Next stage of another dimension (烊々)
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一話

 超次元ゲイムギョウ界と神次元ゲイムギョウ界を行き来するための次元を超える光の柱のようなゲート。

 タリの女神の件で肥大化し、次元間の移動を容易にした光のゲートであったが、猛争事変が起こる前ぐらいにはほぼ消えかかっており、猛争事変が収束した頃には完全に消えてしまっていた。

 しかし、そのゲートは本来プラネテューヌが一定数のシェアを稼ぐことにより、それぞれの次元のイストワールが交信して繋がれるものであったため、次元間の移動法が失われたわけではなく、ネプテューヌとプルルートは遊ぶために、そして遊び終わって片方が元の次元に帰るために、度々クエストなどでシェアを稼いで次元を超えていた。

 

 そして、今日も今日とて超次元へ遊びにやって来ていたプルルートが再び神次元へと帰るためのシェアを稼ぐため、ネプテューヌとプルルートの二人でモンスター退治のクエストに勤しんでいたが。

 

「くっ……!」

「なんて強さ……!」

 

 女神パープルハートと女神アイリスハートは、苦戦を強いられていた。

 彼女たちの目の前に立ちはだかるは『朱雀』。変身した守護女神ですら苦戦する程の強さを誇る、ゲイムギョウ界最強の鳥系モンスター。

 

「キィーーッ!」

 

 その紅蓮の翼で羽ばたくだけで、灼熱の熱風を帯びた風が巻き起こり、ネプテューヌとプルルートの体力を奪っていく。

 

「モンスター駆除程度のクエストだと思ったら、こんなに強いモンスターがいたなんて……」

「ちぃっ、鳥風情のくせに生意気ねぇ……っ!」

 

 ジリ貧の戦いを強いられる女神二人。

 しかし、余裕を失っているプルルートに比べ、ネプテューヌはまだどこかに余力を残しているかのような立ち振る舞いをしていた。

 

(正直……ぷるるんの前でこれは使いたくなかったけど、これ以上時間をかけるわけにはいかないし……仕方ないわね)

 

「『ハイパーシェアクリスタル』! 『ネクストプログラム』起動!」

 

 ジリ貧の状況を打開するため、ネプテューヌはネクストパープルへと姿を変えた。

 

「ねぷちゃん……その姿……」

「下がっていてぷるるん。一気に決めるわ」

 

 ネプテューヌはネクストフォームへの変身によって強化された身体で、通常の女神化では近づくことが困難な朱雀が巻き起こす熱風を物ともせず、一直線に突き進む。

 

「はぁぁっ! 『ネプテューンブレイク』」

 

 そして、通常の変身の比ではないシェアエネルギーの出力から放たれる必殺剣技が朱雀を捉えると、目にも留まらぬ勢いで耐久値を削り切り塵に還す。

 

「ふぅー……クエスト完了だね。おつかれぷるるん。帰ろっか」

「……うん」

「これで次元を超えられるぐらいのシェアは充分稼げたでしょ」

「そうだね、ねぷちゃん」

 

 戦闘を終え、変身解除した二人は、そのままダンジョンを後にする。

 しかし、前を歩くネプテューヌは気づいていなかったが、プルルートの表情は暗く険しいものだった。

 

(『下がっていて』かぁ……)

 

 先程のネプテューヌにとっては何気ないものであったその言葉が、プルルートの心には深く突き刺さっていた。

 

 

 

 

「〜〜〜〜なんてことがあったんだけどぉ」

 

 プルルートは神次元のプラネテューヌ教会に帰宅後、神次元のノワール、ブラン、ベールを集め、真剣な表情で事の経緯を話した。

 

「ネクストフォーム……」

「女神化を超えた更なる変身……か」

 

 猛争事変が引き起こされ滅亡寸前の危機に陥った超次元と比べ、タリの女神を倒した後の神次元は平和そのものであった。

 プルルートはともかく、ノワールもブランもベールも鍛錬を欠かしてはいないが、鍛錬だけでネクストフォームほどの域に辿り着けている筈もない。

 

