空想ヒーロー (UFOキャッチャー)
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中学生編
【1】自己紹介と遭遇


新しく書き始めました。
色々すみませんm(__)m。


俺の名前は擬魅白郎(まがみはくろう)出須多(ですた)中学校に通う中学生だ。ちなみに2年生である。そして俺には前世の記憶がありこの世界を知っている。そう、いわゆる俺は転生者である。

 

 

 

 

 

 

ある日、俺は自分の好きな漫画の最新刊を買いに駅のショッピングモールの中にある本屋に出掛けていた。そして、ショッピングモールの本屋に到着するとお目当ての漫画本と、他の好きな漫画本も何冊か買い終え、ショッピングモール内の階段を下りていると大きな揺れが発生した。そう地震である。地震というのは突然起きるもの。当然、周りの人々は驚き慌てふためく。だが驚きながらもその場にしゃがんだり、持っている鞄などを頭に被せたりなど身の安全を守っていた。しかし俺は階段を歩いていた。これだけ言えばお分かりだろう。そう、俺はその場でバランスを崩し階段から転げ落ち頭を床に強く打ちつけてしまった。頭から流れ出る真っ赤な血。このとき俺は瞬時に理解した… あ、これ死ぬわ …と。それから地震が治まると周りにいた通行人が近寄り声を掛けてくるが俺の意識は薄れていく。スマホを取り出し救急車を呼んでいるのだろうか…とてもありがたい、が俺はもうすぐ死ぬから無意味だ。

 

(ああ…どうせなら最新刊読みたかった……)

 

薄れゆく意識の中であれがしたかった、こんなことがしたかったなど色々な事を思い返す。ああ、これが走馬灯というものかと思う青年。

 

(もし漫画や小説みたいに第二の人生があるなら…好きな漫画の世界に生まれ変わりたい…そうだな、どうせならあのヒーロー漫画(僕のヒーローアカデミア)の世界がいいな…)

 

青年が最後の願いごとのようにそう思っていると、無機質な声が突然青年の頭の中に響く。

 

《確認しました。転生先、僕のヒーローアカデミア……成功しました》

 

(なんだ?何か声がしたような……ああ、転生できるのならどうせ強い力…チートが欲しいな…そうだな、頭で想い描いた力を使えるとか強そうだ…)

 

《確認しました。個性【空想】を獲得…成功しました。ただし、世界の均衡を保つため制限が課せられます。能力などを作製する際、作製できない能力はメッセージが表示されます》

 

(なんか、ゴチャゴチャと声がうるさいなぁ…あぁ、あと顔とか身長はカッコよくて高いのがいいかなぁ…)

 

《確認しました。身体に関する情報を高レベルに設定します…成功しました》

 

(あー…もうダメだ…眠くなってきた…まぶたが重い…ここで終わりか…)

 

 

 

 

 

 

…っとまあこんな感じだ。ここで終わりかなんて思ったらこの世界に生まれ変わって、いや転生か?まあ別にどっちでもいい。まあ簡単にまとめれば事故死からのメチャ強い能力授かってこの世界(ヒロアカ)に誕生。それから生みの親と平和に暮らしていたんだけど、その親は少し前に車による事故で死んでしまった。俺もその車に乗っていたんだが奇跡的に助かった。まあ、無傷ではなかったけど。生みの親が死んだあと俺の親権は父の兄、つまり伯父が引き取ってくれたんだが…この伯父、なかなかぶっ飛んでいるというかいい加減と言うか基本放任である。2人で生活していくのかと思っていたら…

 

『野郎と一緒に生活はしたくねえから白郎!お前1人暮らししろ!今後の為にもなる!ああ、安心しろ!金とかその他いろいろはちゃんとするから!』

 

これ聞いたときはこの人マジかなんて思ったもんだ。父親は結構真面目な性格だったたから本当に兄弟なのかと疑ったよ。だが言葉の通り金とかその他いろいろはちゃんとしている。恐らく楽をするためには努力を惜しまないタイプなのだろう。まあこちらとしても1人暮らしは気楽だからいい。まあ掃除・洗濯・炊事は面倒だがな。さて、自己紹介はこのぐらいにしておこう。冒頭に言ったように俺はいま中学2年生である。そしてもうすぐ夏の休み…そう夏休みがくる。それにともなって学校では今後の進路を考えておくようにと担任を他の教師が俺たち2年生に言っている。一応俺の進路はヒーロー…つまり雄英高校への進学である。事故で死んだ親の最後の言葉も《白郎…あなたのその力は多くの人々の為に役立てなさい…頑張って…あなたなら…》、こんな言葉を言われちゃ目指さないわけにもいかないしな。そんなわけで俺はいま、勉学に励み個性の鍛錬を続けて充実した日々を送っている。

 

白郎がどこの誰に向けてか分からないがそう思い話していると授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。

 

教師「よーし、今日はここまでだ。忘れ物しないよう下校するんだぞー」

 

生徒「「「は~~い!」」」

 

教師「ああ、それと擬魅。後で職員室に来るように。進路どこにするのか聞くから。今日君の番ね」

 

擬魅「あっ、自分雄英です。これでいいすか?」

 

擬魅が職員室に行くまでもなくその場で答えるとその答えにクラスメイト達は驚いた。

 

生徒「擬魅くん雄英志望なの!?すごっ!!」「雄英って倍率ヤバいんだろ!?」「確か300倍じゃなかったっけ?」

 

生徒「でも擬魅、成績いいし納得」「それに個性も強いしねー」「確かに~!」

 

教師「おう、分かった。雄英だな。今んとこ成績は大丈夫だが怠るなよ?」

 

擬魅「了解でーす」

 

その後、ザワつく教室を後にする擬魅であった。そして、あれから数日が経ち学校は夏休みになり生徒達は各々の休みに入るのであった。

 

――街中(まちなか)――

 

擬魅「暑っつ…まだ7月だろ……」

 

当面の生活費を銀行でおろしてこようと自宅を出た擬魅は、7月とは思えない暑さに文句を言う。そんな暑いなか足を進めていると擬魅の進行方向の数m先で3人の男達が1人の女性に絡んでいた。

 

男①「彼女ひとり?おー結構可愛いじゃん。俺らとお茶しねぇ?」

 

男②「へー、ギターやるんだ。俺らに教えてくれよ~」

 

男③「俺らも君にいいこと教えてあげるからさ~♪」

 

??「えっ、いや…うち用事あるんで」

 

男①「ちょっとでいいからさ?ほら行こうぜ!」

 

??「ちょっ!いや、はなして!」

 

3人のうちの1人が女性の腕を無理やり掴んでどこかに連れて行こうとする。女性は腕を振り払おうとするが力の差がありすぎて振りほどけない。

 

擬魅「あ~なんでこんな暑っちーんだよ…ん?」

 

男②「あん?」

 

暑さに対して1人愚痴っていると無理やりナンパしている3人の男の内の1人と目が合ってしまう擬魅。

 

男②「なんだよ兄ちゃん、なに見てんだよ?」

 

擬魅「……」

 

男②「無視かコラぁっ!!」

 

男③「おいどうした?」

 

男②「いや、なんかアイツが見てきたからよ、何の用だつったのに無視すんだよ」

 

男③「ほぉー…おい兄ちゃん、変な正義感だして邪魔すんなら容赦しねぇぞ?」

 

自分たちのしている行為が良くないことと認識しているのか、擬魅に対して釘を差す男。それに対して擬魅は…

 

擬魅「そっすね…痛い目にあいたくないし…」

 

??「なっ……!?」

 

男③「そこまで分かってんならとっとと失せ……」

 

擬魅「だが断る!!」

 

男③「な…あ˝あ゛!?」

 

擬魅「この擬魅白郎が最も好きな事の1つは、自分が強いと思っている奴にNOと断ってやることだ!!」

 

男③「あ˝あ˝ん!?だったら痛い目見させてやろうじゃねぇか!!」

 

男②「あーあ…ケンちゃんキレちゃったー」

 

男①「早く謝ったほうがいいよ~。ケンちゃんキレるとまじヤバいから」

 

男②「まっ、謝ったとしてもボコボコだろうけどなww!」

 

男①「違ぇねえ!ギャハハハハっ!!」

 

キレた男が擬魅にズンズンと近づき目の前までくる。女性はというとその様子を黙って見ているしか出来なかった。

 

男③「おうクソガキ、覚悟は出来てんだろうな?」

 

擬魅「女性にモテたいならまずは痩せたらどうですか?それにその体型じゃ暑いでしょ?」

 

男③「ブッ殺す!!」

 

男が右腕を後ろに引き上げ思いっきり力を込めて殴ろうとする。そして擬魅の顔面めがけて男の拳が放たれる。女性は思わず目を逸らしてしまう。

 

??「……(あれ?なんの音も…?)……!?」

 

男①「おいケンちゃん…なっ、何してんだ?」

 

男②「どうしたのさケンちゃん!なんで寸止めなんかしてんだ!?」

 

男の拳はまさに擬魅の顔面の約3㎝手前で止まっていた。その光景にその場にいる一同は驚く。だが一番驚いて…いや、理解が追いついていないのは拳を放った本人であった。

 

男③「てめぇっ!…一体…何を……しやがった!!?」

 

擬魅「どうしました?ああ、太っているから腕がつってしまったんですか?」

 

男③「ふざけんな!テメェが何かしたんだろーが!」

 

擬魅「ああ、1つ忠告しておきますね。このようなナンパのやり方は法に触れますのでやめた方がいいですよ。では、回れ右」

 

男③「お˝…かっ、体が勝手に……!!」

 

男の体が本人の意思に関係なく仲間たちの元へ向かっていく。それはまるで操り人形のようにぎこちない動きで。

 

男②「あ、あれケンちゃん…?なんでこっちに―きブっ!?」

 

男①「ちょっ!何してんだケンちゃん!!」

 

男③「ちっ、違う!俺じゃない!体が勝手に!!」

 

男①「何わけわかんねぇこと言ってやが―ってうおっ!」

 

??「……???」

 

ぎこちない動きで戻って来たかと思えばいきなり仲間に殴られる男たち。その目の前で起きていることに理解が追いつかない女性。

 

擬魅「ほら、今のうちに逃げよ…!」

 

??「えっ…あっ、う、うん!」

 

男たちが混乱している隙に女性の手を掴み、その場から駆け足で離れる擬魅と女性。

 

男①「なっ!てめぇ待ちやがれ!!」

 

擬魅「ああ、このままじゃいけない。はい解除」

 

男③「おっ…!?体が自由に!やっぱテメェが…!!」

 

擬魅「これはおまけだ…六輪咲き(セイスフルール)

 

男①「うお!?体から腕が…!!?」

 

擬魅「スパンダ!!」

 

ズパパパパパン!!!

