鋼鉄これくしょん (あーくこさいん)
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本編
プロローグ


艦隊これくしょん×鋼鉄の咆哮のクロスオーバーです。

艦これ×鋼鉄の咆哮×新海底軍艦のクロスオーバー作品も連載していますが、こちらも書いてみたいと思い、書いてみました。



超兵器ーーー

 

それは単体で艦隊を始め国をも蹂躙する常識外の兵器、否、化け物だ。

 

圧倒的な攻撃力・防御力、1発で都市を破壊する戦略兵器、終いには大陸をも消滅させる威力を持つ決戦兵器を搭載した代物までいたーーー

 

まさに『破壊』と『闘争』を追求した存在だ。

 

 

だが、その超兵器に立ち向かう艦がいたーーー

 

 

ある艦は極東最大の戦艦として建造され極秘任務の最中に超兵器の特殊能力によって、異次元世界(パラレルワールド)に飛ばされた。

自らの生還と元の世界への干渉を防ぐ為、超兵器を追って世界を駆け巡り北極海における究極超兵器との戦いで元の世界へと帰還し、役目を終えた戦艦は自沈したーーー

 

 

ある艦は南極の独立国家の新資源を巡る戦いから祖国を守る為、列強各国に戦いを挑む。

北極海で枢軸国と連合国の究極超兵器を相手取り、祖国に勝利をもたらしたが、その艦は戦いの直後に限界を迎え乗組員を脱出させた後沈んだーーー

 

 

ある艦は極東の新興国の近衛軍に所属し、クーデターによって侵略国家に変貌した祖国を救う為に戦いに身を投じる。

幾多の超兵器との戦いを乗り越え、北極海で目覚めた究極超兵器を破壊するべく死闘を繰り広げる。

死闘の末、相打ちとなる形で沈んだーーー

 

 

その3隻は超兵器を相手に死闘を繰り広げそして沈んだ。

だが、かと言って戦いが終わるわけでは無い。

三つの世界で戦った3隻は一つの世界へと集い、そして戦い続ける。

『超兵器を統べる暴君』を倒す為…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー??????ー

だだっ広い空間に一人の男がいた。

その男の周りには多数の映像が映っていた。

そこには各所の基地、研究施設の様子が映っていた。

 

「うむ、今のところ順調だな。」

 

男は頷いた。

各基地の戦力、研究施設の兵器開発、巨大な潜水艦や航空機を格納しているドックや滑走路などの様子を確認した後、映像を閉じた。

 

「このままいけば…我ら『テュランヌス』が世界を制覇する日も近い…」

 

男は不敵な笑みを浮かべる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー横須賀鎮守府ー

 

ここは日本国の横須賀鎮守府。

日本を守る鎮守府の一つであり、海軍の本拠地でもある。

その鎮守府近郊に岩礁が存在し、そこに四人の艦娘がいた。

四人ともノースリーブセーラー服を着ていて、一見すると岩礁で遊んでいる女子高校生にしか見えないが、彼女らは阿賀野型軽巡洋艦『阿賀野』『能代』『矢矧』『酒匂』だ。

 

「お〜い、こっちこっち〜。」

 

そう言ってはしゃぐのは、1番艦『阿賀野』だ。

 

「ちょっと阿賀野姉ぇ!気持ちは分かるけどはしゃぎすぎよ!」

 

「だってだって、やっと休暇の許可が下りたんだもん!落ち着いていられますかぁ!」

 

「はぁ〜もう、矢矧も何か言ってやってよ。」

 

能代は溜息を吐きながら矢矧と酒匂に助けを求めるが…

 

「う〜ん、久しぶりの休暇だから少しぐらい羽目を外してもいい気がするけど…」

 

「酒匂も同じかな〜。働き詰めだったし楽しもうよ〜。」

 

「えぇ〜…」

 

「ほらほら、能代も休暇を楽しまないと!こういうのは楽しんだもの勝ちだよ!」

 

「ちょ、ちょっと!分かったから引っ張んないでよ阿賀野姉ぇ!」

 

「あっ、待って阿賀野お姉ちゃん〜!」

 

「ふふ…」

 

そんな姉妹の様子を微笑ましい表情で見る矢矧。

その時だったーーー

 

トントントンツーツーツートントントン

 

「ん?」

 

「あれ?矢矧、どうしたの?」

 

「いや…何か聞こえたような…」

 

そう言うと矢矧は耳を澄ます。

すると…

 

トントントンツーツーツートントントン

 

「…間違いない、これモールス信号だわ!」

 

「えっ!なんで!?」

 

「それより内容は分かる?」

 

「うん、『SOS』…救難信号!?」

 

その内容に四人とも驚愕する中、

 

「落ち着いて!とりあえず矢矧、救難信号の発信場所分かる?」

 

「ちょっと待ってね…」

 

矢矧は目を閉じて感覚を研ぎ澄ます。

 

「…分かったわ。あそこよ!ついてきて!」

 

そう言うと四人はその場所に向かって走り出す。

しばらく進むと岩礁に隠された高さ3m程の洞窟の入り口があった。

 

「…間違いない、ここから信号が出てるわ。」

 

四人は洞窟内へと入って行った。

 

「段々と反応が強くなっているわ。」

 

「ぴゃ〜」

 

そう言いながら進む。

するとーーー

 

「ちょっとストップ!」

 

そう言うと四人は止まった。

そこにはかなり広い空間があり、その奥に何かがいる気配がした。

 

「う〜ん、暗くてよく見えない…」

 

「そうだ矢矧、探照灯つけて!」

 

「え、ええ、分かったわ。」

 

そう言うと、探照灯の光が灯り空間を上下左右を照らし、最後に奥を照らした時“何か”が見えた。

その瞬間、動揺が走った。

 

「っ!何これ…」

 

彼女達は絶句した。

何故なら、そこにいたのは全身血塗れになっていた3人の艦娘だった。

着ていた服はほとんど破れていて最早服としての機能は無かった。

顔から足指まで血で染まり、全身至る所に切り傷、打撲傷、やけどがあり、あまりの凄惨さに目を背けたくなるものだ。

さらに艤装も所々砲身は折れ、装甲はへこみ、穴が空いていた。

しばらく動けなかったが、酒匂が何かに気づいた。

 

「ん?あれ…」

 

酒匂が指差すと、壊れた艤装の中から二頭身の小人がいた。

そう、『妖精さん』だ。

 

「…もしかして、モールス信号出したの貴方達なの…?」

 

酒匂が質問すると、妖精達は頷く。

やがて矢矧もハッとなって、

 

「っ…!私と酒匂はここで待つから二人は提督を呼んできて!」

 

「えっ、あ、うん!分かった!行くよ、能代!」

 

「えっ、ええ!」

 

阿賀野と能代は走っていく。

 

 

 

 

 

一方、ここは横須賀鎮守府執務室。

この部屋には横須賀鎮守府提督『水野凛』少将がいた。

彼女は執務室で仕事に明け暮れていた。

そんな中、

 

「失礼します!提督!」

 

阿賀野と能代は勢いよく入って行った。

 

「あら、阿賀野に能代。どうしたの?」

 

「実は…」

 

能代はさっきの事を提督に話す。

その話を聞くと提督の表情は真剣味を増した。

 

「…分かったわ。第一、第二艦隊出撃準備!」

 

提督がそう言うと、鎮守府中が慌ただしくなり30分後艦隊編成が完了した。

そして、出撃準備が完了した艦娘達は桟橋に集まり、やがて提督が来た。

提督は集められた艦娘達にさっきの事について説明した。

 

「…というわけで、今回の任務はその3人の艦娘の救助よ。阿賀野、能代、案内をお願いするわ。」

 

「任せて!」

 

まず、岩礁の入り口付近に近づき戦艦部隊と共に提督も洞窟に入って行く。

しばらく進むと空間に入り、中にいた矢矧と酒匂に合流した。

提督達もその3人の艦娘の惨状を目の当たりにするが、

 

「うっ、これは…」

 

「ひ、酷い…」

 

先程の阿賀野達と同様に絶句するが、

 

「おっと、突っ立っている場合じゃないわね、直ちに救助を!」

 

提督の指示に艦娘達は一斉に動き出す。

同じく作業に入ろうとした戦艦武蔵は何かに気づく。

艤装の中から助けて欲しそうに武蔵を見つめる妖精達だった。

 

「…分かった。助けてやるさ。」

 

そう言うと武蔵は他の戦艦と協力して一際大きい艤装を運んだ。

 

 

 

 

 

『八洲』『リバティ』『ブリュンヒルデ』が鎮守府に着任しました。

 




次回は3隻が目覚めます。

乞うご期待ください。


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第一話 はじめまして

突如漂着した3隻の艦娘。
警戒しながらも救助し、横須賀鎮守府に運ばれた。
果たして味方か、それともーーー


ー横須賀鎮守府工廠ー

 

「ふぅ…こんな重い艤装運んだの初めてよ。クレーンが折れるかと思ったわ。」

 

明石がそう呟く。

救助した3人の艦娘は艤装を工廠に、艦娘本体は応急処置の為医務室へと運ばれた。

 

「夕張さん、3人の容態は…?」

 

「ええ、応急処置を施したから大丈夫よ。」

 

「それにしてもこの艤装、調べがあるわね。」

 

明石や夕張は未知の艤装に技術屋としての血が騒ぐのだ。

戦艦の艤装は三連装砲と四連装砲が2基ずつ計14門、後ろのコンテナや『H』と書かれた甲板、側面の円柱状のものと変わった形の連装機銃、そして何より気になるのは手甲状の艤装…なのだが、その形がどう見てもカニの形だったことだ。

 

「…このカニっぽい形の手甲、何なのかしら?」

 

「さぁ?」

 

次に潜水艦の艤装…なのだが、これまた潜水艦とは思えない程でかい。

本来潜水艦は最大でも全長122mだが、この潜水艦は全長488m、全幅に至っては102mと大和型を凌ぐ巨大艦だ。

兵装についても艦首魚雷発射管8門、艦尾魚雷発射管4門と重武装な上に、変わった形の連装砲とハッチがついた物体、一際大きい砲台が特徴的だった。

 

「大きい…」

 

「…これ、本当に潜水艦?」

 

最後に重巡洋艦の艤装は、全長198mと最上型に匹敵する大きさで艦幅も他の2隻と比べて大きくないが、兵装は変わった砲塔の28cm三連装砲6基の他に五連装魚雷発射管4基、長砲身の12.7cm連装高角砲と円柱状の物体とコンテナなど先程の戦艦と同じ兵装があった。

 

「かなり重武装だね…」

 

「でも、他の2隻と比べたら案外驚かないかな…」

 

明石と夕張はそれぞれの艤装を見て感想を述べる。

それほどこの3隻の艤装が規格外な代物だったからだ。

その艤装を観察すると大和が、

 

「あら?その戦艦の砲塔や潜水艦の艤装、穴が開いていない?」

 

「えっ?…あっ、本当だ。」

 

そこには四つある砲塔の内一つが大穴を開けられ原型を留めていなかった。

潜水艦も同じことで船体に砲弾で貫かれた穴が開いていた。

明石がその穴を観察すると…

 

「ん?この戦艦の主砲…これ46cm砲より大きくない?」

 

「えっ?」

 

鈴谷の質問に明石は資料を見て確認する。

 

「確かに…四連装砲はうちが扱う51cm砲と同じだけど、三連装砲の方はそれ以上に大きいわね…」

 

「待ってください。今、計算しますから…」

 

そう言うと大淀は電卓をカタカタと打ち込み、計算結果を出す。

すると、その結果に愕然とし恐る恐る口にする。

 

「…恐らく、60cmクラスの代物かと…」

 

その結果を聞いた艦娘達は驚愕する。

列車砲で80cmクラスの砲はあるが、艦砲で60cm砲など何処の国にも計画すら存在しない筈だ。

 

「しかも、51cm砲は75口径、61cm砲は65口径とかなりの長砲身です。」

 

最早驚きを通り越して混乱の領域である。

 

「さらに潜水艦の魚雷発射管も80cm相当…重巡洋艦に至っては装甲が対38cm防御装甲だと…」

 

艦娘達は言葉が出ない。

 

「…つまり、この艤装の持ち主達はこれだけの装備が必要で、敵側はこの重装甲艦に穴を開けられるというのか…」

 

「…どう考えても姫級や鬼級でも不可能だと思うけど…」

 

「…一体、どんな敵と戦ったのでしょう…」

 

大和が空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー横須賀鎮守府医務室ー

 

その頃、医務室では救助された3人が横になっていた。

3人とも包帯まみれでミイラのような外見だが、その中の1人が目を覚ます。

 

「んっ…」

 

目が覚め起き上がろうとするが、激痛が走り満足に動かせる容態ではない。

それでも動かし、自分の手を見る。

包帯だらけでその隙間から血が滲む。

 

(馬鹿な…俺は戦艦…戦艦『八洲』…何故人の姿に…?)

 

八洲は疑問に思うが、後回しにして松葉杖を持って移動しようとした。

すると、他のベッドに2人の女の子がいた。

2人とも包帯だらけになっていて、八洲は情報を得るために2人を起こす。

 

「起きろ…」

 

そう言いながら2人を揺さぶると、2人の女の子は目を開ける。

 

「んっ…あれ…?」

 

「あれ…なんで私…痛っ!」

 

2人とも起き、起こしたであろう八洲を見る。

 

「…貴方は?」

 

「俺は第零遊撃戦隊所属艦『八洲』。艦種は戦艦になる。」

 

八洲は自己紹介をすると、2人は疑問に思う。

 

「第零遊撃戦隊…?聞いたことないわね…」

 

「私も…何処かの国の特殊部隊ですか?」

 

「まぁ、元の世界では大日本帝国海軍所属だが、第零遊撃戦隊はどこの国にも所属しない…そういう部隊だ。」

 

「どこにも所属しない…どういう事かしら?」

 

さらに質問が飛ぶが、

 

「…というか、俺はお前らのことを知らない。自己紹介してくれないか?」

 

「…分かったわ。私は南極連邦海軍所属準超兵器級攻撃潜水艦『リバティ』よ。」

 

「私はウィルキア王国近衛海軍所属重装突撃型フリゲート艦『ブリュンヒルデ』です。」

 

2人も自己紹介をする。

 

(南極連邦?ウィルキア王国?聞いたこと無いな…)

 

八洲はしばらく考える。

 

「…ねぇ、ひとつ気になったけど…」

 

リバティは八洲に対して、

 

「貴方って、()なの…?」

 

そう質問した。

八洲は自分の体を触って、

 

「…ああ、声のトーンや触った感触から多分男性だと思うが…取り敢えず、今の状況を知るために知ってる事すべて話すが、いいか?」

 

「ええ、その方がいいわね。」

 

「私も賛成です。」

 

その後、3人は自分が知ってる事すべて話した。

それによって、以下の事が分かった。

 

・第零遊撃戦隊、南極連邦、ウィルキア王国の事

 

・自分達はそれぞれ異なる世界にいた事

 

・3人とも沈んだ事

 

だが、三つの異なる世界で

 

・『超兵器』という存在と戦っていた事

 

が共通していた。

 

「…なるほど、大体分かった。」

 

「それよりどうする?」

 

「そうですね…これからどうしましょうか?」

 

しばらく考えるが…

 

「…今考えてもキリがない。取り敢えずここから出るか。」

 

彼の提案に2人は頷く。

そうして移動しようとする中、ブリュンヒルデが全身鏡を見つける。

3人は鏡の前に立って姿を見る。

八洲は黒髪短髪に顔立ちは良い方で、体格から見て男性という事は明らかだった。

リバティは腰まで届くロングストレートに緑色の瞳、髪と肌が白くまさにアルビノという言葉が似合う女性だ。

ブリュンヒルデは金髪のミディアムボブに青色の瞳、身長は他の2人と比べて低いがそれでも重巡洋艦並みだ。

今現在包帯まみれになっているが、外見的に美人なのは確かだった。

八洲がドアノブに手を掛け慎重に開けるが、偶然外にいた4人と目が合った。

 

「あら?」

 

「は?」

 

「おっ?」

 

「ん?」

 

4人の艦娘達は信じられないものを見たような声を出しながら、こちらを見ていた。

彼らも見つかった為、4人の前に立つ。

 

「…こんにちは。」

 

「あっ、ええ、こんにちは。」

 

「おい陸奥!」

 

「だって!」

 

さっきから喋っている2人は同じ服装をしている為双子か相当仲のいい関係なのだと彼は推測する。

 

「君達、大丈夫なのか?」

 

「ああ、確かに過去1番の損傷具合だな…」

 

「いつもの事だし、流石に慣れたわ。」

 

「大丈夫です!これぐらい日常茶飯事ですから!」

 

「日常茶飯事って…」

 

おかっぱ頭の女性が質問するが、何ともないと答えると後ろ髪をまとめた女性が困惑の表情をする。

 

「…自己紹介がまだだったな。俺は戦艦八洲だ。」

 

「準超兵器級攻撃潜水艦リバティ。」

 

「重装突撃型フリゲート艦ブリュンヒルデです!」

 

「う、うむ、長門型一番艦長門だ。」

 

「同じく二番艦陸奥よ。」

 

「伊勢型一番艦伊勢よ。」

 

「同じく二番艦日向だ。」

 

自己紹介をする中、長門が何かに気づいた。

 

「八洲…?知らない艦名だな…」

 

「知らないのも無理はないだろう。俺は前級である『大和型戦艦』の後継艦『()()()()()()』として極秘裏に建造されたのだからな。」

 

「…ちょっと待て、今超大和型戦艦とか言ったか?」

 

「?そうだが…」

 

「確か超大和型は計画段階で中止となった筈だが…」

 

彼はしばらく考え、

 

「……なるほど。まぁ、()()()の常識ではそうだが、()()()()の常識では八八艦隊計画で建造された十六隻の戦艦と四隻の大和型戦艦の建造ノウハウや最新技術を惜しみなく投入して建造されたのがこの俺『八洲』だ。」

 

「……日向、ちょっとこっちに。」

 

「あっ、おう…」

 

長門と日向は少し離れた。

 

「あいつの話、どう思う?」

 

「…少なくとも嘘を吐いている様には見えないな。だが、超大和型は計画のみの筈…」

 

「ああ、しかも八八艦隊計画も長門型のみ建造されたから…」

 

陸奥と伊勢は3人と談笑しているが、2人とも同じ疑問を持っている模様。

 

「つまり、『異世界』から来た艦娘…ということか。」

 

「そういうことだろうな。」

 

2人とも同じ結論に辿り着く。

 

「それに、八洲とか言ったか…あれは女性というより男性といった雰囲気だな…」

 

「…念のため聞いてみるか。」

 

そう言うと2人は彼らのところに戻ってきた。

 

「なぁ、八洲。失礼な事を聞くが、もしかして…男なのか?」

 

「ああ、自分でも確認したが男である事は確かだ。」

 

「あら、やっぱり?なんか体格からして男という方がしっくり来たわ。」

 

「そういえば貴方達のことは聞いてないわね。所属とか言える?」

 

「…南極連邦海軍所属。」

 

「ウィルキア王国近衛海軍所属です!」

 

「……えっと、南極連邦?は地理的に分かるけど、ウィルキアってどこにあるの?」

 

「あっ、それはですね……」

 

リバティとブリュンヒルデが加わり談笑している中、長門は通信機を取り出した。

 

「提督、こちら長門だ。」

 

『あ、長門。どうしたの?』

 

「彼らが目を覚ました。」

 

『えっ!?貴方や大和がしばらく眠っているだろうって……』

 

「それが彼らにとってあの程度の傷は日常茶飯事だそうで、3人とも松葉杖を使って立っています。」

 

『日常茶飯事って…一体どんなところにいたのよ………ん?()って、まさか…』

 

「ああ、そのまさかだ。リバティとブリュンヒルデは女性だが、八洲は男性だ。」

 

『触診で戦艦の艦娘が男性だと明石から聞いたわ。』

 

「それより詳しい事を聞くつもりです。提督にも来てもらおうかと…」

 

『分かったわ。切るね。』

 

通信が切れ、通信機をしまうと彼らの元に向かう。

 

「まもなく我々の提督が来る。それまでここで待機してくれるか?」

 

「分かった。指示に従おう。」

 

他の2人も頷く。

 

「……少しぐらい抵抗すると思ったんだがな。」

 

「今更騒いだところで何にもならんからな。大人しくするさ。」

 

「この状態だと抵抗どころか動くことすらままならないから。」

 

「私だって軍属の身です。ここで我儘言ってもしょうがないですから。」

 

そう言うと3人は陸奥達に支えられて医務室に戻される。

しばらくして長門も医務室に入っていった。

 




次回は八洲、リバティ、ブリュンヒルデの軌跡が判明します。

乞うご期待ください。


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第二話 鋼鉄達の軌跡

八洲、リバティ、ブリュンヒルデの3人は横須賀鎮守府で目を覚ました。
彼らはどこで生まれどの様な艦歴を送ってきたのか………


ー横須賀鎮守府医務室ー

 

「失礼するわね。」

 

長門達と談笑していると、旧海軍の士官服を着た女性が他の艦娘を連れて入ってきた。

 

「あ…大和と武蔵……姉貴…でいいのか?」

 

「ええ、私が貴方の前級、大和型一番艦『大和』よ。」

 

「同じく大和型二番艦『武蔵』だ。大和、弟分が出来たとはいえ少し緊張しすぎだ。」

 

八洲が大和達を姉呼ばわりし、大和が狼狽する。

 

「えっと…取り敢えず自己紹介するわね。私は横須賀鎮守府提督水野凛。階級は少将の位を受けているわ。」

 

「俺は八洲型戦艦『八洲』。第零遊撃戦隊所属だ。」

 

「私は南極連邦海軍所属、準超兵器級攻撃潜水艦『リバティ』。」

 

「ウィルキア王国近衛海軍所属、重装突撃型フリゲート艦『ブリュンヒルデ』です!」

 

各々が自己紹介する中、

 

「取り敢えず君達のことについて話してくれない?」

 

「分かりました。まずは俺から…」

 

そう言うと八洲は話した。

 

 

 

 

俺の元の所属は大日本帝国海軍所属であり、地名等はこちらの日本と同じだが歴史は違っていた。

まず、俺の世界の日本は日露戦争に敗北していた。

どうやら日本海海戦に勝利したが、その後起きたロシア帝国陸軍の最後の反撃を受け戦線を維持出来なくなり、結果負けてしまった。

その為、朝鮮半島の利権はポーツマス条約に基づきイギリスに渡り、日本の大陸進出の機会は無くなった。

だが、日本は内需に力を入れ海洋貿易国家として発展した。

貿易で儲けた資金を元手に更なる海軍戦力増強の為、『八八艦隊計画』を発動しその結果、長門型2隻、加賀型2隻、天城型4隻、紀伊型4隻、伊吹型4隻を建造した。

そして最新技術を導入し、大和型戦艦4隻を建造したが、この頃台頭して来た航空機に対応できないと判断され、新たに『超大和型戦艦』の建造を開始した。

主砲は45口径51cm砲を搭載し、設計段階から対空戦闘を視野に入れ、第一次世界大戦の敗戦国ドイツの経済援助の見返りとして手に入れた電子機器のノウハウを惜しみなく注ぎ込まれた俺は『八洲』を命名され、1944年に完成した。

そしてこの世界と俺の世界の最大の相違点は第二次世界大戦が1945年に起きた事だ。

しかも、その原因はソビエト連邦が突如ポーランドへ侵攻した事が発端だ。

日本軍は欧州に救援艦隊を送り、俺も日本海でソビエト海軍の最新鋭艦と激闘を繰り広げている中、ソ連は戦略爆撃機を開発、配備し日本本土を爆撃して来た。

そこで北極海に存在する戦略爆撃機の基地を破壊する為『八洲』単艦で赴くことになった。

任務遂行の為に北極海を航行している中、とんでもない事態が起きた。

突如として光に包まれて、気がつくと見知らぬ海域に出たと同時に所属不明の戦闘艦の攻撃を受け危機的状況に陥る。

これまでかーーーそう思ったその時、『第零遊撃戦隊』と名乗る部隊に助けられ危機を脱した。

その部隊の司令官に話を聞いたところ、ここは俺の世界やこっちの世界とは異なる『異次元世界(パラレルワールド)』だと言うこと、地名等は元の世界と一緒だが、列強各国が『新型機関』を搭載した巨大兵器『超兵器』なるものを建造しその稼働で時空が歪み俺を始め第零遊撃戦隊のメンバーもこの世界に飛ばされたのだ。

それから俺たちは自らの帰還とこれ以上の被害を防ぐ為、世界各地を渡り超兵器を破壊し続けた。

戦いの最中、他にも転移艦が現れてその中には俺の元いた世界から転移してきた艦もいた。

俺も超兵器に対抗する為にパラレルワールドの超技術を導入して建造当初とは別物の戦艦になった。

そして、北極海にてヤツ…“究極超兵器”と対峙する。

その名は『ヴォルケンクラッツァー』

“摩天楼”の名を冠したこの超兵器は大陸をも消滅する究極兵器『波動砲』を持ち、2隻いれば世界を滅ぼすことができる超兵器だ。

無論、最終決戦として第零遊撃戦隊の全戦力を結集しヤツに戦いを挑んだ。

多くの同胞が沈み、俺も損傷を受けたが死闘の末ヴォルケンクラッツァーを沈める事が出来た。

敵艦が爆発しながら沈んでいった次の瞬間、その地点が光り始めた。

そう、元の世界に帰る為の“ゲート”が開いたのだ。

迷わず艦を進め、ゲートの中に入って行った。

気がつくと北極海にいた。

直後、友軍の通信がひっきりなしに入り艦長達は元の世界に帰ってきたと実感できた。

だが、先の死闘で最早修復不可能なまで損傷し本国に帰還することが困難になった。

さらに超兵器と戦う為に原型を留めない程改造されている為、このまま帰還しても本艦の超越した技術が新たな戦争の火種になるのを恐れてそのまま自沈させた………

 

 

 

 

八洲の話を聞いた提督達は言葉を失った。

 

「そ、そんな…」

 

「なんて艦歴だ…!」

 

特に大和と武蔵は弟分である八洲が壮絶な艦歴に絶句した。

するとリバティが、

 

「…ヴォルケンクラッツァー、あの“枢軸国の究極超兵器”と戦ったのね…」

 

「そういえばリバティ、ブリュンヒルデ。お前らもヴォルケンクラッツァーと戦ったのか…」

 

「ええ、次は私ね…」

 

 

 

 

