灰被りの為の舞踏曲 (ふかひれ!!)
しおりを挟む

0話 夢物語の始まり

 

 

「トレーナー君…いや、誠。ようやくだな」

「君の夢が叶った景色はどうだ?」

 

「…君が居ないのが寂しいな」

 

「………」

 

「君は覚えているか?私を皇帝と言ったのを…」

「その威光は衰えているか?」

 

「…まさか?」

 

「そう…初めてのその最高の舞台に私が上がらなくてどうする?」

 

「でも…君は!!」

 

「その為の準備は出来ている…」

 

「みていてくれ…」

「灰塗れの石ころが…輝きを失った石ころがもう一度ダイヤモンドに変わるのを…」

 

 

「祈願ッ!君の武運を祈るッ!」

 

「会長!頑張ってくださいね」

 

 

「皆…知ってたのかよ!」

 

「内緒にね…って言われてましたから」

 

 

「全く…」

 

 

彼女を見送りながら思い出す。

ここに至るまでの道のりを…。

 

「…感情に浸るにはまだ早いですよ?」

 

「たづなさん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話はかなり遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…もうすぐ…完成ですね!理事長!」

そう話しかけるのは緑の服がトレードマークの駿川たづな。

 

「感激ッ!ここから私達の夢が始まるんだ」

理事長と言われたのは秋川やよい。

見た目は完全にお子様な…理事長。

 

 

目の前に建つ建物はトレセン学園。

ウマ娘トレーニングセンター学園…といってもかなり小さい。

 

 

今の競馬…ウマ娘達のレースはおかしい。

 

そう、賭けレース…。

「疑問ッ!もっと伸び伸びと自由にウマ娘が走る事は何故出来ないのか!?」

 

勝ちを争って走る…そう、これは間違いではない。

だが…どうだ?

観客…彼らは何の為にレース場に足を運ぶ?

賭けた金が増える事を祈って来るのだ…所謂、金の為。

 

予想が外れればバ券と怒号が空を舞い…怒号や罵声はウマ娘に突き刺さり、バ券は地に積もる。

 

 

「ウマ娘が走るのは…まるで彼等の懐のためじゃないか!」

「そんなのおかしい!」

「私は…そんな競バ界を変えたい!」

 

 

全てのウマ娘が楽しく誇りを持って走れるように…

 

 

 

 

「たづな!私はやるぞ!

 

「来年の開校で何人くらい入学してくれるかな…と。」

ポロリと不安を漏らすたづな。

 

 

「……4人…」

ボソリとやよいは漏らす。

 

 

「まだ期間もありますから…頑張りましょう?!ね?」

たづなが両手を上げてポーズをとる…と、その時だった

 

ドン

 

「あっ!?」

たづなのあげた手は通りすがりの男に当たった。

 

 

「「すみません!!」」

お互いに謝り合う。

 

「余所見してたもので…」

と、男は言う。

 

「こちらこそ…周りを考えず…すみません…」

 

 

 

ひとしきり謝りあった後に別れる。

「………」

 

「理事長?」

 

「今の男…どこかで見たような……」

 

 

彼女達は知らない。

この男が後に学園に運命のように来るのを…。

 

 

 

「…何の建物が建つのかな?」

この男は知らない。

目の前の小さい学園が自分の運命を大きく変えるのを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





導入です。
ぜひぜひよろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

プロローグ
1話 それをきっと運命と呼ぶんだ ①


閲覧ありがとうございます。

原作ゲームとは違った流れになります。

トレセン学園はまだ小さな学園です。

現状のレースにはお金を掛けたようになってます。
ライブもありません。


主人公とウマ娘…周りの皆が
レースを通して、栄光を掴みに行く中でその在り方を変えて行くお話でもあります。



ここは…私の舞台…

 

私は………

 

私は……ここで…勝つんだ。

 

 

この世界を変えないか?

懐かしいな…その言葉…

 

 

さあ…出走だ!

いこう!トレーナー君!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

星の巡り合わせとは奇妙なものである。

これは泥を被ろうと…転ぼうと…夢中で勝利と栄冠に手を伸ばし続けるウマ娘とトレーナーのお話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

ここはとあるレース場。

ウマ娘とかいう女の子が走って…所謂人間競馬。

 

目が覚めたらここに居た…訳ではない。

俺の話はまあ…別の機会にしよう。

 

 

レース場を眺めながら…走るウマ娘を見る。

 

 

たった…とは言えないが約2kmを走る為に…その数分の為に命を燃やす。

優勝…一着はただ1人。

栄冠も…名誉も何もかも…1人のもの。

 

それを掴む為に彼女達は灰被りの中で輝くダイヤモンドを目指す。

 

 

 

 

 

 

 

今はその練習の真っ最中だろう。

 

 

 

 

「……ごめんなさい」

 

「ライスが居るから…見つからなくて」

 

「そんなことありませんよ?元気出してください」

 

「肯定ッ!その通りだ!出会いは運命の巡り合わせだ!まだきっと大丈夫」

 

そんな声が聞こえてきた。

そちらを見ると………

緑色の服を着た女性と………ん?子供かな?うん?

1人は…うん…ウマ娘だね…。

黒と紫の服に…長い髪…片目が隠れる程の…。

 

「理事長の言う通りですよ!ライスさん」

 

理事長…?名前かな?

いや…合法ロリってのかもしれない…。

やめよ…真面目に生きよう…

 

 

 

ほう…ライスってのか、あの子は。

 

「…そうだ。大丈夫だぞ」

 

「会長…」

 

 

…威厳たっぷりのあの子はカイチョーと言うのか…。

 

 

 

 

 

 

 

その時…ヒュウと風が吹いた。

「あ…」

 

ライスの帽子が風に飛ばされてこっちへ飛んできた。

 

 

「おっと!」

 

俺は奇跡的なミラクルキャッチで帽子を掴んだ。

 

 

 

 

 

 

素晴らしくカッコいいキャッチ…

これはモテる。

 

 

 

 

 

ズルリ…

まあ…そうだよね。

こけるよね。

 

 

 

ドシャァア!!!

 

 

 

 

は、恥ずかしいッ!!

でもね?でもね?帽子だけは守ったよ?!

 

 

「だ…大丈夫ですか!?」

と、ライスと呼ばれた子が駆け寄ってくる。

 

そして…捕まってください…と手を伸ばしてきた。

 

「あ…あはは…こけちゃった…恥ずかしいな」

 

 

そして…その子の手を取った。

 

「「「「!!!!」」」」

 

 

「ありがとうございます。…飛びましたよ。はい……ーって…え?」

帽子を紳士的に渡そうとしたが…皆が固まっていた。

 

「…ごめんね…カッコ悪くて…」

 

「…そんな事ないよ、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少ししての事だった。

 

とあるウマ娘がスパートをかけた時の事…。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ…amg.pjmgwgt…のに…」 

彼はポツリと言った。

 

「……?!」

ルドルフは耳を疑った。

 

 

 

次の瞬間!

 

 

 

「あっ!やべええ!忘れてたッ!」 

突然彼は叫んだ。

 

びくうっ!!

走っていた子は驚いて止まった。止まってしまった。

 

全員が彼の方を見る…。ざわざわとし始める場内。

「な、何ですか!?あなたは!邪魔するんですか?ちょっときてください!」

 

と…別のトレーナーに連れて行かれた…と言うか摘み出された。

 

 

 

 

「…変な方だったんですね」

 

「残念!好青年だと思ったのに」

 

 

「…」

黙って考え込むカイチョーことシンボリルドルフ。

 

「…」

心配そうに彼を見つめるライスシャワー。

 

 

 

 

「君…あの男の人とは知り合いかい?」

 

「い、いえ…」

会長に尋ねられて答えるウマ娘。

 

「どうした?会長」

 

「ん…いや…少しな…」

 

 

 

 

 

 

 

数分して…件のトレーナーが帰ってきた。

 

「あぁ!たづなさん!秋川理事長!」

「すみません…お見苦しいところを」

 

 

「いえ…あの方は知り合いですか?」

 

「いやいや!初対面ですよ…!」

「でもね?アレなんですよ…わざとだって言ったんです!本当失礼な奴ですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達はその後の発言に凍りつく。

ルドルフは疑問が確証に変わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのままスパートかけたら……この子が壊れるって言ったんです…だから止めた…早く医者に見せなって」

「あの子は長距離スタミナを鍛えた方が良いって」

 

 

 

 

 

 

 

「やはり…」

 

「え?どうしたの?会長…」

 

 

「アイツは…あの男はボソッと言ったんだ…」

 

『あぁ…短距離向きじゃないのに…アレじゃ壊れるな…()()()()()()()()()()…』と…。

 

「「「「「!?!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

「…」

皆の視線はその子に集まる。

 

 

 

「え…あ…」

 

 

「と、トレーナー…実は…足が調子がおかしいんです…」

 

「…本当か?…何故言わない?」

 

「も、もうすぐレースで…どうしても…出たかったので……」

 

 

 

 

「疑問ッ!君ッ!この子の走行記録を見せてくれっ」

 

「は、はい!!」

トレーナーは急いでバッグからそれを取り出した。

 

「たづな!」

 

「はい!!」

 

 

ペラペラとめくって行く。

 

 

「これは…」

 

 

彼女の記録表を見ると…。

一見、短距離向きに見えるが…

よくよく見ると…確かに長距離になればなる程に僅かにタイムが伸びていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクゾクッと背中に何かが走った。

それは…何とも形容し難い…高揚感ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

もしもこの感覚が本物なら…私が見た…あの姿は…夢じゃないかもしれないッ

 

 

 

「あのお兄さん…凄い…」

 

「…理事長……ッ!!」

ルドルフは叫んだ。

 

「理解ッ!!わかる!何が言いたいかわかるぞ!」

 

4人は急いで彼を追いかけて走り出した。

 

 

 

 

 

 

もしかしたら…彼なら…ッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし…彼を見つける事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…いてて……」

「あんにゃろ…あんなに引きずらなくても……」

 

 

 

「あいよ!ラーメンお待ち!」

 

「おほー!いただきまーーす!」

 

 

 

「兄ちゃん…さっき競馬場居たろ?」

ラーメンを出しながらジーサンが言う。

 

「お恥ずかしい…見られてましたか」

 

ズルズルとラーメンを食べる。

悪いことしたかな…?あの子には…なんて思いながら。

 

でも…仕方ない。

彼女が壊れるよりマシだ……あのトレーナーが気付けばの話だけれども……。

 

 

 

 

 

 

俺なら上手くやれる…何なんては思わない所詮は偽善。

それほどの能力もない…。

ただ…彼女達には高く飛んで欲しい。

 

 

「……まあ…理由は聞かねえよ…変わり者の兄ちゃん」

 

「…あはは……」

 

 

 

そうさ…変わり者さ…。

だって初めてじゃねえもん……あんなこと…。

ダメだ…

 

 

 

「ご馳走様でした!」

 

「また来いよ…!兄ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら!?あなたは…やっぱりさっきのは!」

 

「げっ!?乙名史さん!?見られてた!?」

 

「ここに居たんですね!?ーって待ってくださいよー!!」

 

「き、記事にはしないでーーーー!!」

 

あの記者はまずい…

どれくらいまずいかと言うと……言葉には出来ないくらいまずい。

 

 

 

 

 

 

 

「…逃げちゃった……もう…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「偶然ッ!乙名史ではないか!」

 

「あら!秋理事長!ご無沙汰です」

 

「なんだか嬉しそうですね」

 

「ええ!久しぶりにあったんですけど…逃げられました」

 

「??」

 

「ふふっ…さっき競馬場でプチトラブルを起こした人ですよ」

 

「それは!?」

「どっちに行った!?」

 

「え?」

 

「その男はどっちに行った!?」

 

「え…あっちですけど…」

 

「理解ッ!行くぞッ」

 

 

「え?!?何?あなた達も知り合い?」

 

 

「いや…今から知り合いになるッ!!」

 

 

「え?何それ面白そう…私も行く!!」

 

 

一行は彼が向かったとされる方向に走って行く。

 

 

 

 

 

 

「なんで彼を追ってるんですか!?」

 

「あの人に可能性を見たから」

 

「トレーナーになって欲しいんだ」

 

 

 

 

 

道中で詳細を話す…。

 

「あー……なるほど。トレーナーになってくれないか?と頼むんですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…無理だと思いますよ」

乙名史は言った。

 

 

「え?」

「なんで?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だって…彼はトレーナーを辞めた人なんですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




間違えてあげたので上げ直しです…


ゆーっくりだからやっていきますので
よろしくお願いします(๑╹ω╹๑ )


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話 それをきっと運命と呼ぶんだ ②

「驚愕ッー?!彼は元トレーナーなのか!?」

 

「でも辞めた…って…」

 

 

 

 

「彼は…」

乙名史が喋ろうとした時だった…。

 

 

 

 

 

 

「って居たぁぁぁぁあ!!!」

叫ぶルドルフ。

 

 

 

 

 

 

 

「おう!?!?」

びっくりする男。

 

 

 

 

 

「き、君は…ゼー…さっき……のハー…」

 

 

彼からしたら…いきなり集団が走って迫って来た。

ゼーハーゼーハー言いながら迫って来た…。

ここ数日で1番恐怖だったと語る。

俺何かしたかな?

