父さんが釣ってきた珍しいポケモンのお話 (しぐ)
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父さんが釣ってきた珍しいポケモンのお話

ふと思い立ちました。


 俺が小さい頃まで話は遡る。

 釣りに出かけた父親が帰ってきたと思ったら凄い勢いで俺に、

 

『珍しいポケモンを釣ったんだ!』

 

 と鼻息荒く話しかけてきた。

 

 皆は珍しいポケモンと聞いたらどんなポケモンを想像する?

 伝説や幻のポケモンや強そうな見た目のポケモン、カッコいいポケモンなどなど。

 当時の俺なんてまだ小さかったしポケモン自体はテレビの中で出てくるポケモンしかしらなくて、リザードンやボーマンダみたいなカッコよくて強いポケモンに憧れてた。

 

『どんなポケモン!?』

 

 って、ワクワクしながら話しかけたのを覚えている。落差が凄かったから。

 

『コイツだ!!』

 

 たっぷり水が入ったケースの中に入っていたのは可愛くもカッコよくもないポケモンだった。

 

 ボヘーン。

 

 って効果音が鳴ってそうな登場で。

 頭の中で描かれていたポケモン達が一瞬で打ち消され、俺は泣いて、

 

『お父さんの嘘つきぃいいいいい!!』

 

 って叫んで自分の部屋に逃げた。

 父さんは何も間違った事は言ってなくて、俺が勝手に勘違いして期待してそれと違うポケモンが出てきたからショックで逃げただけだったんだけど。

 

 リザードンとか、ボーマンダとか、そんなカッコよくて強いポケモンが良かったのにって父さんに言ったんだ。そしたら父さんは、

 

『ごめんな、父さん見たことないポケモン釣っちゃってはしゃいじゃったな。お詫びに今度ポケモンジム連れてってやるからな、それで許してくれないか?』

 

 ジム観戦はエンターテイメントだ。ただ俺が住んでいた街にジムは無かったので遠出となる。久しぶりのお出かけの話にすっかり涙も引っ込んだ俺は、

 

『うん!』

 

 と、途端に笑顔になって笑ったんだ。我ながら現金な奴だったと思う。

 

 その次の日の朝、起きたらいつもはリビングでコーヒーを飲みながらテレビを見てるはずの父さんがいなかった。

 

『お父さんは?』

 

『ん? 外で池を掘ってるわよ』

 

 昨日釣ってきたポケモンの為に朝早くからずっと池を掘っているらしい。

 外に出てみると何やら楽しげな父さんが汗まみれになりながら庭の片隅で土を掘り返していた。

 

『狭いところじゃなくて、広いところで育ててやるからなー!』

 

 なんて話しかけながら、一生懸命掘っていた。

 結局池を掘ったりエサを買ってきたり、水を張ったり、お世話をしたり。父さんと母さんはそっちに時間を割くか自分との時間が取られてると思っていた俺はソイツの事があんまり好きじゃ無かった。

 

 カッコよくないし、可愛くないし、弱いし。

 

 父さんが野生のポケモンとバトルしてるのを見学した事があるけど、弱すぎて話にならないレベルだった。

 

『どうせ飼うならもっと強いポケモンの方が良かった!』

 

 って一度言ったことがある。

 それを言ったらいつもは優しい父さんが真面目な顔付きで、

 

『父さんにはあのポケモンを釣ってきた責任があるし、一度飼うと決めたからには投げ出すことはしたくない。それに、接してみると結構可愛い奴だぞ?』

 

 その時は可愛くないもん! って言って逃げたけど、そのあたりから段々嫌がる俺を無理矢理父さんがお世話に参加させるようになった。

 

 ソイツはとっても人懐っこいやつで、朝の餌やり係に任命された俺が池に近づくとスーッと近づいてきて池から頭を出してパクパク口を開けるんだ。

 不覚にもキュンとしてしまったのを覚えている。

 

 そんな事があったりして段々と俺も積極的にお世話に参加するようになって、父さんと母さんも満足気だった。

 

 相変わらず弱くて、可愛くなくて、カッコよくもないけど、確かにコイツは家族の一員になっていた。

 

 時には近所の友達に馬鹿にされて喧嘩になったりもした。傷ついた顔を見るや慌てて水をパシャパシャさせているコイツを見て、俺が怒ったのは間違ってなかったんだって思ったね。

 

 まあそれからしばらく経ってもコイツは一向に進化する兆しもなければ強くなる事もなかった。

 

 だからといって家族であるコイツがどうにかなるわけではないのだが。

 

『お前、ずっとそのままなの?』

 

 って聞いても答えが返ってくるわけもなかった。

 

 

 そんな折、母さんがポロック作りにハマった。色々なきのみを買ってきて、色んな味を作っては俺に食べさせてきた。

 

『今日は天気も良いし、外で作りましょうか!』

 

 と、その日はお庭キャンプと相成った。

 母さんがポロックを作って、俺と父さんが食べて色々な反応をする。よくある家族の休日だったんだけど事件は起こった。

 とある組み合わせのポロックを食べた俺が

 

『マズイ!』

 

 そう叫んでプッと吐き出したそのポロックは池の中に落ちてしまったんだ。

 

 コイツは俺が吐き出したポロックを一目散に食べるやいなやかつてないほど暴れたんだ。

 あの時は家族一同焦ったね。あの頃はポケモンにポロックを与えるなんて話は聞いた事なかったから。みんな頭を抱えて、変なもの食べたから死んじゃうんじゃとか考えた。

 

 結局その心配は杞憂でただ喜んでいるだけだと分かった時はホッとした。喜び方も可愛くないんだなとわかった日でもあった。

 

 コイツは俺が吐き出すほどマズイと思った渋〜いポロックが大好きで、あげると物凄く喜ぶ。

 

 この頃にはバトルに連れ出す事もなくて、完全にペット要員のポケモンになっていた。

 

 更に時は流れて、俺がポケモントレーナーとしての一歩を歩き出す日がやってきた。あの日見たテレビの中の光景を俺も再現するんだって意気込んでた。

 

 旅立ちの日、父さんと母さんから餞別として渡されたのがモンスターボールに入ったコイツで、俺は大層困惑した。

 

『え? なんで?』

 

『お前について行きたいっぽくてな、凄いやる気だからお前の旅に同行させてやってくれ』

 

 ボールの中のコイツは今まで見た事がない程キリッとした表情をしていた。ただ全然カッコよくなかったけど。

 弱いのにどこからそんな自信が湧いてくるのかって思ったけど、コイツの熱意に負けて結局は連れて行く事にした。

 

 いや、一回戻そうとしたんだけど、そうしたらコイツ池から飛び出してきて跳ねてでも付いてこようとして連れて行かざるを得なかったんだ。

 

 で、旅に出てすぐの事だ。

 大事件が起こった。

 コイツとふたり、なんとかポケモンを倒しながら進んでいたんだけど、急に光りはじめて。

 

 『進化!?』

 

 進化したコイツはとても美しい姿をしていた。

 

 慌てて家に帰って、父さんと母さんに報告した。

 

『あいつが進化したんだ!』

 

 って。父さんも母さんも驚いていた。

 ボールから出してその姿を見せたら更に驚いていたな。

 

 進化したコイツは、カッコよくて、可愛くて、強かった。

 

 俺自身も見た事ない珍しいポケモンを連れているポケモントレーナーとして有名になったし、コイツを狙う悪い奴らにも襲われたし、色んな研究者から進化の条件とか聞かれた。

 

 進化の条件なんてよくわからなかったし、当時は知らないって突っ返したけど、とある場所で熱心にコイツの事を聞いてきた小さな女の子がいたな。

 

 え? いや、違う地方に行った時の話だから今その子が何をしてるのか知らないんだ。

 

 名前は確か……シロナだっけか。

 

 今話してるのと同じような事を何度も話したよ。その時の情熱と言ったら無理にでも旅についてこようとしたコイツに似たようなものを感じて……だからかな、俺も根負けしたんだろうね。

 

 もし、進化前のコイツをゲットしていたあの子なら進化させているかもしれないな。

 

 

 

 

 

「……俺とコイツの話はこれくらいかな。他に何か聞きたい事ある?」

 

「いえ、貴重なお話をありがとうございました。チャンピオン!」

 

「あはは……元、だけどね。じゃあ行こうか。ミロカロス」

 

「ふわぁぁぁぁぁお」




取り敢えずこの話はこれで終わりです。
続きは要望が多かったら考えます。


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幼いあの子と会ったお話

思いつきました。思い付きなので短いです。


 あれはいつの頃の話だったか。

 そもそもミロカロスというポケモンは極々稀に野生での存在が確認された事がある程度で、捕獲しようとした人はその悉くが失敗していた。

 大々的に公表されていない為、知名度は然程高くなかったが、その美しさから欲しいと考える人は後を絶たなかった。

 

 そこに現れたのはノコノコとミロカロスを連れて旅をする御しやすそうな子供である。

 おっ、ヤドンがシッポを携えてやってきたとミロカロスを知る者は思ったであろう。

 

 どこで捕獲したのか聞き出そうとする者。

 力ずくで奪おうとする者。 

 金銭や物を用いて交渉しようとする者。

 

 あの手この手でミロカロスを手に入れようとする者が多すぎて俺は、ホウエンから逃げた。

 

 これも旅だ。

 

 そう思う事にして、船を乗り継ぎシンオウ地方に降り立った。

 

『ミロカロス、お前は人気者なんだな』

 

『ふぉぉぉう……』

 

 ヒンバスの頃は見向きもされず、いざ進化すると人が寄ってくる。

 それはミロカロスに進化してもトレーナーが捕まえられないわけである。人の手を一切借りずに育ったヒンバスがミロカロスに進化すると相当警戒心の高い個体になることは想像に難くない。

 父さんに釣られたコイツは相当なアホだというわけだ。

 

 だからこそ珍しいポケモンで、だからこそそのミロカロスの希少性が高かった。

 

 カッコよくなくて、可愛くなくて、弱いポケモンを好き好んで育てる奇特な人たちはそういない。

 

『取り敢えず、人のいないところに行ってみようか』

 

 シンオウ地方についてすぐの頃は、なるべくミロカロスが人目につかないように、人がいないところでと考えながらフラフラしていた。

 理由がどうであれミロカロスを欲しがる人の多さに辟易していたのだ。

 人の少ない場所を求めてシンオウを旅した結果、辿り着いたのがカンナギタウンであった。

 

『ありがとうございます。泊まる場所を用意してもらっただけでなく、ご飯までご馳走していただいて』

 

『いいんだよ。シロナと遊んでもらっているからねえ。両親が家を空けがちでよくわしのところに預けられるが見ての通りここには何もないからの。おぬしの話を聞いてとても楽しそうにしておるよ』

 

『まだ経験の浅いトレーナーの話ならいくらでも』

 

 シロナは熱意が凄かった。将来考古学者とポケモントレーナーを両立させるべく今から頑張っているらしい。

 俺は勉強はあまりしてこなかったのでこの熱意には弱い。こんなに幼いのに真剣で、強い眼差しを一身に受けてしまえば断れる人なんていないだろう。

 俺がシロナくらいの年齢の頃はヒンバスとのほほんとしていた。うちは全員おっとり系統なのだ。

 

 特に興味を示したのはやはりと言うかミロカロスの事で、メモまで取りながら真剣に聞いていた。

 

 5歳ながらに綺麗な字であったし、そもそも人の話をメモまで取りながら真剣に聞くという行為を俺はした事がない。

 この子は将来大物になると思った程だ。

 

 とはいえヒンバスはこの地方にはいないからそのメモが役立つ事なんて流石に──

 

『いるよ?』

 

 いるんだ。

 

 シンオウ地方の中央に聳え立つ山脈──テンガン山。その山の中に存在する湖にミロカロスを見た者がいるらしい。

 なんとも上手い話があったものである。

 

『へぇ。ミロカロスがいるならヒンバスもいそうだね』

 

『そうなの。それでお願いがあって』

 

 そのお願いというのが。

 

『テンガン山に1人でいくのはとても危険だから優秀で信頼できるトレーナーが善意で連れて行ってくれるというなら許可する。おばあちゃんが若い頃だったらテンガン山ぐらいいくらでも連れて行ってあげれたのに。くれぐれも孫をよろしくお願いします』

 

 という事らしい。

 優秀で信頼できるトレーナーである俺がシロナのお守りをする運びとなった。ミロカロスがいるからうってつけの人材ではあると思うのだが……まあ、裏技だけど。

 

『よろしくお願いします』

 

『おう、行くか』

 

 釣り竿持っていざ、テンガン山へ──

 

 

 

 

 

『おお……!』

 

『わあ……!』

 

 野生のポケモンを薙ぎ倒しながら進むとそこには見事な地底湖があった──。

 

『広くない?』

 

『……釣れるかな?』

 

『まずはやってみよう。釣れなくても大丈夫さ。秘策があるんだ』

 

『うん!』

 

 釣れるわけがないのである。

 警戒心が高いであろうヒンバスがそう簡単に竿に掛かってたまるかという話だし、父さんが釣ってきたヒンバスは相当なアホだったのだろう。ヒンバスらしからぬ警戒心の無さだ。

 

『仕方ない。秘策の出番だ』

 

『秘策?』

 

 名付けて、同族で油断させて誘き出そう作戦だ。

 

『頼んだぞ、ミロカロス』

 

『ふぉぉぉぉう』

 

 自身の進化系であるミロカロスに探させる事でヒンバスの警戒心を解き、そこを捕まえるという実に画期的でミロカロスをパートナーとしている俺にしかできない作戦である。天才である。

 

 

 

 

 

 かくして。

 

『まさか本当に上手くいくとは』

 

『ふぉぉう』

 

 ジトーっとした視線をミロカロスに向けられるが、流石の俺もヒンバスを引き連れて戻ってくるとは思っていなかった。総勢30匹程にもなる群れをズラリと引き連れ得意顔で帰還したミロカロスに、目を輝かせるシロナ、そしてその中から選ばれてドヤ顔をキメるヒンバス。

 実はヒンバスというポケモンは全てアホなのかもしれない。俺の認識を改めなければならないかもしれない出来事に少し混乱が隠せない。

 ミロカロスになると警戒心は一定以上だが、ヒンバスの時点ではただのアホという可能性が有力視されてきた。

 

『はは……まさかね』

 

『ありがとう、お兄ちゃん!』

 

 シロナとヒンバスに見送られてカンナギタウンを後にした。

 シロナならいずれミロカロスに進化させるだろうし、物凄いトレーナーになるだろう。

 

『ってなると俺もうかうかしてられないな。シロナに負けないように凄いトレーナーになろうな、ミロカロス!』

 

『ふぉぉぉぉう!』

 

 

 

 

「──そう考えると、シンオウ地方にやってくるのはそれ以来というわけか」

 

 あの頃は結局シンオウ巡りもそこそこに、ホウエンに戻って修行に明け暮れる日々を送っていた。

 つまるところ、あの時以来のシンオウ地方な訳で10数年経っていれば街並みもそれはそれは変化している訳で。

 

「……完全なるノープラン。取り敢えずカンナギタウンに向かうかな」

 

 あのおばあちゃんとシロナはいるのかな。

 久しぶりに会ってみたかったけど、今どうしてるのかもわからないし。

 

「うーん、まあのんびり旅を続けてたらわかるか!」

 

 目指すはカンナギタウン。

 その先の事はノープラン!

