ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます (トッシー)
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本日の目玉商品『万能薬』

お久しぶりです。トッシーです。
以前にじファンで投稿していたSSをコチラに移転させていただくことにしました。
よろしくお願いします。


俺の名前はタケルです。

ひょんな事から異世界に来てしまったトリッパーです。

テンプレよろしくで特殊な能力、持っています。

最強じゃないけど…。

 

「いらっしゃい、ここはよろず屋だよ」

 

俺の前には様々な道具が並べられている。

当然これらは商品であり、俺の飯のタネだ。

勿論そんじょそこらの店とは格の違う商品を取り扱っている。

その自信と自負がある。

本日の商品は

 

特やくそう(HP90ほど回復)100G

月のめぐみ(HP90ほど回復、麻痺を回復)210G

万能薬(HP90ほど回復、毒、麻痺を回復)360G

賢者の聖水(MP90ほど回復)1240G

毒針(偶に一撃で敵を葬る)980G

命の指輪(歩く度にHP回復)2500G

祈りの指輪(使うとMP回復。但し壊れることもある)2800G

 

それぞれ20個用意してある。

値段が高い?

いやいや適正価格ですよ。

けっしてボッタクリではないです。

第一、本来ならこの世界には絶対に存在しない一品ばかり。

このくらいの値段にしてもバチは当たりません。

 

「これは興味深いですね~」

 

おっと、自分の世界にトリップしてる場合じゃない。

お客さんだ。お客さんは神様です!

俺は満面の笑顔を向けて言った。

 

「いらっしゃいませー」

 

「こんにちは、

 

 この店は素晴らしいですね。とても露店とは思えないですよ」

 

そこにいたのは男二人組の旅人だった。

成人した男性と、まだ幼さの残る顔立ちをした少年。

男性の方は、優しげな顔立ちをしており、掛けたメガネが更にその表情を際立たせていた。紫色の髪を左右にカールさせていて貴族っぽい。

腰には剣を挿している。戦士だろうか?

少年の方は黒い髪にバンダナを巻いており、腰にはロッドを挿している。

魔法使いか僧侶のようだ。

 

(どこかで見た事ある二人組だな、どこだっけ?)

 

俺は二人を観察した。

お金を持っているようにはとてもじゃないが見えない。

この二人がどこの誰かは別にしてもコチトラ商売だ。

俺はジト目で二人組を見た。

男は興味深そうに並べている商品を一つ一つ手にとって眺めている。

 

「先生~、いつまで見てんですか~。もう行きましょうよ~」

 

「ちょっと待ってください、ポップ。もう少しだけですから」

 

ん?

センセイ?ポップ?

まただ。この二人、何か引っかかる。

何だっけ?

 

「大体、何ですかこの値段!

 

 薬草が100G!?ぼったくりもいいところっすよ!」

 

ムカ!

何だと!この野郎!

それは聞き捨てならねぇな!

 

「おい、お客さん!ぼったくりとは聞き捨てならないな!

 

 ソイツは唯の薬草なんかじゃないんだよ!

 

 この俺が心血注いで調合した特やくそうだ!ケチつけんな!」

 

「な、なんだと! 

 

 こんな怪しい薬草がなんだってんだ!?

 

 普通の薬草とどう違うってんだ!」

 

「聞いて驚け!

 

 その薬草は普通の薬草の約3倍の効果があるんだ!

 

 ベホイミ以上なんだぞ!」

 

「だったら普通の薬草を3つ買ったほうがお得だろうが!」

 

 

「そりゃ安全が確保できればだろうが! 

 

 非常時にチマチマと薬草で何度も

 

 回復してる暇があると思ってんのか!?」

 

 

「何ィ!?」

 

「この特やくそうはな、即効性なんだ!

 

回復魔法並なんだよ!だからこそ100Gは高くない!

 

むしろ安いくらいだ!だから買え!」

 

「ふ、巫山戯んな!どさくさに紛れて何いってんだ!誰が―」

 

「特やくそうと月のめぐみ、そして万能薬をそれぞれ2つお願いします」

 

「せ、先生っ!?」

 

ほう、この先生は物の価値が分かっているようだな。

俺は最高の営業スマイルを浮かべて声を上げた。

 

「毎度ありがとうございます。1340Gになります」

 

「これでいいですか」

 

「はい、1340Gちょうど頂きます!またのご利用をお待ちしております!」

 

俺は受け取ったお金をしまい込むと、お客様に向かって深々と頭を下げた。

 

「ところで」

 

お客さんはお買取った道具を袋に入れながら聞いてきた。

 

「あなたは一人で商売を?」

 

「えぇ。まぁ」

 

「まだ若いのに大したものですね」

 

何だこの人。

男性は屈託の無い笑顔を向けて感心する。

そこに悪意は全く無い事が感じられる。

その笑顔に俺は思わず目を逸らしてしまう。

 

「……えっと」

 

「あぁ、すいませんね。先程、ご自分で薬草を調合したと言っていたので」

 

つい興味が出てしまったのですよ。

男性はそう言った。

俺を褒めているのが気に入らないのだろう。

少年の方は面白くなさそうにしている。

 

「先生、もう行こうぜ~」

 

「はいはい、分かっていますよ。それじ私達はこれで」

 

「はい、またどうぞ~」

 

心に引っかかりを残したまま、俺は二人を見送った。

 

 

 

 

ギルドメイン大陸。

この世界の中心に位置する最大の大陸だ。

1年前、俺はこの大陸最大の国、ベンガーナ王国の郊外にある小さな村で目を覚ました。

混乱して、嘆いて、絶望して、そんな俺を村の人々は優しく受け入れてくれた。

この世界の常識を学んでいく内に俺は自分の置かれた状況を受け入れ納得した。

納得できた一番の理由はやはり魔法と魔物の存在だった。

村の外で見かけたプルプルと震えるゼリー状の魔物を見た時、俺は思いっきり肩を落として言った。

 

「ドラクエかよ」

 

そう、この世界はドラゴンクエストの世界だったのだ。

ドラゴンクエストシリーズの中のどれかは分からない。

もしかすると完全にオリジナルかもしれない。

しかしドラクエと分かった時、俺の中にあった絶望は完全に消えた。

絶望は希望へと変わったのだ。

だってドラクエだよ?

しかも村の人の話では魔王は既に勇者によって倒されて平和な世界。

村の外でスライムに襲われなかった理由も頷ける。

命の危険もなく、この世界を堪能できるということだ。

もしかすると魔法を覚えることが出来るかもしれない。

となると俺のステータスってどれくらいだろう?

その時だった。

俺の脳裏に自分の『つよさ』が浮かんだのだ。

 

「うわっ、極端なステータス。しかもオレって弱っ!」

 

浮かんだステータスは次の通りだった。

 

タケル

 

レベル:1

 

最大HP:20

最大MP:500

 

ちから:10

すばやさ:10

たいりょく:10

かしこさ:256

うんのよさ:256

EXP:0

 

攻撃力:10

防御力:7

 

どうぐ

E:普段着

 

呪文・特技

 

錬金釜

採取

大声

口笛

寝る

 

俺は自分の能力値よりも特技に注目した。

錬金釜?採取?

何それ、どうやって使うんだ?

気がつくとカーソルを合わせて採取を選んでいた。

 

採取を行いますか?

⇨はい

いいえ

 

選択すると、目の前に光るものが。

光っているものに手を伸ばすと。

 

太陽石を2個手に入れた

 

気がつくと俺の掌の中にはぼんやりと光を放つ石が二つ、しっかりと握られていた。

 

 

 

 

実際にこの商売を初めて1年になる。

この世界で得た俺の能力。

採取と錬金釜。

採取は割と何処でも利用できる。

その辺で適当に使えばレミラーマよろしく辺りが光るのだ。

光に触れると、素材が手に入る。

俺は自分の能力は最大限に利用した。

そうでなければ生きていくことなんて出来なかったからだ。

はっきり言って俺に戦闘力はない。

だがそれでも俺の能力はチートといっても良い。

何で自分にこんな能力があるのか分からないが、考えたところで答えなど出る筈がない。

ご都合主義ということで、とっくの昔に諦めた。

 

この世界に来て1年。

魔物が普通に存在する異世界で、俺はほのぼのと、旅のよろず屋を営んでいる。

勿論平和な今の時代でなければ旅など出来ない。

俺の特殊なよろず屋は様々な場所を旅しないと成り立たないのだ。

なにせ錬金には素材が必要。

そして優れた素材を得るには採取が必要不可欠だからだ。

普通の店で売っているものでは優れた物は作れない。

だからどうしても旅を続ける必要がある。

 

「あぁ、平和って最高っ!」

 

俺は岩場で採取を行いながら悦に浸っていた。

岩場で適当に採取しているだけで、質の良い鉄鉱石やミスリルが手に入るのだ。

これだからこの商売は止められない。

 

「…やっぱりやめようかな~この商売」

 

「ぐるるるるる」

 

採取もキリの良いところで切り上げ、街に戻ろうとした矢先だった。

リカントが俺の前に立ちふさがった。

ヨダレをだらだらと垂らしながら、血走った視線を俺に向けてくる。

あれ?平和なドラクエ世界は?

 

 



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本日の目玉商品『光のドレス』

行商を続けるオリ主。
一体何時になったらダイの大冒険の世界と気づくことやら…。


「ガアアアアアアアア!!!」

 

「うわっ、こっち来んな!」

 

リカントの叫び声と同時に俺は背を向けてダッシュ。

当然逃げる。

なにせ俺には戦闘力はない。

レベル1でどうやってリカントに勝てと?

装備が充実していても現実に戦うんじゃ話が違う。

戦って勝てる相手じゃない。

俺は全速力でひたすら走る。

しかしここは岩場。

まともに走れる筈もなく、躓き転ぶ。それでも俺は立ち上がって逃げる。

だが―

 

「い、いつの間に!?」

 

目の前の岩陰からリカントが飛び出した。

どうやら回りこまれてしまったようだ。

俺は急ブレーキを掛けて立ち止まる。

不味い。本当に不味い。

実戦経験無しの俺にはマジでキツイ。

それでも生き残るために、俺は手持ちの道具を確認する。

 

「……これだ」

 

錬金したばかりの取って置きの武器。

武器を操る事は出来ないが、武具に宿った力を使うくらいなら。

 

「俺にも出来る!」

 

俺は道具袋から一振りの長剣を取り出して叫んだ。

 

「氷結ッ!!」

 

俺の声に反応して吹雪の剣の刀身が輝く。

 

ビュオオオオオォッ!!!

 

解き放たれた力はうねりを上げて吹雪へと変わりリカントを包み込んだ。

無数の氷の刃が嵐となってリカントへと殺到する。

 

「ギャアアアアアアア!!!」

 

マヒャドと同格、絶対零度の銀世界が一瞬にして目の前に広がった。

俺を襲ったリカントは……。

 

「ご愁傷様です」

 

リカントは氷の檻の中で息絶えていた。

完全にオーバーキルですね。

 

「あーあ、これじゃあ暫く採取は無理か」

 

氷に閉ざされた岩場を見渡して俺は溜息を付いた。

 

「そういえばどうしてリカントが襲ってきたんだろう?

 

 確か勇者が魔王を倒して魔物は邪悪な意志から解放されてる筈

 

 それなのに……っ!?」

 

ギャア!ギャア!ギャア!

 

ま、魔物の声!?

遥か遠い山向こうから魔物と思わしき声が聞こえてくる。

俺は思わず身を竦ませた。

じょ、冗談じゃないぞ!

もしまた魔物に襲われでもしたら!?

高価な装備があるからって安心など出来るわけがない!

第一、もし不意打ちでも受ければ間違いなく死ねる。

街までかなりの距離がある。

もし道中襲われたら!?

 

「……ん?そうだ、何ですぐに気が付かないだ俺のアホ!」

 

さっきはリカントの所為で気が動転してたんだな。

命が掛かっていたのに。

俺は道具袋からキメラの翼を取り出すと空に向かって放り投げた。

パラララタッタター♪

空高く舞い上がりながら、俺は確かにファンファーレの様な音楽を聞いていた。

もしかしてレベルアップ?

 

 

 

 

現在オレはベンガーナに来ていた。

リカントを倒した俺は旅支度を整えると、直ぐにベンガーナに旅立った。

行商人の利用する比較的な安全な街道。

俺は聖水を惜しむこと無く利用、そしてレベルアップすることで新たに習得した特技『忍び足』を使いながら旅をする事で魔物を避けながらベンガーナに到着することが出来た。

もちろん道中、採取を行うことを忘れなかった。

どうやら商人魂が染み付いてしまったようだ。

ベンガーナに辿り着いた俺は、さっそく商売を始める為に適当な場所を探す。

行商人である俺にとって露店を開く場所の確保は最優先事項だ。

 

「……お?」

 

露店を開く場所を探して歩くこと約1時間。

比較的に人通りの多い広場に辿り着いた。

俺と同じように露店を開いている行商人が何人かいるので偵察として取り扱っている商品を覗いてみる。

よし勝った。まぁ当然だな

俺はほくそ笑むと、広場の一角を陣取り露店を開いた。

今日お俺は武具屋さん!

そして本日の商品はコレだ!

 

玉鋼の剣:4200G

隼の剣:5000G

玉鋼の盾:1400G

魔法の盾:2000G

精霊の盾:3000G

鉄仮面:2100G

玉鋼の兜:4000G

玉鋼の鎧:4800G

魔法の鎧:5800G

精霊の鎧:7000G

 

さっき錬金したばかりの出来立てホヤホヤだ。

並べてある殆どの商品がどの店にも取り扱っていない物ばかり!

次から次へと並べられていく見た事もない武具。

通行人達は次々と足を止めて興味深そうに見ている。

何せ商品と袋の大きさが一致しないのだ。

見た目どこにでもある布袋から次々と剣や鎧が飛び出していくのだ。

そりゃ驚くわな。

このチートな道具袋は気がつけば持っていた俺の財産だ。

こいつのお陰で俺は幾らでも持ち運びが出来る。

商人にとって、コレほど素晴らしい物は無いだろう。

 

「へぇ、こりゃ凄い!見たこともないものばかりだ!」

 

おっと、お客さんがお呼びだ。

俺は満面の営業スマイルで声を上げた。

 

「いらっしゃいませー!!」

 

通行人を掻き分けて俺の前に陣取った客は4人。

如何にもな格好の冒険者達だ。

ドラクエⅢの典型的なパーティーだった。

見た目が男勇者に始まり戦士に魔法使い、そして僧侶。

しかし何処か頼りない。

ていうか俗物丸出しだ。表情が…。

 

「おい見ろよ、まぞっほ!この盾すげぇ!」

 

「ふむ、魔法の盾か。この軽さならワシにも使えそうじゃな」

 

「でも仰々しい装備しか置いてないのね。ローブやドレスは無いの?」

 

「そう言うなよ、ずるぼん。確かに品揃えは悪いが置いてある装備は一級品だ」

 

「でろりん…」

 

何こいつら…。

それに品揃えが悪い!?

言ってくれるじゃないか!

露店のスペースじゃ並べられる商品の数にも限りがある。

ドレスやローブだと?

そこまで言うなら出してやろうじゃないか!

 

「お客さん、ローブやドレスをご所望ですか?」

 

「えぇ、置いてないの?」

 

「勿論有りますよ!取って置きの一品がね」

 

「なんですって!ならそれを出してみなさいよ!」

 

「しかし、かなりの一品ですのでお値段張りますよ。

 

お客さん大丈夫ですかー?」

 

「勿論よ!お金ならいくらでも出すわよ!」

 

「お、おい!ずるぼん!」

 

仲間たちが慌てだす。

どうやら浪費癖のある僧侶さんの様だ!

いいカモだ。せいぜい吹っ掛けてやるとするか。

俺は金色に輝くドレスを取り出した。

お客さんの眼の色が変わる。

 

「こちらは光のドレスです」

 

どうですか?

俺は今ドヤ顔に違いない。

ドレスのあまりの輝きに目を奪われている客。

メチャクチャ気分良いーーーーっ!!

 

「素敵……」

 

僧侶のお姉さんはウットリとした表情で光のドレスを眺めている。

もう夢中だ。後一押しで堕ちるな。

 

「どうですか?お客さんにピッタリですよ?

 

 残念ですが今お客さんが見につけている服、

 

 それでは貴方の美貌が損なわれるというものです」

 

「そ、そうかしら?」

 

僧侶の人は照れたように頬を掻く。

ここで一気に畳み掛ける!

 

「素晴らしいドレスは素晴らしい貴方にこそ相応しい!

 

どうですか?本来なら2万5千ゴールドですが、

 

今なら何と、たったの2万ゴールド!」

 

「えぇっ!?5千ゴールドも安くなるの!?」

 

「はい、是非お客さんに着ていただきたく…」

 

「買う!買うわ!」

 

「ず、ずるぼん!」

 

「やめんか!」

 

「あぁん!?」

 

「何でもないです、はい」

 

止めようとする仲間を一睨みで黙らせた僧侶さん。

彼女は即金で俺に2万ゴールドを支払った。

おお、リッチだ。冒険者って儲かるんだな~。

 

 

「まいどありがとうございました」

 

俺は勇者一行を笑顔で見送った。

それにしても、冒険者って凄いな。

ゲームみたいに魔物を倒してもGは手に入らない。

残るのはやはり魔物の死体だけだ。

この世界の冒険者は依頼を受けて商人を護衛したり、捜し物をしたりと何でも屋の様な事をして報酬を得ている。

魔物を倒してGを落とすなら皆やってるだろう。

 

「あの、コレを下さい」

 

おっと、自分の世界に浸っている場合じゃない。

 

「いらっしゃいませ!」

 

光のドレスを皮切りに、商品は次々と売れていく。

他では手に入らない珍しい品の数々。

俺は他の商人の嫉妬を受けながら、笑顔で商売を続けるのだった。

 

本日のタケルのステータス

 

タケル

性別:おとこ

職業:錬金術師

レベル:3

 

さいだいHP:28

さいだいMP:508

 

ちから:14

すばやさ:12

たいりょく:15

かしこさ:256

うんのよさ:256

 

攻撃力:54

防御力:63

 

どうぐ

E:雷帝の杖

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

 

 

呪文・特技

 

錬金釜

採取

大声

口笛

寝る

忍び足

 




リカントを倒してレベルアップしたオリ主です。
魔法は契約しないと覚えないのでまだ先です。


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本日の目玉商品『吹雪の剣』

装備の効力、攻撃力は各シリーズの良いとこ取りです。


「是非その剣を売って欲しい!この通りだ!」

 

現在、俺の目の前で美男子が頭を下げて懇願している。

ここはリンガイア王国。

世界でも1、2位を争う程の軍事国家で城塞王国として有名だ。

突然凶暴になり始めた魔物たち、巷では魔王が復活したのではないかという噂が実しやかに囁かれていた。

俺はこの国ならば、そう易々と魔物達の侵攻に遅れは取らないだろうとリンガイアにやってきた。

道中、何度か魔物に襲われもしたが、チート装備の特殊な力でどうにか撃退。

リンガイアへ辿り着いた俺は、いつも通りに露天を開いた。

本日の商品はコレだ!

 

特やくそう(HP90回復)100G

超万能薬(HP90~120回復・眠り、麻痺、毒、猛毒、混乱回復)300G

世界樹の雫(パーティーのHPを完全回復)3000G

世界樹の葉(死者蘇生)10000G

エルフの飲み薬(MP完全回復)3000G

爆弾石(イオラの効果)170G

砂塵の槍(マヌーサの効果)6600G

ムーンアックス(攻撃した相手を混乱させる)8800G

ウィングエッジ:9000G

普通のチーズ:10G

辛口チーズ:15G

おいしいミルク:5G

 

高価な物ばかり取り揃えると全く売れない日もあるので普通の客にも手が届く値段の商品も並べておく。ドラクエⅧのチーズだ。

戦いの役には立たないが需要はある。

俺は吹雪の剣を自分の側に置く。最近かなり物騒だからだ。

強引に商品を持って行こうとしたりする者。

そして難癖つけて営業妨害をする奴が出てきたのだ。

今回も…。

 

「テメェ!舐めてんのか!」

 

「そうだ!足下見やがて!こんな値段ありえねぇ!」

 

「いいえ、適正価格です」

 

俺は文句を付けてきた二人組の男にピシャリと言い放った。

男たちは顔を真っ赤にして睨みつけている。

 

「買う気がないのなら、ご遠慮ください。

 

 他のお客様のご迷惑になりますから」

 

「な、何だと!?」

 

「俺達は客だぞっ!?」

 

「お客様、値切りの交渉ならば当然の事、

 

しかし度が過ぎれば唯の営業妨害です。お引取りを」

 

「こ、この糞ガキがぁっ!」

 

男達は腰に差していた短刀を抜き放った。

周りから悲鳴が上がった。

ヤレヤレ、最近はこういった客が多くて困る。

俺は側に置いてある吹雪の剣に手を掛け、そして―

 

「やめないかお前た「氷結っ!!」…うわぁぁぁあああ!?」

 

吹雪の剣に込められた力を放つと同時。

誰かが割り込んできたような気がした。

 

「「「うわあああああああああっ!!!!」」」

 

「……あ」

 

割り込んできた誰かは男二人組と共に吹雪と突風に巻き込まれ吹き飛ばされる。

リカントを一瞬で凍りづけにする吹雪の剣。

本来ならマヒャド級の威力を出せるが、手加減して放つ事が可能だ。

そうでなければ辺り一帯が銀世界になっている。

そんな事よりも…。

 

「大丈夫かな?」

 

「……うくくっ…だ、大丈夫だ」

 

巻き込まれたのは青年のようだ。

蒼銀の髪の凛々しい顔立ちの美青年。

青年は服についた氷や霜を払いながら立ち上がった。

 

「す、すいません。大丈夫でしたか!?」

 

「ああ、平気だ。それよりも君は凄いな。

 

商人でありながら、あれほど高度な呪文を使うとは」

 

「いや、さっきのは呪文じゃなくですね」

 

俺は吹雪の剣を見せて言った。

 

「この剣の力なんですよ」

 

俺が吹雪の剣を見せると青年は目を見開いて驚いた。

 

「な、それじゃあその剣は伝説の武具なのか!?」

 

伝説の武具?

何言ってんだこの人。

別に勇者以外でも装備出来るぞ。俺も出来るし。

 

「いえ、伝説の武具じゃなくて俺が作った―」

 

「―なんだって!?これほどの剣を君が!?」

 

青年は吹雪の剣を手にとって刀身を覗き込む。

まるで剣に魅入られたように夢中になっている。

 

「……吹雪の剣といいます」

 

「吹雪の剣……、北の勇者たるボクに相応しい…っ!」

 

北の勇者?

どっかで聞いたような。どこだっけ?

それにしても勇者を名乗るとは…。

前のお客さんは格好がⅢの勇者だったし。

流行ってんのかな?

 

「頼む!」

 

青年がいきなり大声を上げた。

 

「どうかこの剣を売ってくれ!」

 

ナルホド、吹雪の剣が欲しくなったわけですか。

確かに欲しくなるのも頷ける。

何せ俺でさえ愛用している一品だからね。

しかもドラクエⅤの吹雪の剣。

なんと攻撃力105!

戦闘中使用するとマヒャドの効果!

最後まで愛用できる最高クラスの攻撃力の剣ですよ。

どうしようかな?

それ、売り物じゃないんだよね。

何せ俺の護身用として錬金した剣だし…。

 

「お客様、それは売り物ではございません。

 

コチラの剣は如何でしょう?お客様にピッタリですよ?」

 

俺は玉鋼の剣を取り出すと、青年に差し出した。

 

「違う!」

 

青年は腕を振って叫んだ。

 

「ボクは、ボクに必要な剣は、その吹雪の剣だけだ!

 

 どうかこの通りだ!その剣をボクに売って欲しい!」

 

終いには青年は頭を下げて頼み始めた。

それを見た他の客や通行人がヒソヒソとし始める。

 

「ノヴァ様があんなにしてまで頼んでるのに」

 

「ひどい!ノヴァ様が可哀想!」

 

「大体、あんな冴えない奴があれほどの剣なんて似合わねーだろ?」

 

「宝の持ち腐れだな」

 

どうやら青年はこの国では有名人であり人気者のようだ。

それ以上に俺のライフは今にもゼロになりそうだよ!

こんちくしょう!わかったよ!売ればいいんだろ!

ククク……、売ってやるよ!買えるものならな!

 

「わ、分かりました。お客様の熱意に負けました」

 

「ほ、本当か!?あ、ありがとう!」

 

俺の言葉に青年の表情はパァっと明るくなった。

俺の手をとってブンブンと上下に振って礼を言っている。

どんだけ気に入ったんだよ吹雪の剣。

 

「吹雪の剣、60000Gになりま~す!」

 

ピシリッ!

周りが凍りついた。

吹雪の剣を実際に使ったみたいに。

そしてまた周りがヒソヒソと話し始める。

 

「聞きました?60000Gですって!」

 

「さっきの二人組の言う通りだわ。完全に足下見てますよ」

 

「ノヴァ様は勇者だぞ!もっとまけろ!」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「やめないか!みんな!」

 

ノヴァは周囲を一喝してコチラへと向き直り頭を下げた。

 

「すまない、街の皆が失礼をした。

 

代金は城のものに届けさせる。剣は使いの者に渡してほしい」

 

「は、はい。毎度ありがとうございます…」

 

か、買うのか?マジで?

60000Gだぞ!?どんだけ金持ちなんだよ!?

ゴールドは魔物から生まれる世界じゃないんだぞ!?

超大金なんだぞ!?

 

「ノ、ノヴァさま、よろしいのですか?将軍が何と言うか…」

 

兵士が二人、ノヴァに詰め寄っている。

今まで気が付かなかった。護衛の人かな?

 

「し、心配ないさ。これも正義のため。

 

 パパも…いや、父上も分かってくれるさ」

 

将軍だって?

良い所の坊ちゃんどころじゃない!

本物のセレブかい!?

 

「この吹雪の剣は『氷結』の号令でその力を発揮します。

 

 使用の際はくれぐれもご注意下さい」

 

「わかった。『氷結』だな。覚えておこう」

 

ノヴァ様が去って約1時間後、城の使いが来た。

そして確かに60000Gを支払い、吹雪の剣を購入していった。

将軍家パネェ…。

 

「店じまいするか…」

 

護身用に片手間で作った吹雪の剣。

まさか60000Gに変わるとは…。

60000Gは冗談だったんだけどなぁ。

ヤバイ!ニヤニヤが止まらない。

こうなったら吹雪の剣、また錬金しても良いかもしれない。

材料に余裕はあるしな。

いや、そんな事よりも重要な事実に今気づいた。

もっと早くに気づけよ俺のアホ!

 

「ダイの大冒険か…」

 

主要人物に有ってんじゃん。

アバンとポップ組じゃなくて北の勇者で気づくとは…。

まぁ、イイ買い物していったからな。

やっぱりお客様は神様だな。

という事はどれだけレベルが上がっても魔法は覚えないだろうな。確かこの世界は特殊な呪文を除き、契約しないと魔法は習得出来ない筈。

俺のMPって有り余ってんだよな~

自衛のためにも是非とも呪文書がほしい!探してみるか!

さて、今後の方針も決まったことだし今夜はパァーッと楽しむかな。

パ、パフパフとか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

タケル

性別:おとこ

職業:錬金術師

レベル:6

 

さいだいHP:37

さいだいMP:515

 

ちから:20

すばやさ:16

たいりょく:20

かしこさ:256

うんのよさ:256

 

攻撃力:60

防御力:65

 

どうぐ

E:雷帝の杖

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 

 




ドラクエの身の守りは素早さ÷2ですね。


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本日の目玉商品『ロトの剣』

ロン・ベルクさん登場です。



錆びついた剣に磨き砂、オリハルコンを加えるとアラ不思議!

 

「王者の剣の出来上がり~」

 

この世界はオリハルコンの鉱脈がある。

といっても俺の採取スキルで偶然見つけた物だ。

実際に俺以外の人間にオリハルコンを採取することは出来無い。

一応チートスキルだし。

しかし実際にオリハルコンを手に入れた時、俺は狂喜乱舞したね。

錆びついた剣なんて、その辺の剣を塩水に付けて錆びさせただけだし、磨き砂なんて砂場で採取すれば普通に手に入る。

まさか本当に王者の剣が出来るとは思わなかった。

最強装備じゃねーか!?

 

「むむむ…、マジでどうしよう?

 

この王者の剣、攻撃力はⅨで使えばⅢと同じバギクロス」

 

ダイの大冒険の世界だとクロコダインの斧でも充分無双。

ちょっとしたアバンストラッシュ気分らしい。

それを振り回すだけで極大呪文連発出来る王者の剣…。

俺、魔王軍に目を付けられたりしないよな?

俺は王者の剣をスキルで見た。

 

王者の剣、攻撃力158。

戦闘中使用すると、バギクロスの効果を発揮する。

コレを装備できるのは勇者、戦士、賢者だろう。ついでに俺。

 

「どうするかな~」

 

俺はいつもの様に露店の準備をしながら溜息を付いた。

ここは森に囲まれたノドカな村、ランカークス。

未来の大魔導師ポップの生まれ故郷だ。

この世界がダイの大冒険だと気づいた俺は、店を畳むとリンガイアを出た。

何故ならあの国は近い内に超竜軍団に滅ぼされてしまうからだ。

俺はリンガイアを出る前に呪文書を購入した

初級の呪文しかなかったが今はこれで十分だろう。

契約できたのはヒャド系呪文とバギ系呪文、そしてホイミ系呪文だ。

これらの呪文を熟練することで更に上の中級、上級呪文を習得できる。

つまり要練習だ。

この世界は魔法力をコントロールする術があるので実際に呪文を使うとなると結構難しい。俺は中二病よろしくの妄想力のお陰で呪文自体は直ぐに使えた。

だがポップやマトリフのように魔法力を放出する芸当はまだ出来なかった。

ルーラやトベルーラ使いたかったなぁ。

ていうか是非使いたい!主に逃げるために!

 

「……おい、………おい!」

 

ん?誰かが呼んでいるような?

 

「おい!聞いているのか!」

 

「は、はい!」

 

気がつくと俺の目の前には強面の顔色の悪い男がいた。

いや顔色が悪いなんてもんじゃない!紫色じゃねーか!

男は自分の容姿を覆い隠すようにローブに身を包んでいた。

男の視線はは王者の剣に釘付け。

身を乗り出して剣に手を掛けようとする。

その拍子にスルリと頭部を覆っていた布が落ちた。

耳長っ!なにコイツ?

 

「ダークエルフ?」

 

「誰がエルフだ、俺は魔族だ」

 

魔族だと?

そういえばここはランカークス。

ランカークスの魔族といえばもしかして…。

俺はまじまじと魔族を自称する男の顔を見た。

顔の中心に☓傷、間違いない。伝説の魔剣鍛冶師だ。

 

「えっと、お客様?」

 

「そうだ」

 

「いらっしゃいませ~~~」

 

俺は最高の営業スマイルで魔剣鍛冶師を迎え入れた。

俺の対応に魔剣鍛冶師さんは一瞬、目を見開くように驚く。

 

「どうしました?」

 

「いや、魔族と名乗って歓迎されるとは思わなかった」

 

「お客様は神様です」

 

本日の商品はコレだ!

 

光の剣(使うとギラの効果)4800G

ドラゴンスレイヤー(ドラゴンの鱗を易々と切り裂く)12000G

雷の槍(デイン系の追加効果)19800G

デーモンスピア(即死効果)34500G

力の盾(使うとベホイミの効果)17000G

水鏡の盾(使うとマホターンの効果)30500G

おかしな薬(使うと敵を混乱させる)200G

万能薬(HP90~120回復)360G

鉄鉱石(素材)100G

ミスリル鉱石(素材)1050G

磨き砂(素材)20G

 

「お客様、何になさいますか?他では手に入らない珍しい物ばかりですよ」

 

「そ、そうか……それよりも」

 

魔剣鍛冶師殿は王者の剣を指さした。

 

「こ、この剣を見せてもらっても良いか?

 今まで人間の武器なぞ興味は無かった……だがっ!」

 

魔剣鍛冶師様はにじり寄って鞘に収められた王者の剣を覗き込んだ。

 

「えっと、ご覧になられますか?」

 

俺が王者の剣を差し出すと、魔剣鍛冶師様はそれを引ったくった。

鞘から剣を抜き放ち……、その表情を驚愕に染めた。

 

「……っ!?こ、この剣は……まさか!?」

 

魔剣鍛冶師様から滝のように汗が流れ落ちる。

凄いな。どんだけ驚いてんだこの人。

 

「小僧っ!この剣、一体どうやって手に入れた!?」

 

「えっと、俺が造りました」

 

「な、何だとっ!?そ、そんな馬鹿な!?」

 

魔剣鍛冶師さんはフラフラとその場に崩れ落ちた。

おーい、大丈夫ですか~?

 

「こ、この剣をお前のような奴が?」

 

失礼な人だな。

 

「はい、じぶん錬金術師なもので」

 

「錬金術師だと?」

 

「はい」

 

魔剣鍛冶師さんは俺の顔をまじまじと見た。

なんか照れるな。

 

「小僧、名はなんという?」

 

「えっとタケルです」

 

「俺はロン・ベルクという。

 

タケルよ、その剣だが俺に譲ってくれないか?」

 

えっと売ってくれじゃなくて譲ってくれ?

そんな事言う人は初めて見た。

なんか図々しいなこの人。だから俺は笑顔で言ってやった。

 

「王者の剣、120000Gになりま~す」

 

「頼む!この通りだ! 俺にはどうしてもその剣が必要なんだ!」

 

知らんがな。客じゃないなら帰ってほしい。

ロン・ベルクは魔界でも伝説になるほどの鍛冶師だ。

そんな男が人間に熱心に接触を図る。

はっきり言って危なすぎる。魔王に目を付けられるじゃないか。

 

「お客様、他のお客様に迷惑ですねで…」

 

「…そうだ!俺の造った武具と交換はどうだ?

 120000Gなんて大金は無いが、それに見合うという自負はある

 

一品で足りないなら全て持って行っても構わん!だから頼む!」

 

ナンダト?

ロン・ベルクの作品と交換?

しかも全部でも良いだと?マジでか!?

 

「で、では実際にその商品を見せていただかないことには」

 

俺は努めて平静を装いながら言った。

 

「交換してくれるのか!?」

 

ロン・ベルクさん。物凄い嬉しそうだ。

当然か。王者の剣はオリハルコンの剣だ。

しかも武器としては最高クラスの攻撃力。

ロン・ベルクが眼の色変えるのも不思議じゃない。

俺は露店を畳むと、ロン・ベルクに連れられて森の奥の小屋にやって来た。

 

「ここだ」

 

「でも田舎とはいえ魔族のロンさんが良く平気な顔で人里に来れましたね?」

 

「あぁ、村にはダチがいてな…いやソレよりも入ってくれ」

 

ロンさんに促されるままに俺は小屋に入った。

中を見て溜息が漏れる。

 

「……うわぁ」

 

「どうだ?ここが俺の鍛冶場だ」

 

ロンさんは得意そうな顔で言った。

 

辺りを見渡すと、様々な武具が置いてあった。

どれもが不思議な輝きを放っている。魔力なのだろう。

しかし王者の剣と交換しても良いという程の品ではない。

ロン・ベルクの武具で欲しいものといえば決まっている。

鎧の~シリーズだ。

あれを数品と交換なら考えても良いと思ったのだ。

 

「ロンさん、交換の品はここにあるもので全部?

 だったら先刻の話は無かったことにしてほしいです」

 

「ま、待て!奥に俺の傑作がある!ちょっと待っていてくれ!」

 

待つこと数分。

ロンさんは布に包まれた武具を持って現れた。

見たところ四品。両手で抱えるには限界だろう。

ロンさんは一品を残して地面に置くと、布を外し始めた。

顕になっていく武具。

鈍い銀色が顔を覗かせる。

出てきたのは長弓だった。

不思議な事に弦が見当たらない。

弓は装甲の様な物が覆っており、それが弦を隠しているようだ。

 

「まず一品目、こいつは弓の魔装」

 

「弓の魔装?どういったものなんですか?」

 

「タケル、手にとって鎧化(アムド)と唱えてみろ」

 

「はい……アムド!」

 

弓を覆っていた銀の装甲が剥がれ意思を持つように俺の身体に装着されていく。

上から鉢金、胸当て、そしてプロテクターに脛当て。

まるで聖闘士のクロスだな。意外に軽い。

 

「気に入ったようだな」

 

「でもロンさん、俺に弓の心得はないですよ」

 

「お前は商人なのだろう?」

 

ロンさんはニヤリと笑った。

確かに俺が使える必要はない。でもなんか悔しい。

 

「次はこいつだ」

 

ロンさんは次の装備の布を外した。

出てきたのは銃剣だった。マジでか!?

 

「こいつは試作品でな。

 全く新しい概念の武具を創りだそうとしてこうなった」

 

「鉄砲と剣を合体させたんですか?」

 

「ああ。名はまだ無い」

 

「まさにガンブレードですね」

 

「ん?ガンブレードか……いいなその名」

 

どうやらガンブレードに決定したようだ。

 

「でも魔族であるロンさんが鉄砲作るなんて…」

 

「ああ、人間のように火薬で弾を撃ち出すものじゃない。そいつは魔法を利用した銃だ」

 

アバン先生の魔弾銃じゃん。

 

「何を想像しているか知らんが、

 ソイツを使うと人間でも魔法剣を使うことが出来るようになる」

 

なんですと!?

 

「撃ち出した攻撃呪文を刀身に付与させて擬似的に魔法剣にする

 それがこのガンブレードの特性だ。どうだ気に入ったか?」

 

間違いなく竜の騎士を意識して造ってるよこの人。

どんだけ対抗心燃やしてるんだよ!

 

「素材はミスリル鉱石で出来ている。

 

強度は魔装に劣るが、同じ素材だと魔法剣に出来ないからな」

 

「どうしてですか?」

 

「魔装に使われているのはメタル鉱石。こいつは呪文を受け付けない物質だ

 だからガンブレードには使えなかった

 最後に魔法の弾だ。装弾数は10発。コイツは魔法の筒の応用で造り出した物で

 攻撃魔法を詰めることが出来る」

 

成る程。

でもダイはヒュンケルの魔剣で魔法剣使ってたよな?

あれは竜の騎士だから出来る芸当って訳か。

考えている間にロンさんは次の武具の布を解く。

 

「これは……爪?」

 

鋭利な鉤爪が付いた手甲だった。

見たところ魔装ではないようだ。

 

「それは風魔の鉤爪」

 

「風魔の鉤爪……」

 

「とりあえず装備してみろ」

 

俺は言われるままにソレを装着してみる。

左右両方とも装着する。

 

「そいつは切れ味もさることながら特殊な力もある

 良いか?外に向けてだぞ?何かを斬るように振ってみろ」

 

「……シッ!」

 

爪から真空の刃が放たれて森の木を薙ぎ倒した。

 

「こ、これは…」

 

「物騒だからあまり振り回さないほうが良いぞ」

 

確かにその通りだ。

他の伝説の武具と違って号令が必要ない。

雷鳴の剣の様な攻撃魔法の追加攻撃。

それでもかなり強力だ。

 

「それで最後の武具は?」

 

俺は風魔の爪を外すとロンさんを促した。

ロンさんは頷くと、最後の武具の布を外した。

 

「柄だけの剣……?」

 

「魔闘剣だ」

 

首を傾げる俺にロンさんは説明を始めた。

 

「ソイツは持ち主の魔法力、もしくは闘気を刃に変える剣だ。

 昔、最高の杖を造る際、試作的に造り出した物だが…。

 鍛冶師として外に出したくなかったが……」

 

これも王者の剣を手に入れる為だ。

ロンさんは不機嫌そうに呟いた。

そうか光魔の杖の……、ロンさん嫌ってたっけ。

 

「魔闘剣か……俺の場合は魔法力だな」

 

魔闘剣は俺の魔法力に反応し光の刃を創り出した。

俺の身長以上の刀身の長さにロンさんは目を剥いた。

 

「大した魔力の持ち主のようだな」

 

「……ロンさん」

 

「何だ?」

 

「王者の剣、ロンさんに譲るよ」

 

「ほ、本当か!?」

 

「はい、ロンさんの造った武具、大変気に入りました」

 

「商談成立だな」

 

俺達は互いに握手をすると視線を合わせて口元を釣り上げた。

王者の剣はまた錬金すれば良いだけのことだ。

しかし魔界最高の鍛冶師の作品は絶対に手に入らない。

ランカークスに来て本当に良かった!

 

「気が向いたら何時でも来い。お前ならば歓迎しよう」

 

「はい、今日はありがとうございました」

 

「……タケル、お前の王者の剣を上回る剣を創りだしてみせる」

 

ロンさんの目には強い決意の炎が宿っていた。

 

「それではまた」

 

俺はロンさんに別れを告げると、ランカークスから旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

タケル

性別:おとこ

職業:錬金術師

レベル:6

 

さいだいHP:37

さいだいMP:515

 

ちから:20

すばやさ:16

たいりょく:20

かしこさ:256

うんのよさ:256

 

攻撃力:98

防御力:65

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 

 

ホイミ 

ヒャド ヒャダルコ

バギ バギマ

 

 



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本日の目玉商品『大賢者の杖』

現在オレはパプニカ王国に来ていた。

この国はミスリル銀の道具や特殊な魔法の布で織られた衣服が特に有名で、一人の商人として凄く楽しみだ。

おまけにこの辺りには脅威となりそうな魔物は殆どいない。

魔王軍の侵攻の魔手もまだ伸びていないからだろう。

この国が滅びる前に貴重な物を仕入れておこう。

俺はパプニカ王国で最も活気のある商店街に足を踏み入れた。

人々が賑わい商人は自慢の品を売ろうと躍起になって呼び込みをしている。

俺は露店で売られている鳥の肉を購入してかぶり付きながら街を歩いた。

さぁ魔法の布を手に入れよう!

 

 

 

「ふぅ、漸く手に入れることが出来たぞ」

 

街を歩くこと数時間。

目当ての布を手に入れた俺は、広場にあるベンチに腰を下ろした。

パプニカ特産の魔法の布。

高い対魔力を持ち普通の布よりも遥かに丈夫に出来ている。

魔法の法衣や賢者が着ているローブなんかも、この素材が使われているらしい。

それなりに値は張ったが、それだけの価値があることは言うまでもない。

 

「さてと、目的の物も手に入ったし今度は俺の番だな」

 

俺はヨイショと立ち上がった。

俺の目的はパプニカの城だ。

旅の商人としてパプニカ城に持ち込みを行う算段だ。

交易国として名高いパプニカの王族。

さぞかし支払いが良いことだろう。

滅んでしまう前にタップリとゴールドを落としてもらいましょう!

 

この国に来て今日で三日目、仕込みはバッチリ抜かりはない。

というよりも謁見に三日も待ったのだ。

城の門番に王への謁見を申し込む事から始まり、各種の手続きなど結構な時間を食った。こういった事は国によって色々と違う。

 

商売を行う際、大抵の国は入国の際に手続きと審査を行う。

結果問題がなければ入国と商売が認められるという流れだ。

パプニカは特にその辺りが厳しい。

俺の持つ商品は何処にも売られていない物ばかりだ。

それ故に適正価格をイマイチ判断することが出来ないらしい。

故に専門の人間を呼び審査を行う。

結果、今までで最も時間を食った。

これで売れなきゃ最悪だ。

 

閑話休題

 

現在オレは謁見の間にいる。漸く目通りが叶う。

王座の前で膝を付いて国王を待つ。

俺の隣には持ち込んだ品が台座に載せられており純白の布で隠されている。

暫くすると扉が開き、ゆっくりとした足音が近づく。

足音は王座の前で止まると、腰を下ろした。

 

「そなたが行商人のタケルか?」

 

「はっ!此度は拝謁に賜り恐悦至極にございます」

 

「うむ、面を上げよ」

 

王の言葉に従いゆっくりと顔を上げる。

威厳にあふれた表情の国王が王座に腰を下ろしていた。

なんていうか凄い存在感だな。

隣にはレオナ姫もいる。

その後ろに控えている三人組は有名な三賢者だろうか?

 

「聞けばそなたは我が王家の為に貴重な至宝を仕入れたとか?」

 

「はい、この世に無二の一品でございます。

其れは伝説の武具にも勝るとも劣らぬ一品ばかり。

 

必ずや国王陛下の眼鏡に適う物だと自負しております」

 

「うむ、では早速見せてもらおうか」

 

「へぇ、気になるわね。早く見せてみなさいよ」

 

レオナ姫が身を乗り出して先を促した。

原作通り、かなりのおてんば姫のようだ。

 

「これ、レオナ!」

 

「ごめんなさいお父様」

 

「ゴホン!娘が失礼をした」

 

「いえ……では」

 

俺は台座に被せてある布をゆっくりと下ろした。

周りからため息が漏れる。

この世界では伝説級の武具が五品。

そのどれもが見る者を惹きつける輝きを放っている。

本日の商品はコレだ!

 

大賢者の杖(使うとフバーハの効果)50000G

天使のレオタード(死の呪文を防ぐ)48000G

女神の盾(攻撃呪文を半減させる)40000G

黄金のティアラ(嫌な呪文に掛かりにくくなる)24000G

女神の指輪(歩くとMPが回復していく)15000G

 

「如何でしょう?賢者の卵である姫様に」

 

「凄いわ!それを私のために?」

 

「はい、きっと姫さまにお似合いですよ」

 

「お父様!」

 

「……うむ」

 

レオナ姫は国王に強請る様に声を上げた。

国王はヒゲを撫でるとレオナに向かって頷きこちらを見た。

レオナ姫は嬉しそうに駆け寄ってきて杖を手に取った。

どうやら『大賢者の杖』が気に入ったようだ。

嬉しそうに眺めている。

国王はそんなレオナ姫を微笑ましい顔で見てから俺に向き直った。

 

「タケルとやら、そなたの用意した品々、全て貰おう」

 

「ありがとうございます」

 

「これ程の武具を取り揃えるとは誠に大儀であった。

どうだ?そなたさえ良ければこの国で店を構えてみるというのは?」

 

「……え?」

 

国王の言葉に俺は硬直した。

この話は一商人として、この上無い事だ。

周りの臣下達も国王の言葉に「おお!」とか感心してるし。

 

「確か城下の西区に一画、使われていない土地が有った筈。

 

 どうじゃタケルよ。

 

その商人としての手腕をこの国で存分に振るってみては?」

 

「それ良いわね、タケルくん。

どう?お父様がここまで言ってくれるなんて滅多に無いわよ?」

 

マジですか?

それにタケルくんとな!?

まさかダイくんと同じノリで呼ばれるとは思わなんだ。

王様は俺という商人を取り込むことで国力の強化を図る気だよな?

しかしどうするかな?

魔物の動きもますます激しくなってきている今、戦力の強化は急務だ。

兵士たちの武具や食料などの物資は必要不可欠。

それを用意する商人は是が非でも欲しいだろう。

しかも俺は唯の商人じゃない。特に品揃えが。

確かに平和なら迷わず飛びつく話だ。

けど間も無くパプニカは滅びる。不死騎団によって。

うん決めた。

 

「ありがたいお話ですが…」

 

うん。やっぱ保身が大事ですよね。

俺って正義の使徒って訳じゃないし。

装備を除けば一般Peopleですから。

 

「私は自分の商品をより多くの人々の為に役立てたいのです。現在、魔物たちの動きが活発化しており、

 

魔王が復活したと噂されております。

 

確かに陛下の心遣いは大変嬉しいのです。

 

しかし多くの人々の為にも私は旅を止めるわけにはいかないのです」

 

「……そうか…あいわかった!

 

そなたの心意気、ワシは感服したぞ!

 

そこまで言うのなら引き止めることは出来ん。

 

これからの道中、気をつけてな」

 

「ありがとうございます陛下。レオナ姫もお元気で」

 

「またねタケル君。君の装備、大切に使わせてもらうわ」

 

俺は最後にもう一度だけ一礼すると、踵を返して謁見の間を後にした。

あー、緊張したー。

さてと用事も終わったしパプニカから脱出しますかね。

次はロモスでも行こうかなぁ…。

 

 

 

 

パプニカから出る前に俺は度に必要な物を買い揃えることにした。

食料の方も心許なくなってきたし新しい魔導書も有るかもしれない。

そんな訳で買い物開始。

適当な店を練歩くこと半日、保存食と魔導書を数冊ほど購入。

時刻は午後八時過ぎか。

俺は腕時計と薄暗くなった空を見て溜息を付いた。

 

「こりゃパプニカを立つのは明日にした方がいいな」

 

夜の街道を旅するのは止めた方が良い。

俺はパプニカで一泊することにした。

 

「いらっしゃいませ。こんな遅くまでお疲れ様です。

ウチは風呂もベッドも最高ですよ!お一人様ですか?」

 

「あ、はい。部屋は空いてますか?」

 

「勿論です!お一人様たったの15Gになります」

 

俺は15Gぴったり手渡すと、店員に案内されて部屋に入った。

 

「お食事はどうなさいますか?」

 

「自分で用意してあるから構わない」

 

「風呂はソコの扉の向こうになります」

 

「ありがとう」

 

「それではごゆっくり」

 

俺はベッドに身を投げ出して魔導書を開いた。

呪文を覚えるためには習得した系統の魔方陣が必要になる。

魔方陣の中で祈りを捧げる事で、素質ありと認められれば魔方陣が輝き習得することが出来るのだ。俺はドキドキしながら頁を捲った。

 

手に入れた魔導書は3冊。

1冊目にはメラ系、ギラ系、イオ系の呪文。

2冊目にはキアリー、キアリク、シャナクなどの呪文。

3冊目にはラナ系、フバーハ、レミーラ、トラマナ……あ、ホイミ系もある。

 

ホイミ以外は習得してないな。

明日、片っ端から契約してみるかな。

兎に角、攻撃魔法が習得できるのは嬉しい。

敵と正面きって殴りあうのはガラじゃないからな。

ていうか怖い。死ぬ。

 

「さてと、風呂に入って寝るとするか」

 

俺は魔導書を荷物にしまい込むと風呂に向かった。

この世界って補助呪文も少ないよなぁ…。

バイキルトとかスクルト、ピオリムとか無いのかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

タケル

性別:おとこ

職業:錬金術師

レベル:8

 

さいだいHP:44

さいだいMP:525

 

ちから:25

すばやさ:26

たいりょく:30

かしこさ:256

うんのよさ:256

 

攻撃力:103

防御力:70

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 

 

ホイミ ベホイミ  

ヒャド ヒャダルコ

バギ バギマ

 



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本日の目玉商品『毒消し草』

ネイルの村です。


現在オレは一人魔の森を練り歩いていた。

原作キャラの一人、マァムに会ってみたい。

まぁチョットした願望みたいなものだ。

目指すはネイルの村だ。

それにしても魔の森のド真ん中に村を作るなんて何を考えてんだろう?

 

もう魔王軍が復活したのは周知の事実となっている。

魔物の凶暴化もますます拍車が掛かり手が付けられないまでになっていた。

しかし魔導書によって戦闘力を飛躍的に高めたオレに怖いものなど無い!魔物でも大魔王でも掛かってきやがれ!

すいません。ウソです。

現在オレは以前と同じように聖水を巻きながら忍び足で移動中です。

確かに魔導書に載っていた呪文は全て契約できた。

しかし実際に魔の森の魔物と進んで戦うほど俺はバカじゃない。

この森の魔物は今まで旅をしてきた地域の魔物よりも強いのだ。

何故なら獣王の支配する森だからだ。

そこに住む百獣魔団は半端じゃない。

ライオンヘッドを見た時、俺はチビリそうになったくらいだ。

あれは怖すぎる。

俺の知識にあるライオンよりも一回りでかかった。

しかも羽とか生えてたし。

 

ライオンヘッドに気付かれない様に逃げ出した俺は気を取り直してネイルの村を目指す。それでも偶に魔物に見つかって襲われたりもするが…。

 

「ベギラマ!」

 

「ギャアアアア!!」

 

習得したての呪文で焼き払う。

俺の放った閃熱呪文(ベギラマ)はリカントと人面樹を薙ぎ払った。

うん、流石はベギラマ。かなりの威力だ。

この世界はギラ系が強い。

なにせイオナズンよりもベギラゴンの方が強いっぽいのだ。

メラゾーマやイオナズンよりもベギラゴンですよ。

ハドラーもベギラゴン習得した時、メチャクチャ喜んでいたしな。

俺にもギラ系の素養があって良かった。

 

「おっとレベルアップか」

 

頭の中でファンファーレが響く。

何度も聞いているのでもう慣れた。

多分この音楽、俺しか聞くことはないんだろうなぁ。

この世界の人々は、魔物と戦闘以前に普通に修行でレベルアップするみたいだし。

レベルアップって結構凄いと思う。

元の世界に戻ったら間違いなく運動神経チートだよな。

普通に長剣を振り回せる腕力は付いた。

重い荷物を担いだまま走りまわる体力もある。

 

「でもなぁ」

 

それでもこの世界だと本職の戦士には全く敵わない。

まぁ俺は魔法で戦う後衛系ですから。

守ってくれる前衛いないけど…。

 

「さてと、そろそろ到着してもいい筈だけどな」

 

俺は地図を見ながら辺りを見渡した。

前方に明かりと煙が見えた。

どうやらネイルの村の様だ。

俺は歩く足を早めた。

 

 

 

 

素朴で平穏。

それがこの村の第一印象だった。

入り口から村全体が見渡せるほど小さな村。

家も数える程しか建っていない。

中心の広場を囲むように建てられた民家。

見たところ宿屋は無いみたいだ。

商売を行うにしても、あまり高価なものを買う余裕はないだろう。

マァムになら安く売ってやっても良いが…。

何せアバンの使徒の強化は平和に繋がるからな。

それにマァムは可愛いしな。

 

「それにしても良い村だなぁ」

 

この村を歩いていると、世話になった村を思い出す。

見ず知らずの俺を受け入れてくれたあの村を。

皆元気にしているかな?

1年ほど前に旅立ってから一度も戻っていない。

暇を見て帰ってみるのも良いかもしれない。

 

「きゃっ!」

 

その時だった。

俺は何かにぶつかった。

考え事をしていたのが良くなかった。

女の子だった。十歳前後の可愛らしい女の子。

俺にぶつかった拍子で尻餅を付いている。

 

「大丈夫か?ごめん、考え事をしていたんだ」

 

俺はそう言いながら女の子の手を取って起こして上げた。

 

「こっちこそゴメンナサイ。えっとお兄ちゃんは?」

 

「あぁ、俺は旅の商人で先刻この―」

「―お兄ちゃん商人さんなの!?」

 

「あ、あぁ」

 

「だったら毒消し草ありますか!?」

 

「勿論あるよ。だれか毒に侵されたのかい?」

 

「お、お母さんが、バブルスライムに噛まれて…」

 

俺が事情を聞くと女の子は目に涙を浮かべて肩を震わせた。

成る程、お母さんの為か…。

こんな女の子からお金を取るほど俺は強欲じゃない。

それに毒消し草は魔の森で採取してある為、多く持っている。

それに毒消し草を使う必要はない。

 

「あの、毒消し草……これで足りますか?」

 

女の子はお金を差し出した。

1G硬貨が5枚。

毒消し草の値段は10G。

女の子は不安そうに俺の顔を見上げている。

俺はそっとお金を持った手を引かせた。

 

「大丈夫、お母さんの所に案内してくれるか?」

 

「…う、うん!」

 

俺の言葉に女の子の表情がパアッと明るくなった。

 

 

女の子の家に案内された俺は、彼女の母の前に立つ。

ベッドに横たわっている母の顔色は悪く、息を苦しそうだ。

俺は女の子に「大丈夫だよ」と声をかけると母親に手をかざした。

 

キアリー(解毒呪文)

 

覚えておいて良かった解毒呪文。

魔法の光に包まれた母親は見る見るうちに顔色が良くなる。

 

「お母さん!」

 

光が収まった時、母親は安らかな寝息を立てていた。

 

「これでもう大丈夫だ」

 

「ありがとうお兄ちゃん!」

 

お兄ちゃんか。

悪くないなその呼び方。

 

「……私は」

 

「お、気がついた」

 

「お母さん、大丈夫?」

 

「ミーナ……心配掛けてごめんなさい」

 

女の子は嬉しそうに母親に抱きついた。

 

 

 

 

それから暫くして。

 

「本当に何とお礼をっていいか」

 

「本当にありがとう!」

 

「いえ、こんなに美味しい料理を御馳走になれたんです。むしろコチラが感謝したいぐらいですよ」

 

「まぁ!おかわりは沢山ありますからいっぱい食べてくださいね」

 

俺は母親を助けたお礼にと晩御飯をご馳走になっていた。

女の子の名前はミーナ。

なんと彼女は、たった一人で魔の森に毒消し草を取りに行くつもりだったのだ。

魔王復活のため凶暴化した魔物の影響で。村に来なくなった行商人。

その所為で村の蓄えも充分とは言えなかった。

以前買っておいた毒消し草も数日前に無くなっていたのである。

街まで行こうにも森は大変危険である。

それでも母の為にミーナは一人でも森に向かおうと考えたのであった。

ミーナの母、おばさんは「危険なことはしないで」と説教をして、改めてオレにお礼を言って頭を下げた。

 

「邪魔するぞ」

 

「あ、村長様」

 

家に入ってきたのは優しそうな老人だった。

老人、村長はおばさんを見ると、不思議そうに首をかしげた。

 

「ふむ……見舞いに来たのじゃが…、お前さん、もう大丈夫なのか?」

 

「はい、この方の解毒呪文のおかげで」

 

「そうか、村長として礼を言うぞ」

 

「いえ…」

 

「という事はマァムとは入れ違いになったのか」

 

「どういうこと?」

 

「ふむ、マァムのやつがミーナが森に向かったと勘違いしての」

 

「マァムおねえちゃんが!?」

 

「……なぁに、あの娘なら心配はないじゃろう」

 

「えっと……心配ないって?

 女の子なんですよね?オレも魔の森を通って来たんですけど

 あの森は凶暴な魔物がいてかなり危険なんだけど…」

 

原作知識はあるけど一般人なら当然の疑問を突っ込んでおきましょう。

するとミーナが自信満々に言った。

 

「大丈夫だよ、お兄ちゃん」

 

「どういうことだい?」

 

「マァムおねえちゃんは凄く強いんだから!」

 

「そうじゃな。何せ『アバンの使徒』じゃからのう」

 

「凄いな!じゃあアバンの使徒に会えるのかな」

 

「それだけじゃないぞ。

 

マァムの母レイラは嘗て勇者アバンと共に戦った仲間じゃ」

 

「へぇ、英雄の村って事か」

 

オレが感心したふうに言うと、村長はフムと考えこむようにヒゲを撫でた。

 

「ふむ、お前さん、魔の森を抜けて来たんじゃったな」

 

「はい、結構ヤバかったですけど…」

 

「物は相談なんじゃがお前さん、マァムを探してきてくれんか?」

 

「えっと…」

 

「知っての通り、マァムはミーナを探しに行った

ミーナがここに居る事をマァムは知らん

このままだと何時までもミーナを探して森を歩き続けるかも知れん」

 

村長の言うことも一理ある。

でも正直言って遠慮したい。

それにもう日も沈んでおり外は薄暗い。

この状態で魔の森を歩くのはマジで怖い。

俺は戦士じゃないしがない商人だ。

けど…。

 

「お兄ちゃん…」

 

この顔には勝てん。

ミーナちゃんは縋るような上目づかいで俺を見ている。

 

「村長さん」

 

「なんじゃ?」

 

「この村の人達が毒消し草を採取する場所、教えてもらっても?

マァムさんはミーナちゃんを探してそこに向かうと思うんです」

 

「そうじゃな。毒消し草の群生地はここからそう遠くはない。

 

村を出てロモスの方角に行くと、川が流れておる。

 

 その川にそって南に下れば直ぐじゃよ」

 

「お兄ちゃん、マァムお姉ちゃんを呼んできてくれるの?」

 

「ああ、すぐに戻るよ」

 

「すまんのぅ」

 

俺は心の中で膝をつき溜息を付いた。

また魔の森を一人で歩くのか…。

しかしその不安以上にマァムに会えるのは楽しみだ。

こうなったら腹をくくるしか無い。

平和なドラクエ世界を取り戻すにはアバンの使徒に頑張ってもらうしか無い。

でないと商売上がったりだ。

俺は荷物を背負うと、ネイルの村の入口を目指して歩き出した。

 

「後で村長に毒消し草、買ってもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タケル

性別:おとこ

職業:錬金術師

レベル:11

 

さいだいHP:71

さいだいMP:536

 

ちから:29

すばやさ:36

たいりょく:37

かしこさ:256

うんのよさ:256

 

攻撃力:107

防御力:75

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

ヒャド ヒャダルコ

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 

 



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主人公設定

6話終了時のステです。


名前:大江(おおえ) 武(たける)

年齢:16歳

身長:164cm

体重:54kg

 

この二次創作のオリ主。

現代日本の男子高校生。

成績は比較的優秀。しかし天才ではなく秀才。

好奇心が強く順応性が高い。

ドラクエと少年漫画が好き。

 

ダイの大冒険の世界では性は名乗らず名前だけ名乗っている。

自称どこにでもいる普通の行商人。

平和な時代に結構荒稼ぎした為お金が大好き。

しかし魔王軍復活と原作キャラとの遭遇でダイの大冒険の世界だと気づき、魔王軍と戦う勇者メンバーになら役に立つ武具や道具を譲っても良いと思っている。

全ては平和なドラクエ世界の為。

 

魔法の才能は天才の部類に入り、現在手に入れた全ての魔法と契約を成功させている。色々な特技にも精通している。

 

現在のステータス

 

レベル:12

 

さいだいHP:75

さいだいMP:536

 

ちから:32

すばやさ:40

たいりょく:38

かしこさ:265

うんのよさ:256

 

攻撃力:110

防御力:77

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

ヒャド ヒャダルコ

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 

 



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本日の目玉商品『星降る腕輪』

鬱蒼とした森をひたすら歩く。

村長に言われた通り、ロモスの方角を目指して歩く事十数分。

水が流れる音が聞こえ始めた。

川を発見した俺は、川にそって南に向かう。

 

「ギャアアアア!!!」

 

いきなりの事だった。

けたたましい叫びが響き渡った。

俺は声の方へと走る。

 

「うわっ!」

 

俺は火達磨になって逃げていくリカントとすれ違う。

何が起こったんだ?

俺はリカントが来た方へと走った。

少し進むと男女の声が聞こえてきた。

何やら言い争っているみたいだ。

 

「こんな森なんてパパっと通り抜けてやるわい!」

 

「その程度の腕で?」

 

「なんだと!?」

 

電流が走ったように睨み合う男女とオロオロと見守る少年。

これが原作遭遇ってやつか。

 

「行こうぜ!ダイ!」

 

「ちょ、ちょっと!ポップゥ~~」

 

ポップはダイを引っ張って行ってしまった。

あ~あ、ロモスの方角はそっちじゃないって…。

おっと、ここで眺めていても話は進まない。

村長とミーナにも頼まれているし、とりあえず俺は声をかけることにした。

 

「ちょっといいか?」

 

「だれ!?」

 

「怪しいもんじゃないよ。えっと、もしかして君がマァムさん?」

 

「えぇ、どうして私の名前を?」

 

「ネイルの村の村長さんに頼まれてね。君を呼びに来たんだよ」

 

「え?で、でもミーナが…、女の子が一人で森に入ったの」

 

「大丈夫、ミーナちゃんは無事さ。今はお母さんと一緒にいるよ」

 

「ええっ!?」

 

「言いにくいんだけどさ。ミーナちゃんは森に入ってなかったんだ」

 

俺はマァムに事情を説明した。

マァムはミーナが一人で危険な森に入っていない事に安堵し、また母親が無事だったことも心から喜んだ。

マジで良い娘さんだ。眩しすぎる。

 

「ありがとう。ミーナの事もおばさんのことも…」

 

「べ、べつに良いよ」

 

「……あれ?」

 

「どうした?」

 

「これは…」

 

マァムの視線を追ってみると、丈夫そうな布袋が落ちていた。

 

「さっきの二人が落としたのかしら?」

 

「みたいだね。ここに置いておくのも何だし、取り敢えず持って行こうか?」

 

「そうね」

 

「改めて自己紹介するよ。俺はタケル、商人だよ」

 

「知っているみたいだけど、私はマァムよ。

 ミーナとおばさんの事、本当にありがとう」

 

「いいよ。それよりもあの勇者アバンの使徒なんだって?凄いカッコイイよな。オレ、憧れるよ」

 

いやマジで。

遠目から魔弾銃を撃つところ見てたけど、マジでカッコよかった!

本物はやっぱり違うわ。

 

「そ、そんな事ないわよ」

 

「いやいや、本当に凄いって!

