以前に投稿していたものを編集して投稿しています。
これからまた少しずつ、修正しながら投稿していきたいと思います。
プロローグの時系列は二学期より後です。
第一話は原作一巻から始まります。
それではどうぞ。
森の中を一夏は走っていた。
時節聞こえてくる爆音や地響きが一夏の心を騒ぎ立てる。
(早く行かないと、みんなが危ない)
一夏が何故走っていて、ISという最速の移動手段を使わないのかには理由がある。
一夏が慌てていたため、ISという存在を忘れているわけではない。
ひとつの理由として、一夏のいた場所から戦闘がおこなわれている場所が近かった、というものがある。
だが、一番の理由は別にある。
一夏が森を抜けると、地獄のような光景が目の前に広がっていた。
「……なんだよ、これ?」
空き地だったはずの場所は荒れ果てていた。
そこら中にある弾痕、穴があいて煙が立ち上っている地面。
上空には、複数体の無人機を相手にしている仲間たち。
乗っている機体の装甲はボロボロだった。
それもそのはずだ、侵入してきた無人機ISの数は合計12機。
それに対して、こちらの数は自分を入れて現在10人
計算上、一人一機以上を相手しなくてはいけない。
いくら代表候補生でも勝つのは不可能だろう。
専用機持ちの護衛のもと行われた今回の行事は、亡国企業と手を組んでいる組織を完全に撃退するための作戦も練り込まれていた。
しかし、教師陣の使用するISに謎のロックがかかることによって全ての歯車が狂う。
本来ならば、各アリーナの外部に配置されていた人数は2人ずつだった為、コンビを組むことによって他の場所に存在する人が来るまでの時間を稼ぎ、集まり次第、全員でたたく予定だった。
だが、一夏が配置されていた以外のアリーナ上空に3機の無人機が来襲、そして、隔壁と教師陣のISがロックされることで完全に内部と外部で通信がとれなくなる。
おまけに、無人機は前回現れたゴーレムⅢよりも強さが段違いだった。
連携やコンビネーションという言葉をあざ笑うかのような圧倒的な数の暴力。
次々に地面に落ちていく仲間達。
(やめてくれ……)
一夏の中で何かがうごめく。
また一人、落ちる。
それをただ見ていることしかできない自分。
(やめてくれよ……)
自分の中にいるもうひとりの自分が「力を使わなければ仲間が死ぬぞ」と叫んでいる。
(俺はこいつの力を使いたくない。)
(守るために全てを壊す、この力を使いたくない。)
(でも…………)
さらに仲間が落ちる。
無人機がそれに追い打ちをかけるように腕を向ける。
当たれば絶対防御を貫通し、ISに乗れなくなってしまうかもしれない。
当たりどころが悪ければ死んでしまうかもしれない。
自分の中で何かが切れる音がした。
「やめろおォォォォ!!」
次の瞬間、一瞬でISが展開される。
第三次形態移行によって顔が隠れ、装甲に赤いラインが入った機体が体に装着される。
展開と同時に無人機に向かって、瞬時加速する。一夏の周りの景色が変わる。
目の前に腕を斜め下に向けている無人機がいる。一夏の手には、いつの間にか零落白夜が起動している雪片弐型が握られていた。
腕を横に振るう。
無人機の腕ごと体が両断される。そして、一夏は無人機から離れる。
近くにいる無人機に向かって雪片を投げる。同時に反対側にいる無人機に向かって瞬時加速する。後ろで爆発する音が聞こえる。
無人機に近づき、腕を構えると手に雪片がある。そのまま斬りつけて目の前の無人機を両断する。
一夏の周囲に複数の熱源反応がでる、たくさんの砲門が一夏を狙う。
熱線が打たれた。しかし、機体に熱線が当たる直前に瞬時加速で上に移動。そのまま加速中に無人機の方向に瞬時加速をする。
一夏をとてつもない負荷がおそう。でも、機体は止まらない、否止められない。
第三次形態移行によって得た力はVTシステムのように操縦者への負荷を全く考慮しないものだった。
一夏は次々に無人機を斬り払っていく。
瞬時加速による強制的な方向転換によって口から血を吐きながら。
それでも機体は止まらない。一夏の体を全く気にせず動き続ける。
(そうだ、俺の体がどうなろうと皆を守らないと……)
一見、ISの暴走のように見えるが、一夏本人も無理にでも動くことを、もしくはどんな手を使っても敵を倒すことを望んでいる。その思いに応えるように白式は動き続ける。
周りに熱源反応。また、一夏の機体が加速して離脱しようとする。
しかし。先ほど両断した無人機の上半身が体にしがみついている。
おまけに機体が動かない。
「AICか……だが!」
白式が赤く発光する。同時にAICも解除される。
左手の荷電粒子砲でしがみついている無人機を撃ち、破壊する。
周りを確認すると、すでに熱線は発射されていた。
(回避が間に合わない!?)
機体の発光が強くなり、熱線が自分に当たる。
機体にはダメージも衝撃もない。
一夏が移動しようとした時、背中で何かが爆発し強い衝撃をうけた。
無人機は実弾兵器も装備していたようだ。
零落白夜で無効化できるのは、エネルギーのみで実弾を防ぐことはできない。おまけに、零落白夜の発動中は絶対防御が無効となる。
機体が衝撃で吹き飛ばされている間も熱線と砲弾が追い打ちをかけてくる。
一夏は爆風によって地面にたたきつけられた。
「……かはっ」
衝撃によって、さらに口から血が出る。
白式のエネルギーも半分を切りかけていた。
「……まだだ」
倒れながらも一夏はつぶやく。
「まだ、負けるわけにはいけない」
機体の補助で何とか立ち上がる。
(みんなを守らないと……だから!)
「もっと力を貸せ、白式!」
呼応するように機体のラインが赤く光る。
白い全身装甲の機体に赤いラインが入った姿はまるで、返り血を浴びた鬼のようだった。
白式が変化すると頭に音声が流れてくる。
「やっぱり、いっくんもそうなっちゃうんだね……」
7月ぶりに聞く声
「ごめんね、私のせいで……」
世界で天災と呼ばれている人の声
「ちーちゃんは引き返せたけど、その機体とコアじゃ多分無理だから」
以前聞いた声とは違い、聞こえてくる声には憐れむような後悔しているような感情が込められている気がした。
その声が聞こえてくると同時に無人機が腕をこちらに向ける。
「いっくん、白式は壊させてもらうよ!」
全ての無人機から熱線と砲弾が同時に打たれた。
このSSには今後オリジナル要素がどんどん増える予定です。
そして、二学期に入ると半オリジナル展開になります。
学校が忙しかったため、修正が遅れました。
感想、お待ちしております。
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第一話
修正作業に時間がとてもかかっている現状です。
学校も忙しいため、週一投稿は夢のまた夢です。
それではどうぞ。
「こ、これは想像以上につらい……」
背中に刺さる視線に耐えながら一夏は小声でつぶやく。
今日は入学式という新しい生活が始まる日だ。
普通の学生ならば変化する環境に期待するか不安を覚えることだろう。
一夏もそのうちの一人で現在不安を覚えている。
(俺、この学校でやっていけるのかな)
周りからくる視線の量は多い。そして、ほとんどが実験動物を観察するように、じっと見つめてくる視線だった。
一夏が視線を受けているのには理由がある。それは彼がこの場において異質だからだ。
教室内に彼以外に男は一人もいない。それどころかこの学園に男がいること自体がおかしいのである。
彼はIS学園一年一組の教室にいる。IS学園とは、約10年前に発表されたマルチフォーマットスーツであるIS《インフィニット・ストラトス》について学ぶための学園だ。
ISは発表された当初に起きた事件のとき、はるかに上回るスペック差で現行していた兵器を一網打尽にした。その事件を期にISの存在は絶対的なものとなった。しかし、そんなISにはひとつの欠点がある。それは女性にしか動かせないことだ。その欠点は世界を変えるきっかけとなり、現在世界中が女尊男卑になっている。
つまり、女の象徴となっているISについて学ぶ、この学園は女子校だと言っても過言ではない。
そんな中にひとり紛れ込んでいる彼は浮いた存在になるのは必然だ。
(誰か、この状況を何とかしてくれる人はいないのか?)
