おちんちんハンター花月 (名も無き二次創作家)
しおりを挟む
京楽花月
おっきい? 小さい? 皮は? 反りは? 毛は? 色は? 形は? 堅さは? 勃起時と非勃起時の違いは?
疑問が尽きない。
もしかしたら、我々は深淵を覗こうとしているのかも知れませんね。
「僕ら……今、真面目な話してたよね」
「ええ、そうですね。正確には『今も』真面目な話をしていますよ、
少女の爛々とした両の目は、目の前のイケてるおじ様の股ぐらに突き刺さっていた。
ズボンでも袴でもなんでも、誰かが履いたまま座れば座り
しかしそれが男性の場合、皺の原因はそれだけとも限らない。
そう、おちんちんだ。
男性の股間にはおちんちんが付いている。
それがズボンや袴を押し上げ、座り皺にさり気なく混じることがある。
今、少女の目の前に居る男性の股間付近の皺にも、位置的に怪しい物がある。
“物”というか“モノ”というか……。
兎に角、アレは座り皺?それともおちんちん?と訝しむ少女の視線がガッツリと注がれれば、いかに酸いも甘いも経験した大人な男性とはどいえ落ち着かなくなるものだ。
死神は見た目以上に実年齢が高いことが多い。
だが、見た目が年端もいかない少女であるところの彼女が、いい歳をした男性の家の一室で、いい年をした男性の下半身に熱視線を注ぐ。
何故このような怪しい事態になったのか。
それは半刻前に遡る。
◇◇
「じゃあご飯いただこうか、花月ちゃん」
「そうですね、京楽隊長。……いえ、お
上級貴族・京楽家。
そのお屋敷にて二人の死神が夕食を共にしていた。
片方の名前は京楽春水。京楽次郎総蔵佐春水である。
100年以上の永き時を護廷十三隊八番隊隊長として過ごす、歴戦の猛者である。
そして、もう片方は京楽
京楽春水に引き取られる形でつい先日義理の妹となった彼女は、命の恩人でもある義理の兄によく懐いた。
「本日は私の我が儘を聞いて下さりありがとうございます」
「なあに、可愛い妹の頼みなら大抵のことは聞いちゃうよ」
「『若い女の子の頼みなら』の間違いではありませんか?」
「あはは……」
「私はお義兄様のそういうところも大変好ましく思っておりますが」
参ったねぇ、告白されちゃったよ。と巫山戯る春水。
お義兄様ったら、と楽しそうに微笑む
歳の離れた義兄妹である彼等の仲は良好だ。
護廷十三隊の隊員には寄宿舎が存在し、隊長クラスともなれば個室が与えられる。
そのため、春水がわざわざ食事の度に実家に帰るなどという手間暇の掛かることをする必要は無い。
しかし、今日は義妹の花月から「お話しがあります」と言われ、こうして信用できる者で固められた実家にて食事の席を設けた。
「お義兄様は私がどういう経緯でここに居るのかご存じですよね」
「勿論。花月ちゃんを拾ったのも周りに話を付けたのも僕だからね」
「まずはその件につきまして、改めてお礼を言わせて頂きます。本当にありがとうございました」
料理を避けるために横にずれた花月が、恭しく頭を下げる。
ここで春水が花月に頭を上げさせ、雑談へと興じさせて心の距離を近づける。
既に数度繰り返した流れだ。
だが、今日に限ってはそうはならない。
何故なら話の目的が違うからである。
普段は感謝の気持ちを伝えることが花月の目的であった。
だが、今回の感謝は本題の前振りなのだ。
そしてそれが分からない京楽春水ではない。
普段なら優しい言葉で頭を上げることを促す彼も、今日はそのまま話を続ける。
「涅隊長にも困ったものだよ。絶滅寸前まで追い込んだのは確かに僕たち死神だけどさ、そのせいで既に保護対象に指定された
話を続けるどころか、いきなり切り込んだ春水。
このことは少女にとってもトラウマ物の記憶である可能性があるにも関わらず、冷たい瞳でここには居ない十二番隊隊長及び技術開発局局長を糾弾する。
もしこの様子を誰かがみていたら、女好きで女性に優しい彼にしては意外な言動に思われるかもしれない。
だが、春水は確信していた。
少女、義理の妹である京楽花月が既にその件を引きずっていないということを。
「はい。処分されそうになっていた私を、お義兄様が救って下さったのです」
滅却師。
大気中に偏在する霊子を自らの霊力で集め、操る技術を基盤とした人間の総称。
その力を死神に融合したらどうなるのか、という涅マユリの一時的な思いつきによって始まったその実験は、絶滅危惧種だった滅却師を完全に絶滅させ、同胞である死神十九人を廃棄処分するという素晴らしい結果を残した。
その直後に事態を察知した京楽春水によりこの事件が暴かれ、被検体最後の生き残りであったこの少女が死の瀬戸際に命を繋いだ。
