戦姫防御のグリーン・シンフォニー (北岡ブルー)
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◇絶対防御が崩れる時

グリーン・グランデって岩の様な声だって聞いた事あるんですけど、彼は歌えるんでしょうか…?



(……さすがに、迂闊であったか)

 

 そう思ったのは純色の七王の一人、緑の王、グリーン・グランデ。彼は今、危機的状況に陥っていた。

 

(…まさか、防御力を無効化するエネミーがこんなにも居ようとはな…)

 

 グランデの周りには、木の根の様な足を持つ一つ目の怪物がわんさかと群がり、グランデを睨んでいた、ポイントをエネミー達にやり帰る途中、このエネミーに襲われたのだ。

 

 経験豊富な緑の王でも知らないこのエネミー群は、防御力を無効化するレーザーを放つ、グランデとは相性最悪の相手だった。

 

 無論、グランデも無抵抗でやられる訳がなく、何体かをカウンター攻撃で倒していたのだが、グランデ自身も何度か彼らに殺されており、残りポイントも僅かになってしまっていた。

 

 そして、ポイント全損の先にあるのはその記憶全てを失い、加速世界から永遠に排除される『永久退場』今まで何度も仲間達との別れを繰り返して来たグランデも、ついに自分の番が来たのかと覚悟を決める。

 

(…その上、心意システムまで防御系なら無効化可能とはな…。フッ…『絶対防御(インバルナラブル)』が聞いて呆れる。こんなことならあまりポイントをアイテム換金するべきではなかったな)

 

 所詮、我も一人の子供であったと言う訳か…。と、王は所々に穴が空いた大楯『ザ・ストライフ』を握りしめる。

 

(…我自身、永久退場が怖い訳ではない…AA、CCと同じように、このBB(ブレイン・バースト)でも懸命に生き続けたつもりだ。この仮想世界をあの二つの世界と同じ過ちを繰り返させぬ様にと、ここに生を受け、早五千年…その間に我は沢山の物を手に入れ、沢山の物を失ってきた…。それを全部失うと思うと震えも止まらぬ…。それにこれからの加速世界が心配だ。今までは我が下級エネミーに高いポイントを食わせ、そのエネミーを他のバーストリンカーに狩らせることで永久退場する者達を減らし、この世界のバランスを保って来た…。この役目を誰かに引き継いで貰わなければならない…その上、王位だの何だの死に際にやらなければならない事が大量にある…)

 

 ならばと王は、片手でメッセージメールを緑の残像が見える程の音速で二つ製作すると、それを素早く二人のバーストリンカーに送信した。

 

 一つは王位の件、もう一つはこの加速世界の件で。

 

(…よし、これでいい。これでもう加速世界で思い起こす事はない)

 

 王が首を上げると、そこで見上げているのは大量の目玉。

 

(さぁ、楽しませてもらうとしようか。最期の加速を…)

 

 緑の王は、それに臆せず立ち向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

(やはり死んだか。緑の王も防御を取られれば、我ながら呆気ないものだな…)

 

 戦いの結果、我は敗れ永久退場してしまった。今は暗黒空間の中を漂っているわけだが、何か息苦しい。

 

 我が盟友達も、こんな気分を味わったのだろうか…。

 

 ん…、光明が見えて来た、あれをくぐれば我も自分がグリーン・グランデであった事を忘れるのだな…。

 

 行こう。……ん?頭がつっかえただと、そんな事があり得るのか?

 光明に引っ掛かる王…か、黄色か初代赤当たりが見たら笑いそうだな。

 

「立花さん!頭が見えましたよ!後もう一息です!」

 

「んんっ…!!んっ~~~!!!」

 

 …何か、変な声が聴こえるのだが…。

 

「頑張って!頑張って立花さん!!私が赤ちゃんを優しく引っ張り上げますから!!」

 

 …は?赤ちゃんだと?我はブッ!? ←頭掴まれた。

 

 その声の後、グランデの明るくなった視界の左右に腕が現れ、グランデの頭を両腕でがっちり掴み、引っ張り出そうとする。

 

 ヌオアアアアアアアアアアアッ!  スッポォーン

 

「おめでとうございます立花さん!!赤ちゃんが産まれましたよ!」

 

「ハァ…、ハァ…。ありがとうございます…私の赤ちゃんを、見せて下さい…。」

 

(ん、ん? んん?)

 

 この状況に理解不能な緑の王は、周りを見渡した。

 

清潔そうな白いタイル、自分の腹に付いている紐見たいな物に 今自分を抱いている女性はいわゆるナースの服を着ている。

 

ここから宇宙的直感に身を委ねて考えて見ると……。

 

 

「やっと…やっと会えたね…、こんにちは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは今日から、私の子供よ。響…」

 

……まさかの転生と言う奴なのか…!?

 




ネットの方でグリーン・グランデの正体について茅場だの何だの様々な憶測が流れていますが、こっちでは一応一般人としておきます。

キャラ崩壊の理由については、前世で王として気を張ってたのが今世に来た事で気が緩んで素に戻ったのだと思っててくださいお願いしまッス!


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◇我が新しき盟友・未来

 7月6日 いきなり運営から二話のキャラクター紹介にあった文字数稼ぎで削除されかけたので肝が冷えました!
 しかもキャラクター紹介の話を消そうと決断して焦った自分のミスでこれも含めた一部の話が消えるのだもの!
本当にビビった!




…一体、どういう事だ?

 

 それが、グリーン・グランデがこの世界に来て初めて思ったセリフだった。

 

…我のリアルの体は一体どうなってしまったのか、永久退場した我が盟友達もこんな体験をしたのかとも思ったが、自分の息づかい、心臓の鼓動がこれはゲームの類いではなく、現実なのだと教えてくれた。我の肉体は間違いなくこれだと魂が言っていたのだ。

 

 転生してしまったと事実に唖然としていたグリーン・グランデを置いてきぼりにして、時は一瞬で過ぎ去っていく。

 

 決して母の胸を近づけられ、恥ずかしさで失神しそうになったり。前世では使った事がない鉛筆や消しゴムに悪戦苦闘したり。自分が女性の身体になっていたと言う事を忘れたい訳ではない……。

 

 

 

◇――そして数年後…――◇

 

 

 

「響、ここが今日からあなたが通う幼稚園、○●幼稚園よ。近くで良かったわね~、歩いて行けるわよ」

 

「……」コクリ…

 

…我の名はグリーン・グラン…あ、いや立花響だ。今の我は母に車で送ってもらって、幼稚園までの道を教えてもらっている所だ。

 

…我の今の家は、とても居心地がいい。ニューロリンカーで子育てを短縮し勝手に育っていろ同然だった前世の両親とは違い、今世の両親は手間暇掛けてこんな無口な我を育ててくれた。

 

…優しく明るい父上、慈愛を持って愛をくれた母上、我も知らない世界を教えてくれた叔母上いや、おばあちゃん←一回、叔母上と言って泣かれた。「おばあちゃんと呼んでクレェアフェエフぇェェェェッェェ!!!」←入れ歯外れた

 

…第一世代、《オリジネーター》であった我には加速世界での『親』もいなかった。だからこそ暖かく、充実とした5年を住ごせた。こんなに家族が良いものだとは、今まで思いもしなかった。

 

…こんな事なら、前世で我も『子』を作るべきであったか…。

 

「響~お母さんに行って来ますのキスは~♪」

 

…は…母上。それはちょっと…。

 

「フフ、響は恥ずかしがりね♪ん♪」

 

…そう言うと母は我に向かって投げキッスをした。これだけはキツい。たとえ親でも女性に好意を向けられるというのは、なかなか気まずいものだ…。

 

 

 

 

…母が幼稚園の職員室で入学手続きをしている間、響は幼稚園の遊具王、ブランコで遊んでいた。他の園児は部屋の中にいる。

 

(…うむ、たまには童心に帰るのも悪くないな……。ん?)

 

 ブランコで揺れて最高峰まで上がった響は、部屋の窓から多数の男の子に囲まれた一人の女の子を見つけた。

 

 じゃれている感じではなく、何より女の子の方の目は潤んでいるように見える。

 

(…あそこは確かバラ組…、何かしらのトラブルか…?)

 

 そう思った響は、ブランコから飛び上がると一目散にバラ組の部屋へと走っていった。

 

 

 

 

 響がバラ組の部屋に入ると、その瞬間女の子の怒りと悲しみが織り混ぜられた叫び声が部屋に響いた。

 

「返して!私のまぁちゃんを返してよぉ!!」

 

 大きな白いリボンが特徴的な、艶やかな黒髪の女の子だった。近い内にきっと美人になるだろうその顔は、涙や鼻水でぐちゃぐちゃに汚れていた。

 

「やぁ~だよぉ~、それっ」「よし、ほれ」「うっし、来た来た」

 

 その子の周りにいた3、4人の子供達は、まぁちゃんと言うらしい人形をパス回しして女の子を小馬鹿にしていた。彼らの腰には刀のつもりなのか、新聞紙を丸めた物やレ□ブロックで作られた剣がぶら下がっている。

 

 周りの子供達もそれが怖いのか、部屋の端で震えていた。

 

(…あの子らはただ遊んでいるつもりなのだろうが、人の物を盗るのは悪い事だと教えてやらねばなるまいな―――)

 

 そう考えた響は、投げ飛ばされたまぁちゃんを掴みパス回しを中断させ、男の子達を挑発した。

 

「あっ!おい何だよ、オレたちのじゃますると女の子でもいたい目見るぞ!」

 

「…………!(訳)……ああ、良いぞ。少し大人げないが、我も貴様らに元王の実力を見せつけてやる!!)」

 

「声小さくて言ってることわかんねぇんだよ!!オメェらやっちまえ!」

 

「「「おお~!!」」」

 

 豹柄の服が特徴的な男の子が叫ぶと、3人の男の子達が響目掛けて新聞紙やレゴ□ロックの剣を持って襲い掛かってきた。

 

「……!」(訳)…普通の子供なら、そのオモチャの剣に叩かれ、泣くであろうな。しかし、今貴様らの前に立っているのは、歴代クロム・ディザスターと戦い『絶対防御』の二つ名を得た緑の王・グレート・ウォールの元レギオン・マスターグリーン・グランデなるぞ――!)

 

 ボキッ………!!

 

「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 オモチャの剣は響の頭に命中し、その何かがへし折れる音に、リボンの子供が青ざめ悲鳴を上げ。

 

「へ…?」

 

 リーダーらしき豹柄の男の子もそのあまりに生々しい音に動きが止まる。豹柄の服の男の子からは三人の子分に囲まれて響の姿が見えないが、マズイ事になっているのは容易に想像できた。

 

「あ…あぁ…!」「うそぉん……。」「ひぃいいいい~~!!」

 

 響の頭を攻撃した3人組は、その音を自分達が鳴らしてしまった事に戦慄してしまう。

 

「り…リーダぁ…「るせぇよお前らがせきにん取れよ!?」いやリーダー…!」

 

 

 

 

 

 

「「「剣が…!剣が『もげたあぁぁぁぁぁ!!!?』」」」

 

 その三人の腕の中には、まるで獣に引きちぎられたように『もげた』3つの無残な柄が残っていた。新聞紙の剣はビリビリに破け、レゴブロ○クの剣はもう再使用不可のレベルで砕け散っていた。『折れた』のではない。無残に、根元から『もげて』いたのだ。

 

 

「ギエピイィィイイイイィイイ!!?」「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」「ひぃいいいいぃぃぃぃぃぃ!!」「あぁあああっぁぁっぁぁあああああああ~~~!!?」「うっっそおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉんんん!!!」

 

 

 

 

 狭い部屋で、やかましい四重奏(カルテット)が鳴り響く。

 

「あっそうだ!アイツは!?アイツはどこだ!?」

 

 そのパニックの中、いち早く響がいないのを知ったのは豹柄の男の子だった。

 

 武器があのザマだったんだ、やつは居る!どこかに!必ずどこかに潜んで逆襲の機会を待ってい――

 

 

 

―トン―

 

 

 そこで、豹柄の服の男の子は意識を失った。

 

 

 

 

 

(…なんとか上手くいったか、アニメや映画でよくやる気絶攻撃。…一応手加減はしたつもりだが少し心配だ。無事に起きるか?後遺症などは残らないだろうな?)

 

 響は攻撃を受け、武器が壊れた音に子供達が驚いている隙に後ろに回りこみ、手刀を放って気絶させた。

 

 これでもうオモチャを持って暴れないようになればいいのだが…。

 

「あっ…あのあなた…、ケガないの…?」

 

「…………。…?(訳)…あぁ、問題ない。心配してくれてありがとう。確か…、これはまぁちゃんだったか?)」

 

 そう言うと、響は持ったままだったまぁちゃんを女の子の前に差し出す。

 

「…もしかして、まぁちゃんをたすけるためにたたかってくれたの…?」

 

「……」コクン

 

 

 声は聞こえなかったようなので、首を縦に振って応答した。

 すると女の子は目を見開き、その場にうずくまると小さな肩を震わせ、まぁちゃんを強く抱きしめた。

 

「うっ…、うう"っ…ありがと…!本当にありがと…!!うぅ…うええぇぇえん…! ええぇ…!!」

 

 響は、ポケットの中からハンカチを出すと膝を付き、まぁちゃんを抱きしめる腕にそっとハンカチを忍ばせる。

 

 そしてそのまま少女の頭を撫で、泣き止むのを待ち続けた。

 

 

 

 

 その後。あの豹柄の男の子を倒した事によって、響は園児達に英雄扱いされ、胴上げを行われたり、彼らを懲らしめてくれたお礼にと、どこから持ってきたのか飴やお菓子を貰ったりした。

 

 響はその後園児たちと戯れ、皆とすっかり溶け込んでいく。

 

 途中で豹柄の男の子やその子分達も起き上がったが、襲いかかる事はせず、響の舎弟になりたいと言い出す始末。

 

 そして、園児の皆から響はいつしか『王さま』と呼ばれる様になった。

 

 

 だがそんな楽しい時も、ついに終わりが来た。

 

 

「響~、今日はもう帰るわよぉ~!」

 

…母に呼ばれ、窓の外を見ると、綺麗な夕陽が射し込んでいる事に気付いた。そう言えば、時間を忘れて楽しんだのはいつぶりだろうか…。

 

…前世の加速世界でも長い間、無制限中立フィールドに留まっていた事はあるが。それはどちらかと言うと加速世界を停めさせない為といった感じが強く、あの世界を満喫できていたのかと聞かれると疑問符が付く。

 

…こんなにたくさんの人に囲まれて、笑った事など前世では一度もない。

 

…でももう、今日は行かなくてはならない。何、しばしのお別れだ。ここには入学手続きをしに来たのだから明日も来れる。

 

 

…少し寂しい気持ちを押さえつけ、バラ組から飛び出していくと、突然後ろから大きな声が聞こえた。

 

「ねぇ!!名前を教えて!!私の名前はこひなた みくって言うんだ!あなたは?」

 

「……」

 

「えっ、今なんて…?もしかしてしゃべれないの?」

 

…あぁ、わからないのだったか。

 

 周りに自分の声が聞こえないのを思い出した響は、落ちていた木の棒を拾うとガリガリと大きなひらがなを園庭に書いた

 

 

 

 「われのなは、たちばな ひびき」と。

 

 

 

「そっか…、ひびきちゃんって言うんだ…!ひびきひびきひびき…。うん、よしっ!これからよろしくねひびきちゃん!!」

 

 響の書き上げた文字を見て、何度も何度も名前を連呼すると、未来は花が咲いたような笑顔を向け、響の名前を呼んだ。

 

 響も、お返しに手を振り、母が運転して持ってきた車に乗り込み、エンジン音を鳴らして幼稚園を後にした。

 

 

「またね…。ひびきちゃん。」

 

女の子の、いや未来のその笑顔は、夕焼けと共に紅く染まっていた

 





 手を広げて前に突き出し、無言で『待て』と示す立花響。その目には真剣さを帯び、左腕には看板が握られていた。

『ここより先はアクセルワールド劇場版の感想である。作者は視聴欲を掻き立てるため僅かながらネタバレをしているが、僅かなネタバレも否と唱える読者はここより退くことを進める』

 看板をくるりと回転させ『以上』と書かれた大文字を見せ、その場にブッ刺すと、立花響はスタスタとその場から退室した……。









 7月最後の週でアクセルワールド・インフィニットバーストを見ました!そこで何と我らが王グリーン・グランデとその幹部《六重装甲》の姿が!!
『お前そんな姿だったのかよッ!!』とツッコミたくなる人もいるので、アクセルワールドの脈動感溢れるアクションが好きな方はぜひ観るべきです! 
 全く出てこなかった黄の幹部も出てくるぞ!可愛いぞ!もうイエローボッチとか言わせない!!

 ただし前半は全てダイジェストなので、観る予定の人はアニメ予習しないでDVDを見るのがオススメだ!安くつくぞ!!


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◇絶対防御が崩れる時(精神的に)

 グリーン・グランデ&《六層装甲(シックス・アーマー)》大活躍の17巻!
 自分は主にジム→ガデッサに変貌したグラファイトさんに驚いたよ!



…こんにちは、ある者はこんばんはと言うべきか。我は元グリーン・グランデの立花響だ。

 

…我が前回、この幼稚園に入学手続きをして早半年。我は無事入学をしてあの騒動があったバラ組に入る事になった。

 

…豹柄の男の子も、あの騒動の事は秘密にしてくれたようで、噂も立っていなかった。PKなどを警戒していたのだが、根は優しいのだな。

 

…そうそう、最近我には悩みがある。それは…、

 

「ひびき~♪いっしょにトイレ行こっ!」

 

………未来の事だ(汗)

 

…我も、前世でそう長く生きた訳ではないが、時間が何万倍にも伸びる加速世界に没頭する様になってからは、精神年齢が実年齢を追い越し、大体換算するとそこらの老人と変わらない思考をする様になってしまった。

 

…我が普通のこの年齢の女の子ならば「うんっ♪行こ~」で終わるのだろうが、生憎我はもう中身ジジイ同然の心は男、身体は女なのだ。

 

…初トイレは顔真っ赤にして真上を向いていたり、服を脱ぐのも母に任せっきりだ。お風呂も無論、タオルを巻かないと全く入れない。何日も入らない、いや入れない日々が続いた事もある。

 

…まあ結論を言うと、スゲェ恥ずかしい。という奴だ。

 

…いや、この半年に、事あるごとに様々な行事に誘ってくれた未来の好意が嫌なわけではない。むしろ この幼稚園の事を隅々まで教えてくれた未来の頼みなら断る理由もない。

 

…だが、だがトイレだけはホント勘弁していただきたい!幼子と小便など警察沙汰だ!!