「ううん、ネクストフォームだけじゃないよ〜……」

「プルルート……?」

「ここ最近ねぷちゃんと一緒に戦ってて思ったけど、今のあたしじゃネクストフォーム抜きにしてももうねぷちゃんに勝てないかもしれないよ。ねぷちゃんだけじゃなくて、ぎあちゃんもあたしたちと神次元で戦ってた頃よりもすっごく強くなってたしぃ……」

 

 皮肉なことに、守護女神の成長は世界の危機が齎すものなのかもしれない。

 

「……私たちが全力で戦ったのなんて、タリの女神以来あったかしら……?」

「恥ずかしながら、わたくしはありませんわ……」

「……私もよ」

「どうしよう。あたしねぷちゃんたちに置いていかれたくないよ〜」

 

 ノワールもブランもベールも、数年前の強さは超次元の自分たちと並んでいた。

 だが、今は…………

 

「……」

 

 その答えなど既にその場にいる者全員がわかっている。

 しかし、誰も言葉にはしたくなく、その場を静寂が支配する。

 

「やるしかないわね、修行を」

 

 静寂を破ったのはノワール。

 

「修行……? わたくしもノワールも鍛錬を欠かしてなどいないでしょう? 今更その程度のことでどうにかなるとは……」

「いいえ。私たちが個人個人がやる程度じゃなくて、私たち全員で全力でスキルアップのために修行するの。どう?」

「悪くないわね。確かに、限界を越えるなら、私たちが一つに纏まる必要があると思うわ」

 

 三人の女神は志を共にする。

 

「……そういうわけだけど、プルルートはどうする?」

 

 最後の一人、プルルートにもその誘いの手は差し伸べられる。

 

「やる!」

 

 そしてプルルートは、いつものおっとりとした様子からは考えられないぐらい力強く返事をするのだった。

 

「びぃも! ぴぃもしゅぎょーするー!」

「そうね。あなたもこの次元の守護女神だものね」

 

 こうして、神次元の守護女神たちによる、限界を超え新たなステージへと登るための修行が始まるのだった。

 

 



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二話

 

 

 四女神合同での戦闘訓練、演習を繰り返し、修行開始から約一ヶ月が経過した。平和が続いていたせいで少し鈍っていた身体を鍛えなおすこと自体は最初の数日で完了し、女神たちは最終的にタリの女神と戦っていた時よりも強くなっていた。

 

「けど、問題は……」

「ネクストフォーム、か」

 

 しかし、鍛錬の目標の一つである、女神化を超えた更なる変身『ネクストフォーム』の域にはまだ誰も辿り着くことはできていなかった。

 それどころか、どう辿り着けばいいかも見当がつかない。

 

「薄々気づいていたけれど、ネクストフォームは、ひたすら強くなるだけじゃなれるものじゃないってことね……」

「向こうは、色々あったらしいからねぇ〜」

「世界改変に、ゴールドサァド、そしてハイパーシェアクリスタル、だっけ?」

「……私たちの次元は、タリの女神を倒してからは平和そのものだったからね……」

「そもそも超次元と神次元では私たち女神の成り立ちも異なるし……」

「……」

 

 プルルートたちはそれ以上何も思いつかず、会話が途切れる。

 

「……一つ、よろしいでしょうか?」

 

 口を開いたのは、疲れて眠っているピーシェを抱っこしていたベール。

 

「何か思いついたの?」

「わたくしたち一人一人がネクストフォームになる、というのは一旦やめるのはどうでしょう?」

「どういうこと〜?」

「わたくしたちのシェアエネルギーをまとめれば、一つだけならハイパーシェアクリスタルとやらを作れるのでは?」

「それは……盲点だったわね……」

「一先ず、そこから目指してみるのはどうでしょう?」

「ええ、試してみる価値はあるわ」

「では、早速やりましょう。ピーシェちゃん、起きてくださいまし」

「……んぅ?」

「ピーシェちゃん〜、ちょっと手伝って〜」

「わかったー!」

 