 

オレなんて最低限の自衛能力しか身につけてないからさ」

 

「へぇ、でも一人でこの森を抜けてくるのは素直に凄いと思うわよ」

 

「はは、おっと!それよりも早くミーナちゃんを安心させてやらないと」

 

忘れるところだった。

マァムと会えてテンション上がりすぎだろオレ。

それに魔の森で立ち話は危険過ぎる。

マァムには何でもないけどオレに命の危険。

早く帰らないとヤバイ。

 

「そうね!急いで村に戻りましょう」

 

 

 

 

「あ、帰ってきた!マァムお姉ちゃーん!」

 

村に入ると、ミーナちゃんと村長さんが迎えてくれた。

どうやら入り口で待っていてくれたみたいだ。

それに村の人だろうか。

皆が入り口に集まってきた。

一人を心配して村人が全員やってくるなんて本当に良い村だな。

 

「ただいま、ミーナ」

 

「マァム。ご苦労じゃったな」

 

「結局無駄足でしたけどね」

 

「なに、無事で何よりじゃわい」

 

「俺からも礼を言うよ。娘のために有難う」

 

ミーナの父親だろうか。

中年の男性がマァムに頭を下げた。

 

「お礼なら私よりも、このタケルに言って上げて」

 

「ありがとう、妻の治療まで行なってもらって」

 

「いや、良いよ」

 

なんだかしんみりした空気になったな。

村長が申し訳なさそうに口を開いた。

 

「マァム…すまない。村には男手が少ない。お前には何時も危険な目に…」

 

「みんな城を守りに行ってるもの。仕方ないわ」

 

「ウム、国王に何かあってはお終いじゃからのぅ」

 

皆の表情は更に暗いものになる。

いくらアバンの使徒とはいえ、マァムの様な娘がたった一人で村を魔物から守っているのだ。村の人たちも心中穏やかじゃないだろう。

そんな村人たちに、マァムは励ますように明るく言った。

 

「みんな安心して。村は私が守るわ!」

 

漫画で見るのとは訳が違う。

この世界を一人で旅をしてきたから分かる。

魔物の脅威を。

その驚異からたった一人で守ろうと言うのだ。

すごい勇気だ。

それに比べてオレは…。

 

「大丈夫だよ。お姉ちゃんはモンスターみたいに強いんだ!」

 

「そうだね!大丈夫さ!」

 

「こら!だれが魔物ですって!」

 

「あははは!」

 

子供達の言葉にゲンコツで答えるマァム。

雰囲気は一気に明るくなり、村人たちに笑顔が戻った。

凄い、これがアバンの使徒か…。

 

「ねえ、お姉ちゃん。それ何?」

 

ミーナはマァムの持つ布袋を指さした。

 

「ええ、森で出会った妙な二人組が忘れていったのよ」

 

「開けてみようか?」

 

いたずら心と好奇心か。

子供が布袋の紐を解いて開ける。

すると、その隙間から黄金の光が放たれた。

 

ポン!

 

そんな音と共に飛び出してきたのは一匹のスライムだった。

 

 

「スライムだ!」

 

「離れて!」

 

魔物の出現。

マァムはこれまでの経験に基づき反射的に魔弾銃を抜いた。

金色のスライムはいきなり人間に囲まれて困惑している。

そしていきなりマァムに銃口を向けられ怯えた表情を見せた。

銃口とマァムの鋭い眼光、スライムは耐えられずに…。

 

「………ピ、ピェ~~~~ン!!!」

 

泣き出してしまった。

 

「駄目だよ。いじめちゃ…可哀想でしょ」

 

全くもってその通りである。

ミーナちゃんは正しい!

マァムはミーナに言われてバツが悪そうに銃をしまった。

 

 

 

 

一方その頃

 

魔の森の奥深くにある洞窟。

太陽の光を全く通さない最奥では一匹のリザードマンが寝息を立てていた。

ただ、普通のリザードマンとは大きさも威圧感も一線を画している。

 

「獣王クロコダインよ……、目覚めよクロコダイン」

 

低く威圧的な声がリザードマンに掛かる。

声に反応してリザードマンが目を開いた。

 

「誰だ?オレの眠りを妨げるのは…」

 

視線の先には何本もの触手を生やした目玉の怪物『悪魔の目玉』が洞窟の天井に張り付いていた。声は悪魔の目玉から発せられている。

 

「クロコダインよ」

 

悪魔の目玉の眼球から映しだされたのはクロコダインの上司。

魔軍司令ハドラーだった。

 

「これは魔軍司令殿!これは失礼をした!」

 

クロコダインは武人としての礼儀を取り姿勢を正した。

 

「どうしたというのだ?クロコダインよ。お前にはロモスの攻略を命じていた筈だが」

 

だというのに洞窟で眠っていた部下にハドラーは鋭い眼光を向けた。

クロコダインはその視線を受け流して頭を振った。鼻で笑う。

獣王である自分と人間と比べること自体が間違いだが、戦い甲斐の無い弱者を相手に全くその気に成れない。自分の配下の魔物たちだけで十分だ。

クロコダインの言い分、それは団長たる自分が出るまでもない。

配下の魔物たちに任せておけば後数日ほどでロモスを攻略できるとの事だ。

 

「相変わらずだな…。しかし今日はその事ではない。我ら魔王軍に楯突く者共が今、その森に迷い込んでおる。お前が始末するのだ。」

 

「なに?どんな奴だ!?」

 

悪魔の目玉が映し出しているモノが変わる。

映しだされたのは自分がよく知る場所、魔の森の風景。

そして森を歩く二人の少年。

少年の一人の方の顔が大きく映しだされた。

まだ十歳を過ぎたばかりに見えるあどけない表情の少年。

ハドラーは憎々しげに少年の顔を見ながらその名を告げた。

 

「こいつの名は……ダイ…ッ!」

 

クロコダインは顎が外れんばかりに大口を開けて固まった。

まさか軍団長たる自分に勅命が回ってきたと思えば、倒す相手は人間の少年だったのだ。この上司は何を考えているのか。

そう思うと呆れるのを通り越して笑えてくる。

 

「くくくく………」

 

笑いを堪えるが、それでも耐え切れず爆笑してしまう。

 

「何を笑う?」

 

「冗談は止めてくれ魔軍司令殿。獣王と呼ばれる俺に、ガキの相手をしろというのか?」

 

「侮るな!コイツは想像を絶する程の信じられんような底力を秘めておるのだ」

 

ハドラーは何かを思い出したように忌々しそうに拳を握りこんだ

 

「俺も手傷を負わされたのだっ…!このガキに…っ」

 

「な、何っ!?魔軍司令殿に傷を負わせただと!?」

 

クロコダインはハドラーの告白に驚愕した。

 

「そうだ!今の内に始末せねば必ず我等が最大の障害となるだろう……っ」

 

「くく……、面白いっ!」

 

クロコダインは口を吊り上げながら立ち上がった。

その表情は歓喜に震えている。

好戦的な笑を浮かべながら側にあった大斧を手に取った。

 

「ハドラー殿を傷つける程の小僧……ダイ…っ!是非戦ってみたいっ!」

 

その眼光は武人としての誇りに溢れていた。

クロコダインの表情にハドラーは確信した。

コイツならば間違いなくダイを葬ることが出来るだろうと。

 

「では任せたぞ……確実に葬れ!」

 

悪魔の目玉はその瞳を閉じた。

 

 

 

 

「ふふっ、かわいい」

 

ネイルの村にあるミーナの家。

先程の金色のスライムが机の上にいた。

ミーナはぷるぷると揺れるスライムと遊んでいた。

幻の珍獣ゴールデンメタルスライム。

知る人ぞ知るまさに生きた宝石。

それよりも…。

 

(神の涙か……)

 

原作知識。

オレはゴメちゃんの正体が『神の涙』だと言う事を知っている。

あらゆる願いが叶う願望機。

ゴメちゃんに願えば元に世界に帰れるかも知れない。

しかしオレは直ぐに頭を振った。

正直に言って、オレは元の世界にあまり未練はない。

高校生だったオレがこの世界にきてもう一年以上の時が経つ。

戻ったところでどうなるというのか?

学校は面倒臭いと感じていたし、卒業後の進路も全く見えてなかった。

しかしこの世界は居心地が良かった。

スキルの恩恵で商売は順調だったし、好きなドラクエ世界の武具や珍しい道具を手元においてある現実は本当に気分が良かった。

魔王軍によって平和が脅かされているが、いずれダイ達が世界を救ってくれる。

今の生活を捨てて元の世界に戻るのは抵抗感が生まれるのだ。

 

(やっぱり戻りたくないな……叔父さんには悪いけど)

 

現実世界の便利な文明の利器と様々な社会のしがらみ。

ドラクエ世界の自由な生活と魔物の脅威。

天秤にかけると矢張り自分に帰る選択はなかった。

それに自分には両親はいない。昔交通事故で亡くなっている。

世話になっている叔父も負担がなくなると思えば都合が良い。

 

(それに『神の涙』にちょっかい掛けて魔王に知られる訳にはいかない)

 

オレは思考を切り替えた。

マァムは壁にもたれ掛かってスライムを見ている。

無害とはいえ、魔物とミーナを一緒にするにはまだ心配なのだ。

 

「大丈夫かしら?」

 

「マァム、その二人組み、もしかしてロモスに行くって言ってなかった?」

 

「どうしてそれを?」

 

「いや、ネイルの村を素通りしたんだ。一番近い街はロモスだろ?」

 

「そうね……」

 

「で、どうするんだ?あの子、届けるのか?」

 

「そうね。今頃困っているかもしれないし…」

 

マァムはため息を付いて言った。

その時だった。

 

ドオオオオン!!!!!

 

大きな地響きが響き割った。

マァムは顔色を変えて外に飛び出した。

オレも後に続く。

外に出るとマァムは軽い身のこなしで屋根に飛び上がった。

 

「そんな…森が……」

 

マァムはその光景に息を呑んだ。

視線の先に広がる魔の森は朱く…。

轟々と燃え盛る魔の森。

これは只事じゃないだろう。

マァムは直ぐに家の中に戻ると、置いてあった武器を取った。

ハンマーロッド。

強い打撃力を持つが、その重量の為に鍛え上げた戦士にしか操れない武器だ。

 

「マァム、もしかして行くのか?」

 

「えぇ、これは只事じゃないわ。タケルはミーナとここに居て」

 

マァムはオレの返答を待たずに駆け出した。

不意にズボンをギュッと掴まれた。

 

「お兄ちゃん…」

 

ミーナは不安そうな表情をオレに向ける。

オレはマァムの後を追うつもりはない。

何故なら行く必要がないからだ。

俺が何もしなくても、ダイ達はマァムの助けで生き残る。

それにクロコダインなんて化物、俺が行っても意味が無いと思うのだ。

しかし…。

 

「後を追う気、無かったんだけどな~」

 

「え?」

 

俺はミーナの手を優しく取ると腰を下ろしてミーナと同じ高さで視線を合わせた。

この世界が原作通りに進むかどうかはまだ分からない。

正直怖い。でもそれ以上に興味がある。

今から急いで追えば間に合うかもしれない。

俺は道具袋から『星降る腕輪』を取り出した。

 

「ミーナちゃんは、家から出ちゃ駄目だよ」

 

オレは星降る腕輪を装備した。

 

「お兄ちゃん…」

 

「ちょっと行ってくるよ」

 

オレはマァムの向かった先、燃える森に向かって駈け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のステータス

 

レベル:12

 

さいだいHP:75

さいだいMP:536

 

ちから:32

すばやさ:80

たいりょく:38

かしこさ:265

うんのよさ:256

 

攻撃力:86

防御力:97

 

どうぐ

E:砂塵のヤリ

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

ヒャド ヒャダルコ

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 




修正しました。


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本日の目玉商品『砂塵のヤリ』

タケルの人間性が読者様から嫌われているようでww
しかし、ひゃんな事から能力を得ただけに子供なんてこんなものでしょう…。
しかしここから少しずつ心境が変化していきます。
少しずつですよ。


現在オレは魔の森を駆けていた。

流石は『星降る腕輪』と言うべきか。

今まで体験した事の無い感覚だ。人間ってこんなに早く走れるのか。

めまぐるしく流れる風景に感心しながらオレは更にスピードを上げる。

暫く走ると森の闇に人影が二人見える。

マァムがポップに詰め寄っているみたいだ。

 

「まさか、見捨てて逃げてきたんじゃないでしょうね!」

 

「ち、ちち‥‥違っ、ちがっ!」

 

「じゃあどうしてのよ!ええ!?」

 

マァムは激しい剣幕でポップを怒鳴りつけている。

 

「…っ!?」

 

ライオンヘッドが倒れている。

おそらくマァムがぶっ飛ばしたのだろう。

だが…。

倒れているライオンヘッドがゆっくりと起き上がった。

 

「あぶない!伏せろ!」

 

咄嗟の事だった。

オレは反射的に掌をライオンヘッドに向けていた。

多分、ポップとマァムを案じてでは無いと思う。

ライオンヘッドの怒りに狂った表情にオレの防衛本能は警報を鳴らしている。

オレは力の限り叫んだ。

 

「バギマァアアッ!!!」

 

放たれた風は渦巻き木の葉や枝、小石を巻き込みながらライオンヘッドに吸い込まれた。

 

「ギャアアアアアアッ!!!」

 

ううぅ、グロい…。

ライオンヘッドは全身を切り刻まれながら吹き飛ぶ。

血を撒き散らしながら前足が、羽が尻尾が真空の渦から飛びだす。

風が止むと、そこにはグチャグチャのスプラッタ状態の肉塊が残った。

マジで怖かった…。

こりゃ暫く肉は食えないな。

 

「あ、ありがとうタケル。でもどうしてここに?」

 

ポップから手を離したマァムが話しかけてくる。

 

「いや、それは…」

 

い、言えない。

好奇心に負けたなんて。

マァムは少なくとも命がけで村を出た筈。

オレもある意味命がけだけど、全ては保身に直結する。

好奇心は猫を殺す。行動に矛盾があるがオレは好奇心に負けた。

やっとの思いで搾り出した答えは…。

 

「し、心配だったから…」

 

「そう、ありがとう…」

 

「いや、それよりも、もう一人の子は?」

 

「はっ!?そうだったわ!」

 

「ちょ、ちょっとも待てよ!もしかして助けに行く気か?」

 

「当たり前でしょ!?あんたそれでも仲間なの!?」

 

「さっき言っただろ!?現れたのは軍団長の一人!とんでもないバケモンだったんだぞ!?」

 

ちょっと待て!?

本気で行かないつもりかポップ!

それは不味い!

ダイが死んだらどうしてくれるんだ!?

 

「だから急ぐんだろうが!あの子が死んでも良いのか!?」

 

「うぐっ!?」

 

オレの激しい一括にポップは口ごもった。

 

「さっさと案内しろ!ケツ蹴っ飛ばすぞ!」

 

「どわっ!わ、わかったよ!」

 

後で自分を殴ってやりたいと思った行動だった。

何様だよオレ…。

ダイが死ぬ=魔界浮上=人類滅亡=オレ死亡。

この公式が頭に浮かんだオレはかなり必死だったと思う。

今のオレならクロコダインとだって表面きって立ち向かえるはず。

オレとマァムはポップの後を追った。

 

 

 

 

……無理。

何が無理だって?

クロコダインと正面切って立ち向かうだよ!

オレの視線の向こうではクロコダインがダイと対峙していた。

掲げた巨大な斧が、激しい突風を生み出している。

あれが真空の斧だろう…。

つか怖すぎる!

殺気で目をギラギラさせた二足歩行の巨大なワニ。

メチャクチャ怖い!

アレと睨めっこだって出来るか!

そしてオレはダイの凄さに驚愕した。

だってたった一人であの化物と戦ってるんだ!

さすが勇者様だよ。

 

「今だ!海破斬!」

 

ダイはクロコダインが放った真空の刃を切り裂いた。

海破斬の衝撃波はクロコダインの鎧を裂き、後退させる。

 

「何ィ!?」

 

ダイは好機とばかりに飛びかかった。

しかしそれは悪手だった。

 

「カアアッーー!!」

 

「うわっ!」

 

突如吐き出された激しい息吹攻撃(ブレス)。

空では身動きの取れないダイはまともに食らってしまう。

ダイの全身を焼け付くような痛みが襲う。

 

焼け付く息(ヒートブレス)

クロコダインの切り札だ。

コレを受けた者は、全身が麻痺し動けなくなってしまうのだ。

 

「オレに傷を負わせるとは噂通り大した小僧だ」

 

しかし。

それでもダイは身体を引きずって落とした武器(ナイフ)を取ろうとする。

 

「もう寄せ、お前はよく戦った。

 オレは勇者を名乗る大人の戦士と星の数ほど戦ったが…

それでもお前の方が余程強かったぞ」

 

クロコダインは止めとばかりに真空の斧を振りかぶった。

 

「少々惜しいが楽にしてやる」

 

ヤバイ!

ダイのピンチ!

 

「ダイーーっ!」

 

ポップは走りながら杖を構えた。

 

「そうはさせん!」

 

クロコダインは真空の斧を使い突風を生み出す。

 

「これじゃあ近づけない!」

 

マァムは徐に魔弾銃を取り出した。

銃口をクロコダインに、ではなく倒れているダイに向けた。

 

「おい!何処狙ってるんだ!敵はクロコダインだぞ!おい!…や、やめろ~~~~っ!!」

 

ポップの制止の叫びと同時に引き金が引かれた。

放たれた光線はダイへと吸い込まれる。

 

「なにするんだ!?気でも狂ったのかよ!」

 

「落ち着いて!ほら!」

 

マァムの指先を追うと、ダイの体が回復魔法の光に包まれていた。

焼け付く息によって傷ついた身体は見る見るうちに元に戻り…。

 

「う、動く……動くぞ!」

 

「おのれ!」

 

ダイは起き上がってナイフを拾い上げるとクロコダインと距離を取った。

 

「いったいどうなってるんだ?」

 

「もしかしてキアリクか?」

 

「そうよ」

 

オレの回答にマァムは肯定して魔弾銃から弾を抜き取った。

 

「キアリクを込めた弾を撃ってあの子を助けたの」

 

魔弾銃。

火薬の代わりに様々な魔法を込めて撃つ鉄砲。

原作同様にマァムは説明してくれる。

商人としては欲しい一品だぜ。

話し込んでいる間に再びオレたちを突風が襲う。

見るとクロコダインが再び真空の斧の力を発揮していた。

オレたちを近づけない気か!

今のダイでは一人でクロコダインを倒すことは出来無い。

 

「あの武器を何とかしないと…」

 

マァムは閃いたようにポップに聞いた。

 

「そうだ!あんた、氷系呪文(ヒャド)出来る!?」

 

「おお!オレの氷系呪文(ヒャド)と言えば天下一品と評判で…」

 

「貸してくれ!」

 

「あ!」

 

ポップの自慢に付き合ってるヒマはない。

オレはマァムから弾丸をひったくると呪文を唱えた。

 

『氷系呪文(ヒャダルコ)』

 

弾丸に確かに吸い込まれる感覚。

それを確認したオレはマァムに弾丸を手渡した。

 

「マァム!」

 

「…え、ええ!」

 

一瞬戸惑いを見せたマァムだったが直ぐに気を取り直して弾丸を魔弾銃にセットする。銃口を真空の斧に向けた。

 

「死ねぃっ!!!」

 

「今だ!」

 

ダイに向かって斧を振り下ろす瞬間。

マァムは狙いを付けて引き金を引いた。

ヒャダルコの呪文を込めた弾丸は見事に斧に命中。

 

 

「うお…、おおぉっ!?」

 

真空の斧はビキビキと音を立てて凍りつく。

氷はクロコダインの腕まで覆い込んだ。

ダイがこの機を逃すはずがなかった。高く跳躍する。

 

「クロコダイン!これでもくらえ!!」

 

「しまった!朝日がっ!?」

 

ダイの背後の太陽光によって目を塞がれたクロコダイン。

 

「でやあああああああ~~~~っ!!!」

 

ダイの会心の一撃がクロコダインの片目を奪った。

 

「ぐわああああああ~~~~っ!?」

 

ズゥン…!

轟音を立ててクロコダインは大地に倒れ伏した。

 

「ダイーッ!?大丈夫かーっ!」

 

オレたちは倒れかけているダイの体を駆け寄って支えてやった。

 

「ポップ…、ひでぇよ、逃げちゃうんだもんな…」

 

「いや…あ、あはは…」

 

ダイの言葉にマァムはポップを睨みつける。

 

「回復呪文(べホイミ)」

 

オレはダイにベホイミを掛けながら、クロコダインに注意する。

このまま終わる訳がない事を知っているからだ。

 

「あ、ありがとう……」

 

「あなた、回復呪文まで…もしかして賢者?」

 

「いや、商人だよ。呪文の才能だけはあったみたいで…っ!」

 

クロコダインが起き上がった。

ダイ達もオレの表情を見て視線の先を見る。

そこには片目を潰され怒りの形相を向けるクロコダインがいた。

 

「グゥゥ……よ、よくもオレのカオに…いや!オレの誇りに傷を付けてくれたな……っ!!」

 

その表情にオレの身体は完全に硬直していた。

蛇に睨まれた蛙である。本当にこんな状態があるのか!

マジで怖すぎる。つくづく思う。

チートな能力を得ても所詮オレはしがない学生でしかない事を。

 

「お、覚えていろよっ!……ダイ!お前はオレの手で必ず殺す!!!」

 

その形相に恐怖を覚える一行。

クロコダインは闘気の塊を地面に向けて放った。

そして出来た穴に飛び込んで姿を消した。

どうやら助かったみたいだ。

緊張が切れたオレはその場にへたり込んだ。

 

 

 

 

「どうにか助かったな…」

 

「そうね。それにしてもタケルには驚かされたわ」

 

「いや、オレもアバンの使徒の凄さを改めて知ったよ」

 

「「えぇ!?」」

 

オレの言葉にダイとポップが目を向いて驚いた。

 

「お、オレも!俺達も、アバン先生の弟子なんだよ!」

 

「そ、そうなの?」

 

ポップとダイは首飾りを取り出して言った。

 

「アバンの印…」

 

マァムも胸元から『アバンの印』を取り出した。

マジで乳でけーな…。

 

「そうだったのか…道理で強いわけだ」

 

ダイは納得したように微笑んだ。

 

「どうだ?傷の方は?」

 

立ち上がってダイに聞いた。

 

「もうすっかり。爺ちゃんのベホイミよりきくよ」

 

そりゃ光栄だな。

こうやってダイの傷を治すのも好感度アップの為。

そりゃ子供が傷つくのには思うところはある。

でもそれ以上にダイに死なれるのは不味すぎるのだ。

オレの平穏を取り戻してくれるのはダイ達だけなのだから…。

 

「攻撃呪文に回復呪文…おめえ、賢者か?」

 

「マァムにも言ったけど聞こえてなかったのか?オレは唯の旅の商人だよ。呪文がちょっと得意なだけな」

 

「でも本当に凄いと思うわ。ここに来る時も私たちの足についてきたんですもの。かなり鍛えたんでしょうね?」

 

「へえ~」

 

ダイも感心したように俺を見た。

いいえ。

星降る腕輪の力です。

そんなに尊敬の眼差しで見ないで下さい。

 

「あれ?その傷…」

 

マァムは俺の腕を取った。

何時の間にか腕から血が流れている。

 

「多分、どこかで枝にでも引っ掛けたんだろう。

 こんな傷くらい舐めときゃ治るよ」

 

「ダメよ」

 

マァムは回復呪文(ホイミ)を唱えて傷を直してくれた。

人に回復呪文を掛けてもらったのは始めてでちょっと感動。

 

「あ、ありがとう…」

 

「どういたしまして」

 

その様子を見ていたポップが遠慮がちに頭をかきながら言った。

 

「あ、あの…、俺にもひとつ回復呪文(ホイミ)を…」

 

ベチ!っとマァムは薬草を投げつけて返答した。

 

「はい薬草」

 

「て、てめえ!なんだよこの待遇の差は!?」

 

「臆病者と勇者の差でしょう?この人は商人なのよ?」

 

ごめんなさいポップ、マァムさん…。

俺は臆病者です。断じて勇気なんて無いです!

これで次回の戦い逃げれば幻滅されるかな?

「本当は臆病者です!」なんて今更言えない…。

澄まし顔で無視するマァムと喚くポップ。

ダイはその様子に思わず笑い声を上げていた。

 

(せっかく逃げる為に用意した砂塵のヤリ、意味なかったな)

 

いざとなればマヌーサの効果で逃げようと思っていたが…。

無駄になったのは喜ぶべきか残念がるべきか…。

俺は日の登り始めた空を眺めながら溜息を付いた。

 

「あぁ…これで魔王軍に目を付けられたかも…」

 

まだ大丈夫、だよな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のステータス

 

レベル:15

 

さいだいHP:89

さいだいMP:546

 

ちから:42

すばやさ:100

たいりょく:45

かしこさ:275

うんのよさ:256

 

攻撃力:96

防御力:107

 

どうぐ

E:砂塵のヤリ

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 




タケルの魔法の才能はあくまでも魔王軍と戦闘になってしまった時に生き残る為に必要な能力です。
流石に道具だけじゃ自衛は無理そうなので…。


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本日の目玉商品『鉄の剣』

赤い弓兵さんのファンのかたスイマセン。
先に謝っておきます。
気分を害される方もいるかも知れません…。



辛くもクロコダインを退けたダイ達。

一行は一旦ネイルの村に帰還し旅の疲れを癒す事になった。

 

「ピィ~~!ピピィ~~!」

 

「ゴメちゃん!」

 

ダイ達はゴメちゃんがついてきた事に驚き、また再開を喜んだ。

 

「それにしてもゴメちゃんは凶暴化しないんだな」

 

「そうなんだよ。こいつにはなにか不思議な力があるのかもな」

 

「とにかく会えて良かった。ありがとう!マァム、タケル」

 

「どういたしまして……あ、お母さん」

 

人垣から出てきた優しそうな妙齢の女性。

マァムは嬉しそうに女性に駆け寄った。

 

「紹介するわ。母のレイラよ」

 

マァムは親娘並んで紹介。

並んでいるところをこうして見ると良く似ている。

 

「ねぇ お母さん、この子達もアバン先生の弟子なんだって」

 

「まぁ!アバン様の!?」

 

レイラは嘗て夫ロカとアバンと闘った仲間らしい。

戦士ロカと僧侶レイラ。

間違いなく英雄だ。

僧侶と戦士の力を受け継ぐマァムは『僧侶戦士』という事だ。

 

「ところでアバン様はお元気ですか?」

 

レイラの言葉にダイは気まずそうにポップと顔を見合わせた。

ポップは言いづらそうに俯く。

 

「……え、えっと」

 

「げ、元気ですよ!」

 

ダイはポップの言葉を遮りながら無理やり笑顔を作った。

 

「そりゃもう、ピンピンしてますよ!」

 

「そうですか。良かった」

 

レイラは嬉しそうにニッコリと微笑んだ。

 

 

 

 

「ふむ、素晴らしい品揃えじゃのう」

 

「はい オレ自ら作り、仕入れた品々ですよ」

 

オレは現在、村長の家に来ていた。

村長と商談を行なっている。

魔王軍の復活に伴い商人が来なくなった村に蓄えの余裕は殆ど無い。

村に戻ってきた後、村長は直ぐにこれからの村の事を相談してきたのだ。

商人であるオレに食料や薬草などを売って欲しいのだとか。

 

「大した金額は払えぬが、何とかならぬものかのう…」

 

「こっちとしても商売ですからね。まぁ、多少は勉強させてきただきますが」

 

「おお、それは有難い!……それから、すまんが村を守るためにも…」

 

「武具が欲しいのですか?」

 

オレの前に並べられているのは薬草や毒消し草に食料だ。

袋から次々と取り出したオレに村長はそれはもう驚いていた。

やはりゲーム仕様の四次元袋は見た事がないようだ。

付け加えると、この袋はオレしか使えない。

ゲーム同様に盗まれる事は無いのだ。

オレ以外の人間は袋に物を入れることも取り出すことも出来無い。

 

「うむ、武具が高価な事は承知しておるが…。マァム……、あの娘だけに負担を掛け続けるのは…」

 

この村は本当に良い村のようだ。

村長を始めとした全ての村人がマァムの身を案じている。

まさに『一人は皆のために皆は一人のために』だ。

オレはドケチだが人情がない訳ではない。

それに今は平和な時代とは異なり非常時だ。

オレは鉄の剣や槍、盾を次々と取り出していく。

鎧や兜は……まぁ要らないだろう。動けなくなるだろうし。

鍛えていない村人が完全武装は無理がある。

本日の商品はコレだ!

 

鉄の剣(1000G)

鉄の槍(1350G)

鉄の盾(900G)

 

「村人の男性の人数分、用意できますが如何いたしますか?」

 

「ううむ……、村にそんな金はないわい」

 

村の人口はそれほど多くはない。

若者の多くは城を守るために徴兵されているからだ。

武器を扱える男性は大体十人くらい。

それでも人数分の装備を揃えれば大金になる。

 

「そうですか、ならレンタルはどうでしょう?」

 

オレは予てより温めていた計画を初めて見ることにした。

 

「レンタルじゃと?」

 

「はい、これらの装備を格安でお貸しします。期限は1年間、値段は本来の十分の一でどうでしょう?」

 

「うむ…、これならば何とかなりそうじゃな。しかし良いのか?食料や薬草に加えて武具まで…。ワシが言うのも何じゃが、お主にも生活はあるじゃろう?」

 

「心配は要りませんよ。村長はオレよりも村の事を考えてあげて下さい」

 

ぶっちゃけた話、余り金には困っていない。

チートな能力があるから稼ごうと思えばいくらでも稼げるのだ。

それにネイルの村は英雄の村だ。

ちょっとした下心から贔屓にしたいと思う。

 

「……すまぬ」

 

村長は申し訳なさそうに俯いてしまった。

いや、マァムの生まれ故郷だし、この先の事を考えるとね…。

それにマァムは間違いなくダイ達に付いて旅に出てしまうのだ。

マァムの価値と天秤にかければ全然足りないくらいだ。

こうして武具を与えておけばマァムの心も少しは楽になる筈。

結果、オレの保身に繋がる!

 

「長老様、タケル!」

 

「ダイ?」

 

やって来たのはダイだった。

何やら真剣な面持ちでオレたちを見ている。

そして意を決したように口を開いた。

 

「どうか俺に、魔法を教えて下さいっ!!」

 

「何じゃと!?」

 

「はい!俺がこの村にいる間だけでいいんです」

 

「ダイ…」

 

「俺だけが呪文が苦手だなんて言ってられない!」

 

「しかしじゃな…確かにこの村ではワシが一番の魔法の使い手じゃ。だがアバンの使徒である君に教える程の力は無いぞ」

 

「右に同じく」

 

俺も人に教えるほどじゃない。

俺の魔法の使い方は中二全開の妄想力と魔法力に頼った力ずくだ。

多分、参考にはならないだろう。

某・赤い弓兵よろしく「想像するのは常に最強の…」みたいなノリでやってるのだ。

やばい、考えれば恥ずかしくなってきた。

絶対に人には教えられないな。

 

「俺、先生には3日しか修行を受けてないんだ」

 

ダイは目を伏せて消え入りそうな声で言った。

 

「なんじゃと!?どういうことじゃ!?」

 

ダイは悲しそうな表情を上げて告白した。

 

「長老、それにタケル…。マァムやおばさんには絶対に言わないで下さい…!先生は…、アバン先生は死んだんですっ!!!」

 

ダイは涙を流しながら言った。

握りこんだ拳と肩が震えている。

見ていられないな。

俺はダイから目を逸らした。

 

「…あ」

 

森の向こうに誰かが走り去っていく。

あの後ろ姿はマァムだった。

オレたちの話を聞いていたのだろう。

これで原作通りマァムはダイ達と旅立つ。

喜ぶべきなんだろう。

だけど…。

 

「やりきれないよな…」

 

アバンは実は死んでいない。

教えるのは簡単だ。

けど、何故オレがそんな事を知っているのか矛盾が生まれる。

それだけではない。

アバンが心を鬼にして身を隠した意味が無くなってしまう。

オレ自身も力を貸すなら、ダイ達の成長を阻害しない程度にしなければ。

これはさじ加減が難しい。

 

「タケル?」

 

「…あ、ああ。ごめんダイ。魔法の修行か……。オレも感覚的に使っているだけだし…」

 

「その感覚を教えて欲しいんだ」

 

「俺からも頼むよ」

 

「ポップ!」

 

何時のまにか現れたポップもオレに頭を下げた。

 

「俺に出来るのは手本として実際にやってみせる事だけだ。それでも良いなら構わないけど…」

 

「充分だよ!ありがとう!」

 

「ならばワシも微力ながら手助けさせてもらうかの」

 

こうしてダイの魔法の修行が始まった。

ダイは殆どの呪文の契約を既に済ませた後らしく契約の必要な無い。

どうやら故郷で育ててくれた『じいちゃん』が自分を魔法使いにする為に片っ端から契約をさせたらしい。

魔法を扱う素養と準備自体は問題ないのである。

 

「じゃあ取り敢えず火炎系呪文(メラ)からだな」

 

取り敢えず最も魔法力(マジックパワー)を消費せずに簡単なのから挑戦。

俺の知る限り呪文とは先天的な資質があれば誰にでも使うことの出来るものだ。

契約によって魔法の力を宿し習得する。

そして魔法力、力量ともに足りていれば魔法は発動する。

そんな具合だ。

 

オレに促されて火炎呪文を唱えるダイ。

しかし呪文は巧く発動しない。

掌にマッチで付けたような小さな火が出るだけだ。

何度も唱えるが結果は同じ。

ダイは子犬のような目をオレに向けた。

 

「じゃあオレがやってみせる。ダイ、良く見ててくれ」

 

「うん!」

 

オレの先には藁や木の枝で出来た人形が立てられている。

オレは指先に魔法力を集めプラス方向にイメージする。

こういう時に原作知識が役に立つ。

想像するのは常に最強の自分……なんちゃって。

 

「すげー」

 

オレの指先に瞬く間に火球が生み出された。

その大きさは大体バスケットボールくらいだ。

赤い炎はオレの想像力によって黄色に変わる。

あ、ちょっと間違えた。

 

「火炎呪文(メラ)!」

 

撃ち出された火球は轟々と音を立てながら人形に命中。

一瞬で人形を灰に変えた。

 

「な、なな…」

 

振り変えると全員あんぐりと口を開いて固まっている。

やり過ぎたか?

確かに先刻のメラはメラミ並の威力があったからな。

現代で生きたオレは炎の色によって温度が変わってくる事を知っている。

魔法とは集中力とは良く言ったものだ。

錬金術師たるオレに相応しい使い方だ。

 

「あ……あれのどこが火炎呪文(メラ)だ!どうみてもメラミだろ!」

 

「凄いや!どうやったらそんな風に魔法が使えるの」

 

ダイは尊敬の眼差しをコチラに向けてくる。

やめて!そんなに純粋な目を向けないで!

オレのライフはとっくにゼロよ!

 

「ま、まぁ…それはオレの中二の妄そ……、いや想像力というかなんというか…」

 

「チューニ?想像?どういう事?」

 

「そんな言葉、聞いた事ねーぞ」

 

ヤバっ!

声に出てた!?

えっと、どう言おうか…。

まさか中二病の説明をする訳にもいかなしな。

そして苦し紛れに出た言葉は。

 

「……そ」

 

「そ?」

 

「想像するのは常に最強の自分」

 

ゴメンナサイ赤い弓兵さん。

オレはあなたの言葉を汚してしまいました。

 

「なんか良いね。それ…。そうか、常に最強の自分かぁ…、そういえば先生も言ってたっけ?魔法はインスピレーションだって」

 

ポップも思うところがあるように頷いている。

ダイは気を取り直して標的である人形に手をかざした。

 

『―火球呪文(メラ)!』

 

見事に火球が出現する。

しかし飛んでいく気配がない。

 

「くっ、こうなったら…でりゃあああああああ!!!!」

 

ダイは火球を殴り飛ばした。

火球はオレの手本と同じように人形を灰に変えた。

ダイが無理やり打ち出したからだろう。

その威力はもはやメラではない。

マジで怖い。

ダイは嬉しそうにコチラを見ると、飛び上がって喜んだ。

 

「や、やったー!初めて自分の意志で魔法を成功させたぞー!」

 

「うむ、見事じゃ」

 

「けど、なんつう力技だよ…。あんなの成功した内に入らねーよ」

 

「まぁ良いじゃないか。あんなに喜んでるんだ。水を差すのもな…」

 

「確かにな…」

 

ダイは未だに飛び跳ねて喜んでいる。

オレも初めて呪文を使った時はあんな風に喜んだな。

それはもう厨二全開だった…。

この際だ、次いでに真空系呪文(バギ)も教えてみるか。

オレは飛び跳ねているダイの所へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レベル:15

 

さいだいHP:89

さいだいMP:546

 

ちから:42

すばやさ:100

たいりょく:45

かしこさ:275

うんのよさ:256

 

攻撃力:115

防御力:107

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 

 




ダイの大冒険で中二病が誤解されてる…。
チューニ=魔法を使う為の優れた集中法?
ダイ君、ポップ騙されるな。


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本日の目玉商品『鉄の胸当て』

「明日、村を出る?」

 

「そりゃまた急な事だな」

 

日も暮れ魔法の修行が終わり、俺達は明日に備えて休む事にした。

ミーナの家を宿として使わせてもらう。

食事も終わり床に付いたところでダイが村を出ると言い出した。

 

「うん、あまり長いできないから」

 

「ロモスに行くんだよな?

 何をしにいくのか聞いても良いか?」

 

「王様を助けに行くんだ!怪物(モンスター)に苦しめられてるらしいから」

 

「……そう」

 

急な事にマァムは目を丸くしている。

そして寂しそうな顔をすると目を伏せて部屋を出ていった。

 

「さてと」

 

「あれ?どこ行くの?」

 

「ちょっと夜風に当たりにな」

 

オレは外に出ると先程までダイが特訓をしていた場所に来た。

寝る前にオレ自身の魔法の特訓をしようと思ったからだ。

これからの戦い、介入する気はないが巻き込まれる可能性が有る。

その時、自分の身を守る力は絶対に必要だ。

しかし強力な攻撃魔法を習得してしまえば、ポップの役目を奪いかねない。

なら小手先の技術を高めれば…。

オレは両掌にそれぞれ異なる呪文の構成を試みてみた。

しかし…。

 

「……ちっ!失敗か…やっぱりそう簡単な技術じゃないんだな」

 

思うように集中できずに魔力は霧散してしまう。

二つ同時の呪文行使、どうやらかなりの高等技術の様だ。

 

「だからといって諦める気はないけど…」

 

オレは気を取り直して両掌に魔法力を集中させた。

もしも成功すれば戦術の幅が広がる。

そしてあの魔法も出来るかもしれない。

マジで夢が広がる!

 

「…おっと、雑念は捨てないとな」

 

オレは気を取り直して両手に魔力を集中した。

 

 

 

 

「……無理」

 

約1時間後。

オレは両手の魔力を霧散させて呟いた。

はっきり言って難しすぎる。

なんだよこれ!

ポップとマトリフの師弟コンビ、マジでチートだよ。

左右で異なる絵を描くよりも難しいわ!

こんなの一朝一夕では無理だ。

最終決戦でぶっつけ本番で成功させたポップに尊敬。

 

「今日は無理だな。要練習だなこりゃ…気を取り直して錬金でもするか」

 

オレはステ画面を開くと錬金釜を選択した。

目の前に錬金釜が出現する。

このゲーム仕様のお陰でオレは道具を盗まれた事が無い。

全くチートなスキルだよ。

オレは持っている全ての薬草と毒消し草を素材として使い、一段階上の回復アイテムを作り出していく。

やっぱり何でもコツコツやるのが一番だ。

そして作業が終わり、心地よい眠気を感じる。

オレは明日に備えて床に就いた。

 

 

 

 

「もう朝か…」

 

窓の外を見た。

東の山からは日が顔を覗かせていた。

視線を下げると村の入口が見え、そこには人集りが出来ていた。

ダイとポップの見送りか。

俺も一緒に行こうかな。

魔の森を一人で抜けるよりもダイ達と一緒のほうが安全だ。

 

「…いや」

 

俺は直ぐに考えなおした。

明日の朝にはクロコダインが百獣魔団を率いてロモスを襲う筈だ。

そうなれば魔の森の怪物もかなり少なくなるだろう。

村を出るならその時の方が良いかもしれない。

でも…。

 

「流石にナイフと布の服は…」

 

明後日にはダイはクロコダインと戦わなければならない。

しかも防具は無しナイフ一本…。

どんな罰ゲームだよ!

難易度HurdどころかVery Hardだよ!

 

「少しくらいなら、手助けしても良いよな…」

 

オレは直ぐに起きると、ダイ達の所に急いだ。

 

 

 

 

「ダイ兄ちゃん…怪物をやっけたら、絶対にまた来てね!」

 

「頑張るんじゃぞ」

 

「気をつけてな」

 

「マァムもありがとう!」

 

「ごめんね、本当はついて行ってあげたいけど」

 

「大丈夫さ!ちゃんと地図をもらったしね!」

 

「ダイ、ポップ!」

 

「タケルも見送りに来てくれたの?」

 

ダイ達に駆け寄ると、ダイは嬉しそうにオレの顔を見上げた。

だからそんな顔で見ないで欲しい。

伝説級の武具を上げてくなる。

オレは尤もらしく咳を一つ、道具袋からあるものを取り出した。

 

「それもあるが、ダイに受け取ってほしい物がある」

 

「え、何を…」

 

オレは道具袋から鉄の剣と鉄の胸当てを取り出した。

 

「え、ええぇっ!?」

 

剣と胸当てを見て、ダイは目を白黒させて驚いた。

 

「ダイ、装備してやるからコッチに来い」

 

よろず屋がサービスでお客さんに装備させてあげるのはデフォだ。

オレのコーディネートに驚くが良い!

 

「も、貰えないよ!オレ、お金なんて無いし!

 

そう言いながらもダイはチラチラと鉄の剣を見ている。

本当は欲しいくせに無理しやがって。

オレはダイの肩に手をおいた。

 

「ダイ、良く聞いてくれ」

 

「う、うん…」

 

「きのう現れたあの怪物…恐らく近い内にダイのところに現れるはずだ」

 

オレの言葉にダイは真剣な表情で頷く。

 

「敵は独りじゃない。百獣魔団とかいうのも居る…。いくらお前が強くてもナイフ一本で勝てる程、連中は甘くない」

 

「そ、それは…」

 

オレは更に畳み掛ける。

 

「昨日の戦い…」

 

「え?」

 

「正直言って凄かった…オレ、メチャ怖くて死ぬかと思ったんだ。でもさ…ダイが戦ってるところを見て、こう何ていうのかな…」

 

ダイ達は黙ってオレの話を聞いている。

 

「子供だけど、とてもそうは見えないっていうか…。うん、本当にダイが勇者に見えたんだよ…」

 

「オレが勇者?」

 

ダイは目を丸くして驚く。

オレはダイの言葉に「ああ」と答えて剣を差し出した。

 

「オレは商人だ…魔法はそれなりに使える。けど実際に戦いの術を学んだわけじゃない…。オレにはダイの様に魔王軍と戦う事は出来無い。だから…オレはお前に賭けてみようと思う」

 

「タケル…」

 

「俺の代わりにその装備を連れていってくれないか?さっきも言ったけど、クロコダイン相手にナイフ一本は無理だ」

 

唯でさえクロコダインの方が力量(レベル)が上なんだ。

しかも真空の斧とゴツイ鎧まで装備している。

その上ザボエラまで絡んで来るのだ。

Very Hardとか思ったけど、難易度はそれ以上かもしれない。

オレは真剣な表情でダイの顔を見つめた。

ダイは理解し力強く頷いた。

 

「ありがとう、タケル!オレ、絶対にロモスの王様を助けるよ!」

 

「頼んだぞ」

 

オレは早速ダイに鉄の胸当てと鉄の剣を装備させてやった。

布の服の上で光る銀色の防具。

腰に差された鉄の剣。

こうして見ると一端の戦士に見える。

かなり見違えた。

 

「ど、どうかな?」

 

ダイは照れくさそうに言った。

 

「よく似合ってるぞ」

 

どうせクロコダインを倒せば鋼の剣を貰えるんだ。

鉄の剣くらいなら問題ないだろう。

切れ味ならパプニカのナイフの方が上かもしれないし。

 

「な、なぁ!オレには?」

 

「臆病が治ればくれてやるよ」

 

「なんだよ!それ!」

 

「あはは!」

 

すまんポップ!本気でゴメン!

クロコダイン戦が終われば良い装備を上げるから許してくれい!

 

「代わりにコレをやるよ」

 

「なんだよ、コレは?」

 

「俺特性、特やくそうだ!」

 

「特やくそう…?ああーーーっ!思い出した!以前ベンガーナにいた強欲商人!」

 

「失礼な。適正価格って言っただろ?あれ?言ったっけ?」

 

「聞いてねーよ!まぁ、先生も褒めてたから効果は良いみたいだけど…、ていうか金は取らないのかよ!?」

 

「今は非常時だ。皆の為に戦ってくれてる勇者から金は取れないよ。俺が金を取る相手は持っている相手だけだ!」

 

決まった!

本当はそうでも無いんだけどな…。

周りを見ると皆が感心したように俺を見ている。

照れるじゃないか…。

 

「……んんっ!じゃあな!ダイ、ポップ!二人とも絶対に死ぬんじゃないぞ!」

 

「うん!じゃあもう行くよ!」

 

「元気でな!」

 

ダイとポップは別れを惜しみながら手を振り、森の中に消えていった。

 

「本当に大した奴らだな…」

 

「全くじゃ…あんなに小さいのに魔王軍と戦おうとは…」

 

「マァム?」

 

ふとマァムを見ると、彼女は泣いていた。

既に見えなくなった二人の後ろ姿。

彼らが消えた森を見ながら涙を流していた。

母レイラがマァムの肩にそっと手を置いた。

 

「行ってあげなさい」

 

「お母さん…」

 

「私達のことは構わずに」

 

レイラはマァムに武器を渡しながら微笑む。

 

「私もね…むかし傷つきながらも戦い続けたアバン様とお父さん…、二人を見かねて村を飛び出したのよ」

 

「お母さん!」

 

「私の娘だもの、しょうがないわよ」

 

「そうだよ!」

 

「いってきなよ!」

 

村の人たちも口々に声を上げた。

 

「村のことなら心配ないぞ。タケル殿が格安で武具を貸してくれたのでな」

 

「タケルが?」

 

「まぁな…それよりもマァム…,ダイ達にはお前が必要だ…」

 

俺はダイと同じ鉄の胸当てをマアムに手渡した。

 

「ダイ達を頼む…」

 

マァムは力強く頷くと魔の森に向かって走りだした。

 

「マァムにまで…ありがとうタケルさん」

 

マァムが入った後、レイラさんに感謝された。

こうしてみるとマジで美人だな。

 

「いえ、良いんですよ。俺にはコレくらいしか出来ませんから…」

 

ふう、これでダイ達と別行動が出来るな。

心配だけど自分の命と天秤に掛ければ自分の命に傾く。

肩の荷が降りた。

昨日、ダイ達がいたとはいえ、クロコダイン戦で懲りた。

アレは怖すぎる。

もしクロコダインが退いてくれなかったらと思うとゾッとする。

暫くほのぼのが続けば良いな~

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

レベル15

 

さいだいHP:89

さいだいMP:546

 

ちから:42

すばやさ:100

たいりょく:45

かしこさ:275

うんのよさ:256

 

攻撃力:115

防御力:107

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

 



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本日の目玉商品『身かわしの服』

ダイ達がロモスに向けて出発した後。

オレは一人、頭を悩ませていた。

次の目的地はベンガーナ。

恐らく現時点では最も安全な国だ。

ベンガーナの誇る戦車は実際に、何度も魔王軍の侵攻を防いでいる。

初めて戦車を見た時は感動したものだ。

 

「はぁ…」

 

オレは大きく溜息を付いた。

やっぱりダイ達が気になる。

心配してるわけじゃない。

何せダイは主人公。

それに竜の紋章まであるのだ。

どんなにピンチに陥っても勝てる要素はあるのだ。

 

「心配?」

 

ふと横から声がかかった。

レイラさんだ。

何時の間にかオレの隣にいた。

 

「ダイ君達の身を案じているのでしょう?」

 

そりゃ勘違いだ…。

最近良く勘違いされてるなオレ…。

ここは一つ誤解を解いておかないとな。

 

「いえ、ダイ達なら大丈夫だと思います。それに心配してるわけじゃないですよ。それよりもこれから先の事です」

 

「これから先の事?」

 

「はい、次はベンガーナにでも行こうと思って…あの国には戦車もあります。魔王軍もそう簡単には攻められないでしょう?」

 

オレの言葉にレイラさんは目を見開く。

そしてクスクスと笑った。

 

「えっと…オレ、可笑しいこと言いましたか?」

 

「えぇ、何だかんだ言ってもあなたはダイ君達の身を案じている。だってそうでしょ?そうやって理由をつけてあなたはロモスに行こうとしてるんですもの」

 

何を言ってるんですか奥さん…。

自分勝手に自己解釈しないで下さい。

 

「だってベンガーナに行くにしてもロモスから船に乗る必要があるでしょ?お見通しよ…」

 

レイラさんの言葉にオレは固まった。

そうだった…。

ルーラの出来無いオレには徒歩か船しか移動手段はない。

キメラの翼は最後に立ち寄った町や村に限定されている。

レイラさんはニコニコとした顔で俺を見ている。

やばい、物凄くやばい展開。

もしかして期待してますか?

しがない商人の俺に期待してますか奥さん?

それに皆さんもそんなに期待に満ちた目で見ないでくれ。

 

「商人の兄ちゃん、マァム姉ちゃんを助けてくれるの?」

 

「頑張って!」

 

「まだ若いのに大したもんじゃ」

 

何この展開。

もしかしてオレ、ロモス行き確定!?

レイラさんを見る。相変わらずニコニコ。

村の皆を見る。期待に満ちた眼差し。

断れる雰囲気じゃない。

 

「……い、いや~、レイラさん流石!バレてました?…適わないな~」

 

冷や汗ダラダラなオレ。

何でこんな事になったんだろう。

確かにベンガーナに行くにはロモスから船に乗らなきゃいけない。

行くしかないのか?

でもって戦いに巻き込まれるのか?

いや諦めるの早い。

今からゆっくり行けばもしかしたらクロコダイン戦が終わった後に着くかもしれない。そうなればオレはこのままベンガーナに行けば良い。

そうと決まれば…。

 

「じゃあそろそろ行きます。皆さん、お元気で」

 

「気をつけるのじゃぞ」

 

「マァムの事、よろしくお願いします」

 

こうしてオレはロモスへと旅立った。

 

「ゆっくり行こう…なるべくゆっくりと…一晩くらい野宿しても良いかも…」

 

 

 

 

ロモスの城下町。

魔の森を抜けたオレは門を抜けて街に入った。

 

「きゃああああ」

 

「た、助けてくれーっ!」

 

周りからは悲鳴と獣の吠え声が響いてくる。

それだけじゃない。

 

ゴオオオオオオォッ!!!

 

街からは火の手が上がり、ガラガラと建物が崩れる音も聞こえてきた。

火炎系呪文か閃熱呪文か、魔物が使ったのだろう。

 

「なんでこうなる」

 

オレは城門の影に身を隠して街の様子を伺っている。

実はもっと遅くに…。

少なくとも事が終わった後ロモスに到着する予定だった。

けど無理だった。

魔の森で野宿が。

そんな度胸、ヘタレたオレには無理だったのですよ!

凶暴な怪物が徘徊してるような森で一人眠るなんて出来るか!

誰だよ!魔物の数が減ってるなんて言ったのは!

お陰で無理やりの強行軍。

超スピードでロモスを目指して疾走した。

星降る腕輪の力もあって日が登る頃にはロモスに到着した。

 

「嗚呼、逃げようが立ち向かおうが危険じゃん」

 

兎に角、ロモス城にだけは行かない方が良いな。

天秤に掛ければ逃げた方がまだ安全だしな。

にしてもモンスター怖い…。

このまま立ち止まっているのは流石に不味い。

オレは聖水を自分にふりかけると、教会へと走りだした。

 

 

 

 

タケルがロモスに到着する少し前

ダイ達は怪物達の大きな咆哮で目を覚ました。

窓を開けると既に怪物は城下町に侵入しており、町は阿鼻叫喚だった。

既に人々に犠牲も出ている。

 

「そ、総攻撃をかけてきやがった…」

 

ポップは身を竦ませている。

 

「お、おい!ありゃ一体なんなんだ!」

 

隣の部屋にいた偽勇者が泡くって飛び込んできた。

 

「百獣魔団が来たんだ!」

 

「そ、そんな!今までこんな大軍で魔物が襲ってきた事なんて!」

 

『グオオオオオッ!!!』

 

今度は空から猛獣の雄叫びが響く。

クロコダインだ。

ヘルコンドルの力を借りて空を飛んでいる。

そしてそれに付き従うように鳥系の魔物が後に続いている。

 

「行け!行けぃっ!!ロモス城を殲滅するのだぁっ!!!」

 

怒りに燃えるその形相に面々は冷や汗をかいた。

偽勇者の一行は、全身を震えさせて怯えている。

 

「城へ向かってる?」

 

マァムの呟きにダイはキッと唇を噛んだ。

ダイは装備を身につけると部屋を飛び出していった。

 

「早く後を追わないと!」

 

マァムは急いで身支度を整える。

そして壁に立て掛けておいたハンマースピアを取った。

 

「さぁ行くわよ!」

 

「え、えぇ!?何でだよ!?」

 

ポップはマァムの言葉に難色を示した。

 

「先刻のクロコダインの目を見なかったの!?あいつはダイを殺す事しか頭に無いわ!今すぐ助けに行かなきゃ!」

 

「俺たちゃゴメンだからな!」

 

「そうよ!なんたって命が一番大事だしね」

 

「ハハ、俺も賛成~」

 

偽勇者達の意見にポップは賛成を表明。

その言葉にマァムは怒った。

ポップの胸ぐらを掴んで引き寄せて叫ぶ。

 

「何ふざけてんのよ!?早く…っ!」

 

「だけどよ、ヤツは半端じゃなく強いんだぜ?行っても殺されるだけだって…」

 

「だから私達が助けに行くんでしょ!?早くしないとダイが殺されちゃう…!3人で力を合わせなきゃ!!」

 

「心配ねえって…いざとなりゃダイはめっぽう強いし…死にゃしねぇよ」

 

「…ポップ?」

 

マァムは信じられないといった顔でポップを見る。

ポップはバツが悪そうに目を逸らすだけ。

二人の間に重い空気が流れる。

号を煮やしたマァムはポップを揺すって叫ぶ。

 

「あなた、ダイの友達じゃないの!?仲間じゃなかったのっ!?どうしたのよ!」

 

「うっせえな!オレは初めから魔王軍と戦う気は無かったんだ!好きで戦っていた訳じゃないんだよ!」

 

ポップは肩を震わせて叫んだ・

 

「そりゃアイツとは一緒に修行した仲だ。けどよ…あ、あいつがいるから次々と敵が襲ってくるんだぜ?巻き添えくって死にたかねぇっ!」

 

「…っ!」

 

次の瞬間、ポップは吹き飛んでいた。

マァムが力の限りポップをぶん殴ったのだ。

ポップは壁を突き破って倒れた。

すぐに身を起こしてマァムを睨みつける。

 

「…て、てめえっ!」

 

しかし言葉が続かなかった。

マァムが泣いていたのだ。

その表情は失望と落胆、そして深い悲しみ。

 

「あなた、アバン先生から何を学んだの?ダイもあなたも先生の敵を討つために…命がけで戦っている…そう思ったからこそ私、ついてきたのに…仲間になったのに…」

 

「マァム…」

 

「最低よ!あんたの顔なんて二度と見たくない!」

 

マァムは背を向けて走りだした。

 

 

 

 

なんとか怪物をやり過ごしながらオレは教会へと目指していた。

逃げ切れない怪物を攻撃呪文で倒しオレは走る。

十字架の付いた三角の屋根が見える。

教会に間違いない。

非常時なら教会に住人が避難しているはず。

薬草を持っていけばウハウハだ!

命が掛かっているんだ。かなり売れるに違いない!

 

「…ん?あれは、マァムか?」

 

目に涙をためたマァムが走っていくのが見える。

向かう先には城がある。

どうやらポップと別れてダイを助けに行くみたいだ。

 

「…気になる」

 

ポップが勇気を振り絞って立ち上がるシーン。

メチャクチャ気になる…。

でも前も好奇心に負けて死にそうな目に合ったんだよな。

しかし今回は迷わず様子を見に行く!

何せダイの大冒険で一番好きなキャラを聞かれれば迷いなくポップと答えてしまうオレ!

それにクロコダインの所に行く訳じゃないし…。

ちょっとだけなら…。

気がつけばオレはマァムが来た方角に向かっていた。

少し行くと『INN』の看板が見える。

あそこにポップが居る筈だ。

 

 

 

 

マァムがダイの後を追って少し。

ポップは葛藤の渦にいた。

怪物が怖い。自分なんかが適うわけがない。

痛いのも怖いのも嫌だ。

死にたくない。

でも…。

本当はダイ達を助けに行きたい…。

 

「…いや、関係ない!関係ねぇさ!あいつらが死のうとオレの知ったこっちゃねぇっ!」

 

そうだよ。

それにオレなんかが行っても意味はない。

クロコダインに殺されるだけだ。

最終的にはそう完結してしまう。

ポップはそんな自分が堪らなく嫌だった。

 

「おじゃまするよ」

 

「だれだ?」

 

現れたのは魔法使いの老人だった。

 

「たしか、偽勇者の…」

 

「ホッホッホ」

 

魔法使いの男は怪しそうな笑みを浮かべると、部屋に備え付けられている椅子に腰を下ろした。

 

「あんたは逃げねえのか?」

 

「あいにくと皆が逃げてからがワシの仕事での」

 

魔法使いはローブに隠してある金品をテーブルに置いた。

 

「廃品回収と言うわけじゃな…」

 

「何を言ってやがんだ!そういうのを火事場ドロボーって言うんだ!」

 

「どうじゃ?お前さん、ワシの仲間にならんか?見たところ見所がありそうじゃ…」

 

「冗談じゃねぇ!いいか?オレはかつて魔王を倒した勇者アバンの弟子だ!てめえら小悪党と一緒にするな!」

 

ポップはアバンの印を取り出して叫んだ。

 

「ほほう…ワシには全く変わらんように見えるぞ?」

 

「何だと!?」

 

「仲間を見捨てるような者に務まるかの?あの有名なアバンの使徒というのは…?」

 

ポップは痛いところを突かれ口篭った。

全くもってその通りだからだ。

ポップ自身、既に自覚している。

だが踏み出す勇気がないのだ。

 

「どれ…お前の仲間がどうなっているのか。ワシが水晶玉で見てやるとするか…」

 

魔法使いは取り出した水晶玉に魔力を込めた。

水晶玉が光を放ち、望みの風景を映し出す。

 

「ああっ…!?」

 

映しだされたのは倒れたダイを見下ろすクロコダインだった。

鬼面道士ブラスも居る。

ダイに取っては手を出せない育ての親だ。

デルムリン島の結界の外に出た為ダイの敵に回ってしまったのだろう。

マァムは悪魔の目玉に捉えられて身動きが取れない状態だ。

まさに絶体絶命だ。

ポップは水晶玉に縋り付いて涙を流した。

何とかしてやりたい!助けたい!

 

「ちくしょう…っ!」

 

「勇者とは勇気ある者っ!!!」

 

いきなりの言葉にポップは顔を上げた。

いつもは悪人顔の魔法使いの真剣な表情。

思わずポップは聞き入ってしまう。

男は立ち上がって叫んだ。

 

「真の勇気とは打算なきもの!相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは本当の勇気ではないっ!!」

 

男の言葉にポップは肩を震わせた。

それは自分自身だったからに他ならない。

打算に満ちた自身の行動…。

男はフッと笑うと再び腰を下ろした。

 

「なんてな…ワシの台詞じゃないぞ。ワシの師匠がいつも言っていた言葉じゃ」

 

「…師匠?」

 

「ワシもな…若い頃は正義の魔法使いになりたくて修行しとったんじゃよ…けど駄目だった。自分よりも強い奴が相手だとどうしても踏ん張れなくてのぅ…仲間を見捨てて逃げるなんてザラじゃった。おかげで今はこのザマじゃ」

 

「じいさん」

 

「お前さんを見ると昔の自分と重なっての。放っておけん気になってしまってな…ちと、おせっかいをしたんじゃよ」

 

男はポップの胸に手をおいて言った。

 

「さぁ早く行け。胸に勇気の欠片が一粒でも残っているうちに…小悪党にゃなりたくないだろう?」

 

それはポップの望んでいた最後の一押しだった。

魔法使いの男はポップの背中を押したのだ。

ポップは目に強い決意を宿していた。

もう迷いはなかった。

ポップは部屋を飛び出した。

 

「ポップ!」

 

「お、おめえは、タケルじゃねぇか!?」

 

宿屋から飛び出したポップに声を掛けたのはタケルだった。

 

 

 

 

オレが宿屋の前に来ると血相変えたポップが飛び出してきた。

そうか、これからクロコダインと戦いに行くのか。

凄い勇気だな。

さすが魂の力『勇気』の人だけの事はある。

オレにはとても真似出来無い。

けど少しの手助けくらいは許されるだろう。

オレはポップに声を掛けた。

 

「ポップ!」

 

「お、おめえは、タケルじゃねえか!?」

 

「行くのか?クロコダインの所に」

 

「…ああ」

 

強い目だ。

今のポップになら武具を渡しても良い。

オレはポップに用意しておいた防具を手渡した。

 

「こ、こりゃ…『身かわしの服』じゃねぇか!?」

 

「急いで着ろ!時間がないんだろう?」

 

ポップが驚くのも無理は無い。

身かわしの服は高級品だ。

動きやすい様に作られており敵の攻撃を避けやすい。

しかも鉄の鎧よりも丈夫なのだ。

非力な魔法使いにとっては心強い防具なのだ。

 

「けどよ…」

 

「オレに出来るのはここまでだ。出来ればオレも一緒に行ってやりたいが…」

 

オレは教会の方を見る。

向こうからは人の悲痛な泣き声が聞こえてくる。

ポップの表情が歪む。

 

「オレはオレに出来る事をしようと思う」

 

これは本音だ。

オレは大量の回復アイテムを持っている。

今は役立てる時だ。

 

「ダイとマァムを助けるんだろ?」

 

オレの言葉にポップは力強く頷いた。

ポップは着ている服を脱ぎ捨てると走りだした。

どうやら走りながら身かわしの服を着る気の様だ。

 

「やれやれ、たった一日で変わるもんだな。アレが本物ってやつなんだろうな」

 

上半身裸で身かわしの服を脇に抱えて走るポップ。

その後ろ姿を見ながらオレは溜息を付いた。

 

「頑張れよ…ポップ。オレ、お前の大ファンなんだからな…」

 

勿論ダイよりも…。

こんな事、とても本人には言えないよな。

オレはポップに言った言葉を実行する為に走りだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

レベル16

 

さいだいHP:95

さいだいMP:550

 

ちから:45

すばやさ:110

たいりょく:47

かしこさ:275

うんのよさ:256

 

攻撃力:118

防御力:112

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ

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本日の目玉商品『真・星皇剣』

ロン・ベルクさん再びです。


ウオォオーーン!!!

 

それは怪物の断末魔だった。

ロモスの空に広がる悲しき悲鳴。

獣王クロコダインが倒されたのだ。

その事実は城下町で暴れていた魔物達を萎縮させた。

頭を失った百獣魔団は戦意を喪失、魔の森へと逃げ帰っていった。

 

「や、やったぞー!」

 

「俺達の勝ちだーーっ!!」

 

「魔王軍を追い払ったぞー!!」

 

兵士たちの勝利の声に街の人々は安堵の息を漏らした。

 

 

 

 

オレは教会で怪我人の手当を行なっていた。

ベホイミとホイミの連発で既に魔法力は枯渇。

薬草での治療に切り替えていた。

それで漸く怪我人も数えられる人数に減っていた。

 

「これでもう大丈夫だ」

 

「ありがとうございます!何とお礼を言っていいか…」

 

「ありがとう、お兄ちゃん」

 

オレは怪我をした親子を治療。

母親は何度も頭を下げて礼を言った。

 

「これ、少ないですが…」

 

「いや、今回は無料で良いですよ。お大事に…」

 

家を破壊され魔物から追われてと、悲惨な目にあった人々。

そんな人達から金なんて取れない。

まぁ金を持っている相手からは取るけど…。

オレは最後の怪我人の治療を行うと溜息を付いて腰を下ろした。

 

「はぁ、マジで疲れた…それに…腹減った~」

 

治療を終えた時、既に太陽は真上に登っていた。

腹も減るわけだよ…。

教会を出ると、人々の顔に笑顔が戻っていた。

人々がロモスを救った勇者を噂している。

 

「勇者様が魔王軍の親玉を追い払ったって話だ」

 

「まだ少年らしいぜ」

 

「とにかく一目だけでも勇者様を拝みたいものじゃ…」

 

「これからお城でロモスを救った勇者様のお披露目があるらしいぞ」

 

「急げ!」

 

人々はロモス城を目指して走っていく。

 

「さてと、オレも行ってみるかな」

 

オレはチーズを口に放り込みながらロモス城に向かった。

 

 

 

そこには既に多くの人が集まっており、勇者達の登場を心待ちにしていた。

テラスにロモス王、兵士たちが現れる。

兵士たちはトランペットに口をつけると一斉に勇者を迎える音楽を奏でた。

うん、ドラクエのオープニングですね。

暫くして立派な装備に身を包んだ3人の英雄が登場した。

ポップだけは身かわしの服を来たままだが…。

照れくさそうに現れた姿は少し微笑ましく、またどこか誇らしい。

 

「あの子達がこの国を救ったのか!?」

 

「凄い!まだほんの子供だぞ?」

 

「我等が英雄、ばんざ~いっ!」

 

皆は惜しみなくダイ達に賞賛の声を上げている。

本当に凄い…。

これが勇者ってやつか。

オレはダイ達を尊敬せずにはいられない。

特にポップの見せた命がけの勇気

オレには出来ない事をやってのける。

 

「やっぱりポップは凄いな…」

 

読者が最も共感を覚えたのは間違いなくポップだろう。

だから尊敬するのだ。

だからファンになったんだ。

 

「これからも頑張れよ…」

 

……最後にポップと目が合った。

そんな気がした。

オレは一度だけ頭を下げると人垣から離れた。

港に向かう。

オレが助けた人々の中に船乗りがいたのだ。

彼にはベンガーナまで送ってもらうよう話をつけてある。

 

「小さな勇者ダイ、か…」

 

街の人々が言っていた。

街を救った少年の勇者。

彼らは口をそろえて呼んだのだ。

オレはその言葉を反芻しロモスを旅立った。

目指すはベンガーナ。

 

 

 

 

一方その頃。

ランカークスの森の奥。

 

「ふ、ふふふ……ハハ、はははは…、ハ~ハッハッハッハッ!」

 

森には男の不気味な笑い声が響いていた。

その声は森に建つ一軒の小屋から聞こえてくる。

そこは魔界一の名工、ロン・ベルクの鍛冶場である。

小屋の主、ロン・ベルクは全身から流れる大量の汗も気にせずに嬉々とした表情で笑い続けている。その手には二振りの剣が握られていた。

ロン・ベルクは高々と剣を掲げて叫んだ。

 

「遂に……、遂に完成したぞ!これが…っ!これこそがっ!オレの求めていた究極にして至高の剣!」

 

二振りの剣は星の如き輝きを放った。

ロンを中心に広がる光りの奔流。

それは小屋を吹き飛ばし辺りの木々を薙ぎ倒していく。

巨大なクレーターの中心でロン・ベルクは叫んだ。

 

「真・星皇剣だ!」

 

先程の光の奔流。

見るものが見れば即座に答えるだろう。

ドラクエを知るものならば見覚えのあるエフェクト。

ロン・ベルクの究極の剣が放った力。

それは全てを飲み込む魔力の爆発『ビックバン』だった。

 

「おっと、勢い余って小屋を吹き飛ばしちまった…」

 

ロン・ベルクは二振りの魔剣を鞘に収めるとニヤリと笑った。

 

「勝てるぞ…神の創りだした究極の剣…『真魔剛竜剣』に…っ!オレは今、神を超えたっ!」

 

もはや長年に渡って過ごした小屋になど様は無い。

ロン・ベルクは真・星皇剣を腰に挿すと森の中へと消えた。

 

「待っていろタケル…お前にも見せてやろう…究極の剣を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の装備データ

 

真・星皇剣 攻撃力160 使用するとビックバン

 

魔界一の名工であるロン・ベルクが王者の剣と未完成の星皇剣を元に創り出した究極の魔剣。

しかも星皇十字剣を使用した際の腕へと負担を大幅に軽減させる事に成功。

交差させて真名を叫ぶことによって『ビックバン』の効果を発揮。

超チート兵器。魔造兵器?

