好き勝手にONE PIECEで過ごします。 (ガイドライン)
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というか主にオリジナル技について。(ハジメ、ロビン、ルフィ)2021.12.31までの分



ここでは、これまでの各キャラのオリジナル技を書きます。
まあ性格の違いもあるのでちょっとは書きますがそれでも主に技かな。なんかどんどん書きすぎて自分でも分からなくなりそうなのでちょっとずつここに書き足していきます。

忘れている技があったらこのページか登場したページで感想を書いて教えて下さい!!お願いします!!

僕も迷ったときはここを読む!!
皆さんにも僕にも優しい場所です(笑)





●一応主人公、ハジメ。

「間違ってはいませんけど、最近活躍してませんよ」

 

前世の記憶はなく、あるのは"ONE PIECE"だけ。

そんななかでハジメはONE PIECEを自分なりに良くしようと模索、暗躍することにした。

 

しかしロビンを助けたところから何かが変わりだし、ロビンのお兄ちゃんとなり、青雉の甥っ子となり、海軍大将"絶黒"と呼ばれて、七武海のまとめ役に抜擢され、白ひげやネプチューンなど大物と交流を持ち、師匠と呼べる人はレイリーとミホークというまだまだ設定盛り沢山な主人公です。

 

「あれ??こんなにやってましたか……??」

 

○技

特に技名もなく基本的に"一時停止"を使い触れた相手を止めたり、触れてくる攻撃を止めたりしている。攻撃された時に止めた攻撃を再利用して解除というカウンターで相手に喰らわしている。

 

ミホークの師弟があるようにそれなりに剣技も強い。

しかし本人はあまり使わない。水を剣の形にしてその場で剣を作るくらいにそこまで剣に執着がない。

 

 

唯一技として使ったのが「世界停止・小(ストップ・ミニ)

 

周り一帯を僅かの時間だが()()()()()()

水も火も空気も、海賊も海兵もなにもかも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

全てを止めなくても限定的に人物だけなども出来る。

 

本人は話さないがロビンからは「覚醒しているんじゃない」かと思われている。

 

 

 

 

●世界最強の妹。ニコ·ロビン。

「間違ってはないけど、本当の最強はお兄ちゃんよ」

 

オハラでハジメに助けられて心を奪われたロビンはその時点で"お兄ちゃん"無しでは生きられないぐらいになっていた。

ハジメが海軍に入ったので私もと軽い感じで潜入。その時の青雉のメンタルは死んでいた。

 

その時名前を"ニコル"と名乗ることになりハジメの直属の部下となる。青雉以外の大将達や"孫"扱いされているが基本的には表に出さないようにしているようだ。

 

海軍で"八咫烏"や"月兎"を作り完全に海軍を乗っ取るようなことをやったり、"お兄ちゃん"という素晴らしさを教えてこの組織に入れたりなど積極的に海軍をやってる節もある。

 

しかし基本的にお兄ちゃん主義。

(元ストーカー、いや進行形ですかね……)

文句の一つでもいうならあらゆる者でも容赦なく罰する。

それが大将でもセンゴクでも世界政府でも………

 

そして婚約者の地位を手に入れてからは少しはマトモになったとハジメは言っているが周りからしたら変わらない。ついでに分身体から別人格が出てきたためにそっちに"ニコル"を渡したので心置きなくお兄ちゃんに付いていくという幸せライフを満喫している。

 

「あとは結婚式をどこでしようかしら……」

 

 

○技

すでに本編の能力を大幅に超えている。

いくらでも分身体を作り出せ、最近はミニロビンというルフィ達のガイド兼お仕置きする分身体も作り出した。

 

 

◎"万紫万紅(ディミル・フルール)"

 

"ロック"

万単位の人数を一気に動けなくする。それ以下の人数では技名を言う必要もなく呼吸するかのように使える。

 

"樹木壁(ツリー·ウォール)"

巨大な手の壁を作り出し近づけば捕獲されてやられる。そして心も身体も折られてしまう。

 

 

覚醒咲き(エヴェイユ・フルール)

ロビン覚醒によりあらゆる物体が船だろうが街だろうが関係なく"手"と変えられる。

 

"億華神掌(ミリアルデ·フルール)"、"ゴッテスハンド"

名の通り神の手と思わせるほどに巨大な手。それはその手一つで巨人族と同じかそれ以上だと言われている。捕まればその時点で終わる。

 

"鉄槌(アイゼン)ハンマー"

それは巨大な手。握り拳が、まるで神の鉄槌だと言わんばかりのもの。つまりはグーパン。

 

 

●麦わら海賊団船長、モンキー·D·ルフィ(元主人公)

「なぁ、ハジメ。最後なんか書いてあるぞ」

「気にしない気にしない」

「そっか」

 

ガープによる子供虐待を見ていられなかったハジメが代わりにロビンに鍛えてもらうことにした。すると仲間になるはずのロビンから"師匠"に格上げしたために海賊として入ってもらっても師匠と呼んでいる。というか逆らえない。

 

基本的に師匠とハジメの言ったことは絶対。

破ればゴムゴムの実を食べたゴム人間のルフィでも全身骨折なんて簡単にされてしまう。

 

ロビンとの修行のおかげで毒耐性がついたり海楼石の弱いバージョンなら能力も使える。肉を食べれば重症ではない限りは治る。(医者泣かせ)すでに武装色の覇気、見聞色の覇気も使えるがまだまだ及第点とはいかないがこれにより大幅に戦力が上がった。だがロビンとハジメからギア2など禁止されているので基本的攻撃しか使えずにいる。

 

船長なのだがロビンやハジメがいるとその存在感が薄れて船員として見られる可能性があるのが可愛そうである。

 

「えっ。そうなのか??」

「もちろん違うよ。ルフィが船長だ」

「だよな!!!!」

(本当に扱いやすい………)

 

○技

ギア2、ギア3まですでに使える。ただ許可がないと使えない。

海賊として旅立ってもロビンから能力使用禁止と言われしばらく普通のパンチしか使えなかったこともある。

 

しかし一度使えば攻撃力が大幅に上昇。

本編で使っていた技が一段二段と進化しているのもある。

 

武装色の覇気と見聞色の覇気も許可次第である。

(見聞色の覇気は無意識に使ってるが今の所お咎めなし)

 

◎ゴムゴムの"業火隕石(ヘル・メテオ)"

ギア2とギア3を使い、さらに本編の"レッドホーク"の要領で使った技。これに両手で"ツイン·業火隕石(ヘル·メテオ)"

 

◎ゴムゴムの"巨人の圧力(ギガント·プレス)"

ギア3で足を大きくさせて踏み潰す。

 

火炎(レッド)暴風(ストーム)

大きく息を吸い込む胴体を大きく肥大化させ無理矢理その身体を捻りを入れる。そして口を地面に向けて一気に体内の空気を吐き出しながら捻りを解いていく。

 

その一撃一撃が炎を纏わせて複数の腕が広範囲で放つその姿は炎を巻き込む嵐のよう。

 

 

◎"OVER"

ギア2を瞬間的に爆発的に上昇させる。

物凄いスピードとパワーが出る代わりにたった一回の技で空気抵抗により腕の外部と体内に溜まり続ける高熱による火傷が起きる。下手したら炭になる可能性があるのでロビン達から禁止されている。

 

◎レッド・キャノン

ギア・セカンドのまま両腕を後方へ伸ばし交互に前後に何百回も物凄いスピードで空を殴り続ける。それも徐々に外に開いていた腕が自分の元へ戻りながら、スピードがドンドン上がっていき、そして高熱を帯びさせていく。

摩擦熱が今までよりも高熱を帯びてそれを全て一点に集約させ、これまでにない超高熱の"砲弾"を放つ。

 




残りのメンバーも順次書いていきます。お楽しみに!!!


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というか主にオリジナル技について。(ゾロ、くいな)2021.12.31まで。

●海賊狩りの"鬼"ロロノア・ゾロ(くいなに負け越している)

「誰だああぁぁぁ!!!書きやがった奴はッッッ!!!!!」

「ゾロ!!落ち着いてッッ!!!!!」

 

本編と違いくいな生存ルートのため、互いに研鑽し合って強くなっている。しかし手数の多いくいなにゾロが負け越しているが本人はそこまで悔しがっていない。

剣だけに囚われずに一通り格闘や柔術を覚えているがそれでも基本的に剣を使うスタイルであり"剛"の剣を使っている。

 

ミホークとの戦いでは惨敗。

しかしそこでハジメがミホークの弟子と知り修行をつけてくれと懇願した。そこから"呼吸"を知ったりくいなとの合わせ技など一人ではなく二人での剣技も悪くないと感じている。

 

○技

作者もよく分かってないがミホークとの戦いで刀が全て折られてローグタウンで"深紅""3代鬼徹""雪走"の3本を手に入れている。(最初は名の知れない3本だったけどミホークの時には2本になって、くいなに和道一文字を借りていた。どこで一本消えたか謎である)

 

「おい。しっかりしやがれ」

「アハハ……………」

 

一刀流、二刀流、三刀流、そして小太刀と使い分けて剣を扱っているが中に鞘で攻撃していることもあるため、全てが剣だけというわけではない。

 

 

◎"(かつら)()()り"(二刀流)

剣の片手を普通にもう片手を逆手に握り直して胸から足に、その2本の刀が身体の中心にかけて盾ように構えたあと、相手の回転を利用しながらその回転に乗り、前方にある剣を相手の全身に、刀傷をつけたゾロ。切られた二人の体はまるで絡み付く蔦のように、大根の桂剥きのように傷痕が刻まれている。

 

 

◎"()(うん)ニ慈(にじ)"(二刀流·奥義)

左手の刀を逆手に持った状態で、上から下へ、下から上へと同時に、"始まり"と"終わり"のように……

放たれた攻撃は2本の柱が立っているかのように斬撃が残る。異なる2つの柱は"始まり"と"終わり"を意味し、それを喰らったものは生まれてからの時とその終わりまでの時を、走馬灯が一気に頭の中を駆け巡り、そして斬られたことを実感するという。

 

(わし)(づか)()(一刀流·柄)

刀の攻撃ではく柄を使った打撃の三連撃。

 

◎"獅子(しし)(とう)渦羅歯(がらし)"(一刀流·小太刀)

持っている小太刀がまるで獅子の牙のように…

その牙がまさに自分を喰らうべく狙っているかのように…

その刹那に刻まれた相手の胴体に大きな歯形のようなものがつきそして猛スピードで放たれた斬撃は相手を吹き飛ばす。

 

◎"刀狼流(とうろうなが)し・緋那(ひな)(がた)"(三刀流)

猛スピードで突っ込むゾロは、相手の攻撃を"いなし"ながら攻撃を加える刀狼流しを使っている。だけどどういうわけか口で加えている新しい刀"深紅"がやたらと赤々と輝いている。まるで生き血を吸って喜んでいるような………

 

◎"ハ利刃(はりは)慄衝(りづ)け"(一刀流)

刹那の攻撃。中心部から外へと吹き上げる嵐のように四方()()への斬撃だが、なぜか誰もが切られた感覚がない。しかし少しでも動いた者から一瞬にして身体中に斬り口が裂けて血が溢れだす。それに驚き動いてしまいうとさらに斬り口が広がる。

 

◎"獅子(しし)噴迅(ふんじん)"(一刀流·居合)

獅子歌歌とは違い激しい剛の一太刀。

 

◎"弧牙螺刺(こがらし)"(三刀流)

回転をしながら壁を長径1メートルの円状の切り傷を作り出し、そこを何度も何度も削っていき壁をくり抜く。

 

◎"紅々朱(かかあ)電乂(でんか)"(二刀流)

刀2本の刃先を地面に擦りながらまるで電光石火の如く相手との距離を縮める。そのスピードによって地面に当たる刃先が摩擦熱により赤々と熱を持ち、逆手握りにより二刀の振り上げ。

 

◎"帝狩(ていしゅ)冠剝(かんぱく)"(二刀流)

紅々朱電乂から刀の持ち手を戻し両手をくっつけ、2つの刀をまるで一つの刀にするかのように合わせて、相手の脳天へ合わさった二刀が振り下ろされる。

 

◎"火天(かてん)炎卍(えんまん)"(三刀流)

エネルの神の裁きをその身に受けた際に電流を通しやすい刀に熱が帯びた。それは真っ赤に燃え上がり、そしてそれを僅かだが武装色の覇気がフォローに入ったので纏った炎さえもエネルには届く攻撃となった

 

(追加記載)

この上3つ。くいなが名を付けました。

イメージに合うのもあったようだけど、もしかしたらいつか最後の技のようになりたいのかな……(笑)

 

 

●"海賊狩りの姫"くいな

(海軍本部で"月夜姫"かで迷ったという)

「なにそれ!!!??聞いてないんだけどッ!!!!!!」

「ってか、なんだその"姫"推しは……」

 

昔ハジメが階段から転落してその後階段に手すりがつけられたり、そんな転落でも死んでしまうということを改めて知ってから柔術などをゾロと一緒に習っていた。

それがくいなには合ったのだろう。ゾロが"剛"ならくいなは"柔"。

そして相手の動きをよく見ているためか、ゾロの動きをよく見ているのためか修行ではゾロに勝ち越している。

 

ゾロと同じように最強の剣豪になるのが夢であり、女でも、ゾロと隣で立ち続けることを目標としている。

 

しかし近くに居すぎるためかどうもゾロは気づいているのに気づいていないというまぁ鈍感な感じのためにくいなも攻めきれずにいる。

 

「?? なんのことを言ってるんだ??」

「ゾロは気にしなくていいのッッッ!!!!!」

 

○技

一刀流ではあるが腰には小刀を所持している。

そんなに使うことはないが技では使用している。

ゾロの三刀流、くいなの一刀流はそれぞれのやり方があっているために力は均等しているよう。

 

◎"(ホウ)吹突(フヅ)き"(一刀流·斬魔)

まるで複数の手と小刀がくいなの周りの幻覚のように増えていく。しかしそれは幻覚というにはあまりにも立体的でその動きから生まれる音はまるで蜂の羽音のような突き。

 

◎"火蜂(ひばち)針彗(しんすい)"(二刀流)

くいなの背後からは大蜂が狙いを定めているような感じで一気に突きを放つ。

 

◎"渦叉身(かざみ)獲どり"(一刀流)

握った鞘を地面に立て、それを起点に周りながら斬り込む。

とっさの方向転換もこれなら無理なく、回転を利用も出来て攻撃力も上がる。

 

◎"(とん)(てき)"(一刀流)

銃などの遠方の相手に使う。相手は刀に吸い寄せられるように見てしまっている。まるで自分を()み込むかのように…… すると一瞬でくいなは刀の柄を蹴り相手に刀を飛ばす。

刀の柄に細い糸が付いているのでその糸を手繰り寄せてくいなはそこまで飛んでいく。

 

それでも吞擲は刀を少しの間でも手放すことになるので出来るなら使いたくない技でもある。

 

◎"式伐(しり)滅裂(めつれつ)"(一刀流·乱刃)

一度刀を鞘に納めた、駆け出したと同時に刀を抜き相手に斬りかかる。相手が防御を取ろうしていると、いつの間にか刀を振るっていた両手が片手になり、そして空きとなった左手にいつの間にか鞘が握られ、それが相手の脚へ。

そしてくいなは回転しながら体勢を低くして小刀を手に取り相手の腹部に付き立てたりなどして、攻撃に統一性を見せないようにする。

 

和道一文字の刀と鞘、小刀と鞘の合わせ技の為にゾロでも未だに見切れるのは難しい。

 

◎"十ニ(じゅうに)時雨(しぐれ)"(一刀流·刀化)

相手が見えているのはくいなの姿ではなく刀だけ。

その刀は右往左往と動き相手の攻撃全ていなし防ぎきる。

そして通り過ぎた後に振り抜くとそこにはくいなの姿があり自分が斬られていることに気づく。

闘気だけで刀と一体化出来るのはくいなだけ。

 

◎"一刻(いっこく)千愁(せんしゅう)"(一刀流·刀化·居合い)

一瞬、刹那、誰もが認識出来ないその時間、感じ取れない時間。その動きを捉えようとすれば周りの景色は止まったかのように見える。そして気づいたときには斬られている。

 

◎"刺百(しも)(ばしら)ッ(無刀流)

鞘に収められた状態で連続で突く剣技。

"刺突"を一瞬にして百近く付きあげるそれはまるで"霜柱"のように見えることからついた名である。

ゾロが使う"牛針"にも似ているがこちらは懐に入り上へと付きあげる技。相手の体重を利用するために攻撃力が増すという技。

 

◎"円日(えんにち)(一刀流)

ゾロの弧牙螺刺(こがらし)のように一刀に円を描くかのような斬撃。

 

◎"剪体(せんてい)伐殺(ばっさい)"(一刀流)

複数の敵から、刀を向けられた時に一気にその刀を折る事が出来る剣技。今回は電狼から生える刀を全て切り捨て、電狼そのものを一刀両断してみせたくいな。しかしこの技は相手の攻撃を捌くことと敵を斬る工程を同時にするために徹底した倒すイメージ力が必要となる。

 

☆二人合わせ技

◎"伊邪那岐(イザナギ)·伊邪那美(イザナミ)"(居合い)

お互いの抜刀の邪魔にならないようにくいなが左側でゾロが右側に並び立ち、体勢を低く、目の前の標的に全神経を向ける。

 

ゾロとくいなは共に居合い切りを行い全く異なる居合いを"静と動"を放つ

それは激しくも力強い居合いの"動"はゾロ。静かで繊細な居合いの"静"はくいな。

 

異なった居合いだがそれは重なった瞬間に斬られたものは消え去るとんでもない一撃。

 

しかし未だに使いこなせていないために二人とも刀を握った手は麻痺して痙攣を起こしていた。

 

◎"滅獅(めっし)砲紅(ほうこう)"(居合い)

"伊邪那岐(イザナギ)·伊邪那美(イザナミ)"よりも威力を落とした居合い。刹那に抜かれた刀から放たれた2つ斬撃がまるで獅子の牙のように合わさり、その強烈な斬撃の為か、斬撃が合わさったためなのか、その斬撃には"紅い斬撃"と呼べるほどに色が見える。



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プロローグ


マジで間違えて消しちゃったのでまた初めから投稿し直します。バックアップがあるので出来るだけ速く元に戻すので許してね(笑)




「………あっ、あぁ~……」

 

 

よく分からないけどいま僕は、僕がいた世界とは違うところにいる。

何故?と思ったけど僕がいた世界のことが何一つ思い出せない。

覚えていることは漫画「ONE PIECE」のことだけ。

あと自分の名前ぐらいである。

 

 

 

「……時崎 ハジメ……」

 

 

 

まぁ、それ以上は思い出せない。

とにかく周りを見渡してみたら隣に宝箱。

さてさてなにかなーと中身を見てみると、

 

 

 

「手紙と、悪魔の実か……」

 

 

 

悪魔の実は置いておいて手紙から読んでみることに。

 

 

 

 

[これを読んでいるということは無事転生出来たようだ。

私は神、ってまあ信じないかもね♪]

 

 

 

適当ですねー、なんか僕もそんな感じだったような…

 

 

 

[前世の記憶は消させてもらいましたよ。

まぁ、あっても必要ないだろうしね。

その代わりにこの世界『ONE PIECE』の知識を詰め込んでおいたから]

 

 

あぁ~だからね。

なんかアニメを、いや、この『ONE PIECE』の世界が自分の世界で生きてきたような感覚になっていた。

 

 

 

[それとその世界は『ONE PIECE』のパラレルワールドだから好きなようにしてくれていいよ。

というか、もう複数の『ONE PIECE』では面白いほど改変されまくってるしね]

 

 

なるほど。

確かに色んなONE PIECEの小説あるもんなー

みんな自分の理想を叶えるために書いたり、実際に体験してるわけなんだね。

 

で、僕の場合は経験というわけかー

 

 

 

[それとその悪魔の実はオリジナル。

超人系((パラミシア))」トメトメの実

全身一時停止が使える能力だよ]

 

 

 

一時停止が使えるトメトメの実。

なんかすごそーな能力だなー

 

 

[あとは食べてから使ってみてね。

使い方次第では全悪魔の実の頂点、いやこの世界の頂点に立てるかもね]

 

 

 

………マジかー。

でも頂点に立つつもりないもんなー

 

 

 

[君はそんな欲はないのは知ってるし、好きなようにやってくれたらいいよ。

出来るなら麦わら海賊はhappyにしてもらいたいねー]

 

 

 

はーい、分かりましたー!!

 

 

 

[じゃ頑張って!!

P.S.原作から24年前、つまり海賊王が処刑される時代だよ。

あと1ヶ月後に処刑されるからね、見に行ってみたらどうかな?ローグタウンへのログポースを置いておいたからね]

 

 

 

…………………………

 

 

 

 

1ヶ月後。

修行??みたいなことをして船に揺られてローグタウンへ向かっていた。

ある程度能力を使いこなせてきたと思うし、武装色の覇気、見聞色の覇気、覇王色の覇気もそれなりに?使えるようになったと思う。

 

ただ僕の実力がどれだけのものか分からないかなー

強いのか弱いのか分かんない。

 

まぁ、別にすぐにこの世界に介入するわけじゃないし別にいいかーという気持ちでローグタウンに来てみた。

 

 

 

「おぉーここがローグタウンか」

 

 

この世界にきて初めて人を見た、街を見た。

なんか感動するなーと思いながら街を歩いていると街中が海賊王ゴールド・ロジャーの死刑の話ばかりしていた。

 

それもあと一時間らしい、タイミング良かったなー。

 

しかしせっかく来たのに死刑の光景、もとい大海賊時代の瞬間だけってのもな………よし。

 

 

 

 

━━━━━会いに行こう━━━━

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

「という訳で会いに来ました」

 

「ガッハハハハハ!!

てめえここがどういうところか分かってきたのか!!?」

 

「はい。

大丈夫ですよ、海軍の人達には「ちょっと止まって」もらっているだけなので」

 

「ほう、能力者か」

 

 

 

目の前には海賊王ゴールド・ロジャー。

両手両足、首に拘束器具がつけられており、そしてあと30分後には処刑されるというのに全然そんな様子を見せない。

 

 

 

「で、ただ会いに来たってわけじゃねえだろう」

 

「それだけでしたけど、理由要りましたか?」

 

「要らねぇよ!!ったく面白いやつだな!!!」

 

 

 

元気一杯だなー!!

 

 

 

「せっかくだ、ちょっとだけ話聞いていけ」

 

「面白い話ですか?」

 

「あぁ面白いぞ!!この世界の冒険の話だからな!!!」

 

 

 

それから色んな話を聞いた。

戦いの話や仲間の話、本編でも出てきた空島や魚人島の話。

さすがにポーネグリフの話やラフテルの話はしてくれなかったけど確かに面白い話ばかりだ!!

 

 

 

「おっと、そろそろ処刑の時間か」

 

「もっと聞きたかったですね」

 

「なんだ?なら助けてくれるか?」

 

「それはちょっと」

 

「助けろよなそこは!!?

ったくてめえも十分面白いやつだな!!!」

 

 

 

また大きな声で笑うゴールド・ロジャー。

そんなことを言っているけど本気で思っていないようだ。

 

 

 

「……死にたいんですか?」

 

「そんなわけはねぇが、まぁ……時代だな…」

 

「……時代……」

 

「あぁ時代だ。

これからの時代、お前はどうする?」

 

 

 

どうする?

それはもう決めていた。

 

 

 

「海賊王になる人の為に戦う」

 

「海賊王だぁ!!?

ここに海賊王がいるってのに、正面きって海賊王だと!!!」

 

 

 

殺気が、それを浴びただけでも死んでしまいそうになるぐらいの殺気が襲いかかる。

でもそんなの関係ない、だって信じてるから。

 

 

 

「はい、きっと貴方よりずっとふさわしい海賊王を僕が導くために」

 

 

 

それが僕がこの世界に来た理由。

もしかしたらこの世界も二次元の小説かもしれない。

それでもいい、僕に僕の意志があるならそれでいい。

その意志が麦わら海賊の皆をhappyにするなら。

 

 

 

「面白いぞ小僧!!

やってみろ、この世界の全てを見てみろ!!!」

「そこに全てを置いてきた!!!!」

「全く、この先が見れないのが残念だよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてこの日、ゴールド・ロジャーは処刑された。

あの有名なセリフを言い放ち処刑された。

 

でも、僕にはそれとは別の言葉を貰った。

 

 

 

「面白いぞ小僧!!

やってみろ、この世界の全てを見てみろ!!!」

「そこに全てを置いてきた!!!!」

「全く、この先が見れないのが残念だ!!!!」

 

 

そしてこれが最後の言葉。

 

 

 

「……おい小僧、名前は?」

 

「ハジメ、時崎 ハジメ」

 

「……ハジメか。

おい、ハジメ。海賊王目指すなら、レイリーに会っていけ」



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レイリー

大海賊時代を迎えてから数日後。

以前と比べ物にならないほど海賊が増加した海軍は目まぐるしく討伐のため海に出ていた。

 

そんな海賊と海軍の戦いの中をくぐり抜け、とある島へたどり着いたハジメ。その島は大木がそこら中に生えておりその大木を生かしてお店や遊園地、周りにふわふわと浮かんでいるシャボン玉を使って荷物を運んだり移動手段だったり。

 

ここはシャボンディ諸島。

シルバーズ・レイリーに会いに来たのだ。

 

 

というより()()()()()

そうハジメはゴールド・ロジャー死刑を見に来ていたレイリーを見つけて()()()()()()()()()()()

 

 

そしてそのレイリーはとある一件のバーへと入っていった。

 

 

 

「ここかぁーぼったくりBAR」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「あら、お帰りレイリー」

 

「あぁ、ただいまシャッキー」

 

 

 

カウンター席に少し疲れた様子で座る。

それを見たシャッキーはいつも飲んでいるお酒を出して

 

 

 

「どうだったの…あの人の最後は……」

 

「実に彼らしい最後だった……

……私としては…生きてほしかったが……」

 

 

 

それ以上言葉に出さずに出された酒をチビっと飲んだ。

その酒はいつも旨いが今日は少しだけ違う味がした。

 

 

 

「そうよね…」

 

「……悪いが、今日は貸し切りにしてもらえるか?」

 

「最初からそのつもりよ」

 

 

 

そういってシャッキーはカウンターから店の扉へと歩き、「open」の標識から「close」に変えようと扉を開けると

 

 

 

「こんにちは」

 

「きゃっ!!」

 

 

思わず叫んでしまった。

だってこんな扉の前に人がいるなんて思いもしなかった。

 

 

 

「どうしたシャッキー!?」

 

「ちょっ、ちょっとビックリしただけよ……」

 

「すみません、お話しの邪魔にならないようにと外で待っていたんですけど……」

 

 

 

申し訳なさそうに頭を下げる少年にシャッキーは「別にいいのよ」と謝罪を受け入れる。

レイリーはカウンター席から扉まで来てシャッキーの肩に手を置き大丈夫かと心配をする。

無事も確認したところでレイリーは少年に

 

 

 

「それでなんのようかね?」

 

「ゴールド・ロジャーさんからレイリーさんに会えと言われたのですが、せっかくなのでお話ししたいなーと思いましてここまでレイリーさんの後ろを付いてきました」

 

「なっ、なに!?」

 

 

 

色々と理解出来なかった。

ゴールド・ロジャーのこともそうだがここまで後ろを付いてきたということが。

 

 

「ひとまずロジャーのことはいい。

それより私の後ろに付いてきただと?」

 

「はい」

 

「冗談はやめたまえ。

いくらなんでもそんなわけが……」

 

「えぇーと、ローグタウンから小舟で凧の帯(カームベルト)を横断してからいくつもの島を転々としながらここに帰ってきましたよね。

申し訳ないと思いましたけどレイリーさんの小舟に一緒乗せてもらってましたので……」

 

「な、なにッ!!!?」

 

 

信じられないことをいうハジメに驚きを隠せないレイリー。

確かにここまで来るのにカームベルトを通ってきたが……

 

 

 

「あの小舟に一緒いたというのか……」

 

「確かに二人までなら乗れるけど…気づかないってことあり得るの?」

 

 

 

そう、そこなのだ。

ローグタウンからシャボンディ諸島までいったいどれだけかかるか……

そのあいだ小舟に一緒にいて全く気づかないはずが……

 

 

 

「見聞色ですかね、あれは僕の能力「トメトメの実」には全く効きませんよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………………」

 

 

 

言葉に出来なかった。

そう、言われれば思い当たる節がある。

ここまでくる間、小舟の半分を見た記憶がない。

確かに小舟を漕いだり、周りを見るために小舟全体を見ていたはずだが、どうしても自分が乗っていた場所以外の記憶がないのだ。

 

 

 

「し、信じられん……そんなことが……」

 

「あっ、ならいまやってみますね」

 

 

といきなり少年が姿を消した。

あわてて周りを見渡すが見えない、見聞色で探しても見つからない。

 

 

 

「全然見えないわ。レイリーはどうなの?」

 

「……信じられないが私でも少年を見つけられない……」

 

 

その言葉を聞いたのか、次の瞬間にはまた目の前に少年が現れた。

 

 

 

「こうしても未だに信じられないが……どうやら本当のようだね……」

 

「本当ですよ。ちなみに一歩も動いてませんから」

 

「……人生の中でも一番の驚きよ……」

 

 

 

あっけらかんと、無表情で語る少年にもうため息しか出ない。

 

 

 

「……中に入るといい」

 

「いいのレイリー?」

 

「私を敵としているならいつでも殺れたろう。

そうしてないということはそういうことだと思う。

それにロジャーの紹介らしいからな」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「………そうか、最後まで笑っていたか……」

 

 

 

二人で話したことを包み隠さず話した。

それを聞いたレイリーとシャッキーは少し涙目になっていたがそれをハジメは見てみないふりをした。

 

 

 

「ありがとうハジメ」

 

「どうしてお礼を?

僕なら助けられたと思わないんですか?

どうして助けなかったと言わないんですか?」

 

「あいつのコトだ。そんな未練がましいことはしたくなかったのだろう」

 

「??」

 

「あいつは隠していたが……恐らく死に繋がる病気を持っていたはずだ……」

 

 

えっ、ええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!?

そんなこと本編にはなかったよね!?

やっぱりパラレルワールドだからちょっと話が違うのかな?

 

 

 

「だから処刑を受け入れたわけではない。

……私達を守ったのだ、自分が処刑されることで私達を……」

 

 

それは確かに本編に書かれていた。

だからしがみつかなかったのか、助かるかも知れない状況でもそれを掴まなかった。

 

 

 

「だからハジメが気にすることはない。

あれはロジャーが自分勝手に決めたことだ」

 

「レイリーさんがそれでいいのなら僕は何もいうことはありません」

 

 

そういって出されたお酒を飲む。

ちょっと強い酒のようだけどこの能力の前には酔いさえも効かない。

 

 

 

「だけどビックリしたわ…

まさか悪魔の実、最強種といわれた「トメトメの実」を食べた人がいるなんて……」

 

「ビックリするところなんですか?」

 

「知らなかったのか?

最強種と言われる所以はその実に選ばれなかった者は永遠の地獄に捕らえられるからだときく」

 

 

 

おいッ!!そんなの聞いてないよ!!!!

 

 

 

「恐らくだが能力から察するに永遠に体が止められるというところか……」

 

「動けないまま永遠にね……確かに地獄ね……」

 

 

 

おっそろしい……

神からのプレゼントだから大丈夫かもだけど本当に適合して良かった………

 

 

 

「その能力は周りにはむやみに言わないほうが、使わないほうがいいだろう。間違いなく海軍、海賊から狙われるものだ」

 

「とは言いましても、僕はいつか海に出るんですけど」

 

「それは構わない。

だが、いまは力をつけるべきだろう。

ロジャーもハジメの才能を見抜いて私に託したのだろうな」

 

 

そうなんだ。

まぁ、確かに麦わら海賊に入るならそれなりに力をつけないとなー

 

 

 

「レイリーさん、修行をつけてくれますか?」

 

「あぁ、いいだろう。

覇気に関しては問題なさそうだから基本的な戦闘からハジメ独自の戦闘スタイルを作っていこう」

 

 

 

こうしてレイリーさんとの修行が始まった。

そしてそれが後に「……やり過ぎたかもしれん……」とレイリーさんが後悔するほどの力を身に付けることになるなんて誰も予想できなかった。

 



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オハラ

二年後。

えっ、その二年間は何をしていたのかだって?

とにかく毎日筋トレや実践戦闘の繰り返し。

レイリーさんがいうには実践戦闘はともかく筋トレはヤバいらしい。

普通は傷ついた筋肉が修復して肥大化していくもの。

そしてそれは時間が経てば縮小していくもの。

だけどその縮小が僕にはないようで、能力により一番いい筋肉がついた時点で一時停止して筋トレでどんどん大きくなっていくらしい。

そんなに筋肉大好き!みたいにならないようにしないとなー

 

なので途中から実践戦闘がメインになった。

あっ、覇気に関しては才能なのか能力のお陰かレイリーさんから教わることはほとんどなかったようだ。

 

 

で、ある日のこと。

 

 

 

「あっ、レイリーさん」

 

「なんだいハジメ」

 

「出掛けたいんですけどいいですか?」

 

「………被害は最小限にするんだぞ」

 

 

 

最近僕がどこか出掛けるというと必ず遠い目をする。

あれ、僕何かしたかなー

 

 

 

「……ちなみに、何処に行く気だ……」

 

「オハラです」

 

「君は!!また!!問題を起こす気かあッ!!!!」

 

 

 

そんなつもりはないのだが有無も言わさずに鉄パイプに武装色を纏わせて頭に向かって振り抜いた。

まぁ、一時停止の前では能力者をとらえるはずの武装色さえも意味を持たないらしい。

つまり本当にこの「トメトメの実」は最強種だったようだ。

 

で、意味もなく頭に当たった鉄パイプはただ折れただけになり僕はまったくダメージはなかった。

 

それでもレイリーは殴らずにはいられなかったようだ。

 

 

 

「……はぁ~、行くのを止めろとは言わない。言っても君は聞かないからな」

 

「ですね」

 

「ですね、じゃない!!!」

 

 

温厚だったはずのレイリーは何処に……

まぁ、ハジメと二年も一緒にいれば温厚なレイリーでもキレるのは必然である。

 

 

「……ハジメが無意味なことをするとは思わん。

だが、オハラはいまはダメだ……」

 

「世界の秘密を知るからですか?」

 

「ッ!!!!??

……一体どこまで……」

 

「全然ですよ。

ただオハラが何をしているのか、そしてその敵はどこの誰なのかは知ってます」

 

 

 

世界政府。

名前だけで国民、いや世界を騙している親玉。

僕の認識はそんな感じなので大嫌いである。

 

そして僕の大切な考古学者に消えることのない傷をつけようとしているのだ。見過ごすわけがない。

 

 

 

「……何をするつもりだ」

 

「ある考古学者の少女を救いに。

その結果がオハラを助けることになるかは分かりませんけど」

 

「………こういうと薄情ものかと思われるかもしれないが全てを救おうなど神でもないかぎり無理だ。

そこの線引きはハジメ、君がするしかない。それがその少女の大切な人達だとしてもだ」

 

「分かってますよ。

でも僕は救えるものを救うだけです。

神なんて思ってません、手に届くなら掴むだけですので」

 

 

 

そういって歩きだそうとしたハジメをレイリーが静止させる

 

 

 

「……君は、ハジメは()()()()()()()()()?()

 

「知っているのはこの先、この海で最も自由に生きる人達のことだけです」

 

 

 

 

…………………………

 

 

 

オハラにたどり着いたハジメの目の前ではあり得ない光景があった。

 

 

 

「……ひ、酷すぎる……」

 

 

 

すでにバスターコールが押されて全知の樹は燃えていた。そしてオハラの近くにいたと思われる民間船も燃えて海に沈んでいくところだった。

 

そう後の赤犬がオハラの考古学者を、いや、オハラの人全てを逃さないように一般人に向けて大砲を打ったのだ。

 

この時から行き過ぎた正義を執行している。

それを目の当たりにして平常心になんていられなかったのだが、当初の目的を思い出したハジメはグッと堪えてオハラに上陸した。

 

もちろんここまで小舟と一緒に一時停止をしていたので見つかる問題はなかった。

しかしONE PIECEの海はそれだけで生き残れるわけもなく、大シケや災害など当たり前のようにあり、たどり着くまでに大幅に時間がかかった。

 

出来るならもっと早く来たかった。

二年前から知っていたからすぐにでもオハラに来たかった。

しかし自分が向かったことによる想定外の出来事がオハラの最期を早める可能性があった。

 

なぜならこの二年間の間にレイリーがハチに助けられるという出来事がまだ起きていないのだ。

 

それは僕がレイリーに修行をつけてもらっているから。

 

つまり、自分の行動がどんな風に動くか分からない。

それも二年前に接触するなんて危険すぎた。

だからオハラが終わる直前にと思ったが、まさにいまオハラが終わりを向かえるタイミングで着くなんて……

 

 

 

「間に合って……くれ……」

 

 

 

全速力で全知の樹を目指すハジメ

ここまでくれば少女は、ロビンはサウロに、青雉クザンに助けられているはずだ。

そこに介入すればきっと歴史が、僕の想像よりも大きくずれる可能性がある。

 

なら今僕が救うのは

 

 

 

『燃えてなくなるよりマシだ!!!』

『文献を図書館の外へ!!!』

『一冊でも多くの本を!!!』

『一節でも多くの文章を残せ!!』

『数千年もの先人達の言葉が・・・未来へ届くように!!! 』

 

 

 

遠くからでも聞こえる必死の叫び声。

燃え盛る『全知の樹』の中では、学者達が総動員で樹の中の本を外の湖へと投げ落としていた。

 

もう目の前まで来ている。

なのに全知の樹が音を立てて倒れ始めていた。

 

 

 

「……ま、に、あええええぇ~!!!!」

 

 

 

その樹もとうとう全てが燃えて、倒れた。

全ての本を持ち出すことは叶わなかった。

そして全知の樹の中には考古学者達が、一人の考古学者がやっと会えた娘の事を思っていた。

 

 

 

(ごめんねロビン…私は母としての言葉さえ、あなたに残せなかった……。)

 

 

 

そう聞こえない言葉を残して母、ニコ・オルビアは静かに目を閉じてこの運命を受け入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後、レイリーの元へハジメは戻ってきた。

しかしその顔は生気を失い、いつ倒れてもおかしくない状態だったという。

 

そしてハジメはいまぼったくりBARで看病を受けていた。

ハジメの額からタオルをとり、新しいタオルを額においたシャッキーはどういう状況だったのかいま聞き終わったところだった。

 

 

 

「つまり…間に合わなかったのね……」

 

「……そうだろうな……

…新聞にもオハラは終わり、生き残りのニコ・ロビンが賞金首になったと載っている」

 

「まだこんなに小さいのに……」

 

「あぁ、それでも世界政府にとっては脅威なのだろう。

そしてそれをハジメは知っていたようだ」

 

「ッ!!?

一体何者なのハジメちゃんって……」

 

 

 

すると話を返事するかのようにハジメの指が僅かに動いた。そして目を開けて意識を取り戻した。

 

 

 

「ここがどこか分かるハジメちゃん?」

 

「はい、分かります」

 

「今日はもう休みなさい。

話は後日にでも聞こう」

 

「いえ、大丈夫です」

 

 

上半身を起こしたハジメ。

少し顔色が良くなってはいるがまだ体調が悪いようだ。

 

 

「………残念だったね。

こういう時人は無力だ、助けたくとも助けられない」

 

「…………」

 

「それでも君が行ったことは無駄じゃない。

彼らもきっとハジメに感謝してるよ」

 

「そうですね。

感謝され過ぎて死ぬかと思いましたから……」

 

「ハジメちゃん、今日はもう寝たほうがいいわ。

気持ちの整理がついてから……」

 

「いえ、ここももう危ないです。

早く移動しないと捕まりますので」

 

 

そういって立ち上がろうとするハジメをレイリーが止める。

 

 

「海軍なら私が追い払おう。

……そうか、君もオハラに関係したと見なされたのか……」

 

「……そんな……」

 

「オハラに関係したといいますか、悪魔に取りつかれたといいますか……」

 

「そうだ、ハジメは知らないかもしれないが「ニコ・ロビン」は生きてるよ。賞金首をかけられたのだかね……」

 

「はい、知ってますよ。

もう悪魔のごとく付きまとってきましたから……」

 

「「………………うん?」」

 

 

 

そこで異変に気づいた二人。

どうもハジメと会話が噛み合わない。

それどころか……

 

 

「ちょっ、ちょっと待つんだ!?」

 

「はい、待ちます」

 

「どうやらハジメと私達の持っている情報に食い違いがあるようだ。

どういうことだ、オハラは滅びたのではないのか?」

 

 

慌てている二人にハジメはいつものペースで、無表情でこう語ったのだ。

 

 

「はい、オハラは滅びました。

でも全知の樹にいた人達は助かりましたよ。

そのあと一時停止で皆さんの存在を消して島から脱出。

流石に船はなかったので海軍の船に人を割り振りましたけど。

で、そのあとにニコ・ロビンの元にお母さんを連れていったら喜んでくれたのは良かったんですけど、なんか妙になつかれまして、何処に行っても「お兄ちゃん、お兄ちゃん」って付いてきて……なんとか皆さんがいる隠れ島に連れていって別れてきたんですけど、もう行動力がすごくて、何処に行っても居場所が手に取るように分かるんじゃないかってぐらいに付いてくるので、何度も何度も振り切ってやっとここまで……

 

でも、あの「悪魔」はまたすぐに来ます。

なのですみませんが僕はしばらく消えます。

それをいいに来たのです、では」

 

 

 

そういって姿を消したハジメ。

残された二人はただただため息しか出なかった……



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━幕間━ ロビンの場合

とある海賊船の一つ。

その一つのキャプテン室にはその海賊船のキャプテンと、ひとりの女の子が話し合っていた。

 

 

「お前のことなら知ってるぞニコ・ロビン」

 

 

そう、そこにいたのはニコ・ロビン。

オハラの唯一の生き残りであり現在は

 

 

 

()()()()()()()()……

雑用でメシぐらい食わせてやらァ」

 

 

目の間のキャプテンと同じお尋ね者。

しかしそのお尋ね者でも金額と危険度が違う。

 

 

「おお……助けてくれ!!!!

海軍本部だ!!!」

船長(キャプテン)!!!」

 

 

血まみれで船内に入ってきたのはキャプテン。

一体何が起きたのかと思いきや海軍本部がこの海賊船に攻めてきたのだ。

 

なぜ()()()()が来たのか?

周りからみたら弱小とはいわないが海軍本部が攻めてくるほどものではない。

 

そんな海賊に海軍本部が攻めてきたというと

 

 

 

「ロビンはどこだ!!

あいつを引き渡せ!!!!」

「畜生!!

あんなやつがいるから……!!」

 

 

そう海軍本部の目的は海賊ではない。

この船に乗っているたった一人の女の子。

 

 

「ロビン!!!!

あの疫病神め~~~~~!!!!!!!」

 

 

 

…………………………

 

 

 

しばらくしたあとその海賊船は海へと沈んだ。

そんな海賊船をただ見ているロビン。

そしてまた生きるために「自分を利用して最低限の生きる術をくれる」ところを探す。

 

まだ子供、そんな子供がたった一人で生きれる訳がない。

だからどんな思惑があっても生きぬくために我慢するしかない。

そしてオハラの意思を、過去の言葉を聞くために。

 

 

 

「デレシ!……デレシシシシ!!」

 

 

だから笑った。

こんな世の中に負けないように。

サウロが言っていた「仲間」に出会うために。

 

 

「……デレシ………デレ……シ……」

 

 

それでも酷な話である。

たった八歳でたった一人で生き抜く。

どんなに隠れ蓑が心地よくてもきっと裏切る。

 

私が追われているのは海軍本部ではない「世界」なのだ。

そんな巨大すぎる敵を目にしたら誰もが我が身を守るために裏切る。

 

 

だから最初から期待しない。

私も裏切るまえに裏切ってやる。

そんな気持ちがいつの間にか息をするように持ち始める………まえに、一つの出会いがあった。

 

 

 

「お一人ですか?」

 

「……だれ??」

 

 

そこにいたのは一人の少年。

印象はとにかく素っ気ない。なにも興味を持ってないと思うほど無表情。

 

 

「貴女を探していました」

 

「………そう……」

 

 

自分を探していた。

つまり私を利用するつもりか、もしくは海軍に引き渡すつもりか……

 

後者なら先手必勝と両手をクロスさせていつでも能力を発動させようと構える。

 

 

 

「私を、海軍に引き渡すんですか?」

 

「しませんよそんなこと。

ちょっと来てほしいところがあるんですけど来てくれませんか?」

 

 

 

即答。

しかしそれでも私をどこかに連れていこうとしているということは、どちらにしても私を利用するということだけは間違いない。

 

なら、今度はこの人を逆に利用して……

 

 

「……はい……」

 

「よかった。ぜひ会わせたい人がいるんで」

 

 

私は絶対に生き残る。

 

 

…………………………

 

 

 

名前も知らない人に連れられて一週間。

最小限の言葉しか交わさず私としては気は楽だけど一体何処に連れていくのだろうか?

