管理棟の奥の奥……そこにそれはあった。

 

「リバイアサン・リメイク017。フェイゾンの代替エネルギーを生み出すプロジェクトの副産物。……俺が、まだ青い時に請け負ったシロモノさ。」

 

本来は青く光っていたであろうラインが毒毒しいオレンジに染まっている、巨大な生物船が。

 

「は。……なんでこんなモノを?」

 

そうすると、口角を吊り上げこういうのであった。

 

「……もう我慢できないからなぁ、俺も着いていくさ。お前たちは死なせねぇからな?」





お、遅れた…。23○5…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

Feelings for the past

「……久しぶりだな、こうやって機械いじるのは。」

 

ガラガラとした声が、静かに動いていた俺たちに響く。

 

何十年の間も使われていなかったリバイアサンの中は埃だらけで、エンジンの起動にもメンテナンスが必要だった。

 

「……あれからもう1サイクル以上も、時間が経ったのか。……ハッ、お前たちからすればオレは老害だろうな。」

 

ボペットが183台目の、自立型メンテナンスロボットを起動し、中心部へと向かわせる。

 

その傍で俺たちはオレンジ色に輝く液体燃料をリアカーに詰めていた。

勿論、話に耳を澄ませながら。

 

「……そのフェイゾン代替型エネルギーが、リドリー復活になーんの役にも立たないと知ったアイツの顔は気持ちよかったな。……ある意味、アイツが短絡的思考しか出来なくなったのは僥倖だった。」

 

リバイアサンの中心部へと入って行く。そして先に進むにつれ、壁に入っているオレンジ色のラインが太くなっていく事に気付いた。

 

「このエンジンさえ有れば、宇宙のどこにだって行けるからな。モノホンのリバイアサンシステムだ。……正直、もう二度と作りたくはねぇな。」

 

そして、そのラインがが全て集合し、オレンジ色の球体へとなっていた。

メイン炉であるこの球体は、船体に違わない大きさだ。

 

「おい、そこにあるフェイゾン代替エネルギーをよこせ。いや、あー……もう良いわ。俺が全てやる。お前たちはこのナビに従って司令棟Bまで行け。其処なら少人数での操作が可能だろう。」

 

こちらへ声を掛けてきたボペットだったが、瞼を細めてそれを掻き消す。そして小型の端末を俺たちに向けて投げ渡す。

 

ちゃんと起動する事を確認し、ナビに従って目的地へ歩きだした。

 

「……フェイゾンの代わりになる様なシロモノだと、扱いも難しいのか?」

 

「お前、聞いてなかったのか。あれはフェイゾンの放射性と変異性の代わりにエネルギーが詰まっているもんだぞ。」

 

「おっと、真面目にヤベェヤツだったか。」

 

「……下手すれば一瞬でドカンだからな、しっかりしろよ?」

 

「へいへい」

 

その後もくだらない言い合いを続けていたら、いつしか目的地にたどり着いていた。

 

ブルーゲートを開け、中へと入る。

……相変わらず壁は生物らしく、オレンジのラインが入っていた。

 

正直、ここで長い時間を過ごすのは嫌だ。

だがまぁ、流石にホログラムなどで補完されると信じよう。

 

「お、これがリバイアサンシステムを起動する時のやつか。」

 

好奇心が含まれた声で637がコンピュータへと近づく。……私は悟った、コイツは学ばないと。

 

「……おい!マニュアルも無いのに触るな!」

 

立って待機すれば良いモノを。どうしてコイツはまったく……

 

「チッ、別にいいじゃ……?!」

 

いきなり、床がグラつく。いや……艦全体が揺れた。生き物の様に、胎動している。

そして、停滞し続けていたオレンジのラインがまるで血液の様に流れ出す。

 

『……聞こえるか?こちらボペット。どうやら起動は上手くいった様だ。』

 

持っていた端末から声が流れる。さらに、端末は動きを見せる。

 

『今、画面が変わったはずだ。そこには、この艦を動かす為の手筈が載っているはずだ。俺は後で向かう、起動していてくれ。』

 

ボペットがあった通り、画面が切り替わりマニュアルが映し出された。……む、ここか。

 

 

 

 

ーーーーー

 

 

 

「……お、そこそこ出来てんな。」

 

マニュアルに翻弄されながらも、ちゃんと起動は出来た。ホログラムも映し出され、壁も一般的な物となった。

 

