和菓子屋の少女と普通の男の子 (麒麟)
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プロローグ

「んで?」

「それでだな。楽が」

 

高校生が始まり数週間。俺はいつも通りのグループで話していた

俺は水口楓。楓という名前であるが男子である

好きなものはアニメ、漫画と甘いものという普通の学生の俺はいつもの中学校で同じ学校だったグループで話していた

 

「そういえば、お前ってこのクラスに転入生入ることって知ってたか?」

「……この時期に?」

「あぁ。噂によると女子なんだって」

「その噂はどこからでるもんなんだか」

 

情報通の舞子集に呆れながら俺は少しだけ考える

女子か。できれば男子が良かったな

俺は転校生に近いこともあるのだが新規の人なら共通できるし、正直あんまり女子が得意ってわけではない

 

「ん〜まぁどうでもいい。どうせ関わりはないだろうし」

「お前な」

「それに、このクラスには一応アイドル枠が二人もいるのだし、俺たちはその二人と友人関係にあるわけだからな」

「……まぁ、そうだけど」

「アイドル枠って小咲と誰のことかしら?」

 

すると見知った人が俺の元に近づいてくる。メガネがかけた少女と、ふんわり優しい雰囲気を持った少女

メガネをかけた少女が宮本るり、そして優しい雰囲気でクラスでも圧倒的な人気であり、正直好きな人である小野寺小咲が俺たちに話しかけてくる

 

「おはようさん。宮本。小野寺」

「おはよ〜。水口くん」

「おはよう。水口くん。それで一体誰のことなの?」

「……お前ら本当に自覚ないのか?」

 

俺がため息を吐くと宮本が首を傾げる

どうやら本気で理解してないみたいだ

 

「お前ら結構男子から人気あるぞ。舞子もそうだし一条もそうだけど人気な男子の中に入っているからな」

「一条くんも?」

「あいつの家やくざじゃなければの話だろ。優しいけどどこか一生懸命でドジな性格でしかも軽くお節介が入っている。……本当にやくざじゃなければ普通にモテてるだろ。顔が悪いわけではないんだし」

「その一つが絶望的なんだけどな」

「そうか?ちゃんと理解している人なら別にだろ。どちらかといえば俺みたいアニメ好きとかの方が嫌われる世の中なのに」

 

アニメや漫画は昔から好きでよく見る方だから

漫画やアニメが好きってことだけでオタクというのはやめて欲しいが

 

「まぁ何が言いたいのかっていうと二人とももう少し美人なのを自覚しろってことだよ。二人とも結構お人好しだから」

「お前本当にお父さんポジだよな」

「誰がお父さんだ」

 

といつも通りの会話にしてた時にガラガラと扉が開く

さっきまでざわめいていたからどうせ友人の一条楽だろうと思っていたら鼻から血が出ていて赤く擦り傷が顔面にできていた一条の姿が見られる

 

「おはよう〜って一条!?」

「おーす、楽、って楽!?」

「一条くんどうしたのその怪我!?鼻血出てるよ!?」

「鼻血って言うか鼻の下が擦りむけてるな、消毒液あるから軽く消毒しとけ。小野寺。ほれ」

「……えっ?」

 

俺は消毒液を投げると小野寺が首をひねる

 

「一条に消毒してやれって。男子がやったら腐った奴から噂されやすいから」

「腐ったって?」

「小咲は知らなくていいわよ。…でもこの学校にいるのかしら?」

「いるぞ。しかもこのクラスでも数人」

「嫌なこと聞いたわ」

 

うんざりした模様の宮本に苦笑してしまう

俺も小野寺は知らない方がいいという点には同意だ

かなり純粋な少女であり汚れてない女子である

 

「でもいいのか?楓?」

「ん?何が」

「……いいんならいいんだけど」

 

集が少しだけ呆れたようにしているのは多分俺の気持ちに気づいていたからだろう

俺は今失恋真っ最中なのだから

 

「んで何があったんだ?」

「実は」

 

すると一条が話始める。怪我の内容を聞いた時俺は明らかに声を荒げてしまう

 

「「はぁ?女通り魔にやられた」」

「お前ら信じてないだろ」

「バカ言え。うちの学校の塀、2m以上あるだろ。それ飛び越えて膝蹴りってどんな女の子だよ」

 

正論だった。そんなアニメのような女の子がいたら見てみたいもんだよ

本当にそんな奴がいたら、どこか頭のおかしい人間だろう

 