 

目的地は分からないけど気のせいか()()()()()()()()()()()()()()()()()ような気がする。

買い物はこの人がしてくれるから必要以上に人と接触しなくてもいいけど、それでもまったく人と会わないわけにはいかない。

フードをかぶったりして顔を隠していても私を見つける人はいる。

 

なのに、この一週間はまったくと言っていいほど……

 

 

「はい、リンゴ」

 

「……………」

 

 

無言でリンゴを受け取りかじる。

始めは出されるものは食べなかった。何を入れられているかと思うと手を出せなかった。

だけどなんとなくこの人はそんなことはしないと思い少しだけ食べ物を食べてからは少しだけこの人は大丈夫かなと思った。

 

それでも信用出来ない。

何処に連れていくのか?誰に会わせるのか?教えてくれない人を完全に信用出来るわけがない。

 

 

「まだ、着かないの?」

 

「あと一つの島を渡ったら着くよ。

ゴメンね、ちょっと人知れないところだから」

 

 

警戒している私にどうしてそうも隠さずに言えるのか?

間違いなく怪しまれるというのに、どうして??

この人がどうして私を、人に会わせたいのか?

「悪魔の子」だと知っているはずなのに一緒にいるのか?

世界政府に追われていることを知らないのか?

 

 

それが気になって私はこの人に付いてきているのかもしれない。

今までの人とは違う何かを知りたいために。

 

 

それからその島まで往き来する船を探した。

しかし見つけても誰もその島へ出港してくれる人はいなかった。

話を聞けばその島は神隠しが有名な島。

島へ上陸してしまえば二度と戻ってこれないと言われているらしい。

だからこの島の子供達は、小さい頃から悪いことをしたらあの島へ送られると言われていたらしい。その言い伝えはずっと前からあり、この島の人達全員が知っていた。

 

 

そんなところに連れていかれるのか……

改めて不安を覚えながらやっとその島の近くまで乗せてくれる人を見つけた私達はその船に乗った。

 

 

その船に乗せてくれた人がいうには少し前にその島で多くの人が神隠しにあったそうだ。

元々人の出入りが少ない島であったけど、その目撃した日大人数の人がその島に向かったと。

そして、二度とその人達は戻ってはこなかった……

 

それ以降忘れられていた神隠しが再び広がったというのを聞き終わった時にはその島の近くに着いていた。

 

 

 

「ありがとうございました」

 

「……悪いことは言わねぇ。

こんな島に入らんほうがええ……」

 

「どうしてもここに行かないといけない理由がありまして」

 

「……気を付けてな……」

 

 

 

……………………………

 

 

と、前置きはここまで。

確かにあの島は神隠しの場所であり、島に入った私達も神隠しにあった。でもそれは周りからしたらそうみえるだけ。

 

そう、この島は()()()の力によってここにいる人達を隠していたのだ。

 

それは()()()が私の大切なものを守ってくれたからこうして………

 

 

もう!!()()()って書くのいやッ!!

お兄ちゃんはお兄ちゃんなんだからお兄ちゃんって書く!!!

 

 

 

 

 

 

~ここから先幼少期ではありますがロビンが完全に壊れます。~

 

 

 

 

~この先あんなロビン見たくないというひとここでやめておいてくださいね~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん、何処に行くの??」

 

「ろ、ロビン…ちょっと散歩に……」

 

 

 

簡潔にいうと救えた。

なんとか全知の樹が倒れる前に止めることが出来た。

そのあと皆さんに説明して存在を停止させて、海軍が引き払った後に船を作って脱出したのだ。

 

流石に文献や本は海軍が持っていってしまい何も残っていなかったが、それでも皆を誰も住んでいなく立ち入ることのない島へ連れ出した。

 

あと皆が知っている通り。

ロビンを見つけて島へ連れていき、母親であるオルビアに引き合わせた。

 

二人とも顔がぐちゃぐちゃになって水分がなくなるほど泣きあった。今生の別れになるかと二人とも思っていたのだ。感動だって人一倍だろう。

そう、だから僕は異変に気づかなかった。

 

泣き止んだロビンはこっちを向いてこう言った。

 

 

『……お兄ちゃんって……呼んでもいいですか…』

 

 

……寂しかったのかなーと思った。

オルビアさんから少しは事情を聞いていたので兄弟が欲しかったのかなーと。

だからいいよと返事した。そしてそれが間違いだった。

 

例えば取ってきた果物を分けようもすると「お兄ちゃんが食べたものがいい」と言ってきた。……兄弟なら別にいいのかと食べかけを渡した。

破けた靴下を捨てようとしたら「それ私が貰うね」と取り上げられて破けたところを治してロビンが使う。まぁ、エコ精神だと思った。

歩いていたら木の根に足をとられて躓きそうになった。するとロビンが何処から出したのかナイフを取り出して木の根をズタズタに切りつけていた。

 

……なんかヤバいスイッチが入ってるなーと思ったので距離をおこうとしたのだがすでに遅かったのだ。

 

 

「私も一緒に行く」

 

「でもすぐ近くだから」

 

「でも危ないから、私が一緒に」

 

「お母さんと一緒に勉強するんじゃ……」

 

「今日の分はもうやったよ。ねぇお母さん?」

 

「……う、うん……」

 

 

久しぶりに出会ったロビンの姿に喜んでいたのだが、どうしてこんな風になったのかと少し遠い目をしながらニコッと無理やり笑っている。

そんなオルビアさんの近くにいって

 

 

(いや、オルビアさん。止めてくださいよ)

 

(む、むりよ!

あの子、私より貴方に依存してるのよ!!

それに無理に止めようとするとあの腕が私の体に生えてくるのよ!!!)

 

 

実の母親にも能力を使い脅すなんて……

これ、間違いなくヤンデルヨー

ドウシタライイノカナー

 

 

「お兄ちゃんには私が必要なの」



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海軍

あれからハジメは色んな島へ移動しながらロビンから逃げていた。

あれはスゴい、ハジメも最小限の生活のために人に会わないといけないので人前に出てくるのだがそのたったその僅かな情報だけでハジメの居場所を特定して追いかけてくる。

 

その執着心はスゴく、その目はすでにヤンでおり、そのロビンの周囲からはどす黒いオーラが見える……

 

 

とにかく諦めるまで逃げようと頑張っているハジメだがある島の、ヒューマンショップの檻の前で、中には女性が外には男性が話していた。

 

 

しかし話を聞いているかぎり楽しい話ではない。

まぁ、ヒューマンショップの内と外では状況が違う。

 

 

「待ってろ。必ずそこから出してやるからな」

 

「ありがとう、待ってるわ」

 

 

なんかloveな匂いがする。

と言っても関わる気はない。

いや、だってあれテゾーロとステラである。

敵であるテゾーロを助けるつもりはないんだよなー

まぁステラは犠牲者だから助けてもいいんだけど……

うむーどうしようかなー

 

 

「まだ時間あるし、いまは気にしないでおこう」

 

 

ということでここはスルー。

とにかくロビンが来ないところに行かないと……あっ。

 

 

「なんで今まで気づかなかったんだろう……よし、海軍に行こう」

 

 

 

そうである。

別にいま海賊になる必要はないし、海軍に入っても抜ければいいし、なによりロビンが近づかない。

よし、それで行こう!!と決まれば近くのお店で紙とペンを買ってレイリーに手紙を書いた。あとオリビアにも。もちろんロビンには知らせないように。

 

 

「で、確実に海軍に入れる方法は………」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「という訳で海軍に入れてください」

 

「……何がという訳よ……」

 

 

探しに探してやっと見つけた方法()

身長が高く、額にはアイマスク、グダッーとしていて、いまは頭を抱えているけど海軍トップスリーになるものの中では話が分かる。

 

三大将、青雉、クザン。

 

ある無人島でサボっていたクザンの元に言って、今までの事情を話す。主にロビンがヤンデルことを伝えた。

というか、あれ?クザンって本編ではまだ大将じゃないよね?やっぱり僕の影響が出てきてるのかな?……でも海軍に対して何もしてなかったよねー。まぁ、いいけど。

 

 

「あのね…俺はアイツをそんな風にするために生かした訳じゃないんだけどな……」

 

「と言われましても……」

 

「ロビンのことを抜いてもお前を海軍に置く理由がねえな」

 

「……あっ、確かに」

 

「簡単に認めるのね……」

 

 

だって確か海軍が自分を置く理由がない。

うむーと考えること二秒、というかまぁ適当に。

 

 

「ならとにかく海賊捕まえて持ってきますね。

えーと、100あればいいですか?」

 

「……冗談としては面白くないね……」

 

「まぁ、信じられませんよねー

そういう時は実行あるのみ、って誰かが言ってましたので一週間後に海軍本部に持っていきますね」

 

「いやいや、勝手に話を進めなさんな。

……じゃ、億超えを連れてきたら考えるよ」

 

「分かりました」

 

「簡単に返事してるけど億超えだよ?

まぁ、期待しないで待ってるよ」

 

 

 

…………………………

 

 

「これは…どういうことだクザン……」

 

「まさか、マジかよ……」

 

 

海軍本部の港に複数の海賊が横たわっていた。

それも中には億超えしている海賊もいて、これから大将などに狙われるだろうルーキーもまた倒れていた。

 

 

「シャボンディ諸島はいいですね。

安定して「狩り」が出来ますので」

 

「これは、貴様がやったのか?」

 

「初めまして、センゴクさん。

ハジメといいます、海軍にいれてください」

 

「クザンから話を聞いていたが、まさかこれほど……」

 

「足りませんでしたか?

それじゃまた狩ってきますね」

 

 

ちょっ、ちょっとまちな!!とクザンの制止に応じたハジメ。冗談、いや、連れてきても一つの海賊ぐらいと思っていた。

ハジメを見た感じでは全く戦闘力があるとは思えない。

なら悪魔の実を食べたものかもしれないが、それでもルーキーのルーキーだと思っていた。

 

これまでいろんな海賊を見てきたクザンがそう感じたのだ。こんな大きく予想が外れるなんて思ってもいなかった。

 

 

 

「……海軍に入る目的は助けたい者がいると聞いたが?」

 

「(あぁ~そういう設定なんだ)はい。

出来るならその守りたい人の為に海軍がより良くなるために頑張りたいと思ってます」

 

「(ここまでくれば大した度胸だよ……)どうですかセンゴクさん。

実力は申し分もない、志もまぁいいかと思うんだがね……」

 

「………いいだろう」

 

 

おおっ、マジか!!?

 

 

「ただし条件がある」

 

「なんでしょうか?」

 

「一週間交代でクザン、ボルサリーノ、サカズキの下に付け。それに耐えられたら正式にいれてやろう」

 

 

 

いや、それなんのイジメ?

三大将の元に一週間も、それも交代って……

やるけどさ、やるけど、海軍に入るのってこんなに厳しいの?

 

 

「分かりました。まずはクザンさんの元から」

 

「あぁ、頼んだぞクザン」

 

「ったく面倒な……」

 

 

面倒なじゃないよ。完全にセンゴクさんに任せる気満々だったんですか?

 

 

 

…………………………

 

 

 

「お兄ちゃんが…海軍に……」

 

 

情報屋に聞いてしまった……お兄ちゃんが海軍に入ったことを……

どうして、どうしてお兄ちゃん……

どうして私から離れていくの……

 

 

「お、おい、お嬢ちゃん…大丈夫かい??」

 

 

私が何をしたの?

私が嫌いになったの?

私はただお兄ちゃんの側にいたいだけなのに……

 

 

「……お兄ちゃん……」

 

「うん??もしかしてこの海兵が君のお兄ちゃんなのかい?

立派だね~この若さで海軍に入るなんて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「…守りたい……もの……」

 

 

もしかしてそれって……私のため??

世界政府から私から守るために入ったの??

 

 

「そう…なのかな……」

 

「そうじゃなきゃこの歳で海軍は入れないねー!」

 

 

 

そうなんだ……うん、そうだよね!!

分かったよお兄ちゃん!!

私もっと強くなってお兄ちゃんの邪魔にならないように、隣に立てるようになるよ!!

 

 

…………………………

 

 

 

ブルッ!!

何かを感じたハジメは何もないハズの海の向こう側に顔を向けた。

そこには確かに何もないのに、どうしてかこの向こう側に()()()()()()()()()()()()()ように感じた。

 

 

 

「どうしたよ?」

 

「……いや、なんか悪い予感が……」

 

「なんかおめぇさんがいうと本当に悪いことが起きそうだな……」



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三大将

「じゃとりあえず……それ片付けておいて」

 

 

 

三大将の付いて初めの一週間目。

そしてその一日目、書類整理。

とにかくクザンさんは面倒くさがりらしくこうして書類も部下に任せるらしい。そして酷いときには海軍本部を抜け出して遊びに出掛けるという。

 

まぁ、ド新人は上司の言うことを聞かないといけないと割りきり山になっている書類を手に取り整理しはじめた。

開始から五分後、ノックしたあと部屋に入ってきたのはクザンさんの部下のようだ。

 

 

「クザンさん、書類をお持ち……って、君は?」

 

「今日から一週間、クザンさんの元でお世話になりますハジメです」

 

「それはご丁寧に。ちょっと待っててね」

 

 

すると書類をテーブルにおいてソファーで寝ているクザンさんの元へ行き大きく息を吸って

 

 

「入った初日に、入ったばかりの部下に何をやらせてるんですかー!!!!!!」

 

 

書類の山が崩れるんじゃないかというぐらいに大声を出した先輩海兵。そんな大声を出してもやっと「…なに~」と寝ぼけながら起きるクザンさんはやっぱり大物である。

 

 

「おい、マジでいい加減にしろよ」

 

「ちょっ、ちょっと…俺君の上司だよ」

 

「だったら上司らしいことしてからいいやがれ」

 

「おぉ怖いね~。いいかハジメ。あぁいう大人にはならないでくれよ」

 

「てめぇマジでブッ飛ばすぞ!!!」

 

 

なんだこの上下関係は……

と思いながらも終わらない書類をこなしていく。

まぁ、分からない書類は捌けて少しずつでも書類を減らさないと。

 

 

「大体、オックス君を海軍に入れたの俺だよ。

少しは恩を感じてくれてもいいんじゃないか?」

 

「だからクザンさんがもっと周りから尊敬されるように注意していることをもう少し自覚してほしいんですけど!?」

 

「……ダルいからパス」

 

「おい、負け戦でもやる時はやるぞテメェ」

 

 

いつもこんなやり取りをしているのかなーと思いながらも黙々と作業を続ける。面倒なことには巻き込まれたくない。面倒なのは1人(ロビン)だけで十分です。

 

 

「マジでいい加減にしてくださいよ……

いまからの海軍を引っ張っていくんでしょう」

 

「そうはいうけどね……あまり力を入れすぎると痛い目にあうよ」

 

「かといって抜きすぎなんだよ」

 

「大丈夫、オックス君がいるからね」

 

 

その言葉に言い返せないオックス先輩。

なるほど、そういって部下を操っているんですねー

オックス先輩も満更でもない様子。

 

しかし僕がいるのを思い出したのかこっちを見たあとオホンと咳払いして

 

 

「とにかくそんな風にサボられると部下に示しがつきませんので最低限の仕事はしてください」

 

「分かったよ」

 

「はぁ~、……悪かったね。中将のオックスだ、よろしく」

 

「ハジメです。短い間ですけどよろしくお願いします」

 

「くっ!!こんな真面目な子が……

………クザンさん、本当に真面目にしてくださいね」

 

「言っとくけどハジメは変わり者だからね。

それも超がつくほどの」

 

「貴方の適当な発言は聞き飽きました、失礼します」

 

 

全くクザンさんの話を聞かずに部屋を出ていったオックス先輩。するとクザンさんは僕の方を睨みながら

 

 

「人によって態度を変えるのは悪いと思うけど」

 

「全く変えずに人を怒らせるクザンさんには言われたくありませんね」

 

 

 

…………………………

 

 

「今日は訓練だ。相手はオックス君」

 

 

本当に何を考えてるんだこの人は?

相手は中将だよ、そして僕はド新人。

相手にもならないって分からないかなー?

 

 

「心配は要らないよハジメ君。

君は僕に一撃を入れたらいい。もちろん僕も攻撃をするけど気絶する程度だ」

 

 

それ心配しかないような……

まあ、僕の能力では一切攻撃は効かないけど…レイリーさんが能力はバレないようにしろっていってたしなー

 

 

「なにか面白いことしてるね~」

 

 

何か聞き覚えのある声がするなーと振り返るとそこには大将黄猿、ボルサリーノ。そして隣には大将赤犬、サカズキ。

 

 

「おい、クザン。

お前は一体何をしている!!」

 

「見ての通り訓練だよ」

 

「ふざけるな!!

そんな新米に儂ら大将がついて何の得がある!!?

なにより周りの海兵に示しがつかんじゃろうが!!!!」

 

 

おぉ、珍しく赤犬がマトモなことを言ってる。

行き過ぎた正義を持つ赤犬とは関わりを持ちたくなかったけど、もしかして割りとマトモな……わけがないか。

 

 

「まぁ、その判断は自分達が担当の時にしといて」

 

「青雉ッ!!!」

 

「それにあんたの目にかなう人物かもしれないよ」

 

 

……おい、いま何を口走りやがった。

恐る恐る赤犬の方を見ると、スゴい怖い顔で人を睨み殺すんじゃないかと思うぐらい睨んでいる。

 

 

「じゃったら、見せてみんか!!その実力を!!!!」

 

 

いや、何勝手に決めてるの!?

 

 

「面白そうだね~」

 

 

楽しまないで下さい。

 

 

「それじゃ任せたよオックス君」

 

 

任せるな。

これ、やっぱりならないとダメなパターンなわけ??

 

 

「それじゃ構えて」

 

 

オックス先輩もやる気満々かよ。

さてどうしようかなー

 

 

 

…………………………

 

 

━オックス視点━

 

 

審判をクザンさんに任せることにして私は目の前の新人ハジメと戦うことに。

大将赤犬が言うとおりに新人に自分のような中将が相手するなんてあり得ないだろう。

 

しかしクザンさんが目が付けたのは理解出来る。

ハジメ君は何か特別なものを持っている気がする。

だから、その何かを知るために

 

 

 

「では行くよ」

 

 

まずはまっすぐ攻撃をしてみようとハジメの腹の真ん中に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは速くて見えませんでしたよ」

「ッ!!!?」

 

 

そんなことを言っているがハジメは腹の周りを武装色ー硬化ーを使い攻撃を凌いでいた。

確かに視線は追い付いていなかったが的確に武装色を使っている。まぐれ、かもしれないと今度は上段蹴りをしようとフェイクをかけて体を回転させながら顔に裏拳をしてみた。

 

しかし、それも武装色を使い防いでいる。

これは……とんでもない逸材かもしれない。

 

 

 

━━視点アウト━━

 

 

 

あぁー良かった。覇気覚えておいて。

あの速い攻撃に反応出来るわけがない。ないので能力で停止したあと即座に武装色をかけて、いかにも武装色で防いでいるように見せている。

 

これはレイリーが教えてくれて特訓した方法。

やっぱり攻撃後に武装色をかけてもタイムラグがあるのでバレるかもしれないと言われたので、もう当たり前のように息をするかのように武装色の発現速度を、反射神経を上げまくった。

 

それするぐらいなら普通に武装色で良くねえ?

いえ僕の武装色は恐らく誰よりも弱いので能力で見せかけないと使えません。

 

ともかく物凄く速いスピードで攻撃していて全く見えないんですけど…いまどこを攻撃してますかー

なんとか反射神経で乗り切っているようでオックスさんにも三大将にもバレてないようだけど……

 

 

 

「おいおい……マジかよ……」

「あれは、スゴいね~」

「……ふん……」

 

 

なんか勝手に納得しているようだし、大丈夫かな…って、あれなんかゴツい人の腕がグツグツしてるんですけど~

 

 

「大噴火ッ!!!!」

 

 

ええぇー!!!!??

なに攻撃してるのあの人!!!??

オックスさんがとっさに僕の手を掴もうとしてくれたんだけど

 

 

「天岩戸」

 

 

ちょっ!!

オックスさんと僕の間にレーザービームって!!!

そんなことをしている間に

 

 

「あっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっとあんたら!!何してんだよ!!!!!」

 

「うるさいッ!!あれぐらいで死ぬようなら海軍にはいらん!!!!!」

 

「最悪死ぬか良ければ一部無くなってるかもね~

それでも生き残ってればこちらとしては文句はないよ」

 

 

 

ただ実力を知りたいだけで大将の技をぶつけるものか……

オックスもただただ呆然とさっきまでハジメがいた場所、炎上しているその現場を見つめていた。

 

すると揺らめく炎の中から何かが見えた。

それは黒く、黒々強いものがこっちに向かっている。

そうそれはハジメが全身を武装色ー硬化ーを纏い歩いている姿だった。

 

 

「ハジメ君ッ!!!!」

 

 

思わずハジメの元に駆け寄るオックス。

ハジメの全身を確認するがどこも怪我をしていなかった。

そう()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「無事で良かった~」

 

「これって、大将からも攻撃されるんですね」

 

「なわけないでしょう。ったくまさか無傷とは…」

 

 

頭をかきながらため息をついているクザン。

しかしホッとしている様子だったのでどうやら無計画なことなんだなーと改めて思った。

するとさっき攻撃してきた原因の二人が近づいてきた。

 

 

「いや~まさか無傷とはね~驚いたよ~」

 

「はぁ」

 

「でもこれでサカズキにも認められて良かったね~」

 

 

そんな能天気に言われても困るんだけどなー

そしてその隣にいるサカズキは

 

 

「ちぃっとはやるようだが、これからが本番じゃ」

 

「は、はぁ」

 

「なんじゃそのやる気のない返事はッ!!!」

 

 

 

えぇーーー

まずは死ぬかも知れなかった攻撃に対して謝らないの??

……………よし、決めた。

 

 

 

「僕ですね、「気に食わないことはハッキリと、やったらやり返す」を目標に海軍を頑張ります」

 

「ほぅ」

 

「なので早速実行しますね」

 

 

ということで存在感を消してサカズキさんのお腹に手を当てた。それでもまだ気づいていない。

さて、さっきサカズキさんから受けた「大噴火」の衝撃を一時停止のまま残しています。そしてそれをいま僕の手のひらにあります。そして僕が触れているということで海水と同じ効果能力の無効化されてます。

 

さて、このあとどうなるでしょうか?

 

 

 

「ちょっと頭を冷やしてきてくださいね」

 

 

その瞬間に止めていた衝撃を解除してサカズキのお腹にぶつける。もちろんいまサカズキの能力は無効化しているので普通の人。

 

 

「ガハッ!!!!!!」

 

 

そのサカズキの体は吹き飛び、壁を壊し、建物を破壊し、そのまま海へと直撃した。

あまりのことに誰もが言葉を無くしている。

 

 

 

「いくら大将でも間違っていることは間違っているんですからね」



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階級

後日。

 

「それではここにハジメに中将の座を」

 

 

簡単にいうとサカズキさんを吹き飛ばした後、怒り狂ったその人から存在感を消すことにより逃げ切って隠れていた場所が元帥、センゴクさんの部屋だった。

まぁ、初めは驚いていたけどキチンと説明をしたら以外に話が分かる人であり、なんとお咎めなしになり何故か中将の座をもらい受けることになった。

 

 

………いや、展開早くない?

 

 

だっていくら自分の正義のためだからだって大将を吹き飛ばしたんだよ。普通はクビだよねー。

なのに、大丈夫なのか?僕みたいなのが中将ってまだ早すぎるような……

 

ほら、向こうのほうから睨みで人を殺しそうなほど睨んでいるサカズキさんがいるんですけど。

これ大丈夫なの?殺されない?

まぁこの能力があるから大丈夫だけど。

 

そのとなりのボルサリーノさんは耳掻き

そのとなりのクザンさんはたったまま寝てる。

 

 

………おい、大丈夫なの海軍?

 

 

それの様子をもう一人見ていた。センゴクさんだ。

もう額がピクピクしてるよ、完全にキレてるよ。

それでも僕は壇上で授賞を受けたいるけどここからじゃなにもできないし。

なにより周りの部下が諦めている。

あっ、オックスさんがクザンさんを起こしにかかっているけど全くダメだね。

 

そんな感じでのんびり様子を見ていたら突然ドンッ!?と地面が揺れた。何事かと音の方向を見るとセンゴクさんが地団駄を踏んでいた。

 

あぁ、なんかヤバイなー。これヤバイな。

すると一歩一歩ドカドカとセンゴクさんが此方に歩いてきて壇上が上がってきた。

 

うわぁー!嫌な予感がするなー。

 

 

「たった今ハジメに与えた階級は取り消す!」

 

 

ま、マジか!!?

いや、階級取り消しは別にいいけどそれ今言わないとダメなわけ??

 

しかしこの後が衝撃的だった。

 

 

「そして今ハジメに()()の階級を与える!!!」

 

『は、ハアアアアアアアアアァァァ!!!??』

 

 

 

……………………………

 

 

流石に元帥の発言はやり過ぎるということで大将の側近の「参謀」となりました。いや、革命軍じゃないんだから他の呼び方なかったの?

 

まぁ、ともかく大将という桁外れすぎる展開を回避出来たけど側近って……参謀って何しろっての?

 

ということで、めちゃくちゃな発言をした

 

 

「ちょっと説明をしてもらわないと困るんですけど」

 

「……いや、本当に、すまなかった……」

 

 

反省しているから許すけどさ、いや、これ許していいのかな?

とにかく話を聞こう、それからでもいいじゃないか?

 

 

「ハジメも知っての通りあの大将達は……手におえん」

 

「頭を物凄い勢いで抱えるほどですか…」

 

「分かっているだろうッ!!!

赤犬はむちゃくちゃで、黄猿は能天気すぎで、青雉は隙をみてサボろうとするし……マトモなやつが…おらんのだ……」

 

「……えーと、御愁傷様です??」

 

 

大変だなーいや、本当に。

トップである三人が誰一人マトモじゃないなんてねー

僕としてはセンゴクさんもギリ入っていると思いますよ。

 

 

「そこでだ、大将の管理をしてほしい」

 

「いや、なにがそこでだ。ですか」

 

「赤犬を吹き飛ばすほどの実力があるのだ!

あとはどうにでもなる」

 

「ならないですよ」

 

「頼むッ!!!

引き受けてくれるならハジメが望むことを、私に出来ることを最大限の事は叶えてやる」

 

「えっ、えぇ~……」

 

 

そこまで必死になるほどなんだ……

まぁ、ここで引き受けてもいいんだけどなんか絶対に割には合わない気がするんだよなー

 

 

「ならさらにもう一つ。

一切僕に関して、僕の周りに関して詮索しないこと

いま僕に関して集めている資料も全部破棄してくださるならやります」

 

「ッ!!?………分かった、破棄しよう」

 

 

集めてたんかいー!!

マジですか、いや、集めても何も出ないと……あっ、レイリーとロビンと繋がりがあるぐらいは出るかな?

でもオハラの人達に関しては徹底したからバレないだろう。

レイリーにはちょっと迷惑かかるかも。ロビンは……なんだろう、今のロビンならバスターコールでも普通に生き残りそうだと思うのは……

 

とにかく二人とも問題ないだろう、あとその前の過去に関しては自分が知らないんだから探せるわけがない。

 

 

「それで管理って何するんですか?

まさか書類整理とか言いませんよね」

 

「それもあるが……主にマトモな海軍にしてくれるようにどうにかしてほしい」

 

「蟻が象を倒すぐらい不可能で大変なこと、分かってますよね?」

 

 

 

…………………………

 

 

そのあと「とにかくまずはクザンから頼むッ!!!」と言うだけ言って追い出された。

 

これ、絶対に無理ゲーだよね?

 

はぁ~とため息をつきながらもらった「参謀」の腕章をつけてクザンさんの元へ向かう。

まぁ、クザンさんは少し知っているから残り二人よりまだ楽だと………

 

 

「また逃げたぞぉ~!!!!」

「どうするんだよ!!今日中に貰わないといけない書類があるんだぞ!!!」

「こっちだって遠征について話し合いが!!!」

「とにかく探せぇー!!!!」

 

 

と、早速前途多難な展開が待ち受けていた。

 

 

「お疲れ様ですハジメ参謀!!!」

 

「いや、ハジメでいいですよオックスさん…」

 

「それでは下の者に示しが……」

 

「でもクザンさんにはしてませんよね?」

 

「あれはいいんです」

 

 

……自業自得だけど可哀想に……

 

 

「とにかく対等な感じで。

僕はまだまだ若輩者ですので色々教えて下さい」

 

「……ハジメ君……」

 

「早速クザンさんのことから」

 

「おーいみんな!!!救世主ハジメ参謀が来てくれたぞー!!!!!!」

 

「「「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」」」

 

 

……本当に、何をしたらここまで……

なんかちょっと悲しくなった来たが皆さんからのクザンさんのグズっぷりを聞いていたらそんな気分も吹き飛んだ。

 

 

「よし、辞めさせましょう」

 

「いやいや、そこまでは……」

 

「海軍には入らないですよね、そんなグズ」

 

「気持ちは分かりますが……あれでも大将なので…」

 

「……大将の階級のままだったら、辞めさせられたかな……」

 

「あんな人ですけど私たちの大将ですので、ここは穏便に……」

 

「………仕方ありませんね……」

 

 

皆さん優しすぎます。

こういう人には焼けるほどの熱いお灸をです。

しかし皆さんがそういうなら止めてあげます。

 

 

「まずは書類整理をしましょう。そのあとは遠征についての会議ですよね」

 

「そのあとに最近不審な動きをしている海賊の元へ向かってもらう予定なのですが……」

 

「あぁ、それはどうしましょうか?」

 

「私も一緒にいくから心配ないよハジメ君」

 

「オックスさんが来てくれるなら大丈夫ですかね。

分かりました、それもやります」

 

 

円滑に回る仕事に海兵の皆さんはもう喜んでいた。

普段どれだけ部下に迷惑をかけてるんだあの人は…



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甥っ子

「ハジメ参謀!!

3時の方角から海賊船が!!」

 

「分かりました。

僕が潜入してきますので、30分後海賊船から反応がなかったら総攻撃をお願いします」

 

「気を付けるんだぞハジメ君」

 

「行ってきますオックスさん」

 

 

参謀の階級をもらって3日。

やっと探していた海賊船が見つかり作戦通り僕が一人で潜入することにした。

 

今回はこの海賊船に一般人が人質としているという話が上がり、一刻も早く救出することになっている。

しかしその救出を大将にやらそうとしている当たり恐らく上級階級の人達だろう。もしくは天竜人。

 

この二種類は個人的には嫌いだけど、まあ嫌いだけど、人として助けないという選択肢はない。

 

小舟に乗り存在感を消すとあっという間に小舟ごと姿を消すことができる。この現象はここにいる海兵の皆さんには「そういう体質」といったら納得してくれた。

 

……言っておいてなんだけど、それでいいの?

 

明らかな嘘なのにねー、気にしないのかなー?

まぁ、詮索しないようにセンゴクさんには言っておいたからそれが影響していると思えば問題ないか。ないのかな?

 

まぁ、いま気にしてもしょうがないし、とにかく海賊船に乗り込もう。

 

 

…………………………

 

 

「オックス中将、()()()()()()()()()()()()?」

 

 

その含んだ言葉にオックスは表情を変えずに答える。

 

 

「それはどういうことだ?」

 

「質問を質問で返さないで下さい。

ハジメ参謀は階級こそ上ですが海兵としてはまだド新人なのですよ。

なぜ1億の賞金首の海賊船に潜入など!!!??」

 

「それは私や元帥の意思を否定することになるぞ」

 

「そうは言ってません。私は疑問に思ったことを聞きたいだけです」

 

 

その言葉に海兵達は頷く。

普通の考えならそうなるだろう。新人が海賊船に、それも1億など……

 

 

「簡単だ。彼はあの大海賊団の副船長シルバーズ・レイリーから直々に修行を受けていたのだ」

 

「シルバーズ・レイリー!!!??

ならハジメ参謀は海賊ッ!!?」

 

「いや、その意思はないようだ。

それに関しては青雉が核心的なものがあると言っている」

 

 

その核心的なものはロビンのことだが、それは青雉の所で話は止まっている。もちろんそれではセンゴクには納得はいかないと思い、ある狂言をついたのだ。

 

 

「時崎 ハジメは、青雉の()()()()()()

「お、甥っ子ッ!!?」

 

 

もちろんそんな訳がない。

しかしシルバーズ・レイリーと繋がり、その状態で海兵になるとするならその事柄を打ち消すぐらいのインパクトが必要。

 

それがこの甥っ子作戦。

もちろんセンゴクに怪しまれて本当か調べられたのだが、そこは「昔に生き別れた兄弟の形見らしいんだが、ハジメ本人も記憶喪失で何も覚えてないらしい」と更なる嘘をついて、さらに、さらに、偽物の手紙を作り「この子はクザンの甥っ子になる」という風に書かれてあるものを見せた。

 

もう背中に冷や汗をかきまくりながらセンゴクの様子を見ていたクザンだが、「そうか…大変だったのだな……」と奇跡の納得をもらい、センゴクお墨付きのクザンの甥っ子となったハジメだが、何故か本人にはそのことは聞いていない。

 

記憶喪失になるほどショックを受けているから止めてくれるかという、もう嘘もなれた感じで話すクザン。

真実はハジメに知られたら間違いなく面倒くさいことになると思ったからである。

 

で、このシルバーズ・レイリーとクザンの名前を出したことにより

 

 

「それなら一人でも問題ありませんね」

 

「あぁ、これは肩慣らしといったところだ。

だがそれはハジメ参謀には言うな。調子に乗ることはないだろうが今は海兵としての経験を積む必要があると上の判断だ」

 

「「「ハッ!!!!」」」

 

 

…………………………

 

 

ということがあったことも知らずに帰って来たハジメ。

うん、海賊船は?潜入してもうクズの集まりだと分かったので火薬倉庫に火をつけて爆発させて帰ってきました。

 

 

「お帰りなさいハジメ参謀」

 

「爆発させてきたんですけどアレで良かったんですかね?」

 

「あの爆発なら問題ないかと

しかし…いきなり皆殺しとは……」

 

「えっ?」

「えっ?」

 

 

なにかスレ違いがあるようだ。

 

 

「爆発…させてきたのですよね?」

 

「しましたけど、殺してませんよ?」

 

「しかしあの爆発なら……」

 

「あぁ、乗っていた人は全員一つの小舟に積み込みました」

 

 

あそこですよ、と指差す方にはもう沈みかけている小舟が1隻。その小舟にはもう山積みになった人、人、人。

 

 

「もう海賊船は必要ありませんと思ったので壊したんですけど、不味かったですか?」

 

「……あ、アハハハハハッ!!!」

いえいえ、問題ありません!!流石ハジメ参謀です!!」

 

 

後処理はおまかせと言われたのでお言葉に甘えて用意された部屋に戻った。

そして部屋に入ったら部屋全体に一時停止を張り巡らせて()()()()()()()()()()()()

 

そして一言。

 

 

「何やってんだよ僕はああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

なんかロビンを助けてからどうも自分が望んでいた道ではないところを歩いている気がする。というもう迷いに迷っている。

 

 

「麦わら海賊団をhappyにしたかったんだよね!?

なのに、なんで敵対している海軍にいるんだよ僕は!!?

そうでした!!ロビンが病んだ(心の病気になった)からだー!!!」

 

 

もう独り言を言いまくるしかもうこのストレスから逃れなかった。いやもう随分と前から溜まっていたけど性格上溜めてしまうためこうして爆発させてしまった。

 

 

「ってか、なんでロビン病んでるの!!?

オルビアを助けたらもっと笑ってくれると思ったのに、もっと幸せな人生を送れると思ったのに、なんでストーカーになってるんだよおおおおぉぉぉぉ!!!!」

 

 

すでに時崎 ハジメの性格さえも忘れて、もう自棄になっている。それだけこの出来事は大きいのだ。

 

 

「ど、どうする……

このまま逃げ切れても将来麦わら海賊団には入るよね?

僕も麦わら海賊団に入りたいし、でも入ったら……コワッ!!なにされるか分かったもんじゃないんだけどマジでッ!!!!!!」

 

 

誰かが返事してくれる訳でもないけど言わないとやってられないようだ。

 

 

「………落ち着け。落ち着け僕。

……とにかく海軍に入ってしまったのはしょうがない。いやなんで参謀とか本編にもない役職をもらったのか分からないけど!!!とにかくそれは置いといて……

海軍はいつでも抜けられる。赤犬も吹き飛ばせたなら最終手段として実力行使で抜ければいい。

 

問題はいつまで海軍にいるかだなー」

 

 

そう、どうせなら海軍にしか出来ないことをやろうと思った。で、麦わら海賊団に入るためにはコネは必要ないけど出来るなら初回のほうから入りたいのでキチンと抜けるタイミングを図らないといけない。

 

つまりはあと20年。

20年は海軍にいても問題はない。

ないけどまぁ、もう少し早く抜けてもいいかなー

 

そういえばナミのお母さん、確かベルメールさんが亡くなったのが今から10年後。

ならその前に抜けようかなー。海軍のままベルメールさんを助けるとナミが海軍に入りそうだし。

 

よし、海軍にはあと10年。頑張るぞ!!!

 

 

 

と、決意しているがすでに青雉によって3大将の一人の甥っ子という肩書きを勝手につけられ逃げるにも逃げられない状態に追い込まれていることを知るのはまだまだ先の話である。



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それぞれの愛

「はい、これ」

 

「こ、これは……」

 

「足りない??なら……」

 

「い、いいえ!!?足ります!!!

……しかし海兵さんが、()()()……」

 

 

いまいるのは海軍に入る前にいた島。

そしてそこにいた奴隷の女性を買うために来ています。

 

 

 

「いけませんか。海兵が奴隷を買ってはいけないという法律があるのですか?あるのなら教えて下さい。どの文献に乗ってるんですかね??すみません、知識不足で。もっと頭が良ければ良かったんですけど、こんなのが海兵になってすみません。これでは市民の皆さんに顔向けできませんね。あぁ、僕はどうしたらいいのか……」

 

「だ、大丈夫です()()()()!!!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それは良かったです」

 

 

と話が分かってくれる店主で良かった。

もちろん奴隷を買うにはお金が必要だけど、何度か海賊船を沈める際にコッソリと懐に入れていた財宝をお金に買えて今回奴隷を買うことにした。

 

 

「ではお客様、こちらが商品となる奴隷です」

 

「あ、あなたは……」

 

「はい、確かに」

 

 

向こうもビックリしているようだ。

それはそうだろうなー海兵が奴隷を買うんだからなー

 

 

「それじゃ行こうか」

 

「……………」

 

 

返事がない。屍ではないけど返事がない。

まぁ、想い人が助けてくれると思っていたんだからなー

 

 

「大丈夫、君にとって悪いことはここまでだから」

 

「それはどういう……」

 

 

ひとまずあの天竜人が来ないだろう道を歩くことに。

いつ天竜人が来てこの子を買うにくるか分からなかったもんなー

もしかしたら今日来ていてバッタリ会ったら……うん、海の彼方まで吹き飛ばしそうだからね、うん、流石に海軍がやったらアウトだからね、うん。

 

裏路地を歩いていると足音が後方から近づいてくる。

おっ、もしかしたら来たかな?

 

 

「ステラッ!!!」

「テゾーロ!!!」

 

 

来たねーやっぱり愛の力だねー

結構分かりづらい裏路地に入ってきたんだけど良く分かったよねー

 

 

「お前がステラをッ!!!」

 

「はい、買いました」

 

「くっ、う、うおおおおおぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

えっ、な、なに!!なんで突っ込んできてるの!!?

 

 

「ちょっと話を……」

 

「ステラを渡せッ!!!」

 

 

ストレートで殴ってくるテゾーロだけど、これオックスさんより遅いから避けるのは問題ない。

だけどちょっと話を聞いてほしいだけどなー

 

 

「話を聞い……」

 

「ステラは、俺が買うはずだったんだ!!!」

 

「だから……」

 

「な、なのに……てめぇがッ!!!」

 

 

だめだ…頭に血が上って興奮し過ぎて話を聞いてない。

いや分かるけどね、大切な人がいなくなると分かったら必死になるのは分かるけどね。

 

でもね、少しぐらい話を聞こうよ。

 

 

「話を……」

 

「避けてないで戦えッ!!!」

 

「戦う理由が……」

 

「海軍のくせに……なんでステラなんだッ!!!??」

 

「あのね……」

 

「力ずくでもステラを、返してもらうぞッ!!!」

 

 

「まずは人の話を聞けぇ」

 

 

強引にテゾーロの頭を地面に叩きつけた。

 

 

…………………………

 

 

「つ、つまり、天竜人にステラが買われる前にあんたが買ったということか……」

 

「そうですけど何か文句でもありますか?えぇ??」

 

「す、すまなかった……」

 

「はい?」

 

「俺が悪かった許してくれッ!!!」

 

 

土下座をした。それはもう立派な。

まぁ、それぐらいすればいいかな。

 

 

「はい、許します」

 

「……いいのか?」

 

「元々ステラさんをテゾーロさんに渡そうと思っていたので」

 

「ど、どうして……」

 

「どうして私を……」

 

 

どうしてと言われても……

 

 

「いや、あんなlove空間見せられたらね」

 

「「ら、ラブッ!!??///」」

 

「毎日毎日、あんな所で見せられてもね……

正直いうと鬱陶しいので」

 

「「鬱陶しい!!!??」」

 

 

流石カップル。息ピッタリ。

 

 

「とにかく早くこの島から出るように。

天竜人に目を付けられると流石に僕でも……」

 

「そ、そうだよな…海軍だしな……」

 

「天竜人を地平線の彼方へ吹き飛ばしかねないので」

 

「…………そ、そうか……」

 

 

なんか、ヤバイのを見ているような表情でこっちを見てるけど何か変なこと言ったかな?

 

二人を港まで連れていき用意した小舟に乗せた。

まあ、ここまで天竜人には会わなかったから良かったけどこの先は二人で気をつけてね。

 

 

「本当にありがとうございます」

 

「いえいえ、二人仲良くしてくださいね」

 

「本当に、お世話になった」

 

「なら、その手は離さないように」

 

 

握った手を握り直し見つめ直している二人。

あぁーそのlove空間は二人の時にしてくださいね。

 

 

「さて、そろそろ出たほうがいいかもですね」

 

「??

どうして??」

 

「この服で奴隷を買ったのでそろそろ海軍が」

 

 

するの町の方からざわざわと騒ぎが酷くなっていく。

もう気づいたかー

 

 

「なんでその服で買ったんだよ!!!!」

 

「えっ、着替えるのが面倒くさかったからですけど」

 

「「ふざけるなッ!!!」」

 

 

えぇー助けたのに罵倒されるなんて。

 

 

「ほら、早く行った方がいいですよー」

 

「お前のせいだからなー!!!」

 

「はいはい」

 

「どうしようテゾーロ!この人全然反省してないよ!!」

 

「恩返しは10年後で、倍返しでいいですよー」

 

「それはお前がいうことじゃねえー!!!!」

 

 

文句を言いながらも小舟は港から出港した。

もう捕まるんじゃないぞー

 

 

「ありがとうハジメ!!!