 女神たちは変身して輪になり、中心にシェアエネルギーを放出していく。

 すると、クリスタルのようなものが少しずつ顕現されていった。

 しかし、半分ぐらい形ができたところで変身が解けてしまい、クリスタルも消えてしまう。

 

「ぷる〜ん……ダメだったぁ〜……」

「いいえ、手応えはあったわ。単純にシェアが足りないってことだと思う」

「最近修行にかかりっきりで、そっちの方を疎かにしてましたしね……」

「なら、稼げばいいだけよ」

 

 創ることができるとわかり、目標が明確になれば、そこに向かって進めば良いだけ。

 というわけで、一ヶ月の鍛錬の後は、一ヶ月のシェア収集。書類仕事、クエスト、その他社会貢献に至るまで、女神たちはできることはなんでもやった。

 そして再び集まり、ハイパーシェアクリスタル生成が開始される。

 

「じゃあ、みんな行くよ〜?」

 

 以前と同じように、変身して輪になり、中心にシェアエネルギーを放出していく。

 そして、前回よりも早いペースでクリスタルが出来上がっていく。

 

「……よし!」

 

 しかし、完成率が八割を超えた辺りで、急にペースが落ちる。

 女神たちの限界が近くなっていたのだ。

 

「……っ、これでも足りないの……⁉︎」

「もうこれ以上ないってぐらいシェアは稼いだんだけどな……っ!」

「やはり、わたくしたちではまだ……!」

「そんなことない!」

 

 弱気になったノワールたちを一喝したのはピーシェ:イエローハートだった。

 

「みんなで頑張ったもん! みんなでねぷてぬたちに追いつこうって、一生懸命頑張ったんだもん! みんな頑張ったのが無駄なはずなんてないもん‼︎」

「ピーシェちゃん……そうですわね! わたくしたちの力はこんなものではございませんわ!」

「……弱気になっちまってたな。あいつらにできたことが私たちにできないはずなんてない!」

「ええ! 私たちも『守護女神』よ‼︎」

 

 気合いを入れ直した皆は、体の底からシェアエネルギーを絞り出してでも、クリスタルにエネルギーを注いでいく。

 

(絶対に追いついてみせるんだから! ねぷちゃん!)

 

 そして、クリスタルが完全に形になり、同時に爆発が起こる。

 

「きゃあっ!」

「うわっ!」

 

 爆発の衝撃とエネルギー切れにより、女神たちの変身も解けた。

 

「できた……の……?」

 

 爆発の中心地には、菱形の大きなクリスタルの下に小さな五色、紫、黒、白、緑、黄のクリスタルがくっついたものが転がっていた。

 

「これがハイパーシェアクリスタルで……いいのかしら……?」

 

 それはまさしくハイパーシェアクリスタルに相当するクリスタルなのだが、神次元の女神たちはハイパーシェアクリスタルの実物を見たことがないため、確証を得られずにいた。

 

「わーい!」

 

 そんな中、一目散にピーシェが駆け出し、そのクリスタルを拾い上げる。

 

「おおっ! なんかすごい!」

 

 ピーシェの言葉の通り、そのクリスタルは、通常のシェアクリスタルや女神メモリーの比ではない輝きを放っていた。

 

「見た感じハイパーシェアクリスタルが完成したっぽいわね」

「うーん……ハイパーシェアクリスタルって名前、なんだか私たちらしくないと思わない?」

「……? というと?」

「私たちの新たな変身アイテムなら、ハイパーシェアクリスタルじゃなくて『ハイパー女神メモリー』にするべきでしょ?」

「……確かに」

「その名前の方がわたくしも好きですわね」

 

 そのクリスタルの名は、ノワールによって『ハイパー女神メモリー』と名付けられた。

 

「ぷるると! これ!」

 

 ピーシェはハイパー女神メモリーをプルルートに差し出す。

 

「あたし?」

「そうですわね。最初はあなたに譲ってあげますわ、プルルート」

「ベールさん……」

「行ってくるといいわ。超次元に」

「ブランちゃん……」

「ネプテューヌに、私たちを繋げたあの女神に、私たちの力を見せてきなさい!」

「ノワールちゃん……みんなありがとう。行ってくるね!」

「ええ、行ってらっしゃい!」

 