チャイムが鳴り終わって少しすると、陸たちの担任であるキョーコ先生が入ってくる

キョーコは教室に入るなり、口を開いた

 

「早速だが、今日は転校生を紹介するぞー。入って、桐崎さん」 

「はい」

 

桐崎と呼ばれた人物は、返事を返すと教室に入ってくる

長く伸びた金色の髪。きれいな藍色の瞳。あの時は気が付かなかったが、かわいらしい赤いリボンを頭に着けている

 

「初めまして!アメリカから転校してきた桐崎千棘です!母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが、日本語はこの通りばっちりなので、気さくに接してくださいね!」

 

見事な自己紹介を展開した少女は、最後に綺麗な笑顔を見せる。

途端、教室中で湧き上がる歓声。やってきた転校生の容姿の高さに沸く男子に、そのスタイルの良さに沸く女子。 

そんな中、まわりとは全く違う空気を出す二人の男子。

 

「じゃー、ひとまずテキトーに後ろに空いてる席に…」

 

キョーコ先生が、転校生の桐崎に空いてる席に着くように言うと、一条と桐崎の視線が交わる。

 

「あなた、さっきの…」

「お前!さっきの暴力女!!」

 

その一言が、教室内に響く

それはどこか俺も含めて全員が驚きを隠せないのであった

 




名前 水口楓 
性別 男 
誕生日 7月7日
身長 179cm 体重 70kg
クラスメイトのあだ名 お父さん
特技 料理 スポーツ 歌
趣味 カラオケ、アニメ、漫画 野球観戦
バイト カフェ
好きなもの 甘いもの全般 小咲
苦手なもの パクチーやセロリなどの野菜で香りが強いもの 理系全般 美術

クラスメイトから男女問わず慕われていて、小中高と小咲と同じ学校。小学校から小野寺のことを知っていたがクラスメイトになるのは初。なお天狗高原にもいたがその時はつぐみと多く接していて未だにお互いに覚えており、今も料理で話すことが多いことでお互いに親友と呼べるくらいには仲がいい
有名人がこっそり訪れることもあるカフェでオリジナルケーキを作るなど料理の腕は確かである
勉強は文系はそこそこであり理系全般的に赤点をギリギリ取らないくらいには悪い。なお家庭科と音楽は満点だが美術も悪く補修を受けることもしばしば
歌はプロ並みにあるが歌う曲が基本はアニソンとボカロばかりであり他の人にはわからない曲が多い


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2話

「暴力女はないだろ」

 

俺がため息をつくと隣の席の小野寺が苦笑する

どうやらさっきのヒザ蹴り女っていうのは桐崎さんのことらしい。俺はその事実に少しだけ頭を抑える

そして広がる醜い言い争いは少しだけ続いているのを俺は手を叩いて止める

 

「お二人さん。仲がいいのはいいんだけど、ちょっと落ち着けって」

「「良くない!!」」

「そう。なら、まず桐崎さんだっけ?話を聞いたところ謝ることは確かに謝ったけど急いでいたからって理由で言葉で挨拶したくらいで通りすぎていったんだろ?これに関しては桐崎が悪い。まずは怪我をしてないか確認して何かに遅れるにしろ連絡を入れたら良かっただろ?一条が頑丈だったからよかったものの、もしお年寄りだったりしてみろよ。骨折とかしようなら桐崎自身が責任を負うことになるんだぞ?」

「……うっ!」

 

正論を告げると桐崎は自分でも自覚あるのか言葉に詰まる

今度は一条に向き俺は軽く説教を始める

 

「まぁ、急いでいたのも分かるけど、もう少し落ち着け。…んで一条は一条で初対面の相手に暴力女はないだろ。確かに桐崎に非があることも確かだけど、もしそれが人違いとか双子の姉とかだったらどうするんだ」

「……それは」

 

まぁたらればだし、真っ先にいう言葉ではないだろう

それでも桐崎だけを悪者だけにするのはこれから、桐崎も、一条も後悔することになるだろう

 

「それに桐崎は今日から転校生だぞ……お前だって苦労しているんだろ?周囲からの固定概念ってやつには。一条も同じくらい苦労してきたんじゃないのか?」

「……」

「今回の件に限ってはお互いに悪いところが多すぎるからな。ちゃんと謝るくらいはしとけよ」

「さすがクラスのお父さんだな」

「誰がお父さんだ!!キョーコ先生も悪ノリしないでください!!」

 

