ダイヤのA〜世代最強右腕〜 (ホークス馬鹿)
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足立惇

 

身長:176センチ

 

体重:68キロ

 

血液型:A型

 

誕生日:9月4日

 

出身地:神奈川県

 

ポジション:投手

 

投打:右投げ右打ち

 

趣味・特技:YouTube観賞・漫画・野球ゲーム

 

尊敬する人物:両親・斉藤○巳・藤川○児

 

選手としての特徴:抜群のキレと伸びを兼ね備えた真っ直ぐとキレ鋭い変化球で三振を奪う本格派右腕。回を追うごとにスピード、キレが増すタイプで、夏場になると最早無双状態になり手がつけられなくなる。

 

性格:普段はクールで大人しく、友人思いの性格である。しかし試合になると人が変わり、気迫のこもった投球をする。

 

容姿:かつて負けないエースと呼ばれていた鷹のエースの顔をイメージしていただけると。

 

備考:数多くの強豪校から青道高校を選んだ闘志溢れる怪腕ピッチャー。普段は大人しいが、マウンドに立った時の気迫と威圧感は桁違いで、実力と精神面でもエースの器。

選手としては、入学時点で既にMAX140キロのストレートを投げれており、変化球もスローカーブ、Hスライダー、SFFを持っており、どの球種も高いレベルを誇る。しかし、どの指導者曰く、『これでもまだ発展途上』と言う。

打撃も優れており、パワーとミートを兼ね備えており、中学時代は通算25本塁打放っている。その為、マウンドに上がらない時は主に外野を任される事が多い。

外野守備でも、MAX140キロの真っ直ぐを投げられる強肩を発揮し、何度もランナーを刺し勝利に貢献していた。

小湊春市とは、対戦経験は無いが同じ神奈川だったため、既に名前は知っていた。

沢村と降谷とは、同じポジションであるためか、良き友であり、良きライバルでもある。

端整な顔立ちをしているため、女性人気は抜群。

夏川唯とは、幼馴染である。

 

選手ステータス(パワプロ査定・入学時点の能力)

 

球速:140キロ

 

スタミナ:A(80)

 

コントロール:B(75)

 

球種:スローカーブ (3)

   Hスライダー(4)

   SFF(5)

 

弾道:3

 

ミート:A

 

パワー:B

 

走力:B

 

肩力:S

 

守備力:A

 

捕球:A

 

特殊能力

・対ピンチA

・ノビA

・打たれ強さA

・奪三振

・威圧感

・キレ○

・緩急○

・クロスファイヤー

・リリース○

・球持ち○

・低め○

・牽制

・打球反応○

・闘志

・終盤力

・鉄腕

・ギアチェンジ

・根性

・対強打者○

・要所○

・立ち上がり○

・対ランナー○

・チャンスA

・盗塁A

・走塁A

・広角打法

・流し打ち

・高速レーザー

・サヨナラ男

・ケガしにくさA

・速球中心

・テンポ○

・夏男

 

成長タイプ:晩成2

 

体質:普通




投稿出来ました。

グダグダ設定ですが、何卒お許しを(土下座)

そ、それでは、また。


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1話

1話です。


青道高校。西東京3強の一角を担う、甲子園常連の名門校。

そこに、1人の少年がとある女性と自身と同い年の少年と一緒に学校見学に来ていた。

 

高島「どう、足立君、沢村君?これが我が校が誇るグラウンド設備よ!」

 

少年の名は足立惇と沢村栄純。青道高校理事長の娘であり、野球部副部長でもある高島先生にスカウトされ、学校見学に来ていた。

 

高島「あっちには雨天練習場もあるし・・・ウチの部員の半数は寮で生活しているわ!」

 

その横で

 

栄純(うぉぉー、何じゃあのマシンは!見た事ねぇモンが沢山・・・!)

 

惇(成程・・・実際生で見て見たら確かにスゲーわ・・・)

 

惇と栄純は対照的ながら、充実した設備に舌を巻いていた。

 

惇「確かにスゴいっすね。流石名門だけあるっすわ。」

 

高島「フフッ・・・ありがとう。」

 

惇の声に、栄純はハッとなり

 

栄純「べ、別にときめいてなんかねーぞ!ちょっと驚いただけだ!」

 

栄純「第一、こんな金かけなくたって、野球は出来んだよ!」

 

高島「!」

 

惇「・・・。」

 

栄純「どーせ選手だって、上手い奴ばっか集めてんだろ?だったら強くて当たり前じゃねーか・・・」

 

栄純「てゆーか、こーゆー何でも揃ったエリート軍団には、死んでも負けたくねぇ!」

 

そう言いきった。

 

惇「沢村。」

 

栄純「何だよ!」

 

惇「確かにお前の言う通り、この学校のような強豪校は、基本的に全国から有望選手を集めてる。」

 

高島「所謂野球留学ね。現に野球留学に対しての批判は多いわ。」

 

栄純(やっぱり寄せ集めの集団じゃねーか。)

 

惇「けどな沢村。今の高校野球は日本が世界一だって言われて、メジャーのスカウトだって甲子園に来るんだぜ。お前知ってんだろ?プロの選手だって、次々とメジャーに挑戦してるって事を。」

 

高島「そうね。彼らは誰よりも上手くなりたい。その一念だけで、わずか15歳の少年が親元を離れ、より厳しい環境で己の能力を磨き鍛え上げる。私はね、そういう覚悟を持った選手達を心の底から尊敬してるわ。」

 

栄純(覚悟・・・)

 

それを聞き、栄純は再びグラウンドを見た。

 

栄純(確かに、このビリビリした緊張感は・・・)

 

グラウンドに満ち満ちている気迫に喉を鳴らしたその時

 

??「コラァ、川上ぃ!何じゃその腑抜けた球は!」

 

??「もっと活きた球投げんかい!」

 

怒鳴り声が聞こえたため、振り返った。

 

高島「沢村君。足立君。彼のバッティングは見ておいた方が良いわ。」

 

惇「東清国っすよね。確か通算42本塁打放った今年のドラフト候補生の。」

 

高島「ええ。よく知ってるわね。」

 

惇「どうも。」

 

そうこうしていると、東清国のある一言に腹が立ったのか、栄純が彼に噛みつき、1打席勝負することになった。

 

惇「ったく、メンドクセーな・・・」

 

これには、惇も巻き込まれてしまい、栄純の後に投げる事になった。

キャッチャーは御幸一也が受け、栄純のウォーミングアップが終わり、勝負が始まった。

その初球、栄純は地面にボールを叩きつけた。

 

惇「!・・・今の・・・」

 

高島「えぇ。直前に軌道を変えたわね。」

 

惇「・・・驚かないんすね。」

 

高島「あの子は関節が柔らかいのよ。だから出来るの。」

 

惇「ふーん・・・」

 

そして、何球か投げ、最後となる11球目。

ド真ん中に投げたボールは

 

ズバアアンッ!!

 

見事三振に抑えた。

 

高島「足立君。次は貴方の番よ。」

 

惇「うっす。そんじゃあ、準備しときます。」

 

そう言い、惇はマウンドに上がった。

 

御幸「足立だったな?」

 

惇「はい。」

 

御幸「球種は?真っ直ぐだけとか言うんじゃないよな。」

 

惇「ちゃんと変化球ありますよ。けど、今日は真っ直ぐしか投げませんよ。」

 

御幸「何でだ?」

 

惇「入るって決めてないからっすよ。」

 

御幸「ははは!成程!しっかりしてんなぁ!」

 

惇「はい。そんじゃあ、お願いしますよ。」

 

そして、御幸がキャッチャーボックスに行ったのを確認した惇は、いつもマウンドでやる股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

 

高島「沢村君。彼のピッチングは見ておきなさい。」

 

栄純「えっ?」

 

高島「見れば分かるわ。その実力は世代最強よ。」

 

そう言われ、栄純はマウンドを見た。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

東清国「っ!?」

 

東の懐に凄まじい伸びのある真っ直ぐが投げられた。

 

御幸「先輩。ボールっすよね。」

 

東清国「あ、ああ。分かっとるわ!」

 

御幸(あっぶねー!危うく逸らしそうだったぜ・・・!つーか、これマジで噂以上のボールだな・・・!)

 

東清国(何や今の真っ直ぐは・・・!?中坊が投げるボールとちゃうで・・・!?)

 

この時、御幸と東は、惇の伸びのある真っ直ぐに驚いていた。

 

栄純「・・・何だよ、今のボールは・・・!?」

 

栄純(何というか・・・浮き上がった・・・!?)

 

栄純も例外では無く、野球をやってきて一度も見た事が無い伸びのある真っ直ぐだった。

そんな中、惇は2球目を投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

東清国「クッ!!」

 

東のバットは空を切った。

 

高島「今のも恐らく140は出たんじゃないかしら?」

 

栄純「140!?それ以上に見えるけど・・・」

 

高島「本当よ。それが彼の最速よ。でも、それ以上に凄いのは見て分かるようにあの凄まじく伸び浮き上がると錯覚する程の真っ直ぐよ。」

 

そう話してる中

 

東「フゥ・・・」

 

東の表情が変わった。

 

御幸(ほお・・・東さん、とうとうマジになったな・・・)

 

これに、御幸は気付き

 

御幸(さーて、本気になった東さんをどうする・・・?)

 

そう思いながらミットを構えた。

 

惇(おっ、顔つき変わったな・・・。そんじゃあ、ちっとギア上げっか・・・)

 

東の顔つきが変わった事に気付いた惇は、少しギアを入れ3球目を投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

コースは真ん中高めだったが東のバットは再び空を切った。

 

青道高校野球部員A「おいおいマジかよ!?」

 

青道高校野球部員B「真っ直ぐに滅法強い東さんが・・・!?」

 

青道高校野球部員C「これが中学№1ピッチャー、足立惇。」

 

これには、他の部員達は驚きを隠せなかった。

 

高島「真っ直ぐと分かってて打てない。彼と対戦したバッターは、皆口を揃えてそう言ったわ。」

 

栄純「・・・。」

 

栄純(どうすれば・・・どうすれば俺もあれを投げられるんだ?)

 

惇の圧巻のピッチングに、沢村はただただ絶句をしていた。

 

惇(・・・次で決める!)

 

その瞬間、御幸と東の背中から寒気を感じた。それは惇から放たれる圧倒的なオーラによるものだった。

 

御幸(さっきの3球投げた真っ直ぐよりもヤバいかもしれねーな。こりゃあ、気を抜いたら指もってかれんぞ・・・今ちょっと手が痺れてて感覚がねーんだからな・・・)

 

そう思い、御幸は気を引き締めながらミットを構えた。

そして4球目。先程とは比べものにならない程の伸びのある真っ直ぐを投げ込んだ。

 

東「うおおおっ!!」

 

コースは少しインハイ寄りの真っ直ぐで、東も渾身のフルスイングをし

 

バシィィンッ!!

 

御幸「クッ!!」

 

その結果、東のバットは空を切ったが、それと同時にこの場にいた皆が驚きの表情を浮かべた。

それは、御幸のミットが弾かれたのだ。

 

青道高校野球部員D「お、おい・・・今の真っ直ぐ・・・」

 

青道高校野球部員E「ああ・・・また更に浮き上がったな・・・」

 

青道高校野球部員F「そんな事よりよ・・・」

 

青道高校野球部員G「ああ・・・御幸がキャッチできないなんて・・・初めて見たぞ!?」

 

これには、周りにいた皆は絶句していた。

 

御幸「は・・・はは・・・!!」

 

御幸(真っ直ぐを取れねーなんて・・・いつ以来だ・・・?たはは・・・ヤベえ・・・笑いが止まらねえ・・・!)

 

御幸は、取れなかった事に心折れるどころか、逆に目を輝かせていた。

そして、マウンドに歩み寄り

 

御幸「ナイスボール!スゲー真っ直ぐだな!」

 

そう惇を褒めた。

 

惇「フッ・・・どうも。久し振りにちょっと本気出した甲斐がありました。」

 

御幸「へえ・・・久し振りね。これでキレの良い変化球があるって事か・・・。ウチ来たらリードし甲斐があるな。」

 

惇「そっすか。」

 

そして、学校見学は終わり、惇は栄純と別れる事になった。

その道中、色々考えた結果、惇は青道高校に行く事に決めたのであった。




投稿出来ました。

アニメと漫画を見てアレンジしました。

主人公と東さんの対決ですが、藤川○児とカ○レラのオールスターでの対決をイメージして書きました。

拙い内容でしたが、お許しを(土下座)

それでは、また。


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2話

2話です。


初練習は入学式の前日だった為入学式二日前に東京駅にやって来た惇。

そこにいたのは

 

惇「沢村?それに・・・高島さんじゃないっすか。」

 

栄純と高島先生だった。

 

栄純「うおっ!足立惇!」

 

高島「久し振りね、足立君。」

 

惇「久し振りっす。つーかお前、あんだけ野球留学をディスったのに結局青道にしたのか?」

 

栄純「そうだよ!わりーか!」

 

惇「別に悪いとは言ってねーよ。まあ、3年間宜しく。」

 

栄純「俺、絶対お前には負けねーからな!」

 

惇「へえ・・・良いね。楽しみにしてるよ。」

 

高島「2人共、車は用意できてるから行くわよ。」

 

そして、惇と栄純は高島先生が運転する車で青道高校へ向かった。

 

 

 

 

 

青道高校

 

 

 

 

 

高島「足立君。沢村君。寮の荷物を片付けたら、今日はゆっくり身体を休めておいてね。」

 

高島「春休み中でも青道の練習はハードだから・・・」

 

惇「はい。」

 

栄純「へへっ・・・そんな事は十分覚悟の上だよ!」

 

高島「フフ・・・そう・・・?」

 

高島「これで私のスカウトとしての役目は終わりね・・・」

 

高島「貴方達も慣れない環境に戸惑うと思うけど・・・私は自分の目を信じてる・・・」

 

高島「頑張りなさい、将来のエース達。」

 

惇「うっす。」

 

栄純「エースって・・・はは・・・はっはっは。」

 

そして

 

高島「それと、これからは生徒と指導者の関係よ・・・足立君は大丈夫だと思うけど、馴れ馴れしくタメ口なんて聞いたら、ぶっ飛ばすわよ!」

 

そう高島先生に言われ

 

栄純「えぇ!?マジ!?」

 

高島「んっ!」

 

栄純「・・・ですか?」

 

栄純も敬語に切り替えた。

 

惇(切り替えはえー・・・)

 

これには、惇も苦笑いを浮かべたのだった。

そして、惇と栄純は一緒に青道高校野球部の寮、『青心寮』へ向かった。

 

栄純「青心寮・・・」

 

惇「ここだな。」

 

栄純「寮っていうより、何かアパートみてー。」

 

惇「こういうもんだろ。ほら、部屋向かうぞ。お前と俺、確か部屋一緒だったろ。」

 

栄純「お、おう・・・」

 

そして、部屋へ向かうと

 

惇「おお、ここだ。」

 

名前が書かれてある札を見つけた。

 

栄純「先輩達と一緒の共同生活・・・名門っつーからきっと、スゲー人達なんだろうな。何か緊張してきた。」

 

惇「気持ちは分かるが、ずっとここにいちゃわりーだろう。んじゃあ、ノックすんぞ。」

 

そう言い、惇はドアをノックした。

 

コンコン

 

惇「今日からこの寮部屋でお世話になることになった足立惇と沢村栄純っす。ドア開けても良いっすか?」

 

すると

 

??「おう、新入りか?入れ。」

 

許可の声が聞こえたため

 

惇「失礼します!」

 

扉を開けると

 

??「うらあああああぁぁ・・・」

 

顔は青白く、血を流して白目の人が立っていた。

 

惇「・・・。」

 

これに惇は、どうコメントすれば良いのか分からず、ただ突っ立ったままとなった。

 

栄純「どうしたんだよ、足立・・・って、うわぁあぁああ!!出たぁー!!」

 

逆に栄純は、驚いて腰が抜けてしまった。

 

倉持「ヒャハハハ、ある意味大成功!!お前が逆に驚かなかったのは予想外だったが、もう1人は良いリアクションしてくれたぜ!!」

 

倉持「悪かったなお前達!俺も去年やられてコイツと同様腰抜かしそうになったからなぁ!」

 

倉持「では改めて、青道高校野球部へようこそ♡」

 

そう言い、倉持は手を差し出し

 

惇「宜しくっす。」

 

栄純「どうも。」

 

2人も手を出し握手した。

 

倉持「俺は2年の倉持。それと、3年の増子さん。」

 

すると

 

増子『宜しく。』

 

増子は、紙を出した。

 

惇「宜しくっす。」

 

惇(何で喋んねーんだ?)

 

栄純「よ、宜しくお願いします。」

 

倉持「気にしなくて良いぜ!!その人、昨日エラーして喋ること自分で禁止してんだよ!意味分かんねーだろ!?ヒャハハハ!!」

 

そう言い、倉持はゲーム機を取り出し

 

倉持「そんじゃあ、始めるか!新入生歓迎ゲーム大会ー!!」

 

倉持「早くやろうぜ!明日も練習はえーんだからよ!」

 

ゲームを始めようとした。

 

惇「では、お言葉に甘えて。」

 

栄純(ははっ・・・ゲームって・・・名門校って、もっと上下関係厳しくて、軍隊みてーなの想像してたけど・・・)

 

そう荷物置いてたら

 

倉持「負けたら1年間俺達のパシリな。」

 

そうぼそっと恐ろしい声が聞こえたので

 

栄純「なっ、何か今スゲー怖ぇ事が聞こえたような・・・」

 

栄純はそう聞くと

 

倉持「気のせい気のせい!明日も仲良くやろうぜ!」

 

倉持は良い笑顔で返した。

 

栄純(何か・・・スゲーいい人達じゃん!)

 

これに、栄純はそう思ったが

 

惇(ふーん・・・なら、そうならねーように、ちょっと頑張りますか。)

 

惇はしっかり聞こえていたため、少し真剣にやったのであった。




投稿出来ました。

アニメと漫画をアレンジしました。

読みにくかったらお許しを(土下座)

それでは、また。


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3話

3話です。


翌朝

 

ピピピッ!ピピピッ!

 

自身のスマホに設定したアラーム音に、惇は目が覚めた。

 

惇(軽く走っとくか・・・)

 

そう思った惇は、練習着に着替えて部屋を出た。

そして、軽くグラウンドを走った。

暫くすると

 

倉持「おっ、やっぱり部屋から居なくなってたのは足立か。哲さーん、純さーん、亮さーん、コイツが俺達の部屋に入ってきた新人です。」

 

倉持が増子以外の人達と一緒に現れた。

 

惇「横浜シニア出身の足立惇です。よろしくお願いします。」

 

そう、惇は頭を下げ挨拶した。

 

結城(ほう、コイツが噂の中学№1ピッチャーか・・・)

 

結城「俺は青道高校のキャプテンを任されてる結城哲也だ。足立、宜しくな。」

 

伊佐敷「伊佐敷純だ。副キャプテンやってる。宜しくなコラァ。」

 

小湊亮「俺は小湊亮介。宜しくね。あ、今年弟が入るから下の名前で呼んでね。」

 

そう言い、3年生3人はそう自己紹介し、惇は彼らと一緒に自主練をした。

そして、時間が過ぎ惇は結城ら上級生と別れ、初練習初日の自己紹介の為、他の1年生と一緒に並んだのだった。

 

「「「はようございます!!!」」」

 

暫くして、青道高校野球部監督の片岡鉄心が、上級生と共に現れた。

 

片岡「監督の片岡だ。これで入部希望者は全員か?」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

片岡「順番に自己紹介をして貰おうか。」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

しかし

 

惇(沢村の奴、いねーな。寝坊じゃねーだろうな・・・)

 

栄純だけいない事に惇は気付いた。

気付いたのは純だけじゃない。

 

高島(何やってるのよあの子・・・)

 

高島先生も気付いていた。

 

金丸「金丸信二!松方シニア出身!希望ポジションはサードっす!宜しくお願いします!」

 

そんな中、自己紹介は進んでいき

 

片岡「次!」

 

惇(俺か・・・)

 

惇の順番になった。

 

惇「横浜シニア出身、足立惇です!希望ポジションはピッチャーです!宜しくお願いします!」

 

すると

 

金丸「足立もこの学校に来たのか・・・」

 

東条「そのようだね・・・」

 

春市「足立って、あの・・・」

 

上級生A「あいつか・・・」

 

上級生B「ああ・・・噂の中学№1ピッチャー・・・」

 

上級生C「見た感じ、177か8くらいか・・・?」

 

周りがざわついた。

その時

 

??「ああっ!こいつ遅刻したのに列に紛れ込もうとしてるぞー!」

 

別の方向から声が聞こえた。

 

「「「・・・。」」」

 

惇(何やってんだよ、あの馬鹿が・・・)

 

高島「あの馬鹿・・・」

 

これには、惇も高島先生も呆れた表情を浮かべた。

 

栄純「あ・・・あの!!その・・・これは・・・!!」

 

これに、栄純は何か言い訳しようとしたが

 

片岡「小僧。初日から遅刻とは良い度胸だな・・・」

 

片岡「しかも、バレないように忍び込もうとするその腐った根性・・・朝練が終わるまで走ってろ!!」

 

片岡の逆鱗に触れてしまった。

 

栄純「全てが裏目にー!!」

 

倉持「ヒャハハハ!!アイツ馬鹿♡おもしれー!!」

 

増子『自業自得!!』

 

その中で、同室の増子と倉持はそう言ったが

 

惇(いや・・・倉持さん・・・アンタもっすよ・・・増子さんも。後、どさくさに紛れて上級生の列に入った御幸さんも・・・。)

 

惇は冷静に3人を見ていた。

すると

 

片岡「それからこの男と同室の者。そして、どさくさに紛れそこに並んでる大馬鹿者。お前らもだ。」

 

「「「キャー!!!」」」

 

惇(ハア・・・やっぱり・・・)

 

片岡は惇と倉持に増子、そして御幸にも走るよう言ったのだった。

 

栄純「テメーの言う事は二度と信用しねーからな!」

 

御幸「はっはっは。ありがとう!」

 

栄純「褒めてねーよ!」

 

惇「そもそも遅刻して、こっそり列に紛れ込もうとしたテメーがわりーだろうが!」

 

栄純「そ、それは・・・コイツが・・・!」

 

惇「言い訳してんじゃねーよ!確かに罰は受けるかもしんねーが、謝れば監督もここまで怒んねーよ!」

 

これには

 

栄純「うっ・・・!」

 

栄純は何も言えなかった。

 

倉持「ちくしょー!やっぱこうなるわな・・・」

 

増子『ぐすん。』

 

この時

 

高島「後でビンタだわ・・・おじいさん直伝のね・・・!」

 

高島先生が怒りの表情でポーズを構えていたのだった。

 

 

 

 

 

走り終えた後、惇はすぐに片岡がいる監督室へ向かった。

 

惇「足立です!入って宜しいでしょうか?」

 

片岡「足立か。入れ!」

 

惇「はい!失礼します!」

 

許可が入り入ると

 

惇「本日はルームメイトを起こさずそのままにしてすいませんでした!」

 

惇は頭を下げ謝罪した。

 

片岡「詳しい話は結城から聞いている。お前は早朝自主練をしていたため、起こせなかった事を。」

 

片岡「だが、謝りに来たのは感心だ。午後の練習の参加を認める。」

 

惇「はい!ありがとうございます!」

 

そして、惇は監督室を後にし、食堂へ向かった。

 

惇「結城さん!ありがとうございました!」

 

結城「・・・ああ。気にするな。お前は何も悪くないから、それを監督に伝えたまでだ。さあ、早く飯食わないと、午後の練習に間に合わないぞ。」

 

惇「はい!」

 

そして、惇は食事を取った。

その横で

 

栄純「うぷっ!」

 

「ここではやめろー!!」

 

栄純がリバースしかけていた・・・。

 

 

 

 

 

 

栄純「ああ・・・きもちわりー・・・」

 

惇「お前、大丈夫か?」

 

栄純「何でお前は平気なんだよ・・・?」

 

惇「あれくれー普通だよ。」

 

栄純「けど、朝練の間フルで走りっぱなしだったのに、ドンブリ3杯も食えねーよ・・・」

 

惇「・・・アレ見ろ。」

 

栄純「えっ?」

 

純に言われ見てみると

 

御幸「わはははは!世界のフラミンゴ!」

 

倉持「ヒャハハハ!!抜かせるかオラァ!!」

 

惇「俺もあの人達も、同じ量の飯を食ってたぞ。」

 

栄純「マジかよ・・・」

 

一緒に走ったにもかかわらず、苦しい顔一つもせずに動いていた。

 

増子「・・・。」

 

惇「・・・まあ、増子さんは別格だが。」

 

惇(つーか、あの量を6杯って、バケモンだろ・・・)

 

その時

 

コーチA「1年生!」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

コーチA「これより、希望のポジションに分かれての能力テストを行う。スパイクに履き替えて、Bグラウンドに集合!」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

能力テストが始まろうとしていた。

 

惇「さて・・・腹も溜まったし、行くか。」

 

それを聞き、惇は気合を入れた。

栄純も同様の顔を浮かべ行こうとしたが

 

片岡「小僧、どこへ行く?」

 

片岡に止められた。

 

栄純「え?・・・どこって、自分の力を試しに・・・」

 

片岡「お前は参加しなくて良い。暇なら走ってろ。」

 

栄純「えぇ!?何で俺だけ・・・先輩達はもう練習戻ってるのに!」

 

片岡「そこの隣にいる奴もそうだが、あいつらはちゃんと練習が始まる前に頭下げに来たからな・・・」

 

栄純「嘘!?」

 

これには

 

惇「お前、何で謝りに行かなかったんだよ!遅刻したんだぞ!謝んのが常識だろ!」

 

惇は栄純にそう言った。

 

片岡「そいつの言う通り、遅刻をして謝罪も出来ない男など・・・青道野球部の一員とは認めん!」

 

上級生D「あいつ、終わったな。」

 

上級生E「ウチの監督、頑固だからな。」

 

片岡「気に入らんなら、来なくて良いぞ。永久にな。」

 

それを聞いた栄純は

 

栄純「わあああああっ!!」

 

惇「!」

 

叫び声を上げた。そして

 

栄純「ね・・・寝坊したのは、自分の気持ちが甘かったから。言い訳するつもりはありません・・・」

 

栄純「けど・・・俺は・・・俺は・・・俺はエースになる為にここに来てるんだ!その気持ちだけは、誰にも負けるつもりねーっスから!」

 

と栄純は片岡にそう言った。

 

惇「・・・。」

 

片岡「くだらんな。」

 

しかし、片岡はそう栄純の言葉を一蹴し

 

栄純「くだらないって何だよ!!俺は真剣に・・・」

 

これに栄純はタメ口で言ってしまい、それに反応した片岡は、ゆっくりと歩み寄り、腕を振り抜いた。

 

ガシャン!

 

しかし、別に栄純を殴ったわけでは無く、ボールを投げ、それがフェンスにぶつかっただけなのだ。

 

惇(ったりめーだ。殴るわけねーだろ。やったらどえれー事になんぞ・・・)

 

惇(しっかし、えげつねー肩だな・・・そういやシニアの監督、片岡監督と知り合いだったな・・・)

 

それを、惇は見ながら心の中でそう呟いていた。

 

片岡「エースになると言ったな・・・だったら言葉はいらん、才能で語ってみろ!」

 

そう言い、片岡はボールを栄純に渡し

 

片岡「このホームベースからあそこのフェンスまで、約90メートル・・・遠投であのフェンスに届いたら、練習に参加させてやろう・・・」

 

そう、栄純に言った。

 

栄純「マ・・・マジっスか!」

 

しかし

 

片岡「ただし・・・フェンスまで届かなければ、即刻投手を諦めて貰うぞ・・・」

 

という厳しい条件だった。

 

栄純「ははっ・・・ははは。流石は名門!分かりやすくて良いっスねェ!」

 

栄純「要するに、あのフェンス軽ーく飛び越えりゃ良いんですよね!」

 

そう言うと

 

栄純「赤城中学出身沢村栄純!記念すべき高校生活第一投、投げさせていただきます!」

 

栄純(これが、沢村伝説の幕開けだー!)

 

栄純は肩をぐるぐる回し、助走をし、投げたのであった。




投稿出来ました。

アニメと漫画を見て、アレンジしてみました。

主人公君のシニアチームは、思い付かなかったのでMAJORの寿君こと佐藤寿也が所属していた横浜シニアにしました。監督も、同じくMAJORに登場したキャラクターではありません。

この作品には出さないので、ご随意に。

それでは、また。


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4話

4話です。


栄純(沢村伝説の幕開けだー!)

 

そう思い、助走しステップしながら投げた栄純。

 

田中「うおっ!飛んでんぞ!」

 

山崎「フェンスまで行くんじゃねーか!」

 

栄純「行けー!!」

 

惇(あっ・・・そういえば、コイツの球って・・・)

 

その時、惇は栄純のボールはクセ球だという事を思い出した。

それを尻目に、ボールはフェンス手前で曲がった。

 

片岡「っ!」

 

栄純「何故曲がるー!?」

 

その声も虚しく、ボールはフェンス手前で落ちてしまった。

 

惇(あっちゃー。やっぱりこうなったか・・・)

 

すると

 

「「「あはははは!!!」」」

 

「遠投で曲げてどうすんだよ!」

 

「曲がってなきゃフェンスに届いたんじゃねーの!」

 

周りが栄純を嘲笑し

 

惇(・・・チッ。野次馬がうっせえよ。)

 

その様子を、惇は蔑むように見ていた。

 

片岡「答えは出たようだな。約束通り、投手は諦めて貰うぞ!」

 

片岡「練習にも参加させん。暇なら走ってろ。」

 

すると、片岡は栄純にそう宣告したのだった。

 

栄純「ガクッ・・・」

 

これには、栄純も流石に膝を付いた。

 

惇「こればかりは俺は何とも言えねーな。」

 

惇「けど、反省してんだったら、それを気持ちと行動で示せ。そうすりゃあ、あの人も許してくれると思うぞ。」

 

それを見た惇は、栄純にそう言った。

 

栄純「・・・ああ。」

 

惇「そんじゃあ、俺はテストを受けに行くから。じゃあな。」

 

そして、そう言い残してBグラウンドへ向かった。

 

惇(普通あんなクセ球を90メートル近く飛ばす事がムズい筈だ・・・。)

 

惇(それをやってのけるなんてな・・・。立ち直れるか否かは本人次第だけど・・・アイツ・・・案外おもしれーかも!)

 

その際、惇はそんな事を心の中で呟き、少し微笑を浮かべた。

そして、能力テストを受けた惇だったが

 

片岡「御幸、お前が受けろ。」

 

御幸「はい。」

 

惇だけ、御幸が受ける事になった。

 

惇「真っ直ぐ行きます!」

 

まず初球は真っ直ぐを投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

御幸「ふぅー・・・」

 

御幸(久し振りに見たが、スゲー球だ・・・。何とか取れたぜ・・・!)

 

受けた御幸は、去年上手く取れなかった惇の真っ直ぐを取れて、少しホッとしていた。

 

惇(おっ・・・この俺の真っ直ぐを初球でしっかり取れるなんて・・・!)

 

惇は、御幸が去年しっかり取れなかった真っ直ぐをちゃんとミットのポケットに収めた事に少し驚いていた。

 

「す、スゲー・・・!」

 

「マジで浮き上がってるように見えるぜ・・・!」

 

金丸「ヤベえ・・・去年の大会を思い出したわ・・・!」

 

東条「確か信二、3打席全て三振で、全部真っ直ぐだったね。」

 

金丸「ああ。初めてだったぜ、真っ直ぐを待ってて当たるどころか掠りもしなかったのは・・・」

 

これには、周りも少しざわついた。

 

片岡「もう1球!」

 

惇「はい!」

 

そして、真っ直ぐを3球投げると

 

片岡「変化球は何を投げれる?」

 

片岡がそう聞いてきた。

 

惇「カーブ、スライダー、SFFです。」

 

これに、惇がそう答えると

 

片岡「投げてみろ。」

 

と言われ

 

惇「カーブから。」

 

カーブ、スライダー、SFFを投げた。

御幸は、カーブは危なげなく取れた。

 

惇「スライダー行きます!」

 

そう言い、惇はスライダーを投げた。

 

御幸(んっ?真っ直ぐか・・・?)

 

しかし、御幸の目には真っ直ぐに見え、すっぽ抜けたと思い構えたが

 

御幸(なっ・・・!?)

 

その球は加速しながら滑るようにホームベース付近で真横に一気に曲がり、御幸のミットに収まる事無く後ろに転々と転がった。

 

「な、何だ今の球・・・!?」

 

「スライダー・・・なのか・・・?」

 

「けど・・・ほぼ真っ直ぐの軌道からホームベース付近で真横に曲がるスライダーなんて見た事・・・!」

 

これに、周りの者はそう言ったが

 

片岡「スライダーでも高速スライダーか・・・」

 

片岡がそう言うと

 

御幸「そうっすね・・・」

 

御幸はそう答えた。

 

片岡「もう1球、スライダー。」

 

惇「はい!」

 

またスライダーを投げたが

 

御幸「クッ!」

 

御幸(いってー!YouTubeで見た事はあるが、これは取りづれー!)

 

何とか取るのがやっとで、ミットに入ってもポケットで捕球できず、痛みに耐えるのがやっとだった。

 

惇(へえ・・・俺のスライダーを2球目でミットに収めるなんて・・・去年俺の真っ直ぐを取れなかったが今回は取ったし、流石雑誌に載る程の選手だな・・・)

 

この時、惇は自身のスライダーをミットに収めた事に内心少し驚いていた。

 

惇(けど・・・これは取れねーだろ!)

 

惇「SFF行きます!」

 

そして、最後にそう思いながらSFFを投げた。

 

御幸(これもほぼ真っ直ぐの軌道とスピードだな・・・)

 

それを見て構えた御幸だったが

 

御幸(なっ!?消え・・・!?)

 

視界から消え、御幸は何も出来ず後ろに逸らしてしまった。

 

「い・・・今の・・・真っ直ぐとほぼ同じ軌道とスピードだったよな・・・!」

 

「ああ・・・そこからスッと落ちた・・・しかもあのスピードと落差って・・・!」

 

これには、先程投げたスライダー同様、皆驚きの表情だった。

 

御幸「は・・・はは・・・!!」

 

御幸(これが足立のボールか・・・!真っ直ぐと言い、全てのボールが一級品だ・・・!ヤベえ・・・去年と同様、笑いが止まらねえ・・・!)

 

この時の御幸の表情は、去年惇の真っ直ぐを取れなかった時と同様、目を輝かせていたのだった。

 

惇(へえ・・・俺の球を受けて心折れる奴はごまんと見たが・・・この人は去年と同じで目を輝かせてんな・・・!)

 

その様子を見ていた惇は、驚きと同時に少し嬉しい気持ちになった。

そして、その他にも惇は高水準の能力を示した。

その夜、栄純は今回の件で酷く落ち込んだが、倉持の一言にここに来て青道の一員になったという自覚を持ち、その場に一緒にいた惇も、気を引き締めた。

その翌日の早朝

 

高島「片岡監督・・・」

 

高島「沢村君を・・・あの子を本当に投手を諦めさせるつもりですか?」

 

高島先生が、片岡にそう尋ねた。

 

片岡「・・・。」

 

高島「まだ入部したばかりで、実力も未知数ですし、今の段階で決定するのは時期尚早かと・・・」

 

高島「それに・・・東君を三振に打ち取った中学生2人は、足立君と・・・」

 

その時

 

片岡「んっ?」

 

高島「こんな朝早くに誰が?」

 

誰かがグラウンドで走っていたので見て見ると

 

高島「さ・・・沢村君・・・」

 

栄純が汗を流しながら走っていた。

それを見た片岡は

 

片岡「フン・・・一体どういう投げ方をすれば、あんなクセのある球を90メートル近くまで投げられるのか・・・」

 

そう呆れ声で言い

 

高島「え?」

 

片岡「だが・・・約束は約束だ。今はまだ投手として練習に参加させるわけにはいかん・・・」

 

片岡「日が暮れるまで・・・とことん走らせておけ!」

 

そう、少し笑みを浮かべた。

 

高島(今はまだ・・・か。)

 

それを聞いた高島先生は、クスッと笑みを浮かべながら栄純を見たのであった。




投稿出来ました。

上手く書けたかな・・・(汗)倉持と栄純君のやり取りですが、纏められなかったので書けませんでした。

すみません(土下座)

ちなみに主人公の真っ直ぐは藤川○児、SFFは斉藤○巳、スライダーは伊藤○仁を参考にしてます。

個人的に最強のスライダーを投げるピッチャーは伊藤○仁選手かなあっと思っております。

あのスライダーは本当に凄いです!!斉藤○巳同様、怪我さえ無ければどれ程の成績を残せたかな・・・。

それでは、また。


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5話

5話です。


新学期が始まって1週間が経った青道高校。

相変わらず1年生は基礎体力向上の為、サーキットメニューをこなしていた。

 

藤原「どう?今年の1年、目立つ子いた?」

 

そんな中、道具を片付けている3年生マネージャー、藤原貴子が2人の2年生マネージャーに尋ねた。

 

唯「結構豊作ですよー。じゅ・・・足立君を筆頭に全国ベスト4の松方シニアの東条君と金丸君がいます。」

 

藤川「へえー。」

 

梅本「ああ、確かに足立君は飛び抜けてるねー。後もう1人降谷君って子も凄いです。」

 

そう話していると

 

惇「ここで良いな?吉川。」

 

吉川「う、うん。ごめんね、足立君。」

 

惇「別に構わねーよ。」

 

1年生マネージャーの吉川が、惇に手伝わされてバケツに入っているボールを一緒に持っていた。

 

藤原「春乃。大丈夫?」

 

それを見た藤原が、吉川にそう声をかけた。

 

吉川「はい~。すみません~!」

 

藤原「ごめんなさい。えーっと・・・」

 

惇「1年の足立っす。気にしなくて良いっすよ。自分でやった事なんで。それに、ちょうど彼女に用があったし。」

 

そう、惇は唯を見て言った。

 

藤原「え?」

 

梅本「どういう事?」

 

吉川「?」

 

これには、藤原と梅本、そして吉川は疑問の表情を浮かべながら惇と唯の顔を交互に見た。

 

唯「な、何よ惇君・・・」

 

惇「いやー、おばさんから聞いたぞ!お前、やっとちゃんとしたおにぎり作れるようになったんだって!」

 

唯「ち、ちょっとそれどういう意味よ!」

 

惇「だってお前の作ったおにぎり、塩辛くて食えなかったり・・・中の具が異常に多かったり・・・」

 

そう、惇は指を折ってそう言った。

これに

 

唯「もー!恥ずかしい事言わないでよー!」

 

唯は顔を真っ赤にしながら惇の胸をポカポカ叩いた。

 

惇「イテッ!イテーって!」

 

唯「もう!」

 

惇「ハハ!じゃあ、今度食わしてよ。」

 

唯「良いよ!絶対美味しいって言わせてあげるんだから!」

 

惇「わーったわーった!んじゃあ、俺行くな。」

 

唯「授業、寝ないでちゃんと受けるんだよ!」

 

惇「わーってるよ!」

 

その2人のやり取りを

 

藤原(この2人・・・どういう関係?)

 

梅本(こりゃあ・・・興味深いですなあ・・・)

 

藤原と梅本は何か含んだ顔を浮かべていた。

 

吉川(うわぁ・・・2人共、何か怖い・・・)

 

それを、吉川は少し引いた表情を浮かべていたのだった。

この後2人で唯を問い詰めたら、実は惇と唯は幼馴染で、唯が小学校卒業と同時に東京に引っ越してしまった為離れ離れになったが、年に1回はどちらかが家に来たりしていたため、関係は続いていたのだ。

それを聞いた2人は

 

藤・梅((漫画のような話だ・・・))

 

そう思ったとか・・・。

 

 

 

 

 

1年C組

 

 

 

 

 

 

先生「であるからして、この設問1に対する選択肢はこの時点で(ア)と(エ)に絞り込める・・・」

 

そう、先生が皆に問題を丁寧に教えている中

 

吉川(入学式からもう1週間・・・憧れだった野球部のマネージャーになったのは良いけど・・・)

 

吉川(先輩にはフォローされてばかりだし・・・)

 

吉川(選手の人達とは怖くて喋れないし・・・。何か私・・・もう無理かも・・・。こんなんじゃ周りに迷惑かけるだけだよね・・・)

 

吉川はマネージャーとしてやっていけるのか悩んでいた。

その時

 

先生「コラァ!またお前かぁー!」

 

先生「ワシの授業はそんなにつまらんかー!え!?沢村ァー!!」

 

机に突っ伏して寝ている栄純が先生に怒られていた。

 

吉川(あ・・・あの人。いつも1人でグラウンド周り走らされてる人だ・・・)

 

惇(あの馬鹿はまた寝てんのかよ・・・)

 

そう思っていると、栄純が起きた。

しかし

 

パタン

 

先生「コラ!堂々と寝るな!起きろー!」

 

また寝てしまった。

 

「仕方ないっすよ先生・・・そいつ、一応スポーツ推薦の野球部員なんだって。」

 

先生「何!」

 

「へぇー凄いじゃん。ウチの野球部って、有名でしょ?」

 

「練習も厳しいらしいな。」

 

この声に

 

先生「馬鹿たれ!野球部だったら尚更許せんっちゃ!!何かと注目されてる分、しっかりせんちゃっかぁー!」

 

先生はそう沢村に謎の方言で怒った。

 

惇「おい信二。」

 

信二「あ?」

 

惇「あれ・・・どこの方言?」

 

信二「んなの知るかよ。つーか、アイツ本当に大丈夫か?」

 

惇「何が?」

 

信二「まだ監督に入部を認められてねーじゃん。下手したらアイツ、腐っちまうんじゃねーか?」

 

そう、信二は惇に言った。

 

惇「さあな。これで潰れんだったらその程度だろ。」

 

信二「そうかもしれないが・・・」

 

惇「まあ、初日に監督に対しあそこまで言うんだ。それに、俺もアイツのボールはちょっとおもしれーしな。」

 

信二「速いのか・・・?」

 

惇「いや、全然速くねーよ。普通のボールだったら、お前なんか軽ーくスタンドインだ。」

 

信二「普通のボール・・・?」

 

惇「まあ、一緒にやってたら分かるよ。」

 

信二「?」

 

そう、惇と信二はそんなやり取りをし

 

吉川(・・・沢村君って、もしかして私と同じタイプ?)

 

吉川は、栄純を見てそんな事を思ったのであった。




投稿出来ました。

アレンジをしてみましたが、やっぱ難しいですね・・・(汗)

読みにくかったり、違和感があったらお許しを(土下座)

それでは、また。


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6話

6話です。


新入生にとってはまだまだ分からないことだらけながらも、何とか無事に乗り切って迎えた最初の土曜日。青道高校野球部はその日大事な試合を迎えていた。

春の都大会準々決勝。

夏の本戦や春の選抜がかかる秋大会と比べて一般的に重要度が劣るとされる春の大会。

されど、本日戦うことになる青道の相手は昨年の秋大会で苦汁をのまされた市大三高だ。

 

片岡「分かっているな、お前ら・・・?センバツを決める秋の大会・・・本選となる夏・・・その2つに比べて、春の都大会の意味は決して高くないだろう・・・」

 

片岡「だが・・・今日の相手は、秋の大会で敗れた市大三髙だ。受けた屈辱は、10倍にして返すぞ!」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

片岡「結城!いつものやついけ!」

 

結城「はい!」

 

すると、1軍のメンバー皆円陣を組み、ユニフォームの青道の文字に手を当て

 

結城「俺達は誰だ・・・?」

 

「「「王者青道!!」」」

 

結城「誰よりも汗を流したのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「誰よりも涙を流したのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「誰よりも野球を愛しているのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「戦う準備は出来ているか?」

 

「「「おぉお!!!」」」

 

結城「我が校の誇りを胸に、狙うはただ一つ・・・全国制覇のみ!!行くぞぉ!!」

 

「「「おおおおおおっ!!!」」」

 

伝統のかけ声をした。

 

信二「・・・す・・・すげっ・・・やっぱオーラが全然違うよ・・・」

 

「かっけぇー!」

 

「俺・・・あのかけ声に憧れたんだよなー!」

 

「くぅー!俺も早く一軍に行きてぇー!」

 

その様子を見た1年達は、羨望の眼差しで見つめていた。

 

コーチA「そろそろ出るぞ!試合を観戦したい者は、バスに乗り込め!」

 

すると、コーチからそんな声を聞き

 

「「「はいっ!!!」」」

 

1年達は皆、バスに乗り込もうとした。

・・・一部を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

惇「・・・やっべ。まずったわ。」

 

??「そうだね・・・」

 

そう、グラウンドに佇んで言っているのは、惇ともう1人、クールで惇より背が高い者だった。

 

惇「どうする、降谷?」

 

その少年の名は降谷といい、一般入試で青道に入ってきた少年だ。

 

暁「んん~。追い掛けるのも面倒くさいし・・・」

 

惇「まあ・・・そうだな・・・」

 

暁「ま・・・ぶっちゃけ・・・自分が出てない試合なんて興味ないし・・・」

 

惇「まあ・・・分からなくも無いが・・・」

 

惇(やっべぇ・・・唯に怒られんだよな・・・)

 

そう思った惇は、練習前に唯に言われたのを思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

唯『良い!準々決勝の相手は今年のセンバツベスト8の市大三髙!同じ地区のライバルだから、必ず観に行くんだよ!』

 

惇『うるせーなぁ・・・わーってるよ!』

 

唯「良い!絶対だからね!もしいなかったら、今度ご飯奢らないよ!』

 

惇『うわっ!お前、それマジやめろ!』

 

唯『嫌だったら、絶対に来る事!』

 

惇『わ、わーったよ!』

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

惇(って言っちまったんだよな・・・どう言えば機嫌良くなるかな・・・)

 

惇(そうだ・・・いつもみてーに、甘いモンでも奢るか・・・)

 

そう思い、グラウンドに目を向けると

 

惇「ん?どうやら、残ってんのは俺達だけじゃねーみてーだぞ。」

 

暁「ん?」

 

誰かがいることに気付き、指を指した。

するとそこには

 

栄純「自ら投げて捕る!なるべく高く投げるのがポイントだな・・・」

 

栄純「投げてー捕る!投げてー捕る!」

 

1人で何かやってる栄純がいた。

 

惇「何やってんだ・・・アイツ・・・」

 

暁「さあ・・・」

 

それを見た2人は、どこか気の毒そうな表情で見ていた。

それに耐えきれなくなった惇は

 

惇「おい沢村・・・キャッチボールの相手、しよっか?」

 

そう、栄純に言った。

 

栄純「あ・・・足立!い・・・いつからそこに!?」

 

これに、栄純は顔を真っ赤にした。

 

惇「いやぁ・・・最初から・・・コイツと一緒に。なあ?」

 

暁「うん。何かもう気の毒で・・・」

 

栄純「うぐっ・・・!てゆーか、お前ら試合観なくて良いのかよ?」」

 

惇「しゃーねーだろ・・・便所行ってたらバス出ちゃってんだからよ。」

 

栄純「何でお前・・・遠い目してんだよ・・・」

 

暁「僕も同じ。まあ・・・どうでも良いけど・・・」

 

そう言い、3人はキャッチボールを始めた。

暫くやっていると

 

暁「ねえ・・・」

 

惇「ああ?」

 

暁「君のボール、何か怖い・・・」

 

惇「んだよ急に?」

 

暁「だって・・・凄い手元で伸びてくるんだもん・・・」

 

暁にそんな事を言われた。

 

惇「・・・悪かったな。これが俺のボールなんだよ。」

 

暁「へえ・・・」

 

惇「そういや沢村。お前のボール、よくグニャグニャ曲がんな・・・」

 

栄純「えっ!?俺、そんなボール投げてねーぞ!」

 

惇「いや、結構マジで。」

 

惇(こりゃあ・・・実際に捕りづれーわ。)

 

惇「まあいいや。降谷、ちょい強めに投げんぞ。」

 

暁「うん。」

 

そう言われた惇は、ボールを投げた。

すると、そのボールは

 

暁「っ!?」

 

ドバアアアン!!

 

暁の予想以上にボールが伸び、ミットを弾いたのだった。

 

惇「あっ・・・やっべ。」

 

それを見た惇は、すぐに暁の元に駆けつけ、栄純もそれに続いた。

 

惇「わりいわりい。流石に初見じゃ捕りづれーよな・・・」

 

そして、そう暁に謝った。

 

暁「大丈夫。そういえば、君も投手希望だよね?」

 

惇「ああ。コイツもだよ。」

 

暁「そう・・・絶対負けないから!」

 

そう言うと、暁は強烈なオーラを噴き出した。

 

惇「へえ・・・良いね・・・沢村同様、お前マジでおもしれーな。」

 

栄純「お、俺も決してお前らには負けねーからな!」

 

これに、惇は不敵な笑みを浮かべ、それを見た栄純もライバル意識を燃やした。

そしてこれが、後に高校球界最強の3本柱と呼ばれる、足立惇、降谷暁、沢村栄純の初の顔合わせであった。

因みに余談だが

 

唯「じゅ〜ん〜く~ん。今日の試合観に来てって言ったのに、来なかったよね~!」

 

惇「い、いやぁ・・・これには・・・エベレストよりもたけー理由があんだよ・・・」

 

唯「もう知らない!ご飯奢らないから!」

 

惇「マジ悪かったって!」

 

唯「謝ったって許さないから!」

 

惇(しゃーねー・・・!)

 

惇「ほ、ほら唯!このお菓子、お前好きだろ?これあげるから!な!」

 

唯「・・・もう、今回だけだよ!」

 

惇「マジサンキュー!」

 

試合が終わって帰ってきた唯が、不機嫌オーラむき出しで惇に詰め寄ったが、惇が唯の好きな甘いお菓子をあげて彼女の機嫌を直したのであった。




投稿出来ました。

アレンジは難しいですね・・・。

自身の文才の無さを嘆きます・・・(涙)

そ、それでは、また。



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7話

7話です。


市大三髙との試合が終わった後の夕方

 

 

 

 

「おい丹波さん、エース降ろされたらしいぞ。」

 

「マジかよ!?」

 

「試合勝ったのに・・・」

 

「そりゃ、川上がどうにか抑えきったってだけじゃん。」

 

「夏まで3ヶ月切ってんだぜ。」

 

「丹波さんがエースじゃ無いんなら、ピッチャーどうなるんだ?」

 

市大三髙での丹波のエース降格に、皆はそれぞれそういった事を話していた。

その翌日

 

ズドォォン!!!

 

ブルペンから途轍もない轟音が響いて目を向けると

 

「・・・うあ・・・」

 

1人のキャチャーが、ボールを取れずに腰を抜かしていた。

そのボールを投げたピッチャーは

 

暁「・・・。」

 

暁だった。

 

「な・・・何だ今の音・・・!?」

 

「足立以上に大きい音だったぞ・・・!」

 

惇(へえ・・・遠投時から気になってたけど、スゲー球・・・。純粋なボールのスピードと力強さで言ったら俺より上だな・・・)

 

それを隣で見ていた惇は大いに刺激を受け、暁に続いて投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

「あ・・・ああ・・・」

 

すると、もう1人のキャッチャーも惇のボールを取れず、寧ろミットを弾き飛ばされてしまった。

 

「あ、足立も相変わらずスゲー・・・」

 

「つーか、アイツら本当に1年かよ・・・?」

 

これには、皆それぞれ驚いていた。

これに驚いていたのは、監督達もだった。

 

高島「足立君の隣にいる背の高い子は、北海道苫小牧中学出身、降谷暁。ウチに来る為わざわざ一般入試で入学してきました。」

 

高島「今年の1年生で足立君の遠投115メートルを上回る、120メートルを記録しています。」

 

これには

 

太田「ひゃ・・・120メートル・・・!?そんな子が一般入試で?これがあるから野球は面白い!」

 

太田部長は驚いた。

 

暁「もう終わり?」

 

惇「しゃーねー・・・。まぁどっかのタイミングで投げれんだろう。それまで我慢しようぜ。」

 

暁「・・・うん。」

 

惇「分かりやすいぐらい拗ねてやんの・・・」

 

栄純「アイツら・・・もうブルペンで投げてやがんのか!こうしちゃおれん!」

 

これを見た栄純は

 

栄純「タイヤ3つだ!おらあああっ!!」

 

タイヤを3つ付けて走ったのだった。

一方、ブルペンの様子を見た片岡は

 

片岡「・・・1年生でチームを作らせろ。」

 

高島「・・・では試合を?」

 

片岡「実戦で使える選手がどれだけいるか、見て見たい!」

 

そう、高島先生と太田部長に言い、紅白戦を行う事を言ったのだった。

その夕食

 

栄純「おかわりっうぷっお願いしまーす!」

 

栄純は夕食を食っていた。

 

惇「ゆっくり食いな。身体に良くねーぞ。」

 

それを、惇はトレーを持って隣に座った。

 

栄純「足立・・・。」

 

それに続いて

 

御幸「何だ沢村・・・大分食えるようになったじゃねーか!初日は吐いてた癖に・・・ププッ!」

 

御幸もトレーを持って現れた。

 

御幸「若い奴は成長が速くて良いねぇ!」

 

栄純「るせっ!」

 

すると、惇は周りが静かに夕食を食ってるのを見て

 

惇「それより・・・あの話は本当なんすね?」

 

御幸にそう尋ねると

 

御幸「ん?ああ・・・明日のことな。」

 

御幸も察したのか、そう答えた。

 

栄純「何の話だ?」

 

それを聞いた栄純は、首を傾げたが

 

惇「何だお前、聞いてねーのか?明日、俺達1年のチームと2・3年の先輩達のチームで試合やんだよ。」

 

惇がそう答えると

 

御幸「本来なら、ウチの1年目は体力作りがメインでな・・・1年からレギュラー選考なんてしねーんだわ。」

 

御幸「けど・・・この間の試合で状況が変わってな・・・」

 

御幸がそう言った。

 

栄純「何!そんな話全然聞いてねーぞ!俺は出れんのか!?俺はー!!」

 

すると、それを聞いた栄純は必死な表情で御幸に掴みかかって尋ねた。

 

御幸「いや・・・俺、先輩だから・・・」

 

その時

 

暁「あの・・・ここ隣良いですか?」

 

暁がトレーを持って尋ねた。

 

栄純「あ・・・お前は!」

 

惇「おお・・・降谷か。」

 

すると、2人を見た暁は

 

暁「失礼します。」

 

惇「お、おい・・・!」

 

栄純「わたっ!」

 

強引に割り込んだ。

 

惇「まだ何も言ってねーだろうが・・・」

 

栄純「何でそこに座ってんだよ!向こう側空いてんだろ!」

 

しかし、暁は無視し

 

暁「御幸先輩・・・。」

 

暁「自分は明日・・・ここにいる誰にも打たせるつもりはありません・・・。そしたら・・・僕の球、受けてもらえますか?」

 

そう御幸に尋ねた。

 

栄純「なっ・・・!?」

 

惇(うわああ・・・コイツ言っちゃったよ・・・)

 

これには、惇は内心引き攣った顔をした。

すると、暁の発言が気にくわなかったのか

 

「おいルーキー。誰にも打たせねぇだと?お前・・・ここがどこだか分かってんのか?」

 

「中学出たばかりにデケぇ口叩きやがって・・・」

 

「お前もだ、もう1人のルーキー。ちょっとばかし良い球投げるからって良い気になるなよ・・・」

 

前園「御幸に受けてもらいたけりゃ、結果残してから言えや・・・」

 

先輩達が暁達を囲んだ。

その際、惇もとばっちりを受けていた。

その時

 

丹波「みっともない真似するな!」

 

前園「丹波さん!」

 

丹波「俺達はプレーで語るしか無いんだ・・・」

 

前園「は、はい・・・」

 

丹波がそう言って皆を止めた。

すると、丹波とその周りにいた3年生は、闘争心むき出しの目で惇と暁を見た。

 

御幸(成程ね・・・これが監督の狙いか・・・。入部したての1年ぶつけて、先輩達の闘争心煽るつもりだな・・・)

 

それを、御幸は冷静に見てそう感じたのだった。

 

惇(ったく・・・降谷の奴・・・発言の意味分かってんのかね・・・)

 

惇は、暁の発言に頭を抱えて

 

栄純「・・・。」

 

栄純は完全に蚊帳の外であった。




投稿出来ました。

紅白戦前夜を書きました。

上手く書けたか分かりませんが・・・

さて、今回が今年最後の投稿です。

まだまだ序盤であるにもかかわらず、このような拙作を読んで下さって、本当に感謝しております!!

来年もよろしくお願いします!!

それでは、良いお年を!!


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8話

8話です。


グラウンド

 

 

 

 

 

「おーい!こっちだこっち!」

 

日曜日。この日は休みであるため、多くのギャラリーが集まった。

 

信二「相変わらず、日曜日になるとギャラリーがスゲぇな・・・」

 

信二「OBやら記者やら、色んな人が見に来てるぜ。」

 

「やべぇ・・・緊張してきた・・・!」

 

信二「俺だって昨日寝れなかったよ・・・。まさか入部して1ヶ月足らずで、上級生相手にするなんてな・・・」

 

惇「・・・。」

 

そんな中、惇は持ってるボールを指で弾いていた。

その時

 

片岡「1年生には、全員出場のチャンスを与える。各自、アップを済ませておけ!」

 

片岡が現れ、1年の皆にそう言った。

 

「「「はいっ!!!」」」

 

これに

 

信二(うわ~・・・監督が審判かよ・・・!)

 

信二は片岡が主審という事に驚いていた。

 

栄純(1年全員・・・)

 

栄純「やるぞー!俺はやるぞー!このチャンス絶対逃してなるものかー!」

 

栄純は、手にしたチャンスに涙を流していた。

すると

 

御幸「ははっ。また泣いてんのか?」

 

御幸がそう声をかけた。

 

御幸「良かったじゃねーか。やっと練習に参加できるんだって?どんな手使ったんだよ!」

 

栄純「るせっ!アンタ向こうのベンチだろ!」

 

御幸「ははっ。今日主力はオフだってよ!関東大会待ってるしな。」

 

栄純「ちぇっ。何だよ・・・アンタと対戦できると思ったのによ・・・」

 

これには

 

御幸「はっはっはっ!100年早ェ!」

 

御幸は笑って言った。

 

御幸「で?足立が先発っぽいけど、お前いつ投げんの?」

 

栄純「さぁ・・・どうせ最後だろ・・・。あのグラサンの事だから・・・」

 

御幸「はっはっはっ、じゃあ特別に俺がアップに付き合ってやろう!」

 

そして、栄純は御幸と一緒にアップをした。

 

「わっ!」

 

1年チームの攻撃、先頭打者が丹波の初球のカーブに尻餅をついた。

 

片岡「ストライク!」

 

それを見たキャッチャーの宮内は

 

宮内「どうしたルーキー?尻餅ついてたらバットは振れねーぞ!」

 

そう1年に言った。

言われた本人は

 

(何だ・・・今の・・・?身体目掛けて飛んできたと思ったら・・・突然ボールにブレーキが掛かって・・・身体を避けるようにミットに収まった・・・!?)

 

(こ・・・こんなカーブ見た事ねぇ・・・)

 

見た事無いボールに呆然としていた。

 

「丹波の奴、良い気迫だな・・・」

 

「エース降格になった事で、逆に闘志に火が点いたか・・・」

 

「元々素材はピカイチなんだ。あの縦に大きく割れるカーブが、良いコースに決まり出せば、完全復活も近いぞ!!」

 

そう、ギャラリー達が言う中で2者連続三振となり

 

惇「さーって・・・何を打とうかなぁ・・・」

 

惇が打席に立った。

その初球

 

惇(やっぱり・・・この球か!)

 

惇は初球の内角のカーブを迷わず振り切った。

 

カキーン!

 

すると、打球はぐんぐん伸びていき、ホームランとなった。

 

「うおおおっ!ホームラン!?」

 

「丹波のカーブを簡単に仕留めたぞ!」

 

「あれは確か足立だ!投げる以外に打つのも凄いって聞いたが・・・!」

 

丹波「・・・。」

 

宮内「嘘・・・だろ・・・!?」

 

これには、キャッチャーの宮内とマウンドの丹波は信じられないといった表情を浮かべながら、今ホームインした惇を見た。

 

信二「うおおおっ!!ナイバッチ!!」

 

惇「サンキュー!」

 

ホームランを打った惇は、1年の皆に手荒く迎えられた。

 

??「やっぱり君は凄いね・・・」

 

すると、1人の少年が、惇にそう言葉をかけた。

 

惇「お前ほどじゃねーよ、小湊春市。」

 

これに、惇はそう答えた。

少年の名は小湊春市。神奈川の陽光中学からやって来た子だ。

 

春市「はは。僕には初見であのカーブをホームランにするのはキツいよ・・・」

 

惇「お前、言うな・・・」

 

惇(初見でホームランはムズいって、ヒットなら打てるって事か・・・)

 

この時、純はそう思いながら春市と話していた。

そんな中、切り替えた丹波は次のバッターを三振に打ち取り、マウンドを降りた。

そして、次は惇がマウンドに上がった。

 

「フンッ・・・予想通り・・・先発は足立か・・・!」

 

「一発どでかい花火をぶちかましてやんぞ・・・!」

 

これには、3年生の皆は気合の入った表情を浮かべた。

一方の惇は、キャッチャーがキャッチャーボックスに行ったのを確認すると、いつもルーティンでやる股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

 

梅本「唯。足立君が投げるよ!」

 

唯「そ、そうだね・・・!」

 

唯(頑張れ・・・惇君・・・!)

 

それを、梅本と唯が見ており、唯は心の中で惇を応援した。

 

惇(んじゃあ・・・軽く6割位の力で投げっか・・・)

 

そんな事を考えて投げた初球

 

「んなっ!?」

 

「ひぃっ!」

 

ガッ!

 

惇は真っ直ぐを投げたのだが、その伸びのある真っ直ぐに、打席に立った3年生は驚き空振りをした。

キャッチャーは、惇のボールを取れず、マスクに当たりそのまま脳震盪を起こしたのか、倒れてしまった。

 

惇「あ・・・やっべぇ・・・おーい、大丈夫かぁ?」

 

これには、惇もマウンドから駆け、キャッチャーに声をかけた。

 

片岡「誰か、彼を医務室へ!」

 

「は、はいっ!!」

 

片岡「首をやってるかもしれないから、慌てずに運べ!」

 

そう、片岡は的確な指示を下した。

 

片岡(相変わらずなんて真っ直ぐだ・・・!恐らく、あの時よりも更に縦のスピン量が増している・・・!)

 

そんな中、片岡は内心惇の真っ直ぐに驚きを隠せなかった。

そして

 

片岡「合格だ、足立。明日から一軍の練習に参加しろ!!」

 

そう、惇に言った。

 

惇「・・・ありがとうございます。」

 

これには、惇は少し驚きながらもお礼の言葉を述べた。

 

丹波「っ!?」

 

宮内「マジか・・・!?」

 

増子「流石だな・・・あだっちゃんは・・・」

 

増子(恐らく・・・俺もあの球は打てないだろう・・・)

 

主だった3年生メンバーは、この結果に驚き

 

信二「マ・・・マジかよ・・・!?」

 

栄純「一軍!?」

 

春市「良いなぁ・・・一軍・・・」

 

1年も驚きを隠せず

 

暁(・・・負けない!)

 

暁に至っては、オーラを噴き出していた。

 

片岡「ピッチャー交代だ!次、東条!」

 

東条「は、はい!」

 

これに

 

「続けさせて下さい、監督!絶対打ちます!」

 

「監督!」

 

「監督!」

 

3年生はそう片岡に言ったが

 

片岡「アイツの球を受けられる1年はいない・・・」

 

片岡「それに・・・キャッチャーが反応できなかった真っ直ぐだ。今のお前らではアイツの球は打てん・・・」

 

片岡は3年生にハッキリと言った。

 

惇「ちぇ・・・不完全燃焼だけど、しゃーねーか・・・」

 

御幸(やはり・・・アイツは上がったか・・・)

 

御幸(あの真っ直ぐを打てる打者は、全国にそういまい・・・)

 

この時、御幸はそう思いながら惇を見ていた。

 

片岡「丹波・・・お前も交代だ。」

 

丹波「え?」

 

片岡「本来のピッチングさえ出来れば、お前は必ず全国で通用する!これからも自信を持って投げろ!」

 

この激励の言葉に

 

丹波「はいっ!」

 

丹波は気合の入った表情を浮かべ、返事をした。

惇も、マウンドから降り、ベンチに戻った。

 

春市「おめでとう、足立君。相変わらず凄い真っ直ぐだね。」

 

惇「ありがとう、春市。まだ軽ーく6割位だけどな。」

 

春市「あれで6割か・・・やっぱ凄いね・・・」

 

すると

 

暁「ナイスボール・・・でも、負けないから!」

 

暁がオーラを出しながら純に言った。

 

惇「フッ・・・良いねぇ・・・おもしれーよ、お前・・・」

 

これに、惇は不敵な笑みを浮かべた。

そんなやり取りをしてる間に、東条は初回に12点も取られていたのであった。




今年もよろしくお願いします!

いつも通り、アニメと漫画を見て書きました!

違和感とツッコミ所ありまくりだと思いますが・・・(汗)

それでは、また!


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9話

9話です。


惇「マジかよ、東条・・・」

 

東条が、初回に12点も取られ驚く惇。

 

春市「うん・・・流石先輩達だね・・・」

 

惇「ああ・・・」

 

そんなやり取りをしていると、守備についていた信二達が疲れ切った表情を浮かべながら戻ってきた。

 

信二「ハア・・・やっと終わった・・・」

 

そんな中、頭にタオルを被って苦しそうにしている東条を

 

「お・・・おい、大丈夫か?ほら・・・ドリンク・・・」

 

皆は唖然と見ていた。

 

「足立が通用した打線だから全国ベスト4の東条ならと思ってたけど・・・」

 

「全く通用しないなんて・・・」

 

すると

 

栄純「何だよおい!皆してその顔!!」

 

栄純「まだまだ試合は始まったばかりだぞ!!」

 

栄純「逆転するチャンスはまだ8回もあるんだ!!気合入れていこーぜ!!」

 

栄純が現れるやそう言った。

 

「逆転!?」

 

「お前、ちゃんと試合見てたのか!?逆転どころか何点取られるのか分かんねーんだぞ!!」

 

これに、皆はそう言ったが

 

信二「・・・コイツの言う通りだな。」

 

「か、金丸!?」

 

信二「確かにあと何点取られるか分かんねー。けど、前向きに捉えるとまだ8回はあるんだ。それに、足立はこんな先輩相手に1球だけとはいえ、通用したんだ。だから、最後まで諦めずにいくぞ!」

 

そう、金丸は皆を鼓舞した。

すると、下を向いていた1年生が皆顔を上げ

 

「そうだ!まだやれる!」

 

「このままじゃ終われねー!」

 

「行くぞー!」

 

目に光が灯り、気迫が現れた。

 

惇「・・・ふーん。流石沢村だな。アイツの一言で、ベンチの空気を変えたな。」

 

春市「うん・・・金丸君も、良く皆を鼓舞したね・・・」

 

それを見て、惇は面白いと感じ

 

暁「・・・。」

 

その中心に立っている栄純を、暁は羨望の眼差しで見ていたのだった。

すると

 

片岡「よーし1年!投手と外野全部入れ替えるぞ!」

 

片岡「降谷暁。マウンドに上がれ!」

 

片岡がそう言った。

また

 

片岡「お前も守備につけ。」

 

栄純を見て、そう言った。

これに

 

御幸「お・・・」

 

惇「おっ・・・試合に出れたじゃん。」

 

栄純「遂に・・・遂にこの時がー!」

 

暁「僕がマウンドに上がるんだけどね。」

 

栄純「うっせー!今すぐ変われ!」

 

暁「・・・。」

 

栄純「無視すんな!」

 

惇「ほらお前ら、早くグラウンドに行け。さもねーと、監督に怒られんぞ。」

 

これに、惇はそう2人に言うと

 

栄純「・・・分かったよ。」

 

暁「うん・・・」

 

2人はグラウンドに向かった。

 

「フンッ・・・もう1人の怪物ルーキーが出てきたか・・・」

 

栄純(アイツ・・・こんなにスゲぇ打線相手にどんなピッチングするんだ・・・)

 

栄純(それと・・・どんな球投げんだ・・・)

 

そして、暁がマウンドを均すと、ベンチにいる淳を一瞥した。

 

暁(絶対・・・負けない!)

 

そう思い、ワインドアップで振りかぶり、1球目を放った。

 

「っ!」

 

「ひいっ!?」

 

そのボールは、高めにいき

 

ガッ!

 

片岡の審判のマスクを吹き飛ばした。

 

(な・・・何だ・・・今のは・・・)

 

(ボールをリリースした瞬間・・・唸りを上げて・・・むかってきた!?)

 

「か・・・監督・・・大丈夫ですか!」

 

これに、上級生らは片岡に集まったが、片岡は笑みを浮かべ

 

片岡「合格だ、降谷。お前も明日から一軍の練習に参加しろ!!」

 

そう、暁に言った。

 

暁「もっと投げたかったけど、ま・・・いっか。」

 

暁「これで御幸先輩に受けてもらえる。」

 

暁「それに・・・彼に負けたくないし・・・」

 

暁も、そうぼそりと呟いた。

 

惇(やっぱコイツのボール・・・俺より球威あるわ・・・)

 

御幸(誰にも打たせねぇか・・・結果的にそういう事になったな・・・)

 

その後、栄純と春市の活躍で1年生チームが1点を返し、栄純がマウンドに上がって増子にホームランを打たれるなど4失点したが、まともに打たれたのは増子の一発だけという結果になった。

因みに余談だが

 

惇「お前、随分と大胆な行動取ったな。」

 

惇「代打、俺!」

 

春市「ちょっ!やめてよ足立君!」

 

春市の代打での登場を惇はからかったのだが、それは内緒である。




投稿出来ました。

途中纏まらなかったので、最後は駆け足になりました。

お許し下さい(土下座)

それでは、また。


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10話

10話です。


「やっぱ青道の打線はスゲーわ!!」

 

「結局は上級生の圧勝でしたね・・・」

 

「それと・・・足立は噂通りの実力でしたね!!」

 

「ええ。1球しか投げてないけど、あの浮き上がるように伸びる真っ直ぐは凄かったですね!!」

 

「1球だけと言えば、あの降谷って子も良かったですね!」

 

「あの剛速球は相当のインパクトでしたね!!」

 

「投手力の弱い青道の救世主になるんじゃないですか?」

 

「ははっ・・・そうなってもらわんと困る!!」

 

「ここ5年、甲子園から遠ざかってますしね。」

 

「後沢村・・・でしたっけ?途中から出てきた投手・・・。何点かは取られましたけど、最後まで投げ抜きましたよ。」

 

「ああいう諦めの悪い投手も、嫌いじゃ無いですけどね。」

 

紅白戦が終わっても、ギャラリー達は大盛り上がりだった。

 

 

 

 

 

 

倉持「え!?マジっすか増子さん!じゃあ明日の試合・・・」

 

増子「うむ!スタメン復帰だ!!」

 

倉持「ヒャハハハ!!やっぱあのホームランが決め手っスか?」

 

増子「まぁ・・・あれは紙一重の勝負だったがな。」

 

増子「それに、もしあれがあだっちゃんだったら三振だっただろうな。」

 

倉持「成程・・・」

 

倉持「沢村も頑張って投げてたけど、現段階では一軍では通用しねぇって感じか・・・」

 

倉持「あのヤロー、もしかしたら部屋で泣いてたりして・・・ヒャハハハ!!」

 

そう言い部屋に入ると

 

栄純「あ、お帰りっス!」

 

栄純がテレビを観ていた。

・・・増子のプリンを食べながら。

 

倉持「・・・全然元気ってか?コノヤロー!」

 

それを見た倉持は、栄純にドロップキックをぶちかまし

 

倉持「テメー!先輩に一発打たれたんだ!新人らしくちょっとは落ち込めよオラ!」

 

その他のプロレス技を決めながら言った。

 

増子「おおお・・・お・・・俺のプリン・・・」

 

その横で、増子は自分のプリンの亡骸を呆然と見ていた。

その時、栄純の携帯にメールが来たため倉持が見ると、彼の幼馴染の若菜からのメールを見て嫉妬した倉持がプロレス技を更に決めたのだった。

 

 

 

 

 

唯「今日、ナイスピッチングだったね!」

 

惇「1球しか投げてねーから、何とも言えねーよ。」

 

唯「それでも凄かったよ!」

 

惇「・・・はは。サンキュー。」

 

すると

 

唯「・・・ねえ、惇君。」

 

惇「あ?」

 

唯「今・・・野球楽しい?」

 

唯が惇にそう尋ねてきた。

 

惇「・・・んだよ、急に?」

 

唯「・・・ううん。何でも無い。」

 

惇「・・・そっか。そんじゃあ、俺部屋戻るわ。お前も、気を付けて帰れよ。」

 

唯「・・・うん。」

 

そう言い、2人は別れたのだった。

 

惇「・・・。」

 

その時、惇はある人との話を思い出していた。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

それは去年の最後の大会の時だった。

その頃の惇は、他の追随を許さない程の圧巻のピッチングをしており、対等に渡り合える者はいなくなっていた。

この日も、惇は圧巻のピッチングを見せており、無双状態に等しかった。

 

「お、おい・・・これで5者連続だぞ!」

 

「あんな真っ直ぐ、打てねーよ・・・!」

 

「これでキレ鋭い変化球があるんだぜ・・・バケモンだろ・・・!」

 

「ああ・・・アイツは人間じゃねーよ・・・」

 

そんな事を常々言われ

 

惇(チッ・・・どいつもこいつも・・・うっせぇんだよ・・・!)

 

惇の心は荒れていた。

 

「・・・。」

 

そんな惇を見ていたシニアの監督は

 

「足立。ちょっと来てくれ。」

 

ベンチ裏へ一緒に行かせた。

 

「俺はお前に謝らねばならん。」

 

惇「はっ?」

 

「お前が途轍もない才能を秘めている事には、すぐに気付いた。」

 

「だが、当時のお前の一番の悪い癖だった右足に体重をかけて出て行くという癖。膝を曲げすぎてボールを低く放る為に自分がまず低くなってしまっていた為、右腰が落ちて肩も落ちていた。それでトップの位置が低くなり、ボールを前で叩いたら肩肘に負担が掛かっていた。現にお前は、肩と肘の痛みに苦しんでいた。」

 

惇「・・・。」

 

「それで、お前には『上から叩け』、『右膝に土を付けるな』という2つのアドバイスを元にしたフォーム改造を行わせた。その結果、お前のポテンシャルは一気に開花した。」

 

「そして、その才能が開花すれば、今のようになるであろう事にもな。気付いていながら何も言わなかった。」

 

「いや、言えなかったんだ。お前の気持ちより、その才能が開いた先が見たいという感情が勝ってしまった。」

 

「だから謝る。そして頼む、その才能を無駄にしないでくれ。それと、野球を嫌いにならないでくれ。」

 

惇「えっ?」

 

「お前の悩みは、すぐに解決できる事では無い。だが、いつか解決できるかもしれん。だから、決して無駄にせず、これからもずっと野球を好きでいてくれ。」

 

惇「・・・分かったっス。今更もう元には戻れねー。それでも・・・まだ勝ちてーって気持ちは残ってる。」

 

そう言い、惇は表に出て、マウンドに上がった。

そして、そのまま好調をキープし、チームは優勝したのだった。

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

惇(もしあの時話してくれなかったら・・・今の俺はねー。)

 

惇(それに・・・面白れー奴にも会えたしな・・・これからの野球・・・楽しみだ・・・)

 

そう思いながら、惇はボールを弄りながら夜空を見ていたのであった。




投稿出来ました。

一部とある漫画のシーンを入れてみました。

フォーム改造の話は、藤川○児のお話と下記動画を参考にしました。

https://www.youtube.com/watch?v=IM9-W5ckA5Y&t=93s

https://www.youtube.com/watch?v=nd3eE6ECzzk&t=669s

主人公の投球フォームは、お察しの通り、藤川○児のフォームです。

凄い今更ですが・・・(汗)

それでは、また。



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11話

11話です。


伊佐敷「あれ?御幸は?」

 

「さあ・・・飯の時はいたけど?」

 

伊佐敷「あんのヤロー。後で稲実のビデオ見ようって言ってたのに、どこ行きやがった?」

 

その御幸は何処にいるのかというと

 

御幸「ったく、今すぐ自分の球受けろって。お前はもう一軍の選手なんだぞ?いずれ俺とバッテリー組むだろう。」

 

御幸「もしかして、沢村のピッチングに何か感じちゃったのかな?怪物くん♡」

 

暁と一緒に室内練習場にいた。

 

暁「僕は・・・自分の居場所をこの手に掴むために、この青道に来たんです。」

 

暁「がっかりさせないで下さいよ、御幸先輩。」

 

そう言うと、暁は振りかぶった。

それを見た御幸は

 

御幸「はっはっはっ、足立も沢村もそうだけど、お前面白れー!気に入ったぜ!」

 

笑いながら構えたのだった。

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

教頭「新1年を合わせ、総勢93人・・・何とも盛観な練習風景ですな。」

 

教頭「今年こそは、甲子園に手が届きそうですかな、監督?」

 

校長「ここ5年、甲子園から遠ざかってますしねぇ。そろそろ、我が校の名を全国に轟かせてもらわないと。」

 

片岡「心配無用。我々の目標は、常に全国制覇です!!」

 

そう言い、目線をグラウンドに向け

 

片岡「鉄壁の守備を誇る二遊間。1番ショート、倉持洋一。2番セカンド、小湊亮介。」

 

片岡「強肩強打吼える3番センター、伊佐敷純。」

 

片岡「勝負勘冴える不動の4番ファースト、キャプテン結城哲也。」

 

片岡「レギュラーに復帰した超重量級サード、5番増子透。」

 

片岡「そして、チームを支える扇の要。6番キャッチャー御幸一也。」

 

片岡「これらは、全国に誇れる選手達です。」

 

選手紹介をした。

 

教頭「はっはっは。これは頼もしい!」

 

校長「となると、後は投手ですか・・・一軍に復帰した丹波君が、どこまで調子を取り戻すかですね。」

 

校長「しかし、こう言っちゃ何ですが・・・片岡監督は、1人のエースを育てる事に拘りすぎてませんかね。」

 

校長「今の時代、色んな投手を使い分けた方が・・・」

 

すると、それを聞いた片岡は、キッと睨んだ。

 

校長「あっ・・・いや・・・これは私だけの意見ではないのですよ。」

 

校長「長い伝統のある我が校には、口うるさい外野も多いですから。」

 

校長「実際、片岡監督の手腕を疑う声もちらほら・・・」

 

片岡「・・・。」

 

教頭「ほっほっほっ、まぁ、あまり気になさらずに・・・」

 

教頭「選手として後一歩のところで全国制覇を逃し、プロ入りを拒否してまで教職の道を選ばれた。」

 

教頭「その監督の母校に対する熱意は、十分に伝わっておりますから。」

 

すると

 

片岡「私はただ・・・自分を育ててくれた高校野球に恩返しがしたいのです。」

 

片岡「責任を取る覚悟は、いつでも出来ています!ですので、今後現場への口出しは一切やめていただきたい。」

 

片岡「失礼。」

 

そう片岡は言い、その場を後にした。

 

教頭「こ・・・怖い・・・」

 

校長「わ・・・分かってるんですかねぇあの人・・・?今年、結果が残せなければ自分のクビが危ない事を。」

 

その様子を見た高島先生は、紅白戦の後の事を思い出した。

 

 

 

 

 

太田部長「どうでした、今日の試合は?まぁ、スコア的には大敗でしたが、結構収穫もあったのでは?」

 

太田部長「あの小柄なセカンド・・・3年の小湊の弟なんですね。道理でプレーが瓜二つだ・・・」

 

太田部長「それに、たった1球で回りを黙らせた足立惇と降谷暁・・・」

 

片岡「あの2人については、明日の試合に勝てば、関東大会でデビューさせるつもりだ。」

 

これには

 

太田部長「え!?1年の彼らをですか?」

 

太田部長は驚きを隠せなかった。

 

片岡「あの強烈な縦回転で、浮き上がると錯覚させる程の抜群の伸びのあるボールを投げる足立の快速球と、足立を凌ぐ球威を誇る降谷の剛速球・・・あれらを打てる打者は、全国にもそうはいまい。」

 

片岡「夏までは、丹波と足立、そして降谷の3本柱で行くつもりだ。」

 

太田部長「何と・・・」

 

すると

 

高島「沢村君は、使えそうですか?」

 

そう高島先生は尋ねた。

 

太田部長「沢村!?あの子は増子に打たれてたじゃないですか!」

 

高島「野手の間に落ちる不運なヒットと捕手のパスボールで得点は許しましたが、まともに打たれたのは、増子君の一発だけでしたよ・・・」

 

太田部長「!」

 

高島「打髙投低・・・打者優位の現代高校野球において、左のムービングボールは貴重な存在かと・・・」

 

太田部長「確かに、ウチは左投手は不足してはいるが・・・」

 

片岡「馬鹿正直な真っ向勝負に、セットプレーやカバーリングの未熟さ。今のままでは正直使えん・・・」

 

片岡「だが・・・恐らく誰にも教わっていないであろうあの豪快なフォームに、柔軟な関節。」

 

片岡「原石のデカさだけで言えば・・・素晴らしい物がある。」

 

片岡「取り敢えず、足立と降谷は一軍で経験を積ませる。沢村は二軍で、クリスに任せようと思う。」

 

これに

 

太田部長「えっ、クリスに?」

 

太田部長は驚いたが

 

高島「・・・分かりました。」

 

高島先生は意図を察し、了承した。

 

片岡「夏の本選まであと2ヶ月。最後にマウンドに立っているのは誰になるかな。」

 

そう、片岡は夜空を見て言ったのだった。




投稿出来ました。

上手くアレンジできたか分かりませんが、読みにくかったらお許しを(土下座)

これは僕の個人的な考えですが、速くて伸びのあるボールを快速球、速くて重いボールを剛速球だと思っております。

皆さんはどう思いますか?

それでは、また。


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12話

12話です。


片岡「良いか!夏の本選まで後2ヶ月。目標の無い練習は、日々をただ喰い潰すだけだ。」

 

片岡「小さな山に登る第一歩・・・富士山に登る第一歩・・・同じ一歩でも覚悟が違う。」

 

片岡「俺達の目指す山はどっちだ?」

 

片岡「目標こそがその日その日に命を与える!!高い志を持って、日々の鍛錬を怠るな!!」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

 

 

 

 

信二「先輩達は、実戦形式の打撃や守備練習。で、俺達1年は相変わらずサーキットトレーニングとランニング中心か・・・」

 

「一軍に上がった足立や降谷でも、それは一緒だもんな。」

 

「確かに体力差はあるけどよ、早くボール触りてぇよ。」

 

そう1年達はランニングしながら話していた。

そんな中、二軍に上がった栄純は不満そうな顔だった。

それに気付いた春市が

 

春市「あれ?二軍に昇格したのに、あんま嬉しそうじゃないね・・・因みに僕も二軍昇格♪」

 

そう声をかけると

 

栄純「当然だろ。二軍っつってもやってる事は今までと同じじゃねーかぁ!!俺は一軍のマウンドで投げてーの!!」

 

栄純は涙を流しながらタイヤを引っ張って言った。

 

春市「出た!大物発言!」

 

惇「ったく・・・お前は相変わらずだな。」

 

春市「でも、一軍のベンチより二軍で試合に出られる方が良いけどなぁ。」

 

これに

 

栄純「何?試合?」

 

栄純は反応した。

 

春市「これから週末にある試合はダブルヘッダーだから、僕等にも十分出番は回ってくると思うよ。」

 

栄純「マジで!?それってすげぇチャンスじゃん!」

 

暁「うるさい・・・」

 

惇「あ、アハハ・・・」

 

その時

 

『1年の足立、降谷、沢村は、至急Aグラウンドベンチへ集合!」

 

放送で惇と暁、そして栄純が呼ばれ、Aグラウンドへ向かったのだった。

 

 

 

 

 

高島「君達3人には、今日から投手陣のメニューをこなしてもらうわ。練習量は皆の倍になるけど、頑張って。」

 

これには

 

栄純「おおおお・・・」

 

栄純はやっとピッチャーの練習が出来るからか、嬉しさのあまり震えていた。

 

高島「足立君と降谷君は、来週の関東大会で登板があるかもしれないから、御幸君とセットプレーやサインの確認をしておいてね。」

 

惇「うっす。」

 

暁「はい。」

 

栄純「んなっ!?」

 

御幸「礼ちゃん。足立はともかく、降谷は球威はあるけどコントロールは全然っスよ!後スタミナも強化しなきゃな~。」

 

高島「あら。降谷君の球、受けた事あるの?」

 

栄純「・・・!!」

 

暁「自分は、御幸先輩の指示に従います。」

 

そう言った暁は、昨日の事を思い出した。

昨日、御幸にボール受けて欲しいとお願いし、室内練習場で御幸に向かって全力で投げた。

すると、御幸は弾く事なく、ミットに収めた。

 

暁(久し振りに聞いた。自分の投げた球が、ミットに収まる音。)

 

これに、暁の胸が高鳴った。

 

御幸「どうした?お前が投げたいって言い出したんだろ?遠慮しねェでガンガン投げてこいよ。」

 

暁(ここを選んだ事・・・間違いじゃなかった。)

 

暁「よろしくお願いします!」

 

惇「こちらも、よろしくお願いします。」

 

そう言い、暁は頭を下げて言い、惇も同じく続いた。

 

御幸「何だよお前。今日はやけに素直だな。」

 

暁「最初はこのくらいが良いかと。」

 

御幸「はっはっはっ。コノヤロー!」

 

惇「・・・はは。」

 

栄純(コ・・・コイツら・・・いつの間に・・・)

 

高島「沢村君には、3年生のクリス君と組んでもらうわ。リード面や、マウンドでの心構えを彼から色々と教えてもらって。」

 

しかし、栄純は

 

栄純「ちょっと待てよ!俺だって御幸先輩に受けてもらいたいのに!」

 

高島先生にそう不満を言うと

 

クリス「・・・。」

 

それを聞いたクリスは、栄純の手を強引に掴み、握手をし

 

クリス「気が合うな。俺だってお前みたいな奴とは組みたくない・・・」

 

栄純「え!?」

 

クリス「滝川・クリス・優だ。よろしくな、ヘボピッチャー。」

 

そう自己紹介したのであった。




投稿出来ました。

最初に片岡監督選手達に言った言葉、元横浜高校の監督だった渡辺元智さんの座右の銘を使ってるんですよね。

とても良い言葉ですよね・・・。

僕自身、横浜育ちだから神奈川の高校野球の顔って言ったら、横浜高校でした。

強いし校歌もユニフォームも格好良いし、すぐに覚えてしまいました(笑)

一度学校見学で見に行った事あるんですけど、グラウンドが広いのなんの・・・これが名門校のグラウンドかと思いました・・・!

再び、松坂大輔さん以来の夏の全国制覇を成し遂げて欲しいですね・・・。

それでは、また。


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13話

13話です。


コーチA「ファースト!」

 

暁「ヘイ!」

 

しかし

 

ポコッ

 

「・・・。」

 

暁はファーストの送球を弾いてしまった。

 

暁「・・・。」

 

それに、グローブを見た暁は

 

暁「ドンマイ、ドンマイ。」

 

と返したので

 

「お前が言うなー!」

 

と突っ込まれた。

 

亮介「フフッ・・・アイツ凄い球投げるくせに守備苦手なんだ。」

 

コーチA「次!」

 

惇「ヘイ!」

 

しかし、惇は危なげなくこなした。

 

コーチA「ナイスカバーリングだ!」

 

惇「ありがとうございます!」

 

これに

 

暁「・・・。」

 

パチパチ

 

暁は拍手をしていた。

 

惇「いや暁、これ基本だからな。結構マジで・・・」

 

暁「ガーン!」

 

惇「暁。お前ベースを踏む事に意識が行き過ぎだぞ。ラインと平行にカバーに入んねーと、ランナーに足削られっぞ。」

 

暁「うん。分かった、惇。」

 

丹波「降谷。ボールを離した瞬間に投手は9人目の野手。その事を忘れるな。」

 

暁「はい。」

 

惇に続いて、丹波もそう暁にアドバイスをした。

 

倉持「丹波さんライバルにアドバイスたぁ、貫禄だな。まぁ実戦経験は比べものになんねーしな。」

 

倉持「つーか、足立と降谷、いつの間に名前呼びになってたなぁ・・・仲良くなるのはえーな・・・」

 

これに、倉持は惇と暁の2人を見てそう言った。

実を言うと、あの紅白戦以来、2人はよく話すようになり、いつしか名前で呼び合う仲になったのだ。因みに栄純とも、名前で呼び合う仲になった。

この日は投内連携をした後、ブルペンに入り投げ込みをして練習は終わった。

因みに栄純は、クリスとストレッチをして何やら少し揉めていたのだった。

 

 

 

 

 

惇「ふぅ・・・」

 

練習が終わり、クールダウンをしている惇だったが

 

小野「ああ、足立。ちょうど良い所に。」

 

小野が惇に声をかけた。

 

惇「何すか、小野さん?」

 

小野「監督が、監督室に来いって。」

 

惇「?・・・分かりました。」

 

それを聞き、惇はそのまま片岡がいる監督室へ向かった。

そして、監督室の扉の前に到着すると、惇はノックをし

 

惇「1年の足立です。入っても宜しいでしょうか?」

 

と言った。

 

片岡「あぁ、入れ。」

 

惇「失礼します!」

 

部屋に入ると、片岡が1人座っていた。

 

片岡「・・・足立。お前、今日のブルペンでまだ本気で投げてないな?」

 

惇「・・・何故それを?」

 

片岡「過去にお前のピッチングを見た・・・と言えば分かるな?」

 

これに

 

惇「っ!」

 

惇は少し目を見開いた。

 

片岡「お前が去年所属していた横浜シニアの監督とは、古い友人でな。」

 

そう言い、片岡は椅子をくるりと回し、窓の外を見ながら話し始めた。

 

片岡「俺はその日、オフで暇していた時に、奴から連絡が来てな。『ウチに凄い選手が入ったんだ。見に来ないか?』と誘われてな。気になって見に行ったんだ。」

 

片岡「そして、見せてもらったら驚いた。彼はまだまだ線は細く、フォームとコントロールも未熟だったが、真っ直ぐのキレと伸びは中学に上がってまだ1ヶ月とは思えなかった。」

 

片岡「後で聞いたら、本格的に投手に転向してまだ1週間と聞いた。けれど、その素質は最高クラスだと確信した。何より、それ以上に感じたのは、誰よりも野球を楽しんでいるという事だった。それ以降も、少し時間があれば足を運んで見に行った。彼が成長していく姿と野球を楽しむ姿を見たくて。」

 

片岡「そして、中学2年に上がった彼を見たら、進化した姿に鳥肌が立った。上から叩きつけるようなフォームになり、そのお陰か以前と比べて体重移動がスムーズになって、腰と肘、そして肩の位置が高くなり、ボールに綺麗な縦回転がかかってスピードとキレ、伸びが格段に良くなっており、変化球のキレも増していた。」

 

片岡「しかし、まだまだ発展途上であると感じ、どこまで成長出来るのか非常に楽しみだった。」

 

すると、喋りすぎて喉を潤そうとしたのか、片岡は机の上にあるコーヒーを飲んで一呼吸置き、再び窓の方に向いた。

 

片岡「そして、中学3年に上がった彼を見たら、2年よりも更に真っ直ぐのキレと伸びがまた一段と上がり、変化球も更にキレが増し、カーブとスライダー以外にSFFを投げれるようになり、更に他の追随を許さない投手になっていった。」

 

片岡「しかし、その時の彼は、今までと比べて楽しんで野球をしていなかった。以前と同様、気迫のこもったピッチングとその咆哮でチームを鼓舞する姿は変わらなかったが、楽しんで野球をやっていなかった。」

 

片岡「何故楽しんでやっていないのか、その疑問に辿り着くのに時間は掛からなかった。それは、もう既に対等に渡り合える者はいなくなっていたという事に。」

 

惇「・・・。」

 

片岡「アイツもその事には気付いており、ポテンシャルが開花すればこういう事態になってしまうという事にな。アイツに問い詰めると、『言いたくても言えなかった。あれだけの素質を持っているアイツに、野球を愛し楽しんでるアイツに、開花した先が見たいという気持ちが勝ってしまった。』と言っていた。」

 

片岡「その後、彼のいたチームは、彼の圧倒的なピッチングで見事優勝したと聞いた。暫くして、この青道高校にやって来た。また更に成長した姿を見せて。」

 

そして、片岡は振り返り、惇を真っ直ぐ見据え

 

片岡「・・・なぁ、足立。今、野球は楽しいか?」

 

そう、惇に問いかけた。だが、惇はすぐに喋らず、両者の間に沈黙が流れた。

どのくらい経ったのか分からないが、惇は口を開けた。

 

惇「・・・正直、まだわかんないっす。あの時、フォームを改造して、以前より違和感無くボールが投げれるようになって、最初は投げるのが楽しかった。」

 

惇「けど・・・周りからの見る目が変わっていって、『アイツは人間じゃねー、アイツはバケモンだ。』って言われるようになってから、好きだった野球が嫌になったっす。」

 

惇「けど・・・最後の大会に、監督と少し話をして、少し気持ち的に楽になりました。そして・・・この学校に来てまだ日は浅いですが、栄純や暁といったスゲー球投げるピッチャーに出会えて、久し振りに野球を楽しめるような気がするんです。」

 

片岡「そうか・・・その気持ちに、嘘偽りは無いな?」

 

惇「・・・はい。」

 

片岡「そうか・・・分かった。呼び出してすまなかったな。ゆっくり休め。」

 

惇「はい。」

 

そう、惇は片岡に言われ、監督室を後にした。

それを確認した片岡は、椅子から立ち上がって窓の外を見た。

 

片岡(1年の中で、足立の才能は抜きん出ている。ただ、あの才気は大きすぎて危うい。しっかりフォローしてやらんと、潰れる危険性がある・・・)

 

片岡(夏までに、何とかしなければな・・・)

 

そう、片岡は思っていたのであった。




投稿出来ました。

アニメと漫画、そして途中からオリジナル話を加えました。

かなり拙い内容になっておりますが、お許し下さい(土下座)

それでは、また。


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14話

14話です。


昨日、クリスに渡された巻物に書かれたメニューをこなした栄純だったが

 

クリス『1年間、そのメニュー続けたら、お前を認めてやるよ。』

 

と言われ

 

栄純「1年経ったら、テメェ卒業してんじゃねーか!そんなに俺が嫌いかぁー!」

 

怒りでタイヤを引っ張って走っていた。

すると

 

「お疲れさんです!」

 

栄純(あ・・・ありえねぇ。アイツ・・・今日も1人で先に帰りやがった・・・)

 

クリスが、また1人で帰ったのを見て、5分ほど固まってしまった。

その時

 

春市「おーい、栄純君!さっき、3年のクリスって先輩に頼まれたんだけど、これ・・・新しいメニューだってさ。」

 

春市がそう言い、栄純に巻物を渡した。

それを見た栄純は

 

栄純「はあ!?」

 

栄純「ふざけるなコノヤロォ!誰がやるかこんなもーん!」

 

怒りに身を任せ、投げてしまい

 

栄純「やっぱ俺にはタイヤしかねぇー!行くぜ相棒!!わはははは!!」

 

タイヤを腰に付けて言った。

 

春市「何があったの?相談乗るよ。」

 

それを見た春市は

 

春市「ねえ?明後日の関東大会どうする?今回は流石に全員参加らしいよ。」

 

そう栄純に尋ねたが、分かりやすいくらい行きたくない表情を浮かべた。

 

春市「はは・・・分かりやすいね。」

 

しかし

 

春市「今はまだ、スタンドで観ている事しか出来ない。歯がゆい思いは、僕にだってあるよ。」

 

春市「けど・・・いずれ僕たちが戦う全国の強敵。今のうちにチェックしといても良いんじゃない?」

 

春市にそう言われ、栄純は行く事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

春の関東大会に出場が決まった青道は、初戦で神奈川の名門、横浜港北学園、通称横学とぶつかった。

横学先攻で始まった試合は、序盤は投手戦の様相だったが、5回になって青道の先発を任された丹波が遂につかまり、5回が終わって6-2とリードされてしまった。

 

「おわっ、青道負けてんじゃん。」

 

「5回終わって4点差だ。まぁ、4回まで丹波も良いピッチングしたんだけどな。5回にとうとう横学打線につかまったよ。」

 

「やはり投手力の差が、試合の明暗を分けそうだぜ。」

 

『6回の表、青道高校選手の交代をお知らせします。』

 

「おっ・・・投手交代?」

 

「けど、丹波以外に横学打線抑えられる投手、青道にいたっけ?」

 

『丹波君に代わり、ピッチャー足立君』

 

これに、球場はざわついた。

 

「足立惇?誰だそいつ?」

 

「バカッ、お前知らねーのかよ!足立って、去年の中学№1ピッチャーだぞ!」

 

「あの足立か・・・もしかしたら出てくるかもしれないとは思っていたが、まさかこんな場面で出てくるとはな。」

 

「でも、まだ1年だぞ!こんな場面でマウンド上げるなんて、青道・・・何を考えてるんだ?」

 

春市「凄い・・・足立君本当に出てきた。」

 

栄純「!」

 

横学監督「随分と舐められたものだな。まさか入部したての1年をマウンドに上げるとは。高校野球の厳しさ、あのルーキーに叩き込んでやれ!」

 

「「「はい!」」」

 

「細ぇな・・・アイツ。まだ体出来てねぇじゃねぇか・・・青道も毎年大変だな。」

 

御幸「はっはっはっ。お手柔らかに♡」

 

そして、いつものルーティンの股割りストレッチを行った惇は、ロジンを地面に置きセットポジションに構えた。

 

御幸(驚くなよ・・・今日、お前らの胸に、まずコイツの名前が刻まれる事になるぜ・・・)

 

そう心の中で呟き、ミットを構えた。

そして、惇は初球に真っ直ぐを投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

その1球で、一瞬静まりかえったが

 

「「「うおおおっ!!」」」

 

すぐさま歓声が響いた。

それでも、惇は構わず投げ続けると、横学の打者は面白いように真っ直ぐを空振り続けていき

 

横学監督「何やってる!相手は1年だぞ!!その高めのストレートに手を出すな・・・!」

 

横学の監督もそう指示するが

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

惇の伸び上がる真っ直ぐに、皆手を出してしまっていた。

 

「ろ、6者連続三振!?」

 

「スゲーはえー!!マジ手元で浮き上がってんぞ!!」

 

「これが中学№1ピッチャー、足立惇・・・!!」

 

これには、観客も大盛り上がりだった。

 

御幸「ナイピー!」

 

惇「あざっす。」

 

御幸「相変わらずエグい球投げんなぁ・・・」

 

惇「暁ほどじゃ無いっスよ。」

 

倉持「ヒャハハハ!!ナイスピッチング!!」

 

伊佐敷「良い雄叫びじゃねーか、コノヤロォ!」

 

亮介「ナイスピッチ。」

 

惇の周りも、ピッチングを褒めていた。

 

片岡「足立、交代だ。」

 

惇「うっす。」

 

片岡「次、降谷!」

 

暁「はい。」

 

惇「残りのアウトも、俺と同様三振に打ち取っちまいな!」

 

と惇は暁に発破をかけた。

この発破に

 

暁「・・・言われなくても!」

 

暁はオーラを噴き出しながらマウンドに向かった。

その暁の投げる剛速球も、横学打線は惇同様面白いように空振りを取った。

 

「ご、5連続三振!?」

 

「あ、足立から降谷まで11者連続三振!?」

 

「おい、この1年もヤベぇぞ!!」

 

「どこの中学だよ!降谷なんて聞いた事ねーぞ!」

 

「こうなったら、最後の1人も三振で決めちまえ!」

 

「「「後1人!!後1人!!後1人!!」」」

 

これに、球場中後1人コールが湧き上がった。

 

横学監督(馬鹿な・・・試合に勝ってるのはウチだぞ!!毎日マシンの球を打ち込んでるコイツらが・・・ボール球にまで手を出すなんて!)

