GODEATER~破壊の龍は不浄を殲ぼす~ (JAIL)
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龍の消失

初めましての方は初めまして、他小説で知っている方はお久しぶりです。
この度新しい小説が完成しましたので投稿させて頂きます!
それではどうぞ!


ドッ────!!!!

 

ハンターの持つ太刀の一撃が目の前のモンスターの腕に入り、腕を覆うように生えていた棘が折れて地面に散らばる。

だがそのモンスターはお構い無しにそのモンスターはまだ棘の残る左前脚を地面に叩き付ける。

お互いに牽制しているその間に、少しづつ右腕の棘が再生して元の大きさに戻り、まるで斬られてなかったかのようにその棘達は腕全体に鎮座している。

はたから見てもすぐに分かる程の脅威的な再生速度だ。

 

悪魔のように頭から伸びる太く大きな双角、近付く事も許さないと言わんばかりに生えた全身の棘。

そして例えその棘が壊されても瞬く間に生え変わり、より堅くさせる再生力を持つ龍。

 

その名は【滅尽龍(めつじんりゅう)

 

通称────ネルギガンテ

 

新大陸での至る所で地殻変動が起こっていて、ハンター達はその原因を探っている時に繋がっている大陸のその先に元凶がある事が判明。

その大元へ近付いた際に現れた

 

古龍を襲う古龍である。

 

基本古龍は手を出さなければ一部を除いてハンターや竜を襲う事は無い。

自身と周りとでは実力が逸脱している事が分かるからだ。

それでもこの古龍、滅尽龍ネルギガンテは見境無くあらゆる竜や古龍を襲い続けている。

それこそが滅尽龍ネルギガンテだ。

このモンスターもこの新大陸で起きている異変に感付き、偶然にも新大陸の地殻変動を調べているハンター達と同じ場所に遭遇していた。

なぜここにいるのか、妨害を企てているのか、それとも─────。

だが今は一刻も早くこの地殻変動を収めないといけない。

故にその妨害をするのならこのモンスターも倒さなければならない。

次で決めると言わんばかりにハンターは太刀を鞘に収め、居合の構えを取る。

ネルギガンテも早く終わらせたいのか翼を広げて天高く飛び上がり、ハンターに急接近する。

 

 

──────まだだ、まだ抜くな。

 

 

──────この一撃で終わらせる。

 

 

手に、足に、自分の身体の全てに意識を集中させ力を溜める。

 

 

──────刀を抜く瞬間を間違うな。

 

 

急接近するネルギガンテの腕に生える棘がハンターに突き刺さるその瞬間。

 

ハンターが消えた。

 

いや、消えた訳では無い。

力を溜めるに溜めていたハンターが思い切り抜刀し、既にネルギガンテの真後ろに刀を振り抜いた状態で立っていた。

そしてネルギガンテも気付いた。

 

 

自分の喉が既に斬られている事に。

 

 

──────!!!!

 

 

ネルギガンテは悲鳴のような咆哮を上げながら地に伏し、動かなくなった。

すると地響きが起き、地面が割れる。

体重の重さからか倒されたばかりのネルギガンテは割れた地面にめり込むように落ちていき、姿を消した。




…古龍同士って喧嘩しないよね…?ね?


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新たな大地に龍は立つ

1週間ぶりにハーメルン開いて小説の情報見たらお気に入り件数8件…
1週間で8件早いなw


ピチャン─────

 

顔に水滴が落ちて、目が覚めた。

ムクリと起き上がり辺りを見回す。

点々と透明なものが規則正しく並んでいる巨大で四角い何かが傾いて地面に突き刺さっていたり、長い棒から細長い線が伸び、ちぎれて地面に落ちていたり、先程の傾いた四角い何かに繋がっていたりと様々なものがある。

 

 

────ここは…?

 

 

新大陸では無い事は明白だ。

だがなぜ自分がいつの間にこんな所にいるのか?そこまでは把握出来ない。

地面の匂いを嗅ぐにも先程まで闘っていたハンターの匂いは跡形も無く消えている。

ふと視線の隅に白い生き物が見えた。

前足は無く、鬼の顔の形のような尻尾を生やし、腹部以外真っ白な甲冑のようなものを見に纏った生き物、オウガテイルがこちらに近付いて自身の縄張りを主張するかのように威嚇している。

だがこのオウガテイル、生き物では無く、荒ぶる神々”アラガミ”と呼ばれ、”オラクル細胞”という細胞が集まって生まれているアラガミの一種だ。

だが、姿からして相手をする必要も無いと思ったのか、ネルギガンテは歩き出す。

無視されたオウガテイルの方は戦意剥き出しで尻尾を振り回してネルギガンテの後ろ足を攻撃したり、飛び掛ったり等をしている。

少し煩わしく思ったのか振り返って威嚇する。

それでも尚、逃げ出さないオウガテイルに対して苛立ったのか、ついにネルギガンテは棘が生えきった右腕を高々と上げてオウガテイルの頭目掛けて叩き付ける。

 

ゴキン──────!!!!!!!!

 

骨が折れ、砕ける音が響く。

叩き付けられた右手はオウガテイルの首に直撃し、そのままオウガテイルを地面に押し付ける形となった。

そしてその衝撃はそのままオウガテイルの首に届き、たった一撃で頑丈なアラガミの骨を砕き折った。

二、三度痙攣し、動かなくなったオウガテイルを見て死んだと確信したのかネルギガンテは再び歩き始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

一台のカーゴが荒れた街並みの中を走っている。

この車は神機使いが乗っている車で一般的な車よりも頑丈な作りをしていた。

 

「にしてもよかったんですかね?」

「何がだ?」

 

運転をしているのは神機の整備士であるザック・ホーヌと呼ばれる黒髪の男性で、助手席で端末を弄っていた男性の第二世代神機使いのリーチェに話し掛ける。

 

「二人は神機使いだからともかく、俺は整備士ですよ?なら中国支部に残ってた方が良かったんじゃ…?」

「いいんじゃない?極東支部で招集があったんだから。それにあっち(中国支部)だってまだ整備士いるし、私達の神機はザックしか直せないんでしょ?なら大掛かりな作戦を立ててる極東支部の整備士の人口を増やして少しでも早く神機を直せるんならそれでいいじゃない」

 

深く考え過ぎよ。と後部座席にいたこの三人の隊長を務めるフォーツ・エンジェが納得させる。

現在、この三人は中国支部から極東支部に招集が掛けられ、極東支部に合流する為にカーゴを走らせていた。

 

キキッ!

 

数刻前までネルギガンテが一方的にオウガテイルを殺害した所に一台のカーゴが走ってきて停車する。

先程アラガミのいる反応をザックの端末が捉え、リーチェがそれを確認していた。

走行の妨げになるので掃討しようとしているのだ。

ドアが開き、中から右腕に赤をメインカラーとし、黒のラインが入った腕輪をして、その手には”神機”と呼ばれ、剣、銃、盾が組み合わされ、変形機構が搭載された”第二世代型神機”を持つリーチェとフォーツが降りてきた。

この腕輪をした二人は”ゴッドイーター”、別名”神機使い”と呼ばれる者達でオウガテイルのような”アラガミ”を倒せる唯一の存在だ。

だが目の前にいたオウガテイルはすでに息絶えていて消滅する寸前である。

 

「あれ?オウガテイル死んでるじゃん。ザック。ここで反応あったんだよな?」

『ええ、そうですけど…?』

「そのオウガテイル…もう死んでるぞ?」

『え?そんなまさか…』

 

ザックが車の中で何かを調べてる間にリーチェが消えかかっているオウガテイルを調べている。

 

(胴体、尻尾に損傷は無い…けど首が折られてる…頭に関しては原型を留めてない程めちゃくちゃだ…)

 

一体何が…?と考え込んでる中、リーチェのインカムに通信が入る。

 

『リーチェさん』

「どうした?」

『辺りのオラクル反応を調べたんですが先程まであった反応がほぼ九割が消えてます』

 

ザックの言葉に、は?と理解不能だと言いたげにするリーチェ。

その声を聞いたのか辺りを歩いていた神機使いのフォーツが駆け寄ってくる。

 

「フォーツ、そっちもいない?」

「ダメ。既に倒されてる。…というか任務中は隊長って言うようにってほぼ毎回言ってるんだけど?」

「そんな事よりもう少し何か手掛かりが無いか調べようや」

 

そんなに隊長って言いたくないの!?とグズるフォーツをよそに調べ回るリーチェ。

消えていくアラガミを見てある事に気付いた。

 

(なんだこの棘…全然消滅しない…)

 

リーチェが気になって拾い上げたのはアラガミの至る所に刺さっている棘だ。

仮にこのオウガテイル達を襲撃したのがアラガミならオラクル細胞の分散により跡形も無くなっているはず。

だがリーチェが持っている棘は消えない。

新種のアラガミか…?と考え始める。

それでも気になったのは──────

 

(周囲のアラガミを殲滅出来る程の強力な新種って訳か…?)

 

そんなアラガミがここに…?と考えていたが埒が明かないと思い、車に戻ろうとした時だった。

ジャリッ…と瓦礫の山の奥で何かが地面を踏む音がした。

フォーツ、リーチェが共に気付いたのかお互いに持っていた神機を握り締める。

念の為、ザックに何かあった時の為に車のエンジンを付けておくように言って一歩、また一歩と近付いていく。

そして、その主はそこにいた──────




こ…この3人は一体…!?ww(神機使いと整備士です)


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洗礼受けし者

1週間経つのはっやw
それにお気に入り登録者数が着実に増えてる♪


その主はそこにいた。

 

「「…っ」」

 

フォーツ、リーチェ共にその光景に息を飲んだ。

小さい山のように積まれた様々なアラガミの上に立ち、ここ一帯を自身の縄張りと言わんばかりに佇む一体の生き物。

地面を力強く踏み付ける四肢、背中から生えた翼、悪魔を連想させるかのように太く伸び、捻れた双角。

その何処を見てもあるのは白い棘ばかりで痛々しい姿を見せている。

滅尽龍ネルギガンテだ。

だが彼等はネルギガンテの事を知らないが、その様子を見れば分かる。

 

 

まだ自分達では歯が立たない。

 

 

リーチェは横にいたフォーツに手信号で『あれは危険。直ちに帰還』と知らせ、フォーツもさすがに無理だと分かるのか首を縦に振り、帰ろうと振り返った時だった。

いつ現れたのかは不明だがそこにいたのは白い一体のオウガテイル。

 

(いつの間に…!?)

 

すぐにスタングレネードを使おうとした時だった。

焦りからかリーチェの手からスタングレネードが零れ落ちる。

 

コォン…

 

金属と地面がぶつかり、低く鈍い音が響き渡る。

ネルギガンテもそれに気付き、四肢を使って駆け寄り、二人を見付けた。

そして出て行けと言わんばかりに威嚇の咆哮を上げる。

鼓膜が破れんばかりの咆哮にたまらず二人は耳を塞ぎながら乗っていた車へと走り出す。

 

「なんだよあれ!?」

「私が分かる訳ないでしょ!?」

 

とにかく走れ!とネルギガンテから遠ざかる。

だがネルギガンテの方が早く、二人の目の前に回り込んだ。

 

「…っ…逃がさないってか…!?」

 

いつでもシールドを展開出来るように構えながらゆっくりと再び回り込む。

フォーツもリーチェとは真逆から回り込み、少しでも敵視を分散させる。

フォーツは持っていた神機を銃モードのスナイパーに可変させ、銃弾を二発放つ。

その一発がネルギガンテの腕の棘を掠めて折れた。

 

「だからお前はスナイパーなんだからアラガミから離れて遠くから撃てって!てかお前が自分で『私が撃つからリーチェはアラガミの注意引いてね?』って言ってたじゃねぇか!」

「そんな事言ってる場合じゃ無いでしょ!」

 

リーチェは無作為に突っ込んだフォーツをカバーする為にフォーツの方に視線を向けたネルギガンテへ神機の長剣を振り下ろす。

剣先はネルギガンテの翼に当たり、棘が折れる。

あっさりと折れた事に、見掛け倒しか?と思っていたがフォーツは有り得ない光景を見た。

急激に腕の棘が地肌が見えなくなる程に伸びたのだ。

 

(何…!?この棘の成長速度…!?)

 

そして感じる嫌な予感。

フォーツは咄嗟に持っていたスタングレネードを取り出してピンを抜く。

 

「こっち!」

 

自分に意識を向ける為に声を出した。

案の定フォーツに意識が向いたネルギガンテだが、それよりも先にフォーツがスタングレネードを投げ、ネルギガンテの目の前で発光した。

 

「リーチェ今の内に!!!!」

「分かってる!!!!」

 

スタングレネードの発光に足止めを食らったネルギガンテの横をリーチェも走る。

すぐに目が慣れたのかネルギガンテも吠えて棘が生えきった右腕を振りかざし攻撃しようとした。

 

ゴシャッ────!!!!!!!!