確かにこの恩は返すッ!!!」

 

「ありがとうございました!!!」

 

 

大きく手を振る二人を見えなくなるまで見送った。

そしてそのあと僕の後ろには

 

 

「ハジメ参謀。この街で海兵が奴隷を買ったという話が」

 

「じゃ、探しますか」

 

「はっ!!」

 

 

それ僕なんだけどねーと思いながら見つからない犯人を探すことになった。

 

 

…………………………

 

 

「……不思議な人だったね」

 

「あぁ」

 

「本当に10倍ぐらいの恩返ししないとね」

 

「あぁ」

 

 

…………………………

 

 

「……ハジメ参謀……」

 

 

とある島。

そこの情報屋からハジメの情報を買ったロビンはその偉業に

 

 

「………流石、私のお兄ちゃん!!」

 

 

感動していた。

海軍が撮ったハジメの写真を切り抜き、ロビンが作成した「私のお兄ちゃん」というファイルに閉じた。

最近では海軍から出されるゴミの中からハジメが使ったものをあさり……始めようと考えている。

 

もうそこまでいったら……ヤバイ。

ヤバイけど止める人がいない……

 

 

「でも…そろそろ、お兄ちゃん成分が……」

 

 

いや、成分ってなに!!?

なんか体がブルブルと震えている…えっ、禁断症状なの!!?

 

 

「こう、なったら……いくしか…ない……」

 

 

………間違いなくヤバイことが起きる。



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ニコル

「あぁ~、とりあえずお前、明日休みな」

 

「休みですか?」

 

 

今日突然クザンさんから呼び出しがあった。

いつも逃げて書類整理を押し付けるあの人がマトモに大将の仕事をしている。雨降らないかな~と空を確認したけど快晴のようだったので、たまにこういうこともあるのだと感覚的に理解した。

 

で、大将の仕事をしているクザンさんの所に来たらこんなことを言われた。

 

 

「海軍に入ってまだ休み取ってないだろう」

「取れませんからね、あんたのせいで

 

「うっ、……いや、だから、休みを……」

「つまり、オックスさん辺りからキツく言われましたか」

 

「………取ってくれ」

「相当言われたんですね」

 

 

まぁ、自業自得だから可哀想なんて思わないけど確かに休みが欲しかったのは確かだ。

 

 

「それはもちろん休みはもらいますけど、何日ぐらいですか?」

「…………………一週間…………………」

 

 

なに、しぶしぶ言ってるんだこの人は?

 

 

「どんだけ嫌がってるんですか」

「だってトイレと風呂以外は誰かに監視されるんだぞ!!!!」

 

「だって、じゃないですよ。自業自得」

「だからってやりすぎだろう!!!」

 

 

ハァーとため息をついたあと

 

 

「はいはい、寝言は寝ていえ。ってかやる気ないなら寝かしますよ━━━━━永眠という名の寝かしつけを」

 

「こぇーよッ!!!

ってか、俺はお前の上司だぞ…って、おい、こら!!人の話を聞いていけ!!!!!」

 

 

 

上司と思われたいならまずその一週間を乗りきったら考えてやるよ。

 

 

…………………………

 

 

しかし一週間休みかー

もう少ししたら今度はボルサリーノさんの所だしちょっと早いけど、どんな様子か見に行ってみようかなー

 

そんな事を考えながら何気なく海兵達が多くいる食堂近くを通りかかった。そういえば最近新作のカレーが出来たって言ってたなー

 

ちょっとお腹も減ったので食べに行こうかとよってみるとある席に人が集まっていた。何かあったのかなーと近くによると「なんだ、あの子?」「見たことないなー」「でも可愛いよなー」とかなんか誰かを見るために集まっているようだけど……

 

まっ、気にせずにカレーだね。

食堂のおばちゃんに新作のカレーを頼んで、集まっている席から少し離れた場所でカレーを食べることにした。

 

 

「おっ、美味しい」

 

 

最近は書類整理でよくオックスさんがおにぎりやサンドイッチとかを持ってきてくれていたので、こうしてちゃんとした食事は取ってなかったな。

 

しかしあの人が集まっている所は減るどころかどんどん人が集まってくる。なんか可愛いってー言っていたみたいだけど女の子なのかなー

 

でも女海兵とかそんなに珍しいわけでもないし、むしろ海兵にいたら可愛いって概念はなくなるはずだもんなー。むしろ屈強というか下手したらそこら辺の男より強い。

 

 

「ごちそうさまでした」

 

 

食べ終わり食堂のおばちゃんに「ごちそうさまでした。」と言ったあと食堂から出ようとしたとき、なんとなくあの集まりが気になったので最後にもう一度と思い振りかえってみると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、君みたいな小さな子がどうして海軍に??」

「お兄ちゃんを探しにきました」

 

 

はい、即離脱ダッシュー!!!!!

すぐさま食堂から離脱して、能力で存在を消して、とりあえず海岸まで走り抜けた。そして海岸にあった物置小屋に入り小屋全体に一時停止をかけて隔離して一言。

 

 

「何しに来たんだ、あのストーカー(ニコ・ロビン)はッ!!?」

 

 

ここ何処だか知ってるのアイツはッ!!?

それもバレないように海兵服着てるし、髪はポニーテールで眼鏡かけているからパッと見じゃニコ・ロビンとはバレない。

だからといってバレないといっても、普通賞金首にかけられた、それもオハラの生き残りが海軍本部に潜入してくるかああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!??

 

はぁ、はぁ、と息を整えて冷静になろうと深呼吸をした。

 

 

「………よし、落ち着け。

とにかくロビンの目的を……はい、僕だよな。

くそ!!マジで僕に会いに来るためだけに敵本陣に潜入してくるか普通ッ!!?」

 

 

ダメだ、一切落ち着けない。

頭が痛くなり、もう考えたくないのが正直なところ。

……しかし、あのままにしておくのも無理だし。

かといって正面きって会いに行くと……立場的にもロビン的にも不味い。

 

…………仕方ない。非常に、本当に、不本意だけど………

 

 

………………………

 

 

 

「ハジメ参謀の妹ですか!!?」

 

「すみません、突然押し掛けてしまいまして……」

 

「それは構いませんが……」

 

 

あの後ロビンの元へ存在を消した状態で近づいて僕の私物をロビンに見せるようにそれだけを解除して、ちょっと離れたところからまるで釣りをするように餌を揺らした。

そしたらその瞬間に分かったようでそれ(ハンカチ)に飛び付こうとしてので、その餌を取られないように青雉の部下が集まる大部屋に向かって走りだした。

もちろんロビンは食い入れ、視界から離れても常に察知しているかのように追いかけてくる。

 

そして大部屋についてそれを手放したらそれを頬ずりする姿に……本当にドン引きしていたところにオックスさんが来たので説明していたところ。

 

ちなみにオックスさんに説明するために姿を現したらコンマ1秒もかからずに腕に飛び付いて「お兄ちゃん!!」と呼んできたロビンに対しては未だに無視してます。まずは状況を説明しないといけないので、ご迷惑を本当にーーーかけてしまうので。

 

 

「しかし言ってくださったら私が妹君を迎えにいきましたのに」

 

「僕にも内緒でいたようで……」

 

「そうでしたか。

よほどハジメ参謀がお好き…「大好きですッ!!!」……そ、そうですか……」

 

 

やめなさい。オックスさんが引いてるから。

しかしこうなると不味いな……後先考えずにここに連れてきたけど、さっきまでいた小屋にいけば良かったんじゃねぇ?

 

もういまさらだけど、はぁーとため息をつくと

 

 

「お兄ちゃん、ため息をつくと不幸が逃げていくよ?」

 

 

誰のせいですか?誰の?

 

 

「そうです、いまはクザン大将がいますので妹さんと一緒に挨拶に行かれたらどうですか?」

 

 

………………はい?

いや、何いってるのコイツ??

 

あのね、オックスさん。

オックスさんは知らないだろうけどこの子、このロビン(ストーカー)は海軍に世界政府に狙われてるの。

ロビンの中でバスターコールを引き起こし、その元凶であるクザンの所なんて行くわけが……

 

 

「挨拶に行こうお兄ちゃん」

(おい、マジかよ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら妹のニコ……ニコルです」

「ニコルです。どうぞよろしく」

 

「ニコ・ロビンだろうが!!!ふざけるなッ!!!」

 

 

早めにこの部屋に一時停止をかけて良かった。

 

 

「ニコルですよ、クザンさん」

「おい、押し通そうとするな」

 

「いつもお兄ちゃんがお世話になってます」

「おまえも押し通そうとするな。

そして俺はあんたの敵だ、分かってるのか?」

 

「迷惑かけないように休みを使って妹と旅行に行ってきますので、用件はでんでん虫に」

「いま現在進行形で迷惑かけているって気づかないの?」

 

「私はお兄ちゃんと一緒ならどこまでも付いていきます」

「なにそれ、ハジメのためなら海軍でも世界政府でも関係ないっていう、宣戦布告的なやつなの?」

 

 

もう頭が痛いらしく頭痛薬を飲んだり袋に入った氷水を額に当てたりなどしている。ってか、能力で冷やしたら良くねぇ?

 

 

「………言っておくけどねぇ、目の前に標的(ニコ・ロビン)がいて…見逃すほど………甘くないよ……」

 

 

立ち上がるクザンさん。

その体からは冷気が流れ落ち本気でロビンを捕まえようとしているようだ。でも

 

 

「ここにいるのは僕の妹のニコルです」

「そんな戯れ言、聞いちゃいねぇ」

 

 

伸びる手。

怯えるロビンは動けずにいる。

まぁ、あんな勢力を見せられてトラウマにならないわけがない。

 

でも、本当によく海軍本部にきたなー

 

と、考えながら僕はクザンさんの手を掴みロビンへの攻撃を止めた。

 

 

「妹に手を出さないでください」

「おいおい……それは反逆と見ていいんだな?」

 

「妹を守るのに反逆もありません」

「そうかい、ならおめぇ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凍りつきな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ白に凍りつき生きているかも分からない。

その凍りついた氷像はもう口も開かない。

 

 

「お、お兄ちゃん……」

 

 

心配をするロビン。

守るためだとはいえこんな結末になるなんて………

 

 

「いやー氷漬けは勘弁ですよ」

「な、何をしたのお兄ちゃん……」

 

 

ロビンの言葉に返事したのはハジメだった。

そして凍りついたのは、氷像になったのはクザン。

どうしてハジメが凍りつくはずなのに、その能力を持ったクザンが凍りつくのか?

 

 

「クザンさんの周りの分子を停止させて氷点下にしたんだ。なので言わばこれはクザンさんの能力の真似事みたいなやつかな」

 

「さ、流石お兄ちゃんです!!」

 

 

そんなチートありかよ!?って誰かツッコミを入れたいだろうがここにはツッコミ役はいない。

というか一時停止で止めればよくねぇ?と思った人、考えたら負けですよ。

 

 

「……ったく、まさか俺が凍らさせられるなんてな……」

 

 

すると氷が砕けちりその氷像の中からクザンが現れた。

それはそうだろう。いくら凍りつかせてもその能力を持ったクザンに効くはずがない。

 

 

「どういうことだ、ハジメ参謀」

「これは僕の()()()()()を見せて起きたかったので

僕はいつでもロビンを氷付けできますよ。

もし、クザンさんが思う脅威になったときは……」

 

「それをハジメが出来るって証拠はあるのかい?」

「ありませんね。ただ僕の言葉を信じてもらうしかありません」

 

 

にらみ合い二人。

それこそこの部屋が氷点下まで落ちて凍りつくほど雰囲気が悪い。

そんな中、クザンがはぁーとため息をついて

 

 

「……あぁーもうー!!俺の負けだ」

「あれ、勝ち負けあったんですね」

 

「茶化すな。ったく、元々捕らえるつもりはなかったし脅しぐらいだったのによ……

……まさか、ハジメの力をさらに思い知ることになるなんてな……あぁ、面倒くせえ………」

 

 

頭をガシガシとかきながらロビンに近づき手を伸ばす。

今度はその手を僕は止めることはせず見守ってみると

 

 

「ハジメについていけば、間違わねぇだろう……

……ただ、ここには来るな……」

「嫌です」

 

「嫌じゃねえ!!!

お前は自分がどんな立場か分かってるのか!!!?」

「立場よりお兄ちゃんです!!!!」

 

 

 

 

「ハジメッ!!!ニコ・ロビンに何を吹き込んだらこんな風になるんだああああああああああああぁぁぁぁぁ」

 

 

 

 

 

いや、それ、僕が一番知りたいです。本当に。



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━幕間━ 三大将の思惑

「クザン大将、こちらが追加の書類です」

「ちょっ、待ってて。まだ終わってないんだけど……」

 

「なら早く終わらせてください。ちなみにハジメ参謀ならとっくに書類は終わらせてましたよ」

「なんなのハジメって!!?」

 

「貴方の甥っ子ですよね。そして貴方より優秀です。」

「そんなに強調しなくて良くないッ!!?」

 

 

俺はクザン、大将だ。ここ大事な。

誰かに話しかけている訳ではないが、こんな風に自分が溜めているものを言わないとやってられない。

 

前はな、まだのんびり出来たわけよ。

定期的に抜け出してのんびりして仕事をする。これが俺にとってベストだったのに……

 

 

「いえ、言わせてもらいます。

知ってますか?サカズキ大将を吹き飛ばさなければサカズキ大将もボルサリーノ大将もハジメ参謀を引き抜いたいと強く言っていたそうなんですよ」

 

「おいおい、マジかよ……」

 

 

「ですが、あんないきなり大将に喧嘩を売る輩は手元に置きたくないとお二人から取り下げがありましたので結果的にクザン大将の元に置かれる話になっているのです」

 

「おいちょっと、それ俺は知らねぇぞ」

 

 

「それはそうでしょう。

クザン大将を抜いた上層部の話し合い「ハジメ参謀取り扱い会議」があったのですから」

 

「なんだよそれは!!?」

 

 

知らないウチにハジメについての会議だと!!?

 

 

「側に置きたくなくてもその力はスゴいものがありますから。()()()()()()()()()()()()()()、そしてクザン大将よりも断然書類整理がうまい」

 

「………大将って書類整理がうまければなれるものなの?」

 

 

「なので直接関わらずにうまくハジメ参謀に仕事の依頼をするか、うまくクザン大将を真面目人間に変えるようにするか」

 

「おい、それもうハジメ会議ではなく俺なんじゃ……」

 

 

「ですので一番合理的なのはハジメ参謀をクザン大将の元に置いて、クザン大将が真面目に書類整理をしてハジメ参謀がより良く海軍のためになってくれることです」

 

「……全く俺のことは含まれないのね……」

 

 

 

もう一度言っておくけど俺、大将だからな。

なのにハジメが来てから全くその威厳がなくなった気がする……あの二人(赤犬、黄猿)にもハブられるし。

 

一応ハジメは俺の甥っ子にしてるけど、(イコール)俺も関わらないってのはおかしいからな。

 

それでもそれだけされてもハジメはそれ以上の価値はある。

なにせあのニコ・ロビンを手なずけた。いや、信教のようにハジメに依存している。

それは良くも悪くもハジメ一人でロビンを抑えることが出来る。現にいまはハジメと一緒に旅行に出掛けている。

 

さらに話を聞けば進んで歴史を紐解くことはしていないらしい。それは正直信用してないがあの姿を見せられたらそれどころではないだろうな。ハジメを追いかけるためだけに海軍に乗り込むぐらいだ。

 

もちろんそれだけじゃない。

非能力者で赤犬を吹き飛ばす力。

もちろん能力と疑い手錠の掛け方といって海楼石の手錠をかけた。しかしハジメは平然としていた。

 

非能力者でも強いやつはいる。覇気使いがそうだ。

ハジメは覇気を使うのが上手く、やはりシルバーズ・レイリーの影響がデカいのだろう。

 

だから尚更ハジメを海軍から追い出すわけにはいかない。

あんなのが海賊にでもなったら……考えただけでも疲れるよ。

 

 

「何を考えているか知りませんがさっさと書類を終わらせろ」

「お前、マジでふざけんなよ!!!!」

 

 

しかしこの大将を大将とみてないこの雰囲気を作ったハジメについてはマジで怒りを覚える。(完全に八つ当たり)

 

 

 

 

………………………………

 

 

 

「えっ、いまハジメいないの。そいつは困ったね~」

 

「なにか緊急のご用心が??」

 

 

「いやね、この前の昆布茶が旨かったからもう一度お茶に誘ってもらおうかと思ってたんだけどね~」

 

「……意外です。毛嫌いしていたと思っていたのですが……」

 

「別に元々毛嫌いなんてしてないよ~

ただ警戒はしてるけどね~」

 

 

 

「はぁ……」とあまり納得していない海兵。

まぁ、そう簡単にハジメを受け入れるなんて難しいよね~

むしろそれぐらいがいい。完全に信用するなんて無理な話だ。クザンのように「見知らぬ者(ハジメ)を甥っ子としてまで」海軍にいれるなんてね~全く何を考えてるのやら。

 

 

「そんなことをいうことは君はハジメが嫌いなパターンなのかな?」

 

「………嫌いと言いますか、気に入りません」

 

 

「ほう、それは?」

 

「ハッキリ言えば突然現れた奴に大将と同じぐらいの階級を与えられたことです」

 

 

「本当にハッキリいうね~」

 

「取り繕っても意味はありませんので。

それにそれは私だけではなく大半の海兵がそう思ってます」

 

 

それは知っていた。

いくら赤犬を吹き飛ばそうとも、元帥が参謀という階級を与えようと嫌なものは嫌だろう。

 

 

「ならストライキでも起こすかい?」

 

「ご冗談を。私は、私達は気に入りらないだけです。

これまでの成果を見れば分かります。参謀と呼ばれるだけの確かなものを持っている、それは分かっているつもりですので」

 

 

そう、それだけの実力はある。

赤犬を吹き飛ばすのはまぐれではない。まぐれで飛ばされるなら大将なんて勤まらない。

そしてあの青雉の書類整理を一手に引き受けても本人よりも早く終わらせる。

 

もちろんそれだけで大将と同じ階級を渡されるわけがない。

 

 

「そうだね~

一人で億越えの海賊を捕まえてきたそうだし、一般人からの評価もいい」

 

「その分大将赤犬からは相当な怒りをかっているそうです」

 

 

「だろうね~赤犬とは真反対の行動してるからね~」

 

 

そんな話をしていると電伝虫が鳴り響き受話器を取ると、丁度噂をしていたハジメからの電話だった。

 

 

『もしもし、ボルサリーノさん?』

 

「おぉ、ハジメか。

いけないね~こんな直通回線を使うなんて」

 

 

『すみません。お土産のお茶菓子は何がいいかと思って電話しましたが、こちらで勝手に決め』

「何があるんだい。センゴクさんがお煎餅ばかり渡すからもっと水気のあるものをね~」

 

 

「…………大丈夫なのだろうか海軍は…………」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「何を考えとんのじゃお前はッ!!!!」

 

 

部屋の外まで聞こえる怒涛。

大将赤犬は完全にぶちギレていた。

 

 

『ですからお土産は何がいいかと』

「直通回線で何を口走っとるのかといっておるんじゃ!!!!!」

 

『だってお土産の選択間違えたら能力で殺しにかかってるんじゃないですか?なので直接お話したほうがいいかと』

「そんなふざけたことでかけてくるなといっておるんじゃ!!!!!!」

 

『ふざけてません、真面目です』

「おんどれは……消し炭にするぞおおおおぉぉ!!!!」

 

 

すでに自身の机が燃え上がっているのだが怒りのせいで目に見えていない。

 

 

『短気は損ですよ。

ちょっとお土産の好みを言ってくれるだけでいいんですよ。なんでそんなに怒るんですか?クザンさんもボルサリーノさんも親切に教えてくれましたよ』

「あのバカどもはああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

ついに天井も燃えはじめて部屋の外から海兵達が雪崩れ込み消火作業に当たっている。

 

 

『あっ、なんか騒がしくなってきましたね。

また能力で部屋を燃やしてるんですか?駄目ですよ、いくら大将だからといってやりたい放題は。そのうちにセンゴクさんから降格されるかもですよ』

「お、の、れ、は………」

 

『仕方ありませんね。

サカズキさんが好きそうな物を複数買ってきます。

余ったものは海兵の皆さんで分けあって……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「買うならみたらし団子にせんかああああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

(((ええっ!!?そこは答えるのッ!!!??)))

 

 

電伝虫の受話器を壊して叩きつけるサカズキはそのまま勢いよく椅子に座る。

その様子はタダをこねた子供が必死に親に抵抗するが最後は欲望にまけて自分の要望をいい、しかしその行動がさらに腹が立ち結局自分自信で苛立ちを募らせることになった。みたいな展開だった。

 

 

 

…………………………

 

 

 

『ということであとはセンゴクさんだけです』

「……頼むからこれ以上、胃を痛めることをしてくれるな………変わった煎餅で頼む……」

 

 

ありふれた日常であった。



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八咫烏

「悪魔の実の情報かい?」

 

「はい、個人的なものですので後回しにしても構わないですけどよければこちらに回してくれませんか?」

 

 

一週間の旅行から帰って来たハジメの目の前には死体があった。いや、死にかけているグザンの姿があった。

書類整理ごときで死にかけているグザンにお土産を渡して、あとボルサリーノとサカズキにもお土産を渡した。その際にサカズキから攻撃されたがささっと逃げた。

あとセンゴクさんにお土産を渡していつものグザンの部屋に戻ってみるとすでにグザンの姿はなく、置き手紙にあとは任せたと書かれていたのですぐにグザンを捕まえる部隊「雉狩り」を出動させたところでオックスが部屋に入ってきたので早速相談をしているところだ。

 

 

「それは一向に構わないけど……どうしてなのかな?」

 

「どうしても手にしたい悪魔の実がありまして、別に僕が食べるわけではないですけど」

 

 

「食べるわけでもないのに悪魔の実が欲しいと?」

 

「そうですね。僕にとっての()()()()()()()()()()()()に投資したいと思いまして」

 

 

多くを語るわけにはいかない。

その悪魔の実はハジメにとって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に集めるのだから。

本当はもっと早くに集めるべきだったのだが、まずは海軍に信頼してもらわないいけないため時間がかかった。

 

いまの段階でもオックスにこんな無茶なことを言って信用されるか微妙ではあるが

 

 

「そうですか、分かりました。

すぐに情報を集めてきますね」

 

「いいんですか?こんな個人的なものを」

 

 

「未来のためなんて…あのくそ上司に比べたら全うなご命令。喜んでお受けします」

 

「いや、命令とかじゃなくて……」

 

 

「安心してください。私達「八咫烏(ヤタガラス)」はハジメ参謀の手足となって働きますので!」

 

 

では失礼します!となんか一週間いなかっただけでなんか変な組織が作られている……オックスも性格が変わっている……

 

何があればあんな風に変わるのかと思い次に入ってきた海兵に聞こうと待っていると

 

 

「お兄ちゃん、この資料なんだけど」

「な・ん・で!!いるのかなッ!!!!!」

 

 

一週間の旅行も終わりここにいるはずのないロビンを親であるオルビアさんの所に連れていった。

その際も「お願いしますから()()してください」と念をおしたのに……

 

 

「?? お兄ちゃんがいるところに妹ありだよ」

 

「………もう、性格が変わりすぎて……未来が怖い……」

 

 

こんな異常なストーカーになってしまい……なにが悪かったのか…過去に帰れるなら帰りたい。

 

 

「さっき「八咫烏」の人達が出ていったみたいだけど、早速仕事してくれてるんだね」

 

「………ちょっとロビンさん、その含みのある言い方はなに?えっ、もしかしてオックスさんの性格変えたのって………」

 

 

「?? 性格変えたか知らないけどお兄ちゃんがお土産を渡している間にオックスさんたちにお兄ちゃんの素晴らしさを話しただけだけど?

そしたら「一生一生涯ハジメ参謀についていくぞー!!!」

「俺達八咫烏は独立部隊だぁー!!!」って部屋を出ていったから残された資料を持ってきたんだけど」

 

「………それだ………」

 

 

いや、もう頭が痛い……

急激な変化についていけない……

つまり、お土産を渡しにいった僅かな時間、約30分の間にロビンがオックスさん達を洗脳して勝手に八咫烏なんて部隊を作ったと…………

 

 

「何してくれてるんだよ、ロビン……」

 

「?? だってお兄ちゃんの素晴らしさが分からないと仕事しづらいと思って……」

 

 

さっきから?? の度に首を傾げる姿は可愛いけど、そんな言葉も絶対に言いたくないほど頭が痛い……

 

 

「大丈夫だよお兄ちゃん。もしもの時は私がヤるから」

 

「そうだねーロビンはさっさと帰りなさい」

 

 

…………………………

 

 

そのあとストーカーには自分の衣服が効くと思い海兵服を渡して帰ってもらった。

………えぇ、わかってますよ。そんなことしたらストーカーが図にのるってことは。でもこのまま海軍本部に入らせるわけにもいかなったのだ。仕方ない…仕方ないのだ。

 

と自分に言い聞かせながら海軍本部にある図書館から借りてきた「悪魔の実図鑑」を開いた。

 

ハジメが欲しい悪魔の実は3つ。

その実は恐らくまだアイツらは手にしていないはず。

それを先に手に入れる必要があった。

そしてその悪魔の実を食べてもらう人もまた探している。

 

しかし何処にいるかは分からない。

ONE PIECEの知識で時系列を組み見直したがやはりどこで()()()()のかは書かれていない。

それでも()()()()が関係しているのは分かっているのでありとあらゆる人攫い屋の情報をこちらに回してもらっている。もちろんこれは参謀としての権限です。

 

この行動で大きくONE PIECE本編を変えるとどうなるか分からないけど……きっとロビンよりマシだと信じている。

 

そしてこの悪魔の実図鑑で調べておきたかったことがあった。それは僕が食べた「トメトメの実」について。

自分が使ってみて分かった情報と図鑑に乗っていている情報がどこまであっているか、そして知らないことはないのか調べておきたかった。

 

しかしそれは無意味に終わった。

そうこの図鑑には「トメトメの実」は書かれていなかった。

まぁ、オリジナルではあるけどこの世界にきた時点でそこら辺も変わったと思ったけど違ったようだ。

 

 

…………………………

 

 

八咫烏のお陰で悪魔の実は見つかった。

しかしその実は海賊が保管しておりそれもその保管先がかなり厄介であった。

 

 

「………いま、なんて言いました?」

 

「はい、探していた実は『白ひげ海賊団』が持っているようです」

 

 

なんでそうーなるの!!?

そんなの原作にはありませんでしたけど!!

やっぱり色々と本編と違って弄くっているからちょっとした内容も変わってきているようだ。

 

だけどよりによって白ひげ海賊団はないわー

 

 

「潜入しましょうか?」

 

「ちょっと落ち着いてオックスさん。

洗脳されたからってもういろいろ性格変わりすぎです。

お願いだから温厚で優しかったオックスさんに戻って」

 

 

「何をいってるんですか参謀。

私はいつも通りです。いつも通りに参謀のためにこの命をかけて働かせてもらいます」

 

「うん、変わってるね」

 

 

話が通じない。

かといってまたロビンを呼んで洗脳を解いてもらう……ことはできないか。一層酷くなりそう……

 

 

「………分かりました。

偶然を装って会いにいきましょう」

 

「分かりましたすぐに手配を」

 

「ちょっとまったッ!!!!」

 

 

すると二人の行動を止める者が1人。

 

 

「どうされましたかグザンさん?」

 

「さっきから何を話してるの?悪魔の実ってなに?

それ以上に今から白ひげ海賊団に会いに行く?」

 

「はい、そうですけど」

 

 

「そうですけど、じゃねえ!!なに考えてるんだ!!!!

大体オックス、てめえはハジメを止める側だろうが!!

なんで思いっきり支援に回ってやがる!!!!!」

 

「参謀は神です」

 

「なに信仰してるんだよ、おい。

マジで待て、おい、ハジメ。流石にそいつは見逃さねぇぞ」

 

 

真剣な目で、いや、殺す勢いで睨むグザン。

しかしそんなことは気にせずいつも通りに

 

 

「書類整理しながら言われても説得力ないですね」

 

「うるせぇぇぇええぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

それは確かに説得力なし。

 

 

「分かりました。ちゃんとセンゴクさんに一言言ってきますので。そうですねー任務内容は白ひげ海賊団の現在の危険度を把握するってところで」

 

「マジで待て!!

いまのセンゴクさんはストレスで判断力が弱いから待って!!!!!」

 

 

「いや、そのストレスの原因が何を言ってるんですか?」

 

「もうブーメランがスゴいッ!!!!」



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白ひげ海賊団

「ほぅ、おめぇがあの参謀絶黒(ぜっこく)のハジメか」

 

 

作戦も糞もなかった。

センゴクさんにお話しをしたらまるで脱け殻のように「……勝手にしろ……」としか言わなかった。本当に海軍大丈夫かなーと心配しながら白ひげ海賊団に向かうことに。

 

しかしどうやったら海軍が海賊の元へ偶然を装っていけるのか?もう向かっただけで敵対するのに偶然を装っただけで最低でも話し合うことが出来る条件を生み出さないといけない。

 

あのときはオックスさんの変わりぶりに混乱してて頭がよく回らなかったけど、これ結構無謀じゃねえ?と気づいたときにはもう地平線の向こうに船が見えていた。ということは向こうも気づいている。

 

流石に四皇だからか海軍を見ても逃げるようなことはしてないけど、間違いなく警戒をしているだろうなーと思い仕方なく僕1人で白ひげ海賊団のところに向かうことにした。

 

もちろん能力で存在を停止させても良かったけど流石にそれは失礼だと思いしなかったが、こうして体に海楼石のチェーンでぐるぐる巻きにされて周りには隊長クラスの人達が囲まれ目の前には白ひげ海賊団船長が鎮座していることを考えたらもう少し考えたほうが良かったと思う。

 

 

「で、何しにきた。まさか俺達と一戦交えるつもりじゃねぇだろうな」

 

 

するとさらに強い殺気で威嚇してくる。

まだ何も言ってない、やってないのに……

 

 

「敵対心はありません。そもそも僕1人でどうにか出来る相手ではないということはハッキリと自覚してますので」

 

「ならなんでここに来たんだよい」

 

 

あっ、マルコさんだ。

実物通りにパイナップルみたいな頭だなーなんて口に出したら死ぬな。死なないけど。

 

 

「こちらに僕の欲しい悪魔の実があると情報が入ったのでお譲り頂けないかと」

 

「海軍が海賊に物を渡せと?

そいつは無理な相談だって分かっているよな」

 

「まぁ、普通は無理ですよね」

 

「あぁ、無理だよい」

 

 

やっぱりそうだよなー無理だよなー

 

 

「分かりました。帰りますのでこれほどいてくれませんか」

 

「…………はい?」

 

「ですから帰りますのでほどいてください」

 

「いやいや、悪魔の実を手に入れたくてここに来たんじゃなかったのか。それを渡さないと言っただけで帰るのか?」

 

「帰りますよ。別に強奪するわけでもないですし、話し合って貰えるならそちらのほうがいいですので」

 

 

すると誰もが呆れ顔でこちらを見ている。

いや、白ひげ海賊団に喧嘩なんて売れるわけがない。

これ以上の面倒事はいらないので。

 

 

「グッララララララララッ!!!!!

おもしれぇひよっこだなー。よし、いっちょ飲んでけぇ!!」

 

「お、オヤジッ!!!!??」

 

「いいんですか?

なら向こうで待機している海兵も呼んでもいいですか?」

 

「ッ!!!??

やはりやる気じゃ」

「黙ってろアホンダラッ!!!!

俺がいいって言ってるんだ、いいな?」

 

 

おお、覇気も出してないのに一瞬で黙らせた。

流石海賊王に最も近い男だなー

 

ということで一先ず解放された僕は海軍船に戻り事情を話した。そして

 

 

「おおっ!!!いい飲みっぷりじゃねぇか!!!!」

「お酒は強い方ですので」

 

「へぇ、海軍でも異色だと思っていたがまさかここまでとは思ってなかったよ」

「もちろんです。ハジメ参謀は神ですから」

 

「神ときたかぁ!!!おい、小僧!!俺と海賊しねえか?」

「やるにしても僕が望んでいる海賊はここではないので遠慮させてもらいますね」

 

「グラッグラッグラッ!!!!!

この白ひげの勧誘を断るなんざよほどいい海賊なんだろうな!!」

「それはもちろん。でも僕海軍なんでそういう勧誘はやめたほうが良くないですか?周りの目もありますし」

 

「周りがどうした!!息子にしたい人間がいたから誘った。海賊だろうが海軍だろうか知ったことかぁ!!!!」

 

 

…………………………

 

 

結局朝まで飲みあかし白ひげ海賊団は白ひげと見張り以外全員が寝てしまった。海軍といえばハジメ以外が全員寝てしまっている。

 

 

「………ったくだらしねぇな」

 

「あれだけ騒いで飲んだら寝ますよ」

 

「……で、結局の所どうなんだ?」

 

「?? 何がですか??」

 

 

本気で何も分かっていないハジメに特に態度を変えるわけでもなく酒をあおりこう呟く。

 

 

「悪魔の実。欲しかったんじゃねぇのか?」

 

「欲しかったですよ。でも最悪なところに出回るわけでもないのでいいかなーと思いまして」

 

「最悪……世界貴族か?」

 

「よく分かりましたね」

 

「何年生きてると思ってやがる。

そうか…小僧もアイツらに喧嘩を売るクチか」

 

「売っていいなら売りますけどね。いまの立場、いや立場がなくても関わりたくないというのが本音ですね。ですのでそうならないために色々動いてるんです」

 

 

そういってハジメも酒を飲む。

 

 

「おい、小僧。

小僧が欲しがっている悪魔の実、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

それと同じもの。

つまりは物々交換、いや情報でもいいのだろう。

それだけの価値がなければ取引しないということ。

しかし白ひげにとってはそんな取引をしなくてもいいのだ。

つまりそれをするだけの価値をハジメに見いだした、もしくは見定めているのか。

 

 

「じゃ、白ひげさんがピンチの時に一度だけ助けますよ。

あっ、でもそれでも足りないですよね。なら白ひげ海賊団がピンチな時に助けます。どうですか?」

 

 

その嘘もつけないような瞳で白ひげをマジマジと見ながら話すハジメに、白ひげも思わず引き込まれそうになったが次の瞬間

 

 

「グッララララララララ!!!!

ピンチな時に助けるだぁ!!?舐めてるのか小僧ッ!!!!!!」

 

 

圧倒的な覇気。そして殺気。

並みの者なら簡単に気絶してしまうほどの威圧がハジメを襲う。しかしそんな中でも

 

 

「舐めてませんよ。ただですね()()()()()()()()()()()()()いつかは言えませんが白ひげ海賊団の元に最悪の物が手に入ります。なので手放して欲しいですが、もしそれが分からず仕舞いの時の忠告です。それが手に入ったら絶対に目を離さないこと。そして奪われた場合はそれを追わないことです」

 

「……何を言ってやがる。意味がわからねぇぞ」

 

「聞き流してもいいですよ。これは白ひげ海賊団のことですので。ただし王と繋がりの深い者がソイツを追いかけるような事があればすぐに連絡ください。出来れば引き留めてくれたら幸いなんですが」

 

 

 

確かに言っていることが抽象的ではないにしろ、直接言うわけにもいかないのではぐらかしながら話したので訳が分からないだろう。

だからヒントとして受け止めて貰いたい。

これを()()()()何処かで聞いてしまったら警戒するだろう。これぐらいの訳が分からないぐらいにしておかないと危ない気がする。この情報で下手したらより多くの人が亡くなる可能性もある。

だから白ひげだけに、それも漏洩しても気づかれないように分かりづらい言葉で伝えた。

 

 

「まったく意味が分からねぇ……だが、そいつはこの白ひげ海賊団に大きく関わりがあるんだな?」

 

「ありますね。とくに白ひげさんとさっきお伝えした人が」

 

 

そして深く瞑想に入った白ひげを待っていると、突然クワッと目を開いて

 

 

「おい、マルコ。悪魔の実を小僧に渡せ」

 

「いいんですか、オヤジ?」

 

 

どうやら狸寝入りしていたようだ。

まぁ、うちのオックスさんもさっきから聞き耳たてているようですからいいんですけど

 

 

「その情報はどう考えても絵空事としか思えねぇ。

だがそこまで言って尚も小僧は俺達を助けてくれるとほざきやがる。

………どうだマルコ。一丁賭けてみねえか?」

 

「まぁ外れても悪魔の実を無くすだけ。

当たればこの海賊団の危機から脱出ですか……

……まぁ、なら安いもんかもしれないよい」

 

「なら決まりだ。

小僧さっきの言葉に嘘偽りないだろうな」

 

「ありませんよ」

 

 

あるわけがない。

これであの未来から助けれるなら僕は喜んで白ひげ海賊団に手をかす。それが海軍を裏切る形になっても。

 

 

「ところでどうして僕がその「絶黒」って呼ばれてるんでしょうか」

 

「知らねぇのかよい。

海軍でおめぇが大将達と模擬練習してるとき全身武装色硬化して戦ったらしいじゃねえか。それと悪どいやり口で周りをまとめる所から「絶対に逆らうな。真っ黒黒の助が襲ってくるぞ」という名前からとったそうだぜ」

 

 

「そいつの名前知ってますか。ちょっと殺してきますので」



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蛇三人娘①

結局「絶黒」というふざけたネームを付けたやつは分からなかった。でも見つけたら速攻で海に沈めてやる。

 

ということでそれから三年の月日が流れた。

えっ、早すぎる。その間何していたか?

 

取り上げるとしたらロビンがちょくちょく海軍に忍び込んでどんどん地位を上げてきたりして今では大佐まで上り詰めている。あの子一体何をしているのか?自分が手配書に乗っていて世界政府から狙われていることを忘れているのではないのか?まぁ、そんなことを言ってもロビンは全く耳をかさずに「お兄ちゃんの為だから」と一点張り。それを見ているというか指示している八咫烏はさらにロビン基「白花」大佐ニコルの支持者「月兎」なんていうのを作り出していた。

 

…………もう、頭いたいのでここは取り上げスルーしましょう。

 

次に3大将の僕に対する態度が変わってきてグザンさんは完全に僕のツッコミ係、ボルサリーノさんは能天気な性格からボケてくるようになり、サカズキさんに至ってはボケスルーかと思わせての強めのツッコミという高度な技術を手にしました。

センゴクさんからは「…トップが…漫才……」と呟いて嘆いていたようですが、事実上海軍としての機能は数段に上がっているので文句のいいようがないそうです。

 

 

そして今日やっと待ち望んでいた進展があった。

 

 

「お兄ちゃん見つけたよ、ボア・ハンコックの所在が」

 

「本当かぁ!!?

そしてお前はもう帰れ」

 

 

「いや!!お兄ちゃんに寄り付く虫なら排除しないといけないから!!!」

 

「あのなニコル…ハンコックはそういうのじゃなくて……」

 

 

「お兄ちゃんにその気がなくてもお兄ちゃんは魅力的だからすぐにイチコロにするの。だから私が見張ってないといけないの!!!」

 

 

最近女性に話しかけるだけでロビンがその女性に威嚇してくるようになった。まだ威嚇だけならいいのだが親しげにしていたと思われた女海兵がいつの間にか関節技を決められて全治二週間の怪我を負った。

……はい、ロビンの仕業です。

それも誰にも見えないスピードと死角をついた技を作り出したようでこれ本編よりも強くなってます。特に何もアドバイスもしてないのに勝手に強くなっていく。もしかしたらルフィに会う前に能力が「覚醒」するじゃないかという勢いです。

 

 

「分かった分かった。

でもそんな敵意むき出しにされるとハンコックが警戒するから大人しくしてなさい。それが出来たら添い寝してあげるから」

 

「ほ、本当ですかッ!!!?

お、お、お兄ちゃんとそ、添い寝ッ……エヘヘ……」

 

 

 

………これ、このまま成長してもちゃんとあの「ニコ・ロビン」になるよね?冷静で頼れるお姉さんになるよね?

 

 

…………………………

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

「あ、姉様……」

 

「に、逃げ切れないよ……」

 

 

何気ない普通の生活を、いつも通りに三人で街を歩いていただけだった。なのに突然男共が襲いかかってきた。

どうやら人拐いという連中らしく何とかその場を逃げ出したがまだ私達を追ってくる。

 

 

「……二人とも妾が囮になる。その間に逃げよ」

 

「ッ!!?ダメよ姉様!!!!」

 

「そうよ!!捕まるなら三人一緒に!!!」

 

 

「そんなことを言っている場合かッ!!

このままだと三人とも本当に捕まってしまう!!そうなっては意味がないではないか!!」

 

「私達の意味は姉様の隣にいることよ!!!」

 

「だから私達は姉様を置いてはいけない!!!」

 

 

その言葉にハンコックは言葉を無くした。

真剣な眼差しと心の奥からの言葉にどう言えば、いやこれ以上言葉をいうことが出来なかった。

 

 

「……ならば、せめて一矢を報いてやるぞ」

 

「「はいッ!!!!」」

 

 

近くにあった棒切れを手にして近づく足音に注意しながら、近づく影からその者が見えた瞬間に三人が同時に襲いかかった。

 

 

「グハッ!!」

 

「この、ガキどもがッ!!!!」

 

 

一人を不意打ちでノックダウンさせられたがもう一人がナイフを取り出して近づいてくる。

 

 

「無傷で捕らえるつもりだったが……()()()()()()()()()()()問題ないだろう」

 

「…クッ……」

 

「姉様……」

 

 

人数では優勢でもそのナイフと男という象徴がハンコック達に恐怖を与えて体が思考がマトモに働かない。

それでも棒切れを手に一歩踏み出したハンコックは相当の勇気をふりだしたと言っていいだろう。

 

 

「おっ、やるか?言っておくけどなそこで伸びてるやつよりも俺は強いぞ」

 

「ち、近づくではない……」

 

 

「ビビってるのか!!?謝れば許してもやってもいいが……ワリィがいまは虫の居所が悪くてな…そのどちらかは切り刻むだけで許してやるよ」

 

「「ヒッ!!!」」

 

「二人に構うでないッ!!!!」

 

 

「ウルセェガキだな。とりあえずテメェは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地獄でもみてな」

 

 

ゆっくりと時間が過ぎていく感覚になっていた。

体がいうことをきかずに襲いかかってくる男に対して何も出来ない。後ろの二人は何かを叫んでいるようだが何を言っているか分からなかった。

 

そして男が持っているナイフがゆっくりとこの体に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、そこまでですよ」

 

「なっ!!!?」

 

 

何が起きたか分からなかった。

突然現れた海兵が自分に突き刺さるはずだったナイフを右手のひらで止めたのだった。

 

普通なら突き刺さるはずのナイフはまるで鉄板に当たり突き刺さらないように止まっている。

 

 

「なんだテ、ガグハッ!!!!」

 

「私のお兄ちゃんに何してくれているんですか?死にますか?」

 

 

今度は男の体が、関節が勝手に曲がってはいけない方向に曲がった。そのあまりの痛さに男は泡を吹いて気絶した。

 

 

「やりすぎだよニコル」

 

「だってお兄ちゃんが……」

 

 

「壁にめり込ませるぐらいで良かったんだから」

 

 

いや、それも十分やり過ぎだと思ったがそんなことよりも助かったという安心感でその場に座り込んでしまった。

 

 

「あ、姉様ッ!!!」

 

「だ、大丈夫じゃ…二人とも怪我はないな」

 

 

しがみつき泣き出す二人を宥めていると男二人を拘束した海兵がこちらに近づいてきて

 

 

「無事みたいですね、すみませんもう少し早ければ怖い思いをしなくて良かったんですか……」

 

「く、来るなッ!!!」

 

 

その言葉に動けなくなったハジメ。ハンコックはすぐさま二人に元へいき固まり警戒をしている。

 

 

「……悪いとは思っとる…しかし体が、心がいうことを聞かないのじゃ……」

 

「いや、あのあとじゃ仕方ないよ。

だからニコル、敵意を剥き出さないの」

 

 

ハジメに対してのハンコックの態度が気にくわなかったのだろう。両手をクロスさせて能力を発動させようとしていた。いや、正確には発動しておりハンコック達の周囲にはいつの間にか関節技を決めるために腕が生えていた。

 

 

「「い、いつの間に!?」」

 

「な、なんじゃ、お主は……」

 

 

「お兄ちゃんが許すから許すけど、お兄ちゃんに対して少しでも不快なことをするなら……」

 

「だから止めなさい」

 

 

やっぱりこの二人を引き合わせたのは失敗だったかな?