 

男①③「「ほげぶばばばっ!!?」」

 

突然自分の体から腕が生えてきたかと思えば次の瞬間には頬に強烈なビンタをお見舞いされる男たち。

 

??「……すご…」

 

擬魅「ほら、騒がしくなる前に逃げるぞ…!」

 

??「あっ、う…うん!」

 

騒がしくうなると色々面倒くさいことになるので2人は駆け足でその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――公園――

 

??「はあっ…はあっ…いろいろ疲れた…」

 

擬魅「はいこれ」

 

??「えっ、あ…ありがとう…」

 

ギターケースを背負って走ったため女性は息を切らしながらベンチに座り込む。そのベンチの隣にある自販機で飲み物を購入し手渡す擬魅。そして擬魅も飲み物を購入し女性が座っているベンチに一息つきながら座る。

 

擬魅「はあ~…暑いからその分疲れた…あちぃ…」

 

??「あの…」

 

擬魅「ん、なに?」

 

??「助けてくれて…ありがとう…!」

 

擬魅「ああ、気にするな。俺が勝手に助けただけだ…まあ一応…どういたしまして…♪」

 

??「あはは、なにそれ(笑)…!」

 

擬魅「えーと、一応自己紹介しとくは、俺は…」

 

??「まがみ…はくろうだっけ?」

 

擬魅「……俺、名前言った?」

 

??「あの男たちの前で堂々と名乗ってじゃん」

 

擬魅「そういやそうだったな…まあ改めまして、俺は擬魅白郎。出須多(ですた)中学の2年だ」

 

耳郎「えっ!同い年だったの!?あ、うちは耳郎響香。辺須瓶中学の2年だよ」

 

擬魅「辺須瓶っていうと確か隣の区にある学校だったけ?(うおぉぉ…まさかと思ってたら本当に耳郎だったとは…しかも距離は一駅で行ける距離…まあそれでもだいぶ広いけど…)」

 

耳郎「そうだよ。今日はこの街にある行きつけのギターショップに用があったんだけど、運が悪いことに変な輩につかまっちゃって、どうするか困ってる所にアンタが助けてくれたってわけ。あれは本当に助かったよ!ほんとありがとう!!」

 

擬魅「そりゃ災難だったな。いやまあ、一応ヒーローを目指す者として出来る事を俺はしたまでだ」

 

耳郎「!…そっか、擬魅はヒーロー目指してんだ…すごいな…」

 

この言葉を聞いた擬魅はなにかが引っ掛かり耳郎に問いかける。

 

擬魅「……耳郎は、ヒーローを目指してないのか?」

 

耳郎「…………迷ってんだよね…。ほら、見ての通りうちって音楽好きだからさ、音楽かヒーローどっちの道に進もうかなって……」

 

擬魅「なるほど…。じゃあどっちもすればいいじゃね?」

 

耳郎「えっ…!?」

 

擬魅「どっちもすればいい。音楽も、ヒーローも」

 

耳郎「そんな…いいのかな…?。どっちもだなんて…。それにうちの個性そんなに強くないから…」

 

擬魅「周りが気になるか?」

 

耳郎「……うん」

 

擬魅「まあ、人を凌ぐってのも楽じゃねぇしなぁ…」

 

耳郎「……」

 

擬魅「だが…笑われていこうじゃねぇか(笑)」

 

耳郎「えっ…?」

 

擬魅「高みを目指せばその高みを馬鹿にする奴も出てくるもんだ!笑いたい奴は笑わせとけばいい!いちいちそんな奴を相手にしていたら時間の無駄だ!そしてそんな奴を黙らせるには結果を突きつけてやるしかねぇ!!」

 

耳郎「…!!」

 

擬魅「ダハハハハっ!!夢は1つだけだと誰が決めた?神か?仏か?悪魔か?んなもんねぇんだよ!自分がやるって決めたんならやるまでだ!……っといけないいけない。つい熱くなっちまった」

 

擬魅はつい熱くなり持論を語ったことを謝りながら耳郎の方を振り向く。すると…

 

耳郎「……そう…だよね!…うん決めた!擬魅、うち目指すよ。ヒーローを…!」

 

擬魅「そんな簡単に決めちまっていいのか?」

 

耳郎「いい!あんたの言葉聞いてさ、上手く言葉に出来ないけど気持ちが晴れたんだよね!ありがとね擬魅!」ニカッ!

 

擬魅「……お、おお。そりゃあよかった…//(やべぇ…笑顔めっちゃカワイイ…)」

 

不意を突かれた笑顔に思わず照れてしまう擬魅。

 

耳郎「…?どうしたの?なんか顔赤くない?」

 

擬魅「うぇ…!?あ、ああ!大丈夫だ!」

 

耳郎「あっ、そうだ。連絡先交換しない?せっかく知り合ったんだし!」

 

擬魅「お、まじで?」

 

耳郎「うん。それにこれからヒーロー目指すからその…擬魅がいるとその…心強いし!…//」

 

擬魅「ありがとよ!俺で役に立てるなら光栄だ」

 

その後、2人はスマホを取り出し互いの連絡先を交換し、各々の用事を思い出したためその場を解散した。

 

??「………………中坊のガキのくせに…!調子に乗りやがって…今に見てろよ…………!!」

 

そして、身勝手な人間が2人のどちらかに悪意を向ける……。

 

 

 

 

 




ヒロアカの世界はスターウォーズの地名が用いられているのでオリ主の学校もそれっぽくしました。出須多(ですた)中学校/デス・スター


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【2】お嬢様と救出

ヒロアカがあと1年で……プロヒーロー編きてほしいな


俺と耳郎が連絡先を交換してから約2週間が経過。あれから耳郎とは何気ない日常の会話や、ヒーローへ向けての話を通話アプリで話を交わしたりしてなかなか充実した夏休みを送っている。そんな充実した夏休みを送っている俺はいま東京へ遊びに来ている。せっかくの夏休みだ。ただ勉学と個性の鍛錬だけで終わらせるつもりはない。事前に行くところを決めて地図アプリで確認しながら歩いていた。

 

擬魅「もうちょいだな…(それにしてもやっぱ、東京は人が多い…)」

 

初めて東京へ訪れた人が思いそうな感想を頭の中で呟いていると、1台の高級リムジンが停止する。そして助手席からどこからどう見ても、執事と言える男性が降車し後部ドアを丁寧に開ける。

 

執事「お嬢様、到着いたしました」

 

お嬢様「ええ、ありがとう爺や」

 

そう言いながら後部ドアから降りてきたのは薄水色のロングヘアーで、顔にモノクルを掛けた如何にもお嬢様という女子だった。その姿を見た擬魅は「すげー、リアルお嬢様じゃん」と感心していると。

 

お嬢様「…あの、何か私にご用でも?」

 

擬魅「へっ?ああ、いや別になにも…」

 

お嬢様「でしたらどいてくださるかしら?そこに立っていられたらお店に入れませんわ」

 

擬魅「お店…?ああ、これは失礼…!通行の邪魔をしてしまって」

 

擬魅がお嬢様がいる反対の方を向くとそこには高級服のブランド店があった。

 

お嬢様「いえ…ありがとうございます。では爺や、行きますよ」

 

爺や「はいお嬢様…。すみません、お嬢様のご無礼をお許しください」

 

擬魅「ああ、別にいいですよ。実際邪魔になってたし」

 

爺や「寛大なお心感謝いたします。それでは…」

 

執事の男性は擬魅に一言謝るとお嬢様の後を追いかけ店に入っていった。擬魅も目的地へ向けて再び歩き出す。だが擬魅が高級ブランド店から数メートル進んだところで大きな音が聞こえた。

 

ガシャアァアアァアンっ!!!

 

擬魅「―っ!?《ビクッ!》…なんだ…?」

 

通行人「ビックリしたー!なになに?」「ガラスでも割れたのか?」

 

擬魅の周りにいる通行人もこの音に驚いており、音の発生源であろう方向に振り向いている。そんな何事かと見ているとその音の発生源から悲鳴が聞こえた。

 

店員「きゃああああ!!」「ヴィっ!(ヴィラン)だぁー!!」

 

通行人「えっ?(ヴィラン)?」「まじかよ…!?」

 

擬魅「ちょっとすいません…通ります…」

 

擬魅が少なくない通行人を避けながら少し前に行くとそこには、店内から逃げる店員の姿があった。どうやら音の発生源は先ほどの高級服のブランド店のようだ。

 

店員「店内に(ヴィラン)が!!は、早く警察とヒーローを呼んでくれ!!」

 

通行人「もしもし警察ですか…」「ええ…(ヴィラン)が……」

 

店員の様子を見た周りの数名の通行人がスマホを取り出し警察へ通報をする。

 

擬魅「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」

 

店員「だ、大丈夫です…わわ、私を含め店員に大した怪我はない…」

 

擬魅「そうですか。では、まだ店内に誰か取り残されていたりはしますか?」

 

店内「…………お……お客様がまだ2人…恥ずかしながら…わ、私たちはそのお客様を残して…………」

 

擬魅「(マジかよ!!)」

 

店員の言葉を聞いた擬魅は驚き周りを見渡す。そして、自分が先ほど会ったお嬢様と執事の姿が見えないことに気づく。擬魅がまさかと思っていると店内から大声が聞こえる。

 

お嬢様「なっ、何なのですかあなたは!?こんなことをしてタダでは済みませんよ!!」

 

擬魅「あー…なんか嫌な予感が……」

 

店員「ちょ君!危ないって…!!」

 

店員の言葉を聞きながらも店内の様子を見ようと店に近づきコッソリと見る。するとそこにはなかなかの地獄絵図が待っていた。

 

(ヴィラン)「ぶふ、ぬふふふふ…!ああ、才子ちゃん可愛いなぁ~。そんなに怖がらないでよ。僕は君に会いたくて来たんだよぉ!でゅふふ(笑)」

 

才子「~~~っ!!?」ゾワワワワ…!!