 

しかし、行き先をどうするか考えていなかった。逃亡するという事は察っせるのだが……。

 

「ん?どこへ行くかだと?……そうだな、それはサムス・アランの遺伝子なんだろ?1番近場なら……SR388跡なんてどうだ?」

 

それに取り敢えず頷き、入力する。異空間ワープ一回で行ける様だ。

しかし、何故わざわざ滅んだ惑星跡などを目的地に据えるのだろうか。

 

「ああ、ここはな、サムス・アランの訪れたことのある星だ。」

 

「……そこに行けば何かあるかと?」

 

「……最終的に他のところへ行きたいのだがな。中継地点としていくつもりだ。ワープも連続して使える訳じゃ無い。それに、もしもだ。お前の言う通り、何かあるかもしれないって訳さ。」

 

そう言われれば、そうなのかもしれない。

……それで、エネルギーチャージ時間は……1:00:00か。

 

整備も合わせれば、相当な時間を食った事になるな。……ヤツはまだ気付いてないのか?

 

「ボペット、そういえばお前……」

 

「なん……」

 

ドゴーーーーーン!

 

「おい!ブエストロ!このクソ野郎が!どこまで迷惑をかけたら気が済む!」

 

爆音と振動が俺達を襲う。そして金切り声に近い怒声がこの司令棟まで伝わってきた。

 

……ヤツだ。少し、チンタラし過ぎてしまったか。

 

「……あんの野郎、まだ取り憑かれてやんのか?……ふざけやがって、俺はボペットだ!俺を見やがれ!」

 

そしてその声に応える様にボペットが怒りを見せる。

目に宿った灯火がユラユラと揺れていた。

 

「もういい、チャージは逃走しながらする。配置につけ」

 

指示通り、俺は統合操作席へ、637はリバイアサンシステム制御席へと座る。

 

 

 

思えば……怒涛の展開だった。全てが辛い物で。

感情の整理の時間すらなかった。

 

こうして椅子に座る事を噛み締めれるぐらいには。

でもこれからは少し、休めると良いのだが。

 

「スタンバイOK。出力78%まで稼働可能、レディ?」

 

「GO」

 

レバーを前へと倒す。その瞬間ぐらりと、鑑が動き始める。

ゆっくり推進していたかと思えば、急加速し、発着口へと向かう。

 

「なっ、ふざけるな!逃げる事は許さん!今すぐっ、がぁ!」

 

周りの物を押し退け、俺たちは飛び立つ。

モニターを介してでも、この(そら)はいつもより綺麗に見えた。

 

心の中はぐっちゃぐちゃでも、それでも。

 

宇宙に憧れた、地球人の気持ちがわかった様な気がした。

 

 

 




テリーたのしぃ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

離脱の航路

変なところで区切っちゃってるけど、これは描写が迷走しているせいです。
地の文に感情をフルに乗せてるのが今のものだけど、そこをもうちょっと良くしてテンポ良く書きたいのですが……これってどうすべき?

……一応活動報告にアドバイス募集しておきます。出来れば教えて貰えると嬉しいです。


「ひゃひゃひゃ!あたらねぇなゴミ共が!」

 

惑星ボルボイドから離脱後、夥しい量の戦闘機が俺たちを追ってきた。

リバイアサンの巨体では回避行動は難しいが、ボペットの運転技術によって持ち堪えている。

 

俺たちはその間に船体の整備をして、ワープへの準備をしていた。

 

「エネルギー循環機構100%稼働中。整備ロボット格納完了。システムオールクリアだ、そちらは?」

 

「リバイアサンシステム起動まで約7分、エネルギー残量を考えれば……出力が84%まで低下。ポータルのバリア強度は問題無し。エネルギープールが安定したら此方に回ってくれ」

 

「了解。それまで装填を慎重にな、637」

 

ボペットのお陰で、タスクに集中する事が出来る。……次はエネルギープールと呼ばれる機構を整備しなければ。

 

 

ホログラムからこの船体の情報を読み解くのも一苦労だが……これは比較的分かりやすいな。

 

 

どうやら、この船の血液とも言えるオレンジ色のエネルギーは、先程の中心部で生み出す事ができるらしい。

 

 

だが常に新しい物を循環させるのは難しい為、エネルギープールにに貯めて、劣化する直前に一気に替えるシステムになっている。

 