そうして救われた少女は、もうなにに怯えることも無く自由に楽しく暮らしたのでした。
なんて、都合のいい話になればよかった。
薬というものには副作用がある。
そして、効果の強い薬ほどその傾向は顕著だ。
幾ら死神の身体が頑丈だとはいえ、あのマッドサイエンティスト特製の薬に全身を犯され続けていた少女に後遺症が無いはずがない。
「実験の後遺症により、私は生殖能力と性的欲求を消失しました」
「……うん」
人の幸せはそれぞれであるが、愛する異性と結婚して子供を作りたいと思う者は男女に限らず少なくない。
流石にこの話題には春水も苦い表情になる。
だが、次の少女の言葉で流れが変わる。
「消失した性欲は、三大欲求の一つです」
「……?」
「バランスを取るため……なのでしょうか。消失した性欲の代わりに、とある欲求が私の中で肥大化したのです」
嫌な予感がする。
八番隊隊長として長年の時を過ごした春水の感がそう告げた。
だが流れは完全に少女の物であり、もはや春水には続きを促すことしか出来ない空気になっていた。
「その欲求っていうのは……?」
「知識欲です!」
思ったよりもまともな返答に胸をなで下ろす春水。
「より詳しく申しますと、おちんちんです」
「は?」
あまりにもあんまりな不意打ちに、腹芸にも長けている筈の彼が素で呆けた声を出す。
だが、そんな彼の様子に気付くことのない少女が説明を止めることは無い。
聞き間違いだと思いたかった春水に、とどめを刺す。
「護廷にはお義兄様をはじめ、格好いい男性が沢山居るじゃ無いですか。そんな彼等にも……その、下品なんですけど、おちんちんという恥ずかしい部位が付いているのだなあって思うと、気になって気になって仕方が無いのです」
各隊長、副隊長の男性陣はみんなオサレで格好いいですよね。
そんな彼等にもおちんちんが付いている。
実はみんな隠れてシコシコしているのでしょうか。
なんとなく霊体は性欲薄そうだし、シコシコはしていない気がしますが。
吉良のおちんちんは曲がってそう(偏見)
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
円乗寺辰房の霊圧が……消えた……!?
励みになります。
京楽隊長や愛染隊長はラスボス級なので、まずはジャブから。
「義理の兄に打ち明けたら怒られました」
「あたりまえじゃない。あんたバカね」
あれから一日後、昼前の人通りの少ない道にて、
訳ありだった花月を暖かく迎え、女性死神協会の輪に加えてくれた松本。
だが、何よりも花月が心を開いた理由は下の話が出来るからである。
花月はいやらしい意味で男性の下半身に興味を向けている分けではないが、それでも若い女性死神の多くはそのような下世話な会話を嫌う傾向にある。
だが、この松本乱菊は下世話な話に対して抵抗がないらしい。
人の目がないところであれば、やれ誰々のちんこは小さそうだとか、やれ誰々のちんこは曲がってそうだとか。
探せばいるだろうが、現段階ではそんな話を気軽にできる存在は少ない。
「あんたもこれからは貴族の息女なんだから、その自覚を──」
「いえ、まあそれもそうなんですけどね? お
「ま、急に真面目になれたら苦労は無いわよね」
そう呟いてチラリと遠くに視線を移す松本。
その方向は瀞霊廷内の商店街だ。
「……今日も“休憩”ですか? 日番谷隊長も大変ですね」
「義妹にヤバイ性癖暴露された京楽隊長ほどじゃないでしょ」
「私のこれは性癖では無く実験の後遺症による知識欲の片寄った肥大化です!あ、ちょっと!」
はいはい、と適当に流して商店街に駆けていってしまった松本。
その後ろ姿に半ば呆れた目を向ける花月。
「あ、京楽三席。乱菊さんみなかったか?」
「九番隊の檜佐木副隊長……?」
◇◇
「すみません、奢っていただいてしまって」
「気にするな。京楽家のお前には余計なお世話だったかもしれないが、一応これでも副隊長だからな。年下の女子に奢るくらいさせてくれ」
瀞霊廷通信の取材で松本を探していた檜佐木。
仕事内容的に時間の融通が付きそうだった花月が、今日の仕事を夜に残業することに決めて檜佐木の松本捜索に助力した。
だが、商店街を探し回っても松本を見つけることが出来ないまま昼食の時間になってしまった。
よって、近くの大衆食堂に入店して今に至る。
「檜佐木副隊長って、良い身体されてますよね」
「そ、そうか……?」
6テーブルほどある店内の最奥にて、両者とも野菜炒め定食を口に運びながら唐突に檜佐木を褒める花月。
檜佐木も返事が一見疑問形なのだが、これは照れているだけだ。
顔にもありありと出ているので、その事は今まで彼とあまり交流の無かった花月にも容易に理解できた。
