スタンド使いは『ありふれた』 (枯無 柊)
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1話

今回初めて投稿の作品になります。これから出来上がり次第ちょくちょく不定期で投稿したいと思います。そして冒頭部分は6部のシーンを一言一句違えずに抜粋していますのでぜひ楽しんでいってください。(たまにジョジョの様々な部やゲームなどからセリフを抜粋しています。)

注意
・この作品はジョジョの奇妙な冒険の二次創作作品です。
・作者の語彙力と表現力のせいで戦闘描写が下手です。ご了承ください。
・「ジョジョっぽくない」などの意見は受け付けません、なぜならこれは私の自己満足で書いているからです。
・誤字脱字などありましたらコメントなどで教えていただけると幸いです。


  【天国の時 地獄の門】

 時は2011年ケープ・カナベラル。空条徐倫とその仲間達とエンリコ・プッチの最終決戦が行われていた。

「これだッ!36時間後の『新月』はもう待たなくていいッ!私に必要なのが『新月』のときの『重力』の影響というのなら………!!このまま空中に浮いて同じ重力の条件を体で感じて探せばいいッ!『新月』と同じ重力の影響の位置をッ!」

「我がC-MOONの能力がッ!完璧になれる位置があるはずだッ!落ち着け!位置を探すのだッ!素数を数えて落ち着け!13、17、19」

 プッチは『天国の時』を迎えるために、そのスタンド『C-MOON』を使い位置を探していた。

「逃がすと思うのかっ。どこまでも悪あがきしやがる野郎だぜ!!」

「あいつ何かブツブツ言ってるぞ。」

「重力はそのままだッ!地面の重力は垂直に戻らないッ!!」

「エルメェス、下をみろ、ヤツの落とした銃を拾え。成長したな………徐倫……。」

「…………。………………。」

「手すりにつかまってろ。エルメェス銃を拾ってヤツを撃て。」

『ドバッドバドバッドバッ』

 エルメェスがプッチに向け銃弾を放つ。

「『C-MOON』!!」

 プッチがスタンドを使い弾丸を防御した刹那、

「『スタープラチナ ザ・ワールド』」

 承太郎が時を止めた。

「お前はそのスタンドでこれからその弾丸を防御するのだろうが、時は最大で5秒ほど止まっている。この銛の動きにおまえは気づかない。」

 『オラァッ』

 という掛け声とともにスタープラチナがプッチに向けて銛を投擲する。すると空中で銛が止まる。

「3秒前。」

 停止した時間の中でもちろんプッチは動かない。

「2秒前。」

 依然として止まった時の中でプッチは動かない。

「1秒……。」

 止まった時の中で『ギロリ』とプッチの目が銛の方を向く。

「!!」

 そして時が動き出した。

 『ウシァァァァァ』

「うおおおおおおおおおおおおお」

 プッチを貫くはずだった銛はすんでのところでかわされ、プッチの後方へと飛んでいく。

「銛がはずれた………停止した時の中を………。」

「あ…あいつ、無事だぞ。扉を開けてる、中に乗り込もうとしてるように見える……。」

「スペースシャトルが宙に浮いてるぞォォーーーーーッ!神父が展示用シャトルに乗り込んだァーーーーッ」

「銛をかわしたのか?!……だがどうやって……」

「あいつ……ただ逃げようとしているだけじゃあない…まさか……あいつ…ヤツに与えてはならない何かを知ったんじゃあ…?!あいつの能力を完成させる条件を……」

 しかし徐倫達の予感とは裏腹にプッチは焦っていた。

「な、なぜだッ!今わたしは完璧な位置に来ているはずッなのになぜだなぜ我が『C-MOON』が完成されないのだッ!」

「アナスイだッ!シャトルの外壁に既にのってるぞォッ」

「引きずり出せッ!『ダイバー・ダウン』」

「ぬぐあああ!」

 プッチの体が『ダイバー・ダウン』によって空中に投げ出される。

「そこだなッ捕らえたぞプッチ!」

 徐倫の『ストーン・フリー』が糸状になりプッチを捕らえる。

「なぜッ!なぜなんだッ!主はわたしを選んだはずなのだッ!なのになぜだァァァ!」

 承太郎と徐倫が顔を見合わせる。

「この辺り?」

「そう、そこだ。」

「「ここが一番、拳を叩き込みやすい角度ッ!!」」

 『『オラオラオラオラオラ、オラァッ!』』

『スタープラチナ』と『ストーン・フリー』の鉄拳が容赦なくプッチの全身に叩き込まれる。

「ぐおあああああああ!!!」

 ラッシュの勢いによって吹き飛ばされたプッチは痛みのショックでピクリとも動かなくなっていた。それを見たアナスイがすぐさまプッチに駆け寄る。

「こいつ、既に死んでいる…。きっと二人のラッシュに耐えきれなかったんだ。だが、だがこれは……。」

「おねえちゃん達の勝ちだッ!プッチに打ち勝ったんだ!」

「やったな徐倫!ヤツの野望を阻止したんだッ!これで晴れて自由の身ってことだよ!」

 浮かれる三人を前に徐倫は浮かない顔をしていた。

「なんというか…呆気なさ過ぎるわ……あいつは最後に何をしようとしていたのかしら…『何も起こらなかった』なんてことがあるのかしら…」

 徐倫の表情に気付いた承太郎が声を掛ける。

「今分かることは、徐倫。ヤツが死んだという事実だ。これが分かっているだけでとりあえずは一件落着としておこう。詳しいことは追追分かる。」

 そう、後に一行は、いや全人類が思い知ることになる。この時起きた異変を…

 プッチが『天国の時』の位置に到達した瞬間、たしかにある出来事が起こった。それは『スタンドの発現』であった。それも地球規模のもので、地球上の人口の三分の二がスタンド使いとなっていた。

 

 次第に人々は自身に身についたものを理解し始めた。そしてそれは様々なものに利用され始めた。あるものは人を助け、あるものは犯罪に手を染め、そしてある国々は戦争に使うようになった。

 

 スタンドを用いた戦争は従来のものとは比べ物にならないほど熾烈なものであった。スタンドに関する国際法律が定められた頃には、戦争の多かった紛争地域だけでなく、それまで先進国と呼ばれていた国々もまともな経済活動が行えなくなっていた。唯一被害が少なかったのは日本であった。理由は、ご存知の通り日本は『自分からは戦争を仕掛けない』というのが原則となっているためあまり国内での戦闘が行われなかったからである。

 

 そのため比較的都市が無事であった東北などでスタンド使いの研究者によるスタンドの研究が始まり、教育機関ではそれによって分かった正しいスタンドの使い方やスタンドの能力のことなど様々な教育がなされた。

 

 そしてその激動の時代から約250年程が経ち、世界を脅かすほどの悪意が消えたのに呼応するかのようにジョースターの血統は途絶えてしまった。さらに世界各地ではボロボロになった街の再建が進んでいた。

 

 これはそんなスタンドが恒常化した世界で繰り広げられる、とあるスタンド使いの青年の数奇な日常冒険譚である。

 

   【ピエロの青年】

 

 日本国、運内町(はこないちょう)。ここは日本有数の「幽波紋関連技術高校」の多さを誇る町である。

 

 車通りの少ない閑静な住宅街を親子が歩いていた。しばらくすると子供が転んでしまい、膝を擦りむいたようで泣きじゃくっていた。子供の横では彼のスタンドが彼と同じポーズをとっていた。

「やぁ少年、風船は好きかな。それも犬やうさぎみたいな形をしたやつなんだけど。」

 そう言うとパリッとした制服を羽織り、中にパーカーを着た高校生らしい青年が両手を合わせ、離すとその手の中から犬やうさぎ、花の形をしたバルーンアートが順々に出てきた。

「うわぁすごい!これお兄ちゃんの力で出してるの?」

「そう、これは俺のスタンドで出来てるんだ。面白いだろ?」

「うん!ピエロの人みたいで面白かったよ!」

「うちの子がごめんなさいね。その新しい制服、今日から高校生の子かしら。」

「えぇそうなんです。これから入学式で……、ってやっべぇ開始の時間までもうギリギリだ!もう転んでも泣くなよ少年、またな!」

 そう言うと青年は自分がやってきた方向に走り出した。

「あの子、うちの子を泣き止ませるためにわざわざ寄り道してくれたのね。ほらちゃんとお礼言いなさい。」

「ありがとうお兄ちゃん!転んだ時は風船思い出すね!」

 それを聞き振り返って笑顔を向けてから青年は角を曲がり見えなくなってしまった。

 

   【曇りのち雨】

 

「危ねぇ…ギリギリ間に合った…。」

 息を整えられないまま受付に向かうと受付の体育教師が片付けをしようとしているところだった。

「あ!ちょっと待ってください!俺も今日入学式に出るんで来たんです!生徒名簿に載ってると思うんで確認して貰えませんか?」

「ん?あ〜と君は…あぁまだ来てなかった新入生徒は君だったのか。まだ来ていなかった生徒は1人、名前は『鮗柊吾』(このしろ とうご)君だね。」

「はい、そうっす。」

「君は一年C組、出席番号は十三番だね。もうあと二分くらいで始まるから、入学式会場の体育館の自分の席に着いておきなさい。」

「すみません、ありがとうございます!」

 そう言うと柊吾は体育館に向かってまた走っていった。

「元気な生徒が多くて助かるな。今年は不良が少ないといいんだがな。」

 『ピリリリ、ピリリリ』と体育教師の持っている電話が鳴った。

「はい、もしもし加賀原(かがはら)ですけど、はい、はい、え?体育館裏に不良がたむろしてる?分かりました、今向かいます。」

『鮗君といったか、あの生徒、不良に絡まれてなければいいんだが…。』

 加賀原のこの祈りとも言える心の声はその数分後に裏切られることになる。

 視点は切り替わり、柊吾は体育館前に着いていた。

「ふぅ…またギリギリか…今日はツキがねぇな…。」

「へぇそうかい、ツキがないのかお前。じゃあ今日の入学式という日に俺たちにボコされて有り金全部ここに置いて逃げてくってのもよぉ、ツキがなかったってことで許してくれるよなぁ?」