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蛇三人娘②

とにかくあの場所に長くいるのは不味いと思い、いま泊まっている宿に(もちろんロビンとは部屋は別にしているが、どこで覚えたのかピッキングして部屋に忍び込みベットに侵入してくる)連れていった。

 

警戒している三人、ボア・ハンコック妹のボア・サンダーソニアとボア・マリーゴールドだったが、さすがにあそこに留まることも隠れた方がいいことも助けが必要だってことも分かっているので大人しく付いては来ている。それでも棒切れから鉄パイプに変わったのは警戒レベルを上げたと思っていいだろう。

 

その原因を作ったロビンは何も気にしていないようで当たり前のように僕に腕組みしてきてニコニコしながら歩いていた。

 

 

「……妾達をどうするつもりだ?」

 

「なにもしませんよ。少なくとも人拐いのグループを壊滅させるまではここにいてもらいますけど」

 

 

「そんなこと言って私達を陥れるつもりでしょう!!!」

「姉様、こんなところから出ていきましょう!!!」

 

 

すっかりソニアとマリーには嫌われたようだ。

現に僕の後ろで鋭い目で三人を睨んでいるロビンがいたらそうはあるよな。

 

 

「……ニコル。いい加減にしないと…勘当するから

 

「ッ!!!?」

 

 

よっぽどショックだったのかロビンは立ったまま、目を開けたまま気絶してしまった。……本当に未来のロビンが不安だよ……

 

 

「さて、これからの話をしましょう」

 

「よ、よいのか…そ、その娘は……」

 

 

「気にしないでください。話が進まないので」

 

「お、おう、そうか……」

 

 

傲慢で超が付くほどわがままで高飛車なハンコックがなんかよそよそしいというか人を気にかけるほど人らしさがある。まぁ、あのハンコックになるまで時間はあるから子供のころはこんな感じかもなー

 

 

「結論からいうとこの先また人拐いに合う可能性がある」

 

「「「ッ!!!??」」」

 

 

その言葉に体が強ばり恐怖を感じている。

だけどここはハッキリさせないといけない。

 

 

「……ど、どうしてそんなことをいうの!!!」

「ついさっき酷い目にあったのになんて仕打ち!!!」

 

「分かっているよ。だけど早めに手を打たないといけないから」

 

 

「なんて言い種!!」

「姉様、やっぱりこんなところから出ていきましょう!!!」

 

 

話だけでも聞いてほしいがどうもソニアとマリーは聞く耳を持たないようだ。でもさっきから静かにしているハンコックにはまだ望みはあるようだ。

 

 

「聞いてほしい。いつまでも僕が君達を守るのは難しいんだ。そしてそれは君のプライドが許さない」

 

「………構わぬ、続けろ」

 

 

「だから身を守るための力を付けてほしい。

そして短期間で並の人拐いぐらいなら追い払う手段も持っている」

 

「………続けろ」

 

 

「そして力を付けるまでの安全な場所も確保している。

あとは君達がどう返事するかだけで決まる」

 

「…………」

 

 

正直、ここで断られたらあの悪魔の実はハンコックではなく別の者に渡すしかない。そうメロメロの実だ。あれはハンコックだから廻ってきた悪魔の実だと思う。それを別の人物になると未来の海賊王のサポートしてくれるだろう女性に渡すしかないけど……

 

 

「……いいだろう、乗ってやる」

 

「「姉様ッ!!!?」」

 

 

「しかしどうして妾達にそこまでする?

妾達が納得する理由を述べたならその案に乗ってやってもいいぞ」

 

 

ハンコック達を助ける理由。

それは未来の海賊王の為、なんてそんな事をいっても納得しないだろうなー

ここは一般的なハンコックに対する見方で説得するしかないかな。

 

 

「そんな高飛車なハンコックを変えたいから、かな?」

 

「………ハッ?」

 

 

「いや、ハンコックってとにかく人を見下すでしょう?

私が女王様よ、って。それはハンコックだから出来ることで許されることで、現にソニアやマリーも付いてきているわけだし。

でもそんなハンコックが別の人に少しだけでも歩み寄っている姿を見てみたい。将来的にはハンコックのような女王様の隣に立つ海賊王みたいな人に寄り添って助けてもらいたい。というのが理由だけど納得出来た?」

 

 

結局未来の海賊王……ってもう面倒くさいからルフィっていうけど、ルフィの隣でもっと普通の性格に近づいてもらって助けてほしい。そしたらルフィがあそこまで邪険にしないも思う。ハンコックには感謝してたけど素っ気ないところがあったもんなー

 

 

「……ハハ……」

 

「「……姉、様……??」」

 

 

「ワハハハハハハッ!!!

そんな自己中心的な理由で妾達を助けたのか!!?

妾の性格を変えるじゃと、ふざけるなッ!!!!」

 

「いや、ちょっとだけでも変わったらもっと可愛くて綺麗で美しいハンコックになると思うけど」

 

 

「……なんじゃと??」

 

 

……あら?逆鱗に触れたかな?

ワラワラとしているハンコックにソニアもマリーも一歩二歩と後ずさる。これは激怒させてしまったと覚悟していると、ボフッとなにか音がした。

 

 

「………からかうで、ない………///

 

 

なんか顔が真っ赤になっている。

…………やべ、またやらかしたか?

急いで軌道修正しないと不味いことになりそう!!!

 

 

「ほ、ほら!!人拐いってとにかく綺麗な人を拐う傾向にあるから!!とにかく力をつければ美しくても簡単には追い払うことが出来るでしょう!!!それに性格が少しだけでも良くなったら可愛さが増してより一層他の人が言うことを聞いてくれるはずだから……」

 

「もう止めてくれ!!!

………これ以上は……恥ずかしい……///

 

 

…………うわぁーーーー

これ、誰もが見ても間違いなくやらかしたね。

この展開はルフィがいいのに、というかルフィの為にやっているんだけど可笑しくない?

なんで女性関係はこっちに回ってくるのさ!!!??そりゃ役得だけどそんな場合じゃないよ!!!!

 

 

「あ、あのね…ハンコックさん……」

 

「そ、そんな、いままで通り、ハンコックと呼んでください……///」

 

「「ちょっと!!姉様!!!!」」

 

 

これどこかで見たシーンだよー

まさかルフィルートに持っていくつもりがこちらに矛先変えるなんて………どうしよう……

 

 

「は、ハンコック……

あのね、君には将来海賊王となる人物の隣に立つ存在なんだよ、分かるよね?」

 

「はい。一生付いていきます」

 

 

「でね、その海賊王は僕じゃないからね。

将来その海賊のサポートとしては活躍したいけど」

 

「構いませぬ。妾は海賊王の隣に立ち、その傍らに立ち者の………は、伴侶に………/////

 

 

…………もう、いいや……

ルフィの手伝いをしてくれるならいいと言うことにしておこう。じゃないとさっきから後ろで静かに殺気を放っているストーカーをどうにかしないといけないし。

 

 

「よーしニコル。とりあえず落ち着こうな」

 

「お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の。お兄ちゃんは私の………」

 

「よく分かったから本当に落ち着こうな。

ほら、ハンコック達が引いてるからね」

 

 

ビンビンに殺気を出しているロビンを押さえないと、無意識に覇気を出しているからソニアやマリーが軽く失神しかけている。ハンコックは息が上がっているが意識はあるようだ。

 

 

「………あぁーもうー」

 

 

仕方ない。最終手段だ。

殺気を放っているロビンの前に立ち、そして

 

 

「ほら、しっかりしろ」

 

「お、お兄…ちゃん……」

 

 

抱き締めた。これしか方法がない。

時より言葉の説得ではダメなときがある。

そんなときにはこうして包容するのが一番。

 

 

「ったく、お前のお兄ちゃんは僕だけだ。

それは変わらないから心配するな」

 

「…う、うん……」

 

 

こうしていると普通の女なんだけどなー

まぁ、なんとかまとまったようだから良かったかな。

 

 

「でも、お兄ちゃんは必要以上に女の子に話しかけたらダメだから」

 

 

いや、まとまらなかった。やっぱりコイツはアウトだ。



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蛇三人娘③

あの後の話をしないといけない。

その日に人拐いのグループは壊滅させた。というか八咫烏が事務的な感じ報告してきたのでちょっとビックリした。こんな風に上司のために進んでやる人達はきっと出世するだろうなー逆になんでクザン、いや、グザンが大将してるのか謎である。

 

で、安全確保は出来たのだが今度は三人を海軍に見つからないように育てないといけない。

ハンコック達には立場的にも七武海に入ってもらいたい。できるだけハンコック=逆らえないという印象が欲しいのだ。そうすればルフィの援護をしてもハンコックだから許されるという図が完成する。これは原作と同じであってほしいところだ。

 

実際は女ヶ島へ送り届けたいところだけど、ニョン婆にまだ会えていないし………って、考えていたら会える可能性を思い出した。

 

そう、いまここにいるレイリーだ。

 

 

 

「ったく君は……目を離すととんでもなく事をしてくれる……」

 

「ふふふ、でもハジメちゃんじゃないかしら」

 

 

「笑ってる場合か。隠居した身というのにハジメのおかげで海軍に目を付けられたのだぞ」

 

「そんな、おかげなんて……光栄です」

 

「真顔でボケるでない、ったく……」

 

 

そんなやり取りの中ロビンはでんでん虫でオルビアに電話をしていて、ハンコック達は居心地が悪いのかキョロキョロしている。

 

 

「心配しなくてもいいのよ。そこの人とんでもなく強いから」

 

「それは……ハジメよりもか?」

 

 

「どうだろうか、()()()()使われたらもう私に勝ち目はなさそうだが」

 

「信じなくてもいいですよ。レイリーは海賊王の副船長してたんです。そんな人に勝てるわけがありませんから」

 

 

「副船長って…もしかしてシルバーズ・レイリーッ!!!??」

 

「……ハジメはとんでもない大物と知り合いなのね……」

 

 

「ただの飲んだくれ博打好きなおっさんですよ」

 

「君は尊敬しているのか貶したいのか……本当に掴み所が分からない……」

 

 

頭を抱えるレイリーを見た三人は次にハジメの顔を見て驚く。何かと首を傾げるとすぐに視線を外した。えっ、なに?なにかした?

 

 

「気にしなくていいのよハジメちゃんは。ハジメちゃんはそのままでいなさい」

 

「よく分かりませんが、分かりました」

 

 

「シャッキー……少しは性格を変えた方がいいと思わないのか?」

 

「あら?そしたらハジメちゃんがハジメちゃんではなくなるわよ。そんなところ想像してみて」

 

「………あり得んな……」

「でしょう」

 

 

なんか失礼な事を言われている気がしたが、まぁそれは今度話すことにして

 

 

「今日はお願いがあってきたんです」

 

「だろうね。しかしハジメの地位ならある程度のことは叶えられるのではないか?」

 

 

「知ってていってますよね。それが出来ないから来たんです」

 

「そうだったね、すまない。

それでその願いとはなんだ?」

 

 

「2つありまして、一つは彼女達に戦い方を、悪魔の実の使い方を教えて欲しいんです」

 

「ほぅ、悪魔の実を。でその能力は??」

 

 

そう言われたのでハジメがバックから3つの悪魔の実を取り出した。それをみてレイリー、シャッキーは驚いた表情を浮かべる。

 

 

「これって……まさか!!?」

 

「メロメロの実か。まさか実物をお目にかかる日がくるとは……」

 

 

「知ってるんですか?」

 

「悪魔の実でも容姿を、それこそ絶世の美女に変える悪魔の実。その効果は見た相手をメロメロにする」

 

「女海賊、いやこの悪魔の実の存在を知っている者なら誰もが欲しがる実だ」

 

 

やっぱりとんでもない実だったんだな。

しかし本編では世界貴族が余興でハンコックに食べさせたって言ってたけど、それ自分達が食べるという選択肢はなかったんだなー。やっぱり得体の知れないやつは食べないってか。うん、やっぱり嫌いだアイツらは。

 

 

「こっちは……ヘビヘビの実か?」

 

「本当によく知ってますね」

 

 

「どういう部類かまでは知らないが、それを彼女達に食べさせるということか?」

 

「悪魔の実。食べなくてもレイリーの修行なら並の強者ぐらいなら大丈夫だと思います。でもハンコック達はいつか今回みたいに狙われる可能性があるんです」

 

 

その言葉に震えるハンコック達。

すぐにシャッキーが慰めに向かってくれたので助かった。隣で考古学本を読んでいるロビンは全く気にも止めたないからなー

………えっ、ロビンが考古学を学んでる!!!??

いままでストーカーしか見たことなかったからビックリしているが本編はそれが当たり前なのだけど……なんかめちゃくちゃ違和感を感じる。

 

そんなところでビックリしているからロビンが薄情なところが、ハジメしか興味がないというところがハッキリ分かるところをスルーしているハジメに対してレイリーが先程の答えを出す。

 

 

「なるほど。強さといっても力だけとは限らん。

それをその悪魔の実で補うということか」

 

「はい。ついでに悪魔の実を自由に使いこなせば僕が望んでいる世界に近づくと思うんです」

 

 

「ったく、ロジャーもとんでもない者を私に預けたものだ……分かった、彼女達は私が鍛えよう」

 

「よろしくお願いします」

 

 

よし、これで現実より強くなるはず。

あとは力をつけるまで隠れる場所

 

 

「で、二つ目がハンコック達の隠れる場所、といいますか拠点ですかね。そこに連れていって欲しいのでニョン婆を呼んでください」

 

「ッ!!!??

……本当に一体どこまで知っているのだ……」

 

 

「そんなに多くないと思いますよ。

でもハンコック達にはうってつけ。最低でも一人立ちするまで匿ってもらいたいのですが」

 

「………分かった。どう判断するかは彼女次第だ。連絡は入れるが受け入れられるか分からないぞ」

 

「はい、お願いします」

 

 

…………………………

 

 

そのあとはよく分からない。

いや、僕の立場である参謀の仕事はそんなに自由な時間はなかった。いや、正確にはあのグザンが仕事をしないのでその分僕のところに回ってくる。

いい加減に能力使ってボコりたいが、まだ我慢しないといけない。

 

ということであの後すぐにレイリー達とお別れをして海軍本部に戻ってきた。

 

 

「で、二日もいなかったと思ったら()()()()人拐いを壊滅させに行ったということか。参謀であるお前が()()()?」

 

「どうも含みのある言い方ですけど。そういうのは目の前の書類を片付けてからいうのがカッコがつくんですよグザンさん」

 

 

「テメェ……マジで氷漬けにするぞ…

あと俺の名前はクザンだあああぁ!!!」

 

「間違われたくないならさっさとやれ」

 

「……くそ、俺の立場って……」

 

 

そんなのあって無いようなものだろう。とさすがに言葉にするのは止めた。疑われても仕方ないのは本当であり、上司が部下を気にかけることは当たり前なこと。

 

 

「少なくても市民を助けたと思います。

あのままだと……上のバカ共のオモチャにされるところでしたので」

 

「……ハッキリ名前を言わなかったことは褒めてやるが、あまり余計なことをして目をつけられるなよ」

 

 

「そんなへまはしません。したとしたら迷惑がかからないように海軍抜けますよ」

 

「するなバカ」

 

 

と黙々と書類整理を行っていく。

するとある一つの書類に目を奪われる。

 

 

「これって……」

 

 

それはある家族の物語が始まった所。

そして数年後、ある種族がそれを奪った。

それはあの未来の海賊王のクルーの物語。

 

ロビンに続いて絶対に助けないといけない話だ。



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東の海①

「ハジメはおるかぁー!!!」

 

「ドアを壊さないでください。あとうるさい」

 

 

あの報告書をみつけて三日後。

一人の女海兵が退団をしたいと報告が回ってきていた。

普通のその海域の海軍支部が受理するかどうか決めるのだが、その海域は戦闘が激しいらしく海兵も沢山駆り出されている。そのため書類を整理出来ずに回ってきたのがここ。

 

完全にハジメは書類整理の名人と海軍全体に響き渡り変わった書類や対応出来ないものが回されてくる。別に書類が増えるのは問題ない。ただクザン……いや上司のグザンが増えてきた書類をみて「俺を整理ぜめして殺す気かあああぁ!!」と訳の分からないことをいってよく逃げるので、それを毎回対応するのが面倒くさい。

 

……話を戻すがその書類には続きがかかれてあり()()()()()()()()()()()と書かれていた。

 

もちろん退団は許可した。

でもいま僕が出来ることはここまでだろう。

あの魚人をいまどうにかしても、きっと悪い方向しかいかない。今回はいろんな根回しをしないといけないなーと考えながら三日過ぎた今日、久しぶりにうるさい人が来た。

 

 

 

「むっ、相変わらず細かいの」

 

「あっ?そんなこというなら海軍での煎餅食することを禁止させますよ」

 

 

「今すぐ直すッ!!!!」

 

 

このジジイはあの未来の海賊王の祖父、簡単にいえばルフィのじいちゃんガープだ。

出会いはセンゴクさんとお茶していたときに今日と同じ感じで扉を壊して入ってきた。第一印象から最悪なのでこのジジイに関しては最初からトゲ要素が強い。それでもこのジジイは気にしていないようなので遠慮はしてない。

 

 

「で、なんか用ですか?」

 

「孫に会わせる!!!」

 

 

「…………感情で物事を伝えようとしても伝わりませんよ。もう一度相手に分かるように」

 

「孫ができた。ハジメに会わせたい。だから来い」

 

「分かりましたけどその喋り方止めた方がいいですよ」

 

 

よく超簡潔に話すのでその度注意していたらこんな風に必要単語を増やして伝えるという技術を手にした。したのはいいがもうそれ自分がバカだとさらに強めるからもう少し会話にしたほうがいいと言っているがどうやら定着し始めているようでなかなか治らない。

 

 

「では行くぞ!!!」

 

「そっちの分かりましたじゃないです」

 

 

「何故じゃ!!孫じゃぞ!!!可愛いじゃ!!!!」

 

「でしょうね」

 

 

「だから来いッ!!」

 

「テメェ、会話するつもりねえな」

 

 

相変わらず人の話を聞かない。

こうなったらセンゴクさんが言っても聞かないウザいやつ。

 

 

「マジでうぜぇ」

 

「お前さんはよくもまぁ、……そんなにハッキリと本人目の前で言えるの」

 

 

「テメェとクズだけだ」

 

「……風当たりが強すぎる……」

 

 

分かっているなら人の話を聞け。

話を聞かないやつは本当に嫌いだ。

あのサカズキさんでも最終的には必要だと感じたものだけは分かってくれる。そんなサカズキさん以下の人間をどう接しろと?人間として接しているだけでも有難いと思ってほしい。

 

 

「………はあ、僕を駆り出したいならあのクザ、いえグザンを連れてきてください」

 

「もう部下に探させとる」

 

「そうですか。そちらとこちらの人があのクズを探すとなると早く確保できますね」

 

「……あやつも仕事しないが…本当に上司に対してなんて言い種じゃ……まぁワシが悪いじゃが」

 

 

うん、本当に。

 

 

「テメェがいうな」

 

「……頼むから、それ心に閉まってくれんか………」

 

「で、いつ向かうんですか?」

 

「無視を……って、来てくれるのか?」

 

 

こうなったらテコでも動かないやつが何をいまさら。

 

 

「行かないとしつこいでしょう」

 

「よし!!あした船を出す!!!」

 

 

「じゃあとセンゴクさんとボルサリーノさんとサカズキさんにも連絡入れてくださいね」

 

「………マジ??」

 

 

「それだけのことをしているって自覚してください。

僕がいうのはおかしいですけど「参謀」を動かすのはそれだけ大変だと言うことを理解してきてください」

 

 

どうしようかな……とこれからの事を考えて鬱になっているガープは寂しい背中をこちらに向けながら部屋から出ていった。

生まれたばかりのルフィに会ってもどうもできないかもしれないが()()()()いける。

 

 

…………………………

 

 

「村長ッ!!ルフィはどこじゃー!!」

 

「うるさいぞガープ!!!いま寝たところなんだぞ!!」

 

「村長もうるさいですよ」

 

 

東の海、フーシャ村。

ガープに半ば拉致られる形でここに連れてこられた。

その理由としてまだクザンさんを見つけられなかった状態で連れてこさせられたのだ。それもセンゴクさん達に連絡もいれずに。もちろんフーシャ村に向かっている船の中で連絡は取った。その時のセンゴクさんは「……ハジメが割かしマトモでよかった……」と苦労が滲み出ていることを感じ取りながらクザンさんに書類をよろしくと頼んでおいた。帰ったらガープさん説教だろうな~

 

で、小さなベッドの上にスヤスヤと寝ているルフィ。

この子が将来海賊王へと歩み出すのか。

 

 

「ルフィ、じいちゃんだぞー絶対にお前を立派な海兵にするからな」

 

 

すみません、それ僕が頑張っても変えられそうにない未来なので諦めてください。もちろんそんなことは口にしないがせっかくここまできたのだから何か残しておきたい。

ということでこちらに来るときに休憩で寄った街で購入した物を色々見せてみる。

 

「はいルフィ、これいる?」

 

「えぇーと……ハジメさん。それなに?」

 

「寂しくないようにとぬいぐるみを」

 

「それは分かるけど……不気味じゃないかしら……」

 

 

そのぬいぐるみは身体中にまるで手術したあとが残っていると思わせるぐらいの荒い縫い目のぬいぐるみ。

 

 

「そこの店員さんはオススメしてきたんですが」

 

「……ちなみになんていうお店?」

 

「ザ・ファンキー」

 

「うん、そういうお店で買ったらダメよ」

 

 

なんか優しく遠い目で言われた。

ルフィに近づけても喜ばなかったので次。

 

 

「骨付き肉」

 

「ハジメさん、ルフィはまだ赤ちゃんだから」

 

「大丈夫です。ぬいぐるみですので」

 

「だとしてもダメよ」

 

 

少し目尻が強ばった気がしたので止めた。

ルフィはめちゃくちゃ喜んでいたがマキノさんには逆らわないほうがいいので次。

 

 

「海賊旗」

 

「何を考えとるのじゃハジメ!!!そこは海軍の旗じゃろうが!!!!」

 

「海賊旗の方がいろいろとアレンジ出来るかと思いまして。ならいっそう海軍の旗もバリエーション増やします」

 

「ルフィの為ならやるわい!!」

 

「そういう問題じゃないわよ。二人とも。

ねぇ、もっと()()()()()()()()()()()()()の物じゃないと」

 

 

もう吹雪かと思うぐらい部屋の温度が下がった気がする。あのガープさえもブルッと震えた。仕方ありませんねとっておきです。

 

 

「無難にロケットペンダント」

 

「それよハジメさん。ちゃんと持ってるじゃない」

 

「いや、無難すぎるかと思いまして」

 

「赤ちゃんに無難じゃないものを与えるほうがおかしいのよ。そうよね村長さん、ガープさん」

 

「「そ、そうじゃな………」」

 

 

何を渡したのか知らないけどマキノさんに怒られたようだ。ザマァ。

 

 

「それじゃこのロケットにハジメさんの写真を入れるからカメラ店にいきましょうか」

 

「えっ。

いや、そこはガープさんや親御さんを」

 

 

「ガープさんはダメ。そんな怖い顔を入れてたら泣くわ」

 

「……いま、ワシが泣きたいわい……」

 

 

「じゃ親御さんは」

 

「こんな可愛いルフィを置いていく顔なんて却下よ」

 

 

………本編ではあまりマキノについて話はなかったけどもしかしてこれが素なの??僕が来たから影響されたんだよね、そうだよね、そうじゃないとなんか優しいマキノさんとイメージが壊れる……

 

 

「だ、だからって僕じゃなくても……ほらマキノさんとか村長さんとか……」

 

「私達はこの村でルフィと一緒だからいいの。

でもハジメさんはそんなに来れないでしょう?

そんな人からプレゼントってこうしてロケットとかで相手の顔が分かると嬉しいものなのよ」

 

 

それは分かるけど、僕もそのために買ったんだけど、それは僕の写真をいれるわけじゃなくてもっと大切な人に………あっ、そういえばシャンクスとか……はまだ会わないか……

 

 

「こ、今後ルフィが見つける大切な人のためにとかでも……」

 

「あら、ハジメさんもルフィにとって大切な人よ。ねぇルフィ?」

 

 

すると今日一番のキャッキャッと笑うルフィ。

おい、そこは空気を読んでよ、赤ちゃんでもルフィなら……って成長してもルフィはルフィで空気読んだことなかったな~…………

 

 

「さぁいくわよ。最高の一枚を!!」

 

「ちょっとマキノさん!!?ひ、引っ張らないで!!ってか力つよッ!!!??」

 

 

なんか原作マキノからパワーアップしている気がするマキノさんにどうすることも出来ずに流されてしまった僕だった。

 

後日ルフィの首もとにロケットペンダントがあり、その中には最高の一枚を取られたハジメの写真があった。



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東の海②

「えっ、東の海(イーストブルー)の海軍支部の調査ですか?」

 

『最近悪い噂がたっておってな。真偽はともかくハジメが突然くれば何かしら動きがあるかもしれん』

 

 

フーシャ村を出て定期連絡を、センゴクに連絡したのだがここでまさかの指令が出た。

 

 

 

「それは構いませんけど…行く前に話して頂いたら良かったのでは?」

 

『……あのバカ(ガープ)、自分勝手な報告のみで逃げよったからな。それで大将のほうには連絡入れとらんかったからもうてんてこ舞いでな……』

 

 

「いや、なんでそんなことに……」

 

『クザンはいつも通り書類整理、ボルサリーノのは茶友達がいないからと仕事放棄して、サカズキにいたってはストレスの捌け口がないからと若い海兵に八つ当たり………い、胃が………』

 

「あぁ、………お疲れさまです」

 

 

よく今まで海軍成り立ってきたね。

なんか自画自賛というわけではないけど、僕がいないだけでそんなに体勢が崩れるものかなー。特にサカズキさんは八つ当たりって……いや、その前にそのストレスを僕に向けるのもおかしいと思うんだけどなー

 

 

『……だが東の海でのことも気がかりではある。

こっちは…なんとか……なんとかするので、頼むから出来るだけ早く帰ってきてくれ……』

 

 

海軍本部の仕事も忙しいだろうがこういう調査も仕事の一つ。

センゴクさん的にはかなり早く帰ってきてほしいだろうが、私情を挟むわけにはいかないと我慢しているようだ。………本当に大変ですね、元帥って………

 

 

『近いのはシェルズタウンの海軍支部だ。頼んだぞ』

 

 

あれ??そこってなんか聞いたことがあるような……

 

 

…………………………

 

 

「イヤじゃ」

 

 

絶対にいうと思った。

センゴクさんからの指令だといっても行かないというガープ。マジで仕事しろ。

 

 

「休みを取っておるのに仕事なぞするか!!」

 

「ですけど、僕達がいかないと誰が行くんですか?」

 

「そんなもんハジメ一人でいいではないか」

 

「おい、ジジイ。

こういうのは使いたくなかったけど、こっちのほうが階級は上じゃボケッ!!仕事しろッ!!!」

 

 

鼻をほじりながらいうものだから自分でも珍しく怒った。ここまで暴言吐くのはグザンくらいだ。

 

 

「様子を見るだけならワシはいらんだろうが。

それにだ、ハジメが参謀として月日が浅い。この東の海まで絶黒のハジメとして名が届いてない場合がある。

なら、ワシよりもハジメが行った方がありのままの海軍支部が見れるじゃろ」

 

「…………ま、マトモな意見だ…………」

 

 

いくら仕事しない人でもやっぱり年の功。ちゃんと考えているんだなー

 

 

「というわけじゃから後は自力で帰ってこい。ワシは先に帰る」

 

「よし、テメェはここで沈める」

 

 

 

…………………………

 

 

結局ガープの野郎は逃げた。

真正面から逃亡を阻止しようとしたがさすが伝説の海兵。逃げようとする意識で逃げられると僅かな隙の間に逃げる。正確には「あっ、あそこにニコルがおる」と言われて振り向いてしまった時に逃げられた。

 

だって!!ロビン(ストーカー)ならいそうだもん!!!

 

で、フーシャ村の近くに船を置いていたから良かった。

あのジジイは僅かな隙で逃げた、というか僕を海に落としやがった。で水面に出てくる間に手漕ぎで逃走したわけ。

 

なのでいま漂ってます。

本当にトメトメの実じゃなかったら死んでたよ。悪魔の実を無効化する海の特性を停止させているから。

でもどうしようかなー。泳げるけど島までたどり着くのに体力が……

 

 

「………流されるか………」

 

 

なんかどーーーーでも良くなったな~

センゴクさんには悪いけどこの波に身を任せて何処かへと流されよう。支部については責任とってくれるでしょうガープさんが。そして八咫烏とロビンにコテンパンに殺られろッ!!!

 

 

 

…………………………

 

 

「………生……替えて……よ……」

 

「……がと……いな……」

 

 

なんか声が聞こえるなーと言うことは何処かの島に着いたのかな?ゆっくりと目を明けるとそこには男性と少女がいた。

 

 

「おや、気がついたかな?」

 

 

その人はとても優しい目をしていた。

額にあったタオルを手に取り器に入った水に付けて絞る。そしてまた自分の額に戻してくれた。とても気持ちいい。

 

 

「ありがとうございます」

 

「ふふふ、不思議な子だね

普通は、ここは何処ですか?とか貴方は誰ですか?とか聞くものだけど、まさか感謝の言葉を聞くとは」

 

 

「助けて貰ったのは間違いないので」

 

「そうか、自分がどういう状況だったのかもハッキリしているようだね。助けたことに関しては娘に言ってくれ。浜辺で打ちあがってある君を見つけたのは娘なんだ」

 

 

そう言ったので少女の方を見るとビクッとして男性の後ろへ隠れた。

 

 

「すまないね娘が」

 

「いいえ。えーと……」

 

 

「"くいな"というんだ」

 

「ありがとう、くいな」

 

「………うん………」

 

 

小さな声だったけど確かに聞こえた。

………うん、あれ、いま"くいな"って言った?

く、くいなって……まさか……

 

 

「自己紹介が遅れたね。私はコウシロウという」

 

「……ハジメです」

 

 

まさか流れ着いた先がゾロの出身の島かよッ!!!!??

 

 

 

…………………………

 

 

 

「申し立て、ありますか?ありませんよねッ!!」

 

「……あ、ありません……」

 

「センゴクさんに止められたからここまでしときますが……こちらとしては()()()()()()を見せてから殺す気だったということを理解しといてくださいよ」

 

「……はい……」

 

「なにしとるんじゃ。さっさと行けやコラ。ハジメ参謀がもし見つからなかったら……分かってるんだろうなテメェッ!!!!!!!!

 

「今すぐにッ!!!!!!」

 

 

必死になって元帥の部屋から出ていったガープ。

それはもう性格が変わるほどに必死に。

それはそうだろう。いま元帥の部屋には一人で国を簡単に消し去るほどの殺気を放っている大将と

 

 

「お、落ち着いてくださいニコル大佐ッ!!」

 

「気持ちは分かります!!私達もハジメ参謀は心配ですッ!!!!!!」

 

「ですがいまニコル大佐が行ってしまうとその抑えきれない殺気が覇気が市民に多大なる影響をッ!!!」

 

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん………」

 

「全力で押さえろッ!!!いまのニコル大佐は大将並みの力を持っていると考えろッ!!!」

 

 

もう海軍本部全体を覆い被るほどの殺気と覇気を出しているロビン。八咫烏達が必死になって抑えているためになんとかなっているが少しでも油断すると下手したら死者がでてしまう。

 

 

「………バカだと分かっておったが……まさかここまで考えなしとは……」

 

 

さっきから明らかに飲み過ぎている頭痛薬を手にしているセンゴク。それだけいまの状況はヤバい。

ハジメの行方不明。それが発覚した瞬間に海軍が今まで感じたことのないほど傾いた。

 

3大将は溢れだす殺気と覇気を抑えるのが必死で仕事が手につかず、ニコル大佐に至っては駄々もれのままで探しにいこうとしている。八咫烏はそれを押さえているために他の仕事が出来ずにいる。いや八咫烏に関わらずハジメに関しているものは誰もが仕事が出来ずにいるのだ。

 

そのため重要な案件から小さな案件も全てセンゴクの元へ届いている。つまりいま元帥の部屋には大量の書類と殺気立っている者達で溢れかえっている。

 

 

 

「………早く……早く……帰ってき……てく…れ……」

 

 

頭痛薬の次は栄養剤、そして3大将の元へいき殺気と一緒に溢れだす能力を浴びることに。正確には氷で額を冷やして、マグマで冷えすぎた体を温め、光で目を覚ます。

能力を有能活用してハジメが帰ってくるまで頑張るセンゴクだが………さて、いつ帰ってくるのか……



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東の海③

くいなとコウシロウに助けられて3日。

流されている間は体に必要な最低限の活動だけを残して停止させていたので元の状態に戻るのに時間がかかった。それでもコウシロウさんからしたら十分早いらしい。

コウシロウさんによると海軍の服装をしていたので海軍へ電話したところ近くの支部の人が迎えにくるという話。確か明日には迎えがくるという。これは思ったより早く本部に帰れるかもしれないなー

 

と、なるとくいなは約8年後に転落死してしまう。

どうにかしたいところだけど八年後なんて先が長過ぎだし、その年の一年間付きっきりで事故から守り抜くわけにもいかない。それにこれは自然死といってもいい。一回の死の回避で助かるものかのか?

 

なんか色々考えたけどいい案が浮かばない。

 

そんな事を考えながらコウシロウさんの家を歩いているとフッと浮遊感が襲う。

 

 

「うんッ!!?」

「危ないッ!!!!!」

 

 

一体何事かと思いきやどうやらここは()()らしく、そして僕がいたところは()()らしく、そして今現在僕は()()しているようで………

 

 

くいなじゃなくて!!オレッ!!!!!!???

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とに、こいつか……」

「……いありません……」

 

 

何か…声がする……とっさに頭の表面を一時停止して衝撃を止めたけど、いきなり過ぎるのとパニックから頭しか一時停止出来なかった。

 

ダメだな……こんな心が乱れるだけで一時停止が使えなくなるならこの先危ない目にあう。もう一度鍛え直さないとダメだな………

 

そんな事を考えていると視界がハッキリしてきた。

声は両方とも男性ではあるが、なんか片一方が聞き覚えのあるような……それも会ったわけじゃなく、こう()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

 

「目が覚めたようだな」

「……えっ?」

 

 

顔を見て驚いた。

だってそこには()()()()()()()()()()()()()()()()()()モーガンがいたからだ。あれ?確かに若いからビックリもしたけどなんでここにいるの?

 

 

「……こ、ここは……」

「あぁ、海軍第7支部だ」

 

 

ま、じ、か!!

ということはまだ真面目だった頃のモーガンッ!!!

うわぁーどうしよう……これどうしよう!!?

するともう一人の海兵が

 

 

「覚えているか?

お世話になっていたコウシロウ邸の階段から踏み外したことを」

 

「は、はい……」

 

 

「小さな村だ。医者の腕もここの方がいいだろうとコウシロウ殿から許可を受けた

もちろん君には申し訳なかったと思う。別れの挨拶も出来ずに連れ出してしまい……」

 

「い、いえ……」

 

「コウシロウ殿から伝言だ。「体調が戻ったとはいえ不調な君を一人に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()」と。

くいなちゃんからは「また来てね」だそうだ」

 

 

また来てね、か……

ゾロのことを考えるならくいなは生きて欲しい。

だけど転落死は()()()()()()()()()()()()()()()くいなの不注意か階段が劣化したためか分からないけど、もしそれが()()()()()()()()ならどうしようも出来ないかもしれない。

 

その証拠に僕があの階段から落ちた。

それはあの家で起きることは………ってあれ?

 

 

「……身代わりに……なった?」

 

「どうされましたか?」

 

 

いや、そんな夢みたいなこと……

……でもさっき聞いたコウシロウの言葉に「あんな身近な危険があることも気づかずに」って。それって階段の事だよね。つまりはあの階段に対して何かしらの対策をしてくれる?

 

 

「……なら、下手にどうこうしないほうが……」

 

「何を言ってるんだコイツは……」

 

「わかりません。やはり頭に強い衝撃が……」

 

 

くいなの死因は"転落死"であり"家の階段から落ちた"のだ。

その2つが揃わないとくいなが死ぬことはないはず。

あのコウシロウさんが危険だと分かったことに対して何もしないとは思えない。

それにここでくいなに転落に気を付けと言ったとする。

家の階段の事故は防げても他の転落死に繋がるのでは?

なら"家の階段から転落しても助かる何かを"。もしくは"転落してもしなない体作り"をするとか……

 

 

「……そうだ、これしかないはず……」

 

「大丈夫かコイツ……」

 

「はやく引き取りする支部が分かればいいんですけど……」

 

 

でもこれ以上介入するのは止めよう。

くいなに対してはこれ以上踏み込まないほうがいい。

自然死という世界の流れに僕みたいな異質なものが関わると想像できないことが起きるかもしれない。それこそ転落死ではなく別の"死"が訪れることだってある。

 

いまはコウシロウさんが気づいた危険に対しての対策に期待するしかない。

 

 

「おい、大丈夫か……」

 

「はい、大丈夫です」

 

「逆にハッキリ言われると怖いな……」

 

 

…………………………

 

 

「さ、先ほどは失礼しましたッ!!!!」

 

「いや、いいですよ」

 

「そんなわけにはいきません!!」

 

 

その後僕の詳細を調べようとした海兵が「絶黒のハジメ」という資料を見つけたようで、飛んできた海兵がモーガン達に見せると直ぐ様土下座。正直やりにくいだけどな……

 

 

「その資料になんて書いてるか知らないけど参謀って言っても肩書きだけだから」

 

「そんな謙遜されないでください

聞けばあの大将赤犬を吹き飛ばすほどの実力者

そんな方だとつい知らず……」

 

 

さっきからこんな感じである。

やめて欲しいといえば謙遜といい、大したことないといえばそんな筈がないと僕がやった例を上げる。いっててきりがないと分かっててもやめて欲しいので粘るが……さっきからモーガンが喋らない。

 

 

「あの……モーガンさん?」

 

「呼び捨てで構いません」

 

 

「あぁ…モーガン。さっきから頭も上げないけど……本当にあげていいよ」

 

「いえ、最高権力に対してそんな真似は」

 

 

………もしかしても何も、この意識が問題なのね。

原作より三年前、クロネコ海賊団と戦いモーガン以外は戦死、生き残ったモーガンは別人のようになった。たしかジャンゴの催眠が影響しているはず。

 

少なくとも催眠だけであんな傲慢になったわけじゃないんだな。権力者に対しての考え。これがあの悲劇を呼ぶわけか。

 

 

「じゃ言っとくけど。クザンさんはグズだから」

「……はッ?」

 

「もう仕事をしない、しない。

書類整理も下手でその改善することもせずにすぐに逃げ出すグズ。グザンだよクザン。

それにボルサリーノさんはとにかくマイペースというか天然性のわがまま。

よくお茶に誘われるけどお茶菓子がその日気分で変わるから間違ったら買って来て。いや、自分でいけよ。その能力ならすぐに買いにいけるだろう。で買ってきてもまた気分が変わって別のものって……もう自分でお店出したらいいんじゃないかと思うんだよ!!

極めつけがサカズキさん!!

ちょっとしたことで怒るから手がつけられない。

少し時間に遅れたら「大噴火ッ!!!!」書類の一文字間違えたら「大噴火ッ!!!!」自分が道を間違えたくせに「大噴火ッ!!!!」って、子供じゃないんだから癇癪起こすのを抑えろよ!!!!そしてたまに素直に言うときにいつもの倍以上の攻撃するなんて……ツンデレかッ!!!!」

 

 

一気に今までの溜まっていた鬱憤を吐き出した。

あぁ~スッキリした。

 

………あれ、モーガンが呆然としてる。

こっちの海兵の人も……どうしたんだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、ガープ。いまなんと言った?」

「い、いや……ハジメを海に……落とした……」

 

「バカかああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

「村長落ち着いて。

ガープさんは後でいくらでも()()()()()()()()()()()()()()()。いまはハジメさんを見つけないと」

 

「……そ、そうじゃなマキノ……」

 

 

「ということで探しましょうガープさん。

もちろん私たちの指示に従って貰いますよ。NOなんて言いませんよね。そんな事をいったらルフィに()()()()()()()()()()()()()()

 

「………はい………」



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東の海④

「こ、こうか……」

 

「そう。うん、結構スジがいいね」

 

 

翌日突然モーガンが訪ねてきた。

「あんたの弟子になりてぇ!!」って。

いや、どうしたの!!?なんでそんなに態度変えてるの!!?

 

こちらとしてもモーガンの性格やこれから起きる悲劇を、モーガンがクロにやられて催眠術で性格が急変するアレ。防ぐためにも戦闘力や精神力を鍛えたいところではあったけど。

でも覇気は無理で、6式も無理。

えぇー何を教えようと思い、そういえば義手で斧を付けてたなーと思い「斧を使ってみようか?」と言ったら本当にスジがいい。

あれかな、体格いいから斧みたいな大きい武器と相性がいいのかな。

 

 

「俺、斧なんて初めて使った…」

 

「そのわりにはセンスあるよ」

 

「なんか初めて扱った気がしねぇな……」

 

 

 

それはそうだろうな。原作では義手で使ってたからね。

まぁそんなことは知るよしもないだろうけど。

 

 

「なぁ、()()()()()()()?」

 

「何が?」

 

「いや…今さらだが……タメ語って……」

 

「僕は年下ですし」

 

「か、階級が……」

 

「肩書きみたいなものです」

 

 

本当にいまさらように怯えながら言われてもなー

正直見た目がすでにおっさん見たいな人から敬語を言われたくない。まあ海軍本部はもう仕方ないとしてもこういう支部ぐらいはね。

 

 

「別に二人の時はと決めたんですし気にしないでください」

 

「はい…いや、あぁ…」

 

 

なんか無理やり納得したようだ。

まぁ、そんなにここに長居するつもりはないから基礎とあのクロに勝てるだけの修行メニューを教えておけばいいかな?

ここは砂浜、足元が悪く踏ん張りが効かないから訓練にもなるだろうとここを選んだだけど、このあと後悔することになるとは思っていなかった。

 

 

「でもよ…こんなに振り回すんじゃ敵を前にしたら、素早いやつなら当たらないんじゃないか?」

 

「最もな意見ですね。

もちろん最低限のスピードまではあげてもらいますけど、そのスピードを捨ててでもこの斧には利点があるんです」

 

 

そういって「ちょっと貸してください」とモーガンから斧を借りる。まぁ、レイリーと海軍から一通りの武器の使い方を教えてもらっていたのでそこら辺のやつよりも使いこなしていると思う。

だけどそれじゃ見本にならないし、これぐらい強くなれると見せたほうがいいだろうと思いハジメは斧を振り上げた。

 

 

(地面に着く瞬間にガープさんの拳骨の衝撃を開放っと)

 

 

以前に理不尽に拳骨を喰らったことがある。もちろん一時停止によりノーダメージだがその衝撃は停止したままで保存しているのだ。

今まで受けてきた「衝撃」や「能力」

停止してきたものはハジメが所有することになりいつでもどこでも開放、つまり一時停止を解除できる。

 

さすがに能力のような、たとえばサカズキのような能力では停止してもマグマが宙に浮いている状態なので、それをそのまま所有するわけにはいかないので目に見えないもの、つまり「衝撃」だけ保存している状態。

 

数えるだけでも相当ある。

だってレイリーからクザン、ボルサリーノにサカズキなど色んな人から衝撃を貰っているのだ。

その一つがガープの衝撃である。

あの人はあぁ見えても伝説の海兵だからなー。

こうして相手に見せるときには最適である。

 

なので斧を振り落とし地面に着いた瞬間に衝撃を開放。

 

 

「うおおおっ!!!!!!」

 

 

一瞬にして開放した衝撃は砂浜をえぐり、それだけでは足りずに海面さえも吹き飛ばす。ついでにモーガンも吹き飛ばす。

たった一振りで大きなクレーターが誕生した。

 

 

「す、すげぇ………」

 

 

クレーターに海水が入ってきたのでそそくさとクレーターから出てきたハジメは放心しているモーガンの元にいき

 

 

「じゃ、まずは池を切って道を作るところからかな」

 

「ちょっ、えええっ!!!?

いや、いきなりこれをさせるわけじゃなくとも、そんなこと出来るかあっ!!!!」

 

 

 

いや、あの有名な鷹の目ならできるよ。余裕だよ。

でも確かにいきなり過ぎたかなーと思っていると水平線の向こうから何か来るのが見えた。という見聞色の覇気で分かっていたけど………あの野郎………

 

 

「じゃ、その見本も見せよう」

 

 

そう言ってハジメは水平線の向こうから近づくものに、遠いが小船のようなものに、乗っているのがなんかむさ苦しいジジィがいるようだが気にせずに。

 

 

「海水を切るというより「断つ」イメージ。

常にうねり不規則な海流を寸断するにはたった一瞬。

そして最も必要なのは「呼吸」だよ」

 

 

なんか最もらしいことを言っているが僕には出来ない。

はい、出来ませんよ!いけませんか!!!?