 プルルートは、皆に背を向けてプラネテューヌ教会へと戻る。

 イストワールの力で超次元へ跳び、ネプテューヌに新たな力を見せに行くために。

 

 

 

 

「ぷる〜ん……せっかく超次元に来たのに、座標がズレるなんてぇ……いーすんったら〜」

 

 意気揚々と超次元にワープしたはいいものの、イストワール同士の通信に少しラグが発生し、プルルートは超次元プラネテューヌの街外れにワープしてきてしまった。

 しょうがないから、プルルートは超次元のプラネテューヌを観光してからネプテューヌのいるであろうプラネテューヌ教会に向かうことにした。

 

「……おい見たか? 今週のコロシアムの週替わりミッション」

「見た見た。あんなの挑む奴なんていないって」

「パープルシスター様はもう二回挑んでるらしいけどな」

「あの方ぐらいしか挑めないだろ。人間向けのミッションじゃないってことさ」

「確かに」

「ま、俺たちは俺たちにできる程度のミッションで稼がせてもらうってな! がはは!」

 

 プルルートがプラネテューヌの街を練り歩いていると、歴戦のハンターのような風体の巨漢二人の会話が耳に入った。

 

「……ぎあちゃんにしかできない……?」

 

 内容が少し気になったプルルートは、コロシアムに向かい、コロシアムの電子掲示板に表示されている週替わりミッションとやらに目を向ける。

 

『週替わりミッション 女神パープルハートに挑もう!』

 

「あはは。うってつけだね〜」

 

 プルルートは小さく笑い、コロシアムの奥へ進んで行った。

 

 

 

 

 

 




 後編の執筆は『ネクストアイリス』のデザインが頭の中に浮かび次第しますので更新には時間がかかると思います。
 後編はバトルパートなので文字数がとても増えます。


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三話


 文字数のバランス上バトルパートを分けます。



 

 

「またネプギアかな〜って思ったけど、まさかぷるるんだなんてね」

「ねぷちゃんこそ、コロシアムのクエストになるなんて珍しいことするじゃん」

「いやぁ、たまにはこんな感じの仕事もしろっていーすんがね。でも、ネプギア以外だーれも挑んで来なくてさぁ」

「そりゃそうでしょ〜」

「プラネテューヌにはまだ誰も知らぬ猛者がいるんじゃないかと少し期待してたんだけどね」

 

 コロシアムで向かい合い、会話を交わすネプテューヌとプルルート。

 

「さてと。じゃあ、やろっかぷるるん」

「おっけ〜」

 

 ネプテューヌが合図をすると、コロシアムの試合開始を知らせるブザーが鳴り響く。

 

「行くよ! ぷるるん!」

 

 同時に、ネプテューヌ地面を強く蹴り、プルルートの方へ駆ける。

 姿勢は低く、刀を振りかぶる。

 

「え〜い!」

 

 対するプルルートは、ネプテューヌに向かってぬいぐるみを思い切り放り投げる。

 狙いは足元。足を止め、接近を妨害する。

 

「おっと」

 

 ネプテューヌは跳んで回避し、落下の位置エネルギーも活かして刀を振り下ろす。

 

「とりゃああっ!」

「びりびり〜! どか〜ん!」

 

 プルルートは、雷撃魔法と爆発魔法でネプテューヌを迎撃する。

 

「あちちちっ!」

 

 ネプテューヌはシェアエネルギーを込めた斬撃で、プルルートの魔法攻撃のほとんどを弾き飛ばすも、少し残った電流と熱に襲われる。

 

「けど、とったよ!」

 

 迎撃を乗り越えたネプテューヌの刃が、プルルートに届く。

 

「それはどうかなぁ?」

 

 ……寸前に、両者の身体の間に何か割って入る。

 

「ねぷっ⁉︎ これはっ!」

 

 先程プルルートが放り投げたぬいぐるみが、軌道を変えて戻ってきていた。

 プルルートのぬいぐるみはファンシーな見た目とは裏腹に、プルルートの魔力とシェアエネルギーが込められた凶器である。

 鈍器として使用できたり、相手の武器を受け止められるほど耐久性が底上げされているだけでなく、魔力の込め方によっては自立行動する飛び道具としても使える万能武器である。