見た目はキリッとして筋肉もしっかりあって、かなり格好いい男性だ。
そう思っていた花月だが、そこに新たに「実は照れやすくて可愛い」という評価が加わった。
見た目だけでは分からない意外なギャップにほっこりした花月は、まだあまり交流の無かった檜佐木副隊長と急速に心の距離が縮まった予感を覚えた。
そして、これだけ仲良くなれたのだから“アレ”を聞いてしまってもかまわないのでは?という欲が湧いてきた。
一度湧くと、それは際限なく溢れ出す。
護廷は現世でいう軍隊みたいなものであり、隊長、副隊長、三席、四席、と階級制度がある。
三席の自分が目上である副隊長にこんなことを言うのは失礼かもしれいないと思いつつ、彼女の肥大化した知識欲を止められるものはいなかった。
「あの、檜佐木副隊長。……おちんちん見せてもらっていいですか?」
◇◇
花月としては普段となんら変わりない会話だったが、檜佐木からしたらなんの脈絡もないおかしな話を振られたわけだ。
そんな彼女たちは今、トイレの個室の中に居た。
大衆食堂のトイレの個室に若い男女が一緒に入っていた。
「な、なあ。流石にやばくないか?」
「今更怖じ気づいたのですか?ま、まさか……!大きさに自信が無いんでしょうか。檜佐木副隊長のナニの大きさが私から松本さんに伝わると困るから、見せられないのですね!?」
「違うッ!!」
売り言葉に買い言葉。
本来挑発してきた他隊の三席に「無礼だぞ」と突っぱねられる立場の檜佐木だが、若く顔の良い女性に興味を持たれて満更でも無い気持ちがあったがために、その機会を逃した。
もうこの流れでは見せるしか無くなった。
観念したように袴の紐をほどき、下着と共に降ろす。
羞恥心を捨てきれない彼の下着降ろしは非常に時間をかけたため、図らずも一種の焦らしプレイのような印象を花月に与えていた。
早く見たい。知りたい。
形は?大きさは?固さは?
早く、早く、早く、早く早く早く早く早く早く…………!
と、花月の脳内で知識欲が暴れ出した。
本人も知らず知らずのうちに脇を締めて両手を開いたファイティングポーズのような体勢のまま前のめりになっていく。
少女の鼻先と男の股ぐらが接触する寸前で、ついにひょこりと檜佐木のおちんちんが顔を出した。
こんにちは。
おちんちんがそう言ったように花月には感じられた。
宿主と同じくしっかりとしたおちんちんだということか。
いや、ただの彼女の幻覚なのだが。
おちんちんと花月の目の距離が近すぎたため、まず真っ先に彼女の脳内に駆け巡った情報は“おちんちんの臭い”である。
檜佐木のおちんちんからは男根特有のツンと鼻に付く男臭さがした。
だが、「むわっ♡」ともならなかったし「くっさ♡」ともならなかった。
普通に男の臭いがして、しかし強烈というほどでも無い。
これは恐らく、ちゃんとお風呂で綺麗に洗っているという事だろう。
檜佐木修平は仕事だけでなくおちんちんに関しても生真面目な性格だったことが明らかになった。
「おや、まだ勃ってませんね。やはり乱菊さんじゃないと興奮しませんか?」
少し身を引いた花月がおちんちんに焦点を合わせると、そこにはなんら力の籠もっていない平常時のそれであった。
若い男の中には綺麗な女の子に自分の下半身をさらけ出すという事実だけで興奮して勃つ者もいる。
失礼な話だが、花月は檜佐木を「格好いいけど何故かモテない人」と思っていたので女性耐性が少なく、すぐに勃つものだと思っていた。
本当に失礼である。
だが蓋を開けてみれば思いのほかしっかりとしていた。
いや、しっかりとしていたのかふにゃっとしていたのかは表現に困るが、少なくとも花月の中では節操の無い童貞敏感おちんちんから乱菊さんに一途な誠意あるおちんちんに分類分けし直された。
毛もキッチリとは言えないが最低限整えられている。
ちなみに彼女にとってその二つの分類に対してどちらが上とか下とかは無い。
あくまでも彼女は第三者として観測しているにすぎない。
タグ付けはしても評価する立場にはいないのだ。
改めて檜佐木のおちんちん(未勃起)の観察に入る花月。
大きさは平均よりややある。だが際立って大きいわけでも無し。
カリの位置はやや頂点に寄っているものの、気になるほどでは無い。
カリの高さは普通よりかなりある。
花月はまだ男の生おちんちんを直に見た経験が少ない。
だが、なんとなくそういう事は分かるものだ。
太さもかなりある。
もしもこれが勃起したらどうなるのか。
花月の喉がゴクリと鳴る。だが────
「な、な……っ、乱菊さんは関係ないだろ!もういいな。しまうぞ」
「あ、待って下さい!」
ぎゅっ!