頭にある知識を言っているだけだからイコールで僕が出来るなんてことはない!!

それでもいまから海を切ろうとしているのは、ただ単に一時停止のお陰なんですよ。

 

えぇーとまずは、斧を振り落とした瞬間に以前に突然吹っ掛けてきた鷹の目の攻撃を開放する。いやあのときはビックリした!!「強者ならば、受けてみよ」なんて訳の分からないまま攻撃されたんだよ!もちろん一時停止で受け止めたけど、すると「なんとも面白き、そして真の強者」とかもうマトモな言葉を言ってもらわないと僕には通じませんけどと抗議しようとしたらささっと帰った。あっ、海軍本部に来たんですよ鷹の目が。そして攻撃して帰った。

 

………なんじゃそりゃああああああああぁぁぁぁぁ!!!

 

久々に部屋を全体を一時停止で囲んで隔離した状態で叫んだな………

 

で、まぁこの鷹の目の攻撃だけでも十分に海は切れるけどそこにその攻撃を受けた海の断面に一時停止を加えると。

 

 

「……す、すげぇ………」

 

 

海に道が出来ました。

まぁ、直線上にはあのジジィしかいなかったしどこまで道が出来たかな?

 

 

「さて、僕はこれで帰りますね」

 

「も、もう帰るのか!!?

まだ何も教わって!!」

 

「あとはモーガンさんの修行次第ですよ。

それにあの道で横たわっている者を回収して本部に帰らないとセンゴクさんの胃が死ぬと思うので」

 

「……あぁ……頑張れ……」

 

 

あれ?なにか同情された?

まぁこれ以上追及はしたこないようだしさっさとあのジジィを担いで帰りますか。

 

 

…………………………

 

 

「おにいぢゃんッ!!!!!!!」

 

「はいはい、ごめんね。だからちょっと放そうね。体が軋みを上げそうだから……」

 

 

本部に帰ってくるともうラグビー選手を真っ青なタックルを決めてきたロビン。そのまま大泣きをして一切離れようとしない。一時停止でその締め付けを押さえているけど気分的にはもう内臓が飛び出るほど絞められている。…………本当に君は(ロビンは)どこに向かっているのか……

 

 

「悪かったねハジメ。こいつの後始末は儂らに任せておきな」

 

「……ったく、今日ぐらいは俺が書類整理しとくよ」

 

「明日はいの一番にワシのところに来いッ!!!!」

 

 

といいながら三人とも心配してくれたようだ。

そして伝説の海兵、ガープはボッコボッコにやられてそのまま三人に連れていかれた。……これからまだお仕置きが待っているようだ。

 

 

「……ハ、ハジメ……」

 

「あぁー生きてますか?センゴクさんの胃は」

 

「ギリギリではあったが…なんとか……」

 

「そうですか。

報告しますと東の海の支部、まだ一ヶ所しか回れてませんので来週にでも……」

 

「もういいッ!!!!

それは下の者にやらせるからしばらくは本部からでるなッ!!!!!!!」

 

 

ガチで引き留めてるよ……

まぁ、センゴクさんがそういうならお世話になった人達にはお手紙と粗品を送ることにしましょう。

 

えぇーと、コウシロウさんとくいな、モーガンさんとその支部の人達、あとマキノさん達にも心配かけたし、偶然にも()()()()にも会えてお世話になったしな……さて、どんな物がいいかな??



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ー幕間ー 2年間の出来事

特にという訳ではないがまとめてもいいと思う出来事をここにまとめた。

というか、もう頭で纏めるともう頭痛が…なのでこうしてノートに残すことにした。

 

始めはジジィに海に落とされて、モーガンの所でお世話になりジジィを回収して本部に帰る時に起きたこと。そしてその延長線について。

 

 

 

 

 

①親子三人

海を裂いた道の先に島があり、そこから海軍の船を借りて本部に帰ろうとした時である。

 

 

「食料が足りない?」

 

「すみません!!先ほど遠征にでた船に積込んだ次第で……」

 

「じゃ、どこかで買わないといけないわけだね」

 

「申し訳ありません!!航海士には伝えておりますので!」

 

 

ということで船に乗り本部に戻る前に別の島に向かうことになった。で、その島が問題の島だった。

 

 

 

「参謀、コノミ諸島につきました」

 

「……あぁ、ここでしたか……」

 

 

まだ来るつもりもなかったけど来てしまったコノミ諸島。そうここにはココヤシ村がそこにはベルメール、ノジコ、そしてナミがいる。

 

いまはまだ平和に過ごしているだろうが早めに手を打たないとな……だけどどこから介入すべきか。魚人島から手をつけるべきか、アーロンがここに来るまでに潰すか……どうしようかな……

 

 

「では我々は食料を買いに行ってきます」

 

「手伝いますよ」

 

「そ、そんなッ!!!参謀にそんな真似はさせられません!!!代わりにガープ中将を連れていきますので」

 

 

それでも階級は上なんだけど、ガープさんがやらかしたことはすでにここにいる海兵に伝わっておりもう馬車馬のように働かされている。とういうかもう見習いの位だ。それでも文句をいいながらもやっているのでそこについては評価するな。

 

 

「行きますよジジィ」

 

「なんじゃその態度はッ!!?いいよ」

 

 

いや、あんたもなんでそんなに態度が急変するのかな?

まぁ、反省しているようだからいいけどきっと本部に帰ったらこれ以上だろうなー

 

とにかく何もすることが無くなった僕は船にも戻ろうとしたところふっとある女の子が目に入った。

 

海軍の船をジィーと見ている。

そして手には子供が読む童話ではなく難しい航海技術についての本を持っている。

オレンジの髪で航海技術の本……もしかして……

すると向こうもこちらに気づいたようで近づいてくる。

 

 

「これお兄さんの船なの?」

 

「まぁ、そうだね」

 

「やっぱり一般の船と海軍の船は違うだけど、航海技術としてはどうなのかな?」

 

「そこら辺はちょっと……」

 

 

やっぱりナミだ。うん、間違いなく。

すでにこの年で航海技術をか。すごいな。

そんなことを考えていると別の女の子が近寄ってきて

 

 

「ナミ!!ベルメールさんが探してたよ!」

 

「ごめんノジコ!!この船が目に入ったからつい…」

 

「またなの……あっ、初めましてノジコといいます」

 

「ハジメです」

 

「私はナミ!!」

 

「もう!!自己紹介もしてなかったの!!!」

 

 

だってー!!と姉妹で言い合いをしている姿はなんか見てて温かくなる。なるけどノジコまで出てきたぞ。そして最後の人の名前も聞こえたような……

……まだ、この三人には会うつもりはないんだよ。

対策もなにもしてないのに会って余計なことをしたら、予想もつかない出来事になったら………

 

 

「ナミ、ノジコ。何してるの二人とも」

 

「「ベルメールさんッ!!!!」」

 

 

はい、アウトー!!もう引き返せんね!

するとベルメールはナミとノジコを自分の後ろに隠した。まるで僕から守るように。

 

 

「………海軍が私の娘に何のよう?」

 

「いや、僕は……」

 

「言ったはずよ。私はこの子達を育てるって。

そのために海軍を止めたのに、この子達に手を出すようなら……」

 

「だから、ちが」

 

 

う、といようとしたが聞く耳もたず。

背中に隠していたのか拳銃を取り出して僕には銃口を向ける。

 

 

「この子達のためなら私は何でもするわよ」

 

「……………」

 

えぇーと、完全に悪者扱い??

どうしよう…このままだと不味いよね。

 

 

「ベルメール!!!違うの!!!」

「この人はナミに優しくしてくれたの!!!」

 

「………えっ?」

 

 

そのあともうベルメールにこれでもかと謝れて、どうしてもお詫びがしたいと言われたので家まで付いていきご飯をご馳走になった。

 

 

「えっ!!!参謀って……大将と同じ位のあのッ!!!??」

 

「名ばかりですけどね」

 

「スゴい…お兄さん……」

 

「見た目じゃないのね……」

 

「こらノジコ!!もう~すみません」

 

 

お茶をしながら僕がここにきた理由を話していると僕の階級が気になったようなので素直に話したけど、やっぱりどうみても名前負けというか合わないんだよなー

 

 

「いいですよ。ですけどベルメールさんも元海兵とは」

 

「こう見えてか弱いですけどやる時はやるんですよ」

 

「「見た目通りだよね」」

 

「あんたたちッ!!!!!」

 

 

こんな感じでじゃれあう姿は本当の親子、家族なんだなーと思う。微笑ましいなーとお茶を飲んでいるとトンでもない爆弾を放たれた。

 

 

「ねぇ、ハジメさんは独身なの?」

 

「そうだね」

 

「へぇーなら……ベルメールさんはどう??」

 

「の、ノジコッ!!!!」

 

「えっ、お兄さんがお父さんになってくれるの!!!??」

 

「ちょっと待ってナミッ!!!!」

 

 

………あぁーこれ、自分から踏み込まないようにしとかないと……もうフラグいらないよ……

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

という、後半は思い出したくないことがあった。

あのあと真っ赤になるベルメールさんをよそにノジコとナミがベルメールさんをアピールしてくる。

別れたあとも頻繁に手紙が届いて「いつ来てくれるの?」「デートは私達に任せて!!」とか来るのだが、ロビンに気づかれないようにしないといけないのでもう大変である。

 

では次。

これは約一年後ぐらいの話である。

たまたま、本当にたまたまマルコさんにあった。

ちょっと暇を貰ってロビンと買い物に行っていたところで出会ったお話

 

 

 

②白ひげ海賊団

 

 

「まさかこんな所で会うなんて奇遇だよい」

 

「ですね。白ひげさんはお元気ですか??」

 

「オヤジが元気以外あると思うか?」

 

「ないですね」

 

 

と雑談していると隣にいたロビンの存在に気づいたマルコさんが

 

 

「その隣の娘は?」

 

「妹のニコルです」

 

「どうも」

 

「そうかい、ハジメに妹が………うん?」

 

 

あっ、これ気づいたか?もしかしたら気づいちゃったかな??

 

 

「……なぁ、ハジメ……なんかその娘…見覚えがあるんだが………」

 

「そうですか?

それより久しぶりに白ひげさんに会いたいですけど」

 

「近くに船を止めてるから来るか?」

 

 

やんわりと誤魔化したハジメは久しぶりに白ひげに会いに向かった。

 

で、白ひげにロビンを紹介したら

 

 

「おい、いつからニコ・ロビンに兄妹が出来たんだぁ??」

 

 

あっ、気づかれた。

 

 

「やっぱりかよい!!!」

 

「気づいてたんですか?」

 

「あんな風に誤魔化したら間違いかなーと思うだろうが!!!!」

 

 

疑ってはいたんだねやっぱり。

 

 

「いや、それはどうでもいいよい。

………おい、ニコ・ロビン。なんでおめぇ海兵の服を着てる?」

 

「海兵だから」

 

「自分がどういう立場なのか分かってるのかよいッ!!!!!!????」

 

 

久しぶりに聞いたなそのセリフ。

 

 

「何が目的で海軍に入ってやがる?」

 

「お兄ちゃんがいるから」

「お前ら兄妹は頭がおかしいのかよいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」

 

 

失礼な。ロビンよりましだと自負してます。

 

 

「………おい、まて。まさかと思うがそんな髪を変えた程度で海軍に………バレてないとかいわねぇよな?」

 

「バレてませんね。まったく」

 

「俺が言うのもおかしいが……大丈夫なのか海軍………」

 

 

 

いや、ダメですよ。



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ドフラミンゴとロシナンテ

「……島で500人の兵士が海賊の人質になる事件が発生。ロブ・ルッチが事件を収める……か」

 

 

 

書類整理中に見つけたこの事件。

ロブ・ルッチ。麦わら海賊団に襲いかかる名前だ。

正直これは悩んだ。僕の能力ならその海賊を簡単に捕らえるのとは出来る。だけど……あの事件は悲惨ではあったが間違いなくロビンとルフィ達の絆を確かにし、さらに一段階上の強さを手にした出来事である。

 

まぁ、僕の隣で……いや膝の上で寝ているロビンはもうあの苦しみを味わうことはない。それでもロブ・ルッチはきっとルフィの前に現れて戦うことになるはず。それはこれからの戦いの糧になる。ならそのまましたほうがいいも思った。

 

さて、今日はこの出来事だけではない。

センゴクさんから召集があったのだ。それも内密にという珍しい出来事が。

 

ゆっくりとロビンをソファーに下ろして僕はセンゴクさんの元へ向かった。

 

 

「来たかハジメ」

 

「お疲れ様です」

 

 

軽い挨拶をするとそこには見たことのない海兵がいた。

いや、僕は知っている。実際に見たことはないけどその人物を知っている。

 

 

「紹介しよう。ロシナンテだ」

 

「どうも、ロシナンテだ」

 

「初めまして」

 

 

握手もそこそこにさっそくセンゴクさんから説明を受けた。

要約すると兄ドフラミンゴの暴走を止めるため海軍のスパイとしてドンキホーテ海賊団に潜入するということ。

 

 

「お兄さんの暴走を止めるため…ですか……」

 

「聞こえはいいですが、私は身内を売ったのです。

それでも……止めたかったのです」

 

「いいじゃないですか?

僕が呼ばれたのはお手伝いすればいいですか?」

 

「あぁ。

正直ハジメが出れば簡単に終わるかもしれない。

しかし問題はそれだけじゃない。最善としてロシナンテの手伝いで十分だ」

 

 

その問題とはきっと黒幕であるカイドウのことだろう。

カイドウ。流石に僕一人じゃ無理かな?いけそうな気がするけど……まぁ、センゴクさんがそういうなら止めておこう。

 

 

「分かりました。じゃ手始めにドフラミンゴに軽いお仕置きをしてくればいいんですね」

 

「分かってないッ!!!??」

 

「お、おい…止めてくれよ……これから信頼されないといけないのによ……」

 

「ですからいいじゃないんですか。

僕がその愚兄をボコります。すると愚兄は僕を狙ってきますよね。でロシナンテさんが僕の情報を漏らして一緒に倒そうといえば信頼を得ますよね」

 

 

その言葉にちょっと真剣に考える二人。

 

 

「……確かにそれなら……」

 

「しかし、情報って何を……」

 

「それは………」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「……く、クソが………」

 

「ドフィ!!!」

 

「若ッ!!!!」

 

 

現在、ドフラミンゴを血祭りにあげてます。

いやースッキリするわー。畜生を退治するのはスッキリする。

 

 

「お兄ちゃんの邪魔しないで」

 

「く、くそ……ドフィッ!!!!」

 

 

他の幹部はロビンの能力で完全に拘束されている。

ロビンのハナハナの能力は原作よりパワーアップしており、その手一本に武装色をつけることが出来る。だから幹部一人に付き「千本」使っているからいわば千人の武装色で取り押さえられている状態。抜けれる訳がない。

 

 

「な、何なんだテメェは……」

 

「えっ。自己紹介しましたよね。忘れやすい体質何ですか?」

 

「ぶっ…殺す……」

 

「はい、出来ないことは言わないように」

 

 

そういってハジメはもう一度ドフラミンゴの腹にガープの拳骨の衝撃をお見舞いした。衝撃に耐えられなかったドフラミンゴはそのまま吹き飛び建物の壁に突き刺さった。

 

 

「いやああああぁぁぁ!!!」

 

「ドフィッ!!!!」

 

 

なんか僕が悪者みたい……

まぁ、別にどうも思わないけどね。

僕の最終目標はルフィ達に最高の未来を。

そのために別に周りからどう思われてもね……関係ないな!

 

さてと、ドフラミンゴに近づくともう虫の息。

トドメを差したほうがいいのではないかと思ったけどセンゴクさんから「本当に余計なことはするな!!!」と釘を刺されたからな……

 

 

「さて、とりあえずこれからさき大人しくしてくれるなら見逃すけど?」

 

「……海軍参謀にしては、ずいぶん優しいこった……」

 

「でしょう。どうする?」

 

「…死んだほうがマシだ……」

 

 

ニヤッと笑うその態度にカッチーンときた僕はニッコリ笑い返してドフラミンゴに向けて両手を出して

 

 

「じゃ……しばらく死んどいて」

 

 

と、グザンさんの冷気プラス一時停止で空気中の分子を止めて絶対零度の世界をドフラミンゴの周りに一瞬にして作り出した。

ドフラミンゴはその瞬間凍結によりニヤッと笑ったまま氷像と化した。

 

 

「ドフィ…ドフィ……ドフィッ!!!!」

「いやあぁ若様ッ!!!!」

 

 

もがきドフラミンゴに近付こうとしているがロビンの拘束から抜けれるわけがない。

まぁ、ずっとそのままにするわけにもいかなかったので彼らの足を氷により拘束してロビンの能力を解いた。

それと幹部というかドフラミンゴの仲間全員の記憶をどうにかしないとな。この能力とロビンの能力を覚えたままは困る。

 

 

「さて、今日の出来事は無かったことになるけど…言うことある?」

 

「……見つけ出して……殺す……」

 

 

威勢がいいね。と思いながら幹部の一人の頭を触る。

そして次の瞬間にはビクッと震えて気絶した。

殺されたと思い他の仲間が騒ぐ。殺してないよ。ただ今日の出来事を一時停止によって止めただけ。用は記憶を思い出さないように封印したのだ。

 

それを全員したあと、遅れてきたロシナンテから一言。

 

 

「………何をした?」

 

「言われた通りに……制圧しました?」

 

「違うだろうがッ!!!!!

共通の敵を作るための作戦は!!!!」

 

「あぁ、いやよく考えたらドフラミンゴに流す情報って………ないな~と思って」

 

「なら……なら、最初から作戦を立てるな!!!!」

 

 

なんか色々怒られたけど、要はドフラミンゴの部下になればいいんだから()()()()()()()()ドフラミンゴを解凍すればいいんじゃねえ?とアイデアをだしたらなんとか納得してくれた。

だってあの氷、クザンさんの作った氷より頑丈だから簡単に解凍できるわけがない。

 

その解凍の方法……は知らないから頑張れと言ったらまた怒られたからさっさと退散しました。

 

 

…………………………

 

 

『苦労したんですよ……どこかの能力者によって凍らされたドフラミンゴを解凍するのに……』

 

「………クザン……」

 

「違いますよ。ずっと書類整理してましたからね」

 

「では、ハジメが言っていた()()()()()()……」

 

「そうですね。警戒をするべきかと」

 

 

えぇーと、うん。

凍らせたことに関しての辻褄合わせに謎の能力者を作り出した。それによりまず氷と言ったらでクザンさんが呼ばれてこの秘密の作戦が一人バレたがまぁ気にしてない。というか僕が関わった時点でアウトだよね。

 

しかしちょっとやり過ぎたよなーと思いながらロシナンテの話を聞く。

 

 

『とにかくドフラミンゴはぶちギレてますよ。

すぐにでもハジメ参謀に攻めいるって……なんとか宥めましたけど……』

 

「でも潜入には成功しましたよね」

 

『でもやりすぎなんですよ……とにかくしばらくはこちらに近づかないように』

 

 

とでんでん虫が切れてハァーと二人がため息をつく。

 

 

「謎の能力者……まさかクザン以外に氷結系の能力者がいるとは……」

 

「……ですね……」

 

 

そういいながらセンゴクさんにバレないように僕を睨むクザンさん。そういえば知ってたねクザンさんは。

まあ、いいかと思いながら今回の教訓として……ロビンはもうへたに逆らわないようにしないといけないことが分かった。



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ターニングポイント

さて、今までの中で最大の危機かな?

クザンさんが……まじで僕を脅しにかかってきた。

 

 

「今まで聞かないでおいた。だが今回のことでもうダメだ。

……ハジメ参謀、お前は()()()()??」

 

 

だよね。そうなるよねー。

話を聞かれないようにとクザンさんの部屋にはクザンさんと僕だけ。ロビンにも退出してもらい誰も入れないように命令が下った。

今までの中でマジな顔。

いつも誤魔化していたけど……流石に無理かな。

 

 

「そうですね。能力者、ですかね」

 

「なんで曖昧なんだ?」

 

「ちょっと特殊でして……」

 

 

まぁ、ロビンのことも黙ってもらってるし割りと色々見逃してくれているみたいだしレイリーさんには悪いけどこの人には話していいかなーと思った僕は

 

 

「見てもらったほうが早いかもですね」

 

 

僕はカップに入っている紅茶をひっくり返し、もう片方の手で紅茶を受け止めた。すると一時停止により紅茶は停止、それも()()()()()した状態である。

 

 

……くそ、マジか………

……なんつうもんも…見せやがって……」

 

 

すると後悔するように項垂れるクザン。

あれ??なんかやらかしましたか?

 

 

「どうしたんですか?」

 

「……ハジメ。その能力、どれだけの()()があるのか知ってるのか?」

 

「価値、ですか?まあ、強いですし他の悪魔の実よりは……」

 

「世界政府が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!」

 

 

………マジかぁ。

これ、そんなにスゴいの……

 

 

「知っているだろうが…その能力には海楼石や海の効果が全く効かない。そして全ての能力者の能力を封じることの出来る()()()()()()()()()()悪魔の実だ」

 

 

それ知ってたけど、改めて聞くと本当にスゴいんだな。

弱点もなく、能力者の弱点になる悪魔の実。

 

 

「分かるだろう。そいつを手にすれば世界を牛耳ることは簡単だ。だから世界政府はそれを手にしようと躍起になってる。もちろん世界貴族もだ。そして海賊も海軍も……」

 

 

……あぁーやっと本当に理解したかも。

レイリーが言っていたのってこれのことか。

確かに無敵だなこれは。誰もが欲しがるわけだよ。

 

 

「そしてその能力者になったやつは年をとらない。

肉体だけはその年で止まり、ちゃんと寿命をむかえる。

つまりだ、無敵の能力者を次手に入れるにはハジメの寿命が切れるまで待たないといけない」

 

「つまり??」

 

「バレたら……国を滅ぼしてでもお前を捕まえようとするだろうな」

 

 

ま、マジかよ……

確かに成長期止まったかなーと思っていたけど能力のせいか……

それもバレたら僕を捕まえに、国を滅ぼしてでも来るって……

 

 

「……どうしようかな?」

 

「なんで他人事みたいに……

いいかハジメよく聞け。お前の成長については誤魔化せる。少なくとも()()を迎える歳までは大丈夫だ」

 

 

老いならまだ先の話。

それなら確かにルフィ達の未来までは大丈夫だ。

 

 

「能力者でも海の効果を受けないから一般人として紛れる。ここまでは大丈夫だ。問題は……」

 

「僕が今回みたいに能力を使うこと」

 

「そうだ。一切使うな、その能力を。

使えばもう俺は手助けは出来ない。全力でお前を捕まえにいく」

 

 

その目はマジだ。本気で捕まえる気だ。

だから能力を使うなと言っている。

海賊でもないのに、その手で捕まえさせてくれるなと。

 

 

「…分かりました。使いません」

 

「頼むぞ。お前を捕まえるなんて……想像しただけで寿命が縮む……」

 

 

ハァーとため息をつき紅茶をイッキ飲みするクザン。

でもいいのだろうか?

 

 

「でもいいんですか?いま捕まえなくても?」

 

「……書類整理、誰がやるんだ?」

 

「テメェだよグザン」

 

「……本気で肩入れしたことを後悔してるよ…ったく……」

 

 

 

…………………………

 

 

さて、能力は使うなとは言われたけど()()()()()()()()()()()()()()()()()

まあクザンさんの記憶を止めることはしないけど、最悪記憶を止めれば問題ない。だから最小限にするということにした。

 

で次の日。さっそく能力を使いたくなる出来事が。

 

 

「……えーと、あれマキノさんからだ……」

 

久しぶりに手紙が届いた。

まえはよくルフィの事を書いてくれていたけど、最近よくマキノさんの身辺状況もよく書いてあってその頃から何故か送られてくる回数が減った。

そういえばちょっと忙しくて返事が返せてなかった時ぐらいかなー。すぐに返したけどなんか素っ気ない返事が返ってきたっけ。それから久しぶりに手紙が来たんだ。

 

 

どんな内容かなーと見てみると。

 

 

『ハジメ様。いかがお過ごしでしょうか。こちらは天候に恵まれ日々充実に過ごしています。そちらは天候が変わりやすいと聞きます。どうか体には気をつけてください。

さて、この度お手紙を出したのには理由がありまして。

けしてなかなか返信が返ってこなくって拗ねていたタイミングで返信がくるから、なんか素っ気なくしか返信出来ずに、そのあと後悔の念に苛まれて手紙を送れなかったということはなく、今回はある二人の子供についてです』

 

 

 

お、おう……

なんか前置きがずいぶんと長いなー

それもまるでそうだったんですよ、気づいていましたか?感を出している気がするのは気のせいか?

 

 

『その子達はなんと言いますか大人を信じていなくて、自分達だけで生きているという強い意思をもって二人で森の中で生活しています。

そこには獰猛な生き物もいて、私は毎日ハラハラしてます。もちろん保護者というわけではないですがそんな人も近くにはいるのですがやはり心配はつきません。

そして最近になりガープさんが……ルフィをその森に連れていったのです』

 

 

…………はい??

あれ、ちょっとまって早すぎない?

確かあと1、2年してからじゃなかったけ!!??

 

 

 

『ルフィのためじゃ!!とかいってますけどあれではルフィが危ないです。ですからお願いです。どうにかルフィを助けてあげてください』

 

 

………なる~。

よし、まずは……ジジィ殺す。

 

 

 

…………………………

 

 

 

「……ず、ずみばぜん……」

 

「マジふざけるなよな。あぁ!!

なに2才児に過酷な環境に連れていく必要性がある!!?」

 

「……づよぐなるだめに……」

 

「もう何もするなこのクソ脳筋ッ!!!!!」

 

 

フーシャ村。マキノから最新の事情を聞いたハジメは改めてガープをボコり、ルフィがいるだろう森に向かって歩いていた。

 

どうやら流石に2才児をほっとけなかったのか二人の子供、エースとサボはルフィの面倒を見てくれているようだが……

 

 

「うわああああぁぁぁん!!!!」

 

「だああッッッ!!うるせえ!!!!黙らせろよサボ!!」

 

「まだ2才児だぞ!!!暴力振るうクソ野郎にはなりたくねぇ!!!」

 

「だけどその前に……くそッ!!こっちがやられるぞ!!!!」

 

 

 

ルフィが恐怖で大泣きしているために獰猛な生き物がエース達に襲いかかっているのだ。

二人ともまだ子供で、大人が複数いても倒せるかどうかの生き物が巨大ワニだ。



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特例中の特例

「いや本当にありがとう!!助かったよ!!!」

 

「それはいいけどあんなところで何してたの?」

 

「うるせぇ、テメェには関係ないだろが」

 

「おいエースッ!!…すみません、いいやつなんですけど……」

 

「あぁうん。気にしなくていいよ」

 

 

常識人のように話すのがサボ。ツンツンと当たるのがエース。僕の腕の中で寝ているのがルフィ。そして僕の隣で「寂しかったんですよ」「何してましたか?」とかずっと聞いてくるマキノ。床でゴミのように倒れているのがガープ。そしてそんな状況を見てマキノのお店の玄関先で固まっているのが村長と

 

 

「な、なんだい…このカオスは……」

 

 

山賊であるダダン。のちにエースやルフィ達を育ててくれる人。山賊なのになんでそんなに優しいのかなー。ガープさんの知り合いという理由もあるんだろうけど…

 

 

「ちょっ、ちょっとガープさん!!一体何を私達にさせるつもりなんですか!!?」

 

 

その声に頭をあげようとしたが僕がその頭を踏みつけた。

 

 

「喋るなクソが」

 

「……ワ、ワシ……年の功……」

 

「アァッ!!?

だったらなんでこんな幼児虐待をするのかな?

……そんなことをするやつの言葉、聞く耳を持たないんだよッ!!」

 

 

軽く足を上げたあと思いっきり踏みつけた。

それに村長とダダンは口を開けて固まっていた。

 

 

「えぇーと、村長さん。そちらの方は?」

 

「あっ、あぁ……山賊のダダン……」

 

「……山賊…ですか?」

 

 

さらに怒ったように見えた村長は一歩下がった。

しかしダダンは落ち着いて

 

 

「…あぁ山賊だ。

言い訳のようかもしれないけど、一般人を襲うようなゲスじゃないよ。そういう弱い人を襲う山賊を襲う山賊さ。文句でもあるかい?」

 

「いえ。()()()()()()()()()

 

 

そういって口調が柔らかくなりホッとする。

しかしダダンは気づいていた。ただ普通に山賊と言っていたら一体どうなっていたのかと……

 

 

「で、このゴミクズに呼ばれたんですね。

どんな用かは…聞けませんね。ナニしてんだこいつは」

 

(自分でやっておいて……)

 

 

そんなこと、いまのハジメには言わないほうがいいと全員が認識した。

すると思わぬところから話が上がった。

 

 

「おれ知ってるよ。確か知り合いに俺らを預けるって言ってたけど……まさか山賊だったなんてな……」

 

「そんなことを考えてたのかいガープさんは…ったく、山賊に一体何を頼むつもりなんだい……」

 

 

バカだからね。確かに強くはなったけど、やり方がおかしい。そしてルフィの扱いがもっとおかしい。

 

 

「どうせこのグズは過酷な環境化の中で強くなるために、そしてダダンさんという山賊が必要最低限の面倒を見てくれるという計算を……してないだろうけど直感的に感じた、というところでしょうかね」

 

 

その言葉にここにいる皆が「なるほど」と納得してくれた。というかそれで納得なれるというこのグズは…グザンよりグズだな。

 

 

「ダダンさんには悪いけどルフィ達を預けるなんて出来ません」

 

「こっちだって願い下げだよ」

 

「でもここに僕の知り合いを呼びますので引き続きよろしくお願いします」

 

「勝手によろしくするなッ!!!!!」

 

 

 

「安心してください。その子僕の妹になるんですけど海兵ですけど基本的に僕以外のいうことは全く聞きませんけどある程度の()()()をしっかりいっておけば従順にやってくれる子なので。それとこちらに寄越すのは()()()になりますのであまり強い衝撃は控えてくださいね。再びここに連れてくるのに時間がかかりますので。あっ、()()()ですので()()にリアルタイムで情報が入りますので……この子達に何かあったら……その人生自体を()()()()()()()()()()()()

 

 

「待って。本当に待って。

もう色々情報が多くて……とにかく1つだけ……お前ら何者だよッ

 

 

稀にみるツッコミの天才が現れたな。

 

 

 

…………………………

 

 

 

グズを回収して海軍本部に戻った。

でロビンに事情を話したら分かってくれたのだがその後が大変だった。

いやーこの()()()本当にロビンそっくりで思考もそのまま。つまり僕から離れて過ごすなんて『死』を宣告されたのと同義といってきたのだ。

 

あっ、そうでした。説明してませんでしたね。

このストーカー、一秒でも離れたくないと少し本部を離れている間に『覚醒』してました。僕でもまだなのに……ストーカー恐るべし。

 

で、その『覚醒』の能力は本編でもあった二年間の修行後に見せたあの分身。しかしあれは一時的だがこの覚醒では完全に『分身体』として使える。つまり情報の共有と分身体の自己意思、何処までも離れても能力が有効というあり得ない力。流石に海や海楼石はダメだけどそれでも恐ろしい能力である。

 

いまはまだ一体しか呼べないようだが本人は五体呼び出したいらしい。……正直一体でも頭痛いのに……どっちにしろ海軍に身を置いている以上必要以上に使わせないけど……どうやら最近分身体を呼ばずとも()()()()()()()()()()()()()()()()分かるようになったみたいだ。さっきの説明も話の序盤でもう納得している雰囲気だった。

 

……もういや。怖いこの(ストーカー)

恐らくロビンの耳や目を遠隔操作、つまり僕が気づかないうちに体の何処かに付けている。ということだろうと持っている。じゃないと説明がつかないし、覚醒してるからそれぐらい出来そう……

 

……誰かがいった。愛は強し、と。

違うよ。行き過ぎた愛は恐ろし、だ。

 

 

とにかく、とにかくロビンの分身体に無事にルフィ達を育ててくれたら()()()をあげると行ったら飛んで向かった。文字通り背中に羽を付けて。本体も飛び出そうとしたので()()()()()()()()()()()()。その場で昇天してくれたので助かったけどここ海軍本部だよー。能力使うなよ!!幸いトップスピードだったから誰にも見られずに助かったけど……もう……いや……

 

 

…………………………

 

 

「あのよ、ここ避難場所じゃないんだよい」

 

「……すみません。マトモな人がいるの、ここしか、なくて……」

 

「……あぁ、まぁ、同情はするが……」

 

 

なんか現実逃避したくなったハジメは一目散に白ひげ海賊団に来た。そして体操座りでいじけている。その隣にはもちろんロビン(本体)がいる。

 

 

「分かりますか??海軍って、頭のおかしい人ばかりなんですよ?」

 

(その代表格……とは言わないほうが良さそうだな……)

 

「いまの極めつけはここにいますが……どんな悪口でも「私はどんなお兄ちゃんでも受け入れる」って……」

 

「そうだよ!!お兄ちゃんはお兄ちゃんだからッ!!!」

 

「………オヤジ……」

 

「……仕方ねぇ。こいつは海軍でも特別だからな。

だから特例だ。海軍には俺からいっておいてやる。

しばらくここにいろ」

 

「……ありがとう…ございます……」

 

 

 

しばらく海軍に身をおくつもりだったが精神的に無理がきた。こっそりと付けてきた八咫烏の人達もおじゃまするすると白ひげさんに許可をもらいしばらくやっかいになることにした。

 

八咫烏の人達にはセンゴクさんとの連絡手段、もとい書類整理の行き来をお願いしている。そうしないとセンゴクさんが死ぬ。主に胃が死ぬ。クザン?アイツは書類に埋もれて死ね。

 

ということで海賊、海軍両者による特例中の特例。

参謀ハジメの白ひげ海賊団への一時的入隊が決まったのだった。



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白ひげ海賊団の皆様

白ひげ海賊団に身をおいて一年。

簡単に説明すると海軍が酷いことになっている。

 

八咫烏の報告によるとクザンさんは書類整理による極度のストレスを抱えて、逆に書類整理を淡々とこなす一方普段がもうダメ人間になっているようだ。

本編と同じようにだらけることが好きなクザンさんだが、部屋はゴミ屋敷で髭や髪は伸び放題。本部から出るときはしっかり身支度するが終わればダメ人間に戻り本部から出ない限り書類整理しかできない人になってしまった。

 

………あぁ…「書類整理」というものを押し付けすぎたせいかな~

 

 

ボルサリーノさんは……太った。

うん、何言ってるんだと思うだろうけど太ったのだ。

日課になっていた僕との茶会がなくなり、それを埋めるように間食を続けていき、尚且ピカピカの能力で極力動かないというクザンさんに似たダメ人間が発揮され……太ったのだ。

 

これで戦闘力が落ちるわけではないけど……海兵からの信頼が落ちたのはいうまでもない。

 

 

サカズキさんは……可愛くなった。

いや、うん、分かるよ。気持ち悪いよね。うん。

あんなゴツいおじさんが可愛いとか気持ち悪いよね。

でも……可愛くなったのだ。

あの人僕を見るなり攻撃してくるし、電話ごしでもキレてくるし、お土産渡しても照れ隠しか暴れるし、とにかく僕に対する扱いがおかしかった。

だけどそれは裏返せば……依存してたということらしい。

 

いや、僕がそうだと思ったわけじゃないよ。報告によるとだからね。

 

だって……部屋に僕の()()()()()があったって……

それも一体じゃなくて……何体も……

 

もう、一種のホラーかと思ったよ。

隣にいるロビン(ストーカー)が増えたかと思ったよ。

 

だけど実際は、そのぬいぐるみに……えーと、うん…あんまりいいたく…ないけど、その……()()()()()()()()()()らしい……

それも今まで見たことのない()()()()()話しかけているそうだ……

 

それを目撃した八咫烏の一人はトラウマになり、今もまだ夢にでて魘されているそうだ。

 

 

というのことで、海軍がさらにヤバくなりセンゴクさんは毎日命懸けで(ストレスという病から)海軍を引っ張っているそうだ。すみませんがまだ帰れないと通達してもらっているが…大分痩せ細ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫かな……」

 

「また海軍の心配かよい?

一応海賊の船に乗ってるんだから、敵の心配なんぞするなよい」

 

「といいましても、軽く海軍の状況知ってますよね」

 

「……まぁ、敵ながら…哀れだとは思うが……」

 

 

マルコさんも同情してしまうほどに海軍は可哀想。

でも表向きはボルサリーノさんぐらいが影響をみせているけどちゃんと海軍としてはやっているようだから少しは安心している。

 

 

「いいじゃねえか。

オヤジが認めたんだ。それでよ」

 

「サッチさん」

 

「そうだぞマルコ。それにハジメは海軍だろうがなんだろうが俺は気に入っていたぜ」

 

「ビスコさん」

 

「ハジメは好きなだけいろ。

海軍が取り戻ろうとしたら追い払ってやる」

 

「ジョズさん」

 

「お前ら…ハジメに甘過ぎなんだよい……」

 

 

いや、本当にいい人達だ。ここはオアシスかな?

はぁ~このままここにいようかなーと僕の耳元で悪魔なのか天使なのか声が聞こえてくる。

 

 

「そう言ってくれるだけでありがたいです。

本当に皆さんには感謝しかありません」

 

「んなもん、オヤジに言わせたら「家族」だから当たり前だっていうだろうよい」

 

「…家族、って僕正式入隊したわけじゃ……」

 

「それでもオヤジが認めて同じ飯を食って同じ船で冒険している。それだけで家族なんだよい」

 

 

……ちょっと嬉しい……

家族って、ロビン以外にそう思ったことはなかった。ストーカーでも妹として見てたから。

ここでは皆が家族、そういってくれるなんて……

 

 

「じゃ僕は一番末っ子なんですね」

 

「あぁ、ハジメとロ、いやニコルはそういうことになるな」

 

 

おおっ。僕に兄や姉が出来たッ!!

なんか超新鮮な感じだぁ!!

 

 

「そういうわけだ。おい、俺も兄だと思っていいんだぜ」

「うるせぇ、黙れ、死ね。絶対にお前だけは言わん」

 

 

突然入ってきたその声に条件反射のように否定と悪態をついてやった。「連れねぇな」と言ってくる奴の方を見ると本編でいやってほどムカつく一人がそこにいた。

 

 

「んなこというなよ。俺も白ひげ海賊団の一員だぜ」

「知るか。白ひげさんがそう言っても僕はお前だけは認めん」

 

「毛嫌いにもほどがあるんじゃねえか?

えぇ、おい。俺がお前に、何をした?」

「存在そのもの」

 

 

のちにここにいるサッチさんを殺害してヤミヤミの実を奪い、そして大戦争を引き起こしたうえに白ひげさんとエースの命を奪うことになるこの男。

 

 

「ならどうしようもないなー!!」

「あぁ。だから安心して死ねティーチ」

 

 

黒ひげと名乗ることになるマーシャル・D・ティーチ。

そうこいつはすでにこの船に乗っていた。

そして虎視眈々とヤミヤミの実を狙っている。

前に白ひげさんとマルコさんには比喩的な感じで伝えたけど、事が起きるまでまだまだ時間がある。

といっても、僕という()()がこの世界に来て大分本編と違い変わっている。もしかしたら悪魔の実を手にいれる日が早まるかもしれない。

 

しかしその時僕はここにいないだろう。

麦わら海賊団に入るか分からないけど、少なくとも近くで見届けるつもりだからだ。そしてロビンを()()()()()()()()()()()()()()()()()()

なのでいま分身体がルフィ達の元にいるのは大いに助かる。じゃないとこのストーカーはいつまでも僕から離れないだろうから。

 

と、話を戻すととにかくこいつはまだ事件を起こしていないけど、もうなんか生理的に嫌い、大嫌いだ。

なのでこうやって毛嫌いしすぎて変に感づかれる可能性があったとしても、こいつとだけは仲良くなんか出来るわけがない。

 

 

「おいおい、まだティーチを毛嫌いしてるのかハジメ」

 

「すみません白ひげさん。せっかく家族と呼べる間柄として認めてもらったんですが……こいつだけは嫌です」

 

「ゼハハハハッ!!逆にその罵倒が気持ちいいってもんだ!!!」

 

「うわっ、キモッ!!!」

 

「やめとけハジメ。いくら家族として認めたとはいえそいつも俺からしたら家族だ。家族が傷つけあうのは見たくねえ」

 

 

分かっていますけど……そんな人情の塊だと分かっていますけど……

 

 

「……僕がいうのもなんですけど、サカズキさんと仲良くしたいと思いますか?あり得ませんけど海賊になりたいと、白ひげ海賊団に入りたいと言ってきたら。ただ単純に白ひげさんに憧れて入りたいと、「家族になりたい」と言ってきたら……」

 

 

「殺すな」

「でしょ」

 

 

用はそういうことです。無理なものは無理。

 

 

 

…………………………

 

 

「……これって……まさか……」

 

 

数日がたったある日、いつも通りに僕の隣で寝ているロビン共々起こしてくれたマルコさんからいつも通りに新聞をもらう僕はある2つの一面を見てあることが始まったと理解した。

 

 

「聖地マリージョアでボヤ騒ぎがあり、世界貴族が一時的に避難……って、これ……フィッシャー・タイガーが逃げ出した……やつか……」

 

 

あんなところでボヤ騒ぎなんてまずないだろうし、第一に()()()()()()()()()()()とか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて怪しすぎる……

 

 

 

「フレバンスにて国民が一斉に珀鉛病を発症。周辺諸国によって隣国への通路は封鎖された……ということは、ローの生まれ故郷のやつか……」

 

 

トラファルガー・ロー。

のちに麦わら海軍団と同盟を組み、ドフラミンドを倒すことになる。

 

これってほとんど同時期だったんだな。

どうしようこれ?介入を絶対にしないといけないわけじゃないけど……

 

フィッシャー・タイガーについては最低限、あのアーロンをどうにかしてくれたらいいから、今すぐいかなくてもいい。というか翌年にまたマリージョアに言ってもらって奴隷を解放してもらわないと。あそこにはコアラがいるし。

 

だけもローのところに行ってもなー。

ローには悪いけどロシナンテに会ってもらわないといけないし、きっとロシナンテと一緒に旅をしたことであのローという人格が出来たんだろうからまだ介入出来ないし……

 

 

そうなるとフィッシャー・タイガーかな?

でもいま会ってもきっと人間嫌っているだろうし…やっぱり会わないほうがいいかなー

というかいまごろフィッシャー・タイガーは、ってタイガーでいいや。タイガーは魚人島に帰ったんだよな。

 

流石に魚人島にはいけないだろう。

白ひげさんに「魚人島に連れていってください」なんて言えないし、第一連れていく理由がないもんな。

 

仕方ない。今回は諦めるしかないな。

こればかりは仕方ないよ。うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魚人島だぁ?」

「なに言ってやがる小僧が……出航だッ!!!!!」

「かるッ!!?試しに言っただけですよ!!!」

 

「いい機会だ。丁度ネプチューンから「娘が生まれたから会いに来てくれ」と手紙を貰ってたからな。返事を書いて送れば向こうにつく前には手紙は届くだろうから問題ねぇだろう」

 

「まさかの文通友達ですかッ!!」

「ちなみにセンゴクもだ」

 

「………まさかというか、意外というか……

本当に僕がいうのはおかしいけど、海賊と海軍のトップがなにやってるんだと言いたいけど……というか言ってるけど………まぁ、いけるなら、うん……いいか……」

 

 

なんか白ひげさんの新しい一面と、センゴクさんのあまり見たくなかった一面を見てしまったところで魚人島にいくことになった。

 

……でも、あれ「コーディング」とかするのにシャボンディ諸島に向かわないといけないのかな?

というかここは新世界だし、どこで「コーディング」するんだろうか?新世界にもあるのだろうか?