 柊吾が顔を上げると『ごろつき』という単語が見事なまでに当てはまる生徒が三人、体育館の裏から現れた。

「ん?なんだあんたら。見た感じ同級生ってよりかは先輩って感じだけど。」

「その通りだが、先輩に向かって随分な口聞くじゃあねぇの。そうだよ俺たちゃ三年だよ。というわけで俺たちのスタンドでボコされたくなかったら金置いてけ。」

「いやぁそれは無理なお願いっすね、これ終わったら中学の時のダチと昼飯食いに行く約束してるんで。」

「俺たち先輩の"お願い"が聞けねぇってのかよ。なぁ?」

「それならよ、ボコボコにされても文句は言えねぇわな。」

 そういうと二人のごろつきが柊吾に向かい、スタンド攻撃を仕掛けてきた。

 二体のスタンドはどちらも人型を取っており、感情の伺えない無表情なロボットのような顔をしていた。

『どちらも近距離パワー型っぽいな。』

 そう心の中で言うと

「あんまり登校初日から問題は起こしたくないんすけど。」

 と言いながらスタンドを使うことなく、柊吾は攻撃をかわし後退していく。少し下がったところでごろつきの攻撃がピタリと止んだ。

「この辺までが射程距離の限界ってとこすかね。それならこれで。」

 今朝の少年の時のように柊吾が両手を合わせ、離すと同時にそこから拳銃が現れた。その瞬間不良たちの顔が青ざめる。

「ひぇぇ!銃なんて出しやがったこいつ!やべぇよどうする!」

「バカかお前、ただの高校生が本物の銃なんて持ってる訳ねぇだ…」

 『バキューン!』と、西部劇やスパイ映画さながらの銃声で不良たちの会話は遮られた。

 着弾点はちょうど弾丸の形にへこんでいた。

「じゃあそういうことなんで先輩方、とりあえずは一発ずつくらいは入れときますね。」

「やべぇよこいつ!に、逃げるぞ!」

「カツアゲ相手に本物の銃なんて、こいつまじにイカレちまってるんじゃねぇのか?!」

 三人のうち二人が背を向けて逃げ出す。柊吾はその二人の頭を的確に撃ち抜く。

「こ、こいつ二人を殺りやがった!たかがカツアゲしようとしたくらいで殺すこたぁねぇだろ!」

 あまりの出来事に恐怖すらも忘れたのか、凄むごろつきの横にはごろつき二人の死体が出来上がっている"はず"だった。倒れている二人の、撃ち抜かれたはずの頭からは血の一滴も流れてはいなかった。

「いやいやさすがにこんなことで殺すわけないじゃないすか。エアガンっすよエアガン。まぁ人を気絶させられるくらいには威力上げてるんすけど。」

 その事実に安堵したからか、はたまた先程の恐怖が遅れてやってきたからか、残ったごろつきは体の力が抜けたらしくその場に座り込んでいた。しかしハッとしたかのように喋りだした。

「こ、今回のことはすまなかった!もう二度とお前の前には現れねぇよ!だからもう勘弁してくれ!」

「んー、まぁそうっすね。こればっかりは俺もちょいとやりすぎかと思ってたんで。次で最後っす。」

 はぁ、とごろつきが安堵のため息をつく。しかし自分が直面した事実に気づき表情を強ばらせる。

「つ、次で最後…って…。」

「そう、あんたの番ってことっすよ。」

「う、うわぁぁぁ!」

 座り込むごろつきの眉間にエアガンを押し付ける。

「先輩だかなんだか知らねぇが覚えときな。俺は鮗柊吾、そして俺のスタンドの名は『ブレイブ・トゥ・トゥモロー』だ!」

 柊吾の口上を聞き終えると同時にごろつきはエアガンに撃たれることなく気絶してしまった。

「はぁ…やっぱり絡まれてたか鮗君…。」

「あ、さっきの先生。さっきはありがとうございました。あと道案内ついでにこれの掃除お願い出来ませんかね。」

「ん?これって言うのはまさか、君一人で三人を相手取って、しかも勝ってしまったと言うのか?」

「ま、まぁ実質二人だったかなぁ、なんて……いや、ほんっとにすんません!じゃあ俺は遅れあそばせながら入学式に行ってくるんで!じゃあ!」

「お、おい、鮗君!はぁ…。とりあえずは保健室に連れて行くか…。」

 柊吾の登校初日はこうして幕を閉じ、平和な普通の学校生活が幕を開ける、はずだった。

 

 

 入学式の翌日の体育館裏……

「すんません浩之さん、幸紀さん!あ、あいつガチにやべぇやつだったんすよ!」

「そうなんすよ!俺たちじゃどうにもならなくて!」

 浩之(ひろゆき)、幸紀(ゆきのり)と呼ばれた二人はごろつき三人を見つめ何も言葉を発さない。

「あいつのスタンド、拳銃みたいな見た目してたんすよ、最初地面に向けて撃った時は本物の拳銃の威力だったのに…。」

「そうなんすよ!俺たちがくらった時は中身いじったエアガンみたいな、殺傷能力まではない威力に変わってたんすよ!」

 そこで初めて二人は表情を少し変えた。

「んで、てめぇらはそのただの拳銃の威力をいじれるだけの能力に負けたわけか?あぁ?」

 浩之が不良たちを罵る。

「まぁまぁ落ち着けって兄さん。それで?それがその君たちをボコした鮗柊吾とかって奴の能力の全容なのか?それを把握してるから僕達に報告してきたんだよな?」

 それを聞いた幸紀は浩之をなだめ、不良たちに確認をとる。

「そ、それは………分かりません…。」

「なるほどね、つまり君たちはなんの成果も出せなかったことを、わざわざ、僕達に報告しに来たわけだ。」

「「「すんません!」」」

 幸紀の氷のように冷たい威圧感に圧倒されたごろつき三人は反射的に謝っていた。

「まぁいいや。兄さん、その男どうする?まぁ答えは決まってるんだろうけど。」

「当たり前だろ、今日のうちにでもそいつをボコしに行くんだよ。善は急げって言うだろ?」

「そうだね、僕達二人なら無敵だ。なにせ僕らは二人で一人、ここらじゃ"あの方"を除いて誰にも負けやしない、双子のスタンド使い鷹野兄弟なんだから。」

「『ブレイブ・トゥ・トゥモロー』か、楽しみだぜ。鮗柊吾…貴様はきっと『あの方』の邪魔になる…。それにやられっぱなしじゃむかっ腹がたつしなぁ、かならず消すぜ。」

 

 こうして柊吾の学校生活は波乱の展開を迎えたのだった。

 

   【鷹野兄弟が来る】

 

「やっべぇなこれ…かなりまずいぞ…これは…。」

 深刻な表情をして柊吾は自分の机の上を見つめていた。まるでこの世の終わりとでも言うかのような独り言をつぶやきながら。

 すると隣の席の男子が、

「もしかして君その宿題解けないの?僕が教えようか?」

 と話しかけてきた。それを聞いた柊吾の顔がパッと明るくなる。

「まじか!ありがてぇ、えーとあんた名前なんて言ったっけな…桂木、桂木…。」

「蒼太ね。まぁ改めて、僕は桂木蒼太(かつらぎ そうた)。僕はスタンドを持ってないからスタンドの紹介とかは出来ないけど、仲良くしてくれると嬉しいな。」

「おう、よろしくな。というか今どきこの世代で珍しいな、スタンドを持ってないなんてよ。もしかして両親とも非スタンド使いなのか?。」

「いや違うよ、父さんは今は死んじゃったけどスタンドを森林探検家の仕事に活かしてたし、母さんはスタンドを家事に使ったりしてる。正直君たちみたいな人が羨ましいよ。」

「なんか、すまなかったな。まずいこと聞いちまったな。」

「いいんだよ、別にコンプレックスだとかストレスだとかそういう訳じゃあないからね。ところで僕が教えるだけじゃ割に合わないから、鮗君のことも教えて欲しいな。」

「もちろんだ。俺は鮗柊吾、スタンドの名前は『ブレイブ・トゥ・トゥモロー』。能力は、まぁ追々話すわ。」

「なにか話したくない理由でもあるのかい?それとも今度の授業からのスタンドの実技で有利になるから?」

「まぁそんなとこだな。」

『奴らにつけ狙われてるから、なんて言えるわきゃねぇわな…。』

 柊吾が目線を少し教室のドアの方にやる。そこには昨日のごろつき達が様子を伺っていた。しかし柊吾に見られていることに気がつくとすぐにどこかへ走り去って行ってしまった。

「どうかしたの、鮗君?」

「ん?あぁなんでもねぇよ。あとよ、その苗字とくん呼びやめてくれねぇか、柊吾って呼んでくれ。」

「分かったよ、柊吾。そういえば早速次の授業はスタンドの実技、能力測定だよ。体育館でやるって言うから早く行かないと。」

「おう、そうだな。」

 二人が体育館に着くとそこにはサンドバッグや据え置き型のスピードガン、お坊さんが座禅を組むようなお座敷までもが所狭しと並んでいた。

「すごいね、さすがは日本有数のスタンド関連高校。ステータス測定が本格的だ。ほらあのサンドバッグは破壊力、スピードガンはその名の通りスピード、お座敷のところは多分持久力だよ。きっとあそこに座ってスタンドを発現させ続けるんだ。あ、あの人ちょうどスタンドを出してる最中じゃあないか!」