 

アレ?さっきの子達じゃん…締めに来た?

やりにきたの?

 

 

「お、落ち着いてえええ!?」

 

 

 

 

 

「確保おおおおお!!!!」

 

 

「「「「ガッテン!!」」」」

 

 

 

「え!?嘘っ!モゴッ…オオオオオ!?!?」

 

 

 

これを世間では拉致と言う。

まあ…敵うわけないよね?

 

 

目隠し、腕縛り、麻袋

凡そ、ドラマで見る誘拐劇に似た強奪は敢行された。

 

 

 

 

 

 

 

ガラガラと揺られて運ばれる。

車かな?

なんてあんなに考えていたり……

 

 

あれ?止まった?

え?何?やっぱり殺される?

 

まずかったかなあ…アレは…

 

 

 

 

 

 

 

「死ぬなら…一思いにやってくだせえ…」

 

 

「いや…殺しませんから…」

 

 

 

 

 

ざわつく声が聞こえた。

 

 

 

 

 

目隠しを取られると…

部屋の中には…数名のウマ娘?らしき子達と拉致の実行犯が立っていた。

おい、乙名史記者よ…目の前で事件が起こったぞ?

てか…アンタも加担したよね?

 

 

 

 

 

 

 

と言いつつ…何を言われるか分かってる…。

うん、ばかでもわかる…

でも…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…進言ッ!急ですまないッ!率直に言う」

 

 

「私の学園でトレー「トレーナーならやりませんよ」

 

「…どうしてです?」

 

「…乙名史さんと知り合いなら聞いてたりしませんか?」

 

「私は何も言ってないですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…俺は……もう出来ないんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

乙名史は喋り始めた。

「彼は…ブラック学園の新人トレーナーでした」

 

「確か…この前に廃園になりましたよね」

たづなが相槌を打つ。

 

 

「厳しい練習を課して潰れるウマ娘が絶えなかったとか…内部告発と………あぁ!!」

ルドルフの目の色が変わった。

 

 

「そう…彼ですよ」

 

 

 

 

 

「ウマ娘をめちゃくちゃにした…外道男ッ」

ルドルフは彼を睨みつける。

 

「………」

 

「お前はッ!!数多くのウマ娘の夢を奪った犯人じゃないかッ!!」

「ダメだ理事長…!そんな奴にトレーナーは任せられない!」

 

ザワつきが大きくなる教室内。

 

「……」

 

「何とか言えッ!!」

彼に掴みかかるルドルフ。

 

 

「違います…」

乙名史はポツリと言った。

 

「逆なんです…」

「彼は…助けたんです」

 

 

「は?」

 

 

 

 

 

 

「……あるところにだ…とある人が居た」

 

 

フツーに暮らしてフツーに居た男だ。

ある日目が覚めたら…ウマ娘と言うのが走る世界に居た。

 

右も左も分からん中で必死に生きようとした。

やさぐれながらも…

そんな時出会ったんだ…ウマ娘に。

 

彼女達は華奢な体で栄冠の2文字の為に頑張って走っていた…。

その姿に心打たれて…俺も頑張ろうと思ってそいつは頑張り続けた。

 

 

ある時、男はひょんなことからブラック学園にトレーナー補佐として就職した。

 

 

そこは名門と言われる所で…

まあ噂通り、キツいキツい練習を課す所だった。

 

 

メニューを熟せない、タイムが上手く縮まらない子には容赦なかった。

 

初めて担当になった子が居た。

俺なりにその子に合ったメニューを考えて…頑張っていた。

 

でも…学園はそれでよしとはしなかった。

陰で無茶なメニューを課していた。

 

それに気付かなかったトレーナーは……。

 

ある日その子が怪我をした。

 

医者は言った。もう走れないよ…って。

その子は泣いたよ。

泣いて…辞めて行った。

 

 

 

 

 

 

「その後は…」

 

 

 

「死んだらしい」

 

 

 

 

 

「貴様ッ…」

 

 

 

 

「俺は暴れたよ」

「内部告発もした」

 

「でも俺は無力だった」

「全部俺に被せられて……俺は追放された」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達もその事は知っていたんです」

「でも…上層部に握りつぶされたんです」

 

 

「……」

 

「だから関わるのは辞めようと思ったんだ」

「信じられないないだろう?俺に関わってもろくなことにならないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

懸命に頑張る子を壊すのは許せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら何故…あの子を助けた」

 

 

「何のことかな」

 

「関わりたくないなら…何故あの子を助けた!関係ないなら放っておけば良かったんだ」

 

「出来るわけないだろう!!」

彼は言った。

 

「…あ…いや、何でもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

「逃げるのか?」

 

「なっ!?」

 

「汚名を着せられて…逃げるのか?精一杯やり返そうと思わないのか!?」

 

「俺には出来ないッ!!」

 

「何故!?」

 

「その資格も力もないッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…なら一つ聞きたい…。何故お前はトレーナーになった!?」

 

 

 

 

 

 

「ヤケクソに頑張る中で…ウマ娘に…頑張る事を教わったから……頑張る子には高く飛んで欲しいから……」

 

 

「お兄さん…」

「あの…私…上手く言えないんだけど…」

 

「お兄さんが帽子を取ってくれた時…見えたの」

 

「何が?」

 

 

 

「輝く…何かが」

 

 

 

「輝く…何か?」

 

 

「……ッ!ライス…それは」

 

「お兄さんが沢山の皆に囲まれて…よくやった!って皆を迎えてるの」

「きっと夢……じゃない」

 

「私に見えた…」

ルドルフに見えたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

「提案ッ!!なら…ここで示せッ!!」

「私も君に大きな何かを見たッ!!」

 

「私達が君を守る…!だから!この子達を高く飛ばせてくれないか!?」

 

 

 

 

 

 

「なっ……」

 

 

 

「……鵞堂さん」

「次は私も一緒に戦います」

「あなたが…素晴らしいトレーナーである事を知ってもらう為に頑張ります」

 

「だから…」

 

「ここから始めませんか?また一度…」

 

 

 

 

 

 

「良いのか?」

「俺なんかで良いのか?」

 

 

 

 

 

「周囲の目は厳しいものもあるだろう…」

「ここが何と言われてるか知ってるか?」

 

 

「灰被りのダイヤ…グレーダイヤ」

 

「グレーダイヤ…」

 

「君が磨いて…輝かせてくれ」

と理事長が手を出してくる。

 

 

「……後悔しないでくださいね」

 

「承諾ッ…任せろ!」

 

 

「灰だらけなのはお互いだよ」

ルドルフが笑う。

 

俺はその手を取った。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話 それをきっと運命と呼ぶんだ ③

俺は酷く後悔している。

ほぼ焚き付けられた形で承諾したけれども…

 

世間で言う俺は大悪人。

真実は俺の中にあっても其れを知る人は少ない。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それが俺につけられた名前。

 

 

 

 

 

グレーダイヤ…

灰被りのダイヤモンド。

埋れに埋もれた輝きを知らないダイヤモンド…。

無冠で目立つことの無い彼女達についたあだ名。

それでも彼女達は懸命に頑張るんだろう。

その遠い遠い栄光を夢見て飛ぼうとするのだろう。

 

数名はキラキラした目でこちらを見ていた。

数名は諦めた目でこちらを見ていた。

 

 

ダメだ…やっぱり出来ない。

彼女達にこれ以上不幸な目にあってほしく無い…

世間から冷たい風に凍って欲しく無い。

 

 

 

よし、やっぱりやめようと言いに行こう。

 

 

 

 

 

 

教室のドアに手をかけた時だった。

 

 

「私は…運命を信じるよ」

なんて声が聞こえた。

 

「…なんて言うかなあ…ビビっと来たんだよお」

「ああ、この人なんだ…って」

「ねえ!会長」

 

「あぁ…うん、そうなんだ…何か光るものを感じた」

 

 

「でも…あの人は…悪魔なんでしょ?」

 

「そう言われてるな」

 

「なら…私達も同じように」

 

 

 

「そんな事ないよ!!」

ライスが叫んだ。

 

「こけながらでも…帽子を守りながら取ってくれて!怪我させたくないからって悪役になっても…助けてあげてたあの人が…悪い人な訳ないよ!」

 

「ライス…」

 

「でも世間の声は…昨日調べたけど…凄い言われようだよ」

 

 

「私達だって同じだよお!灰被りだなんて言われてる…」

「なら…私達が輝いたら…あの人と一緒に輝いたらきっと変わると思うんだ」

「私は…お兄さんの為に走りたいッ」

 

 

 

「………」

鵞堂 誠……誠は言葉が出なかった。

 

 

ライスちゃんが…俺の為に走る…?

たった一回出会っただけの俺の為に?

帽子を拾っただけの俺に?

 

 

 

 

「ゾクゾクしたんだ!アイツが…ウマ娘の故障箇所や適性を当てた時に…こんな気持ちは初めてだった」

 

 

「見られるんじゃないかと思うんだ…テッペンの景色とやらを」

 

 

カイチョーちゃんまで……そんな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奇遇ッ!!どうしたのかな?トレーナー君」

 

「理事長…」

 

「辞めたい…かな?まあその気持ちも推察できる」

 

 

 

「…ここは、小さな学園なんだ」

「他の素晴らしい設備や人材が揃った強豪校では無い」

「だが……彼女達は本気なんだ」

 

「本気で人生を懸けて夢を見るんだ」

 

「一着というものを目指して」

 

「命を燃やして走るんだ」

 

 

 

 

 

「例えッ!灰被りと言われても…夢見るッ!栄光を掴む日を」

 

「想像…ッ!私にも見えた!君が…君が育てた彼女達が大地を駆け抜けて…それを掴むのを」

 

 

「拝聴ッ!!聞かせてくれッ!真に問いたい!!!」

 

 

.