 

才子と言う女子の体に走る悪寒と拒絶反応。そしてこっそり店の出入り口から店内を見ていた擬魅もこれには引いていた。

 

擬魅「(うわぁ…これはあれだな、ストーカーだな。しかも最悪なパターン!…いやストーカーはどれも最悪か?…まあ今はそれはおいといて…)」

 

擬魅は自身の個性を使って助けるか少し考えた。いま目の前で起きていることは耳朗のときのチンピラとは違いどう考えてもヒーロー案件。下手に自分が助けに向かって被害が出たら取り返しのつかないことになる。だが通報は先ほどされたばかり。警察とヒーローが到着するにはまだ時間が掛かる。律儀にそれを待っていたら彼女が危険である。擬魅がそう思っていると店内の様子が動く。

 

(ヴィラン)「ふひひ、さあ才子ちゃん。僕と一緒になろう…そして幸せな家庭を築こうねぇ…!」

 

才子「だっ、誰が貴方のような方と一緒になるもんですか!!お断りしますわ!!」

 

(ヴィラン)「んなぁ!!ひっ、ひどいんだな!僕はこんなにも君のことを想っているのに!!だったら…僕が嫌でも分からせてあげるよぉ!!」

 

才子「ひぃっ!?こ、来ないで!!!」

 

(ヴィラン)が足が震え腰が引けて床に座り込んでしまって動けない才子の元へゆっくりと接近し始める。

 

擬魅「(だあー!四の五の言ってられねぇ!スケスケの能力…!)」

 

(ヴィラン)「ぶひゅひゅひゅ…!さあ、一緒に気持ちよくなろぉね~~!!」

 

才子「い、いや…!(誰か!誰か助け…)助けて……!」

 

(ヴィラン)「ブへへへへ!このあたりの時間帯はヒーローがいねぇ。呼んだってすぐには―…」

 

擬魅「はじめまして(ヴィラン)さん」

 

(ヴィラン)「……うおっ!?誰だてめぇ!!?」

 

才子「……ぇ…?」

 

突然自分たちの近くに現れた擬魅に驚きを隠せない(ヴィラン)と才子。そして突然現れたことにより(ヴィラン)は一時的に混乱する。

 

擬魅「そして、さようなら…!(バリバリの能力…)バリアクラッシュ!!」

 

(ヴィラン)「なんっ…《ドゴッ!!》ぶべぼぁっ!!?」

 

ズウゥン……

 

才子「…………」

 

目の前で起きたことに理解が追いつかない才子。口は半開きになり瞼は何度もパチパチとさせている。そんな状態の才子に近づき声を掛ける擬魅。

 

擬魅「大丈夫ですか、えーと…才子さん、でいいのかな…?」

 

才子「……ぁ…ぁの…はい…」

 

擬魅「立てますか?どこか怪我を負っていたりとかは…?」

 

才子「…わ、私は大丈夫です。ですが執事の者が…」

 

才子の視線の先には床に倒れている執事の姿があった。

 

擬魅「わかりました。俺が執事の人を背負います。歩けますか?」

 

才子「ええ…、大丈夫…です!」

 

才子は震える足を抑え自身を鼓舞させながら立ち上がり、そのまま少し駆け足で店を出る。擬魅も執事を背負い(ヴィラン)が目を覚ます前に店を出る。そして、店に取り残された者が出てきたことにより、外にいた通行人や野次馬は驚きに包まれた。また、周囲の人たちは(ヴィラン)がいる店内から才子と執事の2人を救出した擬魅に驚愕・称賛・関心の目や声を掛けていた。そんななか、擬魅がぶっ飛ばした(ヴィラン)の意識が徐々に戻りつつあった

 

(ヴィラン)「………う˝っ………痛っっ……イデデデ…顔いてぇ……なんで僕倒れて……………そうだ!思い出した!!才子ちゃん!僕の才子ちゃんは!?それと僕を殴りやがったガキはなんなんだ!!?よくも僕の邪魔をしやがってええ!!!」

 

(ヴィラン)はガバッと立ち上がり物が散乱した店内をドタドタと出る。そして首を左右に振り辺りを見渡し目当ての人物を見つける。。

 

(ヴィラン)「いたあぁ~~!!!才子ちゃわぁぁぁん!!それとお前ぇぇぇぇえ!!」

 

才子「ひっ…!!?」

 

擬魅「げっ…」

 

(ヴィラン)「このクソガキぃ!僕を殴ったこと後悔させてやる!!!」

 

野次馬「ヴィ、(ヴィラン)だあーー!!」「逃げろー!!」

 

通行人「ヒーローはまだなの!?」「それに警察は!?」「まだ来ねぇの!?」

 

(ヴィラン)が目の前に現れたことにより周りは大混乱。周りにいた人々は一目散に逃げ始める。通報から経過した時間は5分弱。しかし、まだ擬魅がいる現場にはヒーローと警察は到着していない。理由としては普段からこの近辺にはヒーローが少ないのと、警察は現場に向かう道中に車の交通事故に遭遇し遅れていた。

 

擬魅「才子さん…あんたは執事の人を引きづってでもいいから下がってて(ヒーロー遅いな…)」

 

才子「なっ…!?危険です!ここは逃げてヒーローの到着を…」

 

擬魅「それを相手が待ってくれるんならいいけどな…」

 

才子「…っ」

 

(ヴィラン)「んなああぁあぁああ~~!!!なに僕の才子ちゃんと喋ってるんだああああ!!!」

 

擬魅「早くしろ!」

 

才子「…分かり…ました!ですが!ご無理はなさらないでください!!」

 

擬魅「大丈夫。時間を稼ぐだけだから」

 

才子はそう言うと執事の両脇に腕を入れて体を起こし、引きずりながら後方へ下がっていった。

 

擬魅「さて…始めようか。(ヴィラン)さん」

 

(ヴィラン)「フシュルルルゥゥ…!!ぶっ殺してやる!!!ぬおおおああああああ!!!!」

 

擬魅「まあぶっちゃけ正面からやり合う気はないけど(ドルドルの能力)キャンドルロック!!」

 

(ヴィラン)「ぬおっ!なんだこの白いドロドロは…ってうおぉあぁあああーー!」

 

ドシィン…!

 

怒りの感情剝き出しで突進してきた(ヴィラン)に対して、擬魅はドルドルの能力で相手の両脚の動きを封じる。相手は脚が一瞬にして固定されたことによってバランスを崩し盛大に転ぶのであった。

 

(ヴィラン)「イデデデデ……クソッ一体何が…んなっ!?俺の脚が!クソッなんだこの白いのは!?硬ぇっ!!」ガンガンっ!!

 

擬魅「無駄だ。それは蝋だが鉄の強度を誇る代物だ。」

 

(ヴィラン)「なっ!?おいクソガキ!僕にこんなことしてタダで済むと思ってんのか!!?」

 

擬魅「そのセリフ、そのままお返ししますよ。あ、一応腕も拘束しておきますね。キャンドルロック」

 

(ヴィラン)「ンガアアアアア!!テメェ絶対許さねえからなああああ!!!!」

 

(ヴィラン)がそう叫んでいるとサイレンの音が近づいてくる。それと同時に連絡を受けたヒーローも到着した。

 

ヒーロー①「皆さん大丈夫ですか!」

 

ヒーロー②「(ヴィラン)はどこに!?」

 

通行人「おお!ヒーローだ!」「ヒーローさん!あっちに(ヴィラン)が!」「子供が(ヴィラン)と戦っている!!」

 

ヒーロー①「なんだと!おい急ぐぞ!」

 

ヒーロー②「おう!皆さん危ないので下がっていてください!」

 

擬魅「どうやらヒーローが来たようだな…んじゃ、面倒ごとは避けたいので俺はこれで…(スケスケの能力、フワフワの能力…)」スゥ…フワッ…

 

才子「あっ、ちょっと待って!お名前を……消えてしまいましたわ…」

 

才子が呼び止める前に擬魅はその場を立ち去ってしまった。その後、駆けつけたヒーローと警察によって(ヴィラン)は再度拘束され連行された。一応、今回連行された(ヴィラン)の犯行動機を述べておこう。簡単にいえば街中で見かけた才子に一目惚れしたらしい。それから本人にバレないように尾行や盗撮を繰り返していたらしいが、日々積もっていく才子への想いが抑えきれなくなり今回の犯行に及んだらしい。ちなみに、まだ才子への想いはあるのかと聴取をした刑事が聞くと『こんなもんで消えるはずがないだろう…ふひひひ…!』と答えたらしい…。

 

 

 

 

擬魅「あー…やっぱあの場から逃げたのマズかったかなぁ…店の防犯カメラとかに顔が映ってたらいずれバレるだろうなぁ……まあその時はその時で何とかなる…かな?」

 

多少後悔しながらも東京を満喫する擬魅であった。

 

 

 

 

 




今年もあと3日で終わりですね。
皆さま、よいお年を!