 そう言う桂木の目はヒーローショーを観る子供のようにキラキラと輝いていた。しかしそれを聞いた柊吾は少しの違和感を感じた。

「ん、ちょっと待て今お前スタンドが見えてるみたいな言い方しなかったか?」

 桂木は柊吾の言葉が耳に入っていないようで設備の方ばかり見ている。

「ごめん、何か言った?聞いてなかったや。」

「いや、なんでもねぇよ気にすんな。」

「それならいいんだけど。というか柊吾も測りに行きなよ、僕もついて行ってあげるからさ。」

「お前さては俺のスタンドがどんなもんか知りたいだけだろ。」

「あ、バレた?まぁでも別にいいじゃないの、僕達友達なんだからさ!」

「あーもうわかったよ。行けばいいんだろ行けば。」

 柊吾達が測定に向かおうと体育館の中央程まで来た瞬間、

「おいお前ら外へ出ろ!鷹野さん方のお通りだ!」

「出ねぇやつはまとめてボコっちまうぞ!」

 と怒号が響いた。声のした方を見るとやはりと言うべきか、昨日のごろつき三人がそこにいた。しかし教室の時と体育館裏の時とは明確に違うことが一つだけあった。

 三人の後ろに髪色と片耳につけたピアスの位置以外ほとんど違いのない二人組がいたのだ。

 その場にいる全員の視線が彼らの方を向くと

「『The・highlows』、爆ぜろ。」

 と二人組が不気味なほどぴったりとタイミングを揃えて言う。その瞬間『ドガァァン!』という鼓膜が張り裂けるかのような音とともに小規模の爆発が起きた。

「きゃあああ!」

「やべぇなんか爆発したぞ!」

「早く逃げろ!」

「おい押すなよ!順番に出ればいいだろうがよ!」

 パニックになった大勢の生徒がその場から逃げ出そうと体育館の出口に群がる。

「ね、ねぇ柊吾。僕らも逃げようよ。アイツら何をする気かは分からないけどここにいたら危険なのは確かだよ!」

 桂木が柊吾の方を見つめ不安そうに言う。

「いやダメだ。奴ら昨日の復讐に自分たちの親分を連れて来たんだ。既に無関係の人も巻き込んでしまっている。奴らはここで仕留める。だからとりあえずお前だけで逃げろ。」

 柊吾の言葉を聞いた桂木は少し戸惑った表情をしたが、すぐに意を決した顔になった。

「それなら僕も残るよ。僕に出来ることがあるとは思えないけど、それでもここで逃げちゃだめな気がするんだ!」

「かっこいいこと言うじゃあねぇか桂木。わかった、お前もここにいてくれ。だがあの二人組のスタンドがどんなものか分からない以上迂闊に近ずいたりは出来ねぇな。とりあえず俺の後ろに下がっててくれ。」

「うん、分かったよ。頑張って!」

「おいおいおいおい?!お前らいつまでくっちゃべってんだ?せっかくこっちから出向いてやったってのによぉ。人を待たせるたぁどういう事だ?!」

 痺れを切らした二人組の片方が怒鳴りたてる。

「いつ俺が先輩方を呼んだんすか。特に用なんてないっすよ。」

「いいやそれは違うな。君は僕たちの使いっ走りをボコした。これは喧嘩を売られたととって問題ないだろう。つまるところ君の行動が僕たちを呼び寄せたのさ。」

「そりゃあ随分なこじつけっすね。そもそもの話、けしかけてきたのはその使いっ走りなんすけど。」

 『ドゴォォォン!!!』と最初の時よりも大きな爆発が、双子と柊吾の間に起こった。

「うるせぇなぁ!その押し問答はどうだっていいんだよ、おらさっさと出せよ。鮗柊吾、お前の『ブレイブ・トゥ・トゥモロー』をよぉ。」

「君のスタンドは拳銃のビジョン、そしてその拳銃の威力を操作できる能力だと聞いた。」

「可哀想なやつだよな、こいつも。そんな能力じゃあ俺ら双子には絶対に適わねぇ。これは絶対だ、お前のスタンドは俺たちの爆風の前に敗れる。」

「あのーさっきから俺のスタンド、スタンドって何か勘違いしてやいませんかね。俺のスタンドが拳銃のビジョンだって?そいつはどうすかねぇ!」

 そう言うと同時に柊吾が二人に向かって真正面から突っ走り出す。

「はははは!おいおいこいつバカなのか?俺たちに向かって、スタンドも出さずに突っ込んできやがったぞ!」

「ダメだ柊吾!そいつらのスタンド、きっと距離だ!そいつらのスタンドの爆発力には距離が関係している!近づいちゃあダメなんだ!」

 桂木がそう言った時には柊吾は既に双子から5mほどの距離まで近づいていた。

「いいや、もう遅いね!喰らわせろ「The・highlows」!」

 『ドゴォォォン!!!』という轟音とともに今までとは比べ物にならない爆発が起きた。

「柊吾ぉぉ!くそッ!…柊吾が…柊吾が!」

「ふっ、この距離でなら完全に爆死したな。どれ、そろそろ煙も晴れてくるかな。」

 しかし巻き起こった硝煙の中からうっすらと見えたのは焼死体でも、吹き飛んだ肉片でもなく、依然走ってこちらへ向かってくる柊吾の姿だった。

「なぜだッ!なぜ爆死してねぇんだ!」

「違う兄さん!こいつのスタンド、拳銃なんかじゃあなかった!盾だ、機動隊が持っているような盾を構えている!」

 柊吾の前には幸紀の言うように、柊吾をすっぽりと覆う大きさの盾が出現していた。そしてその時既に柊吾は双子から2mも無い距離にきていた。

「…いくら自分の能力でも…ここまで近づかれたらよ…自分達も巻き込んじまってさすがに爆破出来ないよなぁ?」

「な、なるほど!近づけば近づくほど威力が高くなるというなら逆にもっと近づけばいいんだ!柊吾の発想の勝利だ!」

「ということで仕返し、させてもらうぜ。」

 いつの間にか柊吾の持っていた盾は消え、柊吾のそばには所々に機械らしいパーツが見えるアンドロイドのような人型のスタンドが立っていた。

 『セアァ!』

 という掛け声とともにそのスタンドが浩之を一発殴った。殴られた浩之は2mほど吹き飛んだ。

「兄さん!」

「よそ見なんてよ、先輩。してる暇ないんじゃあないすか?……『ブレイブ・トゥ・トゥモロー』!」

『セアァァァァ!!』

 『ブレイブ・トゥ・トゥモロー』のラッシュが幸紀に炸裂する。

「ぐあああ!!」

 そしてまた幸紀も浩之の所まで吹き飛ばされる。

「に、兄さん…ここからなら…やれる…爆破が出来るよ、だから兄さん…。」

 幸紀が、まだ傷が浅く立ち上がった浩之に手を伸ばす。しかし浩之はその手を振り払った。

「知るかよボケが!お前みてぇなウスノロと能力を分け合ってなかったらなぁ、俺はあいつをボコして、『あの方』に認められていたんだよ!俺一人でなぁ!」

 それを聞いた幸紀が絶望した表情を浮かべる。

「なるほど…負けた瞬間弟に責任転嫁……か、とんだクソ野郎だな…。」

「ハッ……。」

 声のした方を見ると浩之のすぐ後ろに柊吾が立っていた。その柊吾の表情は怒りや恨みとかではなく哀れみの目をしていた。

「………お前の…負けだ…。」

『セェェアァァァァァァァ!!!』

 声を出す間もなく浩之は吹き飛び、体育館の壁に打ちつけられ気絶した。

「お前は『勇気』を捨てたんだ。兄弟二人、力を合わせて戦うという『勇気』を…。人間の素晴らしさは『勇気』の素晴らしさだ。それを失えばその人は何にも打ち勝つことなんて出来やしないんだ…。」

 そう言い終わると柊吾はフラフラと体育館の外へと歩き出した。見かねた桂木が柊吾に肩を貸してともに歩き出す。

「そういえばさ、結局君の能力ってなんだったんだ?拳銃になったり、盾になったり、さっきは人型のビジョンにもなっていた。それに拳銃の時は威力を変えたりしていたっていうじゃあないか。」

「あぁ、俺のスタンド能力は『再現』だよ。俺が分解したりぶち壊したりしたことのあるものを再現出来るんだ。ただあまり知識の無いものは再現率が低くなっちまうんだ。それに自分の体積よりもでかいものだったり、あまりにも精密過ぎるもの、例えばバイクとかは再現出来ねぇ。拳銃の時は威力を変えたんじゃあなくて内部機構だけをエアガンに変えたんだよ。経験上銃に詳しくねぇやつはそれで騙せるからな。」

「じゃあさっきの人型は何さ、能力が再現なら元は誰かの能力なのかい?」

「いやそうじゃあない、あの人型だけは物心がついた時から出せたんだ。まだ何も分解したり、ぶち壊したりしてねぇのにな。多分あれは俺の精神を具現化、つまり精神の形を再現してるんだ。」

「なるほどねぇ…。なんか今まであった中で一番初見で戸惑う能力かもな。」

「ははは、違いねぇな。今まで誰にも見破られたことがなかったからな。」

 命のやり取りをした後とは思えないほど他愛のない会話をしながら、ボロボロの柊吾を連れて、桂木は保健室に向かって歩いていった。




今回登場したスタンドのステータス&概要

スタンド名
→ブレイブ・トゥ・トゥモロー
本体
→鮗 柊吾

スタンド能力
→本体の知っている形、威力に自由に変えることが出来るスタンド。見た目は拳銃、威力は戦車砲などということも可能。形や威力は模写する物の構造や理論を詳しく知るほど精密度は上がる。さらに近距離での戦闘時には人型になり、近距離パワー型となる。ラッシュの掛け声は「セアァ!」

・破壊力 →C(変形時)orA(近距離戦闘時)
・スピード →B
・射程距離 →A(大体6~8m)orD(大体3m)
・持続力 →C
・精密動作性→A
・成長性 →B

