エヴァのエヴァオタによるチルドレンのための改変(Rルート) (さつまいもキング)
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R.STAGE1歪むキャラ

記念すべきRルート第1話!
ごゆっくりお楽しみ下さい。


シャムちゃんの分析見学の翌日、俺はリツコに呼ばれてネルフに来ていた。

俺はリツコの研究室の扉の前に来るとノックをする。

「大和ケンだ。居るか?」

「入って。」

俺が確認すると、中から少し焦ったような声が返って来る。

「邪魔するぞ。」

「あなた!なぜこんなものが分かるの?!どこでこれを知ったの?!」

「落ち着け!なんのことだ!」

扉を開けて中に入るとリツコが切羽詰まった表情で聞いて来る。

その手には1枚の紙があった。

昨日渡したスケッチの1枚だ。

そこに書かれていたのは、

「どうしてN2リアクターの理論と設計図をあなたが持ってるの?!これはまだ理論すら出来てないのよ!」

「(あ、やべ。なんて言い訳しよう…)いや~、なんとな~く書いただけだからなんとも言えないな~。」

俺は必死の言い訳しか出来なかった。

言い訳にもならない言い訳だった。

その後リツコを落ち着かせるのに10分以上掛かった。

「ごめんなさい。つい取り乱してしまったわ。」

「全く、こんなに疲れたの久しぶりだ。」

「1つお願いがあるんだけどいいかしら?」

「なんだ?」

「これをレイに渡して欲しいの。」

そう言ってリツコはレイのセキュリティカードを俺によこした。

「分かった。明日渡しておこう。じゃあな。」

俺は研究室を早足で出て行った。

 

 

 

翌日、俺はレイの部屋の前に来ていた。

(どうする?もう入るか?入らないか?入ってしまえばレイの裸が見られる。じゃなくて見てしまう。入らなければ諜報部に怪しまれる。俺の男としての本能が入りたがっている。だがそれをしたら人間としてダメだ。)

理性と本能の葛藤の末、俺は決心する。

「(そうだ!目を瞑って入ればいいんだ!よし、行くぞ!)入るぞ!レイ!」

目を瞑って扉を開け、中に入る。

靴を脱いで廊下を進むと何かとぶつかる。

それと同時、胸の少し下のあたりに柔らかい2つの何かが当たった。

目を開けて少し下を見るとレイの顔が目の前にあった。

その赤い瞳でまっすぐと俺を見ている。

風呂上がりで髪はまだ濡れていた。

さらに視線を下にやると、綺麗な2つの果実が俺に当たっていた。

俺は自分でわかるほど顔を赤らめた。

「あ…と…その…すまない!わざとじゃないんだ!本当に!」

俺はすぐにレイから離れ、左腕で目を隠す。

レイはそんな俺を気にも止めず、黙々と着替えていた。

「そうだ、レイ。これを渡すようにと赤城博士に言われていたんだ。」

セキュリティカードを取り出すとレイは何も言わず受け取った。

着替えが終わったと思い目を開けるとそこには、体を拭き終わったばかりなのか、一糸まとわぬレイがいた。

しかもさっきは自分の体で見えなかった部分もモロに見えている。

俺はすぐに視線を逸らしたが完全に目に焼き付いてしまっていた。

 




R15ギリギリになってしまった。


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R.STAGE2久々に書くと止まらなくなる

1ヶ月近く遅れましたがあけましておめでとうございます。
こんな小説ですが今年もよろしくお願いします。


ケンにとってレイとネルフに向かう道中は地獄だった。

もっと言えば零号機の再起動実験中の今でもキツい。

レイがそういうのを気にしない性格なのはケンも理解している。

実際レイが何かを気にするような素振りは見せていない。

でもキツいものはキツいものだ。

軽く一時間は心臓がバクバクなりっぱなしで今にも破裂しそうだ。

顔に出さないように意識しすぎて無の表情になっている。

(頼むラミちゃん、早く来てくれ。これ以上は俺の心臓が耐えられない。)

もはや敵である使徒に来てくれと頼んでいる始末だ。

だが、悲しきかな、この日使徒は来なかった。

 

 

 

数日後の学校、ケンはレイの座る席の前に立っていた。

数日もすれば気持ちは落ち着くもので、変に意識しなければドキドキしなくなった。

ケンは弁当の入った包みをレイの机に上げる。

「レイ、弁当を作って来た。食え。」

ザワッ

『えー?!何?!ケン君と綾波さんってそういう感じ?!』

『でもあの綾波さんよ。絶対ないない。』

『同じパイロットなんだし何かあってもおかしくないわよ。』

『まさか!戦場で芽生えた恋?!』

『『『キャーー!』』』

ケンの言葉を聞いた女子たちは黄色い声を出しながら盛り上がる。

もちろん、女子たちの話は妄想でしかない。

それに対して男子は、

『アイツ、同じパイロットだからって調子にのりやがって。俺たちがどれだけ綾波さんに声をかけようとして失敗したことか!』

『それをケンの野郎は平然とやりやがった!なんて羨ましいんだ!』

『やっぱり顔か!俺たちは顔がダメなのか!』

『『『クソーー!』』』

女子とは対象的に男子は悲痛の声をあげていた。

もちろん、レイがそんな会話気にするはずもなく、

「なぜ?」

と、弁当を食べろと言うケンに理由を問いていた。

「食事は薬しか飲んでないと聞いてな、味気ないと思って作って来た。」

「私、肉は嫌い。」

「安心しろ。肉は入れてない。」

「そう、なら食べるわ。」

「あぁ、それと、明日空いてるか?少し付き合ってほしいいんだが。」

「空いてるわ。」

「分かった。弁当箱はその時に返してくれればいい。じゃあな。」

そう言ってケンはいつもの三馬鹿の元へ行った。

案の定、トウジには絡まれケンスケには「裏切り者」などと言われたが軽く受け流していつものように他愛もない話をしながら弁当を食べた。

弁当を食べ始めたレイは卵焼きを口にすると、

「美味しい。」

と、目を丸くして驚いた。

誰にも聞こえないような小さな声で。

 

 

 

翌日、ケンはレイの家に来ていた。

扉の前に立ち、コンコンとノックする。

「ケンだ。レイ、いるか?」

前回から学習して扉をノックしてもレイが出るまでは開けないで待つことにした。

数秒後、トテトテと可愛らしい足音を立ててレイが出てきた。

寝起きなのか口元にはヨダレの跡がついていて目を擦っている。

どこか幼さを感じる可愛らしい仕草は、普段クールなレイがやることで数倍の威力を発揮する。

だがそれよりも目を引くのは服装だ。

制服の下に着るYシャツしか着ておらず、下にいたっては何も履いていない。

幸い、大きめのシャツを着ていたため、下は見えることはなかった。

人間というのは不思議なもので、裸よりも服を一、二枚だけ着ている方が興奮する。

それはケンも例外では無い。

だがケンはその気持ちをすぐに抑えた。

前回レイが裸で出てきたため、どんな姿で出てきてもいいようにイメージトレーニングをしていたのだ。

トレーニングしていなければ今頃レイを押し倒して社会的に死んでいただろう。

「レイ、とりあえずちゃんと服を着てくれ。来たのが俺じゃなかったら大変なことになってたぞ。」

「そう、次から気をつけるわ。」

「分かったら服を着てくれ。ここで待ってっから。」

「分かったわ。」

そう言ってレイは部屋の奥に戻っていった。

ちなみにケンは、レイと話している間ずっと目を閉じていた。

数分後、制服を着たレイが出てきた。

「やっぱり制服か。行くぞ、レイ。」

「どこへ?」

「買い物だよ、買い物。服は制服だけだろ?そんなに可愛いんだからもっとオシャレした方がいい。」

それを聞いてレイは顔を赤らめて、

「な、なんてこと言うのよ…」

と、呟いた。

 




過去一長い回になった気がする。
何故だろう、レイの回はちょっとエロくなってしまう。


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R.STAGE3仲良い女子と2人きりで行った買い物ってデートになるのかな?

サブタイトルが結構長くなったなぁ
投稿が遅れて申し訳ございませんでした。


ケンとレイはデパートに来ていた。

第三新東京市一の施設ということもあり、いつも沢山の人で賑わっている。

もちろんデートスポットとしても人気で、実際ここに来る若者の半分以上がカップルや新婚夫婦だ。

ケンは最初に服屋を回ることにしていた。

レイの部屋は物が少ない。

服にいたっては制服しかないため最優先で買うことにした。

休日に制服姿のレイは周りと比べるとほんの少し浮いている。

それも意識しなければ気づかない程なので誰も気にしない。

適当な店に入るとすぐに探索を始める。

「これと、これ。お?あれもいいな。いや、こういうのもイケるか?」

人気の服屋で女性物の服をどんどん選んでいく中学男子。

これだけ見るとアウトだが同じ年ぐらいの少女が付いているおかげで周りに疑うような目で見られない。

むしろ学生カップルとして微笑ましい目で見られている。

ケンが10着ほど選んだ所で、レイに試着させる。

 

試着した結果ワンピースを思ったより選んでいたことが分かったが、レイは気にしていないようなので結局全て買うことにした。

その後は本を何冊か買い、それを収納する本棚は流石に持てないのでホームセンターで注文して買い物を終わった。

13時頃、カフェで少し遅めの昼食を食べる2人。

「今日は服を沢山買えてよかったな。しばらくしたら、また買いに来るか。」

「…えぇ。そうね。」

「そうだ、まだ時間もあるし映画でも観に行くか?」

「映画?」

「たまには本以外で物語を感じるのもいいと思ってな。」

「…分かった。行きましょう。」

「良かった。そうだ実は5時からシンジと買い物するんだが一緒に来るか?」

「いいの?」

「お前がいなければ意味がないからな。」

「…そう。行くわ。」

「分かった。映画を観終わったら一度帰って、そのあとシンジの所に行くか。」

その後食事を終えた2人は店を後にし映画館へ向かった。

 

 

 

ケンは映画に全く集中することが出来なかった。

ホラー映画を観たのだが、レイが怯えて終始泣き目になりながら腕にしがみついて離れなかった。

美少女が腕にしがみついて平気な男子がいるだろうか?

相当の遊び人ではない限りそれは無いだろう。

そしてそれはケンも例外では無い。

前世を過ごしている分精神年齢は周りより高いが、時々肉体年齢に引っ張られることがある。

そのため、精神年齢約32歳でも14歳のような反応をしてしまうのだ。

しかも腕にしがみつくだけでなく、普段冷静だけどホラーが苦手、というギャップがさらに破壊力を増している。

数日振りにドキドキした心臓を落ち着かせながら、ケンはまだ少し泣き目になっているレイと帰って行く。

レイの家に戻った2人はシンジとの約束の時間までに買った服をまとめると、シンジの家へ向かって行った。

 

 

 




奇跡的に字数が1揃いだ…
原作にない展開ってなかなか書きずらい…
次回、テストがあるため投稿がさらに遅れます。ご了承ください。


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R.STAGE4連動

3週間も待たせてしまいごめんなさい。
最近話が思いつかなくなってきています。


「が!がああぁ!」

それはレイを連れてシンジの家に行く途中のケンに突然起こった。

全身をまるでとてつもなく熱い何かが流れ込んでくるような激しい痛みが襲う。

ケンはあまりの痛さに思わずうずくまりながらその身を震わせる。

「大和君?どうかしたの?」

隣を歩いていたレイが心配そうに声をかける。だがその声はケンには届かない。

「大和く…!」

心配でならないレイがケンの顔を覗き込み、驚愕する。

 

同時刻、それはネルフ本部で突然起こった。

「これは…!センパイ!無号機に突如高エネルギー反応が!」

司令部の上から2段目、オペレーターのマヤがリツコに異変を知らせる。

「ありえないわ!充電すらしていないのよ!まさか!S2機関?!」

「そんな!今まで前兆なんて見せていなかったのに…」

「とにかく!無号機を硬化ベークライトで固めて!総員第2ケージより退避!」

『緊急!職員は全員第2ケージより退避して下さい!』

退避命令の出た第2ケージでは技術スタッフ達が大慌てで避難する。

「全員第2ケージより退避しました!」

「硬化ベークライト放水!」

流れ出る硬化ベークライトは肩の所で止まり、無号機の動きを封じた。

「しばらくはこれで様子見ね。やっと運用許可が降りそうだったのに先延ばしになったわ。」

「もしも今の状況で使徒が来たらかなり危ないですね。零号機も封印中だし初号機に何かあったら──」

「マヤ、そんなこと考えちゃダメよ。私達の仕事は最悪の事態を防ぐ事。考えるならそうならないようにする方法を考えなさい。」

「はい。」

「レイから緊急!ケン君が高熱を出して倒れたそうです!」

リツコとマヤの話を遮るようにマコトの報告が割って入る。

「熱を出したぐらいでどうしたのかしら?」

「それが、体温が46度もあるらしくって。」

「なんですって?!早く医療班を集めて!集中治療室はすぐに使えるように準備!急いで!」

「センパイ…日射病でもそんな高熱出ます?」

マヤが怯えた様子でリツコに聞く。

「ありえないわ…そんなこと…でも…」

リツコは無号機が何かが関係あるのではないかと思い、焦っていた。

 

ケンはネルフに到着する頃には全身から蒸気が出るほど体温が高くなっていた。

医療班が冷却剤で身体を冷やすが高熱ですぐにダメになってしまう。

集中治療室で医療カプセルに入るまでに実に100個近くの冷却剤を使った。

医療カプセルの中でケンは睡眠薬を打たれ、深い眠りについた。

その後、熱が出た瞬間、数秒程右目が開き、紅い光を発していたことがレイの話により判明した。




今回結局書きたいことの半分ぐらいしか書けてない…話の繋げ方が分からないや…


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R.STAGE5ケンのいない作戦会議

春休み初投稿、コタツに入ってヌクヌクしながらのんびり書いてました。(のんびりすぎる)


ケンに異変が起きてから数週間が過ぎた。

高熱の原因は代謝が異常な程に上がったことだと分かった。

その結果、平熱になる頃には骨と皮のガリガリな姿になっていた。

その上ラミエルが現れ初号機は中破、シンジは意識不明になるというダブルパンチの最悪の状況になりミサト達の頭を悩めせている。

「マズイですよ。現状エヴァは零号機しか使えないし、使徒は侵入しようとしてるしで上層部も混乱してます。侵入と同時にここを自爆させようなんてとんでもない案が通りそうになっているそうです。」

そう口にしたのはミサトの後ろにいるマコトだ。

「バカね〜、ここが終われば人類も終わりなのに。マトモな作戦が思いつかないわ。こんな時に限ってケン君には頼れないし、どうしようもないわね〜。」

疲れきって椅子にダラリと腰掛けているミサトは危機的事態に反して気の抜けた返事をする。

「あら、マトモじゃない作戦なら思いついてるの?」

ミサトがさりげなく発した言葉を聞き逃さなかったリツコは僅かな期待を胸にミサトに問う。

「一つだけなら。戦自が作った陽電子砲あるでしょ?それに日本中の電力を集めてコアを狙撃するって作戦。」

「分かったわ。MAGIにシュミレーションさせた後、戦自に借りに行くわね。」

そう言ってリツコは先に作戦会議室から出て行った。

 

「ミサト、その作戦で行くわよ。」

「ホントに?!」

数分後戻って来たリツコの言葉にミサトは驚愕する。

ミサトだけでなく周りのスタッフもざわついていた。

「MAGIの計算上この作戦が最も成功確率が高いことが分かったわ。それと、陽電子砲は必要無いわよ。ケン君が設計した新型射撃武装がもう少しで完成するらしいから零号機に装備させるわ。」

「もう大抵の事はケン君に任せても大丈夫そうね。」

「まだ14歳よ。せめて高校を卒業するまでは雇えないわ。今の内にどこか空けておくことは出来るけど。」

「任せる気満々じゃない。」

「あら、優秀な人材は大切よ?それに早くて4年後の話よ。今じゃないわ。」

「ま、それもそうね〜。そういえば、なんで初号機じゃなくて零号機に装備させるの?初号機の修復は装甲を交換するだけだからすぐ終わるじゃない。」

「パイロットの問題よ。作戦までに意識が戻るとは限らないし、戻ったとしても乗りたくないと言って乗らない可能性があるもの。保護者なんだからこのぐらい分かりなさい。」

「う、うるさいわねー。努力するわよ。それでいつ頃作業は終わるの?」

「ざっと22時頃ね。使徒の到達予定時刻が0時頃だから大分余裕はあるわ。」

「りょーかい。」

ミサトは深く息を吸い込むと先程までの気が抜けた声とは一転、責任感のあるハキハキした声で話す。

「これより作戦概要を説明します。狙撃場所は双子山、零号機は新型装備で狙撃場所に待機、初号機は使用可能の場合耐熱シールドを装備して零号機の付近に待機、作戦開始時刻は23時とします。異論は無いわね?」

その場に居る全員がミサトに頷く。

それを確認してミサトは高らかに告げる。

「作戦準備開始!」

 

 




3人以上の会話が書けない…
アスカが入るまでには書けるようにしないと…


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R.STAGE6レイの想い

久しぶりに2週連続投稿出来た!
こんなに嬉しいことはない…


22時43分

新型武装を装備した零号機は双子山に移送され、最終調整を受けている。

パイロットのレイは調整中の零号機をボンヤリと眺めながら自分の変化について考えていた。

(碇くんのそばにいる時、私は大和くんのことを考えていた…大和くんが頭から離れない…なぜ?あの人よりも、ずっと気になる。お弁当を作ってくれたあの時から…どうして?)