俺は呆れたようにしてしまう

するとクスクスと笑う声が隣から聞こえると同時に小野寺が笑っていた

 

「小野寺このネタ好きだな」

「えっ?だって本当にお父さんみたいなんだもん」

「はぁ。同級生どころか最近キョーコ先生からもいわれんだぞ」

 

まぁ今のはキョーコ先生に感謝だけど。俺が真面目な雰囲気だけどお父さんネタでクラスの賑わいが保たれている

笑い声が絶えないのはこのクラスの長所だろう。ムードメーカーである舞子のおかげが多いだろうけど

それでも

隣の席の小野寺はそのあともずっと俺の方を見てきたのであった

 

 

「は?ペンダントをなくした?」

「そうなんだよ。だから放課後一緒に探してくれないか?」

 

一条が放課後俺の方にくると俺は少しだけ苦い顔をしてしまう

別に俺は探すことはいいんだけど放課後は基本的にバイトが入っているのだ

 

「…いいけど、バイト入っているからそこまで長く探せないぞ?」

「それでも助かるよ」

「んで?」

「んでって」

「どんな形でどんなやつなのかってこと探し物の形とかわからないのに探せないだろ?」

「えっと。確か」

 

と俺が聞いたら形を表す一条

どうやら鍵穴が空いているペンダントなど色々な

俺はそれを見ながら軽くメモを取る

 

「了解。んじゃ探すけど期待はすんなよ」

「あぁ。サンキュー。今度なんか奢る」

「はいはい」

 

俺は少しだけその姿を見送った後小さく苦笑して、桐崎さんと一緒に行動する一条を見る

小野寺もそっちに行くのがうっすり見えていたが同じところを探していたところで見つかる可能性は低いだろう

と俺は少しだけ気楽に捉えていた

なお、ペンダントは結局見つからず俺は成果なしとだけメールに送るのであった

結局ペンダントを見つけるには二週間かかり、いつのまにか一条と桐崎は全く話さなくなった



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バイト終わり

「ありがとね〜急にシフト変わってもらって」

「あっ、店長お疲れ様です」

 

俺は食器を洗っていると店長である叔母の水口陽子さんに苦笑してしまう

というのもここは個人営業のカフェであり、知る人ぞ知る地域の憩いの場所である

人は少ないが有名人が結構来店しており、取材も全て断っているところで陽子さんがいないところではキッチンを任せられている

 

「そうそう。これ給料だけど、時給もう少し出せるけど」

「十分高いですよ。まぁ休日入れるのは俺と陽子さん、明代さんと来光さんしか従業員いませんしね」

「平日の朝は結構いるんだけどね。平日毎日入ってくれているけど休む時はちゃんと休むって伝えてね」

 

と言いながら日々の業務に入っていく陽子さんに俺は少しだけ苦笑してしまう

趣味で開いているとはいえここの黒字幅はかなり大きい

俺も手伝っているが成功した人にはいるんおだ                

そして書店で漫画コーナーに新作を探していたときだった

 

「…あっ!水口くん!!」

 

色々探っていたところで後ろから声がかけられる

聞き慣れた声でさらに少しだけ胸が高まる声に少しだけ苦笑してしまう

振り向くとそこには

 

「あれ?小野寺?珍しいなこんな街中で。どした?」

「私は友達と買い物に出ててその帰り。水口くんは?」

「ん?バイト終わりだよ。給料日なのもあって、せっかく外に出たんだからどっかで遊んでから帰ろうかなって」

「そうなんだ……じゃあせっかくだから甘いもの食べにいかない?近くの公園で美味しいクレープ屋さんがあるんだけど……カップルずればっかりで入りづらくて」

 

クレープか。いいな

俺も甘いものは好きだからちょうどいいか

 

「いいぞ。つーことは凡矢理総合公園か?このあたりだったら」

「うん!!それじゃあ行こっか」

 

隣に並び歩き始める俺と小野寺

適当に話をしながらクレープ屋に寄ると人が多く少しばかり並ぶことになったので気になっていたことを聞いてみる

 

「小野寺って和菓子屋の娘なんだよな?洋菓子とかってよく食べるのか?」

「うん。甘いもの全般的に好きだから」

「へぇ〜和菓子とか作るのか?」

「私は飾り付けだけかな。一度小さい時に出したことがあるんだけど、お客様が次々倒れちゃって……三日間お店が出せないことに」

「……せめて自分で味見してから出せよ」

「うっ」

 