 

横学監督(それ程の圧力だというのか、あの2人の球は・・・!)

 

これには

 

春市「ハハッ・・・同じ1年には思えないね・・・それに足立君・・・マウンドに立つと人が変わるね・・・」

 

栄純「んぐぐ・・・」

 

春市はただ苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

クリス「たった1球で相手の心を折るボールの威力。これが、お前とあの2人の才能の違いだな。」

 

栄純「てめっ・・・」

 

クリス「言っただろう。この先、お前がエースになる事は無いと。同じ学年にあの2人がいる限りはな。」

 

ドオオンッ!!

 

御幸(ハハッ・・・足立とは違うタイプの真っ直ぐだが、コイツもえげつない球投げやがる・・・)

 

御幸(しかも球が荒れてるのが幸いだったな。これじゃあバッターも的が絞れねーだろ。)

 

そう思った御幸は

 

御幸(あと1人・・・お前の好きなように投げ込め!)

 

そう降谷に腕を広げて見せた。

 

惇(コイツ・・・ボールの威力だけだったら俺より遙かに上だ・・・)

 

惇(だがな・・・スピードとスピン量による伸びなら・・・俺は決して負けねーからな・・・)

 

それを、惇は周りの選手を震え上がらせるほどの威圧感を出したのだった。

 

クリス「このまま行けば3年間、あの2人の陰に隠れるのは確実だな。それともココを辞めて、他の高校でエースを目指すか?」

 

これに

 

栄純「ア・・・アンタだって、俺と同じ二軍じゃねーか・・・。2年生にレギュラーとられて悔しくねーのかよ・・・」

 

栄純「練習終わりゃあ、さっさと帰りやがって。上に行きたきゃ誰よりも練習するしかねーんじゃねぇのか!!」

 

栄純「アンタ自身が、上に行くことを諦めちまってるだけだろ?そんな奴に、分かったような事言われたくねーんだよ!」

 

クリス「・・・。」

 

栄純「いくら壁が高かろーがな、俺は絶対アンタみたいに死んだ目ェした選手にはなりたくねぇ!」

 

ドオオンッ!!

 

「決めたー6連続三振!!」

 

「足立から続いて12者連続三振!!」

 

「コ・・・コイツも本物だぞー!!」

 

「青道に、剛腕怪腕投手が現れやがった!」

 

「今年の青道は要チェックだぞ!」

 

亮介「ナイスピッチ!」

 

倉持「ヒャハハハ!!足立同様、やるじゃねーかコノヤロォ!お前ら1年にこんなピッチングされちゃ、このまま終わるワケにいかねーじゃねーか!」

 

これに

 

結城「後は俺達に任せろ。この試合、ひっくり返すぞ!!」

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

結城はそう皆を鼓舞した。

 

クリス「上に行くのを諦めたか・・・」

 

クリス「馬鹿のくせに、的だけはついてやがる。」

 

そして

 

クリス「俺のようにはなるなよ、沢村。」

 

栄純「え!?」

 

そう言い残し、クリスは球場を後にしたのだった。

試合の方は、最終回に青道打線が爆発し1点差まで追い上げたが後一歩及ばなかった。

しかし、この試合を境に青道高校の足立惇と降谷暁の名前が広まっていったのであった。




投稿出来ました。

アニメと漫画、少しオリジナルをミックスしアレンジしました。

やっぱ、試合描写は難しいです・・・(泣)

そ、それでは、また。



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15話

15話です。


横学との試合後の寮

 

 

 

 

「今日の試合、凄かったなー。」

 

「9回の攻撃、俺・・・マジ鳥肌立ったよ。」

 

「負けたとはいえ、あの横学を後一歩のところまで追い詰めたからな。」

 

「ホントだよな。足立と降谷の活躍もあったけどな。」

 

「マジで今年は甲子園、狙えるんじゃねーのか?」

 

「おう!俺達も頑張ろうぜ!」

 

「ああ!足立と降谷に続こうぜ!」

 

栄純(あっさりと認めやがって、何なんだよアイツ・・・)

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

コーチA「沢村コラァ!何やってんだ!カバーリングは確実に入らねぇか!」

 

栄純「!」

 

コーチA「お前、中学でどんな野球やって来たんだ!野球舐めんなよ!」

 

栄純「すいません・・・」

 

そう謝罪してカバーリングに入ったのだが

 

コーチA「そこじゃねー!!バックホームの時はホームのカバーだろうが!!」

 

サードの後ろに行っていた。

 

春市「・・・。」

 

「アイツ・・・よくウチに入ってこれたな・・・」

 

信二(アイツ・・・ホントどんな環境で野球やってたんだよ・・・)

 

コーチA「おろおろすんなァ!」

 

高島「・・・。」

 

そして練習後、栄純は高島先生に呼ばれた。

 

高島「どう?今までプロ野球も観ないって言ってたけど、試合を観る事も立派な勉強だって分かったでしょ?」

 

高島「野球は9人で戦うスポーツ・・・走・攻・守以外にもやるべき事は沢山あるのよ。」

 

栄純「・・・。」

 

高島「その事を早く分かってもらいたくて、クリス君と組んでもらったけど、ちゃんと彼に教わってる?」

 

この言葉に、栄純はムッとした顔をした。

 

高島「今度の練習試合、登板させてあげたかったけど、今のままでは白紙に戻さないとね。」

 

栄純「なぬ?」

 

その時

 

御幸「礼ちゃん。昨日のスコアブック、見せてもらいたいん・・・だけ・・・ど・・・」

 

惇「失礼しま・・・す・・・」

 

御幸と惇が入ってきたのだが、栄純が高島先生の前で正座してる姿を見てしまった。

 

惇「お前・・・まさかそんな趣味が・・・」

 

栄純「ち・・・違ーうっ!!み・・・見るなー!!こんな俺を見るなー!!」

 

御幸「はっはっはっ。お前最高♡」

 

落ち着くと

 

高島「私の人選ミスかな。この子、クリス君と上手くいってないみたいなのよ。」

 

御幸「まぁ、今あの人と上手くやれる奴も少ないだろうけど。」

 

惇「でも俺、この前ブルペンで良くなくて何でかなぁと思ってた時に声かけられたんすけど、結構的確かつ丁寧に教えてもらって、その後投げたら良くなったんすよ。あれメッチャ助かりましたよ。」

 

御幸「だろう?あの人はスゲーからな。」

 

高島「沢村君は知らないでしょうけど、チームで一番野球に詳しいのは彼なのよ!選手の能力を見抜く力もあるし。」

 

しかし

 

栄純「そんな事言ったって全然やる気ねぇじゃねぇか。今日だってさっさと帰りやがって。」

 

栄純は不満たらたらだった。

 

御幸「おいおい、それはな・・・」

 

栄純「俺は・・・俺はアンタに受けてもらいたい!」

 

栄純「初めてこの学校に来た日、あの時聞いたミットの音が忘れられないんだ。この間の試合だって、少しでもあの時のイメージに近づけるように投げてたし。」

 

御幸(それで全球真っ向勝負だったわけか・・・)

 

惇(コイツ・・・)

 

御幸「まあ・・・そんなに焦るなよ・・・。あの人について行けば、お前間違いなく成長出来ると思うぜ。」

 

そう、御幸は言ったが

 

栄純「イヤだ!あんなやる気のねぇ奴とは組みたくねぇ!」

 

栄純は耳を貸さず

 

栄純「何であんな人がここにいるんスか?やる気がねぇなら、さっさと辞めれば良いのに。」

 

つい非難めいた愚痴を言ってしまった。

これに御幸は

 

御幸「・・・。」

 

栄純の胸ぐらを掴んで

 

ドン!

 

栄純「!え!?」

 

壁に当てて

 

御幸「お前が上を目指したいという気持ちは、2・3年にも十分伝わってる。この間の試合を見ればな・・・」

 

御幸「けど・・・今の発言だけは、許せねーわ。」

 

静かに怒った。

 

惇「カズさん・・・それ以上は・・・」

 

高島「御幸君・・・」

 

御幸「チッ!気分悪ィ・・・礼ちゃん、コレ借りてくよ。」

 

高島「ええ。」

 

御幸「行くぞ、足立。」

 

惇「・・・はい。」

 

そう言い、その場を後にした。

 

栄純「・・・。」

 

栄純の方は、初めて見る御幸の怒った姿に呆然としたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

惇「・・・。」

 

御幸「・・・。」

 

惇「あの・・・カズさん。」

 

御幸「ん?ああ・・・さっきは悪かったな。びっくりしたろう?」

 

惇「いえ・・・。でも・・・悪気は無いとはいえ、キレるのも無理ないっスよ。」

 

御幸「・・・お前、知ってたのか?」

 

惇「まあ・・・俺が中1の時に、練習試合と全国でやってたんで。エグかったっすよ。俺なんか、今のフォームじゃなかったんすけど、デカい当たり飛ばされたんで。」

 

御幸「そっか・・・」

 

そう言っていると、室内練習場に到着した。

そこには

 

暁「・・・。」

 

暁がダウンしていた。

 

伊佐敷「おい御幸!コイツすぐにダウンしたぜ!」

 

倉持「ヒャハハハ!!足立と違ってスタミナなさ過ぎだろ!!」

 

惇「ア、アハハ・・・」

 

御幸「はっはっはっ!!降谷、純さんのウエイトはまだ序盤だぞ!!」

 

そう言い、御幸は暁に言った。

一方の栄純は、クリスのリハビリ姿を見て昨日言った事を後悔し、野球を教えてくれるよう頼んだのであった。




投稿出来ました。

やっぱ結構難しいですね、アレンジするのは。

クリスさんも、怪我がなければどのような選手になってたんでしょうね・・・。

それでは、また。


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16話

16話です。


クリスの真実を知った栄純は、ストーカーの如くしつこくつきまとった。

 

惇「おい、栄純。その汚ねー巻物何だよ?」

 

栄純「これはだな、クリス先輩からいただいたメニュー表だ!」

 

惇「・・・お前、この前あんなに嫌ってたのにか?」

 

栄純「ま、まあ・・・色々な。」

 

惇「そっか・・・そんで、何で泣いてんだ?」

 

栄純「そ、それはだな・・・」

 

そう言い、栄純はクリスとの絡みを話した。

 

惇「いやお前、それは正直うぜーし、もろストーカーじゃねーか。」

 

惇のこのストレートな物言いに

 

栄純「うぐ・・・!」

 

栄純もたじろいだが

 

栄純「だがしかし、まだ諦めん!それじゃあ、また!」

 

そう言い、教室を出た。

 

惇「・・・ったく。」

 

これに、惇は呆れつつも笑みを浮かべていたのだった。

 

 

 

 

 

 

増子(食べられないようにどこかに隠しておこう。)

 

そう思ってプリンを持って歩いていると

 

倉持「・・・。」

 

倉持が、部屋の前で固まっていた。

 

増子「ど・・・どうした?何部屋の前で固まってる?」

 

そう声をかけ、部屋を見ると

 

増子「!!」

 

栄純が机に向かっていた。

 

倉持「お・・・おい、何があった・・・田舎の彼女に振られたのか!?」

 

増子「沢村ちゃんが机に向かうなんて!?」

 

これに、2人はそう声をかけた。

すると

 

栄純「フッフッフッ。俺・・・ようやく気付きましたよ。ただ好きなだけじゃ上には行けない。もっともっと野球の事知らなきゃいけねぇって。」

 

栄純がそう言った。

 

倉持「い・・・今頃・・・?」

 

栄純「フフッ・・・知ってますか?遊撃手って名前、正岡子規が名付けたらしいっスよ!・・・てか、正岡子規って誰でしょう?」

 

これに

 

倉持「お前何の勉強してんだよ!」

 

倉持がそうツッコんだ。

 

 

 

 

 

翌日、ブルペン

 

 

 

 

 

 

ドオオンッ!!

 

「アイツが降谷暁か?近くで見るとホントえげつねぇ球だな・・・。」

 

スパァン

 

「丹波の方も調子上げてきてねぇか?」

 

「あんなサイドスローも控えてんのかよ。

 

「投手層厚そうだな。」

 

「どうやらあの横学と互角の勝負したってのは本当みてーだな。」

 

「やっぱ今年の青道は、油断出来ねーぞ!」

 

「そう言えば、足立はどこに行った?」

 

その頃惇は

 

惇「ハッハッハッハッ」

 

ブルペンで受ける者がいなかったため、1時間走っていた。

 

ドオオンッ!!

 

御幸「よーし。今日はここまでだな・・・」

 

暁「え?もう少し・・・」

 

御幸「駄目だ!お前足立と違ってスタミナねーから・・・取り敢えず走ってこい!」

 

これに

 

暁「・・・。」

 

つーん

 

暁は堂々とシカトし、拗ねた。

 

御幸「はっはっはっ!堂々とシカトかよ!後ついでに、足立を呼んできてくれ。」

 

そう言われ、暁はグラウンドに向かった。

 

惇「ハッハッハッハッ。」

 

暁「惇。」

 

惇「ん?おお、暁か。」

 

暁「御幸先輩が君を呼べって。」

 

惇「そっか・・・分かった。」

 

暁「1時間どれくらい走ったの?」

 

惇「10㎞くれーじゃねーかな?そんじゃ、俺は行くから。」

 

そう言い、惇はブルペンへ向かった。

 

御幸「おお、足立。」

 

惇「うっす。」

 

御幸「そんじゃあ、軽く真っ直ぐ来い!」

 

惇「はい。」

 

そして、惇は真っ直ぐを投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

「ス、スゲー・・・本当に浮き上がってるぞ・・・!」

 

「横学との試合じゃ、降谷同様オール真っ直ぐだったな・・・」

 

「しかし、降谷とはこれまた違うタイプの真っ直ぐだな・・・」

 

惇の球を、そう見ていたのだった。

練習が終わった後、グラウンドを見ると暁の顔が死んでおり、何でも1時間で10㎞程走ったらダウンしたとか。

翌朝、栄純はいつものようにクリスへつきまとっていたが、ボールを受けてくれると言われ、アップをやってボールを受けてもらった。

 

スパァン!!

 

栄純(うわっ・・・良い音した!!)

 

しかし

 

クリス「場外ホームランだな・・・」

 

・・・打たれてしまった。

 

栄純「何で・・・!?今結構良い球・・・」

 

クリス「バッターは松井だからな。」

 

栄純「なっ・・・!?そんなんズリー!!」

 

クリス「どうして、バッターの情報を聞かずに投げる?力で持って行かれた増子のホームランをもう忘れたのか?」

 

クリス「お前は足立のような快速球も降谷のような剛速球、そして丹波のようなカーブも投げられない。お前の持ち味は一体何だ?」

 

とクリスに尋ねられた。

 

栄純「お・・・俺の持ち味・・・!?」

 

栄純「ズバリそれは何でしょう?」

 

クリス「それを自分で考えろと言っている。」

 

そう言われ

 

栄純(俺の持ち味って・・・)

 

栄純は深く考えたのであった。




投稿出来ました。

栄純君、この時クリスさんと組まなかったら、今頃どうなってたんでしょうね・・・

今の栄純君があるのは、ある意味クリスさんのお陰ですね・・・。

それでは、また。


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17話

17話です。


自身の持ち味を探す栄純。

 

倉持「テメーの持ち味?そりゃあ当然馬鹿なトコだろ?」

 

増子「先輩のプリンを食う非常識なトコかな・・・」

 

惇「ははは・・・それは同感っスね。うわっ・・・そこでそれっすか、洋さん!?」

 

倉持「ヒャハハハ!このまま一気に・・・とりゃ!」

 

惇「やらせねーっすよ!おりゃ!」

 

栄純「ほうほう・・・非常識で馬鹿と・・・」

 

倉持「後ゲームが弱い。関節が極まんねェ。」

 

増子「野球を知らん。」

 

倉持「若菜ちゃんのメアド教えてくれない。」

 

惇「洋さん。そこはLINEのIDの方が良いんじゃないっすか?」

 

倉持「ん?ああ・・・確かに。」

 

栄純「若菜のメアドかLINEのID・・・って、それ関係ねーだろ!!」

 

これに、栄純はついタメ口で返してしまい

 

倉持「そうやってすぐ取り乱して、敬語を忘れちまうトコな!ヒャーハハハハ!!」

 

プロレス技をかけられたのだった。

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

春市「栄純君の持ち味?うーん、守ってて楽しいトコかな・・・いっぱい打球飛んでくるし。」

 

栄純は別クラスの春市のトコに行って自身の持ち味を聞いた。

・・・何故か惇も連れて。

 

春市「後、この前フォアボールって一度も無かったよね。これって結構凄い事じゃない?野手もリズム良く守れるし。」

 

惇「確かに。まぁ基本的にド真ん中しか投げてねー気ぃすんぞ。」

 

栄純(フォアボール・・・リズム・・・!?)

 

栄純(もしかしてアレって・・・)

 

そう考えていると

 

春市「そういや、一軍の話聞いた?」

 

栄純「えっ?」

 

春市「今一軍の選手は18人・・・その中で熾烈なレギュラー争いをしてるみたいだけど・・・夏の東京都大会の選手枠は20人。つまり、夏までに二軍から2人の選手が選ばれるみたいだよ!」

 

と春市は言った。

 

惇「まぁ・・・甲子園決まったら18人になるがな。」

 

栄純「・・・なっ・・・マジかよ!」

 

春市「うん!だから練習試合もさ・・・良いアピールの場になるんじゃないかな。」

 

栄純「・・・2人?」

 

これに、栄純が自身と春市を互いに指差し

 

春市「そう、2人!」

 

栄純「フハハハー!俺達2人が一軍にー!!」

 

春市「いや・・・まだ決まってないけど。」

 

惇「確かに・・・」

 

栄純「おっしゃあ!!やるぞー!!」

 

そう声高らかに言った。

 

暁(かに玉食べたい・・・)

 

その時、暁はそう考えていたのだった。

 

 

 

 

 

日曜日

 

 

 

 

 

Aグラウンド

 

 

 

 

Aグラウンドでは、一軍と東東京を代表する名門、帝東との練習試合を行っていた。

 

伊佐敷「だらっしゃああああ!!」

 

一死二塁から伊佐敷のツーベースに始まって、結城、増子の連続ツーベースで青道は幸先良く3点先制した。

 

「来た来た来たぁー。3連続ツーベース!!」

 

「3年の気合スッゲー!」

 

「横学との試合でまた一つ成長したか!?」

 

惇「マジ初回からこんだけ援護してくれるとは、楽に投げれるわ。」

 

暁「うん・・・そうだね。」

 

惇「そんじゃあ、俺行って来るわ。」

 

暁「うん・・・」

 

そう言い、惇は先発のマウンドに上がった。

そして、いつものルーティンの股割りストレッチを行い

 

ズバアアンッ!!

 

マウンドで躍動した。

この試合惇は5イニング投げて被安打1、無四球9奪三振無失点の快投だった。

 

「な・・・何だよ・・・本当にMAX140キロなのか!?」

 

「150の間違いじゃねーのか!?相当手元で伸びてくるぞ!!」

 

「1年の投げる球じゃねーよ!!ボールも浮き上がってるし!!」

 

「真っ直ぐ以外にも変化球もキレッキレだし・・・!」

 

「お、おい・・・ちゃんとデータ取っとけよ!」

 

これに、周りの偵察も驚きを隠せていなかった。

 

片岡「次、降谷!」

 

暁「はい。」

 

そして、惇の後は暁がマウンドに上がり、打力も兼ね備えていたため、惇はライトに回った。

 

ドオオンッ!!

 

暁も、自慢の剛速球で帝東打線をねじ伏せていた。

 

「うおっ!!コイツも150出てんじゃねーのか!?」

 

「足立同様、本当に1年かよ!」

 

「けど・・・コイツは足立と違って真っ直ぐしかねーんだ!必ず攻略の手はある!」

 

御幸(はははっ・・・偵察の数半端ねーな・・・それだけ足立と降谷の名前が広まってるって事か。)

 

そう、御幸が思っていると

 

暁「すいません。ちょっとタイム・・・」

 

暁が突然タイムをかけた。

 

御幸「どうした?ピンチでもねェのに・・・」

 

そう言い、マウンドに行くと

 

御幸「お前・・・その手・・・!」

 

暁の人差し指の爪が割れていた。

 

御幸(全ての体重を指先に集約し放たれるコイツの剛速球・・・その代償として、自分の投げる球に指先が耐えれなくなったか。まさか、コイツにこんな弱点があったとは・・・)

 

それを見た御幸は

 

御幸「誰にも手を見られないように、ベンチに戻れ!偵察に来てる奴らに知られたくないんでな。」

 

そう暁に言った。

 

暁「え・・・?まだ投げられ・・・」

 

暁もまだ投げれると言い切る前に

 

御幸「良いから戻れ!!」

 

御幸は有無を言わせず降ろした。

 

「何だよ、ピッチャー交代か?」

 

「まだ2イニングしか投げてねェのに?」

 

これに、ベンチの片岡は

 

片岡「おい!川上・・・今すぐ肩を作ってこい!」

 

川上「は・・・はい!」

 

そう川上に指示したが

 

丹波「監督・・・自分は何時でもいけますよ!」

 

と丹波が片岡の前に立って言った。

 

太田部長「丹波・・・お前は昨日の試合で投げただろ!アップは済んでるみたいだが今日は・・・」

 

片岡「良し・・・お前が投げろ!ただし3イニング限定だぞ・・・」

 

丹波「はい!」

 

そう言い、片岡は丹波をマウンドに上げた。

 

暁(まだ投げれたのに・・・)

 

そう思いながらベンチに戻った暁に

 

片岡「降谷・・・爪をやったな?」

 

片岡「ピッチャーにとって指先は命・・・日々のケアが足りていない証拠だ・・・。」

 

片岡「降谷。お前は2週間投げ込み禁止!二軍のグラウンドで走ってろ!」

 

そう厳しい宣告を下した。

 

太田部長「か・・・監督!二軍は厳しいのでは・・・」

 

片岡(入部したばかりで先のある1年と、今年で最後の3年・・・この夏にかける想いは比べものにならん・・・)

 

片岡(やはり1年には、エースナンバーは重すぎるようだな。)

 

そんな事を片岡は思っていた。

 

御幸(スゲぇな丹波さん・・・これが後の無い3年の凄みか・・・。ここにきて、カーブの精度がどんどん上がってきてる・・・。)

 

伊佐敷「オラオラ、外野ヒマでしょうがねぇぞ!!」

 

倉持「どんどん調子上がってんじゃん!!」

 

亮介「ようやくエースの自覚が出てきたね。遅いけど・・・」

 

ベンチでは

 

暁(クソ・・・)

 

暁は悔しい表情を浮かべていた。

同時刻、栄純も狛代戦に先発していたが、2回途中でノックアウトされ、マウンドを降りていたのだった。

 

 

 

 

 

 

栄純「ハア、ハア、ハア・・・」

 

ノックアウトされたその日の夜、栄純は1人タイヤを引いて走り、疲れて寝転がっていた。

その時、クリスに言われた事を思い出した。

 

クリス『今は焦らず、土台を作る事に専念出来れば・・・お前の持ち味は必ず活きてくる筈だ。』

 

栄純(・・・って、結局俺の持ち味教えてくれねーじゃん。)

 

そう思っていると、誰かが現れた。

その者は

 

暁「随分と打ち込まれたみたいだね。」

 

栄純「降谷!」

 

暁だった。

 

暁「・・・うん・・・今日は良い月だ。」

 

空を見てそう言うが

 

栄純「月なんて出てねーだろ!!どんより曇り空じゃねぇか!」

 

暁「あ・・・ホントだ・・・」

 

暁「・・・。」

 

栄純「・・・。」

 

2人の間に沈黙が流れ

 

栄純(何しに来たんだコイツ・・・?)

 

と栄純は思った。

すると

 

暁「悔しいね・・・」

 

栄純「!」

 

暁「力を出し切れずマウンドを降ろされる事が、こんなに悔しいとは思わなかった・・・」

 

暁「それに引き換え、惇はどんどん前へ前へ進んでいく・・・悔しいよ。」

 

そう暁は悔しそうな表情を浮かべながら言った。

 

栄純「・・・。」

 

暁「信頼出来る守備陣に、信頼出来るキャッチャー・・・あのマウンドに立てるピッチャーは、本当に幸せだと思う。」

 

栄純「・・・ああ。」

 

暁「いやぁ本当に一軍は良い所だ・・・」

 

栄純「さりげなく自慢かよテメェ!」

 

暁「そのタイヤ使わないなら貸してよ・・・」

 

栄純「はぁ!?これは俺の相棒だ!!誰にも使わせん!」

 

暁「それ、ココの備品じゃん。」

 

栄純「それでも絶対駄目ー!!」

 

栄純「わははははー!奪えるもんなら奪ってみろー!!」

 

暁「こっちにもっと大きいのあった・・・」

 

栄純「何ぃ!!」

 

栄純「テメェにも・・・・そして惇にも絶対負けーん!!3個で勝負だぁー!!」

 

暁「1個で十分だよ。」

 

栄純「俺も絶対一軍に上がってやるからなぁー!!」

 

暁「遅・・・」

 

栄純「あぁ、俺を置いてくな降谷ー!テメェ!」

 

この時

 

伊佐敷「あ?誰かグラウンドにいるな。」

 

亮介「ナイターも付けずに何やってるんだろうね。」

 

伊佐敷「夏の予選までひと月半か・・・。一軍残り二枠、誰が来んのか今から楽しみだな。」

 

結城「ああ・・・」

 

3年生組は真っ暗なグラウンドを見てそう言ったのであった。




投稿出来ました。

しかし、春市君がまだ目が前髪に隠れてる姿を見てると、本当に懐かしいですね・・・。

たまにちょろっと厳しく言う場面があるのですが、そこが何か亮介さんの弟なんだなぁと思います。

髪を切ってから尚亮介さんになってきてましたね・・・。

そ、それでは、また。


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18話

18話です。


その日の一軍の練習試合。一軍の相手は、埼玉の強豪校で、浦島学院とよく代表の座を巡って争う、華咲篤栄高校だった。

そんな強豪校相手に

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

惇は快投を繰り広げ、御幸のミットの音と雄叫びが、グラウンドに響いた。

それと同時に、大きな歓声と拍手が沸き起こった。

 

惇「ふぅ・・・」

 

ベンチに戻った惇は、腰を下ろしてタオルで汗を拭った。

その時

 

御幸「ほらよ。」

 

御幸がスポーツ飲料の入ったドリンクボトルを差し出した。

 

惇「ああ、ありがとうございます。」

 

そう言い受け取った惇は、ボトルを押して飲んだ。その隣に、プロテクターを外した御幸が腰を下ろした。

 

御幸「今日もボールがキレてるな。悪くないぞ。」

 

惇「あざっす。」

 

御幸「次のイニングからあっちも3巡目だ。流石に何か対策を練ってくるだろうが、特に配球を変えるつもりはねぇ。このまま力で押していくから、とりあえず甘くならない様にだけ気を付けろ。」

 

惇「うっす。」

 

御幸「それと、今日も俺のサインに何度か首を振ったな。」

 

惇「何か問題でも?」

 

御幸「いや・・・何か理由があるのかなぁと思ってな。」

 

惇「先に言っておきますけど、別にカズさんのリードに不満があるわけじゃないっすよ。けど、俺マウンドで好きな球投げたいんすよ。我儘かもしんないっすけど、自由にいたいっすね。」

 

御幸「そっか・・・」

 

惇「ピッチャーとしても、後輩としても最悪かもしんないっすけどね。」

 

御幸「はっはっは。別に構わねーよ。それくらい我儘だと、俺もリードしがいがあるってもんだ!」

 

御幸「まあ取り敢えず、次のイニングもしっかり抑えようぜ。」

 

惇「うっす。」

 

そう言い、惇は再びボトルを押して飲んだ。

 

御幸(この我の強さ・・・左右の違いはあれど、アイツにそっくりだな。)

 

それを見た御幸は、白頭のサウスポーの彼を思い出していた。

 

太田部長「ここまで被安打2の10奪三振無失点・・・相変わらず素晴らしいピッチングですね!御幸との相性も良さそうですし!」

 

高島「しかし・・・今日も御幸君のリードに何度か首を振ってますね。大体は打ち取ってますが・・・」

 

片岡「恐らく、その時その時で自分が投げたいボールを投げているだけなのだろう。」

 

太田部長「た、確かに・・・御幸のリードに何度か振ってましたね。」

 

片岡「それに、時折何度か首を捻っていたな・・・。恐らく、今日は自分の感覚とは何かズレがあるのだろうな・・・」

 

そう言いながら、片岡は惇をチラッと見た。

そして、その試合は惇の快投で勝利を収めたのだった。

その日の夜

 

惇「そんじゃあ唯。コレ借りるわ。」

 

唯「良いけど、根詰めすぎないようにね。」

 

惇「わーってるよ。」

 

そう、惇は返すが

 

唯「・・・。」

 

唯は心配そうな表情を崩さなかった。

 

惇「ったく、そういう顔すんなよ。」

 

唯「だって、惇君心配なんだもん・・・」

 

惇「ったく・・・そんじゃあ、これで大丈夫かよ?」

 

唯「!」

 

そう言うと、惇は唯の頭を優しく撫でた。

 

唯「・・・うん。」

 

惇「ったく、お前は・・・」

 

そう言い、惇は唯が納得するまで撫で続けたのだった。

そして、唯が帰った後、惇は室内練習場で1人ビデオカメラを真剣な目で見ていた。

 

惇「・・・。」

 

そして、それを何度も見直して

 

惇「ああ・・・ここか。」

 

修正点が見つかるとすぐに立ち上がって、タオルを取って全身鏡の前に立ってシャドーピッチングを行いながらピッチングフォームを細かく確認した。

 

惇「ハア・・・ハア・・・」

 

1時間ほどやっていると

 

??「やはり・・・ここで遅くまで練習していたか。」

 

惇「あっ?」

 

背後から声がしたので振り返ると

 

惇「監督・・・」

 

片岡が立っていた。

 

片岡「今日のピッチング、100点満点中何点だ?」

 

この問いに

 

惇「・・・85点っす。」

 

惇はそう言った。

 

片岡「それは何でだ?」

 

惇「・・・何球か抜け球がありました。とりわけ7回の最後のバッターを三振に打ち取ったボールが特にそうでした。」

 

惇「結果オーライの最悪のボールでしたよ。」

 

そう言い、汗びっしょりの状態で凄まじい雰囲気を出しながら言った。

 

片岡「そうか・・・だが、あまり根を詰めすぎて無理をするな。お前の野球人生は、まだまだ続くんだからな。」

 

惇「うっす。」

 

惇「けど・・・やっぱ野球は楽しいっすね。」

 

そう言い、惇は先程の雰囲気を和らげ、端整な顔に笑みを浮かべながら言った。

 

片岡「そうか・・・その気持ちは絶対に忘れるなよ。」

 

惇「うっす。」

 

惇「そんじゃあ、もうちょっとだけ、シャドーやっても良いっすか?」

 

片岡「・・・ったく、良いだろう。ただし、俺が止めろと言ったら必ず止めろ。良いな?」

 

惇「うっす!」

 

そう言い、惇はシャドーを再開し、それを片岡は見守っていたのであった。




投稿出来ました。

完全オリジナル版です。

上手く書けたかな・・・?

それでは、また。


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19話

19話です。


パァン!

 

栄純「どうっスか、今の球!!」

 

しかし、クリスの回答は

 

クリス「バックスクリーンに3連発だな・・・」

 

だった。

 

栄純「何故!?」

 

クリス「バッターは、バース・掛布・岡田だからな。」

 

栄純「ミットは良い音してるのにー!!」

 

クリス「人は急激には変化などしない。焦って結果を求めるなと何度も言ってるだろ。」

 

そう諭すも

 

栄純「そうは言いますけど・・・メニューはこなしてるのに、俺の持ち味ってのもまだ教えてもらってねーですし・・・」

 

栄純は不満だった。

 

クリス「柔軟な関節で、球持ちの良いフォーム・・・。お前ボールをどう握っている?」

 

クリスのこの問いに

 

栄純「え・・・ボ、ボール?え、ええっと・・・!」

 

栄純は答えられなかった。

 

クリス「成程な・・・何も考えていないのがよく分かった。」

 

栄純「!」

 

クリス「握りの深さ・・・指の間隔・・・親指や縫い目の位置・・・ボールの握り方を意識していないがために、毎回リリースポイントがずれる。その不安定な投げ方だから、クセ球になるんだ。」

 

栄純「え?俺は真っ直ぐ投げてるつもりなんですけど?」

 

すると

 

クリス「・・・だが、そのクセ球こそが、お前の最大の持ち味・・・」

 

とクリスは言った。

これに

 

栄純「・・・え?」

 

栄純は疑問の表情を浮かべた。

しかし、クリスは真っ直ぐ見て

 

クリス「体全体を不足無く使い、上から叩きつけるようなフォームから強烈な縦回転のボールを投げる、速く伸び上がる足立の快速球と全体重を指先に集約し放たれる、重く速い降谷の剛速球。」

 

クリス「対照的にほんの僅かな指先のズレが、ボールの様々な変化を生み出すキレのあるお前のボール。今まではそれで通用したかもしれんが、ミートポイントの広い金属バットを使う高校野球じゃ、力で押し切られるだろう。」

 

栄純「!」

 

クリス「球威も変化球も無い、そんなお前がこのチームで生き残る道はただ一つ・・・そのクセ球を磨き上げろ。」

 

そう、栄純に言った。

 

クリス「土台となる身体が、しっかり出来上がり球威が上がれば、お前の球は今以上に暴れる筈だ。」

 

それを聞いて

 

栄純(ちょっと待て・・・それじゃあクリス先輩は・・・最初から俺の事を考えてあのメニューを!?)

 

栄純はクリスがちゃんと自分の事をしっかり見て、考えて練習メニューを作ってくれていた事を知った。

 

クリス「・・・お前の目標はエースになる事だろう?御幸なら、どんなクセ球でも受け止めてくれるさ。」

 

栄純「け・・・けど、それじゃあクリス先輩は?」

 

クリス「フッ・・・引退の迫ってる3年の俺が・・・お前に出来るアドバイスなどこれぐらいなもんだ。焦らず上を目指せ。お前には、まだまだ先があるんだからな。」

 

そう、クリスは優しく栄純に言い

 

クリス「アイシングだけは忘れるなよ。」

 

その場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

その夜

 

 

 

 

 

 

 

片岡(予選まで残り1ヶ月・・・選手の疲れもピーク・・・。そろそろ合宿に入る時期だな。)

 

そう、片岡は夜のランニングをしながら思っていると

 

ドン

 

片岡「?」

 

どこかで何かが壁に当たる音が聞こえた。

音がした方へ向かうと

 

栄純「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

 

栄純が壁に向かってボールを投げていた。

 

栄純「後10球・・・」

 

それを見た片岡は

 

片岡「フォームがバラバラだ。速い球を投げようとして、逆に体が開いてる・・・」

 

そう栄純に言った。

 

栄純「ゲッ・・・グラサ・・・」

 

栄純「い・・・いえ・・・お疲れさんです、監督様・・・」

 

失礼な事を言いかけた栄純は、咄嗟に言い換え、土下座した。

 

片岡「ハァ・・・今何時だと思ってる。やみくもな練習は、故障を誘発するだけだぞ。」

 

片岡「土台作りが大事だと、クリスに言われなかったか?」

 

栄純「!」

 

片岡「確かにクリスの要求が理解出来ずに、離れていく投手も沢山いた。だが・・・自身の経験から基礎トレーニングを重視したやり方は・・・決して間違ってないぞ。」

 

片岡「これ以上キャッチャーの言う事が聞けないようなら、バッテリーを解消した方が良いな。」

 

これに

 

栄純「あの人は・・・俺にキャッチャーとして、最初から接してくれてたんです。このまま、持ち味のクセ球を磨け・・・焦るなって・・・。けど・・・このままじゃ・・・俺・・・あの人に何も返せない。後数ヶ月で何が出来るか分かんねぇけど、あの人が引退する前に、少しでも成長した姿を見せたいんです!!」

 

と恩返ししたいという顔で言った。

それを見た片岡は

 

片岡(ったく・・・呆れた奴だ・・・。二軍から2人の選手が一軍に昇格できる事など、すっかり忘れているようだな。)

 

そう心の中で呟きながら首に巻いているタオルを取って

 

片岡「とにかく無茶な投げ込みは、もうするな。これから自主練をやるなら、シャドーピッチングにしろ!」

 

片岡「良いか・・・いくら力を込めて投げようが、速い球は投げられん。重要なのは、グローブを持つ手の方だ。」

 

栄純(え?)

 

片岡「見ていろ。」

 

片岡「全身の力を如何に指先に伝えられるか。サウスポーのお前は、その右腕でカベを作るんだ。」

 

片岡「体重移動した体を支える右足・・・そして、その力を逃さず溜めておく右手のカベ・・・弓矢のようにギリギリまで体のタメを作り、下半身から伝わるそのエネルギーを・・・一気に振り抜く!!」

 

丁寧に教え、実践した。

 

栄純(すげっ・・・風が・・・)

 

片岡「やってみろ。」

 

そう言い、片岡は栄純にタオルを渡した。

 

栄純(右手のカベ・・・体のタメ・・・)

 

栄純「右手でカベを作り・・・振り抜・・・」

 

栄純も早速やったが

 

ビターン!

 

栄純「ゲッ!」

 

片岡に当ててしまい

 

栄純「ひーっ!!すいません!!ワザとじゃ・・・ワザとじゃ無いんですー!!」

 

そう必死に弁明したのであった。




投稿出来ました。

ホント、こうして見てると、クリスさんは素晴らしい選手ですね・・・。

それでは、また。


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20話

20話です。


その翌日、栄純は早速片岡に勧められたシャドーピッチングで練習をしていた。

 

栄純「右手のカベ。体のタメ。略して右のカメ。」

 

栄純「略して・・・」

 

その時

 

関「ボールいったぞ!」

 

栄純「え?」

 

ガシャアッ!

 

栄純の傍にボールが飛んできた。

 

栄純「ヒャー!だ・・・誰がこんな所まで飛ばしてんだ!?思わずヒャーって言っちまったじゃねーか!!」

 

飛ばした者の正体は

 

暁「あ・・・ごめん。飛びすぎた?」

 

栄純「お前かー!」

 

暁だった。

 

惇「うひょー!メッチャ飛んだなー、暁!」

 

暁の後ろで、惇はそう言った。

 

「おいおいなんだよ今の飛距離?」

 

「アイツ・・・打つ方も足立と同様怪物クラスかよ!」

 

これには、先輩達も驚きを隠せなかった。

 

太田部長「ホント・・・足立同様降谷も底が知れませんね。まさかバッティングがここまで良いとは。」

 

太田部長「あの長打力をベンチに控えさせておくのは勿体ないですよ。」

 

片岡「・・・。」

 

打ち終わった暁だが

 

暁(てゆーか速くボールを投げたい!)

 

ボールを投げれずイライラしていた。

それを見た惇は

 

惇「そうイライラすんな。もう少し待てば、投げさせてくれるよ。」

 

暁「・・・うん。」

 

そう暁の肩を叩いて言った。

 

惇「そうだ。なあ暁、練習終わったら俺に付き合え。」

 

暁「良いけど、まさか・・・」

 

惇「投げねーよ。」

 

暁「ガーン!」

 

惇「だからそう焦んなって。とにかく、練習終わったらな!」

 

そう言い、惇は打席に立った。

 

カキーン!

 

そして、惇も長打を連発したが

 

(しかし・・・何故こうも綺麗にレフト・センター・ライトに長打を打ち分けられるんだ・・・?)

 

惇の広角に長打を打ち分ける姿に、先輩キャッチャーは不思議そうに見ていたのだった。

 

槙原「ったく、1年のくせにバカスカ打ちやがって。イヤになるな。」

 

桑田「ああ。中学じゃチームを引っ張ってきた俺達でさえ、ココじゃあベンチ入りすら出来ねぇのによ。」

 

斉藤「しかも、その怪物みてーな奴らが・・・誰よりも努力しやがるからタチが悪い。」

 

槙原「ホント、敵わねーよな。どいつもこいつも馬鹿ばっかりで・・・」

 

桑田「けど・・・俺達だって後悔だけはしたくねェ。」

 

斉藤「ああ。例え試合に出られなくても、最後までコイツらと戦っていてぇよ。」

 

そう言ったが

 

槙原「・・・てゆーか、今更辞められっか!」

 

桑田「何のためにこんな苦しい練習3年もやってきたんだ!」

 

斉藤「俺なんか3年間、彼女も出来なかったんだからなー!」

 

槙・桑「「バカヤロー!それを言うんじゃねェ!!」」

 

槙原「オラオラ!もっと打ってこいよ、1年共がぁー!!」

 

斉藤「彼女出来ないくらい野球やれよコラァー!!」

 

桑田「つーか2年、声出てねぇぞコラァ!!」

 

スイッチが入り、声を張り上げた。

 

信二「何か急にスイッチ入ったぞ、先輩達・・・」

 

その様子を見た栄純は、クリスに言われた言葉を思い出した。

 

クリス『投手ってのはな、出られない選手も含め全てを背負ってマウンドに立たなきゃならないんだ。お前だけには、俺達の過ごした3年間を託したくない。』

 

そして、初日に監督に言った言葉を思い出した。

 

栄純『俺はエースになる為にここに来てるんだ!その気持ちだけは、誰にも負けるつもりねーっスから!』

 

それを思い出して

 

栄純「クソ・・・自分がスゲー恥ずかしい・・・」

 

そう呟き

 

栄純(認めさせるんじゃない。この人に・・・チームメイトに認められてこそエースなんだ・・・)

 

そう思った。

 

クリス「沢村・・・俺は先に上がるぞ。今日は巻物Bの日だ。全てのメニューを3セットずつやっとけよ。」

 

栄純「はい!!お疲れさんです!!」

 

そう言われ、上がったクリスだが

 

クリス(・・・最近、球を受けてくれと言わなくなったな。)

 

ちょっとだけ寂しいクリスだった。

しかし

 

栄純「あれ・・・今の良いんじゃね?」

 

栄純のシャドーを見て

 

クリス(あのシャドー・・・自分で考えて始めたのかもしれんが、体の軸が安定してきている。)

 

クリス(今のアイツには、ちょうど良いメニューかもな。)

 

そう感じたのだった。

そして練習後

 

暁「惇、来たけど。」

 

暁は惇の元へやって来た。

 

惇「おお。わりいな、急で。」

 

暁「構わない。それで、何?」

 

惇「爪見せてみろ。」

 

暁「・・・うん。」

 

惇「・・・大分治ってるみてーだな。」

 

惇「暁。これあげるから、使えよ。」

 

そう言い、惇が暁に渡したのは、アスリートネイルと書かれたネイルと爪ヤスリだった。

 

暁「・・・これって?」

 

惇「爪の手入れ用のだ。俺もお前もピッチャーだから、爪の手入れは絶対だ。手入れを怠ると、先日の練習試合みてーにまた爪割るぞ。」

 

惇「これを定期的に塗って、ヤスリで整えれば割れにくくなるし、しっかりとしたボールを投げられるぞ。」

 

暁「・・・分かった。ありがとう。」

 

惇「良いの良いの。それでやり方はだな・・・」

 

そして、惇は暁に爪の手入れの仕方を教えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

国立トレーニングで父親と一緒にリハビリを終えたクリスは、寮に戻ろうとしていた。

その道中のグラウンドで

 

??「それは俺のタイヤじゃねーか!!」

 

大きな声が聞こえたので見ると

 

暁「ココに落ちてた。」

 

栄純「勝手に使うんじゃねーよ!返せ!!しかもそれは、俺のスタイルだぞ!」

 

惇「はっはっはっは!!」

 

栄純「さては密かに憧れてやがったなぁ?」

 

惇「んなまさか・・・」

 

暁「・・・うん。」

 

栄純「何!?」

 

惇「え・・・マジかよ・・・!?」

 

惇と暁、そして栄純ら3人がグラウンドにいた。

すると

 

丹波「懐かしいな。」

 

クリス「丹波。」

 

丹波が現れた。

 

丹波「レギュラーを取りたい・・・ただそれだけ・・・。アイツらを見てると、昔の俺達を見てるようだな・・・」

 

丹波「クリス。ちょっと俺のフォーム、チェックしてくれないか?70球を超えると、どうしてもコントロールが甘くなる。」

 

クリス「・・・ああ。エースの座を守るのも大変だな。」

 

そして、丹波がシャドーを行い

 

丹波「どうだ?お前の肩の方は。大分良くなってきてるんだろ?夏までには間に合いそうか?」

 

丹波「お前が俺の故障に気付いてくれたから、俺はこうして今も投げていられるんだ。」

 

丹波「俺が一試合でも多く勝てば、それだけ夏も長くなる・・・。必ず一軍に戻って来いよ。」

 

そうクリスに言った。

それを聞いたクリスは

 

クリス「本当はお前だって気付いてるんだろ?1年のブランクを抱え、練習も早めに上がる。そんな俺にチャンスが与えられる程、青道は甘くないさ。」

 

そう丹波に言った。

 

丹波「・・・。」

 

クリス「けど・・・緊張しいのお前が言うようになったな。」

 

丹波「なっ!」

 

クリス「俺はお前がエースの座を守れるのか心配だよ。」

 

丹波「う、うるせェ!青道のエースの座は誰にも渡さん!!」

 

クリス「そう・・・その意気だ。」

 

その時、クリスは父のアニマルに言われた言葉を思い出した。

 

アニマル『このまま二軍の選手として引退し、オマエに何が残ると言うんダ・・・』

 

それを思い出したクリスは

 

クリス(親父の言う事は正しいのかもしれない。・・・けど・・・共に戦ってきた仲間がいる。俺はコイツらと一緒に笑って引退したいんだよ、親父・・・)

 

そう、心の中で呟いた。

その様子を偶然見た惇達は

 

暁「・・・あの2人でも、あんな風に笑う事あるんだ・・・」

 

栄純「ああ・・・」

 

惇「そうだな・・・」

 

それぞれの思いで見ていたのであった。




投稿出来ました。

クールだけど、クリス先輩の熱い仲間想いが伝わる言葉ですよね・・・。共に戦ってきた仲間と共に笑って引退がしたいという言葉は・・・。

例えそれが正しくても、仲間と一緒に過ごした思い出は決して無駄ではありませんからね・・・。

それでは、また。


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21話

21話です。


数日後の二軍の試合の相手は黒土舘となった。

この試合で、一軍の残り2枠が決まる。

先発は栄純だったが、立ち上がり、新フォームがまだしっくりこないのか、3連続四死球で無死満塁のピンチとなった。

しかし、キャッチャーを小野からクリスに変わり、ホームゲッツーにより二死二・三塁になった。

その頃、一軍は室内練習場にて自主トレをしていた。

すると

 

門田「おいっ!今二軍の試合にクリスが出場してるぞ!!」

 

門田が慌てながら室内練習場にやって来てそう言った。

 

丹波「何っ!!」

 

伊佐敷「マジか!?つーかアイツ肩大丈夫なのかよ!」

 

丹波「見に行こうぜ!!」

 

これを聞き、3年生達は全員二軍の試合を見に行った。

 

倉持「ヒャハハハ!!あの人が復活したら、お前のレギュラーの座も危ないんじゃ・・・」

 

それを見た倉持は、御幸にそう言いかけたが

 

倉持「・・・あれ?」

 

当の本人がいなかったため

 

倉持「御幸は?」

 

暁に尋ねると

 

暁「あの人ならもう出て行きましたよ。誰よりも早く・・・一番に・・・」

 

倉持「・・・足立は?」

 

暁「惇は御幸先輩を追って出て行きました。」

 

一方二軍の試合は、クリスの鋭い牽制球により、3アウトとなり、無死満塁のピンチを0点で凌いだ。

 

栄純「すげぇ!!すげぇすげぇ!!クリス先輩、全然投げれるじゃないっスか!!つーか俺、何もしてねぇし!!」

 

春市(この人・・・ホントに肩壊してたの?)

 

前園(何なんじゃこの人・・・これが1年も実戦を離れてた人に出来るプレーか!?)

 

吉川「す、凄い・・・!あんな人が、何で二軍に・・・」

 

このプレーに、吉川は絶句し

 

唯「・・・。」

 

梅本「・・・。」

 

2年生マネージャーも同様だった。

その時

 

??「ははっ!はっはっはっ!!」

 

後ろから誰かの笑い声がしたので振り返ると

 

御幸「やっぱりアンタはこーでなきゃな、クリス先輩!!」

 

御幸が息を荒げながら笑っていたのだった。

 

藤原「御幸君・・・」

 

それに続いて

 

惇「ふぃー・・・追い付いた・・・」

 

惇もやって来た。

 

唯「惇君・・・」

 

惇「ああ・・・唯か。」

 

唯「惇君も来たんだ・・・」

 

惇「ああ・・・クリスさんが出るって聞いて、カズさんが突然走って出て行ったから追い掛けたんだ・・・」

 

唯「そう・・・」

 

御幸「足立。俺はクリス先輩んトコに行くわ。」

 

惇「あ、はい!」

 

そう言うと、御幸は栄純とクリスのいるブルペンへ向かった。

暫くすると、一軍メンバーも集まってきた。

 

惇「おっ!春市ヒットで出たか・・・」

 

唯「そのようだね。」

 

惇「アイツとんでもねーな・・・普通木製を高校生であんな風に簡単に扱えねーよ・・・」

 

唯「フフッ・・・惇君だったらどう攻略する?」

 

惇「フンッ!バットに当てさせなきゃ良い話だ。真っ直ぐで空振りか、見逃し三振で打ち取りゃ良いんだ。」

 

唯「何か・・・惇君らしいね。」

 

惇「ああ?それどういう意味だ?」

 

唯「ううん・・・」

 

惇「んだよそれ・・・教えろよ。」

 

唯「教えてあげなーい!」

 

惇「おい!」

 

このやり取りを見たマネージャー達は

 

藤原(何かこの2人・・・)

 

梅・吉川((まるで夫婦みたい/です!!)

 

そう思っており

 

伊佐敷「おい・・・」

 

倉持「何スか、純さん。」

 

伊佐敷「あの2人・・・どういう関係だ?」

 

倉持「分かんないっス。ただの仲が良い先輩後輩っていう関係じゃないみたいっスね。」

 

伊佐敷「後で問い詰めてみようぜ・・・」

 

倉持「そうっスね・・・」

 

伊佐敷と倉持も、そう思って見ていたのだった。

そして、暫くして財前というかつてのクリスの友の登場で流れが変わりかけたが、栄純の機転と自身のオリジナルフォームで見事打ち取ったのだった。

 

伊佐敷「なんつーデタラメなフォームだ。あれじゃあタイミングもクソもねーぞ。」

 

増子(打てるかな・・・)

 

倉持「調子乗らねーように、後でスパーリングだな。」

 

信二「マジかよアイツ・・・!やっぱスゲー・・・!」

 

御幸「はっはっはっ。やっぱりアイツ面白れーわ!馬鹿な上に何やらかすか想像もつかねぇ。」

 

御幸「お前も気合入れねーと、足立に追い付く前にアイツに追い付かれんぞ?はっはっはっ。」

 

そう御幸に言われた暁。

 

暁「自主練・・・ランニングに切り替えて走ってきて良いですか?」

 

暁も、栄純のピッチングに刺激を受けたのか、そう御幸に言った。

 

御幸「はっはっはっ!!走れ走れ!!死ぬほど走れ!!お前スタミナねーからな!!」

 

暁「・・・。」

 

御幸「はいまた無視!」

 

しかし、刺激を受けたのは暁だけじゃない。

 

惇「・・・。」

 

唯「惇君・・・?」

 

惇「ちょっと走ってくる・・・またな。」

 

惇も同様で、唯の頭を撫で、その場を後にしたのだった。

 

倉持「一軍枠は残り2つ。監督は誰を上げますかね?」

 

倉持「即戦力か、経験か。それとも将来を見据えた可能性か・・・」

 

伊佐敷「フン・・・上がったところでレギュラー確実ってわけじゃねぇ・・・寧ろ大変なのはこれからだろ。」

 

倉持「まあ・・・そうっスね!」

 

伊佐敷「地獄の夏直前合宿。これだけは絶対避けて通れねぇからな!」

 

伊佐敷「他人の心配なんざしてる場合か!さっさと自主練に戻んぞ。」

 

伊佐敷がそう言うと、他の一軍メンバーも、続いてその場を後にした。

 

御幸「・・・。」

 

御幸(誰を一軍に上げるかは、全て監督が判断する事・・・。けど・・・俺個人の希望としては・・・)

 

その時、御幸は栄純達をチラッと見ながらそう考えていたのであった。




投稿出来ました。

黒土舘戦ですが、上手く纏まらなかったのではしょりました。

すいません・・・(土下座)

そ、それでは、また。


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22話

22話です。


二軍の試合が終わった後

 

太田部長「え!?もう決めてるんですか!?一軍入りのメンバーを・・・」

 

片岡「・・・ああ。夏への戦いはもう既に始まっている。選手選考に時間をかけている暇は無い。」

 

太田部長「・・・!!」

 

片岡「今すぐ選手を、全員集めろ。」

 

太田部長「・・・はい。」

 

片岡は選手全員を集めるよう言った。

そして、室内練習場に選手全てが集まった。

 

栄純(アレ・・・?何だっけ、コレ・・・?)

 

しかし、栄純だけ状況が呑み込めていなかった。

 

片岡「今から、一軍昇格選手を発表する!!」

 

この言葉で

 

栄純(・・・そうか。一軍昇格・・・今から?)

 

栄純は何の集まりか分かったが、今から決める事に驚いた。

 

片岡「これまでの練習試合を参考に、自分の判断でメンバーを決めた。選ばれた2名は、我が校代表としての責任を自覚せよ。」

 

片岡「選ばれなかった者は、夏までの1ヶ月、一軍メンバーをサポートしてやって欲しい。」

 

栄純(あれ・・・2人だけ?)

 

栄純は2人だけという事に疑問を抱き

 

春市(うわ~、緊張する。)

 

春市は選ばれるか否かの緊張を感じ

 

クリス(・・・。)

 

クリスは結果を全て受け入れるという強い意志を込めた目をした。

 

片岡「一軍昇格メンバーは・・・」

 

そして、選ばれたのは

 

片岡「1年、小湊春市。」

 

春市「!」

 

片岡「同じく1年、沢村栄純。」

 

栄純「!?」

 

片岡「以上だ・・・」

 

栄純と春市だった。

 

「「「・・・。」」」

 

この決定に、それぞれ色んな想いを浮かべた顔をした。

 

栄純「・・・。」

 

栄純(・・・え。え!?ちょっと待って・・・クリス先輩は・・・!?)

 

栄純のみ、何故クリスが選ばれないのか疑問の顔を浮かべた。

 

片岡「この2人を加えた一軍20名で夏を闘う・・・明日からの練習に備え、今日はこれで解散だ。」

 

片岡「選ばれなかった3年生だけ、ここに残れ!」

 

そう言い、3年生以外の皆は解散した。

 

栄純「・・・。」

 

しかし、栄純のみ動かなかったため

 

惇「・・・行くぞ。」

 

惇は栄純の肩を叩いて、一緒に出た。

 

片岡「これまでの2年間・・・お前らは本当によく頑張った。厳しい練習に、熾烈なレギュラー争い・・・辛く悔しい想いなど、いくらでもした事だろう。」

 

片岡「だがお前らは、決して挫けず、最後までこの俺についてきてくれた・・・」

 

そう言うと、片岡は頭を下げ

 

片岡「これからもずっと・・・俺の誇りであってくれ。」

 

そう言った。

それを聞いた選ばれなかった3年生は

 

「・・・っ・・・」

 

「ぐっ。」

 

「うぐっ・・・」

 

「うう・・・」

 

(覚悟はしていた・・・)

 

(例え選手に選ばれなくても・・・)

 

(絶対に後悔しないと・・・)

 

(けど・・・けどやっぱり悔しい・・・)

 

(俺達の夏は・・・ここで・・・終わったんだ・・・)

 

涙を流し、そう心の中で呟いた。

 

クリス「・・・。」

 

しかし、クリスのみ、悔いの無い顔を浮かべていた。

 

片岡「クリス・・・お前にもこの先、選手としての道が必ずある。」

 

片岡「だからまず、その肩を完全に治す事だけを考えろ。」

 

クリス「・・・。」

 

片岡「その上で、御幸や宮内らキャッチャーのサポート・・・そして投手陣を纏めて見てもらいたい。頼めるか?」

 

片岡は、クリスにそう頼んだ。

それを聞いたクリスは

 

クリス「良いんですか・・・自分で・・・」

 

クリス「自分の指導は、監督より厳しいかもしれませんよ。」

 

そう片岡に言うと

 

片岡「ああ。よろしく頼む。」

 

片岡はそう返事をし

 

片岡「お前らも青道の一員として、一軍メンバーをサポートしてやってくれ。」

 

他の3年生にも頼んだ。

 

「「「はい!勿論です!!」」」

 

クリス(悔いは無い・・・最後の最後・・・俺はプレーヤーとして・・・最高のボールを受ける事が出来たんだからな・・・)

 

その様子を聞いていた栄純は

 

栄純(な・・・何で俺だけ・・・今日のピッチングだって、クリス先輩がいたからだろ・・・)

 

栄純(凄いのはあの人なんだ・・・クリス先輩が、俺の力を引き出してくれたから・・・)

 

辞退しようと思い中に入ろうとしたが

 

惇「どこに行くんだ、栄純?」

 

栄純「惇・・・」

 

惇に止められた。

 

惇「辞退するつもりじゃねーだろうな。」

 

栄純「だって・・・これは・・・」

 

惇「テメーも監督に選ばれた以上、黙って見る他ねーんだよ。テメーも春市も、ココに選ばれた以上、勝手な事すんじゃねー。哲さん達にも迷惑かける気か?」

 

惇にそう言われると

 

栄純「・・・。」

 

栄純は黙って下を向いた。

そして

 

結城「足立の言う通りだ。そんな俺達に出来る事はただ一つ・・・選ばれなかったあいつらの分まで、強くなる事だ。」

 

結城はそう栄純に言った。

 

惇「一緒に強くなろう・・・栄純。」

 

そして、惇は栄純の肩を叩いて言った。

それを聞いた栄純は、ただ泣くしかなかった。

 

御幸(俺は最後まで戦い抜くぞ・・・クリス先輩の分まで・・・)

 

御幸も、決意を込めた目を浮かべながらその場を後にしたのであった。




投稿出来ました。

一軍選考・・・辛いですけど、全ては夏のためですからね・・・。

皆、色んな想いを背負って闘ってるんだと思うと、胸がこみ上げて来ます・・・。

それでは、また。


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23話

23話です。


3年校舎

 

 

 

 

丹波「やっぱり、まだ肩の状態良くなかったんだな。」

 

クリス「ああ。完全に治るまでは、もう少し時間が掛かりそうだな。」

 

クリス「けど後悔はしてない。俺を選手として試合に出してくれた監督には感謝してるよ。」

 

それを聞いた丹波は、複雑な顔だった。

 

クリス「後はお前らが・・・俺達の夏をどれだけ長くしてくれるかだな。俺は裏方として、チームに貢献していくよ。」

 

そう言い、クリスはその場を後にした。

これに丹波は

 

丹波(バカヤロー。何が後悔してないだ。最後の夏・・・俺はお前とバッテリーを組みたかったんだよ。)

 

本音を心の中で呟いたのだった。

 

 

 

 

2年校舎

 

 

 

 

 

「亮介さんの弟はまだ分かるとしても、何であの沢村が一軍なんだよ。」

 

「あの試合だってクリス先輩がいなきゃボロボロだったし、セットプレーも出来てねーんだぞ、アイツ・・・」

 

「アイツ入れるぐらいなら他の先輩を入れてあげれば良いのによ。」

 

「やっぱ監督って鬼だよな・・・」

 

「俺達も簡単に切り捨てられたりして・・・」

 

これに

 

前園「アホかお前ら。」

 

「ゾノ・・・」

 

前園「俺らは常に甲子園を目指すチームなんやぞ。来年以降のチームを支える選手をベンチに入れるなんてよくある事やろーが!」

 

「分かってるよ、そんな事・・・けどお前は・・・お前は悔しくねーのかよ・・・」

 

前園「悔しいに決まっとるやろ!けどな・・・一番悔しいはずの3年の先輩達が、誰1人欠ける事無く今朝の練習に揃っとったんやぞ!!」

 

「「「!」」」

 

前園「もう1年チャンスのある2年の俺達が、ゴチャゴチャ文句言うとる場合か!悔しかったら、頑張るしかないやろ!!」

 

前園はそう一喝した。

これには

 

「「「・・・。」」」

 

愚痴っていた3人は黙って下を向いた。

 

前園(頑張るしか・・・)

 

前園「見とれよ!俺は来年、絶対に生き残ってやるからな!!」

 

そう、前園は決意を込めた顔で言ったのだった。

 

 

 

 

 

2-B

 

 

 

 

 

御幸「・・・。」

 

御幸は、スコアブックを真剣に見ていた。

そこに

 

倉持「御幸!真剣な面して、何見てんだよ?」

 

倉持「この前の黒土舘戦のスコアブックか。お前ホントそれ見るの好きだよなぁ。ヒャハハ!」

 

倉持が現れた。

 

御幸「まあ、これも仕事のうちだからな。」

 

倉持「正直言って俺も、この短期間で沢村がここまで化けるとは思ってなかったけどなぁ。」

 

倉持「まぁ・・・全部クリス先輩が引き出したんだろーけど?」

 

倉持「けどアイツ、ちゃんと切り替えられんのかよ?昨日の晩もずーっと泣いてやがったしよ!」

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

栄純『グスッ・・・グスッ・・・』

 

惇(まだ泣いてんのか・・・)

 

倉持『うるせーな!いつまで泣いてんだ!!』

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

倉持「アイツはどう見ても、足立と同じで気持ちで投げるタイプのピッチャーだろ?足立はともかく、これからに影響が出なけりゃ良いけどよ!」

 

これに

 

御幸「切り替えてみせるさ・・・この俺がな!」

 

御幸は自信を浮かべた笑みで言った。

 

倉持「!」

 

これに倉持は

 

倉持「言ってろコノヤロー!!テメェのそういうとこが鼻につくんだよ!」

 

御幸「はっはっはっ。そりゃどーも。」

 

倉持「褒めてねーよ!」

 

そう怒鳴ったのだった。

 

 

 

 

 

1-C

 

 

 

 

 

「おー日直。赤チョーク補充しとくっちゃよ。」

 

「卜部兼好、俗称吉田兼好の『徒然草』は、『枕草子』『方丈記』と並んで、日本三大随筆の1つだな・・・」

 

この日の1-Cは、少し違った。それは

 

栄純「・・・。」

 

栄純が教科書を開いて、授業を受けているという事だった。

 

惇(コイツ・・・なーんかやな予感が・・・)

 

吉川(なんか・・・沢村君。一軍に上がって変わった?)

 

吉川(ずっとエースになるって言ってたから・・・もっと喜んでると思ったけど・・・)

 

吉川(朝からちゃんと授業受けてるし、一度も居眠りしてないし、事件だわ・・・これは。)

 

(ワシの熱意がやっとコイツにも伝わったか・・・)

 

惇(いや、ちげーから・・・)

 

信二「おいアレ・・・大丈夫なのか?」

 

惇「さあな・・・まあ、確かに朝起きてから変だったけど、アイツなりに色々考えてんだろ。」

 

信二「成程・・・馬鹿なりにってやつか。」

 

惇「まあな・・・」

 

そう、惇と信二は小声で話しながら栄純を見ていた。

そして、練習が始まると

 

栄純(今やれる事を全てやる・・・それが・・・俺がクリス先輩に出来る唯一の恩返しなんだ!)

 

栄純「だりゃあああ、負けるかあ~!!自分に~!!そして野球に~!!」

 

栄純はタイヤを引きながら気合の入った表情で走っていた。

 

春市「気合入ってるな栄純君。やると決めたら迷わず突き進む。あれが栄純君の凄い所だよね。」

 

それを見た春市が素直に言うと

 

暁「・・・。」

 

春市(あ・・・ちょっと加速した。)

 

惇「・・・ちょっとペース上げっか。」

 

春市(足立君も・・・)

 

惇と暁は、感化したのか少しペースを上げた。

 

春市(僕ももっともっと頑張らないと!)

 

春市も続いたが

 

春市(結局、一度も目を合わせてくれなかったな・・・兄貴・・・。お前には一軍はまだ早いって思われてんのかな・・・)

 

亮介に避けられてる事に少し疑問を抱いたのだった。

 

栄純「おっしゃ~!後10本!!」

 

この様子に

 

御幸「はっはっはっ。余計な心配だったみてぇだな!あのヤロー・・・今まで以上に気合入ってんじゃねーか!」

 

倉持「・・・ちぃ。」

 

御幸は笑いながら見ていた。

 

クリス「そうでなきゃ困るさ・・・常に前へ進む姿勢。それこそが、沢村の一番の武器だからな。」

 

御幸「クリス先輩。」

 

クリス「だが・・・少し危ういな・・・」

 

御幸「え?」

 

クリス「アイツにはこの先、覚えなきゃならない事が山ほどあるんだ・・・俺達がしっかりコントロールしてやらないと、潰れるまでやりかねないぞ。」

 

御幸「そうっスね。手加減知らずの馬鹿ですからね。」

 

クリス「ああ・・・止まる所を知らない馬鹿だからな。」

 

倉持「ヒャハハハ!!褒めてんすかそれ!」

 

栄純の練習姿を

 

太田部長「片岡監督。やはり丹波の調子がイマイチ上がらない事が、投手をもう1人ベンチに入れた理由ですか?」

 

太田部長はそう片岡に尋ねた。

 

片岡「三振をいくつ奪ったとか、ヒットを何本に抑えたとか、勝たなければ次のない高校野球に、内容の良いピッチングなど必要ない。」

 

片岡「どんな不細工なピッチングだろうが、勝負に勝てるピッチャー。それが俺の求めるエースだ!!」

 

高島「!」

 

片岡「そういう意味では、今このチームにエースと呼べる存在はいない。これからの合宿と大会中の実戦で、エースを育てていくしかあるまい。」

 

片岡「調子さえ良ければ、1年だろうがガンガン登板させるぞ!」

 

そう、片岡は言い切ったのであった。




投稿出来ました。

片岡監督の理想のエース像は、まさに的を得てますね・・・。

それでは、また。


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24話

24話です。


雨降る合宿前日の早朝。栄純は起きて着替え、ランニングに行こうとした。

それを

 

惇「今日も走んのか、栄純?お前ここ最近無茶しすぎだ。今日はゆっくり休め。」

 

倉持「足立の言う通りだ。お前、最近オーバーワーク気味だ。明日から合宿なんだから、あんま無茶すんじゃねーよ。」

 

惇と倉持が止めた。

 

栄純「・・・。」

 

しかし

 

栄純「行ってきます。」

 

栄純は耳を貸さず

 

惇「オイ栄純!」

 

倉持「テメェ人の話聞いてんのか?」

 

栄純「大丈夫っスよ!俺は雨なんかに負けねーっスから!」

 

倉持「バカヤロー!!俺と足立はそうゆう意味で言ってんじゃ・・・」

 

そのまま出て行ってしまった。

 

惇「ヤバくないっすか?洋さん。」

 

倉持「ああ。マジクリス先輩の言った通りじゃねーか・・・」

 

惇「危ないっすよね?」

 

倉持「ああ・・・」

 

惇「増子さん・・・」

 

増子「うむ・・・」

 

 

 

 

 

 

室内練習場

 

 

 

 

 

 

クリス「もう指の状態は良いのか?降谷・・・」

 

暁「あ・・・はい。この通り。」

 

暁「自分は早く投げたいんですけど監督が・・・」

 

そう言い、オーラを噴き出した。

 

クリス「無表情だが、分かりやすいなお前・・・」

 

クリス「爪のケアはしっかりしとかないと癖になるぞ。」

 

暁「はい。」

 

クリス「後は、スタミナとコントロールが課題だな・・・」

 

暁(スタミナ・・・また言われた。)

 

 

 

 

 

 

 

栄純(やるしかねーんだ。俺はもうやるしか・・・)

 

そう思い歩いていると

 

御幸「よお。ちょっと付き合えよ、沢村。」

 

栄純「ゲッ!」

 

御幸「逃げんなよ!」

 

御幸がいた。

 

栄純「ちょっと何なんスか!俺これからランニングに行きてーんだけど!」

 

御幸「良いから付いてこいよ。」

 

栄純「だからどこに!?」

 

栄純「ハッ!!ま・・・まさか!!俺がクリス先輩の代わりに一軍に上がった事を根に持って、皆で俺を虐める気か!?」

 

御幸「あ~。それそれ。」

 

栄純「ぬぐお~!!やっぱりそうかあ~!!No~!!まだまだ未熟な事は、自分が一番分かってるのに~!!」

 

そう、栄純は頭を抱えて言いながら御幸についていった。

 

 

 

 

 

 

室内練習場

 

 

 

 

 

 

御幸「連れて来ましたよ、先輩・・・やっぱコイツ、雨ん中走ろーとしてました(笑)」

 

栄純「かかってこいや!!」

 

そう言い、シャドーボクシングをしたが

 

クリス「だろうな・・・」

 

栄純「あっ!」

 

クリスを見るや

 

栄純「お・・・おはようございます!クリス先輩。」

 

180度態度を変え、キッチリ挨拶をした。

 

御幸「俺の時とはえらい違いだな、コノヤロー。」

 

栄純「まさかクリス先輩自ら、俺にヤキを入れようとは!!これが体育会の縦社会なんスね!!」

 

クリス「何言ってんだ、お前・・・」

 

クリス「お前をここに呼んだのは、夏までにやるべき事を話しておこうと思ったからだ。」

 

栄純「え?」

 

クリス「降谷。沢村。良いか、野球は投手がボールを投げて、初めて動き出すスポーツ・・・それ程投手の役割は大きい・・・」

 

クリス「内野手とのセットプレー、ベースカバーの遅れ・・・ほんの小さなミスが、チームに敗戦を招く事だってある。」

 

暁・栄「「!」」

 

クリス「つまり、一番長くボールに触れているお前ら投手は、チームの中で誰よりも野球に詳しくなければならない。」

 

これには

 

栄純(だ・・・誰よりも・・・)

 

暁(詳しく!?)

 

暁・栄((このチームの中で!?)

 

呆然となり

 

クリス「勢いだけで勝ち上がれる程、夏の本選は甘くないぞ。」

 

栄純はオロオロし、暁は鼻提灯を出した。

これに

 

御幸「はっはっはっ。心配すんな!その為に俺達がいる。チームプレーは1人じゃ練習出来ねーからな。」

 

御幸はそう言った。

 

御幸「付き合わせて悪いな、ゾノ・・・」

 

前園「アホ!クリス先輩の頼み、断れるかい!お前の為とちゃうわ!」

 

春市「僕もついて来ちゃったよ。ゾノ先輩とは同室だしね。」

 

そして

 

クリス「沢村、お前には言っておいたよな。がむしゃらにやるだけが練習じゃない。体を休める事も覚えろと・・・」

 

栄純「え?」

 

クリス「・・・お前、俺のようになりたいのか?」

 

クリスは栄純に厳しい言葉を言った。

 

栄純「・・・え。いや・・・」

 

クリス「一軍メンバーとして、責任感を持つのは悪い事じゃない。だが、全てを1人で背負い込む必要は無いんだ・・・」

 

クリス「だから今日は、軽めの練習にしとけ。良いな?」

 

そして、クリスは優しい言葉を栄純にかけた。

これに、栄純は涙を流した。

 

クリス「全く、世話が焼ける。」

 

栄純「・・・ぐっ。」

 

栄純(クリス先輩・・・お・・・俺。俺は・・・俺は・・・)

 

その涙は、止まる事なかった。

その時

 

倉持「ヒャハハハ!!また泣いてやがんのか、沢村~!!ホントめんどくせぇヤローだな!」

 

惇「けど、そーゆートコがコイツの良いとこなんすよ、洋さん。」

 

倉持「まぁ、そうだな。しゃーねぇ!俺達も付き合ってやるか!」

 

惇「そうっすね!同じピッチャーとして、お前らには負けたくねぇし!」

 

増子「うむ・・・プリン5個でな。」

 

惇に倉持、そして増子が現れた。

 

栄純「倉持ゼンバイ~!!増子ゼンバイ~!!惇~!!」

 

倉持「おっしゃあ~。まずは牽制からだな!さっさとクイックぐらい覚えろよ!!」

 

それを見たクリスは

 

クリス「沢村、勘違いするなよ。お前ら2人を一人前の投手として育て上げる・・・これはチームのためにやっている事だ・・・。俺はまだ、プレーヤーとしての道を諦めちゃいない。」

 

そう栄純に言った。

 

栄純「はい!!これからもよろしくお願いします!!」

 

クリス「言っとくが明日からは地獄だぞ。」

 

栄純「は、はい!!」

 

その様子を見た御幸は

 

御幸(ちぇっ・・・やっぱ一度くらいはこの人と正捕手争いしてみたかったな・・・)

 

そんな事を思っていた。

 

倉持「いきなりタイキーック!!」

 

栄純「何故!?」

 

その様子を

 

暁「・・・。」

 

暁はジッと見ていた。

 

惇「どうした?」

 

暁「いや・・・」

 

惇「入りづれーのか。」

 

暁「・・・。」

 

惇「まあ・・・不思議と人が集まる奴だよな、アイツ・・・」

 

惇「お前とは正反対だ。」

 

惇「けど・・・まあ、お前はそれで良いんじゃねーか?」

 

惇「俺と同様、力でチームを引っ張る・・・そういうピッチャーでよ。そうっすよね、カズさん?」

 

御幸「言いたい事全部持ってかれちまったぜ。淳の言う通り、お前はお前で引っ張っていけば良いんだよ。」

 

そう、御幸も言った。

 

惇「それで・・・本音は?」

 

御幸「ぶっちゃけ、色んなピッチャーがいた方が、俺もリードしがいがあるしなー!!はっはっはっはっ!!」

 

暁「前から思ってたけど・・・」

 

御幸「ん?」

 

暁「御幸先輩って性格悪くないですか?」

 

御幸「はっはっはっ。よく言われる!」

 

惇「アハハ・・・」

 

そして、今いるメンバーで野球に関する事を学んでいった。

 

丹波「・・・。」

 

その様子を見ていた丹波は

 

丹波(エースナンバーは誰にも渡さない!)

 

そう決意を込め

 

丹波「宮内。後でブルペンに付き合ってくれないか?」

 

宮内「投げるのか?今日・・・」

 

丹波「ああ。試したいボールがあるんでな。」

 

そう言ったのであった。




投稿出来ました。

栄純君って、本当に熱いハートを持ってますよね。

モデルはホークスの和○毅選手なんだけど・・・。

また、原作の大幅なコピーですが、確かに漫画とアニメをベースに投稿しておりますが、台詞にも少なからずアレンジは加えております。

全てでは無いのでなんとも言えませんが。

もしお気に召さなかったら場合は、遠慮無くお気に入りから削除していただいて構いません。

拙作ですが、この作品をよろしくお願いします。

それでは、また。


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25話

25話です。


6月2週目。合宿が遂に始まった。

青道のクリーンナップの気持ち良い打球を

 

槙原「かぁ~っ!相変わらず気持ち良いぐらい打ちやがんな!」

 

槙原は笑いながら見た。

 

結城「大丈夫か、槙原?」

 

これに、結城は気を遣って声をかけると

 

槙原「バーカ!気ィなんか遣うなよ!!気持ち悪りィ!!」

 

斉藤「そうだぜ哲!!」

 

桑田「俺達もいる!!気が済むまでガンガン打てば良いんだよ!」

 

槙原「行くぜ!構えろよ!!」

 

斉藤や桑田も元気な声で返した。

これに

 

結城(お前ら・・・)

 

結城は感謝の気持ちを抱いたが

 

結城「気持ちはありがたいが・・・もう少し活きた球を頼む!」

 

と、オーラを噴き出して厳しい要求を述べた。

 

槙原「厳しっ!!」

 

一方、セカンドのノックでは小湊兄弟がやっており、春市は兄の亮介に全くひけを取ってなかった。

 

「スゲぇあの2人!!動きがハンパねぇ!」

 

「つーか1年のクセして、アイツ亮介さんに全くひけを取ってねーぞ!」

 

この様子を見た倉持は

 

倉持「ヒャハハハ。亮介さんも嫌だろーな。兄弟で、しかも同じポジションなんて・・・」

 

倉持(けど、まぁ・・・差が出てくるのはこれからか・・・)

 

そんな事を思いながら見ていた。

 

 

 

 

 

前園「コラァ沢村ぁ~!!」

 

前園「お前、今ランナーが何処にいるのか分かっとんのか?言うてみぃ!!」

 

栄純「い・・・一塁と二塁。」

 

前園「やったら外野に抜けたらホームのカバーやろーが!!」

 

栄純「ハッ!!そうだった!!」

 

これ聞いて

 

前園「マウンドでボヤーッとすんなや!!」

 

栄純は慌ててしまった。

 

前園「オロオロすんなぁ!!」

 

暁は一塁のベースカバーの送球をまた弾き

 

前園「降谷も堂々とエラーしてんじゃねぇ!!」

 

前園に怒られた。

 

前園「ハァ~。大丈夫っスかコイツら・・・全く進歩がねぇ。」

 

クリス「・・・いちいち頭で考えてるうちは、そんなもんだろう。」

 

暁「ドンマイ。」

 

栄純「テメェが励ますな!!」

 

惇「そこまでにしろ、2人共。」

 

暁「分かった。」

 

栄純「ああ・・・」

 

クリス「プレーの前に色々な局面をイメージし、後は自然と体が動くようにならなければな。」

 

前園の呆れ声に、クリスはそう返すと

 

クリス「丹波、川上。お前らは先にブルペンに入ってくれ。」

 

丹波と川上にそう指示した。

 

栄純「え?俺達は・・・!?」

 

クリス「足立は外野ノックを先にやっててくれ。お前ら2人は、出来るようになるまでトコトンやるぞ。」

 

惇「うっす。」

 

暁・栄「「!!」」

 

クリス「当然だろう。これが終われば、足立同様外野のノックを受けてもらうからな。」

 

栄純「ええ!!外野ッスか!?」

 

暁「き・・・聞いてない。」

 

クリス「ただし、取るだけじゃなく、必ずホームに投げ返せ。良いな?」

 

それを

 

御幸(成程な。外野のノックで走らせ、同時に遠投か・・・)

 

御幸(ボールを遠くに投げようとすれば、自然と大きなフォームが身につく。アイツらには一石二鳥のメニューだわな。全然納得してねーけど。)

 

御幸(監督もクリス先輩も色々考えてる。足立同様、降谷の打撃力をベンチで眠らせておくのはもったいねーって事か。)

 

御幸は納得の表情を浮かべながら聞いていた。

その時

 

御幸「あ・・・丹波さん。ブルペン入るんなら俺が・・・」

 

丹波が現れたので受けると言ったが

 

丹波「いや・・・俺は宮内に受けてもらう。」

 

丹波「今日もアレ中心で投げるぞ。」

 

宮内「ああ。」

 

断られてしまった。

 

太田部長「この合宿が来ると、いよいよ夏間近って感じがしますな!」

 

太田部長「今年も脱落者が出なければ良いですけど・・・」

 

高島「そう願います。」

 

片岡「チームの心を1つに!!それが、この合宿の目的だからな・・・」

 

そう、決意を込めた目で言ったが

 

栄純「わ~!!」

 

前園「何やっとんだコラァ!!お前試合でもそれやるつもりか!!」

 

栄純「ぐぞ~!!」

 

前園「泣いたってノックは終わらねーぞ!」

 

栄純のお粗末すぎる外野ノックを見て

 

高島「ま・・・あの子はおいといて・・・」

 

何とも言えない表情を浮かべた。

・・・酷い守備だな、全く。

 

 

 

 

 

夕方

 

 

 

 

 

どーん

 

栄純「うおお~!飯だぁ~!」

 

栄純「こ・・・これ全部マネさん達が作ったんすか?すげぇ~!」

 

惇「落ち着け、栄純。」

 

この様子に、惇は落ち着くよう言ったのだった。

そして、皆でおにぎりとバナナで腹ごしらえをした。

惇もおにぎりを食って休憩していると

 

唯「はい、惇君。」

 

惇「ん?おお、唐揚げじゃん!サンキュー!」

 

唯が唐揚げとおにぎりを持って現れた。

 

唯「どういたしまして。後これ、はい。」

 

そう言い、唯はおにぎりも差し出した。

 

惇「・・・まさかこれ、お前が作った?」

 

唯「うん。食べてみて。」

 

そう言われ、惇は唯が作ったおにぎりを口に入れた。

 

唯「・・・どう?」

 

惇「・・・まあまあかな。」

 

唯「ちょっと!まあまあって何よ!」

 

惇「べ、別に良いだろ!」

 

これに

 

唯「駄目!素直に言いなさい!」

 

惇「い、いへえいへえ!やめほ!はなへ!」

 

唯「素直に言うまで離さない!」

 

唯はむくれた顔で惇の両頬を引っ張った。

その様子を

 

伊佐敷「ホントに羨ましいぜ。あの2人・・・」

 

伊佐敷がそう言ったら

 

倉持「ホントにそうっすね。」

 

栄純に大量のおにぎりを食わせた倉持がそう返した。

 

伊佐敷「ホント何だ!この漫画みてーな関係は!」

 

亮介「フフッ・・・温かく見守ろうよ。」

 

春市「仲が良いね、足立君と夏川先輩。」

 

暁「?」

 

信二「うらやまけしからん・・・!」

 

それぞれ色んな思いで見ていたのだった。

因みに栄純は、おにぎりを夢中に食っていた。

その様子を見た者は

 

結城(吐くなアイツ・・・)

 

増子(絶対吐く・・・)

 

丹波(死んだな・・・)

 

御幸(ドンマイ・・・)

 

哀れみの目で見ていたのだった。

そして、夕食後の練習に突入した。

 

「ポール間20本!」

 

栄純「しゃあああああっ!!」

 

栄純(へへっ・・・いつもはタイヤで走ってんだ。こんなの、全然大した事ねぇ!!)

 

1本走り終えた栄純はそう思ったが

 

桑田「インターバル90秒。Go沢村!!」

 

栄純(え!?もう?)

 

インターバルの短さに驚いた。

 

「ベーラン100本!」

 

次のベーランで

 

栄純「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

 

春市「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

 

暁「ハア・・・ハア・・・ハア・・・」

 

栄純と暁、そして春市は膝に手をついていた。

 

惇「ふぅー・・・」

 

因みに惇はまだ余裕だったため

 

斉藤「足立Go!」

 

惇「うっす!」

 

すぐに走った。

 

斉藤「コラァ休む3人とも!足立に続け!」

 

栄純「ま・・・まだ息が・・・」

 

斉藤「沢村Go!」

 

栄純(マ・・・マジかよ!!)

 

斉藤「Go降谷!」

 

栄純(何だこれ、テンポ早過ぎ!しかも、人数が少ねーから・・・)

 

「Bグラウンドの10人はもう終わるぞー!」

 

「また1から走りたいのかー!」

 

栄純(何で惇は・・・)

 

暁(そんなに動けるの・・・?)

 

春市(い・・・異常だよ・・・)

 

惇に対してそう思いながらベーランをやった。

そしてベーランを終えると、暁は速攻で倒れた。

 

惇「おーい暁、大丈夫かぁ?」

 

暁「・・・。」

 

栄純も春市も、倒れてはいないが死にそうな顔をしていた。

 

片岡「よし・・・初日はこんなもんだろう。」

 

片岡の言葉を聞いた瞬間

 

栄純(た・・・助かっ・・・)

 

栄純は安堵の表情を浮かべたが

 

片岡「最後にグラウンド20周、全員で元気よく声を出していけ!!」

 

栄純「っぶっ!」

 

現実は甘くなかった。

こうして、地獄の夏直前合宿がスタートしたのであった。




投稿出来ました。

遂に夏直前合宿がスタートしました!

果たして1年生カルテットは耐えきれるか!

それでは、また!


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26話

26話です。


合宿2日目の朝6時。皆それぞれトスバッティングを行っていた。

 

栄純「しゃあああ!」

 

栄純「おいしょー!」

 

しかし、何故か栄純は全くセンスを感じられないバッティングを相変わらず披露した。

 

「「「・・・。」」」

 

栄純「ちくしょー!やはり昨日の疲れかぁー!」

 

桑田「もう良い。お前ノック受けてこい・・・」

 

栄純「くそー!昨日の疲れかぁー!」

 

・・・それは昨日の疲れではなくただ単純にセンスがないだけだ。

そんなこんなで朝練が終わり

 

栄純(トスバッティング200球にノックにランニング・・・)

 

栄純(朝飯前からこんなに飛ばすのかよ・・・)

 

朝飯の時間になった。

 

もんまりっ

 

信二「最低でも、ドンブリ3杯以上だぞ。」

 

栄・暁・春「「「うぷっ!」」」

 

信二「残したら報告すると、先輩達からのお達しだ。」

 

これには、3人はウッとなった。

その横で

 

惇「納豆あんじゃん。卵と一緒にかけるか。」

 

惇は普通に食べており、既に2杯目に突入していた。

 

栄純(何でコイツは普通に食えてんだよ・・・!)

 

暁(・・・惇の所にこっそり・・・)

 

春市(食べれる気がしない・・・何で足立君は食べれるの・・・?)

 

これに、栄純ら3人は絶句しており、おかずと一部のご飯を惇の所に置こうとしたが

 

信二「何してんだお前ら。」

 

信二に止められてしまった。

 

信二「食うのも練習のうちだ。さあ食え。」

 

そう言われ、仕方なく食ったが

 

暁「・・・。」

 

暁だけ、口をもぐもぐさせてるだけで何も口にいれておらず

 

信二「テメェ、全然箸つけてねぇじゃねーか?エア食事すんな!!」

 

信二に怒られた。

 

惇「お前らマジで食った方が良いぞ。身体作りの基本は飯だ。タダでさえ、合宿はハードな練習すんだから、食わねーと体重落ちるし、きちーぞ。特にピッチャーはな。」

 

惇の言葉を聞き、3人は冷や汗を流した。

そして

 

伊佐敷「ちゃんと残さず食えよ。」

 

伊佐敷に言われ、3人は拒否できなかったのだった。

そして学校が始まると

 

ぼへら~

 

栄純はテキストを立てて寝てしまった。

それを見た1人のクラスメイトが

 

「沢村君。寝たら報告するぞって金丸君が・・・」

 

そう言うと

 

ガバッ

 

栄純は起きてテキストを手に取った。

この様子を見ていた監視役の信二は、非常に悪そうな笑みを浮かべていた。

 

惇「うわぁ~。悪そうな笑み・・・」

 

それを、惇は引き攣りながら苦笑を浮かべていた。

そして、授業が終わり、午後の練習が始まった。

昨日から同じ外野ノックを受けているが、惇同様センスの塊の暁は、大分動きが様になってきた。

 

暁(う~。早くマウンドに立ちたい~!)

 

・・・大分イライラしているが。

 

惇「ナイスプレー、暁!」

 

暁「・・・うん。」

 

伊佐敷「坂井!白州!足立でもスゲーのに降谷も様になってんじゃねーか!」

 

この言葉に

 

坂井(レギュラーの席は絶対に譲らねー!)

 

白州(負けません!)

 

坂井と白州は燃えていた。

 

クリス「降谷は元々、センスの塊みたいな奴だからな・・・外野も様になってる。足立は言わずもがなだがな・・・」

 

クリス「それに比べて・・・」

 

そう言って栄純を見たクリスは

 

クリス「ハァ~。お前はもう外野ノックは受けるな。」

 

溜息をつきながら栄純に言った。

 

栄純「何すかその溜息は!?」

 

クリス「仕方ない・・・ボールを投げさせてやるか。」

 

そう言ったクリスは

 

栄純「え♪」

 

クリス「コイツなら・・・お前のどんな球でも受けてくれる・・・チームで一番優秀な奴だ。」

 

クリス「好きなだけ投げ込め。」

 

栄純「ネットぉぉお!?」

 

栄純にネットを用意した。

 

栄純「クリス先輩が受けてくれるんじゃないんすか~!」

 

クリス「甘えるな。受けて欲しいなら、御幸か宮内に頼め。」

 

栄純「あ・・・あの時の絆は~!」

 

クリス「シャドウでフォームを固めるより、ボールを使った方が感覚が掴みやすいからな。」

 

栄純「これ全部?」

 

クリス「距離は近くて良い。1球ずつ丁寧に投げろ。」

 

そして

 

クリス「あの時のボールの感覚だけは、絶対に忘れるなよ。」

 

栄純「!」

 

クリス「フォームを体に染み込ませるんだ。良いな。」

 

そう、クリスは優しく栄純に言ったのだった。

 

栄純(クリス先輩・・・)

 

そして、合宿3日目に突入すると

 

カーン!

 

ガッ!

 

春市「!」

 

疲れからか、春市の動きはいつもと比べて精彩を欠いていた。

 

「どうした~!!もうバテたかぁ?」

 

春市(く・・・足が・・・動かない・・・)

 

これに

 

倉持(そろそろ差が出始める頃か・・・)

 

倉持はそう思いながら見ていた。

 

亮介「辛かったら、休んでても良いんだぞ。」

 

亮介「お前と替わりたいって奴は、沢山いるからさ。」

 

春市「!」

 

亮介の厳しい言葉に

 

桑田「声出せー!」

 

前園「元気ねーぞ!変わったろうか!」

 

春市「ぜ・・・全然へーき・・・」

 

春市は歯を食いしばりながら立ち上がった。

 

亮介「だったら顔に出すな、バーカ。」

 

春市「・・・うん。」

 

一方暁と惇はバッティング練習をしており

 

惇「フッ!」

 

キーン!

 

惇「ンッ!」

 

キーン!

 

惇は快音を響かせ、遠くに飛ばしているが

 

ガコッ

 

暁は、疲れからか全然前に飛ばなかった。

 

槙原「コラァー!!もっと腰入れろ降谷!!惇はさっきからデカい当たり飛ばしてるぞー!!」

 

暁(てゆーかマウンド~!)

 

栄純の方は

 

クリス「足が上がってない。もっと高かったぞ、あの時は。」

 

栄純「は・・・はい・・・」

 

栄純(くそっ・・・連日のベーランで足が・・・)

 

栄純(軽めに投げても結構キツいぞ、これ・・・)

 

クリス「ボールが高い。」

 

疲れからか、調子が悪かった。

ブルペンでは、丹波と川上が投げ込みをしていた。

それを見た

 

栄純(あの人達は、ガンガン投げてるってのに・・・くそっ。)

 

暁(何でブルペンに入らせてくれない?)

 

栄純と暁は疑問を浮かべていた。

そして、締めのグラウンド20周を終えると

 

片岡「明日も朝からやるぞ。ストレッチして早く上がれ!」

 

「「「はいっ!!」」」

 

栄純と暁、そして春市は倒れ込んだ。

 

栄純(ヤバイ・・・もう体が・・・)

 

暁(動かん・・・)

 

春市(何であの人達、立ってられるの?)

 

栄純(何で惇は・・・あの人達と同様立ってられんだよ・・・?)