「葛城三佐。」

レイは近くを通りかかったミサトに声をかける。

「あら、レイから話しかけて来るなんて珍しいじゃない。どうしたの?」

「大和くんのことが頭から離れないです。なぜですか?」

「え?ん?まって、レイ。今なんて言った?」

レイからの予想外すぎる言葉にミサトは耳を疑う。

「大和くんのことが頭から離れないです。なぜですか?」

「なるほどぉ。そういう事ね♪」

ミサトは理解した様にに顔をニヤケさせ、納得する。

そして見守るように穏やかな眼差しでレイの目を見つめ言う。

「それはね、ケン君のことが好きなのよ。好きだからずっと考えるの。きっとレイは自分の気持ちが分からないだけ。だから誰かに言われないと自分の気持ちに気づかないでずっと悩み続ける。困ったことや、分からないがあったらなんでも言いなさい。アドバイスならいくらでもしてあげるから。」

そう言ってミサトはレイの頭を優しく撫でる。

「ケン君の目が覚めたら、ちゃんと「好き」って言いなさい。私はレイの味方よ。」

「はい。ありがとう…ございます。」

「さ!もうすぐ作戦開始よ!すぐに準備して!」

「了解。」

レイの返事はほんの少しだけ、いつもより元気だった。

 

最終調整を受ける零号機。

その右腕は肘から下が巨大な背骨のような大砲になっていた。

 

『試作型天使の背骨』

砲身が腕部と一体化しているのは、銃身内部にATフィールドを展開するためである。

これにより重粒子から砲身を守ることが出来、大型化による砲身の歪みを防ぎ、強度そのものも高くなる。

浸食型に位相変換したATフィールドに加速した重粒子を乗せ、従来のATフィールドの反発力によってさらに加速させ目標に到達させる超遠距離型ATフィールド兵器で、強化加速された重粒子は発射後ゼロ時間でATフィールドを破壊、目標に絶大なダメージを与える。試作型のため放熱性が悪く、砲身の冷却に67~102秒を要することから、連射性は悪い。

いわゆるロマン武器である。

 

23時59分司令車の中

「リツコ、新型武装の説明書見たんだけど最後の一言いらなくない?」

「それ、書いたのケン君よ。開発部に見せたら好評だったから修正するの忘れてたわ。」

「そう、まぁそういう事ならいいわ。あとで修正しましょ。それより…レイ、準備は出来てる?」

 

「はい。」

零号機のエントリープラグの中、緩やかに流れるLCLに髪を揺らしながらレイは応える。

『了解。ヤシマ作戦、スタート!』

(作戦を成功させる。大和くんに…好きって言う為に!)

 

 

 

医療カプセルで眠るケンはゆっくりと両目を開ける。

その右眼から紅い光を放ちながら、

「レイ…」

自らを想う者の名を、知らない天井に向かって呟いた。

 

 

 

 

 




これが今年度最後か…
来年度もよろしくお願いしますm(_ _)m


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R.STAGE7天使の背骨、唸る時

所々分かりにい表現があるかもです。
語彙力欲しい。


ラミエルに降り注ぐ弾丸とミサイルの雨。

それらは全てATフィールドに阻まれ、加粒子砲に撃たれ、ひとつとて当たることはない。

心の壁で鉄の雨を防ぎ、そびえ立つ山々を光の道で焼き払う巨大な蒼い宝石。

その強く美しい宝石は神の使い、まさに、『使徒』そのものだった。

そんな使徒を狙う紅い一つ眼の黄色い巨人。

福音書の名を持つ巨人は使徒に弓引くため、人間によって造られた希望。

人類の未来は今、少女の駆る黄色い希望に託されている。

インダクションモードのプラグの中、ヘッドカバーに映るラミエルのコアを静かに狙うレイ。

(外さない。大和くんの武器で確実に倒して、想いを伝える………そこ!)

焦りのない瞳で狙いを定め、細い指で引き金を引いた。

 

巨人の右腕から光の弾丸が放たれる。

ラミエルがそれを認識した時には既に、宝石の身体の約4分の1を失っていた。

その場にいる全ての者が認識できなかった。

狙撃したと思った頃には使徒が爆発していたのだ。

僅かに狙いは逸れたが絶大な威力をもって十二分なダメージを与え、ラミエルはATフィールドで全方向を守りながら零号機に反撃するためエネルギーを充填する。

 

「きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!あぁ!うぅっ!」

右腕を抱き締め声を上げるレイ。

天使の背骨の放熱が間に合わず、接続している右腕に熱が伝わり、焼けるような激痛がレイを襲う。

『レイ?!移動して!使徒の攻撃が来るわよ!』

「っ!」

ミサトの声で使徒の動きに気づいたレイはとっさに零号機を左に動かし回避行動をとる。

直後、一瞬前まで零号機がいた所を使徒の加粒子砲が通った。

加粒子砲は右腕を焼き、天使の背骨が爆発する。

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

爆発の熱による激痛に耐え切れず右腕を抱えて思わずうずくまる。

「ごめんなさい。何もできなかった。助けて…大和くん。」

綾波レイが誰かに頼る。

その事実に誰もが驚き、口を閉ざす。

今までレイが誰かに頼る所など誰も見た事も聞いた事もない。

だから全員が無意識の内に『レイなら何でも1人で出来るだろう。出来なくても結局どうにかなるだろう。』と思い込んでいた。

1人の少女には重すぎる期待を押し付けていることに誰も気づかないでいた。

それにようやく気づき、自分達に怒りを感じる者もいた、自分達の過ちに絶望する者もいた、ひたすら涙を流す者もいた。

全員が、心の中でレイに謝った。

謝りながらも作戦を続けた。

失敗した作戦に対応するふりをして現実から目をそらすために。

「助けて…助けて…大和くん…」

レイの声に反応するように、とある人物の声が聞こえる。

『ありがとう、ここまで耐えてくれて。よく頑張ったな。あとは俺に任せろ。レイ。』

 

 

 




春休みが終わるため、次回からまた投稿が遅くなるかもしれません。


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R.STAGE8ケンの脱走劇

今回いい感じかも


真っ白な部屋の中、医療カプセルが開く。

その中からゆっくりと裸の男が体を起こす。

紅い右眼と黒い左眼で何も無い天井を見上げ、地上で起こっている事を理解する。

「ラミちゃんが来ているのか…でも何で、初号機は出ていないんだ…マズイな、このままだと負ける…待っていろ、レイ…すぐそっちに行く…」

そう言うとケンはカプセルから出て真っ直ぐ入り口に向かって歩みを進める。

 

その頃、ミサト達のいない発令所ではゲンドウが指揮を取っていた。

「碇司令!医療室より緊急!」

「今は作戦行動中だ。余計な口を出すな。」

モニターを見つめるゲンドウは報告をするオペレーターにキツい口調で応える。

「それが…ケン君が医療室より脱走したとの事です。」

「なに?居場所は分かっているのか?」

「いえ、監視カメラで捜索してますが、まだ分かりません。」

「捜索隊を出せ。見つけ次第拘束しろ。服装は分かるか?」

「はい。男性職員が1人、服を着ていない状態でトイレにいるのが発見されたのでその職員の服を着ていると思われます。」

「………ネルフ本部にいる全職員に通達、近くの部屋に入って廊下に出るな。廊下に出た者は拘束する。以後別命あるまで待機せよ。」

「碇、流石にやり過ぎではないか?脱走したからと言って子供1人に何か出来る訳でもあるまい。」

「冬月、奴は死海文書を知っている可能性がある。エヴァとの高いシンクロ率、高い戦闘力、ATフィールドを利用した武装の設計、ただのパイロットとしてもエヴァを知り過ぎている。我々の計画の障害になる可能性は十分あると思わないか?」

「…そうだな、無号機は我々の切り札、それを使う彼を警戒するのは当たり前か…」

 

(プラグスーツには着替えた。あとは無号機の所まで行くだけだ。)

ケンは全速力で入り組んだ廊下を迷い無く進んで行く。

(それにしても凄いな、脱走する時容易く扉をこじ開けられたし、足も格段に早くなってる。眠ってる間に何があった?それにこの右眼、使徒とエヴァを感じることが出来る。全身の筋肉の強化、右眼の異変、何か関係があると思うが…)

角を曲がった瞬間ケンの前に武装した捜索隊の一個小隊が現れる。

「大和ケンだな!止まれ!」

ケンを視界に入れたと同時に隊長と思われる男が声を上げる。

「止まらなければどうする?!」

走りながら問いかけるケンに男は無言でスっと銃口を向ける。

それでもケンは足を止めずに突っ込み、左手で銃身を掴むとみぞおちに右肘を入れ、そのまま後ろにいる隊員ごと壁にぶつけ意識を奪う。

後ろにいる最後の隊員には回し蹴りをし気絶させ、その場を離れる。

ケンの手によって隊員が全滅するのに1秒と時間を必要としなかった。

第2ケージの扉をこじ開け、無号機を見たケンは驚愕する。

「硬化ベークライト?!やられた!まさかエヴァそのものを封じてくるとは!」

『ケン、そこまでだ。大人しく投降して処罰を受けろ。』

ゲンドウの声が第2ケージに響く。

「碇司令、邪魔をしないでくれ。あんたも分かっているはずだ。このままではレイは負ける。」

『あぁ、だからと言って無号機を出す訳にはいかないのだ。』

「知ったことか!俺はレイを助けたいんだ!」

そう言ってケンは無号機の目をじっと見る。

「動け、無号機。お前の力を思う存分使ってやる。余計な鎖は外してやる。だから動け!無号機!」

ケンの言葉に応えるように硬化ベークライトを砕き無号機が起動し、その背中からエントリープラグがハッチを開けて現れる。

『待て!私の言う事を聞け!ケン!』

ケンはゲンドウの言葉に耳を貸さずにエントリープラグに入って行く。

「双子山までの最短ルートを開けろ!ぶっ壊されても知らないからな!」

 

「どうしますか?司令。」

「行かせろ。」

返事をしたのはゲンドウではなくコウゾウだった。

「冬月!」

「碇、落ち着け。いつものように修正しろ。」

「っ…」

 

『ルート解放!無号機、発進せよ!』

「了解!エヴァンゲリオン無号機、出る!」

無号機の背中に二対の光の翼が現れ、羽ばたくと同時、無号機は光の矢と化し一瞬で地上に舞い上がる。

『助けて…助けて…大和くん…』

自らに助けを求めるレイの声、その声にケンは無意識の内に応えていた。

「ありがとう、ここまで耐えてくれて。よく頑張ったな。あとは俺に任せろ、レイ。」

 

 




やっと書き終わった。
今日はよく寝れそうだ。


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R.STAGE9血着、ヤシマ作戦

保存されなかったりで何回も書き直しました…


二対の翼から輝きを放ち、漆黒の巨人は零号機の前にゆっくりと地上に降り立つ。

「や、大和くん?どうして?」

「どうしてかは分からない。とにかく今は奴を倒す。全てはその後だ。」

涙を流しながら目を丸くして驚き、困惑を口にするレイにケンは冷静に答える。

目の前で起こる奇跡に誰もが歓喜し、言葉を失った。

『なんだ、あの神々しい無号機は。なんだ、あの翼から放たれる温かい光は。まるで奇跡そのものではないか。』

無号機を見た誰もがそう思い、勝利を確信した。

二対の翼をはためかせ、ゆっくりと零号機の前に降り立つ。

瞬間、ラミエルが加粒子砲を放ち、無号機は一瞬で光に包まれる。

無号機は翼で自身を覆い、突然の攻撃から身を守る。

加粒子砲が止み無号機は翼を広げた。

そのままラミエルに高速で接近し、左腕を広げ大きく振りかぶる。

「遅いんだよぉノロマがぁ!」

ATフィールドの鋭爪を纏わせた左手を思い切り振り下ろし、宝石の身体を切り裂いた。

すかさず反撃の加粒子砲を放つラミエルだが撃った時には既に無号機は下に回り込まれていた。

「だから遅いっつってんだろ!」

無号機の回し蹴りが、右脚に纏ったATフィールドの刃をラミエルから伸びるドリルに押し込み、容易く切断する。

ラミエルの正面に浮上し、左腕をコア目掛けて深々と突き刺し、体内でコアを鷲掴みにする。

ラミエルはコアを掴む左腕を焼き尽くそうと全エネルギーを集中させた加粒子砲をコアから直接放つ。

「あっつ!だが、問題ない!」

ケンはの激痛に対して余裕の笑みを浮かべる。

「きゃぁぁぁぁ!」

「どうした?!レイ!」

ケンの余裕を奪ったレイの悲鳴。

左腕を飲み込み、なおも進み続ける加粒子砲が、右脚を負傷して動けない零号機を巻き込んでいた。

残った左腕で身を守る零号機だが、無情にも分散された加粒子砲の1つがアンビリカルケーブルを焼き切り、零号機を追い込む。

 

「零号機のアンビリカルケーブル切断!残り活動可能時間47秒!」

「マズイわ…時間が切れれば胸部に直接撃ち込まれる…そうなれば10秒足らずでレイは死ぬわ。」

リツコの冷静な分析は余計にミサトの焦りを呼び覚ます。

「ケン君にレイを守るよう通信を入れて!」

「ダメです!無号機と通信がとれません!」

「敵の加粒子砲で無号機の通信系がやられたかと…」

「ならスピーカーで──」

「加粒子砲の音に遮られて意味がありません!」

「!じゃあどうするって言うのよ…」

何も出来ない状況にミサトはただレイが死なないように祈っていた。

 