 

「………!」ブンブンブン

 

 響は猛烈に首を横に降り、腕をクロスさせXを作った。

 

「響ちゃん、トイレ…」

 

ブンブンブン!!

 

 X クロスッ!

 

「ト…」

 

ブンブンブンブンブンブン!!

 

  X クロォォォスッ!

 

「うっ…、ふぇえ…!」

 

…………………泣くなよォ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時、友に涙を流させないために、王は何か、男として大切な何かを捨てた…。

 

 

 

 

 幼稚園からの帰り、響の頭の中にはもう何も入らず、加速した訳でもないのにあの光景だけがリプートされ続けていた…。

 

「今日のようちえん楽しかったね♪ひびきちゃん」

 

 響の大切な物を奪ってしまったとは知らず、のんきな未来ちゃん。

 

 彼女はきっと何も奪ってないよと言うだろう。だがあえて言おう。

 

 あなたはとんでもない物を盗んでいきました、響の心です。と

 

「 」ウンソウデスネ

 

 もはや…を付ける余裕すら消え、白く変色した元白の王…、いや違った。響ちゃん。

 

 そこへ車が通ったが、包丁に真っ二つに斬られるように、響にぶつかった瞬間2つに裂けた。ベリリッと

 

 未来も響も会話に夢中(?)で気付いてないが、今いるのは道路の上である。急いで逃げないと大惨事が起きてしまう!車が!

 

 すると、未来が道路の上でまるまっている一匹の子猫を見つける。

 

「うわぁ…!見て見てひびきちゃん、ねこさんだよ!」

「 」ウンソウデスネ

 

 目をキラキラさせた未来は、響から少し離れると、道路のなかにいた子猫を抱き上げる。

 

《みぃ~》

「わぁ~、かわいい~♪」

「 」ウンソウデスネ……ン!?

 

(…いかん!ここは道路の上か!?なっ!)

 

 子猫を見るために頭を上げた事で、ここが車の通る路上だと判断し、一気に意識を回復させた響。

 

 正気に戻った王は、即座に周りを見渡し危険物を確認する。

 

 すると、未来と子猫の前にトラックが接近しているではないか。

 響はグリーン・グランデとして培ってきた長年の勘から『あれに未来が当たれば死ぬ』と断定していた!!

 

「………!!(訳)…不味い…!!)」

 

 響は咄嗟に子猫と未来を庇い、盾となった。

 

 

 

 舞い上がる大量の赤い液、少女の悲鳴がこだまする。

 

 

 その驚愕の声は、トラックの絶大な激突音に塞がれ、赤い液体にまみれた響には聞こえなかった…。



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◇そして

  ドチャンーー

 

 響は赤い液体に身体を濡らし、うつ伏せて倒れた。未来の盾となって…。

 

 さすがのグリーン・グランデも、子供の体でトラックを弾き返す事は無理だったらしく、体は痙攣し、弱々しい。

 

 かつて自分のまぁちゃんを助けてくれたあの力強さは、どこにも感じない。

 

 その周りは、赤い液体が路上のコンクリートを侵食するかの様に広がり続けていた。

 

「ひ…ひびきちゃん…?」

 

 幼い未来は、動かなくなった親友の体に触れる。その体は、だんだんと冷えていた。

 

「うそ…うそだよねひびきちゃん…!!おねがいおきて、おきてよぉ!」

 

 ポロポロと涙をこぼす未来の体にも、赤い液体はかかっていた。

 だが初めて出来た友達の危機にそんなことを気にする余裕もなかった。

 

「あっ…!そうだたしか『じんこーこきゅー』をした人がテレビで助かってた、それをすればひびきちゃんも…!」

 

 この赤い液体の量を専門家が見れば、『即死』を宣言しただろう。しかし、この幼い少女がそんな知識を知るはずもなく、まだ空想と現実と違いを知らない子供である未来には、まだ親友を諦めきれなかった。

 

「ひびきちゃん…!!」

 

 未来は、響を助けようと彼女の体を仰向けにし、その赤い液体に震えながらも親友の顔を見る。

 

そこには…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 緑と黒のシマシマを持つ大型果実、スイカが響の顔面にブッ刺さっていた。

 

「えっ?」

 

 一つの可能性が頭の中によぎった未来は、それを手で掴み、引っ張る。

 

 するとスポンという景気のいい音と共に赤い液体が飛び散り、濡れた顔を出した響が口の中の赤い果肉や黒く小さい種を吐き出した。

 

「…ゲホッ!エホッ、ゴホッ…!」

「ああ…!よかった!ひびきちゃんが生きてる…!」

 

 起き上がり、咳き込み響に未来は瞳を潤ませる。

 

 すると離れた場所で、ムキムキで顔がゴツいトラックの運転手の大声が響いた。

 

「なっ!なんじゃあこりゃあ!?奇妙だ!何て奇妙だ!!トラックの下に子供が大の字に手を広げたみてぇな穴が開通してやがる!?しかも積み荷のスイカがァアァァァ!!」

 

 その絶叫を聞いて未来は、子供の身ながら悟った。

 

 響が自分を庇って前に出た際。あまりにも響が硬すぎた為に、トラックのスピードと相まってトラックを貫通してしまったのだ。そう、豆腐が何の抵抗もなく壊せるのと同じ様に。

 

 そしてその時に、積み荷のスイカが響の体にぶつかってしまい、その時に果汁を浴びて赤く染まり、さらに先ほどのスイカが響の顔面に刺さって、響を呼吸困難に陥らせ。その結果響が倒れてスイカの果汁を辺りに飛び散らせ、あの状況を作り出してしまったのだと。

 

「…………。(訳)ん…、息ができる…)」

 

「あ…、ひびきちゃん…!よかったぁぁ…、よかったよぉぉぉ!」

 

《ミィ~♪》ペロペロ

 

 友達を失ったと思っていた未来は、生きていた嬉しさのあまり泣いて響に抱きついた。その間に子猫はスイカの汁にまみれた響の頬を舐める。

 

「………」////

 

 響は女の子に抱き付かれた事に照れながらも、周りに人が集まって来たのを見て未来にジェスチャーで意思を伝える。『急いでここから逃げよう』と。

 

「うんわかった。ここは私の家のそばだからそこに行こっ!今日はおかあさんがいないから、ベトベトでも大丈夫だよ!」

 

 そう言って快く自分の家を提供してくれた未来に感謝しながら、赤く染まった二人は拾った猫と共にその道路を後にした

 




 今見てみるとホントつたない文章ですねぇ~。こっばずかしくなってきます。(/ω\)

 たまに見直して見ると「昔に比べれば成長してるじゃないか」って元気づけられますね。


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◇友達の家とお風呂と子猫の名

今回、意外な形でグリーン・グランデの側近、アイアン・パウンドが登場します!

後ロリ百合に注意!!


…こんばんは。前回、未来を守る為に交通事故(後の『車真っ二つ事件』)を起こしてしまった元グリーン・グランデ、響だ。

 

…現在、スイカの汁まみれなので物陰に隠れながら、一番近いと言う未来の家へ歩いている途中だ。

 

…友の為に男としてのプライドを捨てたのに、それを引きずって幼き友を危険に晒してしまうとは…。

 

…一人の王として、一人のバーストリンカーとして非常に情けない醜態を晒してしまった。二つ共『元』がついてしまうが…。

 

…我が不注意なばかりに未来を交通事故に遭遇するとい

うトラウマにあわせてしまった。

 なのにあの子は気丈に我の事を心配して、今、自分の家へ我を連れて行こうとしてくれている。

 

…この未来の他人を思いやるこの優しさは一体、何処から生まれたのだろうか…。

 やはりご両親からのご寵愛の賜物なのだろうか?

 

「ついた!ここが私のお家だよひびきちゃん!」

 

…ん、ここが未来の家か…、なかなか大きいな…。屋根は暗い蒼で、そこ以外は玄関含め全て白か…。未来の家はお金持ちなのだろうか。

 

「ちょっとまっててね、私がうらぐちからげんかんあけてくるから!」

 

…可愛らしい声でそう言うと、未来は家の反対側とと走っていき姿が見えなくなる。

 しばらくすると家の中からトタトタと言う走り音が聞こえ、そこから玄関を開けて我の目の前に出てきた。

 

 何だか、さっき見た時より顔がキレイなような…。

 

「おまたせひびきちゃん!私の家にどーぞっ♪ 」

 

 

◇――小日向家・リビング――◇

 

 

 家の中に入り、汚れた上着を脱いで未来に筆記で

『おふろのおけか、バケツにみずを入れて、入れたらわれをよんでくれ』と頼んだ後。響は改めて小日向家の部屋を見渡していた。

 

 ちなみに子猫は響の腕の中にいる。

 

(…しかし、中も本当に広いな。上にはシャンデリアまである…。こんな所に我がお邪魔して良かったのだろうかと少し心配になるな…。)

 

…そう考えていると、未来の声が聞こえてきた。

 

「ひびきちゃーん!おふろわいたよ~!」

 

…え"っ?我は確か、桶かバケツに水をと言ってたハズなのだが…?ハズだよな…!?

 

 

 

 

――――――◇

 

 

 

 

…もしかしたら、我は何か言い間違いをしてしまったのかも知れない。そう思った我は、何故お風呂のお湯を溜めたのか聞いてみる事にした。

 

「うん、たしかにひびきちゃんはおみずいれてって言ったよ。でもひびきちゃんの体もベトベトだったからもう体もいっしょにあらった方がいいんじゃないかな~って思って…」

 

…ああそうか…、我を気遣って入れてくれたのだな…。

 

なら…。

 

「…………………ッ!!(訳)…せめて、…せめて一人で入らせてくれぇぇぇぇッ!!)」

 

「え? ひびきちゃん今なんて?」

 

…そう、今現在、我は未来と一緒にお風呂に入っているのである。

 ああ、我がお風呂の使い方を教えてくれなんて言わなければこんな事にはーーー。

 

 黒の王辺りに見られたら「このロリコンめ!!」と、言われて斬られそうな光景だ。

 

 ん?男の誇り捨てたんじゃなかったのかと?永い時を共にした性は簡単に捨てきれなかったのだ。

 

…しかし、園児の身でどうやってお風呂を沸かしたのだろうか?気を紛らわす為に聞いてみよう。

 

 キュ、キュ、キュ。

 

…お風呂の湯気で白くなった鏡を使って、響は言葉を書いた。

 

『いったいどうやっておふろのおゆをためたのだ?』 と。するとはっきり未来は答えてくれた。

 

「私のお家オールでんかなんだ、ボタンをおしてできあがりだよ」

 

『ピピッ お風呂が沸きました。ピピッ お風呂が沸きました。』

 

……オール電化貴様アアアアアァァァァァァァァァァ!!

 

…ってんん!?未来の顔がぐちゃぐちゃになっているではないか!何だか顔に絵の具をぶちまけた様な…。まさかーー!

 

…未来は、その我の驚いた顔を見ると、エヘンとまだない胸を張って立ち上がる。幼くとも女なのだから胸を隠してくれ。我も人の事を言えないが。

 

「えへへ、わかったひびきちゃん?私いまママのおけしょうつかってきれいになってるんだよ!」

 

…あぁ、だから玄関を開けた時きれいに見えたのか、その化粧が風呂の水分でぐちゃぐちゃになって今の顔に…。いや違う!

 

…我は高速で『水をかける目をつむって』と書き、未来がそれを最後まで見たのを認識すると、シャワーを動かして未来の顔に水を掛ける。

 

「っ!」

 

…少し驚いた様だが、それでもしっかり目を閉じてくれていた。

 

…そのまま我は、洗顔用と面に彫られていた石鹸を取りだし、泡立てて未来の顔を念入りに洗い、流した。あのドロドロに溶けていた化粧品もきれいに落ちていた。

 

…鏡に付いた湯気をシャワーで洗い流し、未来の肩を叩いて終わった事を伝える。

 

「んっ…?あっ~!!もうっ!何でおけしょうとっちゃたのひびきちゃん!!」

 

…片目を開け、鏡を見た事で化粧が取れたことを知った未来は頬をむくれさせ、怒る。

 まあ子供は知らぬだろうし、未来が怒っても全く怖くない。むしろ愛らしさが勝つ。

 

…その言葉に響はお風呂の端にあった水滴を指で伝い、文字の形に並べることで対応した。

 

 そこには「ソっチガキレイ」と書かれていた。

 

…子供の柔らかい肌で化粧をすると顔が荒れてしまう。

 だからといってストレートに『体に悪い』と書いてしまって化粧を恐怖する可能性も捨てきれないので、すっぴんを褒める事で怖がらせずかつ、また化粧を使う可能性を排除したのだ。

 

 

『幼子に対するそのご気遣い、さすがグリーン・グランデ様!!そこに痺れる憧れるぅぅー!!』

byアイアン・パウンド  ←グリーン・グランデの側近。

 

…黙るがいいパウンド。貴様を呼んだつもりはない。

 

…ん、未来が水滴文字を見たまま動かない…。どうしたのだ?

 

「ひびきちゃん、あの…ごめんね…。」

 

…トラックの事か。

 

「あの…、こんなになっちゃたけど、ひびきちゃんがうちにきてくれたこと…うれしくて、つい、あんなことしちゃったんだ…」

 

…そうか、我を歓迎するために化粧をしてもてなそうとしたのだな…。そうか。

 

…これが友達か…。

 

「……………(訳)…心配するな未来、我はこの通りピンピンしている。化粧をしてまで我を迎え入れようとしてくれた事は感謝する…。だがもう化粧はするな、今の未来の優しさで十分だからな…。)」

「………」

 

 そういった響は未来の肩に手を置き、水滴文字を指差す。そしてやさしく未来の頭を撫でた。

 

 グリーン・グランデはーー…響はこの時未来の表情に気づかなかったが、その時の未来の心には、様々な感情がまぜこぜになっていた。

 

 

 自分の顔を褒めてくれた嬉しさ、許してくれた事への喜び、トラックに打ち勝つ強さ、そして―

 

 

 友達という意味ではない…。彼女に、響に『愛されたい』という、本来あり得ない、否、あり得てはいけない禁断の感情が…、織り混ぜられていた。

 

 

 ぜんぶ…ぜんぶ、ホシイ。ホシイヨ…、響が…欲しいよ…。

 

 

 

「ねえ…、ひびきちゃん…」

 

「…?」

 

「響ちゃんの名前、呼び捨てで呼んでも、いいかな…?」

 

「……?…」コクンッ

 

 その時、未来はとても五歳だとは思えない妖艶な笑顔を、こっそりと浮かべた。

 

 しかし、その時彼女は顔を伏せていたため、響にソレを知るすべはなかったーーー。

 

 

―――――◇

 

…それから我は、未来に洗いっこしようと誘われ、断りきれずに洗いあう事になった。

 

…未来は風呂場で動くのに慣れてないのか、よく手を滑らせて我の体に当たってしまったり、我の前で転げてしまったりと危なっかしいので、汚れた服を洗うのは我が担当する事した。

 

…しかし、我らは一つの問題を解決せねばならない。

 

…それは二人で拾ってしまったこの猫をどうするかだ。正確にはこの猫の名前だ。今は未来が紙に候補を考え、書いている。

 

…ここは普通飼うかどうかの議論が普通だろうが、未来が候補を書いている間、試しに家に電話してみた所。

 

「飼ってもいいわよ。可愛い響のためにもなるもの♪」

 

…と、一つ返事で許可が降りてしまったのだ。そこは少し口論になる所であろうに、まぁ話が早くて助かるが…。

 

「ひびき~、私のかけたよ~。」

 

…あ、次は我の番か、いい名前を考えねばな。

 

 

 

 ◇―結果―◇

 

未来の命名候補

 

・響未(ひびみ)

・キティちゃん

・みびき(未来の"み"と響のひ"びき")

・ぬこ

・ポヨピョ

・もう一人の私、響に可愛がられてね。

 

響の命名候補

 

・ブラッド・レパード

・クロム・ディザスター

・アイアン・キャット

・アイアン・パウンド

・白いの

・黒いの

 

……何か可笑しいとか言うなよ…。我自身、自分のネーミングセンスの無さには呆れてる。ほぼパクりだ。

 

…さて、候補は揃った。ここからは硬い頭を柔らかくして考えなければまるないな。

 




と言うわけで猫の名前よろしく!

(丸投げする形になってしまってすいませぇぇん!!!(土下座!)


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◇立花響。中学生になってすぐの話

 修学旅行の合間にちょくちょく書いて出来た物です。

 最後がその合間に書いた物が消えてしまって殴り書き状態になっていたので、2014年の6/10に修正しました。

 これからも、応援的な理由で誤字脱字指摘の理由で、この小説をよろしくお願いいたします。




あと きたおかブルーは ふりがなづけを おぼえた!