 

「それぇ〜っ!」

 

 プルルートの魔法攻撃とぬいぐるみの打撃の連携への対処のため後退ったネプテューヌに、プルルートはぬいぐるみの雪崩『ふぁんし〜れいん』を仕掛ける。

 

「なら……『32式エクスブレイド』」

 

 ネプテューヌは32式エクスブレイドを射出するのではなく、頭上で高速回転させることにより、降り注ぐぬいぐるみから防御する。

 

「ふふっ」

「ははっ」

 

 両者ともに肩慣らしは済み、体も温まってきた。

 

「そろそろいこうか」

「そうだね〜!」

 

 ネプテューヌはシェアクリスタルを、プルルートは女神メモリーを、それぞれ顕現させる。

 

「刮目せよ〜!」

「もー! それわたしの台詞ー! 気を取り直して、刮目せよ!」

 

 ネプテューヌとプルルートがシェアクリスタルと女神メモリーを使い、眩い光に包まれる。

 身長が大幅に伸び、身体の起伏が増え、プロセッサユニットが装備される。

 両者ともに、守護女神本気の戦闘モード、女神化が完了する。

 

「さぁ、ねぷちゃん。本気でイかせ合いましょう」

「変な言い方しないでくれる? けど、ぷるるんと本気で戦ったことなんてなかったから、楽しみだわ」

 

 紫の刀剣を構えるパープルハートと、蛇腹剣を無造作に持つアイリスハート。

 

「『クロスコンビネーション』ッ!」

「『ファイティングヴァイパー』‼︎」

 

 女神化して早速、自身の大技をぶつけ合う二人。

 互いの武器は互いの武器に阻まれ、相手の身体に届くことはなく、コロシアム中に、武器同士がぶつかり合う鈍い音が鳴り響く。

 

(……っ! ぷるるん、修行でもしたのかしら……⁉︎ この間よりも動きの質が全然違うわね……!)

 

 両者一歩も譲ることのない、互角の切り結びが続く。

 剣の扱い自体はネプテューヌが勝っているが、プルルートの蛇腹剣の独特の軌道と攻撃範囲がその差を埋めている。

 

(ぷるるんのアレ、相変わらず厄介な武器ね……けど、見えた! ここ‼︎)

 

 ネプテューヌは蛇腹剣の刀身部分ではなく、ワイヤー部分を掴み、思い切り引き寄せる。

 

(……っと、流石ねぷちゃん。けど、ワイヤーの部分なら安全、なんて思ってないわよねぇ?)

 

 プルルートは蛇腹剣に、自らの得意とする雷撃魔法を纏わせ電流を流す。

 

「……っ、はああああっ! 『デュエルエッジ』!」

 

 しかし、ネプテューヌは電流をものともせず、ワイヤーを引っ張る力を更に込め、引き寄せたプルルートに剣を向ける。

 

「もう、ねぷちゃんったら乱暴ねぇ!」

 

 プルルートは『ドライブスタッブ』の足技でネプテューヌの剣を弾き、その衝撃で宙返りしながら後方へ距離を取る。

 

「やるわね、ぷるるん」

「ねぷちゃんこそ」

 

 ネプテューヌはプルルートとの本気の戦いを心から楽しんでいる。

 しかし、プルルートの方はまだ満足し切っていない様子だった。

 

「けど、こんなんじゃ足りない、全っ然足りないわぁ」

「……足りない?」

「本気じゃないねぷちゃんと戦ってもつまんないってこと」

「私は手を抜いてなんていないわ」

「だってぇ、ねぷちゃんもう一回変身できるじゃな〜い」

「それは……」

 

 実際、ネプテューヌがネクストフォームへと変身してしまえば、アイリスハートが相手だろうが決着は一瞬だろう。

 それに、ネプテューヌは以前プルルートにネクストフォームを見せた後、プルルートがずっと浮かない表情をしていたことを覚えていた。

 