 

 

「君の夢を…ッ!君がトレーナーになった時に持った夢をッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この声は…理事長…?」

 

こっそりと外を覗いてみる。

理事長の向かいに誠さんが居た。

 

 

 

 

 

 

 

「辞めるなら…辞めても構わない…重圧だろう!この仕事を受ける事は…」

「だが!聞かせて欲しいッ!!君の夢を…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夢……

俺がトレーナーに…補佐になった時の気持ち…。

 

『トレーナーさん!一緒に頑張りましょう!!』

 

『栄光は遠いですけど…トレーナーさんとなら!きっと良い景色だと思うんです』

 

『今しかないから必死に走るんです』

『私は行きたい!あなたと!その先に…あの向こうにッ!!』

 

 

[あなたと見たかった…その景色は…私には出来ませんが…きっと見てください]

 

 

 

 

 

 

 

「見たいんだ…」

 

 

 

「……?」

 

「「「「「何を…?」」」」」

何が見たい……の?

シーンと壁に耳を当てる皆皆。

 

 

 

「見たいんだ…栄光って奴を…」

「掴んだ奴にしか見られないその景色をッ!!」

 

「頑張ろうって…生きる希望をくれた彼女達と一緒に見たいんだ!!」

 

「彼女達が高く…高く飛んで行くのを!見たいんだッ!!」

 

 

 

「灰被り?上等だ!!俺は外道だ悪魔だ言われてるんだ!!」

 

 

 

「俺が皆を輝くダイヤモンドにしてみせる!!」

 

 

 

 

 

 

 

「きっとそれを運命と呼ぶんだろう」

「…その為に力を貸して欲しい」

天晴れ!と書かれた扇子を広げて理事長はニコリと笑って言った。

 

「待っているよ…彼女達は…この向こうで」

 

 

 

 

 

 

この扉は…俺の未来への一歩…。

輝く栄光を掴む為に…彼女達に輝きを知ってもらう為にッ!!!

 

 

 

 

ガララッ…

 

 

 

 

 

 

「おはようッ!!俺は鵞堂 誠(げどう まこと)」

「俺と一緒に…頂上…目指さないか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あるぇ?

思ってたのと違うぞ?

 

何でみんな…俯いて震えてるの?

寒すぎた?ウケた?

どっち?

 

 

 

 

 

ルドルフが涙目で握手を求めて来た。

「以前はすまなかった……よ、よろしく…」

 

ああ…くだらなさ過ぎて…ごめん…。

泣かないで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誠がとぼとぼと理事長に手続きがあると言われて連れて行かれた後の事。

 

 

 

 

 

 

 

「…心がざわついたよ…」

 

「運命…かあ」

 

「うん…まさかあんなので涙が出てくるなんて…」

 

「明日から頑張ろう…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…受けは良かったようですよ?誠さん」

たづなさんが笑いながらお茶を出してくれた…。

 

「嘘ダァ…滑りましたよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おむかれさまでしたー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危機ッ!少し泣きかけた」

 

「あんなに真っ直ぐなトレーナーさんて居るんですね」

 

 

 

「楽しみ…ですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここから始まる…

ダイヤが輝くまでのお話。




三分割しました!

次回からまともにウマ娘が走ると…思います。

ゆっくり更新にはなりますが…
少しでもお楽しみ頂けたら嬉しいです!

ぜひ、お気に入り登録等よろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

初勝利に向けて
4話 ライスはヒールじゃないよ ①


連投です。




少し…ほんの少しずつこの学園に馴染み出した…と信じたい。

 

今日はライスことライスシャワーのトレーニングだ。

 

 

 

 

うん、悪くない走りではあるな…。

少し脱力しすぎな気もするが……。

 

「お、お兄さん…」

 

 

「お?ライス…いいフォームだぞ!でも、なんか遠慮気味に走ってない?」

 

「え……あ、う…」

 

「もっと力出してもいいんだぞー?」

「来週の大会に向けて仕上げとかないとな」

 

 

 

「…ごめんなさい」

 

 

 

 

「どした?」

 

 

「あう…あのね…ライスね…」

 

 

 

もじもじと小さくなるライス。

見た目はね完全に強者なのにね。

 

 

 

 

 

 

 

 

ライスの横に座る。

 

「よーし!俺は君のことを知る事から始めるよ!」

 

「ふえっ!?」

 

「お互いに知り合ったばかりだからね」

 

「うん!」

 

データを見ても悪いところはない

寧ろ良い方だ。

 

 

だが…彼女は所謂無冠である。

十分上位に食い込める能力はあるんだ。

これには理由がある筈だ。

その理由を探る必要がある。

 

 

「趣味は?」

 

「あと…ライスは絵本を読むのが好きだよ」

 

「絵本…」

 

「絵本はね!素敵な世界に連れて行ってくれるんだよ」

 

「どんなお話が好きなんだ?」

 

「えとね…コレ」

スッと差し出してくれた絵本。

悪い子と言われた子が大好きなお兄さんに励まされて一生懸命に頑張って最後には笑顔になる話。

 

「懐かしいな…見たことがあるよ」

 

「本当?今度一緒に読もう?」

 

「いいね!」

 

「お兄さんの好きなものは?」

 

「俺はねえ……俺はねえ………」

やべえ…無いよ…ほぼ趣味ねえよ………

 

「……旅行?」

間違っては無い。うん、間違っては無いはずだ。

 

「わあ〜凄い。どこに行った事があるの?」

 

 

よもよもとお昼ご飯を挟みながら会話を広げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして午後の模擬レースでそれは起こった。

 

 

 

出だしも好調なライス。

 

だが…

 

 

 

俺は見た。

 

 

直前で減速したのを…

わざとに減速したのを…

 

 

 

 

 

 

 

「ライス…」

 

「えへへ…ダメだったよ…」

力なく笑うライスに俺は言った。

 

 

 

 

「ライス…なんで()()()()()()()!?」

 

「……え…」

 

 

「何でだッ!」

つい語気が強くなる。

 

「ひうっ」

 

 

 

 

 

「アイツ…」

 

「待て…スカーレット…」

飛び出そうとするスカーレットを抑えるルドルフ。

 

 

「…ッ!会長ッ!!でも…あの子は!……!?」

スカーレットの目の先のルドルフは…期待に満ちた表情で誠を見つめていた。

 

 

「知ってる…ライスの理由も……でも、彼なら…全てをひっくり返してくれる気がするんだ」

ゾクゾクっとした。今迄の誰も気付かなかった事にやはり奴は気付いたんだ。

 

 

 

 

「……あ…」

「ご、ごめんなさい!ライスは…ライスは!ヒールだから!!」

 

駆け出すライス。

 

「ま、待てッ!!」

 

急いで追うが…追いつけるはずは無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くそう……ヒール…?」

ヒールって何だ?と考えていた時だった。

 

 

「アンタ!あの子を泣かせて…許さないわ!!」

殴らんばかりの勢いで飛び出してきたウマ娘。

側から見ても彼女が怒っているのがわかるだろう。

 

「君は…ダイワスカーレット…」

 

「あの子はね…あの子は「言うな」

 

突然言葉を遮られる。

「…ッ!!」

 

「それは俺の仕事なんだ」

 

「……え?」

 

「話したんだ…お互いをよく知ろうって」

「だから…そこからは俺の仕事なんだ」

 

真っ直ぐな目…私達が待って無いような目。

私はまだこいつが信用ならないケド…それでもチャンスはあげても…いいなかな?

 

 

「……ならあの子の居場所は分かるの?」

 

「…………フッ」

 

「分かんないのね……」

「…屋上に行って見たら?」

 

「スカーレット…」

 

「独り言よ…」

 

「ありがとう!」

「カイチョー!俺は少し抜けるぞ!自主練を続けていてくれー!」

 

 

「…あぁ……行ってくると良い」

 

 

 

 

 

個人のメニューを書いたプリントを渡して走って行くトレーナー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スカーレット…」

 

「なに?」

 

「前から思ってたんだが…トレーナーは私の名前をカイチョーと勘違いしてないか?」

 

「そんな事は無いと思うけど…」

 

「コレ…」

 

「……ぶふっ」

思わず吹き出したスカーレット。

沈み気味のルドルフ。

 

 

 

 

 

 

 

ルドルフのプリントの名前欄には…

『カイチョー』と書かれてあった。

 

 

 

 

 

「…ライスはダメな子…」

「ライスはダメな…うっ…ぐすっ」

 

 

「ライ…

と言いかけたところで頬に冷たい感触が伝わる。

「ひゃぁあ!?」

 

「ふえ!?お、お兄さん!?」

そこには…冷たいジュースを差し出したトレーナーさんが居ました。

 

 

「何でここが?」

 

「秘密♡」

 

 

「何できたの?悪いライスの事なんか…」

 

「言ったろう?お互いをよく知ろうって」

 

 

「ヒールって何だい?」

 

 

 

「……」

ライスはポツポツと喋り始めた。

 

 

暫く前に行われたとあるレース。

 

優勝を確信されたとあるウマ娘…をぶち抜いて見事優勝を果たした。

 

『やったよ!会長!』

 

『あぁ!よくやった!』

 

だが…会場はそうはいかなかった。

 

 

『このやろー!何でお前なんだー!』

 

『ヒールじゃないかー!』

 

 

『……え?』

 

飛び交うヤジ。

舞う馬券やゴミ。

 

予想されたものを覆した…

優勝した筈の…讃えられるはずの彼女に投げかけられた言葉は余りにも酷く、彼女の心を折ってしまうのには十分だった。

 

 

 

『なっ…彼女は精一杯頑張ったんだぞ!何でそんな言葉をッ』

 

『うるせー!金を返せええ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『…さい…』

 

『ごめんなさい…ごめんなさい』

 

それ以来彼女は本気で走らなくなった。

 

 

 

 





お気に入りありがとうございます!

少しでもお楽しみ頂けたら幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話 ライスはヒールじゃないよ ②

書き溜めの連投ですー!
このライス編は全投下予定です!


「何だよそれッ…おかしいだろ」

俺は震えた。汚い方法を使ったわけでもない。

なのに…彼女は心に大きな傷を負ってしまった。

無意識に力を抑えるようになった。

 

何故…懸命に頑張る子を平然と貶せる?

 

何故…よくやったと言えない?

 

 

「…だからね?ライスが頑張ったら…()()()()()()()()()()()()

 

「皆も怒られるし…何より怖いの」

「不幸になってほしくないの」

 

 

「全力でぶつかって…勝った時の事思い出せるか?」

 

「ううん…」

 

「ライス…辛かったな」

ポス…と頭に手を置かれる。

よしよし…と温かい手で撫でてくれた。

 

怒ってる…お兄さんは怒ってる。

私の為に…。

 

 

 

「ライス」

 

「ひゃい!?」

その撫で撫での気持ちよさに一瞬我を忘れていたライス。

呼び声でこの世にカムバックして来た。

 

 

 

 

「来週の大会…勝とう」

 

 

「ええ!?」

「む、無理だよ!私がやったら…皆…不幸になるよ」

 

 

 

「…確かに不幸になるな」

 

 

「…ッ!!…ごめんなさ「やらなきゃお前が不幸になる」

 

「え?」

 

 

「…周りなんかどうだっていい…俺はお前が勝つと信じてる。全力で挑まなきゃ…失礼だしな」

 

「周りがうるさいなら…黙らせてやれ!ヒール?違う!お前はヒーローになるんだ」

 

「ひーろー?絵本みたいな?」

 

「そうだ!」

 

 

 

 

 

 

 

「俺の為に勝ちたいと言ってくれただろう?」

 

「え、あ、うん」

顔を真っ赤にするライス。

 

 

「その言葉に俺は…勇気をもらったんだ」

「お前に救われる奴はここに少なくとも1人は居るんだ」

 

 

「私が…?」

 

 

「俺がお前のファン1号だッ!」

 

 

 

 

 

「お前は1人じゃない!俺の気持ちも連れて行け!2人で走ろう」

 

 

下馬評がなんだ!

クソ喰らえだ!