俺は少しだけ笑ってしまう。やっぱり少し抜けているよなぁ

そういうところが小野寺の魅力なんだけど

 

「じゃあ水口くんは?苦手なものとかあるの?」

「俺は……う〜ん。苦手はないなぁ。あんまり得意なこともないけど。全て平均以下くらいだしなぁ。強いて言うなら人付き合いかな?」

 

実際人付き合いは苦手な方だ。感情を隠すことも苦手だし

 

「そうなの?でも、るりちゃんが言っていたけど、水口くんって気を使えるって言っていたよ?桐崎さんのことも助けていたって」

「宮本が?あいつもよく見てるなぁ。まぁたしかに助けたけど、あれは仕方ないだろ?最悪本当に暴力を振る可能性あっただろうし、そうなったら桐崎もぼっち確定だろ?まぁ、あいつ少しだけ見てたけど、一条以外と話す時ってどこか壁があるんだよなぁ。まぁその一条とも最近話してないけど、どこか空回りをしがちだしクラスの人気者に見えて親しい友達はいないしな」

 

すると小野寺はクスクスと笑う

俺はキョトンとすると小野寺は少しだけ笑顔になる

 

「……何だよ」

「本当に水口くんってお父さんみたいだなぁ」

「本当に、好きだよな。お前そのネタ」

 

俺はもう今月何度も言われた言葉に溜め息を吐く。そんな話をしているとクレープ屋につく

 

「いらっしゃいませ。いかがなさいますか?」

「俺チョコバナナクリームマシで。小野寺は?」

「私イチゴクリームにしようかな?」

「じゃあその二つで」

 

とお互いに自分の分のお金を払う

混雑していたので時間がかかるらしく、待ち時間があるとのことだったから、二人で待とうかとなったが席が埋まってることから離れて落ち着いて食べれるところを探すことになり、小野寺が探し、俺が受け取ることになった

そして十分くらい待ち、俺は小野寺の元に向かうと

桐崎と一条、そして小野寺が話していたのであった



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鉢合わせ

「一条と桐崎か?なにしてんの?」

「えっと」

「水口くんと小野寺さんは?」

「俺たちはさっき街中であって、お互いに時間があったからクレープ買ってきたところだけど……」

「クレープ?」

 

俺はクレープを見せると桐崎はなんのことか分からないけど一条は納得していた。元々甘いものが好きなのはこの一ヶ月でわかっていたのだろう

 

「んで、どういう繋がり?」

「繋がりって」

「まぁ、桐崎と一条が俺たちと同じように出かけていただけってことはあるだろ?」

「えっと、それは」

「……その一言でわかったよ」

 

デートですね。完全に

俺は苦笑してしまうと同時に少しだけ疑問に覚えてしまう

あれ?でもそんなに仲よかったか?こいつら

 

「ふ〜ん。まぁおめでとうっていえばいいのか?」

「おめでとうって他人事だな」

「別に俺には関係ないしな。他人の恋愛ごとについてそう簡単に触れることが阻害する可能性だってあるし、人が誰を好きになるかなんて自由だからな。俺は恋愛に興味ないし、余計に拗れる方が問題だろ?」

「…おっしゃる通りで、さすがクラスのお父さんだな」

「誰がお父さんだ」

 

もう何度も言われていることに飽き飽きしながら、俺はいつもなら笑っている小野寺の方を見る

俺の目の前には我慢しているように、そして苦しそうな。そんな小野寺がいた

一瞬息を呑んで立ち尽くしてしまう

分かっていたつもりだった。一条のことが好きってことに薄々気付いていたのもあるのだが

それでもやっぱり笑顔を見せている小野寺に胸が痛みが増す

 

「水口くん?」

「……ん?なんだ?」

「だから一条くんと桐崎さんってお似合いだよねって」

「まぁな」

 

どこか煮え切らない返答になってしまう

その反応に桐崎と一条は少しだけ不自然になっていた

 

俺は話をそらすためにふと思い出す

 

「……つーかそれ、結局どこにあったんだ?」

「へ?」

「ペンダント。俺結構探したけど見つからなかったから。途中から桐崎が一条たちと離れて探し始めたのも少しだけ分からなかったし」

「……あぁ。これか」

「鍵穴が空いたペンダントかって珍しいし年季が入っているから」

「これはごみ収集の場所にあったのよ」

「……よく見つけたな。それ」

 