私の祖国『南極連邦』は1910年に誕生した独立国家。

この国は民族という概念は無く、世界中から科学者や芸術家が集められて科学・芸術面で他の国より発展したの。

その為、南極大陸でも基地や都市を造って発展した。

それから10年後…

この頃、世界規模でエネルギー危機が叫ばれるようになり、化石燃料を必要としない『新機関』の研究が始まった。

5年後、ドイツが先駆けて『新機関』の起動試験を行ったけど、試験中に炉心が破損し暴走、実験施設は跡形もなく消失したわ…

これを機に各国は『新機関』の研究を相次いで中断し、消えかけたエネルギー危機の不安が世界を覆った。

転機が訪れたのは1931年、『南極連邦』の大陸地下から特殊な組成の金属『レアメタル』が発見された。

南極連邦特殊研究機関によりレアメタルを使った合金は高い耐熱性と耐衝撃性を持つことが判明、この新合金が新機関開発に進展をもたらすと考えた南極連邦は他国へ新合金の輸出を開始した。

そして、1933年列強各国は新機関の開発に成功、地球規模のエネルギー問題を回避し世界に平和と安定の時代が到来すると誰もが確信した…

だが、そのような考えをする者ばかりとは限らなかった…

1934年に新機関と新合金を利用した『超兵器』を各国が開発し始め、やがて連合国と枢軸国に分かれて大戦が勃発したわ…

すぐさま新合金の輸出を禁止したけど、今度は新合金の独占を巡って連合国と枢軸国が南極連邦に宣戦布告して来た。

もちろん南極連邦軍が迎撃に向かうけど、いくら科学技術が他国より優れているとはいえ『新機関』の開発に成功していない我が国は超兵器に成す術がなかったわ…

だけど、ただでやられる訳にはいかなかったわ。

『新機関』の次に出力の高い代用機関『核融合炉』を搭載し、我が国の高い潜水艦技術の粋を結集した『準超兵器級攻撃潜水艦』開発計画、通称『R計画』を秘密裏に進めて、1936年にこの私、『リバティ』が完成して就役した。

実戦投入されてからは連合国・枢軸国の超兵器と戦いを繰り広げた。

すべては列強各国の魔の手から祖国を守る為に…

超兵器との戦いを繰り広げる中、遂に連合国と枢軸国を追い詰めた我々は北極海にて連合国の究極超兵器『リヴァイアサン』、枢軸国の究極超兵器『ヴォルケンクラッツァー』と対峙した。

戦いを終わらせる為に支援艦隊と共に2隻を相手取り、損害を被りながら2隻を海の藻屑にした。

だが、その2隻の戦いで致命傷を負った私は艦長の指示で乗組員を退艦させた後、真っ二つに折れて轟沈した………

 

 

 

 

リバティの艦歴も壮絶なものだった。

するとブリュンヒルデがリバティに対して質問した。

 

「えっと、リバティさん。何故、南極連邦は新機関の開発が出来なかったのでしょうか?」

 

「厳密には開発出来なかったというより、その原料を発掘出来なかったという方が正しいわ。」

 

「?それってどういう…?」

 

リバティは説明した。

超兵器との戦いの最中新機関の調査を行った結果、その炉心は世界各地で発掘された『超エネルギー鉱物』を加工したものだと分かった。

ただしこの鉱物は南極大陸以外で発掘されるものだから南極連邦が新機関を開発出来なかったのはその為なの。

 

「…なるほど、土地の性質上原料が取れないから新機関を開発出来なかったという訳ですね。」

 

「まぁ、その代わりレアメタルは南極大陸しか発掘されない鉱物だったけど…私からは以上だわ。」

 

「じゃあ最後は私ですね。」

 

 

 

 

私の祖国ウィルキア王国は北欧からユーラシア大陸を横断したデーン系民族『ヴィルク族』が建国した王国です。

その後近隣の大国からの侵略を受けて近代まで支配されてましたが、クリミア戦争でロシア帝国の後背を突く形で独立戦争を仕掛け、そのまま勝利した。

独立から数十年後、再併合を目論むロシア帝国と戦争になったが日本と同盟を結ぶ事によりこれを撃退。

続く欧州大戦では現地まで遠征しドイツを支援しました。

以来我が国は日本、イギリス、ドイツと同盟関係を結び、戦後は産業の工業化・海軍の増強に力を入れ目覚ましい成長を遂げました。

当時、私は海軍増強計画の一環で巡洋艦『ブリュンヒルデ』として建造されウィルキア王国近衛海軍に配属されました。

しかし、1939年3月に国防軍と近衛軍による総合大演習の最中、突如国防軍の艦艇が実弾を発砲し、本艦は被弾し僚艦は撃沈された。

私は応戦しつつ離脱し、国王陛下を連れてなんとか同盟国の日本に逃げ込みました。

しかし、日本でも国防軍に同調する勢力によって艦長のシュルツ達は拘留された…

幸い、軍事顧問として派遣された筑波大尉と天城大佐が共謀して艦長達は救出されそのまま脱出しました。

そしてハワイに逃げ込んだ後、クーデターを起こした国防軍トップのヴァイセンベルガーがウィルキア帝国の樹立と全世界に帝国の傘下に入る様迫ったの。

当然、容認される筈も無く各国は帝国討伐に乗り出したけど、それも帝国の力の象徴…『超兵器』によって打ち砕かれました。

さらに帝国に与する国家が現れて戦火は世界中に広がった…

そこで帝国に対抗する為、近衛軍は『ウィルキア解放軍』へと名を変え他国と協力し帝国軍と超兵器を相手に戦いました。

私もドック艦『スキズブラズニル』と他の艦艇と共に世界各地を転々とし超兵器を破壊すると同時に超兵器についても調査し、以下のことが分かりました。

・超兵器は『超兵器機関』で動いている

・超兵器機関はバラバラになっても動き続ける

・超兵器機関は世界各地の火山地帯で発掘された

帝国軍相手に勝ち続けて各地を解放し、遂に首都シュヴァンブルグで超兵器『リヴァイアサン』を沈め祖国を解放しました。

…しかし、ヴァイセンベルガーは超兵器潜水艦に乗り込みシュヴァンブルグを脱出しました。

我々も跡を追い、北極海にてあの忌まわしき超兵器と相対しました。

その名は『究極超兵器 フィンブルヴィンテル』

すべての超兵器機関の元になった存在で、ヴァイセンベルガーはこの究極超兵器の力を利用して自らの野望“究極の世界構築”を行おうとしたけど…フィンブルヴィンテルが目覚めた途端、ヴァイセンベルガーが乗っていた超兵器潜水艦を破壊しました。

皮肉にも究極超兵器によってヴァイセンベルガーの野望は潰えました…でも、その後その超兵器は周辺の氷山や島々を破壊しながら南下して来ました。

シュルツ艦長はこれ以上の被害を食い止める為、巡洋艦改めフリゲート艦『ブリュンヒルデ』単艦で立ち向かいました。

究極超兵器との死闘の末、遂にフィンブルヴィンテルを撃沈しました。

しかし、フィンブルヴィンテルの超兵器機関が自壊を起こしその後爆散しました。

私はその衝撃波を受け、沈みはしませんでしたが船体に深刻なダメージを受け浸水が止まらず、航行すらままならない状態になり退艦することになりました。

退艦が完了した後、私は沈みました………

 

 

 

 

ブリュンヒルデも含め3人の艦歴の壮絶さに提督達は絶句した。

するとブリュンヒルデ達は口を開く。

 

「…私達はそれぞれ別の世界でほぼ毎日戦いそして沈みました。」

 

「だけど、私達は人の形を得て今ここにいるわ。」

 

「俺達はこの世界の事は知らない。教えてくれないか?」

 

「……分かったわ。」

 

そう言うと提督は3人に説明した。

この世界の歴史…

現在まで続いている『深海大戦』…

世界共通の敵『深海棲艦』について…

そしてそれに対抗出来る『艦娘』について…

 

「…なるほど、深海棲艦…俺達が今後戦う敵か……」

 

「怖気付いたかしら?」

 

「…まさか。」

 

「如何なる敵が相手でも、ウィルキア王国近衛海軍として戦います!」

 

八洲とブリュンヒルデがそう言い、リバティも頷く。

 

「ええ、その意気込みは良し!さっき大本営から連絡があってとりあえず艤装だけでも直しておけって命令が来たから、明日にでも作業に取り掛かるよう指示を出しておくわ。」

 

「つまり、技術調査という訳か…」

 

「だから、その調査が終わるまでこのままの姿で過ごしてもらうけど……」

 

「構わないわ。」

 

その後談笑と夕食を終えたのちに軟禁用に用意された部屋に入り彼らはそのまま就寝した。

 

 

 

 

数日後ーーー

 

「はい………分かりました。明日にでも修復作業に入ります。それでは……」

 

「いい結果が返ってきて良かったですね!」

 

秘書艦の瑞鳳がそう言う。

 

「ええ、でも……こんな艦娘版姫級、どう扱えばいいのよ……」

 

そう言いながら妖精達が調べ上げた八洲、リバティ、ブリュンヒルデのカタログスペックを見ていた。

 

「強力な戦力が手に入ったからいいのだけれど、心配なのは修復費なのよね……八洲とリバティは船体と武装の規模から大和以上なのは明白だけど、ブリュンヒルデの場合は武装からして予想以上に費用が掛かるかも……」

 

まもなく提督の懸念は現実のものとなる……………

 

 




次回は彼らが復活します。
その修復費は、そして提督の運命は如何にーーー

乞うご期待ください。


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第三話 鋼鉄達の復活

提督達は彼らの壮絶な艦歴を聞き言葉を失った。
その数日後、大本営から彼らの修復が命じられた。
修復費に懸念が残る中、すぐさま修復に取り掛かったが………


ー横須賀鎮守府ドックー

 

本体の修復が決まると、彼らはドックに連れて行かれた。

ドックとは艦娘の怪我を治すだけでなく、マッサージやエステ、談話室等を備えた総合保養施設であり、深海大戦時に経営不振に陥った旅館を国が買い取りドックとして改装したという経緯がある。

現在入渠していた艦娘の修復がちょうど終わり、高速修復剤の在庫があるので彼らの修復はスムーズに進んだ。

尚、先程入渠を終えた子や任務から帰投した子は見たことない艤装に興味津々である。

一方、八洲達はーーー

 

「あっ、くっ沁みますね…」

 

悶絶していた。

無理もない。傷だらけの身体でお湯に浸かったら普通に痛い。

リバティと八洲は声を発していないが、脂汗を流していることから我慢しているのは事実だ。

あと、八洲は男性、リバティとブリュンヒルデは女性である為八洲とリバティの間に仕切りが立てられ見えない様になっていた。

 

「待ってね、バケツを使うから…」

 

そう言うと浴槽の上にあるレールから『高速修復剤』と書かれているバケツが運ばれ、バケツが傾くと中から緑色の液体が注がれた。

やがてその液体が浴槽の湯に馴染むと不思議なことが起こった。

 

「…あら、傷が治っていく…」

 

「えっ、あっ本当だ。」

 

今まで生々しく残っていた傷が消えて、傷付いた箇所を押しても痛みなど無かったのだ。

 

「なぁ、どういう原理でこんな綺麗に治っていくのか?」

 

「う〜ん、それは分からないのよねぇ。」

 

「……えっと、分からない…?」

 

「正確には使い方は分かるけど、どういう原理かは知らないわ。そこは妖精さんの領分だから…」

 

「妖精……2頭身の小人か?」

 

「ええ、このドックも妖精さんが作った…というか元々旅館を改装したものなのよ。」

 

ちなみに高速修復剤の効果は一回のみだが、修復時間が長い艦娘を瞬時に復活できる代物だ。(ただし人間が使うと快楽死する危険性がある。)

 

「もう大丈夫だな。上がっていいか?」

 

「ええ、まずは八洲から上がって。」

 

八洲から上がり、脱衣所にて置いてあった八洲専用の服を着た。

八洲の服は黒を基調とした服で胸当てを付け、黒の軍用ブーツにタンブルホーム船体の艦首を模したサンバイザーを被った。

専用の服を着た後、脱衣所を出て2人が出てくるまで待った。

しばらく待った後、陸奥と共にリバティとブリュンヒルデが出てきた。

リバティはダイバースーツのみと潜水艦としてシンプルな服装で、ブリュンヒルデは青と黒を基調としたウィルキア王国近衛海軍士官服を着ていた。

 

「おまたせ。」

 

「あっ、それが八洲さんの服装ですか。カッコイイです!」

 

「…そうか。」

 

八洲は照れ臭く感じながらも返事をした。

その時だったーーー

 

きゃあああ!!提督ぅ!?

 

瑞鳳の悲鳴が聞こえてきた。

何事かとドックを出て工廠に向かい、そこで見たのはーーー

 

「燃えた…燃え尽きたよ…真っ白に………」

 

椅子に座って灰のように燃え尽きている提督とそれを必死に揺さぶる瑞鳳がいた。

 

「…どういう状況?」

 

「あ〜それがですね、そこにいる3人の修復資材の量を見て燃え尽きてしまってですね………」

 

「…ちなみにどのくらい掛かった?」

 

「……これです。」

 

そう言うと明石は一枚の紙を八洲に渡した。

渡された紙を見た八洲は、

 

「………なるほど。」

 

と言い、その紙をリバティとブリュンヒルデに見せた。

 

「……悲惨ね。」

 

「あっ、えっと………ご愁傷様です…」

 

リバティは納得の表情を見せ、ブリュンヒルデは申し訳なさそうに謝った。

 

「備蓄していた資材が8割消し飛んだわ……ていうか、艦の頃はどうやって補給したのよ?」

 

「俺の場合、反列強勢力から資材・資金面で支援してもらった。」

 

「私は優先的に本国から満足な補給を受けたわ。」

 

「私の場合は各国から支援して貰いました。」

 

「………羨ましい。」

 

提督が恨めしそうに呟いた。

『代償として今は祖国はない』とリバティは思ったが、言ってもどうにもならない為、言わないことにした。

 

「それより大丈夫ですか?私の艤装、精密機械を搭載していますけど…」

 

「あっ、それならご心配なく!資材さえあればどんな艤装も直せるのよ。貴方達の艤装も問題なく直ったわ。」

 

(…いや、どういう原理だ……?)

 

八洲はそう思ったが、自分達も所謂『不思議技術』に該当する為、

 

(いや、俺達も大概だな……)

 

そう思い、納得した。

 

「じゃあ貴方達、とりあえずこの後試験航海に出るから準備してね。」

 

そう言うと八洲達は艤装が置いてあるところに向かった。

 

 

 

 

一方、彼らの艤装を興味津々で見ている艦娘らは、八洲達が来ると一斉に駆け寄ってきた。

八洲達は一斉に駆け寄ってきた艦娘達に驚くが、提督がその場を収めて試験航海に随伴する艦娘を選び出して出撃準備を命じた。

 

「さて、とりあえず艤装つけてみてくれる?」

 

「ああ、分かった。」

 

そう言うと彼らはそれぞれの艤装を装着した。

八洲の艤装は腰に大袖状のプロテクターを付け、そのプロテクターには四連装砲と三連装砲がそれぞれ一基ずつ接続され、外側にはサイドハルを模した装甲を持ち、そこには『30mm機関砲』と『新型パルスレーザー』が複数取り付けられていた。

背中には艦橋を模した構造物と『対空/対潜ミサイルVLS』と先程の対空火器群、艦載機の『OH-1』2機と『AH-64Jアパッチ』2機、『SH-60Jシーホーク』1機を格納する格納庫とヘリポートが備わっていた。

そして、何より異様なのはカニの形をした手甲…『新型カニ光線』一基と右肩部に折り畳んで装着している一際大きい砲…『レールガンβ』が備わっていたことだ。

 

リバティの艤装は右側に船体を模した水中バイクが接続されており、左側には『多弾頭ミサイルVLS3』、右肩部に『小型レールガン』二基、左肩部に『新型強化プラズマ砲』一基、艤装の各所に『30mm機関砲』、『新型パルスレーザー』を装備し、両脚部にはポンプジェット付き機械化ブーツを履いていた。

尚、艦首8門・艦尾4門の『新型超音速魚雷』と艦載機6機を格納していた。

 

ブリュンヒルデの艤装は両側に『280mmAGS三連装砲』を六基、左右の太ももと脛あたりに『五連装新型超音速酸素魚雷発射管』を四基、背中には従来の重巡とは比べ物にならない程大きい艦橋と『多目的ミサイルVLSⅢ』と『12.7cm75口径連装高角砲』と『囮投射機Ⅱ』、艤装の各所に『35mmCIWS』と『チャフグレネード』を搭載し、艦載機は『ハウニブーⅣ』と『RAH-66コマンチ』がそれぞれ二機ずつ格納されていた。

 

ちなみに先程紹介した兵装は存在自体知らない為、艦娘達は何の装備だろうと考えている。

艤装を付けた後、何かが足元を引っ張っているみたいな違和感を覚えたので下を見ると2頭身の小人が沢山集まっていた。

 

「もしかして…これが妖精さん?」

 

「ええ、そうよ。試しにしゃがんでみて。」

 

明石の言う通りにしゃがむと、妖精さん達がそれぞれの体によじ登り、艤装の隙間に入っていく。

明らかに容量以上に入っている様に見えるが、気にしたら負けである。

 

「よし、まずは航行練習よ!慣らしておかないとね。」

 

3人は着水した後動いてみたが、こけそうになったり、盛大にすっ転んでしまう。

それでもアドバイスを貰いながら練習したところ、1時間位で自由に操艦できるようになった。

 

「じゃあ、そろそろ試験航海を始めるわ。随伴艦は高速戦艦4人と正規空母2人、軽巡2人に第六、第七駆逐隊計8人…貴方達含めて19人で行う。」

 

(……なんか清々しいほどに警戒されていますね。)

 

(まぁ、ここは素直に従うのが得策ね。)

 

そう思いながらも準備を整え、指定された地点まで彼らは進んだ。

一方、提督達は執務室へ行きスピーカー付きの無線機を準備した。

金剛の艤装にマイクを付け、詳しい情報を聞き出そうとしていた。

 

「はてさて、どうなる事やら……」

 

この後、彼女達は彼らの性能に驚愕することになる………

 

 

 




次回は彼らの性能が明らかになります。

乞うご期待ください。


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第四話 試験航海(前編)

膨大な修復費と引き換えに八洲達の修復に成功。
彼らの性能を測る為、試験航海を行う………


ー横須賀鎮守府近海ー

 

八洲達は艦隊と合流するまで兵装の動作チェックをしていた。

 

「各種兵装異常無し。」

 

「あっ、前方に艦隊確認。まもなく合流します。」

 

そう言うと八洲達3人と金剛以下16人が合流する。

合流すると自己紹介を始めた。

 

「よろしくネー。私は金剛型高速戦艦のネームシップ金剛デース!」

 

「金剛型高速戦艦二番艦比叡です。今日は金剛お姉さま達と随伴します!」

 

「同じく三番艦榛名です。本日はよろしくお願いします!」

 

「金剛型高速戦艦四番艦霧島です。貴方達のデータ、たっぷり取らせてもらうわね。」

 

「初めまして。翔鶴型航空母艦一番艦翔鶴です。」

 

「同じく二番艦瑞鶴よ。今日はよろしくね!」

 

「川内型軽巡洋艦二番艦神通です。よろしくお願いします。」

 

「俺は天龍型軽巡洋艦一番艦天龍だ!フフフ、怖いか?」

 

「暁型駆逐艦一番艦暁よ。レディーとして扱ってよね!」

 

「暁型駆逐艦二番艦響改めヴェールヌイ。よろしくね。」

 

「暁型駆逐艦三番艦雷よ!この雷様がお世話してあげるわね!」

 

「暁型駆逐艦四番艦電です。どうか、よろしくお願いします。」

 

「綾波型駆逐艦七番艦朧です。よろしく。」

 

「綾波型駆逐艦八番艦曙よ。よろしく。」

 

「綾波型駆逐艦九番艦漣です!よろしくね!」

 

「綾波型駆逐艦十番艦潮です…よろしくお願いします。」

 

金剛達が自己紹介すると八洲達も自己紹介した。

 

「八洲型戦艦八洲だ。よろしく。」

 

「準超兵器級攻撃潜水艦リバティよ。」

 

「重装突撃型フリゲート艦ブリュンヒルデです。よろしくお願いします。」

 

「じゃあ、まずは沖に出ましょう!前進半速ネー!」

 

金剛の命令で艦隊は沖に出るが、瑞鶴が違和感を感じる。

それは八洲達が頻繁に速度調整をしている事だった。

 

(…まぁ、艦娘になったばかりだから仕方ないわね。)

 

瑞鶴は自分も同じ経験をしたので、さほど気にしていなかった。

外洋に出ると金剛は次の命令を下す。

 

「じゃあ、そろそろ航海演習ネー。まずはリバティの動きに合わせて動くネー。」

 

「…いいの?」

 

「OK、OK、No problemネー。神通達もついていくからYouの好きなように動いちゃいなヨ!」

 

金剛達は余裕の表情を見せる。

この時、金剛達はリバティがかなりの巨体を持つ潜水艦と言う認識だった為、水上速度は速くて20kt代も予測していた。

 

「…分かった。辛かったら言って。第一戦速。」

 

ついていく神通達はこけおどしと思ったが、悲劇が起こる。

リバティ達の速度が速すぎて神通達は慌てて追いかける。

なんと第一戦速で18.4kt出ていた。

そのまま第二戦速で29.3kt、第三戦速37.9kt出て神通達は最大戦速で追いかけるが、ついていけずに脱落する。

リバティは最大戦速である54.6kt出していた。

因みに八洲は最大53.7kt出せるし、ブリュンヒルデに至っては最大76.8kt出せるのだ。

 

「…久しぶりね。この感じ。」

 

「そうですね。私はもっと出せますが…」

 

「お前ら、俺達が速すぎるからあいつら置いてけぼりになっているぞ。」

 

リバティ達は振り返ると神通達を大きく離しているので、急いで神通達の所に戻った。

神通達は息切れを起こしていた。

 

「だから言ったのに…」

 

「いや、速えよ……」

 

天龍も今までの余裕は無くなっていた。

 

「一体、どんな機関を積んでいるネー…」

 

「核融合炉Ⅳ。」

 

「核融合炉Ⅳ…?何ですかそれは?」

 

「分かりやすく言うなら、海水を燃料にして動く機関の改良型。」

 

すると霧島が目を見開いて驚愕する。

 

「えっ!?それはつまり、リバティさんにとって周りに燃料があるって事ですか!?」

 

「そう。」

 

周りの艦娘も驚いてリバティを凝視する。

 

「リバティさん、海水を燃料にする為にどんな方法を用いているのですか?」

 

「…核融合炉の運用プロセスはかなり複雑で、貴方達じゃ運用出来ないわ。」

 

「そっ、そうですか…」

 

霧島は明らかに落胆した様子を見せる。

今度は榛名が質問する。

 

「あの、核融合炉の出力は一基でどのくらいでしょうか?」

 

リバティは少し考える素振りを見せるが、話すことを決めた。

 

「核融合炉Ⅳの一基あたりの出力は45000よ。」

 

「よっ、45000!?」

 

彼女達は驚愕する。

無理もない。彼女らのボイラーは最大15000とリバティの核融合炉の三分の一程の出力しかない。

 

「えっ!そんなものを何基積んでいるのよ!」

 

「核融合炉八基に核融合炉は回転効率100%のタービンも兼ねているから…合計288万馬力。」

 

その数値に艦娘達は戦慄した。

リバティは潜水艦だか、大和型戦艦の出力が15万馬力だから約19倍の出力を持っているのだ。

驚かない方がおかしい。

しばらくして霧島は我に帰り、

 

「えっと、ブリュンヒルデさんと八洲さんは?」

 

「私ですか?私は出力32000の核融合炉Ⅳ四基と駆逐タービンε三基で376,320馬力です。」

 

「俺は出力30000の常温核融合炉十二基と標準タービンζ四基で777,600馬力だ。」

 

「八洲はともかく、なんで貴方は貴方で翔鶴型(私達)の二倍以上の出力を持っているのよ!」

 

「なるほど、翔鶴型の二倍の出力に重巡並の船体ですから、驚異的な加速性能と速度性能があるわけですね。」

 

八洲とブリュンヒルデの性能に瑞鶴はツッコミ、霧島は冷静に分析していた。

すると榛名が何かに気づいた。

 

「あの…八洲さん。さっき『常温核融合炉』と言いましたが、それってリバティさんとブリュンヒルデさんの核融合炉と何か違うのですか?」

 

「ああ、核融合と言うのは確かに水素とヘリウムを用いる為、海水を燃料に出来るのが利点だが、核融合反応を起こすには極度の高温と高圧が必要で実用化が難しい。だから、俺の動力炉である『常温核融合炉』は希少金属の一つであるパラジウムを用いて核融合反応を起こす代物で、従来の原子炉と比べて高い出力と安全性が高い。反面、欠点もあって八ヶ月ごとに燃料補給しなければならないがな。」

 

「いや、それでも十分便利よ…」

 

瑞鶴は驚きを通り越して呆れる。

すると朧が気になったことを聞く。

 

「ねぇ、八洲さんのカニの手甲…それは何?」

 

「あっ、そういえば兵装はどんなものを積んでいるの?」

 

「ああ、それは…」

 

 

 

 

ー横須賀鎮守府執務室ー

 

『61cm65口径三連装砲と51cm75口径四連装砲、対空/対潜ミサイルVLS、新型パルスレーザーに30mm機関砲、レールガンβ、そして手甲状の兵装は新型カニ光線だ。』

 

一方ここは執務室。

ここでは金剛の艤装についているマイクから盗み聞きしていた。

提督を始め大和や武蔵に長門や陸奥、赤城や加賀に大鳳、秘書艦の瑞鳳が居た。

 

「あの…提督?」

 

「…いや、ミサイルはともかくレーザーやレールガンまで装備しているとは…」

 

提督は無線機片手に頭を抱える。

 

「なぁ提督…聞き慣れない兵装があるが…ミサイルとかレーザーは何なのだ?」

 

「まずミサイルは誘導式長射程噴進弾を近い。次にレーザーは工業加工に使われるもので、光の速さで飛ぶから避けられないのよ。だけどレーザーを兵器として使うには高い出力が必要だし、曇や霧が掛かると威力が著しく減衰するのだけれど八洲の高い出力なら多分問題は無いわよ。」

 

「ふむ…つまり航空機はほぼ無効になるって事か?」

 

「多分そうじゃない?」

 

「えっ、その性能なら私達空母の出番は………」

 

「えっ、いやいや大丈夫だから安心してっ!!泣きそうにならないでお願いだからっ!!」

 

自分達の存在価値が無くなりそうになって、泣きそうになった空母達を慌てて慰めることに…

 

「本当ですか?」

 

「本当、本当だから!!」

 

「なら良かったです。」

 

「はぁ……とにかくリバティとブリュンヒルデの兵装を聞いてちょうだい。」

 

『えっと、リバティさんは?』

 

『私はまず水中戦用として超音速魚雷、水上戦用として小型レールガンに新型強化プラズマ砲、新型パルスレーザーに30mm機関砲、多弾頭ミサイルVLS3を装備しているわ。』

 

『えっ!?水上戦って、貴方潜水艦でしょ!?』

 

驚くのも無理はない。

本来潜水艦は水中戦が得意だが、その反面水上戦に不向きなのだ。

 

『ええ、度重なる改装で水上戦も出来る様になったわ。特殊鋼鉄複合装甲の恩恵もあって戦艦並の装甲を持つに至ったわ。』

 

『えっと、特殊鋼鉄複合装甲って何ですか?』

 

電が質問した。

 

『特殊鋼鉄複合装甲はレアメタルを練り込んだ特殊装甲で、装甲厚の二倍近い質量の砲弾も防ぐ事が出来るわ。私の装甲は対31cm防御装甲だから、実質60cm砲の直撃にも耐えられるわ。』

 

あまりの高スペックに艦娘達は言葉を失う。

 

「…つまり、戦艦以上の装甲を持つ潜水艦という事か。」

 

「規格外ね…」

 

『えっと、気を取り直してブリュンヒルデさんは?』

 

『私は280mm三連装AGS砲と超音速酸素魚雷、多目的ミサイルVLSⅢに12.7cm75口径連装高角砲と35mmCIWS、チャフグレネードに囮投射機Ⅱを装備しています。』

 

『色々聞きたい事がありますが…そのAGS砲って何ですか?』

 

『AGS砲とは『発展型砲装置』のことで分かりやすく言うなら誘導能力を持つ砲弾を放つ艦砲です。』

 

『えっ!?砲弾自体が誘導を!?』

 

『はい。さらに280mmAGS砲は46cm45口径砲と同威力なのも特徴です。』

 

『それってつまり…大和型戦艦に匹敵する砲を持った重巡って、流石に冗談でしょ!?』

 

『事実です。あと、従来の酸素魚雷の2.25倍の速度を誇る超音速酸素魚雷を装備しているので、水雷戦も得意です!』

 

ブリュンヒルデのスペックに唖然とする中、

 

「そういえばリバティは潜水艦でしょ。なら潜航能力を見てみる必要があるわね。」

 

そう言うと提督は金剛達に指示を出す。

 

 

 

 

「じゃあ、リバティ。とりあえずYouの潜航能力を測るから準備してネー。」

 

「分かったわ。潜航モードに移行。」

 

そう言うと、右側に接続されていた水中バイクを前に出してまたがり、右肩の小型レールガン二基を前に、左肩の新型強化プラズマ砲を後ろに接続した。

その姿はまさに潜水艦そのものだった。

 

「すっご…」

 

曙が思わず口にする。

 

「では、潜航する。」

 

リバティはそのまま潜航した。

潜航し姿が見えなくなった後、駆逐艦達はリバティの水中速力を測る為すぐさま聴音を開始するが……

 

「あの…天龍さん。ちょっといいですか?」

 

「ん?どうした?」

 

「音が聞こえなくて速力が分かりません…」

 

その報告に皆驚愕する。

 

「なっ!?しっかり確認したか!?」

 

「駄目です!何も聞こえません!」

 

「…こっちもだ。スクリュー音を探知出来ない。」

 

八洲とブリュンヒルデはすかさず探信儀を確認する。

その反応を見て、彼らも驚愕する。

 

(…なるほど、かなりの静粛性だ…!)