 

栄純(バケモノだ・・・)

 

 

 

 

 

 

片岡「どうだ?1年のピッチャー3人は?そろそろ疲れが溜まってくる頃だろう。」

 

これに

 

クリス「はい・・・監督の指示通り、合宿になれるまではピッチングをさせてません。」

 

クリス「そろそろペースを落として、ブルペンやシートバッティングで投げさせるつもりです。」

 

クリスはそう報告した。

 

片岡「うむ。丹波と川上は?」

 

宮内「順調です!!」

 

片岡「まだ先は長い。あまり飛ばさせるな。」

 

宮内「はい。」

 

そして

 

片岡「合宿最後の土日、練習試合を4つ組んである。土曜日のダブルヘッダー、朝の試合を足立に、昼の試合を降谷と沢村で投げさせる。日曜日のダブルヘッダーは、丹波と川上に1試合ずつ投げ抜いてもらう。」

 

片岡「勝敗は問わん・・・疲れがピークの中、全員がどれだけ強い気持ちを持って戦えるか・・・ただそれだけが見たい。」

 

練習試合での予定を伝えた。

その頃風呂場では

 

惇(ふぅー・・・体力には自信があんだけど・・・流石に疲れんな・・・)

 

暁「・・・。」

 

春市「・・・。」

 

栄純「・・・。」

 

1年カルテット皆、浴室で疲れた顔をしていた。

・・・栄純。そのままじゃ溺死するぞ。

 

惇「・・・ったく。」

 

それを見た惇は

 

惇「おら!」

 

栄純を上げた。

 

栄純「ゴプァ!!あ・・・危ねぇ、危うく水死体に・・・」

 

栄純「寝るなよ!!寝たら死ぬぞお前ら・・・サンキュー惇!」

 

栄純はそう皆に言ったのであった。




投稿出来ました。

甲子園常連の名門校って、どんな合宿メニューなんでしょうね・・・

それでは、また。



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27話

27話です。


合宿4日目

 

 

 

 

パアン!

 

ブルペンで、御幸が川上の球を受けていた。

 

御幸「ナイスボール、ノリ!!」

 

これに、御幸は素直に褒めた。

 

川上「何かお前に褒められると気持ち悪りィ。絶対裏があんだろ。」

 

御幸「いやいや、このコースに決まれば中々打てねーよ。」

 

御幸「折角のサイドスローなんだし、ストライクゾーンは幅広く有効に使わねーとな・・・」

 

御幸「コントロールは抜群に良いんだ。お前はもっと自信を持って投げて良いんだぜ!」

 

そう御幸に言われ、川上も笑みを浮かべた。

その横で

 

丹波「ふしっ!」

 

宮内が丹波の球を受けていた。

丹波のカーブを見た御幸は

 

御幸「キレてますね、今日も・・・」

 

と言った。

 

宮内「・・・フン。疲れもあるし、まあまあだろ。」

 

宮内「だが・・・1球1球気合が入ってくるのは伝わってくる。俺達はもう後がねーからな。テメェもレギュラーから引きずり降ろしてやらあ・・・」

 

これに

 

御幸「・・・はい・・・楽しみにしてます。」

 

と御幸は返した。

ブルペンの様子を、栄純と暁は羨ましそうに見ていた。

 

惇「おいおい。余所見すんな!」

 

これに、惇は窘めた。

 

コーチA「足立!」

 

キーン

 

惇「フッ!」

 

パァン

 

コーチA「ナイスフィールディング!」

 

惇「うっす!」

 

コーチA「次!沢村!」

 

キーン

 

栄純(くそっ、早く投げたい~!)

 

そう思い

 

栄純「おいしょー!」

 

二塁に投げると

 

パァン

 

良い動きで二塁に送球できた。

 

コーチA「ナイスフィールディング!」

 

「やれば出来るじゃねーか!」

 

惇「スゲーじゃん、栄純!ナイスプレー!」

 

これには、周りは栄純の動きを褒めた。

 

栄純(あれ・・・?何か今・・・体が勝手に動いた・・・!)

 

クリス(ようやく頭より先に、体動くようになってきたな。)

 

高島(マグレじゃなきゃ良いけど。)

 

暁(負けられない!)

 

このプレーに刺激を受けた暁だったが

 

ポコッ

 

コーチA「降谷!もっとボールに集中しろ!」

 

ミスをしてしまった。

 

惇「暁!最後まで気を抜くな!」

 

暁「うん!分かった!」

 

そして、いつものグラウンド20周を終え

 

倉持「きちー!流石に限界だぜ!」

 

「おい1年運んでやれ。」

 

皆流石にきつい顔だった。

そんな中、御幸はベンチで休んでる丹波に近付き

 

御幸「最近密かに練習してるのは、フォークっスか?」

 

そう尋ねた。

 

丹波「!」

 

御幸「足立のSFFを見て習得しようと思ったんスか?」

 

御幸「丹波さん足立よりタッパあるし、フォークは良い武器になると思います。」

 

御幸「・・・けど、どんなに凄い変化球覚えようと、それを生かすのはストレート。これだけは絶対に忘れないで下さいね。」

 

丹波「!」

 

丹波(ちっ・・・先輩相手にズケズケと・・・正直俺はコイツが苦手だ・・・)

 

そう思った丹波は

 

丹波「使えるかどうかは勝手に判断すれば良い。だが、俺は自分を信じて投げる。」

 

そう言い残し、去った。

 

御幸(手に入れられる物は全て手に入れ、誰にもマウンドを譲らない。やっぱピッチャーってのは皆エゴイストだよな・・・)

 

御幸(ま・・・そうゆう連中をリードできるから、キャッチャーってのは楽しいんだけど♡)

 

 

 

 

 

 

青心寮

 

 

 

 

 

 

暁「クリス先輩に受けてもらえば良いじゃん。」

 

栄純「あの人には丁重にお断りされたんだよ!!俺が先だ!!」

 

暁「・・・。」

 

つーん

 

栄純「テメェ、無視すんな!」

 

御幸「何やってんだお前ら・・・さっさと風呂入れよ。」

 

栄・暁「「あっ。」」」

 

暁「最近全然ブルペンに入ってないんで、受けてもらおうと思って・・・」

 

栄純「俺は、クリス先輩に断られたから仕方なく!!」

 

御幸「は?今から?お前ら今日もベーランで死んでたじゃん。それでも投げてーの?」

 

栄純「投げる!1球でも!!」

 

暁「僕は10球で・・・」

 

栄純「あ!?俺は15球だ!!」

 

暁「じゃあ20球で。」

 

この様子を見た御幸は

 

御幸「ははっ・・・」

 

御幸(おいおい。こっちの都合は完全無視かよ・・・)

 

御幸(コイツらも足立同様エゴの塊じゃねーか・・・)

 

御幸「はっはっはっ!!おもしれェ!お前ら最高!!」

 

御幸「そんだけ元気なら大丈夫だよな。取り敢えず、風呂入ってから俺の部屋に来い。」

 

栄純「え?部屋で投げるんスか?」

 

御幸「良いから良いから、早くしろよ。ああ、後ついでに足立も呼んできてくれ。」

 

そう言ったのだった。

そして、惇と一緒に御幸の部屋に行くと

 

御幸「おっ・・・来たな!」

 

栄純「ゲッ!」

 

惇「スゲー!」

 

暁「・・・。」

 

伊佐敷「遅せーじゃねーか!早く入れよ!」

 

3年生もいた。

 

御幸「沢村と降谷は元気余ってんだろ?この人達のお相手よろしくな!毎日俺の部屋に集められて困ってんだ・・・」

 

御幸「足立も悪いな。」

 

惇「気にしなくて良いッスよ。」

 

伊佐敷「おうコラ!足もめコラ1年!」

 

倉持「沢村~、ジュース!!」

 

中田「あっ・・・自分だけズルいんだな~!」

 

結城「御幸・・・早くやるぞ、昨日の続き。」

 

御幸「勘弁して下さいよ!哲さんには敵いませんって。」

 

御幸「弱すぎて・・・」

 

御幸「お前ら将棋は?」

 

栄純「祖父ちゃんとやってたから少しは・・・」

 

御幸「良し!沢村いけ!!」

 

栄純「ちょっ・・・ブルペンは!?」

 

結城「よろしくお願いします。」

 

栄純「は・・・はい!」

 

しかし、断れなかった栄純。

 

御幸「哲さんや中田は、いつも通いだからな。合宿の時はこうして付き合わされんのよ。」

 

御幸「純さんにはいつもマッサージさせられるし。」

 

伊佐敷「ああん?」

 

御幸「倉持と中田はゲーム仲間だってよ・・・」

 

惇「・・・カズさん。」

 

御幸「どうした?」

 

惇「何で増子さんはここで寝てんスか?」

 

御幸「あ・・・ホントだ・・・」

 

御幸「でもまあ、お前らの後ろを守ってくれてんのが、どんな人達か知っとくのも悪くねーだろ?」

 

それを聞いて

 

暁「!」

 

栄純(この人・・・最初からそのつもりで・・・)

 

栄純と暁はそう感じた。

 

惇「ところでカズさん・・・どこで寝るんスか?」

 

御幸「そうだな・・・俺はゾノの部屋で寝るわ。」

 

惇「そっすか・・・」

 

御幸「んなワケで、後は宜しくな!」

 

そう言い、御幸はマイ枕を持って部屋を出たのだった。

 

倉持「ところで足立よ~。お前夏川とはどーなんだよ?」

 

伊佐敷「そうだ。俺にも聞かせろ。」

 

惇「どうって・・・そっすね・・・」

 

そして、栄純は結城と将棋を、暁は伊佐敷にマッサージをやり、惇は倉持やその他の皆に唯との関係を話したのだった。

その際

 

倉持(・・・やべー。何だか、流されて上手く問い詰められなかった・・・)

 

伊佐敷(マジ隙がねーな・・・)

 

この2人はそう思ったのだった。

 

 

 

 

 

栄純「ハァ~。もう部屋帰って寝たい。」

 

暁「あ・・・キャプテンは烏龍茶だよ。」

 

惇「・・・何かお前、嬉しそうだな。」

 

栄純「お前何で嬉しそうなんだよ?」

 

そう、惇と栄純は少し呆れながら言ったのであった。




投稿出来ました。

先輩達、元気ですね・・・

それでは、また。


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28話

28話です。


合宿5日目

 

 

 

 

朝練が終わった後

 

クリス「足立。降谷。沢村。」

 

惇達はクリスに呼ばれた。

 

クリス「午後はブルペンに入るぞ・・・きちんと準備しとけよ。」

 

栄純「え?」

 

春市「やったじゃん。足立君はともかく、2人は足腰フラフラだけどね。」

 

栄純「だ・・・誰が受けてくれるんスか?ま・・・まさかクリス先輩が・・・」

 

そう思った栄純だったが

 

宮内「俺だ!文句あるか?」

 

宮内だった。

 

クリス「宮内自ら受けたいと言ってきてな。まあ、一軍の捕手として当然だろう。」

 

クリス「ああ見えて、人一倍闘志のある奴だからな・・・油断してると御幸でも危ないぞ。」

 

そして、授業を挟んで午後の練習。

 

伊佐敷「どうしたオラァ!!もっとこいやー!!俺は全然へばってねーぞ!!」

 

惇「まだまだー!!もっとこーい!!」

 

結城「もう1本!!」

 

増子「うがうがう~!!(来い~!!)」

 

春市「ハア・・・ハア・・・」

 

亮介「春市。そこ邪魔。」

 

もう5日目で疲労もピークに達してる中、3年生の気合は衰えるどころか増しており、気迫も闘志も更に凄味を増していた。惇もそれに匹敵する物を出していた。

 

太田部長「もう合宿も5日目だというのに、流石に3年は声が出てますなぁ。それについていけてる足立も中々の物です。」

 

高島「去年、後一歩のところで甲子園を逃して、悔しい思いをしてますからね。足立君も普段は大人しい子ですが、闘志は人一倍持ってますから。」

 

その様子を、太田部長と高島先生は流石といった表情だった。

 

片岡「・・・。」

 

前園がボールを取って打とうとしたその時

 

片岡「代われ。俺が打つ!!」

 

片岡がバットを持って現れた。

その瞬間、3年生の顔色が一気に変わった。

 

片岡「1年小湊と足立は外れてろ。足立はそのままブルペンへ行け。」

 

惇「はい!」

 

春市「!」

 

亮介「・・・クス。怪我しちゃうってさ。」

 

春市「・・・。」

 

これに、春市は呆然とした表情を浮かべた。

 

片岡「ガンガン行くぞ!!」

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

そして午後4時、監督ノックがスタートした。

その頃ブルペンでは、まず暁が宮内に投げた。

 

ズドォォン

 

暁「!」

 

しかし、宮内があっさり自身のボールを捕れた事に驚いた。

 

クリス「どうした、何を驚いてる。宮内はマシンの球なら、150㎞は簡単に捕るぞ。」

 

クリス「遠慮せず思いっ切り投げ込め。」

 

暁「はい・・・」

 

暁(くそっ・・・疲れでボールが全然走らない・・・)

 

それと同時に調子が悪いのを感じた。

 

クリス「次、沢村。」

 

栄純「はい!!」

 

栄純(まずはネットスローの感覚で・・・)

 

そう思い投げたら

 

宮内「!」

 

バチィ

 

宮内「・・・くっ・・・」

 

宮内は捕れず弾いてしまった。

 

宮内(正面から見ると、こんなに捕りづれーのか?)

 

クリス「ボールが高い。」

 

栄純「!」

 

栄純(くそっ・・・あの時みたいに全然いかない・・・)

 

そう思った栄純は

 

栄純「どんどん投げて良いっスか!!」

 

とクリスに尋ねると

 

クリス「慌てるな・・・1球1球丁寧に投げろ。」

 

クリスは落ち着いて返答した。

 

暁「次は本気で投げても?」

 

クリス「だから慌てるな・・・」

 

この2人の様子に

 

クリス(ったく・・・コイツらは。)

 

クリスは呆れつつも笑みを浮かべた。

すると

 

惇「すいません。遅くなりました。」

 

惇がブルペンに入ってきた。

 

クリス「肩は大丈夫か?」

 

惇「ちょっとだけ軽く投げます。」

 

クリス「分かった。肩が温まったら、御幸に受けてもらえ。」

 

惇「はい。」

 

そして、御幸に軽く立ち投げし、座らせて投げた惇だが

 

栄純(コイツ・・・本当に疲れを感じてるのか・・・?)

 

暁(いつもと変わらず凄く伸びてるんだけど・・・)

 

変わらず手元で伸びている真っ直ぐに驚きを隠せていなかった。

 

惇(う~ん・・・やっぱ調子悪ぃな・・・)

 

しかし、当の本人は調子の悪さを感じており

 

御幸(やはり・・・合宿の疲れはあるようだな・・・いつもの伸びがない・・・)

 

受けてる御幸もそう感じた。

 

クリス「今日と明日は、ブルペンとシートバッティングで調整だ。土曜日の午前の試合は足立が、午後の試合は降谷と沢村2人で投げてもらうからな。」

 

暁「し・・・」

 

栄純「試合!?」

 

惇「相手はどこっスか?」

 

クリス「去年の夏の甲子園準優勝の大阪の名門、大阪桐生だ。」

 

惇「桐生か・・・」

 

栄純「うおおお~!!試合で投げられる~!!」

 

暁「・・・僕が投げる試合、どっちが先発ですか?」

 

この元気さに

 

惇「・・・お前ら、意外と元気だな。」

 

惇は呆れつつも笑みを浮かべ

 

クリス「もっと走るか?」

 

クリスもそう言ったのだった。

その頃、グラウンドでは

 

キーン!

 

増子「ぐっ!」

 

キーン!

 

倉持「くっ!」

 

キーン!

 

亮介「チッ!」

 

監督ノックは激しさを増し、その迫力に1年生は声も出なかった。

 

片岡「どうしたぁ!!もう声が出ないかあぁ!!」

 

「お・・・おい。ナイター付けてこい。まだまだ続くぞこれ・・・」

 

そして、ナイターを付けてもノックは続いた。

 

伊佐敷「も・・・もう一丁~!!」

 

片岡「全然聞こえん!!いつもの威勢はどうした伊佐敷!!」

 

伊佐敷「もう一丁~!!」

 

キーン!

 

しかし、足がもつれ転び、腹でボールを受けてしまった。

 

片岡「そんな捕り方、教えとらん!!」

 

この様子に

 

「すげぇ・・・いつまでやるんだよ。」

 

「流石の先輩達もボロボロだぞ・・・」

 

「つーか、1人で全員相手にしてるあの人はバケモンかよ?」

 

周りは絶句していた。

 

キーン!

 

片岡「いつもの笑顔はどうした小湊ー!!」

 

そうして続くと、結城達は皆、膝を付いて荒い息を吐いていた。

すると

 

片岡「どうした?もう終わりか?結城・・・」

 

片岡が肩で息をしながら結城に尋ねた。

 

結城「!」

 

その言葉を聞いて、結城は去年の出来事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

結城「キャプテン?自分がですか?」

 

片岡「ああ・・・これは3年全員の意見だ・・・」

 

片岡「部員の多いこのチームを器用に纏めろとは言わん・・・お前は、プレーで全員を引っ張れば良い。プレーでな・・・」

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

この事を思い出した結城は、気力で何とか立ち上がって

 

結城「・・・球・・・もう・・・1球・・・お願いしま・・・す・・・監督・・・」

 

闘志の籠もった目で言った。

この姿に、惇や他の皆も絶句した。

すると、他の皆も次々と立ち上がり、気迫を見せた。

 

惇「すげぇな・・・」

 

栄純「ああ・・・」

 

暁「・・・」

 

惇の言葉に、栄純と暁も同様の表情を浮かべた。

3年の気迫に片岡は笑みを浮かべ

 

片岡「良し!ラスト1球!!最後まで集中力を切らすな!」

 

「「「はい!!」」」

 

ラスト1球を打って終わらせ、5日目を終えたのであった。




投稿出来ました。

片岡監督、あれ結局何球打ったんだろう・・・?

それでは、また。


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29話

29話です。


合宿6日目を無事に終えた青道野球部。

夕食をテーブルに置き

 

栄純(終わったぁー。キツかった合宿も、後は試合を残すのみ・・・)

 

惇「ふぅー・・・」

 

暁「・・・。」

 

そう思った栄純。その隣には、惇と暁も疲れ切った表情を浮かべていた。

その後ろで

 

御幸「いっただきまーす!」

 

御幸が飯を食おうとしていたので栄純と暁は

 

栄純「てゆーか・・・アンタ、惇ばっかり受けていつになったら俺の球受けてくれんだよ!!試合は明日なんだぞー!!」

 

御幸「ん・・・俺?」

 

御幸に詰め寄った。

 

栄純「なんかほらあるじゃん!!明日に向けて打ち合わせとか、心構えとかよ!!何で惇ばっか・・・!!」

 

暁「そーだそーだ。」

 

しかし

 

御幸「何言ってんだお前ら・・・。足立と違って変化球も投げられない癖に何打ち合わせるんだよ?」

 

御幸は本気で驚いた表情を浮かべてそう返した。

 

ズガガーン

 

惇「あ、アハハ・・・」

 

御幸「疲れもかなり残ってるだろうし、2人共明日は派手に散れ!打たれるのも練習ってなー!はっはっはっはっ!!」

 

それを聞いて

 

暁(変化球・・・)

 

暁は先日御幸と話した事を思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

御幸「おい降谷。今までは変化球無しでやってこられたが、これからは違う。」

 

御幸「他校に研究されて、高めのボール球を見送られるようになったらアウトだ。もっと走り込んで、コントロールを安定させねーとな・・・」

 

御幸「それに、爪に負担をかけずに投げられるボールだってある。ヒマさえあれば、こうしてボールを指に挟んでろ。」

 

そう言うと、御幸はボールを挟んで暁に言った。

 

暁「!」

 

御幸「昔ある大投手は、一升瓶を指に挟んで持ち上げたらしーぜ!」

 

御幸「それにこのボールは、足立が投げる変化球の中で一番のキレを誇るボールだからな。現にお前も見てるぞ。」

 

暁「え?」

 

御幸「何にも知らねーんだな。まっすぐとほぼ同じスピードでバッターの手元で真下にスッと落ちる球あったろ?アレだよ。」

 

暁「・・・アレがですか?」

 

御幸「まあ、アイツはここまで挟んでないけどな。握りはこうで、挟み具合はこのぐらいだ。」

 

そう言うと、御幸は握りを変えて暁に見せた。

 

暁「握りが浅い。」

 

御幸「フォークというよりかはSFFだ。しかし、アイツはそれ以外の変化球もキレ鋭い。だからあの伸び上がる真っ直ぐが活きる。」

 

御幸「まあ・・・フォークは肘に負担がかかるから、あまり投げさせねーけどな。現に足立本人も、SFFを投げるのは2~3球程、多くても4~5球程だって言うしな。それに、あのスライダーも肘に大きな負担がかかる。」

 

暁「スライダーって、あの真っ直ぐとほぼ同じスピードで真横に曲がるボールですか?」

 

御幸「あれは普通のスライダーじゃない。」

 

御幸「普通のスライダーの握りはこうで、投げ方はこう手首を捻って投げる。そして、こういう軌道で曲がる。」

 

御幸「だがアイツのスライダーは、こういう握りをして、手首を捻らず指で上から下へボールを切るように強いスピンをかけてんだ。それにより、普通のスライダーと違って、ほぼ真っ直ぐに近い軌道から真横に曲がっていく。それにより、SFF同様真っ直ぐの区別がつかないんだ。リリースもフォームもまっすぐと一緒だから尚更な。」

 

御幸「まあともかく、1つでも変化球があれば・・・お前のストレートをもっと活かしてやれる。」

 

御幸「もっともっと俺を楽しませてくれよ、怪物くん♡」

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

思い出した暁だが

 

暁「・・・。」

 

暁(すっかり忘れてた・・・)

 

忘れていた。

・・・おい。

 

栄純「それがキャッチャーの言う台詞かぁー!」

 

御幸「だから・・・俺先輩・・・」

 

栄純「クリス先輩を見習えー!」

 

惇「そこまでにしろ、栄純。言われて悔しかったら結果で答えろ。」

 

惇にそう言われると

 

栄純「・・・分かったよ。」

 

栄純はそう言い、御幸から手を離した。

一方

 

春市「・・・。」

 

春市は今日の出来事を思い出していた。

 

片岡『1年小湊は外れてろ。』

 

亮介『・・・クス。怪我しちゃうってさ・・・』

 

結城『もう・・・1球・・・お願いしま・・・す・・・監督・・・』

 

それらを思い出して、自らの力の無さに悩んでいた。

その日の深夜、春市はベッドに横になっても寝れなかった。

その時

 

前園「おい小湊。まだ起きとるか?」

 

前園が小湊に尋ねた。

 

春市「あっ、はい・・・何か眠れなくて。」

 

前園「なら、俺のスイング見てくれや!どうしても、バットが下から出とる気がしてな。」

 

春市「今からまだ振るんですか?」

 

前園「当たり前や!お前らの練習にだけ付き合ってられるか!」

 

前園「力の無い者は、努力するしかないからな・・・」

 

この言葉に

 

春市「!」

 

春市は何かを感じ

 

春市「・・・あの、自分も一緒に振って良いですか?」

 

と、前園に言った。

 

前園「は?あ、アホか!!お前はこれ以上努力せんでええ!!」

 

春市「お願いします!」

 

前園「だからやる気出すなや!!」

 

そう言いつつも、前園は春市と一緒に素振りをしたのだった。

その様子を、亮介は兄の顔を浮かべながら聞いていたのであった。




投稿出来ました。

オリジナル話を少し入れてみました。

主人公のSFFは、下記動画の通りの握りと投げ方を参考にしております。

https://www.youtube.com/watch?v=PLwHk7u1CtA&t=958s

僕個人、この人のピッチングを見てなかったら野球を好きになってなかったですね・・・。

人生って、本当に分かんないです・・・。

それでは、また。


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30話

30話です。


合宿7日目。合宿を終えた締めの土日の練習試合。

その初日の土曜日の相手は大阪桐生。

 

片岡「松本監督。今日はわざわざお越し下さり、ありがとうございます。」

 

片岡「夏も近いし、お互い良い試合にしましょう!」

 

そう言い、互いにメンバー表を交換した。

メンバー表を見た松本は

 

松本「フフ・・・ええ試合?にしても一試合目の先発は足立君・・・ですか。」

 

松本「まあ・・・夏前の調整もあるやろうし、色々試したい気持ちは分かります。特にこの足立君はそうやろうなぁ。」

 

そう言い、青道ベンチ前で整列する惇にチラリと目を向けた。

 

松本「関東大会の映像少し見せてもらいましたが、あれはホンマにえぇ投手ですわ。」

 

片岡「足立1人に頼る気はありません。あまり甘く見ない方が良いかと。」

 

片岡の言葉に

 

松本「フフ・・・他にも面白い選手がいると?なら、こちらも楽しみにしておきますわ!」

 

松本は笑顔でそう片岡に言ったのだった。

 

「礼!」

 

「「「しゃあす!!」」」

 

そして、後攻の青道ナインは各守備位置に散らばった。

この試合に出場予定のない青道の控え組がベンチで静かに見つめる中、どういうわけか同じく一試合目に投げる予定がない筈の栄純と暁はグラブを持ってブルペンに行こうとしており

 

クリス「お前ら、どこに行く気だ?」

 

クリスはそれを止めた。

 

クリス「お前達2人は午後からだぞ。」

 

栄純「けど・・・惇が打ち込まれたら俺が・・・」

 

暁「いや、僕が・・・」

 

栄純「はあ!?俺だよ!!」

 

暁「・・・。」

 

栄純「無視すんじゃねー!」

 

クリス「はぁ・・・お前ら、大人しく座れ。」

 

それを見たクリスは、溜息をつきながら2人を座らせ

 

クリス「2人共、足立のピッチングをよく見ておけ。」

 

そう言った。

 

栄純「え?」

 

暁「?」

 

クリス「今日の試合、足立は合宿の疲れで調子は良くない。いつものようなピッチングは出来ない筈だ。」

 

栄純「それのどこに・・・」

 

暁「見る必要が・・・」

 

クリス「だからこそだ。お前らにとって、良い見本になる。」

 

その疑問に、クリスはそう答えた。

マウンドでは、惇がいつものルーティンの股割りストレッチを行い、ロジンを地面に置きセットポジションに構えた。

 

御幸(さて・・・)

 

「プレイ!」

 

その声を聞き、惇は足を上げた。

その初球

 

カキーン

 

惇「やべっ!」

 

栄・暁・春「「「!」」」

 

先頭打者にいきなりツーベースを打たれた。

続く2番は、2球目で送りバントを決め一死三塁となり、次の3番には

 

カキーン

 

初球にレフトの犠牲フライを打たれ、先制点を許した。

 

「うわぁ!早くも先制!」

 

「足立が点取られるの、初めて見たぞ!」

 

「調子悪いのかなぁ・・・」

 

「にしても、流石は桐生だな・・・」

 

これには、見に来たギャラリーは驚きを隠せなかった。

 

惇(いやぁ~、流石は桐生・・・けど、これでランナーは無くなったからちょっと楽になったわ。)

 

しかし、当の本人はそこまで動揺してなかった。

だが

 

栄純(何やってんだ惇・・・)

 

暁(惇・・・)

 

この2人はマウンドにいる惇を苦々しい顔で見つめていた。

 

松本「どうや?足立の球?」

 

「スピードはありますけど、調子悪いのかビデオで見たような伸びは無いですね。」

 

松本(確か・・・今合宿中やゆうてたな。)

 

それを思い出した松本は

 

松本「相手の調子が悪いゆうても遠慮せんでええ!気ィ失うまで打ち込んだれや!!」

 

「「「はい!!」」」

 

そう選手に檄を飛ばした。

 

クリス「・・・。」

 

宮内「・・・。」

 

青道ベンチで見ているこの2人は、昨日の話し合いを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

片岡「明日の午前の試合・・・お前らは足立をどうリードする?」

 

この質問に

 

宮内「取り敢えず、足立は伸びのあるボールを中心にリードし、三振を奪わせるつもりです!!」

 

宮内はそう答えた。

 

片岡「・・・うむ。御幸は?」

 

しかし

 

御幸「足立自身、疲れもあるため本来の調子では無いでしょう。それは本人も自覚してると思い、ピッチングを変えるかと。」

 

御幸「よって、明日の試合は三振を奪うから低めを中心に丁寧に投げさせ、球数を抑えるピッチングにさせます。」

 

御幸は逆を言った。

これを聞いた片岡は

 

片岡「・・・うむ。午前の試合は御幸・・・お前が受けろ。」

 

御幸に午前の試合のマスクを任せた。

 

片岡「相手はあの大阪桐生・・・ハードな試合になると思うが、お前らも付き合ってくれるな?」

 

「「「はい!!」」」

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

そう思い出していると

 

カキーン

 

鋭い打球が二遊間に飛んだが

 

パンッ!

 

亮介が横っ飛びで捕り

 

倉持「亮さん!!」

 

それを見た倉持が声をかけ、亮介はグラブトスでボールを倉持に渡し

 

倉持「ヒャーッハァ!!」

 

パァン!

 

倉持は一回転しながらファーストに送球し、アウトにした。

 

「と・・・止めたぁ~!!」

 

「センター前ヒットがアウトに!!」

 

「何であれが捕れるんだ!!」

 

栄純「ま・・・回ったぁ!?ただの格ゲーマニアじゃねーぞ、倉持先輩!!」

 

暁「凄い・・・!」

 

「ナイス亮さん!!」

 

「最強だぜ、あの二遊間!!」

 

春市(凄い・・・何で疲れもあるのにあんな動きを?)

 

この時、春市は疲れを感じさせない動きに驚いていた。

 

倉持「あ~、体重てー。」

 

亮介「それは皆同じ・・・」

 

惇「あざっす!亮さん!洋さん!」

 

倉持「良いって良いって!!どんどん打たせてこい!!」

 

亮介「クスッ・・・全部止めてみせるから。」

 

御幸「はっはっはっ。バックに助けられたな!」

 

惇「はは。流石にさっきのは抜けたと思いましたよ。」

 

御幸「だが、一応予定通りだな。」

 

惇「そうっすね。引き続き任せますね。」

 

結城「ああ。」

 

増子「うが!」

 

伊佐敷「おうよ!」

 

御幸(流石に冷静だな・・・それにアイツ、ほんの僅かだが微妙にフォームが違うな。)

 

御幸(足の上げ方や体の開き、リリースポイントがバッター毎に少し違う・・・ああやってバッターのタイミングをずらしていたのか・・・)

 

御幸(プププ・・・調子が上がったら面白くなりそうかも・・・!)

 

そう思い、御幸は笑うと

 

栄純「試合中に何笑ってんだぁー!!ちゃんとリードしてやれよ!!クリス先輩のように~!!」

 

暁「そうだそうだ。」

 

御幸「・・・いや・・・」

 

栄純が御幸の胸ぐらを掴みながら怒り、暁もそれに続いた。

 

御幸「つーか、何でお前らがキレてんだよ。打ち込まれたら代わるつもりだったんじゃねーのか?」

 

栄純「ハッ!確かに!!」

 

暁「!」

 

それを聞いていたクリスは

 

クリス(自分の出番が無ければ悔しい。けど・・・同じピッチャーの足立が打たれても悔しい・・・か。)

 

クリス(それだけ沢村と降谷の2人は、足立の事を認めてるって事なんだろうな・・・)

 

柔らかい笑みで見ていたのだった。

 

栄純「代わるか?」

 

暁「僕が投げるよ。」

 

栄純「いいや、俺だ!!」

 

暁「・・・。」

 

栄純「無視すんなテメー!!」

 

春市「タオル使う?」

 

惇「サンキュー、春市。」

 

惇「ホラホラお前ら、午後投げるんだからこんなとこでエネルギー使うんじゃねーよ。」

 

惇「後、俺代わんねーし。」

 

そう惇は鋭い目をしながら言った。

 

栄純「うっ・・・」

 

暁「・・・。」

 

春市「足立君・・・何か出てるよ・・・!」

 

これには、栄純と暁は黙ってしまった。

その裏の攻撃、青道は倉持がサードゴロになったが、亮介が四球を選び、伊佐敷のセカンドゴロの間に二塁へ行き、次の結城のレフトフェンス直撃のタイムリーであっさり同点になった。

この際

 

松本(あ・・・あかん・・・コイツは別格や。まともに勝負したらいかん。)

 

松本は結城を見てそんな事を思っていたのであった。




投稿出来ました。

ちょっと微妙な形で締めました。

大阪桐生・・・モデルは大阪桐蔭ですね。

僕の世代だと、大阪桐蔭は圧倒的な強さでしたね・・・。

同い年だと、今年からオリックスでプレーする森友哉ですね。

実は僕の高校と大阪桐蔭は練習試合を行った事があるんですが、森は別格だったと野球部の友達が言ってましたね・・・。

ホント、毎年凄いチームを作るなぁ・・・西谷監督は。

そ、それでは、また。


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31話

31話です。


青道と大阪桐生との練習試合はテンポ良く進み、6回表一死で5-1と青道がリードをし、一塁にランナーを置いていた。

その初球

 

キーン

 

惇「ショート!」

 

倉持「任せろ!」

 

打球はショート正面に行き、倉持は捕ってベースに入った亮介に転送し、受け取った亮介はそのままステップを踏みファーストへ送球した。

 

「アウト!」

 

塁審のコールをもって6-4-3のゲッツーが成立し、チェンジとなった。

これに、試合を観戦しに来ていたギャラリーは大盛り上がりだった。

 

「おおーっ!!6-4-3のゲッツーでスリーアウトチェンジだ!」

 

「ああ!まるで流れるようだったぜ!」

 

「流石倉持・小湊ペアだ!」

 

しかし

 

「ここまで6回1失点。桐生相手に良いピッチングだけど・・・」

 

「ああ・・・奪った三振は僅かに4つ。何か物足りねーな・・・」

 

「今日は調子が悪いのかな・・・?」

 

その反面、そういった声も聞こえた。

そんな声は勿論、青道ベンチにも聞こえており、その声は記録員としてスコアブックを書いていたクリスも耳に入っており、その中で2人の1年生ピッチャーを見る。

 

クリス(どうやら、まだ分かってないようだな・・・)

 

2人を見たクリスは、御幸に目配せをした。

それを見た御幸は、クリスの視線を察し、栄純と暁に近付いた。

 

御幸「どうした?何やら難しそうな顔をしながら見ているようだが。」

 

この問いに

 

栄純「クリス先輩に、今日の惇のピッチングをよく見ておけって言われたんスよ。」

 

暁「僕達にとって良い見本になるって。」

 

2人はそう言った。

 

御幸「成程・・・。その様子じゃあ、答えが分かってねーようだな。」

 

これに、2人は首を縦に振った。

この素直な行動に、御幸は苦笑を浮かべながら肩を竦めた。

 

御幸「まっ。6回1失点って聞いたら良いピッチングだ。ただ、内容は被安打5、4奪三振といういつもと比べれば物足りねーな。現にボールもそこまで本調子じゃない。」

 

でもな、と御幸は続け

 

御幸「さっきのバッター、何球目に打ったか覚えているか?」

 

栄純「え?初球・・・」

 

御幸「じゃあその前にヒットを打ったバッターは?」

 

暁「・・・2球目。」

 

御幸「その前は?」

 

栄純「確か3球目・・・」

 

御幸「今の足立の球数は57球。点を取られた初回も7球しか投げてない。それ以降も然程多くの球数を投げてないし、このまま行けば9回まで投げても90球少しいくかどうかだろう。」

 

御幸「それに、今日のアイツはタイムリーヒットを打たれたか?」

 

栄純「・・・そう言えば。」

 

暁「打たれてない。」

 

御幸「そう。今日のアイツは1失点だが、この1失点は犠牲フライによる失点だ。それ以降もランナーを背負っても要所を締めるピッチングをして相手に流れを渡してねえ。それにテンポも良いからバックも守りやすいし、その勢いで攻撃に入れて5点も取ってくれてる。」

 

これに

 

栄・暁「「!?」」

 

栄純と暁は目を見開いた。

 

御幸「何もがむしゃらに全力で投げたり、三振を奪ったりする事が投手の仕事じゃないし、ピッチングでもない。如何に調子が良かろうが悪かろうが、試合を作り、しっかり投げきる。それが先発として、エースとしての条件だ。」

 

栄純「エース・・・」

 

暁「・・・。」

 

これに、ライバルの2人はドリンクを飲んでいる惇をジッと見つめた。

 

御幸(そりゃあ・・・悔しいよなぁ・・・。自身とライバルの差がこれだけあるという事に・・・)

 

その様子を、御幸は見ながらそう思った。

 

そして、青道の攻撃が三者凡退に終わり、7回に突入した。

 

惇「カズさん。ちょっと良いっすか?」

 

御幸「ん?」

 

惇「この回、ギア上げても良いっすか?」

 

御幸「・・・良くなったか?」

 

惇「はい。」

 

御幸「・・・分かった。それじゃあ、頼むぞ。」

 

そう言い、御幸は戻ってマスクを被った。

 

御幸(さて・・・この回の先頭打者はこの人だ・・・)

 

打席に立った大阪桐生のエース、舘を見た。

 

御幸(ここまで5失点してるとはいえ、調子も上がってきた。打つ方もまだノーヒットとはいえ、全国トップクラスの実力を誇る大阪桐生のエースで4番の人だ。油断は出来ねー。)

 

御幸(けど・・・本当に試合が好きなんだなぁ・・・笑顔がこえー・・・)

 

御幸(力でねじ伏せるぞ!)

 

そう思い、ミットを構えた。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

先程までの回とは違う伸びのある真っ直ぐが、外低めに投げられた。

これには

 

舘「っ!?」

 

舘の顔から笑顔が消えた。

舘だけじゃなく

 

「な・・・何やあれ・・・」

 

「さっきまでとは違う球やったで・・・」

 

「マジでホンマに浮き上がった・・・」

 

松本「・・・。」

 

桐生のベンチも同様だった。

 

クリス「どうやら、調子が上がってきたようですね。」

 

片岡「ああ。ボールの伸びが先程までとは違う。」

 

そして2球目

 

キーン

 

「ファール!」

 

舘「くっ!」

 

ほぼ真ん中の真っ直ぐだったため、打ちにいったが、振り遅れてファールになった。

 

舘(何やこれ・・・ビデオの通り、伸び上がって・・・!?)

 

そして

 

御幸(得意なボールでねじ伏せろ!)

 

御幸は立ち上がって高めに構えると、惇は3球目を投げ

 

ズバアアンッ!!

 

舘を高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

結城「今日一番のボールだったぞ。」

 

伊佐敷「良い球じゃねーか!コラァ!」

 

亮介「ナイスピー!」

 

倉持「流石じゃねーか!」

 

増子「うむ!」

 

そして、次の5番バッターの初球は真っ直ぐが高めにいったが2球目

 

ズバアアンッ!!

 

伸びのある真っ直ぐが外低めにいき

 

「・・・。」

 

バッターは冷や汗を掻いていた。

 

(先程とはエラい違いや!真っ直ぐのタイミングで合わせな・・・!)

 

そう思って始動を早めようとしたが

 

「!」

 

次の球は緩いカーブだったため、腰砕けの姿勢で空振った。

そして

 

ズバアアンッ!!

 

3球目のインハイのボール球に空振り、三振を喫した。

 

松本「・・・ビデオで見たとおりや。本来の姿に戻っとるわ。」

 

これに、松本は冷や汗を掻きながら見ていた。

次の6番バッターには初球カーブでストライクを取って次の2球目

 

(真っ直ぐや!)

 

そう思って打ちにいったが

 

ストン!

 

「!?」

 

SFFに空振り

 

(何やと!?真っ直ぐと同じスピードで落ちよった・・・!!)

 

そして、3球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇の高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、この回は三者連続三振に抑え

 

惇「シャアアアッ!!」

 

それと同時に惇の雄叫びが響いた。

 

「うおっ!三者連続三振!!」

 

「この回は完璧だったぞ!」

 

「なんつー雄叫びだよ!」

 

「スゲー気迫!かつての片岡監督の再来だな!」

 

これに、ギャラリーは大盛り上がりだった。

これをベンチで見ていた

 

栄純「・・・。」

 

暁「・・・。」

 

栄純と暁は絶句した表情で見ており

 

春市「はは・・・やっぱり凄いね、足立君は。」

 

春市はただ賞賛の言葉を述べるしかなかった。

そして、この勢いで惇は残りの2イニング6つのアウトのうち5つを三振に打ち取り、被安打5の12奪三振1失点完投勝利をあげ、しかも7回から9回までの3イニングは無安打8奪三振という圧巻のピッチングであった。




投稿出来ました。

大阪桐生の練習試合を少しオリジナル風に書きました。

描写が下手くそで大変申し訳ございません(土下座)

7回の三者連続三振は、下記動画を参考にしました。

https://www.youtube.com/watch?v=7wO4F_v9uDw

本当は別の三者連続三振を使おうと思ったのですが、妥協して上記の動画のシーンをベースにしました。

それでは、また。


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32話

32話です。


大阪桐生と青道による2つの練習試合は、1勝1敗という形で幕を閉じた。

その日の深夜、本来無人であるAグラウンドに2つの影があった。

 

栄純「ハア・・・ハア・・・」

 

暁「スタミナ・・・コントロール・・・」

 

その影の正体は、栄純と暁だった。本来試合に登板したその日の夜は早めに休息を取り、疲れを翌日に残さない様にしなければならないのだが、2人は寝れなかった。今日の第2試合、午前の試合で被安打5の12奪三振1失点完投勝利というピッチングを見せた惇に続いて自分もと意気込んで試合に臨んだ。

暁の先発で始まったのだが、真っ直ぐしかないピッチングスタイルでは桐生に通用するわけなく、打ち込まれてしまい、コントロールも良い方では無く、守備でも悪送球やエラーを連発するなど5回で5失点した。しかし、途中御幸に教わったSFFを投げ、桐生の選手を驚かせ調子を取り戻した事が収穫材料でもあった。

その後に続いて栄純が投げ、栄純も暁同様惇に続けと意気込んでマウンドに登って投げたのだが、甘い球は悉く外野に運ばれ、守備でも暁同様悪送球やエラーとミスを連発し、残りの4回で4失点し、2人合わせて9失点し、最終スコアは9-7の敗戦だった。

しかし、逆に言えばバックの助けがあったとはいえ、桐生の強力打線を9点まで抑えたというのだ。

これには、大阪を代表する名将、松本監督も賞賛の言葉を送った。

とはいえ、惇は1失点に自分達2人は合わせて9失点。数字だけ見ればどちらが良いか一目瞭然。だからこそ、2人は悔しくてたまらないのだ。

 

栄純「うぉおおおっ!!」

 

暁「スタミナ・・・コントロール・・・スタミナロール。」

 

暁「あ・・・混ざった・・・」

 

栄純(コントロールもスタミナも、守備もバッティングも全然足りねー!もっと・・・もっと・・・!)

 

暁(ここまで差があるなんて・・・けど・・・負けない!)

 

決して諦めない。今はまだ遠いかもしれないけど、必ず追い付いてみせる!それだけの気持ちで、2人はタイヤを引きながら走ったのだった。

 

 

 

 

 

 

その様子を

 

倉持「ヒャハハハ!!何やってんだあの2人?登板したってのに良いのかよ、止めなくて?」

 

御幸「構わねぇよ。あの2人、アドレナリン出まくって寝れねーんだろ。足立同様アイツら明日登板しねーし。」

 

御幸と倉持は笑いながら見ていた。

 

倉持「ふーん。で・・・今日実際にどう思った、あの2人?」

 

御幸「2人共、球自体は悪くねぇよ。コントロールは悪かったけど、良いとこにいったボールは殆ど打たれてない。バックの助けがあったとはいえ、合宿の疲労で調子が良くない体であの桐生打線を二桁失点を防いだんだ。1年にしちゃあ上出来だ。」

 

倉持「へー。珍しく褒めるじゃねーか?」

 

御幸「あくまでも『1年』にしちゃあ、だ。けど、コントロールにフィールディング・・・2人には足りない物が多すぎる。正直あのままじゃ大事な場面は任せれねぇな。」

 

倉持「だよなー。」

 

倉持「ところでよ・・・ぶっちゃけた話、お前は丹波さんと足立どっちが選ばれると思う?」

 

すると、倉持がそう御幸に尋ねた。

 

倉持「皆気になってるぜ、どっちがエースナンバーを背負うのかってな。成績だけで見れば足立だけど、丹波さんも最近調子を上げてきてるしな。足立とお前、確かに足立も後輩にしちゃあ心臓に毛が生えてんじゃねーのかって思うくらい先輩のお前のサインに首を振ったりするけど良い感じだし。それに引き換えお前、丹波さんに嫌われてんじゃん。」

 

倉持「あの人も難しい人だけど、お前も後輩のくせに一歩も引かずズケズケ言うだろ。これじゃあ嫌われてしかたねーな。ヒャハハハ!!」

 

これに

 

御幸(コイツよく見てるなー。)

 

御幸は内心そう思い

 

御幸「投手と捕手2人合わせてバッテリーなんだ。先輩後輩関係ねーよ。」

 

御幸「投手をマウンドで輝かせる為なら、何だってするぜ。どんな嘘でも、どんな嫌われる事でもな。」

 

そう、決意の込もった目でそう言った。

 

倉持(コイツ・・・)

 

これに、倉持は何も言えなかった。

すると

 

御幸「おーい、お前ら!!明日も早えーし、あんま無茶すんなよ!!」

 

御幸「ま・・・2人で10点も取られたんだ。寝られなくて当然だけどな!!」

 

そう、悪そうな笑みを浮かべながら2人に言った。

これには

 

栄・暁「「!!」」

 

2人は目を見開き

 

御幸「さーて、もう寝るか・・・明日も早えーし。」

 

倉持「・・・。」

 

倉持はマジかというような顔をして御幸を見た。

 

栄純「ちょっ・・・待てコラ!!2人で9失点だー!!勝手に1点増やすなー!!」

 

暁「そーだ、増やすな!!」

 

また

 

倉持「お前、友達いねーだろ・・・?」

 

そう倉持は御幸に言った。

その翌日、チームにとって暗雲が立ちこめる事態が起こった。

それは、フォークを会得しエースとして目覚めつつあった丹波が、練習試合で顎にデッドボールを食らってしまうというアクシデントが起きたのであった。




投稿出来ました。

桐生との試合後を投稿しました。

栄純君と暁君の試合は纏まりませんでした。

成宮の登場や、丹波先輩の怪我も同様です。

文才が無く、大変申し訳ございません(土下座)

青道は、この苦難を乗り切れるのか・・・?

それでは、また。


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33話

33話です。


丹波の怪我があった翌日、外は大粒の雨が降っていた。

 

惇「・・・。」

 

信二「・・・。」

 

栄純「・・・。」

 

この日、1年C組の野球部達は、暗い表情だった。

 

栄純「・・・そう言えば、トーナメントが決まるのって、今日だっけ?」

 

信二「・・・ああ。哲さんと部長が行ってるよ。」

 

栄純「・・・そっか。」

 

惇「いよいよ始まるな・・・夏が。」

 

信二「・・・ああ。」

 

昨日の今日で、野球部は暗いままだった。

 

「ねえ、春乃。野球部の皆、どうしちゃったの?何か暗いけど・・・」

 

吉川「う、うん・・・ちょっとね・・・」

 

吉川(流石に昨日の今日だもん・・・丹波先輩・・・)

 

そのまま、放課後室内練習場に集まった。

この日、野球部全員集合したが

 

倉持「大丈夫か・・・先輩達・・・。昨日から全然元気ねーけど。」

 

御幸(同じ時間を過ごしてきた3年生にとって、昨日の事はショックがでかいだろうな。)

 

御幸(しかも一番士気を高めなきゃいけないこの時期に・・・)

 

3年生は暗いままだった。

暫くして、片岡が現れた。

 

片岡「お前らも聞いてると思うが・・・昨日のデッドボールで、丹波の顎の骨にはひびが入っている・・・」

 

片岡「幸い骨折には至らず、脳の方にも影響はないそうだが、予選には間に合わないかもしれん。」

 

この言葉に、3年生の顔は俯いた。

片岡は、拳を握りしめ

 

片岡「正直・・・俺自身まだ戸惑っているところもある。ようやくエースとして目覚めつつあっただけに、本人も悔しくて仕方ないだろう・・・」

 

そう、戸惑いの言葉を述べた。

しかし、片岡は真っ直ぐ見据え

 

片岡「しかし、これはチームの監督としての意見であり、決して一個人の感情で決めたわけではない・・・」

 

片岡「エースナンバーは丹波に渡す!!あいつが戻ってくるまで、チーム一丸となって戦い抜くぞ!!!」

 

そう力強く言った。

 

片岡「その上で、川上は勿論だが、足立、降谷、そして沢村。この1年生3人にも、投手としての出番が多くなるだろう。その時は3年が中心となり・・・この3人をバックアップしてやって欲しい。」

 

これに、3年生全員が頷いた。

 

片岡「頼んだぞ・・・」

 

「「「はい!!」」」

 

この時

 

惇(丹波さん・・・)

 

ある事を思い出していた。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

丹波「足立。少し良いか?」

 

惇「はい。何すか、丹波さん?」

 

丹波「足立。いつも思うのだが、お前はよく吼えるな。」

 

惇「え?えっと・・・鬱陶しいっすか?」

 

これに、惇は少し慌てた表情で言うと

 

丹波「いや、そうじゃない。言葉足らずで悪かった。」

 

丹波は慌てて弁明し

 

丹波「ピンチを凌いで吼える姿は、まさに俺にとって理想のエース象だ。そんなお前が羨ましい。ピンチを凌ぎ、結果を残すお前の強靱なメンタルに・・・」

 

丹波「それに比べて俺は、打たれてランナーを背負うと、いつも頭が真っ白になって自滅する・・・自分が情けない・・・」

 

そう、羨むように言った。

すると

 

惇「いやいや丹波さん。俺、メッチャ脆いっすよ。俺、登板の日は毎試合胃が痛くなるんすよ。」

 

惇は手を振ってそう言った。

 

丹波「そうだったのか?」

 

惇「ええ。酷い時は胃薬を飲まなきゃ駄目だった時もあったんすよ。」

 

丹波「何か・・・意外だな。」

 

惇「でも、背負えるもんは、逆に背負って行ったれって思いながら投げてますね。」

 

丹波「背負って行く・・・?」

 

惇「ええ。それで自分の力が出せるのなら、まあそれの方が俺にとって良いのであれば、そうしようって決めたんすよ。」

 

丹波「・・・。」

 

惇「俺個人としても、丹波さんはマジでスゲー良いピッチャーだなっていつも思いますよ。」

 

惇「背も高いから角度のあるボール投げれるし、俺には無い武器っすよ。」

 

丹波「フッ・・・この身長はお前にはやらんぞ。」

 

惇「うわぁ・・・ハッキリ言われたっす!」

 

丹波「フッ・・・」

 

惇「はは!」

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

惇(丹波さん・・・信じて待ってますよ・・・。エースナンバーを・・・チームの皆の思いを背負えるのは・・・丹波さんしかいないっすよ・・・)

 

惇(必ず戻って下さい・・・!)

 

そう思いながら、惇は拳を握りしめたのであった。




投稿出来ました。

丹波さんが怪我した後のお話を少しオリジナル風に書きました。

読みにくかったら申し訳ございません(土下座)

それでは、また。


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34話

34話です。


朝練を終えた惇は、制服に着替え、唯と一緒に登校した。

すると

 

唯「ねえ、惇君。」

 

惇「あ?」

 

唯「丹波先輩が怪我してから、3年生達元気ないね・・・今日の朝練も、声が出てなかったし。」

 

唯がそう俯きながら言った。

 

惇「・・・そうだな。まだ、心の中では吹っ切れてねーんじゃねーかな・・・」

 

唯「・・・大丈夫だよね?」

 

惇「え?」

 

唯「皆・・・元気になるよね?」

 

そう、唯は目を潤ませながら上目で惇を見て言った。

 

惇「・・・大丈夫だ。あの人達なら、きっといつもみてーな元気を取り戻すって。それと、丹波さんだって、きっと元気な姿で戻ってくるよ。俺は信じる。」

 

惇「だからお前も、そんな顔するな。」

 

これに、惇は唯の頭を撫でながら優しい声で言った。

 

唯「・・・うん。」

 

そのまま、唯は惇に頭を撫でられていた。

 

惇「落ち着いたか?」

 

唯「うん。」

 

惇「そっか・・・。そんじゃあ、俺は行くな。」

 

唯「うん!後、もうすぐ期末だから、ちゃんと勉強しとくんだよ!」

 

惇「わーってるよ!」

 

唯「良い!もし赤点取って追試になったらおばさんに報告するからね!」

 

惇「お、おいお前!!それはマジ勘弁してくれ!!」

 

唯「だったら、ちゃんと勉強する事!!分かった!!」

 

惇「・・・わーったよ。」

 

唯「返事は『はい』!」

 

惇「っ!はいはい!」

 

唯「はいは1回!」

 

惇「はい!」

 

惇(いつもの明るさが戻ってきたな・・・。けど・・・相変わらず昔と変わらず世話焼きだな・・・)

 

そう思いつつ、惇は少し笑みを浮かべていた。

そして、唯と別れ自身のクラスに入ると

 

栄純「ブツブツブツ・・・」

 

栄純がテキストを開いて必死な表情でブツブツ何か呟いており、その横には信二がいた。

 

惇「・・・おい信二。」

 

信二「ああ、惇。」

 

惇「ああ。これ・・・どうした?何があった?」

 

信二「もうすぐ期末だろ?にもかかわらず、コイツ今から必死に勉強してんだよ。」

 

惇「マジか・・・」

 

すると

 

栄純「じ、惇か⁉︎」

 

惇「うっす、栄純。」

 

惇に気付いた栄純が

 

栄純「惇~!金丸~!何とかしてくれ~!連日、クリス先輩の野球講義で頭パンパンなんだよぉ!」

 

涙を流しながら惇と信二の腕を取って言った。

 

惇「わ、わーった!!わーったから離せ!!」

 

信二「勉強くらい付き合ってやるから、この手を離せ!!」

 

そう、2人は言うと

 

栄純「え!?」

 

栄純は驚き手を離した。

 

惇「取り敢えず、日本史と現文古文は俺がやるから、信二は数学と英語をコイツに教えてやってくんねーか?」

 

信二「ああ、分かった。クリス先輩に頼まれてたしな。」

 

惇「助かる。」

 

信二「気にすんな。良いか、一夜漬けだろうが何だろうが、その頭に全部詰め込んどけ!!」

 

そう、信二は栄純の頭を指差して

 

栄純「・・・。」

 

信二「・・・惇やお前は、野球部の代表ってだけじゃねぇ。俺達1年の代表でもあるからな。全力でサポートしてやるよ!!」

 

惇(信二・・・)

 

そう言ったのであった。




投稿出来ました。

一部オリジナルを入れました。

試験・・・僕も学生時代はそれ聞いただけで気持ちがブルーになりましたね・・・

しかし金丸君って、本当に良い奴ですよね・・・。

何か、兄貴分みたいです。

それでは、また。


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35話

35話です。


食堂

 

 

 

 

惇「あ~、腹減った・・・何食うかな・・・」

 

授業が終わったある日、惇は食堂へ歩いていた。

すると

 

唯「あ、惇君。」

 

惇「唯か。」

 

唯が惇に声をかけた。

 

唯「食堂に行くの?」

 

惇「ああ。」

 

唯「なら、一緒に食べようよ。」

 

惇「ああ、構わねぇよ。」

 

唯「やった!それじゃあ、行こ。」

 

そして、一緒に食堂へ歩いた。

 

唯「ねえ。」

 

惇「ん?」

 

唯「テスト勉強、順調?」

 

惇「まあまあだな。ただ・・・栄純がな・・・」

 

唯「沢村君?沢村君がどうかしたの?」

 

惇「あの馬鹿、碌に勉強してねーから俺と信二が教える事になっちまってな。」

 

惇「けど、俺が予想した以上にヤバかった・・・」

 

そう、惇は頭を抱えながら言った。

 

唯「そ、そうなんだ・・・」

 

惇「ああ・・・流石に赤点取っちまったら一貫の終わりだしな・・・」

 

唯「そっか・・・でも、無理しないでね。」

 

惇「わーってるよ。」

 

そう言っていると、食堂に辿り着いた。

 

惇「お前先に頼みな。」

 

唯「うん。・・・よし、これにしよ。」

 

そう言い、唯はお金を入れてボタンを押し出てきた食券を取った。

 

唯「はい、どうぞ。」

 

惇「ああ。さてと・・・どれにすっかな・・・」

 

そう言い、お金を入れて券売機のメニューを見た。

 

唯「・・・。」

 

そして、決まったのか

 

惇「よし。そんじゃあ俺は・・・」

 

ボタンを押そうとすると

 

唯「焼き肉定食。」

 

惇「ああ?」

 

唯が横でそう言った。

 

唯「当たってるでしょ?」

 

これに

 

惇「・・・ちげーよ。」

 

惇は少し間を置きながら言った。

 

唯「嘘だー!絶対今変えたよね!」

 

これに、唯はそう返すと

 

惇「うっせえよ!俺はこのカレーの大盛りにすんぞ。」

 

惇はそう言いボタンを押して食券を取った。

 

唯「もぅ・・・素直じゃないなぁ・・・」

 

これに、唯は呆れた声でそう言ったのだった。

そして、空いてる席に座った2人は、頼んだ物を食べた。

 

惇「ふぅー・・・食った食った。」

 

食べ終わった惇は、満足そうに言うと

 

惇「にしても、食うの遅えなー、お前・・・」

 

唯を見てそう言った。

 

唯「良いの。味わって食べてるんだから。」

 

それを見た惇は

 

惇「・・・。」

 

惇「んじゃあ、俺が手伝って・・・」

 

手を伸ばしたら

 

唯「さてと、エビフライ食べよう。」

 

惇「ああ?」

 

唯はエビフライを口にした。

 

唯「・・・どうかしたの?惇君?」

 

これに、唯が疑問の顔を浮かべながら言うと

 

惇「別に・・・何でもねぇよ・・・」

 

と惇は返した。

しかし

 

惇「エビフライが駄目ならそっちの・・・」

 

惇は再び手を伸ばすと

 

唯「今度はパスタっと。」

 

惇「なっ!このっ!」

 

唯はパスタを口にした。

 

唯「・・・何、さっきから・・・?」

 

また、唯がそう言うと

 

惇「・・・別に。」

 

惇は再びそう返し

 

惇「そしたらデザートの・・・」

 

またまた手を伸ばすと

 

唯「そうだ、プリンを先に食べちゃお。」

 

惇「あっ!おいっ!」

 

唯はプリンを口にした。

すると

 

唯「フフッ・・・もう、思った通りに狙ってくるんだから。」

 

唯は笑いながら言った。

 

惇「ああ?思った通りってどういう事だよ?」

 

この疑問に

 

唯「私の食べてる料理を、惇君はどんな順番で狙うかなって考えてたんだよ。」

 

唯はそう答えると

 

惇「くっだらねー事考えてんじゃねーよ!」

 

惇はそう返した。

 

唯「だって、昔から私が食べてる料理をいつもつまみ食いするから、自然と身についちゃったんだもん!」

 

惇「んだそれ!」

 

その様子を見ていた

 

(夏川と仲が良いアイツ・・・彼氏か?)

 

(見たところ、1年か・・・イケメンじゃねーか!)

 

(くぅ~!羨ましい!)

 

(俺と代わってくれー!)

 

一部の男子はそんな事を思っていたのであった。




投稿出来ました。

完全オリジナル物です。

あるゲームのシーンを参考に書きました。

分かる人いるかな?

それでは、また。


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36話

36話です。


この日の練習。3年生は結城と伊佐敷を中心に以前のような元気、活気を取り戻した。

 

「キャプテンも純さんも、やっぱ気迫が違うな・・・」

 

「俺達も、もっと声を出していこうぜ!」

 

「おお!!」

 

その中で

 

カーン

 

春市のミート力は下級生の中でも別格だった。

 

前園「おいおい・・・あいつホンマよう打つな。」

 

高島(兄の亮介君に匹敵するミート力。練習試合でも結果を残し続けるその勝負強さ・・・)

 

高島(何より、彼が打席に立つと何かやってくれそうな期待感がある・・・)

 

高島(この子がベンチにいる事で、他の選手達にも十分刺激になってるわ・・・)

 

その中で特に

 

亮介(レギュラーのポジションを譲る気ないけど・・・)

 

亮介は特に刺激を受けていた。

 

 

 

 

 

 

ブルペン

 

 

 

 

 

 

ズバアアンッ!!

 

御幸「ナイスボール!もう1球、真っ直ぐ!」

 

惇「はいっ!」

 

御幸が、惇のボールを受けていた。

 

暁「前から思ってたけど、真っ直ぐの威力が全然違う・・・」

 

栄純「ああ・・・」

 

この様子を、暁はそう思いながら言い、栄純もそれに追随するかのように頷いた。

 

クリス「降谷のストレートが剛球なら、沢村はキレの良いクセ球。足立のアレは綺麗な縦回転のかかった、伸びのある球持ちの良いストレートだ。」

 

クリス「球威の降谷、クセ球の沢村、抜群のキレと伸びを兼ね備える足立。お前達は、それぞれ己の武器を磨き上げろ。」

 

クリス「そうすれば、自ずとお前達は全国で通用する投手になれる。」

 

そう、クリスは2人のやる気を更に向上させた。

それから数日後、期末試験を行い、テスト結果が返ってきた。

その結果・・・

 

栄純「うおおおお!き・・・奇跡だ!!」

 

栄純「惇!金丸!見てくれこれ!!見事な赤点回避!!」

 

栄純は何とか赤点を回避した。

 

惇「お、おいこれ・・・」

 

信二「ああ・・・全部ギリギリじゃねーか・・・」

 

惇「ヤマはらしといて良かったな・・・」

 

信二「ああ・・・。まあ・・・コイツにしたら頑張った方か・・・」

 

惇「そ、そうだな・・・」

 

しかし

 

暁「・・・。」

 

ずーん

 

春市「大丈夫だよ。大会前には追試してくれるって。」

 

暁は赤点だった・・・

 

 

 

 

そして、背番号渡す日。

 

片岡「今から背番号を渡す。呼ばれた者から、順に取りに来い。」

 

片岡「まずは背番号1、丹波光一郎!」

 

これに

 

丹波「!」

 

丹波(戦列を離れている自分に、エースナンバーを・・・?)

 

丹波は驚きのあまり固まった。

 

片岡「どうした?早く取りに来い。」

 

丹波「は・・・はい・・・」

 

そう言われ、丹波は取りに行った。

そして

 

片岡「焦らずに、じっくり治せよ・・・」

 

そう優しく言われ、受け取った。

元の列に戻った際、皆に丸坊主にした事を弄られたのだった。

 

片岡「続けるぞ。」

 

片岡「背番号2、御幸一也!」

 

御幸「はい!」

 

片岡「背番号3、結城哲也!」

 

結城「謹んで!」

 

片岡「背番号4,小湊亮介!」

 

亮介「はい!」

 

片岡「背番号5、増子透!」

 

増子「はい!」

 

片岡「背番号6、倉持洋一!」

 

倉持「あざす!」

 

片岡「背番号7、坂井一郎!」

 

坂井「はい!」

 

片岡「背番号8、伊佐敷純!」

 

伊佐敷「しゃらああ!」

 

そして

 

片岡「背番号9、足立惇!」

 

惇「はい!」

 

足立がライトのレギュラーに選ばれた。

これには

 

「アイツがレギュラー・・・」

 

「まぁ・・・足立は守備もバッティングも上手いからな・・・」

 

周りも納得の表情を浮かべた。

その惇を

 

栄純「・・・。」

 

暁「・・・。」

 

この2人はチラチラと見ていた。

その中でも背番号の発表は続き

 

片岡「背番号10、白州健二郎!」

 

白州「頑張ります!」

 

片岡「背番号11、川上憲文!」

 

川上「はい!」

 

そして

 

片岡「背番号18、降谷暁!」

 

暁も選ばれたが

 

片岡「追試はちゃんと受けろよ。」

 

と言われてしまった。

 

片岡「背番号19、小湊春市!」

 

春市「ペコリ。」

 

最後の背番号

 

片岡「そして最後に背番号20、沢・・・」

 

栄純「はい!!」

 

栄純が選ばれたのだが、名前呼ばれる前に返事をした。

 

片岡「・・・早いな。」

 

栄純「ありがとうございます!!」

 

片岡「記録員はクリス・・・お前に頼む。」

 

クリス「はい・・・」

 

そして、片岡は

 

片岡「それからマネージャー。お前達も本当によく手伝ってくれた。お前達もチームの一員として、スタンドから選手と一緒に応援してくれるな?」

 

そう言い、試合用のユニフォームをマネージャー達に渡した。

この粋な計らいに

 

唯「あー、貴子先輩泣いてる。」

 

藤原「泣いてない!」

 

貴子先輩は感極まって涙ぐんだ。

 

吉川「分かります。私分かりますよ。」

 

藤原「うるさい!」

 

片岡「皆も分かってると思うが、高校野球に次は無い・・・」

 

片岡「日々の努力も、流してきた汗も涙も、全てはこの夏のために!!」

 

そして

 

結城「俺達は誰だ・・・?」

 

「「「王者青道!!」」」

 

結城「誰よりも汗を流したのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「誰よりも涙を流したのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「誰よりも野球を愛しているのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「戦う準備は出来ているか?」

 

「「「おぉお!!!」」」

 

結城「我が校の誇りを胸に、狙うはただ一つ・・・全国制覇のみ!!行くぞぉ!!」

 

「「「おおおおおおっ!!!」」」

 

いつもの伝統のかけ声をした。

 

 

 

 

 

明治神宮球場

 

 

 

 

 

『これより、全国高校野球選手権、東西東京大会を開催致します。』

 

この開会式で、東西の東京の学校が集まった。

これに

 

栄純「す・・・すげえ人だな!」

 

栄純は驚きの声を上げた。

 

惇「開会式は西も東も全て集合すっからな。」

 

春市「うん。まずはここに戻ってくる事が目標だよね。」

 

この予選はわずか3週間足らず。これにより選ばれる代表は、東西それぞれ1校のみ。名門復活を懸けた、青道高校の夏が始まった。

 

暁「・・・。」

 

クラクラ

 

惇「お前、大丈夫か?」

 

暁「何か・・・人に酔った。」

 

惇「マジかよ・・・」

 

栄純「どんだけスタミナねぇんだよ!」

 

・・・始まった。




投稿出来ました。

遂に夏の予選が始まりました。

青道高校は、甲子園出場が叶うのか?

因みに背番号ですが

背番号1:丹波光一郎

背番号2:御幸一也

背番号3:結城哲也

背番号4:小湊亮介

背番号5:増子透

背番号6:倉持洋一

背番号7:坂井一郎

背番号8:伊佐敷純

背番号9:足立惇

背番号10:白州健二郎

背番号11:川上憲文

背番号12:宮内啓介

背番号13:門田将明

背番号14:楠木文哉

背番号15:樋笠昭二

背番号16:田中晋

背番号17:遠藤直樹

背番号18:降谷暁

背番号19:小湊春市

背番号20:沢村栄純

となっております。

一部いないメンバーもおりますが、それはお許しを。

それでは、また。


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37話

37話です。


開会式が終わった後、神宮を後にする青道ナインは

 

伊佐敷「ん?」

 

成宮「あ。」

 

稲実ナインと再会した。

すると

 

成宮「ああ~!た・・・丹波さんが、デッドボールのショックでハゲに・・・!」

 

成宮が丹波の頭を見てそう言いながら稲実の正捕手であり、キャプテンでもある原田の後ろに隠れた。

 

原田「隠れんな・・・。あの時は冷や汗が出たが、思ったより大事に至らなかったようだな。」

 

これに

 

伊佐敷「ったりめーだ!丹波の顔面は鉄よりも硬ぇ!!硬球なんかに負けるか!!」

 

結城「げんこつせんべい並だ。」

 

亮介「いや、それ割れるから。」

 

伊佐敷「ウチと当たるまで楽しみに待ってろコノヤロォ!」

 

そう、元気よく言った。

 

原田「お前ら元気一杯だな・・・」

 

その時

 

惇「お前、水飲むか?」

 

栄純「自分で歩けよ!」

 

春市「大丈夫?」

 

暁「無理・・・」

 

成宮(この声・・・?)

 

青道ナインの後ろから声が聞こえたので成宮は目を向けると

 

成宮「久し振りー!元気だった、足立?」

 

惇がいたため、笑顔で声をかけた。

 

惇「鳴さん。久し振りっすね。」

 

成宮「背番号は9か・・・流石だね。」

 

惇「稲実のエースナンバー背負ってる鳴さん程じゃないっすよ。」

 

成宮「はは!まあ、あの時の借りを返してもらうからな!首を長くして待っとけよ!」

 

そう、成宮は言った。

 

原田「お前ら、ウチと当たるまでコケんなよ!」

 

伊佐敷「それはこっちの台詞だ!!」

 

原田「決勝でな。」

 

結城「ああ、決勝で・・・」

 

そう約束を交わし、神宮を後にしたのだった。

そして、青道の初戦の相手は、米門西高校に決まり

 

片岡「初戦の先発は・・・1年降谷、お前で行く。」

 

先発は暁に決まった。

これには、周りも驚いて暁を見た。

 

片岡「川上。お前は試合中、いつでもいけるように肩を作っておいてくれ。」

 

川上「え・・・?」

 

片岡「これだけ大事な役割を頼めるのは、お前しかいないからな。」

 

川上「か・・・監督・・・」

 

片岡「頼むぞ。」

 

川上「はい!」

 

その横で

 

惇「気負わず行けよ。俺も先輩達もバットでお前を援護してやっからよ。」

 

暁「うん!」

 

惇は暁に笑顔でそう言い、グータッチをした。

 

栄純「んむむ・・・するってーと監督さん!自分もいつでもいけるように肩を作っておけば良いんすね!」

 

これに

 

片岡「・・・まぁ・・・そうだな。」

 

栄純「声小っさ!!」

 

片岡は小さい声で答えた。

そして、翌日の米門西戦。先攻の青道は、何と予想外のアンダースローの控え投手を相手にした。

この奇策に、米門西は2アウトを取ったが

 

『3番ライト足立君』

 

惇が打席に入ったその初球

 

キーン

 

「なっ!?」

 

(コイツ・・・マジで1年なのか・・・!?)

 

(打球が・・・速過ぎ・・・)

 

右中間を破る二塁打を放った。

そして、次の結城の連続二塁打で、青道は1点を先制し、その勢いで初回は10点を取った。

その裏

 

ズドォォン!!!

 

暁の剛速球を前に、米門西は三者連続三振に打ち取られ、それに動揺した相手は2回以降もずるずると失点を重ねた。

4回から栄純と川上の継投で相手を無失点に抑え、惇も2本のツーベースを含め全打席出塁の大活躍で見事暁を援護した。

春市も、この日代打で出場し、いきなりタイムリーを打つ活躍で1年生カルテットは躍動した。

その結果、青道は35-0の5回コールド勝ちで初戦突破を果たしたのであった。




投稿出来ました。

遂に夏の予選スタートしました!

初戦の描写ですが、纏められなかったのではしょりました。

すいません(土下座)

それでは、また。


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38話

38話です。


米門西戦の翌日。その試合で特に大活躍をした惇と暁は、日常生活に大きな影響を与えた。

まずは1-B前にて

 

「ほら、あの子じゃない?」

 

3年のチアの子3人が教室前に来ていた。

彼女らの目的は暁を見に来たのだが

 

「な・・・なんかマウンドと全然違うね。」

 

暁は本を開きながら寝ていた。

 

「でも本当に凄かったんだよ。絶対この先注目されるよ。」

 

「ねー!」

 

「あっ・・・あの子、19番の子だ!!」

 

今度は春市を見て

 

「可愛い!女の子みたーい!」

 

キャッキャしていた。

 

「良し!次は1-Cの教室だね!」

 

「うん!行こう!」

 

そして、1-Cの教室へ向かい、中を覗いたが

 

「・・・あれ?いないよ?」

 

目当ての者がいなかった。

その時

 

??「はいこれ!」

 

??「おおー!サンキュー!」

 

??「ちゃんと食べるんだよ!」

 

??「わーってるよ、唯!」

 

後ろから声が聞こえたので振り返ると、惇が唯から弁当を受け取っていた。

 

「あっ・・・あの子あの子!」

 

「足立君だね!」

 

「近くで見ると本当にイケメンだね~!」

 

「隣の子って、確か野球部のマネージャーの子だよね?」

 

「うん、2年の子だね。」

 

「えっ、どういう関係?呼び捨てでしかもタメ口で話してたし。」

 

「まさか・・・!」

 

これに、3人は色々憶測をした。

 

惇「すいません。教室入りたいんで、良いっすか?」

 

「あっ・・・ごめんね。」

 

すると

 

惇「あれ?3人とも、チアの方っすか?」

 

「え?そうだけど、何で・・・?」

 

惇「いや、見た事あるな~って思って。いつも応援ありがとうございます。スゲー力になります!元気な姿、またスタンドで見せて下さい!」

 

そう言い、惇は端整な顔に笑みを浮かべた。

これに

 

「「「はうっ♡」」」

 

3人は胸を押さえ目にハートを浮かべた。

 

唯「じゅ~ん~く~ん!何チアの先輩をナンパしてるのかな~?」

 

この時、唯が嫉妬の炎を身に纏い、むくれた顔で純の両頬を引っ張った。

 

惇「い、いへえいへえ!やめほ!はなへ!」

 

惇「ほほおへのひょうひふのまへ!」

 

唯「いいや!離さない!」

 

この様子を

 

(何か・・・羨ましい・・・)

 

(良いな~・・・)

 

周りは羨望の眼差しで見ていたのだった。

そして、練習の時間。

 

惇「ハッ、ハッ、ハッ。」

 

暁「ハッ、ハッ、ハッ。」

 

惇と暁がグラウンドを走っていた。

 

暁「ねえ・・・惇・・・」

 

惇「あ?」

 

暁「何か・・・ムシムシするんだけど・・・?」

 

惇「あ?まあ、今年は例年以上に暑ちーって言ったな・・・」

 

暁「・・・そうなの?」

 

惇「まあな・・・」

 

そして、ランニングが終わって

 

惇「ランニング終わりました、クリスさん。」

 

暁「ハア・・・ハア・・・」

 

クリスに報告すると

 

クリス「じゃあ2人共。すぐに肩を作ってブルペンに来い。」

 

暁「え?」

 

クリス「これで余計な力入らずに投げられるだろう?」

 

惇(考えてんなー、クリスさんは・・・)

 

高島「厳しい要求かもしれないけど足立君、降谷君。この夏を勝ち上がるには、貴方達の力が必要なの。」

 

高島「特に足立君。まだ投げてないけど、丹波君が戻ってくるまでの間、あなたがウチの実質エースよ。」

 

高島「気持ちを高く持って、いつでもいけるようしっかり準備しなさい。」

 

惇「うっす。」

 

そう言い、惇と暁はブルペンに行った。

 

その翌日、青道は3回戦を27-0の5回コールドで勝利し、4回戦に駒を進めた。

そして次の相手は、『精密機械』の異名を持つ台湾から来た留学生、楊舜臣擁する明川学園に決まったのであった。




投稿出来ました。

結構内容をはしょりました。

読みにくかったらすいません(土下座)

それでは、また。


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39話

39話です。


次の相手が明川学園に決まった翌日。倉持と亮介は、楊のような正確無比なコントロールとそれを活かしたクレバーなピッチングをする投手を揺さぶるためにバント練習をしていた。

その横で、結城らクリーンナップはフリーバッティングで力強い打球を飛ばしていた。

 

「おお~凄い・・・!」

 

「見てて気持ちが良いですね・・・!」

 

「大技だけじゃ無く、繋ぐ小技もしっかりしてますね・・・」

 

「やはり2試合連続で大量得点しただけの事はある・・・相手にとっては脅威でしょうな。」

 

「中でも飛び抜けてるのは、キャプテンの結城君・・・雰囲気ありますね。」

 

「プロのスカウトも注目してるんでしょ?」

 

「でも本人に全く興味が無いとか。」

 

「今は主将として甲子園出場を果たす事しか頭にないんでしょう。」

 

それを、周りの記者はそう思いながら見ていると

 

大和田「うわ~凄い数の記者!青道ってこんなに注目されてたんですね!」

 

1人の長身の女性記者が現れ

 

峰「大和田!当然のことを言うな!若い片岡監督の下、今年こそ名門復活なるか・・・他にも色々と記事にするネタが転がってるチームだからな。」

 

峰「まっ・・・今日来てる連中のお目当ては、1年の剛腕投手降谷暁と、未だ登板はゼロだが、バッターとしてチームの勝利に大きく貢献してる同じく1年の怪腕投手足立惇だからな!!俺達もブルペンに行くぞ。」

 

大和田「あ・・・はい!」

 

割腹の良い中年男性記者がそう言い、その者と共にブルペンに向かった。

ブルペンに到着すると、既に最前列は記者達で埋まっており、入れそうに無かった。

その前に

 

御幸「真っ直ぐ!」

 

惇「はい!」

 

惇と御幸がいた。

御幸に言われた惇は足を上げ、上から叩きつけるようなフォームから強烈な縦のスピン量を誇る真っ直ぐを投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

御幸「ナイスボール!」

 

「「「おぉ・・・!」」」

 

これには、記者から声が上がり

 

峰「・・・良いボールだ。」

 

峰も同様の声を上げた。

 

大和田「凄いボールですね・・・私、途中から浮き上がってるように感じましたよ!」

 

峰「打者から見たら、打ちづらいだろうな。あれ程の強烈かつ綺麗な縦回転の真っ直ぐを投げる投手はプロでも少ない。」

 

峰「それに、彼の真っ直ぐが中学であれだけ打てなかったのはボールの質だけじゃない。」

 

大和田「どういう事ですか?」

 

峰「彼は中学に入学してすぐに本格的に投手に転向した。」

 

峰「にもかかわらず、その頃から今のようなボールの片鱗が出ていた。だが、まだ当初は線も細く、コントロールも未熟だった。」

 

峰「それと、これが中学1年の時の彼の投球フォームだ。」

 

そう言うと、峰は懐から1枚の写真を取り出して彼女に見せた。

 

大和田「うわ~、今よりほっそいですね!・・・ってあれ?何か・・・低い?」

 

峰「ああ。彼の当時の癖だった右足に体重をかけて出て行くという癖だ。膝を曲げすぎてボールを低く放る為に自分がまず低くなってしまっていた為、右腰が落ちて肩も落ちていた。それでトップの位置が低くなり、ボールを前で叩いたんだ。」

 

大和田「それだと・・・」

 

峰「ああ・・・肩肘に負担が掛かって、最悪故障する危険性があった。現にこの当時の彼は、肩と肘の痛みに苦しんでいた。」

 

大和田「そうだったんですね・・・」

 

峰「それで、チームの監督とコーチから『上から叩け』、『右膝に土を付けるな』という2つのアドバイスを元にしたフォーム改造を行わせた。その結果、以前と比べて体重移動がスムーズになり、腰と肘、そして肩の位置が高くなり、ボールに綺麗な縦回転がかかってスピードとキレ、伸びが格段に良くなっており、変化球のキレも増した。」

 

峰「後、普通の投手のストライドは6足から6足半なのだが、彼はあの天性の股関節の柔らかさがあるため、7足分のストライドを誇り、上から叩きつけるように投げ下ろす。」

 

大和田「・・・それだと!」

 

峰「ああ。ただでさえあの伸び上がるストレートを打者により近くリリースされているんだ。それ故に球持ちが良い。だからより打ちにくいんだろうな。」

 

大和田「成程・・・だから彼は・・・!」

 

峰(それだけじゃない・・・他にも体の開きや足の上げ下げ、腕の振りやリリースポイントを微妙に変えたりしていると言っていた。)

 

峰(そのような技術も兼ね備える者は、他にも聞いた事が無い・・・)

 

そう考えているとその隣で

 

信二「テメェ・・・ワザとやってんだろ!」

 

栄純「すまん!」

 

栄純がピッチングをしていたが、フル装備の信二の背中に思い切り当ててしまった。

 

大和田「痛そう・・・」

 

峰(面白い投げ方をする子だなぁ・・・)

 

そのまた更に隣では、川上もピッチングをしており、丹波は片岡と一緒にネットスローをやっていた。

 

大和田「やはり、丹波君の故障の噂は本当なんでしょうか?」

 

峰「分からん。だとしたら今年も、厳しい夏になりそうだな。」

 

峰「いくら速い球が投げられるとはいっても、足立君と降谷君はまだ1年だしな。」

 

大和田「あれ?そう言えば、噂の剛腕投手は?」

 

しかし、何故か暁はいなかった。

 

惇「カズさん!」

 

御幸「ん?」

 

惇「暁探しに行っても良いっすか?」

 

御幸「ああ。流石に俺も我慢の限界だしな。」

 

これに、御幸は怒りの声で言った。

 

惇「では、ちょっと行ってきますね。」

 

御幸「ああ。」

 

そう言い、惇はブルペンを後にした。

暁は何処にいるのかというと

 

暁「くか~。」

 

室内練習場で寝ていた。

これを見つけた惇は

 

惇(マ・・・マジかよコイツ・・・!)

 

怒りで震えていた。

 

惇「起きろ!」

 

そう、怒りの声で言うと

 

暁「!」

 

暁は目を覚ました。

 

惇「テメェ何でそんなとこで寝てんだ!ランニングやったのか!」

 

暁「・・・うん。」

 

惇「じゃあ、さっさと準備しな!お前の投げ込みの時間だぞ!」

 

しかし

 

暁「いや、今日は蒸し暑いし、もうちょっと休んでから・・・」

 

そう暁が言うと

 

惇「ったりめーだろーが!夏なんだからよ!」

 

惇はそうツッコんだ。

 

惇(コイツ・・・マジで大丈夫か・・・?)

 

そう思いながら暁を連れて行った。

 

惇「そういやお前、昨日もメシ残したらしーじゃねーか。大丈夫か?マジ食わねーとぶっ倒れんぞ!」

 

惇「マジ今年の夏は猛暑なんだから、バテても知らね・・・っ!」

 

その時

 

惇(夏・・・?)

 

惇(確かコイツは北海道から来たんだった・・・)

 

惇(まさか・・・コイツ・・・初めて経験するここの夏の気温に体がついてきてねーのか!?)

 

惇は暁のもう1つの弱点に気付いたのだった。

この事を

 

惇「カズさん!」

 

御幸「ん?ああ、悪かったな。」

 

惇「いえ。それより、ちょっと耳に入れたい事が・・・」

 

御幸「どうした?」

 

惇は御幸に伝えた。

これを聞いた御幸は、その日暁の投げ込みを10球ほどで終わらせたのであった。




投稿出来ました。

楊君のフォームって、上○浩治さんをモデルとしてるらしいですね。

あの人も、マジコントロール半端なかったなぁ・・・。

真っ直ぐは伸びてたしSFFはキレてるし、テンポも良かったですね・・・。

凄かったなぁ・・・。

そ、それでは、また。



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40話

40話です。


片岡「明日の試合に備えて、今日はここまでだ!」

 

片岡「試合開始は午前10時・・・軽く体を動かし、8時半までに軽く球場入りする!明日も30℃を超えるようだから、自主練は程々に。睡眠もしっかり取っておくように。」

 

片岡「解散!」

 

「「「したぁ!!」」」

 

これに

 

栄純「もう終わり?明日試合なのに!!」

 

春市「いや・・・試合だからだよ・・・」

 

惇「アハハ・・・」

 

栄純は不満の声を上げ、それを春市がツッコみ、惇は苦笑いを浮かべた。

すると

 

クリス「足立。ちょっと監督室に来てくれ。」

 

亮介「春市!ティーバッティング、後で付き合ってよ。」

 

惇はクリスに、春市は亮介に呼ばれた。

因みに春市は、まさか亮介にそう声をかけられるとは思わなかったのか、少し緊張していた。

惇は、クリスに呼ばれ監督室に来ると、片岡の他に高島先生に川上がいた。

 

惇「何の用でしょうか?」

 

片岡「降谷の事だ。」

 

これを聞くと、惇はすぐ何かを察した。

 

高島「降谷君は、ここ最近の猛暑の影響か、疲れが溜まってると思うの。短いイニングとはいえ、2試合先発してるから。」

 

惇「しかし、前回のブルペンでアイツの球見たんですが、力は落ちてないんすよ。」

 

クリス「ああ・・・判断が難しいところだ・・・」

 

それを聞いた片岡は

 

片岡「足立。明日の試合はライトでスタメンだが、いつでも投げれるよう気持ちの準備をしておけ!」

 

惇「はい!」

 

片岡「川上も、明日は初回から準備しておいてくれ!」

 

川上「はい!!」

 

2人に準備するよう言った。

 

片岡(暑さから来る疲れやプレッシャー。これらは、勝ち上がるほどに当然つきまとう。)

 

片岡(だからこそ戦い抜くには、全員の力が必要なんだ・・・チーム全員の力が・・・)

 

そう、片岡は考えていたのだった。

そして翌日。球場に大勢の客が集まった。

それと同時に

 

吉川「暑いですねー。まだ朝の9時なのに。」

 

貴子「今日はまだまだ暑くなりそうね・・・」

 

気温も朝であるにもかかわらずどんどん上昇していった。

 

片岡「先発は降谷!準備は良いな!!」

 

暁「はい!」

 

片岡「それから、川上、足立、そして沢村!!お前達は、いつでもいけるように準備しておいてくれ!」

 

惇・栄・川「「「はい!」」」

 

これに

 

倉持「ん?今沢村の名前も挙げたよな・・・珍しい。」

 

倉持は片岡が栄純の名前を挙げた事に驚いた。

その横で、丹波は1人複雑な表情を浮かべたが

 

伊佐敷「何隅っこで小さくなってんだよ!!」

 

亮介「ピカ一郎はベンチでどかっと座ってなよ!眩しいから。」

 

増子「スキンヘッドは、頭皮の火傷に気を付けろ!」

 

伊佐敷らに励まされた。

 

結城「行くぞ!」

 

そして、グラウンドに入ると

 

「あっ・・・出てきたぞー!!」

 

「青道ナイン!!」

 

多くの声援に囲まれた。

 

御幸「まだ気温が上がりきらない午前中の試合で良かったな。」

 

御幸「これなら、いつも通り投げれんだろ!」

 

暁「・・・今日は最後まで投げるつもりですから!」

 

この宣言に

 

御幸(・・・ったく。コイツの場合、強がりじゃ無く本気で思ってるから怖ぇんだよな・・・)

 

御幸はそう思い

 

御幸「でも、いい加減ペース配分考えろよ!」

 

そう暁に言ったが

 

暁「・・・。」

 

御幸「コラコラ。何だその間は・・・」

 

変な間が入ったのだった。

そして、守備についた青道ナイン。先発は暁だったがその立ち上がり

 

「ボール!フォア!」

 

先頭打者の二宮に四球を出した。

 

惇(まさかと思うが・・・バット振る気ねーな・・・)

 

惇(球数投げさせて、アイツの自滅を狙う作戦か・・・)

 

惇「伊佐敷さん・・・」

 

伊佐敷「ああ・・・降谷の自滅を狙ってんな・・・」

 

これを、ライトのポジションから見ていた惇は、明川の作戦に気付いた。

そして、次の打者の橋本も四球を出してしまった。

 

唯「ああ、二者連続フォアボール!」

 

梅本「しかもワンバウンド!」

 

吉川「大丈夫でしょうか、降谷君?」

 

しかし、最後のボールはSFFだった。

その理由は、まだ会得して日が浅く、惇と比べて精度が低いため、落ち幅にムラがあるのだが、このボールを投げるときだけ力が抜けて腕がしっかり振れていたのだ。

御幸は彼の力みを抜こうとそのボールを要求したのだ。

そのまま次の大西の初球、暁は御幸のサイン通りSFFを投げた。

 

「ストライーク!」

 

「良いぞ、ナイスボール!!」

 

「腕振れてるぞ!!」

 

2球目、ド真ん中真っ直ぐを投げ、そして

 

「ットライーク、バッターアウト!!」

 

見逃し三振に打ち取った。

次の打者の白鳥にも、SFFを織り交ぜまた三振に打ち取った。

そして

 

『5番ピッチャー、楊君』

 

キーマンたる存在、楊が打席に立った。

初球は高めのボールを空振らせたが2球目

 

ズドォォン!!

 

楊の打席での気迫に暁に力みが戻ってしまった。

それを見た御幸は3球目にSFFのサインを出した。

しかし、そのボールは落ちる事無く

 

キーン

 

楊は捉えた。

 

御幸「ライト!」

 

打球は惇が守るライトに飛んだ。

惇は走って打球を追い、それを見た伊佐敷は、カバーリングを取った。

そして、落下点で惇は一気にスライディングキャッチを行い、ボールをグラブに収めすぐさま審判に捕球のアピールをした。

 

「アウト!」

 

一打で流れを持って行かれそうだったが、惇のファインプレーで阻止し、無失点に抑えた。

その後亮介にボールを渡し、帽子を拾うと

 

伊佐敷「ナイスプレーだ馬鹿野郎!」

 

伊佐敷は頭をはたいて言った。

 

倉持「ヒャハハ!ナイスプレーじゃねーかコノヤロォ!」

 

惇「はは!あざっす!」

 

倉持にも弄られながらベンチに戻った。

 

暁(お礼・・・言えなかった・・・)

 

そして、その裏の攻撃

 

キーン

 

楊「なっ!?」

 

惇は楊のアウトローのボールを捉え、ライト前に運んだ。

 

「ナイバッチー!」

 

「良いぞ、足立ー!」

 

楊(あのコースを逆らわずにあそこまで強い打球を・・・)

 

そして、次の結城にレフトの大きい打球を飛ばされたが、レフトのファインプレーにより、青道は無得点に終わった。

2回は、御幸のリードで変化球を織り交ぜるピッチングで球数は放られ、ランナーは背負うものの無失点に抑えた。

そして、回は進み4回に突入する前

 

片岡「足立。」

 

惇「はい。」

 

守備につく惇を、片岡が呼んだ。

 

片岡「この回、1人でもランナーが出れば、お前に任せる。」

 

惇「っ!」

 

この決断に

 

太田部長「えっ!」

 

クリス「っ!」

 

太田部長やクリスらは驚きの顔をした。

 

片岡「お前のその気迫のピッチングで、相手を封じ込めろ!」

 

この檄に

 

惇「はい!」

 

惇は目の色を変えて気迫のこもった返事をした。

 

そして、4回に突入すると、明川はバントによる揺さぶりで暁の体力を消耗させる作戦を取った。

この作戦に、暁もどんどん体力を削られていった。

 

御幸(こりゃあ、そろそろ代え時か・・・?)

 

御幸(こんな所で潰れてもらっちゃ困る・・・仕方ねーな。)

 

そう思い、御幸はミットを構えると

 

ズドォォン!

 

暁の球威がまた上がり、三振に打ち取って1アウトを取った。

 

御幸(バントさせるどころか、力でねじ伏せに・・・)

 

御幸(マジで不器用過ぎんだよ、お前・・・)

 

これに、御幸はそう思い、マウンドを見た。

 

暁(このまま先輩達の夏を終わらせてたまるか・・・!)

 

暁(最後まで、投げ抜くんだ・・・!)

 

その思いで、暁はボールを投げ

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

次の打者も三振に打ち取り、2アウトにした。

 

御幸(降谷。あと1人だ・・・ここで踏ん張れ!!)

 

しかし

 

「ボール!フォア!」

 

SFFでも力みは抜けず、四球を出してしまった。

その瞬間、片岡は動き

 

片岡「タイムお願いします。」

 

片岡「御幸・・・投手交代だ!」

 

そう指示した。

 

暁「!!」

 

これには、暁はショックのあまり呆然とした表情を浮かべたのであった。




投稿出来ました。

一部はしょった部分もありますが、ご容赦下さい(土下座)

次回は主人公の夏の公式戦初登板です。

それでは、また。


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41話

41話です。


投手交代を言った片岡。

 

「ここで投手交代かよ。」

 

「早くねーか?まだ4回だし、無失点だぜ。」

 

これには、スタンドは疑問を抱いた。

 

『青道高校、選手の交代をお知らせします。』

 

信二「やっぱりここは川上先輩か・・・」

 

東条「ロングリリーフになるけど、試合展開を考えたら仕方ないよ。」

 

この時、スタンドの皆はそう思っていたが

 

『9番降谷君がベンチに下がり、ライトの足立君がマウンドに。』

 

『ライトには、背番号10番の白州君が入り、9番ライト、白州君。』

 

『3番ピッチャー、足立君。』

 

このコールに

 

信二「マジかよ・・・!?」

 

東条「ここで足立・・・!?」

 

一部は驚いた。

 

藤原「この場面で足立君・・・」

 

梅本「はい・・・」

 

吉川「足立君・・・」

 

しかし

 

唯「・・・。」

 

唯だけ、落ち着いていた。

 

梅本「唯。やけに落ち着いてるね。」

 

これに、梅本はそう尋ねると

 

唯「いや、私も驚いてるよ。まさかこんな大事な場面で初登板を迎えるなんて思わなかったし・・・」

 

唯「けど、惇君なら大丈夫。私は、信じてる・・・」

 

唯は真っ直ぐな目でライトのポジションからマウンドへ駆ける惇を見た。

マウンドに着いた惇は

 

白州「はい。」

 

惇「あざっす!」

 

白州からグラブを受け取り

 

惇「暁、ボール。」

 

暁からボールを受け取ろうとした。

しかし

 

暁「・・・。」

 

惇「おい、暁。」

 

暁は動こうとしなかった。

 

結城「ベンチの指示だ。代われ、降谷!」

 

結城が言っても

 

倉持「おい!降谷!」

 

倉持が言っても

 

暁「・・・。」

 

暁はマウンドを降りようとしなかった。

 

「どうした?早く代わりなさい。」

 

これには、二塁審もそう言う程だった。

 

太田部長「か・・・監督。降谷がマウンド降りませんよ!」

 

クリス(降谷・・・)

 

倉持「絶対守って点取ってやるっつってんだろ!」

 

亮介「1年のくせに我儘すぎ!」

 

倉持「さっさとベンチで休んでろ!聞いてんのか!」

 

それでもマウンドを降りようとしない暁。

 

惇「・・・。」

 

それを見た惇は

 

惇「ライトから見てたけど、力みは抜けねーし、真っ直ぐも高くなっていく一方じゃねーか・・・」

 

惇「テメーがこのまま投げても、チームの足引っ張るだけなんだよ!さっさとマウンドから消えろ!」

 

暁「っ!」

 

暁にキツい言葉を放った。

これには

 

倉持「・・・。」

 

亮介「・・・。」

 

倉持と亮介はドン引きの表情を浮かべ

 

御幸「・・・。」

 

御幸でさえも、一歩引いてしまうほどだった。

そして、惇はグラブを暁の前に出すと、暁はボールを惇に渡し、マウンドを降りた。

その際

 

暁「ごめん・・・」

 

一言そう言い残し、マウンドを降りた。

 

惇(お前の気持ち、受け取ったぞ。俺も、皆も・・・)

 

その後ろ姿を、惇はそう思いながら見ていた。

すると

 

倉持「この場面でお前か!監督も思いきったな!」

 

亮介「けど・・・さっきは怖かったよ。」

 

倉持「結構ビビったぞ!」

 

御幸「はは!かく言う俺も!」

 

倉持「テメェもかよ!」

 

結城「俺も、正直ビビった・・・」

 

増子「うが!」

 

そう、皆はさっきの惇を思い出し、少し怯えていた。

 

惇「すいません。ああでも言わねーと、アイツ降りねーと思ったんで・・・」

 

御幸「成程。良し、思い切っていけ!」

 

惇「はい!」

 

そして、各守備位置に散り、惇もマウンドを均して投球練習を行った。

投球練習を見ている明川ナインは、作戦を変え、積極的に打つ作戦に変更した。

そして、惇はいつものルーティンの股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

 

御幸(リラックスしてるようだな・・・まずは一旦牽制を入れてみるか・・・)

 

そう思った御幸は、牽制のサインを出した。

それを見た惇は、1球牽制を入れ、再び御幸のサインを見た。

 

御幸(インコースに真っ直ぐ!バッターを仰け反らせろ!)