「……良いの? 変身しても」

「何回も言わせないで。本気じゃない子と戦ってもつまらないのよ」

「なら……行くわよ!」

 

 ネプテューヌはハイパーシェアクリスタルを使い、通常の女神化以上に眩い光に包まれ、ネクストパープルへと変身する。

 

「ステキよ。ねぷちゃん」

「ありがとうぷるるん。けど、こうなったからにはもう容赦はできないわ」

「容赦なんて要らないわよ。けど、少し待っててくれる? あたしも、奥の手を見せてあげるから」

「奥の手……?」

「……ありがとうね、ねぷちゃん。あの時ねぷちゃんがネクストフォームを見せてくれなかったら、あたしたちは死に物狂いでこれを創り出そうとなんてしなかったと思うわ」

 

 言いながら、プルルートは掌の上にクリスタルのようなもの顕現させる。

 

「それは……!」

 

 ネプテューヌを目を疑った。形状や色が少し違えど、プルルートが顕現させたものは明らかにハイパーシェアクリスタルだったからだ。

 

(五色……ぷるるんとノワールとブランとベールと……ピー子ね)

 

「まさか……ぷるるんたちもハイパーシェアクリスタルを創るなんてね」

「ちょっと違うわ。あたしたちの変身アイテムだから、ハイパー女神メモリーよ」

「そうね。その方がぷるるんたちらしくていいわ」

 

 ネプテューヌは素直に感心していた。自分たちは猛争事変という世界の危機に誘発され進化したネクストフォームに、プルルートたちが平和な世界の中で自分たちだけの力でネクストフォームの域まで辿り着いたことに。

 そして、プルルートがネクストフォームへ変身することが楽しみでしょうがなく、期待に目を輝かせていた。

 

「ぷるるん。早く見せてちょうだい。あなたのネクストフォームを」

「ふふっ、慌てないでよ。ちゃ〜んと見せてあげるから」

 

 プルルートがハイパー女神メモリーを起動させると、通常の女神化以上の眩い光がプルルートを包み込んだ。

 

 

 





 続きはネクストアイリスのデザインを思いつくまで待ってください。


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最終話

 

 

「……あれ?」

 

 今日も女神ネプテューヌへの挑戦ミッションに来たネプギアは、電子掲示板の前で足を止めた。

 ここ数日、自分以外誰もやっていなかった筈のクエストが、先客があり受付不可になっていたからだ。

 

「他の誰かがやってるってことだよね……?」

 

 考えるより見た方が早い、とネプギアはコロシアムの観客席へ向かう。

 近づくにつれ、ネプギアはあるプレッシャーを感じていた。

 

「もしかしてお姉ちゃん……ネクストフォームになってる……?」

 

 ネプギアは少し悔しさを覚えていた。

 今の自分は、ネプテューヌの通常の女神化の本気なら引き出せるが、ネクストフォームにまでさせることはできない。

 ではそんな自分にできないことをやってのけたのは誰だろう、とネプテューヌの対戦相手へ目を向ける。

 

「あれは……」

 

 ネプギアは、自身が感じていたのは二人分のネクストフォームのプレッシャーであったことに気づいた。

 しかし、ネプギアの目に映る人物はノワールでもブランでもベールでもない。

 では誰のネクストフォームか。

 ネプギアは、なんとなくその人物の雰囲気から正体を感じ取った。

 

「……プルルートさん?」

 

 

 

 

 変身時の光が薄れ『ネクストアイリス』が姿を現した。

 ネクストフォームに共通されるように、肌の露出度は大きく抑えられ、装甲のようなパーツが脚部と腕部に装着されており、背部ウイングはアイリスハートのものから大幅に形を変え、左右五対の能動性空力弾性翼からシェアエネルギーによって紫色の光の翼が形成されるものとなっている。

 

(これが……ぷるるんのネクストフォーム、『ネクストアイリス』……!)

