【カオス転生三次】名無しのガイア連合技術部員が戦闘職を始める様です。 (クエゾノ)
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これは追放・・・でいいんだろうか?

「たまにはお仕事休まない?」

 

いきなり、愛しのマイ式神に言われた。

思わず彼女を見る。

銀色のフワッとしたセミロングの髪からぴょこんと突き出る黒い猫耳、

そして、緑色の瞳がこちらをじっとみつめている。

 

前世のアニメのストパンのサーニャ・リトヴァクの記憶をベースにリアル化した自前の3Dモデルをガイア連合山梨支部技術部の式神用3Dプリンターに読み込ませて作った、出し入れできる猫耳としっぽ以外は、人間そっくりの人型式神である。

 

ガイア連合、それが自分の所属している組織の名前である。

このメガテンの世界に転生してしまった自分達転生者達の寄り合い所帯であり、いずれ来る終末に備えるための相互扶助組織、富士山山麓にある星霊神社の転生者の神主をトップとし、終末に備えるための各種オカルト技術の開発やシェルターの建設、異能者のレベル上げ、終末が近づいた事によって発生した無数のオカルト事件の解決を行っている。

 

ガイア連合の際立った特徴は、所属する転生者のレベル上限が非常に高いことやメシア教と仲がいい等いくつかあるが、単体で見たときに目立つ特徴として、特殊な式神を基盤技術に置いている事である。

 

式神、元々古来より日本で使われていた使役される悪魔の総称であり、人に使われる調伏された悪魔や人工の悪魔の事である。

 

ガイア連合で使われているのは、マグネタイトと呼ばれる人間が発する悪魔や魔術を現界させるのに必要なエネルギーの不足によって、現界に失敗してスライムになった悪魔を術式によって素体に封じ込めて従順な人工の悪魔としたものである。

 

スキルカードを使うことで様々な技術や魔術をインストールでき、簡単な機能を持たせた簡易式神は異能の力に目覚めていない非覚醒者でも使えるのに加えて、高性能式神に関しては、それなりにお値段はかかるが、外見的なデザインやスキル構成、人格の方向性や口調は自由にオーダーメイドできるのもあって、各自の理想のパートナーを実現できる。

 

自分はそんな式神を開発、製造しているガイア連合式神製造部の一員である。

 

いくら初回は安めになるとはいえ、式神制作費のためにこれまでに怪異依頼の解決で貯めたマッカと特許や商標権、株で儲けた貯金を使い果たしたなーとサーニャを手に入れた当時のことを思い出す。

 

まあ、ガイア連合の技術部で働くのに加えて、さらに副収入が入るようになってからは、以前とは比べものにならないほど儲かっているので、

今になっては、端金・・・とは言えないが、大金とは言えない程度だが、

 

「ええ・・・」

 

思わず呟く。

初期の頃は前線で依頼をこなして戦っていたが、中々上がらないレベルにうんざりしたのと、式神製作に目覚めて、裏方の技術部の方に移った。

 

式神製作のための交神術や術式の訓練はきつかったというか地獄で、受けるガイア連合員のほとんどは脱落するが、その中では珍しく、最後まで残って簡易ではない下級式神を作れるようになった。

 

お陰で、ガイアトップの神主の製作した式神には遠く及ばずとも人型の式神を作れる数少ない技術部職員として、わりと儲けている。

 

そのせいもあってあんまり現場に出ることはない。

ただ、レンタル用に製造した新品の自前の式神の初期のレベルアップのために、下級の異界に行くことはたまにある。

 

「仕事あるからなぁ。

式神製作依頼は積もっていく一方で終わらないし、

あ、もしかして疲れた?

それなら、サーニャの休暇入れるよ。」

 

「・・・その分、他に貸してる他の娘を入れて、足りない分はあなたが働くんでしょ?

だめよそんなの。

それに私は、メンテナンスうければ疲れは無くなるから大丈夫。」

 

「そっかー・・・」

 

この手のやり取りは何度も繰り返しているが、休みを取ることは無い。

 

純粋に式神製作依頼が多すぎて、自分が抜けると後々抜けた分だけデスマーチを繰り広げる羽目になる。

 

最近始まった二度目覚醒訓練などという拷問を受ける余裕があるのなら、拷問度は同じくらいな式神製作訓練を受けて、式神作れる連合員が増えて欲しいと切に願っている。

 

「でも、レベルを上げて、マグネタイトを増やさないと、大変だよ?」

 

「マグネタイトは買えるから、サーニャ達への供給は減らさないさ。」

 

「むぅ~そうじゃなくて・・・」

 

と、そこで、

 

ピピピピピピ

 

アラームが鳴った。

 

「そうじゃなくて?」

 

「・・・なんでもない。」

 

「そっか、あー、もう時間か、行かないと、」

 

白々しく言う。

この後、詳しく聞いても心配げに仕事を休むように言ってくるのは分かってる。

 

心配してくれるのは嬉しいし、確かに休んで一日中横になってサーニャの耳やしっぽをのんびり弄くりまわしていたい気持ちもあるが、人型式神の生産は急務で、下手すると死者が出たり、ハニトラに引っ掛かって悪徳宗教に転ぶ奴らも出てくる。

 

マイ式神はとにかく、各支部に配備されている各種レンタル式神の充実度は、もろにその地域の異能者だけでなく、一般住民の死傷率に関わる。

 

その支部のレンタル可能な式神に速の高いテトラジャ持ちレンタル式神がいなかったおかげで、特定の依頼が消化されず現地勢が何組も死亡なんてことが普通にあるのがこの界隈である。

 

なので可能な限り、人型式神を量産しなければならない。

・・・まあ、なんだかんだ言っても、人型式神という人間に従順な美しいものを作るのが好きというだけだが、

 

護身用の装備一式を体に身につける。

カルンウェナンレプリカ、黄金銃、各種護符・・・

外とはいえ、山梨支部の中で襲われることは無いとは思うが、ここは女神転生の世界、レベルが低いのに油断は禁物である。

 

そこでサーニャが乾燥機から出した仕事着を鞄の中に入れて、とてとてとやってくる。

 

「ありがとう。」

 

そういって受け取る。

 

「じゃあ、行こう。」

 

サーニャに手を引かれて、玄関を出る。

 

 

 

 

 

ガイア連合山梨第一支部は、おとぎの国の様である。

 

澄みきった力の溢れる空気の中、無数の式神が飛び交い。

至るところに大きなイヌガミやクダキツネや蛇・・・トウビョウと言うらしいが寝そべったり、のんびり歩いたりしている。

なんだかんだ言っても、こうして行く宛の無い、イヌガミやクダギツネを拾ってきて放し飼いにしてるあたり神主は動物好きだなぁとか思ってしまう。

・・・自分等転生者も神主に拾われた動物だろうか?

 

「くぅん」

 

足に感じた何か擦れる感覚に目を下ろすと、時々家に餌をねだりにやってくるシベリアンハスキーっぽい灰色のイヌガミと目があった。

 

「悪い。餌今持ってないわ。」

 

「そうじゃないよ。

この子、なでてほしいみたい。」

 

サーニャが言う。

見ると、サーニャの周囲には何体かの式神やクダギツネやイヌガミ、各種悪魔が寄り添っていた。

それを上手にあやし、いなしている。

原作に基づいて人格には動物好きの指向性を与えたが、いつの間にかすっかり魔獣マスターになってしまった。

 

「そっか、よしよし」

 

頭から首、首から胴体に向けて何回か撫でてやる。

 

そうすると、満足したのか、イヌガミは親しげに一声鳴くと緩んだ表情を浮かべ去っていく。

 

「あの子、人懐っこいし前の主人が好きだったけど、あんまり可愛がられて無かったみたい。」

 

「そっか、」

 

可哀想とは思うが、そういうものだ。

ただ、今度家に来たときにはもう少し可愛がってやるかとも思う。

 

 

 

 

 

神社の近くに聳える、おとぎの国にしては不似合いなコンクリートでできた巨大な施設群、その一つが目的地のガイア連合山梨第一支部の霊的装備製造工場である。

 

スルッと結界を通り抜ける感覚とともに中に入る。

 

方々に自由な・・・というより自由過ぎるコスプレな服装で内勤組が各職場に向かっている。

 

自分のように式神を連れている人もちらほら見かける。

 

セーラー服を着た仲の良い女学生達がいると思ったらTSしたコスプレ成りきり勢とその式神だったりするので、見た目とのギャップで頭がおかしくなりそうになるが、もう慣れた。

 

生まれ変わったので好きなゲームやアニメの登場人物の様な格好と振る舞いをして〇〇に生まれ変わったのだ!

と主張している連中は成りきり勢と呼ばれている。

 

ネタかと思えば色んな意味でガチな連中も混じっていて、そういう人ほどレベルが高くて修羅場を潜っており、揶揄するような事をいえばとんでもないことになるので、基本的にその手の事を揶揄すべきではない。

 

まあ、好きな作品の装備を再現して装備した結果、成りきり勢と呼ばれるようになった人もいるので一概に生まれ変わったと主張しているわけでもないが、

 

最近ではほとんど見ないが、丈夫な厚手の長コートと、大型改造ノコギリと手製銃ないしショットガンの組み合わせによるbloodbornの狩人じみた装備は、装備の支援体制が整っていない初期の頃に、素質が力、速に向いた前線組によく見られ、狩人の成りきり勢扱いされたこともあったが、彼らは別に狩人に転生したと主張している訳ではなかったなと思い出す。

 

素質が魔術系でなければ一度やってみたかった・・・

 

そんなかつての古狩人達のことを思いだしつつ、自分の仕事場に向かう・・・

前に食堂に寄る。

 

「弁当用ガイアカレー一つ、ご飯抜きで、」

 

「はい、」

 

ガイアポイントカードを読み取り機に翳すと、艦これの加賀の外見をモチーフに製造された調理用式神が水筒を取り出し、慣れた手つきで素早くカレーを入れて蓋をする。

 

「どうぞ。

1日位しか持たないから気を付けてくださいね。」

 

「どもー」

 

ガイアカレーは複数の霊薬を混ぜて作られた回復用の食事である。

食べると数時間かけて体力や傷や魔力をゆっくり回復させてくれる。

ただ、ゆっくりでは間に合わない場合には吸収高速化の霊薬を一緒に飲むことで45分ほどまでに回復にかかる時間を短縮できる。

 

水筒を受けとってから今度こそ仕事場に向かう。

 

 

「おはようございます。」

 

「おはよー」

 

挨拶しながら職場の第二式神製造部に入って、まず真っ先に、机の上に置かれた本日製作する七体の式神の仕様書を確認する。

 

忙しいときだと1日十五体という本気で殺しにかかってるとしか思えない量を捌くこともあるが今日は七体というわりと標準な数である。

 

1日十体を越えるのが連続する時は基本的に家に帰らず職場で寝泊まりして、魔力と体力が回復するここの回復温泉に半分浸かりながら睡眠を取る羽目になる。

 

そんな事を思いつつ、仕様書を確認する。

 

・・・ピクシーのスキル構成をベースにテンプレートにした初心者向け式神が三体、施設設置用の特定のスキルをセットした式神が三体、あとは転生者の趣味人のオーダーメイド品が一体、

キャラクター性は仕様書の設定と付属のSSと動画ファイルを参照、

内、四体はテンプレートの標準人格

 

この部署では、式神製作は共同作業で、自分は訓練を突破できた人が少なく製作のボトルネックになっている交霊による指向性を持たせたスライムの降霊と術式による拘束、触媒への封入を行っている。

 

式神ボディたる人型を作ったり、人型にスライムの入った触媒を入れて慣らして仕様書通りに術式で精密調整する担当とは別である。

 

そんなことをつらつら考えながら仕様書のデータを確認し、スライムを降ろす上で個人的に、注意すべきポイントを仕様書に追記していく、

 

「よしっ、8:15より降霊作業開始します。」

 

そう言って、仕様書を持って隣の交霊室に向かう。

 

交霊室の前にはロッカーがあり、そこでゆったりした服装に着替える。

初期は和服だったが、パジャマの方が楽でねということで、白っぽいパジャマを使っている。

 

パジャマに着替えると自分の交霊室に入る。

 

このドア以外にも、触媒の入った瓶が送られてくる小さな窓や、カーテンのように布状の防音素材を重ねた無音で入る事ができる出入口もあって部屋としては閉じてはいないが、

 

防音素材に包まれた部屋の耳鳴りがするほどの無音と、畳と座椅子以外何もない薄暗い部屋は、交霊修行の時の第六感の感覚器まで潰された真の暗闇を思い出さされる。

 

小窓を押すと、小窓が開いて触媒の入った瓶が出てくる。

瓶に書かれた番号と依頼者名を仕様書と照らし合わせて間違いがないことを確認して座椅子の前に置く。

 

「さあ、始めるか・・・」

 

呟いた声は響くことなく、壁に吸い込まれて消えていく。

 

座椅子であぐらをくむと、息を止め、目を閉じた。

 

 

瞳が作る暗闇の中、闇の中に感覚を沈みこませていく、

 

深度が深くなるに従って周りは冷たくなっていき思考も鈍くなっていく、

 

次第に冷たさが痛さに変わっていくが、身を任せ、さらに深くへと沈みこんでいく、

 

と、見えないはずの瞳に幽かな明かりが見えた、

 

そこを目指して沈んでいく、

 

やがて明かりは視界一杯に広がって不思議な極彩色を放つ、

これは、全ての概念の集合体、概念存在である悪魔はここより生じ、ここに帰る。

 

その明かりに手を差しのべ、ぼやけた意識の中、仕様書を思い出し、願う概念の形を手繰り寄せ、粘土を捏ねるように術式を詠いながら形を作ってゆく。

 

仄かに温かく微睡むような手触りのそれを捏ね、潰し、曲げ、目的の人格やスキル、耐性を形成して求める魂にしていく、

 

出来た。

 

完全とは行かないが、これが精一杯、

 

そっと、しかし強くそれを握ると、一気に上まで浮き上がる。

 

手の中で整えた魂が底から引き離すなと暴れ、形が崩れ、手の中が燃えるように熱くなる。

それに離すものかと手に力をこめ、術式で縛り付け、崩れるのを必死で止める。

 

それに対抗し、魂は手が炭化しそうなほどまでに熱を放ち、崩れて手から逃れようとする。

 

そこで、そっと冷ややかな白い手が自分の手に重なり、熱を奪うのと同時に、唄の様に聞こえる術式が、自分の術式に重なるように魂を縛り付け、魂の形が崩れていくのを抑える。

 

そこで表層まで浮上したことで目の前に現れた空の入れ物に魂をぶち込み、そのまま力一杯、封をかける。

 

持ってきた魂は少々不恰好な崩れた形のまま、スライムとして生まれ、溶媒に取り憑いた。

 

それを確認して、目を開ける。

 

「つっ!はぁっ、はぁっ、はぁっ・・・」

 

止めていた息を吐き、隣に寄り添っていたサーニャに寄りかかる。

 

「ディア!」

 

サーニャの回復呪文に少し体が楽になる。

 

交霊中は隣に何かいると意識の妨げになるが、交霊が終わって術式で形を整えた霊をスライムとして無理やり溶媒に降ろす降霊の段階になると、深く同調している式神のサポートを受けられる。

 

なので降霊のサポートを行う式神は、交霊終了間際にカーテンの方から静かに入って、降霊の段階になったらすぐに術式のサポートを行う体制になっている。

 

さらに、触媒への降霊が失敗してスライムとして具現化したものと一戦交える羽目になることもあるので、この手のサポート用式神は必須である。

 

「成功したわ。お疲れ様。」

 

サーニャが体に付いた氷を優しく払いながら言う。

交霊を行って向こうにいっていると、向こうの寒さが直接具現化するのか、なぜか氷が体に纏わりつくように現れる。

元から氷系の魔法は得意だったが、お陰で、レベル上げや訓練等していないのに、氷系の魔法に関してはかなりの腕前となっている。

ただ、レベルに不相応な魔法を使えても、MPが低いのでろくに生かせないが、

 

「ありがとう・・・

今何時?」

 

そこでサーニャは自分の腕時計を確認する。

時計の類いは集中を乱すので置いていない。

 

「9:33ね。」

 

「あー一時間以上かかっちゃったか・・・

次はもうちょっと早めにやる・・・」

 

「無理しないで、」

 

「大丈夫・・・ありがとう。

 

・・・この溶媒の式神ボディへの定着お願いね。」

 

以前は降霊に関わった人が式神ボディへの定着までやらないと定着させずらかったので、交霊~定着まで行っていたが、

 

降霊の部分を式神が協力して行うようになったお陰で、降霊と定着を分離させて、人間が交霊と降霊を行った後、さらに降霊に携わった式神が定着を行えるようになった上、

降霊の後、霊薬でいちいち回復する必要が無くなり、交霊~降霊に集中した流れ作業の一部としてできるようになったおかげで作業効率があがった。

 

昔、それこそ溶媒を使っていなかった頃は、式神ボディの原料作りから式神の完成まで自分が関わっていたのに比べると生産性が相当向上している。

そもそも触媒自体が、量産性を上げるためにウチの部で使われるものだが、

 

ただ、今でも忙しい時にはノルマの溶媒への降霊が終わったら他の担当にヘルプに入ることもあるが、

 

・・・たまには自分で、自分がデザインして魂を入れた人型を弄くりたくなる時もあるが、そういう時は、人型の素材を作った上で、ガイア連合の式神造形部の3Dプリンターで仕様書通りに製造してもらって、家で魂入れと術式がけを行う。

 

基本的に1日作業なので数少ない休日か無理に取った休暇にしかできないが、

 

山梨第三支部に貸し出してるニーナも育ってるし、生体素材も貯まったし久しぶりに、自分で式神作りたいなぁ・・・

 

そんなことを酸欠でボケた頭で考えつつ、手は仕様書を手繰り寄せ、次の式神の仕様を確認しようと動く。

 

サーニャはそんな様子を見て、仕方ないなぁと笑みを浮かべる。

 

「じゃあいくね。」

 

サーニャはスライムの入った溶媒を持ってカーテンの方から出ていく。

 

それを見送ると自分は次の作業に取りかかる。

 

午前中は後二体、午後は四体仕上げねばならない。

 

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・終わった・・・」

 

午前作業終了、ぼやけた意識の中でそれだけが浮かぶ。

 

「大丈夫?立てる?」

 

「なんとか・・・」

 

よろよろとサーニャにもたれるように立ち上がる。

 

サーニャは溶媒の入った瓶を抱えると、今度はドアを開けて、更衣室まで支えてくれる。

 

そこで、更衣室のロッカーに倒れ込むように手をついて、弁当のカレーの入った水筒を取り出して、口から流し込む。

 

色々固形物が喉を通るが気にする余裕はない。

飲み終わると、もうひとつ、小びんに入った霊薬の吸収を早める霊薬を取り出して飲み干す。

 

これで午後の作業までにはガイアカレーは吸収され回復の効果を発揮する。

変にガイアカレーの回復効果が残ってると、向こうへ降りづらくなるのでこれは必須である。

 

「食べ終わった?」

 

「ああ・・・」

 

「トラポート」

 

サーニャが瞬間移動の呪文を唱える。

 

一瞬で景色が代わり、工場作業員用の風呂場の前にいた。

 

「お疲れ様・・・ゆっくり休んでね。」

 

「サーニャもお疲れ様、定着終わったら休んでな・・・」

 

そういって、男湯の簾を潜って、服を棚に突っ込むと風呂場に突撃して倒れ込むようにして湯船に入る。

 

入る前に体を洗うべきだろうが、そういう余裕がある人向けの湯船もあるので、こっちは基本的にそのまま入って良いことになっている。

 

「はぁ・・・」

 

息をつく、

ここは本殿の回復温泉が引いてあり、浸かるだけで体力怪我魔力ともに回復するという素晴らしい効能がある。

 

「あ゛~・・・酸欠で死んだ脳細胞が蘇って行くのが分かるー・・・」

 

神主いわく、受精卵状態でも感じたり思考することはできるらしいので、脳細胞が感覚や思考に必要と言うわけでもだろうが、

こうやって脳が蘇って意識がはっきりしていく感覚はとても心地がよい。

さらに冷めきった体に熱が伝わり、まるで生き返ったような心地になる。

 

そのままのんびりと漂う。

 

昔は一人向け風呂もあって、時間に余裕があった頃はサーニャと一緒に入ったりもしたが、

酒を流して酒風呂にしたり、風呂場で自分の式神と致す人が無数に出たので無くなった。

 

・・・正直悪かったなとは思っている。

 

そんなことを思いだしながらぼんやりと漂う。

 

ある程度回復して、体が普通に動くようになってきたので、湯船からでて、体を洗う。

 

何だかんだで先程の湯船は結構汚れているので、ある程度回復したら、体を洗ってきれいな湯船に移るようになっている。

 

交霊組は、スライムを降ろすノルマが終わったところで一時間の休憩を取れるので、基本的に他の作業員とは休憩時間が途中まで被らず広い温泉を独り占めできる事がよくある。

休憩時間に霊験あらたかな温泉を独り占めできるなんて贅沢な職場だなぁとのんびりと湯船に浸かりながら考える。

 

そこで、ちらりとかけてある時計を見る。

・・・休憩終了間際までこのままのんびりしてれば、体感的に体力気力魔力ともに十分回復できそうである。

 

そのままのんびりしていると、次第に騒がしくなってきて何人ものガイア作業員が入ってきて湯船に浸かり始めている。

 

見知った顔もちらほら見かけるが、ここはせっかくの回復タイムである。

目を閉じて回復に勤める。

 

 

 

「12:30より午後の交霊作業開始します。」

 

呟く。

机に突っ伏して寝てる人、忙しく作業している人等で職場は混沌としている。

今休憩しているサーニャ宛に開始時間のメモを残し、交霊室に向かう。

 

今回降ろすのは初心者向け式神用のスライムである。

ガイア連合では非転生者からの高性能式神のオーダーメイドは基本的に受け取らないので、外に出す場合、いくつかのテンプレートに沿った特性を持たせた式神を製造して売りに出す。

 

以前、オーダーメイド依頼で、【子守唄】【ジバブー】【トラポート】【マリンカリン】【高揚の歌】【ジオ】【ディア】セットのお前何に使う気だと言いたくなるような、誘拐、洗脳等、犯罪特化の特性をもたせた式神の製作を依頼されたこともあって、

無制限に式神のオーダーメイドを受け入れたら現地民がヤバいことをやらかすのは目に見えてるので、一定の制限は仕方ないと思う。

 

外見は購入時のオプションで調整できるのもあって、理想の嫁を求める非転生者が凄まじいマッカとフォルマ(非転生者の式神購入はマッカとフォルマ払いのみ)をつぎ込んで来る。

 

ちなみに外見モデルや人格特性のテンプレートも存在し、それに沿った式神もつくられている。

サーニャのデザインや口調や人格の方向性もテンプレートとして登録されており既に複数体作られていたりする。

モデルに関しては登録した造形主がロイヤリティを受けとれる制度になっており、これで非覚醒者のデザイン担当の作業員でも儲けられるというわけだ。

 

この辺りは自分のモデルを流用されたことに、デザイン担当の一派が切れて、モデルを自由に流用していい派との間で揉めまくって、問題化したのをきっかけに整備されて、特定のモデルを元にモデルを作って製造する際は、使用料を払わなければならなくなった。

 

自分もデザインのテンプレートを多数登録しているが人気は・・・まあ、ぼちぼちである。

 

そんなことをつらつら考えながら新しい寝間着(午前使っていたのはカレーの香りがついているので交霊する上で邪魔になる。)に着替えて、交霊室に入る。

 

さて、今日は残り4体だ。

 

 

 

霊薬を飲み干し回復した後、風呂に浸かって回復した。

午後の作業終わりにはサーニャと夕食をとるために腹が膨れるガイアカレーではなくお高めの回復用霊薬を使っている。

 

サーニャと帰り道を歩く。

疲れてるだろうし、食堂でエエよと言うと悲しそうな顔をするので、忙しかったり疲れてる時以外は、基本的に家でサーニャの手料理を味わっている。

 

なにもしゃべらないでもこうしているだけで心が満たされ、働いたかいがあったなという気持ちになってくる。

 

そして家で食事を終えると、いつの間にか現れた朝のシベリアンハスキーっぽいイヌガミやサーニャによく懐いているクダギツネを二人して可愛がりながら、のんびりする。

 

「サーニャ、そろそろやるか、」

 

「・・・毎日しなくてもいいよ?大変でしょ?」

 

口ではそう言うが、期待した目でこちらを見つめてくる。

 

「いいの、僕もしたいんだ。」

 

空気を読んだのかイヌガミとクダギツネはいつの間にかいなくなっていた。

 

そのまま、自分の部屋に向かう。

ごちゃごちゃと本や機械や式神整備や製造の道具が転がり、サーニャが片付けなければ足の踏み場すらなくなっていたであろう部屋、

 

その部屋の真ん中近くに置かれている台に腰かけると、サーニャは少し微笑んで顔を赤らめながら服を脱いで、台の上にうつぶせになる。

 

「来て」

 

「おう。」

 

台を起動させる。

魔方陣が広がりサーニャを包み込む。

 

「式神術式には異常ないな。

内蔵スライムも不思議なほど安定してる。

式神の人型にも異常は・・・

これ昨日の残りか、吸着が遅い?

