仮面ライダーリバイス 悪魔と伝説の狂想曲 (BREAKERZ)
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特別版 仮面ライダーリバイス クロスフィアンマ
序章 悪魔と炎


どうも、特別版です。本編が始まる数日ほど前です。


これは、仮面ライダーリバイスこと、嵐山輝二と悪魔のバイスが、伝説の戦士プリキュアと出会う、ほんの数日前に起こった戦いの記録であるーーーー。

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「っ!」

 

ある公園にやって来た嵐山輝二の目の前に、背中にバズーカを備えた亀のデッドマン、『タートル・デッドマン』が暴れていた。

 

「くっ!」

 

「ヘイ、リベンジボーイ。これが、“第2フェーズに到達した者の力”だよ」

 

『うああああああああ!!!』

 

ジョージ・狩崎が、そう説明すると、タートル・デッドマンは背中のバズーカを乱射する。

 

「では、後は頼む!」

 

あまりの砲撃に狩崎は門川ヒトミ達〈フェニックス〉の隊員と共に退避した。

タートル・デッドマンの契約者は既に“一体化しており”、輝二に向かって言葉を発する。

 

『あなたは何故私の邪魔をするの!? 私はただーーーー“夫を殺した奴らに復讐したいだけなのに”!!』

 

タートル・デッドマンと一体化した契約者は女性だった。

結婚5年目の記念日に、夫が職場いじめによって、精神疲労で病を患い亡くなってしまった。彼女がそれを知ったのは、夫の会社で葬儀に来て、涙を流してくれた上司にお礼を言いに行った際、偶々夫の同僚が話しているのを聞いて、問い詰めたら教えてくれた。

何と、涙を流してくれた上司が、事あるごとに夫を皆の前で怒鳴り散らし、嫌味や暴言による言葉の暴力の数々を言ったり、自分の仕事を全て夫に押し付け、仕事の失敗は全部夫に擦り付け、美味しい所は自分の成功として取り上げたりしていた。

他の同僚も同じ事をされていたが、夫の方に矛先が向いていて、助けたら自分も上司のターゲットにされるのではないかと、それ以上言ってくれなかった。彼女は他の同僚や先輩、後輩達に聞いてみたが、皆上司が怖くて言ってくれなかった。そしてーーーーその上司に問い詰めたら、

 

【証拠なんてないでしょう? そもそも、仕事でストレスが溜まるのは当然ですよぉ。自己管理を怠ったご主人に問題がありますし、それにご主人の体調不良を察してあげなかった奥さんが悪いんですよぉ】

 

と、悪びれる事なく言った。

女性は失意に沈んでいると、〈デッドマンズ〉の幹部と名乗る男性から、『タートルバイスタンプ』を貰い、それを使い夫を苦しめた上司を殺そうとした。

が、これはーーーー“上司を調査していた輝二”によって阻止され、上司は病院送りとなった。そして、夫を助けてくれなかった同僚の人達にも同じようにしてやろうとしたら、輝二と〈フェニックス〉が現れたのだ。

 

「・・・・アンタの気持ちは分かる。だが、そのクソ上司はしばらくは車椅子生活になったし、俺が調査で不正や不倫や女性社員にセクハラをしていた事を、アンタの旦那さんの同僚の人達が上層部に証言した事で、クソ上司は平社員に降格になり、離婚して家族と離ればなれになる事になった。会社では今までパワハラやセクハラをしてきた人達から冷遇されるだろう。これからの人生、いっそ一思いに殺されていれば良かったと思うような生き地獄が待っているんだ。もう十分復讐は果たされた。同僚の人達への復讐なんて、する必要はない」

 

『いいえ、まだよ! 奴らがさっさとその事を証言していれば、あの人は死なずにすんだのよ! 奴らに報いを受けさせてやるッ!!』

 

「ーーーーそれじゃ、止めさせてもらうぜ」

 

[リバイスドライバー!]

 

≪行くかい?≫

 

「燃えて来たぜ・・・・!」

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

レックスバイスタンプに息を吐くと、そのままドライバーにスタンプを押し込む。

 

[Come On!レ・レ・レ・レックス! Come On! レ・レ・レ・レックス!]

 

ーーーー亀なのに背中にバズーカをつけてるよ?

 

ーーーー強固な甲羅と強力な砲撃、攻守揃った相手だ。

 

ーーーー亀ってひっくり返せば勝てるかな?

 

ーーーーあれをひっくり返すのは骨が折れそうだがな。

 

輝二の身体からバイスが現れ、巨大なスタンプを手に持つ。

 

「変身!」

 

≪ちょいやっさ!≫

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

輝二はそのままスタンプをベルトに挿入し、スタンプを横に傾けると、巨大なスタンプに押し潰されるように、スタンプの中に入り、輝二の姿が徐々に変わっていきーーーー仮面ライダーリバイスへと変わった。

 

「死ぬ気で、行くぜ!」

 

「レッツ、死ぬ気タイム!」

 

リバイとバイスが、タートル・デッドマンに向かった。

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

そしてここは、輝二が戦っている場所から、遥か遠く離れたイタリアのカプリ島で、異形の怪物達の死骸が倒れていた。

 

「・・・・加古川飛竜。もう止めろ。過去に捕らわれ、未来と向き合おうとしないお前では、『ソウゴ』には勝てない・・・・!」

 

「黙れッ!! 貴様らも所詮『選ばれた人間』だっ! 俺の、俺達のような! 『選ばれなかった人間』の苦しみなど、分かる筈がないんだっ!!」

 

その島の中心で、仮面ライダーのような風貌の異形の怪人と、二人の青年が戦っていた。その一人は橙色の炎を額に燃やし、両手に装備した手甲にも橙色の炎を纏わせ、その瞳はまるで全てを見透かすような力強さがある二十代中盤の青年と、真紅の炎を額に角のように燃やし、両手の手甲にも炎を纏い、強い意志が宿った紋章のような瞳をした同じく二十代の青年だった。

 

「選ばれなかったからと言って、それでお前と言う人間の価値が決まる訳じゃない。過去に捕らわれず、残酷な現実を受け入れて、未来に進んでこそ、その人間の価値が決まる。『彼』は『最低最悪の魔王』から、『最高最善の魔王』になろうとしているんだ」

 

「過去に縛られたまま、人の道を踏み外し、大切な物を失った人間を僕達は知っている。加古川飛竜。このままでは君もソイツと同じようになる。そうなってしまったら終わりなんだ! だからこそ、復讐心を燻らせて暴れまわる君を止めるんだ!」

 

異形の怪人となった青年、加古川飛竜は子供の頃、『時の王』となる少年と同じように、『時の侵略者』による王の選別を受け、両親を失い天涯孤独となってしまった。

しかし加古川飛竜はその事を『王』となった少年のせいだと思い込み、怨みを抱き、何度もその少年に戦いを挑んだが、加古川飛竜は勝てず、何度も苦渋を舐めてきた。

そして今度も、今度こそ少年の命を狙うため、このカプリ島で軍団を作っている所を、目の前の青年二人と、その仲間達によって撃ち破られそうになっていた。

 

「黙れ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!! 俺が『王』になるっ! 『王』になって、俺から全てを奪ったあの男を! 俺を常に見下ろしているあの『魔王』を!! 俺が殺してやるっ!!!!」

 

最早問答ができるようにならなくなった加古川飛竜がなる怪人ーーーー『アナザージオウオーマ』が暴れ狂う。

二人の青年が悲しそうにそれを見つめると、その二人に、黒いのローブと黒いマフラーを着け、表紙に腕時計と無数の歯車が描かれた奇妙な本、『逢魔降臨暦』と言う本を持っていた。

 

「彼はもう話し合いで止まる人間ではないようだ。さて、あなた達に『我が魔王』の力を渡そう」

 

そう言って、青年は時計のようなアイテムを起動させた。

 

[ジオウ! オーマ!]

 

そのアイテムが起動すると、そこから光の粒子が出てきて、二人の身体を包み込んだ。

 

「それで君達も『アナザーライダー』を倒せるようになった。行きたまえ、『天空の炎皇』と『大地の炎帝』! あなた達にも目指す未来があるならば!」

 

「そうだな。『向こう』では“過去の俺達”が戦ってくれている」

 

「約束したんだ。“パパになる”って、“結婚しよう”って、“家族になろう”って・・・・」

 

二人の言葉に、ローブの男の隣に立つ10歳くらいの男の子がニッ、笑みを浮かべる。

 

「分かってるなら、死ぬ気で行きやがれ」

 

男の子の言葉に頷いた二人は、『アナザージオウオーマ』に挑んだ。

 

「どうやら、私は、『我が魔王』にとって、強力な敵にのるかもしれない二人に塩を送ったのかな?」

 

「敵になるかどうかは、テメエの『魔王』次第だがな」

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「行くぞバイス!」

 

「応よ!」

 

リバイはドライバーのスタンプを倒して、ボタンを押した。

 

[リミックス!]

 

まるで組体操の『サボテン』のように中腰になったバイスが土台になり、リバイの足を持って、リバイがバイスの太腿に足を乗せ、リバイはスタンプを倒した。

 

[バディアップ!]

 

リバイとバイスの胸元のマークが光り出し、二人の姿が変わった。

 

[必殺! 繰り出す! マックス! レックス!]

 

ーーーーギャァアアアアアアアア!!

 

リバイの展開した背中アーマーが上顎、両腕が下顎となり、足を担当するバイスのアーマーが変形し、マフラーと尻尾が合体して尻尾のようになった。

まるでTーレックスのような姿ーーーー〈リバイスレックス〉だ。

 

ギャァアアアアアアアア!!

 

「俺っち、輝二のお尻に顔を埋めてる! どうせなら噂の“『伝説の戦士』の可愛い娘ちゃん達”のお尻にーーーー」

 

「さっさと行くぞ、このスケベ悪魔!」

 

バイスがリバイスのお尻に顔を埋めた状態に文句を言うのを無視して、リバイスレックスはタートル・デッドマンが放つ砲撃の嵐の中を突っ走る。

 

『ぐぅぁあああああああああああああああっ!!!』

 

ギャァアアアアアアアア!!

 

砲撃を全て回避したリバイスレックスがタートル・デッドマンに噛みつくと、ガキンッ、ガキンッ、と噛み、上空に投げあげ、落下してきたタートル・デッドマンに、尻尾で地面に叩きつけた。

 

『ぐっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

「死ぬ気で決めるぜっ!」

 

リバイがドライバーを操作した。

 

[レックス! スタンピングフィニッシュ!]

 

「「はぁっ!」」

 

リバイスレックスが上空に飛び上がり、空中で一回転すると、両足を突き出して両足蹴りの体制となる。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! うぉらあ!!」」

 

『ぬぁああああああああああああっ!!!』

 

ーーーーレックススタンピングフィニッシュ。

 

チュドォォォォォォォォォォォンン!!

 

必殺技を受けたタートル・デッドマンが爆散した。

 

 

 

 

ー???sideー

 

「おぉおおおお!!」

 

「はぁああああ!!」

 

二人の青年はカプリ島から数千メートルの空中で、アナザージオウオーマに果敢に挑む。

 

「死ね! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!! 俺の邪魔をするヤツは、皆死んでしまえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

アナザージオウオーマが、キックの体制となり、青年達に向かって突き進む。

 

「憎しみに縛られた者に、王になる資格はない・・・・!」

 

「過去に捕らわれた者に、未来を勝ち取る事はできない・・・・!」

 

「「悲しいだけだ! 加古川飛竜!!」」

 

青年達は橙色の炎と真紅の炎を大きく、美しく燃え上がらせると、拳の籠手が、ガントレットに変化し、炎を一転集中させて振りだす。

 

「「『ダブルビッグバンアクセル』!!」」

 

二人の炎の拳が、『偽りの時の王』の蹴撃とぶつかった。

 

「ぬぅうううううううううううううっっ!!!」

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」」

 

三者のぶつかり合いは拮抗したが、アナザージオウオーマの足が、身体が、少しずつ押し負けていった。

 

「ば、馬鹿な!? い、いやだ! 俺は、王に・・・・王になるんだ!!」

 

「「これで終わりだ! 加古川飛竜!!!」」

 

「わああああああああああああああああっ!!!」

 

ドガァアアアアアアアアアアアアアア!!!

 

カプリ島上空で、島よりも大きな爆発が起こった。

地面に落下したアナザージオウオーマは変身が解除され、一人の青年ーーーー加古川飛竜となり、気を失っていた。

その近くで、『アナザージオウオーマライドウォッチ』がバチっ、バチっ、と火花を飛び散らせると、跡形もなく、粒子状に分解された。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

〈フェニックス〉隊員の門川ヒトミに連行されていく女性。

その途中で、輝二が連れてきていた亡き夫の同僚の人達が近づくと、女性に対して夫を助けてあげなかった事を、全員が頭を下げて、中には涙を流して深く謝罪した。

 

「この人達は、旦那さんの死に本当に責任を感じていて、俺に調査を依頼していたんだ。嘘泣きをしてその場かぎりの謝罪をするクソ上司と違って、この人達は心から謝罪している。本気の謝罪には、価値がありますよ」

 

輝二がそう言うと、女性は涙を流しながら同僚の人達を許し、輝二に対して「ありがとう・・・・」と呟いて、〈フェニックス〉に連行された。

 

「ご苦労だったねリベンジボーイ。『タートルバイスタンプ』の報酬は後日渡すよ」

 

「・・・・ふん」

 

輝二はそう答えると、夕焼けが世界を包む中一人、暗がりの世界へと去っていった。

 

≪もう少し愛想よくしたら?≫

 

「煩いぞバイス」

 

いや、一人ではなかった。

 

 

 

 

ー???sideー

 

「加古川飛竜は、“君達の組織”の監視下に置くと言う訳だね?」

 

「ああ。できる事なら彼には、真っ当な人生を歩んでほしいけどな」

 

「それで、『ウォズ』。テメェはこれからどうする?」

 

「待つだけさ。『我が魔王』が力と記憶を取り戻し、覇道を歩むのを、ね」

 

「もし彼が『最低最悪の魔王』となった時、僕達と戦う事になるよ・・・・」

 

『ウォズ』と呼ばれた人物は、手に持った本『逢魔降臨暦』を掲げる。

 

「この本によると、君達は『我が魔王』と10日間にも及ぶ激戦を繰り広げ追い詰めたが、最後の最後で『奥方の組織』が足を引っ張り、全滅してしまったと記されている。しかし、歴史は変わる。今の君達と、さらに新たに現れた『伝説の戦士達』が手を結べば、『我が魔王』の脅威になるだろう。・・・・しかし、そうならない事を祈りたいね」

 

そう言って、『ウォズ』はマフラーを翻すと、マフラーが大きなって身体を包み、その場から消えた。

 

「・・・・未来は誰にも分からない、か」

 

その青年は仲間達に振り向いて口を開いた。

 

「さあ皆。行こう、なのは達のいるミッドチルダへ!」

 

10代目ボンゴレファミリーボス、いや、ネオボンゴレファミリー初代ボス・『沢田綱吉』が、そう言うと、“約一人欠けた”自分の守護者達、そして、盟友であるシモンファミリーボス・『古里炎真』とその守護者達が力強く頷き、太陽に照らされた晴天の大空を見上げた。

 

「“八年の約束”、果たしに行くよ・・・・」

 

だが、遠く離れた日本にいる少年ーーーー嵐山輝二と、この青年ーーーー沢田綱吉はまだ知らない。

新たな戦いが待っている事に・・・・。

 




はい。この作品のリリカルなのは達は、私BREAKERZの『かてきょーリリカルREBORN』のなのは達です。


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始まりはいつも突然

ツナ達は加古川飛竜と、なのは達は『JS事件』を終えて3日位しか建っていません。


ーツナsideー

 

沢田綱吉。通称ツナは現在、〈時空管理局〉のある世界『ミッドチルダ』の機動六課(仮)隊舎にて、膝の上に座る養女のヴィヴィオに絵本を読んであげていた。

 

「パパ♪」

 

「ん? どうしたヴィヴィオ?」

 

「ん~ん、何でもな~い♪」

 

ヴィヴィオはツナにまるで、主人に甘える子犬か子猫のようにすり寄っていた。

 

「10代目」

 

「どうした『隼人』?」

 

「奥方との結婚式ですが、やはり『JS事件』の後始末が立て込んでいて、しばらくは先になりそうです」

 

「そうか。籍は入れたんだけどな」

 

「でもよ。ちゃんと籍は入れたんだから、後は式だけだよな?」

 

「ああそうだな『武』」

 

自分の守護者である『獄寺隼人』と『山本武』にそう言うと、自分と同じくヴィヴィオのパパであり、今度一緒に結婚式をする事になった古里炎真が結婚式のパンフレットをもって来た。

 

「ツナくん。式は洋式にする? それとも和式にする? なのはとフェイトに聞いたら、なのはは洋式が、フェイトが和式が良いって言い出してね」

 

「う~ん。悩むなぁ・・・・」

 

と、そんな会話をしていると、自分の眼前に空中ディスプレイが現れた。

 

《やぁ綱吉クン☆ 元気かな?》

 

「『白蘭』」

 

「んぅ!」

 

ディスプレイに映る青年は白い髪を逆立たせ、白いスーツを着た青年、『白蘭』だった。ヴィヴィオは白蘭の顔を見るなり、ツナに抱きつき、怯えているのか肩を震わせていた。

 

《あらら、ヴィヴィオちゃんったらそんなに脅えちゃって♪ ま、安心して良いよ。僕は君には何もしないから☆・・・・“まだね”♪》

 

「うぅ~・・・・」

 

若干涙目になるヴィヴィオを守るようにツナは抱きしめ、エンマが二人を庇うように前に立つと、静かに圧を放つ。

 

「白蘭。ヴィヴィオを恐がらせる為に来たのか? 要件を言ってくれ」

 

「・・・・・・・・」

 

「ツナパパ・・・・! エンマパパ・・・・!」

 

ツナも同じく圧を放っている。白蘭は肩を竦めたまま笑みを浮かべる。

 

《まぁまぁ、ちょっとしたお茶目だよエンマクン♪ 少し君達に伝えておきたい事があってね☆》

 

「伝えておきたい事?」

 

《うん。だから、ちょっとヴィヴィオちゃんには、お外に行ってきて欲しいんだけど?》

 

「・・・・・・・・皆」

 

『コクン』

 

ツナがそう言うと、隼人と武が自分の“相棒の動物達”を召喚した。

 

「ヴィヴィオ。パパ達はちょっと難しいお話をするから、『ナッツ』達と遊んできてくれるかな?」

 

「んゆ・・・・うん!」

 

ヴィヴィオは『ナッツ』達と一緒に外に遊びに行こうとする。

 

「ランボ」

 

「了解。ボンゴレ」

 

近くにいた伊達男風の男、守護者の『ランボ』がヴィヴィオ達と一緒に外に行った。それを確認したツナは白蘭に顔を向ける。

 

「それで、白蘭。話とは?」

 

《うん。〈財団X〉が妙な動きを見せているんだ☆》

 

「っ、〈財団X〉が?」

 

〈財団X〉ーーーー。

表向きは知名度のある科学研究財団だが、裏では強力な兵士を手にするため、様々な組織・個人に援助を行う死の商人とも称される闇の組織。

これまで『地球の記憶を宿すメモリ』。『不死身や特殊能力を備えた兵士』。『欲望のメダル』。『星座のスイッチ』。『ゲームの力が宿るソフト』。『ロボット兵士』等、あらゆる組織の技術を手にし、それを利用しようとしていた。最近では〈クライアス社〉と呼ばれる企業にも出資をしていたとか。

その度に、ツナ達や仲間達は、時に『仮面ライダー』達と協力し、その企みを粉砕していった。

 

《この前、最近台頭してきた悪魔崇拝組織〈デッドマンズ〉って組織が、政府直属組織〈フェニックス〉から『悪魔を生み出すスタンプ』を大量に奪い取り、財団所属の科学者の一人が、〈デッドマンズ〉に接触して、そのスタンプを何個かを買い取って、それを使って何かをやろうとしているようだよ☆》

 

「〈デッドマンズ〉か・・・・」

 

「まさか『〈フェニックス〉襲撃』も〈財団X〉が絡んでいるんじゃねぇだろうな?」

 

《その可能性は大きいね☆ 『探偵コンビ』は自分達の守る街の“裏の連中”との戦いで手が離せないし、『パンツくん』はこの間ちょっと激戦があって療養中だし、『青春先生』は海外の友達の所に行っているし、〈財団X〉が動いているとなると、綱吉クン達も無視できないでしょ?》

 

「・・・・・・・・分かった。俺達が行こう」

 

ツナの言葉に同意するように、守護者達やエンマも頷く。

 

《うんうん☆ じゃヨロシクね♪》

 

と言って、白蘭が通信を切った。

 

「武、ランボを呼び戻してくれ。隼人は他の皆を」

 

「「はい/応!」」

 

ツナの言葉にそう返事して、獄寺と山本は部屋を離れると、ツナはエンマに話しかける。

 

「エンマ。お前は・・・・」

 

「いや、僕も行くよ。白蘭がわざわざ任せるだなんて、引っかかるし。ファミリーの方は『アーデル』に任せるよ」

 

「助かる」

 

そう言って、ツナとエンマは立ち上がると、『嫁さん』達に出掛ける事を伝えようと、部屋を出た。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

嵐山輝二は朝の通学路を歩きながら、電車で二駅ほど離れた高校である『並森高校』へと向かっていた。

 

「・・・・・・・・」

 

しかし、朝の爽やかな日射しに照らされたその目には何処と無く、暗い光が宿っていた。

 

「あっ! ちょっと!」

 

「へへへへへ!」

 

「イヤッホォ!」

 

と、目の前でスクーターに乗ったチンピラ二人が、歩いていた老婦人から手提げバックをひったくり、自分のいる方に走ってきた。

 

「・・・・・・・・」

 

「退け退けーーーー!!」

 

輝二はスッと避け、その隣をスクーターが横切ろうとした瞬間。

 

ーーーーカチャッ。

 

「「えっ? うおわぁああああああああ!?」」

 

何と、輝二はスクーターのキーを抜いた。突然キーが抜かれスクーターが機能を停止し、そのまま前に向かってグワシャァァァァァァァンン! と、盛大に転倒した。

チンピラ達はあまりに突然だったので対処が遅れ、地面に派手に転がり、目を回して気を失っていた。転がる拍子にバックが輝二の元に飛んできて。

 

「・・・・・・・・」

 

輝二はそれを無言でキャッチし、キーを捨てると、老婦人にバックを渡した。

 

「あ、ありがとう」

 

「この辺はああいう馬鹿がいますから、気をつけてください」

 

老婦人はお礼を言って離れ、輝二は無様に地面に半壊したスクーターと、目を回して倒れている馬鹿なチンピラ達に見向きもせずに、通学路を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

教室に入ると、ホームルーム前に騒いでいたクラスメート達がシン・・・・、と静まり、憐憫の目で輝二を見ていたが、それも仕方ない。何故ならーーーーほんの数週間前に、輝二は父親と兄を同時に喪い、今日久しぶりに学校に登校してからだ。

 

「・・・・・・・・」

 

輝二は学友達の視線をさして気にする素振りもなく、窓際の自分の席に座り、外の景色を眺めていた。

クラスメート達は、そんな空気に耐えられなくなり、自分達の会話に戻った。

 

≪なぁなぁ! クラス奴ら、ちょっぴり冷たくない? ちょっと前まで輝二に話しかけたり友達面してた癖に、輝二に御不幸があったからって離れやがってさ!≫

 

「(構わねぇよ。可哀想なヤツ扱いされるのが1番腹が立つからな)」

 

と、ソコでホームルームを告げるチャイムが鳴り、教師が入ってくると生徒達は自分の席に戻る。

 

「・・・・えぇ~。今日からこのクラスに転校生がやって来る」

 

教師は輝二を一瞥した後にそう言うと、クラスメート達がざわめく。

 

「はい静かに。入って来なさい」

 

教師が扉に向かって声を発すると、扉を開けてやって来た転校生に、クラスメート達、特に男子は歓声の声をあげた。

転校生が、美少女だったから。

 

「初めまして。『ミランダ・フォーミュ』と言います。フランスから来ました。皆さんヨロシクお願いします」

 

プラチナブロンドの長髪をストレートに流し、綺麗な赤い瞳に、美術品のような美麗な顔立ちをしたスタイルも制服越しでも抜群である、清楚な雰囲気の美少女だった。

 

「ではフォーミュさんの案内を・・・・嵐山。お前がやってくれ」

 

「・・・・は? 俺が、ですか? こう言うのは女子がやった方がフォーミュさんも気が楽だと思いますが?」

 

「いやお前は一応『便利屋』の息子だろう。任せたぞ」

 

そう言う担任の様子に、輝二は訝しそうに眉根を寄せる。

 

「・・・・分かりました」

 

「ではフォーミュさん。嵐山の隣の席に」

 

「はい」

 

ミランダ・フォーミュは輝二の隣の席に座ると、にこやかな笑みを浮かべる。

 

「よろしくお願いしますね、嵐山さん」

 

「ああ。よろしく」

 

≪うっひょぉ! 可愛子ちゃん登場!≫

 

バイスが煩く騒ぐが、輝二は担任に視線を戻した。

ミランダ・フォーミュは、横目で、輝二をジッと見つめていた。

 

 

 

ー守護者sideー

 

そしてその頃、ツナの守護者である獄寺隼人。山本武。ランボ。そして守護者である『笹川了平』は、横浜の街を歩きながら、〈財団X〉の情報を集めていた。

横浜の町は『伝説の戦士達』関連で事件が起こるので、〈財団X〉はそれに隠れて暗躍をしていたりするからだ。

 

「・・・・動くとなると、経済的な影響もあるこのビルを狙うか?」

 

獄寺は高層ビルを見上げて呟き。その後ろを、高校生位の少女が通り過ぎた。

 

 

 

 

「〈財団X〉の奴ら。何を企んでんだ?」

 

サングラスをかけた山本が横浜港の帆船日本丸を眺めながら呟いていると、その近くで日本丸をバックに写真を撮っている高校の制服を着た小柄な少女がいた。

 

 

 

 

 

 

「う~む。極限に分からんぞぉ」

 

了平は中華街で肉まんを頬張りながら、情報を集めていた。その近くの街角でトレンチコートに目深く帽子を被った大柄の男性がいた。

 

 

 

 

 

 

「ん~。子猫ちゃん達が離してくれないなぁ」

 

そしてランボは、横浜のクラブでリズムの良い曲調を聞きながら、年上の女性達に囲まれていた。

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナとエンマ。そしてツナの家庭教師の10歳の男の子『リボーン』と、守護者の『クローム髑髏』が『並森』にある地下基地にて、大型ディスプレイに表示された獄寺達からの報告を聞いていた。

 

「皆。調査はどうだ?」

 

《すみません10代目。〈デットマンズ〉に関する情報もあまり手に入りませんでした》

 

《こっちもだ。前に財団Xの下請け会社に探りを入れても、何も出なかったぜ》

 

《極限に中華街の情報屋を片っ端から当たってみたが、〈デットマンズ〉に関わった奴らは皆消されてしまって、情報が入っておらん》

 

「そうか・・・・ランボ。そっちは?」

 

《申し訳ないボンゴレ。愛くるしい子猫ちゃん達が俺を離してくれなくて・・・・》

 

《・・・・後でシバく》

 

「やっちまえ獄寺」

 

ランボの言葉に獄寺がボソッと呟き、リボーンが許可を出した。

苦笑いを浮かべるツナ達。エンマがボンゴレメカニック『ジャンニーニ』に話しかける。

 

「ジャンニーニ。最近、〈財団X〉の人間が接触している企業か、場所は割り出せない?」

 

「少々お待ちを」

 

ジャンニーニがパソコンを操作していると、ディスプレイに地図が表示された。

 

「ややっ!?」

 

「どうしたジャンニーニ?」

 

「はい! 最近〈財団X〉の人間が乗った車が、ある地区の郊外にある道路のコンビニで、何度も見かけられたようです!」

 

ソコは、『ノーブル学園』がある地域の郊外の森に続く道路のコンビニの監視映像だった。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「ここが屋上。あまり生徒は来ない場所だ」

 

「へぇ~」

 

輝二は昼休みの昼食の後、ミランダ・フォーミュに学校を案内していた。一通りの案内を終えると、最後に屋上に連れていった。

そしてふと、ミランダ・フォーミュが口を開く。

 

「すみません。嵐山さん・・・・」

 

「何が?」

 

「クラスメートの皆から聞きました。嵐山さんは先日お父さんもお兄さんを亡くしてしまった。と、それなのに私の案内役をやらされて・・・・」

 

「・・・・気にしなくて良い。先生も多分そのことを気にして、気分転換になれば良いと思ったんだろう」

 

「はい・・・・」

 

「・・・・フォーミュさんは、ご家族はいますか?」

 

「一つ下の弟が一人います。両親は、私が幼い頃に・・・・」

 

「そうか。俺は八歳の頃に両親が離婚して、母親と妹にはここ十年近くはあっていない。ほとんど天涯孤独だよ」

 

そう言う輝二の目には、悲しみが色濃く浮かんでいたのを、ミランダ・フォーミュは気づいた。

 

「ミランダ・フォーミュさん」

 

「は、はい」

 

「大切にしなよ。弟さんの事、喪ってからじゃ遅いんだからさ」

 

「ええ。・・・・あの、嵐山さん」

 

「ん?」

 

「『ミラ』、と愛称で呼んでください。私も、輝二って、呼ばせて貰っても良いですか?」

 

「・・・・ああ。よろしくミラ」

 

「こちらこそ、輝二くん」

 

お互いに笑みを浮かべて名前を呼びあった。

 

≪いやん! 輝二ったら! こぉんな可愛い子と仲良くなっちゃって! 隅に置けないわぁ!≫

 

「(うるさい)」

 

バイスに心の中でうるさそうにしていると、ポケットに入れていたスマホが震えた。

 

「ちょっとゴメンね」

 

ミラにそう断ると少し離れ、スマホを取り出すと、画面に【狩崎】と表示されていた。目を鋭くすると、スマホに出る。

 

「もしもし?」

 

《やぁリベンジボーイ。〈デットマンズ〉の情報だよ》

 

「それで?」

 

《何でも君の妹の学園の近くで、悪魔が出現しているようだ》

 

「・・・・何?」

 

狩崎の言葉に、輝二は目を鋭くする。

 

《場所の詳細はこれから送る。放課後にでも頼むよ》

 

「ああ」

 

そう言って通信を切った輝二は目を元に戻して、ミラに振り返る。

 

「それじゃ続きと行こうか。ミラ」

 

「ええ」

 

そして二人は、校舎に戻っていった。

 

 

 

 

ー獄寺sideー

 

陽も沈み始めた夕方。横浜の住宅街で合流した獄寺と山本と了平。

 

「調査は?」

 

「空振り三振だ」

 

「極限にこっちもだ。ランボはどうした?」

 

「・・・・侍らせていた女達の彼氏達に絡まれて逃げていった」

 

 

 

ーランボsideー

 

「お助け~!!」

 

「テメエ待ちやがれ!」

 

「よくも俺らの女に手ぇ出しやがったなっ!」

 

「いや、一緒に飲み物飲んだりご飯奢って貰っただけで!」

 

『死ねやぁぁぁぁぁ!!』

 

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

こっちの話を聞いてくれない男達から、ランボは横浜赤レンガ倉庫の周りを逃げ回っていた。

 

 

 

ー獄寺sideー

 

「仕方ねぇなぁ、ランボの奴。・・・・っ」

 

「極限にな。・・・・っ」

 

苦笑いを浮かべていた山本と了平だが、後ろから感じる気配に視線を鋭くする。

 

「テメエらもつけられていたか」

 

獄寺も後ろから感じる怪しい気配に、視線を鋭くしていた。

 

「ああ。昼間からずっとつけられていたぜ」

 

「どうやら向こうから来てくれたようだ」

 

「それじゃ、ご挨拶してやるか!」

 

獄寺達は、建設中の小さなビルへと走っていった。

ちなみに、集まる事前に三人は追跡者達の事をツナ達に報告していた。

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

その頃、ツナとリボーンは、エンマが運転する車に乗りながら、『ノーブル学園』の郊外の森にあるコンビニに向かっていた。

 

「このスピードだと、到着するのは夜になるね」

 

「・・・・隼人達、大丈夫かな? まだ『あの戦い』から数日くらいだから、本調子じゃないし・・・・」

 

「ま。お前らも本来の3分の1って所だろうが。ちゃんと援軍も呼んでいる。そうそう送れは取らねぇだろ」

 

『加古川飛龍』との激戦からまだ3日。その消耗により本調子ではない獄寺達を心配するツナに、リボーンがそう言った。

 

「取り敢えず。俺らはこっちの調査をするぞ」

 

「「ああ」」

 

二人は頷いて、目的の場所へと向かった。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「それじゃミラ。また明日」

 

「ええ。ありがとう輝二」

 

輝二はミラと別れると、目の前に狩崎が運転するオープンカーがやって来た。

 

「やぁ。リベンジボーイ。行くよ」

 

「・・・・ああ」

 

そう言って車に乗った輝二も、目的の場所へと向かった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そしてその様子を、ミラは離れた位置から静かに見据えていた。

 

 

 

 

ー???sideー

 

日も完全に落ち、夜となった町から離れた郊外の森の道路に建っているコンビニの駐車場で、暴走族のような若者達が、けたたましく音楽を鳴らしながら踊っていた。

そしてそれをコンビニの中で見ていた店長。

若者達の騒音にいつも腹を立てていたが、注意すればナイフや数で脅されて、今まで泣き寝入りをするしかなかった彼に、『女性のような身体付きの孔雀の姿をしたドライバーを付けた異形』が、『鳥の刻印をされたバイスタンプ』を渡した。

 

『これを使いなさい。あの五月蝿い坊や達を黙らせてくるのよ』

 

「は、はい!」

 

[イーグル!]

 

店長は『イーグルバイスタンプ』を起動させて自分に押印させた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

≪お?≫

 

「どうしたバイス?」

 

≪悪魔の気配だぜ!≫

 

「悪魔か」

 

コンビニの近くにまで来た所でバイスが気配を感じ、輝二は視線を鋭くしたその時、コンビニの駐車場から小さな爆発と人間の悲鳴が聞こえた。

 

「・・・・これは、急いだ方がよさそうだね」

 

狩崎はアクセルを踏んで、さらに急いだ。

 

 

 

 

そして、件のコンビニに到着するとソコはーーーー地獄絵図と化していた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ひぃ、ひひぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

『クカァァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

「あっははははは!! ザマァ見ろ! 毎日毎日、俺の店の駐車場でバカ騒ぎしやがって!」

 

『イーグル・デッドマン』を従えた男性が、暴走族のような若者達を襲っていた。

 

「コイツは・・・・」

 

「見たまえ。どうやらあの男性、第2フェーズに行くようだよ」

 

狩崎が指差すと、孔雀のデッドマンが、男に話をしていた。

 

「俺は、更に強くなる!」

 

男がそう言うと、身体から契約書が現出し、それに『イーグルバイスタンプ』で押印させると、イーグル・デッドマンが紙の束になり、男の身体に纏わりつき、別納姿へと変貌した。

鷲の頭部と背中に翼を生やし、両手と両足が鷲のカギ爪へと変わったーーーー『第2フェーズ イーグル・デッドマン』へと。そして、孔雀のデッドマンがギフジュニアを召喚した。

 

『クカァァッ!!!』

 

「どうやら、一筋縄ではいかないようだね。リベンジボーイ!」

 

狩崎が輝二に、『プテラノドンの刻印がされたバイスタンプ』を渡した。

 

「ん。下がっていてくれ狩崎さん」

 

「ああ」

 

狩崎が車から降りて離れるのを確認した輝二は、リバイスドライバーを腰にあて、ベルトを展開させる。

 

「燃えてくるぜぇ!」

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

〈レックス・バイスタンプ〉を取りだし息を吐くと、ドライバーに押し込む。

 

≪今夜はオールナイトっ!≫

 

[Come On!レ・レ・レ・レックス! Come On! レ・レ・レ・レックス!]

 

同時に音声が鳴り響くと輝二の背中に、ラインの映像が現れる。

 

ーーーー今度は鳥かよ! 焼き鳥にしてやろうぜ!

 

ーーーー形からした鷲、『イーグルデッドマン』か。

 

ーーーーなぁなぁ! 鷲って喰えるの!?

 

ーーーー猛禽類は肉食獣だから、不味いって聞くな。

 

ーーーーえぇ!? しみるわ~! テンション下がるわぁ~!

 

ーーーーボヤクな。これもお仕事だ。

 

とスタンプを持つバイスが現れる。

 

「変身!」

 

≪ほいっ!≫

 

輝二はそのままスタンプをベルトに押し込み、スタンプを横に傾ける。

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

音声が響くと、輝二は仮面ライダーリバイに、バイスは仮面ライダーバイスとなった。

 

『あら、〈仮面ライダー〉ね』

 

『誰だお前はッ!?』

 

イーグル・デッドマンの言葉に、リバイは答える。

 

「俺達か? 俺達はお前ら〈デッドマンズ〉を狩る者ーーーー〈仮面ライダーリバイス〉だっ!」

 

「へへへ、シクヨロ!」

 

リバイとバイスはそう答えると、ギフジュニア達へと向かっていった。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナ達は、目前のコンビニから火が上がっているのを確認すると、車を路側帯に止めて、車から下りた。

 

「リボーン! あれは!?」

 

「どうやら事が起こったようだな」

 

「行こうツナくん!」

 

「ああ!」

 

ツナが手編み手袋を嵌め、エンマが指輪に意識を集中させると、二人の額にそれぞれ、橙色と真紅の炎が角のように燃え上がり、両手に炎を灯したゴツいガントレットを装備した。

リボーンがツナの肩に乗ると、二人は両手から橙色と真紅の炎を噴射させ、コンビニへと向かった。




次回、悪魔と炎が交差し、物語が始まります。


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炎との出会い

ーリバイスsideー

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

「アチョーーーーーーっ!!!」

 

リバイスは迫り来るギフジュニア達を薙ぎ倒しながら、イーグル・デッドマンに向かった。

 

『クケェェェェェェ!!』

 

イーグル・デッドマンは翼を広げて、夜空に飛び上がった。

 

「ちっ!」

 

「ちょっと! ちょっとちょっと! 空飛ぶなんてずるっこい!」

 

「リベンジボーイ! 『プテラバイスタンプ』を使いたまええ!」

 

「っ! よし!」

 

狩崎に言われ、リバイは『プテラバイスタンプ』を取りだし、『レックスバイスタンプ』を外した。

 

「ありゃりゃ!」

 

「はぁ、はっ!」

 

バイスがリバイの中に戻ると、『プテラバイスタンプ』をドライバーに押印した。

 

[Come on! プ・プ・プテラ! Come on! プ・プ・プテラ!]

 

音声を響かせながら、スタンプを横に倒した。

 

[バディアップ!]

 

『そぉらっ!』

 

思念体のバイスが、バイスタンプを担いで、リバイに叩きつける。

 

[上昇気流! 一流! 翼竜! プテラ! Flying by! Complete!]

 

「よォ~し、行ってみよう!・・・・って、なんじゃこりゃあっ!?」

 

変身完了したバイスが大声をあげる。

リバイは複眼が黄色くつり目、その間はVの字に開き、開いた部分からはプテラノドンの嘴を模したパーツが伸びており、肩の部分に胸部装甲は開いており、プテラノドンが翼を開いたようである。

そしてバイスはーーーー乗り物に、エアバイクになっていた。

ハンドル部分が翼を広げたプテラノドンを模しており、バイスの顔はそのハンドルの下に付けられ、胴体下に大きなプロペラが二つ、そのプロペラの左右には小さなプロペラを付けられた完全なエアバイクだった。

 

「ほぉ、これは使えるな。行くぞバイス」

 

リバイはそう言うと、エアバイクになったバイスに乗り込み、『リバイスプテラ』となる。

 

「ええ、ご乗車誠にありがとうございます。当機はこれから悪魔の追跡を開始します。・・・・って何やらすんじゃい!?」

 

「良いから、はよ行け!」

 

なんて漫才やりながら周りから迫るギフジュニアをを両サイドのプロペラから、光の刃が飛び出し、その場で大きくコマ回りをすると

ギフジュニア達を撃破した。

 

「よしっ! 追うぞバイス!」

 

「よっしゃぁっ! 飛びます飛びま~す!!」

 

プロペラをフル回転させ、イーグル・デッドマンを追撃した。

 

「・・・・さて、と」

 

車でそれを見ていた猟崎は、タブレットを操作すると、後部座席からドローンが三機ほど飛び出し、リバイスプテラを追う。

と、その時、夜空を見上げた猟崎は、不思議な光が流星のように視界を横切り、首を傾げた。

 

「オレンジの炎と、赤い炎?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!」

 

「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃ!!」

 

オーインバスター50とガンデフォン50を両手に持ったリバイと、前側の回転翼下に搭載されているフォトン光弾を放つ火器、『プテラキャノン』を放って、イーグル・デッドマンを攻撃する。

 

「ーーーーん?(湖畔の島?)」

 

イーグル・デッドマンを追撃している際、リバイは視界の端、森の向こうに大きな湖と、その中心にポツンとある大きめの島を見て、何故かその島に違和感を感じた。

 

「うわっ! 輝ニ! 攻撃来ましたけどっ!?」

 

「っ!」

 

バイスの声で現実に気持ちを切り替えると、イーグル・デッドマンが旋回してその鋭い爪をした両手でリバイスリの顔を裂こうとした。

 

「ぬぅぉっ!ーーーーやろう!」

 

身体を退け反らして回避したリバイ。

すぐに上体を戻してリバイスプテラを操作してイーグル・デッドマンを追う。

 

『クルルルルルル・・・・! クカァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

イーグル・デッドマンが翼を大きく羽ばたかせると、羽が飛び、ダーツのようにリバイスプテラに襲いくるが、リバイは巧みな操作で回避したその時、

 

ーーーードドドドドドドドドッ!

 

「なっ!?」

 

「うっそぉっ!?」

 

なんと、回避した羽が爆発し、夜空に小さな花火を作った。

 

「(距離を空けるのは面倒だな・・・・)詰めるぞバイス!」

 

「イヤァァァァァァァァァァ!!」

 

リバイは操作してイーグル・デッドマンに向かい、バイスは嫌なのか悲鳴をあげていた。

 

『クカァァァァァ!!』

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「やったるでぇっ!!」

 

オーインバスター50を斧に持ったリバイが、両手の爪で攻撃してくるイーグル・デッドマンと、火花を散らせた。

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

そして、コンビニから飛び立った鷲の怪人と、それを追うエアバイクに乗った仮面の戦士の戦いを、超<ハイパー>モードのツナと戦闘形態のエンマ、ツナの肩に乗ったリボーンが遠くから見据える。

 

「あの怪人、あれがウワサの〈デッドマンズ〉の怪人って事だね?」

 

「そしてその怪人と戦う新たな〈仮面ライダー〉、か・・・・」

 

エンマとリボーンが、イーグル・デッドマンと新しい仮面ライダーを見て、そう呟く。

二人の会話を聞きながら、ツナは新しい仮面ライダーの姿を見て、とある仮面ライダーの姿が重なった。

 

「(・・・・・・・・巧?)」

 

夢を守る為に、戦う罪を背負いながら戦う仮面ライダーの姿を連想したのだ。

 

 

 

ーリバイスsideー

 

『クカァァァァァ!!』

 

イーグル・デッドマンが雄叫びをあげると、両翼の翼が二回り巨大にして羽ばたかせ、二つの竜巻を巻き起こした。

 

「くっ!!」

 

「のわぁぁぁぁぁぁ! 突然の竜巻注意報発令ーーーー!!」

 

竜巻の風圧によって、リバイスプテラが後方に吹き飛ばされるが、リバイが立て直す。

 

「どうすんのよ輝ニ?」

 

「・・・・このまま突っ込む!」

 

「えっ? うっそぉ!? 俺っち達洗濯機に回される洗濯物か、ミキサーに切り刻ませる果物になっちまうよ!」

 

「考えがある」

 

「俺っちもうお家に帰っておねんねしたいんだけど!?」

 

「四の五の言ってないで、行くぞ!」

 

「ああチクショー! こうなりゃヤケクソじゃいっ!!」

 

リバイスプテラがプロペラから光の刃が飛び出し、フルスロットルでイーグル・デッドマンに向かう。

 

「うおりゃあっ!!」

 

リバイスが匠に操作すると、リバイスプテラはジャイロ回転をし、水色の三円錐となって、二つの竜巻とぶつかった。

 

「おおおおおおおお! これで行けんのっ!?」

 

「死ぬ気で、決めるぜ!!」

 

リバイはドライバーのスタンプを横に倒した。

 

[必殺! 撃ってな! 見てな! プテラ!]

 

音声が鳴り響くと、更に回転の勢いが増しそしてーーーー二つの竜巻を貫いた。

 

『クカァっ!?』

 

自分の竜巻を越えてきた事に驚いたイーグル・デッドマンは、羽爆弾でリバイスプテラを攻撃するが、三円錐のエネルギーが防御膜にもなっており、羽爆弾からリバイスプテラを守った。

 

「「はぁあああああああっ!!」」

 

『クカァァァァァッ!!』

 

イーグル・デッドマンは待ったと言わんばかりに腕を前に差し出すが、リバイスプテラに通じず、

 

ドォン!

 

イーグル・デッドマンの身体を、貫通した。

 

ーーーードガァアアアアアアアアアアアアンン!!

 

「Complete、だな」

 

「アンタを倒すのが罪なら、俺っちが背負ってやる!・・・・なんちゃって☆」

 

爆発の中から、気を失ったコンビニの店長が飛び出して来て、重力に従って地面に落下していく。

が、地面に激突する寸前で、リバイスプテラが助けだし、湖の畔に着陸する。

下りたリバイスは店長の手に力弱く握られた『イーグルバイスタンプ』を回収した。

 

「やりぃっ! さっさと猟崎<カリちゃん>の所に戻ろうぜ!」

 

「・・・・いや、その前にーーーー」

 

リバイがガンデフォン50を構えて引き金を引くと、光弾が放たれ、湖の畔の森の木を撃った。

 

「空の上で戦ってた時から、俺達を監視していたよな? 誰だお前ら?」

 

リバイがそう言うと、木の影から、二十代中盤の黒スーツを着た、両手に手甲を装備した男性二人と、十歳くらいの黒スーツに黒い帽子を被った男の子が現れた。

 

「「「・・・・・・・・」」」

 

「っ、その炎・・・・!」

 

リバイは二十代の男性達の額に灯っている炎を見て、ピクン、と肩を揺らした。

 

「その炎ーーーー『死ぬ気の炎』、だな?」

 

「「っ」」

 

「・・・・」

 

リバイの言葉に男性二人は眉根を寄せ、黒スーツの子供は帽子のつばで目元を隠した。

 

「えぇ、『死ぬ気の炎』って事はコイツら・・・・」

 

「『裏社会の人間』、って事だな? 何故こんな所にいる? お前達も、〈デッドマンズ〉の関係者か?」

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・只今、沈黙中」

 

と、両者でにらみ合いが続いて数秒後、夜の森と湖の水面から、黒い影が現れた。

 

『・・・・・・・・っ!!』

 

「えっ? なに? 何なのよっ!?」

 

ーーーーシュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル・・・・!

 

バイス以外が何かに反応したように身体を動かすと、森から、黒い影がバイスを捕まえ、森へと引きずり込んだ。

 

「いゃぁああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「なっ! バイス!!」

 

ーーーーザッパァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンン・・・・!

 

「っ! さ、鮫!?」

 

『シャァアアアアアアアアアアアッ!!』

 

湖からは、腰に鮫の刻印がされたドライバーを着けた、マゼンタ色の鮫の怪人が現れ、男性達とリバイに襲いかかる。

 

「ふっ!」

 

「つぁっ!」

 

ドゴン!

 

『グォアッ!!』

 

男性二人の手甲に炎が燃え上がると、鮫の怪人を殴り飛ばし、怪人は地面に転がった。

 

「リボーン。コイツは?」

 

「どうやら〈デッドマンズ〉の怪人のようだな。鮫、いや、もっと大きい・・・・メガロドンって処か。まだお前らの力は十全じゃねぇんだ。油断すんなよツナ。エンマ」

 

「「ああ!」」

 

『・・・・シャァアアアアッ!!』

 

起き上がった鮫の怪人、『メガロドン・デッドマン』は雄叫びをあげながら、ツナとエンマと呼ばれた青年達に襲いかかった。

が、二人は直ぐ様左右に別れ攻撃を回避すると、また左右からメガロドン・デッドマンを攻め立てる。

 

「(あれは間違いなくデッドマンだ。だが、彼らは仲間じゃないようだな?)」

 

「おい、新米仮面ライダー」

 

「?」

 

突然、リボーンと呼ばれた子供が自分に話しかけてきた。

何故だろうか、リバイは目の前の子供が、年相応の幼い子供には感じなかった。まるでそうーーーー身体は子供で、頭脳は大人。そんな印象を受けるような子供だった。

 

「ここは俺達がやっておく。オメェは相方を探しに行きやがれ」

 

「何?」

 

「俺達は『裏の人間』だが、〈デッドマンズ〉とは何の関係もない。別の目的でここに来ているんだぞ」

 

「“別の目的”・・・・?」

 

「あぁ。少なくても、お前の敵になるつもりはねえぞ」

 

「・・・・・・・・」

 

ーーーーお助けーーーー!!

 

リバイが訝しそうにリボーンを見据えるが、森からバイスの悲鳴が聞こえてきて、やれやれと肩を落としながら、森へと向かおうとした。

と、その時、リボーンがその背中に向けて声を発する。

 

「さっきの、【死ぬ気で、決めるぜ!!】っての。中々良い決め台詞だな?」

 

「あ?」

 

「だがまだまだ、お前を死ぬ気になりきれてねぇぞ」

 

「・・・・ふん」

 

リバイはリボーンの言葉を無視するように、森の中を駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ! 輝二! 助けてちょうだい!!」

 

大きな蛇、いや、コブラに絡まれて動けなくなったバイスを見つけるリバイだが、バイスに絡まっていたコブラが舌をチロチロと出しながら、威嚇するような声を発する。

 

「まったく、バイス。上手く逃げろよ?」

 

「え?」

 

「ふっ!」

 

リバイはガンデフォン50とオーインバスター50の光弾を放って、巨大コブラの顔に当てた。

 

『シュルルルルルルル!! シャァアアアアアアアアアアアッ!!』

 

巨大コブラが牙を立てて首を伸ばしてリバイに襲いかかったその刹那。

 

「さて、10秒だな・・・・」

 

巨大コブラの牙が届くその瞬間、リバイの身体が一瞬で消えて、いや、超高速で動きながら、巨大コブラの頭を思いっきり踏みつけた。その動きは、某管理局の金髪魔導師が使う、真モードのスピードに匹敵していた。

 

「ギシャァァァァァ!?」

 

巨大コブラが顔をあげると、リバイの姿はなく、横から、下から、リバイが超高速で移動しながら、巨大コブラに攻撃しているのだ。

 

「うおりゃっ!!」

 

『シャァアアアアアアアアアアアッ!?』

 

最後にしたから思いっきり蹴りあげると、巨大コブラの身体がフラフラとなる。

 

「よしっ!」

 

リバイは『プテラバイスタンプ』を『レックスバイスタンプ』に切り替えた。

 

[レックス! バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

「バイス!」

 

「よっしゃ! 脱出成功!」

 

大型のエアバイクから人間の大きさに戻り、絡まっていたコブラの身体から脱出したバイス。

 

『シャァアアア!!』

 

巨大コブラが一瞬発光すると、その姿が変わった。

腰には、リバイのようにドライバーを着けて、そのドライバーの中心にコブラの刻印がされ、藍色の体色のコブラを頭部に、身体にはコブラの鱗のプロテクターを着けた、口元と身体付きから、恐らく女性と思われる怪人だった。

 

「女?」

 

『・・・・・・・・』

 

コブラの怪人、『コブラ・デッドマン』は一瞬だけリバイに視線を向けると、そのまま湖の方へと駆け出した。

 

「っ! 待て!」

 

「待ちやがれ! こんな目に会わせやがって! お尻ペンペンしてやっかんなぁ!!」

 

リバイスも、コブラ・デッドマンの後を追った。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

「はぁっ!」

 

「たぁっ!」

 

『グシャァァァァァァッ!!』

 

ツナとエンマも、メガロドン・デッドマンと戦っていた。戦っていて分かる。メガロドン・デッドマンは戦闘はあまり得意ではないようだと。このまま一気に攻め立てようとするが。

 

「っ! ツナ! エンマ!」

 

「「っ!!」」

 

リボーンの声で二人がその場から飛び退くと、藍色のコブラの女性型怪人、コブラ・デッドマンズがメガロドン・デッドマンの前に現れた。

 

『・・・・・・・・(コクン)』

 

『・・・・・・・・(コクン)』

 

メガロドン・デッドマンとコブラ・デッドマンはお互いに目を合わせて頷くと、湖に飛び込んで、この場から離脱した。

 

「逃げたのか?」

 

「そのようだね」

 

「・・・・今獄寺達から連中が入った。一度基地に戻るぞ」

 

リボーンの言葉に頷いたツナとエンマ。リボーンがエンマの肩に乗ると同時に、リバイスが戻ってきた。

 

「・・・・・・・・逃げられたか」

 

「うわっ! ちょっと! あのお兄ちゃん達、空飛べるみたいよん!?」

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「君の、名前は?」

 

「・・・・仮面ライダーリバイ。こっちはバイス。俺達二人で、仮面ライダーリバイスだ。アンタは?」

 

「・・・・『沢田綱吉』。また会おう。新たな仮面ライダー」

 

そう言って、ツナとエンマとリボーンは、夜空を飛んでいった。

 

「・・・・『死ぬ気の炎』。『沢田綱吉』。・・・・まさか、〈ネオボンゴレファミリー〉の?」

 

リバイは飛び去った三人の背中を見つめていた。

 



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守護者と悪魔

ー獄寺sideー

 

ツナとエンマが仮面ライダーリバイスを発見し、その様子を窺っているのと同時刻。

獄寺と山本と了平は、横浜にある建設途中のビルの中に入ると、自分達を尾行していた人間達に向かって声を発する。

 

「極限に追いかけっこは終わりにしようではないか」

 

「俺達に何の用だ?」

 

「さしずめ、〈財団X〉の特殊戦闘員って処か? わざわざご苦労な事だな?」

 

獄寺がそう言うと、建物内部の上の階から、三人の男女が現れた。

一人は金色の長髪を後ろに結わえた、美しい顔立ちに整ったプロポーションをした高校生位の上品そうな少女。

一人は同じく高校生位だが、小柄で赤い髪をツインテールに結わえた、人懐っこそうな笑みを浮かべる可愛らしい小動物のような少女。

そして最後に現れた大柄の男は、色黒の肌と黒い短髪をした外国人で、服の上からでも鍛えられた肉体をしているのが分かり、小柄な少女を肩に担いでいた。

三人とも、〈財団X〉のメンバーの証である白いスーツに身を包んでいる。

そしてその瞳の奥には、ガラス玉のような冷たい光が宿っており、獄寺達は何人もそう言う目をした人間達を見てきた。

隙を見せればこちらの命を奪う者の、人間の命を簡単に奪ってきた者の、言うならばーーーー『殺人鬼の目』をしていた。

 

「流石はネオ・ボンゴレファミリー守護者、と言った処ね」

 

おそらくリーダー格であろうの金髪の少女が、うっすらと笑みを浮かべながらそう言った。

 

「私は『メノア・ヴァージル』。こっちの彼は『ケイ』」

 

「・・・・・・・・」

 

「私は『ノノ』です! はじめまして♪」

 

ケイと呼ばれた男性は沈黙していたが、ノノと言う少女は人懐っこい可愛い笑みを浮かべていた。

 

「幾度も私達、〈財団X〉のビジネスの邪魔してきたネオ・ボンゴレファミリーにお会いできて光栄だわ」

 

「・・・・気取ってやがるな」

 

「お前達だけなのか? 〈財団X〉は今度は何を企んでんだ?」

 

「お存じの通り。〈財団X〉は多くの闇の組織の技術を兵器として使えるようにし、ビジネスの商品として扱う事で利益を作ってきたわ」

 

「ふん。極限にビジネスとは、死の商人が御大層な事を!」

 

メノア・ヴァージルの言葉に、了平が吐き捨てるように言うが、構わず言葉を続ける。

 

「その中でも、〈仮面ライダー〉の技術は特に花形と言えるわ。『ガイアメモリ』。『オーメダル』。『アストロスイッチ』。『指輪の魔法』。『ロックシード』等、ね。それらの他に、あなた方『裏の人間達』が使う、『死ぬ気の炎』を使った『匣兵器』も、〈財団X〉が注目しているんです」

 

「こっちは迷惑なんだけどなぁ・・・・」

 

「おかげで何度もちょっかいかけられたんだからな」

 

山本と獄寺がウンザリしたような口調でそう言った。

 

「そして、私達の使う、この力もーーーー」

 

メノア・ヴァージル達は自分の腰に『ドライバー』を装着した。

 

「「「っっ!」」」

 

それを見た瞬間、獄寺達は身構えた。

何故ならその『ドライバー』は、『風都』で『ガイアメモリ』を流通させていた秘密結社ーーーー『ミュージアム』の幹部が着けるドライバーに似ていたからだ。

 

「どれ程の力なのか・・・・試させてもらうわ!」

 

三人は『スタンプ』のようなアイテムを取り出すと、スタンプ上部を押した。

 

[ジャッカル!]

 

[カマキリ!]

 

[クロコダイル!]

 

メノアがジャッカルの刻印が彫られたスタンプを、ノノがカマキリの刻印が彫られたスタンプを、ケイがワニの刻印が彫られたスタンプを、ドライバーの中心に押印し、スタンプがドライバーの中に入っていき、ドライバー中心にそれぞれの刻印が浮かんだ。

その瞬間、黒い契約書が三人の身体から溢れ、それが身体を包み込み『形』を成した時、三人の姿が異形の怪人へとなっていた。

メノアは、長い耳が上に向かって伸びており、腰にドライバーの他に前垂れがある、全体的にシャープで女性らしい身体に桃色の体色に黒いエジプト風の装飾が施されたジャッカルのような怪人〈ジャッカル・デッドマン〉へと。

ノノは紺色の体色に、オレンジのカマキリの趣向がある軽装の鎧を纏い、手にカマキリの鎌のような双刃刀を持った〈カマキリ・デッドマン〉に。

ケイは黒い体色に赤いワニ革の宝石のような鎧を着こみ、手にワニ尻尾に刺を付けた大剣を持った〈クロコダイル・デッドマン〉へと変貌した。

 

「今のはまさか!」

 

「〈デッドマンズ〉のアイテムか!?」

 

「ちっ、相変わらず節操がねえなぁ〈財団X〉!」

 

毒づく獄寺にジャッカル・デッドマンは笑いながら声を発する。

 

『ふふふふ、まだまだ、これだけじゃないわ!』

 

三体の怪人は、さらにドライバーの横に『USBメモリ』を差し込んだ。

 

[デスサイズ!]

 

[フリージング!]

 

[ヘヴィーアームズ!]

 

「なにっ!?」

 

「あれは!」

 

「今度は『ガイアメモリ』だと!?」

 

『地球の記憶が内包されたメモリ』、『ガイアメモリ』を使い始め、獄寺達は戦慄する。

が、それに構わず、ジャッカル・デッドマンは両手に死神が持つような大鎌を持ち、カマキリ・デッドマンは双刃刀に冷気を纏わせ、クロコダイル・デッドマンは両手にガトリング砲とミサイルランチャーを着け、両肩にはレールキャノンを装備していた。

 

『・・・・・・・・!!』

 

「「「っ!!」」」

 

クロコダイル・デッドマンが両肩のレールキャノンを放つ。

獄寺と山本と了平が回避するが、レールキャノンの電気が、建物内部の高圧ガス容器に漏電しそしてーーーー。

 

ドガァァァァァァァァァンン!!

 

容器が爆発を起こして、獄寺達を炎が呑み込む。

が。

 

「ーーーー〈SISTEMA C.A.I〉!」

 

「危ねぇ危ねぇ」

 

獄寺が〈SISTEMA C.A.I〉のシールドを、山本が〈雨の死ぬ気の炎〉をバリアのように張って、爆炎を防ぎ、それぞれが武器と装備を展開した。

 

「極限に行くぞ!!」

 

了平が『F<フィアンマ>シューズ』から炎を噴射させ、ジャッカル・デッドマン達に向かうと、獄寺も山本も左右に別れる。

 

「極限ストレート!!」

 

ジャッカル・デッドマンに向けて拳を突き出した。

 

『ふん!』

 

が、ジャッカル・デッドマンは『フェイト』に匹敵するスピードで回避すると、了平に蹴りを叩きつけた。

 

「ぐぉおっ!」

 

地面に叩きつけられそうになるが、Fシューズの炎を噴射させ、体制を整えた。

その近くにいる獄寺の前に、クロコダイル・デッドマンが立ちはだかる。

 

「街中でもお構い無し、てか?・・・・それなら、こっちも! 『嵐+晴れ フレイムランチャー』!!」

獄寺は、晴れの『活性』が混ざり、加速がついたマシンガンの弾がクロコダイル・デッドマンの身体に当たるが、まるで効いていなかった。

 

「ちっ、鰐の硬い皮膚か・・・・!」

 

毒づく獄寺の近くでは、山本が刀に変わった竹刀、『時雨金時』を持って、刃を交えているのは、カマキリ・デッドマンだ。

 

『はぁぁぁぁっ!!』

 

「よっと!」

 

カマキリ・デッドマンから距離を取る山本。

 

『ーーーーシャァッ!!』

 

カマキリ・デッドマンは双刃刀に冷気を纏わせ振るうと、氷の斬撃が山本に襲い来る。

 

「おっと!」

 

が、『雨の死ぬ気の炎』を纏った『時雨金時』で斬撃を斬り捨てる。斬られた斬撃は地面に落ちると、巨大な霜柱を作り上げた。

 

「うわっ! 凄ぇな・・・・!」

 

『へぇ~。それなら、これはどうですっ!?』

 

カマキリ・デッドマンは双刃刀を振り回すと、氷の斬撃を連続して放つ。

 

「うおっ!?」

 

山本は次々と放たれる斬撃を斬り捨てていくが、斬撃が地面に落ちると、山本を取り囲むように霜柱を形成していく。

 

「やっべ!」

 

山本は霜柱に囲まれる前に脱出するが、その先にカマキリ・デッドマンが回り込み、双刃刀を振り下ろす。

 

『はぁっ!!』

 

「くっ!ーーーーうぁぁぁぁっ!」

 

山本は時雨金時で防ぐが、腕力に負けて、吹き飛ばされ、建物の柱に叩きつけらそうになる。

 

「っ! 大丈夫か山本!?」

 

「すまねぇっす!」

 

が、寸前で了平が受け止めた。

それを見て、カマキリ・デッドマンが鼻で笑う。

 

『情けないないですねぇ。この程度の力、受け止められると思ったなのになぁ・・・・』

 

カマキリ・デッドマンは上の階にいるジャッカル・デッドマンに向けて声を発する。

 

『こんなのじゃ実験相手にもなりませんよぉ! さっさと始末しちゃいましょう!』

 

『そう言わないの。彼らも『アナザージオウオーマ』とその配下の軍団と戦い、本来の実力の半分以下で立ち向かっているのだから』

 

「(っ! コイツら、『加古川飛竜』の事も知っているのか?)」

 

クロコダイル・デッドマンと撃ち合いをしている獄寺が、ジャッカル・デッドマンの発言に眉根を寄せた。

 

『・・・・!』

 

「しまっ・・・・」

 

その動作が一瞬の隙となり、クロコダイル・デッドマンが獄寺に向けて、ミサイルを放った。

 

「ぐぅっ! うおっ!」

 

が、獄寺は寸前で、〈SISTEMA C.A.I〉で防御したが、爆風に吹き飛ばされた。

 

「くぅぅぅぅぅ!」

 

ホバリングで急停止する獄寺の元に、山本と了平が合流した。

 

「この者達、やるではないか・・・・!」

 

『・・・・・・・・』

 

クロコダイル・デッドマンが両肩のレールガンを放とうとすると、ジャッカル・デッドマンがそれを制止し、カマキリ・デッドマンが集まった。

 

『少々期待していたんだけど。・・・・やはり本調子ではないようね。次は〈ネオ・ボンゴレファミリー〉お得意の、『ファミリー同士の連携』を見せて貰いたいわね。それまで命を預けておいてあげる』

 

そう言うと、三体のデッドマンはその姿を消した。

 

「ぬぅ、極限に何だったのだ・・・・!」

 

「ご挨拶、ってヤツじゃないっスか? 本気で来られたら、例え本調子でも危なかったな」

 

「ああ。新たな怪人。アイツらまるでーーーー『悪魔』のようだったぜ・・・・!」

 

建物の異変に気づかれ、通報されたのか、パトカーや消防車や救急車のサイレンがけたたましく鳴り響くのを聞きながら、破壊された壁に作られた悪魔の形を見て、獄寺が呟いた。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

基地に戻ったツナとエンマとリボーンは、カメラ付きヘッドフォンで撮影した、新しく確認された〈仮面ライダーリバイス〉をモニターで見ていた。

 

「・・・・新たな〈仮面ライダー〉、か・・・・」

 

「ボス。その〈仮面ライダー〉は、どんな人だったの?」

 

同じく見ていた『霧の守護者 クローム髑髏』が問うと、ツナは後頭部を掻いた。

 

「まだ、何とも言えないが・・・・敵だとは思えないな」

 

リバイスを見据えて、ツナはそう呟くとジャンニーニが、ボロボロの服装になった獄寺と山本と了平、そして、同じくボロボロの状態のランボが戻ってきた。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

そして同じ頃。輝二は〈フェニックス〉の狩崎の研究部屋でドローンが撮影していた、メガロドン・デッドマンと交戦している、『死ぬ気の炎』を纏った二人の青年の映像を見ていた。

 

「リベンジボーイ。これは間違いなく、『死ぬ気の炎』だね?」

 

「ああ。オレンジの炎のヤツは、『沢田綱吉』と名乗っていた。もう一人は恐らく、十年ほど前から台頭してきた〈シモンファミリー〉のボス、『古里炎真』だろう」

 

「と言う事は、〈ネオボンゴレファミリー〉と〈シモンファミリー〉が、この事件に関わっていると言う事かな」

 

狩崎の問いかけに、輝二は答えると、狩崎はパソコンを操作し、コンビニの監視カメラの映像から、コンビニ店員に『イーグルバイスタンプ』を渡している、『孔雀のデッドマン』を見せた。

 

「コイツは?」

 

「我々が急行するほんの十数分前の映像だ。恐らく、〈デッドマンズ〉の一員だろう。イーグル・デッドマンとの戦いを〈ネオボンゴレファミリー〉と〈シモンファミリー〉のボス二人が見ていた、と言う事は」

 

「まさか、〈ネオボンゴレファミリー〉と〈シモンファミリー〉が、〈デッドマンズ〉と手を組んだのか?」

 

狩崎と同じ部屋にいた門川ヒトミが、険しい目で『沢田綱吉』と『古里炎真』を睨んだ。

 

「いや、それなら後から現れた『鮫のデッドマン』と交戦する理由がないんじゃないのでは?」

 

「ふん、嵐山。元々奴等は“マフィア”だ。そんな反社会的な組織が前身なら、〈デッドマンズ〉と手を組んだと言う可能性も十分ある。手を組んでいなくても、その技術を自分達の物にしようと目論んでいる可能性もな」

 

「ま、現段階で得た情報では、憶測の域を出ていない。〈ネオボンゴレファミリー〉と〈シモンファミリー〉が何の目的であの場にいたのか、少し調べてみようじゃあないか」

 

「それじゃ、俺は明日も学校ですから、帰らせてもらいますよ」

 

「うん。お疲れ様だね」

 

輝二はそう言って、研究部屋を出ようとすると、テーブルに置かれた“二つのカプセル状の機械”が目に入った。

 

「狩崎さん。この装置は?」

 

「ああ、“新しいライダーシステム”だよ。9割は完成しているから、後は『適合者』を見つければ、新たな〈仮面ライダー〉ができるよ」

 

「・・・・『適合者』はやはり〈フェニックス〉の隊員から選出するんですか?」

 

「ソコは少し考えものだねぇ。君のように、“お兄さん以上の適合率を持った一般人”もいるしねぇ」

 

「ふぅん」

 

輝二はその装置の中に入っている『緑のドライバー』と『赤いドライバー』を一瞥すると、今度こそ部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日。教室に入った輝二の目に、ミランダ・フォーミュの姿が入った。

 

「おはよう、ミラ」

 

「おはよう、輝二」

 

愛称で呼び会うようになった。

授業の時間になり、教科書とは別冊の教本を持っていなかったミラに、輝二が自分のを見せた。

 

「いいの?」

 

「ないと、困るだろ?」

 

「・・・・ありがとう」

 

ミラは笑みを浮かべ、二人は授業を受けた。

 

 

 

ー???sideー

 

そこは『ノーブル学園』と呼ばれる学校。その図書館で、一人の中学生の女子生徒が本を借りようと訪れていた。

早く目当ての本を見つけて、昼食を一緒に食べようと約束した友達に合流しようと考えていた。

 

『・・・・・・・・(ニィ)』

 

と、人目がない本棚で目当ての本を見つけて手を伸ばした少女の背後に、孔雀の怪人が、笑みを浮かべていた。

 

「ぇ・・・・?」

 

その少女が振り向いた瞬間、少女の意識が途切れ、その姿が図書館から消え、少女が掛けていた眼鏡が床に落ちており、

 

ーーーーパタン。

 

少女が手に取ろうとしていた本が棚から落ちる音だけが、静かな図書館に響いた。

 

 

 

ー輝二sideー

 

そして昼休みを迎えた輝二とミラはーーーー。

 

「輝二。一緒に、お昼ご飯はどうかな?」

 

「ああ。良いぞ」

 

二人は屋上で弁当を広げていた。ミラはサンドイッチ。輝二はコロッケパンだった。

 

「輝二。コンビニのパンなの?」

 

「・・・・いや、これは前から興味があった『PANPAKAパン』って店で買ったんだ。ちょっと料理は苦手でな」

 

≪ちょっとですかねぇ、あれは?≫

 

バイスが呆れたように言う。

 

「良かったら、私のをどうぞ」

 

「おお。ありがとう」

 

ミラがタマゴサンドを受け取り、頬張る。

 

「・・・・うん。旨いな」

 

「ホント? 良かった」

 

笑みを浮かべるミラに、輝二も笑みを浮かべた。

 

「・・・・ねえ、輝二のお兄さんって、どんな人だったの?」

 

「・・・・・・・・」

 

「あ、ゴメンね。ちょっと、気になっちゃって・・・・」

 

「気にするなよ。・・・・そうだなぁ、俺より全然優秀で、お節介な性格で面倒見が良くて、若いながら優秀な人として、職場の人間関係も良好だったようだ。俺これでも昔、6年くらい家出しててな。兄貴はそんな俺をずっと心配しててくれていた。だが、突然いなくなっちまう物なんだよな、大切な物ってさ」

 

輝二の目に、悲しみが浮かぶ。

 

「兄貴にも、親父にも、まだ何にもしてやれてなかったんだ。二人とも、俺が思っているよりも、辛く苦しい事を背負っていたって言うのにさ。俺は、何もしてやれなかった」

 

「そう」

 

「なぁ、ミラの家族はどんなんだ?」

 

「え、私・・・・?」

 

ミラはその時、少し辛そうに顔を伏せる。

 

「私、一つ下の弟がいるの。思いやりがあって、優しくて・・・・私の両親は早く亡くなったから、私にとって、たった一人の家族。でも、重い病気を患って、それからはずっと眠ってしまったの」

 

「・・・・・・・・」

 

「輝二?」

 

ミラが輝二を見ると、輝二の目に、うっすらと涙が浮かんでいた。

 

「いや、すまん。俺達、似た者同士、だな?」

 

「ーーーーうん。そうだね。輝二には、他に家族はいないの?」

 

ミラは輝二にピンクのハンカチを差し出してそう聞くと、輝二は少し沈黙するが答えた。

 

「昔、離婚した母さんと三~四歳くらい離れた妹がいるんだ。今は中学一年くらいかな?」

 

「そう、なんだ。会おうと思わないの?」

 

「・・・・もう、十年近くも会ってないし、母さんや妹にも自分の生活があるからさ。今さら会おうとは思わないよ」

 

無論、それだけが理由ではないが。

 

「ミラ。喉乾いたな。ちょっと飲み物買ってくる。何が良い? ハンカチのお礼に買ってくるぜ」

 

「ぁーーーーそれじゃ、紅茶を・・・・」

 

「ああ」

 

輝二はそう言うと、屋上から出ていった。

 

 

ーミラsideー

 

「・・・・輝二・・・・っ」

 

ミラはその背中を見つめていると、不意に背後から気配がし、顔を伏せ、目元を前髪で隠す。

すると、背後から女性のような声が響いた。

 

「何の用なの?」

 

『あの男を呼び出す準備ができた』

 

「時が来れば、私が連れていく事になっていた筈よ」

 

『そんな回りくどい事をするまでもない』

 

「どういう事?」

 

『あの男には、“妹がいるな”? ノーブル学園に通っている』

 

「・・・・その子は“『伝説の戦士』の関係者”よ。一体どうやって?」

 

『ふん。『伝説の戦士』と呼ばれていても、所詮は素人の小娘達。やりようはーーーーいくらでもあるわ』

 

その女性、『クジャク・デッドマン』の腕に、中学生くらいの少女を抱えていた。

 

「その子が・・・・」

 

『ええ、あなたも自分の任務を忠実にこなしなさい』

 

そう言うと、クジャク・デッドマンは、少女をミラに渡した。

 

『それでは、私達は先に戻るわね。・・・・ネオボンゴレとシモンが動くかも知れないから、邪魔な奴らを黙らせてくるわ』

 

そう言うと、クジャク・デッドマンは背面に翼を広げ、空高く飛び去っていった。

 

「・・・・・・・・・・輝二、ごめんなさい」

 

ミラはその少女、『七瀬ゆい』を見て、輝二に謝意を呟いた。

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・ミラ?」

 

紅茶とコーヒーを持って屋上に戻ったら輝二だが、その場にミラの姿がなく、首を傾げていると、

 

≪なぁなぁ輝二。何か落ちてるぜ?≫

 

バイスの声に、床に小さな手帳が置かれた紙が置かれていた。

 

「・・・・・・・・」

 

輝二がその紙を拾って広げ、中身を読むと、目を見開いた。

 

「・・・・【イーグルと戦った森に来て。来ないと、大切な家族の安全は保証しない。 ミラ】、だと?」

 

そして、小さな手帳、生徒手帳らしき物の中身を見ると、さらに目を見開いた。何故ならーーーー。

 

「! ゆ、ゆい・・・・!?」

 

『七瀬ゆい』の写真を見て、顔を憤怒に染めた。

 

 

 

 

ーツナsideー

 

輝二が青春を謳歌している間、ボンゴレ基地にいるツナ達は、獄寺達が遭遇した三体の怪人達について話し合っていた。

 

「コイツらか・・・・」

 

獄寺達のコンタクトディスプレイに記録していた映像をモニターに映し出された、ジャッカル・デッドマン、カマキリ・デッドマンとクロコダイル・デッドマンを見ていた。

 

「隼人。この怪人達が、〈デッドマンズ〉の怪人なんだな?」

 

「はい10代目。〈デッドマンズ〉が使う、スタンプのアイテムを使っていましたから」

 

「さらにヤツら、『ガイアメモリ』まで使っていたからな」

 

三体の映像の隣に、リバイスの映像が表示されていた。

 

「そう言えば、アイツら自己紹介していたな。確か鰐の方は『ケイ』。蟷螂の方は『ノノ』。んでジャッカルの方は『メノア・ヴァージル』ってーーーー」

 

「『メノア・ヴァージル』ですと?」

 

山本の言葉に、ジャンニーニがピクリと眉を動かした。

 

「知っているのかジャンニーニ?」

 

「はい。少々お待ちを・・・・」

 

と言うと、ジャンニーニはボンゴレのデータベースを検索した。

 

「っ、出ました。メノア・ヴァージル。生物学と薬剤学の権威『ヴァージル教授』の娘さんで、高校生でありながら医大に飛び級で入学し、主席を勤めていた程の才媛です」

 

モニターに映し出されたのは、メノア・ヴァージルと、金髪を後ろに伸ばした壮年の男性、ヴァージル教授が表示された。

 

「彼は『死なない人間』の研究をしていたようで〈財団X〉で、ある研究に目を付け、娘と共に財団に入ったようです」

 

「“ある研究”、『死なない人間』、まさか・・・・」

 

「はい。彼は〈NEVER〉の、〈仮面ライダーエターナル〉、『大道克己』の研究を進めていました」



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不死を目指す者

ーツナsideー

 

『大道克己』。

かつて『風都』と言う街で、破壊活動を行った悪の仮面ライダー、〈仮面ライダーエターナル〉。『風都』を守る『二人で一人の探偵仮面ライダー』によって倒された、『風都』史上最大の危機をもたらしたテロリストであった。

が、その圧倒的な存在感は、『風都』の半グレ達からカルト的な人気を得ていた。

 

「ジャンニーニ。ヴァージル教授が『大道克己』達、〈NEVER〉の技術を研究していたって?」

 

「詳しい事は、『彼』の方が知っていると思います。私も彼からヴァージル教授の事を聞いていたので」

 

ジャンニーニが操作すると、モニターにある人物が現れた。

 

《やぁ、綱吉君》

 

「正一?」

 

画面に映されたのは、『ネオボンゴレファミリー・メカニックチーフ』にして、『バニングス重工』の技術開発部門のリーダー、『入江正一』であった。

現在重役である『奥さん』は海外へ行っていた。

 

「正一。今は『スパナ』と一緒に、『飛電インテリジェンス』と共同開発している『新型通信衛星WE'RE<ウィア>初号機』のプログラミングで手が離せないんじゃ?」

 

《うん。大体部分は終わってね。ジャンニーニからメールが届いたから、少し休憩させてもらっているんだ。ところで、ヴァージル教授の事だけど》

 

「何か知っているのか?」

 

《ああ。彼は以前から、人間の身体をより強く、『死』をも克服する程に強い肉体に進化させる研究をしていた》

 

「『死』を克服、か。成る程。それで目を付けたのが、〈NEVER〉の『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』と言う訳だな?」

 

リボーンが言った『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』。

人間の死体を『人体蘇生酵素』により蘇生させた生物兵器、『死者蘇生兵士』であり、死者を超えた者の事である。

 

《ヴァージル教授は長年、病弱だった奥方、ヴァージル夫人の身体の治療の為に研究を続けてきた。教授が生物学と薬剤学の権威になれたのも、夫人の為の努力と言っても過言では無かった。メノア・ヴァージルも、そんな父親を尊敬し支え、母親の身体を良くする為に研究者になったんだ。僕は、教授達が横浜にある自宅で夫人の介護の為に用意された『ヒューマギア』のプログラミング等の調整の為に、何度か会っていたんだ》

 

「・・・・まさか、奥さんの身体を良くする為に」

 

エンマの言葉に、正一は渋面を作る。

 

《だが、長年の研究と薬で何とか夫人の命を繋ぎ止めていたけど、年々それも効かなくなり、遂に夫人は昨年、植物状態となった。絶望に暮れる教授とメノア・ヴァージルに〈財団X〉が近づき、死者蘇生とも言える『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』を提示し、二人は〈財団X〉に入った。〈財団X〉は〈NEVER〉壊滅後、出資提供を断った彼らの技術だけを、秘密裏に盗んでいたようだからね》

 

「その事は裏の世界でも、結構ウワサになっていましたよね?」

 

「ふん。出資を断った相手から技術だけはかすめ取る。本当に卑劣で節操がねぇぜ」

 

「・・・・教授達も大切な人を失って、その人を取り戻せる術があるなら、それに手を出してしまうのも仕方ないかも知れないけどね」

 

ランボと獄寺は〈財団X〉のやり方に反吐が出ると言いたげな顔を作り、エンマは『妻の母親』と似た境遇の二人に、複雑な表情を浮かべていた。

 

《教授とメノア・ヴァージルは、『NECRO OVER<ネクロオーバー>』の唯一の欠点、酵素が不足すると肉体崩壊を起こす部分を徹底的に排除し、死者蘇生技術を完成させようとした。が、その開発中で事故が起こり、メノア・ヴァージルは死亡したそうだ》

 

「何? 俺達はメノア・ヴァージルと戦ったぞ!」

 

「・・・・まさか」

 

了平とクロームの言葉に、正一が答える。

 

《そう。メノア・ヴァージルも研究中の死者蘇生技術で、蘇ったのだと思う》

 

「自分の娘も、実験に使ったって訳か・・・・」

 

リボーンが帽子で目元を隠す。

 

《綱吉君。敵の戦力が、襲ってきた三人だけとは思えない》

 

「ああ。俺とエンマも、メガロドンの怪人と戦ったし、新しい〈仮面ライダー〉もコブラの怪人と戦っていた」

 

《僕の予想だけど、恐らくあと一人か二人は怪人がいるんじゃないかな?》

 

「僕もそう思う」

 

「しかし正一。良くここまでの情報を掴んだな?」

 

リボーンの問いに、正一は少し目を泳がせながら、口を開く。

 

《・・・・実は、この情報、僕のパソコンに送られてきてね。綱吉君達に伝えるように頼まれていたんだ・・・・》

 

「えっ? 頼まれたって、誰に?」

 

《・・・・・・・・『六道骸』に、ね》

 

「骸様が?」

 

「何で骸の野郎が?」

 

『もう一人の霧の守護者 六道骸』。ツナ達とは利害が一致しなければ協力しない。そんな男から届いた情報に、クロームは目をパチクリさせ、獄寺が訝しげな顔を作った。

 

「骸の動きも気になるけど。今は兎に角、新たに現れた〈仮面ライダー〉。ヴァージル教授達の企みと居場所。これらを重点的に調べよう」

 

『了解!』

 

ツナの言葉に、守護者達と正一とジャンニーニが頷き、エンマとリボーンも頷いた。

 

 

 

 

ー???sideー

 

ソコは、広い研究施設のような場所。

その中心となる場所に、あらゆる医療機械が周りに置かれたベッドの上に、白い髪を短く伸ばした中性的な顔をした少年が横になっていた。

と、その少年に近づく、白衣を着用した金髪の壮年の男性、ヴァージル教授が現れた。

 

「古来より、人間と悪魔との契約には、悪魔が言う対等の条件で成される。だが、それも全て、言葉巧みに人間を弄ぶ悪魔の罠。だが、私はそれでも成して見せる! 人は弱く脆い。幾ら科学が発達しても、人の脆弱さが克服される訳ではない」

 

ヴァージル教授がタブレットを操作すると、少年のベッドの近くの床が、プシュゥ~・・・・! と、駆動音を鳴らしながらせり上がると、棺のようなカプセルの中に、メノア・ヴァージルが大人になったような美しい女性がコールドスリープ状態で眠っていた。

 

「妻よ。寒い中に閉じ込めてすまない。だが、もうすぐだ。人間の身体が弱いならば、強靭な悪魔の肉体と一つとなれば、誰ももう、『死』と言う魔物に怖れる事はーーーーゴホッ! ゴホッ! ゴホッ!!」

 

「お父様!!」

 

突然、血を吐きながら咳き込むヴァージル教授に、メノア・ヴァージルが駆け寄る。それに少し遅れて、ノノを肩に担いだケイも近づく。

 

「お父様! 大丈夫ですか!?」

 

「・・・・ぁぁ、あぁ、大丈夫だ。慣れない戦闘など、やるべきではなかったな・・・・!」

 

「くっ、〈クジャク〉がボンゴレや仮面ライダーをこの施設の近くに連れてこなければ、お父様が戦う事も無かったのに!」

 

「メノア。それは後回しだ。今はまず、このスタンプとメモリだ・・・・」

 

袖で口元の血を拭いながらヴァージル教授は、『蝙蝠の刻印がされたバイスタンプ』と、『Aのマークが付いた銀色のガイアメモリ』を少年の枕元に置いた。

 

「このバイスタンプとガイアメモリならば、彼に力を与えてくれるかも知れん・・・・!」

 

「お父様・・・・」

 

「この、“『バットバイスタンプ』に宿る悪魔”の囁きが、私を破滅に導こうとも、私は歩みを止めない!」

 

ヴァージル教授のその目には、確固たる覚悟が宿っていた。

すると、『バットバイスタンプ』がカタカタと独りでに震え出した。

 

「お父様。これは?」

 

「・・・・どうやら、“スタンプに宿る悪魔”も感じているのだろう。殺したくて殺したくて堪らない相手、〈仮面ライダーリバイス〉、嵐山輝二が、間もなくここにやって来るのを、な・・・・」

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

ツナ達は、〈仮面ライダーリバイス〉がイーグル・デッドマンと交戦した樹海を、ボンゴレの衛星から送られてくる映像とこれまでの情報から解析してみると、メガロドンとコブラの怪人が逃げ出した湖がモニターに表示された。

 

「やっぱり、この湖か・・・・」

 

「適度に街から離れていて、その先は人の住んでいない広野と山岳地帯・・・・」

 

「〈財団X〉のような組織が、隠れて悪巧みするにはうってつけの場所だな。んで、行くかツナ?」

 

「ああ」

 

エンマと山本、リボーンがそう言うと、ツナは頷いた。。

 

「でもボンゴレ。俺達も本調子じゃないんですよ。獄寺氏や山本氏、了平氏が手こずった相手を・・・・」

 

「大丈夫だ」

 

「え?」

 

弱気なランボに、ツナが確信を持って言う。

 

「来るさ。新たな〈仮面ライダー〉、リバイスがな」

 

ツナはそう言うと、格納庫に置かれている輸送飛行機へと向かった。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・ん?」

 

学校を早退した輝二から走り出そうとすると、狩崎が運転するスポーツカーが目の前に停車した。

 

≪ありゃ、カリちゃん!≫

 

「やぁリベンジボーイ。・・・・凄い顔だね」

 

ミラからの手紙とゆいの生徒手帳を持ちながら、顔を向けた輝二のその目は、激しい怒りを必至に抑えているように見えた。この威圧感で教師を黙らせ、早退したのだ。

 

「ほっとけ。今にも爆発しそうな怒りを堪えているんだからな・・・・!」

 

「・・・・まぁ、乗りたまえ」

 

輝二は助手席に座ると、狩崎がタブレットを渡して口を開く。

 

「済まないね。現在〈スカイベース〉が修理で動けなくなったんだ」

 

「修理?」

 

「実は、数十分前に〈スカイベース〉に孔雀のデッドマンと、『コイツ』が現れたんだ」

 

狩崎が片手でタブレットの画面を表示させると、イーグル・デッドマンになった店員にバイスタンプを渡していた孔雀のデッドマン、クジャク・デッドマンとガスマスクを被り白い服を着た、とても人と形容しにくい大型のモノが飛行し、飛行中の〈スカイベース〉にミサイルを放っていた。

その人物を見て、輝二は目をさらに鋭くした。

 

≪うっわ! 何よこのロボットっぽいの!?≫

 

「コイツはーーーー『ストゥラオ・モスカ』か?」

 

「そう。旧イタリア軍が作り上げた狂気の兵器、『ゴーラ・モスカ』の発展機さ」

 

『ゴーラ・モスカ』。

第二次世界大戦のおり、旧イタリア軍が開発した軍事兵器であり、そのあまりにも凶悪な兵装と『人間を動力源』とする非人道的過ぎる設計により、開発を中止とされ、大戦後に研究資料は裏社会のマフィアに売りさばかれたらしい。

この『ストゥラオ・モスカ』は、現代の技術で動力源に人間を使わず、自動運転や人間が乗り込んで操作するように改造されており、裏社会でも極々限られたマフィアしか所持していないと言われている。

 

「こんなのが襲撃してきたのか?」

 

「ああ。少しエンジンをやられてね。ヒトミ達が応戦しようとしたが、あっさり返り討ちにあった」

 

「門川さん達は?」

 

「軽傷で済んだが、大事を取って医務室行きだ。そのすぐ後に、『七瀬ゆい』くんが行方不明になったと報告が入ってね。ここに来たのさ」

 

「まさか、ゆいを巻き込むとはな」

 

「これを見たまえ。イーグル・デッドマンと交戦した樹海に入る人間達を、街頭カメラが捉えた物だ」

 

狩崎が赤信号で車を停車させると、タブレットの画面を変えた。そこには、白いスーツを着た何人もの男女が入っていった。

 

「・・・・コイツらは、〈財団X〉か?」

 

裏社会のさらに奥にある闇社会でも悪名高い〈財団X〉に、輝二は訝しげな顔を作る。

 

「ネオボンゴレファミリーとその友好関係にあるマフィアは、〈財団X〉と敵対関係にあると聞いた事がある。恐らく彼らがあの森に来ていたのも」

 

「〈財団X〉を追って、って事か。しかし、何故ソコにゆいが巻き込まれるんだ?」

 

「憶測だが、君を誘き出す為のエサではないかね? 彼女程、君に有効な手札は存在しないしね」

 

「ーーーー必ず、ぶちのめす」

 

輝二は、ゆいを拐った人間にーーーーミラに対して怒りの感情を抱いた。

 

 

 

その後ろを、黒いスポーツカーが追いかけているのに気づかず。

 

 

 

ーエンマsideー

 

ツナ達は輸送飛行機に乗って、件の森へと向かった(ジャンニーニはお留守番)。勿論。周りの民間人や航空レーダーに引っ掛からないように、『霧の死ぬ気の炎』の迷彩機能で輸送機を覆って、姿を消しているが。

 

「?」

 

あと少しで目的地に到着する所で、エンマは、窓の外で藍色の粒子が流れたのを見え、その瞬間、奇妙な違和感を感じた。

 

「何だ? 一体・・・・」

 

『ーーーーエンマ』

 

「え?・・・・フェイト?」

 

自分を呼ぶ声にエンマは振り返るとソコには、『次元世界 ミッドチルダ』にいる筈の妻、『フェイト・T・古里』がいた。

 

「な、何で・・・・?」

 

「よぉ、こんな所で会うとはな」

 

『隼人さん』

 

獄寺の方を見ると、同じくミッドチルダにいる筈の『彼女』を獄寺が抱き締めていた。

 

「極限に元気そうだな!」

 

『うん! 了平さん!』

 

了平も同じく、ミッドチルダにいる『彼女』が抱きついていた。

 

「こ、これは・・・・!」

 

周りを見ると、山本も、ランボも、ミッドチルダにいる筈の『彼女』達と見つめ合っていた。

 

「骸様・・・・」

 

『クローム・・・・』

 

クロームも、六道骸を見つめている。

 

「・・・・・・・・」

 

リボーンも、誰かを見つめているのか、虚空を見上げていた。そしてツナもーーーー。

 

「なのは・・・・ヴィヴィオ・・・・」

 

なんとツナの目の前には、ミッドチルダにいる妻、『沢田なのは』が、養女である『ヴィヴィオ・K・沢田』を抱っこして立っていた。

 

『ツナさん』

 

『ツナパパ!』

 

二人がツナを呼ぶと、ゆっくりとツナに近づき、二人の手がツナの頬に触れそうにーーーー。

 

「違う」

 

ツナが二人の手を振り払うと、なのはとヴィヴィオの姿が霧状となって消えた。

 

『エンマ』

 

「っ・・・・ゴメンね。幻覚に惑わされちゃ、本物に申し訳ないから!」

 

エンマも、自分に抱きつこうとするフェイトを振り払うと、フェイトの姿が霧状となって消えた。

 

「良くやったぞ。ツナ。エンマ」

 

「リボーン!」

 

「無事だったんだね!」

 

「俺があんなくだらねぇ幻術にやられるか。ほれ、ジャンニーニからの通信だぞ」

 

《10代目! 聞こえますかっ!?》

 

ツナのヘッドフォンから、ジャンニーニの声が響いた。

 

「ジャンニーニ。これは?」

 

《今機体の周囲に、無数の『死ぬ気の炎』の反応がありました!》

 

「っ! さっき、窓の外に藍色の粒子が舞っていたけど」

 

《それです! 恐らく『霧の死ぬ気の炎』を使ったチャフによる攻撃です! それによって、皆さんは、意識下にいる大切な人の幻影を見せられていたんです! あのままだったら、機体の操縦もできなくなり、墜落してしましたよ!》

 

「クローム!!」

 

「っ! はい!」

 

ツナの声で正気に戻ったクロームが、全員に幻術を使って正気に戻した。

 

「っ、10代目、今のは?」

 

「幻覚を見せられていたんだ! 来るぞ!」

 

「っ! ぐぴゃぁああああ!!」

 

ランボが目を見開いて驚くと、飛行機の前方から、ストゥラオ・モスカの大軍が迫ってきていた。

そして一体のストゥラオ・モスカの上に、〈財団X〉の白スーツを着用した。長い茶髪と、美しい顔立ちだが、何処か蠱惑的な雰囲気がある二十代後半の女性が腰にドライバーを付けて立っていた。

 

「ストゥラオ・モスカ!! あんなのまで持っているのかよっ!?」

 

「ほ、本当に、〈財団X〉は節操が無い・・・・!」

 

「それにあの女! メノア・ヴァージル達と同じドライバーを付けてやがる!」

 

「極限に団体でお出迎えかっ!」

 

「行くぞ!」

 

ツナとエンマ、山本と了平、飛行能力があるメンバーが外に出ると、女性が乗ったストゥラオ・モスカが前に出る。

 

「あら。名高いネオボンゴレファミリーボスと売り出し中のシモンファミリーボスね。私は『川西美春<カワニシ ミハル>』よ」

 

『川西美春』と名乗った女性を、ジャンニーニが検索し、ヘッドフォンの通信機越しに伝える。

 

《ありました! 『川西美春』! 元日本の高校の教師でしたが、数年前に素行不良の生徒達を次々と殺してきた殺人鬼で、全国指名手配されています!》

 

「殺人鬼、だと?」

 

エンマがそう言うと、川西美春は頬に人差し指をおきながら、口を開く。

 

「殺人鬼なんて酷いわぁ。私はただ、親が有力者だからってその権力を笠に着て立場の弱い生徒達を苦しめていたり、暴力で弱い生徒達を恐がらせてきたり、強姦とか万引き、窃盗から麻薬の転売をしていた、『社会のゴミ』になりそうな生徒達を世に出さないように、『掃除』していただけなのにぃ」

 

心外と言わんばかりの言葉に、ツナ達は目を細める。

 

「俺達はこの先に用があるんだ。退いてもらおうか?」

 

「・・・・うふふ。それじゃぁ面白くないじゃない」

 

[クジャク!]

 

小悪魔のような笑みを浮かべるが、その瞳にはメノア・ヴァージル達以上の、『殺人鬼の目』をしていた。

そして女性は、孔雀の刻印がされたスタンプを取りだし起動させ、ドライバーの中心に押し込んだ。

すると、黒い契約書が女性の身体を包み込み、クジャク・デッドマンへと変貌した。

 

『さぁ、楽しみましょう!』

 

[キラー!]

 

更に『ガイアメモリ』を差し込むと、どす黒い体色に変わり、背面部から孔雀の尾羽を広げながら飛翔し、ツナと交戦する。

 

「くっ!」

 

「ツナ!」

 

「山本! ツナくんなら大丈夫だ! 僕達はストゥラオ・モスカを相手にしよう!」

 

「「ああ!/うむ!」」

 

エンマの言葉に山本と了平は頷くと、ストゥラオ・モスカと交戦を開始した。

 

 

 

ーツナsideー

 

「ふっ!」

 

『あははははははは!!』

 

空中でクジャク・デッドマンと闘うツナ。本来のツナの実力ならば、難なく倒せる相手だが、本調子でない分手こずっていた。

 

『どうしましたぁ? 早く私を倒さないと、お仲間の皆さんが死んじゃいますよぉ?』

 

明らかに、仲間の窮地を伝えて動揺させるのが目的の嫌味ったらしい口調で言う。

が、ツナはその言葉に欠片も動揺を見せず、毅然と言い放つ。

 

「俺の仲間達を、甘く見るな!」

 

 

 

 

ーランボsideー

 

「ひえぇ~! 何で俺まで・・・・!」

 

飛行機の上に出たランボが、腰を引かせながら泣き言を言う。

が、そんなランボの耳に、獄寺とリボーンの声が響く。

 

《10代目達が安心して戦えるように、お前も力を出せ》

 

《グダグダ言うならこのまま振り落とすぞ》

 

「わ、分かりましたよ! 『牛丼』! 形態変化<カンピオ・フォルマ>!」

 

ほぼヤケクソのランボは、黒いヘルメット、『ボンゴレギア 雷のヘルムVer.X』を被り、自分のアニマルである『雷牛の牛丼』を召喚し、自分と合体させると、巨大なコイル状の角付きの兜に、重装備の鎧を纏う。

鎧の胸についているレバーで、角の幅などを操作すると、コイル状の角に鉄柱が伸び、『雷の死ぬ気の炎』が迸った。

 

「『電磁場<カンポウ エレットメ二コ>』!」

 

ランボが叫ぶと、『雷の死ぬ気の炎』でできた電磁フィールドが、飛行機を包み込んだ。

それに触れたストゥラオ・モスカは、感電したようにスパークし、煙を上げて墜落する。

 

「おっと」

 

が、エンマが『大地の重力』で豆粒にまで圧縮し、自分の手に運んで回収した。

 

「不法投棄は自然破壊に繋がるね」

 

「ナイス、エンマ」

 

次々と迫るストゥラオ・モスカに、エンマ達は迎え撃つ。と、飛行機は遂に湖に到着した。

その時ーーーー。

 

ーーーービシュウウウウウウウウウウ!!

 

湖の中央の島から、レールキャノンが発射され、ランボの電磁場とぶつかり合い、激しい放電を起こし、飛行機の機器類が一時的にショートし停止した。

 

「何っ!?」

 

《エンジン停止! このままじゃ墜落するぞ!》

 

「ひぇええええええええええええええ!!」

 

飛行機が湖の手前の森に、一直線に墜落していき、ランボが振り落とされた。

 

 

 

ーツナsideー

 

「っ!」

 

『(ニィッ!!)』

 

一瞬、ツナの視線が飛行機に向くと、クジャク・デッドマンは女性の口元に歪んだ笑みを浮かべ、ツナの頭を貫手で貫こうとしたその刹那ーーーー。

 

「ーーーー邪魔だ」

 

『ぶふっっ!!!?』

 

ツナの裏拳を顔面に叩き込まれ、空から地面に一直線に叩きつけられた。

 

「皆!」

 

ツナはクジャク・デッドマンに一瞥もくれず、仲間の元に向かった。

 

 

 

ーエンマsideー

 

「『大地の重力』!!」

 

が、エンマが『大地の重力』をフルパワーで使い、地面までほんの数ミリの処で、飛行機を止めた。

 

「フゥゥゥゥゥ・・・・!」

 

「流石だな、エンマ」

 

エンマが深く息を吐き、飛行機の体制を元に戻すと、ランボを回収していたツナが合流し、山本と了平が合流する。

そして、クジャク・デッドマンとストゥラオ・モスカ十数体がツナ達から少し離れた位置で降りてくる。

 

『・・・・・・・・やってくれましたねぇ』

 

殴られた鼻を擦りながら、ツナに冷酷な怒りの視線を向けるクジャク・デッドマン。

ネオボンゴレファミリーとシモンファミリーボスが、揃って構える。

 

「やっと暴れられるぜ」

 

「メノア・ヴァージル達も控えてる。さっさと終わらせようか」

 

「うん」

 

獄寺と山本とクロームが言い構えた。

 

『楽しませてちょうだい!』

 

クジャク・デッドマンが叫ぶと、ストゥラオ・モスカ達がブースターに火を吹かせ、ツナ達に向かった。

 

「皆、行くぞ!!」

 

ツナとエンマが飛び出すと、守護者達も動きだし、交戦が開始された。

 

 

 

 

ーヴァージル教授sideー

 

「お父様。ボンゴレ達がここに来ました。ケイが迎撃しましたが、全員無事のようです。クジャクとストゥラオ・モスカが交戦に入っています」

 

「そうか。彼女だけでは荷が重いかも知れんな。メノア。ノノとケイと共に、お前も迎撃に当たれ」

 

「はい」

 

メノアが離れるとヴァージル教授は、ベッドで眠る少年に、メノア・ヴァージル達と同じドライバーを装着させた。

 

「かつて、〈ミュージアム〉が使用していた幹部用ドライバー。それを改良し、『バイスタンプ』を使用する事で、契約などさずともフェーズ2の力を宿す事ができる。そして私とメノアの研究によって、〈デッドマンズ〉の力を使わずとも、科学の力で悪魔の強靭な肉体を人間の身体と融合させる事ができる。そしてそれこそ、私達が目指す不死にして、強靭な人間なのだ」

 

[バット!]

 

ヴァージル教授は『バットバイスタンプ』を起動させ、少年のドライバーに押印する。

すると、黒い契約書が飛び出し、少年の真上で人型に形成していくと、今度は『ガイアメモリ』を起動させた。

 

「悪魔の肉体。そしてさらに強化させるのはーーーー“天使の力”!」

 

[エンジェル!]

 

ヴァージル教授は、『エンジェルガイアメモリ』をドライバーに挿入した。そしてその時、少年の身体を白い光が覆い尽くす。

黒い契約書は妖しく輝き、少年の身体は美しく輝き、まるで1つになるように混じりあっていった。

 

「ふふふふふふふ、はははははははははははははははははははははは!!!」

 

それを見て、ヴァージル教授は哄笑を上げたのであった。

 

 

 

 

ーミラsideー

 

そしてその頃、ミラは独房のような場所で、ベッドに横になって眠っている『七瀬ゆい』を見ていた。

 

「・・・・・・・・」

 

その目には、何処か悲しそうな光を宿らせて。

 




『電磁場<カンポウ エレットメ二コ>』
ランボのオリジナル技。電磁バリアを展開し、触れれば感電し、なのはの全力全開スターライト・ブレイカーすらも防げる攻防一体の技。


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開戦の悪魔

ー輝二sideー

 

「リベンジボーイ。これを・・・・」

 

「ん?」

 

樹海の湖に向かう途中、狩崎が輝二に渡したのは、先日回収した『イーグルバイスタンプ』と『新たなバイスタンプ』だった。

 

「これで少しは戦術の幅が広がるだろう」

 

「・・・・受け取っておく」

 

輝二は2つのバイスタンプを懐に入れると、ネックレスとして巻いている指輪を手にした。

 

「(また遭遇するかもな、ボンゴレの現ボスに・・・・)」

 

実は輝二はボンゴレには、ある繋がりがあった。

 

「・・・・っ!」

 

[リバイスドライバー!]

 

と、輝二は嫌な予感を感じ、上方へと鋭い視線を向け、リバイスドライバーを装着した。

それと同時に、空からストゥラオ・モスカが十数体くらいが、スポーツカーの前方の道路やその上空に現れた。

 

「What!?」

 

狩崎が慌てて急ブレーキを掛け、キキィィィィ! と、耳障りな音を上げながらスポーツカーは横になり、ストゥラオ・モスカに向かう。

ストゥラオ・モスカが片手を上げて、ガガガガガガガ! と、マシンガンを放つ。

 

「変身!」

 

[レックス! バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

「イエイ!」

 

「狩崎さん!」

 

リバイが狩崎と自分のシートベルトを引きちぎり、空かさずバイスが狩崎を担ぎ、リバイと共にスポーツカーから飛び降りる。

その瞬間、ストゥラオ・モスカの放った弾丸が、狩崎のスポーツカーを穴だらけにし、スポーツカーは爆発した。

 

「っと。車、済まないな」

 

「気にしないでくれたまえ、〈フェニックス〉に請求するよ。それにしても、ストゥラオ・モスカが団体でお出迎えとはね?」

 

「うわ~、生で見ると、スンゴい趣味の悪いデザイン~!」

 

ストゥラオ・モスカがバイスの言葉に反応したのか、一斉に武器を構えた。

 

「あらぁ、気にしてた?」

 

バイスがそう言うのと同時に、ストゥラオ・モスカ達がマシンガンを放つ。

 

「ちぃっ!」

 

「うわわわわわわわ!!」

 

リバイとバイスが慌ててその場を離れようしたその瞬間ーーーー。

 

「キュァァァァァァ!」

 

と、動物の鳴き声のような声が響くと、リバイスと狩崎の眼前に、トゲが付いた紫色の雲のようなものが広がり、マシンガンの弾丸を防いだ。

 

「何っ!?」

 

「何これ雲っ!?」

 

「いや・・・・」

 

驚くリバイスだが、狩崎は冷静に『雲』を眺めると、『雲』を背負っているような『小さなネズミ』がいた。

 

「どうやらこれは、『匣兵器』のようだね」

 

『匣兵器』。

近年、裏社会の組織、マフィアが所持する、『特殊なエネルギー』で稼動するオーバーテクノロジーである。

 

「『匣兵器』? 何故そんなものが?」

 

疑問に思うリバイの後方から、先ほどから自分達を追っていた黒い車がやって来て停車し、その中から黒いスーツを着用し、黒髪に整った顔立ち、猛禽類のような鋭い目付きをした20代中盤くらいの男性が下りてきた。

 

「っ! あの男はっ!?」

 

「知ってるのかい?」

 

「俺の通う『並森高校』ーーーーいや、その『並森市』と隣町の『海鳴市』を裏から牛耳っている、『伝説の最恐風紀委員長 雲雀恭弥』!!」

 

「えっ? 何その風紀委員なのに、ギャングのような人?」

 

驚くリバイスを気にせず、雲雀恭弥は紫色のフワフワとした炎、『雲の死ぬ気の炎』を纏ったトンファーを構えて走りだし、リバイスと狩崎の横を通りすぎると、ストゥラオ・モスカ達の弾幕を全て回避して接近し、一瞬で二体のストゥラオ・モスカを破壊した。

 

「うっそぉ!? めっちゃ強いじゃんあの人っ!? ホントに人間っ!?」

 

雲雀の圧倒的な強さに驚愕するバイスを見て、雲雀が目を細める。

 

「・・・・ふぅん、最近『並森高校』の生徒が〈仮面ライダー〉になったと報告を受けたから、少し見に来てみたけど。大した事ないようだね?」

 

「・・・・・・・・あ?」

 

雲雀恭弥の薄く笑った顔と声に、リバイは仮面越しに片眉をピクンっ、と動かした。

 

「所詮、群れるだけの弱い奴らと同類かな?」

 

「・・・・・・・・」

 

「あの~、輝二?」

 

「バイス。狩崎さんを守っていろ」

 

バイスにそう言うと、リバイはダッ! と駆け出し、オーインバスター50を構えて雲雀に迫ると、その横を通り過ぎ、ストゥラオ・モスカを一瞬で三体粉砕した。

 

「ふん。こんなガラクタを潰した程度で、偉そうにしないで欲しいね。オッサン」

 

「ワォ」

 

雲雀はリバイに少し興味が出たような声を漏らす。

すると、他のストゥラオ・モスカ達が攻撃体制となり、二人に迫った。

 

「邪魔しないでね」

 

「助けてと泣いても助けねえ」

 

二人はそう言うと、トンファーとオーインバスター50を構えて、ストゥラオ・モスカに挑んだ。

 

「うっわ~。輝二ってば、完全にマジになってる」

 

「失礼。怪我はないですか?」

 

「ああ、ありがとう。・・・・凄い頭だね」

 

雲雀が降りた車から、同じく黒スーツを着用し、長いリーゼントをした男性が、狩崎を助け起こしていた。

 

 

 

 

 

ーボンゴレsideー

 

リバイスがストゥラオ・モスカに遭遇するほんの数分前ーーーー。

ヴァージル教授のアジトのある湖畔に着いたツナ達は、ストゥラオ・モスカの大軍と、それを率いる『川西美春』が変身する『クジャク・デッドマン』と交戦を開始した。

ストゥラオ・モスカ一体の戦闘力は、軍隊の一個中隊にも匹敵する。そんなストゥラオ・モスカの大軍を、たった八人で相手するのだ。普通ならば勝ち目など皆無に等しい。

がーーーー。

 

「果てな」

 

ボォンッ!

 

「『時雨蒼燕流 功式 八の型 篠突く雨』・・・・!」

 

斬!

 

「『マキシマムイングラム』!」

 

グワシャッ!

 

獄寺が骸骨の砲台で、山本が刀で、了平は拳で、戦車の大砲にも耐えるストゥラオ・モスカの装甲を貫き、切り裂き、そして粉砕していった。

 

「ふっ!」

 

そしてツナとエンマも、炎を纏った拳で、ストゥラオ・モスカを撃破していく。

 

「っ!」

 

『(ニィッ!)』

 

と、その時、ツナは背後から嫌な気配を察知し、頭を下げ、体勢を低くした。

 

バカンッ!!

 

ツナの頭があった所に、クジャク・デッドマンが尾羽で出来た巨大鉄扇を振り下ろした。避けられた鉄扇はそのまま、地面に亀裂を生み出した。

 

「『大地の拳<プーニヨ・テッラ>』!」

 

『ぐぅうっ!!』

 

エンマは重力を纏った拳をクジャク・デッドマンに叩き込むと、凄まじい斥力によって、吹き飛ばした。

 

『女性一人を相手に二人がかりだなんて、男らしくありませんねぇ?』

 

「〈財団X〉に所属する殺人鬼を相手にするんだ。生半可なやり方はしないさ」

 

『また殺人鬼だなんて、人聞きの悪い事を言いますねぇ。女性に対するデリカシーが無いですよぉ?』

 

クジャク・デッドマンは不満そうな声を漏らすが、ツナもエンマも騙されない。この女からはーーーーとてつもない『邪悪な悪意』を感じてならないからだ。

そしてクロームは。

 

「はぁっ!」

 

『霧の死ぬ気の炎』の特性、『構築』によって産み出された幻覚と、『幻覚を実体化させる装置』で生み出した火柱で、ストゥラオ・モスカを焼く。

 

『ーーーー!!』

 

しかし、火だるまになっても攻めてくるストゥラオ・モスカ。

 

ーーーーバリバリバリバリ!

 

「『電撃角<エレットゥリコ・コルナータ>』!」

 

が、ボンゴレギアを纏ったランボの決め技で一掃する。伊達に〈仮面ライダー〉との戦いに巻き込まれていないのだ。

 

「ありがとう、ランボくん」

 

「良いって事ですよクロームさん。・・・・あの島から放たれた電磁砲が、俺のバリアに攻撃したんですよね?」

 

「うん。だから間違いなく」

 

「あの島が敵の本拠地、ですか・・・・」

 

クロームとランボは、湖の中心の島を見据える。

しかし、ストゥラオ・モスカがまた攻めてきたので、二人は切り替えて迎撃した。

 

 

 

 

 

ーミラsideー

 

ミラは、十年近く前に両親の離婚によって離れ離れになっていた、輝二の『妹』、『七瀬ゆい』の側にいた。

 

「・・・・・・・・」

 

ミラは優しく、ゆいの髪を撫でてあげると、懺悔するように頭を下げ、ヴァージル教授の元に戻る。教授の後ろには、二人ほどの研究員が立っていた。このアジトでは、〈財団X〉所属の研究員や警備兵が配置されているのだ。

 

「あぁミラ。嫌な役割をさせて済まなかったね」

 

「いえ。七瀬ゆいは確保しました」

 

「うむ。まだ準備が出来ていない。暫くはストゥラオ・モスカ達に足止めをしてもらおう・・・・見たまえ」

 

ヴァージル教授が見せたのは、白と黒の光が繭のような形となった物体。

 

「・・・・あの中に、『ミハエル』が・・・・?」

 

そう、『バットバイスタンプ』と『エンジェルガイアメモリ』を入れられた少年こそ、ミラの弟『ミハエル・フォーミュ』である。

 

「君の気持ちは分かる。弟のミハエルが侵された『ウィルス』は、私の妻を、メノアの母を死に追いやった『ウィルス』と同じものなのだからな」

 

「教授、この『ウィルス』は一体・・・・?」

 

「私も長年『ウィルス』に関する研究をつづけてきたがが、こんな未知のウィルスは初めてだ。だからこそ、こんな『ウィルス』にも負けない、強靭な身体として、『バイスタンプ』をよって産み出される悪魔。それを制御する為のドライバー。そして最後に、『天使』の記憶が宿る『エンジェルガイアメモリ』によって、更なる進化が起こる筈だ!」

 

「ですが・・・・」

 

「ん?」

 

ミラが不安そうな顔となり、ヴァージル教授は怪訝そうに眉根を寄せた。

 

「この戦い、何も問題はありません、よね?」

 

「私はこの研究で妻を蘇生させる。君は弟のミハエルを取り戻す。そしてこの研究結果を手土産に、〈財団X〉で地位を得る。そうすれば、我々には安住が待っているのだ」

 

「ですが、この悪魔がそれ程の力を持っているのか・・・・」

 

「その実験の為に、〈仮面ライダーリバイス〉を誘きだしたのだ。さらに、〈財団X〉にとっても邪魔な存在であるネオボンゴレファミリーとシモンファミリーボスを始末すれば、我々の地位は不動となる。何も心配はいらない。私の娘と仲間達は強いからな」

 

「・・・・・・・・」

 

ミラは不安そうな顔をさらに濃くすると、ミハエルを観測していた計器に反応があった。

 

「っ、リバイスが近づいているようだ」

 

「(輝二・・・・)」

 

ミラはここに向かってくる〈仮面ライダーリバイス〉に、輝二に会うのを恐れていた。

 

 

 

 

ーボンゴレsideー

 

『っ!』

 

「ーーーーっ!!」

 

『かはぁっ!』

 

クジャク・デッドマンが攻撃を回避し、カウンターで拳を叩きつけると、クジャク・デッドマンが大きく引く。

そして、エンマはジャンニーニから、川西美春の新しい情報を聞いていた。

 

『ぐっ・・・・!』

 

「貴方は以前、『天ノ川学園高校』に赴任してから、貴方は自分がそれまで、十数人もの問題のあった生徒達を殺したり、謀殺していた事を暴かれてしまい、逮捕されそうになったと。その時に、〈財団X〉にスカウトされたんですね?」

 

『・・・・ええ、そうですよ。でも、それが何だと言うのですかぁ? 私は弱者を救うため、社会のゴミになる生徒達を掃除していただけです。そう、超能力何かを使う怪物達からね!』

 

エンマの言葉に、クジャク・デッドマン、川西美春は悪びれもなく言った。

 

「そんなの教師のやる事じゃない。教師は生徒達と向き合って、教え、導く存在だ。お前のやってる事は、『弱者を守る』と言う題目を立てて、自分の殺人欲求を満たしているだけだ。教師と言う職務を侮辱している行為だ。そんな貴方が、教師を名乗る資格はない!」

 

「超能力を正しい事に使う事を教え、正義の戦士『イナズマン』を生んだ教師がいた。その人が、貴方のこれまでの殺人を暴いた教師、『如月弦太郎』も、同じ事を言ってたのではないですか?」

 

『っっ!!』

 

『如月弦太郎』の名を出した。そこで、それまで余裕綽々で慇懃無礼で、人を小馬鹿にした態度のクジャク・デッドマンから、初めて怒気を感じた。

 

『・・・・あの「青春だ!」とか、「友情だ!」とか、「教師も生徒も皆友達だ!」とか、暑苦しく青臭い理論を出す新米教師ーーーー本当に暑苦しくて、鬱陶しかったわ』

 

クジャク・デッドマンが冷酷に呟くと、破壊されたストゥラオ・モスカの残骸から、プシュゥゥゥゥゥ~! と、煙幕が発射され、周囲が煙に覆われた。

 

「っ」

 

「コンタクトディスプレイが・・・・!」

 

煙の中にはチャフが含まれているのか、コンタクトディスプレイにノイズが走る。

 

ザシュ! ザシュ!

 

「「ぐぁっ!」」

 

ツナとエンマの肩を、鋭い刃物が小さく切り付ける。

そして、煙の中にいるクジャク・デッドマンが静かに手の平から鋭い刃を取り出す。

 

『(うふふふふ。私のガイアメモリは『キラー』、『殺し屋の記憶』が宿っているメモリ。こんな煙の中でも、真っ暗闇の中でも、獲物を仕留める事ができ、気配を消す事など動作もないの)』

 

クジャク・デッドマンは、肩を押さえて動かない二人から、ツナの方に向かう。

 

「(先ずはネオボンゴレボスを仕留め、その後シモンファミリーボスを仕留めましょうか)」

 

冷酷に、そして悪意に満ちた歪んだ笑みを浮かべながら、クジャク・デッドマンはツナの背後に回ると、その刃を振り下ろし、それがツナの側頭部に向かって、刃を押し付けよう振り下ろし、刃がツナに突き刺さろうとしたその時ーーーー。

 

ヒュン・・・・。

 

『は?』

 

クジャク・デッドマンは間の抜けた声を漏らした。何と、ツナの姿が、陽炎のように消えたのだ。

 

『ま、まさか、残像・・・・?』

 

「いくら気配を消してもーーーー」

 

『っ!』

 

クジャク・デッドマンが背後の声に振り向くと、ガントレットを構えたツナがいた。

 

「お前の身体から漏れでている、『どす黒い悪意』までは消せないっ!!」

 

『はっ!?』

 

振り向いたクジャク・デッドマンの腹部に、ガントレットを叩き込んだ。

 

「『ビッグバンアクセル』!!」

 

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!』

 

収束された炎エネルギーが、インパクトの瞬間に爆裂し、クジャク・デッドマンの身体を炎が包み込み、

 

ドガアァァァァァァァァァァァァァンン!!!

 

爆散した。

 

「「・・・・(コクン)」」

 

爆風で煙が吹き飛ぶと、ツナはエンマと合流し頷き合い、クジャク・デッドマンの爆発地点に目をやると。

ソコには、川西美春の姿はなく、破壊されたドライバーと、ブレイクされた『キラーガイアメモリ』。そして、ドライバーから無傷の『クジャクバイスタンプ』が出てきて、地面に落ちた。

辺りを見ると、仲間達もストゥラオ・モスカを片付けたのか悠然と立っていた。

 

 

 

 

ーメノアsideー

 

「寸での所で逃げたようですね」

 

「まぁ、あんな殺人欲求の塊みたいなサイコパス教師にやられるようなら、その程度とも言えるわ」

 

「(コクン)」

 

近くの丘で戦況を眺めていているのは、メノア・ヴァージルとノノを肩に乗せたケイだった。

 

 

 

ーミラsideー

 

ミラは一抹の不安を抱えながらも、弟のミハエルが目覚めるのを、心待ちにしていた。

思えば、長い日々だった。

幼い頃に両親を亡くし、二人は街から離れた教会の孤児院で育ってきた。決して裕福ではなかったけど、神父様にシスター、同じく孤児の仲間達に囲まれ、とても幸せだった。

身体は弱かったが絵を描くのがとても上手だったミハエルは、近所の虐めが好きな子供達、特にそのグループのリーダーである資産家の御曹司にターゲットにされていたが、その度に孤児院の仲間達が庇ってくれたりしてくれた。不幸が起こっても、必ず幸せがやってくる。神様はいるんだ。祈ればきっと救われる。ミラはそれを信じていた。

ーーーーだが、最悪の不幸がやって来た。

ある日、絵画コンテストにて、資産家の御曹司の描いた絵が落選し、ミハエルの描いた絵が優勝した。勿論、自分も神父様もシスターも孤児の仲間達もそれはとても喜び、皆でお祝いしようとした。ミラもミハエルに花束を送ろうと、少し遠くにある花畑で籠いっぱいに花を詰めて教会に帰った。すっかり暗くなり、シスターに怒られちゃうと少し不安になるミラ。

だが、教会に帰ったミラの目の前に広がったのはーーーー炎に包まれた教会だった。ミラは籠を落とし、急いで教会に向かおうとすると、傷だらけのミハエルが自分に近づいてきた。何があったか聞くと、突然、柄の悪い男達が数人押し寄せ、自分達を鉄パイプなどで殴り気絶させた。神父様が庇ってくれて軽傷だったミハエルは、助けを呼ぼうと裏口からコッソリと抜け出すと、突然爆発が起き、教会が炎に包まれた。

その暴漢達が近づいているのに気づいたミラは、ミハエルを連れて茂みに隠れた。そして、暴漢達が言っていた。何と、資産家の御曹司が、ミハエルに優勝を奪われた腹いせに、金で暴漢達を雇って教会を燃やさせたのだ。

驚愕するミラとミハエルだが、暴漢達は突然現れた黒服の男に射殺された。おそらく、口封じだろう。ミラは見つからないように隠れ、ミハエルを守りながら祈った。

 

【神様助けて! 神父様を! シスターを! 皆を助けて!!】

 

が、その祈りは届かず、消防が駆けつけ、消火を終えた教会を見るとソコにはーーーー真っ黒な焼死体となった皆がいた。ミラもミハエルも泣き崩れた。

警察に言っても精神を病んだ子供の妄言として聞き入れて貰えなかった。そして夜遅く。病院に入院していたミラは、自分達の病室に入ってきたあの時の黒服の男の他に、資産家の御曹司がいた。どうやら自分達の口も封じに来たようだが、来ることを予期していたミラはベッドの下に隠れており、隠し持っていたカッターで黒服の男の頸動脈を切って殺し、男の持っていたサイレンサー付きの拳銃を奪い、資産家の息子に向けた。

いつも自分達を馬鹿にし、ゴミでも見るような目で見下していたその御曹司は、尻餅を付いて涙や鼻水を垂れ流し、失禁しながら惨めに命乞いをした。

ミラは、こんな奴のせいで、皆は殺されたんだ! と、怒りのままに引き金を引こうとしたが、父親や母親に助けてと喚く無様な御曹司を見ると、コイツにも家族がいるんだと思い、警察に真実を伝えるよう約束させると、拳銃を下ろした。

が、その時、その御曹司はミラに飛びかかり、拳銃を落とさせると、ミラを顔を殴り、馬乗りになって、ミラの首を両手で締めた。

 

【お前らみたいな下賎の人間が、この僕に命令してんじゃねぇよ!!】

 

逆上し、殺されそうになるミラ。

 

【(神様・・・・! いや、そうか、神様なんて、いないんだ・・・・)】

 

また神に祈ろうとするミラ。しかし、彼女は気づいた、この世に神なんて、存在しないのだと。

死を受け入れそうになったミラだが、唐突に、プシュンっ! と、拳銃の銃声が鳴り響くと、御曹司の脳天から血が垂れ、そのまま力無く倒れ死んでいた。

ミラが息子を押し退けて辺りを見ると、ベッドの下に隠れさせていたミハエルが、銃口から煙を出している拳銃を握って、ガタガタと震えていた。

 

【ね、姉さん!!】

 

【ミハエル!】

 

泣きながら自分に抱きつく弟を抱き止めたミラ。二人の病室に、〈財団X〉の研究員が入ってきた。後で聞いてみると、御曹司の父親は〈財団X〉の下部会社であり、その資産家も息子には手を焼いていたとの事だ。ミラとミハエルは、〈財団X〉に引き取られ、特殊戦闘員として訓練をしていた。

ミラは何とかこなしていたが、ミハエルは身体が弱く、さらに心優しい性格だったので、殺しはまるで出来なかった。それだけでなく、『未知のウイルス』に身体を蝕まれていて、このままでは、処分されると思ったが、ヴァージル教授の実験の被検体となる事で、命を繋いだのだ。

そして今、宙に浮いていた光の繭が開きーーーーミラと同じプラチナブロンドの髪と、美しい赤い瞳に、美術品のような美麗な中性的な美少年、弟のミハエルが姿を表し、目を覚ます。

 

「姉、さん・・・・」

 

「ミハエル!」

 

「姉さん!ーーーーうっ!」

 

「ミハエル?」

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」

 

ミハエルが突然苦しみだし、漆黒の闇のオーラを放った。

ミラとヴァージル教授が驚愕する。

 

「ミハエル!?」

 

「な! まさか、『バットバイスタンプ』の悪魔かっ!?」

 

ヴァージル教授が驚くが、黒のオーラがミハエルの身体に纏わりつくと、黒のレザースーツのようになり、ミハエルの身体に着用した。

 

「ミ、ミハエル・・・・?」

 

「・・・・・・・・あぁん? ミハエルじゃねえよ、お姉様っ!!」

 

ミハエル?が、人差し指をミラに向けると、ソコから光線が発射され、ミラの身体をーーーー。

 

「危ないっ!」

 

が、直前にヴァージル教授がミラを突き飛ばすと、光線がヴァージル教授の左肩を貫いた。

 

「ぐぁっ!」

 

「教授っ!?」

 

「ふぅん、やるねぇ、教授先生♪」

 

痛みに悶えるヴァージル教授は起き上がり、ドライバーを腰に巻き付けると、『メガロドンバイスタンプ』を取り出した。

 

[メガロドン!]

 

「こんな結果になるとはな・・・・! しかし、ミハエルは返して貰おう!」

 

『メガロドンバイスタンプ』をドライバーに押し込むと、ヴァージル教授の姿が、『メガロドン・デッドマン』へと変貌した。

 

「へぇ~じゃあこっちも!」

 

ミハエルが歪んだ笑みを浮かべ、両手を広げると、影の中から無数の蝙蝠が出現し、身体を包み込むと、その姿を変貌させた。

蝙蝠のように突き出た耳、暗闇のように漆黒な身体、所々に蝙蝠の趣向がある姿、『バット・デッドマン』へと。

 

『ウォーミングアップくらいにはなってくださいよぉ? 教授先生♪』

 

『はぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

メガロドン・デッドマンとバット・デッドマンがぶつかり合う。

 

「・・・・・・・・・・・・ミハエル、何で・・・・?」

 

その様子を、ミラは愕然となるだけだった。

 




急展開した事態。この状況をリバイスはどうするのか!?


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悪魔VS悪魔

ーリバイスsideー

 

既に日が落ち始め、夕闇が世界を包んだ頃。

 

「ふん。余裕だ」

 

「つまらないな」

 

「・・・・俺っち活躍してないっ!!」

 

ストゥラオ・モスカの部隊を全滅させたリバイと雲雀。狩崎とリーゼントの男性、『草壁』を守っていたバイスは、活躍できなくて不満だった。

 

「さて、と。バイス、行くぞ!」

 

「あいよ!」

 

[イーグル!]

 

リバイは先ほど狩崎から貰った『イーグルバイスタンプ』を起動させると、

 

「Come on! イ・イ・イ・イーグル! Come on! イ・イ・イ・イーグル!」

 

「はぁっ!」

 

[バディアップ!]

 

ドライバーに押印し、セットした。

 

[荒ぶる! 高ぶる! 空駆け巡る! イーグル! お前の羽を数えろ!]

 

「(ふぅ~ん。『左翔太郎』と『フィリップ』か)」

 

雲雀はその姿に、『ハーフボイルド探偵』と『魔少年』の面影を見た。

〈仮面ライダーリバイス イーグルゲノム〉へと変身したリバイは、さらに操作した。

 

[リミックス! 必殺! ミラクル! グルグル! イーグル!]

 

「ありゃ? 俺っち身体が勝手に!?」

 

「お、おいバイス?」

 

バイスがリバイの肩車するように立ち上がると、リバイスは〈リバイスイーグル〉へと変形した。

 

ーーーーピュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

「・・・・この体勢、凄いイヤだな」

 

「俺っちはおもろいと思うけど?」

 

「ーーーー仕方ないか。狩崎さん、行くぞ!」

 

「ああ!」

 

リバイスが両手で狩崎を抱えると、飛翔し、目的の場所へと向かった。

 

「おっ先に失礼~!」

 

バイスが雲雀と草壁に言うと、道路の向こうに見えている湖畔の島へと向かった。

 

「哲。行くぞ」

 

「はい!」

 

雲雀も草壁と車に乗って、その場所へと向かった。

 

 

 

 

 

ーミラsideー

 

『はははははははははははははは!!』

 

『ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ!!』

 

ミラの弟、ミハエルが変身したバット・デッドマンとヴァージル教授が変身するメガロドン・デッドマンが交戦していた。

 

『貴様! 〈バットバイスタンプ〉に宿っていた悪魔かっ!?』

 

『そうさ! このボウヤの身体を使って出てきたんだよっ!』

 

『くっ、予想以上にコイツの力が強かったかっ!』

 

メガロドン・デッドマンは両手にヒレのような刃を出現させ、バット・デッドマンに切りかかる。

 

『はぁ!』

 

『甘い甘い♪』

 

が、バット・デッドマンは全身を蝙蝠に変化させその攻撃を回避すると、操作パネルに行き。

 

「「!!」」

 

『邪魔なんだよ』

 

その場にいた研究員達に向かって口を開くと、

 

『かっ!!!』

 

「きゃあああああああああああああ!!」

 

「っ!」

 

強烈な音波によって女性研究員はその威力に壁に叩きつけられ、男性研究員は寸でで回避し、バット・デッドマンから距離を取り、女性研究員に駆け寄ると、研究員は壁に叩きつけられた時に首の骨が折れたようで、息を引き取っていた。

 

『ふん。さて・・・・』

 

『っ! やめろーーーー!!』

 

メガロドン・デッドマンが操作パネルをいじるバット・デッドマンに両手から激流が発射する。

 

『おっと』

 

バット・デッドマンが回避すると、操作パネルに激流が当たり、バチバチと火花を散らせ、小さく爆発してしまった。

 

『っ! しまった!』

 

慌てるメガロドン・デッドマンは、床からせり上がり、ヴァージル夫人の入ったコールドスリープカプセルが現れ、冷凍解除される。

 

『お前の大事な大事な奥さん。もう死んでいるって言うのにこんな冷凍保存しちゃって・・・・』

 

『妻に手を出すなぁ!』

 

『女々しいなぁ!』

 

ザシュン!