……こんにちは、またはおはよう。あれから時が経ち、中学生になったグリーン・グランデ入り立花響だ。

 

…幼稚園の時の話が一気に飛んでるのは、そうしないと作者が「最低は白銀の翼と交錯する」と同じく更新が進まない事態になると判断したからだ。 (結局なってしまったが)

 

…そして、今回の話は我の日常の一コマである。と言っておこう。

 

 

 

 

…朝、我は起きた。最近の悩みは、もう学生なので眠る時間に限りができてしまった事だ。

…断じてニート思考などではない。加速さえできれば解決できた問題なのだ。

 

…だが、外には一緒に登校しようと未来が待ってくれている、急がねばな。

…最近は家に泊まって朝ごはんを一緒に食べることの多い親友だが、最近少し入り浸り過ぎではないかと思う。

 

…いや、未だ女性の裸に馴れない我の着替えを手伝ってくれるのは嬉しいが、最初の頃はアホ程大量の荷物を持って来て同棲する気満々だわ、親に断りもなくいきなり家に来たから未来の親が「未来がいなくなった」と軽くパニックを起こしてたくらいだしな。

 

…まあ幼稚園卒業で泣いてたし、未来は人付き合いが苦手な子だ。

…だからこそ数少ない友達である我と一緒にいたいと思うのも無理はないと思うし、昔、未来の家に来た時も彼女に甘えてしまったからな…。

 

「あら響、起きたの?おはよう。」

 

「…………」(訳)おはようございます、母上。あ、ご飯は…。)

 

「大盛りでしょ?分かってるわよ♪」

 

…ちなみに、我の最近の好物は大盛りご飯だ。ご飯はおかずだ。しかし何故だろ、この少女の姿になってから無性にご飯が食べたくて仕方がないのだ。我ながら不思議な物だ。

…前世ではインスタント料理ばかり食べていて空想上の存在だったのに、今ではご飯の米には品種から生産地までこだわる様になった。ホント不思議な話だ。

 

「おぉ、おはよう響。今日も学校か?頑張れよっ!」

 

「………」(訳)いいですとも) コクン

 

「……えっ?スマンもう一回言って」

 

…この人は我の今世の父親、つまり立花響のお父さんだ。会社で忙しく、最近は会えないがよい父親だ。

 

…この人も、全く喋らない我を大切に育ててくれた大切な家族の一人だ。まぁ最初の頃は余りにも我が喋らないので声帯に異常があるんじゃないかと慌てていたが、昔は親が心配してくれているという事に心打たれたものだ。

 

 

…そして…

 

「みぃ~」

 

…こいつが我が未来と共に助け、我が米を与えすぎてまん丸に太った(?)もう一人の家族。

 

「………」(訳)おはよう。)

 

 

 

 

 

 

猫の名前結果発表♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」(訳)みき)

 

「みぃ??」←声小さくて何言ってんのか分かんなかった

 

…この子の名は『みき』だ。

 

 

―――通学路―――◇

 

 

…ご飯を味わって食べていたかったが未来を待たせていた為、急いで食べて現在通学路を登校中の響だ。

 

…今は近くの小学生&中学生達で少し道が混雑しているが。我は一番後ろで未来と過去話(かこばな)の最中だ。

 

「…………」(訳)みきを助け、学校に行く様になってもう半年か…。早いものだな…)

 

「フフッ響、その言い方だとまるでおじいちゃんだよ?」

 

「…………」(訳)ホウ。それじゃあ未来はお婆さんか?)

 

「…あ…!もうっ!それじゃまるで私たち老夫婦じゃない!もう響ったら知らないっ!!」

 

…未来はそう言われると顔を真っ赤にしてそっぽをむく。

フッ、いつも泊まりに来てお風呂だの着替えだので我をもて遊ぶお返しだ。

 

…しかし、この半年でよく我の声を理解できるようになったな未来は…。我が側近アイアン・パウンドでも、知り合って10年でやっと我の声を理解できたというのに本当に耳がいい。最近ピアノを習ってる成果と言う奴なのか?

 

…もし初の七王会議の時に、彼女が我の側近をしていたら、我の考えたニュービー(新人)保護計画を無駄にする事も無かったか…。

…あの頃はニュービーが初期に持っている100BP(バーストポイント)を狙っての新人狩りが横行していたからな…、

…あと、あの時お菓子持って来てOKだったか聞けたかもしれん。あの時は周りの王達の殺気によって産まれた気まずさに、胡座を組んで必死に菓子を隠してたからな…。

 ↑

(当時、グリーン・グランデのリアル年齢は小5と推測されます)

 

…まあそんな辛い思い出は置いておくとして、そろそろ他の班と合流するはずだ。つまりもうじき…。

 

「おはようビッキー」

「おっーすっ響!」

「おはようございます、響さん」

 

…噂をすれば、だな。

 

「…………」(訳)…うむ、おはよう。創世くん、詩織さん、弓美ちゃん)

 

…我の声は小さいので、我はその声に腕を振って答えた。

 

「…ん?何も聞こえなかったけど私の事何か勘違いしてないビッキー?主に男とか」

 

…この黒鉄色のショートカットが特徴的な男の子は『安藤創世』

 

…我に『ビッキー』未来を『ヒナ』と言うように、親しい者に奇妙なニックネームを着ける癖がある子で、名前の読みは『創世(くりよ)』と読むのだが、我は『そうせい』と呼んでいる。え?創世くん男の子じゃないの?

 

「ねえねえ響!昨日の仮面ライダー鎧○見た?凄いよね極○ームズの力は!!私Fe○rのギルガ○ッシュを思い出したよ!」

 

「…………」

 

「弓美ちゃん。響は『我は前のカチ○キアーム○の方が好きだな、あの重装甲が良い。そそる』って言ってるよ」

 

「う~んそっかぁ~…、私はあの極アーム○の神秘的なデザイン好きだけどな~。よしっ!そうとなればなるべきこそ!響!今日私ん()に来てね!全話揃ってるから鎧○一気読みしよう!」グッ!

 

…そのイイ笑顔に、我も親指を立てて返す。

 

「……!」グッ!

 

「弓美ちゃん。響が『お前は本当に中学生か?だがその話乗った!』って…。えぇ!?ダメだよ響!弓美ちゃん見たいなオタクさんになっちゃうよ!?」

 

「なにそれ酷いっ!でもうちの業界ではご褒美ですっ!」

 

…この中学生にしてすでにオタクの境地に達している栗髪ツインテールは『坂場弓美』正直将来が心配なアホっ子だ。

…そして見ての通りアニメだの特撮だのが大好きで。アニソンも聞くらしい。

 

…今度我にも聞かせてくれ。

 

「あらあら、私の事も忘れないで紹介して下さいね響さん♪」

 

…忘れてはいない。

 

…最後に紹介するのは、金髪の綺麗な髪が特徴の帰国子女『寺島詩織さん』

…何故かさん付けを強いられるお嬢様で、いつも給食のご飯を分けてくれるいい子である。そのため、我は本当にこの子には頭が上がらない。お嬢様言葉であの『鉄腕』を思い出すからではないぞ?

 

…鉄腕といえば、詩織さんも確か親戚が凄い人だと言っていたな。

 

…いや、それはどうでも良い話だ。この子ら3人と我&未来を合わせて仲良し5人組と呼ばれている。これが重要なのだ。

 

…皆、余り喋らない我に構ってくれる良い子達だ。我の今世は本当に、出会いに恵まれている。

 

…前世では親や友達はいないも同然、加速世界でも緑の王とわかるだけで謙遠され、比較的仲間の多かった黎明期の連中も、今はほとんどが全損していなくなってしまった。BBの前にプレイしていたAAやCCの仲間達とも、行方すら知れない…。

 

…それに比べれば今は、我を愛してくれる家族が。友達がそばにいる。こんな当たり前をどんなに夢見たことか―――

 

 

「ーーん?ビッキー泣いてない?」

 

…違うぞ創世くん。これは果汁だ、オレン○アームズの果汁が目に入って痛いだけだ。

 

「イヤそっちの方がまずいよ!?」

 

「泣くの?響泣くの?」

 

…未来…、どこから出したそのカメラは。

 

「オレンジ○ームズどこオ○ンジアームズどこォォ!?」

 

…ああ、嬉しいな、こんな"当たり前"が享受できる日が来るとは…。

 

 

 

 

 前を歩く子供達((((なんだあれ…(汗))))

 

 

 

 

―響たちが通う中学校―――◇

 

 

 

 

…ふう、やっと苦手な国語が終わった。なぜそこまで書き順を覚えねばならんのかよくわからんな。文字がわかればどうでもよかろうに。

 

…ちなみにこの学校に入った理由は…、まあ家に近かったからだ。べ、別に未来がいないと寂しかったとかそんなんじゃないんだからなっ。

   ↑

 (立花響のツンデレを妄想して下さい)

 

……スマン辞めよう。我ながらスゴい気色悪いな、ゴツい緑の巨人がツンデレ…、誰得だまったく…。

 

 

 ―別クラス―

 

 

「ゴボップッ」

「先生ェェェ!!未来ちゃんの鼻から赤いシャンパンが!!」

「未来さん!?鼻血噴き出してどうしたんですかぁ!?」

 

 

 

…ちなみに今、我のいる○年○組は3限目の体育をしている真っ最中だ。

 

…今日の授業内容は身体測定。前世では全く運動できなかったが今では大体できる。だが、その《大体》に至るまでがなかなか苦労した…。

 

…グリーン・グランデの防御力と重さをこの体が受け継いでいると知ったのは二歳の時。ハイハイして壁に激突し、貫通したのが始まりだった。

 

(その様を目撃したおばあちゃん曰く「雄々しい獅子の後ろ姿を見た様じゃった」らしく。現在写真として残っている。)

 

…毎夜毎夜、だんだん防御力と共に上がる体重に対応すべく。優しい両親に知られぬよう真夜中に歩く練習をして、立ち上がったのが四歳の時。

 

…地面をヒビ入れて走らぬように踏み所の調整ができるようになったのは幼稚園に入る直前だった。いやはや苦労した。

 

…加速世界ならスゴいで済むが、さすがに生娘としてこの防御力が知れ渡ると色々面倒が起きそうだからな。

 

…ぬ?それじゃあ今体重どれぐらいだ…だと?それはもう少し仲良くなったら教えてあげる。だ。

 

…さて次の時間割は…。

 

『音楽』

 

「……………」←響レイプ目

 

 

 

―音楽室―――◇

 

 

「響さん!」

 

 ビクゥ

 

「今は音楽の時間なのですよ!一人だけ声を出さないで怠けないで下さい!!」

 

「……………!!」(訳)いや先生我…、いえ私はきちんと声を出していて、それを周りの人たちが聞き取れないだけなのです!!)

 

「何を言ってるのか全くわかりませんコウモリの超音波じゃあるまいし!声を出しなさい声をおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「……」(訳)しっ…しかし――)

 

「問答無用ぉぉぉぉぉぉぉうっ!!鉄☆拳☆制☆裁ィイィイィィィィィ!!」

 

「…………………!!」(訳)あああああ!!)

 

 

 緑の王も、先生には勝なわなかったよ…

 

 

◇―昼休み・屋上―◇

 

 

 

「……………………」(訳)…人類は呪われているのではないかと思うのだ…。主に我がな。)

 

…なんなのだあの先生(バケモノ)は、我の防御力を無視してダメージを通すとは…!確かにきちんと声を出せない我も悪かろうが鉄☆拳☆制☆裁はないと思うのだ…。ああ…、頭が痛い…。たんこぶできてるぅ…。

 

「はい響玉ねぎ」「ほいっ私からはピーマン」

 

 パクっ

 

…弓美ちゃんと詩織さんが我に食べ物恵んでくれてた…美味い…。インスタントでない生の野菜は美味いぞ…!

 

「ビッキー、みんなの嫌いな物食べさせられてるの気づいてる?」

 

「おかしいよね響、私キチンと聞こえるのに…よしよし。」

 

…おぉう、未来…、我が友よ…!

 

「いやいや、あれは全く全然聞こえないってビッキー。

センセが怒るのも無理ないって。私らでも翻訳無理だもんアンタの声は」

 

…酷いぞソーセージ!あの先生の味方をするのか!?

 

…その時、未来がいきなり我の頭に覆い被さる様に抱きついた。ちょっ胸ぇぇ…!

 

「いいのっ!響の声は私だけに聞こえればいいの!」

 

「ティひひひ♪いきなり嫁発言ですかぁ~♪」

 

弓美が口に手を当て、シシシと八重歯を見せながら(かが)んで未来を見下ろす形で笑っている。

 

「あっちがっ…!これは違うの!聞かないで響!」

 

「あらあらうふふ♪どうです響さん。お嫁さん発言を聞いた感想はっ♪」

 

「…………!」バシバシ

 

「お嫁さんのお胸に夢中で聞こえないみたいですね♪」

 

「響ぃ~、そこは聞いてよぉ…」

 

…何だか未来の泣く声は聞こえるのだがなぁ…、覆い被さられて聞こえない。あとマシュマロの様に柔らかい胸ぇぇ…。

 

「あの~、響さんと言う人はいますでしょうか?」

 

…何とか未来の拘束を逃れて立つと、その丁度目の前に一人の男の子が立っていた。

 

「……………」(訳)ん、この子は確か『悠詞』くんだったか…。我々と同い年の…)

 

…未来はうなだれて動けそうにないので筆記で答える。

 

『我に何用か?』と

 

…そのメッセージを見た悠詞くんは、ニッコリと太陽の様な爽やかな笑みを浮かべてこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕と付き合ってくれませんか?響さん」

 

………はぁ?

 




クロム・ディザスターの名前もきちんと使わせて貰うのでよろしく!!

3/3 身体能力向上をカットさせていただきました。違和感あったんで


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◇響、運命の日の前夜その1

どーもお久しぶりです。ただいまヴィヴィオとパープル・ソーンの中の人が同じと驚愕している北岡ブルーです!

お久なこの更新、待っててくれた人イルカナー?

…手をあげてくれている人がいますように…(ボソッ)。

んじゃあ言ってみょー!



 

…な、何と言ったのだ悠詞君は…?おっお付き合いだと…?中身男の我に告白だとぉぉ!?

 

お……おっといかんいかん!…今まで待たせてすまなかった!この小説の前の読者様方!!!ただいま前世含めて初めての告白に大慌てしているグリーン・ぐりゃぁ(パニクりすぎて噛んだ)

 

…くっ…ぅぉぉお…ッ!! (まさかこの我が噛むとは…!!口を抑えてうずくまりたいぞ……!)

 

…いや落ち着け我よ!確か前世の加速世界ではチョコ型アイテムにポイントを入れて好きな人に上げるという『バレンタインデーイベント』があったではないか!!その時我はたくさんのチョコを尊敬してます的な意味でレギオンメンバーからもらって――

 

「ん…、聞こえませんでしたか響さん…。それなら僕は何度でも言いますよ…?『僕と付き合って下さい』。」

 

……のわぁぁぁぁぁアアアアッッ~~!!?何でこんなこっ恥ずかしいセリフが吐けるのだこの子わ!?本当に我らと同じ歳か!?

 

 

(ねぇ知ってる?この人一応王様だったんだよ?)↑

 

 

「おぉ~!あの話題沸騰中のイケメン大金持ちのシンユー君が無口っ子なビッキーに告白するなんて!人生何が起こるかわかんないもんだなぁ~!ビッキーも相変わらず無口だけど赤く…なってる気がするし、うまく行きそうなのかな?」

 

「来ましたわ…! 今まさに響さんの春がキマシタワ~~~!!」

 

「これはもしかしてアソコの絶対防御が崩れるのも早いかもぉ!!」

 

…って、なんで君らは我の後ろの木の影に隠れておめめキラキラさせているのだ!というかどこから生えてきたんだその木は!!ここは屋上だぞ!?

 

「あの…、響さん…?お返事を…ヒッ!?」

 

…おおおぉっ!今ぁ!?今言わないと駄目なのか!?だめなのかぁぁ……ってヒッ?意外と緊張してたのか君も?

 

 

 

 

  ◆――――未来サイド――――◆

 

 

 

 その声が聞こえた時。私は一瞬世界が暗くなったと勘違いをするほど ゾッとした。

 

「僕ト付キ合ッテクレマセンカァァ。響サァアァン?」

 

 ベタリ、ベタリとその言葉がヘドロのように響にまとわりつく。私にはそう見えた。

 

 気がついたら私は響の後ろにいた。

 

錯覚?

 

違う

 

私には分かるんだ

 

ヤメテヨ

 

響を汚さないでよ

 

ほら、響も顔を青くして困ってるよ。わからないの? (※響は顔を紅くしております)

 

ヤメテヨ…

 

ヤメテ…

 

ヤメロッ!!

 

 

「ヒィッ!?」

 

 

………アレ?

 

私、まだ声も出して無いのに悠ナントカ君が私を見てビックリした

 

「うっ……。うわああああァァァァ……!」

 

 帰っちゃった…。あ、階段で滑って転げ落ちちゃった。でもいいの、響は無事なら。

 

「……………?(訳)…んぬ?…一体どういうことなんだ?急に帰ってしまったぞ悠詞君)

 

「人違いしちゃったんじゃないかなぁ」 ニッコォォ

 

「………。………!? (訳)おぉ…、そう…だったのか…。何か安心したような悲しいような…否悲しいな…。顔赤くした我がバカ見たいではないか…。って未来いつの間に我の後ろに!?レディオか未来は!)」

 

 ふふ。やっぱりこっちの響の方が可愛いぃ。変な事もされてないみたいだし良かったぁ。

 

 でも、やっぱりさっきのが怖かったのかな?僅かに響の顔が疲れてる様に見える。私以外に響の変化は分からないから、何とかしてあげたい…

 

 あっ、そうだ!

 

 

 

  ◇――――悠詞君サイド――――◇

 

 

 やぁやぁモテない男性諸君!僕の名前は悠詞、いきなりだけど僕の正体は転生者!つまり主人公になる男だ!

 

 前世の僕の家は大金持ちだったから、何でも自由に手に入れた。顔もイケメンだったから学校ではモテまくりだったさ。

 

 成績優秀でもあったから学校でも優遇されてたしね!

 

 まさにその時の僕は物語と言う名の人生を思うがままに生きる、主人公そのものだった!

 

 だがある日、車に轢かれた死んでしまった僕は美人な女神様の所へと導かれ、そこで僕はあの時死ぬべき人間ではなかったと教えられたんだ。まあ当然だね!

 

《アイツ》じゃあるまいし♪

 

 そして僕は、女神から死なせてしまったお詫びとして三つの能力を貰い、僕の知っている空想世界へと飛ばしてもらう事になったんだ。テンプレな展開だね。

 

 ちなみに僕の前にも間違って死んだ転生者はいたらしいけど、そいつはどうやら眠った所を誰かに頭を殺られて死んじゃって、グースカピースカ寝たままここに導かれたんだって。

 

 そして女神も転生特典を渡す為に起こそうとしたんだけど、彼に手をはたかれたんで仕方なく彼が死ぬ前に見ていたアニメの世界に転生させたんだとさ。

 

 フッ、馬鹿馬鹿しい。実に馬鹿馬鹿しい。

 

 僕はそんなおマヌケじゃない。転生オリ主としての人生を生きてやる。

 

 選ばれた世界の名はここ「戦姫絶唱シンフォギア」の世界。美少女がたくさんいる世界だ。いい世界を選んでくれたね女神様。

 

 そして主人公となる僕が選んだ特典は『その世界に似合う最強の能力』(主人公らしくヒロインピンチの時に発動するオマケ付き)と『高いカリスマ』…。

 

 そして3つ目は『永久に転生出来る能力』!

 

 この3の能力が重要なんだ。この能力さえあれば、その世界の戦いが終わって主人公じゃなくなっても、シンフォギア世界の女に飽きても自殺すれば別の世界に行ける。

 

 そうすれば1と2が適応されて新しい最強の能力と新しいヒロイン、新しい仲間ができて新しい戦いの中でもう一度主人公になれる。

 最高じゃないか!普通の奴らならゲートオブバビロンだのエクスカリバーだのを選ぶ所を!!