 

何故なら、彼らの探信儀を持ってしても探知が困難だからだ。

彼女らが戸惑っていると遠くの方に何かが浮上するのが見えた。

そう、リバティだ。

彼女らが驚愕する中、リバティは近づき話しかけてきた。

 

「一通り動いてみたけど、分かった?」

 

「あっ、いや…なんというか……聞き取れなかったから分からん。」

 

「……やっぱりね。」

 

「?何が?」

 

「スクリュー音が聞こえないのは、私の推進システムはスクリュー方式ではなく水流推進(ポンプ・ジェット)と電磁推進の併用だからスクリュー特有の音は聞こえないわ。とりあえず自身の最大戦速67.3ktで一回りしたわ。」

 

そのことに金剛達は驚く。

 

「…そんなに出していたのかい、自信無くしてしまうよ…」

 

響(ヴェールヌイ)はそう呟く。

彼女は練度も高く、聴音に関しては彼女の右に出る者はいない。

彼女がショックを受けるのも無理はないのだ。

 

「と、とりあえず、次は射撃演習ネー。You達の実力を見せてみるネー!」

 

遂に彼らの兵装運用試験が始まる。

彼女達はまたもや彼らの性能に驚かされる事になるーーー

 




試験航海の話は前編と後編に分けます。

次回は射撃演習回です。

乞うご期待ください。


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第五話 試験航海(後編)

試験航海で脅威的な速度性能を見せた八洲達。

続いては兵装についての性能を測るが………


射撃演習に入る為、駆逐艦達が標的ブイの準備をする中、

 

「なぁ、少しあいつらと話をしていいか?」

 

「ええ、いいですけど…」

 

霧島に許可をもらった後、3人は集まり八洲が小声で指示する。

 

「とりあえず攻撃兵装をすべて使うぞ。」

 

「えっ!手の内を明かすことになりますけどいいのですか?」

 

「構わん。それよりもいざと言う時に兵装が動かなかった方がまずい。」

 

「…なるほど、分かったわ。」

 

しばらくして…

 

「射撃演習の準備ができたネー。それではYouの実力を見せるデース!」

 

「了解した。これより砲撃に移る。一番から四番主砲、目標を追尾。」

 

そう言うと八洲の一番、二番の主砲と三番、四番の主砲は2つの標的ブイを捉え標準と装填を終えると、

 

「全門斉射、撃て!」

 

八洲の14門の砲が一斉に火を噴いた。

数秒後、2つのブイに命中し蛍光煙幕が上がった。

 

「次弾、新型徹甲弾を装填……装填完了。撃て!」

 

今度は砲身が下を向き、発砲した。

砲弾は低い軌道で飛翔し、ブイの10m付近に着弾、しばらくして蛍光煙幕が上がった。

 

「新型カニ光線、レールガンβ用意!」

 

すると折り畳み式の砲が展開し超砲身の砲『レールガンβ』を構え、

 

「…撃て!」

 

ギュオン!!

 

レールガンβが大きな音を立てて、1秒も掛からずに命中した。

標的ブイは跡形も無く吹き飛んだ。

 

その後レールガンβを折り畳み、カニ型の手甲を起動すると標的ブイに近づき手甲を前に出す。

 

「新型カニ光線、照射始め!」

 

次の瞬間カニ型の手甲から2本の光線が放たれ、次第に蟹のハサミが閉じるように収束していき標的ブイの的を真っ二つに焼き切った。

八洲の射撃が終わると、リバティとブリュンヒルデ以外はほぼ全員が口を半開きしてポカーンとしていた。

 

「じゃあ、次は私ね。」

 

「…OK、見せてみるネー!」

 

金剛の合図とともにリバティが動き出す。

 

「小型レールガン、新型強化プラズマ砲用意。」

 

それぞれの兵装が標的ブイを捉える。

そしてーーー

 

「…撃て。」

 

ギュオン! ギュオン!

 

バヂィィィィィィィ!!

 

右肩の小型レールガンの純徹甲弾放たれ、左肩の新型強化プラズマ砲から翠色の稲妻が走り、標的ブイに命中した。

片方は跡形も無く吹き飛び、もう片方は黒焦げとなって破壊された。

 

「…いや、何あれ。」

 

「もう慣れましたよ…」

 

軽巡や駆逐艦達は規格外の事に驚きを通り越して呆れてしまった。

 

その後リバティは潜航し、超音速魚雷を放った。

従来の酸素魚雷とは比べ物にならない速度で迫った。

 

ズドーン!!

 

標的ブイに当たり、残る標的が1つとなるとリバティはVLSのハッチを開き、

 

「多弾頭ミサイル発射。」

 

ハッチから1発のミサイルが放たれ、やがて海面を飛び出し標的ブイに向かって飛んでいった。

 

「あれがミサイルですか!」

 

「見てっ!向きを変えてる!」

 

艦娘達がミサイルに興味津々とした中、ミサイルは標的ブイに近づくと分裂して3つの小型ミサイルを放った。

そして、小型ミサイルはすべて命中し標的ブイを粉々に破壊した。

その後、リバティは浮上した。

 

「終わったわ。とりあえず兵装は問題無く動く。」

 

「じゃあ、最後は私ですね!」

 

そう言うとブリュンヒルデが前に出る。

 

「では行きます!目標をA、B、C、D、Eに設定。一番から三番を目標A、四番から六番を目標Bに固定。AGS砲全門斉射!」

 

計6基のAGS砲から誘導砲弾が放たれ、2つの標的ブイに全弾命中した。

 

「続いて目標Cは多目的ミサイルで対応!撃て!」

 

その瞬間、VLSのハッチが開き4発のミサイルが打ち上がりそのまま標的ブイの所まで飛んでいき命中した。

そのままブリュンヒルデは速度を上げて標的ブイに近づく。

 

「超音速酸素魚雷、一斉発射!」

 

残りの標的ブイに超音速酸素魚雷を放った。

魚雷が着水した直後、2秒足らずで命中した。

 

「えっ、何あれ…」

 

「私達が使う魚雷よりも速い…」

 

雷撃を頻繁に行う駆逐艦達はあまりにも速い魚雷に度肝を抜かれた。

 

「よし、兵装に問題は無し。異常はありません!」

 

「これで終わりかしら?」

 

「No、最後は艦載機の運用試験ネー。Youの艦載機を出してみるデース。」

 

「了解した。艦載機部隊発艦せよ!」

 

「艦載機発艦始め!」

 

八洲が命じるとヘリポートから5機発艦した。

艦載機は防衛陸軍(旧陸上自衛隊)の『OH-1』と『AH-64Jアパッチ』がそれぞれ2機ずつ、防衛海軍(旧海上自衛隊)の『SH-60Jシーホーク』1機が飛び立った。

 

ブリュンヒルデからはスマートな形状のヘリコプター『RAH-66コマンチ』が2機、そして円盤状の航空機『ハウニブーⅣ』が2機飛び立った。

 

「ちょっと、あれって…」

 

「まさかのUFO!?」

 

「円盤型戦闘爆撃機『ハウニブーⅣ』です。従来の航空機とは一線を画する速度と機動性を持ち、1機で一個艦隊を殲滅することも出来ます!」

 

「…凄すぎて、もう驚かないわ。」

 

「…Trident隊、Trinity隊、発艦始め。」

 

リバティがそう呟くと、ハリアーに酷似した航空機が6機垂直に飛び立った。

しばらく静止した後、レシプロ機やヘリコプターとは比較にならない速度で飛行した。

 

「あの、リバティさん。あの艦載機、ハリアーに似ていますが…」

 

「あれはVTOL爆撃機『ディザスター』とVTOL戦闘機『カラミティ』よ。ハリアーをベースに私専用に開発したVTOL機で、『ディザスター』は『88mm航空機関砲』と『新型誘導爆弾』、『カラミティ』は『57mm航空機関砲』と『新型中距離AAM』を装備している。」

 

「ちょっと待ってください!88mmってドイツの高射砲と同じ口径の砲を航空機に搭載しているという事ですか!?」

 

「ええ、重量は嵩むけど新型航空エンジンによってハリアーと引けを取らない程の機動性を持つわ。」

 

「…えっと、とりあえず艦載機の性能を測る為に標的ブイの攻撃と演習機との格闘戦を行うね。」

 

そう言うと翔鶴と瑞鶴は矢を放ち、やがて黄色の機体が特徴の演習機が編隊を組んだ。

 

「まずは演習機との格闘戦を行います。準備はいいですか?」

 

「ああ、問題ない。」

 

「それでは格闘戦開始!」

 

そう言うと演習機部隊は八洲達の艦載機に殺到した。

だが、八洲のOH-1とリバティのカラミティ、ブリュンヒルデのハウニブーⅣは持ち前の機動性で回避、OH-1とカラミティは小回りが効く為そのままミサイルと機関砲を放ち演習機を破壊した。

またハウニブーⅣは化け物じみた変則飛行で敵機を翻弄し、機体から光弾…『荷電粒子砲』を放った。

格闘戦…否、蹂躙の末、演習機部隊は戦闘開始からわずか5分で全滅した。

八洲達3人以外の艦娘は皆唖然とする。

 

「…次は標的ブイの攻撃です。」

 

「了解した。」

 

そのまま標的ブイの攻撃に移る。

2機のアパッチが標的ブイを取り囲み機関砲とミサイルを放ち、たちまち標的ブイに煙幕が上がる。

ディザスターが急降下爆撃を敢行して機関砲を放ちながら誘導爆弾を投下し、標的ブイを破壊した。

また、コマンチからミサイルが、ハウニブーから航空爆弾が放たれたちまち標的ブイは煙幕を上げた。

シーホークなどは航空爆雷や対潜航空魚雷を投下し、水中の標的に命中した。

 

「終わったぞ。今度こそ終わりか?」

 

「Yes、データも取り終わったしそろそろ帰投するネー。」

 

金剛の命令で八洲達は帰投しようとした。

その時だったーーー

 

「「「!?」」」

 

八洲達3人は何かの気配を察知し、周囲を見回したり探信儀を確認したりした。

 

「どうしたの?」

 

「何か…誰かに見られている様な気がするんだが……」

 

「気のせいでしょ?」

 

「…だといいんだが。」

 

事実、探信儀を確認してもそれらしい反応は無かった為、そのまま鎮守府に帰投した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー??????ー

 

『男』は一部始終を見ていた。

八洲、リバティ、ブリュンヒルデ…横須賀鎮守府で発見された未確認艦娘の兵装レベルが()()に匹敵していると……

『男』は確信する。

いずれコイツらは我々の脅威になると……

脅威となる存在を知らせる為、送信する。

 

 

『総司令部に通達ーー横須賀鎮守府で発見された未確認艦娘3隻の兵装レベルは我が組織『テュランヌス』に匹敵する模様ーー早急な対策を求むーーー』

 

 

そう、八洲達が感じた気配はこの男…超兵器だった。

だが、何故発見出来なかったのか?

 

……無理もない。

この超兵器は高度800kmから八洲達を観測、データを収集していたのだから………

 

 




八洲達の様子を超兵器衛星が見ていました。

『ソビエツキー・ソユーズ』がもたらした情報に軍事組織『テュランヌス』はどう動くか……

次回をお楽しみに。


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第六話 この世界の軌跡、そして歓迎会

試験航海で圧倒的な性能を見せつけた八洲、リバティ、ブリュンヒルデ。
その様子が超兵器『ソビエツキー・ソユーズ』に見られているとも知らずに帰投した………


ー横須賀鎮守府ー

 

試験航海を終え、八洲達は執務室に入り提督に報告していた。

ふと、八洲が質問した。

 

「そういえば、鎮守府って横須賀以外にいくつあるんだ?」

 

「横須賀の他に佐世保、舞鶴、呉、大湊、室蘭、堺、単冠湾、幌筵、奄美、那覇、小笠原があるわ。前はトラックやラバウル、パナマなどがあったけど…」

 

「今は無いのか…」

 

「ええ、当時はトラックなど南方まで勢力を伸ばしていたけど…」

 

提督は『あの時』の事を話す。

 

 

2013年に艦娘が現れて五年間、日本は太平洋・東南アジアの解放に向けて深海棲艦と戦った。

その結果日本は東南アジアのほとんどを解放したのだが、鎮守府における艦娘の扱いは酷かった。

特に最前線が酷く、損害軽視の無謀な進撃や物資の横領などの提督の腐敗、艦娘の待遇は劣悪と言っていいものだった。

当時それは問題視されたが、それでも戦果を挙げて来るので強くは言えなかった。

今現在艦娘の待遇は改善され提督の意識改革が全軍に行き渡り質が向上したが、そのきっかけになったものがある。

 

 

それが大侵攻『ダイタルウェブ』だ。

 

 

前触れもなく深海棲艦の姫級鬼級が確認できるだけで20隻、イロハ級に至っては推定500隻が侵攻してきた。

突然の事態に対応できず、最前線のトラック・ラバウルは僅か3日で陥落、その後も次々襲撃された。

なんとか本土に撤退できた艦隊はあったが、前線に配備された艦隊の8割が壊滅した。

そして深海棲艦の大部隊はそのまま本土に攻めてきて、一時は東京湾まで攻めてきたが何とか撃退に成功した。

大侵攻の後、5年掛けて戦力の再編と艦娘の待遇改善、提督の意識改革を行い今の状態に落ち着いた。

今現在、大湊、室蘭、単冠湾、幌筵は北方方面、佐世保、呉、奄美、那覇は南方方面、そして横須賀、舞鶴、堺、小笠原は太平洋方面の奪還に勤しんでいる。

 

 

「……これが今日まで続く『深海大戦』だわ。」

 

「なるほど…だが俺達の志は変わらない。この世界に転生した以上貴方達と共に戦う。」

 

リバティとブリュンヒルデも頷く。

 

「ええ、分かった。私も心強い仲間ができて安心しているわ。夕食の時間に貴方達の歓迎会をやるからそれまで部屋で待機してね。」

 

「分かりました。」

 

他の艦娘が歓迎会の準備をしている中、八洲達は部屋で談笑した。

 

しばらくして、大和から呼び出しがあり八洲達3人は会場まで向かうことになった。

会場となる講堂の裏口から入り、提督と合流した。

 

「提督、歓迎会ありがとうございます。」

 

「そんなに気にしないで。ここの伝統みたいなものよ。それで今後の予定なんだけどまず3人にはステージに上がって挨拶をお願いするわ。その後、質問があってそれが終わったら自由時間よ。」

 

「分かった。」

 

その後準備ができたのでステージの裏側に向かい、そこで待機した。

隙間から覗くと会場内には複数のテーブルに大勢の艦娘がいた。

 

「…多いですね。流石に緊張します…」

 

「ほらほら緊張しないの、ほら、八洲やリバティだって緊張して………」

 

提督は2人の方を向く。

そこにはいつもと変わらない八洲とリバティの姿が……

 

「…えっと、あの2人結構胆力あるのかしら……ま、いっか。」

 

そう言うと提督はマイクを手に取ってステージに上がり、マイクのスイッチをオンにする。

 

「はいはいー、全員注目!今日は準備を手伝ってくれてありがとう。もう知っている人もいるかもしれないけど、この鎮守府に新しい仲間が増えることになりました!!」

 

その瞬間、艦娘から拍手と喝采が湧き上がる。

 

「それでは登場してもらいましょう。どうぞ!」

 

提督の合図に八洲とリバティとブリュンヒルデがステージへ上がり、視線は3人に集中した。

 

「それでは挨拶をどうぞ!!」

 

そう言うと提督は3人にマイクを手渡した。

 

「八洲型戦艦、八洲だ。」

 

「攻撃潜水艦リバティ。よろしく。」

 

「フリゲート艦ブリュンヒルデです。よろしくお願いします。」

 

挨拶が終わった後、会場全体に拍手が響き渡った。

 

「さぁ、皆さんお待ちかね質問タイムの時間よ!」

 

次の瞬間、艦娘のほぼ全員が手を上げた。

提督はその中からランダムで決める。

 

「それじゃあ…そこ!」

 

「やったぁ!私、吹雪型一番艦吹雪と言います。質問です、ブリュンヒルデさんのその…『ふりげいと』とはどう言う艦種なのですか?」

 

駆逐艦『吹雪』がブリュンヒルデに質問する。

 

「フリゲート艦とは…新兵器のミサイルとイージスシステム等の電子戦装備を効率的に扱う艦で……分かりやすく言うなら誘導性を持たせた噴進弾と高性能の電探を運用する為に作られた艦です。」

 

「…なるほど、ありがとうございます!」

 

吹雪は深く礼をする。

その後次々と手が上がった。

 

「さて、お次は誰かしら?……じゃあそこ!」

 

「はい、軽巡洋艦名取です。質問なんですが3人はどういう関係ですか?」

 

「知り合いでは無いが…同じ境遇同士気は合う。」

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

次は橙色の着物と緑色の袴を着たショートヘアの女性が選ばれた。

 

「航空母艦飛龍です。3人の性格について知りたいな。」

 

「性格ね……八洲は一言で言ってクール。」

 

「そうか?…ブリュンヒルデは真面目で丁寧な印象を受ける。」

 

「う〜ん、リバティさんは常に冷静な印象を受けます。」

 

「そうですか!教えてくれてありがとう!」

 

「次で最後ね……じゃあ貴方で。」

 

「ども、恐縮です、青葉ですぅ!質問はズバリ装備についてです!」

 

その質問には他の艦娘も気になっていたようで、視線が若干強くなる。

八洲達は考える素振りを見せるが、この世界の技術レベルから模倣は無理だろうと判断した。

八洲、リバティ、ブリュンヒルデの順で話した。

 

「どうもありがとうございます!」

 

「それでは質問タイムは終了!みんな、羽目外しすぎない程度で楽しんでね!」

 

質問タイムが終わった後、全員が騒いでいた。

談笑したら、お酒を飲んだり、料理を食べたりしていた。

八洲達は先程の4人以外の艦娘からの質問に答えながら料理を食べたり、お酒を少々飲んだりと本人なりに楽しんでいた。

数時間後、お開きとなり八洲達は部屋に戻った後そのまま就寝した。

 

 

 

 

ー大本営参謀本部ー

 

ここは大本営参謀本部。

ここでは作戦の立案や対策会議、さらには監視衛星により太平洋エリアの深海棲艦の動向をリアルタイムで観測することができた。

ちなみに赤い点が深海棲艦の艦隊でそれが集まっている箇所が深海棲艦の基地だと思われる。

そして黒い点は姫級鬼級の深海棲艦である。

今現在、深海棲艦の動向を観測していると異変が起きた。

 

「ん?」

 

オペレーターが違和感を覚え、それに気づいた上官が声をかける。

 

「どうした?」

 

「旧トラック・ラバウル地点の深海棲艦の怪力波(シグナル)が著しくしく強くなっています。」

 

確認するとかなり強いシグナル反応が見てとれる。

怪力波(シグナル)とは深海棲艦が発する特異性波長のことで、これによりミサイルの誘導装置やデジタル装置が無効化され目視での戦闘を余儀なくされた事がある。

その為、監視衛星でシグナルをキャッチし超音速戦略偵察機『八咫烏』で詳細を確認するという方法が確立した。

 

「かなり強い反応だな…一応、偵察機を向かわせろ。」

 

「はっ。」

 

オペレーターは偵察中の機に指示を出す。

観測し始めて前例の無い反応に多少驚いていると、その地点に動きがあった。

 

「っ!トラック・ラバウル地点に動きあり!大多数の艦隊が一斉に北西方向へと移動を開始!」

 

「なんだと!?」

 

「規模から見て……推定2000隻以上!」

 

尋常じゃない数に皆驚愕する。

 

「ですが進軍速度にばらつきがあり、後続は遅れている模様。先頭集団は姫級鬼級が15隻、イロハ級が約500隻以上です!」

 

「ちょっと待て、進路を割り出せるか?」

 

「お待ち下さい……このまま行けば小笠原諸島を始め関東地区に向かう模様!」

 

「各鎮守府に緊急伝達。深海棲艦の大艦隊が襲来!艦隊は5年前のダイタルウェブを上回る規模。早急に出撃準備を!」

 

指揮官の指示にオペレーター達が各鎮守府に伝達する………

 




5年前の『ダイタルウェブ』を上回る規模の深海棲艦が襲来。
遂に八洲達が作戦に投入されます。

次回を楽しみに。


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第七話 戦いの備え

提督から5年前の『ダイタルウェブ』を聞かされ、その後歓迎会で親睦を深めた八洲達。
だが、その夜ダイタルウェブを上回る深海棲艦の大群が攻めてきて………


ー横須賀鎮守府講堂ー

 

「今から太平洋方面防衛作戦について説明を始める。皆もある程度知っているかもしれないけど、一刻を争うから手短に説明させてもらうよ。この作戦目標は深海棲艦の進行を食い止め、可能なら撤退させる事。」

 

提督が神妙な面持ちで説明する。

艦娘達も昨日まで歓迎会ではしゃいでいたのが嘘みたいに真剣みを帯びていた。

 

「今現在の情報だと侵攻してきた深海棲艦の数は推定2000隻以上、またこの数はさらに増えていくと予想されるわ。あの『ダイタルウェブ』を上回る数を我々は相手にしないといけない。」

 

画面が入れ替わり、偵察機により撮影された写真が映し出され、ほぼ全員息を飲む。

写真には大多数のイロハ級とその中に姫級鬼級がいた。

 

「今判明している戦力について。深海棲艦の中核をなす姫級鬼級は装甲空母鬼3隻、戦艦水鬼2隻、空母棲姫1隻、空母水鬼2隻、重巡棲姫2隻、潜水棲姫2隻、戦艦棲姫3隻の計15隻、イロハ級に至っては約500隻以上。ちなみにこれは先頭集団の戦力で進路上に存在する深海棲艦の基地も鑑みてさらに増えると予想されるわ。」

 

この事に艦娘達は動揺する。

何故なら今までダイタルウェブという例外を除き大規模作戦で姫級鬼級は1〜2隻、多くて4隻相手にするが今回は約3倍の姫級鬼級を相手にしなければならないからだ。

 

「今作戦には横須賀、小笠原、舞鶴、堺を始め呉、佐世保、大湊、室蘭鎮守府からも艦隊を派遣することが決定したわ。作戦の大まかな流れとして…」

 

そう言うと提督はレーザーポインターである海域を大きく囲む。

 

「この海域に機雷原を敷き、敵艦隊を足止め・迂回する隙をついて航空隊及び水雷戦隊、水上打撃部隊の一斉攻撃を行う。これを小笠原、堺、佐世保、室蘭鎮守府が行うわ。私達横須賀と舞鶴、呉、大湊鎮守府は最終防衛ラインに迫る深海棲艦を迎撃する。」

 

提督は作戦の概要を説明する。

 

「今回の作戦ではここ横須賀鎮守府の主力はもちろん遠征部隊も惜しみなく投入する。…もちろん貴方達も本作戦に投入されるわ。」

 

提督は八洲達に目を向ける。

 

「本来、演習などをしてから戦線に投入するのが良いのだけれど、今はそういう事言ってられる状況では無いわ。…自信の程は?」

 

「兵装レベルによるが…100〜200隻」

 

「同じく。」

 

「私は100〜150隻程度なら…」

 

八洲達の回答に周囲の艦娘達は戸惑いの声を上げる。

それもそのはず、1隻あたり100隻相手にするなどハッキリ言って無謀としか言えないからだ。

しかし、彼らの過去を知っている提督や一部の艦娘達、そして本人の覚悟に満ちた顔から自信は相当なものだとその場に居た艦娘達は思った。

 

「…とりあえず自信の程は置いておいて、各艦の装備については以下のようにするわ。」

 

提督は映像を通して各艦娘の装備を説明する。

 

「……これで説明は終わるわ。今から1時間後に小笠原鎮守府に向け出発する!各員はそれまでに準備を終えるように。諸君、幸運を祈る。」

 