一夏はそう思い、視線だけ動かして周りを見た。
周りにいる女子のほとんどが一夏を見ている状況の中、窓際に見覚えのある容姿をした女子を見つけた。
(もしかして、箒なのか?)
小さい頃に引っ越してしまった女の子、引っ越しをした後、ほとんど連絡も取れずにいた。その女子の姿は小さい頃の面影を残していた。
一夏は窓際にいる女子を注視する。しかし、相手は外を見ているため、こちらの視線に気づく気配はない。
(頼む、こちらを向いてくれ)
一夏は神に祈るように心のなかで呟いた。すると、願いが叶ったのか箒が窓から視線を外し、一夏のいる方を向いた。
そして、一夏と目が合った。
「……!」
一夏と目があった瞬間、箒は勢い良く視線を窓に戻した。
(何故だ!?)
一夏はようやく手に入れかけた現状を良くする材料を手放してしまった。しかし、実際は今のやりとりで時間が経っていた。その証拠に、教室のドアが開く音が聞こえる。
教室に入ってきたのは小柄な女性だった。
「皆さん揃っていますね?SHRを始めますよ!」
晴れ晴れとした笑顔で挨拶をする女性。
「私は、このクラスの副担任の山田真耶といいます。一年間よろしくおねがいしますね!」
山田先生は元気よく自己紹介をする。
「…………」
しかし、周りからの反応は全くなかった。山田先生の顔に雲が指す。
(ごめんなさい、山田先生。反応したいけど、この視線の中ではできません)
心のなかで一夏は謝罪した。
「そ、それでは出席番号順に自己紹介をしてもらいます」
泣きそうな山田先生が言うと、自己紹介が始まった。
一夏への視線は減らない。
(なんで皆こっちを見てるんだよ?自己紹介ぐらい見てやれよ、すごい気合が入っているぞ)
発表者が後ろにいるため、後ろを向けない一夏は気付かなかったが、発表者も一夏を見ていた。
(HRまで我慢すればなんとかなると思ったのに、もしかして、このままずっとこんな状態なのか?)
一夏が未来を想像して絶望していると、ふいに声が聞こえてくる。
「……くん?織斑一夏くん!」
「はっ、はい!」
突然の声に驚いたため変な声を出してしまう。声の主は山田先生のようだ。
「大声出しちゃってごめんね?自己紹介の番が次は織斑くんなんだ」
とても低姿勢の受け答え、本来なら人の話を聞いてなかった一夏が悪いはずだが、真っ先に謝ってくる。
「えっと、もしかして怒ってる?」
(やばい、この人は真っ先に自分に非があると決め付けるタイプの人だ、
急いで話を切り上げないと会話が永久終わらない!)
「だ、大丈夫ですから。怒ってないですし、自己紹介もします!」
一夏は返答を待たずに席から立ち後ろを向く。そこにあるのは今まで散々背中に刺さっていた視線。
(とんでもなく辛い。でも、発言しなければ、ずっと視線がなくならない。)
一夏は思い切って自己紹介をする。
「織斑一夏です。」
一夏は次の台詞を考える
(趣味は特にない。特技は家事全般だけど、男の自己紹介として駄目な気がする。)
案が出ては消されていく。
(あれ?話せるものが何もない。)
一夏の頭にはいい案が浮かばなかった。しかし、時間は有限である時間が経つにつれて周りの視線には「他には?」という意思が付与されていく。
(何か言うんだ俺。)
一夏はさらに考える。考えぬいた結果。
「……以上です」
一夏は締めの言葉を言う。発言時間が10秒にも満たなかった。
クラスの半分近くが椅子からこける。
(俺には無理だったようだ。)
一夏は悟りを開いたように清々しい顔で目を閉じた。
「お前はまともに自己紹介もできんのか?」
「え?」
声が聞こえると同時に、クラッカーを鳴らしたような音が教室中に響く。
その後、激痛が一夏を襲う。
「い、いってぇ?」
あまりの激痛に頭を抱えながらしゃがんでしまう。
「織斑先生!会議は終わったんですか?」
山田先生の声が一夏に届く。
(いったい何が……織斑先生?)
一夏が顔を上げるとそこには、彼の姉である織斑千冬がいた。
「ああ、山田先生SHRを任せてしまってすまない。」
「いえ、私も副担任ですから、これぐらいはしませんと・・・」
普通に会話をする教師2人。
(あれ?俺ぶたれたのに放置なの?)
「それよりも、なんで千冬姉が」
立ち直った一夏が文句を言う前に教室中から爆音が発生する。
「千冬様よ!本物の千冬様だわ!」
「ずっとファンでした!」
「私は憧れてこの学園に来ました!!北九州から!!」
大音量の黄色い声に一夏はまたしゃがんでしまう。
(耳、耳がいかれる。)
一夏がしゃがんでも音響兵器は止まらない。一夏への視線はいつの間にかなくなっていた。
「毎年、よくこれだけの馬鹿が集まるものだ。」
呆れたように織斑先生が言う。
(……毎年こんな状態なのか。千冬姉も大変だな。)
幾分か耳が治ったため一夏は再び立ち上がる。
「それで?お前は満足に挨拶もできずにそのまま立っているのか?」
冷ややかな目で一夏を見る織斑先生。
「そもそもなんで、千冬姉がここにいるんだよ?」
一夏がそう言うと彼の頭にまた、衝撃が走る。
「学校では織斑先生だ!」
(たしかに。でも、一回間違えただけで叩かなくても。)
「なにか言ったか?」
「いえ、なんでもありません。」
(どうやら俺の考えていることは簡単に読まれてしまうようだ……)
「あれ?もしかして織斑くんって、千冬様の弟?」
唐突に発せられるクラスメイトの声。騒がしい中でも、一夏が織斑先生のことを千冬姉と呼んだことに一部の女子は気がついたようだ。
(あっ、これはやばい。また騒がしくなるパターンだ)
一夏は諦めたかのように席に座り、机に突っ伏した。
(もう無理だ、俺の精神がついていけない……)
案の定、騒がしくなる教室内。この数十分間で一夏の精神はとてつもなく消耗してしまったようだ。
だが、案外早く騒ぎは静まった。机の上にへたり込んでいる一夏にも聞こえるように発せられた、織斑先生の声によって。
「いきなりですまないが、転入生を紹介する。」
(……どうやら、俺の精神は更に削られるらしい)
次話からオリキャラが出ます。
修正前と全く話の内容が一緒なのは今回までです。
オリキャラは最初少し戦うだけで、あとは裏でちょこちょこ動いてもらいます。
それでは、次回もよろしくお願いします。
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第二話
いまだに拙い文章ですが、よろしくお願いします。
「突然ですまないが転入生を紹介する」
織斑先生の発言でクラス全体が固まる。
(転入生……このタイミングで? 今は入学式当日だぞ。普通なら新入生じゃないのか)
一夏は訳が分からず首を傾げた。クラスメイト達も一夏と同じ考えなのか顔をしかめている。
「君達の言いたいことはわかる。何故このタイミングで新入生ではなく転入生なのか疑問に思っているのだろう。そして、その理由を聞きたいと」
一夏とクラスメイト達は同時にうなずく。
「その疑問に答えるのは簡単だが直接本人に聞いた方がいいだろう。五代入ってこい!」
織斑先生は答えることを放棄して、廊下で待たせていた転入生を呼ぶ。
(説明するのが面倒になって、人になげたな)
一夏が非難をする目で織斑先生を見る。
「何か言ったか織斑?」
即座に左手に持っていた主席簿を右手に持ちなおす織斑先生。
「いえ、何も言っていません」
一夏がそんなやりとりをしていると、教室のドアが小さな音を立てて開く。そして、教室内に一夏と同じくらいの背をした男性が入ってくる。
「えっ?」
またもや、クラスの空気が固まる。
(お、男だよな?)