「……ッ!?」
まだ、勃起状態を見ていない。
そんな焦りが花月に手を伸ばさせる。
少女の白魚のような手が、男性の竿を両手で握ってしまう。
その刺激に腰をビクつかせる檜佐木の反応が面白くて、おちんちんの感触を確かめながらにぎにぎする。
「……見せるだけって言ったろ」
見せてください。
……見せるだけだぞ?
今回檜佐木が花月におちんちんを見せることになった際に交わしたやり取りだ。
だが、既に彼女の頭は「檜佐木のおちんちんが勃起したらどうなるか」でいっぱいなのだ。
そんなちょっとしたやり取りなど既にトんでいるし、彼の声も聞こえていない。
両手のにぎにぎに加えて、未だ前のめりのため近づいていた鼻から出る息が彼のおちんちんを摩る。
また、個室に若い美少女と二人きりというシチュエーションも相まって、遂に檜佐木のおちんちんが起立した。
まず、太くて硬い。
そしてカリも高い。
それが檜佐木の勃起おちんちんを観測した花月が初めに思ったことだ。
もしも花月の細指がおちんちんの根元から先っぽまでを撫でれば、まるで室内の清掃が使命にも関わらず室内にほぼ必ずある段差に弱い某お掃除機械の如くそれに引っかかり、進めなくなることだろう。
どう考えても立派だ。
立派なイチモツだ。
どのパーツを見ても平均よりは上の筈。
なんというか、どこか目に見えて劣っている部分があるわけじゃなく、それどころかいいところしか無いはずなのに、何故かこれじゃ無い感が拭えない。
そんな不思議な感覚が花月を襲っていた。
客観的に見ても一般的な“ソレ”と比べれば明らかに秀でているはずなのに、どことなく残念な雰囲気が滲み出ている。
「不思議な感覚ですね……」
「えっ、俺のってなんか変なのか!? ちょっと、え!?」
実は自分の“ソレ”に少しばかり自身のあった檜佐木。
確かに物理的には自信を持てるだけの物が付いてはいる。
だが、それを打ち消すような残念オーラがあるのも事実。
花月の発言により檜佐木の自信が揺らいだ。
「は! 記録せねば」
メモ帳「おちんちん備忘録」を持っている事を思い出し、咄嗟に使う花月。
間違いが無いように記入に集中しているため、少女の耳に彼の呼びかけは聞こえていない。
「なあ、おい! なんとか言えって! 別におかしくないよな? な?」
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
ちょっとしたすれ違い
と、検索をして漁ってたんです。
そしたらなんか見覚えのあるタイトルが目に飛び込んできたではありませんか。
誰だこんな下品な作品書いた奴。しかも二話でエタってるし。
作者出てこい! はい私です! ……マジか。(絶望)
そんなこんなでいつの間にかバーが赤くなってるし、書きかけの三話がPCに眠ってたのでちょちょいと書き足して投稿。
ついでに更新再開……出来ると良いな。
冬獅郎の話とか書きたいし、山爺、白夜、駒村、一角、マユリなどなど楽しそうな人材が多すぎる。
「お目にかかれるだけでも光栄ですのに、夕
「はは、突然行方不明になった元部下が戻ってきたんだ。ゆっくり話したくなってしまってね。僕の都合で時間を割かせてすまない。勿論帰りは送らせて欲しい」
場所は瀞霊廷のとあるお高い料理店。
貴族御用達のこの店は、ランクの高い料理屋にありがちな一見さんお断り制度を設けている。
一応花月も上級貴族たる京楽家の者であるため入店は出来る。
しかし、三席としてのお給料だけで利用すれば日常生活に差し支えが出てしまう。
そのため
「五番隊にいたのもほんの十年くらいですのに、覚えていて下さったのですね。嬉しいです」
「君は優秀だったからね。実は注目していたんだよ。……それなのに、すまないね。まさかあんな事件に巻き込まれてしまっていたなんて。部下を護るのも上司の役目だというのに、本当に申し訳ない」
「そんな、頭をお上げください!藍染隊長がそんなことをする必要はありません!」