・・・というほどでもないけど、ちょっと弄るか」

 

サーニャの白い背中に手を当ててから各部に触れ、一つ一つ、サーニャを構成する要素を確かめて手入れしていく、

 

自分の手の中でおとなしく手入れを受け入れているサーニャを見ると、人形の手入れをしているような変な気分になってくる。

 

人形趣味は無かったはずだが、その手の趣味も分かる気がする。

 

この類いのメンテは大きな異常が無い限り、やらなくても普通に問題ないというか、毎日やってる人も、できる人もほとんどいない。

 

ただ意味が無いかというとそうではなく、メンテで歪みを取り払ってやると式神が安定して成長も早まるらしく、毎日の行為とあわせてサーニャの成長率は異常で、あんまり実戦には出ていないのに自分のレベルを遥かに追い越している。

 

まあ自分が持っていてレンタルに出している式神はだいたい自分よりレベルが高いのでアレだが、

終末が近づいたせいもあるが、自分の時より明らかにレベルアップが早い自分の式神達を思い浮かべる。

 

「今、他の娘のこと考えてたでしょ」

 

少し、ジトッとした口調でサーニャが呟いた。

 

「うぇっ、ごめん」

 

思わず変な声が出る。

 

「今は、私に集中して・・・ね?」

 

「あい分かった。」

 

今度は余計なことを考えずに手入れに集中する。

 

 

 

「他のあなたの式神を診るときも、その娘以外の私や他の娘のこと考えてちゃだめだよ」

 

一通り手入れが終わるとサーニャは服を着ながら言う。

 

「ごめんて、でも、いつもメンテしてるのがサーニャだから、メンテの時に思い出さないでやるのは難しいかも、」

 

「それでもだめ」

 

そのままコツンとサーニャは寄りかかるように額を僕の胸に当ててくる。

 

「私はあなたの式神、思いから毛一本まで式神の全ては式主様のもの。

そして、式主様のものは全て式主様のもの。

でも、式神が式主様の心を捉えた時間だけは二人のもの。」

 

吟うように呟く。

 

「だから、式神の事は大事にしなくてもいいけど、式神との時間は大切にしてね?」

 

「サーニャ・・・」

 

心が、捕らわれる。

そして、この存在は自分のものだという欲望と大事にしなくちゃと言う思いが沸き上がり、サーニャにMAGとして流れていくのが分かる。

 

ふ、と顔を上げてサーニャはこちらを見て微笑んだ。

 

「少し、早いけど、一緒におやすみしよ?」

 

そういうと二人してベッドに潜り込んだ。

 

 

 

チュンチュン・・・

 

隣のもぞもぞする感覚に目を覚ますと、サーニャがベッドに腰かけて白っぽいブラジャーを着けていた。

 

白いうなじから背中がなまめかしい。

 

「おはよ。」

 

「おはよう。」

 

サーニャが微笑んでくる。

 

そこで起きる前に日課をこなさなければ、と、ベッドの隣においてある献血装置の針を体に突き刺してボタンを押す。

 

夜やることもあるが、朝やると、適度に血が抜けて交霊しやすくなる。

 

ぐわーんと機械が動き出して、血が抜けて行く、

こうして抜かれた血は自分用の式神パーツ用の生体素材になって、新しい式神を作るときや、式神に欠損が生じた際に使う。

 

血以外にも髪の毛や皮膚、肉、骨も使うが、手っ取り早く量を稼げるので毎日の様に血を抜いている。

 

「さて、今日も1日、式神を作るかー」

 

呟いた。

 

 

 

いつも通り、第二式神製造部に入ると、なにやら雰囲気がおかしい。

いつもより緩んでいるというか、そもそも人が少ない。

 

「?おはようございます。」

 

「おはよう。

早速だけど、神主が呼んでるから神主の事務室に行ってね。」

 

「部長?」

 

いつもはピリピリしていた部長が晴れやかな雰囲気で笑みを浮かべて立っていた。

部長は、人形好きが高じ、式神パーツを移植しまくって、少女とも大人の女性ともつかない不思議な雰囲気の長い銀髪青目のロリ体型を手に入れ、さらに黒いドレススーツで決めているのでさながら大きな人形と見間違いそうになる。

 

「神主がですか?

何かあったんですか、」

 

「自分で聞いてきて、

あ、サーニャも連れて来いって、」

 

「わかりました。行ってきます。」

 

「おつかれさま、行ってらっしゃい。」

 

サーニャのトラポートで神社前に送ってもらう。

 

ただでさえ多忙な神主の時間を無駄に使う訳にはいかない。

 

そのまま鳥居をくぐり抜け、社務所へ向かう。

 

 

 

神主の事務室は色々な物で散らかっている。

式神造りから各組織との交渉、術式開発まで行っているので、様々なものが必要なのだろう。

 

こうしている今でも、事務員や式神が駆け回って、書類を積み上げている。

 

その中央に座す一見子供にしか見えない長髪のショタ、彼こそがガイア連合のトップにしておそらく人類最強の神主である。

 

「わざわざ呼び出して悪いね。」

 

「いえ。大丈夫です。

ただ、式神製作があるので手早くお願いします。」

 

「相変わらず、君は硬いなぁ。

もっとフレンドリーで良いんだよ?」

 

基本、神主に敬語使う転生者は少ない。

神主の態度がアレなので、そのあたりはアットホーム?である。

 

「こっちのが楽なので、」

 

なので、こちらも口調こそ丁寧語だが、態度はわりといい加減にしている。

 

「そっか~

ところで、その仕事の件だけど、」

 

「はい、」

 

「無期停職ね。」

 

「・・・は?」

 

「ついでに、式神も没収後封印ね」

 

「待てコラ」

 

思わず口調が荒くなった。

 

「君のレベルはいくつだっけ?」

 

「7ですね。」

 

「・・・それで、その隣の子のレベルは?」

 

「37ですね。

毎日のメンテの賜物です。」

 

「・・・あのさあ、なにか僕に言うことない?」

 

「・・・いえ別に・・・」

 

目を逸らしながら言う。

 

「式神は持ち主のレベルを超えられない様にできてるはずだけど、」

 

「簡易式神やシキオウジは超えられます。

ならば、高級式神も持ち主のレベルを超えられるようにすることは可能です。

基本的に高級式神は式主との結びつきが強く、その関係で式神はレベルの制限が起こり、式主のレベルを超えそうになると式主と式神の同調が乱れて、式神は吸収したマグネタイトを自分の成長に利用できなくなるのですが、

メンテや調整、手動アップデートの際に吸収したマグネタイトを使って行うと、この同調を無視して成長させられます。

しかし、同調が乱れていることには変わりないので、成長を維持できませんが、この際、式主の生体素材を多めにした式神だと、式神に含まれる生体素材を式主と誤認させて、必要な分だけ自己同調させることで安定化させる事が可能です。

それに、一度、自己同調させると次からは自動レベルアップができますし、」

 

「・・・製作者の目の前で、堂々と式神の安全装置の外し方解説しないでくれる?」

 

「え?これ安全装置だったんですか?

説明してくださいよ。」

 

思わず棒読みになる。

 

「詳しい説明あったら、外す奴多いでしょ?

まあ、それはいいんだ。

君以外にもやってる人多いし、

特に君は自力でそれに至れたから、

ところで、君が持ってる。高性能式神、何体いるっけ?」

 

「レンタルに出してる娘も含めて24体ですね。」

 

「・・・あのさあ、レベルといい、少しはおかしいって思おうよ。」

 

「全員分のMAGの足りない分は、購入と地脈で賄えますし、レンタルに出してる分お金やMAGになるので、まだまだ余裕があります。」

 

「余裕がある(個人MAGはすっからかんだけどまだ細かく分けられる)っていうの止めてくれない?」

 

基本的にレンタルでは各支部に貸し出しているので、MAG自体はそれなりに補給されるが、足りない分は、自分の式神なので送っている自分のMAGと購入したMAGで補っている。

 

新しく開設されたガイア連合施設では、各種機能を持たせた式神や、組合員が戦闘のためレンタルできる式神が不足する。

 

そこに目をつけて、施設と式神とのリース契約を結ぶ事で購入費用を浮かせて、一人で大量の式神を持てる様にするというのが技術部メンバーの使っている裏技である。

 

ただ、浮かせたといっても式神の製作費と故障時の修理費、メンテ費が本人負担でかかることから、最低でも自力で式神を修理できないと赤字になるので、やれるのは一部の技術部員に限られている。

 

なお、この方法で神主の式神を買おうとすると確実に赤字になる。

 

「まあ、そっちは良いんだ。

それより、これ、きみのアナライズ結果だけど見てくれない?」

 

「僕のアナライズ結果ですか?」

 

神主が取り出した用紙を見る。

 

 

 

【人間 ? 】Lv7

ブフ、マハブフ、ブフダイン、魔界の調べ、大冷界、氷の壁、死神の点呼、ムド、サバトマ、ハイ・アナライズ

 

 

 

レベル7にしては色々おかしいが、交霊で魔界に何度も降りているうちに、色々それっぽいスキルが生えてきた。

ただ生えてきた強力なスキルは魔不足でまともな出力が出なかったり、一発撃ったらMPが尽きたり、そもそもMPが足らないのでまともに使えないが、

 

それより気になるのは、

 

「・・・人間のところに薄く?がありますね。」

 

「よりにもよって、量産性が上がるからって召喚魔術を使わずに、毎日のように魔界の深層まで感覚を降ろして霊片と化してる概念の欠片を呼び集めて形作るあの無茶苦茶な方法で何体も交霊して、

霊薬で無理やり回復、挙げ句MAGは自分より上位の無数の式神に吸わせてるって、そりゃあ人間じゃなくなるよ。

ゾンビ君」

 

「うえぇ!

自分、ゾンビになりかけなんですか!?」

 

思わず自分の体を確認する。

 

青白い肌、血を抜いているせいだと思っていたがもしかしたら・・・?

 

「君の式神に感謝した方がいいよ。

最近、君から来るMAGがおかしいっていうから調べたんだ。」

 

「サーニャが?」

 

思わずサーニャの方を見ると気まずそうに目を逸らす。

 

「このままだと確実にゾンビなっちゃうよ?

だから、休んでね。」

 

「・・・休むのは良いとしても、式神の没収は受け入れられません。」

 

それだけは、それだけは受け入れられない。

 

「そしたら、時間は伸ばせるけど、ゾンビになっちゃうよ?」

 

「レベルを上げてMAGの生産を増やせばいいんでしょ?」

 

「だけど、高レベルにくっついたり、MP系の霊薬で強力なスキルを使って、深めの異界で強い悪魔と戦ってレベリングして、無理矢理一気にレベルを上げると、

強力な悪魔のMAGを大量に取り込んだせいで、そのまま悪魔の方に存在が傾いちゃうから、やっても悪化するだけだよ?」

 

「ええ・・・」

 

なんとかする手が塞がれた。

 

「・・・それならゆっくりレベルを上げれば良いんですよね?」

 

「うん、基本はレベル帯より少し上の異界で戦うなら、人間の方が強化されるから、

それで30まで行ったらもう大丈夫かな。

だけど、ゆっくりやってて、今の式神の維持MAG買うお金持つ?

休職中なのに、」

 

頭の中で計算する。

 

「・・・1年位までなら、行けます。」

 

「レベリング無しで7から30ってすごく大変だよ?

あとやるなら、レベル30まで自分よりレベルが3以上の式神を戦闘で使ったり、適正レベルを大幅に越えるスキルを使っちゃ駄目だよ。

存在が悪魔側に引き摺られちゃうから、」

 

「それでも、やります。」

 

自分の式神達を手放さないためならやる。

 

すっ、と神主は笑みを浮かべる。

 

「その言葉が聞きたかった。」

 

 

 

 

 

こうして自分は、式神製造の技を習った時以来、再びの神主の試練を受ける羽目になった。

 

「あ、ところで第二式神製造部は大丈夫ですか?

自分が抜けたら製造依頼が、」

 

「それがさ、みんな泣いてたよ。

これであの無茶苦茶なスライム量産速度に付き合わされて、頭が痛くなるまで術式組まなくて済むーとか、無理な量の製造依頼を無理だからって断れるーとか、やっと作業に余裕ができるーとか、みんな涙を流して悲しんでたよ。」

 

「それ、絶対悲しんでないですよね!?

 

というかもしかして、自分、ブラック現場作ってた・・・?

無理っぽかったら手伝ってたのに、」

 

 

 

 

 

【式神ちゃん万歳】式神仕様相談隔離スレ178【式神ちゃんマジ式神】

 

432 名無しの式主

悲報

式神製造部の交霊キチ、長期休養に入る。

 

433 名無しの式主

は?

 

434 名無しの式主

は?

 

434 名無しの式主

は?

 

435 名無しの式主

それより、今度作る式神の仕様書だけど、中位くらいのサポートでなんか良いアイディアある?

 

436 名無しの式主

首に縄つけて引きずり戻せ

 

437 名無しの式主

ディア!アムリタ!リカーム!!!!!

 

438 名無しの式主

よっしゃー!!!!

あの社畜が消えた!!!!

これで霊薬ガブ飲みしながら気絶するまで術式組まないで済む!!!!!

 

439 名無しの式主

逃げないように交霊室に縛り付けとけ

 

440 名無しの式主

おい、依頼出してる俺の式神、どうなるんだよ。

 

441 名無しの式主

朗報の間違えだろ。

アレ、工程一通りできるから、他が担当してる工程がもう無理ってなっても、手伝いに来て、現場崩壊での仕事リタイアできなくなるんだよなぁ・・・

 

442 名無しの式主

なんか、色んな闇が吹き上がっとる・・・

 

443 名無しの式主

指名製作料バカ上がりしてたからなぁ・・・

生体素材ドカ盛りの式神勧めてくれる人だったんだけど・・・

 

444 名無しの式主

いつの時代の話をしてるんだよ。

もう生体素材ドカ盛りの式神素材の製法はマニュアル化してるから一般依頼でもいけるぞ。

それにアレは一般の量産の方担当だから、指名されるとラインが止まるんでその分かかる様になったんだよなぁ・・・

 

445 名無しの式主

マジか、仕様相談するときに言われなかったから個人じゃないとやってないのかと、

 

446 名無しの式主

そら、式神重量の半分の自分の血と○液と爪と髪となんて勧めるわけねーだろ。

 

447 名無しの式主

いや、そのときは素材が集まらなくて式神ちゃんの体重の三割だったな。

クソ、騙された。

 

448 名無しの式主

三割は甘え、十割行ってこい。

 

449 名無しの式主

十分同期できる一割でええやろ、それ以上は自己鍛練不足

 

450 名無しの式主

ほぼ十割の自分ヒロインは解釈違いだ、俺は自分じゃない式神が良いんだよ。

 

451 名無しの式主

十割って言っても、繋ぎとして色々入れるから、99%位なんだよなぁ・・・

 

452 名無しの式主

あんまり入れすぎると属性も似るんで、式神固有の属性が育たない定期。

やっぱり五割+骨で良くね?

 

453 名無しの式主

むしろ骨入れない式主なんているの?

一割だけど骨だけはいれてるよ。

 

454 名無しの式主

・・・なんでこの人達、式神に割合単位で自分の生体素材入れるの前提なん・・・?

 

455 名無しの式主

・・・?

 

456 名無しの式主

・・・?

ちょっと何言ってるのか分かりませんね・・・?

 

457 名無しの式主

ここではリントの言葉で話せ

 

458 名無しの式主

え、自分がおかしいの!?

 

459 名無しの式主

>>454

おー新参か、生体素材入れることに疑問は無いってことは、初めての式神スレの方は見たのか、

血とか髪の毛とかの生体素材入れると式神との同期が上がって、式主に合わせてレベルが上がりやすくなる&転生者特性が移って強くなるっていうのは知ってるんだな。

 

そこで、今話題のとあるキチが、つまり式神ちゃんを自分色に染め上げれば、式神ちゃんが強くなるのか、と神主の前に式神重量分の自分から取った生体素材を山盛りにしたのが始まりだ。

 

結局、全部だと自分になっちゃうからと半分にしたが、そうやって作られた生体素材盛りだくさんの式神は、体の半分が転生者由来なので元々の素質が高く、ちょっと弄れば式主のレベルを越えてのレベルアップも可能だということが分かって、式神ガチ勢はこぞって自分の生体素材を式神に注ぎ込むようになったんだよ。

 

460 名無しの式主

あのときのガイア説明会の空気はヤバかった・・・

肉体パーツ渡しちゃだめだよって説明の直後でそれだもん・・・

 

461 名無しの式主

それやらかしたのアレかよ!

 

462 名無しの式主

×式神ガチ勢

○式神ガチ勢を名乗る隔離スレに収容された一部の狂人

しれっと式神ガチ勢全員を狂人扱いすんな。

 

463 名無しの式主

は?

強化できる方法があるのに、式神にロクに自分の素材入れてない向こうこそ自称式神ガチ勢だろ。

 

464 名無しの式主

出た!

式神につぎ込んだ自分素材の量でマウント取る奴!

 

465 名無しの式主

ここは怖いインターネッツですね・・・

 

466 名無しの式主

隔離スレだからなぁ・・・

というか、式神の本人超えてのレベルアップ、神主保証無視した違法改造の類いで、公には無いことになってるんで他所で言うなよ。

式神自体の自律性を高めてるから、そのうち規制されるかも分かんね。

 

467 名無しの式主

おい・・・

ところで、ヤバイ人だというのはわかったけど、量産部門の人が一人休んだだけでそんなに影響あるの?

流れ作業だからそんなに影響無いと思うんだけど、

 

468 名無しの式主

流れ作業でも、どうしても特定の人に頼ってる部分があるんだよ。

それが、交霊して仕様に合わせた霊を作ってスライムとして降霊する部分、

ここの部分の修行がきつくて突破できた人があんまりいないんだよなぁ・・・

 

469 名無しの式主

覚醒で地獄コース履修者ワイ、

地獄コース二番目の第六感以外、感覚器全部使えなくなった真の暗闇よりも暗い闇があるとは知らず無事死亡

 

470 名無しの式主

くらいくらいこわい

 

471 名無しの式主

誰かいないのか!だれか!だれか~・・・

 

472 名無しの式主

色んな人のトラウマに刺さってるな・・・・

 

473 名無しの式主

要は召喚だろ?

そんなにきついの?

 

474 名無しの式主

ただ召喚するだけならサバトマ覚えれば済むけど、式神の仕様に合わせた特性持たせるために、召喚する霊を調整して弄らないといけないんだよ。

わざわざ向こうに感覚飛ばさなくても、召喚魔法使うときに特定の側面切り出したり混ぜたりでどうにかなるけど、その調整の仕方を一度修行で向こうに降りて感覚的にできるようにならないと無理。

挙げ句、その辺調節しながらの召喚だと時間がかかる。

 

475 名無しの式主

んで、流れ作業になってるといっても、神主抜きでの式神量産部門の高性能式神の一日の生産数は普通は20体そこそこ、

一見少なくみえるけど、

年間通すと普通に八千体はいける。

まあ多くが施設用だから一般向けは不足してるけど、

 

・・・数が合わない?

繁忙期には生産数が増えるんだ分かれ

 

そのうち、アレが担当するのは普通の日だと一日7体分の式神スライムの作成、これは1日あたりの生産数の1/3に当たるわけだ。

 

476 名無しの式主

思ったより影響でかかった。

なんでそんなに作れるん?

 

477 名無しの式主

アレは、召喚魔法を使わずに、交霊訓練と同じく悪魔のいる領域まで感覚降ろして行くんだけど、息止めて肉の感覚から離れてやるんで、わりとすぐにその領域まで行ける上、存在が近くなってるんで反発が薄めで楽に調整できるらしい。

挙げ句、息止めてるから早めに終えないと死ぬんで、交霊~降霊まで一時間でやってのける。

 

交霊でスライム降ろす奴もいるけど、息止めてやるのは無謀だし、そもそも交霊を連続してやるの自体狂気

 

478 名無しの式主

以前、酸欠で死んだ脳が蘇るとか山梨第一支部の温泉で言ってる奴がいたけど、そのことだったのかな・・・

 

478 名無しの式主

一時間息止め+暗闇修行・・・

それ人として大丈夫なん?

 

479 名無しの式主

大丈夫じゃないから休養になった定期

 

480 名無しの式主

なお、抜けた分は残り組がブラックやる模様

 

481 名無しの式主

いや、これからは部長が無理な分は断ったり後回しにすると言ってるんで楽になるの確定だぞw

わーい。

 

482 名無しの式主

あそこの部長、ちゃんと休憩時間を確保したうえで、壊れそうになると上手くヘルプ要員呼んで、壊れないようにするのがうまいんだよなぁ・・・

だから給料も高いし抜け出せずズルズルと居続ける羽目に、

 

483 名無しの式主

クソッ!

 

484 名無しの式主

どうでも良いから早くワイの式神作って、役目でしょ

 

485 名無しの式主

でもそんなに1日で作ってて質は大丈夫なん?

 

486 名無しの式主

さすがに質上位陣には劣るけどスライムとしての質は十分良い方。

 

根本的に最強の式神を目指すより、たくさん式神を作りたい珍しいタイプ。

 

487 名無しの式主

でも、ショタオジ以外の式神製作者は最初のスキカ無しの時点でシキオウジベースの破魔呪殺無効以外、無効耐性つけられない以上、

ショタオジには質も量も遠く及ばないんですけどね。

 

488 名無しの式主

それ言ったら、どの分野でも神主に勝てる奴おるの?