スタンド名
→The・highlows(ザ・ハイロウズ)
本体
→鷹野 浩之&鷹野 幸紀

能力
→双子のスタンド使い、鷹野兄弟のスタンド。片方が人型の半分のスタンドを持っており2人揃うと真価を発揮する。兄、浩之は周囲の熱を操る能力、弟、幸紀は周囲の冷気を操る能力。2人の能力を同時に使用すると、温度の変動があまりにも大きすぎるため、爆発が起きる。

破壊力→B
スピード→A
射程距離→B
持続力→C
精密動作性→A
成長性→C


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2話

前回のあらすじ

 双子のスタンド使い鷹野兄弟に逆恨みされ、激しい戦闘の末打ち勝った柊吾は負った傷を手当するために保健室に向かった。



【友に会いに行こう】

 

「保健室…あ、ここだ。」

 

 『ガラガラ』と扉を開けると、身長が170cmくらいはありそうなスタイルの良い女性がいた。

 『綺麗な人だなぁ。』と思い、桂木が見惚れていると

 

「あら柊吾君じゃない、どうしたのその傷。」

 と話しかけてきた。どうやら柊吾とは知り合いのようだった。

「げっ、今日弥生(やよい)先生が当番の日だったのか…こりゃ家帰った方がいいかもな…。」

「この先生と知り合いなの?柊吾。」

「あぁ、中学の時も保健室の先生この人だったんだ。それにこの人俺の親戚でさ、昔から知り合いなんだよ。この人のスタンドが、なぁ…。」

「私のスタンド『The・Cure』に何か問題でもあるのかしら。」

「問題大ありだよ!『重症を軽傷に、軽傷を重症』に出来る能力、何度それでいたずらされたことか!まじでなんで先生なんかになれたのかわかんねぇ!」

「あら、随分と酷い言い草ね。それと、もう傷治したわよ。良かったわね限りなく重症に近い軽傷で。」

「えっ?」

 

 驚いて桂木が柊吾の方を見るとたしかに柊吾の傷は完全に癒えていた。

 

「こんな生傷あんまり作ってくるんじゃあないわよ?柊吾、あなたまた面倒事に巻き込まれていたりしないわよね?今日体育館が爆発するなんて騒動があったらしいじゃないの。」

「…面倒事に巻き込まれている、というのは否めないんだよな。双子のスタンド使いの言っていた『あの方』っていうのがずっと気になってる。」

 それは柊吾との戦闘の際に浩之が弟の幸紀に向けて発した言葉だった。

「それで、さっきのことなんだけどよ桂木。」

 保健室を出てから少しして柊吾が話を切り出した。

「ん?さっきの『あの方』ってやつのこと?」

「あぁ、実はこの後俺の仲間と飯食う約束しててよ。そいつらとその事について話したい、お前も一緒に来てくれ。」

「もちろんだよ、僕にできることがあるならなんでもするさ。」

「んじゃちょっとそいつらに連絡するから待っててくれ。」

 

 『ティロン』とメールアプリの通知が、ファミレスでなにやら話し込んでいる二人組の片方のスマホから鳴る。

 

「なあ、柊吾遅くねぇか?珍しいよなぁ、あいつが待ち合わせに遅れるなんてよ。」

「俺らは普段もっと遅れてるんだから文句言えねぇだろうがよ。」

「でもあいつ巻き込まれ体質だからまたなんかに巻き込まれて死にかけてんじゃあないの?」

「そりゃそうかもだけどよって、あ、柊吾からメール来てたわ。なんかケンカに巻き込まれて弥生先生に治してもらってたから遅れたんだとよ。今から向かうってさ。」

「ほら言ったそばから、あいつほんとにめんどくさい体質だな。」

「ん?なんか高校で知り合ったやつも連れて来るってさ。」

「え、誰それ。あんまり知らない人と話したくないんだけど。」

「あいつコミュニケーション能力だけは無駄にあるからな…。まぁもうすぐ着くらしいし、先になんか食って待ってようぜ。」

 

 メールが届いてから10数分後、柊吾と桂木がファミレスに到着した。

 

「すまんすまん、待たせたな。」

「遅せぇよ柊吾、もう待ち合わせの時間からだいぶ経ってんぞ。」

「仕方ねぇだろうが、輩に逆恨みされてケンカしてたんだから。」

 

 くだらない言い争いをしながら柊吾が一人を奥に座らせ、向かいあわせの奥の席に座る。

 すると向こう側にいたもう1人も柊吾達の方に席を移した。

 いつの間にか向かいあわせの席の片側に3人が座り、桂木が残った片側に1人で座らなくてはならないような形になっていた。

 

 その様子を見た桂木が

 『中学からの仲っていうし、さすがに割って入りずらいな…』

 と思っていると、

「あんたもとりあえず座りなよ。」

 

 桂木の様子を見兼ねた柊吾の仲間と言われていた一人が声をかけた。

 

「あ、すみませんありがとうございます。」

「おいおい、敬語なんて使わなくていいって。友達の友達は友達って言うだろ?俺は山之瀬 優大(やまのせ ゆうだい)だ、これからよろしくな。」

 

そう言った優大は身長160cmくらいと男子高校生にしては少し小柄だったがその割にはガタイがよく筋肉質な感じだった。

 

「そんでこっちの柊吾と言い争ってるこいつが御堂 紫音(みどう しおん)な。」

「あ、どうも…。」

 

今の今まで柊吾と言い合っていた紫音だったが、いきなりしゅんとなって挨拶する。

 

「すまんな、こいつコミュ症なのよ。」

「そうそう、意気地無しってやつなんだよこいつ。」

「んだとお前ら、黙って聞いてりゃ自己紹介くらいは自分で出来たっつうの!」

「えーと、じゃあ僕も自己紹介を。僕は桂木 蒼太です、スタンド使いではありません。でもなにか手伝えたらと思って柊吾について来ました。」

「あー、それなら俺達も別にスタンド見せたりしなくていいか、見えねぇもん出しても仕方ねぇしな。」

 トントンと柊吾が優大の肩を叩く、

「いやそれがこいつスタンド見えてるっぽいのよ。ほらこいつの目見てみ。」

 3人が桂木の方に目を向けると

『この人達のスタンドは一体どんななんだろう』 

 という心の声が聞こえてくるほどキラキラとした目で優大と紫音の方を見ている桂木がいた。

「なんというか、この純粋っつうか、遊園地の乗り物見てる子供みてぇな目で見られっと断れねぇんだよ…。俺もそのせいでスタンドの正体明かしちまったし…。」

「まじで言ってんのかお前、ありゃ企業秘密みたいなもんだったろ。まだ身内になるかもわからんやつにバラしちまってどうすんだよ。」

「でもなんか俺柊吾の気持ちわかる気がするぞ、圧力みてぇなもんがあるなこいつは。」

 こそこそと3人が話していると、もう待ちきれないとでも言うかのように桂木が

「あの、会ってすぐで申し訳ないんですけどお二人のスタンドも見せて貰えませんか…?僕スタンドが大好きで、俗っぽい言い方ですけど目がないんです…。」

 と言い出した。

「「はぁ…。」」

 と紫音と優大が顔を見合わせてため息をつく。

「まぁじゃあ俺から説明するか。」

 

と優大がスタンドを出現させる。そのスタンドはボクサーの様な見た目をしており、握られた拳にはメリケンサックのような突起がついていた。

 

「俺のスタンドの名前は『SPEED me up』だ。能力は、名前の通りっちゃ名前の通りなんだが。1発殴ってから大体0.5秒以内に次の1発を当てられたら最初の1発よりも速度が上がるんだよ。どのくらいまで速くなるのか気になって1度だけ試したことがあるが多分上限はない。スピードはAだが破壊力だけで言えばBってとこだな。まぁこんな感じだ。」

 

優大が話し終えたのを見て紫音もスタンドを出現させる。中世の騎士のような鎧を着込んだ下半身が白馬の人型の周りに6枚の盾がゆっくりと回りながら浮かんでいるスタンドであった。

 

「じゃあ次は俺か。スタンドの名前は『エターナル・ナイト』。見ての通り結構かっこいい。こいつの周りに浮かんでる盾は物理攻撃だろうがスタンド攻撃だろうがなんであろうと通さない絶対防御の盾なんだけど……これかっこ悪いからあんまり言いたくないんだよな…。」

 

そう言って黙ってしまった紫音を見兼ねて柊吾が声をかける。

 

「いや変なプライドなんて捨てて言っちまえよ。その方が楽なこともあるだろ?」

「でもよ…。俺の心が折れる度に1枚割れるなんてダサ過ぎるじゃあねぇか…あっ、言っちまった…。」

 

チラッと申し訳なさそうな顔をして紫音が桂木の方を見る。

 

 そこにはやはりキラキラと輝く目をした桂木の顔があった。

「すごい…やっぱりスタンドは絶対的な強さじゃあなくって何かしらの弱点があるんだ…。僕にスタンドがあったらなぁ〜もっと色々別な目線で見れただろうに…。」

「すごい?俺のスタンドが?そんなこと言われたの初めてだな…。」

「まぁこいつスタンドに関しては変態的だからな。持ってない分、考察とか色々とお前のスタンドみたいなやつのが捗るんだろうよ。」

「なぁ、和んでるとこ悪いんだけどよ柊吾。お前なんか話があって俺達を呼んだんだろ?」

 本来の目的からズレていた会話を優大がレールの上に戻す。

「ん、あぁすまんすまん、ついな。もちろん俺達の今までとこれからに関わることだ。あの時の『あの方』ってのが何なのか分かるかもしれねぇ。」

 柊吾の放った言葉を聞いた2人の表情が一変して真剣なものになる。

「……まじか。あれはあれで終わりにしようとかって思ってた所だったのに…。」

「まさか今更になって、って感じだな…。」

「あぁ、俺もそう思った。まさか進学した全く無関係の所であのワードを聞くなんて思っても見なかった。だが奴が関係しているのは確実だ。」

「そうだな…。」

「あのー柊吾?その『あの時』ってのは何のことなの?僕話についていけないんだけど。」

 先程までスタンドの考察に夢中だった桂木が純粋な疑問をぶつける。

「あぁそうだよな、まずはその説明からだな。あの時俺らはまだ中学1年だった。」

 そう言って柊吾は当時のことを話し始めた。

 