 

それを見て構えた惇。その瞬間

 

二宮(な・・・何だ・・・この寒気は・・・?)

 

打席の二宮は、惇の威圧感に寒気を感じた。

次の瞬間

 

ズバアアンッ!!

 

二宮(え!?)

 

インサイドに伸びのある真っ直ぐが投げ込まれ、空振りを取られてしまった。

 

楊(な・・・!?横から見ても凄まじい伸びだ・・・!これで1年だと!?)

 

ベンチで見ていた楊は、惇の真っ直ぐに目を見開き、ベンチにいる他の皆も絶句していた。

 

「な・・・何て真っ直ぐだー!!」

 

「さっきの降谷より凄いぞー!!」

 

「あれ何㎞出てんだよ!」

 

スタンドの観客も、惇の真っ直ぐを見て喚声を挙げていた。

2球目

 

ズバアアンッ!!

 

二宮「くっ!」

 

また同じコースを空振った。

 

二宮(な・・・何だよ・・・コイツの球・・・!?)

 

二宮(手元で浮き上がって・・・!?)

 

3球目

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

惇「シャアアアッ!!」

 

空振り三振に打ち取り、惇は雄叫びを上げた。

 

結城「ナイスボール!」

 

亮介「ナイピー!」

 

倉持「ヒャハハハ!ホント頼もしい奴だぜ!」

 

増子「うがっ!」

 

御幸(初登板だというのに、流石だな・・・)

 

クリス(降谷の想いを引き継いでしっかりと投げ抜いた・・・これは大きいぞ!)

 

春市「ナイスピッチ、足立君!」

 

栄純「おーし!おしおしおし!」

 

吉川「す、凄い・・・足立君!」

 

唯「ねっ!大丈夫だったでしょ!」

 

梅本「そ、そうね・・・!」

 

藤原「・・・。」

 

スタンドにいるマネージャー組も、唯を除いて絶句していた。

 

二宮「・・・。」

 

白鳥「き、気にすんなニノ!切り替えてこーぜ!」

 

二宮「あ、ああ・・・」

 

二宮(何なんだよあの真っ直ぐ・・・今まで一度も見た事ねー!あの雰囲気といい、打席に立つのが怖えー・・・!)

 

この打席で、二宮の心は折れていた。

 

楊(マズいな・・・流れが向こうに傾きかけてる・・・こちら側に持ち込もう・・・)

 

それを見た楊は、何とか流れを引き戻そうと考えた。

 

『4回裏、青道高校の攻撃は、3番ピッチャー足立君』

 

そして、惇が打席に入った。

 

楊(2巡目のクリーンアップ。ここからはより厳しく攻めさせてもらう!)

 

楊(それに、彼は先程のピッチングで勢いがある。挫くぞ!)

 

それを見た楊は、初球胸元に厳しいボールを投げた。

しかし

 

カキーン!

 

楊「なっ・・・!?」

 

惇はそのボールを上手く肘をたたんで完璧に捉えた。

その打球は、見事レフトスタンド最上段に飛んでいった。

 

信二「うおおおっ!!先制ホームランー!!」

 

東条「あの厳しいコースをスタンドイン!!」

 

前園「ナイバッチ、足立ー!!」

 

青道側スタンドは大盛り上がりで

 

藤原「す・・・凄いわね・・・」

 

梅本「は・・・はい・・・」

 

吉川「足立君・・・凄い・・・!」

 

唯「ナイスバッティング、惇くーん!!」

 

マネージャー組も、唯以外驚きの表情だった。

 

関口(嘘だろ・・・インハイギリギリのコースだったんだぞ・・・!?)

 

関口(それをスタンドに入れやがった・・・!)

 

惇がホームインすると、その後ろ姿を呆然としながら関口はそう思いながら見ていた。

 

結城「ナイスバッティングだ。」

 

惇「あざっす!」

 

結城「俺も続こう・・・」

 

惇(うわ~・・・何つーオーラ・・・)

 

春市「ナイスバッティング足立君!!」

 

伊佐敷「ナイスバッティングだコノヤロォ!」

 

亮介「あのコースをスタンドに入れるなんて・・・狙ってたの?」

 

惇「いえ・・・体が勝手に反応しました。入って良かったです・・・」

 

これには

 

倉持「か・・・勝手に反応って・・・」

 

倉持はドン引きしていた。

 

楊「・・・。」

 

一方の楊は、惇の一発で動揺したのか、いつもの正確なコントロールが乱れ、結城にツーベースを打たれ、その後も打ち込まれ続けていった。春市も途中代打で出場し、卓越したバットコントロールを見せた。

惇も4回途中から6回まで投げて7個のアウトのうち、4者連続を含む6つの三振を奪う快投を演じ、続く栄純と川上に繋ぎ、青道は9-0の8回コールドで勝利を収めたのであった。




投稿出来ました。

最後は思いっ切り駆け足で投稿しました。

大変申し訳ございません(土下座)

それでは、また。


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42話

42話です。


明川学園に9-0の8回コールドで勝利を収めた青道。

 

吉川「貴子先輩、勝った!勝ちましたー!」

 

唯「やったー!」

 

梅本「ッシャー!」

 

青道側は勝利に喜び

 

楊「・・・。」

 

明川は敗戦に涙を流す。

 

尾形「・・・。」

 

明川学園の監督の尾形は、一呼吸し

 

尾形「さぁ、整列ですよ!!胸を張って並びましょう!!」

 

そう選手に言った。

 

峰「4回裏、青道が先制点を取り、それをきっかけに青道打線が爆発・・・9対0。終わってみれば青道の完勝だったか・・・」

 

大和田「ナイスゲーム!」

 

峰(地力の差は確かにあった・・・だが青道側にとって大きかったのは、1年生3人でゲームを作った事・・・)

 

峰(更に恐るべきは、敵チームの心を完全にへし折った、足立君のピッチングとバッティング・・・。4回の足立君のあのピッチングとバッティングがきっかけで明川の戦意と楊君のピッチングのリズムが完全に崩れてしまった・・・)

 

この時、峰は惇の実力に恐れを抱いた。

 

「9-0で青道!礼!!」

 

「「「したぁ」」」

 

「青道!!」

 

「哲さーん!!」

 

「足立ー!!」

 

「惇くーん!!」

 

「降谷ー!!」

 

「降谷くーん!!」

 

「片岡さーん!!」

 

「今年こそ甲子園行けよ~!!」

 

「お前らなら行ける!!」

 

「また来るからな~!!」

 

こうして、青道は一番乗りでベスト8進出を決めた。

そして次の試合、西東京3強の一角であり、青道のライバル校でもある市大三髙と薬師との試合が始まろうとしていた。

 

惇「カズさん。」

 

御幸「ん?」

 

惇「薬師って、何かスゲー打ってるチームっすよね?」

 

御幸「ああ。ここまで一度もバントが無い超攻撃型のチーム。1回戦はコールド勝ち。去年の春から監督が替わって力を付けてきたチームだ。」

 

惇「そっすか・・・」

 

御幸「でもまぁ・・・総合力では市大が上だ。この試合は市大が勝つだろう・・・」

 

しかし、薬師の1年生バッター、轟雷市。この男のバットをきっかけに、青道か市大かに絞られていたブロックに波乱を巻き起こした。

それが証明されたのは、それから数時間後。

 

惇「・・・マジかよ。」

 

市大三髙が、薬師に乱打戦の末、サヨナラ負けを喫した。

 

「「「・・・。」」」

 

これには、青道ナインは驚きを隠せなかった。

 

片岡「この試合、全員で見ておいて良かったな。」

 

片岡「次の試合までに対策を立てる事が出来る。」

 

そう言い、青道ナインは球場を後にした。

惇は、栄純と暁のトイレの付き添いで春市と一緒だった。

 

栄純「あれ!?ウチのバスどこだっけ!!」

 

惇「こっちだ。早く行くぞ!」

 

暁「・・・み・・・水・・・」

 

惇「お前・・・マジ大丈夫か・・・」

 

その時

 

ブオン

 

強烈な風を切る音が聞こえたためその方へ向かうと、轟雷市とその父親で薬師の監督を務めている轟雷蔵がいた。

音の正体は、轟の素振り音だ。

 

惇「スゲぇスイング・・・」

 

春市「そうだね・・・」

 

そう思って見ていると

 

雷市「・・・今日のピッチャー・・・凄い気迫だった。」

 

雷市「あんな闘志剥き出しのピッチャーが・・・全国にいっぱいいるんだよな。」

 

雷市「・・・もっと・・・もっともっと・・・もっと打ちたい。」

 

雷市「全国にいるピッチャー全部打ちてぇ~!!纏めてぶっ飛ばしてぇ!!」

 

そう大声を出して言った。

これを聞いた

 

雷蔵「お前はプロの世界で飯食いてーんだろ、雷市・・・」

 

雷蔵「そうなりゃ、色んなピッチャーと毎日戦えるさ。」

 

雷蔵はそう言った。

さらに

 

雷蔵「取り敢えずセンバツ投手の真中は打ち砕いたんだ。後西東京でお前の相手になりそうなピッチャーは・・・」

 

雷蔵「稲城実業成宮鳴。コイツぐらいしかいねーな!!」

 

惇「!!」

 

栄純「!」

 

暁「!!」

 

そう、先に当たるはずの青道なぞ眼中に無いと捉えてもおかしくない発言をした。

 

栄純「あの野郎・・・!」

 

これに栄純は、怒りのあまりあの親子の元に行こうとしたが

 

惇「やめろ。」

 

栄純「惇!」

 

惇が止めた。

 

惇「ここで暴力沙汰を起こしてみろ!終わるぞ!」

 

栄純「けど・・・惇!」

 

惇「・・・グラウンドの上でねじ伏せるぞ!」

 

そう、惇は普段より強烈なオーラを出して言った。

 

栄純「あ、ああ・・・」

 

これには、栄純は大人しくなり

 

春市「あ、足立君・・・」

 

春市(足立君のあそこまで怒る姿、初めて見た・・・)

 

春市は、惇の怒りに冷や汗を流し

 

暁「・・・。」

 

暁は、先程の試合で降りようとしなかった自分にキツく叱られたことを思い出し、寒気を感じた。

そして、3人はそのまま青道のバスに行った。

余談だが、この事を春市は先輩達に伝えると上級生達は怒りを覚え、絶対にグラウンドで薬師を、あの親子をねじ伏せると誓ったのであった。




投稿出来ました。

そう言えば、ホークスの柳田選手、雷市君になりたいと思いあのフルスイングをしてるんですよね・・・。

僕自身、彼のバッティングを生で見た事あるんですが、凄いスイングでしたね・・・。

アレは確かに王さんの言う通り、真似しちゃいけないな・・・。

そ、それでは、また。


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43話

43話です。


センバツベスト8の市大三髙を破り、一躍台風の目となった薬師。

その後の4回戦も、圧倒的な攻撃力で都立千草をねじ伏せ、勢いのままベスト8進出を決めた。

これによって、7月27日の準々決勝は、青道対薬師に決まった。

選手達も、その結果を受け練習に熱を入れた。

 

 

 

 

 

 

準々決勝前日、ブルペン

 

 

 

 

 

 

 

栄純「おいしょー!」

 

栄純は先日同様、信二を打席に立たせて内角の練習をしていた。

 

信二(良いボールだ・・・明川戦でも好投してたし、自信付けやがったな。)

 

栄純「おしおしお~し!」

 

信二「騒ぐな!」

 

暁も

 

ズドォォン!!

 

暁(負けない・・・‼︎)

 

気合が入っているのか、いつもよりボールが唸っていた。

その隣では

 

惇「ふぅー・・・んっ!」

 

ズバアアンッ!!

 

惇が投げていた。

いつ見ても強烈な縦回転を誇る快速球なのだが

 

惇「ちっ・・・くそ!」

 

惇は不満そうなのか、舌打ちをしていた。

 

惇(ちっ・・・上手くコントロール出来ねー・・・!)

 

そう思い、惇は右手の親指で、右手の人差し指と中指を軽く擦っていた。

 

御幸「まだ違和感あるのか?」

 

その様子を見た御幸は、惇にそう尋ねると

 

惇「そうっすね・・・」

 

少し不満そうに惇はそう返した。

別に惇は怪我をしたとかフォームを崩したわけでもない。

 

御幸(そう言えば先月の大阪桐生との練習試合の時からだったな・・・)

 

それは大阪桐生との練習試合での事だった

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

7回に桐生を3者連続三振に打ち取った後のベンチ。

 

御幸「ナイスボール!」

 

惇「あざっす!」

 

御幸は、惇の圧巻のピッチングにそう褒めた。

 

御幸「舘さんを三振に打ち取ったボールも凄かったが、最後のボールもそれ以上に凄かったぞ!」

 

惇「いやぁ・・・結構良い感じに指にかかったんすよね。」

 

惇「いつも以上にしっかり伝わったというか・・・凄く良かったんすよね。」

 

御幸「成程な・・・次のイニングも頼むぞ!」

 

惇「うっす!」

 

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

あの日以来、惇のボールのキレが更に増していったのだ。

 

御幸(あの練習試合以来、ボールのキレと伸びが急激に増した・・・多分だが、球速も上がっている筈だ・・・)

 

御幸(現に俺の左手もコイツのボール受けて痺れてるし・・・)

 

そう思った御幸は、少し苦笑いをマスク越しで浮かべた。

 

御幸(本人としては非常に良い感覚なんだろうけど、もどかしいだろうな・・・更にコツを掴んだというのに、上手く扱いきれてねーんだから。)

 

そう思いながら、マウンドを見た。

そこには、首を傾げながら右手の指を擦り合わせて感覚を確かめている惇の姿だった。

 

御幸(あまり声を掛けない方が良いかもしれねーな・・・かえって邪魔になるかもしれねーし・・・)

 

そう思っていると

 

惇「カズさん。もう1球お願いします!」

 

マウンドから惇の声が聞こえた。

 

御幸「ああ。もう1球、真っ直ぐ来い!」

 

そう言い、御幸はミットを構えたのだった。

 

 

 

 

 

同時刻

 

 

 

 

 

片岡「どうだ?今の状態は?」

 

丹波「まだ、以前のような状態には戻れていません・・・」

 

片岡「・・・そうか。」

 

片岡が、丹波に今の状態の確認を取っていた。

丹波は、自信の状態が戻れない事に目に光を失っていた。

 

片岡「・・・明日の先発、足立に任せるつもりだ。」

 

丹波「・・・。」

 

片岡「とはいえ、アイツも多少なりとも疲労が溜まっているやもしれん。」

 

片岡「だから、明日の試合は点差問わずお前に投げさせるつもりだ。青道のエースであるお前をな。」

 

丹波「っ!?」

 

片岡「お前の3年間・・・それを俺に見せてくれ。」

 

片岡の言葉に、丹波の目に光が戻った。

 

片岡「頼むぞ。」

 

丹波「はい!」

 

そう、片岡は丹波に言い、丹波も気持ちのこもった返事を返したのであった。




投稿出来ました。

完全オリジナル物です。

上手く書けたか分かりませんが・・・。

さあ、薬師戦はどうなるか?

それでは、また。


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44話

44話です。


7月27日。準々決勝。スタンドには多くの観客が入っていた。

そんな中、スタメンオーダーを見ると

 

伊佐敷「あ!?何だこのオーダー!!ふざけやがって!市大の時とまた変わってんじゃねーか!!」

 

クリス「早速仕掛けてきましたね。」

 

片岡「ああ・・・」

 

薬師のスタメンオーダーの1番が、市大戦で4番を打った轟雷市になっていた。

他にも、2番に秋葉、3番に三島になっているなど、明らかに変わっていた。

 

惇「・・・。」

 

御幸「あんまり熱くなりすぎるなよ、足立。」

 

御幸「今日の試合は、自分のピッチングを貫けよ。」

 

惇「うっす!」

 

栄純「安心しろ!もしお前が打たれたら俺が・・・!」

 

暁「いや、僕が・・・!」

 

栄純「うっせ!スタミナねー奴は投げんじゃねー!」

 

暁「・・・。」

 

栄純「無視すんな!」

 

こう、また栄純と暁の言い合いが始まった。

 

春市「ち、ちょっとやめなって!」

 

惇「はは・・・いつも通りっすね。」

 

御幸「ああ・・・」

 

『只今より、準々決勝、青道高校対薬師高校の試合を始めます。』

 

雷蔵「良いか!ここから先はテメェらの仕事だぞ!!テメェの為に打て!!テメェの為に守備につけ!!」

 

雷蔵「そんで、勝利の味ってヤツをしこたま味わいやがれ!!」

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

片岡「その1球に、その1歩に、そしてその一振りに、お前達の全てが映る。」

 

片岡「迷いは要らん!!自分達の野球を信じろ!!」

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

そして、両校整列すると

 

「「「・・・。」」」

 

雷市のみ、青道ナインから強烈に睨まれていた。

これに

 

真田「お前メッチャ睨まれてんじゃん。」

 

雷市「・・・。」

 

三島「何かやったのか、雷市・・・」

 

真田と三島が聞く程だった。

 

「礼!」

 

「「しゃあぁす!!」」

 

そして、後攻の青道は各守備位置に散った。

 

藤原「今日の先発、足立君か・・・」

 

吉川「大丈夫でしょうか・・・」

 

藤原「一応、初先発だからね・・・前の試合でも初登板だったし・・・」

 

梅本「唯。そこんとこどう思う?」

 

唯「惇君、元々先発の方が調子が良いんだよね。」

 

梅本「そうなの?」

 

唯「うん。大丈夫だと思うけど、油断は出来ないね。」

 

梅本「そうだね・・・」

 

唯(惇君・・・頑張って!)

 

唯は、メガホンを持ちつつ御守りをギュッと握りしめた。

隣では

 

高島(さあ・・・今大会初先発の足立君の立ち上がり。大事よ、御幸君・・・)

 

高島(しかも1番からいきなり・・・)

 

高島先生が真剣な表情で素振りをしてる雷市を見ていた。

 

惇「マジやってくれますね。」

 

御幸「ああ。初っ端からアイツと勝負。起爆剤どころか核弾頭だぜ・・・」

 

惇「そっすね。」

 

惇「ま・・・いつも通りねじ伏せてやりますよ。」

 

御幸「フッ・・・頼むぜ、足立。」

 

そう言い、御幸はキャッチャーボックスに戻った。

 

雷市「カハハ!」

 

雷市が打席に入る中、惇はいつものルーティンの股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

 

栄・暁((惇・・・))

 

川・丹((足立・・・))

 

栄・暁・川・丹((((そいつをねじ伏せろ!!))))

 

そんな中、青道投手陣は、マウンドの惇を見てその思いで見た。

 

「プレイボール!」

 

そして、足を上げた惇が投げた初球は

 

ズバアアンッ!!

 

インハイの真っ直ぐで、雷市はそれを空振った。

 

「来た来た来たァー!!」

 

「この球だよ!!この球を見に来たんだよ!!」

 

「轟が振り遅れてんぞー!!」

 

観客は、明川戦で見せた惇の真っ直ぐが見れて、興奮した。

 

信二「気合入ってんじゃねーか足立の奴!!」

 

前園「轟を思いっ切り空振らせたで!」

 

青道側スタンドも、同じように盛り上がった。

 

雷市「ハハ・・・カハハハハ!!スゲぇ・・・浮き上がってきた!!」

 

雷市「スゲぇ・・・スゲぇぞ!!」

 

これに、雷市は独特な笑い声を出していた。

 

雷蔵「マジかよ・・・雷市が空振る姿、初めて見たぜ。」

 

真田「そうっすね。」

 

三島「ヤバいっす・・・」

 

秋葉「・・・。」

 

御幸(空振りしたとはいえ、強烈なスイングだな・・・)

 

しかし、御幸は冷静にそう見ながら惇にボールを返した。

次の2球目。惇は外低めに真っ直ぐを投げたが

 

キーン

 

惇「っ!」

 

「ファール!」

 

三塁線に鋭い打球が飛んだ。

 

雷市「カハハハハ!!スゲぇ・・・!!こうか・・・‼︎」

 

御幸(2球目でもう当ててくるなんてな・・・)

 

そう思った御幸は、マウンドに目を向けたその瞬間

 

御幸「っつ!?」

 

背筋から悪寒が走ったのだった。

 

御幸(あ・・・足立?)

 

そこには、今までよりも遙かに凌ぐ威圧感を剥き出しにしながら立っている惇がいた。

 

雷市「っ!?」

 

これには雷市も感じており、一瞬硬直してしまった。

惇はそれに構わず3球目を投げてきた。

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

その結果、雷市は対応に遅れ真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

惇「シャアアアッ!!」

 

同時に、惇の雄叫びが響いた。

 

「うおおおっ!!空振り三振!!」

 

「轟を打ち取ったぞ!!」

 

「なんつー雄叫びだ!!」

 

「つーか、さっきから威圧感半端ねー!!」

 

これには、球場中大盛り上がりで

 

結城「ナイスボール!」

 

亮介「ナイピー!」

 

倉持「良いぞ足立!」

 

増子「うが!」

 

伊佐敷「良いぞ足立コラァ!!」

 

バックも一瞬固まったが、惇に声援を送った。

 

栄純「・・・。」

 

普段騒がしい栄純も、これには言葉を出せず

 

暁「・・・。」

 

暁も、唖然とした表情だった。

 

片岡「・・・。」

 

片岡も、惇の姿に冷や汗を流しており

 

クリス(桐生との練習試合から、ボールのキレと伸びが増していると薄々感じてはいたが、ここまでとは・・・!)

 

クリス(それに・・・あの威圧感・・・今まで見た事が無い・・・!)

 

クリスも同様だった。

青道側スタンドも

 

前園「な・・・ナイスボール!!」

 

信二「な・・・何つー威圧感だ・・・!!」

 

東条「ここからでも気迫が伝わってくるね・・・!!」

 

惇の気迫に驚きつつ、声援を送っていた。

 

藤原「・・・。」

 

吉川「・・・。」

 

梅本「・・・。」

 

藤原と吉川、梅本に至っては、絶句したままだったが

 

唯「惇君・・・」

 

唯は、ホッとした表情を浮かべていた。

 

高島(まさか・・・あそこまでのキレと伸びになっていたとはね・・・)

 

高島(とはいえ、これは大きいわね・・・!)

 

高島先生も、驚きつつも相手にダメージを与えた事を感じていた。

 

雷蔵「なっ・・・!?」

 

雷蔵(雷市が・・・空振り三振・・・!?)

 

雷蔵(何だよ・・・あの気迫と威圧感は・・・!)

 

真田「ホントに1年かよ・・・」

 

秋葉「雷市が・・・空振り三振・・・!?」

 

三島「んだそれ・・・」

 

薬師側も、雷市の三振に動揺していた。

 

御幸(これは大きい・・・この威力なら、相手を抑えられる・・・)

 

御幸(ねじ伏せるぞ!)

 

そう思った御幸は、真っ直ぐを中心としたリードにし、惇もそれに応え、続く秋葉と三島も真っ直ぐで三振に打ち取り、初回を3者連続三振に打ち取る最高の立ち上がりとなった。

 

結城「ナイス立ち上がりだ!」

 

惇「うっす!」

 

伊佐敷「良いじゃねーかコノヤロォ!」

 

倉持「ヒャハハハ!!やるじゃねーか!!」

 

惇「あざっす!洋さん!けど痛いっす!」

 

これに、惇は周りから手荒い祝福を受けていた。

 

クリス「これは大きいですね。」

 

片岡「ああ。相手にもダメージを与える事が出来たな。」

 

そして、その裏の青道の攻撃は、倉持が出塁して二塁に盗塁をし、亮介が送って一死三塁となり

 

キーン

 

惇が左中間に先制タイムリーツーベースを放った。

そして、その勢いのまま青道は3点を先制したのであった。




投稿出来ました。

ちょっとグダグダになってしまいました・・・。

読みにくかったらすいません(土下座)

因みに主人公の惇君の変化ですが

球速:140㎞→143㎞

ノビA→怪童

に進化した感じです。

つ、強いよと思った方、これはオリ主最強小説なので・・・(震え)

そ、それでは、また。


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45話

45話です。


2回の表の薬師の攻撃。先頭は4番の山内だが

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

山内「くっ・・・!」

 

山内(なんつー伸びしてんだよ・・・!これで1年って反則だろ・・・!)

 

真ん中高めの真っ直ぐに空振り三振を喫した。

 

「よ、4者連続!?」

 

「なんつー真っ直ぐだよ!?」

 

「全く当たんねーぞ!!」

 

これには、観客は益々驚きの声を上げていった。

 

信二「ナイスボール足立!」

 

前園「エエ球や!どんどん攻めたれ!」

 

梅本「っしゃー!」

 

吉川「足立君凄い!」

 

唯「惇くーん!」

 

藤原「ナイスピッチ、足立君!」

 

青道側スタンドも大盛り上がりだった。

 

真田「ウチの打線が真っ直ぐ当たんないなんて、初めてっすね。」

 

雷蔵「ああ・・・マジ笑えねーよ。」

 

雷蔵と真田は、引き攣った顔を浮かべていた。

次の福田の初球

 

ズバアアンッ!!

 

真っ直ぐを投げた。

 

福田「な・・・何だよこの球・・・本当に1年かよ・・・」

 

これには、福田も引き攣った表情を浮かべながら御幸に呟くと

 

御幸「1年です。」

 

と返された。

 

福田「反則だろ・・・」

 

そう、福田は弱々しい声で呟いた。

そして

 

ズバアアンッ!!

 

福田(あ・・・当たる気しねぇ・・・)

 

またまた三振に打ち取った。

 

「ご・・・5者連続!?」

 

「足立が止まらねぇ!!」

 

「このまま一気にいっちゃえー!!」

 

結城「ナイスボール!」

 

亮介「ヒマで仕方ないよ。」

 

倉持「ちょっとは打たせろよ!」

 

伊佐敷「全然飛んでこねーからヒマで仕方ねーよ!!」

 

これには、バックもそう惇に注文つける程だった。

次の三野でやっと打球が前に飛んだが、ボテボテのセカンドゴロに終わり、3アウトチェンジとなった。

その裏の青道の攻撃は、7番伊佐敷のヒットから1点追加され、4-0となった。

3回に突入しても、惇の勢いは止まらない。

7番の渡辺は空振り三振。8番小林はキャッチャーフライ。9番大田は見逃し三振に終わり、この回も薬師は三者凡退となった。

その裏。先頭の亮介は11球粘り、インローのスライダーを捉えるもショートライナーに打ち取られ1アウトとなったが次の惇は

 

キーン

 

前に続いてツーベースを放ち一死二塁となり続く結城が

 

キーン

 

連続ツーベースを打ち5-0とした。

これを見た雷蔵は

 

雷蔵「ナベ~!」

 

キャッチャーの渡辺を呼んでピッチャー交代を指示した。

そして、背番号18ながら薬師の実質的エース、真田俊平がマウンドに上がった。

その瞬間、薬師の雰囲気が変わった。

 

クリス「間違いないですね。」

 

片岡「ああ。」

 

真田「1アウトランナー二塁・・・打席はパワーヒッターの5番・・・」

 

真田(マジで激アツ!!)

 

そう思い、真田は躍動感あるフォームで投げた初球は右バッターの内角に抉るシュートだったが

 

ガッ

 

真田「あっ・・・」

 

増子のエルボーガードに当ててしまい、死球を与えてしまった。

続く御幸も、この勢いに乗って決めようとしたが

 

御幸(な・・・!?)

 

チャンスに強い御幸がゲッツーに打ち取られてしまった。

ベンチに戻った御幸に対し

 

片岡「今の球は?」

 

と尋ねると

 

御幸「恐らくカットボール。」

 

と答えた。

 

栄純「カットボール?」

 

惇「バッターの手元で突然小さく曲がる変化球だ。球速はまっすぐとほぼ変わらず、バットの芯を外して打たせるボールだ。」

 

クリス「所謂ムービングの一種だな。」

 

栄純「!」

 

惇「左右の違いはあるが、お前にとっては良い手本だな。」

 

春市「うん。栄純君と違って意図してボールを動かしてるからね。」

 

これに

 

栄純「ぐぅ・・・」

 

悔し涙を浮かべた。

 

御幸「けど、まぁこんだけ早くエースを引っ張り出せたんだから、攻略の手はいくらでも見つかるさ。」

 

惇「そっすね。」

 

惇「栄純。お前には、お前の持ち味があんだろ。ああいうムービング使いになれるのを信じてっからな。」

 

惇「だから、頑張れよ!」

 

栄純「!あ、ああ!」

 

惇の激励に、栄純は元気を取り戻し

 

暁「・・・。」

 

暁も何か催促するかのように惇を見た。

 

惇「・・・お前もあんな感じに信頼されるように頑張ろうな。」

 

暁「・・・!」

 

すると、分かりやすく明るくなった。

 

御幸「この回の先頭は轟からだ。自分のピッチングをな。」

 

惇「うっす!」

 

倉持「奪三振ショー、期待してんぞ!」

 

亮介「でもたまにはこっちにもボール飛ばしてね。」

 

結城「リードしてるのはこっちだ。思い切り投げろ!」

 

伊佐敷「生きの良い雄叫び見せやがれ!」

 

そう言い、各守備位置に散った。

そして

 

『1番サード、轟君。』

 

「第2ラウンドだ!」

 

「前の打席では足立に軍配が上がった。この打席は!」

 

雷市が打席に立った。

 

雷市「打つ!ゼッタイに打つ!」

 

そう、雷市は勇んで打席に立った。

しかし

 

ズバアアンッ!!

 

雷市「っ!!」

 

初球の惇の真っ直ぐに、雷市は全く反応が出来なかった。

 

惇「悪ぃな、轟・・・」

 

そう、惇は呟くと今度も真っ直ぐを投げた。

そのボールも、雷市のバットは全く当たらず、空を切るだけだった。

 

惇(やっべぇ・・・体軽ぃ・・・)

 

身体が軽く、いつもより更にスムーズに指先に力が伝わっていき、ボールが走っていた。

そして

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

惇「シャアアアッ!!」

 

雷市を再び三振に打ち取り、今日2度目の雄叫びを上げた。

 

「うおおおっ!!また三振だー!!」

 

「スゲぇー!!マジスゲぇぞー!!」

 

「何㎞出てんだ!!」

 

御幸(たはは・・・こりゃあスゲぇな・・・受けてる俺もびっくりだわ・・・)

 

マスクを被ってる御幸も、苦笑いを浮かべていた。

 

太田部長「ぜ、絶好調じゃないですか、足立!!」

 

クリス「ここまでとは思いませんでしたね・・・」

 

片岡「ああ・・・」

 

片岡も、腕を組んで見ているが、背中は冷や汗でびっしょりだった。

そして

 

秋葉「くっ!」

 

続く秋葉はサードゴロ。

 

三島(くっ・・・当たらねー!!)

 

三島は空振り三振に終わり、またまた3者凡退となった。

 

雷蔵(・・・まさか雷市がこうも相手にならねぇなんてな。)

 

そうベンチで座って冷や汗を流しながら見ている雷蔵。

ベンチ内でも、重苦しい雰囲気が漂っていた。

しかし、そんな雰囲気を振り払うかの如く

 

真田「っし!」

 

真田も青道打線を抑えた。

5回に入り

 

キーン

 

惇「やべっ・・・」

 

先頭の山内が2球目のスローカーブをセンター前に運び、チーム初ヒットを放った。

 

小林「ナイバッチー!」

 

渡辺「こっからこっからー!!」

 

大田「続けー!!福田ー!!」

 

この初ヒットに、先程まで暗かった薬師のベンチが明るくなった。

これに、御幸はマウンドに駆け寄って

 

御幸「まだ点差はある。切り替えていけ。」

 

そう声を掛けた。

 

惇「いやぁ~、さーせん!でも、ちっと気持ち的に楽になったっすね。」

 

しかし、惇は特に気負っている様子は無かった。

 

御幸「なら安心だ。いつも通り、ねじ伏せてやろうぜ。」

 

そう言い、御幸は元の位置に戻った。

初ヒットで盛り上がった薬師だが

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

惇「うらあああっ!!」

 

後が続かずこの回無失点に終わった。

その頃、青道側ブルペンでは

 

パァン

 

丹波が肩を作っていた。

それを受けた宮内は

 

宮内(ここ最近じゃ、一番球が走ってる・・・)

 

丹波の状態の良さを感じていたのだった。

5回の裏の青道の攻撃は、真田の力投により0に抑えられてしまい、6回に入った。

6回に入っても

 

ズバアアンッ!!

 

大田「くっ・・・!」

 

大田(全く落ちてねー・・・!)

 

惇の真っ直ぐの伸びは落ちる事無かった。

そして

 

『1番サード、轟君。』

 

雷市との3度目の対決を迎えた。

 

雷市「・・・。」

 

しかし、この打席の雷市は、いつもの特徴的な笑いや勇んでいくような姿はどこにも無く、表情も強張っていた。

 

御幸(かなり硬い顔してんな・・・この様子じゃ、打ち取れるな・・・)

 

雷市の様子を見てそう思った御幸は、ミットをド真ん中に構えた。

 

惇「!」

 

御幸(完膚なきまでにコイツを打ち取れ!奴らの心をへし折るぞ!)

 

惇「・・・。」

 

この思いを察した惇は、ニヤッと不敵な笑みを浮かべ、初球真っ直ぐを投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

雷市「!」

 

これに、雷市は空振り続く2球目

 

ズバアアンッ!!

 

同じ球、同じコースをまた空振り追い込まれた。

 

雷市(う・・・打たなきゃ・・・!打たなきゃ・・・!)

 

そう、雷市は構えるが、その姿は怪物スラッガーの如き雰囲気は最早無かった。

そして

 

ズバアアンッ!!

 

雷市「!」

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

3球連続ド真ん中真っ直ぐに空を切り、空振り三振に打ち取られた。

 

雷市「あ・・・」

 

この瞬間、雷市の心は完全にへし折れてしまった。

その裏、これまで何とか青道打線を抑えていた真田だったが、先頭の結城にソロアーチを打たれたのを皮切りに一挙3失点してしまい、9-0になった。

そしてその次の7回の青道の守備で、惇はマウンドを降り、ベンチに下がった。

代わりにマウンドに立ったのは

 

結城「頼むぞ、丹波!」

 

亮介「頭触って良い?」

 

倉持「ヒャハハハ!!俺も良いっすか?」

 

丹波「ちょっ・・・!」

 

丹波だった。

 

御幸「点差ありますが、油断できません。確実に抑えましょう、丹波さん。」

 

丹波「ああ・・・」

 

そして、先頭の秋葉の初球は逆球だったがボールに力があったため、ファールとなった。

 

御幸(宮さんのアドバイス通り、ボールに力があった・・・!これなら・・・)

 

これに御幸は再び真っ直ぐを要求し、追い込んだ。

そして

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

丹波の代名詞である縦のカーブで空振り三振に打ち取った。

次の三島も初球を打ったがセカンドゴロに終わり、次の山内は2球目を打ったが、高く上がったキャッチャーフライに打ち取った。

 

「アウト!ゲームセット!!」

 

この瞬間、青道のベスト4進出が決まった。

 

雷蔵(全ては・・・あのピッチャー1人にやられたな・・・)

 

薬師のベンチで、雷蔵は冷静にそう思い、ベンチの一角を見た。

 

雷市「・・・。」

 

そこには、惇に完膚なきまでに打ち取られてしまい、悔し涙を流している息子の雷市がいた。

 

「整列!」

 

「9-0で青道!礼!」

 

「「「したぁ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

試合後の薬師

 

 

 

 

 

 

雷市「・・・ぐっ・・・」

 

雷市の涙は止まらなかった。

 

山内「もう泣くなよ、雷市・・・」

 

小林「お前が打てなかったんなら、諦めがつく!」

 

福田「誰も責めはしねーよ・・・」

 

それを見た3年生達は、決して彼を責めたりしなかった。

そして、1年半指導してもらった雷蔵に感謝の言葉を述べ

 

山内「真田!来年は監督を甲子園に連れてってやれよ!」

 

福田「秋葉!ミッシーマ!お前らだって俺達から見れば十分怪物なんだ!頑張れよ!」

 

真田や秋葉、三島にも激励の言葉を言った。

そして

 

小林「雷市!俺達は待ってるからな・・・」

 

福田「お前の名前が、全国に轟く時を・・・」

 

雷市にもそう激励の言葉を送った。

これに雷市は益々大粒の涙を流し、雷蔵も再スタートを切ろうと誓ったのであった。




投稿出来ました。

いつも通り結構駆け足で投稿しました。

お許し下さい(土下座)

ちょっと圧倒的過ぎたかな・・・(汗)

そ、それでは、また。


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46話

46話です。


各球場で行われた試合。稲実を筆頭に4強全てが出揃った。

その中で準決勝の青道の相手はベスト8の常連校、仙泉学園に決まった。

 

伊佐敷「準決の相手は、やっぱ仙泉か。」

 

クリス「部員数80人を超える、ベスト8常連の強豪校。今年の春、市大相手に1点差の投手戦の末、敗れていますね。」

 

この情報を聞いて

 

門田「確か、メチャクチャデカいピッチャーいたよな。」

 

坂井「ああ。」

 

倉持「2m超えてたんじゃねーの?」

 

皆仙泉のエースを思い出した。

そのピッチャーの名前は真木洋介。195センチの長身から投げ下ろす角度のある真っ直ぐと、日本一高い所から放たれると言われるカーブが持ち味の本格派右腕だ。

それを聞いた瞬間、丹波に注目した。

彼も、真木程では無いが身長185センチあり、カーブを決め球にしているからだ。

 

片岡「明後日、準決勝の先発だが・・・俺は丹波でいこうと考えている・・・」

 

すると、片岡は丹波を見てそう言った。

 

丹波「!」

 

片岡「いけるな!」

 

そう言われた丹波は

 

丹波「はい!」

 

気合の入った返事をした。

これには、周りも自分の事のように喜んだ。

 

片岡「川上。いつも通り準備しておいてくれ!」

 

川上「はい!」

 

片岡「降谷、沢村。」

 

片岡「お前達も機会を見て登板させる。準備は早めにしておけよ!」

 

栄純「はい!」

 

暁「はい。」

 

そして

 

片岡「それから足立。お前は準決勝には出さず休ませる。見たところ、多少なりとも疲労が溜まってる。無理はさせない。」

 

片岡は惇に休ませる事を伝えた。

 

惇「・・・分かりました。」

 

片岡「丹波、川上、降谷、そして沢村。明後日の試合は、この4人に任せる。良いな!」

 

栄純「この私、必ずやボスの期待にお応えし・・・」

 

片岡「解散!」

 

「「「はい!!!」」」

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

 

唯「昨日の試合、凄かったよ!」

 

惇「サンキュー。」

 

惇と唯が一緒に歩いて話していた。

 

唯「何か、初回に轟君にファール打たれてから雰囲気変わったよね?」

 

惇「あ?なーんか、あそこまで完璧に捉えられたのは久し振りだったから、ちっとスイッチ入ってな。」

 

惇「いやマジで体軽かったわ・・・」

 

唯「フフッ・・・確かに。力感無くゆったりしたフォームだったけど、凄く伸びてたよ。」

 

唯「スピードも上がったんじゃない?」

 

惇「かもな。測ってみてーんだけど、監督からノースローだって言われちまって測れねーんだわ。」

 

唯「そっか・・・」

 

唯「明日の試合、ゆっくり休んでね。」

 

惇「わーってるよ。丹波さんなら、きっと抑えれるさ。哲さん達も、きっと真木さんから点取ってくれるよ。」

 

唯「うん。」

 

そう、惇は真っ直ぐな目で空を見上げて言った。

この日、槙原達が対真木対策として一晩掛けてマウンドに土を盛ってあげ、片岡自らそのマウンドに上がって練習をした。

その際、結城や伊佐敷らがメチャクチャやる気満々で打ちにいったのであった。




投稿出来ました。

準決勝前日のお話をメインに書きました。

つーか片岡監督、現役時代は何㎞だったんだろう・・・?

それでは、また。


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47話

47話です。


7月29日

 

 

 

 

 

片岡と仙泉のエース真木対策の為に角度のあるボールを打つ練習を行った翌日。

惇は早朝の自主練を終え、朝飯を食べに行こうとした。

その道中

 

御幸「おはよう、足立。」

 

倉持「うっす、足立!」

 

惇「はようございます、カズさん!洋さん!」

 

御幸と倉持に会った。

 

御幸「今日も自主練か・・・」

 

惇「はい。」

 

倉持「今日出番ねーけど、ベンチでしっかり声出していけよ!」

 

惇「はい!今日も勝つ事、信じてますから!」

 

倉持「おっ!言うなー!」

 

そう言うと、倉持は惇の肩を抱いた。

 

惇「フフッ!あっ、ノリさん!」

 

川上「ああ・・・足立。御幸に倉持、健二郎。」

 

御幸「昨日はよく寝れたか?ノリ・・・」

 

川上「・・・少し・・・」

 

この言葉に

 

倉持「おいおい大丈夫か?抑えのエース。」

 

倉持「まぁ・・・大事な場面を任される事も多いし・・・プレッシャーもかかると思うけどよ・・・」

 

倉持は心配の声を上げたが

 

御幸「皆ちゃんと分かってるぜ・・・お前が自分の役目を果たそうと、精一杯投げてる事は・・・」

 

御幸がその横で川上をそうフォローした。

 

倉持「ケッ。恥ずかしげも無く良く言うぜ!」

 

惇「フッ・・・」

 

その時

 

??「ノリ先輩!」

 

グラウンドから声が聞こえたので振り返ると

 

栄純「今日はお互い頑張っていきましょー!」

 

栄純が暁と一緒にタイヤを持っていた。

 

惇「おお、栄純!暁!おはよう!」

 

倉持「朝っぱらからうるせーな!」

 

栄純「今日は絶対に最高の形でバトン渡してみせますから!」

 

川上「沢村・・・」

 

これには

 

倉持「どこから来るんだその自信は!」

 

惇「けどまぁ・・・これがアイツっすからね。」

 

倉持「そうだな・・・」

 

倉持は呆れ笑いを浮かべてそう言った。

 

御幸「けど・・・あの前向きさは、見習わねーとな・・・」

 

御幸もそう川上に言ったが、栄純と暁がタイヤを引いて走ろうとしたのでそれを止めたのだった。

 

 

 

 

 

 

食堂

 

 

 

 

 

食堂に着くと、皆揃って朝飯を食べていた。

そんな中

 

クリス「丹波・・・」

 

クリス「どうだ?今日のコンディションは。」

 

クリスは今日先発の丹波に調子を尋ねた。

 

丹波「悪くない・・・と思う・・・」

 

この返答に

 

クリス「疲れは無いみたいだな。」

 

クリスは丹波の表情をしっかり観察して言ったのだった。

その時、増子が食堂に現れたのだが

 

倉持「ゲッ!」

 

伊佐敷「・・・!!」

 

惇「ま・・・マジで!?」

 

栄純「・・・ま・・・ま・・・ま・・・増・・・」

 

増子のとある場所を見て、皆驚きのあまり言葉が出なかった。

それと同じタイミングで、片岡と高島先生が現れて

 

片岡「・・・。」

 

高島「・・・。」

 

増子「・・・。」

 

やはり固まってしまった。

それは、増子の頭がスキンヘッドになっていたからだ。

暫くして

 

片岡「・・・増子・・・何のアピールだ?」

 

片岡のこの言葉に皆耐えきれず

 

「「「ぶははははは!!」」」

 

倉持「ヒ・・・ヒデぇっす監督!!」

 

伊佐敷「つーか、その頭どうしたんだよ増子!」

 

門田「まさかのイメチェン!?」

 

笑いながら増子に尋ねた。

増子曰く

 

増子「・・・いつものアタッチメント付けるの忘れた・・・」

 

とか・・・。

 

惇「に・・・似合ってますよ増子さん!」

 

倉持「はい!てか、迫力2倍増し・・・」

 

御幸「ハ・・・ハラが・・・!」

 

亮介「良かったね。仲間が出来て・・・」

 

丹波「・・・。」

 

そう亮介が丹波に言い

 

栄純「く・・・苦し・・・」

 

増子「わ・・・笑いすぎだぞ、沢村ちゃん!」

 

栄純に至っては笑いすぎのあまり窒息死しそうになっていた。

後ろを振り返ると

 

増子「うがっ!?」

 

片岡と高島先生が口元を抑えており、最後に片岡が

 

片岡「コホン。起きてしまった事は仕方ない。」

 

片岡「が・・・試合では、こういう凡ミスの無いように!」

 

「「「ははははは!!」」」

 

そう締めた。

そして、準決勝の仙泉との試合に向けて、神宮に出発したのであった。




投稿出来ました。

増子さんのこれはマジで大爆笑でしたね(笑笑)

今でも・・・ちょっと・・・(笑笑)

そ、それでは、また・・・(笑笑)


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48話

48話です。


準決勝第1試合の青道対仙泉との試合。青道の先発は、この夏初先発の丹波だったが、3回に捕まり、1失点してしまい、青道としては今大会初失点を喫した。

尚も二死一・三塁のピンチだったが、何とか後続を打ち取り、1失点で凌いだ。

青道も5回まで真木の角度のあるボールに点を取れず、丹波も久し振りの先発とボールの状態を確認しているため、神経をすり減らしており、球数以上の疲れを感じていた。

その試合状況を

 

原田「1点差か・・・苦戦してるな。」

 

吉沢「仙泉は地味だけど堅実な野球をしてくるからな。」

 

平井「それに、あの真木ってピッチャー・・・あれだけの角度があると打ちづらいんだろうねぇ。」

 

稲実メンバーはそう見て思った。

その後ろで

 

成宮「デカイだけじゃん。俺と足立だって、そんなにデカくなくてもピッチャーやってけてるし。」

 

成宮「それより・・・丹波さんもう代えた方が良くない?」

 

原田「あ?」

 

成宮「変化球で躱してはいるけど・・・ストレート浮きまくってんじゃん。あんまり引っ張ってると、取り返しのつかない事になっちゃうよ。」

 

成宮「ほらぁ!今のも危ない危ない・・・足立なら空振り取れるかもしれないけど。一也もリード大変だな・・・」

 

成宮が丹波のピッチングを見てそう言った。

しかし

 

原田「鳴・・・前にも言ったが、お前は丹波の事を甘く見過ぎだ。」

 

原田「以前と違い、弱気な態度を表に出す事も無い。あのデッドボールを経て・・・アイツは一回り大きくなって戻ってきたぞ・・・」

 

原田がそう成宮に注意すると

 

丹波「らあああ!」

 

丹波がちょうどバッターを三振に打ち取った。

 

成宮(気持ちだけじゃ限界あるって・・・)

 

そう思い、ジュースを買いに逃げた。

・・・てか逃げんなよ。

そんなこんなで6回、先頭の亮介がライト前ヒットで出塁した。

 

片岡「小湊!バットを振って準備しておけ。チャンスが来たら、代打を出すぞ!!」

 

片岡「それから降谷と沢村にも、気持ちの準備をさせておけ!」

 

これを見た片岡は、この回勝負をかけるため、準備を始めた。

 

惇「お前らしく行けよ、春市!」

 

春市「うん!」

 

すると、伊佐敷がセンターライナーでアウトになった後、結城がツーベースでチャンスを作り、増子の打球がサードにいき、そこを突っ込んだ亮介がセーフとなって青道は同点に追い付いた。

 

惇「ナイスラン!」

 

倉持「ナイスラン亮さん!!」

 

その後、満塁となり

 

『8番丹波君に代わりまして、代打小湊春市君!』

 

春市が代打に出た。

 

真木(ここでエースに代えて代打?しかもコイツも1年・・・)

 

これに真木は、少しだけムキになって真っ直ぐで押し、春市を追い込んだ。

そして、最後に投じたのは

 

春市(カーブ!?)

 

真木の決め球カーブだったが

 

カーン!

 

トップの位置を崩さず、腰の回転で対応したため、レフトの頭上を越える走者一掃のタイムリーツーベースを放ち、4-1とした。

 

惇「はは・・・あいつマジヤベぇ・・・!」

 

これには、ベンチで見ていた惇は笑顔を浮かべつつ冷や汗を流していた。

その次の暁は

 

暁「・・・。」

 

春市のバッティングを見てオーラを噴き出していた。

そしてその裏、暁がマウンドに上がった。

 

ズドォォン!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

1人フォアボールを出しそこから1失点するも、何とか凌いだ。

7回に入って、疲れが見え球威が落ちた真木のボールを青道打線は確実に捉え、3点を取って7-2とし、真木を降板させた。

その裏、栄純がマウンドに上がったが、先頭をフォアボールで出し、そこから1点取られてしまった。

しかし、栄純は無意識なのか、右バッターのインサイドにクロスファイヤーを投げ、ピンチを凌いだのだった。

それからもう1イニングを投げ、最後に川上が締めて最終スコアは8-3と勝利を収めたのであった。




投稿出来ました。

試合描写は本当に難しいです。

全然書けない・・・(汗)

そ、それでは、また。


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49話

49話です。


仙泉に8-3で勝利し、3年ぶりの決勝進出を決めた青道。

 

「8-3で青道高校!礼!」

 

「「したぁ!!」」

 

「ナイスゲーム!」

 

「片岡さーん!」

 

「お前ら最強だー!!」

 

「哲さーん!!」

 

「増子ー!!」

 

クリス「皆良く投げてくれましたね。」

 

太田部長「予定通り、足立を休ませる事も出来ましたし!」

 

それを聞いた片岡は

 

片岡「ああ・・・ようやくチーム全体に、力がついてきたな!」

 

笑顔で答えたのだった。

試合後、栄純は来てくれた地元の友達と一緒に話していた。

 

惇「中学ん時のダチが見に来てくれたんだってな。」

 

唯「うん。」

 

惇「つーか・・・あの子じゃね、噂の彼女って?」

 

そう言い、惇は若菜を見て

 

惇「へぇ・・・結構可愛いな。」

 

と素直に言った。

 

唯「・・・じゅ~んく~ん~!」

 

すると、それを聞いた唯が

 

惇「な、何だよ!?」

 

唯「むぅー!」

 

むくれた顔で惇の頬をつねった。

 

惇「やめほ!はなへ!」

 

吉川「わわっ!唯さん!」

 

藤原「唯。足立君可哀想だから離してあげなさい。」

 

梅本「唯~!」

 

すると、唯以外のマネージャー組が、そう唯に言うと

 

唯「・・・分かりました。」

 

唯は手を離した。

 

惇「ってー!ったくお前は・・・!」

 

唯「フンッ!」

 

唯は、不機嫌そうにそっぽを向いた。

 

惇「期間限定アイス奢るから!なっ!」

 

それを聞くと

 

唯「・・・良いよ。許してあげる!」

 

唯は少しだけ機嫌を直した。

すると

 

藤原「へえ・・・期間限定アイスね。ねえ足立君、私にも奢ってよ。」

 

梅本「私も!ほら春乃も!」

 

吉川「え、ええ!?」

 

マネージャー組の藤原と梅本が悪戯っぽい顔で惇に言うと

 

唯「だ・・・ダメェ!!奢らせません!!」

 

唯は目を潤ませ顔を真っ赤にし、腕に抱き付きながら言った。

 

惇「貴子さんらは冗談で言ったんだよ!!お前真に受けんなよ!!」

 

惇「てかくっつくな!!」

 

唯「ヤダっ!!」

 

梅本「冗談だよ、唯!!」

 

藤原「フフッ・・・唯ったら可愛い!ねえ、春乃?」

 

吉川「あ、はい!唯さんって、ホント可愛いですよ!」

 

唯「も、もう!春乃まで!!」

 

これには、藤原と梅本、吉川がそう言うと、唯は益々顔を真っ赤にして言ったのだった。

 

倉持「こ・・・コイツもかよ・・・!!」

 

倉持(くぅ~・・・!沢村は若菜、足立は夏川・・・何故アイツらの近くには女子がいるんだ!!)

 

倉持(特に足立!お前はチアの人気№1だし・・・!)

 

倉持(クッソー!!イケメンめ!!)

 

この様子を見た倉持は、嫉妬の炎に燃えていたのだった。

そして、準決勝第2試合の稲実と桜沢の試合だが、ナックルボーラーの長緒が稲実を3回まで無失点に抑えていたのだが、成宮のピッチングで守備のリズムが崩れてしまい、そこから原田のホームランなどで桜沢は11-0の大敗を喫した。

そして、決勝の顔合わせは、青道対稲実となったのであった。




投稿出来ました。

仙泉との試合後のお話をオリジナル風にアレンジしました。

栄純君の幼馴染の若菜ちゃん、結構可愛いですよね・・・。

つっても、僕個人は夏川唯が可愛いと思ってます(笑)

それより、この漫画に出てくる女性キャラで人気№1は誰なんでしょうね・・・?

それでは、また。


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50話

50話です。


翌日の決勝戦に向けて、ナイン達は最後の練習を行っていた。

しかし、決勝前日だからといって、特別な練習をしているわけでは無く、普段通りの練習メニューをこなしている。

選手達は、声を張り上げ、1つ1つ確認するように体を動かしていた。

 

『後1勝。後1つ勝てば甲子園‼︎必ず勝って甲子園‼︎』

 

口に出さなくても皆思いは同じ。その思いが、練習により熱が入る。

そんな中、ブルペンでは

 

ズバアアンッ!!

 

惇が、御幸にボールを投げており、最後の調整を行っていた。

 

御幸「次も、真っ直ぐ!」

 

ズバアアンッ!!

 

御幸「カーブ!」

 

ククッ‼︎

 

御幸「スライダー!」

 

ククッ!!

 

御幸「SFF!」

 

ストンッ!!

 

御幸(悪くねぇ。寧ろ・・・どんどんボールが良くなってる・・・)

 

御幸(コイツ・・・夏男って奴か。)

 

御幸(どっちにしろ、コイツのボールには大分慣れてきたな・・・最初はスライダーとSFFが捕れなかったからな・・・)

 

御幸(それに・・・薬師との試合以来、コイツのボールを受けるとマジ手が痛ぇ・・・)

 

その時、御幸は惇のボールを見てそう思い、再び真っ直ぐを要求した。

それに感化されたのか、丹波を中心に暁と栄純、そして川上も熱が入ったのだった。

その様子を片岡ら首脳陣は見ていたのだが

 

高島「投手陣も特に気負う事無く調整が出来てますね。」

 

片岡「あぁ。」

 

投手陣皆気負わずに調整する姿に目を細めていた。

 

太田部長「凄いですね・・・足立は特に調子良さそうですね。」

 

高島「やはり昨日の試合での休養は大きかったですね。」

 

片岡「準決勝は、丹波と降谷、沢村に川上が良く投げてくれたからな。チームとして大きい。」

 

高島「仰る通りかと。しかし・・・」

 

すると、高島先生は目を細め

 

高島「相手があの成宮君である以上、いくらウチの打線でも何点も取るのは厳しいでしょう。」

 

そう、冷静に言った。

 

太田部長「そ・・・そんな事は・・・!ウチの選手ならきっと・・・!」

 

高島「勿論期待はしていますが、昨日のピッチング内容を見る限り些か難しいでしょう。やはり鍵となるのは・・・」

 

片岡「・・・足立の出来か。」

 

高島「はい。あの薬師戦の後から足立君のボールは見ての通り以前にも増して鋭くなっています。稲実打線でも足立君から点を取るのは厳しいかと。」

 

高島「とはいえ、野球は点を取れなければ勝てません。後は我慢比べになりそうですね。」

 

それを聞いた片岡は

 

片岡「・・・後は勝利の女神がどちらに微笑むか。」

 

片岡「ラッキーな勝ち方でも・・・泥臭い勝利でも何でも良い・・・」

 

片岡「俺はアイツらを、甲子園に連れて行ってやりたい・・・」

 

そう、真っ直ぐな目で呟いた。

 

太田部長(か・・・監督・・・)

 

高島(届いてますよ。監督の想いは、あの子達にも・・・きっと・・・)

 

それを、2人は柔らかい笑みで見ていたのだった。

その日の夜、決勝のスタメンを発表し、惇が明日の先発を任された。

その後、惇は外に出て星空を見ていた。

Aグラウンドの外野の向こうに広がる土手の芝生に腰を下ろして、1人右手にボールを持ちながら。

すると

 

??「眠れないの?」

 

誰かに声をかけられ振り向くと

 

惇「・・・まだ帰ってなかったのかよ、唯。」

 

唯が立っていた。

 

唯「まあね。」

 

そう言うと、唯は惇の隣に座った。

 

惇「・・・。」

 

唯「・・・。」

 

お互い、星空を見ながら沈黙が流れていたが

 

唯「・・・ねえ。」

 

惇「ん?」

 

唯が先に声をかけた。

 

唯「いよいよ・・・明日だね。」

 

惇「・・・ああ。」

 

唯「・・・惇君。」

 

惇「あ?」

 

唯「一緒に行こうね、甲子園。」

 

惇「・・・ああ。後1つ。あの人達と一緒に・・・甲子園に行きてー。」

 

そう、惇は星空を真っ直ぐな目で見ながら言った。

 

唯「・・・うん。行こうね。」

 

それを見た唯は、そう言い惇の左肩に頭を置いた。

そのまま、2人は暫く身を任せたのであった。




投稿出来ました。

決勝前日。皆こういう想いなんですよね・・・。

やるべき事はやった。後はグラウンドでベストを尽くそう。

そして、皆で一緒に甲子園。

本当に・・・甲子園は凄い場所ですね・・・。

僕も学生時代に夏休みを利用して何度か甲子園に足を運んだ事があるのですが、もう鳥肌が立っちゃって、震えが止まらないんですよ。

あの球場は、世界一の球場だと思います。

100年先も、高校野球が続いて欲しいですね・・・。

それでは、また。


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51話

51話です。


7月31日

 

 

 

 

 

『西東京大会決勝戦は、午後1時プレイボール。尚、本日は気温が高いため、熱中症にならないよう、水分をお取りになりご注意の上、ご観戦下さい。』

 

その頃、結城は稲実のキャプテン原田と先攻後攻を決めていた。

 

「それでは、青道が先攻、稲城が後攻で宜しいですね。決勝戦に相応しい素晴らしいゲームを期待しています。」

 

結・原「「はい!」」

 

そして、結城は先攻を取り、ナインと一緒にグラウンドに向かった。

 

結城「行くぞ!!」

 

「「「おおぉ!!」」」

 

グラウンドに入ると

 

「青道ー!!」

 

「結城ー!!」

 

「伊佐敷ー!!」

 

「今年こそ行こうぜー!!」

 

青道を応援する声で溢れた。

しかし、それは逆も然り。

 

「稲実最強!!」

 

「成宮ァ!!」

 

「鳴ー!!」

 

「雅ー!!」

 

稲実を応援する声で溢れた。

 

御幸「足立。自分のピッチングをな。」

 

惇「うっす。」

 

御幸(気合十分って感じだな・・・けど、リラックスもしてる・・・)

 

御幸(ホント、頼もしい後輩だぜ・・・)

 

御幸「沢村。降谷。今日も暑くなるが取り過ぎると動かなくなるから足立に水分を渡しすぎるなよ。」

 

御幸の注意に

 

栄・暁「「!」」

 

2人は図星だったのか、ビクッと体を震わせた。

 

 

 

そして、青道メンバーはベンチ前にて立ち上がった。

稲実も、それと同時に立ち上がった。

 

『全国高校野球選手権大会西東京地区予選決勝。夏本番を思わせるこの青空の下、両ベンチから選手が出て参りました!』

 

『夏2連覇を狙う去年の覇者稲城実業。去年の雪辱を果たし、6年ぶりの甲子園を目指す青道高校。』

 

『共に全国に名の知れた名門同士。この戦いを制するのはどちらのチームか!?』

 

結・原「「行くぞぉ!!」」

 

「「「おぉ!!」」」

 

そして、両チーム勢いよく飛び出し、整列した。

 

「礼!」

 

「「しゃああす!」」

 

そして、守備につく稲実。

そのマウンドに上がるのは、2年生ながら稲実の絶対的エース、成宮鳴。

その初回の青道の攻撃。倉持が左打席に立った。

 

成宮(あれ?左打席・・・)

 

その時、成宮は倉持がセオリー通りの右では無く左に立った事に気付いた。

 

成宮(セーフティ狙ってんのバレバレ・・・)

 

そう思った成宮は、初球真っ直ぐを投げた。

 

「ボール!」

 

しかし、倉持は特に何もする事無く、初球を見送った。

 

原田(ボールだが、どちらを取ってもおかしくなかった・・・狙いは他に?)

 

それを見て、考えた原田だったが

 

原田(駄目だ。考えすぎても意味ない。それでは相手の思う壺だ・・・)

 

そう思い、迷いを捨ててサインを出した。

それを見た成宮は、にやりと笑い

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

倉持を三振に打ち取った。

続く亮介をセカンドゴロに打ち取り

 

『3番ピッチャー、足立君。ピッチャー、足立君。』

 

惇が打席に立った。

 

成宮(久し振りだなー・・・でも、そう簡単には打たせてあげないよ!)

 

そう思い、成宮はどんどん強気に攻めていき

 

惇「チッ!」

 

センターフライに打ち取った。

 

『青道高校。稲実エース成宮を前に3者凡退に抑えられました!』

 

そして、青道は守備についた。

 

『1回裏青道ナイン。マウンドには、1年生ながら背番号9を背負う1年生怪腕投手足立!』

 

すると

 

「出たー!怪腕!」

 

「片岡2世ー!!」

 

「足立くーん!」

 

一斉に歓声が上がった。

 

吉川「初回の立ち上がり、ウチも3人で抑えれたら何とか渡り合えますね!!」

 

藤原「そう!ウチも3人で抑えれたら、まだまだ行けるわ!」

 

唯「惇くーん!!」

 

梅本「バンバン三振奪れー!!」

 

『ここまで5試合中3試合はライトでスタメン。ピッチャーとして2試合に登板し、その内1試合先発。野手でのスタメンが殆どで登板数は少ないながらチームに貢献し、この決勝という大舞台のマウンドを託されました!』

 

亮介「いつも通り行きなよ。」

 

伊佐敷「そーだ!いつもの雄叫びでビビらせやがれ!!」

 

結城「自分のピッチングをな。」

 

増子「うがっ!」

 

倉持「俺らがいるから、安心して投げろ!」

 

惇「うっす!」

 

皆それぞれ惇に檄を飛ばすと守備位置に散った。

そして、惇はいつものルーティンの股割りストレッチを行った。

 

御幸(さて・・・行くか!)

 

そして、御幸もマスクを被り気合を入れた。

 

『1回の裏、稲城実業の攻撃は、1番センター神谷君。』

 

御幸(ボテボテの当たりでもセーフにする足があるからな・・・塁に出すと厄介だぞ・・・足立。)

 

そう心の中で御幸は言いサインを出すと、惇は足を上げた。

 

カルロス(さぁ来なよ。噂のゴールデンルーキー。)

 

その初球

 

カルロス「うおっ・・・」

 

ズバアアンッ!!

 

カルロスは初球ド真ん中の真っ直ぐを空振った。

そして、バックスクリーンの球速表示を見ると

 

カルロス(マジかよ・・・!)

 

『140㎞』と表示されていた。

しかし、カルロスの体感からしたら150㎞以上に感じた為、目を見開いて驚いた。

これには

 

カルロス「は・・・はは。なんつーボールだよ・・・」

 

そう、カルロスは苦笑いを浮かべた。

その2球目も真っ直ぐを投げたが

 

キン!

 

ファールになり、追い込まれてしまった。

 

カルロス(ヤベ・・・これで1年かよ・・・)

 

カルロス(コイツ・・・マジで怪物だわ。)

 

そして

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

カルロス「くっ・・・!」

 

インサイド142㎞の真っ直ぐに手が出ず、見逃し三振となった。

 

カルロス(何つーボールだ・・・バットが・・・間に合わなかった・・・)

 

信二「しゃああ!!三振!!」

 

前園「エエぞ、足立ー!!」

 

白河「速い?」

 

カルロス「打席で見てみ・・・マジ半端ねーわ。」

 

白河「そんなに?」

 

カルロス「初球セーフティだけはやめといた方が良いぜ。打ち上げてアウトになるだけだ・・・」

 

それを聞いて

 

白河「・・・楽しみじゃん・・・」

 

そう感じた白河は、打席に立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

真ん中高めに真っ直ぐを投げ、セーフティを構えた白河は、手が出なかった。

 

白河(何だこのボール・・・!浮き上がった・・・!?)

 

白河は、打席で呆然とした表情を浮かべた。

その2球目

 

キン!

 

真っ直ぐでファールを取り、3球目は高めに外れボールとなった。

そして4球目

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

白河(なっ・・・!?全球・・・ストレート・・・⁉︎)

 

インハイ140㎞の真っ直ぐで空振り三振を喫した。

 

春市「2者連続三振!相変わらず絶好調だね!」

 

栄純「ああ・・・」

 

暁「・・・。」

 

クリス「温存し、全球ストレートしか投げてないとはいえ、調子は良いですね・・・」

 

クリス「力みもありませんし、ボールも走ってます。」

 

片岡「・・・。」

 

青道ベンチのクリスも、惇の状態を見て片岡にそう言った。

 

御幸(まだ力をセーブしてるが、ボールはかなり走ってるな・・・)

 

御幸(真っ直ぐ中心に攻めていくぞ!)

 

そう思い、御幸はミットを構えた。

そして、次の吉沢の初球も

 

ズバアアンッ!!

 

真っ直ぐで空振りを取り

 

キン!

 

吉沢「くっ!」

 

2球目も真っ直ぐでカウントを取って3球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「うらあああっ!!」

 

吉沢(何つーボールだよ・・・!マジで浮き上がってんじゃねーか!!)

 

外高め141㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、3者連続三振となった。

これには

 

信二「3者連続!!」

 

前園「よっしゃあああ!!」

 

梅本「しゃああ!!3者連続三振ー!!」

 

唯「ナイスピッチー惇くーん!!」

 

吉川「足立君凄い凄い!!」

 

藤原「文句なしの立ち上がりね!!」

 

青道側スタンドは大盛り上がりで

 

「マジかよこの男!!」

 

「ボールもそうだが、気迫も雄叫びも半端ねー!!」

 

「片岡2世ー!!」

 

観客も、大盛り上がりだった。

こうして、両チームの初回は3人に抑えられたのであった。




投稿出来ました。

遂に始まりました決勝戦!!

初回だけで疲れた・・・(汗)

しかし、相変わらず試合描写が下手ですね・・・(汗)

読みにくかったらすいません(土下座)

そ、それでは、また。


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52話

52話です。


2回の表の青道の攻撃。打席には、青道の4番であり、キャプテンでもある結城が打席に立った。

成宮が投げた初球

 

キン!

 

少し真ん中寄りの甘い真っ直ぐだったものの、ボールに威力があった為か、振り遅れてファールになった。

 

原田(甘いぞ、鳴!)

 

これに、原田はそう心の中で言いながら成宮に返球した。

 

成宮(ヤベぇ・・・ちょっと危なかった・・・)

 

そう思い、成宮はボールを受けた。

2球目は外に外れボールになったが、2球目は膝元ギリギリにスライダーが決まって2-1と追い込んだ。

3球目には真っ直ぐを投げると

 

キン!

 

振り遅れたもののキッチリ真っ直ぐに合わせてファールにした。

 

原田(今度はキッチリストレートに合わせてきやがった・・・)

 

そう感じた原田は、成宮にあるボールのサインを出した。

それを見た成宮は、少し不敵な笑みを浮かべ、そのボールを投げた。

そのボールは

 

御幸(来た!チェンジアップ・・・!)

 

チェンジアップだった。

結城は読み通りスイングしたのだが

 

結城「っ!?」

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

空振り三振となった。

 

惇「カズさん。今のチェンジアップ・・・」

 

御幸「ああ・・・スクリュー気味に沈んだな・・・」

 

御幸(これが・・・鳴のチェンジアップ・・・)

 

これには、青道ベンチも驚きを隠せなかった。

続く増子は真っ直ぐでセカンドゴロ、御幸はチェンジアップを狙ったが増子同様セカンドゴロに打ち取られた。

 

御幸(思った以上の球速差だな・・・ストレートの後に混ぜられたら、分かっていても体がついていかねーわ・・・)

 

その裏、惇がマウンドに上がった。

そして、打席に立つのは

 

『2回の裏、稲城実業の攻撃は、4番キャッチャー原田君。キャッチャー原田君。』

 

稲実の主砲であり、キャプテンでもある原田だった。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

『初球ストレートストラーイク!いきなり142㎞!』

 

真っ直ぐで空振りを取った。

 

原田(クッ・・・初回とは明らかに違う球だ!)

 

しかし、その球は初回に見せたものとは明らかに伸びが違っていた。

2球目

 

ズバアアンッ!!

 

原田のバットは、ボールの下を振っていた。

 

原田(これで1年かよ・・・とんでもねぇな・・・!)

 

そう思い、3球目に来たボールを打ちにいったが

 

ストンッ!

 

原田「っ!?」

 

惇「うらあああっ!!」

 

『空振り三振ー!最後はSFFで稲実の主砲原田を打ち取りました!これで4者連続!!』

 

栄・暁「「・・・!?」」

 

信二「4者連続!!」

 

前園「絶好調やないか!!」

 

「足立ー!!」

 

「足立くーん!!」

 

そして次のバッターの成宮は初球にスローカーブを投げた。

 

成宮(なっ・・・舐めやがって!!)

 

これに、成宮は打ったがムキになって打ったためセカンドゴロになった。

 

「2アウトー!」

 

「行けー!足立ー!!」

 

梅本「行けー!足立ー!!」

 

唯「惇くーん!!」

 

次の山岡も

 

山岡「クッ・・・!!」

 

山岡(何だと・・・!?マジで浮き上がってやがる・・・!!)

 

真っ直ぐで空振り三振に打ち取り

 

惇「うらあああっ!!」

 

今日3度目の雄叫びを上げた。

 

『こ・・・これで三振5つ目!!』

 

「スゲぇ足立!!」

 

「マジでヤベぇー!!」

 

「足立くーん!!」

 

「片岡2世ー!!」

 

『この大舞台!!ましてや相手は優勝候補稲城実業!!』

 

『足立惇!!とても1年とは思えない圧巻のピッチング!!』

 

これには、球場から大きな拍手が送られたのであった。




投稿出来ました。

2回が終わったけど、これどうなるのやら・・・(汗)

そ、それでは、また。


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53話

53話です。


3回に突入し、7番の伊佐敷から始まる打順だが

 

伊佐敷「だらっしゃああっ!!」

 

伊佐敷は初球を打ってセンターフライに終わった。

続く坂井はレフト前ヒットを打って、次の白州もヒット性の当たりを飛ばしたがショートライナーに終わり、2巡目に入って1番の倉持は

 

『ヒット性の当たりをショート白河がファインプレー!』

 

『青道高校の攻撃は、この回初ヒットを記録したものの無得点で終わりました!』

 

ショートゴロに終わり、無得点に終わった。

その裏の稲実の攻撃。7番の平井はサードフライ、8番梵はショートゴロで2アウトを取り

 

ククッ

 

富士川「クッ・・・!」

 

富士川をスローカーブでタイミングを外し、三振に打ち取った。

 

『三振ー!これで6個目!!前年王者を寄せ付けません!!』

 

片岡「球数は?」

 

クリス「・・・3回終わって、34球です・・・」

 

クリス「このままのペースで行けば、9回まで何とか行けますね・・・」

 

片岡の問いに、クリスはそう答えた。

 

惇「カズさん。アンシャツノースリーブにしたら良いんじゃないっすか?」

 

惇「身軽な感じがしてて良いっすよ。」

 

御幸「いや。俺は良い。てゆーかお前、今日ノースリーブだったのか。これまでの試合、半袖だったろ?」

 

惇「今日いつもより暑いと聞いたので、それでと・・・」

 

御幸「成程な・・・」

 

御幸(見た感じ、疲れも無さそうだし、ボールも回を追う毎に良くなってる。とはいえ、相手は稲実。次の回から2巡目だ。)

 

御幸(気を引き締めなきゃな・・・)

 

すると

 

惇「ん?」

 

惇の目の前に紙コップが現れ

 

栄純「ナイスピッチ!」

 

そう栄純が言い

 

栄純「ん!」

 

再び紙コップを突き出した。

 

暁「・・・。」

 

その後ろには、暁がタオルを持って控えていた。

 

惇「サンキュー。」

 

惇は、笑顔で紙コップを受け取った。

 

御幸(コイツらなりに、一緒に戦ってんだな・・・)

 

その時、御幸はそう感じた。

紙コップに口を付けた惇だったが

 

栄純「あ!待て!ストーップ!飲み過ぎは良くない!!半分にしとけ半分に!!」

 

突然栄純がそんな事を言い

 

暁「風、送ってあげるよ・・・」

 

暁がタオルを振って風を送った。

・・・汗を拭かせる為に用意したんじゃないのか、それ。

 

惇「・・・テメーら。」

 

栄純「ん?何!?アンダーシャツを替えたい?」

 

暁「僕が持ってきてあげるよ。」

 

栄純「いいや!俺が持って来る!」

 

暁「・・・。」

 

栄純「無視すんな!」

 

惇「マジやめろ・・・」

 

これには、惇も額に怒りマークが出てきた。

4回の表の青道の攻撃。先頭の亮介はサードライナーに倒れ、次の惇は

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

チェンジアップで空振り三振に打ち取られた。

 

惇(ヤベぇ・・・こりゃあ想像以上の球速差だな・・・)

 

その時、惇は成宮のチェンジアップをそう感じていた。

次の結城も

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

空振り三振に打ち取られた。

しかも、この打席では前の打席で打ち取ったチェンジアップを見せ球にし、真っ直ぐで仕留めたのだ。

 

惇「カズさん・・・」

 

御幸「ああ・・・お前と同じ事してんな・・・」

 

惇「はい・・・哲さんのみ全力で、それ以外はセーブしてますね・・・」

 

そう、惇は御幸に言った。

そして、青道は裏の守備についた。

打席には

 

『4回の裏、稲城実業の攻撃は、1番センター神谷君。』

 

カルロスが打席に立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

カルロス「チッ!」

 

カルロス(まだ上がって来んのかよ・・・コイツ・・・!)

 

外低めの真っ直ぐでストライクを取った。

続く2球目は、スローカーブを投げてきた。

 

カルロス「なっ!?」

 

カルロス(クソッ・・・タイミングがずれた・・・!)

 

これには、カルロスも体勢を崩したが

 

キン

 

何とかバットに当ててみせた。

打球は高々と上がったが

 

御幸(かなり微妙な打球だ・・・)

 

御幸「セカンバック!」

 

面白いところに打球が飛び

 

ポテン

 

亮介と伊佐敷の間に打球が落ち、ポテンヒットとなった。

 

『あ~落ちたぁ!!セカンドとセンターのちょうど真ん中!稲城実業、ここで初ヒットが生まれました!』

 

カルロス「っしゃ!!」

 

ヒットになったのを確認し、カルロスは一塁上でガッツポーズをした。

稲実側のスタンドは、待望の初ヒットに盛り上がりを見せた。

それを見た御幸は、マウンドに駆け寄った。

 

惇「いやぁ~・・・しゃーないっすね。」

 

御幸「ああ。気にする必要は無い。長打を浴びるより良い。切り替えていけ!」

 

惇「うっす。」

 

そして、御幸は元の場所に戻った。

次の白河が打席に入り、御幸は一塁牽制のサインを出し、惇は牽制を入れた。

そして初球

 

コツ

 

御幸「足立!ファースト!」

 

白河は初球バントで送り、一死二塁となった。

 

『これで1アウトランナー二塁。この試合初のピンチに稲城実業クリーンアップを迎えます!』

 

倉持「1アウト!」

 

亮介「1アウト1アウト!」

 

結城「いつも通りいけ!」

 

バックも、そう言い惇を鼓舞した。

 

藤原「1アウトランナー二塁。一打先制のピンチ・・・」

 

吉川「ここでクリーンアップ・・・」

 

梅本「足立・・・」

 

唯「・・・。」

 

唯(頑張れ・・・惇君・・・!)

 

唯は、真っ直ぐマウンドを見ながら御守りを握りしめた。

 

惇「ふぅー・・・」

 

そして、3番の吉沢に対しての初球

 

ズバアアンッ!!

 

吉沢「・・・はっ?」

 

インサイドに真っ直ぐを投げた。

 

吉沢(何だよこれ・・・明らかにボールが違う・・・!)

 

しかし、先程とは明らかに違う伸びだった。

球速表示を見ると

 

吉沢「っ!?」

 

『142㎞』と表示されていた。

 

吉沢(マジかよ・・・!)

 

そして2球目

 

キン

 

吉沢は何とかバットに当てたが

 

惇「サード!」

 

サードファールフライに打ち取った。

 

吉川「やったー!」

 

藤原「ナイスピッチ、足立君!」

 

梅本「ヨッシャー!」

 

唯「惇くーん!」

 

『高ーく上がったボールはサードファールフライ!』

 

惇「2アウト!」

 

結城「2アウト!」

 

亮介「ナイスボール!」

 

伊佐敷「良いぞ足立ぃ!!」

 

『しかし、2アウトながら未だに稲実にとって先制のチャンス!打席には稲実の主砲であり主将原田!』

 

『このチャンスをものにし、稲城実業先制点を取るか!』

 

『このピンチを凌ぎ、次のイニングの攻撃に繋げるか、青道高校!!』

 

この時、原田は目を瞑り先程国友と話した事を思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

国友『相手投手の特徴も、成宮の相棒としてここがどういう場面かも十分頭に入っているな?』

 

それを聞き、原田は頷くと

 

国友『ならば監督として一言だけ言っておこう・・・』

 

国友『この場面、キャプテンでもキャッチャーでもなく、4番打者として打席に入れ!』

 

国友『4番打者として、あの怪腕投手と勝負してこい!』

 

そう、国友は静かに、そして鋭く原田に言った。

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

その言葉を思い出し、原田はバットを構えた。

その姿は、まさに名門の4番打者に相応しい威圧感だった。

 

惇(スッゲェ威圧感・・・これが稲実の4番のオーラか・・・)

 

惇「ふぅー・・・」

 

そう思い、惇は1つ息を吐き、帽子を取ってある言葉を見た。

そこには

 

『気力一瞬』

 

そう書かれてあった。

それは自身の座右の銘であり、己を奮い立たせる言葉だ。

 

惇(・・・うし!)

 

その言葉を見て気合を入れた惇は、帽子を被って強烈なオーラを噴き出しながら原田を見据えた。

 

片岡(そうだ!気持ちでねじ伏せろ、足立!)

 

それを見た片岡は、ベンチでそう心の中で惇に檄を飛ばした。

その初球

 

ククッ

 

タイミングを外すスローカーブを投げ、空振りを取った。

 

『初球スローカーブ!空振り!』

 

原田(恐らく次はストレート・・・!)

 

そう思い構えると、読み通り来たのだが

 

ズバアアンッ!!

 

原田「っ!」

 

その前のスローカーブとの緩急と想像以上に伸びてきた真っ直ぐが膝元に来たためバットが出ず、追い込まれた。

3球目

 

ズバアアンッ!!

 

『インコースボール!しかし、攻めていきます足立!』

 

インサイドの真っ直ぐが外れ、2-1となった。

 

門田「ナイスボール!」

 

春市「後1球!」

 

そして4球目

 

原田(ここでスライダーかSFF・・・!)

 

そう思い、バットを振りにいったが

 

原田(なっ・・・!?高めの・・・スト・・・⁉︎)

 

高めの釣り球の真っ直ぐであり、原田はハーフスイングの形になった。

 

御幸(回った!)

 

春市「回った回った!」

 

そして、一塁審を見ると、振ったとのサインだった。

 

惇「シャアアアッ!!」

 

『バットが回ったぁー!!三振ー!!足立気迫のピッチング!!』

 

『このピンチをこの日最速143㎞のストレートで稲実の主砲を再び空振り三振に仕留めましたー!!』

 

結城「ナイスピッチ!」

 

亮介「ナイス!」

 

倉持「ヒャハハハ!!流石だぜ!!」

 

増子「うがっ!」

 

伊佐敷「良いぞ足立ぃ!!」

 

そして、皆に手荒い祝福を受けた。

 

梅本「ヨッシャー!」

 

吉川「このピンチを凌ぎましたよ、貴子先輩!」

 

藤原「ええ!」

 

唯「惇君・・・!」

 

この時、唯は帽子を取ってある言葉を目にした。

そこには

 

『気力一瞬』

 

惇の帽子のつばに書かれてある内容と同じだった。

それを見て、昨日の事を思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

惇『唯。お前の被ってる帽子に、何か書いて良いか?』

 

唯『良いけど、何で?』

 

惇『俺、皆の思いを背負って明日投げる。その為に、お前の力も借りたいんだ。』

 

惇『一緒に戦ってくれ。』

 

それを聞いて

 

唯『・・・うん。良いよ!』

 

唯は顔を赤らめ、鞄に入ってる自身の帽子を取り出して惇に渡した。

 

惇『サンキュー、唯。』

 

そして

 

唯『惇君!』

 

惇『ん?』

 

唯は惇の頬に手を添え

 

惇『私がついてるからね!』

 

そう、真っ直ぐ見据えて言った。

 

惇『・・・ああ!』

 

それを聞いた惇は、そう力強く言ったのだった。

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

唯(やったね・・・惇君!!)

 

それを見て、唯は笑顔を浮かべ惇に声援を送ったのであった。




投稿出来ました。

結構疲れました・・・(汗)

今回は最初から頭に浮かんできた書きたい内容を何とか書いてみました。

上手く書けているかな・・・?

因みに主人公の座右の銘は、とある某投手の座右の銘です。

その中でも特にこの言葉が好きで、今回やってみました。

それでは、また。


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54話

54話です。


一打先制のピンチを凌ぎ、吼えた惇はベンチに戻って腰掛けた。

 

惇「ふぅー・・・」

 

一息ついて帽子を取って汗を拭ってもう一度帽子のつばを見た。

 

『気力一瞬』

 

そう書かれてある座右の銘を見て、惇は周りを見た。

そこには、青道ナインがいる。頼もしく、最高の仲間がいる。

 

栄純「ナイスピッチ!惇!」

 

暁「ナイスピッチ!」

 

その時、栄純と暁がそう言い惇に近付き、スポドリが入った紙コップとタオルをそれぞれ渡した。

 

惇「ああ。サンキュー。」

 

それに惇はお礼を言い、それぞれ受け取った。

そして、5回の表の青道の攻撃。増子からだったが、増子、御幸は空振り三振。伊佐敷はレフトフライに打ち取られて3者凡退に終わった。

 

伊佐敷「悪ぃ、足立。」

 

その時、凡退して帰ってきた伊佐敷が、俯きながら惇にそう謝罪した。

しかし

 

惇「何言ってんすか?まだ5回の表が終わっただけっすよ!さあ、こっからっすよ!」

 

惇はそう言い、伊佐敷を励ました。

すると、俯いていた伊佐敷の顔が上を向いた。

伊佐敷だけじゃ無い。周りの皆も、同じように顔を上げた。

 

(コイツが前向いてるのに、自分達が俯いてどうすんだ!)

 

ナインは、そういう気持ちになった。

 

伊佐敷「おっしゃあああ!!行くぞー!!」

 

結城「いつも通り、自分らしくいけ!」

 

倉持「ヒャハハハ!!頼むぞ!!」

 

亮介「こっちにももう少し打球飛ばしてね!」

 

増子「うがっ!」

 

そして、ナインは颯爽と守備位置についた。

そして、稲実はエースで5番の成宮からだが

 

ズバアアンッ!!

 

惇「らああああっ!!」

 

『三振ー!!稲城実業、この回も得点ならず!!』

 

成宮をSFFで三振。山岡をスライダーを引っかけピッチャーゴロ。平井は真っ直ぐで空振り三振に打ち取りチェンジとなった。

そして、後半戦の6回に入り、青道の攻撃だが成宮はこの回も3人で仕留めた。

その裏の惇は

 

ズバアアンッ!!

 

梵「クッ・・・!」

 

梵を真ん中高めの真っ直ぐで三振に打ち取り、次の富士川は初球を打ちセカンドゴロに仕留めた。

そして

 

『1番センター、神谷君。』

 

3巡目に突入した。

 

御幸(この試合唯一のヒットを打った男だ・・・必ず仕留めるぞ!)

 

そう、御幸はミットを構えた。

そして、惇は初球インハイに真っ直ぐを投げ

 

キン

 

カルロス(チッ・・・全然落ちてねー・・・!)

 

カルロスをキャッチャーフライに打ち取って、3アウトチェンジとなった。

そして、終盤の7回に突入した。

青道の攻撃は、亮介からだった。

打席に入る前、亮介はネクストで待っている惇をチラッと見て

 

亮介(絶対に出塁する!)

 

その気持ちで打席に立った。

初球はボールとなってその2球目を打ったがファーストゴロに終わった。

続く惇は3球目を打ったが

 

『良い当たりでしたが、センターカルロスのファインプレーに阻まれましたー!!』

 

カルロスのファインプレーで2アウトとなった。

 

惇「・・・頼みます、哲さん。」

 

そう、惇は結城に声をかけた。

そして

 

『4番ファースト、結城君。ファースト、結城君。』

 

結城が打席に入った。

 

『この試合最大の山場!両チームのエースと4番の3度目の対決!』

 

伊佐敷(お前が決めろ、哲!)

 

原田「タイムお願いします。」

 

ここで、原田はタイムを取ってマウンドに向かった。

 

原田「鳴。初球厳しく入るぞ。ボールになっても良いから甘い球だけは絶対に投げるなよ。」

 

成宮「分かってるよ。雅さんも、気にしないで攻めていってね。」

 

原田「・・・ああ!」

 

それを聞き、原田は定位置に戻った。

そして、その初球

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!」

 

真っ直ぐを結城は空振った。

 

原田「良いぞ、鳴!」

 

そう言い、原田は成宮にボールを返球した。

2球目

 

ククッ

 

スライダーが外れ、1-1となった。

3球目は中々サインが決まらなかったが、ようやく決まって投げた3球目

 

キン

 

成宮「らああああっ!!」

 

『ここで成宮渾身のストレート!!』

 

真っ直ぐを打ってファールとなった。

 

亮介「合ってる合ってる!」

 

惇「タイミングばっちしっすよ、哲さん!」

 

『激しくぶつかり、飛び散る火花!エースのプライドか!4番の意地か!』

 

前園「哲さーん!」

 

「哲ー!!」

 

「鳴ー!!」

 

「成宮ー!!」

 

4球目のフォーク、5球目の真っ直ぐも結城はファールにした。

 

原田(鳴のストレートは文句無く走ってる・・・これを最大限に活かす為には・・・この球を使うしか無い・・・!)

 

そう思った原田は、あの球のサインを出し構えた。

 

原田(低めにさえ決まれば魔球。誰も打たれやしない!)

 

それを見た成宮は、笑みを浮かべた。

 

片岡(このチームは、お前が引っ張ってきたんだ・・・3年間磨き続けたそのバッティング・・・)

 

片岡(その全てを、この一振りに・・・!)

 

そして、6球目。チェンジアップが低めに来た。

しかし、結城の体勢は崩れる事無く

 

キーン!

 

成・原「「っ!?」」

 

完璧に捉えた。

その打球は、神宮のバックスクリーンへ向かっていき、直撃した。

 

『この試合の均衡を破る4番の一撃ー!7回の表遂に・・・青道高校先制ー!!』

 

青道高校1-0と試合の均衡を破ったのであった。




投稿出来ました。

遂に青道高校先制しました!!

かなり下手くそな描写ですが、ご想像にお任せします(土下座)

このまま決めるのか!!

それでは、また!!


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55話

55話です。


結城のソロホームランで遂に均衡を破った青道高校。

1点を失った成宮だが、そこから切り替えて増子をしっかり抑え、1失点に留めた。

その裏、何とか追い付きたい稲実は2番白河からの好打順だった。

しかし、白河への初球

 

ズバアアンッ!!

 

白河「・・・はっ?」

 

更に真っ直ぐの伸びが増しており、球速表示を見ると

 

白河「っ!?」

 

『141㎞』と表示されていた。

 

白河(普通球威が落ちる筈の終盤に入ってるのに、上がった!?)

 

白河は、惇のボールの力が増した事に驚きを隠せなかった。

そして

 

ククッ

 

白河「クッ!」

 

スライダーで三振に打ち取った。

 

『空振り三振ー!!これで三振11個目!!終盤に入っても、ボールのキレは落ちません!!』

 

次の吉沢はサードゴロに打ち取り、次の4番の原田には

 

ズバアアンッ!!

 

原田「チッ!」

 

惇「シャアアアッ!!」

 

『最後は今日最速タイ143㎞ストレートで空振り三振ー!!原田、今日3打席連続三振ー!!』

 

インハイの真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

春市「す、凄いね・・・足立君。ボールのキレと球威が更に上がったよ。」

 

春市の言葉に

 

栄純「ああ・・・どうやったら、あんな無尽蔵なスタミナを・・・」

 

暁「全くボールの力が落ちてない・・・」

 

栄純はそう反応し、暁は、自分と違って夏の暑さに強く、スタミナも抜群という惇の力を改めて感じ、悔しさが勝っていた。

そして、8回に突入したが

 

ズバアアンッ!!

 

成宮「らああああっ!!」

 

成宮のピッチングはあの1失点以降、出塁を許していない。

最後の坂井に、今日自己最速タイの148㎞をマークするなど、まだまだ衰えていなかった。

その裏、稲実の先頭は成宮からで

 

成宮「終わらせねぇ・・・ゼッテー、こんな所で・・・!」

 

闘志剥き出しで打席に立った。

 

キン!

 

初球の真っ直ぐをファールにし、続く2球目のスライダーを詰まらせたのだが、当たりが弱かった事が幸いし、セカンドの内野安打になった。

打った成宮は、一塁上でガッツポーズをした。

4回以来のヒットで、稲実サイドは大盛り上がりを見せた。

 

御幸「足立!切り替えていけ!」

 

これに、御幸はすかさずタイムを取り、マウンドに向かって惇にそう言った。

 

惇「大丈夫っすよ。後のバッターを打ち取れば良いんですから。」

 

しかし、惇は冷静さを崩していなかった。

続く山岡は初球を打ったがボールの下を擦ってしまいキャッチャーフライ。続く平井は外高めの真っ直ぐで空振り三振、梵はスライダーを引っかけピッチャーゴロに終わり、3アウトチェンジとなった。

 

『不運な内野安打を打たれながら後続をしっかり抑えた足立!青道高校、6年ぶりの甲子園まで、後アウト3つ!』

 

「青道!青道!青道!」

 

そして、9回に突入した。成宮は続投し、鬼気迫るピッチングで3者凡退に抑えた。

 

惇「ヤバいっすね・・・」

 

御幸「ああ・・・そう簡単に勝ちは転がってこねーぞ・・・!」

 

片岡「足立!いつも通り、気迫のピッチングで思い切り行け!」

 

惇「はい!」

 

片岡「良いか!相手は死に物狂いで点を取りに来るぞ!!アウト1つ取るのも丁寧に、最後の最後まで決して油断するな!」

 

「「「はい!」」」

 

そして、片岡は一息つき

 

片岡「今年の稲実は去年のチームよりも力が上・・・俺はそう思う。」

 

片岡「そんなチームをお前達は追い詰めてるんだ・・・」

 

片岡「誇りと自信を持って、堂々とプレーしてこい!!」

 

そう、ナインに檄を飛ばした。

それぞれの守備位置に散り、惇はマウンドに上がった。

そして、帽子を取ってつばを見た。

 

『気力一瞬』

 

そう書かれた自身の座右の銘を見て

 

惇「しゃあっ!」

 

再び気合を入れ直した。

 

唯(惇君・・・!)

 

唯も、スタンドで御守りを握って必死の表情で惇を見た。

 

『9回の裏、2連覇の懸かった夏。前年王者の意地と誇り!!稲城実業最後の攻撃!!』

 

『打席には代打の切り札2年生矢部!』

 

そして、稲実は左の富士川に代えて右の代打の切り札矢部を持ってきた。

その初球、矢部はセーフティの構えを見せたが

 

ズバアアンッ!!

 

矢部「っ!?」

 

空振ってしまった。

 

御幸(まさか初球セーフティとはな・・・)

 

御幸(コイツらも必死だ・・・けど・・・強い気持ちだ!)

 

そう、御幸はミットを構えた。

2球目に外に外れるスライダーを投げ、3球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

『最後はインサイドのストレート143㎞で空振り三振ー!!青道高校、甲子園まで後アウト2つ!!』

 

惇は矢部を空振り三振に打ち取り、雄叫びを上げた。

次のカルロスだが

 

カルロス(ここまでやってりゃ、勝ちが欲しい!結果が欲しい!)

 

その思いで打席に立ったが

 

惇「っ!」

 

御幸「っ!」

 

御幸(コイツ・・・!)

 

ベースに覆い被さって、デッドボール覚悟で出塁する雰囲気を出した。

 

惇(やっべぇ・・・これが王者の執念か・・・)

 

この時、惇も流石にカルロスから滲み出る執念を感じ取っていた。

 

御幸(厳しく攻めるぞ!)

 

御幸は、構わず内角に構えた。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

『初球低めに外れボール!』

 

141㎞の真っ直ぐが外れボールになった。

 

御幸「OK!!球来てんぞ!!」

 

御幸(足立・・・攻めろ・・・!)

 

藤原(足立君・・・!)

 

吉川(足立君・・・!)

 

梅本(足立・・・!)

 

唯(惇君・・・!)

 

前・信((攻めろ足立・・・!))

 

2球目

 

キーン!

 

真っ直ぐを打ちにいったが、振り遅れてファールになった。

3球目

 

ククッ

 

インコースからスライダーを曲げ

 

キン!

 

ショートフライに打ち取った。

 

『ショートフライに打ち取り2アウト!青道高校、甲子園まで後アウト1つ!!』

 

その瞬間

 

「「「後1つ!!後1つ!!後1つ!!」」」

 

「決めろ!青道ー!!」

 

球場中から大きな声が木霊した。

2番の白河の初球

 

ズバアアンッ!!

 

142㎞の真っ直ぐでストライクを取った。

2球目

 

キン!

 

外に逃げるスライダーをファールにし、追い込んだ。

3球目

 

ストンッ

 

SFFが外れ、2-1となって、4球目

 

ズバアアンッ!!

 

今日最速タイ143㎞真っ直ぐで白河が空振り三振に倒れ、一瞬の静寂、そして・・・

 

「ットライーク!バッターアウト!!ゲームセット!!」

 

惇「シャアアアアアアアッ!!!」

 

惇が両腕を広げながら雄叫びを上げ、それが球場中に木霊し、御幸はキャッチャーマスクを投げ捨てマウンドに駆け寄って喜びを爆発させながら惇と抱き合い、内野陣が集まり、ベンチの控えが集まり、最後に外野陣が集まってもみくちゃになった。

この瞬間、青道高校の6年ぶりの甲子園出場が決まったのであった。




投稿出来ました。

やっと決勝戦が終わりました!!

青道高校、甲子園出場です!!

ここまでどう書こうかなと苦労したのですが、ようやく書けました!!

次からは甲子園でのお話ですね!!

何とか書けるよう頑張ります!!

そう言えば、青道高校の夏の出場回数は何回なんだろう・・・?

皆さんは何回だと思いますか?

それでは、また!!