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フィッシャー・タイガー

「おぉ、初めましてじゃもん!ワシはネプチューンじゃもん」

 

「ど、どうも……」

 

「久々に来たと思ったらまさか海軍を連れてくるなんて…一体どういう風の吹き回しなんじゃもん?」

 

「ハジメは海軍なんぞに埋もれる器じゃねえってことだ。こいつは俺の家族になったからな」

 

「海軍大将と同じ位の参謀に白ひげ海賊団の仲間入りか……とんでもない男じゃもん……」

 

 

 

なんか訳の分からないまま魚人島についた。

いや、マジで。どこでコーディングしたか分からずについたのだ。

白ひげさんがいままでの話を聞きたいと呼ばれたから船長室に通されて(ロビンや始めから見つかっていた八咫烏も招き入れられた)宴会のようなノリで過ごしていたら着いていた。

 

……結構重要なシーンだったと思うけど、まぁ仕方ないな。

 

と考えていたらいつの間にか目の前にネプチューン王がいた。

……ちょっと考えすぎというか、もう少し周りを見ないといけないなーと真剣に考えながら

 

 

「僕は別に普通ですよ」

 

「「それはない」」

 

 

とあっさりと否定された。

そして周りにいるロビンや八咫烏、白ひげ海賊団の幹部さんも同じように頷く。なんか解せないな。

 

 

「しかしいままで来なかった魚人島になぜ来たんだもん?ハジメを紹介するためだけじゃないんだもん?」

 

「娘が生まれたそうじゃねえか。祝いついでにハジメを紹介しにきたんだよ」

 

「それはありがとうじゃもん!

おい、今すぐ宴会の用意じゃもん!!!」

 

 

すると兵士が一斉に部屋から駆け出し、それと代わり入ってきたのがオトヒメ王妃とベビーカーに乗せられたしらほしだった。

 

 

「おおっ!!そいつがしらほしかぁ!!」

 

「お久しぶりね白ひげさん。ふふふ、可愛いでしょう」

 

「こいつは間違いなくいい女に育つな」

 

 

おお、赤ちゃんなのにマジでデカいなシラホシ。

一体どういう成長期だったらあんなに育つのか……

するとオトヒメがこちらに気づいたようで

 

 

「あら、そちら方は初めてね。それも海軍みたいだけど白ひげさん達と一緒なんて大丈夫なの??」

 

「こいつらは特別だ。それにこのガキは大将と同等の位、参謀を持っていながら俺の家族だからな」

 

「……すごいお方なのね……」

 

 

そうなのか?

名ばかりのような気がするんだけど、いや本当に。

確かに白ひげさんの家族ってだけでスゴいかもしれないけど、これ一時的処置だよね。

 

 

「どうぞゆっくりしていってくださいね」

 

「ありがとうございます」

 

「それじゃ宴会じゃもん!!!!」

 

 

宴会か。そこにフィッシャー・タイガー現れるかな?

 

 

 

…………………………

 

 

 

結果は現れなかった。

それはそうだろう、全く面識のない僕が偶然にフィッシャー・タイガーに会えるなんて…今までが都合よく行き過ぎたのだろう。だから魚人島さえいければ都合よく会えると勘違いしていたようだ。

 

頭を冷やすために城下におりて散歩をしていると、周りの魚人や人魚たちからなんかスゴく見られている。

まぁ、ここは白ひげ海賊団の縄張りで、いくら客人だとしても海軍がくる場所じゃない。

 

一応ネプチューンが話をしてくれているようだが、そう簡単に割りきれるものじゃないだろう。

 

 

すると集団で近づいてくる魚人。

それもなんかガラが悪そうな者ばかり……ってあれ?

 

 

 

「てめぇか、白ひげ海賊団に付いてきた政府の犬は」

 

「何が目的じゃ海軍参謀」

 

 

……うわぁー!!

まさかここで会うなんて…いや、もしかしたらと思ってたけどさ、それでもフィッシャー・タイガーの後だと思っていたからなー

 

義理と人情が熱いが見た目てきにグレているジンベイと、この時から一際人間嫌いのと思われるアーロン。

 

 

「いきなりですね。なにか僕しましたか?」

 

「ネプチューン王から「なにもするな」と話はあったが裏があるのじゃろう」

 

「ありませんよ。目的としては()()()()()()()()()()()()()()()()ということなんですが」

 

「大アニキに何のようだ人間がッ!!!!!」

 

 

マトモな話を聞かないまま突っ込んでくるアーロン。

やっぱりこの時から人間嫌いのワガママというか後先考えないタイプなんだと分かった。

 

人間に比べて魚人の身体能力は別格。

しかしそれは一般人と比べたらの話である。

極めつけに僕は能力者。それも弱点のないチート持ち。

そんな僕に向かってきても

 

 

「はい、ちゃんと話を聞きましょうね。いい大人何だから」

 

「くそがッ!!!はなせッ!!!!!」

 

 

意図も簡単に捕まってしまう。

僕を吹き飛ばそうとしたその手を、衝撃を止めて両手を後ろに回して拘束。

逃げようと暴れているけどその攻撃も無効化してますよ。

 

 

「アーロンを、離さんかッ!!」

 

 

次はジンベイさん。

なんかこれ僕が悪者になってない?

とにかくここは僕が強者だと分かってもらったほうがいいなーと思い、正拳づきしてきたジンベイの拳を一時停止して受け止めたあと、ジンベイの体重を瞬間的に0にして拳を支点に持ち上げてそのまま僕の後ろへ投げた。もちろん手を離した瞬間的には一時停止を解除しています。

 

壁に激突したジンベイを見たアーロンはさらに暴れだし、仕方ないなーと手を離した瞬間に自慢の歯で僕の肩に噛みついてきた。しかし残念、これは一時停止せずとも武装色硬化で僕の皮膚にその歯は通らない。もちろん()()()()()()()()()()()してますので本当に無意味なんだよね。

 

 

「ガッ!!!」

 

「話を聞いてくれません、かね」

 

 

とにかく離れてもらおうとアーロンの体重も瞬間的に0にした後に一気に引き剥がして、ジンベイの元へ投げた。

 

 

「ちょっとは頭を冷やしてくれませんか?

第一、何か悪いことをするために来たとしたら僕は白ひげさんに殺されますよ」

 

 

その言葉に少しは冷静になったのか無闇に突っ込んでこなくなった。さてどうしたものかなーと悩んでいると

 

 

「うちの者が、悪かったな」

 

「タイのアニキッ!!!」

「大アニキッ!!!」

 

 

おおっ。ここで登場ですか。フィッシャー・タイガーさん。

 

 

「初めまして。海軍参謀ハジメです」

 

「フィッシャー・タイガーだ。海軍が俺に何のようだ?」

 

 

めちゃくちゃ警戒している。

それはそうだろう。まだタイガーさんが海賊じゃないとはいえ、人間で海軍なんて目の敵みたいなもんだしね。

 

 

「ちょっとお話しをしたいのですけど、ちょっと場所を変えていいですか?」

 

「ここでは話せないのか?」

 

「そうですね」

 

 

まだタイガーさんに起きたことをこの二人には話さないほうがいいだろう。だからヒントになるようなことも言えないし、出来るだけいまの状態で来てくれたら嬉しいんだけどな。するとやっぱり人間嫌いのアーロンが

 

 

「ふざけるなよ下等生物がッ!!!」

 

「ふざけていませんよ。そうやってすぐに感情的になる人にはお話し出来ないのですよ」

 

「ぶっ殺してやるッ!!!」

 

 

やっぱりダメだこいつ。

なんとかジンベイが「やめんかアーロンッ!!タイのアニキが決めることじゃ!!!」と止めてくれている。ジンベイぐらいにはいいかなーと思うけど、そこはタイガーさんから話したほうがいいんだろうなー

 

 

「……5分だけだ。

5分過ぎたら二人とも迎えにきてくれ」

 

「分かった」

「手を出したらぶっ殺すッ!!!」

 

「そんな事しませんよ」

 

 

…………………………

 

 

ちょっと離れた広場。

見聞色で周りに人がいないのを確認してタイガーさんとお話しをすることに。

 

 

「時間もありませんので本題をいいますね。

全ての人間があんなクソみたいなやつだと誤解してほしくないです」

 

「ッ!!!??

……知っているのか……」

 

「一応いっときますけど捕まえるなんてことはしませんよ。僕もあのクソは嫌いなので」

 

「海軍がいう言葉じゃないな」

 

 

そうですよねー

 

 

「あのクソはともかく、いきなり()()を信用しろなんて無理だと思います」

 

「………………」

 

「それでも……一定の()()を信じられたらいいなーと……僕は思ってます」

 

「……どうしてそれを俺にいう??」

 

 

まぁ、そう思うよね。

 

 

「きっといつか、どうしようもなく人間の力を借りる時がくると思います」

 

「そんなことは…ありえないッ!!!」

 

「かもしれません。

でも全ての人間が全てじゃありませんよ」

 

「それを信じろと、いうのかッ!!!」

 

「すぐになんて無理ですよ。

だから………」

 

 

僕はタイガーさんに手を差しのべた。

 

 

「僕から始めませんか??」

 

「……………」

 

 

長い沈黙が続く。

まぁ、いきなりこの手をとるなんて無理だろうな。

それにもう近づいてきているし

 

 

「大アニキッ!!!!」

 

「あと一分あったんですけどね。まあここまででいいですよ」

 

 

手を下げて帰ろうとしたらタイガーさんが

 

 

「待てッ!!」

「なんですか?」

 

「…………本当にそんな奴が、いるのか……」

 

「実際に見てもらわないとですかね。

こういうのは地道にコツコツとですから」

 

 

まぁタイガーさんに会ってみたかっただけだし、アーロンにはもしかしたら人間に対して悪いイメージが強くなったかな?まぁ何かやらかす時はぶっ潰すだけだね。



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解放と入隊

翌日。

 

 

「手を貸してもらうぞ海軍」

 

 

昨日はネプチューンからお城の一室を借りて寝ていたんだけど、次の日起きて歯を磨いていたらノック音が聞こえたので扉を開けてみるとそこにはフィッシャー・タイガーがいた。

 

 

「……えぇーと、何を?」

「奴隷解放の手伝いをしろ」

 

 

………うん?

奴隷解放って確か来年に起きるやつだよね。

 

 

「まぁ、僕もあんなクソから他の皆さんを助けたい思いはあるけど」

 

「なら、行くぞ」

 

「えっ、ちょっ、ちょっと待って!!!!」

 

 

何だという目でこちらを見てくるタイガーさん。

いや、まさかとは思うけど、そんなはずは……

 

 

「いまから向かう、なんて言わないですよね?」

「今からだ」

 

「決断早くないッ!!!!!」

 

 

確かに昨日はなんかタイガーの意思を掻き立てるようなことは言ったけど、なんで翌日になって行動するかな!!?

 

 

「俺もこの傷を癒してからだと思った。

だが、貴様が、参謀という肩書きがあるという強者が付いてくるなら話は別だ」

 

「いや、もうちょっと作戦と考えて……」

 

「俺が囮になる。その間に貴様が奴隷達を助ける」

 

「大雑把ッ!!?」

 

 

あれ、タイガーさんってこんなに感情的に行動する人だったかな。コレじゃあまりにも無謀すぎる。

 

 

「僕はいいとしてタイガーさんが危ないですよ。

………仕方ないな、ロビン、オックスさん」

 

「「はい」」

 

 

すると忍者と思うぐらい突然現れた。

ロビンはベッド下から、オックスさんは天井から現れてなにもなかったように平然と僕の後ろに立った。

それを見たタイガーさんはちょっと引いている。そういう反応になるよねー

 

 

「誰にも見つからないようにタイガーさんの援護して

残りの八咫烏達は解放の手伝いをしてもらうから」

 

「お兄ちゃん、私も一緒がいい」

 

「終わったらナデナデ10秒」

 

「私がいるのだから心配しなくていいわよタイの親分さん」

 

 

最近になってロビンが僕や八咫烏以外の人に対して()()()()()を使うようになってきた。それでもやっぱり()()()()()()()()が混ざっているのでさっきみたいな上から目線の言葉が出てくるようだ。

 

……僕としては元祖ロビンがいいんだけど…無理なんだろうな……

 

 

「………いいのか?」

 

「タイガーさんの信頼を勝ち取るいい機会ですし、なにより()()()()あのクソをヤれるなら……ふふふ、楽しみです」

 

「………何故だ??あんな奴等でも同情してしまう俺がいる………」

 

 

失敬な。悪いのはあっち。

僕は合法的にするだけです。

 

 

(いや、合法的じゃないし。見つかったら死刑だし)

 

 

ハジメに対して重度依存してない人達が一斉に思ったがそれは決して口には出さない。すると通り掛かった白ひげさんとマルコさん

 

 

「何を始めるつもりだハジメ」

 

「いいところに白ひげさん。いまからお出かけしてきます」

 

「……帰りが遅かったらメシ抜きだ」

 

「夕方前に帰ってきます」

 

 

よし、白ひげさんにも許可もらったし行くか!!

 

 

「ちょっと待つよい!!!」

 

「なんですかマルコさん」

 

「明らかに散歩じゃねえだろう。なにするつもりだ?」

 

「散歩ですよ。

たまたまゴミが落ちているかもしれませんのでそれを片付けて、そのゴミの奥にある物を掬い上げてくる。

そんなボランティアなことを……僕はします」

 

「やらかす気満々だろうがッ!!!!!」

 

 

おおっ、鋭い。

ボランティアといえば「頑張ってきて」と言われるかと思ったのに、やっぱりこの世界じゃ「ボランティア」という言葉は通じなかったか。

 

 

「なにもしませんよ。

マルコさん、ゴミが落ちていたらそれを拾う。そして片付ける。そこまでは分かりますよね」

 

「分かるがいまはそんな話を」

 

「でもそんなゴミの集まりの中でもきっと大切なものはあるんです。輝けるものはあるんです。それはゴミからみたらゴミに見えるのかもしれませんが、きっとそれはそのゴミの心がゴミだからなんです。だからちゃんと区別させて本当のゴミを片付けないといけないんです。大丈夫です。こうみえてもゴミの区別には自信があります。周りに害するゴミは跡形もなく消して、リサイクルできるゴミはまた輝けるように処理をします。あっ、そうだ。そのゴミが落ちているところにゴミ処理場を作ります。一番は焼却ですかね、プレスもいいですけど片付けるとなると焼却ですね。あっ、なにかいらないゴミありますか?僕的には船に()()()()があるのですぐにでも処理したいところですけど皆さんが止めますからねー。まぁ、いつでもいいですよ。言われたらすぐに処理しますから。切り裂いて、潰して、燃やして、灰も残らないようにしっかりとしますので。あと」

 

「悪かったッ!!!!!俺が悪かったから!!!!!」

 

 

 

…………………………

 

 

 

『……やったな、ハジメ』

「なにもしてませんよ?」

 

『お前以外こんな馬鹿げたこと誰がするッ!!!!』

 

 

二日後。

無事奴隷解放に成功した。

詳細?面倒くさいのでカットします。

 

簡単にいうと本当に作戦どおりだったので。

タイガーさんが囮になってくれた間に僕が存在を消して(一時停止させて)奴隷だった皆さんを解放していった。

 

タイガーさんについたロビンやオックスさんは完璧な仕事をしてくれて、ロビンが遠隔からタイガーさんを守り、それでも取り残した敵をオックスさんが仕留める。

もちろんオックスさんには変装してもらってます。海軍だしね、顔バレは不味いし。

 

僕は奴隷を解放しながらある人物を探していた。そうコアラだ。

しばらくしてからタイガーさんと再会、コアラを親の元へ帰してあげた後に海軍に襲われて、出血多量で死んでしまう。

 

だったらと思いコアラは白ひげ海賊団に置いて貰うことにした。タイガーさんには悪いけどそっちのほうが生きる可能性が高くなるだろうし。

そして解放後、少しは人間を、僕を信用してくれたのか「……ありがとう……」と聞こえないぐらいの声量でお礼をいって帰っていった。

 

そして翌日、未だに奴隷ぐせが外れないコアラにご飯を食べさせた後に電話がかかってきて現在に至る。

 

 

「そうはいいますけど証拠ないですよね?」

 

「あぁ、ない。だから無いというのが証拠だ。

お前はそれぐらい簡単にやってのける。その完璧なまでもやり口がお前だと証明しとる」

 

 

うわぁーお。

まるで刑事ドラマみたいな推理。

厄介事は基本的に姿を消してやってるから誰もが完璧な仕事だと誉めてくれた。もちろん能力を使っているところなんて見せてないよ。というか誰にも気づかれないうちに終わらせるからね。

 

と、まさかそれが裏目に出るなんてなー

 

 

「まぁ、それは置いといて」

「勝手に置くなッ!!!!」

 

 

「最近優秀な人材が入隊したと聞いたんですけど」

 

「………ったく。あぁ、入ったがよく知ってるな」

 

「名前は?」

 

「ハジメが他の海兵に興味を…珍しいこともあるものだな。えぇーと、確か……ヴェルゴだ」

 

 

きた、来やがったヴェルゴ。

ドンキホーテ・ドフラミンゴの指示により海軍に潜入してきたスパイ。

 

さてこいつをどうしようかなー

 

 

「そんなに気になるならハジメの隊に入れるが」

「潰していいなら入れてください」

 

「気になってる割りに嫌いなのか……

というか、知り合い…だったりするのか?」

 

「いいえ。知りませんけど。名前がムカつく」

「お前ならあり得る理由かもしれんが絶対に本人の前で言うな」

 

 

それは向こうの態度次第です。



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手紙

「おい、ハジメ。手紙だ」

 

「僕にですか?」

 

 

この白ひげ海賊団に入ってからある程度のルールがあるにしろ海軍よりも自由な環境を楽しんでいた。

というより、いつもどおりなのだが文句を言ってくる人が少ないので助かっている。白ひげさんは寛大な人なので「…やり過ぎるなよ…」と優しくしてくれる。まぁ、文句と言ってもマルコさんの「もう少し考えてから行動しろよい!!」という僕に対して心配してくれるところが優しい。

 

ようは海軍より海賊がいい。

まぁ、原作よりも断然に海軍も融通がきくようになったけどまだまだだなーと感じながらボーと海を眺めていたら白ひげさんからお手紙を渡された。

 

そして白ひげさんの手にも何通かお手紙がある。

 

 

「一体何人と文通してるんですか?」

 

「そんなに多くはねぇな。

センゴクにネプチューン、あとドラゴンとコブラ……」

 

「どんだけ世界の重要人物と文通してるんですか…

……ってか、偉い人たちは文通が好きなの?」

 

 

白ひげさんが文通してるのも驚いたけど、まさかドラゴンさんまで文通仲間だったとは……

なんか思いもよらなかったところからドラゴンさんの名前が聞けるなんて。

 

 

「いまさらですけど海軍とか革命軍とか、そんなに普通に文通していいんですか?情報漏洩とか心配になりません?」

 

「手紙一つで世界が変わるならとっくに変わってると思うがな」

 

 

……確かにそうだ。

変わらないと分かっていても文通をしている。

みんな、世界を変えたくて色々情報交換しているのかなー

 

 

「ちなみにドラゴンのやつ、息子の姿を一回しか見てなくて寂しいらしい」

 

「本当に普通の文通なんですねッ!!!!」

 

 

当たり前だ。とキッパリ言われたけどそれだけ大物とでんでん虫での会話ではなくて文通を選んでるんだからもっと重要なことを話しているって思うじゃん。

まさか日常的な話ばっかりしてるわけ?

 

 

「……コブラさんとは」

 

「娘が可愛くて仕事にならないらしいな。

まぁ、どこもかしこも赤ちゃんが出来てそればっかりでな………いまはセンゴクとの愚痴の言い合いのほうがおもしれぇ」

 

「……あぁ、そうでしたね……」

 

 

ちょっとは世界の動かしている姿が見れたと思ったのに、なんでもない普通の文通だったとは……

 

 

「でハジメに届いた文通は誰からだ?」

 

「僕は文通してませんよ。ただの手紙です」

 

 

この人文通仲間を増やす気だな。

そんな白ひげさんを軽くスルーして手紙の送り主を確認してみると

 

 

「テゾーロ……あっ、テゾーロさんだ!!」

 

「誰だそいつは?」

 

「昔好きだった女性のために必死に頑張っていたテゾーロさんのお手伝いをしたことがありまして。いやー懐かしいなー」

 

 

しかしよくここに手紙を届けられたな。

もしかして海軍からこっちに回ってきたとか?

とにかく手紙の内容を確認してみることに。

 

 

 

――――――――――――

久しぶりだな。ハジメ。

あの時は本当にお世話になった。

あれからステラと二人であちこちの島へ移動しながら、いまシャボンディ諸島でこの手紙を書いている。

 

ここで偶然にもハジメを知っている人に会って、まさかその人があの伝説の海賊団の副船長なんて……まぁ、ハジメが規格外なんて分かっていてもあれには驚いた。

 

その島で俺とステラは店を出すことにした。

まだ何をするかは決めてないがレイリーさんやシャッキーさんが手伝ってくれると言ってくれたよ。

 

あぁ、そうだ。

俺がこの島についてからしばらくしてレイリーのに三人の女性がきてな。

その三人とレイリーの会話を聞いていたんだがなんか海賊団を作るって言ってて、少しでも「兄様」のお手伝いがしたいって。

 

なんとなくだけどよそれって、ハジメじゃねえのか?

俺は直接話せなかったけど、というかステラがめちゃくちゃ睨んでくるんでな………

 

 

 

 

 

 

 

とにかく俺達二人はここで新しい人生を歩んでいくよ。

シャボンディ諸島に来たときは是非とも寄ってくれよな!!!

 

 

ーP.S.

俺もレイリーに鍛えてもらっている。

もしも店がダメだったら雇ってくれよな。実力は保証するからよ。

 

―――――テゾーロより。

―――――――――――――

 

 

 

へぇー上手くやってるんだなー

……なんか嫌なワードを見た気がするけど気のせいだよな……

 

それとステラが睨んでくるの後の空白部分、なんか血が拭き取られている後があるんだけど……生きてるよねテゾーロさん。

 

 

「レイリーか……手紙だしてみるか…」

 

「お好きにどうぞ」

 

 

これ白ひげさんを知らずに尊敬している人達はどんな風に思うのかなー。突然白ひげさんが文通してるってなったら………それこそ世界の流れが変わりそうだな。だって相手世界にとって重要な人ばっかだし。

 

 

…………………………

 

 

翌日。

 

 

「ハジメ、今日も手紙きてるぞ」

 

「ありがとうございます。そして相変わらず白ひげさんも届いてるんですね……」

 

「今日はマゼランからだ」

 

「あの毒野郎はなに考えてんだッ!!!!」

 

 

捕まえた者を管理するものとして絶対的に敵意を向けないといけないのに!!

 

 

「あんな閉鎖空間だ。文通してないと精神がおかしくなるらしくてな。よく囚人達との監獄あるあるを教えてくれるんだが」

 

「もう少し手遅れだったあッ!!!!」

 

 

なんで囚人と監獄あるあるを話してるの!!!

罰を執行するんじゃないの!!なにフレンドリーになってるの!!!??

 

 

「………マルコさん、変わります?」

「俺はツッコミ係じゃないよいッ!!!!」

 

 

ナイスツッコミ。

と、遊びはここまでにして今日の手紙は誰かな……

 

 

「おっ、オルビアさんからか」

 

「オルビア?……おい、そのオルビアってのは…」

 

「白ひげさん。知らないほうがいいですよー」

 

「……どうやら幻聴が聞こえたようだな。

酒が足りねぇ、どんどん持ってこい!!!!!」

 

 

いや、まだ昼まえですよ。

というかいつの間に酒盛りしてたんですか?

 

 

「なぁ、ハジメ。おめえさんどんだけ世界に影響力があるか分かってるかよい」

 

「?? 海軍参謀程度じゃないんですか?」

 

「………さっきのを素でやってるのかよい……

どうやら俺もハジメの見方や扱いを考え直さないといけないようだな……」

 

 

えっ、なにかした!?

何かを忘れるかの如くマルコさんも酒盛りに参加してるけど、そんなに僕は世界に影響力なんてないけどなー

どちらかというと僕というか周りの人だし、僕に影響してるのはロビンと八咫烏ぐらいじゃないの?

 

酒盛りをしている隣でまずはオルビアさんから

 

 

――――――――――――――――

元気にしてるようね。

こっちにロビンが(分身のほうね)来て私達も随分明るくなったわ。

 

ハジメと会ってからもう私の娘じゃないかと思うぐらい性格が変わったから、ちょっと娘なのに怖かったところもあったけど、どうやら成長するにつれて心も大人になっているようね。

 

私との会話以外じゃクールな感じで話してるのよ。

もう初めは違和感があって戸惑ったけど私との会話はまだまだ子供ね。きっとハジメの前では妹なんでしょうね。

 

こうして手紙に書かなくてもロビンに話したらハジメの側にいる本体に伝わるのだろうけど、こんな話は娘に言付け出来ないからね。

 

 

また遊びに来てね。ハジメから色々ロビンのことも聞きたいわ。

 

 

P.S.

どういうわけかロビンがこの島の人達を鍛え始めたのだけど理由を知っているかしら?

――――――――――――――――

 

 

 

 

知りません。というか知りたくない。

まあ、何をしているか知らないけどきっと「お兄ちゃんの為だよ!」という理由以外はないんだろうなー

 

……深く考えないようにしよう……

 

 

 



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ヴェルゴ

「初めまして、ヴェルゴといいます」

「初めまして、ハジメです。よし、帰れ」

 

 

 

白ひげ海賊団の船の上で最近入ってきたヴェルゴが挨拶に来た。なので挨拶をしたのでさっさと帰って貰うことにした。

 

 

「はっ、そんなに邪険に扱わなくてもいいだろ。

元帥から嫌われていると言われたがまさかここまでとは…

そっちがそういうことならこちらも態度を改めてもいいな。

あぁ、しばらくこちらの隊に加わるようにといわ」

「知るか、帰れ」

 

「こちらの隊に入るのでもちろんその隊のやり方には従う。

それが海賊との馴れ合いとしてもな」

 

「僕の話は聞かないですか。耳に入りませんか。

………マジで帰れ。命令だ。従わなかったら殺すぞコラ」

 

 

嫌みか。センゴクさん、これは嫌みですか?

こちらの態度一つでさっさと態度を急変しやがって。

本編でも人望厚いヴェルゴさんだったんだろうが。

もう少し愛想よくしやがれ。気持ち悪いけどな。

 

しかしまさか白ひげ海賊団の陣地の中でよくそんな暴言吐けたな。白ひげさんはニヤニヤしていて僕の様子見みたいだけど、もし白ひげさんが許しても僕は許さない。

 

 

「言っておくけど、俺は貴方の隊に入るけど部下になったわけでもない。そしてその権限は貴方には元々ない」

 

「何を言っているんだ?」

 

「ハジメ参謀。知ってるか?

あなたのその「参謀」という肩書き。全く意味を持たないと」

 

「意味を持たない?」

 

 

参謀の肩書きに意味がない。どういうこと?

 

 

「貴方は参謀という肩書きを得た。しかしそれは階級を得たわけではない。

おつる中将も参謀という肩書きはあるが、きちんと中将という階級がある。

しかし貴方はいきなりその参謀という肩書きを手にしただけで階級を持っていない。あったとしてもせいぜい中将どまり」

 

 

まぁ、実際中将をもらう予定だったけど。

確かあれいきなりなくなったんだよなー。なにが原因だったのかな?よく覚えてない……

 

 

「俺は少なくても大将ではなくては動かない」

 

「あっ、そう」

 

 

なんか……ヴェルゴも性格というか口調というか、何かがズレているなー。あまりヴェルゴのこと覚えてないけど部下にも優しくて信頼のある上司じゃなかったけ?

いまのヴェルゴは大将じゃなくて中将である僕に、それでも上司である僕に敵意剥き出しだもんなー

 

……あれ?そんなに敵意剥き出ししていいのかな?

海軍に上手く溶け込んでドフラミンゴに情報を流す的な役割じゃなかったけ?

 

 

「というわけだ。隊には入るがここを抜けるまで適当にさせてもらう」

 

「お前ッ!!!」

 

「オックスさん、落ち着いて

ニコルはその手にあるナイフを離そうね」

 

 

ついに八咫烏とロビンがキレて襲いかかろうとしている。

もうー止めてよね。この人達、間違いなくヴェルゴじゃ相手にならないよ。

 

 

「ふん。なにも持たない者に付くなんてな。気が知れる」

 

「こいつッ!!!!」

 

「それにこの海賊もそうだ。

白ひげ海賊団と名ばかりではないのか?こんな奴を家族として受け入れるなんてな」

 

「てめえッ!!!!」

 

「待って!!!!本当に待って!!!!」

 

 

訂正ッ!!!!性格変わりすぎッ!!!!!

僕が影響して変わったり、関わらずとも少し変わるのはなんとなく仕方ないと思ったけど、これはダメだ!!変わりすぎッ!!!!!

 

ちょっとドフラミンゴ。なんでこんなやつを海軍に潜入させたかな?本編のヴェルゴならともかくこいつはダメだよ。潜入どころじゃなくてもう「海賊」として来ているようなもんだよ!

 

 

「あのさヴェルゴ。なんでそんなに敵意剥き出しなの?」

 

「海軍の中でも現在海軍と呼べないものに対してどうして敵意を向けずにいられる」

 

 

あぁーなるー。

つまり、ヴェルゴは海軍なのに海賊にいる僕が気に入らない。そして海賊は大ッ嫌いという()()なのね。

………だとしても、喧嘩を売る相手が白ひげ海賊団ということを分かっているのかな?分かってないよね?そこに関してはダメだなコイツ。

 

 

「な、なるほどね。

でもセンゴクさんからちゃんと許可をもらって」

 

「だからといって海賊を目の前にしてペコペコするなんぞ、俺はそんな海兵になるために海軍に入ったわけではない」

 

 

うわぁー。それだけ聞けばなんとも立派な海兵なんだなーと思うけどさ。

僕知っているよ。ドフラミンゴの一員って知っているよ。

 

やっぱりドフラミンゴとかクロコダイルとか、七武海という名で好き勝手にして人々を不幸にしようとするやつはもう僕の手で潰すべきかな?

出来るだけルフィ達と戦って貰いたいんだよね。

じゃないと成長しないだろうし、なによりその経験はきっと後の戦いの糧になるし。

 

だからといってドフラミンゴやクロコダイルによって死んでしまう人達は助けたいけど……神じゃないから全員は無理だしなー。そう全部が全部思い通りいかないなんて分かっているから最小限に留めているつもりなんだけど………

 

なんかそう考えたらこいつ、要らなくない。

ドフラミンゴに情報を流す程度だったよね。

あと後に海軍を表向きで裏切ってスモーカーとかたしぎとかに迷惑かける的な。

 

 

…………よし、決めた。

 

 

「なるほど。ちょっとそこで待ってね。

オックスさん、でんでん虫貸して」

 

「いまさらセンゴク元帥に何をいっても無意味だが」

 

 

おおっ。そこまで読んでいるんだね。

本当に海賊やめて海軍に入れば随分待遇を良くしてもらえただろうなー

 

もう、無理だけど。

 

 

「もしもし。ハジメです」

 

『なんどいえば分かる…直通でかけてくるな……』

 

「そんなことは置いておいて」

 

『勝手に置くな!!』

 

「ヴェルゴ、無事にこちらに届きました。

あとはこちらに任せてもらってもいいんですよね?」

 

『あぁ、色々経験させたほうがいいと思ったからな』

 

「なるほど。()()()()()()()()()()()()ですね」

 

 

はい。ちゃんと発言を頂きました!

すると勘の鋭いセンゴクさんは

 

 

『…ま、待て。まさか……やる気か?』

 

「やりますよ。証言押さえましたので」

 

『まっ、待てッ!!!

この頃そんなことはしなかっただろうが!!!』

 

「そうですね。散々怒られましたから。僕じゃないのに」

 

『手綱をしっかり握ってないほうが悪いッ!!!

そうじゃなく!!それはやめろッ!!!』

 

「久しぶりにわがままいいますね。

これ受け入れなかったら海軍やめますよ」

 

『お好きにどうぞ』

 

 

滅多に使わない奥の手。海軍やめますよ。

その効果は絶大で、あのサカズキさんにも効果抜群の呪文の言葉。

 

 

「あっ、それと僕の階級ってなんですか?」

 

『大将』

 

「了解です。というかそんな簡単でいいんですか?」

 

『元々大将にする予定だったろうが。

周りから反対にされたために参謀の肩書きを与えたが、もう十分に時間も実力も大将として向かえるに十分だろう。いまこの瞬間から大将ハジメだ』

 

「うわっ。いらない」

 

『いや。もらってもらわないもこちらが困る!!!

誰があの三大将を制御すると思っとる!!!

()()()()()()()としてアイツらの管理をよろしく頼むぞ』

 

「勝手に追加しないでくださいッ!!!

もしもし、もしもしッ!!!」

 

 

勝手に言って勝手に電話を切ったセンゴクさん。

あの人こんなに強引だったけ。

まぁ、大将参謀になってもやることは変わらないだろうなーと諦めて、そして改めてヴェルゴと向き合う。

 

 

「では改めてまして、大将参謀ハジメです」

 

「あ、あり得ない……」

 

「大将のいうことは絶対ッ!!的なこといってましたよね?はい、さっそく白ひげさん達に謝る」

 

「く、くっ……」

 

 

本当に嫌そうな表現で頭を下げながら「わ、悪かった……」と本当に最低限の謝罪をするヴェルゴ。

こいつ、マジで白ひげ海賊団に消されるよ。

 

 

「いいですか白ひげさん?」

 

「息子が大将というデカイもんになった祝いだ。それで許してやるよ」

 

 

おおっ。なんとも寛大なお心をお持ちで!

ヴェルゴ、見習いなさい。

 

 

「白ひげさん達はこれでいいとして、こっちは治まりつかないだろうな」

 

「な、なにを…する気だ……」

 

「僕じゃないよ。さっきセンゴクさんとのやり取りで分かったろうけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何を、言って……ッ!!!??」

 

 

すると一瞬で地面に体を叩きつけられたヴェルゴ。

それも一人勝手に動いたように見えたが、それをしたのはもちろんロビン。

目にも見えないスピードでヴェルゴの体から手を出して、瞬間的に地面に這いつくばるようにしたのだ。

 

そのヴェルゴの元にオックスさんがきて

 

 

「さて、レッスンといこうか」

 

「れ、レッスンだと……」

 

「大丈夫だ。初めは戸惑うが最後には自分からその偉大さに気づく」

 

「な、何を言っている…何をする気だッ!!!」

 

 

そんなヴェルゴを無視してオックスさんはヴェルゴの体を引きずりながら船室へ連れていこうとする。

 

 

「ま、待て!!待ってくれ!!俺が悪かった!!謝るから!!!」

 

「大丈夫ですよ。謝らなくても。

きっと貴方も救われますから」

 

「何をする気だ!!!やめろ…やめろ……やめてくれー!!!!!」

 

 

断末魔を叫びながら連れていかれたヴェルゴ。

そして一番最後にロビンがこちらを向いて

 

 

「待っててねお兄ちゃん。半日で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……やり過ぎるなよ……」

 

「はーい!」

 

 

そういってロビンも船室へと消えた。

残されたもの達はその元凶であるだろうハジメを見て

 

 

「宗教って、ハマりすぎると怖いってよく聞きますよね」

 

「怖すぎるわッ!!!!」

 

 

そしてロビンの宣言通り半日後、見る影もなくなったヴェルゴが第一声に放ったのが

 

 

「ハジメ様万歳ッ!!!」

 

 

その時の白ひげ海賊団の白い目は今でも忘れられない。

というか、僕がやったわけじゃないんですけど!!!



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ー幕間ー 八咫烏と月兎

「ここがこれから一緒に働く仲間だ」

 

 

白ひげ海賊団の船、その一番奥にある在庫室。

その僅かなスペースに我ら大将参謀ハジメの部下にあたる八咫烏がいた。

 

そんな八咫烏に案内してくれたのはこの中でもトップであるオックス。元々大将クザンの元で働いていたがハジメ様の素晴らしさに気づいてたと聞いた。

それ以外にも元々ハジメ様に近づきたかった者、俺のように()であるのにハジメ様の素晴らしさに気づいた者もいるようだ。

 

 

「さて、改めて自己紹介をしよう。

私は八咫烏のリーダーであるオックス」

 

「海軍に入隊したばかりの…ヴェルゴといいます」

 

「入隊したばかりといったが、どうやらここに入る前から随分と体を鍛えているようだ。それも()()()()も豊富とみた」

 

「!!!??」

 

 

さ、流石だ……

オックスと話して、近くにいて僅かだというのにもうそこまで……

 

 

「しかしここではそんな経験は必要ない」

 

「ど、どういうことですか…」

 

「八咫烏()()()()()()()()()()()()

戦闘はもちろん、潜入、捜査、殺しはもちろん、裁縫、ナンパ、料理に、大工など……」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!!!!」

 

 

一体何を言っているんだこの人は?

海軍には絶対に必要ないものがあるのだが

 

 

「それは……任務に関係するのですか?」

 

()()??

あぁ、なるほど。どうやらまだ分かっていないようだな」

 

 

分かってない?何を俺は分かってないというのか?

 

 

「確かに俺達はあの人の部下である。

だけどな、私はあの人の()()()なのだ」

 

「………はい??」

 

「すまない。もっと分かりやすくいうとだな、私達はあの人の側で働きたい。それが最も重要なこと、分かるな?」

 

「はい」

 

「しかしだ。基本的に大将ハジメという方は最も優れている。私達がいなくともなんでもこなしてしまう。

しかしそれでは存在意義を無くしてしまう、それでも側にはいたい」

 

「……はい」

 

「ならば大将ハジメが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それが私達の存在意義だ」

 

 

………いや、それって……

 

 

「…それ、存在してますか?」

 

「あぁ、もちろんだ。

あの人の理想を現実にするために私達は動いている。日常的なことから真っ暗な裏まで、出来ることはすべて」

 

「……裏……」

 

「そうだ()()

だから知っているよ、君が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その瞬間ヴェルゴは大きく後方へ逃げた。

何かをされたわけではない、わけではないが本能が「逃げろ」と体を勝手に動かした。額には冷や汗が流れ一気に緊張感が増す。

 

 

「大将ハジメは知らない。君の正体は」

 

 

そうだとしても、この人達は正体を知っている。

そして……()()()()()()()()()()()()

 

何をしたらこんなにも強い海兵が一人の男の元に集まるのか……

 

 

「昔は昔、今は今。

ヴェルゴ君は潜入したのにも関わらず本気で大将ハジメの元にいたいと」

 

「願いましたッ!!!!!」

 

 

それは間違いない。

敵だというのにどうしてか心の奥底からハジメ様の元にいたいと願っている。例えそれがドフラミンゴを裏切ることになってもだ。

 

 

「なら過去は関係ない。そしてようこそ八咫烏へ」

 

 

どうやら試されていたようだ。

オックスから手を差し出され俺はその手を取った。

 

 

 

…………………………

 

 

「では正式に話をしよう。

さっき言ったように八咫烏はあらゆるものを吸収する。

そしてその吸収したものをフルに生かして大将ハジメの理想の未来へお連れすることが八咫烏の存在理由。

私達はあの人に()()()()を提供するのだ」

 

「無償の愛……」

 

「これは妹であるニコル様のお言葉。

ニコル様にも「月兎」という部下がいるが、あちらには関わらなくていい」

 

「それはどういう…」

 

「あれは……()()()()

八咫烏は吸収する特性とするなら、月兎は()()()()()

経験したはずだヴェルゴ君、ついさっき君は月兎の原点であるお方から直接に」

 

「!!!??」

 

 

ニコル。

そうあの()()が俺を変えた。

いまはそんな事は思うことさえあり得ないが、以前の俺はあの地獄を経験した。

 

洗脳なんて生易しい。魂というものがあるなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……自分が言っていることさえ正しく言えているか分からないほどに()()は恐ろしかった。

 

しかし今となっては違う。

あのお陰で知らないことを知れてこうして喜びを感じれる。

 

だが、染め上げるという言葉には……

 

 

「まだ日が浅い。

その単語になれるまでは時間がかかる。

そして月兎に接触したならば……精神崩壊もありえる」

 

「そ、そんなにヤバイのですか!!??」

 

「現にこの船で月兎に接触していないのは()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「!!!??」

 

 

その言葉に衝撃を受けた。

俺とハジメだけ……つまり()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()?()?()

 

 

「……ぐっふっ!!!」

 

 

思わず吐き気がこみ上げとっさに近くにあった樽に頭を突っ込んだ。

話を聞いただけなのに……どうしてこんなに……

 

 

「分かったか?この異常さが。

そうだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

……つ、つまり、それは…この世界で最強と呼ばれる海賊を……ハジメはその手中に納めたということ……

 

 

「とはいえ、それは最終手段として使うもの。

それにあるスイッチが必要となる。そう簡単にどうこうできるものではない。それにだ大将ハジメは敏感なお方だ。これがバレたらニコル様が怒られるからな」

 

 

怒られるって……そんなレベルですむ話なのか?

 

 

「あと海軍本部では行ってない。

海軍が一番バレるからな、ニコル様が怒られると下手したらこちらに飛び火が降り注ぐ場合もある。月兎はキチンと場をわきまえているから助かる」

 

 

いや、染め上げている時点でダメなのでは?

 

 

「とにかくだ。月兎はしばらくヴェルゴ君に接触しないようにと言っているから安心していい」

 

「何一つ安心できない……」

 

「おおっ、あれだけのことを聞いてまだ()()()()()()()()とは……流石は大将ハジメが選んだ人だ」

 

「おい、待て。いまとんでもないことを言ったよな?」

 

「ツッコミ要員が足りないからな。

この船ではマルコさんがしてくれるがもう一人欲しかったところだ。よろしく頼む」

 

「それは仕事の内に入るのか!!?

というかツッコミ要員ってなに!!!??」

 

 

どういうわけか自然と言葉が、ツッコミが出来てしまう。な、なんだこれは……

 

 

「あっ。もしかしてマカナのやつがヴェルゴ君に接触したんだな。ったく、あれほど後にしろと言ったのに……」

 

「誰ッ!!??それ誰ッ!!!??

マカナって、接触って……えっ!!??もう俺染められたの!!!??ツッコミ要員として!!!!」

 

「いやー………安定するまでにマカナに会うと精神崩壊する可能性が90%で、残りの可能性がこうして何かしらに特化するんだが……まさかのツッコミ要員とは………

……………………………棚ぼただな」

 

 

「なっわけ、あるかああああああぁぁぁッ!!!!!」

 

 

こうして俺ヴェルゴはツッコミ要員となった。

ハジメ様の会話を盛り上げたり、スムーズに話を進めるために必要な存在という。それを聞いたら俄然とやる気になった。



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サイカイ

「ニコルさーん!どうですか!!」

 

「ふふふ、ステキよ」

 

 

最近ロビンとコアラが随分と仲良くなった。

やはり初めは奴隷ぐせが残りいつまでたっても作り笑いを崩せなかったコアラ。

 

それでも白ひげ海賊団の人や特にロビンが頑張ってくれて、やっと素敵な笑顔で笑えるようになった。

 

その頃からロビンもグンッと大人っぽくなったなー

コアラの前では素敵なお姉さん。口調も本編と同じになってきた。

 

 

「あっ、おーいハジメお兄さんー!!」

 

「どうしたんだコアラ」

 

「これ見て!!ニコルさんに教えてもらったの!!!」

 

 

そう言って見せてきたのはワンピース。

それもかなりの出来であり、商品にすれば売れること間違いなし。それをロビンがコアラにねー

 

 

「うん、スゴいぞコアラ」

 

「えへへへ」

 

 

頭を撫でてやるとすごく嬉しいらしい。

だからこうして何か上手くいった時には頭を撫でてあげている。

 

するとロビンが一歩と前に近づき頭をこちらに向ける。

 

 

「はい、ニコルも良くできました」

 

「ありがとうハジメ」

 

 

相変わらず甘えてはくるけどあまり人前では「お兄ちゃん」とは呼ばなくなった。もちろん人前というかコアラのように「お姉さん」を演じる時や心を許していない人の前ではある。

なのでそれ以外、気を許せる人や俺の前だと未だに「お兄ちゃん」で口調も当時のまま。

 

ロビンとコアラはいまはこうして仲良くしているけどもうすぐお別れなのだ。

 

本編通りにコアラを故郷へと帰す為に今向かっている所。

やっと会えた年の近い人に会えたのに……

別れるなんて寂しい…………ってことにはならない。

 

 

「コアラのこと、よろしくね」

「ええ、もちろんよ()

 

 

そう故郷についてお別れになるはずなのにいまのロビンには「分身」がある。もちろんロビン自身はコアラとお別れになり情報共有だけしかコアラを見れない。

だけどコアラにとっては分身でもロビンである。

それはずいぶんコアラの心を救ってくれるのだ。

 

 

「また来てねロビンさん!!