提督は艦娘達に向けて敬礼する。

その後、各員は準備を行い1時間後に出発した。

 

 

 

ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

それから1週間後、八洲達横須賀艦隊は最終防衛ラインに待機していた。

1週間の間、機雷原を敷設したり艦隊を集結したりと準備をしていた。

深海棲艦の侵攻部隊は予想より早く作戦エリアに向かっていた。

なんと進路上にある基地に停泊せずそのまま進軍してきたのだ。

その為、現場は大急ぎで準備を行い、各部隊が配置に付き待ち構えていた。

皆緊張している中、

 

「偵察機より入電!『敵先頭集団作戦海域ニ侵入セリ』とのこと!」

 

「来たか…」

 

八洲がそう呟く。

 

一方、艦娘指揮艦『いずも』の艦内には4人の提督がいた。

横須賀鎮守府提督の『水野凛』少将を始め、堺鎮守府提督『田宮健一』少将、舞鶴鎮守府提督『美川芽依』少将、そして元リンガ泊地提督であのダイタルウェブを生き残った小笠原鎮守府提督『立花颯』中将と元ブルネイ泊地提督で今は太平洋方面司令官『黒鉄剣十郎』元帥が乗艦していた。

佐世保、呉、大湊、室蘭鎮守府提督は艦娘指揮艦『すおう』で指揮をとっていた。

いずものCICでは作戦海域中の深海棲艦の動向がリアルタイムで映されていた。

 

「全艦隊、配置に付きました。」

 

「いよいよね…」

 

「………」

 

水野がそう呟く中、立花と黒鉄は静かに動向を見守っていた。

ダイタルウェブから生き残った者として、今回の侵攻に入念の備えをしてきたが、それがいつまで通じるかは未知数だ。

すると田宮が声をかける。

 

「なぁ、水野。あのドロップ艦、本当に大丈夫か?」

 

「何が?」

 

「いや、あいつら1隻あたり100隻以上相手にするとか言っていたから…」

 

「100隻以上!?流石に冗談では…」

 

美川が戸惑いの声を上げる中、黒鉄は思案する。

 

(ふむ…本来なら無謀だが、あいつらの自信と覚悟に満ちた顔…ひょっとすると冗談では無いかもしれん…)

 

その時、驚きの報告が上がった。

 

「っ!緊急事態発生!深海棲艦の侵攻部隊が迂回するどころか機雷原に突入!このままだと機雷原を突破されます!」

 

「なんだと!?」

 

その報告に皆驚愕する。

本来なら機雷原で侵攻部隊を足止めし、迂回する隙に攻撃を仕掛ける算段だったが、なんと侵攻部隊の全軍が機雷原に突入し多少の損害を被りながらも進軍していた。

 

「まずいぞ…このままだと展開している横須賀艦隊と接敵するぞ!」

 

「なんとか待機している艦隊を呼び戻せるか?」

 

「駄目です!間に合いません!」

 

「……八洲に通信を入れて。」

 

そんな中、水野が八洲に通信を入れる。

 

「………了解した。」

 

「どうかしましたか?」

 

「緊急事態だ。深海棲艦の侵攻部隊全軍が機雷原に突入、このままだと突破されその先に展開している俺達横須賀艦隊に接敵するとのことだ。」

 

その事に艦娘達は動揺する。

 

「援軍は間に合うかどうかは分からないから、俺達で相手にしなければならない。」

 

「遂にきたわね…」

 

リバティが呟く。

ブリュンヒルデも覚悟を決め、艤装を構える。

他の艦娘達も同様だ。

空母組や八洲達は艦載機を飛ばして偵察する中、遂に侵攻部隊が現れる。

 

「敵侵攻部隊視認!敵部隊艦載機を次々発艦!」

 

「来たか…これより戦闘体勢に入る!両舷全速!」

 

八洲、リバティ、ブリュンヒルデが先行し、他の艦娘も体勢を整える。

やがて深海棲艦を射程圏内に収める。

 

「これより砲撃戦に移る。全門開け!」

 

「…雷撃用意、撃て。」

 

「全主砲、データリンクでの情報を元に誘導開始!撃ち方始め!」

 

これより戦いが始まる。

この戦いが八洲達の強さを見せつけ、今日まで続く『深海大戦』に大きな転換期が訪れる………

 




遂に八洲達が深海棲艦の大群相手に無双します。

そして、何故深海棲艦が攻めてきたのか……

乞うご期待ください。


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第八話 一方的な蹂躙(ワンサイドゲーム)

ダイタルウェブを上回る規模の深海棲艦の大群が現れ、その迎撃に八洲達も動員される。
急遽、機雷原を迂回せず突き進んだ先頭集団相手に八洲達は応戦するが………


ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

ここは太平洋方面防衛作戦最終防衛ライン。

そこには深海棲艦………()()()()が無数に散らばっており、残骸や青黒い液体が辺り一面を埋め尽くしていた。

そしてその近くに横須賀艦隊や急行してきた呉、舞鶴艦隊がいた。

皆驚きを隠せない表情をしている。

それもそのはず、機雷原を突っ切って襲撃してきた500隻以上の先頭集団が2時間足らずで全滅したのだから……

その海域には先頭集団を全滅した張本人がいた。

そう、横須賀艦隊のドロップ艦『八洲』『リバティ』『ブリュンヒルデ』だ。

彼らもまた驚愕していた。

理由は簡単、500以上の大群をあっさりと殲滅したのだ。

兵装レベルが第二次世界大戦の延長線上にあるとはいえ、500もの大群で襲い掛かってきた深海棲艦の大艦隊に苦戦すると思っていたが、実際2時間足らずの戦闘で敵艦隊を殲滅した。

 

「えっと……普通に倒せましたね…」

 

ブリュンヒルデが戸惑う中、八洲とリバティは表情を変えていないが内心驚いていた。

 

 

ここで何があったのか、2時間前まで遡る……

 

深海棲艦の先頭集団が襲い掛かってきた時、敵側の艦載機の大群が飛び上がり、横須賀艦隊に向かった。

艦娘側も負けじと航空隊を出し、応戦した。

特に八洲達の艦載機が暴れ回り、敵の航空隊に少なからず損害を与えたが、それでもかなりの数の航空機が八洲達に襲い掛かった。

 

「主砲、新型対空弾装……装填良し。撃て!」

 

その瞬間、八洲の計14門の主砲が火を噴いた。

数秒後、大きな火の玉が上がり敵航空機の大多数が熱と衝撃波によって破壊された。

それでも襲いかかる敵機に八洲とブリュンヒルデはミサイルを放ち、次々と撃墜した。

ミサイルの雨を掻い潜り接近してきた航空機にはブリュンヒルデは35mmCIWS、八洲は30mm機関砲と新型パルスレーザーの濃密な対空砲火により一機残らず撃墜された。

元々対空能力が高かった事に加えてブリュンヒルデのデータリンクの共有によって対空砲火の精度が飛躍的に向上した為、航空機の大群を全滅させた。

 

一方で…

 

「バカナ…ゼンメツダド……」

 

空母棲姫は驚愕していた。

送り出した大多数の航空隊が短時間で全滅したのだ、驚くのも無理は無い。

 

「ウロタエルナ!ダイニジコウゲキタイヲチクジハッカンシテ……」

 

その時だった。

突如装甲空母鬼3隻に水柱が立ち、3隻とも轟沈した。

 

「ナンダト!センスイカンカ!」

 

周りの駆逐艦や軽巡洋艦は敵潜の捜索の為に散らばったが、数発の多弾頭ミサイルが打ち上がり多数の駆逐艦と軽巡洋艦を海の藻屑にした。

さらにその攻撃を行った潜水艦リバティが浮上し、小型レールガンと新型強化プラズマ砲で姫級鬼級イロハ級関係なく殲滅した。

敵空母艦隊を全滅させたリバティはそのまま潜航する……

 

残りの深海棲艦は八洲達に襲いかかるが、彼らは慌てる様子も無く八洲が主砲を斉射し、61cmと51cmの砲弾が降り注ぎ命中した敵は跡形もなく爆沈し、至近弾で駆逐艦や軽巡洋艦は大破・沈没した。

それでも接近する敵にカニ型の手甲を前に出し、

 

「新型カニ光線照射始め!」

 

そこから二本の光線が放たれハサミが閉じるように収束し、巻き込まれた深海棲艦の胴体を真っ二つに切り裂いた。

するとブリュンヒルデに動きがあり、最大戦速で敵艦隊に肉薄したのだ。

深海棲艦側も応戦するが、ブリュンヒルデは敵艦隊の真ん中を突っ切って進んだ為、同時撃ちする艦が相次いだ。

AGS砲と魚雷で敵艦隊を駆逐して、八洲と合流したリバティが己の兵装をフルに活用し襲いかかる敵艦隊をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返して………そうして2時間ぶっ通しで戦い続け、500隻以上いた先頭集団を全滅できたのだ。

 

 

そして場面は最初に戻り、八洲達は驚いていた。

もちろん周囲の艦娘達も驚愕していたが、それは提督達も一緒だ。

 

 

ー艦娘指揮艦『いずも』CICー

 

「何じゃありゃ……?」

 

「えっと…夢ではありませんよね…?」

 

ここCICでは田宮提督と美川提督が信じられないと驚き、立花提督と黒鉄元帥は彼らの性能を間近に見て納得した表情をした。

やがて元帥が口を開いた。

 

「……これで緒戦は何とか凌いだな。だが問題はその次の部隊がどう来るかなのだが…状況はどうなっている?」

 

「はっ、今現在確認されている中で推定1000隻以上の規模の後続部隊がこちらに向け移動中です。」

 

「やはりか…いつ位に到達する?」

 

「おそらくですが…おそらく5日でしょう。」

 

「よし、そのまま防衛線を再構築。修理と補給を整え次に備えよ!」

 

元帥の指示で各員が動き出す中、水野提督がある違和感を感じる。

 

「どうした、水野?」

 

「いや、進路上の基地にいる深海棲艦の反応が現在進行形で減っているから……」

 

立花提督が画面を見ると、実際進路上に存在した反応が確かに現在進行形で消えていた。

 

(確かに妙だな。これは留意しておく必要があるだろう。)

 

立花提督はそう思い、指示を出した。

 

 

 

 

 

ー深海棲艦侵攻部隊ー

 

この海域を突き進む侵攻部隊がいた。

その規模は1000隻以上であり、中核を成す姫級鬼級はざっと50隻程いた。

こんな大規模な部隊は前例は無いが、その侵攻部隊が異質なのは所々に傷を負っているからだ。

特に最後尾の方が酷く、損傷によって速度を満足に出せずに艦隊から置いていかれる艦が続出したのだ。

イロハ級はともかく、姫級鬼級であってもついていけない者は置いていかれるという異常っぷりだ。

無論、彼女らを曳航する余裕などない。

……彼女らは進軍するのに必死だったが、それはそこにいる艦娘達と人間達を皆殺しにしてやろうとか、そういうことを考えている訳ではない。

 

彼女らは必死だっただけだ………()()()のに…

 

怨念や憎悪をねじ伏せる暴力に…恐怖に…

 

その恐怖から逃れる為に進み続けている…

 

先の先頭集団もそうだ…

 

機雷原を迂回なんてしたら()()に追いつかれる…

 

だから突っ切ったのだ…

 

そしてこの侵攻部隊もそうだ…

 

後ろにあった基地は奴らに蹂躙された…

 

だから必死になって侵攻……いや、逃げている…

 

破壊から…暴力から…恐怖から………

 




次回、遂に奴らと相対します。

乞うご期待ください。


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第九話 悪魔襲来

太平洋方面防衛作戦にて規格外の性能を見せつけた八洲達。
一方、深海棲艦の侵攻部隊は“何か”から逃れる為に攻めてきて………


ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

八洲達はここで敵侵攻部隊を食い止めていた。

1000隻以上の大部隊が襲来し、各鎮守府の艦娘達は迎撃にあたった。

特に八洲達3人は持ち前の兵装で深海棲艦の大部隊を蹂躙していた。

500隻から1000隻以上に増えたとはいえ、彼らには問題無かった。

その為、艦娘達は彼らが撃ち漏らした敵や横須賀艦隊の担当外に侵攻した敵部隊を攻撃していた。

 

「主砲、全門斉射!」

 

八洲の計14門の砲が火を噴き、直撃弾や至近弾で敵艦隊を殲滅した。

八洲の砲撃で敵が怯んだ隙にブリュンヒルデがAGS砲を撃ちながら敵艦隊に肉薄し、超音速酸素魚雷を放ち姫級鬼級の個体は海の藻屑になった。

リバティも持ち前の兵装をフルに活用し破竹の勢いで蹂躙した。

だが、そのまま攻撃を続けていたらある問題に直面する。

それはーーー

 

「まずいですね…弾薬がもうすぐ底を尽きそうです。」

 

そう、弾薬欠乏だ。

このままのペースでは弾薬の消費が激しく、弾薬欠乏は時間の問題だ。

だが、彼らにはその問題を解決する方法がある。

彼らは先程殲滅した深海棲艦の残骸に近づくと、次の瞬間ーーー

 

グシャァァァァ!!

 

なんと深海棲艦の残骸に手を突っ込み、()()を取り出した。

その異様な光景に周りの艦娘達は絶句する。

 

「…えっと、何しているの?」

 

大和が質問する。

 

「ああ、弾薬が足りなくなったから敵から現地調達している。」

 

「…ちょっと何言っているかわからない。」

 

「えっ、あ〜なんと言ったらいいかな…艦の頃から補給が出来ない長時間の戦いにおいて沈めた敵から弾薬をそのまま現地調達して補給したり、部品を回収して再利用したりして戦っていたので艦娘となった今でもそれで弾薬補給しています。」

 

規格外の能力に艦娘達は驚愕する。

 

「そんな能力を持っているって…一体どんなところにいたのよ…」

 

「それは…おっと、敵さんのお出ましだ。まぁその事は後で話す。」

 

敵部隊が現れたので八洲達は迎撃に移る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、深海棲艦側ではーーー

 

「ハァ…ハァ…ハァ…」

 

戦艦水鬼が息切れを起こしながら航行していた。

既に彼女の艤装はほぼ破壊されて、機能を失っていた。

さらに周りの深海棲艦達も中破ないし大破しており侵攻部隊としてはあまりにも心もとないものだった。

だが、それには理由がある。

 

ズガガガガガガガガガ!!

 

突如砲弾の雨霰が降り注ぎ、射線上にいた深海棲艦達を蜂の巣にして沈めた。

戦艦水鬼が恐る恐る振り向くと、ある戦艦が近づいてきた。

否、異様な戦艦だった。

 

その戦艦は歪な形の連装砲を両肩に二基ずつ、背中に一基装備していた。

艤装の周りには多数の対空火器、ハッチのついた箱の様なもの、ドーム状の物体が搭載していたが、最も特徴的なのは艤装の外側にある四つの回転ノコギリ、そして先端に螺旋状の機械がついた長い柄の槍…所謂“ドリルメイス”を右手に持っていた事だ。

 

その戦艦は人の形をしていたので艦娘かと思ったが、体格といい顔つきといい女性というよりも男性という方がしっくりくる。

額に『荒神』と書かれた鉢巻を巻き、黒色の軍服を纏った男性だ。

 

戦艦水鬼が未知の存在に怯えていると、彼の持つドリルメイスから機械音が鳴り響き猛スピードでで迫り来る。

戦艦水鬼が悲鳴を上げる間も無くーーー

 

キュィィィィィ!!

 

ドリルメイスで戦艦水鬼は跡形もなく粉砕され、青黒い液体が彼の艤装や身体に飛び散った。

彼は額についた液体を拭うと、そのまま八洲達が展開している海域へ進む………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン!!

 

八洲の砲弾が戦艦棲姫に着弾し真っ二つに割れて轟沈し、これによって深海棲艦の侵攻部隊は沈黙した。

 

「こちら八洲、戦艦棲姫を撃沈。侵攻部隊を排除した。」

 

『ご苦労様、他の艦隊も迎撃成功したわ。』

 

「そうか、これで終わりか?」

 

『ええ、先程の部隊で最後だわ。作戦成功よ。』

 

作戦成功の報を聞き、周りの艦娘達は歓喜した。

八洲達3人も作戦成功にホッとしているが、何か違和感を感じた。

 

(妙だな…先程の部隊、既に中破ないし大破していたのにも関わらずそれをお構いなしに侵攻してきた。何故万全の状態じゃなかったのか?)

 

八洲とリバティとブリュンヒルデはそのことに疑問を感じた。

その時だったーーー

 

「っ!偵察機より入電!所属不明の戦艦二隻を発見した模様!」

 

「所属不明だと…?深海棲艦ではないのか?」

 

「いえ、外見上艦娘だわ。」

 

「もしかしてドロップ艦?」

 

周りの艦娘がざわつく中、

 

「ん…?ドロップ艦から通信が…」

 

『久しぶりだな、八洲。』

 

「…誰だ貴様?」

 

『おいおい、もう忘れたのか?ほら、()()()()()()()()()()()の時に沈めたじゃないか、俺を。』

 

「!?」

 

その言葉を聞いた八洲は目を見開いて驚いた。

その驚愕ぶりはいつもは冷静で表情を面に出さない八洲がこれでもかと分かるように驚いていた事は周りの艦娘達にも分かった。

 

「まさか…いや、俺達がこの世界に来たのだ。()()()がここに来てもおかしくはない…」

 

八洲の言葉にリバティとブリュンヒルデもハッとなって驚く。

 

「っ!まさか……」

 

「ああ、“超巨大ドリル戦艦『荒覇吐』”だ。」

 

そう、彼らの世界で猛威を奮っていた存在…“超兵器”が現れたのだ。

 

『今は“ヘッド”の手によって蘇り、お前らを排除する為に深海の鉄屑共を準備運動がてら殲滅したが、やっぱりお前らじゃなきゃ退屈なんでな。ヘッドには感謝してもしにきれねぇぜ!!』

 

その瞬間、八洲達は飛び出した。

 

『ちょっと待ちなさい!』

 

提督が静止しようとするが、彼らはお構いなしに進んだ。

 

「提督!今すぐ俺達3人以外の艦娘を下がらせろ!こいつは…俺達が沈める!!」

 

彼らが進むと二隻の戦艦が視界に映った。

一隻は先程のドリル戦艦だが、もう一隻は中世の騎士のような銀色の甲冑服に身を包み、艤装には二基の連装砲とVLS、対空火器やドーム状の物体…所謂“光学兵器”を多数積み、光学兵器を模した盾を左手に持ち、背中にも同様のものを装備し、右手には四枚のフィンがついた長い柄の槍を持っていた。

 

「八洲さん、荒覇吐を視認!もう一隻は兵装から推測するに“超巨大レーザー戦艦『グロース・シュトラール』”と思われます!」

 

『いかにも、我々はヘッドの忠実なる兵。我ら『テュランヌス』の脅威となる貴殿らを殲滅する!』

 

グロース・シュトラールがそう言う中、

 

「リバティ、ブリュンヒルデ、分かっているな。」

 

「ええ、超兵器(奴ら)が復活したなら…」

 

「何度でも海の底に沈めるまで!!」

 

八洲達は全兵装を超兵器に向け、荒覇吐とグロース・シュトラールも速度を上げ襲いかかる。

 

この世界初の超兵器戦が始まるーーー

 




遂に超兵器戦に突入です。

乞うご期待ください。





リバティ&ブリュンヒルデ
「「超巨大ドリル(レーザー)戦艦荒覇吐(グロース・)接近!(シュトラール接近!)」」

八洲
「お前ら同時に喋るんじゃない!!」


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第十話 異次元の戦闘

太平洋方面防衛作戦で深海棲艦を退けた八洲達の元に現れた刺客…
それは八洲、リバティ、ブリュンヒルデが死闘を繰り広げた超兵器…『荒覇吐』と『グロース・シュトラール』だった………


ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

「リバティ、ブリュンヒルデ!俺は荒覇吐を仕留めるから、お前らはグロース・シュトラールを頼む!」

 

「了解。」

 

「分かりました。八洲さんも無理しないでください!」

 

「了解した。」

 

そう言うと八洲は荒覇吐に、リバティとブリュンヒルデはグロース・シュトラールに照準を定めた。

八洲の計14門の主砲が荒覇吐に狙いを定めて火を噴く。

1発で姫級鬼級を沈める威力を誇る代物で、『発砲遅延装置β』によって散布界を減らし砲弾がすべて荒覇吐に命中する。

だがーーー

 

ガァァン!!

 

突如蜂の巣状の()()が展開され、ある砲弾は壁にぶつかった様な音を立ててそのまま海に落ち、またある砲弾は弾道が逸れて遥か彼方へと飛んでいき、思った様にダメージを与えられなかった。

荒覇吐が展開したものが何かを彼は知っていた。

 

「くっ、防御重力場か…」

 

そう、外側に向けて重力を発生し砲弾の弾道を逸らしたり、船体に到達する前に砲弾の勢いを減退させそのまま落下させる『防御重力場』である。

その為、八洲の主砲を受けてびくともしないのである。

だが、彼が驚いたのはーーー

 

(何という事だ…!ムスペルヘイムやハボクック、ヴォルゲンクラッツァーが装備していたモノを奴が持っているとは…!)

 

防御重力場は終盤以降に登場した補助兵装で、それを荒覇吐が持っていたという事は今戦っている超兵器2隻は以前より強化されているという事を意味していた。

だが、防御重力場も万能の盾では無い。

防御重力場の展開には膨大なエネルギーが必要である上に攻撃を受け続け負荷限界点を超えてしまうと展開出来なくなるという欠点がある。

その為八洲は荒覇吐に砲撃を当て続け、防御重力場(シールド)が負荷限界点を突破する様に猛攻する。

つまり防御重力場を展開不能にした時から勝負なのだ。

無論、荒覇吐も黙ってやられる訳にはいかない。

 

「くらいやがれぇぇぇ!!」

 

荒覇吐は青白い光線と翠色の稲妻を八洲に向けて放った。

彼は放たれたそれが何なのか理解し、翠色の稲妻を避ける事を選択した。

その結果稲妻を回避する事に成功したが、光線が八洲に命中する。

だが何かの壁に当たった瞬間、光線の勢いが減衰しやがて消滅した。

 

八洲が展開したのは『電磁防壁β』

レーザー等のエネルギー兵器の威力を9割以上減衰させる補助兵装だ。

荒覇吐のレーザー兵器…『エレクトロンレーザー』を防ぐ事に成功したのだ。

なら、エレクトロンレーザーと同時に放った兵器…『強化プラズマ砲』も電磁防壁で防げばいいじゃないかという話だが、そうはいかない。

何故ならプラズマ兵器はかなり特殊な性質故、防御重力場はおろか電磁防壁ですら防ぐ事が出来ないのだ。

その為、その特性を知っていた八洲はプラズマ砲を避ける選択をしたのだ。

すると荒覇吐に動きがーーー

 

キュィィィィィ!!

 

彼はドリルメイスを構え艦尾のロケットブースターを点火すると、物凄い勢いで突進して来たのだ。

そう、荒覇吐お得意の戦術…『ラムアタック』だ。

50ktの速力に膨大な質量を載せたラムアタックを受けたら、八洲であろうとタダでは済まない。

八洲は主砲などを撃ちまくるが、荒覇吐はお構い無しに突っ込んでくる。

するとーーー

 

「バウスラスター起動、急速回避!」

 

彼は艦首のバウスラスターを起動させ回避を図る。

それにより八洲は荒覇吐のラムアタックを回避する事に成功したのだ。

すれ違いざまに主砲を放ち防御重力場に負荷を掛けた。

だが、荒覇吐も()()を八洲に向ける。

次の瞬間ーーー

 

ズガガガガガガガガガ!!