 

長い時間放置されていても劣化はしていないが、生物が侵入していたり、汚れも目立つ。

……格納庫にアクセス。整備ロボット34〜59まで起動、5機1組で行動するように伝達。

 

 

整備に必要な時間は……おおよそ1時間ぐらいか。

 

「……おい!エンジンのチェンバーになんか巣食ってるぞ!エネルギーの毒素で死んだが、このままだと詰まっちまう!」

 

「ヒァハハ……あ?勝手に分解されるからほっとけ!それよりも、お前だよ、お前!461!エネルギープールにどれだけ時間がかかるかちゃんと伝達しろ!」

 

……。

 

「あと……58:47だ。持ち堪えられるか?」

 

耐久性を鑑みれば、ここの宙域から離脱する事は可能だ。……今追って来ている戦闘機だけならば、な。

 

「はぁ?んなもん無理に決まってるだろ?!大型艦の主砲は避けられないわ!」

 

そう、いま追って来ているのはあくまで()()()

大型兵器やエネルギービームで武装した艦に出られたら、逃走しているこちらが不利となってしまう。

 

……ならしょうがない。俺が動くか。

 

「……637、タスクを任せる。暫く席を外す。」

 

「チッ、ちゃんと戻ってこいよ!」

 

司令塔Bから出て、端末を頼りにエネルギープールへと向かう。

この機構自体は、エネルギーを注いだ中央部分よりも上部に位置しており、そこまで離れていない。

 

「……武装は備え付けがあるのか。旧式すぎて、劣化で使い物にならない、は御免だがな。」

 

エネルギープール前のエアシャワー室の更に前の部屋。そこに多少の武装があった。

 

……エネルギー式のライフル、ガスマスク、マグネットボム一発か。

 

「駆除に使うには取り回しが悪いが……そうも言ってられんな。」

 

武装を装着し、エアシャワーを浴びて、エネルギープール内に入る。

 

 

中は一面、黄ばんだオレンジ色に鈍く輝いていた。

足元に目を凝らすと、金属に液体が癒着しているのがわかる。まぁ、これはまだ良い。

 

問題なのは、うじゃうじゃと周りにいるパラサイト共だ。

1匹1匹は強くも無いし、駆除に手間もかからない。

 

しかし、至る所にある巣から溢れ出るぐらいの量ともなれば話は違う。

 

先行してたどり着いた整備ロボットが駆除した奴らは、確かに多い。

だが、それと比べ物にならないほど湧いてくるのだ。

 

……しょうがない、手段をえらんでられるか。

 

「……34〜59!火炎放射器の使用を許可する!巣から焼け!」

 

一瞬で阿鼻叫喚の光景が広がった。パラサイト共が跳ね回り、隅や入り口の方へと殺到してくる。

 

ロボットに護衛を任せ、俺は入り口へ向かってくる奴らを処理していた。

 

 

火炎放射器は正直、エネルギーと二酸化炭素が化合するかもしれないので、使いたくは無かった。まぁ、威力を抑えて使えば良いし、それに時間と天秤にかけたら決断は容易かった。

 

「48と53が破損したか……通常の群れよりか妙に強いな。」

 

かなりの勢いで狩っている筈だが、少しの隙を突いて反撃してくる個体もいる。

そいつら1匹1匹は問題ないが、あの物量に飲み込まれれば流石に破損してしまう。

 

「チッ、早々に切り上げるぞ。火力を上げろ!」

 

ロボットへとそう命じ、本腰入れてパラサイト狩りへと臨もうとした。

 

しかし、それは頭上の穴からの咆哮によって中断された。

 

 

本来エネルギーを注入する為の入り口として機能する穴。そこから足を伸ばし、姿を現したのは。

 

鉤爪のついた前脚、肥大化した生殖器、異常発達した顎。

こいつは紛れもなく……

 

「……パラサイトクイーン!」

 

クソッ!フェイゾン代替エネルギーだからなのか?!変異しやがって!

 

武装はエネルギーライフルと……いや、これ一つしか無い。

ロボットはパラサイトを抑えるのに使うから……俺1人が相手しなきゃいけないか。

 

「ああ、分かったよ!やりゃあいいんだろ?!クソ害虫どもっ!」

 

ライフル片手に奴へと駆け出す。……口、かっぴらいとけよ?ゴミ虫ィ!



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。