花月にとっても藍染は憧れの対象だ。
彼女がまだ被検体として攫われる前、五番隊平隊士だった頃に自らの隊の頂天だった死神。
確かな実力と優雅な物腰。
さらには爽やかなイケメンフェイスと「耳が孕む」と一部女性死神に評判の甘い声色。
完璧超人にして殆どの護廷隊士の憧れの的。
それが花月にとっての藍染惣右介という死神である。
そんな、ある種好きな芸能人みたいな相手に頭を下げられては逆に申し訳なくなってくるものだ。
仲居さんに案内してもらった掘り炬燵の個室に両者は腰を下ろす。
「……」
「……?」
「あの、京楽くん」
「はい、なんでしょうか。藍染隊長」
心底不思議そうな顔でそう返す花月だが、藍染かすればこちらのほうが不思議でならないだろう。
何故なら────
「どうして僕の横に腰を下ろしているんだい?」
二人でテーブルに着く場合、基本的に向かい合う形になる。
だが、そのセオリーを無視してどういうわけか花月は藍染と肩を並べる形で掘り炬燵に着席していた。
いけませんか? と瞳で問いかける花月。
かまわないよ、と懐の広さを見せる藍染。
掘り炬燵は胡座をかいてもいいし普通に座ってもいい。
なかなか便利なものであるのだが、実は掘り炬燵には隠れた致命的弱点がある。
掘り炬燵は床と机との距離が短いため、対面に座ると相手の股ぐらが絶対に見えないのだ。
普通の机であれば床と机の間はかなり幅があり、箸を落としたフリでもすれば簡単にしゃがんで相手のおちんちんに視線を向けることが出来る。
だが、掘り炬燵は床に腰を下ろして食事する関係上必ず床と机の距離が近くなる。
大体上半身の半分くらいの高さになるため、机の下を覗くのは容易ではない。
どうしても覗きたくば掘り炬燵の真下、足下の方の床に潜り込まなければならない。
だが、机という板の真下にカトラリーを落とすには座布団や自身の太腿などによるイレギュラーなバウンドを期待しなければならないため、通常の「箸を落として拾う」を使うにも多少の運が絡む。
また、普通の机の下に潜るより大仰で、はしたない。
上級貴族の娘となった京楽花月には簡単に取れる手段では無い。
故に、そのための横並びなのだ。
花月の目は既に藍染のおちんちんを完全にロックオンしていた。
◇◇
そのまま談笑を交えた食事を取り、花月の緊張も解れていった。
藍染の言動は常に優雅且つ紳士的で、性欲・知識欲含めておよそ乙女とは言いがたくなっている花月を持ってしてもかなり惹かれていた。
人間的に尊敬できる者とは、きっとこういう方のことを言うのだろう。
少女はそう思った。
ところで花月は少女といえども死神である。
お酒だって飲める。
憧れの藍染に酒を注がれて気を良くした花月は、勧められるがままにかなりのペースでアルコールを摂取し続けていた。
もう夜も更けてきたというのに、デロンデロンに酔った若い女性と年上の男性が二人きり。
これでは多少の“何か”が起こっても不思議では無い。
実は、これこそが藍染の今回の目的である。
藍染は護廷入隊後から今までに様々な暗躍を繰り返してきた。
だが途中から自身を不審な目で見てくる存在が二人現れた。
一人は100年程前に既に尸魂界から追い出した元上司の平子真子。
もう一人は京楽春水。
どちらも戦闘力的には藍染の敵ではなかった。
だから平子は簡単に追放できた。
だが、京楽は策略方面である程度の能力があったために平子のように罠にかけるのが面倒くさそうだった。
藍染という圧倒的強者からしても京楽春水という男は「やりにくい」相手なのだ。
春水から長らく疑惑の眼差しを向けられてきた藍染。
それでも“尻尾を見せない“だけなら藍染にとって容易なことである。
だからこれまでわざわざ春水に仕掛けるようなことはなかった。
だが、ここにきて京楽春水に“義理の妹”が出来たでは無いか。
既に五番隊副隊長の雛森は籠絡済みの藍染だが、花月は花月で別の使い方が出来る。
そう、花月と仲良くすることは京楽春水に対する牽制となるのだ。