一夏も表情には出さないが、内心では焦っていた。自分以外に男がこの学園に行るはずがないという気持ちと、実際には目の前には男がいる現実が彼の頭を混乱させている。
クラスメイトたちも現状が理解できない、という顔で転入生を見ている。
転入生はこの空気の中、全く気にしていないように口を開いた。
「世界で二番目に発見された、男性IS操縦者の五代七海です。これからよろしくお願いします」
普通の自己紹介をされて、クラスの空気は少しだけ良くなった。良くなったことによって、今度は疑問が出てくる。
「あの、二人目の男性IS操縦者が発見されたことを、私達は全く知らなかったのですが……」
クラスメイトからの質問は少し消極的な聞き方だったが、暗に「あなたは何者?」という意味が込められていた。
(当然の疑問だ、俺も含めてクラスの全員が知らないようだからな)
その質問に対して五代は少し肩の力を抜いて答える。
「情報規制がされていたのでしょう。一人目の織斑一夏君は、見つかると同時にマスコミの群れに囲まれていましたから。政府もいろいろと情報隠蔽に力をいれていたみたいです。あとは……」
五代は少しだけ言いよどんだ。
「あとは?」
催促するように質問した子が聞き返す。
「私が見つかったのが孤児院だったのも、一つの理由でしょう」
一瞬何を言われたのか、わからなかったのだろう。質問した子は目を見開いていた。
「それじゃあ、もしかして」
少し時間がたった後、おそるおそる聞き返す。クラスの空気は少しずつ重たくなっていった。
「はい、私は生まれたときから親がいない孤児です。日本政府は15才から16才を対象にして検査をおこないました。ですから、学校に通っていなかった自分でも戸籍は昔作って貰ったので検査されたんです」
淡々と経緯を話す五代。
「あ、あの。ごめんなさい」
いたたまれなくなったのか、質問した子は謝って席に着いた。
(完全に地雷だったな。俺や千冬姉と同じで親に捨てられ、俺らとはちがい助け合う兄弟もいなかったのか)
「謝らなくてもいいですよ。孤児院の皆は優しかったし、とても楽しい時間を過ごせていましたから」
五代は明るく振る舞っている。その表情は本当に笑っていて無理に言っているわけではなさそうだった。
「少し湿っぽい雰囲気になってしまったな。他に質問のある奴はいないのか?」
織斑先生が場の雰囲気を変えるように呼びかける。女子達は立ち直りが早く、暗い雰囲気などなかったこのように手を上げた。
そこから先は質問の嵐だった、五代はしっかりと受け答えをしていたのだが、若干頬がひきつっていた。
ひとしきり女子からの質問が終わり、そろそろチャイムが鳴ってもおかしくないころに、一夏が思い出したように質問をした。
「そういえば、なんで転入生になっていたんだ?」
一夏の質問を聞くと五代は頬をかき、苦笑いをしながら答える。
「発見された後に実際に国籍を作るために外国に行ったとき、そのついでに学校で授業を受けていたんですよ。まあ、一週間ほどでしたけれど」
五代は軽く笑いながら話す。
「なるほど、国内にいなかったなら誰も気が付かないし、3月なら外国に行っても旅行者で十分通じるか」
一夏が言い終えると、ちょうどいいタイミングでチャイムが鳴る。
「ちょうどいいな、これでSHRを終わりにする。次の時間は普通に授業だ、しっかりと準備をするように」
織斑先生はそう言うと、教室から出て行った。
「織斑一夏君だよね?五代七海って言います。これからよろしくね」
織斑先生が教室からいなくなった後、教壇の横にいた五代が一夏に話しかけてくる。
「織斑一夏だ。お互い数少ない男同士だから、気軽に一夏って呼んでくれ」
「わかったよ、一夏」
お互いに軽い挨拶を済ませる二人。しかし、周りからの視線が痛いのか両者ともに笑顔が硬い。
「(一夏、この視線は何なの?正直いうと、居心地がすごく悪いんだけど)」
五代が一夏に小声で話しかけてくる。
「(これは、いわゆる洗礼だ。俺たちは、ただでさえイレギュラーなのに二人揃っているだろ?だから、注目を集めているんだよ)」
「(なるほど。でも、一夏はだいぶ自然体だね?)」
「(お前がいない時は、この視線が全部俺に降り注いでいたんだよ!)」
「なるほどね、一夏も大変だったんだ」
五代は納得がいったのか、声のトーンを戻した。
「すこしいいか?」
唐突に横から声をかけられる二人、揃って横を向くと一人の女子生徒が立っていた。
「あっ」
「どちらさま?」
一夏、五代の順番だ。
「一夏、その反応なんだ?それが久しぶりに再開する幼なじみに対する反応なのか」
女子生徒は少し怒ったように聞いてくる。
「ついさっき、目があったら逸らされたから。てっきり別人かと思って」
一夏が非難するような顔で箒を見つめると、起こった態度から一変して申し訳無さそうな顔をする。若干顔が赤くなっているのは気のせいではなさそうだ。
「さっきのことは謝る。まさか目が合うとは思わなかったんだ」
(箒にもいろいろあるんだろうな……)
一夏はあまり深く考えず、適当に自己解釈した。
「そろそろ説明してくれるとありがたいんだけど、一夏?」
今度は五代が二人に話しかける。
「すまない、自己紹介が遅れた。篠ノ之箒だ、これからよろしく頼む」
「こちらこそよろしくお願いします。ところで、篠ノ之さんと一夏は幼なじみなんですか?」
「まあ、そんなところだ。五代、申し訳ないんだが一夏を借りていいか?」
少し控えめに箒が聞く。
「あ、なるほど。何か積もる話がありそうですから、私は席につきますね。一夏、また次の休みの時に」
何かに気がついたようにそそくさと五代は後ろの席に移動した。
「お、おう」
一夏は状況を読めずに、ただ見送ることしかできなかった。
「どうしたんだ、五代のやつ?」
「(借りができてしまったな)」
「なにか言ったか、箒?」
「いや、なんでもない。それより一夏、場所を変えないか?」
「ああ。廊下でいいか?」
廊下に出るために立ち上がった一夏は少し五代の様子を見るために教室の後ろのほうを見る。そこには、隣の人に何かを頼み込んでいる五代がいた。
(適応するのが速いな)
五代だけを教室に残すことに後ろめたさを感じていた一夏だが、自分の心配が杞憂だったとわかり、そのまま一夏と箒は廊下に出た。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あらためて久しぶりだな、箒。あんまり変わってないみたいでほっとしたよ」
「そういえば。五代とはしたが挨拶すらしてなかったな。久しぶりだな、一夏。そして、変わってないというのはどういう意味だ?」
少し不機嫌な顔をして聞き返してくる。
「いや、お前さ、保護プログラムとかでいろんなところを転々としていたんだろ?塞ぎ込んでいないか心配だったんだ。そういう意味で変わってなくてよかったって言ったんだよ」
そういうと箒の表情が不機嫌なものからうれしそうな顔に変わる。
「……そうか、一夏は私のことを心配してくれていたのか」
(それは心配するだろ、いきなり幼なじみが音信不通になるんだから)
一夏がそう思った直後、何故か箒に叩かれる。
「いて!?何すんだよ」
「勘違いだったみたいだから、つい」
(いまいち、箒の考えていることがわからない)
「そ、そういえば、去年の剣道の大会で優勝していたよな。おめでとう」