こっちのロビンさんと待ってるから」

 

「ええ、必ず来るわ」

 

「ハジメお兄さんも絶対だよ!!」

 

「分かったよ」

 

 

こうしてコアラを無事に故郷へ帰せた。

そう無事に帰せたのだが、

 

 

「待っていたよーハジメ」

 

「ボルサリーノさん……」

 

 

まさか原作通りになるなんて…

いやコアラの故郷にいたのはただの海兵。ボルサリーノさんは違う。

ボルサリーノさんはタイガーの敵だといって飛び出したアーロンを止めに来たときだけ。

 

つまりはこれは路辺から離れている出来事だ。

まぁ僕がやっていることは全部本編から離れているけど

 

 

「おい、黄猿。俺の()()になんのようだ?」

 

「家族?笑わせちゃいけないよー

ハジメは海軍の大将、それも3大将をまとめる大将参謀なんだ。たかが海賊といるなんてあっちゃいけない」

 

 

その言葉にマルコさんやサッチさんがキレかけている。

白ひげさんは冷静にしているが心の中は怒りで煮えたぎっているだろうな。

しかしボルサリーノさんがこうして来たということは

 

 

「特例中の特例、解除されましたか」

 

「そうだとも。どっかのバカが世界貴族に手を出したからねー本当は打ち首にでもなりそうな所を元帥やワシらがどうにかして海軍に戻すという条件まで引き下げたんだよ」

 

「それはそれは、ご苦労様でした」

 

「本当だよ。お陰でこうして元の体型に戻れたけどね」

 

 

そういえば会っていない間にストレスで太ったって言ってたなー

 

 

「おい、黄猿。なに勝手に話を進めてやがる

こっちはハジメを抜けさせることに承認してねぇぞ」

 

「海賊に承認なんているわけないだろう

しかし白ひげ海賊団という建前だ、今回は見逃してやるからさっさと消えな」

 

 

その瞬間、マルコさんの体の周りに青い炎が纏った。悪魔の実不死鳥の力だ。

その場から一気にボルサリーノさんに近づくマルコさん。ボルサリーノさんも指に光を集めて反撃しようとしている。

 

おいおい、ちょっと。

 

 

「あんたらも勝手に話を進めるな」

「「ッッ!!!!!???」」

 

 

二人の間に入ってその頭を掴んでそのまま地面に叩きつけてやった。全く、僕のことなのに話を進めないで欲しい。ちょっとそこで反省してなさい。

 

 

「白ひげさん。お世話になりました」

 

「……帰るか」

 

「帰りますけど遊びに来ますよ。来週でもいいですか?」

 

「グラララッ!!!構わねぇな」

 

 

それから一人ずつにお別れの挨拶をして回った。

といっても来週には会いにくるのだから、なんか住んでいる所が少し離れたという感覚なのだ。

あっ、ティーチはガン無視です。嫌いなので。

 

 

「マルコさん。すみません、勝手に決めて」

 

「……まぁ、ハジメはいつも勝手だからな。慣れていたよい」

 

(……ティーチには気をつけて)

 

(……やっぱり、何かあるのかよい……)

 

 

詳しいことは言わなかった。

それでもあれだけ毛嫌いしていればなにか理由がある。

それぐらい白ひげさんやマルコさん、皆さんも分かってくれたはず。もちろん本人(ティーチ)も。

 

 

「ボルサリーノさん。ほら帰りますよ」

 

「……ったく、勝手だねー」

 

「そうですか?クザンさんには負けますよ」

 

「……否定できないことをいわないでほしいねー」

 

 

こうして、こうして少しだけの海賊期間は終わった。

海賊らしいことは一切してないけど、やっぱり海軍より海賊のほうが僕に合っているなーと分かっただけでも良かったかな。

 

あとタイガーさんやコアラも救えたと思うし。

 

 

 

…………………………

 

 

 

「………生きてますかー」

 

「……………」

 

 

すでに屍と化しているのはクザンさん。

というか書類に潰されてまるで事故現場を目撃しているようだ。

 

 

「まぁ、重要書類は一応終わらせてますね。

オックスさん、一度部屋を片付けてもらえます?

この人を連れてサカズキさんとセンゴクさんに挨拶してきますので」

 

「分かりました」

 

「ニコルもよろしく。終わったらクザンさんで遊ぼうな」

 

「うん!!」

 

「うん!!じゃねえだろうがッ!!!!」

 

 

 

あっ、起きた。

 

 

 

「流石です。相変わらずキレのいいツッコミは変わらないですね」

 

「……帰ってきてそうそう何をやらすんだよ……」

 

「ほら行きますよ」

 

「で、人の話も相変わらず聞かないと……」

 

 

いくら書類整理が上達しても部屋のあちこちで暇つぶしに使っただろうと思われる物が落ちている。

きっとこの重要書類も僕が帰ってくる前に終わらせないと!!!と必死になって片付けた後に書類の雪崩にあったというところだろう。

 

で、サカズキさんの部屋にいったけど誰もいなかったので先にセンゴクさんと思い向かってみるとそこにはサカズキさんもいてついでにボルサリーノさんもいた。

 

 

「なにかありました?」

 

「帰って来た挨拶もなしに……まあいい」

 

 

すると何故かクザン達より前に立たされて目の前にセンゴクと対面する形になっている。

……あれ、なにかあったの?

 

 

「……ハジメ」

 

「はい」

 

 

ちょっ、ちょっといつもより真剣な表情で見てくるんだけど。えっ、本当になにかあったの?

 

 

「悪いが………七武海も一緒にまとめてくれんか!!!」

 

「………はい?」

 

 

一体何を言い出すんだこの人は?

後ろ振り向くと三人ともウンウンと頷いているだけ。

あっ、コイツら面倒なことを押し付ける気だ。

 

 

「そういうのはセンゴクさんじゃ…」

 

「ワシ、もう、死ぬッ!!!!」

 

「………いや、まぁ、大変なのは、分かりますけど……」

 

 

僕がいない間に何回か点滴をしたままで仕事をしていたと聞いた。それを聞いたら一方的に断れないよ……

 

 

「一応聞きますが、後ろの三人は……」

 

「消していいならやるわい」

「海軍にいなかったというバツだと思ったらいいよ」

「書類が終わらない…終わらない…終わらない……」

 

 

最後の人に関しては若干可哀想だと感じた。

とうとうそこまで追い詰められたかと、まぁ、それでも書類整理はやらせるけどね

 

 

「……分かりましたよ。やりますよ」

 

「そ、そうか…これで不安の種が一つ消えた……」

 

「それでこれから顔合わせですか?」

 

「そういうことになるな。

新人も入ってきとる、うまくやってくれ」

 

 

 

うまくやってくれねー

それこそ大変なんじゃないか……

 

 

そう、この引き受けたことが間違いだった。

のちに起こる騒動の引き金を引いたのがハジメだと知るのはまだ遠い未来の話。



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会合

「うわぁー。やっぱりこうなるか」

 

 

さっそく七武海に会うことになった。

で、そういえば七武海メンバーはどうなっているのか?

だってまだ「暴君」も「女帝」も加入していないはず。

 

その二人の欠員を誰が埋めるのだろうと思っていたけど、よく考えたらその欠員を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう、このメンバーを見たら分かったのだ。

 

 

兄様(あにさま)あああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「うおっ!!!えっ、ええっ!!ハンコックッ!!!!」

 

「そうですッ!!!妹のッ、貴方の妹のッ、ハンコックです!!!!」

 

 

一気になんかずーーんと近づいてきた超美人さんはまさかの………ハンコックかよ。

…………いやいや。いらない。もう妹いらないから!!

妹は一人で十分なんだけど。本当に間に合ってるから。

となりにいるストーカーで十分なんだけど。

 

いや、でも、まさか……

目の前にいるハンコックがね、七武海となってるなんて。

 

………なに、七武海になってるの??早すぎッ!!!

レイリーさんにニョン婆に会わせるようにお願いしていたからもしかしたらと、思っていたけどこんなにも早く七武海に入るなんて……

 

 

「というか、なに、その兄様(あにさま)って??」

 

「妾は…ずっと貴方の側におる、その娘……いえ、姉様(ねえさま)には勝てんと本能が言った為に……ならば同じ土俵にと思いまして……」

 

「…いやいやいやいや、なんの勝負なの、それ?」

 

というかロビンのことも姉様って…

 

 

「兄様は気にしなくて良いのです」

 

 

そういってロビンの前に立ち

 

 

「そういうことじゃ。

敵対する意思は妾にはない。どうか兄様と呼ばせてはくれんか?」

 

 

……なんだろうなー。ハンコックがこうやってお願いする姿想像できなかったなー。特に同じ女性に対して。

ルフィならまだ簡単に想像できるけど、同じ女性に対してハンコックは自分が美しい=絶対だと思っていたはずなのに……

 

 

「ハジメがいいなら私からはないわ」

 

「……いいけど……」

 

「ほっ、そうか……」

 

「だけど……」

 

 

ハンコックの耳元で

 

 

「お兄ちゃんは私の。それだけは覚えておいて」

「……もちろんじゃ……」

 

 

何かを納得したように握手をかわす。

……なんか勝手に妹が二人になったんだけど……

 

 

「ニコル…納得のいく説明して……」

「ハジメに会う前に私が()()してきた。どうかしら?」

 

 

「……あぁ……OK」

 

 

ようはハンコックもロビンの餌食になったと。

しかし他の人に比べて症状は軽く「妹」という立ち位置でとどまったわけかー

 

 

…………まぁ、妹が増えた。程度で考えておこう。

 

 

「まさかその女帝の兄だったとはな」

 

「……お久しぶりです。というか早くないですか?」

 

「ハジメに恩を返したくてな。

だが俺は海賊ぐらいしかなにも出来ん。そして七武海なら海軍の手助けにと思ってな」

 

「にしても、海賊立ち上げてそんなに時間たってませんよね?七武海になるために一体何を……」

 

 

「ネプチューン、白ひげ、元帥」

「OK。コネ使いまくりですね」

 

 

そこにいたのはフィッシャー・タイガーさんだった。

まさかジンベイさんに代わってタイガーさんが七武海に入るなんてなー

 

タイガーさんに関しては心の闇を、あとコアラを故郷に連れていくという出来事を回避させたのが要因なんだろうな。

 

しかしあのタイガーさんがネプチューンさんに七武海の加入のお願いを白ひげさんに、それからセンゴクさんにリレーの形で回すなんて。

まぁ、センゴクさんとしても世界貴族を敵に回したタイガーさんを手元に置いておきたいという思いもあったんだろうな。

 

 

「でもいいんですか?

海軍は、世界政府はいつタイガーさんに牙を向けるか分かりませんよ」

 

「構わねぇ。それに俺がいうことを聞くのはハジメだけだからと承認ももらってるしな」

 

 

…いや、あの、それ、僕が面倒をみるってことだよね。

だからやたらと七武海を見てくれって言ってきたのかー

 

 

「入ってしまったなら仕方ありません。よろしくお願いします」

 

「あぁ、よろしくな」

 

 

前だったら絶対にしなかった握手をタイガーさんからしてくれた。本当に人間を信じてくれるようになって良かったー

 

 

「いつまで茶番をしてやがる」

 

「「なんだとッ!!!??」」

 

 

いや、一部の人間のようだ……

というかハンコックもキレないの。

 

そんな引き金を引いたのがクロコダイル。

そして興味なさそうに聖書を読んでいるのがクマ。

クマに関しては関わりがないからどうしてこのタイミングで七武海にいるのか分からないけど、もしかしていまサボをロビンが鍛えているからかな?

 

 

「フフフフ。まさか大将参謀が七武海から二人も手駒にするなんてな」

 

「…………」

 

「なかなか面白いやつだなキシシシシ」

 

 

ドフラミンゴにミホークにモリア。

まさか七武海全員が揃っているなんてなー

 

 

「それでは改めまして。

この度皆様を一致団結させる任を受けた大将参謀ハジメです」

 

 

礼儀正しく頭を下げて誠意を見せようとしたけど、あれ?

 

 

「フフフフ」

 

「ドフラミンゴ…さん……」

 

「さん付なんてやめろ」

 

 

これってもしかして……「糸」の能力なのか?

おおっ、ここまで体が動かなくなるんだ。

 

 

「おい、なにを勝手に決めてやがる。俺はテメェを認めてねぇ」

 

「え、ええええぇぇぇぇー」

 

 

自己中のくそ野郎だとは知っていたけど、まさか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

 

「だとしてもこんなことしなくていいですよね?」

 

「分かってないようだな。

だからテメェのその体に、叩き込んでやるんだよ!」

 

 

動けない状態でドフラミンゴがもう片手で太い糸を出して、それもその糸は窓から飛び出してなんか勢いをつけようとしてませんか?そのムチのような糸は僕に向かって

 

 

超過鞭糸(オーバーヒート)ッ!!!!」

 

 

おおっ、それが建物とかをいとも簡単に切断したやつ。

確かにまともに受けたら上半身と下半身がバイバイするなー

 

まぁ、当たっても意味はないんだけど。

というか当たる必要もないか。

 

と、縛り付けた糸自体に能力としての効果を一時停止により無効化。そうすればそれはただの糸。簡単に引きちぎれる

 

 

「こんなことすると、七武海剥奪されるかもですよ」

 

「ッ!!!??」

 

 

あっさりと攻撃を止められ動揺するドフラミンゴ。

というかここで止めておかないとヤバイよ。

後ろでロビンが殺気だって襲いかかろうとしてるし、同じようにハンコックもヤバいし……

 

オックスさんやタイガーさんもキレかかっているけどギリギリ押し止めているみたいだし……

 

そこまで思われてて嬉しい気持ちにもなるけど、お願いだから手を出さないでね。

 

 

「いうことを聞かない人達だとは聞いてましたけど…まさか攻撃してくるなんてびっくりですよ」

 

「そのわりには表情が変わらねえ、なッ!!!」

 

 

今度は糸が小さな一塊になり弾丸のように飛んで来た。

不意打ちを狙ったようだけど当たっても一時停止で止められるんだよね。

 

というか攻撃をした時点でドフラミンゴ、アウト!!

 

ハンコックが身を乗り出してドフラミンゴに蹴りを入れる。すると接触した部分が石化していく。おおっ、やっぱりメロメロの実食べてたんだよ。しかし糸を挟み込んでいたので直接石化出来なかったようだけど、その隙にいつの間にかロビンがドフラミンゴとハンコックの間に入り込んで、ドフラミンゴの腹に一撃を食らわせた。

 

 

「ゴハッ!!!!」

 

 

もちろん武装色硬化でガードしていたようだけど、まさかのロビンの武装色の方が上手だったようだ。

 

…………えっ、まさかもう一人でドフラミンゴに勝てるほど強くなってるの?

 

 

「よくも…よくも、兄様に手を出したな…ッ!!

ここから…生きて帰えれると思うなよッ!!!!」

 

「ええ、全くその通りだわ。消しましょう」

 

「待て待て待て待て!!!」

 

 

勝手に消さないで!

そりゃ僕だって本編を知っているからどれだけドフラミンゴがくそ野郎だろうって知っているけど、ここで消した方がいいんじゃないかってバリバリ思うけどさ!|

 

あくまでもルフィ達メインだからね!!

僕はそのために色々してるんだよ!

なんか最近関係ないこともしてる感じだけどさ!!

ルフィ達の成長のための土台になってもらわないといけないのよ。考えていることゲスいと思われるかもだけど。

 

 

「消したらダメだよ。これ以上センゴクさんに迷惑かけたくないの」

 

「…し、しかし…」

 

「ここで止めてくれたら頭撫でるから」

 

「「止める」」

 

 

欲望に忠実だなー。

しかし……あのハンコックがまじでロビンみたいになってるよ……。これ絶対に大変なことになるよね…すでになってるか………

 

はぁーと頭が痛くなりそうな所に

 

 

「あとは俺に任せておいてください」

 

「……えっ。いや、ちょっと、大丈夫…なの?」

 

「問題ないです」

 

 

気絶しているドフラミンゴを担ぎ上げ部屋から出ていった。………本当に大丈夫なのかな?

 

 

「あの海兵に任せて大丈夫なのかハジメ」

 

「まぁ、()()()()()()()()()()()()なんとかなるかなーと。一応オックスさん、付いていってください」

 

「了解」

 

 

タイガーさんの心配も分かる。

たかが海兵が七武海を相手に出来るはずがない。

でも()()()()()()()()()()

あとは上手くやってくれればいいけど……

 

 

「じゃ、とりあえず……席につきませんか?」

 

 

さて、今からが本番だ。

この七武海をどうまとめるかだなー



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2/3の為

「……ッ、こ、ここは……」

 

「目が覚めたようだなドフィ」

 

 

そこは海軍の在庫室。

隠れて話をするにはもってこいの場所。

そしていまそこにはドフラミンゴと海軍ヴェルゴがいる。

 

 

「おおぉ、ヴェルゴ。

うまく潜入しているようだな」

 

「お陰さまでな。

何が起きたか覚えているか?」

 

「あぁ。あのくそガキが……ッ!!!」

 

 

血管が浮き出るほどキレているドフラミンゴ。

それを見ても冷静にしているヴェルゴは

 

 

「止めておけ、ドフィ」

 

「………それはどういうことだヴェルゴ?

お前、いつから俺に指図出来るほど偉くなったんだ?」

 

 

ちょっとしたことで簡単に怒りの矛先を変え、部下であるヴェルゴにも牙を剥くドフラミンゴ。

 

 

「ドフィの怒りも分かる。

だがあいつは色々と使える。いまは野放しにしたほうがいい」

 

「使えるだぁ?

最近入った新参者が何が出来るというんだ?えぇ??」

 

 

「三大将を手なずけ、あの白ひげさえも動かせることが出来る」

 

 

「………ほう」

 

 

その情報にドフラミンゴの表情に笑みがこぼれた。

使えるものは使う。そうやってドフラミンゴはヴェルゴを海軍へ潜入させて情報を引き出そうとしている。

 

そしていまドフラミンゴの元に新たなる情報が舞い込んできた。

 

 

「だとしてそれが俺とどう関わる?」

 

「連絡したように今俺は大将ハジメの元にいる。

そしてハジメは「自分にとって利益になることを積極的にやる」。それが例え部下の言葉でも、敵対する相手でもな。それをうまく利用すれば……」

 

「………なるほど。それは面白そうだな」

 

 

 

…………………………

 

 

しばらくしてドフラミンゴが帰って来た。

的確に気絶させたようでダメージもそんなにないらしい。しかし絶対に仕返しすると思っていたんだけど「気にするな」と一言で今回の件を終わらせた。

 

いや、ちょっと怖いんですけど!!!

なに、知らない間にヴェルゴさん、何を吹き込んだのッ!!!??

 

あとでオックスさんに何を話していたか聞くとして。

さて、今から決めることは。というか承諾を貰わないといけないんだよなー。はぁー……

 

 

 

「センゴクさんから任命されましたけど、一応七武海をまとめ役として認めてくれる人、手をあげて」

 

 

するとハンコック、タイガーさんは手をあげた。

後の五人は手を上げない。だよねー!!

 

しかしワンテンポ遅れてドフラミンゴが手をあげた。

 

 

 

「おいおい。なんの冗談だドフラミンゴさんよ。

絶対にオメェだけは上げないと思っていたんだけどな」

 

「気が変わったんだよモリア」

 

 

でもその不気味な笑い、絶対になにか企んでるよね?

絶対に俺を巻き込むつもり満々だよねッ!!!

 

 

「キシシシシ!!そうか、そうか。

だがよ、七武海の2/3が手をあげないといくらお前が上げても認めることは出来ねぇーな」

 

「アァ!!?」

 

「それに関しては俺も同じだ」

 

 

するとさっきまで大人しくしていたクロコダイルが声を上げた。いや、大人しくしておいて。もうここの濃いメンバーがいる空間にいるだけでお腹一杯なの。

 

 

「今まで好き勝手やって来ただろうが。

それを今さらまとめ役をつけてもいらねぇと言っているだけだが」

 

「その通りだ。七武海としてやってることをやってる。それ以上俺達を縛り付ける必要はねぇはずだ」

 

 

まあ、アンタらは影で色々やらないといけないだろうからね。僕がいると邪魔しかないもんねー

でもそれでいうならドフラミンゴも一緒なんだけど………ヴェルゴさん、マジで何を吹き込んだんだ?

 

 

「というわけだ。俺は帰らせてもらうぞ」

 

「キシシシシ、なら俺もだ」

 

 

席を立つ二人。ドフラミンゴの額にまた血管が浮き出ている。

あぁーもうー余計なことしないでよー!!

いまここで喧嘩されたら誰が止めると思っているんだよ本当に!!!

 

仕方ない。と諦めてハジメはあまりやりたくなかったと心の中で嘆きながら

 

 

「分かりました。

では帰ってください。もう知りません」

 

「言われなくてもな」

 

「じゃあな」

 

 

こうして二人が席を立ったが残り五人は席を立たない。

それに眉を上げ気になったのかクロコダイルが

 

 

「なんだテメェら。まさかこいつに賛同する気か?」

 

「賛同も否定もしない。

ただ私はこの出来事の行く末に興味があるだけだ」

 

「何をいってやがる鷹の目ッ」

 

「ふっ、ここにいてこいつが強者ということ、それが分からぬなら話にならない」

 

「テメェッ!!!!」

 

 

喧嘩売らないでッ!!!

というか僕が強者って認めてはいるんだね。でもミホークさんのいう強者か分からないけど。

 

 

「騒ぐな。

おい、私たちをまとめる、そう言ったな」

 

「そうですね。いいました」

 

「ならばその実力をみせよ。話はそれからだ」

 

 

……つまり戦ってみせろってやつ。

それはいいけど、えっ、まさかここにいる七武海全員とかじゃないよね。

 

 

「……なら俺も参加しよう」

 

「おいおい。暴君クマもやる気か!?

こいつは面白くなりそうだなキシシシシ!!」

 

 

えぇー面倒くさい二人かよ。

あとは誰も言わなかったけどそれでも七武海二人を相手にするなんて……はぁ、疲れるなー

 

 

「じゃセンゴクさんに会場を探してもらいますので。

改めて連絡いれるので、連絡先教えてくださいね」

 

 

 

…………………………

 

 

「というわけでプライベートの連絡先を全員から貰いました」

 

「その分余計な厄介事を増やすなッ!!!」

 

 

そんなことを言われても仕方ない。

それは僕のせいじゃないのだから。

胃を痛めたのかまたセンゴクさんは胃腸薬を飲んでる。

 

大変だなー

 

 

「それにだ……ドフラミンゴと一戦やったそうだな」

 

「僕じゃないですけどね」

 

「そんな言い訳はいい!!

……しかしよく大人しくなったな……」

 

「それはそうですよ。

ドフラミンゴの部下であるヴェルゴが説得しましたので」

 

 

一息つこうとお茶飲んでいたところに爆弾発言。

思いっきり含んでいたお茶を吹き出したセンゴクさん。

おおっ、実際に見るのは初めてかな?

 

 

「なっ、なっ!!!」

 

「あぁ大丈夫ですよ。すでにニコルが()()()してますので」

 

「………あぁ………」

 

 

一応センゴクさんには話している。ニコルのスキル()()()については。

でもいつもより一層遠い目をしてるなー

すると隣にいたヴェルゴが口を開いた

 

 

「ドフラミンゴにはハジメ様を利用したらどうかと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「だな。こいつの取り扱い説明書があっても無理」

 

「そうですよね!!!

ハジメ様は型にはまらない偉大なお方です!!!」

 

「そういうことを言っているんじゃない!!!

というかお前はツッコミ役に見えたんだが違うのかッ!!!!」

 

 

 

「ハジメ様にツッコミ入れても無駄だと分かってますのでいたしませんッ!!!!!」

 

「やれッ!!!!これ以上私に負担をかけるなッ!!!!!」

 

「二人とも失礼なこと言ってるの、気づいてますか?」

 

 

 

なんかカオスな空間になりそうだったのでこれ以上は止めようと思い話題を反らして

 

 

「とにかく会場を探してくれませんか?

七武海を二人相手しても頑丈であり、人様に迷惑をかけない場所」

 

「なところ簡単に見つかるか……」

 

「そうですか……

……なら僕にアイデアがあるんですが……」

 

 

そういって僕はアイデアを話す。

するとより頭をかかえて顔色が悪くなったセンゴクさん。

あれ?おかしいこといったつもりはないんだけどなー

 

 

 

「ダメですか?

最近どうも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………だがな……」

 

「ちゃんと()()()()()()()()()()

なので大々的にお願いしますね。三大将には僕から声をかけますので」

 

「………はぁー。まぁ終われば()()()()()()()()()()()()……

分かった、手配しよう」

 

 

 

こうして前代未聞の出来事がここに決まった。

それがこの広い世界に「大将参謀ハジメ」という新しい海軍の犬が出来たことを知らしめることになる。

 

……これ、海軍から抜けるとき面倒くさくなったなー

まぁ、なに言われても抜けるときは抜けるけどね。



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海賊と海軍

「これは……一体、なんでしょうか?」

 

 

 

七武海との会合から一週間。

元帥センゴクと話し合い、三大将との()()()()から物事は一気に進みこの度ミホークとクマとの試合(ハジメの見定め)が世界的に決まった。

 

世界的。そう、これは世界的に、大々的に行うことになった。つまりこの戦いは映像でんでん虫により世界中に放送されるのだ。

 

そしてこの戦いのために解説として白羽の矢がたったのはハジメをマトモに意見できて贔屓しない人がまず一名。

 

 

「あぁーこいつはハジメの為の()()()()()()だ」

 

「と、特別ステージ、ですか?」

 

「考えてみろ。普通の島で戦いをやってみろ。化け物三人の戦いだぞ、簡単に消滅する」

 

「な、なるほど……」

 

 

次に七武海をよく知る人物であり今回の首謀者が一名。

 

 

「大したもんだな。そこまでアイツに肩入れする必要があるのか?」

 

「肩入れね…。本気でそんなことを考えてるならさっさとその考えは改めるべきだな」

 

「あぁ!?それは、どういう意味だ?」

 

「どっちにしろここまでやったんだ、あとには引けねぇよな」

 

 

そしてハジメ=妹という絶対的、世界の真理、この世の理と呼べるほど(もちろんこの人の考えです)人物が一名 。

 

 

「もしハジメに勝てるなんて妄想があるなら、もうそれは救えないわ」

 

「……どういうことだテメェ……ぶち殺されてぇのか!!??」

 

「殺す?実力差も分からない人だったのね。

そうじゃないとこんな茶番劇最初からしないわね」

 

「コ・ロ・スッ!!!!!」

 

「おお、おお。止めとけ、止めとけ。

やるにしてこの戦いの後だ。いいな?」

 

 

舌打ちをする義手をはめた男、サー・クロコダイル。

何事も無かったようにお兄ちゃんを見つめるニコル(ロビン)

頭が痛くなって、今からでもセンゴクと交代したいと思うクザン。

 

この三人が解説者となった。というかロビンが「お兄ちゃんの素晴らしさを世界にッ!!!!!」と暴走するので、ハジメとロビンの上司であるクザンがブレーキ役となり、クロコダイルは言ってしまえば建前である。

 

さすがにハジメという色にもうほとんど染まっている(多分?)海軍のみだと贔屓があるんじゃないかという意見が出る前に対策したのがこれである。

 

そして司会進行役として抜擢されたのが

 

 

「……あ、あの…本当に私で…良かったんですか?」

 

「もちろんだよ。ちゃんとクジで決まったんだからね。

それに君は将来海兵を目指すんでしょう?いい勉強になると思うよ」

 

「あ、あくまでも…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…まだハッキリとは……」

 

「その歳でそんなハッキリとした夢を持つのはスゴいよ。

将来が楽しみだなー。どう、終わったあとに食事なんて………」

「なにやってんだこのグザンが。

こんな年端もいかない女の子をナンパか?テメェマジでぶちコロスぞ、あぁ!!!??」

 

「本当に容赦なくなったよなお前はッ!!!!!」

 

 

グザンのツッコミなんて無視をしてたしぎの前に立ち本気でグザンから守る。

 

 

「お、おい……えっ、マジで俺がすると思ってるの?」

 

「むしろしないということを信じろと?

美女であればナンパして、最近ではストライクの幅が広がったことも知ってますよ。いくらストレス発散のためだとしてもそれは……」

 

「ちょっ、お前ッ!!!!!」

 

「…………」

「…………」

「…………」

 

 

「ちょっと引かないでよ!

というか何でクロコダイルも引いてんだよッ!!!!!」

 

 

ロビンとたしぎ、そしてクロコダイルも一歩二歩と後退した。

 

 

「まぁ、僕は戦いに行かないとですので終わるまではニコルがたしぎちゃんを守ってくださいね。

クロコダイルさん、もしもの時はお願いします」

 

「もちろんよ」

 

「てめぇのいうことなんざ、と言いたいがいいだろう」

 

「ありがとう、ございます」

 

 

「なんで一致団結してるのよッ!!!!!」

 

 

…………………………

 

 

今回会場となるのは海の上。

もちろん水面の上とはいけないのでハジメが考えたのは()()()である。

 

そして会場というのだから範囲も決まっている。

長径四キロの氷山の囲みによる制限。

そして飛び石というのが今回は世界に呼び掛けた一つである。

 

 

「いいか野郎共ッ!!!!!

七武海を倒せば俺達が七武海だあ!!

大将参謀を倒せば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!気合い入れろおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「「「「「うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!!!」」」」」

 

 

囲まれた氷山の中には大量の海賊船。

そう、今回呼び掛けたのは海賊なのだ。

海賊には甘い汁をということで2つの約束をエサにした。

 

ピンからキリに海賊がいる。

つまりはもしかしたら七武海の交代はありえるかもしれない。これだけいるのだ。不意打ちをすればなんて誰もが考えている。

 

 

 

「バカだね。ハジメに勝とうなんて」

 

「所詮は海賊。すぐにでも消したいわい」

 

 

海賊の浮かれた姿を氷山の一角から見下ろすボルサリーノとサカズキ。

 

 

「そいつは止めときなよ。ハジメとの約束があるんだからね。サカズキの暴走一つでワッシの約束も破談になりかねないだから」

 

「だからここにおるんだろうが。

こっちにだって約束がある。互いに抜け駆けはなしだ」

 

 

あんなにウジョウジョといる海賊を目の前に大人しくしているのはハジメとの約束。

もちろんこのまま海賊を見過ごすわけではないが、少なくてもいますぐ襲うことはしない。

 

 

「しかしまさかこうしてアンタと並ぶ日がくるとは思わなかったよ」

 

「グラララ。そいつは俺のセリフだ

牙を向けると思っていたんだかな。随分と歯を抜かれたみたいだな」

 

「ほざくなよ白ひげッ!!!

海賊の頂点と呼ばれる男がノコノコと海軍最高戦力のど真ん中に現れる。気がおかしくなったんじゃねえのか」

 

 

睨み合う二人。まさかここに白ひげがいるなんて誰が想像できるか?

もちろん白ひげにもハジメの存在があるからここにいるのだ。

 

 

「止めときなよサカズキ。

今回あの大量の海賊が集まったのも白ひげのおかげであるんだからねー」

 

「……チィッ」

 

 

そう、普通に考えていくら呼び掛けしたとはいえ()()()()()()()()()()()()()。普通は集まらない。いくら甘い話があったとしても。

 

それでもこうして来たのはここにいる白ひげのおかげ。

海軍にとっても白ひげはただ捕まえればいいという存在ではない。ある程度の理由がないかぎりは。

つまりは白ひげがいるからなんとかなるという楽観的な要素があるのだ。

 

もちろんそれひとつじゃ足りない。

なのでハジメの最後の一手は

 

 

「だから俺も呼ばれたのか。まったく面識もないのに何かと思ったぜ」

 

「グラララ。俺一人でも良かったんだがな。()()()()()がいれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()があるというところを見せないといけなかったからな」

 

「………たったそれだけの理由で海軍と海賊がこうして何もせずにいるのか……全く大した男だなッ!!!!!」

 

 

三人の他にもう一人。赤髪。そうシャンクスである。

白ひげと赤髪。この海賊にとっての最高戦力が海軍最高戦力を抑える。

つまりこの海軍の甘い話は満更悪くない話()()()()()()()()()()()()()のだ。

 

何かあっても()()()()()()()()()

もしかしたら()()()()()()()()()()()()()

うまくいけば()()()()()()()()()()()

 

それがこうして現実的に()()()()()()()()()()というところをみせることによって甘い話が現実的にと思わせたのだ。

 

そのために4日前から白ひげと赤髪には海軍本部で映像を世界に見せながら過ごしてもらった。異常すぎることに世界はもちろん目を疑った。なにかの冗談かと思った。ヘタしたら世界の終わりかと思った。

 

しかし1日たってもなにも起きないことに世界はまた驚き、海軍からのこの戦いは本当にあり得るかもしれないと思わせた。そしてまた1日過ぎてもなにも起きないことに海賊は疑いもしやがらこうして指定された海に向けて向かい、2日後たどり着くとこうして本当に戦いをやること、甘い話が現実的にあるという魅力に引き込まれてこうして今を向かえている。

 

 

しかし何度もいうが()()()()()()()()()

あそこにある海賊以外は全員知っている。

というかいくら白ひげと赤髪がいるからといっても、イコール捕まらないなんてあり得ないでしょう。

 

というかここで海賊生命が絶たれることを知らない。

これはハジメが七武海との戦いという表があるとするなら裏は海賊一斉摘発となる。

 

 

「あっ、シャンクスさん。今回はありがとうございます」

 

「おおっハジメか。

まさかこんな馬鹿げたことをするために呼ばれるとは思わなかったよ」

 

「そのわりには結構素直に来ましたよね?」

 

「面白そうだったからな」

 

「なるほど」

 

 

なんともシャンクスらしい意見だ。

 

 

「でも良かったんですか?

海賊の皆さんを売るような真似をしてるんですよ?

ヘタしたらこれが終わったあと他の海賊から非難されますよ」

 

「元々海賊は敵対するもんだからな。

仲のいいところだけ分かってくれれば他はいつものと変わらねぇよ」

 

 

確かに海賊が他の海賊と仲良くなんて滅多にない。

それこそ同盟とか相手を利用するなど裏があることしかない。ルフィのような海賊は稀なのだ。

 

 

「俺としてはこれからもハジメと仲良くしたいものだ」

 

「それはもちろん。シャンクスさんのような海賊は歓迎です」

 

「海軍が海賊を歓迎だぁ!!?

だっはははははあっ!!!やっぱお前面白いなッ!!!」

 

 

背中をバンバン叩かれる。痛くないけどグイグイくるなー。

 

 

「それで、ただここで見てればいい。なんてないよな」

 

「もちろんです。四人には()()()()()()()()()()()()()

 

「ったく、ハジメのことだ。トンでもねぇことをさせるんだろうな」

 

「意見があったねー」

 

「……屈辱じゃわい」

 

「グラララッ!!!本当に飽きねえな!!」

 

 

長径四キロ内にウジャウジャいる海賊船。

誰もが浮かれる中、そこにはハジメも予想出来なかった者達が……………いる。

 

 

 



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海賊と海軍と七武海と①

「ぐふふ。いいもんを考えやがったな海軍は」

「だな。これであいつらを仕留めれば俺らの名が上がるぜ!!」

「それにこんだけいるんだ。弱った所を頂けばいい!!」

「やってやるぜえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

そんな声が響き渡る。

氷山に囲まれた闘技場。

闘技場といっても()()は七武海と大将参謀を仕留めようと色んな所から集まってきた海賊船なのだから。

 

その海賊船は囲まれた氷山の内側一杯にいる。

そしてここにいる海賊共は自分たちの船が戦いの足場になることを知らない。というか気づいてもいない。

 

そしてそんな事考え思い付いたのはハジメなのだが

 

 

「そろそろ始めたいものなのだが、まだか」

 

「…………」

 

「……そうですね……」

 

 

闘技場の真ん中に簡易的に会場を作ったのだが、そのにはミホークとクマ、そしてハジメだけしかいない。

そしてここから戦いが始まるのだがどういうわけかなかなか始まらない。

 

開始の合図はハジメからなのだが、なんかイライラしているみたいだ。

 

 

「……始まる前に提案なんですが聞いてもらえますか?」

 

「……話せ」

 

「内容によるが、聞こう」

 

 

今から戦うというのにひそひそと話し始める三人。

するとそれを見ていた海賊達が騒ぎ始めた。

何をしている!!さっさとしろ!!などと騒ぎ立てているが、遠くから見ているクザンやロビンはもう何をする気なのか察したようだ。

 

 

「おい、あいつ……容赦ねぇな……」

 

「それこそハジメよ」

 

 

二人だけは何をするつもりか分かったようだが今まで面識がなかったクロコダイルやたしぎは何が起こるのかさっぱり分からなかった。

 

 

「おい、あいつはなにするつもりだ?」

 

「あなたは気にしなくていいわよ」

 

「あぁ??どういう意味だ?」

 

「それについても気にしなくていいわ」

 

「……てめぇッ!!」

 

「こんなことで揉めないでくれない?」

 

 

クザンが制止をかけたが明らかにクロコダイルはロビンを目の敵にした。元々クロコダイルは人を信用していない。そしてロビンのような何かを企むものについては尚更信用しない。

しかし本編ではそれでもパートナーとしてやっていくのだが、これからどうなるのか……そのときハジメはその場にいなかった為にいろいろと戸惑うことになる。

 

 

「たしぎちゃん。試合開始してくれない?」

 

「い、いいのでしょうか?」

 

「大丈夫よ」

 

 

何の自信があるのか分からないがたしぎはこの時絶対にロビンには逆らわないようにしようと思った。理由なんてない。言ってしまえば女の勘というもの。

 

 

《い、いろいろと混乱しているようですが、試合を開始したいと思います。それでは…始め!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

 

 

開始と同時に氷山に囲まれた会場は爆発した。

誰もが呆然と何が起きたのか理解出来ない中、やはり司会として抜擢されたたしぎは人一倍早く正気に戻り

 

 

《ふ、ぶっ飛びましたッッ!!!

開始と同時に会場が爆発を起こしましたッ!!!!》

 

《流石ハジメね。海賊を一網打尽にしたわ》

 

《どうやら大将参謀ハジメの作戦のようです。

しかし………だったら海賊を集めた理由は一体なんだったんだッッ!!!

 

《……あぁ、ハジメだからな。気にしたら負けだ》

 

《これは海軍の中では当たり前というわけですね

ここで七武海であるクロコダイルさんから一言ッ!!!》

 

《………………》

 

《流石の七武海でも予想を越えたということでしょう!!!》

 

 

なんか超ノリノリで司会をしているたしぎ。

……もう、性格どうこうではなく人が違うんじゃないかと思う……それでもやらせたハジメはちょっと後悔していた。

 

しかしあそこまで面白く、そして的確なツッコミ……

……スモーカーさんには悪いけどちょっとたしぎが欲しくなった。なんか新鮮なツッコミだなーと感じた。

 

 

さて、ハジメが行ったのは爆発ではない。

中央にいる三人、ハジメ・ミホーク・クマがそれぞれ1/3の面積にいる海賊にむけて一斉攻撃をしたのだ。

 

ハジメは理不尽に受けていたガープの拳骨の衝撃波を全部解放。ミホークはただの斬撃なのだが広範囲に広げたものだった。クマはハジメと同じようなもので空気を超圧縮してそれを解放したもの。

あとは海賊船にある火薬に火がついて爆発を起こしたというだけのもの。

 

しかしそれは一瞬の出来事であり一般人から見たらとんでもない攻撃をしたと見えるのだ。

 

 

 

「片付きましたね」

 

「目障り」

 

「……邪魔」

 

 

しかしとんでもなく理不尽。

海軍が集めたというのに一瞬にして終わらせたのだ。

海には海賊船の残骸が浮いており吹き飛ばされた海賊はその残骸にしがみついている。

 

 

「な、何をしやがるッ!!!」

 

「五月蝿いですね。海賊ならそれぐらい覚悟しておいてくださいよ。海軍のど真ん中にいるんですよ?なにが起きても可笑しくないのに何を呑気にしてるんですか?バカなんですか?あぁ、バカだからこうなったんですよね。これは失礼しました」

 

「て、テメェ!!!」

 

 

それを聞いた海賊達は残骸を足場にしてハジメ達のいるステージに飛び上がってきた。海賊船は壊されたがまだやれる!!と考えているようだ。

 

しかし海賊船を簡単に壊された時点で実力差を深く感じるべきだった。

 

 

「しねえええええええ!!!」

 

「死にたくないのでバイバイです」

 

 

ハジメは飛びかかってくる海賊の攻撃を軽くかわして懐に入った胸に掌を添える。そして死なない程度の衝撃波を解放した。

 

 

「ぐふっっっ!!!」

 

 

その体はクの字に折れてそのまま氷山へ。

次々に飛びかかってくる海賊達を一人づつ衝撃波を放ち氷山へと吹き飛ばす。

 

 

「なかなか器用なことをする」

 

「そうですか?ミホークさんは一撃必殺ッ!という感じでカッコいいですね」

 

「なにを分からないことを…」

 

 

誉めているつもりだったのだがお高いミホークには伝わらないようだ。ミホークは次々に海賊達を切り捨てていきすべてステージ外へと落としていっている。

 

 

「しかし改めてみるとクマさんの攻撃って僕に似てるんですね」

 

「…だから、なんだ?」

 

「いや、それだけですけど……」

 

 

どちらかというとクマの方が絡みにくい。

まだ機械になったわけでもないのにどうしてこう機械的な反応なのか?クマはさっきの空気の圧縮ものを海賊達にぶつけている。周りからみたらハジメとクマは同じ攻撃方法に見えるが実際は大きく違う。

 

ハジメはその衝撃波を()()()()()

周りから見たらただの打撃なのだがそれは目には見えない。

クマは違う。圧縮した空気がその目で見えるのだ。

 

そしてこの時ハジメは思わず口にだしてしまった。

知られてはいけないことを。

しかしそれを聞いたのはクマであり、そしてそれを流してくれたので良かったが……

 

 

(……攻撃が、似ている、だと…)

 

 

ハッキリとクマの意識には届いていた。

そしてそれはこの場ではそれだけですんだのだが、後にまた面倒が広がっていくのは確かだった。

 

 

《これはスゴいですッ!!!

飛びかかってくる海賊達をまるで千切っては投げ千切っては投げの流れ作業のように攻撃しています》

 

《ハジメなら当然ね》

 

《しかしニコルさん。さっきから大将参謀ハジメのコメントしかしてませんが、他の二人へのコメントを》

《ないわ》

 

《…………。えぇーでは大将青雉さんから》

 

《まぁ、ね。ハジメについてはその地位があるというだけでどれだけの実力者かは分かったと思う。鷹の目については最強の剣士。それに尽きるな。暴君クマに関しては俺としても情報はあまりないが見る限り他の二人にも引けをとらない実力者だと考えるな》

 

《なるほど。分かりやすい解説ありがとうございます。

それではクロコダイルさんからも一言》

 

《………くだらん》

 

《はい。一体何しにここにきたのでしょうかと思いますが一言もらいましたのでありがとうございます!》

 

 

軽くディスるたしぎに血管が浮き出ているクロコダイル。しかしここで手を出すのは大人げないしなによりいまはそんな事で()()()()()わけにはいかないのだ。グッと抑え込んで戦いの成り行きを見守ることにした。



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海賊と海軍と七武海と②

「……始めるか…」

 

 

バッタバッタと海賊を切り捨てるミホーク。

しかしこんな事をするためにこの場にいるのではないことをキチンと理解している。

 

目線の先には掌底打ちで何人もの海賊を氷山の壁にめり込ませる()()()()がいる。

確かにいま見ているだけなら強いといえるかもしれない。しかしミホークにはある疑念がある。

 

 

(さて、()()()()で大将の座につけるものか……)

 

 

見えているものが全てではない。

だからミホークはハジメを見定めるためにこんな普段しないことをやることにしたのだ。

 

 

(まずは)

 

 

最低でも自分とやり合う程度はなくては話にならない。

つまり完全な死角から全てを切り裂く斬撃を飛ばしても対処してもらわないと。

 

 

「ふっ」

 

 

そこら辺の雑魚に使わなかった技。

いや、技とも言えないただの剣技。

それでもマトモに食らえば簡単に胴体が別れることになる。

 

一直線に飛ぶ斬撃にいまだ気づかないハジメ。

そして当たる瞬間にそれに気付き振り向いたが

 

 

(遅いッ)

 

 

その斬撃はハジメの胴体に当たり……消えた。

 

 

(なにッ!?)