 

メガロドン・デッドマンの叫びも虚しく、バット・デッドマンは、冷凍解除を終えたコールドスリープ装置を破壊した。

 

『『メディア』!!』

 

すぐにメガロドン・デッドマンは、カプセルの蓋を外し、妻である『メディア・ヴァージル』を抱き抱えて飛び退くと、装置が小さく爆発した。

 

『メディア・・・・』

 

植物状態から永遠の眠りについてしまった妻の頬を愛おしそうに撫でるーーーーが。

 

ビシュン!

 

『ぐはっ!』

 

バット・デッドマンが指先から放たれた小さな光の線、レーザーがメガロドン・デッドマンの腹部を貫き、苦悶の声をあげ、そのまま倒れる。

 

「き、教授・・・・!」

 

ミラは愕然と呟くと、バット・デッドマンはメガロドン・デッドマンのドライバーを引き抜き、『メガロドンバイスタンプ』を取り出し、ドライバーを握り潰した。

 

「く、うぅ・・・・」

 

変身が解除されたヴァージル教授は、そのまま血を流しながら倒れる。

 

『ふふふふ、メガロドンか。貰っておくぜ』

 

「・・・・・・・・ミハエル」

 

『ん? ああ、この身体のお姉様か?』

 

「ミハエルは、ソコに、あなたの中にいるの?」

 

『いるかもなぁ? で・も。自分の身体を良くしてくれようと頑張ってくれた教授を殺して、今はメソメソ泣いているんじゃないかなぁ! あははははははははははははははははは!!』

 

バット・デッドマンの高笑いを聞いて、ミラは拳をフルフルと震わしながら、ドライバーを装置し、バイスタンプとガイアメモリを持った。

 

「許さない・・・・! ミハエルの身体を、これ以上弄ばせないっ!!」

 

[コブラ!]

 

[アナコンダ!]

 

『コブラバイスタンプ』と『アナコンダガイアメモリ』を装填し、ミラは『コブラ・デッドマン』へと変貌した。

 

『ふっ!』

 

『はぁぁぁぁぁ・・・・はぁっ!!』

 

バット・デッドマンは背中から片方が蝙蝠の翼と片方が純白の天使の翼を広げ翔び、コブラ・デッドマンは身体を覆うほどオーラを纏い、オーラが巨大なコブラとなってバット・デッドマンに飛びかかる。

 

『シャァ! シャアアアア!!』

 

『くくくくくく』

 

巨大コブラは顎をあげ、牙から毒を滴り落としながらバット・デッドマンに噛みつこうと飛び掛かるが、バット・デッドマンは優雅に踊るように翔びながらその牙を避けていく。

 

『ウゥゥ・・・・カァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!』

 

『ジャァアアアアアアアアッ!?』

 

バット・デッドマンは巨大コブラの下に回り込み、特大の超音波の放つと、巨大コブラは天井に叩きつけられ、天井の一部に穴が開き、瓦礫が地面に落ちた。

 

『シュルルルルル・・・・ジャァアアアアアアアアっ!!』

 

地面に横たわった巨大コブラは、身体をしならせ、バネのように埋め力を溜めると、跳ねるような勢いでバット・デッドマンに牙を突き立てる。

が、寸前でバット・デッドマンが声を発した。

 

『良い準備運動になったぜ』

 

バット・デッドマンは両手を貫手にすると、ソコから光がまるで剣のように伸びると、巨大コブラを上顎と下顎を別つように斬り、そのまま突き進み、巨大コブラを真っ二つに斬り捨てた。

 

『あああああああああっ!!』

 

巨大コブラが消えると、胴体に切り傷を作ったコブラ・デッドマンが床に転がるように倒れた。

 

『う、うぅ、み、ミハ、エル・・・・!』

 

コブラ・デッドマンはその場で気を失い、ミラの姿に戻ると、ドライバーが火花を散らせ壊れ、ソコから無傷の『コブラバイスタンプ』とメモリブレイクされた『アナコンダガイアメモリ』が出てきた。

 

『・・・・・・・・』

 

『コブラバイスタンプ』を拾ったバット・デッドマンは、気を失ったミラに向けて、指先に光を集め、光線をミラの頭に向けて放とうとする。

が・・・・。

 

『ぐっ・・・・! こ、この、クソガキ・・・・!』

 

苦しそうに呻き声をあげ、指先の光が霧散した。しかし、すぐに収まった。

 

『はぁ、はぁ、はぁ・・・・まぁ良い。もうすぐヤツが来る。〈仮面ライダーリバイス〉などと名乗っているアイツが、間もなくここに来る・・・・! ははははははははは! あははははははははははは!!』

 

バット・デッドマンは身体を震わせながら、高笑いをあげていた。

 

「・・・・・・・・」

 

その状況を、研究員の青年は物陰に隠れながら、静観すると、コッソリとその場を離れた。

 

 

 

 

ーボンゴレsideー

 

ツナ達はストゥラオ・モスカの軍団を撃破させ、敵のアジトへ向かおうとしたが。

 

『っ!!』

 

ドドドドドドドドドドッ!!

 

全員が散開すると、自分達がいた地点に大量の小型ミサイルが撃たれ、爆裂を起こした。

 

「10代目! 奴等です!」

 

「あれが・・・・!」

 

ツナが目を向けると、メノア・ヴァージルとノノ、変身を解除したケイが立っていた。

 

「君が、メノア・ヴァージルか?」

 

「はじめまして、ネオボンゴレファミリーⅠ世<プリーモ> 沢田綱吉。シモンファミリーボス 古里炎真」

 

「君は・・・・いや、君達は、間違っている。死者を甦らせる方法なんて、人の領域を外れた技術だ」

 

「ふん。『奥方の姉』を生き返らせる手助けをしたあなたがソレを言うの?」

 

エンマの言葉をメノアは一笑する。

 

「まぁ、それをこの場で議論するつもりは無いわ。守護者はほぼ全員が揃っているし、こちらも『コブラ』と『バット』がいないけど、私達三人だけで十分だわ。お父様と私の研究で、〈NEVER〉の『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』はより完璧になる。そうすれば、有史以来数多の人間達が望んだ。『不老不死の身体』が手に入るのよ。そして私達は〈財団X〉すら手中に収める事もね!」

 

メノアがそう言った時、頭上を大きな鳥の影が通りすぎた。

ツナはその影に見覚えがあった。

 

「あれは・・・・!」

 

「あなたはもう会っているわよね? 悪魔を持って悪魔を制する〈仮面ライダー〉、〈リバイス〉。彼らの相手は『コブラ』と『バット』にして貰うわ。では、始めましょうか!」

 

[ジャッカル!]

 

[デスサイズ!]

 

[クロコダイル]

 

[ヘヴィーアームズ!]

 

[カマキリ!]

 

[フリージング!]

 

三人がそれぞれのバイスタンプとガイアメモリをドライバーに装置すると、その姿を変貌させた。

 

「(っ! あのスタンプは!?)」

 

「(・・・・・・・・)」

 

ツナとリボーンは、リボーンの帽子に隠してある『スタンプ』と似たアイテムを使ったメノア達に驚いた。

 

「・・・・リボーン。先にあの基地に行ってくれるか? あの〈仮面ライダー〉の事が気になるんだ」

 

「・・・・良いぞ」

 

ツナはリボーンに、先に基地に向かってくれと頼んだ。家庭教師として、生徒の側を離れるのはリボーンの本意ではないが、リボーン自身も〈仮面ライダーリバイス〉を見極めていたいと思っていたので、『形状記憶カメレオンのレオン』を小型ジェットスキーに変化させて、リバイスの後を追った。

 

『・・・・・・・・』

 

『構わないわ。先ずは彼等に、私達の力を見せてからよ!』

 

クロコダイル・デッドマンの意図を理解しているのか、ジャッカル・デッドマンはそう言って姿を消した。

 

『っ!』

 

「なっ!」

 

すると、ジャッカル・デッドマンは一瞬でツナの眼前に現れ、大鎌で首をかっ切ろうとする。

 

「ツナくん!」

 

ガキン!

 

と、その寸前でエンマが大鎌を殴り、ツナから離した。

 

「エンマ!」

 

「うん!」

 

『逃がさない』

 

二人が加速で距離を取ろうとするが、ジャッカル・デッドマンの加速力は二人に匹敵しているのか、ツナとエンマと加速しながら戦う。

 

「ボス!」

 

助けに行こうとするクロームの背後から、両手の鎌を構えたカマキリ・デッドマンが刃を振り下ろす。

 

「おっとぉ!」

 

が、ボンゴレギアを展開していたランボが間に入り、刃を防いだ。

 

「後ろから攻撃するなんて、少々ズルい子猫ちゃんだね」

 

『うふふ♪ ノノはあなたみたいな軟派な男の人、大嫌いなんですよ!』

 

ーーーーピキィィィィン!

 

「いぃっ!?」

 

カマキリ・デッドマンがそう叫ぶと、刃を受けた鎧が凍りつき、ランボの全身を凍らせた。

凍りついたランボを砕こうと力を込めるカマキリ・デッドマン。

 

「油断してんじゃねえアホ牛! 『フレイム・アロー』!」

 

だが、獄寺がシャワー状の『フレイム・アロー』を放ち、カマキリ・デッドマンは離れ、炎をランボに浴びせて、氷を溶かした。

 

「大丈夫?」

 

「は、はい・・・・かなり冷たい子猫ちゃんですね」

 

『アハッ♪ 大した事無さすぎですよぉ! ケイ! 派手にやっちゃいましょう!』

 

『・・・・・・・・』

 

カマキリ・デッドマンはクロコダイル・デッドマンの隣にまで退いてそう言うと、クロコダイル・デッドマンは、両手のガトリング砲と小型ミサイルを一斉に放った。

 

ガルルルルルルルルルルル!!

 

ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ! ドシュッ!

 

「ちっ、『嵐+晴れ フレイム・ランチャー』! 『SISTEMA C.A.I』!」

 

マシンガンモードの『フレイム・ランチャー』でミサイルを撃ち抜き、ガトリングの弾を『SISTEMA C.A.I』のシールドで防ぐ獄寺。

そして加速空間でジャッカル・デッドマンと戦うツナとエンマ。

 

『はぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

「ぐぅっ!」

 

「うぁっ!」

 

加速を解除し、地面に着地するツナとエンマは、目に見えて苦戦していた。

いくら本来の実力の半分とは言え、ツナとエンマを同時に相手して互角に渡り合うジャッカル・デッドマン。

 

「・・・・強いな、リミッター解除のなのは達以上だ」

 

「川西美春とは、レベルが違う・・・・」

 

『ふん。あんな下衆なサイコパス女と一緒にしないで欲しいわね。私達とあの女とじゃ、『覚悟』が違うのよ!』

 

ジャッカル・デッドマンは、大鎌を振って、二人に迫った。

 

 

 

ーリバイスsideー

 

すっかり日が落ち、夜となり、湖畔の島に到着したリバイスイーグルは、島の中央に建てられたドーム状の建物の近くに狩崎を下ろし、リミックスを解除すると、外を警戒していた警備兵達と交戦しようとした。

 

[マスカレイド!]

 

すると、警備兵達が『ガイアメモリ』を首に入れて、黒いスーツを着用し、胴体の外見は人間と変わらないが、頭部だけは、骨とムカデをイメージした仮面の形状に変化した〈マスカレイド・ドーパント〉になった。

 

「『ガイアメモリ』。どうやら〈財団X〉が関わっているのは本当のようだ・・・・バイス、行くぞ!」

 

「あいよ!」

 

二人はマスカレイド・ドーパントと交戦した。が、数は多いだけで所詮雑兵。それでも十数分はかかったが、全滅させた。

再びリバイスイーグルになり、狩崎を抱えて基地の真上に行くと、ちょうどリバイスイーグルが入れる穴があり、ソコから中に入った。

 

「ありゃありゃ? 何これ凄い荒らされてンじゃん?」

 

「この中だけ台風でも起こったかのようだね?」

 

「・・・・・・・・・・・・っ!」

 

バイスと狩崎が辺りを見回していると、リバイも少し離れた位置に倒れているミラを見つけた。

リバイはミラに近づくと。

 

「・・・・・・・・おい」

 

腰を下ろし、ミラの身体を揺すった。しかし、ミラは返答しなかった。苛立たしげにリバイはミラの胸ぐらを掴んで乱暴に揺する。

 

「おい! 起きろ! ゆいを! ゆいを何処に連れていったっ!!」

 

「ちょっ、輝二落ち着いて!」

 

「っ! リベンジボーイ、そのガールを締め上げるのは後にした方が良い!」

 

「ああっ!?」

 

憤るリバイをバイスが抑え、狩崎の言葉に後ろを振り向いたリバイは、空中に浮遊するバット・デッドマンを睨んだ。

 

『随分ご立腹だなぁ? 10年近くも連絡もしなかった妹がそんなに大事かぁ?』

 

「クンクン・・・・輝二、アイツ悪魔だぜ」

 

「ほぉ、バイス以外にも自意識を持った悪魔の個体が存在していたとはねぇ』

 

「誰だ、お前?」

 

『フッフフフフフフ。俺が誰なのか、それは後で良いだろう。さぁ、死ね! 〈仮面ライダーリバイス〉! 嵐山輝二っ!!』

 

バット・デッドマンが手のひらに光を集め、幾つもの光弾をリバイに向かって放った。

 

「くっ!」

 

「うわわわわわわ!!」

 

リバイはミラを抱え、バイスは狩崎を連れて回避する。

 

『はははははははははははははは!!』

 

バット・デッドマンは高笑いをあげながら、光弾を次々と発射していく。

 

「ちょっとアイツ、めちゃめちゃ何ですけど!?」

 

「ちっ、こんなのに構っている暇はねぇ! ゆいを早く見つけないと・・・・ん?」

 

リバイの視界の端に、隣り合わせで横たわる二人の男女がいた。

そして、天井の一部が崩れ落ち、二人に向かっていく。

 

「ーーーーちぃっ! うぉらぁっ!!」

 

リバイが回転蹴りをするように脚を振るうと、緑色と紫色の旋風が巻き起こり、瓦礫を吹き飛ばした。

 

「ふう・・・・。面倒な相手だ。狩崎さん、この女を・・・・」

 

「ああ」

 

「うっ・・・・!」

 

と、ソコで、ミラが目を覚ました。

 

「っ・・・・こ、輝二・・・・」

 

「おや、目を覚ましたかね?」

 

「・・・・おい。あれは何だ?」

 

リバイの感情の籠っていない声に、少し息を詰まらせるミラは、その問いに答えた。

 

「・・・・あれは、私の弟ーーーー『ミハエル・フォーミュ』の身体を、『バットバイスタンプ』に宿る悪魔が憑りついて、『エンジェルガイアメモリ』の力をも使う悪魔よ」

 

「弟さんなの? 随分とハイになちゃっているようだけど?」

 

「ふむ。“バイスタンプに宿る悪魔”、か・・・・」

 

「ゆいは何処だ?」

 

「・・・・この研究室から離れた独房で眠っているわ。害は与えていない」

 

「そうか。じゃあ、ヤツを片付けたら案内してもらうぞーーーー“ミランダ・フォーミュ”」

 

「っっーーーーえぇ」

 

仮面越しから伝わる、数時間前まで、確かにあった優しさと温かさが欠片もない、氷よりも冷たい声に、ミラは一瞬涙が流れそうになったが、輝二の気持ちが分かるのか、顔を少しうつむかせ、前髪で目元を隠しながら頷いた。

 

『俺を前にして妹の心配とは、余裕だな?』

 

「っ!!」

 

声に振り向くと、眼前に現れたバット・デッドマンが指先から光の線、レーザーを放った。

 

「ーーーーぐぉっ!」

 

「輝二ーーーー!!」

 

「リベンジボーイ!」

 

「っっ!!」

 

寸前で回避したリバイだが、脇腹を貫通し、ソコから血がドクドクと流れる。

 

『あっはははははははははははははは!! 10年近くも会っていない妹なんかに気を取られているからそうなるんだよっ!!』

 

「ぅおっ!」

 

「おっとぉ!」

 

バット・デッドマンが哄笑をあげ、リバイは回し蹴りを繰り出すが避けられ、バット・デッドマンは空中に引いた。狩崎とミラを退かせたバイスが駆け寄る。

 

「輝二っ!」

 

「くぅ・・・・やるぞ、バイス・・・・!」

 

「お、おぉ!」

 

[リミックス! 必殺! ミラクル! グルグル! イーグル!]

 

三度リバイスイーグルへとリミックスした二人が飛翔すると、

 

『はっ! 空中戦かっ!? 受けてやるぜぇ!』

 

バット・デッドマンも翼を羽ばたかせ、リバイスイーグルを追う。

 

ーーーーピュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 

『はぁあああああああああああああっ!!』

 

空中で何度も激しくぶつかり合うリバイスイーグルとバット・デッドマン。狭い空間で高速での衝撃は風圧と衝撃波はあまりに撒き散らした。

 

「うわっ!」

 

「うっ・・・・!」

 

狩崎とミラが吹き飛び、壁に叩きつけられ気を失う。

そしてーーーー。

 

『カァァァァァァァッ!!』

 

ーーーーピュゥゥゥゥゥゥッ!!

 

「「うああっ!!」」

 

バット・デッドマンの口から発された超音波の衝撃波によって、リバイスイーグルは地面に叩きつけられ、リミックスを解除してしまう。

 

『ククククククク』

 

「ちょっと! コイツ強すぎじゃね!?」

 

「ちっ・・・・!」

 

『ほらほら踊ってみるかっ!?』

 

バット・デッドマンは両手から光の弾丸を次々また、と放ち始める。

 

「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

 

「のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

放たれ続ける光弾から逃げる二人だが、リバイが脇腹の傷が痛みだし、仮面のクラッシャーから、血を吹き出す。

 

「ごはっ!」

 

「輝二!!」

 

『(ニィッ!) 貰ったぁっ!!』

 

「ぐぁあああああああああああああああっ!!!」

 

バット・デッドマンの光弾がリバイの身体に大量に叩きつけられ、リバイは変身が解除され、ゆっくりと倒れたーーーー。

 

「あっ・・・・輝、二・・・・!」

 

バイスの姿が消えるーーーー。

 

『ふふふふ、ははははは、あーはっははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっっ!!!』

 

衣服はボロボロで、夥しい血を流しながら倒れた輝二を見下ろし、バット・デッドマンが高笑いをあげるのであった。




主人公がやられた!? どうなる次回!


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悪魔の手を取った理由

今回、この事件の元凶が登場。


ーリボーンsideー

 

「(っ、あの女は・・・・)」

 

リバイスがバット・デッドマンと交戦する前に時間は遡り。

リボーンがリバイスを追って、湖畔の島に辿りつくと、中心に置かれ、岩山に囲まれていたドーム型の基地が姿を現した。

そして、その基地に向かって〈財団X〉の白スーツを着た女性が、身体を引きずるように向かっていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・!」

 

先ほどツナに倒された川西美春だった。

リボーンは気配を消して後をつけると、ドーム型の基地の正門らしき場所に到着した。その時ーーーー。

 

『ぐぅああああっ!!』

 

「「っ!」」

 

正門近くの岩山の上からマスカレイド・ドーパントが一体落ちてきて、変身が解除されると、警備兵らしき男性が倒れた。

リボーンがチラッと上を見ると、他のマスカレイド・ドーパント達と交戦する〈仮面ライダーリバイス〉の姿があった。

どうやら警備兵と交戦しているようだ。川西美春に視線を戻すと、川西美春は倒れた警備兵に近づき、まだ意識があり呻き声をあげる彼の上体を起こしそしてーーーー。

 

「・・・・・・・・!」

 

「かっ!?」

 

「(っ!)」

 

何と、隠し持っていた小さなナイフで、警備兵の首の頸動脈をかっ切って殺害した。

川西美春はそれに顔色一つ変えず、警備兵の懐から拳銃を抜き取り、残弾等を確認し終えると用済みと言わんばかりに警備兵をゴミのように捨て、拳銃を構えながら基地の中に入っていった。

 

「(・・・・・・・・)」

 

リボーンも警戒心を高め、レオンをサイレンサー付きの拳銃に変身させるとソッと基地に入ったその時ーーーー。

 

「っ!」

 

背後から怪しい気配を感じ、銃口をソイツに向けた。

 

「お前は・・・・」

 

「クフフフ」

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

そして現在。

 

「それで、ソコでこの基地に潜入していた『六道骸』と合流したって訳か?」

 

「ああ」

 

リバイ(レックスゲノム)がミラに肩を貸しながら、すっかり戦いで電源が落ちたのか、真っ暗になった通路を先行するリボーンと、男性研究員(先ほどバット・デッドマンから逃げた人物)に幻術で変身していた、パイナップルのような特徴的な髪型に端正な顔立ちをした長身の男性。手に三叉矛を持ち、瞳はオッドアイで、片方の目に漢字の『六』となった、全身から妖しく危険な雰囲気溢れる青年、『ネオボンゴレファミリー 霧の守護者 六道骸』を見据える。

 

「なぁなぁ、骸さんよぉ、あの蝙蝠野郎追ってこねぇかなぁ?」

 

「クフフフ。今は僕の幻覚で幻のあなた方との闘いに夢中になっているでしょう。暫くは気づきません」

 

「いやはや、幻術とは便利だねぇ~」

 

ヴァージル夫人を抱えるバイスと、腹部を引き千切った白衣で包帯代わりに結んだヴァージル教授を抱える狩崎が骸の幻術に感心したような声をあげる。

バット・デッドマンがリバイの脇腹をレーザーで貫こうとしたが、そのレーザーはリバイの脇腹をギリギリ逸らし、床を貫通した。

しかも、バット・デッドマンはいきなり虚空に話していると、何やら勝手に喋って動き回っていたのだ。訝しそうにしていた一同をリボーンが誘導して、ゆいが監禁されている独房へと向かっていった。

 

「・・・・何故俺達に協力する? 六道骸」

 

「・・・・・・・・」

 

「確かに、君は裏社会ではかなり名が通った悪党だ。そんな君が何のメリット無しに協力するのは、何か可笑しいと思うねぇ」

 

輝二の言葉に骸は笑みを浮かべたまま沈黙し、狩崎も眉をひそめながら聞いてきた。

 

「クフフフ。まぁそんなに警戒しなくても良いですよ。僕の目的、ヴァージル教授の研究ーーーーと言うよりも、〈NEVER〉の『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』を抹消する事ですから」

 

「〈NEVER〉の『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』? 確か、死者蘇生の技術とか言われているあれか?」

 

「成る程。〈財団X〉が秘密裏に盗み出し、それをヴァージル教授達に完済しようとしたと言う訳か」

 

「そ・・・・その、通り、だ・・・・!」

 

「ヴァージル教授・・・・」

 

漸く意識が回復したヴァージル教授が息も絶え絶えながら答えた。

 

「私の妻を、メディアを蝕んだ『新種のウィルス』、れと同じ、『ウィルス』に感染した・・・・ミハエルを助ける為に、私は悪魔の強靭な肉体と、『天使』の記憶を宿すガイアメモリ、そして・・・・『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』を用いて、人類を『死』と言う、科学も魔法も覆せない運命を越えようと考えた・・・・しかし、結果はこの様だ・・・・」

 

「『死』を越える。それは人類の夢の一つですが。〈財団X〉のような僕の大嫌いな組織がそれを得るのは、面白くなかったので、僕が自ら抹消しようと思っていたのですよ」

 

ヴァージル教授の言葉に、骸が続いた。

骸自身。幼い頃、自分の所属するマフィアによって人体実験のモルモットにされていた事があった。それ故に、〈財団X〉のような組織に嫌悪感を抱いたのかも知れない。

 

「他の奴らはどうした骸」

 

「・・・・最近また妙な動きを見せている〈ZAIAエンタープライズ〉の監視をしていますよ」

 

「〈ZAIAエンタープライズ〉か・・・・本社のあるアメリカの方だな」

 

「ええ。まぁそれは今はどうでも良いでしょう。着きましたよ」

 

骸が壁に設られた電流の檻が張られた独房に到着し、壁に付けられた操作盤を操作すると、電流が消えて、その中のベッドに横たわる、七瀬ゆいの姿があった。

 

「っ! ゆい!!」

 

ミラを下ろしたリバイはすぐに駆け寄り、眠っているゆいの頬に手を当てる。

 

「・・・・大丈夫、そうだな・・・・良かったぁ・・・・」

 

ホッとしたように息を吐いたリバイに、ミラが話しかけた。

 

「・・・・ごめんなさい輝二、私は・・・・」

 

「待ってくれ、ミラ・・・・」

 

「教授・・・・」

 

「リバイス、いや、嵐山輝二・・・・ミラは悪くない、君を連れてくる為に、私がさせた事だ」

 

「あ?」

 

ヴァージル教授が、話し始める。

 

「全ては、私の妻、メディアを蘇られたいと考えた、私の浅はかさから起こった事だ・・・・」

 

「・・・・どういう事だ?」

 

「私は、妻の身体を治したかった、それが私の使命だった。娘のメノアも、そんな私の想いを理解してくれて、研究を続けた・・・・しかし、ある日謎のウイルスが妻の身体を蝕み、私の持てる知識や、あらゆる医療を試したが・・・・妻の身体は良くならず、結局妻は植物状態となってしまった・・・・絶望に暮れる私達親子の前に、以前から勧誘をしていた、〈財団X〉から、『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』の提供をする代わりに、財団に所属しろ、と言われた・・・・」

 

「『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』・・・・確か、死者蘇生による不死身の兵隊を作ろうとした、〈財団X〉の非人道的計画の技術だったね?」

 

狩崎の問いにヴァージル教授は頷く。

 

「〈財団X〉の目論みは分かっていた。しかし、それでも、私は・・・・私達親子は、妻を取り戻したく悪魔の手を握ってしまった・・・・! そして私は、悪魔の強靭の肉体と人体を科学的に融合させようと研究を重ねた・・・・。『不死の技術』。『悪魔の肉体』。そして『天使の記憶』。これらによって新たな人類の進化を考えていた・・・・!」

 

「あのバット・デッドマンを見るに、失敗したって見るべきだろうな」

 

「そうだ。失敗してしまった、強力な怪物を生み出してしまった・・・・!」

 

「・・・・ミランダ・フォーミュ。お前と弟はどうして〈財団X〉に?」

 

「ーーーー数年前、弟のミハエルに絵画コンテストで惨敗した資産家の御曹司が、腹いせに私達の住んでいた教会の孤児院を燃やし、私達姉弟以外を殺した。生き残った私達姉弟を始末しようとしたのを、私達は逆に殺した。その時、〈財団X〉に見つかり私達は財団に保護され、戦闘員として訓練を積んでいった。だけど、ミハエルは教授の奥様と同じウイルスに侵されたの」

 

ミラは、ポツポツと自分と弟の事を話す。

 

「私には、ミハエルしかいない・・・・! 両親を失って、孤児院の家族の皆まで失って、私にはもうミハエルしかいなかった・・・・! 例えそれが悪魔の手だったとしても私は戦った・・・・! どんな時でもミハエルがいてくれた・・・・!だから、人殺しをしていても耐えられる事ができた・・・・! ミハエルのいない世界なんて・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

リバイは、苦しみや悲しみを絞り出すようなミラの言葉を黙って聞いていた。

そして次は、リボーンが問いかける。

 

「まさか、外でツナ達と戦っているメノア・ヴァージル達にも、理由があるのか?」

 

「・・・・ええ。ノノはーーーー国の内戦によって両親が殺され、家族を殺した軍人五人をたった一人で惨殺したと言う事で〈財団X〉にスカウトされた。

ケイはーーーーある国のエージェントとして危険な任務をこなしてきた。だけど、上層部の一人がテロリストに情報を売っていた事実を知った事でその人物の嵌められ、国家反逆罪の汚名を着せられ行き場を無くした所を〈財団X〉にスカウトされた・・・・」

 

「私達の娘ーーーーメノアも、私が〈財団X〉に入る事を止めようとした、婚約者であった助手を手にかけた。その罪悪感と自責の念が心を蝕み、実験でミスを起こし、事故が起きて死にかけたのを、私がまだ研究中だった『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』で、生き返らせたのだ・・・・!」

 

今現在ツナ達と交戦している三人にも、それぞれの過去があった。

 

「実験は失敗した事をお前の娘達に教えて、戦いを終わらせられるか?」

 

リボーンの言葉に、ヴァージル教授は首を横に振った。

 

「・・・・いや、〈財団X〉にとって、君達ネオボンゴレファミリーとシモンファミリーは目障りな存在とされている。実験が失敗した以上、せめて君達を始末しなければ、我々に生き残る手段は・・・・」

 

「だったら、ネオボンゴレファミリーに保護してもらえば良いんじゃないか?」

 

「え?」

 

リバイが言った言葉に、ヴァージル教授は目を丸くした。

 

「ネオボンゴレファミリーボスは、懐の広い人物と聞いた事がある。今から土下座でも何でもすれば、命を取る事はしないと思うし。アンタらの知っている限りの〈財団X〉に関する情報を提供する事を見返りにすれば、ある程度の保護をされるかも知れないだろう」

 

「そんな、事が・・・・」

 

「そこの子供(?)くん。ネオボンゴレファミリーは彼らを始末に来たのか?」

 

「・・・・いや、俺らは〈財団X〉がまた面倒事を起こそうとしていると言う情報を掴んで、調査も兼ねてここに来たんだ。リバイの提案だが、確かに俺達〈ネオボンゴレファミリー〉にとって、〈財団X〉は鬱陶しい連中だからな。その情報が手に入るのは魅力的だ」

 

「じゃあ・・・・私達を」

 

「まぁ俺はネオボンゴレボスのかてきょーだからな。話は通しておいてやる」

 

「「っ!」」

 

ヴァージル教授とミラが笑みを浮かべる。

 

「・・・・・・・・」

 

リバイはゆいを抱き上げると、ミラが声を発した。

 

「輝二。何故私達の事を・・・・」

 

「もしも・・・・」

 

「?」

 

「もしも・・・・俺が手にしていたのが、〈仮面ライダー〉ではなく、〈財団X〉だったとしたら、お前と同じになっていたかも知れない、って思ったからかな」

 

「輝二・・・・」

 

「正直、ゆいを巻き込んだ事に関しては、未だに許していない。だが、見捨てる理由も無いしな」

 

「・・・・・・・・」

 

リバイの言葉にミラは再び顔を少し俯いてしまうが、意を決して声を発そうとしたーーーーその瞬間。

 

「「「っ!」」」

 

リバイとリボーン、骸が後方から怪しい気配を感じて振り向くと同時にーーーー。

 

ダァンッ! ダァンッ! ダァンッ!ーーーー。

 

「・・・・・・・・かはっ!」

 

「あ、あぁ・・・・!」

 

「くぅ・・・・!」

 

『っっ!!』

 

銃声が三つ鳴り響くと同時に、ヴァージル教授の心臓近くから血が吹き出し、ミラの右肩から血が流れ、そしてーーーーリボーンが振り向き際に撃った銃声が、二人は撃った相手に当たった。

暗がりの中から現れたのは、川西美春が左肩を負傷しながら拳銃を構えていた。

 

「川西、美春・・・・!」

 

「川西美春!? あの殺人鬼教師として全国指名手配されている!?」

 

負傷したミラが名を呟くと、狩崎が驚いたように声をあげた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・やはり、監視役、だったか・・・・!」

 

唯でさえ負傷して血を大量に流していたヴァージル教授は更なる負傷でもはや虫の息も同然になっていた。

川西美春は負傷していても、その顔は歪んだ笑みを浮かべていた。

 

「ええそうですよぉ。財団から、あなた方が裏切る素振りを見せたら、すぐに始末するように言われていますから。あ、研究データは貰っておきましたので、あしからず」

 

悪びれもなく言う川西美春に、ゆいを優しく下ろしたリバイと狩崎達を守るように立つバイス、リボーンと骸が構える。

 

「あら? 私は戦う気は有りませんよ。『探し物』が有りますし・・・・」

 

「『探し物』とは、これの事ですか?」

 

骸が懐から、大きめの銀色のUSBメモリ、『Wのイニシャルのガイアメモリ』を取り出した。

それを見て、川西美春が僅かに眉を動かした。

 

「ええ。それですよ。私のガイアメモリを返して下さい」

 

「クフフフフフ・・・・」

 

骸は川西美春の声に耳を傾けず、ガイアメモリを起動させた。

 

[ウイルス!]

 

と、音声が鳴り響くと、川西美春の舌に、ガイアメモリを挿入する『生体コネクタ』が浮かび上がった。

 

「あらあら」

 

「『ウイルスガイアメモリ』。あらゆる病原菌の記憶を宿すメモリで適合者が使えば、現代医学でも対処できない病原菌を作り上げる事ができる、ですね?」

 

「よくご存知で」

 

「知り合いにメモリに詳しい人間がいるので」

 

骸と川西美春の会話から、何人かが察した。

 

「現代医学でも対処できない病原菌・・・・まさか!?」

 

「ええそうよミラさん。あなたの弟とミハエルくん、ヴァージル教授の奥様であるメディアさんの身体を蝕んでいたウイルスはーーーー私が作ったの!」

 

「「っっ!!」」

 

川西美春が笑みを浮かべたまま言った言葉に、ヴァージル教授とミラは驚愕に目を見開いた。

 

「な、何故・・・・!?」

 

「教授。あなたは〈財団X〉からの勧誘を長い事断っていた。それで財団は私に、“多少強引でも教授を引き込め”、と言う指令が下りました。まぁ私としても、新しく作ったウイルスの実験もしたかったですから、ちょうど良かったんですけどね。未完成のウイルスを教授の奥様で試させて頂きました♪」

 

「何、だと・・・・!?」

 

「じゃぁ、ミハエルも病に犯したの・・・・!?」

 

「ミハエルくんは心優しい子でした。だから、あのまま財団の戦闘要員として仕事をしていても、いずれ限界が来ると思いまして、教授の奥様の時は未完成だったウイルスが完成したので、その実験として使わせていただきましたよ♪」

 

悪びれもなく、まるで出来の悪い生徒に根気よく教導する教師のような口調で、残酷な真実を話した。

ヴァージル教授とミラの身体が、小刻みに震える。

 

「・・・・よくも・・・・! よくも教授の奥さんを・・・・! よくもミハエルをーーーー!!」

 

ミラが川西美春に向かって駆け出した。

その時。

 

グワシャァァァァァァァァァン!!!

 

「あああああああああああ!!」

 

「っ!」

 

「ミラ!!」

 

「それでは、さようなら♪」

 

突然通路の壁が吹き飛ぶと、ミラの身体も吹き飛ぶがリバイが受け止め、ヴァージル教授の近くに連れていった。

破壊による煙に紛れながら、川西美春が姿を消し、そして壁の中からーーーー。

 

『ーーーーチャチな幻術なんてやりやがって・・・・!』

 

何と、バット・デッドマンが現れた。

 

「ちぃっ」

 

『さぁ今度こそ始めようぜぇ!』

 

吠えるバット・デッドマンを見据えながら、

 

「・・・・ミランダ・フォーミュ」

 

「っ、輝二・・・・」

 

「どうしたい? お前の弟をどうしたい?」

 

「・・・・・・・・」

 

ミラはバット・デッドマンを見つめ、その姿がミハエルと重なると、小さく嗚咽を漏らす。

 

「・・・・お願い、輝二・・・・こんな事、私が頼める義理も資格もないけど・・・・弟を、ミハエルを助けてっ!!」

 

「・・・・その依頼、引き受けた!」

 

リバイはゆっくりとミラから離れ、バット・デッドマンに向かう。その途中で、バイスが話しかけた。

 

「随分優しいじゃん? 妹ちゃん巻き込んだから、ぶち殺すのかと思ったけど?」

 

「・・・・あの女に会ったら、一発殴ってやろうかと思ってた・・・・だが・・・・」

 

リバイは、輝二はこう考えた。もしも、自分がミラの立場だったら、手にした物が〈仮面ライダー〉ではなく〈財団X〉だったら、自分はミラと違う事が出来たか? と、考えていた。

何故ミラに惹かれたのか今分かった。彼女は自分と似ていたのだ。まるで鏡に映った自分を見ているような感覚があった。

そしてそれはーーーーミラもだったのだ。

 

「ま。輝二の好きなようにやればいいんじゃね?」

 

「バイス・・・・」

 

「ウダウダ考えたってどうしようもないだろ? 輝二は輝二のやりたいようにやればいいんだよ。俺っちは、輝二の悪魔だぜ? いわばもう一人の輝二だ。だから、力貸すぜ!」

 

「ふっ、ありがとよ」

 

リバイスはバット・デッドマンと対峙する。

 

「おい蝙蝠野郎」

 

『あ?』

 

「ミランダ・フォーミュの弟、返してもらうぜ!」

 

「俺っち達に喧嘩売った事! マジで後悔させちゃうもんねっ!!」

 

リバイスがいつもの腕タッチをしてお互いに目配せしてた。

 

「行くぜ輝二っ!!」

 

「ああ! 燃えてきたぜ!!」

 

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」」

 

『はぁああっ!!』

 

リバイスがバット・デッドマンに立ち向かった。

 

 

 

 

 

ーリボーンsideー

 

「どう思いますか、元アルコバレーノ?」

 

「取り敢えず俺達は、負傷した二人を連れて、ここから離脱するぞ。狩崎、手伝え」

 

「オーケー」

 

リボーンがミラを支え、ゆいを背負った狩崎が、再びヴァージル教授に肩を貸す、骸がヴァージル夫人を抱えるとこの場から離れようとした。

そしてリボーンは、バット・デッドマンと交戦するリバイスを見据えた。

 

「(似ているなーーーーアイツらに)」

 

リボーンはリバイスの姿に、“歴代仮面ライダー”の面影が重なった。




次回、激戦。


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BADな脅威、バットの猛威

今回、オリジナルゲノムが登場します!


ーリバイスsideー

 

「うぉおおおおおおっ!!」

 

『ちょわーーーーーっ!!』

 

リバイスが拳や蹴りをバット・デッドマンに叩きつけるが、バット・デッドマンは悠然と立ちながら、それらをさばいていく。

 

「うぉらっ!」

 

リバイが拳をバット・デッドマンの横面に叩き込む。が、バット・デッドマンはギロリと睨み、

 

「なにっ!」

 

『はっはぁっ!』

 

リバイの拳を握って腹部に拳を何度も叩き込む。

 

「がはっ!」

 

「輝二! この野郎!」

 

バイスがドロップキックをバット・デッドマンに繰り出す寸前、バット・デッドマンはリバイを放すとキックをお見舞いしたバイスの両足を掴み、壁に叩きつけた。

 

『うらぁっ!』

 

「ぎょはっ!」

 

「バイス!ーーーーうぉっ!? あぁっ!」

 

バイスに駆け寄ろうとするリバイの首を片手で掴んだバット・デッドマンは、そのままバイスの隣に叩きつけた。

 

「うぅ・・・・!」

 

「輝二うぉぁっ!」

 

『フッフッフッフッ・・・・おらぁっ!』

 

助けようとしたバイスを空いているもう片方の手で首を掴んだバット・デッドマンは、そのまま二人の頭を壁に叩きつける。

 

「「っっ!!!」」

 

そして二人の身体を持ち上げ、少し壁から離し、再び壁に思いっきり叩きつけると、壁が破壊された。

 

「「ああああっ!」」

 

『イヤッホォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!』

 

バット・デッドマンは二人を持ち上げたまま突き進み、次々と壁に叩きつけていった。

 

「ぐぉっ! この! がっ! や! ぐっ! ろう!!」

 

「この! いでっ! この! あだっ! こんのぉ! あたたたたっ!」

 

壁に叩きつけられながも二人はバット・デッドマンの手から逃れようと抗うが、凄まじい握力で握られておりほどけなかった。

 

『はぁああああっ!!』

 

「「ぐぅああああっ!!」」

 

そして一番分厚そうな壁に叩きつけられたかと思うと、夜風の感触と星光が見えた。どうやら遂に外壁まで突き抜けたらしい。

 

『お空のドライブと洒落こもうぜ!!』

 

「「っ!」」

 

バット・デッドマンは二人を持ち上げ、片方が漆黒と、もう片方が純白の翼を広げはためかせると、上空へと飛んでいく。

 

「うおおおおおおおおおおっ!」

 

「何なのよーーーーーーーー!」

 

リバイスの悲鳴が、夜空に響いた。

 

 

 

 

ーボンゴレsideー

 

そしてツナ達も三体のデッドマンに苦戦を強いられていた。

 

「はぁっ!」

 

「たぁっ!」

 

『ッ!』

 

高速で動くツナとエンマに追い付くジャッカル・デッドマンは、大鎌に二人の拳を叩きつけれた。

 

「ツナくん!」

 

「よし!」

 

エンマとツナは渾身を込めた拳をジャッカル・デッドマンに叩きつけた。

がーーーー。

 

『・・・・残念ね!』

 

何と、ジャッカル・デッドマンの両手が鎌となって、二人の拳の甲で刃を受け止めた。

 

「っ!?」

 

「手から鎌がっ!?」

 

『私のガイアメモリは『大鎌』の記憶を宿す『デスサイズ』! あらゆる鎌を生み出すのよ!』

 

ジャッカル・デッドマンはそのまま腕力で二人を押し飛ばした。

 

「「なぁっ!?」」

 

『フゥゥゥゥ・・・・はぁああああっ!!』

 

「「っ!!! うおあああああああああっ!!!」」

 

ジャッカル・デッドマンは足にエネルギーを集めると、振り上げた足が鎌状のエネルギーの刃を纏い、横蹴りで二人を切り裂こうとする。

ギリギリと防いだツナとエンマだが、技の威力に負け、近く森の木々を次々とへし折りながら吹き飛んだ。

そして獄寺達はーーーー。

 

『・・・・・・・・・・・・!!』

 

クロコダイル・デッドマンが両手・両肩の装備を斉射するが、獄寺とランボがSISTEMA C.A.Iのシールドと電磁フィールドで防いでいた。

 

『たぁっ!』

 

そしてカマキリ・デッドマンと戦っていた山本と了平とクロームは両手に持った鎌から冷気を纏う刃を飛ばされ、それを回避すると、地面に当たった刃が氷を張り巡らしていく。

 

「おっとぉ!」

 

「極限に冷えるな・・・・!」

 

「っ」

 

『あはははは! やはり私達の敵ではありませんねぇ!』

 

「あ、あなた達、何故ここまでするの? まだ年若いのに、〈財団X〉の元で殺人に手を染めるなんて・・・・!」

 

クロームがそう言うと、哄笑をあげていたカマキリ・デッドマンは、ピクリと反応して、冷淡に答える。

 

『はぁ? 何言ってるんですか? 私達はもう、『怪物』なんですよ。『怪物』が人間のふりをして生きていける訳無いでしょう?ーーーー綺麗事をほざくなぁっ!!』

 

カマキリ・デッドマンは鎌を地面に突き刺すと、巨大な霜柱が隆起していき、クローム達へと向かっていく。

が、クロームを抱き抱えた山本と了平が空に飛んで回避する。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「ぐぅああああっ!!」

 

「のぉぉぉぉ! 凄いGぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

上空に急上昇する勢いで、身体中の血液が下に行き、危うく意識がブラックアウトしそうになるリバイと騒ぎ出すバイス。

と、そこで雲の上にまで上昇したバット・デッドマン。

 

「ーーーーかっは!」

 

「ぐぅ・・・・!」

 

下に行っていた血液が戻り、朦朧とする意識を元に戻そうと頭を振るリバイス。

しかしーーーー。

 

『次は下だぁ!』

 

と、バット・デッドマンは下へと急降下した。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「ノォォォォォォォォォォォ!」

 

再び意識がブラックアウトしそうになるのを耐えていると。

 

『うぉおおおおおおおおおおお!!』

 

「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

ーーーーザバァァァァァァァァンン!!

 

バット・デッドマンは急降下しながら回転すると、湖に入り込んだ。

 

「ぐばぁっ! ああああああああああああああっ!!」

 

「がぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼっ!!」

 

『(ニィッ!)』

 

上空1000メートルから湖に叩きつけられ、さらに十数秒ほど水の中を進むと、水中から再び空に戻る。

 

「がはぁっ! はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!・・・・」

 

「ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ!・・・・」

 

『ひゃぁああああああああああああっ!!』

 

「「うぉああああっ!!」」

 

バット・デッドマンは力を込めて、リバイスの二人の地面に向けて投げ飛ばした。

 

ーーーードガァァァァァァァァァァンン!!

 

地面を削りながら落下するリバイスの二人。

 

「ば、バイス・・・・うぅぅっ!!」

 

「め、目が回るし、水攻めにあうし、身体中が痛い、し・・・・あっ」

 

バイスがそう言うと、リバイは過剰ダメージにより、変身が強制的に解除され、バイスも輝二の中に戻った。

 

「くっ、くそっ・・・・!」

 

「っ! 君は・・・・!」

 

「ぐっ・・・・うぅっ、あ、アンタは・・・・!」

 

と、ソコでジャッカル・デッドマン達と交戦していたネオボンゴレファミリーとシモンファミリーボスの近くに落下したようだった。

 

『おいおい、面白い事になってるなぁ?』

 

『っ! 蝙蝠のデッドマン・・・・まさか、ミハエル、なの?』

 

ジャッカル・デッドマン達は、上空に現れたバット・デッドマンを呆然と見ていた。

そしてその戦場に響く声がーーーー。

 

「メ、メノア・・・・! ノノ・・・・! ケイ・・・・!」

 

『『『っっ!!』』』

 

自分達の名を呼ばれた三人が目を向けると、湖畔近くに、ボロボロの格好になったミラがリボーンに支えられ、そして人質として捕らえていたゆいを背負った狩崎と骸が地面に横たわらせたヴァージル教授と妻のメディアがいた。

 

『ミラ・・・・。っ! お父様! お母様!!』

 

ジャッカル・デッドマンは加速して、一瞬で骸と狩崎の眼前に来ると、手の平から大鎌の刃を出現させると、二人の首を切り裂いた。

が、二人とリボーンの身体が藍色の霧状となって霧散し、ネオボンゴレファミリーの側に現れた。

 

『ちっ! 幻覚か! メノア! 何が起こった!? 何故お母様をカプセルから! そしてーーーー』

 

ジャッカル・デッドマンが目を向けると、虫の息状態の父、ヴァージル教授に目を向けると。

 

『誰がお父様を、こんな目にあわせた・・・・!?』

 

「・・・・・・・・」

 

ミラが目を向けると、バット・デッドマンがいた。

 

『アイツが? ミハエルが?』

 

『・・・・!』

 

『嘘、ですよね?』

 

ジャッカル・デッドマンと、合流したクロコダイル・デッドマンとカマキリ・デッドマンが戸惑ったような声を漏らした。

数年間チームを組んでいたので分かる。ミハエルがヴァージル教授を傷つけるヤツではないと。

 

「・・・・アレは、ミハエルじゃない、『バットバイスタンプ』に宿っていた悪魔が、ミハエルの身体を乗っ取った邪悪な存在・・・・! そして、あなたのお母さんと、ミハエルの身体を蝕んでいたウイルスはーーーー川西美春が、『ウイルスガイアメモリ』で作り、感染させたものよ!」

 

『っ! あの女が・・・・!!』

 

『『っっ!』』

 

ミラの言葉に、三人は肩を揺らした。

最初に会った時から、あの女、川西美春には警戒していた。表面上は妖しく美しく優しい女性を演じているが、〈財団X〉からの監視役だけではなく、その内心は、とてつもないエゴと殺人欲求を隠していた事を三人は見抜いていたからだ。

 

「メノア・・・・。実験は失敗したのよ、私達はとんでもない怪物を生み出してしまった・・・・! この戦いにもう、意味なんて無いのよ・・・・!」

 

ミラがそう言うが、ジャッカル・デッドマンは、メノアは、くっくっくっ、と笑い声をあげる。

 

『そうーーーーなら、ネオボンゴレとシモン、そして仮面ライダーもろとも! あの悪魔を始末するっ!!』

 

「メノアっ!?」

 

「・・・・ぁ・・・・メノ、ア・・・・!」

 

『・・・・もはや、この道しかないのよ・・・・。私達は、この手を血に染めすぎた・・・・。今さら〈財団X〉から逃げられない・・・・。ならば! この戦いに勝利し! 〈財団X〉をのしあがる! 川西美春も必ず殺す! そして私達が! 〈財団X〉の頂点に立つわ!!』

 

『『(コクン!)』』

 

ジャッカル・デッドマンの言葉に、クロコダイル・デッドマンとカマキリ・デッドマンも頷いた。

 

「やめてメノア! そんな事をしても・・・・!」

 

『ミラさん。私達はもうーーーー怪物になったんですよ』

 

「ノノ・・・・」

 

『今さら人間のふりをした所で、やって来た事が帳消しになる訳無いでしょう? だったら、最後までこの生き方を貫くだけです!』

 

カマキリ・デッドマンの言葉にクロコダイル・デッドマンも同意したように頷く。

 

『ミラ。所詮、勝者にしか明日をーーーー未来を手にする資格は無いの。もう私達は後戻りできない。この戦いから、手を引くつもりはないわ!』

 

ジャッカル・デッドマンがそう言うと、聞こえていたツナ達も構える。

 

「くっ! ややこしい事に、なりそう、だぜ・・・・! ぐぁ・・・・!!」

 

「っ、しっかりしろ」

 

ボロボロの姿でも立ち上がろうとする輝二。だが、ダメージでよろけ倒れそうになるが、ツナが支えた。

 

「・・・・ネオボンゴレプリーモ・・・・」

 

『よそ見している場合か!?』

 

『ソイツは俺の獲物だぁっ!』

 

「ツナくん!」

 

ジャッカル・デッドマンとバット・デッドマンがツナと輝二に向かって来るが、エンマが『大地の重力』で二体を重力球に封じようとする。

がーーーー。

 

『はっ!』

 

『うああああああああっ!!』

 

バット・デッドマンは背中の純白の翼から、白い光線を放ち、重力球を破壊し、ジャッカル・デッドマンは加速の力業で脱出した。

 

「ーーーーロール」

 

『キュアっ!』

 

と、そこで二体に襲い来る巨大で紫色の針の球が現れた。

 

「っ! 『球針体』、雲雀か!?」

 

針の球、『球針体』を放ったのは、トンファーを構えた雲雀恭弥だった。

 

「少しは、楽しめそうかな?」

 

雲雀は球針体を次々と作り、飛び登りながら、バット・デッドマンに向かい、トンファーを叩き込もうとするか、手の平から光の剣を出したバット・デッドマンが防ぐ。

 

「ツナくん、彼を!」

 

エンマは輝二をツナに任せ、迫ってくるにいるジャッカル・デッドマンと交戦した。

 

『・・・・!!』

 

『たぁっ!』

 

クロコダイル・デッドマンが装備を、カマキリ・デッドマンが雹を放ちながら守護者達と交戦していた。

 

「・・・・輝二!ーーーーあぅ!」

 

ミラは輝二の元に行こうとするが、身体に激痛が走り、動けなかった。

そして輝二は、リボーンと狩崎、そして合流した草壁の側に置かされた。

 

「リボーン、彼を」

 

「ああ」

 

そしてツナも、バット・デッドマンと交戦を始めた。

上空にいたバット・デッドマンが地面近くに退き、ジャッカル・デッドマンと顔を合わせた。

 

『はははははは、最後まで戦うとは、お前も中々に狂っているじゃぁねえか?』

 

『付け上がるな蝙蝠風情が! ボンゴレ達を始末したら次はお前だ!』

 

『はっ! それじゃ・・・・テメェから終わらせてやるよ!』

 

『っ!』

 

『・・・・!!』

 

バット・デッドマンが拳から光線を放ち、それがジャッカル・デッドマンへと向かった。が、その寸前、クロコダイル・デッドマンが動きーーーー。

 

ーーーーバシュゥッ!!

 

『あぁっ・・・・!』

 

『・・・・ケ、ケイ・・・・!?』

 

何と、ジャッカル・デッドマンを押し出し、クロコダイル・デッドマンの身体に光線が貫通し、その巨体の腹部には、少し動けば、上半身と下半身が千切れそうな巨大の穴が出来上がっていた。

 

『・・・・・・・・ぁ』

 

クロコダイル・デッドマンは小さく声を発してから、その身体に罅が入り、爆散しそうになっていた。

 

『ケイっ!!! ケイーーーー!!!!』

 

カマキリ・デッドマンが守護者達に目もくれず、クロコダイル・デッドマンに駆け寄ろうとする。

が、

 

『・・・・・・・・』

 

『っ!!』

 

爆発する自分に近づかせないように頼まれたと思い、ジャッカル・デッドマンは加速して、カマキリ・デッドマンを抑えた。

 

『ケイ! イヤだイヤだケイーーーー!!』

 

『・・・・・・・・』

 

カマキリ・デッドマンは泣いているような声を発しながら、クロコダイル・デッドマンの、ケイの名を呼ぶ。

クロコダイル・デッドマンは一瞬ケイの姿に戻ると、カマキリ・デッドマンに笑みを浮かべたまま、

 

ーーーードガァァァァァン!!

 

その身体は爆散した。

 

『ケイーーーーーーーー!!!!』

 

『ケイ・・・・!』

 

カマキリ・デッドマンはジャッカル・デッドマンを押し退けて、変身を解除してノノの姿に戻ると、ケイが爆発した場所から、破壊されたドライバーとメモリブレイクされた『ヘヴィーアームズガイアメモリ』と、無傷の『クロコダイルバイスタンプ』だけだった。

 

『ケイ・・・・! そんな、そんなケイ・・・・!!』

 

ノノは『クロコダイルバイスタンプ』を抱き締めて、涙を流した。

 

『まず一匹♪』

 

「っっ!! うあああああああああああああああああああああああっっ!!』

 

ノノは再びカマキリ・デッドマンに変身し、雄叫びを張り上げると、腰から羽を広げて飛翔し、刃に氷を纏わせ、バット・デッドマンカマキリ向かった。

 

『よくも! よくもよくもよくもぉっ!!』

 

氷の斬撃を乱発するカマキリ・デッドマン。しかし、バットは手から光の剣で斬撃を破壊していく。

 

『死ねぇえええええええええええっ!!!』

 

カマキリ・デッドマンは太く大きな氷柱を空一面に生み出すと、バット・デッドマンに向けて放った。

 

『ヤバイ! ヤられる!!ーーーーと言うと思ったかぁ?』

 

が、バット・デッドマンはほくそ笑んだ声を発し、翼から光の光線を雨のように放った。

 

『うわぁぁぁぁっ!!』

 

『きゃぁぁぁぁっ!!』

 

その光線は地上にいるツナ達にも巻き込み、氷柱を破壊し、正面から向かってくる氷柱は、剣で弾き返した。

 

『あっ・・・・!』

 

ーーーーザクザクザクザクザクザクザクザクっ!!

 

カマキリ・デッドマンの反応が遅れ、弾き返された幾つもの氷柱が身体に突き刺さった。

 

『あ、あぁ・・・・』

 

『ノノ!』

 

「ノノ・・・・!」

 

ジャッカル・デッドマン、いや、メノアの声と、ミラの声が重なる。

カマキリ・デッドマンはガクンと両手を下げ、力無く落下していった。

 

『はい。二匹目♪』

 

バット・デッドマンは剣を投げ飛ばそうとする。

 

「「「≪っっ!! やめろーーーーーーーーッッ!!≫」」」

 

輝二とバイス、ツナとエンマの叫びが響くが、バット・デッドマンは剣を投げ放ちーーーー。

 

ーーーーザシュッ!

 

『あ・・・・!』

 

カマキリ・デッドマンの胸元を貫き刺さった。

 

『け、ケイ・・・・!」

 

涙を流し、ケイの名前を呟きながらデッドマンの姿から人間に戻ったノノの身体も、閃光に包まれ、

 

ーーーードガァァァァァァァァァァンン!!

 

爆散した。

そして、爆発した所から、メモリブレイクされた『フリージングガイアメモリ』と、無傷の『カマキリバイスタンプ』と『クロコダイルバイスタンプ』が飛び出し、バット・デッドマンは二つのバイスタンプを手にし、先程ミラやヴァージル教授から奪ったバイスタンプも取り出した。

 

『うぅ~ん♪ 『カマキリバイスタンプ』に『クロコダイルバイスタンプ』。『コブラバイスタンプ』に『メガロドンバイスタンプ』。そして、『ジャッカルバイスタンプ』にリバイスが所持するバイスタンプを手にすれば、一気に俺の方が相応しい事が証明されるなぁ』

 

「証明、だと?」

 

『そうだ。“出来の良い兄貴から〈仮面ライダー〉を奪った愚弟”よ』

 

「っ!」

 

バット・デッドマンの言葉に、輝二が肩を揺らした。

 

「何故、お前がその事を・・・・?」

 

『それはまぁ後だな。最後のバイスタンプを回収してからだ』

 

バット・デッドマンが目を向けると、両膝をつき、ブレイクされた『フリージングガイアメモリ』と『ヘヴィーアームズガイアメモリ』を手に持ったジャッカル・デッドマンを見据える。

 

『・・・・ノノ・・・・! ケイ・・・・!』

 

ジャッカル・デッドマンはゆっくりと立ち上がると、キッと、バット・デッドマンを睨んだ。

 

『殺してやる・・・・! 殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやるーーーー殺してやる!!!』

 

ジャッカル・デッドマンが全身のあらゆる箇所から、大鎌の刃を伸ばして、弾丸のように回転しながら、バット・デッドマンに向かった。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!』

 

『おっと、無駄な足掻きをしちゃってまあ』

 

『うるさい! 貴様は絶対に殺してやる! 先に地獄に行ってなさいミハエルっ!!』

 

さらに加速するジャッカル・デッドマンと、同じ速度で空中で何度もぶつかり合うバット・デッドマン。

 

「(・・・・二人とも速いな)」

 

「(リミッター解除のフェイト以上だよ・・・・!)」

 

十全ではないが、ツナ達でも二人の動きを何とか捉えていた。

二人のぶつかり合うによる風圧に煽られ、地面には亀裂が走り、衝撃波まで起こった。

 

「ぐぅぅぅぅぅっ!!」

 

『ぐはっ!!!』

 

ツナ達が顔を覆うが、ジャッカル・デッドマンが全身から伸ばした刃を全て砕かれ、さらに光線で全身を撃たれ、満身創痍になって地面に倒れる。

 

『くっ、あ、あぁぁっ!!』

 

『哀れだな。未完成の不死にされたが故に、すぐに楽になれずに苦しむだなんてさ』

 

『うぅっ! うぅぅぅっ!!』

 

ジャッカル・デッドマンが睨み付けるように立ち上がろうとする。が、

 

『っっ!!?』

 

すぐ眼前に、バット・デッドマンが現れ。

 

『終わりだーーーーかぁあああああああああああああああああああああああああっっ!!!』

 

『ぐぅあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!!』

 

口から超音波の衝撃波を放ち、ジャッカル・デッドマンは悲鳴をあげ、

 

『あああああああああああああああああああーーーー!っと、こんなモノか』

 

『あ、あぁぁぁ・・・・」

 

ジャッカル・デッドマンはメノアに戻って倒れると、ドライバーからメモリブレイクされた『デスサイズガイアメモリ』と無傷の『ジャッカルバイスタンプ』が現れ、スタンプはバット・デッドマンに奪われた。

 

『もう、用はねえよ』

 

バット・デッドマンはメノアを蹴りつけると、メノアはミラの近くに転がった。

 

「うっ・・・・うぅ・・・・」

 

「め、メノア・・・・!」

 

「くそ・・・・! ちくしょう・・・・!!」

 

「メノア・・・・やっぱり、ダメだったのかしら・・・・? 今さら私達が、マトモな人間に戻れるなんて・・・・。神は何処まで、私達を苦しめれば気が済むの・・・・!!」

 

身体を引きずりながらメノアに駆け寄り、涙を流すミラ。

 

「・・・・!!」

 

それを見て、輝二の目に、強い輝きが煌めいた。

 

『さて・・・・次はお前だな、リバイス?』

 

「ぐっ、うぅ、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!」

 

突然、雄叫びをあげると、輝二はボロボロの身体で立ち上がった。

 

『っっ!』

 

「バイス! まだ行けるかっ!? 根性見せろよっ!」

 

≪応よっ! 同じ悪魔として、俺っちアイツキライ!≫

 

「戦えるのか? リバイス?」

 

ツナが問うと、輝二は痩せ我慢しているような笑みを浮かべ、

 

「約束、したんでね・・・・!」

 

「輝二・・・・」

 

輝二はミラを見据えた。

 

【・・・・お願い、輝二・・・・こんな事、私が頼める義理も資格もないけど・・・・弟を、ミハエルを助けてっ!!】

 

「これは、俺の依頼だ・・・・。だから、俺が、俺達がやるんだっ!」

 

輝二はゆっくりとだが、歩を進め、ツナ達を押し退け、バット・デッドマンと対峙する。

 

『フフフ、さぁこれで終わらせてやるよ!』

 

「ーーーー燃えて、きたぜぇ!」

 

輝二は、『イーグルバイスタンプ』と共に渡された『新たなバイスタンプ』を起動させた。

 

[カジキ!]

 

「はぁ・・・・!」

 

『カジキバイスタンプ』を持って息を吹き掛けて構える。

 

[Come on! カ・カ・カ・カジキ! Come on!カ・カ・カ・カジキ! Come on!カ・カ・カ・カジキ!]

 

『やったるでぇ!!』

 

巨大なスタンプを持つバイス。

 

「はぁっ!」

 

輝二はリバイスドライバーに『カジキバイスタンプ』を押印すると、起動させる。

 

[バディアップ! 鼻先! 貫き! 水しぶき! カジキ! 結末は波が決める!]

 

スタンプに押し込まれ、音声が響くと同時に、スタンプが砕けると、ソコにはーーーー新たな姿をした〈仮面ライダーリバイス〉が現れた。

 

上を向いたカジキマグロの頭部を右肩に装備し、マスクはクロスの斬撃のようでつり上がり、黄色の複眼で頭部に刃をつけ、腰からはコートのような物が垂れ、靴はヒレのようになり、手には、束にはバイスの顔がある剣が握られていた。

 

「この戦いの始末は俺がーーーー」

 

「「俺達/俺っち達が決めるっ!!」」

 

〈仮面ライダーリバイス カジキゲノム〉は、右手に持ち、剣となったバイスを右胸に持っていき、構えて叫んだ。

 

「ーーーーってあれ!? 俺っち剣になってるぅっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

そしてその頃、本土から離れたある島に住んでいる活発そうな女の子。その島から離れた本土にあるコスメショップが実家の可愛い女の子。本がいっぱいある部屋で眠る知的そうな女の子、凛々しい顔つきをした綺麗な女の子。海の中(!?)で眠っている人魚(!?)の女の子。

 

「「「「「むにゃむにゃ・・・・それ、違うでしょう・・・・」」」」」

 

ーーーービシッ!×5

 

「「「「「・・・・くぅ・・・・」」」」」

 

寝ている筈の少女達は何故か、虚空に向けてツッコミを入れたのであったが、すぐに寝息を立てた。




〈仮面ライダーリバイス カジキゲノム〉

マスクはセイバーと同じだが、右肩にはカジキマグロの頭部が上を向いた形状。腰には右側にコートが伸びている。
バイスは『火炎剣 烈火』を少し長くし、烈火のマークがバイスにしたデザイン。


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カジキで剣士! 本気の死ぬ気!

さぁ、クライマックスです。


ーボンゴレsideー

 

「・・・・『飛翔真』?」

 

ツナ達は、〈仮面ライダーリバイス カジキゲノム〉を見た瞬間、少し前に一緒に戦った『誇り高き剣士の仮面ライダー』達、その中心として戦った『小説家の仮面ライダー』の姿が重なった。

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「・・・・!」

 

『はぁっ!』

 

バット・デッドマンが光の剣を出現させると、ゆっくりと自分に近づくリバイに向かって行った。

光の剣の切っ先をリバイの顔面に向けて突き刺そうとした。

 

「っ!」

 

が、リバイは剣となったバイス(バイス剣)の刀身で切っ先を防ぎ、光の剣の刀身を受け流し、バット・デッドマン向かい、その身体を切った。

 

「アッチチチ!」

 

『ぐはっ!』

 

バイスが光の剣の熱に悲鳴をあげるが、バット・デッドマンに初めてダメージを与えた。

 

「バイス、ギアを上げていくが、大丈夫か?」

 

「あいよ! どんと来なさいって!」

 

「フッ・・・・行くぞ!」

 

リバイはバイス剣を構えて、バット・デッドマンに切り込む。

 

『くぅっ! マグレで一太刀浴びせただけで!』

 

が、すぐに回復したバット・デッドマンが剣をさらにもう一本生み出して、二刀流でリバイを迎撃する。

 

『オゥラッ!!』

 

「・・・・!」

 

『うぉっ!?』

 

二本の光の剣を振るって踊るように滑らかな動きで剣戟を繰り出すバット・デッドマン。

しかし、リバイはその攻撃を全て、眼前やアーマーにギリギリ当たらないように避け、バイス剣でいなし受け流し、さらに防ぎ、まるで攻撃を見切っているかのように、バット・デッドマンの剣戟の合間の僅かな隙から、針穴に糸を通すかのようにバイス剣を繰り出し、バット・デッドマンを切り付けていく。

 

「はぁっ!!」

 

ザシュンッ!!

 

『ぐぅぉおああああっ!!』

 

最後に重い一太刀を受けて、バット・デッドマンは距離を空ける。

明らかに攻勢に出ているのは、バット・デッドマン。しかし、リバイはダメージをほぼ受けず、バット・デッドマンだけがダメージを受け続けていく。

 

「なはははは! 圧倒的! 皆知ってる? 輝二ってね、テンションが上がると物凄く勘が冴え渡って、まるで予測でもしているように戦うんだぜ!」

 

「だからお前は誰に喋ってるんだ?」

 

剣の状態でも顔を明後日の方に向けて喋るバイス剣に、リバイは訝しそうな声を発した。

 

『ぐぅぅぅぅ、ふざけるなぁぁぁぁぁっ!!』

 

バット・デッドマンが翼を羽ばたかせて空を飛ぶと、翼から光の弾丸を生み出し空中に留まらせ、さらにリバイの周囲を高速で旋回すると、光の弾丸が何十、何百と留まってドームを作り、リバイの囲んだ。

 

「げぇっ!? 360度、上まで光の弾まみれッ!?」

 

『くたばれぇえええええええええっ!! 嵐山輝二ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!』

 

バット・デッドマンが叫ぶと同時に、光の弾丸が次々とリバイに向かって放たれたーーーー。

 

「っっ!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

リバイがバイス剣を構えると、バイス剣の悲鳴が上がり、光の弾丸の1つをバイス剣で弾くと、眼にも止まらぬ早さで、さらに襲いくる弾丸をさらにバイス剣で弾いた。

弾いた先が地面だったので、地面に着弾すると土煙が巻き上がり、リバイの姿が土煙で見えなくなった。

 

 

 

 

 

ーボンゴレsideー

 

「・・・・ツナどうする?」

 

リバイが土煙に呑まれ、バット・デッドマンが地上に降りると、リボーンがツナを一瞥してそう問うた。

 

「10代目、あの〈仮面ライダー〉は・・・・」

 

獄寺はリバイスがやられたと思ったように声を発するが、ツナは泰然と答える。

 

「いや・・・・まだだ!」

 

ツナがそう断じた瞬間、土煙を破って、リバイスが僅かにアーマーから煙を立たせながらバット・デッドマンに向けて飛び出した。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

『っ! バ、バカなっ! あの数の弾丸を全て打ち落としたのかっ!?』

 

「少し焼けたけどなっ!」

 

「死ぬかと思ったけどなぁ!」

 

『っ! くそがぁああああああああああっ!!』

 

バット・デッドマンがリバイスに向けて光弾を放ち続けていくが、リバイスはその足を止める事なく、光弾を弾きながら一直線に突き進む。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

 

ーボンゴレsideー

 

「うおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

『・・・・・・・・』

 

「こ、輝二・・・・」

 

「良く見ておけ、ミランダ・フォーミュ。お前の涙を拭い取ろうと、死ぬ気で戦っているアイツの姿をな」

 

「っ・・・・・・・・」

 

ツナ達や狩崎と共にミラに近づいたリボーンがそう言うと、ミラはリバイスの姿を見据えた。

ツナ達も見届ける。たった一人の少女の涙を拭う為に、敢然と立ち向かう二人の戦士を、その姿をーーーー。

 

「(見せてみろ、〈仮面ライダーリバイス〉・・・・! 君が、君達が、彼らのーーーー仮面ライダーの『誇り』を! 『魂』を!・・・・『正義の系譜』を、受け継ぐ者であると・・・・!!」

 

ツナはリバイスを鋭く見据えて、心の中で叫ぶ。

リバイスの姿に、人類の自由と平和の為に戦ってきた、風のように現れ、嵐のように戦い、夕日と共に去っていく『英雄達』の姿が重なっているように見えたのは、ツナだけでは無かった。

 

 

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

『くっ、くそっ!』

 

バット・デッドマンが翼を広げて空中に逃げ、湖に方に飛んだ。

 

「逃がすかっ!」

 

リバイはバット・デッドマンを睨みながら、リバイスドライバーを操作した。

 

[リミックス! バディアップ! 必殺! 正しき! 金色! カジキ!]

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!」

 

「うわお! 俺っち身体、いや刀身が光ってるぅ!?」

 

音声が響くと同時に、背後に二つのカジキのマークが重なり、バイス剣が金色に輝く。

 

「うおらぁっ!」

 

「ありゃーーーーーーーーっ!!??」

 

「はっ!」

 

「んごっ!?」

 

リバイはバイス剣を湖に向けて投げ、自分も跳ぶと、バイス剣に、まるでサーフィンでもするかのように乗って、水面を滑るように突き進む。

 

『何だとっ!?』

 

「死ぬ気で、決めてやるっ!!」

 

「波に乗るぜぇ!」

 

『はぁぁぁぁぁっ!!』

 

バット・デッドマンは再び光弾を連射するが、リバイは水面を華麗に滑って回避すると、その場で回転して、渦を作った。

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「目が回るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

バイス剣が悲鳴をあげるが、リバイは気にせず、高速で回転し渦を巻いた水が竜巻のように巻き上がり、バット・デッドマンにその渦の先端が向かった。

 

『ぬぅおおおおおおおおおおおっ!!』

 

バット・デッドマンが光弾を放ち続けるが、回転する渦の中からーーーー金色に輝くリバイスが現れる。

 

『何っっ!?』

 

[カジキ! スタンピングフィニッシュ!]

 

「「梶木一閃!」」

 

ーーーードシュッ!

 

バイス剣で一突きした瞬間、バット・デッドマンの背中が裂け、その中からーーーーミハエル・フォーミュが飛び出した。

 

「ミハエル!!」

 

ミラの叫びが聞こえると同時に、リバイはミハエルを担いで、ミラの元に戻った。

リバイがミハエルを下ろすと、クロームに肩を貸して貰いながら、ミラは弟の元に行った。

 

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・ミハエル・・・・!」

 

「骸・・・・」

 

「仕方ありませんね。ムクロウ」

 

ツナが一瞥して言うと、骸は肩を竦めながら匣兵器『霧フクロウ』のムクロウを、『D・スペードの魔レンズ』に形態変化させて、ミハエルの身体を分析した。

 

「・・・・・・・・ふむ。過度の疲労で気を失っているようです。身体を蝕んでいたウィルスは、『ウィルスガイアメモリ』のメモリブレイクと共に消滅しました」

 

骸は懐から、メモリブレイクした『ウィルスガイアメモリ』を取り出して言った。

 

「それじゃ、ヴァージル教授の奥さんは?」

 

「それは無理ですね。彼女の場合はもうウィルスが身体全体に侵食しており、命はもう終わっています」

 

「そう、か・・・・っ!」

 

骸の言葉に、リバイは落胆したように肩を落としそうになったが、後方に嫌な気配を感じて振り返るとソコにはーーーーバット・デッドマンが悠然と宙に立っていた。

 

『うおぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!』

 

雄叫びをあげたバット・デッドマンが光弾を辺りに放ち続ける。森に。湖に。研究所に。その破壊の爆弾を放つ。

 

「ランボッ!」

 

「ひぇええええっ!」

 

ランボが電磁バリアを張って防ぐが、バット・デッドマンは遮二無二に光弾を放っていた。

 

「これは、どういう事だ!?」

 

「アイツ! 弟くんと分離されたのに何でやられてないのよ狩ちゃん!?」

 

「ふむ・・・・」

 

リバイスが驚き、バイスがゆいを背負っていた狩崎に向かって言うと、狩崎は思案するように顎に手を当て、骸は『D・スペードの魔レンズ』で解析し、クロームが聞いた。

 

「おやおやこれはこれは・・・・」

 

「骸様。これって一体・・・・?」

 

「どうやら、『バイスタンプ』と『ガイアメモリ』が相乗効果を起こし、彼を留めているようです」

 

「しかし、あの状態はーーーー」

 

「ええーーーー」

 

骸と狩崎の言葉が重なる。

 

「「暴走している」」

 

『暴走っ!?』

 

ほぼ全員が声をあげた。

 

「強力なアイテムを二つも使って、そのアイテムが互いの力を悪い形で上昇させたのだろう」

 

「そこに『ガイアメモリ』の毒性が加わり、暴走しているようですね」

 

『ガイアメモリ』は一度使えばその力の凄まじさだけでなく、強力な依存性を生み出し、使用者は性格が凶暴化してしまう、言うなれば麻薬依存者になってしまうのだ。

故に『ガイアメモリ』を使用した怪人は『ドーピング』をもじって、『ドーパント』と呼ばれるのだ。

 

「ミハエル・フォーミュは『エンジェルガイアメモリ』に適合した人間でしたが。その彼が解放された事により、抑制されていた毒性が一気にバット・デッドマンに襲いかかったのでしょうね」

 

「そしてバット・デッドマン自身、その毒性の蝕まれてしまって暴走した。あれじゃどうにもならないね」

 

二人がそう言うと、リバイはバイス剣を構えて、バット・デッドマンを見据えた。

 

「ならーーーー今度は容赦なく、ぶった切る!!」

 

リバイが電磁バリアから抜けると、辺りに放たれている光弾をジグザグ走りに避け進み、高く跳躍すると、バット・デッドマンの顔面に向けてバイス剣を振り下ろす。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

「往生せいやぁぁぁぁぁっ!」

 

が、

 

『ごぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

「何っ!? うわぁぁぁぁぁっ!」

 

「のへーーーー!!」

 

バイス剣が当たる寸前、バット・デッドマンは口から超音波による衝撃波を放ち、リバイスを吹き飛ばし、リバイスは地面に叩きつけられた。

 

「リバイス!」

 

「野郎! 『嵐+雷 フレイムサンダー』!!」

 

「『時雨蒼燕流特式 飛び雨』!!」

 

獄寺と山本が雷を纏った赤い砲撃と、青い炎の斬撃を放つ。

 

『おぉおおおおおっ!!』

 

が、光弾によって防がれる。

 

「『マキシマムキャノン』!」

 

「『乱気流』」

 

『あああああああっ!!』

 

「「っ!」」

 

了平と雲雀もほぼ同時に攻撃するが、バット・デッドマンは超加速で空中を縦横無尽に飛び回避すると、同じく超音波で吹き飛ばす。

 

「皆・・・・!」

 

「うわぁ・・・・! メチャメチャ強いですよぉ」

 

「クフフフ。唯でさえ2~3割程度しか回復していなかった炎圧が、先ほどまでのメノア・ヴァージル達との戦いでガス欠寸前になっているんです。これでは無理ですね」

 

「「・・・・・・・・(コクン)」」

 

ツナとエンマはお互いの目を見て頷くと、エンマはバット・デッドマンに向かい拳をぶつける。

 

「頼むエンマ!」

 

「ああ!」

 

エンマに任せたツナは、守護者達に声をあげる。

 

「皆! 俺に炎をぶつけてくれ! 『零地点突破・改』で吸収して、『XBURNER』で倒す!」

 

『了解!』

 

『死ぬ気の零地点突破・改』。沢田綱吉がボンゴレの奥義を独自に改良させた技で、死ぬ気の炎を吸収して、自分の力に変える事ができる技だ。

少ししかない獄寺と山本と了平、炎に余力があるクロームとランボが炎を灯し、ツナに向けて放つ。

 

「ま、雲雀と骸は手伝わねえな」

 

「ええ。僕は僕で、始末したい相手がいるのでこれで」

 

そう言って骸は姿を消し、雲雀はーーーー。

 

『うああああああああっ!!!』

 

「っっ!!」

 

「雲雀!?」

 

「邪魔したら噛み殺す」

 

「そっちこそ!」

 

エンマと二人でバット・デッドマンと戦っていた。

 

『ぐぅぅぅぅぅ!!』

 

バット・デッドマンは、『レックスゲノム』に戻り、よろよろと立ち上がるリバイスの二人を睨んだ。

 

「あ?」

 

「げっ!?」

 

『がぁっ!!』

 

バット・デッドマンは二人の首を掴んで上方に投げ、そしてーーーー。

 

『かぁああああああああああああああっ!!!』

 

「「うわぁああああああああっ!!」」

 

再び超音波を放ち、リバイスは上空高くぶっ飛ばされた。

 

 

 

 

ーボンゴレsideー

 

「っ! リバイス・・・・!」

 

「・・・・」

 

エンマは一瞬リバイスを気にかけたが、すぐに雲雀に続く。

 

「・・・・ツナ」

 

「・・・・よし。行くぜ」

 

リボーンが声をかけると、ツナは空を飛んで、エンマと雲雀と交戦するバット・デッドマンを見据える。

 

「“オペレーションX<イクス>”!」

 

[了解しましたボス、XBURNER<イクスバーナー>”発射シークエンスを開始します]

 

耳に着けたヘッドフォンから声が響き、ツナの瞳に付けられたコンタクトディスプレイに、左右の手の炎出力が表示され、両手を前後に伸ばし、後ろに伸ばした手から高純度の炎が噴射しバット・デッドマンに向けた手から高純度の炎が集まる。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

そしてリバイスは、成層圏近くまで吹き飛ばされていた。がーーーー。

 

「・・・・まだまだ、だろう、バイスっ!」

 

「・・・・応、よ! やったるでぇっ!」

 

ボロボロになりながらも、まだ戦う意志を示すリバイス。そしてリバイは、ドライバーを操作する。

 

[リミックス! バディアップ!]

 

リバイとバイスの胸元のマークが光り出し、二人の姿が重なり、その姿が変わった。

 

[必殺! 繰り出す! マックス! レックス!]

 

ーーーーギャァアアアアアアアア!!

 

〈リバイスレックス〉となったその瞬間、リバイのアーマーの下、輝二がネックレスとしてぶら下げていた指輪がーーーーオレンジ色の炎を灯し、その炎がリバイスレックスの足から噴射された。

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」」

 

二人はそれに構う事なく、真っ直ぐにバット・デッドマンに向かって急降下するーーーー。

 

「はっ!」

 

「わぉ」

 

「来たか!」

 

バット・デッドマンと戦っていたエンマと雲雀が上空に視線をやると、恐竜のような者が、足にオレンジ色の炎を噴射させてバット・デッドマンに向かって、急降下しているのを捉えた。

ツナは、それがリバイスであるとすぐに察し、さらに今持てる炎を限界まで、いや、それ以上に引き出す。

そして、バット・デッドマンもそれがリバイスだと察すると、今度は翼から光弾を一転集中させて、リバイスレックスを上回る巨大にして放った。

 

『があああああああああああっ!!!』

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!」」

 

が、リバイスレックスはその巨大光弾に呑まれた。

 

『っ!』

 

バット・デッドマンは、次を睨み付けた。

 

「エンマ! 雲雀!」

 

「「っ!」」

 

[ゲージシンメトリー、発射スタンバイ]

 

エンマと雲雀が離脱するのと同時に、ヘッドフォンから発射準備完了がツナに届いた。

 

「『XBURNER AIR<イクスバーナー エア>』っ!!」

 

ツナの右手から高純度の大空の死ぬ気の炎の激流が発射された。

 

『かぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

バット・デッドマンが超音波を放つが、炎の激流がそれを打ち破っていくのと同時に、

 

[レックス! スタンピングフィニッシュ!]

 

「「うぉおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

『がっ!?』

 

バット・デッドマンが上を見上げると、巨大光弾を突き抜けて、リバイスレックスの身体が光輝き、死ぬ気の炎に包まれた両足で蹴りの姿勢で突っ込む。

 

ーーーーフレイムレックススタンピングフィニッシュ

 

『XBURNER』の炎が一直線に伸びていき、リバイスレックスの光と炎の軌跡が真上から交差するように重なる。

 

『ぐがぁあああああああああああっ!!!』

 

それはまるで、悪魔に鉄槌を下す十字架ーーーー炎の十字架<クロスフィアンマ>を描いた。

 

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッッッッ!!!!

 

そしてーーーーバット・デッドマンの身体は炎の十字架の中心で、爆散した。

 

ーーーーギャァァァァァァァァァァ!!

 

そして、地面に着地したリバイスレックスが雄叫びをあげると同時に、朝日が昇り、光が差し、リバイスレックスを照らしたーーーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー骸sideー

 

 

「おやおやこれはこれは、『万灯雪侍』に『千葉秀夫』」

 

川西美春を追っていた骸は、“絶望に染まった顔をした首と胴体が永遠に別れた川西美春”を見つけると、藤色の長髪に虹色のメッシュを入れており、その部分を編んで金のリングで留めている。〈財団X〉とは違った白いスーツを着用し、長身で眉目秀麗な若い男性と、ショートヘアの小柄な体格の少年で、ブローチを着けたネクタイに上着と半ズボンで身を固めている、ショートヘアの小柄な体格の少年がソコにいた。

 

「やあ骸くん。彼女だが、悪いけどこちらで片付けさせたもらったよ」

 

「ありましたよ。彼女が盗んでいた、ヴァージル教授の『NECRO OVER<ネクロオーバー>技術』の入ったメモリーカード」

 

万灯雪侍が笑みを浮かべて骸に挨拶すると、千葉秀夫が川西美春の身体を探ると、胸の谷間の中からメモリーカードを出して、骸に投げ渡した。

 

「・・・・・・・・」

 

少々腑に落ちない顔をする骸に、万灯雪侍が両手を上げて無抵抗を示す。

 

「そんなに警戒しないでくれ。我々としては、二人も〈ハイドープ〉になる資質を持った逸材を失った彼女に、責任を取って貰っただけだからね」

 

「ミハエル・フォーミュと、『ゼウス博士』、ですか?」

 

「ああ。彼らは〈ハイドープ〉になる人材だったが、彼女は彼らを危機にさらしただけだなく、失ってしまった。それだけでなく、『ゼウスガイアメモリ』も『エンジェルガイアメモリ』も、『エターナル』と同じく希少なメモリを回収しなかった。〈ハイドープ〉未満で打ち止めだった存在が、少し無責任が過ぎる」

 

「元々〈財団X〉にもいるかも知れない〈ハイドープ〉の素質のある人材を見つける為に潜入させていたのに、任務を忘れてこの有り様になったんですよ」

 

そう。川西美春は『彼ら』のメンバーで、〈財団X〉への潜入員だったのだ。

 

「それで、始末したと?」

 

「そう。彼女は始末させていただいたよ」

 

「唯でさえ『一葉さん』で手を焼いているのに、これ以上サイコパスが増えるのは良い迷惑ですよ」

 

骸と万灯雪侍と千葉秀夫の間に、重い沈黙が広がるが、それを止めたのは骸だった。『魔レンズ』で確かめると、確かに川西美春の本人の死体であると確定された。

 

「まあ、僕としても手間が省けましたから、礼を行っておきますよーーーーまた会いましょう、『裏風都』」

 

そう言い残し、骸は、藍色の霧となってこの場から消えた。

 

「・・・・・・・・」

 

[オーロラ!]

 

万灯雪侍は『オーロラガイアメモリ』を発動させると、川西美春の身体が、“白骨体となったのであった”。

 

「では戻ろうか秀夫くん。私達の『裏風都』に戻ろう」

 

「ええ。〈仮面ライダーエターナル〉に憧れている少年達ですね、次の相手は」

 

そう話し合いながら、万灯雪侍と千葉秀夫はその姿を消し、後には白骨だけが残されたのであった。

 




次回、特別編が終了です。


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エピローグ さよならは新たな出会いの始まり

特別編はこれでおしまい。
後書きにて、敵キャラ達のモデルとなったアニメキャラを書きます。


ー輝二sideー

 

あの戦いから2日ほど経った日。

 

「やぁ輝二くん」

 

「・・・・リベンジボーイじゃなくなったのか?」

 

輝二は〈フェニックス〉の〈スカイ・ベース〉にある、狩崎の研究室にやって来た。

 

「ま。気にしないでくれたまえ。それよりも、はい。今回の報酬金だよ」

 

狩崎が、いつもよりかな。分厚い茶封筒を輝二に渡すと、輝二は中身を確認すると、報酬金に頷き懐にしまった。

 

「いや~、今回は『クジャクバイスタンプ』、『クロコダイルバイスタンプ』に『カマキリバイスタンプ』に『ジャッカルバイスタンプ』、『メガロドンバイスタンプ』に『コブラバイスタンプ』。そしてーーーー『トリケラバイスタンプ』と、一気に七個もバイスタンプを回収するとは、ここ数日の激戦も無駄ではなかったって事だね。・・・・所で、ミランダ・フォーミュとミハエル・フォーミュはもう行ったのかね?」

 

「・・・・ああ」

 

話は、数時間前に遡る。

 

 

 

* * *

 

 

 

「輝二・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

輝二は郵便受けに入っていた手紙にミラ達がこの場所に行く事を教えられ、横浜の外国人墓地に来ていた。おそらく、ボンゴレの差し金だろう。

そして、レンタルバイクで墓地に着き歩いていると、車椅子に座ったミハエルと共にミラが、『ケビン・ヴァージル』と『メディア・ヴァージル』と『メノア・ヴァージル』と掘られた三つのお墓の隣に、『ノノ』と『ケイ』と掘られた二つのお墓に花束を添えていた。

輝二はなにも言わず、五人のお墓に花を置いて手を合わせた。

 

「姉さん、彼が?」

 

「・・・・ええ、そうよ」

 

「・・・・行くのか?」

 

輝二の言葉に、ミラはコクリと頷いた。

 

「ボンゴレファミリーが、私とミハエルを〈財団X〉が追ってこれない場所に連れていくって言ってくれたわ。ソコでミハエルを療養させて、追っ手が収まるのを待つわ」

 

「そうか。学校の皆は、“お前がいた記憶を消されていた”。ボンゴレが幻術による催眠術でも、使って手を回したんだろう」

 

「ええ」

 

「・・・・生きるのか?」

 

「そのつもりよ。メノア達との、約束でもあるし」

 

輝二とミラの脳裏に、あの戦いの後の記憶が過った。

 

バット・デッドマンを倒し、ミラに駆け寄った輝二は、出血多量で息を引き取ったヴァージル教授の遺体と、母親のメディア・ヴァージルの遺体が、バット・デッドマンとの戦いにより、過剰なダメージを受け、もはや命は風前の灯火となったメノア・ヴァージルの左右に横たわっていた。

 

【・・・・・・・・私も、もう終わりね】

 

息も絶え絶えの状態、本人に生きる気力もなく、死を悟ったように、それが訪れるのを待っている様だった。

 

【・・・・メノア・・・・】

 

【・・・・ミランダ、分かっていたのよ。お母様が死んだあの時に、私達の戦いに、意味なんて無いって・・・・でも、それじゃ私達のやって来た事は、何だったの?】

 

メノアが、自分達の苦しみを吐き出すように絞り出すように言った。

 

【幼い頃から、お父様がお母様の病を治そうと苦心していたのを間近に見続けていた。天才と呼ばれた私でも治せず、その為に〈財団X〉に入団までした。本当に一緒に人生を歩もうと思っていた婚約者を殺した。私自身も実験体になった。多くの人達の命を奪っていった。ノノも、権力者達のくだらない内戦で家族を失い、ダンサーになる夢を失った。ケイも、誰かの希望になれる立派なエージェントになりたいって夢も、悪辣な上層部に踏みにじられた。私達にはーーーーこの道しか無かったのよ・・・・!! ごふっ!】

 

涙を流しながら独白するメノアが口から血を吐いた。

 

【メノア!】

 

【はぁ、はぁ、はぁ・・・・ミ、ミラ・・・・ミハエルと、生きなさい・・・・約束、よ・・・・】

 

【・・・・うん】

 

ミラが頷くと、メノアは少し笑みを浮かべた。

 

【・・・・私、達は・・・・先に、地獄で、行ってる、わ・・・・】

 

【・・・・ええ。暫しの別れね】

 

【・・・・せめて・・・・お父様と、お母様と・・・・同じお墓、に・・・・】

 

そう最後に呟くと、メノア・ヴァージルは、ゆっくりと瞼を閉じ、その命の灯火が消えた。

ミラとミハエルの二人はそのまま、修理を終えたボンゴレの輸送飛行機に獄寺達がメノア達の遺体を袋に入れて運び出しと一緒に乗る。

その時ーーーー。

 

【〈仮面ライダーリバイス〉、嵐山輝二】

 

【ん?】

 

ツナが輝二の名前を呼ぶと、エンマが懐から、リボーンが帽子の中から、『バイスタンプ』を取りだし、輝二に投げ渡した。

川西美春が使っていた『クジャクバイスタンプ』と、ツナ達が所持していた『トリケラバイスタンプ』だ。

 

【それはお前が使え】

 

【・・・・ああ。ありがたく使わせてもらう】

 

そしてツナ達も乗り込み、輸送飛行機は飛び去っていった。

 

【狩崎さん。今回の事・・・・】

 

【ああ。ボンゴレの事や彼女達の事は、〈フェニックス〉に報告しないでおこう】

 

そして、今に至る。

 

「ほとぼりが冷めたら、どうする?」

 

「旅に出るわ。巡礼の旅に、ね」

 

「旅、か・・・・」

 

「僕も姉さんも、何人もの人の命を奪ってきた。その罪は生きて償い続けなければならないと思うんです」

 

ミランダとミハエルの目には、哀しみの色が出ていた。

もうこちらが何を言っても、彼らは旅に出る決意を変えられないと、輝二は直感した。

 

「姉さん・・・・」

 

「ええ。輝二、少し良い?」

 

「・・・・ああ」

 

ミハエルから少し距離を置き、二人は並んで、少し歩きながら話を始める。

 

「・・・・輝二。私は、あなたの大切な人を巻き込んだ。どんなに謝罪しても、許される事じゃない」

 

「・・・・ゆいは無事だった。記憶の方も、ボンゴレの女幻術師が操作してくれている。今は、学園近くの病院に入院している。気にするなと言うつもりはないが、もう過ぎた事だ」

 

「そう・・・・。輝二。私ね、あなたと初めて会ったあの日、あなたに私と同じ『闇』があるって、思ったの」

 

「ーーーー俺もだ」

 

「本気だったのよ。任務とか抜きで、あなたと仲良くなりたいって、本気で思っていた」

 

「・・・・そうか」

 

一瞬、俺もだよ、と言いそうになったが、輝二はその言葉を呑み込んだ。その言葉を、ミラは望んでいないからだ。

 

「ねえ輝二。あなたは・・・・『神様』って、信じる?」

 

「生憎、俺は『神様』なんて信じちゃいない。いるとしても、ろくでもない『アホ神様』じゃないのか?」

 

輝二は鼻で笑うように言った。これをツナ達が聞いたら、青い髪に白ワイシャツを着用した優男の『青神様』を連想して、ウンウンと頷いていただろう。

余談だが、その『青神様』も、輝二がそう言った瞬間、大きなクシャミをしていた。

 

「私も、『神様』なんて信じられなくなった。だって、『神様』がいるんなら、どうして孤児院の皆を救ってくれなかったのよ!って、ひっぱたきたくなるから」

 

「だな」

 

「でもあの時、ミハエルを救ってくれた時、私思ったの。この世に『神様』なんていなかったけどーーーー『ヒーロー』はいるって」

 

「・・・・俺はそんか柄じゃない」

 

「ううん。私達にとって、あなたは『ヒーロー』よ。輝二」

 

「・・・・・・・・・」

 

≪照れとる照れとる。ヒケケケケケケ≫

 

そっぽを向いた輝二を、バイスがニヤニヤしたように指差す。バイスでうさを晴らそうかと考える輝二に、ミラは少し悲しそうな顔になって話す。

 

「輝二。あなたは凄い人よ。どんな暗闇の中でも、あなたは『目的』を果たす為なら、躊躇なく、諦めずに進んでいく強さがある。ーーーーでも、私は一緒にいられそうにない」

 

「・・・・・・・・」

 

「仮に私があなたと一緒になったとしても、私はあなたと同じ暗闇に行けると思う。でも、それじゃダメなんだと思うの」

 

「・・・・と言うと?」

 

「輝二ーーーーあなたには、『一緒に暗闇に行ってくれる人』じゃなくて、『光へと導いてくれる人』が、ふさわしいわ」

 

「『光へと導いてくれる人』・・・・」

 

「あなたは強い人だけど、あなたに必要な人は、あなたがどんなに暗い世界に行っても、その手を掴んで、あなたが嫌がってもその手を引っ張って、『明るい世界』に連れていってくれる、そんな人があなたに必要なんだと思う」

 

「・・・・『明るい世界』、ね」

 

「あなたの事も、少し調べさせて貰ったわ。あなたは、〈デッドマンズ〉を壊滅させるまで、戦いを続けるつもりなのでしょう?」

 

ミラがそう言っと、輝二は頷いた。

 

「ああ。誰が何を言おうとも、俺はこれだけは譲れない。この『クソッたれな運命』と決着を着けると誓ったんだ。そうしない限り俺は・・・・前に進めないんだ」

 

その瞳には、確固たる覚悟と決意に満ちた輝きを放ち、ミラもそれ以上言わなかった。

 

「・・・・輝二。あなたの『運命』に、『幸福』が訪れるのを祈ってるわ」

 

「・・・・ああ。お前らにも、な。ミラ」

 

「っ・・・・うん」

 

久しぶりに愛称で呼んでくれて、ミラは涙を流しそうになったが、それを我慢して笑みを作り、お互いに握手した。

そして、ミラから手を離し、背を向けてミハエルの元に行くと、車椅子に座ったミハエルが輝二に頭を下げ、二人はそのまま墓地の入口にいた。獄寺と山本の二人に車に乗せられ、そのままその場から去っていった。

 

「・・・・さようなら、ミラ。多分ーーーー『初恋』だったのかも知れない」

 

輝二も、その頬に一筋の涙を垂らしながら、小さく呟いた。

 

≪グスン・・・・皆、『初恋』って、甘いけど苦くて切ない気分になるんだねぇ?≫

 

 

 

* * *

 

 

 

「それは何とも、切ない話だね」

 

「・・・・それはそうと、俺を呼び出した訳は?」

 

「うん。“『依頼』の追加を頼みたくてね”」

 

狩崎がそう言うと、輝二は仕事の顔になる。

 

「追加? 『バイスタンプの回収』の?」

 

「まぁね。君も見かけたと思うけど、私が『リバイスドライバー』の他に製作していた『ドライバー』の1つが、先日のストゥラオ・モスカの襲撃で、私が君と共にあの戦場に赴いて、〈フェニックス〉もゴタゴタしている隙を突かれてしまってね。“何者かに盗まれてしまったんだ”」

 

≪ええっ!? 盗まれちゃったの!?≫

 

「っ、〈デッドマンズ〉か?」

 

「その可能性が一番高いね。今回の事件に、彼らの思惑も少し絡んでいたとしたら、〈デッドマンズ〉は、『ドライバー』を盗むのが目的だったのかも知れない」

 

「(何故『ドライバー』の存在を奴らが知っていた? 一応〈フェニックス〉のーーーー恐らく伯父さん達のような上の人達しか知らない情報の筈。いや、今はそれよりも)・・・・まさか、あのバイスタンプも」

 

「ああ。今なお〈フェニックス〉隊員達が捜索しているが見つからないーーーー『バットバイスタンプ』も関係しているだろうね」

 

そう、ミラの弟のミハエルが使っていた『バットバイスタンプ』。リバイスとボンゴレによってバット・デッドマンは撃破されたが、そのバイスタンプだけは見つからず、〈フェニックス〉の隊員達が今も探しているのだ。

盗まれた『ドライバー』。見つからない『バイスタンプ』。これらに〈デッドマンズ〉の思惑が絡んでいるとなると、繋がっているように思えた。

輝二は頷くと、狩崎に向かって口を開いた。

 

「分かった。『盗まれた『ドライバー』の回収』。その『依頼』引き受けよう。『ドライバー』の名前と形状は?」

 

「名前は、『ツーサイドライバー』。形状は今スマホに送る」

 

スマホに送られた写真を見ると、黒と緑色のカラーに、二つの顔のエンブレムがついたドライバーが映されていた。

 

「了解。これの捜索もしておく」

 

「うん。よろしく頼むよ。ついでに、もう使えるように調整しておいた。使ってくれたまえ」

 

狩崎が『イーグルバイスタンプ』と『メガロドンバイスタンプ』を渡すと、輝二は頷いて、その場を去った。

 

「・・・・さて、こちらのドライバーは廃棄するとして」

 

狩崎は、『コブラバイスタンプ』と適合する『ドライバー』のデータを破棄しようと考え、もう1つのドライバーの調整を始めた。

 

 

 

 

 

 

〈スカイ・ベース〉を出た輝二はレンタルバイクでやって来たのは、ゆいが入院している病院の個室。

ゆいはあの戦いがあった山の入口付近の公園のベンチで眠っていたのを警察が保護した、と言う事で入院していた。丁度学校側も、ゆいの捜索願いが出ていたところであった。

病室から、ゆいの声と友達四人との会話が聞こえる。所々で、変な語尾をつけた別の女の子の声と男の子の声が聞こえたが、廊下側から病室の扉越しに聞いていた輝二はあまり気にしないでいた。

 

「ゆい・・・・お前はこっちに来なくて良い」

 

輝二はそう呟くと、病室から去っていった。

 

 

 

 

ーゆいsideー

 

ゆいは友達の皆と会話しながら、ふと気を失っていた時に、僅かに意識が戻った時の事を思い出していた。

ほんの数秒位の時間だったが、何処か懐かしい温かな感覚があった。

 

「(あれは、何だったんだろう?)」

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

≪なぁなぁ輝二。やっぱりさ。『バットバイスタンプ』のアイツって≫

 

バイクに乗り、ヘルメットを被ろうとする輝二に、バイスが話しかけ、輝二は視線を鋭くして肯定するように頷いた。

 

「ああ。奴はまたーーーー必ず現れる」

 

輝二は、リバイスレックスで止めを差す瞬間、バット・デッドマンが言っていた言葉を思い返していた。

 

【ぐぁあああああああっ!! 忘れ、るな、嵐山、輝二・・・・!! 俺は必ず戻ってくる・・・・! お前を殺す為に! 必ずな!! 俺を覚えておけ! 俺の名を!!ーーーー『カゲロウ』の名をなぁっ!!】

 

「・・・・『カゲロウ』、か」

 

輝二はふとポケットを探ると、ミラから借りたままのハンカチがあった。

 

「あーーーー」

 

そして、風が吹くと、ハンカチは風に飛ばされ、空の彼方に飛んでいった。

 

「ーーーーさようなら、ミラ」

 

輝二は小さく笑みを浮かべ、バイクを走らせた。

 

 

 

 

 

ーツナsideー

 

そしてツナ達は、ミラとミハエルを連れて、ボンゴレ所有の次元航行船に乗り、『ミッドチルダ』へと向かっていた。いくら〈財団X〉と言えど、下級の戦闘隊員二人を消す為に、わざわざ次元を越えるなんてコストも手間を使わないだろうと踏んだからだ。

 

「おいツナ。〈デッドマンズ〉の方は大丈夫か?」

 

「あぁ。『彼ら』がいる。だからきっと、大丈夫だ」

 

リボーンの言葉にツナは確信を込めて頷き、エンマもリボーンも笑みを浮かべるであった。

 

「(頼んだぞ。〈仮面ライダーリバイス〉)」

 

ツナは、新たな〈仮面ライダー〉に地球を託し、次元を渡っていったのであった。

 

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・」

 

バイクを止めた輝二は、ツナの声が聞こえたのか、ヘルメットのバイザーを上げ空を見上げると、少しして、バイザーを下ろしてから、再びバイクのエンジンを吹かせて走り出した。

明日ーーーー新しく出来たショッピングモールに現れる、情報屋を捕らえようと考えていた。

 

そして輝二とバイスは出会う、自分達の戦いに関わってくる、『お節介な伝説の戦士達』とーーーー。

 

 

 

~ED・『liveDevil』~

 

 

 

ー『仮面ライダーリバイス クロスフィアンマ』・完ー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーデッドマンズsideー

 

ソコは、何処かのクラブかディスコのような場所。

その一室の赤い部屋に置かれた上座のソファに座るのは、悪魔崇拝組織〈デッドマンズ〉の首魁・アギレラとその後ろに控える幹部のフリオ。

アギレラが、部屋に入ってきた人物に声をかけた。

 

「おかえり、オルテカ」

 

「ただいま戻りました。アギレラ様」

 

フリオと同じ幹部のオルテカがアタッシュケースをもって入ってきた。

オルテカはアギレラの左隣のソファに座ると、〈仮面ライダーリバイス〉と〈財団X〉、そして〈ネオボンゴレファミリー〉の戦いを伝えた。

それを終えると、アギレラは少し残念そうに肩を落とした。

 

「そう。機械の力で『第三フェーズ』を人為的に作り出すのは、やっぱり不可能なのね」

 

「ええ。この計画が成功すれば、わざわざ育てるなんて非効率な事をせずに、『第三フェーズ』を生み出せる筈だったんですがねぇ。川西美春女史とも、良いビジネスパートナーになれると思ったのに。しかし、良いものも手に入りました」

 

オルテカは懐から、『バットバイスタンプ』を取りだし、テーブルの上に置いた。『バットバイスタンプ』から、弱々しくも、どす黒いオーラがユラユラと立ち上がる。

 

「これが、悪魔の宿ったバイスタンプ。でも、弱ってない?」

 

「ええ。“元々の宿主が死んでしまい”、新しい宿主となった少年を使って、〈仮面ライダーリバイス〉に挑んだようですが敗北し今やこの有り様です。爆発した後、少し離れた位置で見物していた私の目の前に飛んできた時は、まるですがり付いてきたように思えましたよ」

 

「それで、こんな死に損ない使えるのかよ?」

 

可笑しそうな顔をするオルテカに、フリオが訝しそうに聞いてくるが、オルテカはアタッシュケースをテーブルの上に置き、ケースを開け、その中にある“〈フェニックス〉から盗んだ『ドライバー』を見せた”。

 

「要は『新しい宿主』と『新しい力』を与えてやれば良い。宿主にする人間にこのバイスタンプを押印すれば、その中に宿る悪魔を喰らい、コイツは再び息を吹き返す」

 

「それで? この悪魔くんの『新しい宿主』にするのは、一体誰?」

 

「信者達を使いません。この前に捕らえた、我々〈デッドマンズ〉の事をコッソリ嗅ぎ回っていた“ネズミ”を使います」

 

オルテカがタブレットを操作すると画面に、牢屋に閉じ込められ、衣服が少しボロボロになった中学生くらいの少年が、両手に手枷を掛けられ、天井から吊るされた状態で無惨な姿を晒してる姿が表示されていた。

 

「この少年を使います。中々の力を持っていますし、使わない手は無いでしょう」

 

「うふふ。楽しみだわ。私達の新たな手駒が増えるのね」

 

「アギレラ様、スマ~イルですねぇ」

 

「ふふっ、全ては、『ギフ様』の為に」

 

アギレラは笑みを浮かべ、部屋の奥に置かれたーーーー『異形の怪物ミイラのような形をした石棺』にすり寄った。

 

 

 

 

ー???sideー

 

オルテカのタブレットに映し出された少年は、ボロボロになり、前髪が無造作に伸び目元を隠していたが、口元だけは見えており、か細い声で呟いたーーーー。

 

「・・・・の・・・・さ、ん・・・・」

 

そう呟いた後、少年は静かに意識を失った。




これにて終了。
そして、敵キャラ達のモデルとなったアニメキャラ紹介です。

ミランダ・フォーミュ:モデルキャラ 『可愛いだけじゃない式守さん』の『式守さん』

ミハエル・フォーミュ:モデルキャラ 『可愛いだけじゃない式守さん』の『和泉くん』

メノア・ヴァージル:モデルキャラ 『処刑少女の生きる道』の『メノウ』

ノノ:モデルキャラ 『無能なナナ』の『柊ナナ』

ケイ:モデルキャラ 『仮面ライダー555』の『ジェイ』

川西美春:モデルキャラ 『小悪魔教師サイコ』の『葛西心春』


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本編
悪魔と踊る


仮面ライダーリバイスとプリキュアオールスターズ。そして魔法少女リリカルなのは(原作ではない)が登場。


『悪魔』ーーーーーーーー。

神話で。聖書で。伝説で。伝承で。或いは御伽話で。ありとあらゆる逸話に登場する、人を惑わせ、人を喰らい、人を滅ぼす邪悪な存在。

だが、それはあくまでも、架空の存在として認識され、人間はその存在を信じる物ではなかった。

しかし人類は、ただ知らなかっただけである。

 

 

 

 

 

ーーーー『悪魔』とは、人間の心から生まれる存在なのだと・・・・。

 

 

 

 

ー???sideー

 

「♪~♪~♪~♪~♪~♪」

 

「ご機嫌やなぁ、『はな』?」

 

最近できた新しいショッピングモールに向かう少女達。そんな中、マゼンタ色の長髪をした女の子が気分良く鼻唄を歌い、それを赤い短髪の青年が口を開く。

 

「だって! クライアス社との戦いは終わって、また『いちかちゃん』達と一緒に買い物ができるんだよっ!」

 

「うん! 私も凄く嬉しいよ!」

 

茶髪にツインテールをした女の子が、元気良く返事をした。

すると他の少女達も笑みを浮かべる。皆中学生から高校生、中には小学生の女の子もおり、1人1人が可愛らし少女や美しい少女ばかりであった。

 

 

 

ー???sideー

 

そんな少女達の一団から少し離れた位置に、栗色のサイドテールをした大学生くらいの年齢の可愛らしい女性と、金色の長髪をした同い年の美しい女性が歩いていた。

二人とも、服の上からでもプロポーションの良さが分かり、モデルか芸能人と言われても納得するような美貌だった。

 

「『フェイトちゃん』。あの建物かな?」

 

「うん。『アリサ』と『すずか』が教えてくれた新しくできたショッピングモールだね。あそこに『ヴィヴィオ』が喜びそうな絵本があれば良いけど・・・・」

 

「『旦那様達』も来てくれると良かったけどねぇ」

 

「仕方ないよ。今日は『ヴィヴィオ』の定期健診だから、保護者として『二人』は『ヴィヴィオ』と一緒にいないといけなかったからね・・・・」

 

「それにしてもだよ。『JS事件』が終わってまだ半月も経ってないのに、『二人』とも、“仲間の皆さんと一緒に地球に戻って”、そしてまた突然戻ってくるんだから、忙しないよね?」

 

「『リボーン』が言ってたけど、ちょっと『とある裏社会の科学者』が逃走したのと、最近派手に動いている『あの集団』も関わっているみたい・・・・」

 

「あぁ、『あの集団』だね・・・・」

 

二人の言う『あの集団』とは、“自分達が地球にいない間に”、表と裏の社会の領分を侵している『カルト集団』の事であった。

 

「でも、今の私達には、“他にやる事”があるしね・・・・」

 

「うん。今は、ね・・・・」

 

二人は自分の下腹部を優しくさすると、愛おしそうな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

1人の少年が、ショッピングモールにあるカフェで、3杯目となるブラックコーヒーを飲みながら外の景色にソッと視線を流し、行き交う人達に視線を向けた。

 

≪なあなあ! 退屈じゃねえ? 歩いている人間なんかを見て何が楽しいのよ?≫

 

「(五月蝿い)」

 

少年は“自分にしか見えないし聞こえない存在”に、鬱陶しそうに眉根を寄せる。

 

≪あぁ~ぁ、退屈だよなぁ! “この間の戦い”なんてメッチャクッチャ楽しかったよなぁ! 炎を出してる奴や第2フェーズまで行った奴とバドったりして!≫

 

「(あぁハイハイ)」

 

少年は『自分にだけ聞こえる声』を鬱陶しそうにしていると、ちょうど中学生くらいの女の子と高校生くらいの女の子の一団が目に映った。

 

≪うわぁおっ! 何だ何だ! スッッッッゴく美味しそうな可愛子ちゃん達が団体で歩いてやがるっ!! おおぉっ! アッチの大学生くらいのお姉様二人も! 肉付き良くてジューシーそうッ!!!≫

 

『声の主』は女の子の一団を見た後、その近くにいる大学生位の女性二人に目を向けて叫んだ。

 

「(お前、サツがいたらしょっぴかれる面になってるぞ・・・・っ)」

 

半眼になって呆れていると、人混みの中、探していた人物が、美少女軍団に正面から近づくのを見つける。

 

「(中肉中背の猫背。痩せこけた顔。垂れた目。唇近くに毛の付いたホクロ・・・・ヤツだな。行くぞ)」

 

≪あんん! 折角の美少女軍団と美女コンビをもっと眺めていたかったのにぃっ!!≫

 

少年は会計を済ませて、店を出ると、美少女軍団の後方に付き、男とすれ違うようになる。

と、そこで、男が『声の主』が美少女軍団と呼称した女の子達の、茶髪のツインテールの女の子とぶつかった。

 

「きゃっ! ご、ごめんなさい!」

 

「・・・・気を付けろ」

 

男は舌打ち混じりに少女達から離れようとする、その時、少女達なら中で年長者らしき紫色の長髪の猫のような雰囲気をした美しい少女と、赤い短髪の男性の服を着た麗人風の少女と、中学生位の淡い紫色の髪の少女が男の方に声をかけようとしたーーーー。

 

「・・・・・・・・・・・・ちっ」

 

が、その時、少年が小さく舌打ちし、男の方に勢いを付けて肩をぶつけた。

 

「いって! おい!」

 

「すみませぇんっっ!!!!!」

 

『っ!』

 

男が少年を怒鳴ろうとした瞬間、少年は周りの人達が何だ何だ、と自分達に視線を向けてきた。

 

「えっ、いや、あっ・・・・」

 

男の方は少年が大声を上げて周りの人達の視線に戸惑う。

が、少年は構わず、大声を上げ続けた。

 

「すみません! すみません! すみません! すみません! すみません! すいません! 本っっ当にすみませぇん!!! 急いでいたんですぅ! わざとじゃないんですぅ! 肩をぶつけてしまって申し訳ありませぇん! お怪我はありませんでしょうかぁ!! 本当に申し訳ありませぇん!! どうか許してくださぁいっ! ご勘弁してくださぁぁいぃっ!!!」

 

周りにも聞こえる程の大声で平謝りを続ける少年。

それを見て周囲の人達はーーーー。

 

「えっ? 肩ぶつかっただけであそこまで謝らせてるのかな?」

 

「うっわ・・・・今時いんだな、そんな古臭い事やっているやつ」

 

「日本には、そんな野蛮な事をする人もいるのね」

 

「・・・・珍しいから写真でも撮ろうかしら?」

 

「・・・・そうだね」

 

「・・・・『なのは』」

 

「ううん。もう少し待ってよ」

 

「何かあの人、可哀想なのです・・・・」

 

「あんなに謝っているんだから許してあげればいいのに・・・・」

 

「ああいうチンピラは弱い者苛めが大好きなんだよ」

 

周りの人達の冷たい視線と、ヒソヒソと話し声やスマホを構えるのを見て、男はバツが悪そうな顔を作ると、そそくさとその場を去ろうとした。

 

「ちっ! 気を付けろ!」

 

男は慌ててその場を去り、少年は頭を下げたままになるが、すぐに頭を上げて、息を吐く。

 

「(・・・・・・・・はぁ)」

 

≪きひひひ! ナイス演技!≫

 

「(五月蝿い)」

 

からかってくる『声の主』に内心悪態を突いていると、少女達から、茶髪のツインテールの女の子と、マゼンタ色の髪の女の子が近づいてきた。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「(・・・・返しておくか) いえ、気にしないでください。あ、それと君」

 

「は、はい・・・・?」

 

マゼンタの女の子が心配そうに声をかけてきて、返事をすると、少年は茶髪の女の子に視線を向け、ウサギの柄をした可愛らしい財布を出した。

 

「これ、落としてましたよ」

 

「あっ! これ私のお財布!」

 

「中身も確認しておいてください」

 

女の子は財布を受け取り、中身は確認した。

 

「良かったぁ、全部入ってる・・・・」

 

「それは良かった。急いで来た甲斐がありましたよ」

 

女の子が笑みを浮かべると、他の女の子達も近づいてきた。

 

「もしかしてあなた、『いちか』のお財布を届ける為に急いでいたの?」

 

「それでさっきの男の人にぶつかっちゃったのか」

 

青い長髪の女の子と金髪のショートヘアーの女の子がそう言うと、『いちか』と呼ばれた女の子は頭を下げた。

 

「ご、ごめんなさい! 私のせいで!」

 

「いや、気にしなくて良いよ。ぶつかったのはこっちのせいだから・・・・」

 

「で、でも!」

 

「ぁぁ、ゴメンね。これから行くところがあるから、これで失礼させてもらうよ。今度は落とさないように気を付けてね・・・・」

 

少年はそう言うと、来た道を戻っていった。

 

「大丈夫なのかあの兄ちゃん?」

 

「ちょっと、心配ですね」

 

茶髪の女の子に近くにいたお転婆そうな雰囲気にロックファッションをした青い髪をポニーテールにした女の子と茶髪の三つ編みを二つ垂らした小柄な女の子が、去って行った少年を心配そうに見つめる。

 

「・・・・大丈夫でしょ。彼、以外に大胆な性格しているようだし」

 

「・・・・そうだね」

 

「はい」

 

少年の去っていった方を見据えながら、三人の少女が心配ないと言った。

 

「何事もなくて良かったね、『フェイトちゃん』」

 

「そうだね『なのは』」

 

離れた位置で見ていた大学生位の女性達も、ホッとしたようにショッピングモールへと歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「けっ、妙なガキだったぜ。・・・・さてと、『戦利品』は・・・・ん? んん??」

 

ショッピングモールの、誰もいない階段の踊り場で、先ほどの男は懐に手を入れると、何も入っていない事に気づき、服のあちこちに手を這わせた。が、『戦利品』、『財布』が何処にもなかった。

 

「何だ? 何処にやった?」

 

「スリ取った財布だったら、持ち主に返しておいたぞ」

 

「っ!!」

 

男は突然後ろから声をかけられ、肩をビクッと震わせ、後ろを振り向くと、自分にぶつかり、大声で謝っていた少年がいた。

 

「お、お前さっきのガキ、か・・・・?」

 

先ほどの気が弱く、卑屈そうな態度が全くなく、堂々と自分を真っ直ぐ鋭く見据える少年に、男は同一人物なのかと疑ってしまった。

 

「〈番田 寿明<バンダ トシアキ>〉」

 

「っ!」

 

自分の本名を呼ばれ、番田は身体を震わせる。

 

「スリといった窃盗。詐欺。麻薬の転売の常習犯。チマチマとした犯罪をコツコツと重ねて、警察のブラックリストにも乗った犯罪者。そして、情報屋としての顔も持っている・・・・」

 

「お、お前、何なんだ・・・・?」

 

番田は頬に汗を垂らしながら答えると、少年は懐から、『“スタンプのようなアイテム”を持っている番田の写真』を見せた。

 

「っ! そ、それは・・・・! まさかお前、〈フェニックス〉かっ!?」

 

「違う、〈フェニックス〉じゃない。アンタに聞きたい事がある。・・・・このスタンプを、誰から貰った?」

 

そう言い出した少年は、明らかに堅気の人間ではない物騒な光を瞳に宿した。

番田はこれでも一応は裏社会の人間である。チョロい人間とヤバい人間の区別ができる。そして目の前の少年は、後者の人間だ。

 

「くそっ!!」

 

[バッタ!]

 

番田は懐から、『バッタの刻印がされたスタンプ』を取り出すと、その上を押し、音声が鳴り響くと、そのスタンプを自分に押し込んだ。

 

「ぐぉおおおおおおおおおおっ!!」

 

すると、番田の身体から、人間くらいの大きさはある契約書のような紙が現れ、その紙が独りでにクシャクシャに丸まると、飛蝗の姿をした怪人が現れた。

 

≪げっ! 〈悪魔〉を出しやがった!!≫

 

「っ! おっと!」

 

飛蝗の怪人に驚いていると、背後から別の怪人に襲われそうになるが、回避する。

 

『ギフ! ギフ!』

 

上半分を失った頭蓋骨の頭に、骨のような物が上半身に纏わりついた黒ずくめのゾンビのような姿をした怪人が何体も現れた。

 

「〈ギフジュニア〉か・・・・」

 

≪やっぱコイツ、〈デッドマンズ〉とツルんでるんだぜ!≫

 

「へへへ、テメエら! やっちまえや!!」

 

「情報屋なのに、情報不足だなーーーー」

 

番田は勝利を確信したのか、口元を歪ませて〈悪魔〉と〈ギフジュニア〉をけしかけるが、少年は冷静に、『ドライバー』を取り出した。

 

[リバイスドライバー!]

 

腰に当てたドライバーはベルトが伸び、少年の腰に付いた。次に番田が使ったスタンプと同じようなアイテムーーーー違うのは、スタンプの色と刻まれているのは、ティラノサウルス・レックスだと言うことだった。

 

≪イェイ! 出番だぜぇっ!!≫

 

「燃えてこねぇなぁ・・・・!」

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

その音声と共に、少年は、スタンプに息を吐くと、そのままドライバーにスタンプを押し込む。

 

[Come On!レ・レ・レ・レックス! Come On! レ・レ・レ・レックス!]

 

≪さあ! いっちょド派手にやってやるぜぇッ! 『輝二』ッッ!!≫

 

同時に鳴り響く音、『声の主』は少年、『嵐山 輝二<アラシヤマ コウジ>』の背中に、スマホのラインのような映像が現れる。

 

ーーーー派手にやってやるぜ!

 

ーーーー面倒クセェ・・・・。

 

ーーーー何だよ輝二? もっとテンション上げてこうぜ! テンション!!

 

ーーーーお前のテンションに付き合わせるなよ・・・・。

 

ーーーーんもう! ノリが悪いんだから!!

 

輝二の身体から『声の主』、〈悪魔〉が現れ、その手には巨大なスタンプを手に持っていた。

 

「変身!」

 

≪よっこいしょっ!≫

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

輝二はそのままスタンプをベルトに挿入し、スタンプを横に傾ける。

その瞬間、輝二の身体は巨大なスタンプに押し潰されるように、スタンプの中に入った。

スタンプの中はまるで培養液のような液体に満たされ、輝二の姿が徐々に変わっていく。

歯を剥き出しにして威嚇しているようなギザ歯状のクラッシャー。ピンクと水色の体色に、つり上がった赤い瞳が特徴的な姿へと変わっていく。

そして、それに合わせるように、〈悪魔〉もティラノサウルス・レックスを思わせる被り物を付けて現れる。

 

「見てるか? おれっちは『バイス』。そしてこっちは『リバイ』。二人合わせてぇ~・・・・『仮面ライダーリバイス』だぜぇッ!!」

 

「誰に言ってんだよ?」

 

「リバイス・・・・? まさか、〈フェニックス〉が開発した、『対デッドマンズ』の装備かっ!? 壊滅寸前の組織が悪あがきをしてくれるっ! 〈ギフジュニア〉! コイツらを潰せっ!!」

 

『ギフ! ギフ!!』

 

〈ギフジュニア〉と呼ばれた怪人達が、リバイとバイスに襲いかかる。

 

「ふんっ!」

 

「イヤッハァッ!!」

 

リバイが格闘戦でギフジュニアを倒し、バイスがトリッキーな動きでギフジュニアを倒していった。

 

「おい! ずらかるぞ!!」

 

番田は自分の中から現れた〈悪魔〉にそう言うと、〈悪魔〉は番田を抱えて、跳び跳ねるようにその場から逃げた。

 

「おいおい! アイツこのままモールの方に出ちゃうぜ!?」

 

「チッ、面倒だな・・・・!」

 

バイスとリバイは〈ギフジュニア〉の掃討を急いだ。

 

 

 

ー???sideー

 

「怪物だぁっ!!」

 

「〈デッドマンズ〉よっ!!」

 

『っ!!』

 

上の階でショッピングをしていた少女達がモールの吹き抜けから一階を見下ろして見ると、一階に、最近世間を騒がせているカルト集団〈デッドマンズ〉の怪人が現れた。

 

「〈デッドマンズ〉です!」

 

「マジかよっ!?」

 

「あらまあ・・・・」

 

「遂にこんな所にまで・・・・」

 

「『いちか』!」

 

「うん! 『はな』ちゃん!」

 

「うん! 皆!」

 

「ええ!」

 

「わかった!」

 

「非道は許さないのです!」

 

「〈デッドマンズ〉の怪物の戦闘力は未知数です。気を付けましょう」

 

少女達はそれぞれ6人と5人に別れ、人目の無い場所に移動すると、それぞれがアイテムを取り出した。

 

「「「「「「キュアアラモード! デコレーション!」」」」」」

 

「ショートケーキ! 元気と笑顔を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアホイップ、できあがり!」

 

「プリン! 知性と勇気を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアカスタード、できあがり!」

 

「アイス! 自由と情熱を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアジェラート、できあがり!」

 

「マカロン! 美しさとトキメキを! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアマカロン、できあがり!」

 

「チョコレート! 強さと愛を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアショコラ、できあがり!」

 

「パルフェ! 夢と希望を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアパルフェ、できあがり!」

 

『宇佐美いちか』。『有栖川ひまり』。『立神あおい』。『琴爪ゆかり』。『剣城あきら』。『キラ星シエル』の6人は、それぞれピンクと黄色と青と紫と赤とカラフルな衣装を纏い、動物の耳と尻尾や羽を頭に着け、髪型の髪の色もそれぞれの色に変わっていた。

 

「「「「「ミライクリスタル! ハート、キラっと!」」」」」

 

「輝くミライを抱きしめて!! みんなを応援! 元気のプリキュア! キュアエール!」

 

「みんなを癒す! 知恵のプリキュア! キュアアンジュ!」

 

「みんな輝け! 力のプリキュア! キュアエトワール!」

 

「「みんな大好き! 愛のプリキュア!」」

 

「キュアマシュリ!」

 

「キュアアムール!」

 

『野々はな』。『薬獅子さあや』。『輝木ほまれ』。『愛崎えみる』。『ルールー・アムール』の5人も、ピンクと青と黄色と赤と紫のフリフリとしたチアリーダーのような衣装を纏い、髪型と色もそれぞれの色に変わった。

 

彼女達こそ、人々の愛と希望の戦士達、伝説の戦士〈プリキュア〉であった。

プリキュア達は、〈デッドマンズ〉の怪人がいる一階に飛び降りた。

 

「「「「「HUGっと! プリキュア!」」」」」

 

「「「「「「キラキラ☆プリキュアアラモード!」」」」」」

 

名乗りをあげると、自分達の隣に、白い衣装と黒い衣装を纏った歳上の女性達が現れた。

 

「えっ?」

 

「どちら様?」

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

別の階にある本屋で、絵本を買っていた大学生くらいの女性達も、一階を見下ろすと、カルト集団〈デッドマンズ〉がいた。

 

「『フェイトちゃん』! もしかしてあれが・・・・!」

 

「『ツナ』と『エンマ』が言っていた。〈デッドマンズ〉!?」

 

「行こう!」

 

「うん!」

 

「レイジングハート!」

 

「バルディッシュ!」

 

「「セットアップ!!」」

 

栗色髪の女性、『沢田なのは(旧姓高町)』は、白いスーツのような衣装を纏い、桃色の水晶がついた杖を持った。

金髪の女性、『フェイト・T・古里(旧姓ハラオウン)』は、黒い衣装を纏い、金色の水晶をついた杖を持った。

二人は足元に桃色の羽と金色の羽を展開させると、〈デッドマンズ〉のいる一階に降り立つ。

彼女達は、次元世界の秩序を守る『時空管理局』の魔導師である。

と、色とりどりの衣装を纏った年下の女の子達が現れた。

 

「「「「「HUGっと! プリキュア!」」」」」

 

「「「「「「キラキラ☆プリキュアアラモード!」」」」」」

 

「えっ?」

 

「どちら様?」

 

「えっ? お姉さん達、誰ですか?」

 

「めちょっく! 凄い綺麗なお姉さん達!」

 

「スタイルも凄く良い・・・・」

 

「マカロンより美人かも・・・・」

 

「(ジロッ)ジェラート、何か言った?」

 

「(ギクッ)いえ別に・・・・」

 

「あの白い服のお姉さん、アムールと声が似てるです」

 

「そうですか?」

 

「あの紫の女の子。『なのは』と声が似てる」

 

「そうなの? ・・・・あっ、『フェイトちゃん』。もしかしてこの子達が?」

 

「あっ、『アリサ』と『すずか』の言っていた、〈伝説の戦士プリキュア〉?」

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「おらっ!!」

 

「イェアっ!!」

 

プリキュアと魔導師が変身をしている頃、リバイとバイスは、ギフジュニアを倒し終えた。

バイスが壁やら床やら天井やらを破壊しながら戦い、さらに階段の手すりにギフジュニアを横たわらせ、サーフボードのようにしていた。

 

「やっほぉ! まだまだ暴れ足りねえ! 輝二! おれっちアイツ追っかけるなぁ!」

 

「なに? オイコラバイス!!」

 

走り出したバイスを追おうとするリバイだが、二体ほどのギフジュニアが遮った。

 

「くそっ! 邪魔すんなっ!!」

 

リバイは悪態つきながら、ギフジュニアと戦う。

 

「おぉぉ・・・・はぁっ!」

 

『『ギブゥッ!!』』

 

すぐにギフジュニアを撃破し、バイスを追うリバイ。その最中、頭に今朝ニュースでやっていた占いコーナーの情報が浮かんだ。

 

《貴方の運勢は、『大凶』! 年下で異性の女の子達に近づくと、これからの貴方の人生に苦労の連続が待ち受けているかも知れません! ですが、その女の子達が、貴方の救いにもなります。天使と悪魔は表裏一体です!》

 

「(・・・・何か、嫌な予感がする)」

 

言い様の無い悪い予感を感じたリバイは、足を進める速さを上げた。

 

 

 

 

 

 

プリキュア達と魔導師の2人がお互いを見ていると、飛蝗の悪魔、〈バッタ・デッドマン〉が、足に力を込め、床を踏み砕きながら、プリキュア達に向かって跳躍した。

 

『っ!』

 

咄嗟の事で反応が遅れた一同が防御しようとするとーーーー。

 

「イエェェェェェェェイッ!!!」

 

『えっ?』

 

が、その時、後方から現れた被り物の人物が、バッタ・デッドマンにドロップキックをおみまいして、弾き飛ばした。自分もデッドマンの勢いに押され、ちょうどデッドマンとプリキュア達と魔導師の間に落ちた。

 

「あいたぁっ!! んもう尾てい骨を打っちゃった!」

 

「・・・・何あれ?」

 

エールが被り物の人物を指差すと、

 

「バイスーーーーっ!!」

 

また後方から飛び出してきたギザギザ歯につり上がった赤い目をした仮面の人物が、被り物の人物を横に倒して、尻尾を掴んで締め上げる。

「イデデデデデデ!」

 

「勝手な行動、してんじゃねぇっ!!」

 

「あうんっ!! 酷い! この鬼! 悪魔!!って悪魔は俺っちか、こりゃうっかりアイデデデデデデデデ!」

 

ギャアギャアと騒ぐ二人に、バッタ・デッドマンも、プリキュア達も魔導師達もポカンとなる。まぁマカロンは面白そうに笑っていたが。

二人は騒ぐのをやめると、被り物の人物が起き上がる。

 

「あいててて・・・・。では、改めまして。・・・・Yo! こっちはリバイっす! おれっちはバイス! 二人揃って、仮面ライダーリバイス!! オーケー、チェケラ!!」

 

「死ぬ気で、行くか!!」

 

リバイとバイスは横並びになると、腕を合わせ、ハイタッチすると、最後にリバイが拳を出し、バイスが受け止めた。

 

 

 

光輝く伝説の戦士と、悪魔と組む仮面の戦士が、今交わりを始める。

そしてここに、次元の魔導師達と、『覚悟の炎を持つ者達』も、集まっていくーーーー。

 

 

『仮面ライダーリバイス 伝説と悪魔の狂想曲』ーーーー。




オリ主の事は次回紹介します。


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伝説・協力・スタンピング!