 

リーチェとフォーツの間を通り、ネルギガンテにザックが乗っていた車が体当たりする。

衝撃に耐えかねたネルギガンテは後ろに仰け反った。

 

「リーチェさん!フォーツさん!早く乗って!!!!」

「ったくとんでもねぇ無茶しやがる!!!!」

 

運転席から早く乗るように二人に呼び掛け、急いで二人は車に乗って離脱し始める。

体勢を立て直したネルギガンテは四肢を使ってその車を追い掛けている。

 

「ザック!もっとスピード出して!!!!」

「これ以上は無理です!!!!」

 

既に車のギアは最高速度の六になっていた。

その最高速度の車を追い掛けるネルギガンテにリーチェが違和感を持った。

 

(待て…?あいつの腕の棘あんなに黒かったか…?)

 

そう…リーチェは気付いた。

今まで白かったネルギガンテの腕の棘が黒く染まっている事に。

そしてその状態は避けねばならなかった。

 

 

 

何故なら────その黒い棘こそ、このネルギガンテにとっての最高強度を誇る棘なのだから。

 

 

 

突然翼を広げて飛び上がるネルギガンテ。

だがその目は諦めた様子では無い。

まるで─────トドメを刺すかのような目だ。

その目を見て寒気を感じたリーチェとフォーツ。

 

「ザック!蛇行で直撃を───!!!!」

 

避けろ。と言おうとした時だった。

 

 

リーチェの世界が反転した。

 

 

そして腹部に刺さる先程の黒い棘。

 

 

ネルギガンテは急接近し、車ごと三人を瓦礫の壁に叩き込んだ。

ネルギガンテが使う最強の技の一つ

 

破棘滅尽旋・天だ。

 

爆発し、燃える車。

宙を舞うリーチェとフォーツ。

 

「うっ…フォーツ…ザック…」

 

瓦礫の上に倒れ、腕が垂れ下がり、血を下へと流しているフォーツ。

横転し、燃える車の中で額から血を流すザック。

ネルギガンテは興味を無くしたのか、何処かへと行ってしまった。

意識を取り戻したのかリーチェは持っていた無線を使い、とある支部に救援信号を送り、そこで意識を手放した。




はい、第一発見者兼第一被害sもとい、洗礼を受けた人達でしたw
ここで3人のプロフィール紹介といきます。

フォーツ・エンジェ
性別:女性
中国支部第一部隊隊長。
作戦立案はするが本人がそれを忘れたかのように突っ込む癖があり、「隊長(仮)」等と裏で呼ばれているとか…?
極東支部で近々行われる大規模アラガミ狩猟作戦に呼ばれ、ザックホーヌの運転で極東支部に向かっている途中でネルギガンテに遭遇した
神機:第二世代型神機
刀身:ショートソード
銃身:スナイパー
盾:バックラー

リーチェ
性別:男性
中国支部第一部隊副隊長。
作戦立案はするが暴走するフォーツのフォロー役と修正が殆どで「裏隊長」と裏で呼ばれているとか…?
神機:第二世代型神機
刀身:ロングソード
銃身:アサルト
盾:シールド

ザック・ホーヌ
性別:男性
2人の神機を取り扱う整備士だがオペレーターとしての才能や運転免許もあり、隠れた有能者。
とある理由から2人の神機はザックでしか直せないが2人の無茶振りに頭を悩ましている。


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極東支部

今回はクリスマスという事で2本立てでお送りし、21時に投稿します


フェンリル極東支部。

この支部周辺は強力なアラガミが闊歩する事で有名で、他支部では「オウガテイルを倒して一人前」に対して極東支部では「ヴァジュラを倒して一人前」と言われる程、極東支部には強いアラガミが集結している。

それ故に強力な神機使いも多い。

支部長は研究職も兼業しているペイラー・榊と呼ばれる男だ。

その男がよく使っていた研究室には"独立支援部隊(どくりつしえんぶたい)クレイドル"と呼ばれる部隊に所属し、可変しない第一世代型神機のバスターソード型神機でアラガミを倒している現役神機使いのソーマ・シックザールと呼ばれる褐色肌で金髪の男性が頻繁に使い、何かしらを調べていた。

今、忙しなくキーボードを叩いてる時に、ある信号をキャッチする。

 

「ん?こいつは…」

 

ソーマが第一フロアで任務の受付を担当している武田ヒバリに連絡を取ろうとした時だった。

恐らく向こうも信号をキャッチしたのか、内線でソーマに呼び掛ける。

 

『サカキさん、少々宜しいですか?』

「…支部長なら一フロア上だがな」

 

最近支部長が替わった事に慣れてなかったヒバリはいつもの調子で研究室にいるであろうサカキに連絡したつもりだった。

 

『あっ!すみません、ついいつものクセで…』

「いや構わねぇ、俺も丁度そっちに回線で連絡取ろうとしてた所だ。サカキのオッサンには伝えとくからこっちにも確認させてくれ」

 

ま、粗方どういうものかは分かるんだがな…と思いながらもヒバリの言葉を待つ。

 

『分かりました。では、先程救援信号をキャッチしました…のですが…』

「?どうした?」

 

ヒバリにしては珍しく途切れの悪い反応に余計意識が傾く。

 

『あの…周囲にアラガミの反応が無いんですよね…いえ、あるにはあるんですけどその殆どが消滅しかかってるアラガミが全てで、生存しているアラガミのオラクル反応が確認出来ません』

「…なんだと?」

 

ヒバリの言葉にキーボードを叩いていた手が止まる。

オラクル反応が無いのに救援信号を送る事はまずありえない。

ならばその神機使いは何に対してその救援信号を送ったのか────

 

(…まさか…)

 

何を思ったのか急にソーマが立ち上がる。

それと同時に同じく独立支援部隊クレイドルの一員である神薙ユウが入ってきた。

 

「お、ソーマちょうどい…」

「神薙、救援信号が入った。先に行って準備するからブラッド隊にも出動するよう言っといてくれ!」

 

急な出動に一瞬戸惑いながらも返事をしてソーマと走り出す。

 

「ブラッド隊っていうと相手は感応種なのか!?」

「詳しい事はまだ分からねぇ。だがヒバリからの報告によるとそのアラガミはオラクル反応を完全に消せるタイプだ!」

 

感応種(かんのうしゅ)────突如現れたアラガミの進化系ともいえる個体だ。

通常のアラガミでも背中に載せた砲台で空気砲を撃ったり、雷を前方に飛ばすアラガミは存在する。

だが感応種は周りのアラガミにも影響を与える。

 

周りのアラガミのオラクル細胞を取り込んで自身を強化させるもの。

 

周囲のアラガミの戦闘力を上げるもの。

 

他のアラガミを回復させるもの等、様々だ。

 

実を言うと第二世代型神機使いはこの感応種に対応出来ない。

というのも感応種は偏食場パルスと呼ばれる超音波に似たものを操って旧型の第二世代型神機を無力化してしまうからだ。

そしてその感応種に対応出来るようにしたのが第三世代型神機使い、通称【ブラッド隊】だ。

神薙は「分かった」と言って途中でソーマと分かれ、ブラッド隊の元へ急いだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

ブラッド隊の数名はエントランスにいた。

 

「ブラッド隊の皆さん!出動要請が出た!今から急いで準備を!」

 

急な出動要請にすぐ反応し、立ち上がる。

その中で銀髪でツインテールの女性神機使い、シエル・アランソンが口を開く。

 

「私達が出動となると感応種なのですか?」

「分からない。けど分かってるのはオラクル反応が無いって事だけなんだ!」

 

オラクル反応が無い────その言葉だけで特殊な偏食場パルスを用いてその反応を消してる可能性があるアラガミと断定する。

とにかく行く必要がある為、それぞれが神機を取りに行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

フェンリル極東支部の屋上に着いた神機使い達。

既にソーマは屋上に待機状態のヘリコプターに乗って待っていた。

出動要請を受けた神機使いは乗り込むと、ヘリコプターの回転翼のスピードが上がり、飛び上がった。

 

「じゃあ、これから分かっている範囲で状況の説明をするぞ」

 

ソーマは招集を掛けた神機使いを見回して説明を始める。

今回集められた神機使いは

 

独立支援部隊クレイドル所属で変形機構の無い、第一世代型バスターソード型神機を扱う男性神機使いで招集を掛けたソーマ・シックザール

 

同じく独立支援部隊クレイドル所属で変形機構のある第二世代型のロングソードとブラストの可変型神機を扱う男性神機使いの神薙ユウ

 

ブラッド隊の一員で、第三世代型のブーストハンマーとショットガンの可変型神機を扱う女性神機使いであり、特定のアラガミを誘い出せる【誘引】と呼ばれる血の力を発動出来る猫耳の髪型をした香月ナナ

 

同じくブラッド隊で第三世代型のショートソードとスナイパーの可変型神機を扱う女性神機使いであり、アラガミの居場所が分かる【直感】という血の力を使えるシエル・アランソンの4名と救護班4名の計8名でとなった。

 

「つい先程、神機使いから救援信号が送られてきた。だが確認出来るアラガミは消滅しかかっていて、生存を確認出来るアラガミはいなかった。救援信号を送ってきた事から襲撃を受けた上、襲撃したアラガミは他のアラガミを殲滅出来る程の戦闘力を持っている事が分かる。そしてオラクル反応が無かった事から姿を消せる感応種である可能性が高い。用心してくれ」

 

ソーマの声に全員が頷く。

 

「ねぇ、シエルちゃん」

「?どうしました?ナナさん」

 

シエルの横に座っていた香月ナナが話し掛ける。

 

「オラクル反応を消せるアラガミなんているの?」

「いない…とは言い切れませんね。突然第二世代型神機使いが対応し切れない感応種が出たようにアラガミも進化し続けてます。恐らく遠くない内に私達第三世代型神機使いでも対応し切れない種類のアラガミが出てもおかしくは無いですよ」

 

そうなんだ…と再び外を見るナナ。

しばらく飛んで移動しているとパイロットがマイクを通して彼等にアナウンスする。

 

「まもなく救援信号を受信した地点です。ご準備を!」

 

パイロットのアナウンスに各自、自身の神機を握る。

未知のアラガミ…では無く未知の生物である古龍ネルギガンテは彼等神機使いの前に再び現れるのだろうか─────




私が執筆する上で苦手ランキングトップ3

1位、キャラ容姿
2位、日常生活
3位、施設説明

この3つがマジで苦手過ぎるw
誰かアドバイスを…wwww


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見えざる敵

今思うと今年最後の投稿だ…


救援信号の地点に着き、ヘリコプターが着地し、神機使い達が降りてくる。

その目の前に原型を留めず燃える車、血を流して倒れている三人を見付けた。

 

「!あそこだ!」

 

シエルだけが簡易医療セットを取りに行き、残った三人が一斉に倒れている三人に駆け寄る。

 

「救援信号を受け、救助に来ました!大丈夫ですか!?」

 

神薙が近くに倒れていたリーチェをゆっくりと抱き起こし、そっ…と首に指を当てる。

トクン…トクン…微弱ながら脈は流れている。

彼等神機使いの身体は半分がアラガミになっている為、一般人と比べて頑丈に出来ているが所詮は元人間、急いで治療しないと手遅れになる。

 

「神薙さん!止血セットです!」

 

シエルが持ってきた止血セットを神薙に渡し、その後も救助している二人の元に行く。

神薙も受け取った止血セットで出血部分を押さえ、応急処置を施す。

一通り応急処置を終えた神薙は救援班にリーチェを任せ、任された救援班も細心の注意を払ってヘリコプターに固定しに行く。

その間に神薙は辺りを調べる。

すると先程は気付かなかったが車にあるものを見た。

 

「…なんだろう?これ…」

 

神薙が見付けたのは車に刺さった大量の黒い棘だ。

その中の1本を掴み、引き抜く。

その太さは片手で握れる太さで両手で折ろうとしても簡単には折れない程頑丈だ。

 

「この車を襲ったアラガミの…だよな?きっと」

 

こんな棘のあるアラガミなんていたっけか?と考え込むもソーマの声に現実に呼び戻される。

 

「神薙!こっちの方が重症だ!すぐにこの場を離れるからヘリに乗って待っててくれ!」

「分かった!」

 

考えるのは後にしておこう。と神薙は持っていた棘をポケットの中にしまい、ヘリに乗り込んだ。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

極東支部に戻るとすぐに3人は治療室へと連れて行かれた。

中でもフォーツは3箇所の骨折がある他、出血も多く、2人と比べてかなり重症で急いで治療が施された。

頭から血を流していたザックは幸いにもそれ以外では捻挫のみで、3人の中では比較的軽傷だった。

恐らくは運転席のエアバッグが助けになったのだろう。

リーチェもネルギガンテが突進してきた際に車から投げ飛ばされた為、傷の程はザックと変わらないが打撲と捻挫が酷かった。

3人が治療室で治療を受けてる中、救援に向かった4人の神機使いはそのフロアの長椅子に座っていた。

 