その威力は竜闘気砲に匹敵する…かもしれない?

双剣ゆえに盾を装備できない。

王者の剣はお亡くなりになりました…。

 



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本日の目玉商品『満月のリング』

今回は早くもダイと再開です。
タケル、呪われてるのかもしれません…。



潮の匂いと海鳥の泣き声が辺りを満たす。

オレはベンガーナに向かう船にいた。

船は波を掻き分けながらベンガーナを目指している。

船首に取り付けられている水瓶からは絶え間なく聖水が流れ魔物の接近を拒んでいる。これはオレが自腹で用意したものだ。

オレが自腹で用意しました。大事な事なので二回言いました。

 

魔物に襲われずに安全な船旅を満喫する為にはこのくらいしないと…。

聖水を垂れ流しの船など王家か豪商くらいしか扱っていない。

だからオレ豪商。

 

しかしオレは思い知ることになる。

船旅の脅威は魔物だけではないことに…。

 

「う、うわ~~~っ!」

 

「あ、嵐だー!急いで帆を畳め!」

 

「ボサッとすんな!」

 

現在オレの乗る船は大嵐に見舞われております。

轟々と突風が船体の横を殴りつけ豪雨は船の床を叩く。

雨漏りと異常な揺れでオレは甲板に出て仰天した。

 

「津波だ~~っ!!!津波が来るぞ~~~~~っ!!!」

 

「のわあああああああっ!?」

 

外に出たオレが目にしたのはコチラに向かってくる水の大壁だった。

津波は容赦なく船を飲み込みオレは海へと放り出される。

ヤバイ、これ死んだ?

オレの意識は身体と共に海の底に沈んだ。

 

 

 

 

ザザーン…

 

波の音が聞こえる。

 

「…んん、うぅ…」

 

身体の下の硬く冷たい感触。

そして動く小さな何か。

オレは薄く明けた目でそれを追う。

 

「…ヤドカリいや、マリンスライムか…?」

 

モンスター!?

オレは条件反射で飛び起きた。

スライム系は別に怖くない。

見た目的に全然問題ない。

けど怪物の前でぐうたら寝てられる程図太くない。

 

「砂浜…オレ、生きているのか…流れ着いたのか…?」

 

オレのいきなりの行動に驚いたマリンスライムは海へと逃げていく。

ははっ、流石のオレも今回は死ぬかと思った…。

運の良さ255は伊達じゃない…。

おっと、荷物は…良かった全部ある。

そうだよな。

オレの道具はスキルによってステ画面に隠してある。

無くなるわけがない!

でも…。

 

「ここ、どこだ?」

 

「ここはパプニカじゃよ」

 

「誰だ!?」

 

いきなり声をかけられる。

オレは腰のガンブレードに手を掛けた。

剣の心得はないが脅しくらいにはなるか?

念の為、雷帝の杖も出すか…。

振り返るとピンク色の鎧を身につけた老人がいた。

心配そうにコチラを見ている。

 

「そう警戒せんでもワシは敵ではないぞ…」

 

「…みたいだな」

 

オレは剣から手を離すと立ち上がった。

 

「ワシはパプニカに仕える兵士。名をバダックという…お前さんの名は?」

 

「オレは商人のタケル。ベンガーナ行きの船に乗っていたんだけど大嵐にあって船は沈没…気がついたらここに…お爺さん、ここがパプニカと言ったけど…」

 

「そうじゃ…」

 

「くそ!流れ着いた先がよりにもよって!直ぐに身を隠さないと…」

 

「お主…」

 

「情報は商人の命だ。パプニカの現状なら知っているよ。既に魔王軍に滅ぼされたんだろう?」

 

「滅ぼされとりゃせんわ!まだ姫さまは存命じゃ!レオナ様が居る限りパプニカはまだ終わっておらん!」

 

オレの言葉にバダックはすごい剣幕で否定した。

 

「すまん…失言だったな…お爺さん、けど大声出さないほうがいい…」

 

オレはバダックを近くにある大きな岩の影に引き込んだ。

 

「な、何じゃ!?」

 

「見ろよ」

 

オレの指先には骸骨の兵士がキョロキョロと当たりを見回していた。

魔王軍の偵察だろう。

生き残りがいないか確認しているのだろうか…。

敵の姿にバダックはゴクリと唾を飲み込んだ。

 

「どうやらグズグズしてる暇はなさそうだ」

 

「そのようじゃな…」

 

「見つかる前に身を隠した方がいい。お爺さん…いやバダックさん、身を隠せるような場所はないかな?」

 

「おお、あるぞ。この先の山岳地帯に洞窟がある。実はお前さんの他にも2人、匿っておる」

 

「へぇ…」

 

間違いなくダイとポップだ。

という事はヒュンケルに敗退した後なのだろう。

早いところパプニカから出たいが今は無理そうだ。

既に滅びた国に船なんてあるわけないし…。

不死騎団の支配下にある陸路は危険過ぎる。

俺一人で抜けられる程甘くないだろう。

となるとダイがレオナ姫を助けだすまで待つしかないか。

魔王軍にバレないように少しずつ手助け…。

さじ加減が難しいな…。

オレは隠れ家への道中、これから先の事を思考していた。

 

視界の悪い森を抜け岩場を通りぬける。

そして足場の悪い山道の先にその場所はあった。

 

「ここじゃ」

 

洞窟の中からダイが出てきた。

 

「あ、バダックさん、おはよう」

 

「おはよう、ダイ君」

 

「やあ、ダイ、また会ったな…」

 

「あ、あ~~っ!タ、タケル!?タケルなの!?」

 

「なんじゃお前さん、知り合いだったのか?」

 

「まぁね」

 

「あの、ポップを知りませんか?朝起きたら居なくて」

 

「さあ…

 さっきは見たんじゃが…」

 

その時だった。

木々の向こうで眩い光りが放たれた。

 

「これは契約の儀式?」

 

俺達は顔を見合わせると、その場に急いだ。

そこには魔方陣の中で呪文契約を終えたポップがいた。

契約は成功した様でポップは安堵の息を吐く。

 

「ポップ、どうしたんだよ!」

 

「見りゃ分かるだろ?新しい呪文の契約を済ませたんだよ」

 

「新しい呪文…」

 

どうやらヒュンケル対策の様だ。

昨日戦った魔王軍の軍団長の一人。

不死騎団のヒュンケル。

奴の着ている鎧はあらゆる攻撃呪文を防ぐらしい。

軽減ではなく防ぐ。

なんともチートな装備である。

 

「ポップ、頑張るな…」

 

「…ん?お、おめえ、タケルじゃねえか!?」

 

「いや気づくの遅いって久しぶり…でもないか。ロモスの英雄さん」

 

「何でオメエがここに?」

 

「いや参ったよ…乗ってた船が嵐で沈んでさ…気がついたらこの通りさ。それにしても…」

 

「な、何だよ…」

 

「マァムの姿が見えないようだけど…また喧嘩でもしたのか?」

 

オレの言葉に二人は落ち込んだように顔を伏せた。

 

「マァムは…あいつは不死騎団の手に落ちた…」

 

ポップは悔しそうに声を絞り出した。

 

「そうか…その為の修行って訳か…」

 

「ああ、マァムは必ず救いだす!」

 

「うん!」

 

このポップの成長ぶり。

オレは思わず溜息を漏らしていた。

 

「本当に凄いな。頑張れよ二人共…」

 

 

 

 

ポップが契約によって身につけた呪文。

それは天候系呪文『ラナ』だった。

ポップが身に付けたのは天候系呪文の初歩。

雨雲を呼び寄せる『ラナリオン』だった。

今回の敵が呪文が聞かないのは承知の上。

だが唯一、ヒュンケルの鎧に対抗できる呪文がある。

それはライデインだ。

呪文を防ぐといっても鎧である以上、金属には違いない。

電撃なら鎧を伝って中の人間にダメージを与えられる。

しかし勇者ではないポップは電撃呪文は使えないし今のダイの力量では電撃呪文を使えるだけの魔法力がない。

だから…

 

「俺達二人でやるんだよ!」

 

ポップの目には力強い光が宿っていた。

 

「ライデインは雷雲を呼び敵に落雷を落とす呪文だ。だからオレが雷雲を呼べば普段のお前の魔法力でも雷が落とせるじゃねぇか」

 

「あ、そうか!」

 

「俺達二人の力を合わせてヤツを倒しマァムを救い出すんだっ!!」

 

「わかった!早速やってみよう!」

 

この調子なら問題なさそうだな…。

特訓は間違いなく二人を成長させる。

オレは正直限界だった。

さっきまで海を漂流してたんだからな…。

 

「バダックさん悪いけどオレ、休ませてもらうよ…流石に限界だ」

 

「あ、ああ…」

 

オレは洞窟の中に自前の毛布を敷いて横になった。

つい笑みが溢れる。

 

「ふふふ…地底魔城か…レアアイテム、有りそうだな…」

 

隠し通路に隠し部屋。

そこにあった魂の貝殻。

それには手を出さないが他の物なら問題ないよな?

明日はダイ達が暴れてくれるからお宝取り放題かも…

珍しい素材もあるかもしれないし。

忍び足と聖水があればゾンビ系の怪物なんて怖くない。

いや、やっぱり怖いかも…

リアルバイオハザードは怖いだろ…。

行くの止めようかな…。

一度ロモスに戻ったほうが良いのかも…。

オレはキメラの翼を取り出した。

 

「いや、でもな…」

 

しかしこんなチャンスはもう無いし…。

事が終われば確かフレイザードの暴虐で地底魔城は溶岩の海に飲み込まれるはずだ。そうなるともう地底魔城の捜索は出来無い…。

オレはキメラの翼をしまった。

 

「明日、ポップに呪文書を見せてもらおう…もしかしたらオレの習得していない呪文があるかも」

 

オレは考えることを放棄して眠気に身を任せた。

疲れが溜まっていたのかオレの意識はまどろみに溶けていった。

 

 

 

 

次の日。

目が覚めた俺達は地底魔城の入り口。

岩の螺旋階段にいた。

階段の下を覗くが暗く底が全く見えない。

俺達は身を隠すように底をのぞき込んでいる。

 

「ここが地底魔城…」

 

「マァムを助けないと…」

 

「しかし変じゃな…いつもならガイコツどもが見張ってるんじゃが」

 

「へっ!好都合じゃねえか!」

 

「うん!」

 

ダイとポップは立ち上がった。

 

「よぉしっ!ワシも一緒に行くぞ!」

 

「はぁっ!?…いやいや、いいんだよっ!じいさんはここにいてくれよっ!」

 

「何を言う!老いたとは言えこのワシはパプニカにこの人ありと謳われた剛剣の使い手じゃぞっ!!」

 

年寄り扱いされたのが気に触ったのだろうか。

バダックは剣を抜いて自己主張。

なんか危なっかしい…。

 

「まぁまぁ…今回は仲間を救い出すのが目的なんだから」

 

「そうだな…ここで見張りでもしていようぜ…」

 

「そうか…なら止むをえまい…」

 

バダックは剣を鞘に収めた。

 

「ダイ、ポップ…」

 

「何だ?」

 

「コレを受け取れ」

 

オレは二人に『満月のリング』を手渡した。

ヒュンケルの闘魔傀儡掌…。

あれが麻痺状態にする技ならこの装備は有効かもしれない。

 

「なんだよコレ…」

 

「多分、役に立つと思う…要らないなら返してもらうが…」

 

「いや、貰っとくよ。前にもらった身かわしの服…アレには随分助けられたしな」

 

「オレも驚いたよ。あのクロコダインの攻撃をヒラリヒラリと避け続けるんだから…!」

 

ダイは思い出したように言った。

そうか…。

あの装備、そんなに役に立ったのか…。

しかしポップがヒラリヒラリねぇ…。

 

「お前が渡すんだ。何か特別な力でもあるんだろうな…」

 

「じゃあ行ってくるよ」

 

二人は『満月のリング』を装備すると螺旋階段を降りていった。

 

「さてと…」

 

もう暫くしてから行くとするかな…。

お宝探しに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

レベル16

 

さいだいHP:95

さいだいMP:550

 

ちから:45

すばやさ:110

たいりょく:47

かしこさ:275

うんのよさ:256

 

攻撃力:118

防御力:112

 

どうぐ

E:ガンブレード

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

E:魔法の弾×10

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ニフラム 

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス

 



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本日の目玉商品『チーズ』

タケル、ラッキースケベな回です。


「……」

 

現在オレは地底魔城を一人歩いていた。

ダイ達が地底魔城に入って約10数分後。

オレはバダックさんに二人が心配になったと言って迷宮に入った。

通路は狭く黴臭い。

もしも戦闘になれば直ぐに死ねそうだ…。

前後から挟み撃ちにでも合えばヤバすぎる。

袋叩きにされてしまうだろう。

しかもこう狭くては強力な攻撃呪文も使えない。

下手をすれば迷宮が崩れて生き埋めになりかねない。

オレは敵を避けながら迷宮内を探索する。

 

「……牢屋?見張りがいる…あ、マァム発見」

 

暫く歩くと鉄格子が見え、向こう側にマァムがいた。

拘束されていて動けないようだ。

 

「…ゴメちゃん、見つかったのか?」

 

原作通りじゃない?

オレはあまりの光景に呆けてしまう。

マァムに付いてきたゴメちゃんが活躍して脱出に成功…。

 

「けど…」

 

どういうわけかゴメちゃんは鳥籠の中で見を回していた。

見張りのガイコツは1匹か…。

オレは息を潜めてガンブレードを抜いた。

腐った死体よりはマシな相手である。

理科室の模型だと思えば怖くない…。

 

「…疾っ!」

 

オレは勢い良く飛び出すと同時に引き金を引いた。

カシャン!

撃ち出された弾が刀身を炎の刃に変える。

ガイコツはいきなりの襲撃に対応できずに固まっている。

オレはその隙を突いて炎の剣でガイコツを両断した。

ガンブレードを利用した『火炎斬り』だ。

相手が不死系の怪物という事もあり、一撃でガイコツは沈黙した。

 

「タケルッ!?」

 

「マァム、無事か?」

 

「ええ…でもどうして貴方がここに?」

 

「ダイ達に偶然会ってな…

 心配になって助けに来たんだよ」

 

「そうだったの…ありがとう、タケル…」

 

オレは先ずゴメちゃんを鳥籠から出してやった。

ゴメちゃんは嬉しそうにオレの周りを飛び回る。

なんか可愛い…。

 

「ピピィ♪」

 

次にマァムの荷物と鍵を取る。

そして鍵を開けてマァムを牢から出す。

 

「助かったわ」

 

「よし、早くダイ達と合流しよう。二人もこの迷宮の何処かにいる筈だ」

 

「…タケル」

 

「どうしたマァム?」

 

「アレを」

 

マァムは牢の壁を指さした。

天井から少し下の位置に四角い穴があった。

通風口だろう。

 

「このまま行っても見つかるだけ…あそこから逃げましょう…」

 

「そうだな」

 

「私が魔弾銃で壁を破壊するわ

 そうすれば敵はそこから逃げたと思うはず」

 

「その案、採用!じゃあマァム、頼んだ!」

 

「ええ!任せておいて!」

 

マァムは壁に銃口を向けた。引き金を引く。

 

ズガァンッ!!!

 

弾に込められた魔法は爆裂系呪文(イオ)だった。

轟音と共に壁は砕ける。

 

「今だ!」

 

マァムは軽い身のこなしで通風口によじ登り中に入る。

オレもその後に続いた。

 

 

 

 

一方その頃。

ダイとポップは地底魔城の迷宮をひたすら彷徨っていた。

 

「そこの角はまだ行っていないな…」

 

二人は一つ一つ、まだ行っていない通路を虱潰しに歩く。

角を曲がった瞬間だった。

 

「ほが~~~っ!!」

 

ミイラ男が現れた。

 

「うわっ!逃げろ!」

 

「コッチからも来る!」

 

ミイラ男に続き不死系(アンデット)の怪物が次から次へと湧いて出てきた。

 

「こっちだ!」

 

ダイ達は怪物の来ない通路を選びながらひたすら走る。

 

「光りだ…もしかして外に出るのか?」

 

階段を上がった先に見える光り。

後ろからは怪物が追ってくる為、引き返す事は出来ない。

二人はそのまま走り抜けて外に出た。

 

「こ、ここは!?」

 

二人が出た先は観客席に囲まれた円の中だった。

若い男の声が響く。

 

「ここは地底魔城の闘技場だ!」

 

「や、やべえ!嵌められた!」

 

敵の意図に気づいたポップは舌打ちした。

自分たちはまんまとおびき寄せられたのだ。

 

「かつて魔王だったハドラーが捉えた人間と魔物を戦わせてその死闘に酔いしれたという血塗られた場所よ」

 

つかつかと階段を下りながらその男は現れた。

魔剣戦士ヒュンケルが。

 

「オレが貴様らに相応しい死に場所として選んでやったのだ…!!」

 

「いきなり武装してきやがった…」

 

以前の戦いとは違い初めから鎧を身につけている。

魔法使い(ポップ)がいる以上、魔法を警戒するのは当然の事だろう。

鎧さえ着てしまえば二人からダメージを受けることはない。

ヒュンケルは万全の体制で戦いに望んだ。

ダイは空を見上げた。

ここなら電撃呪文(ライデイン)が使える…。

絶対に負ける訳にはいかない。

ダイ達は目の前の敵を闘志の篭った目で睨みつけた。

 

 

 

 

「タケル、絶対に前を見ないでよ!」

 

「わ、わかってる」

 

「もう、こんな事ならタケルから先に入ってもらえば良かった」

 

俺達は通風口から出口を目指して進んでいた。

狭い通路にゴメちゃんは不満そうに鳴く。

普段から飛んでるゴメちゃんにはキツイだろうな…。

 

「仕方が無いって、通路には敵がいるんだから…」

 

オレは何か会った時の為に袋を探ってある物を取り出す。

 

「マァム、これを…」

 

オレは相変わらず下を向いたまま手を伸ばした。

オレの手には小さな袋が握られている。

 

「これは…チーズ?でも不思議な感じがするわ…」

 

マァムは中を覗いて目を丸くした。

 

「ピンチになればゴメちゃんに上げてみてくれ」

 

マァムに手渡したのはドラクエ8でお馴染みのチーズだ。

実は先刻、ゴメちゃんを助けた時に願っておいた。

チーズ食べれば色々出来る様になりますようにと…。

マァムは不思議そうな顔をしながらチーズの入った袋をしまった。

そして再び進み始める。

 

「…ん、あれは…きゃっ!」

 

「うわっ!マァム、急に止まらないでくれ!」

 

「ちょっと!イヤっ!お、お尻に…っ」

 

「わ、悪いっ!でも止まるならそう言ってくれ。マァムに言われた通り前見てないんだから」

 

「そ、そうね…ゴメンナサイ」

 

お、オレの顔にマァムのお尻の感触が…。

感無量です…。

ここに来て本気で良かった!!

 

「そ、それでどうしたんだ?出口、見つかったのか?」

 

「わからない…行ってみましょう」

 

マァムは穴を塞いでいる岩をどかして外を覗いた。

 

「これは…隠し部屋?」

 

マァムは部屋の中に降りた。

オレもその後に続く。

中は岩壁に囲まれていて入り口は見当たらない。

通風口が唯一の出入り口のようだ。

部屋の隅に宝箱が置いてある。

 

「開けてみようか…」

 

マァムは宝箱の前に立って躊躇いがちに言った。

 

「ちょと待ってくれ」

 

「タケル?」

 

オレは宝箱に手を伸ばして呪文を唱えた。

 

『探知呪文(インパス)』

 

宝箱はぼんやりと青い光を放つ。

 

「安全なようだな、開けてもいいよ」

 

「便利な呪文よね…タケルって本当に何者なの?」

 

「だから旅の商人だよ…」

 

「ふふっ、出会った時からそればっかりね」

 

「ははは…」

 

「じゃあ開けるわよ」

 

「うん」

 

マァムは宝箱を開いた。

 

「こ、これは…」

 

中から出てきたのは長方形の箱だった。

開けてみると古い貝殻が入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の道具データ

 

普通のチーズ(ゴメちゃんに食べさせると火の息を吐く)

 

冷たいチーズ(ゴメちゃんに食べさせると冷たい息を吐く)

 

ベホマラーチーズ(ゴメちゃんに食べさせるとベホマラーを使ってくれる)

 

 



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本日の目玉商品『魂の貝殻』①

更新が遅くなって申し訳ありません。



タケルがマァムと合流していた頃。

ダイとポップはヒュンケルと激しい戦いを繰り広げていた。

二人の手札は唯一つ。

電撃呪文ライデインだ。

だがそれを実行するにはヒュンケルに剣を使わせなければならない。

ヒュンケルはダイ達を完全に格下に見ている。

その為、剣を使わず拳で襲いかかってきた。

しかしヒュンケルは知らなかったのだ。

ダイは天才だったのだ。

以前の戦いからヒュンケルの動きを予測しながら先手をうつダイ。

心なしか速さも(スピード)も上がっている。

 

「おのれ!」

 

ヒュンケルは頭部の鞭を操ってダイを攻撃する。

鞭の鋭利な刃はダイの腹部を切り裂いた。

しかし-

 

「な、なにっ!?」

 

ダイは直ぐに起き上がりヒュンケルに飛びかかった。

敗れた服の隙間から灰色の網目が見えた。

 

「く、鎖帷子かっ!?」

 

「だぁっ!!!」

 

ダイの強烈な膝蹴りがヒュンケルの顔面を打つ。

ヒュンケルは堪らず膝をついた。

不覚を取った。いや敵を甘く見た自分が悪いのだ…。

ヒュンケルはダイ達を睨みつけるとゆらりと立ち上がった。

 

「いいだろう…それほど惨たらしい死が望みならば我が地獄の剣で息の根を止めてやる…っ!」

 

ダイの顔に緊張が走る。

しかしこの時を待っていた。

ダイは後ろで控えているポップを見た。

ポップもダイの意図を理解して頷く。呪文を紡ぐ。

 

「天空に散らばる数多の精霊たちよ…我が声に耳を傾け給え…」

 

ポップの祈りが通じ空に雨雲が集まっていく。

ヒュンケルは兜から剣を取り出すと空に掲げて叫んだ。

 

「くたばるがいい!」

 

「ポップ!今だーっ!」

 

「ラナリオー-ンッ!!!」

 

ポップから放たれた魔力の光が柱となって天を突いた。

雨雲は雷雲へと変わりゴロゴロと音を立てる。

 

「何ぃっ!?」

 

「くらえっ!」

 

ダイは剣を投げて叫んだ。

 

「ライデイン!!!」

 

「ぐあああああああっ!!!」

 

ヒュンケルの掲げた剣を避雷針にして落雷が落ちる。

まともに電撃呪文を受けたヒュンケルは金色の閃光に飲み込まれた。

鎧を通して雷撃がバチバチと肉体へと通電する。

雷撃の衝撃で地面はえぐれ爆発した。

 

「や、やった…」

 

予想以上の電撃呪文の威力にポップは溜息を漏らした。

 

 

パラパラと舞い上がった小石や砂が地面に落ちていく。

砂煙は徐々に晴れてヒュンケルの姿が顕になった。

 

「ハ、ハハハ…ハハハハハッ!」

 

両手と膝を付いて動かなくなったヒュンケル。

電撃呪文は完全に決まっていたのだ。

ポップの口から歓喜の声が上がった。

 

「やった!やったぞ~~っ!!あっはっは!予想通り鎧は壊せなかったけど中身は黒焦げだなこりゃあ」

 

ポップは動かない状態のヒュンケルを覗き込んでニヤリと笑った。

 

「オレたちを舐めてるからこうなるんだ!」

 

高笑いを続けるポップ。

だが僅かにピクリとヒュンケルの指が動いた。

それに気づいたダイはポップを注意する。

 

「ポ、ポップ…!」

 

「あん?」

 

だが遅かった。

次の瞬間、ヒュンケルの拳はポップの頬を穿っていた。

ガントレットによって覆われた鋼の拳がポップを吹き飛ばした。

 

「そ、そんな!ライデインも効かないなんてっ!?」

 

何事も無く立ち上がってきたヒュンケルにダイは愕然とした。

だが電撃呪文は効いてないわけではなかった。

タダ単純にヒュンケルが強かったのだ。

ライデインを耐える程の肉体を持っていたのだ。

 

「貴様らを侮った…これ程の真似が出来るのならば手加減はしない…っ!」

 

「ダイ…もう一度だ!上空に雨雲があるうちに…っ!」

 

「遅いっ!」

 

「ウ…あぅ…」

 

電撃呪文を放とうとしたダイにヒュンケルの暗黒闘気が襲う。

指から糸状の闘気を放ち操り人形の如く拘束する技だ。

しかし今回は全開とは違った。

 

「ううぅ…ラ、ライデインッ!!」

 

「な、何っ!?」

 

ダイの指のリングが輝く。

取り付けられた満月を模した宝玉にヒビが入る。

それと同時に放たれる電撃呪文。

しかし…。

 

「くっ、おのれぃっ!ブラッディスクライドーッ!!!」

 

落雷がヒュンケルに、必殺剣がダイにそれぞれ向かう。

ブラッディスクライドはダイの鉄の胸当てを貫く。

しかし電撃呪文はヒュンケルの肩を掠めただけだった。

 

「あ、ああ…ダ、ダイ~~~ッ!!!」

 

ポップは顔を歪ませて叫んだ。

ヒュンケルの剣を受けたダイの身体は高く吹き飛ぶ。

そして鈍い音を立てて地面に落ちた。

 

「お、終わった…」

 

肩を抑えながらヒュンケルは勝利を確信した。

 

 

 

 

その頃。

オレとマァムは通風口をひたすら進み続けていた。

 

「中々出口が見えないな…」

 

「えぇ、でも急がないと…」

 

マァムは先ほど手に入れた魂の貝殻を大事そうに抱えて言った。

 

「さっき言っていたヒュンケルか…マァム達と同じアバンの使徒…。でもそんな奴が魔王軍の軍団長なんて…」

 

「彼は誤解しているだけよ…真実を知ればきっと…」

 

「そう簡単にいくのかな?」

 

「え?」

 

「だってそうだろ?さっきのが真実なら今までの人生を全て否定するようなものだろう?本当の敵は別で敵だと命を狙った相手はずっと自分を見守ってくれていた…。きつい現実だ…」

 

「…そうね。それでも彼に伝えなきゃ…!」

 

凄いな、マァムは…。

ヒュンケルの事を信じているのだろう…。

なんか胸が熱くなるな…。

だったらオレも出来うる限りの事をしよう…。

 

「マァムの言う通りだ…ごめん、余計な事を言った…」

 

「いいのよ」

 

「オレを出来るだけの事をするから」

 

「ありがとう…:

 

「ピピィ!」

 

「どうした、ゴメちゃん…あ、あの光は…出口か!」

 

ゴメちゃんは嬉しそうに出口へと飛び出していった。

 

「ピ、ピピィッ!?ピピピィ~~~~~~ッ!!!」

 

出口を飛び出していったゴメちゃんから悲鳴の様な鳴き声が上がった。

様子が変だ。

俺達は頷き合うと急いで出口を飛び出した。

 

「あ、ああっ!?」

 

俺達が見たのはブラッディスクライドを受けて血を撒き散らしながら宙を舞うダイの姿だった。そのまま地面に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の道具データ

 

超グリンガムの鞭 攻撃力140

 

改造されつくし最強になったグリンガムの鞭

 

近々出ます。

但し武器としてではなく…。

 

 



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本日の目玉商品『魂の貝殻』②

更新が遅れて申し訳ありません。


ヒュンケルの必殺剣ブラッディースクライドによって倒れるダイ。

俺達はそれを見ていることしか出来なかった。

勝利を確信したヒュンケルは止めとばかりに剣を振り上げた。

マァムは弾かれたように飛び出す。

 

「待って!ヒュンケルッ!」

 

「お、おまえっ!何時の間に牢から…っ」

 

ゴメちゃんが心配そうにダイを叩く。

 

「マァム…ダイが…、ダイが…っ!」

 

ピクリとも反応しないダイの様子にマァムは顔を青くした。

 

「ヒュンケル…あなた…何てことを…っ!あなたは自分の後輩を…っ!仲間を斬ったのよっ!」

 

「何が後輩だ!コイツはオレの敵の弟子だ!」

 

「違うっ!」

 

ヒュンケルの言葉にオレは思わず叫んでいた。

 

「貴様は…」

 

「オレが何者かなんてどうでもいいっ!それよりも‥マァム!」

 

「ええ…!アバン先生はあなたの敵なんかじゃないわ!」

 

 

「デタラメを言うな!」

 

マァムは魂の堅殻の入った箱を差し出した。

 

「隠し部屋で見つけたのよ」

 

 

ヒュンケルは受け取った箱を開いてみる。

 

「これは…、魂の貝殻っ!?死にゆく者の魂の声を封じ込めるという」

 

「聞いて!あなたのお父さん…地獄の騎士バルドスの遺言状よっ!」

 

「父さんのっ!?」

 

ヒュンケルは兜を取ると、魂の貝殻を耳に当てた。

 

 

 

 

 

 

 

―ヒュンケルよ、我が息子よ―

 

「と、父さんっ!?」

 

懐かしい父の声にヒュンケルの表情が歪んだ。

 

「聞いて、ヒュンケル!あなたのお父さんが残した真実を…地底魔城が滅びた日、何があったのかを…!」

 

ヒュンケルは再び魂の貝殻を耳に当てると目を瞑った。

父の魂の声に耳を傾ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレはヒュンケルが魂の声を清聴している間にダイに駆け寄った。

 

「タケル…、オメエも来てたのか…」

 

「ああ、心配になってな…ダイは…やばい、こりゃ酷いな…」

 

オレはダイの傷口を手で覆った。

鉄の胸当ては抉り取られている。

だが出血が酷い。

幸い心臓は外れていたが、それでも楽観できる状態じゃない。

 

「ベホイミ…」

 

オレはダイにベホイミを唱える。

傷口を治癒魔法の優しい光が包み込み、徐々に傷口を塞いでいく。

 

「う、ううぅ…」

 

「気がついたか…大丈夫か?ダイ…」

 

「…てない」

 

「え?」

 

「勝てな……い…。剣でも、魔法でも……」

 

こいつは…。

魔法剣フラグか…。

オレはダイに耳打ちするように囁いた。

 

「だったら魔法と剣を同時に使えばいいよ」

 

「魔法と…剣…っ?魔法と剣…魔法と剣…剣と魔法…」

 

ダイはムクリと起き上がった。

 

「ダ、ダイ!」

 

ポップは嬉しそうに叫ぶが、ダイの様子に眉を潜めた。

目に光がないのだ。

ブツブツと口の中で何かを呟いて目も虚ろだ。

しかし眼光だけはヒュンケルを見据えていた。

闘争心を漲らせた瞳で。

 

「駄目だ…ポップ、こいつ、意識がない!」

 

「何だってっ!?」

 

ゆらりとヒュンケルに向かって歩き出すダイ。

俺は静かにその背中を見送る。

視線の先ではヒュンケルが魂の貝殻からのメッセージを聞いていた。

 

 

 

 

 

 

ヒュンケルは静かに父の言葉を聞いていた。

バルドスはハドラーの玉座の間へと続く門を守る門番だった。

あの日、勇者アバンが地底魔城へ攻めこんできた日。

バルドスはアバント戦った。

だがアバンは強かった。

バルドスはアバンの前に敗北した。

だがアバンは自分に止めをささなかった。

 

「止めましょう…」

 

「何の真似だ!情けを掛けるつもりか!?」

 

アバンはバルドスが首から下げている物を指さした。

それは息子ヒュンケルから貰った手作りのペンダントだった。

 

「それは明らかに子供が作ったもの…まさかとは思ったのですが、あなたにも家族が…?一瞬そう思ったら斬れなくなりました」

 

アバンはにこりと笑ってそういった。

負けた…。

バルドスは心の底から敗北を認めた。

実力だけではない。心も…。

バルドスは思った。

勇者アバンになら全てを託せると…。

そしてバルドスは話した。

人間の子供を拾って育てていることを。

魔王の魔力によって活動している自分は、ハドラーが倒れると消えてしまう事を。

 

「アバン殿、恥を忍んでお願いします!ワシが消えた後、どうかヒュンケルを!ワシの息子を…っ」

 

―アバン殿は快く引き受けてくださった―

 

父の言葉にヒュンケルに衝撃が走った。

何から何まで自分の真実とは異なるが故に。

 

ややあって…。

魔王ハドラーの断末魔が響き渡った。

にも関わらず、バルドスは死ななかった。

何故なら…。

 

「ハ、ハドラー様!?」

 

ハドラーは生きていたからだ。

ボロボロの身体を引きずりながら姿を現した。

死の瞬間、魔界の神バーンの超魔力に寄って救われたハドラー。

ハドラーはこれから力を蓄える為に眠りにつくのだという…。

 

「だがその前に…!お前を処刑しておかねばと思ってな…!」

 

「な、何故ワシを…」

 

「お前がとんでもない失敗作だからだ!くだらん正義感や騎士道精神!おまけに人間の情愛に現を抜かすっ!挙句の果てに敵に地獄門を通らせる始末っ!」

 

「そ、そんな…」

 

「新たなる魔王軍には…貴様のような不良品は絶対に作らんっ!!」

 

ハドラーの一撃がバルドスの身体を砕く。

 

「アバンめ…束の間の平和を精々楽しんでおけ…っ!新魔王軍が誕生したら真っ先に殺してやる!」

 

ハドラーはそう吐き捨てると姿を消した。

ほどなくして…。

 

「とうさん!!」

 

―ワシにはもはや、全てを語る力はなかった―

 

だからこそ…。

魂の声を密かに隠していた魂の貝殻に込めた。

いつか我が子ヒュンケルが聞いてくれるのを信じて…。

 

―最後にもう一度言わせてくれ、思い出をありがとう―

 

「と、父さーんっ!!」

 

メッセージが終わりヒュンケルは顔を上げた。

そしてわなわなと肩を震わせて下を向く。

 

「そ、それでは父の命を奪ったのはハドラーだったというのか…!?そしてアバンはオレが父の仇と恨んでいると知りつつ?俺を見守ってくれていたというのか…」

 

認められない…。認めたくない…。今までの自分は一体何だったのだ?

ヒュンケルの全身を言い様のない悪寒が駆け巡った。

 

「嘘だ…う、うそだあああっ!!」

 

ヒュンケルは魂の貝殻を投げ捨てた。

その時だった。

一筋の雷光が地面に落ちた。

そちらを反射的に向いてしまう。

 

「ダ、ダイ…」

 

「ば、バカな…ブラッディースクライドの直撃を受けて…」

 

「待てよ!ダイ、ダイ~~ッ!!」

 

ポップは必死にダイの足にしがみついて止めようとしている。

 

「おのれ!今度こそ成仏させてやる!」

 

「やめて!聞いたはずよ!お父さんの言葉を!あなたが真に憎むべきなのは魔王軍だわ!もう悪の剣を振るうのは止めて!」

 

「うるさい!」

 

「う、あっ!」

 

ヒュンケルはすがり付いてきたマァムを突き飛ばして叫んだ。

 

「いまさら…今更そんな事が信じられるかっ!俺は、俺はもう魔王軍の魔剣戦士…ヒュンケルなのだぁっ!!」

 

壁に身体をぶつけて苦痛に顔を歪めるマァム。

頭に血が登っていくのが分かる。

オレはダイから離れると道具袋を探った。

取り出したのは雷鳴の剣。

 

「雷鳴よっ!」

 

キーワードを叫び秘められた力を開放した。

 

「何っ!?ぐわああああああっ!!」

 

雷鳴の剣から電撃呪文『ライデイン』が放たれる。

それもダイが放った電撃呪文とは違う異質なものだった。

金色の閃光が視界を埋め尽くしヒュンケルを飲み込んだ。

ゲーム仕様の全体攻撃のライデインだった。

 

「き、貴様…っ!」

 

鬼のような形相を向けてくるヒュンケル。

今度は兜を脱ぎ捨ていた為、更に大きなダメージを負った様だ。

耳から血を流している。

 

「オレに構っていても良いのか?」

 

オレはヒュンケルの後ろを指さす。

 

「ちぃっ!?」

 

ヒュンケルの直ぐ目の前までダイが迫っていた。

ダイが剣を振るう。

 

「な、何だとっ!?」

 

ヒュンケルの顔が驚愕に染まる。

傷つかない筈の最強の鎧。

それがダイの剣によって引き裂かれたのであった。

 

「あ、あああ…」

 

「アレは…」

 

「ダ、ダイの剣が燃えている…」

 

ダイの持つ剣は炎に包まれていた。

遂に魔法剣を習得したか…。

後はダイに任せても大丈夫だろう…。

オレはマァムの治療を行う為にヒュンケルに背を向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の道具データ

 

雷鳴の剣 攻撃力95 使うとライデイン

 

雷鳴の言葉で力を発揮。

ドラゴンクエストⅥの仕様です。

 




もう一度、遅くなって申し訳ありません。


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本日の目玉商品『ファイト一発』

連続投稿。
本日はコレにて終了です。


「お、おのれっ!」

 

ダイの魔法剣の威力に動揺を見せるヒュンケル。

しかし直ぐに持ち直し剣を振るう。

互いの剣が交差し、鈍い音を響かせる。

一進一退の攻防…。しかし長くは続かずヒュンケルが押し始める。

ダイは意識がないのだ。

闘争本能だけで戦い続けるダイと、魔法剣に一瞬の動揺を見せたとはいえ冷静さを取り戻しつつ有るヒュンケル。

どちらに軍配が上がるかは明白だった。

 

「闘魔傀儡掌っ!!」

 

それはダイが大振りになった瞬間だった。

その隙を逃さないとばかりにヒュンケルの暗黒闘気がダイの四肢を拘束した。

 

「もはや外さん…っ!これで終わりだ!」

 

ヒュンケルの剣の切っ先がダイに向けられる。

俺は念の為、いつでも助けられるように雷鳴の剣を構える。

しかし杞憂だったようだ。

 

「ダイ、稲妻だ!稲妻を呼べ~~~っ!!!」

 

ポップが弾かれたように叫んだ。

仲間もの声にダイの瞳に一瞬だけだが感情が戻る。

 

「無駄だ!この一撃で終わりだ!くらえ!ブラッディースクライドーッ!!」

 

「うおおおおおおっ!!!ライデイーンッ!!」

 

火事場の馬鹿力か、それとも潜在能力の発露か、竜の紋章の力か。

ダイは力ずくで暗黒闘気の拘束を引きちぎった。

同時にライデインの稲妻を剣に付与。

未完成とはいえアバンストラッシュと共に放った。

 

「ストラーーッシュッ!!!」

 

「うおおおおおああっ!?」

 

ヒュンケルは棒立ちのまま金色の斬撃に飲み込まれた。

煙が晴れそれでも両の足で立ているヒュンケル。

その姿にポップが驚愕するも一瞬。

次に瞬間、鎧は砕け、ヒュンケルは地に伏した。

 

 

これでようやく決着か…。

オレはマァムの膝の上で涙を流すヒュンケルを見て溜息を付いた。

それにしても羨ましい…。

ポップはムスッとしている。

その気持ちよく分かるよ…。

そしてダイの意識が元に戻り。

 

「…うそ…オレ、勝ったのか?」

 

「そうだ。俺の負けだ…」

 

天候呪文も切れ、青い空の下でヒュンケルは自らの敗北を認めた。

 

「ククク…クックック…」

 

不気味な笑い声が辺りに響く。

コロシアムの観客席、その上の方からだ。

俺達が視線を向けると、そこには大柄の人影が見えた。

 

「ざまあねぇな…不死騎団長さんよ…。負けた挙句、情けを掛けられ女の膝枕で涙とは…」

 

「き、貴様は…」

 

その男は岩陰から姿を現した。

両半身が氷と炎に別れた怪物。

胸には大魔王の紋章が描かれたメダリオン。

そいつは凶暴そうな眼でコチラを睨みつけていた。

 

「氷炎将軍フレイザードッ!!!」

 

ヒュンケルがその男の名を明らかにした。

 

「な、なんだ…っ!?あいつ、炎と氷がくっついてやがる!」

 

「なぜ貴様がここにっ!?」

 

「決まってんじゃねぇか!テメエの息の根を止めに来たのよっ!!」

 

「なんだと!?」

 

フレイザードのあまりの言い分にヒュンケルは身を起こして叫んだ。

 

「だいたいテメエは前から気に入らなかったんだ!人間のクセに俺の獲物を横取りなんざ百年早いんだよ!」

 

(まだ一年しか生きていないガキの癖によく言う)

 

俺はフレイザードを睨みながら道具袋を探る。

こいつ自体はそれ程脅威じゃない。

何故ならハドラーの禁呪法によって生み出されて間もなくレベルが低いからだ。

実際の戦闘力は大したことないし、見た目もあんまり怖くない。

戦えば勝てる自信はある。

でもそれよりも逃げる準備だけはしておかないと…。

ヒュンケルが助けてくれるのは知っている。

が、現実に何が起こるか分からないからな…。

 

「テメエが勝てばぶっ殺して手柄を横取りと思ってたが…負けていたとは好都合だぜ!」

 

フレイザードは炎の腕から火炎の弾を作り出すと、コチラに向かって放り投げた。

 

「負けたテメエの敵はオレが取った事にしておいてやるから泣いて感謝しろいっ!!」

 

フレイザードの放った炎の弾丸は地面を砕き奥底へと潜り込んだ。

そして…。

 

「な、なんだ!?」

 

ゴゴゴ…。

音を立てて地面が揺れ始める。

フレイザードの攻撃の影響か、地震が起こったのだ。

その揺れと音は次第に大きくなっていく。

 

「クカカカ…ちょいとそこの死火山に活を入れてやったのさ。もうすぐその辺りはマグマのプールになるぜ…!」

 

それはまさに死の宣告だった。

辺りは岩山に覆われており逃げ場は無い。

引き返そうにも迷宮に戻れば間違いなくマグマに飲み込まれるだろう…。

考えている間にマグマの噴火が始まってしまった。

フレイザードの開けた穴からマグマが吹き出す。

それに連鎖するように地面を突き破ってマグマが次々と吹き出してく。

 

「お、おのれ…フレイザーーードッ!!!」

 

ヒュンケルは剣をフレイザードに向かって投げる。

だが戦う力の残っていないヒュンケルに命中させる力は無かった。

剣はフレイザードの足元に突き刺さる。

 

「おっと!歓迎されてないようだな!じゃあそろそろ俺様はオサラバさせてもらうぜ!あばよ」

 

イザードは高笑いをしながら去っていった。

俺達はどうにかマグマを避けながら移動するが徐々に追い詰められていく。

俺だけなら星降る腕輪の力で高い場所まで逃げられる。

後は時間との勝負か…。

俺は足にグッと力をこめると全力で走りだした。

 

「お、おい!タケル!?」

 

ポップが戸惑ったように声を上げるが今は無視だ。

時間にして約2秒。

速攻で観客席の上の位置まで来た俺は道具袋からある物を取り出した。

取り出したのは三つ。

超・グリンガムの鞭と吹雪の剣、そしてファイト一発だ。

 

「みんなーっ!これからマグマを凍らせる!一箇所に固まって伏せててくれ!」

 

「お、おい?タケル、一体なにを…?」

 

「考えている暇はなさそうだ…アイツの言う通りにするほか無いだろう…」

 

「そうね…」

 

「タケル、頼む!」

 

皆が身を伏せるのを確認すると俺は吹雪の剣の力を開放した。

刀身から放たれた猛吹雪がダイ達に迫るマグマを凍らせていく。

しかしその後から吹き出るマグマによって凍りついたマグマは溶け始める。

周囲だけ凍らせても皆を逃がすのは無理だ。

 

「皆、凍らせたマグマはすぐに溶ける!コイツに掴まれ!」

 

俺は用意しておいたグリンガムの鞭を振るった。

全体攻撃が出来るだけあってコイツはかなり長い。

しかも自在に動く三本の鞭。

先端に付いた刃が地面に深く突き刺さる。

俺は軽く退いて抜けないのを確認するとファイト一発を一気飲みした。

力が込み上がってくる…。

そして腕の筋肉が一回り膨れ上がった。

コイツは凄い…。

 

「皆、早く掴まれ!」

 

ダイ、ポップが掴まりマァムが鞭に捕まる。

マァムはヒュンケルの方を向くと手を伸ばした。

 

「さぁ!あなたも早く…!」

 

「オレは…」

 

ヒュンケルは俯いて目を逸した。

 

「何をしてるの!早くっ!」

 

マグマに押されて徐々に溶け始める氷。

それを見たマァムは焦ったように声を上げた。

 

「な、なにやってんだよぉ!」

 

ポップも慌てたように声を上げる。

 

「早くしろ!ヒュンケルとかいったな!マァム達を殺す気か!そいつらは絶対にお前を見捨てない!死なせたくなければ早く手を掴め!」

 

「くっ!」

 

ヒュンケルがマァムの手を掴んだのを確認するとオレは腕に力を込めて叫んだ。

 

「いいか、絶対に手を離すなよ!ファイトーー、いっぱーーーつ!!!」

 

魚の一本釣の要領で一気に引き抜く。

 

「うわああああああっ!?」

 

まさにギリギリだった。

鞭の先端に付いた刃が抜けると同時に氷の壁は突き破られた。

ダイ達が空を舞った瞬間、その場はマグマに飲み込まれた。

我ながら上手にいったものだ。

 

「…あ」

 

ここでオレは一つのミスに気づいた。

 

「アイツらの着地、考えてなかった…」

 

「うわああああああ~~~っ!!!」

 

ズズンッ!

鈍い音と共に四人は地面に激突した。

ファイト一発の力もあって相当な勢いがついていた筈だ。

大丈夫かな…。

オレは三人に回復魔法を掛けてやろうと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

レベル18

 

さいだいHP:102

さいだいMP:558

 

ちから:50

すばやさ:120

たいりょく:51

かしこさ:279

うんのよさ:256

 

攻撃力:190

防御力:117

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ニフラム 

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス

 

 

本日の道具データ

 

超・グリンガムの鞭 攻撃力140 

 

改造され尽くして最強となったグリンガムの鞭。

三本の長い鞭の先端に鋭利な刃が付いている。

蛇のように自在に動き攻撃範囲も半端無く広い。

 

吹雪の剣 攻撃力105

 

刀身に氷系呪文の力が込められた魔剣。

マヒャドの効果。

 

ファイト一発

 

飲むと一時的に力が倍増する。

飲んだ後はお決まりの掛け声を…。

 



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本日の目玉商品『破邪の剣』

フレイザードの謀略の手から逃れた後、俺達は地底魔城から離れた森の中で身を休めていた。オレは一人ずつ回復魔法を掛けていく。

ダイ、ポップ、マァムに続いてヒュンケルにも…。

 

「暫くじっとしてろよ、ベホイミ…」

 

「あ、ああ…、だが良いのか?オレは…」

 

ヒュンケルは顔を伏せながら呟いた。

その背中には悲壮感が漂っていて、身体中に刻まれた傷同様痛々しい。

 

「んー?いいんじゃね?」

 

原作知識からの確信も有ったのだろう。

ヒュンケルはもう大丈夫だ。

オレは何でもないように言った。

 

「な、なんだよ?」

 

ヒュンケルは目を見開いて俺をじっと見た。

そ、そんな目で見るなよ…。

 

「いや、俺は魔王軍の元・軍団長だぞ?お前たちの敵として多くの人間を殺してきた…この国も俺が滅ぼしたんだ…」

 

「あー、そうか…、でもさ、そんな事俺に言われてもなぁ…。まぁ、罪の意識があって償う気なら俺じゃなくてレオナ姫に裁いてもらえば?」

 

「つまり、俺にお前たちと共に戦えと?」

 

「俺じゃなくてダイ達とだけどな…」

 

「そうよ、ヒュンケル…私達と一緒に行きましょう!」

 

「マァム…」

 

「そうだよ!」

 

「まぁ、なんだ…オメエみたいな奴でも戦力になるからな…」

 

「ダイ、ポップ…」

 

アバンの使徒、四人の間に確かな絆のようなものを感じた。

なんか良いなこういうの…。

友情芽生えちゃってるよ。

感慨深い…。

だがヒュンケルは頭を振って俯いた。

 

「駄目だ…お前達が良くても他の者達は納得せんだろう…無論、この俺もな…」

 

勇者であるダイが自分と行動を共にする。

魔王軍であった自分と。

それは周囲からの疑惑へと繋がる事になりかねない。

ヒュンケルは身体を起こした。

まだ完治していないからだろう。

その動きはギコチナイものだった。

 

「お、おい!まだ全快してない…」

 

「いいんだ」

 

「良くねーよ!」

 

マジで良くないです。

漫画じゃ分からなかったけど実際に見ると…。

ダイに斬られて焼かれた傷が痛々しいです。

しかも何故か治りにくいし。

竜闘気、使ってないよね?

しかも傷口が焦げ臭いし下手すりゃ腐るんじゃ…。

あ、焦げ臭いのは雷鳴の剣(オレの所為)か…。

 

「とにかく!」

 

「ぐっ!」

 

オレはヒュンケルの襟首を掴むと強引に座らせた。

まだファイト一発の効果は切れていなかったので楽だ。

お前は暫く絶対安静だ!

オレは再びベホイミを掛ける。

そろそろベホマの呪文、覚えたいな…。

チマチマ回復するのは面倒だし…。

 

「おーいっ!」

 

「…ん?」

 

「ありゃ、バダックさんじゃねえか?」

 

俺達が休息をとっている所にバダックさんが合流してきた。

そういえば一緒に来ていたんだったな。

 

「よ、良かった!お前さん達、無事じゃったのか!」

 

バダックさんは、はあはあと息を切らせながら嬉しそうに言った。

 

「マグマに地底魔城が飲み込まれた時は、もうダメかと思ったぞぃ…」

 

「へえ、よく俺達の無事が分かったな」

 

「それは、コヤツらのお陰じゃ!」

 

「久しぶりだな、ダイ ポップ マァム…それにヒュンケルよ」

 

「き、貴様は…」

 

ガサガサと草むらから姿を現したのは嘗ての軍団長。

獣王クロコダインだった。

クロコダインは部下のヘルコンドルを伴ってその姿を現した。

 

「クロコダイン…ッ!?」

 

「いやぁ、コイツと出会った時は腰を抜かすところじゃったわい」

 

バダックさんは頭を掻きながら高笑いした。

順応早いな爺さん…。

それにしても…。

オレはクロコダインはじっと見てみる。

改めて見ると凄い迫力だ。あ、目が合った。

 

「貴様は…」

 

「どうも、タケルです」

 

オレはビビりまくる内心を隠しながら素っ気なく挨拶した。

コッチ見ないで。普通に怖いから。

 

「そうか、見た顔だと思ったら魔の森で会ったな」

 

「知り合いか?」

 

「少しな」

 

ヒュンケルはオレとクロコダインを見比べる。

 

「…おかしな商人だな」

 

オレの人間と怪物関係の事だろうか?

ダイ達、アバンの使徒と魔王軍の軍団長。

唯の商人が関わるには過ぎた者達だろう…。

オレの口から乾いた笑いが漏れた。

 

「クロコダインから聞いたわい。お前さんがヒュンケル、魔王軍の軍団長じゃな…」

 

「ああ、そういう貴様は鎧からしてパプニカの兵士か」

 

滅ぼした側と滅ぼされた側。

互いに剣呑な空気が流れる。

バダックは無言でヒュンケルをじっと見つめる。

そして背を向けると静かに言った。

 

「お前さんに償う気があるなら、ダイ君達に力を貸してやれ……レオナ姫の事、頼んだぞい」

 

 

「……承知した」

 

バダックの言葉にアバンの使徒達の顔が綻ぶ。

安堵の溜息を吐いた。

 

 

閑話休題

 

そういえばフレイザードとの戦いが近かったな。

ダイ達の装備、換え時かもしれない。

ダイの胸当ては完全にオシャカになっているしな…。

オレは道具袋を漁りながらダイ達に声を掛けた。

 

「ダイ」

 

「タケル、どうしたの?」

 

「お前達の装備、もうボロボロだろ?そろそろ新しい装備でもと思ってな…」

 

「え?」

 

オレは今のダイの力量に見合った装備を一つ一つ出す。

ポップ、マァムも興味深そうに寄ってきた。

本日の商品はコレだ!

 

「おお!」

 

「すげー!」

 

ダイとポップが身を乗り出して見を見開いた。

オレが出した武具は次の通りだ。

 

破邪の剣 

銀の胸当て 

魔法の盾 

 

いかずちの杖 

魔法の盾 

 

身かわしの服

魔法の盾

銀の髪飾り

 

上からダイ、ポップ、マァムの装備だ。

 

「早速オレが装備させてやるよ。まずはダイからだ」

 

「え、でも本当に良いのかい?」

 

「確かに、見る限りどれも高価な物ばかりだわ」

 

ダイとマァムは目の前の装備に戸惑いの表情を見せた。

 

「ダイ、これからレオナ姫を助けに行くんだろ?あのフレイザードって奴の強さがどれほどか分からないけど軍団長の一人って事はかなり厳しい戦いになると思う」

 

「…確かにな。奴の残忍さは六団長随一だ。戦って負けるとは言えんが、どんな卑劣な手を使ってくるか」

 

オレの言葉にヒュンケルが続ける。

クロコダインも同意するように頷いている。

 

「オレはお前らに賭けてんだよ。ダイ、お前らアバンの使徒なら絶対に魔王軍に勝つってな」

 

「タケル…」

 

「こんな武具くらい幾らでも用立ててやるよ」

 

「ありがとう…」

 

「ははっ!そんなに感動するなって!照れるじゃないか」

 

本当はもっと強力な装備がある。

その事を知れば怒るかな…。

まぁ、装備に力量が追いついてないしな。

あとで説明すれば分かってくれるだろ。

 

「じゃあお前ら、コッチに来い!装備してやるからさ」

 

オレはダイから順々に装備してやる。

ダイに銀の胸当てを装備させてやる。

新しいベルトと鞘当てを取り付けて破邪の剣を腰に差す。

そして魔法の盾をバックラーの様に腕に装着させて完了。

 

「どうだ?動きづらくないか?」

 

「うわぁ…凄く軽いし動きやすいよ!ありがとう、タケル!」

 

次にポップにも同じ様に魔法の盾を装備させる。

そしていかずちの杖を手渡した。

 

「サンキュー!」

 

次にマァムに身かわしの服を手渡す。

 

「マァムは取り敢えず向こうで着替えてきてくれ」

 

「ええ、本当にありがとう」

 

「サイズが合わなかったら言ってくれ。たぶん大丈夫だと思うけど」

 

それからとオレはマァムに銀の髪飾りを差し出す。

 

「タケル、これは…」

 

「銀は魔除けの力があるらしいぞ。それに鉄の兜に匹敵する防御力があるし…その、マァムに似合うと思って…」

 

「あ、ありがとう…」

 

マァムは身かわしの服を岩の上に置くと髪飾りを髪に止めた。

マァムの頭上で銀の髪飾りが輝いた。

 

「どうかな?」

 

「うん、よく似合っている」

 

「けっ!」

 

ポップが面白くなさそうに唾を吐いてる。

そんなに睨まないで欲しい。

最後に装備の特殊な力の引き出し方を説明してやる。

破邪の剣は『閃光』の号令でギラの力を。

いかずちの杖は『雷光』の号令でいかずちを落とす。

クロコダインの真空の斧の様なものだと教えてやる。

ダイは目を丸くしてポップは魔法力を温存できると喜んでいた。

こうしてアバンの使徒の装備が完了した。

 

「さあ、これで準備万端だ!さっそくレオナ姫を助けに行こう!」

 

「じゃが問題は姫さまが何処に居るのか…」

 

ホルキア大陸は広大だ。

何処から手をつけて良いのか。

セオリー通り一番近いところから虱潰ししか無いだろう。

だが時間をかけ過ぎると魔王軍に先手を取られかねない。

ヒュンケルとクロコダインにもレオナ姫の場所は分からないらしい。

もしも分かっていれば不死騎団によって止めを刺されているだろう。

完全に手詰まりだ。

俺達は頭を捻って考え込んだ。

 

「そ、そうじゃあああっ!!思い出したっ!」

 

バダックさんが何かを思い出したように叫んだ。

 

「なんだよ、じいさん」

 

「神殿じゃ!神殿に急ぐのじゃ!早く!」

 

「神殿?」

 

 

俺達はバダックさんの案内で神殿に辿り着いた。

神殿には地下への入り口があるらしく、俺達で手分けして探している。

神殿は既に不死騎団によって廃墟となっており、探すのも手間だ。

入り口を探しながらマァムが問う。

 

「倉庫に何があるんですか?

 

「火薬玉じゃっ!」

 

「火薬玉?」

 

パプニカでは戦場の合図は信号弾を用いるのだ。

火薬玉を見つけて信号弾を上げればホルキア大陸の何処かにいるレオナ姫の目に届くかもしれない。

バダックさんは汗を拭いながら溜息を付いた。

勝利の合図を示す赤い信号弾を上げれば姫も安心して姿を見せてくれるとの事だ。

 

「……あった!あったぞ!」

 

向こうでポップの声が上がる。

俺達はその場に集合した。

だが崩れた柱に塞がれてとてもじゃないが中に入れない。

原作ではダイが魔法剣でふっ飛ばすのだが今回は心強い仲間がいる。

オレは「おれにまかせてよ」と意気込むダイを止める。

 

「なんだよ~」

 

ダイは不満そうにする。

 

「もしかして魔法剣で吹っ飛ばすつもりか?」

 

「え、よく分かったね!」

 

「アホか!中には火薬が大量にあるんだぞ!?」

 

「…あ」

 

「自分の力が試したいのは分かるけど自重してくれ」

 

「じゃあどうすれば…」

 

「今のオレらには心強い味方がいるだろ?」

 

オレはクロコダインの方を見る。

皆もそれに釣られてクロコダインを見た。

そしてナルホドと納得したように頷いた。

 

「ふっ、この程度の柱など造作も無い」

 

クロコダインは得意そうに柱に近づくと真空の斧を地面に突き立てた。

そして柱に両掌を添えた。

 

「おおおおおりゃあああああっ!!!」

 

気合と共に柱は浮き上がり弧を描いて俺達の後方へ落ちる。

本当に凄い。ていうか迫力が…。

クロコダインさん、目が血走ってましたよ。

しかも腕の筋肉の盛り上がりも半端じゃない。

ヒュンケルもニヒルに笑って「流石だな」とか言ってるし。

皆の反応にクロコダインさんドヤ顔だし…。

確かに物凄く心強いけど顔が怖い。

直視できない…。

バダックさんはノリノリでクロコダインの腕をバンバン叩いてるし。

 

「大したもんじゃ!」

 

なんかオレだけが蚊帳の外かい。

早く慣れないと、てか何としても慣れないと…。

 

 

クロコダインが地下への入り口を開いてくれたお陰でオレ達は安全に火薬玉を入手する事が出来た。バダックさんが信号弾をセットする。

ここらが潮時だな。

オレはダイ達とここで別れる事にした。

バダックさんが信号弾を上げるのを確認するとオレは話を切り出した。

 

「なあ、みんな」

 

「どうしたの、タケル」

 

「実はオレ、ここで皆と別れようと思うんだ」

 

「ええっ!?」

 

「どういう事だよ」

 

「ああ、なんか成り行きで一緒に戦ったけどさ正直言ってお前らの戦闘には着いていけそうにない。そう思ったのさ…」

 

「そんな事…」

 

「そうだよタケル!タケルが居なければオレたち助からなかったし!」

 

「いや、確かにそいつの言う事も一理ある」

 

「ヒュンケル?」

 

「てめえ、助けて貰っておいてその言い草は何だ!」

 

「やなさいよ ポップ!」

 

「いやヒュンケルの言うとおりだよ。凄いのはオレの持つ道具であってオレじゃない。オレの実際の戦闘力はお前等の足下にも及ばないのさ」

 

「ふむ、だがタケル。お前はその道具を使いこなしダイ達を救ったのだろう?」

 

クロコダインは腕を組んで言った。

 

「ああ、でもこれからも上手くいくとは限らない。この先、付いて行っても足手まといになるだけだ弱点も容易にバレる」

 

「弱点」

 

「もしも道具を失えば、封じられれば…」

 

「確かに、非力な商人になるか…」

 

ヒュンケルが冷静に言う。

結構傷つくのですが…。

 

「それに何度も強力な道具を使っていけば間違いなく魔王軍の目にも止まると思う…オレには道具とチョットした魔法しか自衛手段がない。その時になるとダイ達に迷惑がかかる」

 

実際に魔王軍に人質に取られでもすればマジで原作どころじゃなくなる。

ダイ達は絶対にオレを見捨てないだろうし…。

オレとヒュンケルの言葉にダイ達の表情が沈む。

 

「そんな顔をするなよ。オレにはオレの戦い方がある」

 

「タケルの戦い方?」

 

「ああ、オレは商人だ。だから強力な武具や道具を仕入れてお前等の支援をする!」

 

「今までと変わらねえじゃねえか」

 

「違うぞ ポップ。ここからは別行動だ…そうすれば色んな道具を仕入れることも出来るだろ?」

 

「確かにな…オレたち軍団長との戦いの時もそうだったが、戦う度に装備が壊れていては…」

 

「ああ、より強力な武具は必要になるだろう」

 

流石ヒュンケルとクロコダイン、分かってる!