やっちまおう!そんな奴らをねじ伏せてやろうッ!!

 

 

「…ッ!!」

 

 

 

荒唐無稽な話だ。

そんな言葉で立ち上がれる奴なんかそうそう居ない。

心が折れた奴に精神論を説いても意味はない。

ましてや、彼女は知っている。その恐怖を身をもって知っている。

だから、周りも気を遣って何も言わない。

気づかないふりをする。

今迄のトレーナーですら気付かない機微に気付いた彼は違った。

 

言ったのだ。

全力を出して勝たないと失礼だと。

下馬評も罵倒も覆すくらいに…黙らせるくらいに勝ってやろうと。

 

 

 

俺の心も連れて行け…2人で走ろう…と。

 

 

どんな人もそんな声を掛けてはくれなかった。

ドンマイ…だとか…

次があるよとか…

仕方ないよ…とか……

 

なのに…この人は…

ファン1号だとか言って…

こんなに目を輝かせて言うんだ。

 

信じてるんだ…

私なら勝てる…と。

 

 

 

 

何だろう?この気持ち…。

まるであの絵本みたい。

やさぐれた悪い子は良いお兄様と出会って改心する。

 

 

あの子はこんな気持ちなのかな?

こんなに…嬉しいのかな…。

 

 

 

 

 

 

 

「……一緒に怒られてくれる?」

 

「怒らせるもんか!俺が黙らせる」

 

「ふふ…暴力はいけないよお?」

 

「なら俺がお前の耳を塞いでやる」

 

「不幸に付き合ってくれる?」

 

「ばか、幸せを掴みに行くんだよ」

 

 

 

「お兄様って呼んでもいい?」

 

「おーおー好きに…………はい?!」

 

「お兄様…ライス頑張るッ!!」

 

 

「ん!?お?おおう!?」

何のスイッチかわからんが…まあ良いよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何アイツ…めちゃくちゃじゃない…」

 

「でも…ライスの心を動かした…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日からライスの猛追が始まった。

練習タイムも模擬レースも抜群の成績を叩き出した。

 

 

「凄いねえ…ライス…」

 

「タキオンさん…」

 

「薬でもやったのかい?」

 

「ううん…やらないよう…コレが……私?」

 

自分でも驚くくらいに体が軽い!

凄いよ!お兄様!!

 

 

 

 

「凄いねトレーナー君…」

 

「カイチョー…」

 

「か……まあいい…。でも浮かない顔だな?」

 

「後は…残り1枚の壁さえつき破れれば…」

 

「壁…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本番当日。

大歓声の中に怯える彼女は立っていた。

 

 

「残り1枚の壁…それは本番という舞台」

 

 

「ライス…大丈夫…怖くない」

 

「お兄様…ライス…ライス」

飲まれそうなライスを抱き寄せた。

 

「ひゃぁぁう!?!?お、お兄様ッ!?」

 

 

「おお…トレーナー君…」

 

「大胆ッ!まさかハグとは…」

 

 

 

お兄様の心臓の音…

何だか落ち着くな……少し早い?お兄様も緊張してる?

 

「うふふ…ライス…頑張るね」

 

ライスは笑顔でハッキリと言った。

 

「行って来ます!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタート位置に着くライス。

 

「お?ヒール様が出るの?」

 

「また荒らされなかったら良いけど…」

 

「賭け金少し下げて来たよ…」

 

 

 

 

「あら?ライスシャワーさん?一度きりの覇者さんが一体何の風の吹き回し?」

 

「…ライスは勝ちに来たの」

 

「は?」

 

「その山の向こうを見に来たの」

「絵本の…マー君と同じように…私は生まれ変わるんだ!!」

 

 

 

目を閉じる…。

知らない…。

私は頑張るんだ!!

やるんだ!!

 

 

 

『さあ!レースが始まります…!』

 

 

 

ライスはヒーローになるんだ!

 

 

 

 

 

『スタート!!』

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話 ライスはヒールじゃないよ ③

一斉に走り出した。

 

出だしは好調ッ!

 

 

 

見事に先頭集団に食い込む。

今のところ三着目。

 

 

彼女達も、そりゃ努力してる。

強い筈だ。

 

 

でも…ライスもこの数日で努力した。

付け焼き刃だと言われるだろう…。

しかしそれで送り出したのは…俺が信じてるから。

あの子がひっくり返すと信じてるから!!

 

 

 

『おーっと!今回はライスシャワーが先頭集団に居るー!』

『先頭は前回覇者キングボタン!続いてハヤテゴーゴー!キングボタンは一度ライスシャワーに敗れましたが…今回も大番狂わせが待っているのかー!?!?』

 

 

「アンタに…負けないわ…」

 

「…まっすぐ前に…まっすぐ前に」

 

 

 

 

 

コーナーに差し掛かりながらひた走る。

 

 

 

 

 

『良いか?ライスの感じ的に見て…まずは先行スタートは必須だ。常に前だ、まっすぐ前に進め!』

 

『最後のコーナーを曲がったときには…持てる力を出し切ってブチ抜け』

 

『後ろの子達は?』

 

『抜かさないように隙のない走りを心掛ける』

『…というより、前に前にと意識してたらそれで良い』

 

 

『お前の持ち味は…スタートダッシュと…ラストスパート』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「前に…前に…前にッ!!!」

 

 

 

 

 

 

最終コーナー途中から…ボッとライスの目が燃えた。

 

「前…にッ!!」

 

 

『おおーっと!!ライスシャワー!前に…前に出たぁあ!抜くか?抜くか!?』

 

 

ジワジワと追い詰める。

焦るキングボタン。

 

「くそ!抜かせないわ!」

「それに…」

「あなたを誰も応援しないから」

 

 

 

 

「やめろおお!抜くなあ!」

 

「またお前かー!?やめてくれー!」

 

「やっぱりヒールじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

その声がライスに届いた。

思い出すあの日のこと。

 

 

「ほら見ろ!誰もお前の勝利なんか求めてない!」

「ヒーローになりに来た?違うわ!お前は…ヒールよ」

 

「大人しく…私の影に隠れなさいよ!」

「ヒールはやられるのがお似合いなのよッ」

 

 

 

 

「頼むー!!やめてくれー!」

 

「そんな大番狂わせ求めてねえよおー!」

 

 

 

「…ライスは……ライスは……」

 

 

 

 

 

何とか繋ぎ止めた心は…また……

 

 

 

 

 

自然と足から力が抜ける。

 

『どうした!ライスシャワー!野次に心裂かれたかー!?三着…四着へと落ちて行くー!』

 

 

 

お兄様…ごめんなさい

やっぱり…ライスは悪い子です。

耐えられないよ…。

一生懸命に頑張っても…やっぱりライスじゃあ……

 

 

 

 

 

 

 

 

「うるせええええ!!」

 

そんな怒号が聞こえて来た。

お兄様の声だった。

 

 

 

「何だテメェ!?」

 

「うるせえ!黙って見てろッ!!」

 

「ああん!?」

 

彼は叫んだ。ブチギレだ。

今にも彼らに飛びかかろうとしそうな程に……本気なのだ。

 

「何だテメェ!ひっこめ!!」

 

「るせええ!!俺はアイツのトレーナーだボケえええ!!!」

 

「ああん!?こっちは金払ってんだよ」

 

 

「知るかァァア!!アイツはテメーらの金の為に走ってんじゃねえんだよッ」

 

 

「アイツの大きな夢とプライドと…必死に絞り出した小さな勇気で栄光を掴む為に走ってんだ!!」

 

「頑張るアイツを…ヒールだとか抜かすなッ!!」

 

「必死に頑張る奴を…蔑むなッ!!」

 

 

「アイツは…頑張るんだ!!やれるんだ!」

「飛ぶんだ!駆けるんだ!!」

「ヒーローになるんだッ!」

 

 

 

 

 

行け…

俺に希望を与えてくれた君よー。

例え誰に蔑まれようと…俺は見ているっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めて…言われた。

そんなこと初めて言われた…!

 

 

そう言われたかったんだ…。

アイツならやれるって…

仮初の慰めでもない…同情でもない。

素直に…頑張る私を見て欲しかった…。

 

 

孤独に走る私を……………

 

 

あ…違う…

 

私は今…1人じゃないんだ……。

 

 

 

 

 

 

何の為に走る?

 

 

 

何の為に一着を狙う?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見たいから…

お兄様の言った…勝利の頂の景色を見たいから……

あの人と!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

負けたくないッ!!

私は…勝つんだ…見るんだ!!

 

 

 

 

 

 

「…やはり彼は…凄い」

ルドルフは感じる…。

ゾクゾクする。あの時感じた…高揚感。

 

真っ直ぐなんだろう…

馬鹿なんだろう…でも何だこの気持ちは…

 

 

私はこの馬鹿が気に入った…好きらしい

ウマ娘の為にここまで叫ぶ彼が…

 

 

 

 

 

「「「がんばれえええ!ライスうう!!」」」

 

ルドルフやスカーレット、タキオンも彼女にエールを送った。

わかってる…。自分達がしてたのは見て見ぬ振りの偽善だったと…。

でもこの感情は……本物だ!

 

 

 

 

 

 

 

「ライスうう!!行けッ!!お前はー…!!!」

 

「ライスは…ヒールじゃないッ…」

 

 

 

 

 

 

ボッ…と彼女の両目が……燃えた。

 

 

 

 

 

 

「「ヒーローなんだぁぁあ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボゴッ…

 

 

 

走者は見た。

 

駆け出したライスの右足が…地面を穿ったのを。

 

 

横並びの者は見た。

 

彼女の目が燃えたのを。

 

前を走る者は感じた。

 

言葉には出来ない…圧倒的な背中を刺す彼女を。

 

 

後ろの者は見た。

 

一気に駆け抜ける彼女を。

 

 

 

 

 

ズドン…

 

 

その一歩は前に進む為に

 

その一歩は私を応援してくれる彼や仲間の為に

 

その一歩は…夢見る栄光の為に!!

 

その一歩は…ヒーローになる為にッ!!

 

その一歩は自分を超えて征く為にッ!!

 

 

 

 

その一歩は…!!!

頂きの景色を見るために(夢を…叶えるために)

 

 

 

「うわぁぁぁぁあッ!!!」

 

 

「いけえええええええ!!!」

 

 

 

彼女は駆けた!!

周りなんか見えない!

ひたすらに前を向いて走った。

 

 

ぐんぐんと追い抜いて行く!

だが彼女にはそんなことわからないッ!!

 

 

 

 

『ライスシャワー!!後方から怒涛の追い上げッ!!』

『何なんだ!その走りはー!!最終コーナーを超えて直線…遂に並んだぁぁあ!!』

 

 

 

 

 

「私だって負けらんないんだよおお!!」

並走するウマ娘。

 

 

ライスは叫んだ!

「ライスは…皆の…トレーナーの思いも背負ってるんだ…」

「2人で戦う(走る)から…怖くないッ!!」

 

 

ズドォン!!

 

もう一歩進める!!

その一歩は………

もっと前に出る為にッ!!!!!

 

 

最後に…ブチ抜いて行け!!

 

 

 

 

 

『一歩出たぁぁあ!!』

『ライスシャワー!前に出たッ!その距離は僅かに一歩…いや二歩…どんどんと前に出るー!』

 

『最終の直線で一気に突き放すーッ!!』

『速い!速い!!速いッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トレーナーさん…お兄様…

 

 

見てて…

 

 

 

「ライスを見てて!!」

 

 

 

私は…やるよ!

この手で掴むんだ!皆を…黙らせるくらいに…!

このスパートに命を燃やすんだッ!!!