 




次のお話が投稿されるとしたら

あの時の少女と再会したお話

とかいうタイトルになるんじゃないですかね。
多分ですけど。

気が向くか続きを求める声が多かったら書くかもしれない


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傷ついたポケモンを拾ったお話

現代のシロナには会えませんでした。なので過去のお話を思いつきました。



 さて、質問がある。

 君は傷だらけのポケモンが道端に倒れていたら保護をするだろうか。

 

 当然保護をする。

 

 そうして俺に保護されたのは、痩せて傷だらけになって倒れていたタツベイだった。

 すぐさまポケモンセンターに運んで然るべき治療を受けてもらった。ジョーイさんの手際は見事で、ボロボロだったタツベイは翌日にはすっかり治っていた。

 

『はい、しっかりご飯をあげて面倒を見てあげてくださいね? それが、拾った人の責任だと思うので』

 

 そうだ。拾う覚悟が無ければ涙を呑んでボロボロのタツベイを見捨てるしか選択肢は無かったし、あそこで衝動的にでもタツベイを救う選択肢を取ったなら、俺にはタツベイを育てていく義務がある。捨てるなんて以ての外だ。

 それに、タツベイはこんな場所に棲んでるポケモンじゃないのも引っかかる。が、

 

『まずは関係の構築からだよね』

 

 何故ボロボロになってるのか、何故倒れていたのか、何故あんな所に。

 次々湧いてくる疑問は一旦振り払って、ポケモンセンターを後にした。

 

 

 

 

『タツーッ!』

 

 結論から言って、俺が拾ったタツベイはとても臆病?な子だった。

 そもそも俺の手から碌にご飯を食べてくれない。ミロカロスに手伝ってもらってなんとか食べさせる事が出来るくらいだ。

 戦闘なんて怯えて出来ないし、ポケモンもトレーナーも受け付けないみたいであった。

 

『……どうしたもんかなぁ』

 

『ふぉぉう』

 

 ミロカロスが困った子だねぇという感じに鳴いている。

 

『ふぉぉう!』

 

 お世話は任せて!と胸を張っているのだろうか。胸がどこか分からないけど。

 ミロカロスの手を借りないとまともにご飯すら食べないからやる気があるのは助かるけれど。ミロカロスに手なんてないけど。

 

『ミロカロスにはそこまで怯えた様子はないのが不思議だな』

 

 よく分からないけど、取り敢えずタツベイがご飯を食べてくれるならなんでもいいか。

 

『タツァーー!?』

 

『おおい落ち着けタツベイ。ソイツはただのケムッソだ』

 

『タツーーー!?』

 

『きのみが落ちてきただけだから』

 

『タツゥゥゥゥッッ!!?』

 

『木の枝に当たっただけだぞー?』

 

 こんなに怯えるならボールに仕舞えばいいだけの話だと思うだろうがそうもいかない。何事にも怯えまくるタツベイだが、ボールに仕舞おうとするとそれとは一線を画す程の怯えた……絶望の表情をする。

 ただ俺1人だとタツベイのフォローが出来ないのでミロカロスも出しっぱになってしまう。つまり街にいけない。

 

『ミロカロスを連れて街に行くとかなんの拷問よ』

 

『ふぉぉぉう……』

 

『うん? 仕方ないよ。タツベイのためだし』

 

 タツベイがボールに入ってくれるようになるか、人に慣れるまで野宿と相なった。

 

 

 

 

 それから色々と試してみたが、ミロカロスの主人という事でなんとなく信用されたみたいで、腕の中に収まってくれるくらいには進歩した。

 

『前は手を差し伸べただけで怯えてたし、大きな進歩か……』

 

 手をかざす。

 それで怯えるという事は……

 

『いや、考えるのはやめるか』

 

 考えたところで何か出来るわけでもない。そういう事は、まだ、考えるべきじゃない。

 

 色々試す中でタツベイについてわかった事が1つある。そもそもこの子は優しいのだ。

 戦闘をするのが元々好きじゃない性格で、自分のご飯をそこらの野生のポケモンに分けに行くくらいお人好し。

 優しくて、臆病で、戦闘に向かないこのタツベイがどうしてあんなところに捨てられていたか。

 

『……チッ』

 

『ふぉぉう』

 

『ごめんな。大丈夫』

 

 ポケモンには優しくしろと教わった。

 ポケモンは道具じゃないと教わった。 

 どれだけ時間が掛かっても真心を込めて信頼関係を構築する事がポケモンと強くなる1番の近道だと教わった。

 

 父さんと母さんがそうやって教えてくれて、それを実践してきた姿を見ているからこそ、ミロカロスがここにいて、タツベイがここにいる。

 だからこそ、ポケモンにあんな仕打ちをした奴は許せない。

 

『タツ?』

 

 これ以上は心配掛けてしまう。ようやく心を開いてきてくれたのに、また心を閉じさせるのは良くない。

 

『ご飯、食べるか?』

 

『タツー!』

 

 食べるー!と言っているのだろうか。

 

『ほら、そっちの子にも』

 

『タツ!』

 

 遠くからこっちを伺っているポケモンに分けてあげたいみたいで、両手で抱えて分けに行く。くっ、かわいい……!

 

『タツベイ。ボールに入ってみない?』

 

『タツ……』

 

 怖いか。タツベイにとって、ボールに入る事がどんな恐怖を呼び起こすのか俺にはわからない。

 言葉の通じ無い人とポケモンだから、ただタツベイの強さを信じることしか出来なくて、それがとてももどかしいけれど一番の近道だから。

 

『……ゆっくりでいいよ。ごめんな、タツベイ』

 

『ふぉぉぉう』

 

 大丈夫、俺とミロカロスがついてるから。

 

 

 

 

 

 まだボールに入る事は出来ないけれど、戦闘は少しずつ出来るようになってきたように思う。

 きっかけはケムッソが襲われてるのを助ける為に飛び出した事で、見事なずつきを決めてくれた。

 

『なんだ、戦えるんじゃん』

 

 無我夢中だったようだけど、その一歩はとても大きかった。自分で踏み出した一歩は、他人に押されて進む一歩より遥かに価値がある。

 

 襲われているポケモンがいないか見回ってみたり、時には俺とミロカロスが襲われてみたり。

 

 タツベイはまだボールには入りたがらないけど、どこか自信がついたように見える。

 

『んー……! 久しぶりの街だ!』

 

 肩に掴まるタツベイは今にも逃げ出しそうだが、何とか堪えてるみたいだ。

 結構戦闘もこなしたし、俺にも慣れてきたし大丈夫でしょうという事で強制的に街に連れてきた次第。

 そろそろしっかりしたお風呂に入りたかったというのはタツベイには内緒だ。

 

『……やっぱお風呂よ。なぁタツベイ』

 

『タツゥ……』

 

『そうか、気持ちいいか』

 

 お風呂はとても気持ちよかったみたいで、目を細めてリラックスしている。

 気に入ってくれたようでよかったよかった。

 

『ふぉぉぉぉう!』

 

『おい馬鹿っ!お前が飛び込んだらお湯がなくな──!!」

 

 ザッパーン!

 

 我慢出来なくなったミロカロスが飛び込んできて、ほとんどのお湯が流れて何が起きたのかわかっていないタツベイが目をパチクリさせているのが面白かった。

 

『ふっ……あは、あははは!』

 

 時間を掛ければ傷は癒える。そう確信した。

 

 

 

 

 タツベイがコモルーになる頃にはもうボールも克服していて、ボールに収まってくれるようになっていたが、あまりボールの中は好きじゃないみたいでちょくちょく外に出さないとボールの中で暴れてしまう。

 なるべく外に出しておくようにしている。

 

 そしてボーマンダになってしまえばボールの中もなんのその。あの日テレビで見た光景と同じような強さを誇るドラゴンポケモンが勇ましい雄叫びをあげ、敵トレーナーのポケモンを倒している。

 

 優しくて、臆病な君は物凄く強くなった。

 

 泣き出して、逃げ出して、怯えてる君はもういない。

 

 空を飛び、炎を吐き、他を圧倒するまでに成長した。

 

 優しいのは相変わらずでお腹を空かせてそうな野生のポケモンにご飯を分けてあげようとして、逃げられて落ち込む事が増えた。

 

 ここに来るまでにとても時間は掛かったけれど、ボーマンダになった君は全てを克服した。

 

 やっぱり教えは間違っていなかった。

 

 そう思えた。

 

 

 

 

 

Side タツベイ

 

 痛い。

 ぶたれて、蹴られて、罵声を浴びせられた。

 痛くて真っ暗闇の中で僕は捨てられて、もう死ぬんだって思った。

 

 意識が朦朧として消えかかっているところをご主人に救われた。

 

 前のご主人みたいに僕をぶつんじゃないかって怖くて、怖くて、怖くて何も見えなかったけれど、ミロカロスはとても優しさに溢れていて不思議と怖くなかった。

 

 ミロカロスは明るくて、優しくて、何も出来ない僕をずっと見守ってくれていて。

 

 お腹を空かせてる子を放って置けない僕を笑って許してくれた。

 

 ご主人も優しくて、ミロカロスはご主人といる時はもっと優しくなる。

 

 ご主人はミロカロスが大好きで、ミロカロスはご主人が大好きだ。

 

 優しい2人に囲まれて、僕も頑張らなきゃって思ったけど怖くて進めなかった。

 

 でも、襲われている子を見過ごせなくて、無我夢中でずつきをした。

 

 何とか撃退したら、ご主人もミロカロスもとても褒めてくれて嬉しかった。

 

 初めて入ったお風呂はとても気持ちよかったけれど、2人だけでずるい!とミロカロスが入ってきたらお湯が無くなってた。

 

 ご主人とミロカロスと他のみんなと過ごしてるうちに暗闇が怖く無くなっていた。

 

 あの時の痛みや苦しみが出てくる事が無くなっていた。

 

 目を閉じても、目を開けてもご主人達がいる。

 

 今はこうしてご主人の役に立てる。

 

 ほら、僕、戦えるよ。

 

 飛べるよって、前のご主人に自慢してあげたいな。

 

 きっと、悔しがる。

 

 ご主人に拾われてよかった。

 

 ご主人、大好きだよ。




主人公の2匹目のポケモンはボーマンダ。
あの頃のテレビで見た憧れのポケモンの1匹です。

Sideミロカロスとかも……いいなぁ。

では続きは気が向くか続編を望む声が多かったら。



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釣りをしていたら麦わら帽子の少女に会ったお話

新年あけましておめでとうございます。
思いつきました。ちょっと短め。


 釣りをしよう。

 唐突に浮かんだその思考が頭の中を支配してしまったので実行する事にした。

 

 いや、理由はきちんとある。普段ミロカロスはボールの中で窮屈な思いをしているだろうから時々海でのびのびと泳いで欲しいというアレである。

 

「ほら行ってこーい」

 

 ドポンと水飛沫を上げながら綺麗に海に入っていき、途端に何処にいるのか全くわからなくなってしまった。

 そして釣り竿を取り出してトプン。

 

「いい釣り竿をゲットしたからには試さねば、と」

 

 今までもミロカロスの為と称して釣りをしていたが、なんというかボロかった。故に今回グレードアップに踏み切った次第である。

 

 のんびりするのが好きな俺は、糸を垂らして獲物がかかるまでの間の時間が存外嫌いではない。

 元々ミロカロスを遊ばせている間の暇つぶしで始めた釣りだが、いつの間にか手段と目的が入れ替わっている気がする。

 

「まあいいか」

 

 ミロカロスも海で遊べて楽しい。俺も釣りが出来て楽しい。いい事づくめである。

 

 

 

「…………」

 

 釣れないなぁ。

 全くと言っていいほど釣れない。そもそも竿がピクリともしない。しかし、こういう日はいくらでもある。運の巡り合わせが良くない日が今日だったと思い、心を落ち着ける事が要求される。

 時間はまだお昼時。そう、まだお昼ご飯を食べていないから少し心に波が起きそうになっているだけで、空腹が原因なのだ。断じて釣れないからではない。

 

「今日のお昼ご飯は……っと」

 

 なんの変哲もないサンドイッチである。釣りを継続しつつ片手で食べるには最適の一品。ピクリともしない釣竿を眺めながらボーっと食事をするのはとても贅沢なのだがそろそろ当たりが欲しい。

 

「……お?」

 

 ピカチュウだ。

 ピカチュウがいる。

 海の上に。

 

「サーフボードで波乗りするピカチュウかぁ……野生かな」

 

 ミロカロスを戻す事を考えつつ、周りを見て人影がないかを確認。

 サーフボードなんて使ってるピカチュウがそう都合よく野生だとは思わないけれど。

 

「……いない?」

 

 であれば偶々サーフボードを手に入れたピカチュウが自発的に水の上で波乗りの練習をした事に。いや、どんな確率だ。

 トレーナーと逸れて進んできたと考える方がよっぽど自然だな。

 

「野生じゃなかったら後が面倒だし」

 

 もし逸れたトレーナーが後から追いついて俺がピカチュウを捕獲しようとしている場面に遭遇したらどう足掻いても面倒な事になる。

 諦めよう。

 

 

 

 

 

 波乗りでどんどん進むピカチュウを見送ってある程度時間が経った頃。

 相も変わらず竿はピクリともせず、流石にアタリが来なさすぎではないかと首を傾げていると、

 

「あの、すみません! サーフボードに乗ったピカチュウを見ませんでしたか!?」

 

 麦わら帽子を被った少女が息を切らして走ってきた。

 ……良かった。こんな子の手持ちポケモンに手を出すところだった。

 

「見たよ。向こうから来てあっちの方にどんどん進んでったな」

 

「本当ですか! ありがとうございます!」

 

 そう言って駆け出そうとする。

 

「あ、待って。どうせなら送って行こう」

 

「いいんですか?」

 

「うん。結構濡れるだろうけど、それでもいいのなら」

 

「お願いします」

 

「了解」

 

 ピュイと口笛を鳴らす。

 これは戻っておいでという合図で、よっぽど遠くまで行ってなければ──。

 

「ふぉぉぉぉう」

 

 随分と早いね……?