  【宿敵は正体不明】

 

「俺達3人は中学の時に知り合ったんだが、3人で小遣い稼ぎくらいの感覚で何でも屋みたいなことをやってたのよ。最初は捜し物くらいの小さい依頼ばっかやってたんだけどよ、ちょっと物足りねぇよなって話になってちょいとばかり荒々しいこともやるようになってたのよ。」

「まぁ多分あん時は調子乗ってたんだろうな…。」

 優大がしみじみとした感じで言う。

「不良に絡まれたから代わりに喧嘩してくれとかそういう感じのやつな。そんなことをするようになってから少しして、1年の冬休みの時だったか。また同じような依頼が来て、まぁ依頼自体は問題なくこなしたんだ。な?」

 

柊吾が念を押すように紫音に確認をとる。

 

「そうだな。でも依頼主に報酬を貰いに行った時に問題が起きたんだよ。」

「そう、受け渡しに指定された場所に現れたのは人型のスタンドだけだったんだ。それもそいつは俺達を見つけるやいなや速攻で襲いかかってきやがった。そん時紫音は待ち合わせに遅れてて後から来たから良かったが、奴の不意打ちを受けた俺と優大は触れられた部分が逆向きにねじ曲がった状態になっちまって動けなかった…。」

「ありゃ相当な激痛だったな…。もう二度とあれは喰らいたくねぇな。」

「んでそいつが去り際に言ったんだよ。『あの方について知り得るかもしれないものは始末しなくてはならない。君たちはもう二度とあの方を追ってはならない。』ってな。」

「なるほどね、じゃあ今回の鷹野兄弟が言っていた『あの方』っていうのがその時のスタンドの本体と関係があるだろうってことだね?」

「そうなるな、だから紫音、優大。俺達はこれから奴の本体について探らなくてはならない。勿論あの時の雪辱を果たすためにだ。」

「あぁ、やられっぱなしじゃいられねぇしな。手掛かりが向こうからきたってんなら尚更だな。」

「そこでだ、桂木。お前はスタンドがないから戦えない。かといって俺たちとこうしてつるんだ時点で敵の標的になってるかもしれねぇ。だから俺たちとできるだけ行動を共にしてくれ。」

「うんもちろんだよ。柊吾ともせっかく仲良くなれたわけだし、御堂君や山之瀬君とも仲良くなりたいからね。」

「桂木、こいつらなら君付けなんてしなくていいぞ。そんな敬うような奴らじゃねぇからな。」

「分かった。よろしく御堂、優大。」

「よし!情報共有もしたし、今日はとりあえず解散!会計は紫音が持ってくれるってよ!」

「おい、そんなこと言ってないぞ!待て、出てくんじゃあねぇ!まじで払わなくちゃならねぇじゃねぇかよ!」

 

過去のことを話した時とは打って変わって、最後は和気あいあいとした雰囲気で顔合わせの場は終わり、各々の家の方向にバラバラに彼らは帰って行った。

 

 しかしそこには、共に帰る柊吾と桂木の後ろを付ける不穏な影があった。

 

  【レッド・サンダンス】

 

 情報共有が終わり、紫音、優大と別れた柊吾と桂木は帰路についていた。

 

「いやぁまさか同じアパート住んでるなんて知らなかったぜ。あんなボロ屋俺以外誰も住みたがらないと思ってたからな。」

「ボロ屋って、そのボロ屋に僕も住んでるんだけど?」

「冗談冗談、あの値段にしちゃいい場所だぜあそこは。借りれるだけありがたいってもんだ。」

「そうだね、今度からご飯作るのがめんどくさい時はそっちに転がりこもうかな。」

「え、お前ってそういうタイプなのか、以外だな…。もっとこう、『3食ちゃんと自炊します!』ってタイプかと思ったぜ。」

「いやいやそんな訳ないよ。」

 

他愛のない話をしていた2人が、元は家が立っていたであろう空き地に差し掛かったとき桂木が足を止めた。

 

「ん?どうした桂木、なんかあったか?」

「な、なんかさ、呻き声…?みたいのが聞こえた気がしたんだよ。ほらここの奥の方から…。」

 

そう言われて柊吾が耳を澄ますと

 

『うぅぅ………うぅ…』

 という苦しそうな男性の呻き声のようなものが微かに聞こえてきた。

「ほら!聞こえたよね?!きっと誰か倒れているんだよ、助けなくちゃ!」

「ちょっと待て。」

 

 声のする方に駆け出していこうとする桂木の前に柊吾が手を伸ばし止めさせる。

 

「どうしてさ、人が倒れていて助けを求めているのかもしれないだろう?」

「罠、かもしれねぇからだよ。さっきも言ったろ?俺達が昔やられたことを忘れなかったみたいに相手方だって俺達のことを狙っていないとも限らねぇ。だからこういうのはまず警戒するんだ。」

「たしかに、それもそうだ…。でも近寄って見ないことには本当に罠かも分からないよ。それにやっぱり無視してはいけないよ。これでもし明日のニュースにこの空き地で死体が見つかったなんてやってたら『僕のせいかも』なんて思わざるを得ないよ。」

「それもそうだが…。でもまぁそうだな。警戒だ、警戒は絶対に怠らねぇように近づくぞ。いいな?」

「分かった。よし行こう。」

 

そう言って、1歩、また1歩と声のする方に2人がゆっくりと近づいていく。

 そして声のする場所までたどり着いた時、そこにはうずくまって倒れているサラリーマンの姿があった。

 サラリーマンはちょうど柊吾の方を向いてうずくまっていた。

 

「やっぱりだ!帰るという選択肢を取らなくて良かった、大丈夫ですか?僕たちが分かりますか?」

 

安堵した表情をする桂木とは裏腹に、柊吾の顔は引きつっていた。

 

「どうしたの柊吾、人1人の命が助かるんだから。なんでそんな暗い顔をしてるんだよ。」

「いやよ、そ、そいつの右手やっぱりなんかおかしいよな…おかしい…普通ならこんなことありえねぇんだ…。」

「右手…?」

 

桂木がサラリーマンを動かし仰向けにすると、サラリーマンの腕が機械のようになっていたのだ。それもじわじわと機械の部分が広がっているように見えた。

 

「な、なんだこれはぁぁぁ!人の手が、機械になっている!それもゆっくりとその部分が広がっていっているように見えるぞ!」

「やはりだ…。やはり攻撃はもう既に始まっていた!警戒しろよ桂木、どっから何が来るか分からねぇ!」

「うん!な、なんてことだ…。さっき話を聞いた時に大変なことに巻き込まれそうだとは思っていたけれど、早速こんなことになるとは…。」

「あら、あなたついさっき足を踏み入れてしまったばかりなのね、可哀想に。」

 

柊吾でも、桂木でもない声が2人の背後からする。2人が振り返るとそこには2人の高校とは違う制服を着た女子高生が立っていた。

 

「なんだてめぇ、このおっさんの右手はてめぇがやったのか?さては『あの方』とか言ってるやつの差し金だな?!」

「うふふふ、えぇそうよ。そこのおじさんは私がやったのよ。私は宗宮 暁音(そうみや あきね)、スタンド名は『レッド・サンダンス』よ。能力はそこのおじさんを見ての通り、スタンドが触れた部分から徐々に相手を機械化させるのよ。」

「ずいぶんとペラペラと自分について喋るなぁ?自分語り大好きか?畜生が!」

 

そう言って柊吾はスタンドを人型にして出し宗宮に殴りかかろうと近づく。

 

「柊吾落ち着いて!警戒を怠るなって言ったのは君だろ?!」

 

 桂木が柊吾を制していると『ガバッ』と目にも止まらないスピードで宗宮が桂木に近づき、触れようとする。

 

「桂木危ねぇ!」

 

桂木が首に着けていたルービックキューブの形をしたネックレスを引っ張り避けさせる。

 間一髪で桂木は攻撃を避けたがネックレスの紐がちぎれ、宗宮の後方へと吹き飛んでしまった。

 

「お前のおかげで冷静になれたぜ桂木、とりあえずここは一旦退くぞ。あいつのスタンド、能力は『触れた相手を機械化』のはずだ。だとしたらさっきの高速移動はなんだ?得体が知れなさすぎる。」

「待って柊吾!今はダメだ!」

「どうしてだよ!これは完全に冷静な判断だろうがよ!」

「違うんだッ!さっき君が僕を引っ張った時に吹っ飛んでいったネックレス、あれは僕の父さんの形見なんだ!絶対に手放したくないッ!」

「まじかよ…これはちょいとばかり面倒なことになったな…。このハードモードのクリア条件は目の前の敵を避けつつ桂木の父さんの形見を回収か…こいつは相当にヘビーだな。」

「お喋りは終わりってことで良いかしら?!」

 

そう言いながら宗宮が一気に間合いを詰め、またしても桂木に触れようとする。それを柊吾が桂木を自身の後方に突き飛ばし宗宮から引き離す。

 

「さっきっから桂木ばっかり狙いやがってよォ、しつこいんだよてめぇ。」

「つれないこと言うわねぇ、でもスタンドの正体が分からない人間から狙うのは当たり前でしょう?あなたのはもう割れてるんだからそこまで気にする必要はないのよ?」

「俺のことなんか眼中に無いってか、そうかそうか…、なら思い知らせてやるよ!」

 スタンドを人型にし柊吾が宗宮に突っ込んでいく。

 『『あら、この子随分と安い挑発に乗っちゃうタイプの子なのね。』とか思ってるんだろうなこいつ、俺の目的はお前をぶん殴ることじゃあねぇんだよ!』

 