 

 

 

 

「うそよ!あり得ない…!うそよ!」

 

 

 

 

 

『突き放したァァア!!』

 

 

 

『何を見てるんだ私達は!?あり得ない瞬間だあ!!こんなに早いウマ娘が居ただろうか!?!下馬評も何もかもを全てを覆して…全てを置き去りにして…ッ!!!…

 

 

 

 

ライスシャワー……ゴオオオオオオオル!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果…ライスシャワーは3バ身以上の差をつけてゴールした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シン静まり返った場内。

 

 

前と一緒なのかな…

また…怒られるのかなあ

 

 

でも悔いはないよ…お兄様…。

 

 

 

心配そうに見守る理事長をはじめ、ルドルフ達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らぁぁいすうううう!!」

 

 

突然裂くほどの声が響いた。

彼が走ってくる。

 

「やった…やったぞッ!!一着なんだ!!お前は掴んだんだぞおおお!」

 

抱き締められる。

振り回される。

 

 

やったんだー!って叫んでる。

私は…足に力が入らないよ…

 

ううん…

そんなのどうでも良い…

だって…お兄さんが笑って泣いてくれてるから…

 

「らいすううう」

 

 

 

 

ハッとした皆が寄ってくる。

「ライス…凄いぞ!!」

 

「やったじゃないか!!」

 

 

 

 

 

うん…

 

 

 

この沈黙がやけに長く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

パチ…パチ…

パチパチパチパチパチパチパチ

 

ドワァァア!!!!!

拍手と声援が一気に彼女に押し寄せた。

 

 

 

「凄えよ!!ライスちゃんだっけ!?」

「何だよあの走りは…!!」

 

「感動したよ!」

 

「ヒールなんて言ってごめんな!!!」

 

 

 

 

 

 

耳を裂くような拍手と声援が私達を包んでいる。

馬券がまるで紙吹雪のように舞って降り注ぐ。

 

 

 

ゾクゾクする。

皆も忘れないだろう…。

 

 

 

 

 

 

「……」

ぽろぽろと何かが溢れてきた。

それは熱い…熱い涙。

 

 

今まで流した冷たいものとは違う…熱い涙。

 

「…え……あ」

 

 

ペタリと座り込んでしまった。

腰が抜けた…みたい。

 

 

トン…と背中を叩かれた。

 

「行ってこい…ライス……この全てが…お前のものなんだ」

 

ルドルフも涙を流しておめでとうと言ってくれた。

 

「腰が抜けて…」

 

 

 

 

手を出してくれたのはキングボタンだった…

 

「おめでとう…ごめんなさいね…酷いこと言って…」

「アンタは凄かったわ…あの野次を実力で捩じ伏せた…すごいわよ」

 

「ありがとう…」

手を取るライス。

立ち上がってもまだフラつく…。

 

 

 

 

 

「よおし!このヒーローを皆で支えよう」

 

 

 

 

この景色なんだね…お兄様…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




閲覧ありがとうございます!
こんな感じの流れで話は進んで行くかと思います!

興味をお持ち頂いたらお気に入りに登録等、よろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話 ライスはヒールじゃないよ ④


ネーミングセンスはないのでモブの名付けにはご容赦くださいませ…


 

鳴り止まない歓声の中で…彼女はそれを目にした。

 

栄光

頂き…

その景色は…あまりにも眩しくて…

 

 

「ライスは……ヒーローになれたかな」

 

「当たり前だ…」

 

「どうだ?この景色は…」

 

 

「最高…だよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に…輝くダイヤモンドにした…」

 

スカーレットは呟いた。

 

 

「会長…?」

 

 

「…ふ…ククク…」

ルドルフは肩を抱いて震えていた。

 

 

ゾクッ…ゾクゾクッ

「すまない…興奮が抑えられないみたいだ…」

「今すぐにでも…どうにかなってしまいそうなくらいに…」

 

「そんなに?」

 

「ああ…今すぐにでも彼に飛びついてしまいたいくらいに…な」

 

 

そう…見せつけられたのだ。

彼の言った…可能性…

高く飛んだライスの姿を…。

灰被りと揶揄されながら…小さな学園から始まった私達を…

 

出会った時に感じた高揚感…

全てを…ひっくり返す気がした。

 

 

 

 

「天晴れッ!!素晴らしいぞ!ライス君!!誠君!」

 

「ロリ長…じゃない、理事長」

 

「減給な」

 

「それは勘弁を!!」

 

 

 

 

「お、おめでとうございます…ぐすん」

 

「たづなさん…」

 

 

 

「謝罪!済まなかった!ライスシャワー」

 

「え?」

 

秋川理事長は頭を下げた。

 

「あの時…私達が君をしっかり守って居れれば…もっと輝かしい今があった筈…」

 

「そして…ありがとう!誠君!この子に…もう一度…前に踏み出す一歩を後押ししてくれて…!!」

 

 

彼女もまた後悔していたのだ。

生徒を守る…それが出来なかったのだ。

さぞ苦心したはず…だが、どうも言うことは出来ない。

頑張れなんて尚更…。

 

だから託すしかなかった。

直感で感じた何かに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとうございますうう!!素晴らしいッ!感動しました!!」

 

「乙名史さん…」

 

「インタビュー…していいですか!?」

 

 

 

 

 

ライスが囲まれる…。

 

あれやこれやと聞かれて…

アワアワしながら答えるライスは可愛らしかった…。

 

 

「トレーナーさんが勇気をくれたので…最後まで頑張れました!」

 

 

 

 

 

 

だが…

皆忘れて居た。

 

当然の質問と答えと…その結果を…

 

 

 

『そのトレーナーさんとは!?』

 

 

「はい!あそこにいる…鵞堂 誠お兄さんです!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その名前を聞いて凍りつく記者達…。

その様子を見て居た…観客達。

 

 

 

 

『…鵞堂…誠?』

『あの学園潰しの…?』

 

 

騒つく場内。

そりゃそーだ。

悪名なら…知らない人は居ないレベルだもんな…

 

『なんでお前がいるんだ?』

 

『またウマ娘潰すような練習強いてんのか?』

 

『ふざけるな!帰れ』

 

 

わーわーと手のひらを返したように文句を言い始める。

記者も面白そうに俺を撮る。

 

『またウマ娘に無理を強いてるんですか!?』

 

『前回の件は…どう決着をついたのですか?』

 

 

 

『亡くなったシャイニーホワイトへの謝罪は!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

「停止ッ!!辞めてもらおう!!」

 

一際大きな声が響いた。

秋川理事長だった。

 

 

 

 

「…彼はそんな人ではない……」

 

『でも前回のブラック学園の例が…』

 

「真実はそれだけか?」

 

 

 

「彼の誠実さは…私達が良く知っている!どれだけウマ娘を愛しているかも!!」

「諸君らは見なかったのか?!」

 

「彼が罵倒が飛び交う中で…ただ1人彼女を庇って立ち上がったのを!」

 

「静寂の中で…誰よりも早く彼女の名前を呼んで駆け寄ったのを!」

「彼女の為に一緒に涙を流して喜んでいたのをッ!!」

 

 

「我らも彼女を前回の罵倒から守ることが出来なかった…なのに…彼はたった1人でもそれに立ち向かった!!」

 

 

「そんな人が…ウマ娘を愛してない筈が無いッ!!!」

 

 

 

 

 

 

「私達は…彼を信じている!いつか、真実が見えるまで…」

 

 

「見て欲しいッ!!彼女の笑顔を!周りの顔を…!!心から飛んだ彼女の顔を見て欲しい!!」

 

「これからもそれを示す…!」

 

「だから真実を知る前に…彼を罵倒するのを辞めていただきたい」

 

 

 

「以上ッ!!!」

 

 

 

ルドルフと乙名史は震えが止まらなかった。

鵞堂と言う男の底が見えない。

理事長までもを変えてしまったのだから…

 

 

 

 

この男について行きたい

その果てを見たい。

そう思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ろり長…」

 

「減給ッ!!お前マジで減給な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある意味波乱の大会から一夜明けたトレセン学園。

 

 

「…お疲れ様だな…トレーナー」

 

「カイチョー…」

 

「…トレーナー。私の名前は…シンボリルドルフだ…」

 

「え!?カイチョーじゃないの?」

 

「それはあだ名だ…ちなみに生徒会長でもない」

 

「嘘だろ!?」

 

「本当だ……」

 

 

 

 

 

「ルドルフ…ね、ごめんね」

 

「ルナと呼んでくれ」

 

「ん?」

 

「ルナと呼んで欲しい」

 

 

「ん…わかった」

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様ー!」

 

「おー!ライスー!よしよし」

「どうだ?一晩過ぎたあとは…?」

 

「全然寝れなかった!」

 

「だろうな!!」

 

 

「でも…物凄く楽しかった!走るのが楽しいって思えたんだよ」

 

「お!!それは良いことだ!」

 

 

彼女は微笑む。

「だからもっと…一緒に走ってね」

 

 

「もちろん…どこまでも一緒に走ろう!!」

 

今までに誰も見たことのない笑顔で…彼女は言った。

 

 

 

 

 

 

 

「お兄様と言わせてるんだな…トレーナーは」

 

「いや!これは…あのねすね!?」

 

「いや…そう言う趣味も私は理解するぞ?」

 

「違うって…」

 

 

 

「冗談だ…シンボリジョークだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてスタートを切り出したまだまだ灰まみれの彼女達。

まずは大きな一歩…を踏みしめた!!

 




ライス編は終わりです!

書き溜めの投稿なのでここで止まります。

ゆーっくりの更新ですので…えへへ


少しでもお気に入り頂けたら嬉しいです。

感想、お気に入りに登録等頂けたらとても嬉しいです!
ぜひ!よろしくお願いします!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

その在り方を変える為に
8話 この世界を変えないか?


やはり原作とは設定が違いますのでご注意下さい。


「今日も精が出るな」

 

 

「おーカイチョー…メニューは?」

 

「終わったところだ…」

「昨日はよく寝れたかい?」

 

「…あんまり」

と返すトレーナー。興奮が収まらなかったのか?

 

 

「見てみろ!ライスのあの顔…君が彼女を変えたんだ」

 

「俺が?」

 

「ああ…ダイヤの輝きにはまだまだ遠いかもだけどね」

「私も…凄く嬉しいよ」

 

 

 

 

 

 

 

「しかし…この歌と踊りのメニューの意味は?」

 

「体幹のトレーニングと肺活量トレーニング…そして」

 

「そして?」

 

 

 

「可愛いから」

 

 

「は?」

 

「可愛いから」

 

「いや、聞き直してる訳ではなくて」

 

 

「楽しいだろう?」

 

 

「まあ…否定はしないが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し間があき…

トレーナーはルドルフに語りかける。

 

「カイチョー…」

「いや、ルドルフ…」

 

「…?」ゾワっ

背中から何かが逆立つ感じがする。

あの時の感覚だ…!

 

 

「ウマ娘のレースはおかしいと思う」

 

 

 

「…何を馬鹿な事を…」ゾクゾクッ…

なんだこの男は…?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()

 

 

()()()()()()()()()()

に…何を言うんだ?

 

 

「そう…その当たり前……そんな在り方…おかしいと思わないか?」

 

「ずっとそうだったんだ…今更だろう?」

 

 

 

「いや…違うな」

 

「お前達の努力は…他人の金の為か?」

 

 

ーゾクリ

 

 

「違うだろう?」

「自分の誇りと名誉の為の筈なんだ」

 

 

 

「それは誰も踏み躙っちゃいけないんだ」

 

 

 

「もっと…楽しく走らなくっちゃ!!」

「賭けるのはお金じゃない!誇りだ」

「皆がハッピーになれるレースじゃないと!!」

 

 

 

 

「覚えてるか?ライスが…勝った時のあの顔」

 

 

 

ゾクゾク…

 

 

「金の為じゃない!…そう!あの笑顔の為に!」

 

 

 

 

ブワッ…

全身の…全てが逆立った。

だが…聞きたい!

