マダラと柱間の川原での決別後、卑劣様♀は(今回の兄者はよりによってうちは一族なのがよろしくなかったが、身内以外との人間関係を築くのは視野を広げる意味でも確かに大切だ)という思い8割、(私は今でも兄者兄者なのに兄者は他所で友達作ってた…!)という焼き餅2割で父上に「見識を広めるためにも、世情を掴むためにも、市井に下りる時間がほしい」とお願い。
父上のOKもらって町に行くと珍しい外国の商品なんかを売ってる露天商の少グループを発見。
いろいろな国を渡り歩いて商売してるそうで、この町にも数ヶ月ほど滞在して商売したりこの辺の特産品を仕入れたりする予定とのこと。
他国の話をねだる卑劣様♀に、そのグループの中の若者(20歳くらい)が相手をしてくれる。
文化や政治やお伽噺など、若者の知見は広くて足繁く通うようになる卑劣様♀。
実は若者は他国の大名の分家筋の三男坊。国のために働きたいが、生まれ的に重要な役職には就きづらい。他国を直接見聞きしている人間は少ないから、家督争いとは縁遠く、ある意味放任されてる自分の立場を活かしてこうして社会勉強中。
人に物を教えると自分の中での理解も深まるので卑劣様♀の相手もすすんで引き受けてた。
年齢にそぐわず賢くて一を聞いて十を知る、質問の切込みも鋭くて関心する若者。
その一方、少女からお礼にと渡されるのは木の実や山菜といった山の幸で、そこは年相応で可愛らしいと思ったり(ほんとは獣〆て肉でも持っていこうかと思ったけど、一般人を装ってるため自重してる卑劣様♀)。
あっという間に時が過ぎ、本格的な冬になる前に船で次の目的地に渡ることになる露天商一行。
若者は卑劣様♀に自分と一緒になってくれないかと尋ねるが、それはできないと即答され、そうだと思いましたと苦笑い。
せめて贈り物を受け取ってほしいと言われ、後に二代目様のトレードマーク(?)となる白いモフモフをプレゼントされる。
こんな良いものは受け取れないと断る卑劣様♀の手の甲に口づけし、貴女様の前途が幸多いものでありますように、と言って笑顔で手を振り、船に乗り込む若者と、生まれて初めての女の子扱いにちょっと呆気に取られ、それから慌てて「私も貴方のご健勝をお祈りしています。今までありがとう!」と声をかけ、船が水平線に消えるまで見守る卑劣様♀。
日が暮れて家に向かう途中、いつもより帰りが遅くて心配した兄者と合流する。
妹が身につける高価そうなモフモフに、それはどうしたんだと尋ねると、卑劣様♀は少しのあいだ小首を傾げて考え、それから悪戯っぽく
「兄者には教えてやらん」
と微笑む。
その表情は、今まで子供と思っていた妹の、初めて見せる「少女」の顔だった。
健全なブラコンシスコンな千手兄妹いいよなー!カッー!
という気持ちから湧いたネタ。
健全とはなんぞや?→「お互いだけで完結しない」かな?ということでオリキャラが出張ってしまった。
里創設後はモブ忍から「昨日みんなで飲み会行ったんですけど扉間様すごい酒豪だったんですね!」とか言われて、
扉間は優しい奴だけど誤解されやすいんぞ〜ワシは分かってるんだけどな!
とか余裕こいてた兄者を「いつの間にそんな馴染んでたんだ…??」と戸惑わせてほしいですねうへへ。
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こぼれ話
カガミ死ネタ注意
全身の激痛で目を覚ます。
20人の追手の内12人までを仕留めたところでチャクラも忍具も底を尽き、満身創痍の状態でこちらに放たれた雷遁をどうにか避けたものの、その着地点に仕込まれていた起爆札による爆発をもろに受けたところまではどうにか把握している。流石に死んだものだと思ったが千手の丈夫な体は一思いにあの世に送ってはくれなかったらしい。
周囲には物が燃えたあとのような匂いが漂っていて、それに嫌な予感を覚える。
意識を手放す寸前、見知ったチャクラを感知した気がした。
うつぶせに倒れていた体でどうにか首を擡げる。死屍累々と転がる雲隠れのクーデター軍。中には金角銀角の姿もある。扉間は手傷を負わせはしたがとどめを刺した覚えはない。嫌な予感がじわじわと胸を浸食する。そうして、ついに見知った木ノ葉の忍装束を一つ見つけてしまった。
こちらに背を向けて倒れているが愛弟子の姿を見間違えるはずもない。なぜ、撤退を命令したのにここにいる。お前はそんな跳ねっ返りな真似をする奴じゃなかっただろう。
「……カガミ…っ…」
もはや体を起こすことも叶わず、ずるずると這ってそちらに近付く。足の感覚は既にない。もしかしたら感覚どころか足自体が吹き飛んでいるのかもしれなかった。