 

 アイリスハートの特徴でもあった、これでもかというほどの苛烈な凶暴性は鳴りを潜め、変身前の穏和な雰囲気すら感じられる。

 しかしネプテューヌは、その裏にある底知れぬ闘気を確かに感じていた。

 いつもは天真爛漫で自由奔放な自分が女神化すると落ち着いた性格になるが、その心の闘志は更に激しさを増すように。

 

「……あなたもステキよ。ぷるるん」

 

 ネクストアイリスを見たネプテューヌは、プルルートに聞こえないぐらいの声量でそう呟いた。

 

「行くわよ、ねぷちゃん」

「受けて立つわ、ぷるるん」

 

 声を掛け合った直後から、常人では目で追えないほどのスピードで動き回り、ぶつかり合う二人。

 紫色の残像が、コロシアム全体を彩る。

 

(……零距離で正面からヤり合ったら、流石にねぷちゃんには勝てないわね。なら……!)

 

 一度距離を取ったプルルート(ネクストアイリス)の新たな蛇腹剣が展開され、ネプテューヌに差し向けられる。

 

(来る……っ! ……あら?)

 

 ネプテューヌは蛇腹剣のある違和感に気づいた。

 

(ワイヤーは……?)

 

 蛇腹剣の刀身を繋ぐワイヤーが存在しないのだ。

 ネプテューヌは無軌道に襲い来る刀身に一瞬は驚きながらも、似た武器を思い起こす。

 

(なるほど……ネプギアのビット、ノワールのナナメブレイドみたいな感じね)

 

 自分の視野だけではなくプルルートの視野を考慮しながら、ソードビットの動きを予測し、的確に捌いていく。

 数は多いものの、ネプギアのビットのような火力もなければ、ノワールのナナメブレイドのような機動力もない。プルルートのピットは、モンスター程度なら手を下すことなく切り刻めるほどの性能ではあるが、ネクストフォームとなったネプテューヌに届くことはない。

 

(……けど、ぷるるんの新しい武器がこの程度のはずがない)

 

 加えて、プルルートの攻撃はどこか積極性がなく散発的なことに、ネプテューヌは違和感を覚え警戒をし続ける。

 

(……⁉︎ 何か来る……っ!)

 

 その時、ネプテューヌは"何か"を感じ取り、急いで旋回してプルルートのビットの包囲から脱出する。

 

「……あら、気づかれちゃった?」

 

 そして次の瞬間、ビットとビットの間にビームの刃が繋がった。

  

「……これは!」

 

 弱者はビットで切り刻まれ、ビット攻撃を乗り越えられる強者もビーム刃を繋げて切り刻む、隙を生じぬ二段構え。

 つまり、通常の蛇腹剣のワイヤー部分がビーム刃によって繋げられるものが、ネクストアイリスの操る新たな武器『ビーム蛇腹剣』である。

 通常の女神化の蛇腹剣にはあった、敵を痛ぶって虐めるという"遊び心"は失われており、ネクストアイリスのビーム蛇腹剣は言うならば洗練された暴力の塊。

 

(動かなければ大ダメージをくらってたわね……)

 

 しかし、相対すらネクストパープルは、強者を更に超えた強者。ビットとビーム刃だけでは倒せない相手。

 だからこそ、戦う相手としては、これ以上なく燃えるというもの。

 互いに昂る心で表情が緩むも、すぐに整え直し、敵の次の行動に備える。

 

「そらぁっ!」

 

 プルルートは射出していた一旦ビットを回収し、そして蛇腹剣をまた大きく振るうと、その動きに反応し、ビットが飛び交い、ネプテューヌを囲いながら攻撃していく。

 

「……」

 

 ネプテューヌが意識していることは三つ。

 一つはビットの波状攻撃を捌くこと。

 もう一つはビット同士を繋げるビーム刃の攻撃範囲に入らないこと。

 そして最後の一つは……

 

「はぁぁぁっ!」

 

 ……ネクストアイリス本体の攻撃。

 『ハープーンスピア』の爆撃がネプテューヌを襲う。

 

「……『ブレイズブレイク』ッ‼︎」

 

 しかし、予測していたと言わんばかりにネプテューヌは反撃に刀を振るう。

 爆炎と爆炎がぶつかり合い、視界が阻まれる。

 

(慣れてきたわ。ぷるるんの剣は、刀身同士をビームで繋げる直前の一瞬、シェアエネルギーの"溜め"がある!)