 

戦艦の主砲とは思えない程の弾幕を放ち、数多の砲弾が八洲に襲い掛かった。

幸いにも防御重力場で概ね防ぐ事に成功した。

先程荒覇吐が撃ってきたのは『406mmガトリング砲』

406mm砲弾を毎分50発で放つ性能を誇り、近中距離にて効果を発揮する所謂ガトリング砲だ。

荒覇吐は三銃身式連装ガトリング砲5基合計30門を持ち、ある意味かなりの砲門数を誇る超兵器なのだ。

ガトリング砲の一斉射で八洲の防御重力場に多大な負荷が掛かり彼自身も怯むがーーー

 

「…レールガン、撃て!」

 

次の瞬間、右肩部のレールガンが放たれ荒覇吐に命中する。

これが決定打となり荒覇吐の防御重力場は消失し、右肩部の主砲2基を破壊した。

彼もすれ違いざまにレールガンを構え、荒覇吐に大打撃を与えたのだ。

 

荒覇吐は頭から血が流れ、敵意と殺意の籠った目で八洲を睨む。

防御重力場を使用不能にする事には成功したが、八洲自身も防御重力場が負荷限界点寸前に達し、防御重力場といえど喫水線下に飛んできた砲弾は直で防ぎ切るしかない為対空火器の一部が脱落していた。

すると彼は防御重力場の展開を解除した。

 

「…何のつもりだ。」

 

「もう防御重力場は負荷限界点寸前に達している。なら他の兵装にエネルギーを回した方がいいと判断しただけに過ぎない。」

 

「…ふっ、フハハハハ!やっぱりこうで無くっちゃな!蘇った甲斐があるってもんだ!」

 

「…超兵器(貴様ら)が何度も蘇ろうが、俺達は何度でも貴様らを海の底に葬るまでだ!いくぞ!」

 

八洲は攻撃を再開する………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、グロース・シュトラールと戦っていたリバティとブリュンヒルデも苦戦していた。

 

グロース・シュトラールとの戦闘に際し、リバティは潜航して雷撃を図りブリュンヒルデはAGS砲と魚雷で対応しようとした。

すると彼のVLSから数発のミサイルが放たれた。

ブリュンヒルデが警戒する中、そのミサイルはリバティが潜航した場所へと飛んでいった。

そしてミサイルのブースター部が切り離され、中からパラシュートの付いた魚雷が出てきた。

ブリュンヒルデはこの兵器の名を知っていた。

 

「ASROC…!リバティさん気をつけて下さい!」

 

そう言っている間に魚雷はすべて着水し、そのままリバティに向けて魚雷は進んでいった。

リバティは直様回避行動に移ったが、魚雷は彼女を追尾し全弾命中した。

 

「くっ、流石に応えるわね…」

 

リバティは怯むが、すかさず魚雷を放ち反撃した。

2本の魚雷は誘導式では無い為、進路を予測し放った。

2本の魚雷が徐々に近づく中、グロース・シュトラールは巧みな操艦で回避する。

その間にもASROCを撃ち続け、リバティにダメージを与えようとする。

するとブリュンヒルデは多目的ミサイルを放ちASROCを全弾撃ち落とした。

そしてAGS砲を撃ちまくり誘導砲弾の雨霰がグロース・シュトラールに降り注いだ。

だがーーー

 

「全パルスレーザー対応開始、薙ぎ払え!」

 

グロース・シュトラールに搭載されている対空火器…『新型パルスレーザー』でもってAGS砲弾を迎撃した。

いくつかは破壊され数発は命中したが、防御重力場によって防がれる。

ブリュンヒルデはAGS砲を撃ちながらすかさず接近し、魚雷を撃とうとする。

するとグロース・シュトラールは持ち前のレーザー兵器をフル活用し対応する。

2本の光線で敵を追尾する『αレーザー』、3本の光線を放ち目標に収束する『βレーザー』、1本の光線が放たれ回避した瞬間8本の光線に分裂し逆戻りして襲い掛かる『γレーザー』、そして槍から放たれる稲妻…『新型プラズマ砲』

様々なレーザー兵器が襲い掛かる中、ブリュンヒルデは巧みな操艦で回避し、命中したとしても電磁防壁でレーザーを無効化した。

だが彼もレーザー兵器では決定打を与える事は出来ないと分かっていた為、2基の連装砲をブリュンヒルデに向けた。

彼女もグロース・シュトラールの主砲がかなりの大口径砲だという事を直感で理解し、回避しながら魚雷を放とうとする。

そしてーーー

 

「全魚雷、発射!」

 

「主砲、一斉射!」

 

ブリュンヒルデの魚雷発射管とグロース・シュトラールの主砲が同時に放たれた。

その後、双方とも回避行動に移る。

数秒後、双方に水柱が立った。

ブリュンヒルデは1発直撃し沈みはしなかったものの、電子機器が一部使用不能になり魚雷発射管も2基使えなくなった。

ここまで被害が出た原因は、グロース・シュトラールの主砲が『56cm80口径連装砲』である為ブリュンヒルデの『超重力電磁防壁』で威力を減衰したとはいえ衝撃波などの被害によって電子機器に影響が出た。

さらに至近弾も出た為、対38cm砲防御装甲では防ぎ切る事が出来ず魚雷発射管のターレットが歪み旋回が出来なくなったのだ。

無論、グロース・シュトラールも無事では無い。

ブリュンヒルデの魚雷が8本命中し、浸水が発生した。

浸水によって船体が傾き速度が落ちる。

 

「…今だ。」

 

リバティが動いた。

彼女の艦首魚雷発射管が全門開き、8発の魚雷が放たれた。

物凄いスピードでグロース・シュトラールに迫る。

だがーーー

 

応急修理(ダメージコントロール)始め、バウスラスター起動!」

 

彼は艦首のバウスラスターを起動しながら排水を行い、二次被害を食い止めつつ魚雷を全弾回避した。

これにはリバティも驚く。

超兵器は高性能の応急注排水装置と自動消火装置を標準装備している為、ダメコン能力が高いのも超兵器の特徴なのだ。

 

「なら…」

 

するとリバティは浮上し水上戦用の兵装を彼に叩き込む。

小型レールガンと新型強化プラズマ砲を放ちグロース・シュトラールにダメージを与える。

流石の防御重力場もレールガンは加速力故防ぎきれないし、プラズマ砲も性質上防壁が効かない。

彼は盾の艤装がプラズマ砲の直撃を受けて融解し、レールガンの直撃で連装砲1基が破壊された。

彼自身も額に血が流れる。

 

「ふ、フフフ、流石だ。私を本気にさせるのはやはり貴様らの他にいない…」

 

「生憎だけど、貴方に褒められても嬉しくないわ。」

 

「私達は貴方達を沈めます。覚悟してください。」

 

「フッ、なら…武人として全力で闘うまでよ……」

 

するとグロース・シュトラールから何やら禍々しいオーラを感じ取り、2人は身構えた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何あれ…?」

 

「あんな戦い見た事がない…」

 

「信じられない…こんな戦艦のデータなんて何処にも無い…」

 

「大丈夫なのでしょうか…?」

 

他の艦娘達は彼らの戦いを見ていた。

本来なら加勢するべきなのだが、彼らの苛烈な戦いに見たことのない兵器の応酬により加勢しようにも返り討ちに遭ってしまう可能性があり、何より誤射しかねなかった。

その為彼らの苛烈な戦いを見ている事しか出来なかった。

特に彼らの壮絶な艦歴を聞いていた大和達は彼らの戦いを見て、彼らが戦った超兵器の脅威を目の当たりにしていた。

 

「八洲…リバティ…ブリュンヒルデ…彼らはこの様な戦いを何度も経験していたのね…」

 

「………」

 

大和がそう呟く中、武蔵はただ黙っている事しか出来なかった。

その時だったーーー

 

「っ!?」

 

「うっ、何…!?」

 

何か禍々しい気配を感じ取り艦娘達は頭を抱える。

さらに異変は起こる。

 

「ちょっ、何これ…?」

 

「どうした!?」

 

「どうしたもこうしたも、電探にノイズが入って機能しないのよ!」

 

「こっちもです!」

 

「そんな…艦隊すべての電探が使用不能になるなんて…!」

 

突如としてノイズが発生し、電探が機能不全に陥ったのだ。

それも艦隊すべてが。

突然の事に狼狽している中、彼女達は目撃する。

 

「えっ…何あれ……?」

 

そう、見てしまった。

見るからに禍々しい紫色のオーラと紫電を纏ったグロース・シュトラールの姿を………

 




次回は荒覇吐とグロース・シュトラールが本気を出します。

乞うご期待ください。


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第十一話 悪魔達の真髄

突如乱入してきた超兵器『荒覇吐』と『グロース・シュトラール』
八洲達は持ち前の兵装とこれまでの経験を活かして戦いを優位に進めてきたが、遂に悪魔達が本気を出す………


ー太平洋方面防衛作戦最終防衛ラインー

 

「これは…!」

 

グロース・シュトラールの禍々しいオーラにブリュンヒルデは()()()()を思い出した。

それは彼女がまだ艦だった頃の話だ。

バルト海でグロース・シュトラールと戦ったブリュンヒルデは戦いの末、敵艦の艦橋を破壊する事に成功した。

それが決定打となりグロース・シュトラールは停船し艦長のシュルツは敵艦に対し降伏勧告を出したが、そこで異変が起こる。

 

なんと敵艦内にて悲鳴が上がり、グロース・シュトラールが紫色のオーラに包まれてそのまま動き出すという異常事態に陥った。

その後敵艦の激しい猛攻によってブリュンヒルデは轟沈寸前まで追い詰められたが、グロース・シュトラールは超兵器機関から発せられるエネルギーの過負荷によって自壊を起こし爆沈した。

その爆発はあれだけの巨体を誇る船体が跡形もなく吹き飛ぶ規模だった。

 

「あの時と同じ…!」

 

「…ブリュンヒルデ、一つ教えてやろう。本来発生する()()()は超兵器機関の暴走を防ぐ為の処置として常に余剰エネルギーが放出され、そのエネルギーが時空に歪みを引き起こすからそれがノイズとして出ているのだ。そしてあの時は超兵器機関の()が強制的に外れた事でエネルギーを制御出来なくなり結果自壊したのだ……」

 

「…なら、何故この時になるまでノイズが出なかったの?」

 

「そう、今我々が搭載している改良型超兵器機関は機関出力を最適化した事により余剰エネルギーを放出する必要が無くなり通常時ではノイズは発生しない!そしてこの改良型にも特殊な枷は付けてある…ただしその枷は自らの意思で外す事が出来、尚且つ自壊しないように調整されている!そのかわり枷を外すと余剰エネルギーが出てしまう為ノイズは発生するが、大した欠点では無い。…さぁ、遊びは終わりだ、我全力を持ってして貴殿らを殲滅しようぞ!」

 

禍々しいオーラと紫電を纏ったグロース・シュトラールが様々なレーザー兵器を乱射しながら襲い掛かる。

ブリュンヒルデとリバティは咄嗟に回避する。

回避しながら2人はAGS砲やレールガン、プラズマ砲で反撃するが、グロース・シュトラールが纏っているオーラによってレールガンは通ったが砲弾は勿論のこと、電磁防壁ですら防ぐことは出来ない筈のプラズマ砲も防いでしまった。

 

「プラズマ砲が効かない…!?」

 

2人は驚愕する。

 

「…言っておくがこのオーラは唯のエフェクトでは無い。このオーラ自体が防御重力場・電磁防壁を凌ぐ特殊力場となっている。プラズマ砲をも相殺する代物だ。」

 

グロース・シュトラールは自慢げに解説する。

だがリバティは見抜いていた。

そのオーラもレールガン等の電磁砲では完全に相殺し切れていないという事に。

そしてブリュンヒルデも気づいた。

あのオーラも防御重力場と同様、喫水線より下には展開出来ない事に。

 

「…だけど、貴方のオーラも完璧な防壁では無いようね。」

 

そう言うと2人はそれぞれの兵装を構えて彼に攻撃を仕掛ける。

 

 

 

 

 

一方、八洲側もーーー

 

「…ほぅ、“極光”の野郎本気を出したか…ならちょっくら俺も本気を出すか…」

 

そう言うと荒覇吐も紫色のオーラに包まれる。

彼も枷を外したのだ。

 

「…来るか!」

 

次の瞬間、荒覇吐がスピードを上げて襲い掛かる。

同時にガトリング砲や各種エネルギー兵器を乱射し、八洲も主砲とレールガンを放ち応戦した。

荒覇吐は発生したオーラでレールガン以外を相殺する。

八洲も巧みな操艦で回避し、電磁防壁でレーザーを相殺する。

彼は17秒で次弾を装填し、すかさず撃ち込む。

荒覇吐はラムアタックを繰り出すが、バウスラスターを起動し間一髪でかわす。

その後も八洲と荒覇吐は互いの兵装をフル活用し、接近しては離脱を繰り返す。

まさに“海上の格闘戦(ドックファイト)”だ。

 

「フハハハハッ!!死ねぇ!!」

 

「…お前がくたばれ!」

 

この戦いによって互いの損傷が激しくなる。

いくらプラズマ砲をも相殺するオーラと言えど、絶え間なく攻撃を浴びせ続けられば、オーラの効果も弱くなる。

さらに背中にあるガトリング砲と数基のエネルギー兵器が破壊され使用不能になる。

八洲も一基の四連装砲が大破した上、カニ光線や数基の機関砲・パルスレーザーが破壊された。

その後、荒覇吐は艦尾のロケットブースターを噴かし猛スピードで襲い掛かる。

流石に回避が間に合わない…その時だ。

 

彼は迫り来るドリルを破壊された四連装砲で受け流し、右側の主砲群でもって荒覇吐に零距離砲撃を喰らわした。

腹部に思いっきり砲撃を受けた荒覇吐は大きくのけぞり血反吐を吐いた。

だが、それでも荒覇吐は攻撃の手を緩めない。

彼らは破壊と闘争の為に生み出された存在。

邪魔する者は皆平等に殲滅する。

 

「…まだだ、これで終わりじゃねぇぞ…!」

 

「…相変わらずのしぶとさだな。」

 

「当然だ!敵たる者は殲滅する…自らの存在を脅かす者なら尚更だ!」

 

「…そうだな、なら鋼鉄(くろがね)として海の底に葬るまで!」

 

戦闘は続く……

 

 

 

 

 

その頃、ブリュンヒルデとリバティはーーー

 

「くっ、厄介ですね…前は見境なく殲滅していましたが、今回は的確に攻撃している…」

 

暴走状態のグロース・シュトラール相手に防戦一方な状況だ。

枷を外し暴走状態になったとはいえ、前とは異なり的確に狙いを付けて攻撃している為ブリュンヒルデは回避するのに精一杯だった。

リバティは潜航したがグロース・シュトラールのASROCの波状攻撃を受け止む終えず浮上した。

彼女はレールガンと魚雷を放ちダメージを与えるが、度重なる砲撃とレーザー攻撃を受け防御重力場と電磁防壁に多大な負荷が掛かり消失寸前にまで追い込まれていた。

 

(このままでは埒が開かない……何か手は…)

 

彼女達は思案する。

グロース・シュトラールは度重なる攻撃によって中破相当のダメージを受けていた。

考えた末、リバティはブリュンヒルデに通信を開く。

 

「ブリュンヒルデ、ちょっといい?」

 

「何か思い付きましたか?」

 

リバティはブリュンヒルデに思い付いた作戦を伝える。

 

「そんな…危険です!その作戦なら確かに有効ですが、リバティさんの身に危険が……!」

 

ブリュンヒルデは懸念を示すが、リバティは根拠を述べる。

なんでもリバティの“特殊鋼鉄複合装甲”は驚異的な防御力の他にプラズマ砲などのエネルギーを分散・無力化する代物なのだ。

無論限度はあるが、1発くらいなら問題は無い。

 

「…分かりました。そこまで言うなら貴方を信じます。ですが…死なないでください。」

 

リバティは頷くとグロース・シュトラールに向けて前進する。

彼の猛攻もお構いなしに。

 

「血迷ったか、リバティ!」

 

彼は槍をリバティに向けてエネルギーを溜める。

リバティはレールガンを撃ちながらさらに接近する。

レールガンによって損傷を受けるが、エネルギーを溜め終わりーーー

 

「プラズマ砲、発射!!」

 

バヂィィィィィィィ!!

 

槍の先端から稲妻が放たれる。

放たれたプラズマはリバティに命中する。

その時、彼はほくそ笑んだ。

プラズマ砲は電磁防壁で防ぐ事は出来ない上、暴走状態でプラズマ砲の威力が格段に跳ね上がり特殊な装甲を持つリバティでさえも只では済まない…そう思っていたその時だったーーー

 

ギュオン!! ギュオン!!

 

「がっ!?」

 

突如甲高い音が鳴り響き純徹甲弾が命中した。

その徹甲弾は推進器辺りに命中し、グロース・シュトラールの速力が大幅に低下した。

さらに彼女が畳み掛けるように放った魚雷は敵艦の艦首に命中し、バウスラスターをも破壊した。

リバティの反撃によりグロース・シュトラールは機動力を失ってしまった。

だが、リバティもプラズマ砲の直撃により大破にまで追い込まれていた。

 

「…これで動けなくなったわね。」

 

「フン、それがどうした。応急処置を施せば済む事だし、動けなくても兵装は動くから問題は……」

 

その時、彼の後ろに何かの気配を感じ取った。

彼が振り向くとそこにはブリュンヒルデがいた。

彼が驚愕しているとーーー

 

「…終わりです。」

 

その瞬間、彼女は四基の魚雷発射管を発射していた。

合計20発の超音速酸素魚雷がグロース・シュトラールに襲い掛かる。

彼はすかさずブリュンヒルデに全兵装を向け彼女だけでも道連れにしようとしたが、リバティによって残っていた兵装を破壊された。

 

「貴様らァァァァァァァァ!!」

 

その後魚雷がすべて命中し、グロース・シュトラールは大爆発を起こした。

致命傷を受けた彼は断末魔の叫びを上げながら、炎上し沈んでいった。

 

「超兵器、撃沈…」

 

彼女達は超兵器を沈めて少し安堵した。

だが、リバティもブリュンヒルデも大破まで追い込まれていた。

 

「なんとか倒せたわね…」

 

「ええ、でも……」

 

戦いが終わっても尚、彼女達は素直に喜べなかった。

この世界に超兵器達が現れたというのは勿論の事、彼が言ってた事が気がかりだった。

 

「“テュランヌス”……でしたっけ、組織の名は。」

 

「………」

 

超兵器に指令を与えた存在…“テュランヌス”という組織。

強化された超兵器を差し向けてきた為、超兵器と戦ってきた彼女達にとっても侮れないというのは確かだった。

するとーーー

 

ズドォォォォォォォォォン!!

 

「「!?」」

 

突如として爆発音が鳴り響いた。

彼女達は応急処置をしながら急行する。

 

 

 

 

 

少し遡ってーーー

 

八洲と荒覇吐の戦いは熾烈を極めていた。

八洲の主砲が多数命中したとはいえ、荒覇吐は怯む様子も無く攻撃を続けた。

無論八洲もガトリング砲の直撃を受けてしまい、中破していた。

そんな中、八洲は思案していた。

 

(このままではジリ貧だ……何か手は…)

 

荒覇吐も耐久値が減っているとはいえ、このまま続けば先に沈むのは八洲の方だ。

彼は戦いながら考え、()()()()を思いつく。

 

(この手なら……しかし…)

 

思いついた手は確かに有効だが、下手すれば彼も沈みかねない方法だ。

 

(……一か八かだ…!)

 

だがこのままでは埒が開かない為、彼は覚悟を決めて行動する。

その頃荒覇吐はラムアタックを行おうとするが、八洲は驚きの行動に出る。

なんと彼は荒覇吐に向かって前進してきたのだ。

 

「なんだと……!」

 

彼は驚愕するが、その後興奮気味に笑みを浮かべる。

 

「…ハッ!ドリル艦ならいざ知らず、唯の戦艦に過ぎないお前が俺を相手に真正面から突っ込んで来るとは…正気の沙汰では無いがその漢気は買ってやる!なら俺も真正面からぶつかり合って粉砕するまでよ!!」

 

荒覇吐のロケットブースターが火を噴き、物凄い速度でラムアタックを繰り出す。

ドリルの機械音が鳴り響く中、八洲はレールガンを構えながら前進する。

彼はレールガンを放つが、オーラの力が強く純徹甲弾は弾道が逸れて遥か彼方へ飛んでいった。

その間に荒覇吐は接近し、ドリルが八洲に迫る。

このままでは八洲が危ない……その時だったーーー

 

(…今だ!)

 

彼は左側の艤装を前に押し出し、ドリルを食い込ませた。

そして左手で艤装に食い込んだドリルメイスの柄を持ち身動きを取れなくした後、その勢いのまま右手に持っていたレールガンを荒覇吐の心臓部に突き刺す。

 

「なっ!?」

 

王手詰み(チェックメイト)だ…!」

 

その瞬間、レールガンが放たれる。

その純徹甲弾は荒覇吐の心臓部…“超兵器機関”を破壊するには十分であった。

レールガンを放った後、八洲は凄い勢いで後進し荒覇吐から距離を取る。

荒覇吐も一矢報いようとしたが、超兵器機関を破壊され膨大なエネルギーを制御出来なくなり自壊し始めた。

 

「おのれ…おのれ八洲ァァァァァァァァ!!」

 

自壊により船体が崩壊し、怨嗟に満ちた断末魔を上げた荒覇吐はーーー

 

ズドォォォォォォォォォン!!

 

大爆発を引き起こし、轟沈した。

大爆発の後、残ったのは静かな大海原であった。

 

(…超兵器撃沈…しかし、この戦いは緒戦に過ぎない……)

 

「八洲さん、大丈夫ですか!?」

 

そう思っていた時、リバティとブリュンヒルデが来た。

 

「ああ、なんとかな……そちらも片付いたようだな。」

 

「ええ、苦戦したけど…」

 

「っ!八洲さん、その傷は!」

 

ブリュンヒルデが指差す方向を見ると、八洲の左横腹から出血していた。

先程の攻撃によって致命傷は避けたものの、ドリルが掠ってしまい出血してしまった。

八洲は慣れた手つきで止血する。

するとノイズが消え通信機能が回復したのか、提督から通信が入った。

 

『ちょっと大丈夫!?かなり酷い損傷じゃない!』

 

「安心しろ、このぐらいの損傷超兵器(奴ら)との戦闘では日常茶飯事だ。」

 

「ははは…」

 

八洲がしれっと返答し、ブリュンヒルデが苦笑した。

 

その時だったーーー

 

「…見事だな。」

 

突如として通信が入る。

八洲達だけで無く、他の艦娘達や艦内にいた提督達にも聞こえた。

 

「誰だ!?」

 

「…強化された荒覇吐とグロース・シュトラールを倒すとは…流石は鋼鉄(くろがね)だな。超兵器に対する“切り札”であり、我々の宿敵である存在…」

 

男はそう語る。

 

『貴方…何者なの?』

 

「…まあいい、どのみち相対するから今名乗っても問題は無い。」

 

そう言うと男は名乗った。

 

「我が名はアレス…テュランヌス総帥“アレス”。人類すべての“敵対者”だ。」

 

「アレス…だと?」

 

「…ちょっと待ってください!まさか他の超兵器も…」

 

「これ以上話す事は無い。いずれ戦場で合間見えるだろう…」

 

男がそう言うと通信は一方的に切られた。

すぐさま逆探知を試みるが、特定は出来なかった。

 

『…“テュランヌス”、深海棲艦に続き新たな脅威か……』

 

元帥はそう呟く。

 

 

 

この戦いは、後の『テュランヌス戦争』の序章に過ぎなかった………

 




次回は各方面の提督達が集まり、テュランヌスに対する緊急会議を開きます。

乞うご期待ください。


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第十二話 緊急会議

太平洋方面防衛作戦に乱入してきた超兵器を苦戦しながらも撃沈に成功した八洲達。
アレスと名乗る男が率いる軍事組織『テュランヌス』とのファーストコンタクトを垣間見た彼らは各方面の提督達を集めて会議を開いた………


ー防衛海軍大本営本部ー

 

ここは横須賀にある防衛海軍大本営本部。

その会議室に各方面鎮守府の提督達が集められていた。

 

北方方面司令官  鈴木霊華元帥

大湊鎮守府提督  田中雄一中将

室蘭鎮守府提督  西原若菜少将

単冠湾鎮守府提督 木下藤也大将

幌筵鎮守府提督  有田純一中将

 

太平洋方面司令官 黒鉄剣十郎元帥

横須賀鎮守府提督 水野凛少将

堺鎮守府提督   田宮健一少将

舞鶴鎮守府提督  美川芽依少将

小笠原鎮守府提督 立花楓中将

 

南方方面司令官  山下昇元帥

佐世保鎮守府提督 浜田翔吾大将

呉鎮守府提督   山村富子大将

奄美鎮守府提督  若川和美少将

那覇鎮守府提督  永谷旭中将

 

錚々たる面々が一同に集まり、会議室に用意された席に座っていた。

さらに提督達だけではなく、八洲、リバティ、ブリュンヒルデもこの会議室に用意された席に座っていた。

 

今回召集された理由は、太平洋方面防衛作戦の終盤に突如として襲来した“荒覇吐”、“グロース・シュトラール”、その2隻を運用する組織“テュランヌス”についての緊急会議だ。

 

「これより緊急会議を始める。今回の議題は“新たな脅威”についてだ。」

 

太平洋方面司令官の口が開く。

 

「新たな脅威……ですか?」

 

「そうだ。太平洋方面防衛作戦で深海棲艦の軍勢を退けたが、その後この2隻が作戦海域に現れた。」

 

そう言うと会議室の壁に取り付けられたモニターに今回現れた超兵器…“荒覇吐”と“グロース・シュトラール”が映し出された。

 

「なんだあの艦は!」

 

「初めて見る艦だ…我々の艦とは根本的に何かが違う……」

 

「あの大和型の艦橋の艦、艦首に付いているのって、まさかドリル……?」

 

「もう1隻の艦、二基の連装砲は分かるがドーム状の物体は何だ!?」

 

その2隻を見た提督達からは様々な呟きが漏れ出す。

そんな中八洲が説明する。

 

「艦首にドリルを持つ戦艦は“超巨大ドリル戦艦荒覇吐”といい、ドーム状の物体を持つ戦艦は“超巨大レーザー戦艦グロース・シュトラール”と言う。」

 

「荒覇吐……」

 

「グロース・シュトラール……」

 

「…ふむ、では具体的な性能を。」

 

「はい、超巨大ドリル戦艦荒覇吐は主砲に『406mmガトリング砲』を持ち、『エレクトロンレーザー』に『強化プラズマ砲』、多数のバルカン砲を搭載している。」

 

「なんか聞き慣れない単語が出たが……?」

 

「まずはその説明から始める。『406mmガトリング砲』とは簡単に言えば16inch砲をガトリングのように連射出来る砲で、毎分50発の連射性能を持つ。」

 

彼の説明にどよめきが広がる。

 

「毎分50発……なんて連射性能なんだ…!」

 

「では、エレクトロンレーザーやプラズマ砲とは一体…?」

 

「エレクトロンレーザーは電子(エレクトロン)を用いた光学兵器で、威力は…直撃で戦艦が跡形もなく融解する程だ。プラズマ砲は膨大なエネルギーをプラズマに変換させ、収束したプラズマを打ち出す兵器だ。威力もレーザーより高く、直撃で戦艦が黒焦げになる程だ。」

 

「…規格外ね。」

 

「兵装も強力だが、何より特徴的なのは艦首ドリルと舷側に付いている回転ソーだ。膨大な質量と50ktの速度から繰り出されるラムアタックを喰らえば俺であってもひとたまりもないぞ。」

 

「あれだけの巨体で島風よりも速いなんて……」

 

「…言っておくが、40〜50ktが超兵器にとって標準的な速度だ。次に超巨大レーザー戦艦グロース・シュトラールは兵装の大半が光学兵器に身を包んでいる超兵器だ。」

 

「それでは、あの連装砲は……?」

 

佐世保鎮守府提督の質問に今度はリバティが答える。

 

「ええ、グロース・シュトラールの主砲を調べた結果、なんと56cm80口径連装砲という事が分かったわ。」

 

「56cm!?」

 

「80口径だと!?」

 

各提督から驚愕の声が上がる。

超大和型は51cm砲を搭載する予定だったが、それを上回り尚且つ80口径と比較にならない程の超長砲身砲に驚きを隠せないのだ。

 

「さらに発射されたミサイルは、深海大戦前に対潜兵器として活躍したASROCよ。」

 

「イージス艦等に搭載されている対潜ロケットを持っているのか……」

 

「さらに防御面でも強大よ。荒覇吐は対56cm砲防御装甲、グロース・シュトラールは対51cm砲防御装甲、おまけに双方とも電磁防壁と防御重力場を持っているわ。」

 

「あの…電磁防壁と防御重力場とは?」

 

「電磁防壁とは艦の周りに電磁フィールドを張り、レーザー兵器の威力を大幅に減退する防御兵装だ。だが、プラズマ砲は防ぐ事は出来ない。そして防御重力場は艦の周りに外向きの重力を発生させて砲弾等の勢いを減退させたり、弾道を逸らす代物だ。流石に電磁砲(レールガン)は相殺する事は出来ないが。」

 

その2隻の性能に沈黙が広がる。

 

「…なるほど、強力な兵装に圧倒的な防御力……これは一筋縄ではいかないな。」

 

「なぁ、超兵器っていうのはこの2隻だけじゃ無いんだな?」

 

今度はブリュンヒルデが答える。

 

「はい、紹介した2隻は所謂“中堅クラス”でありますが、“末端クラス”でも強敵である事に変わりはありません。」

 

「末端でもか!?」

 

「それについては俺が説明する。」

 

八洲が手を上げ、モニターの映像を切り替える。

 

「俺が最初に戦った超兵器…“超高速巡洋戦艦シュトゥルムヴィント”は100ktという驚異的な速力(スピード)で連合国軍3個艦隊を翻弄し7割を撃沈、残りを大破ないし中破に追い込んだ。」