 

 

 

 

「競バ会への謀反そのものだぞ?」

「この収益は巨額なんだ…小さなアリンコではすぐに踏み潰されるぞ」

 

 

 

お前の心を聞きたいッ!!

 

 

 

「…俺はこの業界からしたら…外道らしいから丁度良いだろ?」

 

 

 

「……ッ!!!」ゾクゾクッ

 

 

 

 

 

ゾワっ…

彼がこちらを真剣な目で見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルドルフ…俺と一緒に……この世界を変えないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…クッ…アハハハハハハ!」

「君は…本当に最高だ…ここまで私を震えさせてくれる人は居ない」

 

 

「…ルドルフ?」

 

 

「ルナ…と呼んでくれないか」

 

「ルナ…」

 

 

 

 

 

「ああ…ダメだ…私は君に惚れているらしい…」

 

「は?」

 

「嫌か?」

 

「え…」

 

「嫌なのか?」

 

「いや…嫌じゃないさ!嬉しいけど」

 

 

突然ルナが飛びついて来た。

 

 

 

 

 

 

 

「世界を変えよう…か!何と面白い事か!!約束しよう…私は君に着いて行く。その先が地獄だとしても…この身も心も君に捧げよう」

 

 

「…は!?」

 

「言ったろう?君に惚れたんだ」

 

 

 

 

 

なんてやり取りをしていると…

 

 

「疑問ッ…君の言うことは…本心か?」

ぽろぽろと涙を流しながら問いかける秋川理事長とたづなさん。

 

 

 

「はい」

 

 

 

「そうか…」

「私の願いでもある…。その為に作ったんだ…このトレセン学園は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全てのウマ娘が誇りを持って楽しく走られるように…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が校はまだまだ小さい…だが!いつかきっと!その夢を叶えたいッ!!」

 

 

「提案ッ!!その君の夢に…私達も乗せてくれないか!?」

 

「俺が乗せるんですか!?」

 

「肯定ッ!!そうだ」

 

 

「はい…私達はあなたから感じるんです」

 

 

「この人なら何かやってのけそうだと」

 

 

「ルドルフも君にゾッコンじゃないか…」

「園内恋愛は自由だぞ?」

 

 

 

「ウマ娘に愛されてこそのトレーナーですよ」

ニコリと笑うたづなさん。

 

 

 

 

 

 

「素晴らしいっ!!」

 

 

「聞きました…トレーナーさんの例え逆風の中でもきっと負けずにウマ娘の為に命をかけて世界を変えてやる…と言う言葉…」

 

「感激ですううう」

 

「「「ゲッ」」」

 

「早速記事に…」

 

「待て待て待て待て!!」

慌てて乙名史さん…もとい爆弾を止める。

 

「順序ッ!順序があるからあ!!」

「俺達アリさんなの!ちっぽけなの!だから待って」

 

「アリも群がれば像を殺しますよ?」

 

「そんな数居ねえから!!」

 

 

 

 

 

「…でも、具体的にどう変えるんですか?」

 

「そうだな…皆がハッピーになれるレースなんてあるのか?」

「業界的にも収入は必要だぞ?」

 

 

「皆がはいどうぞとお金を払うコンテンツなんて…」

 

「何か考えはあるのか?」

 

 

 

 

「……ある」

 

 

 

 

「レース後の10分間」

 

 

 

レース後の10分間とは…

 

表彰後に行われる優勝者へ与えられた時間。

 

 

基本的にはスポンサーがつくので広告だったり…

個人的な活動をしていればその活動でのスポンサーを募集したりする。

 

ライスには…というよりこの学園にはスポンサーは地元の飯屋くらいしかついてないので優勝者インタビューとして終わってしまったが…

 

 

 

 

「そこで何をするんだ?」

 

 

 

「ライブ」

 

 

「らいぶ?」

 

 

「うん、ライブ」

「名付けてウィニング ライブ」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!?!?」

スカーレットが叫んだ。

 

「ライブって何よ!?え?踊って歌えって!?」

 

 

「そう!」

「一着は…もちろんセンターだ!!」

 

 

「何で!?」

 

「皆可愛いし!一着ってめっちゃ頑張ったんだからセンターでいいだろう!?」

 

「いや、そう言う意味じゃなくて…」

 

「走った後で…体力持つかなあって事?」

 

「違うわよ!」

 

 

 

 

「んなアホな…」

 

「レースに出た皆で歌って踊る」

「ウマ娘はセンター…を争って走るんだ」

 

「賭けられる金の為でも配当のためでもなく…自分を示す為に!!」

 

 

 

 

 

 

「…馬鹿みたい……」

ふぅ…とため息を吐くスカーレット。

 

「でも…面白そうじゃないか?」

タキオンがククッと笑った。

 

「ライスも…やってみたいかも…」

 

 

 

 

「なら…まずは勝ってスポンサーをつけて発言力を高める為に…練習かな!!」

ルナがニコリと笑う。

「さあやるぞー!!」

 

 

 

 

 

 

「私も協力します!その歴史の変わる瞬間…きっと誰よりも近くで見たいんです!!」

「なので!まずは皆さんの練習風景をーーー…

 

乙名史さんは走って皆を追いかけて行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

荒唐無稽な話。

ただの夢物語…。

まだまだ無銘の奴らの戯言…。

人はそう笑うだろう、馬鹿にするだろう…アホかと。

 

だがどうだ?

目の前のアホはそれを堂々と語っている。

 

 

何故だろう…一瞬見えた気がしたんだ。

 

 

私がセンターで君の方を見て踊る…その瞬間を…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり…運命の出逢いだったのか。

 

 

 

まさか…

あんな男が私の抱えていた理想を語るとは思わなかった。

 

 

 

 

全てのウマ娘が楽しく誇りを持って走れるように

 

 

 

簡単に言えるものではない。

実現なんぞもっと難しい。

だが…それは諦める理由にはならない。

一度転んだなら立ち上がれば良い…。

 

 

その為には…私は君にどんな助力を惜しまないよ、トレーナー君。




少しでもお楽しみ頂けたら幸いです!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話 トレセン学園の日常 ?

 

各個人にそれぞれのメニューを渡す。

といっても基本的には合同での練習がメインであって、日常で出来そうなプチネタを書いて渡したりしている。

 

「ほい、ルナ」

 

「ん、ありがとう」.

 

 

 

 

「さて…トレーナー君。どうやって世界を変えて行く?」

 

「とりあえず…勝って名声を上げるしかないな」

 

「まあ…そうなるな」

 

 

「本気で歌って踊るのかな?」

 

「俺は割とマジなんだけど…」

 

「…そうだな…冗談の目ではないな……」

「まあ…そこも含めて…だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ…はじめないか?練習」

 

 

「そうだ…トレーナー君」

 

「ん?」

 

「確かに興味を強く持っている…。だが…忘れないで欲しい。私は君に全てを捧げる…」

 

「…好きって事だろう?」

 

「あぁ…だから君も私を見てくれ。きっと振り向かせてみせる」

「君の隣にいるに相応しい事を…この足をもって証明するよ」

 

ニコリと笑う彼女にドキッとする。

 

正直な所…

昨日ルナに飛びつかれてから変に意識するようになった。

好かれているのは喜ばしい事だが…思うには、恋愛としての好きとは違うのでは?と。期待や好奇心からではないか…と。

 

それに俺はトレーナー。

恋愛OKよと言われて、はい!なんては言えない。

 

 

だが…彼女の持つ魅力はそれだけではない。

惹き寄せられるなにか‥カリスマめいたものを感じる。

 

まあ…ゆっくりとやって行こう…。

 

 

 

 

 

 

「惚れ薬…」

 

「んあ!?」

いきなりヌッと現れたのはタキオンだった。

「タキオン!?」

 

「…まあ長い付き合いになるんだからね。じっくり見てやってくれたまえよ。しかし納得いかない」

 

「何に?」

 

「いや…彼女に惚れ薬は要らないのか?と聞いたんだが…要らないとあしらわれたよ‥」

 

「惚れ薬?!」

 

「あぁ…!君も何か薬が必要ならラボに来ると良い!実験…いい薬もあるからね」

 

「今実験で言った?ねえ?」

 

「なのに彼女は要らない…と、自力で君を振り向かせる…だってさー非科学的だよねえ」

 

「惚れ薬の方が非科学的だと思うんだけど…」

 

「それを科学で可能にするのが私の役目なのだよ!!」

 

「いや…走ろうよ!何の為にここに居るのさ!?」

 

「無論!設備の充実したところでの実験の為だが!?」

 

「レースは!?!?」

 

「……私はレース向きではないのだよた

 

「いや?素質はあると思うぞ?」

 

「それに走るメリットはないだろう?ウマ娘が楽しく走れる…だったか?夢物語過ぎないか?」

 

 

その言葉に一瞬ピリッとした空気が漂う。

主にルナだけど…。

 

「その夢を叶えるのがまた科学的じゃないか?」

「可能性が低い夢物語だからこそ破り甲斐のある壁だと思わないか?」

 

「何を…」

 

「空を飛ぶのだって、海の上を走るのだって」

「科学の進歩で達成された事たろう?不可能と言われた事なのに」

 

 

「それに…スポンサーがついて人気が出たら研究もやりやすくて捗ると思うんだよなあ……」

 

「………なるほどね」

「…安っぽい言葉だけれども……まあ…少しは心にきたよ」

 

そう言いながら歩いて行くタキオン。

彼女はルドルフの肩をポンと叩いて言う。

「君が彼に興味を持った理由が何となく…わかったよ…なんだか不思議な魅力があるものだね」

 

「…渡さんからな?」

 

「それはトレーナー君次第じゃないかな?…それに……私にはいざとなれば…惚れぐs………待て!待ちたまえ!使わないから!使わないから!!その顔で近づくな!!」

 

「タキオオオオン!」

 

「ちょ!来ないでくれ!」

 

 

何故かはじまった走り込み。

 

「気合入ってんな…あの2人……」

てかタイム早くね?