 

489 名無しの式主

俺のマイ式神への愛ならっ・・・!

 

490 名無しの式主

なんの俺の方が!

 

491 名無しの式主

はいはい、推しへの愛でマウント取り合わない。

 

492 名無しの式主

というか、その人のこと詳しい奴多いな。

そんなに有名人なん?

 

493 名無しの式主

?式神の指名製作依頼で、依頼できるそれなり以上の腕の相手は個人情報調べておくのが基本やろ?

 

494 名無しの式主

そうそう。誰が何が得意でどういう傾向があるとか、どんな性癖に対応してるかとか、でないと予算の範囲内で誰に依頼すれば一番仕様書に合った式神を作ってもらえるかわからんし、

 

495 名無しの式主

特に人格傾向とかは、上手く相手に理解させるために、相手の嗜好調べておかないと再調整に金かかるし。

 

496 名無しの式主

以前女の製作者に式神製造依頼出したら、丁度生理の時期でエライものを納品されて以来、女性製作者の生理周期も調べるようにしてるぞ

 

497 名無しの式主

>>496

さすがにキモい

 

498 名無しの式主

キモッ

 

499 名無しの式主

やwめwれwww

というかあれガチだったんかいw

 

500 名無しの式主

そうですか、良かったです。

私の部署で仕事に余裕ができたからと、仕事中掲示板に張り付いて、同僚の個人情報流してる職員がいなくて

 

501 名無しの式主

ギクッ

 

502 名無しの式主

ギクッ

 

503 名無しの式主

部長さん?も入り浸ってる件

 

504 名無しの式主

だってようやく、無理な依頼を断れるようになったんですよ!

とりあえず、アレ突っ込んでおけばヤバイ担当もなんとか壊れずに最後まで仕事終えられるから、ふざけた量の依頼でも断れなくてっ!

そもそも、依頼交渉の場で真偽判定魔法とか使うなっ!

 

505 名無しの式主

部長さんもはっちゃけてるなぁ・・・

 

506 名無しの式主

ここまで誰も病気休養になった本人のこと心配していないあたり、なんでここが隔離されてるかよく分かるわ・・・

 

 

 

 

 




注)こちらの隔離スレには基本狂人しかいません。
表スレはまともだと思います。

自分生体素材十割式神と骨ネタは某スレからいただきました。


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山梨第三支部編
旅立ちとテンプレ


「とはいったもののどうするか・・・」

 

神主の話が終わり、医療班にしこたま怒られてサーニャに健康管理権限を認めさせられた後、職場に長期休養の届けをだしたところ笑顔で速やかに受け入れられ、家に帰ってきた。

 

それで自分の式神達に、今回の件について連絡を入れての対応を終えたのが今である。

 

あれから神主から一連の説明を受けて、そのための装備を渡された。

 

腕に巻いた籠手のような"COMP"を見て、そのときのことを思い出す。

 

 

 

 

「よし、じゃあ必要な事を説明しようか、」

 

神主がそう言うと、布のかけられた古めかしいお膳を恭しく持った、何度か見かけたことのあるピンクの長髪の妙な巫女服を着た式神が現れた。

 

布の上には籠手とコンピューターが一緒になったような奇妙な道具が乗せられていた。

 

「着けて」

 

言われるがまま左手につける。

すると電源が入り、使用者登録が完了したという通知が表示された。

 

「これは?」

 

「COMPだよ」

 

「え?

悪魔召喚プログラムは、製作に失敗どころか、

呪文をコンピュータープログラムで実行する方法すらまともに分かってないという話でしたが、」

 

「うん、その通り、

でもどうしてもCOMPを作りたい技術部員達がいたんだ。

じゃあどうしたのか、」

 

「・・・簡易式神を組み込みましたか、」

 

"COMP"の中に潜む静かな気配に気づく、

 

「ですが、デモニカ方式のやたらと重い簡易式神との霊基接続装置を入れて、こんな重さで済むはずが・・・」

 

「そこはね、ICチップ型簡易式神を使ったんだ。」

 

「簡易式神自身の動作で回路をOnOffさせるアレですか、

あれは動作速度が遅すぎて既存のコンピューターに組み込んでの動作は無理だった気が、」

 

「ICとしてはね。

特定の信号が打ち込まれた時に霊的処理をして特定の信号を返したり、信号に従って特定の力を発揮するという。センターや動作機として使えれば十分な訳、

ま、遅すぎて画像処理ができないからデモニカみたいなことはできないんだけどね。

それでも内蔵された簡易式神の力をコンピューターからのコマンドで使用できるから、悪魔召喚プログラムにあったような、幾つかのアプリは利用できるよ。

 

肝心の悪魔召喚機能はないんだけどねー」

 

「COMPとして意味無いじゃないですか・・・

悪魔がサバトマ使っても自分より弱い眷属しか呼べない辺り、簡易式神にサバトマ覚えさせてもLV0の滓のような何か、しか呼べませんからねぇ・・・」

 

特性を持たせたスライムの降霊の自動化を目指して色々やったが悉く失敗した日々を思い出す。

 

そこでふと疑問に思った。

 

「あれ?画像処理機能が使えなくても敵がどの辺にいるかの感知機能は簡易式神な以上使えるのなら、ソナーの様にそれを画面に表示させて、

式神IC組み込んだ照準の先に悪魔がいたときに通知する悪魔銃用の照準機と一緒に使えば、デモニカより使い易い未覚醒者向け装備になったんじゃ、」

 

「それを五島さんに渡すの?」

 

「・・・無いですね。」

 

あっさり引っ込める。

簡易式神でもチャージ時間はあるが、ディア等簡単な魔法を覚えさせれば使える以上、

携帯できて簡易式神の機能を手軽にコマンドで利用できるこれを未覚醒現地人に渡すのは危険すぎる。

 

そういや、デモニカは見栄え重視であんまり強くないからこそ自衛隊に提供されたんだったなと思い出す。

 

「これを渡したのは、使用者のバイタルチェック機能があるからなんだけど、

そこの横の赤いボタンを押してみて、」

 

言われた通り押すと、電圧計の様な、針と緑と赤に真ん中から分けられた表示板がデジタル表示される。

針は少し赤側を指している

下にもメーターがあり、こちらは数字表示で47.5833412%と表示されて・・・いや47.5833413%に上がった。

 

「上は今の君のあり方がどっちに偏ってるか、

それで下は、君の悪魔へのなり具合、

上が赤だと下の数字が上がっちゃうよ。

 

それで100%になったらゾンビになる。

まだまだ半分もあるから余裕じゃんとか思っちゃ駄目だよ。

 

50%越えると一気に上昇率が上がるし、そこから%が上がるのに合わせて、さらに上昇率が上がって、止められなくなるから、」

 

「そうですか・・・」

 

呟く、

今、赤なのは式神達にMAGを送っているからだろう。

 

「普通に戦って、ゆっくりMAGを吸収していれば緑側に偏るし、緑が振り切れたら、君のその子とか、強力なスキル、装備も戦闘で一回位なら使っても大丈夫、

制限付きチートだね!」

 

「装備?」

 

思わず、神主を見る。

 

「あれ?言ってなかったっけ?

強い魔力を持った装備や道具を使ったり、科学の武器でも強力過ぎる武器を使って一気に悪魔を大量に倒してMAG吸収して俺tueee!やったら存在が傾くよ?

ついでに、今持ってる短剣とか護符も使ったらヤバいよ。」

 

「言ってませんよ!?」

 

思わず叫ぶ。

完全に金にあかせてのチートができない。

 

「じゃあ止める?」

 

「止める訳ないじゃないですか。」

 

それだけは譲れない。

 

「じゃあ、頑張ってね。

あと、それからこれからの僕や医療班からの連絡はこの子からになるよ。」

 

そう神主が言うとCOMPを持ってきた巫女型の式神が前に進んだ。

 

「よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

 

というわけで、最初は、終末に備えて準備していた金満装備で低位異界に殴り込んで経験値やMAGを荒稼ぎしようと考えていたが、レベル帯にあった装備をする羽目になった。

 

「フルオートショットガンまでレベル20まで、アウトなのは痛かった・・・」

 

製作した自分の式神のレベリングの時は、山梨第三支部の狩場の浅層に適当にフルオートショットガンを担いで行って、マハブフとフルオートショットガンを適当に乱射して式神のレベルを2~3まで上げた上で、彼女自身で銃と武器と魔法で倒させ、そこで一代前の式神に来てもらって、この低レベル帯での最後の仕事として立ち回りの講習を受けさせてからレンタルに出していた。

それで先代は、一代上の式神から次のレベル帯での講習を~というのを繰り返している。

ただ、一度に全員のレベルが上がるわけでもないので、重なったり、そもそも特定の戦い方の専門で後輩が入ってこないというのもある。

 

サーニャはまさにこれで、原作を元にして、

【護りの盾】【トライエド】【トラフーリ】【トラポート】【探知】【アナライズ】【催眠波】【大放電】【キャンディボイス】【貫通弾】【子守唄】・・・etc.

等のスキルカードを詰め込んで威力偵察型にしたところ、高レベルなよく分からない異界に突っ込ませて情報を持ち帰る仕事において、いれば確実に成功して全員帰れるという珍しいタイプの強めな式神となったので、よくレンタル依頼が来る。

 

サーニャを長期間に及ぶリース契約に出すつもりはないが、どうしても必要という場合には、式神製造の補助を行える式神の都合をつけて、一任務単位で貸し出す事がある。

わりとトラ系のスキルカードは過保護な神主が量産しているのもあって入手難易度は高くないので、自分で作れよとも思うが、

 

まあそのお陰で、サーニャは自分のレベルを越える異界に突っ込んで、護りの盾を張りつつ、全力でぶっぱなして威力偵察を行うので日頃のメンテや、僕と致して精を取り込むことによるアップグレードと合わせてレベルが異常に上がってるのだろう。

 

・・・契約を軽視して、深層まで突っ込ませた挙げ句、わざとボスに遭遇して戦闘、勝利ということもあるのでそのせいかも知れんが、

 

神主に無理言ってつけてもらった護りの盾スキルは万能属性以外の攻撃を通さないのでわりと良いように使いたがる連中が多い。

 

なお、それやった連中は契約違反をついて全力で搾った後、技術部と事務方の方で回覧回して式神レンタルができないようにしている。

 

原作よりも強くなりたいとサーニャが言うこともあって、第二次大戦時の航空機動艦隊を単体で殲滅できる巨大怪異を航空中隊規模で倒せる原作エースウィッチを目指してアップグレードを重ねている。

 

ただその結果として、戦闘職だと持て余す代物になってるんだよなぁと思う。

 

サーニャは火力、防御力、機動力全てが非常に高いが、それを発揮しようとすると一戦あたりのMPやMAG消費が非常に大きいので機動力(逃げ足、忍び足)はとにかく継戦能力が低く、このタイプのスキル構成の式神だと、多数の戦闘を継続して行うことによって金を稼ぐ戦闘職が運用しようとすると、確実に大赤字になる。

 

そのため、サーニャの様なスキル構成の式神を所有したがる戦闘職は少なく、それでいて、特定の依頼や依頼の中の仕事で無いと困ることになるというレンタル需要が高い状態にある。

 

基本的にサーニャを異界のボスにぶつける事は契約上許さないことにしているが、それでも威力偵察と称してボスにぶつけようとする連中は後を立たない。

 

どうでも良いが、式神のレベルが上がったら一度メンテを行って成長に合わせて全身を整えると、ステータスが上がったり、稀にスキルスロットの余裕がでたりと上がったレベルをうまく活かせる事があるので、お勧めしている。

式神に内蔵されている自動アップデート機能は素晴らしいが、成長が進むに従い緩和されるとはいえ、どうしてもオートだと局所最適になりがちなので、一度全身を整理してやると喧嘩してるところが無くなって余剰が生まれる。

 

まあ、アップグレードや修理、メンテの予約は常に飽和状態なので自力で術式を弄るか、専属がいないと難しいが、

 

 

「ねえ、そのCOMP、ちょっといじっていい?」

 

思考はサーニャの言葉に中断される。

 

僕の体の異常に気付いて警告を出してくれていたが、こうなるまで無視してたのもあって頭が上がらない。

 

「そういやコンピューター技能持ってたな。

いいよ。はい。」

 

サーニャといえば電子戦というノリで付けたが、あんまり使ってない気がする。

 

COMPを外して渡す。

 

「ありがとう。携帯端末のデータも移しちゃう?」

 

「おねがい。」

 

「わかったわ。」

 

そう言って、僕の端末を受け取るとサーニャの部屋に持っていく。

 

それを見送ってからしばらく考える。

 

「・・・使うか、

もう使うことはないと思ってたんだけどなぁ・・・」

 

物置部屋に入る。

ごちゃごちゃしてる箱をかき分け奥に置かれた箱を引きずり出す。

 

 

 

リビングの机の上には開かれた箱と箱から出された装備が置かれていた。

 

「なつかしいな。

これって、技術部に入るまえ、私といっしょに戦ってた頃に使ってた装備だよね?」

 

COMPを弄るのは終わったのか、寄ってきたサーニャが僕の腕にCOMPを着けながら呟く。

 

サーニャとしてはCOMPのコンピューター機能的には弄るところはあんまりなかったが、これまで使っていた僕の端末のデータを移して、SIMカードを付け替えた上、操作しやすいように、ボタン配置を少し変えたらしい。

サーニャが弄ったからか、なんとなくサーニャの気配を感じる。

 

「そそ、」

 

手製の鉄パイプショットガンと、木製バットに五寸釘を打って釘頭を切って尖らせた釘バットと、腰につけるコンバットナイフ、それに軍放出品として買った旧式のフリッツヘルムとサバイバルベストと防弾チョッキが目の前に置かれている。

 

サーニャが弄ったCOMPを翳して判定する。

・・・レベル的には問題ないようだ。

 

ちなみに、魔力のある装備は魔力の強さで判定されるが、

銃等の科学の武器は形式と銃弾を打ち込んでの人力で判定される。

科学側の防具に関しては基本的には何を使っても悪影響はないが、調子に乗って強い悪魔の攻撃を受けると存在が傾く。

 

「これを装備して戦うの?」

 

「そのつもりだな。戦闘止めるレベル6まで使ってた装備だし大丈夫だろう。」

 

そういって装備してみる。

歳をとったのできつくなったかなと思いきや、むしろ当時よりも余裕があった。

痩せた・・・というよりもゾンビになりそうなレベルでやつれたのだろう。

 

いつの間に着替えたのか、サーニャも当時の戦闘装備に着替えてちょこんと隣に寄り添ってきた。

 

だがサーニャの存在感と比べると装備は貧弱きわまりないものに見えて、

良くてコスプレ、悪ければ外見の幼さと相まって子供の遊び道具にしか見えない。

隣に立っている自分はかかしか人形か、

 

技術部に籠っている間に、いつの間にこれだけ時が流れてサーニャは成長していたのだろうか、

 

そんな事をふと思う。

 

まあ自分も技術部での日々は、戦っていた日々よりもある意味で濃いものだったので無為に時間を過ごしたつもりは無いが、

 

そんなことを考えながらサーニャの頭をヘルメット越しに撫でて、自分のものであることを確認する。

 

サーニャは不思議そうにこちらを見るが、何も言わずにされるがまま、立っている。

 

「じゃあ、さっそく行くか、」

 

サーニャの頭から手を離すと、呟く。

 

「何を言ってるの?」

 

急に周囲の温度が下がった。

気づく間もなくいつの間にか握られた手は、握り締められてこそいないが、万力の様に固く、小指1mmたりとも動かせない。

一瞬で30のレベル差が目に見える形で現れていた。

 

「今日は駄目よ。

今朝、血を300mlも抜いたんでしょ?」

 

「戦っていた頃も抜いてたし・・・」

 

「内勤になって、抜く量増やしたんでしょ?」

 

「それはまぁ・・・」

 

「今日は休まなきゃ駄目」

 

断固たるサーニャの言葉に反論の言葉を飲み込む。

 

「分かった・・・」

 

「うん、いいこ」

 

そこで温度が戻って、手の力が弱まり、サーニャが今度は逆に頭を撫でてくる。

 

以前、内勤だからと毎日血を抜きすぎて血が黄色くなっても、抜く量減らしたから大丈夫としばらく続けてた時は本気で怒られたなぁと当時の事を思い出す。

 

・・・いつの間にか、完全に逆転されていたようだ。

 

それを不思議と心地よく思いつつも、亭主関白に戻してやると、レベル上げの覚悟を決めた。

 

「じゃあ、今日は何をする?

レベル差が大きい式神と日常的に致すのは医療班に禁止されたけど、

今日は、警告を無視してこうなったお詫びということで、サーニャのしたいことをするよ。」

 

・・・正直サーニャと致す頻度が落ちるのはキツいが致し方なし、

 

それを聞くと、サーニャは顔を赤らめて、目を逸らしてもじもじしながら呟く。

 

「何でも、言っていい・・・の?」

 

「おお、いいぞ。」

 

「じゃ、じゃあ・・・

えっちなことはしなくていいから、一日中ベットでゴロゴロしながら私のこと可愛がって?

頭とか、耳とかしっぽとか撫でて・・・」

 

「・・・それ、サーニャの望み?

僕がしたいこと言ってるんじゃなくて、」

 

きょとんとした後で、サーニャは理解したのか、笑みを浮かべる。

 

「私と同じこと、思ってたんだ・・・」

 

 

 

 

 

ふにふにとサーニャの艶やかな黒い毛で覆われた猫耳としっぽを弄る。

サーニャが肌触りのいい薄手の黒い寝間着を着ているのもあって、黒猫を撫でている気分になる。

 

ただ寝間着からこぼれる手足と艶やかな髪は白く、黒猫が人間に変化する途中の様な、あるいは神話が喪われ悪魔としてすら残っていない様な時代の洞窟壁画に現れる半獣のような、不思議な魅力を放っている。

 

耳としっぽはくたっと力が抜けリラックスしているようだが、時折ピクピク震えたり、敏感なところに触れるとピクンと力が入る。

 

白い四肢は甘えるように、自分の体にすり寄ってくる。

 

もうこんなことを、途中昼食夕食をとりながらも、十時間は続けただろうか、未だに飽きる気配はない。

 

と、腕の中の黒猫少女がもぞもぞと動いて体を起こす。

 

「そろそろ、寝よ?」

 

サーニャは少し体を起こしながら言う。

 

「ああ・・・

こんなことだったら、もっと前から休みとってやっておけば良かったな。」

 

「ふふっ、無理だよ。

だって、毎日、なんども死とよみがえりを繰り返すくらい、式神が大好きなんしょ?」

 

サーニャは仕方ないなぁという表情で見つめてくる。

 

「サーニャ?」

 

少し雰囲気が変わった。

 

「だから、

これから会うあなたの式神達も、私に負けないくらい、大事にしてあげて、

そのために、私はしばらくあなたの目の前から姿を消すから、」

 

「サーニャ!?」

 

「【子守唄】」

 

優しげなメロディーだが、その裏には強い意志の籠った歌声が耳に入る。

 

レベル差30の精神スキルに耐えられる訳もなく眠りへと落ちて行った。

 

「私たちの娘たちをお願い・・・」

 

最後にそう聞こえ、唇になにか柔らかい感触があった。

 

 

 

 

 

 

チュンチュン・・・

 

どこか寒い目覚めを迎える。

 

起き上がるがサーニャの姿は見当たらない。

 

と、

ピピッ

 

腕のCOMPに通知があった。

 

「サーニャからだ。」

 

メールを開く。

 

『こんな形で目の前からいなくなっちゃってごめんなさい。

でも、このままだと私に捕らわれてあなたの式神みんなとの時間より私との時間を優先しちゃうから、こうして目の前からいなくなることにしました。

 

式神の契約術式は有効なので、勝手にどこかに行ったりはできないけど、私の力、全力で隠れているので見つけることはできないと思います。

他の高レベルの人たちに頼めば私の事を見つけられると思うけど、

レベル30まで、私を探すのは止めて下さい。

それまでのあなたの健康管理はCOMPに入れた健康管理アプリを通じて連絡します。

 

あなたの事はいつも見守っています。

みんなのことも大切にして、みんなで仲良いあなたのハーレムで会いましょう。

 

アレクサンドラ・リトヴァク』

 

 

 

 

「それで、私のところに来たんですか?」

 

昨日笑顔で見送られた第二式神製作部に来ていた。

 

「部長、話し方、前の頃に戻ってません?」

 

「なんのことですか?

確かに少し前は、忙しすぎて、言葉遣いが少々乱暴になっていたかもしれませんが、」

 

ゆっくりと紅茶を飲みながら部長は言う。

隣に二人の黒髪のメイド型の式神を侍らせている。

この二人は部長を手伝うのみならず、差し入れ持ってきてくれたりと第二式神製作部のマネージャー的存在である。

 

「お疲れ様です。」

 

微かに怒りの波動が漏れる。

それを静めると、部長は、同士としての顔になり少し真面目に言ってくる。

 

「しかし子守唄ですか、式神は式主にその手のスキルを使用できないよう、契約と術式で縛っているはずですが、」

 

「そこは、サーニャに関しては、医療班にドクターストップ権限を認めさせられてるので、その一環として子守唄に関しては認められていたんですよ。

目の前から姿を消したのも式主の体調管理権限の一環ですし、」

 

「なるほど、それはさておき、探すなと言われて探して欲しいというのは、あんまりにもあの子の意志を踏みにじっていませんか?

略称のサーニャではなく本名まで署名しているのに、」

 

「どこにいるかまでで良いんですよ。

ただ、連絡がメール一本なので誰かに拉致られてそれっぽいメールを入れられている可能性があるので、

そういうことがないかどうかを知りたいんです。」

 

「相変わらず、過保護ですね。」

 

「式神ガチ勢として、式神のことには徹底的になるのが当然ではないですか?