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【3】恐竜(とかげ)女子と子供

少し遅れてましたが、あけましておめでとうございます。


とあるお嬢様を窮地から救出したあの日から約1週間が経過したある日。俺のスマホに伯父からの連絡が入った。

 

伯父『おう白郎、元気にしてるか?俺は元気だ!ハッハッハッハッ!…えーと、実はなアメリカでほぼ完璧な状態で発掘されたTレックスの化石が発掘されたんだ。んで今度それが東京の博物館で展示されることになってな、俺は仕事でその展示にいろいろ関わってたんだが、ある日関係者からチケットをご厚意で貰ったんだ。だが俺はその展示期間中は他で仕事あるから意味ねぇんだわ。それにもう搬入するとき見てるしな!ハハハハハ!!でだ、捨てるのはもったいねぇからお前にやるわ!もう郵送で送ったから気が向いたら行ってくれ!またな!!ッ――…ッ――…』

 

内容はこうである。自由奔放とはまさにこういう人のことを言うのだろう。まあ送ってくれたんだし行ってみよう。博物館なんて何かきっかけがないと行かねぇからな。

 

 

 

 

――展示当日――

 

――某国立科学博物館――

 

ざわざわ…… ザワザワ……

 

多くの来館者によって博物館は賑わっている。目玉であるTレックスの化石の前には多くの人が一際集まっている。

 

来館者「おぉ~、やっぱデケェな」「お父さん、見て!見て!恐竜!」「写真撮って!写真!」

 

擬魅「(やっぱ人多い…。あと子供が大半を占めてる…それもほぼ男の子。やっぱ男の子って恐竜好きなんだな。まあ嫌いじゃないね。カッコいいし)」

 

擬魅はメインのTレックスの化石から少し離れた場所にあるベンチに座りながら化石を遠目で眺めていた。理由は簡単。ゆっくり見たいからである。

 

擬魅「(そう言えばこの化石って展示が終わればアメリカに戻るんだっけ?だとすればある意味今回見れたのはラッキーだったな。伯父さんに感謝だな(笑))」

 

そう思いながら擬魅は悠々と化石を眺め十分に満足すると、そのまま博物館関連のグッズが売っているショップへ足を向けた。

 

擬魅「(こういう場所で売っているグッズって無性に欲しくなったりするんだよなー…)さて、なにがあるかな…おっこれは…」

 

商品棚を見ているととあるものが目に入った。それは今回のTレックスの化石展示を記念して作られたラバーストラップだった。Tレックスの化石をモチーフで、デフォルメしてポップな感じになっている。なかなか愛らしい印象である。擬魅は迷わずそれを手に取るのであった。そのあとは気にいったものを手に取り会計を手早く済ませ、帰宅するだけになるはずだったのだが…。

 

擬魅「(たまには博物館(こういう場所)に来るのも悪くないかもな…)」

 

そう思いながらショップをあとにしようとしたその時、ショップの奥の方から大きな声が聞こえてきた。声のした方へ顔を向けると何やら言い争っている様子が伺える。

 

男「あ˝ぁん?変な言いがかりはよしてくれよなぁ!これは俺が先に取ってたんだ!だから俺のもんだ!!」

 

女子「なに言ってんのよ!この子が持っていたのをアンタが無理やり奪ったんでしょーが!!」

 

子供「うぅ…僕の…」

 

聞こえる内容から察するに、どうやら子供が持っていた商品を大声を出している男が無理やり()ったらしい。それを見た女子が返すように注意したが、このようなことをする奴が素直に返すはずもない。

 

擬魅「(パッと見…子供は除いて言い争っている2人は俺と同い年ぐらいか…?原因はあの男か?もしそうだとしたらやめてほしいもんだ…)はあ、ROOM…!」

 

ブウゥゥン…

 

来館者「んっ?」「なにこれ?」

 

男「あっ?」

 

女子「えっ、なにこれ?」

 

擬魅「シャンブルズ…!」

 

擬魅はカバンに入れていた飲みかけのペットボトルと、男が手に持っている商品を入れ替えた。

 

擬魅「あれ、これあのストラップじゃん」

 

男「なっ、俺のストラップが!?どこに…!?」

 

女子「えっ、なにが起きて…」

 

擬魅「店員さん、これお会計お願いします」

 

店員「えっ…あ、は、はい…!」

 

擬魅は言い争いの当事者たちが驚ているうちに素早く会計を済ませる。

 

女子「え、あれって…」

 

男「おっ、俺のストラップ!!」

 

子供「僕の…」

 

店員「お待たせしました」

 

擬魅「はい、ありがとー。……」ちょいちょい

 

子供「……ぼく?」

 

擬魅「そーそー、きみだよ~」

 

涙目になっている子供に自分のもとに来るように手招きする擬魅。子供は少し戸惑いながらも擬魅に近づく。

 

子供「えっと…あの…」

 

擬魅「はいこれ」

 

子供「えっ、これって…」

 

擬魅「君のだよ」

 

女子「…!!」

 

男「んなっ!?ちょっおい!!」

 

子供「…いい…んですか?」

 

擬魅「いいのいいの。もとは君が最初に持っていたんだしね。通りすがりのお兄さんからのプレゼントってことで…!」ニカッ!

 

子供「…!!!」パアァァァ…!

 

子供の顔が戸惑いから一瞬にして笑顔にかわる。子供の気持ちはいま最高潮だろう。そして普通ならここでいいお話でしたね!、で終わるだろう。だが現実はそう簡単にはいかず…。

 

男「おいおいおい!ちょっと待てや!!それは俺のもんだろうが!なに勝手に取ってカッコつけてんだよ!!」

 

擬魅「カッコつけるも何も(笑)、俺はこの子の代わりに商品を買ってあげただけだ。そしてそれをプレゼントした。たったそれだけの事だろうが」

 

男「ふざけんな!!それ(ストラップ)は俺が買うものだったんだ!返しやがれ!!!」

 

男が子供が手に持っているストラップを無理やり奪ろうと、注意した女子を押しのけて擬魅と子供の方へ迫ってきた。

 

女子「うわっちょ…!?」

 

子供「ひっ…!?」

 

擬魅「おっと、それ以上なにかするなら警察を呼ぶぞ。それにアンタの主張が正しいと言うなら防犯カメラを確認するけどいいんだな?」

 

男「あ˝あ˝っ!?そんなこと確認する必要ねぇんだよ!!俺が言ってることは間違いねぇんだ!俺が正しいんだ!!とっとと返さねぇと俺の個性で痛い目見るぞ!!」

 

男はそう言うと体に力を込め始める。すると男の体はミシミシ、メキメキと小さな音をたてながら大きくなり見た目も変化し始めた。やがて変化が終わると男の姿は随分と変わっていた。それはまるで竜と人を融合させたような姿…そう、いわゆる漫画やアニメに出てくる竜人である。周りにいた店員や来館者たちはそれを見ると危険と判断したのか次々とショップの外に移動し始める。

 

来館者「ちょ、あれヤバいんじゃないの?個性使ってんじゃん!」「警察呼んだほうが…」

 

ショップの外に移動した店員や来館者たちは遠目にショップ内の様子を伺っていた。そうしていると博物館の警備員2人が騒ぎを聞き駆けつけて来た。そしてそのまま男の両腕を掴みながら注意を促す。

 

警備員「ちょっと君!何してるの!?」「すぐに個性解除して!」

 

男「あ˝ぁ?外野はすっこんでろ!!」グアッ!!

 

警備員「うわっ!!」「うおぁっ!?」

 

ドガシャアアンっ!!!

 

男は力任せに警備員を投げ飛ばし、投げ飛ばされた警備員はそのまま商品棚に激突し倒れてしまう。

 

来館者「きゃあああっ!!」「ちょっヤバいってアイツ!!」「誰か警察とヒーローを!!」

 

女子「ちょっアンタ!!自分が何してるか分かってんの!?」

 

男「うるせぇ!女は黙ってろ!!」

 

擬魅「少年、今日は誰かと来てるの?」

 

子供「お、お母さんと一緒に…」

 

擬魅「じゃあ、お母さんの所に行くんだ。ここは危ないから」

 

子供「お、お兄ちゃんは…?」

 

擬魅「あ~、俺はね……このトカゲさんをどうにかしないといけないから」

 

男「ト、トカゲだとおおお!!?」

 

擬魅「ほら、早く行って」

 

子供「う、うん!」

 

子供はそう返事すると外にいた母親の元に走っていった。擬魅は聞こえていないがどうやら途中どこかではぐれたらしく、母親は子供を抱きしめていた。

 

男「おい…誰がトカゲだって?」

 

擬魅「ああ、トカゲじゃなくてバカでしたっけ?」

 

男「あ˝あ˝っ!!?バカだと!?テメェいまバカつったか!?」

 

擬魅「こんな騒ぎ起こしている奴をバカと言う以外あるとでも?」

 

男「おいテメェ!今すぐ土下座して謝るならパンチ1発で勘弁してやる!もししねぇなら分かってるだろうな?いや、俺のこの姿を見て分からねぇはずがねぇ…!」

 

竜人に変身した男は擬魅を睨みつけながら謝罪を要求。だがその言動は漫画に出てくるチンピラそのものであった。また、そのチンピラみたいな男に注意をした女子は冷や汗をかいていた。

 

女子「(ちょ大丈夫なのあの人!?さっきの入れ替えが個性だとしたら…相性悪すぎじゃん!!)」

 

擬魅「よっぽどその個性がご自慢らしいですね。お礼と言っては何ですがこちらも個性を披露させて頂きますね(笑)」

 

男「あ、個性を…?ハハハハハっ!!お前の個性はモノの位置を変える個性じゃねぇのか?さっき俺の手にあったストラップがお前の手に移動したのが何よりの証拠!そんな個性でこの俺とやり合うつもりか!?」

 

擬魅「1つ忠告しておこう…目に見えたものが真実とは限らない…(リュウリュウの能力、モデル…――)」

 

男「あ、なに言って……?」

 

男が何か言おうとしたが擬魅はお構いなしに個性を発動させる。

 

ググググオォォ……

 

男「んなっ…!?テメェ体が…!!!」

 

女子「(大きくなって…!?)」

 

擬魅の身体はどんどん大きくなり変化していく。……そして、変化が終わるとそこには…。

 

男「なっ…んなっ……そっ、その姿は……!!!」

 

来館者「あれって…」「すげぇ……」「あの恐竜は確か…」

 

女子「…………スピノサウルス」

 

男「…っ!!!」

 

スピノサウルス…特徴的なのはやはり背中にある半円型の背びれとワニのような長い口だろう。その姿は擬魅の周りにいた者たち全員を圧巻させた。だが…。

 

男「……たっ、たかが恐竜に変身したからってなんだ!!!変身したって弱かったら意味ねぇんだよ!!」

 

男は擬魅に向かって拳を構えながら突っ込み始めた。それに対し擬魅は…。

 

 

グオオオォオオオォォオオオォオッッーーー!!!!!