「あの3人大丈夫かな…」

「さぁな…神機使いの分滅多に死ぬ事は無いけどな。ただ謎のアラガミによって周囲のアラガミは全滅、神機使いにもあそこまでの被害が出たんだ。あそこ周辺はそのアラガミを警戒して暫くは一部を除いた神機使いは立ち入り禁止区域になるだろうな」

 

ナナの呟きにソーマが答える。

そこへ上階の役員区間からペイラー・榊がやってきた。

 

「彼等の様子はどうだい?」

「今こちらの治療室に運ばれて治療を受けています」

「そうか、賢明な判断に感謝するよ。それと今から支部長室に来てくれないかい?少し報告を聞きたくてね」

 

頷く4人はサカキの後を着いて行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「さて、現時点での状況を整理しよう。それと君達も急な招集に対応してくれて助かるよ」

 

サカキの目の前には出動した4人に加わり───

 

極東支部からは、第一部隊の元隊長であり独立支援部隊クレイドルに所属している、金色の甲冑が手首から手先に掛けて施されている雨宮リンドウ

 

同じくクレイドル所属だが兼任として第一部隊の隊長に替わったばかりであり黄色を主としたポップな服をしている藤木コウタ

 

 

独立支援部隊クレイドル所属で神薙ユウと同じ第二世代型の女性神機使いで赤いベレー帽をしているアリサ・イリーニチナ・アミエーラの3名が。

 

ブラッド隊からは任務から帰ってきた第三世代型神機を使う金髪の男性神機使いで【統制】という血の力で各神機使いの基本性能を上げる事が出来る元隊長のジュリウス・ヴィスコンティ

 

同じく第三世代型神機の槍型神機を使い、【鼓舞】という血の力で各神機使いの戦闘力を上げられる、頬に傷があるセミロングの髪をしたギルバート・マクレインの2名

 

以上の計9人が招集された。

 

「それにしても、俺達"独立支援部隊クレイドル"のメンツとブラッド隊の全員を招集するなんて…一体何があったんスか?」

 

恐らくここにいる全員がそれを思っただろう疑問を真っ先にサカキにぶつけるリンドウ。

 

「あぁ、今回の騒動なんだが…ソーマ君、君から説明してもらえるかい?というのも真っ先にヒバリ君から回線を受け取って行動したのが彼だからね」

 

へぇ…こいつが…とリンドウがチラッとソーマを見る。

ソーマも少々面倒くさがりながらも説明を始めた。

 

「今回のあの3名を襲撃したアラガミは新種の感応種だと思われる。というのもヒバリが救援信号を受信した時には既に周囲のアラガミのオラクル反応は殆ど消滅していたからだ。例え飛行出来るアラガミでもオラクル反応は必ずある。それが一切無いとなると────」

「襲撃したアラガミはオラクル反応を感知させないか、それを阻害する能力を持つアラガミである────と?」

 

ジュリウスの補足にソーマが恐らくな…と答える。

 

「あの…ソーマ。ちょっといいか?」

「?どうした神薙」

「実はな…」

 

神薙が現場で手に入れた例の黒い棘を皆に見せる。

 

「それは?」

「あの3人が乗ってたと思われる車に刺さってたんだ」

「ふむ…調べるのならそのサンプルがいいだろうね」

 

サカキの言葉にソーマが神薙の手からその棘を取る。

 

「これに関しては俺が調べてみる。サカキのオッサンもそれでいいだろ?」

 

構わないよ。とサカキが言って今日の所はお開きとなった。




正月も2本立てでお送りしようと思います!
それでは皆さんまた来年お会いしましょう!


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アルディラ・ビジター

皆さん明けましておめでとう御座います!
今年もよろしくお願いします!


フォーツ、リーチェ、ザックの3人が治療室に運ばれて一週間が経った。

リーチェ、ザックは既に全快し、立ち上がれるまでに、フォーツは骨折の方は治ったがまだ立ち上がれず、ベッドから身体を起こせるまでに至った。

そのタイミングでサカキが病室に独立支援部隊クレイドルのメンバーとブラッド隊を集め、その謎のアラガミを発見したと思われる3人を重要参考人としてこの治療室を選んだ。

 

「皆、よく集まってくれた。それと近々行われる大規模アラガミ討伐作戦の為に中国支部から来てくれたが、その際に謎のアラガミの襲撃に遭った3人も回復して何よりだ。それでそちらの隊長は…」

「私です。中国支部第一部隊隊長のフォーツ・エンジェです。こちらの白髪の男性が同じ神機使いのリーチェ、黒髪の方が神機整備士のザック・ホーヌです」

 

横になりながらフォーツがそう答え、紹介されたリーチェとザックも軽い会釈をする。

 

「さて、紹介もされたので早速本題に移ろう。彼等3人が襲撃された件だが…ソーマ君」

 

サカキに促されソーマが口を開く。

 

「一週間、彼、神薙ユウが採取していた棘を元に彼等を襲ったアラガミについてだが…3人を襲ったのはアラガミ────では無い事が判明した」

 

ソーマの言葉にサカキを除く全員が耳を疑った。

 

「アラガミでは無い…?感応種でも無いという事ですか?」

「あぁ、様々な方向性からあの棘を調べたがオラクル細胞の残骸すらも確認されなかった。それにそう断言出来る理由もある」

 

ジュリウスの問いにソーマはそう言ってベッドの簡易テーブルにその棘を置く。

 

「これを見て気付かないか?」

 

ソーマの質問に全員が疑問符を浮かべる。

 

「いや…見てって言われても…」

「なら────仮にこの棘の持ち主がアラガミだったとしてなぜこの棘は消滅しない?」

 

ソーマのその言葉に気付かされる。

アラガミは元々地中から生まれてきて、死ぬと例外無く地中に還る。

だがこの棘は消滅しない時点でアラガミでは無いとソーマも断言出来たのだ。

 

「計器の故障…じゃないよな?」

「俺もそれを考えて極東支部の整備士である楠リッカに計器を見てもらったが故障では無かった。…そしてもう一つ…────絶滅した生物の遺伝子についても照合してみたがその全ての生物に該当するものは見付けられなかった」

 

リンドウが計器の故障を疑うも楠リッカと呼ばれる整備士の名前を出されてそれなら違うか…と納得してしまう。

 

「ちょっ…ちょっと待ってくれ?じゃあ彼等が遭遇したのは何だったんだ?まさか感応種を超える新種とか…」

「だとしても何かしらのオラクル反応がある筈だ。けどこの棘からは何のオラクル反応も見られなかった」

 

アラガミでも無ければ絶滅した生物でも無い。

それもそうだろう…彼等は目にしたのは新大陸からこの世界へやってきた”居るはずの無い”古龍なのだから…

 

「それで君達3人に聞きたい事があってね。君達を襲ったその”何か”の特徴を聞きたいんだ」

「分かりました」

 

3人は頷き、それぞれを説明を始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「ふむ…全身が棘だらけで頭には2本の巨大な角…発達した四肢に翼…」

「改めて聞いても訳が分からねぇ…何なんだよそいつは…」

 

あ、それと…とリーチェが補足をする。

 

「そいつに遭遇した時、その棘は白かったんです」

「?どういう事だい?」

「その棘は戦闘中に次第に黒くなっていきました」

「次第に黒くなる…と…」

 

ますます正体が訳が分からなくなっているクレイドルとブラッド隊のメンバー。

 

「というか翼のあるアラガミっていたっけ?」

「ザイゴードとかはいたが…あの巨体をあの小さな羽で飛ぶ訳じゃねぇし何より棘がない」

「じゃあ以前戦ったディアウス・ピターは?」

「あれは攻撃に使う刃翼だ。それに3人が言ってた双角がない」

 

皆で色々と特徴が合いそうなアラガミを挙げていくがそのどれもが一致しない。

これ以上話しても埒が明かないと思ったのかサカキが切り替える。

 

「うん、今日はここまでだね。クレイドルとブラッド隊のメンバーには特務としてこの…そうだね…仮名としてその存在を"アルディラ・ビジター"とでも名付けておこうか。そのアルディラ・ビジターの捜索を行って欲しい。第一発見者のフォーツ・エンジェとリーチェの2人も体調が良くなり次第、彼等と合流してくれ」

 

サカキの言葉に全員が「了解」と返事をして緊急のミーティングは終了となり、解散された。

 

「アルディラ・ビジター…か…」

 

参加していたソーマも仮名となったアルディラ・ビジターという名前を呟きながら治療室を出る。

他のメンバーをお互いに色々と話しながら治療室を出て行った。

 

(アルディラ・ビジター……っ、マジかよ…そんな事が…?)

 

それに気付いたのはソーマ自身が治療室を出て自室に戻ろうとした時だ。

 

 

アルディラ・ビジター。

 

 

新大陸───いわゆる別世界から来たが為、アラガミでも、絶滅した生物でも無い故にそう名付けられた滅尽龍ネルギガンテ。

 

その名前を日本語に直訳すると──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"異界の訪問者"…か…」

 

ソーマはそう呟き、エレベーターへと消えた。




という訳で今年も色々と執筆しますのでよろしくお願いします!
次回は21時に投稿します。


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姿見えぬ破壊の主

基本的な身体能力を比較したら神機使いとハンターどっちが上なんだろうと気になり始めた…


ネルギガンテの仮名が決まり、クレイドルとブラッド隊がネルギガンテを捜索する中、フォーツ、リーチェも現場復帰出来るようになりクレイドルとブラッド隊に分かれて捜索を行い、整備士であるザックも楠リッカと共に神機の整備を行っていた。

だがいくら探してもネルギガンテの姿どころか痕跡しか見付からない上そこからも追えず、ただイタズラに時間だけが過ぎていく。

そんな中、極東支部にとある報告が入る。

というよりかはフェンリル全支部に同じ報告があった。

それこそが"現場に残る棘の残骸"だ。

神機使いの中にはアラガミを探索する中、ハンニバル、スサノオ、コンゴウといった多種類なアラガミの身体に痛々しく棘が刺さった死体が何十体と転がっている死屍累々の現場を見て恐怖する神機使いも多数見受けられた。

恐らくネルギガンテは各地に飛び回ってアラガミを見境無しに殺して回っているのだろう。

そして何時からかその目に見えないがアラガミのみを殺す為────

 

 

アラガミを殺すアラガミ

 

 

として古龍ながらもネルギガンテは一部の人類からは「自分達を守ってくれる守護神」としてネルギガンテ支持派はネルギガンテを崇め、逆に「アラガミを凌駕する得体の知れない何か」として一部には目に見えぬ何かとして恐れられる事となった。

そんな中大規模アラガミ討伐作戦の当日が迫っていく。

フェンリル極東支部にも少しづつ多くの神機使いが集まってきた。

極東支部も当日の作戦に支障が無いように親睦会を開く中、その会話の殆どが目に見えぬ何か…言わばネルギガンテの話題が殆どだった。

中には魔除けならぬアラガミ除けとして現地で取ったネルギガンテの棘をストラップサイズに加工して穴を付け、紐を通し、御守りとして持つ者もいる程だ。

フェンリル本部の有権者にもそのような者は点々といて、その棘の力強さや色艶に魅了され、神機使い達に高い報酬を払ってネルギガンテの棘を回収してきて欲しいと懇願し、アクセサリーにしようとする者もいる。

神機使い達は面倒ながらも対応する者や、強いアラガミの集まる極東支部ならそのネルギガンテに遭遇し、棘を取れるのではないか?と、その棘欲しさに参加する者等がチラホラいた。

 

そんな中、大規模アラガミ討伐作戦は始まった。

 

作戦の内容はこうだ。

まず、特定のアラガミを集められ、神機使いには害の無い偏食場パルス発生装置を輸送ヘリを用いて空から一定の距離を置いて設置、ある程度集まったら近接型第一世代型神機使い達と可変式の第二世代型神機使いを乗せた複数の輸送ヘリを送り、神機使い達を降ろし、別の輸送ヘリから銃型第一世代型神機使いにアラガミを狙撃させる。

そしてアラガミ達が怯んだ所を地上で待機していた神機使い達でプレデターフォームを使ってコアを回収するという流れだ。

今回の作戦は大規模故、長丁場になる可能性が高くなるとされ、楠リッカ、ザック・ホーヌ等といった整備士達も現地に赴く事となった。

 

エントランスにいる全神機使いにサカキが作戦を説明し、各自で準備を済ませる。

 

「あ、リーさん」

「?どしたザック」

 

自分が割り振られた輸送ヘリに行こうとしてる時だった。

リーチェがザックに呼び止められる。

 

「フォーツさんに流れ弾は他の神機使いの人達に当てないように、と、スナイパーで特攻は極力控えるよう言っといて貰えます?」

「…あいつが言う事聞くと思う?」

「……」

 

リーチェの答えに気まずくそっぽを向くザック。

先に行こうとしていたフォーツに呼ばれ、追うようにして走っていったリーチェに対し、どうか…アラガミじゃなく、仲間に殺されないように…とその後ろ姿に合掌するザックだった…

全員が乗り終わって装置を乗せた輸送ヘリのプロペラの回転が早くなっていく。

とうとう飛び上がり、神機使いより先に現地で飛び立っていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

ゴキン!!!!!!!!