俺は苦笑してしまう。それが本当ならかなり苦労していたはずだ

そういうところに一条も惚れたんだろうかと

 

「ん。んじゃ俺はもう行こうかな。クレープあるし、そろそろ夕飯の買い出しもしないといけないから」

「あ、あぁ。そっかお前一人暮らしだもんな」

「あぁ。小野寺はどうする?」

「私も、行こうかな」

「そうか。それと小野寺クレープ」

「へ?あっうん」

 

俺は小野寺にクレープを手渡すとそして一口食べる

ただ今この中で食べるものではないがどうしてもこの苦味から逃げたくてチョコバナナではなくいちごクリームにするのが正解だったと軽く後悔しながら

 

「んじゃ、また明後日な」

「またね。一条くん、桐崎さん」

「えっ?うん」

 

俺は無理矢理にも話を切り上げ俺は帰ろうとする

すると小野寺もついてくる

しばらく無言なときが続くと同時に俺は小さくため息を吐く

 

「大丈夫か?」

「えっ?」

「なんとなく見てたら分かる。好きだったんだろ?」

「……うん」

「すげぇよ。それで笑顔でいられるんだから」

 

俺は小野寺に告げると素直に頷く

慰め方なんかは知らないのが少しだけ

 

「あはは。でも水口くんにもバレちゃったね」

「そりゃそうだろ。俺は三人に関してはただの友人関係であって俺以外は当事者だからな。俺だけ他人事だから周囲に目を向けることができるんだよ」

「当事者じゃないって」

「実際そうだろ。……まぁ俺から言えるのは泣けばいいんじゃないのか?」

 

小野寺は少しだけキョトンとしている

分かっていたことだけどショックはやっぱり大きいのだ

 

「泣いてスッキリした方が辛いときはスッキリするぞ。余計に溜め込んでいるときの辛いからな。一回色々はしゃいで、辛い気持ちを変換させた方がいい。俺も実際経験はあるし、それに彼女がいるからってアタックしたらダメってわけじゃないだろ?」

「…そうだけど」

 

まぁ俺が言えることはこれくらいかなぁ…

あとは小野寺次第だろうだろうあとはて

か小野寺さぁそしてしばらくクレープをたべて食べていると同じく食べながらグスグスと涙をながをながしはじを流し始める小野寺にをむご無言で眺める……

俺は慰めるわけでもなくそれを見つめていた



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行き帰り

「………ふぁぁ〜」

 

俺は小さくため息を吐くと一昨日のことを思い出す

恋愛には踏み込まないつもりだった

好きな人は知っていたはずだったし覚悟はしていたはずだった

失恋した時より

……あんな顔されちゃあ流石に見過ごすことなんてできないだろ

あの時の小野寺の顔は忘れることなんてできない。泣きそうで、苦しそうでそして切ない

その印象だけが脳裏に焼きつく

好きな人の恋の終わりなんて見たくなんてなかった

そんなことを考えながら歩いていると見知った姿が見える

 

「……あっ!」

「あっ」

 

偶然にも小野寺と出会う。朝の通学路で会うのは初めてだった

ずっと小学校から同じだったし家も近所だと予想できたので、家が近いだろうとは思っていたけど

 

「おはよう。水口くん」

「あぁ。おはよう。小野寺」

 

どこか気まずい雰囲気に俺は少しだけ小野寺という少女の強さを見た気がする

失恋はしたはずなのに、しっかりとした足並みで歩いてきている少女に少しだけ一条が羨ましく感じる

 

「立ち止まってないで行こうぜ」

「えっ?」

「行かないのか?」

「ううん。行くけど……顔大丈夫かな?昨日少し腫れちゃったから」

「ん?大丈夫だと思うぞ?見た目はそこまで変わらないし」

「そっか」

 

少し笑顔が崩れており、未だに痛々しいのは避けられない。ただ、小野寺も進みだそうとしていることはわかる

 

「……そういや、今週末大丈夫なのか?」

「えっ?」

「今週末ケーキの調理実習あるだろ?小野寺って料理できなかったんじゃ」

「あれ?ケーキ作りって今週だったかな?」

「あぁ。一応簡単なものなら教えられるけど、少し空いた時間使って見とこうか?」

「…いいの?」

「まぁカフェでキッチン担当してるしな。元々両親共働きだし、料理もできるし誕生日ケーキも作ることもできるしな」

 