 

 

咆哮。大気が震えるほどの咆哮。それは周囲にあったガラスが割れてもおかしくない程の咆哮であった。

 

男「ヒイイイイィィィィィッーー!!!??」

 

来館者「うおああっ!?」「うわわっ!?」「きゃああっ!!」

 

周囲にいた人たちは驚愕し、尻もちをついてしまったり腰が抜けて床に座り込んでしまったりしていた。

 

擬魅「(あ、やべ…やりすぎたかな?…(汗))」

 

女子「……(ビリビリきた…)スゲぇ…」

 

擬魅「さて…」

 

男「ひっ!ごごご、ごめんなさいごめんなさい!!俺が悪かったです!!」

 

擬魅「(さっきまでの威勢はどこにいったんだ…)なにが…?」

 

男「えっ……?」

 

擬魅「だから、具体的に何が悪かったの?」

 

男「お、俺があの子供から…むむ、無理やりストラップを()ったこと…です」

 

擬魅「じゃあ、俺に謝るんじゃなくてあの子に謝るのが先じゃないの?」

 

男「へっ…あ、ははは、はい!!えっと、無理やり奪ったりしてすいませんでしたぁぁぁぁ!!!」

 

男が子供に対して行った土下座は、それはそれは綺麗な土下座であった。

 

 

 

 

 

 

その後、擬魅の咆哮によって大人しくなった男は通報によって駆けつけたヒーローと警察によって連行されていった。罪状は暴行・器物損壊・個性不正使用である。個性不正使用で言えば擬魅もそうなのだが、今回の事件(トラブル)を解決したためヒーローと警察からのお説教のみとなった。

 

ヒーロー「…であるから今後は気を付けるように!!いいね!?」

 

擬魅「う、うす…すいませんでした」

 

ヒーロー「うむ!では気を付けて帰るように!」

 

擬魅「はーい…………ふぅー…」

 

女子「お疲れだったねぇ~」

 

擬魅「えっ、あ、ああ……確か連行された男の後ろに…いた女子?」

 

女子「そうだよ~!注意していたらアンタが割り込んできてほとんど棒立ちしていた女子でぇ~す!」

 

擬魅「なんか含みがある言い方だな!おい!」

 

女子「なんもないってば~!正直助かったよ!私の個性じゃどうしようもなかったし!それにしてもアンタの個性すごかったねー!あ、アンタって言ったら失礼だね!えーと…」

 

擬魅「擬魅白郎…まあよろしく」

 

取蔭「わたし取蔭切奈!よろしく!」

 

擬魅「(なんかテンション高ぇな…てか取蔭って…マジか)そういや俺になんか用でもあるの?」

 

取蔭「ああ、そうそう!ほら君、おいで!」

 

取蔭が後ろに振り向き誰かを呼ぶ。すると来たのは先ほどの子供であった。

 

子供「あの……た、助けてくれてありがとう…!!あと、すごくカッコよかったです!!ヒーローみたいだった!!」

 

擬魅「―っ!!……どういたしまして(笑)。次からは取られねぇようにちゃんと持っておけよ?」

 

子供「うんっ!!……あの名前…」

 

擬魅「ん、名前…?」

 

子供「お兄ちゃんの…」

 

擬魅「ああ…名前は白郎、擬魅白郎だ」

 

子供「まがみ…はくろう…。おれリュウト!」

 

擬魅「リュウトか、カッコいい名前じゃん」

 

リュウト「っ!…あ、ありがと…ぅ//」

 

擬魅「ほら、お母さんが待ってるぜ」

 

リュウト「あ、うん。じゃあ…またね!!」

 

擬魅「おう、またどっかでな…!」

 

リュウトは多少照れながら母親の元へ戻っていた。そして今のやり取りの様子をニヤニヤしながら見てる者が1人いた。

 

取蔭「ひゅー!カッコいー擬魅!」

 

擬魅「茶化すんじゃねぇよ!正直いまちょっと恥ずかしいんだぞ!」

 

取蔭「アッハッハッハッハッ!!いーじゃんいーじゃん!あ~いいもん見れたわぁ!これであれ(・・)が買えてたら文句ないんだけどなぁ~…!」

 

擬魅「あれ?」

 

取蔭「ああ、限定ストラップのことね。ほら、擬魅がリュウトくんに買ってあげたあれだよ!」

 

擬魅「あーこれのことか」

 

擬魅はカバンの中から購入したストラップを出しながら納得する。すると取蔭がそれに食いつく。

 

取蔭「えっ、買ってたの!?」

 

擬魅「ああ、これだろ?」

 

取蔭「うわー!いいなー!ねぇちょっと見せて見せて!!」

 

擬魅「お、おお……」

 

擬魅は手に持っていたストラップを取蔭に渡す。受け取った取蔭は目をキラキラさせながらストラップを見つめる。

 

取蔭「わぁ~…ヤバかわいい……

 

擬魅「(ヤバかわいい…?)…………欲しい?」

 

取蔭「うぇ…!?いや、そんな目で見てたわけじゃ…!!」ブンブンブン!

 

腕をいろんな方向にぶんぶんと振りながら否定する取蔭だが、その手はストラップをガッチリと握っていた。

 

擬魅「焦りすぎだって。それに取蔭も頑張ってたんだし」

 

取蔭「私も…?」

 

擬魅「最初あの子(リュウトくん)のために声出したの取蔭でしょ?」

 

取蔭「ま、まあ…でも何もできなかったけどね」

 

擬魅「そお?声に出して注意するってなかなか出来ないと思うよ?」

 

取蔭「そう、かな…//?」

 

擬魅「そうだよ。だからそれは俺からの……あー言葉にするのよく分かんねぇけどあれだあれ。まあやるよ」

 

取蔭「いや!最後なんか投げやりだなオイ!!もっとカッコいい言い方なかったのかよ!!」

 

擬魅「ねぇな!」

 

取蔭「即答かよ!!!」

 

取蔭がキレのいいツッコミをすると2人の間に少し沈黙が流れる。だがそれに耐えきれなかったのか取蔭が笑い出した。

 

取蔭「…ふふっ!ぶふはっ!!アッハッハッハッハ!!ダメだ!耐えられない!!ひぃーひっひっひっ(笑)!!」

 

擬魅「そんなに面白かった…フッ…か?」

 

取蔭「いや、アンタも笑ってんじゃん!!いま笑ったでしょ!?」

 

擬魅「んん?なんのことだかな?」キリッ!

 

取蔭「そんな顔しても誤魔化せられないから!…ふふっ、まぁいいや(笑)。じゃあこれはありがたく貰うね!ありがと!」

 

擬魅「どういたしまして」

 

取蔭「じゃあお礼に私の連絡先を教えてあげる!」

 

擬魅「えっ?それじゃ俺があげた意味が…」

 

取蔭「出せ」

 

擬魅「うす…」

 

なかば強制的にスマホを取り出すように言われ、そのまま連絡先を交換する擬魅であった。

 

取蔭「よし、登録っと………ねぇ、擬魅ってヒーロー目指してんの?」

 

擬魅「唐突だな…まあヒーローは目指してるよ」

 

取蔭「!…へぇーそうなんだ。もしかして雄英?」

 

擬魅「そうだよ。そういう取蔭は?」

 

取蔭「私のもヒーロー志望だよ。アンタと同じ雄英」

 

擬魅「じゃあ、次会うときは落ちてなかったら雄英か(笑)」

 

取蔭「そうなるね、お互い落ちないように頑張らないとね!」

 

擬魅「そうだな(笑)」

 

取蔭「…じゃあ私そろそろ帰るね//!じゃあね!!」

 

擬魅「おう、またな」

 

取蔭は軽快な足取りでその場を離れていった。そんな離れていく彼女の顔の頬はどことなく赤みがかっていた。

 

擬魅「(なんか最近トラブルによく遭遇するな…)」

 

そう思いながらも帰路につく擬魅であった。

 

 

 

 

 




いずれ擬魅のイメージ図を出します。


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【4】まさかの復讐

やっとの投稿や…(;^ω^)

誤字脱字報告ありがとうございますm(_ _)m




夏休みに3度のトラブルに遭遇するも、夏休み後半は何事もなく充実した休みを送ることができた擬魅。そんな充実した夏休みも終わり2学期を迎え学生たちの学校生活が再び始まっていく。夏休みにあのようなこと(トラブル・事件)に遭っているため、学校でも何かに遭うんじゃないかと思っていた擬魅。しかしそんな思いは杞憂に終わり月日は11月に突入していた。

 

擬魅「(もう11月か…なんかあっという間だな…)」

 

そう思いながら今日の晩飯を何にするか考えながら歩いていると擬魅のスマホに着信が入る。

 

ブゥー…ブゥー…!