ープリキュアsideー

 

「・・・・えっと、〈仮面ライダーリバイス〉?」

 

「あっちがリバイで、その隣にいるのがバイス?」

 

「二人の名前を合わせてリバイス?」

 

「二人で一人なのですか? 私とアムールみたいなのです!」

 

「そうですね」

 

「何者、何でしょうか?」

 

「敵って事はないよな? 〈デッドマンズ〉を攻撃したし・・・・」

 

「そう思いたいけど、油断はできないわ」

 

「でも、結構面白そうな二人組ね」

 

「マカロン、そんな興味半分で・・・・」

 

「私も、悪い人には見えないけどなぁ?」

 

HUGっとチームとアラモードチームは、突然現れた〈仮面ライダーリバイ〉と〈バイス〉に各々の視線で見ていた。

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

なのはとフェイトは、リバイが言った、「死ぬ気で行くぜ!」と言う言葉から、リバイの姿が一瞬、自分達の『旦那様達』と重なって見えていた。

 

「んん? うっひょぉぉぉっ!! 見ろよ! 見ろよ! スッゴい可愛子ちゃん達と、別嬪なお姉ちゃん達がいるぜぇ!」

 

バイスと名乗ったヤツはプリキュアとなのは達を見ると、はしゃいだように近づいた。

 

「えっ? もしかして君たち、噂のプリクラちゃん?」

 

「(ズルッ)プリクラじゃなくて、プリキュア!」

 

バイスの発言に、エールがこけて、体制を整えてからツッコミを入れた。

 

「うわぉっ! 映像で見たことあるけど、生で見た方が断・然・可愛い!!」

 

「えっ、そ、そう?」

 

バイスの言葉に照れ臭くなるホイップ。構わずバイスは続ける。

 

「ホイップちゃんとカスタードちゃんとジェラートちゃんとパルフェちゃん、エールちゃんとマシュリちゃんは、ちっちゃくてと~ってもキュート~!! マカロンちゃんとショコラちゃんと、アンジュちゃんとエトワールちゃんとアムールちゃんは、ビューティフル&セクシ~!!」

 

「あ、ありがとうございます・・・・」

 

はしゃぎながら自分達を褒めるバイスに、エールは戸惑いながらもお礼を言うと、バイスはピタリと、はしゃぐのを止めると、ホイップをジッと見つめてーーーー。

 

「いや、皆本当に可愛いねぇーーーー食べたくなっちゃう程・・・・」

 

「「えっーーーー」」

 

静かに、何処か冷酷にそう言ったバイスに、ホイップとエールは首を傾げた瞬間、他のプリキュア達と、なのはとフェイトも、薄ら寒い悪寒が背中を走ったその時ーーーー。

 

ーーーーボゴッ!!

 

「あいたぁっ!!! ぐえっ!」

 

リバイがバイスに踵落としをして、バイスは頭を押さえて蹲るが、リバイがマフラーを掴んで引っ張って離れる。

 

「何やってんだよバイス。さっさとアレを仕留めるぞ。・・・・次いでに、あいつもなっ!」

 

リバイが近くにあった買い物カートを掴んで投げ、バッタ・デッドマンの近くの柱に叩きつけると、ガシャンッ!! と音を立て、柱から中年の男が這い出てきた。

 

「ひ、ひひぃぃぃぃっ!!」

 

バッタ・デッドマンの宿主の番田 寿明<バンダ トシアキ>だ。

 

「あ、あの人って・・・・!」

 

「さっきの?」

 

アンジュとエトワールが、先ほどいちかにぶつかった男性であると気づいた。

 

「番田寿明。スリと言った窃盗に、映画などの海賊版を不正に売り捌いたり、フィッシング詐欺を行って、老人から金を騙し取ったり、果てはグレ初めた中学生や高校生の不良達に薬<ヤク>の転売までやっている野郎さ」

 

「っ! 『薬<ヤク>』ってまさか・・・・!」

 

「『麻薬』っ!?」

 

『っっ!?』

 

驚愕したなのはとフェイトの言葉に、プリキュア達も驚愕し、険しい目で番田を見た。

麻薬。中学生処か、最近では小学生でも教えられる、人体や精神を蝕む危険薬物である。一度服用すれば多幸感に襲われ依存し、大金を払ってでも手に入れようとする。それが、自分の身体を死に追いやると分かっていても。

しかも、そんな危険薬物を中学生や高校生と言った子供達に売り付けているだなんて、人間の風上にもおけないような所業だ。

女性陣の冷たい視線に気づいた番田は、スタンプのようなアイテムを取り出した。

 

「く、くそっ・・・・! こ、こんな所で、パクられてたまるかよっ!!」

 

スタンプなようなアイテムを床に押し付けると、なんと床から、〈ギフジュニア〉が大量に現れた。

 

「うわっ! 何だあれっ!?」

 

「・・・・〈ギフジュニア〉。〈デッドマンズ〉の戦闘員と言った処だな。行くぞバイス!」

 

「へっへ~! 俺っちの大活躍! 皆期待しちゃってね~☆」

 

「誰に言ってるんですか?」

 

ジェラートが驚き、リバイがバイスを連れて向かうが、バイスは明後日の方向に向けてそう言い、カスタードが首を傾げた。

 

「ふっ! はっ! そらっ!」

 

「あらよっと! ヘイヘイ! うおりゃっ!」

 

リバイが蹴りや肘打ちに裏拳でギフジュニアを倒し、バイスはボディプレスに頭突きにフライングクロスチョップで攻撃した。

 

『うぅぅぅぅぅぅっ!!!』

 

バッタ・デッドマンがリバイに襲い掛かるが、リバイはそれを受け流しながら、デッドマンと交戦しているとーーーー。

 

「うっ、うぇ、うぇぇぇぇぇ・・・・!!」

 

「大丈夫、大丈夫だからな・・・・!」

 

「っ!!?」

 

『っっ!!』

 

「ありゃ?」

 

戦っている最中、食品売り場の棚の影で、泣いている女の子と、その子を守るように抱き締めている男の子がいた。

 

 

 

ーリバイsideー

 

「・・・・ちっ! バイス!」

 

「えっ? 何?」

 

リバイがバイスに近づくと、バイスの尻尾を両手で掴み、

 

「ちょっと! 何すんのよっ?!」

 

「ちょっとアイツとーーーー遊んでこい!!」

 

「いやぁああ!」

 

リバイは腕を大きく振り回して、バイスをジャイアントスイングする。その際、周りの〈ギフジュニア〉達を薙ぎ払うと、バッタ・デッドマンに向けて放り投げた。

 

『っ!!?』

 

「ぎゃんっ!?」

 

突然のリバイの行動に虚を突かれたバッタ・デッドマンは、バイスと一緒に倒れてしまった。

 

「ちょっと酷い! アタシの事何だと思ってるのよっ!?」

 

「っ・・・・・・・・」

 

「あら無視? 無視ですか? 無視するなんてもっと酷い! この悪魔男っ!・・・・あっ、悪魔は俺っちとコイツか、こりゃうっかり☆」

 

『ぐぅああああ!!』

 

騒ぐバイスを無視して、子供達の元に向かうリバイに、さらに騒ぐバイスだが、倒れながらもバッタ・デッドマンに腕ひしぎ十字固めをちゃっかり決めていた。

リバイは二人の子供達の元に駆けつけると、目線を子供達に合わせ、声を発する。

 

「・・・・君たちだけか?」

 

「っ!!」

 

「ううっ・・・・!」

 

「恐がらなくて良い。俺は君たちの味方だ。ご両親とかは?」

 

「・・・・逃げている最中に、離れ離れになった」

 

「そうか、見えるか? あそこが出口だ。俺はアイツらの相手をするから、その子ーーーー」

 

「妹・・・・」

 

「・・・・妹を連れて、全力で逃げろ」

 

「っ! 守ってくれないの?」

 

「生憎と俺も忙しい。君たちに怪物達が近づかないようにする。だから、妹を守れ。絶対にな」

 

「・・・・!」

 

リバイの言葉に、男の子は息を飲んだ。

 

「お前は兄貴だろう。だったら絶対に妹を守れ。それが先に生まれた者の、兄貴の務めだぞ」

 

「・・・・・・・・」

 

「おにいちゃん・・・・」

 

「っ!・・・・(コクン!)」

 

リバイの言葉に、不安そうになる男の子だが、妹が涙目で自分を見上げるのを見ると、その目から恐怖が薄まり、強い決意に満ちた顔となり、リバイを見て頷いた。

 

「良し」

 

[オーインバスター! 50!]

 

リバイも頷くと、スタンプを取り出し、ポンッ! と、床に押し付けると、斧か銃のような武器がスタンプ上部から構築された。

リバイはそれを掴むと、起き上がって迫るギフジュニア達に、銃から放たれる光弾を撃ち込んだ。

 

『ギュァアッ!!』

 

「今だ! 走れ!!」

 

「うん! いくぞ!」

 

「おにいちゃん!」

 

男の子は妹の手を引いて、真っ直ぐ出口へと駆け出した。

 

「っ! そのガキ共を捕まえろっ!!」

 

『っ!』

 

「ありゃ?」

 

番田は子供達を人質にしようと考えたのか、バッタ・デッドマンとギフジュニアに命令し、バッタ・デッドマンはバイスの絞め技から脱出し、バイスをリバイの方に放り投げた。

 

「のわぁああああっ!!」

 

「おっと」

 

「ギャフン!」

 

投げ飛ばされたバイスを回避するリバイ。バイスを強かに床に顔を打ち付けた。

 

「バイス! 遊んでないで、命懸けでソイツらを子供達に近づけるなっ!!」

 

「アテテテテ、んもう! 悪魔使いが荒いんだからっ!!」

 

リバイがバイスに叫ぶと、バイスも文句を言いつつ戦う。

 

「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・!」」

 

子供達は必死に息を切らせながら走ると、出口までもうすぐそこだった。

 

『キシュゥゥゥゥゥゥ!!』

 

が、バッタ・デッドマンが、まるでクラウチングスタートをするような体制になって力をこめ、足の部分が一回り太くなるとーーーー。

 

『キシャァアアアアア!!!』

 

床を踏み砕き煙を上げながら、一直線に跳び、子供達へと向かっていく。

 

「ちっ!」

 

リバイはバッタ・デッドマンが子供達に到達する前に、バッタ・デッドマンの前に立ち、オーインバスターを盾のように構える。

 

『っ!』

 

プリキュア達となのはとフェイトが、何をするんだと思うと、リバイはバッタ・デッドマンを受け止め、そのまま後ろに押し飛ばされそうなった。

 

「ーーーーくっ! つぁあっ!!」

 

が、何とリバイは、当たった瞬間に後方に退き、ダメージを最小限にすると、上体を倒し、バッタ・デッドマンの腹部に、巴投げの要領の両足蹴りでバッタ・デッドマンを上に蹴りあげた。

 

『キシャァアアアアア!!!』

 

蹴りあげられたバッタ・デッドマンは後方に吹き飛び、床に着地した。

 

「ぐぁ!」

 

リバイは受け身を取るが、少なからずダメージを受けたようだ。

 

「何してんだよっ!? さっさとあのガキ共を捕まえろっ!」

 

『キシャァアアアアア!』

 

番田がヒステリックに叫び、何度もスタンプで地面を押すと、次々とギフジュニアが現れる。バッタ・デッドマンも再び飛び出した。

 

「っ、うぅくっ!」

 

後ろにまだ子供達が走っているので、リバイは動かず、再び迎撃しようとするが、ダメージで僅かに動きが遅れる。

 

「あらやっべぇ!」

 

バイスがフォローに入ろうとするが、ギフジュニア達に阻まれて間に合わない。衝撃に備えて身構えるリバイーーーーが、

 

ーーーーポニュン!

 

「なに?」

 

「えっ? 何あれ? ホイップクリーム?」

 

リバイの目の前に、大量のホイップクリームが現れると、バッタ・デッドマンはその中に突っ込み、動きが取らなくなっていた。

 

「これは・・・・?」

 

「「はぁっ!!」」

 

リバイの近くに迫っていたギフジュニアを、誰かが蹴り飛ばした。それは、キュアホイップとキュアエールだった。

周りを見ると、カスタードはリフのように小さな身体を生かしたフットワークで戦い、ジェラートは氷の拳で雄々しく戦う姿はライオンのように、マカロンは猫のようにしなやかな動きで戦い、ショコラはチョコレートで作られた武器で勇ましく戦つ姿はまるで警察犬のように、パルフェは優雅な動きで戦い、アンジュはギフジュニアの攻撃をいなしながら戦い、エトワールはまるで踊りのような華麗な動きで戦い、マシュリとアムールは抜群のコンビネーションで戦う。なのはとフェイトも、魔力弾を放ちながら、ギフジュニアを倒していく。

 

「・・・・プリキュアに、あの人達?」

 

「あの! 仮面ライダーさん!」

 

「あの子達、無事に逃げられたよ!」

 

ホイップとエールが子供達を指差してそう言った。出口に到着した子供達が、こっちを見ていた。

 

「っ・・・・何をしている! さっさと逃げろ!」

 

「で、でも・・・・!」

 

「お兄さんは?」

 

「この雑魚達を片付ける! お前らは逃げろ! 妹をちゃんと守れよ!」

 

「う、うん!」

 

子供達はそのままショッピングモールから脱出した。それを見届けたリバイは、改めてプリキュア達と二人の女性達を見据えた。

 

「うわぁおっ! プリキュアちゃん達が俺っちに協力してくれんのっ!? 感謝感激雨嵐っ!!」

 

「てか、お前って何者だよ!?」

 

「えっ? 俺っち? 俺っちはーーーー悪魔だぜっ!!」

 

「いや、私達真面目に聞いているんだけど?」

 

ジェラートとエトワールが半眼ではしゃぐバイスを見てそう言う。バイスの言葉が『事実』だとは思っていないようだ。

 

「仮面ライダーさん!」

 

「一緒に戦おう!」

 

「・・・・ふん。バイス! さっさと終わらせるぞ!」

 

[レックス!]

 

ホイップとエールの言葉を無視するように、リバイはバイスに叫ぶと、ドライバーのバイスタンプを取りだし、上部のボタンを押した。

 

「おっ! やったるぜぇ! プリキュアちゃん達とお姉ちゃん達! ちゃんと避けてね☆」

 

『えっ?』

 

「おりゃぁっ!!」

 

ギフジュニアを相手していたプリキュア達やなのは達が、バイスの方を向くと、バイスが突然ーーーー口から火炎を吐き出したのだ。

 

『きゃぁああああああ!!』

 

『ギャァアアアアアア!!』

 

全員が慌てて避けると、火炎はギフジュニア達を焼き払った。

 

「ふぃぃぃ~、ぐぇっ!」

 

「次だ!」

 

「ああ!」

 

「待って!」

 

リバイがバイスの首に巻かれたマフラーを引っ張り、バッタ・デッドマンに向かい、エールとホイップが追う。

 

「あ、あぁ・・・・! や、やれぇ! ぶち殺せ!!」

 

番田は錯乱混じりになりながらバッタ・デッドマンに向けて叫ぶと、バッタ・デッドマンは再び跳躍突進を繰り出した。

 

「はぁ・・・・ふんっ!」

 

が、リバイは冷静に、ドライバーのバイスタンプを外し、判子の部分に息を吹きかけると、右胸のレックスの紋章をスタンプで押した。

 

「はぁああああああ・・・・!!」

 

「イエァアッ!!」

すると何と、リバイの足が一回りも二回りも大きくなり、バイスの尻尾も大きくなった。

 

「ええっ!? 何あれっ!?」

 

「あ、足と尻尾が大きくなった!?」

 

「ーーーー解析完了。リバイの足とバイスの尻尾。あれは形状から、ティラノザウルスの足と尻尾と同じものと判明しました」

 

『ティ、ティラノザウルスっ!!??』

 

なのはとフェイトが驚くが、アムールが冷静に分析して報告すると、他のプリキュア達も驚いた声をあげた。

ティラノザウルス。それは女の子のプリキュア達やなのは達も知っている、6600万年前に絶滅した恐竜の事であった。

 

『グオオオオオ!!』

 

「フン! はっ!」

 

バッタ・デッドマンを飛び越えたリバイ。バイスがバッタ・デッドマンを待ち受ける。

 

「一直線に来るからーーーー」

 

「軌道が読みやすいのよ、ねっ!!」

 

『グァアアアッ!!』

 

尻尾を振りかぶったバイスが、尻尾でバッタ・デッドマンを弾き飛ばした。

飛ばされた先にはリバイが待ち受け、その足でバッタ・デッドマンをバイスの方に蹴り飛ばした。

 

「はっ!」

 

『ギャァ!』

 

「ほいっと!」

 

『ガァ!』

 

「おらっ!」

 

『グァ!』

 

「はいっと!」

 

『ゴァッ!』

 

「とりゃっ!」

 

『ゲフッ!』

 

まるでテニスか卓球のラリーのように、バッタ・デッドを10回ほど打ち合うと、

 

「うぉらぁっ!!」

 

『グァアアアッ!!』

 

遂にリバイがバッタ・デッドマンを吹き抜けの中心に蹴り飛ばした。これまでのダメージでヨロヨロとなるバッタ・デッドマン。

 

「死ぬ気で、決めるぜ!」

 

[レックス! スタンピングフィニッシュ!]

 

リバイとバイスの両足に、エネルギーが流れ込む。

 

「ーーーーはぁ!」

 

『グォッ!』

 

「あらよっと!」

 

リバイがバッタ・デッドマンを蹴りあげ、さらにバイスが蹴り上げた。

 

「行っくぜぇー!」

 

「はぁっ!」

 

リバイとバイスがバッタ・デッドマンよりも高く跳躍して、飛び蹴りの姿勢になると、リバイとバイスの突きだした足に、巨大なバイスタンプ型のエネルギーを生成しーーーー。

 

「「はぁああああああああああっ!!!」」

 

『グォォアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!』

 

二人が着地すると、バイスがプリキュア達となのは達に近づいて、声を発する。

 

「さあ皆さんご一緒に!」

 

『えっ?』

 

「3<スリー>!」

 

「「ス、3?」」

 

なのはとフェイトがバイスの勢いに押され、惑いがちに指を三本立て、

 

「2<ツー>!」

 

『ツ、2?』

 

アラモードチーム(面白がっているマカロンは除く)が、戸惑いがちに指を二本立て、

 

「1<ワン>!」

 

『わ、1?』

 

HUGっとチームも人指し指を立てると、バイスはリバイの隣に戻り、

 

ドガアアァァァァァァァァァァァァァァンン!!!

 

「ビクトリー!!!」

 

バイスが勝利宣言すると同時に、空中にいたバッタ・デッドマンは爆散した。

 

「イェイ! イェイ! 見てた? ねぇ見てた? 俺っちってば、めちゃくちゃカッコ良かったでしょう?! はちゃめちゃ凄かったでしょう?!」

 

はしゃぐようにピョンピョンと跳ねるバイスは、プリキュア達やなのは達に顔を近づけながらそう言い、一同は苦笑いを浮かべながら頷いていた。

 

「ぎゃぁああああっ!!」

 

『っ!』

 

「ありゃ?」

 

一同が悲鳴を聞いて、ソコに目を向けると、リバイが番田の首を片手で掴んで、持ち上げていた。

 

「さて、番田寿明。『悪魔崇拝組織〈デッドマンズ〉』の本拠地。幹部達の素性。〈デッドマンズ〉の活動目的。洗いざらい謳って貰おうか?」

 

「し、知らねえよ・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

番田の返答にリバイは無言で首を掴んでいた手に力を込めた。

 

「ご! がぁ、あ、ぁあ!! 知らねえ! 知らねえ! スタンプは路地裏を彷徨いている時に、〈デッドマンズ〉の幹部って名乗った若い男から貰ったんだ! 俺は〈デッドマンズ〉の本拠地なんて知らねぇ! 本当に知らねえよぉおおおおっ!!!」

 

呼吸困難になり、目から涙、鼻から鼻水、口の端から涎を流しながら、必死に命乞いをする番田。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

が、リバイはそんな番田に耳を傾けず、さらに首を締め上げる。

 

「ま、待って! 待って! 待って!」

 

「ストップ! ストップ! ストップ!」

 

エールとホイップが慌ててリバイを止める。

 

「ん?」

 

「それ以上首を締めたら、その人死んじゃうよ!」

 

「・・・・プリキュア。コイツはな」

 

「悪い人だって事は分かるよ! でも、そんな風に苦しめて良い訳無いよ!」

 

二人の言葉に、他のプリキュア達も頷き、なのはとフェイトも険しい視線でリバイを見据える。

 

「あらら? どうするの?」

 

「・・・・ふん。甘いな」

 

パッと番田の首から手を離したリバイ。番田は地面に崩れ落ちると、激しく咳き込んだ。そしてリバイが見下ろしながら、声を発する。

 

「お前の知っている限りの〈デッドマンズ〉の情報を教えろ。さもなくば・・・・」

 

「わ、分かった。〈デッドマンズ〉には多くの信者がいる。それも、俺のような社会からはみ出たヤツらじゃねえ、其処らの堅気の人間達が大半だ。主に、自分達の事を力の無い弱者であると思っている連中だな・・・・」

 

「そうか。それで? 信者達の情報は有るのか?」

 

「そ、そこまでは・・・・」

 

「(すっ・・・・)」

 

ソッと拳を振り上げるリバイを見て、プリキュア達となのはとフェイトは、すぐに止めようと動こうとするが、先に番田が声を発した。

 

「や、奴らの信者の事を調べようとした同業の奴らは! 皆消されちまうんだよ! 多分、〈デッドマンズ〉のメンバーが、始末しているんだ!」

 

「ふん。情報は簡単に外部に漏らされないようにする、か・・・・。まぁ、コイツが知っているのはここまで、だな!」

 

がんっ!

 

「ひぶっ!!」

 

そう言ったリバイが、軽く番田の顔を蹴ると、番田は鼻から血を流しながら白目を剥いて気絶した。

 

「あっ!」

 

「な、何で!?」

 

「もうすぐ政府特務機関〈フェニックス〉も来る。ヤツらに拘束されるだろうから、抵抗できないようにしただけだ」

 

「やり過ぎだよ!」

 

エールの訴えを無視して、リバイはバイスのマフラーを引っ張って、その場から離れようとするが、なのはとフェイトが杖、デバイスを突きつけて、二人を止めた。

 

「うわあぉっ!! 何々?!」

 

「・・・・・・・・」

 

「あなた達二人に聞きたい事があるの・・・・」

 

「お願いします。彼女達プリキュアと一緒に、私達に付いてきてください」

 

なのはとフェイトの言葉に、リバイは仮面越しに鼻で嗤う。

 

「はっ、武器を突きつけて『お願いします』とは嗤わせる。知ってるか? そう言うのは、『お願い』ではなく、『脅迫』って言うんだよ!」

 

「「っ!」」

 

リバイの言葉に、なのはとフェイトが息を呑む。

リバイはさらに続ける。

 

「それに、何かアンタら、スゲエ気に食わねぇ。プリキュアの子達はまだ少しは信用できるかも知れないが、アンタらは胡散臭くて、信用できない」

 

「「なっ!」」

 

初対面で胡散臭いだの、信用できないだのと断言され、二人は肩をビクッとさせる。リバイと二人の間に、静かな火花が飛び散り、プリキュア達はどうしようかと思い、バイスは愉快そうに身体を震わせていた。

と、そこでリバイが肩を竦めながら声を発する。

 

「でもまぁ、こんな武器を突きつけられた状態で抵抗するのも面倒だしなぁ・・・・仕方ない、か。バイス」

 

「おん?」

 

「お前も抵抗しないで、“アレ”を出せ」

 

「えぇ~、“アレ”を出すのぉ?」

 

「ああ。さっさと出せ」

 

リバイとバイスが言い合っていると、プリキュア達となのはとフェイトが、バイスが何を出すのだろうかと、警戒したその時ーーーー。

 

「仕方ねぇなぁ・・・・せぇ、のぉっ!!」

 

ぶぅぅぅううううううううううううっ!!!

 

『え・・・・・・・・っ?』

 

空気の抜ける音と共に、バイスのお尻から、黄色いガスが噴射され、そのガスがフロアに充満すると、リバイとバイスを除いた一同の目が染みる痛みと、鼻から入る異臭と、喉に伝わる苦い感覚で、彼女達が何か理解した。

ソレはーーーー。

 

『お、オナラァァっっっ!!!???』

 

視覚・嗅覚・味覚を激しく刺激するその汚臭に、カスタードはジェラートは鼻を押さえ踞り、マカロンとショコラとパルフェは気を失い、

 

「ぎゃぁぁっ! 何やこれぇっ!?」

 

「はぎゅぅ~!」

 

「ぺこ~!!」

 

「ペコリン!」

 

「ハリー! はぐたん!」

 

「ぁ・・・・」

 

「マシュリ!?」

 

遠くから男性の声と幼い声が響くと、ホイップとエールとアンジュやエトワールがそっちに向かい、マシュリが気を失い倒れ、アムールがそれに気をとられた。

 

「「ひ、酷い・・・・!」」

 

なのはとフェイトも、まさかオナラで攻撃してくるとはまるで思っておらず、近距離でマトモに受けたものだから、白目を剥いて気を失った。

 

[プテラ]

 

「フンッ!」

 

「アバヨ~! とっつぁ~ん!」

 

そして周りが混乱していると、ガスの中から、エアバイクに乗ったリバイが吹き抜けの天井から、外へと脱出した。

ガスが晴れると、死屍累々となった一同だけが取り残されたのであった。

 

 

 

 

 

 

「けほっ、けほっ・・・・相変わらず苦ぇな」

 

≪いや~それほどでも~≫

 

「なに照れてンだお前・・・・」

 

ショッピングモールから離れ、ビルの屋上に付いたリバイスは、変身を解除すると、リバイは嵐山輝二に戻り、バイスも被り物を無くなり、白い髪をオールバックにし、口の柄が着いた水色のマスクを口に付けた黒い怪人の姿となった。しかし、その姿は透けており、下半身は無く、輝二の身体に繋がっていた。

遠くの空から、〈フェニックス〉の基地である空中要塞、『スカイベース』が見えた。

 

≪あらら、漸く到着なの?≫

 

「ふん。大方モールの監視カメラで、戦況は見ていただろうがな。スタンプ回収の為にご苦労様なこった」

 

輝二は懐から、番田から回収した〈バッタ・バイスタンプ〉を取り出す。

 

≪なぁなぁ輝二? 結局〈デッドマンズ〉の情報は得られなかったな?≫

 

「だが、必ず奴らを潰す・・・・!」

 

≪“親父とお兄ちゃんの敵討ち”、ね≫

 

「・・・・ああ」

 

輝二は懐から、御守りとして持っている『指輪』と、窪みがある小さな『匣』を取り出して、決意を改め、『スカイベース』に回収された。




ー〈嵐山輝二<アラシヤマ・コウジ>〉ー

CV.谷山紀章(文豪ストレイドッグス・中原中也。とある魔術の禁書目録・ステイル=マグヌス)

年齢:17歳

身長:175㎝

体重:68キロ

血液型O型

趣味:風呂・温泉巡り・サウナ・オリジナルブレンドコーヒー作り・サボテン

特技:人間観察により相手の癖や嘘を見抜く観察力・非常に優れた直感力

家族構成:父(死去)。母(八歳の頃に両親が離婚し離別)。兄(死去)。妹(離婚した母と一緒に離別)。叔父(父親の弟)

好きな物:コーヒー(自作も好き)・コーヒーゼリー・インスタントラーメン・風呂上がりに飲む牛乳(コーヒー牛乳と飲むヨーグルト等)・1人で静かにする読書・静かな場所

苦手な物:うるさい人間・馴れ馴れしい人間・偽善・無責任な綺麗事・馴れ合い・根拠のない言葉・甘い物(コーヒーゼリーは除く)

座右の銘:一寸の光陰軽んずべからず

備考:8歳の頃に両親が離婚し、その日からグレて6年間家出をしていた。14歳まで裏社会のバーでアルバイトしながら生き、ソコで世の中の黒い部分を学ぶ。
14歳となってすぐ、半グレの組織に入れて貰う代わりに、イタリアから来る大物の老人を誘拐してこいと言われ、その老人に接触し、その老人に連れられ、ある植物園の老婆と出会い、二人に説得され改心した。


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スプラッシュでフレッシュでスイートな出会い

ー輝二sideー

 

「いや~、お疲れ様だねぇ輝二くん!」

 

フェニックスの司令室にて、『バッタ・バイススタンプ』を手に取り、輝二にお礼を言う白衣を着用し、色眼鏡を掛けた科学者風の男性はフェニックスの科学主任にして、『リバイスドライバー』の制作者の『ジョージ・狩崎』。

真っ白なスーツに白いコートを着た〈フェニックス〉の司令官、『嵐山雄二郎』だった。

 

「輝二。これは〈バイスタンプ〉回収の報酬と、番田寿明の捕縛における報酬金だ」

 

雄二郎司令官が封筒を輝二に渡すと、輝二は封筒を手に取り、少し中身の札束を出して数えると、頷いて懐にしまった。

 

「しかし、遂にプリキュアも関わるようになったか」

 

「そうだねぇ。まあ私としては、彼女達の変身能力や精霊の存在には前から興味があったから、棚ぼたな気分だけどねぇ。あ、輝二くん。これは我々〈フェニックス〉が調べたプリキュアのデータだ。目を通しておいてくれたまえ」

 

狩崎が取り出したUSBメモリを受け取った輝二は、もう1つ気になっている事を口にする。

 

「それで、プリキュアの他に現れたあの女達は、あれは一体なんなんだ?」

 

「ふむ。おそらく彼女達は、〈時空管理局〉の魔導師だろうね」

 

「〈時空管理局〉・・・・? 闇社会の噂程度に囁かれている、次元世界って呼称されている異世界を管理しているって、あの組織か?」

 

輝二の言葉に、狩崎は指を鳴らした。

 

「(パチン!)イエス! おそらくその組織に所属する、魔法と科学を融合した技術を使う魔導師だろうね。まさかその管理局も、〈デッドマンズ〉の件に関わるようになるのかな?」

 

「もしそうなるならば、これからの為にもプリキュアや管理局と協力態勢をとった方が良いかも知れんな」

 

「ふ~ん・・・・。プリキュアは兎も角、“次元世界を管理している組織〈時空管理局〉”、ね。ますます気に入らないし、胡散臭い組織だよ」

 

そう言って輝二は、司令室から去ろうとすると、雄二郎司令官が声をかけた。

 

「輝二。あまり無理をするなよ」

 

「・・・・分かってるよ。“叔父さん”」

 

叔父の司令官にそう返すと、輝二は今度こそ出ていった。

 

≪なぁなぁ! 銭も手に入ったし、ここはどっかでパーっとしないかい?≫

 

「(いや、この足でチョイと調べておきたい場所がある)」

 

輝二とバイスはスカイ・ベースから地上に降りると、そのままある場所に向かっていった。

 

 

 

 

ー狩崎sideー

 

「やれやれ・・・・彼も結構扱いづらいね」

 

「・・・・・・・・」

 

狩崎の言葉に、雄二郎司令官は沈黙する。

そして輝二が出てすぐ、フェニックスの隊員服を着た女性隊員にして分隊長の『門川<カドカワ>ヒトミ』が入ってきた。

 

「どうした門川?」

 

「いつまであの少年に『リバイスドライバー』を使わせておくのですか?」

 

「不服、か? 司令官である私の身内贔屓でドライバーを手に入れた七光りと?」

 

司令官である雄二郎の身内である輝二の、〈フェニックス〉と連携を取らないやり方に不満を述べるヒトミ。だが、ヒトミは首を横に振った。

 

「いえ、そのような事は・・・・。彼の気持ちも分かりますが、我々とあまり連携を取らないスタンドプレーは、少々・・・・」

 

「と言ってもねぇ、彼以上に『リバイスドライバー』に適合する上に、“とんでもない能力まで発現させた者”はいなかったし、彼は独自の情報網でこの僅か1ヶ月の間にかなりの『バイスタンプ』の回収処か、社会のゴミ掃除もしてくれているからねぇ。“あの日”から、〈フェニックス〉も組織の立て直しで動きが取りづらくなっているから、彼には助かっているよ」

 

「しかし・・・・」

 

「お前の懸念は分かる。・・・・が、今はアイツの好きなようにやらせておく。一応監視はしている。狩崎、輝二は今何処に?」

 

「うんーーーーおや。これはまた随分と、ダーティーな場所に向かっているねぇ」

 

衛星から送られる映像から、輝二が向かう場所を予測した狩崎が呟いた。

 

 

 

 

 

 

ーはなsideー

 

「あぁ~・・・・まだ鼻に臭いが残ってるよ・・・・」

 

ショッピングモールから脱出し、変身を解除したプリキュア一同と精霊のハリーにペコリン、そして赤ん坊のはぐたんは、人気のない公園で、まだ鼻に残る異臭に渋面を作りながら、なのはとフェイトと話していた。

 

「つまりーーーー沢田さんと古里さんは、〈時空管理局〉って次元世界、つまり異世界からやって来た魔導師って事なんですね?」

 

「うん。私は正確に言うと、この地球出身の魔導師、だけどね」

 

さあやの言葉に、少し鼻詰まりな声でなのはが肯定した。

フェイトが、プリキュア一同に向けて声を発する。

 

「それで、プリキュアの皆さん。〈デッドマンズ〉の事もあるし、私達管理局の世界に来て欲しいんだけど・・・・」

 

「ん~、分かりました! 行きます!」

 

「おい、いちか! 良いのかよ?」

 

「大丈夫だよあおいちゃん! なのはさんもフェイトさんも、きっと悪い人じゃないから!」

 

「はなまで・・・・」

 

リーダーが行く気になっているようなので、仕方ないか、と他のメンバーも肩を落とした。

そんな中、ゆかりとあきら、さあやとルールーと言った年長組と頭脳組がコッソリと話す。

 

「良いと思うかい?」

 

「あのリバイって人が言っていた胡散臭いと言う理由を探る為にも、〈時空管理局〉って組織を調べて見るのも良いかもしれないわね」

 

「そうですね・・・・ルールーはどう思う?」

 

「私もそれが良いと思います。・・・・ただ」

 

「ただ?」

 

「〈時空管理局〉。・・・・何やら、『ラブ先輩達』が戦った〈管理国家 ラビリンス〉に、似たような組織なのではないかと思います」

 

ルールーの言葉に、三人は眉をひそめながら、他のメンバーと一緒に、なのはとフェイトについていった。

 

 

 

ー輝二sideー

 

≪イェーイッ!! 回ってます! 回っております! ドル箱山積みでジャラジャラですっ!≫

 

昼頃、輝二は現在、とある大型ホテルの地下5階にある、『違法カジノ』に来ていた。こう言った『違法なカジノ』は表向きは合法的なホテルと通しているが、その裏では、会員制の違法カジノを経営していたのだ。しかもカジノにいる会員は皆、顔に仮面を着用するので、身元バレを起こらないようにしていた。

『昔のツテ』で手に入れた会員証を使って、輝二はこのカジノにいる〈デッドマンズ〉の信者の疑いのある人物を見張っていた。

ついでに、スロットで先ほどの〈フェニックス〉から貰った報酬金を担保にしたが、既に10倍近くにまではね上がっていた。

 

「・・・・・・・・(チラッ)」

 

「だぁあはははははははははははっ!! 今日も俺はツイているぜっ!! おいディーラー! さっさと玉を転がしやがれ!」

 

「は、はい!」

 

少し離れた位置にあるルーレットのテーブルでは、ガラの悪い中年の男が、派手な格好をした美女を両脇に侍らせながら、勝ちまくり、ディーラーに玉を転がすように叫んでいた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

≪なぁなぁ! 今度はアイツがスタンプを持っているの?≫

 

「(・・・・あぁ。情報では、奴が持っている)」

 

スロットで荒稼ぎし、すぐ近くを通り過ぎる輝二は、チラリとその人物を睨み、チップの半分を現金に還元し、残りの半分のチップを持って、ルーレットのテーブルに座った。

 

「お。何だお前? 俺と勝負するのか?」

 

「ああ。ゲームと行こうぜ。・・・・黒の7に全て賭ける」

 

そう言うと、輝二は持っているチップを全て乗せた。

 

「ほほう、ツイてる俺に全額出すとはなぁ? 面白ぇっ!!」

 

そう言って、男も方も賭けを始めた。

 

「・・・・・・・・」

 

輝二はこっそりと、〈レックス・バイスタンプ〉をルーレットテーブルに押したーーーー。

 

 

 

 

ー???sideー

 

と、そんな大勝負が行われているカジノの真上にある1階では、ケーキバイキングが行われ、ソコに中学生くらいの女の子の一団がケーキを口に運んで楽しんでいた。

 

「う~ん! このケーキ凄く美味しい! ね! 『せつな』も食べてみて!」

 

「ええ・・・・モグッ、うん! 確かに美味しいわ」

 

「今日このホテルでケーキバイキングが行われているから、『ラブ』達と来てみれば・・・・」

 

「『咲ちゃん』達や『響ちゃん』達に会えるだなんてね」

 

「私達もこのケーキバイキングの事を知ってね。『奏』の新しいカップケーキ作りのヒントになれば良いと思ったの」

 

「このケーキ、美味しいわね。隠し味は・・・・」

 

「『奏』、本気で分析しているわ・・・・」

 

「『エレン』。口元にクリームが付いてるわよ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「? どうしたの『咲』?」

 

そんな中、茶髪の短髪の女の子が『ラブ』達と『響』達の、ある一部分に半眼で視線を向け、黒い髪を後ろにアップした女の子が小さな声で尋ねた。

するとーーーー。

 

「あのさ舞。『ラブ』達も『響』達も、私達と同い年だよね?」

 

「うん。そうだけど、今さらどうしたの?」

 

「いや今さら何だけどーーーー『アレ』、どう思う?」

 

「えっ・・・・?」

 

『咲』と呼ばれた少女の視線を追うと、『ラブ』達と『響』達(『アコ』は除く)のある一部分、“同い年とは思えない程に実った二つの果実”が目に入った。

サイズ的には『ラブ』達の方が実っているが、『響』達も中々のサイズだ。

 

「さ、『咲』・・・・」

 

「同い年の筈なのに、この差は一体なんナリか?」

 

「そうは言っても・・・・」

 

「『アコ』はまだ良いのよ、まだ小学生だから。でも、後輩達に見せびらかされるこの格差は・・・・!」

 

何やら女としての何かが後輩達に負けている気がして、『咲』は悔しそうに拳を握り、『舞』は苦笑いを浮かべるしかなかった。

そしてテーブルの下では、フェレットと猫の妖精や精霊達が、ケーキを頬張っていた。

 

 

 

ー輝二sideー

 

「~~~~~! ど、どうなってやがるっ!?」

 

大勝ちしていた筈の男が、焦躁したようにルーレットを見る。

 

「っ! く、黒の35番、また・・・・こちらのお客様の勝ち、です・・・・」

 

おおぉぉぉぉぉぉぉっ!!

 

ディーラーの震える声に、いつの間にか集まったギャラリーが感嘆の声をあげた。

突然現れた輝二が勝負をしてきた瞬間、まるでツキから見放されたように男が敗けまくってしまったのだ。既に両脇にいた女達は離れ、輝二の方にすり寄ろうとするが、輝二はシッ、シッ、と鬱陶しそうに追い払った。勝ってればすり寄り、負ければ見向きもしない尻軽女が嫌いなのだ。

 

「さて、これで私の連勝「イカサマだぁっ!!」 はい?」

 

突然男が立ち上がって輝二を指差しながら叫びだした。

 

「イカサマだイカサマだイカサマだイカサマだイカサマだイカサマだイカサマだイカサマだイカサマだイカサマだイカサマだぁぁぁぁっ!!」

 

「イカサマと言われましても・・・・」

 

「おかしいじゃねぇかっ! さっきまでツキまくっていた俺がこんなに負け続けるだなんて、こんなのイカサマ以外の何物でねぇ!!」

 

ヒステリックに騒ぎ始める男に、輝二はやれやれと肩を落とすと、冷静に口を開く。

 

「ツキと言うのは気まぐれなモノですよ。あなたのツキが離れただけです。それに、ルーレットでどうやってイカサマをしたと?」

 

「~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 

輝二の言葉に、男は顔を真っ赤にして、ディーラーに掴みかかった。

 

「テメェ! “裏切りやがったなぁ”!!」

 

「えっ?!」

 

「ルーレットでイカサマできるとしたら、テメェ以外に誰がいやがる!」

 

「ちょっ、ちょっと・・・・!」

 

男の叫び声で、輝二だけでなく、ギャラリーの人達、それに他の客やスタッフの目が自分達に集中している。それに顔を青ざめるディーラーだが、男は構わず騒ぎ立てる。

 

「テーブルに仕込まれたイカサマスイッチで、客から金を巻き上げていたのを黙っている代わりに、俺の時は勝たせて貰うって条件だったよな!? それをテメェ!」

 

『っ!?』

 

男の言葉を聞いて、他の客達がざわめき初めた。

何人かのスタッフが、男とディーラーに近づく。

 

「お客様」

 

「あぁっ!!?」

 

「今のお言葉は?」

 

「聞いてねェのかテ、め・・・・ぇ」

 

そこで漸く男は、周りの視線が自分に集まっている事に気づき、ディーラーと同じように顔を青ざめる。

 

「少々、奥で話を聞きましょうか? ソイツも一緒に」

 

「ひっ!」

 

屈強そうな黒服の男達が集まり、男とディーラーを捕らえて、奥の部屋へと向かった。

それを見て、輝二は勝ったチップをテーブルに置いたまま椅子から立ち上がって離れ、内心でバイスに話しかける。

 

「(良くやったな、バイス)」

 

≪へっへ~ん! 俺っちにかかれば、ざっとこんなもんよ!≫

 

バイスが宿る〈レックス・バイスタンプ〉を器物に押すと、バイスがその器物に憑依する事ができる。

輝二はこの特性を使って、バイスをテーブルに憑依させ、ディーラーがイカサマスイッチを押しても、その装置が稼働しないようにした。ちなみに、バイスには装置を稼働させないようにしただけなので、勝ちの方は輝二の天性とも言える、異常なまでの直感力から来ているのだ。

 

≪でもよ。これで尻尾を出すのかい?≫

 

「(奴が〈スタンプ〉を持っているなら、奥の部屋で拷問をかけられそうになればーーーー)」

 

と、そこでーーーー。

 

グシャァアアアアアアアアアンン!!

 

「ぐぅあああああっ!!」

 

「うぉあああああっ!!」

 

奥の部屋の扉をぶち破って、屈強の黒服達がボロボロになって床に転がった。

他の客が何だ何だと騒ぐと、扉の奥から、さらに男達の悲鳴と、銃声のような音が響き、扉からーーーー。

 

『ぐぅぅぅぅぅぅぅっ!!』

 

土竜<モグラ>のような怪物、『モグラ・デッドマン』が現れた。

 

「ははははははは! これで、俺は! この穴グラから出られるぜぇ!!」

 

〈モグラ・バイスタンプ〉を持って、モグラ・デッドマンと後ろにいるのは、“ディーラー”だった。

ディーラーの後ろでは、先ほどの男と支配人らしき人物とスタッフが倒れていた。

 

「やっぱりあのディーラーか・・・・」

 

≪うっへぇ! あんな冴えない感じのモブキャラちゃんだったのっ!? 俺っちあのギャンブラーだと思ってた!≫

 

「(さっさと終わらせるぞバイス!)」

 

[リバイスドライバー!]

 

輝二は人目の無い所に移動してリバイスドライバーを取りだし、腰に当てると、ベルトが伸び、〈レックス・バイスタンプ〉を取り出した。

 

「燃えてくるぜぇ・・・・!」

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

輝二は〈レックス・バイスタンプ〉に息を吐くと、ドライバーに押し込む。

 

≪本日2度目の変身だぜぇっ!≫

 

[Come On!レ・レ・レ・レックス! Come On! レ・レ・レ・レックス!]

 

同時に音声が鳴り響くと輝二の背中に、スマホのラインの映像が現れる。

 

ーーーーHEY! 切った張ったの大博打!

 

ーーーー燃えてくるぜ、この気持ち!

 

ーーーーベットするのはこの命!

 

ーーーー俺らに挑むその大口!

 

ーーーー高くつくぜ地獄行き!!×2

 

最後に二人でラインを書くと、バイスが現れ、その手には巨大なスタンプを手に持っていた。

 

「変身!」

 

≪あらよっとっ!≫

 

輝二はそのままスタンプをベルトに挿入し、スタンプを横に傾ける。

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

その瞬間、輝二の身体は巨大なスタンプに押し潰されるように、スタンプの中に入ると、輝二の姿が仮面ライダーリバイに変わり、スタンプを砕き、その隣に仮面ライダーバイスとなったバイスが立った。

 

「っ! アイツは・・・・!」

 

「行くぞバイス!」

 

「応よっ!」

 

「ちっ! 逃げるぞ!」

 

ディーラーはモグラ・デッドマンに抱きつくと、モグラ・デッドマンは天井をぶち破って行った。

 

「うわぉ! モグラちゃんなだけに、穴堀りが得意なの?」

 

「こんな地下の穴グラにひそんでいたモグラが、地上に出るってか、追うぞバイス!」

 

「あいよ!」

 

二人は天井の穴を登りながら、モグラ・デッドマンを追った。

 

 

 

 

ー???sideー

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・。

 

「ん? 何ナリか? 地震?」

 

『咲』と呼ばれた少女が、何やら揺れているような音に首を傾げていると、他の皆も気づいたのか、床を見るとーーーー。

 

ドガァァァァァンンッ!!

 

『えっ!?』

 

ケーキバイキング会場の中央の床が小さく砕けると、ソコから、モグラ・デッドマンとディーラーの男が現れた。

 

「な、何あれっ!?」

 

「ふはははははは!! グラシアス、〈デッドマンズ〉!!」

 

「デッドマンズだっ!!!」

 

キャー! ウワー!

 

ディーラーが声高く叫ぶと、一気に混乱が広がり、客達は逃げ出した。

 

「嘘っ!? あれって〈デッドマンズ〉?!」

 

「まさか、ここに現れるなんて・・・・!」

 

「『咲』! 『舞』! 変身ラピ!」

 

「このままじゃダメチョピ!」

 

「ピーチはんら! 変身や!」

 

「キュア! キュア!」

 

「皆、変身するんだニャ!」

 

『うんっ!』

 

テーブルの下から、精霊とフェレットと猫が喋り、その女の子達は頷き、2匹の精霊達が変身アイテムとなり、『咲』と『舞』の手に収まり、頭に宝石を付けた4匹の精霊達が、『響』達のアイテムと合体した。

 

 

 

ー輝二sideー

 

「よっと、何だ?・・・・うっ、この甘ったるい匂いは・・・・!」

 

「どしたの? クンクン・・・・ん、お菓子の匂い、お前が一番苦手な匂いじゃん!」

 

「うぅぷっ・・・・ん?」

 

「さらにどったの?・・・・ありゃま!」

 

モグラ・デッドマンが出てきた穴から出てきたリバイス。しかし、リバイはお菓子の甘ったるい匂いに、胸焼けが込み上がってくると、中学生くらいの少女達を見つけた。

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワー」」

 

「花開け、大地に!」

 

「羽ばたけ、空に!」

 

「輝く金の花! キュアブルーム!」

 

「きらめく銀の翼! キュアイーグレット!」

 

『日向咲』と『美翔舞』の二人が、精霊『フラッピ』と『チョップ』の力で変身する。ピンクと白の衣装を纏い、それぞれが花の翼を付けた衣装に、髪型も変わった。

 

「「「「チェインジ・プリキュア! ビートアップ!」」」」

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ!キュアピーチ!」

 

「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ!キュアベリー!」

 

「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ!キュアパイン!」

 

「真っ赤なハートは幸せのあかし!うれたてフレッシュ!キュアパッション !」

 

『桃園ラブ』。『蒼乃美希』。『山吹祈里』。『東せつな』が、それぞれピンクとブルーとイエローとレッドの少々露出の高い衣装を纏い、ラブは金髪ツインテールになり、美希と祈里は髪型が変わり、せつなはピンクの長髪となった姿。

 

「「「「レッツプレイ! プリキュア・モジュレーション!」」」」

 

「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」

 

「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」

 

「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!」

 

「爪弾くは女神の調べ! キュアミューズ!」

 

『北条響』。『南野奏』。『黒川エレン』。『調辺アコ』も、それぞれピンクとホワイトとブルーとイエローの衣装に変わり、髪型も変わった姿になった。

 

「「二人はプリキュア!」」

 

「「「「フレッシュ! プリキュア!」」」」

 

「「「「届け! 4人の組曲! スイートプリキュア!」」」」

 

「聖なる泉を汚す者よ!」

 

「アコギな真似は、おやめなさい!」

 

ブルームとイーグレットが、モグラ・デッドマンとディーラーの男を指差してそう言った。

 

「うっひょぉぉぉぉぉ!! またプリキュアちゃん達だっ! しかも、スタイル抜群が多いフレッシュチームちゃん達とスイートチームちゃん達がいるぜぃっ!!」

 

「うぇぷっ、うるさいぞバイス・・・・!」

 

『えっ?』

 

声がした方に顔を向けたプリキュア達は、自分達を指差してピョンピョン跳ねるバイスと、具合悪そうにしているリバイを見て、首を傾げた。

 

「えっと、あのぉ~・・・・」

 

「お二人はどちら様ですか・・・・?」

 

指差したポーズのまま、ブルームとイーグレットが戸惑いがちに問うと、バイスが元気良く手をあげる。

 

「ハァ~イ! んじゃ自己紹介! いっちゃうかい? HEY! こっちはリバイ! おれっちはバイスだい! 二人揃って、仮面ライダーリバイスだい!! オーケー、プチョヘンザ!!」

 

「死ぬ気で・・・・うぷっ、行くぜ・・・・!」

 

「いや、ぶっちゃけ今お前、本当に死にそうじゃね?」

 

リバイとバイスが腕タッチをするが、リバイは胸焼けで苦しいのか口に手を当て、バイスは優しくリバイの背中をさすった。




フェニックスの司令は、主人公の叔父です。
次回、ゲノムチェンジします。どのゲノムが登場するこは、お楽しみに。


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大海のハンター メガロドン、その瞳は何を捉える?

新たなゲノムは、タイトルで分かる通りですね(笑)。


ーリバイsideー

 

「うぇ・・・・っ!」

 

「もうしっかりしなさいよぉ!」

 

リバイに変身する嵐山輝二。彼は『甘い物』が苦手である。幼い頃からチ○ルチョコ1個が限界で、それ以上食べると酷い胸やけに襲われる体質なのだ。

17歳になって、漸く板チョコ半分食べるようになったが、このフロアーに充満するスイーツの匂いが、彼の身体に一気に胸やけを起こしたのだ。

 

「えっと・・・・大丈夫、ですか?」

 

「こ、これを見て大丈夫に、うくっ、見えるなら、今すぐ眼科に、おぉっ行った方が良ウプッ!!」

 

イーグレットが心配そうに声をかけるが、リバイは憎まれ口を叩こうとするが、込み上がってくる気持ち悪さに、口元を押さえた。

 

「何か、凄く具合悪そう・・・・」

 

「そうなのよブルームちゃん!」

 

頬に汗を垂らしながらそう言うブルームに、バイスは気安い感じで近づく。

 

「コイツってば甘いお菓子が大の苦手でね! この部屋から香るお菓子の匂いに、参っちゃってるのよ!」

 

「ええーーーーっ!? お菓子が苦手なんですかぁっ!?」

 

バイスの言葉に、メロディが大声を上げて驚く。

 

「騒ぐなうぐっ、さっさとコイツらを片付け」

 

『グゥゥゥゥゥ!!』

 

「げっ! ギフジュニア!?」

 

バイスが騒ぐと、リバイ達の周りにいつの間にか、ギフジュニアが大量に現れた。

モグラ・デッドマンを見ると、ディーラーの男がバイスタンプを使って、ギフジュニアを次々と出現させていた。

 

「捕まってたまるかっ! 捕まってたまるかっ! 漸く穴グラから出てこれたんだ! もう誰かに媚びって生きていく人生なんてゴメンだ! 俺は! 俺は新しい人生を歩むんだっ!!」

 

[ジュニア!]

 

『ガァアアアアアアアアッ!!』

 

男はスタンプを床に押してギフジュニアを生み出し、モグラ・デッドマンも雄叫びをあげると、ギフジュニア達がリバイスとプリキュア達に襲いかかる。

 

「ちぃっ! 行くぞバイス!」

 

[オーインバスター! 50!]

 

「行けるけどさぁ、大丈夫な訳?」

 

「さっさと片付けて、この甘ったるい空間から出るんだよ!」

 

オーインバスターを斧を持つように構えたリバイが、ギフジュニアにその刃を叩きつけると、戦闘を開始した。

 

「オッケー! じゃ俺っちも行くぜー! ちゃわ~!」

 

バイスがギフジュニアにドロップキックを繰り出すと、戦闘を始めた。

 

『グゥゥゥゥゥ!!』

 

「「ていっ!」」

 

「「「「はぁっ!」」」」

 

「「「「たぁっ!」」」」

 

プリキュア達も、ギフジュニアと戦闘を開始した。

ブルームは肉弾戦で、イーグレットはバリアを使ってギフジュニアを倒し、ピーチ達とメロディ達も、コンビネーションを使って、ギフジュニア達を撃破していく。

 

「まだまだぁ!」

 

[ジュニア!]

 

が、ディーラーの男がさらにギフジュニアを出現させていく。

 

「おわああああああ!!」

 

ギフジュニア達に持ち上げられたバイスが、ケーキとかが置かれたテーブルの向こうに投げ飛ばされる。

 

「あてえぇっ!・・・・んもぅ、怒ったぞ! これでもくらえっ!」

 

バイスはテーブルの大皿に乗ったケーキやエクレアやマリトッツォを持って、次々とギフジュニア達に投げた。

 

「この! この! この! えいっ! えいっ! えいっ! どうだ! どうだ! どうだ!」

 

『グァ!』

 

『ガァ!』

 

『ゲゲ!』

 

「あぁー! 何やってるのあなた!」

 

リズムがお菓子を投げているバイスを指差すと、メロディ達もそれに気づいた。

 

「うわぁー! 勿体ない!」

 

「折角のお菓子がっ!」

 

「危ない!!」

 

ブルームとピーチとメロディが、投げられたお菓子を手でキャッチしたり、直接口で咥えて食べたりしていた。

 

「モグモグ・・・・ゴクン! ちょっとあんた! お菓子投げるなんて、なに考えてるのよ!!」

 

口に咥えたお菓子を咀嚼しながらギフジュニアと戦うメロディが、バイスを指差して言った。

 

「えぇ? だってさぁ・・・・!」

 

「何してンだバイス!」

 

「ギャンッ!」

 

リバイがバイスにヒップアタックをぶつけ、バイスが床に倒れると、リバイは懐から分厚いスマホを取り出すと、それを拳銃の形に変形させ、バイスに渡した。

 

「・・・・ほら、これを使え」

 

「あっ! 『ガンデフォン』!」

 

それはフェニックス隊員の装備である、通信機兼武装の『ガンデフォン50』だった。

 

「これ使っていいのっ!?」

 

「菓子類を投げるよりかはマシだ」

 

「イエーイ!!」

 

バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!バシュン!

 

『『『『『『グガァアアッ!!!』』』』』』

 

バイスがガンデフォンから光線を放つと、次から次へとギフジュニアを倒していく。

 

「行けぇ!」

 

『シャァアアアア!!』

 

ディーラーが命じると、モグラ・デッドマンは床を砕いて中に入り込み、掘り進みながらリバイとバイスに迫る。

 

「っ!」

 

「あん?」

 

『ガァアアア!!』

 

モグラ・デッドマンが顔を出すと、両手の大きな爪で、リバイスを切りつける。

 

「うおっ!」

 

「あいたいんっ!」

 

「くっ!」

 

リバイとバイスが倒れるが、リバイは倒れてすぐ、オーインバスター・ガンモードで攻撃するが、モグラ・デッドマンはすぐに床に潜った。

 

「ちっ!」

 

潜ったモグラ・デッドマンは、プリキュア達も攻撃する。

 

「うわっ!」

 

「きゃっ!」

 

「ぁあっ!」

 

「うっ!」

 

「あぅっ!」

 

「くっ!」

 

「うぁっ!」

 

「あっ!」

 

「うぅっ!」

 

「きゃぅっ!」

 

と、プリキュア達も床に倒れるが、すぐに起き上がって反撃しようとするが、再び床に潜られ逃げられる。そしてすかさずギフジュニア達がプリキュア達に襲いくると言う状況だ。

 

「ちょっとちょっと! どうして床の中を移動できるのよっ!?」

 

「建物の一階の床と地下一階の天井の隙間は、数十センチ。その隙間を通っているのかよ?」

 

「どうする? このままじゃジリ貧よ?」

 

「ーーーー仕方ない」

 

リバイは腰にぶら下げたバイスタンプの1つを取り出した。

「うそっ! 待って! せめてプリキュアちゃん達の誰かを味見させてからーーーー」

 

バイスの訴えを無視して、リバイはドライバーにセットされた〈レックス・バイスタンプ〉を取り外すと、バイスがリバイの中に戻り、リバイはスタンプを起動させた。

 

[メガロドン!]

 

『ん?』

 

スタンプから聞こえた音声に、プリキュア達もディーラーもリバイに視線を向けた。

 

「死ぬ気で行くぜ! はぁ、ふっ!」

 

リバイは新たなスタンプをドライバーに押した。すると、リバイの背中でスマホのLINEが展開する。

 

「えっ? 何ナリあれっ!?」

 

「スマホの、LINEかしら・・・・?」

 

そして、リバイの身体から伸びる、上半身だけのバイスも。

 

「えっ? なんかリバイって人から伸びてるっ!?」

 

「あれって一体・・・・」

 

「さっきの、バイスって人に似ているような・・・・」

 

「そう言えば・・・・その彼がいないけど?」

 

ーーーーんもぅ! いきなりやらないでよね!

 

ーーーーとっとと終わらせんだよ・・・・。

 

ーーーーなぁなぁ? お菓子って美味しいの?

 

ーーーーそんな事知ってどうすんだ?

 

ーーーーちょっと食べてみたいのよ。お前だって苦手って訳で、食べられない訳じゃないんだろう?

 

ーーーー・・・・その内な。

 

「何でLINEが出てるの?」

 

「と言うか、誰と連絡してるの?」

 

「待って、あの身体から伸びてる方、何か担いでない?」

 

「あれって・・・・判子?」

 

[Come on! メガロドン! Come on! メガロドン!]

 

音楽が流れると、リバイの身体からバイスが伸びてきて、巨大な『メガロドン・バイスタンプ』を担いで、

 

[バディアップ!]

 

『ほぉらさっとぉっ!』

 

そしてバイスが、スタンプをリバイに叩きつけた。

 

『ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!??』

 

プリキュア達が驚きの声をあげるが、スタンプの中にリバイがおり、徐々に姿を変えるとスタンプが砕け、別の姿に変わったーーーー。

 

[潜るドンドン! ヨーイドン! ドボン! メガ・ロ・ド・ン!! 通りすがりのハハハハンター!]

 

リバイはバーコードのような仮面に白黒のラインが走り、両腕や背中にメガロドンの背鰭が着いた姿に。

バイスはマゼンタや白がポイントカラーとなり、バーコードが走った鮫のような被り物を被った姿となった。

 

「シャァク・・・・くぅ〜! サメちゃん姿はやっぱイカすぜ~! イカじゃないけど、目がサメるとはこの事!」

 

「勝ち筋は、だいたい分かった」

 

バイスがはしゃぐとリバイも両手に装備したヒレのようなブレードを擦り合わせた後、隣にいるバイスと腕を合わせ、ハイタッチし、最後に拳を出し、バイスが受け止めるいつもの腕タッチだ。

それを見て、プリキュア達はポカンとした顔となった。

 

「す、姿が変わった!?」

 

「“ラブリー達”みたいな能力かしら?」

 

「ねえリズム、『メガロドン』って何?」

 

「古代に生息していた巨大な鮫だったと思うけど・・・・」

 

「確か18メートルもあるって、前にテレビでやってたわね」

 

「私も『奏太』が恐竜図鑑で読んでるのを見たことあるわ。ん? ピーチ達どうしたの?」

 

ブルーム達と違って、何やらピーチ達は半眼になって、リバイスを見ていた。

 

「いや、何かね・・・・」

 

「良く分からないんだけど・・・・」

 

「さっき、リバイさんの台詞に・・・・」

 

「それ違うでしょ! ってツッコミを入れたい衝動が・・・・」

 

何故かピーチとベリーとパインとパッションは、ツッコミの手をあげて首を傾げていた。

 

「行くぞバイス!」

 

「あいよぉ!・・・・おっと! プリキュアちゃん達! 俺っちの目がサメるような活躍に感動して、サメザメと泣かないでね!」

 

リバイが床を踏むと、まるで、水の上を滑っているように水飛沫をあげ、バイスはプリキュア達に向かってそう言うと、同じように滑っていった。

先行するリバイが、床を掘り進むモグラ・デッドマンの進行方向に先回りすると、両手のブレードを擦り合わせーーーー。

 

「ハァッ!!」

 

『モギャァアアアアアアアアアッ!!』

 

床にブレードを振り上げて、モグラ・デッドマンを床から飛び出させた。その際、モグラ・デッドマンの身体が細長くなっていた。

 

「成る程。自分の身体を細長くして、数十センチの床の中を潜っていたのか。バイス!」

 

「了~解! うぅ・・・・シャァ!」

 

飛び上がったバイスがモグラ・デッドマンに、両手をまるで、鮫の顎のようにすると、その手でモグラ・デッドマンの頭に噛みつくように挟み込んだ。

 

「シャァ! シャァ!シャァ! シャァアクッ!!」

 

『モギャァアアアッ!!』

 

何度も噛みつくように挟み、さらに回転して、モグラ・デッドマンを床に叩きつけた。

 

「外に出すぞ、バイス!」

 

[リミックス!]

 

リバイがベルトのスタンプを横に何度か倒すと、音声が響く。

 

[バディアップ! 必殺! 何トン? メガトン! メガロドン!]

 

「よっと!」

 

リバイとバイスの全身が上下逆の状態で折り重なった。

 

「えっ? 今度はなにをやってるの?」

 

「組体操かな?」

 

ベリーとイーグレットがギフジュニアと戦いながら見たいると、リバイスの身体が宙に浮かび、上半分のリバイが背ビレと胸ビレと上顎に、下半分のバイスは下顎とエラと尾ビレとなった、巨大サメへと変貌する。

 

「えぇっ!? お、お魚?!」

 

「ニャンッ!?」

 

「魚っていうか、鮫でしょあれっ!」

 

パッションが驚き、ビートが目と口が猫のようになり、ミューズがリバイスを指差しながらそう言った。

 

「言っただろ! 目がサメるような活躍を見せるって!」

 

「行くぞ!」

 

ーーーーシャァアアアアアアアアア!!

 

巨大鮫、〈リバイスメガロドン〉は雄叫びをあげると、起き上がるモグラ・デッドマンの胴体に噛みつくと、そのまま窓をぶち破って外に出ると、ガキッ! ガキッ! ガキッ! と、身体を噛み締めていきーーーー。

 

「「うぉらぁっ!!」」

 

モグラ・デッドマンを上空に投げた。そしてリバイがドライバーのスタンプを操作した。

 

[メガロドン! スタンピングフィニッシュ!]

 

「「おぉおおおおおおおおおおおおっ!!!」」

 

巨大サメとなったリバイスがモグラ・デッドマンに突撃する必殺技、『メガロドン・スタンピングフィニッシュ』でモグラ・デッドマンが火花を散らせて落下してくる。

と、そこで、ギフジュニアを全滅させたプリキュア達がやって来ると、リミックスを解除したリバイとバイスが目の前に着地してきた。

 

『うわっ!!』

 

「さあプリキュアちゃん達! ご一緒にっ!」

 

『えっ?』

 

「行っくよー! 3<スリー>!」

 

「「ス、3<スリー>?」」

 

ブルームとイーグレッドが思わずに指を三本立てる。

 

「2<ツー>!」

 

『ツ、2<ツー>?』

 

フレッシュチームも、思わず指を二本立てる。

 

「1<ワン>!」

 

『わ、1<ワン>?』

 

スイートチームも指を一本立てると、バイスはリバイの元に戻り、

 

『モギュアアアアアアアアア!!!』

 

ドガアァァァァァァァァァァァァァンン!!!

 

「ビクトリー!!!」

 

バイスが勝利宣言すると同時に、地面に落ちたモグラ・デッドマンは爆散した。

 

「よっしゃぁ! 本日二連勝! じゃ俺っちはプリキュアちゃん達とお近づきに・・・・」

 

[リミックス!]

 

「えぇっ?! そんなご無体なぁ~~!!!」

 

バイスが叫ぶが構わず、再び〈リバイスメガロドン〉になると、宙を泳ぐように飛び、プリキュア達の後方、ホテルの窓から外の様子を伺っていたディーラーを口で咥えて捕まえる。

 

「ひぃいいいいいいっ!!」

 

「さて、アンタからも色々と聞かせてもらうぞ。プリキュア。もうすぐ〈フェニックス〉が来る。すぐにこの場から去る事をお勧めするぜ」

 

「じゃあね~! プリキュアちゃん達~!!」

 

そう言って、リバイスメガロドンは猛スピードで宙を泳ぎながら、その場から去っていった。

 

 

 

ープリキュアsideー

 

プリキュア達は、去っていったリバイスを見送りながら、少々唖然となっていた。

 

「何だったナリか?」

 

「分からないけど・・・・」

 

「リバイにバイスで、リバイス・・・・」

 

「敵じゃないと思いたいわね」

 

「私達も、〈デッドマンズ〉と戦っちゃったし」

 

「新たな戦いが始まるようね」

 

「でも、ここで無関係を決めるなんて、女が廃る!」

 

「そうね。他の皆と連絡を取っておくのも良いかも」

 

「取り敢えず、この場を離れた方が良いわね」

 

「ええ。〈フェニックス〉も来たようだし」

 

ミューズがそう言って、ホテルの方を指差し、そっちの方を見ると、〈フェニックス〉の隊員達が来ているのが見えた。

プリキュアチームはお互いに頷くと、タルトとシフォンとハミィをそれぞれ抱き抱えて、その場を去っていった。

 

 

ーリバイスsideー

 

そしてリバイスはーーーー。

 

「うわぁああああああああああっ!!」

 

ディーラーの男が悲鳴をあげる。何故ならば、リバイが両手のブレードを鋏のようにして、自分の首にギリギリまで刃を近づけているのだから。

 

「〈デッドマンズ〉に関する事で、お前の知っている情報を全てゲロしろ」

 

「早く言わないと、コイツ容赦しないよ?」

 

仮面ごしでも、冷徹な殺気を放つリバイと、“超がつくほどのごちそう”をまた味わえなくて不貞腐れているバイスがそう言った。

 

「し、知っている事って、言ったて、お、俺にスタンプをくれたヤツの事くらいしか・・・・」

 

「・・・・他には? 〈デッドマンズ〉のアジトの場所。活動の目的。保有する戦力。信者の素性。幹部達の姿は?」

 

「・・・・・・・・わ、分からない、思い出そうとしても、記憶が」

 

「・・・・・・・・」

 

「今までとおんなじみたいね?」

 

これまでバイスタンプを使って悪事をしてきた人間達から、〈デッドマンズ〉の情報を聞き出そうとしても、全員記憶が曖昧になっていた。〈フェニックス〉は、何らかの記憶措置を施されていると、報告を受けている。

 

「・・・・本当に、何も覚えていないのか?」

 

「お、俺にスタンプをくれたのは、緑色の、キラキラスーツを着た、若い男ってくらいしか・・・・」

 

「・・・・そうか」

 

リバイがブレードを離すと、ディーラーはホッと息を吐くが、すぐに体育座りになり、ブツブツと呟く。

 

「いつもこれだ俺ってヤツは、運がないんだ。ディーラーとしての仕事も、ホテルでカジノの裏金を見てしまって、それを黙らせる為に脅されて、無理矢理ディーラーをさせられて、馴れない事やってたらギャンブラーの男にイカサマをしているのがバレて、黙ってもらう代わりに勝たせてやる事にして、ヤツが勝てば支配人達からどやされる、でもやらなきゃイカサマを他の客にバラされる。・・・・俺は、俺は・・・・」

 

「うわっ、ドンヨリしてるね」

 

「・・・・・・・・」

 

それを見たリバイは、男に話しかける。

 

「〈フェニックス〉の更正施設に入っていれば、連中もアンタを口封じしようなんてできないし、カジノの方も今〈フェニックス〉や警察が捜査に行ってるから暫くは営業ができないだろう。そんなゴタゴタの状態で、わざわざ下っぱの下っぱであるアンタにちょっかいかける余裕なんざ無いだろう。更正ができて希望すれば、〈フェニックス〉からマトモな職場を紹介される。再就職場所を地方にでもすれば、ヤツらも追ってこない。後はアンタ次第だがな」

 

「・・・・・・・・」

 

ディーラーがリバイを見上げる。

 

「どうせこの界隈じゃもう生きていけないなら、別の場所で再出発しろ。そっから幸せになれるーーーーいや、幸せを掴めるかは、アンタの努力と根性次第だ。本気で幸せになりたいって言うのならガムシャラに、死ぬ気になってやってみろよ」

 

「・・・・はい」

 

そう言って、ディーラーは涙を流し、リバイスと共に〈フェニックスベース〉に回収され、更正施設へと送られた。

後に更正を終えたディーラーの男性は、自分の実家に近い地方で運送会社でトラックの運転手として再就職し、そこで事務の女性職員と職場恋愛となり、数年後に結婚。二児の父親になるのは、少し先の未来の話。

 

 




次回も、また戦いとプリキュアに遭遇です。


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MAXなハートキャッチにハピネスチャージと遭遇

ーはなsideー

 

「へぇ~! これが機動六課って言うんだ!」

 

はな達HUGっとチームといちか達アラモードチームは、なのはとフェイトに連れられ、時空管理局の機動六課の隊舎に到着した。

“科学と魔法の融合した世界”は、プリキュア達にとっては珍しかった。“純粋な魔法の世界”は知っているが。

 

「なのはママ~! フェイトママ~!」

 

「『ヴィヴィオ』」

 

「ただいま」

 

「んゆっ?!」

 

隊舎前に着いた一同を出迎えるように、茶色の制服を着た女性達や、五歳児くらいの長い金髪をツーテールにした緑と赤のオッドアイをした可愛い女の子がトテトテと走ってきた。

女の子がなのはとフェイトをママと呼んだ事に首を傾げるプリキュア達だが、女の子はそれに構わずなのはに抱きつこうと走り出す。

が、その直前でピタッと立ち止まり、少し顔をしかめて、鼻を摘まんだ。

 

「ど、どうしたの、ヴィヴィオ?」

 

「鼻を摘まんで・・・・?」

 

「なのはママにフェイトママ。・・・・なんか臭い!」

 

「「っっっっ!!!!!???」」

 

『・・・・・・・・っっっっ!!!!!????』

 

なのはとフェイトは、自分達をママと呼ぶ幼子に、「臭い」と言われ、頭の上に『ガーーーーン』と大きな岩が落下したような衝撃が走り、プリキュア達も、自分達の身体を少し嗅ぐと、確かにツンッとする異臭が服に、いや身体に染み付いていた事に気づいた。

そして思い当たった。あの時、リバイスのバイスが逃げる時に自分達にーーーーオナラを浴びせた事を。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

なのはとフェイトは沈黙すると、同じく沈黙するプリキュア一同を率いて、六課のシャワールームに直行し、およそ5時間は出てこなかった。

苦笑いしたハリーは、はぐたんとペコリンを連れて、男性用のシャワールームに入っていき、2時間程で出てきた。

 

『私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない! 私は臭くない!!』

 

『おのれリバイス! おのれリバイス! おのれリバイス! おのれリバイス! おのれリバイス! おのれリバイス! おのれリバイス! おのれリバイス!おのれリバイス! おのれリバイス!!』

 

と、なのはとフェイトとプリキュア達(ほぼ大半)は、六課のシャンプーやボディーソープを使いきる勢いで髪と身体を徹底的に洗いまくり、さらにこんな目に合わせたリバイスに対し、まるで『世界の破壊者』とも呼ばれる“通りすがり”をストーカーする謎のおっさんのような呪詛の言葉を囁くのであった。服の方はなのはとフェイトの仲間達が洗濯してくれた。

そんな事が起こり、今日はプリキュア達は六課に泊まり、後日改めて話をする事になったのであった。

さらに余談だが、なのはとフェイトはリバイスに武器を突きつけて自分達の命令に従わせようとした事をデバイス達が『旦那様達』に知らせ、『旦那様達』に3時間にも渡り、床に正座して滔々とお説教されたのも割愛する。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「へっくしっ!」

 

≪ブェクショォイ! バッキャロオゥッ!≫

 

「あら、輝二くん風邪?」

 

「あ、大丈夫です、『薫子さん』・・・・」

 

その頃、ディーラーの男を〈フェニックス〉に任せ、報酬金を受け取った輝二(&バイス)は、地上に降りると、希望ヶ花市の植物園の近くを通ったので、そこの園長をしている植物学者である上品そうなご老人、『花咲薫子』に会いに来ていた。

薫子は訪ねてきた輝二に嫌な顔1つしないで、お茶をご馳走してくれた。

 

「本当に大丈夫?」

 

「いや何かーーーーとてつもなく爆笑物な事態が起こっているのに、それを見逃してしまって非常に惜しいって気がしてるんです」

 

「そうなの。お茶に誘って良かったかしら?」

 

「いえいえ。薫子さんとお茶できるなら、どんなに惜しい事も取るに足らない出来事です」

 

「あら、ありがとう」

 

孫くらいにまで歳の離れた少年にそう言われ、薫子は優しい笑みを浮かべてそう言った。

それから他愛ない談笑をする二人(バイスは植物園に置いてあるデカイぬいぐるみをジ~っと見ていた)。ふと、薫子が声のトーンを低くして、輝二に話しかける、

 

「輝二くん。大丈夫?」

 

「・・・・大丈夫、と言いますと? 質問を質問で返すようで失礼ですけど」

 

「1ヶ月前に会った時より、少し様子が違うから気になってね」

 

薫子がそう言うのも仕方ない。何故ならその時はまだ、“輝二の父と兄がまだ生きていたからだ”。

 

「・・・・・・・・薫子さん。もし自分の今やっている事が、“ただのワガママな自己満足”だと言われたら、あなたはどうします?」

 

「・・・・例えそう言われても、これが自分の信じる事だと、胸を張って言うわ」

 

輝二の様子から、ただならぬ空気を感じた薫子はそう言った。

それを聞き、輝二も口元に笑みが浮かぶ。

 

「・・・・ありがとうございます。少し気持ちが整えられました」

 

≪さぁすが元プリキュアの『キュアフラワー』! ああ! おばあちゃんじゃなかったらパックンしたいぜ!≫

 

「(・・・・・・・・んな事したら、殺すぞバイス)」

 

≪ちょっ! ちょちょちょちょちょちょ!! 輝二それマジっ! マジもんの殺気だから! 冗談だってばっ!!≫

静かにバイスに向けて氷よりも冷たく冷酷な殺気を放つ輝二に、バイスは慌てて手を振った。

それから暫くお茶を飲みながら薫子と談笑して、一時間ほど経った頃、植物園の扉を開いて、中学生くらいの女の子達が団体でやって来た。

 

「おばあちゃん! ただいま帰りましたぁ!」

 

『こんにちはぁ!』

 

「あらつぼみお帰り。皆もいらっしゃい」

 

1人は薫子をおばあちゃんと呼ぶ、マゼンタカラーの髪を二つに結んだ、前に会った魔導師の金髪に声が似た女の子と、青い髪の小柄な、何やらバイスと似たテンションをした女の子。中性的な美少女。高校生位の眼鏡を掛けたクールな美少女。

 

「(薫子さんのお孫さんの『花咲つぼみ』。その友人の『来海えりか』。彼女達の通う明堂学園の学園長の孫で、中等部の生徒会長の『明堂院いつき』。高等部の在籍する『月影ゆり』)」

 

つぼみ達の後に入ってきたのは、ボーイッシュ女の子とお淑やかそうな女の子と大人しそうな女の子の三人。

 

「(ベローネ学院女子中等部に通う『美墨なぎさ』に『雪城ほのか』に『九条ひかり』)」

 

さらに入ってくるのは、赤い髪をポニーテールにした女の子と青い長髪の女の子と茶髪のショートヘアの女の子と紫色の長髪をした女の子だった。

 

「(ぴかりが丘中学校に通う『愛乃めぐみ』。『白雪ひめ』。『大森ゆうこ』。そして『氷川いおな』か。彼女達全員も、伝説の戦士プリキュア、か・・・・)」

 

輝二はフェニックスから得た情報から、彼女達がプリキュアである事を知っている。

 

「あの、おばあちゃん。この方は?」

 

「ああ。私の友人の嵐山輝二くん。近くを通りかかったたから会いに来てくれたの」

 

「どうも、嵐山です。高校二年生です。薫子さんには三年ほど前にお世話になって、仲良くさせてもらっています」

 

「あ、そうですか! 私、おばあちゃんの孫の花咲つぼみです!」

 

「ども! アタシ来海エリカ!」

 

「明堂院いつきです」

 

「月影ゆり。同じ高校二年よ」

 

「あたし美墨なぎさ! ベローネ学院中等部の三年生!」

 

「雪城ほのかです。同じくベローネ学院中等部の三年生です」

 

「私は九条ひかり。なぎささんとほのかさんの後輩の一年生です」

 

「はじめまして! 私愛乃めぐみ! ぴかりが丘中学校の二年生です!」

 

「わ、私は、めぐみの友達の、白雪ひめ、です・・・・」

 

「ひめちゃん緊張しなくて大丈夫だよ。私は大森ゆうこ。二人の友達です」

「氷川いおなです。はじめまして」

 

≪うわぁおっ!! 何だ何だ!? この子達もプリキュアかよっ!? 皆可愛い系や綺麗系ばっかり! あぁでも俺っち的には特にーーーー九条ひかりちゃんが一番美味しそう!≫

 

「(おいバイス。薫子さんのお孫さんに妙な真似すんなよ)」

 

バイスがひかりに近づくと、涎を垂らしているように見えた。ここにいればバイスが喧しくなると考え、輝二は席を立った。

 

「・・・・薫子さん。申し訳ありませんが、ここでお暇させていただきます」

 

「あら。女の子が多くなって気まずくなった?」

 

「ま。そんな所ですね。会ってすぐですまないけど、お邪魔しました」

 

「えっ? もう帰るんですか?」

 

「ゆっくりしてけば良いのに」

 

「女の子が大勢いるところに男一人は肩身が狭いんでね」

 

「そう言うもの?」

 

「だから『誠司』も来なかったのかな?」

 

ひめとめぐみが首を傾げると、すれ違った際にゆりといおなが輝二を少し訝しそうに見ていた。

 

「最近物騒ですからね。・・・・〈デッドマンズ〉なんて、怪しく集団もいますし」

 

「〈デッドマンズ〉って?」

 

「もうなぎさったら、最近話題になっているカルト宗教団体の事よ」

 

「私もお店に来るお客さんから聞きました」

 

「そう言えば家の道場でも、ウワサになっていたなぁ」

 

「家の道場でもよ」

 

輝二はつぼみ達に向けて口を開いた

 

「この辺りでも現れるかもしれないから、気をつけてください。危ない事には関わらない方が良いですよ」

 

そう言って、輝二は植物園を後にした。

 

「何か、ちょっと恐い雰囲気のあるお兄さんだったね・・・・」

 

「ひょっとしてあのお兄さんが〈デッドマンズ〉の関係者だったりしてねぇ!」

 

人見知りなひめが輝二に少し恐怖感を覚え、えりかがあっけらかんとそう言って、全員がまさかぁ! と笑い声をあげていた。その言葉に、薫子の他にゆりといおなだけが、去っていった輝二を見ていた。

 

 

 

 

 

 

「と、一応忠告はしておいた筈なのに・・・・」

 

≪ガッツリ関わっちゃったな、あの娘達≫

 

植物園を出てすぐ、何やら騒ぎを聞こえ、その場にやって来て物陰に隠れた輝二とバイスの視線の先には、禿鷹、コンドルのようなデッドマンとギフジュニアが街で暴れ、多くの人達が逃げまどっていた。

 

 

 

 

ープリキュアsideー

 

「ウェ~イ! 皆見てるぅ? 今日はあーしから生まれたデッドマンが、街でド派手に大暴れしちゃうよぉ!」

 

ギャル系の中学生くらいの女の子が、自撮り棒でスマホで自分と〈コンドルデッドマン〉を撮影していた。

そしてーーーー他に人がいなくなった広場で、先ほどの少女達がやって来た。

 

「待ちなさい!」

 

「何をしているのあなた!?」

 

なぎさとほのかがギャルにそう言った。

 

「あっれぇ? 何アンタら? 今あーしのデッドマンが派手に暴れようとしてんだからぁ邪魔すんじゃねぇし」

 

「人に迷惑かけちゃダメですよ!」

 

「人の迷惑考えたら、イイね貰えないじゃん!」

 

ひかりがそう言うが、ギャルは聞く耳を持たなかった。

 

「うっわ~。動画配信者ってやつね、あれは・・・・」

 

「全く。動画を配信する前に、マナーを守りなさいよ!」

 

ひめとえりかがゲンナリした顔でそう言った。

 

「ん~? 良く見たらアンタら結構な美少女軍団じゃね? デッドマンに襲われる美少女達。うっわ! 映えそう!」

 

「び、美少女軍団なんて・・・・」

 

「いや~照れますなぁ!」

 

「つぼみ。めぐみ。照れてる場合じゃないでしょう」

 

「とにかくあの子と怪物を止めるわよ!」

 

いつきとゆりがそう言ってアイテムを取り出し、つぼみとえりかも同じアイテムを取り出す。

なぎさとほのかも鞄に下げていたアイテムを取り出し、ひかりは鞄の中からぬいぐるみのような生き物が飛び出し、アイテムに変身した。

めぐみ達もアイテムを取り出す。

 

「「デュアル・オーロラウェーブ!!」」

 

「光の使者 キュアブラック!」

 

「光の使者 キュアホワイト!」

 

なぎさとほのかがそれぞれ黒と白の衣装を纏う。彼女達が『伝説の始まり』のプリキュア。

「ルミナス・シャイニング・ストリーム!」

 

ひかりも変身すると髪のボリュームが増え、ツインテールへとなり、ピンクと白の衣装になった。

 

「輝く命! シャイニールミナス!」

 

続いて、つぼみ達もパフュームのようなアイテムを取り出し、メダルのようなアイテムを付ける。

 

「「「「プリキュア! オープンマイハート!」」」」

 

香水を身体に吹き付けるようにすると、そこからマゼンタと青と黄色と紫の衣装を纏い、髪型も伸びたりそれぞれの色へと代わっていく。

 

「大地に咲く一輪の花! キュアブロッサム!」

 

「海風に揺れる一輪の花! キュアマリン!」

 

「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!」

 

「月光に冴える一輪の花! キュアムーンライト!」

 

めぐみとひめとゆうこはコンパクトミラーのようなアイテムを、いおなは手乗りサイズのピアノのようなアイテムを取り出すと、カードを入れると、そのカードに衣装や背景を付ける。

 

『かわルンルン!』

 

「「「プリキュア! くるりんミラーチェンジ!」」」

 

「プリキュア! きらりんスターシンフォニー!」

 

めぐみの桃色に、ひめは空色に、ゆうこは金髪に、いおなは紫色で髪型が変わり、衣装も変わり、変身が完了した。

 

「世界に広がるビッグな愛! キュアラブリー!」

 

「天空に舞う蒼き風! キュアプリンセス!」

 

「大地に実る命の光! キュアハニー!」

 

「夜空にきらめく希望の星! キュアフォーチュン!」

 

「「「「ハピネス注入! しあわせチャージ! ハピネスチャージプリキュア!」」」」

 

「「「「ハートキャッチ! プリキュア!」」」」

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「闇の力の僕達よ!」

 

「とっととお家に帰りなさい!」

 

「光の心と光の意志、全てを一つにする為に!」

 

プリキュア達が変身すると、ブラックとホワイトが〈コンドルデッドマン〉を指差してそう言うと、

 

「うっわマジ!? アレってプリキュアじゃん! ウェ~イ!!」

 

ギャル系女子はテンション高めに自撮り棒でプリキュア達を映しながら写真を撮った。

 

「もうこんな絵が撮れるなんて、〈デッドマンズ〉最高!」

 

「っ! 〈デッドマンズ〉!?」

 

「あなた、〈デッドマンズ〉の人間なの!?」

 

ハニーとフォーチュンがそう言うが、ギャルの少女は否定するように手を振った。

 

「あぁ、ちゃうちゃう。あーし、イイねが欲しくて何かイイネタねぇかなぁって、街を歩いていたら、あーしと同い年くらいの赤いドレスを着た女の子が現れてね。このスタンプをくれたんだし」

 

ギャルのその手には、『コンドルバイスタンプ』と『ギフジュニアバイスタンプ』があった。

 

「そんで試しにやってみたら、これが凄いの何のって! もう『グラシアス、デッドマンズっ!』って感じだし!」

 

そう言って、ギャルの少女は『ギフジュニアバイスタンプ』を地面をポンポンと押すと、広場を埋め尽くす程のギフジュニアが生まれていった。

 

「そんじゃ、プリキュアVSデッドマン軍団! はっじまり~!」

 

ギャルの少女がそう言うと、コンドルデッドマンとギフジュニア軍団が、プリキュア達に襲い掛かった。

 

 

 

ー輝二sideー

 

「(赤いドレスを着た俺より年下ったぽい女の子、まさか・・・・)」

 

≪どうするよ輝二?≫

 

「あんなバカっぽい娘が、〈デッドマンズ〉の情報を知ってるとは思わないけど、スタンプは回収しなければならないし。それに、薫子さんのお孫さんに何かあったら、薫子に会わせる顔がない」

 

[リバイスドライバー!]

 

輝二は人目の無い所に移動してから、リバイスドライバーを腰に当て、〈レックス・バイスタンプ〉を取り出す。

 

「燃えてこないけど、仕方ないか!」

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

輝二は〈レックス・バイスタンプ〉に息を吐くと、ドライバーに押し込む。

 

≪二度あることは三度あるっ!≫

 

[Come On!レ・レ・レ・レックス! Come On! レ・レ・レ・レックス!]

 

同時に音声が鳴り響くと輝二の背中に、ラインの映像が現れる。

 

ーーーーイエイ! またプリキュアちゃん達と共闘だぜ!

 

ーーーー随分テンション高いな?

 

ーーーーあたぼうよ! 皆俺っち好みの美味しそうな娘ばっかりなんだからさ!

 

ーーーー・・・・他のプリキュアは舐めても、噛んでも、囓っても構わないが、ブロッサムにだけは手を出すなよ。

 

ーーーーえっ? どうしてよ?

 

ーーーー彼女に何かあったら、薫子さんが悲しむだろうが。

 

ーーーーほ~い。

 

会話を終えるとスタンプを持つバイスが現れた。

 

「変身!」

 

≪ほいさっ!≫

 

輝二はそのままスタンプをベルトに押し込み、スタンプを横に傾ける。

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

音声が響くと、輝二は仮面ライダーリバイに、バイスは仮面ライダーバイスとなった。

 

 

 

 

ープリキュアsideー

 

「たぁああああ!!」

 

「はぁああああ!!」

 

『ギュワアアアアアアアッ!!』

 

ブラックは持ち前のパワーのラッシュでギフジュニアを一気に十体近くを殴り飛ばし、ホワイトも蹴りを主体にした格闘で、ギフジュニア圧倒する。ルミナスは戦闘能力はほぼ無いので、逃げ遅れた人達を救出と避難をする。

 

「プリキュアおしりパンチ!」

 

『ギフ~♪』

 

「プリキュアおでこパンチ!」

 

『ギブッ!』

 

ブロッサムとマリンは、一見ふざけていると思えるような技でギフジュニア達を倒していく。ブロッサムにおしりパンチを受けたギフジュニアが、何処か嬉しそうな声をあげたように聞こえるが、おそらく気のせいだろう。

 

「はぁ!」

 

「ふっ!」

 

『グォアッ!』

 

格闘技術に優れるサンシャインとムーンライトは圧倒的にギフジュニアを制圧していく。

 

「うおりゃああああ!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「はぁっ!」

 

「たぁっ!」

 

ラブリーは荒っぽい戦いを繰り広げ、プリンセスは時々ギフジュニアから逃げながら戦い。ハニーは投げ飛ばし、フォーチュンは空手で交戦していた。

 

「うわっはぁ! やっぱプリキュアマジ卍~。イイねいっぱい取れてるぅ~。そんじゃこっちもやっちまえ~!」

 

ギャルの少女が叫ぶと、コンドルデッドマンが翼を広げて飛び立ち、翼から羽をダーツのように発射し、プリキュア達に襲いくる。

 

「っ! サンシャイン!」

 

「うん! 『サンフラワーイージス』!!」

 

ルミナスとサンシャインがバリアを展開して、仲間達を守るが、

 

「ああっ! ブロッサム!!」

 

「えっ?」

 

が、ブロッサムだけが少し離れており、羽の矢が向かってきた。ブロッサムが攻撃に備えて防御するがーーーー。

 

バヒュ! バヒュ! バヒュ! バヒュ! バヒュ! バヒュ! バヒュ! バヒュ!・・・・。

 

別方向から放たれる光弾が、羽を全て撃ち落とした。

 

「えっ・・・・?」

 

『???』

 

ブロッサムや他のプリキュア達が、光弾が放たれた方角を見ると、『オーインバスター50』と『ガンデフォン50』を構えたリバイとその隣でヤンキー座りをしているバイスがいた。

 

「ふん・・・・」

 

「今回は、クールに行くぜぃ・・・・!」

 

「あの、どちら様でしょうか?」

 

「俺っちは、バイス。こっちはリバイ。二人揃って、仮面ライダーリバイス。悪魔も哭かす二人だぜぃ・・・・!」

 

「とっとと、終わらせる」

 

立ち上がったバイスと、いつもの腕タッチをして、リバイスが参戦した。



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Eの飛翔/悪魔とのバリエーション

ーリバイスsideー

 

「えっ? リバイス?」

 

「見たことないわ・・・・」

 

「あの、バイスって人・・・・」

 

ブラックとホワイトが首を傾げ、ルミナスは何故かバイスの方に視線を向けた。

 

「えっと、新しいプリキュア?」

 

「いや絶対違うよ。何か怖いし、男の人だし・・・・」

 

「プリンセス。それは関係ないと思うよ」

 

「プリキュアと呼ぶには、少し違うようね」

 

ラブリーとプリンセス、ハニーとフォーチュンも、リバイスを訝しそうに見ていた。

 

「さて、回収と行くか」

 

「応よ! プリキュアちゃん達ありがとねー! こっからは主役の出番だから! 前座ちゃん達は引っ込んでて良いよっとぉー!」

 

「(ムカッ)前座ぁっ!?」

 

リバイがギフジュニアに向かいながらオーインバスターとガンデフォンを撃ち、バイスも続こうとするが、プリキュア達に向かってそう言うとギフジュニアにラリラットをした。

前座扱いされたマリンが頭に血管マークを浮かばせ、バイスに詰め寄る。

 

「ちょっと! 前座ってどういう事よ! 私達の方が主役でしょう!」

 

「んもう! マリンちゃんったら分かってないなぁ! 〈デッドマンズ〉は俺っち達の相手なの。プリキュアちゃん達はほぼ無関係なんだから、俺っち達が主役なのよ!」

 

「知った事かぁ! 主役は私達よ!」

 

「俺っち達が主役だい!」

 

「私達!」

 

「俺っち達!」

 

「私達!」

 

「俺っち達!」

 

「私達!」

 

「俺っち達!」

 

「私達!」

 

「俺っち達!」

 

「俺っち達!」

 

「私達!」

 

おでこをぶつけ合わせ、ギャイギャイワチャワチャ騒ぎだすマリンとバイス。最後の方でマリンがバイスと同じ被り物を、バイスがマリンの髪型のウィッグを付けているように見えた。

 

「おいバイス、何してンだ?」

 

「マ、マリン、そんな事言ってる場合じゃ・・・・」

 

「うわお! プリキュアと謎のヒーローが喧嘩! これ映えるぅ!」

 

リバイとブロッサムが、メンチ切り合うバイスとマリンを宥め、他のプリキュア達は二人に呆れるが、ギャルの少女はこんな状況でも自撮り棒でスマホのシャッターを押していた。

 

『ギフゥゥゥゥ!!』

 

と、喧嘩する二人にギフジュニア達が襲いかかるが、

 

「「引っ込んでろ!!」」

 

バイスとマリンが同時に言うと、ギフジュニアを殴り飛ばした。

 

『キブゥアッ!!』

 

「もうこうなったら、俺っち達の凄さ、ドドーンと見せちゃうからね!」

 

「それはこっちの台詞よ! 私達の華麗な活躍を見て腰抜かすんじゃないわよ!」

 

お互いにそう言って、ギフジュニア達と交戦した。

 

「ちょわーーーーーーーッ!!」

 

「アチョーーーーーーーっ!!」

 

お互いに負けてたまるかと言わんばかりに戦う二人。

 

「プリキュア全部パンチ!」

 

マリンが身体全部でギフジュニアに体当たりをする。

 

「あれ、ただのボディプレスでしょ・・・・」

 

「まあまあ・・・・」

 

フォーチュンが半眼でツッコむが、ハニーが宥める。

バイスはギフジュニア数体に連続パンチを繰り出す。

 

「ホワタァー! アタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ!!」

 

「す、凄いラッシュ・・・・!」

 

「今にもオラオラかドラララか、無駄無駄と叫びながら殴りそう・・・・!」

 

プリンセスとラブリーが驚愕すると、バイスはラッシュを終えると、倒れるギフジュニア達に背を向け、

 

「必殺、『悪魔百烈恐竜拳<アクマヒャクレックスケン>』!」

 

『キファアアアアアアアアアア!!』

 

ギフジュニア達が爆発した。

 

「へっ! やっぱ俺っち強い! 俺っちが主役だな!」

 

「何をーっ!!」

 

「何だよぉ!?」

 

再びオデコをぶつけ合って、ガルルルル!! と、睨み合うマリンとバイス。

 

「何なんだ、あのバイスの女の子版みたいなプリキュアは・・・・」

 

「何か、マリンが二人になったような気がします・・・・」

 

完全に目的を忘れて張り合っているバイスとマリンに、リバイも他のプリキュア達も、半眼で呆れたり、苦笑いを浮かべたりしていた。

 

「うわっはぁ! やべぇ! 面白れぇ! コンドル! もっともっと暴れろぉ!」

 

『クルァアアアアアア!!!』

 

「どえっ!?」

 

ギャルの少女がコンドル・デッドマンに命令すると、コンドル・デッドマンは急降下して、足の爪でバイスを引っ掻き、マリンにもその爪が迫る。

 

「マリン!」

 

「(ドン)あたっ!」

 

ブロッサムがマリンを押し飛ばして倒すと、コンドル・デッドマンの爪がブロッサムに迫る。

 

「ちぃっ!」

 

「(ドン)きゃっ!」

 

「(ドシン)ぐえっ!?」

 

リバイがブロッサムを退かし、ブロッサムは倒れたマリンの腰に座るように倒れた。

 

ザシュン!

 

「くぁっ!」

 

マリンを退かしたリバイが、その爪に引っ掻かれた。

 

「くっ!」

 

「あ、私を庇って・・・・」

 

「ブロッサム・・・・早く退いて・・・・!」

 

「えっ?・・・・あぁ、マリン! 大丈夫ですか!?」

 

「ち、ちょっと最近・・・・甘い物、食べ過ぎじゃない?」

 

「えっ・・・・?」

 

マリンの言葉にブロッサムがポカンとなるが、コンドル・デッドマンが再びバイスに襲い来る。

 

「げっ!」

 

「危ない!」

 

『クケエエエエエエエ!!』

 

ルミナスがバリアでコンドル・デッドマンを防ぎ、弾き飛ばした。

 

「あっ・・・・ルミナスちゃんありがとう! 愛ちてるぅ!」

 

「ど、どうも・・・・」

 

「俺っちの愛を、受け止めてくださぁあああい!!!」

 

「え、ええぇぇっ!?」

 

両手をバッと広げて、ルミナスに抱きつこうとするバイス。ルミナスはその突然の行動に驚く。

がーーーー。

 

バキッ!

 

「アギャン!」

 

そんなバイスの頭に肘鉄をおみまいするリバイ。

 

「遊んでんじゃない。・・・・とっとと終わらせるに限るな。バイス! 半分力を貸せ!」

 

「あいててて、おうよ!」

 

リバイは腰から鳥のマークがついた緑のバイスタンプを手に取り、ドライバーのレックスバイスタンプを外した。

 

「イェエエエエエエエエエイッ!!」

 

『ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

プリキュア達の大半が驚きの声をあげた。バイスがいきなりリバイに引っ張られるように引き寄せられると、リバイの身体に吸い込まれるように姿を消したのだ。

 

[イーグル]

 

「はぁ・・・・ふん!」

 

スタンプをドライバーに押すと、後ろでLINEが展開される。

 

ーーーーよっしゃぁ! ここで一気に主役の実力見せちゃる!

 

ーーーーいつもより煩いな。

 

ーーーーイーグルだったらハードボイルドに決めようぜ!

 

ーーーーお前の性格でハードボイルドなんて無理だろう。

 

ーーーー固茹で卵、食べてみたい!

 

ーーーー俺は煮卵の方が好きだな。

 

「Come on! イ・イ・イ・イーグル! Come on! イ・イ・イ・イーグル!」

 

[バディアップ!]

 

『ほいっ!』

 

身体から伸びたバイスが、『イーグル・バイスタンプ』をリバイに叩き込むと、リバイはスタンプの中に入り、姿を変え、スタンプが砕けると、バイスも被り物を変えた。

 

[荒ぶる! 高ぶる! 空駆け巡る! イーグル! お前の羽を数えろ!]

 

「へっへ~! 二人で一人だぜぇ!」

 

「コイツで決まりだ!」

 

リバイは右側がピンク、左側がパープルに分かれており、複眼はピンクサイドがグリーンに、パープルサイドがマゼンタとなり、額にはW字のアンテナ。胸部にはワシの頭部が装着し、下半身にはマントを靡かせていた。

バイスはワシを模した被り物に右側がターコイズ、左側がグレーとなっており、こちらも額にW字のアンテナを付け、肩からグリーンとグレーのウイングを付けている。

 

「ええっ!? ぶっちゃけ、あり得なーーーーい!!」

 

「ベルトに付けていたスタンプを外して、別のスタンプを付けて変わった? あのスタンプに何か秘密が有りそうね」

 

「それに、バイスって人も気になります」

 

驚いているブラックは置いて、ホワイトとルミナスはリバイスを見据えていた。

 

「ええっ!? 姿が変わったぁ!」

 

「そんなんありっ!?」

 

「ねえフォーチュン。今、あのバイスって人、リバイって人の身体の中に入ったように見えたけど・・・・」

 

「ええ。私にもそう見えたわ・・・・。ところで、ブロッサム達はどうしたの? ムーンライトまで・・・・」

 

ハピネスチャージチームも驚くが、フォーチュンは、何故か片手を上げて、まるでツッコミを入れるようなポージングをしているハートキャッチチームを見据える。後、マリンだけが何処からか出したのか、金色の文字で『アタシ聞いてない!』と、書かれた緑色のスリッパを持っていた。

 

「いえ、何故か分かりませんが・・・・」

 

「何となく、それ違うっ! ってツッコミを入れたくなって・・・・」

 

「マリン。そのスリッパは何処から出したの?」

 

「いや何か、ツッコミを入れたいと思ったら、いつの間にか持ってた・・・・」

 

自身達の謎行動に戸惑うハートキャッチチームを置いて、リバイが自分の周りに迫るギフジュニア達に視線を向け。

 

「さぁて、行くぜ!!」

 

「はいどうぞ!」

 

いつもの腕タッチをし、バイスが身体を屈めると、リバイが蹴りをする動きをした瞬間、緑色と紫色の風を吹き荒れ、ギフジュニア達を薙ぎ倒す。

 

「はぁっ! とぉっ! うぉらぁっ!!」

 

『ギフウウウウウウウウッ!!』

 

『きゃっ!?』

 

「おおっ!!」

 

と、そこでプリキュア達にも突風が襲いかかり、彼女達は風で舞った埃をガードするが、スカートがユラユラと動き、バイスはプリキュア達の揺れるスカートに目を向けていた。特にかなりスカートが短いサンシャインと肉付きの良い太ももをしたハニー、鍛えられたしなやかな足をしたフォーチュンと、麗しい美脚をしたムーンライトを。

 

「(むぅう!! 後ちょっとで見極められそう!)」

 

「何してんだ」

 

「(コンッ)あいた!」

 

バイスを小突いたリバイ。

 

「とっとと終わらせるぞ」

 

リバイはドライバーのスタンプを倒して、ボタンを押した。

 

[リミックス!]

 

「ほれバイス」

 

「ハイハイ、ちょっくら失礼しまっす!」

 

バイスはリバイの足元に這って、肩車するようにリバイを持ち上げて立ち上がった。

 

「・・・・この格好、なんか嫌だな」

 

「ちょっと! なに肩車なんてしてんのよ!」

 

ブラックがそう叫ぶが、リバイはスタンプを倒した。

 

[バディアップ!]

 

すると、リバイとバイスの胸元のマークが光り出す。

 

[必殺! ミラクル! グルグル! イーグル!]

 

二人のマークが重なり一つになると、肩車したリバイスの身体が浮き上がり、リバイのマントとバイスのマントが翼のように広がり、リバイの胸部のワシの頭部が展開した姿。

ーーーー〈リバイスイーグル〉へと変身した。

 

ピュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 

『ええええぇぇぇぇぇぇぇ!? 流石にあり得なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいいっっ!!!』

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「うわっはぁ! マジテンアゲーーーーッ!!」

 

『クケエエエエエエエ!!』

 

今度はムーンライトを覗いたプリキュア達が、一斉に大声を上げて驚いた。ムーンライトもおもわず唖然となる。ギャルもおおはしゃぎでスマホでリバイスイーグルを写真に収め、コンドル・デッドマンは襲いくる。

 

「「はぁあっ!!」」

 

リバイスイーグルが羽ばたき、コンドル・デッドマンと激しい空中戦を繰り広げる。

お互いに高速飛行で交差し合うと、火花が飛び散る。

 

「ふはははははは!! これぞ主役の活躍ってやつよ!」

 

 

 

ープリキュアsideー

 

「(カチン)むっ!」

 

空の上からバイスの声が聞こえ、マリンの目に炎を宿らせると、手に持っていたスリッパを放り捨て、自分達から少し離れた位置にいる妖精達の中にいるパートナー達を呼んだ。

 

「『コフレ』! 『シプレ』! 『ポプリ』!」

 

「「「は、はいですっ(でしゅっ)!」」」

 

「飛ぶわよ! 真の主役の実力を見せてやろうじゃないの!!」

 

「マ、マリン・・・・」

 

「張り合っている場合じゃないよ・・・・」

 

「完全に目的が変わっているわね・・・・」

 

コフレがブロッサムに近づき、ピンクのマントに変わり、シプレがマリンに、ポプリがサンシャインに、それぞれ青と黄色のマントに変わり、ムーンライトは左肩のエンブレムから薄紫のマントを出すと、空を飛翔する。

 

「あっ、皆! 私達も!」

 

「うん!」

 

「「ええ!」」

 

ラブリーがそう言うと、プリンセスとハニー、フォーチュンの腰の小さな羽を大きくし、白い翼にして飛翔した。

 

「あぁ! 私達翔べない!?」

 

「後輩の皆、飛行能力があるのね」

 

「いや~、時代を感じますなぁ」

 

「ブラック。老け込むのは早い気がします・・・・」

 

飛行能力を持たないブラック、ホワイト、ルミナスは空を見上げてそう呟いた。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「『ラブリーパンチ』!」

 

「『プリンセス弾丸マシンガン』!」

 

『クケッ!』

 

ピンクと空色のエネルギー弾が、コンドル・デッドマンに襲い来るが、ヒラリと旋回して回避した。

 

「あっ! 俺っち達の活躍奪う気っ!?」

 

「フフン! こっからは真の主役の実力よっ!!」

 

「だからマリン! そんな事言ってる場合じゃないですよぉ!」

 

「おいバイス!」

 

「あん? げぇえっ!!」

 

コンドル・デッドマンが翼にエネルギーを込め、まるで刃のように鋭くすると、リバイスイーグルの腹部を切り裂こうとする。

 

「はっ!」

 

「いよっ!」

 

が、二人が肩車を解除すると、その翼を回避した。

 

「えぇっ!? だからそんなのありっ!?」

 

「ありなのでぇ~す!」

 

『クケエエエエエエエ!!』

 

プリンセスが驚き、そして再びリバイスイーグルへとリミックスすると、コンドル・デッドマンが翼の羽をダーツのように飛ばす。

プリキュア達は避けたりバリアで防御する中、リバイスイーグルはその羽を回避しながら、コンドル・デッドマンに迫る。

 

「はあああーっ!」

 

「おおおおおお!」

 

二人はコンドル・デッドマンにターゲットを定めると、バイスの足の爪でコンドル・デッドマンを裂き、上空に飛ばすと、飛ばされた先に回って、緑と紫の風を纏って、コンドル・デッドマンに回転しながらキックを繰り出した。

 

「「はあああああああああああ!!!」」

 

[イーグル! スタンピングフィニッシュ!]

 

コンドル・デッドマンを貫くと、コンドル・デッドマンに火花が散る。リバイとバイスが分離して、ブラックとホワイトとルミナスの近くに着地する。

 

「さぁ! ブラックちゃん。ホワイトちゃん。ルミナスちゃん。ご一緒に行くよー!」

 

「「「えっ?」」」

 

「3<スリー>!」

 

「ス、3<スリー>?」

 

ルミナスが思わずに指を三本立てる。

 

「2<ツー>!」

 

「ツ、2<ツー>?」

 

今度はホワイトが思わず指を二本立てる。

 

「1<ワン>!」

 

「1<ワン>?」

 

ブラックが指を一本立てると、

 

『グゲエエエエエエエエエエエッ!!!』

 

ドバアアァァァァァァァァァァァァァンン!!!

 

「ビクトリー! ふふっ! これぞ真の主役の勝利っ!!」

 

イーグルの紋章が一瞬現れ、コンドル・デッドマンが爆散した。

そしてバイスがふんぞり返ってそう言った。そして、すかさずマリンが着地してバイスに詰め寄る。

 

「ちょっとー!」

 

「何だよ! 俺っち達が倒したんだから、俺っち達が主役だろ!」

 

「なぁに言ってんのよ! 私達がトドメを譲ってあげたんでしょ!」

 

またもやギャイギャイ騒ぐ二人。ブロッサムもサンシャイン、ラブリーとプリンセスがまぁまぁと、宥めていると、リバイはブラック達とムーンライト、ハニーとフォーチュンが後を追い、ギャルの少女に近づく。

 

「あぁ~負けちった・・・・また出せば(ヒョイッ)あっ、返せし!」

 

リバイが少女から、『コンドルバイスタンプ』と『ジュニアスタンプ』、そしてスマホを取り上げた。

 

「おら、少し周りを見ろ。スマホなんて弄ってないで」

 

「えっ?・・・・あ」

 

ギャルの少女は周りを見ると、戦闘によって破壊された広場が目に入った。

 

「これ、あーしがコンドルを暴れさせたから?」

 

「そうだ。ほら、これも見てみろ」

 

「えっ?」

 

スマホを渡され見てみると、さっきまでイイねをしていたリピーター達が、辛辣なコメントを出していた。

 

「皆、さっきまで・・・・」

 

「所詮。こんなの見てはしゃいでいるヤツらなんて、第三者視点で評論家気取っている暇人の集まりさ。そんな奴らの暇潰しの為に、こんな事ひどい事をしたかった訳じゃないだろう?」

 

「・・・・うん。あーしはただ、皆にイイねをして欲しかっただけ」

 

「んじゃ今度やる時は、誰かに迷惑かけないやり方をしな。その方がずっと素敵だと思うぞ」

 

「うん・・・・」

 

ギャルの少女の目に、涙が貯まる。

 

「ちょっと色んな人達に怒られると思うが、ちゃんと反省して、もう一度やり直しな」

 

「・・・・うん」

 

少女はスン、スンと涙ぐむ。

 

「それじゃ、取り敢えず、一言言いなよ」

 

「・・・・ごめん、なさい」

 

少女はリバイやプリキュア達を見てそう言うと、頭を下げた。リバイは少女の背中をポンポンと優しく叩いてやると。

 

「おいバイス」

 

「ふぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ!!! あん?!」

 

「ぬぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ!!!」

 

マリンと両頬の引っ張り合いをしていたバイスが、リバイに目を向ける。

 

「この子を連れて行くぞ」

 

「ちょっと待って! マリンちゃんと決着をつけるまでは!」

 

「決着でも接着でもない! とっとと行くぞ!」

 

「あんもう分かったよ!」

 

「マリンも離しなさい」

 

「むぅっ」

 

バイスがマリンの頬から手を離すと、ムーンライトもマリンに近づき、その首根っこを掴んで離させ。バイスはリバイに近づくと、少女をお姫様抱っこしたリバイを再び肩車した。

 

「それじゃプリキュア。俺達はこれで」

 

「あっ、ちょっと待って!」

 

ブラックが止めようとするが、リバイスは飛び上がると、リバイスイーグルへとリミックスした。

 

「プリキュア! バイスの言うとおり、君達は〈デッドマンズ〉との無関係だからな! これからは関わろうとするな!」

 

リバイスイーグルはそう言うと、少女を連れて離れていった。

 

 

 

 

 

 

少女は厳重注意で済み、〈フェニックス〉に『バイスタンプ』を渡し報酬金を受け取った輝二。

夕方になり、漸く自宅のある小さなビルに着くと。ご近所の『牛島太助』が声をかけた。

 

「やあ輝二くん! 何か良いことでもあった?」

 

「いえ、かなり疲れる事があっただけですよ」

 

そう言って輝二が一階の喫茶店に入ると、店長の『伊良部正造(通称ぶーさん)』がいた。

 

「よ、輝二くん。地下カジノの職場見学はどうだった?」

 

「それなりに楽しめたよ。ありがとうぶーさん。カジノに入れるように会員証を取り寄せてくれて」

 

輝二はぶーさんに、カジノで儲けたお金の半分(0が4つ)を茶封筒と会員証を渡すと、店を出ていった。

 

「・・・・輝二くん。あまり無茶はするなよ」

 

「・・・・善処するよ」

 

そう言って、三階の自宅に入ると、お仏壇に置かれた二つの骨壷と、二人の男性の写真が立てられていた。

輝二はお仏壇に手を合わせた。

 

「父さん。兄貴。〈デッドマンズ〉の情報は見つからなかったよ。でも、必ず見つけてみせるから」

 

輝二は拝むのを終えると、パソコンを起動させ、他のプリキュアのリストを見ていた。

 

≪うっひょぉおお!! 変身している姿も良いけど、変身前も可愛いし綺麗だし、とっても美味しそうな子達ばっか!≫

 

「うるさいぞバイ・・・・っっ!!?」

 

が、輝二は“あるプリキュアの関係者”の中に、思いもがけない人物がいて、目を見開いた。

 

「な、なんで、この子が・・・・・・・・・・・・『ゆい』」




書いている内にマリンとバイスの漫才が目立つようになりました。似ている二人は喧嘩するってヤツですね。
そして、プリキュア側のあるキャラの設定をいじくります。ご了承ください。


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スマイル・GoGo・プリンセス!

ーはなsideー

 

「それじゃプリキュアの皆さん! これから地球で対〈デッドマンズ〉に為に共闘する事になったから、よろしく頼むな!」

 

「よろしくですぅ!」

 

「はい、『はやて』さん! 『リィン』ちゃん!」

 

リバイスと出会った翌日。

管理局の世界〈ミッドチルダ〉にて、なのはとフェイトが所属する〈時空管理局 機動六課〉と協力する事になったプリキュア達は、さっそく地球に向かおうとしていた。

そして関西風の口調で声をかけたのは、なのはとフェイトと同い年位の茶色を帯びた黒髪をボブカットにした『機動六課隊長 八神はやて』と、長い銀髪をした妖精のように小さな体躯をした女の子、『リィンフォース・ツヴァイ』こと、『リィン』である。

 

「くぅ~。なのはさん達とも一緒に戦えるなんて! 早く他の先輩プリキュアの皆にも伝えたいなぁ!」

 

「テンション高いねはな」

 

「そりゃそうだよ! みらいちゃん達の他にも魔法を使える人達が来てくれて嬉しい!」

 

「まぁはなちゃんの気持ちも分かるけどねぇ。一緒に頑張ろう!」

 

「ありがとう『スバル』ちゃん!」

 

はなに同意したのは、プリキュア達と同い年に青い短髪にボーイッシュに活発な雰囲気をした女の子、『スバル・ナカジマ』。その隣には、オレンジの髪をツインテールにした同い年のクールな雰囲気をした女の子、『ティアナ・ランスター』がやれやれとした様子で見ていた。

 

「『エリオ』くん。『キャロ』ちゃん。これから宜しくね」

 

「はいあきらさん!」

 

「私達、がんばります!」

 

「『フリード』もヨロシクね」

 

『キュル~♪』

 

あきらが声をかけたのは、赤い髪を逆立てた九歳位の男の子の『エリア・モンデュアル』と桃色の短髪をした九歳位の女の子の『キャロ・ル・ルシエ』が元気よく挨拶して笑みを浮かべ、ゆかりがキャロの肩に乗った小型の竜、『フリードリヒ』の顎を撫でた。

 

「ほらお前ら。さっさと行くぞ」

 

次元航行船に載れと催促しているのは、エリオやキャロと同い年位の小柄で赤い髪を三つ編みにして二房に下ろした女の子、『ヴィータ』だった。

 

「たくっ、ヴィータ! もう少しゆっくりしてても良いだろう?」

 

「うるせぇあおい! さっさと乗れ!」

 

「あおいちゃん。そんな言い方は駄目ですよ。ごめんなさいヴィータちゃん」

 

「つーかひまり! お前もアタシをちゃん付けで呼ぶな! お前らより年上だーーーー!!」

 

ヴィータが怒鳴り声をあげる。ここにはいないが、キュアミューズこと調辺アコとほとんど変わらない背丈なのに、このヴィータは信じられない事に、なのは達と同い年なのだ。信じられない事に、なのは達と同い年なのだ。

そんなヴィータを桃色のポニーテールをした長身の凛々しい女性『シグナム』。銀色の長髪をした長身の、リィンを大人にしたような女性、『リインフォース・アインス』が両腕を抱えて抑えた。その様子を金髪のショートヘアーをした白衣を着た穏やかそうな女性『シャマル』と青い体毛の大型犬ーーーーいや、狼の『ザフィーラ』が苦笑いを浮かべていた。

 

「なのはママ! フェイトママ!」

 

「ヴィヴィオ!」

 

後で聞いたが、なのはとフェイトの養女の『ヴィヴィオ・K<コザァート>・沢田』が、今度はちゃんとなのはに抱きついた。

 

「ヴィヴィオ、ゴメンね。ママ達またお仕事でいなくなっちゃって・・・・」

 

「寂しい思いをしちゃうよね?」

 

「うにゅ? ううん! 大丈夫だよママ! だって!」

 

なのはとフェイトが申し訳なさそうな顔で言うが、ヴィヴィオはなのはから下りると、後から来た“男性陣の方々”の内の、『なのはとフェイトの旦那様二人』の手を取った。

 

「ママたちがいないときは、パパたちにおもいっきりあまえるもん♪」

 

ヴィヴィオは茶色の髪を逆立たせた、全身から優しく穏やかなお兄さんオーラを出しまくっている『なのはの旦那様』と、同じ位のオーラを出している赤い髪と紋章のような特徴的な赤い瞳をした『フェイトの旦那様』を見てそう言った。

 

「「っっっ!!!???」」

 

そしてなのはとフェイトは一瞬『ガーーーン』と言う岩がまた頭の上に落下したように見えると、

 

「「ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ~~~!!」」

 

「ほらほら二人共、娘にヤキモチ焼いてどないすんねん」

 

涙目でヴィヴィオを羨ましそうに見る二人に、はやてが背中をポンポンと叩いた。

なのはとフェイトの旦那様達が、二人に近づくと、優しく抱き締めて、頭を優しく撫でた。

 

「いってらっしゃい。なのは」

 

「は~い♥️」

 

「気をつけてね。フェイト」

 

「うん。無事に帰ってくるね♥️」

 

なのはとフェイトは、途端に機嫌が良くなり、全身からハートマークを出しながら旦那様達に甘えていた。

 

『んまっ!//////』

 

『うわわわわわわ!!//////』

 

『きゃ~!//////』

 

『あらあら♪』

 

プリキュア達は、綺麗なお姉さん二人のデレデレっぷりに顔を紅くして、両頬に手を当てたり、両手で顔を隠すが指の隙間から覗いたり、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。

さらに周りを見ると、ティアナは銀髪を肩口まで伸ばした恐そうなお兄さんと話をして笑みを浮かべており、スバルは白い髪の短髪の、何処かで見た事ある体格の良いお兄さんと「極限だー!」と叫んでいた。

シグナムは黒髪短髪の、これまた何処かで見た事のある爽やかそうな男性と仲良く会話をし、ヴィータは黒髪癖っ毛の伊達男と会話していると、何故かお尻を蹴っ飛ばした。

はやてと会話しているのは、黒髪に猛禽類のように鋭い目をした男性だった。リィンがその男性に抱きついていた。

 

「さて、それじゃ皆行くで!」

 

『はい!』

 

はやての言葉に全身が声を上げると、時空航行艦に乗り込んだ。

 

「いってらっしゃ~い!!」

 

下ではヴィヴィオと旦那様達が手を振っていた。

そして時空のゲートが開き、地球へと向かって行ったのであった。

 

 

 

 

ー???sideー

 

「ママたち、いっちゃったね・・・・」

 

「寂しい? ヴィヴィオ?」

 

「うぅ~」

 

ヴィヴィオが『なのはの旦那様』に抱きついた。旦那様はヴィヴィオを抱き上げて、ヨシヨシと頭を撫でた。

ふとそこで、“10歳位の黒スーツを着た男の子”が近づく。

 

「なのはから聞いたが、〈デッドマンズ〉と戦っている〈リバイス〉ってのは間違いなく、“アイツ”だろうな」

 

「ああ。“彼”、いや、“彼ら”が力になってくれるのは、心強いな」

 

「だけど、何故管理局は〈デッドマンズ〉討伐を許可したのだろう?」

 

「・・・・何か、“裏”がありそうだな」

 

空を見上げてそう呟いた『なのはの旦那様』の瞳は、まるで先の未来を見通しているような、澄んだ光が宿っていた。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

輝二はその休日、バイクを走らせ、ある学園を見据えた。海沿いの陸地から少し離れた小さな島に設立された『ノーブル学園』である。

そこは橋で陸地と繋がっており、近くで路線バスが通っていた。

 

≪なぁなぁ! 本当に行くのかよ?≫

 

「(・・・・・・・・)」

 

バイスが喋るが輝二は答えず、バイクをさらに加速させ、ノーブル学園へと向かった。

 

 

 

 

ノーブル学園に到着し、バイクを駐車場に止めた輝二は学園の門を通ろうとした。

 

「ちょっと君、待ちなさい」

 

と、ソコで警備員の人が近づくと、輝二は懐から来客のカード(偽造)を見せて中に入っていった。

すると、後ろから姦しい声が響いたので振り向くと、見た事のある女性陣と二人の大人の男性と少女達と同い年の男の子が近づいてきた。

 

「『かれん』さん、今日ってノーブル学園の生徒会と会合なんですよね?」

 

「ええ。でも『のぞみ』達も来る事なかったんじゃない?」

 

「ついでに『はるか』ちゃん達にも会いに行こうと思っていたんですぅ」

 

「って言うか、それが目的で『かれん』さんにくっついて来たんだけどね・・・・」

 

「この学園って設備も充実しているから、面白そうな本とかありそう」

 

「『ココ』様。『ナッツ』様。私達の国でもこういう学園を作ってみますか?」

 

「そうだねぇ、確かに良い学園だね」

 

「外界から離れた学園か」

 

「何で俺まで・・・・」

 

「うわ~! まるで絵本に出てくる学校みたい!」

 

「この学校のバレー部と、今日練習試合をするの『あかね』ちゃん」

 

「せやで。しっかしお上品そうで、ウチには合わんなぁ」

 

「寮生活って私は無理だなぁ、家族と離れるのイヤだし。『れいか』は似合いそうだねこの学園」

 

「そうですか『なお』?」

 

「『キャンディ』も楽しみクル!」

 

とっさにその女性陣から離れた輝二は、スマホを操作して、リストに目を走らせた。

 

「(『サンクルミエール学園』の二年生、『夢原のぞみ』と『夏木りん』と『美々野くるみ』。一年生で最近売れ始めた芸能人でもある『春日野うらら』。三年生の『秋元こまち』と『水無月かれん』。教員の『小々田コージ』にその友人の『夏』と『甘井シロー』。『七色ヶ丘中学校』の二年生、『星空めぐみ』、『日野あかね』、『黄瀬やよい』、『緑川なお』、『青木れいか』。そしてーーーーこの学園にいる一年生の『春野はるか』に、人気モデルの『天ノ川きらら』に“表向きは留学生”の『紅城トワ』。そして二年生の『海藤みなみ』。またプリキュアか・・・・)」

 

≪うっひょぉおおおおおおおおおおおお!! こりゃまた美味しそうな可愛子ちゃん達が目白押し! 俺っち的にはうららちゃんとれいかちゃんが美味しそう!≫

 

木の影からこっそりと状況を窺う輝二は、またもプリキュアと遭遇した事に辟易としていた。バイスはプリキュア達の容姿に叫び声を上げた。

 

「(関わる前に、用事を済ませるぞ)」

 

輝二は誰にも見られないように、コッソリとその場から離れた。

 

≪お約束でまたデッドマンズが出てきたりして?≫

 

「不穏な事を言うのはやめろ・・・・」

 

しかし、輝二の直感も、何か起きそうな予感をしていた。

 

 

 

 

ー『ゆい』sideー

 

そしてノーブル学園の校舎を歩くのは、眼鏡に三つ編みをした女の子、ノーブル学園一年生の『七瀬ゆい』だった。

ゆいは友達で同室の春野はるか、友人の海藤みなみと天ノ川きらら紅城トワと一緒に、生徒会の会合とバレー部の練習試合に来た先輩プリキュアであるのぞみ達とみゆき達を出迎えに向かった。

 

「う~ん! 今日はのぞみちゃん達とみゆきちゃん達が来てくれるんだ!」

 

「はるか。のぞみ達はかれんさんの付き添いみたいな物よ。みゆき達も、今日は我が校のバレー部とあかねの所属するバレー部の練習試合だから来ているんだから」

 

「まあ良いじゃんみなみん。はるはるの気持ちも少し分かるしさ。ね、トワっち」

 

「そうですねきらら」

 

「皆に会うのが楽しみロマ」

 

「パフも楽しみパフ!」

 

トワの肩に乗っている鳥の精霊『アロマ』と、はるかが抱き上げている犬の精霊『パフ』も楽しみにしていた。

 

 

 

 

ー???sideー

 

「・・・・海藤、みなみ・・・・!」

 

はるか達の様子を、廊下の角から眺めていた女子生徒が、はるか達をーーーー正確に言えば、みなみを睨んでギリッと歯噛みした。

女子生徒は今年の三年生であり、以前までは次期生徒会長とも称されていた優秀な生徒であった。

しかし、生徒会長の座に選ばれたのは二年生の海藤みなみとなり、生徒会も二年生が全て引き継ぐ事になった。みなみは成績優秀。スポーツ万能。現役人気モデルの天ノ川きららに負けず劣らずにスタイル抜群。性格も優しく非常にお淑やかな模範的なお嬢様。以前水泳の授業で泳いでいた彼女を見た時なんて、まるでファンタジー小説に出てくる人魚姫を彷彿させるような、中学二年生とは思えない凄まじい美貌。

どれを取っても完璧なお嬢様だ。生徒会長に相応しいと言えるだろう。

だがーーーーそれが分かっているから、自分は逆立ちしても敵わないと分かっているから、余計に悔しく、腹立たしいのだ。

 

「ギリッ・・・・! だけど、アンタの天下はもう終わりよ・・・・! アンタを消して、私が生徒会長になって見せるわっ!!」

 

その生徒の手には、『サソリのエンブレムが付いたバイスタンプ』が握られていた。

 

[スコーピオン!]

 

「やってやる・・・・!」

 

生徒はバイスタンプの自分の胸に押し当てたーーーー。

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

ーーーードガァアアアアン!!

 

「やっぱり・・・・」

 

≪こうなっちゃうのね・・・・≫

 

突然ノーブル学園の校舎の一部が爆発したのを見た輝二とバイスは、肩を落とした。

そして校舎からはるか達が逃げるように出てきて、その中に、ある少女がいるのを目撃した。

 

「っ! “ゆい”・・・・!」

 

「おーい!」

 

輝二は七瀬ゆいに近づこうとするが、夢原のぞみの声に一瞬踏みとどまり、隠れた。

 

 

 

ーはなsideー

 

「あっ、のぞみちゃん! みゆきちゃん!」

 

「何があったの!?」

 

「分からないよ、突然学校の廊下に怪物が・・・・!」

 

『ギギギギギギギ!』

 

と、ソコで校舎から、サソリの怪物が現れた。

 

「ななななな、なにあれぇ!?」

 

「サソリの怪物ですぅ!」

 

「サソリっ!? ふぅ・・・・」

 

「こらなお! 虫やからってサソリにビビってどないすんねん!」

 

「見て! 校舎から誰か出てくる!」

 

校舎から出てきたのは、手にスタンプを持ったノーブル学園の女子生徒だった。

 

「っ! あの人は・・・・!」

 

「みなみ、知ってる人?」

 

「ええ。生徒会の先輩だった人なの。先輩! すぐに逃げてください!」

 

かれんの問いに答えたみなみは、先輩に逃げるように言うが、その先輩はニンマリと笑みを浮かべると、持っていたスタンプを眼前に翳した。

 

「うふふふふ!」

 

その先輩はスタンプを地面に押し付けると、地面から次々と、ギフジュニアが出現した。

 

「なっ!?」

 

「これって・・・・!」

 

「先輩・・・・まさか、あなたが?」

 

「そうよ海藤みなみ! 私はねぇ、ずっとあなたが疎ましかった! ずっとあなたを蹴落としてやりたかった! その望みが今まさに叶うわ! グラシアス、デッドマンズ!!」

 

先輩はさらにギフジュニアスタンプを押して、ギフジュニアを召喚した。

それを見てのぞみとみゆきが険しく、神妙な顔つきとなる。

 

「〈デッドマンズ〉!?」

 

「〈デッドマンズ〉って・・・・!」

 

そしてーーーー。

 

「「何だっけ?」」

 

『ズコーーーーっ!!!』

 

間の抜けた顔となったのぞみとみゆきのダブルボケに、思わずプリキュアの大半に精霊の大半、さらに先輩やスコーピオン・デッドマンにギフジュニア達までずっこけた。

ついでにバイスもずっこけたが、輝二はカクンと、肩を落とした。

 

「のぞみ、あんたねぇ・・・・! 最近ニュースにも取り上げられてるカルト宗教団体でしょう!」

 

「みゆき! ウチでも知ってるでその団体!」

 

「昨日先輩や後輩プリキュアの皆も戦ったってメールが来てたでしょうがっ!」

 

「あぁそう言えば!」

 

「響ちゃん達が戦ったって言ってたっけ!」

 

りんとあかね、くるみがツッコミを入れると、二人は思い出したようにポンッ、と手を叩いた。

 

「ーーーーお馬鹿につき合ってられないわ! やってしまいなさい!」

 

起き上がった先輩がそう言うと、スコーピオン・デッドマンとギフジュニア達が迫り来る。

それを冷静に見て、少女達がアイテムを取り出す。

 

「「「「「プリキュア・メタモルフォーゼ!」」」」」

 

「大いなる希望の力! キュアドリーム!」

 

「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」

 

「弾けるレモンの香り! キュアレモネード!」

 

「安らぎの緑の大地! キュアミント!」

 

「知性の青き泉! キュアアクア!」

 

「「「「「希望の力と未来の光! 華麗に羽ばたく五つの心! YES! プリキュア5!」」」」」

 

「スカイローズ! トランスレイト!」

 

「青い薔薇は秘密の印! ミルキィローズ!」

 

のぞみ達がそれぞれのカラーの衣装と髪の色、髪型に変わり、光を、火を、閃光を、若草を、水を、青い薔薇の纏いながら構えた。

 

[[[[[レディー]]]]]

 

「「「「「プリキュア! スマイルチャージ!」」」」」

 

「キラキラ輝く未来の光! キュアハッピー!」

 

「太陽サンサン熱血パワー! キュアサニー!」

 

「ピカピカぴかりん、じゃんけんポン♪ キュアピース!」

 

「勇気リンリン直球勝負! キュアマーチ!」

 

「しんしんと降り積もる清き心! キュアビューティ!」

 

「「「「「5つの光が導く未来! 輝け! スマイルプリキュア!」」」」」

 

みゆき達もそれぞれ色とりどりの衣装と髪の色と髪型に変わり、光と火と雷と風と氷を纏いながら構える。

 

「「「「プリキュア! プリンセスエンゲージ!」」」」

 

「咲きほこる花のプリンセス! キュアフローラ!」

 

「澄みわたる海のプリンセス! キュアマーメイド!」

 

「きらめく星のプリンセス! キュアトゥインクル!」

 

「真紅の炎のプリンセス! キュアスカーレット!」

 

「強く!」

 

「やさしく!」

 

「美しく!」

 

「Go!」

 

「プリンセスプリキュア!」

 

そしてはな達も、まるでドレスのような衣装となると、まるで花のお姫様、人魚姫、星の王女様、炎の姫君のように佇み、フローラがスコーピオン・デッドマン達に向けて、優雅に手を上げる。

 

「お覚悟は、よろしくて?」

 

「アハハハ、貴女達プリキュアだったの? じゃあ、先輩として教えてあげるわ。世の中、上手く行くことばかりじゃないってね!!」

 

先輩が言うと、スコーピオン・デッドマンとギフジュニアが、プリキュアに襲いかかった。

 

 

 

ー輝二sideー

 

≪それでどうする?≫

 

「どうするって?」

 

≪あの子スタンプ持ってるし、もしかしたら〈デッドマン〉に関する事知ってるかもよ?≫

 

「わざわざ手助けする理由なんてないだろう?」

 

≪プリキュアちゃんと一緒に戦ってたのに?≫

 

「成り行きだったり、薫子さんのお孫さんがいたから一緒になっただけだ。彼女達と共闘するメリットはない」

 

≪んじゃ、スタンプは?≫

 

「回収させて貰うがな。俺らはノンビリ高みの見物して、終わったら回収してトンズラだ。精々プリキュアちゃん達には、露払いをしてもらおうぜ」

 

協力する気無しの輝二は、隠れて見物をしようとした。

 

 

 

 

ーゆいsideー

 

『グガァアアアアアアアアアアア!!』

 

『はっ!』

 

スコーピオン・デッドマンの頭の尻尾から、針が無数に射出され、プリキュア達が回避する。

 

「ちっ、ん? ふぅ~ん」

 

先輩が離れた位置にいる精霊達や、ゆいの方に目を向けると、ニンマリと笑みを浮かべて、スコーピオン・デッドマンとギフジュニア達に指示を出す。

 

「ギフジュニア。プリキュアを足止めをしていなさい」

 

『ギフゥゥゥゥゥ!!』

 

ギフジュニア達がプリキュアを足止めしたほんの数秒の時、スコーピオン・デッドマンに命じた。

 

「スコーピオン。あれ、やっちゃって♪」

 

先輩が指差したのは、ゆい達がいる方を指差したーーーー。

 

『シャァアアアア!!』

 

スコーピオン・デッドマンが針を無数に射出させると、針はゆい達に向かって真っ直ぐ飛んでいった。

 

『っっ!!!』

 

プリキュア達が気づいて駆けつけようとするが、ギフジュニア達が阻む。

 

「ぁ・・・・」

 

無数の針が自分に向かって来るのを、呆然と見ていたゆいの脳裏に浮かんだのはーーーー“幼い頃に離ればなれになった父と二人の兄だった”。

 

「(お父さん、兄さん・・・・お兄ちゃん・・・・!)」

 

ゆいは叫びそうになったその時、

 

「“ゆい”ーーーーっっっ!!!!」

 

自分の名を叫ぶ男性の声が響いた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「ゆいっっ!!!」

 

物陰から飛び出した輝二はリバイスドライバーを腰に当て、〈レックス・バイスタンプ〉を取り出す。

 

[レックス!]