 まあいいや。

 

「ずぶ濡れは覚悟して。ミロカロス。なるべく水飛沫をあげないように素早くお願い」

 

「ふぉぉう」

 

 任せて、とばかりに頷いてくれた。

 うちのミロカロスはとても頼もしい限りである。

 

「……? 急ぐよ?」

 

「あ、はいっ! 今乗ります!」

 

 俺はミロカロスの背に立ち、麦わら帽子の少女はミロカロスに跨らせるのを確認して、出発する。

 

「わわっ、結構揺れるんですね」

 

「うん、どうしても揺れるから落ちないようにしっかり捕まって」

 

「……お兄さんは、よく立てますね」

 

「練習したからね」

 

「練習?」

 

「そう、ミロカロスみたいなフォルムのポケモンに立って波乗りをしてみたかったんだ。流石に波が高いと無理だけどこのくらいならこの通り」

 

 理由はただ一つ。跨るよりその方がカッコいいから。

 それだけの理由で俺はミロカロスの背に立っている。

 

「それよりも、聞いてもいい?」

 

「あ、はい。何でも聞いてください」

 

「ピカチュウと大分離されてたようだけど何かあったの?」

 

「あ、あー……」

 

 麦わら帽子の少女は少し言いづらそうに頬をポリポリとかいたあと、数瞬口をパクパクさせてから意を決した表情をして、

 

「その、日差しが気持ちよくて昼寝をして……起きたらピカがどこにもいなくて」

 

 昼寝をしていた事を恥ずかしそうに告白する。

 

「ああ。今日はとても良い天気だからね」

 

 寝ていたら自分のポケモンがいなかったなんて焦るだろう。なんせトレーナーはいい人ばかりではないのだから。

 

「見えてきたよ」

 

「あ、ピカ! ……良かったぁ」

 

「ふぉぉぉう」

 

「良かったねって」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 麦わら帽子の少女のピカチュウも無事に見つかり、ミロカロスも遊べたようで上機嫌。全くアタリが来なかった事を除けばパーフェクトだったのに。

 

「まあいいか」

 

「あ、お兄さん。今日は本当にありがとうございました!」

 

「何ともなくて良かったよ。次から昼寝する時は気をつけてね」

 

「う……気をつけます」

 

「じゃ、また縁があったら会おう」

 

「……ボクは、イエロー・デ・トキワグローブっていいます! お兄さんのお名前は何ですか!?」

 

「しがないトレーナー見習いだよ。名乗る程の者でもないかな」

 

 キメ顔。そして颯爽と立ち去る……!

 カッコいいのでやってみたかった。麦わら帽子の少女もといイエローには申し訳ないけど、うん、また会えるでしょう。

 




ポケスペはいいぞ(布教)
29巻までしか読んでないですが、ポケスペは最高です。笑いあり、涙ありです。オススメです。

時系列で考えると頭がバグりそうになったのでそんなものは気にしない方向で。いずれ矛盾が出そうな気もしますが広い心で許してくださいお願いします。

続き?は思いつくまで気長にお待ち下さい


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相棒と温泉に入るだけのお話

思いつきました。今回も短いです。


 フエンタウン。

 ロープウェイを登った先にあるこの地には何がある?

 そう、温泉があるッ!

 

 何を隠そう俺は温泉が大好きである。

 温泉が好きで温泉が好きな俺は、ポケモンと一緒に入れる温泉があるという噂を聞きつけ、てこてこやってきたわけなのだ。

 

「……え? そこをなんとかお願いします」

 

 初めはミロカロスを入れる事を渋られたものの、なんとかお願いし通して絶対に静かにさせる事を条件に許可を得た。

 

「よし、入るか」

 

 脱衣所で服を脱ぎ去り戦闘準備は完了。お湯の中にタオルを入れるのはマナーがなっていないので頭の上に置いておく。

 ミロカロスが入っているモンスターボールとタオルを持ち、いざ出陣!

 

「出てこい、ミロカロス」

 

 まずは身体を洗う。そしてミロカロスも洗う。

 手でゴシゴシと……いやお前身体大きいのよ。洗う面積っ!

 

「ふぉぉぉう……」

 

 ……気持ち良さそうにしてるし、仕方ないから気合を入れよう。

 

「おりゃりゃりゃりゃりゃーー!!!」

 

「ふぉぉう!」

 

 ミロカロスの身体全体を洗い終える頃には息も絶え絶え、疲労困憊になってしまったがここは温泉。疲労回復にはもってこいの泉。

 ミロカロスを洗う事で疲れを蓄積させ温泉の効果を最大限受けようという素晴らしい計画。

 

「よし、入ろう。ミロカロスは水飛沫を立てないようにゆーーーっくりね?」

 

「ふぉぉう!」

 

 足先をつける。ああ、少し熱めではあるが良い温度だ。

 手で温泉を掬って足に掛け、腕に掛け、そして最後に身体に掛ける。

 

「はぁぁぁぁぁ……」

 

 ゆっくり首まで浸かっていくと自然に声が出る。疲れた身体が溶けていくような感覚で、温かい温泉に包まれるのが本当に気持ちいい。

 隣のミロカロスも言いつけ通り大人しく温泉に浸かっているし、気持ち良さそうである。

 

「あったまるぅ」

 

 運のいい事に今俺とミロカロスしかいないので足を伸ばしてプカリと浮いてみる。

 極楽である。

 

 俺のリラックス具合を察知したのかミロカロスもすいすいと水飛沫を立てないように綺麗に泳ぎ回る。マナーが悪うございますよ。

 

「人きたら戻ってくるんだぞー」

 

「ふぉぉぉぉぉう」

 

 貸し切り状態は少し気持ちも大きくなる。公共の場所なのに誰もいない状況ってちょっと大胆な事したくなるよねっていう心理状況。

 

 すーいすい。

 

 いや、そんなに深さがあるわけでもないのによく優雅に水飛沫を立てずに泳げるものだよ。

 何が楽しいのか俺の周りをただひたすら回っている。

 

「んー……! 極楽極楽」

 

 伸びをして身体をほぐす。

 偶にはこういう日もいいだろう。

 

 もう少し、泳いでるミロカロスを眺めていようかな。

 

「……あの、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です。気にしないでください」

 

 気がすむまで眺めてたらのぼせて受付の人に心配されましたとさ。




思いつきを投稿してたら思ってたより多くの人に読んでもらえてランキングに載ったみたいです。
評価してくださった皆さまありがとうございます。

これからも思いついたら書いていきますので、気長に広い心でお待ちください。


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暴れん坊なポケモンを捕まえたお話

思いつきました。
今回のお話、捕まえたポケモンの鳴き声が「…………」で構成されています。鳴き声が思いつかなさすぎて話が全く書けなかったのでいっそ鳴き声を書くのをやめました。ご了承ください。


 新しいポケモンをゲットした。

 それは、新しい仲間が増える瞬間であり、旅が更に賑やかになるという事であり、心躍る瞬間である。

 

 ボールに収まったものの、ガタガタと暴れるポケモンをボールから出してはじめましての挨拶をしようとして、

 

 思いっきり蹴り飛ばされた。

 

「ぶべらっ!?」

 

 なんでぇ……?

 

 

 

 

 

 

 改めて。

 旅の途中何やら強そうな雰囲気を放つポニータを見つけたので捕獲を敢行した。

 適度に弱らせてからゲット。これから仲良くやっていこうと思った矢先の出来事であった。

 

「…………!」

 

 気性荒すぎではないでしょうか。

 なんかずっと睨まれてるし。なんなら今にも向かって来そうな勢いで、まるで親の仇を目にしているかのよう。

 

「落ち着け。ステーイ。ステーイ」

 

 向かって来たんですけどぉ!?

 ちょ、たいあたりは絶対に痛い!

 

「戻れ!」

 

 痛いのは嫌いです。

 なので咄嗟に戻してしまいました。

 

「……どうすっかなぁ」

 

 離れても向かってきてたいあたりで、近づけばにどげりをくらう。なんだってんだい。

 

「気長にやるしかないか」

 

「ふぉぉぉう」

 

「ん? 手伝ってくれるのか。ありがとな」

 

 ミロカロスを撫でながら、長くなりそうだなと溜め息をついた。

 

 

 

 

 

 今日も今日とて臨戦態勢。

 

「……」

 

 フシューと鼻息荒く、さあ今にも突撃しますと言っているかのよう。

 

「ゴー、ミロカロス」

 

 俺では受け止められないので、ミロカロスに遊んでもらう事にする。いざとなったらボールに戻せばいいのでどうとでもなる。

 

「迂回するのは聞いてないなぁ!?」

 

 マズイ。と反転してダッシュ。

 

「ミロカロスーーーーッ! 頼んだ!」

 

「ふぉぉぉぉう!」

 

 ミロカロスが目に入っていないんじゃないかというぐらい愚直に俺に向かってくる。

 岩の如き身体を持ってたらいくらでも受け止めてあげるのだけど、あいにくそんな身体は持っていないのでひたすら逃げ回る。

 

 疲れたらボールに戻して休憩。

 

 しばらく休憩してからまた追いかけられ、時々ミロカロスに止めてもらい、やり過ぎてポケモンセンターに駆け込む。

 ジョーイさんの前では大人しいらしい。なんだコイツ。

 

 

 

 人もポケモンも動き回れば腹も減る。

 

「美味いか」

 

「…………」

 

 流石に、食事中は向かってこないみたいだ。睨んでくるけど、それ以上は何もしてこない。

 俺の問いかけにはフンとそっぽを向いて黙々と食べている。

 

「ふぉぉぉぉう」

 

「おかわりはありません」

 

 ずずずいっと空になった皿を差し出してくるミロカロスには無慈悲な宣告をする。あんまり食べ過ぎると太るのでこれ以上はノー。

 

 

 

 

 

 ぐるぐると。

 ミロカロスの周りを回る。

 

「うははっ、追いついてみろ!」

 

「…………!」

 

 ミロカロスの周りを回る理由は、追いつかれそうになったり、何かあったりした時に助けてもらう為だ。

 たいあたりもにどげりも喰らうのはごめんなのだよ。だって痛いんだもの。

 

「ふぉぉぉぉう♪」

 

「…………ッ!」

 

「なんでスピードアップ!?」

 

 間一髪でボールに戻す事が出来た。

 あんなとっしんを受けたらただじゃすまない気がする。

 

「ふぉぉぉう」

 

 ミロカロスはこんな時でも楽しそうで良かった。

 

 

 

 

 そんなこんなで、暴れポニータが暴れギャロップに進化した。

 

「おーでっかくなったなぁ」

 

「……」

 

「待て待て待て。その身体で向かってくるのは流石に反則じゃないか? 言わば大人の身体になったのにその狭量さはどうかと思う。なので背中に乗っていい?」

 

 せっかくギャロップに進化したのなら乗ってみたい。進化前の事は全て水に流して清い気持ちで是非俺のことを乗せて欲しい。

 ギャロップに乗って風になりたいのだ。

 

「…………」

 

「お? やけに素直だね」

 

 乗りやすいようにしゃがんでくれたので遠慮なく乗る事にした。

 

 炎に焼かれました。

 

 ギャロップの背があんなに熱いなんて聞いてないのだが。

 

「だからかっ!」

 

 フンとそっぽを向くギャロップ。バトル中は言う事を聞いてくれるのにそれ以外は全く馴れる気がしない。

 可愛くないヤツ。

 

「……仕方ない、躾の時間だ!」

 

「ふぉぉぉぉう!」

 

「…………!?」

 

 ヤケにノリノリなミロカロスと共にギャロップを躾けて、しっかり回復した後。

 

 

 

 

 

「…………」

 

「なんだ、乗れってか」

 

 地面に伏せってこっちをじっと睨んでくる。

 はいはい、わかりましたよ。

 

「あれ、熱くない」

 

「…………」

 

「おおっ!?」

 

 急に立ち上がって乱暴に走るギャロップ。

 振り落とされないように首に抱き着いて、燃え盛るタテガミに触れた。

 

 前はあんなに熱かったのに、今は心地よい暖かさである。

 

「…………ッ!」

 

 ギャロップの嘶きが聞こえ、顔を上げる。

 

「……うわっ」

 

 風だ。

 風になっている。

 

「…………!」

 

 嘶きと風と流れる景色。

 ──ああ、気持ちがいい。

 

 

 

 

 躾が効いたのかよくわからないけれど、こうして背に乗せてくれると言う事は、少しはコイツに認められたのかもしれない。

 

「ありがとな」

 

 ギャロップの背から降りて頬を撫でる。

 そしてひのこで燃やされた。

 

「あづぁーーーッ! ミロカロスー!」

 

「ふぉぉぉぉう!」

 

 ミロカロスに消火してもらってなんとか一命を取り留めた。

 やっぱり、可愛くないヤツ。

 

 

『こんな話を知っているだろうか。ギャロップは認めた人しか背に乗せない。認めぬ人が無理やり乗ろうとするとたちまち炎に包まれるだろう。しかし、認めた人が背に乗れば不思議とその燃え盛るタテガミを触っても燃えることはないのだと』

 

 

 

Side ギャロップ

 

 一目惚れだ。

 

 一目見て好きになった。

 

 しかし、その隣にはいけ好かないヤツがいた。

 

 ミロカロスの隣には常にアイツがいて、楽しそうに笑っている。

 

 気に食わない。だが、あまりやり過ぎないでねと言われている。

 

 どつくぐらいで勘弁してやろう。いや、やっぱり蹴りも追加だ。

 

 バトル中だけでもいいから言うことを聞いてあげてねと言われたので渋々指示は聞いている。

 

 ああ、気に食わない。

 

 アイツをいくらどついてもアイツは仲良くなると言って聞かないし、ミロカロスはアイツを見てとても楽しそうだ。

 

 ああ、気に食わない。

 

 あの子は、バトルしてる時が1番カッコいいのよ。って。

 

 ああ、気に食わない。

 

 それで納得してしまった自分が気に食わない。

 

 ミロカロスが笑うのはアイツの側でだけで、アイツが笑ってるとミロカロスも嬉しそうだ。

 

 ああ、気に食わない。

 

 ミロカロスの為だ。

 

 決してアイツなんかの為ではない。

 

 ミロカロスが喜ぶのなら、偶に背に乗せてやらんこともない。

 

 そんな真っ直ぐなありがとうなど、貰っても嬉しくないのだ。

 

 