 

グシャッ!!!!!!!!

 

 

圧倒的な力を見せる滅尽龍ネルギガンテ…またの名をアルディラ・ビジター。

殺したアラガミを喰らい、そのエネルギーを体内に蓄えていく。

すると遠い彼方に一機の輸送ヘリが見えた。

 

まだ向こうにも殺す奴が…?

 

そんな事を考えているのかいないのか分からないが輸送ヘリを見つめるネルギガンテにライオンのようなアラガミ、ヴァジュラが攻撃を仕掛けるも、黒く、強固になった棘にその攻撃は通らない。

邪魔をするなと言わんばかりに高く飛び上がり、上空からヴァジュラに体当たりする。

黒くなった棘が何本もヴァジュラの身体を刺し、悲鳴を上げさせる。

だがその悲鳴をかき消すようにネルギガンテは前脚をヴァジュラの顔に叩き付け、喉に歯を食い込ませる。

ヴァジュラも必死に抵抗するがマウントを取られている。

何度も棘の生えた両前脚をヴァジュラに叩き付け、とうとうヴァジュラの喉はネルギガンテによって喰いちぎられた。

ダラン…と力無く横たわるヴァジュラにネルギガンテは勝利の雄叫びをするかのように咆哮を上げる。

そして再び彼方に浮かぶヘリを見て翼を広げて飛び立って行った。




さぁ物語も中盤に差し掛かってきましたw
投稿は再び土曜日の18時に戻ります。
皆さんご感想お待ちしております。


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王と悪魔、相対す

土曜なんだけどうちの会社は火曜まで休みだったから振替出勤になってて、後から「あ、今日投稿日じゃん!」と気付いて急いで投稿しましたw
危うく土曜投稿忘れる所だった…


作戦は順調に進んでいた。

多少の負傷者は出ているものの、神機使い同士が交代して休み、攻撃の手を休めない。

そして整備士達もかなり忙しくなっている。

何せ4人で神機を修理する為、2人1組で交代しながら休憩に入った神機使いがひっきりなしに整備しに来るからだ。

 

「ザックさん!38番シンガポール支部です!」

「リッカさん!こっち終わったので最終チェックお願いします!」

 

お互いに連携を取って次々に神機の整備を終えていく。

 

「お二人さん。交代です!休憩に入って下さい」

 

やっと交代が来て二人は安堵の息を漏らした…

 

「やっとか…」

 

フゥ…と額の汗を拭い、その場を後にする。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「お疲れさ…かなり疲れてるね?」

「あ…リッカさん…さすが極東支部ですね…息着く暇が全く無い…」

 

極東支部で整備士を務める銀髪にタンクトップをした楠リッカがザック・ホーヌにスポーツドリンクを渡した。

 

「あはは、まぁ強いアラガミが集まる支部だから神機も結構ダメージ大きいんだよね。それに神機は神機使いにとっての命の綱だから気も抜けないしね」

「そうですよね」

 

ザックはリッカから受け取ったスポーツドリンクを半分程一気に飲んで天を仰ぐ。

 

「…作戦結構続きますよね?」

「続くね。今回の作戦で予定では全体の10%のコアが手に入る予定だから。長期戦は覚悟した方がいいかな」

 

やっぱりか…と自分で自分の手をマッサージするザック。

 

「さ、さっきの二人のシフト終わるまでしっかり休んでフル充電しよう!」

 

リッカの声にザックは頷き、食事をしに行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

大規模アラガミ討伐作戦の少し離れた位置。

そこから黒く、邪悪な魔人の顔を連想させるヴァジュラがその様子を見ていた。

だが何を思ったのか、その作戦の現場へと駆けていく。

エントランスでアラガミの動きを見ているヒバリは、ある反応を掴んでいた。

 

「…っ!この反応…!」

 

すぐに現地にいる独立支援部隊クレイドルの班とブラッド隊に回線を繋ぐ。

 

「クレイドルとブラッド隊の皆さん!ディアウス・ピターの反応です!御注意を!」

 

ヒバリから"ディアウス・ピター"という名前を聞いてクレイドルとブラッド隊のメンバーに緊張が走る。

 

「チッ…やっぱり来やがったか…」

 

普段から掴み所がない姿勢を取っているリンドウですら悪態をついた。

 

ヴァジュラ神属第一種接触禁忌種(しんぞくだいいっしゅせっしょくきんきしゅ)────ディアウス・ピター

 

またの名を"帝王"と呼ばれている黒いヴァジュラだ。

 

基本的に接触禁忌種は一般の神機使いの接触は禁止されており、この接触禁忌種に接近出来るのは特務を与えられた神機使いのみだ。

ヴァジュラと同様に雷を使ってくるが、この雷がヴァジュラを超える威力を持つ。

その上背中からは刃翼を生やし、素早い攻撃を行う為、かなり危険なアラガミと言える。

 

「一旦俺らとブラッド隊以外は退かせるか…さすがに奴相手はキツ過ぎる」

 

パシュ!とリンドウは空に一時撤退の信号弾を撃つ。

それを見た神機使い達は極東支部へと急いで走っていき、作戦現場にはクレイドルとブラッド隊の計10名が残った。

 

「やっぱり他のアラガミを捕食する為に来たんでしょうか?」

「それ以外考えられねぇな…」

 

アリサの問いにソーマが答える。

 

クレイドルとブラッド隊が見つめる先、数多くのアラガミが倒されていく。

 

そして────それは姿を現した。

 

横たわるオウガテイルに追い討ちを掛けるようにその頭を踏み付ける、老人を思わせる顔をした黒いヴァジュラ。

ディアウス・ピターが姿を現した。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

神機使い達はディアウス・ピターを囲むように攻撃をしていた。

だがディアウス・ピターも負けじと雷を周囲に放つ。

アリサと神薙は神機を銃型に変え、両サイドから撃っていく。

 

「ソーマ!」

 

神薙に標的を付け、攻撃しようとするディアウス・ピターに死角からソーマがバスターソードで斬り掛かる。

 

バキッ!

 

後脚に傷が入るが、それに気付いたディアウス・ピターはすぐに自分の周囲に雷を放ち、距離を取らせた。

 

「チッ…浅いか…!」

 

ソーマにすぐ標的を変えたが真反対にいたコウタの銃撃で攻撃出来ずに走り回るディアウス・ピター。

 

「ギルバートさん!今だ!」

「おう!」

 

コウタの声にチャージスピアを構えていたギルバートが突進する。

だがその攻撃も機敏なディアウス・ピターの前では適わず、すぐに距離を取られてしまう。

 

「クソッ!図体の割に動きが早ぇんだよ!」

 

攻撃がお互いに決め手にならない。

ディアウス・ピターと神機使い達の戦闘は最早硬直状態だった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

ディアウス・ピターとの戦闘の中、ヒバリが見るモニターに異変があった。

 

「…え?これは…?」

 

急な出来事に戸惑うヒバリ。

モニターに映していたマップのアラガミが放つオラクル反応が消えていく。

だがその近くに強いオラクル反応は無い。

まさか…!?と思い、すぐにディアウス・ピターと対戦している神機使い達に回線を繋げた。

 

「皆さん!周囲のオラクル反応が消えています!恐らく…例のアルディラ・ビジターだと思われます!」

 

その回線の声に全員が驚愕する。

 

「マジかよ…!?こいつで手一杯なのに…!」

 

リンドウはディアウス・ピターで手一杯な為、ここにいる神機使いに撤退を言おうとした。

その時だった。

 

ドガッ!

 

回線に気を取られてしまった神薙がディアウス・ピターに吹き飛ばされる。

 

「クッ…!」

 

神薙はすぐに立とうとしたが神機が瓦礫に引っ掛かってしまう。

 

「まずい…!」

 

リンドウがすぐに走り出す。

するとその横を巨大な何かが過ぎ去った。

ディアウス・ピターが神薙にトドメを刺そうと鋭利な爪の生えた前脚を振り翳す。

 

 

ズガガガガガ!!!!!!!!!!!!

 

 

だがその爪は当たらず、巨大な何かがディアウス・ピターに突っ込み、横転させる。

神薙はその隙を着いてリンドウ達の元へ走った。

 

「あ…あれが…!?」

「あの姿…あの3人の特徴と一致する…」

 

背中から生えた翼、全身に生えた棘、悪魔を連想させるかのように伸びた太く、捻れた双角。

 

 

滅尽龍ネルギガンテが帝王ディアウス・ピターと作戦に参加していた全神機使いの前に姿を現す。

 

 

ネルギガンテが威嚇で鼓膜を破かんばかりを咆哮し、ディアウス・ピターも体勢を立て直し、双方睨み合う。

今まさに帝王と悪魔は相対した──────




次は知っての通りですがディアウス・ピターとネルギガンテのガチバトル。
やっぱガチ戦闘書く方が楽しいw
感想お待ちしております。


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玉座に坐せるはただ一人

正直言います。
このタイトル、自分で考えた中でもこの小説で1番のお気に入りですw
…執筆ページの楽曲コードってYouTubeから持って来れたり…無理か?w
分からないんで使い方知ってる人教えて下さいw


先に動いたのはネルギガンテだった。

ディアウス・ピターに急接近し、黒くなった翼の棘を地面に擦りながら近付くがディアウス・ピターは距離を取り、被さるように飛び掛る。

だがネルギガンテの棘がディアウス・ピターの身体に刺さり怯む。

ネルギガンテは右前脚を高く上げ、ディアウス・ピターに向かって叩き付け、ディアウス・ピターの左前脚を掠める。

すぐに空いている左前脚で地面を抉りながらディアウス・ピターへ叩き上げた。

 

ゴッ────!!!!

 

その左前脚はディアウス・ピターの左前脚にクリーンヒットし、前脚を覆っていた鎧のような黒い甲殻を砕く。

その様子はその場にいた神機使いを驚愕させていた。

その戦闘を眺めている中、ヒバリから一時退却の通信が入る。

さすがにこの戦闘に加わるのは自殺行為と思ったのか二頭が戦う中、神機使い達は退却して極東支部へと走った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

二頭の戦闘は極東支部のモニターに映し出されていた。

圧倒的な膂力でネルギガンテはディアウス・ピターを追い詰めていく。

その様子を見てモニターを見ていた神機使い達は歓喜の声や畏怖の声を上げている。

 

「マジかよ…あのディアウス・ピターが一方的に…!?」

 

以前戦ったリンドウも押されているディアウス・ピターに驚いていた。

ディアウス・ピター自身も反撃に移ろうとするがネルギガンテの膂力に耐えきれずすぐに反撃に合う。

そしてディアウス・ピターのマントのようなものに噛み付き、喰らう。

抵抗するディアウス・ピターを前脚で叩き付けて何度もその雷を放出するマントを喰らっている。

 

「なるほど…あれがそうなのか」

 

後ろからサカキがソーマとリンドウの間に立ち、モニターを眺める。

 

「博士、あの名前の由来だが…」

「私も未だに信じられないよ。かの存在、アルディラ・ビジターが異界からこの世界に来たという事自体ね」

「棘を持つアラガミが翼を持つアラガミを喰らって飛べるように…ってオラクル反応も無かったんだっけか…」

 

そう、アルディラ・ビジター────本来の名、ネルギガンテはこの世界には存在しない"龍"だ。

それも火竜リオレウスや雷狼竜ジンオウガ等、現代に存在する竜とは違い、はるか昔に生きていた古の龍…古龍である。

そしてその古龍に対するは荒ぶる神々であるアラガミだが所詮は人の欲が暴走し制御しきれなくなった"神の紛い物"と言うべきもの。

そんな存在が大自然の自浄作用が具現化したかのようなネルギガンテに勝てる訳が無い…

 

 

 

 

そう、この時までは──────

 

 

 

 

ネルギガンテの強烈な猛攻に耐えきれず距離を取るディアウス・ピター。

そのディアウス・ピターに変化が起きた。

メキメキッ…!とディアウス・ピターの背中、人間でいう肩甲骨付近が割れていく。

突然の異変に気付き、ネルギガンテも遠ざかる。

そして───それは姿を現した。

そこから出てきたのは翼のように広がり、左右で等しく四本ずつある赤い刃。

 

刃翼だ。

 

モニター越しにそれを見たブラッド隊と独立支援部隊クレイドルの面々も顔が強ばる。

あの刃翼こそ、ディアウス・ピターの武器の一つだ。

だが、なりふり構わず前脚を叩き付けようとするネルギガンテにディアウス・ピターはその刃翼で防御するかのように構える。

ゴッ────!と前脚と刃翼はぶつかり合ったがすぐにディアウス・ピターは余っているもう片方の刃翼で反撃する。

そして遂に──────ネルギガンテの前脚の棘が砕かれた。

急いで距離を離そうとするが優位に立ったディアウス・ピターは左右の刃翼を間髪入れずに振り回し、ネルギガンテの棘は次々に砕かれていく。

白い棘じゃない、黒い棘が砕かれていくのだ。

黒い棘はネルギガンテの生やす棘の中では最高強度を誇る。

その棘をディアウス・ピターの刃翼は砕いていた。

本能で危険だとネルギガンテは判断し離脱を図ろうとするも、ディアウス・ピターに回り込まれて追い詰められていく。

咆哮し、威嚇するも関係無くディアウス・ピターは迫ってくる。

そしてディアウス・ピターは飛び上がり、上からネルギガンテを強襲する。

一か八かとネルギガンテも翼を広げて後方へ飛び、そのまま高く飛んでいく。

 

 

ネルギガンテは飛び去った。

 

 

オオオオオオ!!!!!!!!!!!!