 

「はぁ!」

 

輝二は〈レックス・バイスタンプ〉に息を吐くと、ドライバーに押し込む。

 

≪おう、気合いが入ってるぅ!≫

 

[Come On!レ・レ・レ・レックス! Come On! レ・レ・レ・レックス!]

 

「変身!!」

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

仮面ライダーリバイに変身した輝二は、『オーインバスター50・アックスモード』で、針を全て叩き落とした。

 

「イッテェェェェェェェェェェッ!!」

 

同じく、尻尾で凪ぎ払おうとしたバイスだが少し間に合わず、何本かの針がお尻に刺さっており、痛みでピョンピョンと跳ねていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

リバイは隣で騒ぐバイスを無視して、ゆいに視線を向ける。

 

「あ、あの、あなたは・・・・?」

 

「・・・・・・・・ケガは、無いか?」

 

「は、はい、ありがとうございます・・・・」

 

「・・・・・・・・隠れていろ」

 

「は、はい!」

 

リバイがそう言うと、ゆいは精霊達を連れて、物陰へと隠れた。

それを確認したリバイは、先輩とスコーピオン・デッドマンに向けて、オーインバスター50を構えた。

 

「燃えてきたぜ・・・・!」

 

「なに・・・・?」

 

「死ぬ気で、お前らをーーーーぶちのめすっ!!!」

 

「あっ、本気でキレてる」




嵐山輝二と七瀬ゆいの関係はいずれ・・・・。


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いーじゃん! いーじゃん! マンモススゲーじゃん!?

ープリキュアsideー

 

ギフジュニアを全滅させたプリキュア達。

 

「あれって・・・・」

 

「ラブ達が言っていた・・・・」

 

「確か名前は・・・・」

 

「リバイと・・・・」

 

「バイスで・・・・」

 

「仮面ライダーリバイス?」

 

5GoGoチームが、リバイスを見て呟く。

 

「あれは、仮面ライダー!?」

 

「知ってるのピース?」

 

「うん! 世界の裏側から人間の自由と平和を守るヒーローの事だよ!」

 

「あれがヒーローかいな?」

 

「ちょっと、恐い感じがするけど?」

 

「ダークヒーロー、と言うのでしょうか?」

 

「最近は恐いけどカッコいい、コワかっこいいダークヒーローもいるんだよっ!!」

 

スマイルチームではピースが目をキラキラさせていた。

 

「ゆいを守ってくれたの?」

 

「何か、ゆいゆいの名前を叫んでいたけど?」

 

「と言う事は、ゆいのお知り合いなのでしょうか?」

 

「きっといい人だよ! ゆいちゃんを助けてくれたもん!」

 

プリンセスチームはゆいを守ったリバイスが敵ではないのではと考えた。

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「っっ!!」

 

リバイはスコーピオン・デッドマンに向かって突っ走る。

 

『キシャァァァァァァァ!!』

 

スコーピオン・デッドマンは無数の針をリバイに向けて放った。

 

「ウザったい!!」

 

が、『ガンデフォン50』で迫り来る針を全て、正確に、外す事なく撃ち破り、光弾をスコーピオン・デッドマンに浴びせていく。

 

『ギシャァァァッッ!?』

 

「オラっ!」

 

『ガァ!』

 

スコーピオン・デッドマンに肉薄したリバイが、オーインバスターの刃を叩きつける。

 

「オラっ! オラっ! オラっ! オラオラオラオラオラオラオラオラ! オォラァッ!!!」

 

『ギシャァアアアアアア!!』

 

何度も何度もオーインバスターの刃をスコーピオン・デッドマンに叩きつけ、最後に逆手に持ち変え、アッパーカットの要領で打ち上げるように振り抜くと、スコーピオン・デッドマンは上に打ち上げられた。

 

「ふっ!」

 

すかさず、ガンデフォンで無防備になった背中に、連射で光弾を撃ち込んだ。

 

『ギシャァアアアアアッ!!』

 

倒れたスコーピオン・デッドマンの身体に、足を乗っけて動けなくさせると、オーインバスターとガンデフォンの銃口を向けて、小さく声を発する。

 

「くたばれ、虫けら悪魔が・・・・!」

 

『ギジャアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

そして、容赦なく、スコーピオン・デッドマンに光弾を何発を叩き込み、スコーピオン・デッドマンが悲鳴を上げた。

 

 

 

ープリキュアsideー

 

「す、凄い・・・・!」

 

「つ、強い・・・・」

 

「でも、恐い・・・・」

 

ドリームとフローラ、そしてハッピーが、容赦なしにスコーピオン・デッドマンを圧倒するリバイに、少し引き気味になる。他の仲間達もだ。

 

「あぁ~ぁ、完全に怒ってるよ」

 

そんなプリキュア一同に、先程お尻にスコーピオン・デッドマンが放った針が刺さったバイスが近づいた。

 

「アンタ達って、一体何者?」

 

「あん? 俺っちはバイス! あっちはリバイ! 二人揃って、仮面ライダーリバイス! 〈デッドマンズ〉をぶっ潰すヒーローだよ~ん!」

 

「いや、そうやなくてな・・・・」

 

ローズの問いにバイスがそう答え、サニーが違うとツッコミをいれる。

 

「そんな事よりもさぁプリキュアちゃん達ぃ、ちょ~っとお願いがあるんだけど?」

 

「何でしょう?」

 

ビューティーが問うと、バイスがクルンっと、お尻を見せると、スコーピオン・デッドマンズが放った針が刺さったお尻を見せた。

 

「お願い! 俺っちに刺さった針、抜いてくんない!?」

 

『あらまっ!?』

 

痛々しく針が刺さったお尻を見て、プリキュアの大半がズッコケた。

 

 

 

 

ー先輩sideー

 

そして、スコーピオン・デッドマンの契約者の先輩は、自分の出した悪魔がリバイに圧倒され、「痛い! 痛い!」と騒ぐバイスを押さえながらお尻から針を抜いているプリキュア一同を見て、忌々しそうに顔を歪めた。

 

「何なのよ・・・・! 何なのよこれは・・・・!!」

 

「先輩・・・・」

 

「っ!」

 

そんな彼女に、一同から離れたマーメイド達が声をかけた。

 

「海藤さん・・・・。あなた達プリキュアだったのね。驚いたわよ」

 

「先輩。もうやめてください。どうしてこんな事を・・・・!」

 

「・・・・私ね、海藤さん。あなたの事、ずっと目障りで仕方なかったのよ」

 

「えっ・・・・」

 

「容姿端麗。スタイル抜群。成績優秀。スポーツ万能。人望をあつい。さらに人格的にも優れたお嬢様。どれをとっても、私なんて足元にも及ばない存在だったわ。あなたなら生徒会長としてふさわしいと思っていたわ」

 

「だったら、なんでこんな事をしたの?」

 

フローラがそう聞くと、先輩は腹の底からドロドロとした感情を吐き出すように声を発する。

 

「私はあなたには敵わない。私じゃ生徒会長にはなれない。彼女の方がふさわしい。そう思えば思うほど、惨めな気持ちになっていったわ」

 

「っ・・・・」

 

「そうして、ドロドロとした感情を溜め込んでいって、そんな気持ちを否定して日々を過ごしていく内に、私は出会ったのよ。このスタンプをくれた人達に・・・・〈デッドマンズ〉にね」

 

「〈デッドマンズ〉・・・・!」

 

「彼らは私を理解してくれた。私の中の嫉妬。羨望。憎悪。そんな醜い私の感情を、彼らは理解し、肯定し、受け入れ、そして力をくれたのよ!」

 

先輩がそう叫んで『スコーピオンバイスタンプ』を少し持ち上げると、白い契約書のような紙が先輩の眼前に現れた。

 

「あっやべぇ! おいリバイ! あのお嬢ちゃん“『フェーズ2』に行くぞ”!」

 

「「? 『フェーズ2』?」」

 

「っ! お姫様プリキュア! ソイツを止めろっ!!」

 

お尻にバッテンマークの絆創膏をアクアに貼られていたリバイが、スコーピオン・デッドマンをリンチにしていたリバイに向かって叫び、アクアとミントが首を傾げ、リバイは先輩の様子に気づき、フローラ達に叫ぶが、

 

「私は、一番になって見せる!!」

 

先輩が持っていた『スコーピオンバイスタンプ』で白い約書に押印した。

 

『ギシャァアア・・・・!』

 

その時、契約書が赤く変色し、スコーピオン・デッドマンが何枚もの紙吹雪となってリバイの足から離れると、先輩に向かって先輩の身体を包むように渦を巻き、それが解かれると、先輩の身体がーーーーサソリの怪人に変貌する。

 

『はぁぁ・・・・! 最高の気分だわ・・・・!』

 

先程のスコーピオン・デッドマンがまるで折紙でできたような姿ならば、こちらはまるで、サソリの顔におさげのようにサソリの尻尾を垂らし、両手は鋏となった黒いサソリの怪人となり先輩の声でしゃべっていた。

 

『あっはははははははは!! これで私は、あなたに勝って見せる!』

 

「っ!」

 

「マーメイド!」

 

マーメイドに向かってくるスコーピオン・デッドマン。フローラがマーメイドを庇う。

 

『食らえっ!』

 

スコーピオン・デッドマンが、頭の尻尾を伸ばすと、その針がフローラ達に襲いかかる。

 

「フローラっ!」

 

「マーメイドっ!」

 

トゥインクルとスカーレットが二人を守ろうと前に出て、液体が滴り落ちる針が迫ったその時ーーーー。

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「『プリキュア エメラルドソーサー』!」

 

「『プリキュア プリズムチェーン』!」

 

尻尾がフローラとマーメイドに迫り、が、その眼前に緑色の光の円盤が盾となって尻尾を塞ぎ、黄色の結晶の鎖が、尻尾とスコーピオン・デッドマンの身体に巻き付き、動きを止めた。

 

「ミント!」

 

「レモネード!」

 

「『プリキュア ファイヤーストライク』!」

 

「『プリキュア サファイアアロー』!」

 

「『プリキュア マーチシュート』!」

 

「『プリキュア サニーファイヤー』!」

 

「『プリキュア ピースサンダー』!」

 

「『プリキュア ビューティーブリザード』!」

 

と、さらに風の玉と火の玉が二つと、雷と水の矢と氷の十字がスコーピオン・デッドマンに当たった。

 

『ふん! 随分温い攻撃ね?・・・・はぁっ!!』

 

が、スコーピオン・デッドマンは殆んどのダメージを受けていなかった。そして力を込めると、レモネードの鎖を引きちぎった。

 

「大丈夫?」

 

「はい!」

 

ドリームとハッピーも来て、ローズが問うと、フローラとマーメイドが立ち上がった。

 

『アッハハハハハハハハ!!』

 

スコーピオン・デッドマンは『ジュニアスタンプ』を使って、次々とギフジュニアを召喚していった。

 

「皆、気を付けて、あの針には毒があるみたいよ」

 

プリキュア達が構えると、ミントが自分の、スコーピオン・デッドマンの針を受けたエメラルドソーサーの一部が、溶解しているのを見せた。

 

「うっわ~。エッグい攻撃・・・・!」

 

「ちょっとアンタら! 〈デッドマンズ〉の専門でしょう!? 一体何が起こったのよ!?」

 

バイスが毒にドン引きするが、ルージュが聞くと、リバイがヤレヤレと肩を竦めながら声を発する。

 

「・・・・〈フェーズ2〉。簡単に言うと、契約者である人間と、召喚したあくーーーー怪人が一体化した状態だ。下手に攻撃をすれば一体化した契約者も危ない」

 

「そんな!」

 

「では、どうすれば良いのですか?」

 

ピースとビューティーがそう言うと、リバイが腰から新たなスタンプ、マンモスの刻印が彫られた『マンモスバイスタンプ』を取り出した。

 

「(コイツを使うか・・・・)俺とバイスで彼女と怪人を分離できる」

 

「分かりました! それじゃ、他の怪人は私達に任せて!」

 

「お願いします。先輩を助けてください」

 

フローラがそう言って、マーメイドもリバイにそう言う。

 

「・・・・その依頼、引き受けてやるよ。バイス! これで行くぞ!」

 

「あいよ!」

 

[マンモス!]

 

『マンモスバイスタンプ』を起動させると、レックスバイスタンプを外す、するとーーーー。

 

「行くぜっ!」

 

『えぇっ!?』

 

何と、バイスがリバイの身体に入り込むように姿を消した。リバイはそれを無視してマンモスバイスタンプをドライバーに押印する。

 

「はぁ・・・・ふっ!」

 

[Come on! マ・マ・マンモス! Come on! マ・マ・マンモス!]

 

後ろでLINEが展開される。

 

ーーーー久しぶりに〈第2フェーズ〉たぜ!

 

ーーーー面倒だが、やるぞバイス!

 

ーーーー応よ! 俺っち達の強さに、プリキュアちゃんは釣られちゃって、敵は泣けるで!

 

ーーーー何だその妙な台詞は?

 

ーーーーこんな台詞言って良いよね? 答えは聞いてないけど!

 

ーーーーあぁ敵よりもコイツが一番面倒くさい・・・・。

 

ーーーーんじゃま! 満を持して、降臨!

 

スタンプをドライバーにセットした。

 

[バディアップ!]

 

「アラエッサッサー!」

 

『うわっ!』

 

身体から伸びたバイスが、『マンモスバイスタンプ』をリバイに叩き込むと、プリキュア達は驚いた声をあげた。

リバイはスタンプの中で姿を変え、スタンプが砕けると、バイスも被り物を変えた。

 

[巨大なキバ持つ! 陸のボス! マ~ンモス! はなっからクライマックスだぜ!]

 

「俺、バイスです!」

 

「前振りはない、徹底的に行く!」

 

リバイは仮面がまるでマンモスのように変わり、アーマーの中心は電車のレールのようになり、二刀流のブーメラン『マンモスガッシャー』を持っていた。

バイスの被り物もマンモスのようで、足はまるでマンモスの脚部となり、尻尾も伸びて、両手には盾『グレイシャシールド』を装備していた。

 

「うわっ! 変わった!」

 

「カッコいい!」

 

「象さんでしょうか?」

 

「いや、マンモスやろ」

 

「弟達が好きそうだなぁ・・・・」

 

ハッピーとピースが目を輝かせ、ビューティーの台詞にサニーがツッコミ、マーチが苦笑いを浮かべる。

 

「あれ、どうしたのドリーム?」

 

「他の皆さんまで・・・・」

 

フローラとスカーレットが目を向けると、何故かドリーム達5GoGoチームが、ツッコミを入れるようなポージングをしていた。

 

「な、何か良く分からないのだけど・・・・」

 

「【ソレ、違うでしょ!】って、ツッコミを入れたい気持ちになって・・・・」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅ!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

アクアとミントが首を傾げており、特にツッコミ担当のルージュとローズは戸惑いと衝動に悶えていた。

 

「ドリームとレモネードって、普段はボケ担当の二人がツッコミに入るって・・・・」

 

「これはかなり変な事態なのでは?」

 

「ひどいよトゥインクル! マーメイド!」

 

「私達ボケた事なんて無いですぅ!」

 

「「「「釣られそうもないウソを言わない」」」」

 

「「え?」」

 

トゥインクルとマーメイドがそう言うと、ドリームとレモネードは心外と言わんばかりに言うが、ルージュ達がツッコミを入れた。

 

「お前ら、遊ぶのはソコまでにーーーーしろよ!」

 

リバイがマンモスガッシャーを投げると、回転しながら放物線を描き、ギフジュニア達を倒す。

 

「行くぞバイス!」

 

「よっしゃ! 行くぜ行くぜ行くぜーーーー!!」

 

戻ってきたマンモスガッシャーを手にし、いつもの腕タッチをしたリバイとバイスは、出鼻を挫かれたギフジュニア達の間を走り、スコーピオン・デッドマンと交戦した。

 

「あっ、皆! 私達も行くよ!」

 

「「「「YES!」」」」

 

『うん!』

 

ドリームが言うと、他のプリキュア達も、ギフジュニアと交戦した。

 

「はっ! たぁ! つぁっ!」

 

「おりゃ! うりゃ! そりゃ!」

 

『あああああっ!!』

 

リバイが片手にそれぞれ持ったマンモスガッシャーで切りつけ、今度は交差するように切り裂く。そのリバイの背中からバイスがグレイシャシールドで殴りつける。

 

「うおらぁっ!!」

 

『ううっ!』

 

リバイがマンモスガッシャーを両手で切りつけようとするが、スコーピオン・デッドマンが両手の鋏で、それを受けとけた。

 

「くぅっ!」

 

『私は一番になるのよっ! あいつを倒して、私が!』

 

「邪魔な奴を始末して上にのしあがるか、それ事態は間違っていねぇよ。ビジネスとかの世界じゃ良くある話だ! だがな、生徒会長ってのは、生徒達全員から選ばれた代表だっ! 彼女を殺した所で、アンタがなれる訳じゃねぇ!」

 

『五月蝿い! 毒をくらえっ!』

 

毒が滴る尻尾を両手が塞がっているリバイに向ける。

 

「バイス!」

 

「あいよっ! そぉれっ!」

 

と、ソコでバイスが自分の尻尾を巻き付け、尻尾を千切った。

 

『ぐぅあああああっ!!』

 

尻尾を切られて怯み、挟んでいた力が緩むのを感じたリバイは、マンモスガッシャーを外して、さらに切り刻む。

 

「おぉおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」

 

「ダメ押しのおりゃぁあああああああっ!!!」

 

『ぐっはぁああああああああああっ!!!』

 

最後にバイスが両足蹴りをおみまいし、スコーピオン・デッドマンを吹き飛ばした。

 

「『プリキュア シューティングスター』!」

 

「『プリキュア ハッピーシャワー』!」

 

「舞え、花よ! 『プリキュア・フローラル・トルビヨン』!」

 

「高鳴れ、海よ! 『プリキュア・マーメイド・リップル』!」

 

「キラキラ、星よ! 『プリキュア・トゥインクル・ハミング』!」

 

「羽ばたけ! 炎の翼よ! 『プリキュア・フェニックスブレイズ』!」

 

ドリームとハッピー、モードエレガントにチェンジしたプリンセスチームが必殺技を放ち、ギフジュニアを全滅させた。

 

「(そろそろ終わらせるか)バイス!」

 

[リミックス!]

 

「オーケー!」

 

[バディアップ!]

 

「はぁ」

 

「よいしょ!」

 

リバイとバイスが向き合って組み合って、さながら電車ごっこのように、リバイがバイスの脇からマンモスガッシャーを突き出した。

 

「なにそのポーズ?」

 

「電車ごっこ?」

 

ローズとマーチが首を傾げると、リバイとバイスの胸のマークが宙にあらわれ、それが一つとなり、リバイスのマークになるとーーーー。

 

[必殺! ドスドス! 倒す! マンモス!]

 

ーーーーパォオオオオオオオオオンン!!

 

何とリバイスの姿が、マンモスのような姿『リバイスマンモス』へと変わった。

 

『えぇええええええええええっ!?』

 

マンモスガッシャーを牙にし、バイスの背中が頭部、尻尾は長鼻になった姿に、プリキュア達は同時に驚きの声をあげた。

 

「それでは皆さん、出発進行です!」

 

「行くぞ! はぁ!」

 

バイスがそう言うと、リバイスマンモスの足元から電車の線路のようなのが空中に現れ、リバイスマンモスがそれに乗ると走っていった。

 

「いや、何でマンモスがレールに乗って移動するのよっ!?」

 

ルージュが盛大にツッコミを入れた。

 

『く、ああああああ!!』

 

起き上がったスコーピオン・デッドマンがリバイスマンモスに向けて針を放つが、空中をレールで縦横無尽に突っ走るリバイスマンモスには当たらず、リバイスマンモスの突撃を受けて吹き飛ぶ。

 

『うぅあっ!!』

 

「きもてぃぃーーーー!!」

 

分離したリバイスに、バイスが大声をあげた。

リバイがスタンプを二回倒すと、

 

[マンモス! スタンピングフィニッシュ!]

 

「悪いけど、終わらせる!」

 

「必殺! 俺っち達の必殺技!」

 

マンモスガッシャーとグレイシャシールドにエネルギーがたまり、

 

「おりゃぁっ!!」

 

「そりゃぁっ!!」

 

リバイがマンモスガッシャーを高速で投げると同時に、バイスが両腕のグレイシャシールドを地面に突き立てると、12枚のグレイシャシールドの分身体が生え、バリケードのようにスコーピオン・デッドマンを取り囲む。

 

『ぐぅ、うぁ、なぁ、ああああああぁっ!!』

 

そのままバリケードの中で乱反射するように縦横無尽に飛び回るマンモスガッシャーの刃がスコーピオン・デッドマンを切り刻み、最後に地面に生えた全てのグレイシャシールドが、スコーピオン・デッドマンの頭上に重なり、押し潰した。

 

「これで分離だ!」

 

「行っくぜーーーー!!」

 

リバイスが飛び上がると、キックの態勢に入り、スタンプのようなエネルギーを足に纏わせ、スコーピオン・デッドマンにぶつけるとーーーー。

 

「あぁぁ!」

 

何と、先輩がスコーピオン・デッドマンの身体から飛び出したかのように分離した。

それを確認したバイスがプリキュア達に近づき、

 

「ではではプリキュアちゃん達! 俺っちとご一緒にっ!」

 

『えっ?』

 

「行っくよー! 3<スリー>!」

 

『ス、3<スリー>?』

 

5GoGoチームが指を三本立てる。

 

「2<ツー>!」

 

『ツ、2<ツー>?』

 

スマイルチームも、指を二本立てる。

 

「あ、1<ワン>!」

 

『わ、1<ワン>?』

 

プリンセスチームも指を一本立てると、バイスはリバイの元に戻り、

 

ドガアァァァァァァァンン!!!

 

「ビクトリー!!!」

 

バイスが勝利宣言すると同時に、スコーピオン・デッドマンは爆散した。

 

「イェイっ!」

 

バイスがピースサインをした後、リバイは爆発した場所に行き、『スコーピオンバイスタンプ』を回収した。

 

「・・・・・・・・(チラッ) 帰るぞバイス」

 

「ぐえっ!」

 

リバイは一瞬、物影から出てきたゆい(オマケついでに妖精達)を一瞥し、バイスのマフラーを引っ張ってこの場から立ち去ろうとした。

 

「待って!」

 

「・・・・・・・・」

 

「フローラちゃん?」

 

フローラがリバイスを引き留める。

 

「ゆいちゃんを助けてくれて、先輩を救ってくれて、ありがとうございます!」

 

「・・・・・・・・俺の仕事だ。礼を言われる事はない」

 

「そうそう♪ コイツ最初はプリキュアちゃん達を戦わせて、美味しい所はかっさらおうとしてたんだから♪」

 

「それでも、ありがとうございます」

 

今度はマーメイドが礼を言った。

 

「・・・・キュアマーメイド。あの先輩の言ってた事、あまり気にするなよ」

 

「えっ?」

 

「ああいう嫉妬やら羨望やらは、生徒会長とかって、役職に付いていればな多かれ少なかれ受ける物だ。一々気にしていたら切りがない。だから、何だーーーーアンタはアンタで、自分の役割をちゃんとやれば良いんだよ。それでも気にするって言うなら、周りの友達や仲間に愚痴ったって良いんだ。それくらいは付き合ってくれる奴らだと思うぞ」

 

不器用ながらも、自分にフォローしてくれるリバイに、先ほどまでの何処か恐ろしい雰囲気と違って、マーメイドは可笑しそうに笑みを浮かべる。

 

「ありがとうございます」

 

「・・・・ふん」

 

「アララ、照れちゃって(ガンッ)んがっ!?」

 

余計な事を言いそうになるバイスを黙らせたリバイは再びその場を去ろうとするが、不意に立ち止まり。

 

「プリキュアさん達。これ以上〈デッドマンズ〉に関わるな」

 

『えっ?』

 

「〈デッドマンズ〉は俺が潰す。アンタらが出張る必要はない」

 

そう言って、リバイスはジャンプして、今度こそ、その場を離れた。

 

『・・・・・・・・』

 

プリキュア達はその背中を見送るが、その目には、この件から手を引くつもりではなさそうだった。

 

「・・・・・・・・」

 

そしてゆいは、何故か、リバイに目が離せなかった。

 

 

 

 

そして、バイクで自宅に帰った輝二は、父と兄の遺骨と写真がある仏壇に手を合わせた。

 

「・・・・父さん。兄貴。今日、ゆいを見かけたよ。プリキュアと友達だから、このままじゃ〈デッドマンズ〉に関わってしまうと思うんだ」

 

手を合わせていた輝二は顔をあげた。

 

「大丈夫だ・・・・。ゆいは、絶対に巻き込ませない」

 

その輝二の目には、強い光が宿っていた。




輝二の自宅は、名探偵コナンの毛利探偵事務所のような家です。しかし、毛利家よりも広い。


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ドキドキと魔法使い

漸く、全プリキュアと出会いました。
原作リバイス、大二は以前から鎧武の光実っぽかったけど、本当にそうなっちゃいましたね。


ーはなsideー

 

「ここがなのはさん達の地球での拠点なんだね!」

 

「えっと、『なみもり民宿』?」

 

はな達といちか達は、自分達の住む町から離れた、『並森町』にある『なみもり民宿』に住もうとしているなのは達、機動六課に会いに来た。

と、ソコで私服姿のなのはが出迎えた。

 

「あ、はなちゃん達、来たんだね」

 

「なのはさん!」

 

「ここが拠点なんですか?」

 

「確か、なのはさん達のご実家は隣街の『海鳴市』ですよね?」

 

「わざわざこっちの方を拠点にしたんですか?」

 

民宿に入った一同は廊下を歩いていると、ひまりとさあやとほまれがそう言い、なのはは笑みを浮かべて答える。

 

「確かに私の実家があるけど、こっちの方が色々と都合が良いんだ。ここは五年前まで、フェイトちゃんの旦那様と友達の皆さんが住んでいたの。最近、都市開発の為に管理人のおばさんが民宿を手離す事になりそうになったをフェイトちゃんの旦那様達が買い取ったから、ここを拠点として使って良いって言われたの」

 

説明している途中、客間を通り掛かると、年配のおばさんが私服姿のフェイトの手を取って話をしていた。

 

「フェイトちゃん。すっかり大きく、綺麗になったねぇ。また会えて嬉しいよ」

 

「おばさん。私もまた会えて嬉しいです」

 

「『ーーー』くんと結婚したのかい?」

 

「籍は入れたんですけど、式が少し後になっちゃって・・・・」

 

などと話に花を咲かせている二人を通りすぎ、エリオを除いたFW陣がプリキュア達を出迎えた。

 

「あ、はなちゃん達!」

 

「いらっしゃい」

 

「(ペコッ)」

 

「スバルちゃん! ティアナちゃん! キャロちゃん!」

 

「あれ? エリオくんは?」

 

「エリオくんはザフィーラと一緒に別の場所で寝泊まりする予定だから、すぐにこっちに来ると思います」

 

「えっ? ザフィーラとエリオは別の場所かよ」

 

「そう言わないのあおい。エリオくんも男の子何だから、女の人達ばかりの所にいたんじゃ落ち着けないよ」

 

「あおいがもしも、男の人達ばかりの空間に自分だけだとしたらどうする?」

 

「・・・・・・・・息が詰まるな」

 

あきらとゆかりの言葉に、あおいは納得したようにゲンナリとした顔になり頷いた。

 

「それで、アンタ達の仲間の先輩プリキュア達はいつ来るの?」

 

「ほぼ全員来るそうです。でも私達を入れても50人以上はいますけど・・・・」

 

「そんなにっ!?」

 

「私達が地球を離れている間に、そんなに大勢の女の子達が地球を守っていたなんて・・・・」

 

ティアナの問いにさあやが答え、スバルが驚き、なのはも苦笑いを浮かべた。

 

「でも8人ほど、今日は来られないって言ってたっけ?」

 

「『真琴ちゃん』が仕事があって、『マナちゃん』達はそれに付いていって、『みらいちゃん』達は『魔法界』に行っているんだ」

 

そして、玄関から女の子達の声が聞こえて、向かって見ると、先輩プリキュア達がやって来ていた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「えっ? 『剣崎真琴』さんのボディーガード?」

 

と、その頃、嵐山輝二は生前父が営んでいた『便利屋』の仕事の依頼に若干驚いていた。

父が存命していた頃から、仕事の手伝いをしていた輝二だが、回される仕事は犬の散歩だったり、迷い猫の捜索だったり、果てはホームヘルパーの依頼ばかりである。

父が亡くなってからは、ある上流階級の学園に通う、大手造船会社会長の娘である女子高生から、病院の院長の息子である彼氏の浮気調査(と言うよりも、女友達と遊んでいた風だったが)や、部下を過労死まで追い詰めたパワハラ上司の粗捜しの調査をしていた。

それが今度は、日本処か世界の歌姫でもある『剣崎真琴』のボディーガードだなんて、最近、一介の高校生に依頼する事では無い依頼が多すぎると少し霹靂していた。

輝二は『便利屋・事務所』の自分が座るソファーの向かいに座る剣崎真琴とそのマネージャー。後、剣崎真琴のお友達の四人の女の子達、三人は剣崎真琴と同い年の中学生位の少女達。一人は小学生の女の子とその女の子が、赤ん坊を抱いていた。

 

「はい。是非あなたに依頼したいのですが」

 

真琴のマネージャーの女性がそう言ってきた。

 

「しかし、一介の高校生にボディーガードを頼むのは・・・・」

 

「ですが、御社はその節の仕事の方達からはかなりの有名です。それに、あまり仰々しいガードを付けると、他の人達に不安を与えるし、マスコミがあらぬ事を書き立てる可能性もあるので」

 

ーーーー世界の歌姫が何者かに狙われている。

確かに、そんなネタを剣崎真琴を目障りと思っている同業の人達や会社、そしてマスコミが放っておく筈がない。

最悪、剣崎真琴のでっち上げの記事を書かれて、彼女のアイドル生命が危険に晒される可能性は十分ある。

輝二は小さくため息を吐いて肩を落としてから、口を開いた。

 

「依頼をお受けします。いつからが宜しいでしょうか?」

 

「ありがとうございます。では、早速これから」

 

「これからって、今からですか!?」

 

「はい。これから真琴が、水着を着た新しいCMの仕事がありますので、これから『並森』にあるスタジオに行きます」

 

そう言って、マネージャーが輝二の手を取ると連れ出し、外で止めているピンク色の高級車に『剣崎真琴』や友達の女の子達も乗り込み、撮影会場へと向かった。

 

≪なぁなぁ輝二! これってさぁ、明らかに輝二を無理矢理連れてきたって事だよなぁ?≫

 

「(ああ。何しろ、ここにいる女の子全員、“プリキュアだからな”)」

 

「改めて、はじめまして! 私、『相田マナ』! 大貝第一中学校二年生! 生徒会長をしているんだ! 今日は友達のまこぴーのお仕事を見学させてもらえるの! あ、他の皆も紹介するね!」

 

「はじめまして、『菱川六花』です。マナと同じ大貝第一中学校で生徒会書記をしています」

 

「『四葉ありす』です。マナちゃん達と違う、七ツ橋学園に通っています。因みに車を運転しているのは、私の執事の『セバスチャン』ですわ」

 

「(ペコッ)」

 

「『円亜久里』。小学四年生ですわ。真琴の為にボディーガードを引き受けてくれて、ありがとうございますわ」

 

「いや、こっちも仕事ですから」

 

素っ気なく答えながら、輝二は窓の景色を眺めながら、チラッとマナ達の様子を窺う。

 

「(『相田マナ』。『菱川六花』。『四葉ありす』『円亜久里』。そして『剣崎真琴』。プリキュアオールスターズの中でもハイスペックなメンバーで更正された『ドキドキチーム』か)」

 

≪俺っち的には、まこぴーと亜久里ちゃんが美味しそうだけどね~!≫

 

既に〈フェニックス〉のデータで知っている少女達を見て、何か思惑があるのではないかと、輝二は考えていた。

 

 

 

ーマナsideー

そして、輝二から少し距離を開けて、マナ達がコッソリと会話をする。

 

「(本当にあの人が、みゆき達やめぐみ達が出会った『仮面ライダーリバイス』なの?)」

 

「(四葉財閥の情報網で見つけたと言いましたけど・・・・)」

 

「(ええ。表だった情報は政府機関の〈フェニックス〉に揉み消されていましたけど、いちかさん達やはなさん達が遭遇したショッピングモール。咲さん達とラブさん達と響さん達が遭遇したホテルの裏口。なぎささん達につぼみさん達にめぐみさん達が遭遇した広場。のぞみさん達とみゆきさん達とはるかさん達が遭遇したノーブル学園。そこらの街頭監視カメラから事件の前に、あのお方の姿がありましたわ。流石に高校生が中学校のノーブル学園にまで姿を現すのは不自然ですもの)」

 

六花と亜久里が訝しそうに視線を細めて輝二を見ていると、ありすがそう答えた。

輝二の予想通り、プリキュア達は日本でも有数の財閥、四葉財閥のご令嬢にして、経営にも携わっているありすが、『先輩プリキュア』達や『後輩プリキュア』達から〈仮面ライダーリバイス〉の事を知り、あらゆる情報から輝二の存在を見つけ、身辺調査をし彼が『便利屋』を営んでいるのも分かり、ちょうど真琴の方でもトラブルが起こったので、彼の人となりの調査も兼ねて、真琴のマネージャーでもある精霊の『ダビィ』にボディーガードの依頼をさせたのである。

 

「(大丈夫かしら? ありすが調べた結果、『便利屋』としてはソコソコ売れているけど、あくまでお父さんの方だし、彼が敵なのか分からないし・・・・)」

 

「(大丈夫だよ! 先輩や後輩の皆と一緒に戦ってくれたりしてくれたんだもん! 絶対イイ人だよ!)」

 

真琴が渋面を作るが、疑い知らずのマナがそう言うと、ありすはにこやかな笑みを浮かべ、六花と亜久里と真琴は眉根を少し寄せていた。

 

「お嬢様。間もなく目的地に到着致します」

 

セバスチャンがそう言うと、『並森』の撮影スタジオに到着した。

一同が車から降りるとーーーー。

 

「あっ、マナちゃん!」

 

「え? あっ、『みらい』ちゃん! 『リコ』ちゃん! 『はーちゃん』!」

 

車から降りた一同に話しかけたのは、中学生くらいの女の子3人だった。

 

「(『朝比奈みらい』。『十六夜リコ』。『花海ことは』。津成木第一中学校に在籍する。魔法を使うプリキュア達か)」

 

≪うわっはぁ! またもや可愛娘ちゃん達登場! ことはちゃんが一番美味しそう!!≫

 

「(マジで五月蝿いぞバイス)」

 

新たに現れた少女達に、バイスが大はしゃぎすると、輝二の紹介もした。

 

「この人は! 今日まこぴーのボディーガードをしてくれる事になった、嵐山輝二さん!」

 

「嵐山だ。初めまして」

 

「初めまして! 私、『朝比奈みらい』です」

 

「・・・・『十六夜リコ』よ」

 

「『花海ことは』です! はーちゃんって呼んでも良いよ」

 

「・・・・よろしく。朝比奈さん、十六夜さん、花海さん」

 

ことはの言葉を無視して、会釈する。

 

「これからまこぴーのお仕事を見学するんだけど、みらいちゃん達も一緒に行く?」

 

「えっ? いいの!?」

 

「良いよねまこぴー?」

 

「えっ、で、でも、水着姿を、マナ達以外に見られるのは・・・・//////」

 

真琴が顔を赤くしてモジモジする。

がーーーー。

 

「わ、分かった・・・・//////」

 

先輩として、後輩達に仕事をしている姿を見せたい気持ちが勝ったのか、顔を赤くしながら首肯した。

 

「よし! それじゃ一緒に行こう! けってーい!」

 

「マナ。それ違うでしょ」

 

マナのボケに六花がツッコミをいれた。

そして一同は撮影スタジオに入り、楽屋に到着すると、先ずは輝二が先に扉を開け、室内に盗聴機や隠しカメラ、不審物や不審な人物がいないか調べ終えると、真琴達を入室させた。

 

「不審な人や物等はいないようですが、気を付けてください。俺は外で見張っていますから」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

輝二がドアの正面で警備に当たっていると、

 

「・・・・っ」

 

横をチラッと見た瞬間、通路の角でこちらの様子を伺っている人影がいるのを見つけた。

 

「っ!」

 

輝二がその人影に向かって走ると、人影が慌てて逃げ出し、輝二はそれを追いかけて角を曲がった瞬間、先ほどの人影は姿を消していた。

 

「(逃げられたか・・・・ん?)」

 

輝二は、天井からヒラヒラと線みたいな物が光り、揺れているのに気づき、それを手にする。

 

「(コレは、蜘蛛の糸?)」

 

天井から蜘蛛の糸が伸びている事を不審に感じる輝二は、とりあえず控え室に戻ると。

丁度、剣崎真琴が身体を大きめのカーディガンで隠した剣崎真琴と、相田マナ達と朝比奈みらい達が出てきた。

 

「どうかなさいましたか?」

 

「どうやら、不審な人物がいるのは本当のようですね」

 

『えっ?』

 

「とりあえず、剣崎さん。お仕事の方を頑張って下さい。ガードはちゃんとやりますから」

 

 

 

ー???sideー

 

「ま、まこぴー・・・・! 君は変わってしまった・・・・! 僕がファンになったのは、今の君じゃないのに・・・・!」

 

「大丈夫ですか?」

 

スタジオの人気の無い通路で、一人の男性がそう呟いていると、緑色のキラキラしたメキシカンスーツを着た青年と、紫色のキラキラメキシカンスーツを着た青年と、赤いドレスを着た中学生位の女の子が伸びている話しかけた。

 

「あっ、皆様・・・・!」

 

「大丈夫です。我々が力を貸します。頑張って下さい」

 

「は、はい!」

 

男性は『蜘蛛の刻印がされたバイスタンプ』を持って、撮影場に向かった。

 

「ちょっと『オルテカ』。わざわざ私達が来る必要があったの?」

 

「いえ、最近〈仮面ライダー〉だけではなく、〈プリキュア〉達まで邪魔になってきましたからね。剣崎真琴達がプリキュアなのは分かっています。少々ご挨拶も兼ねて、我々の存在を分からせてやりましょう」

 

「ふーん」

 

「『アギレラ』様。スマ~イル!」

 

「ありがとう『フリオ』」

 

『アギレラ』様と呼ばれた少女が、『フリオ』と呼んだ青年にお礼を言い、『オルテカ』と呼ばれた青年は笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

そして一同は、スタジオに向かい入ると、水着姿の真琴が新作ドリンクの紹介をする撮影が行われた。

撮影は滞りなく進行していく中、輝二は壁に寄りかかり、スタジオ内の人間達を見回していた。

 

「お疲れ様です」

 

「朝比奈さん」

 

みらい達が輝二に話しかけた。

 

「アンタ、よくボディーガードを引き受けたわよね? こう言うのって普通おまわりさんに任せる事じゃないの?」

 

「まぁそうだけど、一度引き受けてしまった以上、やり遂げるのが、『便利屋』って物・・・・っ!」

 

と、そこで輝二が視線を鋭くした。丁度真琴の真上にある証明ライトが不自然に揺れ、そのライトに、糸が絡まっていたからだ。

 

「まさか・・・・まずい!」

 

「「「えっ? あっ!」」」

 

輝二は突然走り出すと、写真撮影されている真琴の真上にある証明が、バキッ、と音を出して落下してきた。

 

「くっ!」

 

「えっ? きゃっ!?」

 

輝二は真琴に覆い被さるように抱き締め、証明ライトから逃れると、ガシャァァァァンッ!! と、盛大な音を出して、ライトが潰れ、辺りに部品が四散した。

ほんの少しでも遅れていたら、真琴が潰れていた。

 

「まこぴー!!」

 

『真琴(さん/ちゃん)!!』

 

「止まれ!!!」

 

マナ達とみらい達が、二人に駆け寄ろうとした瞬間、ガバッと起き上がった輝二が駆け寄ろうとした人達に向かって大声を発した。

それに驚き、全員が身体を止める。

 

「・・・・・・・・ソコだっ!!」

 

ガンデフォンを構えた輝二は、ライトにくくられた糸を辿り、さらに持ち前の直感力で、銃口をある方向に向けて放つと、スタッフの男性の足元に光弾が弾けた。

 

「う、うわっ!!」

 

男性が驚きふためくと、足元に『蜘蛛の刻印がされたバイスタンプ』『スパイダーバイスタンプ』を落とした。

 

「あれって・・・・?」

 

「アンタ、〈デッドマンズ〉だな!?」

 

輝二が男性に向かってガンデフォンの引き金を引き、光弾を放つが、その光弾を天井から現れた、蜘蛛の怪物、〈スパイダー・デッドマン〉が弾き飛ばした。

 

『シュルルルルルルルル・・・・!』

 

「ちっ!」

 

さらにガンデフォンを放つが、今度はスパイダー・デッドマンの両脇から、二体の怪物が現れ弾いた。

一体は、ウエスタンハットにカブトムシのような巨大な角を混ぜ合わせた頭部をし、茶色と黒を基調としたカウボーイあガンマンのような装甲と、燕尾服の上着を模した赤い裏地の白いコートを身に纏い、全身や頭部には鋭い牙が並ぶ口が至るところにあり、顔もよく見ると目の部分が口になっている、狼のような姿の異形、〈ウルフ・デッドマン〉。

もう一体は、全身に吸盤が付いており、レインコートの様な白フードを頭に被り、折り畳まれた傘のような金色の持ち手が特徴的な杖を持ち、まるで魔法使いの様な姿で、頭部と首元から計4本の角が生え、首元からイカのような触手が腕から脚の全身に渦巻き、指は鉤爪の様に尖っており、背中には蝙蝠のような翼を生やしている異形、〈ダイオウイカ・デッドマン〉だった。

そしてーーーーその二体の間に、赤いドレスを着用した少女が現れた。

 

「さ。あなたの望みを叶えなさい」

 

「くっ・・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

少女が男性にそう言うと、男性はバイスタンプを拾い、身体から白い契約書が現れ、それに押印した。

その瞬間、白い契約書は赤く染まり、スパイダー・デッドマンの身体が紙の束へと変わり、宙を舞いながら男性の身体に纏わりつき、男性の身体が大きく変貌した。

顔は蜘蛛の複眼に側頭部は蜘蛛の足が伸び、上半身は禍々しい毒蜘蛛のような青黒い姿で腕も蜘蛛の足のようになり、下半身は巨大な蜘蛛へと変貌した新たなスパイダー・デッドマンに。

それを満足そうに見た少女は、自分達に向いているカメラに向けて、こう叫んだ。

 

「世の人々よ! 我らを見よ! 畏れよ! 我らこそ!」

 

『『「グラシアス・デッドマンズ!!!」』』

 

『グガァアアアアアアアアアアアアッ!!!』

 

少女と共にウルフ・デッドマンとダイオウイカ・デッドマンが叫び、後ろからスパイダー・デッドマンが身体を大きく見せるように雄叫びをあげた。

 

ーーーーうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

ーーーーきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

それを見た他のスタッフが悲鳴を上げて逃げようとする。

 

「(幹部級が現れたか・・・・!)(シュルッ)っ! しまっーーーー」

 

『グァアアアアア!』

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

輝二がリバイスドライバーを出そうとしたが、胴にスパイダー・デッドマンが口から放った糸が絡み付き、壁に叩きつけられた。

 

「がっはぁッ!?」

 

盛大に叩きつけられ、輝二は気を失った。

 

「嵐山さんっ!!」

 

「まこぴー! 皆! 行くよ!」

 

『ええ!』

 

マナがそう言うと、ピンクの兎の精霊『シャルル』。青い犬の精霊『ラケル』。黄色の熊の精霊『ランス』。紫の猫の精霊『ダビィ』が、スマホのようなアイテムに変身し、マナ達が手に取る。

 

「「「「プリキュア・ラブリンク!」」」」

 

そう言って、『ラブリー・コミューン』の画面に指を置き。

 

[L・O・V・E]

 

すると、コミューンが輝きマナ達の体が光り輝き、マナの髪が金色のポニーテールに、六花とありす真琴も髪が長くなり、髪型が変わり、四人の衣装がそれぞれ、トランプのハート、ダイヤ、クラブ、スペードの意向がつけられていた。

 

「プリキュア・ドレスアップ!!」

 

亜久里は、アイちゃんが出した『ラブアイズパレット』を使い、台座にラビーズをはめこみ、烈火に包まれると、その身体がマナ達と同い年にまで成長した。

そしてマナ達は5人は伝説の戦士、プリキュアへと変身すると、それぞれが両手でハート、ダイヤ、クラブ、スペード、エースの形を作る。

 

「みなぎる愛! キュアハート!」

 

「英知の光! キュアダイヤモンド!」

 

「ひだまりポカポカ! キュアロゼッタ!」

 

「勇気の刃! キュアソード!」

 

「愛の切り札! キュアエース!」

 

「「「「「響け! 愛の鼓動! ドキドキプリキュア!!」」」」」

 

「リコ! はーちゃん! 私達も!」

 

「「うん!」」

 

続いて、みらいとリコは互いに手を取って繋ぎ合う。

 

「「「キュアップ・ラパパ!」」」

 

繋ぎ合った手とは反対の手を天に掲げ叫ぶと、ぬいぐるみの『モフルン』が飛び出した。

 

「「ダイヤ!」」

 

すると、二つのペンダントが一つとなってモフルンへとセットされた。

 

「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!!」」

 

呪文とともに光が二人を包み込み姿が見えなくなり、魔法陣が浮かび上がって中から二人が飛び出すと、髪が長くなり、髪型が変わり、衣装もそれぞれピンクと紫色に変わる。

 

「エメラルド! フェリーチェファンファン・フラワーレ!」

 

ことはがアイテム『リンクルスマホン』と『リンクルストーン・エメラルド』を使うと、髪が伸びて長い三つ編みとなり、緑色の衣装に変わる。

 

「ふたりの奇跡!キュアミラクル!!」

 

「ふたりの魔法!キュアマジカル!!」

 

「「魔法つかいプリキュア!!」」

 

「あまねく命に祝福を、キュアフェリーチェ!」

 

三人が変身を終えると、ハートが前に出る

 

「愛を忘れた悲しいデッドマンズさん! このキュアハートが、あなたのドキドキ取り戻して見せる!」

 

『ーーーー俺はとっくにドキドキしているよ。・・・・まこぴーを、この手にする事にね!!』

 

ハートがそう言うと、スパイダー・デッドマンがその巨体から想像できない俊敏な動きで壁や天井を走ると、ソードの眼前に現れた。

 

「っ!」

 

『まこぴー! 一緒に行こう!』

 

スパイダー・デッドマンは口から玉を吐き出すとその玉がまるで網のように広がり、ソードを拘束した。

 

「しまった!?」

 

『ハハハハハハハハハハハ!!!』

 

スパイダー・デッドマンはソードを連れて天井を破っていった。

 

「ソード!」

 

『プリキュア。あなた達の相手は、我々ですよ!』

 

ダイオウイカ・デッドマンとウルフ・デッドマンが『ギフジュニアスタンプ』を使用すると、大量のギフジュニアが現れ、プリキュア達に襲い掛かった。

 

「っ! 嵐山さんが・・・・」

 

ミラクルが輝二の方に視線を向けると、輝二の姿がいつの間にか消えていた。

 

 

 

 

ーはなsideー

 

先輩プリキュア達と魔導師達の自己紹介も終わり、テレビでもつけたその瞬間、

 

《きゃぁぁぁぁっ! 〈デッドマンズ〉よっ!!》

 

ニュースキャスターが慌てふためきながら画面から消えると、ギフジュニアがカメラに映り、カメラを横倒しにしたのか、画像が横になって倒れた。

そしてーーーー。

 

「あっ! ハートっ! ミラクルっ!」

 

いちかがそう言うと、キュアハート達とキュアミラクル達が、ギフジュニアと交戦していた。

 

「ここって、すぐ近くのテレビ局やな・・・・!」

 

はやてがそう言った瞬間、全員が行動を起こした。




次回、リバイスとプリキュアオールスターズ、そして六課が出会います。


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レックス・ミックス・オールスターズ(+α) Ⅰ

書いている内に長くなり、前後編になりました。


ーエールsideー

 

「な、何なのこれ?」

 

エールを含んだプリキュアオールスターズが、なのは達、〈時空管理局〉の機動六課の魔導師達と談笑している時、テレビで〈デッドマンズ〉が現れた事を知り、『なみもり民宿』から外に出ると、プリキュア達は変身し、なのは達もセットアップをして駆けつけると、ハート達とミラクル達が、〈デッドマンズ〉の怪人達<ギフジュニア>と戦いながら避難しようとしている人達を守っていた。

 

「あっ! 皆!」

 

「ハート!」

 

「助太刀するよ!」

 

ハッピーとラブリーがギフジュニアを倒すと、他の皆も戦い始めた。

 

「っ、ハート! ソードはどうしたの!?」

 

「ソードは、あそこにいますわ!」

 

ムーンライトの言葉に答えたエースが指差したのは、テレビ局の屋上に設られたアンテナ鉄塔を覆い尽くす程の蜘蛛の糸が張り巡らされ、その塔に糸一本で吊るされたキュアソードがいた。さらにその鉄塔をゆったりと歩きながらソードに近づく巨大なスパイダー・デッドマンも。

 

「ソードっ!?」

 

「イヤァアアアア!! 虫ぃぃぃぃっ! 蜘蛛ぉぉぉぉっ!!」

 

「落ち着かんかいマーチっ!」

 

フォーチュンが名を呼び、虫嫌いなマーチが涙目になって悲鳴を上げ、サニーが押さえた。

 

「助けに行くよ!」

 

なのはが飛行魔法でソードの元に飛び立とうとした。その瞬間、

 

[マスター! 狙われています!]

 

「えっ!? (ドンドンドン!) あぁあっ!!」

 

「なのは!!」

 

インテリジェンスデバイス・レイジングハートがそう警告して、なのはのBJ<バリアジャケット>に弾丸が撃ち込まれ、なのはは落下するが、フェイトが飛んで受け止めた。

 

「なのは! 大丈夫!?」

 

「う、うん、何とか・・・・!」

 

フェイトの問いになのはが答えると同時に、テレビ局の窓からウルフ・デッドマンとダイオウイカ・デッドマンと、赤いドレスを着た少女が顔を出した。

 

『へぇ~、あれが〈時空管理局〉の魔導師ってヤツか? 『オルテカ』?』

 

『ああ、そうだ『フリオ』。『アギレラ様』。如何しますか?』

 

「ふん。どうでも良いわ。今はあの蜘蛛君を優先するのよ」

 

そう言って、少女と怪物達はテレビ局の中に戻った。

 

「っ! 今のは・・・・?」

 

「多分、今の人達(?)が、〈デッドマンズ〉の幹部だと思うわ!」

 

ホワイトがなのはは撃った相手を見つけると、ダイヤモンドがそう答えた。

 

「早くソードの所へ行かないと!」

 

逸るハートだが、テレビ局から次々とギフジュニアが溢れ出てくる。

 

「うわっ! ウジャウジャ出てくるっ!」

 

「まるでゴキブリみたいだよぉ!」

 

「いえ、白いのでシロアリではないでしょうか?」

 

「何て言ってる場合じゃないでしょう!」

 

マリンとプリンセスが悲鳴混じりにそう言い、ロゼッタがそう答えるとルージュがツッコミをいれた。

 

「ソード・・・・!」

 

ハートが糸に捕らわれたソードを見上げて心配そうに呟いた。

 

 

 

ー輝二sideー

 

≪なぁなぁ、このまま放っておくのか?≫

 

「・・・・・・・・」

 

≪俺っち的にはさぁ、プリキュアちゃん達って極上のごちそうだからさぁ、お助けしたいんだけど?≫

 

「・・・・・・・・」

 

輝二は倒されたフリをして、幹部達がプリキュアに気を取られている間に、スパイダー・デッドマンとソードを追って屋上まで来ており、物影に隠れて様子を伺っていた。

 

≪せっかく幹部達が現れたのに、そっちよりキュアソードちゃんの所に来たのに何もしないのかよ?≫

 

「・・・・・・・・」

 

バイスの言う通り、ここには〈デッドマンズ〉の幹部が揃っている。ここで奴らを倒せば、〈デッドマンズ〉に大ダメージを与えられるチャンスだ。だが、何故か輝二はソードが連れ去られた瞬間、すぐに幹部達ではなく、ソードの元へと向かった。

輝二はソッと眼を瞑り、少しの間瞑想する。そしてその脳裏には、亡き父の言葉を思い返していた。

 

【良いか輝二。俺達『便利屋』の仕事は、依頼人の依頼を必ず守る事が大切だ。だが、時に依頼人の依頼と自分の信念。どちらを優先しなければならない時が来たら、どの選択が自分にとって最優先事項なのか、冷静に考える事を忘れるな】

 

「(俺にとっての最優先は、〈デッドマンズ〉の壊滅。幹部達を倒せば、それは大きく前進する。ここで雑魚デッドマンと無関係なプリキュアに関わる理由はーーーーないな)」

 

輝二はそう考えて、その場を動いた。

 

 

 

 

ーソードsideー

 

「くっ・・・・!」

 

「ソード、大丈夫ビィ?」

 

ラブリーコミューンに変身し、ソードの腰に下がっているダビィが心配そうな声を発する。

 

「だ、大丈夫よ、ダビィ・・・・!」

 

動けば動く程締め付けてくる糸に苦悶の声をもらしながらも、気丈に振る舞うソード。

そんなソードに、スパイダー・デッドマンは不気味な声を発する。

 

『フフフフフ・・・・まこぴー。どうだい? 囚われのお姫様のようだねぇ?』

 

「っ、何故、こんな事を?」

 

ソードは目を鋭くしてスパイダー・デッドマンを睨むが、その眼光に怯むこと無く、スパイダー・デッドマンは応じる。

 

『まこぴーに、昔の君に戻って欲しいんだよ。その為に、僕はこうしているんだ』

 

「昔の、私?」

 

『僕はねまこぴー。君がデビューする前のストリートシンガーで歌っていた頃から、君の歌を聞いてたんだ。その時から、僕は君のファンになった。・・・・でも、今の君は、昔と変わってしまった。だから僕は・・・・』

 

バヒュン! バヒュン! バヒュン!

 

「「え?」」

 

『何?』

 

突然響いたら銃声のような音が三発も聞こえ、ソードもダビイもスパイダー・デッドマンも首を傾げていると、縛られていたソードを支えていた一本の糸が千切れ、ソードが下に、残り二発はスパイダー・デッドマンの頭に何かが着弾したようにプスプスと煙をあげていた。

 

『グァアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

悼みに悶えるスパイダー・デッドマンと、突然落下するソードの悲鳴が上がるが、ソードは地面に落ちる寸前、誰かに抱えられた。

 

「よいっしょぉ!」

 

「えっ?」

 

ソードが自分を抱えた人物を見て、目を見開く。

黒い身体と尖った耳、地面まで届く長い尻尾、生え際がギザギザに隆起した白いオールバックの髪に青い複眼、口にはギザギザの口がプリントされた青いマスクを着用した、明らかに人間じゃない存在だった。

そう、輝二が『レックスバイスタンプ』を使って召喚した悪魔、バイスである。

 

「やったぁっ! まこぴーもとい、キュアソードちゃん、ゲットだぜっ!」

 

「あ、あなたは一体?」

 

「バイス!!」

 

「えっ? 嵐山さんっ!?」

 

声が聞こえた方に目を向けると、ガンデフォンを構えた輝二がスパイダー・デッドマンに弾丸を放ちながら声をかけてきた。

 

「早く下に行け! プリキュアの子達にキュアソードを預けてこいっ!」

 

「ええっ、良いのかよぉ?」

 

「今の俺のやるべき事は! 依頼人である剣崎真琴、キュアソードの護衛だ!」

 

「オッケー! 行っくよー! ソードちゃん!!」

 

バイスがソードを抱えたまま、屋上の手すりへと走り出した。

 

「え? えっ? ええっ??」

 

今いち状況が読み込めず、困惑するソードに構わず、バイスは屋上から飛び下りた。

 

「時をかけるバイス!!」

 

「きゃあああああっ!!」

 

いきなり落下したので、ソードは先ほどよりも大声で悲鳴を上げた。

 

「え? あ! ソード!!」

 

と、ソコで、ギフジュニア達と戦っていたプリキュアオール達も、なのは達機動六課も、屋上から落ちてくるバイスとソードを見て慌てる。

 

「わ! わわ! ダイヤモンド! ロゼッタ! エース!」

 

「「「ええ!/はい!/わかりましたわ!」」」

 

「マジカル! フェリーチェ!」

 

「「OK!/うん!」」

 

「「「キュアップ・ラパパ! 風さん! 二人を受け止めて!」」」

 

ミラクルとマジカルとフェリーチェが杖を構えて呪文を唱えてそう言うと、突然バイスとソードの身体を風が渦巻いて、二人の身体を包み込み、ゆっくりと落下先で受け止める陣形を組んでいたハート達の元に下りていく。

 

「あれが、魔法を使うプリキュアの魔法、なの?」

 

「杖を構えて風を操るなんて・・・・!」

 

「なんや、おとぎ話の魔法使いさんみたいやな」

 

自分達〈時空管理局〉が使う魔法と、あまりに違った魔法に、魔導師組は目を見開く。

 

 

 

ーバイスsideー

 

「よっと! ソードちゃん救出成功! ハートちゃん達! ミラクルちゃん達! ありがとね!」

 

『・・・・・・・・』

 

プリキュア達も魔導師組も、ギフジュニアと戦いながら、突如現れた異形の存在に目を細めながら怪訝そうに見る。

 

「ありゃりゃ? ちょっと何よその態度? ホイップちゃん達にエールちゃん達、俺っちの臭い付けられた事根に持ってるの?」

 

『えっ?』

 

アラモードチームとHUGっとチームが首を傾げ、

 

「ブルームちゃん達、ピーチちゃん達にメロディちゃん達、お菓子とか投げた事怒ってる?」

 

『ん?』

 

スプラッシュスターチームとフレッシュチームとスイートチームが目をパチクリさせ、

 

「ブラックちゃん達もブロッサムちゃん達もラブリーちゃん達も、主役の顔を忘れたのかよ?」

 

『主役・・・・?』

 

MHチームとハートキャッチチームとハピネスチームが思い当たる節があるのか顎に手をあて、

 

「ドリームちゃん達! ハッピーちゃん達にフローラちゃん達も! 俺っちのお尻に刺さった針を抜いてくれたじゃん!」

 

『は?』

 

5GoGoチームとスマイルチームとプリンセスチームがちょっと間の抜けた顔になる。

 

『・・・・・・・・・・・・ま、まさか!』

 

何人かのプリキュア(主にピンクチーム)はまだ分からないが、大半のプリキュア達が、この異形が何者なのか、察しがつきはじめた。

 

「バイスーーーーーーーー!!」

 

「えっ? のわぁっ!!?」

 

『ええぇぇぇぇっ!!?』

 

バイスとプリキュア達と魔導師組が仰天した声を上げた。

何故なら、屋上から輝二が飛び下りて来て、片方の手に長く垂らされた蜘蛛の糸を、もう片方の手にガンデフォンを握り、屋上にいる敵を牽制しながら、まるで振り子のように弧を描いて、バイスの近くにいたギフジュニアにドロップキックをおみまいして失速させると、パッと糸から手を離し、着地した。

 

「ふう・・・・」

 

「スゲエ輝二! お前どこのシ○ィーハン○ーだよ? あれ? 俺っちを屋上に戻す段取りだったんじゃね?」

 

「そのつもりだったが、面倒になって来たんでな」

 

輝二が屋上を見上げると、『アギレラ』に『フリオ』に『オルテカ』がスパイダー・デッドマンと共に見下ろし、降りてきた。

 

「ありゃりゃ、〈デッドマンズ〉幹部が揃い踏み?」

 

「本腰入れていくぞ!」

 

輝二は『リバイスドライバー』を取り出し、腰に当てるとベルトが伸びた。

 

[リバイスドライバー!]

 

「イェイ! プリキュアちゃん達の前で、本格公開!!」

 

バイスがそう言うと、身体が輝二と一体化した。

 

『ええぇっ?!』

 

プリキュア達(ほぼ大半)と魔導師組が驚くが、輝二は構わず、『レックスバイスタンプ』を取り出した。

 

「燃えてきたぜ!」

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

その音声と共に、輝二はスタンプに息を吐き、構える。。

 

[Come On!レ・レ・レ・レックス! Come On! レ・レ・レ・レックス!]

 

リズミカルな音声が鳴り響き、輝二の背後にスマホのライン映像が現れる。

 

ーーーーお披露目だい!

 

ーーーー結局こうなるのかよ・・・・。

 

ーーーーなぁなぁ! プリキュアちゃん達と、時空何ちゃらって組織にも、バレちゃうんじゃね?

 

ーーーーこの際だ。仕方ないな。

 

ーーーーやったぁ! これで美味しそうな美少女達と肉付きの良い美女達とお近づきになれるぅ!

 

輝二の身体からバイスが現れ、その手には巨大なスタンプを手に持っていた。

 

「変身!」

 

輝二はそのまま『レックスバイスタンプ』をベルトに挿入し、スタンプを横に傾ける。

 

≪よっこいしょっ!≫

 

スタンプを掲げたバイスが、輝二に向けてスタンプを振り上げる。

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

音声が鳴り響いた瞬間、輝二の身体は巨大なスタンプに押し潰されるように、スタンプの中に入り輝二の姿が変わり、スタンプが砕け散ると、〈仮面ライダーリバイ〉に、隣にいつの間にか〈仮面ライダーバイス〉が現れる。

〈仮面ライダーリバイス・レックスゲノム〉へと変身した。

 

「イエイッッ!! コイツは『リバイ』、俺っちは『バイス』! 俺っち達二人でーーーー『仮面ライダーリバイス』だぜぇッ!!」

 

「・・・・・・・・」

 

いつもの腕タッチをしながら騒ぐバイスにリバイは目も暮れず、地上に下りてきた『アギレラ』達を睨み付ける。

 

『や、やっぱり・・・・!』

 

『ええっ!? リバイスっ!?』

 

プリキュア達(ピースは目をキラキラさせていた)と魔導師組(スバルとエリオも目をキラキラした)が驚きの声をあげるが、リバイは構わず、『アギレラ』達を見据える。

 

「〈デッドマンズ〉幹部、『アギレラ』。『フリオ』。『オルテカ』・・・・!」

 

『『「・・・・・・・・」』』

 

アギレラ達は泰然とした態度でリバイスを睨み返す。

 

「お前らに一言言ってやるよ〈デッドマンズ〉ーーーー」

 

リバイは右手をアギレラに突き出すように上げ、手のひらをきつく握り締める。

 

「ぶっ潰す!」

 

「行っくぜー!」

 

リバイスはそう言うと、オーインバスターを持ってアギレラ達に向かう。

その途中、ギフジュニア達が立ち塞がるが。

 

「邪魔だっ!!」

 

「うぉりゃあああああああああっ!!」

 

リバイはオーインバスターを振りながら猛進し、バイスは千切っては投げたりして追進していた。

 

「フリオ。オルテカ」

 

『『はっ!』』

 

ウルフ・デッドマンがリバイと、ダイオウイカ・デッドマンがバイスと交戦した。

 

「おい犬野郎!」

 

『俺は狼だっ!』

 

「どうでもいいっ! 一ヶ月以上前に起こった、『フェニックス分隊長就任式』! ソコでフェニックスの分隊長に就任される筈だった隊員が亡くなった!」

 

『それがどうしたっ!?』

 

「お前が殺ったのかっ!?」

 

『はっ、知らねえよ!』

 

ウルフ・デッドマンは銃を放つが、リバイはオーインバスターで防ぎながら、ガンデフォンで応戦する。

 

「ぬどりゃぁっ!!」

 

『ふっ、はぁっ!!』

 

「げぇっ!? 何これ!? 触手っ!? キモーイ!!」

 

バイスがダイオウイカ・デッドマンに攻撃しようとするが、タコやイカの足のような触手に攻撃されそうになり、回避する。触手を見て、タコを連想したのか、キュアベリーが顔を青くしていたが。

 

「ふぅん」

 

「あなた」

 

「ん?」

 

面白そうに眺めていたアギレラに話し掛けたのは、魔導師組の部隊長である八神はやてだった。

 

「あなたが〈デッドマンズ〉の幹部なんですか?」

 

「そうよ。でぇもぉ、幹部なんかじゃなくてぇ、私こそ〈デッドマンズ〉の頭首、『アギレラ』よ!」

 

『っ!』

 

はやて処か、なのは達やプリキュア達も驚いた。こんなプリキュア達と同い年の少女が、〈デッドマンズ〉の頭首である事に驚いたのだ。

はやては努めて冷静に、アギレラに話しかける。

 

「あなた達、〈デッドマンズ〉の目的は、何なんや?」

 

自分達が手にしている〈デッドマンズ〉の情報は、あくまでネットやニュースで得た情報。本格的な情報を得ようと話しかけたのだ。

アギレラははやての問いに笑みを浮かべたまま応じる。

 

「私達はぁ、『生贄』を集めてぇ、この世の下らない秩序を破壊しちゃうの♪ 全ては“『ギフ様』の復活の為だよ”!」

 

アギレラの言葉と共に、スパイダー・デッドマンがアギレラの前に立ち、はやてに向かって下半身の蜘蛛から糸の塊が吐き出され、はやては一瞬反応が遅れて、その塊を受けてしまい、地面に横たわった。

 

「きゃぁあっ!」

 

『はやて(ちゃん)!/主!』

 

なのはとフェイト、シャマルとアインスとリィンが糸の塊が弾け、まるで網のように絡み取られたはやてに駆け寄る。

 

「貴様っ!」

 

「ゆるさん!」

 

「ぶっとばす!」

 

シグナムとザフィーラとヴィータがスパイダー・デッドマンに迫るが、スパイダー・デッドマンはその巨体から考えられない俊敏な動きで回避し、三人の上方を取ると、三人の上から糸の塊を叩きつけた。

 

「「「うあああああっっ!」」」

 

三人は同じように絡み取られた。身動きが取れなくなったはやてとシグナム達にギフジュニアが迫るが、なのはとフェイト、アインスとリィン、ティアナ達FW陣が守る。

 

「あなたやるじゃない? さ、どんどんやっちゃって♪」

 

『はっ』

 

「まって!」

 

『・・・・まこぴー』

 

仲間を庇い動きづらくなったなのは達を狙おうとするスパイダー・デッドマンに、漸く拘束が破れたソードが声をかけた。

 

「あなた、言ってたわよね? 昔の私に戻って欲しいって、あれってどういう事なの?」

 

『・・・・・・・・まこぴー。君の歌は素晴らしいよ』

 

スパイダー・デッドマンは淡々と語り出す。

 

『君の歌は、皆に元気を、明るさを、楽しさをくれる素晴らしい歌だ。デビューする前から、僕は君のファンだった』

 

「それなら、どうしてまこぴーを危ない目に合わせるの!?」

 

ハートがそう言うと、スパイダー・デッドマンは語る。

 

『ストリートの頃やデビュー当初の君の聴いているとね、あるイメージが頭に浮かんできたんだ・・・・そうーーーー『お姫様』のイメージが、ね』

 

「っっ!」

 

スパイダー・デッドマンの言葉に、ソードは心臓がドクンッと、跳ねるように鼓動したのを感じた。ハート達やダビィ達精霊を含めたドキドキチームもまた、肩をビクッとさせた。

そう、彼は、スパイダー・デッドマンは、キュアソードの、剣崎真琴の心の傷に触れたのだーーーー『マリー・アンジュ王女』の事を。




『スパイダー・デッドマン』
龍騎のディスパイダーを青黒くしたデッドマン。下半身の蜘蛛から糸の塊を吐き出して敵を拘束する。糸は粘着性の高い糸や鉄をも貫く硬質性の糸を作り出す。


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レックス・ミックス・オールスターズ(+α) Ⅱ

ーリバイスsideー

 

「・・・・・・・・」

 

『・・・・おい、何聞き耳立ててんだ?』

 

ウルフ・デッドマンと戦いながら、リバイはスパイダー・デッドマンとキュアソードの会話に聞き耳を立てていた。

 

 

 

 

ーソードsideー

 

『マリー・アンジュ王女』。

トランプ王国のお姫様であり、護衛として一緒にいた真琴こと、キュアソードともまるで姉妹のように仲が良く、ソードの憧れの女性だった。

しかし、トランプ王国がジコチュー軍により侵略され、ジコチュー軍の頭目『キングジコチュー』をアンジュ王女が封印したが、幹部の『ベール』と戦い、行方不明となり、その心は二つに別れ、一つはキュアエースこと円亜久里に、一つは『レジーナ』へと転生し、その身はアイちゃんへと転生していた。キュアソードにとって掛がえのない大切な人であった。

スパイダー・デッドマンは、キュアソードに向けて言葉を続ける。

 

『君の歌には、その『お姫様』にーーーー自分の歌が届いて欲しい。自分の歌を聴いて欲しい。自分の歌に、応えて欲しいーーーーと。華やかな歌の裏に、ガムシャラなまでに必死な気持ちが隠された、強い想いが込められていた歌だった』

 

「・・・・・・・・」

 

ソードはスパイダー・デッドマンの言葉に愕然となりながらも聞いていた。

 

『そんな君の歌が僕は好きだった。魅力された。ドキドキとトキメイた。・・・・だが、何時しか君の歌には、それが無くなってしまった。もう一度だけで良い、大切な人に届いて欲しいと言う、ひたむきな、健気な想いに満ちた歌をーーーー聞かせてくれっ!!』

 

スパイダー・デッドマンが下半身の蜘蛛から網のような糸を吐き出すと、それはソードへと向かっていく。

 

「・・・・・・・・」

 

「ソードっ!」

 

ソードはその場から動けず、立ち尽くしてしまう。ハート達が助けに行こうとしたが、ギフジュニアが邪魔をする。

 

「っ、危ない!」

 

「エリオくん!」

 

と、その時、近くにいたエリオが駆け出し、ソードの腰に抱きつきながら、その網の糸から庇った。

 

「ぁ!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「え、ええ・・・・」

 

エリオに礼を言って立ち上がるソードだが、スパイダー・デッドマンを見ると、戦う気持ちが失せたように、立ち尽くしていた。

 

「・・・・っ!」

 

『まこぴー・・・・また歌ってくれ、ただ一人のお姫様の為に捧げる、あの美しくも必死な、君の歌をっ!!』

 

「ソードさんっ!」

 

戦う気になれないソードを守るようにエリオが立つ、スパイダー・デッドマンが二人に向けて下半身の蜘蛛から糸の塊を吐き出し、それが二人に迫ったその時ーーーー。

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「ちぃっ!! バイス!」

 

「えっ? ありゃ!?」

 

『うぉっ!?』

 

エリオがソードに突っ込むと同時に、リバイがバイスにガンデフォンを投げ渡し、オーインバスター50を振り回してウルフ・デッドマンを振り払うと、

 

[スタンプバイ!]

 

オーインバスター50の銃口部の『オーインスタンプ』を取り外し、バスターのスタンプ台『オーインジェクター』に押し込むと、リバイスのマークが浮かんだ。

 

[オーイングストライク!]

 

オーインスタンプを銃口に戻し構えると、銃口にリバイスのマークが浮かび、エネルギーが充填され、引き金を引くと大きなエネルギー弾が放たれ、糸の塊を破壊する。

 

「っ!」

 

「あっ!」

 

『なにっ!?』

 

スパイダー・デッドマンがさらに糸の塊を吐き出すが、リバイがソードとエリオの前に立ち、斧に持ったオーインバスター50に再びオーインスタンプを押した。

 

[スタンプバイ!]

 

斧の刃にエネルギーを纏わせーーーー。

 

[オーイングストライク!]

 

「ツルァッ!!」

 

糸の塊を次々と粉砕していった。

 

「あ、あなた・・・・」

 

「・・・・おい。キュアソード」

 

「っ」

 

「いつまで呆けてるつもりだ?」

 

「・・・・わ、私は」

 

ストリートで歌を歌っていた時から、自分の歌の本心に気づいてくれていたファンが、あんな風になってしまった。

それも、自分のせいで。その自責の念が、ソードから戦う気持ちを弱らせてしまっていたのだ。

 

「俺は君の護衛だ。依頼人の要望にはできる限り応えるつもりだけど」

 

「えっ?」

 

「アンタはどうしたい? アンタを思って暴走しちまったあのファンに、お前はどうしたいんだ?」

 

「・・・・手伝って、くれるの?」

 

「言っただろう。依頼人の要望にはできる限り応えるってさ」

 

ソードはリバイに向かってこう言う。

 

「手伝ってリバイ! あの人を、私のファンを助ける為に!」

 

「その依頼、引き受けた。それじゃ・・・・死ぬ気で行くぜ!」

 

「ぁ!」

 

『っ!』

 

リバイがゆっくり上げた拳を握る背中を見て、ソードと近くにいたハート達ドキドキチームが笑みを浮かべる。

そしてエリオは見た、尊敬し、目標にし、立場は違うが、いつかソコに追い付いて見せると、隣に立って見せると誓ったーーーー炎を携える兄貴分達の背中に、リバイの背中に、重なって見えていたのだ。

そして、それはーーーーキャロ達FW陣の仲間達や、なのは達隊長陣も同じだった。

 

「さて、一丁派手にやるかな」

 

『邪魔をするな! 僕とまこぴーとの一時をっ!!』

 

スパイダー・デッドマンは辺りに糸の塊を乱発して放つ。

 

『うわっ!』

 

『きゃっ!』

 

『っ!』

 

プリキュア達はその場を跳んだりして回避するが、身動きが取れないはやてとシグナム、ヴィータとザフィーラを守るため、魔力弾やデバイスで糸の塊を破壊するなのは達。

だがーーーー。

 

「な、何これ!?」

 

「い、糸が絡まって・・・・!」

 

魔力弾を受けて弾け飛んだ糸がデバイスや衣服に絡み付いていき、なのは達の動きを拘束してしまった。

 

『ははははははっ! まだまだぁ!』

 

と、ソコでスパイダー・デッドマンが両腕を振り回すと、

 

「っ! まさか! く」

 

「えっ? きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

「ああああああ!」

 

「何なのよーっ!?」

 

突如、リバイが自分の周りをオーインバスター50で振り回すと同時に、バイスとプリキュア達や魔導師達の身体が、何かに引っ張られるように宙を浮き、地面や壁に叩きつけられたり、お互いに身体がぶつかってしまっていた。リバイは振り回されるソードを抱き抱えて庇った。

 

「ちょっ、一体なにっ!?」

 

「身体が、何かに引っ張られたような・・・・!」

 

「っ、この糸だわ!」

 

マジカルとミラクルが驚くと、ダイヤモンドが自分の腕に絡み付いた糸を見て、そう言うと、他のプリキュア達や魔導師達も自分の身体を見てみると、確かに、一人はお腹、一人は腕、一人は足、一人は肩、一人は太腿と、自分達一人一人の身体の一部に糸が巻き付いていた。しかも、はやて達を拘束している粘着性の糸ではなく、細く柔らかくしなやかな硬質の糸だった。

 

「俺っちの尻尾っ!」

 

バイスは尻尾にも。

 

「っ! この糸で私の身体を引っ張っていたの!?」

 

「この戦い方・・・・!」

 

フェリーチェが驚いた声をあげると、ヴィータはこの戦い方に見覚えがあった。かつて『JS事件』で戦った敵の戦い方に。

と、そこでキュアピースの前にスパイダー・デッドマンが現れ、下半身の蜘蛛が牙とカチカチ鳴らした。

 

「あわわわわ! プ、『プリキュア ピースサンダー!』」

 

「っ! 不味い!」

 

「えっ?」

 

脅えたピースが必殺技を放とうとした時、リバイの直感が危険を察知して、ソードの肩に巻き付いた糸をすぐに切ると、ソードを抱えて高く飛んだ。その時ーーーー。

 

『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

『きゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!!』

 

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」

 

スパイダー・デッドマンだけでなく、プリキュア達と魔導師達、さらにバイスが、糸を使って伝導してきた雷撃に悲鳴をあげた。

 

「ピ、ピース・・・・! で、電撃が、私、達にも・・・・!」

 

「ご、ごめんなさーーーーい!!」

 

「フ、フェイトちゃん、雷には、強いんじゃ・・・・?」

 

「こ、この電撃、普通の、雷じゃ、ないみたい・・・・」

 

ハッピー達も雷撃を浴びてしまって、痺れながらピースに言うと、ピースは涙混じりに頭を下げまくった。

雷の魔力変換資質を備えているフェイトやエリオですら、プリキュアの雷撃は普通の雷ではないので、ダメージを受けて痺れてしまっていた。

 

「スゴいな。誤爆とはいえ、ここまでの被害を出すとは・・・・」

 

「ちょっと! 俺っちもダメージ受けてるんですけど!?」

 

少し焦げたバイスだが、それほどダメージを受けていないようで、ガバッと起き上がる。リバイが尻尾に巻き付いていた糸を切ってやる。

 

「「「き、キュアップ・ラパパ、身体の痺れ、抜けて!」」」

 

魔法使いチームが杖を構えて呪文を唱えると、スパイダー・デッドマンを除く全員の痺れが少し抜けた。

 

「それにしても、ちょっと面倒だな。糸の方も厄介だが・・・・」

 

リバイの視線の先には、アギレラとウルフ・デッドマンとダイオウイカ・デッドマン、〈デッドマンズ〉の頭目と幹部を見据えた。

 

「アイツらが邪魔だな・・・・」

 

「「リバイさん!」」

 

「キュアホイップ。キュアエール」

 

リバイが視線を向けると、ホイップとエールが話しかけてきた。

 

「もう一度、聞きたいんだけど」

 

「私達と一緒に、戦ってくれますか?」

 

「(ここは共闘した方が楽そうだな)・・・・アンタらに頼みがある」

 

「「っ、はい!」」

 

リバイが頼みを言い、ホイップとエールは協力してくれる事を嬉しそうに笑みを浮かべて答えた。

 

「それじゃちょっと手伝ってもらうぜ。そっちの先輩プリキュア達もな」

 

リバイが顔を向けたのは、ソードと合流したハート達と、ミラクル達だった。

 

 

 

 

 

ーアギレラsideー

 

ピースの雷撃が発動すると、糸が絡まっていなかった為、雷撃のダメージは受けなかったアギレラ達。

そしてアギレラは、あまりダメージを受けていないスパイダー・デッドマンを興味深そうに見つめていた。

 

「スゴいわね彼。『第2フェーズ』で大型になっただけでなく、ここまでの力を宿すなんて」

 

『ええ。順調に行けば、さらに進化するでしょう』

 

「うふふ、ギフ様が喜んでくれるわ」

 

『アギレラ様、スマイルですね!』

 

『では、彼をこのまま連れ出して「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」っ!!』

 

ダイオウイカ・デッドマンの言葉を遮るように、ホイップとエールが拳を叩きつけようとしたが、触手を伸ばしてそれを防ぐ。

 

『ほぉ、プリキュアですか』

 

『邪魔するのかよ?』

 

ウルフ・デッドマンが銃口をホイップとエールに向け、引き金を引くと、

 

「「たぁっ!」」

 

『っ!』

 

アンジュとショコラがバリアとチョコレートの剣で弾丸を防いだ。

そして、すぐに、他のアラモードチームとHUGっとチームがダイオウイカ・デッドマンとウルフ・デッドマンの相手をする。

 

「んで、あのリバイって奴、本当に大丈夫なのかよ?」

 

「大丈夫だよ! だってあの人、【死ぬ気で助ける】って言ってたもん!」

 

ジェラートが怪訝そうにリバイを見るが、ホイップは大丈夫だと言った。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「さて、幹部連中はあのプリキュア達に相手をしてもらって。キュアソード」

 

「っ」

 

「アンタのファン。必ず助ける!」

 

リバイはドライバーの『レックスバイスタンプ』を倒して、ボタンを押した。

 

[リミックス!]

 

「やるぞバイス!」

 

「あ~いよ!」

 

腕タッチをした蹟、組体操の『サボテン』のように中腰になったバイスが土台になり、リバイの足を持って、リバイがバイスの太腿に足を乗せると、リバイはスタンプを倒した。

 

[バディアップ!]

 

リバイとバイスの胸元のマークが光り出し、宙に浮かび上がり重なると、二人の姿が変わった。

 

[必殺! 繰り出す! マックス! レックス!]

 

ーーーーギャァアアアアアアアア!!

 

リバイの背中アーマーが展開し上顎に、両腕が下顎となり、足を担当するバイスのアーマーが変形し、マフラーと尻尾が合体して尻尾のようになった。

Tーレックスの姿となるリミックスーーーー〈リバイスレックス〉だ。

 

ギャァアアアアアアアア!!

 

リバイの展開した背中アーマーが上顎、両腕が下顎となり、足を担当するバイスのアーマーが変形し、マフラーと尻尾が合体して尻尾のようになった。

Tーレックスの姿となったーーーー〈リバイスレックス〉だ。

 

「イエイッ! 速攻で決めちゃうよ!」

 

『ええええええええええっっ!!』

 

『リミックス』を知らないプリキュア達と魔導師達が驚きの声をあげた。

 

「勝った!」

 

「ええ!」

 

ブラックとホワイトが、リバイスレックスを見て、そう呟いた。

 

ギャァアアアアアアアアア!!

 

リバイスレックスが雄叫びを上げてスパイダー・デッドマンに迫る。

 

『かっ!』

 

が、飛び上がったスパイダー・デッドマンは顔の口から硬質の糸を吐き出し、建物の外壁に突き刺すと、そのまま振り子のように回り、さらに糸を吐き出して建物の外壁に突き刺し、三次元的な動きでリバイスレックスを翻弄する。

 

『はははははは! この糸があれば僕は無敵だっ!!』

 

「・・・・どうかなーーーープリキュア!!」

 

「貴方に届け! 『マイスイートハート』!」

 

「『閃け! ホーリーソード』!!」

 

「彩れ、『ラブキッスルージュ』! ときめきなさい、『エースショット』! ばきゅーん!!」

 

ハートが胸のハートから光線を発射し、ソードが手刀から光の剣を無数に放ち、エースが専用武器『ラブキッスルージュ』からハートの光線を撃ち、スパイダー・デッドマンの周りの糸を撃ち破っていく。

 

『何っ!?』

 

「「「はぁっ!!」」」

 

『グハァッアアアアアアアアアアアアッ!!』

 

驚くスパイダー・デッドマンの上方、ミラクルとマジカルとフェリーチェが箒に乗って上がっており、スパイダー・デッドマンの頭上と蜘蛛の下半身に急降下キックをお見舞いし、アスファルトに叩きつけた。

 

ギャァアアアアアアアアア!!

 

『おのれぇっ!!』

 

リバイスレックスが雄叫びを上げて迫るが、スパイダー・デッドマンは硬質の糸を吐いて攻撃する。

 

「させません! カッチカチの『ロゼッタウォール』!」

 

キュアロゼッタがリバイスレックスに迫る糸を、両手に緑色の四葉クローバー型の障壁で弾き飛ばす。

 

「そのお口、閉じさせるわ! 煌めきなさい! 『トゥインクルダイヤモンド』!」

 

『ガァアアアア!』

 

キュアダイヤモンドが指先から無数の氷の結晶を放ち、スパイダー・デッドマンの身体を氷で固め、動きを止める。

 

「うわぉっ! ダイヤモンドちゃん! ロゼッタちゃん! ナイスサポート!! 渋いねぇっ!!」

 

「ありがとうございます」

 

「渋いって・・・・」

 

バイスの言葉にロゼッタは笑みを浮かべるが、ダイヤモンドは反眼で苦笑いを浮かべる。

 

「マナーの悪いファンには、お仕置きだ!」

 

ギャァアアアアアアアアア!!

 

リバイスレックスが噛みつきで、スパイダー・デッドマンの上半身を噛む。

 

『ぐぉぉぉぉぉっ!』

 

上半身の氷が砕かれながら噛みつかれるスパイダー・デッドマンに、空かさず尻尾を思いっきり振り抜き、上空へと飛ばす。

 

「死ぬ気で、決めるぜ!」

 

リバイがドライバーを操作した。

 

[レックス! スタンピングフィニッシュ!]

 

「「はぁっ!」」

 

リバイスレックスが上空に飛び上がり、スパイダー・デッドマンを追い越すと、空中で一回転し、両足を突き出して両足蹴りの体制となる。

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! おおぉっ!!」」

 

『ぐぁああああああああああああっ!!!』

 

ーーーーレックススタンピングフィニッシュ。

 

リバイスレックスが着地すると、バイスが声を発する。

 

「では、皆さんご一緒に!」

 

『うん!』

 

ドキドキチームと魔法使いチーム、そしてギフジュニアを全滅させたプリキュア達が勢い良く頷いた。

 

「3<スリー>!」

 

『3!』

 

魔法使いチームが指を三本立てる。

 

「2<ツー>!」

 

『2!』

 

ドキドキチームが指を二本立る。

 

「1<ワン>!」

 

『1!』

 

アラモードチームとHUGっとチームを除いたプリキュア達とスバルとエリオが人指し指を立てると同時に。

 

チュドォォォォォォォォォォォンン!!

 

スパイダー・デッドマンが爆散した。

 

「イエイッ! ビクトリー!!」

 

リバイスレックスから分離して、リバイとバイスに戻ると、バイスが大声で天に指を立てた。

 

「っ!」

 

「あ、ちょっと!」

 

が、リバイは『スパイダーバイスタンプ』を回収すると、幹部連中の方に向かっていき、バイスもついていく。

 

「あらら残念。やられちゃったわね、勿体無いわ。フリオ、オルテカ」

 

『『はっ!』』

 

ウルフ・デッドマンとダイオウイカ・デッドマンが、戦っていたプリキュア達を振り払うと、アギレラの元に集った。

 

「〈デッドマンズ〉っ!!」

 

リバイがオーインバスター50とガンデフォンを連射する。

 

『はっ!』

 

が、ダイオウイカ・デッドマンが触手を伸ばして防ぐ。

 

「仮面ライダーにプリキュアに、ついでに“〈時空管理局〉”ね。ふふっ♪ 面白くなってきたわ。また会いましょう」

 

『ふっ!』

 

ウルフ・デッドマンが地面を撃って土煙をあげさせ、自分達の姿を隠した。

 

「ぁ!」

 

「ありゃ」

 

リバイとバイスが幹部連中に近づくと、その場にはもう、誰もいなかった。

 

「逃げられちったね」

 

「~~~~~! クソがぁっ!!!」

 

リバイは吐き出すように吠えると、片膝を付いて、地面を殴り付けた。

数秒の間黙っていると立ち上がり、ガンデフォンをガンモードから通信モードに変えて、連絡をいれる。

 

「ーーーーこちらリバイ。今からそっちに・・・・何っ? マジで?・・・・分かった」

 

リバイが通信を切ると同時に、門川ヒトミが〈フェニックス〉隊員を率いてやって来ると、プリキュア達と魔導師達を包囲するように展開し(武器は構えず)、スパイダー・デッドマンになっていたスタッフの男性を連行しようとした。

 

「ぁ・・・・すみません! 少し、その人と話をさせてください」

 

ソードがそう言うと、門川ヒトミは少し思案し、隊員達に指示を出すと、スタッフの男性をソードに向き合わせる。

 

「・・・・まこぴー」

 

「ありがとうございます。私の歌を好きだって言ってくれて。・・・・でも、ごめんなさい。私は、あなたの望む歌は・・・・」

 

「まこぴー。『お姫様』には、会えたかい?」

 

「っ、ええ。もう、会えなくなっちゃったけど。その人に言われたんです。【これからは、自分の為に歌いなさい】って」

 

「・・・・そうか。昔の歌を好きだけど、今の哀しみも辛さも秘めた、大人の歌も嫌いじゃないよ」

 

「・・・・・・・・」

 

「ずっと応援しているから、まこぴー」

 

そう言うと、スタッフの男性は小さく笑みを浮かべて、連行されていった。

 

「・・・・ある意味あの方は、真琴の本当のファンだったのかも知れませんわね」

 

「それがちょっと歪んでしまったのでしょうね」

 

「大丈夫、かしら?」

 

「きっと大丈夫だよ!」

 

ハート達がそう話をしていると、ヒトミが声をかけてきた。

 

「プリキュアオールスターズと、その協力者ですね?」

 

「はい」

 

漸く拘束から抜け出せたはやてが代表して応じる。

 

「これから我々の司令官に会わせます。同行できますか?」

 

「・・・・・・・・」

 

『(コクン)』

 

はやてが皆に顔を向けると、プリキュア達も魔導師達も頷いた。

 

「はい。私達も色々と情報が知りたいので、お願いします」

 

「分かりました。・・・・では、あなたも来てもらうわよ」

 

ヒトミがリバイスに声をかけると、リバイスは変身を解除すると、バイスが姿を消し、リバイが元の姿に戻る。

 

「異論は無いわねーーーー『嵐山輝二』?」

 

「・・・・・・・・了解」

 

輝二は『レックスバイスタンプ』と『スパイダーバイスタンプ』を手に持って応えた。

 

「あ、嵐山さん・・・・!?」

 

『えっ!?』

 

『???』

 

ブロッサムが驚きの声をあげ、ホワイトとルミナス、サンシャインとムーンライト、プリンセスとハニーとフォーチュンも驚いた声をあげた。ブラックとマリンとラブリーは、忘れたのか首を傾げた。

 

「・・・・結局、プリキュア達も巻き込んじまった、か」

 

≪あの子達の場合、巻き込まれに来たって感じじゃね?≫

 

輝二がぼやくと同時に、〈フェニックス〉の空中移動艦〈スカイベース〉が、頭上に現れた。




次回、プリキュアと魔導師達が、『悪魔』の存在を知る。


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マジか!? 〈悪魔〉!?

プリキュアと魔導師が、『悪魔』の存在を知る。
後、〈フェニックス〉の司令官の名前変更します。


ー輝二sideー

 

「ーーーーぶっちゃけ・・・・あり得な~い!!」

 

「〈フェニックス〉の基地に来ちゃったナリ!」

 

「わ~! 街があんなにちっちゃ~い!」

 

「凄い凄~い! 高~い!!」

 

「お、おお、落ちちゃったりしないですよねぇ・・・・!」

 

「奏太に自慢できるかも!」

 

「ウルトラハッピー! 前から〈フェニックス〉の基地に来てみたかったんだぁ!」

 

「政府の人達、こんなに凄いのを作れたんだぁ! キュンキュンするぅ!」

 

「ツリースカイもあんなに近くに見えるよ!」

 

「あ! あそこに私達の学校が!」

 

「魔法も凄いけど、科学の力も凄~い! ワクワクもんだぁ!」

 

「うわ~! 遠くまで見えるよ!」

 

「めちょっく! 私達、〈フェニックス〉の基地に来ちゃったよ!」

 

政府直轄組織〈フェニックス〉の〈スカイベース〉に案内されたプリキュアオールスターズの面々と〈時空管理局〉の魔導師達。

早速プリキュアの各リーダーがはしゃぎ、他の面々もまるで修学旅行に来たみたいな気持ちで〈スカイベース〉内や外の景色を見ていた。

魔導師達も地球技術の進歩に驚嘆したような顔となり、スバルとエリオなんて特にはしゃいでいた。

 

「「・・・・・・・・」」

 

そんな一同を見ながら、輝ニと門川ヒトミは修学旅行の生徒達を引率する教師の気持ちになっていた。

 

≪ほうほう! 〈時空管理局〉の魔導師ちゃん達は肉付きがとっても豊かでジューシーそう! 食べ物に例えるなら、完全に上物のお肉だね! あぁでもでも! 俺っち的には、明るくキャピキャピしたプリキュアちゃん達の方が、キラキラと輝いていて、スッゴく美味しそう! 極上級のご飯だね!!≫

 

バイスは、輝二以外に見えない事を良いことに、プリキュアオールスターズと魔導師達に近づきながら、観察していた。

 

「・・・・(パンパン!)おい!!!」

 

たまらず輝二が両手を叩いて大声をあげると、一同が目を向けた。

 

「これから〈フェニックス〉の司令官に会うから、アンタら失礼の無いようにしろよ!」

 

〈フェニックス〉の司令官。

その言葉を聞いて、プリキュア達のメンバーの大半は若干緊張したのか、身だしなみとかを整え、魔導師達もはしゃぎすぎていたと反省した。

 

 

 

 

 

 

そして、結構な人数が入りそうな広い空間、何かの研究室のような場所に赴いた一同は、広い空間の中央で会議用の長い机とパイプ椅子が置かれ、その上座の席に座るヒトミの着ている〈フェニックス〉の制服よりも立派な制服に真っ白なスーツに白いコートを着た男性が立ち上がり、その近くのテーブルに置かれたパソコンや機材で分析をしている白衣を着た化学者風の男性が立ち上がった。

プリキュア達も魔導師達も直感した。この白いコートの男性が、〈フェニックス〉の司令官であると。ヒトミが男性達の近くに行き、輝二は白衣の男性に『スパイダーバイスタンプ』を手渡した。

 

「こちらの方が、政府直轄組織〈フェニックス〉の司令官、『嵐山雄二郎 司令』。そしてこちらが我々〈フェニックス〉の装備を開発した技術主任のーーーー」

 

「Welcome! プリキュアオールスターズ! &〈時空管理局〉のウィザード達! 私は『ジョージ・狩崎』だ! 尊敬と友好を込めて『ドクター・狩崎』と読んでくれたまえ!」

 

ヒトミが紹介していると、狩崎は笑みを浮かべてプリキュア達と魔導師達に会釈し、そのテンションに何人かは少し驚きつつも、それぞれ自己紹介をし、はやてが代表して声を発する。

 

「あの、〈フェニックス〉は〈時空管理局〉の事を知っているのですか?」

 

“管理局の管理外世界である地球”の組織が、〈時空管理局〉の存在を知っている事に、はやては首を傾げた。

 

「おやおや、少し地球の組織の情報収集力を甘く見すぎねぇ、八神はやて君。“10年前の事件以前”から、政府や裏社会の情報網に、〈時空管理局〉の存在は認知されていたのだよ」

 

「情報の秘匿が杜撰なんだよ。〈時空管理局〉」

 

輝二が言った言葉に、魔導師達は渋面を作っていた。

 

「・・・・狩崎。輝二。ソコまでだ。プリキュアオールスターズ。魔導師諸君。先ずは座ってくれ。今後の事を話し合いたい」

 

雄二郎司令官がそう言うと、一同は椅子に座った。ヒトミは司令官の側に控える。

 

「いや~、こうしてプリキュアのガールズ達とお話ができる日が来るとはねぇ~。前から君達の変身アイテムとかには興味津々だったのだよ」

 

「そうなんですか?」

 

「うん。私の作ったリバイスドライバーとは違った変身システムだからねぇ」

 

「『リバイスドライバー』?」

 

「仮面ライダーリバイスが変身の際に使うドライバーの事さ。あれは私が作ったのだよ」

 

『ええっ!?』

 

「あっ! もしかして、その棚に置いてあるベルトって・・・・!!」

 

やよいが狩崎の机の隣に置かれた棚に、メカメカしいデザインのドライバーを指差して言った。

 

「おぉ、中々良いところを突くねぇ『ピースガール』。そう! ここに置かれているドライバーこそ! 世界の裏側から、人類の自由と平和を守るために戦う戦士、〈仮面ライダー〉のベルト!・・・・の、レプリカだ。私が研究資料として特注で作らせたモノさ」

 

『『ピースガール』って・・・・』

 

狩崎のやよいの呼び方に半眼になる一同。が、やよいは気にせず、目をキラキラとさせながら狩崎に近づく。

 

「そうなんですか狩崎さん! じ。じゃあ! リバイスが変身する時に流れる!【[仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]】って!?」

 

「ああ。あれは私の趣味だ。物作りにはああ言った遊び心が必要だからねぇ」

 

『し、趣味ですか・・・・?』

 

「素晴らしい趣味です!」

 

呆れる一同だが、やよいは尊敬の目で狩崎を見ていた。

 

「・・・・話を始めるぞ」

 

雄二郎司令官が口を開くと、漸く全員の空気がシリアスとなり、やよいはあかねとなおに連れられ席に座る。

 

「先ず、プリキュアオールスターズ。これまで我々政府が手に負えなかった『闇の勢力』から、人類を守ってきてくれた事に礼を言う。そして、〈時空管理局〉の魔導師達、こちらの招待に応じてくれた事に感謝する」

 

プリキュアオールスターズや魔導師達を代表して、はやてが口を開く。

 

「いえ。私達魔導師の多くはこの地球が出身地ですから、協力するのは当然の事です」

 

「(ピクッ)」

 

はやての発言に、人知れず輝二は眉根を寄せた。

 

「それで教えて欲しいんです。ーーーー〈デッドマンズ〉とは、一体何なのか?」

 

はやての言葉に、魔導師達もプリキュアオールスターズも視線を真剣にする。

 

「・・・・良いだろう。狩崎、教えてやれ」

 

「OK。先ずは、このスタンプ。『バイスタンプ』について説明しよう」

 

狩崎は『スパイダーバイスタンプ』を見せ、タブレットを操作すると、雄二郎司令官の後方にプロジェクターが降りてきて、映像が映し出せた。

 

「『バイスタンプ』とは、50年前、中南米のとある遺跡から発見されたスタンプの形をした『オーパーツ』を解析し、それを元に生成された物だ」

 

「『オーパーツ』、ですか」

 

その当時の写真が映し出され、みらいが首を傾げ、狩崎は続けた。

 

「それらに、鷲や蜘蛛のような現生種と、ティラノザウルスにメガロドン、マンモスと言った絶滅種。これら強力な生物達の遺伝子情報を内包するように造られたこのスタンプを、〈デッドマン〉が強奪した」

 

「なぜ〈デッドマンズ〉は、『バイスタンプ』を奪ったんですか?」

 

フェイトの質問に、狩崎は、いや、雄二郎司令官やヒトミ、輝二も、暫しの間沈黙するが、狩崎が返す。

 

「実は、『バイスタンプ』にはある特性がある事が判明された」

 

「“特性”?」

 

「人間ならば誰しもが持っている、『憎悪』。『嫉妬』。『憤怒』。『欲望』。『悲嘆』。『悪意』。そう言った悪性エネルギーを強く持つ人間に、この『バイスタンプ』を押印すると、そのエネルギーがスタンプに内包されている生物の遺伝子情報を得た怪人、〈デッドマン〉が生み出す事が分かった」

 

狩崎が再びタブレットを操作すると、『バイスタンプ』を自分に押印した青年から、異形の怪人、〈デッドマン〉が現れる姿が映し出された。

 

「〈デッドマン〉・・・・」

 

「丁度、ハートキャッチチームとドキドキチーム、プリンセスチームにHUGっとチームが戦ってきた組織が扱う怪物達と同じモノと考えてくれたまえ」

 

「デザトリアンやジコチューと同じタイプ・・・・」

 

ゆりと六花や、頭脳派プリキュアや魔導師達も顎に手を当てる。

 

「そして、遺跡の壁画やらを調べてみると、この〈デッドマン〉は別名で呼称されているのが分かった」

 

「別名、って何ですか?」

 

壁画の写真を映し出した狩崎の言葉になのはが聞くと、狩崎がパチンっと指を鳴らし、ゆっくりと部屋の明かりが暗くなっていき、プロジェクターの画面も暗くなり、狩崎は小さく、だが、全員に聞こえる声でその呼称を呟いた。

 

「〈デッドマン〉、別名ーーーー『悪魔』、とね」

 

『っっ!!? あ、悪魔ぁっ!?』

 

プロジェクターに悪魔の肖像画が映し出され、プリキュア達と魔導師達が驚くと、狩崎は続ける。

 

「そう。神話や伝承、伝説や物語の世界に登場する、人を惑わし、人を喰らう魔性の存在と呼ばれる、あの『悪魔』だよ」

 

「ちょ、ちょちょちょ、ちょう待ってください!」

 

「あ、悪魔なんて、そんなの、ぶっちゃけあり得ないでしょうっ!!」

 

「いくら何でも、そんなファンタジーやオカルトなんて信じられません!」

 

狩崎の説明を遮るように、はやてが素の口調になり、なぎさとほのかも慌てた様子でそう言った。が、狩崎がやれやれと言わんばかりに肩を落としながらカラカラと笑い、おどけた口調で声を発する。

ついでに輝二も、ハッと鼻で笑った。

 

「おやおやこれは妙な事を言うねぇ、プリキュアガール達に魔導師のレディ達。ファンタジーとかオカルトだとでも思っているのかね? プリキュアガール達と一緒にいる『妖精』や『精霊』だって、一般人から言わせれば十分ファンタジーでオカルトだし。第一、『魔法』なんて使っている君達が『悪魔』を否定するような事を言っても、説得力の欠片もないよ。『魔法』や『精霊』や『妖精』が存在しているのにーーーー『悪魔』が存在しないなんて、どうして言えるのかなぁ?」

 

「堂々とケーキを売っているケーキ屋が、【ウチはケーキなんて販売していませんよぉ】、と言うようなモノだな」

 

『うぐっ・・・・!!』

 

狩崎と輝二の言葉に、プリキュア達も魔導師達もそれ以上言えなくなり、言葉を詰まらせた。お化けとかオカルトが苦手なプリキュア達に至っては、若干涙目で身体がガタガタと震えていたが。

 

「話を戻そう。〈デッドマンズ〉とは、世間ではカルト宗教団体のテロリストと報道されているが、実際は悪魔を使ってこの世の秩序を破壊しようと目論む、悪魔崇拝組織。それが〈デッドマンズ〉だ」

 

プロジェクターに〈デッドマンズ〉の紋章を映し出して、狩崎は言った。

 

『あ、悪魔崇拝組織・・・・!』

 

「そして我々〈フェニックス〉は、その脅威に対抗すべく、『ライダーシステム』を作り上げた。それがーーーー〈仮面ライダーリバイス〉だ」

 

狩崎の説明に、戦慄したような顔になる一同に、雄二郎司令官が輝二に視線を向けてそう言った。

 

「・・・・ちょっと、良いかしら?」

 

と、そこでゆかりが挙手した。

 

「はい。『マカロンガール』」

 

「(『マカロンガール』って・・・・) バイスタンプ、だったかしら。そのスタンプが人間の中にいる『悪魔』を生み出す物だと言うのは分かったわ。だけど、一つ分からない事があるの。多分、他の皆も何人かは思っているだろうけど・・・・」

 

ゆかりに続いて、ルールーが口を開く。

 

「リバイス、いえ、リバイと共に戦っているバイス。彼はまさか・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

二人の問いに、輝二は『レックスバイスタンプ』を取りだ出し、スイッチを入れた。

 

[レックス!]

 

≪あれ? 俺っちの出番?≫

 

プリキュア達の目の前に移動して、おちゃらけていたバイスが声を発すると、輝二は『レックスバイスタンプ』を自分の右胸に押印した。

 

「世に、『毒を以て毒を制す』、と言う言葉がある。そしてリバイスのライダーシステムのコンセプトは、『悪魔を以て悪魔を制す』。ご推察通り、コイツが俺の体内の『悪魔』ーーーー」

 

と、その時、輝二の身体から光の線が走り、テーブルの中央で大きくなると、その光が形を成しそしてーーーー。

 

「バイスだっ!!」

 

「あいてぇっ!?」

 

バタン! と、テーブルの上にバイスが横倒れた。

 

『っっ!!?』

 

突然バイスが現れ、一同は驚いたように椅子から立ち上がり、身構える。

 

「・・・・・・・・フッフッフッフッ」

 

すると、倒れていたバイスが、ゆっくりと起き上がり、尻尾でテーブルはダン! と、叩く。

 

「こうして会えるとは、思わなかったぜ。プリキュアちゃん達、そして、魔導師のお姉ちゃん達・・・・」

 

全身からダークな雰囲気を纏いながら、テーブルの上に立ち上がるバイス。プリキュア達と魔導師達はいつでも変身できるように構える。

 

「そう俺っちこそ、輝二の中に宿る『悪魔』ーーーーバイス(ドゴォッ!)だぼらはぁっ!!?」

 

『え?』

 

と、名乗りあげようとするバイスの顔面に輝二がドロップキックを炸裂させ、バイスはテーブルから転げ落ちる。

 

「な、何すんのよ輝二!! せっかく畏怖らせようと怖い感じで登場したのに! 台無しじゃないの!!」

 

「・・・・いや、何かムカついたから」

 

「ムカついたってなによっ!!?」

 

ぎゃーぎゃー騒ぐバイスに、輝二が今度はバックブリーカーをかけると、さらにバイスが騒いだ。

その光景にポカンとなるプリキュア達と魔導師達に、狩崎が改めて紹介する。

 

「あれが、嵐山輝二くんの体内に宿る『悪魔』、バイス。好物は人間らしいから、食べられないように注意しておくと良い」

 

『に、人間を食べるっ!!?』

 

「と言っても、普段は輝二くんの身体に繋がれており、その間は声も姿も輝二くんにしか見えないし聞こえない。他者に触れる事もできない。『バイスタンプ』を使ったり、変身しないと実体化して分離できないから、本当に食人をするのか分からないけどね」

 

『・・・・・・・・』

 

一同は、ぎゃーぎゃー騒ぐバイスと、今度はバイスにコブラツイストを繰り出す輝二を怪訝そうに見ていた。

と、ソコで雄二郎司令官が口を開いた。

 

「それで、ここからが本題だ。実は我々〈フェニックス〉は、現在人員不足であってな。さらに〈デッドマンズ〉の動きも活発化している現状だ。情けない話だが、〈フェニックス〉や警察の装備では、『ギフジュニア』、〈デッドマンズ〉の下級怪人しか対処できない。怪人達や幹部達の相手をするには、リバイスだけでは手が足りなくなっている」

 

「それにーーーー輝二くん自身も、我々と連携せず、独断行動が多いのも悩み物でねぇ」

 

今度はバイスにオクトパスホールドをかけている輝二を見て、狩崎が言う。

 

「プリキュアオールスターズ。〈時空管理局〉の魔導師達、協力を要請したい」

 

「うん! 良いよ!」

 

「はい! 分かりました!」

 

「ちょっとのぞみ!」

 

「マナっ!?」

 

雄二郎司令官の要請に、間髪入れずに承諾したのは、のぞみとマナであった。それに続くように他のチームのリーダー達も了承する。

 

「ま、やるっきゃないわね!」

 

「悪魔退治ナリ!」

 

「悪魔をやっつけて幸せゲットだよ!」

 

「わ、私も、プリキュアとして、頑張ります!」

 

「ここまで聞いて何もしないなんて、女が廃るよ!」

 

「皆でウルトラハッピーになろう!」

 

「〈デッドマンズ〉と戦います!」

 

「お覚悟は、できてます!」

 

「ワクワクもんだよ!」

 

「一緒に戦うですぞ!」

 

「フレフレ! 私達!」

 

と、リーダー達がやる気になったおり、他のメンバーも、やる気になっていたり、悪魔にビビっていたり、面白そうと笑みを浮かべていたりしていたが、参加する気はあるようだ。

 

「ふむ。輝二。プリキュア達は参加するようだが、お前はどう思う?」

 

なのは達、管理局の魔導師達はあっさりと参加を示したプリキュア達に唖然となり、雄二郎司令官は、今度はバイスに逆エビ固めをしている輝二に問うと、輝二はギリギリと技を極めながら答える。

 

「ん~。正直関わって欲しく無いが、この際は仕方ない、のか? だけどーーーー」

 

輝二はチラッと管理局組、と言うか、なのはとフェイトを一瞬、半眼で一瞥してから口を開いた。

 

「いきなり武器を突きつけて、【こちらの指示に従え】、みたいな事は言わないかなぁ?」

 

ーーーーグサリ!

 

「「うっ!」」

 

『あっ・・・・』

 

輝二の言葉に、なのはとフェイトのプリキュアチーム(一部を除く)にはない大きな胸元に、グサリ! と、言葉の刃が突き刺さって苦悶の声をあげ、アラモードチームとHUGっとチームは半眼で苦笑いを浮かべながらなのはとフェイトを見た。

それに気づかず、他のプリキュアチームが輝二に向かって口を開く。

 

「ちょっと何よそれ!?」

 

「そんな乱暴な事をする権利、誰も持ってないわ!」

 

「酷いです・・・・!」

 

ーーーーグサリ!!

 

なぎさとほのかとひかりの言葉に、なのはとフェイトはさらにグサリと言葉の刃が突き刺さった。

 

「そんな酷い事しないわよ!」

 

「脅迫じゃないの!」

 

「常識が無いわね!」

 

「野蛮な事だわ!」

 

「品性を疑う行為ね」

 

「最っ低」

 

「人の道から外れています!」

 

「協力を申し立てる方にそのような・・・・! 人として恥ずべき行為ですわ!」

 

「引くよ・・・・」

 

「下品ですわ」

 

「卑劣だわ!」

 

ーーーーグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサグサ・・・・!!!

 

咲、りん、くるみ、美希、ゆり、アコ、れいか、亜久里、ひめ、トワ、リコに次々と言われ、さらに他のプリキュアメンバーも輝二の言った事を、「そんなやり方は卑怯だ!」、「人として恥ずかしい行為だ!」、と口々に非難するが、輝二は口元を手で隠して、若干全身が震え、バイスに至っては床に顔を俯かせて、バンバンと、床を叩いていた。

が、二人のそれが笑いを堪えている行為であると、いちか達(同じように笑いを堪えているゆかり)と、はな達は察し、頬をひきつらせる。

 

「「(私達は、乱暴で最低で野蛮で品性を疑う常識知らずの下品で卑劣な人間・・・・)」」

 

『(もうやめて! なのは(ちゃん/さん)とフェイト(ちゃん/さん)のライフは0よ!!)』

 

はやて達はプリキュアチームの言葉の刃による滅多刺しで、半眼で笑みを浮かべながら口元から一筋の血を垂らし、瞳からハイライトが消え去り、顔が真っ青に青ざめ、脂汗も噴き出し、内心自己嫌悪に陥ってしまい、今にもその場で倒れそうになっているなのはとフェイトを憐憫の眼差しを向けた。

特に、『恩人(フェイトにとっては養母)』や『親友』と声質が似ている、ゆりや亜久里からの言葉が、一番堪えているようだ。

 

「わ、分かった・・・・! すまない・・・・俺が、悪かった・・・・! ククっ・・・・!」

 

「ヒー! ヒー! ヒーヒーヒィー!! ゲホッ! ゴホッ!」

 

必死に笑いを堪えながら輝二は謝罪し、バイスは笑いすぎて酸欠気味になっていた。

 

「・・・・じゃ、私達と一緒に戦ってくれます?」

 

「えっと、嵐山さんに、バイス?」

 

「・・・・好きな呼び方で構わない。ま、これからヨロシクって事で」

 

「俺っちもヨロシクねぇ! 美味しいそうな魔導師ちゃん達と! とってもとってもと~~っても美味しいそうなプリキュアちゃん達っ!」

 

いちかとはなに向かって、立ち上がった輝二とバイスがそう言った。

 

「(〈時空管理局〉、ね・・・・)」

 

が、輝二は内心、〈時空管理局〉への不信感を隠していた。




なのは達は魔法って言っても、科学方程式みたいな魔法だから『悪魔』の存在を否定するのは分かりますが、プリキュアが否定しても説得力ないですね。魔法使いチームなんて幽霊がいますし。


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幕間 ひとっ風呂付き合えよ

久しぶりに本編をどうぞ。


ー輝二sideー

 

「さて、と・・・・剣崎真琴さん」

 

「え、はい?」

 

輝二に話しかけられ、真琴が首を傾げると、真琴の眼前に輝二は一枚の紙を差し出した。真琴がそれを持つと。

 

「えっ?・・・・依頼請求書??」

 

「今回の依頼の請求書。マネージャーの妖精にもちゃんと言っておいてくれよ」

 

「は、はぁ・・・・」

 

〈フェニックス〉の一室にて。

真琴に依頼料の請求をする輝二。バイスに絡まれて怯えているお化けが苦手なプリキュア達。そのバイスを叩くプリキュア達。狩崎からリバイスドライバーやバイスタンプについてさらに詳しく説明を聞いているプリキュア達。〈スカイベース〉を案内して貰えないかと雄二郎司令官とヒトミに頼むプリキュア達と、結構交流を深めていた。

〈時空管理局〉側は、いつの間にか部屋の隅っこにて、体育座りで落ち込むなのはとフェイトを必死に慰めていた。

 

「それじゃ、俺は少し席を外す。行くぞバイス」

 

「あぁんっ! そんな殺生な!!」

 

輝二が部屋を出ようとすると、バイスが引っ張られるように輝二の身体に戻る。

 

「あ、嵐山さん」

 

つぼみが呼び止めようとするが、輝二は構わず出ていく。が、少し待って、みなみに話しかけた。

 

「海藤みなみさん」

 

「え? は、はい?」

 

「会わせたい人がいる。ちょっとついて来てくれ」

 

「え、ええ」

 

みなみはは輝二とバイスについていき、はるかときららとトワ、犬の妖精の『パフ』と小鳥の妖精『アロマ』もついていった。

残された一同はなのはとフェイトを慰めたり、さらに狩崎から、〈デッドマンズ〉について詳しく聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、輝二はリバイスに変身すると、〈スカイベース〉に収容されているバイスタンプを使用した人間を収容した独房の中にいる、『スコーピオン・デッドマン』となったノーベル学園の三年生の先輩が入っている独房の前に着いた。

 

「よお」

 

「・・・・仮面、ライダーさん・・・・」

 

その先輩を独房の隅で体育座りで踞っていたが、リバイを見て顔をあげた。

 

「少しは、頭が冷えたかい?」

 

「・・・・笑いに来たの? 生徒会長に選ばれなかったってだけで、あんな事をした私を?」

 

先輩は自嘲するように言うが、リバイは呆れたように答える。

 

「何言ってんだか。いつまでも独房に引き込もっているから出ていって欲しいだけなんだけどな」

 

「・・・・・・・・」

 

「アンタが取り調べに素直に応じて、更正施設に入る気になれば釈放されるんだぞ。いつまで蹲っているつもりだ」

 

「・・・・ほっといてよ」

 

素っ気なく答える先輩に、リバイは言葉を続ける。

 

「正直いつまでもそうしてられるのって、〈フェニックス〉としても迷惑なんだよ。アンタみたいに独房に住み着かれると、新しいヤツらが来ても収容できないからさぁ。ここは監獄じゃなんだぞ」

 

「ほっといてって言ってるでしょうっ!!」

 

リバイの言葉に、先輩は苛立たし気に声を荒げた。

しかし、リバイは平然としていた。

 

「・・・・何で出てこないのか、当ててやろうか? 会わせる顔が無いから、だろ?」

 

「っ!!」

 

リバイの言葉に、先輩はビクッ! と身体を揺らした。

 

「あんな風に暴れて、皆を恐がらせて、後輩を傷つけようとして、そんな自分がどの面下げて学校に戻れるって言うのかーーーーまぁそんな処か?」

 

「~~~~~~~!!」

 

「沈黙は肯定と受けとるけど?」

 

リバイがそう言うと、先輩は観念したかのように口を開いた。

 

「~~~!! ええそうよ。今さらどんな顔して戻れって言うのよ!? もう、戻れないのよ・・・・」

 

ほぼやけくそになって叫ぶ先輩に、リバイを声を発する。

 

「それを決めるのは、俺でもアンタでも無い」

 

「先輩」

 

「っ! 海藤、さん・・・・!」

 

リバイが独房から離れると、一緒に来たみなみが話しかけ、先輩は顔をあげた。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・先輩。学校に、戻ってきて下さい。部活の後輩の皆も、先輩に戻ってきて欲しいって言ってます」

 

「さっきの聞いたでしょう。私に戻る資格なんて無いのよ」

 

「そんな事無いよ!」

 

先輩が突き放すように言おうとするが、はるかがそれを遮った。

 

「先輩は確かに悪い事したよ! でも、学校の皆は先輩の事を怒っていないよ!」

 

「えっ?」

 

「そりゃあんな滅茶苦茶やって、皆驚いたけどさ。先輩の事を心配している人の方が圧倒的に多かったよ」

 

「生徒会長の選挙で勝ちましたけど、私との差はほんの数票の差でした。それだけ、先輩の事を認めている人達がいっぱいいるんです!」

 

「わたくしも過ちを犯しましたわ。でも、そんなわたくしを皆は許してくれました。先輩。あなたも、自分を許してあげて良いと思いますわ」

 

「・・・・・・・・」

 

きららとみなみ、トワがそう言うと、先輩は少し顔を俯かせた。

 

「おいアンタ、『夢』は何だ?」

 

「えっ?」

 

突然のリバイの言葉に、先輩は一瞬唖然となる。

 

「あの学校に通っているんだ。アンタもアンタなりの『夢』があるんじゃないか?」

 

「・・・・弁護士」

 

「ん?」

 

「私は、将来弁護士になって、犯罪を犯した人達の罪を、少しでも減らして、彼らに寄り添える人間になりたかった・・・・でも」

 

こんな事をしでかした自分が、弁護士になるだなんて、と思ったが、リバイが声を発する。

 

「要は、考え方と捉え方次第だ」

 

「・・・・えっ?」

 

「アンタが目指している弁護士は、犯罪を犯した人達に寄り添える弁護士だろう。今回の事件は『器物損害』ってだけで実刑にはならない。まぁ執行猶予は付くがな。だが、この過ちも生きていけば、『経験』になる」

 

『『経験』・・・・?』

 

「どゆこと?」

 

先輩だけでなくはるか達も首を傾げ、バイスが聞いた。

 

「俺は捻くれた性格なんでな。何の過ちも犯していない清廉潔白な弁護士が、【罪を犯しても君はやり直せる】と言っても、何の説得力が無いように聞こえる。だが、【私も罪を犯した事があるけど、こうしてやり直して弁護士になったぞ】って人間の言葉の方が信じられるんでね。この一件を『経験』として受け入れれば、生かせる時が来るかも知れないだろう。そう考えれば良い」

 

「・・・・・・・・」

 

「後は捉え方次第だ。この『失敗と過ち』を『経験』として捉えて、アンタは『枷』にしてズルズルと引きずって一生俯いて下を見て歩いていくか。それともーーーーこの『経験』を『糧』にして、胸を張って前を向いて進む努力をするか。それはアンタがこの『過ち』と向き合って決めれば良い」

 

「『枷』にするか、『糧』にするか・・・・」

 

「少なくとも、『経験』にはなるだろうよ。まぁ、こんな『経験』なんて、一生に一度だけにするべきだろうがな」

 

リバイの言葉に、先輩は眼に少し力を宿して顔をあげた。

 

「・・・・やり直せるかな? 私も」

 

「それはアンタ次第だがな」

 

「私達も! 力になるから!」

 

「償っていきましょう」

 

「『糧』にした方が良いと思うけどね」

 

「人生七転び八起きだぜ!」

 

「・・・・海藤さん」

 

「先輩・・・・」

 

「改めてだけど、ごめんなさい・・・・!」

 

「待ってますから」

 

「うん・・・・じゃあね」

 

「はい」

 

漸く笑顔を見せてくれた先輩に笑みを浮かべて、一同はその場を去った。

 

「よし、変身解除」

 

「あっ! ちょっと待て! せめてみなみちゃんをもうちょっと恐がらせてから!」

 

バイスを無視して、輝二に戻った。

 

「嵐山さん」

 

「あん?」

 

「ありがとう」

 

「・・・・礼代わりがしたいなら、1つ頼みがある」

 

「えっ?」

 

「俺が〈仮面ライダーリバイス〉だって事、君達がプリキュアだと知っている人達にも、口外しないで欲しい」

 

「えっ? 何でよコウジン?」

 

「“コウジン”って・・・・。俺の正体を知るって事は、面倒事に巻き込む可能性があるって事だ。下手をすれば危害が及ぶ可能性も高い。アンタらが信頼できる人間でも、簡単に俺が〈仮面ライダーリバイス〉であると、他人に知られたくないんだよ」

 

「でも・・・・」

 

「やめましょうはるか。人にはそれぞれ事情があるのですから」

 

「他の皆には、私達から話しておきますね」

 

はるかは何か言いたげだったが、トワが抑え、みなみがそう言うと、輝二は小さく会釈する。

 

「助かる」

 

そして、元の場所に戻ると、プロジェクターに先ほどまでの輝二達のやり取りが映し出されていた。

ちなみに、なのはとフェイトも漸く立ち直ったようだ。

 

「何だこれは?」

 

「やあ輝二くんお帰り! プリキュアガールズが君が何をするのか気になるって言うからねぇ。監視カメラで少々見させてもらったよ。いやぁ中々為になる説教だったねぇ」

 

「・・・・・・・・」

 

「輝二さん!」

 

「あ?」

 

狩崎が悪びれなく言うと、輝二は一発殴ろうかと思ったが、はなが話しかけてきた。

 

「感動したよ! 【この『経験』を『糧』にして、胸を張って前を向いて進む努力をするか。それはアンタがこの『過ち』と向き合って決めれば良い】って!」

 

「あっそ。じゃ俺はこの辺で帰る。狩崎さん、報酬は後日にーーーー」

 

「ストーーーーップ!」

 

毒気を抜かれ、帰ろうとする輝二の腕をマナが掴んで引き留めた。

 

「せっかく何だから! もっとお話しようよ!」

 

「そうだよ! これから一緒に戦うんだから!」

 

続いてみらいがもう片方の手を掴んだ。

 

「いやあのな・・・・」

 

「輝二くん。実はここに近場の健康ランドの無料券があるのだけど? しかも期限は今日まで」

 

「(ピクッ)」

 

狩崎の出したチケットを見て、輝二の肩が揺れた。

 

「この時間帯だと客足も少なくて、静かにお風呂を楽しめるけど?」

 

「(ピクピクッ!)」

 

『??』

 

輝二の様子に、プリキュア組も魔導師組も首を傾げるが、狩崎がタブレットで『嵐山輝二は、お風呂と温泉とサウナ。後コーヒー(ブラック)とコーヒー牛乳が好き』と、書かれた画面を見せて全員が納得した。

 

「・・・・・・・・少しだけなら」

 

ちょっと懊脳しつつ輝二がそう言うと、一同は笑みを浮かべた。

 

《・・・・【『失敗と過ち』を『経験』として捉えて、アンタは『枷』にしてズルズルと引きずって一生俯いて下を見て歩いていくか】、か》

 

《耳の痛い、言葉やな・・・・》

 

《そう、だね・・・・》

 

なのはとはやてとフェイトは、念話で輝二の言った言葉を反復した。自分達は、『失敗』を『枷』にしてしまったせいで、限界を迎えてしまったから・・・・。

 

 

 

 

 

ー男湯sideー

 

健康ランドに着くと狩崎の言うとおり人は少なかった。しかし、見目麗しい女性陣に、従業員達が目を奪われたのは言うまでもなかったが。

そして輝二は、人間体となった精霊『小々田コージ』と『ナツ』、『甘井シロー』、そして『ハリー』。そして魔導師組のザフィーラとエリオ。付いてきた狩崎も交えてゆっくり風呂に浸かっていた。

男湯に別れる際、キャロがエリオも一緒に女湯に入ろうと言ったが、エリオが全力で断り、プリキュアも何人かが却下と言って、男湯に来ていた、

 

≪なぁなぁ輝二! 俺っちもお風呂入りたい!≫

 

「お前は駄目だ~」

 

≪なんでよっ!?≫

 

「お風呂が汚れる~」

 

≪酷いっ!≫

 

「めっちゃ堪能しとるな」

 

「オッサンになったら絶対サウナにドハマリするぞコイツ」

 

「安心したまえ、既に手遅れだ」

 

ハリーとシローが半眼で呆れ、狩崎がそう言っていた。

 

 

 

 

ー女湯sideー

 

「うわ~~・・・・!」

 

「どうしましたえりか?」

 

そして女湯では、お風呂に浸かっているえりかが身体を洗っているなのは達を見て、驚嘆したような声を漏らし、同じようにお風呂に浸かっているつぼみが聞いてくる。

 

「見なさいつぼみ。なのはさん達って本当にスゴいわよ・・・・!」

 

「えっ?・・・・う、うわぁぁぁ・・・・!」

 

つぼみも視線を向けると目を見開き、驚嘆した声を漏らす。

自分と声質が似ているフェイトに、ルールーと声質が似てるなのは、はやてにアインス、シグナムにシャマル、ティアナにスバル。全員まさに、ボンッ! キュッ! ボンッ! と、擬音が聞こえてしまいそうな、女の自分ですら見惚れてしまうナイスバディをしているのだ。彼女達を見ると、自分はまだまだ中学生のお子ちゃまなのだと思い知らされる。

プリキュアチームの中でも、特にバストが大きくスタイルの良い女の子が揃っているラブ達フレッシュチームの四人でも太刀打ちできない。

 

「た、確かに、凄いです・・・・!」

 

「う、うん、凄いわ・・・・!」

 

つぼみに同意するのはひめだった。よく見ると、他のプリキュアチームの何人かが、なのは達に視線を向けていた。

そして魔導師組では。

 

「いや~、プリキュアちゃん達も中々将来性豊かな子が多いなぁ。特にフレッシュの皆が凄いわぁ~。美希ちゃんはティアナ位あるし、ラブちゃんとせつなちゃんはティアナとスバルの中間やな。祈里ちゃんなんてスバル位やなぁ。てか、せつなちゃんって着痩せするタイプやったんやなぁ。響ちゃんに奏ちゃんにエレンちゃん、みなみちゃんにきららちゃんにトワちゃんと中々のサイズや。ゆう子ちゃんにみらいちゃんにさあやちゃんは隠れ巨乳やし。高校生組も粒ぞろいやなぁ。もう堪らんわぁ~♪」

 

「クソっ、アイツら本当に中学生かよ・・・・!」

 

と、おっぱいソムリエのはやても口から涎を一筋垂らしながら、プリキュアチームにギラギラとした欲情の視線を、ヴィータは発育の良いフレッシュチームとスイートチーム(アコは除く)とプリンセスチームに嫉妬の視線を向けていた。

 

「主。TPOを弁えてください」

 

「そない固い事言わんとアインス~。ここは柔らかいのに~」

 

「ち、ちょっと主!」

 

諫めようとするアインスの大きく、形も整った美巨乳をツンとつつくはやて。このままセクハラを始めたら、年頃の女の子達の教育に悪すぎる。どうすればとアインスが考えているとーーーー。

 

「はやてさん・・・・」

 

湯船に浸かっていたゆりがチラリ、とはやてを見据えるて名を呼んだ。

 

「(ビクッ!)」

 

少し離れているのに、何故か良く聞こえてしまったはやてはアインスから手を引っ込め、座ったまま気をつけした。

 

「あまり皆に悪影響を与える事はしないでください」

 

「はい・・・・」

 

ゆりに言われ、顔を青くしながらはやてはイタズラを止めて、身体を洗う事に戻った。

 

「スゴッ・・・・! ゆりさんって実は最強?」

 

「そう言えば、なのはさん達も何かゆりさんには逆らえないって感じだったわね」

 

スバルとティアナは、はやてを大人しくさせたゆりに半眼で苦笑いしながら驚嘆した。はやてがゆりに逆らえないのは、『フェイトの養母』と声質が似ているからであろう。

余談だが、なのは達隊長陣も、ゆりには精神的に頭が上がらなくなっている。

と、ソコでーーーー。

 

「ん? んん?」

 

「どうしましたアコ?」

 

アコが周りを見回りしながら訝しそうな顔をしているので、亜久里が聞いた。

 

「・・・・ねぇ、キャロ、何処に行ったの・・・・?」

 

『えっ?』

 

それを聞いた一同も周りを見るが、確かに、キャロの姿が無かった。

 

「キャロちゃん・・・・何処に行ったのです?」

 

「っ! ま、まさかっ!?」

 

えみるが首を傾げ、アコが嫌な予感がして、耳をすませるとーーーー。

 

ーーーーうわぁあああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!×2

 

男湯の方から、エリオとシローの悲鳴が聞こえ、プリキュア組も魔導師組もビクッ! となった。

 

「やっぱり! キャローーーーーーーー!!」

 

アコがバスタオルを巻いて身体を隠すと、凄い勢いで走りだし、男湯へと向かった。

 

「あ、アコ! 私も行きます!」

 

亜久里も身体にバスタオルを巻いて男湯に駆け出した。

 

「私も行くです!」

 

えみるも続こうとする。

 

「えみる。11歳は入れませんよ」

 

ルールーが駆け出そうとするえみるの肩を掴んで止めた。【男湯では10歳以上の女性の入浴はご遠慮ください】と書かれており、9歳のキャロとアコ、10歳の亜久里(ギリギリだが)しか入れないからだ。

 

ーーーーあ、アコちゃん。亜久里さん。

 

ーーーー何やってんのキャロ!!