ポニータとギャロップって文字でどうやって鳴き声書けばいいんだろうって考えてたらこの話書けなくなりそうだったので苦渋の決断です。
手持ちの3匹目はギャロップです。

「ギャロップが認めた人が背に乗ると不思議と熱くない」
というのをやりたくて書きました。ギャロップにそういう設定があるかは分かりませんが二次創作という事でひとつ。

それではまた、思いついたら。


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海の中に潜ったお話

思いつきました。


 ダイビングという技を使うとトレーナーも一緒に海中に潜れるらしいという噂を聞いた。

 おあつらえ向きのポケモンが俺の手持ちにはいるじゃないかと言う事で、覚えさせて使ってみた。

 

「どうなってんだこれ」

 

「ふぉぉぉう」

 

 ポケモンの背に捕まってダイビングという技を使って潜ったら水中で息が出来る不思議な現象が起きた。

 よくわからないけどそう言う事なんだろうと思う。

 

「すっごい」

 

 海の上から見る海中と海の中からみる海中は完全に別物だ。見た事ないポケモンや、ドククラゲやラブカスなんかの知ってるポケモン、ホエルオーなどの巨大なポケモン。

 澄んだ青の世界で数多のポケモンが思い思い泳いでいる。

 

「ふぉぉぉぉぉう」

 

「ん? 海底か」

 

 海底まで辿り着き、砂を少し巻き上げながら進む。

 

「パールルに……あっ、ジーランスだ!?」

 

 博物館で見た事あるポケモンまで見かけるとは思わなかった。

 生きた化石とまで言われるジーランスをこの目で見る事が出来るとは思わなかった。

 

「……いやぁ、取り入れてみるもんだな」

 

 そもそも半信半疑だったけれど、実際に潜れて、貴重なポケモンまで見てしまったとあればその有用性を認めざるを得ない。

 

「ふぉぉぉう!」

 

「どうしたミロカロ……スっ」

 

 海底の砂が舞い上がる。

 視界が砂に覆われて、周りの状況がわからなくなり、ミロカロスが全力でその場から離れたので剥がされないようにしっかりと掴まる。

 

 後ろを振り返って、驚愕。

 

「……逃げろッ!!!」

 

 海上へ、方向転換。

 アレは、人が相対してはいけないポケモンだ。脇目も振らず全速力で海の上へ。

 

「まずいまずいまずい!」

 

 逃げて逃げて海上へ。

 

「戻れミロカロス! ボーマンダ!」

 

 やけに長く感じた海上までの時間。

 海上に上がった瞬間ミロカロスを戻して、ボーマンダを出して飛び乗る。

 

「急いで!」

 

 説明している時間はない。

 俺の意図を察してくれたボーマンダは陸地へ向けて全速力で飛び出して。

 

 ゴッッッ!!!

 

「……そんなんありかよ」

 

 海に穴が空いて。

 少し前まで俺がいた場所を通過していった水のレーザーが消えた頃。

 

「……バケモンじゃねえか」

 

 ビンビン感じていたプレッシャーが消え失せて、ボーマンダの背の上で長い息を吐く。

 

「あれが海の王か」

 

 気まぐれに向けられた敵意。

 見知らぬ存在への興味。

 

「……カイオーガ。海そのものだな」

 

 人がどうこう出来る存在じゃないな。

 この広い海で偶々潜った場所に偶々カイオーガが近くに来ていた。

 

 ……そんな偶然有りなのか。

 

「あれが、伝説のポケモンかぁ……」

 

 ミロカロスがいち早く気付いてくれなかったら俺は今頃海の藻屑になっていただろうと思うとゾッとすると共に、とても高揚してきている。

 

「伝説のポケモンに逢っちまった……!」

 

 また逢えるといいな。

 

「また、潜ってみようかな」

 

 色んな場所で、色んな地方で、ミロカロスと一緒に潜っても楽しそうだなと思うそんな日だった。




何やら、お気に入り登録者が5000を超えて戦々恐々としています。ありがとうございます。
不定期かつ短くて思いつきなこの短編集がここまでの人々に読んでいただけるとは思ってませんでした。


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雪遊びをしたお話

久しぶりに思いつきました。


「……さむっ」

 

 朝目が覚めると予想以上の冷え込みに身体が布団から出る事を拒否する。

 

「なるほど」

 

 寒さに耐えながら窓から外を見てみると、雪が積もっていた。

 

 

 

 

 

「今日は雪遊びをします」

 

「ふぉぉぉぉう!」

 

「…………」

 

「はいそこ! 雪をいたずらに溶かさない」

 

 せっかく積もった雪をすぐ溶かそうとする君はしばらくボールの中にいてください。

 全く、油断も隙もありゃしない。

 

「雪といえば雪合戦ではないでしょうか」

 

「ふぉぉう?」

 

「俺がこうして……雪玉を作って当てるから逃げて?」

 

「ふぉぉう!」

 

 

 

 

 

 

 

 そもそも。

 ポケモンに身体を使う遊びを提案したのがミスだった訳で。

 

「……しぬ」

 

「ふぉぉぉぉう」

 

 疲労困憊で雪の上に寝転がる俺を心配そうな表情で見ていた。

 

「一発くらいは当てられると思ったんだけど」

 

 ミロカロスは滑るように移動して当たりそうになるとみずでっぽうで溶かすし、

 ボーマンダは雪玉が届くか届かないかのギリギリを飛行して躱すし、

 ギャロップは突っ立ってるだけで周りの雪が溶けていくし、

 

「いや、技使うのは反則じゃないかなぁ!?」

 

 無理でした。

 

 

 

 ある程度回復したので雪遊びを続行する。

 雪だるまをのんびりと作りながら3匹が戯れているのを眺める。

 

 一応配慮してくれてるのかかなり遠くで炎全開で走り回り、一帯を春にしている光景や、

 ボーマンダの背に乗ったミロカロスが華麗なダイビングジャンプを決めていたり、

 ボーマンダがぐるぐるに巻きつかれていたり、

 それを見たギャロップが突っ込んできてボーマンダと喧嘩していたり、

 仲裁のれいとうビームで仲良く氷漬けになったりしていた。

 

「もう日が暮れてきちゃったか」

 

 大きい雪だるまも作ったし、そろそろ帰──。

 

「はしゃぎ疲れたかな」

 

 3匹が絡まって仲良く寝ている姿を見て、この光景をもう少し見ていたいと思った。

 

 

 

 

 

文字数足りなかったので嘘予告します。

 

「ミィィィィィ!」

 

 空から落ちてきたのは見た事もないポケモンで。

 

『ミーはお花畑に行かなきゃならないんでしゅ!』

 

 見事俺の頭に着地を決めたそのポケモンはそう言って聞かなかった。

 

「お花畑……? 聞いたことないですね」

 

「あらお兄ちゃん。久しぶりに連絡くれたと思ったら……そのポケモンは……」

 

「え? そもそも地方が違う?」

 

 シェイミと共に、地方を超えていざ久しぶりのシンオウ地方へ。

 お花畑を目指す旅には強制的に昔の知り合いがついてくるようで。

 

「そりゃあ久しぶりに会った訳だし、あたしもシェイミの花運びは一度見てみたいと思っていたの」

 

 無事にお花畑まで辿り着けるのか──!?

 

 




そういえば主人公の名前がまだ出てきてないなと。

大分間隔が空いた気がします。

また空くかもしれませんが思いつくまで気長にお待ちください。


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空に憧れたポケモンのお話

気付いたら3ヶ月も経過していたみたいです。忙しかったので許してください。
シェイミ編を書いていたら唐突に書きたくなったお話。


 空を飛びたいと、いつも空を見上げていた。

 僕に出来る事は精々木を這い回る事ぐらいで。

 木の上から届くはずのない空を見上げていた。

 

 空を悠然と飛ぶあの姿に憧れた。

 悠々と空を飛び、空は自分の物だと主張する様に雄大で。

 大きな翼を持って羽ばたきたい。そういつも願っていた。

 

 あるはずのない翼を幻視して、木の上から飛び降りた。

 もちろん地面に落下して、痛かった。

 見上げた空は更に遠かった。

 

 何度も、何度も飛び降りて、いつか翼が生えないかと叶うはずのない願いを抱いて。

 

 仲間に笑われた。

 

 出来るわけないと言われた。

 

 飛べると言い返した。

 

 いつか飛べると信じていた。

 

 あのカッコいい翼を携えて、僕も空を悠然と飛ぶんだ。

 

 

 蛹になった。

 

 殻の中で翼を幻視する。

 

 あの空を飛べる翼が欲しいと願った。

 

 殆ど動けない身体でそれだけを願った。

 

 

 遠い、遠い空を見上げて。

 

 ああ、今日も空を飛ぶあの姿が見える。

 

 大きな翼でカッコいい姿で。

 

 僕も、空が欲しい。

 

 欲しくて、欲しくて、堪らない。

 

 それだけでいいんだ。

 

 

 

 殻が割れる。空が見える。

 

 ああ、羽ばたける。

 

 空が見える。空に手が届く。

 

 ついに、ついに、あの空が手に入る。

 

 優雅に、華麗に、そして空を僕の手に。

 

 ずっと憧れた空を飛んでいる。

 

 無理だと諦めなくてよかった。

 

 楽しい。

 

 楽しい。

 

 今が、とても楽しい。

 

 あの時見上げた空がここにあって。

 

 ただ見上げているだけだった僕はもういない。

 

 この空を自由に羽ばたける僕は、

 

 あのカッコいい姿にも劣らない。

 

 木が、あんなにも遠い。森を全て見渡せられる。

 

 ほら、あの姿が横にある。

 

 埋まるはずのなかった距離が今、埋まった。

 

 叶うはずのない願いが、叶ったのだ。

 

 ひらりひらりと舞い降りて、花の蜜を吸う。

 

 空を見上げてみた。

 

 あの頃はあんなに遠く感じた空が、今はこんなにも近く感じる。

 

 僕を馬鹿にした仲間が飛んでいる。

 

 とても楽しそうだ。

 

 そうだろうそうだろう。空は楽しい。

 

 僕があんなにも焦がれた空は楽しいだろう?

 

 蜜を吸い終わったのでまた羽ばたく。

 

 どんなところにも行ける。だってこの羽があるから。

 

 色んなところに行って色んな場所を見たい。

 

 どんな花があるんだろう。何がいるんだろう。

 

 襲われるかな。仲良くなれるかな。

 

 何だって出来る。だってこの羽があるから。

 

 自由で、無敵で、カッコいい、僕の羽。

 

 さあ、羽ばたこう。

 

 どこまでもどこまでも高く。

 

 どこまでもどこまでも遠く。

 

 何よりもこの自由な空へ。

 

 僕にはそれが出来る。出来るんだ。

 

 だって、僕は蝶だから。

 




というわけで空を飛びたいと願ったキャタピーのお話でした。

空を飛んでるポケモンはボーマンダのつもりで書いてます。
……あれ、ボーマンダに乗って空を飛んでるトレーナーがいたような。

次は気が変わらなければシェイミ編です。

それでは、気長にお待ちください。
感想をくれると元気が出ます。

リクエストなどあればこちらに
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=280789&uid=175894


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モフモフに包まれたお話

リクエストを見てたら思いつきました。


 ポケモン保護区域。

 ホウエン地方某所に存在し、傷ついたポケモンなどを保護して野生に返す為の場所である。

 

「んー、広い」

 

 本来人が立ち入る事は不可能な場所に特別に入れてもらった。

 

 

 エリアは主に四つで、草原エリア、森エリア、山エリア、水辺エリアと分かれていて、多種多様なポケモンがホウエン中から保護されここで暮らしている。

 

「よし、いけっ」

 

 本来人がいない場所に人がいるのはあまり良くないので俺は入口付近から動くつもりはない。

 代わりに手持ちをのんびり遊ばせようと思う次第である。

 

「好きに遊んできな」

 

「ふぉぉぉぉぉう」

 

 ミロカロスがボーマンダに巻きついて飛んでいった。俺のポケモンの手持ちにも序列が出来ているという事か……相性も最悪だし。

 

「強く生きろよ……」

 

 恐らく水辺エリアまでの足にされたボーマンダはこれからも頑張ってほしい。この序列は一生覆る事はないと思う。

 

「な?」

 

「…………」

 

 シュッ、と無言で繰り出される後ろ足。

 それを間一髪で躱す俺。

 

「やっぱ可愛くねえ! 早く遊んでこい!」

 

「…………!」

 

 

 

 

「……よし、寝るか」

 

 遊び疲れて3匹が戻ってくるまでまだまだ時間はあるだろう。

 せっかくの天気で、こんなに寝転んだら気持ちよさそうな草原なんだ。これは寝るしかないだろう。

 人もいなければ、どうせ近寄ってくるポケモンもいない。なら、ゆっくり出来るだろう。

 

 

 

 

 

 まどろみの中で、鼻がムズムズした。

 くしゃみが出そうだ。

 

 口に手を当てようとして、手が動かない事に気がついた。

 

「……ふえっくし! ……あえ?」

 

 目を開けると、目の前がピンクだった。

 

「どういうこと?」

 

 状況を整理しよう。

 目が覚めたら視界がピンクだった。

 全くもって意味がわからない。そして体が動かない。

 

「なにこれ?」

 

「なーお」

 

 視界を覆っていたピンクが動いて、俺の目には物凄い数のエネコが俺の周りで寝ているというわけのわからない光景が映っていた。

 

「なんで?」

 

 右見ても左見てもエネコ。

 ポケモン保護区域のポケモンは人に傷つけられた場合も多く警戒心が高いって聞いてたんだけど。

 

「んな〜?」

 

 警戒心とかカケラもなさそうな雰囲気なのだが。殆どのエネコが寝てるし、起きてるのはこの顔に乗ってたふてぶてしいこのエネコくらいなものである。

 

「あの、どいてくれません?」

 

 身体が1ミリも動かせないんですが。

 

「な〜」

 

 ダメらしい。首を振られた。

 

 くっそ、モフモフに包まれすぎて何も出来ん。

 

 もう一回寝よ。

 

「な〜お」

 

 ほらエネコもおやすみって言ってるし。

 

 

 

 

「んあ……?」

 

 なんかひんやりしてる。

 

「ふぉぉぉぉぉう!」

 

「あ、おはよう。ミロカロス」

 

「ふぉぉぉぉう!!」

 

「あの、ところで。なんで俺巻き付かれてるの?」

 

 エネコの次はミロカロスか。

 

「ふぉぉぉぉぉう!」

 

「うん、ひんやりして気持ちいいけど、そろそろ解放して欲しいかな?」

 

「……ふぉぉぉう」

 