刻一刻と零号機の活動限界が近づく中、ケンも打開策を考えていた。

(通信系はイカレて役にたたない…零号機の状況も気になる…なる早でラミちゃんを倒さないとな…だがどうすれば…あ、そうだ)

ケンはラミエルのコアを握る左手にグッと力を込めると、

「こうすれば良かったのかー!」

左腕をコアごとラミエルから引き抜き、握り潰す。

コアを失い、加粒子砲を止めたラミエルは自らが脅威に晒した第三新東京市に堕ちた。

ヤシマ作戦は予想外の展開による人類の勝利で幕を閉じる。




やっと書き終わった…やっと投稿出来る…


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R.STAGE10使徒を倒した褒美

前回変なタイミングで出したから今回も投稿ズレた。
何とかしてペースを戻さないと。


ラミエルを倒し、レイを救ったケン。

そんな彼を待っていたのは拍手喝采とは真逆の、重い空気漂う司令室だった。

(あー、何でこうなったんだ?確かラミちゃんを殺ったからレイの様子を見ようと思ったところで気を失って、目が覚めたら某知らない天井の部屋で寝てて、左腕が火傷になって包帯ぐるぐる巻きになってて、ついでにいつの間にか着替えさせられてて、手錠をかけられて司令室に強制IN。なるほど、まぁまぁピンチじゃねーか。とは言えこういう時は余裕を見せて逆に相手の調子を崩すが勝ち。よし…)

「碇司令、利き腕が火傷で使えない人間に手錠はやり過ぎじゃないですか?包帯巻いてるとはいえめっちゃ痛いですよこれ。」

ケンはズッシリと構えるゲンドウに余裕を見せつける作戦を早速実行する。

「貴様の事情など知らん。それよりネルフ本部の施設破壊、職員への暴行、エヴァの私的利用、これらは重罪だ。分かっているな。」

(やはりそう来るか。どうせ2、3日懲罰房ぐらいで済むだろ。せっかくだし少し反抗でもして反応を楽しむか…)

予想通りのゲンドウの反応にケンは心の中でほくそ笑み、調子に乗ってしまう。

「その重罪がなければ人類全滅なのは分かっているでしょう?多少の減刑はあってもいいと思うのですが。」

「1週間…」

「え?」

「1週間懲罰房だ。分かったらさっさと行け。」

「あ、はい。」

(誰だよ「反応を楽しむか」とか言った奴、最低だな。あ、俺だわ。ははは…)

ケンは自分の失敗に気付き、乾いた笑いをする事しか出来なかった。

 

1週間後、ケンは久しぶりに自宅の扉を開けると、予想外の事態に直面する。

「おかえりなさい。大和くん。」

誰も居ないはずのケンの家、そこには居ないはずのレイがエプロン姿で待っていた。

「…レイ、何故俺の家に居るんだ?」

「引っ越したわ。」

レイの口から出た言葉はさらに予想外の事だった。

「何で俺の家に引っ越したんだ?まて、そもそも誰がそんなこと許可した?」

「葛城3佐が、『大和くんはしばらく家に帰ってないから大和くんの家に引っ越して家事をやってあげて』って言ったわ。」

(なんちゅー事してくれてんだあの人…でも、家が綺麗なのはありがたいし、左腕はあと三日絶対安静にしなきゃいけないしな。感謝しないとな。)

「そうか、ありがとな、レイ。俺が居ない間、この家の事色々やってくれて。あと三日もすれば左腕が使えるようになる。そしたら一緒に料理や掃除でもするか。それまでもう少しの間、家事を任せる。頼んだぞ、レイ。」

そう言ってケンは右手でレイを引き寄せ、頭をポンポンと優しく叩き、ゆっくりと撫でる。

レイは赤くなった顔を胸にケンの胸に押し当てる。

自分の行動にケンも困惑していた。

(ヤバい。レイが可愛過ぎる。何も考えずに頭撫でるところまで来てしまった。どうやって終わればいいんだ…そうだ、これで行こう。)

「なぁ、レイ。一緒に暮らすのなら名前で呼んで──」

ケンの話を遮るように、レイは背伸びをしてケンの唇を奪う。

そのキスはほんの数秒だったが、2人にはとても長いように感じた。

 




書きたいところまで書くと投稿遅れるからよく後半キツくなる


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R.STAGE11投稿めっちゃ遅れましたすみません

コロナに感染し、治ったらテスト…この2つが原因で書けませんでした。


「なぁシンジ、あの2人いつの間にあんな仲良くなったんや。」

ホームルーム前の朝の教室、トウジが目の前の奇妙な光景を見て問う。

「分からないよ。僕が学校に来た時からあんなだもん。」

シンジもまた奇妙な光景に目を奪われ、疑問に思っていた。

「くうぅぅ!なんて羨ましい!僕なんて今年委員長以外の女子と1回も話した事ないのに!」

ケンスケは疑問よりも嫉妬の方が強い唯一の人間だ。

そしてクラスで最もうるさいのもケンスケだ。

ざわついているのは3人だけでなく、クラス中で噂になっていた。

生徒達の視線の先には、恥ずかしそうに左手で目元を隠すケンと、そんなケンの右腕に抱き着くレイ。

甘い空気漂う2人の周囲は近くを通り過ぎることすら抵抗が生まれる。

「なぁ、レイ。そろそろ先生が来る時間なんだがいつまでこうしてるんだ?」

ケンが恥ずかしそうに口を開く。

「まだ、こうしてたいわ。それともケンくんは嫌?」

「嫌って訳じゃないんだがなぁ。流石に人前では恥ずかしいんだ。だから外ではもう少し気持ちを抑えてくれないか?」

「そう…分かったわ…」

レイは残念そうな顔をして席を立ち、自分の机に戻って行く。

そんなレイをケンは呼び止めると、耳元に口を寄せ、

「家に帰ったら好きなだけ甘えていいからな。だから外では少し我慢してくれ。」

と呟く。

「ええ。」

レイは顔を少し赤くして短く答えた。

先生が教室に入るとチャイムが鳴り、ホームルームの開始5分前を伝える。

生徒達はチャイムの音で我に帰り自分達の席にそそくさと着席する。

「起立、礼、着席。」

委員長であるヒカリの号令で、ケンにとって約1ヶ月ぶりの学校生活が始まった。

 

午前授業が終わり、昼休みになるとレイよりも先にトウジがケンを誘う。

「なぁケン。久々に一緒にメシ食わへんか?お前が休んでた時の話存分に聞かせたるわ。」

「スマン、今日はレイと食べるって約束してんだ。明日なら空いてるぞ。」

「おう、そうか。あんまり熱くなりすぎんように気いつけや。」

トウジは少し呆れたような口調でケンをからかう。

「お前こそ、委員長と熱くなりすぎんなよ。」

からかってきたトウジにケンはニヤケながらからかい返す。

「はぁ?!な、何で委員長やねん!ワシはあんなうるさいのよりもっと可愛いのが好みや!」

ケンのカウンターにトウジは耳まで赤くなり、大声を上げる。

それに誰よりも速く反応したのは委員長、洞木ヒカリだった。

「ちょっとトウジ!誰のせいでうるさくしてると思ってんの!バカ!ケン君も変な事言わないで!私達はそんなんじゃないんだから!」

「せや!しかも何でよりにもよって委員長やねん!」

「そんな言い方ないでしょ!大体あんた達が静かにしてればいいんじゃない!」

「なんやと!」

(さてと、俺はそろそろ行くかな。)

「行くぞ、レイ。今日は屋上で昼飯食べるぞ。」

ケンは喧嘩する2人を気にも止めず席を立ち、レイを誘って教室を出て行こうとする。

「シンジ、お前も来い。」

1人で弁当を食べようとするシンジにケンは声をかける。

「え?僕はいいよ。2人を邪魔しちゃ悪いし。」

「いいから来い。大事な話があるんだ。それに、」

ケンはシンジの耳元に口を寄せ、

「知りたいだろ?母親の真実を。」

と呟いた。

「分かった…行くよ。」

シンジはケンの誘いに乗り、3人は教室を後にした。

 



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R.STAGE12ATフィールドは何でも出来る

非常に遅くなりましたm(*_ _)m
5月中に9割程書き終わっていたのですが6月はテスト漬けの毎日で書く暇がなく、夏休み前の今日まで完全に忘れてました。
え?7月は何してたかって?


モンハンってハマるよね…


「シンジ、レイ、俺が今から2人にシンクロする。」

学校の屋上、着いて早々に訳の分からぬ発言をするケンに2人は顔をキョトンとさせる。

「はぅっ」

「?変な声出してどうしたの?ケン。」

「いや、何でもない。大丈夫だ。(危ない危ない。レイのキョトン顔が可愛すぎて思わず変な声が出てしまった。深呼吸でもして落ち着け、大和ケン。)」

スー、ハー、と二度三度深呼吸をするケン。

「本題に戻ろう。実はシンクロすると言っても成功するか分からない。もしダメだったら普通に口で伝える。」

「ケンくん、どうやってシンクロするの?」

「ATフィールドを使う。」

「でも、それってエヴァに乗らないとダメなんじゃ…」

「大丈夫だ。今朝分かった事だが、俺は生身でもATフィールドが使えるらしい。だから2人は俺を受け入れることに意識を集中させればいい。騙されたと思ってやってみてくれ。」

「…分かった。一応やってみるよ。」

「ケンくんがそう言うなら…」

2人は目を瞑り、心の中にケンを招く。

ケンも目を瞑り、3人のATフィールドを同調させ、心を繋げる。

 

 

 

3人が目を開けると、目の前に、青く、巨大な、母なる地球があった。

海には緑の大陸が5つと、かつて失われた氷の大陸が2つあった。

上下で地球を挟む氷の大陸が、3人に過去を見ているのだと実感させる。

「すごい…本当にシンクロしてるみたいだ…」

「みたい、じゃなくて本当にシンクロしている。まぁ、方法を説明してる時間は無いからな。セカンドインパクトとエヴァの真実、急いで見せるから瞬きするなよ?もっとも、心の中だから瞬きなんて意味無いがな。」

 

 

 

「と、言うわけだ。あまりいい話じゃなかったな…」

精神世界から戻った3人の顔からは、先程までの元気は消えていた。

シンジは少し暗い表情をしているが、過去と向き合ったことで、どこか大人な雰囲気を出していた。

「そんなことないよ。むしろ、少し安心してるんだ…母さんが、一緒にいてくれたんだって。そう思うと、知ってよかった。」

落ち着いているシンジとは別で、肩で呼吸し、目に涙を溜めているのはレイ。

「私は…どうしたらいいのか分からない…碇司令は…私を見てない…私は…もう──」

「──レイ。」

涙が溢れる寸前、ケンが震える肩を優しく抱きしめる。

「今は、司令がレイの全てじゃないだろ。学校やネルフならシンジがいる。それに、家でも、学校でも、ネルフでも、どこにいこうと俺がそばについてる。」

優しく諭すように、ゆっくりとささやく。

「守ってやる、支えてやる。だから、信じてくれ、レイ。俺は、俺だけは、絶対に裏切らない。」

体を離し、真っ直ぐと瞳を見つめ、想いを口にした。

「約束だ…」

 




ラストは自分を追い込みました。
癒し回書きたい…


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R.STAGE13そろそろ無号機の強化したいな

2話連続投稿は予想外でしょう。
自分でも予想外でちょっとびっくりしてます。


学校が終わり、ネルフにて赤城博士の診察を受け、疲れたケンは自宅のドアを開ける。

「レイ、ただい──」

リビングに入るやいなや、エプロン姿の少女が飛びついてきた。

「ケンくん、おかえり。今、ご飯を作る所だったの。ケンくん、お腹空いてると思って。」

「そうか、ありがとう、レイ。ところで、少し離れてくれないか?」

そう言う理由は、ケンの胸の少し下辺りにある。

それは、思春期の男子にとってとても刺激の強いものだった。

「どうして?ケンくんは私に抱かれるのが嫌?」

迫るレイが更に強く抱きしめる。

すると、より2つのものが体に押し付けられ、ケンの判断能力を奪っていく。

「まさか、嫌な分けないだろ。それとは別の理由なんだが…その、だな…」

ちなみに、判断能力を奪われる理由は1つでは無い。

抱きついたことで互いの顔同士が近づき、昨日のキスを思い出させるからだ。

顔面偏差値が限界突破している美少女が自分に抱きつき、アレを押し付け、顔の距離がほとんど無い。

思春期の男子の脳にこれ程ダメージを与えるものはそうそう無い。

むしろこの状況で襲わない分、ケンは賞賛されるべきだろう。

筆者なら絶対に襲う自信がある。

「色々やったから汗臭いだろうし、早く飯を食べたいからな!」

そう言ってレイを押し離すと、ケンはそそくさと自室に入って行った。

(危なかった。もう少しあのままだったら確実に襲っていた。守ると言った手前、そんなこと絶対に出来ないな…それにしても…)

ふとレイにかけた言葉を思い出す。

(ほとんどプロポーズだよな、あれ。レイに限ってプロポーズだと認識するようなことは無いとは思うが、発言には気をつけないとな。そうでもしないと、その内レイに押し倒されるなんてことも…いや、あるわけないか。)

「そろそろ、着替えるとするか…」

 

「レイ、俺にも何か作らせてくれないか?」

台所で味噌汁を作るレイの横に立ち、シンクで手を洗い始めるケン。

「大丈夫。私に任せて、ケンくんは休んでて。」

「左腕なら心配ない。レイのおかげでしっかり治ったからな。このぐらいさせてくれ。」

左腕を動かし、「大丈夫だ。」と笑って見せる。

「でも…」

「支えてやる、って言ったろ?俺はレイを支えたい。他の誰でもない、レイを支えたいんだ。それに、2人で作った方が楽しいだろ?」

「…そうね…ケンくんがそう言うなら…分かったわ。」

照れ隠しをするように手元の味噌汁に顔を向けるレイ。

そんなレイを見て、ケンは改めて、「守ってみせる。」と決意した。

 

 




あまあま回って書いてて癒されるんだよなぁ…


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R.STAGE14ツンデレ界の女王、降臨

アスカキタ━(゚∀゚)━!