やっとの思いで辿り着き、ぐいと肩に手をかけて仰向かせ、そうして一瞬、世界が色を失った心地がした。
きっと瀕死の己の感知能力が既に役立たずになっているんだろうと祈っていたが、こうしてカガミの体に触れてもチャクラの流れも心臓の鼓動も何も感じられず、既にその命が絶えていることはあまりにも明白だった。
そうして未だうっすら開かれた瞳。それはうちは一族が生来持つ黒い瞳でも、カガミがついに発現し、扉間に内心複雑な思いを抱かせた基本巴の写輪眼でもない。
かつて里の創設前、千手とうちはが血みどろの争いをしていたときに相対し、また幾度かは発現の瞬間にも立ち会ったことのある目。
その目が発現すると本人のチャクラの質もそれまでとは大きく変質する。だから断言できるが、扉間が囮となって別行動をとると宣言したあの瞬間まではたしかにカガミは万華鏡写輪眼を発現していなかった。なのになぜ。この目が発現する条件がなんであるか、扉間も大まかには把握している。
「……馬鹿者が…!」
自分のことなどそれほどに強く想ってくれなくて良かったのだ。
ただ良き師であったと。火影としての務めを果たしたのだと。そう想ってくれたなら充分に報われるというのに。
扉間は物言わぬカガミの胸に顔をうずめ、しばらくそうした後にチャクラを練り始めた。
もはや心身共に尽き果てた体で、己の命を削りながら無理やりに飛雷針を発動させるに足るだけのチャクラを練る。その無理に体が耐えきれずごぼりと口から血が溢れた。
いざとなったら互乗起爆札で己の体ごと敵を一人でも巻き添えにしてやろうと思っていたが、追手は全てカガミが仕留めてくれた。だったら自分の命の使い方は別にある。
この馬鹿な愛弟子を、妻子のもとへ、里へ帰す。
──僕は扉間先生も、扉間先生たちが興したこの里も大好きです。
弟子たちを一人前として認め、当時まだ作り始めたばかりの額当てを巻いてやったとき、そうカガミは言った。だから忍として尽くすことができて嬉しいと。
当時まだ少年だったが故の純真さからくる微笑ましい言葉だと思っていたのに。
「……本当に、難儀な一族だ…」
扉間は少し困ったような切ないような笑みを浮かべ、飛雷針の術を発動した。
後には、雲隠れの賊たちの死体と、焼け焦げた木々だけが残っていた。
卑劣様はまっすぐな馬鹿が好き
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夢の柱間細胞
・扉間の先天性女体化
・柱間細胞バイオハザード
火影塔の地下には研究室が連なるエリアが存在する。それなりの規模と質が揃った設備ではあるが、なにせ里の黎明期であるため皆実務に忙しく、使用しているのはほぼ千手扉間くらいのものだった。
その扉間も仕事が多忙を極めているため訪れるのはもっぱら業務時間外だ。厳密に言うなら私的使用ではあるのだが、研究目的は真っ当に里のためであり内容もしっかり報告書にまとめられている。その上火影の補佐兼実妹という立場もありそこは黙認されていた。
そんな扉間が今着目しているのは実兄・千手柱間の細胞だった。
柱間の脅威の生命力は衆目の知るところだが、幼少期からともに過ごしてきた扉間にとってもそれは『千手一族特有の頑丈さ』では到底片付けられないレベルである。
これを医術に応用できれば怪我を負った忍たちの死亡率や後遺症などを大幅に軽減できるかもしれない。
柱間のそれは医療忍術ではなく自身の異常な回復力に起因するものであると仮定した扉間は、限りなく純粋な善意の元、兄の細胞を研究しようと決めた。
そして若干引き気味の柱間に頼み込んで細胞のサンプルを採取させてもらい、意気揚々と研究を始めたのだった。
しかしその経過は思わしくはなかった。
兄の細胞が想定より強すぎたのだ。
傷をつけた実験用のマウスに兄の細胞を埋め込んで経過を観察してみたが、ちょっとマウスの免疫や体力が落ちると兄の細胞が異常増殖して本体を乗っ取ろうとしてしまう。
増殖した細胞が木状に変質して増大し、挙句の果てにはそこに兄の顔が浮かび上がったときにはさすがの扉間もゾッとした。
あのマウスにはさすがに悪いことをしたとちょっと憐れみさえした。
もう少し細胞の成分を薄めたらうまくいくかも、と思わなくもなかったが扉間もああ見えて人の子である。あの光景があまりにショッキングでこれ以上研究を続ける意欲が薄れていた。
……止めよう。よくよく考えたら兄者の細胞ありきの医術では今後の世代に引き継げない。もっと恒常的な技術を発展させるべきだ。