 しぶしぶといった雰囲気を出しながら離してくれた。

 近くに、エネコが山になっている。

 山になっててもエネコ達は全く気にならないようで、のんびり寝ている。

 

「……コイツら、野生に帰してもいいんじゃなかろうか」

 

 むしろ警戒心のカケラもないコイツらに少し警戒する事を教えた方がいいんじゃなかろうか。

 

「……うん、帰ろうか」

 

 ミロカロスもいるし、ボーマンダもギャロップも戻ってきた。

 

「んー! よく寝た」

 

 夜は寝れないかもしれない。

 

 




そんなわけでリクエストよりエネコに埋もれる主人公を書きました。
エネコに包まれた主人公を見たミロカロスが嫉妬して巻きつくシーンが思い浮かんだので書きました。書き出すまでに随分とかかりました。
次も気長にお待ちください。

リクエストも受付中だったりします。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=280789&uid=175894


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釣られてきた珍しいポケモンのお話

 同じところを徘徊するだけの日々だった。

 変わらない風景、変わらない日常。

 本能で過ごすだけだった私は、不幸にも━━いや、幸運にも釣られてしまってから運命が変わった。

 

 

 私をかっこよくないと指差しながら泣き喚く小さな男の子がいた。

 『私は可愛いと思うんだけどなぁ……もしかして私の感性って変?』とボソボソ呟く女の人がいた。

 『父さんはかっこいいと思うけど』とあたふたしたながら話す男の人がいた。

 

 程なくして私は池に放され、一人で泳ぐ事になった。

 群れから離れてもやる事は変わらなくて、同じところをぐるぐるぐるぐる回るだけ。

 時々投げ込まれるエサを食べながら、ただひたすら。

 

 人が近づくとエサをくれるとわかった。

 与えられるエサは美味しい。故に近づいてエサをねだるのだ。そうするといつもより多くくれたりする。役得なのだ。

 

 小さな男の子が初めて池の前にやってきた。

 エサを貰えると思って近づいたけど中々くれない。

 くれないのかな? と思いながら待ってるとおずおずと小さな手が近づいてきた。

 食べると小さな男の子の顔がパッと輝いてすぐ戻る。

 

 それから、ちょくちょく私のところに来てくれるようになってエサをくれた。

 色んなところにエサが投げられてそれを片っ端から食べていく。それだけでとても嬉しそうにしているのだ。

 それくらいならお安い御用です。

 

 ある日、小さな男の子が怪我をして帰ってきた。

 怪我はダメだ。群れの中でも岩にぶつかって怪我をしたやつはその後から上手く泳げなくなった。

 きっと小さな男の子は上手く歩けなくなってしまう。

 でも、小さな男の子はニコニコと笑ってどこか誇らしげだった。

 

 一度だけ、小さな男の子に

 

『お前、ずっとそのままなの?』

 

 と聞かれた事がある。

 そのまま? よくわからなくて、なんの反応も出来なかった。

 それ以来その言葉を聞く事はなかった。ただその言葉を言う小さな男の子は全然楽しそうではなかった。

 

 

 

 ポチャンと何かが落ちてきた。

 よく小さな男の子がエサを投げてくれるからそれだと思って食べた。

 物凄く美味しかった。

 美味しすぎて暴れたせいで何かあったのかとみんな寄ってきてしまった。

 恥ずかしい。

 

 

 時は流れて小さな男の子は男の子になって、旅立つという話を聞いた。

 ついて行きたかった。

 

 あの子は親の前じゃ格好をつけたがるけど、よく池の前で一人で泣いていた。

 辛い。嫌だ。とひとしきり泣いて立ち上がれる強い子だ。

 なんとかして力になりたかった。

 

 一度置いてかれそうになったけど、跳ねてでも着いていこうとしたら根負けしてくれて連れて行ってくれる事になった。

 

 嬉しかった。

 私は弱いけど、どうにかして役に立ちたいと思った。

 

 役立つ機会は意外と早く訪れるもので、私は進化した。

 進化の光に包まれている間、私はあの時のあの言葉を思い出した。

 

『お前、ずっとそのままなの?』

 

 今の私が過去に行けるのなら、あの時の私に凄くかっこよくなるから待っていなさいと言わせたい。

 

 これで役立てる。

 嬉しかった。とても、嬉しかった。

 

 あなたのパートナーである私は、

 

 カッコよくて、可愛くて、強いんだから。

 

 そう、証明出来る。

 

 

 色んな冒険をした。

 色んなトレーナーと戦って、色んなポケモンと出会って、色んな人に追われた。

 出会いがあれば別れもあった。

 

 でも、あの子の最初のポケモンは私で、あの子のパートナーはずっと私だ。

 あの子にべたべたするポケモンはいっぱいいて、つゆ払いするのが大変だった。あの子は優しいから。

 

 でも、最後には私が横にいる。

 だってパートナーだから。

 ずっと、ずっと、お側に。

 あなたの隣でずっと戦いたい。

 あなたのお役に立ちたい。

 

 お慕いしてます。私のご主人様。




ちょっと嫉妬深いところもありますけど、根底にあるのは大好きなご主人様の役に立ちたいという感情です。

本来ならもっと早く書く予定でしたが何分思いつきで書いてるので随分遅くなりました。
続きは不定期ですので気長にお待ちください

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=280789&uid=175894
引き続きリクエスト受付中です。イメージが沸けば書くかもしれません。


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ミロカロスが一人遊びをするだけのお話

シェイミ編が中々進まない……ので息抜きです。


 とある地方のとあるビーチ。

 手持ちをモンスターボールから解放したトレーナーは煌々と照り付ける日差しを嫌い、パラソルの下に引っ込んでしまった。

 

 炎のたてがみを持つポケモンは砂に足を取られるのを嫌い、ビーチ近くの草地で青草を食む事にしたようだ。

 

 赤の翼のポケモンは元気にビーチ周辺を飛び回っている。休む気満々のご主人様を警護するんだと意気込んで、逆に疲れてしまわないか心配である。

 

 トレーナーの手持ちの残り1匹。

 そう、暇を持て余したミロカロスが一人で遊ぶだけのお話である。

 

「俺はここで寝てるから。好きに遊んでおいで」

 

 必ず自分の元に帰ってくると全く疑わないトレーナーの言葉にミロカロスは少し嬉しくなりながら、でも特にする事はないなと思案する。

 

 ご主人様に仇なす不届き者はボーマンダがきちんと見張ってくれているので、ミロカロスに特に役目はなかった。

 

 本格的に眠りに入ってしまったトレーナーの寝顔をしばらく眺めてから、太陽光を反射してキラキラと輝く海に目を向けた。

 

 海を散歩しようかな、と。

 

 

 前提として、ミロカロスは水中にいるべきポケモンだ。

 トレーナーが陸にいるので必然、ミロカロスも陸にいる事になる。陸で活動出来ないポケモンではないし、ご主人様と一緒にいれるのであれば陸にいる事になんの不満もない。

 

 だが、やはり水中を泳ぐのはいいものだと実感する。

 

 釣り上げられる前に泳いでいた川。

 

 釣り上げられてから泳いでいた池。

 

 そして今泳いでいる海。

 

 どれも気持ちいい。思いっきり泳げるのはとても良い。

 

 進化前は小さかったからあの池でも悠々と泳げたが、今は余ってしまうだろう。

 夏の暑い日は、汗だくになりながら氷を運んでくれたのを覚えている。

 

 その事を思い出して、少し頬を緩めながらミロカロスは海を進む。

 

 そもそもの話である。

 ミロカロスというポケモンは長年謎に包まれていて、見かける数も少ない超希少ポケモンであった。

 野生下のヒンバスがミロカロスに進化する事例はまず無く、極々稀に突然変異の如くミロカロスに進化する個体がいる程度で人の目撃例など皆無に等しい。

 目撃したラッキーな人も、幻覚を疑われる始末である。

 

 つまり、何が言いたいのかというと。

 

 海のポケモンでさえ、ミロカロスというポケモンを見た事ある個体は殆どいないのである。

 

 ドククラゲは、未知のポケモンに驚き威嚇したが、既に目の前から消えていたので見間違いだと思い、ふわふわともう一度漂い始めた。

 

 上空を飛ぶぺリッパーは、美味そうな獲物がいると思って近づいた結果、それは海面近くで休憩していたミロカロスだと気付き、慌てて引き返した。

 

 パールルは、知らないポケモンが通った事にびっくりして、貝殻をキツく閉じた。

 

 ジーランスは、ミロカロスが横を通っても気にせずのんびりと泳いでいた。

 

 泳いで、休憩して、泳いで、休憩して。

 

 やってる事は水泳選手とそれほど変わらないが、ミロカロスはこれでも遊んでいるつもりである。

 

 そもそもミロカロスに進化してからトレーナーの側にいなかった事など殆どない。

 野生下にミロカロスとしていたのならともかく、陸にいる時間の方が長いミロカロスとしてはぼっちでやる事など泳ぐ事しか無い。

 

 いたずらをする性格でもないので、大真面目に泳いでから休憩してを繰り返し、日が暮れる頃になってからトレーナーの元に戻った。

 

 

 もうすぐ日が落ちるというのに、まだ寝ているトレーナーに少々呆れつつ、夏とはいえこれ以上寝ていると身体が冷えてしまうのでくっついて温めてあげることにした。

 

「ふぉぉぉう」

 

「ん……? あれ、なんか薄暗い」

 

 耳元で優しく鳴くと、トレーナーが目覚める。

 

「……結構寝たなぁ。ミロカロスは楽しめたか?」

 

「ふぉぉぉう」

 

「そっか」

 

 あまり回っていない頭でそう微笑んだトレーナーはミロカロスの頬を撫でる。

 毛もなくツルツルしているこの身体をトレーナーは随分と嬉しそうに撫でるものだとミロカロスは感心する。

 ギャロップの身体を撫で回して蹴られているのをミロカロスは知っている。

 もちろんギャロップはそのあとキッチリと氷漬けにした。

 

 触り心地はギャロップの方が上なのかもしれないが、嬉しそうに自分を撫でてくれるだけでとても嬉しい気持ちになる。

 

「帰ろうか」

 

「ふぉぉぉぉう」

 

 この笑顔を守る為なら、なんだってしたくなるミロカロスであった。




まだ夏本番じゃないしと思っていたら実はもう8月という罠。びっくりです。

リクエストも感想もありがとうございます。とても嬉しい思いでいっぱいです。創作意欲が刺激されたらリクエストも文章になります。
全てにおいて気長にお待ちください(短編という括りにあぐらをかきながら)

主人公の名前や容姿は(考えるのが面倒で)敢えて描写してないのですが、いざ登場させようとすると違和感を覚えて結局削除してしまう。
どうしようかと迷っている次第です。

次も気長にお待ちください。
(次はシェイミ編だといいなぁ……)


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空からポケモンが降ってきたお話。前編

シェイミ編、始まります。
映画のような敵は出てきません(断言


「ミィイイイイイ!!」

 

 ある晴れた日の朝。

 少し早く目が覚めた俺は、朝日を摂取する為に散歩を敢行していると、何やら声が聞こえた気がした。

 

「ぶげらっ!?」

 

 空から、何かが落ちてきた。

 

『……助かったでしゅ』

 

「俺は助かってないんだが」

 

 気のせいでなかったみたいです。何やら見た事がないポケモンが降ってきて俺の頭を潰しにかかってきた。許すまじ。

 

『丁度いいでしゅ。オマエ、花畑がどこにあるか知ってるでしゅか?』

 

 花畑?

 

「聞いた事もないけれど」

 

『つーれーてーいーくーでーしゅー!』

 

「知らないところに連れて行けるか! というか俺の頭から退きなさい」

 

 折れる。俺の首が90度にポッキリ逝く。

 

『ミーを花畑に……むぐぅ』

 

「オーケー。一旦落ち着こう。花畑なんて俺は聞いたことないし君がなんてポケモンかもわからない。取り敢えず……」

 

 腹ごしらえだろう。

 

 

 

 

 腹が減ってはなんとやら。

 

『オマエ、中々やるでしゅね』

 

「それほどでもある」

 

 パクパクパクと凄い勢いでホットケーキが腹の中に吸い込まれていく。というかホットケーキ食べて大丈夫なのかはわからないけど多分大丈夫でしょう。

 

「さて、花畑……花畑……」

 

 うーん。わからん。

 

「そもそもこんなポケモン見た事ないし……」

 

『ミ?』

 

 ポケモンの事はあの人に聞けばいいって聞いた。

 

『な、なにするでしゅかー!?』

 

「ポケモンの事をよく知ってる人に聞きに行くんだよ」

 

 食事中だが関係ない。お花畑に行きたいのなら黙っていてください。

 

 

 

 

「……うーん、見た事ないですね」

 

「ジョーイさんでもですか?」

 

「はい。少なくともホウエンのジョーイは見た事ないらしいです」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

「いえ、お役に立てず……」

 

 と、言う事は他の地方の可能性が高い訳だが、地方を超えてポケモンがやってくるなんてそんな事あるか?