 

 やっぱり僕は普通の奴らとはひと味、いやいやふた味も違うんだ!

 

 さぁ、始めるとするか…。僕の新たな第二の、黄金の人生を、

 

 この学校でね!

 

 

 

 

 という訳で成長した僕は、親の反対をガン無視してこの世界の『元』主人公『立花響』のいる中学校に入った。

 所詮ニセの親だし言うことを聞く必要は無い。

 

 アニメで中学校の名前が語られてないのにどうしてわかったかって?フフン、僕のカリスマにやられたその手に詳しい人物に調べてもらったのさ。

 

 でもその学校で僕は奇妙な噂を聞いた。

 僕の知る立花響と言う人物は本来、明るく感情豊かな性格をしていて、成績は中の下なはずなんだ。

 

 だけどモブの噂によると、立花響は無表情無口で何考えているのかよくわからない、成績優秀な生徒らしいのだ。クールビューティーかよ似合わねぇな。

 

 あぁ、そういえば女神が言ってたな、世界は未来に進み、選択する度に枝分かれし、伸びていくと…。

 

 僕が飛ばされる世界もあくまで『戦姫絶唱シンフォギア』の無数にあるパラレルワールド(可能性)の一つだと、そう言っていた。

 

 でもそれ聞いた時僕言ったよね?僕の知っているシンフォギアと限りなく同じ所に飛ばしてくれって!?あの駄女神め!

 

 …まあいいや、情報の限りここの響は原作通り女。男の響よりマシだ。 キタエテマスカラ(`鬼´)

 

 それに論より証拠。モブのデマな可能性もあるし、場所を聞き出して本物を見てみればわかる!!どうかデマであってくれ!

 

 

ーー屋上ーー

 

 

 ハァ…ハァ…や、やっと見つけた…。あの未来に顔を押さえられているのが響だな。

 

 何であんな事になってんだ?高校で出会うハズのモブ女三人もいるし。まあいい、息を整えてぇ~。次に身だしなみ……よしOK。

 

 カリスマが周りのモブに引っ掛かるとヤだから一点集中でっと…。さぁ一気に墜ちて貰おうか立花響。未来の腕の拘束から逃れた所を見計らって…。

 

「あの~、響さんと言う人はいますでしょうか?」(我がハーレムとなって永遠を生きるがいいッ!立花響ィィイ――!!)

 

 作戦はこうだ。僕の数少ない弱点の一つにカリスマを対象を一人に集中した状態で声を掛けると、余程の実力を持ってない者はそのカリスマに当てられて気を失う。

 

 その弱点を利用して彼女の気を失わせてそのまま僕が保健室へ。後は…分かるだろ?

 

 え?何で全力でしないのかって?あまりに強いと一点集中ができずに他のが引っ掛かるのと、本気のカリスマを弱い奴に浴びせると狂うからだよ。

 

「………………」 シーン…。

 

 てっ…、え…?お、可笑しい!もう一度!もう一度一点集中っ!

 

「………………」 シーン…。

 

 そ…そんなバカな!?僕の一点集中カリスマを受けても倒れないだと!?

 

 この頃の響は普通の女と同じはず!しかしこっちをずっと見たままだし…。

 

 すると、僕が内心困惑しているのを尻目に響がポケットから何かを取り出した。えっ、メモ帳っ?

 

 メモ帳を取り出した響はかなりの速さでペンを動かし、こちらにメモ帳を向ける。そこにはこう書かれていた。

 

『我に何用か?』…だとっ!?しかも筆ペンで書いた!そして達筆ゥ!←(ちょっとズレた方向で上達した響、犯人は弓美)

 

 ……くそ!響は無口だと言うあの噂はマジだったのか…最悪だ!あのクソ女神を殴ってやりたい!

 

 いや、だが、無口響もけっこう可愛いな。オリジナルとのギャップ萌えというか…。何だかこの響からは美しい大樹の様な印象を感じる…。参ったな…、これは。

 

 

 どうしても欲しくなってきた…!この()は僕のそばでこそ(まこと)にふさわしい。

 

 よし、一点集中が効かないのなら全力でやってやろう。後ろにいるモブ女三人は廃人同然になるだろうが、そんなの関係ない。この女を僕の物にする為の犠牲だ!言葉と合わせてーーー

 

「響さん、僕とお付き合いしてくれませんか?」(全力っ!どうだ堕ちたか!)

 

「…………………」

 

 よし、顔をうつ向かせたな!これは近い!

 

「ん、聞こえませんでしたか響さん?それなら僕は何度でもいいますよ…?『僕と付き合って下さい』

(墜ちろおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!立花響ィィィィィィイイイ!!!)

 

「………………………!」ポフッ

 

 ヨッシャアアッ!!!顔真っ赤にしてキノコ湯気が立ったあああ!!!! 墜っちたあああああ!!!! うつ向いてはいるが視線も感じるぅ! これだよぉ俺が欲しかったのはこの感じだぁ!! よしっ了承の言葉を言わせよう!

 

これで記念すべきシンフォギアのハーレム第一号完成だああッ!!!

 

「あの…、響さん…?お返事を…」

 

 そう思って響の口から僕の勝利宣言、いや了承の返事を聞こうとした

 

 

 その時

 

 

 

 

 

 

 

 

 響の左肩に、血の涙を走らせる眼球があるのに気付いて、背骨の芯から悪寒が走った。

 

 その恐怖に呼応するように、周りの景色も紅く変わる。

 

「ヒイイイッ!!?」

 

 何だ?

 

 何だ何だナンダナンダ何だアレッ!!??

 

 目玉ァ!?あんなのさっきまでなかったぞ!?

 

 オッオイ響!?何うつむいたまんまなんだよ!お前の肩眼球から出てる血でもう真っ赤だそ!!

 

 どういう事だ…、気付いてないのか!?いや違う止まっている!停止してるんだテレビの一時停止の様に!!こんな事ができるシンフォギアキャラなんていない!まさか、他の転生者…!! 他の奴がいるなんて聞いてないぞあのクソ女神ィィ!!

 

 ヤバい!今のオレが使えるのはカリスマと無限転生能力だけだ!戦闘能力を手にいれるのを原作開始時にしたのが仇になっちなったぜクソがっ!!

 

《カ……ェ…》

 

 ハ…?何だ!何か聞こえ――

 

《カエレェェェェェェェェェェェェェエ"エ"ェエエェェェエ"ェエ"ェェェェェエ"ェェエェエエ"エ"エ"ェェェェェエェエェェェェェェエエ"ェェェエェェエェエエエエェェェェェエェエェェェェェェエエェェェェェエエエエエエエッ!!!》

 

 

 

 《死ぬ》

 

 このまま突っ立ていたら、響ごと殺される。この鳴き声をあげている《ナニか》に

 

 

 

 

 その複数の断末魔を思わせる絶叫を聞いた瞬間、悠詞はただただ、それだけを知った。

 

「うっ…うわああああぁァァァァ!!!」

 

 そこからの悠詞の選択は早かった。

 

 180度真後ろに向かって、自分が苦労して登ってきた階段を一目散に閃光の如き素早さで目指したのだ。

 

 響を置いて

 

 その無茶な方向転換によってゴキッと足首を捻挫した事にも気付かず、顔が様々な体液でグチャグチャになって汁を滴らせても拭くことなく一目散に階段を目指した。

 

 死にたくない。ただそれだけを繰り返し願って。

 

 だが、悠詞は急ぎ過ぎた。

 

「しっしまった!とっ…止まれない…あがッ!?」

 

 急ぎ過ぎて身体が前のめりになっていた事と足を挫いた事に恐怖で気づかなかった事が災いして、悠詞は階段を踏み外し、上から盛大に転げ落ちた。そりゃあもう盛大に。

 

 一打目で角にディープキスをかまして血を吹き出し、二打目で背中、尾骨を打ち、三打目で挫いた足をピンポイントで打ちつけてようやく痛みを(二倍増しで)痛感。

 二、三回転がった後、折り返し地点である床に体を叩きつけてようやく止まる。

 

 巻き上げられていた砂埃が落ちて現わになったのは、余裕しゃくしゃくだった冒頭とは似ても似つかない間抜けな醜態を晒した悠詞の姿だった。

 

 せめての幸運は、周りに人がいない屋上階段だった事だろう。いくらカリスマの力があれどこんなマヌケを晒す男についてくるのは信頼のある者のみだ。そして、彼にそんなヤツはいない。

 

「あ"…あ"がが…あ"ああぁ…」

 

 ちっ…チキショオオオオオオォォォォォォォ!!!

 

 何でだ!!何で僕が!この悠詞がこんな目にあわなきゃいけないんだァ!!良いだろう!!!オタクのクソ転生者が主人公である僕を邪魔したらどうなるか目にもの見せてやるヴ!

 

 この事態は間違いなく転生者のせい、そう確定した悠詞は手際よく懐からスマホを取り出す。

 

 階段から落ちた時に入ったであろうヒビがあるが、それすら無視してどこかに電話を繋げる。彼の頭の中にはもう自分の主人公計画を邪魔したヤツへの報復しかなかった。

 

 彼は眼を血走らせ、口から血を吐きながらもその怨念の篭った言葉を怒号と共に伝えた。

 

「オイイッ!!! 僕だ悠詞だっ!今度ツヴァイウイングのライブがあんだろ!?18才以下の少年少女がライブ来れない様にそのチケットを買収して破棄しろボケ!」

 

『…っ!このがk…ゆっ悠詞の若っ!?い…いったいどうしたんですかい!?』

 

 出た相手は悠詞のカリスマ支配下にあるヤクザらしいが、そのヤクザすらも彼の怒号に驚き、カリスマがとけかけたのか、彼の事をガキと言いかける。

 

『18才以下に買われたチケットの買収なんて…、何故急にそんなことーー「いいから命令通りにガキ共からチケット買収しやがれェ!!出来なきゃ僕のカリスマ下にある軍やサツでテメェらの組なぶり殺しにするぞ!」っ!……わかりやした…若…』

 

 ガチャンと、無理難題を押し付けられた向こうの電話が切れる。

 その音を聞いた悠詞は力なく壁に背中を押し付けてずり落ち、横に倒れ笑う。

 

「は…はヒャヒャヒャ……。ザマァ…!ザマァ見ろォクソ転生者がァ!僕の響陥落を邪魔したと言うことはお前もあの響が欲しかったんだろ…?ならばあのライブ事件を利用しない手はないィ!! 転生者ってんならガキだろうから、どんな力持ってようが権力と金の力には抗えまいィィィ!!フヒヒヒ ヒヤァ―――――――――ハハハハハハハハハハハハハハァ ザマァアアアアアwwwwwww!! ザマァアアアアアwwwwwww!!」

 

 もう主人公ではなく吐き気のする邪悪である。

 

「だがしかぁし!僕と響の分はもう前もって買ってありここにアリィィィ―――…?」

 

 逆転の一手を打った事で先程とは一転、仰向けになり、高笑いを上げながらポケットをまさぐると、その大切な一手であるチケットが…なくなっていることに気付く

 

「……は?僕と響のチケットは?」

 

 唖然とした彼はその後、響達がいなくなった屋上で無くしたチケットを探し回り、日付が変わるまで降りてくる事はなかったそうな…

 

 

 ◇―放課後の響サイド―◇

 

 

………………ズーン…

 

…ンンゥ…いかんせんキツイな…いや、年齢=(前世も含めて)恋人いないから今回のも何かの間違いだと認識する事も、出来たハズなのに…

 

(グリーン・グランデの精神年齢はメソポタミア文明~現代と同い年と言う説もあります。)

 

…悠詞君の言動が余りも本気に見えたから、ついその気になってしまった…。

…フフ…元男だったのにな。(白い目)

 

…午後の授業の時も、我の事を見かねた創世や詩織さんは元気づけようと様々な場面で気を使ってくれたし、弓美も「アニメにはよくあるシチュだよ!」と慰めて…?くれた。

 

…だが、それでもなお我はあの事を引きずり続け、ついには放課後になってしまった。我は部活はしてないので一人寂しく、夕焼けをバックに帰宅中だ。一人寂しくな。

 

…前世と比べて少し…いやかなり精神が脆くなった気がするのは気のせいではないのだろう。もしかしたら肉体に精神が引っ張られているのかもしれない。

 

「………。…(訳)不幸よ…全くもって不幸よな…」

 

……くそ、こんなに悲しいのに涙も出ぬわ…。鉄仮面か我の顔は。

 

「………。(訳)家に帰って、みきでも愛でてご飯食べよう…」

 

…そう思い立ち、家への歩みを早めた時だった。後ろから細くなった影が一本、伸びて来た。

 

…その影を辿る様に振り向くと、夕日を背景に見覚えのある真っ白なリボンが見えた。

 

「響ぃ~!」

 

……未来?

 

 

 ◇

 

 

「………。(訳)……いったいどうしたのだ未来…?今日は部活じゃなかったのか?」

 

「うん、だけど早めに終わったの。だから一緒に帰ろ?(本当は響が心配だったから集中できなくて、早上がりさせてもらったんだけど…、真面目な響には言えないかな)」

 

…我はその言葉に頷いて答えると、未来は我の歩幅に合わせ、隣で歩き始めた。しばらくの間はお互い無言だったが、しばらく歩くと未来が口を開いた。

 

「ねぇ響、『ふらわー』行かない?」

 

「……?(訳)な、なんだいきなり?」

 

「うん。少しお腹が空いちゃって、ね」

 

 そう言うと顔をはにかませる未来。

 

 そういえば、未来の部活は陸上部だったか…。我も少し腹が空いたな…。と考え財布を取りだし中身を確認。

 

 当然と言うべきか前世で高クオリティのゲームをやっていた身の上、前世と比べても全くお金を使っておらず、中身はたくさんあった。

 

「…迷惑だったかな…?」

 

「…………。(訳)いや大丈夫だ、行ける」

 

 未来が心配したが、我のお財布事情は安泰である事を中身を見せて伝えると、我と未来は踵を揃えてふらわーを目指した。

 




はいどーも!お久しぶりの小説になってしまいました北岡ブルーです。
もしここおかしいとかどうゆう事?と言う所あったら優しく教えてねー!豆腐メンタル崩壊するからねー?

◆転生者紹介

野山 悠詞

見た目は金髪青目にクールな眼鏡をかけた、優しい系のイケメン

前世では『最低は白銀の翼は交錯する』の転生者『少年』と同じ学校に通っていたボンボン。いじめの主犯格の一人でもある。悠詞は転生してからの名前

様々な才能に恵まれており、その上金持ちの坊っちゃんだった為に、大抵のことは何でも出来ていた。彼はそんな自分のことをこの世界(現実世界)の『主人公』だと考えていた。

性格は表面上イケメンを装っているが、その実困難やミスに直面した事がない故に少しの事で逆上し乱暴に働く。だが知恵や周りの人間を使って、なるべく自分の手は汚さずになぶり殺し、横目で見て悦に浸るタイプである。

この性格なため、戦闘ではビビること確定。いや、そもそも恐怖にあったことがないため無謀に突っ込むかもしれない。

女神に貰った能力は3つ

1《その世界で最強になりゆる能力》文字通りの意味で、『コントロール』出来ればその転生世界で最強になりゆる能力を授けられる能力。その世界で違和感のない能力をランダムで選ぶ。悠詞はこれに《ヒロインピンチ時に能力解放》と言う条件を付ける事でリスクを消した。

2《高いカリスマ性》これも文字通りの能力。非常に高いカリスマ性を授けられる。だが悠詞の性格上、その性質は《カリスマ》と言うよりも《洗脳》に近く、強いショックを受けると元に戻る。現状最も使用している能力。リスクは不明

3《無限転生》ある意味悠詞が最も欲しがった力。死ぬ→転生を無限に繰り返し、生き続ける事が出来るある意味最強の能力。新しい転生世界に転生する度に1が適応され新たな力を手に入る仕組みである。ただし、同じ世界に転生することは出来ない。リスクは不明


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◇響、運命の日の前夜その2

…こんばんは、催促をしてくれてまでこの話を楽しみにしてくれた人よ。ただいま沈みゆく夕焼けをバックに、盟友未来と『ふらわー』に向かっている立花響だ。我の一人称視点が久しぶりな気がするのは全て北岡ブルーって奴の仕業なんだ。

 

……分かる者がいるか怪しいネタは置いといて、暇潰しがてら、我らが目指している店『ふらわー』の説明をするとしようか。

 

…『ふらわー』とは、我立花響、隣の未来を初めとする女子の中で最近有名になっているお好み焼き屋で、レトロな雰囲気とヘルシーかつ美味なお好み焼きが楽しめる隠れた名店だ。

 

…店の店長も中々のよい性格をしていて、そっち方面でも人気がある。念のために言っておくが女性だ。

 

…我としても、前世では滅多に楽しめないレトロな内装と面白い大人に会えると言うことで結構気に入ってる。

 

「響!『ふらわー』見えてきたよ~!」

 

…よほど腹が空いていたのか、珍しく明るい声を発する未来に、我はいつも通りの頷きで答えた。

 

 

 ◇

 

 

「まあぁ~!いらっしゃあい響ちゃん未来ちゃん!他の三人は一緒じゃないのかぁい?」

 

「……。(訳)こんばんは店ちょ」

 

「へ?今なんて言ったんだい?」

 

…元気満点のおおらかな声で出迎えてくれたこの人こそこの『ふらわー』の店長「店ちょさん」だ。本名は誰も知らない、本人もボケて本名を教えない。誰も知らない。ねーみんぐばい創世だ。我じゃないぞ

 

「こんばんは店長さん。ちなみに響もそう言ってます。今回は私達二人きりです」

 

…未来がいつも通りに我の言語通訳を交わし、席に付くと、「今日はお安くしとくよぉ!」とシルバーに光るヘラを店ちょがクルクルと回す。

 

…その途中で未来が思い出したかの様に、驚きの注文を交わした。

 

「あっ店長さん。今日は自分たちで作れるお好み焼きをお願いします」

 

「あららぁ?いつもの店長手作りお好み焼きじゃないのぉ?」

 

「はい」

 

…その「ごめんなさい店長さん」とお詫びを入れる未来の顔を見て、我も我ながら、唖然としていた。

 