五番隊隊長で人格者と名高い藍染が、悲惨な事件に巻き込まれた元部下兼現八番隊三席(出世頭)を気にかけることはなんら不自然ではないため、自然に近づくことができる。
そういうことで、今日はどうせならとことん自分に心酔させてやろうと思った藍染。
事前の軽い調査で「京楽花月は酔っ払いやすくおかしな事を口走るも、後日記憶が残り自分の言動に恥じ入るタイプ」だと判断した彼は、偶然を装い彼女に接近。
そのまま二人で食事を取り酔わせたのだ。
「……なにか、僕にして欲しいことがありそうな目をしているね」
アルコールが回ってフラついた花月の腰に手を回して、抱き寄せる形で支える藍染。
目が合ったのでそのまま一気に仕掛ける。
事前調査で、花月は男性器に並々ならぬ興味があることは藍染も把握している。
そして先ほど出会ったときからこれまでの間、常に自分の股間を見られていることは彼も感じていた。
十中八九「見せて」というお願いになるだろうことは彼も理解している。
だが、それを上手く躱して丸め込み、なんだかんだでいい感じに持っていき高感度を稼ぐ自信……いや、実力が藍染にはあった。
別に藍染にとって有象無象の蟻に性器を晒すことに羞恥心は無いものの、だからといって見せてやるいわれもない。
案の定、彼の股間から目を離すどころかより一層その酔ってトロンとした彼女の
「どうしたんだい? なんでも言ってごらん?」
ガタッ!!!
突如台パンと共に勢いよく立ち上がった花月。
流石の藍染もこれには驚愕。
肩がびくっ! と揺れた。
これは、常に泰然自若とした藍染を知る者にとっては驚愕の瞬間だっただろう。
彼の部下である市丸辺りなどは爆笑していたかもしれない。
この場に他の誰もいないことが悔やまれる。
「わらひがぁ、藍へんたいひょーにぃ……おねがいしらいことぉ?」
「そうだよ。ああ、そんなにフラつきながら立ち上がるのは危険だ。少し失礼するよ」
ぐらんぐらんとヘドバンする花月をすかさずお姫様抱っこで持ち上げ、座り直させる藍染。
好感度を上げる隙は逃さない。
「あまり口うるさくしたくはないけれど、淑女がこんなに無防備な姿を晒すものじゃない」
折角座り直させてもらったのにすぐに倒れた花月は、再び胡座をかいた藍染の股ぐらに頭を突っ込む寸前で受け止められる。
「興味を持つ年頃なのは分かるけど、君のような少女にはまだ早い」
「じゃあいつならいいんれすか~」
「その時が来ればいずれ分かるさ」
僕が尸魂界を裏切り、君の望みが永遠に叶わないということが。
そんな意味を含ませ独り言のつもりだった。
ここで1つ、藍染にとって予想外のことが起きていた。
だからどうしたと切って捨てられるほどの、どうでもいいほどしょうもない些細なすれ違いだが────まさか酔い潰れてロクに聞こえていなさそうな花月が今の発言をキッチリ聞いており、しかも“将来おちんちんを見せてもらえるという確約”だと解釈していたなんて、このときの藍染は考えもしていなかったのだ。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
挑発耐性貫通
「入っていわよ~」
「失礼します」
場所は十番隊隊舎。
その執務室で珍しく事務仕事をしていた松本
入室したのは八番隊第三席、京楽
彼女は書類を左脇にきっちりと書類を抱えていた。
上位席官、それも三席が他隊の副隊長に手渡しで送る書類。
重要でない筈がない。
彼女はそれを粛々と両手で差し出し、松本は両手で受け取り────
「はーい真面目な話はここまでー!」
「まだ何も話していませんけれど」
細かいことはいーの! と脳天気に言う松本によって、その場の真面目な空気は既に消し飛んでいた。
今更なにを言ったところで無意味、というか薄々こうなることがわかっていた花月としては苦笑いするしかない。
二人は責任ある重役から気安い友人へと立場を変え、会話に花を咲かせることにした。