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56話

56話です。


『空振り三振ー!!青道高校、壮絶な投手戦を制し、6年ぶり12回目の甲子園出場を果たしましたー!!』

 

『2連覇を懸けた稲実、エース成宮の力投も実らず、1年生怪腕投手足立の前に力尽きましたー!!』

 

惇「シャアアアアアアアッ!!!」

 

御幸「足立ー!!」

 

決まった瞬間、御幸は真っ先にマウンドに駆け寄り雄叫びを上げる惇を抱き上げた。

 

伊佐敷「勝ったぞオラァァァァァッ!!」

 

伊佐敷は、決まった瞬間バックの中で誰よりもマウンドに駆け、抱き締めた。

 

亮介「やったね・・・」

 

結城「ああ・・・ようやく・・・ようやくだ・・・」

 

亮介と結城は、こみ上げる物を抑えきれなかった。

 

増子「うがうがらーっ!!」

 

倉持「っしゃーっ!!」

 

青道側スタンドも、笑顔と涙で溢れていた。

 

吉川「やりました!!やりましたね、貴子さん!!」

 

藤原「ええ!!」

 

梅本「っしゃーっ!!」

 

唯「惇くーん!!」

 

一方の稲実は、皆悔し涙で溢れていた。

 

原田「皆・・・整列だ・・・ちゃんと整列しよう・・・」

 

その中で、キャプテンの原田は、気丈に振舞い、皆に声をかけ整列させた。

 

「1-0で青道高校!!礼!!」

 

「「したぁっ!!!」」

 

 

 

 

 

 

閉会式、インタビューが終わって、球場の外に出た青道。

 

「ナイスピッチー!!足立ー!!」

 

「お前ら最高だー!!」

 

「哲ー!!」

 

「御幸ー!!」

 

「伊佐敷ー!!」

 

「行けるぞ、全国制覇!!」

 

そんな声を浴びる中、稲実のマネージャーがある物を持って歩んできた。

それは

 

「チーム全員の思いが詰まっています。頑張って下さい・・・甲子園・・・」

 

千羽鶴だった。

 

亮介「重たいね・・・」

 

伊佐敷「西東京全ての分だと思ったら余計にな・・・」

 

結城「・・・。」

 

それを持って、結城は握手の際原田にかけられた言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

原田「お前達の勝ちだ・・・結城。」

 

原田「頂点獲ってこいよ・・・結城。」

 

結城「っ!」

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

それを思い出した結城は

 

結城「西東京代表として、みっともない試合は出来ない。これからだ、夏の本番は!」

 

そう、ナインに言った。

 

結城(お前達の分まで戦うぞ・・・原田。)

 

惇「・・・。」

 

惇も、それを聞いて成宮との会話を思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

成宮「足立・・・お前には負けたよ。」

 

惇「鳴さん・・・」

 

成宮「俺達に勝ったんだ・・・甲子園で、しっかり暴れてこいよ・・・」

 

惇「・・・はい!」

 

そう言い、成宮は稲実ベンチへ帰って行った。

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

惇「・・・カズさん。」

 

御幸「ん?」

 

惇「哲さんの言う通り、あの人達の分まで暴れてあげましょう・・・」

 

御幸「・・・ああ。」

 

惇「栄純。暁。春市。一緒に暴れてやろうぜ!!」

 

そう、惇は栄純と暁、そして春市らに振り向き、笑顔で言った。

 

栄純「ああ!俺もゼッテー暴れまくってやる!!」

 

暁「負けない・・・!!」

 

春市「僕も・・・兄貴と一緒に・・・!!」

 

これに、栄純達も闘志満々の顔で言った。

こうして、青道は甲子園出場を決め、神宮を後にしたのであった。




投稿出来ました。

試合終了後のお話を書きました。

稲実のマネージャーですが、完全オリジナル物です。

違和感あったら、お許し下さい(土下座)

因みに青道の甲子園出場回数は、2006年までの横浜高校の夏の甲子園出場回数です。

理由は、この漫画が始まった年が2006年だったので、それをベースに決めました。

それでは、また。


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57話

57話です。


青道高校が6年ぶりの甲子園出場を決めた翌日。スポーツ面では昨日の決勝の記事を少し取り上げていた。

 

『稲実、成宮の力投実らず決勝で散る・・・!』

 

『青道、6年ぶりの甲子園出場決める!!1年生怪腕投手足立、9回15K完封!!』

 

『足立、稲実をねじ伏せた!!』

 

各新聞では、それまで市大三髙と稲実に遅れを取り、甲子園から遠ざかっていた青道の名門復活は大きな話題を呼び、殆どの一面では惇が両腕を広げながら雄叫びを上げる姿が載っていた。

 

栄純「くっそー!!俺だって活躍してやるー!!」

 

暁(負けない・・・!!)

 

これを見た栄純と暁は、闘志全開のオーラを出していた。

 

春市「はは・・・」

 

これに春市は、苦笑いを浮かべながら見ていた。

そして、今日の全体練習に入る前に青道ナインは、片岡の前に集まった。

 

片岡「昨日は本当に良くやってくれた。お前達が甲子園の土を踏む事になっただけでも俺は嬉しく思う。」

 

まず片岡は、甲子園出場が決まって、選手達の頑張りに労いの言葉をかけた。

しかし

 

片岡「だが・・・」

 

片岡「俺達の目標は常に全国制覇だ。観光気分、旅行気分で行くわけでは無い事を頭に入れて欲しい・・・と言っても、お前らはもう分かっているようだな。」

 

そう、片岡は全員の目を見た。

皆本気で全国の頂点に立つつもりで甲子園に行くという気迫で満ちていた。

それに満足した片岡は

 

片岡「今日は甲子園本選の18名のメンバーを選びたいと思う!」

 

本選18名の発表をした。

そして、発表を終えた後、全体練習が始まり、投手陣はブルペンに入った。

しかし、惇は昨日9回まで投げきったため、片岡から

 

片岡「今日はノースローだ。」

 

と言われていたため、この日はブルペンでの投手陣のピッチングを見ていた。

 

パアンッ!!

 

栄純「おいしょー!」

 

クリス「ナイスボール!」

 

栄純「はい!」

 

惇「ナイスボール栄純!今の球だったら、バッター手が出なかったぞ!」

 

栄純「本当か!?」

 

惇「ああ!」

 

栄純「おーし!クリス先輩、もういっちょ行きますよ!!」

 

御幸「嬉しそうっすね、アイツ・・・」

 

クリス「ああ・・・足立に褒められるのが余程嬉しいんだろうな・・・」

 

クリス「それに・・・昨日の足立のピッチングは、アイツにとって良い刺激になったと思うし・・・」

 

御幸「そっすね・・・まぁ、コイツも中々良い感じですけどね。」

 

そう、ミットを構えると

 

ズドォォン!!

 

暁の剛速球が御幸のミットに来た。

 

御幸「ナイスボール!」

 

暁(負けない・・・!)

 

惇「良いぞ暁!今のは完全にバッター空振りだったぞ!!」

 

暁「!」

 

すると、惇の言葉に暁は更に気合が入った。

 

丹波「ふしっ!」

 

ギュンッ!!

 

宮内「ナイスボール!丹波!」

 

パアンッ!

 

小野「ナイスボール!ノリ!」

 

これには、丹波と川上の2人も、ピッチングに熱が入った。

そして、各地方も続々と代表校が決まっていって、青道も甲子園入りを果たしたのであった。




投稿出来ました。

甲子園出場決定から一夜明けた日のお話を書きました。

原作だと1年の夏は甲子園行ってないので、完全オリジナル物です。

かなり難しいです・・・(汗)

頑張って書いてみます。

因みにベンチ入りメンバーですが、背番号16の田中晋と、背番号17の遠藤直樹を外しました。

その経緯を書かなかった理由ですが、上手く纏められなかったからです。

文才の無い自分が情けないです。本当にすいません。

因みにエースナンバーは、丹波のままです。

それでは、また。


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58話

58話です。


甲子園の抽選が終わった。

青道の初戦の相手は、香川代表の一善高校に決まった。

そして抽選が終わると、惇はある者達と中学以来の再会を果たした。

 

惇「久し振りだな!正!蓮!」

 

それは、南北海道代表巨摩大藤巻の選手の本郷正宗と円城蓮司だった。

 

円城「久し振り、惇!」

 

円城は笑顔で挨拶したが

 

本郷「・・・ああ。」

 

本郷は、ぶっきらぼうにそう返しただけだった。

 

円城「おい正宗!」

 

惇「はは!良いんだよ!相変わらずだな、正。」

 

本郷「・・・。」

 

惇「しっかし、いきなり甲子園で再会するとはな!」

 

円城「俺達もだよ!お前の活躍、聞いたぜ!決勝戦、稲実相手にスゲーピッチングだな!」

 

惇「そっちこそ!正もエグい活躍だし・・・つーかお前、夏予選ほぼマスク被ってたな!」

 

円城「まあな。毎度コイツのフォローが大変だがな・・・」

 

本郷「うるせぇ・・・」

 

惇「だろうな・・・何か、想像できるわ・・・」

 

本郷「お前まで・・・」

 

惇「まあとにかく、もし当たったら、宜しくな。」

 

円城「ああ。」

 

本郷「・・・望むところだ。」

 

これに、本郷の闘争心を刺激した。

 

惇「じゃあな。」

 

円城「ああ。またな。」

 

本郷「・・・。」

 

そう言い、惇と円城、そして本郷は別れた。

 

御幸「アイツら・・・お前の知り合いか?」

 

すると、後ろから御幸が惇にそう尋ねてきた。

 

惇「シニア時代に何度か対戦したんすよ。」

 

御幸「成程な・・・」

 

惇「まあ・・・勝ち進めばどっかで当たるっすよ。」

 

御幸「そうだな・・・さぁ、戻るぞ。」

 

惇「はい。」

 

そして、戻ると青道ナインが大阪桐生の人達と再会していた。

 

柴田「ホンマに久し振りやな!」

 

結城「ああ。」

 

舘「おう・・・足立か。」

 

惇「お久し振りっす、舘さん。」

 

その横で

 

栄純「ああー!!お前は奥居紀明!!」

 

暁「・・・。」

 

栄純と暁はとある選手と言葉を交わしていた。

 

奥居「ん?おお!沢村と降谷だっけか?久し振り!!」

 

その選手は、奥居紀明だった。

彼は夏強化合宿の最後の土日で青道と大阪桐生がダブルヘッダーでの練習試合を行った時、1年ながら昼の試合で出ており、暁と栄純から2本ずつヒットを打ち、4安打の大活躍だった。

暁曰く

 

暁「真っ直ぐを初見で完璧に捉えられたのは初めて。」

 

と言い、栄純も

 

栄純「あんな完璧に、しかも鋭い打球は初めてだ。」

 

そう言い

 

春市「あんな簡単にミートする選手は初めて見た・・・多分僕以上にミート力とバットコントロールに優れている。」

 

春市もそう言う程だった。

大阪桐生の松本監督曰く

 

松本「ミート力とバットコントロールの巧みさは今まで見てきた教え子の中で№1。』

 

と評する程の選手だった。

 

奥居「ともかく、もし当たったら、その時はよろしく頼むわ!」

 

栄純「ゼッテー打ち取ってやる!!」

 

暁「・・・負けない!」

 

これに、栄純と暁の2人は闘志を燃やした。

 

奥居「はは!ん?お・・・足立じゃないか・・・!」

 

すると、奥居は惇を見るやそう言い近付いた。

 

惇「久し振り。」

 

奥居「お前の球も打ってみたいぜ!」

 

惇「・・・対戦、楽しみにしてる。」

 

奥居「ああ!」

 

柴田「奥居!行くでー!」

 

奥居「あ、はい!!それじゃあ、またな。」

 

そう、奥居は桐生ナインの元へ向かった。

そして、青道ナインも宿舎に帰ったのであった。




投稿出来ました。

オリジナル物は難しいですね・・・(汗)

奥居に関しては、パワプロのマイライフで個人的に好きな選手なので、入れました。

パワプロ2022のマイライフから強くさせるの難しくなったんだよな・・・。

ただし、まだ対戦させるつもりはありません。いつ対戦させるかは、ゆっくり考えます。

因みに能力は

弾道:2

ミート:A

パワー:C

走力:A

肩力:A

守備力:A

捕球:A

特殊能力

・チャンスA

・対左投手A

・盗塁A

・走塁B

・送球A

・流し打ち

・固め打ち

・粘り打ち

・チャンスメーカー

・アベレージヒッター

・内野安打

・初球

・守備職人

・レーザービーム

・逆境○

・対エース○

・プレッシャーラン

・選球眼

・積極守備

・積極盗塁

・積極走塁


です。
それでは、また。


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59話

59話です。


青道の初戦の一善高校との初戦。先発は丹波だった。

丹波が、初回一善を3者凡退に抑えると、その裏に青道は2点を先制した。

これには、甲子園で強力青道打線の姿を久し振りに見れた目の濃い高校野球ファンは大盛り上がりだった。

この援護のお陰で、丹波の調子も上げていき、5回まで2安打無失点の好投を演じた。

そして、丹波の代打に春市が送られ、その初球をいきなりセンター前に弾き返す堂々の甲子園デビューを飾った。

 

「何やアイツ・・・木製バットであっさり打ちよったで!?」

 

「ホンマに凄いわ!!」

 

これには、春市に賞賛の声が上がった。

6回からは、暁がマウンドに上がりその初球

 

ズドォォン!!!

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

『な・・・何と・・・初球いきなり151㎞ー!!マウンド上の降谷暁、初球で1年生最速記録を塗り替えてしまいましたー!!』

 

『甲子園球場は一気に揺れましたー!!』

 

いきなり151㎞の真っ直ぐを投げ、甲子園は大盛り上がりだった。

これに呼応するかのように、暁はその回を三振2つの3者凡退に抑える上々の甲子園デビューを飾った。

 

「何やコイツ・・・ホンマに1年か!?」

 

「降谷ってどこの中学やねん!!」

 

暁の剛速球に、球場のファンは大盛り上がりだった。

7回は、栄純がマウンドに上がり、暁と比べて速くないボールだが、持ち味のクセ球で、相手バッターの内角を攻め、その回1安打無失点に抑える甲子園デビューを飾った。

また

 

「さっきの降谷と比べて速くないが、めっちゃエエな!!」

 

「ああ!!オマケに明るいし、何か応援したくなってもうたで!!」

 

彼の明るい姿勢でマウンド上で躍動する姿に、高校野球ファンは彼を応援した。

8回は惇がライトのポジションからマウンドに上がった。

 

『さあ、西東京大会決勝戦であの稲城実業相手に15奪三振完封と圧巻の投球を見せた足立惇がマウンドに上がりました!!』

 

御幸「緊張してるか?」

 

これに、御幸はそう尋ねると

 

惇「いやぁ~・・・実はちょっと・・・でもまぁ・・・いつも通りのピッチングをしますよ。」

 

惇はそう御幸に返した。

 

御幸「そうか・・・頼むぞ!」

 

それを聞いた御幸は、惇にそう返してマウンドを後にした。

そして、いつものルーティンである股割りストレッチを行って、セットポジションに構えた。

そしてその初球

 

ズバアアンッ!!

 

外に伸びのある真っ直ぐを投げた。

 

『まず初球ストラーイク!!いきなり自己最速タイの143㎞をマークしました!!』

 

『球速は降谷君には及びませんが、数字以上の伸びを感じますね・・・!浮き上がって見えましたよ・・・!』

 

これには、球場だけで無く実況も盛り上がった。

そして

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

『最後は143㎞のストレートで空振り三振ー!!これで3者連続三振ー!!足立惇、予選で見せた伸び上がるストレートを遺憾なく見せましたー!!』

 

「「「おおーっ!!!」」」

 

「凄い雄叫びや!!」

 

「監督の片岡みたいやったな!!」

 

「片岡2世や!!」

 

「ストレートホンマに浮き上がっとるし、ホンマ凄いで!!」

 

「火の玉や!!」

 

「おう!!フォームもルーティン、そしボールも一緒やし・・・!!」

 

「火の玉ストレートの再来や!!」

 

惇は3人を伸びのある真っ直ぐで三振に仕留め、この姿に観戦に来ている野球ファンは大盛り上がりを見せ、かつてこの球場で真っ直ぐを武器に活躍したとある往年の投手を思い起こさせた。

最後は川上が締め、青道は7-0の完封リレーで快勝し、初戦を突破した。

この時の惇、暁、栄純、そして春市の1年生4人の活躍は、「1年生カルテット」と呼ばれた。

次の試合は、1回戦に続いて打線が爆発し、16安打15得点の猛攻で相手投手陣を攻めまくり、守備の方でも、この日の先発の暁が、自己最速タイの151㎞の真っ直ぐを中心に5回2安打無失点の快投を演じ、その後栄純から丹波、足立に川上のリレーで見事な2試合連続完封リレーを果たした。

そして、次の相手は、あの大阪桐生を2回戦でサヨナラで勝った今大会優勝候補であり、怪物スラッガー佐野を擁する西邦と対戦する事になったのであった。




投稿出来ました。

初戦の一善戦と2回戦の陽正戦は、上手く書けないので駆け足で投稿しました。

試合内容はご想像にお任せします・・・(土下座)

それでは、また。


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60話

60話です。


次の相手が西邦に決まった青道高校。

 

伊佐敷「スゲぇな・・・あの舘から140メートルの特大アーチかよ・・・!」

 

亮介「高校通算67本の怪物スラッガー・・・その実力は伊達じゃないね。」

 

伊佐敷「チームもサヨナラ勝ちで勢いに乗ってるしな。」

 

結城「とはいえ、俺達のやることは変わらない。いつも通り、俺達の野球で戦おう。」

 

そう、最後に結城がそう締めた。

 

惇「佐野修造か・・・確かにあの舘さんから打ったホームランはエグかったなぁ・・・」

 

春市「うん・・・打った瞬間入るって分かったけど、どこまで飛ぶんだって思っちゃったよ・・・」

 

惇「ああ・・・流石今大会№1スラッガーだな。」

 

栄純「・・・。」

 

暁「・・・。」

 

その中で、栄純と暁は新聞を見たまま黙っていた。

 

惇「どうした、お前ら?」

 

これに、惇はそう聞くと

 

栄純「奥居にリベンジを果たせなかった・・・!」

 

暁「僕も、彼に良い当たり打たれたし、リベンジできると思ってたけどね・・・!」

 

2人は奥居にリベンジする事が出来ないという複雑な気持ちになっていた。

 

惇「いつか俺達と当たる機会が必ずある。奥居はまだ俺達同様まだ1年だ。必ずある。」

 

惇「今は、次の相手に集中しよう。」

 

これに、栄純と暁は黙って従った。

そして、朝食の後軽い練習を済ませ、午後は休みとなった。

各々、部屋でくつろぐ者をいれば、ホテルのすぐ近くにあるコンビニに行ってアイスを買いに行く者もいた。

惇も、少し空気を吸おうと外に出ると

 

唯「あ、惇君!」

 

惇「唯か。」

 

唯とばったり会った。

 

唯「えっと・・・どこか出かけるの?」

 

惇「ああ・・・ちょっと空気を吸いにな。」

 

唯「そっか・・・じゃあ、私も一緒に行って良い?」

 

そう、唯は惇に近付いてそう聞いた。

 

惇「別に構わねーよ。」

 

唯「やった!それじゃあ、一緒に行こう!」

 

惇「お、おい引っ張るな!」

 

そう言い、唯は惇の左手を取って外に出た。

 

藤原「やったようね、唯!」

 

梅本「はい!」

 

吉川「唯さんって、足立君絡みだと本当に色んな表情を浮かべますね・・・」

 

藤原「当然でしょ!だって唯、足立君の事が大好きなんだから!」

 

梅本「そうだよ春乃!唯って、チアの子や色んな女の子に黄色い声援を浴びてる足立にヤキモチ妬いちゃってね!」

 

藤原「この前なんか、『惇君のバカ・・・惇君のバカ・・・』ってずーっと頬を膨らませながらバスの中で言ってたもの!」

 

藤原「その姿が可愛いくってね!」

 

吉川「た、確かに・・・!」

 

これに、他のマネージャー組はそう話していたのだった。

一方の惇と唯は、2人でホテルの近くを散歩していた。

 

唯「ねえ。」

 

惇「ん?」

 

唯「調子どう?」

 

惇「悪くねぇよ。つーか、マジ夏最高だわ。」

 

唯「フフッ・・・相変わらずだね。」

 

惇「つーか、お前こそ大丈夫かよ?あんな炎天下の中で応援なんて。」

 

唯「ちゃんと水分取ってるから大丈夫。」

 

惇「そっか・・・」

 

そういうやり取りをしていると

 

惇「ん?ここは・・・神社か。」

 

神社に辿り着いた。

 

唯「ホントだ。ねえ惇君、お参りしようよ。」

 

惇「そうだな。」

 

そして、2人は石段を登り、お賽銭をした。

 

唯「何をお願いしたの?」

 

惇「勿論全国制覇だ。」

 

唯「他には?」

 

惇「・・・教えねーよ。」

 

これに

 

唯「むぅー!教えなさいよ!」

 

惇「お、おい揺らすな!」

 

唯「むぅー!」

 

唯は惇の左腕を取って揺らした。

惇のもう1つの願いは

 

惇(コイツと・・・唯とずっと一緒にいられるように・・・)

 

だった。

 

惇「そ、そういうお前は何願ったんだよ?」

 

唯「わ、私!?私は・・・チームの全国制覇と・・・」

 

すると、唯は惇をチラッと見て

 

唯「ひ、秘密!」

 

そう顔を赤く染めて言った。

 

惇「んだよ!お前も教えねーじゃねーかよ!」

 

唯「い、良いじゃん!!」

 

唯のもう1つの願い。それは・・・

 

唯(惇君と・・・ずっと一緒にいられますように・・・)

 

という願いだった。

 

惇「まあ取り敢えず、御守り買って帰るか・・・」

 

唯「そうだね!」

 

そして、2人で御守りを買ってホテルに戻った。

 

藤原「ねえ唯、どうだった?」

 

梅本「どうだったの、唯?」

 

この2人の問いに

 

唯「えっと・・・一緒で・・・楽しかった・・・よ。」

 

唯は顔を真っ赤にしながら俯き、指をツンツンしながら言った。

 

藤原「もう!可愛いわね、唯!」

 

梅本「良いぞ!良いぞ唯!」

 

唯「からかわないで下さいよー!」

 

吉川「唯さん!可愛いですよ!」

 

唯「春乃までー!」

 

これに、唯は他のマネージャー組にからかわれたのだった。

因みに惇は

 

倉持「おい惇・・・お前昼間どこに行ってたんだ・・・?」

 

伊佐敷「正直に言えよ・・・」

 

惇「えっと・・・伊佐敷さん・・・洋さん・・・マジ顔が怖いっすよ・・・」

 

倉持「言え!夏川とどこに行ってた!」

 

惇「み、見てたんすか!?」

 

倉持「お前が夏川に引っ張られる姿を偶々見たんだよ!」

 

伊佐敷「どこに行ってた!」

 

惇「わ、分かりました!話しますよ!」

 

倉持と伊佐敷に詰め寄られていたのであった。




投稿出来ました。

完全オリジナル話ですね。

まあ、甲子園からずっとオリジナルなんですけどね・・・

そ、それでは、また。


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61話

61話です。


西邦戦の先発となった惇。

この日の甲子園は、満員御礼だった。

 

『全国高等学校野球選手権大会11日目。3回戦第1試合、球場には既に満員の観客が入っております。注目選手が控えている者同士の対決。青道高校対西邦高校の試合。』

 

『1年生ながら予選では稲実を完封でねじ伏せた、火の玉ストレートを操る1年生怪腕投手、足立惇がマウンドに上がりました!!』

 

『1回戦2回戦とリリーフながら、実力を遺憾なく発揮しております。もう2人の1年生、沢村栄純君と降谷暁君も同様です。彼らの伸び代は計り知れないですね。』

 

『一方の西邦高校は4番佐野を中心とした打線が売りのチーム。青道の足立との対決が注目です。』

 

この盛り上がりには

 

栄純「す、スゲぇ・・・」

 

流石の栄純は気圧されていた。

しかし

 

惇「・・・。」

 

惇はいつも通りリラックスしており、闘志も充満していた。

 

暁「いつもと全く変わらない・・・」

 

春市「そうだね・・・けど、闘志というか・・・気迫も充満してるね・・・」

 

この様子に、暁も春市もそう感じていた。

そして、円陣を組み、その中心に立った結城はナインに檄を飛ばした。

 

結城「俺達は旅行気分でここに来てはいない!俺達は誰だ?」

 

「「「王者青道!!」」」

 

結城「誰よりも汗を流したのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「誰よりも涙を流したのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「誰よりも野球を愛しているのは?」

 

「「「青道!!!」」」

 

結城「戦う準備は出来ているか?」

 

「「「おぉお!!!」」」

 

結城「我が校の誇りを胸に、狙うはただ一つ・・・全国制覇のみ!!行くぞぉ!!」

 

「「「おおおおおおっ!!!」」」

 

この青道伝統のかけ声を聞いた球場の観客は大盛り上がりを見せた。

そして、ベンチから飛び出していき、後攻の青道は守備位置についた。

惇は、まっさらなマウンドに立ち、投球練習を開始し、終えた後いつものルーティンである股割りストレッチ行ってセットポジションに構えた。

 

「プレイボール!」

 

審判の手が上がり、サイレンが鳴り響いた。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

いつものように上から叩きつけるように投げられた球は、球場中に響くような音を立てながら外低めに決まった。

 

『初球140㎞ストレートでストラーイク!!』

 

『球は伸びてますし、調子良さそうですね!』

 

2球目は外のスローカーブにバットを出し、ファールで逃げた。

これに、西邦の1番打者は苦い顔を浮かべた。

3球目

 

ズバアアンッ!!

 

『最後は141㎞ストレートで見逃し三振ー!!この緩急にバッターは手が出ませんでしたー!!』

 

次の打者は初球のスライダーを引っかけサードゴロに打ち取った。

続く3番は

 

ククッ!

 

スライダーで空振り三振に打ち取った。

 

『空振り三振ー!!青道足立、強力西邦打線相手に初回は3者凡退の素晴らしい立ち上がりです!!』

 

『最後の球はスライダーですが、ストレートとほぼ同じ球速と軌道から逃げるように曲がりましたね!これはバッターは見分けがつきません!非常に厄介ですね!』

 

御幸「まだセーブしてるが、良いボールだったぞ!」

 

惇「あざっす!」

 

その裏の青道の攻撃は、相手エースの前に3者凡退に終わった。

その際、3番として打席に立っていた惇は

 

惇(流石西邦のエースナンバーを背負うだけあんな・・・)

 

そう感じながらグローブを持ってマウンドに行った。

そして

 

『2回の表、西邦高校の攻撃は、4番サード佐野君。サード佐野君。』

 

『さあ、この試合注目の対決である、足立対佐野!怪腕対怪物!その最初の対決は、どちらに軍配が上がるでしょう!』

 

注目の対決が始まった。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

佐野「っ!」

 

外に143㎞の真っ直ぐが決まった。

 

佐野(や、ヤベぇ・・・コイツの球、マジで伸び上がってる!)

 

これに、佐野は戦慄を覚えた。

2球目は低めに外れたが3球目

 

ズバアアンッ!!

 

インサイドに142㎞の真っ直ぐを佐野は空振り、2-1となった。

 

『インサイド142㎞のストレートを空振らせ、佐野を追い込みました!!』

 

佐野(コイツ・・・躊躇無く懐に・・・!)

 

そう思った3球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

高めに外れたが伸びのある真っ直ぐに、佐野のバットは空を切り、惇は雄叫びを上げた。

 

『最後は143㎞高めに外れましたが、空振り三振ー!!まず最初の対決は、足立に軍配が上がりました!!』

 

『狙ったところから外れましたが、非常に良いボールでしたね!』

 

これには、実況も大盛り上がりだった。

次の打者にはライト前に運ばれたが、次の打者には膝元の真っ直ぐを引っかけ、セカンドゴロゲッツーに打ち取って3アウトチェンジとなった、

西邦のエースも、4番の結城をレフトライナーで打ち取り、増子、御幸を連続内野ゴロに打ち取るピッチングを見せた。

3回表の西邦の攻撃は7番8番を連続内野フライに打ち取られ

 

ククッ!

 

『最後はスライダーで空振り三振ー!!足立、この回も危なげないピッチングで西邦をゼロに抑えました!』

 

9番はスライダーで空振り三振に打ち取られてしまった。

裏の青道の攻撃は、伊佐敷が詰まりながらもライト前に運び、坂井が送って一死二塁としたが、白州と倉持が打ち取られ3アウトチェンジとなり、序盤を終わって投手戦の様相を見せた。

4回の表、西邦の1番打者は真っ直ぐに絞ったが

 

ククッ!

 

「クッ!」

 

初球スローカーブにタイミングが完全に外れ、腰砕けとなった。

そして、2球目の真っ直ぐに詰まり、ファーストファールフライとなった。

続く2番には

 

ズバアアンッ!!

 

真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、3番は初球を打ち、打球が初めて外野に飛んだがセンターフライとなり、3アウトチェンジとなった。

その裏、青道の攻撃も2アウトながら結城がレフト前に運ぶが、増子が空振り三振に打ち取られ3アウトチェンジとなった。

5回の表、先頭の佐野が打席に立った。

 

『さあ注目の第2ラウンド!前の勝負では足立に軍配が上がりました!この打席では再び足立が打ち取られるか!それとも佐野が怪物の名に相応しい豪快な一発を放つか!』

 

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

『初球アウトコースに142㎞ストレートで空振りー!』

 

外の真っ直ぐに、佐野のバットは空を切り、2球目は

 

ククッ!

 

スライダーを空振り、2ストライクと追い込んだ。

そして

 

ストンッ!

 

SFFで空振り三振に打ち取った。

 

『最後はSFFで空振り三振ー!!佐野2打席連続三振ー!!2打席目はSFFで3球三振に打ち取られましたー!!』

 

『これもストレートと同じ球速と軌道から落ちてきましたね!これはスライダー同様、バッターは見分けがつかないですよ!』

 

次の打者は、2球目のスローカーブを打つもタイミングが外れレフトフライに打ち取り、6番にはスライダーで空振り三振に打ち取った。

その裏の青道は、伊佐敷と坂井が出たが、白州と倉持が打ち取られ、青道は無得点に終わった。

そして、6回に突入し

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

『三振ー!!足立気迫のピッチング!この回フォアボールで1人ランナーを出しセカンドにランナーを送られピンチを背負うが、無失点に抑えましたー!!』

 

7番は真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振。8番は四球を選ばれ、9番に送られ二死二塁となって初めてのピンチを背負ったが、1番を最速タイの143㎞真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

その裏の青道の攻撃は、1アウト後、足立がヒットで出塁したが結城はセカンドライナー、増子はサードゴロに打ち取られ、無得点に終わった。

そして、終盤の7回に突入した。

 

御幸「ここまで無得点か・・・体は大丈夫か?」

 

惇「全然問題ないっすよ。寧ろ、こっからっすよ。」

 

御幸の問いに、惇はそう答えた。

その様子を見た御幸は

 

御幸(ホント頼もしい後輩だぜ・・・)

 

と思った。

そして、打席に立った2番をインハイ真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、3番をスローカーブでライトフライ。

そして、佐野との第3ラウンド。初球はスライダーで空振り、2球目の真っ直ぐをファールにした後の3球目の外低めの真っ直ぐを打ったがセンターフライに打ち取り、3アウトチェンジとなった。

その裏の青道の攻撃は、1人ランナーが出たが後が続かず、そのまま無得点に終わった。

8回の表の西邦の攻撃。5番をショートライナーで打ち取った後、6番7番に連続ヒットを打たれ一死一、二塁のこの試合最大のピンチとなった。

これには、流石に御幸はタイムを取って内野全員マウンドに集まった。

 

御幸「ランナー気にするな。バッター集中でいこう!」

 

惇「うっす!」

 

結城「良いボールはきてる!いつも通り行け!」

 

亮介「こっちにも打球飛ばしてね。」

 

倉持「ヒャハハハ!!いつも通りな!」

 

増子「うがっ!」

 

そして、それぞれ定位置に戻った。

 

『この試合最大のピンチ、凌げるか足立!』

 

『西邦としたらここを取れば、勝利に一気に近付きますよ!』

 

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

膝元に143㎞の真っ直ぐが決まり、2球目はスライダーでカウントを取り、3球目

 

ズバアアンッ!!

 

真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

『真ん中高め142㎞ストレートで空振り三振ー!!』

 

『ボールの力と伸びは衰えてませんね!』

 

続く9番も

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

インハイ真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

『最後も143㎞ストレートで空振り三振ー!!足立、ピンチを背負うも気迫のピッチングでこの回ゼロに抑えました!』

 

『これは大きいですね!!裏の攻撃にも繋がりますよ!』

 

結城「ナイスボール!」

 

亮介「ナイスピッチ!」

 

倉持「ヒャハハハ!!マジ頼りになるぜ!」

 

伊佐敷「やるじゃねぇかオラァ!!」

 

これに、惇は周りから賞賛の声を受け

 

片岡「ナイスボール!」

 

片岡からも褒められた。

 

惇「あざっす!」

 

そして、その裏の攻撃。先頭の倉持が内野安打で出塁すると、亮介がエンドランでチャンスを広げ、無死一、三塁となって、惇が打席に立った。

その初球

 

キーン!

 

惇が左中間を破るツーベースヒットを放ち、遂に均衡が崩れた。

 

『左中間を大きく破る足立のタイムリーツーベース!この試合、遂に均衡が崩れましたー!!』

 

尚も無死二、三塁で結城もタイムリーツーベース等の猛攻で、青道はこの回だけで5点を取った。

そして9回、惇は1番をスライダーで空振り三振。2番をスローカーブでショートゴロに打ち取り、あと1人となったが、3番に意地でライト前に運ばれ

 

『4番サード、佐野君。サード佐野君。』

 

佐野との第4ラウンドとなった。

 

『さあ、怪腕対怪物の第4ラウンド!ここまで3打数ノーヒット2三振と足立が完璧に抑え込んでおりますが、この回意地の一発を放つか!』

 

惇(スゲー・・・この人何か持ってんじゃね・・・)

 

そう思い投げた初球

 

キン!

 

外低めの真っ直ぐをファールにし、続く2球目のスライダーもファールにした佐野。

 

佐野(あの球来い!)

 

佐野(もう一度見せてくれ!あのスプリッ・・・!)

 

そう、惇のSFFを待つ佐野は3球目を振りにいったが

 

ズバアアンッ!!

 

佐野(しまっ・・・)

 

インハイ143㎞真っ直ぐに空振り三振に打ち取られてしまった。

 

惇「シャアアアッ!!」

 

『試合終了ー!!青道3試合連続の完封!!強豪対決を制した青道ベスト8進出ー!!』

 

この試合の惇は、4安打1四球14奪三振の完封勝利を飾ったのであった。




投稿出来ました。

西邦戦をこのお話で一気に纏めました。

拙い内容ですが、お許し下さい(土下座)

それでは、また。


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62話

62話です。


3回戦で、強力西邦打線を完封した惇。

その活躍は、スポーツ新聞の一面トップに躍り出る程だった。

 

『怪腕対怪物対決!勝ったのは怪腕足立!』

 

『怪物佐野3K斬り!足立惇!マウンドで雄叫び!』

 

『佐野涙なし!「完敗です」』

 

惇だけじゃなく

 

『初戦から見事な活躍!青道1年生カルテット足立惇、降谷暁、沢村栄純、小湊春市!』

 

栄純や暁、春市も載る程だった。

これには

 

伊佐敷「足立達しか載ってねぇな、最早・・・」

 

伊佐敷もそう言わざるを得なかった。

 

亮介「しょうが無いよ。あれだけの活躍をされたら・・・」

 

結城「そうだな。だが俺達の存在も忘れてはいけない。次の準々決勝、俺達も1年に負けない活躍をしよう。」

 

この言葉で、3年生は気を高めたのだった。

 

栄純「むむむっ・・・」

 

暁「・・・。」

 

その頃、栄純と暁は、新聞をじぃっと見ていた。

 

春市「気になるなら読みなよ2人共・・・」

 

これに、春市はそう2人に言ったら

 

栄純「やはり、惇しかメインに載ってない!俺の甲子園デビューは!」

 

暁「僕のデビューはどこに・・・!」

 

2人はそう対抗心を抱いた目で返した。

 

春市「僕に言われても・・・昨日の足立君は別格の活躍だったし・・・」

 

栄純「クソォー!次の試合は、絶対活躍してやるー!!」

 

暁「負けない・・・!」

 

そう、2人は闘志剥き出しで言ったのだった。

 

惇「何騒いでんだよ、お前らは・・・」

 

すると、惇が現れ2人にそう聞くと

 

栄純「惇!俺、テメーには絶対負けねーからな!!」

 

暁「僕も、絶対に負けない!!」

 

栄純と暁はそう惇に詰め寄って言った。

 

惇「んだよ急に・・・でも、俺もお前らには負けねーから・・・!春市も!」

 

惇も突然の事に困惑したが、すぐに端整な顔に獰猛な笑みを浮かべた。

 

春市「うん!僕も、足立君に負けないから!」

 

春市も、普段見せない闘志を見せたのだった。

暫くして、準々決勝前日の試合、熱闘甲子園での取材を受けた惇達1年。

 

「足立君。沢村君。降谷君。小湊春市君。明日の準々決勝に向けて一言。」

 

惇「取り敢えず、ピッチャーでも野手でもチームの勝利に貢献できるプレーをして、優勝目指して頑張りたいと思います。」

 

栄純「自分のピッチングを心がけて、チームに貢献したいっす!」

 

暁「自分のピッチングを!誰もが認めるピッチングを心がけます!」

 

春市「代打でも守備固めでも、どのような形でも良いので勝利に、優勝に貢献したいです。」

 

そう、4人はインタビューに答えた。

そして翌日の準々決勝、相手は埼玉代表で今年練習試合でも戦った華咲篤栄高校。青道の先発は丹波だったが、初回に1点失い、ここまで無失点だったチームが初めて失点したのだがその1点で凌ぎ、5回まで3安打1失点の力投で試合を作った。

打線も、序盤は相手のエースを攻めあぐねたのだが、中盤に追い付いてから小刻みに点を重ねていった。

6回から暁、栄純、足立、川上のリレーで相手を抑えていき、青道は6-1で勝利を収め、堂々のベスト4進出を果たした。

次の準決勝は、みちのく悲願の初優勝を狙う宮城代表の郁栄。この日の先発は暁で、惇は温存のためベンチスタートだった。初回の立ち上がりを突かれた暁は2点を失ったが何とか凌ぎ、その後は尻上がりに調子を上げていき、郁栄打線を抑えていった。

打線も、結城の2ランなどで8点を取り、着実に点を重ねていった。

暁の後も、栄純、丹波、川上のリレーで抑えていき、惇を最後まで温存させ、最終的に8-4で勝利を収め、青道高校は片岡が2年の時以来の決勝進出を果たしたのであった。




投稿出来ました。

かなり内容がグダグダです。

準々決勝と準決勝ですが、最早ハイライトになってしまいました。

文才が無く、申し訳ございません。

次回は決勝です。

青道高校、全国制覇なるか?

それでは、また。


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63話

63話です。


8月20日

 

 

 

 

「足立くーん!」

 

「降谷くーん!」

 

「沢村くーん!」

 

「春市くーん!」

 

「御幸くーん!」

 

青道が泊まっている宿舎の周りには、大勢の人で溢れかえっていた。

 

伊佐敷「外見てみろよ。こんな時間なのにまだ来てんぞ・・・」

 

亮介「ホテル囲まれてるかもね・・・」

 

これに、伊佐敷と亮介はそう思いながら外を見ていた。

 

『夏の甲子園もいよいよ大詰め!決勝戦は、互いに勝てば初優勝!』

 

『現監督片岡鉄心以来となる決勝進出を果たした青道高校が、悲願の初優勝なるか?』

 

『それとも、巨摩大藤巻が初めて北の大地に優勝旗を持ち帰るか?』

 

すると、テレビの高校野球のニュースでは、そう放送していた。

 

結城「頂点まで後1つだ。最後まで、俺達らしく堂々とプレイしよう。」

 

そう、結城は皆の心を纏めていくかのように言った。

その言葉を聞き、選手の目の光が更に増していった。

 

暁「・・・先輩達、本当に甲子園に来ても変わらないね。」

 

栄純「ああ。俺達同様試合に出てるにもかかわらず、体はずっと疲れてるのにな。」

 

春市「本当にそうだね・・・」

 

これに、暁や栄純、春市がそう呟いた。

 

惇「何かよ、この人達と一緒にいると、ここまで来て当たり前みてーな気になる。」

 

すると、惇がそう呟いた。

 

栄純「ああ・・・」

 

春市「そうだね・・・」

 

暁「・・・。」

 

惇「明日の試合、ゼッテー勝ちてー・・・!」

 

栄純「ああ・・・」

 

暁「うん・・・」

 

春市「僕も・・・」

 

そう、惇達は結城達を見て言った。

そして・・・翌日。

 

『さぁー両校飛び出してきました!甲子園決勝!西東京の青道か!南北海道の巨摩大藤巻か!』

 

全国の頂点を決める最後の一戦が始まろうとしていた。

この日の先発は、青道は惇で、巨摩大藤巻が本郷だった。

両校の監督共に、投手戦を考えてお互いの先発投手の打順を9番に下げていた。

 

『その最初のマウンドに上がるのは、巨摩大藤巻の快進撃を支える1年生ながらMAX150㎞のストレートを投げる剛腕であり、「北の怪童」の異名を取る背番号10、本郷正宗!』

 

『今年の夏は1年生の活躍が光りました!青道の1年生カルテットと大阪桐生の奥居紀明、そして本郷正宗!この決勝戦でどのようなピッチングを見せるか?』

 

『いよいよプレイボール!』

 

そして、振りかぶった腕から投げ出されたボールは

 

ゴバアアアンッ!!

 

「「「うおおおっ!!」」」

 

150㎞の球速表示を出した。

 

『い、いきなり150~!!北の怪物本郷正宗!いきなり150㎞を出しました!!』

 

倉持「マジ・・・?」

 

これには、打席に立ってる倉持は苦笑いを浮かべた。

そして、最後はSFFで3球三振に打ち取られてしまった。

次の亮介は2球目を打ったが、キャッチャーフライになり、次の伊佐敷は真っ直ぐで空振り三振に倒れた。

 

『巨摩大藤巻本郷正宗!初回2つの三振を奪う最高の立ち上がりを見せました!!』

 

『甲子園未だに無失点!決勝戦でもその実力を遺憾なく発揮します!!』

 

そして、青道が守備位置につき、惇がマウンドに上がった。

 

『対しまして青道高校の先発は、こちらも1年生!青道の誇る1年生カルテット筆頭で、その快進撃を支えるMAX143㎞の火の玉ストレートを操りし「東都の怪腕」足立惇!』

 

『お互い1年生で、嘗て中学の全国大会でも本郷と投げ合った事もあるライバル!』

 

『ライバルの極上の立ち上がりを見て、どういう立ち上がりを見せるか!』

 

昂ぶる実況の中、惇はいつものルーティンの股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

『初球ストラーイク!!初球は142㎞!』

 

『気合が入ってますねー!!』

 

142㎞の真っ直ぐから入った。

2球目はスローカーブが外れたが3球目は141㎞の真っ直ぐをファールにして追い込んだ。

 

御幸(今日の真っ直ぐもいつも通り走ってる。これで決めるか?)

 

受けてる御幸は、そうサインを出すと、惇は頷き、投げた4球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

142㎞の真っ直ぐで空振り三振に仕留め、いきなり雄叫びを上げた。

 

『空振り三振ー!!最後は142㎞のストレート!!そして吼えましたー!!』

 

『気持ちが伝わってきますねー!!』

 

そして、次の2番も真っ直ぐで空振り三振。3番は初球のスライダーを打ち上げてセカンドフライに打ち取り3アウトチェンジとなった。

 

『両者共に最高の立ち上がり!!まず初回をお互い3人で抑えました!!』

 

そしてこれが、壮絶な投手戦の幕開けとなったのであった。




投稿出来ました。

もの凄いグダグダですね・・・。

読みにくいかもしれませんが、お許し下さい(土下座)

それでは、また。



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64話

64話です。


惇、本郷共に3者凡退で抑える最高の立ち上がりとなった試合。

2回の表、結城が打席に入った。

 

円城(気を付けろよ、正宗!)

 

そう思いながら、円城はミットを構えた。

その初球

 

ゴバアアアンッ!

 

結城にも初球150㎞の真っ直ぐを投げ、結城は空振った。

2球目

 

キン!

 

結城は打ったものの、センターフライに打ち取られた。

 

『4番結城、2球目を打つもセンターフライ!青道1アウトとなりました!』

 

そして、次の増子は真っ直ぐで、御幸はスライダーで空振り三振に打ち取られた。

その裏の惇のピッチング。惇は4番バッターをスライダーでサードゴロに打ち取り、5番のキャッチャー円城に対しては

 

ストンッ!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

SFFで空振り三振に打ち取った。

 

『空振り三振ー!!最後はSFFで空振り三振に打ち取りましたー!!』

 

次の6番は、初球の真っ直ぐを打ったがセカンドゴロに終わり3アウトチェンジとなった。

3回に入って、本郷は7番坂井を真っ直ぐで見逃し三振。8番白州をセカンドゴロに打ち取る。

そして、足立が打席に入ると

 

ゴバアアアンッ!

 

惇「・・・はは。」

 

また150㎞をたたき出した。

そして、5球目でSFFを投げ、空振り三振に打ち取った。

 

『空振り三振ー!!本郷、この回も3者凡退!!最後はSFFで空振り三振に仕留めましたー!!』

 

惇(アイツ・・・めっちゃこのボールを練習したんだろうな・・・)

 

惇(中学最後の大会が終わった後、俺に投げ方を聞いたくらいだからな・・・)

 

この時、本郷のSFFに惇はそう感じたのだった。

 

御幸「切り替えていけ。この回も抑えるぞ。」

 

惇「うっす!」

 

そして、惇がマウンドに上がった。

7番をセンターフライに打ち取り、8番には詰まらせたがライト前にヒットを打たれてしまった。

 

『落ちましたー!!この試合両チーム通じて初めてのヒット!!巨摩大藤巻、先制のランナーを出しましたー!!』

 

そして、9番の本郷は無難に送って二死二塁とし、先制のピンチになったが

 

ククッ!

 

『空振り三振ー!!足立、先制のピンチも最後はスライダーで空振り三振に仕留め、無失点に抑えましたー!!』

 

1番を空振り三振に打ち取り、3アウトチェンジとなった。

 

結城「ナイスボール!」

 

亮介「ナイスピッチ!」

 

倉持「ヒャハッ!良いぜ、足立!」

 

伊佐敷「良いぞ、足立ぃ!」

 

惇「あざっす!」

 

そう、惇はナインに賞賛の声を受けた。

 

新田「ふん!やりおるわ、あのピッチャー・・・」

 

それを、巨摩大藤巻の監督、新田はそう呟いたのだった。

そして、4回に突入し、倉持から始まったが、倉持は2球目のスライダーを引っかけファーストゴロに終わり、亮介はセンターフライに打ち取られた。

伊佐敷は初球をレフト前に運んだが

 

ストンッ!

 

『空振り三振ー!!本郷、青道の4番結城をSFFで空振り三振に打ち取りましたー!!』

 

結城が空振り三振に終わった。

 

結城「・・・未熟。」

 

その際、結城は強烈なオーラを噴き出したのだった。

その裏の惇のピッチング。2番をセカンドゴロに打ち取り、3番はセンターフライに打ち取ったのだが

 

惇「・・・あっぶねー。」

 

打ち取った球が甘かったため、少し冷や汗を流した。

しかし、切り替えた惇は次の4番に目を向けた。

その初球

 

ククッ!

 

『まず初球スローカーブから入りました!』

 

スローカーブでストライクを取り2球目

 

ズバアアンッ!!

 

『140㎞ストレート高めに外れてボール!これで1-1となりました!』

 

真っ直ぐが外れた。3球目

 

ククッ!

 

『スローカーブが外れ、1-2!』

 

スローカーブが外れた。4球目

 

キン!

 

『スライダーを打ちましたが一塁線ファール!』

 

スライダーでカウントを整え、2-2となった。

5球目に入る時、4番バッターは打席を外そうとしたのだが

 

惇「・・・。」

 

惇はセットポジションのまま微動だにしなかった。

そこには、何か途轍もない威圧感が、惇の体から滲み出ていた。

その圧に押された4番バッターは、慌てて構えてやっと惇が足を上げて投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

そのボールは、序盤とはまるで違う伸びのある真っ直ぐだった。

 

『三振ー!!最後は今日最速143㎞のストレート!!』

 

『足立、この回もゼロに抑えましたー!!』

 

それをネクストで見ていた円城は

 

円城(スゲぇ・・・)

 

ただそれしか内心言葉に出なかった。

そして、5回に突入し、本郷は先頭の増子をピッチャーフライ。御幸をセカンドゴロ。坂井にはレフト前に運ばれたが次の白州は真っ直ぐで空振り三振に仕留め、この回も無得点に抑えた。

 

新田「おいお前ら。あの作戦を使うぞ。」

 

その時、新田はナインにある作戦を伝えた。

そしてこの作戦は、試合終盤惇に徐々に影響を受けていくのであった。




投稿出来ました。

試合描写が相変わらず下手くそで大変申し訳ございません(土下座)

さて、新田監督がとった作戦とは何か?

それでは、また。


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65話

65話です。


5回の裏。巨摩大藤巻の先頭は5番の円城。

惇が投げた初球はボール気味のスローカーブだったが、円城は見送った。

その2球目は、スライダーを投げたがボールになった。

3球目に、インサイドに142㎞の真っ直ぐを投げストライクを取ったが、円城のバットは全くスイングしなかった。

 

惇(全くバット振んねーな・・・何が狙いだ?)

 

そう思いながら、惇は4球目に御幸が要求したスローカーブを投げたが、外れて2-2となった。

5球目

 

キン!

 

円城は外高めの141㎞の真っ直ぐを打ってファールにした。

6球目

 

キン!

 

再び141㎞の真っ直ぐをファールにした。

7球目

 

キン!

 

スライダーをファールにした。

 

御幸(またファール・・・?コイツ・・・一体何を狙って・・・?)

 

この時、御幸はファールばっかり打つ円城に疑問を抱いていた。

 

円城「・・・。」

 

この時、円城は先程新田監督が言った作戦を思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

新田「この回、ファールで徹底して粘れ。」

 

新田「そうすれば、あの怪腕ピッチャーの球数は増えていく。中盤になって球威が落ち、甘いボールが来たら、それを狙い打ちしろ。」

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

円城(結構後からくるよな、これは・・・)

 

円城(2ストライクアプローチか・・・)

 

そう、円城は打席で考えていた。

そして8球目に真っ直ぐを打った円城だが、セカンドゴロに終わった。

次の6番は、惇は初球スライダーを投げ1ストライクを取った。

2球目はスローカーブでファールにし、あっさり追い込んだ。

3球目は高めに真っ直ぐが外れ、4球目

 

キン!

 

SFFを投げたが当てられ、ファールになった。

5球目は外の真っ直ぐを投げたがこれもファールになった。

6球目

 

ククッ!

 

スライダーで空振り三振に打ち取った。

 

結城「2アウトー!」

 

亮介「ナイスボール!」

 

バックは、そう惇に声をかけていた。

 

御幸(さっきから気になっていたが、ファールを良く打たれるな・・・)

 

この時、御幸は巨摩大藤巻のバッターがファールで粘られてる事に違和感を抱いていた。

 

惇(んだよ・・・この人も全然前に飛ばねーじゃねーか・・・)

 

惇(だったら遠慮無くねじ伏せてやる!)

 

しかし、惇はアドレナリンが出まくっていたため、気付いていなかった。

そして、7番の初球は、142㎞の真っ直ぐでストライクを取り、2球目も真っ直ぐを投げたがボールになった。

3球目は140㎞の真っ直ぐを空振らせ、2-1と追い込んだ。

4球目はカーブが外れ2-2となり、5球目はスライダーが外れフルカウントとなった。

続く6球目は

 

キン!

 

140㎞の真っ直ぐをファールにした。

そして7球目

 

キン!

 

『出ましたー!!巨摩大藤巻、今日2本目のヒットを打ちましたー!!』

 

高めのボール気味の真っ直ぐをセンター前に打ち返した。

 

御幸「気にするな!球は来てるぞ!」

 

惇「うっす!」

 

これに、御幸はそう惇に言った。

そして、8番が打席に入った。

その初球と2球は外れ、3球目4球目と連続でスライダーを空振らせ2-2とした。

5球目

 

キン!

 

140㎞の外の真っ直ぐをファールにした。

6球目

 

キン!

 

同じく外の142㎞の真っ直ぐを投げたがファールとなった。

 

御幸(まさか・・・相手の狙いは・・・足立の消耗させる作戦か・・・)

 

『この回の球数非常に多くなってますね・・・』

 

『そう言われてみればそうですね・・・』

 

これは、青道側ベンチも気付いていた。

 

片岡「今ので何球目だ?」

 

クリス「27球です。」

 

クリス「恐らくですが、徹底して粘って、終盤一気に崩すつもりでしょう・・・」

 

片岡「・・・2ストライクアプローチか。」

 

クリス「・・・はい。恐らくは。」

 

これに、少し苦い顔を浮かべていた。

 

吉川「この回、やけにファールが多いですね・・・」

 

藤原「・・・そうね。終盤に影響が出なければ良いけど・・・」

 

梅本「・・・。」

 

唯「惇君・・・」

 

スタンドのマネージャー組も、少し不安な色を見せていた。

そんな中8番への7球目

 

ストンッ!

 

『空振り三振ー!!足立、最後はSFFで空振り三振に仕留めましたー!!』

 

『粘られましたが、足立君の粘り勝ちですね・・・』

 

何とか抑えた惇だが、この回28球も投げさせられてしまったのであった。




投稿出来ました。

2ストライクアプローチ・・・これピッチャーからしたら結構嫌ですよね・・・。

この試合、どう転がっていくか?

それでは、また。



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66話

66話です。


6回表の青道の攻撃。打順は惇から始まった。

その初球

 

キーン!

 

『打ちましたー!足立、本郷の初球のスライダーをセンター前に運びましたー!』

 

惇はセンター前に運んだ。

次の倉持はキッチリ送って一死二塁の形にしたのだが

 

ストンッ!

 

『空振り三振ー!!本郷、先制のピンチにも動じず、2番小湊亮介、3番伊佐敷を連続三振で凌ぎましたぁー!!』

 

チャンスを活かせず、無得点に終わってしまった。

 

惇「伊佐敷さん、切り替えていきましょう!」

 

その際、凡退して俯いていた伊佐敷に声をかけ励まし、グローブを持ってマウンドに向かった。

その裏の惇のピッチング。先頭の本郷の初球は外のスローカーブでストライクを取った。

2球目は真っ直ぐが外れボールになって、3球目

 

キーン!

 

御幸「っ!?」

 

SFFが完璧に打たれ、大きな打球が外野に飛んだが白州の守備範囲であった為、アウトになった。

 

惇「ふぅー・・・」

 

それを見た惇は、一息ついて汗を拭っていた。

 

御幸(今のSFF・・・高かったな・・・)

 

しかし、御幸は先程の回までコースに決まっていたSFFが少し浮いてきた事に気付いていた。

次の1番も

 

キーン!

 

SFFではないが真っ直ぐを完璧に捉えられてしまった。

しかし、その打球は伊佐敷の正面だったため、先程同様アウトになった。

 

御幸(マズいな・・・さっきのイニングで球数投げさせられたのが大きい・・・)

 

御幸(ボールは走ってるが、浮き始めてる・・・)

 

御幸は、内心不安の色に染まっていった。

次の2番には

 

キーン!

 

レフト前に運ばれ、2アウトながら一塁に背負った。

 

『巨摩大藤巻、2アウトながらランナー出ましたー!!このランナーを返せるか巨摩大藤巻!!』

 

そして、次の3番の初球

 

ズバアアンッ!!

 

140㎞の真っ直ぐがインサイドに決まった。

続く2球目はスローカーブが外れたが3球目

 

ズバアアンッ!!

 

外に141㎞の真っ直ぐが決まり、2-1となった。

そして4球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

インハイ142㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、雄叫びを上げた。

 

『空振り三振ー!!足立、この回も気迫のピッチングでゼロに抑えましたー!!』

 

伊佐敷「良いぞ、足立ぃ!」

 

結城「ボールは来てるぞ!」

 

亮介「良いよ良いよ!!」

 

そして、周りの声を受けてベンチに戻った。

そして、7回に突入して青道は結城からなのだが、結城をファーストゴロ、増子は空振り三振、御幸はファーストゴロに倒れ、本郷を前にこの回も無得点に終わった。

その裏の惇のピッチング。

4番には、初球スライダーを空振らせ、2球目に真っ直ぐを投げたが

 

キーン!

 

これも完璧に捉えられ、一、二塁間に打球が飛んだ。

しかし

 

亮介(抜かせない!)

 

亮介が横っ飛びで捕り、アウトにした。

 

『ア、アウトー!抜けるかと思われた打球を、小湊亮介のファインプレー!!』

 

惇「あざっす!亮さん!」

 

これに、惇はお礼の言葉を述べた。

 

亮介「どんな打球も止めてあげるからね!」

 

これに、亮介はそう惇に言った。

次の円城には、初球はスローカーブが外れ、2球目は真っ直ぐでストライクを取った。

2球目はスライダーが外れてその次の3球目

 

キーン!

 

少し浮いた真っ直ぐを捉えられ、外野に飛ばされたがレフトフライになった。

 

円城(やはり・・・ボールが浮いてるな・・・本人は気付いてないが、疲れてきてるな・・・)

 

円城(これでチャンスが作れれば・・・)

 

その際、円城は惇の様子と打った打球を見ながらそんな事を考えていた。

次の6番にはライト前に運ばれたが

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

7番には142㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取って、無得点に抑えた。

 

片岡「球数は?」

 

クリス「この回終わって102球です。」

 

クリス「まだボールは走ってますが、疲れの影響からか少し浮いてますね・・・」

 

この時、片岡はクリスに惇の球数を尋ね、それにクリスはそう答えたのだった。

8回に突入し、青道は坂井からだが、坂井はサードゴロ、白州はセンターフライに倒れ、惇はSFFで空振り三振に倒れた。

 

『空振り三振ー!!足立、本郷を前に空振り三振に倒れました!青道、この回も無得点に終わりました!!』

 

その裏の惇のピッチング。

先頭の8番をセカンドゴロに打ち取り、9番の本郷へは

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

141㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取って、先程の三振の借りを返した。

 

『三振ー!!足立、先程の三振の借りを返すかのように本郷を空振り三振に打ち取りましたー!!』

 

次の1番は、SFFで空振り三振に打ち取り、惇はこの回も無得点に抑えた。

そして、この試合16個のゼロが並んだまま、9回に突入したのであった。




投稿出来ました。

決勝戦も8回まで終わりましたが、終わりが見えませんね・・・。

書いててアレですが・・・。

それでは、また。


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67話

67話です。


9回の表。青道の攻撃は倉持から始まった。

 

惇「ふぅー・・・」

 

その時、惇は水を飲んで腰掛け、背を凭れていた。

肉体的にも精神的にも疲労が流石に本人も感じていた。何より、こちらが先攻なだけにここで点が入らずに1点取られれば負けという事が、辛いのかもしれない。

 

栄純「惇・・・」

 

暁「・・・。」

 

春市「足立君・・・」

 

その様子を、栄純達はただ見る事しか出来なかった。

 

片岡「足立。まだ行けるか?」

 

すると、片岡が惇にそう尋ねると

 

惇「全然、余裕っすよ。つーか、援護が来るまで抑えますよ。」

 

惇「丹波さんは言いました。マウンドに上がった者がエースだと。」

 

惇「なら、今マウンドにいる俺が点を取られなければ良いんすよ。」

 

惇「味方が点を取ってくれるまでいかに粘れるかが本当のエースっすよ。点を取れないのだったら、取ってくれるまで俺が我慢して0点に抑えれば良いだけっすよ。」

 

惇はそう答えた。

それを聞いた片岡は

 

片岡(足立・・・)

 

何も言えなかった。

しかし、まだ1年生。現在記録員としてチームに貢献しているクリスの怪我を見逃した身としては、慎重にならざるを得なかった。

 

片岡「御幸。」

 

御幸「はい。」

 

そう思った片岡は、密かに御幸を呼んで、こう言った。

 

片岡「これ以上は無理だと思ったら、サインを出せ。交代させる。」

 

御幸「っ!」

 

これに、御幸は驚いた表情を一瞬浮かべたが

 

御幸「・・・分かりました。」

 

すぐに冷静な表情に戻り、承諾の言葉を言った。

それと同時に

 

『空振り三振ー!!本郷、この回も3者凡退に抑えましたー!!』

 

青道の攻撃が終わり、無得点だった。

 

惇「さあ、ここも抑えましょう!」

 

そう、惇はグローブを持ってマウンドに向かった。

そして、巨摩大藤巻の攻撃は2番という好打順から始まった。

その初球は真っ直ぐから入ったが、ボールとなった。

2球目も真っ直ぐが高めに外れ、ボール。

3球目はスライダーが外れ、4球目

 

『ストレートが外に外れフォアボール!!足立、先頭打者を出してしまいました!!』

 

フォアボールとなってしまい、先頭を出してしまった。

続く3番が打席に立って

 

御幸(どう出る・・・?送るか・・・それとも・・・)

 

御幸はじっくりと観察したが、その初球

 

コツン

 

バントで確実にランナーをスコアリングポジションに進めて、4番を迎えた。

そして、惇は帽子を取って

 

『気力一瞬』

 

とつばに書かれてある自身の座右の銘を見て、スイッチを入れた。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

『初球140㎞ストレートでストラーイク!!』

 

真っ直ぐでストライクを取った。

 

結城「ナイスボール!」

 

亮介「良いよ良いよ!ボール来てるよ!」

 

倉持「いつも通り行け!」

 

増子「うがっ!」

 

バックは、惇を声で後押しした。

 

門田「ナイスボール!」

 

春市「ボール来てるよー!!」

 

栄純「ナイスボール!」

 

暁「ナイスボール!」

 

ベンチも、惇に声援を送り

 

吉川「ナイスボール!」

 

藤原「ナイスボール!足立君!」

 

梅本「ガンガン攻めろー!!」

 

唯「惇くーん!!」

 

スタンドも、マネージャー組らが必死に声援を送っていた。

2球目

 

キン!

 

『ファール!追い込みました青道バッテリー!』

 

高めの真っ直ぐをファールにした。

3球目はスローカーブが外れ

 

御幸(次はこれだ!)

 

御幸はあるボールのサインを出した。

それを見た惇は頷き、足を上げて投げた。

 

ストンッ!

 

惇「らああああっ!!」

 

そのボールは、SFFだった。

低めに投げ込まれたボールは、バットの空を切って空振り三振に打ち取り、雄叫びを上げた。

 

『三振ー!!最後は火の玉ストレートと並び伝家の宝刀、SFFで空振り三振に打ち取りました!!』

 

『これっていう最高の球でしたね!!』

 

そして、二死二塁で迎えるは、円城だった。

 

円城(相変わらずタフだな・・・かなり球数放ってる筈だが・・・)

 

そう思い、打席に立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

円城「っ!」

 

高めに143㎞の真っ直ぐが投げ込まれた。

 

円城(ったく・・・まだこんな底力があるなんてな・・・)

 

これに、円城は内心苦笑いを浮かべた。

しかし、その球は良いボール過ぎて、僅かに外れてしまっていた。

 

円城(恐らく次の投げるボールは・・・)

 

御幸(次は・・・)

 

惇(あれっすよ、カズさん!)

 

惇・御・円(((SFF!!)))

 

この時、惇と御幸はSFFでいこうと思い、円城も次の球はSFFで来ると予想し、狙っていた。

その2球目に、SFFを投げた。

そしてこれが、この試合127球目だった。

 

キーン!

 

円城はそれを打ち返し、マウンド左方向に弾き返した。

打球はセンターに抜けようかと思ったが、何とか亮介が飛び付き、捕った。

 

倉持「亮さん!」

 

それを見た倉持は、亮介にそう言い、亮介は倉持にトスした。

受け取った倉持は、一塁に送球したが僅かに逸れ、結城が目一杯体を伸ばして捕球し、円城はヘッドスライディングをした。

そして

 

「セーフ!」

 

一塁審の手は、左右に動いた。

 

惇(ヤバイ!!)

 

それを見た惇は、そう思い後ろを振り返ったら、セカンドランナーが三塁を回り、一気にホームまで突っ込んでいった。

この時、惇の目にはスローモーションに見えた。

 

「「「バックホーム!!!」」」

 

青道ベンチも、皆そう叫び、結城はホームに送球した。

受け取った御幸はタッチしようとしたが、間に合わずホームインを許してしまった。

その瞬間、9回裏のスコアボードにゼロ以外の数字、1が刻まれ、青道の準優勝が決まり、巨摩大藤巻の優勝が決まったのであった。




投稿出来ました。

このシーンですが、下記動画を参考にアレンジしてみました。

https://www.youtube.com/watch?v=jeJ0l1D3Pv0

というよりかは、この決勝戦の試合そのものが上記の試合なんですけどね・・・。

この試合、僕は家で観てました。

あの試合が決まった瞬間から次の朝までの記憶が全く無くて、今でも思い出せません。

ただ、親に聞いたら、『テレビの前で呆然としながら涙を流していた』らしいです。

僕自身、ある意味一生忘れられない試合です。

今でも、この動画を見るだけで泣きそうになってしまいます。

けど、これらのような時期があったから、ホークスは強くなったのかなと思いました。

長文ですいません。

それでは、また。


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68話

68話です。


『試合終了ー!!9回裏、劇的な幕切れ!!この壮絶な投手戦を制し、全国の頂点に立ったのは、巨摩大藤巻-!!』

 

『真紅の大優勝旗を、初めて北の大地に持ち帰りました!!』

 

『足立、マウンドで崩れ落ちました!!』

 

『青道高校、現監督片岡鉄心以来2度目の決勝進出も、再び準優勝に終わりました!!』

 

『唖然呆然愕然の青道高校の選手達!!』

 

ホーム上で、巨摩大藤巻の選手達が喜びを爆発させてる中、惇はマウンド上で片腕をついて崩れ落ちていた。

ベンチでも、青道の皆は崩れ落ち泣いていた。

 

栄純「・・・。」

 

暁「・・・。」

 

春市「・・・。」

 

栄純と暁、そして春市も呆然とした表情を浮かべながらグラウンドを見ていた。

すると

 

クリス「沢村・・・降谷・・・小湊・・・整列だ。」

 

クリスがそう栄純達に声をかけた。

 

藤原「・・・うっ・・・ぐすっ・・・」

 

吉川「ぐすっ・・・貴子さん・・・」

 

梅本「先輩・・・」

 

唯「ぐすっ・・・うっ・・・」

 

青道スタンドでは、マネージャー組や応援の人達も涙を流していた。

 

結城「さあ、並ぼう・・・」

 

結城「皆立て・・・ちゃんと整列しよう・・・」

 

グラウンドでは、結城は青道のキャプテンとして気丈に振舞い、皆に声をかけていた。

そして、御幸がマウンドに行き、惇の肩を抱き上げた。

すると、片岡がベンチから駆けていき、同じく惇の肩を抱き、左右で抱えながらホームの整列に向かった。

 

『ああ、足立が・・・涙!そして立ち上がる事が出来ません!!』

 

そして、両チーム整列し、片岡はベンチ前に戻った。

しかし、惇は御幸の支えなくして立ち上がれなかった。

それを見た主審は

 

「1-0で巨摩大藤巻!礼!!」

 

そのまま、試合終了の宣告を下した。

その瞬間

 

パチパチパチ

 

『観衆が立ち上がった!!観衆が立ち上がった甲子園!!両者の健闘を称える拍手を送っています!!』

 

甲子園が拍手に包まれた。

そして、巨摩大藤巻の校歌斉唱を終え、それぞれ応援してくれた人達に挨拶をした。

惇はそこでも涙が止まらず、ずっと泣き崩れていた。

 

惇「すいません・・・哲さん・・・ホントにすいません・・・」

 

結城「もう泣くな、足立。お前で負けたなら納得できる。」

 

結城「ありがとな。ここまで連れてってくれて。」

 

結城「最後、お前を援護できなくて、あの場面アウトに出来なくて悪かった。」

 

結城「もう一度、ここに戻ってこい!そして、忘れ物を取り戻してこい!」

 

これに、結城はそう惇に言った。

そして、ベンチに戻ると、多くの記者からのインタビューを受けた。

その際、惇は泣きながら

 

惇「勝って・・・監督を日本一にしたかったんですけど・・・それが叶わなくて・・・悔しい気持ちでいっぱいです・・・」

 

そう、何とか答えた。

こうして、青道高校の甲子園は、準優勝という結果に終わったのであった。




投稿出来ました。

勝負というのは、非常に残酷だなと下記動画を見て本当に思います。

https://www.youtube.com/watch?v=jeJ0l1D3Pv0

でも、勝つか負けるかの世界ですから、仕方がありませんね・・・。

それでは、また。


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69話

69話です。


甲子園の激闘から数日が経ち、東京に戻った青道高校。

2日ほどの休みを貰い、野球部は新チームが始動し、御幸がキャプテンとなった。

しかし、この中に1人だけグラウンドにいなかった。

 

片岡「・・・足立は?」

 

片岡は、いない惇を高島先生に尋ねた。

 

高島「・・・倉持君によると、まだ塞ぎ込んでいるようです。」

 

これに

 

片岡「・・・そうか。」

 

片岡はそう返した。

 

高島「・・・どうしますか?呼びますか?」

 

片岡「いや。暫くそっとしておいてやれ。」

 

高島「はい・・・」

 

そう、片岡は高島先生に言った。

それから3日経っても

 

「何やってんだ足立・・・」

 

「今日で3日目だぞ?」

 

足立はグラウンドに顔を出さなかった。

 

太田部長「お前1人のせいで負けたわけじゃない。何度もそう言ってるのに・・・」

 

太田部長「監督!私が部屋に行って出してあげましょうか?」

 

これに、太田部長は片岡にそう言ったが

 

片岡「良い。放っておけ。」

 

片岡にそう返された。

 

太田部長「し、しかし・・・アイツは新チームのエースに・・・!」

 

太田部長「このままじゃ、チームに影響が・・・!」

 

これに、太田部長がそう言うと

 

片岡「アイツを信じてやってくれ。」

 

そう、片岡は太田部長に言った。

 

太田部長「か、監督・・・」

 

高島「・・・。」

 

そして、1週間が経った。

 

倉持「よーキャプテン。どーすんだよ?」

 

惇は未だにグラウンドに顔を出さなかった。

これに

 

御幸「何が?」

 

倉持「足立だよ!足立!!」

 

倉持「甲子園の決勝、最後は打たれちまったけど、誰もアイツの事責めてねーし、この新チームのエースになるんだぜ。アイツがいるいないじゃ、チームの士気に関わんじゃねーのかよ?」

 

倉持は御幸に惇の事を話していた。

 

御幸「ふーん・・・随分気に掛けてんだな。」

 

倉持「違げーよバカ!!いつまでも部屋で落ち込まれても鬱陶しいだろ!!」

 

倉持「沢村も、何とか声をかけているんだが、全部空回りしてよ・・・」

 

御幸「今は後輩を気遣うよりも、センバツに向けてどう戦っていくかが先なんじゃねーのか?」

 

倉持「そりゃそーだけどよ!アイツはほら、投打においてチームの中心だし・・・」

 

御幸「大会が近付いた今、優先すべきは個人よりチーム。お前もそれは分かってんだろ?」

 

しかし、御幸は終始冷徹な態度を崩さなかったため

 

倉持「んな事は分かってんだよ!けど先輩として、ルームメイトとして、放っとくわけにはいかねーだろーが!」

 

倉持は御幸の胸ぐらを掴むかの勢いで怒鳴った。

 

前園「お・・・おい倉持。」

 

白州「やめろ、倉持・・・」

 

これに、たまたま近くにいた前園と白州が止めに入った。

 

御幸「・・・あの試合、ああいう結果になったのは俺にも原因がある。5回に球数を放られた時、もっと早く相手の作戦に気付いて対策を取っていたらと。9回の先頭のフォアボールの後、一言でも声をかけていたらってな。」

 

倉持「っ!」

 

御幸「あの日は、アイツなりにチームのために全てを背負ってマウンドに立って必死に腕を振っていたんだろう。ボールにも、その気持ちが伝わってきた。」

 

御幸「現にアイツはこうも言っていた。『背負える物は全部背負ってマウンドに行く』と。」

 

御幸「だから、甲子園の決勝戦というマウンドではいつも以上にアドレナリンが出ていたから、アイツはそれに気付けなかった。」

 

御幸「もしかしたら、試合が始まる前から負けていたのかもしれないな。」

 

と御幸は言った。

 

倉持「!」

 

倉持「そ・・・そこまで分かってんなら・・・何で・・・?」

 

この問いに

 

御幸「大事な戦力だからに決まってるだろ?まだまだ成長出来るし、してもらわなきゃならねぇ・・・」

 

御幸「1つの負けなんかで潰れてもらっちゃ、こっちが困るんだよ!」

 

そう、御幸は強い意志の籠もった目で返した。

これに倉持は

 

倉持「お前・・・言ってる事無茶苦茶だぞ。」

 

御幸「知ってる。」

 

そう、御幸に返したのだった。

その日の夕方

 

惇「・・・。」

 

惇は変わらずベッドの上で塞ぎ込んでいた。

その時

 

ガチャ

 

誰かが部屋の中に入ってきた。

そして、惇のベッドに入り

 

パンッ!

 

惇「っ!?」

 

頬を叩いた。

その者は

 

唯「いつまで塞ぎ込んでるの!」

 

惇「ゆ・・・い?」

 

唯だった。その目は、薄らと涙を浮かべていた。

 

唯「結城先輩に何て声をかけられたか、忘れたの!」

 

惇「っ!」

 

この時、惇は結城にかけられた言葉を思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

 

結城「もう一度、ここに戻ってこい!そして、忘れ物を取り戻してこい!」

 

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

 

惇「・・・覚えてる。」

 

これに、惇はそう唯に言った。

すると

 

そっ

 

唯は、惇を優しく抱き締め

 

唯「だったら、もうこれ以上苦しまないで。惇君の気持ち、私も一緒に背負ってあげるから。」

 

そう、耳元で囁いた。

 

惇「うっ・・・ぐすっ・・・唯・・・」

 

すると、惇は泣きながら唯にしがみついた。

 

唯「大丈夫・・・大丈夫だからね、惇君・・・」

 

そう、唯は優しく惇の頭を撫でながら涙を流していたのであった。




投稿出来ました。

甲子園が終わって、東京に戻った後のお話を書きました。

オリジナルなので、相変わらず上手く書けたか分かりませんが・・・。

それでは、また。


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70話

70話です。


唯に叱咤された翌日、惇は着替えてすぐに監督室に向かった。

その前日に、栄純と倉持に謝罪をし、気まずさは解消されている。

すれ違うチームメイトに頭を下げながら、惇は目的の部屋の扉に立つ。

 

惇「ふぅー・・・」

 

そして、一つ息を吐いて

 

コンコン

 

ノックをした。

 

惇「失礼します。」

 

一言言って、部屋に入った。

そこには、片岡と高島先生、そして大田部長がいて、その中に知らない中年男性がいた。

 

太田部長「おお、足立!もう大丈夫か?」

 

惇「はい。ご迷惑をお掛けしました。」

 

そう、太田部長に言うと

 

惇「監督。」

 

惇は片岡に目を向け

 

惇「個人的私情で練習を休んでしまい、大変申し訳ありませんでした。」

 

頭を下げて謝罪した。

すると

 

片岡「頭を上げろ。」

 

そう、声が聞こえたので顔を上げると

 

片岡「体に異常は無いか?」

 

と聞かれた。

 

惇「はい。練習に出なかったので、少し体が重い程度っすね。」

 

片岡「なら、今日から復帰しろ。」

 

これに

 

惇「・・・良いのですか?」

 

と惇は聞くと

 

片岡「ただ休んでいたわけでは無い事は、こちらも分かっている。」

 

片岡はそう答えた。

片岡本人も分かっていた。自身も高校時代、甲子園決勝まで勝ち進んでいった。その投球スタイルは、惇とよく似ていた。

マウンド上の気迫、三振を奪い、ピンチを凌ぐ度に吼える姿は、OBやファンから見ても似ており、『東都の怪腕』だけじゃなく、『片岡2世』と呼ばれており、その2つの異名が定着していた。

唯一の違いは、目つきが悪く、強面の片岡と端整な顔立ちで女性ファンが多い惇といったビジュアル面だけだった。

だからこそ、片岡は分かっていた。必ず乗り越えてくれる事を。

だからこそ、片岡は惇にある事を言った。

 

片岡「それと、お前にも言っておく。新チームのエースナンバーを、お前に託そうと思う。」

 

それは、新チームのエースを惇に託すという事だ。

 

惇「・・・俺で、良いんすか?」

 

これには、惇は目を見開いた。

 

片岡「ああ。これは3年と1,2年全員の意見だ。お前なら、きっとこのチームを引っ張ってくれると信じてる。」

 

そう、片岡は真っ直ぐ見て言った。

 

惇「・・・俺、監督を日本一に出来なかったんすよ。そんな俺が、エースナンバーを背負っても、良いんすか?」

 

片岡「甲子園での敗戦、お前が責を背負う必要は無い。全ての責任は、勝たせる事が仕事の監督である俺の責任だ。」

 

惇「監督・・・」

 

片岡「お前が、俺を思って責任を感じてくれるのはありがたい。だが、それで自身を追い込むのは許さん。お前は、自分らしく野球を楽しむんだ。勝敗の責任は全て、監督である俺が取る。」

 

こう、片岡は監督として、一教師として惇を庇おうとした。

これに、惇は目頭が熱くなり、涙が出そうになった。

 

惇「・・・はい。ありがとうございます。」

 

涙を堪えた惇は、そう言い監督室を後にしたのだった。

惇が出て行った後

 

高島「彼、思っていた以上に相当気に病んでいたみたいですね。」

 

高島先生は、そう片岡に言った。

 

片岡「ああ、そうだったな・・・」

 

太田部長「それだけ、責任を感じたという事でしょうか・・・」

 

片岡「・・・。」

 

すると

 

??「彼が足立ですね。甲子園の活躍は見てました。」

 

??「彼は才気溢れてますが、危うさを感じさせます。しっかりフォローせねば、最悪・・・」

 

言葉を発さなかった中年男性が、惇をそう評した。

 

片岡「はい。だからこそ、私がいるのです。彼だけじゃ無い、甲子園で、皆の意識は変わりました。」

 

片岡「皆をしっかりフォローし、これからの野球人生の大きな糧になっていければと・・・」

 

これに、片岡はそう中年男性に言った。

この中年男性だが、名は落合博光。神奈川の名門である紅海大相良でコーチを務め、多くの勝利に貢献してきた名参謀だ。

今回の甲子園準優勝で来年の野球部入部する者が増える事を想定して、片岡以外にも選手に目を配れる人を依頼したのだ。

片岡に相談するための野球ノートだけじゃ、限界があるからだ。

こうして、本当の意味での新チームが始動した。

しかし、片岡は惇にランニング等の別メニューを課した。

その理由は、惇がここ最近あの決勝の事が夢に出てくる為、満足に野球が出来ないと思い片岡に伝えたのからだ。

その為、片岡は惇に別メニューでの調整を課したのであった。




投稿出来ました。

かなりグダグダな内容になりました。

落合コーチを登場させました。

この人、完全にモデルはあの人ですよね・・・。

それは誰も気付いたか・・・。

それでは、また。


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71話

71話です。


惇が復帰し、本当の意味で新チームが始動した青道高校に新学期が始まった。

 

「お~野球部!真っ黒だな!!」

 

「甲子園お疲れ様!」

 

信二「おお、お前ら!」

 

「本当に惜しかったな、全国制覇。スタンドの皆も泣いてたしよ、俺のツレで今まで見た試合の中で一番盛り上がったって言ってたし・・・」

 

そう、クラスメイトは信二に話していたが

 

信二(いつの話してんだ・・・もうとっくに次に向かってんだよ・・・)

 

信二は皆の声を聞いてそう心の中で思っていた。

 

「てかさ、沢村も凄かったけど、足立マジでヤバかったな!」

 

信二「!」

 

「甲子園のマウンドで堂々と投げてるし、メッチャ吼えるし、普段クールで大人しいからギャップ半端なかったわ!」

 

「ああ!次の野球部のエースは足立になるんじゃねぇのか?」

 

そう、皆は惇の活躍を思い出し、興奮していた。

 

信二「・・・。」

 

それらを聞いて、信二は複雑な表情を浮かべたのだった。

実を言うと、惇は復帰してから片岡からの指示でずっとブルペンに入らず、ランニングする等の別メニューを行っていたのだ。

 

「甲子園の活躍、格好良かったよ!」

 

「マジ凄かったぜ!」

 

信二が教室に到着すると、惇の周りには大勢の生徒で溢れていた。

惇も笑顔で対応していたが、少し複雑そうな表情を浮かべていた。

 

栄純「・・・。」

 

吉川「・・・。」

 

その様子を、栄純と吉川は複雑に見ていた。

そして、全ての授業が終わり、練習が始まった

 

ブルペンでは、栄純は狩場に、暁は御幸に、川上は小野に受けさせていた。

 

小野「御幸。足立は今日もランニングか?」

 

御幸「ああ・・・」

 

狩場「大丈夫なんでしょうか・・・」

 

御幸「倉持や沢村から聞いた限りじゃ、普段は大丈夫らしい。」

 

小野「普段は?」

 

御幸「これはアイツ本人から聞いたんだが、あの決勝戦での出来事が夢に出てくるらしい。」

 

狩場「本当ですか・・・」

 

御幸「ああ・・・けど、アイツなりに前を向こうと必死なんだろう・・・腐らずランニングしてるからな。」

 

小野「そうだな・・・もしあの時夏川が説得しなかったら、マジヤバかったしな・・・」

 

御幸「そうだな・・・」

 

御幸(ホント・・・夏川には感謝だな・・・)

 

そう思っていると

 

栄純「狩場!行くぞ!」

 

栄純が狩場に声をかけ

 

狩場「あ、ああ!来い、沢村!」

 

狩場はミットを構えた。

 

栄純(打席には右バッター・・・コースは、アウトロー・・・!)

 

この時、栄純はアウトローにボールを投げる練習をしていた。

その理由は、ある日惇とこんな話をしたのがきっかけだった。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

栄純「なあ、惇。」

 

惇「ん?」

 

栄純「お前、何で足を上げた瞬間三塁方向に目を向けてんだ?」

 

惇「ああ、あれ?俺さ、あまりミットをジッと見てっと、変な力が入っちまうんだよ。」

 

惇「他にも、体が突っ込んで流れねーように、1回体勢を作ってから投げにいってんな。」

 

栄純「そうだったのか・・・だから、内と外にあんなに投げれるんだ・・・」

 

惇「あ、因みになんだけど、俺日によって視線変えてっから。」

 

栄純「え、マジ?」

 

惇「ああ。その日その日によって調子変わるからな。それでバランス保ってやってる。」

 

惇「自分で作っときゃ、色んな状況に対応できるしな。今日ここが駄目だったらここをこうしてみようかなってな。」

 

惇「そうやって、自分の中で引き出しを増やしてんだよ。」

 

栄純「成程・・・」

 

惇「お前も、今まで攻め一辺倒だったろ。あのボールが外に投げれたら、お前マジで打たれなくなるんじゃねーのか?」

 

栄純「外に・・・」

 

惇「ああ。そうなりゃあ、お前は無敵のサウスポーに一歩近づけんぞ。」

 

栄純「!」

 

これに、栄純は背筋から鳥肌が立った感覚になった。

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

栄純(いつまでも攻め一辺倒じゃ、上には通用しない。ましてや惇にも・・・このコースを投げれるようにし、一歩・・・いや半歩でも前へ進んで、惇に勝ちたい!)

 

栄純(だから惇・・・待ってるからな!)

 

と栄純は強い決意を胸に投げ込んだ。

一方の暁は、真っ直ぐの握りを少し変えて投げていた。

以前は指2本ぐらいの間隔で空けていたのだが、今は指1本ぐらいに狭めた。

その理由は、とある日に惇とこんな話をした。

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

暁「惇。ストレートどうやって握ってるの?」

 

惇「藪から棒になんだ?」

 

暁「いや、惇って僕よりスピード無いのに、数字以上に伸びてるしバッターを空振りにしてるし、逆に僕はファールにされて、バッターに捉えられちゃうんだ。」

 

暁「だから、惇みたいな伸びのあるボールを投げたいんだ。」

 

そう言われ

 

惇「・・・わーった。良いぞ、暁。」

 

惇は承諾した。

 

暁「ありがとう。見せて。」

 

それを聞き、暁は惇にボールを差し出した。

 

惇「俺は真っ直ぐをこうやって握ってる。」

 

受け取った惇は、暁に真っ直ぐの握りを見せた。

 

暁「・・・指をくっつけてるんだ。」

 

それを見た暁は、少し驚きの表情を見せた。

 

惇「ああ・・・俺はこうやって握ってる。」

 

暁「・・・何でこういう握りしてるの?」

 

惇「押し出す力が増すし、普通より多く回転かけれるからな。」

 

惇「もしお前がこのボールを投げれたら、お前の真っ直ぐは更に最強に近づける。」

 

惇「タダでさえお前の真っ直ぐの球威は半端ねーんだ。誰も打てねーぞ。」

 

それを聞いた暁は

 

暁「・・・どうやって投げるの?」

 

そう、惇に尋ねた。

 

惇「簡単に会得出来ねーぞ。それで良いのか?」

 

これに、惇は暁にそう言ったが

 

暁「構わない。教えて。」

 

暁は真っ直ぐ惇を見て言った。

 

惇「わーった。じゃあまずは・・・」

 

こうして、惇は暁に真っ直ぐの投げ方を教えたのだった。

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

暁(最初は全く感覚が合わなかったけど、今はだいぶしっくりきたし、以前よりボールが伸びてるように感じる・・・)

 

暁(絶対に負けない・・・!このボールをしっかり投げれるようにして、惇に・・・勝ちたい!)

 

暁(だから惇・・・待ってるからね!)

 

そう思い、暁は真っ直ぐを投げ込んだ。

そんな中、惇はグラウンドを走っていた。

 

惇(マジ情けねー・・・俺1人こうやって走って何やってんだよ・・・)

 

惇(最後の最後で打たれて、日本一を逃して、いつまでもあんな夢に惑わされて・・・)

 

惇(本当マジ情けねー・・・マジでカッコ悪ぃ・・・)

 

惇(俺は・・・まだまだ弱ぇ・・・)

 

そう思いながら、惇は前を向き走り続けた。

 

片岡「・・・。」

 

その様子を、片岡はしっかりと見ていたのであった。




投稿出来ました。

オリジナル話を投稿しました。

中々内容が文章に出来ませんね・・・頭には浮かぶのに・・・(涙)

ホント、難しいです。

それでは、また。



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72話

72話です。


9月4日の秋季大会一次予選、抽選会。御幸のこの日のクジ運は強く、薬師や稲実がいないブロックに入り、初戦は日曜日になった。

 

春市「今日も別メニュー?」

 

惇「まあな・・・」

 

春市「復帰してまだ投げてないけど、焦んなくて良いと思うよ・・・ピッチングの生命線は足腰と言われてるし・・・」

 

惇「ああ・・・サンキュー。」

 

そんな中、春市は別メニューを行おうとする惇にそう声をかけていた。

その時

 

片岡「足立!今日から、バッティングと守備練習に入れ!」

 

片岡から練習参加の許可をもらった。

 

春市「良かったじゃん、久々にボールに触れて・・・」

 

これに、春市はそう惇に言い

 

栄純「ああ・・・良かったな、惇。」

 

暁「良かった・・・」

 

栄純と暁も、そう惇に言った。

 

片岡「久々にボールを触るから、1球1球丁寧にな。」

 

惇「分かりました。」

 

それを聞き

 

片岡「沢村!降谷!今日もシートで投げてもらう!ベースカバーやバント処理も本番のつもりでな!」

 

片岡は栄純と暁にもそう指示した。

 

栄・暁「「はい!」」

 

そして、練習が始まった。

 

コーチA「足立!」

 

キン!

 

惇「フッ!」

 

パァン

 

コーチA「ナイスフィールディング!」

 

惇「うっす!」

 

御幸(久々とはいえ、全く錆び付いてねーな・・・)

 

その様子を、御幸は冷静に見ており

 

倉持(やっぱり足立がいねーと、イマイチ盛り上がんねーんだよな・・・沢村も元気ねーし・・・)

 

前園(やっぱ、足立はエースの器やな・・・)

 

春市(足立君がいるいないじゃ、こんなに気持ちが変わるなんてね・・・やっぱ、足立君がいないと駄目だね・・・)

 

信二(こんなに良い感じで練習出来るなんてな・・・アイツがいるいねーじゃ、こんなにも変わるんだな・・・)

 

チームメイトも、以前と比べて目の力強さが増し、一段と盛り上がりを見せた。

 

太田部長「思ったより練習の合流が早かったですね・・・」

 

この言葉に

 

片岡「ここ数日ずっと走らせてきたが・・・俯き気味だった顔も上がってきたし、顔色も良くなってきたからな。」

 

太田部長「え?」

 

片岡「気持ちが前へ向かおうとしてなければ、顔は上がらない。」

 

片岡はそう返した。

 

太田部長「!」

 

これに

 

太田部長(ずっと別メニューで走らせたのにはそんな意図が!?)

 

太田部長は驚きを隠せなかった。

 

片岡「結局のところ、一番大事なのは本人の意志だからな・・・」

 

この言葉を聞いて

 

太田部長(足立のこれからの事まで・・・)

 

太田部長(そこまで・・・足立の事を・・・)

 

太田部長はただただそう感じたのだった。

 

落合「やはり、彼は守備でも良い動きをしてますね・・・」

 

片岡「元々、野球センスの塊ですからね・・・」

 

落合「彼が練習に加わると、チームの士気も上がりますね・・・」

 

落合「前よりも、チーム全体に声が出ていますし・・・」

 

片岡「アイツはこのチームの中心的存在・・・。アイツの存在が、沢村ら投手陣は勿論、他の皆にも良い刺激を受けています。」

 

落合「成程・・・」

 

落合(彼がいるいないでこうもチームの雰囲気が変わるとは・・・今後このチームのエースは足立か・・・)

 

落合(けど・・・同学年のあの沢村と降谷もその力を持っている・・・今後次第で、この2人のどちらかがエースナンバーを背負う可能性も無きにしも非ず・・・)

 

落合(どっちにしろ、今後暫く青道の時代が続くやもしれんな・・・)

 

そう、落合は感じたのであった。




投稿出来ました。

上手く書けたかな・・・?

それでは、また。


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73話

73話です。


秋大一次予選、所謂ブロック予選が開幕した。

青道の初戦の相手は、東東京の豊崎だ。

この日の先発は暁で、新チームのエースとなった惇はベンチで待機となり、点差次第では投げる事が決まっている。

先攻の青道の初回の攻撃。1番倉持がヒットで出塁すると、2番春市のエンドランで無死一、三塁とし、3番前園の犠牲フライであっさり1点先制した。

続く4番の御幸と5番の暁の連続ツーベース等で、青道は4点先制した。

その裏の暁の立ち上がり。1番を真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振。2番はインハイ真っ直ぐで、3番は外高めの真っ直ぐで空振り三振と、高め真っ直ぐによる3者連続三振に打ち取った。

 

落合(ボールの球威だけでいったら、彼は足立を凌ぐが、初回からペース配分を考えすぎず飛ばしすぎだ・・・)

 

落合(足立のピッチングをちゃんと見てなかったのか・・・)

 

しかし落合は、暁の初回のピッチングを見て、そう感じた。

その為、ベンチに戻った暁に対し

 

落合「普通に見たら良い立ち上がりだが、初回から飛ばしすぎだ。これじゃあ、中盤体力が持たん。」

 

落合「お前のボールだったら、6割程度の力でも抑えられる。」

 

そう、厳しくもしっかりフォローし

 

御幸「初回から球数使いすぎだ。これが上位に食い込むチームだったら、お前初回から自滅だ。全然駄目。」

 

御幸からは非常に厳しく言われた。

その後も、打線が4回までに9点を奪う猛攻で、暁は3回で無失点7奪三振でマウンドを降り、4回からは栄純がマウンドに上がった。

栄純のピッチング、まず先頭打者を外のボールでセカンドゴロに打ち取り、続くバッターをサードゴロに打ち取った。

次のバッターの初球。栄純はある球を投げた。

その球は

 

前園「ナイスボール沢村!」

 

倉持「ヒャハハハ!!良いチェンジアップじゃねぇか!」

 

春市「ナイスボール栄純君!」

 

チェンジアップだった。

そのボールは、落合が教えたのだ。

いつまでもストレート1本じゃ、上のレベルに行くのは難しいと伝え、その為にウィニングショットとなる変化球を会得させるべきだと教えた。

その中で最も会得しやすい変化球はチェンジアップだった。

外の制球力も大分つき始め、そこに緩急が加われば、更に上のレベルに行ける。そう言われた栄純は、落合の丁寧な教えを聞いて、会得したのだ。

加えて、同じ腕の振りで色んな握り方で投げさせたら、多彩な変化を生み出し、栄純独自のボールを投げれる事が出来、それにより、栄純のピッチャーとしてのレベルは少し上がったのだ。

そして、チェンジアップを見たバッターは、そのボールが完全に頭にちらついたのか、次の真っ直ぐに対応できず、ファーストフライに打ち取られてしまった。

これに

 

栄純(ヤベぇ・・・俺、どんどんレベルが上がってきてる・・・?)

 

栄純は、自分がどんどん強くなってきてる事にわくわく感を感じたのだった。

そして、5回にも青道は1点を取り、5回表終了で10-0と大量リードとなり、その裏、マウンドに背番号1を背負った惇がマウンドに向かった。

 

御幸「久し振りの実戦マウンドだが、緊張してるか?」

 

惇「いつも通りっすよ、カズさん。」

 

御幸「そうか。良し、お前らしくな!」

 

そう惇に言って、自身のポジションに戻った。

投球練習を終え、いつものルーティンである股割りストレッチを行い、足を上げた初球

 

ズバアアンッ!!

 

膝元に真っ直ぐが決まった。久し振りの実戦マウンドのため、力を入れてないのだが、力感が無いため、バッターは非常に球速以上に伸びを感じていた。

2球目も真っ直ぐを投げ、2ストライクと追い込んだ。

 

「スゲぇー!!絶好調じゃねーか、足立も!」

 

「足立、降谷、沢村!この3人が中心になるだろうな!」

 

「本選も頼むぞ、エース!」

 

これには、回りのギャラリーも大盛り上がりだった。

そして3球目

 

ククッ

 

「っ!?」

 

タイミングを外すスローカーブにバッターの意表を突き、見逃し三振に打ち取った。

続くバッターには、真っ直ぐ3球で三振に打ち取った。

 

片岡(調整登板だが、悪くないな・・・寧ろ、また更にボールが鋭くなったな・・・)

 

落合(フォームに全く力感が無い・・・これは打てない・・・寧ろ、更に鋭くなった気がするな・・・)

 

片岡と落合は、惇のボールのキレが増した事に気付いていた。

受けてる御幸も、惇のボールの状態に気付いていた。

 

御幸「ナイスボール!」

 

御幸(まだストレートとスローカーブだけだが、力感が全く無いしボールが走ってる・・・それに、以前よりボールのスピンが増し、鋭くなった気がするな・・・)

 

御幸(これでまだ6割程だから、本気出すと恐ろしいな・・・)

 

そして、3人目のバッターも真っ直ぐ2球であっさり追い込み

 

御幸(最後はこれで決めるぞ!)