…なぜなら、未来はお好み焼きを焼くのが下手な故に、自分の分はいつも店ちょに焼いて貰っていたからだ。

初めて来た時に、友達(より響)にカッコいい所でも見せようとしたのか勢いよくアツアツのお好み焼きを我の顔面にぶつけたのがトラウマになったのかと思っていたが、どうやら違った様だ。まあよく考えて見れば、未来は我の防御カを知っているハズなのでトラウマになるはずはないのだが。

 

「へい『お好みお玉』二丁! ゆっくりしていってね!」

 

…得意技を披露できなかった店ちょだが、彼女の接客態度は相変わらずで、どんぶりクラスの巨大お玉の中にお好み焼きの具が入ったセルフサービス料理『お好みお玉』を出してくれた。

 

…よし焼くか…。と腕をまくり、金属ベラを取ろうとしたその時、金属ベラの上に見覚えのある手が覆い被さった。顔を上げると、その手は案の定未来だった。

 

「ごめんなさい響。今日は、私に先やらせて…」

 

「……。………。(訳)ム…そうか、気をつけろよ。油跳ねるからな」

 

「…っ!うん、ありがとう響…それじゃあするね」

 

…我の了承を得て、水に入った魚の様に元気な声を出した未来は、早速油の敷かれた鉄板の上にお玉の中の具を一気に入掻き込んだ。

 

「わ…!」

 

「………!」

 

…だが勢いで注いだせいか、油の滑りが良すぎたせいか、具が鉄板の上を滑らかに伸びてしまい。大きいサイズである鉄板の半分を殆ど覆い尽くしてしまった。

 

…流石にこれは一人では無理だ。そう判断した我はもう一組の金属ベラに手を掛け助太刀しようとすると、大砲を撃った様な、しかし確かな決意と熱意を感じさせる大きな声が上がり、我は体が止まってしまった。

 

 

 

「大丈夫っ!大丈夫だから響は見てて!大丈夫、大丈夫だからっ!!!」

 

 

 

「……!(訳)未来…?」

 

……かつて、緑の王と称された我の前世では、様々な攻撃が降りかかった。我の肉体を覆い隠せる程の閃光のごときレーザーをくらった事もあるし、我を後退させる程の衝撃にも、何度かあった事がある。

 

…だから何より驚いた。

 

…ただの『声』だけで驚き、椅子の下で僅かに後ずさった自分が。それをさせた 未来が。

 

 

「見ててね…、響」

 

 

…そのあとの我はもう、石の様に固まって見守る事しか出来なかった。

 

…固唾を飲み、焼け上がってきた具の端と端に金属ベラを潜り込ませる未来。それを見て、我の心の中で静かにこぼれ落ちた、二つの言葉があった。

 

 

…失敗させたくない。 させない。

 

 

…と言う、確かな硬い想いが

 

「………。(訳)…奥だ」

 

「…え?」

 

我の声を聞いて、お好み焼きに向いていた未来の目が我の目と合う

 

「………。……。(訳)上げる時、腕もお好み焼きの奥に潜り込ませて思い切りひっくり返せ。熱いのはお好み焼きの熱の一瞬だけ、上げる時に思い切り歯車を回す感じでひっくり返せば、この油ならなんとかひっくり返る」

 

「…アドバイスありがとう響…、行くよ…!」

 

…要らぬ世話だっただろうか。そんな事を僅かに心配したが、未来は我の言葉に笑顔で答えると全神経をお好み焼きに注ぎ、顔をしかめる。お好み焼きは未来が火を強くしたのか、表面が裏返す必要もない位に焼き上がっている。未来もそれを見てか大きな皿を横に置いて準備する

 

「……やあっ!!」

 

…そこからの未来の動作は素早かった。未来は先程のアドバイスを聞き入れてくれた様で、ヘラと共にその手をお好み焼きの下、その奥まで入れ込み、その勢いに乗って思い切り上へと腕を上げる。それを滑走路にする様にお好み焼きも高く宙を舞った。

 

…ブオン、ブオンと空中回転を決めるお好み焼きを尻目に未来が用意した大きな皿を持ち上げる。未来がお好み焼きの落ちる方向に合わせて皿の端を持った為揺らぐが、反対側の端を我が持った事で何とか受け止める姿勢を磐石にする。

 

…ドス!とお好み焼きは勢いよく皿の上に着陸し、その衝撃に僅かながら皿が揺れ、未来と我は目をつむってしまう。

 

…皿を安全圏に下ろし、目を開けるとそこには、とても素人が作ったとは思えない程キレイにできたお好み焼き(特大)がそこにあった。

 

「―――! やった…! やったぁ!!」

 

「…………シッ!!!」グッ!

 

未来のお好み焼きリベンジが大成功に終わり、椅子の上で小さくピョンピョンと跳ねて喜ぶ未来に合わせて、我も思わず小さなガッツポーズを上げてしまう。

 

「響響!出来た…!出来たよ!私出来たよ!」

 

「…!」コクコク!

 

未来はこの成功が夢じゃない事を我の頷きで確認すると、さらにもう一声「やったあぁぁ!!」と歓喜の声を上げるのだった…。

 

 

 ◇

 

 

「もう夜になっちゃったねぇ」

 

「……。(そうだな、にしても今日は月がキレイだ。)」

 

…『ふらわー』で未来のリベンジミッションを楽しんで時間を忘れ、未来の作った特大お好み焼きを食べきって外に出た頃には、もう夜になっていた。未来の成功を祝してくれているかの様に、空には明るく蒼い月がスポットライトとなって小さな成功者を照らしてくれていた。

 

…月に照らされていた未来をなんとなく見つめているうちに、一つ ふとした疑問が浮かんできた。

 

「…(訳)所で…、」

 

「ん?」

 

「…………。(訳)何で急に『ふらわー』に行こうといい出したのだ?未来はいつもお腹がすいたら近くのコンビニでチョコボー買うのが日課ではなかったか?」

 

…そう言うと未来は目に見えて慌て出した。

 

「えぇ!?そ…そうだったかな~?」

 

「…?(訳)そだぞ?何ならいつもよる近くの公園のクズカゴ見てみるといい、未来の食べたチョコボーの空で一杯だぞ?」

 

「うわぁ~!体重計に乗るの怖いよぉ~!」

 

…その話を聞くと耳を塞いでイヤイヤと首を左右に振る未来。

 

…大丈夫だ。我が乗った後の体重計に乗れば一ミリも動かん。

 

「とっ…とにかくっ!今日はそんな気分だったの!リベンジもしたかったしそれでいいでしょ?」

 

「……。(訳)あぁあぁ。それでいいさ」

 

「んもぉ~、信じてよぉ~!響ィ~!」

 

…全く、未来といると飽きないな。

 

 

 

 ◇―まさかまさかの店ちょサイド―◇

 

 

…その頃店ちょは閉店した店の中、未来と響のいたテーブルの上で、特大お好み焼きを食べたが為に残ってしまった響の分のお好お玉を使ってお好み焼きを作っていた。

 

そこは流石店長と言うべきか、片手で頬杖付いたままの不安定な状態で、すらすらとキレイなお好み焼きを作っている。

 

今店ちょの頭の中にあったのは、未来の事だった。

 

「全く、知らん顔も楽じゃないねぇ…未来ちゃん毎日ここに来て練習してたクセに…」

 

まぁ、確かにあんな大きなお好み焼きを作ったのは初めてなんだけどさ。と言うと、まるでカードを裏返すかの様な手軽さでお好み焼きを表裏と、彼女愛用の特性金属ベラでひっくり返し続ける。

 

そんな彼女の頭の中で浮かぶのは、毎日毎日時間があればここに来て、なけなしのお金を払い、たくさん失敗してそれを口に運ぶ。涙目の少女の姿だった。

 

不思議に思って何故毎日来るのか聞いた事があった。その答えは別の意味で店ちょを驚かせた。

 

『響に、私のきちんと出来たお好み焼きを食べさせてあげたい。笑顔にさせてあげたい』

 

それが答えだった。彼女は自分のリベンジではなく、前に自分のミスの巻き添えを食らわせて迷惑をかけた響に、今度は自分のお好み焼きを食べて笑って欲しいと言う思いだけで、中学生には重いお金をはたいてまで練習しに来ていたのだ。

 

にしても何故今日だったのだろうか?

 

今の彼女ならいつもの5人組の輪の中でも慌てずにうまいお好み焼きを作れたハズなのに…。そっちの方が無口な響二人きりよりもたくさんの歓声なども起きて賑やかになっただろうに…

 

そう言えば、響の顔が僅かに影が差していた気がする。それに関係があるのだろうか。

 

「正直に言って…響ちゃんは無口なのも相まって、何考えているのかが全く解らないのよねぇ…あの子余程の事がないと顔の表情変えないから…」

 

初めて会った時なんて、余りにも表情を変えないから仮面でも被ってるのかと思ったもんねぇ。と呟いて、焼け上がったお好み焼きを金属ベラでピンとコインの様に弾いて、皿の上に落とした。

 

「でも、そんな響ちゃんでも未来ちゃんと一緒なら表情を感じさせてくれるから、不気味がらずに仲良くなれたのよねぇ」

 

表裏一体 そんな言葉が相応しい二人だ。もし異性だったらきっとピッタリだったろうに。そう惜しみながら、かつおぶしとソースであえた質素なお好み焼きを噛み締める店ちょだった…。

 

 

 ◇―響サイド―◇

 

…戻り戻って我だ、響だ。さっき未来の家に着いた所なんだが、未来の両親に玄関先で怒られてしまった。前世ではこんな風に心配してくれた大人に怒られた事がなかったため真摯に聞いていたのだが、夜も遅いのでと終わってしまった。少し残念だ。

 

「……響はMっ気の素質アリっと…大丈夫、言…攻…鍛え…きっと…」ブツブツ

 

「……………?(訳)…何書いてる未来?」

 

「あっ!!!いやなんでもないよ!?」

 

…おかしいな…?先ほど未来の手元に『響ノート20019』とか何とかと書かれたノートが見えた気がするんだが消えた…。まさか未来に何かしらの能力が有るわけはないし気のせいか。疲れたんだな。←(読者よ、これが現実逃避だ)

 

そんな事を考えていると、未来が「あっそうだ!」とポケットから何かを取り出した。

 

「響!良かったら明日ツヴァイウィングのライブ行かない?」

 

その手に握られていたのは二枚のチケットだった。いやにクシャクシャだが…ツヴァイウィングってなんだ?

 

「……。(訳)…ツヴァイ…ウィング…?何だソレ?何かのアニメか?」

 

「響違うよぉ!もぉ~だんだん弓美にアニヲタ浸食されてる~!しっかりしてよ響ぃ~!」

 

…あうあうあうあうあうあうあ←肩を掴まれ、ガクガクと揺らされている我

 

…しばらくカクカクすると気が済んだのか、手を離した未来は今度はその手を交えてツヴァイウィングの説明をしてくれた。

 

「いい響?ツヴァイウィングって言うのは最近人気急上昇中のツインボーカルユニットなんだよ?今ツアーの最中で今度この近くでライブを初めるんだって。しかも相方の風鳴翼さんの母校が近いからってツヴァイウィング専用の巨大ステージで!」

 

「…………。(訳)ほぉ~、それは凄まじいな。ニャーKBに迫る勢いじゃないか」

 

「にゃ…ニャーKB…?」

 

「……。(訳)にしてもよくそんなライブチケットを手に入れたな。どこで売ってたんだ?」

 

そう質問してみると、何だか顔を黒くして答えを帰してきた。

 

「………えっとね、(響をたぶらかそうとした)人から(せめて私が有効活用してやろうと)もらったの」

 

「……。(訳)もらった…か、親戚か?」

 

「うん♪(響を想う人としては)親戚だね♪(まぁ天地の差だけど)」

 

…そうだなぁ…、どうせ明日は何もないし、未来と一緒ならば遠出も悪くまい。我の親ならすぐに了承してくれるだろう。

 

「…………。(訳)ああいいぞ。行こうか、ライブ」

 

…そう返事を返すと、未来はその黒くなっていた顔をまるで太陽の様に明るくして集合場所や時間を教えてくれた。

 

「それじゃあ明日、10時の○○バス駅前でね!また明日!」

 

「………。(訳)あぁ、また明日」

 

…そう未来と明日の約束を交わすと、我は内心意気揚々とさせながら帰路を後にした。

 

 

…それが、悲しき歌と、『絶対防御』の戦いの、再来の日になるとも知らずに…




何か余りコメント来ないなぁ…(´・ω・`)

なんでなんやぁ…?

あと補足の説明をすると、今回未来がお好み焼きに挑戦したのは、響が悠詞君に言い寄られたせいで疲れていると考え、未来の私お好み焼き出来る様になったよパフォーマンスで元気になってもらいたいと考えたからです。


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番外編・未来の華麗な1日 中学生の朝編

遅れまして申し訳ありませんでした!北岡ブルーです!
今回は前いい放った通りに二話に続き、三話目も投稿しようと思います!


第1は前回の話の流れ的に番外編だせるかな?と思い、リハビリに書いたウラドさんソラさんからの要望『未来の華麗な1日』をお送りします!!




 皆さん、いつも響の活躍を見てくれてありがとうございます。私は『いつも』響と一緒にいる小日向未来です。

 

 今日はちょっと視点を変えて、私の1日をご紹介しようと思います。皆に響の魅力がわかるまで頑張るぞっと!

 

 

◇―朝―◇

 

 

 菫色の下地にユリの花がプリントされた布団が、モゾモゾと微かに揺れる。ピチャピチャと、水が跳ねる音と声がするのは多分気のせいだろう。きっと。

 

 この布団の中にいるのが、今回の主役である。

 

 部屋は女の子らしく可愛い部屋だ。下にはホコリ一つ落ちておらず、壁は汚れを知らぬ白。周りには木製のタンスやお客様用の椅子と共に、クッションの代わりになりそうな人形が置かれている。

 

 まさに「女の子」の部屋である。ガキィン!と言う音が出そうな存在感の『鋼の金庫』が置かれている以外は。

 

 ピp√

 

 すると突然、彼女の目覚めを知らせる鐘、いや目覚ましがなる。だがその前に黙れと言う様に布団から腕が伸び、『ダァン!!』とムチの様にしなるチョップが叩き込まれる。

 

 表面が凹み、粉砕された哀れな時計が最期の力を振り絞って指した時間は12時。つまり今日の『0時』であった。

 

 シュルルと腕が引っ込み、布団が山なりに盛り上がる。次の瞬間布団はずり落ちて、中に隠れていた黒髪が現わとなる。

 

「んんぅ…、はぁ…」

 

 一人の少女が、伸びの姿勢でその姿を現した。

年齢は中校生くらいで、首にかかる程伸びた黒髪が特徴的だ。体は太いわけでも細いわけでもなく、布団半分で隠れながらも魅力のプロモーションを保っている。

 

 そしてその顔は、ほのかな色気と甘い息に濡れていた。

 

「よし、いつも通りに起きれた」

 

 少女はスクッと起き上がると金庫に近づき、手慣れた操作で鍵を開け中身のリボンを取り出すと、その中におかれていたリボンとあわせてポニーテールを造り出す。

 

これぞ彼女のトレードマーク、彼女の名は『小日向 未来』である。

 

 

 

 

 

 未来の1日は、今日と言う日が来た瞬間始まる。睡眠については毎日8時に寝ているので大丈夫だ。それでも早いため、毎日きちんと寝ないと背は伸びないと言うが、

 

「大きくなったら響をだっこ♪同~じだったら響の隣っ♪小さかったら響にだっこ♪」

 

 と鼻歌歌うくらいだから心配ナッシングである。本人は。

 ちなみに両親はまだ起きていないため、一人でキッチンに立ち料理を作っている。

 

 今日のメニューはハムエッグとブルーベリージャムを乗せたパンにココアミルクと、軽い物である。

 

 未来は大事な日課があるため、料理を作るために着けていたエプロンを外すとあっという間に食べ、外へと出ていった。

 外はまだ暗…、と言うより完全に闇であり、蛍光灯も全力稼働中の中を、眠気であくびをしながら歩く。

 

するとその前を三台のバイクが足止めした。

 

「おっとぉ~!ゴメンよ嬢ちゃんここから先は行き止まりぃ~♪」

 

「ん…?」

 

 眠気で目をこすり、前を見てみると2、3人の男が時代遅れのパンクファッションで行き先を封じていた。リーダーっぽい男はにやつきながら汚ならしく喋る。

 

「こんな夜中に一体どうしたんだい?も・し・か・し・てぇ~~~っ!イケない事シにいくのかなぁ~!!」

 

「あの…すみません、私大事な用があって…」

 

「ナニしに行くのかなぁぁぁぁ~~♪♪♪」

 

「んん…」

 

 他の道を行くと手遅れになる事を経験で知っている未来は、眠気を押さえて退いて貰おうとするが全く話を聞いてくれない。その問答を後ろの男達はヒヒヒと笑って見ている。

 

 時間が勿体ないから仕方ない、いつも通り(・・・・・・)にアレをしようかと、手を横に出した。

 

 

 

 

 

 

 

「遅れちゃった…!急がなきゃ!あぁ起きてないよね響ッ…!」

 

 その数分後、三人の男を■■■■した未来は、のちに彼らを追いかけて来たらしい警察も■■し、大急ぎで目的の場所へと向かっていた。しかし、その心配は0時に出た事もあって杞憂に終わる。

 

 その目的地とは未来にとっての聖堂(カテドラル)、『立花 響』の家である。和風の木造建家は、未来の親友の雰囲気にとてもよく似合っていた。

 未来は大急ぎで響の部屋の窓を確認するが。灯りは見受けられない。

 

「あぁ良かった…、まだ起きてなかった…。ありがとう響…」

 

 その暗さに涙を浮かべ、神に手を合わせる未来。まだ夜中の0時半なので起きているハズがないんだが、響が寝ている事を知った未来は涙を振り払い、目的を果たすための行動を開始する。

 

「よしっ、まずはお邪魔しなきゃ…」

 

 そう言うと未来はピッキングに使う針金とその他諸々の侵入用道具を幼稚園時代に使っていたバックから取り出すと、玄関の鍵穴に差し込む。

 しばらく針金でこねくり回していると「カチャン」と解除された音が聞こえた。

 

 その音を聞いてパアッと花開くような笑顔を浮かべた未来は、早速家の中へと「失礼しま~す」といってお邪魔する。

 正直いって響の歴史を採しゅ…、辿りたい気分だったが、それを首を絞める思いで圧し殺し、静かに響の部屋へと急ぐ。

 

(響の部屋は…あったッ!)