 

「……バカなの?あの2人は…」

 

「…お兄様!ライスも行ってきます!」

何故か混ざりに行くライス。

 

「3人に増えたぞ…?」

と、言いながらスカーレットを見やる。

 

「へっ!?アタシ!?行かないわよ!?」

 

「……ふーん?」

 

「行く意味ないでしよ!?」

 

「………」

 

「わ、分かったわよ!なんだか知らないけど行けば良いんでしょ!?」

 

 

 

「…くっ!なぜライスが増えたのかな?……おや!?スカーレットまで!?恨まれるようなとこは…実験以外では………実験が原因か…」

 

妙に納得したタキオンであった。

 






ほのぼの…日常会です(๑╹ω╹๑ )


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話 練習の後に ①

ロリ長…いえ、理事長のセリフの後の( )は扇子の一言です。
よくあるやつです。


「…このダンスと歌はメニューからのかないのかしら!?」

 

「イエス」

 

「アンタが喜んでるようにしか見えないけど!?」

 

「否定はできない」

「でも真面目にやるよねスカーレットは」

 

「当たり前よッ!!」

 

 

 

「トレーナー君…私はそろそろ限界なんだけど」

 

「タキオン…ドーピングは禁止だぞ」

 

「くっ!!」

しようとしたんか?ドーピング。

 

 

「ライスは…楽しいかな」

 

「ライスはいい子だねえ…」

 

「ありがとう…お兄様♪」

 

「ちょっ!?私も真面目にやってんだけど!?!?」

なんて言うスカーレットを尻目になんか変な薬を飲もうとするタキオンを羽交い締めにする。

 

「栄養剤だって!?本当だよ!」

 

「内容物と効果は?」

 

「###とか@@とか…効果?すごくハイになれるんだよ」

 

「ボッシュートです」

 

「あ"あ"あ"あ"!?私の成果が!?」

 

 

 

 

「…楽しそうだな!トレーナー君」

「私の事も見てほしい」

 

「ルドルフ…」

「君はあれだ…うん完璧だな…本当」

踊りはね…

 

 

 

「歌は…歌うのは苦手なのかな?声出てないけど」

 

「……恥ずかしいじゃないか」

 

何だよそのギャップは…可愛いじゃねえか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習終了〜

 

 

 

「疲れた…」

 

「お腹すいた…」

そこそこハードな練習だったと思う。

ルナに関しては精神面もね…歌わせたからね。うん。

 

 

 

 

「皆で飯でも行くか?ラーメンだけど…」

 

 

「乙女を連れてラーメン?」

フフン…と笑うスカーレット。

 

「嫌ならいいぞ〜」

ニヘラ…と返す誠。

 

「嫌とは言ってないわよ!?行くわよ!」

 

「わかってるよ」

と、スカーレットの頭をわしゃわしゃする。

 

「や、辞めなさいよおー!?」

 

 

 

「お?大盛りでもいいかな?」

 

「ん、いいぞ?タキオン」

 

 

「ライスも行っていい?」

 

「もちろん!行こうな〜」

 

 

「私も良いかな?」

 

「おう、ルドルフも行こう!美味いんだ〜」

 

「…私も撫でて欲しかった…呼び方も…」 

 

「ん?」

 

「…何でもないよ」

 

?何で少し不機嫌なの?ルドルフ?

 

 

 

 

 

 

 

「あのー…これから皆とラーメン食べて帰ろうかと思うんですけど…お2人もどうですか?」

 

「残念ッ!今日は打ち合わせがあるのでな…」

 

「すみません…」

 

 

 

 

 

 

 

「あ!?でも理事長!?歓迎会やってないですよ!?」

 

「………」

「驚愕!忘れていたァァ!?!?」

 

「うわ…気まずい…」

 

「……3人で今度いきましょうか」

あわあわと慌てるたづなさん。

 

「……それで良いですか?」(ごめんネ)

ごめん!と書いた扇子を開けるロリ長。

 

「理事長…キャラ忘れてますよ?」

「俺は嬉しいですよー!楽しみにしています!」

 

「だから誰がロリ長だ!?」(ああん!?)

 

 

 

「また決まったら連絡しますね!」

 

はい!と返事を言って部屋から出る誠を見送る2人。

 

「…皆との関係も良好みたいですね」

 

「うむ、さすがだな」(イイネ)

 

「ルドルフさんは彼を好きみたいですよ?本当に恋仲になるんじゃないですか?」

 

「…それはそれで楽しみだな。ウマ娘の為に頑張るトレーナーとトレーナーの夢の為に走ると誓ったウマ娘…」

「…将来が楽しみだな」(応援!)

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナー!遅いよー!」

 

正門の所で待つ皆に合流した誠。

もちろん、少しだけブー垂れたルドルフは彼の隣に居る。

 

 

 

 

 

情熱ラーメン 

 

 

 

「らっしゃい!……って!お!?兄ちゃんじゃねーか」

「このまえのレースの子も居るな!?熱くなったぜ」

 

 

「俺はこの情熱ラーメンの大将やってる丈ってんだ!よろしくな!」

 

「誠です、トレーナーです」

「シンボリルドルフです」

「ライスシャワーだよ」

「アグネスタキオンだ」

「ダイワスカーレットよ」

 

 

 

 

 

スカーレット「味噌!」

タキオン「塩!」

ライス「味噌!」

 

「俺は…塩!!」

ルドルフ「私も塩」

 

 

 

 

 

「ヘイお待ちッ!!」

皆の前にラーメンが並ぶ。

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

ズルズルとラーメンをすする。

「ん!おいひ」

 

「トレーナー君ずるいじゃないか!こんなに美味しい所…もっと早く…」

 

「煮卵おいしいよぉ」

 

「……美味しい」

 

 

 

 

 

 

 




仕事帰りにラーメンを食べたくて…


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話 練習の後に ②

「……」

「なあ大将…」

 

「何だ?」

 

「今の競バってどう思う」

 

「……兄ちゃんは?」

 

 

「…間違ってると思います。金の為になんて彼女達は走らなくて良い!彼女達の誇りをもって走られるようになるべきだと思うんです」

 

「でも皆、納得して走ってんじゃねえのか?」

 

「…それは今の環境しかないからですよ」

「それが当たり前になっているから…なんですよ」

 

「俺は変えたい!そんな在り方を」

 

「夢物語だろう?」

 

「それでも!彼女達と叶えてみせたいんです!」

 

「その為に彼女達を利用するのか?」

 

 

「…ッ!?」

ルドルフが立とうとするのを止める。

 

「…そう思う人も居るでしょう。でも…俺は…彼女達が笑顔で走ってゴールして喜ぶのを見たい」

 

 

「その為に何すんだ?」

 

「まずは勝ちを重ねてスポンサー…ファンを獲得して信用と発言力を高めたいと」

 

「長え話だな」

 

「それでもやらなきゃ先は変わらないんです」

 

 

 

 

「……そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまねえな!悪い言い方してよ!」

「……悪くねえ夢だ。頑張んな!」

 

「なら…今日のラーメンは門出の祝いだ!食っときな!」

さらに…と煮卵とチャーシューを出してくれた。

 

 

「大将…」

 

 

 

「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」

 

 

 

「ならよ…まずは俺がお前らのすぽんさーとやらになってやるよ」

 

「え!?」

 

「つってもよ…ラーメンくらいしか出せねえけどよ」

「ずっと応援してたんだぜ?兄ちゃん」

 

「え?」

 

 

「まあ…また来なよ」

「うまかったか?お嬢ちゃん達」

 

皆無言で親指を立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お前の言っていた事は間違いでは無かったんだな…」

「…あんな奴初めて見たぞ」

 

丈の首からかけられたペンダントには………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ!買い物があるんだ。すまない、皆は先に帰ってくれないか?」

と、ルドルフが言う。

 

 

「分かったわ。先に帰るわね」

と、信号で別れる。

 

 

 

 

「アンタ何してんの!?」

と、スカーレットに突っ込まれる。

 

「え!?何って帰るんだけど!?」

 

「アホか!ルドルフについて行かんかい!」

タキオンもキャラ忘れて突っ込む。

 

「…………」

ライスは黙ってる。

 

 

ほらほら行った行った!と追い払われながらルドルフを追い掛ける。

 

 

 

 

「ルナ」

と、後ろから声が聞こえた。

 

「…トレーナー君?」

 

「…一緒に行くよ」

 

「皆に言われたのかな?」

 

「…まあね」

 

「そこは自分で来て欲しいな…」

 

「ん?」

 

「何でもないさ!」

 

少し嬉しいような…寂しいような表情をしたルドルフだった。

「ルナ?」

 

「行こうか」

 

 

「荷物持つよ」

 

「ありがとう」

 

 

 

「…あ」

ルナの前にはスイーツ屋さん。

確かここは…フルーツパフェが美味しいんだっけ?

「……」

 

何も言わずに去ろうとするルナの手を掴んだ。

 

「食べてく?2人で」

 

「…いいのかな?」

ドキドキが止まらない。

私は待っていたんだろうな…そう言ってくれるのを。

追いかけてくれたのはチームメイトの言葉でも…この言葉は彼から発された言葉だから…。

 

 

 

 

2人でパフェを食べる。

雑誌で見た通りのパフェは美味しかった。

 

だが、美味しいのはきっと…君と2人で食べるからだろう。

他愛もない話で笑顔になる。

余計にこの時間が嬉しくて、パフェが美味しくて。

 

 

ああ…私は本当に君が好きなんだな…。

君はそう思ってないかもだけれど…少しずつ見てくれたら嬉しいな。

 

 

 

「ルナ?」

 

「うん?」

 

「ついてるぞ?」

と、口の端を拭ってくれた。

かなり恥ずかしいが嬉しかった。

 

 

「そういうとこだぞ…」

 

 

 

 

 

…帰りに試しに距離を詰めてみた。

車が通るから危ないぞと、車道側と変わってくれた。

 

 

…ああもう、君は本当にそーやって私を……。

 

 

「…好きだ」

 

 

 

「ありがとう…」

 

 

…いつかちゃんと振り向かせてやるからな!!

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話 お出かけデート?

「………」

 

「……この店?……」

 

 

「仕方ないじゃない!!」

「2人じゃないと入られないんだもの!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トレーナー…アンタは土曜日暇なの?」

 

突然のスカーレットの質問に驚く。

 

 

 

「ん?土曜日??暇だけど?」

 

「そ、ならアタシに付き合ってくれない?」

 

一瞬、ルドルフやライスから凄い視線を感じたが…まあ気のせいだろう。

 

ふむふむ…

「何しに行くんだ?買い物の荷物でも持ったらいいのか?」

 

 

 

「……くのよ」

 

「-??」

 

「オムライスが食べたいのよ!」

 

 

 

 

 

 

 

ってな訳でやって来たこの店

おむらいすてー

 

店の中を見てみると…ああなるほど

カップル連れが多いのね?なるほど…

 

「ほーほー…」

と、チラ見してみると…スカーレットがハッとして言う。

「こ、ここはカップルじゃないと入れないのよっ…でも私…男性の知り合いなんか居ないし…でも…食べたかったの!悪い!?」

 

「んにゃ?別に?」

 

「ちょっと!何で笑ってんのよ!」

 

「ふわとろおむらいす?」

 

「うぐぅ」

 

「…可愛いところあるな」

 

「は、はぁ!?!?どう言う意味よッ!?」

 

 

 

 

 

「お次のお客様どうぞ〜」

 

「よし、スカーレット行くぞ」

 

「ちょっ…え!?」

スカーレットは驚いた。なぜならトレーナーが腕を組んできたのだ。

 

「…カップルなんだろ?これくらいはね?」

 

「………うん」

 

 

 

 

 

ご注文は?と聞かれて…

スカーレットの注文した特製ふわとろオムライスセットを俺もと頼む。

 

「…スカーレット……」

 

「としたの?」

 

「……周りがカップルだらけだと落ち着かないな」

 

「言いたいことは分かるわ」

「ほら?あそことあそこのカップル…私達と一緒よ?恐らくだけど…」

違いは?と聞くと…なんかぎこちないわ?と言う。

 

確かに言われてみれば仕草がぎこちない。

「ははっ…確かに…て事は俺らもそう思われているのかな?」

 

「かもね?ふふっ」

 

2人で笑う…。

少しぎこちなさが取れた気がした。

 

 

 

 

 

「…2人とも…怪しいからやめた方が……」

 

 

「…何だあの笑顔は……」

 

「オムライスおいしそー…違うっ!ライスも行きたいなあ…」

 

向かいのカフェから羨ましそうに見つめるルドルフとライスを宥めるタキオン。

 

 

 

 

 

 

「…見えてるけどね」

 

「ん?何が?」

 

「…何でもないわ?さあ…頂きましょ?」

 

 

 

 

「おいしいね」

 

「おう、美味しいね」

 

 

温かいオムライスは…とても美味しくて…。

それを美味しそうに食べるトレーナーの顔が…いつも見ない顔に見えて少し嬉しい。

 

 

皆でラーメンを食べるのも好きだけど…

初めて2人で食べるご飯もいいなあと思う。

 

 

 

…外の2人は……アレだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後はお買い物!