女三人寄れば姦しいなどというが、姦しさなど二人居れば充分に事足りる。
ところで、十番隊副隊長の松本乱菊はサボり魔で有名だ。
護廷の階級は現世で言う軍隊の階級であり、基本的には上官の命令は絶対だ。
しかし松本は隙あらば直属の上司である十番隊隊長の命令を無視して仕事を放り出す。
というか、隊長に仕事を押しつけて遊びに行こうとする。
誤解の無いよう言っておくが、十番隊隊長──
これには二人の過去の立場や関係などが絡んでくるのだが、彼等にはただの上司と部下というだけではない、特殊な絆のようなものがあるのだ。
松本から冬獅郎への信頼は勿論、冬獅郎から松本への信頼だって充分にある。
例えば戦闘力、事務処理力、咄嗟の判断力。
そして────書類仕事からの逃亡力。
今日この状況下で松本が仕事から逃げないはずがない。
その絶大な信頼を得ている彼女には、本日隊長命令により監視が付けられている。
先程花月を部屋に通し、そして今も部屋の前で鎮座している影の薄い男性が今回の監視役である。
まあ、いくら隊長命令とは言え平隊士に副隊長を止めることなど出来るはずもないが。
今日も今日とて名ばかり監視が「また自分まで隊長に怒られる……」と意気消沈しながらその未来を諦めて受け入れようとしていた。
しかし彼も末端とは言え死神。
ただでは転ばない。
せめて
彼は影が薄いことに定評があり、先ほど花月を通す際に言葉を交わしたというのにもう乱菊から忘れられていたのだが、今はそれが逆に盗み聞きの役に立っていた。
「──そういえばあんた、この前修兵のあそこ見たんだって?」
「見ましたけど、どうしてご存じなのですか」
「あんたと修兵が夜遅くに一緒に居るのを見た子がいたのよ。それを聞いてピーンときたわ。どうだったのよ」
「興味があるなら乱菊さんもどこかに連れ込んで見せてもらえば良いじゃないですか。檜佐木副隊長も乱菊さん相手なら喜んでみせてくれると思いますよ」
「いやーよ汚い。こういうのは雑談のネタにするくらいがちょうど良いの」
あそこ? 九番隊副隊長の檜佐木修兵さんの汚いあそこ、とは何処だろうか……。
と、監視役は考える。
まさか股間のことか? と一瞬最低な思考が過ぎるも、まさかこんな美しい女性達がそんな下品な会話をするわけがないと思い直す。
「あそこと言えば今一番気になるのは吉良副隊長ですね」
「あいつのはなんか曲がってそう。見たことないけど」
「わかります。どうしてか曲がっていそうな雰囲気なんですよね、見たことないですけれど」
曲がってる……あそこ?
それもう男性器以外にあるのか? という疑問を必死に振り払い、兎に角会話に集中する。
もしも本当に三番隊副隊長である吉良イヅルの男性器のことを言っているのなら、監視役の男も「わかる」としか言えない。
「あんたの影響か、最近私まで気になる時があるのよねぇ」
「本当は門外不出なんですが、乱菊さんなら見せても良いですよ。この『おちんちん備忘録』」
不意打ち。
咄嗟に吹き出すのを我慢できた彼は立派だろう。
しかしそもそも存在を忘れられているからこそ盗み聞きできているのだからして、そんな彼が盗み聞きの内容で吹き出さないよう堪えたところで、褒めてくれる者はいないのだ。
「ほうほう……へー、流石に副隊長までなのね」
「実はここだけの話、
「ええっ!? ちょっとそれホント!?」
隙を生じぬ二段構え。
五番隊の愛染惣介隊長といえば、所属や男女を問わず最も多くの死神から尊敬されている存在だ。
優しく、柔和で、気品があり、仕事ができて、強い。
完璧である。
勿論監視の男も憧れている。
故に、彼に藍染隊長=女遊びのイメージは一切無い。
特大のショック続きで、彼の精神はダウン寸前だ。
ただでさえ美人と美少女が男性器の話題で盛り上がっていることが未だに信じられないというのに、更にあの藍染隊長が女遊び……。
しばらくは立ち直れそうになかった。
「隊長と言えば、
「えー、涅隊長!?」