 

 発見した興奮のあまり、氷の床を滑る様に響の部屋へと侵…お邪魔する未来。8時間ぶりの再開と同時に親友の部屋を見渡す。

 

 畳と木造で出来た部屋は、まさに親友の精神の化身といって良いくらい素晴らしい出来だった。

 それに合わせる様に置かれた机や椅子などが最高にいい味を出している。掃除も畳相手では難しいハズなのに非常にキレイで、100京点の(二重丸)を出してあげたい程だ。そして、何よりのワンポイントが机の中心に置かれた盆栽。

 

「盆栽のやり方」だの「匠の盆栽」だのと書かれた解説書が近くに鎮座するそれは、響の愛情たっぷりに育てられたに違いない。

 

ジッ…と見つめる未来。

 

 …いやいや、そんな盆栽は一旦置いといて、来た目的を果たそう。と頭を振って殺意を消した未来は部屋の奥へと移動し、遂に親友と対面する。

 

「~~~~~っ!!!!」

 

 未来が会いたくて震える程に求めていた光景が目に入り、声にならない声が出そうになって口を抑える。あの出来事(・・・・・・)を気にしてか床にベッドを敷き寝る親友は、まさにリンゴをかじって眠りに落ちた白雪姫のようだ。

 

 その両手には花束の代わりに未来がおこづかいを貯めて買ったヒヨコ人形が抱きしめられている。寝ぼけて抱いたのだろうが自分も響からもらったリボンを大事にしているので、思わず狂喜してしまいそうになる。でもガマン、濡れている感覚がしてもガマン。

 

(…寝ている響が見られるのはこの時間だけだもの。たくさん見て、色々しておかなくちゃ)

 

「………………」

 

(ふふっ、『眠い…』だって。夢の中でもお眠さんなんだね、響…)

 

 物音一つしない空間の中で、無口な響の寝言も無論一言も聞こえない。しかし未来には聞こえるようで、時々聞こえる響の寝言に首を振り向き一言一句微笑む。そしてその傍ら、手を止めずに謎の作業を続ける。

 

出来たようだ。

 

「よし出来た。お母さんから借りてきた美肌用品の簡易式!」

 

 これが未来の毎朝の日課『響を美人に計画』である。未来はムスッとして

 

「響ったら女の子なのに全く美容に気を使わないもの、キレイな顔してるのにもったいないなぁ」

 

 と言いながら美肌用品を響のほっぺに塗り始める。 この美肌用品簡易式は、未来が『美人になりたい!!』と、初めての駄々をこねて買ってもらった高級化粧水や美肌成分を未来が合成し、簡単にすむように魔改造した代物だ。

 

その能力の高さはグリーン・グランデの防御力をもってしてもプニプニ卵肌になるほど。

 

 無論、幼き日の過ちを犯さぬようにたくさんの情報を頭に入れている。ぶっちゃけ薬の特許も取れるぐらいには自信がある方だ。

 

 しかし、そんな物に興味など微塵もない。あるのは日々キレイになる響だけだ。

 目をつむれば今でも目に浮かぶ、自分の事を思って化粧を洗い流してくれた響の姿が、その一糸纏わぬ幼児体型が…、ゲフンゲフン。

 

 だからこそ、今度は自分の番なのだ、『響はそのままでも十分綺麗だよ』と言ってあげたいのだ。

 

「くふ、くふふふふ…、よし終わり。でも、響はもう十分美人なんだから、これする必要あるのかな…?」

 

 血を一筋たらしながらもそれを拭わず、響を美人に計画を完遂させた未来。しかしその十分な親友の可愛さに計画の空しさを感じ始めると、そこでピキーンと妙案が光り、両手をパンとあわせる。

 

「そうだ!響の体にも美肌用品塗っちゃおう!響の体がテカテカしてきっと…、フフフ『響を美人に計画』から『響の全てを美人に計画」に変えておかないとね…」

 

 そうすると未来はシナリオの変更を頭で思考しながら、響のパジャマのボタンに手をかけ始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立花 響の瞳が、うっすらと開き始めた。

 

 




まだまだ~!大至急二話目だ!
遅れましたがウラドさんソラさんありがとうございます(〝⌒∇⌒〝)


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番外編・未来の華麗な1日 中学生の朝編 響VS未来?

オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!

 c=  c= c= c=
c= c=(`·ω·´ )c= c=
c=  c= 入 c= c=
     
↑作者の投稿オラオラッシュ!!


 響のパジャマのボタンを中程まで外した次の瞬間、未来は自分の頭に殺気が迫って来るのを感じた。

 

「…!」

「―――え?」

 

 咄嗟の判断で殺気をかわそうと頭をふせる未来、その上を細い腕が横切った。この部屋でそんな行動が出来る人間など一人しかいない。未来は驚愕した。

 

(そんな…!何で響が起きてるの!?この時間は熟睡してるハズなのに…!この前来た時はずっと起きなかったのに!)

「……ッ!!」

「キャッ!」

 

 気が動転しマトモな行動ができないでいる彼女を、響が布団ごと蹴り上げ吹き飛ばす。幸い、響本人の力が常人と変わらない事と、布団がカバーしてくれたお陰でケガをすることはなかった。

 

しかし、未来は親友に蹴られたと言う真実に絶望する。

 

(響…?ウソ、ウソでしょ?何で私を蹴り上げたの…?)

 

 前を向くと、無表情で胸をシワができるほど抑え、自分に迫る親友の姿が映る。それを見る未来の瞳には、蹴られたショックによる涙が溜まり、捨てられる寸前の子犬のように震えていた。

 

(そんな…)

響は一歩、また一歩と迫り、

(私達…)

その重い口を…

(絶交…?)

開いた。

 

 

「…?」

(え?『だれた貴様?』?)

 

 そのセリフを聞いた事で未来は死人の様になっていた肌の色を元に戻し、活性化した脳で答えにたどり着いた。

 

(そっか…、響はまだ夜目が聞いてないんだ…。と言うことは響のあの蹴りは『私』じゃなくて『家に忍び込んで夜這いを仕掛けようとした変態』に向けられた者!そうだ!響のディフェンスが硬いのは当たり前じゃない!)

 

 ならばと未来は考える。この状況では正直に話しても、響のためにした事とはいえ引かれてしまう可能性が高いだろう、それだけは指20本切られるより嫌だ。ならどうするか。

 

それは…

 

(ごめんなさい響!)

「!」

 

 逃げの一択であった。彼女は布団を放り投げ念入りに響の視界を奪うと、畳をひっぺがしあらかじめ作って置いた脱出経路へと逃げ込もうとする。

 しかし流石は元緑の王と言うべきか、布団を押し退け「何でそこに脱出経路が!?」と言うように(未来しか気づけないレベルで)驚くも、一瞬でそれを引っ込めて犯人の裾を捉え、顔を見ようと明かりのスイッチに手を伸ばす。しかし。

 

「……ッ!」

 

明かりがつかない。何度押しても光がつかない。

 

(よかった…!万が一に備えてブレーカー切っておいてよかった!)

 

 よくやった過去の自分!と未来は内心でサムズアップを決めると響に掴まれた裾の端を破き、つむじ風の様に素早い動きで脱出経路へと後にするのだった。

 

「…………」

 

 後に残ったのは、裾の切れ端を掴んだまま立ち尽くし、犯人を蹴りあげたせいで粉砕された盆栽を見てフリーズした立花響だけだったと言う…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇―未来の家―◇

 

「ハッ、ハッハッ、ハァ…ッ、あ…危なかった…!掴まれてたのが裾で良かった!」

 

 その頃、短い人生で手に入れた全スキルを使い、何とか家へと逃げおおせていた未来は、自分のベッドへと倒れふし軽い呼吸困難に陥っていた。

 

「でも…、この一歩踏み間違えたら終わりな感じも、たまにはいいかなぁ…」

 

 しかしその一方で、こういうプレイもなかなかイケるッ!と言う気持ちもあった所は、流石は未来と言うべきか。

 

「あ、服が汗でベトベト…。破れたのは記念に保存しておくとして、他は洗おっと」

 

 学校もあるし。と未来はおもむろに服を脱ぎ始める。破れた服は裾の部分以外全てハサミで切り刻んでゴミ袋に入れると、裾はいつものように(・・・・・・・)お気に入りを金庫の中にいれる。

 

 服は体ごとキレイに洗い、汗を落とすと絞って洗濯機の中へと突っ込む。できるお嫁さんは掃除・洗濯・料理共に上手いのだ。どこに嫁へ行くかは言うまでもあるまい。

 

 その後、時計(二代目)の目覚ましを7時にセットして寝た未来は、起きた後頑張って両親にいい子アピールをして、元気に家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 響の家の前に到着し、朝の事で顔がバレていないだろうかと心配しながら待っていると、響の母親が出てくる。

 

「ごめんね、響ったらまだご飯食べてるのよ。よかったらウチに入る?」

と行ってくれて、危うく心配停止しかける未来だったが何とか息を吹き返すと

 

「大丈夫です!待ってます!」

と焦りながらも明るく元気に答える。(心配停止から息を吹き返すまで0.5秒である)

 

「(あっそうだ。いつも通りに言っておかないと怪しまれるよね) 響~、早くしないと学校遅れるよ~!早く~!」

 

 そう言いながらも実際30分前にスタンバっていた未来は、この時間が好きだ。なぜなら、こうやって催促すると親友の為に急ぐ響のドタバタが聞こえてきて、運がよければ――

 

「…ッ!」

「おはよう響。もうっ…、いつも遅いんだから (うっひゃあああぁ!)」

 

いつもは完璧超人な響の、ちょっとドジな一面が見られるからである。

 

 響には男らしくしようとする変わったクセがあり、持っている服は友達から貰った服以外男物しか持ってないのだ。制服配布の時もそこにこだわり『何とぞ!何とぞ男物を所望するッ!!!』と土下座する程だった。

 

 だがダメだ。そんな事はこの未来が許さないぜ?そう思った未来も、この時だけは心を鬼にして封じた。

 だからこそ、この全て遠き理想郷(アヴァロン)が実現したのである。

 

 響は女物の服を着れない事を未来は知っている。しかしこの歳で母親にお願いする事も出来なかったのだろう、いろんな所が崩れていた。

 肌の露出を抑える為に着ているのであろうタイツも、ミスで少し破け色気をだす為の淫具へと変わり。スカートも少しズレ、タイツもあわさってピンクのパンツが僅かに合間を覗く。

 片方はみ出したシャツはドジっぷりと慌てっぷりを増幅させ、その胸元には桜の花びらのようなブラが隠れていた。

 

 ブラチラである。

 

 ブラチラである。

 

 ブ ラ チ ラ であるッ!!!! (大事な事なので三回言いましたッ!!)

 

…最高だ。さて、これを他の害虫共に見られる前に何とかしなければ。未来はもう言い慣れたセリフを言って響のボタンに手をかける。

 

「全くもう~。服メチャクチャだよ?ほら私に見せて」

「……」

「『いつもすまないな未来』って…いつもの事だから馴れたよ。もう」

 

 こうして未来は服直しを口実に響のブラに顔を近づけると、学校行く時に朝の事をさりげなく聞いておこうかなぁ。と、朝の事態の把握に思案するのであった。

 

 

 これが、未来がいつも送っている朝である。無論、ここで終わりではない。

未来の華麗な1日は、ここから始まるのだから。

 




次は本編ですよぉ!皆さん!(フリーザ風)


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―覚醒の鼓動―
◇いい歌ライブ気分


???「やっとアタシらの出番か!待ちくたびれたぜ!」


「…………ッ!?(訳)なん…だと…ッ!? 来れない…だと…ッ!?」

 

『ごめん…ッ!ごめんね響…!お父さんがどうしても行くって言って…ッ!』

 

……………! お、オォウ読者の皆様方…!傷付いてなんか無いぞ!我はグリーン・グr違うッ!!!我は立花響ッ!!無敵なのだッ!

 

 

 

 

……すまない、少しトチ狂っていた。もう落ち着いた大丈夫だ。

 

……我は前回、お好み焼きを食べた帰りに未来から『ツヴァイウィング』のライブを見に行こうと誘われ、集合場所である○○駅前に来ている。

 そこでSF世界のような都会を暇潰しがてらに眺めていると、未来から『森岡の叔母がケガをしたので来れない』と電話で伝えられたのだ。

 

「…………。(訳)ムゥ…、家族の事情なら仕方ない…。しかし、それならば何故早くに言ってくれなかったのだ?」

 

『うん…。ぬいぐるみを身代わりにして隠し通路から出たり、窓から飛び降りて行こうとしたりしたんだけど全部親に阻止されちゃって…』

 

…と…飛び降り…。揶揄(やゆ)よな? 未来よそれは揶揄よな?

 

「…………?(訳)…そこまでしてライブに行きたかったのか?」

 

『当然だよ!!何でこのタイミングでこんな事になるの!?神様ももう少し子供の未来(みらい)の事も考えて欲しいわ!!』

 

「………!?(訳)未来の未来に関わる程か!?」

 

『ルビをふって響!私の名前がわかんない!』

 

…そう言って声を荒らげる未来。その言葉には強い無念さがあり、話に混じってピキパシと何かがひび割れる音がする。スマホの悲鳴ではあるまいな…。いや、落ち着いて考えてみればこれは未来が誘ったライブ。行きたいと考えるのは当然の既決か。

 

…そうだな…。

 

「…………。(訳)未来よ、お前の気持ちはよくわかった。だから機嫌を治し、我にまかせろ」

 

『え…?任せろってどうするの?』

 

「………………。(訳)我にいい考えがある。我のスマホでライブを撮影し、その映像を未来のスマホに送り続けるのだ。森岡まで距離もあろうから車の中で見るも良いし、後で観れるように調整もしておく。いわば自動保存される生中継だ」

 

『そんな事できるアプリなんて配信されてたっけ?』

 

「………。(訳)否、今から自分で作る。電車の時間を考慮すればカメラアプリを少しいじって何とかなるだろう」

 

『作るって…、響ってそんな事できたんだ…』

 

「………。(訳)できるのだ」

 

……まぁ、前世から引き継いだ技術(スキル)の一つというものだな。加速世界ではほぼ無敵の我だったが、所詮リアルでは力なき子供。王として君臨するには、そういう技術をマスターしなければリアルアタック(物理攻撃)などで殺される可能性があったからな…。

 

…高い防御力の、数多い代償の一つというヤツだ。しかし、それは遠き昔の前世の話。今の我はそういう物に縛られていない。グリーン・グランデは、もういない

 

…ここにいるのは普通の中学生の立花響だ。

 

…技術はもとより、体の硬さもあくまで前世の我から引き継いだだけにすぎない。

 

…この世界ではただ平穏に、静かに一般人として一生を終えたい。

 

……普通に大きくなり、大人になって…。そしていつか伴侶を見つけ一緒に子供を…。

 

 

 

 ガ ゴ ォ ン ッ!!! ※頭を拳で打ち付けた音です。

 

 

『えっ!? 今すごい音しなかった!?響?響!!』

 

 

…………おいちょっとマテ今何を口走ろうとした今!?

 

…間違いない、精神が引っ張られているッ!精神が身体に引っ張られているッ!!!

 

…そういえば最近、だんだんとスカートに抵抗がなくなってきた気がする。最初の頃は未来や母上が願おうとも断固絶対拒否してきたはずなのにだ!

 

 ※グリーン・グランデがスカートはいてるイメージをしてみてください。

 

…駄目だ…、想像をしたら吐き気がする…、目眩もだ…、これは必然的だ気分が悪いィ!!

 

どうしても アーッ な展開しか浮かばな『響ィ!!!』

 

「………!」

 

『全くもう…。考え事すると黙っちゃうの響の悪いクセだよ?気をつけてね』

 

「……………。(訳)お…あぁすまない、ありがとう未来。」

 

『うん、それじゃあ響監督のライブ生放送。楽しみにしてるからよろしくね』

 

…最後にそう伝えると満足したのか、未来は電話を切った。

 

…本当にすまんな未来。未来にはいつも助けてもらってばかりだ。

 

…では(響監督)も昔の事は忘れて、いい席を取りに行くとしよう。

 

 

 

   ただ一人の、大切な視聴者の為にもな…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―その頃、未来は両親の車の後部座席にいた。

 

持参してきたまくらを顔にうずめて。

 

「んんっ~~~!!!」

 

あぁあああああああああああ~ッ!!!響響響響響響響響響響響響響ィィィイイイイ!!!!!!嬉しい響響響ィ優しい嬉しい嬉しい嬉しいよぉおぉおお響ィエヘヘ私ただ一人の為にあそこまでしてくれる何てえぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!それにしても響がインテリ系だった何て私知らなかったよぉぉおおおおおぉぉぉぉおおおおぉぉ!!!響ノート500071に追記しなくっちゃ!!こんな事になるんだったら去年の響の誕生日の時にメガネをあげるべき!!あげるべきだったよぉおおおおおお!!!!響がメガネをかけて椅子に腰かけて…、ビデオを撮影して鋭い瞳で…「………。(訳)カットだ、なっていないぞ」(キリッ…きゅわああああああああああああああんん格好いい格好いいカッッコ可愛い!かっこよすぎて失神しちゃうよおぉぉおおおおおおおぉおおおおぉおおお!!!!それにしても珍しく黙って佇んじゃうなんて…響なに考えてたんだろ見たかったよぉぉおおおおおぉんもおぉぉぉぉぉおおおおぉぉ!!!頭のナカをぉ頭のナカをぉ見られるメガネがあったら欲しい位だよぉぉおおおお!!!!いいえッ!駄目そんなこと駄目よ!!響はちょっとミステリアスでクールで、それなのに無言で一喜一憂する姿が至高なんだよっ!それが無くなったら響の魅力の1割半分が消えちゃう大切な1割半分が消えちゃう!!!それじゃぁどうしたらいいの!!!!!そうだっ!!未来こんな時は逆に考えればいいんだっ!!『見られちゃってもいいさ』って!そうよ響にそのメガネをあげればいいんだ!!そしたら優しい響はさふぃげない←※さりげない優しさをもっともっともっ―――――――とくれるハズ!!!それどころかもしかしたら「未来…こんな事を考えていたのか…いけない子猫ちゃんだ」っていってきゅれる←※くれるかもおおおおおおぉぉぉぉぉぉおおおおぉおおぉおお!!!!