 コイツは飛べそうに無いし。

 

「なんでお前空から落ちてきたんだ?」

 

『気付いたらおっきな奴に鷲掴みにされてたでしゅ。暴れたら落とされたでしゅ』

 

「ふうん……」

 

 他の地方からホウエンまで移動出来るようなポケモンなんて心当たりないけど……考えても知らないポケモンの事なんてわかるわけもなく。

 

「わかるのはホウエン地方にはいないコイツが間違いなくここにいるって事だけで」

 

『? なんでしゅか?』

 

「いや、アホっぽい顔してるなって」

 

『馬鹿にしてるでしゅかー!?』

 

「揺れるな痛い! 首が取れる」

 

 人間首が取れたら死ぬんだぞ。そこんとこわかってるのかねこのポケモンは。

 

「しかし他の地方ってなるとアテが……あ」

 

 いや、いるじゃないか。

 

「覚えてればいいなーっと」

 

 あの時の少女は今どのくらい大きくなっているのかな。

 

 

 

 

 

 シロナという少女の噂は、地方を超えて俺の耳にまで届いていた。

 

 曰く、ミロカロスという珍しいポケモンの所有者である。

 曰く、アカデミーを飛び級で卒業した。

 曰く、瞬く間にジムを制覇した。

 曰く、考古学者として地方中を飛び回り研究をしている。

 曰く、とても美しい少女らしい。

 

 チャンピオンはもう手中にあると言われている天才少女の連絡先をこの度入手した。

 ソースはシロナの祖母である。

 

 いくら天才とはいえあの頃のシロナは連絡手段を持っておらず、これも縁だと祖母と連絡先を交換した。

 

 しばらく連絡していなかったので忘れられている可能性もあったのだが、覚えてくれていたようで快く連絡先を教えてくれた。

 

 やはり親切。親切は全てを凌駕する。

 

『何してるでしゅか?』

 

「お前の為に知り合いに聞いてみるんだよ」

 

『早くするでしゅ!』

 

 ぐわんぐわんと頭が揺れる。せっかくテレパシーという手段を使えるのだから直接的手段に出ないで欲しい。コイツの言う花畑とやらに着く前に俺の頭が取れる。

 

「……もしもし」

 

 そうこうしているうちに繋がったみたいで、とても警戒してる事がわかる声が聞こえてきた。

 そりゃそうか。いきなり知らない番号から掛かってきたら誰でも警戒する。

 

「あー、もしもし。覚えてるかわからないけど、ほら、ミロカロスの事教えてあげた」

 

「……本物ですか? 私の元に来たあの頃ミロカロスの事を教えてあげたと名乗る人はあなたで8人目です」

 

 なんでそんなに偽物が大量発生しているのか気になるところではあるが、証明方法は単純明快。

 

「ふぉぉぉぉう!!」

 

「まだ信じられない?」

 

「……ええ、まだ信じられないので、5日後にミオシティで待ってますね? ホウエン-シンオウ間の船があるので」

 

「オーケーオーケー。乗ってやる」

 

「わかりました。それでは5日後に」

 

 切れる直前、「やたっ」って声が入ってたけど、これは聞こえなかったフリをした方がいいよな。そうしよう。

 

『どうなったんでしゅか? というか助けてほしいでしゅ』

 

 急かす声が聞こえないと思ったら、ミロカロスにぐるぐる巻きにされていた。

 当のミロカロスは一仕事終えた表情をして満足気だ。絶対に離さないという意志をもって締め付けているのか、少し苦しそうに見える。

 

「ほらミロカロス、離してやれ」

 

「ふぉぉう……」

 

 ちっ、仕方なくだからなと言っているかのようである。とても不満げなミロカロスがゆっくりと解放する。

 

『ぷはぁ! 死ぬかと思ったでしゅ。オマエ容赦ないでしゅな』

 

「ふぉぉぉう」

 

『う……わかったでしゅ』

 

 これでコイツがシンオウのポケモンじゃなかったら相当な遠回りになるけど、その時はミロカロスに口を塞いで貰う事にして、俺は説明を放棄した。

 

「そういえば目的も何も伝えてないじゃん」

 

 もしかして俺、ガバガバすぎ……?

 

 

 

『酔ったでしゅ』

 

 シンオウに向かう船の上で、早々にグロッキー状態なコイツは座席の一つを占領してぐでっと伸びている。

 

「まだかかるぞ」

 

『飛べれば……酔わないでしゅ』

 

「飛ぶ? 飛べんの?」

 

『当たり前でしゅ。今は無理でしゅけど』

 

「ふーん」

 

 飛べるみたい。うちのボーマンダも飛べるけどな。

 

『まだ着かないでしゅか』

 

「まだまだ」

 

『あっ……揺れがキツいでしゅ』

 

 生憎と波が少し高いようで、割と大きな揺れが起こっている。揺れる度に顔を顰めて何かに耐えているコイツの酔い度合いは相当高そうだ。

 だからといって俺に出来る事は何もないわけで、伸びるコイツを眺めて暇を潰す。

 

『オマエはなんともないんでしゅか』

 

「この揺れが楽しいんじゃないか」

 

 波は高ければ高いほど楽しいだろう。

 嵐に直撃して転覆は避けて欲しいけど。

 いざという時はミロカロスに乗ってシンオウまで行こうか。

 

 

 

 

 気分はジェットコースター。少し長い船旅だったが、遊園地気分でいれたので退屈はしなかった。

 コイツにとってはそうではないようで。

 

『死ぬかと思ったでしゅ』

 

「酔っただけじゃ死にゃしないよ』

 

『いや、死んだばあちゃんが手を振ってたでしゅ。見たでしゅ』

 

「そうか」

 

『……んで、ここはどこでしゅか』

 

「シンオウ地方のミオシティ。お前の事を知ってるかもしれない人物に会いに来たんだ。俺が持つツテの中で1番可能性が高い」

 

 久しぶりのシンオウ地方。何の用事も無ければ観光と洒落込むのだが、頭に爆弾を抱えてるので早急に問題を解決しなければならない。

 いつ首折られるかわかったもんじゃないからな。

 

 prrrrrr

 

「……ん? 電話?」

 

『ああ、もしもし。シロナには会えたかい?』

 

「いや、これからです」

 

『早く会ってあげてね。あの子すっごく楽しみにしていてねぇ。お兄さんに会えるってやる事全部放って行ってしまったんだ』

 

「……そうだったんですね。お兄さんに会えるって喜びのあまりやる事全部放ってミオシティまで来たシロナさんに会うのは僕も楽しみです」

 

『そうかいそうかい。合流したらよろしくしてあげてちょうだい』

 

「はい。わざわざありがとうございます」

 

 澄まし顔で近づいてきたシロナが俺とおばあちゃんの会話を耳にして顔を真っ赤にして突っ込んでくるまであと3秒──。




なんか(この短編集にしては)長くなりそうなので分けます。
続きはいつになるかわからないですが、なるはや(死語)で仕上げたい所存。……所存。

やっとシロナが出てきます。しかし、少女なので原作よりもまだだいぶ若いです。

では、気長にお待ちください。


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空からポケモンが降ってきたお話。後編

なるべく早くとはなんだったのか。
お待たせいたしました。後編です。


「……台無しです。色々考えてたのに」

 

 突っ込んできたシロナは俺の手から通信端末を奪い取ると既に通話は終わってる事を確認した後、『奪い取ってすみませんでした』と告げ、おばあちゃんに抗議の電話を入れていた。

 孫想う祖母の気遣いは吉と出るか凶と出るかわからないシロモノだ。扱いには注意せよ。

 

「慌てて突っ込んでくるのが面白かったです」

 

 澄まし顔が驚愕に変わる瞬間は何度も見たい。

 

「……こほん。何はともあれ、お久しぶりです。お兄さん」

 

「久しぶり、シロナ。疑惑は解けた?」

 

「ええ、バッチリです。それで……用件というのは?」

 

「ああ、コイツなんだが」

 

『オマエは、花畑を知ってるでしゅか?』

 

 相も変わらず俺の頭の上に鎮座するコイツは、俺とシロナの身長差もあってなんだか偉そうである。

 

「……聞いた事あります。……ええっと、『そのポケモン、名をシェイミ。特定の条件下でフォルムチェンジをする。人前には滅多に姿を現さないポケモンであるが、稀にシェイミの花はこびを目撃する人がいるらしい』です」

 

「シェイミ。シェイミっていうんだな」

 

『そんな事より花畑の場所を知ってるでしゅか!?』

 

「振り落としたろかオマエ」

 

 人の頭間借りしておいてなんて言い草だ。

 

「詳しい場所はわからないです……が、私にも伝手がありますので大体の検討はつけられると思います」

 

「おお、ありがとう! いやー、遠出してきた甲斐があるってもんだよ」

 

『ミーに感謝するでしゅ』

 

「そうですね。ありがとうございます。シェイミ」

 

 いい子だ。以前会った時から礼儀正しい子だったけど、こんないきなり本題に入った挙句感謝を求めるようなよくわからんポケモンにもきちんと感謝する。人間が出来てるって話よ。

 

『オマエも大概アホでしゅな』

 

「は? 俺の頭の上からなんて発言だ許しておけん」

 

 そもそも、港で頭を振り回しながら暴れる人間はそりゃ目立つ。

 段々と注目を集める俺たちにシロナが遠慮がちに声をかけるまでそんなに時間は掛からなかった。

 

 

 

 

 

 

「面目ない」

 

『悪かったでしゅ』

 

 控えめに注意してくれたシロナの声で我に帰った俺は、シェイミを頭から振り落とす作業を一旦中断して移動する事にした。ちょっと目立ちすぎた。

 ただでさえこのシンオウ地方でシロナは有名人なのだ。むしろなんであんな変なのと一緒にいるんだろうとシロナが悪目立ちしていないか心配だ。

 

 とはいえ旅は始まった。

 なるべく歩きで行きたいらしいシロナの言に従い徒歩で進む。

 俺の頭の上でのんびり振られているシェイミは少し眠たげだ。俺はゆりかごじゃあないんだが。

 

 まあいいか。

 

「お兄さんは、どうしてシェイミの手助けを?」

 

「ただの成り行きかな。特に目的もなく旅をしている身だし、こういうのも一興だと思って」

 

 その点シロナは凄い、俺より全然歳下なのに活躍ぶりが凄い。

 

「そうですか。……ちなみに、ちなみにですけどシンオウ地方に拠点を移したりとかは……」

 

「うーん、取り敢えず無いかなぁ。まだホウエンを回り切れたとは言えないからね」

 

「そ、そうですか」

 

「そんな悲しそうな顔をしなくても、これからはちょくちょく遊びにくるよ」

 

 そんなに分かりやすくガーンとした表情をされたら仕方ない。

 これまた分かりやすく嬉しそうな表情になっている。

 この子は楽しそうにしてる方が似合うからこのくらいは、と。

 

 しかし、そんなに懐かれるような事をしたかね……?

 

『オマエ、やっぱりバカでしゅな』

 

「フン!」

 

『絶対に振り落とされてやるもんでしゅかー!!』

 

 他に人のいない街道で、それこそシェイミの言う通り馬鹿みたいにはしゃいでシェイミを振り落とそうとする。

 俺の頭を掴んで離さないシェイミとちょっと混ざりたそうにこちらを見ているけど自身の中のなにかと葛藤してるシロナがいて、

 

 ──あそぼ

 

 何かの声が聞こえた気がして、有無を言わさぬ力で何処かに引きずり込まれた。

 

「……え? お兄さん?」

 

 

 

 

 

 

「なんですかね、ここは」

 

『わからないでしゅ』

 

 なんだかよくわからないところに連れてこられて、どうしたもんかと頭をかいてみる。

 ところがシェイミをかいてしまってくふふと笑い声を漏らした。

 

『いきなりくすぐるのはやめるでしゅ』

 

「存在を忘れてたよ」

 

『なにおう……って、なんか来るでしゅ!!』

 

「ミロカロス!」

 

 飛び降りたシェイミが戦闘体勢に入ってるのを見て、俺もミロカロスをボールから出しておく。

 ポケモンの感覚は人のソレよりも確実に鋭い。何か来るというのなら来るのだろう。

 

「わあお」

 

 そして姿を現したのは、巨大なポケモンだった。本当にポケモンなのかはわからないが多分ポケモンだろう。

 

『先手必しょ……わぷっ、何するでしゅかー!!』

 

「待て待て、多分大丈夫」

 

 わざを使おうとしたシェイミの口を塞ぎ、一応ミロカロスに何かあったらすぐ動いてもらう為に目配せだけしておく。

 そもそも、このポケモンが俺達に敵意があるのなら引きずり込まれた時点で詰みだ。遊ぼうと言ったのがこのポケモンなら、敵意はないはず。

 

「遊ぼうか」

 

 寂しいのは嫌だよな。

 

 

 

 

 

 背に乗ったり、戯れているのを眺めたり、変な重力を体感したり、この不思議な世界とこの世界にただ1匹のポケモンと遊んでしばらく経った頃。

 

「あ、シロナどうしてるんだろ」

 

 割と時間を忘れて遊んでしまった。

 花畑とうるさいアイツもキャッキャ遊んでいるから大概アホなんだろう。だから迷子になるんだな。

 心配してなきゃいいけど。

 

「すまん、戻らなきゃ」

 

 コクンと頷いて、背に乗るように促された。

 優しいいい子だ。

 

「え? え? えぇえええええ!?」

 

 戻った俺達を出迎えたシロナは、案の定驚いていた。

 鏡の中からいきなり巨大なポケモンが現れたら誰だって驚くはず。モンスターボールを構えたまま俺の姿を発見して固まったシロナに笑ってしまったのは多分バレてないはず。

 

 

 

 

 

「心配したんですよ」

 

「悪かった。俺も引きずり込まれたんだ」

 

「それにしても、鏡の中の世界……? あのポケモンは一体……? 重力がおかしくて……うん、興味深いわね」

 

 俺の心配もそこそこに学者としての顔を覗かせたまま、自分の世界に入っていった。

 なんだか、長くかかりそうな予感がする。

 

『何しても無反応でしゅ』

 

 これ幸いとイタズラシェイミはシロナの頭の上に乗り込みぐらぐらと揺れてみたり、頬をぺちぺちと叩いてみたり、口を引っ張ったり。

 何してるんだコイツは。

 

「やめなさい」

 

『痛いでしゅーーー!?』

 

 虐待でしゅ! と喚くシェイミを無視してシロナから引き剥がす。

 せっかく熱中してるんだ、こんな時こそ俺と遊ぼうじゃないか。

 俺の頭ならくれてやる。乗れ!