乱菊はびっくりした。
監視の男もびっくりした。
そもそも涅マユリは“男性”の枠に入るのか。
そもそも自分の身体すら弄くり回している彼に、果たして男性器が残っているのだろうか。
そもそも不気味で怖い……。
「ていうか、そもそも涅隊長に付いてんの?」
そうだそうだ。
まさに我が意を得たり。
よくぞ言ってくれました。
さすが我らが副隊長。
そんな風に、思わず聞き入っていた監視役の隊士。
先程までは意識を部屋内に向けながらも顔だけは廊下に向いていた彼だが、盗み聞きに夢中になるあまり顔まで部屋の方を向けいていた。
「おい……。自分とこの隊長の霊圧すら知覚できないほど、なにに夢中になってんだ?」
「ひゃい!!!」
床に座り込んで顔だけ
まさかの隊長様のご帰還だった。
「えっと、それは……その……」
「隊長と言えば、うちの隊長のおちんちんは?」
「見たことないですね」
「じゃあ見てく?」
「いえ、別にいいです」
「あら、以外。いつもの知識欲はどうしちゃったのよ」
「別に何でもかんでも見たいわけじゃないんですよ。あくまでも想像出来ないおちんちんが見たいのです。体格とか雰囲気とかで察せられるモノを見てもどうしようもないじゃありませんか。何度も言っていますが、私のこれは性欲ではなく知識欲ですから」
「???」
日番谷冬獅郎は混乱した。
自分の副官がちゃらんぽらんなのは知っていた。
しかし、これはあまりに酷すぎる。
下品すぎて一周回ってやっぱり下品だった。
監視役の平隊士にとっても地獄以外の何物でも無い。
しかし、実は本当の地獄はここからだった。
「まあ、うちの隊長のなんてどう考えてもお子様サイズだしねえ」
「常識的に考えて、典型的な子どもおちんちんで間違いないでしょう」
「ぷふっ……!」
油断した隙を突いて、再度の不意打ち。
笑いを堪えきれなかった監視モブ隊士は隊長の怒りに触れて死んだ。
「テメェら……神聖な仕事場でなに下品な会話してやがる」
「あ」
「げっ」
怒髪天を突く勢いで乗り込んできた話題の人物。
申し訳ない、気まずい、そして────哀れ。
そんな視線が冬獅郎の股間に注ぎ込まれていた。
それが冬獅郎の怒りを加速させる。
普段彼は極力感情的にならないように意識している。
怒りのままに怒鳴り散らすのはガキのすることだから、ただでさえ小柄な彼はせめて立ち振る舞いや精神性には気を使っているのだ。
そんな彼ですらも怒らせるのが松本の特技であり、本日もその特技は遺憾なく発揮されていた。
◇◇
五番隊副隊長、雛森桃。
彼女は日番谷冬獅郎の幼馴染みである。
非番を使って街の方に足を向けると、とある居酒屋の前でなにやら聞き覚えのある声がした。
まさかと思って入店すると、またもや先ほどの大声が個室の方から聞こえた。
誰か若い女性を叱りつけているようで、かなり興奮した様子が彼女にも伝わってくる。
あの後花月たちは仕切り直しのために場所を移していたのだ。
「たぶん乱菊さんと……誰だろ」
また乱菊さんがお仕事サボったんだろうけど、お店の人や他のお客さんも迷惑しているみたいだし、ここは幼馴染みとして私が注意てあげないと! と張り切る雛森。
ここ最近は急に大人っぽく振る舞ったり階級で抜かれたりした結果、あまり年上らしいことができていなかった反動も僅かにあった。
遅れて
「ちょっと、日番谷くん? そんなに騒いだらお店に迷惑……え?」
可愛い幼馴染みの男の子が、女性隊士に股間を見せつけていたという現実。
「お、お邪魔しました~」
顔を真っ赤に染めて店を飛び出した。
絶望に固まる冬獅郎。
長年の初恋があっけなく散った。
こんな不本意な形で。
流石に申し訳なく思った花月は、雛森に冬獅郎のおちんちんの大きさを大袈裟に伝えることを決めた。
花月は真実の探求者なだけであって、真実の伝道者ではないのだ。
後日追加ダメージを喰らった瀕死の冬獅郎が見つかったという。
目次 感想へのリンク しおりを挟む