 

 

ご主人に撫でられて、テンションMAXになった小型犬の様に内心狂っていた…

 

 

 

 

 

 

 

 ◇―――???&???サイド―――◇

 

「…………。」

 

とある会場の舞台裏。そこにはコンテナを背に銀色の合羽を目深に被った女性が体育座りになり、何が不安なのか小さくうずくまっていた。

 

その回りを慌ただしく動くスタッフ達に関わる事なのだろう。時々薄く開けられた瞳が動き、スタッフの後を追う―

 

「つぅーばさっ♪」

 

「ひゃっ!?」

 

が、突然頬に駆け巡る冷たさに驚き飛び上がる。その拍子に合羽のフードがめくれ、特徴的な蒼い髪が露出する。

彼女の名は『風鳴 翼』今まさに響が向かっているライブ会場で歌う『ツヴァイウィング』の『右翼』である。

 

そんな彼女が冷たくされた頬の方向を向くと、目の前にしてやったりの笑顔を浮かべ、二本のポカリを振り子の様に揺らしている相方の姿が映った。

 

「そんなに固くなるなって翼、歌う時に声が出なくなっちゃうぞ~?」

 

「もう…、本番前にいたずらしないでよ『奏』」

 

「ハハハッワリィワリィ♪ そうむくれんなって」

 

そして、先程翼に冷えたポカリで冷凍攻撃を行ったおちゃめさんは『天羽 奏』

 

翼と共に飛ぶ『左翼』であり、もう一人の『ツヴァイウィング』

特徴はスーパー○イヤ人3の如く盛り上がった赤い髪で、翼を引っ張る良き姉貴分だ。

 

ちなみに、作者からの愛称は「バーロー」理由は声を聴けばよぉーくわかる。

 

それはさておき、いたずらが成功しひとしきり笑った奏は、いたずらに使ったポカリを翼の傍に置くともう片方のポカリのフタを開け、中身を口に注ぎ喉を潤す。

 

そんないつも通りの明るさを見せる彼女を見て気が緩んだのか、翼の口から言葉がこぼれる。

 

「それにしても…、あの人達はなんでこんな事をしたんだろう…『チケットを奪う』だなんて…」

 

「あぁ、そのことか…」

 

そう、それこそが翼に元気がなかった理由なのだ。

 

奏も正直、それをマネージャーの緒川から聞いた時は驚いた。自分達に恨みでもあるのかと怒りたくなるほどに。

 

なぜなら前の日の夜、突如としてこの町のヤクザというヤクザが動き出し、ツヴァイウィングのチケットを買った人々からそのチケットを買収、脅しなど思い付く限りの方法で根こそぎ奪い取っていったのだ。

 

幸い死傷者は出ず、チケットを奪われたのもこの地元に住む人達だけで、買ってくれた者達の下へと戻ったらしい。

…そのほとんどが燃えカスだったのだが…。

 

賠償罪、器物損害などにより大量検挙されたヤクザ達も全員「何であんな事をしたのか覚えてない」と発言、真実は闇の中となった。

 

その事件自体もこのライブに関わる『大事な事』のために秘匿され、一部の人間以外だれも知らない。

 

(全く…、あたしの一番嫌いな終わり方だ、タイミングも考えると米国政府あたりの仕業か?)

 

頭の中で考えを交錯させ眉をひそめる奏。だがその感情を表に出す事はしない。

 

(顔に出したら不安になってる翼を怖がらせちゃうからな。こういう時にあたしのやることは、いつも一つ…)

 

そう決めた奏は思いを行動に変え、冷えた翼の両手を包みこみ優しく彼女を鼓舞する。

 

「なぁーに、心配ない。私達のやる事は変わんないよ翼。相手が誰だろうが何人だろうが、私とアンタ、両翼の歌で魅了してやるだけだ」

 

「奏…」

 

「そうだろ?」

 

「…そうだね…うん、きっとそう…ありがとう奏」

 

翼の背中を押してやるだけだ。翼の元気が戻ったのを見て、奏は立ち上がる。

 

するとそこへ、ガタイの良い赤いスーツのマッチョメンが歩いてきた。

 

「準備は出来たようだな二人とも」

 

「おぉ~!これはこれは弦十郎の旦那ァ!さっきの見てた?」

 

「ん? さぁな」

 

見てたろ~。とジト目で笑う奏と、その後ろに隠れて頬を染める翼。そんな二人の前にいるこの男の名は「風鳴 弦十郎」だ

名前から見て分かる通り風鳴翼の関係者で叔父なのだが、髪は某火竜を思わせる赤い髪をしている。亜種じゃないのは何故だろう。

 

「それはそうと、客の方は心配するな。今特別配布という形で客を出来るかぎり集めている最中だからな」

 

「流石は旦那だ!仕事が早い!」

 

「それでも人の数は予定より大きく下回っている。お前達には予定よりたくさん歌ってもらう事になるぞ!」

 

「あぁ、ステージの上は任せてくれ!待たされた分大暴れしてやるよ!」

 

「頼もしい限りだ、では頼むぞ!」

 

拳を前に出し、気合いを見せつける奏とその気合いに呼応するかの様に頷く翼。

二人の顔を見て気合い十分、心配無用と判断した弦十郎は声援を贈るとその場を離れ、携帯を取りだして技術スタッフに連絡をいれる。

 

その姿を見送った二人は、ライトが灯され明るくなったステージの方へ振り向く。

 

「さあ、難しい事は旦那や了子さん達に任せてさ、あたしらはパーっとやろう!」

「…うん!」

 

小さく、しかししっかりと答えた翼を見て、もう大丈夫だなと安心した奏は彼女の手を取り、来てくれたファン達の待つ舞台へと歩いていく。それと同時に信念を示す口上を口ずさむ。

 

「アタシとアンタ、両翼揃ったツヴァイウィングなら…」

 

「どんな壁でも、飛び越えて見せる!」

 

そして二対の両翼は、お互いの手を強く握ると決意を新たに羽ばたいていく。

 

戦場の下へ、もう一つの戦場《いくさば》の下へと。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇―――響サイド―――◇

 

 

…ウム、読者の皆様方、我だ。立花響だ。

 

…今我は、苦心してやっとの事でライブ会場の内部にたどり着いた所だ。

生中継のプログラムを作成しながらライブ会場に向かっていたので電車を乗り過ごしたり、サラリーマンの荒波に呑まれたりして大変キツかった。特に加齢臭が。

 

…周りが見えなくなる程の凝り性も、ここまで来ると苦労する…。

 

…余りにも遅れていたのでもう始まっているやも。と思ったのだが、幸運な事に会場側も軽いToLOVEるが起きたらしく、少し公演が遅れていたのだそうだ。

 

…そう言えば、来る途中でここのスタッフと同じ服を着ていた者達が何か配布していたな。

我は急いでいたので無視したのだが…。

 

「…………。」ピラッ

 

「ツヴァイウィング・ライブ公演のチケットですね。ありがとうございまーす。これをどうぞ~」

 

…未来から貰ったチケットの片方を受け付けのスタッフに手渡すと、半分に切られ帰還したチケットと共に何やらプラスチックで出来た二本の棒を手渡された。何なのだコレは?

 

…それよりも会場だ。と、とりあえずその棒を小脇に挟み、受け付けの隣にある扉を手で押すと…。

 

「あっ響さん!」

 

「…ッ!?(訳)オヴッ!」

 

…おぉ…あ、危ない…ッ!滑って転んでしまった…!驚きのあまり艦○れの島○の様な声を上げてしまったぞ恥ずかしい(無論無傷です)

 

…しかし、どこかで聞いた声だった様な…。

 

…ん?目の前に白い手が。

 

「おっとごめんなさい、驚かしちゃいましたか?僕ですよ響さん」

 

 

 

 

「野山悠詞です!」

 

 




戦姫防御のグリーン・シンフォニーランキング入り!! いえーい!


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◇ソレは空から来る。

 前半だけ勢いでできて半年。

 ちと人にスランプを打ち明けてなんとか立ち上がったので、一ミリ一ミリの一歩を1日歩き、なんとかできました。

 ヒロアカ12話で終わるなんてウソだろ?ねぇ、時間帯替えるだけだといってよ(切実に)

 蛙吹ちゃんに蛇と化す未来とか蛙吹ちゃんに蛇と化す未来とか蛙吹ちゃんに蛇と化す未来とか妄想したのに…。



「いやぁ、響さんもツヴァイウィングのファンだったなんて知りませんでしたよ!意外に思うかも知れませんけど、僕も好きなんですツヴァイウィング!」

 

「…………」

 

「え?今何か言いましたか?」

 

…『我もこんな所で会うとは思わなかった』と言ったのだ。悪いが仕様だ。

 

…おっと、いつもこんなクセのある小説を見てくれてありがとう。といつも作者と共に感謝しているグリーン・グランデ(イコール)立花響だ。

 

…我は今、大人気のツインボーカルユニット『ツヴァイウィング』のライブに来られなかった未来の為に、指定された席に座りスマホ撮影の準備をしている所だ。

 しかしこの席、他と離れている上に金箔でデカデカとVIP(ビップ)としるされてないか? 家もそうだったが未来の家系は結構裕福なのだろうか。

 

…そして今、我の席の隣で話しかけているのはこの前 わ…我に告白…?し間違えた悠詞君という者だ。

 あぁもう思い出しただけで顔に火が出る…。

 悠詞君はどう考えているのだろうか…?告白し間違えた人と隣で気恥ずかしくないのか?我だったらもう気まずくなって帰ってしまうぞ…。

 

…聞くべきか…?いや本人も顔に出してないだけで気を使っているのやもしれぬ、もう触れないで置こ…、

 

「響さん!」

 

「…!?」

 

…何ッ!? いきなり我の手を掴んで来ただと!?

 ちょっと待てちょっと待て!! 周りを見ろ!悠詞君が大きな声を上げるものだから周りのライブに来た者達がこっちを見ているぞ!

 それにあれは勘違いでは――

 

「昨日は本当にすいませんでしたッ!いきなり告白なんてしてしまって!!実は僕…貴方に…

 

 

 

   一目惚れしてしまったんです!!!」

 

 

……ファッ!?

 

「貴方を知ったのは入学式の時、具体的に言うと僕が代表として上がった宣誓の時でした…」

 

「……………」←【今明かされる衝撃の真実ゥにオーバーヒート寸前の無口ビッキー】

 

「その時に見えたんです、ほだらかな稲穂を思わせるその髪と、誰にも見初められず密やかに咲く花の様な貴女の姿を。その全てに僕は…!」

 

「「「ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…!!!!」」」

 

…そ、その先はなかった!聞こえなかった!何故ならばコンサートの舞台に光が差し、それを見て観客が歓声をあげ始めたからだ!おそらくツヴァイウィングの二人が出てきたのだろう!

 

 さ、さぁ悠詞君には申し訳ないが我も未来の為に作ったアプリを起動せねば!

 

……我は言いかけたままの姿勢になっている悠詞君に『また後で聞く!御免!』と書いたメモをピシッと膝に書き置くと、自作の生放送アプリを起動し、準備したスマホ用立て掛けにセットして、録画と転送が同時進行しているのを確認する。

 

 これで準備OKだ。我もライブを楽しむとしよう。

 

 

…しかし凄いものだ、風鳴翼と天羽奏。

 二人は翼をモチーフにしたのであろう服を身に纏い、一対の翼の様に息をあわせてステージの上を舞い踊っている。

 

 曲名は確か、ボーカル名ツヴァイウィングをイメージした新曲『逆光のフリューゲル』

 

…体を動かしながら歌うなど、相当の体力を消耗するハズだが二人の顔から疲れらしき物は見当たらない。流石はトップアーティストと言うべきか、会場のドームが翼の様に展開される仕掛けにもその人気振りが伺える。

 

…無論、歌の方も負けてはいない。むしろ歌こそ本懐と言うべき所だ。

 

…彼女らはマイクの補助があるからとはいえ、その歌声はここにいる者達の魂と心を震わせ、歓声へと変えていく。

 その大きな歓声の中にあっても二人の歌声はかき消されず、それを越えていく歌が強く高く『鳴』り、『奏』でられている。

 

…まさに限界という壁を飛び越え続ける鳥の如し。名は体を表す(ツヴァイウィング)とはよくいったものだ。

 

…未来はこのライブを見ているだろうか。正直、我もこれほど凄いものだとは思ってもいなかった。

 

…これがライブ、これこそがツヴァイウィングなのだと、我の胸に強く刻まれていくのを感じた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇――――悠詞サイド――――◇

 

 

クソッ…!クソックソクソクソクソクソクソオオオオォォォォ!!!!

 

何でなんだよ!何でこのタイミングで歓声を上げるんだクソモブ共ォォオッ!!!お前ら能力が覚醒したらぶっ殺してやるから覚えとけよッ!

 

畜生が!!このままじゃあヤクザ共にチケットを奪わせて、もう一度VIP席のチケットを作らせた意味がなくなるじゃねぇか!!

 

クソッ早く終われよ一曲目!告白の続きが出来ねぇじゃねぇかよ!!もう前世のCDやYou○ube(ユー○ューブ)で聞き飽きてんださっさと終われ!

 

ん?いや待てよ…? 思い出した二曲目はない!何故なら直後でこの作品の敵である『奴ら』が出てくるからだ!

 

そうすれば響がピンチになって僕の能力が覚醒する!! クッ…クフフ…、フハハハハハハハハハハハハよっしゃあ!!そうなれば主人公の僕に不可能はない!!響も助ければ僕に惚れるだろうしそのまま勢いに乗って奏と翼を陥落させることもできらぁなぁ!

 

こうして僕は主人公らしく崇高な考えを浮かべていると、ついに運命の時が、合図がやってきた!奏の声だ!!

 

『どんどん行くぞ――――ッ!!』

 

さぁ来い!主人公であるこの僕が、貴様らを灰塵に帰してくれるぞ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ◇――――響サイド――――◇

 

 

…沸き立つ歓声、渦巻く大衆。我はそれを巻き起こしたツヴァイウィングに感嘆の声をあげていた。加速世界の維持に付きっきりだった我はライブの事など全く無知だったからこそ、その興奮もひとしおだった。

 

…さすがに場の雰囲気というのは実物でないと分からないだろう。未来がいない事が本当に悔やまれる。今こそこの興奮を分かちたいと言うのに、人生とはままならぬものだ。

 

…そう惜しみつつも、次はどんな歌が聴けるのだろうかと期待してスマートフォンの角度を調整し、2曲目に備えていた時だった。

 

 

…突然観客の一人が空を指差し、声を上げる。

 

 

「おっオイ! 何だアレ!?」

 

 

…その声につられて我も上を向いてみると、遥か上空に鳥の群れがいた。最初は鳥がどうかしたのかと思ったが、我はすぐにそんな認識を改めることになる。それはなぜか。

 

…その鳥はなんと体をねじれさせ、まるでドリルの様に体を変化させて落ちて来たのだ。このライブ会場目掛けて、しかも複数。繰り返すがそんな事ができる鳥はいない。同時に我は確信した。

 

 

 

 ―あれは『(エネミー)』の類いだと―

 

 

 

…次々に地面へと激突し、ステージに亀裂をいれる鳥らしき生物。その内数体は人間に直撃した。我はいきなりの事態に思わず身を乗り出すが、その瞬間に衝撃の光景が目に入った。

 

「うわあぁ!!! 刺さった!刺さ――

 

「イヤアァァァ!!死にたくない!死にたくな――

 

…なんと、その生物に体を貫かれた人間は体の至る所を黒く染め、完全に染まりきると欠片となって崩壊、四散したのだ。あの鳥らしき生物ごと。

 

…気づけばライブ会場の下層部は人形、オタマジャクシ、果てまでは怪獣の様な生物などが沸き上がり充満し、その足元は漆黒に染まっていた。あんなに大量にいるものがどこから沸いてきたのか想像もつかないが、その姿と先の自爆攻撃に、我は見覚えがあった。

 

 

 ―特異災害『ノイズ』―

 

 

…前世の、二つの世界(仮想と現実)を含んで存在しなかった、謎の生物群の総称。

 

…我がハイハイをし始め、この世界の情報をインターネットで収集をしていた頃に知った『加速世界』と同じ、日常の中に紛れる『非』日常の存在。

 

…数年前に突如現れた人類の天敵であり、触れた人間を炭素…、つまり炭に変えてしまうという恐ろしい能力を持つ怪物だ。ネットで流出したといわれる監視カメラの動画を見た時は、こんなものが実在するのかと背筋が凍った。触れることが炭化の条件ならば、我の防御も貫通してしまうかも知れないからだ。

 

…しかし、その一方でノイズと遭遇して死ぬ確率は通り魔事件に会うよりも遥かに低かったはず。それがよりにもよってこんなに人が集まる場所に出てくるとは…、最悪の奇跡という奴か。

 

「きゃあッ!」

 

…その時、下から不意に小さな女の子の声が聞こえた。思わずその方向へ首を傾けると、転んだらしい少女の姿が目に入る。その後ろからは、オタマジャクシに似たノイズが少女の命を奪おうとのしかかろうとしていた。

 

…その姿を見た時にはもう、我の体は少女を救う為に動いていた。かつて守護の要として戦っていた我の、戦士(バーストリンカー)としての本能が無視できなかったのだ。戦えない者達の犠牲を。

 

「……………!(訳)先にすまないと言っておく!」

 

「響さん大丈夫ですよ!僕がついグエッ!?」

 

…我はすまないと思いつつ、悠詞君の服の襟を掴み席の真横に移動すると、床に向かって全体量を乗せた踏みつけをお見舞いする。

 

…すると次の瞬間、床は我の重みに耐えきれず無数の破片となって粉砕され、土台がなくなったVIP席が衝撃で僅かに浮く。

 

「……………(訳)上手くいったな…。行け!」

 

…そしてVIP席が浮き上がったのを確認した我はVIP席を壊さぬように手加減して――

 

 

 ()()()()()()()思い切り蹴り、押し飛ばした。

 

 

…飛ばされたVIP席は、人を避けつつ水切り石の様に周りを吹き飛ばしながら少女の元へと向かい。ギリギリのタイミングでノイズの攻撃から少女を守った。ノイズはぶつかって弾かれた後、ターゲットを見失って右往左往している。

 

…おそらく倒れていた少女も、いきなり現れた席を見て唖然としているだろう。まあ驚くのは当然か。

 

…あれは、我がまだ大楯を持っていなかった時期に編み出したスキル《創盾撃(シールドクリエショット)

 