こんな一度握った手を離したら、また元通りの存在として会えるかになんの保証もない女神転生世界では特に、」

 

「・・・おっしゃる通り、全くその通りですね。」

 

部長は、つい、この世界の無情さを忘れていたという風に呟いた。

 

「ですが、私が誘拐して、コレクションに加えているかも知れませんよ?」

 

「部長は他人のものを取ったりはしないでしょう。

それにここに来る前にも確認しています。」

 

「ええ、複数チェックは式神ガチ勢として当然、ですよね。」

 

「ええ、」

 

「分かりました。

せっかくの部下の門出です。無料で見て差し上げましょう。」

 

そう言うと、部長はティーカップを置き、目を閉じる。

 

「【探知】【ハイ・アナライズ】」

 

そうして呟く。

 

「まさか・・・」

 

「どうかしましたか?」

 

「今、この子と話しているので待って下さい。

 

・・・とりあえず、あなたの心配している様なことはありませんよ。

むしろ、疑問が残りそうな形式で伝えて式主が迷惑かけることになって、ごめんなさいと謝られましたよ。」

 

「そうですか、ありがとうございます。

サーニャもごめん。」

 

「とりあえず、この子と離れることは気にしなくても大丈夫です。

それより、ちゃんとこの子の願い、聞いてあげるんですよ。」

 

「はい。ありがとうございました。

ではしばらく、」

 

そう言って、古巣を去る。

 

 

 

「だいぶ、こたえてる様でしたね。」

 

部長は一人呟いた。

 

「ですが、あなたが思っているよりずっと、あの子は強くて、あなたを信じていて、あなたから学んでいますよ。」

 

だからあの子は姿を消した。

そう心の中でつなげる。

 

「それより、サーニャであのレベルで積極的にハーレム公認とは、上手く調整しましたね。

 

ガチ勢として、繋がる先の神格の乱数調整は基本とはいえ、

それほど繋がりは強くないもののの、サーニャ(アレクサンドラの略称)→アレクサンドラ(アレクサンドロスの女性形)→アレクサンドロス(ヘラの異名:盾を掲げ戦士を守る女)→ヘラで、

かの厄介な女神に近づいて影響を受ける可能性もあったはずですが、

 

今も無理やりちゃんと原典に繋げ続けているとは、」

 

そう言って、紅茶を飲んだ。

 

 

 

工場を出る。

こんな朝から元職場から出ることでいけない気分になるかと思えば、たまに徹夜明けで朝出ることもわりあいあったのでそんなこともなく、

ただ荷が降りたスッキリした気分と、いつも隣にあった体温の無さに寂しくなりつつも、第三支部へのバス停まで歩く、

 

 

 

 

第三支部へ向かう猫バス型式神に揺られながら、サーニャを感じられない喪失感を感じる一方で、これから行く第三支部での行動を考える。

 

とりあえず、第三支部には、鍛練用の異界があるので、そこである程度鍛えるつもりだ。

第三支部にリース契約に出してるニーナが空いてたら、レンタルするか、契約条件のレンタル予約が空いてる間はメンテ等をやっていいに従って、メンテとコミュと異界でのレベル上げを行う。

 

さすがに式神も無くガチガチの装備で固めてる訳でもないのに、レベル7で一人でレベルの上がりやすいレベル帯の異界に潜るのは単なる自殺である。

 

一人でやった方が確かにレベルが上がりやすいかもしれないが、多分やったら死ぬ。

一段階下のレベル帯で一人でやるよりは、複数人で上のレベル帯で戦った方がレベルが上がりやすい。

 

霊薬がぶ飲みで一日中戦い続けるというのも考えたが、霊薬を使うと悪魔側に傾くので、一日一回のMPポーション以外、必要時以外止めろと医療班に止められたので、悪魔に存在が傾かない程度に質の高いレベル上げを翌日にそれほど疲労が残らない範囲で行い続け、一年で30までレベルを上げなければならない。

 

・・・無理でね?

というか今まさに霊薬の必要時でね?

 

いや、1日あたりの戦闘時間増やして限界までやって翌日からの、限界までやってさらに翌日を、蓄積疲労でぶっ倒れるまで続けて、ぶっ倒れたところで霊薬で回復すれば、霊薬の使用量は複数日で一回に収まるはず・・・

あと、霊薬じゃなくて、科学系の薬なら存在が傾かないから起きていられる薬と、痛み止めでも入手するか、目指せドーピングランナーと後のプランを立てる。

 

そんな事を考えている内にバスは森を抜け、山梨第三支部のバス停に向かう。

 

 

 

「コんにちハ、あるじさま」

 

「ニーナ?」

 

バス停には、金髪で蒼色ががかった深緑の翡翠のような瞳の白いセーラー服を着た小柄な少女が立っていた。

 

背中まである長めの淡い金髪に黒いリボンのついた細いカチューシャをしている。

セーラー服は白いが袖と襟は緑色で、それがニーナの金髪を引き立てている。

 

頬は少し赤く染まり、目元は本来はつり目気味だが柔らかな表情がそれを隠し垂れている様に見える。

 

このあたりの調整が大変なんだよなと、モデルを作る時の事を思い出す。

 

美人にしたければ目元を吊った方が楽だが、少しきつめの顔になってしまう。

柔らか目の可愛い顔の時は目元を吊りつつ、眼全体は傾けたりといった微調整が必要になってくる。

 

特に彼女に関しては前世のとある同人のキャラを元にしているのもあって、出来はいいからこれで良いかでやめることができなかった。

 

「ハイ、サーニャさんから、レンタルの予約が入っていたノデ、むかえに来まシた。」

 

若干話し方がぎこちないのは買ったり不安定なのはまだレベルが十分上がっていないので、会話スキルを使いこなせていないからだろう。

 

「サーニャからレンタル?

聞いてないけど、」

 

「エエ、サーニャさんも、教えていないと言っていました。

予約されているのは初心者一日講習コースですね。

これをうけるか聞いたら断るだろうからと、」

 

「そら断るわ。」

 

一応以前はこのレベル帯で戦っていた上、たまに来てはレベリングしているのに講習が必要とは思えない。

しかも時間を無駄にできない状態では特に、

 

「でも、最近、近接武器は使ってない、ですよね?」

 

「そらまあ・・・」

 

基本的にマハブフとショットガンをぶっ放すだけのお仕事である。

 

「強い道具も開扉の実も使えない、ですよね、」

 

「基本はな。」

 

開扉の実は、緊急時には認められている。

 

「じゃあ、受けマしょうよ。」

 

「ええ・・・」

 

悩む。

言ってることも分かるが・・・

 

「それに、講習を受けてる最中、キャンセルされたら私の評価も下がります。」

 

「それなら受けようか」

 

あっさり翻す。

確かにそれは重要だ。

自分事ならいくらでも無理をきかせて構わないが、他人の、しかも自分の式神の事は別だ。

 

「じゃあ、イきましょう。」

 

「分かった。

ところで最後のそれ、サーニャに言えと言われたの?」

 

「ハイ、そうですが、」

 

きょとんとした不思議と無垢な表情でニーナは言う。

 

本来このレベルの式神が言う言葉にしては違和感があったがその通りだったか、

 

「ありがと、

あー、行く前に、受付寄っていい?

登録とか挨拶済ませておきたい。」

 

「ええ、ご案内シます。」

 

 

 

 

 

「あ、交霊キチが来た。」

 

「なんだそれ、」

 

「あだ名だよ。掲示板では話題になってたよ。

みんな心配して早い復帰を祈ってたぞ。」

 

「あの狂人共が心配なんてするわけねーだろ。」

 

「隔離スレに毒され過ぎだぞ、

表は心配してる人もいたぞ。

早く回復して自分の式神作って欲しいって、」

 

「掲示板か・・・

そういや、ここ数日色々あって見てなかったな。」

 

受付にいた知り合いの顔見知りの未覚醒転生者の事務員と駄弁る。

 

以前、どうしてもと無理にお願いされて、無理やり未覚醒でも使える簡易式神で人型式神を仕立てた事があって、その時以来、会ったときには立ち話する程度の仲である。

 

基本的に自分はぼっち気質だが、式神製造のプロの一人になったお陰で、部長をはじめとして、なんだかんだでこうして付き合いが生まれている。

 

ちなみに、そうして作った人型簡易式神は、当然立ち上がることすら怪しかったが、こいつは家で喜んでその子を介護しているという。

このあたり、隔離スレを覗いてるだけあるなと思う。

 

「ひとまず事務側の通達として、お前が誰かについては隠しとくことになったから、

さすがに、ウチの自動高性能式神量産装置がまともな装備も持たず、レベル一桁であちこちふらふらしてることについて詳しい情報が出回るのは色々危険すぎる。

んで、基本名前は出さないように、

こちらも基本名前は呼ばない。

アナライズ結果誤魔化す装備もつけてるんだろ?」

 

「ああ、」

 

その辺りは分かる。

 

「んで、事務方としてもある程度サポートすることにしたから、

お前の式神に関しては優先レンタル&リース契約の早期終了に関しては要相談だが基本OKになった。」

 

「いいのか?」

 

「事務方も第二式神製造部にはかなり世話になってるからな。

わりと無理な式神依頼通してくれたり、」

 

「まあ、部長はわりと権力志向が強いからな。

その手の各部門に出来る限り最大限恩を売るのは怠らない。

そのお陰で勤務がブラックになったりするんだけど」

 

「お前・・・」

 

なぜか奇妙なものでも見る様な目で見られた。

 

「そういや、以前作ってやったおまえの人型簡易式神の調子はどうなん?」

 

「お、それ聞いちゃう?聞いちゃう?」

 

やけににやにやしながら奴は言う。

 

「まさか・・・」

 

「サーニャ、こっちに来て、」

 

カウンターの奥の扉から、"サーニャ"が現れる。

装備は事務方らしくスーツっぽいが、体の造形のモデルが同じなので、自分のサーニャそっくりである。

"サーニャ"はとてとてと奴の元に来る。

 

「呼びましたか?」

 

そこでポンと奴は"サーニャ"の頭に手を置く。

それを"サーニャ"は目を細めて心地良さそうに受け入れる。

 

「ああ、ちょっとこのメモを部長に届けてくれ」

 

「分かりました。」

 

「ありがとう。」

 

そう言ってサーニャはメモを受けとると戻っていく。

 

「覚醒したのか、」

 

「おう、最近始まったデモニカ講習を受けてな。

お陰でレベル4だ。

お前に作ってもらった人型簡易式神のサーニャもレベル上げ&改造でこの通りよ。」

 

「といっても、今ちらっと"見"たけどあの子レベル3だろ?

よくあそこまでしゃべれたりモーションできるな。」

 

「簡易式神の頃から話しかけまくってたからな。

これぞまさに愛の力よ。」

 

「はいはい、」

 

とはいえ、レベル3で普通にしゃべれるように仕込む時点でわりとすごい。

 

こいつが自分に泣きついて来たのも、自分がサーニャの式神のテンプレートを作ったからだったなと思い出す。

あのとき、さんざん迷惑かけられた挙げ句、態度が偉そうなのもあって、こいつには敬語を使わないことにしている。

 

「それで神主にはエイラの製作依頼出すつもりだから、これでエイラーニャが揃うと言うわけよ。」

 

さすがに未覚醒者の二体目の人型簡易式神の所有は、危険性が跳ね上がる上、どう考えても管理しきれないというので神主直々にストップが入ったので、当時エイラも作らせようとしていたこいつは悔しそうにしていた。

 

「大丈夫か?

サーニャは・・・」

 

「名前と盾で守るという特性から、ヘラと繋がりやすいんだろ?

分かってるって、だからエイラを側に置いて薄めるし、本霊との通信もしないつもりだ。」

 

「まあ、あのレベルだとそもそもモーショボーあたりの雑魚霊と繋がりそうだけどな。」

 

「そういや、お前はエイラは作らないのか?」

 

「エイラも嫌いじゃないけど、恋敵のイメージが強くて、作る気になれない。」

 

「恋敵(笑)」

 

「つまらない嫉妬だよ。」

 

「嫉妬(笑)」

 

「まあ実際、サーニャもエイラも中身の存在しない形だけのデザインと設定の束でしかないんで、

自分で作り出さない限り現実に存在しないから恋敵も嫉妬も無いんだけどな。

だからこそ、それを現実に作るための式神という技術は素晴らしい。

 

というか、いい加減掲示板語やめん?

カッコ、カッコ閉じを実会話でつかうのは、」

 

「拗らせてるなぁ・・・

・・・そういや、お前のサーニャはどうしたんだ?

一緒じゃないのか?」

 

「一緒らしいけど、レベル30まで見えないよう姿を隠してるとメールが来た。」

 

「なんじゃそりゃ。

まあ、お前のためを思ってのことだろ。」

 

「それは違いない。」

 

それだけは間違いない。

 

「そういえばニーナの事だが、」

 

「ニーナがどうかしたのか?

なんか調子が悪かったり」

 

「いや、拗らせた奴に付きまとわれてるみたいで、因縁つけられるかもしれないから気を付けろよ。」

 

「事務方でガイア連合から出禁にしろ」

 

「いや、無理無理、さすがにレンタルした式神に手を出そうとして、持たせてる簡易式神のエネミーソナー&開扉の実の安全装置が発動したからって・・・」

 

「誰か教えろ殺してくる」

 

「やめい。

それに、殺したらケツ持ちしてるレベル30オーバーのブラックカード持ちが出てくるぞ。

とりあえず、そいつらには式神レンタル禁止とクエストとショップ禁止にしたんで、落ち着け、」

 

「・・・分かった。

山梨第三支部は、適当な対処を行ったと、それでいいな。」

 

「ああ、ま、なんかあったらどんどん通報してくれ、

俺らブラックカード持ちに何かしたら、さすがにケツ持ちしてるのも黙るだろうし、」

 

ブラックカードとは転生者に渡される物で、持っていると各種特権が受けられる。

 

基本的にブラックカード持ちのためにガイア連合は存在していると言っていい。

 

「ケツ持ちしてる奴、誰か聞いていいか?」

 

「悪い、さすがに俺らの情報は教えられんわ、

ただ問題起きて通報したら自動的に分かると思う。」

 

「そうか、」

 

「よしっと、手続き終了、

式神補助輪付き異界サイクル初心者コースをお楽しみあれ、」

 

「やめろ。」

 

呻くように言った。

 

 

 

 

 

洞窟の入り口を抜けて異界に潜る。

ここは神主が管理していた狩場を訓練用に解放したもので、レベル15位までは訓練に使うことができる。

 

迷宮好き勢と神主が調子に乗って改造しまくったせいで、異界というより現代ダンジョンと言った方が適切な有り様になっている。

 

明るく照明完備な上、いくつかの階層毎にダンジョンボスがいて、各階層に到達したら解放されるエレベーターがあると言えば分かるだろうか、

挙句、この異界内で死んだら過大な救助費用と引き換えに蘇生サービスまでついてくる。

そもそもこの異界の名前が修練用ダンジョンという時点で大分アレだ。

 

とりあえず、ここでレベル10位までレベル上げしたら、

レベル差的にパーティー組んでも平気なレベル11,12の子を派遣してる某所まで行ってそこで彼女達と一緒にレベル上げするかと考えている。

 

これからのことを考えると1,2週間で1はレベルアップしないといけない分、大分厳しいが、

 

「じゃあ講習を始めますね。

マズは属性について、

悪魔には属性というものがあります。

属性の種類については割愛しますが、大事なのは、悪魔ごとに有利不利属性があって、

悪魔は、弱点属性をつくと怯みます。

そうして怯んだら、もう一撃加えるチャンスです。」

 

照明に照らされた洞窟を背景に、白いセーラー服を着て腰に無銘の日本刀とコルトディテクティブSP拳銃を吊り下げた小柄な金髪少女が微笑みながら説明する。

 

もう知っていることだが、得意気に説明しているニーナを見ていると、わざわざ無粋に口を挟む気がなくなる。

 

そんなことより、可愛いニーナの成長を見て和むことの方が有意義だ。

 

「ここ一階層で現れる悪魔は、ガキとノッカーとゾンビとゾンビドッグ、カハク、ハーピー、です。

詳しい属性の説明はその都度しますが、注意として、ココのゾンビ系悪魔とガキは銃撃を反射して、カハクは火炎を反射するので、気を付けて下さい。」

 

なので、フルートショットガンで戦うときは特殊弾を適当にバラ撒いてたなと思い出す。

 

すると、入るとき持たされたお守り型の異界探索用簡易式神に反応があった。

同時にCOMPのエネミーソナーにも反応が出た。

 

ニーナは腕輪・・・腕輪型の簡易式神をちらっと確認するとこちらを見て言う。

 

「では、ゾンビがいるところに向かうのデ、近接武器を構えて下さい。」

 

「いきなり近接!?」

 

最初は遠くから銃や魔法で戦って慣らそうかなと思っていたが、

最初から接近戦を指示されるとは思わなかった。

 

とりあえず、釘バットを振り上げる。

 

「あいた!」

 

勢い余って尖らせた釘が頬を掠めた。

 

おそらく傷になっているだろう、

まあ、そんなことはとにかくと、強くなった腐った匂いのする方を向く。

 

「ヴォ、ボァ~~・・・」

 

奇妙な叫びを上げながら、半分腐った人体の様なものが現れた。

だが距離は遠い。

 

「あれが悪魔です。

サァ、近づいて武器を振るって倒して下さい。

この悪魔はレベルが低いので、簡単に倒せます。」

 

念のためアナライズしてみる。

 

【ゾンビ】

レベル2

スキル:無し

【銃撃反射】【呪殺無効】【火炎弱点】

 

レベルが低すぎる。

おそらく、死者の成れの果てとしてのゾンビではなく、死者がそうなるという伝承が形を持っただけの悪魔だろう。

 

釘バットを振りかぶったままゾンビに近づく、

そうして、

 

「アッ、まっ」

 

「おりゃ!!」

 

ゾンビの頭部に横から釘バットをぶちこむ。

 

一瞬の抵抗の後、脆いゾンビの頭部は砕散った。

 

素質が魔術系とはいえこの程度の相手なら余裕で肉弾で倒せる。

 

しかし・・・

 

「あぁあぁあぁ・・・」

 

横殴りにしたせいで砕けたゾンビの頭部の腐った肉や汁が少しかかってしまった。

 

すぐにMAGに分解されて消えていくとはいえ、気持ちの悪い感触と鼻の奥に匂いは残る。

 

「こうやっテ、頭が破裂シて、相手の中身を被ることがあるので、

鈍器で、弱い人型悪魔の頭部を狙うときは、横からよりも上から振り下ろして、叩いた方がイイですよ。」

 

「早く言ってよ・・・」

 

情けない声が出た。

 

 

 

次は銃の講習である。

今使っている鉄パイプ型散弾銃は手製銃だけあって引き金は無く、ショットガン弾を二重になった鉄パイプを滑らせて底に打ち付けることで直接叩いて発砲するフィリピンゲリラガンと呼ばれる代物で、いくら慣れてたと言ってもこれは新しいの買うべきだったかと今さらながらに後悔している。

 

飛行系のハーピーが来るとのことだったので、弾丸をスラッグ弾(一粒弾)からパチンコ玉ほどの弾丸がいくつか入った鹿弾に変更する。

 

この銃でスラッグ弾を使って飛行系の相手に狙いをつけて撃ち落とそうとするのは無謀以外の何者でもない。

 

COMPのエネミーソナーを確認し、ハーピーが来る方向へ散弾銃を向ける。

 

「キシャーー!!」

 

ハーピーが吠える。

 

鉄パイプの持ち手をスライドさせて雷管を撃針に叩きつける。

 

バン!

 

鹿弾が弾け飛び、ハーピーのあちこちに黒っぽい小さな穴が開く。

 

だが遠かったのか浅い。

 

「クアァーーー!!」

 

怒り狂ったハーピーが突撃してくる。

 

ハーピーに向かって再度鉄パイプをスライドさせる。

 

カンッ!

 

硬い音がするが弾丸は発射されない。

 

カンッ!カンッ!

 

再度やっても変わらない。

 

「あっいけね、」

 

これ単発だった。

 

慌てて、開けてある穴から、ショットガン薬莢を引き抜いて再度装填しようとするがその隙にハーピーが迫ってくる。

 

「シャッ!!」

 

ハーピーが爪を振るってくる。

 

ガキッ!

 

思わず、鉄パイプ散弾銃の銃身で受け止める。

装填中のショットガン弾が転がり落ちる。

 

こんなときだけは冷静な思考がこのまま一撃離脱されると不利だと告げる。

腰を落としながら一歩進み、ショットガンから手を離す。

 

ハーピーの毛だらけの顔が目と鼻の先にある。

目が合った。

 

「はっ!!」

 

気合いを入れて、左手で逆手に抜いたコンバットナイフを持って、力一杯ハーピーの耳に抉り込む。

 

「グゲェ」

 

奇妙な音を立てて、ハーピーは白目を向いて崩れ落ちて、MAGに変わっていく。

 

ナイフと拳銃は護身用としてある程度は訓練を続けていたのでこれくらいはできる。

 

それを拳銃を構えて見ていたニーナが言う。

 

「大丈夫ですか?」

 

「ああ、大丈夫」

 

「それなら、良かったです。

次は銃だけで、倒してくださいね。」

 

「分かった。」

 

さすがにこの有様のままでは終われない。

 

ナイフをしまって、捨てたショットガンを拾う。

やはり、ハーピーの爪を受け止めて歪んでいる。

力を入れて、曲がりを直すと、何回か無理やりパイプを往復させて、滑らかに動くように調整する。

 

「よしっ」

 

呟いて弾を込める。

今度はもっと引き付けて射つ。

 

 

 

「次は魔法ですね。

ブフとマハ・ブフ、ムドを使うんですよね?」

 

「基本はそうだな。」

 

といっても不確実なムドはよほど物理、氷結系の相性が悪い相手でも無い限り、使いたくないが、

 

「では、こっちにゾンビがいるので案内します。」

 

歩き出すニーナについていく、

しかし異界の中で自分の式神とはいえ、セーラー服の小柄な少女の後ろを追って歩いていると妙な気分になってくる。

 

というかこの子、貸し出し中とはいえ、自分の持ち物なんだよなと改めて強く自覚すると、妙に興奮してくる。

 

「・・・?

ドウカ、しましたか?」

 

「いや、なんでもない。」

 

妙な気配を気取られたのか、ニーナに聞かれ、慌てて答える。

 

 

 

「マハブフ」

 

目の前にいたゾンビ共が凍りつきMAGに還っていく。

 

「ブフ、ブフ」

 

残ったゾンビ達もブフで倒していく、

 

腐っても・・・自分がこいつらの同類になりかけてるとかそういう意味ではなく、腐っても魔術系の覚醒者として魔術を使った戦闘では遅れをとることはない。

ブフとマハブフは昔から使ってたのもあって、慣れている。

 

「おつかれサマです。

MP回復ポーションです。

使いますか?」

 

そっと、ニーナがポーションを差し出してくる。

 

「ごめん、ポーションの類いは敵の攻撃を受けて怪我した時や、一日一回のMPポーション以外は基本的に使うなって医者から言われてるんだ。」

 

「そうですか・・・」

 

残念そうにニーナがポーションをしまう。

その表情を見ていると悪いことをした気分になってくる。

 

「さあ、次は道具の使い方です。

自動販売機があるところまで行きます。」

 

「至れり尽くせりだなこの異界!?」

 

思わず突っ込んだ。

 

 

 

 

 

「本当に自動販売機だ・・・」

 

街でもよくある自販機に雑に装甲をつけて強化したものを見て呻く、

ペットボトルや缶や瓶に入って霊薬やらアイテムが入っている。

珍しい瓶ビールの自販機があると思いきや、瓶ビールの代わりに火炎瓶が売られているのはシュールを通り越してなんの冗談だと言いたくなる。

管理部門が悪ノリしたのか、火炎瓶のところには、ゾンビパーティーには黙って火炎ビールとか、北欧原産モロトフカクテル等と煽り文句が書かれている。

この二つには名前以外の差は無さそうだった。

 

ニーナはカードを翳して、火炎ビールとモロトフカクテルを一度に押すと購入口から落ちて来たそれらを持って、渡してくる。

 

割れ防止なのか、薄い金属板が巻いてある。

 

ニーナの元ネタはロシア人なのでモロトフカクテルで、自分はゾンビなりかけなので火炎ビールで一緒に焼かれちゃう等とバカなことが頭に浮かぶ。

 

「この火炎瓶を使うときは覆いをとってから、相手に向かって投げて下サイ、

ガイア連合の火炎ビンは割れると燃えるようにできていますが、

ガイア連合以外で買ったり、自作するときには口の部分が外れない様にしっかり留めてあるか、確認して下サイ。

そこが弱いと火をつけて投げる時に抜けて中の油を被ってしまいます。」

 

「丁寧だな。」

 

「たまに、自作する人がイルので・・・」

 

そういや自分も昔、戦っていた時に火炎瓶を自作して使っていたなと思い出す。

 

当時は二本携帯して戦っていたが、戦闘中割れて火がつき、なんとか敵は倒したものの、色々混ぜて火力と粘性を上げていたため転がっても消えず、

ブフで無理やり火を消したところ、腹から下腹部にかけて火傷+凍傷という、サーニャのディアでも治らない訳のわからない怪我を負って、医療班のお世話になったなと思い出す。

 

そんな忌まわしい記憶を心の奥底に封じ込める。

 

「さあ、ゾンビの所に案内します。

ゾンビは火炎弱点なので、とても有効です。」

 

そのまま、ニーナの案内に従ってゾンビの元へと歩いていく。

 

 

 

離れた所にゾンビが一体突っ立っている。

 

「それじゃあ、投げるか」

 

モロトフカクテルの方の覆いを取って構える。

 

「あっ、力いっぱい投げると、銃撃扱いになって反射される事があるので、注意して下サイ」

 

「えっ、それは知らなかった。

ありがとう」

 

慌てて力を抜く、そうして、そのまま構えて、多少力を抜いて投げる。

 

パリン!