一夏としては地雷を踏まないように安全な方向に話題を持っていくつもりだった。
「何故お前がそれを知っている!」
しかし、箒は逆に血相を変えて一夏を問い詰める。
「いや、新聞で読んでな……」
一夏は気迫に押されて声に覇気がなくなる。
「……そうか、新聞か」
しばしの沈黙の後、箒は少し安堵したように息を吐き、態度が軟化した。
(なにかあったのか?でも、今は聞くべきではないな。相談してこないあたり、人には触れて欲しくないことなんだろう。)
一夏はさらに話題を変えることにした。
「やっぱり箒はすごいな。俺は剣道を止めちまったからな」
「なっ?やめたとはどういうことだ」
(やっぱり突っ込まれたか。箒にはしっかりと理由を言ったほうがいいよな)
「実はバイトと家事ですごく忙しくて」
言いづらそうに一夏が話す。
「……千冬さんの負担を減らすためにか?」
(こういうとき幼なじみってすごいよな。言いづらいことを言わなくても理解してくれるから)
「ああ。」
「それならしかたないな。けど、勘を取り戻したいなら、いつでも付き合うぞ。」
(やっぱり持つべきものは友達だな。こんなにも俺のことを気にかけてくれるとは)
「そろそろ戻るか。」
「そうだな。これからよろしく頼むぞ、一夏」
「こちらこそ」
そう言って二人は教室に戻っていった。
学校が忙しかったので全く更新できませんでした。
これから休みに入ります。ですから、書き上がり次第、投稿していきたいと思います。
今後とも、よろしくお願いします。
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第三話
とても読みづらいかもしれませんが、手探りでこれから良くしていきたいと思います。
それでは、よろしくお願いします。
「これで二限目の授業を終わる、次の授業に遅れないように休め」
織斑先生が授業の終わりを告げ、クラスの中が少しずつ騒がしくなっていく。
「お、終わった」
一夏は後頭部を抑えながら机にくっついていた顔を上げた。
「大丈夫か、一夏?」
箒がそう言いながら近づいてくる。
「大丈夫なら、頭を抑えているわけないだろ?」
一夏が非難げに言うと、箒は「それもそうだな」とそっけない返事をした。
一夏の脳細胞はたった二時間で何十万と死んでいる。叩かれた回数は今日だけで片手で数えられないほどである。
「なんで俺だけ叩かれなくちゃいけないんだ」
「いや、参考書をなくしたお前が悪いだろう。」
一夏は学校に入る前に必読であった参考書を読まないのなら、まだしも捨ててしまったのだ。それを正直に山田先生に伝えたところ、織斑先生からの愛の鞭(出席簿)を受けてしまった。
その後も、ことあるごとに叩かれていた為、授業終了時には虫の息になっていた。
「大変だったね、一夏」
五代が声をかけながら、後ろの席からやってくる。
「五代はちゃっかりしているよな、休み時間のうちに隣の人に教科書借りる約束していたみたいだし」
非難するように五代に言う。
「一夏、そろそろ八つ当たりをやめろ。見苦しいぞ」
皮肉を言い続けている一夏を箒が諫める。
「わかったよ。でも、なんで五代は授業についていけたんだ?俺は全くわからなかったぞ」
不思議そうに一夏が聞く。
「外国に行ってたときに、勉強させられていた内容だったからさ」
「なるほど。そういえば、そんなことを言っていたな。」
納得したのか、一夏は話題を変えた。
「ところで、帰属国家はどこなんだ?本当はさっき聞こうと思っていたんだが、時間がなくて聞けなかったんだ」
「実は、国が公表するまでは人に言わないでくれって、頼まれてるから他の人に言えないんだ」
「そうなのか、少し残念だ」
話が一段落すると一夏達は後ろから声をかけられる。
「すこしよろしくて?」
少し上品な話し方。しかし、その中には明らかな敵意が含まれていた。一夏が振り向くとそこには金髪のクラスメイトがいた。
「えっと、何か用か?」
一夏が答えると女子生徒は信じられないという顔をした。
「まぁ、なんて口の効き方。学年主席である。わたくし、セシリア・オルコットが話しかけているのにその態度。失礼ですわよ。」
一夏と箒は「お前のほうが失礼だろ」と思い、少し顔をしかめてセシリアを見つめた。五代は状況が読めないのか、頭に疑問符を浮かべている。
「何か不満でもあるのかしら?」
セシリアが冷ややかな目で一夏達を見る。
「いや、気のせいだ。それで、学年主席のエリートが参考書をなくすような劣等生に何か用があるのか?」
皮肉を込めた物言いで一夏はセシリアに応対する。
「一夏物凄く喧嘩口調になっているぞ。少しは抑えろ」
それに箒がツッコミを入れる。
「そうか?」
箒の方へと向きを変えて、一夏が答える。
「あ、あなたのような人が世界で数少ない男のIS乗りだとは……期待して損しましたわ」
呆れたようにセシリアが言う。
「俺に期待されても、困るんだが……」
体の向きをもとに戻しながら、一夏は面倒くさそうに応対する。
「だいたい、もう一人の方もふざけているとしか思えません」
セシリアの罵倒の対象が五代に変わる。
「五代の何がふざけてるっていうんだよ?」
一夏は友人が馬鹿にされたので、口調を強くして問いかける。
「発見されてから1ヶ月もの間、雲隠れをしていたなんて、信じられませんわ」
セシリアの言い分はもっともだ。
「雲隠れって言い方は気にくわないな。だいたい、五代は国からの指示で外国に行ってたんだぞ」
「ならば、政府の対応の仕方が悪かったのでしょう。これだから辺境の国は」
嘲笑うかのように言い放つセシリア。一夏の顔がみるみるうちに怒りに変わっていく。
「ストップだ、一夏。」
しかし、箒によってその怒りは矛先を見失う。
「箒?」
一夏が困惑した顔で箒を見る。
「あら、あなたは確か」
「初めましてだな、セシリア・オルコット。私の名前は篠ノ之箒という。」
少し乱雑な挨拶、少し急いでいるようにも感じられる。
「それで?何か用かしら。」
セシリアが不機嫌な顔をして箒に問いかける。
「五代なら、もういないぞ」
「「えっ!?」」
箒の一言にセシリアと一夏の二人が驚く。セシリアと一夏が同時に五代のいた位置を見ると、そこに五代はいなかった。
「一体どこに行きましたの?」
セシリアが周りを見渡す。
「あっちだ」
そう言って箒が後ろを指差す、窓側最後列の席に五代はいた。申し訳なさそうな顔をしてこちらに手を振っている。
「ちょっと、あなた!」
セシリアが怒なりながら五代のもとに行こうとした。そこでタイミング悪くチャイムが鳴る。
(なるほど、だから話の途中で席に戻ったのか。やっぱり、ちゃっかりしているよな)
「ま、またきますわ」
そう言いながら、セシリアは自分の席に戻っていく。
(もうこないで欲しいな)
一夏は叶わないのだろうが、願わずにはいられなかった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「授業を始める前にクラスのリーダーであるクラス代表を決めたい」
授業開始の挨拶の前に織斑先生がそう切り出す。
「自薦他薦は問わない。意見のあるものは手を上げろ」
すぐにクラスが騒がしくなる。
「はい、私は織斑君を推薦します!」
「あっ、私も!」
クラスの大半の人達が一夏をクラス代表に推薦した。
(なんで俺なんだ?俺は参考書なくすような奴だぞ?)