 

 

ディアウス・ピターの雄叫びが木霊した。

大自然の自浄作用の権化であるネルギガンテは敗北し、その大地には帝王ディアウス・ピターが立っていた──────




執筆してる中で気付いたんですけど、ネルギガンテってワールド、アイスボーンのストーリー上、敗北、撤退してるシーンって孤島でのハンターとナナ・テオコンビの二戦という…
それ以外のゲーム内の縄張り争いではほぼ引き分け。
脳筋古龍恐るべし…w
あ、ゾラ・マグダラオス戦はハンターに妨害されたという事でノーカンにしましたw
感想お待ちしております。


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破壊の龍は怒りを纏いて

気付けばお気に入り登録者人数が90人近くに…
1人でも多くの人に読まれて頂いて感謝です(´∀`*)


二頭の壮絶な戦いを見ていた神機使い達は静まり返っていた。

あのアラガミを殺すアラガミと呼ばれていたネルギガンテ、またの名をアルディラ・ビジターは帝王ディアウス・ピターに敗北した。

ディアウス・ピターはヴァジュラ種神属第一種接触禁忌種────下手に近付く事は自殺行為である。

一般の神機使いなら尚更だ。

そのディアウス・ピターが作戦中だったあの場に鎮座しているのでは作戦は進まない。

もしかすればアルディラ・ビジターがこのディアウス・ピターを倒し、そのまま帰ってくれるかもしれない…という望みは容易く壊された。

 

「アルディラ・ビジターが去っていく…」

「…クソッ…」

 

ブラッド隊とクレイドルの神機使い達に流れる空気も重いものとなった。

 

「…一旦今日は終わりとしよう。ディアウス・ピターも気が変わって立ち去ってくれるかもしれないしね」

「その可能性がどこにある」

 

サカキの言葉にソーマが噛み付いた。

 

「よせソーマ…」

「あのまま奴があそこにいたら全ての意味が無くなるんだぞ。なら────」

 

リンドウの言葉を無視しながら口を開くも、リンドウが肩を掴んで止めさせる。

 

「俺達の見込みが甘かった。最初こそ有利だったものの、アルディラ・ビジターでさえ、ディアウス・ピターのあの刃翼には勝てなかった。それだけだ」

 

リンドウはソーマを諭すもソーマはクソッ…と悪態を付く。

 

「ヒバリ君、他の神機使い達に待機命令を伝達してほしい。一旦現場は様子を見よう」

 

サカキの言葉に分かりましたとヒバリは対応し、マイクを使って待機命令を出した。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

遠く離れた名も無き土地にネルギガンテはいた。

 

 

殺す──────!!!!

 

 

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!!!!!!!!

 

 

 

もはやネルギガンテにあるのは怒りだけだった。

ディアウス・ピターに敗北した事に怒りを露わにし、近付くものは全て破壊し続け、その全てを食らっていた。

 

もっとだ…もっと喰らわないと──────

 

無差別にアラガミを潰し、喰らい、その力を体内に蓄えていく。

全ては奴を、ディアウス・ピターを倒す為。

それだけがネルギガンテを突き動かしていた。

そんな中、戦車が生き物になったかのような姿のアラガミが現れる。

クアドリガというアラガミだ。

クアドリガは骸骨のような模様をしている胸を両扉のように広げ、そこからミサイルを出そうとしていた。

だが先にネルギガンテがその開ききった胸に伸びきった棘の生える前脚を叩き込む。

怯んだクアドリガに追い討ちを掛け、右前脚を頭に叩き付け、肩にあるミサイルポッドを噛み砕く。

 

 

今のネルギガンテに近付くべきでは無かった。

 

 

瞬く間にクアドリガの抵抗は無くなり、微動だにもしなくなる。

そのクアドリガにネルギガンテは食らい付いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

クアドリガを食い終わり、再び極東支部付近を眺める。

 

待っていろ──────

 

グルル…とディアウス・ピターには聞こえてはいないだろうが威嚇する。

 

だが知らなかった。

 

そのネルギガンテの両前脚の棘に、パリッ…とディアウス・ピターと似たような赤い閃光が走った事を──────




1話1話の文字数の振れ幅がすげぇ…
感想等お待ちしております。


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悪魔の眼光は帝王を捕えん

漫画をまとめ買いしたら合計9万円也…
細々と買うのが嫌なのです(´・ω・`)


ガシャ…

神機保管庫に一人準備をしている者がいた。

 

「どこ行く気だ?」

 

そこにリンドウが現れる。

神機を準備していたのは神薙ユウだ。

 

「勝算はあるのか?」

「…」

 

リンドウの問いに神薙は何も言い出せない。

分かっているのだろう。

勝ち目は分からない。

だが動かなければその勝ち目も上がる事は無い。

ギュッ…と神機を握り締める神薙ユウにリンドウは困ったような笑みを浮かべる。

 

「ったく…」

 

スタスタと神薙ユウの元へ歩み寄り…通り過ぎて自身の神機の前に立つ。

 

「…リンドウさん…?」

「どうせ言っても聞かねぇ事くらい分かってるっての」

 

ポンと神薙ユウの肩を軽く叩く。

 

「二人でどうするつもりだ?」

 

二人で行こうとする中、再び声を掛けられる。

そこにいたのは独立支援部隊クレイドルとブラッド隊の面々だ。

 

「お前ら…」

「奴を倒さねぇ事には作戦は進まねぇ…さっさと終わらせるぞ」

 

悪態を付きながらも自身の神機を握るソーマ。

それを皮切りにそれぞれ自身の神機を持つ。

 

「こりゃあ、全員纏めて独房行きか?」

「はっ、被害が広がるよりかはマシだろ」

 

クレイドル、ブラッド隊が扉の前に立つ。

 

「行くか」

 

リンドウのその言葉と同時に扉は開いた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

ディアウス・ピターの被害は甚大だった。

殆どのアラガミ誘導装置は破壊され、他のアラガミも喰われている。

当の本人はその真ん中で堂々と睡眠を取っていた。

 

「こりゃひでぇな…」

 

チッ…と舌打ちする中、目の前にいるディアウス・ピターを全員が視界に収める。

その視線に気付いのか眠りから目覚め、神機使いを見るディアウス・ピター。

 

「…サクヤ、コウタ、以前使ったバレットあるか?」

「ええ、勿論」

「ブラッド隊の皆はその二人の援護を頼む。援護の人数はそっちで決めていい。ユウ、アリサ、ソーマ、行くぞ」

 

リンドウの言葉に全員が了解。と答え、散っていく。

サクヤとコウタは後衛にブラッド隊からはシエル、ジュリウスが二人に付いた。

そしてクレイドルのリンドウ、神薙ユウ、アリサ、ソーマ、ブラッド隊のギルバート、ナナが前衛に立つ。

アリサは神機を銃モードに切り替えてディアウス・ピターに引き金を引いて注意を引く。

その隙に神薙ユウとギルバートで逆方向へ走る。

 

「おらよっ!」

 

ギルバートが先制して突撃する。

だが気付いていたのか、すぐにディアウス・ピターはギルバートに向き直って刃翼でその槍を防ぐ。

もちろんその刃翼にはヒビ一つ付いていない。

連撃でギルバートが槍を振り回している。

その死角から神薙ユウが跳躍し、神機を突き刺そうとするも次は尻尾で防がれる。

 

「こいつ…!背中に目でも付いてるのかよ!」

 

ギルバートは悪態を付きながらも必死に銃モードと槍モードを切り替えてディアウス・ピターに応戦する。

そんな中、ディアウス・ピターは神機使い達の攻撃を煩わしく思ったのか、何本にも枝分かれしたマントのような器官の先端に雷の球体をそれぞれに蓄え、全方位に飛ばした。

バリバリ!と神機使いの横を掠めていく。

 

「きゃあっ!?」

 

各神機使い達がギリギリで避ける中、アリサの持つ神機の盾に雷が直撃する。

吹き飛ばされ、瓦礫に全身を強く打ち、呼吸がままならない。

そこに追い討ちを掛ける為に駆け寄るディアウス・ピター。

 

「こんのっ!」

 

真横からソーマがバスターソードを横に薙ぎ、アリサから距離を取らせる。

ディアウス・ピターは再び雷を蓄積していた。

 

「みんな!離れて!」

 

遠くからサクヤの声がした。

サクヤとコウタが共同で作り上げたバレットの発射準備を終え、トリガーを引く。

二人が撃った弾はディアウス・ピターの真上で三角の形に展開し、発せられた雷を吸い上げていく。

 

「今だ!」

 

神薙ユウの声にリンドウ、ソーマ、アリサ、ギルバート、ナナが全方位から一斉に神機を振りかぶる。

 

オオオオオオ!!!!!!!!!!!!

 

突如ディアウス・ピターから発せられる雷の威力が上がり、サクヤとコウタの自作バレットが壊された。

それと同時にディアウス・ピターの雷が五人に突き刺さる。

その全員が感電し、身体がまともに動かない。

 

「クッ…!」

 

サクヤとコウタを援護していたジュリウスとシエルが彼等の追撃を防ぐ為にサクヤとコウタの元を離れ、ディアウス・ピターに掛かっていく。

するとそこにいる神機使い達のインカムに無線が入る。

 

『皆さん!そちらに微弱ながら同じディアウス・ピターに似通ったオラクル反応が近付いています!危険です!離れて下さい!』

 

その無線に驚愕する。

 

「嘘だろ…!?」

「目の前のこいつでも手一杯なのにもう一体来るのかよ…!?」

「クソッ…!」

 

だが一人、ソーマが先程の無線の内容に違和感を感じた。

 

(待て…?ディアウス・ピターでは無く、ディアウス・ピターに似通った…?)

 

現時点でヴァジュラに似たアラガミは自由の女神の顔をした氷属性のヴァジュラ、プリティヴィ・マータ

 

目の前にいる神属種のディアウス・ピターくらいだ。

 

それ以外となると新種という扱いになる。

 

「待て、そいつは本当にディアウス・ピターなのか!?」

『え、はい確認します。…え、何これ…!?オラクル反応のブレが酷い…!?』

 

ジュリウスとシエルがディアウス・ピターを引き付けている中、雷を受けた全員がようやく動けるレベルにまで回復する。

そして聞こえる足音。

ソーマが全員を呼び、1箇所に集める。

 

「どうしたソーマ」

「いや…恐らくは…奴だ」

 

奴────その一言だけで全員が理解し、再びその場を離れようとする。

そして現れるアルディラ・ビジターこと、滅尽龍ネルギガンテ。

だがソーマは退こうとしない。

 

「いや、その必要はねぇだろ。恐らく俺達には見向きもしねぇ…」

 

そう…ソーマには分かる。

いや、オリジナル(・・・・・)のソーマだからこそ分かった。

近付いてくるネルギガンテ、彼の狙いはそう────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────リベンジだ。




この話書いてて「リベンジだ」って所で2000年に放送されたゴジラミレニアム(ゴジラ対オルガ)を思い出しましたw
戦闘回は次回にお預けですw
感想等お待ちしております。


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牙は刃を砕けるか────前編

まさか…まさかのお気に入り登録数100人…
気付いたのは昨日の職場でですが、その時に咄嗟に「よしっ!」と声を出してしまい、同じ職場の人達に驚かれましたw
自分が「こういう設定の世界とか面白そうだな…」と書いた物がインターネットを介して色んな人に読まれ、そして楽しんでくれている…
これだから創作は止められない訳ですわw
何はともあれ、お気に入りに登録して頂いてる登録者の皆様、この小説を楽しんでくれている皆様、本当にありがとうございます!
それでは続きをどうぞ!


ズゥン!

 

ネルギガンテが荒々しく大地を踏んで現れる。

 

グオオオオオ!!!!!!!!!!!!