 宗宮が柊吾にスタンドに触れようとした瞬間、柊吾がスライディングで宗宮の体のすぐ左横をくぐり抜ける。

 もちろん狙った先は桂木のネックレス。柊吾はそれを拾い上げてすぐに桂木に投げ渡す。

 

「ありがとう!これで一旦退ける、行こう柊吾!」

 

 しかし柊吾は片膝をついたまま立ち上がらず返事をしない。

 

「あらぁ?狙いは私じゃあなくてそのネックレスが狙いだったのねぇ。でも惜しかったわね、私の『レッド・サンダンス』は既に彼に触れたわ。」

 

 そう言われ、桂木が反射的に柊吾の方を見る。

 

「すまん、桂木…。」

 

 未だ片膝をついたままの柊吾の左上半身は既に機械化が始まっていた。

 

「な、なんだってぇぇぇ!」

「2人で私から逃げるためにそれを拾いに行ったのに…あなたじきに動けなくなるわよ。」

「桂木…形見は手に入っただろ…お前だけでも逃げろ…。そしてあいつらに伝えてくれ…。それまで…持ちこたえるからよ…。」

「で、でも…。」

「いいから逃げろ!お前にはスタンドがないんだ!今この女と戦えるのは俺だけだ!お前には何も出来ない!」

 

 柊吾の言葉で桂木の表情が少し変わった。

 

『本当にそれでいいのか…?本当に僕には友達を見捨てて逃げることしか出来ないのか?この間だってそうだ、あの場にいたにも関わらず僕には何も出来なかった…スタンドが無いからという事実に甘えて…』

 

 その表情の変化に気付いたのか宗宮が桂木の方に近づく。

 

『そんなのはもう嫌だ!こんな僕にだって何か出来ることがあるはずだッ!』

「この子さっきよりも表情が男前になったわねぇ。こういう窮地に立たされた子が一番怖いのよね。」

『お父さんお願いだ、僕に力を貸して!』

「だから真っ先に始末させてもらうわ。『レッド・サンダンス』!」

 

 『レッド・サンダンス』の手が桂木に触れる…直前でピタッと止まる。

 その手と桂木の間には20個程の小さな正方形が浮かんでおり、それらが『レッド・サンダンス』の手をその場に留めていた。

 

「な、何よこれ?!まさかこれがこの子のスタンド…?でも何故こんなにも小さな、そして沢山の四角形が浮いているの?!」

 

 突然桂木の周囲に現れたスタンドに宗宮が驚いていると、足元から『カチッカチッカチッ』と規則正しい音が聞こえてきた。

 宗宮が足元を見るとそこには半分が置時計に変わっている石があり、その石にもまた20個程の小さな正方形がくっ付いていた。

 

「まさか、『レッド・サンダンス』が触れた正方形を介して、この石が機械化したっていうの?!」

 

 戸惑う宗宮よりも、負傷した状態で思いもよらぬ状況を目の当たりにした柊吾よりも、その場で一番驚いていたのは桂木自身であった。

 

『こ、これは…父さんのスタンド能力だ!たしか名前は『Rain that takes away heat』!お母さんに聞いたことがある…たしか能力は…』

「そうだ!僕のスタンド能力の役割はパイプだ。受けた力を別の場所に移すパイプだ。例えどんなに離れていても双方に僕のスタンドが付いていればどんな事象も移すことができる。」

「だ、だからどうしたのよ。あなたが不利な状況なのには変わりないのよ。」

「まだ話は終わってない、そして今僕のスタンドをあんたに付着させた。」

「な、なんですって?!」

 

 そう言って体を見回すと、腕や脚に桂木のスタンドがまとわりついており、その部分からじわじわと機械化が進んでいた。

 

「あんたの負けだよ、宗宮さん。」

「ま、まだよ私はまだ…、負けてないわ…。『レッド・サンダァァンス』!」

 所々が機械化した『レッド・サンダンス』が桂木に向け両腕を振り下ろす。

「はぁ…大人しく帰ってくれるなら何もしたくなかったんだけど…。『Rain that takes away heat』!全てを弾き返せ!」

 

 桂木のスタンドがまたピタリと『レッド・サンダンス』の腕を受け止め、その能力の全てを宗宮に送り返す。

 

「いやぁぁぁぁぁ!絶対に…絶対に許さないわぁ、許さなぁぁぁぁい!」

 壮絶な断末魔と共に、ついに宗宮の全身が機械化した。それと同時に柊吾の機械化が解ける。

「柊吾!大丈夫?!」

 

 よろけた柊吾に桂木が駆け寄る。

 

「あぁ問題ねぇ…。しかしお前スタンドあったんじゃねぇか、なんで黙ってたんだ?」

 

 桂木は出会った頃『自分にスタンドは無い』と柊吾に説明していた。

 

「それが、さっきの戦いの中で思い出したのだけれど、このスタンドは僕のお父さんのスタンドなんだ。」

「お前の父さんのスタンド?どういう事だ?」

「僕のお父さんが森林探検家だったっていうのは覚えてる?」

「あぁ覚えてるぞ。」

「そう、それで僕のお父さんは世界各地を回って探検で見つけたお宝とかを持って帰って来ていたんだ。そしてその中の一つがこのネックレスなんだ。」

 そう言って首から下げていたネックレスを柊吾に見せる。

「これを僕に渡す時お父さんは『お前がピンチになった時、きっと父さんはお前の傍にいてやれないだろう。だからこれを握って強く念じるんだ。そうしたら父さんの力がお前に届くはずだ。』って。小さい頃はよく分からなかったけれど、今ならよくわかる。」

 

 桂木が首から下げたネックレスを見つめて言う。

 

「父さんが言いたかったのは僕に父さんの力が『受け継がれる』っていうことだったんだ!」

 

 キラキラと瞳を輝かせながら桂木がそれまで柊吾が見た事のない程に大きな笑顔になった。

 

「なるほどな…つまりお前の決死の思いが、お前の父さんのスタンドをお前に受け継がせたんだな。よくやったじゃあねぇか桂木!」

「うん!あ、そうだ。」

 ふと桂木が我に返る。

「こんな短期間で僕らが襲われたんだ、もしかしたら優大や御堂も危ないかもしれない!」

「確かに、それもそうだな…。よしいっぺん電話してみっか。」

 携帯を取りだし柊吾はまず山之瀬に電話をかける。

 何度かコール音が鳴り

『はいもしもし。』

 

 と山之瀬の声が電話から聞こえた。

 

「あぁ、優大、そっち大丈夫か?あぁいや大丈夫ならそれでいいんだが、え?おう、おう、いやなんでもねぇって。とりあえず大丈夫なら切るぞ。じゃあな。」

 『ピッ』と音が鳴り、電話が切れた。

「よし、優大は大丈夫そうだ。次は紫音だな…。」

 

 次に御堂に電話をかけ始める。しかし何度コール音が鳴っても紫音が出ることはなかった。

 2人の表情が一気に真剣なものになる。

 

「これは…まずいかもな…。あいつ全く電話に出やがらねえ…。」

「どうする?優大に連絡して3人で手分けして探す?」

「あぁそうだな。」

「じゃあ電話してくる。………もしもし?うん、いや……。」

 

 歩きながら桂木が優大に電話をする。

 それを見送った柊吾の表情がより神妙なものになる。

 

「なにも起きていなければいいんだが…。」

 

 しかし柊吾のその心配とは裏腹に、御堂は飛んでもないやつに捕まってしまっていた…。 




今回初登場のスタンド紹介!

Rain that takes away heat
本体
→桂木 蒼太
能力
→群体型のスタンド。ルービックキューブ型のネックレスから展開される方体のビジョンをしている。力を別の場所に飛ばすパイプとしての能力を持つ。
例:対象Aに炎による熱を与えたい場合、内ひとつを炎につけ、もうひとつを対象Aにつけることにより、この2点間で熱を共有出来る。

破壊力→B
スピード→A
射程距離→C
持続力→A
精密動作性→B
成長性→C



スタンド名
→レッド・サンダンス
本体
→宗宮 暁音
スタンド能力
→スタンドが触れた物、生命体を機械に変える。機械化は触れられた部分から徐々に進行していき、最終的には全体が機械となり動くことは出来なくなる。機械に変わった物は変わった機械の性質を持つ。(例えば電動ドリルに変われば電動ドリルとして使える)

・破壊力 →C
・スピード →B
・射程距離 →本体が解除するまで止まらない
・持続力 →A
・精密動作性 →A
・成長性→C


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3話

前回のあらすじ
 
 触れたものを機械に変えるスタンド『レッド・サンダンス』とその本体の宗宮 暁音。 

落としてしまった桂木の父親の形見を取り返すために攻撃を喰らってしまった柊吾。
 
 その隙に桂木に迫る宗宮、しかし桂木の想いに呼応するようにペンダントが桂木に力を引き継がせる。
そして桂木の新たなスタンド「Rain that takes away heat」が襲い来る宗宮の能力を弾き返したッ!
 
 敵を倒し安堵したのも束の間、御堂と連絡が取れなくなってしまう。果たして御堂の身に何が起きたのか?