今の一夏は授業や先ほどの会話を引きずっていて、とても自分に自信をなくしている。
(というよりも、クラス代表とか絶対に面倒くさいだろ)
というわけではなく単純にやるのがいやなようだ。
(しかし、このままでは俺がなってしまう。それなら)
「俺は五代を推薦する!」
一夏が声を大きくして発言する。
「そうだった、私達のクラスには男が二人いる。やっぱり、五代君を推薦します」
「私も五代君を推薦します!」
それに対するクラスの反応は一夏にとっていいものだった。どんどん便乗していくクラスメイト達。
(よし!このままいけば回避できるかもしれない)
そんな風に思いながら、五代のいる後ろを見ると五代は何か考え事をしていた。
(……しまった。五代は学校にほとんど通っていなかったんだった。学校生活の最初から厄介ごとを押しつけることになってしまう)
いたたまれなくなった一夏が、クラスメイトの便乗を止めようとしたとき、誰かが机をおもいっきり叩いた。クラス内に静寂が走る。
「そのような選出の仕方は認めませんわ!」
叩いた張本人は、金髪のクラスメイトもといセシリア・オルコットだった。
「実力的にイギリスの代表候補生であり、学年主席であるわたくし、セシリア・オルコットがなるのは当然のこと。それを男だからという理由で代表にするなど、ただの恥曝しですわ」
(確かに一理あるな、クラスの代表なら実力がある方がいいだろう)
「だいたい、わたくしがこんな偏狭で後進的な地に来たのはISについて学ぶためであってサーカスを見にきた訳ではありませんわ」
(いや、さすがに言いすぎだろ)
「日本もイギリスも島国だし、ISを発表したのも日本だから後進的でもないだろ
」
一夏はつい口を滑らせてしまった。
「あら、自称劣等生の方は人の話に割り込む無礼者なのですね」
即座に口論の体制になるセシリア
「おっと、口に出ていたか。すまないな。でも、学年主席様は自薦もせずに勝手に発言する、ルールを守らない不届き者のようだな」
一夏はそれでも、ケンカ口調を続ける。
「あなた、喧嘩を売っていますの?」
セシリアは真偽をはかるように一夏に問う。
「先に売ったのは、あんただ。高く買い取るぜ?」
「いいでしょう、決闘ですわ!」
一夏の返答を聞くと、セシリアはそう宣言する。
「本来ならば止めるべきだが、ちょうどいい。来週にセシリア含めた候補者達で試合を行いその勝者がクラス代表になるということでいいか?」
織斑先生も決闘をすることには賛成のようだ。
(止める気なかったくせに)
一夏が心のなかでぼやく。
「異論はありませんわ」
「俺もないぜ」
一夏とセシリアの返答を聞くと、織斑先生は後ろの五代を見る。
「五代はどうだ?」
織斑先生が後ろにいる五代に聞く。
一夏が後ろを見るとまだ五代は考え事をしていた。
少したった後、考えるのを諦めたのか、五代が織斑先生に顔を向けて話す。
「クラス代表って何をするんですか?」
クラス全体が固まった。
「そういえば、話していなかったな」
織斑先生が思い出したかのように言う。
(俺もそういえば、何をするのか知らない)
「クラス代表は主にクラスをまとめる仕事とクラス対抗戦で、文字どうりに代表として他クラスの代表と戦ってもらう」
織斑先生の返答を聞くと五代はまた質問をする。
「クラス対抗戦の頻度はどれくらいですか?」
「今月末に一回やるだけだ」
その答えを聞くと五代は考える動作に戻る。
「それで、異論はないのか?」
再度、織斑先生が聞く。少しの間沈黙が続いた。その後、結論が出たのか顔を上げた。
「私は戦いたくありません」
そして、五代はそう言い放った。
以前よりも話しの進むスピードが早くなった気がします。
このペースでいけば、夏が終わるまでに原作3巻の内容までいける気がします。
一日一話は無理でも一週間に最低でも二話は投稿したいです。
次回もよろしくお願いします。
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第四話
星を観る者です。
バイトがあるとパソコンをつけている余裕が無いことに最近気が付きました。
更新が遅れて申し訳ないです。
「私は戦いたくありません」
五代の発言にクラスが唖然とした。
「あら、逃げますの?やはり男なんてその程度なのですね」
「五代はここまで言われて何も思わないのか?」
五代の発言に対して、セシリアと一夏はそれぞれの反応をする。クラスメイトたちも同じ意見なのか、五代を見ている。
「ごめんね、一夏。できるだけ、面倒事を起こさないよう、国に言われているんだ。とくに、他国の代表候補生とかはね」
そう言いながら五代はセシリアを見つめる。
「面倒事か。たしかに私情を挟んでいる試合でもあり、両者とも双方の国を罵倒するようなことを言っていた。下手をすれば国際問題にも発展しかねない状態だな」
「えっ?」
織斑先生の付け足した言葉にセシリアが反応する。
「なんだ、てっきりイギリスから何が何でも織斑のデータを取って来いと言われたから、あんなことを言ったのかと思ったぞ。でなければ、とんだ怖いもの知らずだな。織斑は日本という国が保護している人間だ。保護対象に危害を加えようとする奴に対して国が黙っていると思うのか?」
「わ、わたくしはそんなつもりでは……」
さらに続く織斑先生の叱責にセシリアの顔はどんどん青ざめていく。
「だいたい、オルコットさんは一夏とどうやって戦うつもりですか? 専用機を持っていない一夏に対して専用機を持っているあなたが普通の試合ができると思っていませんよね?」
「専用機と訓練機ではスペックに差がありすぎる。ただでさえ一夏や私は搭乗時間が短いのだから訓練機を使って、専用機に勝てるわけ無いでしょう。そういうのは試合ではなく、弱い者いじめって言うんですよ」
とどめを刺すかのように五代は発言する。五代にとって、この試合はできるだけ回避したいものだった。
「五代。教師側の立場から言わせてもらえば、クラス代表を決めなくてはいけない。正直に言うとお前達三人の中から決まれば、決め方は何でもいい。試合をしたいという人間が二人いるんだ、多数決で試合をするのが道理ではないのか?」
しかし、織斑先生の叱責の対象が五代に変わる。
「たしかに……」
ごもっともな意見に言葉をなくす五代。
「それに、織斑には専用機が支給される予定だ。一週間後には届くだろう」
五代のセシリアに対しての抗議は、あくまで自分と一夏のどちらかが訓練機を使用することが前提である。五代は専用機を国から渡されているため、一夏が訓練機を使用しなければ、その抗議は意味がなくなる。
「うっ……わかりました。ですが、試合はしますけどハンデを付けてもらいたいです」
「それはオルコットと織斑に言え」
間髪入れずに織斑先生につっこまれる。五代は出鼻をくじかれたが、セシリアと一夏の方を向き、ハンデの内容を言う。
「オルコットさん、一夏、試合時間を10分にして勝敗を決める条件はシールドエネルギーの残量の多い方にしていただけませんか?」
ハンデの内容というよりもルールの変更と言ったほうがいいだろう。
「試合時間を短くする……なるほど、その条件ならば勝てないまでも引き分けまでなら持っていけるかもしれません。わたしくしは異論ありませんわ」
先ほどの叱責から立ち直ったセシリアは意図を理解したのか、五代の提案を了承した。
「織斑はどうだ?」
織斑先生が一夏に聞く。
「……俺は反対です。五代との試合はいいとしても、セシリアと俺の勝負は制限時間を設けないで片方のシールドエネルギーがなくなるまでにしてください」
「あなた、せっかく人が情けをかけてあげているというのに!」