 

擬魅「(ん、誰から…)お、耳郎からだ《ピッ…》はい、もしもし?」

 

耳郎『あ、擬魅?ウチだけどいま時間大丈夫?』

 

擬魅「ああ、大丈夫だけど どうした?」

 

耳郎『えぇっと、今週の土曜日って予定空いてる?』

 

擬魅「今週の土曜日?あ~…いや、特に用事はないな」

 

耳郎『じゃあさ、ウチの家に来てくれない?』

 

擬魅「耳郎の家に…?」

 

耳郎『うん。実はこの前あんたと電話してたとき母さんに会話を聞かれて、あんたの事いろいろ話しさせられちゃったんだよね…(苦笑)』

 

擬魅「あぁー…」

 

耳郎『夏休みの時のお礼もかねてご飯をご馳走したいらしい…主に母さんがだけど…』

 

擬魅「なるほどね。わかった、何時に行けばいい?」

 

耳郎『親がお昼まで仕事あるらしいから……午後3時過ぎぐらいかな』

 

擬魅「OK、3時過ぎね」

 

耳郎『駅着いたら知らせて。迎えに行くから!』

 

擬魅「了解、助かるよ…!」

 

耳郎『いいっていいって!じゃあ土曜日にね!』

 

擬魅「おう、また土曜日に…!」

 

ピッ…ッーー……ッーー……

 

通話が終わりスマホをズボンのポケットに戻す。そして小さく鼻歌を交えながら擬魅は行きつけのスーパーに向かうのであった。そんな彼を自宅に招待した耳郎はと言うと…。

 

――耳郎宅――

 

耳郎「……土曜日に擬魅がうちに…(なんでウチこんなドキドキして…いやいや!これはお礼をするためで…)…あいつとはただの友だ…」

 

耳郎母「あらあら~~(嬉)!」

 

耳郎「わあぁあぁああーーーーー!!?」

 

耳郎母「あらあらどうしたの~?そんなに驚いちゃって~(嬉)?」

 

耳郎「いいい、いつからそこにいたぁーー!!?」

 

耳郎母「えーっと…《あ、まがみ?ウチだけど――》

 

耳郎「最初(イントロ)からじゃん//!!」

 

耳郎母「響香にいよいよ春がきたかしらね~(嬉)!」

 

耳郎「だああーー!!そんなんじゃないからー//!!」

 

必死に否定するもその日耳郎は夜遅くまで母にいじられ続けられたのであった。

 

 

 

 

そして、日は経過し擬魅が耳郎の家に訪問する日がやってきた。

 

ガタンガタン…ガタンガタタン……

 

『間もなく~阿留津、阿留津です。お出口は――……』

 

電車が駅に到着。ドアが開き乗客が乗り降りし新たな乗客を乗せ、電車は再び動き出し次の駅へ向かっていく。その電車から降りた乗客の1人である擬魅は改札を出ると、スマホを取り出し耳郎に到着したことの連絡を入れる。

 

――耳郎宅――

 

耳郎「あ、擬魅が駅に着いたって!ちょっと迎えに行ってくるから出るね!」

 

耳郎母「は~い、行ってらっしゃ~い…!」ニコニコ

 

耳郎「そーゆーのじゃないから//!」

 

顔を赤くしながらドアを開け小走りで駅に向かう耳郎。だが、その耳郎の姿を見つめる姿があった。

 

ピッピッ……プルルルル……ガチャ…!

 

??「そっちに行ったぞ…」

 

??『了解…お前は先に戻っててくれ』

 

??「わかった…うまくやれよ?」

 

??『まかせろ…』

 

不穏な通話が終わる。耳郎を見ていた男はどこかへ行き、通話先の男は乗っていた車のエンジンを掛ける。

 

耳郎「(もぉー母さんったら!あんなにいうから変に意識しちゃうじゃん//!!)」

 

母親へのいじりに対して頭の中で愚痴っていると十字路に差し掛かる。すると右の道路の方に車が見えたため一旦立ち止まる。耳郎は駅に着くまでに気持ちを落ち着かせておこうと思いつつ、車が通り過ぎるのを待っていると突然車の後部ドアが開く。そこから1人の男が現れ耳郎の腕を掴みそのまま車内に引きづり込む。

 

耳郎「えっ!?ちょ…ん˝ー!」

 

??「いいぞ!出せ!」

 

??「おう!」

 

ブオオオォォォォ……!!!

 

引きづり込まれた耳郎は声が出せないように布で口を塞がれ、車は急発進しどこかへ走り去っていくのであった。

 

 

 

 

駅前で耳郎が来るのを待っている擬魅。彼は最初、耳郎が5分ほどで駅に着くと言っていたため待っていたが、待ち合わせてから時間が20分過ぎても耳郎が現れないため不審に思い始めていた。それこそ最初は時間が5分経過しようとも多少のズレはあると思い待っていたが…。

 

擬魅「(いくら何でも遅いな…連絡してみるか)」

 

スマホを取り出そうとズボンのポケットに手を入れたその瞬間、擬魅のスマホに1件の着信が入る。それは今まさに連絡を入れようとしていた耳郎からであった。擬魅はすぐに応答し電話に出るが…。

 

擬魅「もしもし耳郎?今どこに『よお…』……!?」

 

返ってきた声は明らかに耳郎とは違う声。その声に一瞬動揺しつつも聞き返す。

 

擬魅「えっと、誰…ですか?耳郎じゃないですよね?」

 

??『俺を覚えてないのか…?』

 

擬魅「?…すいません、名前とかを言ってもらえれば……」

 

??『まあ数カ月も前の事だ…忘れてても仕方ねぇか…』

 

擬魅「?……あの…」

 

??『お前の友達は俺たちが預かっている』

 

擬魅「…………は!?なにを言って…!?どういう…!!」

 

??『返してほしければ今からメールで送る場所に来い』

 

擬魅「何を言って…!?」

 

??『あと、サツやヒーローにチクれば大事なお友達の命はないと思え』

 

擬魅「あ、おい!!もしもし!?もしもし!?……(切れた…)」

 

通話が切れた画面を見ているとメールが送られてくる。画面をタップしメールを開くとどこかの住所と1枚の画像が添付されていた。添付データをタップし画像が表示されると擬魅を目を見開き驚く。それは猿ぐつわをされ両手首と両足首を縄で縛られ地面に横たわっている耳郎の姿であった。一瞬思考が止まる。そして体の奥から怒り…不安…恐怖…殺意……それらが入り混じった感情が湧き出る。擬魅はメールにに記載してあった住所を地図アプリに入力し場所を検索する。検索結果が出るとそこに表示されたのは、擬魅がいる場所から10キロほど離れた場所にある倉庫であった。場所を確認すると周りの目なんか気にせず個性でフワフワの能力を発動させ、空に飛び立ち耳郎が囚われている倉庫に向かう。

 

 

 

 

――倉庫――

 

ここは倉庫と言っても現在はもう使用されていない廃倉庫であり、かつては建築資材や輸送用コンテナなどを保管しておく場所として使われていた。しかし、ここより立地が良い場所に倉庫ができてからは皆そちらを利用するようになり、次第にこの倉庫は使われなくなっていった。建物というものは使わなくなっていくと段々と朽ちていく。この倉庫も壁や屋根に使われている金属製のトタンが錆び、そこに穴が開き光が差し込んで倉庫内を一部照らしている。本来ならば倒壊など起こさないために解体をするのだが、解体には金が掛かるため現在は不良などの溜まり場となっている。そんな溜まり場に現在4人の人影があった。

 

耳郎「……(コイツら……確か…)」

 

タツヤ「なあケンちゃーん。この子さー味見しちゃだめなの?」

 

耳郎「(…!?)」

 

ケン「まだダメだ、タツヤ。あの野郎をボコって立ち上がれない状態にしてから目の前で犯ってやるんだ」

 

サダ「だけどサツやヒーローにチクられていたら俺ら終わりじゃね?」

 

ケン「心配すんなって!ちゃんと警察にチクったらコイツの命はない!って脅したか心配ねぇって!それにいざっていう時はコイツ連れて逃げりゃあいんだよ!」

 

サダ「まあそうだな」

 

タツヤ「だけどさーあの時みたいに体の動き操られたら終わりじゃん?」

 

ケン「そこはサダの個性(・・)の出番よ!」

 

サダ「通用しなかったら終わりだけどな(笑)」

 

タツヤ「まあ何とかなるっしょ。早くそいつボコっておいしい思いしよーぜ」

 

耳郎「(サイテー……ウチ…やられ(犯され)るのかな…………擬魅…)」

 

ケン、タツヤ、サダという名の3人の男。実はこの3人は約3か月前の7月に耳郎に対して悪質なナンパをした3人であり、それを通りすがりの擬魅に止められ返り討ちにあった哀れな男達である。そう、彼らが耳郎を攫ったのは擬魅に対する逆恨みによるものだった。何とも迷惑な話であるが彼らが大事なことは、他人からすれば安っぽい己の自尊心(プライド)を満たすことのみであった。そんな3人が廃倉庫で擬魅のことを待っていると、タツヤが廃倉庫の外に人が来たことに気づく。

 

タツヤ「!…おい2人とも、外に誰か来たぞ…!」

 

《タツヤ》個性【レーダー(発動型)】…個性を発動させると半径50m圏内にいる人間の居場所をレーダーの様に探知できるぞ!かくれんぼでは敵なしだ!

 

ケン「おっ、来たか!サダ、人質頼むぜ」

 

サダ「あいよ…!」

 

3人が廃倉庫の扉が開くのを待ち構える。静かになったことにより扉に近づいてくる足音が聞こえてくる。

 

ザリ…ザリ………

 

耳郎「(擬魅…なの?)」

 

タツヤ「止まった…

 

サダ「……入ってこねぇな?

 

ケン「なんで入ってこね――

 

ピシピシピシッ…………カコ…ガココ!ガゴンガラン!!ゴゴォン…!!