 

ゾンビが炎に包まれて倒れ、MAGに還っていく。

 

完全にゾンビが消えてもまだ炎は消えずしばらく燃えていた。

 

「火炎瓶は近づいた敵の真ん中に投げると複数の敵を巻き込めることがあります。」

 

「そうなのか」

 

今の騒ぎに気づいたのか奥から三体のゾンビがゾロゾロとやってくる。

 

「じゃあやってみるか、」

 

今度は火炎ビールの火炎瓶を敵の真ん中ら辺に投げてみる。

 

「あっ」

 

コントロールがずれて、敵の前に落ちた。

火柱が立ち上る。

 

さすがのゾンビも火柱を迂回してこちらに向かってくる。

 

「ジオ」

 

ニーナの言葉とともに、ニーナの前から雷光が走り、

近づいてくるゾンビの一体の腹に炸裂した。

 

バン!

 

放電音を立ててゾンビは倒れる。

 

その間に、ニーナは拳銃の回転弾倉を抜きとり他の弾倉に入れ換える。

 

「【火炎弾】です。」

 

バン、バン

 

銃弾が命中すると二体のゾンビが燃え上がり、そのまま倒れる。

 

ニーナは、三体のゾンビをあっという間に倒すと、こちらを見て得意げに微笑む。

 

「ここから少し歩くとエレベータールーム、です。

着いてきて下さい」

 

そう言って、歩き出す。

 

 

 

目の前に大きな金属製の扉があった。

 

「このカード読み取り機にカードをかざすと、ロックが解除されて、ロックを解除した階層までエレベーターで、行けるようになります。」

 

言われてた通り、カードをかざすと、金属扉についた小さな扉が開く。

 

ニーナに先導されて中に入る。

中は小さなエレベーターが並んでいるホールになっている。

 

「この中には許可された悪魔以外は入ってこれません。

また、既にあるじさまは既に3階層まで解放しています。」

 

この辺は既にニーナ等作りたての式神のレベリングで何度も利用したことがあるのでわかる。

 

「さて、これで講習を終わります。

ドウでしたか?」

 

そこでニーナはこちらの目の前に立つと上目遣いで、照れたような期待しているような表情を浮かべこちらを見上げてくる。

 

「いや、すごく良かったよ。

かなり成長してる、あの戦い方とか凄かった。

説明もちゃんとできてるし、」

 

レベル差もあるが、実際、あのジオからの流れるような特殊弾装填と射撃は自分でもできるか怪しい。

 

それを聞くとニーナは花が綻ぶように微笑む。

 

「良かったです。

 

では、帰りましょう。」

 

「あーこれからレンタルするから下に降りてレベル上げしないと・・・」

 

「ダメ、です。」

 

そう言うとニーナは自分の前に立って、そっと右手を僕の頬に当てて撫でる。

 

そういや、ここは安全なんだなと思って力を抜いた瞬間、

 

ニーナが触れているのとは逆の頬がジクジクと痛みだし、血が流れ出す感覚がした。

あ、まずい。

 

と、同時に緊張が解け、知らず知らずの内に力が入っていた体から力が抜け、ガタガタと震え出す。

 

戦闘後の離脱症状、初めて戦った時以来無かったがなんでこんな時に、

 

ニーナはそっと手を伸ばし首に手をかけて、その濃い青みがかかった翡翠のような瞳でこちらを見つめる。

 

「ディア」

 

そっと彼女が呟くと同時に頬の痛みが消える。

 

「息を吐いて下さい、」

 

言われた通り吐く、

 

「息を止めて下さい・・・息を吸って下さい・・・息を止めて下さい・・・」

 

指示にしたがって呼吸を繰り返す。

 

次第に体の震えが引いていく、

が強い脱力感は消えなかった。

 

「初めて戦ったり、久しぶりに戦ったら、みんなよくそうなってしまうもの、です。

 

戦いで体が緊張して、そこから安全な所にいくと、安心しちゃって、体が必要以上に緩んでそうなってしまうもの、です。

 

だから休んで下さい。」

 

精神の問題なら耐えられるつもりだったが、これは肉体の、神経系のストレスから来る生理反応である。

 

さんざん無理させていた体が、機会とみて魂に反逆しにかかった、そんな妄想さえ浮かぶ。

 

本来なら徐々に緊張を下げたり、あるいはレベル持ちの身体能力で神経への負荷に耐えるが、久しぶりということで、神経への負荷がもろにかかってしまい状態異常のような状態になってしまった。

 

状態異常・・・?

 

「状態異常なら・・・アムリタソーダで・・・」

 

「ポーションは、敵の攻撃を受けて怪我した時や、一日一回のMPポーション以外は基本的に使うなって医者から言われてる、ですよね?」

 

サバイバルベストからアムリタソーダを取り出そうとした腕を、ニーナの手がそっと握り、止められる。

 

「あう・・・」

 

ここで、いつもなら自分の状況を危機的状況を説明して説得にかかるが、そんな気力が湧かない。

 

いや、気力の無さにあかせて一言命じれば、自分の式神であるニーナは断れないはずだが、せっかくのニーナの気遣いを無視するのは嫌だった。

 

・・・いや、ニーナはそこまで情緒が発達しているか?

先ほど言ったルールにしたがってるだけじゃ・・・

 

「さあ、戻りましょう。」

 

ニーナがその、小さいが力の強い体で優しく肩を貸してくる。

小柄過ぎて、半分おぶさっている様な形になる。

 

それでも、自分の式神が示した気遣いの様に見えるものをないがしろにしたくはなかった。

 

 

 

「ふぅ・・・」

 

ガイア連合第三支部の迷宮部門のロビーにて、長椅子に座ってゆっくりする。

 

戦闘ストレスの離脱症状で気力が抜けて、やる気が起きない。

 

特にエレベーターは止まったりせず、ニーナは講習終了の連絡のため、事務所の方に行っている。

これから、ニーナにはレンタル依頼は入っていないので、契約に基づいてメンテ等を行う予定だ。

ついでに、新しくショットガンを調達する。

暇だし、my式神専用掲示板でも見るかと思って、スマホを取り出す。

 

「おい、おっさん」

 

「ん?」

 

乱暴な口調で声をかけられたのでそちらを見る。

 

目の前に五人の男が立っている。

高校生位の青年と言っていい年齢にみえるが雰囲気が荒っぽい。

話しかけて来たのは、一番前に立っているカイザーアーマーを着て十徳刀とデザートイーグルを装備した男、

レベルは・・・10,11位か、

その後ろは彼より少しレベルが下の様だ。

明らかに戦闘職なのに誰も高性能式神を連れていない、

現地人異能者か、

 

「お前、ニーナと一緒にいたな?」

 

「?」

 

なんでこいつらは、マイ式神でもない汎用なスキル構成のレンタル式神を個体識別しているんだろうか、

教習所の日替わり教官みたいな感じだと思っていたが、そういう文化なのか?

 

いや、ニーナが有能だから覚えられているのかもいれない。

 

「何とぼけてんだオラ!」

 

「それは、確かにニーナから講習を受けましたが」

 

いきなり襟を捕まれた。

 

「ニーナを誘ったな!」

 

荒っぽい相手は式神製作依頼で慣れてるとはいえ、こいつは何を考えているんだろうか、

相手がなんなのか分からないのはとにかくとして、ここでこんなことをやるとは、

そんなことを思っていると、

 

「ニーナちゃんは兄貴の良い人なんですよ、

それなのにニーナちゃんを誘って講習行くなんて、年考えろよおっさん、」

 

「そうそう、しかもその年齢で講習とか恥ずかしくないの?

クソダサザコおっさん」

 

後ろにいた取り巻きとおぼしきチャラい男が囃し立てる。

 

「そうだ。ニーナは俺の物だ。」

 

「何を言っているんですか?

ニーナは僕の物ですけど」

 

「あ?」

 

「式神には組織であれ個人であれ所有者がいます。

自分がニーナの所有者です。」

 

「お前がか!!」

 

そのまま首を絞めるように襟ごと持ち上げられる。

 

そうしてそのまま、襟を捕まれた状態で身体中睨み付けられる。

 

何を見たのかそこでフッと馬鹿にしたように嗤う。

 

「ふん、ザコが、お前にはニーナは釣り合わない。

せいぜい簡易式神と遊んでろ。」

 

「は?」

 

こいつは、こうやって喧嘩売る前にあらかじめ相手の力量を図っていなかったのだろうか、

そもそも高性能式神や簡易式神をなんだと思ってるんだろうか、

そんなことを思っていると、

そして、言い聞かせるように目を見て言ってくる。

 

「あれはお前には過ぎた女だ。」

 

リアルで言う奴を初めて見た。

いや、サーニャに関してはレンタルした連中に、技術部で個人警護やらせとくのは勿体ないとかは、わりと言われてたか、

 

そんなことが頭に浮かぶ。

 

奴は僕の目を睨み付ける。

 

「ニーナを渡せ、」

 

殺すか、

確か、カイザーアーマーは冷凍に弱かったはず、

マハブフで怯ませてからの劣化ブフダイン・・・いや、マハブフ二段構えで、それでダメなら冷凍弾ぶちこめば死ぬか、

いや、ここは山梨第三支部、ここでは控えよう。

 

そんなことを考えていると、

 

襟を掴んでいた腕が横からガシッと褐色で傷だらけの巨大な手に捕まれた。

そのまま、無理やり下げて椅子に戻される。

 

ミシッ・・・

 

異音と共に奴の手の力が弱まり解放された。

 

「いででででででで!!!」

 

「またお前らか、懲りないな。」

 

「ジント・・・?」

 

人に威圧感を与えるためにデザインされた巨大な体躯と傷痕だらけの褐色の肌、そして物騒な装具、

そのコンセプトに見覚えがあった。

 

「そうだが、会ったことがあるか?

あいにく覚えてない。」

 

「いえ、あなたの降霊を担当したのが私なので、少し懐かしくなっただけです。

助けていただいてありがとうございます。」

 

「そうだったか、そういうことはあまり言わない方がいいぞ。

それに、礼を言う必要はない。これが仕事だ。」

 

しまった。

聞かれたか?

と思って絡んできた男達を見たがそれどころでは無いようだ。

 

「てめぇ!ジント!邪魔するんじゃねぇ!」

 

「そうですよ!兄貴の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られちまえ!」

 

わーわーと男と取り巻き共が騒ぐ。

 

「お前ら、やるなと言ったよな?」

 

ジントの雰囲気が変わる。

連中はピタッと黙って、その顔から血の気が引いていく。

 

【威圧】か、これは降霊の段階でうまくつけられたんだよなと、彼を作ったときのことを思い出す。

 

「くそっ、引くぞ!

あと、おいお前!

ニーナを返してもらいに来るからな!

首を洗って待ってろ!」

 

返すも何も元から自分の物だが、こいつの脳内はどうなってるんだろうか、

二度とくんなと思ったが、ここでようやく、こいつも"ニーナ"が"好き"で"ニーナ"を求める顧客候補だということに気づいた。

 

それならば、やることは決まっている。

 

「もし、ニーナをお求めでしたら、式神製造部にご依頼下さい。

予算の範囲内で、都合が合えば、スキル構成や性格の指向性をあなた好みに調節したあなたのニーナを注文できますよ。」

 

この頭のおかしい男もマッカとフォルマを搾り取る顧客だと思えば気分を抑えられる。

ニーナのテンプレートは登録されているので、こいつも自分の"ニーナ"を手に入れられる。

というか、偏愛向けるなら自分の"ニーナ"を買って向けろ、僕のニーナが迷惑するだろ。

 

「ふん、お前らはみんなそうだ。

ニーナをなんだと思ってるんだ。

やっぱおめえにはニーナはふさわしくない。

俺が何もやらんでも捨てられるろうな。」

 

そう言って冷たい目を向けてくる。

めんどくさい、このタイプか、

そもそも式神を、いやニーナという存在をなんだと思ってる。

そんなことを思う。

 

こちらを一睨みすると奴等は去っていった。

 

「ありがとうございます。ジントさん。

もしよければ、お礼に事務方に言ってメンテをしましょうか?」

 

たしか、ジントは発注者が山梨第三支部の個人の式主を持たない地脈のMAGで運用するタイプの式神だったはず。

勝手に人の式神に、お礼であれ、あれこれするのはどう考えてもトラブルの元なので、まず、持ち主に話を通さねばならない。

根本的に、そういう風に作っている。

 

「いや、悪いがその類いの賄賂になりかねないような行為は禁止されている。

それにメンテは事務方の方で定期的に適切に行われているので、心配ない。」

 

「そうですか・・・無粋な事を言いました。

すみません。」

 

と、そこで、

 

「あるじさま!」

 

ニーナが駆け寄って来る。

 

情緒がさっきより明らかに発達している。

何かあったのか?

 

「どうかし・・・」

 

「あるじさま!大丈夫でしたか!?」

 

とても慌てたようにニーナが話す。

 

「大丈夫、大丈夫、ちょっと変なのに絡まれただけ、

ジントさんに助けてもらったし、」

 

二重の意味で、

最後は心の中で呟く。

あのままどうしようもなければ、確実に血が流れていた。

 

「怪我はないですか!?」

 

ニーナは聞いておらず捕まれた襟のところの首筋を覗き込む。

 

近い・・・

 

ちょうどニーナの綺麗な金髪に顔を埋める形になる。

 

なんとなくそのままポンポンと背中をたたく、

 

首を確認していたが、気が済んだのか力を抜き、そのまま、寄りかかってくる。

 

「よかった・・・」

 

「大丈夫、大丈夫」

 

そう言いながら背中を撫でる。

 

「災難だったな。

感謝しろよ、飛び出して行きそうなニーナを止めてたんだから、」

 

「お前かよ。

そうか、ありがと。

あの場で出てこられたら確実に血を見る羽目になった。」

 

後ろから出てきたサーニャを連れた顔馴染みに、ニーナに抱きつかれながら話す。

 

「あいつら、ほんとどうしようもないな。

お前が言った通り、ガイア連合追い出せればいいんだが、」

 

「やっぱり厳しいか?」

 

「ああ、普通なら式神の持ち主の方が高レベルなんで持ち主自ら〆るんだが」

 

「〆ちゃってええん?」

 

相手の方が高レベルと言えども、継続的な戦闘が必要となる異界探索などの場合でなければ、ブラックカード持ちの技術部員としては、物理精神問わずいくらでも大物食いする手段はある。

 

「止めろ。

お前はレベル低いから、威圧とかじゃなくて、物理的に〆にかかるだろ。」

 

「反魂香使って生き返らせれば、実質無傷なんで物理でも威圧やろ。」

 

そう冗談半分で言ったら奴は頭を抱えた。

 

「おい、揉め事担当の前で、なに話してるんだ。」

 

「あ、すいません。ジントさん、止めときます。」

 

奴は、なにか奇妙なものでも見る目でこちらを見てくる。

 

「ジントの言うことは聞くんだな。

ジントは自我もってないぞ。」

 

「知ってるぞ、ジントさんの仕様書頭に叩き込んで魔界の深部まで潜って連れてきたのは誰だと思ってる。

知のステータスもあるし、そうそう自分で作った式神のことは忘れない。」

 

ジントは自我を持たないコンセプトでデザインされていて、そういう特性を持った魂をスライムとして降霊した。

 

「のわりに扱いが俺より良くね?」

 

「むしろ、自我持つ相手に善人ロールするよりは、自我持たない相手に善人ロールやった方が安心安全でね?

変に利用されたり粘着されても厄介なことになるし、」

 

だいたいこの事を言うと、大体の人は引く。

同士の場合は引いた後、なにかを納得してしまうが、

 

「善人ロールやる意味は一体・・・」

 

「やりたいからやる。

俺らにそれ以外に意味とかなんて必要かな、」

 

この辺、特に意味もなく生まれ、特に意味もなく死に、さらに特に意味もなく生まれ変わる事を体験した転生者は、存在することの意味自体を重視しない傾向がある。

だからこそ、自分が存在することの意味を勝手に定義して救済といって与えてくる類いの宗教とは相性が悪い。

 

「あー、お前はそうだったな。

でも、とかいっても、なんだかんだで助けてくれるじゃん。」

 

「おい、利用&粘着の筆頭」

 

こちらを見ている"サーニャ"を製造した時のドタバタの事を思い出して、思わず突っ込む。

 

突っ込まれて厄介筆頭は笑ってごまかす。

 

まあ、だからこそ善かれ悪しかれ人の繋がりが生まれるんだよなぁとも思う。

 

「しかし、お前、自分の式神のことになると、とたんに理性消えるよな。

止めなかったらなにかやってだろ?」

 

「やろうかと思ったけど、ここは事務方の管理する場所だし、

まあ、あのまま管理する気がないようならマハブフ位は使ってたと思うけど、」

 

「やめれ、

で、こっちが安全が確保したんで煽ったと、」

 

「?煽ったつもりはないけど、」

 

「・・・やっぱりというか、最後の宣伝、天然だったのか・・・」

 

「"ニーナ"が欲しいなら、こんなトラブル起こさず自分の"ニーナ"を買えというそれなりに善意はあったんだけどなぁ・・・」

 

ぽんぽんといつの間にか首もとに抱き付いていたニーナの背中を撫でながら言う。

 

「いまだによく理解できないんだけど、

このニーナが欲しいって話だろ?」

 

「だったみたいだな。」

 

「むしろそれ以外にあるのか?」

 

「・・・式神は人間じゃないぞ。

うーん・・・さっきの自分の反応、無理に人間で例えるなら、よく知りもしないで、人の妻に懸想してる男にそっくりの相手紹介した感じ?

あんまり深いこと考えない代わりに情は強そうだったから、本人の"ニーナ"もってればそっちに関心移るやろ。」

 

「あー・・・それなら、なんとなくは分かるわ・・・」

 

「・・・例えておいてなんだけど、あんまり式神を人間として見ない方がいいぞ。

ちょっとこの辺のこと、今度二人で話そうか、」

 

このあたり勘違いしていると、人間にとっても式神にとってもわりと不幸なことになる。

 

「お前から誘うって珍しいな。」

 

「あの大迷惑の果てに、なんとか成立したお前とお前のサーニャの関係が破綻してほしくないだけだよ。

お前が覚醒してサーニャもレベル持った以上、このままだといつかはぶつかる問題だから、

 

余計なお世話かも知れんが、さんざん色んな式神を作って見てきた降霊キチの、自分の式神ともっと仲良くなるための方法だ、

聞いといたほうがいいぞ。」

 

式神を人間として見ていたせいで式神との関係がうまくいかなくなった例を何度も見てきた。

十分な依頼料を貰っておいて依頼主の願望の形を受け止めきれない式神を作ってしまうのは自分達式神製造者の怠慢だが、

その願望の形が"式神が人間であること"なら技術での突破は困難だ。

 

式神はどんな形であれ仕様に沿った式神として見るべきである。

仕様書外の事や構造上無理な事を式神に要求するべきではない。

それは魚に鳥の様に飛べというのに等しい。

 

「あぁ、まあ機会があったらな。」

 

明らかに気の無さそうに言う。

そのうち、とりあえずここを出る前に一度捕まえて話しておこうと決意する。

 

というか、こいつからまたサーニャとの関係上手く行かないと泣きつかれたら鬱陶しい・・・

 

ちょうどその辺で、気が済んだのか、ニーナは体を離す。

 

「じゃあ、行こっか。ショットガンを見たい。」

 

「ハイ、あ、その前に・・・」

 

そういうと先ほどの僕を真似するようにニーナはジントに向き直って口を開く。

 

「ジントさん、あるじさまをありがとう。」

 

ニーナはぺこりとジントに頭を下げる。

 

「だから礼を言う必要はない。」

 

それに何事もなく自我を持たぬ式神は答えた。

 

 

 

 

ガンショップには銃刀法はなんだったのかと言いたくなるような、多種多様な銃器が山ほど並んでいる。

山梨第三支部という本部のお膝元なのでやたらと商品は充実している。

 

貿易系の仕事をやっている転生者がアメリカやら世界各地から買い集めてきて、事務方の許可を得て洗脳系の魔法で税関を突破して運び込んでいる。

 

ちなみに、ガイア連合内でのランクに従って買える武器は決まっているが、自分の様なブラックカード持ちには関係の無い話である。

 

護身用に持つならとにかく、異界での戦闘でメイン火力として使うならショットガンがベストという信念を持っているので、当然のごとくショットガンを見る。

 

ニーナの場合は、メイン火力というよりはあくまでレンタルした相手のピクシー的なサポート役としての運用なので、取り回しがしやすく、相手に合わせての特殊弾が切り替えやすい拳銃を持たせている。

 

「セミオートすらダメかよ・・・」

 

良さそうなショットガン(ベネリM1)を見つけたので、確かめたところCOMPに表示された結果を見て思わず呻く。

 

ここはやむを得ない、ポンプアクションにするかと思って、他のを探す。

 

「あノ・・・」

 

「ニーナ、どうしたの?」

 

「ショットガンなら、この銃がいいと思います。」

 

そう言って、木製ストックのいかにも猟銃という感じのショットガンを持ってくる。

札にはモスバーグM500と書かれている。

 

「ありがとう。どうしていいの?」

 

「使ってる人を見てて、不発になったのを見たことがありません。

ソレに、一度にたくさんの特殊弾の装填もしやすいです。」

 

少し弄ってみる。

確かに戦闘中弾を切り替えての装填がしやすそうだ。

 

シューティングレンジに行って、同型の銃を借り、何発か撃ったり装填したりしてみる。

 

・・・慣れてないが良い感じだ。

 

「ありがとう。これにするよ。」

 

「役に立てて良かったです。」

 

にっこりとニーナは笑う。

さっきより情緒発達してるなと思いつつ言う。

 

「ニーナも何か欲しいもの無い?

銃変えたいとか、」

 

少しニーナは首を傾げ、頬に手を当てる。

 

「銃は、このままで良いです。

だけど刀が、ちょっと、武器として合ってない感じがして・・・」

 

「基礎訓練はしたけど、剣術スキルいる?」

 

「ソウじゃなくて、向いていないというか、なんていうか・・・」

 

「しっくり来ない?」

 

「ソウそう、それです。」

 

「武器の素質が剣に向いてないのかな?