原作だと布の服とナイフでクロコダインに挑んでるからな。

よく勝てたもんだよ。

 

「…タケル、また会える?」

 

「当然だろ」

 

オレの答えにダイは嬉しそうに手を差し出した。

差し出された手を取って握手する。

 

「頑張れよ勇者」

 

「タケル、本当にありがとう!」

 

「マァム、元気でな!」

 

「今度はもっと良い装備を用意してくれよな」

 

「期待しててくれ、ポップ」

 

オレは道具袋から月のめぐみと魔法の聖水を幾つか取り出す。

 

「これを持っていけ。回復アイテムが有ればかなり楽になる筈だ。ヒュンケル、クロコダイン、ダイ達を頼みます」

 

「分かった、貴様も気をつけて行け」

 

オレは皆に頭を下げると背を向けて歩き出した。

振り返るとダイ達が手を振っているのが見える。

なんか嬉しい…。

オレはダイ達に手を上げると再び歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

本日の道具データ

 

破邪の剣 攻撃力42 使うとギラの効果。

『閃光』の言葉でちからを発揮。

 

いかずちの杖 攻撃力24 使うとライデイン(単体ver)

『雷光』の言葉でちからを発揮。

 

魔法の盾 防御力20 攻撃魔法の威力を軽減する。

ちゃんと防げば下級の魔法なら無効化出来る。

 



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本日の目玉商品『霜降り肉』

ダイ達と別れたオレは一人森の中を歩いていた。

神殿は森に覆われていたので先ずは森を抜ける必要があるのだ。

ダイが不死騎団を倒した事によって怪物も沈静化しており、オレは比較的に安全に旅を続ける事が出来ていた。

とりあえず森を出たらキメラの翼でロモスに戻ろう。

さっきは別れを惜しむあまりキメラの翼を使いそびれてしまったのだ。

以前の経験から森の中だと木の枝とかにぶつかって普通に痛い。

オレは森を抜けるために歩を早めた。

 

 

 

「閃光よ!」

 

破邪の剣を構えたダイが叫ぶ。

すると刀身から一筋の閃光が放たれ崩れた柱に穴を開ける。

 

「おお!」

 

破邪の剣の力にダイは感動を覚える。

ポップとマァムも感心した様に破邪の剣を見ている。

ダイは新しい玩具を貰った子供のようにはしゃいでいた。

タケルと別れた後、レオナ姫達の反応があるまで時間が出来た。

ダイ達はタケルに貰った武具の具合を確かめる事にしたのだ。

 

「雷光よ!」

 

ポップもいかずちの杖を天に掲げて叫ぶ。

すると落雷が落ちて地面を抉った。

 

「すげえ…」

 

「これはオレの持つ真空の斧と同じ伝説の武具か」

 

クロコダインはダイ達の装備を眺めながら興味深そうに呟いた。

 

「これ程の貴重な武具を奴はどうやって手に入れたのだ?」

 

ヒュンケルが感じた疑問を口にした。

まさかその辺で購入した武器とその辺で採取した素材を錬金しただけで手に入れているとは夢にも思わないだろう。

もしも魔王軍にその事が露見すれば間違いなく狙われるだろう。

 

「それは聞いてみないことには分からん。だが、これからの戦いにタケルの力は必要だ…」

 

「ああ、それに中々機転も利くようだしな」

 

「確かマグマからお前達を救い出したのだったな」

 

「ああ、道具の特性を正しく理解していないと、ああはイカンだろう」

 

ヒュンケルはフレイザードの手によってマグマの海に飲み込まれた地底魔城を思い出していた。絶体絶命の危機。

それを救ったのは、まるでノーマークだった同行者の少年。

多彩な道具を操り自分たちの危機を救った。

もしもタケルが居なければヒュンケルがダイ達を救う為に犠牲になっただろう。

今となっては自分の命など惜しくはない

だが…。

 

「楽には死ねんと言う事か…」

 

ヒュンケルは自嘲気味な笑みを浮かべると溜息を漏らした。

 

「あ、あれは!?」

 

「ヒュンケル…」

 

「ああ、どうやら来たようだな」

 

ダイ達が空に浮かぶ影を指さしているのを見て元・軍団長の二人は歩きだした。

空に浮かぶ気球を見つめながら。

 

 

現在オレはラインリバー大陸を旅している。

森を抜けて空に障害が無くなったのを確認したオレはキメラの翼を放り投げた。

キメラの翼が輝く。

瞬間、身体から重さが消えるような感覚。

景色が高速で流れ、俺はあっという間にロモスの町に立っていた。

俺は地図を確認した。

北はギルドメイン大陸。

ここからだとカール王国が近い。

勇者アバンの故郷か…。

物凄く気になる。

思い立ったら吉日、オレはロモスから出て北に向かうことにした。

地図を見るかぎりイカダを使えば充分にギルドメインに渡れそうだ。

道中、何度か怪物に遭遇するが襲ってくる気配はなかった。

おそらく獣王クロコダインが敗北したためだろう。

統率する親玉がいない事が影響しているのだろうか。

 

「まぁ 魔物に襲われないのは良いことだよな」

 

こっちから仕掛けない限り襲われる事は滅多に無い。

偶に襲われるけど、今のオレのレベルだと楽勝できる。

今までの戦いは無駄ではなかった事を実感できた。

中級の攻撃呪文の一発でケリがつくのだ。

それを見た魔物達が怯えて襲ってこなくなる。

魔法って本当に便利だ。

オレは道すがら両手にそれぞれ異なる魔法を構成しようと努力している。

そして遂に成功の兆しが見え始めていた。

 

「バギ…でもってギラ!」

 

「ぎゃああああ!!」

 

オレは右手からバギを放ち続けざまに左手でギラを放つ。

熱線が真空の刃に乗せられて目の前の怪物を切り裂く。

すごい切れ味だ。

オレはもう一度、バギとギラを生み出す。

 

「合体!」

 

両手を合わせて合体呪文…。

 

「ありゃ、失敗か…」

 

目の前で悶え苦しんでいる怪物を見ながらオレは溜息を付いた。

成功すると炎の竜巻が出来る予定なんだが…。

流石にいきなり合体魔法は無理か。

連続魔法の方も下級呪文しか成功しないし…。

 

「まぁいいか、魔法の同時行使は出来るようになったし。やっぱりレベルが上がったからかな~」

 

まさかレベル関係してるとは思わなかった。

だったら、しっかりレベルさえ上げれば他の技術も?

夢が広がるな…。

でも命がけの戦闘は出来ればやりたくないかも…。

なんか楽にレベル上げの方法って無いかな…。

 

「…ん?」

 

いた。居たよ。あったよ。

楽してレベル上げる方法が…。

まさかのご都合主義?

こんな時に遭遇するとは!!

これは神様がオレにレベルを上げろと言ってるようなものだろ?

草むらでゴソゴソと蠢く銀色の物体。

液体のようにドロドロとしている身体と泡立つブクブク。

 

「は、はぐれメタル…キタ━(゜∀゜)━!!」

 

お、落ち着けオレ!

これはチャンスだ!

逃げられでもすれば折角のチャンスがパアだ。

いや、この付近にはぐれメタルが生息してる情報が得られたのは超幸運、いや落ち着けオレ!とりあえずやることは一つ。

幸いはぐれメタルには気づかれていない。

オレは道具袋から毒針と魔物のエサ等々を取り出した。

チャンスは一度きりだ…。

オレは意を決して一番高価な『霜降り肉』をはぐれメタルの目の前を狙って放り投げた。

さあ喰らうが良い!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

本日のタケルのステータス

 

レベル19

 

さいだいHP:106

さいだいMP:561

 

ちから:52

すばやさ:130

たいりょく:53

かしこさ:281

うんのよさ:256

 

攻撃力:53

防御力:123

 

どうぐ

E:どくばり

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ニフラム 

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス

 



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本日の目玉商品『どくばり』

勝利の方程式というものが有るとすれば。

オレは間違いなくその方程式を使う。

そして勝利を掴み取る。

はぐれメタル攻略の方程式というものがある。

その方法は色々ある。

 

方法その1、パーティー全員で聖水を掛けて2ターン目に賭ける。

方法その2、DQ3仕様のドラゴラムの激しい炎で一掃。

方法その3、魔神斬りで一か八かに賭ける。

方法その4、毒針で急所狙い。

方法その5、500を超える攻撃力で実力で倒す。

 

オレの取るべき方法は四だ。

ていうかソレしか無い。

しかし1~5の方法に共通する所が1つだけある。

それは全て運任せという事である。

そしてオレの運は256のカンスト!

イケる!絶対にイケる!

 

オレは霜降り肉を投げて毒針を握りしめた。

霜降り肉は弧を描いてはぐれメタルの目の前に落ちた。

ポトリ、という音にはぐれメタルが反応する。

ビクッとして逃げると思った。

だが、辺りの危険を確認もせずに目の前のご馳走にかぶり付いた。

はぐれメタルは夢中になって霜降り肉を食べている。

今がチャ~~ンス!

オレは星降る腕輪の恩恵によって流星の如く超加速した。

 

「命『タマ』取ったらあああああ!!!」

 

はぐれメタルがコチラに気づいたがもう遅い。

オレの毒針は既にはぐれメタルの身体に突き刺さっていた。

そして―

 

「ギラ!」

 

次の瞬間、はぐれメタルの閃熱呪文(ギラ)が俺を襲った。

 

「うわっちぃっ!こなくそっ!」

 

俺は熱さに耐えながら再びはぐれメタルの身体に毒針を突き立てる。

ついでに怒りを込めてグリグリしてやる。

 

「ピッ、ピギィッ!?」

 

「あ、急所直撃だ ラッキー!」

 

毒針が急所に直撃したことによってはぐれメタルは息絶える。

オレは動かなくなったはぐれメタルを見下ろしながら頭の中で響くレベルアップのファンファーレを聞いていた。

 

「さてと、暫くこの辺でレベル上げでも…」

 

オレは次なる獲物(はぐれメタル)を求めて歩きだす。

しかし後ろからの小さな音に足を止めた。

何かを引きずる音だ。

振り返るとはぐれメタルがヨロヨロと起き上がり…。

 

「仲間になりたそうにコチラを見ている」

 

はぐれメタルはつぶらな瞳でコチラを見上げている。

か、可愛いじゃいか…。

 

「一緒に来るか?」

 

ブンブンブン!

ものすごい勢いで何度も頷いてるよ。

 

「肉、食うか?」

 

ブンブンブン!

オレが霜降り肉を出すと更に激しく頷く。

 

「よし、今日からお前は はぐりん だ」

 

オレはそう言って霜降り肉を差し出した。

愛どころか悪意を持って戦ったのに仲間になるとは…。

もしかして肉に釣られたのか?

ものすごい勢いで肉を食べるはぐりん。

まあ、何はともあれ心強い味方が出来て良かったのか?

しかしオレはこれからコイツの同族を狩りまくる予定だ。

大丈夫かな?

考えている内にはぐりんは食事を終えてオレを見ている。

 

「もしかしてもっと欲しいのか?」

 

ブンブンブン!

すごい勢いで頷くはぐりん。

良し、肉で釣るか。

 

「はぐりん、はぐれメタルの巣の場所を教えてもらってもいいか?」

 

肉を沢山やるぞ?

オレは最高級の霜降り肉を沢山出して見せてやった。

はぐりんはヨダレをダラダラと垂れ流す。

そしてビシッと姿勢を正すと背を向けて移動を始める。

そして振り返る。

 

「ついて来いってことか」

 

それにしてもコイツ、自分の欲望に素直だな。

肉につられて仲間を売るとは…。

オレははぐりんの後を付いて行った。

 

 

 

 

一方その頃。

ダイ達は気球に乗ってホルキア大陸の北に位置するバルジ島の塔へと目指していた。迎えに来たのは三賢者の一人エイミ。

魔王軍の軍団長の存在に一悶着はあったもの、一行はレオナ姫の待つ塔へと向かう事に。

但し気球の大きさから全員を乗せるのは不可能。

ヒュンケルとクロコダインは別行動を取る事になった。

魔王軍を離れる事になったとはいえ、ヒュンケル自身、部下のことが気になるようだ。

一度、地底魔城の様子を見ておきたいとの事。

クロコダインもそれに付き合う様だ。

ダイ達を乗せた気球は真っ直ぐバルジの塔へと進む。

 

 

 

「はなせ!これはオレのもんだ」

 

「うるせぇ!そっちこそ離せよっ」

 

バルジの塔から怒鳴り声が響く。

そこではパプニカの兵士たちが掴み合いの喧嘩をしていた。

 

「きさまら何事かっ!?」

 

騒ぎを聞きつけた三賢者のアポロとマリンが仲裁に入った。

 

「ああ、アポロ様!こいつらが食料の事で争い始めてっ!」

 

バルジの大渦に囲まれたこの島は唯でさえ食料の入手が困難だ。

しかも現在は魔王軍から身を隠している。

食料は既に以って後数日分も無いだろう。

警戒に当たっている兵士たちの気が立っていても可笑しくはない。

 

「その手をどけろよ!」

 

「断る!オレは二日間何も食ってないんだっ!」

 

アポロとマリンが懸命に止めようとするが、空腹で気が立っている兵士たちは聞き分けない。それどころかますますヒートアップする。

その時だった。

割り込んできた白い手が食料を叩き落とした。

食料は地面に落ちてしまう。

 

「な、何て事しやがる!」

 

「そ、そうだ……ひっ!?あ、ああ…ひ、姫さまっ!」

 

食料をたたき落としたのはレオナ姫だった。

 

「何をなさるのですか!貴重な食料を粗末に扱うなどっ」

 

兵士の一人がレオナ姫を非難する。

だがレオナは態度を崩さずに毅然と言い放った。

 

「いくら貴重でも争いの火種になる必要ないわ」

 

兵士たちに衝撃が走る。

まさしくその通りだった。

現在、我等がこうしているのは魔王軍を退けるためだ。

それなのに自分たちが欲望のままに他者を傷つけていては魔王軍と変わらないのだ。

 

「モンスターの様に我を忘れて争うくらいなら…人間として、飢えて死にましょう…っ!!」

 

レオナの一括によって兵士たちは冷静さを取り戻した。

皆が落ち着いたところでレオナ姫は希望であるダイの事を話して聞かせた。

 

「まだ子供で小さいけど…まぁ、それなりに勇者してるはずよ。けっこう頼りになるんだから…」

 

「希望の救世主にしては酷い言われようだな」

 

「ははは!」

 

「そうだな。姫様に掛かれば勇者様も型なしだな」

 

「それに彼から買った武具も…」

 

「あの時の少年…、確か巷では『幻の商人』と呼ばれているとか…」

 

「その筋では有名人の様ですね。何処からともなく強力な武具を仕入れてくるという…」

 

「ええ、後で知ったことだけどね…知っていれば是が非でもパプニカに引き止めていたわ」

 

「私も幻の商人の武具を使ってみたいものです…」

 

「そうね、この難局を乗り切ったら…探しだして扱き使ってやりましょうか?」

 

「ははは!」

 

暗い雰囲気から一転、兵士たちに明るさが戻った。

 

「悪いな、その期待は空振りだ!」

 

そこに水を刺すように低い声が割り込んできた。

 

視線を移すとそこには炎と氷の怪人が立っていた。

氷炎将軍フレイザードである。

 

「残念だったな!期待の勇者様じゃなくてっ!ククク…クカカカカカ…クカカカカカーーーッ!!!」

 

フレイザードの左右の手から炎と吹雪が放たれた。

炎と吹雪、ベギラマとヒャダルコの呪文だ。

近くにいた兵士たちは攻撃呪文に飲み込まれ息絶える。

 

「さぁ死んでもらうぜ!今日でパプニカ王国は終わりだぁっ!!!」

 

 

 

 

「おおおお~~~~~っ!!」

 

一方その頃の幻の商人は…。

 

「す、すげえ…経験値(はぐれメタル)が一杯だ~っ!」

 

目の前で蠢いているはぐれメタルの大群に目を輝かせていた。

はぐリンに案内されて来たのは植物の無い砂地だった。

周囲は岩に囲まれており、身を隠すにはうってつけの場所だ。

そこははぐれメタルの群れの隠れ家だった。

 

「ひいふうみい…すごい、ざっと見て20匹はいる…あれだけ全部倒せばあっという間に…」

 

いや、流石にそれは無理だな。

いくら何でも都合よく全部倒せる筈がない…。

 

「はぐりん、コイツを…」

 

オレは毒針をもう一つ取り出すとはぐりんに手渡した。

オレの意図を組んではぐりんが毒針を装備する。

狙うは一番手前の獲物だ。

 

「行くぞ はぐりん…」

 

はぐりんが頷いたのを確認してオレは駈け出した。

 

「死ねえっ!!」

 

「ピッ!?」

 

オレの毒針がはぐれメタルの身体を捉えた。

よし、続けてはぐりんの番だ。さぁ突き立てろ!

 

「……あれ?はぐりん?」

 

何故か攻撃しないはぐりん…。

後ろを見ると…。

ダダダダダ~~~~ッ!!

はぐりんは逃げ出した!

 

「っておい!逃げるのかよ!あ、あわわ、こいつらも、ちょ、ちょっと待て!」

 

ゲームと現実は違う。

仲間になったはぐりんも矢張りはぐれメタル。

オレの命令を無視して一目散に逃げ出してしまった。

しかも折角のはぐれメタルの群れも全て逃げ出してしまう始末。

 

「はぐりん…」

 

逃げ出したものの、岩陰からこっそりとコチラを伺っているはぐりん。

オレは嘸かし恨めしそうにはぐりんを見ていたことだろう。

だが逃げたまま行方を眩ませなかった事にも、また安堵したのだ。

オレは笑顔を作るとはぐりんを呼んだ。

 

「もう怒ってないよ、おいで はぐりん」

 

はぐりんがやって来たのでオレは骨付き肉を差し出した。

嬉しそうに肉に食らいつくはぐりん。

 

「なあ はぐりん…頼むから一緒に戦ってくれよ。お前が一緒に毒針で攻撃してくれるだけで随分違うんだ」

 

はぐりんは無い首を傾げる仕草をする。

 

「よし、はぐりん君、はぐれメタル、一匹倒す事に霜降り肉追加でどうかね?」

 

ブンブンブン!

物凄い勢いで頷くはぐりん…。

こいつ、どんだけ肉が好きなんだよ。

さっきのはぐれメタルの群れ全てに逃げられたのは痛かったが、はぐれメタル狩りには良くある事なのだ。

一度や二度の失敗は想定済みだ。

オレは気を取り直してはぐりんに次なる狩場を案内させる事にした。

 

「…その前に火竜変化呪文(ドラゴラム)の呪文書を探すか?カール王国なら有るかもしれないし…」

 

より確実にはぐれメタルを倒して経験値を稼ぐなら手札は多いほうが良い。

オレは一旦、はぐれメタル狩りを止めてカールに向かう事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

本日のタケルのステータス

 

レベル23

 

さいだいHP:143

さいだいMP:585

 

ちから:60

すばやさ:150

たいりょく:72

かしこさ:290

うんのよさ:256

 

攻撃力:61

防御力:133

 

どうぐ

E:どくばり

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ニフラム 

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス

 



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本日の目玉商品『竜のうろこ』

はぐりん

 

職業:はぐれメタル

☆2:ひとりぼっち

 

LV1

 

さいだいHP:8

さいだいMP:30

 

ちから:60

すばやさ:1001

たいりょく:5

かしこさ:15

うんのよさ:82

 

どうぐ

 

E:どくばり

 

攻撃力:61

防御力:500

 

特技

 

ギラ

アストロン

 

 

「うーむ…」

 

オレは はぐりん のステータスを見ながら一人唸っていた。

微妙だ…。

強くはないが弱くもない。

はぐれメタルらしく防御特化型だ。

しかし体力が余りにも残念すぎる…。

ついさっき気がついたがオレはどうやら はぐりん の強さが分かるらしい。どの程度のステータスか気になって はぐりん を眺めていたらこうなった。

頭にステータスが浮かんだのだ。

しかし素早さ1001って…。

カンストどころじゃないだろ?

オレ、良く倒せたよな…。

仲間になって間違いなく素早さステ修正されたな…。

 

 

現在オレは旅のお供に はぐりん を引き連れてカール王国を目指していた。はぐれメタル狩りは取り敢えず後回しだ。

確実に はぐれメタルを短時間で狩るには今の戦力だと無理だ。急がば回れだ。

 

初めの はぐれメタルは運良く倒せたが、次も首尾よく事が運ぶ保証はない。

実際、10回戦って10回逃げられても珍しくないのだ。

このまま狩りを続けても時間の無駄に終わる可能性が高い。

ならば、より確実に はぐれメタルを仕留める方法を得る方が良いと思ったのだ。

 

どっちにしてもオレはカール王国に行く予定だったのだ。

あの国には有名な図書館がある。

古今東西、様々な呪文書も集まっている筈だ。

あの有名な『アバンの書』もあるという…。

そう簡単に閲覧できるとは思えないが、善は急げだ。

 

「いくぞ、はぐりん!」

 

はぐりん は勢い良く頷くとオレの肩に飛び乗った。

こいつ、体力ないからな…。

オレはカールを目指して全力で走りだした。

 

 

 

一方その頃、ダイ達は遂にレオナ姫の待つバルジ塔に到着した。

塔の屋上からは黒い煙が上がっており、不吉を感じる。

到着してみるとフレーザードはレオナ姫と戦っていた。

先ずはアポロがフバーハの呪文で耐え凌いでいたのだが、フレイザードの禁術である『五指爆炎弾』を撃ち放った。

一度に五発ものメラゾーマを放つ絶技だ。

フバーハの結界も易々と破られようとしたその時。

 

「大賢者の杖よ!光壁を!」

 

フレイザードの攻撃をレオナ姫は大賢者の杖の力で防ぐ。

杖からフバーハと同様に光の防御膜が展開、五指爆炎弾を防ぎきる。

 

「す、すごい…私のフバーハ以上だ…っ!」

 

賢者アポロは賢者の杖の力を目の当たりにして驚愕する。

 

「アポロ、火炎系呪文と氷系呪文を使ってはダメよ!真空系か爆裂系の呪文に切り替えて!弱点をつくんじゃなくて確実にダメージを与えるの!」

 

「わ、分かりました!」

 

「皆はアポロの援護を!」

 

「はっ!」

 

兵士たちは盾を構えて防御姿勢を取る。

レオナ姫とアポロを守るようにフレイザードに立ちふさがる。

 

「皆、まずは生き残ることを考えて!

 エイミが必ず助けを連れてきてくれるわ!

 それまで頑張って!」

 

「…ちっ!厄介な姫さんだぜ…」

 

フレイザードは忌々しそうに呟く。

そして希望は到着した。

 

「レオナーッ!!」

 

ダイは気球から塔に飛び降りた。

それと同時にパプニカのナイフをフレイザードに投げつける。

 

「う、うぐっ!」

 

ナイフはフレイザードの肩に突き刺さり、後退させる。

 

「ダイ君!?」

 

「良かった!間に合った!」

 

「て、てめえ…このクソガキ、生きてやがったのかっ!?」

 

ダイの登場にフレイザードは目を向いて驚いた。

どうやってマグマの海から生還したのか…。

しかし現にこうして目の前にいる。

敵である勇者が。

 

「レオナから離れろ!」

 

「小賢しいわ!」

 

目の前の小僧がどうやって生き残ったのか疑問だ。

だが今は戦闘に集中するべきだ。

フレイザードは氷の腕から刃を生み出してダイに投げつけた。

対してダイは掌に火炎呪文(メラ)を生み出してそれを相殺する。

そしてフレイザードに睨みつけて言い放った。

 

「レオナに手を出せば、唯じゃ済ませないからな…」

 

「このガキが…」

 

フレイザードは肩に刺さったナイフを引き抜きながらダイを睨みつけた。

 

「タダじゃ済まさないだと…っ!?舐めた口聞きやがってっ!どうただじゃ済まさないか見せてみやがれっ!」

 

フレイザードの炎の腕がダイを襲う。

ダイは最小限、紙一重で躱すと隙かさず剣を振り下ろす。

破邪の剣の刀身がフレイザードの半身に食い込む。

 

「ぐぅっ…、おのれ……シャアァーーっ!!」

 

フレイザードはダイを逃すまいと剣を掴み、凍える吹雪を吐き出した。

ダイは刺さった剣を支点に身体を後ろに反転させる。

フレイザードの頭部を蹴りながら剣を引きぬいて後ろに飛んだ。

 

その一連の行動は約2~3秒程度。

凄まじい早技だった。

フレイザードもダイのスピードに驚愕の顔を浮かべた。

 

「フレイザード、覚悟しろ!!」

 

「な、生意気抜かしてんじゃねえ!!」

 

フレイザードはマヒャドの呪文を唱えた。

氷の手から凄まじい猛吹雪が放たれた。

 

「ギャハハハ…ッ!!!魂まで凍り付けっ!!」

 

「ダイ君…っ!!」

 

為す術もなく凍り付いていくダイをフレイザードは愉快気に笑う。

だが…。

 

「…っ!?」

 

だがその笑いも続かなかった。

ダイの剣から炎が燃え盛ったのだ。

メラメラと燃え盛る炎はダイを覆っていた氷を溶かしていく。

 

「ゲエッ!?な、なんだその剣は?」

 

アッという間に氷の束縛から解放されたダイは高らかに叫んだ。

 

「魔法剣だっ!!」

 

「な、何ぃ!?」

 

「いくぞっ!」

 

ダイは高く跳躍すると勢い良く剣を振り下ろした。

アバン流刀殺法『大地斬』と火炎呪文(メラ)の複合技。

 

「火炎大地斬!!」

 

「うおっ!」

 

とっさに腕を犠牲にすることで直撃を避けるフレイザード。

だが切られた氷の腕は更に燃え盛り、その身体を溶かしていく。

このままでは半身を失ってしまう。

 

「こ、この……、がぁっ!?ち、ちくしょうめ!!」

 

フレイザードは燃え盛る自分の腕を叩き落とした。

 

 

 

レオナ姫はダイの登場と、その逞しく成長した姿に感動を覚えていた。

思わず涙ぐんでしまうほどに。

しかし感涙してる場合じゃない。

今の自分なら充分にダイの援護が出来るはずだ。

レオナ姫は大賢者の杖を握り締めるとダイへと駆け寄った。

 

「ダイ君!」

 

「大丈夫かレオナ!?」

 

「私は大丈夫よ…皆が守ってくれたから」

 

レオナは倒れた兵士たちを見る。

既に事切れた者、重症を負って動けない者…。

アポロはまだ生きている者に付いている。

レオナは悔しそうに歯噛みした。

 

「ダイーッ!」

 

気球を屋上に取り付けたメンバーがぞろぞろと降りてくる。

 

「マァムとエイミさんは怪我してる人たちを頼む!」

 

皆はダイの声に従って倒れている者たちに駆け寄った。

 

「コイツだったのか…」

 

フレイザードの姿を見たポップはたじろいた。

しかし腕を失って膝を付いている様に顔を綻ばせた。

 

「でもちょっと優勢って感じだよな」

 

「まだ油断しちゃ駄目だ!」

 

ダイはチラリと後ろのレオナを見た。

ヒュンケルを殺しに来た時のコイツの残忍な顔が浮かぶ。

コイツは危険だ。ここで止めを刺す。

 

「フレイザード、これ以上レオナに手は出させない!」

 

ダイは破邪の剣を構えてフレイザードににじり寄る。

 

「くっ…ククク…ガァ~~ッハッハッハッ!!!」

 

「何が可笑しい!?」

 

「いいとも!もうこんな小物に興味も用もねえよ!」

 

フレイザードは狂喜の表情で振り返った。

 

「テメエの方が遥かに大きな獲物って事が分かったからな!」

 

「えっ!?」

 

「むぅんっ!!」

 

フレイザードは腕に力を込めた。

すると失った氷の腕がメキメキと音を立てて再生する。

 

「その首、俺がいただくぜぃっ!」

 

クオオオオオ!!!

フレイザードは体全体を震わせて腰を落とした。

ダイは確かに見た。

フレイザードの身体を覆うように構成されている岩石が動くのを。

危険を感じて叫ぶ。

 

「あ、危ないっ!みんな伏せろ!」

 

「氷炎爆花散!!」

 

フレイザードの身体が弾けた。

氷の弾丸と溶岩が四方八方に飛び散り辺りの者を襲う。

ダイはレオナを庇うように魔法の盾を全面に出し防御姿勢を取る。

ポップとマァムはみかわしの服の力で難を逃れている。

しかし全ては無理のようで躱しきれない物は魔法の盾で防ぐ。

頭部を守り膝を付いて足を踏ん張る。

その時、塔の頂上が輝いた。まるで灯台のように。

 

アバンの使徒、レオナ姫は殆どダメージが見られず立ち上がる。

だが他の者達は激しいダメージを受けて直ぐには起き上がれない。

 

「くそっ!」

 

ポップは直ぐにタケルから貰った回復道具を取り出した。

月のめぐみとアモールの水だ。

 

「マァム、手伝ってくれ!」

 

「ええ!」

 

ポップから道具を受け取ったマァムは怪我人に駆け寄った。

 

「く、まだまだ!」

 

ダイは皆を守るためにフレイザードに立ち塞がる。

何時の間にか元の体に戻ったフレイザードは指を左右に振って言った。

 

「チッチッチッ…お前はもう終わりさ…」

 

「なに!?」

 

「今の技は俺の部下への合図なのさ。死ののバトルを始めるためのな…っ!」

 

フレイザードは得意げに勝利宣言。

そして…。

ゴゴゴゴゴ…ッ

地響きがバジル島全体を揺るがした。

そして塔を挟むように二つに柱が地面から生えてくる。

炎の柱と氷の柱。

 

「さあショータイムだっ!」

 

炎と氷の柱の先が光を放つ。

光は塔を囲むように円を展開する。

そしてバルジ島は光りに包まれた。

 

 

 

 

「もうすぐギルドメインか…」

 

その頃タケルはラインリバー大陸の最北端の岬にいた。

海の向こう、水平線をじっと見る。

微かに大陸が見える。

肉眼で確認できる程に離れていないのだ。

これなら充分に渡ることができるだろう。

足下にはイカダが置かれている。

即席で作ったにしては良い出来だ。

 

「いくぞ はぐりん」

 

はぐりんは静かに頷くとオレはイカダを海に浮かべて乗り込んだ。

はぐりんも続く。

オレは空かさず聖水を振りかけた。

こんな不安定なイカダの上で海の魔物に襲われたくはないからだ。

 

「いくぞギルドメイン!」

 

オレはギルドメインに向かって船を漕ぎ始めた。

 

 

 

 

ギルドメイン大陸西方。

リンガイアの南方に位置するギルドメイン山脈では地響きが絶え間なく続いていた。

 

「グオオオオオッ!!」

 

大地を揺るがす咆哮と地響き。

何頭もの巨大な竜(ドラゴン)の断末魔が響く。

凄まじい速さで動く影は次々とドラゴンの首を叩き落としていく。

ここは超竜軍団のテリトリーだ。

リンガイア攻略の際、拠点としている場である。

国を滅ぼした後もそれは続いていた。

 

そして今日、超竜軍団は何者かの襲撃を受けていた。

ドラゴンも最強の魔物だ。

黙ってやられる訳ではない。

尾を振り回し、炎の息吹を吐いて対抗するが襲撃者を捉える事は叶わなかった。それどころか手痛い反撃を受ける始末。

攻撃した竜は襲撃者の反撃によって為す術もなく絶命する。

 

もしも軍団長がいれば結果は違っただろう。

だがバランは魔軍司令ハドラーの招集を受けて現在は鬼岩城だ。

頭の居ない竜の群れは次々と狩られていった。

それはまさに一方的な虐殺(いじめ)だった。

戦いが始まって約10分程、百頭近くいた竜の群れは全て地に伏していた。

 

「…ふぅ」

 

襲撃者は動きを止めて溜息を付いた。

二振りの双剣を腰の鞘に収めて空を仰いだ。

陽光によって素顔が晒される。

魔剣鍛冶師ロン・ベルク。

究極の剣完成の折、ランカークスの森を旅立った男は自慢の剣の力を試す為の旅を続けていたのだ。

鉄以上の強度を誇る鱗を持つドラゴンはまさにうってつけの相手。

あわよくば超竜軍団の団長である竜の騎士に会えるかもしれない。

ロン・ベルクの行動は早かった。

ベンガーナの地を侵略している超竜軍団に文字通り喧嘩を売ったのだ。

 

「…ちっ!この程度か…

 やはり竜の騎士が居なければ話しにならんか…

 こいつらを狩っていれば現れると思ったのだがな…

 ここは下手に動くよりもこの国で待っていた方が良いか…」

 

ロン・ベルクは物足りなさそうに竜の死骸を見た。

 

「いや、コイツらの鱗は使えそうだ。

 タケルのやつの土産にもなるだろう…」

 

ロン・ベルクは地図を取り出して見る。

 

「南はテランか…

 あの湖の水は質が良い…

 鍛冶場に使える場所もあるだろう…

 真・星皇剣の手入れもやっておきたいしな」

 

目的地は決まった。

ロン・ベルクは手馴れた手付きで鱗を剥がす。

ある程度の量、回収したところで立ち上がった。

 

「待っていろよ竜の騎士…」

 

ロン・ベルクはテランを目指して歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

ロン・ベルク

 

職業:魔剣鍛冶師

 

LV67

 

さいだいHP:501

さいだいMP:0

 

ちから:220

すばやさ:232

たいりょく:252

かしこさ:100

うんのよさ:99

 

攻撃力:380

防御力:203

 

道具

 

E:真・星皇剣

E:闇の衣

 

特技

 

気合ため 疾風突き はやぶさ斬り

みなごろし 魔神斬り 

足払い 回し蹴り かまいたち

みかわしきゃく 

真空斬り 受け流し さみだれ斬り

ドラゴン斬り メタル斬り 真・星皇十字剣

めいそう 大防御

 

 



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本日の目玉商品『最後の鍵』

イカダに揺られて約1時間。

ラインリバー大陸から出たオレは漸くギルドメインに到着した。

砂浜に降り立つ。

目の前には森が広がっている。

地図によればカールとテランのちょうど真ん中辺りだ。

ここはもうミストバーンの勢力下だ。

だが現在、六団長は魔軍司令ハドラーの招集を受けていた筈だ。

しかも現在は勇者ダイを始めとするアバンの使徒に注目していて、オレの様なモブキャラは間違いなくノーマーク。

勇者討伐に躍起になっている今、世界征服は停滞中といっても良い。

事を済ませるなら今しかないのだ。

オレは迷わずカール王国への道を進む。

 

現在ダイ達はフレイザードと交戦中の筈だ。

レオナ姫が凍りづけにされるかはまだ分からない。

だがダイ達もレオナ姫のかなりの武具を装備している筈。

しかも回復アイテムも多く持たせている。

死ぬ事は無いだろう。

どうにも心に凝りを感じる。

 

『このままで良いのかと…』

 

オレはラインリバー大陸を見た。

 

「気張れよ、ダイ達…」

 

海の向こうで戦っているであろう勇者達。

オレは彼らに心からのエールを送った。

 

 

 

 

バルジ塔を挟むように現れた炎と氷の柱。

『氷炎結界呪法』

フレイザードが此度の戦いに用いた最悪の禁呪法。

敵の技能を封じ込め、尚且つ力を激減させる卑劣な術だ。

ダイ達はこの禁呪法の前に苦戦を強いられていた。

ポップの魔法、マァムの魔弾銃は封じられパーティーとしての強さは機能しなくなってしまう。

ダイの攻撃力も大幅に下がり、フレイザードには通用しなくなってしまう。

攻撃を仕掛けたダイの剣はフレイザードに受け止められ反撃を受けてしまう。

 

「どうしたんだ!?フレイザードのやつ、急に強くなったぞ!」

 

「ククク…違うな…、お前等が弱くなったんだよっ!」

 

「なにっ!?」

 

フレイザードは外に見える柱を指さしていった。

 

『炎魔塔』と『氷魔塔』

その二つの塔はフレイザードの体内の核に作用してこの島に強力な結界を張ってる。

この結界陣の中においてフレイザード以外の者は力も呪文も全て封じられてしまうという…。

フレイザードは勝利を確信したかのように愉快に説明した。

絶望的な死の宣告。

これまで培ってきた力が使えない。

このままでは戦いの先に待っている結果は敗北しか無い。

 

 

「汚い手を…、正々堂々と戦えフレイザード…」

 

「…オレは勝つのが好きなんだよ!別に戦いが好きな訳じゃねぇんだよっ!」

 

フレイザードはダイ達に襲いかかった。

ダイ達は防御の体制でフレイザードを迎え撃つ。

ダイは魔法の盾でフレイザードの猛攻を受け止める。

ポップとマァムはフレイザードの攻撃を掻い潜る。

 

「くっそ!」

 

「どうすんだよ!このままだと殺られちまうぜ!」

 

ポップはフレイザードの攻撃をどうにか躱しながら叫ぶ。

 

「どうにかして活路を見つけないと!」

 

「そんなもん、有るわけねえだろ!」

 

フレイザードはポップに襲いかかる。

 

「あわわ、ら、『雷光』!!」

 

「な、なにぃ!?」

 

咄嗟のことだった。

ポップはいかづちの杖の力を解放するキーワードを叫んでいた。

むしろこれ以外、ポップの攻撃手段は残されていなかった。

マァムの魔弾銃の様に発動しないかもしれない。

しかし、そこまで考えている余裕もないのだ。

だがポップの行動は大当たりだった。

いかつちの杖から金色の光が放たれた。

それは蛇行しながらバチバチと音を立ててフレイザードを襲う。

 

「うぎゃああああっ!!」

 

電撃呪文『ライデイン』と同等の威力の雷撃の直撃。

フレイザードは堪らず膝をついた。

 

「や、やった…」

 

「そうか!タケルから貰った装備…」

 

「これならまだ…」

 

「よーし、『閃光』!」

 

ダイは破邪の剣の鋒をフレイザードに向けて叫ぶ。

狙うは当然、氷の半身。

膝を付いて体制を崩しているフレイザードは躱しきれない。

 

「ぐうううっ…くそったれっ!」

 

光線に腕を焼かれながらフレイザードは忌々しそうにダイを睨みつける。

 

「ダイ君、ここは一度退きましょう…」

 

「レオナ!?」

 

戦いを冷静に見守っていたレオナが静かに言った。

 

「いくら武具が強力でもそれだけで勝てるほど軍団長は甘く無いわ…それに見て…」

 

レオナは塔の外を指さした。

 

「あれは…」

 

外を見るとフレイザードの配下の怪物達がワラワラと周囲に集まってきた。

 

「この結界の中じゃ私達に勝ち目はないわ。それに傷ついた者たちを守りながらじゃ…」

 

「そうね…悔しいけど姫さまの言う通りだわ」

 

マァムのレオナ姫の意見に賛成する。

ダイは周りの傷ついた者達を見た。

エイミはマリンにホイミを掛けているがまるで効果は見られない。

アポロも重症の兵士を治療しているが同じく効果が見られない。

このままでは皆死んでしまう。

ダイは悔しそうにフレイザードを睨みつける。

 

「さあ急いで怪我人を気球へ!」

 

「わ、わかった!」

 

ポップとマァムは怪我人に駆け寄って肩を貸す。

 

「ちっ!逃すかよ!」

 

フレイザードは再び腕を再生すると立ち上がった。

逃がさないようにするにはと当たりを見る。

そして必死で姉に三賢者の姉妹に目を付けた。

エイミはマリンの治療で直ぐに動けそうにない。

それにフレイザードの目の前に居るのだ。

利用しない手はない。

フレイザードは素早く姉妹の前に駆け寄った。

 

「あ、ああ…」

 

「エイミ、マリン!」

 

アポロが走るが間に合わない。

 

「ね、姉さん!」

 

咄嗟にエイミはマリンを庇うように前に立った。

 

「エ、エイミ…っ!」

 

焼け爛れた顔を押さえながらマリンは悲痛な声を上げた。

エイミはフレイザードに捉えられてしまったのだ。

 

「あ、ああぁ…」

 

そして凍り付いていく。

意識のある状態で身体が凍り付いていく恐怖。

エイミは顔を歪ませながら、ただ身体を震わせていた。

同時にアポロがマリンを助けだす。

 

「ちっ!出来れば姫さんのほうが良かったんだがな…どうだい?これでも逃げられるのか?えぇ!?お姫様よ!大事な部下が凍り漬けだぜ!」

 

「くっ」

 

「いけません、姫様!」

 

「わかっているわ…ダバック、アポロとマリンを回収後、気球を発進させて」

 

「わ、わかりました」

 

「させるか!」

 

「くっ!」

 

気球の縄梯子に掴まっている状態のマリン達の背中にフレイザードが襲いかかる。

フレイザードの指から閃熱呪文の炎が生み出される。

マァムは咄嗟に魔弾銃の弾筒を、フレイザードの指目掛けて投げつけた。

 

「な、なにぃっ!?」

 

フレイザードの指が弾筒を突き破った瞬間、大爆発が起こった。

 

「うぎゃああああああっ!!!」

 

フレイザードは大爆発に飲み込まれて悲鳴を上げた。

 

「今よ!」

 

アポロとマリンは爆風に煽られながらも必死で縄梯子にしがみ付く。

そして幸か不幸か気球は爆風の衝撃波によって空高く舞い上がった。

 

「ぐうううぅ…」

 

フレイザードは失った半身を押さえながらも散らばった魔弾の破片に目を向けた。

 

「そうか…あの筒の中にはギラの呪文込められていたのか…それがオレ様の呪文に誘爆して…」

 

忌々しそうに離れていく気球を見上げた。

 

 

 

気球はどんどんバルジの塔から離れていく。

このままだと程なくして逃げられてしまうだろう。

しかしそうは問屋が卸さない。

フレイザードは炎魔塔のフレイム達に向かって叫んだ。

 

「フレイム軍団っ!そいつらを逃がすなっ!!」

 

 

 

 

「くっ!エイミ…」

 

気球の上でアポロは悔しそうに塔を見下ろす。

ダイ、マァム、ポップも同様に歯噛みしている。

マァムは申し訳なさそうに呟いた。

 

「ごめんなさい…わたしが…」

 

「いいえ、あなたの機転がなければ私達は殺られていたわ」

 

「そうだぜ、マァム」

 

レオナとポップがマァムのフォローを入れる。

 

「それにエイミは死んだわけではないわ。次に奪い返せばいいのよ」

 

「そうですね…」

 

「ううぅ…エ、エイミ…」

 

「あ、あああ、あれはっ!?」

 

パプニカの兵士が下を指差して叫んだ。

視線を移すと、炎の怪物フレイムの群れが気球に向かって飛んできていた。

感情の感じさせない表情と共に身体を揺らめかせながら襲いかかってくる。

 

「じいさん、飛ばせ!全速力だ!」

 

「ヒャダイン!!」

 

アポロが氷系呪文でフレイムを攻撃する。

どうやら既に結界の外、呪文は使えるようだ。

レオナ、アポロ、ポップはそれぞれ氷系呪文でフレイム達に応戦する。

しかし数が多すぎた。

フレイム達は直に気球を攻撃して落とそうとする。

攻撃を受けて気球は次第に高度を下げていく。

真下はバルジの大渦。

このままだと大渦に飲み込まれて全滅してしまうだろう。

 

「こ、このままだと…っ!?」

 

「つ、墜落…」

 

その時だった。

気球を一筋の閃光が飲み込んだ。

 

「グワアアアアアアアァッ!!!」

 

フレイム達は閃光によって消滅していく。

凄まじい魔法力の奔流。

それはダイ達を傷つけること無く敵だけを消滅させた。

閃光の出元は気球の上からハッキリと見えた。

海岸に見える洞窟、そこから光が放たれていたのだ。

フレイム達の攻撃から逃れた気球は、徐々に高度を落としながらバルジの大渦を超えて陸地の近くの浅瀬へと落ちた。

 

「ぶはっ!」

 

「あそこだ!あそこから閃光が奔って…、オレたちを助けてくれたんだ!」

 

「行ってみましょう!」

 

一行は傷ついた者たちを連れて洞窟の入口までやって来た。

中に橋を踏み入れようとした時、奥の方から低い男の声が響いた。

 

「なんだ、先刻の連中か……礼は良いからとっとと帰れ。面倒事はゴメンだ…」

 

明らかな拒絶の声。

マァムはその声に憶えがあるのか、はっとする。

 

「あなたは…」

 

「んん…っ!?」

 

男の方もマァムの声に反応して振り返った。

宝玉の付いた縦長い帽子をかぶった老人。

魚を咥えた表情は、何というか間が抜けていた。

マァムは顔を綻ばせて叫んだ。

 

「…マトリフおじさん!」

 

大魔道士マトリフ。

かつて勇者アバンと共に世界を救った英雄がそこにいた。

 

 

 

 

「漸く着いた…」

 

オレは目的地であるカール王国に到着した。

美しかった街並みは見る影もなく。

人の気配も感じられない。

魔王軍の進行による爪痕。

建物は破壊され、鎧を着たガイコツが散らばっている。

おそらくこの国の兵士だろう。

オレは心を込めて胸の前で十字を切って祈った。

 

「…アーメン」

 

酷いことをする…。

オレは辺りを警戒しながら忍び足で街を歩く。

目指すはカールの図書館。

 

 

しかし期待はずれだった。

カールの図書館は怪物の攻撃によって半壊していた。

この様子だと貴重な本は奪われるか燃やされているか…。

オレは図書館の内部に侵入した。

扉を開くだけで建物全体が揺れた気がした。

気をつけて進まないと図書館が崩れて生き埋めになりかねない。

オレはまだ無事な本棚を一つ一つ調べていく。

 

「…あった!魔導書だ!」

 

図書館の最奥、貸出禁止の禁書を保管している部屋だ。

鍵が壊れていて中に入る事が出来た。

更に奥の方に宝箱が置いてある。

持ち出し厳禁の札が掛けられている。

 

「…これはもしかして『アバンの書』か…?」

 

宝箱には鍵が掛かっており開けることが出来ない。

盗賊の鍵を試してみたが無理だった。

 

「アバカムが使えたらな……いや待てよ もしかしたらイケるかも…」

 

オレは昔手に入れた物を取り出した。

錬金釜を取り出す。

先ずは盗賊の鍵を入れる。

次に『魔力の土』を入れる。

そして最後に先ほど取り出した『マネマネ銀』を入れる。

 

「巧く行けば…出来た!」

 

出てきたのは金色の鍵。

オレは早速、宝箱の鍵穴に鍵を近づけてみた。

すると鍵の先がウネウネと動き、鍵穴にピッタリとハマる。

 

「おお!巧く言ったみたいだな!」

 

まさかこうも上手くいくとは思わなかった。

『最後の鍵』によってオレは宝箱を開けた。

中を覗いてみると古ぼけた一冊の本が入っていた。

どうやらビンゴだったみたいだ。

表紙の紋章に見覚えがある。

 

「アバンの書だ…」

 

オレはアバンの書の頁を捲ってみた。

まずは武術の『地の章』、次に呪文の『海の章』最後に心の『空の章』。

様々な事が詳細に書かれていた。

オレは逸る気持ちを押さえながらアバンの書を読む。

武術の『地の章』はオレには不要。

今のオレに必要なのは呪文の『海の章』だ。

 

「オレの知らない呪文…これはダイ大の特有の魔法だ…契約の魔方陣も載ってる…」

 

オレは自分の手帳に一つ一つ、魔方陣を書き写していった。

 

「…こ、これは!?」

 

海の章の最後を見てオレは驚いた。

描かれていたのは、あの有名な『旅の扉』だった。

空間を歪め一定の場所に繋げる旅の扉。

流石に作り方は載っていなかったが、旅の扉が封印されている場所が載っていた。

その場所は『死の大地』。

どこに通じているかは不明だが、アバンによれば魔界に通じているかもしれない。

そも旅の扉を封じたのはアバンの家系らしい。

 

閑話休題

 

「ま、オレには関係ないか…」

 

オレはアバンの書を閉じた。

 

「……」

 

オレはもう一度アバンの書を開く。

どうにも気になるのだ。

オレはペラペラと頁をめくり最後の空の章を開いた。

目を通す。

オレは気づかない内に次第にその内容に引きこまれていった。

指でなぞりながら一文字、一文字を余すことなく読む。

ポタリ―

 

「……あ」

 

気づかない内にオレは涙を流していた。

不意にオレの心に過る自分の声。

 

『このままで良いのか…』

 

雫が頁を濡らしてしまい、オレは慌てて本を閉じた。

オレはアバンの書を宝箱に戻して鍵を掛けた。

 

「戻ろう…ホルキア大陸に…!」

 

ダイ達を助ける。

オレにしか分からない事、オレにしか出来ない事。

それがある。

先ずは新しい魔法を覚えよう。

取り敢えずダイ達の側で色々と手助けしよう。

幸いアバンの書にはルーラも載っている。

巧く習得できれば一瞬でパプニカの町まで戻れる筈だ。

それに明確な目的も出来た。

 

「キルバーン人形を手に入れる!」

 

黒の核が埋め込まれたアレを手に入れて道具袋に保管してしまおう!

あの小悪魔(キルバーン)さえ殺ってしまえば楽にいくはず。

黒の核が有れば大魔王を倒せるかもしれない。

それに黒の核が人形に埋め込まれているのを知ってるのはキルバーン本人と冥竜王だけの筈だ。

手に入れてしまえばコッチのもの。

決行は百貨店での邂逅の時。

出てきた瞬間、ぶっ殺す…っ!

 

「…うまくいくはずだ」

 

オレは急いで図書館から出た。

目指すのはちょっとだけ良い未来(エンディング)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

本日のタケルのステータス

 

レベル23

 

さいだいHP:143

さいだいMP:585

 

ちから:60

すばやさ:150

たいりょく:72

かしこさ:290

うんのよさ:256

 

攻撃力:61

防御力:133

 

どうぐ

E:どくばり

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ

 



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本日の目玉商品『祈りの指輪』

オレはアバンの書から得た知識を元に呪文の契約を行った。

契約を成功させた呪文は次の通りだ。

 

瞬間移動呪文『ルーラ』

飛翔呪文『トベルーラ』

火竜変化呪文『ドラゴラム』

破邪呪文『マホカトール』

解錠呪文『アバカム』

 

変身呪文『モシャス』

透明呪文『レムオル』

昼夜逆転呪文『ラナルータ』

合流呪文『リリルーラ』

弱体化呪文『ル■ニ』

加速呪文『ピ■リ■』

攻撃力強化呪文『■イ■ルト』

 

全て問題なく習得できた。

驚いたのは補助呪文の存在。

残念ながらアバンは使えなかったようだ。

何故なら補助呪文の殆どは既に失われてしまった呪文だったのだ。

ジュニアール家が代を重ねて再現しようとしたのだが呪文(コトダマ)まで解析出来ていなかったようだ。

その為、補助呪文については虫食い部分が多々あった。

しかしオレはゲームからの知識でそれを識っている。

試してみたが問題なく呪文は効果を発揮した。

バイキルトを使ったオレは自分の倍以上もある大岩を軽々と持ち上げる事も可能だ。

これで勝つる!

 

 

それからアバンの書に載っていた瞑想による魔法力の上昇と制御法。

そして魔法力を放出させるという応用技術。

なんの事はない。

攻撃呪文や回復呪文が出来れば応用でこのくらい…。

オレはアバンの書に従った練習方法で、この技術を習得。

闘気法は無理でも魔法に関しては無駄に才能ある…。

いや今はこの才能に感謝しよう。

 

「はぐりん、おいで」

 

「キュルキュル!」

 

オレの練習中、その辺を彷徨いていた はぐりん を呼ぶ。

はぐりん はオレの肩に飛び乗った。

オレは頭の中にパプニカの町を思い浮かべる。

そして呪文を唱えた。

 

―瞬間移動呪文『ルーラ』!

 

重力が消える感覚。

そして高速で流れる景色。

オレは、あっという間にパプニカの町に降り立った。

更に飛翔呪文(トベルーラ)を唱える。

オレは森や山をショートカットして真っ直ぐバルジ島を目指して飛んだ。

暫く飛ぶとバルジ島が見えてきた。

 

「あれか…」

 

塔を挟むように伸びた赤と青の柱が見える。

あれが炎魔塔と氷魔塔か…。

という事はダイ達は敗退したのかな?

 

「…っ!?」

 

気球が墜落している。

所々、焼け焦げ傷ついた気球は岩に引っかかっていた。

という事は近くにダイ達が居る筈だ。

オレは洞窟に近づいていった。

 

 

 

 

「はあ!でやあっ!」

 

そこではダイが剣の鍛錬をしていた。

相手はマァムだ。

ダイは目隠しをした状態で果敢にマァムに木剣を振るう。

その身体の至る所にはマァムからの反撃によって痣が出来ている。

かなりキツイ修行のようだ。

ジャマをするのも悪いのでオレは暫く見守る事に…。

 

「なんだお前は…」

 

「―っ!?」

 

突然背後から声を掛けられて振り返る。

大魔道士の顔のドアップにオレは思わず悲鳴を上げそうになった。

だってあの強面の不気味面が振り返った先にあるんだぜ?

そりゃ驚くって!

 

「な、アンタはっ!?」

 

「そりゃオレが聞いてんだよ

 さっさと答えな、それとも答えさせて欲しいのか?」

 

大魔道士マトリフ怖っ!

虚偽や黙秘は許さない。

その鋭い眼光にオレは思わず息を飲んだ。

「えっと」とか「あの」とかそんな言葉は出るが後が続かない。

マトリフの表情が更に険しくなっていく。その時だった。

 

「あ、タケルーっ!」

 

マァムがオレを呼んだ。

ダイも目隠しを外してオレを見て声を上げた。

 

「ほ、本当だ!タケル!」

 

「ふむ…知り合いか?」

 

「仲間だよ!」

 

ダイは迷わずに言った。

マジでか!?オレがダイ達の仲間!?

なんか凄い嬉しいんだけど。

こりゃ気合を入れないとな…。

 

「ダイ、マァム…じゃあ、さっき見た気球に乗ってたのは…」

 

「うん…」

 

「一体何があったんだ?ポップの姿も見えないし」

 

「実は…」

 

「それは私から説明してあげるわ」

 

振り返るとそこにはパプニカの王女レオナが立っていた。

何故いるし…。

原作通りなら今頃氷漬けの筈。

もしやポップが居ないのは…。

頭から血の気が引いていくのを感じる。

 

「ちょっと!聞いてるの!?」

 

オレの態度に気分を害したのかレオナ姫はズンズンとオレに近づいてきた。

大きな瞳がオレの顔を覗き込む。

かなりの美少女…。

性格はアレだけど。

 

「すいませんレオナ姫」

 

「まあいいわ」

 

オレは素直に謝罪してレオナ姫の話を聞くことにした。

 

 

 

 

「そんな事が…」

 

どうやら原作とは少し違った事になっているようだ。

俺達はマトリフの住処の洞窟の中に集まっていた。

まずフレイザードに捉えられ氷漬けにされたのは三賢者のエイミ。

レオナ姫はオレが与えた装備の力で善戦して難を逃れたようだ。

ポップは原作通りマトリフに魔の森で置き去りにされたようだ。

ダバックさんは禁呪法の塔を破壊するための爆弾を作成中。

その間、ダイは心眼を鍛える修行をしていたそうな。

レオナ姫はエイミを救出しフレイザードを倒す策を練っていたのだとか。

 

「それで、なにか良い案は考えついたんですか?」

 

オレはレオナ姫に問いかけた。

原作と違いレオナがこの場にいる事がどんな違いをもたらすのか。

それが吉と出るか凶と出るか…。

それから原作知識はあまり当てにしない方が良いのかもしれない。

原作知識から外れて、いざという時だった場合、冷静さを欠いて更に状況が悪化してしまうこともありうる。

最悪は常に想定しておこう。

 

閑話休題

 

取り敢えずレオナ姫の策を聞こう。

 

「目的はエイミの救出とフレイザードの撃破…。その為には禁呪法を打ち破らなければならないわ…」

 

皆はレオナの言葉を黙って聞く。

 

「島に乗り込むにあたって最早気球は使えない。マトリフさんのボートを借りるのだけど4人しか乗り込めない…。行くのはダイ君、マァム私、そして…」

 

「ワシが行きます!爆弾を作ったのはワシですぞ!」

 

ダバックが猛烈にアピール。

しかし、マァムは首を振ってそれを制した。

ここはポップしか居ないだろう。

しかしレオナ姫はじっとオレの方を見た。

え、オレですか?

 

「お願いできますか?幻の商人タケル」

 

「へ?マボロシのショウニン?」

 

何ぞ?その呼び名は…。

幻のって辺りが微妙にイタイ…。

レオナ姫はニコリと微笑むと口を開いた。

 

「ていうか命令です」

 

強制ですかいっ!?

王族からの勅命って断れないじゃん!

まぁ、断る気無いけど。

元々、ダイ達の力になる為にここに来たわけだし。

しかしポップはどうするんだろう?

今頃ルーラ習得しながら此処を目指しているはず。

その事を聞こうとした時だった。

 

「アバンの使徒どもーーっ!!」

 

外からフレイザードの声が響いた。

 

「いつまでコソコソと逃げまわってやがる!」

 

ダイ達は急いで外に飛び出した。

洞窟を出た先に見える崖下には悪魔の目玉が張り付いていた。

悪魔の目玉はコチラを見つける。

どうやらフレイザードの声を伝えているのはコイツのようだ。

 

「まさかテメエらあの女賢者が何時までも無事だと思ってんじゃねぇだろうな!?あの氷の中でどんどん女の生命力は失われていくんだぜ!」

 

フレイザードの残酷な宣告が響き渡った。

 

「明日だ!あの女の命は持って明日の日没だ!」

 

ダイ達に衝撃が走る。

レオナ姫を始めとするパプニカのメンバーは悔しそうに悪魔の目玉を睨みつけている。一刻も早くエイミを救出しなければ。

 

「エイミが死ぬ…っ!?」

 

「ああ…、姉さん」

 

「そんなこと、させないわ!」

 

レオナ姫は決意の篭った表情で皆を見渡した。

 

「時間がないわ。ダバック、爆弾を」

 

「はい」

 

ダバックは爆弾を見せた。

球体に導火線。

昔の漫画みたいなシンプルでレトロなデザインだ。

ここでマトリフが口を開く。

 

「良いかお前等…明日の日没までにフレイザードを倒さなければ三賢者のお嬢さんが死ぬ。だが、昼間ノコノコと出て行っても敵の思う壺だ」

 

確かにその通りだ。

期限は明日の日没までしかない。

だが裏を返せばまだ明日の日没まで猶予はあるのだ。

つまり一日以上の時間がある。

充分に準備をする時間はあるのだ。

 

「今夜決行する!」

 

マトリフも分かっているのだろう。

重々しく決行の時を告げた。

 

「じゃあ作戦を確認するわよ」

 

レオナ姫が前に出た。

 

「先ず島までの移動手段だけど、マトリフさんのボートを使わせてもらいます。大きさの関係で乗ることが出来るのは四人…」

 

「なら私が!」

 

「お願いします!私も同行させて下さい!」

 

三賢者のアポロが名乗りを上げる。

妹を心配してマリンも後に続く。

レオナ姫は頭を振って話を続ける。

 

「もうメンバーは決まっているの」

 

レオナ姫はダイとマァムを見た。

ダイ達もレオナを見て力強く頷く。

 

「メンバーはダイ君とマァム、私…」

 

「なっ!?姫様が!?」

 

「なりませんっ!」

 

臣下としては当然の反応だろう。

しかしレオナ姫は退かない。

 

「戦力的な判断よ。確かに私は未だ未熟よ。でも補って余りある強力な武具がある」

 

本当なら装備を交換してでも行きたいだろう。

だが…。

既にレオナ姫用に仕立て直されている防具は彼女以外には合わないだろう。

武器は兎も角、王族の衣装を変えろとは臣下としても言い辛い。

 

「それで四人目は?」

 

マトリフが問う。

 

「タケル、王女として命じます。パプニカのため、ひいては世界平和のためにあなたの力を貸してください」

 

皆の視線がオレに集中した。

 

「……了解しました」

 

オレはここで空気を読めないほどバカではない。

オレは素直に頭を下げて了解した。

 

「あの、レオナ…」

 

ダイは言いづらそうに口を開いた。

 

「ポップは…」

 

レオナは少し考えこんで首を振った。

 

「悪いけど、彼を待っている時間も余裕もないわ。今回はメンバーから外れてもらいましょう…」

 

「待てよ」

 

レオナが言葉を終えた時だった。

洞窟の入口から弱々しくも力強い声が響いた。

そこにはポップの姿があった。

身体中傷つき今にも倒れそうだが確かにそこにいた。

間に合ったのだ。

オレはポップの到着に胸をなで下ろした。

 

「ポップ!」

 

ダイとマァムは嬉しそうにポップに駆け寄った。

 

「へへっ!おまたせ…みんな…。この場所が中々イメージがかたまらなくてな…。神殿まで飛んで後は自力でな」

 

ポップは仲間たちと抱擁した後、オレの前まで歩いてきた。

 

「悪いけどよ、四人目はオレに譲ってもらうぜ」

 

ポップはマトリフとレオナ姫を見て言った。

 

「分かった。オレは飛翔呪文『トベルーラ』で行く」

 

「へ?おめえ、そんな呪文まで使えんのかよ?」

 

「ああ」

 

「けどさ、実際助かったぜ」

 

何のことだ?

今回の事に関しては何もしていない。

首を傾げたオレにポップは感謝の言葉を言った。

 

「ほら、前に行ってただろ?チューニって言ったっけ?想像するのは常に最強の自分ってヤツ?」

 

確かに言った…。

つか中二病の事は言わないで欲しい。

間違った認識で純粋に感謝されると死にたくなる。

 

「あの時の言葉のお陰だ、ありがとな」

 

「ほう…」

 

ポップの言葉にマトリフは感心したように呟いた。

やーめーてー!

そんな目でオレを見ないで!

凄い居た堪れないんですが!

 

「頼む…」

 

レオナ姫も納得したように頷いた。

 

「いいでしょう」

 

「マリンさん、アンタの妹さんは心配すんな。俺達が必ず助けだすからよ…っ!」

 

「ポップ君…」

 

「時間がない、行くとしよう」

 

「準備が終わるまでポップは休んでろよ」

 

オレはポップに祈りの指輪を二つほど手渡した。

当然使い方も教えてある。

 

 

 

 

俺達はボートを岸へと運びだした。

ポップは既にマァムのベホイミで全回復しており、元気よく伸びをしている。

祈りの指輪のお陰で魔法力も満タンだ。

俺達はボートの前に集まった。

マトリフは厳しい視線で言った。

 

「いいか、これが最後の助力だ。オレの魔法力でボートを島まで飛ばしてやる。ルーラで行ければ良いんだが生憎オレはあの島に行ったことがない…ポップだとイキナリ中央の塔に着いちまう」

 

「それで充分よ、おじさん」

 

「本当にありがとう!」

 

「バーカ、礼は勝ってからにしろ」

 

「うん!必ず勝つよ!」

 

ダイは力強く頷いた。

 

「さあボートに乗れ!」

 

パーティーは次々とボートに乗り込んでいく。

最後にポップが乗ろうとして足を止めた。

ポップはマトリフに向かうと言った。

 

「もしもオレが生きて帰れたら続きを受けに来るぜ…あそこまでイビラれて途中で音を上げれば逃げたみたいだからな」

 

「逃がしゃしないさ。お前にはまだまだ教えることが山程あるんだからな」

 

「またな師匠っ!」

 

初めて認められた気がしたのだろう。

ポップは嬉しそうにボートに飛び込んだ。

 

「お?」

 

何時のまにか乗り込んでいたゴメちゃんにポップは驚く。

 

「こいつ、ちゃっかり潜り込んでたのか」

 

「ピィッ!」

 

ダイは嬉しそうに笑う。

 

「よし、行くぞ!」

 

マトリフが両手から凄まじい魔法力を放つ。

こうして見ると本当に凄いな。

物凄い参考になる。

オレは飛翔呪文『トベルーラ』を発動させて浮き上がる。

 

「ぬううううううんんっ!!!」

 

マトリフから放たれた強大な力はボートを宙に浮かび上がらせる。

 

「はあああっ!!」

 

そして気合と共に放たれる風の魔法力。

撃ち出される形で飛び出すボート。

 

「死ぬなよ…アバンの忘れ形見ども…」

 

あっという間に大渦の上を通過していくボートを見ながらマトリフは柄にも無く祈りの言葉を漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

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さいだいMP:585

 

ちから:60

すばやさ:150

たいりょく:72

かしこさ:290

うんのよさ:256

 

攻撃力:61

防御力:133

 

どうぐ

E:どくばり

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

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本日の目玉商品『命の石』

オレはダイ達の乗ったボートを飛翔呪文(トベルーラ)で追いかけていた。

マトリフの魔法によって高速で突き進むボート。

星降る腕輪の力もトベルーラの移動速度に影響しているのか付いていけている。

はぐりんがオレの懐から顔を出した。

ていうか何時の間に?