 

大地を揺るがす咆哮。

それはただ揺れただけではない。

怒り、憎悪といったものが伝わってくる感じがした。

それ程までにディアウス・ピターに敗北したのが屈辱的なようだ。

ネルギガンテを目視したディアウス・ピター。

一度負かした相手を見て鼻で笑う様子を見せる。

そんなディアウス・ピターにネルギガンテは飛び掛る。

ディアウス・ピターも再び展開した刃翼でそれを防いだ。

ガギン!!!!とネルギガンテの爪とディアウス・ピターの刃翼がぶつかり合う。

その時だ。

 

ミシッ───!

 

刃翼にヒビが入った。

その音にすぐに気付いたディアウス・ピターは雷を全身から放出しネルギガンテに距離を取らせる。

そのヒビは軽度な物だが神機使いですら付かせなかったヒビを、この目の前にいる悪魔に入れられた。

 

ついこの間とは何かが違う────

 

すぐにネルギガンテの異変を感じ取るがその異変が何かは分かっていない。

だが───倒す事に変わりはない。

刃翼を広げ振り回す。

ネルギガンテも棘の生えきった翼で防御しながら前脚を叩き付ける。

再び二頭の激しい攻防が始まった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

その様子を見ていた神薙ユウが隙を付いてディアウス・ピターに攻撃をしようとしたがリンドウに止められる。

 

「止めとけ、今の二体に近付いたら危ない事くらい分かるだろ」

「…けどまた」

「お前だって見たろ。アルディラ・ビジターが奴の刃翼にヒビを入れたのを───恐らくアイツは進化してる。その短期間でな。その進化に賭けてみるしかねぇ」

 

リンドウに諭され、神薙ユウは神機を握る手を緩め、二頭の戦いの行先を眺める事にした。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

ズザザッ!!!!

 

ディアウス・ピターは再び押されていた。

それもそうだ。

ネルギガンテは再生に特化し、尚且つ自身に近付くものは全て敵と見なす古龍。

そんな古龍にアラガミの…オラクル細胞を取り込めば古龍とアラガミを超えた力を持つ事は誰であろうとも分かるはずだ。

つまり今、ネルギガンテは古龍とアラガミの二つの要素を持っていると言っても過言では無い。

ネルギガンテという古龍の再生能力をネルギガンテの一部となったオラクル細胞が学習し、細胞自身が生きる為に再生を行う。

即ちネルギガンテ特有の再生能力がオラクル細胞の学習能力との相乗効果で跳ね上がっているのだ。

だがそのネルギガンテでも体力は無限では無い。

ディアウス・ピターでもそれは分かる。

少しづつネルギガンテの攻撃速度が落ちていた。

これを好機と見たディアウス・ピターは1度も使わないでいた尻尾を前方に叩き付ける。

ネルギガンテは距離を取って尻尾の直撃を防ぐ。

叩き付けた所からは土煙が舞う。

それを見たネルギガンテは急いで攻撃を仕掛ける。

 

 

その判断が誤りだった─────

 

 

土煙を抜け、前脚を叩き付けようとしていた相手がいない。

 

ズザッ!!!!

 

真横から足音がした。

そう、ディアウス・ピターは土煙を目眩しにしてネルギガンテの横に移動していたのだ。

そして背中にある刃翼を振り翳す。

今の位置からは体勢的にも距離的にもネルギガンテに直撃する。

少しでもいい…距離を取らなければ───!

その願いは叶わなかった。

ドッ──────!!!!!!!!

 

ネルギガンテの喉に深く突き刺さるディアウス・ピターの刃翼。

喉を裂かれ、ネルギガンテの目から生気の色が消えていく。

 

ドサリ…とゆっくりした動きでネルギガンテは地に伏せた。




だから文字数の高低差が激しいのなんの…w
けどここで切ってこそ次への楽しみが増えるという訳で…w
さて、終盤へ突入してると同時にちょっとした宣伝を。
明後日月曜日より、私、JAILが実際に寝てる際に見た夢を小説化した新連載「ゆめにっき」が始まります。
笑い(?)あり、感動(?)あり、ホラー(?)ありのありありづくしな小説となっておりますので皆さん、こちらの方も宜しければ御閲覧下さい。
最初は幼少期より、かなり記憶に残っている夢や未だに内容を覚えている夢の内容を投稿、その後は夢を見る度にスマホでそれを先にメモっておき、後にちゃんとした小説として投稿する為、どうしても不定期更新となる事はご了承頂いた上で二度目となりますがどうぞ御閲覧下さい。
感想等お待ちしております。


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牙は刃を砕けるか────後編

さぁ、本編クライマックス!
地に伏せたネルギガンテはどうなってしまうのか…!?
それではどうぞ!


地に伏せたネルギガンテ。

するとミシミシと地面にヒビが入る。

恐らくそこは元々地盤が緩く、先程の激しい戦闘で更に緩くなったのだろう。

ネルギガンテの身体は段々沈んでいき、そして姿すらも見えなくなった。

二度目の、帝王の勝利だ。

それを見ていた神薙ユウの神機を握る手が強くなり、駆け出す。

 

「おい待て!」

 

リンドウが止めようにも既に遅かった。

 

 

時間を稼がないと────────

 

 

何故か神薙ユウの頭の中にそんな考えが浮かんでいた。

何故かは分からない。

だが今は、時間を稼ぐ。それだけを考えて動いた。

 

「お前ら…一斉に行くぞ!!!!」

 

もうなりふり構っていられない。

全員で総攻撃を仕掛ける。

 

「おおおあぁぁぁああああ!」

 

ゴウッ…!!!!!!!!

 

ソーマがその場で神機を振りかぶり、力を溜めてリーチと威力を強化し始める。

ブラッド隊もそれぞれが持ちうる血の力をフルに活用する。

 

「…っ!」

 

ナナが【誘引】でディアウス・ピターの注意を引く。

その隙にジュリウスが【統率】の血の力で各神機使いのバーストし、基本性能を上げる。

ギルバートが【鼓舞】の血の力で神機使いの戦闘力を上げる。

ブラッド隊の血の力によって基本性能、戦闘力を上げてもらったクレイドルの神機使いが全方位に散って攻撃を仕掛ける。

コウタとサクヤはお互いに走りながら銃弾を撃っていく。

その死角からリンドウ、神薙ユウ、アリサが斬撃を叩き込む。

 

 

だがその全てが無意味だった。

 

 

神機使い達の斬撃も刃翼によって防がれ、銃撃もディアウス・ピターの前では傷の一つも作れなかった。

ディアウス・ピターは駆け出し、神機使い達へ刃翼を振り回す。

周りにいた神機使い達はその刃翼によって次々と倒され地べたに這い蹲る。

 

「クソッタレがあああぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

チャージクラッシュ。

バスターソード型の神機で力を溜めた先で使える技だ。

それが出せるまでに溜め続けていたソーマが、ようやくその技を全身全霊で地面がえぐれる程までに神機を振り下ろしてディアウス・ピターにぶつける。

 

 

その技ですら──────届かなかった。

 

 

強靱過ぎる刃翼の前にそのチャージクラッシュは砕かれた。

そして技を使ったソーマにその凶刃は向かっていた。

 

「ソーマぁ!」

 

倒された神薙ユウが必死で立ち上がろうにも全身が動かない。

 

 

でも、少しでもいい。

 

 

この身体よ、動いてくれ──────

 

 

あいつを死なせたくない。

 

 

分かってる。

 

 

もう、この距離ではどう足掻いても先にディアウス・ピターの攻撃が入ると言う事位──────

 

 

もう…無理だ…とそこにいたほとんどの神機使いがソーマを死を悟った───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思い出して欲しい。

 

 

何故、ネルギガンテが古龍と呼ばれているのか

 

何故、古龍はそこまでに長寿なのか

 

古龍とは自然災害や自然現象を具現化したかのような存在だ。

そして驚異的な生命力を持っている。

 

風を操る鋼龍クシャルダオラ

 

氷を操る冰龍イヴェルカーナ

 

炎を操る炎王龍テオ・テスカトル

 

というように全ての古龍には大自然の現象を象徴出来る程の力を持っている。

 

それでは、ネルギガンテは例えるなら何の具現化だっただろうか?

 

ネルギガンテは破壊を司る古龍と思われているが実際には自然界に現れた不浄を破壊し(・・・・・・・・・・・・・)元の生態系へと浄化する(・・・・・・・・・・・)…言わば────

 

 

大自然の自浄作用の象徴だ。

 

 

つまりネルギガンテの持つ脅威の再生能力と古龍特有の生命力ならば大きな傷でも時間が経てば─────

 

 

 

 

バキャン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

その驚異的な再生能力と生命力を持ってすれば復活等容易い事なのだ。

割れた大地を割いて、天高くネルギガンテが飛び上がっている。

ディアウス・ピターもソーマに攻撃しようとしていたが突然の轟音に足を止め音がした方を振り向く。

 

「あいつ…!?」

「まだ生きて───!?」

「っ!ソーマ!」

 

神薙ユウが軋む身体に鞭を打って神機を銃モードへ移行し、ソーマに照準を合わせ、一つの銃弾を撃ち放つ。

ソーマはシールドを展開してその銃弾を受け、後ろに飛ばされる。

そこへネルギガンテがディアウス・ピター目掛けて空から襲い掛かった。

ディアウス・ピターは刃翼でガードしようとしたがネルギガンテの奇襲の威力がそれを上回り姿勢を崩した。

それをよそにネルギガンテが刃翼でも最も肉質の柔らかい根元を食い千切ぎる。

 

 

もう一つ忘れてはいないだろうか?

 

 

ネルギガンテが最初の戦いでディアウス・ピターの雷を発生させるマントのような器官を食らっていた事を────

 

棘はその雷を纏う能力を持った。

そう────帝王の力を宿したのだ。

帝"王"の力をその身に宿す悪"魔"へと登り詰めたネルギガンテ─────さしずめ、"魔王"と呼ぶべきだろうか。

その帝王の雷とネルギガンテはすこぶる相性が良かった。

というのもそれはネルギガンテの技に関係している。

ネルギガンテは己が傷つこうとも構わない程、肉弾戦を用いている。

そしてよく使っている、前脚を相手に叩き付ける技「滅尽掌」と呼ばれる技だが、ただ叩き付けるだけじゃない。

叩き付けた後、前脚にある棘がその対象に刺さるようになっている。

その為、ネルギガンテの脚の棘は下に向いているのだ。

つまり、叩き付けた爪先と食い込んだ棘から雷が放出され、相手の体内に直接雷を叩き込めるのだ。

強力な雷を体内に流された筋肉と神経が麻痺し、ディアウス・ピターの身体は動けなくなる。

それをいい事に脳天にその滅尽掌を叩き込む。

 

 

バキン────!!!!

 

 

脳天を覆っていた甲殻が破壊され、その中に青白く光る楕円形の球体が見えた。

これこそがアラガミの身体を形成する核───コアだ。

ネルギガンテはそのコアを乱暴に食らい、ブチブチという肉が千切れる音を立てて引き千切り、バキャン!!!!!!!!という音を立てて噛み砕いた。

コアを破壊されたディアウス・ピターは力無く地べたに横たわる。

 

グオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!