ちょっと一通り試してみよう。」

 

ニーナに関しては特に武器素質は決めてなかったというか、製造する時にそこまで設定するだけの余裕がなかったなと思い出す。

魔法系と銃が使えれば良いので、近接武器が何に向いてるかは重視してなかった。

 

ガンショップと言いながらも近接武器のコーナーもあり、そこでニーナに色々と武器を持たせる。

 

 

 

「剣とか刀とか槍系はやっぱりだめ?」

 

試し振りのコーナーで、何か違和感を感じるという表情でセーラー服の緑色のスカートと金の髪を翻してショートスピアを振っていたニーナに声をかける。

 

「ハイ、合ってない、です。」

 

「斧とかこん棒系は本格使いすると力のステが足りんしな・・・」

 

どうしたものか、

本来ならニーナは基本的に後列で運用するが、自分のお守りということで前列で運用する必要が出てきたのでこの問題が浮上した。

普通素質が無くても違和感を感じるレベルで特定種類の武器と合ってない式神ができることは珍しい。

こういう場合には大体他の武器の素質があるもんだが・・・

 

ショートスピアをニーナから受け取って、元の所に戻しながら考える。

 

杖系とか一通り試すか、と思ったところでクイと裾が引っ張られた。

 

「どうしたの?」

 

「あっ、ごめんなさい。」

 

ニーナはあわてて手を放した。

ニーナが気にしていた辺りを見ると鞭のコーナーだった。

 

・・・あきらかにSMプレイ用品が混じっているのは見なかったことにしよう。

 

「鞭が気になるの?」

 

「ハイ、」

 

「じゃあ試してみよっか、どれにする?」

 

「じゃあ、これを、」

 

「・・・クイーンビュートか・・・」

 

2mほどの先端がバラけた革の鞭を持ってきた。

これ武器というよりSM道具でねと思ったが、こんなものでも式神や覚醒者が使うと武器になる。

 

根本的に、SM道具以外だと武器に使えるような鞭ってあまり売ってないからなぁと、昔、戦闘職やってたころ買える武器を探してあちこち調べたときのことを思い出す。

 

店員に言って試し振りのコーナーに持っていく。

 

 

 

ヒュッ、

 

蛇のように鞭が蠢き、空を目掛けて飛びかかる。

 

革とは思えぬ刃物の様なキレに思わず見惚れた。

 

しばらくニーナはクイーンビュートを新体操で使うリボンの様に振り回す。

 

自在にクイーンビュートを繰るニーナはどこか楽しそうに見えた。

 

「ふぅ・・・」

 

ニーナがため息を吐いて演舞の様な試しは終わる。

 

気になったのでアナライズでスキルを確認すると、鞭術がいつの間にか生えていた。

 

今度から、後方用でも作った式神の武器適正もちゃんと確認しておこうと決意を新たにする。

 

「コレ、欲しいです。」

 

ニーナはねだるように上目遣いで言ってくる。

 

「ああ、良いよ。」

 

呟く。

 

「やった!ありがとう!

大好きです!」

 

思わず、喜んでいるニーナを見る。

 

自分の式神であっても、いやだからこそ、好きと言われるのは心に響くものがある。

 

・・・ねだられたのを買ってあげただけだが、

というか、これくらいは普通に買えるだけの金は持たせてるはずだが、

 

まあそんな無粋なことはとにかく、

 

思わずぽんぽんとニーナの頭を撫でると、ニーナにしてはめずらしく、にへらと緩んだ顔で笑った。

 

 

 

 

 

 

第三支部のダンジョン修行者用宿の一室、ここのエレベーターは異界に直結で行けるので修行者は泊まって修行する事が多い。

第一支部にある実家からだと、ここまで通うのに時間がかかるので1ヶ月間借りてダンジョン通いをすることにした。

 

 

ヒュッ、ピシッ!

 

ニーナが先ほど買ったクイーンビュートを振り練習している。

 

練習というよりはニーナの表情から新しく買ってもらったおもちゃで楽しんでるといった方が適切だろう。

 

それを横目で見つつ、購入したモスバーグM500の説明書を読みつつ、分解組み立て、手入れ装填等、一通り慣らす。

 

ニーナにレンタル予約は入っていないのでこうして好きに連れ回せると言うわけだ。

 

現場が忙しくなったり予約が入ったら連絡が入ってニーナが派遣されることになっているが、これから非番になるのでしばらくは無いだろうという話だ。

 

一通り、確認を終える。

ニーナの方を見ると、遊び飽きたのか椅子に座ってさっき買ってもらったクイーンビュートを眺めてのんびりしている。

 

「ニーナ」

 

呼ぶ。

 

それで察したのか、期待した表情を浮かべこちらに歩いてくる。

 

「服を脱いで、」

 

「ハイ、」

 

ニーナは顔を赤らめ、するりとセーラー服を脱ぎ捨てる。

 

セーラー服だけあってとてもいけないことをしている感じがする。

 

そのままニーナはうつ伏せに横になる。

 

そうしてニーナの乗る家から運んでもらった式神台を起動させた。

 

 

 

式神台の上で魔法陣に包まれているニーナの白い背中に手を翳し、ざっと術式を確認する。

 

問題を起こすようなものでは無いが多少術式が歪んでいたので、それを修正する。

 

「アッ・・・」

 

自分という存在の根幹を弄られる感覚に慣れていないのか、ニーナは声をあげる。

 

さらにレベルアップと自動アップデートによって部分最適に陥っている部分を解消して最適化を進める。

 

するとステータスがいくばか向上して成長しやくすくなる。

 

お、スキルスロットが一個できた。

 

それを終わらせると、内蔵スライムの調子を確認する。

 

元気に蠢いているが特に異常は無さそうで少しMAGを与えて可愛がってやる。

 

「♪」

 

内蔵スライムというが要は人間の脳の様な、式神の魂部である。

これを式神ボディに入れて、術式で縛ることで式神としての形を作っている。

 

そして式神ボディの確認を行う。

 

・・・わりとあちこちに問題にならない程度の損傷や回復時の歪みがある。

それを一つづつ、触って撫でてMAGや魔力で干渉して直していく。

 

「うふふ・・・くすぐったいです。」

 

ニーナは目を細めて笑みを浮かべる。

 

一連の工程が終わると式神台を終了させる。

 

ニーナは、起き上がって服を着替える。

 

「ニーナ、ちょっと話していいか?」

 

声をかける。

 

「ハイ、おはなししたいです。」

 

「こっち来てからどんな感じ?」

 

「えっとですね・・・」

 

ニーナは隣でベッドに座り、一つ一つ、あったこと、楽しかったこと、きつかったことをゆっくりと、それでいて明るく話し出す。

 

「そっか・・・

それで、その人、折れちゃって故郷に帰ったのか・・・」

 

「ハイ、

残念でした。」

 

色々な人に借りられて使われた話、優しい人、粗暴な人、うまく育った人もいれば、途中で心折れたり才能限界を迎えてしまった人もいる。

 

そして、話は連中のことに及んだ。

 

「それで、チャーム受けた訳でもないのに、いきなりアイツらの反応が敵になって、抱きついてきたんです、

それで、キスされそうになって、抵抗してたら、転ばされて・・・

そこで、スタッフ保護簡易式神が動いて、外に転送されて、アイツらが捕まったんです。」

 

「辛かったんだな。」

 

珍しく怒り気味にアイツらと呼ぶニーナを見てぽんぽんとニーナの背中を叩きながら呟く。

やっぱり殺そうか、生き返れない様にして

 

「いいえ?別に」

 

きょとんとした顔でニーナは言う。

 

「どっちにしろ、"あるじさま以外は私に何もできない"し、

しようとしてもすぐ捕まったので、いきなり抱きつかれて、無理矢理キスしようとしたり、倒された事が不快なだけ、です。

それより、そのあと、私を借りた人を邪魔するようになって、私が借りられる事が減って、私の役割を果たせなくなった事が辛かったです。」

 

「悪かった。様子を見に来れば良かった。」

 

連絡体制も整ってるし連絡してくれれば良かったのにとも思ったが、未熟な彼女の状況を把握できず、運用環境を整えられなかった自分の責任なので、彼女に文句を言うのはお門違いだ。

 

慌てた様にニーナは言う。

 

「いいえ、そこまでは辛くなかったので連絡しなかっただけです。」

 

「それでもだ。」

 

「それなら、私もあるじさまにアイツらのこと言わなかったせいで、巻き込んでしまって・・・」

 

沈んだ声で言う。

 

「どっちにしろ、あいつらは絡んできただろうし、ああいう連中がいるっていうのは、受付で聞いたから気にしなくていいぞ。」

 

しれっと受付担当のヤツを売る。

一応、今回の件で顔を合わせず済むように連中の位置情報をCOMPに送ってもらえることになっている。

 

「でも・・・」

 

「あいつらが全部悪い。

それでお互い全部良くしよ。」

 

「ハイ、そうですね。」

 

そういうとニーナは少し笑った。

 

「あの・・・」

 

そこで、モジモジとニーナは肩を寄せながら、何かをねだってくる。

 

「良いのか?」

 

「ハイ、あるじさまとするともっと強くなれるし・・・

シたいです。」

 

そして、ニーナと一緒にベットに転がった。

サーニャが見ていることはわかってはいたが、彼女からはそっと背中を押される感覚がした。

 

 

 

 

 

 

医療班愚痴スレ68

 

 

547 名無しの医療班

あの愚患者、ゾンビの代わりに狂人:ジャンキーLv25にでもなるつもりか、

 

548 名無しの医療班

患者の名前隠しても、この時点で患者が誰か分かっちゃうのは草なんだよ。

 

549 名無しの医療班

医療コンプライアンス的にアウトだけど、規模が小さすぎて学会とかやっても医療の知識の共有や拡大速度に限度があるから、

こうやって医療班限定の専用掲示板で症例と治療法のヒントになりそうなものは何でも共有してるんだよなぁ・・・

 

550 名無しの医療班

で、何やったの、

こっそり霊薬使ってた?

 

551 名無しの医療班

いや、アレはとりあえず医者の言うことは聞く、

言ってない事は全力でやろうとするが、

 

それで霊薬じゃなければOKですよね!

と、連続稼働できるようドーピングするからと、科学側の眠くならない薬と、痛み止めで良いのないか聞かれた。

 

552 名無しの医療班

おい。

 

553 名無しの医療班

おい。

 

554 名無しの医療班

痛み止め・・・

市販のロキソ〇ンとかかな?(すっとぼけ)

 

555 名無しの医療班

それは、前世の名前、こっちの世界だと、薬の名前や規制違ってることがあるから気をつけろよ。

おかげで一回医学試験に落ちた・・・

 

556 名無しの医療班

それっぽいのはあるっちゃあるけどそんな理由で処方したら医者としてアウトな奴

 

557 名無しの医療班

>>555

ワイは転生を解明しようと思って現世から医者目指した組だから、その辺のは苦労しなかったな。

転生者富豪に金出してもらって、そのまま転生者富豪がパトロンの医大の転生研究サークルに入った組、

 

そこからサークル全体がガイア連合の医療班に組み込まれたからなぁ・・・

 

まさかここが女神転生世界だとは思わなかった。

 

558 名無しの医療班

それで、処方しなかったよな?

 

559 名無しの医療班

当たり前だ。しっかり自分で変な薬を調達しない様に念も押した。

けど、異界でレベル上げしてる時間を延ばさないといけないから、カフェインと市販の痛み止めでがんばるらしい。

とりあえず、それで数日に一回レベルまで体力系の霊薬使用を抑えるつもりらしいんで、悪魔化という点では問題ないからほっとくことにした。

 

560 名無しの医療班

相変わらず精神力がおかしいなぁ・・・

 

561 名無しの医療班

アレはどっちかってーと、一度走り出して習慣にしたら、それを維持するために理性と社会合意の許す範囲で何でもやりだすタイプだから、精神力が強いって訳でもないと思う、

つまり自分で止まれる強さがない。

 

562 名無しの医療班

あーそれはあるか、

 

563 名無しの医療班

けど、アレ外界に放流しちゃって大丈夫なのか?

アレ、色々ヤバめな研究知ってる技術部の深淵組の一人やろ?

医療班にも移植用式神パーツの量産方法の開発絡みで関わってたし、

 

564 名無しの医療班

アレ、変に人が良いから、頼まれたらいろんな研究手伝ってるから色々知ってるんだよなぁ・・・

ここんとこ、仕事や式神ちゃんの管理が忙しいからあんまりは手伝ってはいないみたいだけど

 

565 名無しの医療班

その分、医療班に迷惑もかけてるけど、

 

566 名無しの医療班

"種"の話は止めろ。

当時は、わりと"種"に関しては医療班としても意見割れてたからなぁ・・・

結局、ガイア連合が健在な限り、レベル上限上げ+生命維持だと普通に専用のシキガミパーツ移植して、一般装備整えた方がいいし、関係者が納得できるレベルの安全性を求めるとコンセプトからして間違ってたということで、研究に関わってたメンバーの中でアレはいち早く離脱したからなぁ・・・

外付けで霊的素質を補って、レベル30まで上げられるデモニカが生まれた今となっては完全に過去の遺物だ。

 

567 名無しの医療班

・・・"種"に関わってたって、アレ、外に出しちゃって良かったの?

 

568 名無しの医療班

技術部深淵組の中では、わりと人の言うこと聞くし、人の話が通じる分マシな部類だと思う。(なお)

 

569 名無しの医療班

せやな。(全く言うことを聞かない技術部のキチ共を思い出しながら)

 

570 名無しの医療班

スキルカードはカードゲームのカードではないですし、

人間はデッキホルダーではないですし、

スキルカードは人間に物理的に挿し込むものではありません!

 

571 名無しの医療班

おい、人工デビルシフターの実験失敗したといって、悪魔とごちゃ混ぜに混ざった本人にこられても困るんだけど、

 

572 名無しの医療班

悪魔を倒す武器の試作品の反動で、どうして使用者本人がこんなに粉々になれるんだ・・・?

 

・・・・・・

 

・・・・

 

・・

 

 

(このあと延々と技術部員への愚痴が続いた。)

 

 

 




インテリ系キチvsDQN系キチ


第二式神製作部、ブラックの構図
降霊キチ「じゃんじゃん式神つくれるぞ!」
部長「関係各所に恩売ってマウント取りたいから、無理にならない程度に依頼受けるけど、
上のこいつ突っ込めばどうにかなってしまうから無理にならない範囲が広すぎぃ!
依頼で無理と嘘ついて生産能力誤魔化そうにも真偽判定魔法使ってくるので誤魔化せない!」



ニーナの身に起こったことについて、本人を含め周りがわりとドライな理由は山梨第三支部編の終わりで明らかになります。
とりあえず知らないのは連中だけで物理的に保護されています。



しかしまさかサーニャが姿隠すとは・・・これが登場人物が勝手に動き出すということなのか・・・
あとなんで、モブ名無し事務員がこんなに動いてるんだろ・・・





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知は力なりとはいうが、専門家には専門家なだけの理由があるんです

戦闘、メンテ、仮眠、戦闘、メンテ、仮眠、戦闘、メンテ、仮眠、戦闘・・・霊薬、戦闘、メンテ、仮眠、戦闘、メンテ、仮眠、戦闘、メンテ、仮眠・・・

 

 

「お前、死ぬ気か、」

 

 

「ふぇっ?」

 

 

思わず変な声が出てしまった。

 

そろそろ霊薬を飲んで4日だ。

 

霊薬飲めば回復するとはいえ、だいぶ受け答えの反応がおかしくなってる。

 

これくらいでおかしくなるとは、未覚醒な軍人からも笑われるなぁと、軍人の軍事訓練時の睡眠時間と戦闘時間を思い出しながら情けない気持ちになる。

 

昼夜問わず悪魔を倒し続けたことで、メーターは緑側に、数値は47.1%台まで下がった。

 

しかしレベルはまだ上がらない。

 

緑側だし下がったし、ちょっと攻めてボス倒して今いる4階より下の階中心にして動いた方が良いかな?

 

でも今でもギリギリなのにレベルが2位上がる前に行ったら悪魔方向に数値上がるな。

 

悪魔が何じゃやっつけてやる!

いや自分が悪魔になってるんじゃろ、じゃあ自分を引き裂いてやるとか、半ばバグったことを考えながらドアのチャイムに呼ばれて部屋を出ると、見慣れた事務員に声をかけられた。

 

連絡があるから、明日の7:00から18:00の時間に連絡入れろと、COMPに連絡があったので、起きた後連絡して奴が来るまでの間、昨晩買ったおにぎりをニーナと一緒に掻き込んでいた。

 

それでチャイムが鳴って開けた所でコレである。

 

「なん用?」

 

舌がうまく回らない。

 

脳が死のうが魂さえ無事なら思考は問題ないはずだが、半端に脳が元気なので絶賛精神に影響が出ている。

 

そろそろ霊薬飲んで回復すべきかとも思うが、戦闘をこなす途中で無理になったところで飲んだ方が無駄にならない。

 

そして、飲んだら、20時間まで落ちてた継戦時間が伸びて24時間まで戦闘継続できるのは大きい。

 

というか、ここまで8日くらい続けてやってもレベルが上がる気配すらないあたり、自分はレベルが上がりづらいのではないかと、かなり焦っている。

 

「休め、ゾンビになるぞ。」

 

「らいじょーぶ、存らいの偏りは人間側だし、

ここまげやってレベル上がらないかろがんばらないと、」

 

COMPを見せる。

 

ホーム画面からでも存在の偏りを確認できるようにサーニャが設定していた。

 

・・・そういや、こいつ見方とか知らなかったよな、なにやってんだろ・・・

 

奴はため息を付き、言う。

 

「ニーナもキツイだろ。」

 

「そうなん?ニーナ?」

 

神経や回路たる術式、魂たるスライム、肉体たる式神ボディ、それらは毎日のメンテで常に正常な状態を保っているが、精神は別だ。

 

魂の方を弄ることで精神的なストレスに対処できる上、同じような戦闘を続けることによる精神負担も考慮して無理の無い様にしているはずだが、精神に関してはたまに予想外の結果が出てくるので、異常が見られたらすぐに対処しなければならない。

 

「いいえ、いつもメンテしてくれてるし大丈夫です。」

 

いつもと変わらない様子で明るく言う。

 

「だってさ、」

 

「・・・」

 

何か異様な物を見る目でニーナを見てくる。

 

「式神ってこーいうもんぞ。

じょーちょがもっと発展してたらちゃうけど、基本、精神性が悪魔だから、メンテで、体と術式とスライム霊の負荷取り払えば、自爆させようが口ではもんくってもそんなに気にしないし、

 

あれ?もしかして、ワイ式神になってメンテ受けたが楽?」

 

それはとても良いアイディアに思える。

 

「・・・ゾンビじゃなくて、スライムになる気か?」

 

「ざんねん、たしかに無理だわははは」

 

こいつに、式神のことで突っ込まれるとはだいぶキテるなと思いつつ、とっとと戦闘済ませて霊薬飲まないとと、出ていこうとしたところで、肩を掴まれた。

 

「そうだそうだ。今日は要件が合ったんだ。」

 

「なん?」

 

「あいつら、どうも今日から4階の階段とエレベーターとボス部屋の前の各所に張り付くことにしたらしい。」

 

「わぁ迷惑。」

 

思わず呟く。

 

3階で戦ってもニーナと二人なら得られる経験値というかMAGは微妙だし、

さすがに異界内であいつらとやり合うのは不味い。

 

3階で一人で戦うか、でもこの疲れて頭がバグった状態だと一人で戦うのはなぁと考える。

・・・一人一人殺るか?

ついそんな物騒な事を考え始める。

 

「それでだ。

文句言っても、分散して狩りをしてると言い逃れされるが、以前から初心者を脅して、

お前探し出して妨害しようとしてたのを含めて、こんなことを続けられたらお前以外にも迷惑だから、あいつらのバックにいるブラックカード持ちに苦情入れて止めさせることにした。」

 

連中の位置情報とCOMPの敵探知だと、明らかに敵探知の方が多くて、人間の敵反応が増えて行ったのはそれが理由か、

 

探知があるから、今、ちょうど戦いやすい規模の悪魔の群れまですぐ行けて効率的に狩れるけど、人間の敵反応がポツポツあって迷惑だったんだよなと思い出す。

 

随分治安悪いなと思っていたが、それが理由か、

 

「そかー、がんばってな!

レベルあげてるから!」

 

我ながらテンションがおかしい。

 

「えぇ〜来てくれよ・・・」

 

「なんで?」

 

「この件のメインの被害者だろ、説得もお前がいたら楽だし」

 

「だけど、いそがしし」

 

「助けると思って、な?」

 

「また~?」

 

「それにニーナの事もあるだろ?」

 

「ん〜・・・う?」

 

そう言われて、思考が少し澄んで行く、

 

・・・なんで僕はレベル上げにかまけて、ニーナの問題をおろそかにしようとした?

 

すうっと頭が冷える。

 

「わるい。たすかった。ぼくも行くわ。」

 

「そうそう。

18時半に話し合うことになったから、それまで10時間、部屋で寝てろ。」

 

「じゅう時間?

それだけあるならさん階層に・・・」

 

「相手とちゃんと話せるように部屋で寝てろ!

寝ぼけスライム!」

 

思いっきりドアを閉められた。

 

開けようとするが、事務方の上位権限でロックされた様だ。

 

横暴な。

 

ブフで壊すかとも思うが、これはここの異界の利用者で暴走したりやらかした異能者を閉じ込めるためのもの、上位魔法でもぶつけないと壊れないだろう。

それに根本的に公共の設備を壊すのはまずい。

 

スタッフであるニーナなら・・・

 

いや、ニーナはここにスタッフとしてリース契約で貸し出されてる式神だ。

 

スタッフとしての規則と主人としての命令を対立させてはいけない。

 

ニーナにとって負荷になるし、下手したら心に後を引く。

 

「出たい、ですか?」

 

スタッフ用簡易式神を弄っていたニーナが聞いてくる。

 

「いやあ、ニーナは事務方に貸しださらてふスタッフやから、ニーナに頼ろうとは思わないさあ。

自分ででるわ。」

 

「さいしょに、」

 

「うん?」

 

「エレベーターの所で、私が止めたときは、止まったのに、

あの人が止めても止まらない、ですね。」

 

不思議そうに言われた。

 

・・・それもそうか、

 

知らん内に奴の心遣いを蔑ろにしようとしていたのか、自分は、

 

やはり式神はいい、自然と自分の歪さに気付くことができる。

 

「ニーナ、ありがとう。やっぱりねる。」

 

「ソウですか、」

 

「その前に、ニーナをアップデートするわ。

あと、いつも長時間ありがとうな。」

 

「ハイ!」

 

顔を綻ばせ、ニーナはすり寄ってきた。

 

 

 

・・・スッキリして寝過ごした。

 

 

 

 

 

 

「確かに初心者に絡むのは問題だけど、どうせ現地人だろ?