ふと思い出したようにしているが、いくつかあまり触れないようにするために俺は話の話題をいくつか用意していたのだ

少しだけ笑顔がこぼれいつも通りの小野寺が戻ってきている

やっぱり悲しんでいる小野寺より笑顔の小野寺の方がいいしな

そんな中で教室に二人で歩いていくとすると教室内がざわざわと騒いでいる

 

「あれ?なんか賑わってるな」

「おっ!カエデ!!おはよう!!」

「ん?おはよう?どうしたんだ?やけにテンションたけぇな」

 

俺は少しだけ引き気味の答えるとすると舞子が笑う

 

「実はな。楽と桐崎さんがデートしていたのを板野と城ヶ崎が目撃してたんだよ」

「……あ〜なるほど」

 

バレてるぞ一条と桐崎。俺は小さく苦笑してしまう

 

「そっか。んでからかうのか?」

「あぁ、こんなに面白いことからかわないわけないだろ?」

 

その舞子の言葉に俺も少しだけ違和感を覚えたが、俺はどうしようにもないだろうと判断する

そして入ってくる一条と桐崎。どうやら一緒に登校してきたのか一緒に歩いてきた

 

「おおっとー!?一条と桐崎さんじゃねえかーーっ!!」

「へ?」

 

賑わってきた。教室に学級日誌がないことに気づく

……まぁいいや。こういう雰囲気好きじゃないしな

 

「あれ?どうしたの?」

「ん?学級日誌取りに行こうって思って」

「あっ!私も行くよ」

 

俺は席を離れようとすると小野寺が立ち上がる

少しだけ辛そうにしていたのがふと気づくがあまり触れないようにする

でもなんとなく舞子の態度が少しだけ気になってしまうのであった

 

 

「あれ?小野寺?」

「えっ?水口くん?」

 

翌日、俺は放課後図書館で宿題を終わって帰ろうとした時、小野寺と出会う

最近会う機会増えたなと少しだけ苦笑していると小野寺が近づいてくる

 

「水口くん珍しいね。今日バイトは?」

「休み。宿題を家でやるの嫌だったから図書館で終わらせてきたところだよ。小野寺は?」

「あはは。忘れ物しちゃって」

「……あぁ。なるほど」

 

結構抜けているところもあるし授業中に、時々寝ている小野寺は見ているしな

 

「…勉強って真面目だね」

「家で勉強したくなしたくないんだしたくないんだよ。勉強嫌いだし」

「そうなの?」

「……言っとくけど俺小野寺より成績順位はかなり低いぞ。ここも繰り上げだったし」

「私もそうだったけど」

「……俺入学後のテスト108位だったんだけど」

「私も100位くらいかな」

 

俺もは少しだけ苦笑してしまう

なんか共通点が多いよなぁ。こういう普通の生活は

 

「んー。まぁ、今日は帰るかぁ。明日の調理実習の準備もしないといけないし」

「調理実習の準備?」

「あぁ。俺はカップケーキにしようと思って。あれ人に配りやすいし簡単だから小野寺も作りやすいだろ?」

「…そっか。優しいね」

「ん?当たり前だろ?一度言ったからにはちゃんと美味しいケーキ作りたいだろうしな」

 

そして自然と隣を歩き始める小野寺に少しだけ驚いてしまう

多分天然だろうけど、普段よりも距離が近い

 

「ねぇ。水口くん。私頑張ってみるよ」

「ん?」

「一条くんのこと。もう少しだけ追ってみようと思う」

 

どうやら決意したらしい。何があったあ分からないがそれでもいつもの力強い小野寺に戻っていた

本当に恋する女の子はずるいと思う

強く儚く、そしてこんなにも魅力的なのだから

……胸が痛いけど俺がみたいのはこの姿なんだから

 

「そっか。んじゃ少しだけ多めに持ってくるか。ケーキ渡せるといいな」

「えっ?…うん」

 

ひたすらに恥ずかしそうな小野寺に俺は少しだけ苦笑してしまう。やっぱりわかっていた筈だけど結構きついものがある

それでも俺は君には笑ってほしいから

恋を素直には応援できないかもしれないけど

 

小野寺には幸せでいて欲しいから

もうあんな姿見たくないし俺は小野寺の味方であろう

初めて一緒に帰る帰り道は何処か苦く、切なかった



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