 

帝王を玉座から引きずり下ろし、最強の魔王へと登り詰めたネルギガンテは勝利の雄叫びを上げる。

それは空気はおろか、大地すら揺れるのではないかと思わせる程の雄叫び。

そしてボロボロになった神機使い達を一瞥すると、その巨大な翼を広げ、どこかへ飛び立っていった。

 

「帰った……?」

「どうやら…助かったみてぇだな」

 

それぞれがアラガミの驚異であるディアウス・ピターから解放され、ネルギガンテというイレギュラーによって命を救われた事に安堵する。

すると通信が入った。

 

『皆、一部始終は見ていたよ。一旦帰還してほしい。話はその後だ』

 

サカキの声に苦笑しながら極東支部へと戻り、懲罰を待つ神機使い達であった。

 

後日、フェンリル本部よりネルギガンテから微弱ながらディアウス・ピターと酷似するオラクル反応が確認され、その見た目、確認されたオラクル反応、凶暴性から【破壊の魔王】という意味合いを込めて【アンドラス・サタン】と正式決定されると同時にディアウス・ピターと同様第一種接触禁忌種に認定された。




一体いつからこれで最終回だと錯覚していた?
来週に続きますよ~?w
そしてMHWIBのとあるシーンを再現したのですが何処でしょーね?w(すっとぼけ)
感想等お待ちしております。


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ネルギガンテ

さぁ、この回でMHW…というよりネルギガンテ×GODEATERの二次創作小説は終わりを迎えますが後書きにお知らせを2点用意しましたので最後までご覧下さい。


極東支部より遥か遠く、海に隣接した土地でネルギガンテ、またの名をアンドラス・サタンは眠っていた。

帝王ディアウス・ピターを倒し、部分的に古龍からアラガミへと進化を遂げたネルギガンテの身体だが、正確にはオラクル細胞に侵食されつつもネルギガンテ自身が暴れる事で侵食された部分が完全にとまではいかないがそれを破壊し、オラクル細胞の完全な侵食を防ぐ事でアラガミと古龍のハーフという異質な存在へと変わっていた。

ディアウス・ピターの一件でネルギガンテは以前から噂されていた"アラガミを殺すアラガミ"としてその存在はネルギガンテの姿と共に各地のフェンリル支部に確実に広まる事となった。

侵食するオラクル細胞、ネルギガンテ特有の破壊と再生力…新大陸で自浄作用の働きをしていたネルギガンテだからこそ出来た荒業なのかもしれない。

ようやく現時点で安寧を手にしたネルギガンテは闘いの疲れからか今いる所で眠っている。

だがそれを邪魔する者は何処にもいない。

現在生存している大型のアラガミでさえネルギガンテの驚異的な戦闘力には抗えず、近付こうとも思えないからだ。

例え近付く事でもその行動は自殺行為と言えるだろう。

そして極東支部の作戦に対して甚大な被害を出していたディアウス・ピターを退け、その場を去るだけにしたネルギガンテに対して各国のフェンリル支部は「完全に飼い慣らして人類側の戦力に加えるべきだ」、「いつ人類にその脅威を振り翳すか分からないから倒せる時に倒すべきだ」等とネルギガンテ支持派と否定派で様々な意見が飛び交う中、実際にディアウス・ピターという脅威から救われた極東支部は敬意としてこれ以上の被害を増やさない為にも暫くの間は向こう側から被害を出された際以外では不干渉を取る事に決定した。

ちなみに無断出撃していた神機使い達はアンドラス・サタンとの共闘(?)によるディアウス・ピター討伐で大規模作戦を再開出来た為お咎めなしになった。

そもそもネルギガンテといった古龍自体は元の世界の人々でさえ制御不可能なのだから古龍そのものを知らないこちらの世界の人達では更に不可能だろう。

アラガミからも神機使いからも開放されたネルギガンテは時折起きて浄化という名の破壊をアラガミに対して繰り返し、アラガミと古龍のハーフになってからまた一段と破壊力は増している。

それゆえにネルギガンテは暴れ続けるだろう。

新大陸に帰る術は分からない。

だが自身を倒したあのハンターなら新大陸の厄災もどうにかするだろう。

仮に帰れるのなら予めこの地のエネルギーを体内に蓄えておくだけだ。

この地には新大陸以上のエネルギーを持つ生物…いや、アラガミは数え切れない程存在する。

アラガミは生物では無いし、生物のように絶滅する訳でも無いから尚更好都合だ。

正直、その古龍由来のエネルギーも貰いたかったが、この世界のエネルギーの方が更に上な感じがしていた。

まぁ使いこなせればの話だが…

そしてネルギガンテ自身は今でもこの崩壊した世界で、その命が尽きるまでその力を振るい続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不浄(アラガミ)の悉くを殲ぼす為に───────




GODEATER~破壊の龍は不浄を殲ぼす~をここまで読んで頂いてありがとうございました。
二次創作小説としては私が執筆活動を始めたはがりの小説より少し表現においてもレベルアップ出来たのかな?と思っております。
そしてまさかのお気に入り登録数100人越えと、こちらも作者の私自身も驚いておりますw
元々ネルギガンテとディアウス・ピターを戦わせ、ネルギガンテの勝利で終わりにしようとしていたので作者としても納得のいく終わり方が出来た…のですが、えー、前書きにもあったようにお知らせが2点あります。
一つ目は第一発見者であり、重要参考人だったリーチェ、フォーツ、ザックの3名のキャラで少しばかりあそb…もとい、活躍させて帰還させようかなと思います。
こちらの小説は本編となんら関係が無い、おまけのおふざけ半分の小説ですが興味がある方はどうぞ御閲覧下さい。
ちなみに掲載は明日の18時と21時を予定しております。
もう一つはこの小説についてで、かなり重要なお知らせです。
というのも作者自身がゴッドイーター×モンスターハンターのクロスオーバー小説の創作に完全にハマってしまい、「もっとこの執筆を楽しみたい!」という創作意欲が暴走し、脳内で様々な古龍を転生させてます。
つまり何が言いたいのかと言うと…誠に勝手ながらシリーズ化させて頂く事になりました。
シリーズ化する上で入れる予定のモンスターは4体を考えておりますが作者のテンションによってはその数が増減する可能性(どちらかと言うと増寄り)があります。
まぁこの作品自体、古龍TUEEEEをしたいが為に書いてるわけですが… w
書いてる途中で「この古龍入れたらどうなるだろ?」、「この古龍入れてみたいなぁw」という発想が頭に浮かび、「…書こうかな」と思い至った訳ですw
という訳で

GODEATER~破壊の龍は不浄を殲ぼす~

は新タイトル

GODEATER~古龍達は荒ぶる神々に導かれる~

と変更し、一章ごとに完成まで書いて定期更新の繰り返しをする為、一旦執筆期間に移らせて頂きます。
尚、ゴッドイーターの要素を少しでも多く持たせる為に古龍同士の縄張り争いは無くし、基本的に古龍vsアラガミ、あるいは古龍vs神機使いとなり、一つの章につき一体の古龍を載せて全ての章で古龍がオラクル細胞に侵食されてない状態から始めます。
皆さん、終わりは延長しますが最後までお楽しみ下さい。


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おまけ
3人のドタバタな1日【前編】


こちらはおまけであり、本編とはなんら関係ありませんw
本当は1話で終わらせるつもりだったのに長くなって2話構成になってしまった…w


これはとある三人の1日を覗いた者の記録である。

 

~リーチェ、フォーツの場合~

 

中国支部から呼ばれていたリーチェ、フォーツの二人は支部長室に呼ばれていた。

 

「え?俺達を1日防衛班に?」

「そう、君達の中国支部から契約期間はまだ少し残っていてね、極東支部で待つのもなんだろうかな試しに比較的安全な防衛班と協力してもらおうかなと思ってね」

 

今回この二人に提案されたのは極東支部防衛班との共同戦だ。

というのも終わった大規模アラガミ討伐作戦は多少のイレギュラーがあったものの、作戦そのものは順調であり、目標も達成出来ていた。

だがそのせいか極東支部が各支部との契約期間はまだ残りがあり、この二人以外の支部から来た人達も何かしらの任務に着いていたからだ。

 

「まぁ俺達が力になれるならいいですけど…フォーツはどうなんだ?」

「私もいいよ?…というかこれ決める権限って隊長の私なんじゃ…?」

 

自分の立ち位置に不満をリーチェにぶつけるも、着々と話が進み、明日から極東支部防衛班との共同でアラガミ討伐を請け負った。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

翌日。

エントランスに防衛班とリーチェ、フォーツが集まっていた。

 

「よーし、皆集まったな」

 

ショートブレード型神機を扱う大森タツミが全員の集合を確認する。

 

極東支部第二部隊────通称:【防衛班】と呼ばれる部隊で

 

ショートブレード型の第一世代型神機を扱い、防衛班隊長の大森タツミ

 

バスターソード型の第一世代型神機を扱い、冷静沈着なブレンダン・バーデル

 

ブラスト型の第一世代型神機を扱うが、誤射の酷い事から「誤射姫」とも呼ばれている台場カノン

 

ロングブレード型の第一世代型神機を扱い、お調子者の小山シュン

 

アサルト型第一世代型神機を扱い、結果にこだわる野心家のカレル・シュナイダー

 

スナイパー型第一世代型神機を扱い、アラガミを撃つ事だけしか頭に無いジーナ・ディキンソン

 

以上6名から防衛班は成り立っている。

 

「さてと、それでそちらの隊長は…」

「あ、私です。中国支部第一部隊隊長のフォーツ・エンジェです。こちらは同じ部隊のリーチェです」

 

フォーツに紹介され、軽い会釈をする。

 

「フォーツさんとリーチェさんね、オッケー。まぁ今回の任務は結構楽だから気楽に行こう」

 

タツミの言葉にそれぞれが返事をする。

こうして極東支部防衛班と中国支部の共同任務が始まった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

極東支部の防壁の上に彼等は立っていた。

 

「極東の任務はここにいるアラガミの掃討だ。俺達防衛班とお二人さんは2人1組になってアラガミの掃討をする。それとなるべく一体ずつ違うアラガミに試作されたバレット型発信機を埋め、そのアラガミは討伐せずに残し、徘徊ルートを算出するのを目的とする。皆、オッケーだな?」

 

タツミの声に頷くメンバー。

 

「そしたらバレット型発信機は…あ、フォーツさんスナイパー型だよね?そしたら今回はフォーツさんに頼もうかな。それとこの発信機、普通のバレットと似てるから気を付けてね」

 

そう言ってタツミがフォーツにバレット型発信機を2つ渡す。

 

「今回確認してるのはコンゴウとグボログボロの集団みたいだからそれぞれ一体ずつにそれを撃ってくれ」

 

分かりました。とフォーツがポケットにしまうが持っているバレットが正しいか確認をする為に少し離れてポーチを見に行った。

それを見ていたリーチェの心配そうで少し安堵したかのような表情にタツミが気付く。

 

「フォーツさんが心配?」

「え?あー…心配っちゃあ心配ですね…あいつ、作戦立案は出来るんですけど決めた本人が従わない上、後衛無視して特攻した挙句、ボロボロになって帰ってくる事がよくあるし、たまに流れ弾が味方に当たっちゃうけどエリア分けされるならその心配無いかなぁ…って…」

「うん待って?色々とツッコミ所が多いんだけど?」

 

リーチェが言うフォーツの特攻癖を聞いて少しだけ2人が心配になるタツミだった…

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

フォーツとリーチェが担当するエリアに着いた。

それと同時に無線でタツミに報告する。

 

「こちら中国支部第一部隊隊長のフォーツです。担当エリアに到着しました」

『オッケー。そしたらそっちはアラガミが確認出来次第、戦闘開始していいよ』

「了解」

 

フォーツが無線を切る。

 

「さーて、中国支部の強さをアピ…どうした?」

 

グイーッと伸びをするリーチェが嬉しそうなフォーツに気付く。

 

「だって嬉しいんだもん♪」

「?何が?」

「今のやり取り、凄い出来る女って感じ無かった!?やっぱ隊長ってこういう人がやるべきよねー♪」

 

ウンウンと嬉しそうに頷くフォーツに対し、あー、こいつ…隊長っていう自分の立場に酔ってるな…と呆れるリーチェ。

 

「ま、作戦成功したら中国支部に対しての評価も上がって、また応援とか頼まれるから完璧にこなそうぜ」

「そうだね。そしたらリーチェは誘導お願い最初のグボログボロに発信機撃ち込むから」

「…了解」

 

間違っても俺には撃つなよ?と思いながら最初のターゲットに向かうリーチェだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

リーチェが神機を構え、慎重にアラガミを探している。

 

(それにしてもさすがは強敵の多い極東支部だ…)

 

あちこちにある戦闘の傷跡を見てそう思った。

中国支部は比較的弱いアラガミが多く(と言っても数も多いが)、新人の神機使いでも油断さえしなければほぼ無傷で帰って来れる程だ。

だが極東支部は違う。

ここに集まるアラガミは中国支部で倒してきたアラガミの強さが格段に上がっている。

それでもリーチェやフォーツに召集が掛かったのは生還率が高い為だろう。

 

(っ!出たか…!)

 

ギリ…と神機を握る両手に力が入る。

目の前に現れたのは大きな顔に鋭い牙、頭のてっぺんに砲台のような物が付いたグボログボロと呼ばれるアラガミだ。

3メートルはあろうその巨体であるにも関わらず攻撃も移動のスピードも早い。

リーチェに気付き、威嚇するグボログボロに対し、駆けて接近するリーチェ。

グボログボロが大きな口を開けて噛み付く────その時だ。

走っていた軌道を一気に横にずらしながらグボログボロの口の中目掛けてグレネードを投げる。

見事口の中で爆発し、グボログボロはその衝撃でダウンする。

 

タタンッ!

 

地面と壁を蹴り、グボログボロの真上から神機の鋒の下に向けて落ちていく。

 

「あばよ」

 

ドシュッ────!!!!