…地表を割って即席の盾を作り、味方の前に飛ばして守るアビリティ……というより我の高い防御力を利用した力技なのだが、精密な起動計算をしないと味方をヤってしまうわそもそも加速世界の地面は硬いわで、我以外誰にも使えなかった悲しい技術だ。

 

…最初は失敗し続け、練習に付き合ってくれたパウンドをボコボコにしてしまったのだよなぁ…。あの時はホントすまなかったパウンドよ。

 

…しかし、少女を守っているのはあくまで普通の席だ。先の鳥型が繰り出した突貫攻撃が来たらひとたまりもない。

 

…そう考えた我はジュースを股関にこぼしたらしい悠詞君を背負い、ノイズが近くにいない時を狙って少女を助けようと下層へ降りていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇―――翼・奏サイド―――◇

 

 

 

「全く。今日は厄日かよ、ノイズまでアタシらのライブ邪魔しにきやがって…」

 

 一方その頃、ツヴァイウィングの片割れである天羽奏は、大量に溢れだしたノイズに悪態をついていた。

 

 その目に恐れは全くない。

 

 攻撃をすり抜け、触れたものを炭に変えてしまうノイズを前にして、アイドルは至極冷静に文句をいう。

 

 普通の人間から見れば、間違いなく正気を疑う行為だろう。災害相手に愚痴を言うなど狂気の沙汰だ。しかし、彼女は違う。

 

 奏にとって、こんな文句はいつもの事。災害に予定を狂わされるのは日常茶飯事である。

 

 今回が最悪なタイミングである事を除けば、だが。

 

(全く、"アレ"の起動もかねているってのによ――)

 

「飛ぶぞ翼。この場に剣を携えているのはアタシ達だけだ!!」

 

「でっ…でもまだ司令からは何も――」

 

「このままじゃ聞きに来てくれた奴ら皆死んじまうだろ!」

 

 煮え切らない相方の言葉を置いて前へと走り出し、ステージから飛び出す奏。その下に群れる晴れ舞台を邪魔してくれた雑音無勢(ふぜい)を前に、防人は歌う。

 

 

 

 自身をもう一つの世界へと誘う聖詠(・・)を。

 

 

 

「《クロイトザァル・ロンゼル・ガングニー…・ズィール――》」

 

 瞬間、奏の服は弾け飛び、同時に光の中に包まれた。肌の上にはオレンジと黒を主色としたボディスーツが形作られ、その上から角付きのヘッドホンやガントレットなどが装着、変形され火花が舞い上がる。

 

 光が消えるとそこには、SFさながらの姿に変わった奏が――『防人』がいた。

 

 彼女の足がノイズの同じ地に立つと、それに呼応するかの様に波状光が発生し、触れたノイズから透明じみた色が消えて、カラフルな色合いになってゆく。

 

 それは、強者と弱者の関係が反転した事を意味していた。

 

「フンッ!」

 

 奏はそれを確認するまでもなく両腕を前に突きだすと、半円状の特異な形をしたガントレットはひとりでに奏の腕から離れて形を変え、一振りの巨大な突撃槍(ランス)に姿を換える。

 

 得物を掴み、戦闘態勢を整えた奏は歌『君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ』を口ずさみ始める。

 

 『―幻、夢…、優しく包まれ…―』

 

 そのまま奏は槍で次々とよってくるノイズを凪ぎ払い、突き、切り裂いていく。その体に炭化の兆候はない。

 

 これは奏の纏っているFG式回天特機装束――通称《シンフォギア》の効果だ。

 

 ノイズにあらゆる攻撃が通じないのは、自身の存在を異次元より跨がせる『位相差障壁』によって『半存在』と化すからであり、彼らはそこから行き来きる。

 いわば普段の彼らは常時セーフゾーンに片足を突っ込んで戦っているようなものなのだ。

 

 しかし、そのセーフゾーンを、無敵化という逃げ道を無効化する手段として、シンフォギアは調律を、歌をぶつけることで位相差障壁を中和して打ち消し、こちらの世界に引きずり込む。

 

 そうすれば通過を気にせず戦えるようになり、殲滅することが可能になるのだ。

 

 しかし、ノイズ達はその絶対的優位を失ってもなお炭に変えようと、奏のもとに向かい続ける。

 

 届く範囲のノイズを片付けた奏も、それに負けじと槍を複数に分裂させて投げつける技『STARDUST∞FOTON』を炸裂させてノイズ達を迎え撃ち、炭へと変えていく。

 

「奏ッ!遅れてごめん!」

 

 一足遅れてきた翼も、奏と同じようにシンフォギアをまとい相棒の前に降り立ち、首をしゃがめた奏の後ろにいるノイズを二分に断つ

 

「気にすんなよっと!」

 

 相棒の参戦でさらに戦意を燃え上がらせたのか、しゃがみ様に槍を突きだし、翼の背後に迫る二、三体を串刺しにした奏は、背中合わせになった相棒にある提案をした。

 

「翼、やっこさん数多いからアレ(・・)使いたいんだ!アタシもそろそろ限界が近いしな!」

 

「ッ!…わかった、終わらせよう…!」

 

「あんがとよ、翼ならそういってくれると思った!」

 

 相談を終えた二人はアーティストとして歌っていた舞台へと走り出す。

 生き残ったノイズも獲物を逃すまいと追従し、大型は二人を狙って炭化効果を持つゲルを吐き出した。

 

 ノイズが集まったのを振り返って確認した奏は叫ぶ。

 

「今だ! いくぞ翼!」

 

「了解ッ!」

 

 合図と共に、翼は刀を巨大に変形させ、振り向き様に蒼の斬撃を飛ばす。

 奏もそれを追いかけるように槍を突き出し、回転させる事で荒れ狂う橙色の竜巻を作る。

 蒼の斬撃を巻き込んだ嵐は、ノイズの大群へと突っ込む。

 

 ゲルを吹き飛ばす橙の嵐は蒼の斬撃によって切り裂かれ分裂し、まるで獲物に飢えた蛇のようにノイズ達を次々と喰らい、吹き飛ばし、飲み込んでいく。

 

 

 

 絶大な威力を誇るこの技、名を『双星ノ鉄槌-DIASTER BLAST-』

 

 奏と翼の、無双の一振りである。

 

 

 

 技を解き放ち、ほとんどのノイズを一掃した二人。

しかし地上に降り立った瞬間に槍から輝きが失われ、奏はよろめいた。

 

「っと…!?」

 

「奏ッ! 大丈夫!?」

 

 危うく倒れかけるも、それは翼が奏の体を受け止めることで回避し、その場に座らせた。あと僅かとはいえノイズはいる。油断はできない。

 

「…あぁ大丈夫だ。ワリぃ、時限式はここまでだ。後のノイズは任せる」

 

「無茶したのは奏でしょ? もう、任された」

 

「おう」

 

 会話を終わらせると、翼は奏のいる所を振り返りつつ、ノイズの残党狩りに向かって走っていった。

 

「はぁ…。よっ、…と」

 

 その後ろ姿を見届けた奏は一息吐いて槍を持ち、残っている力を振り絞り立ち上がる。

 

 槍を支えにするその姿は痛々しさを感じさせるが、目に宿る戦意が消えた訳ではない。

 

 この状況でしかできない戦いも、確かに存在するのだ。

 

(頼む。誰か…、誰かいるなら生き残っててくれよ…)

 

 周囲を見渡し、生存者を探す奏。

 

 双星ノ鉄槌で大部分のノイズが消滅し、翼が後ろでノイズ達を引き付けている今こそ、逃げ遅れた者達を逃がす最大のチャンスだと奏は考えていた。

 

 もう皆死んでしまったのなら奏の行動は無駄骨ものだが、目の前で殺されるのを防げるなら喜んで折ってやる。その思いで全ての感覚をフル回転させる。

 

 もしもの時にはこの槍を投げつけるとばかりに自身の得物を固く握りしめる奏。その前に、幸か不幸かその姿がうつった。

 

「―――子供…! 生き埋めになってたのか!?」

 

 いたのは、大きな観客席の空洞に挟まれる形で生きていた少女だった。足が挟まって動けないらしく、その目はこの惨状を見て涙を流していた。

 

(落っこちてきた観客席があの子をノイズから隠してたのか? とりあえず不幸中の幸いだ、本当によかった!)

 

 生きてくれていた喜びから一瞬顔を綻ばせるも、少女を助ける事を優先して気持ちを引き絞り、槍を三本目の足にして傍まで走り寄る。

 

「あ…、お姉ちゃん、助けて…」

 

「ああ大丈夫だ!絶対助けてやるからな!」

 

 奏は少女を助けようと観客席に手をかける。だが、鉄の様に重くなってしまった上に力を失ったシンフォギアではなかなか持ち上がらない。

 

 ならばとばかりに槍を隙間に刺し、テコの原理で動かそうとするも、地面と一体化したかのように観客席は動かなかった。

 

(クソッ! コイツ落ちた衝撃でめり込んでやがる! 翼は後ろで()り合ってるしどうしたら――)

 

 テコもきかない観客席に焦りを覚える奏。

 

 次の瞬間、一般の観客席の前に倒れていた巨大なスクリーンが突如爆散し、黒煙が上がった。

 

「何だッ!?」

 

 奏は咄嗟にその爆発に反応し、少女のいる席を守ろうと前に出て臨戦態勢に入る。

 

 ショートして壊れた爆発ならいいが、ここには不意に現れるノイズの存在がある。

 

 万が一大型ノイズが出た場合、シンフォギアがマトモに動かないこの状況で戦わなければならない。それは死すら想定しなければならない最悪のシナリオだ。

 

 しばしの緊張、それを土煙と共に破ったのは――

 

 

 

 

 気絶したらしい少年を肩に持ち上げて無言で歩く、もう一人の少女だった。

 

 

 

 

 

「――は?」

 

 一瞬、奏は我が目を疑いまぶたをこする。しかし、間違いなく同じ少女が正面を歩き、こちらに近づいていた。

 

 奏がおかしい訳ではない。どこの世界にさっきまでノイズが闊歩していた会場を顔色一つ変えずに歩ける幼女がいるというのか。

 

 いや、そもそもなぜ爆発があったスクリーンの先から無傷で歩いているのかすらも、奏には理解できなかった。

 

 シンフォギアどころか、武器すら持たず感情を見せない幼子。では一体、この子は何を考えてここまで来たのか。明らかな違和感と静寂が空気に張り付き、奏は思わず汗を流してしまう。

 

「……どうしたらいいんだコレ…?」

 

「……ッ!」

 

「は? 今何か言ったのか? ここは危ないから早く退(しりぞ)―」

 

「……ッ!」ピッ!

 

 少女の口が僅かに動いたのを見た奏は今の状況を思い出して我に返り、避難を呼び掛けようとする。

 しかしその発言よりも早く、少女は少年を背負ってない方の手から何かを投げ落とした。

 

 それはスケッチブックであり、開かれたページには分かりやすい大文字でこう書かれていた。

 

「『それよりも、その童を救う事が先決だ』…? まさか、お前そのために…?」

 

「……。」コクン

 

 奏はその頷きに唖然とし、名も知らない少女の目を見る。その目の奥には、絶対に助けると言わんばかりの確信めいた輝きがあった。

 

 それは防人の目。

 

 戦う時の自分の相棒や、初めて会った時の絃十郎と同じ目を、この少女は宿していたのだ。

 

 その目を見た瞬間、奏は確かな確信を持ってこの娘をどう扱うかを決めた。

 

「……お前みたいな奴、まだいたんだな……」

 

「…?」

 

「いや、何でもねぇ!そうと決まれば力を貸してくれ!!」

 

「…!」コクコク!

 

 小さく頷いた無言の少女は肩に抱えた少年を降ろすと、少女の下に歩みより観客席の端を掴む。

 

 奏も同じように構えて観客席を掴んだ。

 

 四本の手に力が入り、奏が少女に呼び掛ける。

 

「いくぞッ!踏ん張れぇッ!!」

 

「……ッ!」

 

 奏は歯を食い縛り、少女は瞳の輝きを増して全力全霊の力を細い腕にかける。

 

「うおおおおッ…!!」

「………ッ!」

 

 ミシ、メキ。と観客席が震え、先程と違う感触を感じた奏はさらに力をこめる。

 

 すると、機能が死んだはずのシンフォギアが僅かに動き出し、赤いクリスタル部が輝き始めた。

 

「――いける! よしッ!!全力で上げろおおおおおおおおッ!!!」

 

「――――…ッ!!」

 

 ――ボゴンッ!とめり込んでいた観客席が上がり、砂埃が巻き上がった。

 

 そのチャンスを逃すまいと奏は「一瞬だけ頼むッ!」と喋らぬ少女に現状の維持を託すと、突き立てられていた槍をできた隙間に突っ込み、支えにする。

 

 そこから少女の手を掴み、引き上げたのだった。

 

 よほど不安だったのか、少女は引き寄せられた勢いで奏の胸に抱き付き、火が付いたかの様に泣き出した。

 

「おっと」

 

「うわぁあぁああ…! ごわかっだぁ…! 怖かったよぉお姉ちゃあぁぁん…!!」

 

「よしよし、もう大丈夫だ、よく生きるのを諦めないで頑張ったなぁ。よしよし…」

  

 経験があるのか、抱き付かれた奏は驚いたものの、その後は冷静に少女を落ち着かせようと頭を撫で、背中をさすっている。

 

 そのまま奏は、ある程度落ち着いた少女をそっと降ろすと、観客席から手を離した無言の少女に近づき、太陽のような笑顔をパッと浮かべて礼をいった。

 

「ありがとうな。お前が来てくれなきゃアタシは何もできなかった。ノイズのいた所に助けに駆けるなんて、勇気あるよホント」

 

 ポンポンと、軽く無口な少女の頭を叩く奏。しかしその態度とは裏腹に、彼女は助けに駆けつけたこの少女に敬意を抱いていた。

 

 なすすべもなく黒く染まり、消えていく蹂躙劇。

 

 そんなものを見てしまえば、大人でも逃げてしまっておかしくないのだ。しかし、目の前の少女は心が折れることもなく、窮地の命を助けるために動いた。それがどんなに困難な事かは、奏自身がよく知っていた。

 

(あの頃のアタシにもこんな勇気があったら、父さんや母さんを死なせなかったのかなって、そう思うよ)

 

 その勇気に称賛を、その勇気に喝采を。

 

 すると、そんな気持ちが伝わったのか、自身の目を見続けていた少女は僅かに顔をそらし、柔らかそうな頬を人差し指の先でこちょこちょと撫でてた。照れたのだろうか。

 

「ふふっ」

 

 かわいい所もあんだなぁ。と口元を緩ませると、気を引き締めて助けた少女をその子に背負わせる。分かりやすいように、槍を矢印に逃げ道を示した。

 

 勇気あるこの少女を死なせてはならないと、防人の使命を新たにして。

 

「んじゃ、次はちゃんと避難するんだぞー? あそこの避難経路はまだ崩れてないから、そこから外へ――」

 

 

 

 

 その時の奏は、間違いなく油断してしまっていたといえよう。

 

 頼りになる相棒である翼にノイズの残党退治を任せた事で、奏の意識は完全に助ける事に回ってしまった。

 

 彼女は僅かな一瞬(とき)とは言え、ノイズを見くびりすぎたのだ

 

 

 

 

《■■■■■■■■■■■ッ!!》

 

「お姉ちゃんうしろっ!!」

 

 ノイズとは不意に現れるもの。その予知方法は完全に確立されておらず、それはノイズと長い戦いを続けてきた熟練者ですら例外ではなかった。

 

「チィ――、狙いすましたかの様にでてきやがって――」

 

 出てきたのは三体。不意討ちを狙うような出現に多少驚きはしたものの、態勢が崩れる程のインパクトではない

 

「ひっちくどいんだよぉッ!!」

 

 奏は槍で一閃し、三匹纏めて炭に変える。しかし、両断した隙間から見える次元の裂け目はまだ消えていない。奏は嫌な予感を感じ、後ろに叫ぶ。

 

「伏せろぉ!!」

 

 間もなく、ドドドドドと何十ものガトリング砲の様に次元の裂け目からドリルと化した鳥型ノイズが射出された。その数、百以上。

 

 先に出てきたのは囮兼、視界を妨害する煙幕に過ぎなかったのだ。

 

「くっ…そぉおおおおーーッ!!」

 

 今の状態で直撃を食らえば、機能が止まっているシンフォギアごと自分を、そのまま後ろの少女達をも殺しうる災禍の弾幕。

 

 逃げることは不可能、そう判断した奏は、少女らを守る為に盾となることを選んだ。

 

 槍を猛回転させて敵を粉砕、波状に炭の破片を飛ばし直撃を凌ぎ続けるも、遂にシンフォギアの端々が限界を越え、砕け初める。

 

「ぐぅううう…ッ!!」

 

 ヘッドホンアンテナが、ガントレットが、ヒールがノイズの肉片に当たり砕ける。

 

「………ッ!」

 

 咄嗟に少女の前に出て、飛んできた破片を弾く無口な少女。当たる度に服が破け、ガキンッガキュンと火花が散るが、ノイズ弾の対処に追われる奏や頭を抱えて悲鳴を上げる少女らに知られることはなかった。

 

 しかし、彼女達の足掻きを終わらせるモノは次元の先からではなく、空から来た。

 

 

 

 

 ー少女達を狙って、真っ直ぐ上からー

 

 

 

 

「――――……!?」

 

 その正体は、ツヴァイウィングとの戦闘を回避した鳥型ノイズだった。

 

 この時を待ちわびていたかのように高高度から飛来してきたソレは、間違いなく現在最速のスピードで、ブレることもなく無口な少女の下へと向かう。

 

 間の際に無口な少女は気付き、下の娘と一緒に回避しようとするが間に合わない。

 

 奏もノイズの弾幕を防ぐのに手一杯だ。

 

 無口な少女は覚悟を決め、ノイズから覆い隠す様に少女を抱き締める。

 

 ――あと数秒で無口な少女の背中とノイズが接触しようとしたする、その時――

 

 

「響さんっ!!!」

 

 

 無口な少女を押しやった少年が、腹に大穴を開けられた。

 




※ちと時列系がおかしかったりしますが余り気にしないで下さい。

 しかしここの表現がおかしいとかこのキャラクターはこういう喋り方だ!トカは気にして教えて下さい。

 奏語録難しすぎるよぉッ!!!(泣)

6/27追記
活動報告に、自分の妄想サーヴァントの設定を書いてみました。良かったら見てってください!


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