海の上を飛ぶ一機のヘリコプター。

その中には3人の少年少女、1人の赤い制服に身を包んだ女性が座っている。

「知らなかったな。他の国でもエヴァを造ってて、僕らの他にもパイロットがいたなんて。2人は知ってたの?」

「えぇ。シンジくん達の来る前から聞いていたわ。」

「俺も一応聞いてはいるが、名前はどころか性別も知らないからなぁ。(まぁ嘘だけど)それにしても、すごい景色だな。」

眼下に広がるのは、布で隠した巨大な荷物を運ぶ大型輸送艦、その周りには護衛艦や空母が見事な陣形を作って海を進んでいる。

 

護衛艦に着艦したヘリ。

その中からミサト、シンジ、ケンが出てくる。

ケンはすぐに歩き出すことはなくヘリの方に振り返り、降りて来るレイにそっと左手を差し出す。

差し出された左手に右手を重ね、ゆっくりと降りるレイ。

2人の周囲には海から流れる潮の匂いなど気にならないほど甘い空気が漂っていた。

「んもぅ!海デートの気分で来てって言ったけどイチャつきすぎよ?」

ミサトがニヤニヤしながらからかうように言う。

最も、2人だけの世界に入った彼らには届いてないが…

「そだ、シンジ君は好きな子とかいないの?」

「え?!ぼ、僕はそんな!好きな子なんていませんよ!」

いきなりの言葉をうまく受け流せず誤魔化すような返事をしてしまうシンジ。

「そうなの?中学生の男の子なら彼女の1人や2人欲しいと思うけど。」

「1人や2人って…それもう浮気じゃないですか…それに、僕はそういうの無いですから。」

「あら、そうなの?華が無いわね~。」

「くだらないこと言ってないで行きますよ。相手待たせてるんでしょう?」

「げ、そうだった!ケンくーん、レイー、早く行くわよー!」

「もう!遅いですよ!ミサトさん!」

海を見ながらイチャつく2人を呼ぶミサトの背中に丁寧な口調の美声が降りかかる。

ミサト達が声の方に目をやると、青い瞳に金髪(見た目は完全に茶髪)のツインテール、淡い黄色のワンピースを着た少女が立っていた。

「ア、アスカ?!な、なんでここに?!」

「ヘリを降りたらなかなか動かないので、心配になって見に来たんです。」

「そ、そうなの。ありがとう。そうだ、シンジ君、彼女がエヴァンゲリオン弐号機のパイロット、セカンドチルドレン。惣流・アスカ・ラングレーよ。」

アスカはシンジに視線を移すと行儀良く挨拶をする。

「こんちには。」

「あ、こんちには。」

そこに、ケンとレイが戻って来た。

「すまない、遅くなった。って、なんだ、もう挨拶したのか。」

ケンはアスカと目が合ってすぐに挨拶をする。

「遅れて申し訳ない。俺がエヴァンゲリオン無号機パイロット。アナザーチルドレン、大和ケンだ。それで、こっちが──」

「──綾波レイ。ファーストチルドレンよ。」

「よろしく頼む。」

手を差し出して握手の形をとるケン。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

アスカはその手を取り、笑顔で握手を交わす2人。

笑顔の裏に本性を隠すアスカ、その本性を知るケン、仲間が増えて嬉しいシンジ、海デートを楽しむレイ。

個性豊かなチルドレン達は、この後使徒が来ることを、1人を除いて知らない。




エヴァって月日の描写少ないなぁ
ちなみにイスラフェルが来るのは漫画版では6月7日です


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R.STAGE15なんか勢いで書けちゃった

気がついたら書けちゃった勢いだけの回です


布を被せただけの簡易的な屋根の下、弐号機の上で腕を組んで仁王立ちする少女がいた。

「これがエヴァンゲリオン弐号機!あんた達の試作型の零号機やテストタイプの初号機、独自に造られた無号機とは違う。世界で初の本物のエヴァンゲリオンよ!」

「?え?どういうこと?」

「(これぞアスカ!まさにアスカ!素晴らしい!)赤いな。俺たちのエヴァより3倍ぐらい速そうだ。」

「赤くて………赤い。」

先程までの性格との差に困惑するシンジ、心の中で歓喜の声を上げながらさりげなくボケるケン、頑張って感想を言うレイ。

「赤いだけじゃないわ!この弐号機は目が4つあるから──」

「──目が4つあるから左右だけでなく上下からも見ることが出来る。それでより立体的に物を見ることを可能にしているのか。それだけじゃない。カメラ型センサーも4つ付いているから情報収集能力が向上している。問題は精密機器が密集しているから整備性が悪い事か…」

大和ケン、セリフを全て奪う。

しかも余計な部分も足して。

「そ、それだけじゃないわ!プログレッシブ・ナイフはあんた達の物と違ってカッターナイフ型を使っているから──」

「──カッターナイフ型を使っているから刃こぼれしてもすぐ新しい刃に替えられるのか!だが刃を小さくする上にグリップに出し入れしないといけないからやはり整備性は悪いか…これじゃ量産型と言うより『量産試作型』だな。」

「あんたねぇ!人のセリフ取ってんじゃないわよ!しかもやたら整備性悪い所押すじゃない!挙句の果てには『量産試作型』って!バカにしてるの?!」

遂にキレるアスカ。

目をウルウルさせながら顔を真っ赤にして怒る姿はめちゃくちゃ可愛い。

そんなアスカにめっちゃ静かにハートを射抜かれるシンジ。

ケンに構ってもらえず内心ちょっと不機嫌になりつつあるレイ。

「俺は事実を口にしただけだ。バカにはしていない。」

しっかりと答えるケン。

本人はこれが火に油を注いでいることに気がついていない。

と、ちょうどそこに使徒が出現したと警報が鳴り響く。

ちなみに、アスカがどうやって3人を連れてきたかと言うと…

 

「そうだ。ミサトさん、皆を弐号機の所に連れて行っても良いですか?私の弐号機を早く見て欲しいんです!」

挨拶を終えたアスカは、胸の前で指先をくっつけ、わざとらしい仕草でミサトに聞く。

「そう?別に良いわよ。艦長には私の方から伝えておくわね。気をつけるのよー。」

「はーい。」

そう言ってアスカは3人を弐号機の元へ連れて行く。

 

という事があったのだが、もちろんコレはケンの計算通りである。

この男、バカなのか頭がいいのか分からない。

話は戻って弐号機へ

 

「フフフ…いいわ。その挑発乗ってあげる。ちょうど使徒が来たんだからあんた達も弐号機に乗りなさい!アタシの実力、その目に見せてやるわ!」

 

※ケンは挑発したと思っていません。

 

 




深夜テンションってスゴいですね☆


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R.STAGE16アスカの覚悟

3日連続投稿は出来んかった


「…思ったより狭いね。」

シートに座っているが姿勢はかなり前のめりなシンジ。

「うっさいわねー。仕方ないでしょ。4人も入ってんだから。」

シンジの左後ろから手を伸ばし操縦桿を握りしめるアスカ。

「(予想はしてたがここまで狭いとは…)レイ、しっかり掴まってろ。」

シンジの右後ろで足をぶら下げて座るケン。

「離さない。絶対」

ケンの膝に座るレイ。

構ってもらえなかった反動で強い力でケンに抱きついている。

さらには揺れた時に事故に見せかけてキス出来るように顔も近づけている。

もちろんケンはレイの思惑に気付いていない。

「ほら、使徒が目の前に来てんだから早くシンクロするわよ。」

「分かってるよ。やればいいんだろ。やれば。」

「あんまいい予感しないがやってみるか。」

「ん…」

4人がシンクロしようとした瞬間、壁一面に現れる『FEHLER』の文字。

「ちょっと!あんた達ドイツ語で考えなさいよ!」

「仕方ないだろ?!ドイツ語なんて分からないんだから!」

「喧嘩してる場合か!まずい!フィールド全開!」

「は?あんた何してるのよ。」

「使徒がこの船に突進してきたからATフィールドで防いだだけだが?」

「あんたバカァ?生身でATフィールドが使えるわけないでしょ。それに使えたとしてもなんで来るのが分かったのよ?外の様子なんて分からないじゃない。」

「それはATフィールドをレーダー代わりにして対応した。」

「はぁ?ねぇシンジ、コイツっていつもこんなくだらないこと言ってんの?」

「ケンが言ってることはホントだけど。ねぇ、レイ。」

「えぇ。ケンくんは嘘はついてないわ。」

「いや、仮に使えるとしても、なんで使えるのよ。」

「簡単だ。使徒を食った。」

「…もういいわ。あんたと話してると頭痛くなってくる。そういえば使徒が来てるのよね。思考ベースを日本語に変更。もう一度シンクロするわよ。」

アスカがそういうと、全員が意識を集中させる。

「言い忘れてたがアスカ。少し意識が飛ぶかもしれないから気をつけろ。」

「え?」

アスカはその言葉を最後にして意識が途切れた。

 

 

 

「ん…ここはどこ?」

アスカが目を開けると、目の前には真っ白な空間が広がっていた。

そこには1人の女性が立っている。

それはアスカにとってどうしても忘れられない存在。

かつて目の前で死んだ母親、惣流・キョウコ・ツェッペリンがそこにいた。

「久しぶりね。アスカちゃん。」

「ママ?ママなの?嘘よ…だってママは…」

「ごめんなさい。アスカちゃん。確かにママは死んだわ。」

「じゃあなんで…」

「でもね、それは精神がエヴァに取り込まれてしまったからなの。だからずっと、エヴァの中からアスカちゃんを見守ってきたわ。アスカちゃんの努力も、アスカちゃんの悲しみも分かる。」

そう言ってアスカをそっと抱きしめる。

「あなたには何もしてあげられなかった。あなたをずっと悲しませた。こんな母親だけど、一緒に戦ってくれる?アスカちゃん。」

「何言ってんのよ。ママじゃなきゃダメじゃない。」

声は震え、目には涙が溜まっている。

「ママこそ、こんな娘だけど守ってくれる?」

「もちろんよ。娘を守らない親なんているわけないわ。」

母の胸から顔を離して、目を合わせるアスカ。

「ありがとう。ママ。一緒に、使徒を倒しましょ。」

「えぇ。ほら、みんなが待ってるわ。行ってらっしゃい。アスカちゃん。」

「行ってきます。ママ。」

『行ってらっしゃい』、『行ってきます』そんな何気ない親子の会話が、アスカの背中を押した。

 

 

 

「どうしたの惣流?泣いてるよ。」

シンジの声で目が覚めるアスカ。

「なんでもないわ。ほら、行くわよ!」

その目には、悲しみから解き放たれたことで生まれた、新たな覚悟があった。

 




そろそろシンジに出番をあげないと…


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R.STAGE17史上最も不遇な使徒ガギエル

ガギエルって…あまり強くないよな…


覚醒したアスカと弐号機は凄かった。

起動と同時に空高く飛び上がり、それを狙って巨大な顎を開けて海中から飛び出てきたガギエルのコアを、まさかのライダーキックで破壊した。

それはたった5秒足らずの出来事。

ガギエルはたった一撃でその命を散らした。

 

 

 

「すごいじゃないアスカ!あのデカい使徒を一撃で倒しちゃうなんて!さっすが!期待のエースパイロットね!」

弐号機から降りたアスカを見ると、ミサトが駆け寄って賞賛の声を上げる。

「もぉ!そんなに褒めないでください!ちょっとだけ本気を出した程度ですよ!」

一方、謙遜しているアスカは顔がニヤけて本心がバレバレ。

「使徒を倒した記念よ!ここの食堂でなんでも好きな物奢ってあげる!」

「だそうだ。せっかくだし一番高いやつ頼むか。」

「え?ケ、ケンくん?居たの?」

「俺だけじゃないぞ。チルドレンは全員乗っていた。」

ケン達も弐号機に乗っていた事実を知ったミサトの顔から血の気が引いていく。

「で、でも、弐号機のパイロットはアスカだし、あなた達は乗っていただけじゃない?だから全員はちょっと…」

「確かに乗っていただけだが、俺はエヴァが起動するまでの間使徒の攻撃をATフィールドで防いでたし、それにレイとシンジは蹴りの軌道を補正してたからなぁ。」

(あれ?補正なんてしてないよな?まぁいいか。)

(ケンくんと…キス出来なかった…)

ケンの言葉、後半は嘘である。

「え?アスカ、ホント?」

「はい。みんなにはとても助けられました。ありがとう。綾波さん、シンジ君、大和君。」

アスカは勢いで操縦していたため、事実を知らない。

ただ適当に答えただけだ。

「終わった…今週はビール無しだ…」

もちろんミサトがそんな事を知る由もなく、1週間ビールにありつけないことに絶望していた。

 

食堂に向かう道中

「ケンくん…ちょっと。」

レイに呼び止められるケン。

「レイ、どうした?」

「その、お手洗いに行きたいのだけど、案内して?」

頬を赤らめながら呟くレイ。

もちろんケンは心よく承諾する。

「分かった。着いてきてくれ。」

2人は列を離れ、廊下の奥に消えて行った。

 

食堂

「あれ?ミサトさん、ケンとレイがいないですよ。」

2人がいないことに気がついたシンジが辺りを見回す。

「あの2人のことだからどっかでイチャついてんじゃないの?それより何か注文しなさい。あ、高いのは無しよ。」

いつもの事だろうと特に気にしないミサト。

「あの2人ってとても仲がいいですけど付き合ってるんですか?」

アスカは行方よりも関係が気になり、ミサトに聞く。

「そうよ。最近はどこに行っても一緒にいるわね。ちなみに告白したのはレイの方なのよ。」

「そうなんですか?!綾波さんって大人しいから、イメージ湧かないですね。」

「それでね、実は──」

調子に乗って2人の馴れ初めを話し始めるミサト。

アスカも気持ちが乗ってきて女子トークに花を咲かせるのだった。




丸2日 戦闘シーンが 浮かばずに ちょっと無理やり 倒しちゃった


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R.STAGE18綾波レイ、一線を越える

夏休み中はこのペースを維持したい


窓から射す日光が唯一の光源になっている暗い船室。

仰向けで倒れているケンと、その上に馬乗りするレイ。

「レイ、こんな所で押し倒しきて何をするんだ?」

少し恐怖の混ざった声で話し始めるケン。

「……」

レイはケンの瞳を真っ直ぐと見下ろすだけで何も言わない。

「レイ?どうしたんだ?何か話したい事があるな──」

上体を起こそうとするケンの肩を抑え、至近距離で向かい合う2人。

レイの目にはハイライトが無く、息も荒くなっている。

その姿はまるで、獲物を追い詰めた野獣。

対するケンは、これから食べられる小動物のようになっていた。

ケンなら簡単に振り解ける程の力しかないレイ。

だが『レイを傷付けたくない』という思いが邪魔をして満足に力が出ない。

ゆっくりと顔を近づけるレイ。

ケンの記憶は、そこで途絶えた。

 

記憶がハッキリとした時には、かつてない疲労と、隣でスースーと可愛らしい寝息を立てるレイの姿があった。

両者服が乱れており、何があったかを理解するには十分な状況。

「あ…なるほど。」

流石のケンも完全にアレされたことを察した。

「今までいきなり抱き着いてきたり、毎日あーんされてきたが、まさか、レイがここまでやるとは…少し甘く見てたかもしれないな…それにしても、ホントに可愛い寝顔だな。」

そう言って微笑むケンはレイの頭をそっと撫でる。

しばらくすると、乱れた服を直してレイを優しく背負い、部屋から出て行った。

 

 

 

食堂

「──てっいうことがあったのよー。」

仕事中なのを忘れてビール片手に話すミサト。

「へぇー。そうなんですかー。」

呆れているのか、棒読みの返事をするアスカ。

「zzz…」

シンジはテーブルに突っ伏して寝ている。

「ちょっとシンちゃーん。寝てないではなし聞きなさいよ〜。」

寝ていようとお構い無しに絡む酔っ払い。

「碇くん、起きてー。ミサトさんが呼んでるよー。」

ミサトから逃げるようにシンジを起こすアスカ。

「うーん…何?」

寝ぼけるシンジ。

「シンちゃーん、アスカのことどう思ってるの?」

ド直球なミサトの質問。

いつものシンジならこの状況、『別に、仲間が増えて嬉しいなって思ってますよ。』と答えるだろう。

「アスカのことですか?そりゃまぁ…好きですよ。顔は可愛いし、髪は綺麗だし、スタイルもいいし。一目惚れするに決まってるじゃないですか。」

寝ぼけているシンジは本人の目の前で正直に話してしまった。

「え?え?シ、シンジ?それって、その…」

目の前で自分が好きだと言われ、混乱するアスカ。

「シンちゃ〜ん、隣で大好きなアスカがあたふたしてるわよ~。」

「え?」

ミサトに言われ横を見るシンジ。

そこには顔を真っ赤にしているアスカが座っていた。

「あ…あ…」

状況を理解してたちまち顔を赤くするシンジ。

「ア、アスカ、今のは、その…」

「名前で呼ぶなバカシンジ!」

恥ずかしさを隠すようにシンジの頬にビンタをかますアスカ。

そこにレイを背負って現れるケン。

恥ずかしさでお互いの顔を隠すシンジとアスカ、それを見て爆笑するミサト、何があったのか分からず混乱するケン、ケンの背中で寝るレイ。

カオスとまではいかないプチカオスな空間がそこにあった。




ちなみにレイの暴走の原因は、弐号機の中でキス出来なかったから強硬手段に出た、というものです。(伝われ)
そう言えば新しい弐号機が出たそうですね。
皆さんも一度見てみてください。