 

「ちょっと待て!それで末端クラスなのか!?」

 

堺鎮守府提督が驚きの声を上げる。

 

「ああ、シュトゥルムヴィントは主な兵装は35.6cm砲に酸素・誘導魚雷に装甲は対31cm砲防御装甲とそこまで強力では無いが、超兵器機関の膨大な出力を速力に全振りした超兵器である為、末端でも艦隊を屠る事は容易だ。」

 

どよめきが広がる中、呉鎮守府提督が手を上げた。

 

「超兵器というが、通常兵器と何か違いがあるのか?」

 

「超兵器と通常兵器との違いについては、超兵器機関を搭載しているか否かが区別する基準です。」

 

「超兵器機関?」

 

「簡単に言えば超兵器の動力炉です。具体的には……」

 

ブリュンヒルデ達は超兵器機関について説明する。

八洲、リバティ、ブリュンヒルデの世界線で超兵器機関の出自や仕組みは違うが共通している点を述べると、

 

・出力が膨大過ぎて危険な為、特殊な“枷”をつける必要がある。

 

・枷を付けている状態でも常に余剰エネルギーが放出されそのエネルギーが時空に歪みを生じさせ、その結果ノイズが発生する。

 

という点があげられる。

 

※尚、今回テュランヌスの超兵器達は改良型の超兵器機関を搭載しており、出力が最適化された事で通常時ではノイズは発生しない。

 

「次に質問なんだが、君達は今まで何隻の超兵器を沈めてきたのだ?」

 

大湊鎮守府提督の質問に八洲達は今まで戦ってきた超兵器を正確に答えた。

 

八洲の世界線

・超高速巡洋戦艦『シュトゥルムヴィント』

・超巨大潜水戦艦『ドレッドノート』

・超巨大高速空母『アルウス』

・超巨大双胴強襲揚陸艦『デュアルクレイター』

・超巨大爆撃機『アルケオプテリクス』

・超巨大双胴戦艦『播磨』

・超巨大高速潜水艦『ノーチラス』

・超巨大高速空母『改アルウス』

・超巨大光学迷彩戦艦『リフレクト・ブラッタ』

・超巨大ドリル戦艦『荒覇吐』

・超巨大双胴戦艦『駿河』

・超巨大高速潜水艦『改ノーチラス』

・超巨大双胴強襲揚陸艦『改デュアルクレイター』

・超巨大擬装戦艦『ストレインジ・デルタ』

・超巨大二段空母『ペーター・シュトラッサー』

・超巨大レーザー戦艦『グロース・シュトラール』

・超巨大爆撃機『改アルケオプテリクス』

・超高速巡洋戦艦『改シュトゥルムヴィント』

・超巨大潜水戦艦『改ドレッドノート』

・超巨大氷山空母『ハボクック』

・超巨大航空戦艦『ムスペルヘイム』

・超巨大戦艦『ヴォルケンクラッツァー』

・超巨大戦艦『ルフトシュピーゲルング』

・超巨大戦艦『ヴォルケンクラッツァーII(ツヴァイ)

 

 

リバティの世界線

・超高速巡洋戦艦『シュトゥルムヴィント』

・超高速戦艦『インテゲルタイラント』

・超巨大ホバー戦艦『アルティメイトストーム』

・超巨大二段空母『ペーター・シュトラッサー』

・超巨大高速潜水艦『アームドウィング』

・超巨大要塞艦『ストレインジ・デルタ』

・超巨大双胴航空戦艦『近江』

・超巨大高速空母『アルウス』

・超巨大爆撃機『ジュラーヴリク』

・超巨大双胴戦艦『播磨』

・超巨大潜水空母『ドレッドノート』

・超巨大ドリル戦艦『荒覇吐』

・超巨大レーザー戦艦『グロース・シュトラール』

・超巨大光学迷彩戦艦『シャドウ・ブラッタ』

・超巨大陸上戦艦『スレイプニル』

・超巨大氷山空母『ハボクック』

・超巨大二段空母『改ペーター・シュトラッサー』

・超巨大航空戦艦『ムスペルヘイム』

・超巨大戦艦『リヴァイアサン』

・超巨大戦艦『ヴォルケンクラッツァー』

 

 

ブリュンヒルデの世界線

・超高速巡洋戦艦『ヴィルベルヴィント』

・超巨大潜水戦艦『ドレッドノート』

・超巨大双胴強襲揚陸艦『デュアルクレイター』

・超巨大爆撃機『アルケオプテリクス』

・超巨大双胴戦艦『ハリマ』

・超巨大航空戦艦『ムスペルヘイム』

・超巨大列車砲『ドーラ・ドルヒ』

・超巨大氷山空母『ハボクック』

・超巨大レーザー戦艦『グロース・シュトラール』

・超巨大攻撃機『フォーゲル・シュメーラ』

・超巨大ドリル戦艦『アラハバキ』

・超巨大戦艦『ヴォルケンクラッツァー』

・超巨大水上要塞『ヘル・アーチェ』

・超巨大航空戦艦『リヴァイアサン』

・超巨大潜水戦艦『ノーチラス』

・究極超兵器『フィンブルヴィンテル』

 

3人とも多くの超兵器と戦闘を繰り広げていたのだ。

話を聞いた提督達は押し黙っていた。

それほど彼らの軌跡が想像を絶するものだったからだ。

 

「…つまりテュランヌスもこれらの超兵器を保持していると?」

 

「おそらくその可能性が高い。現状、テュランヌスとの戦力差は特に技術面において絶望的だ。」

 

それもそのはずである。

こちらは第二次世界大戦時の装備なのに対し、奴らは現代化はおろか近未来レベルの兵装を持ち艦隊どころか都市や国、挙句の果てには世界をも滅ぼす力を持った超兵器がいるからだ。

無論、この後も議論したが一向に解決策は見つからず皆頭を抱えていた。

この中で超兵器の事を知っているのは八洲達3人だけであり、奴らに対抗できるのも彼らだけであった。

 

「ふむ…八洲、リバティ、ブリュンヒルデ、テュランヌスの件一任してもいいかね?」

「…よろしいので?」

「構わん。現状我々に出来ることが無い以上、超兵器に詳しい君達がテュランヌスに対する情報収集に戦力の撃破、対テュランヌス用の装備開発などやってもらう方がいいだろう。もちろん資材や後の事はこちらでなんとかする。」

 

超兵器の事を知っている彼らにテュランヌス対策を一任するという異例の対応をとったのだ。

 

「……分かりました。やれるだけの事はやります。」

 

「同じく、全力を尽くすわ。」

 

「私も元ウィルキア解放軍の一員として尽力します!」

 

3人は黒鉄元帥に向かって敬礼する。

彼らは打倒超兵器の決意を胸に秘め、出来る限りの事をする………

 




次回は対テュランヌス兵装の開発回、開発した兵装を実際に艦娘達に装備させます。

果たして艦娘達は鋼鉄の兵装を扱えるのか?

そして、八洲達3人も兵装を強化します。

乞うご期待ください。


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第十三話 開発・試験運用

緊急会議で超兵器の脅威を伝えた八洲達。
その超兵器を統括する“テュランヌス”に対抗する為、八洲達の技術を用いた兵器開発をすることになった。


ー横須賀鎮守府ー

 

緊急会議が終わり、八洲達はまず工廠へと向かった。

テュランヌスに対抗する為、そして戦力増強の一環として対テュランヌス用の兵装を開発する必要があった。

工廠には開発装置があり、それを用いて艦娘の兵装等を作ることが出来る。

 

だが、そこで問題が生じた。

なんと八洲達が使おうとすると、開発装置が動かないのだ。

故障かと思われたが、他の艦娘が使うと問題無く動いたのでその原因を明石と夕張が調べた。

調べた結果、開発装置はその中にいる妖精さんの働きにより兵装等を製造するが、それも第二次世界大戦時、またはそれの延長線上の技術水準しか対応しておらず、八洲達の技術に対応出来ていない為開発装置が動かなかったのだ。

 

彼らの兵装を開発出来ないと話にならないので、八洲達3人は彼らの技術を知っている妖精さんと話し合い、予備の開発装置を拝借して試行錯誤を繰り返した。

 

 

それから五日後ーーー

 

「やっと完成したぞ。これが『鋼鉄式開発装置』だ。」

 

完成した開発装置を提督達にお披露目する。

スパコンの様な外見にシャッターとベルトコンベア、ディスプレイが接続されたもので、艦娘側の開発装置もこの見た目だが、艦娘側は茶色なのに対し鋼鉄側は黒色なのとレバーが無いのが特徴だ。

 

「…えっと、私達が使っている開発装置と同じだけど何が違うの?」

 

「それを説明する為に今から動かす。」

 

そう言うと八洲はディスプレイに近づいた。

画面には『クリエイト』と『カスタム』の文字が映し出されていた。

 

「画面には『クリエイト』と『カスタム』の文字があるが…『クリエイト』は新しく兵装等を作ることで、『カスタム』は既存の兵装等を強化・改造する。試しに新しく兵装を作ってみるぞ。」

 

八洲は『クリエイト』のボタンを押し、操作する。

次に『兵装A』を押しその中にあった『61cm75口径三連装砲』を選択する。

製造する個数を設定すると、何やら数値が表示された。

 

「製造する兵装を選択すると、それに必要な資材量が表示される。あとはその量の資材を投入するだけだ。」

 

八洲が説明を終えると提督を始め艦娘達、特に明石と夕張は驚愕する。

 

艦娘側の開発装置はまず資材を投入してレバーを下ろして起動、何が出るかは資材の量で決まり、大量の資材を投入しても希望通りのモノは出ないばかりか、中にはぬいぐるみの様な見た目のモノがダンボールと一緒に出る所謂『スカ』が出ることがあるのだ。

 

鋼鉄式の様に兵装を指定して、必要量の資材を投入するだけでその兵装が必ず出るというのは驚くに値する。

 

「すごい…画期的じゃないですか!」

 

「でも、これって量産出来るの?」

 

「それなんですが…量産するには開発装置内にいる妖精さんに私達の技術の基礎理論を習得させる必要がありまして、最低でも一ヶ月以上掛かります。なので、量産はすぐには出来ません……」

 

夕張からの質問にブリュンヒルデは申し訳なさそうに答える。

 

「それじゃあ製造するぞ。」

 

資材を投入しディスプレイのボタンを押す。

すると機械音が鳴り響き、やがてシャッターが開く。

開いたシャッターからベルトコンベアで三連装砲が2つとも運ばれる。

 

「完成したな。次は既存の兵装を改造する。」

 

そう言うと『カスタム』のボタンを押す。

そして彼はベルトコンベアに『61cm65口径三連装砲』2つを置く。

開いた後、ボタンを押すとシャッターが開き、2つの三連装砲が中に入っていく。

 

「それで中にある兵装を改造する。今回は長砲身化…65口径から75口径に改造する。」

 

ボタンを押し、しばらくするとシャッターが開きベルトコンベアで前より砲身の長い三連装砲が運ばれた。

 

「これで鋼鉄式開発装置の説明を終える。後は艦娘達に載せる兵装の開発だけだな。」

 

「あれっ?八洲達はいいの?」

 

「大丈夫よ。私達のは昨日強化し終えたわ。残っていた八洲の主砲も強化・製造し終えたし…」

 

この際、兵装を大幅に強化したのは八洲とブリュンヒルデだ。

八洲は主砲を全て61cm75口径三連装砲に乗せ替え、空いたスペースに光学兵器“なすびー夢”を複数搭載した。

 

ブリュンヒルデは高角砲と多目的ミサイルを撤去し、“対空ミサイルVLSⅢ”と“ASROC対潜Ⅲ”を搭載した。

 

「じゃあ、開発に取り掛かるわね。その前にどんな兵装があるか確認していい?」

 

「ああ、あと攻撃兵装だけで無く補助兵装や機関も確認した方がいいぞ。」

 

艦娘達は兵装レシピを確認する。

 

「…兵装Aは艦砲と高角砲、機銃(CIWS)に速射砲などがあるわね。」

 

「兵装Bは魚雷にミサイル…ミサイルは発射基タイプとVLSタイプがある。さらに爆雷や噴進砲もある……」

 

「兵装Cは…レーザーに荷電粒子砲、プラズマ砲にレールガン…規格外ね。」

 

「ねぇ、気のせいかな…?なんか“妖しい大砲”や“弓矢”、“汚水噴射砲”とかがあるんだけど……」

 

「なんで帆船時代の大砲が……?」

 

「汚水をかけて敵の戦意を削ぐって……」

 

「航空機はレシプロ機やジェット機、ヘリコプターは分かるけど…その、ハウニブーって名のUFOがあるのね……」

 

「補助兵装は探信儀はもちろん、自動装填装置など……なんか“謎の装置”とか“お守り装置”もあるわね………」

 

「機関はボイラーやタービン、原子炉に核融合炉…ガスタービンもあるのか。」

 

艦娘達は聞いた事の無い兵装に関心を持つ。

 

「それじゃあ、まず兵装Aと兵装B、航空機と機関を10回ずつ、兵装Cと補助兵装を5回開発するわ。」

 

提督は開発を開始する。

その結果ーーー

 

兵装A:127mm速射砲×2

    152mm速射砲

    20mmCIWS×2

    50.8cm70口径四連装砲

    57mmバルカン砲

    155mmAGS(三連装)

    41cm75口径四連装砲×2

 

兵装B:新型対潜ロケットⅢ×2

    対空ミサイル発射機Ⅲ×2

    大型ミサイル

    対潜誘導魚雷

    対空ミサイルVLSⅢ

    RAM×3

 

兵装C:対空パルスレーザーⅢ×2

    怪力線照射装置

    荷電粒子砲Ⅲ

    小型レールガン

 

航空機:震電改×2

    Su-37J

    F-15EX 蒼天

    F-3C F・フォックス

    AV-8BJ ハリアーⅡ

    AH-64D アパッチLB×2

    SH-60J×2

 

機関:ガスタービンε×2

   駆逐ボイラーε

   駆逐タービンε

   標準タービンε×3

   巡洋ボイラーε

   戦艦ボイラーε

   空母ボイラーε

 

補助兵装:超重力電磁防壁

     自動装填装置a

     新型探信儀γ

     自動消火装置β

     応急注排水装置β

 

「ふぅ、こんなもんかな。」

 

「改めて見ると凄いわね……」

 

出来立てほやほやの兵装を見て艦娘達は改めて驚愕する。

 

「あと言い忘れていたが、『艦橋』と『船体』もあるから見ておいた方がいいぞ。」

 

「分かったわ。それじゃあ、新しく出来た兵装を使ってみるわよ。」

 

提督は艦娘達を召集し、試験運用を行う。

 

 

 

 

 

演習海域にて試験運用が行われる。

 

使用してみた結果、今までの兵器とは一線を画す性能を持つ兵器に艦娘や提督達は驚いた。

 

標的を一瞬で溶かすレーザー兵器。

驚異的な連射性能を誇る速射砲。

目標に正確に命中するミサイル。

画期的な性能を誇る艦載機群。

圧倒的な運動性能を持つ新型機関。

 

どれも高性能なものだった。

だが、前例の無い兵装にみんな振り回されていた。

 

具体的にはーーー

 

・駆逐ボイラーεと駆逐タービンεを搭載した駆逐艦『島風』は驚異の80ktを出したが、速すぎて旋回が出来ずにすっ転んだ。

 

・長砲身50.8cm砲の反動で戦艦『大和』が10m程後ろに下がった。

 

・重巡『足柄』が小型レールガンの試射で、打つことに成功したがその反動ですっ転んだ。

 

・装甲空母『瑞鶴』がSu-37Jと F-15EX 蒼天を着艦させる際に危うく海に落としそうになった。

 

…などと、使いこなすのにまだまだ時間は掛かる。

 

だが、装備を開発しそれを艦娘に搭載出来たのは大きな進展だ。

これからは新装備開発に力を入れる様になる。

また、新装備を使いこなす為に八洲達は教官を務める事が決定した。

すると、提督が質問する。

 

「そういえば八洲達は建造とかはした?」

 

「建造…?艦を造ることか?」

 

「そういえば…開発装置の製造でやってませんね……」

 

「ええ、貴方達も建造をやってもらうわ。もちろんその分の資材は大本営側が出すから。」

 

「…しかし出来るかしら?私達に……」

 

「それは分からないけど、まぁそこは“物は試し”よ!」

 

提督の命令で、八洲達に建造任務が課せられた。




次回は建造任務回です。

八洲達の世界で活躍した艦が各世界線に1隻ずつ計3隻登場します。

乞うご期待ください。


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第十四話 鋼鉄の艦娘達

テュランヌスの戦いに備えて八洲達の技術体系の兵装の開発に成功する。
次は建造に着手する。


ー横須賀鎮守府工廠ー

 

八洲達は工廠の建造ドックに来ていた。

そこは資材を投じて艦娘を建造する施設である。

事前に妖精さんに調べた結果、八洲達3人は3ヶ月に一隻しか建造出来ないが、建造出来るのは彼らの世界線で活躍した艦船が建造出来るという。

 

「という訳で建造するわ。資材は多めに用意したから性能のいい艦船が出るといいけど…」

 

「まぁやってみなければ分からないだろう。では…」

 

そう言うとまず八洲が建造を行う。

装置のパネルを操作し、ボタンを押すと装置が動き建造時間が表示された。

そこには『残り時間 99:99:99』と表示されていた。

表示された残り時間に皆驚愕する。

 

「…これは」

 

「ちょっと、時間かかり過ぎでしょ…」

 

「提督、これだと建造に四日以上掛かるが…」

 

「大丈夫よ。ここで高速建造剤の出番だから!」

 

聞き慣れないワードに首を傾げる八洲達だが、提督が高速建造剤のボタンを押すと、妖精さんが現れて何かを構えると今建造を行なっているだろう装置をバーナーで炙った。

しかもそのバーナーの火は想像してたものより大きかった。

 

「あの〜これは…?」

 

「ああ、これは“高速建造剤”といってこれを使えばどんなに建造時間が長い艦娘も一瞬で建造を終えるのよ。」

 

どうなっているんだ…と思っていると、装置に緑色のランプがついた。

どうやら建造が終わったようだ。

 

「建造出来たわ。お披露目の時間よ。」

 

そう言うとプシューと音を立てながらカプセルが開き、大量の煙が上がった。

やがて煙が収まると中から人影が見えた。

 

この時八洲は前の世界線で一緒に戦った艦船(戦友)達を思い浮かべていた。

どんな戦友が来るのか…彼は心なしか楽しみだった。

 

そして建造された艦娘の全容が明らかとなる。

茶髪のサイドポニーテールに、巫女服を着ている女性…言わば艦娘だ。

 

艤装は右側に『75口径50.8cm四連装砲』を二基八門、『20mm機関砲』や『対空/対潜ミサイルVLS』などを備え、左側には明石のような工作機械やクレーンが連なっていた。

まさに戦艦と工作艦をくっつけた様な戦艦だ。

この戦艦の名を八洲は覚えていた。

 

「お前、出雲か…?」

 

「あっ、えっと…八洲さん…?お久しぶりです。あの…何から話せば良いのか……」

 

出雲という艦娘は状況が飲み込めずたじろぐ中、提督が話す。

 

「初めまして。私は横須賀鎮守府提督水野凛少将よ。とりあえずあなたの名を聞かせて貰えるかしら?」

 

「…分かりました。私の名は工作戦艦“出雲”。八洲さんとは元の世界に帰る為に協力していました。」

 

「工作戦艦…それって工作艦と戦艦が一つになったって事?」

 

同じ工作艦の明石が質問する。

 

「はい。元の世界にいた工作艦“明石”以上の工作能力と戦闘能力を兼ね備えた軍艦として誕生しました。」

 

出雲はこの世界はもちろんのこと、八洲が元いた世界とは別の世界線から飛ばされたらしく、八洲に救われてからは共に戦い元の世界への帰還を果たした。

 

「八洲さん、私やあなたがこの世界にいるということはやはり…」

 

「ああ、実は…」

 

八洲は今までの経緯を話す。

 

「…分かりました。この私も微力ながらお手伝いさせていただきます。」

 

「よろしく頼む。」

 

「次は私ね。」

 

そう言うとリバティが前に出る。

彼女は装置を動かし、建造時間が表示された。

すると八洲同様『残り時間 99:99:99』と表示された。

直様高速建造剤を使用し、カプセルが開く。

 

中から出た艦娘は背丈は秋月型駆逐艦と同じで、銀髪のショートヘアに青色の瞳、服装はJ級駆逐艦に酷似していた。

艤装は右手に『新型152mm速射砲』、両腰部に『新型155mmAGS砲』と『20mm機関砲』を装備し、背中には煙突を模した部位とVLSを模したコンテナを艤装各所に多数配置していた。

 

「皆さん初めまして。南極連邦海軍所属トライトン級ミサイル駆逐艦三番艦の『トールギス』です。」

 

自己紹介を終えた艦娘はリバティの方を向く。

するとリバティが口を開く。

 

「久しぶりね、トールギス。()()()はありがとう…」

 

「いえいえ、私も貴方に何度も助けてもらっていたんですからいつか恩返ししなきゃと思っていたので、今までの恩を返しただけです。」

 

リバティは2隻の究極超兵器を沈めた時に船体が限界を迎えてしまい退艦命令が出された。

その際にリバティの乗組員を救助したのがトールギスを筆頭とする駆逐艦だった。

特にトールギスは対列強戦争において幾多の戦い・超兵器戦に赴き、その都度リバティに助けられたので、今までの恩を返す為に最終決戦に駆けつけ援護しそして退艦してきた乗組員を救助したのだ。

 

その事についてリバティは感謝している。

 

「最後は私ですね。」

 

そう言うとブリュンヒルデが前に出る。

彼女も建造装置を装置し、またしても高速建造剤を使用して建造を終える。

カプセルが開き、中から艦娘が姿を現す。

 

服装はブリュンヒルデと同じウィルキア近衛海軍士官服を着ており、金髪のポニーテールの女性だ。

 

艤装は右手に発艦用の猟銃を、左側には二段式飛行甲板を備え、艤装各所に『新型パルスレーザー』や『35mmCIWS』、『対艦ミサイルVLSⅢ』に『ASROC対潜Ⅲ』、『対空ミサイル発射機Ⅲ』を搭載していた。

 

「初めまして。ウィルキア解放軍所属前衛装甲空母『フレイ』よ。」

 

その艦娘はフレイと名乗る。

 

「フレイさん!」

 

「あ〜ブリュンヒルデちゃん!久しぶりね〜。で、その人が…」

 

ブリュンヒルデとフレイは挨拶を済ませ、フレイは提督の方を向く。

 

「初めまして。横須賀鎮守府提督水野凛少将よ。」

 

提督が自己紹介を終えると装甲空母大鳳がフレイに対し質問した。

 

「あの、フレイさん。その前衛装甲空母とは何なのでしょうか?」

 

「ああ、基本的に空母は後方にて艦載機を繰り出すのだけど、私の場合は自慢の装甲で敵の攻撃を防ぎながら艦載機を繰り出す戦法を行うことを前提に造られたの。だから装甲は対80cm砲防御装甲を採用しているわ!」

 

フレイの言葉に皆驚愕する。

空母はともかく戦艦でも最大で51cm砲防御装甲なのに、彼女の装甲はリバティや八洲より重厚な装甲を持っていたのだ。

 

「因みに艦載機はどんなのを積んでいるの?」

 

「私が積んでいるのは、戦闘機『ハウニブーⅠ』10機、攻撃機『ミホーク』10機、爆撃機『F-15EX 蒼天』5機、偵察機『ヴィンディッヒ』3機、救助ヘリ『スーパーピューマ』2機、計30機搭載しているわ。」

 

「えっと、少ないですね…」

 

「格納庫を少なくした分、装甲を強化したから別に問題は無いわ。」

 

「フレイさん、ブリュンヒルデさんとはどう言う関係だったのですか?」

 

「ブリュンヒルデちゃんとは戦友と呼べる関係だわ!」

 

ブリュンヒルデとフレイは同じ元ウィルキア王国近衛海軍所属であり、後にウィルキア解放軍として世界を転々とし様々な超兵器と戦った。

そして首都シュヴァンブルクにて超兵器『リヴァイアサン』との戦いにも参加した。

当初は連携で確実にダメージを与えていたが、リヴァイアサンの切り札…レールガンによって形勢が逆転、ブリュンヒルデも撃沈寸前にまで追い詰められたが、フレイは咄嗟に盾となりブリュンヒルデが応急修理を終えるまで時間を稼いだのだ。

だが、その間にリヴァイアサンの猛攻を受けてしまいフレイは致命傷を受け沈んでしまったが、修理を終えたブリュンヒルデがリヴァイアサンに猛攻を仕掛けて撃沈する事に成功したのだ。

 

「フレイさん…あの、何と言ったらいいか……」

 

「いいのよ。私が望んでやった事だし、希望を繋げたから後悔は無いわ。だから自分を責めないで。」

 

「フレイさん…ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

各艦が再会を謳歌した後、建造された3隻の配属先については以下の事が決められた。

 

現在日本は北方方面、太平洋方面、南方方面の戦線を構築しており、深海棲艦の迎撃を行なっている。

その為、出雲は北方方面の室蘭鎮守府、トールギスは太平洋方面の小笠原鎮守府、フレイは南方方面の佐世保鎮守府にそれぞれ配属される事が決まった。

テュランヌスが何処から攻めてくるか分からない為、とりあえず八洲達3隻を横須賀に、新しく建造された3隻を各方面の鎮守府に配属した。

 

新しく建造された3隻も元いた世界線の兵装を開発出来たが、初めの3隻とは違って建造は出来なかった。

それでも強大な戦力拡充が期待できる為、そこまで問題にならなかった。

計6隻の艦娘はテュランヌスとの戦いに備えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、ここは元タウイタウイ泊地。

 

そこには先のダイタルウェブにて鎮守府施設は破壊され、廃墟になっていた。

そこに人は居ない……かと言って深海棲艦もここには居なかった。

かつては深海棲艦の泊地となっていたが、テュランヌスの超兵器によって蹂躙された。

今現在、地上は廃墟のままだったが、地下は違った。

テュランヌスによって地下に基地を建設しており、そこには膨大な物質が貯蓄されていて、幾多の空間があった。

作戦指令室、兵装開発地区、保養所、巨大ドックなど様々な施設が地下空間にあった。

 

そして一番広い空間には数人の男女と立体映像に映っている男がいた。

 

「諸君、このタウイタウイ基地とパラオ基地、そして北太平洋海底要塞が只今をもって完成した。これより対日本制圧作戦『Op(オペレーション).フォールダウン』を始動する。」

 

その男は各基地の役割を言う。

 

「……そしてタウイタウイ基地はパラオ基地と連携して通商破壊を行なってもらう。その為の特設艦隊だ。そして…」

 

そう言うと男は超兵器の一人であろう少年を見る。

 

「ヴィントシュトース。我がテュランヌスで開発された量産型超兵器として君の他に大多数のビットユニットを配備している。圧倒的な速力と数の暴力によって通商ルートをズタズタにしろ。以上だ。」

 

「…了解。」

 

少年…否、超兵器『ヴィントシュトース』は笑みを浮かべる。

 

テュランヌスも世界掌握に向けて動き始めた………




次回は超兵器が登場します。

乞うご期待ください。


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第十五話 南方戦線異常有り

鋼鉄式開発装置により八洲達の兵装を開発し、建造にて工作戦艦“出雲”、ミサイル駆逐艦“トールギス”、前衛装甲空母“フレイ”を建造した八洲達。
一方、テュランヌスでは日本制圧の為行動を起こす………


ー那覇鎮守府周辺海域ー

 

出雲達が各地の鎮守府に配属されて1週間後…

 

ここは南方方面の最前線“那覇鎮守府”周辺海域。

その海域に一隻の潜水艦が浮上した。

 

その潜水艦は両腰部に艦首の魚雷発射管を、右側のアームにミサイル発射管、左側のアームに飛行甲板を備え、艤装の後ろに艦尾舵を付けた艦娘。

服はリバティと同じウェットスーツであり、青色のツインテール姿の女性だ。

 

無論この潜水艦は超兵器であり、名は『超巨大潜水空母ドゥールム・レムレース』である。

元々はリバティの世界線に登場した『超巨大潜水空母ドレッドノート』だが、アレスによって改良され艦名も変更された。

 

彼女は飛行甲板を構えるとエレベーターから航空機が出てきた。

Su-35J、F-117ナイトホーク、タイフーンⅡ、EFAなど様々な航空機が甲板に並べられ、先頭の機体が二基のカタパルトにセットされた。

カタパルトにセットされた機体はジェットエンジンを噴かし、やがて射出される。

 

射出された後、次々にとセットされ発艦し数十分の間に搭載している150機の内100機を発艦した。

 

飛び上がった航空隊はそのまま那覇鎮守府方面へと進んだ。

彼女はその航空隊を見てこう呟く。

 

「…いってらっしゃい。」

 

その直後、ドゥールム・レムレースは潜航した。

 

 

 

 

 

それから数分後ーーー

 

ドゴォォォォォォン!!