 

ーーーー殿方の皆さん! 見てはいけませんわ!

 

男湯の方でキャロの声と、アコと亜久里の怒声が聞こえ、女性陣は苦笑いを浮かべるしかなかった。

この日から、アコと亜久里がキャロのお目付け役となったのであった。

 

 

 

ー輝二sideー

 

「全く、騒がしい風呂だったぜ・・・・。おい少年、牛乳でも奢ってやるよ」

 

「えっ、で、でも・・・・」

 

「子供が生意気に気を使うな。貰えるんなら少し遠慮しながらも貰っておくものだぞ。ほれ、そこの女の子達も」

 

「えっ? 良いんですか?」

 

「ありがとう」

 

「では遠慮なく」

 

「ありがとうございます!」

 

風呂から上がった輝二はほぼ同じ時に上がった女性陣と鉢合わせすると、エリオとキャロ、アコに亜久里、そしてえみるに牛乳を奢った。

 

「あの~嵐山さん。私達にも牛乳を奢って欲しいんですが?」

 

「自分で買え」

 

「冷たい!」

 

「折角暖まったのに寒くなったよ!」

 

「湯冷めしたなら風邪引かないようにな」

 

奢って貰おうとしたはなだが、輝二は冷淡に答え、えりかとひめが抗議するが、全く相手にしなかった。

 

「良いか少年。風呂上がりには牛乳を飲む時は、片手で牛乳を持ち、もう片方の手は腰に置き、グイッと勢い良く飲む!」

「は、はい!」

 

エリオは輝二の動きを真似し、グイッとコーヒー牛乳をイッキ飲みした。その模範的な風呂上がりの牛乳スタイルに、大半が半眼で苦笑いを浮かべる。

 

「これが風呂上がりのマナーだ」

 

「そうなんですか?」

 

『(いや、微妙に違う・・・・)』

 

輝二の言葉にエリオが首を傾げ、他の皆の大半が半眼を作りながら苦笑いを浮かべ、心の中でツッコむ。

 

「特にコーヒー牛乳を飲むのが鉄則だな」

 

「意義あり!」

 

と、輝二がコーヒー牛乳をエリオに勧めようとするが、ソコでえりかが挙手した。

 

「お風呂上がりはイチゴ牛乳だよ!」

 

「意義あり!」

 

今度はなぎさが挙手した。

 

「シンプルイズベスト! 普通の牛乳が一番!」

 

と言い出すと、他にも。

 

「私はフルーツ牛乳だね」

 

「いやいやバナナオレも美味しいよ」

 

「飲むヨーグルトもいけるわ」

 

「アイスが良いよ!」

 

「それ飲み物じゃないでしょ」

 

と、お風呂上がりの飲み物(&甘い物)の論争が起こったのであった。

 

 

 

 

 

 

そして後日、輝二の家の下の階にある、〈便利屋 嵐〉ではーーーー。

 

「テメェら・・・・何で家の事務所に入り浸っていやがるんだっ!!」

 

≪それでもお茶は出すのね≫

 

プリキュアオールスターズの何チームかが、便利屋の事務所に入り浸り、輝二が烏龍茶を出しながら怒鳴るであった。

 




ここから、仮面ライダーリバイスとプリキュアオールスターズの奇妙な腐れ縁が始まった。


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〈便利屋 嵐〉

ー輝二sideー

 

その日、〈便利屋 嵐〉の給湯室にて、輝二はコーヒーミルでコーヒー豆を挽いていた。

 

「(コーヒーミルで好みのコーヒー豆を挽く。これによってコーヒー豆から芳しい香りが漂い、その鼻腔を燻る香りが、俺の疲弊した心を癒してくれる。そうーーーーこのド阿呆共が吹き溜まってしまった事務所の現実から!)」

 

「輝二さぁん! お煎餅のおかわりない?」

 

「輝二さん、このファイルって何のファイル?」

 

「嵐山くん。私にもコーヒーを」

 

「輝二さん、私はコーヒーよりカフェ・オレがいい」

 

「あ、私はカフェラテ」

 

「うるせぇっ! 人の事務所で吹き溜まるなアホ共!!」

 

日替わりで事務所にやって来るプリキュアオールスターズに、頭に血管を浮かべながら怒鳴る輝二。

今日来ているのはアラモードチームとHUGっとチームであり、お煎餅のおかわりをねだるはな、調査ファイルを読もうとするいちか、しれっとコーヒーを頼むゆかり、カフェオレを頼むほまれ、カフェラテを頼むシエル。他は輝二が録り溜めていたクイズ番組とかサスペンスドラマや映画を見ていた。

最初から結構気遣った口調をしていた輝二だが、プリキュア達の図々しさとふてぶてしさにもう素の口調になり遠慮をやめた。

 

「たくっ・・・・」

 

文句を言いつつも作ってやり、さらにお煎餅の追加も持っていく輝二。

 

「ん~。嵐山くんの淹れてくれるコーヒーはとても美味しいわ。プロ級ね」

 

「カフェラテやカフェ・オレも素晴らしいわ。『キラキラパティスリー』で出したいくらいよ」

 

「そらどうも!」

 

ゆかりとシエルが絶賛するが、輝二は事務所をたまり場にされるのにイラついていた。

不機嫌そうに自分の席に座る輝二は、目の前のソファで飲み物や煎餅やスイーツを頬張り、サスペンス映画で誰が犯人なのか当てっこしているプリキュア達に向けて声を発する。

 

「お前らなぁ、人ん家の事務所で毎日毎日入れ代わり立ち代わりで現れやがって、学校とか店はどうした?」

 

「ちゃんと放課後や定休日で来ているから大丈夫!」

 

「それに一緒に戦う事になったんだから、交流を深めるのは大切だよ!」

 

ちなみに、なのは達〈時空管理局〉は、〈フェニックス〉の〈スカイベース〉に行き、〈デッドマンズ〉に関する情報などの為に交流をしている。

輝二とも交流しようと、なのは達は事務所に訪れたが輝二は、

 

【アンタら胡散臭い】

 

と、言って門前払いしたのだ。

それもあって、輝二に関してはプリキュアオールスターズが積極的に関わろうとしているのだ。

 

「学校云々って言うけど、嵐山くんだって学校はどうしたの?」

 

「俺は『休学』しているからいいんだよ」

 

などと駄弁っていると、事務所のドアがコンコンとノックされ、ドアが開くと中学の制服を着た、はな達と同い年の女子中学生が入ってきた。

 

「あの、依頼いいですか?」

 

「うわぁぁぁっ! アホの掃き溜めにようこそ! すぐにこのアホ共片付けますから!」

 

依頼人が来たので輝二は慌ててプリキュア達を給湯室に無理矢理押し込もうとした。

12人も給湯室に押し込められて、プリキュア達がギャーギャー騒ぐが、輝二は構わず押し込むと、給湯室の扉を閉め、手をパンパンと払い少女をソファに座らせた。

ちなみに、赤ちゃんのはぐたんは輝二が用意していたベビーベッド(アイちゃんも使う)で寝ている。

 

「えぇ・・・・オホン。騒がしくて申し訳ないありません。先程のはーーーー野性動物の集団みたいな物とでも思ってください」

 

「はぁ・・・・」

 

ーーーー野性動物とは何だ~!

 

給湯室からそんな声が聞こえるが、輝二は無視して、プリキュア達を押し込む前に取り出したお茶と彼女達が少し散らかしたテーブルを片付け、女子生徒をソファに座らせてから話を聞いた。

女子生徒の名前は『真崎有美<マサキ ユミ>』。ある中学の女子生徒であり、友人からの紹介でこの事務所に来たと言う。

そして依頼の内容は、

 

「ーーーー『松田歩<マツダ アユム>』? あの『全国総合格闘トーナメント 学生の部・男子』で去年優勝した、キックボクシングの?」

 

『全国総合格闘トーナメント 学生の部』。

それは、日本中の中学生から高校生の格闘家達が戦う大会であり、キックボクシングの他に、空手。柔道。ボクシング。レスリング。テコンドー。ジークンドー。ムエタイ。サンボ。カラリパヤット等、徒手空拳の武術を使う学生達か試合をする格闘トーナメントである。

そのトーナメントに去年、高校1年でありながら優勝を果たし、現在は高校二年生となっている筈の学生が『松田歩』である。しかしーーーー。

 

「確か彼は二~三ヶ月程前に交通事故にあって、二度と格闘技ができない身体になってしまって引退した、っと噂に聞いてましたけど・・・・」

 

「はい・・・・私、松田歩さんのファンで、彼の事を調べていたら。松田さん、一週間程前から行方不明になったって聞いて」

 

「! 行方不明? 家族は警察に捜索願を出したんですか?」

 

「出ているようですけど、一向に行方が分からないって聞きました」

 

「(ま、警察なんて一時停止違反や無断駐車やスマホ運転してるヤツを取り締まる事か、人のプライバシーを根掘り葉掘りほじくり回す事くらいしかできないからな)・・・・友人の方達とかは?」

 

「・・・・一応、“恋人だった人”や“友人だった人達”に聞いて見ましたけど、心当たりが無いと」

 

少女が言った言葉に、輝二は一瞬目を細めたが、すぐに戻して話を続ける。

 

「しかし、警察が動いているなら、わざわざ便利屋に相談する事はないと思いますが」

 

「実は、クラスメートの子が、【この便利屋さんに頼んだ方が良いよ】、って紹介してくれたんです」

 

「クラスメート・・・・はっ!」

 

ソコで輝二は気づいた、彼女の着用している制服はーーーー『七色ヶ丘中学』の制服であると。そして、事務所の扉に張り付いている『五つの影』があると。

 

「・・・・・・・・分かりました。出来る限り調査をします。が、その前にーーーー」

 

輝二がサッと扉に近づき、思いっきり開けるとーーーー。

 

「「「「「うわああああああ!!?」」」」」

 

扉に張り付いていたみゆきとあかねとやよいとなおとれいかのスマイルチームが雪崩れ込むように倒れた。

ちゃっかり何人かのスカートの中が一瞬見えそうになったが、輝二は見なかった。

 

≪うっひょぉぉっ! みゆきちゃんは白なのねぇ! れいかちゃんは水色でやよいちゃんはレモン色と白のシマシマぁ!≫

 

「(バイス。後でチクるぞ)」

 

≪ごめんちゃい!≫

 

バイスが興奮するが、輝二にそう言われて大人しくなった。

 

「やっぱり、お前ら依頼人を紹介しやがってどういうつもりだ?」

 

「いたた、どういうつもりって、クラスメートの真崎さんが困っていたから力になろうと思って」

 

「輝二さんって探偵さんみたいな事もしてるって狩崎さんに聞いてたから・・・・」

 

「せやから、ウチらが紹介したんや」

 

「・・・・たくっ」

 

「星空さん達」

 

輝二はみゆき達を事務所に入れると、真崎有美に向き直る。

 

「依頼はーーーー『松田歩を見つけて欲しい』って事ですか?」

 

「はい・・・・あの人を、松田歩さんを、“救って欲しいんです”」

 

「・・・・その依頼、引き受けましょう」

 

「! ありがとうございます!」

 

「じゃ早速、松田歩さんと交流を持った人達から、改めて話を聞いてみましょうか。星空、日野、黄瀬、緑川、青木。お前らはここまでだ」

 

「えぇ~! 何でぇ~!」

 

「私達だって一緒に行きた~い!」

 

「真崎さんにここを紹介したの私達だよ!」

 

「私達にも紹介した責任があります」

 

「・・・・お前らは便利屋の人間じゃないんだ。これ以上は首を突っ込むな。事務所で水道水でも飲んでろ!」

 

「あの、水道水は酷いんじゃ・・・・」

 

「良いんです。人の事務所を遊び場にして入り浸るアホ共なんて、水道水でも勿体無い位なんですから」

 

「アンタ酷すぎやろ!」

 

ブー! ブー! ブー!とブーイングするみゆき達(れいかは除く)だが、輝二は耳を塞いで聞こうとせず、真崎有美を連れて事務所を出ようとする。

 

「あ、そうそう。そろそろ赤ん坊が起きるから、あやしておけ。後給湯室にいるアホの後輩達もな」

 

「「「「「えっ?」」」」」

 

みゆき達が振り向くと、はぐたんが起き出して、はな達がいないと確認してグズリ初め、給湯室からドンドンと叩く音が響き、中からはな達やいちか達の声が聞こえた。

 

ーーーーみゆきちゃん達助けて!

 

ーーーーギュウギュウ詰めになって出られないの!

 

ーーーー密着されてるから身体が痛くなってきた!

 

ーーーーい、息も苦しくなって・・・・!

 

ーーーーうわっ! さあや、おっぱい大きいのです!

 

ーーーーあ、あきらさんも、意外な大きさ・・・・!

 

ーーーーゆかり姫は、予想通りの凄まじい大きさ・・・・!

 

「「「「「・・・・・・・・」」」」」

 

給湯室から聞こえる後輩達の声に、みゆき達は中の地獄絵図を予想して頬をひきつらせていた。

 

「じゃ、後ヨロシク」

 

と、そう言って、輝二は真崎有美を連れて事務所を後にした。

 

 

 

 

 

ー狩崎sideー

 

「あの、狩崎さん」

 

「ん? 何かなミス・沢田?」

 

丁度その頃、〈スカイベース〉に来ていたなのは、フェイト、はやての隊長陣が来ていた。

そしてなのはが、バイスタンプの調整に勤しんでいる狩崎に話しかけた。

 

「何故嵐山くんは、私達の事を【胡散臭い】って言うのか、分かりますか?」

 

なのはは輝二の自分達に対する冷淡過ぎる態度に、ムッとなりつつも腑に落ちないのか、狩崎に聞いてみた。

狩崎はパソコンの画面から視線を外さず、なのは達に向けて口を開く。

 

「・・・・・・・・質問を質問で返すようで失礼だが。私も〈時空管理局〉には、色々と腑に落ちない点があるのだよ」

 

「えっ? それって・・・・」

 

「君達〈時空管理局〉はーーーー今更になって何故地球の問題に首を突っ込んで来たんだい?」

 

「「「っ!!」」」

 

なのはだけでなく、フェイトとはやても肩をビクッと震わせた。

 

「君達が一応解決した『10年前に起きた二つの事件』。それから10年間、この世界には様々な事件が起こった。『沢芽市で起こったクラック事件』。『グローバルフリーズ』。『バグスターウィルス』。『国家を揺るがすテロ』。『ヒューマギア事件』。『異常な時空湾曲』と言った事件。『ドツクゾーン』。『ダークフォール』。『管理国家ラビリンス』。『砂漠の使徒』。『幻影帝国』と言った暗黒の勢力。そんな事件や勢力の中には、この『次元世界』処か、『全平行世界』が危機に陥るような事態が多発していた地球に、今の今まで全く干渉してこなかった〈時空管理局〉が、何故今更になって介入してきたのかな?」

 

なのはに代わって、はやてが話に入ってくる。

 

「それはーーーー地球は管理局にとって、『管理外世界』と定められていて、その管理外世界には干渉してはならないって規則があるんです」

 

「ほぉ、では私達が知らない内に地球は管理局の管理保護下に置かれたから君達が派遣されたのかな? そんな情報は入っていないが?」

 

調整を終えた狩崎は画面から視線を外して、なのは達に向かって振り替えってそう言うと、なのはとフェイトは気まずそうになるが、はやてが何食わぬ顔で続ける。

 

「確かに、今まで私達は何もしてきませんでした。せやけど、私達の故郷である地球に危機が訪れているんです。私達は管理局の魔導師であると同時に、個人としても、この地球を守る為に上層部に無理を言って派遣させて貰ったんです。ソコだけは信じてください!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

はやてが真摯な目を見つめて、狩崎は肩を落とす。

 

「ま。その言葉を“一応”信じよう。だが、輝二くんは私のような理論型と違って、意外に直感型の人間だからね。しかも、彼の『直感力』はかなり優れている。おそらく今私に言った言葉を輝二くんにそのまま伝えても、プリキュアオールスターズが一緒に説得してくれても、彼は君達に対する不信感を撤回しないだろう。彼は他人の評価と自分の直感、どっちを信じるかと言われれば、自分の直感だからね」

 

「そうーーーーですか・・・・」

 

はやてがそう返すと、狩崎は調整を終えたバイスタンプを懐にしまうと、更に新たなバイスタンプの調整を始める。

 

「君達管理局が何の目的で〈デッドマンズ〉に関わるのか今は知るつもりは無いが、輝二くんの邪魔だけはしない方が良いよ。・・・・彼は、『復讐』で戦っているからね」

 

「「「えっ?」」」

 

狩崎の言った言葉に、なのは達は間の抜けた声を発した。

と、ソコで調整を終えた狩崎は、スマホで『ハッピーガール』と表示された相手に連絡をいれた。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

そしてその頃、松田歩の関係者達から話を聞き終えた輝二は真崎有美と共に公園のベンチに腰掛けながら、一息吐いていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「(あのアホ共を連れてこなくて良かったぜ)」

 

双方に沈黙が訪れるが、輝二は気づかれずホッとした。

輝二がプリキュア達を調査に連れてこなかったのは、何も彼女達がウザったいからだとか、邪魔だからと言った理由ではない。まぁ、七~八割ほどそう思っているが、他にも理由がある。

 

「予想通りの“銀蝿”な連中だったな。君も最初から知っていたようだし」

 

「ええ。少し話を聞いてみたので・・・・」

 

≪ひっどい奴等だったよなぁ~、悪魔の俺っちでも引いたよ~≫

 

真崎有美が、“友達だった人達”や“恋人だった人”と、過去形で言っていたので、輝二も予想していた。

ーーーー松田歩の友人達は、松田歩の寄生虫のような人間であり、恋人だった人は松田歩の他にも複数の男子生徒と付き合っていたのだった。

友人だった人達は、『全国総合格闘トーナメント優勝者』と言う肩書きを持った松田歩にゴマ刷っており、さらに彼の名前を勝手に使って、他校の生徒達にカツアゲやらナンパ等を行っていた。

恋人だった女性は、他校のバスケ部のエースだったり、モデルをしている生徒とかと秘密裏に付き合っており、松田歩の事も、『格闘チャンピオンの彼氏』と言うアクセサリーが欲しかったから付き合っていただけだったのだ。

彼らが松田歩の事を【格闘ができなくなったら価値の無いゴミ】と、もう松田歩の事を何とも思っていない態度で悪びれる事なくそう言った時は、正直輝二はソイツらの顔面に拳と蹴りを叩きつけてやりたくて、それを押さえようとかなりの胆力を使ったくらいだ。こんな穢らわしい銀蝿のような奴等をプリキュア達に見せなくてホッとしている。

 

「松田歩さんは、あの人達に捨てられて自暴自棄になって行方を眩ませたって事でしょうか?」

 

「・・・・いや、クラスメートやキックボクシングジムの人達から聞くと、そうでもないようですね」

 

その恋人や友人達だけでなく、同じ高校のクラスメート達やジムの人達にも聞いてみた所ーーーー松田歩は気が優しく人当たりも良く、自分が学生チャンピオンだからとひけらかそうともせず、気さくな感じで接し、練習もひた向きに、真面目に取り組む模範的な性格だったらしい。

どちらかと言えば、友人だった奴等と恋人だった女が付きまとっていて、その人の良さから邪険にできず、仕方なく付き合っていたようだ。

 

「(煙たがっていた奴等が近づかなくなった。俺だったら少し安心感すら持てる。それなのに行方不明とは・・・・)この人からも、聞いてみようかな?」

 

と、ソコで輝二はジムの人達から、松田歩が交通事故にあって一週間後にやって来た、学生トーナメント決勝戦で松田歩と戦ったレスリングの選手の事を聞き、スマホで調べて写真が表示された画像を見る。

 

「名前は『宮岡孝治郎<ミヤオカ コウジロウ>』。レスリングの選手で、松田歩さんとは中学時代からの格闘のライバルだった人物。松田歩さんが怪我で格闘ができなくなってしまったと聞いて、何度か尋ねたりしていたようだ。しかも、彼が行方不明になったのを期に彼もジムに来なくなったーーーー」

 

「その人から松田歩さんの事が聞けるかも知れないね!」

 

「ああ、ちょうどこの辺りがランニングコースにもなっているから・・・・ん? どおぉぅっ!?」

 

不意に聞こえた声に応対した輝二は、嫌な予感をして顔をあげると、めぐみ、ひめ、ゆう子、いおなのハピネスチャージチームがおり、思わず座ったまま器用にずっこけた。

 

「な、何でお前らがここにっ!?」

 

「ふっふ~ん。実は、この〈プリキュアライン〉で、輝二さんがめぐみちゃん達が連れてきた依頼人さんと、松田歩さんの捜索をしているって書かれていたの!」

 

めぐみがスマホを取り出して画面を見せると、ソコにはみゆきにいちかにはなの顔写真が入ったラインに、【輝二さんに依頼が入ったよー☆】、【私達のクラスメートの女の子(^-^)】、【輝二さんの手助けできる子達はヨロシクー♪】、と書かれていた。

 

「こんなアプリいつ出来た!?」

 

「ありすの四葉財団が作ったプリキュア専用のアプリ!」

 

「これで私達連絡を取り合っているんです」

 

「金持ちがしょうもない事に金を使いやがって!!」

 

「まぁまぁ落ち着いて・・・・」

 

ひめといおなが〈プリキュアライン〉を見せると、輝二は頭に血管を浮かばせて怒鳴るが、ゆう子が笑みを浮かべながら抑える。

 

「んで、そこのいる青少年は誰だ?」

 

めぐみ達と一緒にいる、学生服を着た少年を見て、輝二はある程度の予想を立てながらコメカミをピクピクさせる。

 

「はい! 私達の友達で、『誠司』です!」

 

「あぁ~、『相楽誠司』です。どうも・・・・」

 

「お前ら、春野達から聞いていなかったのか? 俺の事を知る人間を作るなって! その頭には記憶力ってモンがねぇのかっ!?」

 

「大丈夫です! 誠司はちゃんと秘密は守ってくれますから!」

 

「そうじゃねぇよ! 人の頼みをマトモに聞けねぇのかっ!?」

 

「お、落ち着いて嵐山さん!」

 

それから数分して漸く輝二の怒りも収まっていき。

 

「あの、嵐山さん、この子達は?」

 

「ーーーーあぁ、気にしないでください。星空達のように事務所に集まってくるドアホウ軍団の一つです」

 

「「「ドアホウって何ですかっ!?」」」

 

「「あははは・・・・」」

 

輝二がそう言うと、めぐみとひめといおながツッコむが、ゆう子と誠司は苦笑いを浮かべた。

 

「それで、その宮岡孝治郎さんはここを通るの?」

 

「・・・・ここがランニングコースだからな。この時間帯に通る事は調査済みーーーー言った側からだ」

 

輝二が目を向けると、ランニングウェアを着用した高校生とは思えない大柄の体格をした少年がランニングをしていた。ウェア越しからでも、鍛えられた身体をしているのが分かり、写真と見比べて見て一致していた。

 

「ちょっとすみません宮岡孝治郎さんですよね?」

 

「あ?」

 

宮岡孝治郎は足を止めて、輝二と真崎有美を見ると目を細めた。

 

「そうだけど。なんの用だ?」

 

「いやですね。俺達松田歩さんのファンでしてね。彼が最近行方不明となったと心配になりまして、ライバルであったあなたなら、何か知っているのではないかと思いましてね」

 

「・・・・へぇ~」

 

宮岡孝治郎は、唇の端を小さくあげると、ウェアのポケットから、スタンプを取り出した。

 

「これ、何か分かる?」

 

「っ! バイスタンプ・・・・!?」

 

「えっ?」

 

「「「「っ!!?」」」」

 

「何っ!?」

 

宮岡孝治郎が出したのは、『蟹が刻印されたバイスタンプ』だった。

 

[キングクラブ!]

 

「さぁ、死合開始だっ!」

 

宮岡孝治郎はバイスタンプを自分に押印したその時、白い契約書の束か身体から溢れ出て人型に集まり、頭部が折紙の蟹となり、両手が鋭い鋏となった怪人を形成した。

 

『キシャァァァァァ!!』

 

怪人、〈キングクラブ・デッドマン〉は、両手の鋏を振り下ろして、輝二と真崎有美に襲い来るが、輝二が真崎有美を抱えて後方に飛び退くと、鋏は地面に叩きつけられ地面に切り傷を作った。

 

「ちっ! 〈デッドマンズ〉の信者かよ・・・・!」

 

[リバイスドライバー!]

 

輝二はリバイスドライバーを装着すると、めぐみとひめとゆう子は『プリチェンミラー』を、いおなは『フォーチュンピアノ』を取り出す。

 

「今一燃えてこねえけど・・・・」

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

その音声と共に、輝二はスタンプに息を吹き、ドライバーにセットすると、輝二の身体からバイスが現れ、巨大なスタンプを手に持っていた。

 

「変身!」

 

輝二はそのまま『レックスバイスタンプ』をベルトに押印しスタンプを横に傾ける。

 

≪ほいっとっ!≫

 

スタンプを掲げたバイスが、輝二に向けてスタンプを振り上げる。

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

「ふっ」

 

「イエイ!」

 

[かわルンルン!]

 

「「「プリキュア! くるりんミラーチェンジ!」」」

 

「プリキュア! きらりんスターシンフォニー!」

 

「世界に広がるビッグな愛! キュアラブリー!」

 

「天空に舞う蒼き風! キュアプリンセス!」

 

「大地に実る命の光! キュアハニー!」

 

「夜空にきらめく希望の星! キュアフォーチュン!」

 

「「「「ハピネス注入! しあわせチャージ! ハピネスチャージプリキュア!」」」」

 

リバイスに変身した輝二とラブリー達が、キングクラブ・デッドマンへと向かった。

 

「はぁぁぁ!」

 

「とわぁ!」

 

先陣を切って、ラブリーとバイスがキングクラブ・デッドマンに拳と蹴りを繰り出す。

 

『キシっ!』

 

その時、キングクラブ・デッドマンは頭を向け二人の攻撃を受けた。

 

バキィィィィッ!

 

二人の攻撃を受け、その音が辺りに響くと。

 

「「い、いぃ、いったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃっ!!」」

 

ラブリーが殴った拳が真っ赤に腫れ、バイスが足を押さえてピョンピョンと跳ねた。



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魔導師VS悪魔

注意
今回の話、リリカルなのはファンには不快な思いをさせます。それでもよろしい方、非難中傷をしない方は進んでください。嫌な方は見ないでください。


ーリバイスsideー

 

「おう! おう! おう! おう!」

 

「いたたたたたたたたたた!!!」

 

キングクラブ・デッドマンに攻撃したバイスとラブリーは足と拳を押さえて痛みに悶えていた。

 

「『キングクラブ』、第一フェーズとは言え、流石は甲殻類と言った処か。バイスと馬鹿力担当組プリキュアの一人であるラブリーの一撃を食らってもビクともしてない」

 

「いや馬鹿力担当プリキュアって・・・・」

 

「力任せでガンガン攻める戦闘のプリキュアだ。各チームにも1人あたりはいるだろう? いないチームもいるが」

 

リバイの言葉に、誠司やプリンセス達は先輩プリキュアや後輩プリキュアの何人かの顔が思い浮かんだ。

 

『キシャァァァァ!!』

 

と、バイスとラブリーが遊んでいる間に、キングクラブ・デッドマンは、大量の泡を口から吐き出し、それをバイスとラブリーに向かって放つと、泡は二人を取り囲むように浮かんでいた。

 

「おぉいてて・・・・えっ?」

 

「フー! フー!・・・・何?」

 

脚を擦っていたバイスと、拳に息を吹いていたラブリーが、その周りに浮いている泡を訝しそうに見て、チョンっと触れようとする。

 

「っ! 馬鹿! 不用意に触るな!」

 

「「えっ?」」

 

リバイの叫びが響くと同時に、二人の指先が、泡に触れたその瞬間ーーーー。

 

ーーーードカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ・・・・!!

 

触れた泡が爆発し、そこから連鎖するように他の泡が爆裂を始め、バイスとラブリーを包んだ。

 

「バイス!」

 

「「「「ラブリー!!」」」」

 

リバイとプリンセス達と誠司が叫ぶと、爆発の中から、ヒュルル~、と、バイスのラブリーが少し身体を黒くして地面に頭から落下した。

 

「ヒデブッ!」

 

「ギャフン!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

リバイ達が二人に駆け寄り、リバイが倒れたラブリーの状態を見て、頭が地面に突き刺さったバイスを引っこ抜くと、指でチョンチョンとつつくと。

 

「うん。バイスは少し軽傷。ラブリーも軽傷だな。咄嗟に脱出しようとしたのが幸いしたな」

 

「し、死ぬかと思った・・・・!」

 

「一瞬お花畑が見えた・・・・!」

 

そんな二人の様子を遠巻きで見ながら、宮岡孝治郎はキングクラブバイスタンプに視線を向ける。

 

「・・・・・・・・ふん。こんなものか」

 

「?」

 

リバイはそんな宮岡孝治郎の妙に素っ気ない態度と言うか、不機嫌な態度を訝しそうに見ると、真崎有美が宮岡孝治郎に近づき、声を発する。

 

「・・・・さんを・・・・」

 

「あん?」

 

「松田歩さんを、何処にやったんですかっ!?」

 

「・・・・・・・・」

 

宮岡孝治郎は真崎有美を少しジッと見ると、

 

「アンタ。奴の何だ?」

 

「私は、彼に会いたいんです!」

 

「・・・・・・・・」

 

真崎有美の言葉に、少し思案すると、宮岡孝治郎はハァッと息を吐いた。

 

「良いだろう。一緒にこい」

 

宮岡孝治郎はキングクラブ・デッドマンの背に乗っかると、キングクラブ・デッドマンは両手で真崎有美を抱き抱えるように持ち、そのまま飛び上がろうとする。

 

「っ! 不味い!」

 

「誠司!」

 

誠司がそれに気づいて、飛び出したキングクラブ・デッドマンの腕に掴んで、一緒に飛び去ってしまった。

 

「しまった!」

 

「誠司!!」

 

リバイはすぐにガンデフォンを操作するが、プリンセスは大声をあげる。

 

「誠司・・・・すぐに追おう!」

 

「「「うん!」」」

 

ラブリーがそう言うと、四人はキングクラブ・デッドマンを追って、背中から羽を生やして飛んでいった。

 

「良いのかよ輝二?」

 

「アホ共はあれで良いさ。さてと・・・・」

 

輝二はガンデフォンを操作すると、地図のような画面が映し出され、移動するマーカーがあった。

 

「何よこれ?」

 

「もしもって事があると思って、真崎有美さんにGPS発信器を持たせていたんだ」

 

「うわぉっ! 用意が良いじゃん輝二!」

 

「それラブリー達にも教えてあげれば良かったんじゃないの?」

 

「教える前に飛び出してーーーーうわぉっ!!」

 

「うひゃぁっ!」

 

声がする方に振り向くと、アラモードチームの六人がそこにいた。

 

「な、何でここにいやがる!?」

 

「ラブリー達が〈プリキュアライン〉でここに輝二さんがいるって教えてくれたんです」

 

「人を給湯室に押し込んだ事に文句言ってやろう思ってな!」

 

「私達が一番近くにいたのよ」

 

「それでいざ来てみれば、爆発が連続で起こって、〈デッドマンズ〉かと思って変身して駆けつけて見れば」

 

「蟹ようなデッドマンが、相良くんと真崎有美さんを連れていったのをが見えたのよ」

 

「あっそ」

 

そう答えると、リバイはマーカーが一ヶ所に止まったのを確認した。

 

「っ! 松田歩さんが所属するキックボクシングジムの前のジムがあった場所か」

 

「えっ? 前のジム?」

 

「松田歩さんの所属するジムは、二年前に新しい建物に移転したんだ。ここはその前にあったビルの場所だ。確か今は閉鎖されたって聞いたな」

 

「隠すとしたら、うってつけね」

 

「よし。行くぞバイス」

 

「おうよ!」

 

リバイはレックスバイスタンプを外すと、『プテラバイスタンプ』を取り出した。

 

[プテラ!]

 

『プテラバイスタンプ』をドライバーに押印する。

 

[Come on! プ・プ・プテラ! Come on! プ・プ・プテラ!]

 

音声を響かせながら、スタンプを横に倒した。

 

[バディアップ!]

 

『そぉらっ!』

 

バイスがバイスタンプを担いで、リバイに叩きつける。

 

[上昇気流! 一流! 翼竜! プテラ! Flying by! Complete!]

 

「よっしゃ、行ってみよう!」

 

『いやバイス何それぇっ!?』

 

ホイップ達(マカロンも目をパチクリ)が目を見開いて、『プテラゲノム』になったバイスを指差すが仕方ない。何故なら、バイスがエアロバイクになっていたのだから。

 

「へっへ~カッコいいだろう?」

 

「いやカッコいいけど! 何でお前バイクになってんだよっ!?」

 

「プテラだとこうなっちゃうのよ」

 

「うふふ。本当に面白いわ」

 

「ところで、輝二さんは?」

 

カスタードがリバイを見ると、リバイはガンデフォンで狩崎に連絡を取っていた。

 

「キングクラブ・デッドマンの能力はそんな所だ。・・・・あぁ、その周囲の民間人をすぐに避難させてくれ。何? 管理局の魔導師達が近くにいたから向かわせた? 良いのか、アイツらどうも〈デッドマンズ〉を舐めている様に見えるが・・・・・・・・だな、俺もすぐに行く」

 

どうやら狩崎と連絡を取っていたようで、ガンデフォンを切ると、バイスに乗り込む。

 

「行くぞバイス!」

 

「無理だ!」

 

「何で無理何だよ?」

 

「だってーーーー定員オーバーだもん!」

 

「はぁ? ってうお!?」

 

リバイが周りを見ると、ホイップ達もバイスの乗り込んでいた。

 

「何でお前らまで乗ってんだ!?」

 

「私達も一緒に行く!」

 

「バイス、発進しなさい!」

 

「イヤだから定員オーバーなの!」

 

「根性出せ! 悪魔のガッツを見せろ! 悪魔のガッツを!」

 

「いや何その根性論!?」

 

「さ。兎も角出発よ」

 

「んもう!」

 

パルフェにジェラート、マカロンに言われ、バイスが何とか宙に浮くが、いつもよりも遅かった。具体的に言うと、速度80㎞の車と同じくらい。

 

「何してんだバイス! いつものスピードが出ねえじゃねぇか!」

 

「無理だよこんなに乗ってんだから! 輝二の体重が65キロで、プリキュアちゃん達一人一人の体重が40『(ギロッ!)』ーーーー訂正します。35キロくらいしてそれが六人だからえっと・・・・」

 

体重の事を言いそうになると、ホイップ達に恐い目付きで睨まれ、訂正するバイスが計算するが分からず、代わりにカスタードが答える。

 

「35キロが六人で210キロで、輝二さんの体重と合わせると275キロですね」

 

「やっぱお前ら降りろ!」

 

「こんな空の上で無茶な!」

 

「お前らなら落ちてもかすり傷で済むだろうが!」

 

ギャー! ギャー!騒ぎながら、リバイス達は目的の場所へと向かった。

 

 

 

 

ー誠司sideー

 

誠司と真崎有美は、ラブリー達を振り切ったキングクラブ・デッドマンと宮岡孝治郎と共に、閉鎖された五階建てのビルの最上階に到着すると、フロアの中央に置かれたリングを見つめながら壁に寄りかかり、松葉杖を傍らに置いた人物を見つける。

 

「松田さん!」

 

「あれが、松田歩?」

 

真崎有美が駆け寄り、誠司も前にスマホで見た事のある松田歩と疑問に思った。何故なら、彼は目が虚ろで、無気力に壁に寄りかかり、まるで糸の切れたマリオネットのようになっていた。

そんな松田歩の近くに置いてあったコンビニ袋を宮岡孝治郎が持って、中にあるおにぎりとお茶を取り出して、松田歩につき出す。

 

「また食ってねぇのか? 食わねえと持たねぇぞ」

 

「おいアンタ! 何で松田歩さんをこんな所に監禁したんだ!?」

 

誠司が、近くにいるキングクラブ・デッドマンに臆することなく、食って掛かるが、宮岡孝治郎は頭を掻いて話す。

 

「俺が監禁してるんじゃねぇよ。コイツがここから動かねぇんだ」

 

「えっ?」

 

「お前ら、俺がコイツを誘拐したと思っているようだがな。俺がコイツを見つけた時には、コイツはこんな状態で、あのリングをボーッと眺めていたんだよ」

 

「嘘、じゃないよな?」

 

「何で俺がそんなすぐバレそうな嘘を言うんだよ。行方不明になったって聞いて、俺も方々を探していて、漸く見つけたと思ったらコイツ・・・・」

 

「そこまでや!」

 

『っ!』

 

突然フロアに響いた声に振り向くと、フロアの扉を開いて、はやて達〈時空管理局 機動六課〉が現れた。因みにFW陣はヒトミ達〈フェニックス〉の隊員達と避難誘導をしている。

 

「(あっ、良い歳してプリキュアみたいな格好してる成人女性達。この人達が〈時空管理局〉って所の魔導師か)」

 

誠司は内心、なのは達隊長陣にかなり失礼な事を考えていたが、それに気づかず、はやてが杖を宮岡孝治郎に突きつける。

 

「宮岡孝治郎さん。今すぐ松田歩さん。真崎有美さん。そして相楽誠司くんを解放し、バイスタンプを置いて投降してください。さもなくば」

 

「さもなくば?」

 

「実力行使で、止めさせていただきます」

 

はやてがそう言うと、宮岡孝治郎は一瞬松田歩に視線を向けると、キングクラブバイスタンプを握り、近くにいた誠司にしか聞こえない声で呟く。

 

「コイツらに倒されれば、奴も目が覚めるかも知れないな・・・・」

 

「ん?」

 

「・・・・やれ」

 

『キシャァァァァァァァ!』

 

キングクラブ・デッドマンがはやて達に襲いかかる。先陣を切ったのは、シグナムとヴィータ。

バトルマニアのシグナムは以前からデッドマンと戦ってみたいと思っており、ヴィータは先日のスパイダー・デッドマンでの雪辱晴らしだ。

 

「はぁぁぁぁぁっ!」

 

「ぶっ潰れろぉっ!」

 

シグナムが剣型デバイス『レヴァンティン』を、ヴィータが鉄槌型デバイス『グラーフ・アイゼン』を振って、キングクラブ・デッドマンに叩きつけた。

なのは達も、六課で攻撃力に優れた二人の攻撃で、キングクラブ・デッドマンがやれると思い、静観したが・・・・。

 

ーーーーガキィィィィィィィィィィン!!

 

レヴァンティンとアイゼンを叩きつけたまま動かないシグナムとヴィータ。キングクラブ・デッドマンの装甲には傷一つついておらず。

 

『キシャァァ』

 

平然としていた。そして。

 

「ぐ、うぅぅぅぅ・・・・!」

 

「い、いてぇぇぇ・・・・!」

 

シグナムとヴィータは手がが痺れたような声をあげて後ずさった。

 

「シグナムさん! ヴィータちゃん!」

 

「嘘! 二人の攻撃が通じていない!?」

 

「逆に二人があまりの防御力に技の反動を受けたんか!?」

 

『キシャァァァァァァァ!』

 

追撃しようとするキングクラブ・デッドマンだが、二人が後退できるようになのはと一瞬で側面に移動したフェイトが魔力弾を放つ。

 

「アクセルシューター!」

 

「プラズマランサー!」

 

桃色と金色の魔力弾がキングクラブ・デッドマンに着弾する。

 

『キシャァァァァ・・・・!』

 

キングクラブ・デッドマンが怯むと、シグナムとヴィータがデバイスから薬莢が射出される。

 

「『紫竜一閃』!」

 

「『ラケーテンハンマー』!」

 

『ギシャァアアアアアアアアア!!』

 

炎を纏った刃と巨大化したハンマーを受けて、キングクラブ・デッドマンは仰向けに倒れる。が、すぐに起き上がり、泡爆弾を放つが、なのはとフェイトが魔力弾で撃破して行く。

 

「・・・・・・・・」

 

「(何だこの人?)」

 

不利な状況を見て、宮岡孝治郎は怯んだ様子も、焦った様子も見せず泰然としており、誠司にはその様子に不気味さを感じていた。

 

「・・・・こんな物か」

 

と、素っ気ない態度を取っていた宮岡孝治郎のポケットから、バイブ音が鳴り、彼がスマホを取り出して電話に出る。

 

「アンタか。こんな物で“奴”の望みが叶うのかよ?」

 

《ーーーーーーーー》

 

電話の内容は聴こえなかったが、微かに聞こえる声から男のようだった。

 

「・・・・ふぅ~ん。それじゃ、それも試してみるか」

 

宮岡孝治郎はスマホを切ると、キングクラブバイスタンプを強く握った瞬間、身体から白い契約書が現れ、それに押印した。

 

『キシャァァァ・・・・!!』

 

『っ!!』

 

「・・・・・・・・」

 

その瞬間、白い契約書は赤く染まり、キングクラブ・デッドマンの身体が紙の束へと変わり、宙を舞いながら宮岡孝治郎の身体に纏わりつき、その身体が大きく変貌させ、その様子を魔導師達も、真崎有美も目を見開き、松田歩はゆっくりと顔を向けた。誠司は二人の前に立ち、守るように身体を屈める。

紺色の人間大のスマートの身体に棘付きの紺色の甲羅で覆われており、両肩は巨大な蟹の鋏となっており、背面に四つの蟹の足が折り畳まれており、脚にも蟹の足のような鎧を纏った姿。

〈キングクラブ・デッドマン フェーズ2〉である。

 

『これが悪魔の力、か・・・・』

 

「フェーズ2になった・・・・!」

 

「丁度良い!」

 

「蜘蛛野郎もフェーズ2だったからな!」

 

シグナムとヴィータは、再びデバイスから薬莢を射出させて技を放とうとした。が、その瞬間、キングクラブ・デッドマンは自分の周囲に泡を吐き出す。泡は弾けるとその水分が床に広がる。

 

「爆発しない?」

 

「へっ! 不発かよ!」

 

シグナムとヴィータに向けて泡を放ち続けるが、泡はやはり爆弾せず、その水分だけが二人の身体に纏わり付いただけだった。

 

『(勝った!)』

 

二人はキングクラブ・デッドマンに肉薄し、武器を握り締め、地面を強く踏みつけ、デバイスを叩きつけた。なのは達も勝利を確信し、笑みを浮かべたその瞬間・・・・。

 

ーーーーツルッ。

 

「「はっ?」」

 

[[え・・・・?]]

 

『へ・・・・?』

 

シグナムとヴィータ、二人のデバイスも、そしてなのは達も間の抜けた声を漏らした。

理由は単純、シグナムとヴィータのデバイスがキングクラブ・デッドマンに当たった瞬間、手からツルッとデバイスが離れ、足元もツルッと滑りバランスを崩して二人はそのままーーーー。

 

「「ぐはぁっ!!」」

 

顔面から床に盛大にスッ転んだ。

 

『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?』

 

なのは達が顎が外れんばかりに驚いた。

転んだ本人達の方が戸惑っていた。

 

「な、何だよこうわぁ!」

 

「身体が! す、滑って!」

 

シグナムとヴィータが起き上がろうとするが、ツルツル滑って起き上がれなかった。

 

「ど、どういう事です?」

 

「っ! あの泡よ! 爆発する泡じゃなくて、滑りやすい、まるで潤滑剤のような物質で出来ているのよ!」

 

「それでシグナムとヴィータは滑ってしまったのか!?」

 

「デバイスも、身体が潤滑剤にまみれた手に握られていたから滑って離れてしまったのか!」

 

リィンが驚き、シャマルが二人が浴びた泡が原因だと叫ぶと、ザフィーラとアインスが驚愕した。

 

『・・・・・・・・』

 

「むっ!」

 

「何だ!」

 

キングクラブ・デッドマンはシグナムとヴィータの首を逆さまに抱え上げて、後方へブレーンバスターを叩きつけた。

 

「がはっ!」

 

「ぐぁっ!」

 

二人は防御魔法の展開が間に合わず、背中を強かに痛めると、床がビキビキとひび割れて砕け、そのまま五階から一気に一階にまで床を突き破った。

 

「「ああああああああああああ!!」」

 

「シグナム! ヴィータ! ぬぉっ!?」

 

ザフィーラが割れた穴から助けに向かうと穴の中からキングクラブ・デッドマンがザフィーラの頭を掴んで、天井を突き破ると、空中でザフィーラをパイルドライバーで同じく一階まで叩きつけた。

 

「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

『ザフィーラ(さん)!』

 

なのは達の叫びと共に、キングクラブ・デッドマンが泡を穴の下に向けて吐き出しながら出てきた。そしてーーーー。

 

「ふん(パチン)」

 

ーーーードカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカドカ・・・・!!

 

一階から連続で爆発が起こった。

 

《シグナム! ヴィータ! ザフィーラ! 応答しいや!》

 

《ふ、不、覚・・・・!》

 

《ぢ、ぢぐじょう・・・・!》

 

《も、申し訳、ありません主・・・・!》

 

弱々しいが、どうやら無事のようだ。はやてはアインスとシャマルに三人の救助の向かわせると同時に、

 

「『ソニックムーヴ』!」

 

フェイトが加速してキングクラブ・デッドマンに近づき、デバイスの『バルディッシュ』を金色の魔力光の刃の大鎌に変形させると、キングクラブ・デッドマンの後ろから切りかかる。

 

「(貰った!)」

 

フェイトの刃が届くその寸前、キングクラブ・デッドマンはひらりと受け流し、フェイトの首目掛けて、アックスボンバーを叩きつけた。

 

「なっ!?」

 

『丸見えなんだ、よ!』

 

ーーーードンッ! グギリッ!

 

「かっはっ!!」

 

喉に強烈な衝撃が入り、呼吸が止まってしまったフェイトの耳に、キングクラブ・デッドマンの無情の声と首の関節から嫌な音が響いた。

キングクラブ・デッドマンは腕を思いっきり振ったその瞬間、フェイトは空中を何度も空転してから、床に仰向けに倒れた。

 

「「フェイトちゃん!!」」

 

「ぁっ・・・・ぁぁっ・・・・!」

 

『ふん』

 

なのはとはやての声が響くと、フェイトは喉を押さえて苦しそうな声を漏らし、キングクラブ・デッドマンが背中を蹴り飛ばして、なのは達の近くに転がった。

 

「アカン! 呼吸困難になってもうてる!」

 

「お、応急措置ですぅ!」

 

「・・・・・・・・よくも」

 

リィンが慌てて対処するのを見て、なのはが目元を影で隠しながら、杖型デバイス『レイジングハート』の先端をキングクラブ・デッドマンに向けて、魔力を集中させる。

 

『こんな・・・・(ガキン)ん?』

 

キングクラブ・デッドマンの身体に、桃色の鎖が巻き付いて拘束した。なのはの『バインド』だ。

 

「よくもフェイトちゃん達をーーーー少し、頭冷やそうか?」

 

『っ! 不味い・・・・!』

 

拘束されたキングクラブ・デッドマンが息を詰まらせる。恐ろしい気配を纏って冷酷な笑みを浮かべたなのはに対してではない。

今から放たれる攻撃が、自分の後ろにいる松田歩に真崎有美、そして二人を守っている誠司が巻き添えになるのではないかと危惧しているような様子だ。

 

[マスター! 冷静に!]

 

「大丈夫だよレイジングハート。私は落ち着いてるから・・・・!」

 

見るからに冷静ではないなのはの様子に、はやてはキングクラブ・デッドマンを見て、ハッとなった。

 

「待ってなのはちゃん! 奴の後ろにはーーーー」

 

「『ディバインバスター』!!!」

 

はやての声が届く前に、なのはが杖から魔力砲を放ち、それが拘束を引きちぎったキングクラブ・デッドマンに当たった。

 

ーーーーバシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・・!

 

「「「なっ!」」」

 

が、なのはとはやてとリィンが驚愕する。キングクラブ・デッドマンは腕を交差させてなのはの砲撃魔法に耐えながらゆっくりと近づき、なのはの杖の真正面に来た。

 

『テメエ・・・・! 俺の後ろにいる奴らを巻き添えににするつもりかっ!!』

 

「え・・・・あっ!」

 

キングクラブ・デッドマンに言われ、なのはは奴の後ろにいる誠司達の存在に気づいて、しまった、と云わんばかりに目を見開いた。

キングクラブ・デッドマンは両肩の鋏が腕に移動させると片方の腕を振り上げると。

 

ーーーージョキン!

 

何と、レイジングハートの先端を鋏で切り捨て、砲撃魔法が止んだ。

 

「な・・・・!」

 

なのはが驚愕すると、その眼前にキングクラブ・デッドマンが顔を近づけ、吐き捨てるようになのはに言う。

 

『テメエの方がーーーー頭冷やせや!』

 

「ぐぅっ!」

 

なのはは思わず“お腹を庇うように”両手で守るが、キングクラブ・デッドマンは、腕の鋏を取り普通の腕に戻すと、なのはの首を逆手に持ち上げ片足をもう片方の手で掴むと、自分の頭になのはの背中を乗せバックブリーカーをかけた。

 

『うおらっ!』

 

ーーーーゴキリッ!

 

「うあああああっ!!」

 

「なのはちゃん!!」

 

なのはの背中から嫌な音が響き、はやてが叫ぶと、キングクラブ・デッドマンなのはを下ろす。なのはは腰を押さえて動けなくなった。

 

「ぅ、あぁ・・・・ぐぅぅぅ・・・・!」

 

「くっ!」

 

『遅い!』

 

「あ・・・・!」

 

『ふん!』

 

ーーーーペキッ!

 

「ああああああああああっ!!」

 

「はやてちゃん!!」

 

はやてが杖・『シュバルトクロイツ』を構えたその瞬間、キングクラブ・デッドマンははやての腕を取り、ハンマーロックで肩の関節を外し、はやてとリィンの悲鳴が響く。

 

「くっ・・・・!(アカン・・・・! 甘く見とった・・・・! 〈デッドマン〉の強さを、甘く見すぎてもうてた・・・・!!)」

 

はやてが渋面を作って、キングクラブ・デッドマンを睨み付けるように見上げると、キングクラブ・デッドマンは窓を見て後ろに退いた。

 

『準備運動はここまでだな』

 

ーーーーグワシャァアアアアアアアアン!!

 

「うわぁぁぁぁっ!!」

 

「のへぇぇぇぇっ!!」

 

「「「うああああ!!」」」

 

キングクラブ・デッドマンがそう呟くと、フロアの窓をぶち破って、エアロバイクに乗ったリバイと、ホイップにマカロンとショコラが入ってきた。

 

「あ、あんたら・・・・」

 

「あてて、真打ち登場、ってな!」

 

リバイが構えると、窓の向こうでは、“蝶々の羽を生やしたスマイルチーム”が、カスタードとジェラートとパルフェを抱えて飛んでいた。何故か目を閉じたマーチをサニーが手を引いていたが。

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「(ちっ、格闘トーナメント準優勝者に悪魔の身体能力が加わると思っていたより厄介のようだな)」

 

さて、リバイスが突撃するほんの数分前、ガンデフォンから狩崎の連絡で、魔導師達の戦況を聞いていたリバイスとアラモードチームに近づく五人の人影が。

 

「あっハッピーに皆!」

 

「おーい! 輝二さん! ホイップ!」

 

ハッピー達が近づくと、ハッピーはリバイにバイスタンプを渡した。

 

「新しいバイスタンプか?」

 

「うん! 狩崎さんが是非使って欲しいって!」

 

「そうか、助かる。お前ら飛べたのか?」

 

「『チョウチョデコル』クル!」

 

ハッピーの肩に乗った精霊の『キャンディ』がそう言った。

 

「・・・・それで、マーチはどうした?」

 

リバイはサニーに手を引かれながら目を力強く瞑っているマーチに呆れた声を発すると、サニーは苦笑いを浮かべた。

 

「マーチは高い所苦手やからなぁ」

 

「だ、だって~・・・・!」

 

「ま、丁度良い。ハッピー。ピース。ビューティー」

 

「「「はい?」」」

 

「定員オーバーで困っていたから、コイツら任せる」

 

リバイがアラモードチームを指さすと、ハッピー達は苦笑いを浮かべながら、ハッピーがパルフェを抱え、ピースがカスタードを抱え、ビューティーがジェラートを抱えた。

 

「バイス。これで少しは軽くなったろ?」

 

「おおよ!」

 

「それじゃ急ぐぞ!」

 

リバイがバイスを操作すると、先ほどよりも速いスピードで空を駆けていき、ハッピー達も急いで追いかけた。




この小説のメインはリバイスとプリキュアなので、なのは達はあまり役に立たないようになります。


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青春コング・カーン!

ーリバイスsideー

 

「おいよいよいよい。どうやらナイスなタイミングで登場したんじゃないの?」

 

「なのはさん! フェイトさん! はやてさん!」

 

「大丈夫ですか!?」

 

「これは、かなりのピンチだったようね」

 

レックスゲノムに戻ったバイスが、ボロボロになったなのは達を見て言うと、ホイップとショコラが駆け寄り、マカロンは〈フェーズ2〉になったのだろうキングクラブ・デッドマンに鋭い視線を寄越した。

リバイがはやての関節が外れた肩に触れる。

 

「・・・・ふむ。この程度なら、大丈夫だな」

 

「だ、大丈夫って何(グギリッ!)にょわああああああああああああああっ!!」

 

「は、はやてちゃんっ!?」

 

「こ、輝二さんっ!?」

 

「嵐山くんっ!?」

 

「あらまあ」

 

リバイがはやての外れた肩をグギリッ! と動かすと、はやてが喉が瞑れんばかりに悲鳴をあげ、リィンとホイップとショコラが驚き、マカロンも小さく目を見開いた。

 

「な、何すんねん!!」

 

はやてがリバイを払ったが、リバイは何なく回避した、肩が外れて動かなくなった腕を。

 

「あ、あれ?」

 

はやてが間の抜けた顔で肩をさすった。

 

「綺麗に外されていたのが幸いしたな。お陰で関節を戻すのが楽だった(いや寧ろ、“わざと綺麗に外したのかもな”)」

 

「か、関節が戻った?」

 

「あくまで応急措置だから無理に動かすな。一生脱臼に悩みたくなかったら大人しくしてるんだな。さて、こっちの二人も」

 

ーーーーべギリッ! ゴギリッ!

 

「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

リバイは今度はなのはの腰の関節と、フェイトの首の関節を戻したが、あまりの荒っぽい処置による激痛で悲鳴をあげる二人。

 

「お前らも一生ぎっくり腰に悩んだり、下手に動かして首の骨が曲がらなくなった、なんて事になりたくなかったら、大人しくしている事だな」

 

「「う、うぅっ・・・・!」」

 

痛みに悶えるなのはとフェイトにそう言うと、リバイはホイップ達に向かって声を発する。

 

「ホイップ。マカロン。ショコラ。怪我人を連れて退避しろ。ここで寝転がられていても、ハッキリ言って邪魔だ」

 

「輝二さん、辛辣ですぅ」

 

「仕方ないわね」

 

「行こう」

 

「っ! 待って!・・・・ハッピー! 皆! 下から変な足音がーーーー」

 

ウサギのように聴覚が発達しているホイップが言うと。

 

ーーーーギフジュニアだっ!

 

下からそんな声が響き、バイスが下の方を覗いた。

 

「ありゃりゃ、ギフジュニアがワラワラ出てきたぜ! ヒトミっち達やエリオ<魔導師くん>達が応戦してるよん!」

 

「(幹部達が来ているって事なのか?・・・・だが今は) スマイルチーム! 下にいる連中を助けてやれ! カスタード! ジェラート! パルフェはこっちに来て、ホイップ達の手助けをしてくれ!」

 

『うん!』

 

パルフェ達をリバイのいる階に下ろすと、スマイルチームは下に行き、ギフジュニアと交戦を始めた。

アラモードチームも、なのはをカスタードとマカロンが、フェイトをジェラートとショコラが、はやてをパルフェとプリキュア達位の大きさになったリィンが支える。

 

「ありゃ? リィンちゃんそんな事できるの?」

 

「小さい方が動きやすいので、あの姿になってるんですぅ」

 

そして一同は、リバイスを残してフロアに去った。ホイップも残っていたが。

 

「おいホイップ。なんでお前は下りない?」

 

「ここで戦いが起これば、相楽君達も巻き込まれるでしょう? ラブリー達が来るにはまだ時間が掛かるし、いざって時に、皆を守る人が必要だよ」

 

確かにその通りだ。誠司の様子から、おそらく人質として使われた気はしないが、追い詰められてキングクラブ・デッドマンが自棄を起こさない可能性が無い訳ではないので、リバイは納得すると、ホイップとバイスに聞こえるように呟く。

 

「良し。俺とバイスでデッドマンを外に連れ出すから、ホイップはその隙に松田歩達を助けて、ここから退避しろ」

 

「うん!」

 

「・・・・行くぜバイス!!」

 

「よっしゃぁっ!!」

 

リバイスが駆け出すと、一瞬左右に別れ、攻撃するような素振りを見せる。

 

『っ!』

 

キングクラブ・デッドマンは防御の態勢を取る。先ほどバイスやパワー担当のラブリーの攻撃を防ぎ、ヴィータとシグナムの攻撃やなのはの砲撃魔法をも防ぎきった装甲だ。並大抵の攻撃では傷一つ付かないだろうが、リバイスの狙いはソコじゃない。

リバイスはキングクラブ・デッドマンの左右から押さえる。

 

『何っ!?』

 

「ここだと狭いんでね!」

 

「広い所に誘ってやるよん!」

 

リバイスはそのまま押し出して窓を破って、キングクラブ・デッドマンと外に飛び出し、キングクラブ・デッドマンが下にして落下した。

オフィスビルの高さはざっと20メートル。キングクラブ・デッドマンでもソコから叩き落とされれば多少のダメージは受けるだろう。幸いか、下にはプリキュア達も〈フェニックス〉隊員もいない。

 

『ふっ、甘いぜ』

 

「何・・・・?」

 

『ふん!』

 

キングクラブ・デッドマンが気合いを込めたような声を発すると、背中に折り畳まれた四本の蟹の足が開くと、それが支えとなってアスファルトに突き刺さり着地した。

 

「なっ!」

 

「うっそん!」

 

『うおりゃっ!』

 

驚くリバイスにキングクラブ・デッドマンは力を込めて二人を振り払うと、両肩の鋏を腕に移動させて切り付けた。

 

『『蟹爪』!』

 

「「うわぁっ!!」」

 

切り付けられた二人は火花を散らしながらアスファルトに転がる。

アスファルトに刺さった足を動かして、キングクラブ・デッドマンも器用に立つ。

 

『輝二さん! バイス!』

 

と、そこでギフジュニア達を倒したスマイルチームと、漸く駆けつけて加勢に入ったみたいなハピネスチャージチームが声をあげて近づく。

周囲を見ると、身体の至る所が焦げたシグナムとヴィータとザフィーラをシャマルが治療し、アインスとFW陣が守り、〈フェニックス〉隊員達はヒトミの指揮の元、ガンデフォンを構えてキングクラブ・デッドマンを見据えていた。

 

「輝二さん! 誠司達はっ!?」

 

「ホイップが守っている、そろそろ出てくる筈だ」

 

リバイがそう言い終わると同時に、なのはとフェイトとはやてを支えながら、ホイップを除いたアラモードチームがビルから出て来て、そのすぐに松田歩をおぶったホイップと、誠司と真崎有美が出てくる。

それを見てラブリー達はホッとした顔となる。

 

「さて、多勢に無勢だ。降参して〈デッドマンズ〉に関する情報を話すって言うなら、優しく分離させてやるぞ?」

 

手を握りながらゴキッゴキッと関節を鳴らすリバイにプリキュア達は苦笑する。

 

『・・・・ふん。ギブアップには、まだ早いだろう』

 

キングクラブ・デッドマンは松田歩を一瞥すると、ピョンっと跳ねて身体を丸めると、空中で凄まじい勢いで回転した。

その回転スピードは早く、地面に着地した際、凄まじい勢いで転がりながらリバイスに襲いかかった。

 

「うおっ!?」

 

「のわっ!?」

 

『っ!!』

 

リバイスとプリキュア達が避けると、キングクラブ・デッドマンは勢いが止まらず、近くのビルの壁を貫通した。

 

「うわぁっ! 凄い破壊力!」

 

「蟹が身体を玉のように丸めて突撃する、これぞホントの『カニ玉』かっ!?」

 

「(ビシッ)上手い事言うとる場合かっ!」

 

プリンセスが目を見開いて驚き、バイスの発言にすかさずツッコミを入れたのはサニーである。

何て言っていると、キングクラブ・デッドマンが再び壁を貫通して襲いかかってきた。

 

「ちっ!」

 

『うわわわわわわっ!!!』

 

リバイが舌打ちをし、バイスとプリキュア達は仲良く慌てながら回避する。

が、キングクラブ・デッドマンは壁やアスファルトを、まるでパチンコの玉のように跳ね返り、攻撃してくる。

 

「この、『プリキュア サニーファイヤー』!」

 

「今度はパンチをしないよ! 『ラブリーエクスプロージョンボンバー』!」

 

サニーが火球をバレーボールのスパイクのように放ち、ラブリーもラブプリブレスに炎のエネルギーを溜めでパンチで火の玉を射出する。二つの火の玉はキングクラブ・デッドマンに当たり、その身体が炎に包まれた。

 

「どうや!」

 

「やった!」

 

「あっ! ラブリーちゃん! それフラグ!」

 

「えっ?」

 

『・・・・こんな物かぁっ!!』

 

が、キングクラブ・デッドマンは勢いが死なず、そのまま火の玉となった身体で突撃してきた。

 

『うわあああぁっ!!』

 

全員が回避すると、玉が通った後は焼き焦げていた。

 

「余計攻撃力増しちゃったじゃん!」

 

「ごめーん!」

 

「あんなんアリかいな!」

 

「それじゃ今度は私が! 『プリキュア マーチシュート』!!」

 

「私も! 『プリンセス爆弾ボンバー』!」

 

今度はマーチが風の玉を蹴り、プリンセスが圧縮空気の炸裂弾でキングクラブ・デッドマンを攻撃した。

が、

 

「おいそれはやめーーーー」

 

リバイが止めようと声を上げたが、風の玉と空気の炸裂弾がキングクラブ・デッドマンに当たると、

 

ーーーーボゥオオオオオオオオオオ!!

 

炎の勢いが更に増してしまった。

 

『ウッソォォォォォォォォっ!!』

 

再び攻撃に転じるキングクラブ・デッドマンと、それを避け続けるリバイスとプリキュア。

 

「だから余計攻撃力マシマシにしてどうすんのよっ!?」

 

「そんな事言ったってぇ!」

 

「うわーん!」

 

 

 

 

ー魔導師sideー

 

負傷したなのは達と保護された誠司達は一ヶ所に集められ、〈フェニックス〉とFW陣、そしてアラモードチームが守っていた。

 

「あ、アイツら何してやがんだ! こうなったらアタシが(ビキッ)あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『ヴィータ(ちゃん)/(副隊長)!』

 

加勢に行こうとするヴィータだが、全身が悲鳴を上げてそのまま横になった。

 

「無理はダメよヴィータちゃん! 背中の骨を強かに叩きつけられただけでなく全身も浅くない火傷を負ったんだから、ドクターストップよ! シグナムにザフィーラ! はやてちゃんになのはちゃんにフェイトちゃんもよ!」

 

『は、はい・・・・』

 

シャマルに怒られ、加勢に行こうとコッソリ動こうとしたなのは達も大人しくする。

 

「ねぇホイップちゃん、助けに行かなくて良いの?」

 

「・・・・・・・・大丈夫だよスバルちゃん! 何となくだけど、輝二さんが何とかしてくれると思うし!」

 

ホイップがそう言うと、他のメンバーも、リバイスの戦いに視線を戻した。

 

「・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・」

 

皆が戦いに目が行っている中、誠司はジッとリバイスを見つめ、松田歩もその戦いに、漸く目に光を取り戻して見ていた。

 

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「とりあえず炎を消しましょう! 『プリキュア ビューティーブリザード』!」

 

ビューティーが放つ氷雪が、キングクラブ・デッドマンの炎を消火させる。

 

『フッ!』

 

キングクラブ・デッドマンが身体を戻すと、両手を鋏に変えて切りかかる。

 

「トリプルダンスハニーバトン! 『ハニーリボンスパイラル』!」

 

ハニーが専用武器の『トリプルダンスハニーバトン リボンモード』でキングクラブ・デッドマンは絡め取って動きを封じる。

 

「『フォーチュンスターリング』!」

 

「『プリキュアピースサンダー』!」

 

すかさずフォーチュンとピースが攻撃するが。

 

『くっ、まだまだぁ!!』

 

キングクラブ・デッドマンは攻撃に耐えながら、背面の足を動かして、リボンを引きちぎった。

 

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・!』

 

が、流石に疲労の色が濃く出ていた。

 

「・・・・何でソコまでして戦うんだ? 何の目的で〈デッドマンズ〉に入ったんだ?」

 

『はぁ、はぁ、〈デッドマンズ〉なんて、どうでもいい』

 

「あ?」

 

キングクラブ・デッドマンの言葉に、リバイは仮面越しに眉根を寄せた。

 

『・・・・俺はただ、証明する。『運命』なんて言葉で、『試合』を放棄しようとしているアイツに・・・・『運命』なんて、覆す事ができるって事をな・・・・!!』

 

キングクラブ・デッドマンは両手を構えてそう言った。

 

「(・・・・どういう事だ?)気にはなるが取り敢えず、コイツで料理してやるぜ、蟹野郎!」

 

[コング!]

 

リバイは『コングバイスタンプ』を取り出すと起動させ、『レックスバイスタンプ』をドライバーから外す。

 

「あ、それ私達が持ってきた」

 

「イェイ! 新スタンプだぜっ!」

 

ハッピーがそう言うとバイスははしゃぎながらリバイの身体に入ると、リバイは先ほど、ハッピーから貰ったゴリラの刻印がされたスタンプ『コングバイスタンプ』を押印する。

 

「はぁ・・・・ふん!」

 

[Come on! コン・コン・コング! Come on! コン・コン・コング!]

 

スタンプをドライバーにセットすると、LINEが展開される。

 

ーーーー・・・・・・・・。

 

ーーーーどしたのよ輝二?

 

ーーーー何か今回のヤツ、妙だ。

 

ーーーー妙って何がよ?

 

ーーーー何か今までの奴らと違って、欲望優先で戦っていないって雰囲気だ。

 

ーーーーでも魔導師ちゃん達やっつけてたじゃん。

 

ーーーー戦闘なんだ。殺るか殺られるかの状態なら、ああなるのは当たり前だろう。

 

ーーーーふ~ん、んでどうすんの?

 

ーーーー取り敢えず奴を悪魔から引き剥がすぞバイス!

 

ーーーーそう来なくっちゃ!

 

[バディアップ!]

 

『コラサットォッ!』

 

身体から伸びたバイスが、『コングバイスタンプ』をリバイに叩き込むと、リバイはスタンプの中で姿を変え、スタンプが砕けると、バイスも被り物を変えた。

 

[バディアップ! アーム! ストロング! 戦いのゴング! 鳴らせ! コング! ドラミングキター!]

 

「新ゲノム・・・・キター! ウッホホーイ!」

 

「二対一だが、タイマンはらせて貰う!」

 

現れたリバイはゴリラの顔の上からオレンジ色の複眼を被せたような、複眼と複眼の間からはゴリラの顔が覗く仮面。胸部は分厚く、背中の部分はゴリラの顔になっている。両腕にはグローブを着けコングのマークがある左胸を右手でドンドンと叩くと、キングクラブ・デッドマンに向けて拳を伸ばした。

バイスは全体的に巨体となり、ゴリラを模した被り物を頭全体に被り、最早ゴリラの鎧でも纏ったような姿で、上体を屈めると、バッと両手を天に伸ばして叫んだ。

 

 

 

 

ーアラモードsideー

 

「うわっ! ゴリラだっ!」

 

「ゴリラさんです!」

 

「世紀の対決! ダブルゴリラVS巨大キングクラブ!?」

 

「う~ん、お金払ってでも見たいわね」

 

「見るからにパワータイプって感じだね」

 

「でもパワーだけであの装甲を砕けるかしら?」

 

アラモードチームがゴリラゲノムを驚いた顔になり、魔導師組も驚いた顔になっていた。スバルとエリオは目を光らせていたが。

 

 

 

ースマイルsideー

 

「だ、大丈夫ハッピー?」

 

「何か、結構辛そうだけど?」

 

「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」

 

「な、なんやこれ・・・・!」

 

「す、凄くカッコいいんだけど・・・・!」

 

「そ、それ違うでしょ! ってツッコミを入れたいぃぃぃ!」

 

「どういう事でしょう?」

 

ラブリーとプリンセスは、何故かツッコミの姿勢で見悶えているスマイルチームを怪訝そうに見つめた。

 

「おい、スマイルチーム」

 

「は、はい?」

 

「話がある」

 

リバイが声をかけ、衝動を押さえたハッピー達は首を傾げた。

 

 

 

 

ーキングクラブ・デッドマンsideー

 

『・・・・・・・・』

 

キングクラブ・デッドマンこと、宮岡孝治郎はソッと視線を松田歩に向けた後、両手の鋏と背面の足を動かす。

 

「行くぜ!」

 

「いっけぇっ!!」

 

リバイスが声を揃えて両拳をキングクラブ・デッドマンに突き出した瞬間、何と、二人の両手のグローブがキングクラブ・デッドマンに向けて射出された。

 

『何っ!?』

 

「ロケットパンチだっ!」

 

ピースが叫ぶが、ただのパンチではない、タービンが搭載された拳はより破壊力を増してキングクラブ・デッドマンに襲い来る。

 

『舐めるなぁ!』

 

が、両手の鋏と背面の足を駆使して、四つのロケットパンチ、『コングリバイパンチャー』と『コングゲノブレイサー』を弾き飛ばし、パンチはリバイスに戻る。

 

『っ、はぁぁっ!!』

 

さらに、爆裂泡をリバイスとプリキュア達に向けて放ち。

 

『っ!』

 

パチンっ、と指を鳴らした瞬間。

 

ーーーードドドドドドドドドドドドドンンっ!!

 

連続した爆発でリバイス達の姿が見えなくなった。

がーーーー。

 

「「「「っ!」」」」

 

『何だとっ!?』

 

爆煙の中から、『コングリバイパンチャー』に乗ったサニーとピース、『コングゲノブレイサー』に乗ったマーチとビューティーが現れた。

煙が晴れると、ハピネスチャージチームがバリアで爆裂泡を防いでおり、リバイスが拳を突き立てていた。

 

「行くでピース!」

 

「うん!」

 

「『サニーファイヤー』!」

 

「『ピースサンダー』!」

 

火の玉と雷を受けた『コングリバイパンチャー』のタービンがそれらを巻き込み、炎と雷の拳となった。

 

『なにっ! ぐぁあっ!!』

 

それを受けて、キングクラブ・デッドマンは後ろに退く。

 

「『マーチシュート』!」

 

「『ビューティーブリザード』!」

 

風と氷雪はバイスの『コングゲノムブレイサー』のタービンにより回転すると、暴風雪の拳となってキングクラブ・デッドマンに当たった。

 

『ぐぅぅおおおおっ!!』

 

「ここだな!」

 

「そうそこだ!」

 

『っ!』

 

キングクラブ・デッドマンが顔をあげると、いつの間にかグローブを戻し、眼前まで迫ったリバイスが横に並びながら、拳を繰り出そうとした。鋏で迎撃しようとするキングクラブ・デッドマンは、リバイスの後ろから着いてきたプリキュアが見えた。

 

「気合いだ気合いだ気合いだ気合いだ! 『プリキュア ハッピーシャワー』!!」

 

ハッピーが拳を繰り出そうとするリバイの右手とバイスの左手に必殺技を浴びせると、ハートのシャワーの受けたリバイスの拳が桃色に光り輝き、バイスが叫ぶ。

 

「「名付けて、『ハッピーライダーダブルパンチ』!!」」

 

ーーーードゴンッ!

 

『グウオアッ!!』

 

キングクラブ・デッドマンは技の威力に大きく後方に吹き飛んだ。

 

「よっしゃ! 輝二!」

 

「一気に攻め立てる!」

 

リバイがドライバーの『コングバイスタンプ』を操作する。

 

[必殺! キング! パンチング! コング!]

 

「ほいっ!」

 

「ふっ!・・・・って、何かヤダなこれ・・・・」

 

逆立ちしたバイスの尻尾にリバイ(かなり渋々)がしがみつくと、バイスが胴体を、リバイが背中が頭部を構成したリミックス、『リバイスコング』が現れた。

 

ーーーーウッホホォォォォォォォォォォッ!!

 

リバイスコングがドラミングをしながら叫ぶ。

 

「行くぞ!」

 

『っ! はぁ!』

 

リバイスコングが駆け出し、キングクラブ・デッドマンが両手の鋏と背面の足を伸ばして応戦する。

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」

 

『らぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

手数ではキングクラブ・デッドマンが上だが、一撃一撃が重いリバイスコングに押され、背面の足を全てリバイスコングの手に捕まれると、

 

ーーーーグシャ!

 

そのまま握りつぶされる。

 

『ぬぐぅっ!!』

 

ーーーーウホホホォッ!!

 

『っ! ぐぉぉぉぉぉっ!!』

 

キングクラブ・デッドマンが一瞬怯むと、リバイスコングはダブルスレッジハンマーを叩き込もうとし、防御しようとするが耐えきれず、アスファルトに沈んだ。

 

「決めようぜ!」

 

「死ぬ気で、決める!」

 

リバイがスタンプを二回倒すと、二人は分離し、両手のグローブからジェット噴射が起きて空高く飛んでから、両足での急降下キックを繰り出す。

 

[コング! スタンピングフィニッシュ!]

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ライダーダブルゴリラキィィィィック!!」

 

急降下した二人のキックが、アスファルトから起き上がったキングクラブ・デッドマンに炸裂した。

 

『ぐっ、ぬぁああああああああああああっ!!』

 

ーーーードカァァァァァァァァァンンッ!!

 

アスファルトに倒れた宮岡孝治郎と、キングクラブバイスタンプが落ちていた。リバイはバイスタンプを回収する。

 

「回収完了・・・・ってな」

 

「やった! やった! やったぁ!!」

 

「「あははははは!」」

 

バイスが肩にハッピーとピースを乗せてスキップし、サニー達とラブリー達も笑みを浮かべている。

 

「・・・・うっ、うぅっ・・・・!」

 

宮岡孝治郎が起き上がる。流石は全国学生トーナメント準チャンピオンと思わせるタフネスぶりだ。

 

「おい、アンタは何で〈デッドマンズ〉何かに入ったんだ?」

 

「・・・・〈デッドマンズ〉なんてどうでも良かった。ただ、アイツに、見せてやりたかった」

 

「何をだ?」

 

リバイは、何処か達観とした物言いの宮岡孝治郎の様子を訝しそうに見下ろしながら聞いた。

 

「こんな、悪魔の力なんて大した物じゃないって、こんな物を使っても、失った物の代わり何かにはならないって、な・・・・」

 

「(失った物・・・・アイツ・・・・まさか!)っ!! おい、ホイップ達っ! 松田歩は何処だっ!?」

 

『えっ?』

 

バイス達に近づこうとしたホイップ達が周りを見ると、松田歩の姿がなくなっていた。

 

「っ、おい。まさかこのバイスタンプ、お前の物じゃないのか?」

 

「それはアイツが、松田が〈デッドマンズ〉から貰った物を、俺が奪い取ったんだ。・・・・アンタを見た時、直感したよ・・・・アンタが、〈デッドマンズ〉が目障りに思っているーーーー仮面ライダーだって、さ」

 

そう言うと、宮岡孝治郎は意識を手放した。

 

「松田歩・・・・ヤツが、〈デッドマンズ〉・・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

ー松田歩sideー

 

その頃、松田歩はオルテカに連れられ、まるでクラブのVIPルームに入ると、ソファの上座に座るアギレラと、その後ろに控えるフリオがいた。窓の外のクラブを見ると、ギフジュニアと踊り狂っていた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

松田歩はオルテカから新たなバイスタンプを渡され、それを掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー針ネズミが刻印されたバイスタンプを。

 

[ヘッジホッグ]

 

その音声がVIPルームに不気味に響いた。




テレビに登場したゲノムの中で、不遇扱いのゴリラに初白星!


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ケジメの為の復讐

ー松田歩sideー

 

「・・・・・・・・」

 

松田歩は、自分の身体から生まれた〈デッドマン〉、〈ヘッジホッグ・デッドマン〉を見ていた。

 

「・・・・これが、俺の中の悪魔、か」

 

「おい」

 

そんな松田歩に話し掛けてきたのは、幹部のフリオだった。松田歩がフリオに振り向くと、フリオの後ろにいるギフジュニア達が人間達を連れてきていた。松田歩の取り巻きだった男子達と、恋人だった女子だ。全員が必死に助けを求めるように喚くが、フリオはソイツら侮蔑の視線を向けて口を開く。

 

「お前を無価値だとかほざいていた連中を連れてきてやったぞ。好きにしな」

 

フリオがギフジュニア達に命じて、連れてきて人間達を松田歩の前に放り投げた。

地面を転がりながら倒れた彼等は、松田歩の姿とヘッジホッグ・デッドマンを見た瞬間、惨めに泣きながら、その場で土下座を繰り返しながら命乞いをしていた。

 

「・・・・・・・・下らない」

 

松田歩は情けない様を晒すソイツらに、冷たい視線でそう呟くと、『ヘッジホッグバイスタンプ』を、自分に押印したーーーー。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

キングクラブ・デッドマンとの戦いから翌日。

輝二は、〈フェニックス〉のスカイベースに来ており、ソコの取調室で行われている宮岡孝治郎の尋問を聴いていた。

 

《では君は、松田歩さんが〈デッドマンズ〉に入ろうとするのを止めようと、自分があのスタンプを使ったのか?》

 

《はい・・・・アイツが、松田が手に入れようとしている物が、何となくヤバい物だって思って、怪我人のアイツが使って痛い目に合う前に、俺が使って危険性を見せようと思ったんです。〈デッドマンズ〉と戦う〈仮面ライダー〉と戦って負ければ、アイツも「所詮こんな程度の物」って見切りを付けると、そう思って・・・・!》

 

取調室の隣でマジックミラー越しに聞いていた輝二に、れいかが声をかける。

 

「どうですか嵐山さん? あの方は嘘をついているように見ますか?」

 

「・・・・いや、嘘はついている風には見えないな」

 

「さっきヒトミさん達の方でも、嘘発見機を使って調べた言うたけど、嘘は言っていないって判定されとったなぁ」

 

「それじゃあ、松田歩さんは〈デットマンズ〉に入ったのかな?」

 

「多分ね・・・・」

 

輝二がそう言うと、あかねとやよいとなおが結論した。いちか達は負傷したなのは達六課隊長陣のお見舞いに、めぐみ達は狩崎に診療されている誠司の付き添いをしている。

 

「〈デットマンズ〉に入って何するつもりクル?」

 

「もしかして・・・・」

 

キャンディの言葉に、みゆきは顔を曇らせる。『バイスタンプ』の力を使って、自分を捨てた取り巻き達や恋人に復讐するつもりなのかと思ったからだ。

 

「ま、だと思って、〈フェニックス〉がソイツらを保護に向かったからな。取り敢えず、この場は門川さん達に任せるか」

 

そう言って、取調室を離れる輝二とスマイルチームは、丁度診療を終えたハピネスチャージチームと出会した。因みに真崎有美は既に検査を終えて、〈フェニックス〉隊員が家まで送っている。

 

「あ、めぐみちゃん達!」

 

「みゆきちゃん! 皆!」

 

「相楽君、大丈夫だったの?」

 

「あぁ。問題無いってさ」

 

「・・・・狩崎さんに、どんな検査されたんだ?」

 

「えっと、何か血液なら色々検査されたけど」

 

「そうか・・・・さて、次は魔導師連中だな」

 

輝二を先頭に、一同はなのは達が治療を受けているスカイベースの治療室に入ると、白衣を着て、髪の毛の下の方だけオレンジがかっているという独特のファッションをした女医『御子柴朱美』と、医療官のシャマルに治療を受けている背中を向けて寝そべるなのはと、首にギプスを着けたフェイト、外された肩にギプスを着けたはやてに、包帯まみれのシグナムとヴィータとザフィーラのお見舞いに来ていたアインスとリイン、FW陣にアラモードチームがいた。

 

「あっ、輝二くんにプリキュアちゃん達」

 

「お邪魔します朱美さん。どんな感じですか?」

 

「魔法って便利ねぇ、八神さんは完治に二週間は掛かる程の、沢田さんと古里さんは一ヶ月、シグナムさんとザフィーラさんとヴィータちゃんの傷なんて下手すれば三ヶ月以上は掛かる怪我を一週間以内で完治させちゃうんだから」

 

「でも、重傷のシグナム達を優先しなくちゃいけないから、なのはちゃんとフェイトちゃんの治療は後回しね」

 

関節を外されたなのはとフェイトとはやては勿論、数階上のフロアから床をぶち破って一気に一階まで叩き落とされ、さらに爆弾で攻撃されたシグナムとヴィータとザフィーラの負傷が特に酷いようだった。

 

≪あららぁ、痛々しい姿なのねぇ≫

 

「・・・・・・・・」

 

「ん? どうしたの輝二さん?」

 

「お前らさ、この魔導師の隊長達って強いんだよな?」

 

輝二が、なのは達を親指で差しながら、アラモードチームに尋ねた。

 

「え、うん。私達とはなちゃん達、一度〈ミッドチルダ〉って、管理局のある世界に行ってシグナムさんと模擬戦したんだ」

 

「いきなり実力が知りたいって言われまして・・・・」

 

「最初はガジェットって言う変な機械と戦わされてさ・・・・」

 

「それを全滅させたらシグナムさんが突然現れて・・・・」

 

「私達11人で模擬戦する事になったね・・・・」

 

「その後、なのはさんやフェイトさんとも模擬戦やったし・・・・」

 

半眼で苦笑いを浮かべるアラモードチームから、模擬戦が大変だった事が窺えた。そしてなのはとフェイト、シグナムはバツが悪そうに目を反らした。

 

「それで、実力は?」

 

「凄い強かったよなのはさん達! 私達が戦ってきた人達でも、幹部の人達くらい強かったよ!」

 

現在なのは達隊長陣は魔力を制限するリミッター状態だが、それでも幹部級の実力者達なのだ。

 

「だが、そんな連中でもここまで負傷してしまうんだな。・・・・相楽って言ったっけ?」

 

「あ、はい・・・・」

 

「お前、もう関わるな」

 

「えっ?」

 

輝二は誠司に向かってそう言った。

 

「ちょっと輝二さん! 何でそんな事を言うの!?」

 

「そうだよ!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

めぐみとひめが噛みつくが、ゆう子といおなは表情を少し曇らせるが、輝二の意見に反対しようとしなかった。

 

「今回の件で分かったろうが。相楽みたいな一般人が巻き込まれる事もある。この間の戦闘でも、巻き添え食らってた可能性だって十分あっただろうが」

 

「(グサッ)ぅっ・・・・!」

 

輝二は知らずに、自分の砲撃魔法に巻き込みそうになったなのは(しかも敵である宮岡孝治郎<キングクラブ・デッドマン>が誠司や他の人達を守ってくれた)に、言葉の流れ弾で撃ち殺してしまった。

フェイトとはやてが憐憫な視線をなのはに向け、輝二はなのはに目もくれず、言葉を続ける。

 

「相楽はお前らみたいにプリキュアでもなければ魔導師でもない、ただの一般人だ。お前らな、もしかしたら今怪我だらけのボロ雑巾になった魔導師達が、相楽になっていたかも知れないんだぞ?」

 

『うっ』

 

『(ボロ雑巾って・・・・)』

 

ハピネスチャージチームは言葉を詰まらせ、なのは達は輝二の言葉に片眉をヒクヒクとさせる。

 

「魔導師連中が見せてくれただろう。〈デッドマンズ〉と関わるのは危険な目に、それこそこんなズタボロな目に合うって事をーーーー彼女達は身を持ってお前達に見せてくれたんだ」

 

『(うわっ、強烈な皮肉ーーーーって言うか・・・・)』

 

『(嫌味かっ!?)』

 

あかね、やよい、なお、れいか、ひめ、ゆう子、いおな、ひまり、あおい、ゆかり、あきら、シエルが半眼で苦笑し、なのは達隊長陣はちょっと頭に血管を浮かばせ、アインスとシャマルと朱美が「まあまあ」と宥め、FW陣がアワアワとなる。

が、輝二はそんな隊長陣の視線なんて完全無視する。

 

「相楽。正直言って、お前さんは足手まといだ。〈デッドマンズ〉には、もう関わるな」

 

「・・・・・・・・」

 

誠司は黙ったまま、医務室から出ようとする。

 

「誠司!」

 

「めぐみ。確かに嵐山さんの言うとおりだ。今回で分かったよ。〈デッドマンズ〉ってのは、〈幻影帝国〉みたいなアホばかりじゃない。アイツらよりもヤバい奴らだ」

 

〈幻影帝国〉だけでなく、プリキュアが今まで戦ったきた『闇の勢力』の幹部は、基本大半が、ドジでマヌケで頓珍漢で協調性も殆ど無いアンポンタンばかりだったが、そのくせプライドだけは無駄に高い故に、人質と言った卑怯な作戦は使わなかった。

だが、〈デッドマンズ〉は違う。奴らは人質と言った卑劣な手段も辞さない連中である事を、誠司は何となく理解した。めぐみ達の足手まといにはなりたくないから、身を引こうとしているのだ。

 

「誠司っ!」

 

「・・・・悪い。俺、足手まといにはなりたくないんだ」

 

そう言って、誠司は医務室から出ていった。

 

「誠司待って!」

 

めぐみは誠司を追いかけ、ひめ達やみゆき達、いちか達も追いかけた。

 

「・・・・もう少し優しい言い方をすれば良かったんじゃない?」

 

「逆に惨めになるだけですよ。“中途半端な優しさで固めた薄っぺらな言葉”は、時に相手にとって逆効果になりますからね」

 

「うっ・・・・!」

 

輝二の言った言葉に、またもやなのはが苦しそうな声を漏らし、フェイト達とFW陣(取り分け何故かティアナ)が苦笑した。

 

「んじゃ、俺はこれで」

 

「あっ、ちょぉ待って嵐山くん!」

 

「・・・・・・・・」

 

「いや、そんな嫌そうな顔せんでもええやんか・・・・」

 

はやてが声をかけると、輝二は冷たい目で凄い嫌そうな顔で振り返り、ここまで嫌われているのに、はやては苦笑する。

 

「何か御用で?」

 

「いやそのな・・・・狩崎さんから聞いたで、君が〈デッドマンズ〉と戦う理由・・・・」

 

「・・・・あっそ」

 

「待って!!」

 

それだけ答えると、輝二は医務室を出ようとするが、今度はフェイトが声をあげて止め、輝二は今度は何だよ、と言いたげに鬱陶しそうに顔を向ける。

 

「あの・・・・私もね、少し前にある犯罪者を追っていたんだ。ちょっと、ううん、かなり、個人的な感情で・・・・」

 

「・・・・アンタも『復讐』を、か?」

 

「・・・・そうだったのかも知れない。でも、私はただ、『八つ当たり』や『逆恨み』を晴らしたいだけだったんだと思う・・・・」

 

「・・・・それで? 俺の戦う理由もソレだと言いたいのか?」

 

輝二の言葉に、フェイトに小さく頷いた。

 

「・・・・うん。気持ちは分かるけど、それで「それで親父と兄貴は喜ばないし浮かばれない。赦す事が大事だ。復讐は何も生まない。っとでも言いたいのかい?」えっ?」

 

フェイトの言葉を遮るように、輝二が声を発し、フェイトだけでなく、なのは達も驚いた、

 

「俺のやってる事が自分のエゴイズムだって事は十分理解してんだよ。理解して貰いたいと思わない。だがな・・・・!」

 

『っっ!!』

 

フェイト達は、輝二のその瞳を見た時、息を呑んだ。その瞳にはーーーー『なのは達の旦那達』と同様の、強い『覚悟』を宿した『炎』があったのだ。

 

「俺は、ケジメ付けなきゃ納得できねえんだ。そんな安っぽい言葉で折れる程度の『覚悟』で、戦っちゃいねえんだよ」

 

「あの、輝二さん。どちらに?」

 

「・・・・まだ、“『依頼』の途中なんでな”」

 

エリオにそう応えると、今度こそ輝二は、医務室を出て行った。

 

 

 

ーなのはsideー

 

「嵐山くん・・・・!」

 

「無理だよなのは」

 

なのはが止めようとするが、ヴィータが止め、シグナムが口を開く。

 

「あの目を見ただろう。『あの方達』と同じ、強く確かな『覚悟』を決めている目だ。生半可な『力』と『言葉』では、あの少年が止まる事はない」

 

「でも・・・・それじゃ彼は・・・・」

 

「我々では、彼を止められないだろう」

 

ザフィーラもまた、輝二を見てそう呟いた。そして、朱美も口を開く。

 

「・・・・輝二くんは、止まらないわね。自分が納得する方法で決着をつけない限り」

 

その言葉に応じる人間は、この場にいなかった。

 

 

 

 

 

ーいちかsideー

 

めぐみ達が誠司を止めようとしたが、「今は一人にしてくれ・・・・」と誠司は〈スカイベース〉を後にしてしまい、そのまま少し暗くなっていた。

あおいがこの空気が耐えられないと云わんばかりに声を張り上げる。

 

「何だよ輝二さんってば! あんな言い方ないだろうが!」

 

「誠司は私達の大事な仲間なのに!」

 

「酷いと思わないっ!?」

 

あおいに便乗してめぐみとひめが叫ぶが、ゆかりは静かに口を開く。

 

「そうかしら? 私は嵐山くんはーーーー“優しい人”だなって思ったけどね」

 

「えっ? どうしてですかゆかりさん?」

 

ひまりの問いにゆかりは淑やかな笑みを浮かべる。

 

「わざわざ憎まれっ子をやってまで、相楽くんを危ない事から遠ざけようとするだなんて、本当に優しい人じゃなきゃやらない事よ」

 

「誠司、凄い傷ついていたけど・・・・?」

 

「でも、男の子は遠回しに言ったり、気遣う事を言っても、逆にもっと傷つけてちゃう事もあるからね」

 

「男って妙にプライドがあるからなぁ。ウチらも弟がいるから経験あるわ」

 

「確かに、私のお兄様も、殿方には殿方のプライドがあると言ってましたからね。そう言うと、輝二さんも随分嫌な役をしたようですね」

 

弟がいるなおとあかねと、兄がいるれいかは理解を示していた。

 

「おや、プリキュアガールズ。良いところに!」

 

と、ソコで狩崎がやって来て、シエルが声を発する。

 

「あら、ドクターどうしたの?」

 

「先ほど松田歩が狙っているかも知れない元取り巻きや、元恋人を保護しに行った隊員達から連絡が入ってね。彼等は何者かに誘拐されたようなんだ」

 

『えっ!?』

 

驚くプリキュア一同。が、その瞬間、狩崎から振動音が聞こえ、狩崎は懐からガンデフォンを取り出して通話する。

 

「もしもし・・・・何?・・・・分かった。丁度ガールズ達もいるから急行させよう」

 

そしてガンデフォンの通話を切った狩崎に、いおなが話しかける。

 

「何かあったのですか?」

 

「うむ。はな<エールガール>達から連絡だ。針ネズミの姿をしたデッドマンと交戦中。のぞみ<ドリームガール>達も一緒に戦っているらしい」

 

「っ! はなちゃん達とのぞみちゃん達がっ!?」

 

「うん。既に輝二もスカイベースを出て、向かっているようだ」

 

 

ープリキュアsideー

 

『きゃぁっ!!』

 

エールとアンジュとエトワールとマシェリとアムール、HUGっとチームが、衣装を少し傷つけられ後退する。

 

「大丈夫エール!?」

 

「う、うん・・・・! それにしても、このデッドマン、強い・・・・!!」

 

5GoGoチームが駆け寄ると、エールは目の前のデッドマンを見てそう呟いた。

全身は黒く、銀と赤のプロテクターを装備し、両手と両足には小さなトゲが着いたグローブとグローブを装備しているが、一番目を引くのはその頭であろう。盛り上がった長い長髪はドレッドヘアのように束にされ、鋭い針となって後ろに流されている。

 

『・・・・・・・・〈仮面ライダーリバイス〉は、何処だ?』

 

そう言って近づいてくるデッドマン、〈ヘッジホッグ・デッドマン〉である。

 

「あのデッドマン、輝二さんが狙いなのっ!?」

 

「何が狙いか分からないけど! 『プリキュア ファイヤーストライク』!!」

 

『ふん!』

 

ルージュが炎の玉を蹴り飛ばすが、ヘッジホッグ・デッドマンは鋭い回し蹴りで、逆に蹴り返した。

 

「うわっ!?」

 

「ルージュ! 『プリキュア サファイアアロー』!」

 

ルージュが蹴り返された自分の技を回避すると、アクアが水の矢を放つ。

 

『はぁっ!』

 

が、ヘッジホッグ・デッドマンは頭をまるで歌舞伎のように振り回すと、水の矢は長い針の髪によって削り消された。

 

「『プリキュア プリズムチェーン』!」

 

レモネードが黄色の水晶の鎖をヘッジホッグ・デッドマンの両手に巻き付けて動きを封じた。

 

「これでどうですかっ!?」

 

『・・・・ふっ!』

 

しかし、ヘッジホッグ・デッドマンは両手が拘束されたにも関わらず、レモネードに向かって走りだした。

 

「えっ!?」

 

レモネードもまさか接近してくると思わず、一瞬対応が遅れ、ヘッジホッグ・デッドマンが上段蹴りを繰り出す。

 

「『プリキュア エメラルドソーサー』!」

 

そうはさせまいと、ミントがエメラルドソーサーを盾にして蹴りを防いだ。

 

『・・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

ヘッジホッグ・デッドマンは力を込めてプリズムチェーンを引きちぎると両手と足を使ったキックボクシングのようなコンビネーションでエメラルドソーサーを攻撃し、遂に罅を入れた。

 

「っ! ミント! レモネード!」

 

ローズが二人は抱えて離れると同時に、エメラルドソーサーが砕かれた。

 

『・・・・・・・・〈仮面ライダーリバイス〉は何処だ?』

 

「しつっこいのよ! この針ネズミ!!」

 

ローズが力を込めた右の拳をヘッジホッグ・デッドマンに突き出し、ヘッジホッグ・デッドマンも左の拳で応戦する。

華奢そうな見た目に反して、ミルキィローズはプリキュアでも一二を争うパワー系だ。その拳を地面に叩きつけて巨大なクレーターを作りあげる程である。

時空管理局のティアナ曰くーーーー「スバル以上の馬鹿力ね・・・・」と、戦慄した程だ。

 

ーーーードゴンッ!!

 

拳を叩きつけられた音が響くと、ローズの腹部に、ヘッジホッグ・デッドマンの拳が叩き込まれていた。

 

「・・・・かはっ!(ボフンッ)ミル~・・・・」

 

ローズが息を吐き出すような声を漏らすと、妖精ミルクに戻り、地面に倒れる。

 

「ミ、ミルク・・・・!」

 

「一体何が・・・・!?」

 

「アムール、分かりますです?」

 

「・・・・はい。二人の拳がぶつかるほんの一瞬でしたが、デッドマンの方が僅かに左の拳をローズの拳の内側に滑り込むように反らしました」

 

「ああ。凄いテクニックだな」

 

「あっ、輝二さん!」

 

ドリームとエトワールが驚き、マシェリがアムールが何が起こったか聞くと、プテラゲノムのリバイスが駆けつけ、アンジュが声を発し、エアバイクになったバイスが問いかける。

 

「なぁなぁ輝二? 詳しく説明して」

 

リバイは両手をクロスするように動かし、左手が右手の内側に滑らせながら自分の腹部を叩いた。

 

「つまり、右手を突き出したミルキィローズの拳と正面からぶつかろうとせず、左手の拳を僅かに腕の内側に入り込むように反らし、そこから滑り込むようにミルキィローズの腹部に拳を叩き込んだんだ。相当のテクニックと動体視力、そして度胸がなければできない芸当だ。こんな事ができるとしたら、全国チャンピオン、松田歩。アンタだな?」

 

リバイが言うと、ヘッジホッグ・デッドマンはリバイに目を向けて声を発する。

 

『・・・・そうだ』

 

「ま、松田歩さんっ!?」

 

「その人って、輝二さんに依頼に来た人の事?」

 

エールとドリームが驚くが、リバイは気にせず声を発する。

 

「アンタの目的は何だ? 〈デッドマンズ〉に入って、その力を得て、自分を捨てた奴等に復讐か?」

 

『・・・・・・・・アイツらの事は、もうどうでも良い』

 

「あ?」

 

『・・・・日常生活に支障はないが、もう二度と格闘ができなくなったこの身体が、再び使えるようになった。だから俺はーーーー』

 

そう言うと、ヘッジホッグ・デッドマンはリバイに拳を突き出した。

 

「〈仮面ライダーリバイス〉。アンタに決闘を申し込む!」

 

『け、決闘っ!?』

 

「おう、受けてたつ」

 

『受けちゃうのぉ!?』

 

突然の果たし状に5GoGoチームが驚き、それに応じたリバイにバイスとHUGっとチームが驚く。

 

「だが、勝負は明日の夕方。場所はーーーー『大和武道館』!」

 

『何?』

 

「アンタが、日本チャンピオンになった場所だ。受けるか?」

 

『・・・・・・・・良いだろう』

 

ヘッジホッグ・デッドマンはそう応えると、その場を去った。

 

「・・・・・・・・」

 

「良いのかよ輝二?」

 

「あんな勝負なんて受けちゃって」

 

「・・・・依頼は、ちゃんとやらないと、な」

 

『えっ?』

 

首を傾げるプリキュアチームに、リバイはそう言うと、ガンデフォンで連絡をした。

 

 

 

 

 

 

ー誠司sideー

 

「はぁっ! ふっ! せやっ! たぁあっ!!」

 

相楽誠司はスカイベースを出てすぐ、空手道場に来て鍛練をしていた。

『足手まといになる』、と輝二にハッキリと言われてどうしても大人しくしていられず、道場で身体を動かせば少しはスッキリすると思ったが、全く晴れなかった。

こんなに努力しても、結局自分はプリキュアでもなれば魔導師でもないーーーー結局は『足手まとい』なのだ。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・クソッ」

 

汗だらけになった誠司は、誰もいない道場で小さく毒づいた。

 

「荒れてるねぇ『空手ボーイ』」

 

「っ、狩崎、さん・・・・?」

 

道場入り口から、タブレットを持った狩崎が現れた。

 

「何か、用ですか?」

 

「イヤね。悩める若人に、ちょっとした提案さ。ーーーー君に、本気で命を賭けられるかを、ね」

 

狩崎がタブレットに表示された物を誠司に見せた。

 

「これは・・・・?」

 

「空手ボーイ、いや、相楽誠司くん。君に『覚悟』はあるかい?」

 

液晶に映し出されたのは、リバイスの使うものと違う『ドライバー』だった。




はてさて、誠司はどうするのか?


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鋼のアッパーカット! カンガルー!

ー〈デッドマンズ〉sideー

 

〈デッドマンズ〉のアジト、幹部達がいる間では、頭目のアギレラと側近のフリオと参謀のオルテカが、松田歩、ヘッジホッグ・デッドマンの行動に渋面を作っていた。

 

「ちょっと、あの彼、リバイスと勝負する事になってるんだけど?」

 

「多分ですけど、先ずは邪魔なリバイスを片付けようとって考えているのでは?」

 

「まぁ確かに、リバイスだけでなく、伝説の戦士プリキュア。それと〈時空管理局〉の魔導師達も動いてますからね。先ずはリバイスを潰しておくのは良いでしょう。彼は彼女達と仲間と言う訳ではなさそうですし」

 

「ん? どういう事オルテカ?」

 

「簡単ですよ。プリキュア達は善意で、魔導師達は別の思惑で戦っていますが、彼、リバイスの戦う理由はーーーー『復讐』ですからね。お利口さんばかりのプリキュア達とは相容れないんですよ」

 

オルテカは信者達が隠し撮りしたプリキュア達の写真が張られたホワイトボードを見て、ほくそ笑みを浮かべるのであった。

 

「それに、こちらとしても、漸く『彼』が動けるようになったようですよ」

 

「それって、この間見つけた『スタンプ』の事?」

 

「ええ。“新しい肉体と、馴染んできたようです”」

 

オルテカがそう言うと、部屋の扉が開かれ、ソコから黒衣の少年が、薄く不気味な笑みを浮かべて立っていた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そして事務所のテレビで、輝二は“ある映像が撮られているDVD”を、それはもう何度も何度も繰り返しで見ていた。

 

≪なぁなぁ輝二? 相手は全国チャンピオンよ? 明らかにこっちに不利なんじゃね?≫

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

輝二はバイスの言葉に返答せず、DVDの映像を時にはスローモーションで、時には同じ場面を見ていた。

 

ーーーードドドドドドドドドドドド! バンッ!!

 

『輝二さんっ!!』

 

と、そこで事務所の扉を開いて現れたのは、はな達HUGっとチームだった。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

が、輝二ははな達に目を向けず、ジッと映像を凝視していた。

はな達は気づいていないのかと思ったのか、輝二に近づく。

 

「輝二さーん! おー(バクッ)ハグッ!?」

 

はなが輝二の耳元で大声で叫ぼうとするが、輝二がはなの口にお茶請けの大きめのお煎餅を突っ込んで黙らせた。

 

「モガモガモガモガモガモガ!」

 

お煎餅を突っ込まれ、はなが弱冠苦しそうにもがき、今度はさあや達が話しかけた。

 

「輝二さん、どうして決闘なんて受けたんですか?」

 

「そんな事しなくても、あの場で倒しちゃえば良かったんじゃないの?」

 

「私達とのぞみさん達と輝二さんとバイス。このメンバーで戦えば勝率は98.28%でした」

 

「しかも、何で松田歩さんが全国チャンピオンになった場所で戦う事にしたのです?」

 

「・・・・・・・・あの場で倒しても、意味がねぇんだよ」

 

『えっ?』

 

「ムグググググググググ・・・・プハッ! それってどういう事?(バリッ、ムシャムシャ・・・・)」

 

漸くお煎餅を外したはなが聞くが(ついでにお煎餅も頬張る)、輝二はそれ以上答えず、映像に集中していた。

 

「輝二さん! もう!」

 

「ところで、輝二さんの見てるこれって・・・・」

 

「昨年の松田歩さんが優勝した『全国総合格闘トーナメント 学生の部』の試合映像ですね」

 

 

 

 

ーいちかsideー

 

その頃いちか達アラモードチームは、治療中のなのは達へとお見舞いのスイーツを持ってきていた。

 

「(バクバク! ムシャムシャ!)おかわり!」

 

「ヴィータちゃん。あんまりお菓子ばかり食べると、夜のご飯が食べられないわよ!」

 

「あんな不味い病院食みたいなもん食えるかっ! 逆に身体が悪くなるぜ! とっとと治してあのクソ生意気な輝二より先にデッドマンをぶっ倒して! あんの野郎の鼻を明かしてやるっ!」

 

シャマルが苦言を言うが、ヴィータは輝二への対抗心をメラメラ燃やしており耳を貸さずスイーツは爆食いしていた。シグナムやなのはにフェイトも、口には出さないが、デッドマンにやられた借りを返そうと闘志を燃やしているのが分かる。

スバル以外のFW陣は苦笑し、スバルはスイーツを食べて頬を緩ませていた。

 

「元気そうで良かったですね」

 

「まぁなぁ」

 

いちか達も苦笑しながらその様子を見ていると、はやてが少し思案するように黙る。

 

「(私らじゃ輝二くんの『復讐』を止められへんけど・・・・もしかしたらプリキュアの皆やったら)・・・・なぁ、いちかちゃん達、ちょっとエエか?」

 

「はい?」

 

いちか達が首を傾げると、はやてが意を決したように口を開いた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

そして翌日。『大和武道館』の選手控室。

両手に包帯を巻いて、腕の保護倶のようにしていた。

 

「・・・・ふぅ~~」

 

呼吸を整え、平常心を保ちながら、『新たなバイスタンプ』を握り締める輝二。

 

≪なぁなぁ輝二? ホントに大丈夫?≫

 

「やれるだけの事はやった。人事も尽くした。後はもう、天命が微笑んでくれる事を祈るだけだ」

 

バイスにそう答えた輝二が控室を出ると廊下にいちかご立っていた。否、いちかだけでないゆりにいおなもいた。

 

「宇佐美? それに月影に氷川も、一体どうした?」

 

「あの! 輝二さん・・・・その・・・・」

 

「・・・・・・・・あぁ」

 

いちかの様子から、何となく察した輝二は後頭部をかきながら口を開く。

 

「口が軽いなぁあの狸魔導師さん」

 

「狸?」

 

「八神はやての事だよ。なぁんかあの女<ヒト>、人を化かす狸ってイメージがあるんだよなぁ。琴爪が猫で、立神がライオンってイメージがあるように」

 

「「あぁ」」

 

その意見に何故かゆりといおなが納得したような顔になる。いちかは納得できたのか、苦笑するが、すぐに戻した。

 

「あの、ね。はやてさん達から聞いてね、輝二さんーーーーお父さんとお兄さんを、〈デッドマンズ〉に・・・・」

 

「ーーーーあぁ、殺された」

 

「っ!」

 

「「・・・・・・・・」」

 

輝二の返答にいちかは息を詰まらせ、ゆりといおなは少し眉を寄せる。

 

「それで、そんな事は無意味だって俺を説得させようと、八神はやては自分達では無理だから、ダメ元で君達プリキュア、特に復讐をしようとしていたムーンライトとフォーチュンの二人を寄越したって訳かい?」

 

「・・・・うん」

 

いちかの返答に、輝二はふぅ~っと、息を吐くと、仕方なさそうに話し出した。

 

「・・・・1ヶ月と少し前、〈フェニックス〉分隊長を任命する式典が行われた」

 

「っ、確かその時の式典に〈デッドマンズ〉が乱入し、数名の重傷者と、死者二名って報道されたわね」

 

「じゃ、その死んでしまった二人が・・・・?」

 

嫌な予感がするいちかに、輝二はソレを言った。

 

「その時に亡くなった一般人と、その式典で分隊長を任命される筈だった隊員が、俺の父の『嵐山勇一郎<ユウイチロウ>』。兄の『嵐山一光<カズミ>』だった」

 

「「「っ・・・・!」」」

 

驚愕する三人に、輝二は話を続ける。

 

「兄貴は俺より八つも年上でな。高校卒業して、防衛大学校、略して防大を卒業して、〈フェニックス〉に配属された。そしてあの日、俺は父さんと一緒に兄貴が分隊長に任命される式典に行ったんだ」

 

当時の事を語りながら、輝二の何処か哀愁のある声となる。

 

「父さんは勿論、俺も兄貴が誇らしかった。俺も兄貴のようになれるかなぁ、なんて呑気な事を考えていたその時だった。あの忌まわしい事件が起こった」

 

そして、徐々に怒りが込められていく。

 

「丁度その時にお披露目される予定の対〈デッドマンズ〉用の装備、〈ライダーシステム〉と『バイスタンプ』を手に入れようと、突然〈デッドマンズ〉が襲撃して来た。その時に、何処から飛んで来たか分からない光弾が、避難しようとしていた俺の眼前に迫って来た。もうダメだと思った俺を庇ってーーーー父さんがその光弾を受けたんだ・・・・」

 

「「「っ!」」」

 

「そして気がついた俺が目にしたのは、背中が焼き爛れ、“心臓の音がしない父さん”だった」

 

「そ、そんな・・・・!」

 

「目の前で、お父さんを!?」

 

「何て、事を・・・・!」

 

いちかは涙を浮かべ、ゆりといおなも驚愕する。

 

「その後、俺は目の前に落ちてきた『リバイスドライバー』を見た瞬間、悪魔の、いや、バイスの言葉に突き動かされ、怒りのままに変身した・・・・」

 

【≪父ちゃんの仇を討てる力が目の前にあるぜぇ! レッツゴー!!≫】

 

「とな」

 

「まさに悪魔の囁き、ね」

 

≪ちょっとゆりちゃん! 俺っちが悪者みたいに言わないでよ! まぁ悪魔だから悪者だけどねぇ!≫

 

「襲撃してきた〈デッドマンズ〉を蹴散らした後、兄貴を探していた俺が目にしたのは、兄貴がーーーー“腹に大穴を開けられて殺されていた姿”だった」

 

「「「っ!!」」」

 

父に続いて兄まで殺されていた。父を目の前で殺されたゆりに、姉を殺された(実際には生きていた)いおなは、それだけでも心が壊れる程の衝撃だったのに、彼はそれを二度も受けたのだ。その時の衝撃は想像を絶するだろう。

 

「俺はな、未だに父さんと兄貴の骨壷を、家に置いてあるんだ。お墓に納められないんだよ。俺の心はーーーーあの時から、父さんと兄貴が死んだあの時から、止まっちまったんだ。だからさ、自分の過去と納得する形で決着を付けなきゃ、俺は前に進めない!」

 

輝二はいちか達に背を向けると、リングの方へと向かった。

 

「例え自己満足だとかエゴイズムと言われようが、俺はこの道を進む! 過去と決着をつける! その『覚悟』は、とうにできてる!」

 

いちか達は、その背中を見つめるしかなかった。

そしていちか達の後方の通路の角では、こっそり話を聞いていたひまり達だけでなく、他のプリキュアメンバー達も、涙を浮かべていた。

そして、あおいが持っていたガンデフォン越しで聞いていたなのは達も。

 

 

 

 

 

 

そして決闘の時間が迫り、赤コーナーで待っている輝二。そして青コーナーからは・・・・松田歩、否、ヘッジホッグ・デッドマンが現れ、リングへと上がってきた。

 

『・・・・良く決闘に応じてくれた。感謝する。しかし、何故あの時お前は俺を倒そうとしなかった?』

 

「ふん。ただ倒せば終わりなんて、んな単純なモンで終わりじゃないからな。俺は依頼されたんだ。アンタをーーーー救ってくれってな!」

 

[リバイスドライバー!]

 

「燃えてきたぜぇ!」

 

マウスピースを付けた輝二は『新たなバイスタンプ』、カンガルーが刻印された『カンガルーバイスタンプ』を起動させた。

 

[カンガルー!]

 

輝二はスタンプに息を吹き、ドライバーにセットすると、輝二の身体からバイスが現れ、巨大なスタンプを手に持っていた。

 

[Come on! カ・カ・カンガルー! Come on! カ・カ・カンガルー! Come on! カ・カ・カンガルー!]

 

ーーーー・・・・・・・・。

 

ーーーーさぁ! 世紀の対決が今始まろうとしていたす!

 

ーーーー赤コーナ~! 仮面ライダーリバイ!

 

ーーーー青コーナ~! ヘッジホッグ・デッドマン!

 

ーーーー今まさに! コングが、じゃなくてゴングが鳴ろうとしています!

 

ーーーーでは、スタンプバイ!!

 

「変身!」

 

『カンガルーバイスタンプ』をベルトに押印しスタンプを横に傾ける。

 

≪ありゃぁ!≫

 

スタンプを掲げたバイスが、輝二に向けてスタンプを振り下ろした。

 

[バディアップ! 跳び上がる! 舞い上がる! カンガルー! 勝利のパンチが決まった!]

 

スタンプが砕かれ現れたのは、赤と青のハーフ&ハーフになっている複眼はまるでカンガルーの耳のようにのびており、手にはボクシンググローブのような巨大な拳を装着し、腹部にはカンガルー育児嚢を模したポケットのようなものが付いた姿、〈仮面ライダーリバイス カンガルーゲノム〉へと変身した。

 

「さぁ、試合を始めようか」

 

その複眼の片方を片手の甲で撫でると、両手を叩き合わせた。

 

 

 

ーはなsideー

 

そして客席では、既に座っていたプリキュアオールスターズが、新たに姿となったリバイスを見ていた。

 

「うわっ! カンガルーだっ!」

 

「ボクシングと言えばカンガルーさんですぅ!」

 

「でも、何でボクシングでカンガルーさんがイメージされるんですか?」

 

「1980年代で、オーストラリア国家を動物になぞらえたボクシング・カンガルーってキャラクターが作られ、それが影響されたって聞いたわね」

 

「流石ほのか、『蘊蓄女王』・・・・それで、はな達どうしたの?」

 

のぞみとうららか目を光らせ、ひかりの疑問にほのかが答えると、なぎさは何故かツッコミのポーズでプルプル震えているHUGっとチームを訝しそうに見ていた。

 

「な、何だか良く分からないんだけど・・・・!」

 

「さっきの輝二さんの、【さぁ、試合を始めようか】って台詞と・・・・!」

 

「あのリバイスの姿を見ると・・・・!」

 

「【それ、違うですぅっ!】ってツッコミを入れたくなってしまうですぅ・・・・!」

 

「理解不能・・・・! この状態はとても理解不能です・・・・!」

 

『メガロドン』だとフレッシュ。『イーグル』だとハートキャッチ。『マンモス』だと5GoGo。『コング』だとスマイル。

何故かリバイスが新たなゲノムになると、1チームのプリキュアチームが、得たいの知れないツッコミの衝撃に駆られているのだ。

と、そんな中、ゆりが声を漏らした。

 

「・・・・バイスは?」

 

『えっ・・・・あれ?』

 

ゆりの言葉に、プリキュアオールスターズは首を傾げた。輝二がリバイに変身したなら、バイスも変身して現れている筈。

 

「輝二さ~ん! バイスはどうしたのー!?」

 

えりかが大声でそう聞いた瞬間。

 

「ーーーーこっちでちゅ!」

 

『“でちゅ”・・・・?』

 

バイスの声がしたが、舌ったらずで変な語尾をつけていた。

 

「ここでちゅ! ここでちゅ!」

 

バイスの声がリバイから聞こえると、左手に何とーーーー赤と青のウサギのフードらしきものを被り、しかもおしゃぶりまで咥えた、はぐたんと同じ位の大きさになった赤ちゃんのバイスが出てきた。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

プリキュアオールスターズ、そしてガンデフォンからこの状況を見ているなのは達も、眼を擦り、リバイの左手を再び凝視すると、

 

「俺っち、赤ちゃんになっちゃったでちゅ~!!」

 

『ええええええええええええええええええええええええええええっっっ!!!!!』

 

ーーーーズデェェェェェェェェン!!

 

赤ちゃんになったバイスを見て、プリキュアオールスターズの大半と、ガンデフォン越しで見ていたなのは達も、一斉に仰向けに倒れた。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「ちっこくなったなバイス」

 

「ベストマッチでちゅ!」

 

「だな」

 

ヘッジホッグ・デッドマンはゆっくりリバイスに近づき、リバイスもドライバーのスタンプを操作した。

 

[必殺! 仕上がる! 身軽! カンガルー!]

 

「俺っち、ひっこむでちゅ!」

 

バイスが育児嚢に入り込むと、リバイスもゆっくりとヘッジホッグ・デッドマンに近づくと、両者リングの中央でにらみ合いを始める。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

と、ソコで実況席に座る狩崎(と、何故かヒトミ)が。

 

「では、試合開始!」

 

ーーーーカーン!

 

ゴングをならした。

 

『「っ!!」』

 

超至近距離から放たれた棘だらけの拳と、巨大な拳が繰り出されるが、二人は顔を僅かにずらして回避し、そしてーーーー、

 

ーーーードドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!

 

高速て放たれる怒濤のラッシュが繰り広げられ、二人はお互いの拳をギリギリに回避したり、ラッシュをぶつかり合わせていた。

 

「うおらぁっ!!」

 

『らぁああっ!!』

 

最後に放つ拳が交差すると、クロスカウンターとなって、お互いの横面に叩き込まれた。

 

「くっ! うぉ!」

 

『ぐっっ! ぐぅ!』

 

よろけた二人だが、すぐに体勢の整え、拳をぶつけ合わせた。

 

 

 

ーはなsideー

 

プリキュアオールスターズのいる客席に、〈フェニックス〉隊員数名が連れてきた真崎有美と、宮岡孝治郎が現れた。

 

「あ、真崎さんどうしてここに?」

 

「あの、嵐山さんが、ここに来て欲しいって」

 

「俺も連れられた。しかし・・・・」

 

二人はリングの上で戦うリバイとヘッジホッグ・デッドマンの戦いを見た。

 

「・・・・アイツの為に戦ってくれているのか」

 

《まぁそうだね》

 

と、ソコで、実況席にいた狩崎が〈フェニックス〉隊員

が持つガンデフォンで連絡してきた。

 

《宮岡孝治郎くん。君の予想通り、輝二くんは真崎有美さんの依頼、【松田歩を救って欲しい】と言う依頼の為に戦っているだけじゃない。松田歩くん自身の為にも、戦っているのだよ》

 

「えっ? それどういう事ドクター?」

 

《まぁ、端的に言うと、松田歩くんが〈デッドマンズ〉に入り、『バイスタンプ』を手に入れた理由は、自分を捨てた人間達への復讐でもなければ、悪魔の力に魅入られた訳でもない。彼はただーーーーもう一度、キックボクシングがやりたかっただけだったんだ》

 

『えっ?』

 

狩崎の言葉に、プリキュアオールスターズは目をパチクリさせた。

その言葉に続くように、宮岡孝治郎が口を開く。

 

「アイツは、松田のヤツは、もう二度キックボクシングができなくなった事を心から苦しんでいた。もう一度だけで良い。燃え尽きるくらいに思いっきりキックボクシングをしたい。ただそれだけを、アイツは願っていたんだ」

 

「っ! だから〈デッドマンズ〉に入ったのね。デッドマンの第二フェーズになれば、怪人の身体でもまたキックボクシングができるから」

 

「ああ」

 

ゆりの推察に宮岡孝治郎は肯定を示す。

 

「真崎さんは、この事を?」

 

「少し前に、松田さんに会って、あの人がキックボクシングに捕らわれているって分かったの。だから、何か力になれないかなって悩んでいた時に、星空さん達に、嵐山さんを紹介してもらった時、もしかしたらって・・・・」

 

今度はれいかの言葉に、真崎有美は肯定した。

 

ーーーードンッ!!

 

「ぐはっ!」

 

『っ!』

 

と、全員が話に夢中になっている内に、ヘッジホッグ・デッドマンの回し蹴りが、リバイの顔を蹴り、リバイの口のクラッシャーから、血が吐き出た。

 

 

 

 

ーリバイsideー

 

「ちょいちょい輝二! けっこうやばいのうけちゃったでちゅっ!」

 

「っ・・・・!」

 

クラッシャーの血をグローブで拭ったリバイは、ヘッジホッグ・デッドマンに向かおうとした。

 

「なにっ!?」

 

が、それよりも早く、ヘッジホッグ・デッドマンが眼前にまで迫り、 ストレーツ、ジャブ、フック、アッパー、ガゼル、スマッシュなど、様々なラッシュを繰り出し、リバイは回避するので精一杯だった。

 

『シッ!』

 

「ぐぁっ!」

 

「ありゃぁっ!」

 

今度はハイ、ミドル、ローキックの連撃をリバイはギリギリ回避したが育児嚢に当り、バイスが客席にポーンっと飛んでいってしまった。

 

「バイス! ぐぅああああっ!」

 

バイスに一瞬気を取られたリバイに、ヘッジホッグ・デッドマンが踵落としを繰り出し、リバイは回避が間に合わず、左肩に叩きつけれた。

 

「くぅ・・・・!」

 

リバイは一瞬下がって体勢を整えようとするが、ヘッジホッグ・デッドマンはそれを許さないと言わんばかりに追いかけ、拳と蹴りのコンビネーションにリバイは防戦一方になった。

 

 

 

ーバイスsideー

 

「あ~れ~!!」

 

「うわわわわわ!」

 

飛んでいったバイスはつぼみがキャッチした。

 

「あぁつぼみちゃん! これぞハートキャッチならぬナイスキャッチでちゅ!」

 

「ど、どうも・・・・」

 

「凄い強い人じゃん! 格闘経験者の皆さん! どう見ますかっ!?」

 

えりかが、いつきにありすにいおな、格闘経験者プリキュア達にまるでマイクを持ったキャスターのように握り手を突き出して聞いた。

 

「拳だけでなく、蹴りとのコンビネーションがとても上手いね。しかも自分の身体の使い方も熟知しているよ」

 

「怪我でのブランクも全く感じさせていない。流石は全国チャンピオンだ。パワーもテクニックも凄まじい」

 

「ですが、輝二さんも凄いですわ」

 

「えっ? それはどういう事、ありす?」

 

「確かに松田歩さんの動きには目を見張りますが、輝二さんはその動きに、徐々にですが見切り始めています・・・・!」

 

再びリングに目を向けると、先ほどまで防戦一方だったリバイがーーーー。

 

「はぁっ!」

 

『ぐぉ!』

 

「つぁ!」

 

『ぬぅ!』

 

「てぃゃぁっ!!」

 

『ぐはぁぁぁぁっ!!』

 

段々と動きのキレが増していき、ヘッジホッグ・デッドマンの動きに順応していき、拳が当たっていった。

 

「輝二もエンジンのギアが上がってきたでちゅ」

 

「エンジンのギアってなんですか?」

 

「輝二はいつも、変身する時、【燃えてきたぜぇ!】、【燃えてこねぇなぁ】って言うでちゅね?」

 

「はい」

 

「あれは輝二の闘志と言うか、闘争心と言うか、とりあえず戦いのテンションが車のエンジンのように掛かってきたって言う意味なんでちゅ。【燃えてこねぇなぁ】は、エンジンの掛かり具合が悪い状態、【燃えてきたぜぇ!】は、エンジンが良い感じに掛かってきた状態でちゅ!」

 

「それじゃギアが上がるってどういう意味よ?」

 

「例えでちゅけど、プリキュアのみんなも、戦っている最中に集中力が増してきた事があるでちゅか?」

 

『あるある』

 

バイスの言葉に、プリキュアオールスターズがウンウンと頷く。

 

「それと同じでちゅ。輝二はエンジンが暖まってくると、ギアを一段階ずつ上がってきて、相手の動きを予測しているかのように戦うんでちゅ!」

 

『ぐっあああああああああああああ!!』

 

バイスがそう断言すると、防戦一方だったリバイがヘッジホッグ・デッドマンが、ロープにまで殴り飛ばされた。

 

「凄い・・・・!」

 

「輝二のヤツはね、わかってたでちゅ。松田歩の心を救って欲しいってその子の依頼、それはーーーー『未練』って鎖に縛られた松田歩を、解放させてやって欲しいってさ」

 

「それで、嵐山くんは彼との決闘を受けたのね」

 

「ひねくれ者でちゅけど、誰かの為に戦う事ができるヤツなんでちゅよ。輝二ってヤツは・・・・」

 

 

 

 

 

ーリバイsideー

 

『ぐぅ・・・・はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・』

 

「どうした松田。まだだろう?」

 

『えっ?』

 

「お前、まだ戦えるんだろう!? だったら、燃え尽きてしまうぐらいの勢いで、かかってこいや!!」

 

リバイごヘッジホッグ・デッドマンに立てと激励した。

 

「っ! 何してやがる松田! まだお前は戦えるだろう! 負けるんじゃねぇ!」

 

「松田さん! 頑張って下さい!!」

 

宮岡孝治郎と真崎有美が声を張り上げてヘッジホッグ・デッドマンを応援する。

 

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・ぬぅおおおおおおおおおおっ!!』

 

「ふっ」

 

『そうだ・・・・! 俺は、まだ・・・・燃え尽きていないんだぁぁぁぁぁぁぁ!! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

「ふっ・・・・」

 

ーーーードンッ!!

 

リバイはリング中央にまでさがると、中央で戦おうぜ、と言わんばかりに地団駄を踏んだ。

ヘッジホッグ・デッドマンか立ち上がると、再びファイティングポーズを取って、リバイの申し出に応じるようにリング中央に移動し、

 

『「っ!」』

 

二人は拳をぶつけ合い、試合を再開した。

 

「・・・・輝二さぁん! フレッフレー!」

 

「相手もヨロヨロです! このまま一気に攻め立てて下さい!」

 

「松田さんもまだまだだぁ!」

 

はなとさあやとほまれが輝二だけでなく、ヘッジホッグ・デッドマン、松田の応援を始めると、他のプリキュアメンバーも、リバイだけでなくヘッジホッグ・デッドマンを応援する。

 

「理解不能。何故輝二さんだけでなく、松田さんも応援するのでしょう?」

 

「ルールー、きっと皆分かったんです。輝二さんは、松田さんの為に、キックボクシングへの『未練』を絶ち切らせる為に戦っているって・・・・」

 

「『未練』を絶ち切らせる為に戦う・・・・ですか」

 

ルールも最初は分からなかったようだが、徐々に理解したような顔となり、リング上で戦う二人を見て、声を張り上げる。

 

 

 

ー狩崎sideー

 

「ふむ。プリキュアガールズも理解を示したねぇ(さて、こちらの“彼”はどうだろうねぇ)」

 

狩崎は自分の傍らに置いたガンデフォン越しで戦いを見ている“少年”はどうしているのか、と思っている。

 

 

 

ー???sideー

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

プリキュアオールスターズの観客席の向かい側の席の通路では、“黒衣の少年”がリングの上で戦っているリバイとヘッジホッグ・デッドマン、否、リバイに冷笑を浮かべながら見据えていた。




次回、黒い仮面ライダーとサムズアップのライオンが登場。


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黒き襲撃と獅子

今回で、第二のライダーと平成最初の仮面ライダーのゲノムが登場。


ープリキュアsideー

 

「負けるな二人とも!」

 

「立って!」

 

「頑張って下さい!」

 

なぎさとほのかとひかりが、否、客席にいるプリキュアオールスターズや、宮岡孝治郎と真崎有美が、12R<ラウンド>もリングの中央でノーガードの殴り合いを続けるリバイとヘッジホッグ・デッドマンに声援を送っていた。

 

「ぐはぁっ!!」

 

リバイがヘッジホッグ・デッドマンの一撃を受けてよろける。

 

「立て! 立つんでちゅ輝二! 辛かった特訓の日々を思い出すんでちゅ!」

 

「いや、何ごっこよソレッ!?」

 

「今よ! ソコで必殺の拳を叩きつけるのよ!」

 

「えりかまで何言ってるの!?」

 

「このままじゃ輝二さんは真っ白に・・・・」

 

「燃え尽きちゃ駄目でしょ! てか、さあやまで乗らないの!」

 

ボケる連中に流れるような連続ツッコミを入れるのは、プリキュア最強のツッコミ担当、夏木りんであった。

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「たぁっ!!」

 

『ぐぉ! がぁぁっ!』

 

「っ! つぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『がぁっ!!』

 

リバイの拳による連打で、グラつくヘッジホッグ・デッドマン。

 

「うぉらぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

『がぁぁぁぁっ!』

 

リバイは渾身の力を込めて拳を叩きつけると、遂にヘッジホッグ・デッドマンはヨロヨロになる。

 

「っ、バイス! 決めるぞ!」

 

「あいよでちゅ!」

 

バイスがつぼみの手から飛び出し、リバイは後方に飛び、ロープを足場にして大ジャンプをすると、ドライバーを操作した。

 

[カンガルー! スタンピングフィニッシュ!]

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「でちゅううううううっ!!」

 

後方宙返りしながら前に進むアクロバティックな動きでスタンプ状のエネルギーを足に纏い、キックを繰り出すリバイと、それより先にキックを繰り出すバイス。

 

『くっ! まだまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

と、ヘッジホッグ・デッドマンが全身に刺を生やし、防御の態勢を取った。

 

 

 

ープリキュアsideー

 

「うわぁっ! 刺だらけナリ!」

 

「輝二さん! バイス! 中止して!」

 

咲と舞があれではダメージを受けてしまうと考え、二人を止めようと声を張り上げる。

しかし、リバイは。

 

「それがーーーーどうしたっっ!!!」

 

「フィニッシュでちゅっ!」

 

しかし、二人は構うことなく、キックをヘッジホッグ・デッドマンに叩きつけた。

バイスが身体が小さく、刺の隙間からキックを打ち込んだ。が、リバイは思いっきり叩きつけ、足から血が流れた。

 

「構わず叩きつけたっ!」

 

「痛い痛い痛い痛い痛い! 見てるだけで痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

 

めぐみが驚きひめの他、何人かのプリキュアが足を抑えた。

 

 

ーリバイsideー

 

「ぐぅ・・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!」

 

『うあああああああああああああっっ!!」

 

ーーーードォォォォォォォォォンンッ!!