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R.STAGE20事件発生

いつもギリギリで思い付く


2015年6月6日土曜日

この日、シンジは誘拐されていた。

朝、1人で留守番をしていると玄関のチャイムが押される。

誰が来たのか聞いてみるも何も返ってこない。

イタズラだろうと思い放置すると、再びチャイムが鳴る。

もう一度聞いてみるも、やはり何も返ってこない。

そしてしばらくするとまたチャイムが鳴る。

苛立ちを抑え切れず、扉を開けた瞬間、何者かによって意識を奪われた。

 

気がつくと目隠しをされており、周りの様子が分からない。

分かるのは手足を縛られ、椅子に座らされていることのみ。

抵抗は無駄だと理解したシンジは、大人しくして誘拐犯の反応を待つ。

数十秒の間を置き、犯人と思われる人物が口を開いた。

「流石はエヴァのパイロットだ。判断能力は目を見張るものがある。私はA。君に伝えたい事がある。拘束を外そう。」

聞き慣れない男の声がそう言うと、手足の拘束が解かれる。

目隠しが外れると、目の前にピエロの仮面に真っ黒なロングコートを着た男の姿が現れる。

「このような形で呼び出してしまった事、申し訳なく思っている。」

「…こんな事をしてまで僕に伝えたい事って何ですか。」

男の異様な風貌に怯むことなく、シンジは真っ直ぐと問う。

「君の質問に対する答えは、この箱の中にある。」

男が取り出したのは、ケーキを入れるようなサイズの箱。

シンジが恐る恐る手を伸ばし、箱を開けると…

『happybirthday!シンジ!』

と書かれたホワイトチョコが乗った豪華なケーキがあった。

「へ?」

「出て来い!みんな!」

ピエロの男がそう言うと、見慣れた顔の者達が続々と出てくる。

「「「happybirthdayシンジ〜、happybirthdayシンジ〜、」」」

「?」

突如始まるバースデーソングに戸惑うシンジ。

「「「happybirthdaydeerシンジ〜、」」」

「!」

全てを察し、涙が浮かぶ。

「「「happybirthdayシンジ〜!おめでとうー!」」」

「みんな、ありがとう!」

友への感謝と同時に、涙が溢れ出した。

「サプライズ大成功。いやぁ、練習したかいがあった。」

ピエロの仮面を外し、ケンが悪みのある笑みを浮かべる。

「ケン…度が過ぎるよ…」

そう言いながらも満更でもないシンジ。

「おめでとさん!シンジ!」

「めでたいなぁ。」

「ありがとう!トウジ、ケンスケ!」

トウジとケンスケがシンジに飲み物をつぎ、3人は紙コップを交わす。

「おめでとう、碇くん。」

「ありがとう。委員長。」

委員長らしく落ち着いて祝うヒカリ。

シンジも落ち着いて感謝を述べる。

「シンジくん、お誕生日おめでとう。」

「これからもよろしく頼むぞ、シンジ。」

「ありがとう。2人とも。こちらこそ、これからもよろしくね。」

静かに祝うレイの前で、シンジとケンは硬い握手を交わす。

「たかが誕生日祝われた程度でそんなに喜ぶなんて、バッカみたい。」

「惣流…そこまで言わなくても…」

「俺より張り切ってた奴がよく言う。」

アスカの辛辣な言葉にへこむシンジ。

だがケンの一言で表情は明るいものに戻る。

「え?惣流、そうなの?」

「~~!」

顔を真っ赤に染めるアスカ。

「あんたは素直に喜んでればいいのよ!バカシンジ!」

「ありがとう。惣流。」

照れ隠しとしか思えない言葉にシンジは笑顔で返す。

「…もう、アスカで良いわよ。」

「ふふ、ありがとう!アスカ!」

その後、みんなでケーキを食べてワイワイと騒いで誕生日パーティーは終わった。

 




パーティー会場はケン宅、ケーキはケン、レイ、アスカの手作りです。


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R.STAGE21使徒流サプライズ

オリジナル武装やっと出せた。


シンジの誕生日パーティーの翌日、ソイツは、使徒は来た。

海に沈んだ街で使徒を捜索する3機の新武装を装備するエヴァ。

初号機は身の丈程ある巨大な日本刀、『マゴロク・E・ソード』通称『マゴロックス』を。

弐号機は銃身下部に刃を付けたライフル、『プログレッシブ・ベイヨネット』を2丁。

無号機は左腕を前腕から覆うシールド一体型の巨大な爪、『フィールド・フィンガー』をそれぞれ装備している。

「危なかったな。昨日来てたら誕生日どころじゃなくなってたぞ。案外、使徒にも礼儀があるのかもな。」

使徒が来ようと冷静にボケるケン。

「あんたってなんでいつも余裕こいてんのよ。」

基本どんな状況でも全く焦りを見せないケンに呆れるアスカ。

「焦ってミスするよりはマシだろ?」

「それもそうね。」

アスカは思ったよりもマトモな回答にあっさり納得する。

「アスカも大分ケンに慣れてきたね。」

「コイツもちゃんと考えて変なこと言ってるし、それで特に障害になる訳でもないから気にしないだけよ。」

「確かに、ケンってふざけても嘘はつかないもんね。」

「やれやれ、そんなに褒めても何も出ないぞ?」

ケンがそう言った瞬間、イスラフェルが海中から勢いよく飛び出した。

「前言撤回、使徒が出たか。て…あれ?待て!アスカ!」

「何よ!使徒がいるんだから攻撃しないと!」

銃口を使徒に向けたまま突撃をやめる弐号機。

「アスカ、アイツの光球を見て!」

シンジに言われるがまま、そっとコアに視線を落とす。

「!コアが2つ?どういうこと?」

「今までにないタイプだ。作戦を変更。シンジは正面から、俺とアスカは一度左右に別れて同時に攻撃する。いいな?」

「「了解。」」

「(この作戦ならすぐに倒せる。悪いなイスラフェル。初見殺しは俺には通用しない!)攻撃開始!」

勝利を確信し、シンジの右側に回り込むケン。

次の瞬間、初号機のマゴロックスがイスラフェルを一刀両断する。

そして、ケンの知る通り両断されたイスラフェルがそれぞれ別の個体になる。

「はぁ?!何よあれ!」

「怯むな!コアを破壊しろ!」

驚きつつも攻撃するアスカ、勝利の笑みを浮かべるケン。

2人の刃が2体のイスラフェルをコアごと同時に切断する。

だが、ケンの笑みは消え、焦りに変わる。

切断した2体のイスラフェル。

それが更に新たな個体となり黄、紫、赤、紺色の4体に増え、3人に襲いかかる。

(黒とオレンジから更に分かれるだと?!バカな!コアは2つしかなかったはず!まさか、TV版のイスラちゃんが2体くっ付いて漫画版の見た目に化けていたのか?!)

「ケン!危ない!」

「!」

シンジの声で紺色のイスラフェルの接近に気づくケン。

すぐにATフィールドを展開するも、時すでに遅し、無号機は遠くへ投げ飛ばされた。

 

 

 

 




たまには主人公も負けないとね


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R.STAGE22ケン、初敗北

イスラフェル戦、結果は惨敗だった。

初号機、弐号機、無号機はぶん投げられ、空中で衝突。

落ちた所をまたぶん投げられ、初号機は海で、弐号機は海で、無号機は近くの町で犬神家状態にされた。

その映像を大画面でゲンドウとコウゾウ、リツコとミサト、加持さんに見られる。

「何よあの使徒!せっかくの日本でのデビュー戦がめちゃくちゃじゃない!だいたいアンタもボーッと突っ立ってんじゃないわよ!」

大人達がいなくなって素の性格に戻ると、当然アスカはキレた。

その怒りの矛先は使徒からケンに移る。

「アスカ。ケンはいきなりのことで混乱しただけじゃないか。そこまで言わなくてもいいだろ。」

珍しくアスカに反抗するシンジ。

「シンジ。庇う必要はない。アスカが言ってることは正しい。完全に俺が悪かった。まさか2段構えとは思わなかった。奴を斬った瞬間、油断していた。本当に、申し訳ない…」

思いのほか落ち込んでるケンに若干引くアスカ。

「なんか、アンタがそう素直に謝ると調子狂うわね。そこはいつもみたいに「悪いな、少し油断していた。」ぐらい軽い感じで謝りなさいよ。」

「そうだな。あんまり暗くしてると、レイに心配かけちまう。いつも通り、気楽にいくかぁ。それじゃ、また明日なー。」

すぐにいつもの調子に戻るケン。

先に行かせたレイを追って歩き始める。

「「切り替え早。」」

珍しく2人の声がハモった。

「まぁな。」

一度止まって2人にドヤ顔で応えるケン。

そうしてまた歩き始めた。

と同時、

『エヴァパイロット全員は、至急、第2作戦会議室に集合してください。繰り返します。エヴァパイロット全員は──』

「思ったより早いな…しゃーない。サクッと行ってサクッと終わらせるか。」

やっと止まることなく歩くケンにシンジとアスカも続いた。

「エヴァのまだ動けないはずなのに…どうするんだろ?」

「知らないわよ。そんなこと。」

「作戦でも思い付いたんだろ。最も、今呼ぶということは俺たちも何らかの準備が必要。多少の覚悟はしておくか。」

 

第2作戦会議室に着くと、レイとミサトが待っていた。

「みんな、こっちこっち。」

4人が集まるやいなや、会議室を出て手招きするミサト。

「?どこ行くんですか?」

「いいから黙って着いてらっしゃい。次の作戦の準備よ。」

シンジの質問を一蹴するミサトはイスラフェルの特性を話し始める。

「次の作戦?」

「コンピュータシュミレーションの結果、4つに分離した使徒はお互いがお互いを補っていることが分かったわ。つまり──」

「撃破するには4つのコアを同時に破壊する必要がある。その為には完全に息を合わせることが必要。ってことか。」

アスカの時のようにセリフを奪うケン。

「まぁ、簡単に言うとそうね。」

ミサトがドアを開けると、テレビや電話、クローゼットに4つのベッドのある、まるでホテルのような部屋が現れる。

「あなた達にはここで5日間、一緒に暮らしてもらいます。」

ミサトの唐突な発言に、4人は顔を見合わせると、

「「えーーっ?!」」

(やっぱこうなるよな〜。)

(ケンくんと同じ部屋で寝られる。嬉しい。)

こうしてドタバタ共同生活が幕を開けた。

 




やっべ加持さん出すの忘れてた


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R.STAGE19書き忘れてた回 前編

前書きのネタも尽きてきた…


「はよぅ。」

鞄片手に教室に入るケンは、ヒカリの席に止まる。

「委員長。レイは今日検査が入って休みになった。レイのプリントは放課後預かる。」

「綾波さん大丈夫?よく休んでるけど…」

ヒカリが心配そうに顔を暗くする。

「別に病気とかある訳ではないし、いつも元気だから問題無いとは思うが、いかんせん俺も詳しいことは分からないからな。そうだ。そんなに心配なら今度の土曜日、家に来るか?」

「いいの?でも、迷惑なんじゃ。」

「気にするな。めったに人なんて来ないんだ。それに、知ってる奴ならレイも安心だろ。」

「そう?なら行こうかな。」

笑顔に戻るヒカリ。

「よかった。詳しいことは放課後に。あと、トウジも呼ぶからよろしくな。」

「?!」

笑顔から一転、ケンの一言で驚きに変わる。

「それじゃ。」

そう言うとシンジ、トウジ、ケンスケの所で話し始めるケン。

「おはよう、ケン。」

「おぅ、はよぅシンジ。」

「あれ?綾波は今日も休みか?」

「ちょっと検査でな。ま、いつものことだ。」

「ケン、お前数学得意やろ?宿題見せてくれ。」

会って早々に宿題の写し書きを懇願するトウジ。

「全く、お前が妹の看病をする優しい兄じゃなかったら殴ってたところだ。」

そう言いながらも宿題のワークを取り出すケン。

「ホンマありがとう!お礼に書き写しのコツ教えたるわ。こうやって所々違う答え書くとええんや。」

ページをパラパラとめくり、答えを書き写すトウジ。

「ちゃっかりしてるよコイツ。あ、そうだ。大和、あれはバッチリか?」

「もちろんだ。約束通り、しっかり撮ってきた。」

ポケットからこっそり写真入りの封筒を取り出すケン。

ケンスケは写真を確認するとこっそりポケットにしまった。

「今後ともよろしく頼む。」

「こちらこそ。」

シンジの目の前で行なわれた取引。

そこで渡された写真の中身は、先日乗った戦艦オーバー・ザ・レインボー他多数の戦艦のものだった。

この他、いままで渡された国家機密は数知れない。

そしてケンスケが提供するもの、それは新武装の設計とアイデア。

ケンのアイデアをより現実的にするだけでなく、ケンスケ自身もアイデアを提供することで新武装の開発に陰ながら貢献している。

ネルフ側も、リツコに『開発部への貢献、これまでも機密情報を漁っているが、ネットなどに上げていないうえ、ケンの信頼があるため外部に情報が漏れる可能性が著しく低い。その為交渉の規制は禁ずる』と書類で言われているので見逃している。

「ケン、そろそろホームルーム始まるよ。」

「そうだな。じゃ、また休み時間に。」

ケンが席に着いた直後、先生が教室の戸を開ける。

 

 

 

学校が終わり、男子4人で帰っている。

ゲームセンターの前を通った時、ケンスケのセンサーが反応を見せる。

「おいトウジ、見ろよ!」

ケンスケの視線の先には、以前と同じワンピース姿でクレーンゲームをするアスカの姿があった。

「うおーー激マブ!」

「チョーー好み!」

((あ…マジか…))

「あの人はやめとこう。あまりいい気がしない。」

「俺も同意見だ。この場は去った方がいい。」

そそくさと立ち去ろうとするシンジとケン。

2人の制止を聞かずに舌を出してパンツを覗こうとするジャージとメガネ。

((コイツら死んだな…))

「ケン。2人は置いて帰ろっか。」

「そうだな。」

その後、トウジとケンスケがどうなったかはお察しである。




ほとんど原作と変わってない。まるで初期の頃のようだ。


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R.STAGE19書き忘れてた回 中編

夏休み最後の投稿です


リツコの研究室

「赤城博士。レイの検査結果、どうだ?」

神妙な面持ちでケンは問うた。

「単刀直入に言うわ。レイは…」

リツコは手元のカルテを睨み、それを見るケンの身体に激しい悪寒が走る。

「処女よ。」

「それは…ほ、本当か?」

驚きを隠せない表情で問うケン。

「あら、信じられない?」

「そういうわけじゃないが…いや、正直信じられないな…」

「私って信用無いのね。ガッカリだわ。」

「いや、赤城博士のことは信用している。だが、あの時の状況的に信じるのが難しいだけだ。」

「無理ないわ。正直言うと、私も信じられないもの。でも、検査の結果は処女。MAGIもそう言ってるわ。」

「……」

黙り込むケン。

研究室に流れる長い沈黙の中、2人は思考にふける。

「一つ、聞いてもいいかしら?」

沈黙を先に破ったのはリツコだ。

「どうやってあのレイを、こんなことするような娘にしたの?」

「分からない。」

顔を暗くし、口を開く。

「…第5使徒戦の後、いきなりキスをされた。レイが変わったのは、そこからだ。」

「そう…」

そしてまた長い沈黙が流れる。

今度の沈黙は考えるためではなく、何も言うことが無い、ただそれだけのものだった。

 