 

あるボールのサインを出して、ミットを構えた。

そして、それを見た惇は頷き、足を上げて投げた。

 

ストンッ!

 

最後はSFF。バッターを空振り三振に打ち取ったのだが

 

御幸「っ!」

 

予想以上の鋭さに、御幸が後ろに逸らしてしまった。

しかし、すぐに反応した御幸はボールを一塁に送ってアウトにし、試合は終了した。

 

前園「ナイスボール足立ぃ!御幸が逸らすなんて、久し振りやな!」

 

倉持「ナイスピッチ!」

 

春市「ナイスピッチ!」

 

御幸「ナイスボール!悪い、予想以上にキレてたから捕れなかった。」

 

惇「いやぁ~、取り敢えず良かったっす。」

 

こうして、惇達新生青道高校の初公式戦は、コールドで大勝するという上々の結果に終わったのであった。




投稿出来ました。

秋大開幕です!

ブロック予選はどうなるか!

それでは、また。




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74話

74話です。


秋大ブロック予選における青道の初戦。甲子園にて活躍した1年生投手3人の完封リレーで危なげなく勝った。

これには

 

伊佐敷「昨日のブロック予選、降谷と沢村が活躍したらしいじゃねーか。」

 

亮介「うん。降谷は3回無失点。その次の沢村も無失点に抑えたって。」

 

門田「打線も10点取ってくれたしな。」

 

伊佐敷「何より、足立も久し振りの実戦登板を果たしたし・・・」

 

亮介「うん。甲子園から帰ってずっと塞ぎ込んでたし、新チームに加わって練習に参加できてもブルペンにはまだ入ってないからね。」

 

門田「夏川には感謝だな。」

 

亮介「そうだね・・・」

 

伊佐敷「あの試合、1点も援護できなかった俺らが悪いだけだし、アイツのせいじゃねー。」

 

伊佐敷「俺がもっと打ってやれば・・・」

 

門田「純・・・」

 

3年生達は初戦突破を喜びつつ、惇に対する申し訳なさが残っていたのだった。

その日は、少し小雨が降っていた。

その中で、惇は誰よりも早くグラウンドに来てランニングをしていた。

 

惇「ハッハッハッハッ。」

 

惇(まだ・・・本調子じゃねぇな・・・)

 

惇(昨日の試合・・・流石に力が上手くボールに伝われなかったわ・・・)

 

惇(調子取り戻さねぇとな・・・)

 

そう思いながら、ランニングしていた。

その様子を

 

倉持「アイツ・・・もうグラウンドで走っていやがったのか?」

 

御幸「昨日の試合・・・調整ながら内容もボールも悪くなかったが、本人なりに納得してなかったんだろう・・・」

 

前園「あれで納得してへんって・・・ストレートもSFFもメッチャキレてたで!」

 

前園「最後のSFFなんか、お前が捕れん程やったし・・・」

 

御幸「まあな・・・」

 

御幸らは少し驚いた表情で見ていた。

また、栄純と暁も、惇の姿を見て

 

暁(昨日の試合・・・最後まで投げさせて貰えなかった。)

 

暁(惇と違って、まだまだ信頼されてるわけじゃなかったんだ・・・)

 

暁(結果も・・・内容も、誰にも文句は言わせない・・・)

 

暁(惇みたいに・・・惇のように、誰からも信頼されるようなピッチャーになりたい・・・!)

 

栄純(昨日の試合・・・惇は、アイツは久し振りのマウンドだったにもかかわらず、しっかり3人で抑えた・・・)

 

栄純(どんなに高い壁だろうと、決して負けねー!)

 

栄純(俺も惇みたいに、信頼されるようなピッチャーになりてぇ・・・!)

 

そう思いながら見て、惇の背中を追って走ったのだった。

そして、暫く走って体が温まった頃に

 

片岡「足立。体は十分温まったようだな。」

 

惇「あ、はい。」

 

片岡「足立。お前もブルペンに入れ。」

 

惇「!」

 

そう、片岡に言われたのであった。




投稿出来ました。

ブロック予選初戦の翌日を書いてみました。

ほぼオリジナルなので、内容がいつも通り薄いです。

すいません・・・。

それでは、また。


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75話

75話です。


片岡の指示でブルペンに入った惇。

 

惇「ふっ!」

 

ズバアアンッ!

 

惇「んっ!」

 

ズバアアンッ!

 

御幸「ナイスボール!良い球来てんぞ!!」

 

栄純(相変わらず綺麗なストレートだな・・・)

 

暁(やっぱり・・・惇のストレートは僕より凄い・・・)

 

その後ろで、栄純と暁はそう思いながら見ていた。

因みに落合も、様子を見るためにブルペンに来ていた。

 

片岡「今のはどの程度の力で投げた?」

 

惇「6割程っす。」

 

片岡「昨日の試合でも、その程度か?」

 

惇「あ、はい。」

 

片岡「良し・・・。次は8割程の力だ!」

 

惇「はい!」

 

そう片岡に言われ、惇は少し力を入れて投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

すると、先程よりも伸びのある真っ直ぐが投げられた。

 

御幸「っ!」

 

これに、御幸の顔が少し歪んだ。

 

御幸(マジかよ・・・これで8割かよ!)

 

御幸(既に10割の力なんじゃねーのかよ!?)

 

それは、あまりにもボールのスピン量が増し、予想以上に伸びてきたためだ。

何とかミットに受けたのだが、少し左手が痺れてしまった。

それでも

 

惇「んっ!」

 

ズバアアンッ!!

 

惇「ふっ!」

 

ズバアアンッ!!

 

何球か受けていくと、少しずつボールをしっかり受けれるようになっていった。

 

御幸(ふぅー・・・何とか受けれるようになったな・・・)

 

御幸(これは想像以上に伸びてるな・・・昨日の試合は1イニングだけで良かった・・・)

 

御幸(あの真っ直ぐとSFFをこれ以上受けれる自信が無かったからな・・・)

 

その時、御幸はそう思いながら昨日の試合を思い出していた。

 

片岡「御幸。手は大丈夫か?」

 

その時、片岡は御幸にそう尋ねた。

 

御幸「あ、はい。1球だけなら、まだ・・・」

 

これに、御幸はそう答えると

 

片岡「そうか・・・良し足立!ラスト1球、本気で投げろ!」

 

惇「はい!」

 

惇にそう伝えた。

そして、ラストに真っ直ぐを投げたのだが、先程とは比べものにならない程の伸びのある真っ直ぐで

 

御幸「っ!!」

 

バシィィンッ!!

 

御幸「クッ!!」

 

御幸のミットは弾かれ、ボールは後方に転々と転がった。

 

惇「あっ、ヤベ・・・」

 

そう呟いた惇は

 

惇「カズさん!大丈夫っすか!」

 

御幸に近付いてそう言った。

 

御幸「ああ・・・大丈夫だ。」

 

これに、御幸はそう惇に言った。

 

片岡(これは・・・想像以上だ・・・!昨日の試合時点で、ボールが以前より鋭くなっていると思っていたが、まさかここまで鋭くなっているとは・・・!)

 

落合(何てボールだ・・・!これは・・・想像してたよりも・・・!)

 

片岡と落合は、惇のボールが想像してた以上に成長している事に驚きを隠せなかった。

この2人だけじゃなく

 

栄純(んだよ今の球・・・!?また更に浮き上がったぞ・・・!!)

 

暁(惇・・・!)

 

栄純と暁も、驚きのあまり目を見開き立ち上がった。

これに、少し何とも言えない空気がブルペンの中に漂った。

 

惇「えっと・・・ちょっとクールダウンしても良いっすか?」

 

これに、惇は少し複雑そうな表情を浮かべながらそう片岡に聞いた。

 

片岡「・・・ああ。ストレッチして上がれ。」

 

惇「・・・はい。」

 

そう言われ、惇はブルペンを逃げるようにその場を後にしたのだった。




投稿出来ました。

本日はブルペンでのお話を書いてみました。

ちょっと後味が悪い感じになってしまいました。

すいません・・・。

それでは、また。


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76話

76話です。


スタッフルーム

 

 

 

 

 

落合「あ・・・バッターの資料もあるんですか。」

 

太田部長「いやぁ・・・主力メンバーだけですが・・・」

 

落合「助かります。」

 

ブルペンでの惇のピッチングを見た後、落合は都内の主要校のデータが欲しいと太田部長に頼み、見ていた。

すると

 

太田部長「あっ、今日もお疲れ様でした監督。」

 

片岡「・・・ああ・・・まだ残ってる選手もいるがな・・・」

 

片岡が戻ってきた。

 

太田部長「最近、2年生が特に気合入ってますよね・・・」

 

太田部長「前園なんか、よくバット振ってるの見かけますし。」

 

その時

 

落合「片岡さん。正直なところ、今日の足立の事どう思いました?」

 

落合が、惇の事を片岡にそう尋ねた。

 

片岡「・・・。」

 

落合「甲子園から今に至るまで彼を見てきましたが、まさにエースと呼ばれるに相応しい実力を持っております。」

 

落合「また、彼が加わった時、チームの雰囲気がガラリと変わり声も出るようになりました。チームにおける精神的支柱でしょう。」

 

落合「彼の存在が、チームにとって良い刺激になると片岡さんは仰いました。」

 

落合「確かに、彼の存在が皆の刺激になり、モチベーションも高く練習中の雰囲気も良いです。」

 

落合「しかし、このまま彼が成長し続けたら、チームの雰囲気はどうなりますかね?」

 

片岡「・・・。」

 

太田部長(なっ・・・!)

 

落合「彼はまだ発展途上です。まだまだ成長し続けるでしょう。」

 

落合「その実力に皆が遠慮し、離れていったら彼は孤立しますよ。」

 

落合「そうなると、このチームは空中分解しかねませんね。」

 

そう、落合は加えた。

 

片岡「足立の・・・彼の実力とその伸び代は、私の想像を遙かに超えております。」

 

片岡「現に今日のブルペンでのボールの鋭さは、以前の比ではありません。」

 

片岡「しかし、例えどんなことがあろうとも、私が彼を、そして皆をサポートします。」

 

片岡「私は・・・決して足立を孤独にさせたりはしません!」

 

これに、片岡は強い意志を込めた目で落合にそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

室内練習場

 

 

 

 

 

 

御幸「足立!ストレート投げてくれ!10割の力で!」

 

惇「あ、はい!」

 

同時刻、御幸は惇を呼んで、ボールを受けていた。

その横に

 

御幸「しっかり撮っておいてくれ。」

 

狩場「はい!」

 

狩場も呼んで、ビデオを撮らせてもらっていた。

 

惇「んっ!」

 

惇は御幸の指示通り真っ直ぐを投げたが

 

バシィィンッ!!

 

御幸「っ!」

 

まだ慣れないのか、ミットは弾かれ、御幸の顔が歪んだ。

 

狩場(うわあぁ・・・あんなボール見た事ないぞ!これもう変化球無しでも無双出来んじゃねーのか・・・!)

 

この時、ビデオを撮っていた狩場は、そう思いながら見ていた。

 

惇「カズさん。手大丈夫っすか?」

 

御幸「ああ、気にするな。もう1球来い!」

 

惇「はい!」

 

そして、それから5球程真っ直ぐを投げ、最初は弾いてしまっていた真っ直ぐも大分捕れるようになってきた。

 

御幸「ふぅー・・・」

 

惇「カズさん。どうします?」

 

御幸「ああ。ちょっと変化球も投げてくれ。」

 

惇「はい!では、スローカーブからいっても?」

 

御幸「頼む。」

 

しかし、御幸は最後までSFFとスライダーは捕れず、最後に狩場からビデオを受け取って

 

御幸「必ずお前のボールを捕れるようにする。だから、それまで待ってろよ。」

 

そう、ビシッと惇に指差して言った。

 

惇「はい・・・待ってます、カズさん・・・」

 

これに、惇は少し笑みを浮かべてそう言ったのであった。




投稿出来ました。

かなりめちゃくちゃな内容です。

大変すみません・・・(泣)

それでは、また。


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77話

77話です。


それから1週間が経ち、青道のブロック予選2回戦を迎えた。

相手は都立三野高校。

先発は栄純で、初回から安定感抜群のピッチングを見せた。

この日の最速は132㎞なのだがチェンジアップを習得した影響なのか、初戦の時からボールに力が伝わりやすくなっており、真っ直ぐのキレが増し、ピッチングの幅が広がった。

それに緩急のあるチェンジアップと色んな握りで投げるムービングにを内と外の投げ分けで6回2安打9奪三振無失点に抑え、7回には川上が締めた。

打線も、初回からコツコツと点を積み重ねていき、この日惇と御幸にホームランが飛び出すなど9点を奪い、そのままコールド勝ちを収めた。

 

惇「ナイスピッチ、栄純!」

 

栄純「ああ、サンキュー!」

 

惇「真っ直ぐもキレてたし、今年1番のピッチングじゃねぇか!」

 

栄純「ああ・・・チェンジアップを覚えてから、ボールに力が伝わりやすくなったんだよ。」

 

栄純「何か・・・ストレート投げんのスゲぇ気持ち良いんだよね・・・」

 

惇「そっか・・・でも、エースナンバーは譲んねーぞ。」

 

栄純「へっ!ゼッテー負けねーからな!」

 

これに、栄純はそう惇に言い

 

暁「僕も・・・絶対に負けない!」

 

暁も、そう惇に言った。

 

前園「あんな足立見るの、久し振りやな・・・」

 

春市「はい。何か・・・良かったです。」

 

前園「せやな。」

 

春市「そういえばゾノさん、今日は絶好調でしたね。」

 

前園「ああ!昨日足立に言われて、何かスッキリしてな!」

 

そう、前園は昨日足立と一緒に自主練していた時を思い出した。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

前園「なあ、足立。」

 

惇「どうしたんすか、ゾノさん?」

 

前園「お前、どういう感覚で右に打ってるんや?」

 

惇「右にっすか?」

 

前園「ああ。色々考えとるんやけど、どうも上手くいかなくてな。どうやったら打てるようになるんや?」

 

惇「そうっすね・・・俺の場合は、後ろの手の押し込みっすね。後は肩が開かないように逆に引っ張る感覚っすね。」

 

前園「手の押し込み・・・逆に引っ張る・・・」

 

惇「でもゾノさん・・・右に打とうと意識しすぎて、スイングが窮屈になってません?」

 

前園「何やて?」

 

惇「多分っすけど、ゾノさんチームバッティングを意識してるかもしんないっすけど、右方向に打つバッティングスタイルはゾノさんに合ってない気ぃするんすよ。」

 

惇「何つーか、どっちかっていったら、引っ張る方が良い感じしますよ。」

 

惇「ゾノさん・・・普通に引っ張ってもヒットも長打も打てますし・・・そのスタイルを貫いた方が、良いんじゃないっすか?」

 

前園「引っ張る・・・」

 

惇「あ、すいません・・・。何か生意気な言い方で・・・」

 

前園「いや、ええんや。何か、エラいスッキリしたわ。明日の試合、思いっ切り引っ張って打ちまくってみるわ。」

 

惇「はい!そんじゃあ、全打席ホームランで!」

 

前園「難しい注文すんなや!」

 

惇「ははは!」

 

前園「ははは!」

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

前園「あの時、アイツに聞かなかったら、今頃俺は打てずに終わっていたかもしれへん。」

 

前園「ホンマ、後輩ながら頼りになるわ。」

 

春市「ゾノさん・・・」

 

前園「アイツが投げる日は、全力で援護したろうや!」

 

春市「はい!」

 

こうして、都立三野との試合で、前園は自身のバッティングスタイルに自信を持ったのであった。




投稿出来ました。

中々話が進まない・・・。

それでは、また。


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78話

78話です。


9月20日。前日に続いてのブロック予選の試合。

青道の相手は成翔学園。この試合に勝てば、本選出場が確定する。

この大切な試合の先発を任されたのは、暁だった。

ブルペンでの様子は

 

ズドォォン!!

 

「「「おお~!!!」」」

 

ボールは走っていた。

しかし

 

御幸「ちょっと浮いてんぞ。もっと抑えてこい!」

 

ボールは高めに浮いていた。

その様子を

 

亮介「調子良さそうだね、降谷。」

 

丹波「ああ・・・そうだな。」

 

門田「先発じゃないけど、足立も元気そうだったな。」

 

亮介、丹波、門田の3年生が見ていた。

 

「さぁー頼むぞ降谷。気持ち良く本選行きを決めてくれよ。」

 

「打線も頼むぞ。」

 

ギャラリーも、そう暁と打線に期待した。

暁の隣では

 

惇「んっ!」

 

惇が投げているのだが

 

ズバアアンッ!!

 

小野「クッ!」

 

小野は上手く捕れず、左手が痺れ感覚が無くなりかけていた。

 

小野(何だよこれ・・・!?力感無いのにスゲぇ伸びてやがる・・・!)

 

小野(左手が・・・ヤバイ・・・!)

 

これを見た惇は

 

惇「小野さん!6割くらいですが、もう少し抑えますか?」

 

と尋ね

 

小野「い、いや!後2球投げてくれ!」

 

小野はそれにそう返した為

 

惇「分かりました!」

 

惇は続けて投げた。

 

小野(あ、あれで6割だと・・・!?全力じゃなかったのかよ!?)

 

これには、小野は内心驚きだった。

この様子を

 

御幸(やはり・・・足立のボールは小野には難しかったか・・・)

 

御幸(俺でさえも、上手く捕るのが難しいほどだ。これで変化球混ぜられたら益々捕れねーぞ・・・)

 

御幸はそう思いながら見ていた。

惇の隣では

 

パァン!

 

栄純「おいしょー!」

 

栄純が投げていた。

これに

 

御幸「いくらアピールしても、昨日投げたお前には出番ねーよ!」

 

御幸はそう言うと

 

栄純「分かっております!けど、こっちはこっちでまだまだ課題山積みなんですから!」

 

栄純にそう返されたため

 

御幸「知らねーよ!つーかそれ試合前にする事か!!」

 

ツッコミを入れた。

 

御幸(ったく、コイツは相変わらずだな・・・)

 

そう思った御幸だが

 

御幸(でも、ま・・・コイツみたいのが1人くれーいないとつまんねーからな・・・)

 

と感じた。

そして

 

御幸「降谷、ラスト!!」

 

ズドォォン!!

 

御幸「OK!戻るぞ!!」

 

ラスト1球を受け

 

御幸(少し浮いてるけど、力は十分ある・・・)

 

御幸「もっと力抜けー。」

 

そう感じつつ、暁に力抜くように伝えた。

当の本人は肩を回しながら

 

暁(凄く肩が軽い・・・)

 

暁(今日なら、自己ベスト更新出来るかもしれない。)

 

暁(惇以上のボールを投げれるかもしれない・・・)

 

そう感じていた。

しかし、いざ試合が始まると

 

「ボール!フォア!」

 

「押し出しー!」

 

「何やってんだ降谷!初回なのにもう四死球4つじゃねーか!!」

 

暁は立ち上がりから大乱調だった。

 

倉持「打たせてこい!」

 

春市「楽に楽に!」

 

暁(あれ・・・?)

 

御幸(力みすぎだろ!もっと力を抜け、降谷!このチームの打線なら、お前が5割の力で投げても抑えられるって!)

 

門田「ブルペンでは良かったのにな・・・」

 

亮介「うん・・・ボールは走ってたけど、降谷は相変わらず立ち上がり弱いね・・・」

 

丹波「ああ・・・そうだな・・・」

 

この暁の大乱調を、3人の3年生はそう言った。

 

暁(悪くない・・・調子は悪くないんだ・・・。もっと・・・もっと最高のボールを・・・)

 

そう思って投げたが

 

「ボール!フォア!」

 

また押し出しのフォアボールを出し、暁はノーヒットで2失点を喫した。

これには、内野全員マウンドに集まり

 

御幸「何やってんだ。力でねじ伏せにいく場面じゃないだろ。」

 

御幸「1人で野球やるつもりか?もっと周りを見ろ!」

 

暁「!」

 

御幸はそう厳しく言った。

ブルペンでは、川上が急いで準備をしていた。

 

暁(別に・・・1人でやってるつもりはない・・・)

 

暁(ただ・・・今日は・・・もっといける気がしたんだ・・・。)

 

そう思い投げたのだが

 

キーン!

 

甘く入った力の無い球を打たれ、惇がいるライトに打球が飛び、惇は危なげなく捕った。

それを見たサードランナーは、タッチアップしたのだが

 

惇「んっ!」

 

惇は慌てる事無く糸を引くような鋭い送球をホームにダイレクトに投げ

 

「アウトー!!」

 

アウトにし、2アウトにした。

 

「うおおおっ!!流石足立だ!!」

 

「レーザービームだ!!」

 

「これで一気に2アウトだ!!」

 

これには、ギャラリーは大盛り上がりだったが

 

暁「・・・。」

 

暁は、ライトのポジションの惇に対し寒気を感じた。

 

惇(立ち上がりから無様なピッチングしてんじゃねーよ・・・)

 

そう言ってるかのような鋭い送球だった。

 

御幸(アイツらしい発破のかけ方だな・・・)

 

前園(ふぅー・・・お陰で冷静になったわ・・・)

 

倉持(ホント・・・こういう時頼りになるぜ・・・)

 

春市(ちょっと落ち着いたかも・・・)

 

東条(足立らしいな・・・)

 

これに、周りも少しずつ落ち着きを取り戻し、暁も気を引き締め直し、この回を何とか2失点に留めた。

 

亮介「何とか落ち着いたようだね・・・」

 

門田「ああ・・・バタバタしなくなった・・・」

 

丹波「足立のあのプレーに感謝だな・・・現にあれで何度か助けられたしな・・・」

 

亮介「そうだね・・・」

 

その裏、落ち着きを取り戻したナインに気負いは無く、着実に点を積み重ね、6回まで12点を奪った。

暁も、2回以降は立ち直り、4回2失点でマウンドを降り、5回は足立が3者連続3球三振で全9球が真っ直ぐで1球も掠りもしないという圧巻のピッチングだった。

そして最後は川上が締めて6回コールド勝ちとし、青道は本選出場を決めたのであった。




投稿出来ました。

最後の方は駆け足で終わらせました。

また、ここから少し更新のペースが落ちるかもしれません。

お許し下さい(土下座)

それでは、また。


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79話

79話です。


秋の都大会本選の組み合わせが決まった。

その結果、青道の初戦の相手は

 

倉持「・・・初戦が・・・帝東・・・」

 

前園「その次勝っても・・・稲実やと・・・」

 

倉持「死のブロックじゃねぇか!!てめぇ、クジ運にもムラがあんのかよ!!」

 

御幸「はっはっはっ!でも燃えんだろ?」

 

倉持「うっせぇ!!」

 

今年の夏の東東京代表で、甲子園ベスト16に進出した常勝軍団、帝東に決まった。

 

惇「確か、向井が甲子園で投げてたよな?」

 

春市「うん。凄いコントロールだったよね。」

 

惇「ああ。左のサイドスローで、スクリューがメッチャエグかったな・・・」

 

惇「俺も中学の時戦った事あるけど、あの頃からコントロールもスクリューもエグかったわ・・・」

 

春市「そうなんだ・・・」

 

惇「ああ・・・コイツマジで俺達とタメなのかって思っちまったぐれーだ・・・」

 

その横で、惇と春市がそう話していた。

すると

 

片岡「甲子園でも、彼のコントロールは通用した。それは全国トップクラスだ。低めの変化球を見極め・・・甘く入ってきたボールを叩く。」

 

片岡「シンプルだが、これを徹底してやろう。後はエンドラン!足を絡めた攻撃で、徹底的に揺さぶりをかけるぞ。」

 

片岡「当然、向こうだって仕掛けてくる。その中で、如何に自分達の野球が出来るか。」

 

片岡「まずは強者との戦いを楽しめ!その上で、この一戦を獲る!」

 

片岡が、そう選手に檄を飛ばし

 

「「「はい!!!」」」

 

片岡「それで、帝東の試合の先発だが・・・足立、お前に任せる。」

 

惇に帝東戦先発を託した。

 

惇「はい!」

 

その横で

 

栄純「ぐぬぬぬ・・・アイツが先発・・・!」

 

暁「僕も投げたい・・・」

 

栄純と暁が、闘志を剥き出しにしながらそう呟いた。

この日の練習は、実戦形式のシートバッティングで、帝東の機動力やバッターの対策を行った。

その翌日。野手陣は向井対策の練習をしており、ボール球に手を出さず、ギリギリまで引き付け、センターから逆方向へ飛ばす練習をした。

中でも前園がよく飛ばしており

 

高島「見慣れない左のサイドスローとはいえ・・・右バッターの方が、ボールの軌道が見えやすいですし、帝東の試合で鍵を握っているのは、右バッターになりそうですね・・・」

 

太田部長「ええ・・・特に前園はブロック予選でも打ってましたから。彼が打つと盛り上がりますしね。」

 

それを高島先生と太田部長はそう見て言った。

ブルペンでは、惇がボールを投げていた。

 

御幸「ふぅー・・・ストレート!」

 

ズバアアンッ!!!

 

御幸「っ!」

 

御幸は、惇のボールを身構えて

 

御幸(ようやく、コイツのストレートに慣れてきたな・・・)

 

ここ最近やっと惇の真っ直ぐを何とか収められた。

 

御幸「カーブ!」

 

ククッ!

 

カーブは変わらず捕球出来たが

 

御幸「ふぅー・・・スライダー!」

 

ククッ!

 

御幸「っ~!」

 

御幸(いってー・・・!)

 

スライダーは上手くポケットで捕球出来ず、痛みで顔が少し歪んだ。

それでも、以前後ろに逸らしていたのと比べればまだマシだった。

 

惇「大丈夫っすか、カズさん!」

 

これに、惇はそう声をかけると

 

御幸「ああ、悪い!次、SFF!」

 

御幸は切り替え、返球しミットを構えた。

そして、惇は足を上げ、SFFを投げた。

御幸は集中して構えていたのだが

 

ストンッ!

 

御幸「っ!」

 

捕球出来ず、ミットに収まらなかった。

しかし、何とか後ろに逸らす事は阻止し、体で止めた。

 

御幸(まだ上手く捕れねー・・・!体で止めるので精一杯だ・・・!)

 

これに、御幸は内心悔しい感情が湧き出た。

 

惇(チッ・・・!真っ直ぐもそうだけど、スライダーもSFFもキレすぎて上手くコントロール出来ねー・・・!)

 

惇(スゲぇ良い感覚なのに・・・クソッ!)

 

惇は、良い感じで投げれても上手くボールを扱えない事に内心苛立ちを感じていた。

 

惇(つっても、んなの言い訳だ・・・。上手く扱えなきゃ意味ねー・・・)

 

惇(カズさんだって必死なんだ・・・!カズさんの思いに応えなきゃいけねー!)

 

しかし、すぐに切り替え

 

惇「カズさん!真っ直ぐ良いっすか?」

 

御幸にそう声をかけた。

 

御幸「あ、ああ!来い!」

 

そして、御幸はミットを構え、それを見た惇は足を上げ

 

ズバアアンッ!!!

 

真っ直ぐを投げた。

その2人の様子を

 

落合(相変わらず凄まじいキレだな・・・最早高校のレベルを超えてる・・・)

 

落合(御幸もよくついて来れてる・・・。普通だったら無理だ・・・)

 

落合(足立も、御幸の思いに応えてくれてる・・・。良いバッテリーだな・・・)

 

落合はそう感じながら見ていたのであった。




投稿出来ました。

途中からグダグダになりました。

読みにくかったらお許し下さい(土下座)

さて、秋の本選、青道はどうなるか?

それでは、また。


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80話

80話です。


秋大本選の初戦、帝東との試合の日がやって来た。

先攻は帝東となり、守備についた青道。

そのマウンドに、足立が上がった。

 

御幸「良いか、まず先頭には気を付けよう。帝東には足の速いのが揃ってるからな。」

 

惇「了解っす、カズさん。」

 

そして、御幸が戻るのを確認した惇は、いつものルーティンである股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

そして、主審の手が上がり、足を上げて投げた初球

 

ズバアアンッ!!

 

膝元に真っ直ぐを投げ、ストライクを取った。バッターは思わず腰が引け、電光掲示板の球速表示を見ると

 

「っ!?」

 

そこには、『140㎞』と表示されていた。

 

(相変わらず速えー・・・150㎞に見えるぜ・・・)

 

これには、バッターはそう感じた。

2球目は外にスローカーブを投げ

 

キン!

 

バッターはファールにしたのだが、あっさり追い込まれた。

 

(クソッ・・・!何つー緩急だ・・・!)

 

そして3球目

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

外高めの141㎞真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

次の2番には初球スローカーブを投げ、ストライクを取った。

2球目

 

ズバアアンッ!!

 

140㎞の真っ直ぐで空振りを取り、3球目

 

ズバアアンッ!!

 

真ん中高め141㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

御幸(相変わらずボールがよく走ってる・・・)

 

御幸(恐らくまだ5割程か・・・まだ手は耐えれる・・・)

 

この時御幸は、惇のボールの状態の良さと自身の手の状態をそう感じていた。

次の3番には、初球のスローカーブでセカンドゴロに打ち取り、初回は3者凡退の立ち上がりとなった。

 

乾「・・・。」

 

乾(相変わらず相当な伸びだ・・・)

 

この時、帝東の4番で主将、捕手もやっている乾は、惇の真っ直ぐを見て冷や汗を掻いた。

 

岡本「憲剛!太陽!」

 

すると、帝東の監督岡本が乾と1年生エース向井を呼び

 

岡本「流石甲子園準優勝投手だぜ!『東都の怪腕』の異名も納得だ!」

 

岡本「だが、おめぇらも負けてはいねぇ!魅せてやれい、太陽!」

 

そう、檄を飛ばしてマウンドに向かわせた。

 

御幸「良いボールだ。」

 

惇「あざっす。」

 

御幸「今のところ、5割程度か?」

 

惇「おっ、よく分かったっすね!まさにその位っすよ!」

 

御幸「まあ、投手陣の中でお前のボールをよく受けてるのはお前だからな。」

 

惇「そっすか・・・」

 

この時、青道ベンチでは惇と御幸はそんな話をしていた。

その裏、マウンドには向井が上がったが

 

向井(何なんだよ、あの野郎・・・!)

 

初回の惇の立ち上がりにムキになっていた。

 

向井(何でお前は、俺より先に行ってやがる・・・!)

 

そんな気持ちで、向井は先頭の倉持の膝元に真っ直ぐを投げストライクを取った。

 

倉持(流石に甘めぇ所にはこねぇな・・・)

 

そう思った倉持。

 

続く2球目

 

倉持「っ!?」

 

インハイ厳しいコースに投げ込み、思わず仰け反った倉持。

マウンドの向井は帽子を取って謝罪の言葉を述べているが、全く謝罪が伝わらなかった。

 

倉持(初球膝元。2球目はインハイ。なら3球目は・・・!)

 

この時、倉持は向井が次に投げるボールを予測し

 

倉持(外のボール!軽打で良い!出てやる!)

 

予測通りのボールが来たため、流し気味にバットに当てて、ライト前に落とした。

 

「おっしゃああ!初回先頭打者出塁!」

 

前園「ナイバッチ!倉持!」

 

続く2番の春市に、片岡はセオリー通りバントの指示をした。

しかしその初球

 

「スチール!」

 

倉持は初球スチールを仕掛けた。

これには、向井、乾バッテリーは動揺し、倉持の盗塁を許してしまった。

そして

 

コン

 

春市は確実に送り、一死三塁の形にした。

そして

 

「3番ピッチャー、足立君。ピッチャー、足立君。」

 

惇が打席に立った。

 

惇(さーて、洋さんをキッチリ返すとすっか!)

 

そう思い、惇はバットを構えた。

 

向井(んだその表情!お前の球なら確実に打てるって!)

 

向井(ふざけんじゃねー!)

 

これに、向井はそう感じ、初球外からスライダーを投げストライクを取った。

続く2球目は、外のスクリューが外れ、1-1となった。

 

惇(やっぱ良いコントロールしてんな~!さて、次の球は・・・)

 

向井のボールを見て、そう思った惇。

そして3球目。向井は先程と同じく外のスクリューを投げた。

 

惇(やっぱスクリューか・・・!もらった!)

 

しかし、惇はスクリューが来る事を読んでおり

 

キーン!

 

向井「っ!」

 

綺麗に一、二塁間に流した。

それを見た倉持はゆっくりとホームに帰り、青道が1点先制した。

 

信二「ナイバッチ、足立ぃ!」

 

東条「鮮やかな流し打ち!」

 

春市「ナイバッチ!足立君!」

 

これには、青道ベンチは盛り上がり

 

吉川「初回幸先良く先制しましたね!」

 

唯「うん!惇君自らのバットでね!」

 

スタンドも大盛り上がりだった。

そして、次の御幸も

 

キーン!

 

ライトフェンス直撃の長打を放ち、それを見た惇は一気にホームに帰ろうと思ったが、ライトからの鋭い送球を見てストップした。

次の前園は

 

キーン!

 

レフトに大きな当たりを飛ばしたがレフトが何とか捕ってヒットにはならなかった。

しかし、それを見た惇はタッチアップしてホームに帰り、2点目を取った。

次の白州は、良い当たりだったがセカンドライナーとなり、3アウトになった。

しかし、青道は初回向井の立ち上がりを確実に捉え、2点先制したのであった。




投稿出来ました。

相変わらず試合描写が下手ですが、ご想像にお任せします。

また、活動報告にてお聞きしたいことがありますので、時間があればで良いので、見ていただけるとありがたいです。

それでは、また。


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81話

81話です。


2回の表。打席に立つのは4番で主将で捕手の乾。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

惇はインサイドに140㎞の真っ直ぐを投げた。

 

乾(あの時とは明らかに伸びが違う!)

 

その初球を見た瞬間、乾の身に雷が落ちた。

・・・よく雷が落ちますね、乾キャプテン。

2球目は、外にスローカーブを投げ

 

キン!

 

乾も打ったがタイミングがずれていたため、ファールになった。

3球目は、真っ直ぐが高めに外れボールになった。

4球目

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

惇「シャアアアッ!!」

 

乾(何て伸び!そしてこの気迫!まさに『東都の怪腕』!)

 

真ん中高め142㎞の真っ直ぐに空振り三振を喫した。

これに、乾の身にまた雷が落ちた。

続く5番はショートフライに打ち取り、続く6番は

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

膝元140㎞の真っ直ぐで見逃し三振に打ち取った。

 

惇「・・・。」

 

それを見た惇は、悠々とマウンドからベンチへと戻っていった。

 

御幸(手の状態は・・・まだ良いな・・・!大丈夫・・・耐えれる・・・!)

 

この時、御幸は自身の手の状態をそう感じていた。

 

前園(力感全然あらへんのに、メッチャエエ球やんけ・・・!)

 

倉持(コイツ・・・まだまだ成長するってのかよ・・・!)

 

春市(本当に・・・凄い!)

 

前園らも、まだ2イニングながら、惇の好調ぶりに頼もしさを感じていた。

 

惇(ちっ・・・!まだイマイチだな・・・)

 

しかし当の本人は、まだ上手くコントロール出来ない事に少し複雑な感じだった。

2回裏の青道の攻撃は7番樋笠から始まったのだが、樋笠はショートゴロ。麻生はセンターフライ。東条はサードゴロに終わった。

3回の表、帝東は7番から始まるのだが

 

ズバアアンッ!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

7番は初球を打ちライトフライに終わり、8番はスローカーブで見逃し三振。9番の向井には、インサイド141㎞の真っ直ぐで見逃し三振に終わった。

惇は3回を投げてヒット1本も許しておらず、奪三振は6つという名門帝東相手に圧巻の投球を見せていた。

 

「ナイスピッチ!足立ぃ!」

 

「全く寄せ付けてないぞ!!」

 

「流石片岡2世!!」

 

「東都の怪腕ー!!」

 

青道側の応援席も、惇のピッチングに賞賛の声をあげていた。

しかし

 

惇(クソッ・・・!全然操れねー・・・!)

 

当の本人は、キレすぎる自身のボールを操れない事にまだ内心苛立っていた。

この様子に

 

御幸(まだ自分の思い通りに操れない事に苛立っているな・・・)

 

御幸(けど、試合に勝つという気持ちで何とかその苛立ちを抑え込んでるんだ・・・)

 

御幸は気付いていたのだが、声をかけられなかった。

気付いていたのは、御幸だけではなかった。

 

唯「・・・惇君。」

 

唯も、惇の苛立っている気持ちに気付いており、その姿に哀しげな表情を浮かべていた。

 

吉川「唯さん・・・?」

 

その様子を、吉川は心配になり、声をかけたのだが

 

唯「ん?どうしたの、春乃?」

 

唯はいつものように明るい表情を吉川に見せた。

 

吉川「い、いえ・・・何か哀しそうな顔を浮かべていたので・・・」

 

唯「気のせいだよ、春乃。試合はウチが勝ってるんだよ。惇君も良いピッチングしてるし。」

 

吉川「けど・・・」

 

唯「さあ!次は1番倉持君からの好打順!声を張り上げていこう!」

 

そう、唯は吉川の心配そうな声を振り切って言った。

 

吉川「唯さん・・・」

 

これに、吉川は複雑な表情を浮かべたのだった。

その裏、青道は倉持から始まるのだが、調子を取り戻してきた向井のピッチングが冴え渡り、3者凡退に抑えた。

そして、4回の表に入ると、試合開始から降っていた小雨が少し強くなった。

 

惇「・・・お前、晴れ男じゃなかったのかよ・・・」

 

これに、昨日スタメン発表の時晴れ男と自負した栄純にちょっと文句を言った。

 

栄純「い、いやあ・・・これには・・・」

 

これに、栄純は変な汗を掻きながら引き攣った笑顔を見せた。

 

惇「まあいいや。行って来る。」

 

しかし、惇はそのままマウンドに向かった。

そして、帝東は2巡目に突入し、1番が打席に立った。

その初球に、惇は真っ直ぐを投げ

 

キン!

 

詰まらせたのだが、春市と東条の間に落ち、初ヒットを許した。

これを見た御幸は、すかさずタイムを取ってマウンドに向かった。

 

惇「詰まらせたんすけどね・・・」

 

御幸「しょうがない。ボールは文句無く走ってる。切り替えていこう。」

 

惇「うっす。」

 

そう話し、御幸はキャッチャーボックスに戻った。

そして、次の2番はバントの構えを見せたのだが

 

ズバアアンッ!!

 

惇は一塁ランナーに牽制を入れつつ躊躇いもなくインサイドに真っ直ぐを投げ、ストライクを取った。

2球目も真っ直ぐを投げたが、高めに外れボールとなった。

そして、御幸はミットを下に構えるサインを出した。

それを見た惇は足を上げた。その瞬間、一塁ランナーが走った。

そのまま惇はボールを投げると、2番はバントの構えを解いてエンドランを仕掛けようとした。

しかし、惇は外に外し、それを捕った御幸はすかさずセカンドに送球し、ランナーをアウトにした。

 

岡本(良いバッテリーじゃねぇか・・・)

 

これを見た岡本は、惇・御幸バッテリーをそう評した。

そして、そのまま2番をキャッチャーフライに打ち取り、次の3番には

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

真ん中高め141㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

「足立ナイスピー!」

 

「良いぞ足立ぃ!」

 

このピッチングに、青道側スタンドは大盛り上がりを見せたのであった。




投稿出来ました。

帝東のモデルとなった高校、復活して欲しいなぁ・・・。

最近そう思っております・・・。

それでは、また。


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82話

82話です。


東東京の名門、帝東相手に被安打1の7奪三振と圧巻のピッチングを見せる惇。

それを、とある2人の少年が見ていた。

 

??「やっぱスゲぇな、あの人・・・」

 

??「甲子園の時よりまた更にボールが鋭くなったし・・・」

 

??「光舟、お前もそう思うだろ?」

 

??「・・・ああ。」

 

その2人は、瀬戸拓馬と奥村光舟。2人は惇のシニアの後輩で、惇のピッチングを見るために来ていた。

初回から圧巻のピッチングを見せる惇に、瀬戸はただ舌を巻くしかなかった。

しかし

 

光舟「・・・でも、惇さん本調子じゃない。」

 

拓馬「えっ?」

 

光舟「多分だけど、自分のボールを思い通りに操れてないんだと思う。」

 

光舟は、惇の状態を即座に見抜いていた。

 

拓馬「そうなのか?」

 

光舟「その証拠に、毎度指を擦る仕草をしていた。」

 

拓馬「そう言えばそうだったな・・・」

 

光舟「俺の勘が正しければ、内心相当苛ついてる筈。」

 

これに

 

拓馬「へえ・・・流石惇さんをよく見てるな・・・」

 

拓馬はそう光舟をからかった。

 

光舟「別に・・・」

 

拓馬「まあその分、お前は惇さんに相当首振られたけどな。」

 

光舟「まあ・・・あの人は結構我儘な一面あったし・・・」

 

拓馬「お前もハッキリと物言うし。」

 

光舟「うるさい。」

 

拓馬「はは!」

 

そういうやり取りを2人はしていた。

一方、マウンドに上がった向井は

 

向井(クソッ・・・!気に入らねぇ・・・!)

 

向井(何でだ・・・何でお前は俺より先に・・・!)

 

惇のピッチングに苛立ちを感じていた。

そんな心理状態でマウンドに上がれば

 

キーン!

 

向井「!」

 

先頭の御幸にあっさりツーベースを許してしまう。

続く前園にも

 

キーン!

 

ツーベースを打たれ、3-0と追加点を許してしまった。

 

向井(そんな・・・!)

 

続く白州にもツーベースを打たれ4-0。樋笠にはセカンドゴロによる進塁打を打たれ、麻生に犠牲フライを打たれ、5-0になった。

ここに来ての失点は、勝負を決定づけるものとなった。

5回表の惇のピッチング。

乾をキャッチャーフライに打ち取り、5番6番を真っ直ぐで連続三振に打ち取った。

その裏、帝東は向井から2年生ピッチャーをマウンドに上げ、その回は無失点に抑えた。

6回に入り、帝東は先頭の7番がヒットで出塁したが

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

8番を空振り三振、9番をセカンドゲッツーに打ち取り、このイニングも無失点に抑えた。

その裏、前園がアウトになったが、白州のツーベースヒットと樋笠のタイムリーで6-0になり、7回に突入した惇のピッチング。

 

ズバアアンッ!!!

 

「・・・は?」

 

先程までとは明らかにボールの伸びが違っており、帝東の1番は球速表示を見ると

 

「っ!」

 

『143㎞』と表示されていた。

 

「・・・何なんだよ。」

 

(明らかにさっきより伸びてんじゃねーか!)

 

(つーか、ここで自己最速タイだと!)

 

これには、帝東の1番は冷や汗を掻いた。

 

御幸(いってー!ギアが上がったな・・・!)

 

御幸は、惇のボールが上がった事に気付き

 

御幸(マズいな・・・手が痺れて・・・)

 

左手が痺れてきたのを感じた。

そんな中、真っ直ぐ2球で追い込み

 

御幸(これで決めるぞ!)

 

あるボールのサインを初めて出し、惇は頷いて投げた。

そのボールは

 

ストンッ!

 

SFFでバッターは空振り三振となったが

 

「後ろに逸らしたぞ、走れ!」

 

ギアが上がった時の惇のSFFは、御幸の想像以上のキレを生み、後ろに逸らしてしまった。

その結果、1番を空振り三振にしたが、振り逃げで一塁に行かせてしまった。

 

御幸「悪い、足立。」

 

これに、御幸はマウンドに行き、惇に謝った。

 

惇「良いっすよカズさん。切り替えていきましょう。」

 

御幸「ああ。」

 

しかし、惇はそう御幸を励ました。

 

拓馬「今の、SFFだよな・・・」

 

光舟「ああ・・・想像以上のキレだな・・・」

 

見ている2人は、惇のSFFのキレに驚きを隠せなかった。

 

拓馬「光舟、お前はあのボール捕れるか?」

 

この質問に

 

光舟「捕れないと思う・・・」

 

光舟は正直に答えた。

 

拓馬「・・・そうか。」

 

しかし

 

光舟「けど・・・」

 

拓馬「?」

 

光舟「身体で止めてみせる・・・!」

 

拓馬「光舟・・・」

 

光舟はそう強い意志の籠もった目でそう答えた。

そして、次の2番には初球スローカーブを投げ、2球目にはスライダーを投げたのだが

 

ククッ!

 

御幸「くっ!」

 

御幸はそれも上手く捕れず、一塁ランナーを二塁に行かせてしまった。

そして、2番はセカンドゴロに打ち取ったが二塁ランナーはそのまま三塁に行った。

 

拓馬「スライダーのキレも上がってんな・・・!」

 

拓馬「御幸さんも苦労してんな・・・」

 

光舟「・・・。」

 

前園「1アウト!」

 

倉持「1つずつ行け!」

 

春市「打たせていこう!」

 

バックも、惇にそう声をかけていた。

そして、次の3番の初球

 

ズバアアンッ!!!

 

143㎞の真っ直ぐを投げ、1ストライクを取った。

 

御幸(くっ!明らかにボールのキレが上がってる・・・!)

 

御幸(目で追い付くので精一杯だ・・・!上手くミットに収まんねー!)

 

御幸は、惇のボールに何とか受け止めようと精一杯だった。

2球目はスローカーブが外れボールになり、3球目

 

キン!

 

142㎞真っ直ぐをファールにし、追い込んだ。

そして4球目

 

ストンッ!

 

惇はSFFを投げ、空振り三振に打ち取ったが

 

「また後ろに逸らしたぞ、走れ!」

 

またしても御幸は捕れず後ろに逸らしてしまい、三塁ランナーが生還し6-1となり、空振り三振に喫した3番は振り逃げで一塁に行った。

 

「足立から1点返したぞ!」

 

「まだまだいけるぞ!」

 

これには、帝東サイドは盛り上がった。

 

拓馬「やっぱりSFFは捕れなかったようだな・・・」

 

光舟「ああ・・・」

 

その様子を、光舟と拓馬はそう言った。

そして、乾が打席に入って、この勢いを物にしたかったのだが

 

乾「っ!?」

 

乾の背筋から悪寒が走った。

 

惇「・・・。」

 

そこには、明らかに威圧感剥き出しに立っている惇がいた。

 

御幸(あ・・・足立・・・)

 

これには、御幸も感じていた。

しかし、惇はそれに構わず投げた初球

 

ズバアアンッ!!!

 

インサイドに真っ直ぐを投げ込み、乾はボールだったため見送ったのだが

 

乾(何て伸びだ・・・)

 

そう思い球速表示を見ると

 

乾「っ!」

 

そこには、『145㎞』と表示されていた。

 

乾(こ、ここで自己最速更新だと・・・!?)

 

これには、乾は絶句してしまい

 

岡本(何て奴だ・・・!もう終盤だってのに・・・!)

 

岡本も絶句してしまった。

 

光舟「!」

 

これは光舟も同感で、思わず立ち上がってしまった。

 

拓馬「マジかよ・・・!ここで自己最速かよ・・・!」

 

それは拓馬も同様で、立ち上がって絶句していた。

2球目

 

ズバアアンッ!!!

 

同じくインサイドに144㎞の真っ直ぐを投げ込んだが、外れて0-2となった。

3球目

 

ズバアアンッ!!!

 

144㎞真っ直ぐが外高めに外れたが、乾は空振り、1-2となった。

4球目

 

キン!

 

143㎞真っ直ぐをファールにし、2-2と並行カウントになった。

そして5球目

 

ズバアアンッ!!!

 

真ん中高め145㎞真っ直ぐで乾を空振り三振に打ち取った。

 

前園「ナイスボール!」

 

倉持「2アウト!2アウト!」

 

春市「ボール来てるよ!」

 

そして次の5番の初球

 

ズバアアンッ!!!

 

再び145㎞真っ直ぐで空振り2球目

 

ズバアアンッ!!!

 

144㎞真っ直ぐでまた空振らせた。

 

前園「エエ球来とる!」

 

倉持「どんどん攻めていけ!」

 

春市「どんどん行こう!」

 

拓馬「ヤベ・・・惇さんちょっと怖くねーか?」

 

光舟「ああ・・・あんな惇さん初めて見たかもしれない・・・」

 

光舟と拓馬は、惇の様子に背筋が寒くなっていた。

 

片岡「・・・。」

 

片岡(ここで自己最速・・・!)

 

片岡も、惇の様子に絶句してしまい

 

落合(ここで何てボールを投げるんだ・・・!)

 

落合も驚きで固まってしまった。

 

唯(惇君・・・)

 

唯は、惇の姿に初めて恐怖の感情を抱き

 

吉川「唯さん・・・」

 

それを見た吉川は、何とも言えない表情を浮かべた。

そして

 

ズバアアンッ!!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

145㎞真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、この日1番の雄叫びを上げた。

しかし、ベンチに戻ると

 

惇「くそっ!」

 

惇は悔しさを滲ませながらベンチに座った。

この姿に

 

栄純「・・・。」

 

暁「・・・。」

 

この2人は声もかけられなかった。

 

御幸(くっ・・・この回アイツは最高のボールを投げてくれた!なのに俺は・・・!)

 

この時御幸も、惇のボールを受け止められなかった己に悔しさを覚えていた。

そして、このイニングで惇はマウンドを降り、8回を栄純、9回を川上が投げ、打線も9回に1点追加し、青道は7-1で初戦を突破したのであった。




投稿出来ました。

帝東戦、最後は駆け足でしたが勝利しました。

奥村君と瀬戸君ですが、原作では大京シニアでしたが、今作品では主人公君の後輩という設定にしました。

違和感があったらお許し下さい(土下座)

それでは、また。



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83話

83話です。


初戦の帝東戦を7-1で快勝した青道。

この試合7回13奪三振の快投を見せた惇だったが、7回に2つの振り逃げで失点をしてしまった。

それでも、今年の夏の東東京代表で、甲子園ベスト16相手に堂々としたピッチングをした。

 

倉持「おい、御幸。」

 

御幸「ん?」

 

倉持「足立、またグラウンドで走ってたぜ。そろそろ止めさせるか?」

 

倉持のこの問いに

 

御幸「良いよ!走らせとけば。」

 

倉持「え?」

 

御幸「今日の内容に、本人も納得してないだろうしな。」

 

御幸「それに、俺自身も色々収穫あったからな。」

 

そう言い、御幸は左手を見た。

その左手の人差し指は、いつもより腫れていた。

今日惇のボールを受け続けた結果、こうなってしまった。

 

小野「御幸・・・それ大丈夫なのか?」

 

御幸「ああ・・・一応医者に診てもらったし・・・」

 

御幸「骨に異常は無かったから大丈夫だ。次の試合までには間に合う。」

 

御幸「その代わり、暫くキャッチングは控えろって言われたな。」

 

倉持「お前・・・」

 

小野「つーか、お前が3度もボール捕れないなんて、初めて見たぞ。」

 

御幸「俺も初めてだ。あんなボールを見るのも初めて見た・・・」

 

御幸(つーか、アイツがどこまで上がるのか恐ろしくなったぜ・・・)

 

この時、御幸はそう思いながら左手の人差し指を見ていたのだった。

 

 

 

 

 

スタッフルーム

 

 

 

 

 

太田部長「いや~ナイスゲームでした!今年の東東京代表に7-1!チームに勢いがつきますな!」

 

高島「今年の夏の甲子園で良いピッチングを見せた向井君に5得点。前園君も調子をキープしてますし。」

 

片岡「ああ。他の選手達、特に試合に出てない奴らにも刺激になったんじゃないか?」

 

落合「この勝利は非常に大きいです。センバツに向け一歩踏み出せましたから。」

 

帝東戦の勝利に、首脳陣はそう話していたが

 

落合「しかし、7回の足立のピッチング。御幸がついて行くのがやっとの状態でしたね。」

 

落合「ボールのキレなんか先日以上でしたし、球速も自己最速の145㎞。変化球も鋭かった。」

 

落合「SFFとスライダーに御幸は全く捕れませんでした。」

 

落合は、惇のボールにそう感じていた。

 

片岡「確かに、今日の足立のボールは鋭かったです。それは先日ブルペンで見た時以上でした。」

 

片岡「御幸の左手人差し指を腫らす程のボールを投げていましたから。」

 

太田部長「確かに、御幸が人差し指を腫らすなんて初めて見ましたよ・・・」

 

しかし

 

片岡「けれど、御幸はそれでも足立のボールに必死に食らいついてきています。」

 

片岡「その思いに、足立は応えようとしております。」

 

片岡「これに、周りの皆も意識し、競い合い、高め合っている。」

 

片岡「そういう仲間がいるから頑張れる。もっともっと成長してくれる。それこそ、我々の想像など、軽く超えてくれる程の。」

 

片岡「チームが成長すれば、選手はより強くなってくれる。これは、前のチームから教えられた事です。」

 

片岡はそう真っ直ぐな言葉でそう言った。

 

落合(成程・・・。だから選手の皆は、この人を慕っているのだな・・・)

 

落合(だから、このチームは強いのだな・・・)

 

これに、落合はそう感じたのだった。

一方グラウンドでは

 

惇「ハッハッハッハ。」

 

惇がランニングをしていた。

 

惇(クソッ・・・!全然駄目だ・・・!)

 

惇(あのイニング・・・俺がゼロに抑えていれば・・・!)

 

そう走りながら思っていると

 

??「うおおおっ!!」

 

惇「っ!」

 

後方から叫び声が聞こえたので振り返ると

 

栄純「お前にはゼッテー負けねー!!」

 

暁「・・・。」

 

栄純と暁が猛烈な勢いで走ってきていた。

 

惇「・・・ふっ。」

 

それを見た惇は、少し笑みを浮かべ

 

ダッ

 

更に加速を付けて走った。

 

栄純「クソォー!!待てーっ!!」

 

栄純(クソッ・・・!あれだけのピッチングを見せやがって・・・!!)

 

栄純(けど・・・ゼッテー諦めてたまるかよ!!)

 

栄純「うおおおっ!!」

 

暁「ハッハッハッハ!」

 

暁(今日の試合、惇は更に僕より前に進んだ!!)

 

暁(けど、決して負けない!!必ず追い付いて、そして追い越してみせる!!)

 

これに、栄純と暁はそう思いながら惇の背中を必死に追い掛けていたのであった。




投稿出来ました。

帝東戦後のお話を投稿してみました。

少しグダグダですが、お許し下さい(土下座)

それでは、また。


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84話

84話です。


帝東戦に勝利を収めた翌日

 

伊佐敷「帝東相手に7ー1だそうだな。その1失点も暴投の失点とはいえ、終始危なげなかったっていうじゃねーか!」

 

伊佐敷「ゾノも良く打ったな!」

 

亮介「やるじゃん。」

 

前園「あざっす!」

 

廊下にて、引退した3年生達と出会った2年生達。

 

結城「甲子園終わってからずっと心配してたが、足立は元気そうで何よりだ。」

 

伊佐敷「つーかお前ら、3回戦で順当通り行けば稲実だろ?」

 

前園「はい。」

 

伊佐敷「返り討ちにしてやれよ!」

 

前園「はい、純さん!」

 

そして、3年生と色々話をした。

一方、自分の教室に着いた惇は

 

惇「・・・なあ、信二。」

 

信二「あっ?」

 

惇「あのバカは何読んでんだ?マジ泣きしてんじゃねーか・・・」

 

栄純が何か読んでるのに気付いたので、信二に尋ねた。

 

信二「・・・『○に○け』だよ。」

 

惇「『○に○け』ね・・・」

 

惇「つーか、泣きすぎじゃね?」

 

信二「ああ。早く読めよ!次俺だからな!」

 

惇「はは・・・」

 

これに、苦笑いを浮かべた惇。

そして、練習の時間となった時、惇は唯を探し、暫くして見つけると

 

惇「おーい、唯!」

 

唯に声をかけた。

 

梅本「おー、足立!」

 

この時、梅本も一緒だった。

 

惇「ちわっす、梅本さん。」

 

唯「どうしたの、惇君。」

 

これに、唯は振り向いて聞いたら

 

惇「後でビデオカメラ貸してくんね?」

 

と惇に言われた。

 

唯「良いけど、何で?」

 

惇「ちょっとフォームの確認してー。」

 

これに

 

唯「・・・無理、しないでね。」

 

唯は心配そうな表情を見せた。

 

惇「なーに言ってんだよ、お前。俺がいつ無理するって?」

 

唯「だって・・・」

 

惇「大丈夫だよ。ボール投げねーし、ただシャドーで確認取りてーだけだから。」

 

唯「・・・分かった。」

 

惇「サンキュー。んじゃあ、また後で。梅本さんも、また。」

 

そう言い、惇はその場を後にした。

 

唯「・・・。」

 

その後ろ姿を、唯は心配そうな表情で見つめていた。

 

梅本「どうしたの、唯?」

 

これに、梅本はそう声をかけると

 

唯「・・・怖いの。」

 

梅本「え?」

 

唯「ここ最近、惇君が怖くてたまらない・・・」

 

唯「甲子園が終わってから、惇君は益々実力が伸びていった。」

 

唯「以前だったら惇君が投げてる姿を見ていると、私自身も元気が出てくるんだけど、ここ最近投げてる姿を見るだけで怖くなっちゃう。」

 

唯「昨日の帝東との試合、怖くて怖くて仕方なかった・・・」

 

梅本「唯・・・」

 

唯「ねえ、さっちん。」

 

梅本「ん?」

 

唯「私・・・どうしたら良いの?」

 

唯「惇君の事・・・大好きなのに・・・私・・・どうしたら・・・」

 

そう、唯は涙を流し、顔を手で覆って言った。

 

梅本「唯・・・」

 

これに、梅本は何も言えず、ただ唯を抱き締めて背中を撫でるしかなかったのであった。




投稿出来ました。

帝東戦の翌日のお話を書きました。

オリジナル物ですが・・・。

また、侍ジャパン世界一獲りました!!

みんなサイコーです!!

感動をありがとう!!

本当にみんな世界最強最高だー!!

それでは、また。


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85話

85話です。


練習が始まった。この日の練習、ケージが5つに増えていた。

これに

 

太田部長「おお~、壮観ですね!ケージを5つに増やすと!」

 

高島「選手達も数打てて嬉しいんじゃないですか?」

 

2人はこの壮観な風景にそう言った。

 

片岡「ああ。この提案をしてくれたのは落合コーチだ。」

 

片岡「常日頃から実戦形式の練習をしているだけあって、ウチの連中の野球に対する意識は高い。」

 

片岡「それだけ今はあまり頭でっかちにならず気持ち良くバットを振らせてはどうかと。」

 

これに

 

落合「一応、他にも色々考えてますよ。」

 

と落合は言った。

そんな中で、栄純は自ら志願して登板した。

 

パアンッ!

 

白州「チェンジアップ習得してからボール良くなったな。タイミング取りづれーし。」

 

倉持「ああ。」

 

しかし、志願したのは栄純だけじゃない。

 

ズドォォン!!

 

暁「フー・・・」

 

暁も自ら志願し、投げている。

 

麻生「相変わらずエグいボール投げてきやがる!」

 

樋笠「ああ。タイミングもクソもねぇ!!」

 

これには、麻生と樋笠は暁のボールにそう言った。

 

惇「ハッハッハッハ。」

 

川上「ハッハッハッハ。」

 

そんな中、惇は川上と一緒にグラウンドで走っていた。

 

川上「調子はどうなの、足立?」

 

惇「まあ、ボチボチっすね。」

 

川上「そう。後ろには俺がいるからさ、思い切り暴れなよ。」

 

惇「うっす!」

 

そう、惇と川上は話していた。

そして、この日は他にも3回戦でほぼ間違いなく当たるであろう稲実の、成宮対策を行った。

また、この日の惇は1球も投げずノースローだったため、シャドーピッチングを行った。

 

惇「ハア・・・ハア・・・」

 

そして、それを撮ったビデオを再生した。

 

惇「ここか・・・」

 

そして、それを見て修正点を見つけた惇は、タオルを取ってシャドーピッチングを再び行った。

そして、それを1時間程行い、今日の練習を終えた。

その翌日。その日は2回戦の試合前日で

 

太田部長「え?明日の試合、降谷先発ですか?」

 

片岡「ああ。ブロック予選でペース配分を考えず飛ばした結果、初回からフォアボール連発し自滅。その後は上手く立て直したが、ペース配分の大切さを改めて教わった筈。」

 

片岡「あの時の悔しさをぶつける良い機会だ。」

 

太田部長「な、成程・・・」

 

落合「挽回のチャンスを与えるって事ですか。」

 

片岡「それが出来れば、アイツはエースに一歩近づけるからな・・・」

 

御幸(降谷にそこまで期待して・・・)

 

御幸(アイツが好投すれば、足立は勿論、沢村にとっても良い刺激になる・・・)

 

御幸(アイツにとっても、チームにとってもプラスになるな・・・)

 

この時、御幸はそう思いながら片岡の話を聞いていた。

そして、明日の七森学園戦の先発は暁に決まったのであった。




投稿出来ました。

七森学園戦前日までを書きました。

七森学園戦、原作は栄純でしたが、今回は暁にしました。

滅茶苦茶グダグダですが、お許し下さい。

それでは、また。


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86話

86話です。


10月9日の七森学園戦。その日の先発に決まった暁はブルペンで投げていた。

惇はこの日、レフトでスタメンとなり、東条と信二に話しかけた。

 

惇「秀。信二。」

 

東条「足立!」

 

信二「足立か。」

 

惇「やったじゃねえか信二!初スタメン。」

 

信二「ちょっとだけビビってるぜ!」

 

惇「大丈夫。お前らしいプレーすりゃあ良いんだよ。」

 

惇の激励に

 

信二「ああ!」

 

信二の表情から緊張がなくなった。

その横で

 

ズドォォン!!

 

暁が御幸に投げていた。

 

御幸「OK!ボール来てんぞ!」

 

暁「・・・。」

 

しかし、御幸の言葉に暁の反応は鈍かった。

 

御幸「緊張してるのか?」

 

これに、御幸はそう尋ねると

 

暁「・・・はい。」

 

暁はそう答えた。

 

御幸「大丈夫だ。今日のお前の出来なら、ド真ん中放っても打たれはしねーよ。」

 

御幸「それに、この前の試合で痛感したんだろ。ペース配分の大切さを。」

 

暁「・・・はい。何故惇が投げきれるのか改めて理解出来ましたし、僕はまだまだ惇の背中が見えてないんだということも気付きました。」

 

御幸「そうか。でも、お前もアイツと遜色ない力を持ってる。」

 

御幸「お前には、アイツには無い球威がある。お前レベルの球威なら、どんな相手でも抑えれる。」

 

御幸「だから、もっと自信を持て。」

 

この御幸の言葉に

 

暁「っ!」

 

暁は気合の入った表情を浮かべた。

それを見た御幸は

 

御幸「お前らしい力でねじ伏せるボールが来る事を期待してるぜ。」

 

そう、暁に言った。

そして、試合は青道の先攻でスタートした。

まず倉持がヒットで出塁すると、2番春市の初球に盗塁を決めた。

春市がそのままバントを決め一死三塁の形を取った。

そして、惇が打席に立ったのだが

 

「ボール!フォア!」

 

バットを振る事無く、一塁に向かった。

 

惇(さあ・・・一発決めましょう・・・カズさん。)

 

そう思いながら、惇は打席に向かう御幸を見た。

その初球

 

キーン!

 

痛烈な金属音と共に放たれた打球は、ライトスタンド中段に叩き込む先制3ランとなった。

 

「っしゃーっ!!先制の3ラン!」

 

「幸先良く3点取ったぞ!」

 

これには、青道側スタンドは大盛り上がりとなった。

続く前園もツーベースで続き、暁はレフトライナーに倒れたが東条はフォアボールで一塁に向かい、打席には今日初スタメンの信二が打席に立った。

 

惇「お膳立ては整ったぜ、信二!」

 

これに、惇はベンチからそう声を出し

 

春市「積極的に行こう!」

 

春市も続いた。

その初球

 

キーン!

 

信二は迷う事無く積極的に打ちにいき、走者一掃左中間を破るタイムリーツーベースを放った。

 

「結城達がいなくても良く打つよな!」

 

「ああ!ブロック予選からホント好調キープしてるぜ!」

 

「足立、沢村、そして今日先発の降谷とこの3本柱を中心とした投手陣も充実してるし、流石夏の甲子園準優勝だぜ!」

 

これには、スタンドの観客も大盛り上がりだった。

こうして、初回青道は5点も先制した。

 

御幸「降谷!この裏の守り、大事だぞ!ここをしっかり抑えねぇと、主導権握ったとは言えねぇからな。」

 

御幸「5点貰った事は忘れろ。」

 

暁「はい。」

 

そして、裏の守りについた青道。そのマウンドに、暁が上がった。

その初球

 

ズドォォン!!

 

ド真ん中に真っ直ぐが決まった。

普通に考えたら甘いコースなのだが

 

「っ!!」

 

(んだよこれ・・・!ビデオで観たのとじゃ全然威力がちげーじゃん・・・!)

 

予想以上のボールに、バッターは驚愕してしまい、手が出せなかった。

2球目

 

ズドォォン!!

 

「くっ!」

 

外低めに真っ直ぐが投げられ、ボールになったが初球同様手が出なかった。

 

(しかも角度があるから、打ちにくい・・・!)

 

また、183㎝と1年ながら背もある暁のボールには角度がある為、それも打ちづらさの一つにもなった。

3球目

 

ストンッ!

 

SFFを投げ追い込んだ。

そして

 

ズドォォン!!

 

真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

「おっしゃあああ!まずは三振!!」

 

「幸先良いぜ!」

 

青道側スタンドは、これには大盛り上がりだった。

 

太田部長「軽く投げているようですが、ボールは走ってますね。」

 

片岡「ああ。無駄な力が入ってない。」

 

これに、片岡はそう冷静に言った。

そして、その勢いで2番3番も空振り三振に打ち取り、初回は三者連続三振となった。

 

前園「ナイスピッチ!」

 

倉持「ナイスピッチ!」

 

春市「ナイスボール!」

 

これには、この3人はそう暁に賛辞の言葉を送り

 

惇「スゲぇじゃん暁!このまま最後まで行きなよ!」

 

惇も、暁に賛辞の言葉を送った。

 

暁「うん!」

 

これに、暁は分かりやすいほど嬉しそうな表情を浮かべた。

その後も、暁は伸びのある剛速球で面白いように三振に打ち取っていった。

打線も、次々に打っていき、5回終わって18点も取った。

暁も、5回1安打9奪三振の圧巻のピッチングを見せ、18-0の5回コールド勝ちとなった。

 

惇「コイツ・・・」

 

栄純「ゼッテー負けねー・・・!」

 

これに、惇と栄純にとって非常に刺激となった。

 

片岡(エース争いも、分からなくなったな・・・)

 

片岡も、暁のピッチングを見てそう感じた。

そして、試合が終わった後、青道ナインに衝撃のニュースが入った。

それは、稲実が鵜久森に逆転負けを喫してしまったという事であった。




投稿出来ました。

試合内容は上手く書けませんでした。ご想像でお許し下さい(土下座)

それでは、また。


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87話

87話です。


稲実敗退。このニュースに、青道ナインに大きなショックを受けたが、すぐに試合映像を観た。

 

惇「・・・。」

 

惇は、成宮が打たれた瞬間を映像で観ていると

 

御幸「足立。お前はこの場面どう思う?」

 

隣に座ってる御幸はそう惇に尋ねた。

 

惇「うーん・・・多分なんすけど、多田野のリードは間違ってなかったっすよ。」

 

これに、惇はそう答えた。

 

御幸「どうしてそう思った?」

 

惇「えっと・・・この場面なんすけど・・・」

 

そう言うと、惇は打たれる前のシーンを巻き戻し

 

惇「最後に打たれる前に鳴さん、多田野のサインに首振ってるじゃないすか。多分、ここで変化球のサイン出したと思うんすよ。」

 

惇「真っ直ぐ、スライダーを見せた後、真っ直ぐで追い込んで、多分最後は低めのフォークかチェンジアップで仕留めようとしたんすよ。」

 

そう、御幸に言った。

 

御幸「でもアイツは真っ直ぐを投げた。まあそれはアイツの自滅でもあるな。」

 

惇「それに、何かちょっと打線も噛み合ってなかったし・・・」

 

御幸「そうだな。稲実は、負けるべくして負けたのかもな。」

 

御幸「とにかく、優勝への最大の壁が崩れてくれたんだ。俺達にとって強烈な追い風と考えて良い。」

 

御幸「鵜久森の勢いを根こそぎいただこうぜ!!」

 

御幸は強い口調で言った。

 

惇「うっす!」

 

そして、片岡らスタッフが現れ

 

片岡「明日の鵜久森の先発だが・・・」

 

片岡「足立。お前に任せる。」

 

惇「はい!」

 

片岡「スタメンは明日発表する。相手は稲実を倒して勢いに乗っている。勝負の際、勝つまで決して気を緩めるな!」

 

「「「はい!!」」」

 

そうメンバーに言い

 

片岡「以上、解散!」

 

解散した。

その帰り

 

惇「しっかしこの梅宮さん、スゲー良いピッチャーだな。」

 

惇「130後半くらいの真っ直ぐに100㎞あるかないかくらいのスローカーブ・・・」

 

春市「うん。加えて・・・」

 

惇「ああ。あれって・・・縦スラ?」

 

春市「けどカーブっぽくもあったね。」

 

惇は春市と一緒に梅宮について話していた。

 

惇「打てるか、春市?」

 

春市「何とか打ってみせる。絶対君を援護して、楽に投げさせるから。」

 

そう、春市は言った。

その表情は、強い決意が込められていた。

 

惇「ああ。頼りにしてんぞ。お前がいると、何か安心するしな。」

 

惇「明日の試合、いつもの守備とバッティング、頼むぞ。」

 

これに、惇はそう春市に言い、拳を突き出した。

 

春市「うん!」

 

これに、春市も拳を突き出し、合わせた。

 

春市「それと一つ気になる事があるんだけど・・・」

 

惇「あ?」

 

春市「最近、夏川先輩の様子がおかしいんだけど・・・足立君何か知ってる?」

 

春市「この前トスでもう1箱ボール頼んだんだけど、反応がいつもと違って遅かったし、ちょっと暗かったんだよね。」

 

惇「・・・そっか。」

 

春市「足立君、夏川先輩とは幼馴染だから何か知ってるかなって。」

 

惇「いや、俺も知らねー。ここ最近一緒じゃねーからな・・・」

 

春市「そっか・・・。」

 

惇「取り敢えず、明日は宜しく。」

 

春市「うん!」

 

そう言って、惇は春市と別れた。

 

惇(唯・・・)

 

その際、惇は少し唯の事を考えていた。

この同時刻に、食堂で大変な事が起きていた。

それは、今日の鵜久森と稲実戦の偵察に行ってくれた渡辺らの一件で、御幸と前園が喧嘩をし

 

前園「お前をキャプテンとして認めへんからな!」

 

と前園がそう御幸に言ったのであった。

こうして、青道は険悪な状態のまま、翌日の鵜久森との試合を迎えたのであった。




投稿出来ました。

稲実敗退。でも、現実でもこういうジャイアントキリングはあり得ますからね・・・。

とは言っても、メチャクチャびっくりしますけどね・・・。

それでは、また。


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88話

88話です。


翌日の秋季大会3回戦。青道ベンチは空気が重かった。

これに

 

惇「秀。信二。」

 

秀明「惇。」

 

信二「足立。」

 

惇「昨日、カズさんとゾノさんが喧嘩したっていう話はマジか?」

 

惇は2人にそう尋ねた。

 

信二「ああ。俺達はあの場にいたからな。ちょっと色々な。」

 

惇「そっか・・・。」

 

秀明「昨日の今日だしね・・・。」

 

惇「・・・でも、試合になりゃあ大丈夫じゃねーか。勝つって目的は一緒だし。」

 

信二「ああ・・・。」

 

秀明「そうだね・・・。」

 

そして、ベンチ前で並ぶと

 

御幸「今は、目の前の敵を倒す事だけに集中しようぜ。」

 

と御幸は倉持らにそう声をかけ

 

御幸「行くぞぉ!!」

 

「「「らあああ!!」」」

 

一斉に飛び出したのだった。

そして、後攻の青道が守備につき、マウンドには予定通り惇が上がって、いつものルーティンである股割りストレッチを行って、セットポジションに構えた。

その初球

 

「ストラーイク!!」

 

140㎞真っ直ぐが膝元に決まり、1ストライクとなった。

 

近藤(やはり・・・打席で見ると凄いな・・・)

 

初球の真っ直ぐを見た近藤は、そう感じた。

2球目

 

キン!

 

振り遅れ、三遊間に打球を放った。

それが幸いしたのか、俊足を活かして内野安打となった。

 

「シャアアアッ!!」

 

「良いぞガッチャン!!」

 

先頭の出塁に、鵜久森ベンチは盛り上がった。

 

倉持「気にするな!」

 

春市「1つずつ行こう!」

 

信二「強気で行け!」

 

前園「打たせていけ!」

 

これに、バックも負けじと惇に声をかけた。

次の2番は、バントの構えを見せ

 

コツ

 

バントしたのだが

 

惇「フッ!」

 

打球がピッチャー正面に行き、勢いが強かったのと惇の猛チャージにより

 

「アウト!」

 

ファーストランナーの近藤はアウトになり、一塁はセーフになったがバントを失敗させた。

 

倉持「ナイスプレー!」

 

春市「ナイスフィールディング!」

 

信二「良いぞ、足立ぃ!」

 

前園「ええぞ、足立!」

 

これには、バックも声を上げて盛り立てた。

次の3番の初球

 

ククッ!

 

「ボール!」

 

スライダーが外れボールになり2球目に真っ直ぐを投げたが

 

キーン!

 

ガッ!

 

惇「っつ!」

 

御幸「っ!」

 

弾き返されてしまい、打球が惇の足に当たってしまった。

そのまま打球は一塁のファールゾーンに行ってしまい、前園が捕ったが間に合わず、内野安打になってしまった。

これには、御幸やバックが集まり

 

片岡「っ!」

 

片岡もベンチから飛び出した。

 

御幸「大丈夫か、足立!」

 

惇「大丈夫っすよ、カズさん。」

 

片岡「大丈夫なんだな・・・」

 

惇「はい・・・痛みは全くありません。」

 

片岡「・・・。」

 

惇「・・・。」

 

惇がそう言うと、両者暫く黙って見て、片岡はそのままベンチに戻った。

 

唯「惇君・・・」

 

これに唯は、心配な表情を浮かべながらマウンドの惇を見ていた。

そして、惇は投球練習を少し行い、試合を再開した。

 

梅宮「モロ直撃したってのに、良い根性じゃねーか。」

 

これに、梅宮はそう言いながら打席に立った。

その初球

 

キン!

 

外の142㎞の真っ直ぐを梅宮が打ち、ファールになった。

 

「振ってくるなぁ・・・。」

 

「流石だな・・・。足立のストレートについていったぜ。」

 

これに、観客はそう感じていた。

 

梅宮(スゲェ・・・これが甲子園準優勝投手のボールか・・・)

 

梅宮(テレビで観たのと比べたら想像以上だぜ・・・)

 

梅宮(それに・・・感じるぜ、コイツの燃えるような気迫が・・・!)

 

梅宮(うお・・・早くも暴れ出してんぜ、アドレナリンが!!)

 

打席の梅宮も凄まじい気迫を噴き出した。

2球目

 

ククッ!

 

スライダーが外れ、1-1となり

 

キン!

 

3球目は、外低め141㎞真っ直ぐをファールにし、追い込んだ。

 

御幸(よし・・・追い込んだ。次はこの球だ・・・!)

 

これに、御幸は最後あのボールのサインを出し

 

惇(了解っす、カズさん!)

 

惇も頷いた。

そして4球目

 

梅宮(ストレート・・・!貰ったぜ!)

 

真っ直ぐと思った梅宮は振りにいった。

しかし

 

ストンッ!

 

梅宮「っ⁉︎」

 

そのボールは惇の伝家の宝刀SFFで、梅宮は空振り三振に終わった。

御幸は、このSFFを何とか前で受け止めた。

 

倉持「ナイスボール!」

 

春市「2アウトー!」

 

信二「ナイスボール!」

 

前園「ええぞ、足立!」

 

バックも、そう惇を盛り立てた。

次の犬伏には1-1とし、最後はインサイド140㎞真っ直ぐを詰まらせ、レフトフライに打ち取って、初回のピンチを凌いだのであった。




投稿出来ました。

鵜久森戦、始まりました。

どういった試合になるか?

それでは、また。


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89話

89話です。


鵜久森の攻撃を何とか凌いだ惇。

その裏の青道の攻撃。1番の倉持が打席に立った。

その初球

 

倉持「・・・っ。」

 

「ストラーイク!!」

 

スローカーブから入った。

2球目

 

「ボール!」

 

ボールとなったがコースはギリギリだった。

 

惇「見かけによらず、コントロール良いっすね。」

 

御幸「ああ・・・。思わず手を出してしまいそうなコースギリギリに投げてる・・・。」

 

惇「しかも、あそこまでブレーキの利いたカーブ・・・。これで真っ直ぐ投げられたら打ちづらいっすよ。」

 

これに、惇は御幸に梅宮のコントロールの良さに舌を巻いていた。

そして3球目、倉持は狙っていた真っ直ぐを打ったが

 

倉持(クッ・・・この球速差。打席で見ると想像以上だぞ・・・)

 

想像以上の緩急に振り遅れ、三遊間に詰まったゴロを打った。

しかし、自身の俊足を活かしてショートの内野安打となった。

 

樋笠「しゃあ!韋駄天キター!!」

 

麻生「途中加速装置使ったろ!?」

 

これには、ベンチは大盛り上がりだった。

 

栄純「そう!!転がせば良いんです!!足しか取り柄がないんですから!!」

 

倉持「うるせえ!」

 

次の春市は

 

コツ

 

初球キッチリ送って倉持をスコアリングポジションに進めた。

そして、惇が打席に立った。

 

惇(さーて・・・どの球から来る・・・?)

 

そう思い、構えた初球

 

惇「・・・っ。」

 

「ストラーイク!!」

 

スローカーブから入った。

 

惇(こりゃあ・・・想像以上だな・・・)

 

惇(マジすっぽ抜けたと思っちまったぞ・・・!)

 

これには、惇も驚きを隠せず

 

梅宮(へっ・・・驚いてやがんな・・・怪腕イケメンピッチャー!)

 

それを見た梅宮は、不敵な笑みを浮かべた。

2球目

 

「ボール!」

 

初球同様スローカーブが来たが、外れてボールとなった。

 

惇(多分・・・次真っ直ぐだな・・・)

 

そう思って3球目にその通りの球が来たのだが

 

キン!

 

惇「チッ!」

 

先程のスローカーブが利いてるのか、振り遅れてファールになった。

 

惇(やべっ・・・マジタイミング合わねー・・・)

 

信二「タイミング取りづれーんだろうな・・・」

 

秀明「うん・・・あれだけブレーキが利いてたら・・・」

 

ベンチで見てる信二と秀明は、惇の様子にそう感じていた。

そして、勝負の4球目

 

梅宮(コイツで・・・仕留める!)

 

梅宮は、切り札たるあの球を投げた。

その球は、外低めへとピンポイントに投げ込まれ、手元で急激に曲がっていった。

 

惇(縦スラ・・・!)

 

惇は、このボールに少し体勢を崩されたが

 

キーン!

 

梅宮「っ!」

 

咄嗟の反応で何とかミートし、一塁線に弾き返した。

これに、鵜久森のファーストは

 

「っ!」

 

(なっ・・・!?打球が速すぎ・・・!)

 

全く反応できなかった。

これを見た倉持はあっさりと二塁からホームに帰り、青道は1点先制した。

 

「一塁線長打コース!」

 

「エースの一打で1点先制!」

 

梅宮(ヤロォ・・・何つー反応だ・・・!)

 

この惇のバッティングセンスに、梅宮は驚きを隠せず

 

松原(タイミングずれてたのに・・・流石だね・・・)

 

松原も、これには苦笑いを浮かべた。

 

惇(想像以上のキレだったわ・・・。ナベさんにマジ感謝だな・・・)

 

惇は二塁ベース上でエルボーガードとレガースを取りながらそう思った。

続く御幸も

 

キーン!

 

右中間に破るタイムリーツーベースを放ち、惇が帰って2点目を取った。

続く前園が打席に入る。

 

前園「・・・。」

 

この時、前園は御幸を見て

 

前園(やっぱコイツ・・・ホンマに凄い選手や・・・。)

 

前園(やからこそ・・・凄い選手やからこそ・・・余計腹が立ったんや!!)

 

そう思い

 

キーン!

 

レフト線長打コースのタイムリーツーベースを放った。

 

前園「じゃらあ!!」

 

「しゃああ!!クリーンアップ連続タイムリー!!」

 

「この回3点目!!」

 

「最強クリーンアップだぜ!!」

 

これには、青道スタンドも

 

倉持「ナイバッチゾノー!!」

 

春市「ゾノさーん!!」

 

ベンチも大盛り上がりだった。

こうして、青道は幸先良く3点先制したのであった。




投稿出来ました。

幸先良く先制しましたね・・・。

この流れで行けるのか!!

それでは、また。


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90話

90話です。


3点先制したその後の2回表の惇のピッチング。

先頭の6番への初球

 

ズバアアンッ!!

 

膝元に141㎞の真っ直ぐが決まった。

2球目

 

ククッ!

 

スローカーブを投げ、サードゴロに打ち取った。

次の7番には、初球スライダーを空振らせ、2球目に140㎞真っ直ぐでファールにして、3球目も141㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

次の8番には、2球目のスローカーブをレフト前に運ばれてしまい、二死一塁となった。

 

「鵜久森これでヒット3本目か・・・」

 

「足立が2回でヒット3本打たれるって珍しいな・・・」

 

「調子悪いのかな・・・」

 

これには、観客もそう感じていた。

 

御幸(元々細かなコントロールを持ってねーんだけど、相変わらずボールのキレ、力はある。)

 

御幸(ただ・・・今日はいつもと比べたらちょっとコースが甘いな・・・)

 

この時、御幸も惇の状態がいつもと比べてあまり良くない事に気付いていた。

9番には、1-1として、3球目

 

前園「スチール!」

 

ランナーが盗塁を仕掛け、前園がそう叫んだ。

しかし

 

「アウト!」

 

御幸の矢の如き送球でアウトにして、この回無得点に抑えた。

 

惇「あざっす、カズさん!」

 

御幸「いつもお前はそうしてるが、ランナーは俺に任せろ。」

 

惇「うっす!」

 

そう、惇と御幸は話した。

その裏の青道の攻撃は3人で終わり無得点に終わった。

3回表の惇のピッチング。

先頭の9番には、2-2からインハイ143㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

打者一巡して1番の近藤は、初球142㎞の真っ直ぐをファールにした。

2球目は初球同様143㎞真っ直ぐで空振らせてあっさり追い込んだ。

そして3球目

 

ストンッ!

 

最後はSFFで空振り三振に打ち取り、まだ受け止められない御幸は、初回の時と同様何とか体で受け止めた。

 

倉持「ナイスボール!」

 

春市「ナイスピッチ!」

 

信二「ナイスピッチ!」

 

前園「ええぞ、足立ぃ!その調子や!」

 

そして、次の2番には、初球スローカーブから入り、2球目は141㎞真っ直ぐが外れ、3球目も142㎞真っ直ぐが外れた。

4球目はスライダーを空振らせ、5球目は真っ直ぐが高めに外れフルカウントとなった。

そして6球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

外143㎞真っ直ぐで見逃し三振に打ち取り、この回3者連続三振とし、雄叫びを上げた。

 

「3者連続三振!!」

 

「これが足立だー!!」

 

「まさに東都の怪腕!!」

 

「片岡2世ー!!」

 

この回の圧巻のピッチングに、観客も大盛り上がりだった。

しかし

 

御幸(まだボールがバラバラだ・・・。最後の球以外、殆ど構えたところに来なかったな・・・)

 

まだ惇の調子が上がってない事を御幸は感じていた。

その裏の青道の攻撃。先頭の春市はショートゴロに打ち取られたが、次の惇はレフト線にツーベースを放った。

そして、次の御幸の初球

 

キーン!

 

高々と舞い上がった打球はライトスタンドに突き刺さる2ランホームランとなり、5-0となった。

 

倉持「ナイバッチ、御幸ー!」

 

白州「ナイスバッティング!」

 

これには、ベンチは大盛り上がりだったのだが

 

栄純「えっ・・・えっ・・・!?」

 

栄純のみ、見逃していた。

・・・何やってんだよ、おい。

そして、4回に突入した試合。惇は、鵜久森の先頭の3番にフルカウントまで粘られ、フォアボールで歩かせてしまった。

そして、前の打席で空振り三振に打ち取ったが、エースで4番でもある鵜久森の精神的支柱、梅宮が打席に立った。

 

梅宮「負けてたまるかよ・・・」

 

この時、梅宮はそう呟きながらバットを構えた。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

外に143㎞の真っ直ぐを空振らせた。

2球目

 

ククッ!

 

スライダーが外れ、1-1となり、3球目

 

キン!

 

外142㎞真っ直ぐで追い込み、4球目はスローカーブを投げたが外れ、並行カウントとなった。

そして5球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「らああああっ!!」

 

インハイ143㎞の真っ直ぐで梅宮を2打席連続三振に打ち取った。

 

倉持「ナイスボール!」

 

春市「1アウト!1アウト!」

 

信二「1つずつ行こうぜ!」

 

前園「エエ球いっとるで、足立!」

 

次の犬伏には、真っ直ぐ2球で追い込んで、最後にSFFを投げ、それを引っかけさせセカンドゴロゲッツーに打ち取って3アウトチェンジとなった。

その裏、青道はランナーは出たが、梅宮の粘投で無得点に終わった。

5回に入り、6番にはスローカーブで、7番にはスライダーで空振り三振に打ち取った。8番には、2-1と追い込んだ4球目

 

キン!

 

8番は何とかバットに当てた。

打ち取ったのだが、高いバウンドだったのが幸いしたのか、内野安打となってしまった。

次の9番にはフルカウントまで粘られたが

 

ククッ!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

スローカーブで見逃し三振に打ち取り、最後は雄叫びを上げたのだった。

その裏、青道は倉持、春市の連続ツーベースで6-0とし、試合は後半戦に突入していったのであった。




投稿出来ました。

結構駆け足投稿かつ、拙い試合描写になってしまいました。

いつもいつも大変申し訳ございません・・・。

さあ、鵜久森戦も後半戦に突入します。

どうなるのか?

それでは、また。


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91話

91話です。


6回表の惇のピッチング。

1番の近藤に、初球スローカーブでストライクを取り、2球目は143㎞真っ直ぐであっさり追い込み

 

ストンッ!

 

最後はSFFで空振り三振に打ち取り、体で受け止めた御幸は、タッチした。

次の2番は、初球スライダーが外れボールになり、2球目の真っ直ぐをしぶとくライト前に運ばれた。

 

梅宮「ナイバッチー!!」

 

「良いぞー!!」

 

これには、鵜久森ベンチは盛り上がった。

 

御幸(今のストレートも、少し内に入ったな・・・)

 

御幸(けど、良いボールは来てる。攻めていくぞ!)

 

そう思い、御幸はミットを構えた。

次の3番の初球

 

前園「スチール!」

 

一塁ランナーが盗塁を仕掛けた。

しかし

 

「アウト!」

 

御幸の鋭い送球が、盗塁を阻止した。

しかし

 

「ちくしょー!」

 

「スタート悪くなかったよ。」

 

「スタートだけな!」

 

「るせぇ!」

 

積極的に仕掛けていき、失敗しているにもかかわらず、鵜久森ベンチは明るかった。

続く3番の初球

 

ガツ!

 

「しゃああ!」

 

懐に真っ直ぐを当ててしまい、デッドボールで再びランナーを一塁に行かせてしまった。

これに御幸は、すかさずタイムを取り

 

御幸「大丈夫だ。ボールは来てる。1つずつ行こう!」

 

惇「はい。」

 

そう惇に声をかけ、戻った。

そして、次に打席に立つのは、梅宮だった。

その初球

 

「ットライーク!」

 

142㎞真っ直ぐを空振り、1ストライクを取った。

 

梅宮「スゲぇな、コイツ・・・。ホント・・・」

 

これに、梅宮は初回と変わらず眼光をギラつかせていた。

2球目はスライダーが外れたが、2球目

 

キーン!

 

真っ直ぐを打ったのだが、センター東条の正面を突き、3アウトチェンジとなった。

その裏の青道の攻撃は、ヒットとエラーで満塁としたが、梅宮が何とか無失点に抑えた。

そして、7回の惇のピッチング。

犬伏をスライダーで空振り三振に打ち取ったが、6番7番に連続ヒットを打たれ、一死一、二塁のピンチとなった。

これには、すかさず御幸はタイムを取り、内野も集まった。

 

御幸「ランナーは気にしなくて良い。いつも通り行け!」

 

惇「うっす!」

 

倉持「後ろは任せな!」

 

春市「1つずつ丁寧に行こう!」

 

信二「いつも通りな!」

 

前園「どんな打球も受け止めたるからな!」

 

そう、周りも惇を励まし、それぞれ定位置に戻った。

 

「これで7安打・・・」

 

「鵜久森良く打つな・・・」

 

「まだ無得点だけど・・・」

 

「ここで1点入ったら、流れが変わるかもな・・・」

 

そう、周りの観客は感じていた。

8番の初球はスローカーブから入り、2球目は真っ直ぐが外れた。

3球目も真っ直ぐを投げ、ファールにして追い込み

 

ズバアアンッ!!

 

最後も142㎞真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

次の9番には、初球真っ直ぐを投げ、2球目はスローカーブを投げ追い込み

 

ズバアアンッ!!

 

惇「らああああっ!!」

 

最後は今日最速144㎞の真っ直ぐで見逃し三振に打ち取り、この回も何とか無得点に抑えた。

 

御幸(球数は100球超えてるが、ボールは悪くねぇ・・・)

 

御幸(寧ろ、どんどん良くなってきてるな・・・手が痛くなってきた・・・)

 

この時、ベンチで汗を拭ってる惇の姿を見て、御幸はそう感じた。

 

惇「ふぅー・・・」

 

この時、惇は一息ついていた。

すると

 

栄純「おい!」

 

頭上から栄純の声が聞こえたので頭を上げると、栄純と暁がいた。

 

栄純「お前、この試合1人で投げ抜こうと考えているな!」

 

暁「僕達も準備してるから!」

 

栄純「覚えとけ!野球はそんなに甘くないって事を!」

 

すると、2人はそう惇に言ったのだった。

そして、青道の攻撃も無得点に終わり

 

片岡「どうだ?行けるか?」

 

片岡は惇にそう聞いた。

これに

 

惇「行けます!」

 

惇は真っ直ぐな目で片岡に言った。

 

片岡「・・・分かった。この回も任せたぞ。」

 

惇「はい!」

 

そして、惇は8回のマウンドに上がった。

まず先頭の近藤は、2球目のスライダーを引っかけさせ、セカンドゴロに打ち取った。

続く2番には、真っ直ぐ2球で追い込んで、最後はSFFで空振り三振に打ち取ったが

 

「後ろに逸らしたぞ、走れ!」

 

御幸は後ろに逸らしてしまい、振り逃げで一塁に行かせてしまった。

 

御幸(クソッ・・・!ここまで何とか体で受け止めてたのに・・・!)

 

これには、御幸は悔しさで顔を歪ませ

 

御幸「悪い。」

 

そう、惇に謝った。

 

惇「良いっすよカズさん。1アウトっすよ!」

 

しかし、惇は笑顔で人差し指を立てて御幸に言った。

 

御幸「ああ。」

 

そして、次の3番の初球スライダーを投げたのだが

 

御幸「くっ!」

 

上手く捕球出来ず、二塁にランナーを行かせてしまった。

そして、3番をセカンドゴロに打ち取り、2アウトを取ったが三塁にランナーを行かせてしまった。

ここで、梅宮が打席に立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

今日最速タイの144㎞真っ直ぐが膝元に決まった。

 

御幸「くっ!」

 

御幸も、ギアが上がってきた惇のボールを受け止めるので精一杯だった。

2球目はスローカーブが外れ、3球目も真っ直ぐが外れた。

 

梅宮(っぶねー!危うく振るところだったぜ・・・!)

 

梅宮(つーか、さっきと比べてボール伸びてやがるぜ・・・!)

 

これには、梅宮も惇のボールに冷や汗を掻いた。

そして4球目、惇は真っ直ぐを投げたのだが

 

バシィィンッ!!

 

御幸「っ!」

 

梅宮「走れぇー!!」

 

御幸の想像以上にボールが伸びてきたため、弾いて後ろに逸らしてしまい、三塁ランナーがホームに帰ってしまった。

しかもこの時の球速が、自己最速タイの145㎞だった。

 

御幸(くっ・・・受け止められなかった・・・!)

 

「しゃああ!1点返したぞー!!」

 

「行けるぞー!!」

 

これには、鵜久森ベンチは盛り上がり

 

「頑張れ鵜久森ー!!」

 

「諦めんなー!!」

 

「まだまだいけるぞー!!」

 

観客も、まだ5点差と大差はあるが、前日稲実を倒した鵜久森の大物食いを期待した。

その時

 

梅宮「っ!?」

 

梅宮の背筋から悪寒が走った。

その瞬間

 

ズバアアンッ!!!

 

145㎞の真っ直ぐがド真ん中に来て、梅宮はそれを空振った。

 

梅宮(な・・・何なんだよコイツの球・・・!?さっきより伸びて・・・!)

 

これには、梅宮も惇のボールの伸びが先程より上がった事を感じた。

 

唯「惇君・・・」

 

一方の唯は惇の姿に再び恐怖を感じていた。

 

6球目

 

キン!

 

梅宮「くっ!」

 

梅宮は何とかファールにした。

7球目

 

キン!

 

これも何とかファールにした。

 

唯(怖がっちゃ・・・駄目・・・!怖がっちゃ・・・)

 

そう思っても

 

唯(駄目・・・怖い・・・惇君が・・・怖い・・・)

 

目を逸らしてしまった。

 

唯(甲子園が終わってから・・・惇君は変わっちゃった・・・)

 

唯(まるで・・・何かに取り憑かれたみたいに・・・知らない誰かみたいに・・・変わってしまった・・・)

 

唯(惇君の目のどこにも・・・私なんて映ってないって・・・感じてしまう・・・)

 

その時

 

吉川「頑張れ、足立君!」

 

唯「っ!」

 

唯の隣で応援していた吉川が、大声を上げて惇を応援した。

 

吉川「何をしてるんですか、唯さん!唯さんも声を上げて応援するんですよ!」

 

唯「え?」

 

吉川「え?じゃないです!足立君は、一生懸命投げてますよ!」

 

吉川「なのに何で唯さんは足立君を怖がってるんですか!」

 

唯「春乃・・・」

 

吉川「唯さん前に言いましたよね!『惇君は格好良くて、野球が大好きな優しい子だ』って!」

 

吉川「私もそう思います!彼とはクラスメイトですから!」

 

吉川「その格好良い足立君が、こう言ってました!『唯を笑顔にするために、俺は皆の、あいつの思いも全部背負ってマウンドに立つ』って!」

 

吉川「足立君は本当は苦しいんです!甲子園が終わってから、あの決勝戦の負けを気に病み、塞ぎ込んでしまうほど責任を感じました!」

 

吉川「けど、唯さんはそんな足立君を受け止め、優しくして傍にいてあげたじゃないですか!」

 

吉川「唯さんが・・・唯さんが応援しないでどうするんですか!!」

 

この吉川の言葉に

 

唯「っ!」

 

唯はハッとした表情を浮かべ、マウンドを見た。

 

惇「ふぅー・・・」

 

そこには、汗を拭ってる惇がいた。

 

唯(そうだ・・・甲子園が終わって・・・塞ぎ込んでしまった惇君がとても見ていられなくて・・・傍にいてあげたんだった・・・)

 

唯(少しでも・・・惇君がまたいつもの姿に戻れたらって・・・)

 

唯(帝東戦での惇君を見て・・・何か・・・怖くなって・・・)

 

唯(本当は・・・何も変わってないのに・・・どんなに実力が伸びても・・・惇君は何も変わってないのに・・・)

 

唯(なのに私は・・・勝手に怖がっちゃって・・・!)