 

ケン「……はっ!?」

 

サダ「うわ…これヤバいんじゃないのケンちゃん?」

 

ケン「慌てるんじゃねぇ…!」

 

扉を個性で細かく切断し廃倉庫に入ってきた擬魅。彼は3人の男と拘束されている耳郎を確認すると目を(しか)めながら口を開く。

 

擬魅「来たぞ……耳郎は無事なんだろうな…?」

 

ケン「へ…へへへへへ!おぉ~よく来たな!ご覧の通りテメェのお友達は丁重に扱ってるぜ!まあそれもここまでだ…テメェをボコした後は目の前で犯してやるぜ!」

 

擬魅「…………そもそもなんでこんな事したんだ?俺があんたに何かしたか?」

 

タツヤ「あら、覚えてない?」

 

サダ「まあ3カ月前だから仕方ないか」

 

ケン「ああ!?何かしただと!?テメェ俺にあんな恥かかせて覚えてねぇとはいい度胸だ!俺の体を操って仲間を殴らせ、その仲間にビンタを何度もさせやがって!それを忘れているとは言わせねぇ!!」

 

擬魅「ビンタ?………………ああ、もしかしてアンタら耳郎に悪質なナンパをしていた奴らか?」

 

ケン「そーだよぉぉ!!やっと思い出したか!あの時の屈辱ここで晴らさせてもらうぜ!!」

 

擬魅「屈辱もなにも悪いのそっちじゃねぇか。逆恨みもいいとこだな」

 

ケン「うるせえ!!俺に恥をかかせたこと後悔させたことその身に教えてやらぁ!!」

 

擬魅「そうなる前に動きを封じてお前らを片すだけだ…!」

 

ケン「ハッ!そうはいくかよ!サダ!」

 

サダ「おう…!」

 

個性でイトイトの能力を発動。そのまま3人の動きを封じようとしたが途中である異変に気付く。

 

擬魅「(なんだ?あのサダっつったけ?あいつに糸がいかねぇ…なんか邪魔されているような……)」

 

《サダ》個性【阻害(発動型)】…自身に対しての個性による物理的干渉を阻害することが出来る。

 

ケン「ハハハッ!どうやらサダの個性は通じたみたいだな!サダ、そのままその女抑えとけよ!」

 

サダ「ああ、まかせろ…!はは、上手くいくか心配だったがこれなら大丈夫そうだな…!」

 

タツヤ「ほらほら~!早く俺らの体自由にしないと大事なお友達に傷が付いちゃうよ~?」

 

その言葉の通り、サダが懐に持っていた小型ナイフを耳郎に近づける。

 

耳郎「ん˝ん˝っ!?」

 

擬魅「クソ野郎が……」

 

ケン「お、体が!へっへっへっ!それじゃあ早速テメェに俺の怒りの鉄拳を……」

 

擬魅「…予定変更だ…力づくでいかせてもらうぞ…クソデブ」

 

ケン「あ˝あ˝っ、またクソデブっつったかテメェ!!てゆーかこの状況分かってんのかよ!?テメェが変な動きをすれば大事なお友達はタダじゃ―!」

 

擬魅「おかないってか?だったらそうなる前に助けりゃいいんだよ…おいサダって言ったか?お前光の速さで殴られたことってあるか?(ピカピカ…)」

 

サダ「あ?光の…なに?何を言って…」

 

眉間にしわを寄せながらサダが聞き返そうとすると擬魅の姿が3人の前から消える。耳郎を含めた4人が消えたことに驚くのも束の間、擬魅が姿を現したのはサダの目の前だった。

 

サダ「うえっ!?うそ、どうし―!?」

 

擬魅「耳郎を…返してもらうぞ!

 

サダ「ちょちょま―ぶべばっ―!!!」メギッ!!

 

顔面直撃の右ストレート。ピカピカの能力でその威力は桁違いに上がっており、それを喰らったサダは宙を舞い地面を数回バウンドしながら殴り飛ばされた。

 

サダ「あ……ぁう……」

 

タツヤ「サダ!?」

 

ケン「なっ…!?」

 

擬魅「耳郎、ちょっと待ってろ…こんな奴らすぐに片付ける…!」

 

耳郎「…!」

 

目尻が熱くなりながらも頷きながら返事をする耳郎。そして残りの2人を片付けるため体を2人に向ける。

 

擬魅「さて…」

 

ケン「てめえええええ!!!」

 

擬魅「クソデブ…お前は最後だ。その前に……」

 

タツヤ「うえっ!?ちょちょちょ!俺は別にその()でいい思いをしようとか全然…!」

 

擬魅「どんな言い訳をしようが俺お前らを許す気ねぇから…あとさ……どう考えてもそれ本音だろテメェ…!!!六輪咲き(セイスフルール)!!

 

タツヤ「ひっ!?こ、これは…!!」

 

擬魅はハナハナの能力でタツヤの顔の近くに腕を6本生やしビンタを始めた。

 

バチチチチチチチチチチン…!!!!

 

タツヤ「ゴベッ!…ま˝っ!…なざ!…や˝め˝!……」

 

擬魅「ふん…」

 

擬魅が個性を解除するとタツヤはその場に崩れるように倒れる。その顔はパンパンに腫れておりもはや最初の顔の原型がない。そして地面に倒れる2人を見て体を震わせながら怒るケン。

 

ケン「てめぇ…!ぜってぇ許さねぇ!!再起不能にまでボコボコにしてやるぅぅ!!いや!縄で縛って海に沈めて…!!」

 

擬魅「…御託はいいからさっさとかかって来いクソデブ」

 

ケン「ぬぅあああああああ!!!!ぶっ殺してやるうううう!!!!!

 

ドスドスドスッ!と足音を鳴らし怒りと憎悪の感情にまみれながら突っ込むケン。

 

擬魅「全部自分が悪いんだろうが…(メラメラの能力)!!火拳!!!

 

ボオオオオオオオン!!!

 

ケン「ギョオ˝オ˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ア˝ーーッ!!!!」

 

ケンは巨大な炎の拳によって廃倉庫の扉近くまでブッ飛ばされ気を失うのであった。

 

耳郎「(すごい……)」

 

擬魅「クソ野郎が……耳郎、待たせたな。いま縄を解くから」

 

固く結ばれた縄を個性で切り、口にしてあった猿ぐつわを取る。すると緊張の糸が切れたのか擬魅の方に向かってよろけてしまう。

 

擬魅「っとと…」

 

耳郎「擬魅…」

 

擬魅「大丈夫か…?しんどかったらどこかに…」

 

耳郎「…大丈夫…だけど…少しこのまま…いいかな?」

 

耳郎は擬魅の胸の辺りに頭を軽く(うず)め、両手は擬魅が着ているシャツを強く握りしめながら小さく震えていた。震え(それ)を見て擬魅は頭と肩に腕を回し、耳郎を苦しくないように抱きしめる。

 

擬魅「もう大丈夫、大丈夫だ…!安心しろ…!」

 

耳郎「~~~っ///……うん…ありがとう…//」

 

耳郎の震えが落ち着いたその後、擬魅の通報によって警察とヒーローが廃倉庫に急行。事件の首謀者である3人組は連行しようにも怪我がひどいため警察病院に搬送された。耳郎も念のため病院に搬送され、連絡を聞き病院に駆けつけた両親に目一杯抱きしめられたのであった。そして擬魅はというと、今回の事件の顛末と個性使用について警察署で調書を取ったあとしっかりとお説教を受けたのであった。こうして擬魅と耳郎の波乱な一日は幕を下ろすのであった。

 

ちなみに擬魅に抱きしめられた耳郎はそのことを思い出すたびに、顔が真っ赤になり恥ずかしさに駆られるのであった

 

 

 

 




駅名【阿留津】はスターウォーズの地名ではないんですがR2D2から取りました。







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【5】バレンタインと尾行

久しぶりの投稿(^^;


耳郎が連れ去られた事件から数日が経過。事件の後処理は特に問題が起こることなく進み、耳郎を攫った3人の男たちは取り調べで判明した余罪も含めて検察へ送検された。事件の問題があらかた片付くと擬魅は改めて耳郎の家に招待され、耳郎の両親から感謝の言葉を多く貰いながら楽しい食事を堪能したのであった。

 

それから11月後半…12月…1月と、特に何も起こることはなく月日は経過し2月に突入していた。

 

――耳郎宅――

 

耳郎「(もう2月か…あの日(・・・)からもうそんなに経ったのか…あっという間だな…)」

 

壁に掛けてあるカレンダーを見ながら自身が連れ去られた日の事を思い出す。擬魅が来てくれなかったらと思うと体が身震いしてしまうが、その後のことを思い出すと今度は体が熱くなる。特に顔は恥ずかしさでさらに熱く感じてしまっている。

 

耳郎「(いやあれは不可抗力と言うかなんというか…!だあー!なんて言えばいいんだ!!)」

 

耳郎が頭の中でモンモンと色々考えていると後ろから母親に声を掛けられる。だが思考に集中している耳郎は聞こえていない。そんな耳郎に母親は肩を叩き呼びかけた。集中していた耳郎はそれに驚き声をあげてしまう。

 

耳郎「わ˝あーーー!!…ってなんだ母さんか…びっくりさせないでよ…」

 

耳郎母「びっくりしたのはこっちよー!呼んでも返事してくれないんだもの~!!」

 

耳郎「あ、それはゴメン…ってかなにか用?」

 

耳郎母「あ、そうそう。もうすぐあれ(・・)だけど響香は擬魅くんにあげないの?」

 

耳郎「…あれ?」

 

耳郎母「もう!2月といえばあれがあるでしょ…!バレンタイン!!

 

耳郎「………うえっ!?バババ、バレンタインって!?はっ!?なに言ってんの母さん!!?」

 

耳郎母「え~?なにって響香が擬魅くんにチョコあげるのか気になっちゃって~~!」

 

耳郎「いやいやいやいやいや!!!べべべ、別にウチはあいつ(擬魅)のことが…好きとか…そんなんじゃ///!!!」ごにょごにょ…

 

耳郎母「あら~?私は別に擬魅くんにチョコをあげないのか聞いただけで別に《擬魅くん好きなの?》とかそんなことは一言も~…(嬉)!!」

 

耳郎「なっ!ああぁあ~…!やめ…やめろぉぉぉ///!!」

 

母親にいじられ顔を真っ赤にしながら叫ぶ耳郎であった。それから2日後、耳郎の姿は近場にあるショッピングモールにあった。耳郎がいる場所は赤やピンク色で装飾され、そこには様々な種類のチョコレートが陳列されていた。そしてその特設コーナーには宣伝用の巨大なポップやゲートフラッグがありそこにはこう書かれてあった。

 

!!♡ハッピーバレンタイン♡!!