「そうだ、例の新型武装。届いたか?」

明らかに無理をしている声でケンが話題を振る。

「え?えぇ。今日届いたわ。あとは調整するだけだから明後日には使える状態になるわよ。」

「分かった。それと、例の装備の進捗は?」

「2種類はとっくに完成してるわよ。試作品の方も、片方は無号機に取り付け中、もう片方もあと1、2週間程で完成するわ。」

「次の戦闘で全部試したかったが…仕方ない。また今度にするか…」

「そうしてくれると助かるわ。ダミープラグの研究も遅れてるから余裕無いのよ。」

リツコが満面の笑みで嫌味ったらしく言う。

「…すいません。」

静かな怒りを感じ取ったケンは謝るしかなかった。

 

 

 

ネルフ本部、自販機コーナー

「お疲れ様、レイ。いきなり検査させて悪いな。」

ベンチに腰掛けるレイに話しかけるケン。

「いいえ。ケンくんが私のこと心配してくれてると思うと、嬉しいから。ありがとう。」

ケンはレイの隣に座る。

「俺もレイが健康でいてくれて嬉しいよ。」

じっと見つめ合う2人。

しばらくしてレイが口を開く。

「ケンくん…」

「どうした?レイ。」

「名前、呼んでみただけ。」

少し頬を染めて微笑むレイに、ケンも微笑み返す。

そのまま近付く2人の瞳。

レイがまぶたを閉じ、あと数センチで唇同士が触れる時、ケンは背後に殺気を感じ、恐る恐る振り返る。

そこには、何も言わずにこちらを凝視するゲンドウの姿があった。

ケンはレイの手を取ると急ぎ足でその場を後にする。

背中に絡み付く並々ならぬ殺気を振り払う様に、そそくさと帰って行った。

 



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R.STAGE22共同生活

最後の数行にいつも苦戦する…


ユニゾン作戦の内容は当初と大きく変わっていた。

最初は、動きを完璧に合わせて同じタイミングでそれぞれコアを破壊する作戦だった。が、別に動きを合わせる必要はないことに気付き、それぞれ適当に戦い同じタイミングでコアを破壊する作戦になった。

結果、ダンスの時間を無くして各々専用に設計した武器のレプリカを使用したパイロット同士の戦闘訓練をしている。

もちろんただの訓練ではない。訓練最終日にはトーナメントを開催し、優勝すれば、最下位の人間に1つ言うことを聞かせられるという景品を得られる。全員が己の野望の為、訓練に励んだ。

 

訓練時以外は共に生活し、親睦を深めた。

味噌汁を作るシンジ、その隣で、慣れない手つきで野菜を切るアスカ。

エプロン姿で顔をしかめているアスカをチラチラと見るシンジ。

アスカはシンジの視線に気付くことなく、野菜相手に苦戦している。

「アスカ。ちゃんと野菜切れ──」

「ったぁーー!」

シンジの言葉を遮るアスカの悲鳴。

「アスカ。また指切ったの?押さえる手は丸くしてっていつも言ってるよ。」

「やってるわよ〜。でも切っちゃうのよ。」

指の傷口を咥えるアスカは、涙目になりながらもシンジを睨む。

指を咥える+涙目+ギャップという悪魔的な式を目の当たりにしたシンジ。

その光景は、世の男子にとって絶景以外の何物でもない。

「ほら、絆創膏貼るから来て。」

「あ、うん。」

だが、シンジは強かった。目の前の光景に心を打たれながらも、すぐに手を取ってキッチンから連れ出す。

強引ながら優しく自分を引っ張るシンジに揺らぐ、アスカの心。

指の傷口を消毒して丁寧に絆創膏を貼るというシンジの行為。

それは厳しい環境で育ち、亡き母親の愛情を求めていたアスカにとって、激薬のような優しさと愛情がこもっていた。

「うん、これで良しっと。気をつけてね?アスカに何かあったら僕が不安になるんだから。」

「?!」

顔をブワッと赤くするアスカ。

「あんたバカァ?!なんでアンタが不安になんのよ!」

「え…なんでって…それは…その…」

シンジも顔を赤くし、なんとも恥ずかしい空気が部屋に充満する。

「そうだ!お味噌汁見ないと!」

そう言って手当てを終えたシンジは逃げるようにキッチンに向かう。

シンジが去った後、指に貼られた絆創膏をぼーっと見つめるアスカ。

その顔は微かに赤く染まっていた。

「どうしたアスカ?ぼーっとして。野菜はまだ切れてないようだが?」

「!…あ、今行くわ!」

取り出した洗濯物をレイと共に運ぶケンの声で我に帰り、また野菜を切り始めた。

 

 

 



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R.STAGE23全面対決

めっっっちゃ遅れたー!
本当に申し訳ございません!m(_ _)m


『目標、第三新東京市まで残り12km。エヴァ各機、スタンバイ完了です。』

エントリープラグのディスプレイから、マヤの声が聞こえる。

「了解。作戦スタート。無号機、行くぞ!」

無号機を走らせるケン。目の前には山があり、その陰には身体を修復し、再び1つになったイスラフェルがいた。

山を飛び越え、落下の勢いを利用し、フィールド・フィンガーの爪で縦に真っ二つに切り裂く。

「今だ!シンジ!」

近くの建造物の陰から現れた紫の巨人。その手に握るマゴロックスで、分裂したイスラフェルが形を戻すよりも速く、2つに斬った。

ケンは4つに分かれたイスラフェルの一体を持ち上げ、思い切りぶん投げる。

「お前はそっちだァ!!」

それを追いかけ、彼は走って行った。

残されたイスラフェル達とシンジ。そこに颯爽と駆けつける二号機。

「バカシンジ!大丈夫!?」

「ありがとうアスカ!行くよ!」

2対3の状況になり、再び戦いが始まる。

シンジはマゴロックスで切り払い、アスカは二丁のプログレッシブ・ベイヨネットを乱れ撃つ。

イスラフェルはバタバタと倒れるがすぐに再生し、隙なく攻撃を仕掛ける。

「やっぱりキリが無い!」

「弾が尽きそう!レイはまだなの!?」

驚異的な再生能力と単純な数的有利。2人は苦戦を強いられていた。

 

「ライフルでも持ってくれば良かったか。それかもう一体連れてくれば良かったな。まぁ、アイツらならなんとかなるか。」

少し離れた所で、ケンは2人の戦いを見ている。足元にはコアを踏み潰され、なおも抵抗するイスラフェルが地面に押し付けられていた。

 

バイヨネットの発砲が途切れ、銃身から煙が上がる。

「弾が無くなった?!ちっ、レイ!とっとと来なさいよ!」

「こっちもキツイかもね…もう刀が欠けてきた…」

よく見るとマゴロックスの刃は欠けているだけでなく、うっすらとヒビが入っている。

一見不利に思われる戦場に光の弾丸が放たれ、イスラフェルの上半身を1つ、2つと吹き飛ばした。

「ごめんなさい。調整に時間がかかり過ぎた。」

零号機の右腕は『試作型天使の背』の様な、機体よりも長い砲身に変わっている。

それはN2リアクターを内蔵し射程と威力を増した新型であり、頭部にはセンサーユニットを付け射撃精度を上げている。

「全く、調整ぐらいさっさと済ませないよ!まぁいいわ。一気に行くわよ!」

「うん!」

「了解。」

レイの正確無比の射撃により形勢は逆転。シンジはコアを突き刺し、アスカは左右からハサミの様に切断し、レイの砲撃は半身ごとコアを消し飛ばした。

それと同時、ケンはイスラフェルを踏む足にグッと力を込める。

全てのコアを破壊され、爆散する使徒。皆が勝利の余韻に浸る中、ケンはただ1人、険しい顔をしていた。



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R.STAGE24

イスラフェル撃破の翌日、とあるカップルが夜のネルフ本部でイチャついていた。

「レイ。もうすぐ零号機の調整が始まるからそろそろ行かないか?」

膝の上の何かを優しく撫でるケン。

「あと1分だけお願い。」

膝枕&頭なでなでセットを堪能するレイ。

「そう言ってもう10分経つんだが…」

「ケンくんは嫌?」

「そういうわけじゃなくて、早く行かないとリツコに叱られるぞ。」

「…分かったわ。でも、」

「でも?」

「終わったらご褒美が欲しい。ダメ?」

自分の膝に頭をのせて甘える美少女に勝てる男子などいるはずもなく、

「分かったよ。何か考えておく。」

ケンはあっさりと了承した。

 

 

 

調整が終わる頃にはすっかり夜が明けて日が昇っていた。2人を乗せたネルフの車が家に着く。

運転手が振り向くと、

「到着し…」

レイがケンの肩に頭をのせて眠っていた。

「お運びしましょうか?」

と、小声でたずねる運転手。

「構わない。俺が抱いていく。」

そう言うとケンは車から降り反対側のドアを開け、レイを抱きかかえて去って行く。

玄関を開けるとまっすぐ寝室に入り、目を覚まさないレイをそっとベットに寝せる。

「おやすみ。レイ。」

その声は、とても穏やかなものだった。

リビングのソファに腰をかけ、ケータイを開いてある人と話し始める。

『はい、もしもし。』

「大和ケンだ。時間は空いてるか?」

『えぇ。ちょうど仕事を切り上げたところよ。何の用かしら?』

「ダミー用のデータはしっかり取れたか?リツコ。」

『えぇ。レイの調子も良いみたいだし、あなた達が期末テストをする頃には完成してるわ。それと例の装備だけど、1週間後、無号機に取り付ける予定よ。』

「凄いな…もうそんなに進んだのか…」

2つの朗報に思わず声が出てしまうほど、ケンは驚きを隠せなかった。

『そろそろ切るわね。それと、遠慮せず困った時は連絡するのよ。』

「もちろんだ。レイに何かあった時、頼れるのはリツコだけだからな。」

『あら。レイのことじゃなくてあなたのことよ?』

「……」

リツコの言葉に声が詰まるケン。

『気付いてないと思ったら大間違いよ。最近シンクロ率が異常に高くなってるわ。それに、戦闘中の怪我が多くなってるのに全然傷跡がないし、もしかして』

「リツコ。それ以上は何も言うな。」

普段のケンとは全く違う厳しい声。それは、リツコの予想を肯定していると言っているようなものだった。

「もう寝る。またな。」

そう言うと返事も聞かずに電話を切る。ケンはソファに座ったまま、しばらく天井を仰いでいた。



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R.STAGE25前回と一緒に出せば良かったかもしれない

「ん……あぁ……」

ケンはいつの間にか眠っていたのか、ソファの上で意識が戻る。

(何だ…体が重い…金縛りか?)

覚めない脳で動かない体を疑問に思い視線を下げると、自分の上ですーすーと寝息を立てる少女。

(かわいいが…流石に暑いな…)

「レイ。レーイ。起きてくれないかー?」

背中をとんとん叩いて起こそうとするも、全く起きないレイ。

(……かわいいからいっか。)

その後数時間程、レイはケンの上で眠り、ケンはレイの頭を撫で続けた。

 

 

 

ピンポーン

どれほど経った頃だろうか。ふと玄関のチャイムが鳴った。

「レイ。誰が来たから起きてくれないか?」

一向に起きる気配のないレイ。

ピンポーン、とまたチャイムが鳴らされ、ケンの顔に焦りが出る。

「レイ!頼む起きてくれ!人来てるから!誰か分からないけど人来てるから!起きて!」

これだけ言っても眠り続けるレイ。これには流石のケンも最終兵器を出すしかなく、

「ちょ、ホントに起きて!後で『何でもする』から!」

最終兵器『何でもする』、レイはその言葉を待ってましたと言わんばかりに勢い良く体を上げる。

そして獲物を仕留めた肉食獣のような眼でケンの左眼を真っ直ぐ捉えた。どうやら最終兵器は想像以上の破壊力だったらしい。レイの眼が一瞬で獣のそれに変化したのだから。

「ほんと?」

「え?」

「何でもするってほんと?」

「あ…はい。」

「じゃあ起きるわ。」

事実確認を済ませるとあっさり起きるレイに若干の恐怖を覚えながら、ケンはそそくさと玄関に向かった。

 

「ゼェハァ、すいませーん。ハァ、遅れました。」

と扉を開けるとプリントの束を持ったシンジが現れる。

「ケン。大丈夫?何か凄い声聞こえたけど…」

先の奮闘は外にいたシンジにまで届いていたらしく、ゼェゼェと息を切らせているのも相まって、何かあったのではと心配される。

「気にするな。ほんのちょっと、疲れただけだ。」

「(多分レイが何かしでかしたな…)そうだこれ。委員長が届けてくれって。」

「おぉ、助かる。」

差し出されたプリントの束を受け取るケン。

「ところで、明日の中間テスト。自信あるか?」

「あ……ケンは?」

一瞬真顔になり、何事も無かったようにいつもの顔に戻るシンジ。だがケンは一瞬の真顔を見逃さなかった。

「おい待て何ださっきの『あ……』て。まさかお前…」

「はは…腹をくくるよ。」

「全く…」

「で、ケンは?」

満面の笑みでケンは言う。

「よく言うだろ?『赤信号みんなで渡れば怖くない』って。」

そして2人は、乾いた笑いを交わした。

 



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R.STAGE26あけましておめでとうございます

「誰が来たの?」

「あぁ。シンジが俺達のプリントを届けてくれたんだ。明日のテストに備えて、ちゃんと勉強しないとだな。」

「嫌、私の言うことを聞くのが先よ。」

「まぁまぁ、そう言わずにな?」

プリントの帯を解くと、課題の多さに顔をしかめるケン。

「ほら、こんなに範囲広いんだぞ?少しだけでも勉強しないと赤点になるだろ。」

「でも…」

不服そうに頬を膨らませるレイに、ケンはそっと呟く。

「それに、赤点とったら補習で一緒にいる時間が無くなるからな。」

「!」

「だから、な?今日は勉強しよう。」

「もちろん。赤点をとるわけにはいかないわ。」

即答するレイの目つきはキリッとしたものに変わっていた。

 

翌日

中間テストで早く終わった学校の帰り道。珍しくケン、レイ、シンジ、アスカ、トウジ、ケンスケ、ヒカリの7人で帰ることになった。

「にしても珍しい事もあるんやなぁ。ケンと綾波も一緒に帰るなんて思いもせんかったわ。」

「なに、最近あまり絡んでなかったからな。それに今日は午前授業だ。時間はたっぷりある。」

「そうだ、久しぶりにゲーセン行かないか?ガ○ダムの新作が出たんだ!」

「お!いいなケンスケ!みんなもいいか?」

「私はケンくんがいるならそれで。」

「アタシも別にいいわよ。暇つぶし程度にはなるし。」

「僕も。別に行きたいところもないしね。」

「私はあまり行った事がないから気になるな。」

「んじゃ、行くとするか。」

ゲームセンターへと進路を決めた一行はのんびりと歩き始めた。

「そういえば加持さんから聞いたが、一昨日ミサトの昇進祝いとアスカの歓迎会をやったそうだな。どんな感じだったんた?」

「なんかすごい疲れたわ…しばらくはやりたくないわね。」

と、肩を落とすアスカ。

「すごく楽しかったよ。またいつかやりたいな。」

アスカとは逆に満面の笑みのシンジ。

「ワシも疲れたわ…もうどつかれるのは懲り懲りや。」

「それはアンタが色々勝手に話すからでしょ。おかげで加持さんの前で恥かいたじゃない。」

左頬をさするトウジにどついた本人がつっこむ。

「でも最初からバレてたワケだし、いつかはあぁなってたでしょ。」

おちゃらけるケンスケにアスカの鋭い視線が突き刺さる。

「何、アンタもどつかれたいの?」

「まぁまぁ落ち着いて、相田も余計なこと言わない。」

ヒカリが仲裁に入ってなだめている間に、いつの間にかゲームセンターの目の前まで来ていた。

「なんか…色々あったんだな…(ま、知ってるけどね。)と、言ってる間に着いたぞ。嫌なことはゲームでもしてとっとと忘れちまおう。」

 