 

そして

 

唯「頑張って・・・!」

 

唯「頑張って、惇君!!」

 

そう、唯はマウンドに立ってる惇に声をかけた。

 

惇「っ!」

 

すると、何か感じたのか、惇は青道側スタンドに目を向けた。

 

唯「頑張って・・・惇君・・・!!私が・・・ついてるから・・・!!」

 

そう、唯が涙を流しながら惇に言った。

 

惇「・・・。」

 

すると、惇の顔から硬さが消え、少しリラックスした表情になった。

 

御幸(硬さが消えた・・・?)

 

御幸(これなら・・・!)

 

これに、何かを感じた御幸は

 

御幸(必ず受け止めてやる・・・!)

 

気合を入れてミットを構えた。

 

梅宮(また雰囲気が変わったな・・・)

 

梅宮(けど関係ねー!弾き返してやる・・・!)

 

これに、梅宮はそう思いつつも、いつものように眼光をギラつかせながら構えた。

そして、投じた10球目

 

梅宮(ストレート!貰ったあぁ!!)

 

梅宮は真っ直ぐだと思い振ったが

 

ズバアアンッ!!!

 

梅宮「っ!!」

 

梅宮の想像したボールよりも更に手元で伸び、バットの空を切った。

 

惇「らああああっ!!」

 

そして、それと同時に惇の雄叫びが球場中に木霊した。

これにより、この回1失点に抑え、その裏に青道は2点を取り、結果8-1と8回コールドで勝利を収めたのであった。




投稿出来ました。

鵜久森戦決着がつきました。

久々に疲れた・・・(汗)

吉川の台詞ですが、某アニメのシーンを参考にアレンジしました。

分かる方はいるかな?

それと、山梨学院初優勝おめでとうございます!!

春夏通じて県勢初優勝!!

夏も頑張って下さい!!

それでは、また。



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92話

92話です。


鵜久森に勝利し、ベスト8進出を果たした青道高校。

青心寮に戻ったナインは、食堂にて

 

小野「最後のストレート、本当に凄かったな!」

 

御幸「ああ・・・今日1番のボールだったな・・・」

 

小野「お前、手は大丈夫なのか?」

 

御幸「ああ・・・何とかな。」

 

そう言い、御幸は小野に手を見せた。

 

御幸(俺の予想以上に、あいつは成長している・・・)

 

小野「今日はナベの取ってきてくれたデータに助けられたな。」

 

麻生「稲実しか見てなかったらヤバかったよな。」

 

関「樋笠にもタイムリーが出たしなっ!」

 

小野「打線も良く繋がるしな・・・」

 

そう言うと、御幸と前園が反応し

 

前園「次も繋がらなかったら意味が無い!」

 

御幸「ま・・・そうだな。」

 

よそよそしい反応だった。

 

関「お前ら試合中普通だったじゃねぇかよ!なっ!」

 

前園「それとこれとは、別の話や・・・」

 

前園「コイツがナベに言った事、許したわけやないからな。」

 

これに

 

御幸「別に俺も、今更自分の意見を変えるつもりはねーよ。」

 

御幸もそう返した。

 

前園「あ?」

 

小野「お・・・おい御幸・・・」

 

御幸「厳しい事を言ったかもしれないけど、やっぱり大事なのはナベの気持ちだよ。」

 

前園「だからって勝手にしろって言うてええんか?」

 

御幸「考えて答えを出すのはナベだからな。」

 

前園「お前マジで言ってんのか?」

 

前園「お前はキャプテンなんやぞ!!チームを纏めるのが役目やろーが!!」

 

小野「やめろって、ゾノ!」

 

この後、この2人は以前よりも酷く喧嘩した。

この様子を

 

倉持(そういや、純さん達も新チームになった頃はいつも喧嘩してたよなぁ・・・)

 

倉持(少しは近づけてんのかよ、あの先輩達に・・・)

 

倉持はそう感じたのだった。

その頃、惇は唯と一緒にいた。

 

惇「お前な・・・お礼言ったくれーで泣くなよ・・・」

 

そう困ったような顔で言う惇と

 

唯「だって・・・」

 

口元を抑え、涙を流す唯。

 

惇「またお前の口癖か・・・」

 

惇「でも・・・マジでありがとな。それと・・・悪かったな。」

 

唯「もう良い・・・もう良いよ、惇君・・・」

 

惇「ホント・・・お前には助けられたな・・・」

 

そう言い、惇は唯の頭を撫でた。

 

唯「惇君・・・」

 

惇「後・・・そうだな・・・」

 

そして

 

惇「・・・好き。」

 

唯「っ!」

 

惇「お前の事、小さい頃から・・・ずっと好き。」

 

そう、惇は唯に告白した。

この瞬間、唯の顔はリンゴのように赤くなった。

 

唯「え、えっと・・・」

 

これに

 

唯「・・・き。」

 

惇「唯?」

 

唯「私も・・・惇君の事・・・好き。」

 

唯「小さい頃から・・・ずっと好きでした。」

 

唯も、目を潤ませ顔を赤くしながらそう言った。

 

惇「唯・・・」

 

唯「ずっと・・・ずっと好きだったんだよ・・・」

 

惇「そう・・・か・・・」

 

これに、惇は頭を掻くと

 

惇「改めて・・・唯・・・好きです・・・付き合って下さい・・・」

 

そう、惇は唯に言った。

これに、唯はまた涙を流しながら

 

唯「・・・はい!」

 

眩しい笑顔を笑顔を見せながら返事をしたのであった。




投稿出来ました。

鵜久森戦の後を書きました。

最後の告白は・・・ご想像にお任せします(笑)

また、ちょっと活動報告にて皆さんにご相談がありまして、興味があればご覧いただけると幸いです。

それでは、また!!


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93話

93話です。


ベスト8進出を果たした青道高校。

その翌日

 

伊佐敷「やったな、おめでとうベスト8!」

 

伊佐敷「修学旅行行けなくなったか!!去年の俺らと同じだな!」

 

倉持「何で嬉しそうなんスか!!」

 

早速伊佐敷が嬉しそうに言った。

・・・倉持の言う通り、嬉しそうだな。

 

門田「ここだけの話、同級生に彼女がいる奴は溝が出来るぜ!!思い出共有出来なくて。」

 

門田は暗い顔でそう言った。

・・・滅茶苦茶実感こもってるな。

 

結城「そういえば、足立の調子はどうだ、御幸?」

 

伊佐敷「昨日7本くらいヒット打たれたよな?」

 

御幸「ボールの状態は悪くありません。寧ろ夏より良いです。ただ、本人の思い通りにボールを操りきれないらしく・・・」

 

結城「そうか・・・それで次の相手はどこだ?」

 

御幸「王谷です。」

 

門田「都立王谷か。何年か前甲子園に行ってたよな。」

 

伊佐敷「後3つ死んでもとれ!!」

 

伊佐敷「じゃー、練習行けたら顔出すからな!!後試合もよ!!」

 

そう言い、3年生達はその場を後にした。

その際

 

倉持「増子先輩、丸すぎね?」

 

樋笠「シュー・・・」

 

倉持は増子の体がどんどん色んな意味でデカくなっている事を樋笠に囁いた。

・・・増子さん。

すると

 

御幸「あ・・・哲さん。」

 

結城「ん?」

 

御幸「昼休み、少し時間貰って良いですか?」

 

御幸は結城を呼び、時間取れるか尋ねた。

これに

 

結城「・・・コレか?」

 

結城は将棋の駒を指す仕草をした。

 

御幸「あ、将棋じゃないです。断じて・・・」

 

・・・何で将棋だと思った、結城。

その頃、1-Cの教室では

 

「沢村ぁー、この本読んだ?」

 

「10巻からマジ神!」

 

栄純「へー、10巻までは?」

 

「うん、まあ少し入りづらいけど、良いから読めよ!!」

 

栄純がクラスメイトと漫画の話で盛り上がっていた。

 

吉川(また増えてる、漫画仲間・・・)

 

信二(相変わらず元気だな、アイツは・・・)

 

これに、吉川と信二はそう思いながら見ていた。

すると

 

惇「そんじゃあ、また練習でな!」

 

唯「うん!良い!お昼休み終わっても、絶対授業中寝ちゃ駄目だからね!!」

 

惇「わーってるよ!」

 

唯「本当に分かってるの!!」

 

惇「マジでわーってるって!」

 

唯「じゃあ、ちゃんと顔を向けなさい!」

 

惇「い、いへえいへえ!!やめほ!!はなへ!!」

 

唯「じゃあ、ちゃんと私を見なさい!!」

 

惇と唯が教室前で話していて、唯が惇の頬を引っ張っていた。

 

吉川「唯さん・・・」

 

信二(大分元気になったな、アイツ・・・)

 

この様子を、2人はそれぞれそう思いながら見ていた。

 

吉川(けど・・・何か唯さんと足立君、前より距離が近くなったような・・・まさか!)

 

と同時に、吉川は何か察したのだった。

その頃、御幸は結城の下を訪れ、相談していた。

 

結城「そうか、渡辺に・・・」

 

御幸「『自分の考えを押し付けんな』。ゾノにそう言われました。」

 

結城「・・・。」

 

御幸「や・・・ゾノの言いたい事も分かるんですけど、やっぱり一番大事なのは本人の気持ちだと。」

 

御幸「俺の言った事が気に入らなかったらそう言ってくれて良いし。」

 

御幸「キャプテンだからって、自分の主張抑えなきゃいけないんですかね。」

 

結城「・・・。」

 

御幸「そこまでしてキャプテンに拘りたくないというか・・・」

 

すると

 

結城「だったら辞めるのか?キャプテン。」

 

結城「一番大事なのは、本人の意思なんだろう?」

 

結城がそう御幸に切り返した。

 

結城「入学してすぐに選手として試合に出てたお前が、突然チームを纏めろと言うのは、窮屈に感じるだろうな・・・」

 

結城「あの甲子園の敗戦がそうさせているのかもしれんが、足立もお前もチームを背負いすぎる。」

 

結城「もう少し誰かに頼る事を覚えておけば良い。お前達は器用そうに見えて不器用だ。」

 

結城「そういう意味では、俺は周りに助けられた・・・」

 

結城「部内で上手く立ち回れたとは思えないし・・・ただただ毎日が必死だった。」

 

結城「自信が無いと監督に断りに言ったぐらいだ・・・」

 

この告白に

 

御幸(え?)

 

御幸は目を見開いた。

 

結城「お前も足立も、周りから求められるプレッシャーは俺なんかの比じゃないだろう・・・」

 

結城「それでも、俺はお前をキャプテンに推したよ。お前がキャプテンになれば、チームは強くなる。そう思ったからな。」

 

結城「何かあったら、いつでも呼べ!話なら聞くぞ!」

 

御幸「・・・はい。」

 

しかし、まだ表情は晴れなかった。

 

結城「まだ、悩みがあるのか?」

 

これに、結城はそう聞くと、御幸はある悩みを告白した。

 

御幸「足立のボールです。ストレートといい、変化球といい、以前よりも更に鋭くなっています。」

 

御幸「初戦の帝東戦と昨日の鵜久森戦、俺がアイツのボールをしっかり受け止めてやれば、失点する事もなかったのかなって思って・・・」

 

結城「足立のボールの進化・・・か。」

 

今の惇のボールは、鞘が抜かれた名刀。御幸本人も、惇の進化について行くので精一杯だ。

 

御幸「キャッチャーとして、アイツのボールを受け止められない自分が悔しいんです。アイツが気持ち良く投げれるように今必死に、がむしゃらに練習してます。」

 

だからこそ、帝東戦以来ワンバンの捕球練習は勿論、ピッチングマシンで160㎞に設定しての捕球練習も行っている。

この成果は鵜久森戦で現れ、SFFはまだ捕球出来ていないが後ろに逸らさなくなった。

 

結城「・・・そうか。」

 

御幸「すいません。大した事ではないのに・・・」

 

結城「良いんだ。だが、諦めてないのが分かった。」

 

結城「それだけで安心した。」

 

そう言い、結城は立ち上がって

 

結城「また何かあったら、いつでも相談しろよ。」

 

そう、御幸に言った。

 

御幸「哲さん・・・」

 

これに、御幸は感謝の思いで一杯になったのであった。




投稿出来ました。

試合翌日のお話を投稿しました。

御幸みたいに、キャッチャーでキャプテンで4番って、想像するだけでも胃に穴が空きそうですね・・・。

阿○慎之助も、よくそれを全うしましたよね・・・。

後、以前お話した新たなダイヤのAの小説ですが、設定のみ投稿しました。

色々ツッコミどころ満載で、僕自身書けるか分かりませんが、ちょっとだけ見ていただけると幸いです。

それでは、また。


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94話

94話です。


次の対戦相手の王谷のビデオを見る青道高校。

 

渡辺「都立王谷エース、若林豪。今時珍しくフォークを主体としてるピッチャーですね。」

 

白州「テイクバック小さいな。」

 

御幸「どちらかというと野手投げだな。」

 

惇「テンポ早ぇーな。」

 

春市「うん。打席でのんびり構える暇無いかも。」

 

渡辺「打線の要は、4番の春日と、5番の山里あたりが要注意。」

 

渡辺「大きく打ち上げる打球ではなく、ライナー性の強い当たりで野手の間を抜くイメージです。繋がり始めるとうるさい打線ですよ。」

 

渡辺「後守備では、思い切ったシフトを敷いてきますね。」

 

渡辺「こちらのデータも細かく取られてると考えた方が良いでしょう。」

 

片岡「決して油断できる相手ではないが、我々がやることはいつもと変わらん!」

 

片岡「守備、攻撃、走塁全てにおいて、相手を圧倒しろ!!」

 

「「「はい!」」」

 

片岡「それと準々決勝の先発だが、初戦と3回戦に足立、2回戦に降谷を使った今、この試合の先発は沢村に任せようと思う。」

 

この片岡の言葉に

 

栄純「!!」

 

栄純は驚きと同時に歓喜の表情を浮かべた。

ここまで初戦の帝東戦で8回にリリーフで上がった時以外、出番が無かった栄純。彼にとって、これは絶好のアピールチャンスなのだ。

 

栄純「この私、必ずやボスの期待に応えて見せます!!」

 

これに、栄純はそう気合の入った表情を浮かべて言った。

 

春市「やったね、先発!」

 

栄純「ああ!」

 

片岡「川上には、いつも通り後ろで待機して貰う。リリーフとしての経験はチーム一だ。しっかりと心技体の準備をしておけ。」

 

川上「はい!」

 

片岡「足立は今日はノースローで調整してくれ。昨日の試合は球数を多く放った。肩肘をしっかりと休ませろ。」

 

惇「・・・はい。」

 

片岡「フリーの後、ノック!外野手はそのままランナーへ!」

 

「「「はい!」」」

 

そして、皆立ち上がりグラウンドに向かった。

その際

 

御幸「あ・・・ナベ。」

 

御幸は渡辺を呼び

 

御幸「今日の王谷のデータ取りも完璧だな。やっぱお前に頼んで良かった。」

 

王谷のデータ収集のお礼を言った。

 

渡辺「ありがと。少しでもチームの役に立てたなら良かったよ・・・」

 

これに渡辺は、そう謙遜したが

 

御幸「何言ってんだ!少しじゃねぇだろ!」

 

御幸はそう返した。

 

渡辺「や・・・でもこれから打者のデータ取り揃えなきゃ。」

 

御幸「か・・・完璧主義者!!」

 

このやり取りを

 

前園「・・・。」

 

前園は聞きながら今日の昼休みに伊佐敷と話した事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

伊佐敷「聞いたぜ。お前御幸とやり合ったらしーな。」

 

前園「あ・・・いや、御幸の言い分があまりにも・・・」

 

伊佐敷「ほぉ~。」

 

伊佐敷「で?お前は何をしたんだ?ただ怒り散らしてただけか?」

 

前園「え?」

 

伊佐敷「副キャプテンに選ばれる時、監督から何か言われなかったか?」

 

伊佐敷に言われ

 

前園「!」

 

前園は片岡に言われた事を思い出した。

 

伊佐敷「気に入らねぇって反論するのは誰にでも出来るぜ。そこからどう改善していくかを一緒に考えてやるのがお前の役目だろーが。」

 

伊佐敷「キャプテンに何でも押し付けんじゃねーぞ。」

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

これには

 

前園(ホンマにアホや・・・俺・・・)

 

前園は頭が上がらなかった。

この日の練習、御幸は何か吹っ切れたのか、気持ち良く打球を飛ばし、ノースローを言い渡された惇は、走って汗を流したのであった。




投稿出来ました。

王谷戦前のお話を書きました。

王谷のエース若林君のフォーム、確か中日で活躍した浅○拓也がモデルなんですよね。

彼もエグいボール投げてましたけど、守備もえげつなかったですね・・・。

それでは、また。


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95話

95話です。


準々決勝当日。王谷戦が始まった。

先攻は青道で、打席に立った倉持は王谷のエース若林から7球粘り、最後はフォークを捉えセンター前に運んだ。

続く春市への初球はフォークでストライクを取った。

 

倉持(クイック速えー・・・)

 

この時、倉持は若林のクイックの速さにそう感じた。

2球目は外れたが3球目

 

コツ

 

春市は真っ直ぐを確実に送って一死二塁の形にした。

そして、惇が打席に立った。

その初球はフォークが外れていたため見逃した。

2球目は外低めに真っ直ぐが決まり3球目

 

キン!

 

インサイドの真っ直ぐをファールにした。

4球目は低めにフォークが外れ、2-2になって5球目

 

キーン!

 

インサイドにシュートが来て、惇は肘を上手く畳んで打った。

打球は三塁線に飛び、サードは飛び付いたが捕れずツーベースとなり、青道は1点先制した。

続く御幸に対しては、突然サイドスローからのフォームチェンジによって放たれるシンカーを打たされ、2アウトとなり、続く前園は初球を捉えたがあらかじめライン際へ守っていたレフトに捕られ、この回青道は1点しか取れなかった。

 

惇「カズさん。あのボール・・・」

 

御幸「ああ・・・シンカーみたいだったな・・・」

 

惇「色々やってくれますね・・・」

 

御幸「ああ・・・取り敢えず、初回先制できたんだ。切り替えていこう。」

 

惇「うっす!」

 

そう言い、守備位置に散った。

そして、栄純がマウンドに上がり

 

栄純「ガンガン打たせていくんで、宜しくお願いします!」

 

いつものアレをやった。

その初球

 

パアンッ!

 

外低めに真っ直ぐが決まった。

2球目

 

キン!

 

栄純「春っち!」

 

外の真っ直ぐでセカンドゴロに打ち取った。

次の2番の初球も

 

パアンッ!

 

外に真っ直ぐを投げ空振らせ2球目も真っ直ぐであっさり追い込んだ。

そして3球目

 

パアンッ!

 

インハイの真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

 

「「「おおおー!!」」」

 

樋笠「は・・・早くも2アウト!」

 

山口「幸先良すぎるぞ!」

 

これには、ベンチは驚いた。

次の3番も真っ直ぐ2球で追い込んだ後の3球目

 

「っ!?」

 

外のチェンジアップで空振り三振に打ち取った。

 

御幸(悪くないな・・・今日はいつもより走ってる。)

 

今日の栄純のボールの状態に、御幸はそう感じていた。

一方の若林も、3回まで1失点に抑えた。

王谷の打線も、春日と山里らを中心に援護してやりたかったのだが、栄純の出所の見えないフォームから繰り出すキレのある真っ直ぐと独自の握りで会得した動くボールにチェンジアップを投げ、尚且つテンポ良く投げてくるので狙い球を絞りきれず、どんどん打ち取られていってしまい、6回まで僅かヒット2本で1つのゲッツーと抑えられてしまい、二塁も踏めなかった。

打線も、倉持が3安打1打点。惇は2安打1打点。御幸が2安打2打点。前園も1打点の活躍を見せた。

加えて7回には春市がホームランを記録する活躍を見せた。

この時、春市は顔を真っ赤にしながら控えめのガッツポーズを取りながらダイヤモンドを一周していた。

これにより、9-0と大量リードを取り、栄純は7回のマウンドに立った。

王谷は2番からだが、2球連続インサイドの真っ直ぐで追い込んだ後、外にカットボールを投げ、空振り三振に打ち取った。

3番は、真っ直ぐのタイミングで初球打ちにいったが、チェンジアップを投げられ全くタイミングが取れず、空振った。

2球目は真っ直ぐで追い込み3球目

 

パアンッ!

 

インハイの真っ直ぐで2者連続三振になった。

4番の春日には、初球外に動く球でファールにし、2球目はチェンジアップでタイミングを外した。

3球目は膝元の真っ直ぐが外れ、4球目

 

パアンッ!

 

外いっぱいのボールで見逃し三振に打ち取り、最後は3者連続三振で締め、7回コールド参考ながら被安打2で二塁を踏ませない抜群のピッチングで見事な完封勝利を挙げ、青道は9-0の快勝でベスト4進出を果たした。

 

峰「被安打2の10奪三振で二塁を踏めず。王谷は最後まで沢村君を捉えきれなかったか。」

 

大和田「控えながらこの安定感は凄いですね・・・」

 

峰「足立君も降谷君もそうだが、甲子園を経験して成長を遂げている。」

 

峰「この青道が誇る3本柱は、並の打者じゃ打つ事は不可能だな・・・」

 

大和田「打線も相変わらず好調ですし、このまま順調にいけば、センバツは・・・」

 

峰「ただし、何が起きるのか分からないのが高校野球だ・・・。現に稲実は鵜久森に負けた・・・」

 

大和田「そうですね・・・」

 

この様子を、峰と大和田が観客席からそう感じながら見ていた。

青道ナイン達が観客席へと向かっていると、3年生達が試合を見に来ており

 

栄純「師匠!」

 

その中にクリスもおり、その姿を見た栄純は、笑顔で駆け寄った。

 

栄純「観にいらしてたんですか!?」

 

クリス「ああ。初回からずっと見てたよ。」

 

栄純「ありがとうございます!」

 

栄純のこの問いに

 

クリス「内と外の投げ分けもしっかりしてたし、ストレートも走ってチェンジアップも良かった。成長したな、沢村。」

 

そう、クリスは栄純を褒めた。

これに

 

栄純「はい!ありがとうございます!」

 

栄純は満面の笑みで答え、頭を下げた。

その様子を

 

惇「相変わらず、栄純はクリスさんの事好きだな。」

 

春市「うん、そうだね。」

 

惇と春市は笑顔で見ていた。

 

惇「それと、ナイスホームランだったな。」

 

春市「うん、ありがとう。」

 

惇「綺麗な放物線だったな。」

 

春市「まさか入るとは思わなかったけど。」

 

惇「そっか・・・。しかし、栄純があそこまでのピッチングをするとはな。」

 

春市「うん。僕もバックから見てて凄く頼もしく感じたよ。」

 

惇「ああ・・・。外野から見てても頼もしく見えたわ・・・」

 

すると

 

惇「けど・・・それと同時に負けらんねーよ・・・」

 

惇は一瞬獰猛な笑みを浮かべ

 

惇「なあ・・・暁。」

 

後ろにいる暁に声をかけた。

 

暁「うん・・・僕もうかうかしていられない・・・」

 

暁も、闘志剥き出しの表情を浮かべながら言った。

 

春市(凄い・・・一体このエース争いは・・・)

 

春市(僕も頑張らないと!)

 

これに春市も、良い刺激を受けた。

その後、青道は次の相手が決まる仙泉学園と成孔学園の試合を見た。

試合は4回まで両チームのエース真木と小島の力投で0が並び投手戦の様相を呈していたが、5回に成孔の4番長田の特大先制アーチから3者連続アーチ等で4点先制し、最終的に6-3で成孔が勝利し、青道の次の相手は成孔学園に決まった。

また、他のブロックでは薬師と市大三髙が勝ち上がり、ベスト4が出揃ったのであった。




投稿出来ました。

王谷戦ですが、簡潔に纏めました。

栄純君の活躍は、ご想像でお許し下さい(土下座)

それでは、また。


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96話

96話です。


王谷との試合を制した青道高校。

 

太田部長「いや~。7回参考とはいえ、沢村の完封は流石でしたね。」

 

高島「打たれたヒットは僅か2本。球数は92球ですしね。」

 

太田部長「7回の3者連続三振なんて正直、震えましたよ。」

 

太田部長「落合コーチは、沢村のこの快投は・・・」

 

落合「いえ、全く予想してませんでした。」

 

落合「今日の沢村は、キレ、コントロール共に1番でしたし、今日投げていない足立と降谷にとって、良い刺激になるでしょうね。」

 

落合「もしこのまま行けば、この3本柱は高校野球史上過去最強の3本柱になれる可能性がありますね。」

 

そう、落合は惇達投手陣をそう評したのだった。

翌日のブルペン

 

パアンッ!

 

栄純が狩場に投げていた。

 

御幸「良さそうだな、ストレート。」

 

狩場「もしかして、球速も上がってますかね?」

 

御幸「どうかな?キレは増してるが。」

 

狩場「チェンジアップを習得してから特にそうですよね。」

 

御幸「ああ。」

 

そう、御幸と狩場が話していると

 

栄純「もっと色々試して良いっすか?昨日投げたのと違うやつ!」

 

栄純がそう御幸らに言った。

 

御幸「おいおい、欲張るなよ。今ある球をもっと磨けば良いだろ!」

 

栄純「いえ、まだ惇の背中には未だ追い付けてないっす!!だからもっと欲張って、強くならないと!」

 

これに

 

御幸(足立に追い付き追い越せという気持ちは健在だな。)

 

御幸(けど・・・こっちが管理してやらねーと、いつまでも投げてそうだな。)

 

御幸「投げすぎてバテるなよ。」

 

御幸はそう釘を刺した。

 

栄純「はい!」

 

そして

 

惇「うっす。」

 

御幸「足立か。」

 

惇「カズさん、ちょっと投げますね。」

 

御幸「良いぞ。監督から許可を貰ったんだろ?」

 

惇「ええ。」

 

御幸「じゃあ、来い!お前のボール、今度こそしっかり捕ってやる!」

 

そう言い、御幸は構えた。

それを見た惇は、笑みを浮かべながら

 

ズバアアンッ!!!

 

御幸にボールを投げたのだった。

そして、練習後の夜は、次対戦する成孔学園対策のミーティングを開いた。

 

倉持「あっちのブロックはやっぱり薬師と市大か。夏の再戦だな。」

 

麻生「あの2校が潰し合ってくれるのは、正直ラッキーだろ。」

 

渡辺「皆も観てたと思うけど、特筆すべきはあのパワー。真木から4本のホームランを放った超重量打線。」

 

惇「体デケぇ・・・!レスラーだな・・・!」

 

春市「うん・・・見た目通りのパワーヒッター揃いだね。」

 

渡辺「真木のカーブにもしっかり対応。王谷と違って引き付けて押し込むタイプ。まさにパワー系打線。」

 

渡辺「打者全員フルスイングでくるだけに高めは禁物。やはり、低めのコントロールが重要だと思う。」

 

渡辺「投手の要はこの2人。エース小島と1年生サウスポーの小川だね。小島はスライダー。小川はスクリューが決め球だね。」

 

渡辺「ただ小川はコントロールがまだ甘く、エースの小島は後半ストレートが浮いてくるし、甘い球を逃さず確実に捉えきれるかが攻略の鍵になると思うよ。」

 

この説明に

 

前園「さすがナベ!入ってくる!分かりやすい!」

 

前園は高評価だった。

 

御幸「まずは目の前の相手!決勝のことは勝ってから考えよう!!」

 

そう最後に御幸がそう締め

 

「「「おっしゃ!!」」」

 

解散となった。

その際

 

川上「御幸。」

 

御幸「んっ?」

 

川上は御幸に声をかけ

 

暁「惇。」

 

惇「んっ?」

 

暁は惇に声をかけたのであった。




投稿出来ました。

主に成孔学園対策がメインですね。

こんな3本柱がいたら、もう安心だろうな・・・。

とはいえ、僕の中で高校野球史上№1の投手陣は去年の仙台育英かなと思っております。

皆さんはいつのどの高校の投手陣が最強だと思いますか?

それでは、また。


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97話

97話です。


惇「もう1つ変化球を覚えたい?」

 

暁「うん。」

 

そう、暁に言われた惇は

 

惇「お前、言うのは簡単だけど、そう簡単に会得出来るもんじゃねーぞ。」

 

惇「指先の感覚とか人それぞれだし・・・オフでも十分間に合うんじゃねーのか?今でも、十分通用してるしよ。」

 

無理に会得する必要は無いのではないかと言った。

しかし

 

暁「それでも、もう1つ変化球を覚えたい。」

 

それでも暁は会得したいと言った。

 

惇「つってもなぁ~・・・」

 

そう言い、頭を掻いて悩んでいると

 

落合「その件、俺が預かろう。」

 

惇「落合コーチ・・・」

 

落合が現れてそう2人に言った。

 

惇「・・・何とかなるんすか?」

 

落合「全ては降谷次第だがな。」

 

惇「そっすか・・・」

 

惇(つーか、この短期間でもう1つの変化球を会得出来るのか?)

 

惇(仮に出来たとしても、本来コイツの持ち味のあの真っ直ぐの影響が出るんじゃねーのか?)

 

この時、惇は新たに変化球を会得する事で、暁のボールに悪い意味で影響が出るんじゃないのかという思いが芽生えた。

これに

 

落合「少しコツを教えてやるだけだ。本人が望んでいるなら、やってみる価値はある。」

 

落合は惇の心中を察するかのようにそう言った。

 

惇「まあ・・・確かにそうっすね・・・」

 

落合「そういうわけだ。俺が何とかしよう。」

 

惇「分かりました。そんじゃあな、暁。」

 

暁「うん・・・」

 

そう言い、惇はその場を後にした。

 

落合「まずは何からいくか?スライダーあたりか。」

 

そして、暁は落合に変化球のコツを教わったのだった。

一方、川上に声をかけられた御幸は

 

御幸「珍しいな、ノリ。お前から声かけてくるなんて。」

 

川上と一緒に室内練習場に入った。

すると

 

川上「・・・シンカーを解禁しようと思う。」

 

と川上は言った。

そのボールは、決め球であるスライダーに匹敵する程のキレなのだが、1年の秋大で1イニング3死球してしまい、それ以来封印してきたボールなのだ。

 

御幸(もう傷は癒えたのか・・・?)

 

御幸「あ!もしかして落合コーチに?」

 

そう思った御幸は川上にそう聞くと

 

川上「えっ?いや、自分で決めたけど?」

 

川上「・・・あの3人にここまで置いて行かれるとね、焦るし・・・やっぱ悔しいよ。」

 

川上はそう悔しそうな表情を浮かべながら言った。

それを見た御幸は

 

御幸「分かった、付き合うぜ。納得いく球が投げれるまでとことんやろう。」

 

そう川上に言い、練習に付き合ったのだった。

そして、暁と別れた惇は

 

惇(暁・・・真っ直ぐの球威のまま変化球会得したら、エグいな・・・)

 

惇(まあ、そう簡単にこのエースナンバーは譲らねーよ。)

 

そうボールを指で弾きながら思い、ある人物を探していた。

その人物は

 

惇「いたいた。狩場!」

 

狩場だった。

 

狩場「うん?足立か。どうした?」

 

惇「お前、この後何かあるか?」

 

狩場「いや、特に用は無いけど、何で?」

 

惇「ああ。ちっと試してーボールがあるんだよ。」

 

そう言い、惇は指先で弾いていたボールを持って言ったのであった。




投稿出来ました。

主人公君が試したいボールは何か?

それでは、また。





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98話

98話です。


広いグラウンドで、数十名の2年生がサッカーをやっていた。

彼らは体育でサッカーをやっているのでは無い。彼らは青道高校野球部の2年生なのだ。

何故彼らは、グラウンドでサッカーをやっているのかというと、他の2年生は修学旅行中で、大会と重なった野球部は不参加となったのだ。

しかし・・・

 

かすん

 

ちっぷ

 

皆素人とはいえ、下手すぎないか・・・

すると

 

栄純「ずっと野球ばかりやってきたから、反動でグレちゃったんですか?」

 

惇「お前デケぇ声出すんじゃねーよ・・・」

 

この様子を見た栄純が、大声で2年生達にそう言った。

 

倉持「なワケねーだろ。他の連中は修学旅行中だからよ・・・俺ら今日殆ど自習なんだよ。」

 

倉持の言葉に

 

栄純「それなら安心しました!!皆さんサッカード下手なんで、見てられなくて。」

 

栄純は素直にそう答えた。

 

倉持「うるせ!」

 

・・・そりゃあ、そう返すよな。

そんなこんなで全ての授業は終わり、練習が始まった。

しかし、この日の練習は少し様子が違っていた。

 

樋笠「シュー!」

 

片岡「良く止めたが、その後だ!!足の無い打者なら、慌てる事も無いからな!」

 

樋笠「はい!」

 

片岡「木島ぁ!お前は亮介とは違うんだ!自分らしいプレーをしろ!!」

 

木島「はい!」

 

皆どこかプレーが雑だった。

これには太田部長も

 

太田部長「どうしたんでしょうか、あいつら?プレーがどこか雑じゃないですか?」

 

そう感じていた。

しかし

 

片岡「いや・・・動きは悪くない。寧ろこちらにアピールしようと気持ちが前へ出てる。」

 

山口「らっせい!!」

 

前園「気合入ってんな!」

 

片岡「飢えてるんだ、出場する機会に。」

 

片岡は、彼らの熱いアピールを感じていたのだ。

そして、ブルペンに移動すると

 

栄純「んっ!」

 

パァン!

 

小野「ナイスボール!良いぞ、沢村!」

 

落合「この前の試合といい、チェンジアップが低めに集まってきたな。その感覚を忘れるなよ。」

 

栄純「はい!」

 

川上「んっ!」

 

ククッ!

 

御幸「ナイスボール!良いぞ、ノリ!」

 

落合「良いシンカー投げられるじゃねーか。何で今まで使わなかった?」

 

川上「・・・色々ありまして。」

 

落合「勿体ない。どんどん投げろ!」

 

落合が、ブルペンで投手陣にアドバイスをしていた。

 

太田部長「まるでブルペンの主のようですね。」

 

これに、太田部長はそう感じた。

その時

 

落合「御幸、ちょっと良いか?」

 

御幸「はい?」

 

落合が御幸に声をかけ

 

落合「降谷が変化球試すと言っているんだ。受けてやってくれ。」

 

と言った。

 

御幸「え!?」

 

これには、御幸だけじゃ無く

 

「「「!?」」」

 

他の皆も驚いていた。

 

御幸「降谷が変化球?」

 

すると

 

惇「んだよ暁。お前変化球会得したのかよ。」

 

惇が指先でボールを弾きながら狩場と一緒にブルペンに現れた。

 

落合「足立か・・・。お前も何か投げるのか?」

 

惇「はい・・・YouTubeで観たのを試しに投げたら良かったので。」

 

落合「・・・そうか。だが、まずは降谷からだ。良いな?」

 

惇「良いっすよ。」

 

そう言い、惇はボールを指で弾きながらベンチに座った。

 

落合「降谷。まずは縦からいくか?」

 

これに

 

栄純「縦!!・・・という事は横もあるって事!?」

 

栄純は興奮した。

 

落合「横はまだ無理。それに、足立が既に横に鋭く曲がる高速スライダー投げてる。」

 

栄純「なぬ!?・・・まさか、あのストレートにほぼ近い球速から真横に瞬間移動するあの球か!?」

 

・・・コイツ、どんだけ野球の知識無いんだよ。

そんなこんなで暁は落合に教わった縦スラを投げると

 

ククッ!ストンッ!

 

「「「!?」」」

 

縦に鋭く落ちた。

これには周りも絶句の表情を浮かべた。

 

落合「元々足立を凌ぐ威力を誇るストレートが投げられるんだ。握り方と手首の角度を間違えなければ、ボールは勝手に曲がる。曲げようとするな。」

 

暁「・・・。」

 

栄純「ま・・・曲げようとするな!?何だか知らないけど凄い説得力だ!!」

 

惇「まあ落ち着けって、栄純。落合コーチ、次良いっすか?」

 

落合「ああ、構わないぞ。何投げるんだ?」

 

惇「えーっと・・・スプリームっす。」

 

これに

 

落合「スプリーム?○ルビッシュが開発したあの変化球か?」

 

落合がそう言うと

 

惇「そうっす。一応狩場に投げてみたけど、まだ未完成なんすよ。」

 

惇はそう返した。

 

栄純「スプリーム!?何だそれは!?」

 

狩場「けど、結構凄かったぞ。ネット裏で見たけどかなりの鋭さだったし。」

 

惇「まあ、まだまだなんすけど、投げて良いっすか?」

 

そう言い、落合と片岡を見た。

 

片岡「良いだろう。ただし、1球だけだ。」

 

惇「了解っす。カズさん、良いっすか!」

 

御幸「ああ、良いぞ!」

 

そう言い、御幸はミットを構えた。

それを見た惇は、セットポジションに構え、投げた。

すると

 

ククッ!ストンッ!

 

御幸「っ!」

 

右方向に曲がりながら鋭く落ち、御幸は捕る事が出来ず、後ろに逸らしてしまった。

 

小野「い、今・・・」

 

川上「ああ・・・右バッターに食い込みながら鋭く落ちたよな。」

 

御幸(マジか・・・!?元々のスピードと落差のあるSFFに加え、右に食い込んでいく変化をさせるボール、スプリームも投げれるなんて・・・!)

 

御幸(しかも・・・まだ会得して日が浅いのにこの落差・・・!)

 

御幸は、先日会得したばかりにも関わらず予想以上の鋭さに、唯々絶句していた。

 

栄純(コイツ・・・)

 

暁(また更に成長した・・・)

 

栄純と暁は、悔しさで顔を少し歪ませた。

 

片岡(まだ進化するのか・・・。一体どこまで行くのか・・・)

 

片岡は、惇のボールを見てそう感じた。

そして、片岡は今のチームの熱量を見て紅白戦を行うことを決意したのであった。




投稿出来ました。

久し振りの投稿で上手く書けたか分かりませんが、何とか投稿しました。

今日、ドジャースのクレイトン・カーショウが通算200勝を達成しました!!

僕自身、メジャーの選手でカーショウはとても好きな選手の1人なので、この快挙にはとても嬉しく思います!!

全盛期のあの伸びのある真っ直ぐと鋭い変化球、抜群のスタミナとコントロールはまさにメジャー最強左腕でした。

今後とも頑張って欲しいです!!

それでは、また!!


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99話

99話です。


落合「紅白戦ですか・・・」

 

そう、落合は片岡に言った。

 

片岡「えぇ・・・それで落合コーチには、レギュラーチームの指揮をとってもらえたらと。」

 

片岡「控えチームの指揮は、私がとります。」

 

これには、周りの選手はざわついた。

 

落合「分かりました。オーダーは変えずにでも良いですか?」

 

この問いに

 

片岡「はい。大会中なのでそれで良いです。」

 

片岡は了承した。

 

落合「やりましょう。」

 

片岡「お願いします。」

 

そして、選手に振り返ると

 

片岡「レギュラーチーム、先発は足立。」

 

惇「はい!」

 

片岡「7回からは川上、お前が投げろ!」

 

川上「はい!」

 

片岡「控えチームの先発は降谷、お前だ。」

 

暁「・・・。」

 

片岡「6回からは沢村、お前が投げろ!」

 

栄純「イエス、ボス!!」

 

それぞれの先発と2番手に誰が投げるかを言った。

そして、それぞれのベンチに分かれた。

この間、ギャラリーも多く詰めかけ、紅白戦をやると聞くと、まだかまだかと待ちきれなくなっていった。

 

 

 

 

レギュラーチーム

 

 

 

 

 

落合「いつも通りの戦い方で行く。だが、お前達には一言だけ言う。」

 

落合「勝て。それだけだ。」

 

・・・凄いザックリだな、落合コーチ。

 

 

 

 

 

控えチーム

 

 

 

 

 

片岡「・・・ここまで順調に勝ち上がってきたとはいえ、スポーツは何が起きるか分からない。出番は突然に訪れるんだ。」

 

片岡「心の準備は出来てるか?俺は公式戦のつもりでサインを出すからな!」

 

片岡「倒しに行くぞ!!」

 

この片岡の発破に

 

「「「おおお!!!」」」

 

控えチームの熱量が急上昇した。

 

 

 

 

 

 

その声はレギュラーチームのベンチにも勿論届き、圧を感じるほどだった。

そして

 

結城「整列!」

 

片岡直々に主審を頼まれた結城の声に、選手がホームベースに集まった。

 

結城「先攻Aチーム。後攻Bチーム。紅白戦といえど、Aチームは油断のないように。」

 

結城「今日の相手は手強そうだぞ。」

 

控えチームの気迫に

 

御幸「プレッシャーかけるなぁ・・・」

 

御幸は思わず本音が零れた。

 

惇「・・・ふっ。」

 

栄純「ゼッテー勝つ!」

 

暁「負けない・・・!」

 

青道の誇る3本柱も、互いに火花を散らしていた。

 

結城「礼!」

 

「「「しゃす!!!」」」

 

そして、控えチームはそれぞれの守備位置に散らばり、暁がマウンドに立った。

 

倉持(実際打席で降谷の球見るの初めてかもな・・・)

 

中田「セーフティ警戒!来るぞ!」

 

惇「洋さん!積極的に行きましょう!」

 

その初球

 

ズドォォン!!

 

インサイドに剛速球が決まった。

 

結城「ットライーク!」

 

2球目

 

キン!

 

何とかファールにしたが、3球目も真っ直ぐで詰まらせ、ショートゴロに終わった。

 

秀明「流石降谷だね。」

 

信二「ああ・・・。」

 

次の春市も初球打ったが打ちあげてしまい2アウトとなった。

 

春市(これが降谷君のボール・・・想像以上の圧力を感じる・・・)

 

そして

 

惇「さーって、どう打とうかなぁ・・・」

 

惇が打席に立った。

その初球

 

ズドォォン!!

 

結城「ットライーク!」

 

インハイ真っ直ぐが決まった。

 

惇(こりゃスゲーな・・・マジボールが唸ってんぞ・・・!)

 

暁のボールに、惇はそう感じながら構えた。

2球目

 

惇(やっぱり・・・真っ直ぐ!)

 

キーン!

 

暁「っ!」

 

外の真っ直ぐを捉え、センター方向に飛んだ。

しかし、センター三村の正面だったため、アウトとなった。

 

「あぁー、惜しい!!センター正面か!」

 

「初回を危なげなく3人で仕留めたな、降谷!」

 

小野「上手く合わせられたな!でも、ボールは悪くなかったぞ!」

 

暁「・・・。」

 

そして、今度はレギュラーチームが守備位置に散らばり、惇がマウンドに立った。

 

御幸「どうする?スプリーム、試してみるか?」

 

惇「ちょっとやってみます。」

 

御幸「まずは立ち上がりだ。しっかり抑えようぜ。」

 

惇「うっす!」

 

そして、御幸が元の位置に戻ると、惇はいつものルーティンである股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

 

「最早アレは足立の定番だな。」

 

「ああ、ホントだな。」

 

ギャラリーも、惇のルーティンを見て口を揃えてそう言った。

そして、控えチームの1番である木島が打席に立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

インハイに真っ直ぐが決まり、1ストライクを取った。

2球目

 

キン!

 

真ん中高めの真っ直ぐをファールにした。

 

「おお!当てたぞ!」

 

「木島、足立のボールを当てたぞ!」

 

これには、ベンチも盛り上がった。

 

御幸(最近益々似てきたな・・・亮さんのバッティングフォームに。)

 

御幸(けど、それだけじゃコイツのボールは打てないぞ!)

 

そう思い、御幸はミットを構えた。

そして

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

2球目と同じコースだったが、木島を空振り三振に打ち取った。

 

「おおーっ!!ストレート3つで空振り三振だ!」

 

「そして挨拶代わりに吼えたー!」

 

「やっぱり足立の火の玉ストレートと雄叫びは最高だぜ!」

 

ギャラリーは、惇のボールと雄叫びに興奮した。

 

木島「クソッ!!」

 

関「木島・・・」

 

樋笠「あの物静かな木島が・・・!」

 

山口「悔しそうに吼えた!?」

 

木島も、悔しさを露わにし、周りも驚きの表情を浮かべた。

続く関も真っ直ぐ2球で追い込み3球目

 

ククッ!

 

関「なっ!」

 

スライダーにハーフスイングを取られ、2者連続三振となった。

次の小野の時

 

御幸(小野は狙いを絞るタイプ。初球のファーストストライクは確実に振ってくる・・・)

 

そう思った御幸はあるボールのサインを出した。

 

惇「!」

 

御幸(本番前の貴重な実戦の場だ。有効に使わせて貰おう!)

 

サインを確認した惇は、握りを変え、投げた。

 

ククッ!ストンッ!

 

小野「っ!」

 

そのボールは、小野の懐に食い込むように曲がり、鋭く落ちていって、小野のバットが空を切った。

 

「おぉ、スプリーム!!」

 

「これが噂の!!」

 

太田部長「す・・・既に我が物に!?」

 

周りも、惇のスプリームの精度にそう感じていた。

 

落合「角度・・・スピード、キレ・・・どれも申し分ないな・・・」

 

落合も、そう感じていた。

 

惇「ん~っ・・・」

 

しかし

 

惇「イマイチだな・・・」

 

投げた当の本人は、どこか納得していなかった。

2球目にインハイの真っ直ぐで詰まらせ、サードフライに打ち取って、惇も立ち上がり上々のピッチングを見せた。

こうして、紅白戦の初回は、両チーム先発共に3人で仕留めたのであった。




投稿出来ました。

紅白戦、スタートしました。

本当に片岡監督って、選手を乗せるの上手ですよね・・・。

作者は一体誰をモデルとしたんだろう・・・?

それでは、また。


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100話

100話です。


初回を危なげなく3人で抑えた惇は、悠々とベンチに戻った。

 

御幸「どうだ、スプリームの感覚は?」

 

惇「ん~、イマイチっすね。」

 

御幸「そうか?ボールは良かったように見えたが・・・」

 

惇「いや、もうちょっとクイッとやるか、スッとやるかで良くなると思うんすけど・・・分かんないっすね。」

 

御幸「いや、俺もお前が何言ってるか分かんねーよ。」

 

御幸「まあ、焦らずじっくり磨いていこう。欲しい物はそう都合良く簡単に手に入らねぇって事だ。」

 

惇「そっすね。そんじゃあ、打つ方頼みますよ、カズさん。」

 

その際、御幸とこういった話をして、御幸は防具を脱ぎ、ヘルメットを被って打席に立った。

その初球

 

ズドォォン!!

 

真っ直ぐが決まり、2球目はSFFが外れて1-1となった。

 

小野(やっぱり御幸は何考えてんのか分かんねー・・・)

 

小野(そう簡単に打ち取れない・・・だったら、コイツで・・・!)

 

そう思った小野は、あるボールのサインを出した。

 

暁「!」

 

それを見た暁は、握りを変え、投げた。

 

ククッ!ストンッ!

 

御幸「っ!」

 

そのボールは、縦に鋭く曲がり落ち、御幸のバットは空を切った。

 

「おお、縦スラ!!」

 

「早速我が物にしたか!」

 

周りも、決まった事に驚きの声を上げた。

 

片岡「・・・。」

 

しかし

 

結城「ボールフォア!」

 

後が続かなかった。

 

小野「力入ってるぞ!リラックスな、降谷!」

 

これには、小野はすかさずマウンドに行き、暁にそう声をかけた。

次の前園の初球

 

前園「ふんぬ!」

 

キーン!

 

暁「!」

 

レフト方向に強烈な打球が飛んだが、関の正面だったためアウトになった。

次の金丸には縦スラが連続して外れ、3球目

 

キーン!

 

カウントを取りに来た真っ直ぐを捉え、御幸は一気に三塁まで行って、一死一、三塁とレギュラーチームが先制のチャンスを作った。

そして、次の白州の初球

 

キーン!

 

センターに打球が飛び、それを見た御幸がタッチアップし、ホームに帰った。

 

「おおーっ!!Aチーム先制!」

 

「白州のバットで先取点取ったぞ!」

 

ギャラリーは、レギュラーチームの先制に盛り上がりを見せた。

 

惇「ナイスっす、健さん!」

 

白州「ああ!」

 

落合(この男、一見目立たないが良いバッターだ。俺だったら間違いなくクリーンアップに置くな。)

 

落合は、内心そう白州を高く評価していた。

その後の東条はサードゴロゲッツーに打ち取られチェンジとなったが、先制点はレギュラーチームが取った。

その裏の惇のピッチング

 

ズバアアンッ!!

 

山口「っ!」

 

初球ド真ん中の真っ直ぐで山口を空振らせた。

2球目

 

ズバアアンッ!!

 

真ん中高めの真っ直ぐを空振らせ

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

3球目は、インハイの真っ直ぐで空振り三振に打ち取った。

次の5番樋笠の初球

 

ズバアアンッ!!

 

外の真っ直ぐでストライクを取り2球目

 

ズバアアンッ!!

 

インサイドの真っ直ぐで空振らせ

 

ズバアアンッ!!

 

惇「らああああっ!!」

 

3球目は真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、再び雄叫びを上げた。

 

「うぉあ!2者連続3球三振ー!!」

 

「しかも全てストレート!!」

 

「流石片岡2世だせ!!」

 

ギャラリーは、この圧巻のピッチングに盛り上がり

 

山口「やっぱアイツはスゲぇ・・・!」

 

木島「ああ・・・1球1球魂が込められてるようだ!」

 

栄純「ヤロォ・・・!」

 

暁(負けない・・・!)

 

関「なっ!」

 

控えチームも、改めて惇の実力の高さを感じた。

 

御幸(流石だな・・・。相手が狙っても当たらないストレートと気迫の投球・・・それがお前の最大の武器だもんな・・・)

 

御幸も、惇の圧巻のピッチングにそう感じた。

この時

 

??「ほぅ・・・紅白戦か。」

 

??「秋大中だってのに相変わらず熱い指導してるじゃねぇか、鉄心の奴。」

 

ある男性が青道高校に現れたのであった。




投稿出来ました。

最後の男性は、ダイヤのAファンなら知ってるあの人ですよ!

それでは、また。



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101話

101話です。


惇に真っ直ぐだけで2者連続3球三振に打ち取られてしまった控えチーム。

打席に立ったのは、控えチームの先発の暁だった。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

インサイドの真っ直ぐに暁は空振った。

2球目

 

キン!

 

何とかバットに当てたが、セカンドフライに打ち取って、3アウトチェンジとなった。

 

「相変わらず安定感抜群だよな、足立!」

 

「この回ストレートしか投げてないのにこの無双ぶり!」

 

ギャラリーは、惇の安定ぶりと真っ直ぐだけでの内容に驚いていた。

 

御幸「ボールは悪くない!この調子で抑えるぞ!」

 

惇「うっす!」

 

そして、レギュラーチームの攻撃は9番麻生から始まった。

その初球

 

キン!

 

暁「っ!」

 

真っ直ぐに麻生は積極的に振りにいったが、サード正面に行ったため、アウトになった。

 

小野(このままじゃやられるだけだな・・・)

 

そう思った小野は

 

小野「タイム!」

 

タイムを取ってマウンドに歩み寄り

 

小野「降谷。縦スラも使おう。このままじゃ、打ち込まれるだけだ。」

 

小野「曲げようと意識せずに投げれば勝手に曲がるさ。大丈夫、どんなボールも必ず受け止めてみせる。」

 

そう、暁に言った。

 

暁「はい!」

 

この言葉に、暁は力強く頷き、小野は戻った。

そして、一巡して倉持が打席に立った。

その初球

 

ククッ!ストンッ!

 

倉持「っ!?」

 

縦スラがコースに決まり、倉持のバットは空を切った。

 

「おおーっ!!決めやがった縦スラ!!」

 

「スゲぇー!!」

 

これに、周りは盛り上がり

 

惇「コイツ・・・マジかよ・・・」

 

惇も、暁が縦スラを決めた事に驚きつつも、口元がニヤけていた。

そして

 

ズドォォン!!

 

倉持は初球の縦スラが利いたのか、空振り三振に打ち取られてしまった。

続く春市は、縦スラが頭をよぎったのか、初球の真っ直ぐに対応できずに打ち上げてしまい、レギュラーチームは3者凡退に打ち取られてしまった。

 

「降谷、この回は安定したピッチング!」

 

「縦スラも良い感じに決まったしな!」

 

ギャラリーも、暁の調子が上がった事に盛り上がりを見せた。

 

太田部長「縦スラが決まってから、降谷の調子が上がってきたな・・・」

 

この試合の様子に、太田部長はプレハブ小屋の中でそう本音を言っていた。

その時

 

??「久し振りに教え子の顔をと思って来てみたら何だ、声かけられる雰囲気じゃねぇな。」

 

誰かが入ってきたので振り返ると

 

太田部長「さ・・・榊監督!!」

 

榊「入るぜぇ。」

 

嘗て青道高校野球部監督を務め、全国常連校に育て上げた名将、榊英二郎がそこにいたのであった。




投稿出来ました。

榊監督登場させました!

中の人は中田譲治さんですよね。

あの渋い声、凄いマッチしてますね・・・。

それでは、また。


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102話

102話です。


青道高校野球部前監督榊英二郎の来訪に驚いた太田部長だったが

 

太田部長「吉川。こちらは片岡監督の前にこの学校の監督を務めていた榊さん。今は、H大の総監督を務めておられるんですよね。」

 

すぐに冷静になり、吉川に榊を紹介した。

 

吉川「あ・・・はい、知ってます。」

 

しかし、吉川は少し興奮していた。

それは

 

吉川(私が小さな頃、テレビで見てた人・・・)

 

吉川(この学校を全国常連校に育て上げた名将、榊英二郎。)

 

吉川(そんな人が、生で見れるなんて・・・!)

 

青道高校を全国屈指の名門校に育て上げた人が、今実際に目の前にいるという事に。

 

榊「とにかく試合見ようや。座りねぇ。」

 

そして、榊の一言で太田部長と吉川は席に座り、試合を見た。

その時、ちょうど惇がマウンドに立っており、三村が打席に立っていた。

その初球

 

ズバアアンッ!!

 

外低めに真っ直ぐが決まり2球目

 

ククッ!

 

スローカーブが低めに決まった。

そして3球目

 

ズバアアンッ!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

真ん中高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、再び雄叫びを上げた。

続く8番の金田は、初球のスライダーを打ったがピッチャーゴロに終わった。

9番の中田の初球

 

ククッ!

 

中田「くっ!」

 

スローカーブにタイミングが合わず空振った。

2球目はスライダーが外れたが3球目

 

ズバアアンッ!!

 

中田「っ!」

 

インサイドに真っ直ぐが決まりあっさり追い込まれた。

そして

 

ズバアアンッ!!

 

惇「らああああっ!!」

 

外低めの真っ直ぐに全く反応できず、見逃し三振に終わり、雄叫びを上げた。

 

信二「良いぞ、足立!」

 

足立「ああ!」

 

倉持「ナイスだぜ、足立!」

 

これに、周りも惇を賞賛した。

 

榊「テレビでも見たが、ボールのスピードとノビは1年とは思えねぇな・・・加えてまだまだ発展途上のようだ・・・」

 

榊「何より、あのマウンド上での闘志と気迫。本当、鉄心にそっくりだ・・・」

 

榊「テレビで見て思わず鉄心と勘違いしちまった程だったぜ・・・」

 

榊「まぁ、目つきの悪く、『悪童』と呼ばれたアイツと違ってこちらは二枚目だがな。」

 

惇のピッチングに、榊はどこか懐かしそうに見ながらそう呟いた。

 

吉川(『悪童』・・・?)

 

これに吉川は、榊の言った『悪童』という言葉に反応した。

そんな中で、4回の表の暁のピッチング。

レギュラーチームは、惇から始まるクリーンアップからだった。

しかし、惇はキャッチャーフライ、御幸はセカンドゴロ、前園は空振り三振に打ち取られてしまった。

 

樋笠「ナイスピッチング、降谷!」

 

中田「ナイスだな、降谷!」

 

バックも、そう声をかけた。

 

工藤「すげっ・・・この回も無失点に抑えたよ。」

 

渡辺「2回に少し乱れたけど、縦スラが決まってから安定してきたね。」

 

渡辺「足立も凄いけど、降谷もまだ投げてない沢村も凄いし、本当頼りになる後輩だよ。」

 

これには、裏方で回っている渡辺達もそう言った。

 

榊「怪腕と剛腕、そして技巧派左腕・・・タイプの違う投手が3人。その全てがまだ1年で発展途上・・・」

 

榊「鉄心の奴も育てるのが楽しいだろうな。」

 

太田部長「彼らに隠れがちですが、サイドスローの川上も良いピッチャーなんですよ。」

 

榊「ほう・・・それは楽しみだな・・・」

 

プレハブ小屋では、榊と太田部長がそんな話をしていた。

すると

 

吉川「あの・・・さっき仰ってた『悪童』って、もしかして片岡監督の事ですか?」

 

吉川が榊に声をかけ、先程呟いた言葉に対して聞いた。

それを聞いた榊は

 

榊「ああ、そうだ。目つきは悪い、敬語は使えない。奴が入学してきた時は、手のつけられない悪タレ小僧だったよ。」

 

そう、遠い目をしながら言った。

・・・15歳とは思えない風貌だな、おい。

 

榊「そんなだから先輩に目ぇつけられて、揉め事ばっか起こしてたな。」

 

ただし、片岡が誰より最も人より勝っていた点。それは負けん気の強さだった。

 

榊「その燃えるような闘志と気迫に惚れ込んだ俺は、アイツを1年の秋からエースナンバーを背負わせた。」

 

榊「ただ、技術的にも精神的にも未熟だったから、当然上からの反発もあったが、アイツはそれを全て受け止めたよ。」

 

それら全て受け止め、改善した片岡は、見事開花した。

 

榊「マウンドにいる彼同様、気迫溢れるピッチングでチーム内の信頼を得ていき、2年の夏に甲子園出場。」

 

榊「その勢いのまま、チームを決勝まで導いたんだ。」

 

吉川「・・・。」

 

太田部長「見てたな、テレビで。」

 

しかし、チームは惜しくも優勝に届かなかった。

 

榊「続くセンバツではベスト8。最後の夏は惜しくも甲子園に届かなかったが、最後までエースとしてチームを引っ張ってくれたよ。」

 

その時、榊は片岡に言われた言葉を未だに覚えていた。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

榊「どうした、鉄・・・」

 

片岡「すいません。力及ばず、監督を日本一にする事が出来ませんでした。」

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

榊「・・・。」

 

この言葉に、榊は片岡の成長を感じたのだった。

 

吉川「あの・・・それじゃあ、プロからの誘いを断ったというのは・・・」

 

榊「ああ・・・今じゃ大分緩くなったが、当時はまだプロアマ規定が厳しくてな。『プロの世界に入れば、指導者としてこの高校へ戻るのが難しくなる。どうしようもない自分を変えてくれた高校野球に恩返しがしたいんです。』」

 

榊「18になる前の小僧が、ハッキリとそう答えやがったよ。」

 

榊「大学卒業後、コーチとして8年。俺が身を引こうと考えたのは、コイツなら任せられると思ったからだ。」

 

そう、吉川の質問に答えた。

その間試合は続き、惇は6回無安打無失点、奪三振は脅威の15個だった。

暁も1失点に留め、縦スラもしっかり投げれるようになった。栄純も独自の握りで会得した動くボールにチェンジアップを駆使し、堂々と小気味良いピッチングをし、青道が誇る3本柱は順調な調整ぶりを見せた。

惇の後に投げた川上も、キレの良いスライダーに加え、今まで封印していたシンカーを解禁して、最初はコースが決まらず甘く行ってしまったが次第に決まり始め、相手を抑えていった。

試合は、7-2でレギュラーチームの勝ちで点差はついたものの、内容以上に締まった試合で投手陣の調整は勿論、チームの士気を高める事が出来た非常に濃い内容でもあったのであった。




投稿出来ました。

最後の最後で纏まらず、変な形で締めました。

大変申し訳ございません・・・。

最近思ったのですが、片岡監督の見た目って、2004~2011まで中日の投手コーチやヘッドを務め、中日黄金期を支え、後に監督にもなった森○和さんにそっくりな気もします。

見た目厳ついですし・・・ね。

そ、それでは、また。


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103話

103話です。


紅白戦終了後、片岡はかつての恩師である榊英二郎と再会を果たしていた。

 

片岡「お久し振りです、榊監督。」

 

そう言い、頭を下げた片岡。

 

榊「おいおい、鉄心。ここの監督はもうお前だぞ。榊さん、で良い。」

 

これに榊は、片岡に苦笑いを浮かべながらそう言い

 

榊「鉄心。言うのが遅くなっちまったが、甲子園ご苦労だったな。」

 

片岡に労いの言葉をかけた。

 

片岡「ありがとうございます。しかし、目標の全国制覇はまだ程遠いです。」

 

これに、片岡は神妙な表情を浮かべながら答えた。

 

榊「今日のレギュラーチームの先発ピッチャーだけどよ・・・」

 

片岡「足立ですか?」

 

榊「ああ・・・。あの強烈な縦回転を誇るストレートと鋭い変化球は誰よりも抜きん出てる。加えて、マウンド上でのあの闘志と気迫・・・実際テレビで見ててお前と勘違いしてしまった程だ。」

 

榊「ついさっきも、お前と錯覚してしまったよ・・・」

 

榊「まあ、目つきの悪いお前と違って二枚目だがな、ガハハハ!!」

 

これには

 

片岡「・・・。」

 

片岡も苦笑いを浮かべた。

 

榊「だが、甲子園でのあの涙は今でも覚えてる。その時思ったさ、彼はもっと素晴らしいピッチャーになれるってな。」

 

榊「だからこそ、お前は彼にエースナンバーを託したんだろ?」

 

この問いに

 

片岡「はい。」

 

片岡は真っ直ぐに答えた。

それを見た榊は

 

榊「・・・ふっ。」

 

笑みを浮かべ

 

榊「彼の他にも生きの良いピッチャーが揃っている。それだけじゃあねぇ・・・他にも生きの良い選手が揃っている。皆どれも全国クラスだ。」

 

榊「皆をしっかり導いてやれよ、鉄心。」

 

そう、真っ直ぐな目で榊は片岡に言った。

 

片岡「・・・はい。」

 

これに、片岡はそう答えたのだった。

こうして、熱い紅白戦は終わりを告げた。

そして、準決勝の前日に

 

暁「ちょっと良い、惇。」

 

惇「あっ?」

 

栄純「お前に聞きたい事があってな。」

 

暁と栄純が一緒になって惇を呼んだ。

 

惇「聞きてー事?」

 

栄純「ああ・・・」

 

そう言いながら、3人で室内練習場に向かった。

何故この2人は惇を呼んだのかというと

 

惇「変化球の投げ方?」

 

栄純「ああ・・・惇は変化球を投げる際、どういう意識で投げてるのか聞きたくて。」

 

惇「暁。お前も?」

 

暁「うん。」

 

変化球を投げる時の意識を聞くために呼んだのだ。

 

惇「成程・・・お前ら、変化球投げんのが楽しくなったのか?」

 

栄純「ま、まあな。」

 

暁「うん。縦スラがあんな良い感じに決まったのが気持ち良くて。」

 

惇「そっか・・・。まあ、良いぞ。」

 

そう言うと、惇はボールを取って

 

惇「じゃあ、何を聞きたい?」

 

と尋ねた。

 

暁「じゃあ、SFFなんだけど。どういう握り方してるの?」

 

この質問に

 

惇「SFFは、こうやって握ってる。」

 

惇は握りを見せた。

 

栄純「第1関節の所に縫い目をかけてるのか・・・」

 

惇「実は俺、この球種をしっかり投げれるようになったのは中3になる前の3月だったんだ。」

 

暁「そうなの?」

 

惇「ああ。最初はコーチに教わった通り結構深く握っててさ、このくらいで。」

 

そう言い、がっつり深く握って2人に見せた。

 

惇「所謂フォークなんだけど、これくらいの握りで投げたらスゲー落ちたんだよ。」

 

惇「ただ、抜けやすくてさ・・・棒球になっちまってさ、あんま自信なかったんだよ。」

 

この言葉に

 

暁「そうだったんだ・・・」

 

栄純「今じゃ信じらんねーな・・・」

 

暁と栄純は驚きの表情を浮かべた。

 

惇「それで色々考えたんだよ。どうやったらしっかり投げれるのかなーってな。」

 

惇「色々考えた結果思い付いたのが、このボールを両サイドに投げ分ける事が出来れば、それだけで1つの球種でバリエーションが増えるんじゃねーのかって発想が浮かんだんだよ。」

 

惇「そうすりゃあ、配球の組み立てに幅が出来るし、それで改良してみようと思ったんだよ。」

 

惇「まず、この深さの握りじゃ、両サイドに投げ分けられるのは無理だったから、違う角度で物事を考えてみたんだよ。」

 

暁「それで・・・!」

 

栄純「どうなんだ!」

 

これに、2人は食いつくように言った。

 

惇「はは。まあ落ち着け。で、俺フォームを改造してから真っ直ぐにスゲー手応えを感じてたんだよ。」

 

惇「であれば、真っ直ぐに近い感覚、握りが1番フォークもコントロールしやすいんじゃねーかなって発想に辿り着いたんだよ。」

 

惇「そこから、この握りから幅を狭めてみたりしてみたんだけど、それでもしっくりこなくてな。」

 

惇「それで、真っ直ぐは縫い目にかけてるからそれみてーに縫い目にかけたんだよ。」

 

惇「最初は少し深く握ってみて、最終的にこう第1関節に縫い目をかけて真っ直ぐと同じ感覚で投げてる。」

 

そう言い、惇は握りを変えて2人に丁寧に説明した。

 

暁「それで、どういう意識で投げてるの?」

 

惇「フォークを投げた当初は、しっかり落としたいって思ってたんだけど、その発想を捨てて、バットの幅くらい落ちれば空振りを取れるし、当たっても引っかけさせてゴロを打たす事が出来るっていう発想に辿り着いたんだ。」

 

惇「もうこれは勝手に落ちるんだっていう意識で投げるようになってから、このボールに自信がついたんだ。」

 

そう言い、今投げている握りを見せた。

 

暁「落とそうっている意識を捨てて・・・」

 

栄純「勝手に落ちる・・・」

 

惇「そう。他のカーブとスライダーも同様。曲げようって意識すると肘が下がるし、手首も寝てしまう。」

 

惇「だから、曲げようと意識せず、真っ直ぐと同じ感覚で腕を振るようにしてる。」

 

そう、惇は2人に言った。

この惇の変化球を投げる時の意識に、暁と栄純にとって良い刺激となった。

その様子を見ていた御幸らは物珍しさを感じ、この際御幸は明日の準決勝の先発は暁であると伝えたのであった。




投稿出来ました。

最後の最後でグダりました。

すいません・・・(土下座)

後、本日ダイヤのAの最終巻が発売されました!!

僕自身、小学校5年の時から読んでおり、全巻揃えて毎回とても楽しく読んでおりました!!

この結末に賛否両論分かれると思いますが、寺嶋さんには本当にお疲れ様です、このような素晴らしい作品ありがとうございましたと伝えたいです!!

しかし、最終巻で青道の夏の甲子園7年ぶり5回目と書かれてあったけど、無印37巻で片岡監督が高2の時4年ぶり8回目と書かれてあったんだよなぁ・・・。

変に気にしすぎてしまって、大変申し訳ございません。

けど、栄純の世代のキャプテンが彼なのは予想通りだったな(笑)

ダイヤのA、感動を本当にありがとうございました!!

そして青道高校、全国制覇目指し、頑張って下さい!!

それでは、また!!


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104話

104話です。


準決勝当日

 

「うわ・・・客入ってんな。」

 

「2試合とも良いカードだからな。」

 

「つーか青道の先発誰なんだろうな?」

 

「怪腕足立か剛腕降谷、そして技巧派左腕沢村。」

 

「全国クラスのエース級3人を擁する青道と豪快な打線で相手投手を粉砕した成孔学園。」

 

「やっべぇ・・・熱すぎるぜ!」

 

「その3人に隠れがちだけど川上も良いピッチャーだよな。」

 

「やっべぇ・・・青道投手陣半端ねー!」

 

観客も、どちらが勝つか話し合っており、待ちきれないのか非常に興奮していた。

そして、青道ベンチ前では、ベンチメンバー全員が円陣を組んでいた。

これに

 

「おっ、円陣組んでんじゃん!」

 

「って事は、久々に見られるな、王者のかけ声!」

 

観客が反応した。

 

太田部長「珍しいですね、御幸からやりたいと申し出るのは。」

 

そして、メンバー全員胸に手を当て

 

御幸「俺達は・・・王者なんかじゃねぇよな。」

 

御幸は普段と同じ声で言い

 

御幸「挑戦者だ!!」

 

そう、ハッキリと言った。

この言葉に、一同笑みを零し

 

「「「おおおーっ!!!」」」

 

雄叫びを上げた。

 

御幸「誰よりも汗を流したのは!!」

 

「「「青道!!!」」」

 

御幸「誰より涙を流したのは!!」

 

「「「青道!!!」」」

 

御幸「戦う準備は出来ているか!?」

 

「「「おおおーっ!!!」」」

 

この雄叫びはベンチ入りメンバーだけじゃなく、スタンドの応援団にベンチ入りが出来なかったスタンドの部員達の声も重なり

 

御幸「我が校の誇りを胸に狙うは全国制覇!!行くぞぉ!!」

 

御幸は天に片腕を掲げ、皆もそれに続いて片腕を掲げ、その雄叫びは天に届く勢いだった。

そして、ナインは闘志を燃やしながら整列場所へかけていき、挨拶を交わした後、それぞれの守備位置へと散っていき、この日先発の暁がマウンドに上がった。

 

「今日の青道の先発は降谷か・・・」

 

「剛腕vs豪快打線!熱いぜ!」

 

先攻の成孔学園。打席には成孔学園の切り込み隊長であり、キーマンでもある枡が入った。

その初球

 

ズドォォン!!!

 

真っ直ぐがやや外に外れた。しかし、悪くないボールだった。

2球目

 

ズドォォン!!!

 

初球同様外に真っ直ぐを投げ、ストライクを取った。

3球目

 

ズドォォン!!!

 

今度は内に真っ直ぐを投げ、追い込んだ。

そして

 

ズドォォン!!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

最後は外低めに真っ直ぐを投げ、見逃し三振に打ち取った。

 

御幸「降谷、ナイスボール!」

 

枡(マジかよ・・・手が出なかった・・・)

 

これには、枡は悔しそうな表情を浮かべた。

次の2番には、初球のSFFを引っかけさせてセカンドゴロに打ち取った。

そして

 

ズドォォン!!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

3番の小島には高めの真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、立ち上がりを3者凡退に抑える上々の立ち上がりとなった。

 

御幸「ナイスピー、降谷!」

 

倉持「ナイスだぜ、降谷!」

 

春市「良いよ、降谷君!」

 

周りも、上々の立ち上がりを見せた暁にそう声をかけたが

 

暁「まだ初回。油断は禁物。」

 

暁は油断のない表情でそう返した。

 

御幸「そうだ。油断なく、力み無く、自然体で行け。そうすれば、お前のボールは打たれはしない。」

 

これに、御幸はそう暁に言った。

 

惇「暁。この調子で最後まで行け!お前のボールなら、どんなバッターでも抑えれるぜ!」

 

惇も、暁に激励の言葉をかけ

 

暁「うん!」

 

暁も、嬉しいのか少し表情が崩れたのだった。

その裏の青道の攻撃。先頭の倉持が右中間を破るスリーベースを放ち、いきなり先制のチャンスを作った。

続く春市は初球をセンター前に運んで青道があっさり先制した。

 

『鮮やかなセンター返し!!三塁ランナー倉持ゆっくりホームイン!!青道、この試合も初回に先制!!』

 

惇「洋さん!」

 

倉持「おう!」

 

ホームに帰った倉持を、惇はハイタッチで迎え、打席に立った。

 

枡「切り替えろ、龍平!!」

 

枡は、小島にそう声をかけ、落ち着かせようとした。

そして、惇に対しての初球

 

キーン!

 

外のスライダーに惇はバットを出し、右中間にフライが飛んだ。

 

枡(あのコースのスライダーを!?けど、これはフライだ・・・アウト1個取れたな・・・)

 

立ち上がって打球を見た枡は、小島の調子が悪いとはいえ、外のスライダーを確実に当てた惇の技術に驚きつつも、高く舞い上がった打球に対しそう思っていた。

しかし

 

(お、おい・・・いつになったら落ちるんだよ・・・)

 

(どんだけ高く上がって・・・ってまだ伸びんのかよ・・・!)

 

センターとライトの2人は、惇の打球が全く落ちてこず、加えてどんどん下がっていき、フェンスにまで到達した。

そして、その打球は2人のグラブに収まる事無く、そのままスタンドに入ってしまった。

 

枡「嘘・・・だろ・・・?」

 

これに、枡は唖然とした表情でスタンドを見ていた。

 

『は、入ったー!!外野フライかと思われた当たりは大きな弧を描いてスタンドに入りましたー!!足立、自らの豪快なアーチで先発降谷を援護しました!!』

 

「お、おい・・・あれ詰まってたよな・・・」

 

「ああ・・・詰まり気味だったな・・・」

 

「何であれが入るんだよ・・・」

 

観客も、惇のホームランに唖然としていた。

 

信二「ナイバッチ、足立ー!!」

 

秀明「ナイス!!」

 

麻生「え!?い、今、詰まってなかったか!?何で!?」

 

関「なっ!」

 

ベンチも、惇のホームランに興奮し

 

吉川「やりましたね、唯さん!!」

 

唯「うん!!惇くーん!!」

 

スタンドでも、マネージャーを筆頭に興奮の渦中だった。

その間、惇はゆっくりとダイヤモンドを一周していた。

 

惇(やっべ・・・詰まったと思ってたけど、ラッキー・・・!)

 

その頭の中では、打席の結果が良かった事に内心やったと思っていた。

 

栄純「うおおおっ!!流石俺のアドバイスが効いたな、惇!!」

 

その間、何故か栄純がそのような事を口にしていた。

 

惇(・・・お前、いつ俺にアドバイスしたんだよ・・・)

 

これに内心そんな事を思っていた。

そして、ホームに帰ると

 

御幸「ナイスバッティング!」

 

惇「あざっす!いやぁ・・・入って良かったっすよ。」

 

御幸がハイタッチで迎えた。

 

御幸「結構詰まってるんだがな・・・」

 

惇「そうなんすけど、思ったよりスライダーが曲がってなくて良かったっすよ。」

 

御幸「そうか・・・じゃあ、取れるだけ点を取るか。」

 

そう言い、御幸は打席に向かったのだが

 

惇「さっきの台詞は何だったんすか?」

 

御幸「い、いやぁ・・・ははは・・・」

 

惇「ここ最近調子良かったのに・・・何でっすか?」

 

御幸「はは・・・」

 

息をするかのように力の無いセカンドゴロに終わった。

そして、この回青道は3点を先制したのであった。




投稿出来ました!!

久し振りの投稿です!!お待たせして大変申し訳ございませんでした!!

実を言うと、ダイヤのAが本格的に終わってしまい、少し気分が落ちていました・・・。

終わると分かっていたのですが、いざ終わるとなると寂しくて・・・。

これから先時間がかかると思いますが、頑張って投稿しますので、宜しくお願いします!!

後、こちらのドキュメンタリー映画、スゲー面白かったです!!

https://www.japan-baseball.jp/jp/movie/2023/

あの時の感動が思い出してしまい、思わず涙が出そうになりました!!

そして改めて、僕は野球が滅茶苦茶大好きなんだなと思いました!!

この気持ち、死ぬまでずっと持ち続けたいです!!

長くなりましたが、それでは、また!!


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105話

105話です。


初回に3点先制した青道高校。

この流れるような攻撃に

 

「また初回に先制したな、青道。」

 

「ああ。新チームになっても良い形になってるよ、青道打線。」

 

「甲子園準優勝してから益々勢いに乗ってるな。」

 

「甲子園優勝も夢じゃないぜ!」

 

観客はそう、青道を評価した。

そんな中、成孔学園の攻撃は、4番の長田から始まった。

その初球

 

ズドォォン!!!

 

暁の真っ直ぐに長田は空振り

 

ズドォォン!!!

 

2球目も真っ直ぐを空振り、2ストライクと追い込んだ。

 

小野「おっしゃあ!」

 

関「押してる押してる!!」

 

これに、ベンチも暁に声援を送った。

そして、3球目

 

ククッ!ストンッ!

 

長田「っ!?」

 

縦のスライダーを投げ、空振り三振に打ち取った。

これには

 

「4番長田を変化球で空振り三振に打ち取ったぞー!」

 

「今のボールって・・・」

 

「スライダーか?」

 

観客も盛り上がりつつ、暁の新たなボールに驚きを隠せなかった。

そして、次の打者も真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、6番にも縦のスライダーで追い込んで

 

キン!

 

最後は高めの真っ直ぐでライトフライに打ち取ったのだが

 

惇「・・・」

 

惇(スゲぇ・・・全く落ちてこなかったな・・・)

 

ライトでスタメンの惇は、成孔打線の打球に驚きを見せていた。

その裏の青道の攻撃は、8番の東条がツーベースで出塁すると、9番の麻生が送り、倉持が四球で出塁すると

 

キーン!

 

また春市のタイムリーで4点目を取り、倉持は三塁に到達した。

この状況に成孔学園は小島をセンターに下げ、1年サウスポーの小川をマウンドに送った。

 

惇「デッケぇ・・・あれで俺とタメなんすね・・・」

 

御幸「ああ・・・そうだな。」

 

これに、惇と御幸はそんな話をしていた。

そして、惇が打席に入ったその初球

 

どぉん!

 

高めに真っ直ぐが外れ、ボールとなった。

2球目

 

キン!

 

惇は真っ直ぐをファールにした。

 

惇(デケぇから角度あんな・・・ボール重ぇし・・・つーか、何食ったらあんなガタイになんだよ・・・)

 

小川のボールに、惇はそう感じていた。

2球目も外れた3球目

 

キーン!

 

惇は高めの真っ直ぐを打ったが球威に押されたのか、レフトフライに打ち取られた。

しかし、犠牲フライには十分な飛距離だったため、倉持はタッチアップして5点目のホームを踏んだ。

次の御幸は死球で出塁して、更にチャンスが広がったが、前園の時にある歌を口ずさみながら自身のウイニングショットであるスクリューで打ち取ってチェンジとした。

 

栄純「今のは・・・チェンジアップ?」

 

このボールに、栄純はそう呟き

 

惇「いや、あれは小川の決め球スクリューだ。」

 

信二「右打者から逃げていくように落ちていくボールだ。」

 

惇と信二はそう栄純に説明した。

小川のピッチングに触発されたのか

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

この回も2つの三振を奪うなどしてヒットを許さずに3人で仕留めた。

 

春市「ナイスピッチング!、降谷君!」

 

倉持「良いぜ、降谷!」

 

前園「その調子や、降谷!」

 

バックも、そう暁に声をかけた。

一見好調そうに見えるが

 

惇「・・・カズさん。」

 

御幸「ん?」

 

惇「汗半端ないっすね、暁。」

 

御幸「ああ・・・流石にプレッシャー感じてんのかもな。」

 

惇「はい・・・」

 

成孔のフルスイングに圧を感じているのか、少し飛ばしており、少し多めに汗を掻いていた。

その裏畳みかけたい青道だったが、先程の回からリリーフで上がった小川の前に3人で打ち取られてしまった。

そして、回は4回に入ったのであった。




投稿出来ました。

ここんとこ全然更新出来ず、本当にすいません。

以前のように毎日でなくても、気長に待っていただくと非常に幸いです。

それでは、また。


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106話

106話です。


4回の表の成孔学園の攻撃。枡が打席に立った。

 

枡(もう黙って見てるだけじゃねぇぞ。球種だけじゃなくコースに狙いを絞って・・・)

 

そう思って構えた初球

 

ククッ!ストンッ!

 

縦スラから来て2球目

 

枡「っ!」

 

初球同様縦スラが来て、引っかけてしまった。

 

枡(2級続けてスライダー・・・!?)

 

しかし、飛んだ方向が幸いしたのと

 

枡(なめてんじゃねーぞー!!)

 

枡の気迫のヘッドスライディングでセーフとなり、成孔学園初ヒット初ランナーが出た。

次の2番には、初球ピッチャーゴロに仕留めたが

 

ぶんっ!

 

暁「っ!」

 

フルスイングしてきたためゲッツーに取れず、送ったような形となって一死二塁となった。

次の3番小島も

 

ズドォォン!!!

 

ぶんっ!

 

暁「っ!」

 

初球からフルスイングしてきた。

2球目

 

キン!

 

レフト前に運ばれてしまい、当たりが良すぎたため失点はしなかったが更にピンチが広がり、迎えるは

 

『4番ファースト長田君』

 

豪快かつ重量打線の主砲、長田が打席に立った。

 

御幸(流石に2巡目捉えてきたか・・・縦スラが甘く入るよりかは、ストレートで押した方が良さそうだな・・・)

 

そう思った御幸は、真っ直ぐのサインを出して構えた。

その初球

 

ズドォォン!!!

 

ぶんっ!

 

暁「っ!」

 

高めに浮いた真っ直ぐを長田は空振ったが、強烈なフルスイングに更なるプレッシャーを暁は感じた。

 

御幸(少し高めに浮いてきてんぞ。もっと低く・・・っ!)

 

そう思った御幸だったが

 

ズドォォン!!!

 

外に大きく外れてしまった。

これに

 

御幸「タイムを!」

 

御幸はすかさずタイムを取り、マウンドに駆け寄った。

 

御幸「どうした?力入ってるぞ。もっと低く投げて来い!」

 

御幸「こういうバッターには、パワーよりもコントロールだ。力み無く、自然体にだ!」

 

暁「っ!」

 

御幸の言葉に、暁は目が覚め

 

御幸「お前のボールなら、絶対に打たれはしない。」

 

御幸もそう返し、マウンドを後にした。

暁も

 

暁「ふぅー・・・」

 

1つ深呼吸をし、力みを取った。

そして、セットに構えた3球目

 

ズドォォン!!!

 

長田「っ!」

 

外低めに綺麗に決まり、2-1と追い込んだ。

 

御幸(力が抜けたようだな・・・)

 

これに御幸は、マスク越しに笑みを浮かべた。

 

栄純「うぐぐ・・・!そこは俺の聖域・・・!」

 

・・・いつからそこはお前の聖域になったんだよ、栄純・・・。

3球目

 

キン!

 

長田は打ったがファースト正面に打球が飛び、3-6-1のゲッツーに仕留めた。

 

『ゲッツー!!3-6-1のダブルプレー!!』

 

春市「ナイスカバー、降谷君!」

 

前園「ナイスや!」

 

『青道には『東都の怪腕』足立だけじゃない!剛腕降谷もいる!成孔学園、この回も得点ならず!』

 

信二「最後の球やべぇな・・・」

 

倉持「降谷、ナイスカバー!」

 

惇「ナイスボール、暁!」

 

こうして、暁はこのピンチを無得点に抑えた。

その裏の青道の攻撃は、小川の前にこの回も三者凡退に終わった。

そして、5回に突入した。

暁は先頭の5番をサードゴロに打ち取り、6番をライトフライに打ち取って2アウトとした。

そして、小川が打席に立ち、初球を空振らせたのだが2球目

 

キン!

 

暁・御「「っ!」」

 

少し高めに浮いた真っ直ぐが当たり、打球はレフトスタンドギリギリに吸い込まれた。

 

『は・・・入ったー!ホームラン!!立ち塞がる剛腕から大きな一打。この一発が反撃の狼煙となるかー!!』

 

御幸(確かに少し高かったが・・・それをスタンドまで・・・)

 

この打球に、御幸は少し驚きを見せた。

次の8番はライトフライに打ち取ってチェンジとなったが

 

惇(マジかよ・・・暁のボールに打ち負けちゃいねぇ・・・)

 

前園(下位の打者がフェンス手前まで飛ばすんかい・・・)

 

ツボにはまったら危険な打線であると改めて感じたのだった。

そんな中

 

御幸「最後のボール、悪くなかったぞ・・・あのコースからスタンドまでは届かねぇよ・・・」

 

御幸「大切なのは打たせない事じゃなく、打たれた後どう投げるか・・・」

 

御幸「少しずつ足立に近付いてきてんぞ・・・」

 

御幸はそう暁を励ました。

そして、その裏の青道の攻撃は、先頭の惇が打席に立った。

打席に立つ前に、惇は片岡にある指示を受けていた。

 

片岡『あの投手は、初球からインコースを攻めてくる事が多い。狙うはその・・・』

 

惇(真っ直ぐだろ!!)

 

そして、狙い通り真っ直ぐがインコースに来て、惇は迷い無くバットを出した。

小川の球威に押されそうになったが

 

惇(関係ねー!押しこんでやらぁ!!)

 

惇は右手でぐっと押し込み

 

キーン!

 

振り抜いた。

打球は高々とレフト方向に上がり

 

ガシャン!

 

小川「っ!」

 

スタンド中段まで運んだのだった。

その時、一瞬の静寂が球場を包み

 

わあああああっ!!!

 

一気に大歓声に包まれ

 

惇「しゃああああっ!!」

 

惇も右手を高々と掲げて雄叫びを上げながら一塁を回った。

 

『は・・・入ったー!!ホームラーン!!点を取られたその裏、青道は足立のこの試合2本目のホームランで追加点を取りましたー!!』

 

『球威に押されていたのかもしれません!しかし、1本目と違い、力で完璧に捉えました!」

 

実況は興奮した様子で惇のホームランを言った。

 

枡「マジかよ・・・」

 

枡(常のインコースストレートをあそこまで・・・!)

 

枡(あんな細身で何つーパワーだ・・・!)

 

枡も、惇の2本目のホームランに絶句し、固まってしまった。

 

「す、スゲー!」

 

「ああ!1本目といい、ホームランバッターの打球だぜ!」

 

「足立、ピッチャーとバッター両方いけるぞ!!」

 

観客も興奮が収まらず

 

信二「ナイバッチ、足立ー!!」

 

秀明「凄いね!!」

 

前園「ナイスや、足立!」

 

春市「ナイス、足立君!!」

 

栄純「うおおおっ!!」

 

ベンチも、惇の2本目のホームランに興奮し

 

唯「ナイバッチー!!惇くーん!!」

 

吉川「す、凄い!!凄いよ足立君!!」

 

青道応援席も、興奮を隠せなかった。

そして、ホームに帰ると

 

御幸「ナイスバッティング!」

 

惇「うっす!」

 

御幸がハイタッチで迎えた。

 

御幸「良くあそこまで飛ばせたな。」

 

惇「利き腕の右腕で押し込んだんすよ。球威に押されないように。」

 

御幸「成程・・・なら、俺もやってみるかな。」

 

惇「最初の時みたいにあっさり終わらないで下さいよ。」

 

御幸「あはは・・・善処するよ。」

 

そう言い、御幸は打席に向かった。

そして、ベンチに帰ると惇は手荒い歓迎を受けたのだった。

 

小川「・・・。」

 

一方の小川は、次の御幸にも完璧にスタンドまで運ばれてしまったが、それでもある歌を口ずさんで気持ちを立て直し、後続を絶った。

しかし、完全に調子が上がった暁の前に成孔学園は何も出来ず、7-1で青道の完勝となり、暁も8回1失点10奪三振の快投を演じ、後に投げた川上が締めた。

そして、次の試合の薬師対市大三髙との試合は、市大のエース天久と真田の投げ合いとなったが、終盤に真田自らの逆転タイムリーで薬師が3-2で勝利し、秋季大会決勝は、青道と薬師の顔合わせとなったのであった。




投稿出来ました。

最後は完全に駆け足投稿です。

大変申し訳ございません。

次の決勝ですが、内容が纏まれてないのでゆっくり考えます。

それでは、また。


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107話

107話です。


準決勝が終わり、学校に戻った青道高校。

戻ってすぐに今日の試合について話した。

 

片岡「降谷。今日の試合、ホームランを打たれても粘り強く良く1失点に抑えてくれた。これからも、頼りにしてるぞ。」

 

暁「はい!」

 

片岡「御幸も、良くリードしてくれた。」

 

御幸「はい!」

 

片岡「足立も、今日はバッティングで良くやった。ナイスバッティングだ。皆も、途中点が取れない中良くやってくれた。明日の決勝も、ベストを尽くしていこう。」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

そして、話は明日の決勝の相手である薬師になる。

 

片岡「明日の決勝の相手だが、夏の大会でコールド勝ちした時とは訳が違う。今日の試合で分かったように、打線だけではなく守りもしっかりしてる非常にバランスの良いチームだ。」

 

そして、片岡は渡辺にスイッチした。

 

渡辺「皆分かってると思うけど、轟と真田は特に警戒しなければならない。」

 

渡辺「今日エースの真田が先発してたから明日の先発はピッチャーも出来る三島か秋葉の可能性が高いと思うけど、轟の可能性も視野に入れても良いと思う。」

 

この言葉に、皆は絶句したが渡辺は続け

 

渡辺「2回戦と準々決勝で2イニングずつ投げてて、ストレート主体で押しまくる強気なピッチングスタイル。」

 

渡辺「ステップ幅が広く深く沈み込んで投げてくるから、ボールの軌道には少し戸惑うかもね。」

 

そう轟を評した。

そして、最後に片岡は

 

片岡「明日の先発は足立、お前だ。お前に全て任せる。」

 

そう惇に言った。

 

惇「!!」

 

これに惇は目を見開き驚くも

 

惇「はい!!」

 

すぐ気合の入った表情になり、力強い返事をした。

そして、最後に倉持、前園、そして御幸の最後の一言で締め、解散となった。

その日は3年生達も顔を見せに来ており

 

伊佐敷「お前ら、あと一つ必ず獲れ!!そしてもう一度あの舞台に戻れ!!」

 

「「「は・・・はい!!!」」」

 

伊佐敷の強烈な檄が飛び

 

藤原「これだけあれば十分かな?」

 

梅本「どうですかね。」

 

唯「作り過ぎたと思っても、すぐ無くなっちゃうんですよね。」

 

藤原がおにぎりを作るのに手伝っていた。

 

藤原「それと足立君。何か表情柔らかくなったね。」

 

すると、藤原がおにぎりを作りながらそう呟いた。

 

吉川「え?」

 

藤原「甲子園準優勝に終わってから、新チーム結成から暫く表情が硬かったから、ちょっと気になってね。」

 

藤原「元気になって良かった・・・」

 

この言葉に

 

唯「そうですね・・・」

 

唯は慈しむような目で惇を見ていた。

その様子に

 

梅本「おっ!唯~。な~んかとっても良い顔だね~!」

 

唯「え?」

 

梅本「恋する乙女って顔だよ~。」

 

梅本がからかうように言うと

 

唯「も、もうやめてよ~!」

 

唯は顔を真っ赤にしながら梅本に言った。

 

吉川「可愛いですよ、唯先輩!貴子さんもそう思いますよね!」

 

藤原「ええ、そうね!付き合うようになってから益々可愛くなったわよ、唯!」

 

唯「貴子さんに春乃まで!もう~!」

 

藤原と吉川も、梅本に続いて唯をからかった。

そして、皆で室内練習場へ行き、3年生も付き合った。

その際

 

惇「カズさん。」

 

御幸「ん?」

 

惇「ちょっと受けてもらって良いっすか?」

 

惇は御幸に声をかけ、受けてもらうよう頼んだのであった。




投稿出来ました。

お久し振りの投稿でこんな薄い内容で大変申し訳ございません。

それと、続々と代表校が決まってきてますね。

まだ決まってないところもあるけど、来月の甲子園が待ちきれません!!

それでは、また。


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108話

108話です。


受けて欲しいと御幸に頼んだ惇。

 

御幸「別に構わないが、明日は決勝なんだから少しだけだぞ。」

 

惇「はい。」

 

そして、御幸と一緒に室内練習場に向かった。

するとそこには

 

伊佐敷「よー足立!これから投げんのかよ!」

 

惇「ちわっす、伊佐敷さん!」

 

結城「明日は試合なんだ。無理はするなよ。」

 

惇「分かってますよ、哲さん!」

 

亮介「明日、頑張ってね。」

 

惇「あざっす、亮さん!」

 

増子「うむ!あだっちゃん!」

 

惇「増子さん!」

 

3年生達が集まっていた。

 

栄純「な・・・なんかこのメンツと練習出来るの懐かしいな!」

 

暁「うん、そうだね。」

 

これには、後から来た栄純と暁もそう思っていた。

すると

 

??「これから投げるのか、足立?」

 

惇「あ、はい。少し投げようかと・・・」

 

そう声が聞こえたので振り返ると

 

惇「か、監督・・・」

 

片岡がいた。

 

栄純「ビッ・・・ビッグボス!!」

 

片岡「誰がビッグボスだ!」

 

・・・栄純、片岡監督に変なあだ名つけんなよ。

そんなこんなでキャッチボールを始め、肩を温めた。

少し投げて

 

惇「カズさん。座ってくれますか?」

 

惇がそう御幸に言った。

 

御幸「はいよ!」

 

片岡「あくまで肩馴らし程度だからな。」

 

惇「うっす!」

 

御幸「じゃあ、まず軽く真っ直ぐ!」

 

そして、御幸の指示を聞いた惇は足を上げて真っ直ぐを投げた。

 

ズバアアンッ!!

 

右バッターから見て、膝元に投げられた綺麗な真っ直ぐだった。

これには

 

結城「良いストレートだ。軽くでこのノビか・・・」

 

増子「うむ。これぞ綺麗な縦回転のストレート。また一段と速くなったな。」

 

伊佐敷「沢村と違って綺麗なストレートだな。」

 

3年生達はそう惇の真っ直ぐを評した。

 

栄純「皆さん・・・酷いっす!」

 

川上「ま、まあ沢村・・・」

 

その横で、川上が沢村を慰めていた。

そんな中

 

御幸(いってー!これで軽くなんだよな~!)

 

御幸(ホント気が抜けらんねーな、こいつの球は!)

 

御幸は惇のボールに内心苦痛で歪んでいた。

周りは気付いてなかったが

 

クリス(御幸・・・痛そうだな・・・)

 

クリスのみ気付いていた。

 

御幸「次、スライダー!」

 

惇「はい!」

 

そして、2球目は外にスライダーを投げ

 

ククッ!

 

加速しながら滑るようにホームベース付近で真横に一気に曲がり、御幸は何とかミットに収めた。

 

「えっぐ・・・」

 

「何つーキレ・・・」

 

初球の真っ直ぐ同様、感嘆の声を上げた。

 

御幸「ふぅー・・・次、SFF!」

 

すると、御幸の表情が段々硬くなったので

 

惇「カズさん。顔硬いっすよ。」

 

惇はそう声をかけた。

 

御幸「おいおい!これまで何度後ろに逸らしそうになったか。」

 

惇「まあ、リラックスっすよ。」

 

そう言い、惇はSFFを投げた。

 

ククッ!ストンッ!