一夏の返答にセシリアは怒りをあらわにする。
「情けなんていらない。もとより俺とお前の喧嘩が発端だ。巻き込まれた五代はともかく、俺達はきちんと決着をつけないといけないだろ?」
一夏は意思のこもった目でセシリアを見つめ、そう宣言した。
「……分かりましたわ。覚悟があっての発言でしたのね。それならば、完膚なきまでに叩きのめして差し上げますわ」
セシリアは少し驚いた後、納得したのかその後は何も言わなかった。
「どうやら決まったようだな、来週に試合は行う、各自準備を怠らないように」
織斑先生の一言でその場は幕を引いた。
_____________________________________
時は変わって、放課後。
「やっぱり、腕は落ちているか……」
「三年間も竹刀を握っていなければ、しかたのないことだろう。だが、少しずつ反応できるようになっている。毎日続けていけば来週には形にはなるだろう」
一夏が落ち込みながら言うと、箒がそれを慰める。
一夏と箒は武道場で剣道をしていた。本来ならば来週の試合に向けて少しでもISを動かしておきたいところだったのだが、この時期は訓練機の使用許可が集中しているらしく借りることができなかったのである。
この場に五代がいないのは、転入に必要な書類や専用機を持つものが書かなければいけない書類を職員室で書いているからである。
「ISを動かすには体力が必要だって五代が言っていたし、俺にできる悪あがきはこんなものか」
「五代も災難だな。書類を書くのに放課後を使っているから、いくら一夏よりも操縦時間が長くても試合は辛いものになるだろうな」
五代はこれから試合まで、ほとんどの放課後を書類を書くことに費やさなければいけない。午前と午後は普通に授業があるため、放課後にしか準備をする時間がない。
「代わりと言ってはなんだが、五代の分まで頑張ろう。箒、もう一本頼む」
「わかった」
二人は日が暮れるまで稽古をしていた。
武道場で剣道をしたあと、一夏は箒を待つために武道場の外にいた。そんな時、不意に声をかけられる。
「あっ、織斑君、ここにいたんですね」
校舎の方から山田先生の声が聞こえてくる。
「どうしたんですか、山田先生?」
一夏が不思議そうに聞く。
「織斑君に寮の鍵を渡すのを忘れていました」
そう言って、山田先生はポケットの中をさぐる。
「てっきり、自分で取りに行くのかと思っていました」
「そんなことないですよ。はい、これが織斑君の部屋の鍵です。失くさないように気をつけてくださいね」
一夏に寮の鍵を渡すと、山田先生は校舎の方に戻っていった。
「何かあったのか?」
箒が着替えから戻ってくる。
「ああ、寮の鍵を渡されたんだ」
「ほう、何号室なんだ?」
そう言って、箒は一夏から鍵を見せてもらう。
「はっ?」
突然、箒が声を上げる。
「どうしたんだ、箒?」
一夏がおそるおそる聞くと
「この部屋番号は私の部屋とおなじなんだが……」
わけがわからない、という顔をしながら箒が話す。
「……何かの間違いだろう。一夏、職員室に行くぞ。」
「お、おう」
こうして、2人は職員室に行くことにした。
「やはり納得ができない」
「まあまあ、そう言うなって」
一夏の部屋は箒と同じで、二人はルームメイト。織斑先生に聞いた結果、返ってきた答えがそれだった。
なんでも、部屋割りを決めた頃に五代が見つかったため空き部屋の確保ができなかったらしい。それで、もう一度部屋割りを組み直したら今度は男と女が混ざってしまったらしい。
今の時期は先生も忙しいらしく、来月になれば部屋替えができるそうだ。
「ある意味、箒でよかったよ。これで全く知らない人が相部屋だったら、気まずくて何もできなかったと思う」
「まあ、たしかに私としても一夏でよかった。いまだに人との付き合い方がわからないのでな」
箒は保護プログラムで各地を移動し続けていたため、友達も殆どできなかったらしい。そうしているうちに、人との接し方がわからなくなってしまったようだ。
「そういえば、五代はどうなったんだろうな」
「……多分だが、先程一夏が言っていた、気まずいことになっているんじゃないか?」
他愛もない話をしながら、一夏達は寮へと向かった。
「とりあえず、シャワーの時間などの、ちょっとしたルールを決めよう」
寮の部屋に着くと箒が話を切り出す。
「そうだな、変な事故だけは避けたい」
「決めるのはシャワーの時間、消灯の時間、あとは、起床の時間だな」
「箒は朝練とかは、あるのか?」
「自主的なものだがある。起床は5時30分くらいだろう。」
「流石だな。俺は6時30分くらいに起きたいから、朝はできるだけ静かにしてくれるとありがたい。」
「了解した。」
「次は消灯時間だな。俺は何時に寝ても大丈夫だから、箒に合わせるぞ。」
「朝練があるから、11時30分には寝たいな。」
「そしたら、11時に消灯しよう。」
「最後はシャワーだが……」
「箒は剣道のあとすぐに入りたいだろ?先に箒が入って、俺が後に入った方がわかりやすくていいんじゃないか?」
「そ、そうか。悪いな、一夏」
「気にするなって」
一夏は完全な善意で言っているのだが、箒はよくよく考えてみる。
(私が入った後に一夏が入るわけだ……風呂に入るのにも気を使わなくてはいけなくなるな)
「一夏、6時30分までなら自由に入って良いぞ。」
「大丈夫なのか?」
「6時まで武道場は使える。片づけをしたら、戻ってくる頃には6時30分を越えるだろう。」
「なら平気か。それじゃあ、これで全部決まったな。」
「あと、着替えは脱衣場で行うことにしよう。もちろん、鍵を閉めて」
「わかった。それじゃあ、箒は先にシャワー浴びておいてくれ。俺は荷物の確認をしておくから。」
「了解した」
その後、一夏と箒は食堂で夕食をとってから、就寝した。
Side五代
「ふう、ようやく終わった」
職員室で今日のノルマである書類を書き終えた五代は織斑先生から寮の鍵を貰って自分の部屋に向かっていた。
「それにしても、試合か……許可取らないとな」
五代が試合をしたくなかった理由は国から言われている情報制限に触れてしまっているからである。幸い一週間後なので、許可も取れるだろう。
五代が自分の部屋の前に行くと先客がおり、その子は自分の鞄から鍵を取り出そうとしている。
「こんばんは。もしかして、ここの部屋の人かな?」
声をかけられてびっくりしたのか、一瞬体を痙攣させた。少し間を置いて、少女は体をこちらに向ける。
「……あなたは?」
「はじめまして、二人目の男性IS操縦者の五代七海と言います」
軽い挨拶をする。
「二人目?」
少女が怪訝そうな顔で五代を見る。
「存在を秘匿にしていたので、知らなくても当然ですね。織斑一夏のあとに見つかった操縦者です」
「……そう」
少女は興味がなくなったのか、そっけない返事をする。
「ところで、あなたのお名前なんですか?」
五代がそう聞くと、間を少しあけて少女は答える。
「……更織簪」
その答えを聞くと五代は満足したのか部屋について聞く。
「更織さんの部屋はここなんですよね?」
「そう」
「同居人はいましたか?」
「いない」
五代は必死に会話をしようと話しかけるが、なかなか会話が続かない。
「……たぶん、私と相部屋になるんだと思います。私に渡された鍵がこの部屋の鍵ですので」
会話を諦め、申し訳無さそうに五代は言う。
「……別に気にしない」
「そうですか、良かった」
「代わりに、わたしの邪魔だけはしないで」
その言葉には拒絶の意思が含まれていた。
「で、できるだけ、邪魔しないようにします」
五代は突然向けられたことにたじろいでしまった。
「ならいい」
(なにか怒らせるようなことしたかな?)