 

 

「思ったより遅くなったな。」

ケンとレイが家に着く頃には外はすっかり暗くなって、時計は8時をまわっていた。

「今日の夕飯は少し適当でいいか?」

「えぇ。ケンくんが作ってくれるならどんなものでも美味しいから。」

「ありがとう。じゃあ先に風呂入るか?上がったらちょうど出来たてを出せるようにな。」

「分かったわ。」

そういうとレイは着替えを取りに自室へ向かった。

 

 

15分程で、レイが上がってきた。

「早かったな。まだ少しかかるから髪乾かして待っててくれ。」

野菜を切る手を速めるケン。すると、後ろからレイが髪を濡らしたまま、無言で抱きついた。

「レイ?今包丁持ってて危ないから離──」

「したい…」

「!?」

静かに、それでいてはっきりと聞こえたその言葉にケンは手を止める。

以前よりも自分を求めるレイの行動が嫌な訳では無い。むしろとても喜んでいた。だがそれと同時にこのまま進んでいくと、いつか取り返しのつかない事になるんじゃないかという不安にいつもかられていた。それでも彼女の秘密を知っているケンは、抵抗することが出来なかった。悲しい運命を変えられなかったとしても、せめて幸せを増やしたい。その想いが彼から思考を奪っていた。

そんな中で出されたこの言葉は、ケンを不安に飲み込むには十分だった。そして彼はまた、

「分かった…それじゃあ、俺が風呂に入ったらベットで待っててくれ。」

考えることをやめていた。




やっべ思ったより重くなった


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R.STAGE27久しぶりの戦闘だー

『第6サーチ衛生より目標の映像データを受信!モニターへまわします。』

シールドのないフィールドフィンガーを装備する無号機のプラグ内、ディスプレイに使徒の姿が映る。

「おおぉ…」

あまりの大きさに思わず声が漏れる。

(いや、これよく3機でやったな?!ホントにコレ受け止められるのか?!)

流石のケンを持ってしても、この圧倒的な体格差はビビらざるを得ない。

「俺の配置はホントに真ん中でいいんだな?」

時間が残されている内に作戦の内容をミサトに確認する。

『そうよ。無号機は落下予測範囲の中心から向かって。これはフィールドフィンガーの強化ATフィールドで時間を稼ぐためよ。』

「それって端に落ちてきたら俺が間に合わないんじゃないか?そしたらフィールドフィンガーも意味がないと思うが──」

『いい?貴方達はとにかく走って受けとめることだけを考えて。』

「…了解。(見てくれとこれまでの流れは漫画版と同じ。そして最も落下の確率が高いのはシンジ方面の山岳部。2人がシンジに合流するのに約1分。そこから逆算すると………この辺りか。とはいえ前回のイスちゃんの例がある。原作の流れは参考程度にしておかないと死ぬかもな。)」

ケンが思考に耽けていると、通常仕様に戻した零号機に乗るレイが話かける。

「ケンくん。」

「どうした?レイ。」

「呼んだだけ。」

そう言うとレイは楽しそうに微笑む。

「ふふ…そうか。」

それにつられてか、ケンも笑みがこぼれる。

『「アンタ達何作戦前にイチャついてんのよ。」』

弐号機のアスカと、本部のミサトが同時にツッコんだ。

「ていうか、アンタはアンタで何で黙ってんのよ。」

何も話さないシンジにアスカは聞く。

「え?ごめん…考え事してた。」

「そんなんで足引っ張んないでよね。少しでも気を抜いたら終わるんだから。」

「そうだね。気をつけるよ。」

シンジは気を改め、オペレーターの声に耳を向ける。

 

『目標落下開始。作戦スタート!』

ミサトの声と同時、4機のエヴァが走り出した。

使徒の落下を阻止せんと、河を、山を、街を超え、ただひたすらに走り続ける。

(コイツ!前よりも早い!初号機では間に合わないか!)

 

とある山の頂上。無号機がそこに止まると、 自分を目掛けて落ちてくる使徒に向かってフィールドフィンガーの掌を掲げる。

「(ギリギリで間に合った!あとは!)フィールドォ!ぜんかぁい!」

展開されたATフィールドが使徒を受け止め、その動きを完全に静止させる。

すると、使徒は何重にも重ねたATフィールドを自身の上に展開。止められた勢いを復活させた。

「これは…マズイか…」

無号機の足が山肌に沈む。ケンの頬を冷や汗が流れる。

「なんてね。」

ケンはニヤリ、と怪しく微笑む。

「強化ATフィールド!展開!」

フィールドフィンガーから奇怪な音がなり始め、激しく輝くATフィールドが広がった。

使徒と無号機のATフィールドがぶつかり合い、空間が歪み、火花を散らせた。

 



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R.STAGE28引き寄せる力

落下する使徒を受け止める無号機。

活動限界時間まで、あと26秒。

「誰でもいい!早く来い!これ以上俺は何も出来ん!」

そこに駆けつけ、使徒を共に押し出す初号機。五分五分のところにさらに力が加わり、ハサクィエルは押し戻される。

「シンジ。今のうちに穴を空けてくれ!活動時間が持たない!」

「分かった!」

ケンに言われるがまま、シンジはATフィールドに指をねじ込み穴を開ける。

ちょうどそこに零号機が現れ、両肩からナイフを出すと、ATフィールドに空けた穴からコアを突き刺す。

だが、それでも使徒は活動をやめない。

あと、9秒。

「どきなさいレイ!」

いつの間にか来ていた弐号機がコアに刺さったナイフを思い切り膝蹴りをかます。

押し込まれたナイフはコア内部のS2機関を破壊し、4人を爆炎で包み込んだ。

 

 

 

ネルフ本部にて、更衣室へ向かう途中。

「今回は危なかったな。連携が取れていなかったら今頃みんな空の上だ。」

「ミサトの作戦っていつもギリギリよね。普通、思いついてももっと現実的なの考えるでしょ。」

「まぁまぁ。一応マギが1番成功率が高いって言ってるんだし、何とかなってるからいいじゃない。」

「だからって素直に従うのはちょっと…」

「私はケンくんが命令に従うなら、そうするだけよ。」

「ありがとう。レイ。俺もレイがいるだけで安心するよ。」

「ケンくん…」

「アンタらってなんでそんなにイチャイチャしてんのよ。ていうか…なんで10分も経ってるのに電気がつかないのよ!」

アスカの言う通り、ネルフ本部は停電していて真っ暗だ。

誰も気にしないのも異常だが、そもそも停電するというのも異常だ。

「あー。言われてみれば確かに。なんでこんなに停電してるんだろ?」

「嫌な予感がする。ちょっと調べてくるから、先に発令所に行ってくれ。」

ケンは電源室に1人で向かった。

 

 

 

電源室の扉を前に、ATフィールドで中の様子を探る。

「工作員が3人。内2人が銃持ちか。所属は…まぁ戦自だろうな。出来れば他の奴らも捕まえたいが、とりあえずコイツらが先だな。よし、行くか。」

扉を開けると、2人の男が拳銃を向ける。

奥の工作員も、素早く拳銃を取り出した。

ケンは一瞬で奥の男に接近し、肘をみぞおちに突く。

相手が倒れるよりも先に右手の拳銃を奪うと、振り向きざまに警戒役の銃を撃ち落とす。

そして怯んだところに回転蹴りとアッパーを食らわせ、僅か3秒足らずで全員を沈黙させた。

尚、ケンは索敵以外でATフィールドを使用していない。

エヴァの右眼の影響、それが身体能力を向上させていた。

ケンは次第にエヴァそのものに引き寄せられる自分自身に、静かに恐怖した。



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R.STAGE29呪い

電源装置のむき出しにされた回路を慣れた手つきで繋ぎ直すプラグスーツ姿のケン。

(まさか、前世で機械科に行っていたことが役に立つなんてな…ほとんど覚えてなかったが、やってみると思い出すもんだ。)

昔の記憶に浸っているうちに、回路の接続が終わった。

「後は電源を入れれば…お、ついたついた。」

電気がつき、部屋が明かりで満たされると、扉の前にレイが立っていた。

「レイ。いつの間に着いてきてたんだ。ケガはないか?どこかぶつけたり─」

「これ、ケンくんがやったの?」

怯えた目と震える声。

倒れている工作員を見ると、さっきまで暗くて分からなかったが、誰も気絶しているのではなく死んでいた。

それを知ったケンは声を荒らげて否定する。

「違う!そんな!俺は…気を失わせようとしただけで…」

だが、自分がやった。

「ケンくんが殺したの?」

ついさっきまで自分が恐怖していた力で。

「違う!違う違う違う違う違う違う違う違う!違う!」

頭に手をやり、首を大きく横に振り、全力で否定した。

「違うんだ…」

レイに顔を向けると、いつの間にか部屋から消えていた。

 

 

 

発令所の面々は、監視カメラの映像を通して様子を見ているリツコが言う。

「諜報部を回して遺体の回収と調査をさせて。それと…ケン君の拘束もね。」

この場において最も正しい命令は、残念ながらケンを絶望の底に突き落とすことになる。

 

 

 

死体の中で力なく座るケンの手に手錠がかけられる。

無理やり立たされても何も言わず、ただ従うままの目に光はない。

何も考えず、何も言わない。かつてシンジがそうしたように、暗い独房の中でケンはそうして現実から逃げた。

真夜中になっても寝付けないまま、死体の様に横たわる。

誰1人として面会に来るでもなく、ただ尋問を受ける日々。

やがて1週間が経った。

 

 

 

「ケン君、今日も何も答えなかったそうです。それに、食事も水しか飲まないと…」

報告書をそっとリツコの机に置くマヤ。

「困ったわね。無号機のパイロットは替えがきかないし、少しでも立ち直って貰わないと貴重な戦力に穴ができるわ。」

報告書に目を通しながらリツコは言う。

「そもそもなんで水しか飲んでないのに健康に異常無しなのよ。むしろそっちの方が気になるわ。そこんとこどうなのよ?」

サボりに来ていたミサトがコーヒーを口にする友人に聞く。

「そんなこと言われても。私だって気になるわよ。」

そして影のある表情で言った。

「もしかするとケン君はもう…人を超えた、もっとスゴい何かになってしまったのかも…可哀想に。エヴァに呪われてしまったのね…」

 



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R.STAGE30最大の敵

どれ程の時が経っただろうか。

ここ数日、やたらと外が騒がしい。

それに、尋問も行われていない。

久しぶりに暗い独房に明かりが差し込んだ。

(もう疲れたな…行きたくない。まぁ、どうせ言っても無駄だろうな。俺に拒否権なんてありやしない)

「ケン君。今すぐ出てきて。出撃してちょうだい」

耳に馴染んだ声で言われる予想外の言葉に視線を向ける。

案の定、そこにはミサトが逆光で照らされていた。

よく見ると左腕を怪我している。

それを見たケンが状況を察するのに時間は要らなかった。

参号機の暴走、使徒バルディエルの発生とその殲滅。

結果としてトウジは死んだ。

結末を知るからこそ溢れそうになる涙をグッと堪えて、けれども止まらなかった。

「……トウジ……どうして!」

静かに怒った。

目の前のミサトに言っても何も解決しない、そもそもミサトにはどうしようもなかった。

それを知っているから、静かに怒った。

「ごめんなさい。けど泣いている時間は無いの。今あなたが戦わないと、みんな死ぬのよ。シンジ君も、アスカも、そしてレイも、みんな死ぬのよ」

「ヴゥゥ!」

言葉にならない怒りの唸りと双眸がミサトの目を睨む。

「そんなこと言われたら…戦うしかないだろう。それに、俺はその名前出されると引くに引けないんだよ」

赤く腫れた目に覚悟をして、ミサトに言う。

「もちろん無号機はすぐに出せるんだろうな。俺が準備している間に状況をまとめておけ。作戦は俺が考える。」

 

 

 

初号機を攻撃していたゼルエルが動きを止めた。

先程空けたジオフロントに歩みを進め、そのまま入って行く。

ゆっくりと下るゼルエルがとある通路に光線を放ったが、その中から伸びた漆黒の右手が顔面を鷲掴みにした。

その勢いで指を両目にねじ込むと血が吹き出して指を塗らし、そのまま壁に押し付ける。

通路から全身を現した無号機がフィールドフィンガーを外した左手にナイフを抜刀。

「まずは…」

ゼルエルのATフィールドを中和しながら右肩に振り下ろす。

「その腕を落とす!」

超振動の刃が肉を切り裂き、リボンの腕を右肩ごとセントラルドグマの底へと切り落とした。

「フィールド全開!!」

背部拘束具を内側から弾き飛ばして溢れる金色のオーロラ。

それはラミエル戦で見せた光の翼。

顔面を掴んだ右腕を掲げ、光の翼が羽ばたくとセントラルドグマの中を急上昇して行った。

NERV本部を背にしても止まることはなく、そのままゼルエルの空けた穴を通り第三新東京市の上空に突き上げる。

ちょうどそこへ、全方位からN2爆雷が降り注いだ。



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R.STAGE31

N2爆雷の光に照らされ、真昼のように明るい第三新東京市。

光の中心で使徒ゼルエルを押し上げる無号機。

背部拘束具を内側から破壊した光の翼が、触れる大気を燃やしバチバチと火花を上げる。

次第にN2爆雷の爆発がゼルエルの背中を抉り始めた。

左手に握るナイフをコア目掛けて突き上げた。ゼルエルはコアを殻で覆い守りナイフを防いだ。

だがケンはエントリープラグの中で口角を上げた。右手に掴む顔面を引き、ナイフを無理矢理にでも突き刺さんと押し込む。

無号機のATフィールドはゼルエルのものの中和と滞空の為の推進力に全て注いでいる。

そのため爆発の熱と衝撃が、一切の緩和無しに拘束具や内部機器を叩き破壊した。

そんなことはお構い無しに降り続けるN2爆雷が肉を抉り、ついにコアまで到達すると、剥き出しのそれを容赦なく襲い始める。

コアのシェルはナイフを防ぐために使われ爆発を防ぐことが出来ない。

シェルに突き立てられたナイフ、コアを襲うN2爆雷、目を潰され光線も撃てず、ATフィールドは全て中和され、死へと近づくゼルエルは最期の抵抗として残ったリボンの左腕を無号機の胸に突き刺した。