こっちに言うほどのことか?」

 

「言うほどのことです。その上、その現地人使って、ブラックカード持ちに嫌がらせしようとしてるのが問題なんです。」

 

公的な対応なので、知り合いのキチと話す時とは違って丁寧語で話している。

 

現地人切り捨てろと言うんだったらお前のとこのDQNどももさっさと切り捨てろ。

そう心の中でつぶやく。

 

「確かに事務方のレンタル式神に勝手に手を出そうとしたのはまずいし、それでレンタル禁止にするのはとにかく、ショップ&クエスト禁止まではやりすぎだろ。

最大罰則じゃないか」

 

「特に悪質な上、諸般の事情がありまして、」

 

山梨第三支部の様な本部直轄の支部がなぜ、リース契約した式神を使っているのかというと、式神運用規模が大きくメンテや修理まで含めると必要経費が足りなくなると言うのがある。

 

このため、メンテや修理は式主が行うリース契約した式神が必要なので、リース契約する式主が居なくなりかねない問題には厳しく対処している。

 

「そもそも、今回問題になってる相手は、幹部方という訳でもないのに、横紙破りのレンタル契約無しでそっちの式神を連れ歩いてるそうじゃないか、

そっちの方がおかしいだろ。」

 

「諸般の事情がありまして、

あれに関しては事務方全体の決定であり、問題ありません。」

 

ただこの辺の事は、ブラックカード持ちとの契約の話になる。

同志の個人情報保護は事務方の義務だ。

 

だから、来て欲しかったんだけど、あいつはまだ寝てんのか、寝不足しすぎだろ。寝坊助

 

心の中で毒づく。

 

本人が契約について言ったり、本人の許可を得て契約について話すなら、問題ない。

 

「そりゃ、色々あるんだろうけど、

傍からみれば不平等に見えるから、あいつらがああやるのも仕方ないだろ。

それで俺を呼び出して止めさせるとか、止めさせられなかったらダンジョンから追い出すとかはやりすぎだろ。」

 

色々あると分かってるなら黙って聞けよと思う。

 

こいつは、レベル30オーバーになって調子に乗ってるらしく、転生者の低レベル勢を努力不足とどこか軽く見てる。

 

そのくせ、現地人の身内の"努力している"勢には優しい。

 

・・・傍から見て、周りの現地人にヨイショされて親分気取りで調子に乗ってるようにしかみえない。

 

しばらくそんな感じで、実りの無い会話を続けていると、会議室の外が騒がしくなって、ドアが開いた。

 

 

 

 

「すみません。遅れました。」

 

会議中とのことなので、ゆっくり入る。

 

顔なじみの事務員とパンクな格好をした転生者・・・こいつが連中のケツ持ちらしい。

がいた。

 

「この人は?」

 

「話題になってた相手ですよ。」

 

「どうぞよろしくおねがいします。」

 

頭を下げる。

日本人の性か向こうも軽く会釈するが、どこか軽く見てる様に感じる。

 

まあ、レベル30オーバーからみれば仕方ないか、

 

「ところでなんとお呼びすれば?」

 

「健(たける)だ。峰口健、」

 

峰口・・・?

確か・・・

 

「あ、峰口さんですか?

桜ちゃんの調子はどうですか?

問題ありませんか、」

 

とりあえず、最初の話し合いの取っ掛かりとして、穏健な話から入ろうと以前依頼されて作った式神の話題を振る。

 

「いぇっ!?

な、何のことだ?」

 

「木之本桜ちゃんですよ。

あれ?式神量産部門の方に、オーダーメイドで発注かけてませんでした?

あの子の製造担当したの僕なんですよ。」

 

仕様書に書かれていた内容を記憶から引っ張り出す。

 

「そ、そんなことはしらんな。」

 

明らかに挙動不審になった。

 

「あー、カスタムで名前変更しましたか、

ほら、【家事】とか、【育児】とか、付けた・・・」

 

「ワーワーワー!!」

 

狂ったように叫びだす。

 

「分かった!分かったから!あいつらにはしっかり言って止めさせとく!

あいつらが迷惑かけて済まなかった!

俺は帰る!」

 

「あの、桜ちゃんの調子は・・・」

 

問いかけを無視して峰口は去っていく。

 

そして、同胞とはいえあの明らかに不良な雰囲気の男の対応がきつかったのか引き攣った表情を浮かべた顔なじみの事務員に向き直る。

 

「もう話し合いは決着寸前だったみたいだな。

僕が来ることは無かったか、」

 

「・・・お前さ・・・流石にえげつないだろ・・・?」

 

「?なんのことだ?」

 

首を傾げる。

 

「いや、いまの奴の式神の話・・・」

 

「それがどうかした?」

 

いつになく、こいつが何を言ってるのか分からない。

 

「いきなり脅すのはないだろ・・・」

 

「脅す・・・?

会話の枕詞みたいなもんだろ、

お前と会うときも、お前の式神の様子聞いてるし、

ほらワイって式神作ってばっかだから、共通の話題となるとどうしてもその辺になるし、」

 

その辺、わりと自分の専門外のことで気軽に話しかけて来た挙げ句、泣きついてくるこいつはわりとすごいと思っている。

 

「・・・知ってるか?

あいつ独身だぞ。」

 

「コンプラ的に言って良いん?それ、

まあ、だろうなとは思ってた。

本人のいないとこでは本人の式神の話を吹聴したりしないけど、特性的に、独身っぽかったからな。」

 

仕様書通りバブみの特性が出て、癒やされる様に調整したスライムを降ろした。

 

「・・・ジントの時もそうだったけど、もしかして作った式神を全部覚えてるのか・・・?」

 

「ああ、魔界に仕様書の記憶保持して潜らないといけないから、嫌でも記憶に刻まれるし、

そもそも式神作るための術式作るには知のステが必要だし、作ってると自然と知のステが上がってくるから、どの製作工程でも仕様書見て担当した人なら薄っすらとは覚えてるんでね?

 

部長は、ウチに来た仕様書全部に目を通して覚えてるみたいだけど、」

 

部長の有利な立場取り好きにも困ったもんだと笑う。

しかし、笑うどころか、強張りを通り越して恐怖すら浮かべ始めたのを見て、失敗だったかと思う。

 

「そも神主もそうだろ?

あれだけ面倒見が良いのは知のステが高くて、みんなを意識していられるからだし、そも神主に神主式神作ってもらった時点で、式神の特性把握されてるやろ。

それが嫌なら何名かでアップグレードを重ねて、特性をバラけさせれば良いし、

おすすめはしないけど、

というか、式神の持ってるスキルとある程度の特性傾向なんてハイ・アナライズで一発だろ。」

 

所詮はその程度だ。

根本的に、利用しようとしても調査抜きで一手早く動けるだけで、メリットは薄い。

そう言われてようやく落ち着いたのか、余裕を取り戻す。

 

「でも、相手に性癖把握されてるってのはきついと思うぞ・・・」

 

「基本そんなに思い出したりなんてしないし、

そも、生産者としては誇りを持って依頼者の性癖を認めて具現化したんだから、

依頼者も自分の性癖を変に恥ずかしがったりしなければええのに、

 

お前らが認めた俺の性癖だ。ってね。」

 

そもそも、その式神が作り出された時点で、依頼者の性癖は他人に認められてる。

 

「そもそも、お前もそうだろ?

未覚醒でも"サーニャ"が欲しくて欲しくて、

できたとしても、ろくに動けないで自分で面倒見ないとしても、それでも良くて、それを僕は認めた。」

 

まあ、根負けさせられたという方が正しい気もするが、

 

「それに、自我目覚めるタイプだと、式神にとっても自分が式主にとって恥ずかしいものであるってのは、

結構負荷になるから、自我持つタイプ運用するならその辺の覚悟決めといた方がええぞ。

まあ人格傾向の調整でどうにかなる話だから、アップグレードか発注の時、隠しておきたいと書いたらそう対応するけど、」

 

「・・・さすがに性癖露出プレイ全肯定なのは引くわー」

 

「おい。」

 

 

 

 

 

自分の説得作業を楽に終わらせるため、関係者とはいえ、非事務方を自分から誘って同席させたとして叱責を受けているバカを尻目に部屋に戻る。

 

レベル30オーバー対策に持っていた使うと存在が傾く護身用の各種装備や護符を外し、

いつもの釘バットとモスバーグM500ショットガンに切り替える。

 

釘バットは、たまに頭を尖らせた釘が何本も滅茶苦茶に相手に深く刺さって、相手が動けなくなる事があり、そのまま捻ったり持ち上げて叩きつければダメージになるので、変な安めの刀剣よりも妙に便利である。

 

まあ、ある程度レベルが無いとその力を生かせないが、

 

・・・改めて見ると、ショットガンに釘バット、軍帽に防弾チョッキとは一体どこの世紀末ヒャッハーだろう。

 

「行きますか?」

 

装備を整えたニーナが言う。

 

白と緑のセーラー服、それに左腰のガンホルスターは同じだが、さらに左腰に丸めたクイーンビュートを着けている。

・・・ベルトごと少しスカートが左側にズリ落ちて、へそが見えているのが艶めかしい。

 

「ああ、」

 

COMPの位置情報によれば、まだ連中は4階に張っているらしい。

 

しばらくすりゃ、さっきの同士に怒られて消えるだろうと、効率は悪いが一個上の3階層でレベル上げを行う事にする。

 

未だにレベルが上がる気配もないので急がなければ、

 

そう思って、エレベーターに向かう。

 

 

3階層をニーナに導かれながら歩く、

最初は走っていたが仮眠まで体力が持ちそうに無かったので歩くことにした。

 

地面がデコボコでなければ電動カート的なもので疲れることなく移動できて、さらに速度を上げれば、悪魔狩りの効率が上がる上、活動時間が増えるんだが、

と、堕落してるのかやる気に満ち溢れてるのか分からないことを考えつつ、出てきたノッカーの体に向けて雑に銃弾を叩き込む。

 

と、

 

「あれ?」

 

不意に自分が一回り大きくなった様な、今まで瞑っていた目が開いた様な、不思議な感覚がした。

 

これは・・・

 

「レベルアップした?嘘!?」

 

自分をアナライズすると、確かにレベル8になっていた。

力や魔力、知力のステも上がっている。

 

「おめでとうございます。

なにか変な事でもありましたか?」

 

「いや色々おかしい。」

 

レベルアップとは、経験値がギリギリまで貯まっていたから、ノッカー一体分の経験値でレベルアップしたというモノではない。

 

一応レベルアップという区切りこそあるが、小成長をポツポツ行って、それがある程度に達すると、レベルアップという数値として現れるというものである。

 

そもそも、レベルという代物自体、ガイア連合がポツポツ行われる成長の一区切りとして決定している基準であって、細分化しようと思えばもっとできたりもする。

 

なので、レベルが上がる前には、そろそろレベルがあがりそうだなという感覚がするもので、

だからこそ、レベルが上がる気配すらない現状に焦ってもいたのだが、今回は一段飛ばしでレベルが上がった。

 

「というわけなんだよ・・・どういうことだ?

悪魔になりかけてる影響か?」

 

「【探知】では悪魔にちかくなった、という感じはしないですね。」

 

COMPをみると存在の傾きは完全に緑に振り切っていて、悪魔への成り具合46.0%とレベルアップの影響で1%以上下がっている。

 

似たような事例がないか思い出してみる。

 

確か・・・

 

「初期の頃ノーメンテの式神をメンテして戦わせたら、すぐレベルが上がったって話があったな・・・」

 

メンテをしていなかったお陰でせっかく式神の存在の格自体は上がって、成長する余地があっても式神を構成する要素同士が干渉しあって不協和音を奏でいて、成長が阻害されていたという事例がよくあった。

こうなると、メンテや改造無しでどうにかしようとすると、自然調整に任せて、やたら時間をかけてレベルアップするか、大物食いして一気に存在の格を上げて、要素の成長より早く要素同士が干渉しないように式神の器の格自体を拡張してレベルアップするかのどっちかしかなく、

その辺を調整してやるだけでアップデートと言い張れたあたり、当時は緩かったなと思い出す。

今では、式神にオートアップデート機能がついたのでそこまで極端なことになることは少ないが、自分が式神の過剰なメンテを行う理由の一つである。

 

「僕は自分の体のメンテをやっていなかったということか?

でも霊薬はこないだ飲んだし、今日の分はまだ飲んでないし・・・」

 

呟く。

 

「ねむってなかったから、じゃないですか?」

 

「うーん・・・」

 

その可能性はあるが、霊薬で体は直せる以上、関係なさそうに感じる。

 

・・・専門家に聞くか、

 

 

 

 

「・・・で、それが理由でこんな時間に尋ねて来たわけ?」

 

「一応まだ診療時間ですし、」

 

「それはそうだけど、」

 

山梨第一支部に一旦戻って自分の担当医の元に行く。

かなり珍しい症例なので担当医がついて、経過観察して医療データを取ってレポートとして纏めることになっている。

 

レベル上げを放置していくのには抵抗があったが、このままやっても上がらない可能性が出てきた以上、なんとなくでレベル上げを続ける訳にはいかない。

 

加えてレベルアップしたら一度来て、様子を確認したいと言われたので、どっちにしろ来ることになっている。

 

「レベルアップ前後のステータスの育ち方見たけど、確かにだいぶ変な育ち方してるね。」

 

「やっぱり変ですか?」

 

「ああ、悪魔化が原因の可能性もあるけど、」

 

「悪魔化のせいの可能性もあるんですか?」

 

「もちろん、悪魔化に抑え込まれていた人間因子が成長したことで、それが外れたということも考えられるね。

いや、やっぱりそれはおかしい、それならもっと人間が強くなってるはず。」

 

目の前のタブレットを操作しながら担当医は呟く。

そうして、目を上げてこちらを見る。

 

「君はかなり特殊な例なんだ。

レベルアップしたいなら装備を整えて相性が良い格上と戦ってレベルアップするのが効率が良いのにもかかわらず、同レベル帯の相手と戦わなければならない。

実際に転生者が君のようにぶっ続けで戦ってレベリングした例もあるけど、それは基本的に格上相手で、同レベル帯でのレベリングを、ロクに眠らず長時間行った事例は少ないんだ。」

 

「採集系ではどうですか?」

 

「・・・確かに採集系ではあるね。

確かに採集系では・・・ちょっと待って、」

 

タブレットに目を落とし、何かを調べる。

 

「・・・確かに、採集系でオーバーワークしていると成長効率が悪い・・・かな?

あとなんだこれ?適正レベルより低レベル帯でのオーバーワークレベリングが少しある?」

 

「そこまでデータあるんですか?」

 

「その辺はまあ、」

 

言葉を濁す。

 

・・・どこまで医療班は個人のステータスや成長のデータ持ってて共有してるんだ・・・?

 

式神の製作時のデータしか持ってないワイなんかよりよっぽど恐ろしいわと、心の中のバカに呟く。

 

「君程じゃないけど、オーバーワークした結果、大怪我して運ばれてくる患者が多いからね。

それで怪我が治ったらまた同じことやって、大怪我ってパターン。」

 

どこか言い訳するように言われる。

 

「・・・なるほろ。」

 

それは分かる気がする。

 

「でも式神のメンテ=人間の睡眠&休息という君の仮説は面白いね。

適当に研究室に投げようか、」

 

「雑にレポート書きたいので、某薬あたりの起きながら頭の機能を眠らせられるスマートドラッグくれません?

今までのデータと、それ使ったときと、寝た時で対照実験がしたいので、」

 

「・・・ここまで堂々と医療倫理的にアウトなこと要求する患者初めて見た。

医療行為ではなく実験といえば許される訳ないでしょ。」

 

「やっぱり駄目ですか、」

 

駄目元で聞いたがやはり駄目か。

 

大きくため息をついて主治医はこちらの目を見てくる。

 

「あのさあ、好き放題に体使い潰して、それで体が悪くなったら霊薬やら医療で帳尻合わせようとする思考やめなよ。

そりゃあ、自分も結構霊薬飲んでるけどさ、

でも、使う事前提で、無茶を無茶とも思わず体を進んで使い潰しにかかるのは絶対におかしい。

まあ、ずっと君のソレに依存してた僕らの言えることじゃ無いかもしれないけどさ。」

 

そう言って、主治医は彼の式神を見る。

 

七瀬恋、自分も名前しか知らない古いエロゲのキャラの式神、

SSと仕様書で初めて性格傾向を知った。

緑色の優しげな瞳に長い艷やかな赤茶色の髪を大きな白いリボンでポニーテールにしている清楚そうなナース服の少女、

医療行為の補助のため外見に合わず力を強めにして、チャクラウォーク、ディアラマを入れてある。

 

この子のスライムを降ろしたのは自分だ。

 

この間、来たときに主治医にこの子の調子を聞いたところ特に不満や問題は無いらしい。

 

医療班では、医療班の医療業務で使う式神であり、本人がいない時、他の班員が医療業務で使うことを許可するなら、個人式神の購入費用の一部を負担してくれる制度があるので、それを使ってウチからもそれなりの数の式神を買っている。

 

「どうかしましたか?」

 

急に注目されて戸惑ったのか、少し慌てた様に彼女が言う。

 

「いや、何でないよ。」

 

「そうですか?」

 

そして主治医はこちらに顔を戻す。

 

「霊薬や医療で直せるなら、使い潰しても問題無いのでは、」

 

「治せなかったから、こんなことになってるんでしょ、」

 

「それはそうですね。」

 

ぐうの音も出ない。

 

「ガイアやってると、自分のパラメータが上がっていくのに夢中になったり、仕事が多すぎたり、自分の理想を叶えられると夢中になって、霊薬がぶ飲みしながら爆進する人多いけどさ、

実際に君の件で、霊薬に依存した現状のやり方を続けてると予想外の所でしっぺ返し食らう可能性が取り沙汰されてるんだ。」

 

「かなり自分は特殊例でしょ?」

 

降霊しまくってゾンビ化なんて人が多いとは思えない。

 

「それでも、オカルト的な医療には分かっていない事が多すぎるんだ。

その辺無理に技術でできるんだと、やろうとすると予想外の所に歪みが出る。

君のレベルみたいに、

だから研究が整うまでは、変に医療や技術でどうにかしようとするのはやめた方がいいよ。」

 

「じゃあどうすれば良いんですか!

355日後までにレベル30までいかなきゃいけないんですよ!」

 

思わず叫ぶ。

 

「医者的には維持できる規模まで式神を封印して休め、と言いたい。

が、それは嫌なんでしょ?」

 

「ええ、」

 

「だったら、自分で考えて、

体を使い潰さないという条件を付け加えた上で、

いつもやってるみたいに、観察して研究して知識総動員させて、裏かいてなんとかなる道を探して、

それが僕らガイア連合後方組でしょ。」

 

「・・・」

 

「今回みたいにちゃんと相談には乗るから。」

 

「分かりました・・・

とりあえず対照実験として休憩有りで次のレベルまでやってみます。」

 

「うん、それで良い、

どの程度休めば良いかの目安は、後でざっと概算して送るから、」

 

「・・・ありがとうございます。」

 

そう言って、席を立つ。

 

「お大事に」

 

「ありがとうございました。」

 

席を立って出ていく。

 

 

 

「あの人は、ちゃんと聞いてくれるでしょうか?」

 

"彼"が去った後、七瀬恋は呟く。

 

「多分聞いてくれると思うな。

なんだかんだで、専門家の意見はちゃんと聞くし、」

 

「そうですか、良かった。

治した患者がまた患者として運ばれてくるのは悲しいですからね。」

 

「それもまた、医療側としてのエゴなんだろうね。

実際問題として、一部のガイア連合員を酷使しないと回らないほどガイア連合が対処しなければならない仕事は多くて、各各、終末までにやっておきたい事、やらねばならない事が山ほどある。

それより、僕達の仕事を優先させろといえるのかと時々思うんだ。」

 

そして彼らのブラック勤務に自分達、医療班は依存している。

その事実につい苦笑が漏れる。

 

「でも、それで取り返しの付かない事になって、結果的に本人の仕事や、やりたい事ができなくなってしまったら、本末転倒ですよね・・・」

 

「ああ、そうだな。」

 

自分の式神、七瀬恋に、改めて人を癒やす事の根幹原則を説かれ、どこか自嘲的になっていた思考を振り払う。

 

「さて、次の患者を呼んで、」

 

「はい。分かりました!」

 

 

 

 

「どうすっか・・・」

 

暗めの猫バスの中で呟く。

 

この猫バス型式神は、終末時に複雑な機械が使えなくなることが予想されているので、終末が来ても使える公共交通機関として有志が集まって作った。

 

今では交通機関として山梨支部内を元気に何匹も駆け回っている。

 

終末時には装甲を取り付けて猫バス戦車という名状し難いものにするという計画もある。

 

どう考えても、猫バス戦車じゃなくて猫バステクニカルだろと言ったが、妙な拘りがあるらしく却下された。

 

一緒にいたニーナは行きのときと同じく、楽しそうに外を見ている。

 

これを車と言って良いのかは分からないが、車に乗ったこと自体ほとんど無いので、楽しんでいる様だ。

 

もう暗いのに外見て楽しいのかな?とも思うが、眼球自体人間より強力なパーツを使っているので、明るく見えているのかも知れない。

 

ちらほらと不思議な光が窓の外に見える。

 

イヌガミか何かの悪魔だろうか、

 

「様子を見て判断・・・する余裕があるかなぁ・・・」

 

呟く。

 

だが、がむしゃらにやってもうまく行きそうに無いのも確か、

 

「アノ・・・」

 

「どうしたの?」

 

いつの間にかニーナがこちらを向いていた。

 

「私達は、あるじさまのためなら封印されてもいいです。」

 

「ありがとう。だけど、僕が嫌だ。」

 

「でも・・・」

 

そこで、息を飲んで言う。

 

「むちゃなことを続けたら、あるじさまが大怪我をします。

それは、嫌、です。」

 

「・・・」

 

主治医の言葉に感化されたか、

 

しかし、そこではっと何かに気付いたように目を開く。

 

そしてどこか必死な口調で語り始める。

 

「実際に毎日のように遅くまで潜っている人はいます。

 

でも、そういうことをしていると、その内大きな怪我をして、来なくなってしまいます。」

 

自分の経験と結びつけて自分の判断で式主に説得を始めた。

 

このタイミングで成長したのか、

 

「そうか・・・」

 

ニーナの成長を否定したくはない。

 

だが、レベル上げはしなければならない。

 

どうしたものか・・・

 

「ニーナ、その人たちって本人のレベル帯よりも、かなり深めなところ潜ってなかった?」

 

「それは・・・そうでした。」

 

「僕は、適切なレベル帯しか行けないし行ったとしても何度も行けないから大丈夫だよ。」

 

説得にかかる。

 

「・・・でも・・・」

 

「そういえば、」

 

ふと、気づく、

 

「無茶をせず、自分みたいに適切とされるレベル帯潜って、レベル上がったところから二週間以内でレベルアップしてる人達っていなかった?」

 

そう言われて、少し考える様にニーナは首を傾げる。

 

「いました。」

 

「ブラックカード持ち?」

 

「持ってる人もいない人もどっちもいました。」

 

「その人達がどんな感じで戦って、どれ位、どの深度の異界に潜ってたか、分かる?」

 

「ハイ。」

 

そこでニーナに理解の色が浮かんだ。

 

「それじゃあさ。」

 

なんで自分はもっと早くこの多くの初心者異能者をサポートをしてきた自分の式神に聞かなかったんだろう。

 

いや、以前の成長状態だと聞いても質問の意図を理解できなかったか、

 

「僕のレベル上げためのプラン、一緒に作ってくれない?」

 

「ハイ!」

 

頼られて嬉しい、というようにニーナは満面の笑みが浮かべた。

 

 

 

 

ドン!