 

 

 

       予定に無かったけど♪

 

 

 

 

 

チビてしまった靴を選ぶ時に色々と一緒に考えてくれた。

 

「軽めの靴もなかなかいいけど、トレーニング用には重めのもありかな?」

「今の靴よりは大きめの靴が良いのではないかな?」

とか

 

やはりトレーナー…

真剣に考えてくれる姿は…少しカッコいい。

 

 

「…ありがとう…」

 

 

ある人達は私をじゃじゃ馬なんて言うけれど…

この人は私をそんな風に言わずに見てくれている。

真剣に私達の未来を考えて…毎日を過ごさせてくれている。

 

だならそれに対するありがとう。

 

「なら…トレーナーのオススメを買おうかしら」

 

なんて言いながら靴をレジに持って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

しくじったッ!!

 

予算オーバー……だとぉ…!?

 

足りない…でもトレーナーのオススメだし…

 

 

 

うう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局トレーナーが靴を買ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかった?」

ライスがニコニコと聞いてくる。

 

「…羨ましい……」

 

「カイチョーはこの前行ったでしょ」

 

 

 

「おや?靴を選んでもらったのかい?」

 

「ええ…そうよ?」

 

 

 

「「羨ましい…」」

 

「…良かったねえ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ…

私もきっと好きになりはじめてるんだ…彼のことを。

「アタシだって…負けないから」

 

私はルドルフを見る。

 

 

 

 

「…私も負けない」

ルドルフはニヤリと笑って言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ライスだって…!」

 

 

 

「「え!?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私は置いてきぼりかい!?」

というタキオンの声が響いた。





スカーレットもデレ期に突入か?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13話 歓迎会?

さて…

ここ数日でルドルフも伸びが良くなって来ている。

 

レースはまだ先であるが…黙々とメニューをこなしている。

 

 

 

その陰でのお話…。

 

「…この前のデートはどうだったんだい?」

タキオンがスカーレットにニヤニヤと話しかける。

 

「バッ…デートなんかじゃ無いわよ!」

「たまたま行きたい店が……その…男女ペアじゃ無いと入れなかったのよ!」

 

「ほー…カップルじゃないとダメなんだね?」

 

「……デート…なんだな?」

ずいっとやって来たのはルドルフ。

 

 

「か、かいちょー…」

 

「…そ、そうよ!?デートよ!?」

 

「それならカチイョーだってこの前デートしてたじゃない!」

 

「…ふふッ…確かにアレはデートだ…」

 

「どこ行ったのよ?」

 

「2人でスイーツ食べた」

 

「ほーー!!進んでるなあ」

ふむふむとメモを取り出すタキオン。

 

 

 

「……ライスはまだどこにも行ってないよ…」

 

「「ら、ライス!?」」

 

「2人はいいなあ…。どこかに連れて行ってもらって…」

「羨ましいなあ…」

 

「……でもアンタ…レースで応援してもらって…ヨシヨシしてもらったじゃない」

 

「…そうだけど…」

 

 

 

 

「トレーナーの手はどうだった?」

 

「暖かくて…大きくて…優しくて…ほわーってなったよ」

えへへ…と、微笑みながら撫でられた箇所に手を置くライス。

 

「う、羨ましい…」

 

「撫で撫でされたい…」

 

 

 

そこからアホみたいに練習した。

くっそタイムが縮まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では…」

 

「誠さんの歓迎会を始めます〜♪」

乾杯の合図と共に3人でガラスを交わす。

 

と言っても秋川ロリ長はソフトドリンクです。

 

「だからロリ長言うな」(禁止!)

 

「でも…ライスちゃんも初勝利ですね」

「さすかです♪」

 

 

「驚嘆ッ!さすがとしか言いようがない!」

 

「…でも、世間の風は冷たいですよ」

 

「…任せてくれ!君もこの学園も…きっと守ってみせる」

秋川理事長は力強く語った。

それ程までにこの人は学園を大切に思う中で俺もその中の1人だと言うのだろう。

 

これだけ小さな人なんだ。

俺の思う以上にキツイこともあるだろう。

たづなさんが支えてるとは言え、色々と苦しい事もあるだろう。

 

それでも守ると言ってくれるこの人に報いたいと強く思う。

 

 

 

 

「…で?ウマ娘との恋愛の方は?」

 

「ブッ…ゲホッゲホッ…何が!?!?」

唐突な質問だった。

無意識の外側からの的確なストレートパンチ。

 

「ど本命は?言い寄られてたりもするんだろう?」

 

「ええ、色々聞いてますよ?デートしたとか」

「誠さんも…青春真っ只中ですね?」

 

「そ、そんな事…」

 

「まあ…アレだ…子供とか…作らなかったらいいんじゃないか?」

 

「なんつーことを言うんだこの理事長は」

 

「そりゃそーでしょ!?生徒が子供できました〜とか言ったらダメでしょ!?」

 

「話が飛びすぎですよ!?」

 

 

 

「コホン…まあ…アレだ」

「…それだけ愛されてるトレーナーという事だよ」

 

「それに?たづなもフリーだぞうー?」

 

「・ちょっと!理事長っ」

慌てるたづなさん。

 

「満更でもないくせに〜」

煽るロリ長。

 

「ま…まあ…良い関係で居ましょう?」

 

 

良い関係と言うのがなんなのかはさておいて…

楽しい歓迎会になりそうだ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話 編入生登場(狂)

あーー!!

 

大掃除しなきゃ……

 

しゅーーごーーー!!!

 

ロリ長からの集合合図で集まる面々。

 

 

 

 

「番号ッ!!」

 

「1」 たづな

「2」誠

「3」ルナ

「4」ライス

 

 

「5ぉぉお」スカーレット

 

 

 

「……・6」 スカーレットに引きずられて来たタキオン

 

 

「……少ねえええ」

「大掃除やるには少ねえよお…」

 

 

 

「7!!」

 

「乙名史さん…!?」

 

 

 

 

 

 

 

はぁあちいいい!!!

 

 

 

「……は?」

 

「…誰?」

 

 

 

 

「おいーーーっす!謎のウママスクの登場だぜーー!」

 

と、突如現れたマスク姿のウマ娘。

 

「あっはっはー!!シケた面すんなって!な!?理事長!!」

 

と、たづなさんに向かって言うマスク。

まあ…順当だわな…?

 

 

 

しかし、俺達は真の理事長に問いただす。

 

 

「…理事長?」

 

「え!?あ?!わ、私は何も知らないぞ!?本当に」(本当)

 

「……ええ…」

 

 

 

 

 

「…で?誰だ?怪しいマスクさん?」

 

「……覚えてねえのか?」

「アタシだよ……ゴルシちゃんだよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい!手を離すなッ!』

 

 

『えへへ…ドジっちまったぜ…すまねえ…』

 

『諦めんなって…な!?」

 

『…帰りを待つ奴が居るんだろ?』

『行けよ』

 

パッと手を離すゴルシ…彼女は谷底に落ちて行く…。

 

 

『ゴルシイイイイイイ!!!』

 

彼の悲痛な叫びがこだました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!?お、お前…生きてたのか!?」

 

「ああ!生きてたぜ!何とかな!」

 

「下はマグマだったのに…!?」

 

「アタシにはあんなの…ぬるま湯だ」

 

 

「ゴルシ…」

 

「たけし!」

 

ガシッと握手からのハグで再会を祝う2人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな出会いがあったんですね…たけしさん…」

 

 

 

 

 

「いや知らんけど?俺誠だし…」

 

 

 

 

 

「「「「おおおおおい!!!」」」」

 

 

 

 

 

「えええ!?あんなにやっといて!?」

 

「初対面」

 

「ええ!?!?」

 

 

 

 

「あっはっはっはー!いいねえ!ノリがいいよ!アンタ!」

 

「こんなに笑ったのは…宇宙旅行以来かな?」

 

 

 

 

「……濃すぎるよ…キャラが…」

 

「ライス…深く考えるな……」

 

 

 

 

 

ひとしきり笑った彼女が言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で?ここは何?」

 

 

全員でコントみたいにずっこけた。

 

 

 

 

 

 

 

「え!?ここ学校なん!?」

 

「今更!?」

 

 

「あー……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし決めた!!」

 

「何を!?」

 

 

「アタシここに通う!!」

 

 

「はぁ!?」 驚愕

「はぁ!?」 困惑

「はぁ…」 絶望

「はぁぁ!!」喜び

 

 

 

「お?おう?!歓迎されてんの?困らせてんの?」

三者三様のリアクションに驚くゴルシ。

ちなみに喜んでるのは理事長とたづなさん。

やったね!生徒が増えるよ…

 

 

「さっそく…入学?編入?手続きを……」

「どこから編入?」

 

「ウマセン」

 

真面目に生徒手帳を出すゴルシ。

 

「ええ!?ウマセンから!?」

 

ウマ娘育成セント学園略してウマセン

無類のエリート学園である。

 

大会総なめは当たり前で、圧倒的に強い。

そんなエリート学園からの編入……

 

 

「あ!モシモシ。アタシ…ゴールドシップ。編入の話決まったんで、ええ、トレセン学園です。今手続きやってんで…必要書類送っといて」

 

 

 

 

「はい完了」

 

 

 

 

 

「と言うわけでアタシはゴールドシップ!」

 

「よろしくな!」

 

 

 

 

 

 

「いやいやいやいや!何で!?」

 

 

「いやー…なんかさ…合わなくて…というか、疲れてさ」

「楽しくねえ…っつーか…」

 

「でもよ!ここのトレーナーは面白え!だからここで走りたいって思うんだ」

 

 

 

「ダメか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいや…面白い奴だ。是非とも来て欲しい」

そう理事長は言った。

 

 

 

 

頭を抱えるウマ娘メンバー…。

 

「だが…君達にはいい刺激になるだろうな」

 

「…刺激?」

 

「日本一と言っても過言ではないトコの編入生だ。トレーニングのレベルアップもかなり期待できそうだ!」

 

「…そうだぜ?アタシ…お前らには負けないと思う」

 

 

「「「「は!?」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで簡単にレースをやる。

 

 

「見てろ…編入生!」

「負けないから!」

「…負けない」

「……」

 

 

「おうおう…気合十分ってか?いいねいいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な?言っただろう?」

 

 

 

 

 

圧倒的だった。

それ以外の言葉が見つからない。

 

 

皆、はぁはぁと息を切らせてゴルシを見つめる。

 

 

 

嘘でしょ?ってくらい余裕のぶっちぎりで負けた。

 

こんなにも遠いのか?

私達の目指す先はもっと遠くなった。

 

 

 

 

 

「……でもよ」

ゴルシが言う。

 

 

「これで終わりじゃないだろう?」

トレーナーも重ねて言う。

 

 

 

 

「言ったろう?俺らの目標は…こんな壁よりもっと高いんだ」

 

「なら…もっと強くならんとな」 

ゴルシも言う。

 

 

 

「…で?目標って?」

 

「レースの在り方を変える」

「もっと皆が自由に誇りを持って走れるように!!」

 

 

 

 

「………」

 

 

「…ゴルシ…?」

 

 

 

「ん?あ、いや、なんでもない…」

「いいね!いいね!そういうゲームの主人公?みたいなの?いいね!ゴルシちゃんも頑張っちゃう!!」

 

 

 

 

「だから…その為には強く何なくちゃなあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…悔しいが、その通りだ…」

ルドルフが言う。

 

そうだ…

こんな所で止まってられない…。

私達の夢は…こんな所で止まれないから…。

 

 

 

 

「…シンボリルドルフだ!よろしく…ゴールドシップ!」

 

「おう…よろしく」

 

固く握手を交わす。

 

 

 

 

 

 

 

食らって行く…

そのウマセンも…ゴルシも…

私はもっと強くなるッ!!!

 

 

 

心の中で闘志が燃え上がるルナだった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。