 

「…そうか、基本ビビリだもんな お前」

 

恐らくダイ達と顔を合わせるのを嫌がったのだろう。

飼い主のオレにも気付かれない内に隠れたのは凄い。

 

「まぁ、ヘタレた男子のオレにはピッタリだな」

 

はぐりんは辺りを見渡すと再びオレの懐に潜り込んだ。

今はいいか。

いざという時に役に立ってくれれば…。

オレは腰に装着した超グリンガムの鞭を触れた。

大軍を相手にするには丁度よい。

装備は防具を含めて新しいものに変えてある。

これからは本気で命に危険がつきまとう。

言うなれば魔王軍との戦争なのだ。

 

「やっぱ怖えぇ…」

 

前を見るとダイ達の乗ったボートは激突する瞬間だった。

うわっ!痛そう…。

壊れたボートと岩にぶつかった痛みで顔をしかめているパーティー達。

彼らを見ながらオレはボートに乗らなくて良かったと心底思った。

 

 

 

 

「イタタ…」

 

「そりゃないぜ師匠…」

 

「咄嗟にダイ君が真空呪文(バギ)でブレーキを掛けてくれたお陰で大したことはなかったけど」

 

「流石にこれは…」

 

皆マトリフへの不満を漏らしながら立ち上がる。

 

「おーい、大丈夫か?」

 

「タケルは良いよな、空飛べるんだからよう」

 

ポップは恨めしそうに言った。

まぁポップも直ぐに飛翔呪文(トベルーラ)が出来るようになるさ。

 

閑話休題

 

「ここは敵地だ、早速行動を開始しよう」

 

オレの言葉に皆は真剣な表情になって集まってきた。

 

「作戦通りに行くわよ」

 

「うん!オレとレオナが炎魔塔…

ポップとマァム、そしてタケルは氷魔塔だ…」

 

「ピピィ!」

 

ゴメちゃんが割って入ってきて「ボクは?ボクは?」という感じで鳴く。

 

「ははっ!そうだね、ゴメちゃんはオレと一緒だ!」

 

「ピィ~~ッ!」

 

これでメンバーは決まった。

一同は決意を込めた目でお互いの顔を見て力強く頷いた。

念の為に回復系道具を渡しとくか…。

ポップには渡したけどダイ達には渡してなかったな。

 

「ダイ、レオナ姫…」

 

オレは道具袋から回復アイテムを取り出した。

 

月のめぐみ×4

賢者の聖水×2

爆弾石×4

命の石×2

 

コレぐらいなら邪魔にならないだろう。

オレは丈夫な布袋に入れてレオナ姫に手渡した。

確か妖魔司教ザボエラもいるだろう。

奴は即死呪文(ザラキ)を使う。

このくらいの備えは必要だ。

ポップ達にはオレが付くから回復面では必要ない。

 

「ありがとうタケル…」

 

ダイは嬉しそうに礼を言った。

 

「じゃあ行くぜ!」

 

俺達は氷魔塔、ダイ達は炎魔塔。

それぞれを目指して走りだした。

 

 

 

 

一方その頃。

バルジ島にはハドラーが派遣した魔王軍が到着していた。

魔影軍団と妖魔軍団である。

妖魔司教ザボエラと魔影参謀ミストバーンの姿もある。

一同は森の中で軍団を待機させていた。

ザボエラは水晶玉を出した。

水晶玉にはダイ達の様子が映し出される。

ザボエラは薄ら笑いを浮かべてミストバーンを見た。

 

「キッヒッヒッヒッ!来おった来おった。愚かな小僧どもが儂の策にかかりになぁ。ミストバーン、お主の方は準備できたかのぅ?」

 

ミストバーンは無言で後方を指さした。

その指先には不気味に佇む騎士達が並んでいた。

魔界特有の『魔影気』によって動く、さまようよろい達だ。

ミストバーンと同様、兜の隙間から感情を感じさせない冷たい光を放っている。

目的は勿論勇者ダイ及びその仲間達の抹殺だ。

ダイ達の目的は既に知れている。

禁呪法の結界を形成している二つの塔の破壊だ。

ミストバーンとザボエラは部下たちを先導すると炎魔塔を目指して進みだした。

 

「氷魔塔にはハドラー殿がおる…。アバンの弟子どもの生き残れる確率は万に一つも無いっ」

 

ザボエラの不気味な声が深い森の奥に吸い込まれていった。

 

 

 

 

カール王国の東、竜達の住む山岳地帯。

ロン・ベルクは適当な岩に腰掛けていた。

目の前には焚き火の炎が揺らいでいて、巨大な肉がジュウジュウと音を立てていた。

周囲には竜の群れが地に伏している。

全ての竜は既に生き絶えており、共通して巨大な裂傷がくっきりと付けられていた。

一刀の下に斬られたのだろう。

 

「…ん?」

 

足下にある影を見る。

自分の物とは異なるもう一つの影。

ロン・ベルクは竜の肉を口に含むと空を見上げた。

そして骨を投げて口元を釣り上げた。

 

「ようやく来たか…」

 

待ち望んでいた相手が現れた。

ロン・ベルクは歓喜する自分を押さえながら立ち上がった。

 

「これは貴様がやったのか」

 

ロン・ベルクの頭上から低い男の声が発せられた。

視線の先にいたのは一人の戦士。

黒髪に黒い瞳。

攻撃的なヒゲを蓄えた男がロン・ベルクを見下ろしていた。

空に浮かんでいるのは飛翔呪文の力だろう。

魔王軍・超竜軍団長バラン。

真の竜の騎士がそこにいた。

 

「やはりオレの睨んだ通りだ」

 

ロン・ベルクはバランの背負う剣を一瞥して口元を更に釣り上げた。

自分の予測は正しかった。

 

「どういう事だ?」

 

「お前は竜の騎士、なのだろう?」

 

「……」

 

「ふっ、答えなくていい…

 その背中の剣を見れば一目瞭然だ…」

 

超竜軍団。

ロン・ベルクは魔王軍に竜系の怪物のみで構成された軍団に疑問を感じていた。

何故ならドラゴンは誇り高く高い知能を持つ。

並の戦士に従う道理はない筈だ。

下級の竜なら兎も角、全ての竜を従えるなど普通は無理だ。

恐らくハドラーでさえも。

以前、バーンに魔王軍に誘われた時、六軍団については聞かされていた。

当時は存在しなかったが、超竜軍団の団長になれる人物については心当たりが無かったのを覚えている。

まあ、自分は人付き合いが極端に悪かった所為もあっただろうが…。

そして現在、魔王軍の六軍団は全て存在し機能している。

竜を従えられる程の人材。

ロン・ベルクはもしやと思った。

 

「案の定だったわけだ…」

 

ギラギラとした目で竜の騎士を…。

いや背中の剣を睨みつける。

別に竜の騎士に対して感じることは余り無い。

自分の目的は飽くまでも神が創りだした最強の神剣。

真魔剛竜剣。

 

「貴様はこの私と竜の騎士に戦いを挑む為だけに我が軍団を襲ったというのか?」

 

明らかな怒りの声。

バランは配下の竜達の死体を見渡した。

そして背中の剣に手をかける。

 

「だったら?」

 

「見たところ魔族のようだが、舐められたものだな…」

 

真魔剛竜剣を抜き放つ。

そして、バランの額から光が放たれる。

竜の紋章が浮かび上がり、バランの肉体を光が覆う。

竜闘気(ドラゴニックオーラ)。竜の騎士最強の証である力が発動した。

 

「それが真魔剛竜剣…っ!?」

 

「ほう、この剣の事も知っているとは…纏う闘気といい、どうやら唯者ではないようだな…」

 

バランも歴戦の戦士。

臨戦態勢に入ってロン・ベルクの強さを感じ取ったのだろう。

剣を握る力を更に強める。

ロン・ベルクは腰に差した二剣一対の双剣を抜き放つ。

真・星皇剣。

王者の剣を材料にして打ち直した最高の自信作だ。

 

「さあ、まずは…」

 

急降下してくるバランに対してロンは剣を交差させて構える。

そして叫んだ。

 

「力比べと行こうかっ!!!」

 

最高の魔剣鍛冶師ロン・ベルク。

最強の生物、竜の騎士バラン。

二人共地上界、魔界を合わせても最高クラスの戦士。

―ギギィィンッ!!!

白刃のこすれ合う音が響く。

二人の影が衝突した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

本日のタケルのステータス

 

 

レベル23

 

さいだいHP:143

さいだいMP:585

 

ちから:60

すばやさ:150

たいりょく:72

かしこさ:290

うんのよさ:256

 

攻撃力:200

防御力:133

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:力の盾・改

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 



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バランVSロン・ベルク 其の一

「はああああっ!!」

 

「ぬぅんんっ!!」

 

重なりあう剛剣と双剣。

石の大地に剣戟が何度も響く。

その度に火花が散り、衝撃で岩が砕ける。

竜達の死体も転がり、また宙に跳ね飛ばされる。

圧倒的な金色の闘気を全身に纏うは竜の騎士バラン。

バランは凄まじい程の剛剣をロン・ベルクに振り下ろす。

ロンも負けじと双剣を巧みに操りバランの剣を受け流していく。

 

「何時までも逃げられると思うな!」

 

バランは瞬間移動呪文(ルーラ)を唱えた。

一瞬にして光となったバランはロンの背後、その上空に現れる。

 

「これで終わりだ!」

 

ロンが振り向いた時にはバランは剣を振り下ろす瞬間だった。

咄嗟に双剣を交差させて防御の体制を取る。

竜闘気によって強化された真魔剛竜剣。

斬れない物などこの地上のどこにも存在しないだろう。

現にバランもそう思っている筈だし今までもそうだった筈だ。

だが―

ロンはニヤリと笑った。

 

「な、なにぃっ!!?」

 

なんとロンはバランの剛剣を正面から受け止めていたのだった。

ロンの口元が更に釣り上がる。

歓喜の表情を隠すことが出来ない。

予感は確信に変わり、全身が泡立つ。

これだ!

こんな戦いがしたかったのだ!

真魔剛竜剣を求めたのも、最強の剣を求めたのも…。

 

「全てはオレの全力を振るうため…」

 

久しく忘れていたよ。

鍛冶屋を目指したのは断じて他者の為ではない。

嘗て魔界最強の剣士として名を馳せた自分。

実戦の中で数々の剣技を編み出してきた。

そして多くの強敵を下してきた。

しかし、決して満たされる事はなかった。

どれほど多くの強敵を打ち倒しても。

何故なら全力を出せなかったからだ。

極みに達した剣技。

それを振るうには自身の肉体と剣は余りにも惰弱だった。

どれほどの名剣を用いようと。

魔界に名を残すほどの伝説の剣を持ってしても。

そして更に自身の肉体を鍛えても。

遂には自身の極めた技を自在に放つ事は叶わなかった。

だからこそ歓喜する。

オレの鍛えた剣は地上最強の剣と打ち合えているっ!!

いや眼の前の剣は、もう地上最強ではない。

ロン・ベルクは予感を確信に変えてバランと切り結ぶ。

 

(どうやらオレは二つとも嬉しいらしい)

 

「最強の剣と剣士の誕生がなっ!!!」

 

「っ!?」

 

超速の連撃『はやぶさ斬り』だ。

ロン・ベルクの二刀流も相まって一瞬で四斬。

それを連続で行う。

 

「はああああああああっ!!!」

 

「ちぃっ!!!?」

 

ガガガガガッ!!!!!

 

ギィィンッ!!!

 

四、八、一六と僅か刹那の内に繰り出される無数の連撃。

バランは防戦一方になる。

忌々しそうに口元を歪ませる。

しかしバランも歴戦の騎士。

一旦仕切り直そうと飛翔呪文(トベルーラ)で上空に飛ぼうとする。

だが―

 

「させんっ!!」

 

「ぬぅんっ!」

 

一瞬の内に上空をとったロンが強襲する。

放たれた闘気は竜の顎となってバランを襲った。

竜系に対して痛烈を与える秘剣『ドラゴン斬り』だ。

バランは辛うじて剣で受け止めたもの、竜の闘気はバランの剣の脇を通り抜けて、その身に食らいつく。

まるでドラゴンキラーで攻撃された衝撃。

それは竜の因子を持つが故のダメージ。

バランは堪らず膝をついた。

 

「ぬぅう…流石は魔界の剣士…

 人間如きの剣技とは一線を画している」

 

「そういうアンタも流石だ

 竜の騎士の力は伊達じゃないと言ったところか」

 

「どうやら剣技の勝負では分が悪いらしい」

 

バランの紋章が更に輝きを増す。

ロン・ベルクは空かさずバランに斬りかかる。

 

「ちぃっ!!」

 

しかし次の瞬間、ロンは身を捻って地面を転がった。

同時にその横を一筋の閃光が通り過ぎた。

閃光は連なる岩々を貫通し、更にその先に見える大きな岩山に直撃。

 

「……くっ!」

 

岩山に刻まれた巨大な紋章の後。

竜の騎士が紋章に闘気を収束させて放つ光線『紋章閃』だ。

ロンはそれを見て息を飲んだ。

もしも躱さなければ自分は…。

冷や汗が流れた。

だが…。

 

「どうやらそう簡単にはいかないようだ」

 

ロン・ベルクは嬉しそうにバランを見た。

嘗て無い緊張感。

これほどの戦いは過去どれだけだったろうか?

一瞬の判断ミスが敗北を招くギリギリの攻防。

だがまだまだだ。

何故なら自分は未だ全てを出し切っていない。

真・星皇剣の能力も、最強の奥義も。

礼を言うぞタケル…。

ロンは心中でタケルに礼を言うと再び双剣を交差させた。

 

―先程のお返しだ―

 

そして真名を叫ぶ。

二剣一対の双剣の名を!

 

『真・星皇剣(ビッグバン)!!!!』

 

「な、なにぃ!!?」

 

瞬間。

双剣の中心が煌き極光が放たれた。

それは一瞬で膨張しバランを飲み込んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 

 



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バランVSロン・ベルク 其の二

「ぐおおおおおおおっ!!!?」

 

真・星皇剣の放った極光。

バランは咄嗟に竜闘気を全開にしながら歯を食いしばる。

光は竜闘気の護りを打ち破りながらバランに食らいつく。

全身を襲う焼け付くような感覚。

バランは歯を食いしばって耐える。

そして光が弾けた。

 

 

「やったか…」

 

ロンは、もうもうと広がる煙の中心を睨む。

不吉な事に空は何時の間には雨雲が覆っていた。

いや、あの程度で伝説の竜の騎士が死ぬはずがない。

ロンは真・星皇剣を握る手に更に力を込めた。

今の内に闘気を高める。

ロンは大きく息を吸い込んだ。

体内に闘気が充満し、駆け巡るのがわかる。

さぁ、何時でも来い!

次第に煙は晴れていく。

 

「やはりか」

 

バランは生きていた。

竜闘気を身体に纏い、防御姿勢のまま空に静止していた。

しかし無傷ではなかったようだ。

額からは赤い血が流れている。

鎧も所々破損している。

バランは剣を天に掲げた。

 

「ギガデインッ!!」

 

雨雲に稲妻が走る。

極大の落雷がバランの剣まで一直線に伸びた。

真魔剛竜剣は紫電を纏い、バチバチと凄まじい音を立てる。

魔法剣、この世界において人の身では決して扱う事の出来無い力。

正しく人間以上の存在が目の前に居た。

バランは紫電の剣を上段に構えてロンを見下ろす。

そして-

 

「はあああああっ!!!」

 

バランは飛翔呪文と竜闘気を全開にして急降下。

ロンまで一直線に強襲する。

 

「おおおおおおっ!!!」

 

ロンも自身の秘剣で対抗すべく構えを変える。

闘気を集中させつつ剣を左脇に交差させた。

 

「ギガブレイクッ!!!」

 

「星皇十字剣っ!!!」

 

バランが剣を振り遅すと同時にロンの一刀目が振り抜かれる。

まるで落雷の如き轟音。

そして刹那の間に二刀目が振り下ろされて剣が十字を描く。

バランとロンを中心に閃光が広がった。

 

 

光が収まる。

そこには膝を付いて互いを睨み合う戦士がいた。

汗が滝の様に流れ、腕が震える。

不意にロンが笑う。

視線の先には真魔剛竜剣。

バランが杖のように大地に突き立てている。

しかし刀身には亀裂が入り、刃が欠けているのが見て取れた。

 

「……くっ」

 

バランも自身の剣のダメージに気づき歯噛みした。

 

「くくく……、ハハハハハハーーッ!」

 

ロンは笑う。

消耗した体力の事など忘れて立ち上がる。

ロンの胸中には勝利の二文字が浮かんでいた。

 

「コレだ!オレが望んでいたのはコレなのだッ!!」

 

「どういう意味だ」

 

「オレの望みは最強の剣を創り上げる事ッ!!それだけを望み、渇望して生きてきた!その真魔剛竜剣を超える事だけを望み剣を鍛えてきたのだっ!」

 

バランは真魔剛竜剣を地面から引き抜き立ち上がる。

掛けた刃を見る。

剣が損傷したのには驚いた。

怒りはある。

だが不思議と憎しみは沸かなかった。

目の前に男にあるのは唯只管に剣の事だけなのだ。

善悪のない純粋さ。

バランは剣を下げて言った。

 

「その為に我が軍団を襲い、私に戦いを挑んだと…ならばもう目的は果たしたのだろう。剣を交えてみて思ったが、貴様は殺すには惜しい男だ。素直に剣を引くのであれば、今回の事は不問にしてやろう」

 

最早この男と戦う気は起きない。

確かに配下の竜達を消耗したのに対して思う事はある。

だがそれ以上に。

 

「いや、それよりも…我が軍門に下る気は無いか?その力、人間共を滅ぼす為に使う気はないか?」

 

この男が配下に加われば消耗した竜達にお釣りが来るほどの戦力だ。

それにロンに武具を造らせれば、我が軍の戦力は更に上がる。

敵対するよりも仲間に引き入れたほうが遥かに良いのだ。

バランは一度剣を鞘に納めるとロンの返答を待つ。

 

「そう、オレの剣は真魔剛竜剣に勝る…先程の一合でそれが分かった本来オレの目的はこれで達したと言ってもいい…だが!」

 

「…っ!」

 

ロンは鋭い眼光をバランに向ける。

 

「気づいたのさ、オレが本当に求めているものを」

 

「本当に求めているものだと?」

 

「ああ、最強の剣を目指し長年に渡って剣を鍛えてきた!だが一度オレは自分の限界に絶望した。年月だけが過ぎてオレは腐っていった……」

 

ロンは忌々しそうに視線を落とした。

 

「だが、ある人間の存在がオレの情熱を取り戻した!」

 

バランは眉がピクリと動く。

 

「おれたち魔族に比べてちっぽけな存在である人間がオレの剣を上回る物を創り出したと言うんだからな」

 

本当に驚いた…。

数百年の時を生き、伝説の魔剣鍛冶師とまで云われたロン・ベルク。

そんなロンの剣を上回る物を創りだしたのが人間だった。

彼にとって驚愕だったのだろう。

勿論、唯のチート能力なのだが…。

もしもタケルがロンの心中を知れば何とも言えない気分になり凹むに違いない。

 

「人間って生き物は大したもんだな…っと、どこまで話したか…。本当にオレが求めているものだったな…」

 

ロン・ベルクは双剣を構えて闘気を高めた。

 

「貴様…っ」

 

「オレが剣を鍛え始めたのはオレに見合う剣が無かったが故に本来のオレは鍛冶師などではない…最強の二文字を目指す唯一人の剣士に過ぎん…オレはオレの鍛えたこの剣と共に最強の剣士になるのだっ!!!」

 

「コチラも気が変わったぞ、魔族の剣士よ…人間などを大した存在などと宣う貴様など最早生かしておけんっ!」

 

「ほう、貴様にとっては禁句だったか…上等っ!」

 

膨れ上がったバランの殺意を何処吹く風と受け流しながらロンは笑みを浮かべる。

 

「天下の竜の騎士殿はかなり人間臭さを持っているようだな…」

 

「何ィっ!?」

 

「竜の騎士の使命ってのはオレも知っているさ」

 

竜の騎士。

それは人間、魔族、竜の神が集まり創り出した究極の生命体。

竜の戦闘力と魔族の超魔力と人間の心を持った戦士。

もしも何れかの種族が野心を持ち地上を支配しようものなら天に代わり之を裁く。

神の御使い。

その竜の騎士が魔王軍に味方し人間を滅ぼそうとしている。

客観的に見れば人間が悪なのだろう。

だがロンはバランの憎しみを見抜いていた。

 

「お前は竜の騎士の使命として人間を滅ぼすのか?」

 

「……」

 

バランは無言だ。

 

「憎しみなんざ最も人間らしい感情だろうよ」

 

「ほざけえええええっ!!!」

 

ロンの言葉にバランの怒りが頂点に達した。

バランは竜の牙を取ると天高く掲げた。

 

雷雲が集まり雷が走る。

 

ドドドドーーーーンッ!!!!!

 

極大の落雷がバランに落ちた。

 

「ぐおおおおおおおおおお!!!」

 

バランは天に向かって竜のように吠えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く…。

 

 



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バランVSロン・ベルク 其の三

「コイツは…」

 

ロン・ベルクは目の前の光景をただ眺めていた。

凄まじい雷光が奔り、バランの肉体を包み込んでいく。

そして竜の牙を握りしめた拳の隙間から血が滴る。

ヒトの赤い血はやがて魔族の青い血へと変わっていく。

 

「グゥゥ…、オオオオオオオッ!!!!」

 

バランは天に向かって吠える。

筋肉は更に膨れ上がりバランの鎧を、衣服を裂く。

その身体はヒトのモノではなく異形、竜に酷似したモノ。

ヒトの素肌は鱗に覆われていく。

髪の毛は逆立ち額の紋章は更に輝きを増し肥大化する。

背中から竜の翼が生える。

そして-

 

「こうなった以上、もう後には引けん…理性が無くなる前に聞いておこう……魔族の剣士よ、貴様の名を」

 

変身を完了したバランが雷を背に悠然と立っていた。

怒りの形相でロン・ベルクを睨めつける。

 

「オレはロン・ベルク…最強の剣士を志す無頼者だ」

 

「そうか、この姿は竜の騎士のマックスバトルフォーム…っ!……竜魔人と呼ばれる姿だ…この姿になった以上、目の前の敵を殲滅するまでは元には戻れん」

 

「竜の騎士の本気か…もとより覚悟の上だっ!」

 

ロン・ベルクは双剣を交差させて身体をバランに対して半身にした。

防禦重視の構えだ。

 

 

「そうか…では死ね!」

 

バランは最後に残っていた一片の理性を手放した。

 

「ウオオオオオッ!!!」

 

猛然とした勢いでバランはロン・ベルクに迫る。

竜の如き双牙を生やした拳をロンの身体に叩きこむ。

その勢いは剣ごと破壊しそうな勢いである。

バランの拳はロンの肩の横の空間を裂く。

咄嗟にロンが受け流したのだ。

しかし-

 

「…チッ!」

 

ロンの肩が裂けて青い血が流れる。

バランの拳圧によって裂かれたのだ。

バランは息を巻きながら手を休めずに猛追していく。

ロンは顔を顰めながら防戦一方になる。

突き出された拳を紙一重で避け頬が裂ける。

蹴りをどうにか双剣で受け止め腕が軋む。

どうにか攻撃を躱し続けるが、少しずつダメージを蓄積させていく。

 

「流石に竜の騎士だ…唯、一魔族に過ぎんオレには荷が重すぎたか…っ」

 

ロンには足を、腕を止めることは許されなかった。

少しでも動きを止めれば、あっという間に押し切られてしまう。

先程の心地良い緊張感とはまるで違う。

背筋から既に汗は流れない。

それどころか氷のように冷たい感覚が全身を巡る。

だが、此処で諦めるくらいなら初めから挑んでなどいない。

これ以上に理不尽な力にオレは心当たりがある。

思い起こされるのは嘗て見を寄せていた男。

魔界の神バーン。

それに比べれば、いかに強大な敵とはいえ理性のない獣など!

 

「ぬぅんっ!」

 

「がっ!?」

 

ロンは咄嗟に剣を手放す。

そして突き出された拳を避けると同時に腕を取り極めながら逆方向に投げる。

防戦に徹してきたお陰か徐々に慣れてきたのだ。

ロンは終始相手の動きを読むために防戦に徹し様子見をしていたのだ。

バランは自身の力も利用され盛大に吹き飛ぶ。

吹き飛ばされたバランは硬くゴツゴツした大岩に叩きつけられた。

ガラガラと岩が崩れバランの身体を隠す。

ロンは直ぐに剣を拾い上げると油断なく岩と埃に隠れたバランを見つめる。

勝負はここからなのだ。

 

「くそったれ…本当に洒落にならんな」

 

ロン・ベルクは未だ震える腕を忌々しそうに睨みつける。

しかし弱音を吐いてはいられない。

ロンは呼吸を整えて静かに闘気を練り始める。

バランがダウンしている今がチャンスなのだ。

ロンは闘気を練りながら竜魔人の能力を考察する。

攻撃力、防御力、速さ。

どれを取っても先程までとは比べ物にならない。

恐らく魔法力も強化されているだろ。

そして間違いなく先程の戦いで見せた魔法剣などの技能も健在な筈。

だがバランの理性が無い事が幸いした。

初めの攻撃もそうだが直ぐ目の前にある真魔剛竜剣を無視して素手で向かってきた。

魔法も紋章閃も使わずに通常攻撃のみで向かってきた。

そんな所を見ると、バランはかなり頭に来ているらしい。

しかしソレも何時まで続くか。

相手は生粋の戦神の末裔なのだ。

いくら理性を失おうと戦士の本質が勝利のための行動を起す事だろう。

今の内になんとか大きなダメージを与える必要がある。

 

(…準備が整うまで間に合うか)

 

ロンは額に汗しながら闘気を高め続ける。

カラ…。

バランを埋め尽くしていた岩が僅かに動く。

投げ飛ばされてから凡そ十数秒。

バランが動き出す。

それでもロンは動かない。

ただじっと静かにバランの様子を伺っている。

 

(使えるのか?今のオレに…星皇十字剣を編み出しならがも思い描いていた技…しかし十字剣さえ満足に放てない為、理論の余地を出なかったが…)

 

しかしやるしか無いのだ。

恐らく星皇十字剣でも奴にダメージは与えられるはずだ。

いくら竜魔人といえど直撃さえすれば致命傷も夢ではない。

幸い相手は無手なのだ。

だが一度見せた技だ。

対応されない保証はどこにもない。

星皇十字剣は奴のギガブレイク同様、自身の最強の奥義だ。

だがソレを、最強を超える究極の剣技ならばどうだろうか?

思い描くだけで完成など不可能だと一度は考えだした自分自身に一笑した。

しかし-

 

「賭けるしかないっ!」

 

ドゴンッ!!

同時にバランが岩の中から飛び出した。

そして空かさず急降下。

 

「来いっ!竜の騎士っ!!」

 

ロンは双剣の柄を合わせる。

柄同士が重なり一つとなる。

ロンは船のオールの様に軽く左右に振るうと剣を天に掲げる。

瞬間、剣から伸びた光の柱が雷雲を貫いた。

 

「ガアアアアアアアアッ!!!」

 

「アルテマ、ソーーードォッ!!!」

 

ロンは光の柱、いや巨大な光の利剣をバランに向かって振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く

 



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幕間

アルテマソード。

それは自身の闘気を暴走させ、更に制御。

制御した膨大な闘気を放出と同時に剣の形に収束させる。

天を突く程に強大な光の剣。

それがアルテマソードの正体だった。

魔界の剣技を極めたロン・ベルクが編み出した究極の一。

星皇十字剣を上回る必殺剣だ。

 

「勝った…っ!」

 

自身の秘奥義に飲まれていくバランを見てロン・ベルクは勝利を確信した。

それ程確かな手応えだった。

 

「…うぅ?」

 

急な目眩と同時にロンは膝をつく。

 

「ぐ……むぅ…」

 

そしてその意識は次第に薄れていく。

駄目だ、ここで意識を失う訳には…。

ロン・ベルクは眼前を埋め尽くす極光に飲み込まれるように意識を失った。

 

 

 

そして…。

そこには全ての力を使い果たして倒れたロン・ベルク。

しかし手には確りと愛剣が握られており、その鋒の先には…。

竜魔人化が解け、人の姿に戻ったバランが倒れ伏していた。

鎧は既に砕け、全身から血を滲ませている。

既に意識はないようだ。

 

-バキンッ!

 

バランの目の前で何かが砕けた。

何時からだろうか。

そこにはバランの愛剣、真魔剛竜剣があった。

しかし刀身は根本から砕け、ガラガラと地に落ちる。

真の武具は主を自ら選ぶ。

そして主の下に帰る。

真魔剛竜剣は真の武具の中でも最高の一。

伝説の武具だった。

それ故だろう。

主の危機を察知し、自らの身を挺して主を庇ったのだ。

しかしアルテマソードの余りの威力に耐え切れず…。

まるで涙を流しているかのように落ちていく刀身の欠片。

オリハルコンの光は雫の様に零れ落ちた。

 

「グ…ッ」

 

剣の涙を感じ取るようにバランは呻く。

嗚呼、取り敢えず主の命だけは護る事が出来たようだ。

真魔剛竜剣は最後にオリハルコンの光をバランの顔に反射させて崩れ落ちた。

 

 

 

 

その光景を見つめる視線があった。

悪魔の目玉だ。

全世界の動向を探るべく放たれた魔王軍の偵察。

それはバランとロン・ベルクの戦いを確りと捉えていた。

 

「むぅ…」

 

「どうやら決着が付いたようですね」

 

地上最強の力を有する両雄。

当然ながらその戦いは魔王軍にリアルタイムで伝わっていた。

悪魔の目玉が写す光景は魔王軍の本拠、鬼岩城へと送られていた。

城の最奥にある謁見の間。

城の主たる大魔王バーンは、側近の一人、死神キルバーンと共にその光景を眺めていた。

結果は相打ち。

バランは満身創痍の上に剣を砕かれ、ロンは全闘気を使い果たし戦闘不能。

両者、今なら簡単に討ち取られそうだ。

 

「バラン…、油断しおったか」

 

バーンは面白くなさそうに倒れたバランを睨みつけた。

 

「ホント、ホント、天下の竜騎将もてんでだらしないの!」

 

キルバーンの肩に乗った小悪魔がヤジを飛ばす。

 

「それにしても」

 

バーンの声音が不機嫌なものから機嫌なものに変わる。

髭を摩りながら面白そうにロンを見つめた。

 

「まさか人間界におったとは」

 

「アイツ、魔族だよね!何で魔王軍将軍のバランに戦いを挑んだんだろう?」

 

「ふふふ、ピロロ、彼の名はロン・ベルク…魔界じゃ超有名な御方だよ」

 

「ホントー?」

 

「それでどうします?今なら簡単に殺れますよ?」

 

「そうそう!大魔王様!ぼくらにお任せ!」

 

「まあ待て。アヤツは我等に戦いを挑んだわけではない」

 

「どういう事ですか?」

 

キルバーンの問いかけにバーンは面白そうに笑う。

 

「あやつ、何も変わっておらん…。いや、完成させた所を見ると、随分な進歩よ…」

 

「どうゆうこと?」

 

「恐らく自身の剣が最強である事を証明したかった…」

 

唯それだけであろうな…。

バーンはゆっくりと玉座に背を預けると酒を煽った。

 

「ロン・ベルクは捨て置け。それよりも今のうちにバランの奴を回収しておけ」

 

「処分なさるので?」

 

「いや、此度のことは任務外のこと。不覚を取ったとは言え竜の騎士は貴重な戦力だ。……今回は不問にしておこう」

 

それよりも、と。

バーンの瞳が怪しく光った。

 

「ロン・ベルクは興味深い事を言っておったな」

 

「はい、確かに」

 

「ロン・ベルクを感心させる程の人間か…」

 

「興味ありますよね」

 

「うむ、やはり欲しいな」

 

バーンの脳裏には先程の戦いの終始が鮮明に甦っていた。

ロン・ベルクが地上界に居たのも驚いたが…。

 

「星皇剣を完成させておったとは」

 

嘗て魔界最強の剣士として名を馳せたロン。

しかし彼が剣の道から鍛冶の道に変えた理由。

バーンはそれを見抜いていた。

ロンの極めた剣。

それは強靭な魔族の肉体を持ってしても自身に帰ってくる諸刃の剣だった。

ロンが鍛冶の道に入って百年余り。

 

星皇剣は見事にロンの技に耐え、尚且つ主の身を守る最強の武具として完成していた。

しかも星皇十字剣をも上回る秘奥義まで…。

 

「アルテマソード…、脅威だ」

 

その威力はバーンをして戦慄させる程のものだった。

あれ程までに収束させた闘気の剣。

おそらく『黒の核』に匹敵するだろう。

その威力と範囲は比べるべくもないが…。

あれは黒の核の威力の剣で斬りつけるようなものだ。

真魔剛竜剣が無ければ間違い無くバランの命はなかっただろう。

 

「くくく…」

 

だからこそバーンは笑う。

まさか人間界で是程までに楽しませてもらえるとは…。

 

「キルバーン」

 

「はい」

 

「ロン・ベルクの動向を探れ。間違いなく件の人間と接触するはずだ」

 

「分かりました。バランの回収後、直ちに」

 

キルバーンはクスクスと笑いながら闇にその姿を消した。

 

「さて、どうなるか…」

 

バーンは残った酒をグラスで転がしながらじっと虚空を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 



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本日の目玉商品『爆弾石』

鬱蒼とした森の中を歩く。

バルジ島に到着した俺達は二手に分かれて行動を開始した。

それぞれ炎魔塔と氷魔塔を目指す。

ダイはレオナ姫とゴメちゃんを連れ炎魔塔へ、オレはマァムとポップと氷魔塔を目指す。

 

 

暫く歩くと薄暗い森の奥、木々の隙間から光が見えた。

真夜中だというのに何だろう?

その答えは直ぐに出た。

氷魔塔の光だ。

氷が星と月の光を反射していたのだった。

 

「ポップ、タケル…」

 

「ああ、どうやら嵌められたみたいだな」

 

何時からだろうか?

見られている。

身体中を突き刺すような視線、殺気が俺達を襲う。

獣の匂い…。

しかし百獣魔団の物ではないだろう。

木々や、水の自然な匂いがしない。邪悪な気配だ。

バサッ!バサッ!

不気味な羽音が響く。

空に見えるのはガーゴイルとホークマンだ。

段々と気配は増えていき、アッという間に周囲から殺意が突き刺さる。

完全に囲まれてしまったようだ。

 

「クックック…ダイ達は炎魔塔か、拍子抜けだな…」

 

魔物の群れを掻き分けながら現れたのは魔族の男。

側近の悪魔系怪物、アークデーモンを引き連れて歩く。

威風堂々とした佇まいに残忍な笑みを浮かべて。

ポップは魔族の声に肩を震わせた。

 

「こ、この声は…」

 

「どうしたの、ポップ?」

 

「こいつの声だけは死んでも忘れねぇ…っ!」

 

ポップは怒りを孕んだ声で魔族の男に向けて叫んだ。

 

「魔軍司令ハドラーッ!!!」

 

「こいつが…」

 

オレはハドラーを観察する。

青い肌に、ローブの上からでも分かる鍛えぬかれた巨躯。

その風貌は全身から凄まじいオーラを放っていた。

現時点のコイツは、どこか大したことがないという印象だった。

だがどうだ。

こうして見ると、とんでもないバケモノだ。

 

「コイツがアバン先生を殺した男…?」

 

「ああ、まさか…、魔軍司令自ら出てくるなんて…」

 

「目障りな貴様らを一気に叩き潰してやろうと思ってな。しかしガッカリだ。罠に掛かったのが貴様らのようなヒヨコとは…」

 

「うるせえ!そうそうテメエの思い通りになると思うな!」

 

「…ん?そうか貴様…思い出したぞ。デルムリン島でアバンを葬った時に側にいた魔法使いのガキか?」

 

ハドラーはポップの顔を思い出して肩を震わせた。

そして大いに笑う。

 

「ククク……、ハーッハッハッハ!」

 

「何がおかしいっ!」

 

「くくく、コイツは泣かせてくれる感動的な話じゃないか。ひ弱で未熟な弟子が最愛の師の敵を討つ為に必死で戦いを潜り抜けてきたという訳か…涙ぐましい努力だな…。しかもその結果が惨めな討ち死にとはなぁ」

 

ハドラーの眼光にポップはたじろいた。

 

「ふ、ふざけんなよ!タ、タダじゃ死なねえ!たとえ刺し違えてもアバン先生の受けた痛み、全部テメエの身体に刻みつけてやるぜ!」

 

しかし勇気を振り絞って啖呵を切る。

マァムもハンマースピアを握りしめて叫ぶ。

 

「そうよ!許せないわ!あの先生の生命を奪った貴方だけは!」

 

「フン!勘違いするなよ小娘…アバンの命を奪ったのはオレ様ではないその優しさとか言う愚にもつかない猿以下の感情なのだ!」

 

そのハドラーの言葉がマァムの怒りに火を付けた。

頭に血が上ったマァムは怒りの表情で飛び出す。

 

「よせ!マァム!」

 

ポップの制止の声も振り切りハドラーへと走る。

そして一気に距離を詰めるとハドラーにハンマースピアを振り下ろした。

しかし-

 

「-ッ!?」

 

ハドラーは涼しい顔でマァムの一撃を受け止めた。素手で。

ライオンヘッドの巨躯でさえ安々と吹き飛ばす一撃を容易に止める。

やはり半端な強さではないようだ。

オレはこの戦いに生き残るために努めて冷静にハドラーと手下たちを分析する。

ヒュンケルの助っ人に期待するのも手だが確実ではない。

ゲームではなく現実である以上、手を抜く訳にはいかない。

 

 

「逃げろ!マァム!やつは格闘技も半端じゃねぇんだ!」

 

マァムの一撃を受け止めたハドラーはハンマースピアを握り捉える。

そして反撃とばかりに拳を構えた。

それを見たオレは直ぐに呪文を唱えた。

 

「瞬間移動呪文『ルーラ』」

 

オレの身体が光の矢となってハドラー目掛けて翔ぶ。

 

「……むっ!?」

 

ハドラーの拳がマァムを捉える瞬間。

オレは瞬間移動呪文の速さによってマァムの救出に成功する。

 

「大丈夫か?」

 

「え、ええ」

 

マァムを下ろしながらオレはハドラーを見据える。

ここはボス戦のセオリーで行くしかないな。

 

「ちっ!余計な真似をしおって…死ぬがいいっ!」

 

ハドラーは面白くなさそうに爆裂系呪文『イオ』を連発してきた。

 

「マァム!タケル!」

 

ポップが駆け寄ってくる。

ヤバイッ!

オレはポップとマァムの前に歩み出ると力の盾・改を構える。

そして全神経を集中して防御する。

無論、唯の防御態勢ではない。

実戦で使うのは初めてだが上手くいく筈。

コレはあらゆる攻撃を十分の一に軽減する『大防御』だ。

同時にイオが俺の面前に着弾、爆発が連続した。

 

「タケル!」

 

腕が少し痺れたが問題はないだろう。

ダメージを受けると同時に力の盾の能力で回復したから問題ない。

煙が晴れると地面は砕け、煙が上がっていた。

とてもではないが並のイオの威力ではない。

それを見てポップが顔を青くした。

 

「い、以前よりもハドラーの呪文の威力が上がってる?」

 

「ふっ、見て分らぬか?オレはアバン討伐の褒美としてバーン様より新たな肉体を頂いた…。以前のオレとは比べ物にならん程に強くなったのだっ」

 

それを意味するのは唯一つ。

この男はアバンを倒した時よりも強い。

 

「理解できたか?貴様らには万に一つも勝ち目がない事に…。そしてこの場にはダイもいない…。今頃ダイは妖魔師団と魔影軍団の集中攻撃を受けているだろう。そろそろくたばっておるかもな」

 

「そ、そんな…ダイ達も…っ!?」

 

ポップとマァムの顔が絶望で歪む。

 

「虫ケラ以下の人間の分際で偉大なる我が魔王軍に楯突いた事は死を持ってしても有り余る…オレの高熱地獄で死よりも苦しい地獄を味わいながら消し炭になるがいい」

 

ハドラーの掌から炎が迸る。

あれは閃熱呪文『ベギラマ』だ。

ポップは死を予感して肩を震わせる。

 

「けど俺達は無傷だ」

 

「む…っ」

 

「タ、タケル…」

 

「お前さ、得意そうに呪文を披露してるけどさっきの呪文で俺達は別段傷を負ってないぜ」

 

「そういえば、おめえ、俺らを庇ったってのに…」

 

「ポップ、諦めるなよアバンの使徒だろ?たしかに恐ろしい相手だけどさ…勝てるぞ、コイツに…俺達が一致団結すれば間違い無くな…」

 

「なにぃ?」

 

ハドラーはオレの顔を睨めつける。

結構な迫力だけどワニ顔のクロコダインに比べればマシだ。

一応、人間の顔だし…。

オレはハドラーを無視して補助呪文を掛け始める。

淡い金色の光が俺達を包む。

 

「コイツは…」

 

この呪文は仲間の素早さや反応速度を倍加させるピオリムの呪文だ。

ポップとマァムは自身の体の異変に気づいて怪訝な表情になる。

しかしこれは不調ではない。むしろ好調だ。

オレはスクルト、バイキルトと次々と補助呪文をかける。

勿論、敵に呪文がバレないように声を落とし口元も隠して。

 

「スゴイ…力が漲ってくる」

 

「な、何だと!?」

 

これがオレの戦い方の答え。

要はボス戦のセオリーだ。

まずは補助呪文でパーティーの強化だ。

ハドラーは現時点のアバンの使徒よりも強い。

ならば呪文で補強してやれば良いのだ。

オレはマァムとポップの肩を引き寄せた。

 

「タ、タケル!?」

 

「マァム ポップ、聞いてくれ!今のは補助呪文だ。一時的だけど俺達の戦闘力は倍増してる。けど呪文だけは強化できない!それでも今のハドラーを相手にする分には十分な筈だ!」

 

「ククク…、何を言うかと思えば…何をしたが知らんが、貴様ら人間如きに何が出来る。それにオレの相手をするには十分だと?手加減していれば図に乗りおって!」

 

ハドラーは愉悦の表情を浮かべて足を踏み出した。

 

「いいか二人共!奴が敵で憎いのは分かるが今は耐えろ!いま戦っているのは俺達だけじゃない!目的最優先で行くからな!」

 

二人の脳裏にダイとレオナ姫の顔が浮かぶ。

そして氷漬けにされているエイミの顔も。

 

「マァムは前衛でハドラーを抑えてくれ!大丈夫だ!今回は絶対にイケる!ポップはマァムの援護だ!他の雑魚どもに邪魔はさせるな!」

 

オレは氷魔塔を破壊する。

 

「はあああああっ!!!」

 

「なっ!?疾い!?」

 

マァムはハドラーに突っ込む。

ピオリムによって強化されたスピードは電光石火。

一瞬で間合いを詰め一閃。

強化されたマァムの一撃はハドラーの身体の中心へと迫る。

しかしハドラーも並の敵ではない。

その経験が、元魔王のプライドか…。

ハドラーはマァムの攻撃に反応し咄嗟に腕でガードする。

ミシリと鈍い音が響く。

 

「ぬぅっ!?」

 

マァムの一撃がハドラーの腕にめり込む。

先程は用意に防ぐことが出来た。

しかしこの結果。ハドラーは驚愕する。

バイキルトは攻撃力を倍加させる呪文だ。

つまり強化されるのはマァムの力だけではないのだ。

マァムの持つハンマースピアも含まれる。

マァムは更に力を込めてハンマースピアを振りぬいた。

 

「でやあああああああっ!!!」

 

「ぐおおっ!」

 

ハドラーは大きく吹き飛ぶ。

しかし宙で姿勢を整えると地面に下りた。

腕に受けたダメージを信じられない面持ちで見ている。

部下の怪物たちに動揺が広がる。

そして怪物たちが動き出す。

 

「ハ、ハドラー様!」

 

「させっかよ!」

 

ポップが行かせまいと呪文を放つ。

 

「タケルだけにいいカッコはさせねえ!」

 

ポップの放った閃熱呪文『ギラ』が進化する。

ギラは大きく炎を収束させて巨大化した。

あれは最早ベギラマだ。

 

「出来た!オレにもベギラマが…っ!」

 

ポップのベギラマはアークデーモンとハドラーの間に着弾する。

瞬間、巨大な炎がハドラー達を飲み込んだ。

 

「よし、今のうちに」

 

オレは氷魔塔に向けて掌を向けた。

道具袋から10個もの爆弾石を取り出す。

そして宙に放り投げる。

 

「バギ!」

 

真空呪文で爆弾を氷魔塔目掛けて飛ばす。

続けて両手に別々の呪文を作り出す。

イオラとベギラマだ。同時に放つ。

 

ズガガガガーーーンッ!!!!

 

爆弾石は連鎖的に爆発していく。

最後にバダックさんの爆弾を取り出すと爆発する空間目掛けて投げつけた。

氷魔塔を大爆発が飲み込んだ。

 

「やったぜ」

 

崩れ落ちていく氷魔塔を見て自然と顔が綻ぶ。

 

「お、おのれ…」

 

「あ、ああ…」

 

怒りを孕んだ低い声音。

視線を向けると怒りの形相のハドラーがいた。

ローブを脱ぎ捨て青い肌が顕になる。

どうやら少しダメージを負っているようだ。

しかしそれがハドラーのプライドを傷つけたようだ。

 

「許さんぞ貴様ら…」

 

「あ、ああ…、うああ」

 

ハドラーの両手から巨大な炎がアーチの様に蠢く。

まさかあの呪文は…。

ポップのハドラーの呪文のヤバさに気づいたようだ。

しかしもう遅い。

オレはルーラを唱えて二人を庇うように立つ。

大防御で耐えるしかない。

 

「逃げろ!」

 

「タ、タケル!?」

 

「何考えてやがんだ!」

 

うるせえ!

オレだってあんなヤバそうな呪文食らいたくねえよ!

躱す事も考えたが無理だ。

極大閃熱呪文『ベギラゴン』は既に完成している。

極大呪文の効果範囲から全員で逃れるのは無理だ。

道具袋から強力な防具を出す時間もない!

甘く見過ぎた!手持ちの装備と呪文だけで上手くいくなどと!

珍しく強力な武具で注目されたくないなどと!

ここ一番でヘタレる自分に腹が立つ。

それよりも目の前の危機に集中しないと。

今はこれが一番被害が少くて済む筈なんだ。

大防御に力の盾による回復。

食らうと同時に即回復だ。イタイの嫌だし…。

 

「死ねえ!」

 

「早く下がれ!」

 

オレは咄嗟にバギの呪文で二人を傷つけないように吹き飛ばす。

お陰で大防御が少し遅れた。

同時にハドラーが叫んだ。

 

「極大閃熱呪文『ベギラゴン』ッ!!!」

 

超収束された高熱の炎がレーザーの様にオレに向かって伸びる。

こりゃヤバすぎる!

例えるなら某白い魔王の殺傷設定星破壊光線。

そんな事を考えてる間にベギラゴンはオレに直撃した。

同時に凄まじい衝撃で盾が吹き飛ばされる。

ヤバイこれは計算外だ!

 

あ、熱いっ!イタイッ!?

 

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

アツイ!アツイ!!アツイ!!!アツイ!!!!

 

それだけじゃない。

苦しい!

周囲は炎の海なのだ。

当然酸素などない。

呼吸など出来ないから呪文も唱えられない。

簡単な初級呪文なら出来るがベギラゴンを打ち消すほどの物は出来無い。

息が出来ない…。

それでもオレは死にたくない一心で大防御を行う。

大防御のお陰で即死は免れたが、甘く見ていた。

極大呪文を正面から受け止めるなんてバカだった。

し、死ぬ…、本気で死んでしまう…。

痛みで流れる涙は炎によって直ぐに蒸発していく。

嫌だ…、死ぬのは嫌だ…。

 

 

「ヒャダルコーッ!!」

 

声の方を見ると、ポップが必死に氷系呪文で消化している。

マァムも魔弾銃からヒャダルコを放っている。

二人共必死でオレを助けようとしてくれている。

…嬉しい。嬉しくて泣きそうだ。

 

そういえば、はぐりんは何処だろう?

懐を探る……居た。逃げてなかったのかコイツ…。

…コイツ、寝てやがる!?

オレが熱さと苦しさで喘いでるってのに…っ!

 

「くそったれ!」

 

「タケルーっ!」

 

程なくしてベギラゴンの炎は消え去った。

同時にオレは胸いっぱいに酸素を吸い込んだ。

早く酸素をとオレの肺が活動する。

 

「げほっ!げほっ!」

 

「大丈夫!?タケル!!」

 

マァムがオレに駆け寄りベホイミを唱える。

 

「へ……、へへっ!サンキュー!」

 

オレはどうにか取り繕いながら礼を言いながら自身もベホイミを唱える。

 

「無茶しやがって」

 

「けど大丈夫だっただろ?」

 

「にしてもなぁ!おまえ!窒息死するとこだったんだぞ!」

 

「すまねえ、そこまで考えてなかった!」

 

ベギラゴンのダメージ自体は耐えれる自信があったんだけどな…。

やっぱり現実の実戦は違う。

それに極大呪文の恐ろしさを身をもって知った。

オレは悠然と佇むハドラーを睨みつけながら立ち上がった。

恐怖に震える身体に活を入れながら。

勝負はこれからだ。

そう自分に言い聞かせながら。

そうでないと心が折れて戦えなくなりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

本日のタケルのステータス

 

 

レベル23

 

さいだいHP:143

さいだいMP:585

 

ちから:60

すばやさ:150

たいりょく:72

かしこさ:290

うんのよさ:256

 

攻撃力:200

防御力:104

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

力の盾・改が紛失したので防御力低下。



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本日の目玉商品『世界樹の雫』

タケル達が魔軍司令ハドラーと戦っている頃。

ダイ達は妖魔師団と魔影軍団に襲撃を受けていた。

バダックの爆弾による炎魔塔の破壊は失敗し、ダイとレオナは苦戦を強いられていた。

しかしタケルから受け取った武具によって二人は大したダメージを受けること無く少しずつだが敵の数を減らしていく。

ダイは魔影軍団のさまようよろいを。

レオナは妖魔師団の悪魔神官達を相手どっていた。

二人は結界の中に入らない様に魔王軍相手に立ちまわる。

しかし敵の数はどんどん増えていき完全に取り囲まれてしまった。

不気味な笑い声が木霊する。

 

「キ~っヒッヒッヒッ」

 

「誰だ!」

 

そこに居たのは怪しげな風貌の魔族の老人。

そして全身をローブで覆った異様は雰囲気の怪人だ。

 

「ワシは妖魔師団の長ザボエラじゃ。そしてこやつはミストバーン…魔影参謀などと呼ばれておる」

 

「魔王軍の軍団長が二人もっ!?」

 

「貴様らが二手に分かれて来る事はお見通じゃ。この機会にいい加減目障りな貴様らを一掃しようという訳じゃ」

 

「じゃあマァム達も?」

 

「いくら勇者といえどこの数を相手に手の打ちようはあるまい?我らが魔王軍の恐怖を味わいながらくたばるがよいっ」

 

そして襲い掛かる怪物たち。

ダイはレオナを護る様に敵に突っ込んだ。

タケルから与えられた破邪の剣とアバン流の剣技が合わさりダイの剣戟は凄まじいものだった。ダイの大地斬は瞬く間に次々とさまようよろいを切り裂いていく。

レオナも後方から攻撃呪文で妖魔師団を打ちとっていく。

しかしやはり多勢に無勢。

少しずつだが二人は徐々に追い詰められていく。

二人を囲む円は徐々に狭まり身動きが取れなくなっていく。

 

「くそっ!このままじゃ…」

 

ダイは敵の数を一気に減らすべく大技に望む。

高く跳躍すると剣を逆手に構えて闘気を集中した。

未完成の技だが雑魚を蹴散らすには十分なはずだ。

 

「アバン……ッグッ!?」

 

しかしダイは後頭部に強い衝撃を受けて地面に堕ちた。

痛みに耐えながら空を見上げると、何時の間にかミストバーンがダイを見下ろしていた。

ミストバーンは徐に手をかざす。

 

「そ、そんな…っ!?」

 

ミストバーンから放たれた漆黒の闘気がダイを縛り拘束した。

 

「この技は闘魔傀儡掌っ!?どうしてヒュンケルの技を!?」

 

「バカめ!ヒュンケルの剣はアバンから学んだものじゃが暗黒闘気はミストバーンから伝授されたもの!アンデット系の怪物を支配するためにな…ミストバーンは本家本元なのじゃよ!」

 

「ダイ!」

 

身動きが取れないダイにさまようよろい達が迫る。

レオナはダイを助けるために走る。

しかしザボエラが行く手を遮った。

 

「どきなさい!」

 

「そうは問屋がおろさんぞレオナ姫よ。ワシの死の呪文で永遠の眠りにつくがいい」

 

-即死呪文『ザラキ』-

 

不気味な声がレオナを襲う。

重たい空気と地の底から這い出るかの様な怨念…。

しかし-

レオナはその声を無視してザボエラに掌を向けた。

 

「氷系呪文(ヒャダルコ)ッ!!!」

 

「な、なんじゃとっ!!?」

 

レオナの掌から強力な冷気が放たれた。

ザボエラは意表を突かれてヒャダルコに飲み込まれた.

ザボエラは身を捻りながら飛翔呪文で宙へと逃げる。

ビキビキと半身が凍りつく。

それでも身を振って氷を振り落とす。

 

「こ、小娘がっ!!なぜワシのザラキが効かん!?」

 

レオナの身につけている黄金のティアラの効力だ。

ティアラの中心に埋め込まれた神秘の宝玉がキラリと光った。

それはレオナの精神を護り、呪いの声を無効化したのだった。

つまりザキやザラキと言った即死呪文を防ぐのだ。

レオナはザボエラを無視してミストバーンに爆裂呪文『イオ』を放つ。

ミストバーンはイオを躱すが、それによってダイの拘束を解いてしまった。

 

「大丈夫?ダイくん!?」

 

「うん!助かったよレオナ!」

 

二人は背中合わせになって周囲を警戒した。

 

「お、おのれ…よくも、よくも!」

 

ザボエラは身体から氷を完全に剥ぎ取ると怒りの形相でダイ達を睨みつけた。

自身の体に回復呪文を掛ける。

そして叫んだ。

 

「こうなったら総攻撃じゃ!そやつらを嬲り殺しにするのじゃっ!」

 

遂にザボエラは軍団の全戦力を持った数の暴力を行使した。

ダイとレオナの背中に冷たい汗が流れる。

魔王軍の怪物たちは一斉にダイ達へと飛びかかった。

しかし-

 

ドゴンッ!!!

 

ダイ達と魔王軍の間に巨大な大岩が落ちる。

それによって妖魔師団の数多くが岩の下敷きになってしまった。

 

「だ、だれじゃ!!!!」

 

間一髪で難を逃れたザボエラが声を張り上げて岩が飛んできた方を睨みつけた。

そこに居たのはダイ達の嘗ての敵にして百獣魔団の長。

獣王クロコダインだった。

ダイは思わぬ援軍に顔を綻ばせて喜んだ。

 

「クロコダイン!」

 

「なぜ貴様がここにいる!?軍団長の一人でもあるお前がダイ達の味方をするとは気でも狂ったか!?」

 

「余りの多勢無勢に見かねてな!」

 

「なんじゃと!?クロコダイン!貴様裏切りおったな!?お前ら!この裏切り者を片付けてしまえ!」

 

ザボエラに命じられた怪物たちは一斉にクロコダインに襲いかかった。

しかしザボエラは失念していた。クロコダインの恐ろしさを。

 

「笑止!貴様ら雑兵如きが何匹集まろうと、この獣王が倒せるものかっ!!」

 

まさにクロコダイン無双だった。

クロコダインは波寄る怪物たちを蹴散らしてダイ達に合流した。

 

「クロコダイン!来てくれたんだね!」

 

「フフフ…待たせたな!ダイ…!」

 

「でも状況は芳しくないわ。氷魔塔には魔軍司令ハドラーが…」

 

レオナは悔しそうに声を漏らす。

クロコダインは得意に笑う。

 

「大丈夫だ。氷魔塔にはオレよりも強い助っ人が向かっている」

 

「それって…まさかっ!?」

 

ダイ達の顔に希望が満ちた。

 

「さぁ。ここはオレに任せて、お前はフレイザードを…」

 

「クロコダイン…、有難う!レオナ、行こう!」

 

「ええ!」

 

ダイとレオナ、そしてゴメちゃんは塔へと駈け出した。

賢者エイミを救うために…。

二人と一匹を見送ったクロコダインは小さく笑みを浮かべると、魔王軍達に向かう。

ザボエラが忌々しそうにクロコダインを睨みつけた。

 

「お、おのれ…、この裏切り者めぇ…あの裏切り者を、さっさと始末してしまえぃっ!」

 

ザボエラの命を受けて配下の魔物達が動き出す。

クロコダインは不敵な笑みを浮かべて真空の斧を構えた。

 

「笑止っ!暫く会わない内に忘れてしまったか?ならば思い出させてやる!貴様らにこの獣王クロコダインを止められるものか!」

 

そして獣王に寄る蹂躙劇が始まった。

クロコダインは波寄る魔王軍を蹴散らし炎魔塔へと走る。

真空の斧を振るう度にさまようよろいが両断される。

尾を振るう度に妖魔師団が蹴散らされる。

そして炎魔塔がクロコダインの射程距離に入る。

クロコダインは全闘気を一点に集中、そして開放した。

 

「獣王痛恨撃っ!!!」

 

膨大な闘気の本流は炎魔塔まで伸び爆発。

炎魔塔はガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。

 

「お、おのれ…、クロコダイン…」

 

「次は貴様の番だ。ザボエラよ」

 

クロコダインは真空の斧をザボエラに向けて宣告した。

 

 

 

 

戦場には沈黙が流れていた。

氷魔塔は既に崩れている。

不意に空が光った。そしてバルジ島を覆っていた結界が消えていく。

辺りは酷い有様だった。

極大閃熱呪文『ベギラゴン』の影響だろう。

激しい傷跡が残っている。

そこに向かい合い睨み合う勢力が二つ。

ハドラー率いる魔王軍とアバンの使徒が二人。

そしてオレとはぐりんだ。コイツは寝てるけど…。

ハドラーは憎々しげにコチラを睨みつけている。

当然だ。自身の最強呪文を凌がれたのだ。

よほどプライドが傷つけられたのだろう。

 

「お、おのれ…、人間風情が…」

 

俺達は油断なく構えハドラーを睨みつける。

幸いな事に補助呪文の効果は、まだ暫くは保つ。

極大呪文は、甘く見すぎていたが同じテツは踏まない。

オレは未だゲーム感覚で呪文を知った気になっていた自分を恥じる。

防いでダメージを受けても回復呪文で直ぐに何とかなると思っていた。

生き残れたのは正に仲間のお陰と幸運だった。

これからは自分を守る為の防具は出し惜しみなしでいこう…。

しかし現在は戦闘中だ。

道具袋から必要な武具を選んで出している状況じゃない。

手持ちの道具と今の戦力で乗り切るしか無い。

 

「マァム、ポップ…、方針を変えよう…

 オレとポップがオフェンスに回る…

 悪いけど、マァムは雑魚の相手を任せる。

 アークデーモンが三匹。厳しいけど速やかに雑魚を倒してくれ」

 

「え?二人でハドラーと?無茶よ!」

 

「極大呪文…」

 

「え?」

 

「アレがヤバイ…。マァムにアレを防ぐのは無理だ

 でもオレとポップが二人で協力して魔法を使えば相殺くらいは出来る

 幸いまだ補助呪文の効果は切れてない…

 強力な武具もある。凌ぐだけなら十分可能な筈だ…っ!

 マァムが速く雑魚を片付けて加わってくれれば必ず勝てる…」

 

「タケル…、おめえ…」

 

オレの提案にポップは目を丸くした。

そして決意を固めて頷いた。

あの恐ろしいハドラーを相手にマァムを矢面には立たせたくない。

その思いが伺える。

それにマァムが雑魚を片付けて戻ってきてくれればハドラーの呪文を抑えている隙をマァムが突く事が出来る筈だ。

 

「じゃあ…、良いか?先ずは全員で突っ込むんだ。オレが派手に合図するから、そしてら一気に目標にっ!」

 

俺達は互いに頷きあった。

そして一斉に飛び出す。

 

「うおおおおおおっ!!!」

 

「まだ、懲りんと見えるな…、小僧ども」

 

ハドラーは拳を構えて格闘の構えを取った。

オレは手を突き出す。魔力を高めて呪文を唱えた。

狙いはハドラーの後方、アークデーモン!

 

「氷系呪文『ヒャダイン』ッ!!!」

 

上級の氷系呪文。

それは凄まじいマイナスエネルギー。

分子の運動を停滞させる冷気の渦と氷結の刃。

 

「ぬおっ!?」

 

「がっ!?」「ぎぃっ!?」「…っ!?」

 

ハドラーは身を低くする事で氷系呪文(ヒャダイン)をやり過ごす。

しかしアークデーモンは、その効果範囲に入っていた。

目的は敵を怯ませ牽制し、あわよくば敵の数を減らす事…。

しかしアークデーモンも並の魔物ではない。

その耐久力でオレの呪文を傷つきながらも耐える。

しかし十分だ。

俺達は足を速めて一気に突っ込んだ。

 

「やああああああっ!!!」

 

「ぎゃあああっ!?」

 

とりわけマァムが速かった。

流石は未来の武道家である。

マァムはハドラーの横を走り抜けると、氷結の呪文によって動きを封じられたアークデーモンの前まで踏み込んだ。

ちょうど全身が凍りつき身動きが取れない魔物が三匹並んでいる。

マァムは力の限り武器をフルスイング。

それは凍りついた体には致命的な会心の一撃だった。

アークデーモン二体はマァムの一撃によって粉砕される。

しかし最後の一匹は、辛うじて動き、空中へと飛び上がった。

 

「なにっ!?」

 

ハドラーがマァムが通り抜けた事を驚き振り向いている。

オレとポップは左右から呪文で攻撃する。

 

「「閃熱呪文『ベギラマ』っ!!!」」

 

「ちぃっ!?」

 

ハドラーは強靭な脚力で高く跳躍し呪文を躱した。

同時に拳から鋭利な爪を突き出す。

 

「おのれっ!血祭りにあげてくれるわっ!!」

 

地獄の爪。ロン・ベルクの鎧さえ貫く恐るべき攻撃。

スクルトを重ねがけているとはいえ食らえば不味い。

加速呪文の効果があるから気をつければ回避は可能なはず。

いや、此処は攻撃あるのみだ。ギリギリまで引きつけてルーラで回避だ。

オレはハドラーの標的になる様に前に出て両手から呪文を連発する。

 

「爆裂呪文(イオラ)!」「真空呪文(バギマ)!」

 

「なにぃっ!?ぐぅ・・・っ!?お、おのれぇえええっ!死ねえええええっ!!!」

 

 

空中で強力な爆風と真空の渦に見舞われ傷つきながら憤怒の声を上げるハドラー。

その爪の先は完全に俺に向けられる。

ハドラーはオレに向かって急降下する。

オレは構わず攻撃呪文を連発。

 

「何やってんだ!タケル!逃げろっ!」

 

ハドラーはもう目前まで迫っている。

ポップが焦ったような声を上げる。

 

「もう遅いわっ!死ねいっ!!」

 

「瞬間移動呪文『ルーラ』」

 

「なにぃ!?」

 

ハドラーの凶爪がオレを貫く瞬間…。

スカリとハドラーの爪がオレのいた空間を斬り裂く。

オレはルーラによって難を逃れた。

移動先はポップの直ぐ横だ。

そしてポップに合図を送り呪文を唱えた。

 

「バギマ!」「ベギラマ!」

 

オレのバギマとポップのベギラマがハドラーに向かって伸びる。

 

「お、おのれ…、調子に乗るなよ…」

 

ハドラーは怒りの形相を向けて極大呪文の構えを取った。

両掌に暴力的な閃光の爆弾が唸りを上げる。

あれはベギラゴンではない…。

 

「極大爆裂呪文(イオナズン)ッ!!!」

 

ハドラーは両手を突き出し呪文を唱える。

両手から放たれた巨大な光球は混ざり合いながら俺達に伸びる。

そして互いの攻撃呪文が接触した。

イオナズンはバギマによる真空の渦で少し掻き消される。

そこにポップのベギラマが接触。

威力が弱まったとはいえ中級呪文と極大呪文。

徐々にだがポップのベギラマが押され始める。

このままポップが負ければイオナズンの大爆発は俺達を薙ぎ払うだろう。

そうはさせない。オレはもう一方の手から呪文を放つ。

 

「ベギラマ!」

 

「なにっ!?」

 

ここで漸く俺達とハドラーの呪文は拮抗した。

ジリジリと互いの攻撃呪文が鬩ぎ合う。

 

「き、貴様らごときに…」

 

しかしこのままでは不味い。

ハドラーは俺達よりも強靭な肉体を持った魔族だ。

対して俺達は人間。何時までも、この呪文の鬩ぎ合いに耐えられる気はしない。

どうする…?