  【鞭と盾】

 

 時間は少し遡り、『レッド・サンダンス』との戦闘開始と同時刻、御堂もまた敵?に遭遇していた。

 

 桂木達と別れ、家から数分のところまで来たところで『ドスンッ』と鈍い音が後方からし御堂が振り返る。

 

「はぁ…?なんだ…あれ…。」

 

 恐る恐る近付いていくとそれは顔を袋で隠され、全身を紐で縛られ拘束された男であった。

 

「そーいう趣味の人…って感じじゃあないよな…それにさっき高いところから落っこちたような音したよな?でもこの辺は普通の住宅街でビルだのマンションだのって建物はないしな…。」

 

 そう言って御堂が辺りを見回す。しかし周囲には怪しい人間はおろか、歩行者の一人もいなかった。

 

「これはスタンド攻撃ってことでいいのか?のわりにはよく分かんねぇな、攻撃力があるようには見えないんだよな…。」

 

「なぁ…あんた……あんたかい…?御堂ってのは……?」

 

 先程までそこで縛られていた男が掠れた声で喋りかけてきた。

 反射的に御堂が男の方を振り返る。

 

「なんで俺の名前を知ってるんだあんた、まさかあんたが敵のスタンド使いなのか?」

 

「それは違うな…むしろ被害者といった方が正しいだろう……。」

 

 あまりにも男の声が掠れ、小さかったため御堂は男のそばにしゃがみこんで話を聞いていた。

 

「被害者?つまりあんたをこんな状況にしたそいつが敵のスタンド使いってことか?あんたは巻き込まれたのか?」

 

「まぁ…そんなところだろうな……いや一つ訂正があるとしたら…『利用された』のが正しいということだな…。」

 

「とりあえず敵が近くにいるっていうことだな…。柊吾達に連絡をとった方が良さそうだな。俺一人のところを襲われるのはあまり良くないからな…。あんたなんか知ってること無いのか?」

 

「あまり有益な情報を渡してやることは出来ないが…一つだけ教えてやろう…後ろには気を付けろ…。」

 

 そう言われ反射的に御堂が後ろを振り返る、よりも早く御堂の体に電流が走りその場に倒れ込む。

 

「ぐあッ!」

 

 身体を起こそうと腕に力を入れるが、上から踏まれまた倒れてしまう。

 

「あらぁ?当たり所が悪かったのかしらぁ?それとも意外にタフだったのかしらぁ?気絶してないわねぇ?」

 

 御堂を足蹴にした声の主が不思議そうに言う。その声の主は女であった。

 

「お前か…そこのやつを縛ったスタンド使いは…。」

 

「えぇそうよぉ、あぁもう起き上がってもいいわよぉ。」

 

 そう言われるとさっきまでの様子が嘘のようにキビキビとした動きで立ち上がり声の主の元まで歩いていく。

 

 いつの間にか男を縛っていた紐も、顔を覆っていた袋も消えていた。

 

「ありがとう助かったわぁ、またお店に来てねぇ。今度はそっちで楽しみましょう?」

 

「はい!ま、また今度!」

 

 そう言って男は走り去ってしまった。

 

「くそ…『利用された』ってのはそういうことか…あいつ…顔…覚えたからな…。(多分すぐ忘れちまうけど…。)」

 

「さぁ本題に戻らないとぉ、あなたを人質にさせて貰いたいのよぉ。それに今回は『あの方』の命令だから、失敗出来ないのよぉ。」

 

『ちくしょう…さっきの電流のせいで体が全く動かねぇ、この状態で俺のスタンドを出してもどうにもならねぇし…。』

 

「じゃあそろそろ連れていかなきゃだからぁ、サービスでもう一発、今度こそ眠ってねぇ?えいっ。」

 

 『バチバチバチッ!』と最初よりも強い電流が流れ、御堂が気絶する。

 

「さっ、『洋館』に連れていかなきゃぁ。」

 

 女が手をかざすと鞭が現れ、御堂の体を縛り付けた。すると御堂の体が宙に浮き上がった。

 縛った御堂を連れ、女は人の往来のない暗い道に消えていった。

 

  【学生の敵はイケメン?】

      

「おーい!柊吾!」

 

「おう優大、早かったな。」

 

 宗宮との戦闘の後、御堂と連絡がとれなくなり柊吾は再度優大に連絡し、ある場所に行くために駅前で待ち合わせをしていた。

 

「なぁ柊吾、駅前なんかで待ち合わせしてどうするんだ?電車使ってどっか行くのか?」

 

「あぁ、本当は頼りたくなかったんだが…あの人の手を借りようと思ってな。」

 

「げっまじかよ…あの人に頼み事して対価に何を求められるかお前もよく分かってるだろ?」

 

「そりゃあそうだけどよ…他に紫音を探す手立てがねぇからな…。」

 

 柊吾と優大が浮かない顔をして何やら話し込んでいる。

 

「あの、さっきから気になってるんだけどその『あの人』って誰?そんなやばい人なの?」

 

「やばいなんてもんじゃねぇよ…あの人は学生の敵だぜ…。」

 

「そうだな…とりあえずはあの人のところに行くか。」

 

 そう言って改札を通り、三人はしばらく電車に揺られていた。

 

 『錫也(すずなり)ー錫也ーお降りの際はお忘れ物のないようご注意ください。』

 と車内アナウンスが流れた。

 

「よしここで降りるぞ。」

 

 柊吾が二人に声をかけ、電車を降りる。

 駅を出て三十分ほど歩いた場所で柊吾と優大が歩みを止めた。

 

「着いたぞ桂木、ここだ。」

 

 桂木が柊吾の指を指す方向を見ると、そこには薄暗い照明に照らされた地下へと続く狭い階段があった。

 

「こ、こんなところに御堂を助けてくれる人がいるの?」

 

 あまりにも不気味な雰囲気に桂木が言う。

 

「助けてくれるというより力を貸して貰う感じだな。まぁ雰囲気が不気味なのはめちゃくちゃ分かる。俺も最初は入る気しなかったからな。」

 

 桂木に共感すると同時に優大が説明をする。

 

「おい何やってんだお前ら、早く行くぞ。」

 

 先に階段を降りていた柊吾に呼ばれ、二人も階段を降りていく。

 

 二十段程の階段を降りた先にあったのは『BAR"Sensation"』と書かれた看板のかかった大人な雰囲気のバーだった。

 

「ここバーって書いてあるけど僕ら未成年だよ?入っちゃまずいんじゃないかな…。」

 

「その点は大丈夫だ、用があるのはここのオーナーだからな。」

 

 そう言いながら柊吾は一切の遠慮もなく中へと入っていく。

 

「ほら行くぞ。」

 

 結局桂木は優大に手を引かれ中に入っていった。

 

 中へ入るとこじんまりとした店内には客は一人もおらず、バーテンダーがグラスを拭きながら柊吾達の到着を待っていたようだった。

 

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました柊吾様、優大様。そちらの方は…ここへ来られるのは初めてですね。」

 

「あぁ、だが疑う必要はないぞ。新入りってだけだからな。」

 

「左様でございますか、主が奥の部屋でお待ちになられております。しばらく前から待たれているため不機嫌になられる前に行かれるのがよろしいかと。」

「分かった、ありがとう。二人とも行くぞ。」

 

 執事のような低姿勢のバーテンダーに案内された部屋に入ると

「遅すぎじゃないか柊吾ぉ!?メールしてからどんだけ経ってると思ってるんだよ!」

 

 といきなり罵声が飛んできた。

 

「いや、あの位置からだとこれが最短なんですよ、仕方ないじゃないですか。」

 

 特に気にしていない様子で柊吾が返しながら部屋の奥へ進む。

 入口から続いていた通路を曲がったところで見えたのは、女児向けアニメのフィギュアや玩具、タペストリーやゲームなどが所狭しと並んだ、俗に言うオタク部屋だった。

 

 その真ん中で声の主は布団にくるまりテレビゲームをしていた。

 

「それで、僕直々に動かなくちゃならない依頼なんだからさ。当然"アレ"持ってきたよね?」

 

 声の主がこちらを振り返ろうともせずに言う。

 

「持ってきましたよ、いつものアニメのフィギュア。それも今回は御堂の命がかかってるんで限定販売のやつです。」

 

「え〜それだけ〜?なんかしょぼくない?」

 

「頼む側なんで強く言えないんすけど、これでも二十万は下らなかったんですからね?おかげで俺の口座がすっからかんですよ!」

 

 声の主に柊吾が口座の残高を見せながら言う。

 

「な?あの人やべぇだろ?もちろん仕事はめちゃくちゃ出来る人だから以前も時々頼んでたんだけどよ。如何せん金がかかりすぎるし、ああいうフィギュア買いに行くのは恥ずいしで…極力頼りたくなかったんだよな…。」

 

 優大が声を潜めて桂木に言う。

 

「そっか…それで柊吾は『学生の敵』って言ってたのか…可哀想に…。」

 

「どれどれ、今回はどの子かな〜。」

 

 先程まで布団から出ようともしなかった声の主が布団から出て柊吾からフィギュアを受け取ろうとする。

 

 布団の中から出てきたのは意外にも美形で長身な二十代前半くらいの男だった。

 

「ってあれ、そこの君は見たことないやつだな。もしかして新入りかい?」

 

「あ、桂木 蒼太って言います。スタンドは…教えた方がいいですか?」

 

「そうだね嫌じゃなければ教えて欲しい。後々の僕のオペレーター業務にも関わってくるからね。」

 

「オペレーター?依頼は御堂の捜索じゃなかったんですか?」

 

「ん?柊吾から聞いてなかったのか。僕のは捜し物も得意だけど、もっと得意なのはオペレーターなんだよ。それで君のスタンドはどんなものかな。」

 

「あ、はい。スタンド名は『Rain that takes away heat』、場所と場所を繋ぐパイプのような能力で、例えばA地点に全く違う場所にあるB地点の炎の熱を僕のスタンドを双方につけることでその二点間で熱を共有できます。」

 

「なるほどね、もし君の言うように熱を共有した場合、君自身はその熱を感じるの?射程距離の上限はどのくらい?共有というのは完全に同じ力で伝えることが出来るの?」

 