扉間は自身に言い聞かせ、採取した細胞たちは火遁で念入りに焼却処分した。
「それにしても、本体から剥離した細胞でもこれだけの回復力を見せるとは。今まで戦場で兄者の血に触れた忍たちもただでは済まないかもしれないな」
まぁ他ならぬ自分が幼少期から幾度かは確実に兄の傷から流れた血に触れているし、そんな自分が今まで何度も大怪我を負っても傷口が木になったりも兄の顔が浮かび上がったりもしなかったんだから杞憂だろうが。
そんな扉間の笑えない冗談は、聞く相手もなく研究室の石の壁に吸われていった。
里の河川敷をのんびり歩いていたマダラは、背後から女の悲鳴が聞こえてぎょっと足を止めた。
繰り返すがここは里の河川敷であり、戦場ではない。そんな場所でなぜ悲鳴がと思いながら振り向くとドン、と胸に人影が飛び込んでくる。
見下ろしてマダラは更に驚いた。はぁはぁと息を切らしながらマダラの胸にしがみつくのは、なんとあの千手扉間だった。戦場で死にかけるような大怪我を負ってすら悲鳴を押し殺して気丈に振舞ってきたような元仇敵が生娘のような悲鳴をあげて取り乱している。
「おい、いったい何があった?」
マダラが声を掛けると、扉間はやっと気が付いたように顔を上げた。
「あ、まだら、あに、兄者が…いや、あれは兄者なんかじゃ……」
元から白い顔は更に血の気が引いて真っ青で、あまつさえ涙まで零している。
確かに柱間は意見が対立し、なおかつ譲る気がないときに扉間を威圧することはある。だが扉間とてそれで泣き出すような可愛らしいタチではない。なにが理論武装を地で行く扉間をここまで怯えさせているのか。その幼い子供のような怯えっぷりに、マダラはついつい長男気質が働いた。
「柱間がどうかしたのか?落ち着いて話してみろ」
「あ、ああ…実は、」
扉間の腕に手を添えてそう穏やかに声を掛けると、扉間はどうにか頷いて説明を試みようとした。そのとき、扉間が走ってきた方向から別の声が聞こえた。
「トビラマー、マツンゾー」
ひゅっ、と扉間が息を飲む音がした。
扉間の背後に視線を移すと、そこにいたのは柱間……のように見える木人形だった。
輪郭だけは柱間を象った、木目も露わな人型のそれが、柱間そっくりで、しかし抑揚のおぼつかない声を発しながらふらふらとこちらに歩み寄ってくる。
「な、」
そのあまりの光景に絶句する。まだ現実を受け入れられないマダラは木分身かと思おうとしたが、それにしてはあまりにお粗末だ。
扉間が怯え切った様子でマダラの服を掴む手に力がこもる。
木人形と柱間との関連性があるのは間違いないだろうが、ブラコンの気がある扉間がここまでの反応を見せているということは、肯定的な存在ではないのだろう。
ならば燃やしてしまうのが手っ取り早いかとチャクラを練ると、更に反対方向から声が聞こえた。
「オイテイクナンテヒドインゾー」
「トビラマー」
「トビラマー」
「オオ、マダラデハナイカ!」
「フタリイッショトハメズラシインゾ」
「ナカガイイノハヨイコトゾ」
「ワシモマゼテホシインゾー」
気が付けばわらわらと溢れ出た木人形に囲まれていた。
その異様な外貌と、一様にたどたどしく、しかし親し気に発される柱間そっくりの声音。
そのあまりのおぞましさにマダラの背中に冷たい汗が伝った。
「……と、いう夢を見たんだ……」
げっそりとそう言うマダラに、柱間は大笑いで膝を打った。
「それで朝から碌に目を合わせてくれなかったのか。ワシが何かしでかしてしまったかと心配して損したわ」
「笑いごとじゃねえよ。気を抜いたら今もあの光景が浮かんできそうなんだからよ…」
そう言いながらのっそりと筆をとって書類に目を通す。
夢見が最悪だったせいで仕事の進捗はすこぶる良くない。そろそろ扉間が市井の視察から戻ってくるというのにこの山積みの書類を見たらどんな小言を言われるか。
そんなことを思っていたらその扉間が火影室のドアを開けて現れた。
「いま戻った。商店街もずいぶん活気が出てきてこの調子なら…、」
言いながら机に向かっていた扉間は、そこで柱間の顔を二度見して足を止めた。
「……兄者?え?だってさっき資料室に向かうと言って廊下をすれ違ったはずじゃ……?」
その言葉にオレは思わず柱間を見る。
「ん?ワシはずっとここにおったぞ?」
そう答えた柱間の首元、襟からかろうじて見える素肌部分の一部に木目が見える。
──カツンと、マダラが取り落とした筆が床に落ちる音がそらぞらしく室内に響いた。
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