その時だった…。

 

「はあああああっ!!」

 

「ぐあっ!?」

 

いきなりハドラーが吹き飛んだ。

マァムだった。

何時の間にかアークデーモンを倒したマァムがハドラーを背後から殴りつけた。

 

「マァム!直ぐに離れろ!」

 

マァムも理解していた。

ピオリムによって強化された素早さで一撃離脱。

同時に拮抗していた呪文は一気にハドラーに注がれた。

 

「ぬっ!?ぬぅおおおおおおおおっ!?」

 

「ふ、伏せろっ!!」

 

マァムは岩陰に飛び込むと同時に身を屈めて伏せる。

同時に大爆発と振動。

オレとポップのベギラマとイオナズン。

その圧倒的な暴力をハドラーは一身に受けてしまった。

いかに耐性を持つとはいえ、これならば…。

煙と砂塵が舞い上がり、徐々に晴れていく。

そこには全身から血を流し、腕と左足を失ったハドラーが倒れ伏していた。

 

「や、やった…」

 

「あ、ああ。俺達…、遂に?」

 

「ええ。アバン先生の敵を…」

 

感無量だった。

もしも息が合ったとしても、あの傷だ。

ハドラーは滿足に戦える状態じゃない。

油断さえしなければ問題ないはずだ。

それに俺達は一刻も早くフレイザードを倒す必要があった。

 

「二人共…、気持ちは分かるが今は…」

 

「ええ。エイミさんを助けないと」

 

「だな」

 

「その前に回復しておくか…」

 

オレは世界樹の雫を取り出す。

試験官に世界樹の葉が収まっており、エキスによって中が満たされている。

オレはその蓋を開いた。

試験官の中から雫が溢れる。

それは優しく雨の様に降り注ぎ俺達を癒す。

 

「すげえ…」

 

ポップが自分身体を確かめながら呟く。

 

「これで完全回復だな」

 

傷ついた身体はこれで回復。

魔法力は道中、賢者の聖水を飲めばいいだろう。

 

「じゃあ行くか」

 

そして俺達がフレイザードを目指そうとしたその時だった。

 

「お前たち!無事だったか!」

 

背後から声をかけられる。

振り返った先には…。

 

「ヒュンケル!」

 

魔剣戦士ヒュンケルが追いついていた。

空にはクロコダインの配下のコンドルが空を舞っている。

ヒュンケルはハドラーを見て驚いたように目を見開いた。

 

「お前たちだけで倒したのか…」

 

「ああ。苦戦したけどな…」

 

「ふっ。大したものだ…」

 

「それよりも今はフレイザードの野郎を…」

 

「ああ、分かっている。急ごう!」

 

そして俺達は走り出す。

目的はバルジ島の中心。バルジ塔だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

レベル25

 

さいだいHP:153

さいだいMP:600

 

ちから:67

すばやさ:170

たいりょく:77

かしこさ:300

うんのよさ:256

 

攻撃力:207

防御力:114

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

 

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

ハドラー撃破でレベルアップです。

ルカナンとラリホーを習得しました。



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本日の目玉商品『炎の盾、氷の盾』

更新が遅くなって申し訳ないです。
リアルが忙しくて思うように書けません。
いえ言い訳ですね。
他の方のSSが面白くてついついソチラに目が行ってしまいww


ハドラーを倒した俺達は、ヒュンケルと合流。

バルジ島、中央の塔を目指して走る。道中、賢者の聖水でMPを回復する。

オレは道具袋から炎の盾と氷の盾を取り出した。

魔法使いのポップは装備不可だが、オレとダイ、マァムなら装備可能だろう。

ヒュンケルにも渡しておきたいが、数に限りがある。

それに単純に戦闘力が高いし鎧の魔剣がある為、必要ではないだろう。

盾を持てば手が塞がる。渡すのは一つだけだな。

 

「マァム!コイツを」

 

オレは走りながら取り出した炎の盾をマァムに渡してやる。

 

「これは?」

 

「炎の盾だ。『炎の壁』の言葉で、炎のバリアを張ってくれる

この先のフレイザードとの戦いで役に立つはずだ」

 

「ありがとう」

 

マァムは礼を言うと炎の盾を受け取った。

そしてオレは氷の盾を装備する。

先の戦いで力の盾・改が紛失したから丁度良い。

辺りを見渡しても無かった所を見ると、結構遠くまで吹き飛んだのだろう。

それを探しているヒマなど無いから仕方がない。

そして最後に魔封じの杖を取り出してベルトに差した。

 

「その袋、やっぱ便利だな…」

 

ポップは感心したように言った。

 

「まぁね。オレもそう思う」

 

ポップに相槌を打ちながらオレは走る。

この先のフレイザードとの戦いの作戦を考えながら。

フレイザードの秘技はアバンストラッシュを完成させる為の絶好の経験だ。

それでなくてもオレはヒュンケルがグランドクロスを習得していない事が気に掛かっていた。

このまま進めばラーハルトの戦いで勝利するのは不可能かもしれない。

だがまだ大丈夫な筈だ。

オレの持つ武具や回復アイテムで何とかなる範囲だ。

しかしこれ以上、ダイ達から実戦経験を奪う訳にもいかないだろう。

オレは商人らしく道具による支援のみに徹するとしよう。

原作知識を知っているというのは厄介だ。いっその事なにも知らなければと思う。

そうすれば何も気にせずにダイ達と付き合えるのに…。

 

 

少し走るとダイとレオナ姫が先を走っているのが見えた。

 

「ダイ、レオナ姫!」

 

「みんな!無事でよかった!」

 

「ヒュンケルも来てくれたの?」

 

「ああ」

 

ダイはヒュンケルの参戦に嬉しそうにはしゃぐ。

 

「けど二人だけでよく…」

 

「うん。クロコダインが妖魔師団と魔影軍団を引きつけてくれてるから」

 

「まさか…ミストバーンが」

 

「うん、気味の悪いやつだったけど」

 

ダイの言葉にヒュンケルの顔が険しくなる。

 

「すなまいがダイ、オレはクロコダインの救援に向かう」

 

「ええっ!?」

 

「クロコダインは強い。しかし軍団長が二人では少し分が悪いだろう」

 

ミストバーンが来ているならヒュンケルは行くだろう。

確かにクロコダインの身を案じているだろうが、ヒュンケルとミストバーンの間にはそれ以上の因縁がある。

マァムが心配そうにヒュンケルを見つめる。

 

「ヒュンケル…」

 

「マァム、心配するな。すぐに俺も追いつく」

 

「わかった。気をつけろよ」

 

オレは念の為にヒュンケルに回復アイテムを幾つか渡し、再び中央の塔を目指す。

 

 

道中、全員の体力と魔法力を全快させた俺達は駆け足で塔を目指して走る。

塔を睨みながら丘を駆け上がると、そこはもう塔の前だ。

遂にここまで辿り着いた。

間違いなくフレイザードも待ち構えている事だろう。

俺達は顔を見合わせる。

塔の外周をぐるりと歩き入口の前まで来た。

 

「あっ」

 

先頭のダイが立ち止まる。

その先には大きな岩玉が散乱している。

唯の岩じゃない。微妙に揺れ動いている。

 

「ばくだんいわ」

 

ざっと見て二十体はいるだろう。

もしもコイツラが一斉に『あの呪文』を唱えれば…。

ダイ達の顔が青ざめる。

 

「自己犠牲呪文メガンテ…、不味いわね」

 

レオナが嫌そうに眉をしかめる。

 

「刺激しないように通るしかないよ」

 

「くそ!時間が無いってのにっ!」

 

「いや、みんな待ってくれ」

 

俺は皆の前に出ると同時に魔封じの杖を振りかざした。

そしてキーワードを口にする。

 

「封印」

 

魔封じの杖から放たれた青白い光がばくだんいわ達を包み込む。

 

「これは…」

 

「マホトーンの呪文だ。これでコイツらのメガンテは封じた」

 

「やったぜタケル!」

 

「あとは…ラリホー!」

 

メガンテを封じたとはいえ、無害とは言い切れない。

ついでだから眠ってもらう。

ばくだんいわ達は、為す術もなくラリホーの呪文に掛かり眠りに落ちていった。

 

「ちょろい」

 

「でもありがたいわ。エイミさんを助けるために無駄な戦いは避けるべきよ」

 

「うん!行こう!」

 

「まてっ!」

 

ばくだんいわの群れを素通りして行こうとした俺達の背後にはいつの間にか氷炎魔団が迫っていた。

フレイムとブリザードだ。しかもかなりの数がいる。

氷炎魔団は左右から一斉に襲いかかってきた。

コイツラは打撃に強いので魔法で蹴散らす。

 

「邪魔だ」

 

俺は右手からベギラマを、左手からヒャダルコをそれぞれブリザードとフレイム達に向かって放った。

 

「よし行くぞ」

 

「ああ」

 

ダイを先頭に俺が最後尾として歩き出す。

この後は確か地面からの奇襲があったはずだ。

オレは後方から足元を注意する。

 

「うわっ」

 

瞬間、オレの視界が反転した。

ていうかオレ狙いかよっ!原作だとマァムが捕まる筈なのに…。

 

「見てたぜぇっ!テメエがダイの次に厄介なのはよぉっ!」

 

「フレイザードッ!?」

 

フレイザードは素早く地面から飛び出すと、オレを頭上高く持ち上げる。

このままだと間違い無く叩きつけられる。

オレはその前にフレイザードに向かって手を伸ばした。

 

「先ずは一人目っ!!」

「イオラッ!!」

 

それはフレイザードが地面に向かってオレを振り下ろすと同時だった。

ズガガガーーンッ!!!!

 

「何ィッ!?」

 

至近距離で放たれた中級爆裂呪文はオレとフレイザードの間の空間で爆発して両者を吹き飛ばした。

 

「タケルーーッ!!」

 

オレは空中高くに吹く飛ばされる。

このままでは間違いなく地面に激突してしまうだろう。

せめて頭部は守らないと。

しかし、地面に激突するかに思われたオレは誰かに受け止められた。

固いゴツゴツした鱗に覆われた腕。これは間違いなく…。

 

「クロコダイン!ナイスタイミング!」

 

「間に合ったようだな」

 

妖魔師団を蹴散らした後、直ぐに追ってきてくれたのだろう。

本気でありがたい。

 

「オレもいるぞ」

 

魔剣戦士ヒュンケルも到着する。

 

「ふたりとも無事だったのか…。よかった」

 

「ああ、ミストバーンはどういうわけか早々に引き上げてしまってな…」

 

「ザボエラにはもう少しという所で逃げられてしまった…」

 

「それよりも今は…」

 

クロコダインとヒュンケルはそれぞれの武器を構えてフレイザードを睨みつけた。

正に四面楚歌。

六将軍フレイザードと対等の元獣王と元不死騎団長。

それに加え勇者ダイ達アバンの使徒。

配下の魔物たちはタケルのラリホーと魔封じによって無力化。

フレイザードは冷や汗を流して周囲を睨みつけた。

そして大きく息をつくと。

 

「クックク……カァ~~、カカカッ!!」

 

高らかに笑い出した。

その目は追い詰められた獲物も目ではない。

ギラリと闘争心を光らせた覚悟を決めた敵の目だった。

 

「な、なにを笑ってんだ!?気でも触れたか?」

 

ポップがフレイザードの狂気じみた笑いに後ずさる。

他のメンバーも油断なくフレイザードの様子をうかがう。

本能的に判っているのだ。

目の前の男が素直に負けを認めるような殊勝な者ではないことに。

 

「もう過去の栄光は必要ねぇ…、バーン様…俺に新たな栄光を……っ」

 

フレイザードは身体の中心の大きなメダルに手を掛けて、一気に引き剥がした。

そしてメダルをゴミを捨てるように放り投げた。

その様子に元軍団長の二人が驚愕する。

それも無理の無き事だった。

あのメダルは嘗て大魔王バーンへの忠誠心を示す為に六将軍が奪い合った暴魔のメダル。

フレイザードの命の次に大切な物だったのだ。

それを捨てる意味はつまり…。

 

「そうっ!俺様の命をかけて貴様らを倒すっ!!!!」

 

瞬間、フレイザードの身体が弾けた。

無数の炎弾と氷弾が散弾の如く周囲にばら撒かれる。

ダイ達は目を疑った。

命を賭ける…フレイザードはそう言ったが、まさか自爆した?

 

「いや違う…、こいつはっ!?」

 

原作知識によってフレイザードの攻撃を読んでいたタケルは盾を構えて身を守る。

散らばった散弾は意志を持つように宙を舞ながらダイ達を次々と襲う。

パーティーはダメージを受けながら理解した!

この岩石の破片の一つ一つがフレイザードなのだとっ!!!

 

「うわーーーっ!!!」

 

「ぎゃっ!!」

 

この攻撃の前に盾など意味はなかった。

縦横無尽に上下左右、四方八方から攻め立ててくる弾丸の嵐。

反撃しようにも通常の攻撃など意味を成さない。

それどころかフレイザードの破片を増やし逆に不利に陥ってしまう。

攻撃魔法も同様だった。

 

「これがオレの最終奥義!弾丸爆花散だっ!!!」

 

タケルは身を守りながら考える。

火炎系呪文も氷系呪文も通じない。かといって真空系呪文も宙を自在に舞う弾丸に効果は薄いだろう。

フレイザードはハドラーの禁呪法によって生み出された生命体だ。

その生命活動を断つには、身体の何処かにある心臓『核』を破壊する必要があるのだ。

ともすれば爆裂系呪文が望ましい。

広範囲を一気に吹き飛ばすイオラならばフレイザードの核を破壊可能かもしれない。

しかし、フレイザードはダイ達が更にレベルアップする為のお誂え向きの経験値だ。

ならば…。

 

「スクルト!!」×2

 

タケルは全員の守備力を増強させる呪文を両の掌から発動させた。

青白い光がパーティーを包み、肉体の耐久力のみならず身に着けている衣服や防具に至るまで強化した。

 

「イタタタ……、あ、あれ?そんなに痛くねぇ?」

 

急に受けるダメージの軽減にポップは不思議そうに首をひねった。

他のメンバーも同様に。

 

「驚いたな…、だがこいつは良いっ!!」

 

スクルトの影響を最も受けたのはクロコダインだった。

その巨体を盾に前に躍り出る。

 

「更にピオラ!」

 

タケルは続けてクロコダインに加速呪文を掛ける。

今のクロコダインは高速で戦場をかけて味方を庇う防壁だ。

仲間たちを襲う嵐のような攻撃に回りこみ、その身体一身にフレイザードの攻撃を受ける。

 

「わっはっはっはっ!どうしたフレイザード!痒いぞっ!」

 

「な、なんだとっ!?あのガキの魔法かっ!厄介な真似をっ」

 

クロコダインが盾になってくれている。

その間にオレはダイ達の側まで走る。側には他のメンバーもいる。

散開するよりも今は固まっていたほうがクロコダインも守りやすいのだ。

 

「ダイっ!」

「タケル!おめえ、何か手はねぇか?状況は好転したけど…」

「……いや、流石にオレもフレイザードを倒すとなると…」

「くそっ決め手がねぇじゃねえかっ!」

 

ポップが悔しそうに宙を舞うフレイザードを睨みつける。

 

「みんな聞いてくれ。フレイザードは多分、禁呪によって作られた魔法生命体だ」

 

「ああ。その通りだ。奴の生みの親はハドラーだからな…」

 

タケルの言葉を肯定するようにヒュンケルが続ける。

 

「ヤツを倒すには身体の何処かに有る核を破壊しなければならない」

 

「でも、そんな事…」

 

フレイザードの破片群を眺めながらダイは戸惑った様に言った。

確かにあの無数の岩の破片の中から本体を見分けることは常人には無理だろう。

しかしソレ以外に方法はない。

 

「爆裂系呪文で一気に吹き飛ばす手もあるかもだけど、オレのイオラじゃ…」

 

タケルの言葉は事実だった。

フレイザードが身体を爆散させる前なら兎も角、今の時点では全ての破片を吹き飛ばすのは不可能だ。

運に任せてという手も有るかもしれないが…。

それに出会い頭にイオラを放ってみたが効果は薄かった。

あの時は体内深くに核を隠していたのだろうが…。

それでもイオラの呪文の効果が薄いことは解ったのだ。

ここは是非ともダイに空裂斬を習得して欲しいのが本音だった。

だからこそ一計を講じたのだった。

 

「あの中から本体だけを見つけて攻撃する…、そんな都合のいい技が…」

 

「……空裂斬」

 

ダイが気づいたように呟いた。

ヒュンケルも正解を肯定するように呟いた。

その時だった。

フレイザードの破片が集合していき…、元の姿に戻った。

しかし身体を覆っていた炎と氷は弱々しく、フレイザードは大きく消耗していた。

 

「なぜそこまでして…」

 

余りにも痛々しいフレイザードの姿にマァムは憐れむ。

しかしフレイザードはマァムの同情を一笑した。

同情など要らぬ。ハドラーに生み出されて一年しか立たない歴史の無い自分。

だからこそ自身の存在を周りに認めさせたい。

例え自身の命を削る事になろうとも、力ずくでも認めさせてやるのだ。

 

「クロコダイン…」

 

ダイはクロコダインの巨体の影からその小さな体を晒した。

 

「出てきやがったな…ダイッ!!」

 

「勝負だっ!」

 

「ダメよ!ダイ!こんな事に付き合う必要はないわっ!」

 

客観的に見ればマァムの言うとおりだった。

スクルトによって強化されたパーティーの守備力は驚異的だ。

例えフレイザードの奥義でも決定打ではない。

対してフレイザードは奥義の連発で体力を著しく消耗しているのだ。

先は見えていた。だからこそマァムはフレイザードに降伏を進めている。

しかし忘れてはならない。

三賢者の一人エイミが氷漬けにされたままなのだ。

そして過去の栄光を捨てて命がけで挑んでくるフレイザードには説得など通じないのだ。

エイミを救うにはフレイザードを倒す以外に方法はない。

フレイザードはダイの姿に口元を釣り上げた。

 

「オレとサシでやろうってかっ!」

 

「勝負だ!フレイザード!!」

 

「はっ!いい度胸だっ」

 

「これからオレは最後の技を繰り出す!まだ成功したことがない技だけど、失敗すればお前の勝ち…、だけど成功すればオレの勝ちだっ!!!」

 

ダイは剣を鞘に収めるとフレイザードを睨みつけて力強く叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

レベル25

 

さいだいHP:153

さいだいMP:600

 

ちから:67

すばやさ:170

たいりょく:77

かしこさ:300

うんのよさ:256

 

攻撃力:207

防御力:114

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

魔封じの杖

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

氷の盾を装備しました。



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本日の目玉商品『世界樹の葉』

難産でした。
感想に対する返信も満足に返せませんでスイマセン。
時間は掛かるでしょうが何とか返していきます。


ダイは眼前で宙を舞う無数の岩石を睨みつけている。

その瞳に闘志を漲らせて柄を握りしめた。

 

「あの中に、本物のフレイザードがいる…」

 

ダイは呼吸を落ち着けると、すっと目を閉じた。

 

 

アバン流刀殺法。

嘗て勇者アバンが長い旅の末に編み出した正義の剣技。

大地を斬る『大地斬』、海を斬る『海破斬』、空を斬る『空裂斬』。

そして『地』『海』『空』の全てを斬る奥義『アバンストラッシュ』。

 

ダイは大地斬と海破斬を既に習得している。

未だ成功したことがない技と言った。

ならばダイがこれから繰り出そうとしている技は『空裂斬』に他ならない。

 

空を斬る、といっても『空裂斬』は言葉通りの技ではない。

目には見えない敵、実態のない敵の急所を心眼によって見抜き一撃の下にその生命を断つ一撃必殺の剣なのだ。

 

アバンによる修行やマトリフによる特訓やこれまでの厳しい実戦。

ダイは既に、空裂斬を習得できる力量まで成長している筈だ。

タケルはダイに向かってベホイミを唱えつつ見守る。

 

「行くよ…信じるのは……、常に最強の自分だ」

 

いつか苦し紛れにタケルが口にした言葉。

ダイは鞘に収めた剣に手を掛けて静かに目を閉じた。

自分自身の台詞ではない分、物凄く安っぽく感じるもの、ダイが口にすると何故か本物のように感じられた…。

 

 

そしてダイの精神は極限まで研ぎ澄まされていた。

確かに、そして確実に感じている。

周囲にいる仲間達の気配を、そして悪意と殺気をまき散らしながら襲ってくる敵をっ!

ダイは迷うこと無く剣を鞘から抜き放ったっ!

そして放たれる秘剣!

居合の如く放たれた剣閃は光の衝撃波となってフレイザードに向かう。

秘技『氷炎爆花散』によって無数の弾丸と化したフレイザード。

タケルや仲間達見ても、あの中から本体を見分けるなど不可能だ…。

 

ダイの剣から放たれた疾風が駆け抜ける。

フレイザードは何事もなかったかの様に集まり元に戻っていく。

長時間、秘技を使うには著しく消耗するからだろう。

 

「ケッ!何ともねぇぞっ…ククク、カァ~カカカ!」

 

そして高らかに笑う。

ダイは静かに目を開くと勝利を確信したように言った。

 

「手応えありだ…」

 

ダイの視線の先には拳大の大きさの、まるでハリネズミのような形の岩石が浮かんでいた。

キン、とダイは再び鞘に剣を収める

同時に目の前の岩石が真っ二つに割れた。

 

「そ、それはっ!?それはっ、ま、まさか…っ!!?そんな馬鹿なっ!?」

 

それを見てフレイザードの表情が絶望に歪んだ。

そう、あれこそフレイザードの『核』。相反する左右の身体を繋ぎ止めていた心臓だった。

 

「き、決まったっ!!?」

 

本当に凄いっ!

まさか本当に一度で空裂斬を成功させるとは…。

タケルはフレイザードを討ったダイの勇姿を感嘆する。

子供の筈のダイ。しかしその背中がとても大きく感じられたのだ。

 

「あ、あああっ、身体がっ、オレの身体が溶けるっ!身体が維持できないっ!!」

 

炎の半身によって氷の半身が溶け始める。

フレイザードは堪らず身体を再び左右に割る。

その姿は余りにも弱々しく、その生命も風前の灯だ。

 

「ベギラマッ!!!」

 

すかさずポップの閃熱呪文が炸裂する。

 

「ぎぃえええええっ!!!」

 

厳しい修行と命懸けの実戦によって磨かれたポップの魔法力は強力で、たったの一撃でフレイザードの氷の半身を消滅させた。

 

「さて、こいつをどうする」

 

ダイ達が残った炎の半身を取り囲み、睨みつけた。

散々、皆を苦しめてきた氷炎将軍の最後の時が来たのだ。

勇者たちの殺気と敵意に晒されフレイザードの顔が恐怖に歪む。

まさか自分がここまで追い込まれるとは。

このままでは自分は確実に殺されてしまう…。

 

――嫌だっ!!!!

 

このままでと死んでも死にきれない。

フレイザードは、敵から少しでも距離を取ろうと後ずさる。

こんな所で死にたくはない。まだ自分は生まれて一年しか経っていないのだ。

 

「や、やめてくれっ!!たのむっ!!」

 

だからこそ無様にも命乞いをする。

それがどれほどの屈辱であろうと、ただ死にたくない一心で。

 

「覚悟しろ!!」

 

元同僚の魔剣戦士の剛剣が襲い来る。

凄まじい剣圧を纏った一撃、今の自身が受ければ間違い無く終わりだ。

しかし、ヒュンケルの魔剣がフレイザードの命を奪う寸前、何者かが乱入しヒュンケルを吹き飛ばした。

 

幽鬼の如く気配を感じさせないその乱入者は魔影参謀ミストバーン。

恐らく掌から暗黒闘気を衝撃波として放ったのだろう。

その男は不気味な雰囲気を漂わせて宙から眼下の敵を見下ろしていた。

 

「ミ、ミストバーンッ!!た、頼む!助けてくれっ!このまま死んでも死にきれねえよ!」

 

突然の援軍にフレイザードが嬉々として助命を乞うた。

ミストバーンは無言で自身の上空の空間を指さした。

釣られて一同が視線を移動させたその先の空間に孔が開く。

 

――それは鎧だった。

孔から出てきたのは鈍い光を放つ巨大な鎧。

フレイザードは語る。

この鎧こそは魔王軍最強の鎧。

そしてフレイザードが自らを炎の暗黒闘気『魔炎気』と化すならば鎧を与えようと。

それはつまりミストバーンの眷属と成る事に他ならない事だった。

 

「テメエの部下になれってっ!!?そんなのっ!」

 

フレイザードは当然難色を示す。

今まで同じ軍団長の地位にいた同格だった者に、これからは頭を垂れなければならない屈辱。冗談ではないっ!

自己顕示欲が服を着て歩いているようなフレイザードは到底承服できなかった。

そんなフレイザードにミストバーンは背を向けて去ろうとする。

 

「待ってくれ!その鎧と一体化すれば本当に勝てるのかっ!?」

 

去ろうとするミストバーンを慌てて引き止めて鎧の力を念を押して確認する。

このままミストバーンに去られては自分は間違いなく殺されてしまうのだ。

もしも本当にダイ達に勝てるのならば…っ。

 

「敵はない」

 

フレイザードの問に即答するミストバーン。

その言葉にフレイザードは決意した。

 

「わかった…」

 

それがミストバーンとフレイザードの契約だった。

暗黒闘気を統べ操るミストバーンの能力によって新たな生を受けたミストバーンは、岩石の身体から解き放たれて魔炎気と化した。

そして魔王軍の鎧と一体化する。

フレイザードは確かに感じた。新たに手に入れた力の凄まじさをっ。

その姿は正に邪悪な全身鎧の悪魔。

悪の気によって活動する『さまようよろい』の上位存在が此処に完成したのだった。

 

 

「すげえ…、力だっ!力が漲ってきたぜっ!!!」

 

フレイザードは手に入れた力に酔いしれて興奮する。

何でも良いから直ぐにこの力を試したい。何かを壊したい。殺したいっ!!

そして視線の先にいる敵と目が合う。

フレイザードは猛然と標的に向かってかけ出した。

その先にいる標的とは…。

 

「お、オレかよっ!!」

 

「タケルッ!!!」

「いかんっ、逃げろっ!!!」

 

タケルは自身にスカラを重ねがけしながら炎の盾を全面に出して『だいぼうぎょ』の構えをとる。

 

「死ねっ!!!」

「なんのっ!!!」

 

タケルは全身の力の全てを防御に集中して踏みとどまる。

瞬間、凄まじい衝撃が盾を通して全身に襲いかかるが歯を食いしばって耐える。

しかし、以下に数値の上で守備力が高くても変え様のない現実が有った。

超重量級である現在のフレイザードの一撃を軽量のタケルが踏みとどまって耐えるのは不可能だったのだ。

その上、フレイザードは魔炎気と化している。

 

「うわああああっ!!!」

 

魔炎気を纏った拳がタケルの全身を焼く。

いかに氷の盾と言えども暗黒闘気までも防ぐ事は出来なかった。

 

「タケル!!!」

 

仲間達の悲鳴が聞こえる。

これは不味い。もしかしなくてもオレ死にそうっ!?

タケルは吹き飛ばされ、激痛に耐えながらも必死にベホイミを自身に掛ける。

眼下で仲間達が奮戦しているが、押されている。

ポップの魔法が尽く弾かれ、消耗しているヒュンケルとクロコダインでは分が悪そうだ。

あの鎧はヒュンケルの物と同じ素材で造られた物だ。

魔法を弾き、軽く強靭な素材で出来ているのだ。

レオナ姫も芳しくない戦況に悔しそうな顔をしている。

しかし、ダイだけは違っていた。

こんな絶望的な状況だというのに、ダイの表情だけは…。

 

「ああ、矢っ張りダイは特別だ…」

 

タケルは自分への治療を止めると、ダイに向かって補助呪文を集中するのだった。

 

 

そしてフレイザードはアバンの使徒を蹴散らしながら自分の得た力に陶酔していた。

力ではクロコダインに勝り、ポップの魔法も寄せ付けない。そして身体が軽く素早く動ける。

これまで散々になるまで追い詰めてくれた敵に復讐も兼ねて、痛めつけて嬲り、散々楽しんだ上で殺してやろう。

そして、これ程の力を得たのならミストバーンに用はない。今は部下という立場だが、隙を突いて寝首をかいてやろうと息を巻く。

 

だがその前に、自分は勇者を殺さなければならない。

先程は見事に核を両断されて自身に恐怖と絶望を植えつけた元凶だ。

楽には殺さない。徹底的に攻めて、自身が受けた屈辱を何倍にもして返してやる!

フレイザードはダイを標的に変えると怒涛の攻めを開始した。

 

ダイは側に控えていたマァムとレオナを突き飛ばしてフレイザードの前に立った。

 

「ダイッ!!?」

 

「二人は離れていて。あいつはオレ一人で倒す」

 

「そ、そんなっ!!ダメよ!」

 

連戦に次ぐ連戦でダイの体力は尽きかけているはずだ。

傷は魔法で治癒できても失った体力までは、早々回復しない筈だ。

ダイの身を案じるレオナとマァムはダイを助けようと駆け出す。

 

「ダイなら大丈夫だ!」

 

吹き飛ばされてきたタケルがマァムとレオナの前に降り立つ。

 

「タケル!?」

 

タケルはダイに補助呪文の光を飛ばしながらダイの邪魔にならないように心掛ける。

 

「あんな奴、今のダイの敵じゃないさ」

 

「ああ、なんだか俺、こいつに負ける気がしないんだ…」

 

ダイはタケルの言葉を肯定、再びフレイザードに向かっていく。

 

「どういうこと!?」

 

「アバンの使徒のマァムなら、オレよりも分かると思うんだけどな」

 

タケルはそう言いながらダイとフレイザードの戦いに目を向け、そしてその光景に目を奪われた。

それは他の仲間達も同じだった。

決まったと思われるフレイザードの一撃にダイは何事もなかったかのように立ち上がった。

見事に攻撃の威力を受け流しているのだ。

 

「空裂斬を完成させて心眼を極めたんだ…」

 

次々と繰り出されるフレイザードの攻撃をダイは全て紙一重で無駄なく躱す。

 

「……あ!」

 

マァムも気づいたように声を上げる。

 

「完成した!」

 

「どういうことだよ」

 

「さっきタケルが言った通りだ。空裂斬を習得したことによってダイはアバン流を極めたのだ…っ」

 

「それってつまり…」

 

ダイは無意識の内に感じ取っていたのだ。

そして悟ったのだ。完成した奥義の威力を。

そして確信した。こいつには間違いなく勝てると。

 

 

アバン流を完成させたダイの剣の威力は最早、以前のそれではなかった。

フレイザードの攻撃に合わせたカウンターが次々と鎧を砕いていく。

 

こんな筈ではない。

フレイザードは堪らずにダイから距離をとった。

先程まで良い気分で敵を嬲っていた。しかし今は…。

しかし自分は一度失敗して命乞いをしてまでチャンスを得ている。

今更退路など無い。

フレイザードは十分に距離を取ると、自身の渾身の力を込めてダイに向かって突撃した。

 

 

その先ではダイは剣を逆手に待ち構えていた。

ダイは襲い来るフレイザードを冷静に見つめる。

自分達を、散々まで苦戦させた相手、しかし不思議と恐怖はない。

今の自分ならば、きっと出来る筈だ。

大地を斬り、海を斬り、そして空を斬った。

そう、もう自分は全てを斬る事が出来るっ!!

見ててくれっ!!アバン先生っ!!!!

ダイは目を見開くと、力の限り叫んだ。

 

「アバンストラッシュッ!!!!!」

 

それは正に剣閃だった。

 

「うぎゃああああああああああっ!!!!!?」

 

放たれた閃光は眼前の強靭な鎧を貫き両断する。

同時にフレイザードの断末魔が響き渡った。

数々の戦いを経て、ダイは遂にアバンストラッシュを完成させたのだった。

 

「すばらしい…」

 

その強さに敵であるミストバーンは、ポツリと賞賛の言葉を漏らしていた。

 

 

奥義を完成させてフレイザードを砕いたダイは遂に力尽き気を失った。

 

「すげえな…、あれが完成した真のアバンストラッシュか…」

 

「師・アバン以上の威力…、見事だ」

 

ガラガラと、鎧が砕け魔炎気が周囲に散らばる。

そして魔炎気の欠片の一つがミストバーンの足元に落ちた。

欠片は目を開き、ミストバーンを見上げて恨みがましい声を上げた。

 

「て、てめえ…、騙しやがったな」

 

「騙してなどいない。あれは紛れもなく我が軍最強の鎧だ。破壊されたのは相手の力が勝っていただけの話だ…」

 

ミストバーンは淡々と言うと、命乞いを続けるフレイザードを踏みつぶして止めを刺した。

そしてダイ達を一瞥すると、煙のように姿を消した。

 

「ひでえな…。味方じゃねぇのかよ」

 

ポップがミストバーンの非情さに顔を青くする。

 

(…アイツ、もしかしてオレを見ていたのか?)

 

気の所為なら良いのだが…。

タケルはミストバーンがダイを値踏みしていた視線と同種の物を感じた。

気味の悪い何かが自身を見透かしているようで恐怖を感じる。

 

しかし立ち止まっているヒマなど無い。

エイミを救出しなければならないのだ。

ダイ達は傷ついた身体に活を入れ塔の最上階へと急ぐのだった。

 

 

 

 

「…っ」

 

「嘘だろ…」

 

塔の最上階までは驚くほど楽に進む事ができた。

軍団長全てを退けたことによって部下である怪物たちも撤退していたのだ。

しかし、最上階で一同が見たものは、氷の棺の中で眠るエイミの姿だった。

フレイザードを倒したというのにどうして…。

 

「いや、氷は溶け始めている…しかし」

 

空を見ると、既に太陽が沈み始めていた。

フレイザードを倒すのが遅すぎたのだ。

その邪悪な呪法を破っても、戒めから開放されるだけの生命力が無いのだ。

 

「みんあ、どいてくれ。ポップ!」

 

「あ、ああっ!!」

 

「私もやるわよ!」

 

レオナ姫がギラ、ポップとタケルがベギラマを放つ。

すると、氷の呪法は瞬く間に消え去り、エイミは氷の棺から開放された。

 

「エイミ!!」

 

レオナ姫が倒れてくるエイミを抱きとめる。

そして顔色を確かめるように覗きこみ、はっとなった。

 

「…そ、そんな…、エ、エイミ?」

 

「ど、どうしたんだ!?」

 

「い、息してない…」

 

「な、なんだって!?」

 

「う、うそよ…、折角ここまで来たのに…」

 

レオナ姫の目から涙がこぼれた。

これではここまで来た意味が無い。

確かにこの戦いで魔王軍に勝つことは出来た。

しかし、本来の目的はエイミの救出なのだ。

 

「まだ諦めるのは早いっ!!」

 

タケルは道具袋から一枚の大きく瑞々しい青葉を取り出した。

その溢れる生命力の輝きから唯の葉ではない事が伺える。

 

「それは?」

 

「こいつは世界樹の葉…、死者の魂を呼び戻すことが出来る伝説の道具だ」

 

「ええっ!?」

 

「どうしてそんなものを持ってんだよ!?」

 

「ていうか、本当に死者を生き返らせることが…」

 

「試してみる価値はあるだろう」

 

タケルはレオナ姫を促してエイミの口に世界樹の葉から落ちた雫を垂らした。

一滴、二滴と雫はエイミの口に注がれていき…。

 

「あ、ああっ!エイミさんの顔色が…」

 

「こ、鼓動が…」

 

みるみるうちにエイミの顔に血の気が戻り、静かだが確かに心臓が鼓動を刻み始めた。

なんとエイミが蘇った!!

レオナは忠臣であるマリンの命が救われた事に嬉し涙を流し、ぎゅっとエイミを抱きしめたのだった。

 

 

「…ふぅ、よかった…、どうにかなったな」

 

タケルは既に力を失い枯れ果てた『世界樹の葉』をじっと見つめる。

 

「ありがとう…」

 

世界樹の葉を額に当てて心からの感謝を述べた。

 

「まさかアンタの力を借りることになるなんてな…」

 

その双眸をある方角へと向けて、そっと呟いた。

タケルの声は誰の耳に入ること無く虚空に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レベル26

 

さいだいHP:155

さいだいMP:604

 

ちから:69

すばやさ:173

たいりょく:78

かしこさ:302

うんのよさ:256

 

攻撃力:209

防御力:115

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

世界樹の葉

賢者の石

魔封じの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

 



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本日の目玉商品『世界樹の葉』2

今回はタケルの回想編です。
短くてスイマセン。


少年の話をしよう。

何処にでもいる何の変哲もない少年の話だ。

お調子者で、少し見栄っ張りで、思春期の少年らしく異性への興味も人並みな少しスケベな面もある…。

そんな普通の少年の話を…。

 

 

 

 

タケルが異世界のとある村で目覚めて数日が経過した頃。

自分の『能力』にも自覚し、村の人々と打ち解け色んな事に慣れ始めた頃。

 

タケルはある場所を目指して一人、黙々と歩いていた。

ギルドメイン大陸。村同士を繋ぐ街道を離れた小高い丘。

その先には青々とした森が広がっていた。

旅人の服に皮のブーツ、腰には短剣をといった軽装。

やや頼りない装備だ。

しかし魔王ハドラーが倒され平和になった時分、このくらいで丁度良い。

 

異世界すなわちドラゴンクエストの世界。

普通なら元の世界に帰る為に奔走するのだろうが、タケルにその気は全く無い。

将来は商人として村を出ることも決めており、この世界に根を下ろすことを決定している。

 

しかし、気になる事が一つだけあるのだ。

タケルを拾ってくれた狩人、彼の話によるとタケルは村から大きく離れた森で倒れていたのだという。

魔王が倒され、森の魔物が居なくなった為、狩りにやって来た際に発見したのだという。

この世界ではありえない学生服、そして彼を守るように下に敷き詰められた瑞々しい大葉と共に。

 

タケルは件の大葉を見せられた時に仰天した。

何故ならそれはドラゴンクエストを知るものなら、誰でも知っているアイテム。

死者を蘇生させることが出来る貴重品『世界樹の葉』だったからだ。

 

タケルを拾ってくれた狩人も首を傾げたという。

その大葉の木など、森の何処を探しても生えていないのだ。

つまり森に存在しない木の葉が有ったのだから。

 

 

首都へ向かう街道から大きく外れ、丘を越えて谷を横断する。

その先は深い霧が掛かった青の森。

魔王ハドラーの脅威があった頃は、恐ろしい魔物の住処だったが現在は静寂が支配する霧深い森だった。

魔物が居ない現在、動物たちが戻り、狩人の狩場としても穴場となっている。

 

 

タケルは狩人に教わった通り、深い森を分け入り目的の場所を目指す。

しかし旅が初めての為、思うようにいく筈もなく、少ない体力は直ぐに底をつき何度も休憩を挟みながら、狩人に教わった旅の心得を実践していくのだ。

危険な獣道の見分け方、火の起こし方や、地図やコンパスの使い方。

運悪く魔物に遭遇した時は、テンパりながらもどうにか聖水を使う事によって事なきを得た。途中何度も挫けそうになり村に戻ろうと思った。

 

それでもタケルは好奇心と探究心を燃やして前へと進んだ。

森の奥に進む度に霧は濃く深くなり、視界はますます悪くなっていく。

それでもタケルは藪を掻き分けながら進み…。

 

「…あれ?急に明るく?」

 

タケルの視界を青い光が満たしていた。

そこは大きく拓けた場所だった。

まるで狩人が休憩のために作ったかのような円状に開けた場所。

空を見上げると月が見えた。月の光だったのか…。

タケルは次々と空から舞い落ちる落ち葉を擽ったそうに払う。

 

「落ち葉?なんで絶えず落ち葉が?いや…ちょっとまて!」

 

暗がりでよく分らなかった。

手にとった落ち葉が月の光によって照らされる。

タケルの手の中にあったのは、なんと『世界樹の葉』だったのだ。

 

「オレを…、呼んでたのか?」

 

何もない虚空から次々と落ちてくる世界樹の葉は、何故か時分を誘っているように感じた。

そして何時の間にか世界樹の葉の雨は止んでしまった。

満月が真上に来たのは同時だった。

 

「うそだろ?」

 

次の瞬間、タケルの眼前には力強く雄々しい大樹が天に向かって聳え立っていた。

優しい青い光を放つ大樹はまさしく伝説に語り継がれた世界樹そのものだった。

 

タケルは吸い寄せられるように世界樹に触れた。

そして靴を脱ぎ捨てると、世界樹の頂上を目指して登りはじめた。

タケルは運動が苦手ではないが、この世界の人間に比べると遥かに体力はない。

此処に来るまでで、その体力は底をつきかけている。

しかし、何時の間にかタケルは身体には活力を完全に取り戻していたのだ。

間違いなく生命力溢れる世界樹の恩恵だろう。

タケルの木登りは徐々に速さを増し、あっという間に世界樹の頂上まで到達した。

 

「すげえ…」

 

タケルはその光景に息を呑んだ。

世界樹の頂上から見下ろす世界の姿に。

それは正に世界の全てと言っても良いのかもしれない。

星や月に手が届きそうな、遙か上空。しかし世界樹に繁る葉のお陰かまるで寒さは感じない。それどころか暖かくさえ感じた。

タケルは徐に世界樹の葉に手を掛けた。

 

「……抜けない?」

 

首を傾げながらもタケルは直ぐに納得した。

ああ、この世界でもそういうものなのかと。

タケルが初めに手にしていた世界樹の葉も何時の間にか無くなっていた。

どうやら一つだけしか所持できないらしい。

 

「ここがオレの降り立った場所…なんだな…」

 

-はい、その通りです-

 

「誰だ!?」

 

タケルの脳裏に不思議な声が響く。

その声に驚いたもの、しかしどこか優しい声にタケルは戸惑う。

 

-私はルビス、精霊ルビスです。世界樹を通して貴方に語りかけています-

 

「精霊ルビスだって?もしかしてオレをこの世界に連れてきたのは…」

 

-はい、この私です-

 

あまりの予想外の展開にタケルの心は混乱する。

自慢ではないがタケルは自分が平凡な人間であることを自覚している。

異世界に召喚されて活躍する物語の主人公のような真似が出来る人物ではないのだ。

何故?その答えを聞くという思考へと移動する間もなくルビスは話を続けた。

タケルは混乱とあまりの展開に思考がついていかず、その話の殆どの部分を聴き逃してしまう。

やはり自分は凡人なのだろう。

 

-貴方には世界樹の加護を授けました。どうか私の願いを聞き届けてください-

 

その言葉に漸くタケルは己を取り戻した。

 

「え…、ちょ、ちょっと待って!いきなり言われても!」

 

-本当に申し訳ありません。貴方をこんなことに巻き込んでしまって-

 

世界樹の枝が寂しそうに揺れた。

 

-せめて貴方の身を守れるように-

 

一瞬、美しい少女の姿が見えた。

この少女こそが精霊ルビスなのだろう。

少女は神々しくも儚い光を指先から放つ。

優しい光がタケルへと吸い込まれていき…。

 

-貴女を守るにはこの方法しかありません。これからこの場での記憶を封印します-

 

「ふ、封印?忘れるってことか…?な、なんでっ?」

 

-恐れることはありません。いずれ記憶は戻ります-

 

「戻る…?どうやって」

 

ルビスは寂しそうに笑う。

 

-貴方が世界樹の葉の力を必要とした時、私のことを思い出すでしょう-

 

「それって、誰かが死ぬって事か?そんなことっ!」

 

誰が死ぬというのか?

タケルの脳裏に自分に良くしてくれた村の人々の顔が浮かんだ。

そして直ぐに被りを振った。

 

「そ、そんなっ!」

 

-忘れないでください。私は常に貴方を見守っていることを-

 

そこでルビスの声は聞こえなくなった。

タケルが何度呼びかけても返事は帰ってこない。

そしてタケルは何時の間にか地面に立っており、世界樹もその姿を消していたのだった。

そして次第に意識が遠のいていった。

 

 

再び目を覚ますと、タケルは森の入口で倒れていた。

そして何故か、これいじょう森に踏み入る気を無くしたタケルは村へと引き返したのだった。その手に世界樹の葉を持って…。

 

 

 

 

「そうか…、この馬鹿みたいに高い魔法力って」

 

世界樹と精霊ルビスの加護だったんだろうな…。

タケルはエイミの無事を喜び合うダイ達を眺めながら深い溜息を付くのだった。

 

「ルビス様…、記憶を取り戻したのはいいけど、オレ、肝心な所おもいっきり聞き逃してるから。何を言ってたのかさっぱりだから」

 

ルビスから貰った能力を商人として金稼ぎに使うほど小市民な自分である。

平凡な人間である。元手ゼロで大儲けだと喜んでいた普通に欲の強い人間である。

 

「なんでオレなんだろうな…けど」

 

きっと自分は少しは変わることが出来たのだろう。

ダイ達を見ながら思う。

精霊ルビスは自分がこうなることを見越していたのだと信じたい。

今はダイ達を助けて少しだけ良いハッピーエンドを目指すことに全力を注ごう。

タケルはゆっくりと世界樹の葉を手放すと、葉は風に抱かれて空へと消えていった。

 

「…そういえばオレ、前に一度、売ろうとしたんだっけ?売れなくてよかった…」

 

 

 

後にタケルは知ることになる。

じぶんの錬金術の能力の本来の意味。

そしてタケルのこの世界での本当の役割の事を。

そしてそれが世界全体を巻き込むほどの重大な事をタケルは知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

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さいだいHP:155

さいだいMP:604

 

ちから:69

すばやさ:173

たいりょく:78

かしこさ:302

うんのよさ:256

 

攻撃力:209

防御力:115

 

どうぐ

E:超・グリンガムの鞭

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

魔封じの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

※世界樹の葉使用により消滅。

 




タケルの魔法力は世界樹の加護。
魔法の才能は実はルビスの加護です。


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本日の目玉商品『地獄の魔槍』

更新が遅れてスイマセン。


魔王軍との死闘が明けて。

オレは久し振りに錬金に精を出していた。

実際は久し振りというほどでは無いのだが、今回の戦いはそれ程厳しい戦いだった。

あの絶望的な戦力差を覆し皆で掴みとった勝利。

ささやかな宴が開かれ勝利を喜び合い、怪物であるクロコダインも共に戦った仲間として皆に受け入れられ、魔剣戦士ヒュンケルもレオナ姫によって許された。

少しのわだかまりは有るだろうが、確実にダイ達は前に進んだのだ。

 

 

そして次の日、自らの力不足を感じたマァムが武道家になる為に一人旅立ち、ヒュンケルとクロコダインも魔王軍の動向を確認する為に旅立った。

寂しさは感じるものそれが未来の為だと信じダイ達は快く仲間を送り出したのだ。

 

「となると、そろそろオレも離れるべきだよな…」

 

目の前で錬金釜がオーブントースターの様な音を鳴らす。

出来上がった品『トリトンダガー』を取り出し、次の素材を入れる。

こうして錬金を行なっていると、いろんな事を考えなくて済む。

あの出来事世界樹の葉によってエイミを蘇生させたの後、オレの脳裏にはルビスの声が反芻していた。

この世界は『ダイの大冒険』、物語の世界の筈。

しかしオレがいて精霊ルビスが出てきた時点で原作とは乖離してきている。

 

「…くそ」

 

自分の思考につい嫌悪してしまう。

『ダイの大冒険』だの『物語』だの『原作』だのと、何時まで読者気分だ。

そういう意識はとっくに捨てた筈なのに…。

この世界の人々を一人の人間として見ようと決めていた筈なのに。

ルビスの存在を思い出した今、オレの思考は元の、この世界に来たばかりのオレの物に戻ってきてしまっている。

 

錬金釜から再び出来上がりの音が鳴る。

オレは出来上がった『オーロラの杖』を取り出す。

各最強装備、今はまだ使わないだろが将来確実に必要になる。

伝説の武具を上回る性能を誇る最強装備。

今の内に全て錬金しておくのだ。

出来上がった武具を袋にしまい、ふと視界の端に銀色の何かが映った。

そういえば戦いが始まって直ぐに姿を眩ませたままだったな。

オレは呆れて溜息を付いた。

 

「で、何時までそこに居る気だ?」

 

返事はない。

こんにゃろう。無視する気か?いい度胸だ。

オレは最高級の霜降り肉を取り出して…。

ダダダッ!!!

……速いな。まさに一瞬だった。

はぐれメタルのはぐりん。

前に肉に釣られて仲間になった臆病な旅のお供だった。

はぐりんは涎を垂らしながら霜降り肉に釘付けになっている。

 

「……仕方ない」

 

オレは霜降り肉を宙へと放り投げた。

すると、はぐりん は器用に身体の一部を伸ばして霜降り肉をキャッチ。

そのまま口に運ぶと貪りはじめた。

 

 

「タケル」

 

「ダイか?」

 

何時の間にかダイが後ろにいた。ゴメちゃんもいる。

マァムとの別れの所為か少し寂しそうに見える。

ポップの落ち込み具合は半端じゃなかったが…。

 

「あれ?そいつ…」

 

「ああ、こいつは はぐりん っていうんだ。まぁ、旅の仲間ってやつだな」

 

「へぇ?でも今まで見てなかったけど?」

 

「恥ずかしながら、こいつは臆病でな。戦いが始まると直ぐに姿を消すんだ」

 

オレは肉を貪る はぐりん を小突く。

 

「ピィ!ピィ!」

 

聞いたゴメちゃんが非難するように鳴く。

本当に賢い子だな。

 

「恥ずかしながらだな。ゴメちゃんは逃げずに戦ってるのに」

 

少しは見習え はぐりん。

オレは霜降り肉を取り出すとゴメちゃんに上げる。

ゴメちゃんは嬉しそうに肉を食べようとする。

ザザッ!

 

「ピィ!?」

 

一瞬のことだった。

ゴメちゃんが食べようとした肉が消えたのだ。

理由はわかりきっている。

 

「はぐりん…」

 

視線を移すと、はぐりんが霜降り肉を貪っていた。

勿論それはゴメちゃんに上げた物だ。

ゴメちゃんは怒り、はぐりんも譲らない。

臆病な はぐりん もゴメちゃんの様な無害そうな相手だと強気らしい。

二匹は取っ組み合いの喧嘩を始めた。

 

「は、はは…」

 

その光景にダイは苦笑いだ。

まぁ、お互いスライム族だし。

そのうちに仲良くなれるだろう。

オレは再び意識を錬金に戻した。

 

「それよりも何やってるの?」

 

「ん?ああ、新しい武具や道具を作ってる」

 

「へぇ…、そういえばタケルが何かを作ってるところなんて初めて見るよ」

 

ダイはその場に座り込むと興味深そうに錬金釜を覗きこんだ。

錬金釜が完成の音を鳴らし、中から『神竜の爪』が出てくる。

 

「す、凄い!なにそれっ!?爪っ!?」

 

「ああ、武道家用の武器だな」

 

「武道家用?それってもしかしてマァムに?」

 

「ああ、これはな。勿論お前らの全員分あるぞ」

 

オレは『神竜の爪』を袋に入れると次の錬金に入る。

 

「ホントに!?」

 

ダイは飛び上がって喜ぶ。

そしてバツが悪そうに剣を抜くとオレに見せた。

 

「何時は前に貰ったこの剣だけど…」

 

破邪の剣は見事にボロボロだった。

刀身は歪みが見え始め、柄の部分も少しグラついている。

これは新しい剣が必要だな。

 

「レオナが百貨店に行こうって言ってたけど、タケルが新しい剣をくれるなら問題ないよね!」

 

「百貨店?もしかしてベンガーナの?」

 

「え?さぁ…、そういえば聞いてない。気球にのって行くって言ってたけど」

 

オレは暫く考えこむ。

百貨店。国にも寄るが色んな掘り出し物が在る場合がある。

品揃えも豊富だし何よりも普通の店よりも安い。

それにオークションもある。

残念ながらオークションを経験した事はまだ無い。

 

「ダイ、百貨店に行くぞ」

 

「え、ええぇ!?だ、だって剣は」

 

「良いじゃん別に。それにダイも百貨店には興味あるだろ?」

 

「う、うん…レオナは城よりも大きいって」

 

「おう、それに手に入らなものはないって言うくらいだしな」

 

そうと決まれば是非行こう。そうしよう。

思い立ったら吉日だ。

オレは荷物を纏めると気球目指して走りだした。

 

「行くぞダイ、はぐりん、ゴメちゃん!」

 

「ま、待ってくれよ」

 

「ピィ、ピィ~~~ッ!」

 

百貨店かぁ。楽しみだ。

最近シリアスと戦い続きで精神的に辛かったところだ。

この辺りでリラックスしておかないと色々と保ちそうにない。

ダイ達を助ける決意に変わりはないけど、それはオレに出来る範囲でだ。

選ばれし者だのルビスや世界樹の加護なんて正直オレには荷が重すぎる。

最近その事について考えすぎな自分がいて辛かったのだ。

でも百貨店に行けば気分も紛れるだろう。

オレは意気揚々と階段を駆け上がると扉を開いた。

 

「姫様ッ!百貨店にはオレも是非連れて行って下さい!」

 

こうしてオレとダイ、レオナ姫は気球に乗り込むと百貨店目指して空へと旅立つのだった。

初めてゆっくり見る空からの景色にダイは嬉しそうに声を上げる。

微笑ましそうにダイを見るレオナ姫。

ゴメちゃんとはぐりんは相変わらず喧嘩している。

後で気づいたが飛翔呪文で気球の下でぶら下がるポップ

一行は初めての穏やかな旅の中で心を通わせるのだった。

オレは錬金釜で最後に作った物を眺める。

 

「こいつを使うことにならなきゃ良いけど…」

 

オレの手の中には禍々しい光を放つ槍。

『地獄の魔槍』が異彩を放っていた。

如何なる盾をも貫く魔槍。実際にその名の通りだった。

矛盾という言葉など嘲笑うかの様にこの槍は『ウロボロスの盾』を貫く力を秘めているのだ。

当たりさえすれば間違いなく竜の騎士クラスの敵にも深手を負わせることが出来るはずだ。

これからの敵は間違いなくレベルが違う。

特に実力が足りない者は装備で補わなければダイ達の戦いに着いて行けない。

しかし作った装備が必要になるということは、それだけヤバイ事態だという事なのだ。

 

「イカン…、楽しむと決めたのに、また変な思考に…」

 

オレは皆にバレないように槍を仕舞う。

顔を上げると色取り取りの風船と花煙が上がっている。

百貨店から上がっているソレは、離れた空からでも明るい賑わいを感じさせてくれた。

こうしてオレたちは目的地であるベンガーナに辿り着いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レベル26

 

さいだいHP:155

さいだいMP:604

 

ちから:69

すばやさ:173

たいりょく:78

かしこさ:302

うんのよさ:256

 

攻撃力:245

防御力:115

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル

 

 




武具の性能や設定は独自の物が入っています。
ご了承下さい。


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本日の目玉商品『ドラゴンキラー』

大変お久しぶりです。
今回もかなり短いです。


気球に揺られること数時間。

最短距離でベンガーナに辿り着いた俺達は馬車へ乗り換えて街へ向かった。

目的地である百貨店は町の中央にあり、旗や風船が昇っているので良く目立つ。

多くの人々が賑わい多くの笑顔がそこにはあった。

ダイとポップは完全に田舎もの丸出しでキョロキョロ辺りを見渡しながら歩く。

微笑ましいおのぼりさんだ。

 

レオナ姫は二人を注意しつつ目的の武具屋へ向かう。

途中、利用したエレベーターに目を丸くして驚くダイとポップを抑えながら目的の三階へと到着した。

ダイは立ち並ぶ武器や防具に目を輝かせて喜ぶ。

 

「す、凄い…こんなの初めてだっ!」

 

「う、うん!この鎧なんて凄くかっこいいし……ってさ、3800ゴールドッ!!?」

 

ペタペタと触れまくっていた鎧の値段を見てダイが仰天する。

もしも誤って倒したりして結果、壊してしまっては大変だと顔を青くする。

 

「ああ、ダイ君。5000ゴールドまでなら好きなもの選んじゃって良いわよ」

 

レオナ姫の言葉にダイはあんぐりと口をあけて肩を落とした。

パプニカ王国の魔法銀や上質な布で出来た衣服。

今、レオナが身に着けているものだが、それらを売ればかなりの額になるらしい。

 

「け、桁が違う…」

 

レオナは嬉しそうに身奇麗な衣装を次々と選ぶと試着室へと走っていった。

 

「さてと…」

 

俺は目的の物を手に入れるべくエレベーターに乗り込んだ。

目的地は4階の『よろず屋』。

『呪文の契約書』や『魔法の筒』を初めとするこの世界特有の様々なアイテムを取り扱っているのだ。

この機会に纏め買いしておくのも良いのかもしれない。

 

 

店内を歩く。

俺の両手は既に買い物袋で塞がっている。

未修得の呪文書が一冊。薬草などの回復アイテムや補助アイテム。

百貨店だけあって他の店よりも安価で手に入った。

 

「…お、こいつは」

 

ふと目に付いたのは『匂い袋』と『魔物の餌』だ。

自分も持ってはいるが、微妙に形や大きさ、使われている餌が異なっている。

値段は少し高めだ。

魔物の行動を多少なりともコントロール出来るのだ。

この値段も納得というものだ。

俺は即決で『匂い袋』と『魔物の餌』の購入を決定した。

会計を済ませる。

 

「さてと、ダイ達の買い物は終わってるかな?」

 

それに、もしも『原作通り』ならもうすぐ超竜軍団によってここが襲われる事になる。

早めに合流しておくに越したことはない。

俺はダイ達と合流すべくエレベーターに乗り込んだ。

 

 

 

 

仲間とは直ぐに合流できた。

というよりも一人目との合流が早かった。

しかし何というか、あまりの事態に俺は思考が固まってしまう。

 

「……マジでか」

 

シャッ、と試着室のカーテンが開く。

反射的にそちらを見ると、そこから肌の大半を露出したレオナ姫が姿を現した。

水着というよりも下着に近いそれは、ドラクエシリーズでも有名な『あぶない水着?』だ。

近くにいたポップも思わず鼻血を噴出した。

レオナ姫は動きやすく着心地も良いため大変気に入っている。

グッジョブ!と言いたい所だが、如何せん防御力が低すぎる。

ポップも、そんな格好の姫など聞いたことがないと却下した。

 

「動きやすくて良かったんだけど…」

 

「いやいや。姫様、そういうことなら俺がもっと動きやすくて防御力が高い装備を用意しておきますから」

 

「本当に!?じゃあお願いね!」

 

レオナ姫は喜んで再び試着室へと引っ込んでいった。

 

「……タケルぅ、ポップ~」

 

ガチャガチャと音を立てて現れたのは、先程いたく気に入った騎士の鎧を装備したダイだった。

しかしサイズ的に全く合っておらず、凄まじく動きにくそうだ。

あれだと実戦で敵に囲まれてタコ殴りに去れそうだ。

 

「……くくっ、ダイ…よく似合ってるぞ」

 

「あ、ああ……カッコいいぞ」

 

ダイはバツが悪そうに下を向いて小さくなった。

恐らく脳内の自分の騎士姿と現実の姿が一致していない事に気づいているのだろう。

ちょっとキツいけど背丈は未来に期待するしかない。

 

「…うぅ、あんまり強くなった気がしない」

 

暫くして着替えが終わったレオナ姫も合流。

俺達は百貨店の中をブラブラとウィンドウショッピング。

 

「あれ、レオナ…これ値段が付いてないけど…」

 

ふとダイが足を止めて、ある商品を指差した。

 

「こいつは『ドラゴンキラー』だな」

 

「ドラゴンキラーだってっ!!?」

 

武器屋の息子であるポップが目の色を変えて叫んだ。

鋼よりも硬いという竜の鱗をもバターのように切り裂く一品だ。

戦いに携わるもの、いやそうでなくとも喉から手が出るほどの武器だ。

俺も世界を見て回ったが、ドラゴンキラーが市場に出ているのを見たのは初めてだ。

これがあれば『ドラゴンスレイヤー』を作る事が出来る。是非とも欲しい。

値段が付いていないということは、この後のオークションに出品される物だろう。

原作ではどこまで値段が上がったか忘れてしまったが、俺の財産なら余裕で買える。

レオナ姫に視線を送ると同感らしく強く頷いた。

 

「ドラゴンキラー、絶対に手に入れてやるっ!」

 

「おいおい、ガキは引っ込んでろよ」

 

そこに突っ込んできたのは体格の良い戦士だった。

周りには小馬鹿にしたような笑みを浮かべた者たちが此方を見ている。

 

「ガキども、あれが何か分かってんのか?」

 

「坊やのおこずかいじゃ無理だぜ」

 

「ははは!」

 

「あの『ドラゴンキラー』はワイが貰うで」

 

「いや俺が!」

 

ここにいる全員が『ドラゴンキラー』を狙っているのだ。

ライバルは多いが負けるわけにはいかないだろう。

 

「おやめ」

 

そこに割って入ってきたのは二人の女性。

限界まで曲がったのかと思えるくらい腰の曲がった老婆。

そして黒髪の綺麗な美少女だ。

『占い師』。まさにこの言葉がぴったりの二人組みだった。

 

「自分のレベル以上の武器を手に入れて強くなった気になる輩の仲間になる必要は無いよ…大枚を叩いてまでさ」

 

「このババア…」

 

「俺たちのことを言ってるのか!?」

 

「他に誰がいるんだいっ」

 

「お婆様っ!」

 

少女が諌めるが、老婆は面白くなさそうに鼻を鳴らすとスタスタと言ってしまった。

 

「すいません。祖母は口が悪いもので」

 

少女はぺこりとお辞儀をすると老婆を追いかけていってしまった。

 

 

 

 

老婆とその孫娘は町から町へと旅する占い師だ。

魔王が復活し、怪物が暴れまわる世界。

二人は持ち前の予知の能力で危険を回避しながら安全な場所から場所へと旅をする。

占い師の少女メルル。彼女は今、言いようのない不安に駆られていた。

背筋が、いや背筋だけでなく身も心も凍るような感覚。

『何時もの』やつだ。危険を知らせる予知の力。

しかし…。

 

「……え?」

 

気が付くと、嫌な感じは収まっていた。

しかし直ぐに悪寒を感じ、だんだんと広がっていく。

心の警報が鳴り響く。

窓から見える空は快晴。とても何かが起こるとは思えない。

しかし不安は大きくなっていく一方だった。

 

「どうしたんだい?」

 

肩を震わせて怯える愛孫の様子に老婆は首を傾げる。

 

「お、おばあさま…、何かが危険な何かがこの街に向かってきます」

 

「な、何だって!?わたしにゃまだ何も見えん。メルルや、お前にも一族の力が!!?」

 

「でも何かがおかしいのです」

 

「おかしい?」

 

「はい。二つの未来が…、とても不安定だけど…こ、これはっ!?」

 

メルルは肩を抱いてその場に蹲った。

 

「メ、メルル!しっかりおしっ!」

 

老婆がメルルに寄り添う。

 

窓の外、空は相変わらず晴れているがしかし。

その遥か先には暗雲が次第に広がっていった。

 

 

 

 

ベンガーナの街に面した海。

大陸から大きく離れた大海原は黒いカーテンに覆われていた、

不気味な稲光が奔り、すべてを飲み込むような悪意が波となって光を飲み込む。

常人なら生きてその場を抜けることは出来ないだろう悪環境を、物ともせずに進む巨体が複数。

頑強な鱗に覆われたその姿は、数多の怪物の中でも最強と称される『竜』だ。

しかしその竜たちは鱗は剥がれ落ち、骨が飛び出している。

腐臭が漂い、眼の光も見受けられない。

破れた羽を羽ばたかせて、それでも水面を滑空する姿は余りにも不気味だ。

そんな竜の背に危なげも無く立つ人影があった。

黒い衣装に身を包んだ道化師。配下の小悪魔を肩に乗せて楽しそうに笑う。

 

「うふふ、楽しみだねピロロ」

 

「そうだね!キルバーン」

 

大魔王バーンの側近の一人。

死神キルバーンと子悪魔ピロロだ。

二人は『異様な竜の群れ』を操り目的地を目指す。

その視線の先にあるのはベンガーナ。

今まさに、再び厳しい戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レベル26

 

さいだいHP:155

さいだいMP:604

 

ちから:69

すばやさ:173

たいりょく:78

かしこさ:302

うんのよさ:256

 

攻撃力:245

防御力:115

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

ステータスは前回と変わりません。

呪文を追加。




更新が大変遅くなって申し訳ないです。

明日か明後日にもう一度更新できるように頑張りたいと思います。
ここからは、この『ダイの大冒険でよろず屋を営んでいます』に集中したいと思います。




そういえばダイの大冒険の世界の魔法の威力ってMPの最大値に比例するんでしたっけ?


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本日の目玉商品『魔物の餌』

戦いが始まります。
キルバーン登場はもう少し待って下さい。


その日の天気は快晴。

ぽかぽかとした日差しが心地よく眠気を誘う。

ベンガーナの街を大きく囲む城壁と対魔物用の大砲。

魔王軍の侵攻を何度も撃退した城塞だ。

ここ暫くは魔物の襲撃は鳴りを潜め、平和が続いていた。

兵士達も気が緩み、大きく欠伸をかみ殺している。

 

「ふああああ~~っ、かったりぃ…」

 

大きく伸びをして息を吸い込む。

生温い潮風に思わず気分が悪くなる。

 

「あん?」

 

「どうした?」

 

視線の先に見えるのは怪しい暗雲だ。

それは次第に広がっていくように見える。

 

「嫌な天気だな。さっきまであんなに晴れていたのに」

 

「コイツは一雨来そうだな」

 

その時だった。

カッっと黒雲が光り、凄まじい早さで閃光が飛来した。

 

「ぎゃっ!!」

 

光線は城壁に立つ兵士の身体を貫く。

同時にその身体は炎上して崩れ落ちた。

 

「な、なんだぁっ!!?落雷かっ!?」

 

「だ、大丈夫かっ!?」

 

光線によって倒れた男は既に手遅れだ。

 

「ひでえ…、何だってんだ…っ!」

 

「お、おい…なんかヤバイぞ」

 

「うわああああああっ!!!」

 

光線が暗雲から次々と飛来してくる。

兵士達は城壁の影に身を隠してやり過ごす。

足元が強い熱線によって焦げ跡を穿つ。

 

「こ、こいつは…」

 

その『光線』は落雷などではない。

閃熱呪文ギラだ。そしてこんな場所で攻撃呪文を唱えるなど敵以外にあり得ない。

気づいた時にはもう遅かった。

黒雲は稲光を発しながら分裂していく。

それは雲の様な姿の怪物だった。

 

「ギ、ギズモだっ!!怪物の…、魔王軍の襲撃だっ!!!」

 

その叫びと同時に海面が盛り上がる。

 

「気をつけろ!海にも何かいるぞっ!!」

 

「ひ、ひぃっ!!?」

 

勢い良く姿を表したのはドラゴンだった。

しかし唯のドラゴンではなかった。

兵士達が見たのは、知識の中にあるドラゴン達とは何もかもが違っていた。

異様な雰囲気。変色し今にも剥がれ落ちそうな鱗や剥がれて落ちた肉から除く肋骨。

鼻を突く腐敗臭。そして意思の感じない光を失った眼。

 

「コイツは…ゾンビ?」

 

「うふふ…、その通りだよ…人間諸君」

 

「だいせいか~いっ!!」

 

再び海面が盛り上がり次々と竜達がその姿を露わにしていく。

 

「この前の戦いで死んだ竜の死骸…、まさかこんな使い道があるなんてね~、流石キルバーンえらいっ!凄くえらいっ!!」

 

小悪魔ピロロが嬉しそうにキルバーンを褒め称える。

 

「ふふふ、そう褒めないでくれ ピロロ。伊達にボクも死神を名乗ってないさ。それに勿体無いじゃないか。折角の竜の死骸、リサイクルしないと勿体無いだろ?」

 

以前の戦い。

それは竜騎将バランとロン・ベルクとの戦いにおいて築かれた竜の屍の山であった。

 

「ふふふ、ボクのドラゴンゾンビを相手に何処まで奮闘できるのか…せいぜい頑張ってくれたまえ」

 

キルバーンが言葉を切ると同時にドラゴンゾンビの群れは、その巨体を乗り出す。

そして城壁に向かって突撃した。

 

「うわああああああああっ!!!」

 

轟音と共に城壁の守りは容易く突破された。

 

「う、撃てっ!撃てぇっ!!」

 

兵士達は必死に抵抗を試みた。

剣で槍で、大砲による砲撃で襲い来る怪物達と戦う。

しかし敵は痛みも恐怖心も感じない生ける屍。

それも最強の怪物である竜種なのだ。

ドラゴンゾンビの群れは他の怪物達を引き連れて構わず進む。

今、ドラゴンゾンビ達の侵攻が開始された。

 

 

 

一方その頃、タケル達は…。

 

「18500ゴールド!」

「18800っ!!」

「わしは19000ゴールドッ!!!」

 

ドラゴンキラーを巡ってのオークションの真っ最中だった。

値段は釣り上がり遂に19000ゴールドまで上った。

もしもこれ以上の値段が付かなければ落札されてしまうだろう。

 

 

オレは考える。

果たしてこれ以上の大枚を出してまでドラゴンキラーは必要か否か。

間違いなく否だ。

しかし以前持っていたドラゴンスレイヤーは実は既に売ってしまっている。

それ以上の武具は多く持っているが…。

 

「う、売れちまう…」

 

ここで悪い癖が出てしまう。

コレクター癖という名の悪癖だ。

例え必要のないものでも珍しいものは欲しい。

一つは持っておきたい。

ゲームとしてドラクエをプレイしていた時からの悪癖だった。

実際に数多くのアイテムをコレクションするなど旅する身では不可能だ。

しかしオレにはそれを可能にする手段がある。

オレは『幾らでも』物を持つことが出来るのだ。

オレはライバルである19000ゴールドを提示した男の顔色を見る。

胸に手を当てて緊張した面持ちでドラゴンキラーを睨めつけている。

その表情に確信した。この人はこれ以上値段を上げることは出来ない。

 

「25000ゴールド!!」

 

オレは立ち上がって宣言する。

視線が集中する。沈黙、そしてゴクリと誰かが息を呑む。

 

「に………、に、25000ゴールド出ましたっ!!!25000ゴールドッ!!!」

 

「ま、マジかよ…払えませんじゃ済まねぇぞ」

 

「大丈夫だって」

 

「さぁ!他にはっ!?他にはいらっしゃいませんか!?」

 

かなり痛い出費だが後悔はない。

ここで逃すと次は何時手に入るかわからないからだ。

これ以上ゴールドを出す者は居ないようだ。

ここでドラゴンキラーの落札が決定した。

 

「ドラゴンキラー!25000ゴールドでの落札が決定いたしました!落札したのは此方のタケルさんでした!どうもありがとうございますっ!!」

 

周囲から感嘆の声が流れた。

オレは係りの者に25000ゴールドを支払うとドラゴンキラーを受け取った。

そして自慢するように高々と掲げてみせる。

 

「やったなタケル!」

 

「でも良いのかな?25000ゴールドも…」

 

「けど、あんな奴らに取られるよりは遥かにマシだろ?」

 

「確かに…」

 

「ダイ、楽しみにしてろよ。こいつを材料にもっと良いもの作ってやるからな」

 

オレはドラゴンキラーを『道具袋』に入れた。

その時だった。

この百貨店全体が揺れ始め、次第にグラグラと強く揺れ始めた。

 

「じ、地震…っ!!?」

 

「いや違う…コイツは…」

 

「きゃああああっ!!!ば、化け物っ!!」

 

遂に来たか超竜軍団。

オレは悲鳴が聞こえた方を辿って窓の外を見た。

 

「な、なんだと…?」

 

オレは自分の目を疑った。

ドラゴン…、ドラゴンの群れには違いない。

しかしオレの識る光景とは根本的に異なっていた。

ゲームとは違う現実の光景。

ドラゴンゾンビ。

画面越しだと骨だけの存在で登場するが…。

あれはモノホンのゾンビだ。

 

「…最悪だ」

 

ドラゴンゾンビの中にはヒドラかヤマタノオロチか分からないが、八つの首のもいるのだ。

そんな奴がゾンビとして向かってきている。

異様で不気味な、そしてドラゴン特有の圧倒的な存在感。

生物的な嫌悪感が噴き出してくる。

よく見ればドラゴン以外の魔物の姿も見られる。

キズモにフロストギズモ。メドーサボールなど。

明らかに超竜軍団ではなかった。どういうことだ?