「えっと、ここに来るまでの間に色々と試してみたんですけど、熱を共有する場合僕の方は熱いとは感じません。射程距離は半径大体3kmくらいで、共有を行う際は100%で共有することが出来ます。」

 

「オーケー、君のスタンドのことはよく分かった。かなり便利な能力だな〜僕の助手として雇いたいくらいだ。」

 

 一通り話し終えた桂木は

 

 『これが"仕事は出来る"、なんて言われる要因か…たしかに僕のスタンドのことを熱心に聞いてくれたし悪い人ではないんだろうな。』

 

 と思いながら声の主の顔を見つめていた。

 

「あ、ごめんごめん僕の自己紹介がまだだったよね。つい仕事柄君のことばかり聞いてしまったよ。」

 

 桂木が自分の自己紹介を待っていると思ったのか声の主が謝る。

 

「僕は姫野 橋介(ひめの きょうすけ)だ。もし柊吾にクビを切られるようなことがあったら迷いなくうちに来てくれ、歓迎するよ。」

 

 そう言うと同時に桂木に向けて『ニコッ』と笑いかける。内面を知らない面食いの女性が食らったらまず間違いなく一発で落ちるような笑顔だった。

 

「そんな予定はないんで桂木を籠絡しようとしないでください。それと頼んでた仕事はどうなりましたか?姫野さんのことだからもう終わってるんですよね?」

 

 桂木と姫野の間に割って入った柊吾が言う。

 

「もちろんだよ、と言いたいところだがちょっとした問題があるんだ。」

 

「問題?なんですそれは。」

 

「御堂君の大方の位置座標は掴めたんだけれど、半径50m以内で十数分おきにテレポートのような形で移動してるんだ。」

 

「テレポート?おかしくないですか?あいつのスタンドにそんな能力はないし、第一…」

 

「そう、第一彼は拘束されてろくに動けないはずだ。つまり彼は何らかのスタンド能力を利用して監禁されている。」

 

「しかもそのスタンドが御堂を誘拐したやつのものとは限らない、敵は複数人でかかってくる可能性が高いのか…。」

 

「あぁ、正面切って敵に挑むのは君たちの人数と戦力的に得策ではないだろうね。」

 

「となると何か作戦を考えなくちゃならねぇな…どうしたもんか…。」

 

 『ドンッ!』

 

 と隣の部屋に音が響きそうな程の力で優大が壁を殴る。

 

「んなことここで言い合ってたって仕方ねぇだろ!今まさに紫音が危険に晒されてるんだぞ?まずは現場に向かうべきだろ!」

 

「ゆ、優大落ち着いて。」

 

「これが落ち着いてられるかよ!お前らがまだお喋りしてたいって言うんだったら俺一人だけでも行くからな!」

 

 普段の優大は穏やかですぐに手を上げたりはしないのだが、キレると見境が無くなる。これが優大の悪い癖だった。

 

「待て優大、お前の言うことにも一理ある。」

 

 部屋を出て行こうとする優大を柊吾が引き止めた。

 

「今まさに紫音が危険に晒されているかもしれないのはたしかだ。お前の言う通り監禁場所に向かい始めた方が良さそうだ。姫野さんはいつも通りここから指示をお願いします。」

 

 柊吾が姫野に頭を下げる。

 

「分かっているよ。死なないようにだけ気を付けなよ。あ、そうだこれを持っていきな。色々と役に立つはずだよ。」

 

 姫野が柊吾に手渡したのはホームビデオを撮るようなどこにでもあるビデオカメラだった。

 

「ありがとうございます。行くぞ。」

 

 もう一度頭を下げた後振り返って部屋を出ていく。二人も後を追って部屋を出た。

 

   【御堂の行方】

   

 姫野の案内の据え辿り着いたのは一見何の変哲もない港だった。

 

しかし一つだけこの光景の中には絶対に溶け込めない異様なものがあった。

 

 

 それは歴史的建造物と言っても違いないような年季の入った外国人貴族が住んでいそうな洋館だった。

 

「館だ、こんな港のど真ん中に館が建っている!」

 

 驚きのあまり桂木が声を上げる。

 

 他の二人も冷静ではあるが多少驚いたような顔をしている。

 

「その中だ、その中に御堂君がいる。座標の位置的に考えると彼は二階にいるようだよ。恐らくその洋館自体もスタンドだ、さっき言ったテレポートも二階の中だけで行われてるみたいだね。」

 

 通信機と自身のスタンドを通して姫野は柊吾達の位置や状況、果ては周辺の地形までをも把握している。

 

「ただ御堂君以外の人間が何人いるか、配置がどうかは分からない。恐らくデコイのようなものが大量にあるんだ。ごめんよ。」

 

「ありがとうございます、もう充分です、これで確定しました…。敵は一人じゃない。」

 

 確信した現状を噛み締めるように桂木が言う。

 

「あぁ、それに連絡が取れなくなった時間帯的に紫音はまだ帰宅途中だったはずだ。いくら攻撃性能のない紫音相手とは言え、多少なりとも攻撃力のあるスタンドじゃなければあいつを拐ったりなんて出来ないはずだ。」

 

「御託はいいんだよ柊吾。今やるべきことはこの洋館の中にいる奴ら全員倒して紫音を助けるだけだ!」

 

 やはり焦りと怒りが収まらないのか優大が急かす。

 

「まぁ待て優大、この洋館に入る前にやることが一つある。この中の内情偵察だ。」

 

「内情偵察?そんなもんどうやるんだよ、まず入ってみないことには中のことなんて分からねぇだろ。」

 

「そこで僕のスタンドとこのカメラだよ。」

 

 優大の最もな質問に桂木が答える。その手には姫野から渡されたビデオカメラがあった。

 

「カメラ…?あぁそうか!お前のスタンドを通してそのカメラで中を見るってことだな?」

 

 少し考えて、ハッとしたように優大が言う。

 

「そういうこと、それじゃ早速。」

 

 桂木のスタンドが洋館の扉をすり抜け、中に入って行く。

 

 少ししてビデオカメラに洋館の中の様子が映し出された。

 

 一階の内装は以外にもよくあるような至って普通のもので特に変わったものはないようだった。

 

「問題は二階だな。桂木、二階の映像出せるか?」

 

 一通り一階の映像を見終えた柊吾が桂木の方を見ると桂木の顔色が悪くなっていた。

 

「どうした桂木?顔が真っ青だぞ。」

 

「それが、さっきっから二階の部屋に入った僕のスタンドの座標がぐるぐるかき混ぜられてるみたいに安定しないんだ。」

 

「もしかして姫野さんの言ってたテレポートみたいなものか。」

 

「多分そうだと思う、一応映像を出すから見てみて欲しい。」

 

 ビデオカメラに二階の部屋の映像が映る。

 

 ……が特に映像に変わった様子はなかった。

「特に変わった感じはしねぇよな…?」

 

 小首を傾げながら優大が言う。

 

「うん、多分映像に変わりはないと思う。でも今の二階の部屋の状況について分かったことがあるんだ。ただその前に僕のスタンドについて説明する必要があると思う。」

 

 そう言って桂木は自身のスタンドについて説明を始めた。

 

 まず桂木のスタンド『Rain that takes away heat』は最大で81個にまで分裂することが出来、さらにそれを全て同時にバラバラに操ることが出来る。

 

 それだけの数をどう把握しているのかというと、それぞれがいる位置にX軸、Y軸、Z軸の座標が振られ、スタンドが移動する度にそれが随時更新されているためである。

 

 さらに81個に分裂したスタンドには座標の他に番号も振られており、テレビのチャンネルを変えるように番号を切り替えることで力を共有する場所や見る視点を変えたりしている。

 

「そんなわけなんだ。長かったけど分かったかな。」

 

「あぁ、大体分かったぜ。それで今回のテレポートとそれはどう関係してくるんだ?」

 

「また映像を見て欲しいんだけど、今この部屋は二階の一番左端に位置する座標にあるんだけど。」

 

 そう言って桂木が見せた映像にはたしかに、外から窓越しでも分かる特徴的な照明のある二階左端の部屋を映していた。

 

「ちょっと見てて……今!座標が変わった!」

 

 桂木の声と同時に先程の部屋の方を見る。

 

 すると窓から見えた部屋は全く違う部屋に変わっていた。

 

 それを確認した二人が桂木の方を見る。

 

「つまりは、中の人が移動してたんじゃなくって部屋ごと入れ替わってたんだ。それも僕らが来てから入れ替わりの周期が早くなってるみたいだ。多分僕のスタンドも一つくらいは敵に発見されてる頃だと思う。」

 

「なるほど…道理でって感じだな。」

 

 優大が頷く。

 

「これは侵入は慎重にならざるを得ないな…。」

 

 そう言って柊吾が洋館の方を見る。

 

「待っとけ紫音…今助けてやるからな…。」

 

 柊吾につられて洋館の方を見た優大が呟いた。

 




・スタンド名
→インビジブルセンセーション

・本体
→姫野 橋介(ひめの きょうすけ)

・能力
→土地や物、人に残る感覚を感じ取ることが出来る。例えばAさんがある場所で拘束され「拘束された、動けない」と思うとその感情がその場に残る。インビジブルセンセーションはそれを感じ取り、正確な位置座標を割り出すことが出来る。

破壊力→なし
スピード→(感覚を捜索する範囲による)
射程距離→A
持続力→D(本人の体力次第)
精密動作性→A
成長性→E

洋館のスタンド

・本体
→???

・能力
→2階にある部屋の位置交換?

破壊力→?
スピード→?
射程距離→?
持続力→?
精密動作性→?
成長性→?


前話投稿から2ヶ月以上が経過してしまいました…

モチベが上手く上がらずなかなか筆を進められず…

これからは頑張って投稿ペースを上げれたらと思いますので、

これからもどうぞ「スタンド使いはありふれた」をよろしくお願いします!!


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