 

グボログボロの頭を神機が貫いて口の中まで届き、たった一撃でグボログボロは息絶えた。

 

「フゥ…」

 

無傷で倒し、プレデターフォームでグボログボロのコアを取る。

 

「こちらリーチェ。グボログボロ一体を討伐した」

『なんで倒しちゃってんの!?発信機付けるんでしょ!』

 

鼓膜が破れるのでは無いかと思う程の声量がインカムを通してリーチェの耳に届く。

 

「お前な…第一目標は掃討でその次に発信機って言われたろうが」

『けど私の活躍がー!!!!』

 

分かった分かった!と子どもをあやすかのように隊長であるフォーツを宥め、通信を切る。

これ…大丈夫か…?と少し心配になってきたリーチェだった…




さーて、とことんあそb…もとい頑張ってもらいましょうかね?w


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3人のドタバタな1日【後編】

長くなっちゃった…


群がる小型アラガミを倒す中、そろそろフォーツの方に対象のアラガミを誘導した方がいいな…と思い、建物を食べていたグボログボロに小石をぶつけて挑発する。

すぐに気付き、戦闘態勢に入ったグボログボロに対してリーチェは背を向けて走っていく。

 

「フォーツ、今一体のグボログボロを誘導してる。弱らせてから発信機を付けたいから普通の狙撃弾に替えといてくれ」

『オッケー』

 

無線を切り、走る事に集中する。

どうか、外しませんように…と願うリーチェの横腹に衝撃が走った。

 

「…っ!?」

 

ズザザッ!!!!

 

何メートルか飛ばされたが体勢を急いで立て直す。

そして衝撃を受けた先を見るともう一体のグボログボロがいた。

 

「…ッチ!もう一体いたのかよ!?」

 

大型アラガミ二体に対して神機使い1人は分が悪い。

とにかく今は走ってフォーツを合流し、援護射撃をしてもらいながら一体だけを討伐する方が先決だろうというのはリーチェでも分かる。

 

(走るしかねぇか…!)

 

再び走るリーチェ。

そのリーチェを追い掛け、間髪無く頭の砲台から水球を撃ち続ける二体のグボログボロ。

 

「あいつら好き勝手撃ちやがって!」

 

少しづつ距離が縮まっている。

 

(まずい…!)

 

 

パァン!!!!

 

 

その時、一体のグボログボロの頭を1つの銃弾がめり込んだ。

 

「フッ!」

 

スタングレネードを投げ、2体のグボログボロの目を眩ませた。

 

「フォーツ!?」

「遅いっての!」

 

グボログボロは水球を撃つがフォーツはバックラーを展開して攻撃を受け切った。

 

「…」

 

フォーツはジッ…とグボログボロを見ていた。

 

「リーチェ、あれやろう」

「…やるしかねぇか…」

 

リーチェはすぐさまもう一体のグボログボロに封神トラップ(アラガミの行動を抑制するトラップ)を直に与えて動けなくし、フォーツは2枚の壁を連続で蹴り、1番上で立ち上がる。

動けるグボログボロが突進する中、リーチェは神機を地面と水平に構えながら盾を展開した。

グボログボロに突進され後ずさり、壁に激突するも横にしていた神機のお陰で直撃は避ける事が出来た。

そんな中シールドに噛み付いているグボログボロの口の中にピンが刺さったままのグレネードを投げ入れる。

 

「やれ、フォーツ」

 

壁の1番上で待っていたフォーツが銃形態のまま飛び降り、銃口をグボログボロに突き刺す。

そして握っていた柄にあるトリガーを引いて銃弾が飛び出す。

銃弾はグボログボロの中にめり込み、口の中へ辿り着いた。

すると銃弾が赤くなっていき、やがて爆発する。

中にあったグレネードもその衝撃で誘爆され、グボログボロは中からコアごと破壊された。

 

「ナ~イス♪」

「それはいいんだけどこの作戦俺が1番危なくね?」

「いいじゃん、いいじゃん。死んではないんだから、さ、そろそろ封神トラップも切れてるでしょグボログボロに発信機撃ち込むよ」

「…まぁいいや、頼むわ」

 

オッケーとフォーツは発信機をリロードしてグボログボロに撃ち込んだ。

 

「あとはコンゴウだけか」

「意外と早く終わりそうね」

「だな」

 

少し安堵しているとフォーツのインカムにタツミから通信が入った。

 

『あ、お二人さん、コンゴウなんだけど一体だけそっちに行っちゃったから、なんならそのコンゴウに発信機撃ち込んでいいよー』

「あ、分かりました」

 

回線を切り、何かあった?と聞いてきたリーチェにコンゴウがこちらに来ている事を話す。

 

「ならそいつ弱らせて撃ち込むか」

 

リーチェの提案にそれしか無いねとフォーツも同意した。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

少し移動してきた所で負傷しているアラガミに遭遇する。

金色の胴体に赤い顔と背中に沿って付いている赤い2本の砲台を持つ、猿の姿をしたアラガミ。

コンゴウだ。

 

「さてと、ここは───」

「あ、リーチェ、すぐ撃っちゃうから何もしないでいいよ?どうせ一体だし」

 

そうか?とリーチェは少し下がり、フォーツはウエストポーチを漁る。

 

「…っと、これは違った…あれ?これも違う…」

「フォーツさん?」

 

ひっきりなしに手がウエストポーチと神機の間を往復する。

やがてその手はピタリと止まった。

 

「…フォーツさん?」

「えっと…その…」

 

大量の汗をダラダラと流しながら振り向くがその目は泳いでいた。

 

「リーチェ、私思うの。人は間違いを起こす生き物で、その間違いから学んでいってこそ────」

「素直に言おうか」

 

顔"は"笑顔だ。

目"は"笑ってなかった。

 

「…多分最初に撃った銃弾が発信機で、グボログボロに2発撃ってました」

 

その言葉を聞いて次第にリーチェの後ろに般若が現れる。

 

「えっと……その……やっちゃったっぴ♪」

 

フォーツはテヘッ(´>∀<`)ゝという効果音が付きそうな謝り方をした。

 

 

一つ、注意すべき事がある。

 

 

可愛い謝り方というのは実質幼い子…幼児だから適う方法であり─────

 

「こんの……」

 

大の大人がそれをした場合……

 

 

「馬鹿野郎があああぁぁぁぁああああ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

火に油を注ぐ結果となる…………。

その時、今日一甲高いリーチェの怒号が極東支部中に響いた…。

 

 

~ザックの場合~

 

 

「ザックさーん。おっかしいなぁどこ居るんだろ…」

 

楠リッカがザックを探していた。

エントランスまで降りてくるとソファーで談笑してるクレイドルの神機使い達を見付ける。

 

「あ、皆ちょうど良かった。中国支部から来てるザック・ホーヌって人見た?」

「いや、見てないよ?アリサは?」

「私も見てません。何かあったんですか?」

「あぁ…いや…同じ中国支部から来てたリーチェさんとフォーツさんの使ってた神機に見た事ない部品があったんだけど見た目の割に結構性能良くて、出来たら入手先とか知らないかなぁって…」

 

クレイドルのメンバーはリッカから内容を聞いて見付け次第、呼んでおくと約束をしてくれた。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「これがリンクサポートデバイス…」

 

当の本人であるザックは神機保管庫でリンクサポートデバイスを手に持って観察していた。

 

「これは…あの部品を代用出来るな…ここは…あれか…」

「あー!やっと見付けたー!」

 

突然声を掛けられ、ビクッ!と反応する。

 

「あ、リッカさん」

「探したよ~ってそれリンクサポートデバイスじゃん。どうしたの?」

「いえ、こういうリンクサポートデバイスを別の何かで代用出来ないかなぁって…」

「これを?」

 

ザックからデバイスを受け取り、ジーッと眺める。

 

「んー…私から見たら代用方法とかはあまり思い浮かばないなぁ…」

「ですよね…そういえば俺を探してたみたいですけど…」

「あ!そうだった。ちょっとリーチェさんとフォーツさんの使ってる神機にあったパーツの事なんだけど、私あんな部品見た事無いんだよね」

 

使ってる部品…?とザックが考え込む。

すると、あ。と何か思い当たる節はあったようだ。

 

「あー、もしかして接続部分のベアリングの事ですよね?」

「そう!それそれ。見た目の割に結構性能が良くてさ、もし入手先とか知ってたら教えて欲しくて…」

 

お願い!と目の前で手を合わせるがザックは少し困った表情を浮かべる。

 

「入手先…というかそもそもあれは既存品では無いんですよね…」

「え?それってどういう…」

「あれ、既存品を使ってて悪くなった部分を取り替えてそのまま使ってるだけなんですよね」

 

ザックの言っている事は俗に言う部分的な"リユース"の類だろう。

中国支部は極東支部と比べて周囲にいるアラガミの数も少ないし強さもそれ程では無い。

その上神機使いの人数も少ない故、限られた素材や部品で神機を製造、修理する必要がある。

だからこそザックはこの"部品そのものを新品同様に近付ける技術"は身に付ける事が出来たのだろう。

なるほどねー、とリッカも感心する。

 

「あ、だからあの2人の神機はその部品を使ってる事を知ってる君にしか直せないんだ」

「ま、そうなりますね」

 

ふーん…とチラッとリッカは持っていたリンクサポートデバイスの試作品を眺めていた。

すると何か面白そうな事を思い付いたのか笑みが浮かび上がる。

 

「ねぇ、この試作品のリンクサポートデバイス、あげよっか?」

「…はい?」

 

突然のリッカの提案。

 

「え、どうして急に?」

「部品の再活用法を教えてくれたお礼…って感じかな。あ、それと…」

 

リッカは急に紙片に何かを書いてザックに渡した。

 

「これ、私のアドレス。もしもリンクサポートデバイスの代用方法見付けたら教えてよ」

「あぁ、そういう…」

 

部品の再活用法で、してやられたか…と苦笑するがザックは帰ったらリンクサポートデバイスの代用方法の探すのだった。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

そろそろ中国支部への帰還の時間となり、2人を探しにエントランスまで来たザック。

そこには……

 

「ひっぐ…グスッ…」

 

大粒の涙を浮かべているフォーツとイライラしてるリーチェがいた。

 

「…えっと…これは?」

「まぁ…俺から説明するよ…」

 

横から来たタツミに経緯を説明されるザック。

ある程度聞いて、あ…と何かを察したようだ。

そしてフォーツもザックに気付き、泣きついて来た。

 

「ザッグ~私頑張ったんだよ!?隊長として頑張ったの!!!!なのに少しのミスでリーチェが凄い怒るの!私隊長なのに!隊長なのにぃ!」

「少しってレベルじゃねぇだろうが!てか先に言ったろ!普通のバレットに変えとけって!!!!それなのに替えてないお前が悪いじゃねぇか!」

「だって!だって!アラガミの位置とか把握した後に変えるつもりだったんだもん!あっちでもミスは多少なりとはあるけどここまで怒ってないじゃん!」

「他所の支部に迷惑掛けてるからこうなってんだろうが!隊長としての自覚をもっと持てや!」

「うわああぁぁああん!リーチェが私に言っちゃいけない事言ったぁ!」

 

うわああぁぁああん!とずっと泣き付いているフォーツに対して、収集付かねぇ…と後の対応に迷うザックだった…

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

「極東支部周辺のアラガミってやっぱ強敵でした?」

「そうだな…中国支部の新人が行けば間違い無く戦線に出られなくなる」

 

ザックの運転でカーゴに乗り、中国支部に帰ってる途中でザックがそのような話題を切り出した。

 

「俺達くらいでようやく追いつける程度だけどディアウス・ピターくらいとなると出会いたくないな…」

「ですよね…俺の方も整備で忙しかったし…」

 

だよなぁ…とリーチェが運転席と助手席にあるダッシュボートにあったリンクサポートデバイスを見付ける。

 

「何これ?」

「あ、それリンクサポートデバイスですよ」

「「リンクサポートデバイス?」」

 

フォーツも気になったのか後部座席から身を乗り出した所でリンクサポートデバイスの説明をする。

 

「へぇ~そりゃ便利だ。俺らでも使えるの?」

「それがまだ分からなくて…まぁ代用方法が分かり次第実戦投入して向こうにも連絡するつもりなので」

「ふーん…ん?」

 

フォーツがザックの言葉の何かに気付いた。

 

「連絡って誰に?」

「いたでしょ?極東支部の神機整備士の楠リッカさん、その人にそれを貰った時に代用方法が分かったら連絡してくれって言われてて…」

「へぇ~…」

 

途端にフォーツの目がジト目になりながらも面白そうな表情でザックを見る。

 

「ザックって…こういうのを皮切りにナンパするタイプなんだ?」

「ちょっ!?ハイィ!?」

「おっとザック。極東支部に浮気する気か?」

「えぇ!?リーチェさんまで!?俺はただこのリンクサポートデバイスが2人にも使えたらなぁと思って…!」

「分かった分かった。ちゃんとそれを大義名分にしてあげるよ。隊長の私はちゃんと分かってるから」

「話を聞いてえぇぇぇぇええ!?!?」

 

フォーツとリーチェで運転中のザックで遊び始める。

色々と喧嘩もしてはいるがお互いに弄れる節度は知っているからこそだろう。

ザックを弄るフォーツに、それを笑うリーチェ、必死に否定しながら運転するザックはそのまま中国支部へと帰って行くのだった。




これ書いてて思った…
疲れてんのかな…w
現在、続編を執筆中です。
完成をお楽しみに!


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