 

突如爆発音が鳴り響いた。

 

「何事だ⁉︎」

 

那覇鎮守府提督永谷旭が爆発音で目覚め、制服を脇に抱えながら執務室に入ってきた。

提督は管制を担当している大淀に尋ねる。

 

「現在状況把握中‼︎恐らく航空機による空襲と思われます‼︎」

 

「今は状況把握をしている暇はない‼︎哨戒中の艦隊を戻せ‼︎直ちに迎撃を‼︎」

 

提督の言葉に従って大淀は指示を出す。

那覇鎮守府に所属する艦娘達は先の爆発音で起きたが、鎮守府が空襲された事に衝撃を受けた。

 

だが、狼狽える暇はない。

直様迎撃に当たる。

 

まず哨戒中の艦隊に海域に敵艦隊が居ないか捜索させる。

次に応急班を繰り出し空襲を受けた施設の消火・救命活動をする。

そして鎮守府防空隊所属の航空機を上げさせ、迎撃に当たらせる。

 

数分後鎮守府防空隊の航空機が飛び上がり、敵機に襲いかかる。

 

だが、防空隊の航空機がレシプロ機、ジェット戦闘機“橘花”、ロケット戦闘機“秋水”が主力なのに対し、敵機は所謂“4.5世代ジェット戦闘機”と呼ばれる代物である為、性能差は歴然としており格闘戦(ドックファイト)では一方的に落とされていた。

 

「駄目です‼︎敵機の性能がこちらと比べ物になりません‼︎」

 

(管制機の情報だと敵機は4.5世代ジェット戦闘機だという…やはりテュランヌスの超兵器か…!)

 

大淀の報告に提督はそう推測する。

八洲達のサポートにより鋼鉄兵装を開発・配備出来る様になったが、配備状況は芳しくなく兵装を配備している鎮守府は横須賀、室蘭、小笠原、佐世保であり、南方戦線の最前線である那覇、奄美鎮守府には配備していないのが現状だった。

最前線にも配備する予定だったが、テュランヌスの襲撃が早く那覇鎮守府は今までの装備でテュランヌスの超兵器を迎撃しなければならなかった。

 

(クソッ…例の鋼鉄式開発装置の配備が間に合っていれば奴ら相手に善戦出来るが……いや、無いものを強請っても仕方がない…!)

「直様暗号通信でこの事を大本営に知らせろ‼︎」

 

「了解‼︎」

 

そう言うと、大淀は暗号化した通信を発信した。

その間にも那覇鎮守府は攻撃を受け続けている。

 

 

 

 

 

一方、那覇鎮守府所属の哨戒艦隊は…

 

「何ですって…鎮守府が空襲を受けた⁉︎」

 

「はい!空襲によって甚大な被害を受けている模様‼︎」

 

哨戒艦隊の艦娘達は鎮守府が空襲を受けた事に驚愕した。

 

「もしかして周辺海域に敵艦隊が…⁉︎哨戒機からの情報は?」

 

「いえまだ…あっ、哨戒機より入電!敵艦隊を発見、数6!」

 

「敵艦は?」

 

「艤装から戦艦クラスのものと思われます!ただ…」

 

「ただ?」

 

「速力は80ktだと…」

 

「何ですって⁉︎間違いないの⁉︎」

 

「はい、間違いないかと…まもなく接敵します!」

 

哨戒艦隊の艦娘達は振り向くとそこに艦影が見えた。

どんな戦艦か確認する為に目を凝らしているとその艦影から何かが発射された。

 

そう、ミサイルだ。

 

「っ!迎撃急いで‼︎」

 

各艦は迎撃するが、航空機より小さいミサイルを落とすのは至難の業だった。

 

「駄目です!迎撃間に合いません‼︎」

 

「みんな、衝撃に備え…」

 

そう言おうとした瞬間、ミサイルが炸裂し青白い光が艦娘達に襲い掛かる。

それが何なのか知るよしも無いまま、哨戒艦隊全艦が()()()()()()()

 

「敵艦隊、排除。」

 

ミサイルを撃った張本人である艦はドイツ軍水兵のセーラー服と帽子をしており、駆逐艦並の背丈に青い髪が特徴だ。

因みに性別は男である。

艤装は背後にX字のアームを付け、右上部のアームに『28.0cm80口径三連装砲』2基、左上部のアームに三連装砲1基と『対空/対潜ミサイルVLS』、左右下部のアームに『新型巡航ミサイル発射機』と『53.3cm誘導魚雷発射管』を搭載し、艤装の各所に『対空パルスレーザー』や『12.7cm速射砲』、『20mmCIWS』を取り付け、艤装の色も青色だった。

 

また、周りの艦も紹介した艦と同じ容姿と艤装をしていた。

違うところと言えば、その5隻は目元を覆うバイザーと両耳にヘッドホンみたいなギアを付けている事だ。

 

この超兵器は『超高速装甲艦ヴィントシュトース』

この超兵器は所謂“量産型超兵器”と呼ばれるものであり、量で圧倒する事をコンセプトに開発された超兵器である。

 

量産型である為大量に建造されるが、オリジナルの超兵器のように自我と個性があるのはバイザーを付けていない個体であり、その個体は旗艦級個体(フラッグシップ・タイプ)と呼ばれ、バイザーを付けている個体は自我は無く簡易的なAIを搭載してある個体を従属艦級個体(ビットユニット・タイプ)と呼ばれ旗艦級個体の命令に従う。

 

このような量産型超兵器に見られるシステムを『ビットユニットシステム』と言い、大多数のビットユニットを統括する旗艦級個体(フラッグシップ・タイプ)が先程ミサイルを放った個体である。

 

「みんな、この調子で敵艦隊を撃破するよ‼︎」

 

哨戒艦隊を撃破しその様に鼓舞した後、那覇鎮守府と周辺基地を攻略する為高速艦隊は更に進む。

 

 

 

 

 

その頃、奄美鎮守府では…

 

「那覇鎮守府がテュランヌスの襲撃に遭ったのは本当⁉︎」

 

「はい、暗号通信と管制機の情報から空襲に遭ったのは確かなようです‼︎」

 

奄美鎮守府提督若川和美が司令室に赴き情報を大淀から聞く。

 

「いつでも出撃出来るように準備して!」

 

提督の命令により就寝中だった艦娘達は起き、出撃出来るように待機する。

哨戒中の艦隊にも警戒体制を維持する様命令を出したが…

 

ドゴォォォォォォン!!

 

「キャァァ‼︎」

 

突如として爆発音が鳴り響き、その時生じた揺れで提督は転んでしまった。

 

「大丈夫ですか、提督?」

 

「大丈夫よ。それより今のは…」

 

「今調べます…そ、そんな……管制機の情報によりますと詳細は不明ですが砲撃を受けた模様‼︎」

 

「何ですって⁉︎まさか敵艦隊が…」

 

次の瞬間、砲弾が司令室付近に着弾し大きな衝撃が起こる。

その時生じた爆風で提督は壁に激突する。

 

「提督⁉︎大丈夫ですか、提督⁉︎」

 

大淀が慌てて呼びかけるが、大事には至らなかった。

提督はなんとか起き上がり、指示を出す。

 

「舐められたものね…全艦隊、出撃せよ‼︎」

 

提督の指示により艦娘達は一斉に出撃する。

 

 

 

 

 

一方、奄美鎮守府周辺海域では…

 

「おっと、奴さん達飛び出して来たぞ。」

 

男はそう呟く。

その男は艦橋を模した海軍帽を被り、大英帝国海軍士官服の上にコバルトブルーのロングコートを羽織っており、右手にはタバコの一種であるパイプを持っていた。

 

もちろん、この男も超兵器である。

左右の艤装に『45.7cm80口径連装砲』2基4門と『対空/対潜ミサイルVLS』、ウォータージェット推進器それぞれ1基ずつ備え、右側の艤装に『61.0cm酸素魚雷発射管』と『61.0cm誘導魚雷発射管』を搭載した艦首を接続し、背中に接続されている艤装には『多弾頭ミサイルVLSⅢ』と大型のウォータージェット推進器が付けられ、また艤装の各所に『57mmバルカン砲』と『30mmCIWS』が多数搭載している。

 

この超兵器の名は『超巨大潜水戦艦ドレッドノート』である。

 

潜水艦でありながら大和に匹敵する主砲を搭載した超兵器であり、哨戒網を掻い潜り奄美鎮守府に砲撃を加えたのもこの男である。

 

すると彼の背後から何かが浮上してくる。

超巨大潜水空母ドゥールム・レムレースである。

 

「おっと、那覇鎮守府の方は順調か?」

 

「ええ、そっちは?」

 

「ああ、奄美鎮守府の主力艦隊は出撃した。敵艦隊は《旋風》と《暴風》が相手になる。我々は引き継ぎ鎮守府施設を攻撃する。」

 

「分かったわ…那覇鎮守府の方は?」

 

「那覇鎮守府は《突風》艦隊と揚陸部隊が攻略を担当する…さて、行くぞ。」

 

ドレッドノートとドゥールム・レムレースは奄美鎮守府攻略の為、行動を起こす。

そして更なる魔の手が………




次回、旋風と暴風による強襲、そして更なる危機が……

乞うご期待ください。


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第十六話 破滅を呼ぶ嵐達

テュランヌスに対する対抗策が確立された矢先、テュランヌスの超兵器が那覇、奄美鎮守府を襲撃する。
負けじと応戦するが、テュランヌスの高性能な兵器により苦戦を強いられる………


奄美鎮守府の主力艦隊が出撃した頃、その周辺海域では…

 

「シュトゥルムヴィント、《勇者》より入電だ。奄美鎮守府の主力艦隊がこぞって出てきた。俺達はその主力艦隊を殲滅する…準備はいいな?」

 

「ええ、全兵装及び推進器に異常は無いわ。」

 

その様なやり取りをしながら80ktで航行している銀髪の男と金髪の女…

この2隻は『超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィント』と『超高速巡洋戦艦シュトゥルムヴィント』である。

 

『超高速巡洋戦艦ヴィルベルヴィント』はウィルキア帝国海軍士官服に身を包み両腰部に接続されているアームに『38.1cm80口径三連装砲』4基、両脚部に『61cm五連装誘導魚雷』2基と『68cm五連装酸素魚雷』4基、背中にはV字型の煙突と『対空/対潜ミサイルVLS』、2基のロケットブースターを備え、艤装の各所に『152mm速射砲』4基に『新型パルスレーザー』と『35mmCIWS』を多数搭載している。

 

『超高速巡洋戦艦シュトゥルムヴィント』は灰色を基調とした軍服を着ており、両腰部の主砲や両脚部の魚雷、背中のV字型の煙突に『対空/対潜ミサイルVLS』とロケットブースターの配置、そして各所に『152mm速射砲』4基、『新型パルスレーザー』と『35mmCIWS』を搭載しているのは同じだが、主砲は『43.2cm80口径三連装砲』、魚雷は『五連装超音速酸素魚雷』4基に変更されており、煙突部に『βレーザーⅢ』を2基搭載している。

 

彼らは奄美鎮守府主力艦隊を撃破する為、出陣していた。

まずドレッドノートが鎮守府に対し砲撃を行い、艦隊を炙り出す。

そして出てきた艦隊を2人の超高速の機動力でもって破壊するのがこの2人の役目だ。

 

「レーダーに感。やっとこさ来たか…」

 

超兵器特有の高性能レーダーで敵艦隊を捕捉する。

それと同時に敵の哨戒機にも捕捉された。

 

「どうやら敵にも見つかったようね。」

 

「ああ、だが丁度いい。()()()には持ってこいの獲物だからな…」

 

腕試し…彼らは元いた世界で八洲達に沈められた為、彼らへの復讐に向けて新しい兵装がどれだけの威力を持つかを確認するのが目的だ。

 

2人は艦尾のロケットブースターを点火し、一気に速度を上げる。

 

一方、奄美鎮守府主力艦隊は…

 

「哨戒機より敵戦艦2隻接近中、速度…80ktとの事‼︎」

 

2隻の規格外の速度に艦娘達が動揺する中、まず空母が艦載機を発艦し先制攻撃を加える。

その間に戦艦は砲撃を、巡洋艦・駆逐艦は雷撃の準備を済ませ艦隊による飽和攻撃で決着をつけるつもりだ。

 

だが、彼女達は知るよしもなかった。

今出ている80ktは2隻の最高速度ではなく、()()()()に過ぎないことを………

 

異変はその後起こった。

 

「…えっ、そんな……!」

 

「どうしたの⁉︎」

 

「敵艦、速度上昇…2隻とも既に100ktを超えています!」

 

「なっ⁉︎計測違いでは無いのか!」

 

「間違いありません!このままでは航空機による攻撃は間に合いません!」

 

突如として2隻は100ktを超え、ヴィルベルヴィントは120kt、シュトゥルムヴィントに至っては驚異の180ktを叩き出した。

 

シュトゥルムヴィントはその驚異的な速度で艦隊に急接近し、まずは主砲を叩き込む。

彼女の主砲は43.2cm砲で長門型よりも強力な上に砲身は80口径と長砲身の為、大和型戦艦の装甲を貫き大ダメージを与えた。

砲撃によって敵艦隊が混乱している隙にすかさず超音速酸素魚雷を放った。

 

酸素魚雷を遥かに上回る速度で加速する魚雷は戦艦・空母等の大型艦を容易く葬り、終いにはβレーザーにて運良く生き残った戦艦にトドメを刺した。

 

ものの数分もしない内に戦艦・空母が壊滅した事で、残った艦娘の戦意は砕け散り、中には逃げ出す駆逐艦が出た。

巡洋艦達が必死に規律を乱すまいと奮闘するが、それを踏み躙るかの様にヴィルベルヴィントが時間差攻撃を仕掛ける。

 

ヴィルベルヴィントの長砲身38.1cm砲や誘導・酸素魚雷の飽和攻撃を受け巡洋艦はほぼ轟沈する。

これにより艦隊の8割が沈み、秩序もクソも無くなった艦娘達は皆我先にと逃げ出した。

 

だが、おめおめと逃げ出す彼女らを見逃す程彼らは甘くは無い。

 

2隻共すぐさま旋回し逃げ惑う駆逐艦相手にパルスレーザーで掃討した。

パルスレーザーは光学兵器の中では威力は低めだが、それでも航空機はおろか駆逐艦を沈める事が出来る。

 

更なる追撃に皆パニックになり、半狂乱となりながらがむしゃらに打ちまくる者、泣きじゃくりながら命乞いする者まで出たが、艦娘がいなくなるまで彼らは追撃をやめなかった。

 

発艦した航空機は母艦の仇討ちにと突撃したが、パルスレーザーとCIWSの弾幕により呆気なく撃墜され、奄美鎮守府主力艦隊は会敵からわずか数分で全滅した。

 

 

 

 

 

その報は奄美鎮守府に届く…

 

「提督…先程出撃した主力艦隊ですが、ついさっき反応が途絶えました……」

 

「………えっ?」

 

突然の報告に提督はショックを受け、よろよろと呼びかけた。

 

「提督?」

 

「ねぇ…大和!応答して!長門、武蔵、陸奥‼︎なんで…なんでみんな応えてくれないの……!」

 

その時だった。

 

ドゴォォォォォォォン‼︎

 

「キャァァァァァァ‼︎」

 

鎮守府施設に砲弾が直撃し、施設は倒壊し提督は大きく吹っ飛ばされ気を失った………

 

 

 

 

 

その頃、那覇鎮守府では…

 

「駄目です!哨戒艦隊すべての反応が途絶えました!」

 

「くっ…なんて事だ…!」

 

ヴィントシュトーツ率いる突風艦隊によって那覇鎮守府の哨戒艦隊が全滅した。

今現在空爆は止み主力艦隊はいつでも出撃出来る状態となった。

 

だが、敵の技術レベルが段違いの為出撃したとしても反撃すら出来ずに返り討ちに遭う可能性があった。

さらに近くの奄美鎮守府は『現在敵の攻撃を受けている』の連絡を最後に通信が途絶えた。

 

彼は最悪の事態が起きた事を悟り、()()()()を出した。

 

「…大本営に連絡しろ、『敵の攻撃により那覇鎮守府の維持が困難となった為佐世保鎮守府に撤退する』と……!」

 

「っ!提督…」

 

このまま戦線を維持しても援軍は間に合わずやがてはジリ貧となる。

その為、本土へ撤退し戦力を温存する事を選んだ。

だがーーー

 

「提督!どうやらこの鎮守府に向けて6発のミサイルが接近中との事!」

 

「何っ⁉︎」

 

敵からのミサイルに驚くも6発程度では空爆にも耐えれる緊急司令室にダメージは無いと鷹を括っていた。

 

そう、そのミサイルが通常弾頭であれば…

 

飛来したミサイルは鎮守府上空で青白い閃光と共に炸裂した。

六つの青い太陽は瞬く間に鎮守府全体に膨大な熱と爆風を浴びせた。

特に爆心地周辺の施設は跡形もなく()()し、中にいた艦娘諸共焼き尽くした。

そして緊急司令室も例外では無い。

いくら空爆に耐えれるとしても、その攻撃が戦術核並の破壊力を持つなら別だ。

 

提督はもちろんの事、緊急司令室にいた者は全員骨すら蒸発した。

 

たった6発のミサイルにより、那覇鎮守府は壊滅した。

 

 

 

 

 

「友軍機より報告。那覇鎮守府を始め普天間物資集積所、嘉手納空軍基地等沖縄にあるすべての軍事施設の破壊を確認との事。」

 

「うん、ご苦労。」

 

従属艦(ビットユニット)の報告に旗艦である彼は労いの言葉を掛ける。

ヴィントシュトーツ級が持つ『新型巡航ミサイル』により南方方面の最前線は呆気なく壊滅した。

 

ヴィントシュトーツ級はこの作戦において初めて投入され、目覚ましい活躍を遂げた。

 

(さて、あとはデュアルクレイター率いる揚陸部隊に任せて休憩するか。)

 

そう思ってると後方から『超巨大双胴強襲揚陸艦デュアルクレイター』率いる揚陸部隊が到着し、多数の揚陸艇を用いて物資の揚陸を行った。

 

 

 

 

 

「ん……あ……」

 

先程の砲撃で気を失った奄美鎮守府提督若川和美はようやく目を覚ます。

そこには地獄の光景が目に映った。

 

鎮守府施設のほとんどが破壊され炎上し、焼け焦げた死体があちこちに散乱していた。

まさに戦時の東京大空襲さながらの地獄絵図だ。

 

この光景に彼女は絶望した。

 

「おや、まだ生き残りがいたか。」

 

突然背後から声が聞こえ振り返るとコバルトブルーのロングコートを羽織った男性…『超巨大潜水戦艦ドレッドノート』がいた。

 

「…っ!」

 

彼女は咄嗟に護身用の拳銃を構えたが、彼は瞬時に懐に入り込み片手で彼女の首を掴み持ち上げた。

彼女は苦悶の表情を浮かべる。

 

「生き残りが居ないか上陸して探したが、目ぼしいのは君しか居なかったよ。まぁ瀕死の者はそれなりに居たから、せめてもの慈悲としてトドメを刺したがな。」

 

彼はニヤリと笑いながらそう語る。

だがーーー

 

「フ…フフ……」

 

彼女も笑った。

 

「…何が可笑しい?」

 

「そうやって調子付くのも今の内よ。私達には貴方達に対する“切り札”があるわ。貴方達が元いた世界で猛威を奮っていた存在がね…!」

 

彼女は最後の抵抗とばかりに捨て台詞を吐く。

 

「そうか……なら死ね!」

 

そう言った瞬間に首の骨を折り、彼女は絶命した。

そしてそのまま放り捨てる。

 

彼は苛立ちながらも気分を落ち着かせる為にパイプを吸う。

パイプを吸い煙を吐いた後、彼はこう呟いた。

 

「……楽しみだな、ああ楽しみだ。」

 

彼は八洲達との戦いを楽しみにしていた。

前の世界での雪辱を晴らす為…

 

そして南方戦線だけでは無い。

北方戦線でも超兵器の猛攻を受けていた。




次回、北方方面にも超兵器の魔の手が襲い掛かる。

乞うご期待ください。


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第十七話 北方より来る悪魔達

テュランヌスの超兵器の猛攻により、抵抗虚しく壊滅した奄美鎮守府と那覇鎮守府。
だが、攻撃を受けたのは南方戦線だけでは無く北方戦線でも超兵器の魔の手が迫っていた………


ベーリング海では5隻の超兵器が単縦陣で南下していた。

目標は北方方面の最前線である幌筵鎮守府と単冠湾鎮守府。

 

先頭の艦は三胴船(トリマラン)が特徴であり、八洲と同様の(タンブルホーム船体の艦首を模した)サンバイザーを被った艦息である。

金髪碧眼に青を基調とした服、両肩部に『280mmAGS三連装砲』を二基、両舷の艤装に『228mmAGS単装砲』を合計八基、背中の艤装に『電子攪乱ミサイル』『対艦ミサイルVLSⅢ』『対空/対潜ミサイルVLS』を備え、艤装の各所に『新型パルスレーザー』『35mmCIWS』を多数搭載している。

この艦の名は『超高速戦艦インテゲルタイラント』

速力は70ktと遅いが純粋な戦艦である為ヴィント系高速艦と比べて耐久性は高い。

 

先頭から二番目の艦はグラマラスボディにカウボーイの衣装が特徴的な艦娘であり発艦用のリボルバー式マグナム二丁と飛行甲板を装備している。

兵装は『多弾頭ミサイルVLSⅢ』と『対空/対潜ミサイルVLS』、『超射程SSM』を背中の艤装に、各所に『20cm12連装噴進砲』と『57mmバルカン砲』、『新型パルスレーザー』に『35mmCIWS』を多数搭載している。

この艦の名は『超巨大高速空母アルウス』

500機の艦載機を搭載出来る戦略空母であり、最高速力90ktを出せる高速艦でもある。

 

中央の艦は大日本帝国海軍の士官服に身を包み、まさに軍人という風格である艦息だ。

左右の艤装は『61.0cm80口径三連装砲』計八基、『30.5cm80口径三連装砲』計十基に艦首が二つあり、『多弾頭ミサイルVLSⅢ』と『多目的ミサイルVLSⅢ』に『12.7cm80口径高角砲』を針鼠の様に搭載し各所に『57mmバルカン砲』と『35mmCIWS』を多数備えている。

この艦の名は『超巨大双胴戦艦播磨』

双胴船という構造から多数の兵装を搭載し、圧倒的な火力・弾幕によって多数の敵を殲滅する超兵器だ。

 

播磨の後ろにいるのは同じ大日本帝国海軍の士官服に身を包んでいるが播磨に比べて若干幼い。

兵装は『12.7cm80口径高角砲』を針鼠の様に搭載している点は同じだが、『280mmAGS三連装砲』48基に『対空/対潜ミサイルVLS』『電子攪乱ミサイルVLS』『超怪力線照射装置』を多数搭載し、各所に『新型パルスレーザー』と『35mmCIWS』を数多く備えているなど全体的に違う。

また艤装の形もまさに針鼠という印象が強い。

この艦の名は『超巨大双胴戦艦駿河』

火力特化の播磨と比べて新型砲・光学兵器を搭載し迎撃・精密攻撃に重点を置いた超兵器である。

 

そして最後尾の艦は着物に身を包み銀髪のウェーブがかかった艦娘だ。

播磨や駿河と同じ双胴船であり、『50.8cm80口径三連装砲』二基と『46cm80口径三連装砲』三基、『超射程SSM』に『噴進爆雷砲』、『多目的ミサイルVLSⅢ』を左右の艤装に載せ各所に『57mmバルカン砲』と『35mmCIWS』を多数搭載している。

後ろには飛行甲板を備え、両手に二丁の大型のボウガンを持っている。

この艦の名は『超巨大双胴航空戦艦近江』

航空戦艦の欠点である艦載機数の少なさを双胴船にする事で克服した超兵器であり、特に旋回能力が桁外れに高い。

 

この5隻の超兵器は北方方面攻略艦隊として、南方から攻め込んでいる超兵器艦隊に呼応し北方の戦力を削ぎ壊滅するのが目的だ。

 

「…さて、そろそろだな。これより二手に分かれる。」

 

北方方面攻略艦隊の旗艦播磨がそう言うと艦隊は播磨を旗艦とし駿河、近江が随伴する第一戦隊、アルウスを旗艦としインテゲルタイラントが随伴する第二戦隊に分かれた。

 

「うまくいくかな。」

 

「ああ、その為に我々が囮になるんだ。北方方面の艦隊を引きつける。」

 

そういうと第一戦隊はさらに進んでいく。

数十分後、第一戦隊は哨戒機に発見された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー単冠湾鎮守府ー

 