 

それは御幸の視点から見たらボールが消えたのだが、何とか後ろに逸らす事無く、体で止めた。

 

伊佐敷「何つーキレだよ・・・」

 

亮介「凄い落差だね・・・」

 

結城「・・・。」

 

若干1名強烈なオーラを出しながら見ているのを除くと更に驚いていた。

 

御幸「次、スプリーム!」

 

その時、室内練習場の雰囲気が変わった。

そんな中、惇はスプリームを投げた。

 

ククッ!ストンッ!

 

それは、右バッターの懐に食い込むように曲がり、鋭く落ちていき、御幸はそれを体で止めた。

このボールを見た3年生達は

 

「「「おおおーっ!!!これが噂の!!」」」

 

伊佐敷「良いボールじゃねーか!」

 

結城「ああ。打席で見て見たいものだ。」

 

感嘆の声を上げた。

そして

 

片岡「御幸。足立。そろそろ切り上げろ。」

 

惇「うっす!」

 

御幸「はい!」

 

片岡の声に2人はそう返事をし

 

片岡「現時点でお前の投げられる最高のストレートを見せてみろ!」

 

そう惇に加えて言った。

 

惇「了解っす!」

 

そう言うと、惇は集中した表情になり、それと同時に周りの空気が張り詰めた。

そして、惇は足を上げて御幸目掛けて真っ直ぐを投げたのであった。




投稿出来ました。

決勝前日パート2ですね。

全然内容が薄いです。

文才が欲しいです、ホントに・・・(T_T)

それでは、また。


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109話

109話です。


10月24日。緊張感を感じさせる雰囲気を出しながら青道高校は球場入りした。

夏に続いて2大会連続の決勝進出。先発は『東都の怪腕』で2失点ながらタイムリーによる失点は無いという抜群の安定感で勝利に貢献している惇。

今大会はバッティングでも評価はうなぎ上りであり、準決勝の成孔学園戦では2本のホームランでチームの勝利に大きく貢献した。

打線も今大会は初回から先制点をたたき出し、確実に追加点を取っており、新チームになっても伝統の強力青道打線は健在だ。

投手陣も先程述べた惇だけじゃなく暁と栄純も今大会安定感抜群のピッチングをしており、評論家の間では関東最強の3本柱ではないかと言う意見まで飛び出している。

そんな中、来年どの高校に入学するか決めようとする有望な中学生が集まり

 

拓馬「どうやら間に合ったな。」

 

光舟「ああ。」

 

惇のシニアの後輩、瀬戸拓馬と奥村光舟も来ていた。

彼らだけじゃない。

 

結城「久し振りだな、原田。」

 

原田「ああ、結城。」

 

青道と稲実の前キャプテン、結城と原田も来ていた。

その他にも3年生らも見に来ており、稲実に至っては現チームの主力が観に来ている程だ。

 

結城「成宮は?」

 

原田「昨日は渋ってたけど、どうかな。」

 

・・・成宮だけ来ていなかったが。

そんな中、ブルペンでは惇が試合前の投げ込みをしていた。

 

惇「んっ!」

 

ズバアアンッ!!!

 

いつ通りの良い音なのだが、この日の惇はいつもと違っていた。

 

惇(やっべ・・・いつもより体が軽い・・・)

 

いつもと比べてボールのキレが良かったのだ。

それだけじゃなく

 

ズバアアンッ!!

 

その殆どのボールが、御幸の構えたところへドンピシャに決まるなどコントロールも抜群だった。

 

惇(昨日からこんなボールが投げれるなんてな・・・)

 

実を言うと、この伏線は昨日からだった。

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

ズバアアンッ!!!

 

最後の球が、いつもより更に伸びたのだ。

これには

 

坂井「速く・・・なった?」

 

楠木「速いよな?」

 

周りもそう感じていた。

 

栄純「マジかよ・・・」

 

川上「まだ伸びるのか・・・」

 

暁「・・・負けない。」

 

他の投手陣もそれぞれ色んな感情が入り交じり

 

惇「カズさん。もうちょっとだけ良いっすか?」

 

惇も、この好感触に少し興奮していた。

すると、片岡から

 

片岡「・・・後10球だ。」

 

この声を聞き

 

惇「うっす!」

 

惇は端整な顔をはにかませたのだ。

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

惇(こんな感じ・・・いつ以来だっけ・・・?)

 

そう思いながら、惇は試合を待っていた。

一方の御幸は

 

御幸(昨日から思ったがこのボール・・・今まで見てきた中で一番だな・・・ボールのノビが今までとは比べものにならない・・・)

 

惇のボールを受けてそう感じていた。

 

御幸(今はまだ軽く投げてるから良いけど、気を抜いたら冗談抜きで後ろに逸らすどころか怪我するぞ・・・!)

 

御幸(つっても、もう既に俺の左手は痛ーんだけど・・・)

 

そして、ベンチ前に並び、審判からの声を待った。

 

『ダークホースから本命へ!初の甲子園なるか薬師高校!』

 

『夏の甲子園準優勝、2大会連続決勝進出!夏に続いてこの秋を制し2季連続の甲子園出場なるか青道高校!』

 

「整列!」

 

「「「おおおーっ!!!」」」

 

『いざ、決戦!!』

 

そして、両者整列し、先攻は青道で、後攻は薬師となり、薬師先発の三島がマウンドに上がり、青道は倉持が打席に立ち、決勝戦が始まったのであった。




投稿出来ました。

遂に始まった決勝戦!

上手く書けるか分かりませんが、頑張ります!

それでは、また。


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110話

110話です。


初回の青道の攻撃。先頭の倉持はファールで粘っていた。

この様子に

 

伊佐敷「今日の倉持、お前みてーに粘るじゃねーか。」

 

伊佐敷は亮介にそう言うと

 

亮介「捉えきれてないだけじゃん。」

 

亮介「元々守備位置気にしたり球種読もうとしたり、色々欲張りすぎる奴だからねぇ・・・」

 

亮介「今大会みたいに打つ事に集中できたら良いと思うけど。」

 

そう亮介は厳しく言いつつも倉持の実力はまだまだだと言った。

そんな中、フルカウントとなって、最後のボールを捉え、倉持は出塁した。

そして、すぐさま大きくリードを取り、三島も牽制を入れたのだが、春市への初球で倉持はすかさず走り、無死二塁の形を作った。

 

栄純「あ・・・あし・・・足・・・足。足お化け!足の権化!足イケメン!えーと・・・」

 

・・・それ、褒めてるのかそれとも馬鹿にしてるのか、栄純。

 

倉持「もっと上手く褒めろや!!」

 

これには、倉持はそう栄純に怒鳴った。

 

惇「たはは・・・この人はヒット1本で二塁打確定っすね・・・」

 

御幸「ああ・・・敵にしたらこの上厄介だな・・・塁に出れたらだけど。」

 

これに、惇と御幸はそう言った。

続く春市は手堅く送り、一死三塁の形にして

 

『迎えるは青道のクリーンナップ。3番ピッチャー足立君!』

 

『前回の成孔学園戦では2本のホームランを放ちました!マウンドだけじゃなく打席でも存在感を見せつけます!』

 

『この試合でもあの豪快なアーチを描けるのか!?』

 

惇が打席に立った。

 

三島(ゼッテー抑えてやる!イケメンめ!)

 

そう思い、三島は初球インコースに投げ込んだ。

その初球を

 

キーン!

 

惇は豪快に引っ張った。

 

三島「なっ!?」

 

秋葉(あのコースを!?)

 

これに三島と秋葉は驚き打球方向を見た。

しかし

 

「ファール!」

 

ほんの数㎝切れ、ファールとなった。

 

惇「ちっ!」

 

惇(ちょっとタイミングが早すぎた・・・!)

 

この時、惇はミスショットした事に少し悔しさを滲ませた。

一方の三島は

 

三島(何つー飛距離だよ!?もし甘かったら・・・!)

 

惇の飛距離に恐れたが

 

三島(けど、この夏休み色んな修羅場くぐってきたんだ!こんなんでビビったらエースなんて夢のまた夢だぜ!)

 

すぐ切り替えて投げた。

しかし

 

ドパッ

 

「ボール!フォア!」

 

『特大ファールで慎重になり過ぎたか、ストレートのフォアボール!!』

 

あっさりフォアボールで歩かせてしまった。

そして、この絶好のチャンスで打席に立つのは

 

『4番キャッチャー、御幸君』

 

キャプテンであり、主砲でもある御幸だった。

その様子を見ていた原田は

 

原田「初めて4番を任された時は力みまくったな。新チーム結成から暫く打率上がんなくてよ。」

 

原田「あのヤローがいちいちうるせーし、黙らせる為にどんだけバット振ったか!」

 

そう己を振り返っていた。

・・・成宮、お前煽るの得意だな。

 

結城「ああ・・・俺も周りが見えなくなるくらい必死だった・・・」

 

結城も、原田の言葉に自分も重圧に苦労したと言った。

 

原田「まあでも、周りの期待がプレッシャーになるようなタマじゃねーか、アイツは。」

 

しかし、原田は御幸の実力を認めてるため、そう御幸の事を評価した。

 

結城「随分買ってんだな。」

 

原田「嫌いだけどな!」

 

・・・嫌いなのは変わらないんだな。

 

惇「思いっきりいきましょう、カズさん!」

 

そう、惇が一塁上で声援を送ったその初球

 

パァン!

 

外低めに絶妙なコントロールで決まった。

2球目

 

ストンッ!

 

低めにフォークが外れボールとなった。

 

秋葉(インコースに1球見せておきたいけど、甘く入るのは危険すぎる。)

 

秋葉(今度はストライクゾーンにフォークだ、優太!)

 

そう思い、秋葉は三島にフォークのサインを出した。

それを見た三島は

 

三島(これは自分を成長させてくれるご褒美だ!神様からのプレゼント!)

 

三島(ゼッテー凌いでやる!)

 

フォークを投げ込んだ。

しかし、御幸はそれを狙っており、そのボールを捉えた。

しかし

 

バチッ!

 

三島「あぁあ!」

 

たまたま出したグローブに打球が当たり

 

秋葉「優太!セカン!!」

 

三島は二塁に投げ、最後にファーストの真田に渡りゲッツーに終わった。

 

惇「おい、マジかよ・・・!?」

 

惇も、このプレーに驚きを隠せなかった。

 

『ゲッツー!!強烈なピッチャーライナーを三島がファインプレー!!』

 

『青道、今大会初めて初回無得点に終わりました!!』

 

御幸「悪い、足立!」

 

これに、御幸は惇に謝ったが

 

惇「今のはしゃーないっすよ。」

 

惇は気にしてないと言った感じでそう御幸に返した。

そして、惇はグローブを取ると

 

片岡「足立。頼むぞ。」

 

片岡がそう惇に言い

 

前園「行くで、足立!」

 

白州「思い切りいけよ、足立!」

 

樋笠「シュシュシュッ!」

 

周りも、惇に声をかけた。

 

暁「惇。頑張ってね。」

 

川上「後ろには俺達がいる。思いっきり暴れてこい!」

 

栄純「やっちゃっても良いんだぞ、惇!」

 

投手陣も、惇にそう声をかけた。

その声を背に受け

 

惇「しゃっ!!」

 

惇は気合を入れ、マウンドに上がり

 

倉持「まずは先頭だぞ、足立!」

 

春市「1つ1つ打ち取っていこう!」

 

二遊間からの檄に手で応え、数球ボールを投げた。

 

惇(やっべ・・・この感覚、マジヤベぇ・・・)

 

ブルペンと変わらず、いつも以上にキレのあるボールを投げ込む。

この様子に

 

吉川「調子良さそうですね、足立君!」

 

藤原「ええ、そうね。」

 

スタンドで見てる吉川と藤原はそう言い

 

唯「多分ですけど、今まで見た中で一番良いかもしれませんね。」

 

唯もそう2人に言って

 

唯(頑張って、惇君!)

 

手に持ってる御守りをギュッと握りしめてそう心の中でエールを送った。

惇は投げ込んだ後いつものルーティンである股割りストレッチを行い、セットポジションに構えた。

そして、薬師は1番の秋葉が打席に立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!!

 

御幸が構えた秋葉の膝元に寸分の違いもなく真っ直ぐが投げ込まれた。

これには、秋葉は思わず打席から数歩、一塁側に出てしまい

 

秋葉(何だよこれ!?この前ビデオで観たのよりもキレ良すぎじゃねーか!?)

 

そう感じていた。

2球目

 

ズバアアンッ!!!

 

同じコースに真っ直ぐを投げ込み、秋葉はバットを振ったが空を切った。

 

秋葉(クッ・・・!力感全然ないから余計・・・!)

 

これを見た御幸は

 

御幸(ストレート・・・続けるか?)

 

そう思い、サインを出した。

そして、3球目

 

ズバアアンッ!!!

 

「ットライーク!バッターアウト!!」

 

外に真っ直ぐが投げ込まれ、見逃し三振に打ち取った。

これには、秋葉は悔しそうにしてベンチに戻った。

因みに3球投げた真っ直ぐの球速は、『140㎞』、『141㎞』、『140㎞』と全て140少しだった。

しかし

 

御幸(昨日のあのボールといい・・・今までと比べて更にボールのスピン量が増してる・・・!)

 

スピン量が更に増しているため、今まで以上のボールの伸びを感じていた。

加えて

 

御幸(ヤベッ・・・これは想像以上だぞ・・・!もう手が痺れてきた・・・!)

 

御幸の左手が、3球真っ直ぐを受けただけで黄色信号が灯った。

続く2番の増田は、2球目のスライダーを引っかけさせてショートゴロに打ち取った。

そして、次の三島は

 

三島(ゼッテー打ってやる!夏のリベンジだぜ!)

 

そう思い打席に立ったがその初球

 

ズバアアンッ!!!

 

外低めに140㎞の真っ直ぐが絶妙なコースに決まり、2球目

 

キン!

 

初球同様外低め141㎞真っ直ぐをファールにし3球目

 

ズバアアンッ!!!

 

再び外低めの140㎞の真っ直ぐを投げ込み、外3つで三島を空振り三振に打ち取り

 

惇「シャアアアッ!!」

 

マウンド上で吼えたのだった。

 

『全球アウトローのストレートで空振り三振ー!!』

 

『「東都の怪腕」足立、初回ほぼストレートで初回を3人で仕留めましたー!!』

 

春市「ナイスボール!」

 

倉持「良いぞ、足立ぃ!」

 

前園「ナイスボールや!」

 

これには、バックもそう惇に声をかけた。

 

暁「ナイスボール。」

 

栄純「ナイスボール!」

 

この2人もそう言い、コップを差し出すが

 

惇「2つもいらねーよ。」

 

惇はそう2人に返した。

すると

 

栄純「俺のを渡す!」

 

暁「僕が!」

 

2人はそう言い争い

 

川上「やめろよお前ら・・・」

 

川上がそう呆れた声で言った。

一方その横で

 

御幸「っ・・・」

 

御幸は自身の左手を見て

 

御幸(どうにか持ってくれよ、俺の左手!)

 

そう思いながら冷やしていた。

そして、2回の表の青道の攻撃が始まったのであった。




投稿出来ました。

久し振りに少し長めの投稿です。

この試合は一体どうなるのか!?

それでは、また。



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111話

111話です。


2回表の青道の攻撃。前園が打席に向かった。

その初球

 

パァン!

 

外の真っ直ぐに空振った。

しかし

 

前園(これでええ・・・どんな形でも自分のスイングや!)

 

前園の目には、迷いは全く無かった。

そして2球目

 

キィン!

 

インコースボール球の真っ直ぐを打ちにいって、どん詰まりの当たりだったがレフト前に落ちるポテンヒットとなった。

これに

 

前園「だあああ!」

 

と派手なガッツポーズをした。

これには

 

伊佐敷「サヨナラ打ったみてーな派手なガッツポーズしてんじゃねぇ!!こっちが恥ずかしいわ!!」

 

伊佐敷は赤面の顔で言うと

 

亮介「純もよく打ってたじゃん、あんな当たり。」

 

亮介に突っ込まれた。

次の白州は、片岡のサインを見てバントの構えを見せたがその初球

 

キィン!

 

バットを立てて見事初球を打ってバスターエンドランを決め、無死一、三塁の形を作った。

 

惇「毎回思うんすけど、流石白州さんっすね。」

 

御幸「ああ。そうだな。」

 

惇は、白州のこのキッチリこなすプレースタイルに舌を巻き

 

秀明(派手さはないけど堅実なプレースタイル。後ろを守って貰ってこれほど頼もしい人他にいないよ・・・)

 

秀明(外野手として目指すべき人が近くにいるじゃん。)

 

秀明も、白州のこの姿に良き手本を見つけたと思っていた。

そして、この日久し振りのスタメン出場を果たした樋笠が打席に立った。

その初球

 

キィン!

 

積極的に打ちにいき、ファールとなったが彼の思い切りの良さが現れた。

 

信二「樋笠先輩、合ってますよ!!ナイススイング!!いけるいける!!」

 

スタメン落ちとなった信二は、樋笠に声援を送っていた。

そして2球目

 

樋笠「ぷシュー!!」

 

キィン!

 

レフトへ大きな当たりを飛ばしたが、後一歩届かずレフトフライに終わったが、犠牲フライとしては飛距離十分であり、それを見た前園はタッチアップし、先制のホームを踏んだ。

 

『秋大決勝戦。先制したのは青道高校ー!!』

 

『「東都の怪腕」足立に得点をプレゼントしましたー!!』

 

次の秀明のセカンドゴロの間に白州は三塁に行き、追加点のチャンスだったのだが、麻生の当たりを轟のファインプレーに阻まれこの回1点に終わった。

その裏の薬師の攻撃。打席に立つのは

 

『2回の裏、薬師高校の攻撃は、4番サード、轟君。サード轟君。』

 

轟だった。

 

『さあ、お聞き下さいこの歓声!前の試合でもホームランを放ち、今大会脅威の7ホーマー!』

 

『夏の大会では足立を前に3打席3三振と完敗を喫しましたが、そのリベンジなるか!?』

 

『それとも、「東都の怪腕」足立が前回同様あの浮き上がる火の玉ストレートで三振に打ち取るか!?』

 

『注目の対決です!!』

 

雷蔵(確かに調子は良さそうだが、関係ねー!)

 

雷蔵(夏の時とは違う姿を見せてやれ、雷市!)

 

その初球

 

キン!

 

インハイ140㎞の真っ直ぐをファールにした。

2球目

 

ズバアアンッ!!!

 

外に141㎞の真っ直ぐが外れ3球目

 

ククッ!

 

外からスライダーを曲げ、2-1と追い込んだ。

4球目

 

キン!

 

インコース142㎞の真っ直ぐを何とかファールにした。

これには

 

御幸(夏の時はここまで当てられなかったんだが、流石に成長してるな・・・)

 

惇(ふぅん・・・よく当てるじゃん・・・)

 

惇と御幸はそう思った。

そして

 

御幸(スローカーブでタイミングを外して打ち取るぞ!)

 

御幸はスローカーブのサインを出した。

しかし

 

惇「・・・。」

 

惇は首を横に振った。

 

御幸(何?なら、SFFか?)

 

これに御幸は、疑問に思いつつ今度はSFFのサインを出すが

 

惇「・・・。」

 

またしても惇は首を横に振った。

 

御幸(スライダーか?)

 

スライダーのサインを出しても

 

惇「・・・。」

 

惇は首を縦に振らなかった。

この様子に

 

「サインが決まらないな。」

 

「ああ・・・」

 

「轟を混乱させるためかな・・・?」

 

観客はそれぞれの思いを吐露し

 

伊佐敷「中々サインが決まらねーな。」

 

亮介「うん。この光景見るの、久し振りかもね。」

 

丹波「かもな。」

 

原田「こういうのは初めてじゃないのか?」

 

結城「ああ。夏の頃は阿吽の呼吸って感じしか見てないようだが、最初の頃は御幸のサインに殆ど首を振ってたな。」

 

結城「何度か御幸がマウンドに行ってた時もあったぞ。」

 

原田「そうだったんだな・・・」

 

結城「ああ。けど、御幸はそんな足立に良く付き合ってたな。」

 

これに、原田は意外そうな表情を見せていた。

そんな中

 

惇「真っ直ぐ。」

 

惇は、マウンド上でそう御幸に向かって呟いた。

 

御幸「っ!?」

 

これには、御幸はマスク越しで驚きの表情を見せたが

 

御幸(マジかよ・・・!?)

 

御幸(けど、今日の足立の調子なら・・・)

 

すぐに切り替え、ミットを構えた。

そして、惇は足を上げて外低めの141㎞の真っ直ぐを投げた。

 

キン!

 

それを、轟は打ち返した。

打球はレフト方向に高々と舞い上がったのだが、レフトの麻生が掴んで1アウトとなった。

 

『最後はストレートで押し切り、レフトフライに打ち取りました!』

 

『足立対轟の最初の対決は、足立に軍配が上がりましたが、轟は初めて足立の球をフェアゾーンに飛ばしました!』

 

この対決に

 

「はぁー!凄い緊張感!!」

 

「差し込まれてたのか!」

 

観客は興奮し

 

伊佐敷「スゲぇ痺れる対決だったな!」

 

亮介「うん・・・轟は初めて足立の球を前に飛ばしたね。」

 

増子「うがっ!」

 

3年生達もそう少し興奮した雰囲気で言った。

次の真田は

 

真田(ははは、夏よりも更にレベルアップしてんなぁ・・・)

 

惇のピッチングを見て、内心苦笑いを浮かべつつそう感じながら打席に立った。

その初球

 

ククッ!

 

スローカーブが決まり、1ストライクとなった。

2球目

 

ストンッ!

 

SFFに空振り、追い込まれてしまった。

3球目はスライダーが外れ、4球目

 

ズバアアンッ!!!

 

インサイド140㎞の真っ直ぐに空振り三振に終わった。

 

『最後は140㎞ストレートに空振り三振ー!』

 

『真田君から見たら140㎞の数字以上にノビを感じてるのではないでしょうか。』

 

真田(はは、狙い通りのストレートだったんだけど、やっぱ更にキレてんな・・・)

 

そう思いながら、真田はベンチに戻った。

次の平畠は、2球目のスローカーブを打ったがショートゴロに終わり、薬師は初回に続き三者凡退に終わった。

 

倉持「良いぞ、足立!」

 

春市「ナイスピッチ!」

 

惇「あざっす!」

 

そう言い、ベンチに戻ると

 

栄・暁「「ナイスピッチ!」」

 

栄純と暁からコップを差し出された。

その横で

 

御幸「・・・。」

 

御幸は左手を必死に冷やしていたのだった。

3回表の青道の攻撃は、一巡して倉持が打席に立った。

その初球

 

キーン!

 

しぶとくショートの頭上を越えるヒットで再び出塁した。

 

栄純「イタチ様キター!!イタチ様出塁!!」

 

暁「イタチで良いんだ・・・」

 

これに、栄純はそう倉持をイタチにたとえて彼の出塁を喜んだ。

 

倉持「チーター様で良いだろ!!」

 

・・・倉持、チーター様気に入ってたんだな。

 

秋葉(ランナー気にしすぎてたら状況は悪くなるばかりだ。バッター集中でいこう、優太・・・)

 

秋葉(正直、この人を止められる気がしない・・・)

 

秋葉は、倉持の足を止められないと感じ、とにかく目の前のバッターに集中しようと三島にサインで伝えた。

 

三島「だからって、みすみす走らせて良いのかよ!」

 

しかし、三島はこのサインを無視し、2回一塁に牽制を入れた。

そして、春市に対しての初球

 

真田「スチール!」

 

倉持は走り

 

カーン!

 

春市は甘く入った初球を捉えてエンドランを仕掛けた。

倉持は三塁に向かい、薬師のセンター阿部は三塁は間に合わないと判断し、米原に送球した。

その隙を青道の三塁コーチ三村は見逃さず

 

秋葉「ホ・・・ホーム!!」

 

腕を回して倉持をホームに向かわせ

 

倉持「らぁ!」

 

2点目のホームを踏んだ。

 

惇「ナイスランです、洋さん!」

 

倉持「ああ!やってやったぜ!ざまーみろ!」

 

惇「まるであの日本シリーズの伝説の走塁みたいっすよ!」

 

倉持「ずっと三村と狙ってた走塁だったからな!」

 

倉持「お前のバッティングで一気に畳みかけてやれ、足立!」

 

惇「うっす!」

 

そう、倉持の言葉に背中を押され

 

『3番ピッチャー、足立君。』

 

惇が打席に立った。

その初球

 

キーン!

 

フォークを捉え、センター方向に高々と舞い上がった。

しかし、後数㎝届かずフェンス直撃となったがツーベースヒットとなり、無死二、三塁の形を作ったのだった。

そして、御幸が打席に立つと、薬師ベンチが動き、ピッチャー交代した。

 

『薬師高校、ピッチャー交代をお知らせします。』

 

観客は真田が上がるのかと思ったが

 

『三島君に替わりまして、ピッチャー、轟君。』

 

マウンドに上がったのは真田ではなく、轟だった。

 

惇「マジか・・・」

 

惇(ここで轟かよ・・・)

 

御幸(ナベによると、低い姿勢から力のある球を投げてくるんだよな・・・)

 

御幸(後は打席で確かめてみるか・・・)

 

御幸も、そう思いながら打席で構えた。

その初球

 

御幸「っ!」

 

バチン!

 

顔近めのボールを投げ込まれ、御幸は驚きつつも咄嗟に避け、間一髪で何とかなった。

 

惇(コイツ・・・意外とボールに力あんな・・・)

 

惇は、二塁のベース上で轟のボールにそう感じていた。

2球目も高めに外れたが3球目

 

バチン!

 

外低めにしっかり決まり、御幸は空振り

 

バチン!

 

3球目も良いコースに決まり、御幸を追い込んだ。

 

惇(外れたと思ったら良いコースにズドンと決まる・・・)

 

惇(カズさんが苦手な典型的なタイプのピッチャーだよな・・・)

 

惇は、御幸と轟の対決を見てそう思っていた。

 

御幸(苦手だからって、そう簡単に打ち取られるわけにはいかねーな・・・)

 

御幸(皆で作ったチャンスを打たなきゃ、4番じゃねぇ・・・)

 

そう思い、御幸は構えた。

そして4球目。少し甘く入ったが力のある球が投げ込まれ、御幸はその球威に押されそうになった。

 

御幸(利き腕で・・・押し込む!)

 

キーン!

 

しかし、前の試合で惇から聞いたバッティングで逆方向に飛ばした。

打球はレフト方向に飛び、伸びなかったが犠牲フライには十分な飛距離となり、春市はタッチアップして3点目のホームを踏んだ。

 

御幸(チッ!この感覚、マジでムズい・・・)

 

御幸は、利き腕で押し込む技術がまだ上手くいかず、内心悔しい気持ちになった。

 

「流石御幸だな。犠牲フライか・・・」

 

「よく打ったな。結構球威あったぞ。」

 

観客も、これにはそう答え

 

カルロス「ああいうピッチャー捉えるの、難しいよな。」

 

カルロスは轟の球威にそう答え

 

白河「けど、犠牲フライを打った。4番として最低限の仕事はしたでしょ。」

 

白河は御幸の打席結果に最低限のことはしたと言った。

その時

 

鳴「一也はそんな器用に逆方向に飛ばせるタイプじゃないけど、何とか押し込んだって感じだったな。」

 

成宮がそう言いながら多田野と共に現れた。

これには

 

原田「やっと来たか・・・」

 

原田は呆れ顔でそう呟いた。

その間、前園と白州は轟の球威に手こずり、打ち取られてしまい、青道の攻撃は終わったのであった。




投稿出来ました。

ホント、試合描写は書くの難しいです・・・(涙)

因みに主人公の利き腕で押し込んで打つは、とあるバッターの理論を使いました。

ヒントは、通算1865安打、360本塁打のバッターです。

こういった技術があったから、彼は広角に打球を飛ばせたんだなと思いました。

ホント、凄いバッターでした。

長くなってしまい、申し訳ございません。

また、明日いよいよ甲子園開幕です!!

選手の皆さん、甲子園という夢の舞台で精一杯、全力でプレーして下さい!!

頑張れ!!

それでは、また!!


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112話

112話です。


轟のボールに前園、白州が打ち取られてしまった青道。

そのピッチングに

 

拓馬「スゲぇな、轟って人!」

 

瀬戸は興奮を隠せなかった。

 

拓馬「打つ方だけじゃなく投げる方も怪物クラスかよ。」

 

拓馬「御幸さんも犠牲フライ打ったとはいえ、ストレートで押し切ったしな。」

 

しかし

 

拓馬「けど、今日の惇さんは一番スゲぇかもな!」

 

拓馬「ストレートも変化球も前見たときよりキレてるし、構えたところにビッタビタに投げれてるしな!」

 

拓馬はそれ以上に惇の良さにそう興奮しながら光舟に話しかけた。

そう話している中、惇は7番先頭の阿部を打ち取った。

その時、惇の様子に少し変化がみられた。

 

惇(何だ・・・この感覚・・・思い通りにボールが操れるし、体も動けるんだけど・・・!)

 

自身の頭に思い描いていた動きのイメージがピタッと嵌まる感覚になっていた。

そして、8番米原に対しての初球は外のスローカーブ、2球目はインハイ141㎞の真っ直ぐで追い込むと

 

ズバアアンッ!!!

 

米原「うっ!」

 

最後はインサイドに140㎞の真っ直ぐが決まり、見逃し三振に打ち取った。

その時

 

米原「っ!」

 

米原の背筋から、どこか寒気を感じマウンドを見ると

 

惇「・・・。」

 

マウンド上の惇が、いつも以上に大きく見えたのだ。

米原だけじゃなく

 

前園(何や・・・この感じ・・・?)

 

春市(足立君・・・?)

 

倉持(足立・・・?)

 

バックも、惇がいつもの雰囲気と違う事に気付き

 

暁「惇・・・?」

 

栄純「何だ・・・これ・・・?」

 

栄純と暁もそう感じ、彼らの周りも同じ感覚を味わった。

この時

 

片岡(まさか・・・足立・・・!)

 

御幸(ゾーンに・・・入ったのか!?)

 

片岡と御幸は、惇がゾーンに入った事に気付いた。

 

拓馬「・・・なあ、光舟。」

 

光舟「何だ・・・?」

 

拓馬「俺らも初めて見るよな・・・?」

 

光舟「ああ・・・これが・・・」

 

光舟「惇さんの本当の姿なのかもしれないな・・・」

 

この時、瀬戸と奥村はそう惇を見て言った。

次の森山には、初球のスローカーブでストライクを取り、2球目には外低めの140㎞の真っ直ぐで追い込んで

 

ズバアアンッ!!!

 

最後はインハイ140㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、3アウトチェンジとなった。

4回の表の青道の攻撃は、樋笠から始まったのだが、轟のボールに押され、三者凡退に終わった。

その裏の薬師の攻撃は、一巡して1番秋葉から始まったのだが

 

ズバアアンッ!!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

三島「な・・・何だよこれ・・・!」

 

三島(さっきよりボールのノビが違う・・・!それに、何て威圧感だ・・・!)

 

秋葉はインハイ140㎞の真っ直ぐを打ち上げサードフライに、2番増田はSFFで空振り三振に倒れ、御幸も何とか体の前で止めアウトにし、3番の三島には真ん中高め141㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、雄叫びを上げた。

 

「おいおい・・・もう二巡目だぞ・・・」

 

「いくら何でも薬師が殆どまともに打てないなんて・・・!」

 

観客も、惇のこの姿に驚きを隠せなかった。

 

拓馬「今の惇さんのボール、薬師の選手はどう感じてるんだろうな。」

 

光舟「多分、今までの2倍ほど速く感じてるはずだ。」

 

光舟「ゾーンに入ったら、余計な思考が無くなってプレイに没頭する。」

 

拓馬「つまり、惇さんの集中力は・・・」

 

光舟「ああ・・・最早極限状態だ。」

 

ベンチに戻っても

 

栄純「・・・。」

 

暁「・・・。」

 

栄純と暁は、惇にコップを差し出せなかった。

周りも、惇に声をかけられなかった。

それだけ、惇の雰囲気は普段と大きく違っていたのだ。

惇のこの姿に

 

吉川「何か・・・足立君怖いです・・・」

 

藤原「そうね・・・ねえ唯。」

 

唯「はい。」

 

藤原「足立君のこの姿、見たことはあるの?」

 

唯「いえ、初めて見ました。」

 

藤原「そうなの?」

 

唯「はい・・・」

 

スタンドのマネージャー達もそう話しており

 

結城「この姿・・・あの日以来だな。」

 

原田「どういう意味だ、結城?」

 

結城「俺が足立のあの姿を見たのはこれで2度目でな。」

 

結城「あの日、御幸に頼まれてアイツの本気を見るために打席に立ったのだが、何も出来なかった。」

 

原田「おいおい・・・あの決勝も凄かったけど、あれより上かよ。」

 

結城「まあ・・・この状態になれるのはそう簡単じゃないからな。本人も言ってたし。」

 

原田「そうか・・・」

 

結城と原田もそう話し

 

カルロス「ヤベぇな、これは・・・」

 

白河「あんな姿、初めて見た・・・」

 

鳴「・・・。」

 

多田野「凄いですね、足立君。」

 

稲実主力組もそう話していた。

 

御幸「・・・。」

 

一方の御幸は、左手を冷やしながら

 

御幸(あの姿・・・あの日以来か・・・)

 

あの時を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

それは、関東大会が終わった後の話だ。

大会が終わった後、御幸は惇がまだ全力を出していない事に気付き、本当の姿を見せてくれと頼んだのだ。

 

惇「いや別に良いっすけど・・・何でっすか?」

 

御幸「いやぁ・・・お前の本気をちょっと見て見たくてな。」

 

惇「そっすか・・・そんじゃあ、哲さん呼んでくれませんか?」

 

惇「この状態でも投げれますけど、バッターいた方が良いので。」

 

御幸「・・・分かった。」

 

そして、御幸は結城を呼んで1打席勝負させたのだ。

 

御幸「忙しい中すいません。」

 

結城「いや、良いんだ。足立のボールをバッター目線で見て見たかった。」

 

そう言うと

 

結城「良いぞ。いつでも来い。」

 

結城はオーラを出しながら構えた。

その姿は、まさに名門青道の4番であり、キャプテンに相応しい姿だった。

 

惇「そんじゃあ、いきますね。」

 

惇はそう言うと、一度目を閉じ

 

惇「・・・。」

 

セットポジションに構えたその瞬間

 

御・結「「っ!!」」

 

一気に途轍もない威圧感が噴き出て、御幸と結城の背筋から得体の知れない寒気が出てきた。

その初球

 

ズバアアンッ!!!

 

結城「っ!?」

 

御幸の構えたところに寸分の違いもなく真っ直ぐが投げ込まれ、結城は何一つ反応できなかった。

 

御幸「っ~!」

 

ボールを受けた御幸は、この強烈なボールに苦痛で歪んだ。

 

結城「大丈夫か、御幸?」

 

御幸「はい、大丈夫です。」

 

結城の気遣いの言葉に、御幸はそう答え

 

御幸「ナイスボール!」

 

惇に返球した。

2球目

 

ズバアアンッ!!!

 

同じコースに真っ直ぐを投げたのだが

 

結城「っ!」

 

結城のバットは空を切った。

 

結城「これは凄いな・・・」

 

御幸「そうっすね・・・俺も手がちょっと・・・」

 

結城「ああ。俺も少し怖いな・・・」

 

この時、結城は惇の姿に恐怖を感じていた。

そして3球目

 

バシィィンッ!!

 

最後も真っ直ぐで、結城のバットは最後まで掠ること無く

 

御幸「クッ!」

 

御幸も、最後のボールを受け取れず、ミットが弾かれた。

 

惇「ふぅー・・・」

 

その時、惇が一息ついて

 

惇「手ぇ、大丈夫っすか?」

 

そう御幸に聞いた。

 

御幸「ああ、大丈夫だ。これがお前の本当のボールか・・・」

 

惇「まあ、そう都合良く使えないっすけど。」

 

御幸「成程・・・突然で悪かったな。」

 

惇「いえ、とんでもありません。」

 

御幸「哲さんも、ありがとうございます。」

 

結城「別に構わんさ。こちらこそ、良い経験させてもらったよ。」

 

そう言い、この日は解散となった。

 

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

 

御幸(昨日受けた時からボールがキレてるなと思ってたし、構えたところにドンピシャに決まるなと思ってたけど、やはりその予兆だったか・・・)

 

御幸(持ってくれよ、左手!)

 

そう思いながら、御幸は腫れ始めた左手を見ていた。

 

倉持「・・・。」

 

その様子を、倉持はジッと見ていたのであった。




投稿出来ました。

上手く書けたか分かりませんが、分かりにくかったらお許し下さい(土下座)

甲子園始まりましたね!!

仙台育英、初戦突破したけど、この投手陣が9点取られたのはビックリしたのと同時にやっぱ全国レベルだなと思い、「2度目の初優勝」はそんな簡単じゃないんだなと感じました。

けど、最後まで「2度目の初優勝」を諦めず頑張って下さい!!

また、活動報告にて皆さんにお聞きしたいことがありますので、見ていただけると幸いです。

それでは、また。


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113話

113話です。


5回表の青道の攻撃。先頭の倉持が打ち取られ、2番の春市が打席に立っていた。

初球はファールにし、2球目は外れ、3球目はファールにした。

 

栄純「ナイス、春っち!」

 

これに、栄純は声援を送った。

 

春市(ストレートだけしか投げてないんだ・・・そう簡単に打ち取られるわけには・・・!)

 

そう思い構えたその時

 

春市「っ!」

 

春市の顔近くにまたボールが来て、当たりそうになった春市だったが何とか避け、そのボールがバットのグリップ付近に当たりファールになった。

 

春市(凄い・・・これが轟君のボール・・・)

 

雷市のボールに、春市は素直にそう感じた。

そして1球外れ並行カウントになった6球目

 

ガキッ

 

真っ直ぐがインコースに来て春市は打ったのだがボテボテのピッチャーゴロとなり、2アウトとなった。

 

前園「あのボール、インコースにシュートしてくるから厄介やな。」

 

御幸「左打席もな。」

 

この時、前園と御幸は雷市のボールをそう評し

 

白州「ああ。打者の手元でボールが暴れながら飛び込んでくるな。」

 

白州もそれに続いた。

 

秀明「もしかして、ボールの握りなんか気にしてないのではないでしょうか。」

 

白州「恐らくな。」

 

これに

 

春市「それって、栄純君の・・・」

 

春市は栄純と同じかと思ったが

 

白州「いや、沢村のクセ球より厄介だな。スピードもあるしな。」

 

白州は栄純のボールより厄介だと言った。

そんな中

 

キン!

 

惇「チッ!」

 

惇(この球威、打席で見ると結構スゲぇな・・・)

 

惇がセンターフライに打ち取られ、この回三者凡退無失点に抑えられてしまった。

これには

 

「ヤベぇ・・・轟の球超ヤベぇ・・・!!」

 

「ああ!青道の攻撃をゼロに抑えたぞ!」

 

球場の雰囲気が少し変わった。

 

拓馬「この回3人で〆たな。」

 

光舟「ああ・・・」

 

瀬戸と奥村も球場の雰囲気を肌で感じた。

そして、その裏の薬師の攻撃で打席に立つのは

 

『4番ピッチャー、轟君。ピッチャー轟君。』

 

雷市だった。

 

「さあ、第2ラウンドだ!!」

 

「最初の打席はレフトフライだったけど、この打席ではどうなるんだ!!」

 

観客も、惇と雷市の第2ラウンドに盛り上がりを見せた。

その初球

 

ククッ!

 

スライダーが外れボールとなった。

2球目

 

キン!

 

真っ直ぐを捉えた雷市だったが

 

『セカンド正面!足立対轟の第2ラウンドはセカンドライナーに終わりました!!』

 

セカンド春市の正面のライナーで終わった。

 

御幸「1アウト!」

 

御幸(マジか・・・ゾーンに入った足立のボールをこうも対応するなんて・・・!)

 

御幸は、ゾーンに入った惇のボールを対応できた雷市に内心驚きを見せた。

しかし

 

惇「カズさん!1アウトっすよ!」

 

惇が御幸にそう声をかけた。

 

御幸(そうだな!まずは切り替えないと!)

 

これに、御幸は改めて気持ちを切り替え、マスクを被った。

5番の真田が打席に入ったその初球

 

ズバアアンッ!!!

 

外に142㎞の真っ直ぐが外れ、ボールとなった。

2球目

 

ククッ!

 

スライダーが外に決まった。

 

真田(やっべ・・・これは最初の打席よりキレてんぞ・・・!)

 

真田(つーか雷市、さっきは良くこのボールを打ったな・・・)

 

惇のボールに、真田は冷や汗を掻きながらそう思った。

3球目

 

ズバアアンッ!!!

 

外高め141㎞の真っ直ぐを空振らせ、追い込んだ。

そして

 

ズバアアンッ!!!

 

『見逃し三振ー!!真田、足立のボールに手も足も出ず!!これで7つ目の三振です!!』

 

最後はインサイド140㎞の真っ直ぐに手が出ず、見逃し三振に打ち取られてしまった。

そして

 

ズバアアンッ!!!

 

惇「らああああっ!!」

 

平畠は、最後外低めの142㎞の真っ直ぐに空振り三振に打ち取られ、惇は雄叫びを上げながらマウンドを降りた。

 

御幸「っつ~・・・!!」

 

その際、御幸はミットをつけている左手を痛そうに抑えており

 

前園「・・・。」

 

前園(まさか・・・御幸・・・!)

 

この様子を見た前園は、御幸の手の状態を察したのであった。




投稿出来ました。

かなり内容がぐちゃぐちゃですが、お許し下さい(土下座)

それと、本日甲子園が終わりましたね!!

まさかの優勝が慶応!!

107年ぶりの日本一なんて凄いです!!

本当におめでとうございます!!

仙台育英の皆さん、「2度目の初優勝」叶わず、悔しい結果に終わってしまったけど、素晴らしい試合をありがとうございます!!

また来年、「2度目の初優勝」目指して、頑張って下さい!!

慶応の皆さん、本当におめでとう!!


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114話

114話です。

お待たせして大変申し訳ございません。

それでは、どうぞ。


6回表の青道の攻撃。御幸が打席に立った。

その初球

 

バチン!

 

御幸「っ!」

 

膝元に真っ直ぐが決まり

 

バチン!

 

2球目も決まって

 

バチン!

 

雷市のボールに1球も掠りもせず、三球三振に終わった。

 

『三球三振!!この打席、主砲のバットから快音聞かれず!』

 

御幸(クッ・・・!左手に・・・力が入らねー!!)

 

この時、御幸は自身の左手の状態が悪化してるのを感じていた。

そして

 

御幸「・・・悪ぃ。」

 

前園「っ!」

 

ベンチに戻る際に、すれ違いに前園に謝罪したのだった。

御幸のこの打席結果に

 

貴子「御幸君が三球三振なんて・・・」

 

伊佐敷「あのヤロォ、どうしたんだ?」

 

亮介「初球の見逃し方もらしくなかっただけど、スイングがちょっと鈍かったね。」

 

落合「スイングがいつもより鈍かったですね・・・それと・・・少し左手を気にしてるような・・・」

 

青道サイドのスタンドにいる誰もが少し感じており

 

カルロス「らしくねぇな・・・」

 

白河「うん。」

 

鳴「いつもと比べてスイングが鈍いな・・・」

 

稲実の主力も感じていた。

そして、前園が打席に立つと

 

キン!

 

前園は雷市のボールに必死に食らいついていた。

 

前園(らしくない事言いやがって・・・)

 

前園(あのボケ・・・もしかして足立のボールを受けて左手痛めとるんじゃ・・・!)

 

この時、前園は御幸の左手に対しそう感じ

 

前園(アイツは弱みを見せる奴やない・・・そんな事分かってたはずやろ・・・!)

 

前園(俺は・・・ホンマに鈍い奴や・・・!)

 

キン!

 

前園(アイツの覚悟に気付いてやれんで何が副キャプテンや!!)

 

キン!

 

「合ってる合ってる!」

 

春市「タイミング合ってますよ、ゾノさん!」

 

惇「飛ばせー!ゾノさーん!」

 

栄純「ゾノ先輩ー!!」

 

追い込まれても必死に粘り食らいつき、並行カウントに持ち込んでいった。

 

倉持(行け、ゾノ!)

 

伊佐敷(急造投手に振り回されんな!テメーが打たねーで誰が打つんだ!)

 

そして、粘って9球目

 

バチン!

 

高めに外れ、フルカウントとなった。

その時

 

雷市(スリーボール・・・)

 

雷市(何だこれ?マウンドって・・・こんな場所だったっけ・・・?)

 

雷市はマウンドに立つ恐ろしさと前園の威圧感に呑み込まれてしまった。

その状態で投げ込まれた10球目

 

キーン!

 

雷市「っ!」

 

振り抜いた打球は詰まりながらもライト上空に舞い上がり

 

平畠「嘘・・・だろ・・・?」

 

そのままライトスタンドに吸い込まれていった。

 

『は・・・入ったー!ホームラーン!』

 

『詰まった当たりでしたが豪快にフルイングされたその打球は大きな弧を描いてスタンドに入りましたー!!』

 

『青道、前園のソロで貴重な追加点となる4点目が入りましたー!!』

 

前園「じゃあああああ!!」

 

これに前園は、ド派手なガッツポーズをしながら雄叫びを上げ、ダイヤモンドを一周した。

 

伊佐敷「やるじゃねぇか、ゾノ!!」

 

亮介「少し詰まったけど、力で持って行ったね。」

 

結城「ああ・・・ナイスバッティングだ!」

 

原田「・・・結城。何かで出てるぞ。」

 

吉川「貴子さん!!」

 

貴子「ええ!ナイス、前園君!!」

 

スタンドは、前園のホームランに大盛り上がりで

 

倉持「やったな、ゾノ!!」

 

前園「おお!!」

 

惇「ゾノさーん!」

 

倉持と惇は、前園に近付いてハイタッチを交わし大盛り上がりを見せた。

この勢いで続きたいところだが、雷蔵は雷市から真田にスイッチし、真田は雷蔵の期待に応えて何とか後続を絶った。

 

「ああー!流石真田!青道の攻撃を抑えたか!」

 

「でも、前園のホームランは大きいだろ!」

 

「そうだな。けど・・・ちょっと御幸が気になるよな・・・」

 

スタンドの観客も、真田の火消しと前園のソロに興奮する反面、打点がついたとはいえ、状態の悪い御幸が気になったのだった。

 

御幸「まだまだいけるな?」

 

惇「当然っすよ!」

 

御幸「よし!頼むぞ!」

 

惇「うっす!」

 

その時

 

前園「おい御幸!大丈夫なんやな?」

 

前園がそう御幸に尋ねた。

これに

 

御幸「・・・何が?」

 

と惚けたため

 

前園「何がやない!お前・・・!」

 

前園が左手の事で言いかけた時

 

倉持「・・・ゾノ。取り敢えず、一旦守備に集中しようぜ!追加点取った後なんだからよ。」

 

察した倉持がそう前園を窘めたのだが

 

前園「倉持・・・お、お前も・・・気付いとったんか?」

 

前園は倉持も御幸の状態に気付いてた事を察した。

 

倉持「・・・ちっ。」

 

前園「おい倉持!」

 

これには、ベンチの空気が悪くなった。

すると

 

片岡「どうなんだ、御幸?」

 

片岡が、そう御幸に聞いた。

その目は、嘘は許さないと言ってるような目だった。

 

御幸「・・・自分はいつも通りプレーしてるつもりですけど・・・犠牲フライ以外の2打席の内容が悪かったら流石に4番としてマズイですよね・・・」

 

惇「カズさん・・・」

 

この御幸の言葉に

 

栄純「そーなんで・・・」

 

栄純が何か言いかけたが

 

惇「栄純・・・」

 

栄純「っ!」

 

惇の威圧感に黙った。

 

御幸「もしプレーを見てチームの足を引っ張っていると思ったら、いつでも代えて下さい。」

 

御幸「自分は、監督の指示に従います。」

 

これに、御幸はそう目を逸らさずにハッキリと言った。

このベンチの様子に

 

丹波「どうした?ベンチ前で。」

 

流石に違和感を感じた3年生達。

 

クリス「まさかと思うが御幸・・・」

 

この時、クリスは御幸の状態を推理し、皆に話した。

 

伊佐敷「えっ?足立のボールに左手が?」

 

伊佐敷「けど、そんな素振り見せてなかったろ。これまで何球も足立のボールを多く受けてきたんだぞ。」

 

クリス「だが、今日の足立のボールは今までより遙かにキレが増している。そのボールに、受ける左手に限界が来てるんだろう。」

 

クリス「この試合、どことなくミットをはめてる左手を気にする素振り見せてたしな。」

 

伊佐敷「そう言われてみれば、確かに・・・」

 

これに、伊佐敷はそう呟きつつ

 

伊佐敷(あんのバカヤローが・・・)

 

そう心の中で怒った。

そんな中

 

片岡「分かった!俺が代われと言ったら代わるんだな。」

 

片岡「キャプテンだろうが4番だろうが、チームにとっても本人にとってもマイナスでしかないなら代える。お前の気持ちも関係ない。」

 

片岡「無理だと判断した時点で即代える!恨むなら、俺を恨め!」

 

片岡は御幸にそう厳しい言葉を言った。

しかし

 

片岡「それでも、プレーするのは俺じゃなく、今グラウンドに立っているお前達だ。」

 

片岡「スタンドにいる者。ベンチにいる者。全員を代表して試合に出ているお前達だ。」

 

片岡「そこに立つなら迷うな!目の前のプレーに全力を尽くせ!!」

 

片岡はそう言葉をかけると

 

片岡「お前達の!!青道の野球を見せてこい!!」

 

そう、力強く檄を飛ばした。

すると

 

「「「おおおーっ!!!」」」

 

ベンチの士気は最高潮に上がった。

 

御幸「・・・小野。準備しておいてくれよ。変なプレーしたらマジでこの人代えてくるから。」

 

惇「暁。栄純。恐らく俺も代えられるかもしんねーから、準備しといてくれよ。」

 

この青道バッテリーに

 

小野「・・・。」

 

暁「・・・。」

 

栄純「・・・。」

 

3人は深く頷き

 

御幸「行くぞ、足立!」

 

惇「うっす!」

 

前園「下位やけど、攻めるで!」

 

白州「いつも通りのピッチングをな!」

 

春市「後ろには僕達がいるから!」

 

倉持「お前の雄叫びで更にビビらせやがれ!」

 

御幸「さぁ、行こう!」

 

「「「らああああっ!!!」」」

 

こうして、最高潮の状態で青道は守備についたのであった。




お久し振りです!!

暫く投稿出来ず、大変申し訳ございません!!

中々お話の内容が纏まらず、ここまで延びてしまいました!!

これは全て、僕自身の力不足です!!本当にすいません!!

次のお話しもまだ纏められてないので、また時間がかかるかもしれませんが、お待ち下さい!!

それでは、また!!


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115話

115話です。

遅くなって大変申し訳ございません!!

それでは、どうぞ!!


守備についた青道ナイン。

そして、薬師の攻撃で、打席には7番の阿部が立った。

その初球

 

ククッ!

 

阿部「クッ!」

 

スローカーブから入り、阿部はタイミングをずらされたが何とかファールにした。

2球目はSFFが外れ3球目

 

ククッ!

 

「ボール!」

 

スライダーが僅かに外れ、1-2となった。

 

惇(マジか・・・これは手厳しい!)

 

御幸(どっちを取ってもおかしくはねーんだがしょうがねー!)

 

これに、惇は苦笑いを浮かべ、御幸は少し表情を歪めたがすぐに切り替えてサインを出した。

4球目

 

ククッ!

 

同じくスライダーを投げ空振らせた。

5球目

 

ズバアアンッ!!!

 

インサイドに141㎞の真っ直ぐを投げたが、外れてしまいフルカウントとなった。

 

『さあ、これでフルカウントとなりました!次は何を投げるか、足立!?』

 

サインを見て投げた6球目

 

キン!

 

高め142㎞の真っ直ぐを何とかファールにした。

 

「行けるぞ!!」

 

「阿部さーん!!」

 

この粘りに、薬師ベンチは盛り上がりを見せた。

 

御幸(さて・・・こうなったらスライダーで・・・)

 

この粘りを見た御幸は、そう思い惇にサインを出したが

 

惇「・・・。」

 

惇は首を横に振った。

 

御幸(何?なら・・・同じく真っ直ぐか?)

 

御幸は真っ直ぐのサインを出したが

 

惇「・・・。」

 

惇は再び首を振った。

 

御幸(なら・・・これか?)

 

そして、御幸がサインを出すと、惇は頷いた。

 

御幸(このボールか・・・まぁ、確かに決める時のこのボールはマジでキレるからな・・・)

 

そう思った御幸は、気を引き締めてミットを構えた。

そして、7球目

 

阿部(ん?真っ直ぐか?なら・・・打っ・・・)

 

阿部は真っ直ぐと思いタイミング合わせて振ったが

 

ストンッ!

 

阿部「っ!?」

 

それは真っ直ぐではなく、SFFだった。

御幸はそれを体で受け止め、一塁に投げて1アウトを取った。

 

惇「1アウト!」

 

前園「1アウト!」

 

春市「ナイスボール!」

 

倉持「良いぞ足立!」

 

樋笠「シュシュ!」

 

惇が人差し指を立ててそう言うと、バックは盛り立てた。

そして、薬師では8番の米原が打席に立った。

その初球

 

ククッ!

 

SFFが外れ2球目

 

ククッ!

 

今度はスライダーが入り

 

ククッ!

 

3球目はスローカーブを投げ、変化球3球で追い込んだ。

そして、4球目

 

キン!

 

米原は低め140㎞の真っ直ぐを打った。

打球は打ち取っていたが叩きつけるような感じで跳ね上がったのが幸いし、惇は何とか捕ったのだが

 

御幸「止せ!」

 

御幸の言葉で投げられず、バックスクリーンの掲示板のHにランプが点灯した。

 

『詰まりましたが高く跳ね上がったのが幸いし、内野安打となりました!薬師、今日初ヒットは6回に出ました!薬師、これが反撃の狼煙となるのか!』

 

これには

 

「よっしゃあああっ!!」

 

秋葉「ナイスラン、米さん!」

 

三島「よっしゃあああっ!!」

 

雷市「カハハハハ!!」

 

薬師ベンチは大盛り上がりを見せ

 

雷蔵(さあて・・・イケメン怪腕エースを崩してやるぜ・・・)

 

雷蔵は笑みを浮かべながら見ていた。

一方の惇は

 

惇(マジか~!まっ、しゃーねーか!)

 

悔しそうに苦笑いを浮かべたが、すぐに切り替え

 

惇「1アウト!」

 

そう人差し指を立てて御幸やバックに振り返って言って、打席に立った森山を見据えた。

その際、一塁の米原を見た時

 

惇(あっ、コレ刺せるわ。)

 

牽制で刺せると直感で感じていたのだった。

その初球

 

キン!

 

スローカーブを投げ、それを森山は打ったがレフトフライとなり、2アウトとなった。

そして

 

『1番キャッチャー、秋葉君。キャッチャー秋葉君。』

 

二巡目に入り、秋葉が打席に立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!!

 

143㎞の真っ直ぐが外に外れ2球目

 

キン!

 

142㎞の真っ直ぐが三塁方向に飛び、ファールとなった。

その次に

 

シュッ

 

緩い牽制球を投げた。

当然それは緩いため、米原は普通に帰塁出来た。

そして、惇はセットに構えたその時

 

ピュッ!

 

惇は鋭い動きで一塁に牽制球を投げ

 

「アウト!」

 

米原をアウトにした。

 

『ア、アウト!アウトです!!何と足立、出してしまったランナーを自らの鋭い牽制でアウトにしました!!薬師、やっとランナーを出しましたが、足立の鋭い牽制にやられました!!』

 

これには

 

御幸(マジかよ・・・あまり牽制入れない奴だけど、滅茶苦茶キレのある牽制じゃねーか!)

 

御幸(今まで見た事ねー!)

 

御幸も驚きで、今まで見たことが無いと感じるほどの鋭い牽制だった。

これに

 

前園「ナイスボール!」

 

前園(今の牽制・・・今まで見た中でホンマに綺麗な牽制やった・・・)

 

牽制球を受けた前園本人も同じ感情を抱いた。

 

春市「ナイス牽制!」

 

倉持「良い動きじゃねーか!」

 

樋笠「シュー!」

 

他のナインもそう言い

 

栄純「何だよ、今の動き・・・」

 

暁「・・・。」

 

川上「そんなに牽制しないけど、それでも良い牽制だったね。」

 

他の投手陣も、惇の牽制に驚きを隠せなかった。

 

貴子「す、凄い・・・!」

 

春乃「はい・・・!」

 

この二人も同じ感情を抱き

 

唯(良かった・・・!)

 

唯は、ホッとした表情を浮かべていた。

一方の薬師側は

 

米原「クソッ!あまり牽制しないから油断したが、何て鋭い動きなんだ!」

 

三島「チッ・・・」

 

秋葉「スゲぇ・・・」

 

真田「エグいわ、アイツ・・・」

 

雷市「カ・・・カハハ・・・」

 

少し意気消沈していた。

 

雷蔵(ヤベぇ・・・今のプレーはかなりデカい・・・!)

 

この流れに、雷蔵は頭を抱え込んでしまった。

そして、イニングは7回に入ろうとしていたのであった。




お久し振りです!!

中々お話しが纏まりまらず、今年ギリギリまでになってしまいました!!

大変申し訳ございません!!

けど、何とか投稿出来て良かったです!!

後、この投稿で今年最後の投稿とします!!

今年は本当に楽しい1年でした!!

侍ジャパンの世界一から始まり、慶応の107年ぶりの日本一、そしてオリックスと阪神の関西対決となった日本シリーズなどなど・・・。

充実した1年でした!

来年もまた良い年でありますように!!

さて皆様、良いお年を!!

それでは、また来年!!


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116話

116話です。

もう2月ですが、今年もよろしくお願いいたします。

それでは、どうぞ。


7回表の青道の攻撃は、8番の東条からだったが

 

キン!

 

真田「シャアアアッ!!」

 

『ファースト正面のゴロ!!薬師真田、最後は内に切れ込むカットボールで打ち取り、この回三者凡退に打ち取りました!!』

 

三者凡退に抑えられ、3アウトチェンジとなった。

その時真田は雄叫びを上げ、まだ諦めてないという姿勢を見せつけた。

 

惇「まだ諦めてないっすね、薬師は。」

 

御幸「そうだな。だが、それに呑まれたら終わりだ。行くぞ!」

 

惇「うっす!」

 

そして、青道ナインがそれぞれの守備位置に向かい、惇もマウンドに立った。

その初球

 

ズバアアンッ!!!

 

秋葉「クッ!」

 

142㎞の真っ直ぐに、秋葉は空振りし

 

秋葉(クッ・・・!また更にボールが伸びて・・・!)

 

その際、秋葉は惇のボールが更に良くなった事を感じた。

 

御幸(っつー!調子上げてきやがったな、足立!)

 

ボールを受けていた御幸も、惇が調子を更に上げた事を感じた。

2球目

 

ククッ!

 

秋葉「なっ!」

 

キン!

 

スローカーブにタイミングを外され、引っかけた秋葉は、セカンドゴロに打ち取られた。

 

前園「1アウト!」

 

春市「1アウト!」

 

そう言い、前園と春市は惇に人差し指を立てながら言った。

そして、増田が打席に立った。

 

ククッ!

 

初球はスライダーで空振りを取り、2球目と3球目は外れた。

そして4球目は

 

キン!

 

惇「キャッチャー!」

 

高く打ち上げ、御幸が捕って2アウトとなった。

そして、3番の三島が打席に立った。

その初球

 

ククッ!

 

内からスライダーを曲げ、ストライクを取った。

 

三島(クソッ・・・!)

 

そう内心呟きながら構えると

 

ズバアアンッ!!!

 

三島「っ!」

 

今度は外高めに142㎞の真っ直ぐが来て、それを三島は中途半端なスイングをしてしまい、2ストライクと追い込まれてしまった。

 

三島(クソッ・・・何を打てば良いんだ・・・!)

 

これには、三島は顔を歪ませながら構えた。

そして

 

ズバアアンッ!!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

ド真ん中に今日最速145㎞の真っ直ぐが来て、三島は何も出来ず、見逃し三振に終わり、惇は気合の雄叫びを上げながらベンチに戻った。

 

前園「ナイスボール!」

 

倉持「ナイスボール!」

 

春市「ナイスピッチ!」

 

その際、前園らが惇のピッチングにそう声をかけた。

そして、惇はそのままベンチ裏に行った。

 

惇「フゥー・・・」

 

そして、ベンチ裏に行くや、息を吐いた。

 

信二「ナイスピッチ!調子上げてきたな!」

 

その時、背後から金丸が現れ、そう声をかけられた。

 

惇「ああ、信二か。つっても、薬師の打線は侮れねーけどな。」

 

信二「そうだな。ほれ。」

 

そして、信二はペットボトルを惇に渡した。

 

惇「ああ、サンキュ・・・」

 

そう言い、受け取ろうとしたその時

 

ドッ

 

惇の手からペットボトルがすり抜けるかのように落ちてしまい

 

信二「悪い・・・」

 

そう謝った信二が拾って顔を上げると

 

信二「?」

 

惇「・・・。」

 

惇が、目を丸くして自身の右手を見つめていたのであった。




投稿出来ました!

今年初の投稿です!

上手く内容が纏まらず、こんなに遅くなってしまいました!

遅くなり、大変申し訳ございません!!

今日から春季キャンプが始まりましたね!

今年は何処のチームが優勝するのかな・・・?

個人的には、ホークスファンなので、ホークスの王座奪還が見たいです!

そして、大きな怪我無く行って欲しいです!!

それでは、また!!


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117話

117話です。


8回表の青道の攻撃は、2番の春市からだった。

その初球

 

カーン

 

春市はシュートを迷わず振り抜き、綺麗にセンター前に弾き返した。

 

『先頭の小湊、真田の初球のシュートを捉え出塁しました!』

 

惇「ナイバッチ春市ー!」

 

これに、次に打席に立つ惇はそう言いつつ

 

惇(スゲェ・・・コイツ迷わずに振り抜いたな・・・)

 

春市の相変わらずの思い切りの良さに内心驚きながら打席に立った。

 

倉持「さぁ続こうぜ、足立ー!」

 

秀明「行けー!」

 

惇に声援を送る中

 

信二「・・・。」

 

信二は先程の事を思い出していた。

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

目を丸くしながら自分の右手を見つめている惇。

 

信二「・・・大丈夫か、惇?」

 

これに、信二は心配そうに声をかけると

 

惇「・・・ん?あぁ・・・悪い、ちったぁ気ぃ抜けてたわ。」

 

惇は笑みを浮かべながらそう言い、ペットボトルを拾って飲むと

 

惇「点差はあるけどあの薬師の打線。油断してっと呑まれちまう。」

 

惇「気持ち入れ直さねーとな。」

 

そう、惇は獰猛な笑みを浮かべながら言ったのだった。

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

信二(確かに今日の惇の真っ直ぐと変化球のキレ、そしてコントロールは今まで見た中で完璧だ。)

 

信二(何より、マウントでの気迫と威圧感は、これまでと比べて桁違いだ・・・)

 

信二(けど・・・それでも薬師の打線のプレッシャーは凄いのか・・・)

 

そう内心思いながら打席に立った惇を見ていた。

すると

 

キーン!

 

インサイドのシュートを完璧に振り抜いた惇の鋭い打球は三塁線に向かったが

 

雷市「かははは!」

 

雷市が飛びつき抜けるのを防いだ。

しかし

 

真田「一塁!」

 

打球が鋭かったのがあったからか、二塁は間に合わず真田の指示で一塁に投げてアウトにした。

そして

 

『4番キャッチャー、御幸君。キャッチャー御幸君。』

 

御幸が打席に立った。

 

伊佐敷「ここまでノーヒットか・・・」

 

亮介「点は取ってるけど、まだ2イニング残ってるから、取れるだけ取っておきたいね。」

 

亮介「それに・・・4番がノーヒットっていうのもなんか嫌だし。」

 

結城「・・・。」

 

これに、3年生達はそう言い御幸を見た。

その初球

 

ズバン!

 

胸元に真っ直ぐが外れボールとなった。

2球目

 

ズバン!

 

インサイドの真っ直ぐを空振ったが、左手がバットから離れてしまった。

この様子に

 

結城(ああも簡単に左手が離れるなんて・・・今までの御幸ならあり得ない事だ・・・)

 

結城(左手に何か違和感があるのか・・・?)

 

結城は御幸の不調を感じていた。

そんな中3球目

 

キン

 

外の真っ直ぐをファールにした。

4球目は高めに外れ5球目

 

キュ!

 

インサイドにカットボールが来たが、僅かに外れフルカウントとなった。

 

秋葉(クッ・・・コースは悪くなかったけど・・・!)

 

これには、秋葉はマスク越しで悔しそうに歪め

 

真田(マジかよ・・・結構良い感じだったんだけどな・・・)

 

真田も、内心悔しそうにしていた。

6球目は外の真っ直ぐをファールにした。

そして、7球目

 

秋葉「っ!」

 

真田(しまっ・・・!)

 

インサイドに投げようとしたカットボールが高めに抜けてしまった。

 

御幸(手の痛みなんか・・・関係ねー!押し込むように・・・振り抜く!)

 

それを御幸は逃さず

 

キーン!

 

完璧に捉えた。

その打球は綺麗な放物線を描き、スタンド中段に飛び込んだ。

 

『は・・・入ったー!ホームラーン!』

 

『ここまでノーヒットだった青道のキャプテン御幸、フルカウントからのボールを見事に捉え、大きな弧を描きながらライトスタンドに運びました!』

 

伊佐敷「よっしゃああ!」

 

亮介「綺麗なホームランだったね。」

 

結城「ああ・・・実に見事なスイングだ。」

 

3年生達は、御幸のホームランに興奮し

 

倉持「やっとか、キャプテン!」

 

栄純「やっとキャプテンの自覚を見せましたね!」

 

秀明「なんで上から目線なの、沢村?」

 

ベンチも、御幸のホームランに盛り上がった。

・・・秀明、それは触れるな。

 

惇「カズさん!」

 

そして、最後に惇と御幸がハイタッチを交わした。

打たれた真田は、暫く呆然としたが、すぐに切り替え後続を断ち切った。

 

「これはもう決まったかな・・・凄いホームランだったな!」

 

「ああ、そうだな!流石青道のキャプテン!」

 

「けど、薬師の打線は侮れねーぞ。轟がこの回の先頭だし。」

 

「だけど、今日の足立の前に何も出来てないじゃないか・・・」

 

スタンドの観客は皆そう話していた。

 

御幸「行くぞ、足立!」

 

惇「うっす!」

 

倉持「いつも通りねじ伏せろ!」

 

春市「打たれても僕達がいるから!」

 

前園「攻めたれよ、足立!」

 

その声を背中に受け、惇はマウンドに上がったのだった。

そして、薬師の攻撃。打席に立つのは

 

『4番サード轟君。サード轟君。』

 

雷市が打席に立った。

 

『さぁ、足立と轟の第3ラウンド!ここまで足立に抑え込まれている轟!』

 

『この打席ではどうなる!』

 

「さぁ、第3ラウンドだ!」

 

「第1打席はレフトフライ。第2打席はセカンドライナー。この打席は!」

 

実況は勿論、観客も盛り上がりを見せた。

その初球

 

ズバアアンッ!!!

 

外に143㎞の真っ直ぐが決まり、雷市はそれを見逃した。

2球目

 

ズバアアンッ!!!

 

高めに144㎞の真っ直ぐが外れ3球目

 

ククッ!

 

スライダーに空振らせ、追い込んだ。

そして、4球目

 

ズバアアンッ!!!

 

惇「シャアアアッ!!」

 

インハイ145㎞の真っ直ぐに雷市は空振り三振に終わり、惇は気迫の雄叫びを上げた。

 

『最後はインハイのストレート!!轟雷市、この試合も足立に一本も打てず、最後は空振り三振に終わりましたー!』

 

前園「ナイスボール!」

 

春市「1アウトー!」

 

倉持「ナイスボール!」

 

バックも、この気迫に乗って更に声を上げ

 

吉川「足立君ー!ナイスボール!」

 

藤原「ナイスボール、足立君!」

 

スタンドも、そう声を上げた。

そんな中

 

唯「・・・?」

 

唯(何だろう・・・この感じ?)

 

唯は、惇の様子に上手く言えない違和感を感じたのであった。




投稿出来ました。

相変わらず内容に違和感ありますが、お許し下さい(土下座)

しかし、早くペナント開催して欲しいですね・・・!

待ちきれませんよ(笑)

それでは、また!


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118話

118話です。


惇の様子に何とも言えない違和感を感じた唯。

その様子に

 

藤原「どうしたの、唯?」

 

藤原が気付き声をかけ

 

吉川「唯さん?」

 

唯「あっ・・・いえ、ちょっと・・・」

 

それに、唯はそう答えた。

 

藤原「足立君がどうかしたの?」

 

これに、藤原が惇絡みか聞くと

 

唯「・・・上手く言えないんですけど、惇君おかしくて。」

 

唯が、素直にそう言った。

 

藤原「おかしい?」

 

唯「はい・・・」

 

唯のこの言葉を聞いて

 

藤原「・・・取り敢えず、次の真田君に投げる姿見てみようか?」

 

藤原はそう唯に言った。

これに、唯は素直に従いマウンドを見た。

そして、真田が打席に立ったその初球

 

ククッ!

 

外へ逃げるスライダーを空振らせ2球目

 

ズバアアンッ!!!

 

同じく外に144㎞の真っ直ぐが決まり、あっさり追い込んだ。

3球目

 

ストンッ!

 

インコースにSFFを投げたが、真田がギリギリでバットを止め、御幸も何とか身体で止めていた。

 

真田(っぶね~!ホントに真っ直ぐと区別つけらんねーから・・・!)

 

これには、真田は内心そう呟いた。

4球目

 

キン!

 

143㎞の真っ直ぐをファールにした。

5球目

 

キン!

 

少し落ち幅を変えたSFFを引っかけ、それを前園が難なく捌き、ベースカバーに入った惇にトスして2アウトを取った。

この様子を見て

 

藤原「特におかしい様子は無かったわね・・・」

 

藤原はそう唯に言った。

 

吉川「私もそう思います。唯さんの気のせいでは無いでしょうか?」

 

吉川も、唯にそう言ったのだが

 

唯「・・・けど、何だかおかしいです。」

 

唯は、それでも意見を変えなかったのだった。

しかし、惇の違和感に気付いたのは唯だけじゃなかった。

 

光舟「・・・惇さん、おかしいな。」

 

拓馬「は?」

 

この日観戦に来ていた光舟も気付いた。

 

拓馬「何がおかしいんだ?」

 

これに、光舟と一緒に観戦に来ていた拓馬がそう尋ねると

 

光舟「ほんの僅かにリリースポイントがずれた。」

 

光舟「轟さんを空振り三振に打ち取った時の真っ直ぐ、スピードもノビも悪くは無かったが、少し抜け気味だった。」

 

光舟「また、真田さんに投げた3球目のSFFも少し引っかけ気味だった。」

 

光舟はそう拓馬に言った。

 

拓馬「疲労が出たんじゃねーのか?」

 

拓馬もそう言ったが

 

光舟「この程度の球数で、惇さんが疲れる筈が無い。」

 

光舟はそう返した。

 

拓馬「・・・お前、惇さんの事、よく見てるな・・・」

 

光舟「あの人のボールを多く受けたのは俺だ。俺が一番よく知ってる。」

 

光舟は、拓馬にそう言ったのだった。

そして、次の平畠もファーストゴロに打ち取り、3アウトチェンジとなった。

その際

 

惇(何か・・・さっきから指に違和感あんな・・・。少しボールが引っかかる・・・)

 

惇はずっと指の違和感を感じており

 

惇「・・・。」

 

自身の手を見て、少し指を動かしてみたら

 

惇「・・・?」

 

惇(んだこれ・・・?何か・・・ちょっといてー・・・?)

 

少し痛みを感じたのだった。

 

御幸「・・・。」

 

一方の御幸も、自身の左手を見ると

 

御幸(たはは・・・こりゃヤベーな・・・)

 

明らかにヤバいと誰が見ても分かる程腫れていたのだった。

そして、9回の青道の攻撃が終わり、惇がマウンドに向かうと

 

片岡「足立!御幸!」

 

片岡は惇と御幸を呼ぶと

 

片岡「全て任せたぞ!」

 

そう、2人に檄を飛ばし

 

惇・御「「はい!」」

 

惇と御幸は、気迫のこもった表情を浮かべながらそう返事をした。

 

片岡「最後まで決して気を抜くな!!」

 

そして、ナインにそう声をかけ

 

「「「おおおーっ!!!」」」

 

ナインもバッテリー同様の気迫を見せ、それぞれの守備位置に散った。

 

「青道ー!」

 

「御幸ー!」

 

「足立ー!」

 

「足立くーん!」

 

観客席から来る声援をバックに

 

惇「で・・・大丈夫なんすか、カズさん?」

 

惇は、御幸にそう聞いた。

 

御幸「お前は心配すんな。無理だったらさっき監督に止められてるよ。」

 

御幸「んな事より、お前だよ。」

 

惇「え?」

 

御幸「お前も指は大丈夫なのかよ?」

 

すると、御幸は惇の指の様子を尋ねた。

 

惇「・・・何でっすか?」

 

御幸「お前、さっきから指を気にしてた素振り見せただろう?」

 

御幸「今更こんな事言っちゃあなんだけど、多分監督も気付いてるぞ。」

 

この問いに

 

惇「・・・んな大した事ないっすよ。試合が終わったら、一緒に病院っすかね?」

 

惇はそう御幸に言った。

 

御幸「かもな。ボールは悪くねーけど、少しでも違和感あったら遠慮しねーからな。」

 

惇「わーってますよ。」

 

御幸「そんじゃあ、初球な!」

 

そう言うと、御幸はキャッチャーボックスに戻り、構えた。

それを見た惇は、少し笑みを浮かべ投げた初球

 

ズバアアンッ!!!

 

阿部「クッ!」

 

インサイド144㎞の真っ直ぐに手が出なかった。

2球目はスローカーブが外れ3球目

 

ズバアアンッ!!!

 

外に143㎞の真っ直ぐが決まり、追い込んだ。

4球目は何とかスライダーをファールにして、5球目

 

ズバアアンッ!!!

 

阿部「うおっ!」

 

145㎞のド真ん中の真っ直ぐだったが、衰えを感じないボールに思わず避けるように後ろに下がってしまい、見逃し三振に終わった。

 

「シャアアアッ!!」

 

「1アウト1アウト!」

 

『真ん中の真っ直ぐで見逃し三振ー!まずアウト1つ取りました、足立!』

 

次の米原の初球

 

ズバアアンッ!!!

 

外低めの144㎞真っ直ぐに手が出ず

 

米原(ここでこのノビとコントロールかよ!)

 

この絶妙なボールに、米原は内心そう愚痴った。

2球目

 

ストンッ!

 

SFFで空振らせ、御幸はそれを体で受け止め、米原を追い込んだ。

3球目

 

キン!

 

高め143㎞の真っ直ぐを何とかファールにしたのだが

 

ズバアアンッ!!!

 

インサイド144㎞の真っ直ぐに手が出ず、見逃し三振に終わった。

 

『三振ー!これも三振!最後もストレートで見逃し三振!』

 

この状況に

 

「「「・・・。」」」

 

内野の4人は緊張で無言になり、顔も強張っていた。

 

倉持「ツ、2アウトな!足立!」

 

いつも特徴的な笑い声を出す倉持も、流石に緊張していた。

当の本人は

 

惇(やっべ・・・マジ楽しいわ・・・指の状態とか関係ねー・・・!マジ楽しい・・・!)

 

投げるのが楽しすぎて堪らなくなっていた。

そして、森山の初球

 

ククッ!

 

スライダーが決まり2球目

 

キン!

 

144㎞の真っ直ぐが逆球になったがファールにし、追い込んだ。

その時

 

「「「後1球!!後1球!!後1球!!」」」

 

球場に、後1球コールが木霊した。

そんな中3球目

 

ズバアアンッ!!!

 

外低めに143㎞の真っ直ぐが来たが、ほんの僅かに外れてしまった。

 

御幸(かー!コレは手厳しい!)

 

受けた御幸は、この判定に内心苦笑を浮かべた。

4球目

 

ズバアアンッ!!!

 

アウトサイドに144㎞の真っ直ぐを投げたが、コレも僅かに外れ

 

惇「アハハ・・・マジかよ・・・」

 

惇は、これに笑みを浮かべながらそう呟いた。

その姿は、まさに心の底から野球を楽しんでるようだった。

この様子に

 

唯(惇君・・・)

 

唯は、スタンドで両手を握り締めながら見ていた。

 

栄純「決めろー、惇ー!!」

 

信二「後1球だ!!」

 

山口「後1球!!」

 

川上「行けー!!」

 

ベンチも、惇に声援を送っていた。

そして、5球目

 

ズバアアンッ!!!

 

最後は145㎞の真っ直ぐで空振り三振に打ち取り、一瞬の静寂が流れ

 

「「「わあああっ!!!」」」

 

球場中に大歓声が木霊し

 

惇「よっしゃあああっ!!」

 

惇は、それに負けないくらいの雄叫びと同時にグラブを叩きながらクルっと一回転し、両腕を広げた。

それと同時に他のナイン、そしてベンチ入りメンバーが一斉にマウンドに駆け、人差し指を立てながら集まった。

 

『最後は気迫のストレートで空振り三振ー!!「東都の怪腕」足立、27人斬りの14奪三振の準完全試合という圧巻の投球を見せましたー!!』

 

『秋季東京都大会を制し、センバツの切符を手に入れたのは青道高校!!』

 

『今年の夏に続いて春も切符を手に入れました!!』

 

『薬師高校、また足立の前に何も出来ず、無念の完封負けに終わりました!!』

 

前園「やったでー!!ホンマにやったでー!!」

 

倉持「シャアアアッ!!」

 

樋笠「シュシュシュー!!」

 

春市「やったー!!」

 

そう言いながら、皆マウンドでもみくちゃになった。

 

伊佐敷「シャアアアッ!!」

 

増子「うがうがらー!!」

 

門田「よっしゃあああっ!!」

 

亮介「やったね・・・」

 

結城「ああ・・・」

 

青道側スタンドも、喜びを抑えきれなかった。

 

「5-0で青道高校!!礼!!」

 

「「したぁっ!!!」」

 

そして、整列して挨拶して緊張の糸が切れたのか

 

倉持「御幸!」

 

前園「おい御幸!」

 

御幸はふらついたが倉持と前園に支えられ、何とかベンチに戻り

 

惇「緊張の糸が切れたんだな、カズさん・・・」

 

その様子を見た惇は、そう呟きながらベンチに戻ると

 

片岡「良くやってくれたな、足立。」

 

片岡がそう惇に労いの言葉をかけた。

 

惇「ありがとうございます。」

 

片岡「足立・・・指の状態はどうだ?」

 

片岡は、惇にそう尋ねた。

 

惇「・・・やっぱり、気付いてたんすね。」

 

惇は、そう苦笑いを浮かべながら

 

惇「少し痛みを感じます。特に力を込めると・・・」

 

素直にそう答えた。

 

片岡「・・・話をしておく。御幸と一緒に病院に行け。」

 

それを聞き、片岡は惇にそう言うと

 

惇「・・・分かりました。カズさんと一緒に行きます。」

 

惇は、そう答えた。

 

片岡「それが良い。お前の野球人生は、まだまだ先が長い。」

 

片岡は、惇の言葉にそう言うと

 

惇「因みに監督はいつ気付いたんすか?」

 

惇は、自身の違和感にいつ気付いたのか尋ねた。

 

片岡「お前がベンチ裏に行って戻ってきた時だ。ほんの一瞬、右手の指を見ただろ。その時からだ。」

 

これに、片岡はそう返した。

 

惇「ネクストサークルに行った時っすか。流石っすね。」

 

惇「けど、変えようと思わなかったんすか?栄純や暁、それにノリさんも控えてましたし。」

 

この質問に

 

片岡「・・・変えるつもりだった。だが、点差はあれどあの薬師。余計な隙を見せたくなかった。」

 

片岡「お前の将来より、目先の勝利を優先してしまった。すまなかった。」

 

片岡はそう言い、惇に謝罪した。

 

惇「そんな・・・謝んなくて良いっすよ。」

 

これに、惇は慌てながらそう答えた。

そして、惇は御幸と一緒に病院に行った。

こうして、青道高校は秋季都大会を制し、センバツ切符を手に入れたのであった。




投稿出来ました。

随分グダグダと長くしてしまいましたが、お許し下さい(土下座)

ダイヤのAですが、漫画を読み返したりHuluで観たりしてるけど、やっぱり面白いですね!

この作品本当に最高です!!

この作品に出会えて、本当に感謝です!!

ありがとう!!

それでは、また!!


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119話

119話です。


センバツ切符を手に入れた青道高校。

その翌日

 

吉川「あった!あっ、こっちにも載ってる!」

 

吉川は、近くのコンビニでスポーツ新聞を取っていた。

その内容は、青道の秋季都大会優勝が載っていた。

それをレジに持っていき、会計しようとしたが

 

吉川「・・・。」

 

財布を持ったまま固まったかと思いきや

 

吉川「すみませーん!何故か財布にお金が入ってませんでしたぁ!出直して来まーす!」

 

と頭を下げて謝罪した。

・・・何故かって、どういう事?

そんなこんなで学校に行くと

 

「お前ら、また甲子園に出るんだよな!」

 

「頑張れよ!」

 

栄純「アハハー!」

 

信二「調子乗んじゃねーぞ、沢村!」

 

野球部が既に皆からセンバツ出場の祝福の言葉を受けていた。

 

「そう言えば、足立は?」

 

「今日休みなのかな?昨日滅茶苦茶三振取ってたよね!」

 

その際、惇がいないのに気付いたクラスメイトは、そう尋ねると

 

栄純「あ、ああ・・・ちょっとな。」

 

信二「今日はちょっと用があるって言ってたな。」

 

2人はそう答えた。

いないのは惇だけじゃ無かった。

 

「つか御幸君は?」

 

「え~、休み?」

 

御幸もいなかった。

その理由は、御幸と惇は病院に行っていたのだ。

 

「やったね、春乃!」

 

吉川「ありがと!」

 

吉川も、クラスメイトから祝福の言葉を受けた。

そして、席に着くと、早速買った新聞を切り取り、野球日誌に貼っていった。

この日誌は、藤原が書いていた日誌であり、これを引き継いだのは、新チームが結成され、ブロック予選が始まる少し前だった。

 

 

 

 

 

 

回想

 

 

 

 

 

 

 

藤原「これ、春乃に。」

 

吉川「え?」

 

日誌を渡され、それを開くと、そこには過去の記事から日々の練習、課題、選手個々の情報が事細かく示されており、それは3年生が歩んだ道のりであり、チームの記録でもあった。

すると

 

吉川「・・・。」

 

それを読んでいた吉川は、涙を零し

 

梅本「ちょ・・・何泣いてんの、春乃。」

 

梅本がこれにそう言うと

 

吉川「すいません。だって・・・貴子先輩がどれだけチームを見てきたかが伝わってきて・・・」

 

吉川は声を震わせながらそう答えた。

そして、最後のページには

 

『巨摩大藤巻劇的サヨナラ勝ち!』

 

『北の大地に初の真紅の優勝旗を持ち帰る!!』

 

『青道悲願の日本一ならず!!』

 

『涙!足立力尽き立ち上がれず!!』

 

『「東都の怪腕」壮絶に散る!!』

 

敗れた甲子園決勝戦の記事が丁寧に貼られており

 

『私達の代は、日本一に届きませんでした』

 

『でも、本当にあと少し・・・次こそ必ず・・・夢の日本一へがんばって下さい』

 

と、後輩達へのエールが添えられていた。

 

藤原「書き方は、唯と幸から教わって。私の代も1人だったから、春乃の大変さは分かるから。」

 

そんな吉川を見て、藤原は優しい笑みを浮かべながら言った。

 

吉川「はい、頑張ります。」

 

藤原「唯も幸も、しっかり春乃を支えてね。」

 

唯「はい!」

 

梅本「任せて下さい!」

 

また

 

藤原「唯。足立君の事、しっかり支えなさいね。」

 

藤原「彼、何でも背負っていくと思うから、その重みを分かち合ってね。」

 

藤原「そして、叱る時は叱ってね。もし辛い事があったら、私に相談しなさい。何でも聞いてあげるからね。」

 

藤原は唯にそう惇の事をしっかり支えるように言い、辛い事があったら自分に何でも相談するように優しく言った。

 

唯「・・・はい。」

 

これに、唯は吉川同様涙を浮かべ声を震わせながら言ったのだった。

 

 

 

 

 

回想終了

 

 

 

 

 

想いは届く・・・繋がる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、放課後になり、野球部全員が室内練習場に集まった。

それは、惇と御幸の怪我の状態を言うためだった。

片岡は、選手達の前に立つと

 

片岡「まずは御幸だが、幸い骨に異常が無かったが、全治3週間となった。」

 

御幸の怪我を言った。

これだけでも充分ショックなのだが

 

片岡「次に足立だが・・・右手人差し指末節骨の疲労骨折と、右肘内側上顆炎を確認した。」

 

片岡「幸い、肘は靱帯や腱に異常は無かったが、復帰は御幸よりも更に時間がかかるだろう。」

 

惇の怪我は更に重く、指だけじゃなく肘も怪我していた事が判明し、一同絶句した。

これは病院に行った際、指の他にも念の為に精密検査を受けた時に発覚したのだ。

 

惇(やっぱ・・・流石にゾーンが入った状態じゃ今の俺の身体はキチーか・・・)

 

この時、惇は自身の力をフルに出したらまだ身体が耐えれないと痛感した。

 

御幸(大袈裟なんだよな。10日あれば治ってるって。)

 

御幸は、大袈裟だと感じていた。

 

片岡「神宮大会は、足立と御幸抜きで戦わねばならない。」

 

片岡「ベンチ入りメンバーからも外すつもりだ。」

 

片岡の言葉に

 

御幸「え!?」

 

御幸は驚きを隠せなかったが

 

惇「いや、外すっしょ。普通・・・」

 

惇は、そう冷静に突っ込んだ。

そして、キャプテン代理は倉持で、レギュラーキャッチャーは小野に決まった。

また、今後怪我や違和感を隠さず、ほんの少しでも異変を感じたら、自己判断で無理をせず、すぐに報告する事と、怪我を含めての体調管理も決して怠らず行動するようにと通達した。

そして、神宮大会に向けての実戦練習が始まったのであった。




投稿出来ました。

決勝戦の後を書きました。

結構無理した内容ですが、そこはお許し下さい。

それでは、また。


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120話

120話です。


惇と御幸の抜けた穴を埋めるべく、チームの練習は熱を帯びていった。

 

パァン!

 

栄純「おいしょー!」

 

ブルペンでは栄純が吼え

 

川上「んっ!」

 

スパァン!

 

川上も、静かなる闘志を燃やし

 

ズドォン!

 

暁も、内に秘めた闘志を押し出して投げていた。

 

小野「沢村とノリ、後でシートな!」

 

栄純「はい!」

 

小野「降谷・・・お前も守備練習な!」

 

小野も、一時的であるがレギュラーキャッチャーとしてやるべき事をやろうと一生懸命投手陣を纏めていた。

 

栄純(惇がいない今、俺がやらねばならん!)

 

暁(僕がやるしかない!)

 

特にこの2人は惇の穴埋めのため、一層気合が入っていた。

 

惇「気合入ってますね、2人共。」

 

御幸「ああ。空回りしなきゃ良いけど・・・」

 

惇「・・・多分大丈夫っすよ、多分・・・」

 

御幸「それはそうとノリ~。アピール足りないんじゃないの~?良いのかそれで~?」

 

御幸の小言に

 

惇「まぁカズさん。ノリさんもしっかりアピールしてますよ。」

 

惇はそう言って川上をフォローした。

その時

 

唯「こんな所にいた!」

 

惇「ゲッ!」

 

唯が目を吊り上げ、腰に手を当てた状態で惇の前に現れた。

 

唯「駄目じゃない!怪我人がこんなとこにいちゃ!」

 

惇「い、いや・・・その・・・」

 

これに、惇は何か言おうとしたが

 

唯「ほら、行くよ!」

 

唯は惇を連れて行こうとしたため

 

惇「か、カズさん!カズさんも何か言って!」

 

惇は御幸に助けを求めたが

 

唯「・・・御幸君。」

 

唯(惇君を庇ったら、分かってるね?)

 

御幸(こ、こえ~!夏川って、こんなに怖かったっけ・・・?)

 

唯の笑顔に隠された般若のオーラと心の声に御幸はビビってしまい

 

御幸「・・・夏川。足立を頼んだ。」

 

圧に押され、そう唯に言った。

 

惇「か、カズさ~ん!」

 

これに、惇は御幸にそう叫んだが

 

唯「ほら!」

 

唯のいつもならあり得ない力に引っ張られてしまい

 

惇「お、おい引っ張るなよ唯!俺、怪我人だぞ!」

 

唯「勝手に1人で抜けた罰よ!」

 

惇「お、おい唯!お菓子奢るから!」

 

唯「そんな手には乗りません!」

 

といったやり取りをしながらその場を後にしたのだった。

しかし、惇と御幸の離脱は、結果としてチームに新たな結束を生み、その熱はベンチ入りメンバーだけでなく、控えの選手まで伝播していった。

そして、神宮大会初戦の前日、倉持と前園、そして白州の3人は皆を集めて決起集会を開くと

 

倉持「分かってんのか、お前ら?これで明日俺達があっさり負けてみろ。足立と御幸がいねーと、青道はクソ弱ぇって言われんぜ。」

 

まず最初に倉持が始めに悪そうな表情でそう言い、緊張が走った。

 

前園「要は舐められるっちゅうわけや!」

 

白州「俺達の地力を見せる時だな!」

 

前園と白州もそう続いた。

 

小野「やってやんよ、ノリ!俺やってやんよ!」

 

・・・無理するなよ、小野。

 

川上「小野はいつも通りで良いと思う・・・」

 

・・・その通りだよ、川上。

 

麻生「ヒット打った男は、温かい拍手で迎えてやれ!それが男の優しさってやつだろう?」

 

・・・何言ってんだ、麻生。

 

関「どさくさ過ぎな!こいつ!な!たまにやるよな!」

 

・・・関も煽るな。

この雰囲気に

 

信二「何か雰囲気違うな。」

 

秀明「リーダーが変わるとね。とにかく先輩達凄い気迫だ。」

 

この2人はそう言っていた。

 

栄純「夜露死苦ー!」

 

・・・栄純。お前何乗ってんだよ。

 

倉持「邪魔するヤローは全○し!!」

 

「「「全○し!!!」」」

 

倉持「舐めてるヤローはフル○ッコ!!」

 

「「「フル○ッコ!!!」」」

 

そう言い、チームはある意味一体感となって神宮大会初戦に挑んだ。

この様子を

 

惇「何じゃこりゃ・・・」

 

惇は引き攣った表情で見ており

 

御幸「・・・。」

 

御幸は何とも言えない表情で見ていたのだった。

そして、初戦の美能相手に投打が噛み合い、結果は7-0と快勝し、初戦突破したのであった。




投稿出来ました。

リーダーが変わると、こうなるんですね・・・。

つーか、倉持は半端ねー・・・。

それはそうと、4月27日と28日に横浜アリーナでやるイベントが当たり、めちゃくちゃ嬉しいです!!

本当にサイコーです!!

早く当日にならないか楽しみです!!

それでは、また!!


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121話

121話です。


美能に7-0と投打が噛み合い、快勝したその日の夜。

 

梅本「外だとこうでしょ。球種は色を分けて・・・」

 

渡辺「へ~。」

 

梅本「で、これは貴子先輩のオリジナル。」

 

梅本が、渡辺と御幸にスコアブックを見せていた。

 

梅本「あのクリス先輩も驚いてたんだよね。」

 

この見やすさに

 

渡辺「そうなんだ。でも、これだとコースも分かるし本当に凄いよ!」

 

渡辺は大絶賛だった。

しかし

 

御幸「んー・・・でも、貴子先輩に比べたら、まだ読みづらいよ。」

 

御幸は辛口だった。

・・・容赦ねー。

 

梅本「そうかな・・・やっぱり。」

 

御幸「うん。」

 

この辛辣な評価に、梅本は顔を引き攣らせたが

 

梅本「そっちはどうだったの?初めてスタンドから観た試合。」

 

すぐに切り替え、御幸にスタンドから試合を観た感想を尋ねると

 

御幸「まあ・・・いつもと違うし、面白かったよ。」

 

御幸はそう淡々と返したのだが

 

渡辺「でも、やっぱ物足りなかった?」

 

渡辺にそう言われると

 

御幸「っ!」

 

図星なのか、御幸は冷や汗を出しながら固まり

 

渡辺「思いっきり顔に出てるよ。声も足立と比べてそんなに出てなかったし。」

 

梅本「え?そうーなの?」

 

梅本「照れがあるんじゃないの照れが!!まずそこから捨てないと!」

 

梅本「もっと応援頑張ろ!」

 

御幸「・・・。」

 

梅本らに弄られてしまった。

 

御幸「そ、それはそうと夏川はどうした?」

 

これに、御幸は強引に話を変えて、唯の事を尋ねると

 

梅本「唯なら、今愛しの彼氏君と一緒だと思うよ。」

 

梅本は、そう御幸に言った。

その頃、惇は

 

惇「今日の栄純と暁のリレー、凄かったな。」

 

唯「うん。沢村君は5回1安打6奪三振無失点。最速も135㎞とスピードも悪くなかったしね。」

 

唯「降谷君も、残りの2回ノーヒット4奪三振と完璧に抑えてたし。」

 

惇「打線も全打席出塁の洋さんにゾノさんと白州さんで4打点だしな。」

 

唯と一緒に初戦の美能との試合を話しており

 

惇(まあ・・・試合前日にあれだけの決起集会開いたら、そりゃあ勝つわな・・・)

 

その際惇は、前日に行っていた決起集会を思い出し、苦笑いを浮かべていた。

 

唯「それもそうだけど、スタンドから観た試合はどうだったの?」

 

すると、この日の試合の感想を唯が惇に尋ねると

 

惇「まあ・・・スゲぇ面白かったよ。」

 

惇は、そう一言唯に言った。

すると、唯は後ろに手を組んで惇の前に立つと

 

唯「そうだね。惇君、まるでちっちゃい子供みたいに楽しそうにしてたね。見てて可愛かったよ。」

 

上目遣いでそう惇に言った。

 

惇「う、うるせーな!」

 

これに、惇は頬を染めながらそっぽ向くと

 

唯「あー!惇君顔真っ赤!もう可愛いなあ!」

 

唯は笑顔でそう言いながら、少し背伸びして惇の頭を撫でた。

 

惇「あ、頭を撫でるな!」

 

これに、惇はそう返すと

 

唯「良いじゃん!そんな事言うなら・・・えいっ!」

 

唯は頭を撫でるのを止め、惇の背中に手を回し、胸に顔を埋めながら抱き締めた。

 

惇「お、おい!」

 

唯「フフッ・・・!」

 

そして、唯はそのまま惇の胸に顔を擦り寄せ、幸せそうな笑みを浮かべながら抱き締めていたのだった。

その様子を

 

倉持「・・・足立。」

 

前園「何でや・・・何で俺はイケメンに生まれなかったんや・・・!」

 

この2人は嫉妬の炎を燃やしながら見ており、前園に至っては、涙を流していたのであった。




投稿出来ました。

神宮大会初戦の後を投稿しました。

最後の方は・・・すみません。

誰か、超苦いブラックコーヒーを皆に!

そ、それでは、また(汗)


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