 

 加えて、溜めの段階では刀身を静止させなければならない。

 時間にすれば一秒にも満たないが、女神同士の戦いにおいてその隙はかなり大きい。

 早くもネプテューヌは、プルルートのビーム蛇腹剣を攻略し、一気に距離を詰める。

 

「『クリティカルエッ……きゃっ!」

 

 すると、ビーム刃が鞭のようにしなやかに動き、ネプテューヌを捉えた。

 

「少し、油断したわね、ねぷちゃん」

 

 ネクストアイリスのビーム蛇腹剣はネプテューヌの想定を超えた、刀身ビット、ビットを繋げるビーム刃、そしてビーム刃自体を動かす、二段ならぬ三段構え。

 その隙にプルルートが仕掛けたのは、攻撃ではなく拘束。ビットがネプテューヌにまとわりつき、自由を奪う。

 

「ぐっ、しまっ……!」

「さぁ、食らいなさい!」

 

 振り下ろす脚を合図に、無数の雷撃が相手を襲うプルルートの必殺技(エグゼドライブ)『サンダーブレードキック』がネプテューヌに襲いかかる。

 

「特別に延長サービスよ!」

 

 そして、追撃に投げキッスから発生したハート型の術式がビーム砲を放ち、ネプテューヌを爆風が包む。

 ネクストフォームであっても、同じネクストフォームの必殺技をまともに受ければタダでは済まない。

 

(……っ、ネクストフォーム、とんでもない消耗ね……けど、このまま押し切れば勝てるわ……!)

 

 瞬間、閃光が煌めき、プルルートの身体に衝撃が走った。

 

「……え?」

 

 プルルートがその衝撃の正体を、ネプテューヌ最強の必殺技(エグゼドライブ)『次元一閃』に斬られたものだと理解した時には、既にダメージで変身が解け、その場に倒れ込んでいるのだった。

 

「……確かに、今のは負けるんじゃないかと思うぐらいのダメージだったわ……」

 

 ネクストパープルの並大抵の攻撃では傷がつかない筈のボディスーツは所々焼き切れており、背中のプラネットリングは、何箇所も破損していた。

 そして『次元一閃』の反動で変身が解け、ボロボロの身体をなんとか剣で支えながらも、ネプテューヌは立ち続ける。

 

「……けど、これがわたしの『次元一閃』、必殺技(ネプテューンブレイク)を超えた必殺技(エグゼドライブ)だよ、ぷるるん」

 

 ギリギリの戦いを制した勝者は、ネプテューヌだった。

 

 

 

 

 激闘から数日。

 

「うわーん! 終わらないよー!」

 

 本気のネクストフォームでの戦闘によるシェアの消費量は凄まじく、その回収のための仕事にネプテューヌは追われていた。

 

「ぷるるんも手伝ってよー!」

「え〜、あたしねぷちゃんにやられたダメージでまだ動けな〜い」

「何日も前のダメージがまだ残ってるわけないじゃん! ていうかぷるるんが変身に使った分のシェアも引かれてるんだよ! それに、ぷるるんが向こうに帰る分のシェアも稼がなきゃだし……」

「ごめんごめん冗談だよ〜。お手伝いするね〜」

 

 プルルートはネプテューヌの隣に座り、仕事を手伝い始める。

 

「……ね〜、ねぷちゃん」

「なーに、ぷるるん?」

「次は、負けないからね」

「受けて立つよ。いつでもね」

 

 

 

 

 

 かくして、神次元の守護女神たちも進化を果たした。

 超次元の女神には寸前で届かなかったものの、肩を並べて戦えるほどの強さを手に入れた。

 ある時は友として、ある時は好敵手として。

 次元を超えて影響を与え合い、女神たちは進化し続ける。

 

 

 

 

 

   Next stage of another dimension  

 

          -完-

 

 

 

 

  





 ノリと勢いで始めたこの作品も、ようやく終わらせることができました。ありがとうございました。


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