敵艦隊発見の報を受け単冠湾鎮守府では艦娘の出撃準備でごった返していた。

鎮守府司令室では単冠湾鎮守府提督木下藤也とその秘書艦の大淀、各艦隊の旗艦が集まっていた。

 

「皆集まったな、これより作戦会議を行う。哨戒機からの敵艦隊を発見した。その映像を確認したらテュランヌスの超兵器だと判明した。」

 

そう言うと提督は哨戒機からの航空写真を皆に見せる。

そこには播磨、駿河、近江が写っていた。

初めて見る規格外の存在に皆驚愕する。

 

「航空写真から照らし合わせて、この3隻の超兵器はそれぞれ『超巨大双胴戦艦播磨』『超巨大双胴戦艦駿河』『超巨大双胴航空戦艦近江』だ。大淀、その超兵器についての情報を。」

 

「はい。」

 

大淀は超兵器の情報を出す。

 

○超巨大双胴戦艦播磨

八洲、リバティ、ブリュンヒルデの世界線における超兵器

外見上の特徴として双胴式の船体が挙げられる。

双胴式であるが故に強力な兵装を多数載せれる。(大口径三連装砲八基24門他多数)

八洲の世界線では東京湾にて敵航空機100機あまりを単艦で撃墜するなど対空迎撃能力も高い。

 

○超巨大双胴戦艦駿河

八洲の世界線における超兵器

播磨型双胴戦艦二番艦。

大口径砲を主兵装としていた播磨と比べて、ミサイル・光学兵器等を搭載している。

 

○超巨大双胴航空戦艦近江

リバティの世界線における超兵器

航空戦艦の欠点である搭載機数の少なさを双胴式にする事で格納庫の面積を増やし搭載機数の増加を図った超兵器。

また、日本海軍における超兵器機関のテストも兼ねていた。

 

どれも強力な兵装を持っているばかりか航空写真からの解析によると、近江の主砲は51cmクラスと46cmクラスなのは変わりないが、播磨は61cm砲を24門、駿河に至ってはブリュンヒルデに搭載されてある280mmAGS三連装砲を48基搭載している。

特に280mmAGS三連装砲は46cm45口径砲と同威力の為、駿河は大和型戦艦16隻分の攻撃力を備えているという事になる。

しかも砲弾自体が高い誘導性能を持つ為、命中率も尋常じゃない程高い。

 

「はっきり言って我々と敵側の戦力差は絶望的です。北方方面の総力を集めて勝てるかどうか…そして仮に勝てたとしても多大な犠牲は避けられません。」

 

大淀の分析に皆沈黙する。

戦力差があまりにも開き過ぎているからだ。

大淀はモニターの映像を切り替える。

 

「さらに敵艦隊の予想進路から北海道沿岸部が射程圏内に入る事になります。」

 

「迎撃作戦はどのようになっている?」

 

「幌筵鎮守府は他鎮守府艦隊と合流する為、鎮守府施設を放棄し単冠湾鎮守府に合流するとの事。室蘭、大湊鎮守府も超兵器迎撃の為今朝出撃しました。特に室蘭鎮守府所属の工作戦艦『出雲』と彼女により改装された対超兵器艦隊は兵装試験は既に終え出撃には問題は無いとの事です。」

 

「それだけが唯一の救いだな…」

 

次に北方方面司令官から超兵器迎撃作戦の内容が伝えられる。

・歯舞群島にて戦力を展開し超兵器を迎撃する。

・敵艦隊の進路上に出雲を旗艦とする対超兵器艦隊と戦艦艦隊を展開し重雷装巡洋艦と駆逐艦で構成される雷撃艦隊を岩陰に待機、軽・正規空母艦隊を後方に展開する。

・雷撃艦隊の補給、再出撃の時間短縮として補給艦を国後島の島影に待機させる。

 

つまり飽和攻撃によって決着を着けようとする算段だった。

 

「太平洋方面の援軍はどうなっている?」

 

「はい、報告を受けて八洲を派遣するとの事。」

 

「そうか、心強いな‼︎」

 

この情報に皆歓喜する。

先の太平洋方面防衛作戦にて突如現れた超兵器を撃沈した艦息であり、八洲が援軍として駆けつけるのなら百人力も同然だった。

 

だが、この歓喜をひっくり返す事態が発生する。

鎮守府司令室に兵士が勢いよく入っていく。

 

「失礼します!」

 

「どうした、今会議中だぞ!」

 

「いえ、緊急の報の為急いで…!」

 

兵士は何やら慌てている様子だった。

 

「落ち着け、一体何があった?」

 

「横須賀鎮守府から緊急連絡です!たった今横須賀鎮守府が超兵器艦隊の急襲を受け大半の施設が破壊され、八洲、リバティ、ブリュンヒルデを始め横須賀鎮守府艦隊は身動き出来ない模様‼︎」

 

この報に司令室にいる者は驚愕し動揺が広がる。

 

援軍が無くなったのもそうだが、大本営本部のある横須賀鎮守府が超兵器の襲撃を受けた事に皆驚愕した。

 

「なんてことだ…!」

 

提督は苦虫を噛み潰した表情をする。

北方方面の艦隊は援軍が来ない状態で迎撃しなければならなかった………




次回、南方、北方に続き横須賀鎮守府にも超兵器の襲撃を受ける。

果たして八洲達の運命は如何に………

乞うご期待ください。


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第十八話 横須賀鎮守府強襲

南方続き、北方方面にも超兵器艦隊が攻めてきた。
迎撃の準備を進めている中、驚くべき事態が発生する。
なんと八洲達がいる横須賀鎮守府が超兵器の襲撃を受けたのだ………


ー横須賀鎮守府ー

 

南方方面と北方方面で超兵器艦隊の襲来が確認された為、八洲達は横須賀鎮守府の執務室に集まっていた。

 

「提督…」

 

「ええ、恐れていた事態が起きたわ。」

 

提督は説明する。

南方方面の那覇鎮守府と奄美鎮守府が超兵器の襲撃を受けたとの連絡があり、その後現在に至るまで通信は途絶。

さらに北方方面も超兵器艦隊が南下しているとの情報が入った。

 

「奴らが近いうちに来る事は予想していたが、まさか二方面から同時に襲撃してくるとはな。」

 

「今ここの鎮守府の全艦隊は出撃に備えて準備中。南方方面はリバティとブリュンヒルデ、北方方面は八洲を向かわせるわ。」

 

「提督、超兵器の情報は何か無いのですか?」

 

提督はタブレット端末を出し、画像を見せる。

 

「北方方面では超巨大双胴戦艦『播磨』『駿河』、超巨大双胴航空戦艦『近江』の3隻が南下中、南方方面では航空機の襲撃があった事からおそらく空母型超兵器数隻、唯一判明してるのはこれよ。」

 

提督が見せた画像には、超巨大潜水戦艦『ドレッドノート』が映っていた。

 

「ドレッドノート…!」

 

「とにかく今は一刻を争う事態だわ。準備が整い次第、出撃よ!」

 

「「「了解‼︎」」」

 

八洲達は超兵器戦の為の準備をする。

だが、その数分後………

 

ドゴォォォォォォ‼︎

 

突如爆発音が響いた。

 

「何事⁉︎」

 

「報告します!敵の攻撃により鎮守府施設が破壊された模様!」

 

「何ですって⁉︎いつの間に侵入したの⁉︎」

 

「大淀、上空に展開している空防軍(航空防衛軍)の哨戒機からの情報は?」

 

八洲が大淀に尋ねるが、思いもよらぬ返答が返ってきた。

 

「それが…哨戒機によると敵艦隊の姿は愚か航跡すら発見出来ない様です‼︎」

 

「何、レーダーは⁉︎」

 

「電探も同様です‼︎」

 

「貴方達、心当たりはある?」

 

「…おそらく『リフレクト・ブラッタ』か『シャドウ・ブラッタ』だと思う。」

 

提督の質問にリバティが答える。

前者は八洲の世界線、後者はリバティの世界線で猛威を振るった光学迷彩装置を搭載している超兵器だ。

 

「確かに姿が見えないのなら光学迷彩の可能性が高いが…光学迷彩で姿を消せたとしても航跡は残る筈だぞ!」

 

「しかも攻撃の規模からかなりの大艦隊なのは明白です!」

 

確かに光学迷彩装置を使って姿を消せても航跡までは消せない。

さらに攻撃の規模からかなりの大艦隊なのは明白だ。

超兵器との戦いを経験した八洲達でも想定外の事に狼狽するが、手をこまねいている場合では無い。

敵が光学迷彩を使っている以上、迂闊に出れば返り討ちに合うのは確実だ。

そこで耐久力が三人の中で抜きん出て高いリバティを向かわせた。

八洲やブリュンヒルデ、他の艦隊は東京湾に陣取っている超兵器艦隊を片付けてから出撃する手筈となった。

 

 

 

 

 

一方、横須賀鎮守府を攻撃している超兵器艦隊12隻は新型光学迷彩システムを活用し哨戒網を突破した。

そして搭載されている『50.8cm80口径四連装砲』で鎮守府施設に対し砲撃を仕掛けた。

この超兵器はテュランヌスが新規に開発した量産型超兵器『超高速光学迷彩戦艦マレ・ブラッタ』である。

四連装砲の他に『88mm連装バルカン砲』、『57mmバルカン砲』、『35mmCIWS』、『多目的ミサイルVLS』、『新型クリプトンレーザー』、『新型火炎放射砲』を搭載している。

艤装は顔を覆うフルフェイスにゴキブリを思わせる二本の細長いアンテナが付いたヘッドギア、両腰部の部分は右側は四連装砲二基、左側は四連装砲一基とVLS、各所にバルカン砲とCIWS、左肩にレーザー砲と右腕に火炎放射砲をガントレット型として搭載している。

東京湾に展開している12隻の内11隻は従属艦級個体(ビットユニット・タイプ)であり、残りの1隻は旗艦級個体(フラッグシップ・タイプ)である。

旗艦級はヘッドギアのみで顔が露出している。

この超兵器は新型光学迷彩システムで姿は勿論なんと航跡も消している。

 

すると彼女達のレーダーから敵艦の反応を捉えた。

偵察機の情報によると準超兵器級攻撃潜水艦リバティだと分かった。

艦隊はリバティに近づく。

光学迷彩によって姿と航跡は消せてるし、数の優位があるので飽和攻撃を仕掛けるべく行動する。

 

接近してくる敵艦隊にリバティは多弾頭ミサイルを2発発射する。

打ち上がったミサイルは3発の小型ミサイルに分かれ合計6発のミサイルが敵艦隊に向かう。

が、突如としてミサイルは上空に飛んでいった。

不具合かと思ったが、次の瞬間ーーー

 

()()()()()()()()()

 

眩しさのあまり敵艦隊は怯むが、所詮は閃光弾。

ダメージは全く無い。

 

だが、この閃光が光学迷彩戦艦にとって致命的だった。

 

「…バカな、光学迷彩が!」

 

そう、先の閃光で光学迷彩装置が麻痺したのだ。

光学迷彩装置には弱点があり、それは強烈な閃光を浴びると装置そのものが麻痺して使い物にならなくなるというものだ。

因みにどうして弱点が分かったかと言うと、初めてブラッタ級と相対し撃沈した時にその研究施設を強襲し占領、そこから押収された資料を解析し弱点を突き止めたのだ。

それらの記憶を元に開発したのが『閃光ミサイル』

閃光弾をミサイルに搭載し強烈な光を発生させる兵器だ。

 

何がともあれブラッタ級の強みである光学迷彩を潰せたのだから敵艦隊は目視で発見出来たしレーダーでも確認できる。

敵艦隊は後退しながら応戦するが、砲撃もレーザーもリバティの防御重力場や電磁防壁、特殊鋼鉄複合装甲によってほぼ無効化され反撃に遭う。

数隻がリバティの小型レールガンにより当たった途端爆発し轟沈する。

 

超兵器のくせに脆いのかと思うが、これこそブラッタ級光学迷彩戦艦のもう一つの弱点…『装甲の脆弱さ』なのだ。

ブラッタ級は光学迷彩が纏いやすい様に特殊な艦形をしている。

その為、純粋な装甲の耐久性に問題があり防御重力場と電磁防壁が無力化されるレールガンやプラズマ砲1発で沈んでしまう程の脆さだ。

 

「このまま撤退よ、急いで!」

 

撤退時に超兵器艦隊は損害を被るが、それをお構い無しに東京湾を脱出する。

リバティは敵の行動を怪しみ、東京湾の出口付近で待機する。

 

 

 

 

 

指揮を取っている提督達もこの状況を怪しんでいた。

 

「敵艦隊、東京湾から離脱。」

 

「こちらも出撃用意、今は待機よ。」

 

提督も敵の行動を怪しみ、艦隊の出撃を控えていた。

 

「確かに…罠の可能性がありますね。」

 

「それにブラッタ級は装甲が脆弱な上に光学迷彩装置を搭載している以上、通商破壊やゲリラ活動、強行偵察に向いている。今回の様な拠点襲撃には向いてない。」

 

八洲達も超兵器艦隊の行動に疑問を抱く。

すると上空に展開している哨戒機からの報告に大淀が驚愕する。

 

「はい、はい…えっ?海が燃えている…?

 

 

 

 

 

少し前に遡る。

リバティが東京湾の出口付近で待機していると、ソナーから反応をキャッチする。

 

(これは…潜水艦?あの光学迷彩戦艦の他にも超兵器が?)

 

そう思った瞬間、()()()が聞こえて彼女は潜航する。

そう、()()()()()()()()()だ。

 

(音の数からしてこの海域には多数の潜水艦がいる…!)

 

そして魚雷が放たれ、一直線に向かっていく。

だがそれらの魚雷はリバティに当たるどころかそのまま通り過ぎて行く。

 

(…通り過ぎた?)

 

彼女がそう疑問に思う。

リバティを通り過ぎた魚雷はしばらく進むと弾頭部から黒い液体を流す。

流された黒い液体は広範囲に広がり、やがて海域全体を染め尽くす。

 

一方、偵察機から黒い液体が海域全体に広がった報告を受けてマレ・ブラッタ艦隊は途端に反転する。

 

「みんな行くよ!“ファイアウォール作戦”開始‼︎」

 

旗艦級の掛け声と共に各艦が一斉に火炎放射砲を発射する。

すると火炎放射砲の炎が海面に浮き上がった黒い液体に引火、次の瞬間ーーー

 

ボォォォォォォ‼︎

 

海面が勢いよく燃え上がる。

その炎は海域全体に広がり、東京湾を物理的に封鎖した。

先程打った魚雷は中に重油に酷似した発火性の特殊液体を入れていた。

結果海は文字通り燃え上がり、東京湾は封鎖された。

 

リバティは潜航している為影響を受けなかったが、すぐさま魚雷が放たれる。

彼女は回避行動に移るが、突如猛々しい音が鳴り響いた。

 

「キャッ‼︎」

 

彼女は慌てて耳を塞ぐ。

放たれたのは音響魚雷だった。

音響魚雷によってリバティの耳を塞いだので、ブラッタ艦隊はすぐさま海域を離脱、敵潜水艦隊は陣形を組み直す。

そして一回り大きい潜水艦がリバティ以上のスピードで彼女の後ろを取る。

 

「っ!しまった…!」

 

彼女が気づいた時には完全に包囲されていた。

前方には量産型超兵器『超巨大潜水艦レムレース』で構成された潜水艦隊が、後方には『超巨大高速潜水艦ノーチラス』が布陣し包囲する。

 

しかも東京湾は“炎の壁”によって封鎖されているので、リバティは孤立無縁の状態での戦いを強いられた…




次回、ノーチラスとレムレース艦隊がリバティに襲い掛かる。

さらに空からも超兵器の魔の手が………

乞うご期待ください。


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第十九話 海中の群狼、上空の始祖鳥

南方、北方方面に続き超兵器の奇襲を受けた横須賀鎮守府。
マレ・ブラッタ艦隊を退けたリバティは追撃を行うが、待機していた潜水艦隊の奇策により東京湾が封鎖されてしまう………


ー横須賀鎮守府ー

 

「何…これ……」

 

哨戒機からの映像を見た提督達は絶句していた。

海が燃えており、辺り一面火の海となっていた。

 

「これで奴らは東京湾を封鎖したというわけだな…」

 

八洲の言う通りこの状態では潜水艦以外の船は航行できない。

炎の壁によって東京湾は封鎖された。

 

「リバティからの報告は?」

 

「この状況下では通信は出来ません。鎮火するまで待つしか……」

 

その時、とんでもない報告が入った。

 

「はい、はい…そんなッ!」

 

「どうしたの?」

 

「先程厚木基地が空爆を受けた模様!」

 

「なんですって!機動部隊がいたの⁉︎」

 

「いえ、報告によると巨大航空機によって基地は機能不全に陥った様です‼︎」

 

「巨大航空機…まさかッ⁉︎」

 

しかも悪い知らせが届く。

その巨大航空機が横須賀鎮守府に向かっているとの事だ。

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府上空…

そこに一機の航空機が飛んでいた。

これから空爆を仕掛けようというのに一機のみとは少ないにも程があるが、今回に至っては一機で充分だ。

何故なら、全長200m、全翼400mの巨人機であり…

兵装は『43.2cm80口径連装砲』に『203mmガトリング砲』、爆弾倉(ウェポンベイ)には『ロケット弾』、『航空魚雷(爆弾)』、『長距離AAM』、『長距離ASM』を多数格納し、機体各所に『新型パルスレーザー』を複数搭載している上に装甲は対51cm砲防御装甲の重武装であり重装甲の爆撃機…

おまけに速力は脅威の1080.0km/hを誇る航空機型超兵器…『超巨大爆撃機アルケオプテリクス』である。

 

始祖鳥の名を冠した彼女は赤に近いカラーリングで染められた艤装を背部に背負い、スチームパンク風の服装にパイロットゴーグル、オレンジ色で短めのツインテールが特徴的な少女である。

 

彼女は横須賀鎮守府攻略において直接鎮守府を叩く役割を与えられており、手始めに防衛空軍の厚木基地を空爆によって機能不全に追い込んだ。

 

既に横須賀鎮守府はマレ・ブラッタ艦隊の奇襲によりダメージを受けていた。

奇襲艦隊はリバティにより退けられたが、今はノーチラス率いる潜水艦隊がリバティを沈めるべく包囲する。

東京湾の出口付近は炎の壁によって封鎖されておりリバティに対する援軍は送れないし、横須賀鎮守府艦隊も身動きが取れない。

その隙に彼女の絨毯爆撃により艦隊を殲滅する算段だ。

 

彼女は鎮守府を目視すると高度を下げながら爆弾倉を開く。

そして一定の距離に差し掛かると爆弾倉からロケット弾と航空爆弾の雨霰が降り注ぐ。

空爆により損壊していた鎮守府施設が更に破壊される。

鎮守府施設が破壊されたが地下防空壕は今のところ無事であり、横須賀鎮守府所属の艦娘や妖精さんは全員避難している為無事であった。

 

通り過ぎた後旋回して再度爆撃しようとするが、何かに気付いた彼女は急速に旋回する。

その瞬間爆発した。

八洲が緊急出撃し、牽制としてアルケオプテリクス向けて新型対空弾を放った。

対空弾の炸裂により衝撃波を受けるが直撃に比べてダメージは少ない為、標的を八洲に定め爆撃を敢行する。

 

「見つけたわ、八洲!アンタに堕とされた恨み…思い知りなさい‼︎」

 

そう言うと彼女は連装砲とガトリング砲を展開して一斉射する。

多数の砲弾が八洲に降り注ぐが、彼は巧みな操艦で回避し命中弾は防御重力場で防ぎ切る。

回避しながら八洲は対空ミサイルや対空弾でアルケオプテリクスを迎撃する。

 

「チッ!鬱陶しいたらありゃしない‼︎」

 

彼女は苛つきながらもロケット弾と航空爆弾による急降下爆撃、旋回しながら連装砲とガトリング砲で攻撃する。

八洲もありったけの対空弾と対空ミサイルによって対応する。

 

「八洲さんッ‼︎」

 

「なっ⁉︎ブリュンヒルデ⁉︎」

 

さらにブリュンヒルデも加勢しVLSから対空ミサイルを発射する。

予期せぬ加勢により対空ミサイルの大半が命中し一旦距離を取る。

 

「八洲に続いてブリュンヒルデも…いいわ!纏めて海の藻屑にしてやる‼︎」

 

ブリュンヒルデの加勢に堪忍袋の尾が切れたアルケオプテリクスは超兵器機関の枷を外し、暴走状態となって襲い掛かる。

 

 

 

 

 

一方、こちらは超兵器艦隊に包囲されたリバティ。

前方には量産型超兵器『超巨大潜水艦レムレース』艦隊、後方には『超巨大高速潜水艦ノーチラス』が布陣している。

この二種類の超兵器はドレッドノートとは違い純粋な潜水艦である為、雷撃能力が高い。

比べてリバティは全長488mと巨大な上に水上戦用の兵装も搭載している為、電磁推進とポンプジェット推進で60kt以上の速力を出せるが最大速力100ktのノーチラスに負ける上に小回りが効かない。

 

最初に行動したのはレムレース艦隊で旗艦の合図で一斉に魚雷を発射する。

誘導魚雷に酸素魚雷の大群が迫るが、リバティは落ち着いた様子で回避し魚雷を放つ。

回避し切れず数本は命中したが持ち前の特殊鋼鉄複合装甲によってダメージはほぼ無い。

逆にリバティの放った音響誘導魚雷はレムレース艦隊に真っ直ぐ向かい各艦は回避行動に移る。

従来の誘導魚雷より誘導性能が高い音響誘導魚雷の為次々と命中するが量産型といえど装甲は折り紙付きの強度を誇るレムレースはなんとか耐える。

だが、次弾は音響誘導魚雷とは比べ物にならない程の速度を誇る超音速魚雷が放たれ回避する間も与えず命中する。

威力も高いので命中した艦は大破または轟沈の憂き目に合う。

 

リバティは更なる追撃を加えようとしたが後方から魚雷が迫る。

回避するが間に合わず命中、しかも放たれた魚雷は超音速酸素魚雷だった。

 

「ふんふふ〜ん♪命中〜♪」

 

水色のポニーテールにダイバースーツを着た少女…『超巨大高速潜水艦ノーチラス』が無邪気に喜ぶ。

彼女の艤装はドレッドノートに酷似しているが大口径連装砲なるものは無く、酸素魚雷や誘導魚雷、超音速酸素魚雷などを発射する魚雷発射管を艦首・艦底部前方に備え、艦尾にX字舵と一体化した推進ノズルを持っている事などドレッドノートと差別化されている。

 

自分の放った魚雷がリバティに命中した事で機嫌を良くした彼女は次々と多種多様な魚雷を連射する。

命中弾も多かったが、リバティが回避した事で流れ弾が発生しレムレース達に命中、沈没するという事態が続発した。

だが、彼女にとって自分達の怨敵である八洲、リバティ、ブリュンヒルデが沈めば問題ない為、自分が沈むのは御免だがテュランヌスが結成された際に完成した量産型超兵器が何隻沈もうが関係ないのである。

 

対してリバティも唯ではやられない。

ノーチラスに向けて音響誘導魚雷を放つ。

持ち前の速力で回避されるが、彼女は予想進路に向けて超音速魚雷を艦首の魚雷発射管全門使って放つ。

ノーチラスの最大戦速を考慮して放たれた為、数本命中する。

ダメージを負い浸水したノーチラスは速力が落ちる。

 

リバティは更なる追撃をしようとしたが、突如として爆発が起こる。

 

「何…⁉︎」

 

彼女は驚き状況を確認すると、体制を整えたレムレース艦隊が超音速酸素魚雷を一斉射で放ちその殆どが命中したのだ。

幾ら特殊鋼鉄複合装甲を纏っているとはいえ、超音速酸素魚雷を大量に受ければ損傷し浸水する。

浸水によって各所に被害が発生し、応急修理の為攻撃を中断し距離を取ろうとするが移動の最中にまたもや爆発が起こる。

辺りを見渡すと海中に何かが浮かんでいた。

 

「これは…機雷⁉︎」

 

そう、感応機雷だ。

目標が接近すると自動的に爆発する機雷であり、レムレース艦隊とノーチラスがリバティに対する攻撃の際に予め放った『感応機雷敷設魚雷』により運悪く敷設エリアに逃げ込んだリバティは更にダメージを受けた。

 

「やってくれるじゃない…頭にきた‼︎」

 

リバティの反撃でダメージを負ったノーチラスは怒り、超音速酸素魚雷と感応機雷によってダメージを受けた事を好機に彼女は超兵器機関の枷を開放、アルケオプテリクス同様暴走状態となって襲い掛かる。

 

 

 

 

 

ここはテュランヌス総帥アレスがいる最高司令室。

そこでは今回の対日本制圧作戦の進捗状況がリアルタイムで表示されていた。

 

ーーー今作戦の進捗状況ーーー

 

○太平洋方面攻略艦隊

構成:超巨大高速潜水艦『ノーチラス』

   超巨大爆撃機『アルケオプテリクス』

   超巨大潜水艦『レムレース』艦隊

   超高速光学迷彩戦艦『マレ・ブラッタ』艦隊

 

現状:現時点で八洲達対超兵器艦隊の足止めに成功。

   このまま八洲、リバティ、ブリュンヒルデに対する攻撃を続行。

 

○北方方面攻略艦隊

構成:超巨大双胴戦艦『播磨』

   超巨大双胴戦艦『駿河』

   超巨大双胴航空戦艦『近江』

   超巨大高速空母『アルウス』

   超高速戦艦『インテゲルタイラント』

 

現状:艦隊を二分し播磨を旗艦とする第一戦隊を予定通りに敵に察知させる事に成功。

   まもなく北方方面連合艦隊を接敵する。

 

○南方方面攻略艦隊

構成:超巨大双胴強襲揚陸艦『デュアルクレイター』

   超巨大二段空母『ペーター・シュトラッサー』

   超巨大潜水戦艦『ドレッドノート』

   超巨大潜水空母『ドゥールム・レムレース』

   超高速巡洋戦艦『ヴィルベルヴィント』

   超高速巡洋戦艦『シュトゥルムヴィント』

   超高速装甲艦『ヴィントシュトース』艦隊

 

現状:那覇鎮守府及び奄美鎮守府の殲滅に成功。

   予定通り沖縄に『B-2 スピリット』『B-3 ビジランティⅡ』を中核とする戦略爆撃機部隊を配備できる飛行場の建設作業に入る。

 

と、この様に対日本制圧作戦は順調に進んでいる。

だがこの作戦自体が大西洋・インド洋攻略に向けた布石だという事実を知っているのは作戦立案者のアレスのみである………




次回、暴走状態となったアルケオプテリクスとノーチラスが襲い掛かる。

横須賀攻防戦の行方は如何に…

そして八洲達は南方・北方戦線の援軍に間に合うのか………

乞うご期待ください。


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