 

【カンガルースタンピングフィニッシュ】

 

吹き飛びながら、ヘッジホッグ・デッドマンから分離した松田歩。ヘッジホッグ・デッドマンはリングの上で爆散するが、松田歩はロープに叩きつけられ、反動でリングの外に放り出される。

 

「ヘイ!」

 

が、狩崎がスライディングでキャッチした。

 

「おおっ! ドクターナイス!」

 

えりかが狩崎を賞賛した。

 

「ぁ・・・・ぁぁっ・・・・」

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

『ヘッジホッグバイスタンプ』を回収したリバイは、息切れをしながらも足を引きずり、リングから狩崎に抱えられた松田歩を見る。

 

「どうだ、狩崎さん」

 

「うむ。無事だよ」

 

「・・・・・・・・俺は、負けた、のか?」

 

目を覚ました松田歩は、自分の身体を見てそう呟き、輝二は肯定した。

 

「そうか・・・・負けたか・・・・」

 

「どうよ? 『未練』は、断ち切れたか?」

 

「あぁ。やっとーーーー『未練って鎖』から、解き放たれた気分だよ・・・・! もう、うぅ、思い残す、事はない・・・・!」

 

啜り泣きのような声を漏らす松田歩。しかしその声には、何処か晴れ晴れとした想いが滲んでいた。

 

「そうかーーーーアンタは、もう大丈夫だ。これで、前に進めるな?」

 

「あぁ、やっと、前に進めるよ、ありがとう・・・・! 本当に、ありがとう・・・・!!」

 

涙を拭って、やって来たヒトミ達〈フェニックス〉隊員達に運ばれようとしている松田歩。真崎有美と宮岡孝治郎が近づき、松田歩が声を発する。

 

「宮岡、済まない。俺のせいで・・・・」

 

「気にするな。俺が終生のライバルと認めた男が、腐っていくのを止めたかっただけだ。俺もレスリングを引退するつもりだ」

 

「引退、するのか?」

 

「あぁ。それが親父との約束だったし、何より俺自身のもう一つの夢だからな」

 

「お前の夢?」

 

「おう。親父の店を継ぐ、ラーメン屋だっ!」

 

ドドンッ! と、擬音が聞こえそうな堂々とした物言いをする宮岡孝治郎。それを見て、松田歩は笑みを浮かべる。

 

「そうか。お前はちゃんと、レスリングの後の事を考えていたんだな・・・・」

 

「おうよ! 親父の店を継ぐのが俺の夢だ。レスリングやキックボクシングができなくなった。だがそれだけで俺らの人生が終わる訳じゃねえ。俺らもコレからいっぱい考えて、いっぱい悩んで、時には間違う事もあるだろうけどよ。鍛えてきた心と肉体がありゃぁ、どうにかなるっ!」

 

「お前は凄いな。じゃ俺は、スポーツドクターを目指そうかな。俺みたいに、怪我でスポーツができなくなった人達の、力になりたい・・・・」

 

「おう。良い夢だな!」

 

ライバル二人の会話に、真崎有美がオズオズとだが割り込み、松田歩の手を取る。

 

「あの! 松田さん!」

 

「あっ、君は、去年の優勝した時、花束をくれた・・・・」

 

「ぁっ・・・・私も! 松田さんの力になります!」

 

「でも、俺は、アイツらをーーーー」

 

「君に寄生していた連中なら、〈フェニックス〉が保護したよ」

 

そう。松田歩は彼らを殺していなかった。友達面してゴマすり、恋人気取りで付きまとっていた連中は、〈デッドマンズ〉がヘッジホッグ・デッドマンになった時に連れてきたが、勝手にビビって、涙や鼻水を垂れ流しながら汚ならしく命乞いする奴らの眼前に、襲うような素振りを見せた瞬間、彼らは気絶し、更には失禁までした。ソコで松田歩の復讐は終わった。

その後見捨てられ、〈フェニックス〉隊員達が発見し、彼らを保護したが、最早悪事ができないレベルにまで精神が折れたようである。

 

「そうか・・・・」

 

「これでーーーー」

 

「っ! 嵐山くん! 後ろ!」

 

不意に客席からゆりの声が響き、リバイはガードの体制になって振り向くとーーーー黒い影が襲いかかった、

 

『はぁっ!』

 

「ぐぁっ!」

 

黒い影が持っていたブレードに両手のグローブを切られ、その衝撃でコーナーにまで吹き飛ばされるリバイス。

 

「わぁっ! 何事でちゅっ!?」

 

『・・・・くくくく、寸前で防御したか。存外、油断はしてなかったようだなぁ?』

 

驚くバイスに、くぐもった声が響く。

 

「戦っている最中、客席から妙な視線と、殺気を感じていたから、だ」

 

『そうかい。だが、その足じゃ踏ん張りが効かなかったようだなぁ?』

 

「ちっ・・・・お前、何者だ・・・・!?」

 

血が流れる足でヨロヨロと立ち上がろうとするリバイ。客席にいるプリキュアオールスターズも、リング外の狩崎達も、その影を見て驚愕する。

マスクの形は上が剣のように伸び、羽を閉じて逆さまにぶら下がっているコウモリようで、複眼は小さくせり上がり、黒とターコイズの姿。複眼と胸部の紋章の色はそれぞれターコイズとイエローとなっているその姿はーーーー仮面ライダーに酷似していたからだ。

 

『くくくくくくくく・・・・!』

 

が、その仮面ライダーは不気味に笑うと、リバイスに向かって声を発する。

 

『忘れちまったのかよ仮面ライダーリバイス! いや、嵐山輝二ぃっ!』

 

「何?」

 

『この俺の名を! 『カジキゲノム』で斬りつけたこの俺を! 『ミハエル・フォーミュ』の身体に入った俺をよぉ!』

 

「『カジキゲノム』、『ミハエル・フォーミュ』・・・・! まさかお前ーーーー『カゲロウ』かっ!?」

 

「えぇぇぇっ!? 『カゲロウ』って、あの『カゲロウ』でちゅかっ!?」

 

「Whats!?」

 

リバイスと狩崎の顔に驚愕に染まる。

 

「ドクター、『カゲロウ』って・・・・?」

 

「あぁ、輝二くんがホイップガール達にエールガール達、そしてミス・沢田とミス・古里と初めて共闘した日の先日に戦った、『バイスタンプに憑依した悪魔』の名前だ」

 

「えっ!? 『バイスタンプに憑依した悪魔』って?」

 

「言った通りさ。カゲロウは『バットバイスタンプ』に憑依し、それを押印した人間に取り憑いて、精神を支配し、肉体の主導権を奪ってしまうんだ。君達の知るバイスも、『レックスバイスタンプ』を器物に押印すると、その器物に憑依する事ができるんだ」

 

「バイスってそんな能力があったんだ・・・・」

 

狩崎の説明に、ゆかりといつきとほまれがそう答えた。

 

「しかし、驚くべきはソコではない。輝二くん! ヤツの持っている武器とドライバーを見たまえ!」

 

「っ!」

 

カゲロウがその手に持っている武器とドライバーを見て、リバイは驚愕した。ソレはーーーー黒と緑色のカラーに、二つの顔のエンブレムがついたドライバーと、『バットバイスタンプ』を装填した銃のトリガーの柄をしたブレードだった。

 

「まさか、『ツーサイドライバー』だと!?」

 

「えぇっ!? それって、盗まれたって言うドライバーでちゅ! あんなの持ってるって事はカゲロウのヤツまさか・・・・!」

 

「・・・・カゲロウ、お前、〈デッドマンズ〉と手を組んだって事か・・・・!」

 

リバイスが怒気を込めた声を発すると、カゲロウは身体を震わせながら笑った。

 

『くくくく、はははは・・・・あーっははははははははははははははははは!!! 当然だろ? じゃなきゃ何で俺があんな悪魔崇拝者達に協力しなきゃあならねぇんだ? お前をぶっ殺せるなら、どんな手段も使ってやるよ! そして改めて、俺カゲロウが変身するこの姿。そうだなぁーーーー〈仮面ライダーエビル〉とでも名乗ろうかっ!』

 

「仮面ライダー・・・・!」

 

「悪<エビル>・・・・でちゅ?」

 

「台無しだよ」

 

リバイが戦慄の顔で言うが、バイスのせいでシリアスになりきれなかった。

が、カゲロウ、嫌、エビルはそんな漫才コンビに気にも止めず、手を上げて指を鳴らした。

 

『(スッ・・・・パチン!)』

 

『ギフゥゥゥゥゥゥ・・・・!!』

 

その瞬間、客席からギフジュニア達が這いずり出てきた。

 

『っ! ギフジュニア!』

 

『やれ』

 

エビルがそう短く言うと、ギフジュニア達はプリキュア達や狩崎達、さらに松田歩達にも襲いかかる。

 

「野郎(ズキンッ!)ぐぁっ!」

 

動こうとするリバイだったが、足の負傷で動きが止まる。

ギフジュニア達が迫ったその瞬間ーーーー客席、正確に言えばプリキュアオールスターズがいた席から光が溢れ出て。

 

『はぁあああああああああああああああっ!!』

 

プリキュアオールスターズが変身し、自分達に迫っていたギフジュニア達を薙ぎ倒し、アラモードチームとスマイルチームが飛び出し、狩崎達と松田歩達を守り、MHチームがリバイスの元に駆けつけた。

 

「お前ら・・・・」

 

「大丈夫輝二さん! バイス!」

 

「ここは私達に任せてください! ルミナス!」

 

「はい!」

 

ルミナスはリバイの足に手を当てると、淡い光が放射され、リバイの足の負傷が癒えていった。

 

「ルミナス。アンタ、回復が使えたのか?」

 

「最近になって使えるようになったんです。あまり大きな傷は治せませんが、この程度なら」

 

ルミナスが回復させていると、エビルがブラックとホワイトを見据える。

 

『へぇ・・・・お前らがキュアブラックとキュアホワイト、か』

 

「私達の事、知ってるの?」

 

『くくくくくく、因果ってのは巡る物だなぁ?』

 

「何の事なの!?」

 

愉快そうに身体を震わせるエビルに、ブラックとホワイトは訝しそうな顔となる。

 

「はっ・・・・教えねぇよ!!」

 

[ブレード!]

 

エビルは武器『ツーサイドウェポン・エビルブレード』を振って、二人に斬りかかるが、ブラックとホワイトは左右に別れてすぐ、エビルを挟撃する。

 

「「はぁぁぁぁぁっ!!」」

 

『キュアブラック、右手のストレート。キュアホワイト、右足の回し蹴り』

 

が、エビルは大きく動かず、ソッと体制を僅かに動かして二人の攻撃を回避した。

 

「「えっ!? たぁぁぁぁぁっ!」」

 

二人は驚きながら、次の攻撃に移る。

 

『キュアブラック、拳での1・2ラッシュの後に回転裏拳。キュアホワイト、回転キックの後に踵落とし』

 

エビルはまたもや二人の攻撃を見切っているように僅かなモーションで回避した。

 

「「っ!」」

 

『攻撃が回避され続け、一旦リズムを整えようと、二人は距離を空ける・・・・!』

 

「「っ!!?」」

 

エビルが言うと同時に、ブラックが後方に飛んで、ホワイトがバク転で距離を空けた。完全に動きを読まれていると直感した二人に戦慄が走るが、その瞬間。

 

『だが! キュアホワイトは僅かに体制を整えるのにコンマ数秒の遅れが、ある!』

 

「はっ!」

 

ホワイトの眼前に、エビルがその仮面をギリギリまで近づけ、ホワイトが退こうとするが、リングのロープに遮られる。

 

「しまっーーーー」

 

『しゃぁっ!!』

 

「ホワイト!」

 

エビルブレードを突き立てるように、ホワイトへと腕を伸ばしたエビル。しかしーーーー。

 

「ふっ!」

 

『っ』

 

ホワイトはその腕を掴んで、投げ飛ばそうとした。

 

「やった!」

 

「いや、ダメだ!」

 

ルミナスが安堵するが、リバイがそう言った瞬間、エビルは掴まれていない手でロープを掴み、その握力で投げ飛ばされる体勢のまま動きを止めた。

 

「なっ!?」

 

『またまた残念、だな!』

 

「ホワイト!」

 

掴まれていた腕を外して再び身体を動かしリングに戻り、ホワイトの首根っこを掴むと、助けに向かおうとするブラックに向けて投げ飛ばした。

 

「うわっ!」

 

「きゃっ!」

 

ブラックはホワイトを受け止めるが、衝撃で動きが止まった。

 

『終わりだ!』

 

[必殺承認!]

 

「マズイ! ルミナス! 二人の所に!」

 

「でも輝二さん!」

 

「傷は塞がった! 急げ!」

 

「・・・・はい!」

 

ルミナスがリバイから離れると同時に、エビルはエビルブレードに付いた『バットバイスタンプ』のスイッチを押してから、エビルブレードのトリガーを引いた。

 

[バット! ダークネスフィニッシュ!]

 

『させない!』

 

ルミナスが二人の前に出てバリアを張り、リング外にいた何人かのプリキュア達が、一斉にリングに飛び込んでくるーーーーしかし、エビルは慌てた様子もなく。

 

『ふっーーーーはぁぁぁぁっ!!』

 

【バットダークネスフィニッシュ】

 

エビルは、ルミナスにブラックとホワイトではなく、リング外のプリキュア達に向かって、エビルブレードを数回振るうと、青緑色の斬撃を放った。

 

『えっ!? きゃぁぁぁぁぁぁ!!』

 

突然の攻撃にプリキュア達は反応が僅かに遅れ、斬撃を浴びてしまい、リング外に弾き出された。

 

「皆さん!」

 

『はぁぁぁぁぁっ!!』

 

「くっ! あぁぁぁっ!」

 

「「ルミナスっ!」」

 

エビルは次にルミナスに向けて斬撃を連続で放ち、ルミナスのバリアが破れ、衝撃で吹き飛んだルミナスを受け止めるブラックとホワイト。

弾き出され倒れたプリキュア達にギフジュニアが迫るが、他の仲間達がフォローに回る。

 

「えぇっ!? アイツ、プリキュアちゃん達の動きを読んでいるでちゅかっ!?」

 

「(・・・・妙だ。一度戦ったが、カゲロウはアソコまで頭脳的な戦闘ができるタイプじゃないし、プリキュア達の行動パターンはある程度付き合ってみれば読めるだろうが、ブラックのホワイトの動きを、まるで“以前から知っているような戦い方”なんてできるか・・・・?)」

 

「ああああああっ! ギフジュニアって本当に面倒くさいっ!!」

 

「スナッキーやチョイアークくらいのヤツだと思ってたけど・・・・!」

 

「彼らよりタフだね!」

 

マリンが叫び、サンシャインとハニーも同意するように応える。

 

『さて、と。取り敢えず邪魔だから、テメエらから始末してやるよ! プリキュア!!』

 

「くっ! バイス! 『レックスゲノム』だ!」

 

「あいでちゅ!」

 

「輝二くん! これを使いたまえ!」

 

ゲノムチェンジをしようとするリバイが、バイスに頼むがリング外でアラモードチームに守られている狩崎が、新たなバイスタンプを投げ込んだ。

 

「っ! バイス!」

 

「キャッチ! カリちゃんナイスでちゅ!」

 

「カリちゃん!?」

 

『あ、ちょっとアリかも』

 

バイスタンプを受け取ったバイスがそう言うと、狩崎が面食らうが、プリキュア達は好評だった。

バイスは『カンガルーバイスタンプ』を取り外すと、『ライオンが刻印されたバイスタンプ』を起動させる。

 

[ライオン!]

 

「行くでちゅよ輝二!」

 

「あぁ! ゲノムチェンジだ!」

 

[Come on!ラ・ラ・ライオン!Come on!ラ・ラ・ライオン! Come on!ラ・ラ・ライオン]

 

「何っ!?」

 

「ライオンっ!?」

 

エビルとジェラートが反応すると、バイスがスタンプをリバイに叩き込んだ。

 

[バディアップ! ガオーン! ゲットオン! 野獣の王!ラーイーオーン! 見ててください!俺の雄叫び!]

 

「はっ!」

 

「ニャオ!」

 

バイスが左手を腰に、右手を左側に向けて伸ばすと、リバイは中腰で両手を下に広げるポーズを取った。

二人とも、ライオンを彷彿させる仮面を着け、リバイは両肩にライオンの爪の装飾を、バイスは赤いかぎ爪を装備し、胸と足にプロテクターを装備して赤いマフラーまで巻いていた。

 

「「うぐっ!」」

 

「ブラック? ホワイト?」

 

何故かブラックとホワイトがツッコミのポージングをして固まり、ルミナスが首を傾げた。

 

「うわぉ! ライオンかよっ!?」

 

「行くぜバイス!」

 

「あいよ!」

 

ジェラートが喜びの声をあげ、リバイとバイスがいつもの腕タッチをしてから駆け出し拳を繰り出すと、二人の拳が炎を纏った。

 

「おらっ!」

 

『くっ!』

 

「あちゃぁっ!」

 

『ぬぁっ!』

 

左右からの連続パンチにエビルは

一瞬気後れするが、すぐにエビルブレードを振るうと、二人は後退した。

 

「輝二! まだ傷治りきってないだろ? 一気にやったろうぜ!」

 

「あぁ」

 

[リミックス! 必殺! チャンピオン! 爆音! ライオン!]

 

後ろ向きの四つん這いとなったバイスの両足を、中腰になったリバイとリバイの上半身が上顎、バイスの両足が下顎を担う巨大なライオンの頭に変化して、『リバイスライオン』へとリミックスした。

 

ーーーーガォオオオオオオオオオオオン!!

 

「と、見せかけてぇっ!」

 

「は? うおっ!?」

 

がしかし、バイスが身体を動かすと、リバイと位置が逆転するとバイスの頭と両手に、猫の被り物と猫の手が装備され、ご丁寧に左手に大きな小判まであった。

 

「ニャ~! 俺っちのリミックスだニャ~!」

 

「何じゃこりゃぁぁぁぁ!?」

 

『何じゃそりゃーーーー!?』

 

リバイとプリキュアオールスターズ(大半)が、同時にツッコミを入れた。

 

『・・・・馬鹿かお前?』

 

「ニャ~! 馬鹿かどうか、この力を見せてやるニャン! ウニャ~!!」

 

リバイスライオン(笑)がエビルに近づき、連続パンチを繰り出す。

 

『ぐぅ! この!』

 

勝手が違う敵を相手に、エビルは戦い辛そうにする。

 

「うわっ! バイスネコちゃんスゴい!」

 

「てかあれって事務所に置かれてる招き猫でしょ!」

 

ギフジュニアと戦いながら、ミラクルとマジカルがそう会話をする。

 

「ニャ~! ネコちゃん最強~!」

 

「ネコじゃない!ライオンだライオン!!」

 

『調子こいてんじゃ!』

 

「っ、こんのっ!」

 

「あニャンっ!」

 

リバイスライオン(笑)がエビルに飛びかかろうとする際、リバイが体勢を変えると、リバイスライオンにチェンジすると、エビルブレードを突き出そうとしていたが、牙でエビルブレードの側面を咥えて、コーナーへと投げ飛ばした。

 

『ぐはっ!』

 

「決めるぞ!」

 

「おうよ!」

 

距離を空けたリバイスライオンは、四足に炎を纏いながら駆け出し、全身に光を纏って突進する。

 

『ちっ!』

 

[バット! ダークネスフィニッシュ!]

 

「「おりゃあああああああああああああっ!!」」

 

『しゃぁぁぁっ!!』

 

【ライオンスタンピングフィニッシュ】

 

【バットダークネスフィニッシュ】

 

ーーーーガォオオオオオオオオオオオン!!

 

『ちっ・・・・んっ!? しまっーーーーぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

エビルが青緑の斬撃を連続で放つが、リバイスライオンの突進を止められず、逃れようと動こうとしたが、突如身体が動けなくなり、炎と光を纏った突進を受けてしまいリングから吹き飛び、客席へと落下した。

 

ーーーーガォオオオオオオオオオオオン!!

 

リバイスライオンが勝利の雄叫びをあげた。

 

「やったね輝二さん! バイス!」

 

リミックスを解除したリバイスに向けてホイップが声を発した。

 

「・・・・・・・・ふっ」

 

「イエイッ!」

 

『(パァッ!)』

 

ホイップに向けてサムズアップするリバイスに、ホイップや他のプリキュアオールスターズも笑みを浮かべて、同じくサムズアップで返した。

 

『かはっ! ふっ、流石にやるなぁ・・・・!』

 

『っ!』

 

すると、ヨロヨロとボロボロになりながらも立ち上がる。【ダークネスフィニッシュ】によって威力が多少落ちたようだ。ギフジュニア達がプリキュアオールスターズに全滅されそうになっていた。

 

『ちっ。ここまでか』

 

「待ちやがれカゲロウ!」

 

「逃がさないもんね!」

 

『・・・・ふっ!』

 

リバイスが攻撃するが、エビルは全身を真っ黒な蝙蝠の群れに変えると、宙を舞いながら声だけが響き渡る。

 

ーーーーくくくくく、そう慌てるなよリバイス! 今日はほんのご挨拶代わりだ! 次も楽しもうじゃぁねえか! 伝説の戦士のお嬢ちゃん達も、せいぜい楽しませてもらうぜ! はっはっはっはっはっはっ! アーハッハッハッハッハッハッ!!

 

そして蝙蝠の群れは散開し、武道館から消えていった。

残されたギフジュニアも、プリキュアオールスターズによって、全滅させられた。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

「~~~~~~~~!!」

 

「はい輝二さん、我慢して下さい」

 

翌日。輝二は事務所に集まったプリキュア達(5GoGoとドキドキとHUGっと)から、かれんに六花、さあやと言った医者志望のプリキュア達に治療を受けていた。消毒液が顔や足に染み込む度に痛みに悶えそうになるが、意地で我慢する輝二。松田歩と宮岡孝治郎は〈フェニックス〉の保護監視下に置かれたが、危険性はほぼ皆無なので早い内に釈放されるとの事。

 

「染みますか輝二さん?」

 

「ば、馬鹿野郎・・・・! こんな程度、何とも、ないわい・・・・!!」

 

「あらそうですか、じゃもっとキツメに!」

 

「~~~~~~~~~~~!!!!」

 

六花が心配するように言うが輝二はそう返し、さあやが消毒液が染みたガーゼを傷口に押し付けると、輝二は声にならない悲鳴をあげる。

端から見れば美麗な乙女三人に治療され、役得な物だが。

 

「てか、お前ら、まだウチに・・・・! 吹き溜まる、つもりかよ・・・・!?」

 

「まぁまぁ! 私達も、輝二さんが復讐をやり過ぎないようにしようって事にしたんだ! けって~い!」

 

「いや勝手にけって~いする「はい輝二さんまた染みますよぉ」~~~~~~~~~~!!」

 

抗議しようとする輝二だが、六花が消毒液付きガーゼで足の傷につけると、激痛で黙った。

 

≪どうやらさ、プリキュアちゃん達とのつき合いはまだまだ続きそうね?≫

 

「な、何でこうなんだよ・・・・!!」

 

「諦めろ。コイツらに目を付けられたら逃げられないからな」

 

輝二は苦しそうな声をあげ、そんな輝二に、シロップことシローは確信を込めて言うのであった。

 

 

 

 

 

 

ーカゲロウsideー

 

「デビュー戦はそれなりの活躍でしたね、カゲロウ?」

 

『ふん。この身体の元々の持ち主がまだ少し抵抗しているがな。だが、それも直ぐに終わる』

 

〈デッドマンズ〉の本拠地にて、エビルの姿でテーブルに足を乗せながらソファにふんぞり返るカゲロウ。

 

「それで、次はどうするの?」

 

『どんな人間にだって弱点はある。勿論ーーーー嵐山輝二にもな』

 

エビルが一枚の写真をテーブルに放り投げた。その写真にはーーーー『七瀬ゆい』が写っていた。

 

「・・・・・・・・」

 

「あらフリオ? どうしたの?」

 

「あ、いえ、何でもありませんアギレラ様。スマ~イル!」

 

そんな中、一人浮かない顔をするフリオだが、アギレラに声をかけられ無理に笑顔を作った。

フリオには分からなかった。自分を裏切った人間達を見逃した松田歩を。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

夕方。プリキュア達が漸く帰り、ガンデフォンにメールが届き、あまり人のいない公園にやって来た輝二。そして目の前には、ギブスを外せたなのはとフェイト、そしたはやてがいた。

 

「何だよ、突然呼び出しやがって」

 

「輝二くん。今日の戦い私達も見せてもろうたで」

 

「ふぅん」

 

「あんな戦い方をしていたら輝二くん身体を壊すよ! あんな無茶な戦いはやめなさい!」

 

「・・・・くっだらねえ」

 

なのはが輝二の戦い方を否定するが、輝二は冷めきった目で一蹴した。

 

「えっ?」

 

「無茶な戦い? 戦いに『安全』なんて物は無いんだよ。そんな線引きをして戦えるような甘ったるいヤツらじゃないってのは、ボロ雑巾にされたアンタらが分かってるんじゃないのか?」

 

「「「っ!」」」

 

「アンタらはどうやら『安全』に戦える雑魚か、『ルールのある戦い』をしてきたようだな?」

 

「「「うっ!!」」」

 

輝二の言葉に、なのは達は息を詰まらせる。その言葉は、『ほんの数週間前の事件』の時にも言われた言葉だからだ。

 

「それに、アンタらの命令に従うつもりもないし、アンタらの事を信用していない」

 

「何で・・・・何で私達を信用しないの!?」

 

フェイトが噛みつくが、輝二は淡々と応える。

 

「逆に聞くけどさ。アンタらはーーーー“何を隠しているんだ”?」

 

「「「っ・・・・!」」」

 

再び息を詰まらせる三人を見て、輝二の『不信感』は『確信』へと変わっていく。

 

「俺も『隠し事』をしている人間だからさ。匂いで分かるんだよ。FW陣は兎も角、アンタら隊長陣は『何か』を隠している。その隠している『何か』が、俺だけでなくプリキュア連中にも関わる物じゃないのか?」

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

顔を俯かせるなのは達を見て、これ以上の問答は無意味と思ったのか輝二は去ろうとするが、一瞬だけ止まり。

 

「この事は俺の胸にしまっておくが忘れるな。アンタらへの『不信感』が拭えない限り、俺はアンタらを信用しない」

 

そう言って、今度こそ輝二は去って行った。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

輝二が去った後、なのは達は念話で会話する。

 

《彼・・・・気づいているのかな?》

 

《いや、今は多分疑っている段階やと思いたいわ》

 

《・・・・私達、破廉恥な事をしているよね》

 

なのはの自虐的な言葉に、フェイトとはやても黙った。なのは達機動六課の隊長陣は、〈時空管理局〉上層部から密命を受けていたのだ。それは・・・・

 

 

 

【伝説の戦士プリキュアが所持する『ロストロギア』を全て回収せよ】

 

 

 

とーーーー。

 

 

 

 

 

ー狩崎sideー

 

そして夕方の公園。ここにも、一人の少年を呼び寄せていた人物がいた。足元に小型のアタッシュケースを置いた狩崎だ。

 

「・・・・・・・・・・・・来たね」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

狩崎は振り向いてその少年に向けて声を発する。

 

「言い訳を言うようだが、私は『コレ』を君に渡すのは本意ではない。だが、〈フェニックス〉上層部が『コレ』に適合する人間を見つけろ、と催促されている。君の適合率はヒトミ達〈フェニックス〉隊員の誰よりと高い。それに君の潜在能力は“彼女達以上”だ。まぁだからと言って、『コレ』を渡して良い訳ではないがね」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「断っておく。『コレ』は私が作った物ではない。“既にあった物を調整しただけだ”。『コレ』を使う事で何が起きるか、どんな副作用があるかは検討もつかない。それでも、『コレ』を求めるかい? もう一度良く考えてくれたまえ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

少年は狩崎に自分の決意を伝えると、狩崎は両肩を落として、アタッシュケースを少年に差し出した。

少年はケースを開けると、『スパイダーバイスタンプ』と『赤いドライバー』を手に取り、決意を込めて頷いた。




次回の話で、遂にプリキュア達、特にGoプリメンバーは知ってしまう。輝二とゆいの関係に。


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輝二の隠し事

それは、嵐山輝二が〈仮面ライダーリバイス〉として戦い初めての頃。輝二はある二人の男を探していた。

一人は、『蛭山明彦<ヒルヤマ アキヒコ>』。でっち上げや捏造の記事を書き、人を不幸にする記事を喜んで作る悪徳記者だ。

最近の標的はプリキュアであり、【プリキュアがいるから我々は危険な目にあう】、【プリキュアは魔法等と胡散臭い力を使うぺてん師】、【一部のプリキュアは政府と癒着している】、【プリキュアは自分勝手な善意を押し付けているだけの偽善者】とプリキュアに批判的な記事を書いていた。

もう一人は、『加藤雅夫<カトウ マサオ>』。高校生で、学校では顔が少し整っている優しい好青年。だが裏では、何人もの女子生徒や若い女教師と肉体的な関係を持ち、さらには可愛ければ男子生徒でも手を出す無責任で無節操な男だった。

輝二は独自のぶーさんや情報屋の情報網を使って、この二人の人物像と最近この二人が、〈デッドマンズ〉から『バイスタンプ』を手に入れた事と、頻繁に出会っている事を突き止めた。

プリキュアにアンチな悪徳記者と無節操な男のコンビだ。何を企んでいるのか大体想像がつく。

 

【(ま、俺には関係ないからどうでも良いけど)】

 

と、後にそのプリキュア達と腐れ縁を作る事になる輝二は露知らず、二人が密会している廃工場を見つけ、ソコに向かおうとしたその瞬間、

 

ーーーーワー! ギャー! グァー!

 

【???】

 

【≪何か煩くね?≫】

 

廃工場から、複数の男達の野太い悲鳴のような声が響いてくる。蛭山は半グレを雇う事もしているので、おそらくその手の連中がバカ騒ぎでもしているのだろうと思った。が、不思議な事に、その声はすぐに止み、不気味な静けさが残った。

 

【(何だ?・・・・っ!)】

 

廃工場から妖しい光が僅かに見え、さらにそのすぐに廃工場から“何か”が目の前に飛んできて、輝二の横を通りすぎ、その先にあった木に突き刺さった。見てみるとそれは。

 

【≪何これ? 釘抜き?≫】

 

【いや、これはーーーーバールの先端だな】

 

そう、突き刺さっていたのは工具のバール。その釘抜きの部分であった。半グレ達の武器かな? と思い、輝二は一応〈フェニックス〉に連絡を入れてから、再び廃工場へと向かった。

 

ーーーードガァァァァァァァァンン!!

 

【っ! 変身】

 

【[リバイスドライバー! レックス! バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]】

 

【よっと!】

 

突然の盛大な物音にすぐにリバイスドライバーを着けてリバイスに変身した二人は、静かに工場の中に入った。

すると工場の中心で、ボロボロになり気絶した半グレ達が倒れ、件の蛭山と加藤の二人が、二体のデッドマンを側に控えさせていた。

 

【(トカゲとゴリラのデッドマン、さしずめ『リザード・デッドマン』と『ゴリラ・デッドマン』かな?)】

 

正確には、『コモドドラゴン・デッドマン』と『コング・デッドマン』なのだ。

多分蛭山との報酬のトラブルかなんかで揉めて、数の不利を考えた蛭山と加藤が、バイスタンプで悪魔を呼んだんだろうと思ったが、二人の話し声が聞こえ、ガンデフォンの録音機能を起動させた。

 

【何だったんだよ? あの男?】

 

【さぁな。自分の事を『スタイリッシュ悪人デストロイヤー』なんて名乗っていたが・・・・】

 

【(ーーーーどうやら何者かに襲撃されたようだな。それにしても・・・・)】

 

【(センス0の名前だねぇ~、その襲撃者)】

 

と、呆れながらコッソリ会話するリバイスだが、蛭山と加藤は話を続け、加藤が自分達のデッドマンを指差す。

 

【コイツらを使って、プリキュア達を捕まえた後は、俺の好きにして良いんだよな?】

 

【あぁ。プリキュアの強みはチームプレーだからな。一人ずつ確実に倒して捕まえた後は、お前の好きになぶって良いぞ。俺はその姿を写真で取り上げて、新聞にデカデカと載せてやるよ。『伝説の戦士プリキュア、快楽に溺れる』ってな】

 

下卑た笑みを浮かべる蛭山に、加藤は訝しそうな顔になって問いかける。

 

【それにしても、アンタは何でそんなにプリキュアが気に食わないんだ?】

 

【はっ! あの『世の中皆優しい人達ばかりだよぉ~』、『世界はこんなに綺麗なんだよぉ~』、『頑張れば、信じれば夢は叶うよぉ~』、何てほざいてやがる、脳ミソお花畑なお嬢ちゃん達に、『現実』ってヤツを教えてやろうって思ってなぁ。それに大衆ってのは有名人の綺麗な部分じゃなくて、汚い部分の方が大好きだからなぁ。自分達の日頃の鬱憤を晴らせるターゲットが欲しいんだよ。『真実』なんてどうでも良い事なんだよ。お前も好みのプリキュアをなぶらせてやるんだ。ありがたく思えよ?】

 

【へぇ~、じゃぁ誰にしようかなぁ? キュアムーンライトとか、キュアマカロンみたいな澄ました女やトゥインクルのような生意気そうな女も悪くないなぁ。けど、キュアビートもなぶりがいがありそうだし、胸も大きくてスタイルの良い子が揃ってるフレッシュなら、キュアパインを味わいたいなぁ】

 

下卑た笑みで舌舐めずりをする加藤に、同じ男として嫌悪感を感じた輝二は、少し痛め付けてから〈デッドマンズ〉の事を聞こうと思っていた慈悲が、一瞬で消滅した。

 

【・・・・速攻で終わらせるぞ、バイス】

 

【あいよ!】

 

ダッ! とリバイは胸元の紋章にバイスタンプで押印して、リバイは両足が、バイスは尻尾が大きくなり飛び出す。蛭山と加藤が驚くが、二人は構わず、スタンピングフィニッシュで一気に二体を撃破した。

 

『レックス・スタンピングフィニッシュ』

 

ーーーードゴォォォォォォォォォン!!!×2

 

【【うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?】】

 

突然の爆風で二人は軽く吹き飛びながら転がり、その拍子にバイスタンプを放り出すと、その先にリバイスが立っていた。

 

ーーーーバシュンッ!! バシュンッ!!

 

そして、倒れる二人の背中をバイスタンプを二つともキャッチしたバイスが尻尾を叩きつけて動きを押さえ、ガンデフォンの光弾が二人の顔をギリギリに掠めた。

 

【ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?】

 

【な、何だよお前らぁ!?】

 

【うるせぇ。テメェらが知ってる〈デッドマンズ〉に関する情報を全てゲロしろ。三秒以内だ。ほら1・・・・】

 

バシュンッ!! バシュンッ!!

 

【【まだ三秒経ってねぇよ!!】】

 

バシュンッ!! バシュンッ!! バシュンッ!! バシュンッ!!バシュンッ!! バシュンッ!! バシュンッ!!バシュンッ!!

 

【【ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!】】

 

一秒でガンデフォンを撃つリバイに、理不尽そうに悲鳴を上げる二人だが、リバイは関係無いと五月蝿い、と言わんばかりに光弾を蛭山と加藤の顔に当たるギリギリに撃った。

 

【とっととゲロしろ。さもないと手の平か足にデッカイ風穴が空く「ーーーーガシャァァァンッ!!」あん?】

 

弱冠本気で引き金の指に力を込めたリバイだが、突然離れた位置から何かが崩れ落ちる音がして、バイス共々目をそちらに向けるとソコにはーーーー。

 

【・・・・何よ? あの血まみれの筋肉ゴリラの出来損ない?】

 

バイスがかなり失礼な事を言うが、リバイも同意した。

現れたのは、体格は大柄で、身体にはモリモリと筋肉の鎧を纏っており、筋肉ゴリラと言っても良いガタイの凄い男だった。しかし、上半身は裸で、所々に鉄パイプで殴打された痕もある上、顔は無造作に伸びた前髪と頭から血がドクドクと流れ顔を隠し、出来損ないと言うよりも、くたばり損ないと言った方がシックリくる容貌だった。

その筋肉ゴリラは前髪の隙間から、ギラギラと獰猛な光を放っており、まるで餌を前にしたケダモノのように唸るような声をあげた。

 

【あ、アイツはさっきの・・・・!】

 

【『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』!?】

 

【えっ? あれが?】

 

【(スタイリッシュじゃなくて、マッスルだろ・・・・)】

 

【・・・・こせ・・・・!】

 

【は?】

 

【その・・・・スタンプを、僕に寄越せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!!】

 

咆哮を上げて迫る『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』は、リバイに向かってストレートパンチを突き出した。

 

【っ! おらっ!】

 

ーーーードシッ、バコォォォォンッ!!

 

【はぶんっ!?】

 

危険を感じたリバイは突き出された拳に蹴りを入れて軌道をずらすと、拳は『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』の顔面に深く突き刺さった。それはもう、顔のパーツが全部、比喩抜きで凹んだようだ。

 

【バイス!(バキッ!)】

 

【ぎゃぼっ!?】

 

【おう!(バキッ!)】

 

【べあっ!?】

 

リバイスは蛭山と加藤の後頭部を思いっきり殴ると、二人は地面に顔面を叩きつけて気絶した。

次にリバイは『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』の上を飛んで踵落とし後頭部に、バイスは下から踵で顎を蹴り上げた。

 

ーーーーバキャッ!!

 

【げぶばぁぁぁぁっ!?】

 

『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』は後頭部と顎からの同時に攻撃で、顔面にめり込んだ拳が離れると、ただでさえ血が流れていた顔に鼻血も加わって真っ赤に染まり、さらに福笑いのように顔がグチャグチャになってしまい、そのまま土煙をあげながら倒れて気絶した。

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・】

 

【どうするよこのゴリラ?】

 

一応脈はあるが、完全に虫の息で気絶した『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』を爪先でツンツンしながらバイスが聞くと、リバイは声を発する。

 

【完全にコッチを殺す勢いだったから思わずやっちまったけど。ま、放っておいて良いだろう。もうすぐ〈フェニックス〉も来るし、後はアイツらに任せれば良い】

 

そう言って、『コモドドラゴンバイスタンプ』と『コングバイスタンプ』を持って、リバイスはその場を去った。

 

 

 

ーーーー数分後に駆けつけた門川ヒトミ達によって蛭山と加藤の他、半グレ達は捕縛されたが、『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』の姿だけは、消えていた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

そして現在に戻りーーーー。

〈便利屋 嵐〉の事務所にて、高校の勉強をしている輝二。休学しているとは言え、勉強は怠るつもりはないようだ。数時間程勉強し、軽く身体を伸ばした。

 

≪えぇ・・・・只今輝二は勉強中です≫

 

「おしっ。本日の勉強はこれで終了、っと・・・・」

 

『た、ただいま~・・・・』

 

「おお、便利屋代行の仕事、お疲れさん」

 

と、ソコでいつものように事務所にやって来たプリキュア達。今回はスイートチームとフレッシュチームとGoプリンセスチームである。全員疲れているのが分かるほどに、ヨロヨロだった。

 

「ま、迷子の猫ちゃん達の捜索、終えたよぉ~・・・・」

 

「まさか、一匹か二匹かと思ったら十一匹の仔猫を探す事になるなんて・・・・!」

 

「こ、こっちは、ワンちゃん達の散歩、終わらせてきたわ・・・・」

 

「ラ、ラブちゃんが一番おっきなワンちゃんの散歩をして、走り出したワンちゃんに引き回されて大変だったよぉ・・・・」

 

「あ、あははは、ごめ~ん・・・・」

 

「わ、私達も、お惣菜の買い出しの代理、してきたよぉ・・・・」

 

「奥様方の荒波が凄まじかったわ・・・・」

 

「女は弱し、されど母は強しって、あぁ言うのを言うんですわね・・・・」

 

ほぼボロボロの状態のプリキュア達を見て、輝二がテーブルに置かれたお菓子とジュースを準備している妖精達を親指で指差す。

 

「お疲れさん。お菓子とジュースはソッチにあるから、好きなだけ食べて良いぞ」

 

『あ、ありがとう・・・・』

 

全員がソファーに座ってお菓子とジュースを頬張る。疲れた身体に甘い物が染み渡り、頬を緩ませるプリキュア達。

さて、何故プリキュア達が〈便利屋 嵐〉の仕事の代行をしているのかと言うと、いつもの通りに事務所に掃き溜まるプリキュアオールスターズに、遂に輝二がキレて。

 

【テメェら!! 人の事務所で掃き溜める暇があるなら仕事を手伝え!! 菓子代と飲み物代と光熱費代わりだっ!!】

 

と、言われ、前に便利屋の仕事にも興味があったオールスターズはそれを了承した。

が、結果はご覧の通りであった。

 

「まぁったく『こうじん』も酷いよねぇ。私達に自分の依頼をやらせるなんて」

 

「誰が『こうじん』だ天ノ川。人の事務所で駄弁って掃き溜まっていられても迷惑なんだよ」

 

「まぁそう言わず輝二さん。あ、奏。確か冷蔵庫にカップケーキ入れてたよね」

 

「ええ取ってくるわ」

 

「あっ! カオルちゃんのドーナッツも持ってきてたんだった!」

 

「それも持ってこないとね」

 

「それじゃ私は戸棚に置いておいた紅茶も持ってくるわね」

 

「みなみ。わたくしも行きますわ」

 

「だから人ん家の事務所の給湯室や冷蔵庫に自分達用の紅茶やらオヤツとか入れてんじゃねぇ! 悪霊寄りの座敷わらしかお前らは!!」

 

完全に溜まり場にしているプリキュア達に、輝二は血管を浮かべながら怒鳴るが、もはや慣れたのかプリキュア達は気にしなかった。

 

ーーーーピコン。

 

「あ?・・・・・・・・」

 

自分のスマホのメール受信音が聞こえ、輝二はメールの中身を確認すると目線を少し細くし、事務所を出ようとする。

 

「あ、輝二さん。何処か行くの?」

 

「ちょっと野暮用だ」

 

そう言って、輝二は事務所から出ていった。

 

 

 

 

 

ーはるかsideー

 

「野暮用って、輝二さんどうしたのかな?」

 

「さぁーーーーあれ?」

 

はるかの言葉に響は首を傾げると、机の上に、新しく渡されただろうバイスタンプが置かれていたのに気づいた。同じく気づいたラブが、『タコが刻印されたバイスタンプ』を手に取った。

 

「う~ん、改めて見ると、本当にこんなスタンプで人間の中の悪魔が出てくるの?」

 

「ラブちゃん、勝手に取ったら輝二さん怒るよ?」

 

「大丈夫だよブッキー」

 

「ーーーーくぁ~・・・・キュア? プリップ~♪」

 

と、ソコでお昼寝していたシフォンが起きて、超能力でバイスタンプを浮かばせた。

 

「うわっ!」

 

「シフォン! 何しとんのや!」

 

シフォンが超能力で輝二の机に置かれていた他のバイスタンプや参考書や文具やらその他までも浮かせて、部屋の中央で回していた。

 

「キュワ~♪」

 

『うわぁっ!?』

 

特に、バイスタンプは縦横無尽に飛び、奏がおぼんでバイスタンプを叩き、響が仰け反ってかわし、アコの頭上をかすり、きららが捕まえようとするが逃げられ、トワの顔の横を飛び、せつなの後ろから迫るバイスタンプを回避し、美希の顔を横切った。ーーーーその際、自分の前を横切ったバイスタンプに、タコの刻印があったのを見て、美希が青ざめる。

 

「っ! い、今のバイスタンプって、タコ!?」

 

「あ、そういえばタコのバイスタンプがあったよ」

 

「イヤーーーー!! 私タコは駄目なの! そんなので押印されたらタコの悪魔が生まれちゃうわ! そんなの悪夢よっ!!」

 

「悪魔が生まれたらそれだけでも悪夢よ・・・・!」

 

「そう言えば、『音吉さん』から貰った本に、タコってヨーロッパの一部では『悪魔の化身』とも言われてるってあったわ・・・・!」

 

「あぁそれでドクターさん、タコさんのバイスタンプを作ったんだ」

 

錯乱する美希に、オカルトが苦手なみなみとエレンが顔を青ざめ、祈里は納得した。

 

「プリップ~♪」

 

「シフォン! やめるんやっ!!」

 

「っ、それ!」

 

と、ソコでアロマが人間態に変身すると、ドーナッツをシフォンの口に押し付けた。

 

「キュア~♪ ハムハム♪」

 

ドーナッツが機嫌が良くなったのか、超能力が止まり、床や机にバイスタンプや他の物が落ちた。ホッとする一同に、ラブが声をあげた。

 

「・・・・皆、片付けようか。この惨状を輝二さんが見たら・・・・」

 

ーーーーこのドアホウ共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!

 

と、鬼面を着けて怒鳴り声をあげる輝二の姿を想像して、半眼で苦笑した一同が片付けを始めた。

 

「シフォンちゃん。超能力をイタズラに使っちゃ、メッ、だよ?」

 

「キュア~?」

 

「分かってないわね」

 

「ごめんなさい」

 

祈里が優しく諭すが、シフォンは首を傾げ、アコが呆れたように呟くと、せつなが謝罪した。

 

「・・・・あれ?」

 

片付けている中、はるかが一枚の写真を見つけて手に取ると首を傾げた。写真には、男の人と女の人、そしてその足元に二人の小さな男の子がいた。おそらく輝二の両親と幼い頃の輝二のお兄さんの『一光』と、幼い頃の輝二だと思ったが、首を傾げた理由は他にある。その幼い輝二達兄妹の他に、“幼い女の子がいた”。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「はるか、どうしたの?」

 

「みなみさん。この写真」

 

はるかがみなみ達とラブ達と響達にも写真を見せた。

 

「輝二さんの家族との写真だね」

 

「コレがどうかしたの?」

 

「・・・・輝二さん、お父さんとお兄さんが〈デッドマンズ〉に殺されたんだよね?」

 

「ええ」

 

「それじゃ、お母さんとーーーー多分妹さんだと思うけど、この人達はどうしたのかな?」

 

『っ!』

 

全員が確かに、と思った。この事務所で集まるようになってから、輝二のお母さんは一度も顔を見てないし、妹さんも姿が見えない。これは少々気になる。

 

「ーーーーそれに、この妹さん・・・・私、何処かで会ったような気がするの」

 

『えっ?』

 

「「「・・・・??」」」

 

「ロマ?」

 

「パフ?」

 

ラブ達と響達が目をパチクリさせるが、みなみときららとトワ、そしてアロマとパフまでも首を傾げた。

 

「・・・・私も、誰かに似ているような」

 

「何だろう? 見覚えがある、この妹ちゃん・・・・」

 

「ええ。何処かで、それこそ昔ではなく、最近の記憶で・・・・」

 

「どうなってるロマ?」

 

「パフも会った気がするパフ?」

 

う~ん、と悩むGoプリンセスチーム。他の一同も首を傾げていた。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

と、その頃、輝二は下の階のぶーさんが経営する喫茶店のカウンターで、ぶーさんからお金が入った茶封筒を渡された。

 

「受け取らないってさ。自分の役に立てなさい、って」

 

「・・・・そうか。悪いけどぶーさん、預かっておいて」

 

「・・・・分かったよ」

 

輝二がそう言うと、ぶーさんはカウンターの引き出しを開けると茶封筒をいれた。既に何個も茶封筒がある。

輝二はバイスタンプの回収で〈フェニックス〉から貰っている報酬金の八割を十年近く前に離れ離れになった母親に、妹の学費と養育費、そして母の生活に当てて欲しいと、ぶーさんを通して渡しているのだが、母親は受け取ろうとしなかった。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「輝二くん。あの娘の友達のプリキュアちゃん達に、いずれバレると思うぞ」

 

「・・・・それでも、俺はあの娘をーーーーゆいを巻き込むつもりはない。それで、何か情報が入った?」

 

輝二がそう聞くと、ぶーさんは小さく息を吐いてから、タブレットを取り出し、輝二に見せた。

 

「カゲロウに関する情報は入っていないけど、近頃都内の半グレや暴力団を襲撃している奴がいるみたいなんだ。ある暴力団の事務所前の駐車場のカメラにソイツが映っている」

 

タブレットにはーーーー『ムカデのデッドマン』が、事務所から出ていった姿が表示されていた。

 

「コイツか。それで、襲われた奴らに共通点は?」

 

「最近、ドラッグとかを売りさばき始めた奴らがターゲットのようだ」

 

「分かった。ありがとうぶーさん」

 

そう言って、輝二はぶーさんの店を出ると、

 

「おや輝二くん」

 

「牛島さん」

 

ご近所の牛島太助の一家が現れた。奥さんの『牛島公子』と中学生の息子である『牛島翔<カケル>』だった。

 

「息子さんですか? 確か『ノーブル学園』に通っているんでしたよね?」

 

「ああ。休みだから帰ってきてくれてね。コレから家族で買い物なんだ」

 

「良いですね。それじゃ、俺はこれで・・・・」

 

そう言って、事務所に戻る輝二。そしてすぐに。

 

ーーーーこのドアホウ共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!

 

ーーーーきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ! ごめんなさーーーーい!!

 

と、怒鳴り声が響き、牛島一家は何処か影のある顔になりながら、その場から去っていった。



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『兄妹』?

ー狩崎sideー

 

狩崎はウォーキングマシンで走りながら、スカイベースの訓練場でシミュレーションによる訓練をする少年の様子を、タブレットで眺めていた。

そんな中、嵐山司令が話しかける。

 

「どうだ? あの少年は?」

 

「シミュレーションでの戦闘は申し分ない。ヒトミ達からも戦闘訓練を受けさせている、まだ“試合”と“実戦”の違いに戸惑う事があるが、十分間に合うとの事だ」

 

運動の爽やかな汗を流しながら、狩崎はそう報告した。

 

「今度もまた、一般人から選ぶ事になるとはな・・・・」

 

「仕方ないさ。上の連中がせっついているし、プリキュアガールズ達とも連携が取りやすい人間の方が都合が良い」

 

「・・・・それで、輝二が探している『デッドマン』は?」

 

「襲撃した奴等の地点を調べてみると、ジグザグの模様を作っている。次に狙うとしたら、サディスティックな性格をした評判の悪いチンピラ兄弟、『村木兄弟<ムラキキョウダイ>』が率いる半グレ達が根城にしている、此処だろうね。さて、あの少年はどうかな?」

 

 

 

 

 

ー???sideー

 

「今日の訓練はここまで」

 

ヒトミがそう言うと、訓練を受けていた少年は礼をすると、持ってきていたリュックからタオルを取り出して額の汗とかを拭いた。

 

「大分形になってきたわね」

 

ヒトミの言葉に、少年は会釈しながら、ヒトミ達の指導のお陰と言っていた。

 

「・・・・・・・・すまないわね」

 

突然謝罪するヒトミに、少年は首を傾げるが、ヒトミは言葉を続ける。

 

「あなたや嵐山輝二はまだ未成年なのに、本来なら私達大人がやらなければならない戦いをやらせている。不甲斐なくて、情けない事この上ないわ」

 

少し自虐的なヒトミの言葉に、少年は気にしないでくださいと言うが、ヒトミは少し笑みを浮かべて声を発する。

 

「ありがとう。それで、狩崎から色々とアドバイスを受けたようだけど、どんなアドバイスを受けたの?」

 

少年は訓練を始める前に、狩崎に言われた言葉を伝えた。

 

【良いかいボーイ。その力に溺れるな。力に溺れる者は力に振り回され、道を踏み外し、破滅へと向かってしまう。決して力を得たからと言って、自分は選ばれた存在だとか、特別な存在だとか思わないように心がけたまえ】

 

『蜂の仮面ライダー』のフィギュアを持ちながら言った狩崎の言葉が、少年に深く刺さった。

 

「力に溺れるな、か。意外と深い言葉を言うわね」

 

ヒトミの言葉に少年は頷くと、狩崎から貰った『クモのバイスタンプ』を手にとってジッと見つめた後、再び訓練を開始した。

 

 

 

 

 

ーはるかsideー

 

そして輝二から怒声を受けて事務所の片付けを終えたはるか達は、ラブ達や響達と別れ、ノーブル学園に戻っていた。

 

「う~ん・・・・」

 

が、はるかは先ほど見た輝二の家族の写真に写っていた、輝二の妹らしき女の子の事が気になっているようだ。

 

「はるか。まだ気になっているの?」

 

「うん・・・・何かあの女の子、何処かで見た事あるような気がするんです」

 

「わたくしも気になりますわ。会った事があるのですが、誰なのかが分からないと言う感覚ですわね・・・・」

 

「あぁもう! 指先が少し触れそうなのに、後もうちょっとの所で届かないようなもどかしさを感じるなぁ!」

 

トワときららがそう言うと、実はみなみやアロマとパフも似たような感覚を感じているのだ。

と、四人と二匹が悩んでいると、一同は寮に到着した。

と、ソコでーーーー。

 

「あっ、はるかちゃん、皆。お帰り」

 

寮に入ると、図書館に行って帰って来たゆいとちょうど合流した。

 

「あ、ゆいちゃんただいま!」

 

「ただいまゆいゆい」

 

「ただいま帰りましたわ」

 

「ただい・・・・ぁ」

 

はるかが元気良く返し、みなみも返そうとした瞬間、空いていたピースがピッタリ嵌まったような感覚が覚え、思わずゆいに近づいた。

 

「えっ? み、みなみさん・・・・?」

 

「ゆい。ちょっとごめんなさい」

 

「えっ? (スッ)えぇっ!?」

 

突然の事にゆいだけでなくはるか達も面食らった。みなみが突如、ゆいの眼鏡を外したのだ。眼鏡が外されたゆいの目は、昭和の眼鏡キャラのような3の字の目になったのだ。

 

「あ、あのみなみさん! 一体どうしたんですかっ!?」

 

目が33になったゆいは戸惑うが、みなみはゆいの両肩に手を置いて口を開く。

 

「ゆい。その目、普通の目にできる?」

 

「えっ? ち、ちょっと目に力を入れればできますけど・・・・」

 

「お願い。普通の目になって」

 

良く分からないが、とりあえずみなみに言われた通り、目に力を入れて普通の目になった。

 

「やっぱり・・・・」

 

「みなみさん、やっぱりって・・・・?」

 

「見た事ある筈だったわ。だって私達、その子と一緒にいたんだから・・・・」

 

「えっ? どゆことみなみん?」

 

「皆、ゆいの顔、良く見て」

 

「ゆいの顔・・・・ぁっ!」

 

「ロマッ!?」

 

「パフっ!?」

 

みなみがゆいの顔を皆に見せると、トワだけでなく、アロマとパフも気づいた。そしてはるかときららも、気づいたように肩を揺らした。昼間、輝二の家族の写真に写っていた『妹』の面影が、ゆいと重なったからだ。

 

「も、もしかして・・・・!」

 

「いやいやいやいや、そんな筈無いって・・・・!」

 

「ですが、あまりにそっくりですわ・・・・!」

 

「あ、あの、どうしたの皆?」

 

「ゆい、ちょっと聞きたい事があるの。あなたのプライベートを聞くようで悪いんだけど・・・・」

 

「えっ・・・・あぁ、良いですよ」

 

ゆいはみなみから眼鏡を返され掛け直すと頷いた。

 

「ゆいって・・・・“お父様とお兄様がいるの”?」

 

「・・・・・・・・良く、覚えていないんです・・・・」

 

みなみの問いかけに、ゆいは少し困ったような顔になりながらも続けた。

 

「私の両親、十年近く前に離婚して、私は母の実家でママとお爺ちゃんとお婆ちゃんと暮らしていたから。ただ、お爺ちゃんとお婆ちゃんが、私には『二人の兄』がいるって教えてくれた事があったけど、物心付いて間もない頃だったから、あまり覚えていないの」

 

はるか達は察した。その二人の兄こそ、輝二と輝二の兄・一光であると。

 

「あ、あのね、ゆいちゃむぐっ!?」

 

はるかが輝二の事を話そうとするが、みなみとトワが口を塞いだ。

 

「はるかちゃん?」

 

「あぁゆいゆい! 私達ちょっと話があるから、先に部屋に戻ってて!」

 

「う、うん・・・・」

 

きららに背中を押されながら、ゆいは部屋に戻っていった。

 

「・・・・行ったかしら?」

 

「ええ」

 

「はるるんの口、離してあげよう」

 

ゆいが完全にいなくなったのを確認すると、はるかの口を解放した。

 

「ぷはっ! な、何するんですかみなみさん! トワちゃん!」

 

「ごめんなさい。でも、もしゆいが嵐山さんの妹だったとしたら、教えるのは少し待った方が良いわ」

 

「どうしてですか?」

 

「今、嵐山さんの現状を伝えると言う事は、ゆいにーーーー“お父様と上のお兄様が、〈デッドマンズ〉に殺された”、とゆいに教える事になりますわ」

 

「あっ・・・・!」

 

「ロマ・・・・」

 

「パフ・・・・!」

 

そう言われて、はるかとロマは察し、アロマは少し顔を俯かせた。

もしもゆいが本当に輝二の妹であれば、父親と長男の兄が殺された事を伝える事になる。物心が付いて間もない頃とは言え、ゆいは大なり小なり傷つくのは目に見えている。いや、下手をすれば輝二のように、〈デッドマンズ〉に復讐を考えてしまうのかも知れない。

 

「この事は、コウジンに改めて確かめてからにした方が良いかな?」

 

「そうね。まだゆいが本当に妹さんなのか確証を得た訳じゃないんだし、明日また嵐山さんの所に行きましょう」

 

「それでもし、ゆいが嵐山さんの妹であれば・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

トワの言葉に、はるかだけだなく全員が閉口してしまい、重い空気が一同を包んでいた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

そして後日。今日はS☆Sチームの二人とハートキャッチチーム、そしてハピネスチャージチームが来る筈なのだが。

 

「愛乃達は来ない、か」

 

そう、ハピネスチャージチームは来なかった。

 

「何か、めぐみとひめが来るのを渋っちゃったようなんだよ」

 

「あの、相良君って人を足手まといって言って追い出した事、怒っているんじゃないですか?」

 

咲とつぼみがそう言うと、輝二は鼻で息を吐く。

 

「ま、来ないなら来ないで別に構わんけどな」

 

「うわっ、ドラ~イ・・・・」

 

輝二の態度に、えりかが苦笑した。

 

「とりあえず。日向と美翔は二丁目のおばあさんの犬の捜索」

 

「えぇっ、またあのおばあちゃんのワンちゃん逃げたの?」

 

「逃げたと言うより外に遊びに行ったっきりだと思うわ・・・・」

 

二丁目のおばあさんの犬は良く逃げる、いや、家から外に遊びに行ってそのまま帰ってこない事が良くあるので、便利屋の輝二に依頼が来る。ある意味ではお得意様なのだ。プリキュア達も何度か探したりしているのですっかり顔馴染みだ。ちなみにその犬は二本立ちすれば咲と同じくらいの大型犬なのだ。

 

「花咲さん達は三丁目の田中さん家の庭の草むしりだ」

 

「はい! 体操着や軍手とか持って来ました!」

 

「日焼け対策にUVカットパーカーもあるし、日焼け止めクリームをあるからな」

 

「うわぉ! 至れり尽くせり!」

 

「それじゃよろしく。俺は別の仕事があるんで」

 

そう言ってそれぞれの仕事場へと向かう一同。

輝二は皆が行った事を確認すると、ある場所へと向かった。ソコは、次に『ムカデのデッドマン』か襲う可能性がある『村木兄弟』が活動拠点にしている地下バーの入口だった。

輝二はそのバーの入口を向かい側のビルにある喫茶店からブラックコーヒーを飲みながら覗いている。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

≪ホントに来るかねぇ?≫

 

「(今までの出現の流れから見て、あのバーが1番可能性があるーーーー)」

 

と、輝二がそう言おうとした瞬間。

 

ーーーーシャッ・・・・!

 

「っ!」

 

≪えっ!? 今なんか通りすぎたっ!?≫

 

一瞬だが、赤い影がバーへと入っていったのが見えた輝二は、すぐに喫茶店を飛び出して、バーへと駆けつけるとそこには・・・・。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

全身に複数の大型のムカデが巻き付いており、足の部分がワシャワシャと動き、顔にもムカデが巻き付いたおぞましい容貌をしている、おそらく第2フェーズのデッドマン、〈オオムカデ・デッドマン〉が、倒れて重なった沢木兄弟の上に座り、優雅にワインを飲んでいた。

ボロボロになった沢木兄弟の手下である半グレ達は、床に転がり、壁や天井に叩きつけられ、中には酒棚に叩きつけられて店の酒がほぼ全てが床に落ちて割れ、店内には幾つもの酒の匂いが複雑に混ざり合って充満し、人によっては匂いだけで酔い潰れそうな状況になっていた。

 

「うっ・・・・ひっでぇなこりゃ・・・・」

 

≪酒臭~い! さらにあのデッドマン、キモ~イッ!≫

 

輝二とバイスが酒の匂いに噎せそうになるが、オオムカデ・デッドマンはワインを飲み干すと、グラスを床に叩き捨てる。砕けたグラスに目を向けず、オオムカデ・デッドマンは輝二を見据えていた。

 

『・・・・やぁ、久しぶりだね』

 

「・・・・・・・・」

 

≪っ・・・・・・・・≫

 

話しかけられ、輝二とバイスは身構える。

 

『雑魚共を潰していけば、必ず君に辿りつけると思っていたよ』

 

オオムカデ・デッドマンは気安い感じで語りかける。

 

「・・・・お前、俺を誘き出すのが目的だから、こんな事をしていたのか?」

 

『ん~。少し違うなぁ。確かに君を探していたのは事実だけど。ちゃんと他にも目的があるのさ。例えば、この反社会的な奴らを潰して、世の中を綺麗にしてあげたり。ついでに、奴らが集めた汚い金を僕が有効活用してあげたり、ね』

 

≪うわっ! 強盗の考え!≫

 

『でも、何よりも優先していたのは・・・・』

 

オオムカデ・デッドマンは自分の腕を撫でながら徐々に感情を込めながら声を上げた。

 

『せっかく手に入れたこの力をーーーー“どれ程の物か試してしたいだろう”? この力でどんな事ができるのか? どれ程のパワーが出るのか? どんな相手でも倒せるのか!? 僕は興奮しているよ! 以前は軍人上がりのチンピラを舐めプで倒せていたが、所詮は人間の枠から逃れる事はできない! だからこそ! “『魔法』のようなとてつもない力を手に入れて、超人になろうと考えていた”! あぁそして遂に念願がかなった! “人間を越えた力を手に入れたんだ”!! これで僕は『夢』に一歩近づいた!ーーーー次は貴様だ! 『我』のようなパワーを手に入れた者共を倒している〈仮面ライダーリバイス〉よ!! この我の力をとくと味わうがよい!!』

 

≪うわっ、何か口調が変わった・・・・!?≫

 

オオムカデ・デッドマンの口調が気安い感じから、妙に気取った態度と口調になり、バッ! バッ!っとポーズをしながら、輝二にかかってこいと言わんばかりに手招きをした。

 

「(・・・・・・・・・・・・玩具を手に入れて、はしゃいでいる餓鬼だな)」

 

が、輝二は全くと言って良いほどに、オオムカデ・デッドマン、嫌、その本体を冷めた態度で見ていた。このムカデ男はただ『悪魔と言う玩具』を手に入れて、それを使って世直しと称しての強盗と自分の力の実験をしているだけの矮小なクズであると判断したからだ。

 

「お前な。俺に用があるなら先に俺にかかってこいよ」

 

『フッ、我が世直しをしていれば、いずれ貴様自身がやってくる事は想定済み。それに、このような悪人共に人権などなし! この者共には我が力を実験台になる程度の価値しかない』

 

「はぁ・・・・全然燃えてこねぇけど。そのバイスタンプは回収させてもらう」

 

[リバイスドライバー!]

 

これ以上会話しても、話が通じない上に時間の無駄と判断し、リバイスドライバーを腰に巻いた。

 

[レックス!]

 

「はぁ・・・・」

 

レックスバイスタンプを起動させ、輝二はバイスタンプに息を吹き、ドライバーにセットすると、輝二の身体からバイスが現れ、巨大なスタンプを手に持つ。

 

「変身!」

 

≪こりゃさっ!≫ 

 

輝二はそのまま『レックスバイスタンプ』をベルトに押印しスタンプを横に傾けと、スタンプを掲げたバイスが、輝二に向けてスタンプを振り下ろす。

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

「ふっ」

 

「へイ!」

 

リバイスに変身し構える二人を見て、オオムカデ・デッドマンは愉快そうに身体を震わせた。

 

『フフフフフ・・・・やはり貴様がそうだったか』

 

「あ?」

 

「おん?」

 

全く話が見えないリバイスが首を傾げるが、オオムカデ・デッドマンは気にする事なく、勝手に話を続ける。

 

『貴様と初めて会った時から、この日が来るのを予感していた! 貴様こそ! 我が宿(バシュバシュバシュバシュバシュバシュ!!) うおっ!!?』

 

オオムカデ・デッドマンが言い終わる前に、リバイスはオーインバスター50を、バイスがガンデフォンを撃って遮ると、戦闘を開始した。

 

『我が言の葉は聞かず、か』

 

「戦闘中にベラベラ喋るウザったいのは、ウチのアホ悪魔だけでも十分なんだよ」

 

「そうそう!・・・・って酷い!」

 

 

 

 

ー狩崎sideー

 

ーーーーピリリリリリ・・・・! ピリリリリリ・・・・! ピリリリリリ・・・・!

 

「ん? 狩崎だが・・・・何だって?」

 

バーの監視カメラで戦況を見ていた狩崎に、『とある少女』の監視護衛をしていた隊員から連絡が入った。

 

「・・・・・・・・これは、使えるかも知れないな」

 

狩崎がそう呟くと、ヒトミに連絡を入れた。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

『フッ、ハァッ!!』

 

ーーーービュンっ!

 

「何!? (ガキンッ!) ぬぁっ!!」

 

「(バキンッ!) ぎょわっ!?」

 

オオムカデ・デッドマンは一瞬身体を制止すると、その場から消え、周りを見回そうとするリバイスは、突然の衝撃で吹き飛ばされる。

 

「な、何が(ガキンッ!)ぐぁっ!」

 

「(バキンッ!) のえっ!」

 

『どうした? この程度ではないだろう?』

 

「ぁ・・・・」

 

再び姿を現したオオムカデ・デッドマンの“足元”を見て、リバイは察した。

 

「どうなってんのよ!? アイツ透明にでもなれんの!?」

 

「違う。ヤツの足元を見ろ、まるでブレーキ痕のような物がある」

 

「えっ?・・・・あっ、ホントだ!」

 

オオムカデ・デッドマンの足元に、まるで車が急ブレーキをしたような痕が、煙をあげていたのを見て、高速で動いていたのを理解した。

 

『ハハハハハハハハ! スゴいぞ! これが加速世界と言う物か! スゴすぎるぞ!!』

 

再びオオムカデ・デッドマンが加速すると、リバイスが辺りを警戒し、衝撃に備えようとしたその瞬間ーーーー。

 

「「「「シュシュっと気分でスピードアップ!」」」」

 

「「は?」」

 

『くばぁっ!』

 

突然バーの出入りから声が聞こえると、四つの光が横切り、バキッ! と、音が響くと、壁にオオムカデ・デッドマンが叩きつけられた。

 

「うわぉっ!」

 

バイスが四つの光が消え、ソコに現れた人物達を見て、バイスは目をハートマークにかえた。

 

「ブロッサムちゃん! サンシャインちゅわん! ムーンライトちゅわん!!」

 

「ーーーーちょっとアタシは!?」

 

「あ、マリンちゃんもいたのね」

 

「お前ら、何でーーーー」

 

『ハァァァァァッ!!』

 

ここに? と、聞こうとするリバイだが、オオムカデ・デッドマンが起き上がり、再び攻めようとした。

が、

 

「「たぁぁぁぁっ!!」」

 

『ぐほぉっ!!』

 

さらに現れたブルームとイーグレットが、ダブルパンチでオオムカデ・デッドマンを後退させる。

 

「ブルームちゃんにイーグレットちゅわんまで!」

 

「・・・・」

 

「輝二さん水くさいよ!」

 

「何が?」

 

「新しいデッドマンが出たのに、私達に内緒で行くなんて!」

 

「依頼と重なったんだからーーーーつかお前ら、依頼はどうした?」

 

「大丈夫です。六課の皆さんが代わりにやってくれていますから」

 

ブルームか抗議し、依頼の事はイーグレットがそう言った。

 

 

 

ー魔導師sideー

 

「ティア~、何で私達が草むしり?」

 

「良いからさっさと終わらせるわよ」

 

ティアナとスバルとエリオとキャロが、ハートキャッチチームに変わって草むしりをしていた。

犬の捜索は。

 

「ザフィーラ。犬は何処だ?」

 

「(クンクン・・・・)こっちだ」

 

「何でアタシ達がこんな事をよ・・・・!」

 

シグナムとヴィータが、ザフィーラの鼻を使って、捜索していた。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「たくっ、そう言う事か」

 

「六課の人達、頼りになるでしょう?」

 

「ふん。んな事よりも、さっさとコイツを片付けるぞ!」

 

『はい!(うん!/ええ)』

 

「よっしゃ! 行くぜぇ!」

 

リバイの言葉に、プリキュア達が頷き、バイスも気合いを入れた。

 

『ハハハハハハッ!! 伝説の戦士プリキュアか! 丁度良い実験体がまた増えたよ!!』

 

オオムカデ・デッドマンも、臨戦態勢を取った。

 

 

 

 

 

ーはるかsideー

 

「はるかちゃん」

 

「ゆ、ゆいちゃん!?」

 

輝二の所に行こうと学校を出て町に行こうとするはるか達に、後を着けてきたようなゆいが声をかける。

 

「どうしたの? 昨日から様子が変だったから着けてきたんだけど?」

 

「いや、その、ね・・・・」

 

『その理由、俺が教えてやろうか?』

 

『っ!』

 

突然声をかけられ、はるか達が目を向けると、エビルがギフジュニア達を引き連れて現れた。

 

「エビル!?」

 

「何でここに!?」

 

『フフフッ、教えねぇよ!』

 

エビルはエビルブレードを構えるのを見て、はるか達がプリンセスパフュームを構える。

がしかし。

 

「待て!」

 

少年の声が響いたと思って一同が目を向けると、ソコに現れたのは、相良誠司だった。

 

「えっと、相良、くん?」

 

『おいおい、キュアラブリーの金魚の糞が何の用だ?』

 

「・・・・・・・・」

 

誠司はエビルの言葉に答えず、『紅いドライバー』を取り出すと、腰に巻いた。

 

[デモンズドライバー!]

 

『っ! そのドライバーは!?』

 

エビルだけでなく、はるか達も驚く。誠司はさらに、『スパイダーバイスタンプ』を取りだし、起動させた。

 

[スパイダー!]

 

「俺の命を懸けて、お前を倒す!」

 

そして、ドライバーの上に押印した。

 

[Deal・・・・]

 

音声が響くと、重いオーケストラが鳴り響き、誠司の横に糸を垂らして降りてきた『蜘蛛』が現れ、足元に四角の液晶が現れる。

左手を顔の前まで持っていき、ゆっくり下げながら右手をゆっくり大きくあげる。

 

「変身!!」

 

ドライバーの中心の液晶に押印する。一瞬、液晶につり上がった眼が表示される。

 

[Decide up!]

 

すると、『蜘蛛』が動き出す。

 

[Deep.深く]

 

蜘蛛が誠司の周りを動き。

 

[Drop.落ちる]

 

蜘蛛が糸を出し、誠司の身体を包み込む。

 

[Danger.危険]

 

誠司の身体が見えなくなり、赤い光に包まれ、中から弾け飛ぶ。

 

[Kamen.Rider]

 

そして中から、『スパイダーバイスタンプ』の紋章を浮かばせながら、新たな戦士が現れた。

右肩から蜘蛛の巣のアーマーを纏い、頭の左側に蜘蛛の目のようになった赤い戦士。

 

[DEMONS!]

 

「変身したっ!?」

 

「まさか!」

 

「蜘蛛の仮面ライダーっ!?」

 

「まぁ・・・・!」

 

「あれって・・・・?」

 

『・・・・・・・・』

 

驚くはるか達、そしてエビルも警戒する。

それを見て、誠司が変身して仮面ライダーが声を発した。

 

「俺は〈デモンズ〉・・・・〈仮面ライダーデモンズ〉だっ!!」




仮面ライダーデモンズの変身者・相良誠司の活躍をご期待ください!


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赤き決意 カマキリ花道

ーリバイスsideー

 

戦いの場をバーの外に移したリバイスとS☆Sとハートキャッチ。しかし、

 

『ふっ!』

 

「また高速移動を!」

 

「追うわよ!」

 

オオムカデ・デッドマンが再び加速し、それを追ってハートキャッチチームも加速する。

 

「あぁもう! 加速されると私達じゃどうにもできないよ!」

 

「どうにかして、あのデッドマンを捉えられれば・・・・!」

 

「どうするよ輝二?」

 

「ーーーーこれでいく」

 

[プテラ! Come on! プ・プ・プテラ! Come on! プ・プ・プテラ!]

 

『プテラバイスタンプ』を取り出して起動させると、ドライバーに押印して横に倒す。

 

[バディアップ!]

 

『チュゥっ!』

 

思念体のバイスが、バイスタンプを担いで、リバイに叩きつける。

 

[上昇気流! 一流! 翼竜! プテラ! Flying by! Complete!]

 

プテラゲノムに変身したリバイは一度手首をスナップさせると、両足を開いて中腰になる。エアバイクになったバイスがブルームとイーグレットの近くに浮遊する。

 

「ブルーム。イーグレット。俺とブロッサム達でムカデの動きを制限するから、お前らはバイスの乗って追いかけてこい。そしてムカデに必殺技をぶつけろ」

 

「いえい!」

 

「えっ? 大丈夫なの?」

 

「凄く早いですけど?」

 

「問題ない。数秒間付き合ってやる!」

 

ーーーーギュゥンッ!!

 

リバイが高速でダッシュすると、ブロッサム達に追い付いた。

 

「きゃっ! 嵐山さん!?」

 

加速空間に、リバイが現れて驚くブロッサム。リバイはブロッサムに耳打ちをする。

 

「ーーーーよろしく」

 

「分かりました!」

 

ブロッサムは頷くと、オオムカデ・デッドマンと交戦していたマリン達が後退し、ブロッサムが三人に駆け寄ると、リバイがオオムカデ・デッドマンと拳を交える。

 

『ふっ! やはり来たかっ! この加速の世界に入ってこられるとは! 流石は我がーーーー』

 

「はっ!」

 

オオムカデ・デッドマンが何か口走りそうになったが、欠片も興味が無いリバイは拳を繰り出し、中断させた。

 

『っ、まだ話しているだろう?』

 

「さっさと終わらせたいんだよ」

 

プテラゲノムの加速は十秒間しかない。その後は十数秒のインターバルを開けなければならないのが弱点だ。無駄口をしている暇は無い。

 

『いけっ!』

 

「(ガキンッ!) ぐおっ!」

 

「はっ!」

 

「ふっ!」

 

オオムカデ・デッドマンが身体の百足を伸ばして攻撃すると、リバイは後退し、入れ代わるようにサンシャインとムーンライトが挟撃した。

がーーーー。

 

『シャァッ!!』

 

「うぁっ!」

 

「くっ!」

 

何と、格闘戦に置いてはオールスターズでも上位に入る二人を同時に相手をして、余裕にあしらうオオムカデ・デッドマン。

 

「うそっ!? サンシャインとムーンライトを簡単に!」

 

「なんでですか!? 何故あなたはそれほどの力があるのに! 何で酷い事をするのですかっ!?」

 

『ふん。あのような悪党共に人権など無い。我は我の道を進むのみ。その為ならば、あらゆる物を切り捨てていく、それだけよ』

 

武闘派二人を軽くあしらわれ、マリンが驚愕し、ブロッサムがその強さで悪い人とは言え人間相手に何故振り回すのか聞くと、オオムカデ・デッドマンはまた気取った態度でそう言った。

すると、ブロッサムはワナワナと震えながら声を発した。

 

「そんな・・・・そんな理不尽に人を傷つけるような人を、大切な物を簡単に切り捨てていくような人を、私は許せません! 私、堪忍袋の緒が切れました!」

 

「出ました堪忍袋!」

 

ブロッサムが突撃し、マリンも続くが、武闘派のサンシャインとムーンライトをあしらった相手だ。攻めきれずにいた。

 

『ふん。この程度で我に勝てるとでも?』

 

「勝つ必要は無い」

 

『むっ! (バキッ!) ぐぉ!?』

 

背後から聞こえた声に視線を向けると、再び加速したリバイが回し蹴りを放つ。

 

「「はぁっ!」」

 

『ぐほっ!』

 

するとすかさず、サンシャインとムーンライトが前蹴上げでオオムカデ・デッドマンを空中に蹴りあげた。

 

「マリン!」

 

「やるっしゅ!」

 

ブロッサムとマリンも、光りだした拳や蹴りでオオムカデ・デッドマンを上空へと蹴り上げていく。

 

『ふっ、無駄な事を』

 

オオムカデ・デッドマンは余裕の態度だったが、眼下のリバイが声を発する。

 

「お前、空中で加速できるのか?」

 

『えっ?・・・・あ・・・・!』

 

オオムカデ・デッドマンは気づいたように間の抜けた声を発した。そう、どんなに早く動けていても、それは足が地面についていればの話。足場のない空中ではオオムカデ・デッドマンの加速能力は使えないのだ。

 

「ついでに、横に注意」

 

『?・・・・げぇっ!?』

 

横を見ると、エアバイクのバイスに立ち乗りしているブルームとイーグレットがいた。

 

「大地の精霊よ!」

 

「大空の精霊よ!」

 

「今、プリキュアと共に!!」

 

「奇跡の力を解き放て!!」

 

ブルームとイーグレットは互いに手を繋ぎ、大地と大空の精霊に呼びかけ、ブルームの右手に大地の精霊の力が、イーグレットの左手に大空の力が、それぞれ集中させてエネルギーを集めた腕を左右対称に渦を描くように回す。

 

『うわっ! うわわわわわわ!!』

 

「「『プリキュアツインストリーム』」」

 

ーーーー【プリキュアツインストリーム】

 

オオムカデ・デッドマンが身体をワチャワチャと動かすが、空中でそんな挙動をしても無意味である。

ブルームとイーグレットは、両手をそれぞれ突き出すことで、大地の精霊と大空の精霊のエネルギーが交差するようにオオムカデ・デッドマンに襲いかかる。

 

『まっ、待て! そんなのズルギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 

オオムカデ・デッドマンはツインストリームを受けて、そのまま町の向こうへと飛んでいった。

 

「やったかっ!?」

 

「あっ! マリンちゃんそれフラグ!」

 

「あ、ゴメンつい」

 

《やってないよ》

 

「「やっぱしっ!?」」

 

『っ!』

 

リバイがガンデフォンを取り出すと、画面に狩崎の顔が映し出されていた。

 

《どうやらブルームガールとイーグレットガールが少し手心を加えたようだね。ヨロヨロになりながら逃げているよ》

 

「ちっ! ブルーム! イーグレット! バイスに乗るから降りてくれ!」

 

「「うん!」」

 

リバイが跳ぶと、ブルームとイーグレットは飛び降り、キュアブライトとキュアウィンディにフォームチェンジし、風の精霊の力を借りて飛行する。

リバイがバイスに跨がると、ブロッサム達も飛行し、共にオオムカデ・デッドマンを追跡した。

 

「そう言えばさ。あんなに俺っち達が暴れたのに、誰も来ないよね?」

 

「・・・・・・・・」

 

バイスの言葉に、リバイも確かにと思った。あれだけ裏街道とは言え町中で暴れていたのに、一般人が誰一人として現れなかったのには疑問が生まれる。

 

「あ、それはシャマルさんが結界を張っていてくれたからなんです」

 

「ほら、彼処にいるよ」

 

ウィンディが説明し、ブライトが指差す方に目を向けると、ビルの屋上に時空管理局のシャマルが手を小さく振っており、手にしていたペンデュラムを振るうと周囲にうっすらとあった壁のような物が消え、町中に人々の姿が現れた。

 

「・・・・成る程な」

 

「魔法ってこんな事ができんのね?」

 

《ソレよりも急ぎたまえ。オオムカデが向かった先に、フローラガールズに、カゲロウ、エビルがいる》

 

「なにっ!」

 

「エ、エビルってあの!?」

 

「フローラ達が戦っているの!?」

 

マリンとウィンディが戦慄したような顔になると、狩崎がさらに言葉を続ける。

 

《ミス高町とミス古里、ミス八神が結界を張り、ラブリーガールズも向かっている》

 

「了解だ」

 

《それと輝二くん》

 

「ん?」

 

《フローラガールズの側に・・・・“彼女”がいる》

 

「っっ!!?」

 

狩崎の言葉に、リバイは輝二は仮面越しに顔を驚愕に歪め、バイスのスピードをあげた。

 

 

 

 

 

ーラブリーsideー

 

ラブリー達ハピネスチャージチームは、先日の誠司の事で、めぐみとひめが輝二と顔を合わせづらくしており、気分転換をしようとゆう子といおなが連れ出したのが、すぐにいおなのスマホから狩崎からの連絡が入り、ハンズフリーにする。

 

「ドクター? どうしたんですか?」

 

《やぁフォーチュンガール。実は君達の近くで、フローラガールズがカゲロウ、いや、エビルに襲撃されているんだ》

 

「えっ? フローラ達がっ!?」

 

《此方から隊員を行かせたが、何が起こるか分からないからね。君達も急行してくれたまえ》

 

「分かりました!」

 

いおながスマホを切ると、狩崎から送られた地図を見た後、めぐみ達と視線を交えて頷き合うと、

 

[かわルンルン!]

 

「「「プリキュア! くるりんミラーチェンジ!」」」

 

「プリキュア! きらりんスターシンフォニー!」

 

それぞれが変身して、その場に向かった。

そしてソコにはーーーー。

 

「あっ! ラブリー!」

 

フローラ達がギフジュニアと戦っており、さらにエビルと戦っている『蜘蛛の巣を付けた赤い仮面ライダー』がいた。ラブリー達はフローラ達に加勢する。

 

「フローラ! あの仮面ライダーは誰!?」

 

「えっと・・・・! その、狩崎さんが寄越してくれた仮面ライダーで、デモンズって言うんだけど」

 

「仮面ライダー、デモンズ?」

 

ラブリーは仮面ライダーデモンズを見据えながらギフジュニアと交戦する。

 

「ん?」

 

が、フォーチュンだけは戦いながら、デモンズの戦い方が知っている人に似ているように見えて、訝しそうにしていたが。

 

 

 

 

ーデモンズsideー

 

「はっ!」

 

「おっと! シャァッ!」

 

デモンズは回し蹴りをエビルに繰り出すが、エビルは屈んで回避し、エビルブレードを突きだす。

 

「ふっ! とぁっ!」

 

デモンズは突きだされたエビルブレードを回避し、カウンターで正拳突きを連発で叩き込んだ。

 

「ぐぅっ! うぅっ・・・・はっ! 金魚の糞にしてはやるじゃねぇか?」

 

「それは、どうも!」

 

デモンズは両手から蜘蛛の糸を発射すると、エビルブレードに絡ませた。

 

「ちぃっ!」

 

「ーーーー! おらっ!!」

 

「かはっ!?」

 

デモンズが糸を引っ張ると、エビルは回転しながら倒れる。

と、ソコで。

 

「ロマーーーー!!」

 

「パフーーーー!!」

 

「っ!」

 

近くでアロマとパフの悲鳴が聞こえ、ソチラに目を向けると、ムカデのデッドマンが現れた。

 

「マズイ! うおっ!」

 

「はっ! 形勢逆転、ってな!」

 

助けに行こうとするデモンズだが、今度はエビルに引っ張られ、動けずにいた。

 

 

 

 

ーゆいsideー

 

物影に隠れていたゆいとアロマとパフの近くに、突然ムカデの怪人が現れ、アロマとパフが悲鳴をあげた。

 

「ひっ・・・・!」

 

ゆいも、全身に大きなムカデを巻き付けた怪人のおぞましいの姿に小さく悲鳴をあげた。

 

『ん? ほぉ』

 

オオムカデ・デッドマンが、ゆいを見据えると、その手をゆいに伸ばした。

 

『これはまさに運命だ。我が“宿命のライバル”の関係者に会えるとは』

 

「えっ?」

 

『ゆい(ちゃん)!!』

 

ギフジュニアを全滅させたフローラ達が助けに行こうとする。

がーーーー。

 

『引っ込んでろ!』

 

オオムカデ・デッドマンが叫ぶと、身体から長く太い、大蛇のような大ムカデが何匹も飛び出すと、フローラ達とラブリー達に絡み付き、拘束されて動きを封じた。

 

「こ、このぉ・・・・!!」

 

パワータイプのラブリーがムカデを引き千切ろうとするが、足まで食い込んできて、拘束がさらにキツくなるだけだった。

 

「さて、我が“宿命のライバル”との戦いの為に、少し協力してもらおうか?」

 

「ゆいちゃん! 逃げてっ!!」

 

「ぁ・・・・!」

 

ゆいがフローラの叫びで反射的に逃げようとするが、オオムカデ・デッドマンは逃がすまいと、当て身をしてゆいを気絶させた。

 

『くくくくく、さてとーーーー(ガシッ!)んん?』

 

ゆいに手を伸ばそうとしたオオムカデ・デッドマンの手首を、レックスゲノムになったリバイが掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーリバイsideー

 

プテラゲノムで大急ぎでこの場に急行したリバイスは、オオムカデ・デッドマンがゆいのすぐ近くにいる事を確認すると、プリキュア達やデモンズ、エビルにギフジュニアに目もくれず、レックスゲノムにチェンジして、オオムカデ・デッドマンの手首を掴んだ。

 

「・・・・・・・・」

 

『くくっ。やはり決着をつけに来たか。それでこそ我がしゅ(バキャッ!)めげぶばぁっ!!』

 

オオムカデ・デッドマンが再び何か言おうとしたが、リバイは完全に無視して、渾身の力を込めた拳を、その横顔に深く、顔の半分を潰そうとする勢いで叩き込んだ。

 

「この子にーーーー近づくなぁっっ!!!」

 

リバイは叫びながら拳を振るい、オオムカデ・デッドマンは地面をバウンドしながら転がり、ゆいから遠ざけられた。

 

「・・・・・・・・」

 

「あっ、これキレてます。完全無欠に」

 

リバイスの近くでは、ブライト達とブロッサム達が、拘束されたラブリー達とフローラ達を助けているが、それにも何の反応を示さず、『カマキリが刻印されたバイスタンブ』を取り出して、息を吹き掛けると起動させる。

 

[カマキリ!]

 

「潰してやるよ・・・・ムカデ野郎!」

 

ーーーー・・・・・・・・。

 

ーーーーあのさ輝二。少し落ち着いたら?

 

ーーーー何を言っているバイス? 俺は冷静だ。

 

ーーーーホントに?

 

ーーーーあぁ。血まで凍りつきそうだ・・・・!

 

ーーーー全然冷静じゃないじゃんっ!?

 

[Come on! カ!カマキリ! Come on! カ!カマキリ! Come on! カ!カマキリ!]

 

≪チェストっ!!≫

 

[バディアップ! いざ無双斬り! 俺が横切り! カマキリ! 俺たちオンステージ!]

 

バイスがスタンプを叩きつけて中から砕けると、リバイスが新たな姿になった。

リバイは、オレンジ色の複眼にカマキリのような兜と触覚を付けた、まるで鎧武者のような出で立ち。片手に刃を付けた弓を持っていた。

バイスは、ビス留めされたオレンジの肩アーマーや、カマキリの翅のような腰マント、デフォルメされたカマキリの様な顔が特徴的な姿となっていた。

仮面ライダーリバイス カマキリゲノムである。

 

「ここからは・・・・俺っちオンステージィ~!」

 

「俺の~花道だぁ~!」

 

二人は歌舞伎役者のように構える。

 

「「「「~~~~!!」」」」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

解放されたハピネスチャージチームが、「それ違うでしょ!」と言いたげにツッコミの手をあげながら悶え、さらにエビルと戦っていたデモンズも何か言いたげな様子であった。

 

『くくくくく、新たな姿か。しかし、我が神速に付いてこられないだろうがな!』

 

オオムカデ・デッドマンは再び加速する。

 

「あっ、また加速しました!」

 

「ちょっと二人とも!」

 

ブロッサムとマリンが叫ぶが、リバイスは冷静に弓矢、カマキリゲノム専用武器『カマキリックアロー』の弦を引くように構えると。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「ただいま、集中してます」

 

「・・・・ソコッ!」

 

リバイがカマキリックアローから放たれるエネルギー状の光の矢をあらぬ方向に射つと、誰もが外れたと思ったが。

 

ーーーーバシュッ!!

 

『ぐぁっ!!?』

 

何と、虚空からオオムカデ・デッドマンが火花を散らしながら倒れた。

 

「一気に攻め立てる!」

 

「セイヤッ!」

 

リバイはカマキリックアローで斬り付け、バイスも腕を鎌のように構えて、オオムカデ・デッドマンを攻撃する。

 

『ぐぉっ!』

 

攻め立てられ後退するオオムカデ・デッドマン。これで決めるつもりのように、リバイスがリミックスを起動させた。

 

[リミックス! 必殺! コマ斬り! ブッチギリ! カマキリ!]

 

「ほいさっと」

 

「ふっ」

 

逆立ちしたバイスがリバイの両肩に足先を乗せ、リバイの腕がカマキリの前脚となり、足が複腕を担い、バイスは腕が後脚、足先がカマキリの目を構成し、リバイが持つカマキリックアロー2つに分割し、逆手持ってカマキリの鎌となり、バイスの腰マントがカマキリの羽根のようになっている。

カマキリゲノムでのリミックス、『リバイスカマキリ』だ。

 

ーーーーカァァァァァァァァァァッッ!!

 

「カマキリになったわ!」

 

「マーチが見たら悲鳴あげそう」

 

イーグレットが驚き、ブルームは百足に蜘蛛に蟷螂の姿をした仮面ライダーやデッドマンがいるこの空間に、虫嫌いのマーチ<緑川なお>がいたらと考え苦笑する。

因みに、この戦闘映像を見て、なのはとフェイトとはやては、オオムカデ・デッドマンの姿に、『鬼の女教官』が使っていた相棒の百足を連想し、顔を青ざめていた。

 

ーーーーカァァァァァァァァァァッッ!!

 

『ぐぅあああああああああああっ!!』

 

リバイスカマキリは両手の鎌でオオムカデ・デッドマンを斬りつけると、上空に切り上げた。

 

『うわっ!?』

 

また空中に放り出され、加速が使えない事に、オオムカデ・デッドマンは焦燥する。

が、リバイスカマキリは腰の羽根を広げて飛び上がると、バイスタンブを二回倒した。

 

[カマキリ! スタンピングフィニッシュ!]

 

高速で飛行するリバイスカマキリは、縦横無尽に飛びながらオオムカデ・デッドマンに斬撃を繰り出し、最後に上空から両手の鎌『リバイスカマキリフォアレッグ』を振り下ろして、オオムカデ・デッドマンを切り捨てた。

 

ーーーー【カマキリスタンピングフィニッシュ】

 

『あじゃばああああああああああああああああああああああああああああっっ!!!』

 

オオムカデ・デッドマンは爆散すると、上から1人の少年が落ちてきた。が、突然その少年の身体に、何処から伸びた触手が絡み付き回収した。

 

「っ! オルテカッ!?」

 

リミックスを解除し、『オオムカデバイスタンブ』を手にしたリバイの視線の先には、建物の屋上でオオムカデ・デッドマンの契約者である少年を回収したダイオウイカ・デッドマン、幹部オルテカがいた。

 

『この彼は使い勝手が良いのでね。失う訳には行きませんよ』

 

ダイオウイカ・デッドマンが少年を下ろすと、少年は無造作に伸びた前髪をあげて、それなり整っている顔にギラついた目で不敵な笑みを浮かべ、リバイを指差す。

 

「今回はほんのご挨拶だ。だが、次は必ず貴様を倒す! このーーーー『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』がな!」

 

そう叫ぶと、ダイオウイカ・デッドマンと共にその場を去った。

そして、リバイスとプリキュア達は思ったーーーー。

 

『(だ、ダサっ!)』

 

『(センスな~い・・・・)』

 

あまりのセンスの無い名前に呆れてしまった。

 

「あの、輝二さん? 知り合いなんですか?」

 

「・・・・・・・・知らん。バイス、知ってるか?」

 

「う~ん・・・・覚えてねぇ」

 

正確には1度、ほんの一分にも満たない時に会っているのだが、二人はとっくに忘却の彼方に行ってしまっているようだ。

 

「まぁ、んなくだらない事よりも、カゲロウだっ!!」

 

リバイがキッとカゲロウことエビルを睨むと、ラブリー達もソッチに視線を向けた。

そして、エビルとデモンズが、それぞれの必殺技を放とうとしていた。

 

[バット! ダークネスフィニッシュ!]

 

『おぅらぁっ!!』

 

ーーーー【バットダークネスフィニッシュ】

 

エビルがエビルブレードに青緑のエネルギーをチャージすると、デモンズドライバーにスパイダーバイスタンプを押印した。

 

[Charge!]

 

「こっちも行くぜ!」

 

[デモンズフィニッシュ!]

 

デモンズの背中から赤い蜘蛛の足を生えて飛び上がり、右足に囲って飛び蹴りを放つ。デモンズの蹴りは斬撃を貫き、エビルに叩き込んだ。

 

『なにっ!?』

 

「おおおおおおおおおおおっっ!!」

 

ーーーー【デモンズフィニッシュ】

 

ヒットした際に、赤い蜘蛛の巣が浮かび爆発した。

 

『ぐおぁっ!』

 

エビルは爆発に吹き飛ぶが、受け身を取る。

 

『ふっ・・・・まぁ今日はここまでだな』

 

「逃がすと思ってるのか、カゲロウ!」

 

リバイがカマキリックアローを射つが、エビルは身体を無数の蝙蝠に変えて離脱し、声が響いてくる。

 

ーーーー新米仮面ライダー。精々リバイスに鍛えてもらうんだな。それと嵐山輝二。これで少しは理解したか? 俺達はお前の『弱点』を知っている。ゆめゆめ忘れない方が良いぜ・・・・『妹』の命が大事ならなぁっ!!

 

「っ!」

 

「バレてーらっ!」

 

『っ!!』

 

蝙蝠達が消えると、リバイは無言でゆっくりとゆいに近づき、気を失っているだけでケガをしていないと分かり安堵の息を吐く、フローラがおずおずと、リバイに近づいて声を発した。

 

「あの、輝二さん。私達この間ね、写真を見たの。輝二さんの子供の頃の写真。その中に、『妹』さんっぽい女の子がいたんだけど、まさかーーーー」

 

フローラの言葉に、リバイは観念したかのように声を発する。

 

「ああ、この子は七瀬ゆい。旧姓を『嵐山ゆい』。俺のーーーー『妹』だ」

 

『っ!』

 

プリキュア達、特にGoプリンセスチームは驚愕した。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

そして、デモンズもリバイに近づく。

 

「(・・・・狩崎さんがこの間から調整していたドライバーか。変身者は門川さんか?) 助かった。アンタがいなかったら、ゆいも危なかったかも知れない」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

デモンズはドライバーを外すと変身が解けた。そしてソコから現れたのは。

 

「なっ!?」

 

「マジでっ!?」

 

「うぇっ!?」

 

「あっ!」

 

「あぁっ!」

 

「どっひゃぁっ!」

 

「えっ!?」

 

「・・・・!」

 

「うそっ!?」

 

「っ!」

 

「なぁっ!?」

 

「・・・・・・・・誠司?」

 

変身を解除したデモンズを見て、リバイスとS☆Sチームとハートキャッチチームが驚き、特にハピネスチャージチームが驚愕に目を見開いた。

デモンズの正体が、相良誠司だったから。

 

「おう」

 

誠司は小さく手をあげて応えた。




オリジナル設定。誠司が仮面ライダー化、ゆいがオリ主の妹化、どうだったでしょうか?
次回、お節介プリキュア達が動くかも?


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幕間 コモドドラゴンベントと戦う理由

今回は幕間です。


ーリバイsideー

 

その日、ナッツハウスの前には、プリキュアオールスターズと、機動六課が揃い、狩崎とヒトミもタブレットとドローンを使って、向かい合う二人(三人?)の様子を眺めていた。

 

「では二人共、はじめてくれ」

 

「・・・・ああ」

 

「はい」

 

[リバイスドライバー!]

 

[デモンズドライバー!]

 

輝二がリバイスドライバーを、誠司はデモンズドライバーを腰に巻くと、『コモドドラゴンバイスタンブ』と『スパイダーバイスタンブ』を取りだし、誠司はバイスタンブを起動させる。

 

[スパイダー!]

 

「見せてやるぜ、〈仮面ライダーデモンズ〉を!」

 

誠司は、『スパイダーバイスタンブ』をドライバーの上に押印した。

 

[Deal・・・・]

 

音声が響くと、重いオーケストラが鳴り響き、誠司の横に糸を垂らして降りてきた『蜘蛛』が現れ、足元に四角の液晶が現れる。

 

「ひっ! 蜘蛛!」

 

「なお。目ぇ隠しておこうな」

 

悲鳴を上げそうになるなおの視界をあかねが塞ぐ。

それに構わず誠司は、左手を顔の前まで持っていき、ゆっくり下げながら右手をゆっくり大きくあげる。

 

「変身!!」

 

ドライバーの中心の液晶に押印する。一瞬、液晶につり上がった眼が表示される。

 

[Decide up]

 

すると、『蜘蛛』が動き出す。

 

[Deep.深く Drop.落ちる Danger.危険]

 

蜘蛛が誠司の周りを動き、蜘蛛が糸を出し、誠司の身体を包み込み、誠司の身体が見えなくなり、赤い光に包まれ、中から弾け飛ぶ。

 

[Kamen.Rider DEMONS!]

 

そして中から、『スパイダーバイスタンプ』の紋章を浮かばせながら、〈仮面ライダーデモンズ〉へと変身した。

 

「それじゃあこっちも、新ゲノムと行くか。少しは燃えさせてくれよ?」

 

[コモドドラゴン!]

 

デモンズの変身を見て、輝二は『コモドドラゴンバイスタンブ』を起動させる。

 

ーーーー戦え! 戦え! 戦え!!

 

ーーーー何だよ、馬鹿の一つ覚えのように騒ぎやがって。

 

ーーーーいやさ。何かこう言わなきゃいけない電波を感じて。

 

ーーーーんな毒電波なんて無視しろ。

 

[Come on! コモ・コモ・コモドドラゴン! Come on! コモ・コモ・コモドドラゴン! Come on! コモ・コモ・コモドドラゴン!]

 

「変身!」

 

『コモドドラゴンバイスタンプ』をベルトに押印しスタンプを横に傾ける。

 

≪シャオラッ!!≫

 

スタンプを持ち上げるバイスが、輝二に向けてスタンプを振り下ろした。

 

[バディアップ! この世! Oh My God! 現世の竜こと! コモドドラゴン! 戦わなければ生きものでない!]

 

スタンプが砕けて中から現れたのは、中世の騎士のような鉄仮面に鋭く赤い複眼をし、背中にコモドドラゴンの頭部のような装備をし、両手に細長い、生物の腹部のような盾を装備したリバイと、コモドドラゴンの被り物を被り、リバイと同じように盾を装備したバイスがいた。

 

「・・・・しゃっ!」

 

「がぉぉぉぉん!」

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

「あや? プリキュア皆、今回はツッコミ無しなんか?」

 

「いや、何か・・・・」

 

「あの姿は、ツッコミを入れる気がしなくて・・・・」

 

リバイスの新ゲノムを見ると、プリキュアチームのどれかがツッコミを入れていた筈と思ったはやての言葉に、なぎさとほのかが苦笑しながらそう言った。

さて、どうしてリバイスとデモンズが戦いを、それもナッツハウスで行うようになったのか、それはほんの昨日ほど前に遡る。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

【どういう事なのドクター!?】

 

【どういう事とは、ラブリーガール】

 

【何で誠司が仮面ライダーになっているのかですよっ!?】

 

【まぁまぁそんな顔をグイグイ寄せなくでも良いよプリンセスガール】

 

スカイベースの狩崎の研究室に駆け込んできたハピネスチャージチームと連れられた誠司。ゆいの事をGoプリンセスチームに任せ、S☆Sチームとハートキャッチチームは依頼の方に向かわせた輝二も、『オオムカデバイスタンブ』を渡す為に来ており、丁度研究室にあったコーヒーメーカーでコーヒーを淹れていた。

 

【以前から調整していたドライバーでしたよね。門川さん達ではなく、一般人の相楽に任せたんですか?】

 

輝二の言葉に、狩崎は大仰に肩を竦めながら応える。

 

【ドライバーには『適合率』と言う物があってね。『適合率』が高ければ高い程、変身するライダーの戦闘力は高くなる。生憎、我々〈フェニックス〉の隊員達の最高率が、“ヒトミの82%”だった。しかし、より確実に戦力を上げたい上層部が、一般人の中から選別してでも見つけろとせっつかれていてね。以前、『キングクラブ・デッドマン』の戦いに巻き込まれた空手ボーイをちょっとした好奇心から計ってみたら驚き。空手ボーイの“適合率は93%”に達していた。そして、何処から嗅ぎ付けたのか上層部が、【相楽誠司を〈フェニックス〉の民間協力者として迎え入れろ】と、お達しが来てね。現在に至ると言う訳さ】

 

【他にいなかったんでしょうか? 相楽くん以外に適合率の高い人が?】

 

【例えば、なのはさん達、機動六課の皆さんとか・・・・】

 

いおなとゆう子の言葉に、狩崎は、はぁ~っと、盛大なため息を吐いてから応える。

 

【勿論、先ず最初に彼女達を計測してみたよ。だけどね、一番高い数値を出したのはエリオ<雷ボーイ>だが、それでも適合率73%。そのすぐに下がFW陣の三人娘。ミス・沢田達隊長陣に至っては50%以下。正直お話にならないってレベルだね】

 

【あぁ、それは話にならないな】

 

【≪戦闘力、たったの5か、ゴミめ・・・・ってか?≫】

 

輝二が狩崎の言葉に納得しながらコーヒーを渡し、めぐみ達にはカプチーノを手渡すと、カップで誠司を指しながら言葉を発した。

 

【しかし、彼は使えるんですか? 分不相応に力を与えんたじゃないですかね?】

 

【・・・・・・・・・・・・】

 

輝二の言葉に、誠司は少しムッとなる。

 

【ならば。一つ試してみたらどうかな?】

 

【試す?】

 

【イエス。他のプリキュアガールズに六課の彼女らにもお披露目しようと思っていた所だからね】

 

と、そう言う事で、全員が見られるようにナッツハウス、それも六課の魔導師達による結界まで作り、リバイスとデモンズの模擬戦が行われるようになった。

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

そして現在。他の皆にもお披露目も兼ねて、ナッツハウス前で戦う事になった。周辺にはシャマルが結界を展開して、一般人には気づかれないようにしている。

 

「とりゃっ!」

 

「うわっとっと!」

 

先ずバイスが先駆け、デモンズの蹴りを両手の盾で防ぐ、少しフラついただけですぐに体制を整える。

 

「へーん! そんなキックなんて、通じないもんねぇ!!」

 

「空手ボーイ! 『ゲノミクス』を試したまえ!」

 

「了解!」

 

狩崎の声にデモンズが頷くと、ドライバーの左右を押した。

 

[Add・・・・!]

 

音声が流れると、デモンズは『モグラバイスタンブ』を取りだす。

 

[モグラ!]

 

そして、デモンズドライバーの上部に押印し、液晶に押印した。

 

[Dominate up! モグラ! ゲノミクス!]

 

突きだしたデモンズの右手に赤い触手が生まれ、右手を覆い尽くして弾けると、緑色にオレンジのラインがまだらに入ったドリル、『デモンディグゾン』が装備されていた。

 

「嘘っ!? そんなんアリっ!?」

 

「とぅりゃっ!」

 

バイスが驚愕するが、デモンズは構わず、デモンディグゾンのドリルを激しく回転させ、風を巻き起こしながら、バイスの突き立てようと振るった。

 

「うわっ!」

 

ガードするバイスだが。

 

ーーーーガキィィィィィィィィィンッ!!

 

「あ~~~~れ~~~~!!」

 

ーーーードボォォォォォォォォォンッ!!

 

ぶっ飛んだバイスは湖へと落下した。

 

 

 

ー狩崎sideー

 

「あぁ、バイス!」

 

のぞみがバイスの叫ぶと、ココ(人間態)が狩崎に話しかけた。

 

「相楽くんが変身する仮面ライダーは、輝二のリバイスとは違うんだね?」

 

「あぁ。輝二くんが変身するリバイスは、そのスタンプの能力を全面的に使う事で、パワー特化から防御特化、スピード特化と言った、幅広い戦術ができる。対してデモンズは、最も適したスタンプである『スパイダー』をメインとし、他のスタンプの特性を武器として扱う事ができるのだよ。本来ならば、エビルが使っている『ツーサイドライバー』もリバイスと同じ能力を持っているがね」

 

「しかし、相楽誠司だったか。彼があそこまで戦えるとはな」

 

ナッツ(人間態)の言葉に、狩崎は計測に戻りながら、心の中で喋る。

 

「(何も不思議じゃない。かつて幻影帝国に洗脳された空手ボーイは、ラブリーガールズを圧倒する程の戦闘力を見せた。まぁ彼女達がボーイと戦うのを躊躇していたのもあるだろうが、彼自身の潜在的な戦闘力は高い。要はソレを最大限に引き出す事ができる道具がなかっただけだけどね)」

 

狩崎は再びデモンズの各所のチェックと誠司のバイタルチェックに視線を戻した。

 

 

 

 

ーデモンズsideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

湖でアップアップと騒いでいるバイスから視線を外し、デモンズはリバイへと視線を向けた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

リバイは構えると、デモンズもソレに応えるように構えた。

 

「っ!」

 

「っ」

 

モグラゲノミクスや蹴りを駆使するデモンズを、リバイは盾や持ち前の直感と反射神経で防ぎながら戦う。

デモンズがデモンディグゾンを繰り出すが、リバイは盾で捌き、蹴りをデモンズの左脇腹に叩き込む。

 

「ぐっ・・・・ふっ」

 

「っ!」

 

が、デモンズは脇腹を蹴った左足を左腕で捕まえ、リバイの動きを止めると、デモンディグゾンを振り下ろす。

 

「とぁ!」

 

「なろっ!」

 

ーーーーガリガリガリガリガリガリガリガリッ!!!

 

が、リバイは盾、『コモシールド』で防ぐと、激しい火花が辺りに飛び散った。

 

「おおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 

デモンズが貫こうと拳に力を込め、リバイは貫かれるのも時間の問題と感じ、どうするか考えながら耐えていると。

 

「ーーーーフゥ・・・・」

 

「何っ!?」

 

リバイは身体を支えている右足から、否、全身から力を抜いて、身体をのけ反らせると、デモンディグゾンはコモシールドから滑り空ぶった。

 

「ーーーーどりゃぁっ!!」

 

「うぉっ!」

 

と、ソコでリバイは右足でデモンズの足に蹴手繰りを繰り出し、バランスを崩したデモンズから左足を抜き取り、コモシールドを前面に出してタックルした。

 

「そらっ!」

 

「ぐはっ!」

 

デモンズは咄嗟にデモンディグゾンを盾にして防ぐが衝撃で転がった。が、すぐに起き上がり、さらに迫るリバイとガッチリ組み合った。

 

「くっ・・・・!」

 

「・・・・少しはやるな?」

 

デモンズの耳に、リバイがこっそりと声を発した。

 

「ん?」

 

「お前、何の為に戦ってんだ? もしも、愛乃の守る為に戦っているって言うなら、やめて方が良いと思うぞ?」

 

「っ!」

 

「彼女はお前に守ってもらわなくても、友達や仲間がいる。お前が守ってやらなくても、大丈夫だと思うぞ。わざわざ戦う理由にするのは「違う」あ?」

 

「俺は、めぐみを守りたいから戦ってるんじゃない!」

 

誠司の脳裏に、訓練の時に狩崎に言われた事が思い浮かんでいた。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

【空手ボーイ。一応聞いておくけど、君はデモンズの力で、ラブリーガールを守りたいから戦おうと思っているのかな?】

 

【えっ?】

 

【もしそう考えているなら、その考えはーーーー捨てたまえ】

 

【っ!】

 

狩崎の言葉に、誠司は息を呑む。

 

【誰かの為に戦うのは素敵な事だ。だが、ラブリーガールは君に守ってもらうようなか弱いガールなのかい?】

 

【っ、そ、それは・・・・】

 

【ただ君が、彼女を守りたいと言う自己満足の為にそう思っているだけではないかね?】

 

【・・・・・・・・・・・・】

 

狩崎の言葉に、誠司は言い返せず、黙ってしまう。

 

【はっきり言うとね。彼女は友達にも仲間にも恵まれている。間違った事をしても親身になってくれる人達がいる。君だけが彼女の『特別』とは限らないよ】

 

【・・・・・・・・・・・・】

 

【・・・・彼女を守りたい、その気持ちはとても大事だが、正直言ってそれは、『依存』と隣り合わせの想いだよ】

 

【『依存』・・・・】

 

【その想いに捕らわれるとどうなるか、君は身を持って知っていると思うが?】

 

【っ】

 

知っている。かつて誠司は、めぐみへの独占欲、めぐみを守れない無力感、ある神様への嫉妬心、ソレらを幻影帝国の黒幕『レッド』につけこまれ、めぐみ達の敵となった。

あの時の事は、おそらく誠司の生涯一の恥と呼べる物だろう。

そんな心情を察したのか、狩崎が言葉を紡ぐ。

 

【『復讐』の為に戦ってはいるが、輝二くんは、自分なりの『ルール』を持って戦っている。さもなければ、便利屋の仕事や依頼人の為に身体を張るなんてしないだろう】

 

【・・・・・・・・・・・・】

 

確かにと思った。本当に『復讐』の為だけに戦っているのなら、便利屋の仕事なんてやらないだろう。

 

【改めて聞こう、空手ボーイ。イヤ、相楽誠司くん。君は、何の為に戦うんだい? ラブリーガールの為、と言うのは無しだよ?】

 

狩崎の言葉に、誠司は一瞬黙る。が、すぐに、何かを決意したように顔を上げた。

 

【・・・・・・・・俺は、狩崎さん、俺はーーーー】

 

 

 

* * *

 

 

 

「俺は、今のままじゃダメだ! だから、過去の俺を越えるっ! そして、強くなる為にーーーー戦うんだ! 命を懸けてっ!!」

 

「うおっ!?」

 

デモンズがそう叫ぶと、組み合った状態でリバイを持ち上げると。

 

「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

そのまま投げ飛ばした。

 

「くっ・・・・とぉっ!」

 

リバイは体制を整えて受け身を取った。

 

「ふっ! たぁっ!」

 

デモンズはデモンディグゾンを地面に突き立てると、土煙を上げて地面に潜っていった。

 

「っ!」

 

リバイが警戒すると、ボコボコ・・・・! と、地面が盛り上がっていき、リバイへと向かっていくと、リバイスの手前で盛り上がりが一瞬止まったきと思えば、リバイの背後の地面から、デモンズが飛び出し、デモンディグゾンを力一杯振るった。

 

「くっ・・・・! うぉおっ!!」

 

咄嗟にコモシールドで防いだが、衝撃に吹き飛び、丁度湖のほとり、泳いで戻ってきたバイスの隣に着地した。

 

「こ、輝二! アイツ、結構、やる!」

 

「あぁ、これだけできれば十分及第点だな」

 

ぜーはー、ぜーはー、ぜーはーと、肩で息をするバイスにリバイはデモンズの戦闘力を賞賛する。

デモンズはデモンズドライバーの左右から押した。

 

[Charge!]

 

すると、デモンディグゾンに緑色のエネルギーを螺旋状に纏わせ構えた。

 

「本気じゃん!?」

 

「ならばこっちも!」

 

リバイがドライバーを二回倒して。その時、

 

[リミックス! バディアップ! 必殺! この音! コモドドラゴン!]

 

リバイがバイスに肩車をすると、二人共、両手に持っていたコモシールドを縦に連ねると、リバイの背面にあったコモドドラゴンの頭部が展開され、バイスの尻尾も長くなり、二人の姿が巨大トカゲのようになると、バイスは上体を下ろし、二人の足が地面に着くと、巨大なコモドドラゴン、『リバイスコモドドラゴン』へと変身した。

 

ーーーーシャァァァァァァァァァァァッ!!

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

リバイスコモドドラゴンが雄叫びを上げながらデモンズへと突っ込んでいくと、デモンズも突撃した。

リバイスコモドドラゴンは上体を上げると、口部から火炎弾を放ちながら突き進む。

 

『いや何で火炎放ってるのっ!?』

 

プリキュア組と魔導師組の何人からかツッコミを受けたが、そんか事は気にせず、リバイスコモドドラゴンとデモンズがぶつかり合い、そしてーーーー。

 

ーーーードカァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンッ!!!

 

爆発が起こった。

戦いを見ていた一同が爆風に耐えていると、爆風が収まり、爆心地にいた二人(三人?)を見ると、デモンディグゾンを両手で掴んで抑えるバイスと、オーインバスター50の刃をデモンズの首に当てているリバイ。そしてーーーーガンデフォンをリバイの喉元に当てているデモンズだった。

 

「うぎぎぎぎぎぎ・・・・!」

 

「・・・・ふん。格闘一辺倒の馬鹿って訳じゃあないようだな?」

 

「どうも」

 

「・・・・良いだろう。合格だ。こんだけできれば大丈夫だろ」

 

「へっ」

 

リバイスとデモンズがお互いに構えをほどいた。

 

「うん。これで終了だ。お疲れ!」

 

狩崎の言葉に、変身を解除した二人。それと同時に、シャマルが結界を解除すると、戦闘で荒れた場所が何事も無かったかのように元通りになった。

 

「ふぅ・・・・」

 

「ま、改めて、これからよろしく頼む。相楽」

 

「はい」

 

輝二が手を差し出すと、誠司もその手を握りしめた。

そしてプリキュア一同が二人に近づくとーーーー。

 

ーーーーパンパンパンパンパン!!

 

「うおっ!?」

 

「ん?」

 

『これから宜しく! 相楽くん!!』

 

クラッカーを鳴らして、さらに【歓迎 相楽誠司くん 仮面ライダーデモンズ!】とプラカードまで出して、歓迎された。

 

「誠司!」

 

「めぐみ」

 

「すごかったよ!」

 

「おう、まぁな!」

 

めぐみとハイタッチしながら、誠司は内心思った。

 

「(まだ俺は、半人前だ。だから、デモンズで戦って、胸を張って一人前になったら、告白するぜめぐみ)」

 

「ふっ」

 

「わざわざ戦うなんてしなくても、良かったんじゃないかな?」

 

その誠司に小さく笑みを浮かべる輝二に、いちかが話しかけた。

 

「〈デッドマンズ〉との戦いは危険と隣り合わせだ。生半可な覚悟で戦わせる訳にはいかないからな」

 

輝二はそう答えると、他のメンバーと話し合っている誠司を見て、小さく笑った。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

「いや~青春やなぁ、見ていて眩しいわ」

 

「はやてちゃん、オバサン臭いですよ」

 

「うっ!」

 

リインの(悪意ゼロの)言葉に、はやては胸を抑えて蹲る。

 

「私達も、あんな風だったね、フェイトちゃん」

 

「そうだね。誠司って、子供の頃の私達みたい」

 

子供の頃、『好きな人』に追い付きたくてガムシャラだった頃の自分達と重なって見える誠司に、なのはとフェイトはにこやかに微笑む。

 

「ま。あの誠司って奴はお前らと違って、八年間も停滞しちまって、『好きな人』の背中が、遥か遠くにまで行かれるって事は無さそうだな」

 

「「うっっ!!」」

 

ヴィータの言葉(こちらはトゲあり)に、なのはとフェイトははやてと同じように蹲るのであった。




〈仮面ライダーリバイス コモドドラゴンゲノム〉

仮面ライダー龍騎に似で、背後にコモドドラゴンの頭部を付けたリバイとコモドドラゴンの頭を被ったバイス。二人とも両手に専用武器『コモシールド』を装備し、鏡面の中に入れる能力を持つ。
リバイスコモドドラゴンは二人のコモシールドは縦に連ね、リバイスイーグルのように肩車してから前に倒れ、リバイの両手が前足に、バイスの両足が後ろ足になる。
スタンピングフィニッシュでは、火炎弾を口から放ちながら突進する。


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窃盗団と悪魔!?