考えても分からない。

自分は、ここまで自体を変えるような行動は取らなかった筈だ。

それとも…。

 

「知らず知らずのうちに、オレの行動ってやつはこんな事態を引き起こしてたっていうのかっ!?冗談じゃねぇぞ」

 

現実から目を背けたくなる。

これはもしかしてオレが招いた事態なのかもしれない。

ドラゴンゾンビは次々と逃げ惑う人々を襲い、街を蹂躙していく。

ドラゴンゾンビの眼から逃れた人達も他の魔物の犠牲となっていく。

 

「くそったれ!」

 

この調子だと死神キルバーンも現れるかどうか分からない。

どうすればいいんだ?

 

「戦いましょう」

 

オレが悩んでいると、凛とした声が響いた。

レオナ姫だ。王者の風格を持った少女が強い眼差しでドラゴンゾンビを睨みつける。

ダイもポップもそれに同意して戦う意志を見せる。

さすがアバンの使徒だ。

オレも悩んでいる暇があるなら行動するべきだろう。

 

 

それに、こうなった以上責任は絶対に取らないと。

オレは『道具袋』から剣を一振り取り出した。

それをダイに放り投げる。

 

「ダイ!」

 

「これは…?」

 

ダイの手には十字架を模した両手剣が握られていた。

 

「そいつは『ゾンビキラー』だ。奴らはドラゴンだがゾンビでもある。そいつなら有利に戦えるはずだ」

 

ダイはゾンビキラーを鞘から抜くと、吸い込まれそうな刀身に溜息を付いた。

 

「凄いや…タケル、ありがとう!」

 

実際に単純な攻撃力ならドラゴンキラーを上回る剣だ。

原作のようにいきなり折れたりしないだろう。

 

「よし!じゃあ行くか」

 

「おう!あのドラゴンゾンビの群れは俺がやる!ダイはあのデカイのを頼むぜ!」

 

ポップの視線の先には暴れまわるオロチゾンビ。

ダイはオロチゾンビを一睨みすると、ガチャガチャと体を引きずりながら走っていった。

 

「タケル、悪ぃが付き合ってくれ!オレだけだとドラゴンゾンビだけで他には手が回らねぇ…おめえは」

 

「他の怪物の相手だろ?わかってるって!」

 

ゾンビならともかく通常の魔物なら、アレが役に立つはずだ。

 

「姫さんは逃げ遅れた人達の避難を頼む!」

 

「分かったわ!気をつけてね!」

 

オレとポップも飛翔呪文トベルーラで窓から飛び出した。

 

 

 

ポップはドラゴンゾンビの群れ、オレはメドーサボールやギズモを標的に空を舞う。

数多の眼を持つメドーサボールがオレたちを補足する。

ギズモの群れが閃熱呪文ギラを、フロストギズモが凍える吹雪を吐き出してくる。

 

「じょ、冗談じゃねえ…っ!!」

 

一匹、一匹は大した事のない敵だが群れをなしての一斉攻撃をまともに受ければ一溜まりもない。

それにあの数の怪物達を相手にするには手持ちの攻撃魔法だとキリがない。

半端な攻撃だと間違いなく反撃を受けて殺されてしまうだろう。

オレは攻撃の届かない上空に逃れながら魔力を集中させる。

 

この世界において魔法の威力は集中力と魔法力、即ちMPに依存する。

未習得の呪文も実力が足りていれば開眼できる可能性もある。

ハドラーとの戦いにおいてポップがベギラマを開眼したように。

オレの魔法力は最終決戦のポップよりも遥かに上だった筈。

なのに呪文の威力が一定なのはおれの考え方というか意識がゲーム知識に沿うところが大きい。

『メラのダメージは約10ポイント』だという感じに。

この世界はゲームなんかじゃないというのに。

こんな当たり前の事でもオレは…。

 

「けど…、だったら信じて、集中して試すしかねえよな…っ!」

 

オレは意を決すると。身を翻して怪物の群れに突っ込む。

同時に先程、手に入れた『魔物のエサ』を投げつける。

 

「やった!」

 

流石に全ての怪物達は釣れなかったが、半分以上は我先にと魔物のエサに向かっていく。

魔物の群れは押し合いへし合いと互いに足を引っ張り合っている。

それでも何匹かは惑わされずに此方を攻撃しようとしている。

もうすぐ互いの射程距離だ。

これからの試みに失敗すればオレは怪物の群れの反撃によって死ぬかもしれない。

けど、このまま何もしなければオレは自分自身を一生誇れないだろう。

 

「アバンの使徒って訳じゃないけど…オレだってっ!!」

 

オレは自分の力量以上の未習得の呪文を構成する。

イメージするのは常に最強の自分。本当の意味で信じて集中する。

この空において相手に有効な攻撃呪文。

オレは腕を交差させて叫んだ。

 

「バ、ギ……、クロオオオオオオオォスッ!!!!!」

 

十字に交差する風刃が放たれる。

それは怪物の群れの先頭に着弾し突風と竜巻を巻き起こした。

 

―ビュオオオオオオオオォッ!!!!!

 

極大真空呪文バギクロス。

その風の猛威は敵の呪文攻撃や息吹攻撃をも巻き込みながら敵を蹂躙した。

 

「これが俺の力…っ?」

 

一瞬、脳裏に何かしらの光景が浮かぶ。

力強い生命に満ち溢れた芽が芽吹く。そんな光景だった。

 

「い、いまのは…、世界樹…?」

 

オレは頭を振る。

今はそんな場合じゃなかった。

 

「ポップは!?」

 

目を向けるとポップは重圧呪文ベタンでドラゴンゾンビの群れを押しつぶしていた。

あの威力は間違いなくオレのバギクロスと同等の威力だ。

流石はマトリフのオリジナル呪文だ。

それを習得したポップも半端ねえ。

 

 

しかし今のポップには、まだ早い呪文だったようだ。

一気に魔法力を使い切ったポップは飛翔呪文さえ維持できずに地面に落ちた。

 

「ポップ!大丈夫か!?」

 

「あ、ああ…、タケル…か。どうだ?流石は師匠直伝の大魔法だ…けど一気に力を使い切ったみたいだ」

 

「ポップ、コイツを…」

 

「魔法の聖水か…ありがてえっ!」

 

「いやコイツはエルフののみぐすりだ」

 

ポップはオレが渡したエルフの飲み薬を一気に飲むと人心地ついた。

 

「ふぅ、次はダイ達の方を…」

 

その時だった。

ポップの呪文によって潰されたかに思えたドラゴンゾンビ達が起き上がった。

自身を下敷きにしていた大岩を跳ね飛ばして不気味に唸る。

しかもその数は三頭。二頭しか仕留められなかった様だ。

 

「ま、まじ?」

 

魔法力を全快させたとはいえ、この状況。

ドラゴンゾンビは直ぐに目の前だ。

ドラゴンゾンビは大きく行きを吸い込むと氷の息吹を吐き出した。

 

「やべえ!」

 

オレは咄嗟にベギラマで相殺を試みる。

しかし敵の数は三頭だ。のこりのドラゴンゾンビはジリジリと距離を詰めてくる。

ポップもベギラマを放って残りの敵を牽制するが、手数が足りない上にベギラマの効果も薄く見える。

オレもポップも身動きがとれない。

 

「やべえ…積んだか?」

 

「くそったれ…」

 

そして三頭目のドラゴンゾンビがオレたちに向かって突っ込んできた。

 

「やべえ!逃げろ!タケルッ!!」

 

ポップの声も虚しく、鈍い衝撃と共にオレは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:247

防御力:116

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

 

 

※今回はバギクロスを習得しました。

たまにはオリ主らしくしてもらいました。

 




このまま更新していっても良いのか迷います。

タケルはロン・ベルクに王者の剣を渡したことが原因で、この事態になったことに全く気づいてないです。
自分の所為でロンさんがバランに喧嘩を売ることになるとは、お釈迦様でも思いませんねw


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本日の目玉商品『ゾンビキラー』

書き溜めが…。


タケルとポップが戦っている頃、ダイもまたオロチゾンビの元へ急いでいた。

騎士の鎧は既に自分の動きやすいように動きを阻害するパーツを剥がしていた。

肩当てと胸当て、そして頭にはサークレット。

その姿は正に勇者に相応しいものだった。

 

「あ、危ないっ!!」

 

視線の先ではオロチゾンビが逃げ遅れた母娘に向かってブレス攻撃を行おうとしていた。

母親は瓦礫に足を取られて身動きが出来ないようだ。

ダイはタケルから渡されたゾンビキラーを抜き放つとオロチゾンビと母娘の間に割り込んだ。

オロチゾンビの凍える吹雪。そしてダイの『海波斬』は、ほぼ同時だった。

鋭い剣閃がブレス攻撃を両断し、更にその先にいるオロチゾンビを襲う。

ゾンビキラーという名刀によって放たれたダイの技は正に強力の一言だった。

八つの頸の内、一気に三つの頸を刎ね飛ばした。

しかし痛みも恐怖も感じないヒドラゾンビは構わずに残りの頭がブレス攻撃を放とうと息を吸い込む。

 

「くっ、早く逃げろ!」

 

ダイは母娘を庇うように前に出るとオロチゾンビを強く蹴り飛ばした。

オロチゾンビの巨体が揺れブレスが中断される。

 

「こっちだ!」

 

ダイは母娘から注意を逸らすために挑発するようにオロチゾンビの目の前を横切る。

その時だった。

ゴポッ、ゴポポ…ズズズズズッ!

 

「な…、さ、再生したっ!?」

 

驚くべき事にヒドラゾンビの頸が新しく生えてきたのだ。

腐り落ちそうな状態は相変わらずだが、それでも元の状態に再生してしまう。

 

「ひっ」

 

その悍ましいまでの様子に母娘も、周りの人間達も小さく息を呑んだ。

このままだとマズイ。ヤツを完全に倒し切るには再生速度を上回る攻撃を一気に叩き込ましか無い。

自分の攻撃手段ではそれは二つだけだった。

その内の一つは自分の意志で使いこなす事が出来ない謎の能力。

ならば答えは一つ、『アバンストラッシュ』以外にない。

このゾンビキラーに全ての力を込めて振り抜けば、完全に倒しきる事が出来るだろう。

しかし、問題は周りに住人たちだ。

彼らを護りながら大技をヒドラゾンビ相手に決めるのは難しい。

 

 

ダイはチラリと逃げ遅れた母娘を見た。

そこには先程の占い師の二人組が来ており、必死に瓦礫を退かそうとしている。

戦士風の男たちも老婆に叱咤されながら怯えた表情で瓦礫相手に奮闘している。

 

「ダイくん」

 

「レオナ!?」

 

「他の人達はもう避難したわ!後は…」

 

「わかってる!でもこの状況じゃ…っ!!」

 

ダイは必殺剣の構えを取ろうとするが瞬間、強烈な尾撃が鞭の様にダイへ振り下ろされる。

十分に距離が開いているなら兎も角、こんな状況ではのアバンストラッシュは難しい。

かといってヒドラゾンビと距離を取れば、今度は逃げ遅れた人々が標的になる。

 

「くそっ!」

 

このままだとジリ貧だ。

どうにかしてこの状況を打開しないと。

そんなダイの苦境に更に追い打ちが掛かる。

 

「…ダイ…っ!…姫さんっ!!」

 

「ポップ!?それにタケル!?」

 

視線の先には意識を失ったタケルを傷ついた身体で背負いながらも現れたポップだ。

飛翔呪文によってコチラに向かってくる。

その後ろからドラゴンゾンビが三頭、後を追ってきていた。

 

「済まねえっ!三頭、仕留め損なっちまったっ!逃げてくれ!」

 

「そ、そんな…」

 

「ひ、ひぃっ!?」

 

男たちは瓦礫から手を離すと一目散に逃げ出していく。

戦場はパニックに陥ってく。

 

「チクショウ…、このままじゃ…」

 

「ポップ、危ないっ!!!」

 

ポップ自身も気が付かなかった。

焦りで何時の間にか飛翔呪文の高度が落ちていた。

そこにドラゴンゾンビの突進が迫る。

 

「…っ、どけポップッ!!」

 

何時の間にか意識を取り戻したタケルがポップを突き飛ばした。

 

「タケル!?………タケル!!!!」

 

数トンもの巨体による突進。

それは正に痛恨の一撃だった。

ポップを庇うように咄嗟に身体を入れ替えたタケルは身を守る行動が出来なかった。

 

「ああ、あ……ああっ!!!」

 

ダイはそんなタケルの姿をただ見ているしか出来なかった。

ゆっくりとタケルの身体が宙へと投げ出され、そして勢い良く地面に激突した。

ポップが駆け寄りタケルの身体を起こして…、そして悔しそうに涙を流して俯いた。

タケルは死んでしまったのだ。

 

「…う、ううぅ……うおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

プツン、ダイの中で何かが切れた。

額に輝くは竜の紋章。

ダイは竜の騎士へと覚醒し猛然とヒドラゾンビへ突撃した。

ヒドラゾンビもブレスによって反撃するが、竜闘気によって守られたダイは相手に攻撃を物ともせずにヒドラゾンビに肉薄した。

ダイはヒドラゾンビの巨体を踏みつけた後、流れるように背後に周り尾を掴む。

そしてドラゴンゾンビの群れへと投げ飛ばした。

続けて瓦礫を破壊して母娘を助け出す。

 

「早く逃げろ」

 

ダイの怒りの表情に母娘は顔を青くする。

その神々しい輝きと鬼のような威圧感。

占い師はその姿に目を丸くする。

 

「あ…、あの紋章はまさかあの方は竜の騎士さま…!?」

 

「まさか…竜の騎士さまの戦いを見られるなんて…」

 

「竜の騎士?」

 

レオナは初めて聞く言葉に首を傾げる。

 

 

 

 

「はああああああっ」

 

ダイは剣を高く掲げると電撃呪文ライデインを唱えた。

ゾンビキラーは電撃を帯びバチバチと火華を放つ。

ダイは一箇所に固まったドラゴンゾンビとヒドラに向けて最高の奥義を振り切った。

黄金の剣閃が雷を纏いながら目標に直撃。そして轟音。

パラパラと砂塵が舞い、そこには最早肉片一つ残らずに敵が消滅していた。

同時に竜の紋章も役目を終えて輝きを失った。

 

「……っ、タケル!?タケル!!!」

 

戦いが終わり、ダイは表情を一変させた。

その表情は先程までの凶暴な戦士の顔ではない。

親しい人間を気遣う普通の少年の顔だった。

ダイはポップと共にタケルの顔を覗き込む。

 

「酷い…」

 

後から来たレオナも思わず口元を覆った。

身体中、酷い状態だ。腕も足もズタボロで。

それに呼吸もしていない。

 

「レオナ!」

 

ダイの言葉にレオナは直ぐに気を取り直してベホマを掛ける。

しかし、まるで効果がなかった。

傷も塞がらなければ、タケルは目覚めもしなかった。

 

「う、嘘だ…、タケル、しっかりしてよ!!」

 

その時だった。

タケルの身体が眩い光を放ち始めた。

風が香る様な翠風が青葉の様な光を運び、碧い光へと変わる。

神秘的で幻想的な光景。

タケルの傷はみるみるうちに塞がっていき、そして。

 

「あれ?オレ…」

 

「うそ…」

 

レオナが信じられないという顔をした。

ダイやポップも同様に。そして周囲に人々も…。

 

「生き返ったの…か?」

 

「は?生き返る?何言ってんだ?」

 

タケルは訳が分からずに首を傾げる。

そして厳しい表情になってポップに詰め寄った。

 

「そうだ!ポップ!ドラゴンゾンビは!?どうなった!?」

 

「そ、それならダイが倒しちまったよ。すごかったぜ…それよりもお前」

 

「…あん?」

 

「何かまた道具でも使ったのかよ。まさか生き返るとは思わなかったぜ」

 

「は?イキカエル…?何を?」

 

「心臓は完全に止まっていたわ…ベホマでも効果が無いし…」

 

タケルは皆の言葉に漸く気づいた。そして思い出したのだ。

自分は咄嗟にポップを庇い、そして敵の痛恨の一撃を受けて……。

死んでしまったことを。

 

 

タケルの手には何時の間にか青葉が握られていた。

よく似ているが『世界樹の葉』ではなかった。

青葉は空気に溶けるように消えてしまった。

 

「そっか…じゃあオレ、本当に…」

 

タケルは立ち上がる。

そして周囲からの視線を感じ辺りを見渡した。

町の住人達だ。

何か化け物を見る様な目で此方を見ている。

 

 

タケルは納得した。

おそらくダイの戦いを間近で見てビビってしまったのだろう。

タケルは一歩前に出ると。

 

「おい、アンタら。助かったんだからもっと嬉しそうな…」

「近づくな化け物っ!!!」

「…っ!?」

 

いきなりの非難の言葉にタケルの足が止まる。

ダイに向けての言葉か?いや、コイツはオレを見て化け物といった。

タケルは思わず喉を唸らせる。

 

 

間違いなく自分は化け物などではない。

自分が生き返ることが出来たのは、間違いなく世界樹の加護によるものだろう。

しかし、しかしだ。この町の住人達はそんな事は識らない。

確かにこの世界において蘇生させる法はある。

ザオラルによる蘇生だ。しかしそれもかなり条件が限定されており確実ではない。

タケルはひとりでに勝手に蘇生したのだ。

理解できない。あまりにも不自然。

町の住人にこのような目を向けられるのは必然だった。

まさかの事態にタケルは戸惑うばかりだ。

そして急激に腹の底が冷たくなっていくのを感じた。

 

「……はぁ?おい…何を言って」

 

タケルは周囲を見渡すが、住民は目を合わせないように反らしたり俯いたり。

そして視線の先に女の子を見つけ。

 

「ああ、さっきの…助かって良かった…」

 

「娘に近づかないで!」

 

母親が傷ついた足を引きずりながらも娘を守るように抱きしめる。

 

「な、何で?何で皆そんな事を…」

 

この状況に戸惑ったのはタケルだけではなかった。

皆の余りの態度にダイは前に出る。

何故こんな空気になるんだ。タケルが助かって、皆が助かって良かったじゃないか?

戦いの後、こんな気持になったのは初めての事だった。

 

「…ひっ」

 

手の伸ばした先の女の子が怯えた表情で母に抱きつく。

 

「ど、どうしたの?」

 

「こ、こわい…、こわいよ!お兄ちゃんたち怖いっ!!」

 

「怖い?オレたちが…、な、なんで…」

 

「君が人間じゃないからだよ…ダイくん…」

 

「誰だ!?」

 

「おっと、人間じゃないのはそこの君も同じかもしれないね…」

 

「…タケルもだと?」

 

「ふふ、人間は勝手だよねぇ…命懸けで守って貰っておいて…でも納得だよ。君の余りにも人間離れした戦い振りを見て怖くなったんじゃない?中にはゾンビみたいに勝手に復活しちゃう子もいるみたいだけど…」

 

現れたのは全身黒装束に身を包んだ道化師だった。

 

「僕はキルバーン。ただの使い魔さ。口悪い友達は死神なんて呼ぶけどね」

 

 

 

 

遂に出てきたか。

タケルは自身に向かられた恐怖の感情。

そしてその事で中に渦巻く感情を抑えながらキルバーンを睨みつけた。

 

(…あの小悪魔は…キルバーン本人の姿がない…どこだ?)

 

タケルは小悪魔の姿を探す。

 

「はぐりん…」

 

タケルはこっそりとはぐりんに指示を出すと、毒針を持たせる。

はぐりんは凄まじい速さで皆の目に止まらない様に姿を消した。

 

「お前がコイツラを操っていたのか?」

 

「ふふふ…不死の竜は気に入ってもらえたようだね。用意したかいがあったよ」

 

「どういう意味だっ!?」

 

「最近ボクたちの間でも君の話題が上がっていてねぇ…なにせ魔王軍の軍団長を立て続けに退け遂には前の総攻撃をも跳ね除けた」

 

死神は歌うように話す。

 

「それで君の正体を見極めようとドラゴンゾンビをプレゼントしたのさ。お陰で君の本当の姿、正体に確信を持てたよ」

 

「オレの本当の姿?正体っ!?どういうことだっ!!!」

 

「ふふふ、近いうちにまた会お…」

 

そこでキルバーンの動きが止まる。

 

「こ、こいつ…、なにするんだ!?やめろっ!」

 

瓦礫の影から小悪魔が飛び出す。

追いかけるようにはぐりんも飛び出した。

 

「…おやおやピロロ…姿が見えないと持ったら」

 

キルバーンははぐりんにじゃれつかれているピロロを見て愉快そうに笑う。

 

「ふ、ふんだ!助けてくれてもいいじゃないか!」

 

「ごめんごめん。それにしても『はぐれメタル』とは珍しいな。さぁピロロから離れたまえ」

 

その時だった。

 

「はぐりん!!!」

 

タケルの大声。

ただの大声じゃない。これは相手を威圧し身を竦ませる『雄叫び』だ。

世界樹の加護を自覚したタケルが身につけた新たな力。

その声にピロロは身を竦ませ一瞬動きを止める。

今が最大にして最後の好機。当たれぇええええええええっ!!!

 

「バイキルト!」

 

タケルは手にした槍を目標目掛けて全力で投擲した。

 

「『穿け』地獄の魔槍ッ!!!」

 

言霊による武具の能力の発動。

槍から凄まじいまでの死の呪いが放たれる。

槍は禍々しい黒い光線と化し小悪魔に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:247

防御力:116

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ 

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

 




ここで引っ張ります。
ピロロさん(キルバーンの安否が気になります)
そして化け物扱いされたのはダイだけではありませんでした。


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本日の目玉商品『黒の核』

今年最後になりそうです。
来年も頑張りたいです。


「がぁっ!!?」

 

禍々しい漆黒の光線が黒い影を貫く。

 

「…ちぃ」

 

「キ、キルバーンッ!?」

 

抜かった。

俺の視線の先ではキルバーンが小悪魔ピロロを庇うように立ち塞がっていた。

それも当然だ。なんせ本体だ。

キルバーンは人形であり、切られても殴られても痛くも痒くもない。

ピロロはキルバーン人形を操り自分の盾としたのだった。

咄嗟に自分を庇うように見せかけて。

 

「大丈夫かい?ピロロ?それにしても酷いね。僕でなく弱いピロロを狙うなんて、勇者の仲間とは思えないよ」

 

「そうだ!そうだ!」

 

「弱いやつ、弱点から狙うのは戦闘の基本だろう?」

 

「…ほう」

 

キルバーンの仮面の奥の目が光る。

ピロロ、キルバーン本人は表情こそ笑顔だったが内心穏やかではなかった。

なにせ殺されかけたのだ。先程の魔槍の光。

それが眼前に迫った時、死を幻視してしまう程に。

巫山戯るな!僕は死を超越した死の神だ!

その僕が死にかけたんだぞっ!

 

「確かに君の言うとおりだ。ならばその言葉、君自身にも当て嵌まる事は理解できるかな?」

 

キルバーンは何時の間にか強大な鎌をその手に出現させていた。

 

「君の能力、少々厄介だ。ここで消しておくのも悪くない…、何ボクの専門は暗殺でね。気づいた時には………フフフッ」

 

死神キルバーンは不気味に笑う。

 

「そんなこと…、させるもんか!」

 

ダイとポップがタケルを庇うように前に出て各々の武器を構える。

タケルは少し嬉しそうに笑うと、視線を外してニヤリと笑った。

どうやら準備が整ったようだ。

 

「……っ、いや、やっぱり死ぬのはお前だよ……はぐりん!!!」

 

トスン!

 

そんな気の抜けた、命を奪うには余りにも弱々しい音だった。

 

「……へ?」

 

小悪魔ピロロは訳が分からなかった。

体の中心が熱い。焼けた鉄を差し込まれたように。

振り返ると、スライムの顔のアップが見える。灰色の見慣れないスライム。

その口には毒針が咥えられており、その先端は…どうやら自分の身体に…。

 

「…あ?あああああああああっ!!?」

 

理解した。刺されているのだ。

逃れられぬ死の針が自身の心臓に、深々と。

理解した時にはもう遅い。

必死に身を捩りキルバーン人形に命令を送る。

しかし人形は動かない。

タケルだ。タケルは取り出した『まだら蜘蛛の糸』を人形に投げつけて拘束する。

普段なら、そんな物はキルバーンには通じない。

しかし人形師であるキルバーン本人は最早死ぬ間際、通常の能力など発揮できるはずもなかった。

 

「…っっくっそおおおおおおおおおっ!!!!!」

 

こんな筈ではなかった。

冥竜王ヴェルザーの側近、死神キルバーンは真の任務である大魔王バーンの暗殺を果たすこと無く最後を迎えたのであった。

 

「……」

 

タケルは続けてキルバーンの胴体を魔槍で貫く。

人形師を失った人形は無防備にタケルの攻撃を受けて串刺しになった。

 

「な、なんだぁ!?呆気ねえな…」

 

ピロロに続いてキルバーンまでも。

その様子にポップが気の抜けた声を上げた。

本来なら攻撃する必要はないのだが、タケルがキルバーンが人形だと知っている事実は矛盾が生まれる。

そこで一芝居打つ事にしたのだ。

 

 

「そ、そうだな…まさかコイツ、本当に使い魔ってやつじゃ?」

 

「いやそれは、そのスライムが刺した奴だろ?」

 

「まだ油断するな!このぐらいでやられるなんて」

 

ダイは構えを解かずにキルバーンを睨む。

 

「……いや、ちょっと待ってくれ…コイツは」

 

「どうしたんだよ?」

 

「人形だ…こいつ、生き物じゃない」

 

「な、何だってっ!?」

 

「見ろよ」

 

タケルはキルバーンから槍を引き抜くと、穴の開いた部分を見せる。

レオナ姫が気づいたように呟いた。

 

「絡繰仕掛け…?それに…血じゃないわねこれ」

 

傷口から流れる液体はふつふつと茹だっており地面に滴り落ちる。

ジュウジュウと石畳の床が焼けていく。

魔界のマグマ。強い酸性を持った猛毒だ。

 

「触らない方がいい…かなりの熱気…火傷じゃ済まないかも…危険だ」

 

タケルは危険なものを処分、または遠ざける流れでごく自然にキルバーン人形を仕舞う。

 

「消えた…、またお前の袋に?」

 

「ああ…、この人形、多分さっきの小悪魔が操ってたんだろうな…偶然とはいえ先にアイツを狙ったのは正解だったよ」

 

「…だな。人形を攻撃しても意味ねえもんな」

 

ポップはしみじみと頷いた。

そして仲間達は戦闘が終わり漸く一息ついた。

 

 

タケルは内心、飛び上がりそうなほど喜んでいた。

これで目的のものは手に入った。

上手くやればバーンをも倒す事が出来るかもしれない。

少なくとも真・大魔王ではない老人の姿のバーンなら確実に…。

自分が関わる事によって生じてしまった歪み。

責任を感じていた。もしもこのままダイ達の成長を阻害し、最終決戦前に負けるような事になれば死んでも死にきれない。

なら責任を取るしか無い。

足りない実力は道具や武具で補うしか無いのだ。

必要なら『ドーピング』もしなければならないかもしれない。

 

「けど……取りあえずは上手くいった…」

 

タケルの視線の先ではダイ達が占い師の少女と話をしていた。

恐らく竜の騎士の話を聞いているのだろう。

だとすると、次の目的地は『テラン』という事になるだろう。

 

「気が重い」

 

竜騎将バランとその配下である竜騎衆。

今までで最強の敵だ。

自分の持つチート道具が何処まで通用するか。

そもそも戦闘中に簡単に使う事が出来るのか…?

タケルの最大の武器はアイテムだ。

敵もバカではない。タケルに道具を使わせないように妨害だってするだろう。

タケルは逃げ出したい気持ちを必死で押し殺しながら破壊された街を眺めていた。

 

(街の復興の手伝いを口実に残れないかな)

 

冗談と本音が半々。

こんな時にも少しだけヘタレるタケルなのであった。

 

(何にせよ『黒の核』は手に入った…後は…)

 

タケルは東の空を見つめる。

その遥か先には自然を信仰する国『テラン』だ。

タケルの記憶通りに進むなら間違いなく激戦になるだろう。

 

(チート性能の武具、解禁しないといけないかもな…後、出来そうな呪文も一通り試しておこう…)

 

自重していて勝てる相手ではない。

タケルは密かに心の中で決意を固めるのであった。

 

 

 

 

一方その頃、かつてのアルキード王国。

その近隣に位置する森の奥深く。

清涼なる水が湧き出る美しい泉があった。

そこでは怪物も、動物も関係なく己の疲れた身体を安める為に訪れる。

アモールの泉。

傷を癒やす聖なる水を何時の頃からか人はそう呼ぶようになった。

その泉の中心、そこにはベッドに横たわるように揺蕩う人影があった。

竜騎将バランだ。

魔界の剣豪ロン・ベルクとの戦いに置いて傷ついた身体を癒やす為に、この泉に訪れていたのだ。

そして此処はかつて愛した女性と出会った思い出の場所。

目を閉じると瞼の裏に映るのは、優しい妻の笑顔だった。

だからこそ…。

次の瞬間、美しい笑顔が紅蓮の炎によって黒く塗りつぶされていった。

そして夢から覚醒める。

 

「私はニンゲンを許さんっ!!!」

 

バランは憎々しげに目を開いて怨嗟の言葉を吐き出した。

体の節々が痛む。バランは治癒呪文を唱えようとして止める。

あの男との戦いで酷使したのは肉体だけではない。

精神も限界まで消耗していたのだ。

バランは瞑想、自己診断する。

その身体が完全に癒えるまで僅か数日。

 

「バラン様」

 

「ラーハルトか…」

 

現れたのは肌の碧い青年。

鋭い目つきに尖った耳、魔族の戦士だった。

 

「はい、お休みのところ申し訳ありません」

 

「なんだ?お前には私の名代としての任務を与えていたはずだが?」

 

青年は負傷したバランに代わり軍団長代理として会議に参加していたのだった。

 

「はい。会議は滞り無く…その事でバラン様に至急お耳に入れておきたいことが」

 

「なんだ?」

 

「ディーノ様が…ご子息が生きて、おられました」

 

「……っ」

 

バランの身体が硬直し水面下に沈む。

今、何と…。バランは青年の言葉の意味を繰り返す。

そして直ぐに立ち上がった。

 

「何だとっ!?」

 

「お喜び下さい!ディーノ様は生きておいでです」

 

「ほ、本当なのだな」

 

「はい」

 

「詳しく聞かせろ!ラーハルト!」

 

十一年前に生き別れた我が子の無事。

その喜びにバランは体の痛みも忘れて泉から上がろうとする。

ラーハルトは、それを宥めながらも魔王軍の本拠地『鬼眼城』での経緯を話し始めるのだった。

 

 

 

竜騎衆の一人、陸戦騎ラーハルト。

彼も噂には聞いていた。

勇者ダイ達の快進撃を。次々と魔王軍の軍団長を打ち破っていく武勇伝。

しかも勇者ダイはまだ年端もいかない子供だというのだ。

敵ながら尊敬できる。

 

会議に出席したラーハルトが目にしたもの、それは見苦しい権力争いだった。

勇者ダイ討伐に失敗したハドラー。

そして責任の追求から逃れようと躍起になる浅ましい姿。

反吐が出そうだった。

しかし疑問に感じるのは勇者ダイの力の秘密だった。

いくら勇者とはいえ、未だ少年ダイにそこまでの力が?

そこで悪魔の目玉が記録した戦闘の記録が流れた。

 

「……あれは『竜の紋章』っ!?」

 

ラーハルトは見た。

ダイの額に輝く『竜の紋章』を!!

嘗て聞いたことがあった。

父のように尊敬する自身が命を捧げた将から。

十一年前に生き別れた子ディーノの話を。

ラーハルトは勇者ダイの戦う姿に引きこまれていく。

その闘争心、戦闘力はバランの姿と重なる。

 

 

 

「では…その勇者ダイが…?」

 

「はい。間違いありません。歳の頃も…それに、何よりも」

 

「竜の紋章か…」

 

「はい」

 

「ラーハルト」

 

「分かっております。ご命令を…」

 

「この通り私は未だ動けん。ラーハルトよ竜騎衆を率いて我が子、ディーノを奪還してくるのだ!!」

 

「御意」

 

ラーハルトの後ろ、木陰から獣人の戦士たちが姿を表した。

残忍そうな笑みを浮かべた鳥の獣人と逞しいトドの獣人だ。

バランは部下の勇姿を満足そうに見渡す。

 

「ラーハルト」

 

「はっ」

 

「ボラホーン!」

 

「はい」

 

「ガルダンディー!」

 

「ヒャッハァッ!!」

 

「竜騎衆、出撃せよっ!!」

 

「「「ははあっ!!」」」

 

ラーハルト達は一礼するとその場から姿を消した。

遂に最強の竜使い達が動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:247

防御力:116

 

どうぐ

E:地獄の魔槍

E:ビロードマント

E:幸せの帽子

E:氷の盾

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

オーロラの杖

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ ベホマ

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト バイシオン 

スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

バーハ フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

今の魔法力で出来そうな呪文追加。




少し短いです。
そして難易度低下?
まずは竜騎衆が相手になりそうです。

ところでイマイチ分からないのですが…。
ボラホーンってトドですよね?オットセイ?セイウチ?
牙があるのでアザラシとは違いますよね?


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本日の目玉商品『メタルキング装備』

あけましておめでとうございます。
今年初めての投稿になります。
よろしくお願いします。

今回はすごく短くなります。


俺達は自然を信仰する国『テラン』へと訪れていた。

百貨店で出会った占い師の老婆ナバラと孫娘のメルル。

二人がダイの紋章を目にして口にした『竜の騎士』という言葉。

その意味とダイの出生の秘密を追う為だ。

それは俺の知識通りの事だ。

それよりも今の俺の心は憂鬱だった。

 

-近づくな!化け物っ!!-

 

瞼の裏に焼きついた人々の非難と拒絶の感情。

まさか自分が向けられる事になるとは考えていなかった。

俺の力は唯のチート。自慢すべきものなんかじゃない。

なにせ世界樹と精霊ルビスの加護が付いているのだ。

まさにチートである。この世界の人々から見れば完全にズルだ。

何も知らない人から見れば化け物扱いも納得だ。

 

「確かに嬉々として能力使ってきたけどさ…、俺だって望んで手にした力って訳じゃ」

 

異邦人である自分がこの世界で不自由なく生きていく為には有効だった。

ただそれだけだった筈だ。

魔王軍が復活するまで攻撃呪文だって殆ど使った事はなかった。

 

「化け物か…」

 

今回のことは間違いなく魔王軍にも知ることになった筈だ。

ダイの正体の露見と俺の存在。

キルバーンは本体が小物とはいえ、間違いなく魔王軍内では最高幹部だ。

それを倒した俺は今後、間違いなく…。

俺は背筋が寒くなるをの感じた。

もう後戻りはできない。

俺は意を決して道具袋の中からとっておきの物を取り出した。

 

 

 

 

「なぁ、タケルのやつはまだか?何時までションベンしてんだよ」

 

ポップは目の前の水面に小石を投げて溜息を付いた。

メルルはポップの口から出た下品な言葉に顔を赤くする。

 

「……ポップさん」

 

 

テランの村外れにある湖の前に一行は集まっていた。

占い師ナバラとメルルも一緒だ。

神秘的な雰囲気の湖には竜の神が祀られており、竜の騎士の伝説も眠っているのだという。

ダイは自身の出生の秘密を前に焦りを隠せないでいた。

 

「ダイ、気持ちはわかるけど焦るなよ。もう少しタケルをまとうぜ」

 

「ポップに何が分かるんだよ!」

 

今の様な気持ちになったのは生まれて初めての事だった。

人々から向けられる視線に宿った感情。

今まで暮らしてきたデルムリン島では向かられた事のない負の感情。

自分の事ながら深く考えたことなど無かった。

島の皆は自分にとても良くしてくれたからだ。

そして自分も島の皆が大好きだったからだ。

種族なんて関係なかった。

 

「でも人間はオレが人間じゃなきゃ仲間には入れてくれないんだよね?だからオレ、一人でいってくる……、オレは皆に嫌われたくないから…っ」

 

そう言ってダイは駈け出した。

 

「ダ、ダイッ!!!」

 

ダイの目尻から涙が真横へと流れる。

そんなダイの寂しげな背中を皆は何故か追うことが出来なかった。

水柱が上がりダイの姿が水底へ消える。

 

「バカヤロウ…ッ、つまんねえこと気にしやがって…っ」

 

ポップは悔し涙を流す。

地面を殴りつけて感情を吐き出す。

 

「俺達は仲間じゃねえか……、友達じゃねえかっ!!!正体なんて…そんなの関係ねえよっ!」

 

「ポップさん…」

 

レオナはダイの身を案じてじっと水面を見つけていた。

此処から先はただ待つことしか出来ないのだ。

 

「………ダイは、行ったのか?」

 

「……あ、貴方は…」

 

メルルは唖然とした声を上げた。

ポップは涙を拭いメルルの視線を追う。

 

「お、おめえ……、何だその格好は…」

 

パーティーが目にしたのは全身がこれでもかと言うくらいの銀色。

ギンギラギンに輝く甲冑…。

 

「タケルっ!!?」

 

「姿を表さないと思えば…」

 

「お?似合うか?」

 

全身鎧の重量など微塵も感じさせない軽やかな足取りでタケルは歩く。

武具にはそれぞれ幻の魔物の姿が彫られ鈍い輝きを放っていた。

これからの戦いの激化と自分の身の安全を懸念したタケルが用意した新装備だった。

腰に差したメタルキングの剣、背中に背負ったメタルキングの槍、そして腰に装着したメタルウィング。

価値の分かる人間が見れば生唾ものだ。

 

「ずいぶん物々しい格好ね」

 

「タケル、全く似合ってないけどそいつは…?」

 

「メタルキングの武具だ」

 

「メ、メタルキングだってぇっ!!?」

 

武器屋を実家とするポップは思わず驚愕の声を上げた。

ポップ自身、目にしたことは無く話には聞いただけだった。

父親であるジャンですらお目に掛かったことは無いのだという。

ただ、一武器屋として一度は見てみたい品だという…。

全世界の武器屋を通しての幻の品なのだ。

 

「……本物?」

「当然」

 

思わず目の前の存在に疑いをかけたポップにタケルはドヤ顔で答えた。

 

「おっと、そうだった皆の分も用意したんだ」

 

メタルキングの武具を自慢したいところだが、あまり時間がない。

『ヤツ』が来る前に皆の装備を一新しないと。

タケルはこれから始まるであろうバランとの戦いに最も有効だと考えた武具と道具を取り出して皆の前に置く。

 

「ちょ、ちょっと!!いきなりどういう事!?」

 

目の前の光り輝く……、というよりも凄まじいオーラを放つ武具に気圧されながらレオナが叫ぶ。

新しい装備買う必要なかったじゃないっ!

 

「あれは息抜きも兼ねてだと思ってたけど?」

「……まぁ、確かに……じゃなくて!」

 

「すげえ…オレん家、武器屋だけどこんな物、初めて見るぜ」

 

「みんな聞いてくれ。確かにベンガーナで装備を一新した。けど竜の群れと戦ってみてどうだった?その前の戦いは?」

 

タケルの言葉に一行は厳しい表情で俯いた。

装備は所詮消耗品だ。激しい戦いが続けば痛むし壊れる。

それにこれからの戦いは更に厳しいものになっていくはずだ。

パーティーのレベルアップは勿論だが、優れた武具やアイテムは必須だ。

以前の戦いだが、展開によっては新しい武具もダメにしてしまうところだったのだ。

 

「だったら、少し早くても強い武具に変えるのも有りだと思う。力量が足りなきゃ武具に見合う実力をこれから身に付ければ良い訳だし…」

 

強い武具を身に付けて生まれる慢心や心の隙。

それを懸念してないわけじゃない。

けどここまで関わった以上、タケルに出来る最大限のサポートをするしか無い。

勇者であるダイが大魔王バーンを倒す。それを待つ気はない。

出来るなら、可能なら自分がバーンを倒す。

例え最悪の物を使ってでも。

 

「さぁ、ダイを待っている間に着替えちまおうぜ」

 

「着替えるって…ここで?」

 

「いや、それは服の上からでも着れるようになってるから…」

 

「けど、ダイが…」

 

「大丈夫!ダイの装備もちゃんと用意してるって!」

 

どうせならダイを待って一緒に。

そう言うポップ達だが、タケルがしつこく勧めるものだから渋々新しい装備を身につけていく。

そんな皆の姿を見ながらタケルはホッと息をついた。

そして空を見上げて吐き捨てるように呟いた。

 

「………来るなら来やがれ」

 

装備、アイテム共に充実している。

相手の情報も識っている。その能力や技も。

今回の武具もその情報に沿って選んだ。

後は作戦次第で圧倒的な戦力差を覆す。

タケルは虚空をじっと睨みつけた。

しかしタケルは知らなかった。

これから近づいてくる敵は一人ではなく複数だという事に。

過去に自分がした事が決定的な原作ブレイクを引き起こしていることに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:208

防御力:338

 

どうぐ

E:メタルキングの槍

E:メタルキングよろい

E:メタルキングヘルム

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

超万能薬

超万能薬

世界樹のしずく

賢者の石

メタルキングの剣

メタルウィング

 

メタルキングよろい +120(炎や吹雪を防ぐ)

メタルキングヘルム +60(マヌーサ、メダパニ、ザキ系などの呪文を防ぐ)

メタルキングの盾  +70(あらゆるダメージを軽減)

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ ベホマ

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト バイシオン 

スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

バーハ フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

装備が一新。

レベルが変わらないのは死んでたからです。

キルバーン一人の経験値じゃレベルが上がりませんでしたw




今年もよろしくお願いします。


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本日の目玉商品『メガザルの腕輪』

10日更新予定が間に合いませんでした。


「どうだ?似合うか?」

 

「何これ?何で楽器なんかが…」

 

「ぴきーっ」

 

「ていうかコイツ何時の間に、つーかどうやって鎧着てんだ?…」

 

「ポップ君、あれは鎧の中に入ってるって言うのよ」

 

「皆さんよくお似合いですよ」

 

オレが用意した新装備を装着して皆が思い思いの言葉を吐く。

そんな皆の姿を見ながらオレはパーティーの強さを確認した。

 

ポップ 職業 まほうつかい

 

レベル:27

 

さいだいHP:150

さいだいMP:142

 

ちから:52

すばやさ:70

たいりょく:75

かしこさ:71

うんのよさ:202

 

攻撃力:175

防御力:180

 

E:ドラゴンの杖

E:ドラゴンローブ

E:幻魔のたて

E:山彦の帽子

E:メガザルの腕輪

賢者の石

エルフの飲み薬

 

レオナ 職業 賢者

 

レベル:23

 

さいだいHP:165

さいだいMP:103

 

ちから:51

すばやさ:60

たいりょく:75

かしこさ:114

うんのよさ:58

 

攻撃力:149

防御力:185

 

E:オーロラの杖

E:光のドレス

E:水鏡の盾

E:山彦の帽子

E:メガザルの腕輪

エルフののみぐすり

賢者の石

 

はぐりん 職業 はぐれメタル ★×8

 

レベル:5

 

さいだいHP:255

さいだいMP:385

 

ちから:105

すばやさ:255

たいりょく:125

かしこさ:20

うんのよさ:255

 

攻撃力:225

防御力:510

 

E:メタルキングの剣

E:メタルキングよろい

E:メタルキングヘルム

E:メタルキングのたて

E:メガザルの腕輪

 

賢者の石

世界樹のしずく

復活の杖

 

オレが用意した装備の中で注目するのは二つ。

『山彦の帽子』と『メガザルの腕輪』だ。

呪文を主力とする二人に『山彦の帽子』の力は、とても有用だ。

そしてもう一つは『メガザルの腕輪』。

力尽きると自動的に『メガザル』の呪文が発動する優れものだ。

実を言うと『メガンテの腕輪』と何方にするか迷った。

ポップのドラゴンの杖は『ドラゴラム』の呪文を、姫の『オーロラの杖』は攻撃魔法の威力を爆発的に高める効果がある。

昔、メラの呪文を使う際に試した事があるが、『メラミ』並の威力になった。

 

その他の装備も特殊な力が宿った物ばかりで、確実に戦闘を有利に進めてくれることだろう。

少なくともいきなり即死する事態には成らないと思いたい。

ダメージを受ければ『賢者の石で』空かさず回復だ。

皆で使えば一瞬で完全回復できるはず。

ダイの装備も用意したが、まずった…。湖に入る前に渡しておくべきだった。

 

「にしても姫さんの格好、すげえな…マジでお姫様って感じだな…その帽子がなければ…」

 

「当然よ。だって本物のお姫様だし……でもポップ君とお揃いっていうのもねぇ…」

 

「チェッ、酷えな…」

 

二人のやりとりを見てメルルが微笑ましそうに笑う。

そしてオレは二人にアイテムの使用方法と効果を説明していく。

時間は掛けられない。簡潔に要点だけを。

 

「なるほど…確かにこれは便利ね…でも実戦の中で簡単に使えるの?」

 

「その時は皆でフォローすればいい」

 

「確かにな。だとすると大事なのはフォーメーションか?」

 

「ああ、役割を決めて臨機応変に行動することも大事だ」

 

特に次の戦いで鍵となるのは『不思議なタンバリン』を持つはぐりんだ。

アバンの使徒たちが戦いの中で実力以上の力を発揮してきたのは周知の事実。

オレは、その事実を『テンション』が関係していると考えた。

戦いの中で各々が持つ魂の力を高めて実力以上の力を出す。

ポップが勇気を振り絞ってハドラーに立ち向かった時が良い例だ。

そして戦いのテンションを常に維持、更に任意で高めていければどうなる?

 

「そこで用意したのが『不思議なタンバリン』だ」

 

「本当に効果あるんでしょうね?……まぁ、アナタが用意したものだから問題ないのでしょうけど…」

 

レオナ姫は疑わしげにオレを見た。

しかし直ぐに頭を振って言った。

 

「それよりもタケル、この腕輪は何だよ?皆も姫さんも付けてるけど」

 

「ん?……ああ、ちょっとした保険だよ」

 

「あん?何のことだよ。歯切れワリィな」

 

「まぁ、気にするなって」

 

流石に死ななければ発動しないとは言えない。

『メガザルの腕輪』は言った通り本当に保険なのだ。

発動しなければそれに越したことはない。

 

「……それにしてもダイ、遅いな…」

 

「……ダイ君」

 

ポップとレオナ姫は改めて水面を見つめた。

その時だった。

湖を囲むように立つ木々、森がざわめき小鳥達が一斉に飛び立った。

水面が泡立ち魚達もビチビチと暴れ始める。

まるで何かに怯えているかのように。

 

「なにか……なにか来ます…恐ろしい何かが…」

 

突然メルルが膝をついた。

顔から血の気が引き頭を抱えて怯えている。

 

「な、何っ?」

 

「何だよこれ?」

 

グオオオオオオオオンッ!!!!

 

大気を揺らす咆哮が響き渡る。

この咆哮、覚えがある。最近聞いたものによく似ている。

……ドドドドドドドッ!!!!

木々を薙ぎ倒しながら猛然と轟音が近づいてくる。

 

「……ドラゴン?」

 

その姿を見たポップが唖然と呟いた。

凄まじい圧力を放つドラゴンが二頭。

その背には何者かが騎乗している。

 

「上からも来るっ」

 

「ヒャッハァッ!!!」

 

金色の鱗に覆われた大蛇のような長大な体躯が見えた。

スカイドラゴンが急降下してくる。

やはり背には何者かが乗っていた。

誰が見ても只者ではないと理解できるプレッシャー。

ベーシックな竜に跨った碧い肌の魔族の戦士。

ガメゴンロードを従えるトドの獣人の戦士。

そしてスカイドラゴンを駆る鳥人の戦士。

正に『地』『海』『空』の三界を支配する覇者たちだ。

今、タケル達の前に最強のドラゴンライダー達『竜騎衆』が現れた。

タケルはこの事態に脳の処理が追いつかない。

 

「……どうなってるの」

 

そして思わずそんな言葉を漏らしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:208

防御力:338

 

どうぐ

E:メタルキングの槍

E:メタルキングよろい

E:メタルキングヘルム

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

世界樹のしずく

世界樹のしずく

世界樹のしずく

賢者の石

メタルキングの剣

メタルウィング

 

メタルキングよろい +120(炎や吹雪を防ぐ)

メタルキングヘルム +60(マヌーサ、メダパニ、ザキ系などの呪文を防ぐ)

メタルキングの盾  +70(あらゆるダメージを軽減)

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ ベホマ

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト バイシオン 

スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

バーハ フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

 




今回は前回よりも更に短いです。
本当は竜騎衆との戦いに入る予定だったのですが…すいません。


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本日の目玉商品『オーロラの杖』

大変遅くなって申し訳ないです。
かと言って復活したわけではないのでarcadia様の『長い更新停止から不死鳥のように復活した良作』には載せないでくださいw
別に良作ではないので…。それに恥ずかしいし…。


「空戦騎っ、ガルダンディーッ!!!」

 

「海戦騎、ボラホーンッ!!」

 

「陸戦騎、ラーハルト、推参…」

 

最強の怪物、ドラゴンを駆る竜騎士の戦士達が名乗りを上げた。

 

「ま、魔王軍かっ!?ハドラーの野郎の手下かっ!!」

 

竜騎士達に警戒しながらポップが叫ぶ。

その言葉に碧い肌の魔族、ラーハルトと名乗った戦士はフッと嘲笑した。

 

「な、何がおかしいんだ!」

 

「勘違いするなよ雑魚が…、我らはたしかに魔王軍。しかしハドラーなどの下に付いた覚えはない」

 

スカイドラゴンの上から鳥人ガルダンディーが見下すように嗤う。

 

「違いねぇ!俺達に命令できるお方は唯一人っ!」

 

トドの獣人ボラホーンも同意して巨大なイカリを地面に打ち付けた。

 

「そう!我ら竜騎衆を束ねる将、バラン様のみよっ!!」

 

竜騎衆、魔王軍の六つの軍団の一つ。

超竜軍団に属する選りすぐり最強の竜騎士達だ。

今まで戦ってきた軍団長にも決して引けは取らないだろう。

 

 

タケルは困惑しながらも敵を観察した。

既に覚悟していたことだ。動揺してどうする。

今まで何度も自分の識っている歴史と異なる事は起こってきたのだ。

今更尻込みしてどうする。

タケルはメタルキングの盾と槍を交差させるように構えると敵を睨みつける。

 

「バラン…っ、それが超竜軍団の団長の名前…っ」

 

「そうともっ!最も貴様らが知るのは名前だけだっ!あの方の姿を見る事はねぇだろうがなぁっ!!」

 

そう言うやいなやガルダンディーは巧みにスカイドラゴンを駆り、此方に向かって強襲してきた。

 

「来るぞっ!!みんな油断するなっ!!」

 

「へっ、こんな雑魚どもオレとルードだけで充分よっ!テメエらは手を出すなよっ!!」

 

「ふん、またいつもの悪い癖がでよったか…」

「構わん、好きにやらせてやれ…幸いディーノ様も居らっしゃらないようだしな」

 

ガルダンディーの独断専行に他二人は呆れた声を出すが、止める様子も助太刀する様子もない。

明らかにオレたち人間を見下しているのだ。

ラーハルトの言葉から、察するに奴らはディーノつまりダイの力のみで今までの戦いを切り抜けてきたと思っているのだろう。

そこは腹が立つが全否定出来ないのも事実。それにこれはチャンスだ。

各個撃破はむしろ好都合だ。奴が実力を発揮する前に確実に仕留める。

 

「みんな、一気にけりをつけるぞっ!!!」

 

タケルは用意しておいた不思議なタンバリンをリズミカルに打ち鳴らす。

シャカシャカと鳴らしバンバン、ババンと軽快にリズムを取る。

 

「ケッ、何を血迷ってんだっ、ルードォ、構わず突っ込めーーっ!!」

 

ガルダンディーはタケルの行動に意味を見出せずにバカにしたように嗤う。

スカイドラゴンに突撃命令を出すと更にスピードを上げた。

 

「ポップ君、同時に行くわよ」

 

「おう……行くぜっ!」

 

「「ベギラマッ!!!」」

 

 

「ギャハハ、無駄無駄ァ!!!ルードッ!!!」

 

脆弱な人間の呪文などとガルダンディーは叫ぶ。

スカイドラゴンは敵の呪文を相殺、いや呪文ごと飲み込もうと凄まじい炎を吐き出した。

ガルダンディーは勝利を確信したように口元を釣り上げる。

これまでスカイドラゴンの炎によって何人もの人間の戦士を焼き殺してきたのだ。

今回も三人まとめてあの世行きだ。

しかしその予想は呆気無く裏切られることになった。

そして目の前の敵を見下し油断した代償は、相棒の命と自分の翼だった。

 

「ぎ、ぎえええええええええええぇっ!!!!!?」

 

テンションを高めた二人のベギラマは勢いを増して炎のブレスと衝突。

拮抗したのは一瞬だった。

レオナ姫のオーロラの杖の宝玉が輝き呪文の威力を更に激増させた。

二人のベギラマは炎のブレスを食い破り、その威力をも巻き込みながら進んでいく。

翼だけで済んだのはスカイドラゴンが身を挺してガルダンディーを庇ったおかげだろう。

その大蛇の如き体躯を巻きつけて炎の直撃を防いだのだ。

最も、咄嗟の出来事故に全身を護るには至らなかったが。

 

「ば、バカな…、そんな馬鹿な……ル、ルードオオオオォ……ガフッ!!_」

 

その巨体を炭化させ煙を上げながら地に落ちていく相棒の姿。

それが空戦騎ガルダンディーの見た最後の光景だった。

ガルダンディーはタケルの放ったメタルウィングによって両断され絶命した。

それはテンションアップ+バイキルトによる凄まじい攻撃だったのだ。

 

「ガルダンディーッ!」

 

「バカな…、いくら三人がかりとはいえガルダンディーをあっさり…」

 

「三人がかり?残念だったな…」

 

タケルの言葉にラーハルトは感づいたようだがもう遅い。

 

「ハッ、ボラホーン!!」

 

「はぐりん!!!」

 

ラーハルトの言葉にボラホーンが振り向く。

 

その先には『さまようメタルキングよろい』ではなく、メタルキングの武具で完全武装したタケルの相棒が迫っていた。

 

「う、うおおおおおおっ」

 

苦し紛れだったのだろう。

それでも咄嗟に自身に活を入れて巨大なイカリを振るう。

しかしその一撃は虚しく空を切り交差するようにメタルキングの剣の刀身がボラホーンの肩に吸い込まれた。

まさに会心の一撃だった。

伝説の武具をも上回る凄まじい切れ味。

それはボラホーンの巨躯を無慈悲に袈裟斬りにした。

世界樹の加護による補正はタケル自身に留まらなかったのだ。

最も、はぐりんが受けた補正は確りと命令を聞くようになっただけだが。

 

「よっしゃ!これで後一人だ!」

 

ポップは得意気に鼻を鳴らした。

しかしラーハルトは余裕な態度を崩さない。

 

「ふ…、なるほど…伊達に修羅場を潜り抜けてきたわけではないようだな…非礼を詫びよう」

 

ラーハルトは静かにドラゴンから降りると自身の武具に巻いていた布を外していく。

禍々しい灰の光を放つ槍が顕になる。

 

「な、なんだよ…やけに素直だな……降参する気になったのかよ」

 

「ポップ、降参する奴が槍を取り出したりするか?」

 

「……言ってみただけだっつの」

 

「でも本当に戦うつもり?私達を相手に貴方一人で?」

 

「……笑止、俺をさっきの二人と同じように思うなよ。そもそも貴様ら如きを片付けるのに俺一人で充分」

 

「へっ、ハッタリだぜ」

 

「ハッタリではない…。見たところ貴様らは全員、呪文を主力としているようだが…」

 

「だ、だから何だというの?」

 

「その槍、ロン・ベルクのものか…」

 

「ほう、識っているものがいたか…人間の分際で博識だな」

 

「タケル?あの槍が何だってんだ」

 

「簡単に説明するとヒュンケルの鎧の魔剣の槍バージョンだろう」

 

「何ですってっ!!」

 

「つまり…」

 

―鎧化っ!!!

 

解答は直ぐだった。

ラーハルトの声と同時に槍の装飾が分解され担い手の身体を覆っていく。

額当て、軽鎧、ガントレットそして具足。

次々と装着されてく最高の武具。それはあらゆる呪文を弾く最高の鎧。

 

「マジかよ…、だったら奴に攻撃呪文は…」

 

「ああ、雷撃系呪文以外は通じないだろうな…。」

 

タケルは絶望を振り払うように吐き捨てた。

 

「最早きさまらを雑魚と侮るまい…最初から全力で行くぞっ」

 

次の瞬間、ラーハルトの姿がその場から消える。

 

「くっ、ポップっ!!!」

 

「遅いっ!!」

 

ラーハルトは魔槍の切っ先をポップの喉もと目掛けて突き刺した。

ギィンッ!!!!

 

「な、何だとっ!!!」

 

ラーハルトが驚愕の声を上げる。

タケルだった。

飛翔呪文によって光の矢と化したタケルが間一髪、ラーハルトの槍を受け止めていた。

こうなることを予測して予めピオラを唱えていたのだ。

そして星降る腕輪の効果もあってか、タケルのスピードは一時的にラーハルトを超えていたのだ。

 

「貴様、一体…」

 

「はぐりん!ポップを」

 

タケルの命令を受けてはぐりんはポップを後方に退かせる。

 

「すまねえ」

 

「…ち、モンスターの癖に人間に従うのか…」

 

ラーハルトの殺気を受けてはぐりんが萎縮する。

 

「お前の相手は俺だ!」

 

タケルは相棒を庇うように剣を振るった。

ギリギリと鍔迫り合うが徐々にタケルは抑えこまれていく。

負けじとメタルキングの盾を手放し両手持ちにして挑むが敵わない。

バイキルトで強化して尚、ラーハルトの力はタケルを上回っていたのだ。

 

「最も初めに片付けなければならないのは、どうやら貴様のようだな」

 

「くっそったれ…」

 

「死ねっ!!!」

 

「させるか!!」

 

ポップのベギラマがラーハルトに向かって進む。

 

「馬鹿め」

 

ラーハルトは無視してタケルに集中する。

攻撃呪文に構う必要など無いのだ。

ベギラマはラーハルトの背に直撃したが、ラーハルトはダメージを受けなかった。

ベギラマの熱線を鎧が完全に遮断しているのだ。

 

「これまでだな。確かに良質な武具を備えているようだが使い手がこれでは宝の持ち腐れ、恐るるに足らんっ!!」

 

ラーハルトは巧みに槍を操ると鍔迫り合う状態から流れるようにメタルキングの剣を絡めとり弾き飛ばした。

 

「…っ!!?」

 

「そらっ!丸腰でどう防ぐっ」

 

「くっ、スカラ!」

 

タケルは腕をクロスさせて頭と心臓を護るように身を捩った。

防御に全神経を集中させながらスカラを唱える。

凄まじい激痛が襲ってくるが、痛みに喘いでいる暇はない。

鎧を纏ったラーハルトを退けられないようでは、この先の戦いについていくことなど出来ないからだ。

しかし現実は非情だ。気持ちだけでは実力不足の差を簡単に埋めることは出来なかった。

 

「タケル!」

 

「来るなっ!奴の槍の間合いに入ると殺されるぞっ」

 

こんなことなら俺もメガザルの腕輪を装備しておけば良かった。

タケルは確実に迫る死に抗いながら、そう考える。

ラーハルトは桁違いに強い。まさか自分が直接戦うことになるとは思わなかったが、このスピードと槍術は反則だ

先程、ポップが狙われた時は客観的に見ることが出来たから対応できたに過ぎない。

しかしこうやって眼前に迫られると影を追うので精一杯だ。

ラーハルトは虚実を混ぜながら確実に防御の隙間を抜いてくる。

タケルは何度も必死にベホイミを使い続けるが、回復が追いつかない。

刺されては回復、刺されては回復、刺されて刺されては回復、まさに拷問だ。

 

 

ポップとレオナ姫もどうにか隙を見つけようとするが、タケルとラーハルトの距離を考えると目眩ましを目的とした呪文も使えない。

体制を立て直そうにも相手が許してくれない。

既に持ち替えたメタルキングの槍もメタルウィングも弾き飛ばされ絶体絶命だ。

 

「よく持ちこたえたがこれで終わりだ!!」

 

ラーハルトの槍の穂先が正確にタケルの眉間に迫る。

その時だった。

はぐりんが凄まじい速さで割り込んできたのだ。

 

「何っ!?コイツッ…」

 

「はぐりんっ!!」

 

はぐりんは恐怖に表情を歪めながらラーハルトと対峙する。

 

「助かったよ!サンキュー!」

 

「おのれ…、怪物が人間の味方をするなど…巫山戯るなッ!!!」

 

凄まじいまでの神速の連突。

常人、達人関わらずに目の前の暴風の如き槍の前では誰もが無残に散るだろう。

しかし、はぐりんの場合は…。

 

「何だとっ」

 

ラーハルトの凄まじい殺気と攻撃に萎縮して動けないものの、はぐりんは全くダメージを受けていなかったのだ。

 

「今だっ!!!」

 

タケルは道具袋から取り出したある物をラーハルトに向かって投げる。

 

「小賢しい」

 

ラーハルトは飛んできた物体を槍で両断する。

 

「それで詰みだ」

 

「な、なんだこれはっ!!?」

 

斬られた球体は無数の糸に分かれてラーハルトを襲う。

 

まだらぐもの糸、敵の動きを拘束する強靭にして柔軟な糸に絡め取られて抜け出せる者などいない。

 

「勝った…っ」

 

後は全員にバイキルトをかけてテンションを高めて一斉に攻撃すればいくらラーハルトといえど一溜まりもないだろう。

しかしラーハルトは甘くなかった。

 

「甘いっ!!」

 

次の瞬間、ラーハルトを覆っていた鎧が弾け飛んだ。

 

「な、なにぃっ!!?」

 

なんとラーハルトは鎧化を解除することによって難を逃れたのだ。

そして凄まじい速さで糸の隙間をすり抜けて距離を取った。

 

「嘘…だろ?」

 

ラーハルトは忌々しそうに糸に絡まれた鎧の魔槍を軽く振った。

どうやら糸が邪魔して巧く鎧化が出来ないのだろう。

 

「まさかここ迄とは…、この糸のせいで暫くは鎧化は出来んな…っ!!」

 

「タケル…こいつはやべえぞ…」

 

「わかってる。確かにこれで呪文は効くけど…」

 

「ふん、当たらなければどうということはない…」

 

ラーハルトは何処かで聞いた台詞を吐くと、槍を構えた。

その時だった。

 

「さぁ、覚悟しろ……むっ!?」

 

湖の水面が揺れ泡立つ。

そして激しい水柱が上がった。

 

「あ、ああ…っ!?」

 

「漸く出て来たか…」

 

「遅えよ」

 

「「「ダイ!!」」」

 

額に竜の紋章を輝かせた勇者が水面から飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 



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本日の目玉商品『ドラゴンスレイヤー』

今年初めての投稿です。
今年もよろしくお願いします。


「ダイ!」

 

ダイが戻ってきた。

それは俺達全員に確かな活力を与えてくれる。

正に無くてはならない太陽のような存在だ。

ダイはその瞳に力を漲らせてラーハルトを睨みつける。

その額に竜の紋章を輝かせていた。

 

どうやって…。まさか自力で竜の紋章を発現させたのか?