 

 

ショットガンの発砲音とともにゾンビの群れの前列が火達磨になる。

 

再びハンドグリップを動かし、火炎弾を装填、さらに発砲。

 

もっとレベルが上がれば、存在の格の差でダメージが増えて、ゾンビの弱点属性の火炎弾を使わずとも、一撃で倒せる様になるだろうが、まだそこまでには至らない。

 

音を聞きつけたのか、探知の反応からこちらに向かって新たな群れが来ているのが分かる。

 

「!カハクが二体混じってます!」

 

ニーナが声を上げる。

 

厄介な、カハクは火炎反射を持ってるから火炎弾を使うとこちらに跳ね返ってくる。

 

かといって・・・

 

「ブフ」

 

魔法を唱えると同時に群れの前にオレンジ色に揺らめく炎の壁が現れ、ブフの氷をかき消した。

 

間に合わなかった!

 

カハクの氷結を無効化する【炎の壁】である。

 

 

バンバンバン、

 

 

ニーナが、赤い肌をした小さな妖精という感じのカハクに向けて銃を撃つ、

 

銃弾を撃ち込まれたカハクが崩れ落ちる。

 

と、残る赤い妖精の目の前で火球が生じる。

 

まずい、アギが来る!

 

「あるじさまっ!」

 

ニーナが射線に割り込むのと同時に火球が放たれ、ニーナに直撃する。

 

「っ!」

 

本来の式神だと火炎に弱いので、火炎耐性を持たせてあるが、自分にできるのは火炎半減程度なので、ダメージを受けてしまう。

一応ニーナのセーラー服は火炎耐性だがニーナ自身の耐性と合計してダメージを1/4程度まで減らせるだけで0にはならない。

 

炎の壁はまだ消えない。

 

その後ろから無数のゾンビが迫って来ている。

 

これはできるだけやりたくなかったが・・・

 

「ムド」

 

なんとも言えない胸が詰まったような手応えを感じた。

 

通った。

 

呪殺であるムドは上手く行けば一撃で倒せるが運が悪いと効かないのでできるだけ使いたくは無い。

 

炎の壁が揺らいで消える。

 

そうして向こうからゾンビの群れがぞろぞろやってくる。

 

 

ドン!

 

 

それを火炎弾でまとめて吹き飛ばす。

 

「ありがとう!大丈夫か?ニーナ」

 

「大丈夫です!まだまだ行けます。」

 

以前のニーナを借りた客の話を聞いて浮かび上がって来た適切な休憩のとり方と、戦い方、そして狩り場、

 

ここは、いくつかの悪魔の通り道が交差する場所で、ここで戦っていると、戦いの音を聞きつけた悪魔がひっきりなしに現れる。

 

以前は手軽に攻撃できる探知した悪魔を探して奇襲をかけて・・・という風に戦っていたのと比べると格段に効率が良い。

 

ただ、その分、先手を取りづらいので僕を庇うニーナへのダメージが増えている。

 

それもあって、自己判断で回復するように言ってあり今の所ちゃんと自己判断に基づいて適切に回復しているように見える。

 

幼女に庇われるのになんとも思わない訳も無いが、これも式神の役目であり、

自分で受けて、下手に魔術で治しても後遺症の残るダメージを負うと存在がゾンビに傾く霊薬を使わなければならないので仕方ない。

 

その分、帰ってからの修理とメンテは存分にしてやろうと心に決めつつ、やはり無事か心配になってニーナをちらちら確認する。

 

・・・とりあえず、布系の防具なら何でも制服風に仕立て上げてくれる技術部防具製造班の物理、火炎耐性の制服はあちこち汚れてはいるものの、破けたり穴が空いたりはしていないようだ。

 

これほど攻撃が当たるなら盾でも持たせておけば良かったとも思う。

 

だが霊装として篭手と干渉する上、最重要ステータスである素早さが下がるのもあって盾はあんまり売ってないんだよなぁと思い出す。

 

良くも悪くもこんなふうに待ち構えて戦う場合でもない限り、篭手の方が都合が良い。

 

これは今後の改良点か、そんなことを考えながら、探知に引っかかった次の群れを迎える準備をする。

 

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

荒く息を吐く。

 

MPは空っぽ、手には釘バットを握っている。

 

以前は、MPを使ったり近接攻撃する位なら銃で戦っていたが、ニーナの話から、単一の攻撃法で戦うより、自分の特化属性、つまり自分だと魔術を主として使いつつも、他の戦い方もやった方がレベルが上がりやすいということが見えてきて、疲労が溜まりにくい銃をメインにしつつも、近接攻撃も行い、絶対に魔法でMPを使い切るようにしている。

以前は体力回復の霊薬を飲める頻度を上げるために、魔法をできるだけ使わず一日一回の許可は出ていたMP回復霊薬を控えていたが、毎日限界まで魔法を使った方が自分にとってレベルアップ効率が良い可能性が出てきた。

 

「これくらいで引き上げましょう。」

 

「魔力は尽きたけど、まだ行けるぞ。」

 

「レベルが上がった皆さんはこれ位で引き上げていました。」

 

「そうか、わかった。

ところで何回も攻撃受けてたけど大丈夫?」

 

「ハイ、ディアで治しました。」

 

先程まであったカハクのアギの火傷痕や、ゾンビの噛みつき痕は完全に消えていた。

 

・・・ハーピー?

 

銃撃弱点の、近づく前に落ちるボーナスですね。

 

五階層までは、一階層と同一の悪魔が出るとはいえ、出てくる悪魔は大量のゾンビにハーピーとゾンビドックたまにカハクとノッカーと言った具合で、ガキは見たことが無い。

ニーナに聞いたところ、たまに出る上、低レベルが遭遇したら攻撃力とクリティカル率の高さに加えて銃撃反射で全滅することがあるので、FOE扱いらしい。

 

ガキパトまで実装しなくても、と思ったがこの異界の性質上、自然湧きするらしい。

 

基本まともなグループなら、運悪くクリティカルを受けた人が死ぬことはあっても全滅する事はまずないので、適切な緊張感を与える敵として放置されているらしい。

 

・・・正直、ガキがFOEww

的なノリで放置されている気もしないではないが・・・

 

そんな事を考えつつ、この狩り場から離れる。

 

「お疲れ様です。」

 

狩り場が空くのを待っていたらのか、さっきからこちらを見ていた現地人異能者に声をかける。

 

・・・何故か引いた表情でこちらを見ている。

 

どうかしたのかなと思いつつも、さっさとエレベーターまで向かう。

 

 

 

「あっ・・・」

 

式神台の上で、白い背中を晒したニーナが啼く。

ダメージを受けたところを中心にダメージとその回復時にできた歪みを解消していく。

いくら盾になったからといっても、こちらに来たときに直した時程の内部ダメージは無く。

当然、自分の体から作った補修用の式神素材を使う必要はない。

 

それでも、彼女が傷つくような使い方をして傷ついた分、自分が流した血や切り取った肉から作った補修材を使いたくなってしまうのは、単なる自傷的な自慰だなとか思いつつ、使おうとしたところでふと考える。

自分がニーナをそういう目的で使うのは別に良いとして、これはニーナという式神にとって、或いは自分にとって悪い事では無いのか?

 

・・・

 

「あるじさま?」

 

メンテが止まったのに気になったのか、頬を赤らめながら、少し潤んだ青い翡翠の瞳で、こちらを振り返って、誘う様にこちらを見つめてくる。

 

それを見ると、この美しい少女の式神を自分で染めたい思いがむくむくと湧き上がってくる。

 

それを抑えて考える。

ニーナの式神素材的には誤差レベルなので、ニーナの固有特性が育ちにくくなったり逆に目に見えて強化されるということはない、

ただ、自分にとっては、この程度で補修材を使っていたらキリがなくなるので、使うという判断は合理的には間違っている。

だが・・・

 

「あっ、あるじさまの・・・」

 

「・・・」

 

欲望に負けて結果的に使う事にした。

多分何かしら特別な事がないと次はやらないと思いながら、

 

 

 

「済まなかったな。今日は乱暴な扱いして、」

 

ニーナと致した後、隣で裸になって横になっているニーナに声をかける。

 

「?乱暴でしたか?

むしろ、いつもより優しかった、です。」

 

キョトンとした無垢な表情で聞いてくる。

 

「そっちじゃない。

今日の戦闘のこと。ダメージ多かったろ?」

 

これぐらいのレベル帯では、前衛として盾としても使えるように作ってあるが、根本的にニーナは後衛向けである。

 

「なんで、あやまるんですか?」

 

「僕があやまりたいから、まあ、ニーナは気にしなくていいよ。」

 

式神として、悪魔として、大して気にしていないだろうことは分かっていた。

だが、自分が言いたいから言う。

 

「私は、あるじさまを守れて、うれしかったです。」

 

「そうか・・・ありがとう、ニーナ。」

 

この辺りの式主の欲求を受け入れつつも、式神自身の思いをもって人型をしているものを式神として使う上での罪悪感を薄れさせるのも式神の仕様である。

そう願い、そう作り、そう愛した式神の人格の指向性、あるいは式神の魂の形。

 

しかし、ニーナは自分の怪我に関してはあんまり気にしないのに、貞操や自分の役割に関しては気にするあたり、我ながら歪な人格を作ったなと自分のエゴを突きつけられる。

 

・・・あるいは、自分の心の鏡なのかもしれないが・・・

 

少なくとも性癖の鏡ではある。

 

月明かりに浮かんだニーナの金の髪を優しく撫でながら、そんなことを思う。

 

 

 

 

 

 

山梨第三支部初級一般連合員スレ 25

 

254 名無しの一般連合員

幼女を盾にするってどうなんだろ?

 

255 名無しの一般連合員

通報しました。

 

256 名無しの一般連合員

何か悪いのか?

 

257 名無しの一般連合員

これだから元一般人は・・・

 

258 名無しの一般連合員

その手の見かけに基づく倫理は捨てた方がいいぞ。

 

259 名無しの一般連合員

盾にしてでも成し遂げないといけない事もあるよ。

放置してるともっと死ぬ時とか、

後々夢にうなされても、

 

260 名無しの一般連合員

あ、いや、鍛錬用ダンジョンの4階で幼女盾にしてる男がいたからさ、

 

261 名無しの一般連合員

その子の方がレベル高いなら普通やろ。

 

262 名無しの一般連合員

組んだ相手が幼女で、こんな子供が危険なオカルト依頼なんて・・・

と思ってたら、全身整形したブラックカード持ちだった件、

眼の前でボロカスに悪魔倒して行く後ろで神経弾を連打するワイ

 

263 名無しの一般連合員

幼女に庇われるのを恥と思ってるようではまだまだ。

ワイなんて、退魔師の家にもかかわらず最大レベルが4で、なのに娘はレベル6で、親なのに守られてるヒモやぞ(泣き)

 

264 名無しの一般連合員

親の威厳まるで無し

 

265 名無しの一般連合員

おめでとう。君の家は安泰だな。

 

266 名無しの一般連合員

は?

子供がそこまで行けるなんて羨ましすぎるんですけど、

やっぱりブラックカード持ちの子を孕むしかないみたいね。

 

267 名無しの一般連合員

嫁にください。

ウチの一族で大事にしますから、

 

268 名無しの一般連合員

ぜってーやらん

 

269 名無しの一般連合員

そんな幼女のことを話してると里長がくるぞ!

 

270 名無しの一般連合員

ひっ!

 

271 名無しの一般連合員

幼女幼女詐欺師の話はやめろ

 

272 名無しの一般連合員

最近はロックオン対象が出来たのか、被害は無くなってるから安全やぞ。

 

273 名無しの一般連合員

なら安心だな!

 

274 名無しの一般連合員

でも、セーラー服の制服で防具も無しな一方で盾にしてる人はサバイバルベストと言う名の防弾チョッキのガチ武装だったからなぁ・・・

 

275 名無しの一般連合員

サバイバルベストがガチ武装w

 

276 名無しの一般連合員

陸軍と海軍でどっちも軍服だな。ヨシッ!

 

277 名無しの一般連合員

>>275

意外と馬鹿にしたもんでもないぞ。弱点耐性ないから

 

278 名無しの一般連合員

鍛錬用ダンジョン向けの火炎、物理耐性用布防具を制服に仕立て上げた奴でね?

たしかその手の仕立て変えのサービスあったし、

 

279 名無しの一般連合員

これで学生服着てコスプレしても防具と言い張れる

と思いきや高えよ!?

 

280 名無しの一般連合員

低ランクの異界攻略が楽勝になる位の代物だからしゃーない。

中ランクでも通じるし、

 

281 名無しの一般連合員

低ランク(別に低く無い)

 

282 名無しの一般連合員

低ランクってレベル10相当までだからなぁ。

ぶっちゃけ家宝になるレベル。

 

283 名無しの一般連合員

家宝がセーラー服って嫌すぎる。

 

284 名無しの一般連合員

なお、そんな代物を好き勝手カスタムオーダーするガイア連合

 

285 名無しの一般連合員

代々当主はセーラー服を着て退魔仕事を行う家って嫌すぎるわ・・・

 

286 名無しの一般連合員

セーラー服はまだマシだろ!?

ウチなんて、技術部の知り合いから、知り合いが試作品で作ったけど性能イマイチだったからと譲ってもらった、呪殺地変反射付きバニースーツが家宝になりそうだぞ!

 

287 名無しの一般連合員

よこせ

 

288 名無しの一般連合員

羨ましすぎる件

 

289 名無しの一般連合員

呪殺される危険性が無くなるどころか

反射までするとか、

地変系使う奴も多くはないけどぽつぽついるし、

 

290 名無しの一般連合員

こうして>>286の家はバニー退魔師の家となりましたとさ

 

291 名無しの一般連合員

どっかのエロ本みたいだな。

 

292 名無しの一般連合員

やめろ。確かに精神神経弱点だからあっさり洗脳されちゃいそうだけどさぁ・・・

 

293 名無しの一般連合員

>>292

弱点耐性晒すとか馬鹿か?

削除してもらってこい。

 

294 名無しの一般連合員

あ、はい。

 

295 名無しの一般連合員

俺のログには何も無かったな。

 

296 名無しの一般連合員

さて話戻して、あそこの鍛錬用のダンジョンの4階層くらいだと、基本簡易式神での【探知】からの敵を選んで優位な位置取りからの奇襲で方がつくから、立ち回り覚えたら、あんまり攻撃受ける機会無いんだよなぁ。

 

297 名無しの一般連合員

つくづく簡易式神の【探知】が意味不明なレベルで便利過ぎる。

あれ無しでの探索とか、恐怖しか無いわ。

それを5千〜数万円程度で売ってるとかさぁ・・・

 

298 名無しの一般連合員まま

簡易式神があれば、みんな見えない悪魔に怯えながら一方的に死なずに済んだのに・・・

 

299 名無しの一般連合員

でも、無傷で済む数の敵選んでたら効率悪くね?

多少ダメージ負ってもいける量の群れなら行っちゃうけど、

 

300 名無しの一般連合員

そして嵩む傷薬費

 

301 名無しの一般連合員

ガキ「やあ」

 

302 名無しの一般連合員

負けそうになって逃げ出したせいでここが何処か分からない!

傷薬も尽きた!

 

303 名無しの一般連合員

【探知】だと種類不明なの本クソ

 

304 名無しの一般連合員

やった一体だ!→ガキ&クリティカルで仲間死亡&蘇生費用で揉めて放置

というテンプレ

 

305 名無しの一般連合員

でも6階層より上の方行くと、怪我しないとか言ってられなくなるからなぁ。

その前に、慣れといた方が良いのはほんと

 

306 名無しの一般連合員

悪魔を倒さないと上がらないレベルはしゃーないけど、異界を精神や技術の鍛錬場にするのは間違ってるぞ。

 

その辺は迷宮に入る前に整えとけ、

 

306 名無しの一般連合員

鍛錬はなぁ・・・

 

307 名無しの一般連合員

いやその人、4階層の無限湧きポイントでその子を盾にしながら戦ってた。

 

308 名無しの一般連合員

あの、デストラップかよ!?

 

309 名無しの一般連合員

いくら倒しても次から次へと音を聞きつけた悪魔がやってくるあそこか、

それっぽいところが各階層何箇所かあるんだよなぁ。

 

310 名無しの一般連合員

レベリングかな?

さすがにそれは酷い。

 

311 名無しの一般連合員

逆に、その子による男育成なんでね?

強い人が才能有りそうな人を育てるのって良くあるし、

 

312 名無しの一般連合員

それなら、先の5階層で強敵に先制した方が効果的でね?

レベリングで、長々上の階層で戦い続けるのってあんまり無いし、

 

313 名無しの一般連合員

式神レンタルのレベリングでもそんな感じだしな。

 

314 名無しの一般連合員

ちょっと違和感があるんだけど、

あの辺の適正レベル帯の退魔師がそんなに長々連続して戦い続けられるの?

高レベルならまだしも、

 

315 名無しの一般連合員

高レベルだったら、そもそも庇われる必要ないし、適正でね?

ワイもあの辺だけど、盾用式神借りて無理すればできなくもないと思う。

なお、事故が起こっての式神修理費

 

316 名無しの一般連合員

いや、あんまり効率良くないけど、高レベルとぶつかるより安全取りたい人だと、ガチガチに対策装備して安全確保した上で、適正レベルより下のああいう場所使って鍛えることはそれなりにある。

 

だいたい5階層からだけど、

というか6階層になったら一気にキツくなるんじゃ!

 

317 名無しの一般連合員

悪魔の種類がガラッと変わって、全体攻撃とか状態異常持ちが出てくるからなぁ・・・

 

318 名無しの一般連合員

レベル÷2の小数点以下切り上げが適正階層だし、実際の異界でも適正レベル10の奴を超えるとそういうのが来るからなぁ・・・

 

319 名無しの一般連合員

初級スレなのに中級者が居ますね・・・

 

320 名無しの一般連合員

精液頂けませんか?

言い値で買います。

 

321 名無しの一般連合員

私は女だ。

 

321 名無しの一般連合員

チッ

 

322 名無しの一般連合員

同業者に精液提供とか怖すぎんよ。

 

323 名無しの一般連合員

それはとにかく、その子大丈夫だった?

 

324 名無しの一般連合員

ディア使ってたし、特には気にしてなさそうだった。

あと、その子の方が目上って感じはしなかったな。

むしろ下だった。

 

325 名無しの一般連合員

幼女を配下にして盾にするとか酷すぎる件

 

326 名無しの一般連合員

流石に鬼畜

 

327 名無しの一般連合員

・・・なあ、その子、人型式神でね?

 

328 名無しの一般連合員

分からん。

けど、幼女盾にするのは無いと思うぞ。

 

329 名無しの一般連合員

はい?

 

330 名無しの一般連合員

何言ってるんだこいつ

 

331 名無しの一般連合員

レンタルした式神を盾にするのは正しい運用だろ?

 

332 名無しの一般連合員

人型式神って、出来は精密だけど、根本はそこらの式神と同じで、耐性とか持ってるから、人間と同じく扱えんぞ。

 

333 名無しの一般連合員

でも気持ちは分かるわ。

以前は、式神レンタルで女型借りてたけど、庇われたときの罪悪感で、男型とかロボット型借りてる。

 

334 名無しの一般連合員

そうか?ワイは、女の子がダメージ受けると何というかこう、興奮するから、

女の子系の式神レンタルしてるぞw

 

・・・わざと無茶やって庇われてたら、女の子系は空きが無いと言われて、レンタルできる式神は筋肉達磨男型とかロボット型ばっかりになって、たまにあっても、マゾな性格な子ばっかり紹介されるようになったけど・・・

ぜってー、空きが無いとか嘘だろ。

 

335 名無しの一般連合員

残当

 

336 名無しの一般連合員

事務有能

 

337 名無しの一般連合員

レンタルで式神自身の意思も関わってるとか意外

 

338 名無しの一般連合員

どっちかってーと、事故防止でね?

そんな使い方して壊したら弁償は>>334行くけど、払えなかったり、修理終わるまで空くから、頑丈なの紹介してる感

 

339 名無しの一般連合員

つーか正気か?

もし、壊れたら弁償しなきゃいけないのに、

 

340 名無しの一般連合員

やるときの相手は選んで、

きつい相手の時は避けてるから大丈夫

 

341 名無しの一般連合員

なお式神にも避けられてる模様、

 

342 名無しの一般連合員

式神レンタルはデリヘルじゃないんだよなぁ・・・

 

343 名無しの一般連合員

従順だからってセクハラしたり、手を出そうとすると、開扉の実で地上送りにされて、そのまま罰則だからなぁ。

 

344 名無しの一般連合員

ところで、その子どんな子なん?

式神じゃなかったらさすがに寝覚め悪いし、

 

345 名無しの一般連合員

金髪で青緑っぽい目の子だったな。

 

346 名無しの一般連合員

セーラー服の幼女で金髪青緑目・・・

あっ、

 

347 名無しの一般連合員

もしかして、ニーナって呼ばれて無かったかその子?

それでおっさんの方の武器は、釘バットで

 

348 名無しの一般連合員

なんで地雷に突っ込んで行こうとするのかこれが分からない。

 

349 名無しの一般連合員

触るな。

多分奴らだ。

 

350 名無しの一般連合員

>>347

確か、そう呼ばれてたような・・・

男の近接武器は釘バットなのはそうだったな。

 

351 名無しの一般連合員

なんで答えるかなぁ。

そいつ、多分、ここの修練用異界で迷惑行為しまくってるDQN共だよ。

レンタル式神のニーナちゃんを付け回した挙げ句、借りるな、見たら教えろと脅してる振られ男とその舎弟だし

 

352 名無しの一般連合員

>>351お前覚えてろよ。

兄貴と会って無事だったら良いな。

 

353 名無しの一般連合員

あーワイも脅されたな。

連合の方でなんとかしてくれないかな。

 

354 名無しの一般連合員

>>353

レベル15にもいってない群れて粋がるカス共が私にナニするって?(レベル18並感)

 

355 名無しの一般連合員

ひえっ

 

356 名無しの一般連合員

>>354

・・・なんであなたこのスレにいるん・・・?

 

357 名無しの一般連合員

ここには一桁時代相談に乗ってくれてお世話になったから、相談があるなら聞こうと思って、

それに後ろ盾から後輩の育成任されてるから・・・ね。

 

358 名無しの一般連合員

レベル上限が高くてそこまでいけて、羨ましいなぁ・・・

本当に

 




せんとうしょくのこうげき!
せんとうしょくはごねた
じむかたに0のダメージ

じむかたのこうげき!
じむかたはせっとくした
せんとうしょくに0のダメージ
じむかたはなかまをよんだ!
こうれいキチがあらわれた!

こうれいキチのこうげき!
こうれいキチはせわばなしをした
つうこんのいちげき!
せんとうしょくはにげだした。



戦闘職:戦闘の専門家、戦闘力の使い方を知っている。
式神製造班:式神の専門家、作った式神のことを知っている。
医療班:人体の専門家、来訪した患者のことを知っている。
レンタル式神:サポートの専門家、どういう戦い方をしてどう成長したのかを知っている。
事務方:人材管理の専門家、上の奴らを特殊召喚できる。

部長「上の連中が欲しがってるものを提供した上で、性癖知れたら、話すときマウント取れません?よしっ

・・・第二式神量産部を組織して、効率的な量産体制が整ったのはいいものの、交渉苦手だからって不利な条件をとってくるな!

・・・話し合うときは、優位な立場をとるため、まず、自分の専門の事を相手の依頼や状況に絡めて話し始めて、そのまま自分のフィールドで交渉するといいですよ。
もし相手が自分が作った式神を持っていたら、自分が作った式神の調子はどうですか?という風に」




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