 

 

 

 

 

 

「はっ!」

 

「おかえり。随分と熱中していたようで」

 

「ご、ごめんなさい。つい熱中しすぎてしまいました」

 

「気にしない気にしない。そうだ、シロナのミロカロスを見たいんだけど」

 

「あ、はい! そうですよね! 今出します。おいで」

 

 ぽんと放ったボールから現れたのは俺のミロカロスより一回り小さいミロカロス。

 まじまじとシロナのミロカロスを見る俺を見て自慢げにしているシロナ、そして不機嫌な俺のミロカロス。

 

「ふぉぉぉぉう」

 

「ふぉぉぉう!」

 

「ふぉぉぉぉぉぉう」

 

「ふぉぉう!!」

 

「ふぉぉぉう……」

 

『しゅ、修羅場でしゅ……』

 

 頭の上のシェイミが何やら戦慄している。

 俺にはポケモンの言葉はわからないから、何を言ってるのかわからないが何やら言い合ってるらしい。

 多分そんなに対面する事もないから大丈夫だろう。多分。きっと。

 

 

 

 

 そんなこともあって、無事花畑に到着した。

 

『花畑でしゅーーー!!!』

 

「グラシデアの花畑、綺麗だな」

 

「そうですね」

 

『……ま、感謝しといてやるでしゅ。オマエとの旅はそこそこ楽しかったでしゅから』

 

「また会おうな、シェイミ」

 

『ふん、たまになら会ってやってもいいでしゅ』

 

 ちょっと長く感じて、けれども短かった旅は終了した。

 

「……んじゃ、シロナもまた会おう」

 

「はい。何があっても駆けつけます」

 

「いや、それは用事を優先して欲しいかな」

 

「ふふふ、頑張って都合をつけますね」

 

 また会う時は更に有名になってるだろう。年月が経てば俺の事など忘れるかもしれないが、まあ、思い出のお兄さんとして記憶の片隅にでも留めておいて欲しいところだ。

 

 

「さて、帰るか。ホウエンに!」

 

「ふぉぉぉぉう!」




なんやかんやで1ヶ月半経ってしまいました。
時が経つの早すぎやしないかと。

ちなみに、リクエストでよくブイズに関するものをいただきます。作者も例に漏れずブイズは大好きなんですが、種類が多すぎて絞れません。
なのでもうしばらく悩みます。多分アンケートすると思います。

それではまた次回も、気長〜〜〜にお待ちください。

おまけ:特別翻訳(意訳です)

「え? そんなにジロジロ見てボクの身体ってそんなに美しい?」

「……私のご主人様に色目を使わないでください!」

「あなたに魅力がないだけじゃないの?」

「は?」

「ごめんなさい……」


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アブソルが現れたお話

正に不定期投稿。


 災いを知らせるという不吉なポケモンの噂を聞いた事がある。

 アブソルと呼ばれるそのポケモンは、人前に姿を現す時は、災いが訪れる時であると。

 

 

「──それがどうしてこうなった」

 

 ミロカロスとボーマンダと、そして野生のアブソル。俺の膝の上で、3匹が寝ているのは果たして何故だろうか。

 

 

 

 始まりはとある地方のとある場所にあるポケモン自由区。数多のポケモンが人の手に触れる事なく自由な暮らしを送る事の出来る場所に特別に入れてもらい、草原で休んでいたんだ。

 

「ん? あれは……」

 

 猛スピードでこちらに駆けてくる白い物体。アブソルだとわかったのは、その姿を文献で見た事あるからだ。当然見た事なんてないし見た事あったら多分酷い目にあってるはずだ。

 

 だがそれにしては無警戒。

 ミロカロスも、ボーマンダも、俺に決して近寄らず草を食んでいるギャロップも。

 アブソルの接近に無警戒で、仕舞いにはミロカロスが俺の膝に頭を乗せてスヤスヤと寝息を立て始めた。

 

「え? え?」

 

 対抗するようにボーマンダも俺の膝の上に頭を置いて、駆けてきたアブソルも何故か俺の膝の上に頭を置いて寝始めた。

 

「は??????」

 

 俺の膝の上は手持ち二匹と野生一匹に占拠されてめちゃくちゃ重い。

 そしてワケがわからない。

 

「は????」

 

 アブソルが現れた。それはまだいい。

 こちらに駆けてきた。それもわかる。

 ミロカロスとボーマンダが俺の膝を枕にして寝始めた。あんまりわからない。

 駆けてきたアブソルまで俺の膝を枕にして寝始めた。さっぱりわからない。

 

 でも無理矢理起こすのは可哀想なので、起きるまで三匹を眺めつつ撫でながら起きるのを待つことにした。

 

 

「足……足がしびれびれ……」

 

 単純に重い。なんか足の感覚が無くなってきた。

 が、幸せそうに俺の膝に頬擦りするミロカロスを見ると避けるに避けられない。

 ギャロップはこちらを見ず同族に混じって草原を駆け回っている。

 

「なんの夢見てるんだろう」

 

 俺の疑問は一切解消しないまま、時間だけが過ぎていった。

 

 

 

 アブソルが目を覚ました。

 俺にぺこりと頭を下げるとまた駆けて行った。

 何の疑問も解消しないままいなくなったんだが。

 

 そのまま夕方になって、ミロカロスとボーマンダが目を覚ました。

 

「ふぉぉぉう」

 

「おはよう。いい夢見れた?」

 

「ふぉぉぉぉう!!!」

 

 それはよかった。

 ところで、足の感覚が無くてしばらく立てそうもないんだけどどうすればいい?

 助けてもらってもいい?

 あの、笑い事じゃなくてですね。

 あなた方を膝に乗せたからなんですけど。

 

「はぁ……まあいいか」

 

 疑問しかないけれど、アブソルにも色々あるんでしょう。

 ちなみに、災いは起こりませんでした。




アブソルといえば映画ジラーチのアブソルが印象的です。
悪いポケモンかと思いきやめちゃくちゃ良いポケモンでしたね。
アブソルだってまったりしたい時もある。多分

アンケートは引き続きよろしくお願いします。
まだまだ結果はわからないですね。いずれ閉めます。

思いついたら次が投稿されます。気長にお待ちください。


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マホイップ狂人に出会ったお話

リクエストを眺めていたら思いつきました。


 とある地方のとある場所で。

 

「マホイップ?」

 

「そう! 聞いたことあるかい? まるでホイップたっぷりの美味しそうなケーキの風貌をしたポケモンなのだが、このポケモン何とたくさんの種類がいる。何種類までいるのかはわかっていないが僕は!!! 取り敢えず見つかる種類は全部ゲットした! そう、これ以上いなければ全部だ! そもそもマホイップというポケモンはマホミルから進化するポケモンなのだが、僕が最初に進化させたマホイップと他のトレーナーが持っているマホイップが違うという事に気付いたんだ。そこで僕は考えた。いや、辿り着いてしまったんだ。マホイップには色々な姿があると。最初は手探りだったさ。どうしたら姿が変わるのか全くわからなかったんだからね。まあどうやって見つけたのかは三日三晩話しても終わらないような苦悩と努力があるのだが──それは仕方がないから省こうじゃないか。僕が今まで見つけた種類は63種類に……ん? そういえば君はポケモンには色違いがいると言うのは知っているかい? 知っている。それはよかった。え? いやいや、63種類の色違いがいるわけではないよ。色違いは7種類さ。多分ね。どうやってやったかは黙秘しよう。そうだね……貰い手を探すのが1番、大変だったかなぁ……。いや、そんなのはどうでもいいんだ。そんなわけで僕は70種類のマホイップと暮らしているんだけど、見たいよね? いや、見たいに決まってると思ったんだよさあ行こう!」

 

 なんか変な人に捕まったかと思えば、大量の同じポケモンと暮らしてるんだという話をされた挙句半ば引き摺られるようにして家まで連行された。

 

「マホイップの美味しいケーキ屋さん?」

 

「そう! マホイップというポケモンは愛情を注ぐとそれはそれは美味しいクリームを出してくれるんだ。僕という人間はマホイップに対する愛は本物だっと思っていてね、その愛に応えてくれるマホイップのクリームをどうにかして活用できないかと思ってこのケーキ屋を開いたら大繁盛だよ。いや、僕一人で愛の対価を抱え込めたらよかったんだけど、美味しい上にするすると入ってくるから体重が心配で──あとは切実にご飯代が……結局人を雇ってマホイップにも手伝ってもらって自分の食い扶持を自分で稼いでもらっている状況になってるんだけどね。え、僕? 僕はマホイップに愛情を注ぐのが仕事さ。可愛いんだよマホイップは。ニコって笑った顔がとってもキュートで思わず抱きしめたくなるんだよ。マホイップってこんくらいしかないんだけど、一生懸命ケーキを作るのを手伝ってくれるんだ。可愛くて働き者で、とっても癒される可愛いポケモン──ハッ、すまない。早くそんな可愛いマホイップを見たいだろう?」

 

 扉を開けると、そこには色とりどりのマホイップがいて。

 

「微妙に模様が違う?」

 

「微妙じゃないけどね。結構違うと僕は思うよ。違うのは色と髪飾りなんだけど、どれも可愛くて甲乙つけ難いな。ああ、黒いマホイップは色違いだよ。色違いのマホイップは髪飾りの違いしかないけど、僕はどこからでも見分けられる自信があるかな。これも全てのマホイップに平等に愛を注いでいると豪語する僕だけの──おや、どうしたんだい? 甘ったるいクリームで胸焼けしたような顔をして」

 

「いや、ちょっとお腹いっぱいになって」

 

「……ふむ、そうか。僕の店の自慢のケーキでもご馳走しようかと思ったんだが。仕方ない、お土産に何個か包むから是非食べてくれたまえ。なに、割と僕の店は有名なんだ。食べて損はさせないよ。マホイップのクリームに虜になってくれれば僕も嬉しい。そして、君もマホイップを連れて歩いてくれると更に嬉しいよ」

 

「……ありがとう。考えてみる」

 

 

 

 

 後日、テレビであの店の特集が流れているのを見た。

 

「……凄かったな」

 

 マホイップにかける全てが常人では辿り着けないなと、心底思った。




余談ですが、他の人がマホイップを育ててクリームを出してもらってあんなに美味しいクリームにはならないそうです。
あのケーキ屋さんでは、どのマホイップがクリームを出しても甘くて美味しいクリームだそうです。


何とは言いませんが、色んな人にマホミルを渡したんだと思います。
何とは言いませんがね。
きっと沢山の野生のマホミルを捕まえたんだろうなぁ……
これを読んだあなたの脳裏に何かが浮かんでるかもしれませんが、彼はマホイップやマホミルに対する愛情は本物なので変な事は一切していません。

アンケートはもうちょっと続きます。
ちょっと思いつきかねているので長引く可能性もアリ。
と言う事で次も気長〜〜にお待ちください。


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アルトマーレに訪れたお話

思いつかなかったので出会いはカットしました。
アルトマーレのあのBGMを流しながら書きました。


 アルトマーレ。

 水の都とも呼ばれるこの場所は水ポケモンを連れているトレーナーにとって過ごしやすい場所なのではないだろうか。

 水ポケモンに引っ張ってもらうレースも存在していて、それは普段使いも出来るようで。

 

「ふぉぉぉぉう!」

 

「待て待て速いって!」

 

 何故か水路を爆走するミロカロス。掴まっている俺の身にもなって欲しいところ。

 ほら、街の人も何だ何だとこっちを見てるじゃないか。

 

「ふぉぉぉぉぉぉう!!」

 

「なに? 後ろ?」

 

 爆走しながら顔だけ水から出して後ろを向くミロカロス。器用だなぁオイ。

 後ろを振り向くが何もない。住民の視線が刺さるのみである。

 

「ふぉぉぉう」

 

 更にはビタッと急に止まったせいで俺が慣性で投げ出される始末。綺麗な放物線を描いて水面に落下──する前に何かに受け止められてふよふよと地面まで連れてかれた。

 

「ふぉぉぉう」

 

 何やら憎々しげに鳴いているミロカロスが水から上がってきて尻尾をビタンビタンと打ち付けている。

 厄介な奴に見つかってしまったような雰囲気を醸し出している。

 

「───」

 

「え? ああ、ラティアスだったのか」

 

 スッと姿を現して、次に物陰から現れたら既に女の子の姿になっていた。そのまま手を引かれてされるがままに歩き出す。

 

「あ、行くよ。ミロカロス」

 

 ビタンビタンと苛立ちを露わにするミロカロスはボーマンダを要求。ボールに入る事を拒み、ボーマンダに絡まって空からついて来る事を選んだ模様。

 ボーマンダは疲れた表情をしている。頑張れ。

 

 

 

 

 

 

 アルトマーレにはポケモンの隠れ家と呼ばれている場所がある。俺はラティアスに教えてもらった。

 迷路みたいな道を進み何やかんや変な道を通って辿り着けるこの場所は確かに隠れ家だ。

 この場所を探そうと思って目指しても辿り着くことは容易ではないだろう。

 

「────!」

 

 にこっと笑って抱きついてくる少女姿のラティアス。

 

「久しぶり、ラティアス。元気だった?」

 

「────」

 

 うんうんと頷いてくるくると回る。元気ですよと全身でアピールしてくれた。

 ちらりと後ろを見ると笑顔のミロカロスと何やら苦しそうなボーマンダ。首に身体が巻き付いているのでちょっと苦しいのだろう。絞め落とすなんて事はしないはずだ、多分。

 

「ん? どうしたどうした」

 

 俺の周りを回って腕をぺたぺた、足をぺたぺた。最後におでことおでこをこっつんこ。

 

「────!」

 

 ぐっ、といい笑顔でサムズアップ。どうやら俺の身体に異常がないか調べてくれたらしい。問題無かったようで安心した。

 

「ふぉぉぉぉぉう」

 

「────」

 

「ふぉぉぉぉう……」

 

 にこにこぶんぶん。

 ラティアスは嬉しそうにミロカロスに抱きついて、笑顔が止まらない。

 何やら不満げだったミロカロスもこれにはタジタジである。

 

 空中でホバリング中のボーマンダはもう一度捕捉されないように少し高度を上げた。

 

 

 アルトマーレに来た目的といえばこのラティアスに会う事のみ。

 適当に観光して、適当に遊んで、ミロカロスと姿を消したラティアスに水上を引っ張ってもらってミロカロスの鬱憤を晴らしたり。

 

「んー楽しかった! また来るからな、ラティアス」

 

「────」

 

「そんな寂しそうな顔されると俺も心苦しいけど……一緒に来るか?」

 

「────」

 

「……そうだよな、まあ気が変わったらいつでも待ってるよ」

 

 一瞬嬉しそうな顔をして、ハッと何かを思い出したかのように首を振った。

 一説には、ラティアスとラティオスはこのアルトマーレを色々な災いから守ってる守護神的な役割をしているという。そんな話を聞いた。

 

「そんな悲しい顔をするなって、また会いに来るからさ」

 

「ふぉぉぉう」

 

「それじゃあな」

 

「────!」

 

 ぶんぶんと手を振るラティアスに見送られて、アルトマーレを後にする。

 

「なんだかんだ、ミロカロスもラティアスが好きだなぁ」

 

「ふぉぉう!!」

 

 べちべちと、海の上を尻尾で叩く。

 それが照れ隠しである事はすぐにわかった。

 

「まあ、いつか一緒に旅が出来るかもな」

 

「ふぉぉぉう」

 

 それは、とても楽しそうだ。

 




ポケモンの映画はどれも名作ですが、やはり水の都はイイ。作者はそう思います。再上映された時に映画館に行けなかったのを今更ながらに後悔している最中です。

ラティアスを仲間にするか、かなり悩みましたが取り敢えずこの話はこういう終わり方とさせていただきます。
そのうちひょっこり仲間になりにやってくるかもしれないですね。この時空内においてはアルトマーレに危機とか訪れないので。

さて、次話はアンケートで一位に輝いたあの子が仲間になるお話の予定。

感想をくれる皆様、そしてこの作品を読んでくださってる皆様に改めて感謝を申し上げます。
短い上に間隔が開きまくる拙作を読んでくださって作者と致しましても感無量でございます。
つまりびたんびたんしてるミロカロスって可愛いよねって話でした。
次はなるべく早めに投稿したいという気持ちは持っていますが、期待せず気長なお待ちください。気長に。