本来、竜の騎士は成人するまで紋章の力を自在に制御できない。

これは人間の、母≪ソアラ≫の血がそうさせたのか…。

 

「おお…っ!あの紋章はまさしくっ!」

 

ダイの勇姿にラーハルトが感嘆する。

 

「うむ、バラン様の…っ」

 

ダイは身を翻する、軽やかに地面に着地する。

 

「ダイ!こいつを受け取れ!」

 

タケルは用意しておいた武器をダイに向かって投げる。

武器は吸い込まれるようにダイの掌へと収まった。

ダイの眼前には真紅に輝く刀身があった。

 

「これは…っ!?」

 

「そいつは『ドラゴンスレイヤー』、竜殺しの魔剣だっ!」

 

「ド、ドラゴンスレイヤー……っ!!?」

 

ドラゴンキラーを豪傑の腕輪によって強化した対竜用の剣。

竜族に対して絶大な威力を誇る正に今回の戦いには、うってつけの剣だった。

 

「よぉし……っ!?」

 

ダイは剣をラーハルトに向けて臨戦態勢へ移行した。

しかし、そこでダイの動きが止まる。

なんと、ラーハルトが武器を下ろし膝を折って頭を垂れていたのだった。

先程まで戦場を支配していた殺気と敵意は鳴りを潜めている。

陸戦騎ラーハルトは唯静かに目を閉じていた。

 

「な、なんだっ!?何の真似だっ!?」

 

ダイは敵の態度に戸惑いの声を上げた。

 

「お初にお目にかかります!竜の騎士の後継者様!我が将の命によりお迎えに馳せ参じました……ディーノ様」

 

ラーハルトは、臣下の礼をとる騎士の様に傅く。

 

「竜の騎士、だってっ!?それにディ、ディーノ…っ!?」

 

「…、失礼しました…。今は勇者ダイと名乗っておられたか…」

 

ラーハルトはゆっくりと立ち上がるとダイの顔をじっと見つめる。

タケル達と対峙していた時からは考えられない穏やかな表情だ。

 

「よく似ておられる…。お父上に…」

 

ラーハルトの爆弾発言にパーティーは目を剥いた。

 

「父親、だって…っ!?お、俺に父親が…っ」

 

「はい…名はバラン!我ら竜騎衆を束ねるこの時代の真の竜の騎士。それが貴方のお父上なのです。そして私の名はラーハルト、バラン様の命により、そのご息子である貴方をお迎えに参上しました」

 

「な、なんだってぇっ!?」

 

驚愕の事実にダイ達は目を剥いて驚いた。

ラーハルトは語った。

本来なら竜の騎士は一人。同じ時代に複数の竜の騎士は生まれない。

 

「そ、その話なら知っているよ。竜水晶から全部聞いた」

 

「はい」

 

しかし現代において例外が起こった。

この時代の真の竜の騎士バランは一人の女性を愛した。

その女性はやがて子を宿し生まれたのが、

 

「そ、それが…俺?」

 

「はい。十一年前に生き別れて以来、随分と行方を探し、遂には…」

 

赤ん坊だったダイの小舟が荒れた大海に長時間耐えられる筈もない。

とうとう我が子を見つけることが叶わなかった父親の嘆きは察することも出来ないだろう。

 

「しかし、こうして貴方は生きていた。バラン様の、あの喜びようは…」

 

「……竜の騎士、その人が俺の父さん?」

 

「はい」

 

「ま、待てよ!」

 

「ポップ?」

 

「どうして、どうしてお前らが迎えに来て父親は迎えにこないんだよ!?十年以上も行方を探していた息子が見つかったんだろ!?」

 

ポップが最もな疑問を口にした。

大切な我が子を部下に任せて今、自身は何をしているのだ。

我が子以上に大事な要件でもあるのか?

 

「誤解のないように言っておく!バラン様は自ら迎えに出向こうとしたが、我らがお諌めしたのだ!バラン様は先の戦いで負傷しておられる。命に別状はないが決して軽いキズではない。その為、我らがこの場に参上したのだ」

 

バランは現在、アルキードにある、竜の騎士の傷を癒やすという泉で療養中だ。

混血であるダイとは異なり、純粋な竜の騎士であるが故にである。

 

「聞いてもいいか?」

 

「何なりと」

 

ダイはラーハルトの眼をじっと見て言った。

 

「父さんは、俺の父親は今、やっぱり魔王軍に?」

 

「はい、超竜軍団の団長にして我ら竜騎衆を束ねる竜騎将であらせられます」

 

 

その言葉にダイの眼に鋭さが宿る。

予想はしていた。しかし信じたくはなかった。

まさか生き別れの父親が魔王軍の軍団長だったとは…。

ダイによって大切な者たちを傷つけた許せいな者達。

デルムリン島の怪物たちやブラスじいちゃん。

恩師であるアバン先生。

ダイの脳裏には魔王軍によって傷つけられ殺された者達が過った。

小さな勇者の肩がわなわなと震えた。

 

「さあ、ディーノ様。今こそ真の竜の騎士の使命にお目覚め下さい。お父上もお待ちです。我らと共に人間どもと戦いましょう」

 

ラーハルトはダイへ手を伸ばして、

 

「ふ、ふざけるなっ!!」

 

冗談ではない。

ダイは力の限り咆えた。

 

「俺が、俺が魔王軍に?本当の名前はディーノ…?ち、違うっ!」

 

ダイはラーハルトの手を払いのけて叫んだ。

 

「過去の事なんて関係ないっ!俺は人間の味方だ!俺は勇者ダイだっ!!!」

 

「ディーノ様…」

 

ラーハルトは目を伏せる。

主であるバランの息子に槍を向けるなど断じて出来無い。

それこそ、バラン本人からの勅命でも無い限り…。

しかし、ここに来て既に自分以外の竜騎衆は全滅。

ラーハルトは無言で物言わぬ屍とかした同士を見た。

褒められた人格ではなかったが、共に同じ人物を主として幾つもの戦場を共にした同士だった。

手ぶらどころか失っただけだ。なんという無様。

 

「ご無礼をお許し下さい」

 

ラーハルトは決断した。

主の息子に槍を向ける覚悟を。

 

「ダイ!来るぞっ!!!」

 

ラーハルトが空高く跳躍すると同時にタケルは声を上げた。

同時にタケルは、はぐりんを掴むと呪文を唱える。

瞬間移動呪文だ。一筋の光線と化したタケルがラーハルト目掛けて突撃する。

いくらラーハルトでも空で自在に動けない。

タケルはラーハルトの言葉に耳を傾けながらも脳内でその後の展開をシミュレートしていたのだ。

ラーハルトの次の行動を。

即ちダイと決裂した後、どのような行動に出るか。

そのまま引き下がる事は有り得ない。それがタケルが導き出した答だった。

自分を除いて仲間と竜は全滅、そして何が有ったかは知らないがバランは負傷しているという…。

 

(短期決戦の勝負に出るはずだ)

 

ダイへの負傷を最小限に抑えて他の邪魔者を排除するという行動に。

即ち最大の必殺技での奇襲だ。

ラーハルトは凄まじい勢いで槍を頭上で回転させる。

 

「受けろ!陸戦騎最強の一撃を!!」

 

凄まじい闘気が槍の回転と共に高まり必殺の一撃へと昇華していく。

 

「やらせるか!!」

 

奇襲には奇襲をタケルの移動先、それはラーハルトのちょうど頭上だった。

 

「な、何ぃっ!!!?」

 

ラーハルトは完全に無防備だ。

呪文に対して無敵を誇る鎧は剥がされ頭上をも奪われている。

タケルは自身が関わってしまった責任を取るべく覚悟を決めた。

その両手にそれぞれ異なる呪文が生み出される。

 

喰らえ!

 

タケルの右掌から真空呪文が唸りを上げる。

真空系呪文最強のバギクロスだ。

真空の渦が周囲の空間を巻き込むように引き裂きながら竜巻を生み出す。

 

「うおおおおおおおぉぉっ!!?」

 

タケルのイメージによってバギクロスはラーハルトの自由を奪うようにその身に巻き付き食い込む。

ブシュリ、ブシュリ!と鍛えられた魔族の肉体が裂ける。

しかしラーハルトも歴戦の戦士。槍を更に勢い良く回転させていく。

 

「な、なんだと!?」

 

タケルも驚愕した。

まさか、あの魔槍でバギクロスの竜巻を収めようというのか?

 

「そうはさせない」

 

タケルは左の呪文を開放する。

それは火炎系最強の呪文メラゾーマだった。

光熱を帯びた巨大な炎球は竜巻に纏わりつくように引火する。

 

「こ、これは…っ!?」

 

そこに生み出されたのは正にファイヤーストームだった。

ゴオオオオオッ、と周りの草木を焼き払いながら火炎竜巻は唸りを上げる。

 

「や、やった…あの鎧も無いんだ…あの野郎も…」

「ええ、これで…」

 

ポップとレオナは巻き込まれなように走りながら火炎の中心の人影を見つめる。

そこでは依然としてラーハルトの身が焼かれていることだろう。

流石の強敵も一溜まりもない筈。

ラーハルトは強敵だが、ヒュンケルのような不死身を思わせる生命力は無かったはずだ。

 

その時だった。

 

「な、なにか聞こえないか?」

 

ダイは火炎の中心を見て呟く。

一同は耳を澄ますが聞こえてくるのは、火炎の渦によって焼かれていく音だけだ。

 

「気の所為じゃないか?それよりも、そろそろ鎮火したほうがいいんじゃないか?」

 

「……いや!」

 

ダイは剣を構えて警戒を強めた。

その耳には確かに聞こえていたのだ。

ヒュンヒュンと唸る様な風切音を…。

 

「あ、ああ……、ああぁ!?」

 

ポップが目を剥いて驚く。

その先にはタケルによって生み出されたファイヤーストームが徐々に小さくなっていく光景だった。

 

「いや一箇所に…一点に集中している!?」

 

-オオオオオオオオオッ!!!!

 

炎が一箇所に集まって…、そこには全身に火傷と裂傷を多いながらも槍を回転させている陸戦騎の姿だった。

その魔槍は凄まじいまでの光熱によって唸りを上げた。

 

「みんな逃げろっ!!!!」

 

タケルが咄嗟にあるものを取り出したと同時に、その絶望の一撃は放たれた。

 

「ハーケンディストールッ!!!!!!」

 

バギクロスとメラゾーマによって生み出されたファイヤーストーム。

その力を乗せた奥義が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

レベル28

 

さいだいHP:165

さいだいMP:624

 

ちから:71

すばやさ:177

たいりょく:82

かしこさ:308

うんのよさ:256

 

攻撃力:208

防御力:338

 

どうぐ

E:メタルキングの槍

E:メタルキングよろい

E:メタルキングヘルム

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

世界樹のしずく

世界樹のしずく

賢者の石

メタルキングの剣

メタルウィング

 

メタルキングよろい +120(炎や吹雪を防ぐ)

メタルキングヘルム +60(マヌーサ、メダパニ、ザキ系などの呪文を防ぐ)

メタルキングの盾  +70(あらゆるダメージを軽減)

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ ベホマ

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト バイシオン 

スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

バーハ フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 




仕留めたつもりが逆に大ピンチ。
ラーハルト強すぎ。
オリ主がちょっと知恵を絞った程度でどうにかなる甘い相手ではないかもしれませんねw
ドラゴンスレイヤーまったく使ってないしw


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本日の目玉商品『上やくそう』

漸くラーハルトもとい竜騎衆戦終了です(^_^;)


「ハーケンディストールッ!!!!!」

 

ラーハルトの最大の秘技が戦場を蹂躙する。

台風の如き猛威がパーティーを吹き飛ばす。

上空に飛んでいたタケルとはぐりんは難を逃れたが、他のメンバーは無防備にラーハルトの奥義を受けることになった。

ダイは竜闘気を全開にしてその場に踏みとどまる。

しかしポップとレオナは、

 

「うおおおおおああああああっ!!?」

「きゃあああああああっ!!?」

 

ラーハルトの絶技が引き起こした暴風に引き離され吹き飛ぶ。

 

「レオナ!ポップ!!」

 

ダイは急いで二人のもとに向かう。

しかしどちらに?

 

「ポップは俺が!ダイは姫を!」

 

タケルがそう叫びながら飛翔呪文でポップの方へ飛ぶ。

 

「分かった!」

 

タケルの声にダイは弾かれたように飛び出した。

小さな身体からは考えられないような力強い跳躍によって一足飛びにレオナの側まで辿り着く。

ダイはレオナの身体を庇うように自身の身体を盾とする。

ブシュリ、ブシュリとダイの身体から鮮血が舞う。

 

なんて凄まじい技なんだ…っ!!

 

鉄壁の竜闘気の防御を抜き自身の身体にダメージを与える。

クロコダインの獣王痛恨撃でさえ耐えたというのに…っ!

 

ダイはその痛みに耐えながら陸戦騎の猛威から抜け出すべく身を翻し、地面に降り立った。

同時にポップを回収したタケルがルーラによってダイの側に現れる。

 

「ほう、流石にこれまでの戦いを潜り抜けてきただけはあるな」

 

雑魚と侮ることはない。

慢心を捨てて相対したが、まさかここまでのダメージを受けるとは…。

ラーハルトは自身の纏っていた鎧を一瞥する。

斑蜘蛛の糸によって絡め取られた鎧は、糸を除かない限り装備はできまい。

 

敬愛する主の息子、そしてその仲間達の強い闘志が伝わってくる。

ニンゲンが竜の騎士のチカラを利用して切り抜けてきたのだと思っていたが…。

しかし認めることなど出来無い。

ニンゲン如きにそれ程のチカラが有るなどと…。

目の前の敵と成り得るのはタケルと不本意だがダイのみ。

ポップとレオナは負傷によって意識を失っている。

ダイとタケルは戦意を更に高めて二人を庇うように前に出てきている。

ラーハルトは脳裏に忌まわしき記憶が過る。

 

-大勢の人間に殺される魔族の女性と人間の男性、

 

ニンゲンとはそんな“種族”のはずだ。

断じて身を挺して他人を護る輩ではない。

ラーハルトは槍を構えながら再び口を開いた。

 

「……ディーノ様、今一度お考え直し下さい。どうか俺と共に…」

 

「な、何度も言わせるなっ!嫌だって言ってるだろうっ!」

 

「ディーノ様、こやつらは竜の騎士のチカラを利用しているだけに過ぎません。マンに一つ、例え魔王軍を滅ぼすことが出来たとしても、その後で奴らは貴方を迫害するでしょう…っ、そうなった時、貴方の心は耐えられますかっ!?」

 

「……うっ」

 

-近づくな化物!!

 

-こ、こわい…、お兄ちゃんたち怖いっ!!!

 

ベンガーナの街での出来事が思い出さる。

人々の自身を見る視線がまるで鋭い刃物のように身体中に突き刺さる感覚。

痛みはないが、酷く冷たかったことを覚えている。

 

ダイはラーハルトを見た。

敵対する魔王軍の戦士だ。

しかし自分を見るその眼は穏やかであり、ベンガーナの人々とは違う温かみを感じる。その視線の先には未だ見ぬ父親の影が見え隠れした。

 

「ふ、ふざけんな!」

 

そんなダイの迷いを振り払ったのはポップの声だった。

振り返るとタケルのベホイミによって復活したポップが迷いのない眼でラーハルトを睨みつけていた。

同時進行でレオナの治療も進んでいるようでダイは安堵する。

 

「少なくても俺たちは死んでもそんなコトするもんかよっ!ダイは俺達の大事な仲間だぜっ!利用だとっ!?迫害だと!?そんな事させっかよっ!!!」

 

「ポップ…」

 

ポップの熱い言葉に目頭が熱くなる。

 

「そのとおりよ…、他の誰がどう思おうと私達は最後までダイ君の味方よ」

 

仲間達の意思は一つだった。

 

「そのとおりだ!俺達は絶対に負けないっ!ラーハルト、何度言われようと俺は人間の味方だ!勇者ダイだっ!」

 

ダイはドラゴンスレイヤーを逆手に構えた。

同時にダイの意思に呼応するように額の紋章が光を放つ。

 

敵とはいえ自身を気遣い説得を続けたラーハルト。

そして人間達の自分を見る眼と態度。

 

それらはダイの心に影を落とした。

しかし仲間達の存在が影を吹き払ったのだ。

もう迷いはなかった。

 

「……、しまっ!?」

 

ラーハルトが気づいた時には遅かった。

眼を焼くような閃光が紋章から放たれる。

それは正しく竜の騎士の固有技“紋章閃”だった。

額から放たれた光線は凄まじい速さでラーハルトに直進する。

ラーハルトが反応出来たのは超一流の戦士故か、歴戦の戦闘経験からか。

肩を焼かれながらも、どうにか光線を回避する。

紋章閃はラーハルトの真横を通り過ぎ、遥か後方の岩山を貫いて見えなくなった。

なんという威力っ、

 

「今だっ!タケル!ポップッ!!」

 

ダイの声に弾かれるように二人は動いた。

 

「「ヒャダルコッ!!!」」

 

ラーハルトの移動した足元に二人の放った氷系呪文が縛鎖のようにその足を拘束する。

 

「アバンストラッシュッ!!!」

 

そこに間髪入れずに奥義が炸裂した。

閃光の如き斬撃がラーハルトの視界を埋め尽くした。

 

 

 

 

 

 

そして、

 

「何故ですか…」

 

ラーハルトの頭は理解できないナニかに埋め尽くされていた。

自身の身体を見る。

ダメージは有る。しかし自分は五体満足で生きていた。

鎧の魔槍を失った今、竜闘気を収束した一撃に耐えられる道理はなかった。

ラーハルトの身体にはアバンストラッシュによって穿たれた傷はなく、そのダメージを肩代わりしたかのようにその後ろが更地と化していた。

アバン流における“空”の技の特性だろう。

 

ダイは悲しそうな、それでいて寂しそうな表情でラーハルトを見ていた。

 

「ディーノ、さま…」

 

「分かるんだ…、あんたの言ってること、きっと間違いじゃないんだって…」

 

ラーハルトの言い分、そして自分の身を案じる父親とその部下。

ラーハルトは最後までダイだけには殺意を向けはしなかった。

ダイは気づいていたのだ。

ハーケンディストールの威力に…。

ダイがレオナ達庇った瞬間、ラーハルトは絶妙の力加減によって技の威力を分散させていたことに。

最後までダイを気遣いながら戦っていた事に。

もしもラーハルトを斃してしまえば絶対に後悔する事に。

 

「それでも俺は人間を…、いや仲間を信じるよ」

 

ダイは額の紋章の輝きを消して笑顔でそう言った。

その言葉にラーハルトは唖然として、

 

「……ソアラ様」

 

それは紋章の輝きではない。太陽の輝きを感じてしまう。

 

「……え?」

 

「……申し訳ありません、バラン様…」

 

ラーハルトの手から槍が滑り落ちた。

陸戦騎の闘志を挫いたのは竜の力か、それとも他の何かなのか。

ラーハルトは身体の力を抜くとその意識を手放した。

 

 

 

凄まじ過ぎる強敵だった…。

知ってたつもりだったのにラーハルト、とんでもない強さだった。

原作のヒュンケル、よく一人でラーハルトに勝てたな…。

タケルは背筋を流れる冷や汗に身体を震わせながらも、ラーハルトに駆け寄るダイの後ろ姿を見つめていた。

まさか“アバンストラッシュ”を外すなんて…。

結局ラーハルトを降したのは、竜の力じゃなくて“ダイ”のチカラだった。

本当に大した奴らだよ…。

タケルは“道具袋”から“上やくそう”を取り出しながらダイの後を追って駆け出した。

 

「あ、レベルアップしてる」

 

ラーハルトもとい竜騎衆との戦いの戦果である“つよさ”を確認しながらも次に襲い来るであろう脅威にタケルの憂鬱な心は晴れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

レベル31

 

さいだいHP:177

さいだいMP:645

 

ちから:72

すばやさ:181

たいりょく:88

かしこさ:311

うんのよさ:256

 

攻撃力:210

防御力:341

 

どうぐ

E:メタルキングの槍

E:メタルキングよろい

E:メタルキングヘルム

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

エルフの飲み薬

エルフの飲み薬

世界樹のしずく

世界樹のしずく

賢者の石

メタルキングの剣

メタルウィング

 

メタルキングよろい +120(炎や吹雪を防ぐ)

メタルキングヘルム +60(マヌーサ、メダパニ、ザキ系などの呪文を防ぐ)

メタルキングの盾  +70(あらゆるダメージを軽減)

 

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ ベホマ

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン マヒャド

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール

バイキルト バイシオン 

スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

バーハ フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 




原作ヒュンケル、どうして勝てたんでしょうw
実はもうHP1以下にならないバグが発生していた可能性が…っ!?

失礼しました(・。・;

ラーハルトを降したのはダイの心ということにしておいて下さい。
描写が難しいですね…。

ヒュンケルの出番がどんどん無くなっていく…。
長兄ヒュンケル、結構好きなんですが…。


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クイーンズブレイド編
本日の目玉商品『ビキニアーマー』


番外編です。
本編を期待した方は本当に申し訳ないです。

以前、感想にあった要望に答えようと思います。
本編とは切り離してお楽しみ下さい。
以前のとはサブタイトルは違いますし、内容にも変更はありますが、良ければ見てやって下さい。



気がついたら見知らぬ場所にいた。

周りは赤い岩が並び、ドロのような沼が湯気を立てている。

 

「どこよここ」

 

俺、大江タケルは、日本に住むごくごく普通の学生だった。

それが何の因果か二次創作よろしく『ダイの大冒険』の世界にトリップ。

トリップした際に手に入れていた特別な力の事もあり、商人として生きていた。

成り行きで主人公に出会い、協力することになり、大魔王と戦うことに。

長い戦いの末、仲間たちと力を合わせて大魔王を倒し、元の商人生活に戻り…。

 

「はぁ…、魔法力をケチらずにルーラで帰ればよかった」

 

大団円の後、一度世話になった村に帰ることになり、しかしタケルはその手段を間違えたのだ。

『旅の扉』、世界各地に存在する大陸間を移動する瞬間移動の門だ。

旅の途中に発見した『旅の扉』はすぐ近くに有る。

瞬間移動呪文『ルーラ』 は便利だが、あのふわっと浮き上がった後のジェットコースターの様な感覚は遠慮したい。

タケルは『旅の扉』を利用することに決めたのだった。

 

仲間たちに暫しの別れを告げて旅の扉の放つ青い渦の様な光の中心に飛び込む。

この光の先は自分の第二の故郷の村の近くにある祠に続いている。

久しぶりに会う皆への挨拶を考えてウキウキする。

視界を覆う光は次第に収まっていき、眼を開くとそこは見慣れた風景ではなく。

 

「…で、マジでどこよ」

 

俺はアテもなく歩きながら溜息を付く。

はぐりんともはぐれてしまったみたいだし。

イカンイカン、ついつい寒いダジャレを…。

当然だが瞬間移動呪文『ルーラ』は既に試した。

しかし効果はなかった。発動はするもの、ふわりと自身の体が一瞬浮くだけ。

『不思議な地図』にも目を通してみた。

結果、真っ黒になっていて何も記されていなかった。

 

嫌な雰囲気だ。

周囲の岩は勿論、温泉のような泥沼も。

そして見上げると不吉な赤黒い空。

怪物の巣窟と言われても納得が出来る場所だった。

 

「……ん、この音は」

 

俺の耳に微かに何か響いて斬る。

 

……キィン!……ギギィン!ギン!!

 

これは金属がぶつかり合う音、剣戟の音だ。

次第に俺の足は速くなる。

剣戟音は次第に大きくなり、その場所に到着。

その先では何者かが戦っており、俺はそっと岩陰から様子を伺った。

 

「……おっぱい?」

 

自分でも何を言っているのか分からなかった。

こんな陰気臭い魔物が好きそうな場所で、周りはゴツゴツドロドロだ。

なんで、なんでそんな場所におっぱいが有るのか?

そう、俺の目の前ではプルプル揺れる四つの桃があった。

 

「はぁっ!!」

 

「アハハ!この程度?相変わらず弱いなぁ」

 

二人の女戦士が剣を合わせている。

美しい金髪の美少女剣士と全身がピンク色の怪しい女戦士。

どちらも素晴らしいプロポーションだ。

マァムと同等いや、それ以上かも知れん!

俺はそんなことを考えながら二人の戦いを見守る。

 

「うん、金髪の方が好みだな…それよりも真逆ビキニアーマーとは…」

 

金髪の剣士は劣勢のようで、身体の至る所に傷が出来ていた。

身を守る鎧も損傷が激しく、片方だけだが胸部を守る部分が砕け美しい乳房が丸出しになっていた。

 

そしてピンク色の女戦士、間違いなく人間ではなかった。

時折身体を変形させて剣を躱したり、直撃してもゲル状になって無効化する。

どうみてもモンスターですね。

 

「…っ、この化物っ!!」

 

金髪の剣士がそう叫んだ瞬間、ピンクの女戦士の眼の色が変わった。

次の瞬間、凄まじい速さで間合いを詰めて相手の剣を弾き飛ばす。

 

「しまった!?」

 

剣を拾おうと手を伸ばすがもう遅い。

ピンク色の魔物は相手の頸を無造作に掴むと軽々と持ち上げる。

先ほどまでの巫山戯た態度は最早ない。

どうやら『化物』は禁句だったらしい。

 

「もういいや、アンタはもう要らない。死んじゃえ」

 

あのままでは不味い。

おっぱい、もとい少女が死んでしまう。

気が付くと俺は指先を怪物へと向けていた。

 

「閃熱呪文『ギラ』」

 

一点に収束された熱線が凄まじい速さで目標へと伸びる。

 

「……っ!?」

 

光線は少女を捉えていた怪物の腕を貫き蒸発させた。

俺は連続で閃熱呪文を放つ。

 

「何っ!?くぅっ!?」

 

次々と身体中を貫かれる怪物。

怪物は俺を睨みつけるも、不利と悟ったのだろう。

身体をスライムへと変化させて泥沼へと飛び込んだ。

 

「爆裂呪文『イオラ』」

 

俺はイオラで追撃。

掌から放たれた光球は泥沼に接触、大爆発した。

ボトボトと泥や石が落ちてくる。

今ので終わってくれればいいのだが…。

暫く周囲を警戒していたが、敵はもういないようだ。

振り返ると金髪の少女は丸出しの胸を隠そうともせずに唖然とした様子で眺めていた。

 

「大丈夫か?」

 

俺はポーカーフェイスを意識しながら努めて安心させるような声音で声を掛けた。

おっぱいに視線が言ってしまうのは不可抗力だ。

 

 

 

 

「へぇ、レイナっていうかの。良い名前だ。俺はタケル」

 

「そう、有難うタケル。貴方のお陰で命拾いしたわ」

 

おっぱいさん、いや美少女の名前はレイナというらしい。

何でも人助けの旅をしながら剣の修行をしているのだとか。

いや、それよりも遠くからで分からなかったが…。

おっぱいさん、もといレイナはとんでもなく美少女だった。

いや予想はしていた。

あんなに綺麗でエロいおっぱい。間違いなく顔も最高ランクだろうと。

しかし予想以上だった。

今は手ブラで隠しているが、隠しきれていな乳房が指の隙間から見えている。

つか乳首が少し見えてるよ。ある意味全裸よりエロいかもしれん!

傷は既に治癒呪文『ホイミ』で癒している。

ホイミ一回で全回復するあたり、レベルは低いのかもしれない。

レイナには物凄く感謝するとともに驚かれた。

 

「それにしてもタケルって凄い魔法使いなのね。あんなの初めて見たわ」

 

「ん、ああ、この大陸じゃみないだろうな…。まぁ一人旅をするんだ。最低限自衛手段を持ってないと…」

 

「へぇ、じゃあタケルはヒノモトの人?黒目黒髪だし。私はまだまだ未熟だから羨ましいな…」

 

自分がもっと強ければ、こんなに無様にはならなかったのに…。

レイナは砕けた鎧を悲しそうに見る。

 

「そっか、でもその格好じゃ旅を続けるのキツくないか?」

 

ぶっちゃけ鎧が壊れていなくても、無いと思う。

以前の世界である程度は慣れているが、この世界はそれ以上である。

なにせ露出が激しすぎるのだ。後ろ姿など殆ど尻丸出しだ。

痛くないのだろうか?岩に腰を下ろしたレイナを見て本気で思う。

 

タケルはレイナとの会話で、此処が以前の世界とは異なる異世界だと当たりをつけた。

『王都ガイウス』に『ヴァンス領』、『魔女の沼地』。

聞いたことのない地名と常識。

適当に相槌を打ちながら情報を得る。

先程の魔物とも因縁が有るようだ。

旅の途中、色々あって運悪く『沼地』に迷い込んだのだという。

まぁ初対面の人間に一から十まで話したりはしないだろう。

 

「そうだレイナ、言ってなかったけど俺は商人でね」

 

「商人?貴方が?」

 

「ああ、その格好だけど、何とかしたくないか?」

 

「ええ、確かにそうだけど…、こんな場所じゃ」

 

「大丈夫だって。言っただろ?俺は商人だって。どんな場所であろうと商品を持ち込んでみせるさ」

 

俺は道具袋から商品を取り出していく。

 

「えぇ、どうやって…っ!?」

 

本日の目玉商品はこれだ!

 

ビキニアーマー(DQ3の女戦士) 

危ない水着

マジカルビキニ

あぶないビスチェ 

神秘のビスチェ

踊り子の服

バニースーツ

 

「今はこれぐらいしか無いけど…どれも防御力に優れた良い物ばかりだよ」

 

勿論他の装備はあるが、これ以外に出してはいけない気がしたのだ。

 

「ええ、確かに凄そう…でも代金は?」

 

「それなりに勉強させてもらうよ」

 

「でも私、今はこれだけしか…」

 

レイナは腰に下げていた革袋から何種類かの硬貨を取り出した。

金貨が1枚、銀貨が12枚、銅貨が6枚。

この世界の物価の価値が分からない。

 

「そうだ、レイナ」

 

「なに?お金足りそう?」

 

「その前に君の剣を少し見せてもらっても良いか?」

 

「え、ええ‥いいけど、これは売れないわ」

 

「大丈夫、ちょっと気になっただけだから」

 

レイナから剣を受け取り鑑定呪文『インパス』をかける。

剣の情報が頭に流れ込んでくる。

 

ロングソード 攻撃力:32 価値:金貨21枚

 

「有難う、なかなか良い剣だね」

 

「えぇ、ありがとう」

 

「それよりもレイナの持ち金で買えるものだけど、残念ながら…」

 

「何もないの?」

 

レイナが沈んだ声を上げる。

 

「いやいや、一つ、これだけしか…」

 

俺はビキニアーマーをレイナに差し出した。

 

「こいつ以外はちょっと無理だな。コイツは金貨一枚と銀貨が5枚だよ」

 

買うかい?その問にレイナは強く頷いた。

レイナは岩陰に入ると手早く着替えを済ませる。

思っていた以上に似合っていて眼福ものだった。

後ろ姿が特に良い。むっちりした尻と太腿が堪りません!

FU・N・DO・SHI、だと!?いやTバックか!?

 

「その壊れた鎧は?良ければ買いとるけど…?」

 

さっきまでレイナが身につけていた鎧。それだけで買う価値がある。

 

「ううん、大切なモノだし、出来れば修理したい…持って行くことにするわ」

 

レイナはよいしょと鎧を持ち上げた。

 

「良かったら預かろうか?」

 

タケルは『道具袋』を開く。

 

「その袋、凄いわね?魔法で作られたものなの?」

 

「まぁね?家みたいに余程大きなもの以外なら大抵のものは入るよ」

 

「じゃあお願いするわ」

 

俺はレイナの鎧を預かる事になった。

 

「それで?レイナはどこに向かうんだ?」

 

「王都ガイウスよ」

 

そうして俺達は『王都ガイウス』を目指して旅立った。

こっちでの商売、どうしようか…。

許可を取るの面倒なんだよな…。

どこかにご都合主義でも転がってないかなぁ……。

こうやって見ず知らずの世界で、いきなり善良な美少女に出会えただけでも充分にご都合主義だよな…。

俺は歩くレイナの後ろ姿、フルフル揺れるお尻に鼻の下が伸びていくのを抑えながら後に続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

おまけ

 

タケル

 

レベル40

 

むっつりスケベ

 

さいだいHP:263

さいだいMP:824

 

ちから:91

すばやさ:370

たいりょく:132

かしこさ:392

うんのよさ:256

 

攻撃力:91

防御力:205

 

どうぐ

 

E:鉄の胸当て

E:旅人の服

E:スーパーリング

E:星降る腕輪

 

どうぐ(チート道具袋ではない手持ちの)

 

超万能薬

超万能薬

美味しいチーズ

美味しいチーズ

賢者の聖水

祈りの指輪

 

 

呪文・特技

 

錬金釜 採取 大声 口笛 

寝る 忍び足 穴掘り 大防御

連続魔法 雄叫び 思い出す もっと思い出す

 

 

ホイミ ベホイミ ベホマ

ベホマラー

キアリー キアリク シャナク

メラ メラミ メラゾーマ

ギラ ベギラマ 

イオ イオラ

ヒャド ヒャダルコ ヒャダイン

バギ バギマ バギクロス

ドラゴラム

ニフラム マホカトール 

マホトラ マホアゲル

バイキルト スカラ スクルト 

ピオラ ピオリム 

ルカニ ルカナン

ラリホー ラリホーマ

フバーハ

ラナリオン

トラマナ レミーラ 

インパス アバカム 

ルーラ トベルーラ リリルーラ

レムオル 

 

 

最終決戦後という設定です。

装備も外しています。

 

おまけ2

 

レイナ せんし 

 

 

レベル4

 

セクシーギャル

 

さいだいHP:42

さいだいMP:0

 

ちから:21

すばやさ:7

たいりょく:22

かしこさ:32

うんのよさ:52

 

攻撃力:53

防御力:40

 

どうぐ

 

E:ロングソード

E:ビキニアーマー

E:青銅の盾

E:サークレット

 

呪文・特技

 

無し

 




高貴なる戦士レイナから流浪の戦士レイナ(まだ弱い)にジュブチェンジしたばかりの頃です。

原作の好きな部分、特に成長イベントは消したくない。
しかしタケルという要素が入ったために自然にそういった流れにするのに苦労しております。
今の構想だと成長イベント(グランドクルス)の修得が完全に無くなりそうです。

皺寄せが酷いことになりそう。
原作ファンのかたマジでスイマセン!


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本日の目玉商品『ビキニアーマー2』

なんか思った以上に好評なので。
それに本編行き詰まってるし。
後3話くらい投稿します。


流浪の戦士レイナ。

本名はレイナ・ヴァンス。

ヴァンス領を支配するヴァンス伯爵家の次女である。

彼女は貴族として何不自由のない生活を送っていた。

だが、そんな与えられるだけの人形のような退屈な生活に嫌気がさし継承権を捨てて旅に出たのである。

 

しかし現実は残酷だ。

屋敷で学んだ剣術は道場剣法の域を出ておらず、初の実戦では無様な敗北。

その後も盗賊に襲われたり実家に連れ戻されたりと不幸の連続だった。

それでも負けずに再び旅立つ。

 

剣の腕を磨きながら、各地で山賊退治や魔物退治の依頼を受ける。

運が良かったのだろう。

相手は自分の実力でも充分に対応できる程度で、レイナに少なからず自信を取り戻させた。

少しずつ実力を身につけていくレイナ。

しかし、現実はやはり非情だった。

旅を続けて暫く、レイナは運悪く『魔女の沼地』に迷い込んでしまった。

世界征服を目論む悪名高き魔女が支配する危険な領域だ。

未熟なレイナが長く生きられる場所ではない。

そして最悪の相手と再再会を果たす。

 

初の実戦で自分に苦い記憶を植えつけた魔物。

沼地の魔女の下僕メローナだった。

『シェイプシフター』。

身体を自由自在に変化させる事が出来る恐ろしい魔物だった。

当然、駆け出しの剣士が敵う魔物ではない。

ほんの少しの実戦経験を経ただけのレイナ(ヒヨッコ)に勝ち目はなかった。

 

当然のごとくレイナは弄ばれ、あっさりと敗北してしまう。

そして止めを刺される。

その瞬間だった。メローナの刃がレイナの喉を貫くすんでの所で閃光が奔った。

レイナの拘束は解かれ、メローナの身体は、次々と閃光に貫かれていく。

そして凄まじい轟音と爆発。

その光景を、レイナは生涯忘れないだろう。

 

「大丈夫か」

 

優しく手を差し出す少年をレイナは唯、呆然と見つめていた。

 

 

 

それからレイナとタケルは王都を目指して旅立つ。

 

「村があるわ。これで久しぶりにまともな食事と宿にありつけるわね」

 

「そうだな」

 

早いものでレイナと出会って既に半月。

俺達は随分と打ち解けていた。

それで分かったことは、レイナがとても良い子という事である。

しかも凄まじく無防備だ。お陰でこの半月間、大変眼福でした。

なにせ平気で水浴びを始めるし…。

確かに覗かないでね的な事を言うが、いくら何でも…。

レイナに女の一人旅はさせちゃダメだな。

なんか簡単に悪い人間に騙されて、ホイホイ着いて行きそうだ。

そして新たな出会いもあった。

おっとりした大和撫子。

赤い鬣の様な髪を持つ義賊の女性。

なんかやたらとハイテンションな天使。

特に最後のハイテンション天使は最悪だった。少なくとも俺の印象は。

出会う度にクイーンズブレイドなる決闘を強制的に始めようとするし…。

そんなこんなで密度の濃い半月だったと言えよう。

 

「見てタケル、村が見えるわ」

 

草原の先に村の入口が見えた。

レイナは嬉しそうに足取りを早くする。

俺はレイナの感情に連動するように揺れる尻を追いかけた。

 

 

「ようやく一息つけるな」

 

村に到着した俺達は直ぐに宿をとった。

幸い部屋は一部屋だけ空いており、俺はレイナと同室になった。

レイナも特に不満は無いようで、オレはこの娘の将来がますます不安になった。

いや嬉しいけどさ…。

 

しかし、ここで問題が発生する。

 

「路銀が尽きそうだわ」

 

レイナは真剣な様子で所持金を確認している。

所持金、銀貨が3枚、銅貨が1枚だ。

もう一泊する余裕はない。どうにかして稼ぐ必要がある。

因みに俺はまだこの世界で本格的な商売は初めていない。

日々の生活費なら冒険者としての仕事で充分だからだ。

それにこの半月程で分かったことだが、俺の持つ道具は色々と不味い。

この世界では絶対に有り得なような物ばかりなのだ。

確実に目をつけられるだろう。

 

「タケル、少し出かけてくるわ」

 

「冒険者の仕事?良かったら手伝おうか?」

 

「ありがとう。でもこれは修行でもあるから。大丈夫、自分の身の丈にあった仕事を探すから心配しないで」

 

レイナはそう言うと、身支度を整えて出て行った。

オレは一人部屋に取り残される。

退屈なので不貞寝を決め込んだ。

 

 

 

「やっぱり心配だな」

 

空が茜色に染まり、日も沈み始めた。

レイナはまだ戻ってこなかった。

オレは意を決すると、道具袋に手をかけた。

取り出したのは、嘗て魔界最高の名工が生み出した傑作『ガンブレード』だ。

装備を整えて廊下に出た。

一階は酒場も兼任しており、冒険者の仕事の斡旋なども行っている。

部屋を取る際に、壁に複数の依頼書や手配書が並んでいるのを見た。

階段を降りてカウンターに向かうと、宿屋の主人が神妙な顔で中年の男と話をしていた。

 

「どうしたんですか?」

 

「あんたは…、確かあの女戦士さんと一緒にいた」

 

「そうですけど?何か有ったんですか?」

 

「実は…」

 

店主と話をしていたのはレイナに仕事を頼んだ依頼人だった。

 

 

レイナが受けた依頼とはスライムの討伐依頼だった。

村の近くの泉でスライムが大量発生したらしい。

泉の水は村の主な水源だ。このままだと死活問題。

報酬も良く人助けにもなるためレイナは二つ返事で引き受けたという。

 

「スライム退治にしては遅いな…」

 

俺の脳裏にはドラクエお馴染みのスライムの姿が浮かんだ。

ハッキリ言って世界最弱の怪物だ。

群れで現れたとしても敵ではないだろう。

しかしこの世界の怪物は以前の世界と異なる。

 

「行ってみるか」

 

泉の場所を教えてもらうと目的地に向かって歩を進めた。

これでも足には自信がある。

それに俺の腕には『星降る腕輪』が装着されている。

その為、本気で走ると常人の眼には捉えられない程の速さで移動が出来るのだ。

すれ違った人の髪や服が揺れ、不思議そうに首を傾げる。

俺は、そんな人達に苦笑しながら更にスピードを上げた。

 

 

 

 

「心配してきてみれば…」

 

泉に到着した俺が見たものはこの世のパラダイスだった。

 

「…っ、あぁんっ!やめっ!……ひぃうっ!…あああぁんっ!」

 

俺の目の前でレイナが艶やかな声を上げて悶えている。

巨大なスライムに捕らえられたレイナは両手両足を拘束され身体中をヌルヌルとした触手で蹂躙されていた。正に伝説の触手プレイ。

それにしてもこの世界のスライムって前のとは違って凶悪だな。

なんかキモいし…。

 

そういえば前の世界には多種多様な怪物がいたが人間の女性相手にエロい狼藉を働く怪物は居なかったな。この世界はもしやエロゲの世界っ!?

 

「ダ、ダメェ…、そ、そんなとこ……あ、あぁ…っ!?」

 

アホなことを考えている場合じゃない。

眼福だがそろそろ助けよう。

ビキニアーマーも半脱げ状態だし、レイナも俺の存在に気づかないほど余裕が無い。

なんか可愛そうになってきた。

しかし攻撃呪文をぶっ放そうにもあの巨体。少なくとも中級以上の呪文をぶつけないと効果は薄そうだ。

かといってそんなことをすればレイナも危険。

俺はガンブレードを抜いて弾丸を込める。

 

「真空呪文(バギ)で吹き飛ばすか」

 

俺は高く跳躍するとレイナを避けるように銃剣を振り下ろした。

ぐにゃりと嫌な感触とともにブレードがスライムに食い込む。

同時に引き金を引く。

 

-ズドン!!!

 

放たれた弾丸に封じられた真空系呪文(バギ)が開放された。

 

ビュオオオオオオオオッ!!!!!

 

「きゃあああああああっ!!!?」

 

逆巻く竜巻がレイナとスライムの身体を吹き飛ばした。

スライムの身体は四散し、レイナの身体が空高くに投げ出される。

俺は飛翔呪文(トベルーラ)で舞い上がると空中でレイナをキャッチした。

 

「-え、あれ?タ、タケル…!?」

 

「無事か?レイナ」

 

「う、うん……っ!それよりもスライムは!?」

 

「あそこ」

 

バラバラになって地面に落ちていくスライムを指さしてやる。

なんにせよこれで依頼達成だ。

 

「だ、駄目っ!アイツ、もともとは群れだったの!あれじゃあ」

 

レイナは俺の腕からすり抜ける様に飛び降りると落ちているロングソードを回収。

次々にスライムに止めを刺していく。

 

「また合体される前にっ!」

 

胸を隠すのも忘れてプルプル揺らしながら無双していく。

余程ムカついたのだろう。

そして暫くして…。

 

「は、はぁ……はぁ…はぁ……っ」

 

随分と時間は掛かったが、レイナは見事にスライムを全滅させる事に成功した。

レイナはその場に座り込むとぐったりと大の字に倒れた。

汗でしっとり濡れた身体が赤みを帯びて色っぽい。

 

「大丈夫か?」

 

「えへへ……どう?なんとかスライムを全滅させたよ…」

 

「そうだな…あとは酒場で報酬を受け取らないとな」

 

俺はレイナを労いながら旅人の服のマントを外し身体に掛けてやる。

 

「……あ」

 

レイナは今になって自分の状態に気付き顔を赤らめた。

何故もっと早くに言ってくれないのか、レイナはジト目で訴えてくる。

俺は顔をそらしながら、誤魔化すように回復呪文(ホイミ)を唱えるのだった。

 

 

レイナが身支度を整えた頃には既に日が沈み辺りはすっかり暗くなっていた。

村の場所は確り覚えている。

俺はレイナの手を握ると瞬間移動呪文(ルーラ)を唱えた。

この世界の行ったことのある場所なら移動可能なのは確認済みだ。

初めて瞬間移動呪文(ルーラ)を経験した時のレイナの驚いた顔は脳内保存。

 

「相変わらず便利ね。タケルの魔法は」

 

レイナは感心しながら周囲を見渡す。

 

俺達は宿屋に戻ると一階で報酬を受け取った。

 

 

 

「さてと、タケル」

 

「なんだ?」

 

宿屋の一室。

俺達はベッドに腰掛けて向かい合っていた。

レイナは神妙な面持ちで俺の目を見つめている。

鎧を外しラフな姿は余りにも無防備である。けしからん。

 

「私に…、戦い方を教えて欲しい」

 

「戦い方?」

 

「うん、別に魔法を習いたいって訳じゃないの。タケルって剣も使えるでしょ?」

 

レイナの話を聞いてみると、自分は少し自惚れていたのだという。

ここ半月の旅で成り行きとはいえ、クイーンズブレイドを経験。

勝つことは出来なかったが、それなりに戦いを経験したし、盗賊や魔物にも勝てた。

自分は確かに成長している。

しかし、すこし想定外の事態が起こると途端に崩れてしまう。

今の自分は、その程度だと分かってしまった。

 

「タケルは私が全く歯が立たなかった巨大なスライムを一撃でバラバラにしたわ。よかったら、あの技を私に」

 

「ちょっと待った!」

 

戦いを思い出して少し興奮したのか捲し立てるレイナを静止する。

 

「あれは剣技じゃなくて武器に魔法を付与してるだけだ。けっして純粋な技じゃないんだ」

 

「……そうなの?」

 

俺はレイナにガンブレードの簡単な説明をしてやる。

 

「で、でも今の私よりもずっと強いでしょう!?」

 

「身体能力だけならな。剣技ならレイナのほうが上だ」

 

「でも…」

 

「まぁ、特訓に付き合うくらいならいいけど」

 

「ほんとうっ!?ありがとう!タケル」

 

レイナは花が咲いたように笑うと素直に頭を下げた。

不覚にもドキッとしてしまう。

 

「お礼はいいから…、それよりも、もう遅い。今日はもう寝よう」

 

「あ、そうね…おやすみなさいタケル」

 

「おやすみ、レイナ…」

 

暫くしてレイナは穏やかな寝息を立て始める。

俺はレイナに背を向けると目を瞑った。

 

圧倒的な実戦経験(コロシアイ)の不足。

これがレイナの弱点だろう。

俺は先程のレイナの笑顔を思い出す。

恐らく余程、性根が捻くれていない限り本気でレイナに負の感情を向ける者はいないだろう。

本気でレイナを害そうとは思わない筈だ。

格上との命がけの戦い。それを経験しない事には今の壁を超えるのは難しいだろう。

しかしその為には間違いなく挫折を経験する事になる。

運が悪ければ死んでしまうかもしれない。

 

「……厄介なことになったな」

 

 

 

 

次の日の朝。

俺達はスライム退治の泉に訪れていた。

レイナの特訓のためである。

俺は剣士じゃない。

しかし嘗ての仲間の剣術の知識だけならある。

この世界の戦士、特に強力な女性戦士。

美闘士と呼ばれる存在だが、以前の世界程ではないにしても結構ぶっ飛んでいる。

女の細腕で大岩を粉砕したり、真っ二つにしたり。

符術や魔法を使ったりと人外に片足は突っ込んでいるだろう。

つまり修行次第でレイナにも出来る筈だ。

 

「レイナ、コイツを」

 

俺は道具袋から『銅の剣』を取り出すとレイナに手渡してやる。

 

「なにこの剣…、ひどいナマクラ…」

 

俺は近くにある岩を指さす。

成人男性の倍ほどの大きさの大岩だ。

 

「なに?この岩がどうしたの?」

 

「そのナマクラの剣で、この大岩を割ってもらう」

 

「え、ええっ!?これで、この岩を!?」

 

アバン流刀殺法『大地斬』

半人前とはいえレイナは生粋の戦士だし、俺と違って才能は有る。

案外、大地斬くらいなら短期間で習得できるかもしれない。

因みに鋼の剣以上の攻撃力を持った剣と身体能力に任せた力ずくなら俺にも出来るだろう…。

しかし銅の剣でやれと言われたら首を振らざるをえないだろう。

もし現時点のレイナがこの大岩を斬ることが出来れば、大地斬の修得の証明になるだろう。

 

「まぁ、取り敢えずやってみろよ。全力で」

 

「わかったわ」

 

結果、やっぱり無理でした。

何度も岩に向かって銅の剣を振り下ろすが、岩を断つことは出来なかった。

そして、とうとう銅の剣は根本からポッキリと逝ってしまった。

 

「大丈夫。まだ銅の剣はあるから」

 

俺は次の銅の剣を取り出しながらアバン先生の修行方法を思い出す。

そういえば限界まで体力を使わせてたな。

次は限界まで筋トレとランニング、いやちょうど泉があるし鎧を付けたまま水泳させるか?

 

「タケル、なんか不穏なこと考えてない?」

 

レイナは顔を青くして後ずさった。

今更後悔しても遅い。

なんか楽しくなってきたし意地でもアバン流をマスターさせたくなった。

そんな訳で大地斬の特訓が本格的に開始された。

 

「本当にこんな大岩、斬ることが出来るの私…」

 

「因みに、俺の知る限りじゃ12歳の子供が3日でこの技を習得したらしいぞ」

 

俺の言葉にレイナの顔つきが変わる。

レイナはかなりの負けず嫌い。戦士の素質は充分だ。

 

 

レイナは何度もフラフラになりながらも、俺の課した訓練メニューを消化していく。

しかし大地斬を放つ事が出来るだけのステータスが無いと話にならない。

そのための特訓だが少しズルをする。

食事にすり潰した『ちからのたね』を混ぜておく。

後の事も考えて『すばやさのたね』も入れておく。

 

そして時間は瞬く間に流れ、レイナの特訓は続く。

レイナは腕が上がらなくなるまで剣を振るい、足が動かなくなるまで走る。

しかしレイナは泣き言一つ言わなかった。

知識だけの素人の俺の言う事を信じ、真剣に特訓に取り組んでくれた。

 

特訓開始から一週間。駄目にした銅の剣は既に6本。

銅の剣を駄目にしたら、大地斬のチャレンジは終了してトレーニングというルールにしている為。

レイナは遂に大岩を見事に両断し大地斬を習得した。

 

「や、やったわ…やった!やったわ!タケル!」

 

レイナは感極まって俺に抱きついてくる。

この一週間、レイナは随分力をつけた。

気持ち良い感触と同時に本気で痛い。

ギリギリと締め付けてくる腕を必死で引き剥がす。

流石は戦士。この調子だと、もうすぐ素の身体能力も追い抜かれそうだ。

次は海破斬。アバン先生みたいに火竜变化呪文(ドラゴラム)を使うかな。

 

「タケル、また不穏なこと考えてない」

 

「気の所為だ」

 

「でも、どんな特訓も受けて立つわ!タケルのおかげで私も強くなれたし!タケルが教えてくれるなら何でも信じられるもの!」

 

凄い良い子過ぎる。

 

じゃあ早速……。

 

「男と逢瀬とはずいぶんいい身分だな!レイナ!」

 

次の特訓と言いかけた所で威圧的な声が響き渡った。

目を向けると、そこにはレイナ以上のきわどいビキニアーマーが。

真紅の髪の美女が怒りの表情でレイナを睨めつけていた。

レイナは慌てて俺から離れると、怯えた表情で声を絞り出した。

 

「お、お姉さま…」

 

へ?お姉さま?

え、ええええええええええっ!!?まじですかっ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

レイナ 

 

せんし 

 

 

レベル11

 

セクシーギャル

 

さいだいHP:91

さいだいMP:0

 

ちから:47

すばやさ:29

たいりょく:45

かしこさ:38

うんのよさ:82

 

攻撃力:60

防御力:51

 

どうぐ

 

E:銅の剣

E:ビキニアーマー

E:青銅の盾

E:サークレット

 

呪文・特技

 

だいちざん まじんぎり 




大地斬修得。
ダイは3日掛からなかったですがレイナは一週間掛かりました。
しかもドーピングしてw
魔神斬りは紛れ当たり。


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本日の目玉商品『ビキニアーマー3』

本日の目玉商品『ビキニアーマー』は今回で終了です。
アニメ見ましたが凄いですね。
プルンプルンですよ。
乳首エロいですね。子供が見ていいもんじゃないですね。
子供の頃キュー○ィーハニー見てて家族に見つかって気まずい感じになったことが有りますが、今どきの子どもたちも同じなんでしょうかw


流浪の戦士レイナと行商人タケル。

現在逃亡中である。

レイナは精神的に憔悴した様子で足を動かす。

いつものビキニアーマー姿ではない。

質素な麻の服に青色の外套姿だ。

町を繋ぐ街道から逸れて足場と視界の悪い雑木林。

二人は草木を掻き分けながらひたすら進んでいた。

 

 

 

十数分前、レイナ以上のキワドいビキニアーマーの女戦士は、それはそれは怒り心頭な様子でレイナを見下ろしていた。

レイナの言葉通りなら彼女はレイナの姉ということだ。

 

雷雲の将クローデット、

 

ヴァンス伯爵の長女でありレイナの腹違いの姉である。

大陸随一と称されるほどの凄まじい剣技の持ち主であり、クイーンズブレイドの最有力候補としても有名だ。

彼女の姿を前にしたレイナは絶望に彩られた表情で姉を見上げていた。

 

クローデットがこの場にいる理由は唯一つ。

家出同然に屋敷を飛び出して美闘士となったレイナを強制的に連れ戻す為だ。

 

貴族としての退屈な生活に嫌気が差し自由を求めるレイナ。

秩序と規律を重んじ、貴族の義務を全うしようとするクローデット。

対立するのは自然な流れであった。

 

 

屋敷には戻らない。

レイナの頑なな態度に対するクローデットの行動は、

 

「愚か者め」

 

手にした大剣による一閃だった。

瞬間、眼を焼くような閃光が刀身から放たれた。

バチバチという音を立てて放たれた光は正しく雷光。

 

「避けろ レイナッ!!」

 

レイナは身体が萎縮して動けない。

タケルはレイナを押し倒す形で雷撃を回避する。

通り過ぎた電熱が背中を焼き、タケルは歯を食いしばった。

 

「サンダークラップ…」

 

その凄まじい雷撃を目の当たりにしたレイナは怯えた声を出した。

長身のクローデットの身の丈ほどのツーハンデット・ソード。

それは剣自体の切れ味もさることながら電神の加護によって自在に電撃を操る事が出来るのだという…。

 

今のレイナの敵う相手じゃない。

それに相手は伯爵家の長女であり、最前線で軍務を取り仕切る将軍なのだ。

おそらく勝てない相手ではないだろうが、積極的に敵対してもメリットが全くないどころかデメリットしかないだろう。

 

かといって話し合いが通じる相手とは思えない。

何故ならクローデットはレイナとは会話してもタケルとは会話をする気が無いと言い切れる。

レイナの側にいるタケルの目を見ようともしていない、空気扱いであった。

身元不明の平民とまともに応対する必要性は感じていないのだろう。

 

「レイナ!どうしても我が道を行きたいというなら剣を抜くがいい!」

 

「…っ、私は絶対に戻らない!行くわよ!お姉さまっ!」

 

考えている間にもレイナは恐怖を隠して剣を構える。

クローデットと戦う気のようだった。

 

「お、おいレイナ…」

 

「大丈夫、私だって少しは腕を上げたんだから…」

 

確かにレイナは大地斬を習得した。

しかし、少々強くなった程度で目の前の敵に敵うとは到底思えなかった。

何よりも実戦経験が違う。

タケルはクローデットから歴戦の戦士の空気を感じ取っていた。

それは多くの実戦を潜り抜けてきたものが纏う強者の風格。

タケルの嘗ての仲間達や立ち塞がってきた強敵たち。

クローデットの闘気は正にそれに類似していた。

 

レイナの肩が震えている。

彼女も本当は理解しているのだろう…。

しかし逃げることよりも戦うことを選ぼうとしていた。

 

 

そして結果はレイナの惨敗だった。

レイナは次の雷撃が放たれる前に勝負を決めようと駆け出す。

覚えたての大地斬に全てを賭けた。

しかし、クローデットの剣の一振りに大地斬は弾かれ、雷を纏った斬撃によってレイナは、

 

「きゃああああああっ!!!」

 

鎧は砕け、凄まじい電撃がレイナの全身を襲った。

美しい乳房が露出して空気に揺れる。

宙に投げ出されたレイナは殆ど全裸に近い状態で地に落ちる。

このままでは受け身も取れずに硬い地面に全身を打ち付け事になるだろう。

 

「レイナ!」

 

タケルは凄まじい速さでレイナに追いつき、その華奢な肢体を抱きとめた。

 

「タ、タケル…」

 

レイナは痛みに耐えながら、それでも剣を杖にして立ち上がろうとする。

 

「……ふん、所詮はこの程度か…これで分かっただろうレイナ。中途半端な貴様がつかめるものなど何もない…、おとなしく屋敷に戻り、大人しく閣下の言い付けに従うのだな…」

 

「……いやよ、私は…ま、まだ負けてないわ…」

 

レイナは尚も剣を構えて戦う姿勢を見せる。

その姿にクローデットは癪に障ったような表情を見せた。

まるで目の前の妹を憎悪するように。

 

「よかろう……少々手加減が過ぎたようだ…最早語ることはない」

 

クローデットはサンダークラップを上段に構える。

上空の雲が漆黒へと染まり雷雲へと変わる。

ゴロゴロと怪物の唸り声のごとく雷雲が唸る。

そして一筋の閃光が奔った。

 

「はああああああああああっ!!!」

 

クローデットは裂帛の気合と共に振り下ろした。

その姿は雷雲の将と呼ぶに相応しいものだった。

 

「暫しの眠りにつくがいいレイナよ!」

 

「……あ、ああ…あぁ…」

 

先程の電撃とは比べ物にならないほど巨大な雷撃。

それは大蛇のようにうねりを上げて向かってくる。

その威力と範囲はタケルの知る電撃呪文ライデインを上回るだろう。

今のレイナが直撃すれば死は免れない。

 

「……これは…、狙いは俺じゃねぇかっ!!!」

 

クローデットはレイナを殺す気はない。

だからこそ直撃を避けレイナが死なないように計算して電撃を放っていた。

しかし飽くまでも妹であり爵位の第一位継承権のレイナが死なないようにであって、他の事は埒外である。

寧ろ妹に近づく不審者が死んでも全く問題ないのだ。

レイナを回収するついでには良いだろう。

 

「全くよくねぇ!」

 

タケルの行動は速かった。

レイナの腕をつかんで引き寄せる。

 

「ちょ、タケル!?」

 

「逃げるぞレイナ!」

 

タケルは目的地を頭の中で明確に思い浮かべた。

魔法力を言葉に乗せて呪文を唱える。

 

-ルーラ

 

瞬間、二人の身体は光りに包まれた。

同時に轟雷が爆音を立てて二人の前に着弾する。

地面は電熱によって焦げ割れた大地から舞い上がった埃と小石がパラパラと落ちる。

 

「……レイナ?」

 

埃が晴れて視界に映った光景にクローデットは息を呑んだ。

サンダークラップの凄まじい暴力によって穿たれたそこには意識を失ったレイナと不審者の死体が転がっている筈なのだ。

しかし、そこにはレイナの姿も不審者の姿も無かった。

ふと空を見上げると、陽光に重なって伸びる光が町へと向かって行くのが見えた。

 

「……あの男が…?そうか、魔道士だったとは…」

 

クローデットは愛剣を肩に担ぐと髪にかかった埃を払うようにかきあげた。

 

 

 

ルーラの呪文によってクローデットから逃げおおせた二人は、その足で宿に戻った。

レイナは荷物を回収して着替えを済ませると、タケルの回復呪文を受けて一息つく。

 

「これで少しは安心ね」

「いや、そうでもないぞ」

 

タケルは窓から外を眺めながら嘆息する。

レイナがタケルの肩から外の様子を伺う。

そこには鎧を纏った兵士が複数、何かを探ぐるように徘徊していた。

 

「家の兵士だわ…」

「やっぱり?」

 

クローデットは二重の策を練っていたようだ。

恐らく街道は封鎖されているだろう。

ここが見つかるのも、クローデットが時間の問題だ。

 

「どうしよう?」

「いい方法がある」

 

タケルは道具袋から特徴的な形の“杖”を取り出した。

その表情はイタズラを企む子供のようである。

 

「何?」

「こいつは“変化の杖”だ」

 

様々な姿に化けることが出来る魔法の杖だ。

 

「へぇ、便利ね」

 

「幸い俺の事を知ってるのはクローデットさんだけだ。化けるのはレイナだけでいいだろう」

 

「でも念の為にタケルも变化したほうが…」

 

「いや、多分どっちにしてもバレると思う 俺の容姿は村の人達もクローデットさんも知ってるわけだし、いきなり变化した俺達が現れれば不審に思われる」

 

結局は同じなのだ。

自分が魔法を使えることも見破られただろうし…。

いつまでも二人が見つからず、代わりに变化した二人が村を出れば間違いなく正体がバレて追手が掛かるのだ。

 

レイナが変化の杖の力で化けたのは“子猫”の姿だった。

変化したレイナ自身、自分の姿に驚きながらも次第に楽しそうに猫を演じ始めた。

こうして何処から見ても子猫を連れた旅人になったタケルは兵士の眼を掻い潜り村を出る事に成功したのだった。

 

そして变化の効果が切れ、人目を避ける為に念の為に街道から外れて行く道を二人は選ぶ事にしたのだった。

 

 

そして冒頭に戻る。

 

「もう、大丈夫かな?」

 

レイナが息を切らせながら後ろを振り返る。

修行から立て続けクローデットとの戦いと逃走によって大分疲れているようだ。

回復呪文は傷は癒しても体力までは完全に戻らいないのだ。

 

「そうだな…、今日はこの辺で野営の準備をしよう」

 

レイナの疲労を気づいかいタケルは足を止めた。

 

「そうね、もうクタクタだわ」

 

「水場を探してテントを張ろう」

「手伝うわ」

「出来るのか?」

「やったことはないけど…、それでもやってみたいの」

 

レイナは疲労を感じさせない歩みでタケルの前まで来た。

タケルはレイナの上目遣いに思わず顔が熱くなるのを感じた。

 

「これからも旅を続けるんだから覚えることは山ほどあるわ」

「分かったよ」

 

数刻後、二人は川を見つけると上流へ向かい、開けた場所を見つけた。

協力してテントを設営すると次は食料と火種の調達だ。

辿々しくも一生懸命に覚えようとするレイナにタケルは好感を覚えならが作業を続ける。

 

 

日が傾き、空が赤く染まり始めた頃、野営の準備を終わらせた二人は火を囲んで向かい合って座っていた。

焚き火の側には先程捕まえたばかりの新鮮な川魚とタケルの用意したチーズが串に刺さり焚き火の熱に晒されていた。

そして焚き火の真上に固定されたヤカンがシュウシュウと音を立てる。

 

「美味しそう…」

 

今にも蕩けそうなチーズにレイナが目を輝かせる。

 

「そろそろだな」

 

タケルは木製のコップを取り出すと、そこにヤカンを傾ける。

よく温まった“おいしいミルク”が注がれた。

ミルクをレイナに手渡し、焼きあがった川魚に蕩けたチーズをまぶして山菜と盛り付ける。

 

「タケルは料理も出来るんだ」

「料理ってほどのもんじゃないって…」

 

タケルは頭を掻きながら自分の分も同じように盛り付ける。

そして手を合わせて「頂きます」と軽く頭を下げた。

レイナも釣られるように同じようにする。

 

 

 

「美味しい…」

 

料理を口に運んだレイナが、ほぅっと溜息を漏らした。

 

「そりゃよかった、レイナの屋敷の料理人には全然及ばないだろうけど口にあったなら良かったよ」

 

「ううん、そんなことないわ。それに私、タケルにはすごく感謝してるんだから」

 

レイナの真っ直ぐな目は嘗て共に旅をした仲間達の姿が重なって見えた。

今頃みんなどうしているだろう…。

タケルはミルクを口につけると既に暗くなった夜空を見上げた。

 

「……そっか、どういたしまして」

 

星と月の光が水面を照らしキラキラ光る。

その光景が“旅の扉”と重なり郷愁の念が沸き上がってくる。

 

「どうしたの?」

「……いや、何でもないよ」

 

タケルは食事の残りをミルクと共に描き込むとレイナに背を向けて再び夜空を見上げた。

 

「もう遅い、レイナも食べ終わったら休むといい…見張りは俺がやっておくから」

 

タケルの寂しそうな後ろ姿にレイナには掛ける言葉が見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 

 

 

 

 

 

レイナ 

 

せんし 

 

 

レベル12

 

セクシーギャル

 

さいだいHP:101

さいだいMP:0

 

ちから:55

すばやさ:33

たいりょく:50

かしこさ:39

うんのよさ:100

 

攻撃力:68

防御力:42

 

どうぐ

 

E:銅の剣

E:旅人の服

E:青銅の盾

E:サークレット

 

呪文・特技

 

だいちざん まじんぎり 

 

 

クローデット

 

バトルマスター

 

レベル45

 

ごうけつ

 

さいだいHP:511

さいだいMP:0

 

ちから:166

すばやさ:97

たいりょく:254

かしこさ:62

うんのよさ:30

 

攻撃力:266

防御力:127

 

 

どうぐ

 

E:サンダークラップ

E:ビキニアーマー

E:鉄兜

 

呪文・特技

 

ちからため きあいため うけながし とびひざげり 

五月雨斬り 稲妻斬り いなずま




上のステータス唯の遊び心で本気にはしないで下さい。
私の独断と偏見でステータスを妄想してみただけですのでw


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