「ドアを開けて」
「わかりました」
五代は自分の持っている鍵でドアを開けて中に入る。
(まぁ、そこまで気にするほどのことでもないのかな)
こうして、五代も何事も無く就寝した。
次回から戦闘描写になります。
うまく書けるかどうかわかりませんが、頑張って行きたいのでよろしくお願いします。
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第五話
戦闘描写がとても難しい。けど、打つ速度はとても早かったです。
それではどうぞ。
あれから一週間が経過した。一夏と箒は放課後に武道場で剣道をし続けていた。その反面、五代は書類作りに勤しんでいたのだが。
「なあ、箒」
「どうした、一夏?」
一夏も現在の状態がよくわからないのか箒に問いかける。
「なんで五代は目に隈を作りながら、机に突っ伏しているんだ?」
「さすがに私もわからん」
五代はアリーナにある休憩室の机に突っ伏していた。一夏もよく思い出してみたが、この一週間、五代と会話した覚えが殆ど無い。
「少し聞いてくる」
箒は五代のそばに寄り、話を聞こうとする。そんなに離れていないのに一夏には全く会話が聞こえない。しばらくして箒が戻ってくる。
「どうだった?」
「どうやら、相部屋の人が夜遅くまで起きているらしい。そのせいで寝不足が続き、ああなったようだ」
「そうなのか……俺が先にセシリアと戦ったほうが良さそうだ」
一夏は今の五代がISに乗って戦うと事故が起きるようにしか思えなかった。
「そうした方がいいだろう。それと五代、今のお前は絶対に無理をしている。体を壊す前に文句は言った方がいいぞ」
箒が言い終えると、休憩室のドアが開いた。
「織斑君の専用機が届きましたよ!」
山田先生と織斑先生が入ってくる。
「五代はどうしたんだ?」
「寝不足で体調が悪いそうです」
織斑先生の問いに対して箒が答える。
「大丈夫ですか、五代くん?」
山田先生が心配そうに五代を見る。
「コーヒーでも飲ませておけば、大丈夫だろう。それより織斑、準備はいいな?」
「はい、大丈夫です」
織斑先生の確認に一夏は胸を張って答える。
「ならばハッチまでついてこい。そこにお前の専用機がある」
そう言うと織斑先生は部屋を出て行く。後を追いかけるように山田先生も慌ててついていく。
一夏もついていこうと歩き出した。
「……一夏」
五代が小さな声で話しかけてきた。ついでに手招きもしている。一夏が近づくと五代が耳打ちしてくる。
「…………」
「……なんでお前そんなことを知ってるんだ?」
「…………」
「一夏、何をしている早く行くぞ」
遅れている一夏を呼ぶ声が聞こえる。一夏は早足で休憩室から出ようとして、立ち止まった。
「ありがとな、五代」
返事はなかったが、五代は手を小さく振っていた。
「これが織斑くんの専用機、白式です」
一夏の目の前には白色の機体があった。
「織斑くん、ISの装着の仕方はわかりますか?」
「あ、はい。大丈夫です」
一夏は少しの間、白い機体に心を奪われていた。入試の時に操縦した打鉄とは形も風格も違う。一夏には、主を待つ騎士のようにも見えた。
「早く装着しろ。もうセシリアは出ている」
織斑先生が急かしてくる。一夏は体を機体に預けるように機体を装着した。
「初期移行をしている余裕はない。実戦でやれ」
「わかりました」
一夏は織斑先生の指示を理解した。専用機でも初期移行が行われなければ勝ち目はないと。
「一夏……」
箒が心配そうに一夏に話しかける。
「箒、行ってくる。この一週間の成果をオルコットに見せてやるんだ!」
一夏は元気よく宣言した。そして、それを聞いた箒は表情を変えた。
「ふっ、そうだな。行って来い、一夏。私が稽古をつけたんだ。無様な姿を見せたら承知しないぞ」
「それなら、頑張らないとな」
そう言って、お互いに笑い合う。そして、一夏と白式はハッチから飛び出した。
________________________________________
「あら、あなたが先でしたのね」
アリーナの中央部にセシリアはいた。手には巨大なライフルを持っている。そして
(青い機体……)
セシリアの機体は青かった。
「ああ、五代は俺の後に戦う」
セシリアと会話しながら一夏は青い機体を見続ける。
「最後の通告ですわ。ハンデを受けなさい。あなたでは敗北するのは目に見えていますわ」
セシリアにとっては善意の発言。しかし、一夏にはそれを受けるという選択肢はなかった。
「言っただろ?ハンデなんていらないって」
一夏がそう言うと放送がはいる。
《両者準備はいいな?》
放送の後すぐに、ブザーが鳴る。
「そうですか……」
もう一度。
「ならば、ここでお別れですわ!」
三回目のブザーが鳴り、試合が開始した。
試合が始まると同時にセシリアは四機のビットを展開し、一夏に向かって自身の手にあるライフルも使って射撃した。
大人気ない不意打ちの攻撃にも見えるが、セシリアは織斑一夏には全力を出す必要があると思っている。
彼は自分の持っている男のイメージからかけ離れていた。人の顔色を伺って生きていた彼女の父親とは違い、無礼ではあったが自分の意志をしっかりと持っていた。
だからこそ……
砂煙が晴れると、そこには無傷の白式と息を荒らげた一夏がいた。
「あなたどうやって避けましたの?」
それほど驚いた様子もなく、セシリアは一夏に問う。
「攻撃が来るのはわかっていたから、お前がライフルを撃つ瞬間に前に飛び出しただけだ」
淡々と言う一夏。呼吸の乱れも幾分かましになっている。
「攻撃が来るのがわかっていた。時間をあけて前方にも撃ちましたのに、それさえもわかっていたと?」
「ああ、五代には感謝しないとな。あいつがお前の機体の特徴を教えてくれなければ、俺は攻撃をモロにくらって、負けていた」
先ほど一夏を呼び止めた五代は。
「……セシリアさんの機体が青だったら、主武装はライフルではなく四機のビット兵器だよ」
「……なんでお前そんなこと知っているんだ?」
「国に調べてもらった。それと……」
「なるほど、やはりあなた達は油断できませんわ。ですが」
四機のビットを手足のように操るセシリア。
「ブルーティアーズの奏でる旋律は……この程度ではありませんわ!」
第二ラウンドが始まる。
________________________________________
「初撃はなんとか避けたが、状況は悪いな」
ハッチからモニターのある休憩室に移動した織斑先生たちは、一夏たちの試合を見ていた。
「はい、五代くん。コーヒーです」
「……ありがとうございます。山田先生」
山田先生からコーヒーを受け取り、五代は少しずつ飲んでいく。
「それにしても、よくセシリアの専用機を調べあげたな」
五代に対して箒が賞賛する。
「国に調べてもらいました。私にできる悪あがきはこれぐらいでしたから」
「なるほど」
五代の返答に織斑先生は納得したように頷いた。
「でも、一夏はすごいですね。動かして二回目の動きじゃないですよ、あれ」
現在、一夏はビット兵器による攻撃を掠りながらも避けている。着実にシールドエネルギーを減らされているがモロに当たった様子はない。
「おまけに一夏の動きに無駄がなくなってきた」
「それに、目的を持って動いているな。期を伺っているようにみえる」
「くそっ!」
ビット兵器の猛攻の中、一夏は悪態をつく。
(悔しいが相手のほうが何枚も上手だ。俺を撹乱するようにビットを動かし続けているうえに、多分だがハイパーセンサーだけじゃなくて、ライフルのスコープでこっちを見ているな。常に銃口がこっちを向いている)
セシリアは一夏の隙を伺い、ライフルで着実にシールドエネルギーを削っている。
(おまけに、俺の武装はブレード一本だけだ)
一夏の白式には武装がブレードしかなかった。遠距離装備に対して近距離の装備しかない。それは、相手にダメージを与えられないことを意味している。
(何とかしてビットを壊せれば……)
一夏はセシリアがライフルを撃つ瞬間にがむしゃらにビットへ特攻を仕掛けた。
「……!」
「えっ?」
ビットの猛攻が一瞬止まり、目の前のビットがブレードを避けた。しかし、すぐに再開される射撃の雨。
(もしかして、セシリアはビットに細かい指示を送るには他のことを中断しないといけないのか?)