 

そう、耳郎が今いる場所はバレンタインデーの特設コーナーだ。日本の食品企業が力を入れるイベントの1つである。そんな食品企業が設けた特設コーナーに陳列されている、様々なチョコレート商品を眺める耳郎の姿がそこにはあった。

 

耳郎「(いっぱいあるな…擬魅(あいつ)どんなのが好きなん……って、待て待て待て!これはあくまで義理だからそこまで真剣に考えなくても…だけどだからといってテキトーに選ぶのもなんだか…)」

 

耳郎が頭の中でモヤモヤと思考を巡らせる。そんな耳郎の姿を少し離れた場所から見る2人の女子がいた。実は彼女たちは耳郎と同じ辺須瓶中学校の生徒で耳郎のクラスメイトであった。彼女たち2人はこのショッピングモールにバレンタインチョコを作るための材料を買いに来ていた。そしてバレンタインの特設コーナーに着くと2人は耳郎がいることに気づく。1人は声を掛けようとしたのだがもう1人がそれを遮りながら手を引っ張り近くの商品棚の影に隠れたのであった。

 

(ク)女子①「ねぇ、なんで隠れたの?あそこにいるのって耳郎じゃん。隠れる必要ある?

 

(ク)女子②「分かってないわね!耳郎が今までバレンタインで誰かにチョコ送ったことある!?ないでしょ!?

 

(ク)女子①「あー…確かにないね。周りの女子がバレンタインの日に男子にチョコあげたりしてるけど、耳郎は私らとかの友チョコぐらいだね。前に好きな男子とかいないの?とか聞いたけど満足のいく答えは返ってこなかったからねー

 

(ク)女子②「でしょー!?だから耳郎がどんな人に渡すのか気になるの!

 

(ク)女子①「まあそれはめっちゃ気になるけど、親とかなんじゃないの?仮に親じゃないとしてどうやって相手を知るのさ?

 

(ク)女子②「それはもうドラマや映画で定番のあれ(・・)をやるのよ!!

 

(ク)女子①「………もしかして刑事や探偵とかがやってるあれ(・・)?

 

(ク)女子②「そう!あれ(・・)よ!!

 

(ク)女子①「大丈夫かなー…

 

※(ク)…クラスメイト

2人のクラスメイトが商品棚の物陰でいろいろと話している間、耳郎は購入するチョコレートを決めその場を立ち去っていた。ちなみ2人の会話は奇跡的に耳郎には聞こえてはいなかった。そしてそれから数日が経ちバレンタイン当日。学校や職場などで様々なチョコレートが渡し渡されていた。

 

――辺須瓶中学校――

 

時刻は夕方4時過ぎ。生徒たちが部活動を始めたり下校の時間である。そんななか耳郎はスマホを取り出し、擬魅へメッセージを送りながら駅へ向かっていた。そしてそんな耳郎の後ろをつける影が2つ。

 

(ク)女子②「駅に向かってるわね。ワトソンくん」

 

(ク)女子①「誰がワトソンだ」

 

(ク)女子②「雰囲気よ!それより家じゃなくて駅に向かってるってことは誰かにチョコを渡しに行く確率が高くなったわね!」

 

(ク)女子①「そもそもまだ渡すかどうかもわかんねーじゃん。単に買い物かもしれねぇし」

 

(ク)女子②「いいのよ!その時はその時よ!あ、ほら行くわよ!!」

 

(ク)女子①「はいはい…」

 

耳郎の個性に気づかれないように後をつけていく2人のクラスメイト。そしてその行動はまたもや奇跡的に耳郎の行先まで気づかれずに上手くいくのであった。

 

 

 

 

――素戸無(すとむ)駅――駅前――

 

後を付けている2人は耳郎にバレないように駅前にあるカフェに入る。そして耳郎を見逃さないように窓際の席に座り耳郎の様子をうかがう。

 

(ク)女子①「あそこで待ち合わせかな?」

 

(ク)女子②「どんな相手か楽しみね!」

 

(ク)女子①「ここ隣の区だからあんまり詳しくないんだけど、確かこの辺りの中学は出須多中や駄須部(だすべ)中だったかな?私らの学校との距離とか考えるとそこらへんじゃね?」

 

(ク)女子②「可能性は高いわね……だけどまさか隣の区の学校とは思わなかったは…」

 

(ク)女子①「まあその前に耳郎に男がいるってのがビックリだけどな」

 

(ク)女子②「そうよね!だって耳郎は気づいてないけど意外と男子から人気あるのよ!普段はクールでサバサバとした印象なのに、たまに見え隠れする乙女な一面がギャップがあって可愛いって…羨ましいしズルい!」

 

(ク)女子①「どこもズルくねーだろ。それが素なんだから」

 

(ク)女子②「それがズールーいーの!素でギャップるなんてもはや最強じゃん!!」

 

(ク)女子①「ギャップるってなんだよ」

 

2人がそんな話をしていると耳郎の方に動きがあり2人もそれに気づく。

 

擬魅「(えーと…駅前にいるって…あ、いたいた!)…おーい、耳郎ー!」

 

耳郎「っ!!…あ…ま、擬魅!」

 

擬魅「ごめんごめん、ちょっと遅れたわ。学校出るとき先生に呼ばれてしまって…」

 

耳郎「だ、大丈夫、ウチもさっき着いたから」

 

擬魅「それでどうしたの?なんか渡したいものあるってメッセージには書いてあったけど?」

 

耳郎「う、うん………(うぅぅ…いざ渡すとなるとめっちゃ恥ずい…)///」

 

擬魅「耳郎…?」

 

恥ずかしさからなかなかチョコレートが入っている紙袋を渡させない耳郎。そしてその様子を見て耳郎の後をつけていた2人の内の1人はすごいやきもきしていた。

 

(ク)①「なかなか渡さねぇな」

 

(ク)②「何をやってんのよあの子は!!あーもうじれったいわね!!」

 

(ク)①「まあ耳郎ってこういうこと苦手だしああなるのは仕方ないか」

 

(ク)②「だからってこうもモジモジされたら堪んないわよ!!」

 

(ク)①「そうは言うけど私らのやってることただの覗き見だからな?」

 

(ク)②「そこはノーコメント!」

 

(ク)①「おい」

 

2人がコントのような会話をしていると…。

 

耳郎「えっと……これ…///」スッ…

 

擬魅「え、もしかしてチョコレート…!?」

 

耳郎「……//」コク…

 

擬魅「うおぉマジで!ありがとう耳郎!!」

 

耳郎「い、一応言っとくけど!義理だから!義理だからね//!」

 

擬魅「いやー義理でも嬉しいよー!ありがとな耳郎!」満面の笑み!

 

耳郎「ぅ…まあ、あんたが嬉しいならいいけど…///」

 

恥ずかしさからイヤホンジャックの先端同士をカチカチとさせる耳郎。その行動は傍から見ればツンデレと言われてもおかしくなく、その様子をカフェの店内から見ていた耳郎のクラスメイト女子2人の内1人は大興奮していた。

 

(ク)女子②「渡したぞ!耳郎渡したわよ!!」

 

(ク)女子①「分かってるよ。そんなに興奮すんな、落ちつけっての」

 

(ク)女子②「アレを見て興奮するな?あんな乙女な耳郎を見て興奮せずにいられないわよ!!なんなのあの子は!超乙女じゃん!!」

 

(ク)女子①「だけどさーまだあれが本命かどうかわかんねぇだろ?義理かもしれねーじゃん?」

 

(ク)女子②「あんなツンデレみたいな行動しといて義理なわけないじゃん!義理だとしてもそれは照れ隠しよ!きっと!!」

 

(ク)女子①「そうだといいねー(棒)」

 

(ク)女子②「それにしても相手の男子、結構カッコいいわね。どうやって知り合ったのかしら?」

 

(ク)女子①「あーそれは気になるな。他校だしどうやって知り合ったんだろーな?」

 

(ク)女子②「これは色々聞きださないといけないわね!」

 

(ク)女子①「素直に話してくれるとは思えねぇけどな」

 

こうして耳郎が知らない所でこのようなことが繰り広げながらも、耳郎のバレンタインは無事に終わるのであった。

 

 

 

 

――翌日――

 

――辺須瓶中学校――

 

(ク)女子②「あ、来たわよ!」

 

(ク)女子①「はよー、耳郎」

 

耳郎「おはよ、2人とも」

 

(ク)②「ところで耳郎…」

 

耳郎「ん、なに?」

 

(ク)②「昨日会っていた男子とはどういうご関係で?」

 

耳郎「―っ!??!?!?」

 

奇襲のような質問にドキンッ!!となる耳郎。そして首が錆びついたブリキ人形のようにギギギギ…と動きながら質問してきたクラスメイトの方へ向く。

 

耳郎「な…なんのこと…(焦)!?」

 

(ク)女子②「とぼけても無駄よ!めっちゃ悪いけど昨日アンタの後をつけさせてもらったわ!!」

 

耳郎「え˝えっ!?ちょっ!なにやっ…!」

 

(ク)女子①「ちなみに私も」

 

耳郎「うえ˝え˝え˝っ!?」

 

驚きが隠せない耳郎。そんな耳郎の驚きを気にせずクラスメイトは質問を迫ってくる。

 

(ク)女子②「それで?どういう関係なの?」

 

耳郎「い、いや擬魅とは別にそういう…!」

 

(ク)女子②「ふむふむ、名前はまがみ君ね。漢字はどんな字?」

 

耳郎「あ、えっとね字は……じゃなくて!」

 

(ク)女子①「ゲロっちまいな。その方が楽になるぞ」

 

耳郎「アンタもなに言ってんのよ!」

 

その後、2人のクラスメイトによる質問をなんとか凌ぎきる耳郎であった。そして同時刻ごろ、擬魅にも同じような事が起きていた。

 

(ク)男子①「おい擬魅!昨日駅前で一緒にいた女子は誰だ!?」

 

擬魅「ああん?なんだよ急に?」

 

(ク)男子②「ダニィっ!女子だと!?」

 

(ク)男子③「おい!その女子は可愛いかったか!?」

 

(ク)男子①「遠めから見たからはっきりとは言えないが可愛い印象はバッチリ感じたぞ!!」

 

(ク)男子②「ほほーなるほど…おい擬魅!どういうことか話してもらおうか!!」

 

(ク)男子③「さあ話してもらおうか!」

 

擬魅「うるせぇっ!!!」

 

詰め寄ってくる男子に向けた擬魅の声が教室によく響いたのであった。

 

 

 

 

 



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