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とあるタマゴを拾ったお話

なんでこんなに早いかというと半分くらい既に書いていたからです。
と、いうわけでアンケートの結果、ブラッキーが仲間になるお話です。



 巡り合わせとは往々にしてあるもので、俺がそのタマゴを見つけたのは、遊ばせていたギャロップが珍しく俺に近づいてきたからだった。

 

「…………」

 

「なんだなんだ。どうした」

 

 普段は絶対に近寄らないという意志が見えるのに今日は近づいてきたどころか襟を咥えられてズルズルと引っ張られるのみだ。

 

「あの、乗せてくれません?」

 

 首を振られた。ダメみたい。

 一回乗せてくれたし、たてがみを撫でても全く熱くはない。信頼も信用もしてくれているみたいだけどどうにも一線を引かれているという感じがする。

 それはそれでいいんだけど、たまにはべたべたしてくれてもいいと思う。ミロカロス程べたべたされるのも困ってしまうから程々にべたべたされたい。

 

 

 

 

 そうしてズルズルと引き摺られてしばらく経って、止まったギャロップの視線の先には。

 

「タマゴ? 何でこんな所に……」

 

「…………」

 

 どうにかしろと目で訴えかけられる。

 そもそもタマゴがこんな所に放置されてるという異常事態。誰かが捨てて行ったのか、それとも落としたのか、はたまた野生のポケモン同士のたまたまか。何にせよ俺が拾うのは早計というもの。

 

「違う違う。どつくのをやめなさい」

 

 薄情者と言いたげな感じでガスガス突かれたがそういう事じゃない。

 もし捨てて行ったのではなく落として探してる場合、それはタマゴなんていう大きなものを落としたのであればすぐ気付くだろう。日が暮れる前までには取りに戻ってくるはず。

 野生のポケモンのタマゴであれば、近くにいれば帰ってきた親がタマゴを守ろうと襲い掛かってくるはず。

 

「どちらにせよ、もうちょっと待ってみような」

 

 俺が拾うよりも、そうであった方がよっぽどこのタマゴにとっても幸せだろう。

 

「……ミロカロスとボーマンダはこの場所わからないよな。そろそろ戻ってくるだろうから、ここまで連れてきてくれるか?」

 

「…………」

 

 頷いて、この場から去っていくギャロップを見送ってから、深いため息を吐く。

 

「はぁ〜〜…………」

 

 野生のポケモンであればタマゴを放置するなんて有り得ない。

 本当に愛情深いトレーナーであれば落とす事などおろか、タマゴを忘れるなんて事はないだろう。

 こんな木の根元に無造作に、ポツンと置かれているタマゴを見た時点で捨てられたのだとわかる。

 何故そんな事をしたのか。その人の気持ちは全く理解出来ないし、したくもない。

 

「まあ、見つけられて良かったよ」

 

 ポン、とタマゴに手を置いた。

 

「ん?」 

 

 ぴくぴくと動いた気がした。

 

「これも巡り合わせなのかな」

 

 この子は俺に出会う為にここで待っててくれていた。そう思う方がずっといい。

 

 

 

「やっぱりタマゴは炎タイプのギャロップが持つべきだと思うんだよ」

 

 フルフル

 

「そもそもギャロップが俺にこのタマゴの事を教えたわけだからタマゴの面倒を少しくらい見ようとは思わない?」

 

 フルフル

 

「いやー、ギャロップが持ってくれないとまたどっかに置いて忘れてっちゃいそうだなー」

 

 フルフルフル

 

「そんな事する訳ないでしょって目で見つめないで欲しいんだけど。やっぱギャロップに預けた方が早く孵ると思うんだけどなー」

 

 フルフル

 

「ふぉぉぉう」

 

 コクコク

 

 タマゴを持つのを頑なに拒んでいたギャロップだが、ミロカロスの鶴の一声で即座に頷いた。最初からこうしていれば良かったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ポケモンセンターでまったり夜を過ごしていたある日、最近活発だったタマゴについにヒビが入った。

 

「……おおっ!」

 

 実はタマゴが生まれるのを見るのは初めての事で、タマゴを拾うのも初めての経験だったりする。いや、そんな経験は無い方がいい。

 とはいえ、タマゴに罪は無い。

 

「……ブイッ!」

 

「はじめまして、よろしくな。イーブイ」

 

 生まれたばかりのイーブイがこちらを見上げている。

 俺が、今日から君のトレーナーだよ。

 

「ブイッ」

 

 よろしくと、言ってくれたような気がした。

 精一杯可愛がろう。俺に出来るのはそれだけだと思うんだ。

 

 

 

 

 

「ブイブイブイッ!」

 

 この子、めちゃくちゃ元気。

 どれくらい元気かっていうとモンスターボールに入らないくらい元気。別にモンスターボールが嫌いというわけではないし普通に入ってくれるんだけどずっと中でガタガタ動いてる。

 ボールから出すとずっと動き回っている。

 あっち行ったりこっち行ったりそっち行ったり、目に映るもの全てが楽しいのだろうから、物を壊したり迷惑をかけなければ何をしても構わないのだが。

 そんな時に役に立つのが草原である。

 

 遊びたい! とボールの中で全力で主張しているイーブイを出すと走って何処かに行ってしまう。

 

「ギャロップ、よろしく」

 

「…………」

 

 まあいいだろうと言いたげな表情でフンと鼻を鳴らした。

 タマゴの頃から面倒を見ていたからか、何処にでも走っていくイーブイの面倒を見るのは基本ギャロップの役割になっている。

 

「ブイーーーッ!!」

 

「ぐえっ」

 

 一通り走り回ると今度は俺の元に戻ってきて遊ぼう遊ぼうと催促の嵐だ。

 服をぐいぐいと引っ張って遊んでくれなかったら服を引きちぎるぞと脅しの構え。

 

「わかった、わかったから!」

 

「ブイッ!」

 

 早く早くと急かされるもイーブイの体力は無尽蔵なのだ。

 こちらはただの人間なのでついていけないんです。

 速攻で視界から消えたけど、大分離れてる事に気付いているのだろうか。欠片も追いつける気がしないのでのんびり歩く。

 

「───ブゥゥイッ!!」

 

 程なくしていない事に気付いたイーブイが戻ってきて、何やってんの! とでも言いたげな声を上げている。

 

「ほら、もうちょっとゆっくり歩こう? 時間はまだまだいっぱいあるんだから」

 

「ブイッ」

 

 のんびりがどうしても性に合わないのか、視界から消える事はないものの俺の周りをずっと走り回っている。

 時々ずつきをしてくるのはやめて欲しい。痛いので。

 

 

 

「ブイ〜」

 

「…………」

 

 疲れ知らずのイーブイもたまには休憩をする。ギャロップのたてがみに掴まる形で。

 助走をつけて猛ダッシュしたイーブイはギャロップのたてがみ目掛けてジャンプをすると、ひしとしがみついて目を閉じた。

 

「嫌じゃないか?」

 

 フルフル

 

「そっか。じゃあしばらくよろしくな」

 

「…………」

 

 言われなくてもというような雰囲気で、ふいっと顔を逸らされた。

 

「じゃあ俺はミロカロスに抱きつこっかなーいってぇッ!!! お前イーブイ乗せてるくせにどんだけ器用に俺を蹴るんだ!」

 

「…………!」

 

「くっそ冗談の通じない奴だな……」

 

「ふぉぉぉう?」

 

「え? ほーらよしよしよし。いい子だなーミロカロスは」

 

 そういう事じゃないって顔してた。でも隠しきれない嬉しさが尻尾に出てた。

 

 

 

 

 

 イーブイは ブラッキーに しんかした!

 

 毎日毎日雨の日も風の日も雪の日も一緒に走り回り、遊んでやってたらいつの間にかブラッキーに進化した。

 

「スンってしてるな。ほら、進化したとはいえあんだけ走り回ってたんだから」

 

「ブラッ」

 

「え? 行かないの? そっかそっかぁ。ブラッキーに進化して大人になったんだなぁ」

 

「ブラッ……」

 

 なんだか複雑な顔をしていたけどしっかりこの黒いボディを撫で回しておいた。

 結構気持ちよさそうだったので撫でられるのが好きなのは変わってないみたいで安心した。

 ぺしって拒絶されてたら俺は泣いてしまうかもしれない。

 

 

 

 進化しても移動時の定位置は変わらずギャロップの上だ。

 

「…………」

 

 たてがみに纏わり付くのはギャロップがちょっと重そうにしているのに気付いたのかやめた模様。

 今は普通に背中に乗って器用に丸まっている。滑って落ちそうだけど何故か落ちないんだこれが。

 

 

 

「ふぉぉぉう」

 

「ブラッ」

 

「ふぉぉぉう!」

 

「ブラッ!」

 

 夜、焚き火のパチパチ音を聴きながらぼーっとしていたら何やらミロカロスとブラッキーが話をしていた。

 何の話をしているかはわからないが、変な事ではないだろう。

 

 うん? どうしてこっちを見るんだボーマンダ。

 

 

 

 イーブイの頃は割と直接的に表現してくれていたのだが、それがちょっと恥ずかしいのかブラッキーに進化してからは構って! とか遊ぼ! とか撫でて! とかのアピールをあまりしなくなった。

 ただその欲求はしっかり残っているのか、撫で回してやると目を細めて喜ぶ。これが可愛い。

 ボールから出して移動してる時は専らギャロップの背に乗っているブラッキーだが、宿では俺のそばにいる場合が多い。

 宿の中でどったんばったん暴れ回って怒られたものだが、そういう事はしなくなった。

 

 

 

「ブラッ」

 

 寝る時は布団の中に潜り込んでくるタイプだ。入れてくれと一言の後布団の中で包まって寝ている。

 あったかいのが好きなんだと思う。

 真夏は流石に暑いのか起きたらタンスの上にいた事があったが、基本的に布団の中にずっといるようで。

 息苦しくないのかと問いかけたところ、首を傾げられた。快適ならそれでいいんだけどね。

 

 

 

 

 自由行動させている時は基本的にギャロップと一緒にいるようで、イーブイの頃の名残りを感じる。縦横無尽に駆け回る事はしないでギャロップの隣で一緒に走ってる様子。

 やっぱり走るのは好きなんだなっていうのはわかった。なんだか生き生きしてる。

 

 

 いい兄貴分をやっているようでなんだか微笑ましい気持ちになりながら時々一緒に遊んでいる様子をこっそり眺めに行っている。

 こっそり行かないとギャロップがスンってしちゃうからしょうがない。

 

 

 

 

 

「改めてよろしくな、ブラッキー」

 

「ブラッ!」

 

 ギャロップと相性のいい新しい仲間が出来たお話だ。

 




途中のブラッキーとミロカロスの会話の内容はご想像にお任せします。

そういえば年間ランキングに載っているのを発見しました。
嬉しくて頑張って書き上げました。

Twitterも始めてみました。ネタ探しの旅が始まります。
@sigu_111で検索してください。多分出てくるはずです。

それではまた次回、思いついたら投稿します。
気長にお待ちください。


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堪えきれなくなったミロカロスのお話

ポケモンSVのストーリー結構濃くてお腹いっぱいになりました。
厳選とか対戦まで進む気力が残りませんでした。
レイド難しくないですかねこれ。


 最近、ミロカロスの様子がおかしい。

 ソワソワしてる事が多くて、何かを堪えているような気がする。

 今日も今日とて俺の膝の上で丸くなるブラッキーを撫でながらそんな事を考えていた。

 

「ふぉう!」

 

「どうしたミロカロス」

 

「ふぉぉぉぉぉう!」

 

 ぐりぐり。

 

 これは撫でろと言われているのだろうか。

 

「わかったわかった。撫でて欲しいのか?」

 

 撫でていると、気持ちよさそうな顔をしているがどうやら尻尾は満足していないようで、びたんびたんと不満を表している。

 こんなに顔は嬉しそうなのに、尻尾は真逆の感情を表して……いや、嬉しさの表れという可能性も……?

 

「…………」

 

「ミロカロス?」

 

「ふぉぉぉぉぉう!」

 

 ポイっとブラッキーが尻尾によって放り投げられ、俺はミロカロスに絡み取られた。

 音もなく着地したブラッキーは訳がわからなさそうな顔をしている。俺もよくわからない。

 

「ふぉぉぉう」

 

 とはいえミロカロスがとても満足そうなので良しとしましょう。

 よく見ると今は尻尾がびたんびたんしていない。という事はさっきは尻尾が不満を表していたという事。そんなキリンリキみたいな事があるかって話よ。

 

「あの、そろそろ離してくれたり「ふぉぉぉう」……は、しませんよね」

 

 絶対に離さないとばかりに締め付けが少し強くなった。

 

「遊んでおいで」

 

 ギャロップとブラッキーは何処かへ走って行き、ボーマンダは少し離れたところで寝るみたいだ。

 じゃあ俺も寝る──締め付けが強くなった。

 

「わかったわかった。今日は目一杯遊ぼうな?」

 

「ふぉぉう」

 

 ようやく離してくれたミロカロスとのじゃれ合いは日が暮れてみんなが戻ってきてもなお続いた。

 

 

 

「今から宿まで帰るのも危ないから今日は野宿です!」

 

「ふぉぉぉう!」

 

「わかったわかった。一緒に寝ような」

 

 たまにはこういうのもいいかもしれないと思った。

 ミロカロスの何かが堪えきれなくなる前に、定期的に1日かまって野宿する機会を作ってあげないとな。

 

「……ふぉぉぉう」

 

 寝ながら絡みついてくるのはやめてくれませんかね……?

 ちょ、あの、締め付けがつよっ

 

 

 

 

 

 

文字数足りなかったので嘘予告。

 

 パルデア地方に引っ越してきたレモンちゃん(仮)

 

 オレンジアカデミーの先輩、ネモに将来的なライバルになってくれと頼まれる。

 

 まあいいかと軽く受けたレモンちゃんだが、ネモはなんと戦闘狂だったのだ!

 

 事あるごとに頼まれるバトル、勝つ度に激しくなるスキンシップ。

 

 果たして、チャンピオンクラスになり正々堂々とネモのライバルになった時、そのスキンシップはどうなってしまうのか──!




ストーリーをプレイしてて思った事はポケモンの主人公が女の子固定だったらネモは絶対スキンシップ激しいだろうなって事です。

あの、ところでミロカロスってリストラされてません……?


いずれ主人公にはパルデアに行って欲しいですね。
それではまた次回、思いつくまで気長にお待ちください。
ごく稀にTwitterに駄文が投稿されます。


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