すぐに回避行動に戻った一夏は考える。あくまで憶測でしかない。だが、その憶測で現状が変わるなら……
(賭けに出るのもありだな!)
一夏はもう一度ビットに特攻を仕掛ける。他のビットの動きが止まる瞬間に一夏は現在出せる最大のスピードでセシリアに向かって加速した。
反応が遅れて一夏の接近を許してしまうセシリア。
(とった!)
一夏が一撃を入れることを確信した時、セシリアの口元は笑っていた。
「残念ながら、ブルーティアーズは……六機ありましてよ!」
スカート状の装甲から二機の新たなビットが現れる。その形状は他の四機と違い銃口の代わりに鉄の塊がついていた。つまり、ミサイルを装備したビット。そして、そのビットからミサイルが放たれる。
「それも計算済みだ!」
思い出すのは五代の言葉。
「それと、開発当初はビットの数は六機だったらしい。気をつけてね」
一夏はミサイルを紙一重でかわし、セシリアに肉薄する。
「なっ?」
驚きの声を上げるセシリア。
しかし、一夏は違和感を覚えた。ミサイルによって生まれた煙が一つしかない。そして思い出す、ミサイルが何にくっついていたのかを。
「後ろか!」
一夏は全速力で回避行動をとる。そして、一夏の体のあった部分を通過するビット。
「ふふふ、惜しいですわ。もう少しで決定打を与えられたのに」
先ほどの声は演技だったのか、笑っているセシリア。
セシリアは二機のミサイルビットのうち、一つを発射し、もう一つをビットとして一夏に放っていた。
「最初の不意打ちを避けられた時点で私に慢心の二文字は存在しませんわ!」
一夏は急いでミサイルビットから離れようとする。
「それでは、鬼ごっこを始めましょう。鬼の数は五、一つにでも当たればゲームオーバーですわ」
先ほどまで遠くにあった四機のビットが戻ってきていた。
前方と後方をビットに囲まれた一夏は急いで空域を離脱しようとする。
その時、一夏は気づくべきだった。セシリアの持つライフルが一夏を狙っていないことに。ライフルから放たれた光は真っすぐ進み、一夏に肉薄していたミサイルビットを破壊した。
轟音とともに一夏の機体が吹き飛ばされ、地面にぶつかる。そして
「ゲームオーバーですわ」
ライフルとビットの五つの砲門から同時に光が放たれた。
「一夏!」
「織斑くん!」
山田先生と箒が悲鳴を上げる。そんな中
「ブザーが鳴っていない?織斑先生」
「ああ、間に合ったみたいだな。当初の予定を見失い賭けに出たのはマイナスだが、時間稼ぎにはなったようだ」
煙が晴れるとそこには、先ほどと形が変わった機体がいた。
「なぜっ?」
今度こそ本当に驚きの声を上げるセシリア。一夏は何も話さない。
「おまけに、そのブレードは」
セシリアはそのブレードを見たことがある。正確に言うなら似たものだが。かつて、初代ヴァルキリーに選ばれた機体と操縦者が使用していた武器であり、必殺の一撃を生む最強の武器。
「……雪片」
一夏の手にある刀が光を放つ。
(来る!?)
しかし、一夏は動かない。
(何故、動きませんの?)
セシリアの意識が一瞬、一夏の動きから雪片へと変わったとき、一夏は突然動き出した。
いきなりのことで反応が遅れるセシリア。
「先程より速い、やはりあなた初期移行もしていなかったのですね!?」
セシリアにできたことは叫ぶことだけだった。
(ま、負け……)
セシリアが負け感じた瞬間、ブザーが鳴る。
「えっ?」
《試合終了。勝者セシリア・オルコット》
Side一夏
衝撃を受けた後、一夏は立ち上がって周囲を見てみる。
(あれ?さっきとぜんぜん違う)
先ほどまで意識しなければビットの位置もわからなかったのに、今は手に取るようにわかる。
(これが初期移行。これで、この機体は俺専用になったのか)
一夏はブレードを見てみる。最初は名前が近接ブレードとなっていたのに、今は雪片弐型と表示される。
(雪片ってたしか、千冬姉が使っていた)
《零落白夜を起動します》
一夏の頭に幼いころに見た姉である織斑千冬の試合が映像として浮かんだ時、雪片が発光する。
(これが白式の本来の姿か……)
一夏は雪片を見ていると視界の隅にある数値が減っているのに気づく。
(へ?)
ちょうどそこはシールドエネルギーが表示されている場所だった。
(も、もしかして、この光ってシールドエネルギーを消費しているのか?)
一夏は気づく、自分にはこの光を止めるすべがないことを。
(やばい、このままだと自滅してしまう!)
そして、一夏は簡単な結論に至る。
(殺られる前に殺ればいい!)
一夏はセシリアに向かって突撃する。そのときセシリアが何か言っていたが無我夢中の一夏には聞こえなかった。
あと少しで刃が当たる、その直前でブザーが鳴る。つまり
(俺の負けか……)
《試合終了。勝者セシリア・オルコット》
一夏は心のなかでため息をついた。
次回はオリキャラの戦闘回です。多分短くなるから一話で二人と戦うことになると思います。
これから書いていく内容はだいたい決まっているので、バイトがなければかけると思います。
それでは、次回もよろしくお願いします。
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