分厚い胸部装甲を容易に貫通したリボンはコアを切り裂き、内部のS2機関を傷つける。

「がばぁ!」

無号機と高シンクロ状態にあるためダメージが過剰にフィードバックされ、異常なまでの痛みが脳を一瞬支配する。

「この…程度の…痛みでぇ…」

数秒、視界がホワイトアウトし、音が遮断され、手足の感覚も消えた。

それでも尚ATフィールドの展開を止めずナイフをコアに押し付ける。

「やられてたまるかぁ!」

自分の声も聞こえない。それでも叫んだ。痛みを紛らわす為に、己を鼓舞する為に。

ようやく外界の情報が分かるようになった時、左手に硬い物が割れる感覚がナイフを伝って感じた。

N2爆雷がコアを破壊したのだ。光に包み込まれると、達成感と疲れがATフィールドを解除して黒い巨人が街に落ちる。

「残念だったな…俺の勝ちだ…」

焦点の定まらぬ視界に見たのは、消えゆく巨大な光の十字架だった。

十字の光に照らされた第三新東京市を突き抜け、ジオフロントに落下するエヴァ無号機。

落ちた衝撃で、一瞬LCLの中で体が浮いた。LCLが無ければ放り投げられただろう。

ケンはオレンジのLCLが赤く滲んでいるのに気がついた。それはまるで水槽に入れた水にに赤い色水を垂らしたような景色だった。

もう1つ、ある事に気がついた。シンクロが切れているにも関わらず左胸が異常に痛いこと。

視線を移すとプラグスーツの左胸が赤く染まっている。それを見て呼吸も満足に出来ていないことに気がついた。

ケンは察した。

フィードバックされたものは痛みだけでなく、物理的なダメージも含んでいたと。

それが分かると自然とこう思った。

(あぁ、死ぬのか…)

人間不思議なもので、死を実感すると冷静になる。諦めからか、慌てるだけのエネルギーも無いからか。理由は分からないが死ぬ時はあっさり死ぬものだ。

ゆっくりとまぶたを閉じる、ミサト達が通信で何か言っているがどうでもよく感じた。

真っ暗な視界の中、最期。

レイに抱きしめられるような感覚に陥った。



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新しい世界編
R2.STAGE1新しい世界、新しい地獄


 

長い夢を見ていた気がする。

まるで現実味の無い、それでいてリアルな夢。

その夢の中では、自分と同じ名前の男の人が巨大なロボットに乗っていた。

訳の分からない何かと戦って、友達を作って、恋をして、最後は死んだ。

まるでシナリオが迷走して打ち切りになった下手なロボットアニメのような夢だ。

正直言って駄作だ。あまりに酷すぎて、テレビでやったらネットのおもちゃにされるぐらいには酷い。

やたら長いし、途中もありきたりな展開や大して面白くない場面が多い、オマケに後味も悪いと来た。二度と見たくない。

そこらの悪夢の方が早くおわるだけマシだろう。

全く、朝から嫌な気分だ。

 

部屋を出て階段を降りると、父さんと母さんが朝ご飯の準備をしている。

「おはよう、ケン。相変わらず早いわね」

「おはよう。顔色が悪いぞ、よく眠れなかったのか?」

「おはよう。大丈夫、少し変な夢を見ただけだよ。すぐに顔を洗って手伝うね」

洗面所でふと鏡を見て驚いた。

夢の中に出てきた男の人のように右目が赤く光っていたからだ。

「ひぃ!」

思わず目を背けて手で鏡を隠す。

恐る恐る指の間から鏡に写る右目を見ると、何の変哲もない黒目だった。

(見間違いか…)

そう思うと、何だか急にバカバカしくなってくる。

自分に呆れながら顔を洗って、そそくさと家族が待つ台所に向かった。

 

いくつかの大きなテーブルを慣れた手つきで拭いて回って、食器を並べ終わると丁度、自分が降りてきた階段からチビ達が眠そうな顔で降りてきた。

「おはよう。みんな」

そう挨拶すると、

「「「おはよぉ!ケン兄ちゃん!」」」

と元気な挨拶が返って来る。

「朝ご飯の準備はできたから、顔を洗って来るといい」

「「「はーい」」」

10人程の可愛いチビ達がとてとて、と足音を立てて洗面所に入って行く。

この光景に毎朝癒されているのは言うまでもない。

 

この子達は兄弟では無い。とは言っても、本当の弟妹のように愛している。

みんなセカンドインパクトの影響で孤児になった子達だ。

セカンドインパクトは世界を滅ぼしかけた、当然世界中の政府が崩壊。

五体満足で生き残った大人も職を失い、何年も定職出来なかったり、出来たとしても自分の事で手一杯な人も多い。

そういう人に子供が出来ても、中絶するお金も無く産むしかないので、産まれた赤ちゃんはどこかに置いてかれる。

ほとんどが雨風のしのげる橋や屋根の下だが、運が悪いと人のいない場所で飢え死にするか動物の餌になるか、あるいは人身売買か。

父さんと母さんは優しい人だ。

孤児を放ってはおけないからと、自分が4歳の頃に孤児院を作った。

自分も積極的に手伝ってはいるが、学校もあるので簡単な仕事しかさせてもらえない。

 

1週間前の事だ。

もうすぐ自分の誕生日だから、みんなでどこかに出かけようという話になった。

自分は特に行きたい所もないが、前にチビ達が「だーさんしんとーきょーしにいきたーい」と言っていたので「第三新東京市に行きたいな」と言った。

「第三新東京市か、分かった。来週みんなで行くか!」

と父さんは快く言ってくれた。

「「「やったー!」」」

後ろで遊んでいたチビ達が喜ぶ顔は、いつまでも忘れないだろう。

 

そういう訳で、今日は朝ご飯を食べたら第三新東京市に向かう。

昨日まではチビ達が迷子にならないか心配だったが、いざ当日になると自分も喜んでいるのが分かった。

「「頂きます」」

「「「いただきまーす!」」」

父さんと母さんにチビ達が元気に続いた。

朝ご飯を食べながら、どこを見て回ろうかと考えていると、いつの間にか孤児院のバスに乗っていた。

これには驚くしかない。

途中の記憶が全く無い程集中していた自分に変な笑みがこぼれる。

そして、悲劇は起きた。

 

目の前に父さんと母さんだった物が散らばる。

右目が痛い。

後ろではチビ達が泣き喚き、失禁している。

頭から血が垂れている。

地面に広がる血の溜まり。

足に力が入らない。

周りの情報と自分の情報が交互に処理されていく。

訳が分からない。

バスを降りてみんなで歩いていた。

そしたら暴走した大型トラックが目の前を歩いていた父さんと母さんを

「ヴォェェ」

吐いた。

父さんと母さんを潰した。

2人は最期に何も言わなかった。言う暇が無かった。

落ちた吐瀉物が血と混ざって地獄のような景色で視界を埋める。

気を失った自分はその地獄に顔面から倒れ込んだ。

最後に感じたのは、消化途中の朝ご飯と胃酸と、血の匂いだった。




前回の世界では書かなかったケンの家族を書きました。
初期の頃にケンは孤児院に仕送りをする為に戦っている。というのは決めていたのですが、その話を途中に挟む技量が無かったこと、途中で1度リセットをかけるつもりだったこともあって、2度目の世界で最初に書くことにしました。
皆さんの疑問が少しでも解けたら幸いです。


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R2.STAGE2再び得る生、初めて失う死

ケンはまた、不思議な夢を見た。

今朝、夢に出てきた白い少女に抱きしめられている。

自分の体も夢中の様に成長している。ゆっくりと体を離すと、少女は涙で目を潤わせて言った。

「ごめんなさい。私のせいでまた苦しませることになった。ごめんなさい」

そう言って涙を流す少女を、今度は自分が抱きしめる。

「そんなこと無い。俺の方こそごめんな。1人で逝ってしまって。もう1人にはしない。約束する」

お互いの顔が見えるように体を少し離す。少女の目をまっすぐに見て言った。

「だから、もう一度そばに居てくれるか?」

「ありがとう。ケンくん」

少女は涙を流しながら笑った。

「こちらこそありがとう。レイ」

2人は何も言わず顔を近づけ、唇を重ねる。

 

 

 

目を覚ますと、照明が1つ付いただけの真っ白な天井があった。

ケンは体を起こして周りを見る回すと、いつもの病室に懐かしさを覚える。

前の世界よりもかなり早くNERVに来たことに少し困惑して状況を整理する。

(そうか…父さんも母さんもいないのか。俺がここに来たいと言わなければこんなことには……俺のせいで、あいつらを苦しませるのか……)

溢れる涙と後悔を堪えて、なんとか冷静を保つ。

(今は泣いてる場合じゃない。逆に考えろ。使徒が来るのは4年も先だ。まだエヴァの開発も終わっていない。この4年でなんとかして設計に関わることが出来れば戦闘を優位に進めることが出来る。それにこの右目。前は1年も使えなかったが、今回は4年の期間がある。それだけあれば前よりも身体が適応し、上手く扱えるはずだ。このチャンス、逃してなるものか)

ケンが新たな覚悟に拳を震わせると、病室の扉が開き1組の男女が入ってきた。

サングラスをかけた黒い制服の男性と白衣をきた金髪の女性。

NERVの司令、碇ゲンドウと技術1課E計画担当博士、赤木リツコだ。

「目は覚めたかしら?大和ケン君」

(この2人相手は特に気をつけないとな。記憶があると思われたら何されるか分からん。せめて生身でATフィールドが操作出来るまでは一言一句気をつけるか)

「……父さんと、母さんは?」

少し躊躇して、リツコが答える。

「残念だけど、あなたのご両親は──」

 

「そう、か…俺のせいで……」

抑えていた涙が止まらない。分かっていたことだが、受けとめることが出来なかった。第三者に言われて湧いた実感が、ケンを辛い現実に押し付ける。

初めて両親を失った喪失感と悲しみが混ざり、無表情のまま涙を流した。



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R2.STAGE3 シナリオ通りに

ケンの両親が死亡し、ネルフで無号機のパイロットをすることを条件に施設の子をネルフの施設に入れてもらうことになった。

その後レイに再会したが、周りと同じように記憶はなかった。

再びレイと仲を深めながら、ネルフでの地位を確立していく。

そうしている内に4年が経った。

 

警報が鳴る病室

「そろそろ行ってくる。レイ」

「気をつけてね。ケンくん」

ベッドに横になる怪我をした少女、綾波レイ。彼女の手を握り寄り添うのは大和ケン。

14年振りに使徒が襲来しているとは思えないほど甘い空気が漂っている。

「ケンくん、行ってらっしゃい」

「必ず帰ってくる」

ケンはレイに見送られながら病室を出ていった。

少し歩くと携帯に電話がかかる。

『ケン、分かっているな?』

「当然。サードチルドレンと葛城ミサトの乗る車を守りつつ、頃合いを見て撤退。でしょう。司令」

『そうだ。期待している』

電話は切れた。

「期待…か…」

気持ちのこもらない声に呆れながら、無号機の格納されたケージに向かった。

 

 

 

エントリープラグの中でヘッドホンをつけるケン。

するとリツコの声が聞こえてきた。

『使徒はミサト達の近くにいるわ。安全な場所に離れるまで2人を守って』

「了解。LCLを入れてくれ」

そう言うとエントリープラグの中をLCLが満たしていく。

慣れた様子でLCKを肺に吸い込むと、ゆっくりと息を吐いた。

(シンクロ率は70%未満にしとくかあんまり高すぎると警戒されるからな。厄介事は極力避けたい)

無号機を乗せたリフトが発射体制に入った。

「大和ケン、出るぞ」

秒速数百メートルはあろうかという高速でリフトは上る。

十数年ぶりの感覚に沸き立つ高揚感が脳に広がるが、決してそれを顔には出さない。

第三新東京市の中を駆ける青いルノー。そのすぐ側にいるのは第3使徒サキエルだ。

サキエルが足元のルノーに気付いたその瞬間、黒い巨人がサキエルに飛びついた。

『聞こえるな?葛城三佐』

サキエルの攻撃を防ぎながら黒い巨人は言う。

『こちらで時間を稼ぐから一刻も早くネルフへ向かえ。近くにいると満足に戦えん』

言葉を聞いたルノーはアクセルを吹かし、全速力で離れた。

 

『葛城三佐、サードチルドレンの戦闘区域からの離脱を確認』

「了解。これより攻撃に移る」

無号機は繰り出された腕を掴み止め、仮面の様な顔に左の拳をぶつけた。

よろけたサキエルにすかさず回し蹴りをいれ転倒させる。

肩部パイロンからナイフを取ると、無防備なコアに振り下ろした。が、サキエルは光のパイルを無号機の胸目掛けて打ち出し、無号機はすぐに回避したがかわしきれず、左胸に刺さったパイルは背中まで貫通した。

「が…は…」

ケンの胸に激痛がフィードバックされ、意識が飛びそうになる。

「まだ!」

なんとか気を保ち反撃に出ようとしたところで警報音が鳴り響いた。

「ちぃ!今の衝撃で火器管制がやられたか…戦闘は続行出来るがこちらが殺られる…仕方ない…」

無号機を後退させながら通信ウィンドウを開く。

「火器管制がやられた。このままでは勝てない可能性が高い。撤退の許可を求む」

『了解した。援護射撃を行う。指定のエリアまで後退せよ。そこで回収する』

「了解」

サキエルに降り注ぐ弾丸が気を引いている間に無号機は撤退し、無事に回収された。

 



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R2 STAGE4接触

約4ヶ月、おまたせしました


回収された無号機の中、仕事を終えたケンはプラグ内で現状報告を聞きながらくつろいでいた。

(倒そうと思えば倒せた相手ではあった…そうすればシンジに無理をさせることもないし、被害も少なく済んだ…最も、それをするのはまだ先の話だ…今はゲンドウの、ゼーレのシナリオを利用するして時を待つ…その為にこの4年間、準備したのだ…)

『衝撃波、来ます』

報告の直後、回収リフトのそれとは違う一際強い振動に揺らされる。

「そろそろ来る頃か…先に行って待ってるかな…」

 

 

 

「お前など必要ない。帰れ…」

NERV本部総司令、碇ゲンドウの冷たい言葉が息子シンジに降り注ぐ。

扉の向こうから聞こえる声で状況が分かるケンはスイッチに手をかけた。

(相変わらず言いすぎだと思うがな…もう少しシンジの意も汲んでやればいいものを……)

指に力を込めて扉を開けケージに足を踏み入れた。

「そう言わずに、素直になってはどうです?そのような言い方では誤解を生みますよ」

サングラスに越し一瞥を受ける。

「ケンか…」

プラグスーツの上にコート仕様のNERV制服を羽織った姿のケンを困惑した顔で見るシンジ。

「私は大和ケン。アナザーチルドレンとしてエヴァンゲリオン無号機、先の機体のパイロットをしている。隊長も務めているのでな、今後共に戦うことがあれば私に従ってもらう。…で、本題に入ろう。司令はああ見えてかなり緊張している。昨日も私を相手に相談してきた程だ」

「え!?そうなの!?」

シンジがゲンドウを見上げるが返事は無い。

「だから乗ってくれないか?司令はお前が思っている程冷たい人間ではない。期待故の態度なんだ」

「………」

「………」

「………」

「…分かったよ。乗ればいいんだろ?僕が乗るよ…」

静寂の末、やり投げ的な覚悟を決めた。

だが今はそれでいい。思春期の反抗だとしても、世界は何も文句を言わない。

 

シンジがリツコに連れられて行った。続いて去ろうとするケンをゲンドウは呼び止める。

「なんでしょうか?」

「人の前でデタラメを言うのはやめろ。変な誤解を招きかねん」

「それはそれは。失礼しました。ですが今後のモチベーションも考えると最善の行為かと…」

「………」

「私から、いや俺からも1つよろしいですか?」

「なんだ」

「もしレイを利用しようと言うのなら……その時は覚悟してください」

危険を感じる黒い瞳。

交わす視線に火花が散る。互いに利用し合う2人はもう止まることはないだろう。

「では、私はこれで失礼します。また後ほど」

一礼してケージから出て行った。



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