今回から、原作仮面ライダーリバイス沿いになります。
オリ設定で、この世界のぶーさんは既婚者って設定にしています。モデルは後書きにて。


ーいちかsideー

 

「はい! それではこれより、『輝二さんとゆいちゃん仲良し大作戦』の会議を始めます!」

 

キラパティに集まったアラモードチームと5GoGoチームとドキドキチームが、作戦会議をしていた。

 

「・・・・って、のぞみとマナといちかの勢いで始めたけど。実際、輝二とゆいを仲良くさせる作戦なんて本人に許可も取らずにやっちゃって良いの?」

 

と、くるみが半眼になって言うと、のぞみが声をあげた。

 

「だって輝二さん、お父さんもお兄さんも〈デッドマンズ〉に殺されちゃったんだよ。残った家族であるゆいちゃんとゆいちゃんのお母さんと仲良くした方が良いと思うよ!」

 

「と、のぞみさんは言ってますけど。実際、妹がいるお二人はこの作戦をどう思いますか?」

 

うららが、このメンバーの中で妹持ちのりんとあきらに聞くと。

 

「・・・・あたしは、七瀬さんと仲良くさせる事には反対じゃないけどさ。輝二さんの気持ちを考えるとねぇ」

 

「・・・・個人的には私も二人の仲を取り持ちたいけど、家族を危険に巻き込みたくないって嵐山くんの気持ちも理解できるよ」

 

ゆいとの関係をプリキュアオールスターズや六課に説明する時、輝二は。

 

【母さんには、父さんと兄さんの事は伝えているが、俺が〈デッドマンズ〉と戦っている事は伝えてないし、妹にも教えないように頼んだんだ。物心付く前に離ればなれになったが、父親と長兄が〈デッドマンズ〉に殺されたと聞けば、あの子はーーーーゆいは少なからずショックを受ける。いや、最悪、この事態に首を突っ込んでくる可能性の方が高い。〈デッドマンズ〉の方でも、ゆいの事が知られてしまったが、それでもゆいには、この戦いに巻き込まれて欲しくない。これは俺の独り善がりだが、ゆいには知って欲しくない。だから、俺とゆいが兄妹だって事は、ゆいに話さないでくれ】

 

と、頭を下げてまで頼んだのだ。

ちなみに、〈オオムカデ・デッドマン〉の事があってから、Goプリンセスチームはゆいのガードをしてくれている。一応〈フェニックス〉の隊員も、事務員に扮してガードしているが、前回の事もあってか、よりゆいの近くにいるはるか達が引き受けてくれた。

 

「中々に複雑な問題ね」

 

「〈デッドマンズ〉が輝二さんの弱点を知った以上、七瀬さんが巻き込まれるのは時間の問題ですが」

 

「巻き込まれるにしても、ゆいさんに輝二さんとの関係を知られないようにするのも一つの手段ですわね」

 

「私は輝二さんとゆいちゃんが仲良くして欲しいよ! 家族だって、兄妹だってゆいちゃんに知られなければ良いなら! そっちの方が良いよ!」

 

シエルとありすと亜久里の言葉にマナがそう言い出した。

 

「・・・・まぁ確かに、兄妹だって事が七瀬さんに知られなければ良いならその方が良いけど」

 

「・・・・問題は、二人をどのタイミングで会わせるか、って事ね」

 

かれんとこまちの言葉に全員がう~んと、首を傾げる。

と、ソコでーーーー。

 

ーーーーピリリリリリ、ピリリリリリ、ピリリリリリ・・・・。

 

《もしもーし! いちかちゃ~ん! 聞こえてる~?》

 

「え? バイス??」

 

いちかのガンデフォンに着信音が鳴り、さらにバイスの声が聞こえ、ガンデフォンを手に取ると。

 

《はぁい!》

 

「うわっ! バイスが私のガンデフォンにっ!」

 

『えっ?』

 

いちかがガンデフォンの液晶を見せるように出すと、画面にバイスが出ていた。

 

《へいへーい! 》

 

「な、何でバイスが私のガンデフォンにっ!?」

 

《細かい事は後回し! そんな事よりもさ、大変! 窃盗団とデッドマンが現れたの!》

 

『えっ? デッドマンに・・・・窃盗団っ!?』

 

バイスの言葉に、プリキュア達は驚きの声を上げた。

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

と、プリキュアオールスターズが勝手にゆいと仲良し作戦の会議をするおよそ二時間前ーーーー。

輝二は依頼人、と言う訳でもない相手から。

 

「彼女が欲しいんだ! 女を紹介してくれぇっ!!」

 

と、両手をバタバタと振り、まるで駄々っ子のようにねだられていた。

相手は前にコンビニでバイトしていた時の店長の息子で、『世界一カッコいい無職』と自称する高卒フリーターのドラ息子(19)だった。

 

「あのですね。あなたモテたいなら先ずちゃんとした仕事に就いて、真面目に働きながら自分を研く事から初めたらどうですか?」

 

「え? 『世界一カッコいい無職』の俺にこれ以上どうカッコ良くなれと?」

 

ドラ息子は輝二の言葉を、まるで理解できないと言わんばかりにキョトンとした顔をする。

輝二は内心、「これならあのアホ共<プリキュア>の相手をしている方が、なんぼかマシだな」と、心の底から思い、大きなため息を吐いてから話す。

 

「第一あなた、俺と同じコンビニで働いていた女性が、【彼女、俺にとても優しいからな。きっと俺の事が好きなんだぜ】って言ってませんでしたか?」

 

「ふっ・・・・彼女、本当は俺の事が好きな癖に素直じゃないからな。このまま俺に捕らわれていたんじゃ彼女に未来がないと思って、さよならしたのさ。お陰で彼女、新しい恋を見つけて幸せにーーーー」

 

「そうですか。てっきり彼女が優しかったのは店長の息子だからってだけで、本当は好意の欠片も持たれていなくて、彼女から体よくフラれたけど、それを認めず、ストーカーのようにしつこく付きまとってたら、怒った彼女から手酷くフラれたので、女の子を紹介して欲しいって喚きに来た訳ではないのですね?」

 

フッ、とキザったらしい態度でそう言うドラ息子に、輝二はとてつもなく冷めた態度と冷淡な口調でそう返した。

 

「ちちちちちち違ぇしッ!! 俺の方がフッたんだよ! 別に彼女から、【あなたみたいなの全っっっ然タイプじゃないの】とか! 【今の仕事辞めて十歳上の金持ちと結婚するから】とか言われてねぇしっ!!」

 

すると、ドラ息子は見て分かる程に態度が完全に崩れ、酷く狼狽しながら喚きだした。

 

≪プププ! 図星、突かれたみたいよ?≫

 

「(つか、こっちはその彼女から、目の前のドラ息子からストーカーされているって相談されて、結婚の事を伝えてキッパリさせた方が良いって言ったんだけどな)」

 

何の事はない。最初から輝二とバイスは全部知っていたのだ。

 

「兎に角! 俺に女を紹介してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!!」

 

「ちなみに依頼料は?」

 

「えっ? 君、前のバイト先の店長の息子から金取るの? 仁義とか義理とか知らないの? 人間として最低じゃない?」

 

≪うっわ! 清々しい程のクズ!≫

 

「こんな所に来て、年下の高校生の小僧(17)に女の子を紹介してくれって喚いている人(19)の方が情けないと思いますけど」

 

さっさとこの馬鹿ドラ息子を追い出した方が良いな、と思いながら、輝二はやる気ゼロな態度で応対する。

 

「んで、どんなタイプの女の子が好み「おっぱい大きくてエロい感じでお金をいっぱい持ってて、俺を養ってくれる美人なお姉さん!!」ーーーー分不相応の高望み、身の程を弁えるって言葉知ってます?」

 

欲望だだ漏れのドラ息子に、完全に呆れ果てる輝二。

 

「俺の知り合いの女の子は、中学生が多いですけど」

 

「えっ? 君ってロリコン? 中学生なんておっぱいのないツルペタで、色気の欠片もない女の子が好きなんてキモッ! 引く」

 

「恋人が欲しいなら先ず、辞書でデリカシーって言葉を学んで来てからどうです? それに高校生(17)と中学生(13~15)なんてそんなに変わらないですよ。文句あるなら今すぐに出ていきますか?(寧ろとっとと出ていけこのクズ!)」

 

≪つか、ラブちゃん達とか中学生とは思えない胸が大きくてスタイルの良い子も結構いるし、かれんちゃんとか、みなみちゃんみたいに色気のある子もいるけどねぇ≫

 

今すぐぶん殴りたい気持ちを必死に抑える輝二と、呆れるバイス。

 

「・・・・一応年齢はどれくらいですかね?」

 

「高校生か大学生くらい!!」

 

輝二の脳裏に高校生なら、月影ゆりと琴爪ゆかりと剣城あきら、ティアナ・ランスターとスバル・ナカジマが頭に浮かび、大学生くらいなら機動六課の隊長陣(ヴィータを除く)が浮かんだが。

 

≪誰がどう見ても、このクズには全く全然釣り合わないじゃん≫

 

「(このクズが彼女らと釣り合うかどうか考えること事態が烏滸がましいな)」

 

≪俺っちが女の子なら、こんなクズを紹介されたら速攻で一緒に殴り飛ばしているね≫

 

「(俺ならさらに迷惑料を請求するわ)」

 

最早面倒臭くなったので、どうやってこの馬鹿ドラ息子を追い返すか考えていると。

 

ーーーーピロリン。

 

と、そんな時に、狩崎からLINEで【デッドマンの情報が入った、来てくれたまえ】と書かれていた。

 

「ん?(狩崎さん? 丁度良いな)あっ、すいません。別の依頼主から連絡が来たんで、今日は帰ってください」

 

「えっちょっと俺の依頼は?」

 

内心、心底面倒くさいと言いたげなため息を吐きながら、何の感情も籠っていない目で声を発する。

 

「・・・・・・・・『世界一カッコいい無職』のアンタなら、俺が何かしなくても、ちょっと声を掛ければ女の子なんて引く手あまたじゃあないですかー?」

 

「えっ? そう?」

 

「勿論ですよー。真にカッコいい男って言うのは、その場にいるだけで女の子が群がる物ですからねー。ちょっと駅前でカッコ良いポーズをしていれば、女の子達が放っておく訳ないですよー」

 

「そうかっ!! やっぱ俺ってカッコいいもんなぁ! よぉーし! 待っててね! 金髪巨乳なお姉さーん!!」

 

と輝二の超適当な褒め言葉をすっかり鵜呑みにし、調子に乗った馬鹿ドラ息子は、あっさりと事務所から出ていった。

 

「ーーーーさて、行くか」

 

≪だな≫

 

二人共、何事も無かったかのようにスカイベースへと向かった。

 

 

 

ちなみにその馬鹿ドラ息子は道行く女性達にカッコつけたポージングをしてアピールしていたが、「キモい」「ウザい」「顔がキショい」「頭悪そう」「犬臭い」「お金とか無さそう」「甲斐性とかもまるで無いって感じ」「視界に入れるのも迷惑」「付き合ったら人生を無駄にしそう」「自分を勘違いしている痛い童貞」「結婚したら必ず不幸になる男No.1」と、散々に酷評された。

 

「・・・・俺、鳥になりたい・・・・」

 

涙を流し、髪の毛が抜け落ちる程の悲嘆に暮れ、とりあえず金を稼ごうと、父親の薦めで父親のコンビニで働く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、そんな結末などに微塵も興味ない輝二とバイスは、スカイベースの一室にて、嵐山雄二郎司令と狩崎からの情報を聞いた。

空中モニタに映し出されているのは、目出し帽と運動用ジャージを着た三人が、警察から逃げている映像だった。

最近噂になっている覆面窃盗団だ。

建物等の障害物をかわしてアクロバットでトリッキングな動きで逃げるそれは、まるでフリーランニングのようであった。

 

≪スッゲェ! カッケェ!≫

 

「へぇ~、結構良い動きしてますね?」

 

と、ソコで、メンバーの一人がドジり、警察に捕まりそうになったその時ーーーー薄い緑色の蜂のような身体となっており、赤いボタンを着けた白いジャケットを羽織り、鬼のような真っ赤な人面と斑点模様のある黄色い頭部、複数の赤いドリル状の突起を生やした両腕を持ち、両肩には緑色の仮面があり、首元に生やした赤い毛をマフラーのように垂らしているデッドマンが手助けし、その逃走犯を逃がした。

 

「この後、警察が逃げたデッドマンをパトカーで追ったが、追い付けなかった。走力から恐らく、〈チーター・デッドマン〉、それもフェーズ2にまで到達している」

 

≪おうおうおう! 悪そうな猫ちゃんだぜ!≫

 

「猫じゃなくてチーター。しかし速いですね」

 

スケボーに乗った狩崎が輝二に近づく。

 

「地上最速の生物チーターだからねぇ、しかもフェーズ2だ! フェラーリよりも速いよ」

 

「リバイスの力で契約を解除して、人間に戻せ」

 

「了解」

 

「問題はヤツのスピードだがねぇ。フェイト<ミス・古里>が追跡したが、途中で障害物に遮られ、逃げられてしまったよ」

 

「判明しているのは、窃盗団が四人組と言う事だけだ」

 

ーーーーピリリリリリ、ピリリリリリ・・・・。

 

《もしもーし、電話だよー!》

 

ガンデフォンから着信音とバイスの声が響く、バイスがガンデフォンに取り憑いたのだ。

 

「はぁ・・・・(ピッ)」

 

《はぁいカリちゃん! こんな感じで皆とお喋りできるって幸せ!》

 

「ガンデフォンは君の為に作ったのではない」

 

《もう! 照れちゃって~!》

 

「君の事は何か嫌いだ」

 

「ちょっと黙れバイス。狩崎さん、チーター・デッドマンに対抗する手段はあるんですか?」

 

「地上にチーター以上に走れる生物はいない・・・・しかーし!」

 

狩崎はポケットから、『ジャッカルバイスタンプ』を取り出した。

 

「ジャッカルがある!!」

 

「(ジャッカルか・・・・)」

 

輝二は因縁がある『ジャッカルバイスタンプ』に少し目を細めるが、空中モニタに映し出された『ジャッカルゲノム』のバイスを見ると。

 

「(うわっ、微妙・・・・)」

 

《う~わ、ダッサっ!》

 

頭部に原始人のようにジャッカルの毛皮を着た体を合わせたデザインをしたバイスの姿に、輝二は内心で、バイスは大声で酷評した。

 

「セイ ホワット!?」

 

バイスに画面に、狩崎が顔を近づける。

 

《だ~って、なんかもっさりしてね? 全然速くなさそうだし〜!》

 

「ジャッカルあげない!」

 

とバイスの酷評に、狩崎は顔を歪めていき、ぷいっと顔を背け、近くのソファに座ってふてくれた。

 

《そんなのなくても、俺っちの輝二とプリキュアちゃん達に任せときゃ問題ねえって!》

 

「お前少し黙れ!」

 

輝二はバイスタンプをポケットにしまった。

 

「期待している。バイスタンプの回収も頼むぞ」

 

「・・・・報酬の為でもあるからね。所で叔父さん。エビル、カゲロウについて何か分かった?」

 

「調査中だ。六課も協力してくれているが、めぼしい情報はない。が、今は目の前の窃盗団とチーターに集中しろ」

 

「うん。それじゃ、窃盗団についても調べてみるよ」

 

ガンデフォンに送られてきた画像を見ると、目を細める。

 

「それじゃ俺はこれで・・・・」

 

そう言って、輝二は司令室を後にした。

 

「バイス。少しは言い方を考えろよ」

 

《えぇ~! だって仕方ないじゃん! 悪魔は正直なんだも~ん!》

 

「正直者の悪魔なんているのかよ・・・・」

 

 

 

 

ー???sideー

 

一人の少年が、自分の家でゲームをしているが、そのゲームに飽きたのか、テレビの画面を消した。

漫画も読み飽きた。ゲームも飽きた。退屈で退屈で死にそうな気持ちだった。

少年は、大きくため息を吐くと、スマホで友達に連絡した。

 

「なあ、今からやんないーーーー『鬼ごっこ』」

 

少年は目出し帽を手にとって弄びながらそう言った。少年の名前は『前園仁志』。覆面窃盗団の一人だった。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

地上に戻った輝二は、事務所の下の階で喫茶店を経営しているぶーさんの元を訪れた。

 

「ぶーさん。ちょっと頼まれてくれる?」

 

「ん? 何だい?」

 

輝二は、ガンデフォンに映し出された窃盗団の一人の映像を寄せる。

 

「これ、最近噂になってる覆面窃盗団だね?」

 

「このジャージ、学校のジャージにも見えるだろう? 何処の学校か特定できるかな?」

 

「・・・・少し待っていてくれ」

 

ガンデフォンを持ってぶーさんが店の奥に引っ込むと、入れ代わるようにぶーさんの『奥さん』が出て来て、輝二にブラックコーヒーをくれた。

 

「はい、輝二くん」

 

「ありがとうございます。『セシア』さん」

 

ちなみにぶーさんの『奥さん』は、明るい茶髪と豊満な胸元に、細目で穏やかそうな笑みを浮かべる外人の女性、『伊良部セシア』だった。

それから数分後ーーーー。

 

「見つけたぞ」

 

ぶーさんがタブレットとプリントアウトした一枚の紙を持ってやって来ると、ガンデフォンを輝二に渡し、タブレットに映し出された学校を見せた。

 

「この窃盗団、運動神経がいいから近辺の高校や大学の運動部を洗ってみたら、ビンゴ! このジャージ、『私立大白水学園』のジャージだったよ」

 

「『私立大白水学園』? あの弁護士の子供や銀行の頭取の子供、病院の院長子供と言った、所謂お金持ちのお子さんが通う超名門校の?」

 

「そう。その学校で先月に、体操部の学生が四人停学になったよ」

 

ぶーさんが差し出した紙に、停学になった四人の学生の顔写真と名前とクラス、現在の住所まで記されていた。輝二はその紙を手に取って、ガンデフォンで撮影した後、改めて見る。

 

「この四人の一人がデッドマンって訳か・・・・」

 

≪へへ~! お金持ちのお坊ちゃん達め! 俺っちが捕まえて、とっちめてやるぜ!≫

 

「ありがとうぶーさん」

 

「うん」

 

輝二はブラックコーヒーのカップの下に千円(依頼料込み)を置いて喫茶店から去った。

 

≪んで、コイツらの家に殴り込むの?≫

 

「いや、先ずはコイツらの学校に行って、停学になった理由を探るのが先だな」

 

≪でもどうやって入るの?≫

 

「・・・・持つべきものは、“お金持ちのご令嬢”ってな。今日は確か夢原達と相田達、宇佐美達が来る予定だったな」

 

≪な~る。かれんちゃんとありすちゃん、ついでにあおいちゃんに潜入して貰おうって訳ね≫

 

「ああ。水無月家のお嬢様と『立神コンツェルン』のご令嬢、さらに『四葉財閥』のご令嬢が、見学したいと言えば、快く学校に入れてくれるだろうよ」

 

ーーーーピリリリリリ。

 

「ん?」

 

輝二はガンデフォンが鳴り、画面を見ると、例の覆面窃盗団が現れたと連絡が入った。

 

「ちっ、タイミングが良いのか悪いのか。仕方ない宇佐美達にも連絡するか」

 

そして、輝二はいちか達に連絡した。

 

 

 

 

ー前園仁志sideー

 

前園仁志は、仲間達と一緒にパトカーから逃げていた。途中、工場に逃げ込むが、出口のシャッターが閉まっていた。

 

「行き止まりだ!」

 

「おい、やべえ・・・・!」

 

焦るが、警察官に囲まれてしまった。

 

「もう諦めるんだな」

 

これまでかと前園仁志は諦めかけた瞬間、上から何かが飛んできた。

 

『・・・・・・・・』

 

『うわっ!』

 

それは、先日自分達を助けてくれた怪人だった。怪人が突然現れて、警官達は驚いてコケた。

 

「おい今のうちだ!」

 

仲間に言われ、前園仁志もその場から逃げた。

 

『・・・・・・・・』

 

怪人もその場を去ろうとしたその時、

 

「とりゃっ!!」

 

赤い仮面の戦士が、怪人を蹴り飛ばした。

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「ふっ!」

 

誠司ことデモンズも連絡を受けて駆けつけ、怪人、チーター・デッドマンと交戦する。

窃盗団の一人が、此方の様子を見ていたが、デモンズは気に止めなかった。

 

「よう相良。早いな」

 

「っ、輝二さん」

 

「よう誠司!」

 

リバイスもその場に駆けつけた。リバイは、チーター・デッドマンに向けて声を発する。

 

「オイタが過ぎるぞ。お前、大白水学園の生徒か?」

 

『ぐぅ、関係ない!』

 

「フハハハハハハハハハハハ! なんて分かりやすい狼狽え方! ウハハハハハハハハハハハ!!」

 

「大白水学園って、あのお金持ちの名門? そんなお坊ちゃんが悪魔何かに魂売りやがって。親が泣いてるぞ」

 

『っ! 黙れ!!』

 

デモンズがそう言うと、チーター・デッドマンは襲い掛かった。

 

「おい仁志、行くぞ!」

 

窃盗団の一人がそう言うと、三人の窃盗団が今度こそ工場から逃げ出した。

が、名前を呼んだ事をリバイはしっかり聞こえていた。

 

「(っ、『仁志』・・・・確かぶーさんのくれたリストに入っていたな。『前園仁志』、大病院の院長の息子か)」

 

『フゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 

「お前は逃がさないよぉん! 俺っちが! あらっ? 相手だ! コラッ! フッ!」

 

バイスが攻撃するが、全てかわされてしまう。

 

「バイス!」

 

「大丈夫?」

 

「うわぉ! 皆!」

 

『キッ! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

駆けつけた5GoGoチームとドキドキチームに、加速したチーター・デッドマンが攻撃する。

 

『きゃぁぁぁぁっ!!』

 

「あぁっ!」

 

「お前ら!」

 

「大丈夫かっ!?」

 

リバイスとデモンズが駆け寄ろうとするが、チーター・デッドマンが横切りながら攻撃する。

 

「「「うおあっ!」」」

 

倒れる三人だが、デモンズはすぐに起き上がると、同じく起き上がるプリキュアの一人に声をかける。

 

「レモネード! チェーンを出してくれ! 俺も糸を出すから、チーターを捕まえるんだ!」

 

「分かりました! 『プリキュア プリズムチェーン』!!」

 

「はっ!」

 

レモネードがプリズムチェーンを、デモンズが糸を出してチーター・デッドマンを捕らえようとする。

がーーーー。

 

『かぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!』

 

身体の突起が回転し、チェーンと糸を引き裂いていく。

 

「っ、カッチカチの『ロゼッタウォール』!」

 

ロゼッタが障壁を展開すると、チーター・デッドマンは壁に正面衝突し、ピンボールのように跳ね飛び、工場の壁を破って外に出た。

 

「やったぁ!(ガン!)あいた!」

 

「やったじゃねぇ! 逃げられるだろうが!」

 

「あっ! そうだった!」

 

急いで追跡するリバイスとプリキュア達が外に出ようとすると、ギフジュニアが沸いて出てくる。

 

「ここは任せた! 」

 

デモンズとプリキュア達に任せ、丁度外にでると、チーター・デッドマンはアラモードチームと交戦していた。

 

「はぁ!」

 

「えい!」

 

ホイップとカスタードが大きなクリームと大きなプリンの障害物を作るが、チーター・デッドマンはその上を滑りながら回避する。

 

「この! 同じ猫科として負けられない! 行こうマカロン!」

 

「うふふ、チーターとライオンの闘いに猫が参戦って訳ね。面白いわ」

 

ジェラートは両手のグローブにエネルギーを纏い殴りかかり、マカロンはマカロンの形をしたエネルギーをヨーヨーのように伸ばして攻撃するが。

 

『はぁっ!!』

 

「あだっ!?」

 

「あらま」

 

チーター・デッドマンは跳ねてジェラートの頭を足場に回避し、さらにマカロンのヨーヨーを健脚で蹴り返し、マカロンは返されたヨーヨーを回避する。

 

「強い上に、何てスピードなんだ!」

 

「流石はチーター! 地上最速の生物は伊達ではじゃないわね! でも! 『レインボーリボン』!!」

 

『ぐっ!』

 

パルフェがレインボーリボンで腕を拘束する。

 

「ショコラ!」

 

「うん!」

 

パルフェに続き、ショコラはエネルギーの剣を作り、刺突するように剣を突き立てようとする。

が、

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!』

 

チーター・デッドマンは拘束された身体を無理矢理に、力任せに動かしてレインボーリボンで繋がったパルフェを振り回す。

 

「きゃぁっ! (ドン!)あうっ!」

 

「あぁっ!」

 

振り回されたパルフェはショコラと激突し、二人は吹き飛ばされ、壁に激突しそうになるが。

 

「おっと!」

 

「よっと!」

 

壁に叩きつけられる寸前、ショコラをリバイが、パルフェをバイスが受け止めた。

 

「嵐山くん!」

 

「大丈夫か!?」

 

「バイス!」

 

「いえぃ! ちょっと役得!」

 

『かぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

「「やばっ!」」

 

肩の突起を回転させたチーター・デッドマンが、ショルダータックルを仕掛けようとし、リバイスはショコラとパルフェを離れさせると、チーター・デッドマンのタックルをモロに受けてしまった。

 

「「うぉわああああああああっ!!」」

 

『輝二さん(嵐山くん)! バイス!』

 

リバイスが近くにあった重ねられたドラム缶の山に激突した。全員の目がリバイスに向いている内に、チーター・デッドマンはその場から立ち去った。

 

「だぁっ! くそっ! 逃げられたかっ!」

 

「ーーーー輝二!(ガン!)あてっ! ちょっと誰よ電気消したのっ!?」

 

ドラム缶を退かして立ち上がるリバイだが、バイスはドラム缶に嵌まって抜けなくなり、足だけ出してヨロヨロと動いていた。

 

「バイス・・・・」

 

「また面白い姿ね♪」

 

二人に近づいたホイップ達が、バイスの姿に苦笑する。マカロンだけは面白がっていたが。

 

「(ーーーープテラゲノムなら・・・・いや、たった十秒の加速で闘える相手じゃない。やはり必要だな、『ジャッカルゲノム』)」

 

アラモードチームがバイスをドラム缶から引っこ抜こうとするのを尻目に、リバイはどうやってヘソを曲げた狩崎を宥めるか悩んでいた。

駆けつけたデモンズと5GoGoチームとドキドキチームは、状況に首を傾げていたが。

 

 

 

 

ー???sideー

 

「ど、どうしたのはるかちゃん? トワちゃん?」

 

「気にしないでゆいちゃん」

 

「わたくし達があなたを守りますわ」

 

所変わってノーブル学園では、はるかとトワがゆいをガッチリガードしていた。ちなみにみなみは生徒会、きららはモデルの仕事で不在。

と、廊下の角を曲がった所で、ゆいは背広の男性とぶつかった。

 

「あっ! すみません!」

 

「こちらこそすみません!」

 

「・・・・あの、あなたは?」

 

「あぁ、僕、今日から教育実習でノーブル学園に来た、『玉置豪』と言います。宜しくお願いします」

 

「は、はい」

 

ゆい達は玉置豪に会釈してその場を離れた。その後ろ姿を見て、玉置豪は小さく笑みを浮かべ、懐のポケットから、『狼の刻印がされたバイスタンプ』、『ウルフプロトバイスタンプ』を手に持って、

 

「・・・・・・・・グラシアス、デッドマンズ」

 

玉置豪ーーーー否、〈デッドマンズ〉幹部、『フリオ』はボソッと呟くのであった。

 

 




オリキャラ・『伊良部セリア』。ぶーさんの嫁さん。見た目もプロポーションも二十代に見えるが、実は四十代。モデルは『異世界はスマートフォンとともに』の『セシル』。
馬鹿ドラ息子、『吸血鬼すぐ死ぬ』の武々夫。今回だけのゲスト。二度と出ない。


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レールの上に捕らわれて

ーアギレラsideー

 

「フリオの潜入は順調のようです」

 

〈デッドマンズ〉の基地にて、オルテカからの報告をアギレラはソファーに寝転がりながら聞いていた。

 

「この前アンタが連れてきたオオムカデくん。あ、もう違うっけ? えっと、『スタイリッシュ何とか』くんはどうしてるの?」

 

「『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』ですね。彼は戦闘力は勿論ですが、特に非常に強い『欲望』を持っています。『新しいバイスタンプ』も与えており、既に〈第二フェーズ〉に到達しています。今は力を使いこなすように訓練中ですよ」

 

「頑張り屋さんねぇ。ーーーーそれに比べてあのチーターくん、全っ然使えないんですけど!」

 

「まあ、巧く逃げ切ったと言う点だけは、評価すべきかと」

 

オルテカもチーター・デッドマンに対して最低限のフォローに留めた。どう見ても、彼が〈第二フェーズ〉以上になる事を期待していない風だった。

 

「ふーん。あれ、『生け贄』になりそう?」

 

ソファーから起き上がったアギレラが、『〈ギフ〉の石棺』に近づき、石棺を撫でる。

 

「早く世界中の皆を〈ギフ〉様の家族にして、幸せになって欲しいなあ」

 

「勿論ですアギレラ様。ーーーーカゲロウの『寄り代』になっている少年も、少しずつ、カゲロウの傀儡になっていますよ」

 

オルテカが含み笑みを浮かべて呟いた。

 

 

 

 

ーカゲロウsideー

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

〈デッドマンズ〉の基地の一室。

灯りの無い暗い部屋で、カゲロウの『寄り代』となった“少年”は苦しみながら、部屋に設えられた鏡に映る自分を見ると、自分に憑依している『悪魔』の姿が映し出された。

 

≪よう相棒。調子はどうだ?≫

 

「くっ・・・・!」

 

≪おいおいそんなに怖い顔で睨むなよ。俺達は今や『運命共同体』だぜ?≫

 

「・・・・!!」

 

ーーーーバキャ!

 

ニヤニヤと歪んだ笑みを浮かべるカゲロウを、“少年”は視線を鋭くして睨み、鏡に拳を叩きつけた。鏡に大きな皹が走り、“少年”は拳を少し切ってしまい血が流れ、皹が走った鏡に、カゲロウの姿か幾つも映った。

 

≪まあ、お前はどう足掻いても、俺からはもう逃げられない。この身体はーーーー俺の物だ!≫

 

「ーーーーーーーー!!」

 

“少年”が声にならない悲鳴を上げると、その身体を影から伸びた触手のようなものが包み込み、“少年”の身体は、〈仮面ライダーエビル〉へと変貌した。

 

『くくくくく、はははははははははははははははははははははははははは!!!!』

 

暗い一室に、エビルの高笑いが響いた。

 

 

 

ー前園仁志sideー

 

「おいどうすんだよっ!? マジヤベエぞ!」

 

その日の夜。街の裏路地で、覆面窃盗団である学生達は、今の自分達の状況に酷く狼狽していた。

最初はただの『遊び』だった。陸上部で問題を起こして停学になり、親からも叱られ、鬱積した気持ちをぶつける先が欲しかっただけであった。

チンケな窃盗をして、陸上で鍛えた脚でフリーランニングのように街を駆け回りながら警察との鬼ごっこをして、スリルを味わいたかっただけであった。

 

「チーター・デッドマン<アイツ>、やり過ぎだって・・・・!」

 

しかし、あんなチーター・デッドマン<怪物>まで現れて事がここまで大きくなってしまい、どうしたらいいのか、彼らにも分からなくなってしまったのだ。

仲間の二人は、貧乏揺すりをする前園仁志に目を向ける。

 

「おい!」

 

「うるせぇなっ!!」

 

「あっ、仁志!」

 

「待てよ!」

 

仁志はヒステリックに怒鳴り、その場を離れると、仲間の二人もそれについていく。

 

『・・・・・・・・・・・・!!』

 

そして、そんな進退窮まった三人を、チーター・デッドマンが隠れながら見ていた。

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

翌日。

 

「頼みます狩裂さん。『ジャッカルバイスタンプ』、俺達に下さい! ほらバイスお前も!」

 

《カリちゃんゴメンね。やっぱり『ジャッカル』頂戴!!》

 

ガンデフォンの液晶から飛び出しながら、狩崎に懇願するバイス。

しかし。

 

「断る」

 

《えっ!?》

 

「君には、ダサくて! 似合わないだろうからね!」

 

《まあね》

 

「お前状況分かってンのかこのアホ悪魔!」

 

《(コン!)あてっ!》

 

すっかりふて腐れている狩崎に、悪戦苦闘する輝二とバイス。

 

「まぁ、見ようによっては、カッコいい、よな?」

 

《えっ・・・・? カッコ悪くても良い。我慢する! だからお願い! 頂戴!!》

 

「ふん」

 

狩崎はプイッと、顔を背けた。因みに、プリキュア達に〈ジャッカルゲノム〉のバイスの姿を写真で見せたら、『うわっ、カッコ悪い・・・・』、『何か遅そう・・・・』と酷評だったのは黙っている。

 

「頼む狩崎さん。『ジャッカル』が必要なんだ!」

 

《そうそう!》

 

「《お願いします!》」

 

「・・・・・・・・」

 

「狩崎!」

 

頼み込む二人に顔を背ける狩崎に、見かねた雄二郎司令が声をあげ、全員が目を向けた。

 

「くだらん意地を張るな」

 

雄二郎司令が、『ジャッカルバイスタンプ』を狩崎に投げ渡した。

 

《そうだよ》

 

バイスが小さく呟くと、狩崎は小さくため息を吐いてから椅子から立ち上がり、研究室へと向かう。

 

「少し時間を頂くよ」

 

《ウハハハッ!》

 

「助かります。ありがとうございます」

 

《カリちゃん大好き! よっ! 天才!!》

 

輝二が頭を下げ、バイスが調子の良い台詞を言うと、雄二郎司令が声をかける。

 

「それで、窃盗団の方の調査はどうだ?」

 

「うん。そっちはプリキュア達に任せているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーありすsideー

 

【覆面窃盗団は大白水学園で停学処分された陸上部の生徒達だ。水無月と四葉と立神なら、学校見学とか言って中に入れるだろう。ソコで彼らの情報を聞き出してくれ。任せた】

 

「と! 輝二さんに任されたので! かれんさん! ありすちゃん! あおいちゃん! 潜入捜査宜しくお願いします!!」

 

「いや、それは良いんだけど・・・・」

 

「何やらサスペンスドラマみたいでワクワクしますね」

 

「前に水島が高校の進学先として見せてくれた学園の生徒が、〈デッドマンズ〉なのかよ」

 

のぞみが大白水学園に向かおうとする、かれん、ありす、あおいのお嬢様トリオにそう言い、ありすが執事のセバスチャンに指示をすると、セバスチャンは大白水学園に連絡を取り、すぐに学校見学の許可が下り、大白水学園へと向かった。

本来ならば、こんな突然の訪問が罷り通る筈が無いのだが、ソコは大財閥のありすの存在が大きく影響していると言っても良いだろう。

まだ中学生でありながら四葉財閥の経営を任せられる手腕を持った才媛であるありすが大白水学園に通うようになれば、名門の名は更に大きくなる。

三人はお付きとして、ありすはセバスチャン。かれんはくるみ、あおいは水島を連れて、ひとしきりに大白水学園を案内されると応接室にて、校長から色々と話を聞き流しながら、本題である停学された生徒達の話へと入った。

 

「うーん・・・・まあ、確かに、体操部の生徒が四人停学になりましたね。部室で財布の盗難事件がありまして」

 

「その四人が盗んだのですか?」

 

「前園仁志って言う生徒が疑われて、その友達が、それを庇う形で喧嘩になって、暴れたんです」

 

「濡れ衣かも知れないか、学校側は調査しましたか?」

 

ありすとかれんが聞くと、校長はそれを否定する。

 

「いや、学校側も調べましたが、それはないですよ」

 

「あのさ! 停学中の四人に会っても良いかな?」

 

あおいの問いに、校長は歯切れ悪く答える。

 

「・・・・構わないですけど、一人は退学して、親の仕事の都合で海外に行ってますよ」

 

「「「えっ?」」」

 

「っ・・・・」

 

かれんとありすとあおい、くるみが眉根を寄せた。窃盗団は四人、内一人がチーター・デッドマンになっている筈なのだから、当然の反応であった。

 

 

 

 

ーいちかsideー

 

いちか達は四手に別れ、それぞれが停学中の四人の元に向かっていた。

そんな中、前園仁志の家に向かっていたいちかとマナとのぞみと小々田コージ<ココ>が、【前園】の表札を見つけると、前園家の玄関で警察官と話している女性の会話が聞こえた。

 

「病院の方から連絡がございまして、もう一週間も行ってないって、でもわたくしね・・・・」

 

「何があったのかしら?」

 

と、そんな会話を聞いていると、近所のマダム達の話が聞こえた。

 

「前園さん家の旦那さんが、“行方不明らしいのよ”」

 

「えっ!? 仁志くん、もうすぐ大学受験でしょ?」

 

「そうよ! 病院継がせるって教育熱心だったじゃない?」

 

「ちょっと過保護って感じもしたけどねぇ」

 

「っ!」

 

「ココ?」

 

コージが、輝二から貰った前園仁志の写真を見ると、父親が病院の院長である事が記されていた。

 

「まさか・・・・!」

 

コージは嫌な予感を感じて渋面を作った。

 

 

 

 

 

 

ー前園仁志sideー

 

そして前園仁志とその窃盗仲間は、交番へと赴いた。

 

「どうしました?」

 

駐在する警察官が聞くと、前園仁志が代表して声を発する。

 

「僕達を逮捕してください・・・・」

 

「はい?」

 

「良いから早く逮捕しろよ! “パパが来るだろ”!!」

 

何が言いたいのか分からなく、警官が声を発そうとしたその瞬間、

 

ーーーーズガァァァァァンッ!!

 

交番の壁をぶち破り、チーター・デッドマンが現れた。

 

「「うわぁぁぁぁっ!?」」

 

驚く警官達をチーター・デッドマンが殴って気絶させた。

 

「パパ!」

 

『来い!』

 

仲間の二人を置き去りに、チーター・デッドマンは前園仁志を連れ出す。

 

「おい! なんだよ離せよ!」

 

抵抗する前園仁志だが、チーター・デッドマンは構わず交番から出ると、道を塞ぐように、輝二の他に、のぞみ達とマナ達といちか達がいた。

輝二がチーター・デッドマンに向けて口を開く。

 

「アンタ、ソイツの父親だったんだな」

 

『・・・・・・・・』

 

「息子さんが自首しようとしているのに、邪魔しちゃ駄目だよ!」

 

のぞみがそう言うが、チーター・デッドマンは声を上げる。

 

『私の息子は犯罪などしない! 私と同じ! 『医学の道』に進むんだ!』

 

「・・・・・・・・」

 

チーター・デッドマン、否、父親の言葉に、前園仁志は何か言いたげな顔になる。

 

「子供を信じてあげて下さい!」

 

「無理にレールに入れっから脱線するんだろう!?」

 

『口出しするなっ!』

 

六花とあおいがそう言うが、チーター・デッドマンが怒鳴る。輝二は『リバイスドライバー』を腰に巻いた。

 

「口出しするなって言われても無理だな。ーーーーここにいる娘さん方は、“日本一お節介な集団”なんだよ! 変身!」

 

≪はいさっとっ!≫

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

輝二とバイスがリバイスに変身すると、それにしても続くようにプリキュア達も変身する。

 

「「「「「プリキュア・メタモルフォーゼ!」」」」」

 

「大いなる希望の力! キュアドリーム!」

 

「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」

 

「弾けるレモンの香り! キュアレモネード!」

 

「安らぎの緑の大地! キュアミント!」

 

「知性の青き泉! キュアアクア!」

 

「「「「「希望の力と未来の光! 華麗に羽ばたく五つの心! YES! プリキュア5!」」」」」

 

「スカイローズ! トランスレイト!」

 

「青い薔薇は秘密の印! ミルキィローズ!」

 

「「「「プリキュア・ラブリンク!」」」」

 

[L・O・V・E] 

 

「プリキュア・ドレスアップ!!」

 

「みなぎる愛! キュアハート!」

 

「英知の光! キュアダイヤモンド!」

 

「ひだまりポカポカ! キュアロゼッタ!」

 

「勇気の刃! キュアソード!」

 

「愛の切り札! キュアエース!」

 

「「「「「響け! 愛の鼓動! ドキドキプリキュア!!」」」」」

 

「愛が行きすぎたチーターお父さん! このキュアハートが、あなたのドキドキ、取り戻して見せる!」

 

 「「「「「「キュアアラモード! デコレーション!」」」」」」

 

「ショートケーキ! 元気と笑顔を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアホイップ、できあがり!」

 

「プリン! 知性と勇気を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアカスタード、できあがり!」

 

「アイス! 自由と情熱を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアジェラート、できあがり!」

 

「マカロン! 美しさとトキメキを! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアマカロン、できあがり!」

 

「チョコレート! 強さと愛を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアショコラ、できあがり!」

 

「パルフェ! 夢と希望を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアパルフェ、できあがり!」

 

「「「「「「キラキラ☆プリキュアアラモード!」」」」」」

 

『っ!』

 

チーター・デッドマンが一同の上を飛び越えると、そのまま走り去る。

 

「追うぞ!」

 

「待たんかいっ!!」

 

『待てーーーー!!』

 

走り出すリバイスとプリキュア達。追うとチーター・デッドマンは、運動施設スケボーパークに到着した。

 

「回り込め!」

 

「あいよ!」

 

『うん!』

 

リバイがオーインバスター50でチーター・デッドマンを撃つが、チーター・デッドマンは瞬発力で回避する。

 

「なら、閃け! 『ホーリーソード』!!」

 

「『エースショット』! バキューン!」

 

「『プリキュア・サファイアアロー』!」

 

「『プリキュア・ファイヤーストライク』!」

 

ソードとエース、アクアとルージュも攻撃して、チーター・デッドマンの動きを狭め他のプリキュア達が捕らえようとするが、徐々にチーター・デッドマンの走力が上がっていき、かわされていく。

 

「『プリキュア・エメラルドソーサー』!」

 

「カッチカチの『ロゼッタウォール』!」

 

『っ!』

 

ミントとロゼッタが障壁を作って行く手を遮ると、

 

「捕まえたぁ!!」

 

「「えーい!!」」

 

上からバイスが、左右からドリームとハートが、飛びかかるが。

 

『フン!』

 

「「あらっ!?」」

 

『シャァッ!!』

 

「あらんっ!!」

 

なんとチーター・デッドマンは飛び上がり、ドリームとハートから逃げると、バイスの頭を踏み台にして逃れた。

 

「やるぜ(ザシュンッ!) ぐぁっ!!」

 

「ぁ、輝二!」

 

『輝二さん!』

 

突然背中から斬られて倒れるリバイ。その後ろには、エビルがエビルブレードの刀身を撫でながら立っていた。

 

「カゲロウ! またお前か!」

 

『ハハハハハハハハハハ!!(シュバッ!)うん?』

 

エビルブレードを構えて斬り込もうとするエビルの身体に、糸が巻き付いて拘束する。糸の先を見ると、デモンズとエリオとキャロとフリードがいた。

 

「あっ! 相楽くん!」

 

「エリオくんにキャロちゃん!」

 

ホイップとショコラが名前を叫んだ。

 

「輝二さん!!」

 

「おっと!」

 

エリオが『ジャッカルバイスタンプ』をリバイに投げ渡した。

 

「狩崎さんから届けてくれって渡されました!」

 

「それを使って、デッドマンを人間に戻してください!」

 

「キュクゥ!!」

 

「エビルは俺が止める!ーーーーハッ!」

 

『フン!』

 

デモンズが身体に巻き付いた糸を切り裂いたエビルと組み合いながらその場を離れた。

 

「良いタイミングだ! バイス! 行くぞ!」

 

「あいさ!」

 

[ジャッカル!]

 

「フッ!」

 

『ジャッカルバイスタンプ』を起動させると、リバイは息を吹き掛ける。

 

ーーーーはてさて、どんな姿になるのかな?

 

ーーーーカリちゃん、ちゃんと改良してくれたかな?

 

ーーーーそれを確かめるか。

 

[Come on! ジャ・ジャ・ジャ・ジャッカル! Come on! ジャ・ジャ・ジャ・ジャッカル! Come on! ジャ・ジャ・ジャ・ジャッカル!]

 

『ジャッカルバイスタンプ』をベルトに押印しスタンプを横に傾ける。

 

≪はいやっ!≫

 

リバイに向けてスタンプを振り下ろしすバイス。

 

[バディアップ! テクニカル! リズミカル! クリティカル! ジャッカル! ノンストップでクリアしてやるぜ!」

 

スタンプが砕けて現れたのは、ヒロイックな姿にバイザーを付けたマスク。背部にはジャッカルゲノムの頭部がデフォルメされたのを背負った姿、〈仮面ライダーリバイス ジャッカルゲノム〉だ。

 

≪やるぞー! うわあああ・・・・!≫

 

そしてバイスはーーーースケートボードになっていた。

 

『えぇぇぇぇっ!? バイス何それぇっ!?』

 

スケートボードになったバイスを見て、プリキュア達が驚愕し、リバイがボードを立てると、ボードの中央にあるバイスの顔が飛び出て、自分の身体を見下ろすと、驚愕の声をあげた。

 

「ウッヒョー!! 俺っち板なの!? ねぇ板になっちゃったのー!?」

 

「あの、ドクターこれって・・・・?」

 

キャロが戸惑いながら、タブレットに表示された狩崎に聞くと、

 

《お望み通り、“速くてカッコいい”ゲノムにしてあげたよ~♪》

 

「いや、こう言う問題ですか・・・・?」

 

エリオとキャロとフリードが、頭に大きな汗をタラリと垂らした。

 

「まぁ、良い。取り敢えずーーーーコンティニュー無しで、クリアしてやるぜ!」

 

「俺っち達のスペシャル協力プレイ! 見せちゃうよぉ!」

 

「「「「うぁぁぁぁぁ・・・・!!」」」」

 

「「んん・・・・??」」

 

何故か、アラモードチームが『それ違うでしょ!』と言いたげなツッコミの姿勢になり、ホイップとカスタードとジェラートとパルフェが訳の分からない衝動に悶え、マカロンとショコラも首を傾げていた。

 




次回、ジャッカルゲノムとアラモードのコンビネーションが炸裂!


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No Continueなジャッカル

ーリバイスsideー

 

『っっ! はぁっ!』

 

〈ジャッカルゲノム〉へと変身したリバイスの姿を見て、チーター・デッドマンはその場から逃げるように駆け出した。

 

「逃がすかっ!」

 

[必殺! 軽々! 乗っかる! ジャッカル!]

 

【GAME START】

 

『いや何それっ!?』

 

リバイがスケートボードになったバイスに乗って追跡すると、頭上にゲーム開始の文字がデカデカと現れた。それを見てルージュとローズとダイヤモンドとジェラートと言ったツッコミ担当が叫んだ。

 

『ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!』

 

「はぁっ! そらっ! よっとぉっ!」

 

スケボーパークで駆け回るリバイは、チックタックにオーリー、レールスライドに壁走り等、スケボーの技を駆使してチーター・デッドマンを追う。

 

「アチチチチチ! 無理無理無理!!」

 

「我慢しろバイス! 根性だっ!」

 

が、スケボーになっているバイスは悲鳴を上げていたが、リバイがバッサリ切り捨てた。

そして、ボードでチーター・デッドマンに叩きつけた。攻撃が当たる度に、ピンクと水色の衝撃波のエフェクトが現れた。

 

「ううううっ・・・・ねえ、強く踏み込まないで!」

 

「しょうがないだろ。しっかり前に集中しろ」

 

「じゃあ顔はやめてよ!」

 

バイスの顔のイラストが泣きながら抗議した。

 

『グゥゥゥゥゥ!』

 

と、ソコでチーター・デッドマンが、スケボーパークから脱出し、街中を走り出した。

 

「あっ! 逃げた!」

 

「そりゃこんな所に居続ける理由ないしね」

 

「どうするよ輝二!?」

 

「追う!」

 

「あ、やっぱし・・・・」

 

パルフェが驚くが、マカロンが冷静に答え、リバイはスケボーを巧みに操って滑り、追跡する。

 

「私達も追おう!」

 

『ええ!』

 

「私達は誠司くんと協力してカゲロウを!」

 

『YES!』

 

「私達も輝二さんのサポートだよ!」

 

『うん!』

 

ドキドキチームとアラモードチームはリバイスを追い、5GoGoチームはデモンズの方へと向かった。

 

「エリオくん、私達はどうしよう?」

 

「僕達は、誠司さんのサポートをしよう!」

 

エリオとキャロもデモンズへと向かった。

 

 

 

 

ーデモンズsideー

 

「とりゃっ!」

 

『ふっ!』

 

デモンズが回し蹴りを繰り出すと、エビルの蹴りを回避し、エビルブレードを振るうが、デモンズはバックステップで回避する。

 

『はっ、キュアラブリーの金魚の糞が、ここまでやるとは思わなかったぜ』

 

「・・・・お前、バイスタンプに取り憑いている悪魔なんだよな?」

 

『あん? そうだぜ』

 

「その身体の人間は、どうしたんだよ? 〈デッドマンズ〉の関係者か?」

 

デモンズの怪訝そうな問いに、エビルは嘲るような声を発する。

 

『くっくっくっ。い~や。この身体の元々の持ち主は〈デッドマンズ〉の関係者じゃねぇよ。〈デッドマンズ〉の事を探っていたネズミを、オルテカ達が捕獲して、俺の器にしてくれたんだ。今は俺がこいつの意識をガッチリ押さえていてな。「止めてくれ~!」って泣いちまってるかもなぁ!』

 

「っ! その人を解放しろよ! 俺達との戦いに、“無関係な人間”を巻き込むなっ!!」

 

デモンズが怒りを込めて叫ぶが、エビルは可笑しそうに身体を震わせながら言葉を出す。

 

『ところがどっこい! この身体の元々の持ち主は、お前らと無関係って訳じゃねぇんだよ。まぁ、“お前は面識がないがな”』

 

「何?」

 

『この身体の持ち主との関係者が、“プリキュアの中にいるんでな”!』

 

「それは、一体誰なんだっ!?」

 

『(ニィッ・・・・)教えるかよ!』

 

[必殺承認! バッド! ダークネスフィニッシュ!]

 

『ダークネスフィニッシュ』

 

「くっ!」

 

デモンズがクモの巣のようなエネルギーの障壁を張って防ぐか、技の威力に後退する。

 

『っ! シャァッ!!』

 

エビルがエビルブレードをデモンズに突き立てようとし、その切っ先がデモンズ額に届きそうになったその時ーーーー。

 

「はぁっ!!」

 

ドリームがサーベルのようなフルーレ、『キュアフルーレ』のドリームが使用する『クリスタル・フルーレ』で、エビルブレードを弾いた。

 

『ちっ! ぐうあっ!!』

 

エビルが舌打ちすると、ルージュとレモネードが『ファイヤー・フルーレ』と『シャイニング・フルーレ』を突き立て、火花を散らしながら後退すると、

 

『くぅっ! っ! がぁあああっ!!』

 

上からミントとアクアが『プロテクト・フルーレ』と『トルネード・フルーレ』ん振り下ろしてきて、エビルを切りつけてさらに後退する。

 

『ぐぅぅぅ・・・・! ふぅ! 結構集まって来やがったな!』

 

デモンズの前にローズとエリオとキャロも立ち、5GoGoチームとエリオとキャロがやって来た。

 

『ま、今日はここまでにーーーーしておくか!』

 

エビルが『ギフジュニアスタンプ』を起動させると、ギフジュニア達が大量に現れた。

 

『っっ!』

 

『行け』

 

『ギフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 

デモンズ達はギフジュニア達に応戦していると、エビルはその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

『ーーーー!!』

 

「ふっ! はっ!」

 

リバイは逃げるチーター・デッドマンの前に出ると、チーター・デッドマンは一瞬止まり、その周囲を滑りながら、バイスボードの上でカポエラのような回転蹴りをチーター・デッドマンに叩き込み、ピンクと水色の衝撃波のエフェクトが幾つも現れる。

 

『ギィっ! はぁぁ!!』

 

が、チーター・デッドマンはすぐに起き上がって逃走を続け、途中に大きな河川に向かって助走を付けて飛び込む。

 

「うへへへへへ! バッカじゃん! 猫って泳げないの知らないのぉ?」

 

追いながら、バイスがバカにするように笑いながら言う。

が、

 

「ーーーーいや、逃げてるぞ」

 

「ん?・・・・でぇえええええええええっ!?」

 

何と、チーター・デッドマンは水面を走りながら、川を渡っていた。凄まじい速度だ。

 

「ちょっと! 何で水の上を走ってんのよ!?」

 

「チーターじゃなくてトカゲか?」

 

しかし、呑気な事を言ってられない。近くに橋がない上に、普通に跳んでも届かない。今から助走を付けて跳んでもチーター・デッドマンのあの走力と速度では、向こう側についた頃には逃げられているだろう。

バイスを抱えて泳いで行くか、と考えていたその時、

 

「輝二さーーーーん! そのまま進んで!」

 

「っ?」

 

「あん?」

 

後方からホイップの声が聞こえて振り向くと、ホイップ達アラモードチームが、背中に翼を生やしたハート達ドキドキチームに抱えられてやって来た。パルフェは自分で翼を広げて飛んでいた。

 

「私達が、『道』を作ります!」

 

「だから構わず突っ走れ!!」

 

カスタードとジェラートが叫ぶが、訳が分からないリバイスは首を傾げそうになる。

 

「信じて! 嵐山くん!」

 

「私達がサポートしてあげるわ」

 

「だから必ず、あのお父さんを止めて!!」

 

ショコラ、マカロン、パルフェをそう言うと、リバイは小さく息を吐いてから、バイスを動かす。

 

「行っちゃうの?」

 

「ああまで言われたら、信じてやるしかねえだろーーーーはぁっ!!」

 

リバイスは勢いを付けて川へと飛び出したその時ーーーー。

 

「そぅれーーーー!!」

 

ハートに抱えられたホイップが、手のひらからエネルギーを放出すると、リバイスの足元に、ホイップクリームが道を作るように伸び、水面を走るチーター・デッドマンに追った。

 

「うわぉ! 何これ!?」

 

「ホイップクリームの道か! これなら!」

 

リバイスはホイップクリームを滑るように突き進む。

しかし、所詮ホイップクリーム、ズルズルと沈んでいきそうになる。

 

「し、沈む・・・・!」

 

「行けぇ!」

 

次に、ダイヤモンドに抱えられたジェラートが、アイスで出来た道を作ると、リバイスはホイップクリームの道から飛び出て、アイスの道を走る。

 

「寒い! 冷たい! 寒い! 冷たい! 寒いよ! 冷たいよ! さぶいよ!! ちべたいよ!!」

 

「バイス、根性だっ!!」

 

「そんな事言われたって! 身体が凍えそうだよぉ!」

 

「後でジェラートにでも暖めてもらえ!」

 

「ジェラートちゃんよりダイヤモンドちゃんに優しく抱き締めて暖めて欲しいよぉぉっ!」

 

「え??」

 

「それどういう意味だこのスケベ悪魔っ!!」

 

ダイヤモンドが目をパチクリさせ、暗に自分よりダイヤモンドの方が良いと言われ、複雑な女心から怒りを感じたジェラートは拳を握って怒鳴る。

が、チーター・デッドマンはすでに陸に上がり、そのまま速度を落とさず逃げようとする。

 

「野郎!」

 

「輝二さん! 次は私達が!」

 

「任せて!」

 

今度はロゼッタに抱えられたカスタードがリバイスの前に大きなカスタードプリンを作り、エースに抱えられたショコラが、リバイスの前にチョコレートでできたスキージャンプ台を作ると、リバイスは一気にジャンプ台を登りきり、カスタードプリンの上に着地すると、

 

ーーーープルルルン・・・・。

 

と、気の抜ける音を鳴らしながらも、大ジャンプを飛び出すと、巨大なマカロンが幾つもに重ねられ列なり、完全に逃げ道を塞がれていたチーター・デッドマンを見つけた。

 

「うふふふふ」

 

近くに目をやるとソードに抱えられたマカロンが優雅な笑みを浮かべていた。

 

『っ! っ! っ! っ!』

 

逃げ道を封じられたチーター・デッドマンが狼狽しているかのように、辺りをキョロキョロしだした。

 

「行ってこいバイス!」

 

「バイス! 行っきまーす!!」

 

ボードのバイスを蹴り飛ばすと、バイスは空中を縦横無尽に動きながら、チーター・デッドマンを攻撃する。

 

「バイス! 乗せて!」

 

「うわぉ! パルフェちゃんなら大歓迎!!」

 

バイスにパルフェが乗り込み、さらに明るめの虹のエネルギーの矢でチーター・デッドマンが撃っていく。

 

『グゥオオオオッ!』

 

「俺も忘れるなっ!!」

 

リバイがカポエラのような動きで蹴りつける。

 

『がっ!!』

 

倒れるチーター・デッドマンを河川敷の上で、〈フェニックス〉の隊員に連れられた前園仁志が見ていた。

 

「輝二っ!」

 

「よっと!」

 

パルフェがバイスをリバイに返し、リバイがバイスに再び乗った。

 

「ノンストップでクリアしてやるぜ!」

 

「さあネコちゃん! 悪魔のリベンジの時間だぜ!」

 

[ジャッカル! スタンピングフィニッシュ!]

 

ジャッカルバイスタンプを二回倒して発動させる。

 

「ふっ!」

 

リバイが反転ジャンプをしてキックの態勢を取ると、空中でリバイの足裏にバイスがくっつき、ボードの裏側にバイスが描かれたボードで、押し潰すようにキックする。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「ヒィーーーーハァーーーーッッ!!」

 

『っ! グゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

チーター・デッドマンから、立派な背広を着て、眼鏡をかけた少し老けた感じの前園仁志の父親が分離した。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンッ!!

 

ーーーー【ジャッカルスタンピングフィニッシュ】。

 

ーーーー【GAME CLEAR】

 

チーター・デッドマンが爆散すると、ゲームクリアの表示が現れた。

 

「あぁ・・・・! うぅ・・・・!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

苦しそうに蹲る父親を見て、前園仁志も顔を俯かせる。

『チーターバイスタンプ』を回収すると、リバイスは下りてきたホイップ達とハート達と共に変身を解除した。

 

「ああっ・・・・!」

 

倒れている前園仁志の父親に、〈フェニックス〉隊員達が駆け寄り、両脇を抱えて起き上がらせようとする。

 

「離しなさいって! 金なら払うから! 上の者ちょっと連れてきなさい!」

 

「パパ! もう終わったんだよ・・・・」

 

見苦しく抵抗する父親に、前園仁志がそう言うと、父親は項垂れる。

 

「ーーーー私は、間違っていると言うのか・・・・?」

 

「まだ子育ては終わってないよ!」

 

「行き過ぎてはいましたが、あなたの愛情は本物だと思います」

 

「これからやり直せるよ!」

 

マナと亜久里にいちか、自分の半分も生きていない子供達にも言われ、前園仁志の父親は大人しくなっていく。

そして、前園仁志が口を開いた。

 

「・・・・俺、自分の生き方が分からなくて、ついムシャクシャして・・・・すいませんでした!」

 

前園仁志が頭を下げた。

 

「ーーーー自分の生き方が見つかってるヤツなんて、そうそういないさ」

 

「えっ?」

 

頭を下げる前園仁志に、輝二が話しかけた。

 

「誰だって、自分のやりたい事や生き方が見つけられなくて、モヤモヤして、ムシャクシャして、間違った事をやってしまうものだ。やりたい事や生き方を見つけているヤツ等は皆ーーーー“運が良かったヤツ等”だ」

 

「“運が良かった”?」

 

「ちょっとした“きっかけ”があったからとか、“出会い”があったからとか、そんなほんの些細な出来事によって、それが自分のやりたい事や生き方に繋がった。俺もな、親父の手伝いで始めた『便利屋』の仕事が、やりたい事で生き方になった。やりたい事や生き方ってのは、そんな些細な事が始まりになるものだ」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

輝二の言葉に、あおいとゆかりは共感した。

あおいは『立神コンツェルン』の令嬢としての生き方が窮屈でならなかった。そんなあおいは、ロックと言う“きっかけ”を見つけ、それがやりたい事と生き方になった。

ゆかりは勉強もスポーツも、何でも人並み以上に出来てしまうが故に、情熱を持てず、退屈をもて余していた。そんな自分がいちか達に“出会い”、お菓子作りを見つけた。

この中で前園仁志の気持ちが理解できているのは、おそらくあおいとゆかりだろう。

 

「お前は間違った事をした。これからそれを償って、自由の身になったら、何かに挑戦してみたらどうだ?」

 

「何かって・・・・」

 

「色々あるだろ。山とか登ったり、旅したりして、自分が何をしたいのか、その『答え』を見つけに行くってのもあるぜ。勿論、父親の力を借りずに、な」

 

「うん・・・・やってみようと思う。パパ、良いよね?」

 

「・・・・好きにしなさい」

 

父親がそう言うと、前園仁志は父親に近づき、父親を背負って立ち上がる。

 

「仁志・・・・」

 

「パパ、まだ歩けないだろ?」

 

「お前、私をおぶれるくらいになったんだな・・・・」

 

「陸上で、結構鍛えていたから・・・・」

 

「・・・・仁志、すまなかったな・・・・! 無理矢理、私と同じ医者の道に閉じ込めて・・・・! すまなかったなぁ・・・・!!」

 

「良いよ。俺もパパに迷惑かけちゃったから・・・・ごめん、ごめんよパパ・・・・!」

 

いつの間にか成長した息子に、父親は少し涙を流し、前園仁志は〈フェニックス〉の隊員に連れられながら、その場を去ろうとした。

 

「成長しましたね。前園さん」

 

「・・・・父親を背負えるほどに成長する。最高の親孝行かもな」

 

アリスと輝二の言葉に同意するように笑みを浮かべるプリキュア達、そんな中、輝二は少し物悲しそうに呟く。

 

「ーーーー俺は親父と兄貴に背負われて、支えられてばかりで、そんな恩返しなんて全くできなかったがな・・・・」

 

そう呟くと、プリキュア達は悲しそうな顔になる。と、ソコで、前園仁志が振り向いて、輝二に向かって声を発する。

 

「ーーーーなぁ!」

 

「ん?」

 

「アンタってさ、冷めてるようで、実は結構熱いんだな! そっちの女の子達の事、『日本一お節介な集団』って言ってたけど! アンタも十分お節介だよ!」

 

「なっ・・・・!」

 

『プッ! あっははははははははははははははははははははははははははっ!!』

 

≪フハハハハハハ! 冷めてるけど熱い! 略して冷め熱い! 輝二にピッタリだよな! フハハハッ! 冷め熱い! 冷め熱い! ははっ! あざい!≫

 

前園仁志の言葉に、輝二は愕然となるが、プリキュア達とバイスを可笑しそうに笑っているであった。

ちなみに、デモンズの方は全員無事であるとの事。

 




次回、遂にエビルの正体が解る回です。


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温泉旅行! 妹も同行!?

さぁ、遂にエビルの正体に迫ります。


ー輝二sideー

 

ーーーーカチャ・・・・。

 

「っ・・・・」

 

その夜。輝二は自分の家の自室のベッドで寝ていたが、突然、外に繋がる扉から開く音が聞こえ、瞬時に起きる。スマホの時計を見ると、時刻は午前四時。そろそろ夜明けが来る時刻だ。

輝二は宙を浮遊しながら、ナイトキャップを被って枕を抱いて、見事な鼻ちょうちんまで出してムカつく程完璧な就寝スタイルて寝ているバイスを小さな声で起こす。

 

「おいバイス・・・・」

 

≪ーーーーむにゃむにゃ、もう、プリキュアちゃん達食べきれないよぅ・・・・≫

 

「妙に不気味な寝言なんて言ってないで起きろ・・・・!」

 

≪んん~・・・・ありゃ? ちょっと! ゆう子ちゃんといおなちゃんのサンドイッチは!?≫

 

「どんな風にアイツらを美味しく頂こうとしてたんだ?・・・・んな事より、侵入者だ・・・・!」

 

≪えっ? 警報! 警報! 侵入者在り! 侵入者在り!≫

 

他者には姿も声も聞こえないバイスが喧しく騒ぐ。

 

「うるさい! ちょっと、壁抜けして、外の奴らの人数数えてこい」

 

≪あいよ≫

 

バイスが壁をすり抜け、輝二は自室の机の引き出しから道具を取りだし、ドアの横に身を屈め、バイスからの報告を待つ。

 

≪見つけた!≫

 

「数は?」

 

≪暗くて良く分からなかったけど! 居間に男が二人! 一人はスーツで、一人は筋肉系!≫

 

「・・・・良し」

 

輝二は音を立てずにドアを少し開けて、居間を動く二つの影を確認すると、引き出しから取り出した物、催涙グレネードを開けて隙間から居間に転がした。

その瞬間ーーーー。

 

ーーーープシュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 

「ぬおっ!?」

 

「これは!?」

 

「っ!」

 

輝二は煙で男達が戸惑っている隙にドアから飛び出し、二つの影に向かった。

 

ーーーードガッ! バキッ! ゴキッ! グギッ! ドシュッ! バキャッ!!

 

それから嵐山家の居間から、何かを殴る音が響く。

 

≪おぉっとぉ! 輝二選手! 侵入者二人に殴りかかったぁ! 激しいバトルだぁっ!!≫

 

そんな中、バイスは楽しそうに実況をしていた。

 

 

 

 

 

 

「ーーーーさん! 輝二さんっ!」

 

「・・・・・・・・っ! おらぁっ!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

声が聞こえ、目を覚ました輝二は声がする方に上段蹴りを放つが、声の主は身体をブリッジして回避した。微睡んでいた意識がハッキリしてくると身体が不規則にグラグラ揺れているのを感じ、車で移動しているのが分かった。

そして、蹴りを放った相手を見ると、私服のはなが輝二の蹴りを顔面スレスレが回避する姿があり、周りを見ると、他のプリキュア達(何人かが驚いた顔をしている)もいた。

どうやら誘拐されて大型バス(しかも希少な六十人乗り)の最奥席に座って移動しているようだ。

 

「何だ野々。お前も誘拐されたのか? 危ない目に合うやつだなぁ」

 

「ゆ、誘拐なんてされてないから! と言うか、今まさに危ないのは輝二さんの方だから!」

 

「・・・・どういう事だ? 俺は家に不法侵入してきた二人を催涙グレネードで怯ませてから迎撃しようとして・・・・」

 

「その二人を半殺し寸前にまで追い詰めた後、その二人に拘束されて眠らされた後、このバスに乗せられたのよ」

 

さあやが苦笑しながら説明した。

 

「成る程。だから俺の身体は拘束されてるのか」

 

縄で縛られた上半身を見下ろしてそう呟いた。

 

「それで、俺を誘拐しようとした二人はどうした?」

 

「一人はわたくしの執事のセバスチャンですわ」

 

「もう一人は、後ろのバスに乗っている機動六課の皆さんのザフィーラが人間に変身した姿です」

 

「(ペコリ)」

 

アリスと六花が説明し、運転しているセバスチャンが会釈した。

 

「ふむ。セバスチャン、さんは大丈夫か? 結構良い攻撃が入ったと思うけど?」

 

「ええ。大丈夫ですよ。肋骨を八本折られただけです。シャマル様に治療魔法を受けて回復していますよ。ザフィーラ様に至っては右腕と左足、それに左の鎖骨を折られたくらいです。今シャマル様に治療魔法を受けてます・・・・ゴフッ」

 

セバスチャンはにこやかに話をしているが、少し血を吐いた所を見ると、まだ完治していないようだ。

 

「・・・・ぶっちゃけ、重傷でしょ」

 

「輝二さん、やり過ぎですよ・・・・」

 

「人を誘拐しようとした奴らはな、骨の二~三本くらいはへし折られても文句言えねえんだよ」

 

「いや、二~三本処か二人合わせて十本以上折られてるんだけど・・・・」

 

「二人共ボロボロでしたし」

 

「過剰防衛と言わざるえません」

 

全員が苦笑をする中、なぎさとほのかが輝二にそう言うが、輝二はこんな目に合って当然と言うが、ほまれとえみるとルールーがそう言った。

 

「んで、わざわざ俺を誘拐してどうするつもりだ」

 

≪輝二、輝二≫

 

「あん?ーーーーっっ!!」

 

バイスが輝二の隣の窓際の席を指差したのでそちらに目を向けるとソコにはーーーー。

 

「は、初めまして嵐山さん。私、七瀬ゆいって言います」

 

「(・・・・ゆ、ゆい!?)」

 

ゆいがお行儀良く挨拶するが、輝二は目を見開いて硬直していた。

 

「っ!」

 

『(ビクッ!)』

 

そしてすぐ、ゆいから見えない位置で、前髪の影からギラッ! と瞳孔が開き、目が血走った人殺しのような目になった輝二がプリキュア達を睨むと、そのあまりの迫力に、歴然の戦士であるなぎさとほのか、ゆりですらもビビった。

後にプリキュアオールスターズ曰くーーーー。

 

『この時の輝二さんの迫力は、私達が今まで戦ってきた組織のラスボス達以上だった・・・・!』

 

「(テメエらどういうつもりだゴラァ!? )」

 

「(温泉旅行に友達のゆいちゃんが連れてきただけなんです!)」

 

「(こ、この間のムカデのデッドマンとの戦いでのメンタルケアと思って下さい!)」

 

「(ゆいゆいにはコウジンの事は教えていないから!)」

 

「(だから安心して、ゆいの近くに座ってくださいな!)」

 

「(アイコンタクトで会話できる程の仲になってたロマか?)」

 

はるか達Goプリンセスチームとアイコンタクトで会話していた。

 

「(・・・・・・・・この子に余計な事をくっちゃべってみろ。ーーーー未来永劫に口が利けないようにしてやる!)」

 

『(コクコク・・・・!)』

 

殺意増し増しの視線で睨まれ、プリキュア達はかつてない恐怖を感じながら首を縦に振った。

輝二は身体に巻き付けられていた縄を自力で引きちぎると、不機嫌さを隠そうとせず、ドガッ!と、ゆいと距離を開けて座席に着いた。

 

「(あちゃー、うまく行かないナリ・・・・)」

 

「(やっぱり強引過ぎたんじゃ・・・・)」

 

「(見てよアレ・・・・『近づくんじゃねぇよオーラ』が全身に迸ってるよ)」

 

「(こ、恐いです・・・・!)」

 

咲と舞が半眼になり、えりかとつぼみが、輝二が纏うオーラに戦々恐々としていた。

ホテルに到着して、機動六課(+誠司と狩崎とヒトミ)がバスから下りてくると、「テメェらも共犯かッ!?」と輝二に睨まれ、身体を硬直させた。

六課一同曰く。

 

『魔王モードのなのは(ちゃん/さん)以上の迫力があった・・・・』

 

「ちょっと皆! 魔王モードって言わないで!」

 

と、なのはの訴えを無視し、一同は温泉旅館であるホテルへと入っていった。

入るとすぐに、スタッフが声をかけに来た。

 

「いらっしゃいませ、水上温泉へようこそ」

 

「お世話になります」

 

「よろしくお願いします」

 

『お願いします!』

 

スタッフに一応代表として狩崎が挨拶すると、輝二にプリキュア達も挨拶した。

 

「おやおやおや~!」

 

「あ、牛島さん」

 

ホテルにチェックインしようとしている家族がいて、声をかけられた輝二が目を向けると、牛島家の人達がいた。

 

「こりゃまた奇遇だねぇ、輝二くん!」

 

「どうも」

 

「輝二さん知り合い?」

 

「ウチの近所のご家族だ」

 

「あら、牛島くん」

 

「あっ、生徒会長も来てたんですね!」

 

「みなみさん知り合い?」

 

「私のクラスメートよ。牛島翔くんって言うの」

 

「どうも、始めまして」

 

みなみ達を見ると、牛島太助が声を上げる。

 

「いや~、ウチの息子の学校にこんな美人な生徒会長がいただなんて! 輝二くん、お友達?」

 

「・・・・いいえタダ働きで働くーーーー下女共です」

 

『誰が下女ですってぇーーーーっ!?!?』

 

『まぁまぁ!』

 

輝二の発言に頭に血管を浮かべた何人かのプリキュアが飛び掛かりそうになるが、他のプリキュア達と六課一同が羽交い締めで止めた。

と、ソコで、眼鏡を掛けた中居の少女が牛島家の人々に話しかける。

 

「お部屋にご案内致します」

 

「はい。じゃあ」

 

「(ん?)・・・・ええ」

 

≪ん? あれれ?≫

 

その中居の少女に連れられて、牛島家の人達が離れていくのを見ながら、輝二とバイスは訝しそうに見る。

 

≪おい輝二、あの女何処かで・・・・≫

 

「(あぁ。何処かで見た気が・・・・)」

 

「お荷物。お預かり致します」

 

今度は後方から男性スタッフが声をかけられると、荷物運びのスタッフ達だった。

 

「あ、ありがとうございます」

 

その中に、はるか達の学校の教育実習生の『玉置豪』がいた事に、はるか達は気付かなかった。

 

 

 

 

 

ーオルテカsideー

 

輝二達がチェックインをしていると、女性スタッフが眼鏡をかけたフロントスタッフの青年に話しかけた。否、それに扮したオルテカに。

 

「グラシアス・デッドマンズ」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

その言葉を聞いて、オルテカは眼鏡の縁を上げながらニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

輝二は温泉に浸かりながら、怒りを静めようと瞑目していた。そんな輝二に同じ部屋になっている誠司と狩崎が話しかける。

 

「あまりしかめっ面は止めておきたまえ。せっかくの旅行を楽しんではどうかな?」

 

「無理矢理連れてこられて良い気分になる訳ないでしょうが。まぁ来てしまったもんはしょうがないから、取り敢えず温泉は楽しみます。・・・・それで、カゲロウの器にされた人間は分かりましたか?」

 

「うん。空手ボーイが以前カゲロウ、エビルと交戦した時ーーーー」

 

【この身体の持ち主との関係者が、“プリキュアの中にいるんでな”!】

 

「と、奴は言っていた。この言葉を本当と受けとって見て、プリキュアガールズの関係者達を洗って見たのだが、“別の世界にいるメンツ”を除いて、全員の無事が確認できている」

 

狩崎からそう聞くと、輝二は眉根を寄せた。

 

「ーーーーじゃあ一体、誰なんだ・・・・?」

 

未だに正体が知れないエビル、カゲロウの器となってしまった人物。輝二は得たいの知れない不安感を感じた。

 

 

 

 

 

ーアギレラsideー

 

ホテルの一室にて。

 

「〈フェニックス〉や魔導師の連中も来てるなんて聞いてない」

 

中居の少女、アギレラが気だるそうに言う。

 

「アイツら、エビルの正体を探ってるんじゃないですか?」

 

玉置豪、フリオがそう言うと、アギレラはオルテカに話しかける。

 

「あのカゲロウってヤツ。ここで決着つけるんでしょ?」

 

「アギレラ様、顔がにやけてますよ」

 

「フフッ・・・・楽しみじゃない? 楽しい楽しい皆での旅行が、ズタズタになるなんて」

 

アギレラの言葉に、フリオとオルテカも笑みを浮かべると、先程の女性スタッフが、『バイスタンプ』を持って入室してきた。

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

浴衣姿になった輝二は、浴衣姿の誠司とコンビを組んで、同じく浴衣姿のなのはとフェイトと卓球をしていた。

 

「おらっ!!」

 

ーーーーギュルルルルルルル!! シュバッ! ガツンっ!!

 

「にゃっ!!?」

 

「なのはっ!?」

 

輝二が打った玉が台で凄まじい回転をすると、これまた凄まじい勢いで飛び跳ね、なのはの額に当たり、なのはは仰け反るように倒れると、フェイトが駆け寄る。

 

「もう一丁!!」

 

ーーーーギュルルルルルルル!! シュバッ! ガツンっ!!

 

「あうっ!!」

 

が、輝二は続いて卓球の玉を打つと、先ほどと同じく回転し今度は、フェイトの額に当たり、フェイトも倒れた。

 

≪試合終了ーーーー!! この勝負、輝二と誠司の勝利!!≫

 

「ふん」

 

「俺、何にもしてない・・・・」

 

「てか、あんな勝敗で良いの・・・・?」

 

完全に別のスポーツのなっていた勝負に、誠司とひめ、他のメンツも半眼で呆れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋に戻った輝二は外の景色を眺めながらコーヒー牛乳を飲んでいた。

 

「ふん」

 

ーーーーコンコン。

 

「ん? はーい」

 

女性陣から逃げてきたエリオとハリーとシローを交えて狩崎とババ抜きをしていた誠司が抜けて、部屋の扉を開けると、ソコにはひかりが来ていた。

 

「九条どうした? 皆とお土産や施設に遊びに行ってたんじゃないのか?」

 

「あの、輝二さんに、ちょっとお話が・・・・」

 

「ん?」

 

誠司が輝二に目を向けると、輝二は窓の外を眺めながら、入って良いと手招きした。

 

「・・・・その、すみません。輝二さんに内緒でゆいさんを連れてきてしまって・・・・と言うよりも、輝二さんも無理矢理連れてきちゃって」

 

「ま。戦士の休息だと言っても、七瀬ゆいくんが来ると知れば、君は絶対来ないと思ったからだけどね」

 

「・・・・・・・・もう気にしなくて良い。こうなってしまったんだから、もうどうしようもない。が、ゆいに俺との関係をバレないようにだけはしてくれ。あくまで、一緒に〈デッドマンズ〉と戦う協力者、って事にしておいてくれ」

 

「は、はい!」

 

「九条達にもすまないな。妙に気を使わしてしまって」

 

「いえ。気にしないで下さい。私達のお節介ですから」

 

「お節介じゃなきゃ、プリキュアは勤まらないんじゃないのか?」

 

「そら言えてる」

 

輝二の言葉にシローが同意するように頷くと、一同は可笑しそうに笑みを浮かべた。

 

「・・・・ふぅ、部屋で大人しくするのも飽きたし、少しホテルの中を見て回るか。九条も行くか?」

 

「あ、はい! シロップとエリオくんも行きませんか? うららさんとキャロちゃんが寂しそうでしたよ?」

 

「はい!」

 

「・・・・しゃあねぇなぁ」

 

「相楽、お前は?」

 

「んじゃ俺も行くかな。母さんと妹にお土産買っておきたいしな。狩崎さんは?」

 

「私は少しノンビリさせていただくよ。最近夜遅くまで調整していてほとんど寝ていないのでね」

 

「分かりました」

 

そう答え、輝二達は部屋を後にした。そして、輝二達は気づいていなかった。輝二が座っていた椅子に、赤く点滅する“盗聴器”が置かれていた事に。

 

 

 

 

 

 

ー牛島sideー

 

盗聴器から音声を聴いていた牛島太助は、重い声で妻と息子に声で話しかけた。

 

「彼とプリキュア達の関係は良好のようだ」

 

先ほどのフレンドリーな雰囲気とは全くの真逆の声色で二人に指示を出す。

妻の公子と息子の翔も、先ほどのアットホームな雰囲気が消え、今は能面な顔で佇んでいた。

 

「そろそろ、浴衣に着替えておけ」

 

「「はい」」

 

その様子は『家族』ではなく、まるで『上司と部下』のようであった。

 

 

 

ー輝二sideー

 

そしてその夜。

宴会場で机を並べ、全員で夕食を摂っていた。食いしん坊のメンバーが凄い勢いでご飯を食していた。

 

「あら! どうも」

 

「こりゃまたまた、奇遇ですねぇ!」

 

「あ、どうも」

 

またも牛島家族もやって来て、別の机に向かった。その時、輝二達の視線に隠れて、牛島太助は能面な顔に戻っていた。

そんな中、中居の少女は白い薬をコッソリと飲み物にいれて、輝二の元へと届けた。

 

「どうぞ当館からのサービスでございます。地元のマスカットソーダです」

 

「あ、ありがとうございます」

 

中居の少女が他の皆にもソーダを配り終えて去っていくと、バイスが出てきた。

 

≪おい輝二! なんか怪しいだろ! この飲み物も!≫

 

「(・・・・・・・・っ)」

 

バイスに言われ、輝二はソーダの入ったグラスに視線を向けると、一瞬キッと目を細め、ソーダのグラスから手が滑ったような体で、畳に溢した。

 

「ちっ・・・・!」

 

中居の少女が小さな声で舌打ちするのが聞こえ、その場から去り、輝二は立ち上がろうとすると、いちかが声を上げた。

 

「うわぁ~! 輝二さん何してんのっ!?」

 

「すまん。少しめまいがな・・・・。ちょっと席を外す」

 

「あ、輝二さん!」

 

はるかが声を上げるが、輝二は構わず中居の少女を追った。

 

 

 

 

 

ーアギレラsideー

 

中居の少女、アギレラは物置部屋のような場所で、フリオとオルテカと話をしていた。

 

「アギレラ様・・・・飲み物に毒入れちゃったんですか? ハハハハハ・・・・!」

 

「そうよ。悪い?」

 

可笑しそうに笑うフリオに、アギレラは不機嫌そうに答えるが、オルテカは溜め息を吐きながら伊達眼鏡を直す。

 

「カゲロウとの約束を忘れたのですか?」

 

オルテカは、カゲロウとの会話を言った。

 

 

 

* * *

 

 

 

カゲロウはその日、ギフの間にて、“自分の器となった者”の姿で説明した。

 

【プリキュア達に残酷な『真実』を教えてやる。根はお人好しの嵐山輝二も、ショックを受ける。奴らの関係にヒビを入れてやるのさ】

 

【面白れぇ・・・・】

 

ーーーーガンっ!

 

近づこうとするフリオに、カゲロウはテーブルを蹴って遠ざける。

 

【貴様らは指を咥えて見ていろ。絶対に手を出すなよ】

 

【ふん!】

 

 

 

* * *

 

 

 

「知ってるでしょ? 私、命令されるのが嫌いなの」

 

そう言うアギレラに、フリオとオルテカは苦笑するが、すぐにアギレラの背後を見て、顔を強ばらせた。

 

「あっ、アギレラ様!」

 

「っ!」

 

『ふっ』

 

振り向いたアギレラの首を、エビルに掴んだ。

 

『手を出すなと筈だが、聞いてなかったのかっ!?』

 

掴んでそのまま、アギレラをフリオとオルテカの方に放り投げ、フリオとオルテカがアギレラを受け止めた。

 

『楽しい楽しい旅行の幸せの絶頂から地獄に叩き落とさなきゃ、意味がないだろう! それに、テメェが余計な事をしたから、嵐山輝二が不審を感じやがった。今こっちに向かってきているぞ!』

 

「「「っっ!!」」」

 

エビルにそう言われ、耳をすますと、こちらに向かって走ってくる足音が聞こえ、アギレラ達はすぐにその場から走り去った。

 

 

 

 

 

ーエビルsideー

 

『ふん、ガキ共が』

 

そう言って、エビルの後方から足音がさらに近づき、そして扉が開かれると、リバイスドライバーを巻いた嵐山輝二が入ってきた。

 

「っ! 誰も、いない。・・・・逃げられたかクソッ!」

 

誰もいない物置部屋を見回す輝二は悔しそうに毒づくと、リバイスドライバーを外した。

 

「輝二さん!」

 

すると、ひかりの他に、なぎさとほのかが、輝二を追いかけて来ていた。

 

「っ! 美墨、雪城、九条、どうした?」

 

「どうしたじゃないよ! 心配になってついていこうとしたら、いきなり走り出しちゃって・・・・!」

 

「何かあったんですか?」

 

「・・・・いや、ちょっと道に迷っちまった。行くか」

 

そう言って、輝二はひかり達を連れて、部屋を後にした。無人になった部屋に、カゲロウが現れる。

 

「くくくくく、もうすぐだ・・・・」

 

カゲロウの不気味な声が、無人となった物置部屋に木霊した。

 



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立つ、ハシビロコウ

エビルの正体と新ゲノム。


ーアギレラsideー

 

「あぁ! ムカつくわね、カゲロウのヤツ!」

 

ホテルの一室に戻ったアギレラ達。

アギレラは先ほどのエビルの態度に不機嫌さを隠さず、ドカッとソファに座り込んだ。

 

「アギレラ様、スマ~イル☆」

 

「ふんっ!」

 

フリオが笑顔でそう言うが、アギレラは不機嫌が収まらなかった。オルテカはそんな様子にため息混じりに声を発した。

 

「嵐山輝二はかなり勘の鋭い男ですからね。プリキュアや魔導師達は気を抜いていますが」

 

「どうするのよオルテカ。このままあの生意気なカゲロウの好き勝手にさせる気?」

 

「そうですねぇ。・・・・嵐山輝二が一番嫌がる事って何だと思います?」

 

「「?」」

 

オルテカの言葉に、アギレラとフリオは首を傾げる。

 

「今このホテルにはプリキュア達と一緒に、嵐山輝二の妹がいるんですよ。まぁ、当の妹本人は嵐山輝二が自分の兄である事を知らないようです。彼自身が隠しているみたいけど」

 

「それで?」

 

「嵐山輝二の父親と兄は、私達〈デッドマンズ〉との戦いに巻き込まれて、命を落としたそうです。もしも、何も知らない妹が、“父親と兄が殺された事を知られてしまったら、嵐山輝二がどんな顔をするでしょうねぇ”」

 

「ふぅん」

 

オルテカが悪い笑みを浮かべて放つ言葉を聞いて、アギレラは唇の端をあげた。

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

全員が自分達の部屋で寝ている時間、誠司が眠りについたと察した輝二が、まだ眠らず、窓際の椅子に座り、“ハンマーのような武器“を持っている狩崎に話しかけた。

 

「・・・・狩崎さん」

 

「オー、眠れないのかい?」

 

布団で横になっていた輝二が話しかけると、机の上に置かれた狩崎のガンデフォンに、バイスが現れた。

 

《もしもしカリちゃん。ぶっちゃけ、俺っちも輝二も胸騒ぎしてんだよ。でも輝二が、皆の楽しい旅行に水を差すなって言ってるからよ》

 

「輝二もそうだが、君も悪魔にしては勘が良いね」

 

「何かあったら俺が困るんだけど」

 

「それなら、これでも使いたまえ」

 

狩崎が輝二に向けて何かを投げ、輝二がキャッチするとそれは、『ハシビロコウが刻印されたバイスタンプ』だった。

 

「・・・・感謝します」

 

輝二はそう言うと、再び寝ようと瞼を閉じる。が、バイスはまだ狩崎に話しかける。

 

《俺っちには何かアドバイスないの?》

 

「輝二が大変な事になったら、君が助けになってやればーーーー良い」

 

ーーーーポコッ!

 

《あいたっ! ニュ~・・・・》

 

狩崎が持っていたハンマーでガンデフォンを軽く叩くと、バイスはガンデフォンから去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・それで、ゆ、七瀬さん。どうして俺と一緒にいるんですか?」

 

「・・・・えっと、その・・・・」

 

翌日のホテルの中庭。プールがあり、ソコでなぎさ達MHチームと響達スイートチーム、はるか達Goプリンセスチームがティアナとスバルとキャロと楽しそうに遊んでいるのを尻目に、輝二はゆいに話しかけられていた。

他のメンバーはホテルのゲームコーナーや各部屋やお土産屋等で各々の時間を過ごしている。

 

「は、はるかちゃん達から聞いたんですけど、嵐山さんが、〈仮面ライダーリバイス〉なんですよね?」

 

「・・・・あぁ」

 

どうやら〈仮面ライダー〉である事は知らされていたようだ。

 

「あの時、助けてくれてありがとうございます! ずっとお礼が言いたくて、はるかちゃん達から、嵐山さんの事を聞いていて、ずっと会ってみたかったんです!」

 

「・・・・そうか」

 

ゆいの話に、輝二は素っ気ない態度で応対する。

 

「はるかちゃん達から聞いたんですけど。嵐山さん、この間、私がムカデの怪人の襲われそうになった時も、助けてくれたんですよね」

 

「・・・・追跡していたデッドマンが襲っていたからな。偶々だ」

 

「何度も助けて貰って、お礼が後回しになっちゃってごめんなさい」

 

「・・・・お礼を言ったり謝罪したり、忙しないな」

 

「あっ、その、すみません」

 

「・・・・いや、別に、謝る事じゃない。とりあえず、ケガは無くて何よりだ」

 

「はい。あの、それで聞いて見たい事があるんですけど」

 

「ん?」

 

少し眉根を寄せながら、輝二が目を向けた。

 

「嵐山さんは、どうして戦うんですか? 何でも屋、つまり万屋だから、って訳じゃないと思うんですけど・・・・?」

 

「・・・・・・・・ケジメを着けたいから、かな」

 

「ケジメ、ですか?」

 

「ああ。俺は、大事で、大切な物を二つもデッドマンズに奪われた。それはもう、デッドマンズをぶっ潰した処で戻ってこない。ーーーーだが、奪われた物は戻って来なくても、奪った奴らは絶対に許さない・・・・! 奴らにケジメを着けないと、俺の気がすまないんだ・・・・!」

 

その目に宿る静かに、しかし熱く滾るような炎に、ゆいは一瞬息を呑むが、輝二をジッて見つめていた。

何故この少年がソコまで気になるのか、実はゆいにも分からない。しかし、初めて会った時から、この少年の事が気になって仕方なかった。何処かそうーーーー懐かしい感覚が、ゆいの胸に溢れてくるのだ。

 

「その、嵐山さん、凄く辛いですね。私には想像できないです・・・・」

 

「想像も理解もしなくて良い。君にはーーーー“関係の無い事”、だからな」

 

妹を危険な目に合わせない為に、敢えて突き放すような言い方をする輝二に、はるかと響、そしてスバルが何か言いたげそうに声を発そうとするが、他のメンバーが止めた。

 

「・・・・・・・・」

 

ゆいは、輝二の突き放す言葉に、少しばかり自分が出過ぎた事を言ったと思うと同時に、何故だか分からないが、胸が締め付けられるような気持ちになった。

と、その時ーーーー。

 

「ーーーーそれじゃあ、私達が教えてあげようか?」

 

「っ!」

 

「???」

 

『っ!?』

 

突然その場に響いた声に、輝二がバッと目を向けるとソコに、中居の少女と、スタッフの男性二人がいた。

彼らが服を脱ぎ捨てるとソコにいたのは、アギレラとフリオとオルテカ。〈デッドマンズ〉の頭目と幹部達であった。

 

「お前ら!」

 

「「「グラシアス・デッドマンズ!!」」」

 

アギレラ達が叫び声をあげると、フリオは『ウルフプロトバイスタンプ』を、オルテカは『ダイオウイカプロトバイスタンプ』で自らを押印すると、ウルフ・デッドマンとダイオウイカ・デッドマンへと変貌した。

 

「あっ、あの人、玉置先生っ!?」

 

「えっ!? 知ってるの!?」

 

「先日から私達の学校で教育実習に来ていた人よ!」

 

「まさか、その人が〈デッドマンズ〉の一員だったなんて!」

 

「しかもあの姿、幹部のフリオだったの!?」

 

教育実習の先生が〈デッドマンズ〉の一員、それも幹部だった事に、はるか達は驚きを隠せなかった。

 

「くっ・・・・ゆ、七瀬はここを離れろ! ホテルの中に逃げてーーーー」

 

『それはお勧めできませんねぇ。何しろホテルは、ギフジュニアに溢れていますから!』

 

ダイオウイカ・デッドマンがそう叫ぶと、ホテルの窓からギフジュニアが顔を出した。

 

ーーーーギフゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!

 

「な、なにぃっ!?」

 

『流石に今回はプリキュア達と魔導師達も全員いますからねぇ。こちらの信者と協力者達を使わせてもらいますよ!』

 

 

 

 

ー誠司sideー

 

「とりゃぁっ!!」

 

『ギフゥゥッ!』

 

ギフジュニアがホテルの各部屋から溢れるように出てくると、自分達の部屋にいた誠司はすぐにデモンズに変身し、同じく部屋から出てプリキュアに変身した咲達とラブ達とめぐみ達と共に、ギフジュニアを倒しながら避難誘導をしていた。

その時、

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「っ! ここは危ないよ! すぐに逃げて!」

 

厨房スタッフの男性を見かけ、逃げるように声をかけるプリンセス。

 

「っ!」

 

「プリンセス!!」

 

その男性スタッフがプリンセスに空の瓶で殴ろうとするが、デモンズがプリンセスを庇って腕でガードした。

 

「ぐっ!」

 

「誠司!」

 

『誠司/相楽くんっ!!』

 

ラブリー達や他のプリキュア達が目を向けると、男性は懐からバイスタンプを取り出し、自分に押印した。

 

「・・・・やってやる・・・・! やってやる!!」

 

[ニワトリ!]

 

押印すると、ニワトリ・デッドマンが現れた。

 

 

 

 

ーはなsideー

 

ゲームコーナーで遊んでいたはな達といちか達、のぞみ達とつぼみ達もヒトミと共にギフジュニアを倒しながら避難誘導をしていたが、清掃員のおばさんがバイスタンプを取り出し押印する。

 

「ごめんなさい・・・・ごめんなさい!」

 

謝罪しながらおばさんから、キリンのデッドマン、キリン・デッドマンが出現した。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

そして、お土産コーナーにいたなのは達隊長陣もBJを纏い、プリキュアに変身しためぐみ達とみらい達とマナ達と共に避難誘導していたが、ソコに女性スタッフが現れ、バイスタンプから生み出したであろうデッドマンを連れてきた。

 

「グラシアス・デッドマンズ!!」

 

女性スタッフがそう叫ぶと、目の前に現れた白い契約書にバイスタンプを押印すると、自分のデッドマン、フンコロガシ・デッドマンと一体化した。

 

『っ!』

 

第2フェーズデッドマンを見て、警戒心を高める一同。

 

 

 

ー牛島sideー

 

「どうしますか?」

 

自分達の部屋で、外の輝二達の様子を双眼鏡で覗いていた牛島家の人達、公子が聞くと、双眼鏡から顔を離した牛島太郎が口を開く。

 

「ここにいても何もならん。私達も避難するぞ」

 

そう言って、牛島家の人達は黙々と部屋から去っていった。

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

FW陣にゆいを任せて下がらせてからすぐに、リバイスとプリキュアに変身した輝二達は、ウルフ・デッドマンとダイオウイカ・デッドマンと交戦した。

 

「うらぁっ!」

 

「そりゃっ!」

 

『ふっ! ハァァァァァッ!!』

 

『くっ!』

 

リバイスの拳を傘で防ぐと、ダイオウイカ・デッドマンは身体のゲソを伸ばして、リバイスだけでなくスイートチームを押し退ける。

 

『ヒャッハァァァァァァァッ!!』

 

MHチームとGoプリチームが交戦するウルフ・デッドマンは狼の運動能力を使って彼女達を翻弄し、銃で攻撃する。

 

[必殺承認! バッド! ダークネスフィニッシュ!]

 

「ぐぅぁああああっ!」

 

『輝二さんっ!』

 

「輝二っ! げっ!?」

 

と、その時、突如戦場に音声が響くと、ターコイズブルーの斬撃が迫ってきて、リバイが受けて倒れ、バイスが駆け寄って斬撃が来た方に目を向けると、

 

「「カゲロウ!」」

 

エビルがエビルブレードを構えて悠々と歩いてきた。

 

「くっ! ホワイト! ルミナス!」

 

「ええ! 皆!」

 

「お願いします!」

 

『うん!』

 

幹部二人をスイートチームとGoプリチームに任せ、ブラックとホワイトはエビルに立ち向かい、ルミナスはリバイのケガを癒していた。

 

「「はぁぁぁぁっ!!」」

 

『キュアブラック、ストレートに見せかけてのフック。キュアホワイト、ハイキックに見せてのミドルキック』

 

ブラックとホワイトの攻撃を、エビルは再び予測し、滑らかな動きで回避すると、攻撃で空いた二人にエビルブレードで切りつけた。

 

「「あぁぁぁっ!!」」

 

「っ! まただ・・・・」

 

「えっ? 何がですか?」

 

リバイの呟きに、ルミナスは首を傾げ、リバイは続けた。

 

「カゲロウの動きだ。他の連中はともかく、ブラックとホワイトの動きを、奴はまるで予測しているように避けている」

 

「あっそういえば、カゲロウの身体にされているのって、プリキュアちゃん達の関係者だったんだっけ?」

 

「・・・・それって、どういう事ですか?」

 

「つまり、“ブラックとホワイトの事を知る人間”が、カゲロウに取り憑かれているって事だ」

 

リバイスは傷が癒えると、ガンデフォンとオーインバスターの光弾でエビルを牽制すると、ブラックとホワイトに駆け寄った。

 

「ブラック、ホワイト、エビルに取り憑かれているのは、“お前達の関係者”のようだ」

 

「えっ!?」

 

「私達の、関係者・・・・?」

 

「お前達の知り合いで、お前達がプリキュアである事を知っていて、現在連絡が取れない人間っているか? ソイツがーーーー今カゲロウに取り憑かれている人間だ」

 

「ーーーー私達がプリキュアである事を知っていて・・・・」

 

「連絡が取れなくなった・・・・・・・・っっ!!?」

 

その瞬間、ホワイトは息を呑んだ。頭に浮かんだのだ。

自分達がプリキュアであるのを知っており、“行方不明になっている人間”が。

 

「っ・・・・まさか・・・・!」

 

ホワイトは狼狽したようにバイスと戦うエビルを見据える。

 

『くっ・・・・!』

 

一瞬だけ、“ある人物”とエビルの姿が重なったように見え、ホワイトは雑念を振り払うかのように頭を振って、ブラックに声を上げた。

 

「ーーーーブラック、マーブルスクリューよ!」

 

「う、うん!」

 

焦ったかのようなホワイトに少し戸惑いながらも、ブラックはホワイトの手を取って、必殺技の構えを取る。

 

「輝二さん! エビルを足止めして! タイミングを合わせて必殺技を同時に!」

 

「・・・・分かった」

 

リバイは承諾すると、『ハシビロコウが刻印されたバイスタンプ』を起動させた。

 

[ハシビロコウ!]

 

「はぁ・・・・ふっ!」

 

ドライバーに押印する。

 

[Come on! ハシ・ハシビロコウ! Come on! ハシ・ハシビロコウ! Come on! ハシ・ハシビロコウ! Come on! ハシ・ハシビロコウ!]

 

ーーーーコイツの正体を暴くぞ。

 

ーーーー出てくるのは鬼か蛇か・・・・!

 

ーーーーいや、鬼でも蛇でもねえだろ。

 

ーーーー鍛えに鍛えたこの力、見せちゃうもんねー!

 

『うりゃっ!』

 

いつものLINEが展開され、バイスがスタンプを叩きつけた。

 

[バディアップ! 端から端まで!走らず見渡す!ハシビロコウ! 動かず耐えてますから!」

 

スタンプが砕けると、リバイはマスクに二本の角が伸び、身体も筋肉質のような屈強で、まるで『鬼』のような容貌となっていた。背中には二本の羽の蛮刀まで装備していた。

 

「ありーっ!? 俺っち身体が伸びてるーっ!?」

 

バイスはハシビロコウの被り物を被り、足がのっぽのように長く、身体も超細身で二メートルは越えており、両肩に鋭利で大きな羽をしている姿に変貌していた。

 

「うわっ! 皆ちっちぇなっ!」

 

「お前がデカイ、いや、長いんだよ。ーーーーとりあえず、祭だぜバイス」

 

リバイが背中の鳥の羽の刀身をした二振りの剣を構えた。

 

「応よ! どんな姿でも戦えるように、鍛えてますよ!」

 

「「うぅぅぅぅぅぅ・・・・!」」

 

『うぎぎぎ・・・・!(バシンッ!)あああああっ!』

 

ブラックとホワイト、ダイオウイカ・デッドマンと戦っていたスイートチーム(特にメロディ)が、何故か『それ違うでしょっ!』っと言いたげなツッコミのポージングをしており、ダイオウイカ・デッドマンが伸ばしたゲソに叩かれ、少し吹き飛ぶが、すぐに気持ちを切り換えて戦う。

 

「イエイ! 行っくぜーーーー!!」

 

バイスが羽を広げて宙を飛び、エビルに向かって羽で切りつける。

 

『うぉっ!!』

 

「はぁっ!」

 

続いてリバイが二振りの剣、『羽斬剣<ハネキリケン>』を降って、エビルに斬りかかる。

 

『ちっ!』

 

エビルブレードで片方を防ぐが、刀身に炎を纏わせ、もう片方の剣でエビルを切る。

 

『ぐぁあああっ!』

 

「はぁっ! そらっ! だだだだだだだ!!」

 

クルリと一回転させた剣で切りつけ、もう片方の剣でも切りつけ、さらにはまるで太鼓を叩くように、連続でエビルを切りつけていく。

 

『がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

ゴロゴロとエビルが転がると、空かさずリバイはドライバーのスタンプを二回傾ける。

 

「リミックス! バディアップ! 必殺!詫びろ!詫びろ!ハシビロコウ!」

 

「よいしょっ!」

 

「はっ!」

 

バイスか両手を前方に突きだして手を合わせると、両肩の四枚の羽が合わさり、大きな嘴の形になると、そのバイスの首にリバイが逆股がって身を屈めると、両手に持っていた羽斬剣が伸びて大きな翼となり、ハシビロコウの形へとなった。

新たなリミックス、『リバイスハシビロコウ』であった。

 

ーーーークァアアアアアアアアアッ!!

 

リバイスハシビロコウが雄叫びを上げると同時に、ブラックとホワイトが、手を繋ぎ、繋いでいない手を天に伸ばした。

 

「ブラックサンダー!」

 

「ホワイトサンダー!」

 

それぞれの手に、黒と白の稲妻が落ちて、エネルギーをチャージする。

 

ーーーークワァァァァァァァァァァッ!!

 

『くっ・・・・! ぐはぁあああああああっ!!』

 

リバイスハシビロコウはエビルに近づくと、大きな嘴で突っつき、足で蹴り、嘴で咥えてブラックとホワイトの前に放り投げた。

 

ーーーークァアアアアアアアアアッ!!

 

[ハシビロコウ! スタンピングフィニッシュ!]

 

「回りまぁすっ!!」

 

飛び上がったリバイスハシビロコウがリバイスにリミックスを解除すると、バイスがリバイの前で円形になるように高速回転すると、リング状のエネルギーを形成、そのリング中央にハシビロコウの刻印が浮かんだ。

 

「っ! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!!」

 

リバイが切っ先に炎を貯めた羽斬剣をゆっくりと上げると、

 

「だぁああああああああああっっ!!」

 

羽斬剣をエネルギーに叩き込むとソコから、スタンプ型のエネルギーが、エビルへと向かっていった。

 

『ぬぅ・・・・はっ!』

 

「「プリキュア・マーブルスクーーーー」」

 

ヨロヨロと起き上がったエビルは、ブラックとホワイトが技を放とうとしたのを捉えた。

エビルが「やめてくれ!」と言わんばかりに片手を突きだしーーーー“カゲロウの声ではない声”を放った。

 

 

 

 

「“やめて下さい! なぎささん! ほのかさん!”」

 

 

 

 

「「っっっ!!??」」

 

「「!?」」

 

人間の記憶は、五感が捉えるほんの些細な事が契機になって甦る事がある。それは景色だったり、匂いだったり、味わった物だったり、触れた物だったり、そして音ーーーー声だったり。

その声を聞いた瞬間、ブラックとホワイトだけでなく、メップルやミップルの脳裏にも、“一人の少年”の姿が鮮明に浮かんだ。その時、『マーブルスクリュー』が霧散してしまった。

 

「何っ!?」

 

『はっ!』

 

[必殺承認! バッド! ダークネスフィニッシュ!]

 

エビルがダークネスフィニッシュでスタンピングフィニッシュがぶつかり合い、爆発が起きる。

 

『うぉおおおおおおっ!!』

 

『きゃぁあああああっ!!』

 

周囲にいた一同も巻き込まれ吹き飛ぶ。が、ゆいはキャロが防御魔法で守った。

 

「が! いってぇ~・・・・!」

 

「あたたた・・・・!」

 

爆発が止むと、レックスゲノムに戻ったリバイスがエビルを見ると、エネルギーが霧散していくのが見えた。

 

「っ! 変身が解除された・・・・!?」

 

そして、エビルの変身が解除されるとソコにはーーーー1人の少年が起き上がった。

濃い緑色の髪にキリッとした瞳、服装はオレンジ色のTシャツに黒いジーンズを着用し、腰に『ツーサイドライバー』を直用した、なぎさやほのかと同い年位のーーーー少年だった。

 

「少年・・・・? 雪城?」

 

リバイが首を傾げると、ホワイトが、嫌、ホワイトだけではなく、ブラックまでも、茫然自失とした貌でその少年を見据えていた。

そしてホワイトが、その少年の名を呟くーーーー。

 

「・・・・・・・・・・・・“キリヤ”、くん・・・・!?」

 

「・・・・・・・・・・・・ほのか、さん・・・・」

 

ソコにいた少年の名をホワイトが呟くと、“キリヤ”と呼ばれた少年が返答した。

ホワイトの目から涙が溢れて流れ、両手で口元を隠しながら、ゆっくりと、その少年に近づく。

 

「あ・・・・あぁっ・・・・!」

 

言葉すら満足に発せない程に嗚咽を漏らし、だんだんと歩く早さが増していく。

 

「ほのかさん・・・・!」

 

「キリヤくん!!」

 

“キリヤ”と呼ばれた少年が名を叫ぶと、ホワイトはたまらずと走りだし、“キリヤ”に向かって抱き締めようと両手を広げたーーーーしかしその時。

 

「・・・・・・・・・・・・(ニヤリ)」

 

「はっ! 駄目だホワイト! ソイツはーーーー」

 

“キリヤ”の口が小さく、亀裂のような笑みを浮かべるのを見て、嫌な予感を感じたリバイが叫ぶと同時に、“キリヤ”のその手にはーーーーエビルブレードが握られていた。

 

「!!」

 

“キリヤ”がエビルブレードをホワイトに向けて突き刺そうとするように突き立てたその時、

 

ーーーーザシュンッ・・・・!!

 

鮮血が、飛び散った・・・・。

 

 




エビルの正体は、キリヤくんです。ずっと出ていないので、今作に登場してもらいました。そして、キリヤくんが〈デッドマンズ〉に潜入していたのには理由が。



〈仮面ライダーリバイス ハシビロコウゲノム〉

リバイは響鬼と同じデザインだが、ハシビロコウの被り物をしてハシビロコウの目が角のように伸びている。背中には装甲響鬼のように武器を背負っている。
バイスは『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』の『キジブラザー』をモデルにしています。被り物はハシビロコウ。


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明かされた正体

ーーーー『キリヤ』。

キュアブラックとキュアホワイトこと、なぎさとほのかが戦っていた『闇の勢力』、〈ドツグゾーン〉の五人の幹部〈ダークファイブ〉の最年少幹部であった少年。

プリキュアを探る為に二人の通うベローネ学院に『入澤キリヤ』として潜入した。

しかしソコで彼らなぎさとほのかと過ごし、己のアイデンティティが揺れ、闇に帰っていき、その後は光と闇の狭間を彷徨っていたが、人間界と闇の世界との間に歪みが生じていたため脱出してドツクゾーンでの最終決戦に臨む二人の前に再び姿を現し、味方をした。それから行方不明となってしまった。

ほのかは彼の事を時おり探していたが、一向にその姿を見つけられずにいた。

だが、彼は見つかった。〈仮面ライダーエビル〉と言う敵としてーーーー。

 

 

 

 

ー誠司sideー

 

「とりゃっ!!」

 

『ゴゲェェェェッ!!』

 

ニワトリ・デッドマンと共に窓を突き破って外に飛び出たデモンズ。受け身を取って着地すると、他にも窓を突き破って、ニワトリ・デッドマンの近くに転がるキリン・デッドマンが現れた。

 

「なっ! 他にもいたのかよ!?」

 

キリン・デッドマンが出てきたと思しき窓を見上げると、ムーンライトがいた。恐らく肉弾戦ではプリキュア最強と言っても良い彼女が追い出したのだろう。

と、次の瞬間。

 

ーーーードゴォォォォォォォォォンッ!!

 

「な、何だぁっ!?」

 

『ぐぁぁぁぁっ!!』

 

ホテルの一番下の階で桃色のエネルギーの奔流が壁をぶち破ると、奔流の中から、他のデッドマンとは容貌が違う、恐らく第二フェーズのデッドマン、フンコロガシ・デッドマンが飛び出て転がる。

破壊された壁の向こうから、なのはがレイジングハートを突き出した姿勢を取ると、すぐにギフジュニアの相手に戻った。

 

「なのはさん、滅茶苦茶やるなぁ・・・・」

 

「確かに、力任せは少し乱暴ですわね」

 

デモンズの話に同意するように、エース達ドキドキチームと、ホイップ達アラモードチーム、そしてラブリー達ハピネスチャージチームが合流した。

 

『っ! 行くわよ!』

 

フンコロガシ・デッドマンが指示を出すと、他の二体も動き出し、ホテルから逃げるように出てきた男性スタッフと清掃員のおばさんを連れて、その場から離れた。

 

「おっと、逃がすかよっ!」

 

デモンズ達が追いかけ、中庭のプールに到着したその時。

 

ーーーードォオオオオオオオオンンッ!!

 

『っ!!』

 

中庭でも爆発が起き、三体のデッドマンを追いかけていたデモンズ達が見たのは。

エビルブレードの刃を突き出している少年と、ホワイトがその凶刃に斬られ・・・・るのを庇い、左肩をエビルブレードの刃に貫かれ、血を流したリバイだった。

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

『輝二さんっ!』

 

「輝二っ!」

 

「うぅっ、あ、あああああああ・・・・!!」

 

「しゃっ!」

 

「ぐぅっ!」

 

「っ! いけない!」

 

左肩の痛みに悶えるリバイをキリヤ?が蹴ると、ツーサイドライバーの刃が引き抜かれリバイは地面を転がり、その拍子に、腰につけていた『ジャッカルバイスタンプ』が弾け飛んだ。傷口から血がドクドクと流れ出るリバイ。ルミナスが急いで治癒を行っていると、キリヤ?はエビルブレードを振って血を払い、足元に転がった『ジャッカルバイスタンプ』を手に取った。

 

「ーーーーふっ、ジャッカルか良いねぇ」

 

「キ、キリヤくん・・・・!」

 

「違うホワイト、いや、雪城。コイツは、お前達の知り合いじゃない! カゲロウだっ!」

 

「・・・・ふふふふ、はーははははははははははは!!!」

 

キリヤ?が高笑いをすると、キリヤの身体から黒と緑の霧がキリヤ?の身体を包み込み、キリヤ?の少し髪が跳ね、黒を基調とした衣装を身を纏い、右腕を曲げて人差し指を顔に打ち付ける仕草をした。

 

「楽しい楽しい皆との思い出の旅行が、とんだ血みどろになったなぁ? ええ? 輝二よぉ?」

 

キリヤ?、否、カゲロウはキリヤの顔を歪めながら笑みを浮かべる。

 

「その少年が、お前の新しい『宿主』って、訳か?」

 

「そうさ! しっかし流石は子供とは言え、〈ドツクゾーン〉の幹部〈ダークファイブ〉の一人だなぁ? そこら辺の雑魚共とはスペックが桁違いだぜぇっ!」

 

「どうして・・・・!」

 

「あん?」

 

ブラックが前に出て、カゲロウに向けて怒気を孕んだ声を発した。

 

「どうしてキリヤくんの身体に、アンタが入ってんのよっ!?」

 

半ば茫然自失しているホワイトに変わって、ブラックが声を張り上げると、カゲロウは笑みを更に深くして声を発する。

 

「ちょっとした偶然、いや、運命だったのかもな! 俺はかつて、ソコに転がっている仮面ライダーリバイスに屈辱的な敗北を受け、バイスタンプの状態になり、暫くは休眠状態に陥った。その俺を拾ったのが、〈デッドマンズ〉だ!」

 

全員の視線が、オルテカとフリオ、そしてアギレラに向けられた。

 

『中々興味深い存在だったのでね。丁度我々の事を探っていた少年に『宿主』になって貰いましたが。くくっ・・・・まさかプリキュアの伝説を作ったキュアブラックとキュアホワイトの関係者だったとは!』

 

『あははははは! まさにスマ~イルだぜっ!』

 

「うふふ・・・・」

 

ほくそ笑みを浮かべる三幹部達。そして、カゲロウはエビルブレードをツーサイドライバーにくっつけると、『バッドバイスタンプ』を構える。

 

「ーーーーさて、お喋りはもう終了だ」

 

[バッド!]

 

カゲロウは『バッドバイスタンプ』を起動させ、ツーサイドライバーのエンブレムに押印した。

 

[コンファームド!]

 

押印したその瞬間、黒い靄が周囲を包み込み、カゲロウの影から無数の蝙蝠が周囲を飛び交う。

 

『きゃぁっ!!』

 

『『っ!』』

 

プリキュア達や幹部達も蝙蝠にたじろぐが、カゲロウは気にせず、両手を交差させて声を発する。

 

「変身」

 

バッドバイスタンプをツーサイドライバーのエビルブレードに装填したその時ーーーー。

 

[Eeny meeny miny moe! Eeny meeny miny moe!]

 

蝙蝠がカゲロウを覆うように飛び交うと、カゲロウはエビルブレードを取り外し、引き金を引いた。

 

[バーサスアップ!]

 

その時、蝙蝠達がカゲロウの頭上に集まると、蝙蝠の羽をつけた漆黒のスタンプが、判子口がまるで怪物の口のようになり、カゲロウを飲み込むようにスタンプの中にいれた。

 

[Madness<マッドネス>! Hopeless<ホープレス>! Darkness<ダークネス>! バット!]

 

スタンプの中のカゲロウが、緑色の液体に包み込まれその身体が変化していきそして、

 

「はぁっ!」

 

[仮面ライダーエビル! ハッハハー!]

 

中からスタンプを切り裂いて、仮面ライダーエビルとなって現れた。アーマーの一部がジッパーのようになり、そのジッパーが閉じた。

 

『さぁ、真っ黒に染まりなっ!』

 

キリヤの声からカゲロウの声に変わると、エビルブレードを構えて倒れたリバイに斬りかかろうとする。

 

「させないっ!」

 

「おんどりゃー!!」

 

ブラックとバイスが抑えて、そのまま押し出していった。

 

「・・・・・・・・」

 

「ホワイト! 行かなくちゃミポ!」

 

ミップルが声をかけるが、ホワイトは茫然として動けなくなってしまった。

 

「くそっ! 俺らが!」

 

『邪魔をさせるなっ!』

 

『グラシアス! デッドマンズ!』

 

デモンズ達が向かおうとするが、オルテカが指示を出すと、フンコロガシ・デッドマン達が遮り、メロディ達とフローラ達も、オルテカとフリオに遮られた。

 

「ちっ、ルミナス。最低限の治療で良い! お前はホワイトの側にいろっ!」

 

「あ、輝二さん!」

 

止血と傷口の上部を塞いだ左肩を抑えて、リバイがバイスとブラックの方に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーゆいsideー

 

「あらら、随分と混沌としちゃったねぇ♪」

 

「っ! あなたは・・・・!」

 

『アギレラっ!?』

 

FW陣に守られていたゆいに、〈デッドマンズ〉の首魁アギレラが笑みを浮かべて近づいてくる。

ティアナがクロスミラージュの銃口を、エリオがストラーダの切っ先を向け、スバルがマッハキャリバーを、キャロがケリュケイオンを構え、フリードが威嚇するように唸る。

 

「ーーーー邪魔よ。お子様達!」

 

アギレラが手を突き出すと、赤い靄が噴射された。

 

 

「っ! 七瀬さんゴメンっ!」

 

「きゃっ!」

 

ティアナが咄嗟にゆいを突き飛ばして自分達から離れさせると、赤い靄がFW陣を包み込んだ。

 

「うっ!?」

 

「あうっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

「ギュゥ~っ!?」

 

靄に中からFW陣の苦悶の声が上がり、靄が晴れるとソコにはーーーー。

 

『あ、あぁぁぁぁぁ・・・・っ!!』

 

その場に倒れ込んで、顔色が土色になり、身体中から赤い斑点が出て、苦しそうに悶えているFW陣だった。

 

「皆さん!」

 

「ちょっと邪魔だから退いてもらうね」

 

アギレラはそんな彼女達を踏みつけながら、腰を落としたゆいに近づく。

 

「っ! アギレラ! ゆいに手を出さないでっ!!」

 

フリオをマーメイド達に任せ、フローラがアギレラに向かおうとするが、

 

「はっ!」

 

「きゃぁぁぁぁぁっ!!」

 

アギレラの手から赤い衝撃波が放たれ、地面を転がった。

アギレラはそんなフローラを気にせず、ゆいにニッコリと笑みを浮かべながら近づき、優しい声を発する。

 

「ねぇ。七瀬、ゆいちゃんだよね?」

 

「・・・・・・・・」

 

ゆいは戦慄と緊張が混じった顔で、アギレラを見据える。アギレラはそんなゆいを薄目で見つめながら口を開く。

 

「あなた、生き別れたお父さんにお兄ちゃんが二人いるんだよね?」

 

「っ、何で、そんな事を・・・・!」

 

驚くゆいに構わず、アギレラは言葉を続ける。

 

「あなたの『七瀬』って名字、お母さんの旧姓でしょう? 私知ってるんだ。あなたの本当の名前♪」

 

「え・・・・?」

 

「っ! ゆい! 彼女の話を聞いてはいけません!」

 

フローラに駆け寄ったスカーレットがゆいに向かって 声を張り上げるが、アギレラはゆいに顔を近づけ、耳元で囁くように呟いた。

 

 

 

「あなたの本当の名前はーーーー『嵐山ゆい』」

 

 

 

「え・・・・・・・・?」

 

アギレラにそう囁かれた瞬間、自分の本当の名前を告げられた瞬間ーーーーゆいの脳裏に、幼い頃の記憶が、次々と甦った。

 

【ーーーーゆい】

 

【ゆい】

 

【ゆい!】

 

人間の記憶は、些細な事で唐突に呼び覚まされる事がある。ゆいの頭に、優しく幼い頃の自分に愛しそうに微笑んでくれる父の姿が、自分を見て笑顔を見せてくれる二人の兄が、その内の一人、小さな兄の姿が、嵐山輝二の姿に重なった。

 

「ぁ・・・・あぁ・・・・!」

 

「ーーーーでも残念。あなたのお父さんと大きいお兄ちゃんは、もう死んじゃったんだけどねぇ!」

 

「ぱ、パパが・・・・お兄ちゃんが・・・・死ん、だ・・・・? ーーーーあ、ああああああああああああああああっっ!!!!」

 

アギレラの言った言葉の意味が分かり、ゆいはその場に蹲り、泣き崩れてしまった。

 

『アギレラーーーー!!』

 

『うおっ!!』

 

アギレラに怒りを燃やしたGoプリチームは、叫びを上げてフリオを振り払い、アギレラに向かった。

 

「はっ!」

 

『あぁっ!!』

 

が、アギレラがFW陣に使った赤い靄でフローラ達を包みすぐに晴れると、フローラ達は首やら腕を抑えて、身悶えていた。

 

「ふふっ、また遊ぼうね、ゆいちゃん♪」

 

泣いているゆいに向かって、アギレラは笑みを浮かべてその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

ーバイスsideー

 

河原までエビルを押し出してきたブラックとバイスが河に足を入れた状態で戦いながら、水飛沫を飛ばしていた。

 

『ハッハァ!』

 

「うわっ!」

 

「くっ!」

 

エビルブレードを振るエビルから逃れるが、ブラックの足元の石が転がった事で足が滑り、バランスが崩れる。

 

「しまっーーーー」

 

『オラッ!』

 

「っ!」

 

ブラックに振り下ろされる寸前、オーインバスター50・アックスモードでリバイが防いだ。

 

「こっの!」

 

『ふっ、心が躍ってきたぜ!』

 

[ジャッカル!]

 

エビルは先ほど手にいれた『ジャッカルバイスタンプ』を起動させると、『バッドバイスタンプ』を取り外し、『ジャッカルバイスタンプ』を装填し、引き金を引いたその瞬間ーーーー。

 

[バーサスアップ!]

 

エビルの背後にジャッカルの紋章が浮かび、黒い靄と共に黄色い光にエビルが包まれ、それが収まると、

 

[Feel<フィール>! athrill<アスリル>! Spiral<スパイラル>! 仮面ライダーエビル!ジャッカル!]

 

左胸にジャッカルの顔のような紋章を付けた漆黒のアーマーとなり、頭部はリバイのジャッカルゲノムを黒くし、目は紫色となった姿だった。

 

「何っ!?」

 

「うっそぉ!?」

 

「ありえない!」

 

『ありえるんだなぁ・・・・これがっ!』

 

エビルがエビルブレードを構えると、緑色の軌跡を描きながら加速し、リバイスとブラックをすれ違い様の一瞬に、緑色の斬撃で連続で斬り付けた。

 

「「うわぁっ!!」」

 

「ああっ!?」

 

倒れる三人に、エビルは更に加速して、連続ですれ違いながら斬りつけていく。

 

「あだっ!? どうせえちゅうのよっ!?」

 

「ヘイ君!」

 

「えっ? はっ!」

 

声がした方をバイスが振り向くと、いつの間にかやって来た狩崎が、夕べから調整していたハンマーを持っており、

 

「プレゼント!」

 

「うわっと! 何だ? これ」

 

それをバイスに投げ渡した。

 

「それあげるからリバイを助けてあげて! 新装備、『オストデルハンマー50』だ!」

 

ライトブルーとイエローというポップなカラーが特徴的な、狩崎の趣味が入っていた。

 

「うはははは・・・・カリちゃん! サンキューな!」

 

バイスが礼を言うと、狩崎はパチンッ!と、指を鳴らした。

 

「おりゃっ!」

 

『っ!』

 

停止したエビルに、バイスがオストデルハンマーを叩きつけた。

 

「輝二は俺っちが守るぜ!」

 

バイスはハンマーを振り回して当てると、その威力にエビルが後退した。

 

「はははは・・・・これいいね! カリちゃん!」

 

「ちょっとソコの岩。叩いて振ってみて!」

 

「岩?」

 

狩崎の言葉を聞いて、バイスが足元の岩を見つけると、思わずハンマーの束を叩いた。するとーーーー。

 

[レッツイタダキ!]

 

「えっ・・・・?よっ」

 

ハンマーから音声が響き、バイスは岩を叩いた。

 

[ネイチャー!]

 

叩かれた岩に紋章が浮かび、ソコから光が無数に舞い上がると、岩の形になった。

 

「ワーオ!」

 

バイスが再びハンマーの束を押すと、音声が響く。

 

[イタダキ!]

 

「よっとぉ!」

 

[エレメント印! オストデルクラッシュ!]

 

光が完全に岩となり、バイスがエビルへとハンマーを下ろすと、岩は次々とエビルへと向かっていった。

 

『ぐっ! くぅっ! あぁぁっ!!』

 

エビルブレードで迎撃するが、数に押され岩を叩きつけられ、その場に両膝を突いて、バッドゲノムに戻った。

 

「ヘッド部分に取り付けられた押印式情報入力装置、『イタダキインジェクター』で叩いた物の組成を瞬時に読み取り、その疑似エネルギー体を生成するイタダキ必殺技を発動できるのだよ!」

 

狩崎は指を鳴らして説明するとさらに補足する。

 

「そしたら次はオストデルハンマーをリバイのオーインバスターと合体させるんだ!」

 

「もう悪魔使いが荒いんだから! 輝二! ちょっと貸して!」

 

「ああ!」

 

「えっと、こうしてと・・・・ふふ、はいこれを合わせまして・・・・」

 

バイスがオストデルハンマーのハンマー部分を縦にすると、折り畳まれていた刃が飛び出て、オーインバスター・アックスモードと合体させた。

 

[リバイスラッシャー!]

 

「よぉしできたぁ! うわあ~!」

 

「よし! これなら!」

 

[レックス! スタンプバイ!]

 

[必殺承認! バッド! ダークネスフィニッシュ!!]

 

「はぁっ!!」

 

「しゃぁっ!!」

 

お互いにエネルギーが貯まった刃をぶつけ合うと、凄まじい火花が散りそして・・・・。

 

ーーーーズドォォォォォォォォンンッ!!

 

「げっ!?」

 

「うえっ!?」

 

爆発が起こり、リバイの後方にいたバイスとブラックも爆風に巻き込まれた。

 

 

 

ーデモンズsideー

 

「はぁっ!!」

 

『ガハッ!?』

 

『はぁぁぁぁぁ!』

 

『ゴゲッ!』

 

『フッ!』

 

『クワッ!』

 

デモンズがフンコロガシ・デッドマンを、ハピネスチームがニワトリ・デッドマンを、ドキドキチームがキリン・デッドマンを一ヶ所に集めた。

 

「誠司!」

 

「おう!」

 

ラブリーの声にデモンズが頷くと、ドライバーの左右を押した。

 

[Add・・・・!]

 

[バッタ!]

 

音声が流れると、デモンズは『バッタバイスタンブ』を取り出して、デモンズドライバーの上部に押印し、液晶にも押印した。

 

[Dominate up! バッタ! ゲノミクス!]

 

中腰になったデモンズの両足が、バッタの脚の形状『デモンボトムハイヤー』がとなった。

 

「はぁっ! とりゃっ! うりゃっ!」

 

デモンズがバッタ脚でデッドマン達を攻撃すると、デモンズはデモンズドライバーの左右から押した。

 

[More!]

 

高く跳躍すると、両足蹴りを三体に叩き込んだ。

 

『『『ギャアアアアアアアアッ!!』』』

 

三体が爆発すると、爆炎から三つのバイスタンプが飛んできて、ラブリーとハート、エースがそれぞれキャッチすると、フンコロガシ・デッドマンの契約者だった女性スタッフも地面に叩きつけられそうになる。

 

「よっ!」

 

が、寸前でデモンズが糸を射出して、スタッフをす巻きにして木に吊し上げた。

 

『一気に三体も倒すとは、やりますね・・・・』

 

「余所見は禁物だよ!」

 

『っ! うわぁ!』

 

『何だこれ鬱陶しい!』

 

オルテカがデモンズに感心すると、アラモードチームがホイップやらチョコのエネルギーでオルテカとフリオを拘束した。

 

「メロディ達! 今よ!」

 

「「「「うん!」」」」

 

パルフェに声に答えるように、スイートチームが武器を構えた。

 

「「かけめぐれ、トーンのリング! 『プリキュア・ミュージックロンド』!」」

 

「かけめぐれ、トーンのリング! 『プリキュア・ハートフルビートロック』!」

 

「シの音符のシャイニングメロディ! 『プリキュア・スパークリングシャワー』!」

 

『『ぐぅぅぅっ!!』』

 

「「「「三拍子、1、2、3。フィナーレ!」」」」

 

ーーーードォォォォォォォォンンッ!!

 

『『ぐぁああああああああっっ!!』』

 

スイートチームの必殺技を受けて、オルテカとフリオは多少のダメージを受けた様子で後方に倒れる。

 

『・・・・流石に、ここまでですね・・・・! フリオ、引くぞ・・・・!』

 

『ああ!』

 

オルテカとフリオはその場から姿を消した。

 

 

 

 

 

ーリバイsideー

 

「わぷっ! わぷっ! 溺れる! 溺れちゃう! 俺っち泳げない! あっ、足がちゃんとついてる!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・」

 

「うっ、くぅっ・・・・!」

 

リバイスとブラックは爆風で河に落ちてしまい、バイスは騒ぎながら、リバイとブラックも満身創痍ながら這い出ると、同じく満身創痍のエビルが立ち上がりながらも、こちらを見据えていた。

 

『今日はここまでだな。・・・・だが、近い内にまた殺り合おうぜ。ーーーーでは、ほのかさんによろしくと伝えて下さい、なぎささん♪」

 

「っ!」

 

後半の声をキリヤの声にしながら、エビルはそのままその場から消えた。

 

「ブラック!」

 

「手酷くやられたねぇ。身体ではなく、心が、だが」

 

「くっ・・・・うぅっ!!」

 

ルミナスが駆け寄り、狩崎がそう言うと、ブラックは悔しそうに地面を叩いた。

 

 

 

 

 

 

 

ヨロヨロの身体を押して、輝二となぎさは狩崎に支えられながら、中庭に戻ると丁度ソコには、ホテルの敵達を全滅させたであろう全員が揃っていた。

 

「皆・・・・」

 

「っ! なぎささん、ほのかさんをお願いします」

 

なぎさを落ち込んでいるほのかの隣に座り、まだ変身していたルミナスは、アギレラの毒で苦しんでいるはるか達の治療に入る。

既にシャマルが魔法でFW陣の治療を、かれん達医者志望組も一応の応急措置をしていた。

輝二は、ボロボロになったホテルを見上げる。

 

「・・・・こっちも酷いな」

 

「しばらくは営業停止だろうね。損害や従業員達の生活費の方は、我々〈フェニックス〉で何とかしてみよう」

 

「わたくしの四葉財団も手を貸しますわ」

 

と、話していると、ゆいが顔を俯かせながら輝二に向けて声を発した。

 

「ーーーーお兄ちゃん・・・・」

 

「っ!」

 

輝二はギクッと肩を奮わせながら、ゆいに顔を向けた。

 

「お兄ちゃん、何だよね・・・・?」

 

「ゆ、ゆい・・・・何で・・・・?」

 

ゆいの目を見て、輝二は直感した。ゆいは、気づいていると。

 

「・・・・パパと、大きいお兄ちゃんは・・・・死んじゃったの?」

 

「・・・・・・・・・・・・ああ」

 

「!」

 

輝二の答えに、ゆいは息を詰まらせながら、一人その場から立ち去る。

 

「っ! ゆい!」

 

「嵐山くん。ここは私が」

 

「月影・・・・頼む」

 

ゆいを追いかけようとするが、ゆりが代わりに向かった。

パートナーや父親を失ったゆりなら、ゆいに寄り添えると考え、輝二が頭を下げると、ゆりも頷いてゆいの後を追い、つぼみとえりかといつき、妖精達も追った。

輝二が適当な椅子に座ると、響達が近づく。

 

「あのね、輝二さん。輝二さんが、ブラック達を追ってすぐに、アギレラがゆいちゃんに近づいて、兄妹だって教えたの・・・・」

 

「そうか・・・・はぁ、〈デッドマンズ〉をぶっ潰してから、伝えようと思っていたけど、後回しにするべきじゃ無かったかもな・・・・」

 

「あの、輝二さん・・・・」

 

輝二が片手で額に手を当てて悔いていると、ほのかが顔を上げて話しかけた。

 

「あのキリヤくんは、私となぎさの知っている、キリヤくんですか?」

 

「ーーーーいや、肉体はキリヤって少年だろう。だが、『バッドバイスタンプ』に宿る悪魔、カゲロウに身体を乗っ取られているんだ。多分だが、本来の肉体の持ち主は、心の奥底に封印されているんだろう」

 

「そうーーーーですか」

 

「雪城。やるべき事は分かっているか?」

 

「・・・・はい。キリヤくんを、助けます!」

 

「当然私も、協力するよほのか!」

 

「なぎさ・・・・ええ!」

 

ほのかは両頬をペチ! と叩いて顔を上げると、なぎさと共に、その目には確固たる『覚悟』が宿っていた。

なぎさ達は大丈夫だな、と輝二は笑みを浮かべると、

 

「(次からの戦いは、カゲロウと本格的な決戦になるな)」

 

これから起きるであろうカゲロウとの戦いに、更なる決意を燃やしていた。




エビルの正体、キリヤ。ゆいに輝二の正体が自分の兄だと知られてしまいました。


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プリキュアランキング

今回、途中おふざけをいれます。


ーオルテカsideー

 

〈デッドマンズ〉の本拠地の『ギフの間』にて、キリヤの身体に取り憑いたカゲロウが、オルテカから『ギフジュニアスタンプ』と『新しいバイスタンプ』を渡された。

 

「ギフ様の為に『生け贄』を捧げて貰いましょう」

 

「はっ・・・・それで、お前らは満足するのか?」

 

「何だと?」

 

鼻で笑うカゲロウにフリオが怒るが、カゲロウは無視して部屋を出ていった。

それを見送ってから、アギレラが吐き捨てるように口を開いた。

 

「ホ~ント、超ガッカリ。アイツ口だけなんだもん」

 

「アギレラ様、スマ~イル♪」

 

ブスッとした顔のアギレラに、フリオがぎこちない笑みを浮かべる。

 

「カゲロウに挽回の機会を与えました」

 

「マジ!? 甘くない?」

 

オルテカの言葉に、アギレラは不満そうな声を上げた。

 

「まあまあ。ちょうど、『彼』も新しいスタンプに馴れたようですし」

 

《ーーーーぬぉおおおおおおおおおおっ!!》

 

オルテカがタブレットを操作すると、数十体のギフジュニアを一瞬で凪ぎ払う、『牛のデッドマン』が映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーカゲロウsideー

 

カゲロウは昼の町を歩いていて、ふと、ショーウィンドウに映る自分を見ると、苦しんでいるキリヤの姿が映し出されていた。

 

≪ーーーーはぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ・・・・!≫

 

「苦しそうだなぁキリヤ? まぁ楽しみにしてろよ。リバイスに始末したら、次はプリキュア達を全滅させて、最後にお前の大事なキュアホワイトの死に様を見せてやるからなぁ」

 

≪ーーーーお前は、一体、何者だ・・・・? カゲロウ・・・・!≫

 

「・・・・ふっ、俺は『バットバイスタンプ』に宿る悪魔。それ以上でも、それ以下でもない」

 

『バットバイスタンプ』を取り出して、何処か自嘲気味に笑みを浮かべるカゲロウに、キリヤは苦しみながらも声を上げる。

 

≪違う・・・・! 『バイスタンプ』に、ただのアイテムであるそれに、悪魔が宿るとは思えない・・・・! お前はーーーー“誰の心から生まれた悪魔なんだ”!?≫

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

≪・・・・あぁっ!≫

 

カゲロウはキリヤの言葉に一瞬目を伏せるが、すぐにキリヤの影を消した。

するとーーーー以前から手頃な『駒』として目を付けていた、三人の大学生達を見つけると、リーダー格らしき人物の肩にわざとぶつかった。

 

「いって! おいガキっ! てめえ何しやがるっ!?」

 

「ーーーーすみませんねぇ。あまりのアホ面に目を奪われて、注意散漫になっていましたよ」

 

「あ?」

 

リーダー格の男は方眉をあげ、カゲロウの胸ぐらを掴もうとするが、カゲロウはヒラリとその手を避け、

 

ーーーードウッ!!

 

「ごほっ!?」

 

男の腹に膝蹴りを叩きつけた。

 

「お、おい!」

 

「この野郎!」

 

他の二人がカゲロウを捕まえようと迫るが、カゲロウはヒラリヒラリと回避し、さらに足を引っかけて、男達を転倒させた。

 

「「うわぁぁぁぁっ!?」」

 

もつれ合うように倒れる男達。それを見て、嘲笑うように笑みを浮かべるカゲロウが路地裏へと走る。

 

「ほら、ここまでおいで、木偶の坊さん達♪」

 

「こ、このガキっ! ぶっ殺してやるっ!」

 

顔を真っ赤にしたリーダーの男が立ち上がり、他の二人も顔を真っ赤にし、カゲロウの後を追っていった。

その先には・・・・地獄が待ち構えているとも知らずにーーーー。

 

 

 

 

 

 

ーなぎさsideー

 

『入澤キリヤ』が仮面ライダーエビルであり、カゲロウに取り憑かれている事が分かった翌日。

 

「美墨さん」

 

「ふ、藤P先輩っ!?/////」

 

学校が終わり、なぎさも掃除当番を終えて、すぐにほのかとひかりと合流して、〈スカイベース〉に向かおうとすると、なぎさの憧れ『藤P先輩』こと『藤村省吾』に話しかけられ、なぎさは顔を赤くした。

 

「今日、何か思い詰めていたようだったけど、大丈夫かい?」

 

「は、はい。ちょっと、やらなくちゃいけない事ができたんです・・・・」

 

「・・・・僕が力になれるか分からないけど、相談の相手はできるから、無理はしないでね」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

キリヤの事があり、少し気負っているようだったなぎさだが、気分が少し晴れ、すぐにほのかとひかりとの待ち合わせ場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

「はぁい遅かったね。ブラックガールにホワイトガールにルミナスガール。プリンセスチーム以外のガールズ達はとっくに集まってるよ」

 

ほのかとひかりと合流したなぎさは、その足で〈スカイベース〉に行くと、はるか達以外のプリキュアが集まっていた。

 

「皆・・・・!」

 

「力を貸してくれるの?」

 

「勿論!」

 

「なぎさちゃんとほのかちゃんの大事な友達なんだもん!」

 

「ここで協力しなきゃ女が廃る!」

 

ラブとはなと響がそう言うと他の皆、特に同じく初めは敵対していたが、今は仲間になったせつなとエレンとルールーはキリヤに通じる物があったのか、かなり力強く頷く。ここにトワがいれば彼女も頷いただろうが。

 

「はるかちゃん達は・・・・」

 

「彼女達はまだアギレラの毒の影響が残っていて本調子ではない。それと、七瀬ゆいくんのガードとメンタルケア役も兼ねて、今回は参加を遠慮してもらったよ」

 

あの騒動のすぐ後、狩崎が連絡した〈スカイベース〉がやって来て、全員を回収して家に帰された。

が、アギレラの毒を受けたはるか達とFW陣は特に重傷であり、ルミナスによって解毒されたが、それでも体力やら毒の後遺症が残っており、はるか達はゆいと共にノーブル学園の寮に、はるか達より長く毒を受けていたFW陣はスカイベースの治療室で療養中であった。

 

「ゆりさん。ゆいちゃんの方は・・・・」

 

「・・・・今は気持ちの整理をする時間が必要みたい」

 

アギレラから、輝二と兄妹であると告げられ、さらに父親と上の兄が殺されたと知り、ゆいはかなり気落ちしていた。ゆりがフォローしてくれたが、それでも今は気持ちを整理したいようだ。

話を戻そうと狩崎が状況を説明する。

 

「現在はヒトミと誠司くん、後ミス・沢田達がカゲロウの捜索に当たってくれているが、残念ながら未だに発見できていない」

 

「・・・・ドクター、輝二さんは?」

 

いちかが聞くと、周りの皆も悲痛な顔になる。巻き込まれないように細心の注意をはらっていたゆいに、とうとう兄であると知られてしまい、輝二はずっと無言のままになっていた。

 

「カンデフォンのGPSを見ると、事務所にいるね」

 

「カゲロウと、仮面ライダーエビルと戦うには、多分、輝二さんとバイスの力が必要だと思うわ」

 

「それじゃ! 私達で呼ぼう! リコ! はーちゃん!」

 

「ええ!」

 

「うん!」

 

ほのかは、リバイスを倒すのを目的としているようなカゲロウを誘き出す為、輝二が必要と言い、みらいとリコとことはが杖を構える。

 

「「「キュアップ・ラパパ! 輝二さん! バイス! ここに来て!」」」

 

三人が魔法を使うと、三人の前にボワン、と煙が出て晴れるとソコにはーーーー。

 

「さぁバイス! さっさと決めろ! HUGっとチームは誰だっ!? 二人しか選べられないぞ!」

 

「うーん! うーん! うーん!・・・・決めたっ! はなちゃんと! さあやちゃん!!」

 

『・・・・・・・・・・・・え?』

 

何故か落ち込んでいると思っていると輝二が、実体化したバイスと騒いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

みらい達に魔法で呼び出された輝二と実体化したバイスは、プリキュアオールスターズと狩崎の存在に気づかず、はな達HUGっとチームの名前が記された紙を輝二が持って、バイスの眼前に突き出した。

 

「さぁバイス! さっさと決めろ! HUGっとチームは誰だっ!? 二人しか選べられないぞ!」

 

「うーん! うーん! うーん!・・・・決めたっ! はなちゃんと! さあやちゃん!!」

 

バイスがはなとさあや、それぞれの名前が記された紙を手に取った。

 

「よぉし! これでチーム選抜は終わったな! たくっ、二時間も悩み続けやがって!」

 

「だって! しょうがないじゃない!」

 

「さて次は選抜メンバーからランクを作るかーーーー」

 

「・・・・何してんの?」

 

「「ん?」」

 

と、盛り上がっていた二人が周りを見回すと、何故かスカイベースの狩崎のラボにおり、さらにプリキュアオールスターズに囲まれており、なぎさが代表して声を発した。

 

「何だお前ら、人の事呼び出しやがって」

 

「一体何してんのよ?」

 

「そのセリフ、そのままバットで打ち返すわよ。何してんの二人とも・・・・」

 

輝二とバイスの言葉に、なぎさが聞き返すと、輝二達は淡々と説明した。

 

「いやな。前からバイスがプリキュア達の事を気に入ってるようだから、どのプリキュアが一番お、魅力的なのか聞いたんだけどな。かなり迷ってたから、各チームごとに選抜しようと思った訳だ」

 

「そう! 俺っちが厳選する! 『プリキュアちゃんランキング』!」

 

バイスがくす玉を取り出すてそれをポンっと、開けると、垂れ幕が下りそこに文字が書かれており、ルールーがそれを読む。

 

「ーーーー『悪魔バイスが選ぶ、美味しそうなプリキュアちゃんランキング』、と書かれています」

 

『・・・・え”?』

 

ルールーの話を聞いて、プリキュアオールスターズがサッと顔を青ざめた。

前に、悪魔は人間を捕食すると聞いていたが。どうやらバイスは自分達もターゲットにしたようだ。それに構わず輝二が平静に説明する。

 

「プリキュアは数が多いからな。各チームの四人までのチームからは一人、四人より多いチームから二人選ぶと言う選抜方法だ」

 

「ほう、ホントに厳選だね。興味がある。選抜されたガールズ達を教えてくれたまえ」

 

『何でドクターも興味持つのっ!?』

 

先程までのシリアスが一気に消滅し、おちゃらけな空気が流れ始めた。

 

「人数の少ないチームなら即決したり数十分悩んだりしたが、人数が多い方は二時間は悩んだりしたな」

 

「だって! 皆美味しそうなんだもん!」

 

『美味しそうとか言わないで!』

 

「ではまずブラックガール達から聞こうではないか」

 

狩崎が言うと、バイスは奇妙な冒険キャラのようなスタイリッシュなポーズを取り。

 

「では、MHチームからは! すぐに決まってーーーーダララララララララ・・・・ひかりちゃん!」

 

「えぇっ!? 私ですかぁっ!?」

 

バイスに指差されたひかりが驚愕する。

 

「次にS☆Sチームからは! 三十分も悩んでーーーーダララララララララ・・・・咲ちゃん!」

 

「わ、私ぃっ!? 舞じゃなくてっ!?」

 

「ビジュアル的には舞ちゃんが好みだけど、咲ちゃんからは焼きたてのパンみたいな美味しそうな臭いがしているの!」

 

「ーーーーあぁ言われて見れば・・・・確かに咲って美味しそうな臭いがしてるわ」

 

「ちょっと舞!」

 

バイスが咲の臭いを嗅ぐと、舞も一緒に嗅いでみた。

 

「次に5GoGoチームからは! 一時間も悩んでーーーーダララララララララ・・・・りんちゃんとかれんちゃん!」

 

「「えぇっ!?」」

 

「えっ? ミルクとか美味しそうだと思うよ?」

 

「ちょっとのぞみ!」

 

りんとかれんがうららとこまちの背中に隠れ、のぞみが首を傾げて言うと、ミルクことくるみが怒鳴るが。

 

「なぁんかくるみちゃんってさ。食べた瞬間お腹の中を食い破って出てきそうな感じなんだよねぇ」

 

「私はSFホラーの宇宙生命体かっ!?」

 

『あぁ・・・・』

 

「何で皆納得してるのよっ!?」

 

納得したような皆の反応に、くるみがまた怒鳴った。

 

「次にフレッシュチームからは! 一時間も悩んでーーーーダララララララララ・・・・せつなちゃん!」

 

「えっ?」

 

せつなが目をパチクリさせ、ラブ達は苦笑する。

 

「次にハートキャッチからは! 一時間悩んでーーーーダララララララララ・・・・いつきちゃん!」

 

「ぼ、ボク・・・・!?」

 

「そう! つぼみちゃんも選抜しようとしたら輝二が怒るし」

 

「薫子さんのお孫さんを狙うな」

 

「それで、いつきちゃんかゆりちゃんのどっちかを選ぼうか悩んでいて、ゆりちゃんは少し栄養不足感があるので、いつきちゃんを選びました!」

 

「ちょっと! 何であたしは入ってないの!」

 

えりかが憤懣の顔でツッコンだ。

 

「だって~、えりかちゃん食べたらーーーー頭に悪そうだし~」

 

「頭に悪いって、どういう意味よ!」

 

「「まぁまぁえりか・・・・!」」

 

えりかがキシャー! と、バイスに飛び掛かろうとするが、つぼみといつきが押さえた。

 

「次にスイートチームからは! 一時間悩んでーーーーダララララララララ・・・・エレンちゃん!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

エレンが涙目になって破顔し、口の中に猫のセイレーンがこんにちはしたように見えたが、すぐに苦笑している響と奏の背中に隠れ、アコは呆れ目だった。

 

「次にスマイルチームからは! 一時間悩んでーーーーダララララララララ・・・・あかねちゃんとやよいちゃん!」

 

「う、うちかいな!?」

 

「わ、私!?」

 

「あかねちゃんは、美味しそうな臭いがしてるよ! やよいちゃんは食べやすそう感があったから!」

 

あかねとやよいが青ざめ、やよいはみゆきの、あかねはれいかの背中に隠れたが、同じようにれいかの背中に隠れていたなおと押し合いを始める。

 

「ドキドキチームからは! 皆美味しそうだったけど、二時間悩んでーーーーダララララララララ・・・・マナちゃんとまこP!」

 

『あ、やっぱりですか?』

 

マナとまことが選ばれた事に妙に納得する六花達。選ばれたマナとまことは苦笑していたが。

 

「ハピネスチャージチームからは! 一時間悩んでーーーーダララララララララ・・・・ゆう子ちゃん!」

 

「わっ、食べるのは大好きな私が、食べられる立場になっちゃったわ!」

 

「「「あぁ・・・・」」」

 

ゆう子は楽しそうな笑みを浮かべ、確かにゆう子は美味しそうに見えるなぁ、と、めぐみ達は妙な納得をした。

 

「プリンセスチームちゃんからは!ーーーー輝二がゆいちゃんの友達を狙うなっ、て言って選びませんでした・・・・」

 

「当たり前だろう」

 

「あの、輝二さん・・・・ゆいちゃんの事は・・・・」

 

めぐみが聞くと、輝二はやれやれと肩を落としながら答える。

 

「ーーーーバレてしまったら仕方ないだろう。グチャグチャ考えていたって何かが変わる訳じゃねぇんだ。今俺がやるべき事は、ゆいの事じゃなくて、カゲロウとの決着<ケリ>を着ける事だ。ゆいの事はその後だ」

 

「・・・・輝二さんって、結構クールと言うかドライな所あるよねぇ?」

 

「ああいうのをプロと言うのだろうか・・・・」

 

ひめといおなは輝二の割り切った考えに苦笑する。

 

「魔法使いチームからは! 三十分悩んでーーーーダララララララララ・・・・ことはちゃん!」

 

「はー?」

 

「ちょっ! バイス!」

 

「はーちゃんは食べさせないわよ!」

 

ことはを守るようにみらいとリコがガードする。

 

「ちっ・・・・では次はアラモードチームからは! 二時間も悩んでーーーーダララララララララ・・・・いちかちゃんとシエルちゃん!」

 

「えぇっ!? 私とシエル!?」

 

「Tu te moques de moi(嘘でしょ)!?」

 

「あら、私は美味しそうじゃないのかしらバイス?」

 

「何で対抗心を燃やしてるのゆかり?」

 

いちかが声をあげ、思わずフランス語で驚くシエル。ゆかりが謎の対抗心を燃やすのを半眼で呆れるあきら。

 

「いやね。ゆかりちゃんって、食べたら後が恐い感覚があってさぁ~」

 

「「あぁ、納得」」

 

「どういう意味? あおい? ひまり?」

 

「「い、いえ、別に・・・・」」

 

「まぁまぁ」

 

あおいとひまりが納得したように手をポンと打つが、恐いオーラを出すゆかりが迫り、冷や汗を垂らしながらあらぬ方向を見て、あきらがゆかりを宥めた。

 

「そしてそして最後に選ばれたのが! はなちゃんとさあやちゃんでーーーーす!」

 

「さっき聞いたわ」

 

「私とさあやちゃんか・・・・」

 

「お二人は平均十三時間ほど、このランキングを作っていたのですか?」

 

ルールーの問いに、輝二は平然と答える。

 

「いや、昨日帰った後、バイスとこのランキングを作ってな。途中で寝たり休憩したりしながら今さっき出来上がったんだ」

 

「私達、ゆいさんの事で落ち込んでいると思っていたのですよ・・・・」

 

「それなのに輝二さん。バイスと何を遊んでいるの・・・・!」

 

えみるとほまれは半ば怒り交じりに言うが、輝二は平静だった。

 

「やる事はもう決まってんだろ? お前らは」

 

『えっ?』

 

「あのキリヤって少年を助ける。これがお前らではもう決定事項なんだろ?」

 

「うん! もうけってーい! してるよ?」

 

「俺はカゲロウと決着<ケリ>をつけたいし、以前から狩崎さんからの依頼でツーサイドライバーを回収したい。お前らはカゲロウからキリヤ少年を助けたい。お互いに利害は一致している」

 

「じゃぁ・・・・」

 

ほのかの問いに、輝二はニィッと笑みを浮かべて、ほのかに握手を求めるように、手を差し出す。

 

「協力しようじゃあねぇか」

 

「ーーーーはい!」

 

ほのかが輝二の手を握ると、その手になぎさとひかりが手を乗せ、全員が力強く頷いた。

 

「ーーーーなぁ輝二! ランキングは今日はここまで?」

 

「あぁ。暇つ、退屈しのぎはおしまいだ」

 

『退屈しのぎで恐いランキングをつけないでっ! て言うか、今、暇つぶしとも言おうとしました!?』

 

バイスと輝二の会話に、プリキュアオールスターズの大半が盛大にツッコミの声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーカゲロウsideー

 

とその頃、キリヤの身体を使い、カゲロウは小さな廃工場にてーーーー自分の足元でボロボロに痛め付けた三人の大学生達を冷酷な笑みを浮かべて見下していた。

 

「あ、あぁ・・・・!」

 

「た、助けてくれよぉ・・・・!」

 

「俺達が何したってんだよぉ・・・・!」

 

三人の大学生は顔が殴られ青アザだらけの痛々しい顔になり、歯も二~三本は折れ、鼻血や口から血を垂らし、身体もボロボロになり、見るも無惨な姿を晒していた。

 

「ふん」

 

「がぁっ!」

 

カゲロウはそんな彼らのリーダーの男性の頭を踏みつけ、グリグリと踏んでいく。

 

「何言ってんだ?ーーー“同じサークルの人間をイジメで自殺にまで追い込んだゴミ共が”」

 

「お、お前! あのクズ野郎の親戚か何かかっ!? お、俺らは何も悪い事してねぇよ! ただちょっと・・・・からかっただけなんだよ! 自殺なんて、あのクズ、イヤ、アイツが勝手にやったんだ! 俺らは悪くないっ!」

 

「そ、そうだ! 自殺なんてやったアイツが悪いんだ! 男だったら文句があるんだったら拳で勝負しろって話だ!」

 

「陰キャラのキモ男が同じ空間にいると、気持ち悪かったんだ! 俺達は大学の空気を良くしようとしただけだったんだ!」

 

イジメをして、人一人の命を自殺にまで追い込んでおきながら、罪悪感を抱く処か、自分達は悪くないと、何の正統性の無い言葉を喚き散らす大学生達。

そのあまりにも醜悪な姿に、カゲロウは歪んだ笑みを浮かべる。

 

「良いねえ、その腐ったジャガイモのような悪臭を放つ性根。お前らのその醜く穢れ爛れた魂がーーーー極上の悪魔を生み出すよ・・・・!」

 

[ブラキオ!]

 

カゲロウは『ブラキオザウルスが刻印されたバイスタンプ』、『ブラキオバイスタンプ』を取り出して起動させた。




ランキングは作者の偏見で作りました。
因みにGoプリンセスや後輩達では、
Goプリンセスーーーートワ(スカーレット)。
スタートゥインクルーーーーララ(ミルキー)とえれな(ソレイユ)。
ヒーリングっとーーーーのどか(グレース)。
トロピカルージューーーーさんご(コーラル)とみのり(パパイヤ)。
デリシャスパーティーーーーーここね(スパイシー)。
ひろがるスカイ!ーーーーましろ(プリズム)とあげは(バタフライ)。
です。


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暴走カゲロウ! プリキュア奮闘!

ー輝二sideー

 

「ーーーー所で狩崎さん。この間捕まえた〈デッドマンズ〉の連中は?」

 

輝二が問いかけたのは、ホテルで戦った三人のデッドマンの契約者達の事であった。

 

「信者だったのは、女性スタッフだけだったよ。後の厨房スタッフの男性と清掃のおばさんはそれぞれ、ギャンブルの借金に病気の夫の入院費と治療費を肩代わりさせて貰った恩で雇われていただけだったようだ。女性スタッフは兎も角、他の二人は精神鑑定等を行われてから、問題が無ければすぐに釈放される事になったよ。ーーーーまぁ、今はそれよりも先ほどカメラの映像で、見つけたのだが・・・・」

 

狩崎がタブレットを操作すると、街頭カメラの監視映像から、キリヤ<カゲロウ>が三人の大学生くらいの男達に追いかけられている姿が映し出された。

 

「キリヤくん、嫌、カゲロウ?」

 

「(コイツら、確か大学のサークルで虐めをやって自殺者を生んだ連中・・・・)」

 

「どうやら、この三人が新しい悪魔の契約者のようだ」

 

狩崎がそう言うと、嵐山雄二郎司令も口を開く。

 

「ーーーー我々〈フェニックス〉は、〈仮面ライダーエビル〉、カゲロウこと、入澤キリヤの殲滅を決定した」

 

「待って下さい! カゲロウの寄り代にされているだけで、キリヤくんは何もしていないんです!」

 

「殲滅なんて、そんなのぶっちゃけあり得ないよ!」

 

ほのかとなぎさがその命令に反対し、他のプリキュア達も同意するように頷いた。

 

「ーーーー叔父さん」

 

「・・・・・・・・」

 

「頼むよ叔父さん。殲滅は、少しだけ待ってくれ」

 

輝二は嵐山司令に頭を下げた。

 

「駄目だよ輝二さん! 司令さんをおじさん呼ばわりしたら!」

 

「あれ? 知らなかったかいドリームガール。嵐山司令は輝二くんのお父さんの弟さん。つまり、輝二くんの叔父なんだよ」

 

「ええええええええええっ!?」

 

「そうだったんですかっ!?」

 

「いや、名字で分かるでしょうがっ!?」

 

のぞみとうららが驚き、りんがすかさずツッコミをいれた。

 

「うそっ!?」

 

「全然気づかなかったよ!」

 

「驚きもんだぁ!」

 

「めちょっく!」

 

「って、アンタらもかいっ!」

 

ラブ、みゆき、みらい、はなも驚き、他にも何人かのプリキュアが気づいていなかったのか、目を見開いており、りんが全方位にツッコミをいれた。

 

≪わぉっ! さっすがりんちゃん! プリキュア最強のツッコミ担当ッ!≫

 

ーーーーブー! ブー! ブー! ブー!・・・・。

 

『っ!』

 

とソコで、〈デッドマンズ〉発見の警報が、けたたましく鳴り響くと、一同が近くにあったPCの液晶を見ると、人々が逃げる姿が、PCのスピーカーから人々の悲鳴が響き、その人達を追うギフジュニア達と、『ブラキオサウルスの姿をした〈デッドマン(第一フェーズ)〉』と、キリヤの姿をしたカゲロウがいた。

 

「キリヤくん!」

 

「『ブラキオ』! 『ブラキオ』だっ! あれ回収してきて!」

 

「彼を助けたければ急げ!」

 

「ーーーー了解。行くぞお前ら」

 

『はい!/うん!/ええ!』

 

≪おっ楽しみの時間でーすっ!≫

 

「おっとその前に、持って行きたまえ!」

 

狩崎が調整を済ませた『バイスタンプ』を輝二に投げ渡すと、輝二はそれをキャッチし、プリキュア達と現場に向かった。

 

≪いやっほぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!≫

 

 

 

 

 

ー狩崎sideー

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

輝二達を見送ると、狩崎がスッと顔を引き締め、カゲロウの方にカメラをズームアップさせた。

 

「私の作った『ツーサイドライバー』。この間のホテルの戦いで彼の適合率を調べたら、“適合率96%”と、かなりの高さだったんだけどねぇ」

 

「・・・・食えない男だな」

 

嵐山司令はそう言い残し、狩崎のラボから離れた。

 

 

 

ー輝二sideー

 

「おらっ!」

 

「やぁっ!」

 

「ふっ!」

 

「はぁっ!」

 

「たぁっ!」

 

人々を襲うギフジュニア達に、輝二と〈フェニックス〉隊員達、いつきにゆり、アリスにいおなと言った生身でも戦える武闘派プリキュア達が応戦し、他のプリキュア達は避難誘導をする。

 

「キリヤくん! 何処なのっ!? キリヤくーん!!」

 

が、ほのかはキリヤを探して辺りに向けて声を発していた。

 

『ギフゥッ!』

 

そんな無防備にしていて、後ろからギフジュニアが襲い来る。

 

「ほのか―っ!」

 

「おりゃぁぁぁっ!!」

 

「往生せいやー!」

 

「てやぁぁぁぁっ!!」

 

『ギフゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 

が、なぎさと咲、あかねとなおがドロップキックを繰り出し、ギフジュニアが蹴り飛ばした。

 

『ギフッ! ギフッ! ギフッ!』

 

『ギィィィィィィィッ!!』

 

が、所々からギフジュニアが溢れるように、次から次へと出てきた。

 

「うわっ! まだ出たナリっ!」

 

「まるでアクションホラー映画に出てくるゾンビのようね・・・・!」

 

「止めてよこまちさん! ちょっとそう思ってたんだから!」

 

咲がゲンナリしたように言うと、こまちが神妙な顔で呟き、りんが怯えた顔でそう言った。

 

「お前ら! 行くぞ!」

 

「ほのか! しっかりして! 変身よ!」

 

「え、ええ!」

 

なぎさに声をかけられ、ほのかも頷く。

そして、ギフジュニアの一体殴った輝二も、リバイスドライバーを巻いた。

 

[レックス!]

 

「変身!!」

 

[バディアップ! オーイング! ショーニング! ローリング! ゴーイング! 仮面ライダー! リバイ! バイス! リバイス!]

 

「はっ!」

 

「ヤッホー!」

 

オーインバスター50・アックスモードを持ったリバイと、オストデルハンマー50を持ったバイスが、ギフジュニアを倒しながらブラキオ・デッドマンと交戦する。

 

「「デュアル・オーロラウェーブ!!」」

 

「ルミナス・シャイニング・ストリーム!」

 

「光の使者 キュアブラック!」

 

「光の使者 キュアホワイト!」

 

「輝く命! シャイニールミナス!」

 

変身したMHチームがギフジュニアを蹴散らしながら飛び出し。

 

「「デュアル・スピリチュアル・パワー」」

 

「花開け、大地に!」

 

「羽ばたけ、空に!」

 

「輝く金の花! キュアブルーム!」

 

「きらめく銀の翼! キュアイーグレット!」

 

飛翔しながらギフジュニアを倒すSSチーム。

 

「「「「「プリキュア・メタモルフォーゼ!」」」」」

 

「スカイローズ! トランスレイト!」

 

「大いなる希望の力! キュアドリーム!」

 

「情熱の赤い炎! キュアルージュ!」

 

「弾けるレモンの香り! キュアレモネード!」

 

「安らぎの緑の大地! キュアミント!」

 

「知性の青き泉! キュアアクア!」

 

「青い薔薇は秘密の印! ミルキィローズ!」

 

5GoGoがそれぞれのフルーレでギフジュニアを切り、ローズが一体殴ると、他のギフジュニアを十数体巻き込んで吹き飛んだ。

 

「「「「チェインジ・プリキュア! ビートアップ!」」」」

 

「ピンクのハートは愛あるしるし!もぎたてフレッシュ!キュアピーチ!」

 

「ブルーのハートは希望のしるし!つみたてフレッシュ!キュアベリー!」

 

「イエローハートは祈りのしるし!とれたてフレッシュ!キュアパイン!」

 

「真っ赤なハートは幸せのあかし!うれたてフレッシュ!キュアパッション !」

 

フレッシュチームが人々を襲うギフジュニアを倒す。

 

「「「「プリキュア! オープンマイハート!」」」」

 

「大地に咲く一輪の花! キュアブロッサム!」

 

「海風に揺れる一輪の花! キュアマリン!」

 

「陽の光浴びる一輪の花! キュアサンシャイン!」

 

「月光に冴える一輪の花! キュアムーンライト!」

 

ハートキャッチチームが自分達を覆うように迫ってきたギフジュニア達を、ダイナマイトで吹き飛ばす。

 

「「「「レッツプレイ! プリキュア・モジュレーション!」」」」

 

「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」

 

「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」

 

「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!」

 

「爪弾くは女神の調べ! キュアミューズ!」

 

スイートチームが五線譜と音符を撒き散らしながらギフジュニア達を凪ぎ払う。

 

[[[[レディー]]]]]

 

「「「「「プリキュア! スマイルチャージ!」」」」」

 

「キラキラ輝く未来の光! キュアハッピー!」

 

「太陽サンサン熱血パワー! キュアサニー!」

 

「ピカピカぴかりん、じゃんけんポン♪ キュアピース!」

 

「勇気リンリン直球勝負! キュアマーチ!」

 

「しんしんと降り積もる清き心! キュアビューティ!」

 

スマイルチームが変身すると、光と火と雷と風と氷でギフジュニアを倒す。 

 

「「「「プリキュア・ラブリンク!」」」」

 

「プリキュア・ドレスアップ!!」

 

[[[[LOVE]]]]]

 

「みなぎる愛! キュアハート!」

 

「英知の光! キュアダイヤモンド!」

 

「ひだまりポカポカ! キュアロゼッタ!」

 

「勇気の刃! キュアソード!」

 

「愛の切り札! キュアエース!」

 

トランプのマークを撒き散らしながら、ドキドキチームもギフジュニアを倒していく。

 

[[[[かわルンルン!]]]]

 

「「「プリキュア! くるりんミラーチェンジ!」」」

 

「プリキュア! きらりんスターシンフォニー!」

 

「世界に広がるビッグな愛! キュアラブリー!」

 

「天空に舞う蒼き風! キュアプリンセス!」

 

「大地に実る命の光! キュアハニー!」

 

「夜空にきらめく希望の星! キュアフォーチュン!」

 

次々と現れるギフジュニア達に、踊るように倒していくハピネスチャージチーム。

 

「「「キュアップ・ラパパ!」」」

 

「「ダイヤ!」」

 

「「ミラクル・マジカル・ジュエリーレ!!」」

 

「エメラルド! フェリーチェファンファン・フラワーレ!」

 

「ふたりの奇跡!キュアミラクル!!」

 

「ふたりの魔法!キュアマジカル!!」

 

「あまねく命に祝福を、キュアフェリーチェ!」

 

箒に乗って、高い所にいるギフジュニア達を相手取る魔法使いチーム。

 

「「「「「「キュアアラモード! デコレーション!」」」」」」

 

「ショートケーキ! 元気と笑顔を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアホイップ、できあがり!」

 

「プリン! 知性と勇気を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアカスタード、できあがり!」

 

「アイス! 自由と情熱を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアジェラート、できあがり!」

 

「マカロン! 美しさとトキメキを! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアマカロン、できあがり!」

 

「チョコレート! 強さと愛を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアショコラ、できあがり!」

 

「パルフェ! 夢と希望を! レッツ・ラ・まぜまぜ! キュアパルフェ、できあがり!」

 

アラモードチームはそれぞれのスイーツにギフジュニア達をデコレーションして倒していく。

 

「「「「「ミライクリスタル! ハート、キラっと!」」」」」

 

「輝くミライを抱きしめて!! みんなを応援! 元気のプリキュア! キュアエール!」

 

「みんなを癒す! 知恵のプリキュア! キュアアンジュ!」

 

「みんな輝け! 力のプリキュア! キュアエトワール!」

 

「「みんな大好き! 愛のプリキュア!」」

 

「キュアマシュリ!」

 

「キュアアムール!」

 

HUGっとチームが〈フェニックス〉隊員達に襲い来るギフジュニアを蹴散らす。

 

「1チーム足りないけど!」

 

『プリキュアオールスターズ!』

 

ブラックがボソッと呟くが、プリキュアオールスターズが揃った。

さらに出てくるギフジュニアを蹴散らしていく。

 

「おいおい! こんなに沢山現れて! “キリヤ(切りが)無いよ”!」

 

「っ!」

 

バイスの一言に、ホワイトはピクッ、と肩を震わせる。

 

「だけど! 文句言わずに、“キリキリヤ(キリキリ)と退治しないとねぇ”!」

 

「っ!」

 

「でも! “キリヤ(切りの)良い所で終わらせない”と、俺っちの体力が、“キリキリヤ(ギリギリ)になっちゃう”!」

 

「っ!」

 

「“キリヤ(キリッ)ッと”! カッコ良く倒しちゃおう!! “キリヤキリヤキリヤキリヤキリヤキリヤ”!」

 

「ちょっとバイス!」

 

「(ガン!)あいたぁ!」

 

キリヤキリヤと喚くバイスの頭に、ブラックが拳骨を振り下ろすと、そのままコブラツイストを繰り出した。

 

「さっきからわざとそう言う事言ってんのっ!?」

 

「あっ分かっちゃう?」

 

「分かるわこの!」

 

「ぐぇぇぇぇぇっ!ーーーーってああああああ! キリヤ!」

 

「バイス、流石にこれ以上言うのは・・・・」

 

「違うってルミナスちゃん! あれあれ! あっち!!」

 

バイスが指差すと、キリヤ<カゲロウ>がソコにいた。

 

「っ!」

 

と、ホワイトがこちらに向けて嘲笑を浮かべているキリヤ<カゲロウ>に気づく。キリヤ<カゲロウ>は笑みを浮かべたまま、その場からソッと離れる。

 

「キリヤくん!」

 

「ホワイト!」

 

「ありゃっ!?」

 

「待って下さい!」

 

ホワイトがそれを追いかけ、バイスを離したブラックとルミナスが追いかける。

 

「おいお前ら!(ドンッ!)うおわっ!!」

 

ブラキオ・デッドマンと戦っていたリバイが、突然後ろから衝撃が走り、吹き飛んで転がる。

 

「輝二さん!」

 

「大丈夫!?」

 

ブルームとイーグレットが駆け寄り、リバイは頭を振りながら衝撃の先を見るとーーーー神話に出てくるミノタウロスのような容貌をした、“バッファローの姿をしたデッドマン”、それも、『第2フェーズ』に到達していた個体がいた。

 

『ーーーーヌォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!!』

 

バッファロー・デッドマンは、雄叫びをあげ、片足でアスファルトを砕きながら擦ると、闘牛のような勢いで突撃してきた。

 

「離れろブルーム! イーグレット! ぬぉおっ!! のわぁああああああああああっ!!」

 

角を突き出して突撃してくるバッファロー・デッドマンの角を掴んで、リバイが止めようとするが、あまりのパワーにアスファルトをギャリギャリに砕きながら押し出される。

 

『フンッ!!』

 

「うおっと!」

 

バッファロー・デッドマンが頭を振り上げると、リバイを突き上げるが、リバイはヒラリと着地した。

 

「っと!ーーーーまた新しいデッドマンかよ・・・・!」

 

『・・・・久しいなぁ! 我が宿敵よ!』

 

「・・・・誰だお前?」

 

「・・・・その声、まさかオオムカデ・デッドマンのっ!?」

 

リバイは気づかなかったが、イーグレットは声で気づいたようだ。

 

『その通り! さぁ我と決着ーーーー』

 

「っと、こんなのどうでもいい。ブラック達を追うぞ」

 

『ーーーー僕を無視するなぁああああああああああああああああああっ!!』

 

完全に眼中に無いと言わんばかりのリバイの態度に、バッファロー・デッドマンは憤慨し、再び突撃してくる。がーーーー。

 

「「「「はぁぁぁぁっ!!」」」」

 

『ぐぉわっ!!』

 

フレッシュチームが蹴りを放ち、バッファロー・デッドマンズを転がす。

ブラキオ・デッドマンを押さえていたバイスが声を発する。

 

「ここは俺っち達に任せて! アイツらを追え!」

 

「任せたバイス!」

 

「「任せたバイス!」」

 

リバイとブルームとイーグレットが、ブラックとホワイトとルミナスを追った。

 

 

 

 

 

 

ーバイスsideー

 

ブラキオ・デッドマンを殴ったバイスが、あらぬ方向に顔を向けて喋る。

 

「ハァッ! 全世界のバイスファンの皆様、お待たせ致しました! 遂にこの作品の真の主人公! 仮面ライダーバイスの出番です! 今から俺っちが、超カッコいい姿見せるから、SNSで拡散ヨロシク! ハッシュタグは、『#ナイスバイス』! ハハッ!」

 

「ーーーー誰に喋ってんのよ?」

 

ルージュがツッコムが、ブラキオ・デッドマンが迫ってくる。が、バイスはオーインバスター50・アックスモードを持って、ガンデフォンで自撮りする。

 

「いつ見てもイケメン。撮っちゃお。ウハハッ!」

 

ガンデフォンで撃ち、オーインバスターの刃をブラキオ・デッドマンに叩きつける。

 

「ハァッ! ハハッ、俺っちスーパースター!」

 

『グァアアアッ!!』

 

バイスの動きに、ブラキオ・デッドマンは翻弄され倒れると、次に近くの車に近づくと、オストデルハンマーを取り出す。

 

「お待たせしました。オストデルハンマー!」

 

[レッツイタダキ!]

 

バイスはオストデルハンマーを起動されると、車をポコン、と叩き、

 

[車!]

 

「イタダキ!」

 

車の能力を読み込んだオストデルハンマーを持って、その場で独楽のような大回転をしながら、ブラキオ・デッドマンとバッファロー・デッドマンを叩きつける。

 

『『グァアアアアアアアアアアアッ!!』』

 

[ドライブ印! オストデルクラッシュ!]

 

「スゴい!」

 

「やるやんけバイス!」

 

マーチとサニーが褒めると、バイスはリバイスラッシャーを持った。

 

[リバイススラッシャー!]

 

「最後はリバイスラッシャーで、トドメだ~!」

 

リバイスラッシャーの刀身が輝き、バイスはブラキオ・デッドマンとバッファロー・デッドマンを交互に切りつけていく。

 

[リバイバイスラッシュ!]

 

「スラッシュ! スラッシュ! スラッシュ!!」

 

『『ギャァァァァァァァァァァァァァァッ!!』』

 

「あっ決まった!!」

 

倒れる二体を見て、バイスは歌舞伎のような振り付けでポーズを決めた。

 

『ち、調子に(シュルン!)なっ!?』

 

起き上がるバッファロー・デッドマンの身体に蜘蛛の糸が絡み付いた。

 

「あっ、誠司!」

 

糸の先にいたのはデモンズであった。

 

「誠司! 来るの遅いよ!」

 

「悪い! なのはさん達と一緒に向かってたんだけど! 途中で別のデッドマンが襲い掛かってきて遅れた!」

 

「えっ? 別のデッドマン?」

 

「あぁ! 今はなのはさん達が相手をしている! 『クジラ』と『コヨーテ』と『ゾウ』に『アルマジロ』だ!」

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

「アクセルシューター! シュート!」

 

「フォトンランサー!」

 

『っ!』

 

なのはとフェイトが魔力弾を『コヨーテ・デッドマン』に魔力弾を放つが、コヨーテ・デッドマンはフェイト並のスピードで回避していく。

 

『クゥオオオオオオオオッ!!』

 

「うわっ!」

 

「ふっ!」

 

はやてとアインスはクジラ・デッドマンの頭から噴射される凄まじい潮を回避すると、潮が当たった箇所が溶けていく。

 

『パォォォォォォォォッ!!』

 

『ヌゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 

『くっ!』

 

身体を丸めたアルマジロ・デッドマンを持って、ヴォルケンリッター達に投げつけるゾウ・デッドマン。

そのデッドマン達の近くでは、〈デッドマンズ〉の信者と思しきフードを被った四人の女性よ契約者達が、その場で笑みを浮かべていた。




オリジナルデッドマン。コヨーテ。クジラ。ゾウ。アルマジロ。オルテカが選んだ欲望が強い四人の女性により構成されている。


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天の道を行くオオムカデ

ーリバイsideー

 

「ーーーーキリヤくん! キリヤくん!!」

 

「おいホワイト!」

 

「ブラック!」

 

「ルミナス!」

 

ブラック達に追いついたリバイとブルームとイーグレット。

 

「落ち着けホワイト! 冷静さを失えば、カゲロウは容赦なくソコを突いてーーーー」

 

リバイがそう忠告しようとしたその瞬間。

 

『ギフゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!』

 

ギフジュニアがまたウジャウジャと出てきた。

 

「ちっ! また出やがったっ!!」

 

「もうしつこい!」

 

「このっ!」 

 

「ふっ!」

 

「どいて! あなた達に構っていられないの!」

 

応戦するリバイとプリキュア達。ホワイトが激しく戦った。

 

『グォォォォォォッ!!』

 

「輝ニ! ソッチに逃げちゃったよぉ!」

 

バイスに追い詰められたブラキオ・デッドマンが逃げ込んで来た。

 

「っ! ブラック!」

 

「うん!」

 

「「『プリキュア・マーブルスクリューマックス』!!」」

 

『グガァァァァァァァッ!!』

 

ーーーーチュドォォォンッ!!

 

「あぁっ! 美味しいとこ取られたっ!!」

 

ブラキオ・デッドマンが撃破され、バイスが悲鳴を上げた。

程なくして、ギフジュニアも全滅させたが、キリヤ‹カゲロウ›は見つけられず、なのは達の方でも、デッドマン達に逃げられたようだ。

 

 

 

 

 

ーカゲロウsideー

 

そして、元の廃工場に戻ったカゲロウは、ボロボロの大学生達を壁に寄り掛からせて殴る。

 

「おい。まだ壊れるなよ。まだまだお前達には働いて貰うからなぁ?」

 

「か・・・・勘弁、してくれよぉ・・・・」

 

「た、助けてくれぇ・・・・」

 

「お願いだよぉ、頼むよぉ・・・・!」

 

大粒の涙を流して命乞いする三人を、カゲロウは嘲笑する。

 

「何言ってんだよ? お前らが今までイジメてきてた奴らが今のお前らのように必死に泣きついてきた時、お前らは勘弁したり、助けたり、やめたりしてたのか?」

 

「「「うぅ・・・・!!」」」

 

してこなかった。まるでゲームでもするかのように高校時代から今までイジメをしてきて、大学で自殺者まで出した。だが、彼らは反省する事なく、「ちょっとやりすぎた」だの、「お互い若かった」だの、「命の尊さを学んだ」だのとゲラゲラ笑って過ごしてきたのだ。

自分達も、このまま目の前の少年に殺されると思うと、最早恥も外聞もなく、泣き出すしかなかった。 

 

《ーーーーカゲロウ!》

 

と、そんなカゲロウの脳裏に、キリヤの声が響いた。カゲロウが地面に落ちている大きめの割れたガラスに近づいて自分の姿を映すと、ソコにこの身体の本来の持ち主であるキリヤが映っていた。

 

「よぉキリヤ。見たかぁ? コイツらの惨めな姿? こうして見ると思わねえかぁ? 人間って、"本当にくだらない生き物"だってなぁ? 自分達が優位な立場なら弱い者いじめを平然と行い。自分達が不利になれば被害者面して惨めに命乞いをする。全く度し難く愚かな生き物だろう?」

 

《・・・・これから、お前は何をするつもりだ!?》

 

キリヤはカゲロウの言葉に反応せず、目を鋭くして睨んだ。が、カゲロウはニィッと笑みを浮かべて、ブラキオ・デッドマンを一瞥してから、『ブラキオバイスタンプ』を起動した。

 

[ブラキオ!]

 

「くくくく、もっと面白い事をだよ」

 

《さ、させないっ!》

 

キリヤが目を鋭くして睨むと、バイスタンプを持っていた手がプルプルと震える。

 

「・・・・はっ、流石は元〈ドツクゾーン〉の幹部。ーーーーだが、もう鬱陶しいんだよっ!!」

 

ーーーーガジャァァァンンッ!

 

カゲロウがガラスを踏みつけると、ガラスは粉々になり、キリヤの姿が消えた。

 

「フフフフッーーーーはっははははははははははははははははは・・・・!!」

 

カゲロウが声高らかに笑い声をあげると、三人の大学生達は完全に脅えきってしまい、失禁までしてしまった。

 

 

 

 

 

 

ーゆいsideー

 

その頃、ノーブル学園の図書館。ゆいは一人、勉強に勤しんでいた。あの温泉旅行での一件以来、はるか達が自分をガードするようになっているが、若干居心地悪く思っており、気分転換も兼ねて図書館に来ていたのだ。

 

「七瀬さん?」

 

「あっ、牛島先輩」

 

と、そこで、みなみと同じクラスの先輩、牛島翔が話しかけてきた。

 

「この間は、お互い大変だったね。まさかあんな怪物が現れるなんて」

 

「そう、ですね・・・・」

 

この間、つまり温泉旅行の事だろう。

だが、ゆいにとって忘れていた家族との思い出が蘇ってしまったのだ。

 

「七瀬さん。何か辛い事でもあった?」

 

「えっ、な、何でですか?」

 

「いや、顔色があんまり優れてなかったから・・・・。何か海藤会長達にも相談できない事があるなら、僕で良ければ愚痴の相手くらいにはなるよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ゆいはペコリと会釈すると、翔は手を小さく振って背を向けて離れた。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

が、背を向けた瞬間、ゆいに向けて目を細めていたのに、誰も気づかなったが。

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

そして、その場を解散した輝ニが事務所兼自宅に戻ると、その前に狩崎が待っていた。二人(三人?)は事務所に入り、コーヒーを飲みながら会話を始める。

 

「〈フェニックス〉は、入澤キリヤを殲滅対象にしたよ」

 

「やっぱり、な」

 

「例え、世間から言わせれば"人間のクズ"と呼べるような人間でも、無理矢理に悪魔を生み出させるのは容認できないからね」

 

既に輝ニと狩崎は、カゲロウがブラキオ・デッドマンの契約者にした人間達の事を知っている。正直腐った生ゴミのような人間だ。憐憫の情など欠片も湧いてこない。因果報応としか思えない。

しかし、契約者達はどうでも良いが、入澤キリヤを殲滅する事には、輝二は渋面を作った。

 

「プリキュアの子達には言わない方が良いな。余計に話が面倒になる」

 

「そうだねぇ。私としても、彼女達とは"まだ"、仲良くしておきたいしねぇ」

 

それだけ言うと、狩崎は帰っていき、輝二は事務所の上の自宅に戻り、一時間程お風呂に入ってから上がり、パジャマに着替えると、コーヒー牛乳のカップを丸々一つ一気飲みしてから、ソファに寝転んだ。

 

「ふぅ・・・・」

 

《あのキリヤってヤツはさ。カゲロウに本当に乗っ取られてるのかなぁ?》

 

「さぁな。雪城達はそう思ってるようだけど」

 

《輝二はさぁ、アイツがもう助けられないって状況になったら、どうする?》

 

「・・・・その時は、アイツらに代わってーーーー俺が始末を付ける」

 

『決意』と『覚悟』の炎を宿した瞳になった輝二はそう言うと、持っていたパックを握り潰した。

 

 

 

 

 

 

ーカゲロウsideー

 

『フォォォォォっ!!』

 

「きゃー!」

 

「わー!」

 

翌日のオフィス街。カゲロウはブラキオ・デッドマン(ブラキオサウルスの首から突き出た骨がチェーンソーになっていた)とギフジュニア軍を引き連れ、暴れさせていた。辺りには破壊された残骸と逃げ惑う人々が走り回り、一種の地獄絵図と化していた。

 

「キリヤ。これがアイツらの墓場だ。フッ・・・・"もう聞こえないか"」

 

「ハアーッ! ヤアッ!」

 

「「たぁっ!」」

 

ブラキオ・デッドマンが逃げ遅れた女性二人に襲い来るが、デモンズ‹誠司›とラブリーとフォーチュンが駆けつけ、ブラキオ・デッドマンを殴りつけた。

 

「逃げてください!」

 

「早く!」

 

「「は、はい!」」

 

ハニーとプリンセスが女性達を逃がすと、デモンズはカゲロウを睨みつける。

 

「カゲロウ! 罪のない人達に手を出すな!」

 

デモンズがカゲロウに向かおうとするが、ブラキオ・デッドマンが邪魔をした。

 

「っ! 邪魔すんなっ!」

 

が、デモンズは空手で殴り飛ばした。

 

「お前は俺が倒す!」

 

「お呼びじゃないんだよ」

 

『フォォォォォッ!』

 

カゲロウがそう呟くと、カゲロウの後ろから新たなブラキオ・デッドマンB(ブラキオサウルスの骨格を模したキャノン砲になっている)がデモンズに襲いかかる。

 

「えっ!? ブラキオ!?」

 

「どうなってんのっ!?」

 

「いや待て! あのブラキオ、一体目と武器が違っているっ!」

 

「もしかして、複数の人にバイスタンプを使うと、細部が違うけど、同じデッドマンが生まれるのっ!?」

 

ラブリー達が驚くが、デモンズの加勢に向かおうとする。

が、

 

『フォォォォォ!』

 

ブラキオ・デッドマンBがキャノン砲から砲弾を放つ。

 

『きゃぁぁぁぁぁっ!!?』

 

ハピネスチャージチームがゴロゴロと転がると、ギフジュニア達が群がってきた。

 

「ラブリー! 皆!」

 

デモンズが駆けつけようとするが、

 

『フォォォォォッ!』

 

「ああっ! ぐあぁーっ!」

 

物影から三体目のブラキオ・デッドマンC(ブラキオの首ではなく、緑色のドリルを備えた)が現れ、ドリルで突進してデモンズを飛ばす。

 

「ぐっ! 三体目だとっ!?」

 

『『『フォォォォォッ!!』』』

 

咆哮を上げなから、チェーンソーとドリルを鳴らしながら、デモンズに襲い来るブラキオ・デッドマン達。

 

「セイヤッ!」

 

「ソイヤッ!」

 

『はぁぁっ!』

 

リバイが蹴りをバイスが頭突きで、ブルームとイーグレットのキックで、三体のブラキオ・デッドマンを吹き飛ばし、ハピネスチャージチームに群がりそうになったギフジュニア達を、MXチームとスイートチームとHAGっとチームが蹴散らした。

 

「よぉ! リバイス!」

 

「カゲロウ! キリヤくんを返しなさい!」

 

「同じ悪魔として、何かアイツ嫌い!」

 

リバイスとブラックとホワイトとルミナス、ブルームとイーグレットがカゲロウを睨みつけ、ホワイトとバイスが声を発する。

 

「キリヤなら、粉々に砕け散ったよ。お気の毒♪」

 

[バッド!]

 

カゲロウは『バッドバイスタンプ』を起動させ、ツーサイドライバー押印した。

 

[コンファームド!]

 

カゲロウの影から無数の蝙蝠が周囲を飛び交う。

 

「くっ!」

 

「うわぁっ!」

 

『きゃぁっ!!』

 

リバイスめプリキュア達もたじろぐが、カゲロウは両手を交差させて声を発する。

 

「変身」

 

バッドバイスタンプをツーサイドライバーのエビルブレードに装填した。

 

[Eeny meeny miny moe! Eeny meeny miny moe!]

 

蝙蝠がカゲロウを覆うように飛び交うと、カゲロウはエビルブレードを取り外し、引き金を引いた。

 

[バーサスアップ! バット!]

 

スタンプの中のカゲロウが、緑色の液体に包み込まれその身体が変化しる。

 

「はぁっ!」

 

[仮面ライダーエビル! ハッハハー!]

 

中からスタンプを切り裂いて、仮面ライダーエビルとなって現れた。アーマーの一部がジッパーのようになり、そのジッパーが閉じた。

 

『さぁ、真っ黒に染まりなっ!』

 

「「たぁっ!」」

 

リバイスが無防備のエビルに拳を叩きつけた。エビルはアッサリ倒れると、バイスが胸倉を掴んで立ち上がらせて、殴り続ける。

 

「へへへへへへへへ! お前なんか、ギッタギタのメッタメタにしちゃうんだからね!」

 

しかし、その拳をエビルが掴んだ。

 

「いいぞぉ! 痛みを感じる・・・・この身体は、俺の物だぁ!」

 

「のわぁぁぁぁっ!!」

 

エビルブレードでバイスを斬りつけてから、腹部を蹴り飛ばした。

 

「バイス!」

 

「コイツ! メッチャ強くなってるよ!」

 

「っ! 行くぞ!」

 

「っ!」

 

リバイがエビルに向けて駆け出すと、ブラック達とブルーム達も続く。

 

「さぁ! もっと楽しもうぜ!」

 

[ジャッカル!]

 

エビルは『バッドバイスタンプ』を取り外し、『ジャッカルバイスタンプ』を装填し、引き金を引いた。

 

[バーサスアップ!]

 

エビルの背後にジャッカルの紋章が浮かび、黒い靄と共に黄色い光にエビルが包まれ、

 

[Feel<フィール>! athrill<アスリル>! Spiral<スパイラル>! 仮面ライダーエビル!ジャッカル!]

 

『ふふっ、真っ黒に染まりな。シャァっ!』

 

〈仮面ライダーエビル・ジャッカルゲノム〉へと変わると、加速してリバイとブラック達とブルーム達を斬りつける。

 

「うあっ!」

 

『きゃぁっ!』

 

切りつけられた六人は地面に転がるが、すぐに立ち上がり、エビルと交戦した。

 

 

 

 

 

 

ーデモンズsideー

 

「輝二さん! バイス! うわっ!」

 

加勢に行こうとするデモンズだか、ブラキオ・デッドマンAに邪魔され、ラブリー達と協力しながら戦う。

メロディ達がブラキオ・デッドマンBの砲弾を回避し、HUGっとチームがブラキオ・デッドマンCのドリルの突進を回避していた。

 

 

 

 

 

 

ーリバイsideー

 

「「はぁっ!」」

 

ブルームとイーグレットがキックを繰り出すと、エビルはそれを回避し、その身体にホワイトがしがみつく。

 

「キリヤくん! キリヤくん! 聞こえてるのっ!? 絶対助けるから!」

 

「離せ!」

 

エビルがエビルブレードを突き刺そうとするか、その腕をブラックがしがみついて止めた。

 

「キリヤくん! ほのかが待ってるよ! 目を覚まして!」

 

「っ! 気持ち悪いんだよっ!」

 

[必殺承認! ジャッカル! ダークネスフィニッシュ!]

 

ブラックを振り払うと、加速して動き、ブラックとホワイト、ブルームとイーグレットを斬りつける。

 

『きゃぁああああっ!!』

 

「皆さん!」

 

「よくも可愛子ちゃん達を! 許さないもんね!」

 

「これで行くか!」

 

ブラック達とブルーム達が柱や地面に叩きつけられて倒れる。

リバイが『オオムカデバイスタンプ』を取り出し起動させた。

 

[オオムカデ!]

 

「ハァ・・・・ふっ!」

 

ドライバーに押印した。

 

[Come on! オ・オ・オオムカデ! Come on!オ・オ・オオムカデ! Come on! オ・オ・オオムカデ!]

 

ーーーー悪魔が言うぜ、オレっち達が全てを司ると。

 

ーーーーそれ悪魔の囁やきだろうが。身の破滅だろうが。何処の支配者気取りだ?

 

ーーーーくくくく、今のオレっちは俺様な気分よ。

 

ーーーー調子乗るな。

 

ーーーー(ポカっ)痛い!

 

LINEが展開され、バイスがスタンプを叩きおろし、リバイと中に入った。

 

『あっそぉれ!』

 

[バディアップ!]

 

スタンプの中でリバイの身体が変わる。

 

[土の中で! Got it! 顎が進化したぜ! オオムカデ! ワンハンドレッド! ライダーキック!]

 

スタンプが砕けて出てくると、リバイはの身体に重厚なアーマーを纏い左肩のアーマーに『オオムカデ』の紋章があり、頭のVの字アンテナにはバイスの顔があった。

 

「ふっ」

 

リバイスは天に向かっで片手を上げ、指を突き立てた。

 

「「あぁぁぁぁ〜・・・・!」」

 

ブルームとイーグレットが、そんなリバイスを見て、「それ違うでしょ!」と、ツッコミの姿勢をしながら身悶えていた。

 

『そんな重そうな身体で、俺を捉えられるかよっ!』

 

エビルが加速し、リバイスのアーマーを斬りつける。

 

「・・・・で?」 

 

が、リバイスはまるで効いていないと不動の姿勢だった。

 

『ちっ、頑丈さだけは取り柄か?』

 

「それだけじゃないんだよ!」

 

[リミックス!]

 

リバイスはバイスタンプを倒し、リミックスを起動させた。

 

「皆! 無事!?」

 

「なのはさん!」

 

「フェイトさん!」

 

「はやてさん!」

 

空から、なのはとフェイトてはやてが降りてくると、リバイスが纏っていたアーマーが解除され浮き出る。

 

[バティアップ! 必殺! 拘束! 猛毒! オオムカデ!]

 

「フッ!」

 

リバイスが纏っていたアーマーが吹き飛び、エビルへと当たっていく。

 

『ぐぅっ!!』

 

アーマーから出たのは、リバイのカラーリングをしたシャープな姿で、顔は何処となくカブトムシを連想されるようだが、角はムカデとなっており、吹き飛んだアーマーが集まるとムカデの形となった。

 

「俺が望めば、天は俺に味方する」

 

「イエーィっ! 俺っち達が、全てを司るもんね!」

 

「「あぁぁぁぁ〜!!」」

 

新たな姿〈仮面ライダーリバイス・オオムカデゲノム〉となったリバイスに、S☆Sチームがまた身悶える。

 

「「「ひぃっ! ム、ムカデーーーーっ!?」」」

 

なのはとフェイトとはやては、ムカデの姿になったバイスを見て、顔面が蒼白になり、ガタガタと小刻みに震えていた。

 

「あれ? なのはさん達どうしたの?」

 

[マスター達はムカデが苦手なのです。『鬼教官』を思い出すので]

 

ブラックの問いにレイジングハートがため息を混じりに応えた。

 

『ーーーーフッ!』

 

「っ!」

 

エビルが加速すると、リバイも加速すると、

 

ーーーーガキン! ガキン! ガキン!・・・・。

 

「は、速いっ!?」

 

時空管理局最速と謂われるフェイトも目を見張る程のスピードで戦う二人。

 

「バイスっ!」

 

「よっしゃ!」

 

リバイの身体に巻き付いていたバイスが、リバイの腕に絡みつくと、リバイはその拳をエビルブレードを突き立てようとするエビルに、カウンターで叩き込む。

 

『がっ!』

 

エビルは両足が地面から離れ、吹き飛ぶと、リバイスは加速し、エビルの後方につきバイスを足に巻き付けると、その足で飛んできたエビルの背中に蹴りを叩き込む。

 

「ふっ!」

 

『ガハッ!』

 

「行けバイス!」

 

「おっ任せ!」

 

足から離れたバイスが身体を伸ばし、エビルの身体に巻き付いた。

 

「おりゃぁっ!! 締め付けじゃーいっ!」

 

『ぐぅっ!!』

 

「これで、終わらせる!」

 

[オオムカデ! スタンプフィニッシュ!]

 

リバイはドライバーのスタンプを操作すると、右足にバイスタンプのエネルギーを纏い。

 

「そりゃあ!」

 

バイスが身体をしならせ、リバイの方へ巻き付いたままのエビルを引き寄せた。

 

「・・・・・・・・はぁっ!!」

 

引き寄せられたエビルに、リバイがバイスタンプのエネルギーを纏った足で回し蹴りをエビルに叩きつけた。

 

『ぐわぁあああああああああああああっッ!!!』

 

ーーーーチュドォオオオオオオオオオオンンッ!

 

「よっと」

 

エビルに巻き付いていたバイスがリバイの元に戻った。

 

『がぁっ!! ぐぅぅぅぅぅぅぅ・・・・!』

 

バットゲノムに戻ったエビルは、地面をゴロゴロと転がる。

 

[リバイスラッシャー!]

 

レックスゲノムに戻ったリバイス。リバイはリバイスラッシャーを構え、エビルの喉元に突き立てた。

 

「ーーーーくっ」

 

「エビルーーーーいや、カゲロウ。その身体からさっさと出ていけ。さまなくば、こちらも相応の対応をさせてもらう」

 

「輝二さん!」

 

「ちょっと! キリヤくんを助けるのに協力するって言ってたでしょうっ!?」

 

「ーーーー確かにそう言った。だが、コイツはあまりにも危険過ぎる。このまま放置していても迷惑だ。ならば、始末を付ける」

 

リバイスがリバイスラッシャーを持ち上げた。

 

「さて、カゲロウ。返答は?」

 

「ーーーーやれるものなら、やってみろよ! 嵐山輝二ッ!!」

 

「ーーーーそうかいっ!!」

 

『ダメーーーーーーーーーーーーーーーっっ!!!』

 

ホワイト達やなのは達が静止する声が響くが、リバイは構わず、リバイスラッシャーをカゲロウへと振り下ろしたーーーー。

 




〈仮面ライダーリバイス・オオムカデゲノム〉
変身すると、仮面ライダーカブト・マスクドフォームのような重厚なアーマーを装備し、リミックスするとアーマーがパージされ、アーマー‹バイス›がオオムカデの形になる。パージされるとカブトのライダーフォームと似た形で、角はムカデにり、フェイトの『真ソニックフォーム』以上の速度で加速する。オオムカデとなったバイスを腕や足に巻きつけて武具のようになる。


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痛い敗退 再び決意

ーバイスsideー

 

《へい! 皆元気かぁ〜い! 俺っちバイス! 超絶イカした悪魔だぜぇ! ちょいとここまでのおさらいだぜ!》

 

思念体のバイスが騒ぎながら、これまで経緯を説明する。

 

《父ちゃんと兄ちゃんを〈デッドマンズ〉に殺された輝二は、〈仮面ライダーリバイス〉として戦っていた! その最中、可愛子ちゃんばかりのプリキュアちゃん達! 美味しそうな〈時空管理局〉の魔導士ちゃん達! あと〈フェニックス〉の連中と、仮面ライダーデモンズになった誠司と一緒に戦ってたんだけど! そんな俺っち達の前に、以前ぶっ倒したバイスタンプに宿る悪魔カゲロウが、なぎさちゃんとほのかちゃんの友達、キリヤってヤツに取り憑いて、〈仮面ライダーエビル〉となって俺っち達の前に現れやがった! しかも! ソイツのせいで輝二の生き別れの妹のゆいちゃんに、輝二と兄妹だってバレちゃうし、カゲロウが好き放題暴れるわで、もうシッチャカメッチャカ! 決着を着けようと挑んだけど!》

 

 

 

* * *

 

 

 

【はぁっ!!】

 

【ダメーーーーー!】

 

リバイがリバイスラッシャーを振り下ろし、ホワイトとブラックが止めようと走り出すが、バイスが抑える。刃がエビルの頭部を切り裂こうとした。

ーーーーが、

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・】

 

【・・・・・・・・・・・・・・・・ふっ】

 

 

エビルに刃が触れる寸前、リバイはスラッシャーをピタッと止めた。

 

【チッ、出てこねえか】

 

【俺がビビッてキリヤの身体から脱出するのを期待したようだがーーーー残念だったなぁ!】

 

エビルブレードでリバイスラッシャーを弾くと蹴りを叩き込み、リバイが体制を僅かに崩す隙を突いてすぐに起き上がり、ジャッカルゲノムの加速でリバイの身体を斬りつける。

 

【ぐぅああああぁぁぁっ!!】

 

【輝二っ! あっ!】

 

【『輝二さん! バイス!』】

 

連続で斬りつけられ、リバイは変身が解除されバイスも姿を消した。

プリキュア達となのは達が駆け寄ろうとしたその瞬間、

 

【ヌゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!】

 

【『きゃぁぁぁぁっ!!』】

 

バッファロー・デッドマンが横から突進してきて、行く手を遮る。

 

【くっ! (ドンッ!)ぐはぁっ!!】

 

あお向けに倒れる輝二の腹に、エビルが踏みつけるように足を乗せて動きを止めると、見下すように視線を向ける。

 

【どうだ嵐山輝二? こうも簡単に叩きのめされる気分は?】

 

【ぐぅ・・・・! カ、カゲロウ・・・・! 何故、そこまで俺を執拗に攻撃、するんだ・・・・!】

 

【あぁん?・・・・そうだなぁ、テメェにはちょっとした『恨み』があるんだなぁ!】

 

エビルは物思いに耽るように顎に手を当ててそう言った。

 

【う、恨み? まさか、あの戦いでの・・・・】

 

【それよりも前からあるんだよ!】

 

輝二の腹を力強く踏みつける。

 

【ぐはっ!!】

 

【《この野郎! 輝二をイジんなぁ!》】

 

思念体のバイスが、エビルの顔面を何度も殴りつけるが、実体の状態では触れる事ができず、エビルに認識されてすらいない。

 

【輝二さん!】

 

イーグレットが駆け出そうとするが、今度はギフジュニアがワラワラと出てきて、イーグレット達となのは達を遮る。

 

【さて、お前の方が終わりーーーーだなぁ!】

 

エビルがエビルブレードを輝二に振り下ろそうとする。

 

【っ・・・・!】

 

輝二は、胸元から"細いチェーンにくくられたリング"を引き千切り、指に嵌めて力を込めようとしたその瞬間ーーーー。

 

【オラァァァァァァァァァァッ!!】

 

【っ! ぐわぁっ!!】

 

何と、横からエビルに向かって突進してきたバッファロー・デッドマンによってエビルは突き飛ばされ、柱に叩きつけられると地面に落ちた。

 

【っ、よっと!】

 

【輝二さん!】

 

輝二はその隙を逃さず、即座に起き上がって体勢を整えると、すぐにルミナスが駆け寄り、治癒を施す。

 

【・・・・おい、元ムカデの牛。どういうつもりだ?】

 

【仮面ライダーリバイスは、我が倒すべき宿敵。貴様のよえな寄生虫悪魔にやらせる訳にはいかん】

 

エビルはエビルブレードを構えると、バッファロー・デッドマンも、斧のような武器を構える。

 

【調子こいてんじゃあねえぞ・・・・。この中二イカレ野郎!】

 

【我は我の道をゆくのみ!】

 

輝二達をそっちのけで、戦いを始めるエビルとバッファロー・デッドマンがその場から離れていく。

 

【キリヤくん!】

 

【ホワイト! ここは引こう!】

 

エビルの方に駆け出そうとするホワイトの手をブラックが握って止めた。

 

【離してブラック! キリヤくんが! キリヤくんが!!(パシンっ)っ!】

 

振り払おうとするホワイトの頬に、輝二が平手打ちをした。

 

【頭冷やせ雪城ほのか。冷静さを抜いた今のお前じゃ、入澤キリヤってヤツを助けられねぇ! ブラック! ルミナス! 連れて行け!】

 

【う、うん!】

 

【は、はい!】

 

ブラックとルミナスがホワイトを連れていき、ブルームとイーグレットに連れられながら輝二も引き、なのは達はギフジュニア達を抑えていた。

 

【(・・・・バイス。どうだった?)】

 

【《おうよ! バッチリだぜ!》】

 

そんな中、輝二とバイスがコッソリと話をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

ーデモンズsideー

 

 

ブラキオ・デッドマンデモンAと交戦していたデモンズが、ドライバーにスパイダーバイスタンプを押印した。  

 

【[Charge!] 】

 

【ふっ!】

 

【 [デモンズフィニッシュ!] 】

 

デモンズの背中から赤い蜘蛛の足を生えて飛び上がり、右足に囲って飛び蹴りを放つ。デモンズの蹴りを叩き込んだ。

 

【でりゃっ!!】

 

【『グギャァァァァっ!!』】

 

ーーーー【デモンズフィニッシュ】

 

ヒットした際に、赤い蜘蛛の巣が浮かび爆発した。

 

【愛の光を聖なる力に! ラブプリブレス!】

 

【勇気の光を聖なる力へ! ラブプリブレス!】

 

【【あなたにハッピー! お届けデリバリー! ハァァァピィィィィ!!】】

 

ラブリーとプリンセスが『ラブプリブレス』を操作し、ハートと円のエネルギーを作り、合わさるとブラキオ・デッドマンBに向けてシュートした。

 

【【プリキュア! ツインミラクルパワーシュート! ハピネスチャージ!!】】

 

【『ガァァァァっ!!』】

 

ブラキオ・デッドマンBは爆散した。

 

【【【【【プリキュア! チアフルアタック!】】】】】

 

チアフルスタイルとなったHUGっとチームが、ミライパットにメモリアルパワーを注ぎ込み、巨大な6個のハートのエネルギーが繋がって1つの花のようになって、ブラキオ・デッドマンCに飛んでいき、浄化した。

 

【『グゥゥゥゥっ!!』】

 

浄化されたブラキオ・デッドマンCが消えた。

 

【相楽! プリキュア! ここは退くぞ!】

 

ヒトミからの指示で、デモンズとプリキュア達はこの場から去っていった。

 

 

 

 

 

* * *

 

 

 

 

 

ーバイスsideー

 

《んで! ブラキオのデッドマンをやっつけた誠司達も一緒に、〈フェニックス〉のスカイベースのカリちゃんの研究室に戻った俺っち達! んもう皆の雰囲気がお通夜になっちゃってんのよ!》

 

バイスがそう言うと、ひかりと舞に包帯を巻いてもらっている輝二。深刻な状況に、誰しもが声を発せずにいた。

 

《はーい! では暇つぶしに、なぎさちゃんの頭の中を覗きまーす! へへ・・・・それではいってみよう!》

 

バイスがなぎさの頭の中に入ると、脳の中らしき場所に行き。

 

《あっ! なぎさちゃん発見! って、ええっ!?》

 

《うぅっ! うっ! わぁーん!》

 

《えぇっ!? なぎさちゃん号泣!?》

 

何と、なぎさの心は涙を流していたのだ。

 

《はい報告! 悔しくて、マジ泣きしてました! ふぇぇぇん!》

 

バイスがなぎさの中から出てきて泣き真似をする。

そんな中、狩崎が口を開く。

 

「カゲロウは入澤キリヤくんの身体で、一般人に被害を出している。これ以上はもう擁護できないね」

 

「っ! それって、どういう事? ドクター?」

 

「・・・・〈フェニックス〉は、入澤キリヤくんごと、カゲロウを殲滅する、って事さ。ブルームガール」

 

「っ! そんな!」

 

思わず立ち上がるほのかに、狩崎は淡々と声を発する。

 

「残念だがホワイトガール。彼一人の為にその他大勢の市民が危険に晒される訳にはいかない」

 

「・・・・そんな・・・・」

 

「ほのか・・・・」

 

そして力無く座り項垂れるほのかに、パートナーの精霊メップルは、悲しそうに見上げる。

 

《ほのかちゃん・・・・痛いの痛いの、飛んでいけ〜・・・・これでよくなる?》

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

「(バイス。今雪城が痛いのはソコじゃねぇよ・・・・)」

 

バイスなりにほのかを気遣って頭を撫でるが、輝二は苦笑する。

 

「輝二くん・・・・」

 

「あ?」

 

と、ソコでなのはが少し顔に影をさしながら輝二を見据える。なのはを知る人間達ならそれが静かに怒っているという事が分かる。しかし、輝二はそんな静かな怒りに気づいているのかいないのか、普段通りの態度だった。

 

「あの時、君はキリヤくんごとエビルを攻撃しようとしたよね? 何で?」

 

「ーーーー自分の命が危険に晒されれば、カゲロウがビビって引っ込むと思ったからだ」

 

「もし引っ込まなかったらどうしてたの?」

 

「ちゃんと寸止めしただろうが」

 

「そういう問題じゃないの!」

 

『っ!』

 

《うわぁビックリ! 何々? なのはちゃんってば結構ヒステリックな性格なの??》

 

なのはが怒鳴り声をあげ、なぎさ達も咲達も響達もめぐみ達もはな達も、当然誠司や精霊達もビクッとなり、バイスがドン引きした。

が、輝二はそんな怒号なんてどこ吹く風と言わんばかりだった。

 

「あんな危ないやり方で助けようなんて『無茶』をしなくても! もっと、『安全なやり方』で助けようとすれば「『安全なやり方って』何だ?」っ!」

 

なのはの言葉を遮るように、輝二はなのはの威圧的な視線を真っ向から見返しながら問う。

 

「雪城と美墨が必死に声をかけても届かなかった。この中で誰よりも入澤キリヤってヤツとの繋がりが深い二人が、だ。それなのに、彼との繋がりなんてまるでない俺達が、どうやってヤツを助けるんだ?」

 

「それはーーーー皆で考えて・・・・」

 

「そんな能天気で悠長な事をやってるから、遂に一般人に被害が出る事態になったんだろうが?」

 

「っ!」

 

輝二の言葉に、なのはは押し黙る。

 

「具体的なアイデアも無いのに、『安全なやり方』も何も無いだろうが。だったら、多少は強引なやり方だろうがそれを実行するしかない。『安全』だの『無茶』だのと、そんなーーーー"くだらない線引きなんてして何が成せるんだ?"」

 

「っっっ!!」

 

「「っっっ!!」」

 

輝二のその言葉になのはが、否、フェイトにはやても息を詰まらせた。

それはーーーー少し前に『鬼教官』に言われた言葉だったからだ。

 

【貴様らは『無茶』だ『安全』だと、"くだらない線引きをしていたから、『限界』を超える機会を失ったのだ"!】

 

輝二は別にそれを知っている筈がない。しかし、なのは達の心にある、ちょっとした『傷』をエグッた。

フルフルと若干震えて、黙ってしまったなのはを放って、輝二は研究室を出ようとするが、項垂れるほのかを見て、フウ、と小さく溜め息を吐いてから、口を開く。

 

「“それにしてもキリヤってヤツは、随分情けないヤツだなぁ"」

 

「・・・・・・・・え?」

 

輝二の言葉に、なぎさが弱冠目を鋭くし、項垂れていたほのかがピクッと、反応する。

 

「ああも簡単にカゲロウに身体を乗っ取られて好き勝手にされて、今は美墨と雪城が助けてくれるのを待ってうずくまっているなんて、元〈ドツクゾーン〉の幹部なのに、何とまあ不甲斐ないヤツだなぁ!」

 

「ちょっと輝二さーーーーほのか?」

 

輝二に文句を言いそうになるなぎさだが、それよりも早く、ほのかがすくっと立ち上がる。

 

「今キリヤってヤツは、こう思ってるだろうなぁ。『助けてなぎささ~ん! 助けてほのかさ〜ん! 僕じゃカゲロウに勝てないよぉ〜! 怖いよぉ〜! 恐ろしいよぉ〜! 苦しいよぉ〜!』って、メソメソ泣いているのか。それともカゲロウの言う通り、無様に消えてしまった(パシィッ!)・・・・・・・・」

 

輝二の言葉が平手打ちで止められた。そうーーーーほのかが止めたのだ。

ほのかの意外な行動に、なぎさとひかり、メップルにミップルにポルンにルルン、他のプリキュアメンバーに、なのは達すら唖然と目を見開いた。

 

「ーーーー取り消して・・・・!」

 

「・・・・・・・・」

 

フルフルと震える声で、ほのかが声を発したかと思えば、キッと顔を上げて輝二を睨みつける。輝二はまるで臆する事なく、なのはの時のように真っ向から見返す。

 

「取り消して! キリヤくんの事を何も知らないあなたに! キリヤくんの事をとやかく言う権利なんてないわ! キリヤくんはメソメソ泣いてなんかいない! 消えてもいない! 必ず生きてる! そして絶対、カゲロウに打ち勝つわ!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

輝二とほのかが視線を交じわせ、両者に沈黙が流れる。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

その空気に、周りの皆も黙った。

 

「・・・・ふっ、分かってるじゃないか」

 

「・・・・え?」

 

輝二はニッ、と笑みを浮かべる。その反応が少し意外だったのか、ほのかは目をパチクリさせた。輝二はポンとほのかの肩を叩くと、今度こそ研究室を出る。

 

「キリヤってヤツは、"お前達が助けてくれるのをジッと待っているようなヤツじゃない"、それが雪城が知っている入澤キリヤなら、お前のやる事は、もう決まっているだろう?」

 

「輝二さん・・・・」

 

輝二はそう言い残して、研究室を去った。ほのかは輝二は打った手をジッと見ると、グッと握りしめると、なぎさ達に向けて顔を向けた。

 

「「「っ!」」」

 

振り向いたほのかの顔を見て、なのはとフェイトとはやてはそのーーーー『迷いない覚悟の炎を宿した瞳』に一瞬、"旦那様達と同じ炎を見た"。

 

「なぎさ。ひかりさん。それに皆。私、決めたわ。必ず、キリヤくんを取り戻す。その為に、力を貸して!」

 

「当然!」

 

「はい!」

 

「メポ!」

 

「ミポ!」

 

「ポルン!」

 

「ルルン!」

 

『うん!』

 

なぎさ達は力強く頷くと、ほのかはなぎさに近づいて、

 

「ーーーーなぎさ。私のほっぺた、ビンタして」

 

「えっ!?」

 

「お願い」

 

「・・・・・・・・」

 

ほのかの申し出に、なぎさは目を見開いて驚くが、その決意に満ちた眼差しを見ると、

 

「・・・・分かった。でも、その後、私のほっぺたもビンタしてくれるほのか?」

 

「!・・・・ええ!」

 

なぎさの返しに、今度はほのかが目を見開くが、薄く笑って頷いた。

そしてーーーー。

 

「ーーーーふん!」

 

ーーーーパンッ!

 

なぎさがほのかの両頬にビンタをした。

 

「〜〜〜〜!」

 

ほのかの両頬に紅葉のような手形が付き、痛みを少し堪えるように、うっすらと涙目になると。

 

「それじゃほのか、お願い」

 

「ーーーーええ」

 

次はなぎさが顔を突き出すようにあげると、

 

ーーーーパンッ!

 

「ぶっちゃけ、痛〜い!」

 

「私も痛かったわよ」

 

なぎさの両頬にも、ほのかによる紅葉のような手形が付いて、なぎさが涙目になるが、ほのかも苦笑した。

 

「おいおい片方じゃなくて両頬かよ・・・・」

 

「男前ね。なぎさもほのかも」

 

誠司が苦笑し、さあやが笑みを浮かべた。

そして、気合を新たにしたなぎさとほのかは、ひかりや皆を交えて、これからの事を話し出した。

 

「「「・・・・・・・・・・・・」」」

 

「輝二くんも、ホワイトガール達も、『覚悟』を決めたって所かな?」

 

狩崎の言葉に、なのは達は返せず、ほのか達を見てこう思った。

 

ーーーー彼女達は、『あの人達』と同じ、"向こう側に行ける人間なんだ"。

 

と。

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

研究室を出た輝二はすぐに通路の角に隠れている六人に目を向けた。

 

「ーーーーお前ら、元気づけようとスウィーツを持って来たんだから、ちゃんと届けてやったらどうだ?」

 

角から出てきたのは、いちか達アラモードチームだった。

 

「あの、輝二さん、痛くなったんですか?」

 

「いてぇに決まってんだろ。美墨の方がくると思っていたが、まさか雪城とはな・・・・」

 

「あんな悪びれた事を言わなくても、普通に言ってあげれば良かったんじゃないかな?」

 

「ふん。甘ったるい慰めなんかよりも、発破になっただろう?」

 

「ハッパ? 草がどうかしたの?」

 

「シエル。そっちの葉っぱじゃないから・・・・」

 

ひまりが心配そうに言い、あきらが呆れたように言うが、輝二はフンと鼻で息を吐きながら返し、シエルが外人らしいボケをあおいがツッコんだ。

 

「輝二さんは、これからどうするの?」

 

「最初に言った通りだ。入澤キリヤを助ける。それが俺が受けた『依頼』だからな」

 

「それじゃ! 輝二さんも食べて! 元気100%になるスウィーツだよ!」

 

いちかがスウィーツが入ったバゲットを差し出すが、輝二は弱冠苦い顔をし、

 

「すまないが、俺は甘い物が苦手なんだ・・・・」

 

『えぇっ!?』

 

「うふふ、嵐山くんって、本当に面白いわ」

 

ゆかりだけは笑みを浮かべていた。後にキラパティのメンバーや奏は、輝二が食べられるスウィーツを作ろうとするのはまた後の話。

 

 

 

 

 

 

ーアギレラsideー

 

そしてそのその頃、〈デッドマンズ〉の本拠地・『ギフの間』では、フリオが苛立たしげに、テーブルを蹴る。

 

「ーーーーカゲロウは生け贄を集める気がさらさら無いみたいだが!?」

 

「リバイスを消してもらったら・・・・もう用済みですね。ま、バッファローが先にリバイスを消すか、カゲロウが先に消すか、ちょっとした茶番劇ですかね」

 

ドカッとソファに座るフリオに、爪の手入れをしていたオルテカがそう答えた。

すると、ギフの石棺を愛しく撫でていたアギレラが口を開く。

 

「ウソっぱちの愛なんかに頼るから、そうなるのよ。ーーーー幸せは掴もうとすればするほど遠ざかる。身を委ねるしかないのにね」

 

「おっしゃるとおりです」

 

フリオがにこやかに答えながらソファから立ち上がると、アギレラはスキップしながら石棺から離れ、部屋を出ていく。

 

「ちょっと遊んでくるね♪」

 

「いってらっしゃいませ」

 

アギレラが部屋を出ていくと、フリオは執事の如く頭を下げた。

 

 

 

 

ー狩崎sideー

 

全員が帰った後、狩崎はリバーシで遊んでいた。

と、ソコに嵐山雄二郎司令官がやってきた。

 

「随分と悠長に構えているな。〈フェニックス〉にとっては、良い状況ではないぞ?」

 

「ん〜、少し悲しんでますよ。結構な自信作であったツーサイドライバーが、無駄になろうとしているんですから」

 

「お前にとっては全てが『実験』か。その最終目標は何だ?」

 

「海よりも深い〈仮面ライダー〉への愛が故。それだけですよ」

 

そう云うと、狩崎がリバーシの白の駒を黒に反転させた。

 

 

 

 

 

 

ーゆいsideー

 

そしてここはノーブル学園の浜辺。ソコでゆいは1人で波を見ながら佇んでいた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

1人になりたいと無理を言って、はるか達から離れてここに来たのだ。波を見れば何か気が紛れるかと思ったが、何も変わらない。父と一番上の兄が〈デッドマンズ〉に殺され、下の兄が戦っている。母に連絡しても通じず、祖父に祖母は詳しい事は知らない。

 

「・・・・ハァ・・・・」

 

「溜め息を吐くと幸せが逃げるよ」

 

「っ!?」

 

自分は何もできない事に無力感を感じていたゆいが、突然の声に振り向くとソコには、先日の温泉旅行で遭遇した〈デッドマンズ〉のリーダー・アギレラがいた。

 

「あ、アギレラ・・・・!」

 

「あっ、名前覚えてくれたんだ♪ 温泉旅館、楽しかっね?」

 

「っ・・・・」

 

ゆいは警戒しながら距離を空ける。

 

「安心して。別にゆいちゃんをイジメに来た訳じゃないの。寧ろーーーーゆいちゃんを救いに来たんだよ」

 

「・・・・???」

 

「ーーーーねえ、私と一緒に、『ギフ様』の家族にならない?」

 

「『ギフ様』? 誰なの? いやそれより、なる訳ないよ・・・・」

 

「悩んでる『答え』が見つかるかもよ?」

 

「えっ?」

 

ニッコリと笑みを浮かべるアギレラが、ゆいに近づく。

 

「っ!」

 

「恐がらなくていいんだよ、ゆいちゃん♪」

 

数歩後ろに退くゆいに、アギレラは笑顔で近づく。

 

「・・・・・・・・」

 

「(この子・・・・)」

 

と、ソコでゆいは、アギレラの瞳に何処か、『ある少女』の瞳と重なったーーーートワイライトだった頃の、トワのような。

 

「ーーーー七瀬さん。どうしたんですか?」

 

と、ソコで、ランニング中だった牛島翔がやってきた。

 

「翔くん! っ!!」

 

振り抜くがソコに、アギレラの姿は無くなっていた。

 



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心はキング! 輝けクラブ!

二十年の時を超え、漸く登場した『仮面ライダーレンゲル・キングフォーム』を祝って、あのゲノムが登場。


ー輝二sideー

 

「・・・・・・・・」

 

ほのかは家の縁側に座り、瞑目してガンデフォンを持ち、着信音が鳴るのを待つ。

そしてその両隣には、メップルとミップルを抱いているなぎさと、ポルンとルルンを抱いているひかりが緊張した面持ちで座っていた。

 

「あらあら、ほのかったらお客様を放っておくなんて」

 

「ああ、お構いなく。ありがとうございます」

 

ほのかの祖母である『雪城さなえ』が、ほのか達が家に連れて来た輝二にお茶を出す。

 

《さて、なぁんで輝二と俺っちがほのかちゃんのお家にいるのかと言うと! カゲロウが現れた時にすぐに急行できるように、ほのかちゃんのお家にお呼ばれしたの!》

 

「あっ、ひかりさんが持ってきてくれた『TAKOCAFE‹タコカフェ›』のたこ焼きがあったんだわ。皆で食べましょう」

 

《ええ! ちょっとお婆ちゃん! 俺っちも食べたいよぉ!》

 

さなえお婆ちゃんがたこ焼きを持ってこようと部屋を出るのとほぼ同時に、

 

ーーーーヴー! ヴー! ヴー!

 

「もしもし!?」

 

ガンデフォンが震え、画面に『狩崎』の名が表示されているのを見て、ほのかが出た。

 

《エビルの潜伏先が判明した。ーーーーやれるのかい?》

 

狩崎の言葉に、ほのかは縁側から立ち上がり、声を発する。

 

「ーーーーやります!」

 

ほのかに続くように、なぎさとひかりも立ち上がる。

 

「ーーーーさて、行くか」

 

輝二は立ち上がると、ガンデフォンに表示される地図を見て歩き出し、ほのかの家を出た。

なぎさ達も、そんな輝二の後に続くように歩き出した。

 

「あらほのか。お出かけ?」

 

「・・・・うん。お婆ちゃん。ちょっと行ってくるね」

 

「・・・・ええ。気をつけて行ってきなさい」

 

孫娘の『覚悟に満ちた瞳』を見て、何かを察したようにさなえお婆ちゃんは静かに頷いて、見送った。

ほのかの家を出てその場に向かっている内に、咲達が。のぞみ達が。ラブ達が。つぼみ達が。響達が。みゆき達が。誠司も含めてめぐみ達が。はるか達が。みらい達が。いちか達が。そしてはな達が・・・・。

次々と合流しながら、何も言わず、全員が一丸となってその場所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

ーカゲロウsideー

 

「・・・・あ・・・・あぁ・・・・」

 

「は・・・・へは・・・・へは・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

その頃、廃工場の中では、カゲロウによってブラキオ・デッドマンの契約者にさせられた三人は、廃人寸前の状態になっていた。

悪魔〈デッドマン〉は欲望と悪意が具現化した存在。何度もデッドマンを召喚し続け、三人の精神は絞られ続け、疲弊しきってボロボロの状態になっていた。

それを見下ろしながら、カゲロウは笑みを浮かべていた。

 

「さぁ、早く来い輝二。今日こそお前を仕留めて全てを終わらせる」

 

カゲロウがそう呟くといた瞬間、

 

『ーーーーヤツを仕留めるのは我だ』

 

カゲロウが突然響いた声に目を向けると、バッファロー・デッドマンがやって来た。

 

「ーーーー何の用だ?」

 

『言った通りだ。この我が倒すべき宿敵。貴様には渡さん』

 

「はっ。いつまでそんな気取った口をしてるんだ? "中二病拗らせ僕ちゃん"?」

 

『何とでも言え。我の向かう道にとって、仮面ライダーリバイスは超えなければならぬ『試練』。ソイツを貴様に奪われる訳にはいかん』

 

「ふうん。ーーーーそう、かい!」

 

[ブラキオ!]

 

「「「ぎゃぁぁっ!!!」」」

 

カゲロウが『ブラキオバイスタンプ』で三人を押印すると、再び三体のブラキオ・デッドマンが生まれ、三人はカクッと気を失った。

 

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 

一触即発の空気の中、風を切る音ともに、仮面ライダーリバイス・プテラゲノムと仮面ライダーデモンズ、そしてプリキュア達が駆けつけた。

 

『リバイ(バシュン!)グバァ!?』

 

「お前に用はない!」

 

リバイはガンデフォンでバッファロー・デッドマンを撃って黙らせると、レックスゲノムとなってカゲロウを見据えた。

 

「よぉカゲロウ。お取り込み中だってんなら、ソコに並んでる契約者三人は邪魔そうだから片付けてやるぜ?」

 

「ふっ。なぁに、お気づかいは無しでイイぜ。全員仲良く、地獄に行って貰うからな!」

 

「カゲロウ・・・・!」

 

軽口を叩きあうリバイとカゲロウの間に、ホワイトとブラックが割って入る。

 

「何だぁお嬢ちゃん? まだ俺からキリヤを助けるとか言ってんのかよ? 諦めが悪いなぁ」

 

「ええ。私達は絶対に諦めない!」

 

「私達は、キリヤくんを信じているわ! だから、貴方を全力で倒す!」

 

「ふっ。カゲロウ。お前分かっていないなぁ? プリキュアってのは全員もれなく、諦めが悪いんだよ!」

 

「へへへ! 覚悟しろよぉ! 腹くくった輝二とプリキュアちゃん達は! 悪魔よりも恐ろしいぜ!!」

 

ブラックとホワイトに並ぶようにリバイス。そして、全員が臨戦態勢に入った。

 

「ハァーーーー面白く、なってきたなぁ!」

 

[バッド!]

 

カゲロウは『バッドバイスタンプ』を起動させ、ツーサイドライバー押印した。

 

[コンファームド!] カゲロウの影から無数の蝙蝠が周囲を飛び交い、カゲロウは両手を交差させて声を発する。

 

「変身」

 

バッドバイスタンプをツーサイドライバーのエビルブレードに装填した。

 

[Eeny meeny miny moe! Eeny meeny miny moe!]

 

蝙蝠がカゲロウを覆うように飛び交うと、カゲロウはエビルブレードを取り外し、引き金を引いた。

 

[バーサスアップ! バット!]

 

スタンプの中のカゲロウが、緑色の液体に包み込まれその身体が変化する。

 

『っ!』

 

[仮面ライダーエビル! ハッハハー!]

 

中からスタンプを切り裂いて、仮面ライダーエビルとなって現れた。アーマーの一部がジッパーのようになり、そのジッパーが閉じた。

そして、廃工場の色々な所から、ギフジュニアの大軍がゾンビのようにワラワラと這い出てくる。

 

『さぁ、真っ黒に染まりなっ!』

 

「行くぞお前ら! 燃えてきたぜぇっ!!」

 

「「おう!」」

 

『はい!』

 

そして、戦いが始まった。

 

 

 

 

 

ーリバイス&MH&ドキドキVSエビルー

 

「はぁっ!」

 

「おりゃぁっ!」

 

『ふっ! シャッ!!』

 

リバイスが拳を振るうが、エビルは難なく回避して後ろを取ると、エビルブレードでリバイスを斬りつける。

 

「「うわぁっ!!」」

 

「「はぁぁぁっ!!」」

 

リバイスが倒れると、ブラックとホワイトが挟撃するように攻める。

がーーーー。

 

『キュアブラックとキュアホワイトが挟撃した場合の二人の攻撃パターンは・・・・・』

 

と、ブツブツ呟きながら、ブラックとホワイトの攻撃をヒラリヒラリと回避していくと、僅かに空いた二人の隙を衝いてエビルブレードで斬りつけた。

 

『はっはぁっ!』

 

「「きゃっ!」」

 

「ブラック! ホワイト!」

 

「何でアイツ、ブラックちゃんとホワイトちゃんの動きが分かんのよ!?」

 

ルミナスが駆け寄り回復を施すと、バイスが吠える。

 

「恐らく、器に使っているキリヤの記憶を読んで、二人の攻撃パターンを攻略してやがるんだ!」

 

「それなら!」

 

「キリヤくんの知らない私達が!」

 

「攻め立てれば良い!」

 

ハートとダイヤモンドとソードがエビルに迫るが、エビルはダイヤモンドとソードの攻撃を片手で防ぎ、ハートの拳を片足で止めた。

 

「「「なっ!?」」」

 

『プリキュアが諦めが悪いヤツら。そして、大半のプリキュアは戦い方が馬鹿正直過ぎるから、読みやすいんだよ!!』

 

「「「あぁっ!!?」」」

 

エビルは三人を払うと、大振りな回し蹴りで三人を蹴散らす。

 

「『エースショット』! バキューン!」

 

『はぁ! ふぅぅぅ・・・・オラァっ!!』

 

エースが必殺技を放つが、エビルのハートのエネルギーにエビルブレードを突き刺し、そのまま回転してからエースへと投げ返した。

 

「っ!」

 

「『ロゼッタウォール』!!」

 

返された『エースショット』をロゼッタが防いだ。

 

「カゲロウ!」

 

リバイスラッシャーでエビルに斬りかかるが、エビルブレードで防ぐと火花が飛び散り、さらにリバイスラッシャーの刃を受け流すと、回し蹴りをリバイに叩きつける。

 

「ぐはっ!」

 

「輝二! コンニャロー!」

 

『ふんっ、おらぁっ!!』

 

「ありゃー!?」

 

バイスが飛びかかるが、エビルは巴投げの要領でバイスをドラム缶が並び置かれた場所に放り投げた。

ドンガラガッシャンと、大きな音を立てながら倒れ込むバイス。

 

「ちょっとぉ! 誰よ電気また消したの!?」

 

またもドラム缶に嵌まるバイス。

 

『ーーーーシャッ!』

 

『っ!』

 

再び攻めてくるエビルを、リバイ達が迎撃した。

 

 

 

 

 

 

ーデモンズ&ハピネス&HUGっとVSバッファロー・デッドマンー

 

『待て! リバイスとは我が「おらっ!」グバァっ!?』

 

リバイスに突進しようとするバッファロー・デッドマンにデモンズが拳を叩きつけて、後退させた。

 

『貴様・・・・邪魔するな!』

 

「いや、正直今まさに邪魔なのはお前の方だろう・・・・」

 

「ホワイト達の邪魔はさせないよ!」

 

「あなたの相手は私達!」

 

『フン! ならば、粉砕してくれる!』

 

バッファロー・デッドマンもギフジュニアを召喚させると、デモンズ達と戦わせ、さらに猛牛のように足を引きながら、突進してきた。

 

 

 

 

 

ーS☆S・ハートキャッチ&魔法使い&VSブラキオ・デッドマンAー

 

「(ガシッ)えっ!?」

 

『フォォォォ!!』

 

ブラキオ・デッドマンAが、ギフジュニアと戦っていたブルームノ肩を掴むと、首のチェーンソーを回転させながら、振り下ろそうする。

 

「うわぁぁっ!」

 

「ブルーム!」

 

イーグレットがブラキオ・デッドマンの首を蹴り上げチェーンソーを逸らす。

 

「ありがとうイーグレット! このぉっ!」

 

「「プリキュア! おでこパンチ!」」

 

「「はぁっ!!」」

 

ブルームが礼を言いながら、ブラキオ・デッドマンAの腕を払うと、ブロッサムとマリンが頭突きで離れさせると、サンシャインとムーンライトが飛び蹴りを叩きつけ後退させた。

 

「マジカル! フェリーチェ!」

 

「「ええ!」」

 

すかさずミラクルとマジカルとフェリーチェが、ブラキオ・デッドマンの契約者達を救出した。

 

 

 

 

 

ー5GoGo&スマイル&アラモードVSブラキオ・デッドマンBー

 

『フォォォォッ!!』

 

ブラキオ・デッドマンBが、キャノン砲から砲撃を連射して、ギフジュニアと戦っている3チームを攻撃する。

が、爆煙が晴れると、ミントの『エメラルドソーサー』に守られ、無傷のプリキュア達がいた。

 

『フォォォォっ!?』

 

「『プリキュア プリズムチェーン』!」

 

「『レインボーリボン』!」

 

驚くブラキオ・デッドマンBに、レモネードとパルフェが拘束した。

 

『フォォッ!?』

 

『はぁぁぁぁっ!!』

 

拘束されたブラキオ・デッドマンBに、プリキュア達が迫る。

 

 

 

ーフレッシュ&スイート&GoプリンセスVSブラキオ・デッドマンCー

 

『フォォォォッ!!』

 

ブラキオ・デッドマンCは、ドリルで地面を掘って地面に中に隠れる。

 

「はぁっ! 皆気をつけて! 下からくるわ!」

 

ベリーがギフジュニアを一体蹴り倒すと、後ろの地面からブラキオ・デッドマンCが飛び出し、ベリーにドリルを突き立てようとする。

 

「「はぁぁっ!!」」

 

『フォォォォっ!』

 

が、寸前でマーメイドとスカーレットが蹴りを叩き込み、後退させた。

 

「フローラ! ゆいちゃんのガードは!?」

 

「ティアナさん達とシャマルさんとザフィーラがやってくれているよ!」

 

「って言うか、なのはさん達どうしたの!?」

 

「ーーーー今連絡があったわ! なのはさん達とヒトミさん達、アギレラ達とこの前現れたデッドマン達と交戦しているそうよ!」

 

ピーチが聞くとフローラが答え、メロディが到着の遅いなのは達はどうしたかと叫ぶと、ガンデフォンで狩崎に連絡していたミューズか答えた。

 

 

 

 

ーなのはsideー

 

「くっ!」

 

なのは達は廃工場から少し離れた町中で、アギレラとオルテカとフリオ、さらにクジラ・デッドマン達に足止めをくらい、さらにヒトミ達も混乱した市民の避難で動けなくなってしまっていた。

 

「ちょっとオルテカ。何で私達が〈時空管理局〉なんかと戦わなきゃならないのよ?」

 

「ーーーー彼女達はそれなりに厄介そうなので、せめてカゲロウかバッファローがリバイスを始末するまでの時間は稼いでおきましょう」

 

オルテカはそう言うと、フリオと共にバイスタンプを構え、デッドマンに変身し、なのは達に向かった。

 

 

 

 

 

ーホイップsideー

 

『はぁっ!!』

 

『『『フォォォォっ!!』』』

 

三体のブラキオ・デッドマン達を追い詰めるプリキュア達。

 

「ふふん! 楽勝っしゅ!」

 

「第2フェーズじゃないなら、そんなに強敵じゃないな!」

 

マリンとジェラートが平坦な胸を反らして得意げな顔になった。

 

『『『グゥゥゥッ!! フォォォォッッ!!!』』』

 

その時、三体のブラキオ・デッドマンが起き上がり、咆哮を上げると、三体が光り集まったその瞬間、

 

『ブオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

一回り大きくなったブラキオ・デッドマンAの両手に、ブラキオ・デッドマンBとCの武器となった1体のデッドマン、『スーパーブラキオ・デッドマン』となった。

 

「うそ! デッドマン達が!」

 

「が、合体したぁっ!?」

 

「そんなのありぃっ!?」

 

「はっぷっぷー! ずるいよ!」

 

『ブオオオオオオオオっ!!』

 

ミラクルとフローラが驚愕し、ホイップとハッピーがむくれて文句を言うと、スーパーブラキオ・デッドマンが武器から竜巻状の三つのエネルギー波を発射した。

 

『きゃぁぁぁぁぁっ!!』

 

ホイップ達が、そのエネルギー波を何人かがバリアーを張って防ぐが、あまりの威力に爆発が起き、吹き飛ばされた。

 

 

 

 

ーデモンズsideー

 

『ヌオオオオオオオオオオオオオオっっ!!』

 

「ぐぁぁっ!!」

 

『あぁぁぁっ!!』

 

バッファロー・デッドマンが大きめのハルバードを振り回して、大きく振るうと、その時に生じた風圧に、デモンズとラブリー達とエール達が吹き飛ぶ。

 

『ムゥゥン! オオオオオオオオオオオオオオっ!!』

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

今度は頭の角が一回り巨大になって突進すると、デモンズ達をまたも吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「お前ら!」

 

『シャァっ!!』

 

「うぁっ!!」

 

「輝二!(ザシュン!)あいたぁ!」

 

劣勢になったデモンズ達を見てリバイの視線がソッチに向かった瞬間、エビルが斬り込んできた。

 

『ククク・・・・』

 

「「カゲロウ!!」」

 

ブラックとホワイトが、『マーブル・スクリュー・マックス』を放とうとする。が、エビルは声色を変えてーーーー。

 

「やめて下さい! ほのかさん!! なぎささん!!」

 

キリヤの声でそう言った。

これでブラックとホワイトの動きが止まったら、すかさず攻撃を・・・・。

 

「「マックスーーーー!!!」」

 

『何っ!? うぁああああああああああああッッ!!』

 

エビルが二人の必殺技を受けて倒れる。ヨロヨロになりながらも、立ち上がるエビル。

 

『な、何故だ・・・・! 何故攻撃を・・・・! お前ら、キリヤを、友達を殺すつもりかっ!?』

 

「・・・・キリヤくんを、甘く見ないで!」

 

ホワイトがキッと目を鋭くして、エビルに声を発する。

 

「カゲロウ。アンタはキリヤくんの事を全く理解していないわね」

 

「あ?」

 

ブラックの言葉に、エビルは首を傾げる。

 

「キリヤくんはね・・・・運命を変える勇気を持った強い人なのよ!」

 

「キリヤくんは光と闇の狭間に囚われても、私達の危機に駆けつけてくれる! そんな人なのよ! だから私達は信じている! キリヤくんがきっと、あなたを打ち破るって!」

 

『ーーーーはっ! ぐだらない事をベラベラと!』

 

[必殺承認! バット! ダークネスフィニッシュ!]

 

エビルが二人の言葉を嘲笑うように言うと、必殺技を放とうと飛び上がったーーーーその瞬間。

 

『(ビキッ!!) ぐぁあっ!!』

 

突然、エビルの身体が空中で止まり、そのまま地面に落下した。

 

『な、何だぁ!? はっ! キリヤ!? お、お前、生きてーーーーぐわぁぁっ!!』

 

倒れるエビルが、痛みに悶えるように動く。

 

「き、輝二さん! これって・・・・!?」

 

「ヤツの中に捕らわれていたキリヤが、遂に暴れ出したんだ」

 

「イェイ! 実を言いますと、俺っちバイスって、他人の頭の中に入る事ができんのよね! 前にカゲロウが輝二を踏みつけた時に、アイツの頭ん中を覗いたら驚き! キリヤが虎視眈々とカゲロウを狙っていたのよねぇ!」

 

『な、ん! だとぉっ!!』

 

ルミナスの問いにリバイスが答えると、エビルが起き上がりながら吠える。

リバイはソレを見て、『キングクラブバイスタンプ』を取りだしそして、

 

「さぁ、最後のひと押しと行くか!」

 

[キングクラブ!]

 

『キングクラブバイスタンプ』を起動させた。

 

「戻りまっす!」

 

バイスがリバイの中に戻り、リバイと繋がった姿で現れる。

 

[Come on! キン・キン・キングクラブ! Come on! キン・キン・キングクラブ! Come on! キン・キン・キングクラブ!]

 

ーーーーここにあるのは希望? 絶望?

 

ーーーー動けなく前に動き出すぞ。

 

ーーーー強さは自分の中に!

 

ーーーー恐れさえ乗りこなして・・・・

 

ーーーー進化するぜ!

 

ーーーー進化するぜ!

 

LINEを展開させると、バイスタンプをドライバーに押印して横に倒すと、思念体のバイスがスタンプをリバイに下ろした。

 

『ウェイっ!』

 

[バディアップ!]

 

スタンプの中でリバイが身体を変わっていき、スタンプが砕け、新たなゲノムへと変わった。

 

[チョッキン! 近々! キンキラキン! キングクラブ! カテゴリーキングの♣︎‹クラブ›マーク!]

 

リバイの姿をは、リバイのカラーをした西洋の鎧騎士の姿をし、背面には盾のようなアーマーを装備し、その盾に翼がついていた、左肩のアーマーは上に伸び、頂点に青い♣の形をした宝石があり、右足には剣のようなグリーブをつけ、仮面の方には角のような突起が伸びていた。

バイスも同じ西洋の鎧騎士だが、コチラは金色により重厚感のある重騎士の姿をし左足に剣のようなグリーブをつけ、右肩のアーマーリバイと同じだが、宝石はピンク色であり、仮面の頭はまるで王冠のようになっていた。

それぞれの左胸には『キングクラブ』のエンブレムがあり、リバイは腹部に、バイスの王冠に、さらにそれぞれの両肩には、♣‹クラブ›のマークが彫られていた。

 

「奇跡を起こす切り札は」

 

「俺っち達だぜっ!」

 

「「あぁぁぁ・・・・!」」

 

『あぁぁぁ・・・・!』

 

『あぁぁぁ・・・・!』

 

何故か、ブラックにホワイトだけでなくドキドキチームと、さらにフレッシュチームまで、「それ違うでしょっ!!」と、ツッコミを入れる姿勢で悶えていた。

 

「行くぜバイス!」

 

「よっしゃ!」

 

リバイスはそれぞれのグリーブを掴むと、グリーブが剣、『ハサミサーベル』となり、リバイが右手、バイスが左手に持ち、剣を持っていない手で腕タッチをした。

 

「「はっ!」」

 

リバイがオーインバスター・アックスモードも持って、エビルを斬りつける。

 

『がぁっ!? テメェ!』

 

「ふっ! バイス!」

 

「あいよーっとぉ!」

 

エビルがエビルブレードを振るい、リバイが後ろに退くと、入れ替わるように剣とオストデルハンマーで斬り、叩き、攻めたて、エビルが後ろに引く。

 

『クソがっ!』

 

「「はぁっ!!」」

 

『うおっ!?』

 

引いた先にダイヤモンドとロゼッタがおり、エビルを二人で掴んで投げる。

 

「「たぁっ!!」」

 

『ぐぁっ!』

 

空中に投げられたエビルに、ソードとエースがキックを叩き込むと、地面に叩きつけられそうになるエビル。

そしてソコにーーーー。

 

「『プリキュアハートシュート』!」

 

『がぁぁぁぁぁっ!?』

 

ラブハートアロー(ハートモード)から光の矢を放ち、撃ち抜かれたエビルが地面をゴロゴロと転がる。

 

『ぐっ、クソがっ!』

 

「無様だな。カゲロウ」

 

『っ! テメェ!!』

 

ボロボロのエビルに、リバイスラッシャーとハサミサーベルを持ったリバイが悠然と近づく。

 

「仲間を信じ、友を信じ、己を信じて覚悟を決めて、死ぬ気で戦う。他者を利用するだけのお前には出せない、気高く美しい強さをその濁った心に刻みつけ!」

 

そのリバイの姿は、まるでーーーー『王』のようであった。

 

『ーーーーテメェが、テメェみたいな『出来の悪い弟』ふぜいが! 気取ってやがるなぁっ!!』

 

憤怒に染まったエビルがエビルブレードを振るうが。

 

「ーーーーふっ!」

 

リバイはリバイスラッシャーで受け流すと、ハサミサーベルで斬りつけた。

 

『うぉっ!』

 

「はっ! はっ! はっ! はっ! はぁぁぁぁぁぁっ!! つぉあっ!!」

 

『ぐおおぉっ!?』

 

そしてそのまま、流れるように二刀流で連続斬りを繰り出す。

 

「ーーーーたぁっ!!」

 

『ぐおわぁぁぁっ!!』

 

そして二刀で切り上げると、エビルは後方に反転するように倒れる。

 

「うっひょぉ! 輝二メッチャ強〜い!」

 

「畳み掛けるぞバイス!」

 

リバイはドライバーのスタンプを二回傾ける。

 

[リミックス! バディアップ! 必殺! シザース! キングクラブ!]

 

「よっ!」

 

「はいさっ!」

 

リバイスはハサミサーベルを足に戻して背中合わせになるとお互いの腕をガッチリと組んだ。

すると、リバイの背中の羽が伸び四つに割れると地面に突き刺さると、二人の身体を持ち上げ、背中のアーマーが外れる。二人は片足で身体を支え、それぞれの肩のアーマーも変化し、まるで蟹の目のようになる。そして、ハサミサーベルがついた足を上げると右側のリバイの足がまるで鋏のようになり、左側のバイスの足もサーベルだけでなく尻尾と合わさり、リバイよりも大きなハサミを形成した。

さらなるリミックス、『リバイスキングクラブ』となった。

 

『ぐぅっ!! くっそぉっ!!』

 

ーーーーキィィィィ!!

 

最早ヤケクソになったエビルがエビルブレードでリバイスキングクラブに切り込むが、リバイスキングクラブは右のハサミを振るって、エビルブレードを弾き飛ばした。

 

『なっ!?』

 

ーーーーキィィィィ!!

 

リバイスキングクラブはそのまま、左の大きなハサミでエビルを掴むと、思いっきり投げ飛ばす。

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

「死ぬ気で、決めるぜ!」

 

[キングクラブ! スタンピングフィニッシュ!]

 

飛んでいくエビルを横走りで追うリバイスキングクラブ。リバイがドライバーのスタンプを操作すると、リミックスが解除され、リバイスのハサミブレードにエネルギーが集まり、ハサミブレードを付けた足に、『キングクラブバイスタンプ』の形をしたエネルギーとなる。

 

『ち、調子に!』

 

エビルが抵抗しようとするがその時ーーーー。

 

「光の意思よ! 私に勇気を! 希望と力を! 『ルミナス・ハーティエル・アンクション』!』

 

ルミナスが『ハーティエルバトン』を使い、虹色の光でエビルの動きを停止させた。

 

『ぬぁっ!!』

 

動けなくなったエビルに、リバイが上から、バイスが下から蹴りを放ち、落下するエビルを挟むように蹴ろうとする。

 

『く、クッソォォォォォォォォォォォォォォっっ!!』

 

ーーーードゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンンッ!!

 

ーーーー【キングクラブスタンピングフィニッシュ】。

 

挟まれるように蹴りを受けたエビルは、『キングクラブ』よ紋章を浮べて爆発した。

そしてーーーー爆炎が収まるとソコには、黒のレザースーツのカゲロウ(?)が、ヨロヨロになって倒れそうになっていた。

 

「キリヤくん!」

 

「ーーーー待て」

 

ホワイトが駆け寄ろうとするが、レックスゲノムに戻ったリバイが腕を上げて制止させた。

 

「ーーーーああ・・・・うぅっ・・・・! あぁっ!」

 

カゲロウ(?)は、踏ん張りながらたおれそうになる身体を持ちこたえさせ、顔を上げた。

 

「ほのかさん・・・・」

 

その眼には、リバイの直感からも、大丈夫だと感じ、リバイが腕を下ろすと直ぐ様、ホワイトはキリヤを抱きしめた。

 

「うっ・・・・うぅっ・・・・!」

 

「ほのかさん達なら、きっと来てくれるって、信じて、いました・・・・」

 

「キリヤくん・・・・! キリヤくん・・・・!!」

 

ホワイトが大粒の涙を零しながら、キリヤの身体を強く抱きしめた。

 

「ほのかさん、ちょっと、苦しいですよ・・・・」

 

「あっ・・・・ご、ゴメンね・・・・」

 

ホワイトがキリヤを離すと、零れ落ちる涙を拭う。

 

「あああああぁぁぁっ!!」

 

「良かった・・・・! 本当に・・・・!」

 

ブラックが滝のような涙を流し、ルミナスも薄っすらと浮かんだ涙を指で拭い、ドキドキチームも涙を浮かべて笑みを浮かべる。

 

「くぅぅ〜! コレが感動ってやつなのね!」

 

「ふっ・・・・」

 

バイスも涙を流し、リバイは薄く笑ったような声を漏らすと、地面に落ちた『ブラキオバイスタンプ』とエビルブレードを拾った。

 

「『ブラキオバイスタンプ』。『ツーサイドライバー』。回収完了」

 

と、リバイが呟くと同時に。

 

「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

デモンズと他のプリキュアチームが吹き飛んできて、ダメージ過多により変身が解除された。

 

「皆!」

 

ブラックてルミナス、ドキドキチームが駆け寄った次の瞬間ーーーー。

 

『ーーーーふん。カゲロウ。威勢の良い事を言っていたが、ここで終わったか。存外情けないヤツだ』

 

『ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

『っ!』

 

バッファロー・デッドマンとスーパーブラキオ・デッドマンがやって来た。

 

「ーーーーキリヤ!」

 

「ーーーーっ!(コクン!)」

 

リバイがエビルブレードを投げ渡すと、キリヤはそれを受け取り力強く頷いてから、ホワイトに向けて口を開く。

 

「ほのかさん。ここは任せて下さい」

 

「ええ。頼むわね。キリヤくん」

 

ホワイトがそう言うと、キリヤから離れ、キリヤはリバイスの二人の隣に立つ。

 

「おい新人! 俺っち達の足、引っ張んないでよ!」

 

「ええ。任せて下さい」

 

[ツーサイドライバー!]

 

キリヤが『ツーサイドライバー』を腰に巻き付け、『バットバイスタンプ』を構えた。

 

「ふっ。それじゃあ・・・・燃えてきたぜぇっ!」

 

「白黒つけましょう!」

 

それを見て、リバイも『新たなバイスタンプ』を構えると、二人は同時にスイッチを押した。

 

[トリケラ!]

 

[バット!]

 

二人のバイスタンプから、音声が響いた。

 




次回、キリヤくんが仮面ライダーに!


ー『仮面ライダーリバイス・キングクラブゲノム』ー

リバイが『仮面ライダーブレイド・ジャックフォーム』をモデルとし、バイスは『仮面ライダーブレイド・キングフォーム』をアレンジしたデザインです。


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生きろその魂! トリケラとライブ!

ライブとなったキリヤくんの大活躍!


ー輝二sideー

 

[トリケラ!]

 

リバイが『トリケラバイスタンプ』を起動させると、バイスはリバイの中に戻る。

 

[Come on! トリ・ト・トリケラ! Come on! トリ・ト・トリケラ! Come on! トリ・ト・トリケラ!]

 

ーーーーあぁ疲れたぁ。さっさと終わらせて、ひとっ風呂浴びたいぜ。

 

ーーーーなぁなぁ輝二! 俺っちも頑張ったしょ?

 

ーーーー・・・・まぁな。良くやったな、バイス。

 

ーーーー後でコーヒー牛乳奢ってやる

 

ーーーーうっひょぉぉっ! 輝二が俺っちを褒めてくれたぁ!

 

ーーーーさぁ、もう一仕事行くぞ!

 

ーーーーオーライ!

 

ドライバーにセットしたスタンプを横に傾ける。

 

《ィヤタァ!》

 

スタンプを持ったバイスが、リバイに振り下ろし、スタンプの中に入るリバイ。

 

[バディアップ! トリプルホーン! トリッキーバトル! トリケラ! 目覚めろ! 三角竜!]

 

スタンプに砕いて現れたのは、リバイは新たな戦士となり、背中に短い突撃槍を二つ持った戦士の姿となる。

バイスは重厚な鎧に、背中に角のないトリケラトプスの頭のような盾を装備し、鼻先の角が上下に動いていた。

新たなゲノム、〈仮面ライダーリバイス・トリケラゲノム〉であった。

 

「手を伸ばして掴み取るぜ!」

 

「俺っち達が求めるものをな!」

 

トリケラゲノムとなったリバイスは、いつもの腕タッチをする。

 

 

 

 

ーキリヤsideー

 

[バット! Confirmed!]

 

音声を響かせると、キリヤの影から無数のコウモリが飛んでいく。キリヤはスタンプを持った手と待っていない手を交差させ、回しながら顔の近くに持っていき。

 

「変身!」

 

『バットバイスタンプ』を『ツーサイドライバー』に押印させると、エビルブレードを変形させ、ドライバーのエンブレムのもう片方が白く発光し、銃のような形にしたその時、漆黒のコウモリ達が純白となる。

 

[Eeny, meeny, miny, moe♪ Eeny, meeny, miny, moe♪]

 

音声が響く中、純白のコウモリ達がキリヤの背後で一つとなり、巨大なコウモリが逆さにぶら下がる。

キリヤが、エビルブレード(?)を取り外すと、引き金を引いた。

 

[バーサスアップ!]

 

次に、純白のコウモリがキリヤに飛びつき翼で包み込むと、そのまま回転しながらスタンプの形となる。

 

[Precious!Trust us!Justis!バット!]

 

「はっ!」

 

スタンプの中でキリヤが『仮面ライダー』の姿になると、スタンプを砕くように銃を撃つと、スタンプが砕かれ、その姿を露わにした。

 

[仮面ライダーライブ!]

 

閉じていた顔面のコウモリの翼は開き、それに伴ってオレンジ色のクリアパーツになっている。頭部はシルバーで、黒をベースとしたエビルに対比して、白がベースとなっており、差し色はターコイズブルーの、まるで聖職者のような出で立ちの新たな仮面ライダーがいた。

 

そうーーーー純白の聖戦士『仮面ライダーライブ』である。

 

 

ー狩崎sideー

 

「裏返ったーっっっ!!!」

 

そしてドローンからの映像を見ていた雄二郎司令の後ろで、狩崎がリバーシをひっくり返して吠えた。リバーシの駒が黒から白に反転した。

 

「〈仮面ライダーライブ〉爆誕! フォーッ! うおおおおおお!」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

テンション爆アゲとなる狩崎と対象的に、雄二郎司令は何処か、険しい顔色になっていた。

 

 

 

 

 

 

ーキュアホワイトsideー

 

ホワイト達も、新たな姿となったリバイスとライブに目を見張った。

 

「えぇっ!? ぶっちゃけ、ありえな〜い!?」

 

「エビル、じゃなくて、ライブ!?」

 

「っ! そうか・・・・! 黒が白に反転、『EVIL‹エビル›』が反転したから『LIVE‹ライブ›』なんだわ!」

 

「よぉ〜し! 私達も!」

 

「待って皆!」

 

ブラックとルミナスが驚き、ゆりが考察するとめぐみが再度変身しようとするが、ホワイトが止めた。

 

「ホワイト・・・・?」

 

「・・・・皆、キリヤくんの好きにさせてあげて」

 

ホワイトがバッファロー・デッドマンとスーパーブラキオ・デッドマンと対峙するライブの背中を、その勇姿を、目に焼き付けようとしていた。

その言葉と気迫に、ブラックとルミナスとドキドキチームは拳を下げ、誠司と他のプリキュア達も、変身アイテムを下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「おい、キリヤとか言ったな。あのバッファロー・デッドマン‹牛›、やれるか?」

 

「ーーーー余裕ですよ」

 

「んじゃさ! 俺っち達があのブラキオの寄せ集めやっつけてやるよ!」

 

「美味しい処はくれてやる」

 

「ーーーーありがとうございます」

 

そう会話して、リバイスはスーパーブラキオ・デッドマンへと向かった。

しかし、バッファロー・デッドマンが立ち塞がろうとする。

 

『待て! 貴様とは決着ぶへっ!?』

 

「うるせぇんだよ邪魔牛! お前の遊び相手なんてしてやる義理はねぇよ!」

 

「お邪魔ちゃんなのよ!」

 

が、リバイがバッファロー・デッドマンの顔面を踏みつけ、そのまま跳躍して飛び越えると、バイスをバッファロー・デッドマンにラリアットしてから通り過ぎた。

 

『ハブッ!ーーーーお、己!』

 

起き上がったバッファロー・デッドマンは顔を抑えてリバイスを追うとするが、今度はライブか立ち塞がる。

 

「僕が相手になってあげますよ。相手にされてないお牛さん」

 

「貴様・・・・」

 

「カゲロウに捕らわれながらも、僕は色々と聞き耳を立てていましたから、あなたのーーーー”くだらない目的”も、知ってますよ?」

 

「くだらない・・・・だと!? この、『ドラッグ野郎』がっ!!」

 

ライブが含み笑いを交えた言葉を聞き、バッファロー・デッドマンはギフジュニアを大量に召喚し、ハルバードを振り回しながら、ライブへと襲い掛かった。

そして、リバイスは。

 

『ブォオオオオオオオオオオオオオオオオオっ!!』

 

「はぁっ!」

 

スーパーブラキオ・デッドマンのドリルとノコギリを回避し、二本の突撃槍『ツノランサー』を突き立てる、

 

『ブォオッ!?』

 

「はぁぁぁぁっ!!」

 

後退するスーパーブラキオ・デッドマンに、リバイはツノランサーの柄を接続すると少し柄が伸び、一本の長槍となった。

 

「はぁっ! とりゃ! つぁっ!!」

 

『ブオオオオオオオ!』

 

リバイはツノランサーを回しながらスーパーブラキオ・デッドマンを攻めたて、更に大きく振って遠心力を交えた突きを繰り出し、スーパーブラキオ・デッドマンが大きく後退する。

 

『ブオオオオオオオオオオオ!!』

 

が、スーパーブラキオ・デッドマンは、キャノン砲で攻撃をしてくる。

 

「っ!」

 

砲弾がリバイの当たり、爆裂を引き起こす。

 

『輝二さん!』

 

プリキュアの何人かが声を上げ、煙が晴れると。

 

「ーーーーへっへ〜! 俺っちがいる事、忘れちゃったの? しみるわ〜!」

 

リバイの前に盾『トリケラシールド』を構えたバイスが、砲弾を防いでいた。

 

『ブオオオオオオオッ!!』

 

「どぉぉりゃぁぁぁっ!!」

 

スーパーブラキオ・デッドマンが連続で砲弾を放つが、重厚な鎧を纏ったバイスに通じず、トリケラシールドで防ぎながら突き進み殴りつけると、鼻の部分がバンカーのように動いて、スーパーブラキオ・デッドマンを突き刺す。

 

『ブガッ!』

 

「ふんぬぅぅぅらぁぁぁっっ!!!」

 

「ブオオオオオオオッ!?」

 

「はぁぁぁっ!!」

 

バンカーを刺されたスーパーブラキオ・デッドマンがその場で動きを止め、バイスがその身体を掴んで盛大に投げ飛ばすと、先に跳んでいたリバイスがツノランサーを思いっきり振り、スーパーブラキオ・デッドマンに叩きつける。

 

『ブォォォッ!!』

 

スーパーブラキオ・デッドマンが吹き飛び、バイスの隣に着地するリバイ。

 

『ブオオオオオオオオオオオッ!!!』

 

起き上がったスーパーブラキオ・デッドマンは雄叫びをあげ、頭と両手にエネルギーを溜めていく。プリキュア達を吹き飛ばした竜巻攻撃である。

 

「バイス!」

 

「よっしゃぁ!」

 

リバイはドライバーのスタンプを二回傾けた。

 

[リミックス! バディアップ! 必殺! チェケラ! ひと欠片! トリケラ!]

 

「そいやっさ!」

 

「よっと!」

 

トリケラシールドを上に投げたバイスが四足歩行になると、リバイもツノランサーを上に投げ、トリケラシールドと合体しトリケラトプスの頭となりそれを両手で持つと、四足歩行になったバイスに跨がると、リバイスの身体が変化し、トリケラトプスへと変貌した。

角竜類のリミックス、『リバイストリケラ』である。

 

『ブオオオオオオオオオオオッッ!!!』

 

ーーーークァァァァァァァァァ!!

 

スーパーブラキオ・デッドマンが竜巻攻撃を繰り出すと、リバイストリケラが突進し、竜巻をもろともせず、スーパーブラキオ・デッドマンに頭を振って、角で攻撃するとキャノン砲の腕が砕けた。

 

『ブオオオッ!?』

 

そしてスーパーブラキオ・デッドマンは錐揉み回転しながら吹き飛び、地面に盛大にバウンドしながら転がり、一際大きく跳ねて地面に落下ーーーーする先に、バッファロー・デッドマンが転がってきた。

何故バッファロー・デッドマンが転がってきたと言うと。

 

 

 

 

 

ーライブsideー

 

リバイスがスーパーブラキオ・デッドマンと交戦する前、

 

「ハァッ!」 

 

『ギフッ!?』

 

ライブは固有武器『ライブガン』の引き金を引くと光弾が放たれ、ギフジュニア達を正確に撃ち抜いていく。

 

『ギフッ!』

 

「はぁっ! たぁっ!」

 

『ギフッ!?』

 

ギフジュニア達が攻勢に出るが、ライブはその攻撃を受け流し、流れるような動きでライブガンを至近距離から撃っていく。

 

『ギファ!?』

 

「っ、ふっ!」

 

『ギフっ!?』

 

後ろから攻撃してきたギフジュニアを跳躍して回避し、両足でギフジュニアの首をホールドしたライブは背面にぶら下がるようにすると、その場で振り子のように動くと、ギフジュニアの身体をその場で180°回転させながらライブガンの光弾を全て正確にギフジュニア達に浴びせていく。

 

『『ギファァァァァッ!!!』』

 

「っ! はぁっ!」

 

『ギフっ!』

 

逆さまにぶら下がり、さらに回転した状態にも関わらず、的確にギフジュニア達を撃ち倒したライブはホールドしていた足を離し、ギフジュニアを撃ち抜く。

 

「・・・・・・・・」

 

『『・・・・ギフゥゥっ!!』』

 

ライブガンを下ろし一息吐いたライブの後ろから、隠れていたギフジュニアが二体が飛びかかってくる。

 

「・・・・!」

 

ーーーーバシュン! バシュン!

 

『『ギフゥゥゥゥッ!?』』

 

が、ライブは後ろを振り向かず、ライブガンで正確に二体のギフジュニアの脳天を的確に撃ち抜き、ギフジュニア達は地面に置いて消滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキュアホワイトsideー

 

「えぇ〜!? ぶっちゃけ、キリヤくん強ーい!」

 

「ぶ、ブラック、キリヤさんってあんなに強い人だったんですか!?」

 

「い、いや、あんなに強くはなかったと思うけど・・・・」

 

「ですが、彼のあの動き、まるで特殊で、それも高度な戦闘訓練を受けているようなキレがありますわ・・・・!」

 

ブラックとルミナス、否、他のプリキュア達もライブの戦いぶりに目を見開き、ロゼッタがそう考察した。

そんな中、やよいはリバイスの方に視線を向けたり、すぐにライブの方に視線を向けたり、またすぐにリバイスを、またすぐにライブをと、往復するように見ていた。

 

「やよいちゃん、目疲れるよ・・・・」

 

「だってだって! ワイルドでダイナミックに戦うトリケラゲノムと! クールでスタイリッシュなライブ! もう最高だよぉっ!!」

 

なおが苦笑して言うが、ヒーロー大好きなやよいは胸の高揚を隠そうとせず、目をキラキラさせながら双方の戦いを見ていた。

 

「だけど、本当に凄いわね、あのライブって・・・・」

 

「ええ。下手をすると私達よりも上って気がするわ・・・・」

 

シエルとダイヤモンドも、ライブの活躍ぶりに目を見張っていた。

 

 

 

 

 

ーライブsideー

 

「ふぅ・・・・」

 

ギフジュニアを掃討したライブは、ホッと一息をーーーー。

 

『ヌウォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

「っ!」

 

吐く暇もなく、バッファロー・デッドマンがハルバードを大きく振り下ろしてきた。

 

ーーーードゴォォォォンン!

 

ハルバードが地面に叩きつけられ少し土煙を舞うが、ハルバードの長い柄に、ライブがヒラリと立った。

 

『この! 下りろ・・・・!』

 

「ーーーーハァッ!」

 

『ぐわぁっ!!』

 

振り上げようとするバッファロー・デッドマンよりも早く、ハルバードを足場に曲芸のように連続回転するライブは、銃撃と蹴りを繰り出した。

 

「ハッ! ハッ! ハッ! ハッ! ハッ!」

 

『ぐわぁっ! ぐわぁっ! ぐわぁっ! ぐわぁっ! ぐわぁっ!!』

 

連続攻撃に耐えられず後退するバッファロー・デッドマンが、足を地面に引っ掛けて倒れてしまう。

ライブは着地すると同時に、ライブガンをドライバーに戻し、『バッドバイスタンプ』を押した。

 

[必殺承認!]

 

「ーーーーバッファロー。あなたは凄い人だ。自分の目的の為ならどんなに多くを切り捨てても構わない、その狂気にも似た信念には驚嘆すら感じます。その動きからも、キュアロゼッタのように、あらゆる武術を修めていった努力が垣間見えた」

 

『ーーーーあぁそうだ。我はこの力を得る為に、あらゆるモノを切り捨てた! 我が求めるものの為に!!』

 

バッファロー・デッドマンは起き上がると、大仰に宣言した。しかし、ライブは冷淡に声を発する。

 

「でもねーーーーあなたの力は・・・・“軽いんですよ”」

 

『・・・・“軽い”、だと? 『僕』の、積み上げてきた力が?』

 

その言葉を聞いて、バッファロー・デッドマンは一人称を『我』から『僕』に変わって首を傾げる。

 

「あなたは自分の力を、“自己満足の為だけ”にしか使っていない。ーーーーそんな“薄っぺらな覚悟”と“軽薄な力”で積み重られた強さだなんて、たかが知れてますよ」

 

ライブは確信を込めてそう言って、チラッとホワイト達を一瞥した。

そうーーーー彼は知っている。本当に強い『覚悟』と『想い』を以て、どんなに絶望的な状況でも立ち上がってきた人達を。

バッファロー・デッドマンはライブの言葉が逆鱗に触れたのか、身体をフルフルと震わせ、唸るような声を上げた。

 

『ーーーーふざけるな! この『悪魔の力』を使いこなすように、『僕』は努力を積み重ねてきた! お前の! お前達のように! そんなドライバーやアイテムを使うような外付けドーピング共なんかに! 劣っている筈が、負ける筈が無いんだぁああああああああああッッッッ!!!』

 

怒りに任せて突撃をしてくるバッファロー・デッドマン。

しかし、ライブはその場から動こうとせず、構えたまま動かない。

 

『キリヤくん!』

 

ブラック達の声が響くが、ライブはそれでも動かない。ホワイトも、拳を握りしめて見つめる。

バッファロー・デッドマンの角が、ライブの胸に突き刺さるその時ーーーー。

 

「ーーーーふぅ・・・・」

 

ライブはのけ反るように倒れると、両足をバッファロー・デッドマンの腹部に当てると、その勢いでバッファロー・デッドマンのその巨体を、フワリと投げた。

ーーーー巴投げだ。

 

『なっ!?』

 

大きく投げ飛ばされたバッファロー・デッドマン。ライブはすぐに立ち上がると、ライブガンを抜いて、その銃口を向けた。

 

[バッド! ジャスティスフィニッシュ!]

 

ライブガンの銃身にエネルギーがチャージされ、トリガーを引くと、黄色い音波状のエネルギー弾を撃った。

 

『グワァアアアアアアアアアっ!!』

 

そして地面を転がるバッファロー・デッドマンの上に、同じくリバイストリケラに吹き飛ばされてきたスーパーブラキオ・デッドマンが落ちてくる。

 

『えっ? ウソ? ウソウソウソ!? 来るな来るなァァァァァァっ!!!』

 

バッファロー・デッドマンは必死に懇願するが、止まる訳が無く、そのままーーーー。

 

ーーーーグサァッ!

 

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

スーパーブラキオ・デッドマンのノコギリが頭の角に引っ掛かり、さらにドリルがバッファロー・デッドマンの腹部に深く突き刺さった。

 

『うわっ!? ちょっとスプラッタ・・・・!』

 

プリキュア達が口に手を当てて憐憫な視線を向けた。

 

 

 

 

 

ーリバイスsideー

 

「よっしゃ! 今がチャンス!」

 

[トリケラ! スタンピングフィニッシュ!]

 

バイスの言葉に続くように、リバイがバイスタンプを操作すると、リバイストリケラの足元の地面に、『トリケラバイスタンプ』のエンブレムが浮き上がり、リバイストリケラの足に吸い込まれるように消えていく。その瞬間、リバイストリケラの身体が発光し、スーパーブラキオ・デッドマンとバッファロー・デッドマンに向かって突撃していく。

 

ーーーークァァァァァァァァァッ!!

 

『っ! ヤバいっ!!』 

 

突撃してくるリバイストリケラを見て、バッファロー・デッドマンは腹部に刺さったドリルを無理矢理抜き、ノコギリが引っかかった角をへし折る。

 

『ぐぅぅっ!!』

 

『ブォ?』

 

痛みに微かに悶えるバッファロー・デッドマンはスーパーブラキオ・デッドマンの後ろに回り、その身体を持ち上げ、

 

『このぉぉぉっ!!』

 

『ブオオオオオオオっ!?』

 

「っ!」

 

[スパイダー!]

 

リバイストリケラに向かって思いっきり投げた。ソレを見た誠司が、『スパイダーバイスタンプ』を起動させた。

 

「死ぬ気で、決めるぜ!」

 

リミックスを解除したリバイは槍を持って飛び、上からスタンプ状のエネルギーを纏ったキックを。

 

「とりゃぁぁぁっ!!」

 

バイスは盾を持って下からスタンプ状のエネルギーを纏い、スライディングキックを繰り出した。

 

『ブオオオオオオオオオオオオオオオっっ!!』

 

ーーーー【トリケラスタンピングフィニッシュ】。

 

ーーーードガァアアアアアアアアアアアアアアンン!!

 

スーパーブラキオ・デッドマンは、『トリケラバイスタンプ』の紋章を浮かべて爆発した。

 

『くっ、クソぉっ!!』

 

「あ! アイツ逃げるぞ!」

 

「仲間のデッドマンを盾にするなんて!」

 

「恥ずかしく思わないのですか!」

 

あおいとなおとエースが文句を言うが、バッファロー・デッドマンは構わず駆け出す。

 

「キリヤくん!」

 

「それじゃ僕も・・・・死ぬ気で、決めてやるさ!」

 

[必殺承認! バッド! ジャスティスフィニッシュ!]

 

ライブがツーサイドライバーを起動させると、跳躍し飛び蹴りの体制に入る。

 

『ーーーーき、貴様! 逃げる相手を後ろから攻撃するだなんて! なんて卑劣なヤツだ! 恥を知れ!!』

 

『アンタが言うなっっ!!!』

 

味方を盾にして逃げようとする自分を棚に上げたバッファロー・デッドマンが、ライブの方を向きながら見苦しい言葉を吐くが、プリキュア達の大半が一蹴する。

 

『クソっ! このまま「逃げるな、よっとぉッ!」ゴブベバァッ!!

 

逃げようとするバッファロー・デッドマンの逃げ道に先回りしたのは、『デモンディグゾン』を装備したデモンズだった。

デモンズは激しく回転するドリルを力いっぱい振り抜くと、完全に意表を突かれたバッファロー・デッドマンを殴り飛ばし、ライブの攻撃を正面から受ける体制にした。

 

「今だ! ライブ!!」

 

「Grazie‹グラッツィエ›! デモンズ!!」

 

何故かイタリア語で『ありがとう』と言ったライブは、白い蝙蝠を右足に纏って飛び蹴りを放つ。

 

「ヤァァァァァァァァっ!!」

 

『ず、ズルイぞ!! 卑怯だぞ!! こっちは一人なのに二体一だなんモゲギャァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!』

 

ーーーーズガァアアアアアアアアアアアアアンンッ!!

 

見苦しく喚くバッファロー・デッドマンだが、ライブの蹴りを受けて、『バッドバイスタンプ』のエンブレムを浮かべながら爆発した。

丁度その時、なのは達とヒトミ達も、幹部達が退散したのか、ようやく到着した。

 

「ーーーーふぅ、助かったよデモンズ」

 

「おう。コレからよろしくな、ライブ!」

 

お互いにそう言うと、パン! とハイタッチした。

それを見ながら、リバイは『バッファローバイスタンプ』を拾った。

 

「ーーーー『バッファローバイスタンプ』。回収完了」

 

「あ、これにて一件落着〜!」

 

バイスが締めの言葉を発した。

 

 

 

 

 

ーオルテカsideー

 

オルテカは、アギレラとフリオを先に帰らせて、リバイス達がいる工場から離れたビルの屋上の床に倒れる。バッファロー・デッドマンの契約者である『スタイリッシュ悪者デストロイヤー』と名乗る少年を見下ろす。

 

「〜〜〜〜!! オルテカ・・・・!」

 

「ーーーー分かっていますよ」

 

オルテカは獣のような唸り声を上げる少年に、『新しいバイスタンプ』を渡した。

 

「まだまだ、やれますよね?」

 

「当然だ・・・・! それよりも、魔法使いのプリキュアがいたよなぁ? アイツらの魔法が、欲しい・・・・!!」

 

「時期を持ってください。時期を、ね」

 

オルテカはそう言って、薄く笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーキリヤsideー

 

キリヤはその後、ほのかの家でプリキュア達と輝二と誠司、そして精霊達とタコカフェのたこ焼きや、PANPAKAパンのパン、シュークリームやドーナッツ、カップケーキやキラパティのスイーツ等を持ち寄りドンチャン騒ぎで盛り上がっていった。

突然のパーティーだったが、さなえお婆ちゃんは笑みを浮かべて受け入れてくれた。なのは達は事後処理の為に不参加である。

因みに、ブラキオ・デッドマンの契約者の三人は、精神崩壊寸前の状態であり、およそ半年以上は精神病院での治療を受ける事になったが、彼らがカゲロウに捕まる前の所業を考えれば、当然の報いとほとんど同情されなかった。

パーティーが盛り上がっている最中、キリヤは少し席を外し、人気の無い場所につくと、お腹を少し押すと、口から“特殊なケースに入っていた小さな通信機”を取り出し、何処かの誰かと静かに連絡を取る。

 

「ーーーーはい。定期連絡を怠り申し訳ありませんでした。〈デッドマンズ〉に捕縛されましたが、怪我の功名か、『仮面ライダー』の力を得る事ができました。・・・・はい・・・・はい。やはり〈デッドマンズ〉で、“最も警戒すべきはオルテカ”だと思われます。引き続き、“他の事も含めて”、〈フェニックス〉の内部を探ります。ーーーー僕の先輩でもある“あなたの出来の悪い教え子達”の様子も一応見ておきますよ」

 

それから数秒ほど、通信相手との話を終えたキリヤは、目をキリッとさせて応えた。

 

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーでは、〈ネオボンゴレファミリー門外顧問『CEDEF‹チェデフ›』〉、『コードネーム・ぺぺ』。通信を終えます、『ラル・ミルチ教官』」

 

 

 

通信を終えたキリヤは、丁度よく迎えに来たほのかに笑みを浮かべ、手を繋ぎ合って皆の元に戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ーーーーにゅ~ん》

 

キリヤがいた場所に、小さな影が動いていた。

 

 

 

 

 

 

ー輝二sideー

 

輝二は真琴やうららが歌まで歌い出し、マナも参加するのを六花とアリスと亜久里が止めたりするのを眺めていた輝二に、キリヤとほのかが戻ってくるのと同時に、キリヤの後を追っていたバイスも戻って来ると、輝二の耳元でコショコショと話す。

 

「(ふぅ~ん。成る程、な・・・・)」

 

輝二はキリヤをソッと見据えながら、これから面白くなりそうだと、薄く笑みを浮かべていた。




ー『仮面ライダーリバイス トリケラゲノム』ー

リバイは『仮面ライダーアギト グランドフォーム』をリバイスカラーにした姿。
バイスは『ブラキオゲノム』の時と同じだが、大きめの盾を装備した。

『ぺぺ』とは、イタリア語で胡椒(ペッパー)を意味しており、ホワイトペッパーやブラックペッパーにもなります。


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