 

 

確かに斬撃は当たった。いや触れただけで切り裂く斬撃が()()()()()()()()()()()()()()()()

服も肌も一切切れていない。しかし武装色ー硬化は間に合っていなかった。

 

 

(何が…起きた?)

 

 

斬撃をかき消すほどのものがぶつかった?いや、そんな素振りも隙もなかった。

なら悪魔の実の能力によってか?いや、あれはそれさえも切り裂くはずだ。

 

 

「まさかミホークさんから仕掛けてくるなんて思いませんでした」

 

「……ガラあきだ。文句はあるまい」

 

「そうですね。そういう戦いですから」

 

 

かといってハジメから攻撃をしてこない。

舐めている?いや、何かしら考えがあるのだろう。

これだけの殺気とさっきの斬撃。

これを受けてもなお攻撃を仕掛けてこないなど、余程の臆病者か策士か………

 

 

「しかし」

 

 

例えそれがあの者の作戦だとしてもそれさえも切り捨てる。

今度は手に持つ世界最強の剣「黒刀」で沈める!!

 

一気に加速をしてハジメに近づくミホーク。

それには流石に気づいたハジメだがその場から逃げても切られる範囲に入ったことを悟り、いやミホークならばこの氷山一帯は範囲内。

こうしてターゲットにされた時点でどこにいようともミホークは切ることが出来る。

 

 

「これで、沈めッ!!!!!」

 

 

振り上げハジメの胴体を切り落とそうとするミホーク。

しかし今度は受け止めるではなく()()()()()

まるでその場から()()使()()()()()()()()()()()()()

 

 

(なにッ!!!)

 

 

しかしその程度で終わる訳がない。

ミホークは直ぐ様縦から横への振り方を変えてハジメに迫る。

 

しかし今度は助走もなしに上へと逃げたのだ。

 

 

「逃げられると、思うなッ!!!」

 

 

空中のほうが逃げようがない。

しかしそんな決めつけはせずにミホークは空中でも逃げれると仮定して攻撃を始める。

 

すると思った通りにハジメは空中でもミホークの斬撃から逃げている。しかし前もって仮定していたミホークにとっては計算の打。つまり

 

 

「終わりだ」

 

 

完全にハジメの背後を取り、防御も回避も出来ない状態で黒刀を振り下ろす。そしてハジメはその黒刀により真下の海に落ちた。

 

手応えはあった。

胴体を切り落とす気ではあったがその感覚まではなかった。だがあれを喰らっては間違いなく致命傷。

 

 

《こ、これはッ!!!鷹の目の攻撃により大将ハジメが海に沈んだあああぁ!!!》

 

《ね、ねぇ、ちょっとたしぎちゃん…

もうちょっと感情を抑えたほうが……》

 

《なにを言っているのですか!!?

実況とは見ていられる方々の代弁者となり、さらに映像では伝えられないことを声にして伝えること。感情的になるのは必然です!!!》

 

《わ、分かるけど……その年でそんなハッキリと……》

 

《なんですか!!?私が子供だから女だからと差別するというのですか!!!?》

 

《い、いや、ちが》

《最低ね、()()()

 

《おら、そこのクソガキ。なにしれっと暴言を吐いてやがる!!!!!!》

 

《………チッ………》

 

《おい!!!クロコダイルもこのタイミングで舌打ちをするなッ!!!!!》

 

《うるせぇ!!!俺まで巻き込むな!!!》

 

 

なんかカオス状態。

しかしハジメの一番近くにいる二人が全く動揺していない。それを感じ取ったミホークは

 

 

(………まさか)

 

 

そのまさかをこのタイミングで気づいて良かった。

突然に海面が競り上がり、その青い海の下から巨大な影が迫っていたのだ。

 

それに気づいた時にはそれはミホークの目の前に現れた。

 

 

「海王類だと!!」

 

 

現れたのは海王類。

それもこのタイミングで現れるなんて。

 

すかさずミホークはその海王類をぶっ斬り、胴体が2つに割れた間をすり抜けていると、またしても海王類が向かって飛んできた。それも一体二体ではなく大量に。

 

たまらずミホークは体を軸に一回転を、斬撃と共に回ったその攻撃は一回の攻撃により押し寄せてくる海王類をぶっ斬りった。

 

こんなことが自然ではありえない。

そんなことは分かっていたが、これには予想出来なかった。

 

 

「やられたらやり返す。それが僕のやり方です」

「ッ!!!?」

 

 

突然現れたハジメに目を開くミホーク。

ハジメは大量にいた海王類の一匹の()()()から現れたのだ。

 

それには予想出来なかったミホークはハジメの手にある()()()()()()()()に二度驚き、その剣と黒刀のぶつかり合った瞬間にハジメから放たれた衝撃波により吹き飛ばされた。

 

ミホークの体は海賊船の残骸に何度もぶち当たり、黒刀を残骸に突き刺しやっと停止した。

 

 

「どうですかミホークさん。僕の実力は」

 

 

すでに目の前にいるハジメ。

いまハジメがそこにいることは目を瞑っても分かる。

しかしあの時、ハジメの存在を完璧に見失っていた。

恐らく海王類の気配に紛れていたためだと思われるが、それだけのために海王類の腹に隠れるなんて

 

 

「なかなか面白いな、()()()()

 

「おっ、認めてくれました?」

 

「しかしあの暴君は簡単にはいかない。

失望させてくれるなよ」

 

 

そういってミホークは黒刀を収めて氷山の外へと出た。

 

 

《おぉーと、鷹の目が外へ出たあぁ!!

これは棄権だと見なしてよろしいでしょうか》

 

《いいんじゃない。武器も収めてるしね》

 

《つまり大将ハジメの勝利です!!!

要因はなんでしょうかニコルさん》

 

《ハジメだからよ》

 

《はい、そうでした。それしかありませんよね!!

ではクロコダイルさんお願いします!》

 

《……………チッ。

……海王類の腹なら気配を消せると思ったんだろうな

だが、普通はそんなこと考えねぇ。喰われた時点で胃液に溶かされるのがオチだ。それを計算して鷹の目に海王類を切らせたのかは知らねぇが……》

 

《とても分かりやすいご説明ありがとうございます!》

 

 

楽しくやってるなーと思っていると

 

 

「おい、大将ハジメ」

 

 

近くに一人、ハジメに近づいてきたものがいた。

それもかなり見たことあるね。

というか若いのは知ってたけど、何でいるの?

確かにたしぎはいるけどまだ関わりないんだから。

 

 

「あら?ここは海賊と僕と七武海しかいないはずだよ()()()()??」

 

「そうだな。だがどうしても俺はてめぇに会いたかった。大将に会う機会なんざ俺みたいな下の海兵にはねぇからな」

 

 

僕に会うためにか。

なんか素敵な出会い。だったら良かったんだけど。

なんかこっちを見ている目が強いし、何よりまだ持ってない大きな十手に変わって棍棒を持ってそれを僕に向けている。

 

 

「大将ハジメには悪いが……手合わせしてもらうッ!!!」

 

「なんでッ!!!??」

 

 

よく分からないけどまだ会う予定のなかった海兵、スモーカーが向かってきたのだ。一体僕がなにをしたのさ!!?



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海賊と海軍と七武海と③

しかし手合わせってなんだろう。

何かを仕返しにきたというわけではなさそうだ。

それなら「手合わせ」なんて言わずに「てめぇは許さねぇ!!」とかいって襲ってきそうだし。

 

まぁ海軍として建前上「手合わせ」という形をとったという可能性もあるな。

それだとしたらなんであんなに睨まれないといけないのか。

 

そして一番気になるのは

 

 

「君ね、いま何歳なの?」

 

 

目の前のスモーカーがタバコを吸っていたことだ。

いや、スモーカーといえばタバコだって知ってるよ。

でもね、それはあくまでも成人だったからである。

確かスモーカーの今の年齢はまだ二十歳ではないはず。

なので改めてスモーカー本人に聞いてみると

 

 

「……また、か………」

 

 

あ、あれ?また、か。ってなに?

怒りのゲージのように一気にタバコが燃焼して根本まで燃えきった。

それと同時にスモーカーは一気に近づいてきて棍棒を振り下ろす。

 

 

「てめぇはまた俺から奪うのかッ!!!?」

 

「何をッ!!!?」

 

 

なんか知らんけど激おこなスモーカーは棍棒を振り回してくる。もちろんその間にうざったい海賊が乱入してくるのだが、スモーカーは全く目にも止めない様子で簡単にあしらう。

 

 

「一体俺からどれだけ奪えば気がすむ大将ハジメ!!!!」

 

「意味が分からないんだけど!!!?」

 

 

本当に何なの!!?

とにかく怒り狂って攻撃してくるスモーカー。

そんな攻撃が通るほど世の中甘くない。

それさえ分かっていないスモーカーに対して僕が負けることはない。

というか、能力持ってるし。過信と言われるかもだけど誰にも負ける気はしないんだよねー。まぁ自分から仕掛けないけど。

 

とにかく一撃二撃ぐらい喰らわせて大人しくなってもらうかなーと行動にしようとした瞬間に、大きな手が迫ってくるのが見えたハジメは()()()()()()()()その攻撃から回避した。

 

 

「あっぶな!!」

 

「……その身のこなし……」

 

 

その正体はクマ。

ただでさえスモーカーでいっぱいなのに(気持ちが)クマまで加わると面倒くさい。

 

 

「邪魔をするな七武海ッ!!!!!」

 

「それは…俺のセリフだ!!」

 

 

すると突然にスモーカーの前に立った。

その動きはハジメと同じように()()使()()()()()()()()()()()()()()()という動き。

おっ、それって……

 

 

「貴様の下らないことに時間を裂く暇はない。

()()()()()()()()()()()()

 

「てめえがどっかに行きやがれ!!

俺は、そいつのせいで探していた悪魔の」

 

 

スモーカーの言葉は途中で遮られた。

クマの掌がスモーカーの体に触れた瞬間に()()()()()()()()()()

やっぱりどっかにスモーカーを吹き飛ばしたよう。

本編にある麦わら海賊団を助けるために吹き飛ばしたアレ。今回はスモーカーが邪魔で飛ばしたようだけど……

 

 

「おいおい。勝手に海兵を飛ばさないでほしいな」

 

「……あいつが悪い……」

 

「だとしてもだ。ってか、どこにやったの?」

 

「問題ない。時期にわかる」

 

 

そんな曖昧に答えるクマは脈絡もなく攻撃してくる。

いや、元々そういう戦いだったのだけどクマの動きはどうも僕に似ている。

 

というか元祖がクマで僕が真似てる?ってところなのかなー。もちろんクマがこの方法を使ってたなんて知らなかったし、パクりだと言われても困るけどまぁ仕方ないのかなー

 

 

「で、何が聞きたいわけ?」

 

「それは……()()()()

 

「なんだ…ね……」

 

 

その瞬間、たった一秒も満たない。

0,2秒という気がつかないほどの僅かに時間。

しかしそれは強者なら気づくだろう。

その僅かな時間に変化があれば気づいたはず。

 

しかし少なくともこの氷山にいる人達は気づかない。

 

だってその僅かな時間は、ハジメによって止められたのだ。

 

 

世界停止・小(ストップ・ミニ)

 

 

氷山の周り一帯を僅かの時間だが()()()()()()()

水も火も空気も、海賊も海兵も七武海も、範囲に入っているもの全て()()()()()()()()()()()()()()()()()が止められた。

 

発動した本人とクマを残して。

 

 

「ッ!!!??」

 

 

しかし気づいた時にはすでに元に戻っている。

そしてハジメはクマが動揺している隙に懐に入り

 

 

「それでは、また」

 

「まッ!!!」

 

 

待てと言っても待つはずがない。

だってハジメだから。

なのでさっきクマがスモーカーにやったように、クマの周りの空気を停止させた後にその止められた空気に今までの中で一番の衝撃波をぶつけてやった。

 

クマのように行き先は知りません。

なのでどっかに吹き飛ばされたクマは、周りからしたらクマと同じように突然と姿を消したハジメの行動を目撃したことになり

 

 

「で、あと誰かやりますか?」

 

「………に、」

 

「「「「逃げろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!」」」」

 

 

と、逃げまとう海賊達。

これだけで逃げるようなら海賊やっても意味なくない?

だってここには3大将いるんだよ。

いくら赤髪や白ひげがいるにしてもね……って、おい。

 

 

「グラララッ!!!!!いける口だなおい!!!」

 

「あぁっ!!?こんな酒で酔うなんぞ思ったかッ!!!!!」

 

「おいおい。それはちょっと失礼じゃねえか?

これでも一級品だぜ」

 

「確かにイイ酒だね~

こいつはこちらも…」

 

「おい黄猿ッ!!!それはワシの酒じゃ!!!!」

 

「名前書いてなかったからね~」

 

「ふざけるなッ!!!それで何本目だッ!!!!」

 

 

と酒盛りしてやがる…

何かやらかすだろうなーとは思っていたけど、まさかこれを肴に飲んでやがったよ……

 

もうムカついたので一気にその現場に移動して

 

 

「さっさと働けクソ大将共」

 

「おぉ、おお……こいつは…」

 

「ちぃっ!……不味いの………」

 

 

すぐさま二人は逃げまとう海賊達の元へ。

そして残された二人は

 

 

「逃した海賊をやれ」

 

「いや、そいつは……」

 

「やれ」

 

「逆らうんじゃねぇよ赤髪。命まだ繋げてだろう?」

 

「み、みたいだな……マジで化けもんだこいつは…」

 

 

失礼な。いま普通に怒っているだけなのに。

ともかくこの戦いは終わりが見えた。

ということで、最後に向かうところは

 

 

「はい、お疲れさま」

 

「流石ねハジメ」

 

「やりす」

「てめぇいけやグザン」

 

「………はい………」

 

 

ロビン達のいる席に移動して、早速そこにまだいたもう一人の大将を向かわせた。

 

 

『お、お疲れさまでした』

 

「はい、お疲れさま。まだ流れてるのこれ??」

 

『は、はい…終了の合図もまだなので……』

 

「よかった。はい、こっちにカメラ向けて」

 

 

せっかくだから言いたいことを言っておこう。

どうせすでにこの世界は()()()

 

ダメというのはハジメが介入して変化しすぎたという意味ですよ。勘違いなさらずに。

 

このカメラ、世界中なのだ。

なのでここにいる四皇の()()も、これから成長する海賊達も、それを止める海兵達も見ているから。

 

 

『はいはい。見てますか?大将参謀ハジメです』

 

 

誰もが見ている。

ハジメにとって今回の目的はこれだ。

七武海の相手でもなく、赤髪を呼ぶためでもなく

 

 

『ハッキリ言っておきますね。

海賊だろうが人を助けたらダメというやつ。僕はそいつを捕まえます。海兵だろうが一般市民を困らせるやつ。僕はそいつを捕まえます。

善だ悪だなんてそんな物差し持ってませんので。

それが曖昧でも僕が心が感じることを信じて動きます。

えぇーと、要はですね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。終わりです』

 

その終わり宣言通りに撮影は終わった。

そしてその瞬間から始まったのだ。

すべてが大きく変わることが。

 

もう後戻り出来ない。本編は徐々に関係なくなる。

この先は何が起こるか分からない未知の世界だ。

でもそれでいい。やるなら徹底的だ。

 

 

「さて、初めますか」



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ルフィとの出会い

はい、本編から13年前になりました。

えっ、その間?知らない、じゃダメですよねー

もうだって内容が濃い濃い。

まぁ、簡潔に説明しますね。

 

あのあと…センゴクさんに怒られた。めちゃ怒られた。

流石にあの海兵も悪いことをしてますよ。的な発言はふざけるなだろうだ。正論だなー。

 

それでも建前上みたい。あとでプライベートで話したらもちろん絶対はない。そんなやつはいる。だからその発言は貴重だと。しかし立場的にはということも言われた。優しいなーセンゴクは。

 

あのあと赤髪とは関わってない。

どうせあと何年で会うしね。白ひげと強制的に文通仲間にされていたみたいだからいいかなーと。

 

あっ七武海。

結局保護者になりました。なんか名前もらったけどもうお腹一杯だから保護者でいいよ。

ドフラミンゴとクロコダイルは納得してなかったみたいだけどそれ以外は賛成だもん。仕方ないよ。

そういえばクマ、結局飛ばされた先(僕がやったあれ)はレッドラインの壁にめり込んだという。

 

うん、謝ったよ。ちゃんとね。

そのあとちゃんと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そしたら保護者に賛成してくれた。ミホークはもちろんオッケーなのでということです。

 

 

それから一年か二年かな。

コラソンから連絡が来た。「助けてくれ」と。

これはセンゴクさんではなく僕にプライベートでかかってきたやつ。よっぽどで、それだけのことなら答えは一つ。

 

ローの話だと。

 

いまは色んな医者に見せてるが誰も見てくれないと。

どうしたらいいのかと電話してきたようだ。

まだオペオペの実のことを言わないということは、それでもどうにかして医者の力で救いたかったのだろうな。

 

さて、それでもローにはオペオペの実を食べてもらいたい。そしてコラソンにも生きてもらいたい。

 

なので作戦を伝えるためにある小島に来てもらった。

 

 

 

あっ、これからちょっとだけ話が長くなるよ。

 

 

…………………………

 

 

「はい、オペオペの実」

 

「………はっ?」

 

「だからオペオペの実だよ。この子に食べさせて自分で治したらいいよ」

 

「待て待て待てッ!!!!

俺は医者を探してたんだぞッ!!!!」

 

「だから、いまからローが医者」

 

「そうだった……お前に話が通じなかったんだ……」

 

 

なんかめっちゃ失礼なことを。

しかしローはそんなコラソンの気持ちを汲んだのかどうか知らないがその実を手に取った。

 

 

「お、おい、ロー!!!分かってるのか!!!二度と泳げない体に!!!!」

 

「ありがとうコラソン。

でももういいんだ。これで自分の手で治せる。そしたら……コラソンがこれ以上大変な思いをしなくて…すむから……」

 

「ッ!!!??……バ、バカ野郎……」

 

 

なんかスゴくいい話になってきたなー。

とそんな事を考えているとイイタイミングでヴェルゴが現れて

 

 

「ハジメ様。ドフラミンゴに動きが」

 

「あいつ面倒くさいなー」

 

「潰しますか?」

 

「いや、あんたいまこっちを潜入中という仮定でしょうが。やめなさい」

 

 

その会話に全く付いていけてないローと、感情が色々溢れて戸惑っているコラソン。

 

 

「ちょっ、ちょっとまて……

…ヴェルゴがなんでここに…っていうか潜入中とか……」

 

「あっ。気にしなくていいですよ」

 

「なるわッ!!!」

 

「うっさいですね。さっさと悪魔の実を食べたローの手助けをしててください」

 

「お、おい!!ロー!!!!」

 

 

今度はそっち慌てるコラソン。

ローはローでさっさと病気を治したいだろうから。

 

 

「この先に医療機器が整った小屋があるのでそちらで」

 

「す、すまない……」

 

 

とにかくローを優先させていまはヴェルゴからの話を聞くことに。

順調に事は進んで、本編通りにドフラミンゴはコラソンとローを探して、同時にオペオペの実を探しているようだ。

 

しかし残念。コラソンもローもオペオペの実も、そしてヴェルゴさえこっちにある。まぁそれでもまだ潰さないけどね。流石にレベッカの母スカーレットは殺させないけどね。

 

ということで泳がせますよ。ルフィに無様に負ける姿を見るのが楽しみだ。

 

 

 

なのでそのあと本編通りにローは自分で病を治して、コラソンにはドフラミンゴに銃で撃たれてもらった。もちろん死んでませんよ。服の下に一時停止をかけたので服が破ければ血糊が出るようにして。

流石に頭等は難しいからそこだけは賭けだったけど、良かった撃たれなくて。流石に兄弟の頭を撃ち抜くことはしなかったようだ。あとはコラソンの演技だったけど見事でした!

 

そのあとコラソン回収。

コラソンにはドフラミンゴを討ち取る算段が出来るまで大人しくしてもらうためにローの完全な後ろ楯になってもらった。全く表に出ずに後ろからサポートする形に。

 

 

 

まぁ、そんなところかな。

あと色々あったけど後々お伝えすることに。

 

だってこの年からシャンクスとルフィが出会うから

これがルフィが海賊に憧れるきっかけになる。

だから余計な人は入れたくなかった。

しかし、強くもなってもらいたかった。

だが、修行つける者に憧れをいだいてはいけない。

尚且つシャンクスを見て海賊になりたいと思わせないといない。

 

意外にここのコントロールが難しかった。

だって強くなるためには師匠がいるけど男なら教えてくれる人に、それも初めての大人に教えてもらったら憧れを持ってしまうことになるかねない。

 

なので…秘策はこれだッ!!!!!!

 

 

…………………………

 

 

「く、来るなッ!!!!」

 

「もう、止めてくれッ!!!!」

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

久々にルフィの元に来た。

そしたらルフィ・エース・サボはあるものから逃げまとっていた。それは

 

 

「……失礼ね」

 

 

能面を被ったロビン(分身)が木刀を持って、三人の頭に複数あるたんこぶに更なる追加をしようと追いかけていた。しかしそれで逃げているわけではない。

その能面、()()()()()()()()()()()()()()なのだ。能面からだと見えにくいということで能面の上から目を生やして現れたら「ば、化け物ッ!!!!!!」と呼ばれている。

でも能面の目が自由に動いていたら怖いよ…

いくら能力でも能面自体がちょっと不気味なのに更に怖さが増している。

 

それを分かってロビンは付けているが、それでも乙女だ。気分が悪くなる。ということで予定していた以上のスパルタ修行が始まった。

 

そう、ハジメはロビンのハジメ以外に対する短気を忘れていたのだ。

 

まぁ、今回はそれがイイ方向へ進んでくれたので良かったが。だってすでにルフィ達は無意識に高速移動"剃"を使っているし武装色硬化で何度も攻撃を防いでいる。

そこまで成長しているとは思っていなかったので驚いているが、それでもロビンにはまだまだなのだ。あの子はすでに大将並の実力はあるんじゃねえ?

 

 

「はい、20回目よ。今日はここまで」

 

「くそッ!!!!!」

 

「逃げきれなかった……」

 

「は、腹へった……」

 

 

悔しがっているエース。落ち込むサボ。一人だけお腹をすかしたルフィ。良かった性格が完全に歪んではなかったようだ。

 

 

「おーいニコル」

 

「あら、ハジメ」

 

 

分身でも「ニコル」と呼んでいる。というか海軍のニコルはすでに中将になってます。

でもバレないように髪型を変えているのだ。

こちらのニコルはポニーテールである。

しなくても能面被ってますから分からないだろうけど、食事とかはずらさないと食べれないし、完全に外さなければほとんどバレない……はず。

 

 

「どうだ。三人の成長は??」

 

「まぁまぁかしら」

 

 

すると恐る恐ると近寄ってくる三人。

そしてその三人でも末っ子のルフィが

 

 

「も、もしかして……ハジメか?」

 

「おっ、知ってるのかルフィ」

 

「おおぉッ!!!!!()()()()()()()()ハジメなんだなッ!!!!」

 

 

するとガッシリと抱きついてきたルフィ。

そのルフィの首もとにはロケットペンダントに付いていたハジメの写真。

あの日からマキノや村長が教えてくれて、ロビンがどういう人が話したようだ。

 

さてここだ。頼むから………

 

 

「やっと会えたなルフィ」

 

「おぉ、俺はハジメに会うために……」

 

 

えっ、ここでいうの!!!!

そこは赤髪でいいんだよ。僕じゃなくて……

 

 

「俺は…海賊になる!!!」

 

「いやルフィ、普通は海兵だろう?」

 

「だってよサボ。海賊は、自由なんだぜ!!!」

 

「ったく、ルフィらしいな」

 

「しっしっしっ。エースも入るだろ??」

 

「船長ならやるぜ」

 

「なら俺は副船長か」

 

「ち、違うッ!!!俺が船長だッ!!!!」

 

 

 

………ほっ。ロビンか余計なことは吹き込んでなくて良かった。

なんか本編よりもぐっーと仲良くなってるな。良かった良かった。

あとでロビン(分身)にはトロける頭撫で撫でしないとな。ロビン(分身)は完全に消えるけど(笑)

 

 

「なら、ルフィ。本物の海賊。見てみるか?」

 

「み、みたいッ!!!!!!」

 

 

こうしてちょっと早かったけどルフィに赤髪を会わせることが出来た。さてしばらくはここで様子を見ておこうかな。あれからほとんど休んでないんだ。有給は一杯あるだろうしここで使おっと。

 

 

「なのでお休みしますー」

 

『てめぇはこの野郎ッ!!!!!!書る』

 

 

はい、あとはグザンに任せて見ていきましょうかね。

ルフィの海賊王への道のりを。



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シャンクス

フーシャ村。

その海岸には巨大な船が。

海賊旗は左目に3本の傷が描かれたドクロマーク。

船の名前は“レッド・フォース号”で船首は竜を象っている。

 

そしてその船の、海賊団の船長は

 

 

「いやーすまないな」

 

「村に危害を加えないなら構わん」

 

「それは助かる。代わりに周りの海賊は任せろ」

 

 

シャンクスと村長は契約を交わして、シャンクスは村の滞在の代わりに近くの海賊を追い払う。

村長もシャンクスの赤髪海賊団の噂を知っている。

四皇の中でも大人しく市民に信頼のある海賊。

少なくとも赤髪海賊団が町を襲ったという話は聞かない。

 

それがなければ村長も抵抗するだろう。

まぁ村長が抵抗しようが四皇に勝てるなぞありえないが。

 

 

「あと酒場を教えてくれ」

 

「飲むのは構わんが物は壊してくれるなよ」

 

「そいつは心がけるよ。

もしもの時は弁償するさ」

 

 

普通は海賊から「弁償」など言わない。

やはり変わった海賊だなーと思っていると

 

 

「壊す前提は感心しませんね。

心がけるではなく、努力、いや実行してもらいましょうか」

 

「おっ、お前は」

 

「ハジメ!!!戻ってくる時は連絡を入れんか!!!!」

 

 

ちょっと注意したつもりがまさか自分が注意される羽目になるとは思わずちょっとびっくりしたが「ごめんなさい」と素直に謝った。

 

 

「ったく、村はともかくマキノぐらいには手紙をもう少し出さんか。心配しとるぞ」

 

「そうですね。よくルフィ達の事を話してくれるので助かってます」

 

「………わざと言っておるのか?」

 

「はい?」

 

 

もうよい……と何かを諦めた村長。

よく分からないがまぁいいやと思い

 

 

「久しぶりですねシャンクスさん」

 

「まさかここで会うなんてな。

ところでハジメ、白ひげに文通を」

「無理です。諦めてください。戦争する気ですか?」

 

「文通一つで戦争って…あのオヤジずいぶん変わったな……」

 

 

変わったなと言われてもそれだけは関係ないですよ。

かなり遠回りして繋がっているかもですが、白ひげが文通に執着しているのは僕のせいじゃない。

 

 

「それで、どうしてここにきたんだハジメ?」

 

「ちょっと海賊に憧れている少年達に会ってもらいたくて」

 

「……おいおい。海兵が一般市民を海賊に会わせるって……」

 

「大丈夫です。プライベートなので」

 

「ハジメがいいなら、いいんだが…」

 

 

…………………………

 

 

「ぎゃははははははは!!!!

お前が海賊?なれるわけねぇだろうが!!!!」

 

「なんだと!!!なってやる!!!!!」

 

「ムリムリ。ガキは家でミルク飲んでな!!!」

 

「俺はもう大人だぁ!!!!」

 

「ほれ、ジュースやるよ」

 

「ありがとう」

 

「ほれみろガキじゃねえか!!!!」

 

「卑怯じゃねえかッ!!!!!!」

 

 

みたいなことを毎日毎日、約一週間もやっている。

ここはマキノの仕事場の酒場。

早ければ昼間から夜までよくもまぁ浴びるほどに酒を飲む。

そんなザルな人達に対応が大変だろうとハジメはマキノの手伝いをしている。もちろんエースとサボ、ロビンも巻き込んで。ルフィにやらせたら食器が何十枚も割れるので赤髪に献上したら毎日こんな感じで遊ばれている。

 

 

「ふふふ。楽しそうね」

 

「くそ!ルフィだけ楽しやがって!!」

 

「なら混ざります?シャンクスさんには「とても弄りがいのあるエースです」って紹介しますよ」

 

「すみません。ここでお願いします」

 

「勝てないって分かってるのによくやるよエースは……」

 

「お酒追加よ。あと料理も」

 

 

マキノは料理。ハジメはその補助。

エースとサボは皿洗いで、ロビンはウェイター。

でもいま現在もロビンは能面をつけてますので、注文するときや品物が届くときは誰もがビクッと驚く。

 

あれは子供と大人という次元ではない。

もうただ単に怖い。それはもう怖い。

 

 

「ねぇ、ニコルさん。それ外さない」

 

「外さないわ。この子達のいる前では絶対に」

 

「本当になんの嫌がらせなんだよ!!!!!」

 

「五月蝿いわよ。どうしてもみたいなら早く私に一撃くわえてみせなさい」

 

「いやいや、速すぎて追い付けないし…」

 

「大人げないんだよ!!!」

 

 

ぶーぶーと文句をいうがロビンは聞いていない。

各地に散らばっている分身体は自分の正体を極力知らせないようにしている。

ロビンの能力「ハナハナの実」は()()()()()()が持っているのだ。

そしてそのロビンは海賊の中将でニコルと名前を変えている。戦闘の時は使っているが周りに見えないスピードと死角を駆使して海軍にバレないようにやってきた。

 

顔?ツインテールでバレてません。

 

とにかくそこまでしているのに分身体でニコルが「能力者」だとバレたくない。いまニコルは普通の人としてやっているのだから。

 

海楼石や海は??

常にハジメの側にいるので、その体の周りに一時停止の膜みたいなものが張られていて、その2つで力が抜けるようなことにはならない。ということになっているようだ。

 

ようだ。というのはハジメがしたわけではなくいつの間にかなっていたみたいなこと。突然にロビンに「私も海の力が効かなくなった」と言われたのだ。マジでビックリした。

 

 

副産物?というのか、特にハジメとずっと一緒にいるとそうなるらしい。オックスもその一人。能力者ではないけど一度だけ能力者からの攻撃が()()()()()()()ことがあるそうだ。

 

つまりはハジメと長時間一緒にいるだけで一時停止の簡易版が付与される。もちろんその事実はロビンとオックスだけ。一番信頼の出来る二人だからこそ付与された能力である。

 

と、かなり便利だと思われるがそれはロビンやオックス、ハジメでさえ「あっ、そんなもんあったんだ」程度。別になくてもそんなに困らないというちょっと抜けた考えだからこそ重要な秘密なのに秘密って感じではないほうがバレないのかもしれない。

 

 

「大人げない?大人だから当たり前よ」

 

「ま、マキノッ!!!!」

 

「い、いや…私どうしてもニコルさんに逆らうというか口答えというか……なんか言えないのよ」

 

「く、くそ……鬼ッ!!悪魔ッ!!!!」

 

 

するとロビンが怒るかと思ったが意外にハジメが怒ったようで結構マジな拳骨をエースの頭に喰らわせた。

 

 

「グガッッ!!!!ツウゥゥゥゥ…………

な、なにしや」

「女性に悪魔っていったか小僧」

 

 

その表情、きっと今まで生きていた中でも最もキレていたとハジメも自覚していた。そして()()()()()()が少しだが漏れ出ていることも分かっていた。

 

殺気と僅かに漏れ出た覇気がエースやサボ、マキノやロビン、店全体に広がっている。気絶するほどはない、ハジメが抑えているから。でも恐怖が全身に包まれている感覚がある。

 

 

「悪魔?おい、それがどれだけ傷つけるのか分かってるのか?」

 

…ァ……ァァ……

 

「いいか、よく覚えとけ。たった一言で人の人生を大きく狂わせることがあるってことをな」

 

 

さらに吹き出そうとする殺気と覇気。

しかしそれは近づいていたシャンクスが止めた。

 

 

「もう止めとけハジメ。

十分に理解したはずだ」

 

「…分かりました」

 

(覇王色の覇気……持ってると思っていたが……)

 

 

落ち着いたハジメ。

張り詰めた緊張がなくなり一番影響を受けたエースはそのまま気絶。サボとマキノは冷や汗をかいていたが無事であった。

 

 

「お、お兄ちゃん……」

 

「ゴメン。我慢出来なくて」

 

「ううん。ありがとう」

 

 

少し嬉しそうなロビンだが能面を被っていたので分からない。でも声はそんな声に聞こえた。

 

 

「そんな顔して怒るとき怒るんだな」

 

「それ差別ですよ」

 

「悪い悪い。

しかしここは面白い。まさか()()()()()()()()()()()()()()()まったくお前と会ってからは驚かされてばっかりだ」

 

 

その後、エースは意識を取り戻し真っ直ぐにロビンの元へ行き「ごめんなさいッ!!!!」と土下座をしたようだ。

その後訓練メニューが増えたのはいうまでもない。



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重要会議①

「さて、そろそろ厳しくなってきたかな……」

 

 

そんな独り言を言いながら書類を整理しているハジメ。

ルフィとシャンクスを出会わせて一週間滞在後、あとはロビン(分身)に任せて海軍本部に戻ってきた。

いくら自由に動き回るハジメでも「大将参謀」というものを背負っている。ずっといないわけにもいかない。

 

以前に行方不明になったときも海軍本部はヒドイ状態になっていた。ここでハジメが長期いなくなるとヤバい。

白ひげの時もちょくちょく連絡とったりしていたから良かったけど

 

 

「大体海軍に入ったのロビンから逃げるためだったんだよなー」

 

 

そのロビンはいま僕の背中に乗っかってダラーとしている。二人だけのときはもう甘えん坊になっている。まぁそれ以外では結構本編のロビンになってきたからいいけど。

さっきボソッといった言葉は全く聞こえてないのだろう。軽く夢の中にいるようで「お兄ちゃん……」と寝言をいいながらイイ顔をしている。

 

 

「自由に動くためには…賞金稼ぎか海賊かぁ…」

 

 

それ以外にもやり方はあるのだろうが正直そこまで世渡りできるスキルはない。正攻法がダメならこの2つかな。うん?ならなんで海軍に入っていても大丈夫なのか?それはノリでやっても問題ないから、なぜか。

 

 

「しかし海賊はダメだよなー」

 

 

あくまでも麦わら海賊がいいのだ。入れないにしても。

なら賞金稼ぎになるけど……

 

 

「大将をやめて賞金稼ぎか……怒られるよね」

 

 

いや、怒られるだけですむわけがない。

だけどハジメの頭では説教ですむと考えている。

そこに()()()()()()()()()()()があるとは全く思っていない。

しかしどっちにしろいつか海軍を止めるのだ。

何か手を考えないとなーと思っていると

 

 

「失礼します」

 

 

そこに現れたのはオックス。

ロビンはオックスがいてもいまの体勢を変えない。それほどオックスを信頼しきっている証拠である。

オックスもまたロビンに次ぐ「ハジメ依存性」があったら間違いなく重度の患者。

ロビンのように表に出さないがハジメのことになると周りが見えなくなり、ハジメのためなら世界を敵に回すことぐらい簡単にやりかねない人物。もちろんそんなことはハジメは知らない。普通に頼りになるお兄さんと感じているだけ。

 

 

「前から探っていたジェルマ66に動きが」

 

「もしかして東の海(イースト・ブルー)に向かってる?」

 

「流石ハジメ。その通りです」

 

 

つまりそろそろサンジがあの家族から離れる。

そして料理人の道を歩むことになる。

そこは改変しないようにした。じゃないと「赤足のゼフ」と会わなくなってしまったら「黒足」となる可能性もなくなるしね。

 

しかしそれでもジェルマ66に探りをいれていたのは

 

 

「流石にあの家族。見逃せないよね」

 

 

レイジュはともかくあのクソ三兄弟と父親にはちょっと痛い目に合わせてやる必要がある。

 

 

「それならちょっとぐらいいいかな」

 

 

それはサンジが抜ける前でもいいかもしれないな。少なくともあそこから抜ける覚悟は決めただろうし。痛い目にあうアイツらを見れば少しはスッキリするかも。

 

しかしそれは大将ではダメだ。

 

 

「………ねぇ、オックスさん。ニコル」

 

 

そういうときには一人では悩まない。

だから信頼出来る二人に話そうと声をかけると

 

 

「お兄ちゃんがやりたいなら私は付いていくわ」

 

「ニコルさんと同じです。どこまでも」

 

 

何にも話してないのに。この人達は。

ならちょっと試したいことがあったのだ。

これが出来ればさらに自由に動けて世界を更に変えることが出来る。

 

 

「それじゃ…準備しないとだね」

 

 

…………………………

 

 

「で、なんで俺は呼ばれたんだ」

 

「あぁ、僕の影武者になってもらいたくて」

 

「……………はぁ?」

 

 

本部に呼び出したのは東の海の海軍にいる海兵。

その海兵はハジメに大きく影響を受けた人物、モーガンだった。

 

 

「お、おい、まて。

影武者って……意味分かって言ってるのか?」

 

「大丈夫ですよ。実力はこれから僕が直々に鍛えあげて大将クラスまで引き上げますので」

 

「そんなことをいってんじゃねえ!!!!

なんで影武者なんて必要なんだよッ!!!!」

 

 

まぁ気になるよな。なので素直にいうことに

 

 

「いつか海軍を止めるので。でも止めるだけじゃダメだと思ったので僕の代わりを」

 

「だからって影武者なんて……

…止めないという選択はねえのか……」

 

「ないですね」

 

 

ハッキリと言われた言葉に頭が下がるモーガン。

大きくため息をついたあと

 

 

「……やってもいいが条件がある」

 

「おっ、もっと渋るかと思ったんですが」

 

「うるせぇ。どうせ決定事項みたいなもんだろうが。

だったら決まる前に条件つけたほうがいいだろう」

 

 

そこら辺は抜け目ないなーと感じながら

 

 

「で、条件ってなんですか?」

 

「息子。息子のヘルメッポも連れてきたい」

 

「そして海軍に入れて欲しいですか。

僕はいいですけど、本人には??」

 

「あのバカ息子には少しお灸が必要だ。

俺だと甘えがあるからな、それが条件だ」

 

「いいですよ。二人とも面倒みますね」

 

「いや、息子は普通で……ってもうムリか……」

 

 

ちょっと後悔しているモーガンだが気持ちを切り替えて

 

 

「で、やるのは構わないがちゃんと理由を話してくれるんだろうな?」

 

「それはもちろん。

でもちょっと待ってくださいね。まだ来ていない人がいるので」

 

 

するとタイミングよく扉が開くとロビンとオックス、そして絶世の美女が現れた

 

 

「兄様ッ!!!!お久しぶりです!!!」

 

「ゴメンねハンコック。忙しいときに」

 

「いいえ構いませぬ。

兄様のためなら妾はどんなことでも優先して兄様の元へ」

 

「やり過ぎないようにね」

 

 

はいッ!!!と元気よくいうが本当に大丈夫なのか?と考えていると脇腹をこずいてきたモーガンは

 

 

「なんでここにボア・ハンコックがいるんだッ!!!??」

 

「あれ?僕が七武海の管理人になったの知りませんか?」

 

「知るかッ!!!!そんな上層部しか流れない情報が下にくると思ってるのか!!?こっちはハジメが七武海に喧嘩を売ったとしか知らねぇんだよ!!!!」

 

 

あぁ、あの戦い七武海に認めてもらうためにしてたけど映像を見ていた人にはそんな風に思われてたんだなー

 

 

「まぁ気にしない気にしない」

 

「………くそッ!!!

まぁ、いい。もうないんだろうな……」

 

「あと一人来ますけど??」

 

「……頼むからマトモなやつで…」

 

 

しかしそれは虚しくとも崩れた。

そこに現れたのは年老いた人で、しかし全くスキもなく絶対に勝てない強者と肌で感じる人物

 

 

「まさか…海軍本部に入る日がくるとは」

 

「いつか職場を見せたかったのでイイ機会でした」

 

「職場というが君のは特殊だと思うんだかね。

そして私はそれに追われる立場なんだが」

 

「引退しているのでセーフです。

それに()()()がいるので問題なかったですよね」

 

「……ったく、君の行動は本当に…」

 

 

頭を抱える人物、シルバーズ・レイリー。

海賊王の副船長であり、この海軍の敵対するはずの人物がいま海軍本部のど真ん中にいる。

 

 

「ハ・ジ・メッ!!!説明しろおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!」

 

「五月蝿いですね。説明するっていいましたよね?」

 

「規格外過ぎんだよお前はッッ!!!!!!」

 

 

もう頭がパンクする寸前のモーガン。

しかしこれからが本番なのだ。

 

 

「言っときますけどこれからが本番ですよ。

ちゃんと理由を話しますので」

 

「……いま物凄く後悔してるよ……」

 

 

…………………………

 

 

「それでこのメンバーだけに話すのか?」

 

「実際はもっと話したい人がいますが、あまり広めたくないですし、まぁ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

部屋に集まったのはロビン、オックス、モーガン、ハンコック、レイリー。

このメンバーが集まった理由とは

 

 

「今回集まってもらったのは……僕という存在を消すためです」

 

 

その言葉に誰もが言葉を出せなかった。

一体何を言いたいのかまだハッキリしていないから。

だからハッキリと分かるまで誰も口を出さないようだ。

 

 

「正確には「海軍にいる大将参謀ハジメ」という存在を消します。いや違いますね。大将参謀ハジメはいるんですけどそれは僕じゃありません」

 

「それが……俺か」

 

 

さっき言われた影武者。

そうハジメがモーガンにやってもらいたかったのはハジメが抜けたあとの「大将参謀ハジメ」になってもらうため。

 

 

「だがよ。どう見ても俺じゃお前にはなれねぇぞ」

 

「そこは大丈夫です。

ただその大丈夫にするためには……()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その言葉に誰もが緊張感を感じ取った。

ハジメの秘密。秘密があるのはなんとなく分かっている人もいただろうが何かは知らない。

 

 

「なるほど。私には報告を兼ねて呼んだのか」

 

「ですね。こんな機会がないと海軍本部に呼べませんので」

 

「それだけ重要な話だと、私も怒るに怒れないな。

ったく、こういうことは策士というか……」

 

 

レイリーは知っている。この中でも数少ない秘密を知っている者。そして今回その秘密を知る人物が増えるのだ。

 

 

「おい…待ってくれ……一体何を知らされるんだ俺は……」

 

「大丈夫ですよ。大したことありません」

 

「んなわけあるかッ!!!!」

 

「でも僕が「トメトメの実」を食べた能力者ぐらいですけど」

 

 

……………………………

…………………………

………………………

……………………

…………………

………………

……………

…………

………

……

 

 

「トンでもないもんをぶっこむなああああああああああぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!!」

 

 

本当に五月蝿い。

部屋に一時停止かけておいてよかった。



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重要会議②

「トメトメの実ッ!!?

それって悪魔の実の最強じゃねえか!!!」

 

「やっぱり有名なんですねー」

 

「なんでのんびりしてんだッ!!!!!!

そいつは世界政府も狙ってるやつだぞ!!!!!」

 

 

やっぱり有名らしいこの実。

でもこの力は僕のものだし、世界政府にどうこうされるつもりもない。

 

 

「それはともかく」

「ともかくッ!!!??」

 

「あまりしつこくツッコミ入れるとその口動かなくしますよ」

 

 

流石に話を中断させていることに気づいたモーガンはグッと堪えた。それだけのことを言われたらツッコミのモーガンは言いたくなるだろうけど我慢しないとね。

 

 

「この力があれば僕の存在を止めることができます。

そうすれば「大将参謀ハジメ」はいなかったことになります。でもそれだともうこの海軍が機能しないというレベルになってしまってます」

 

「……さ、流石に…」

 

「なってますよ。グザンは書類整理できずにボルサリーノさんはストレスで体調崩しますし、サカズキさんはもう堅物の面影をなくして周りの海兵にバカにされますしセンゴクさんは胃に穴が空いて死にかけます」

 

「……………………」

 

 

あまりにもヤバすぎる状況に言葉を失くすモーガン。

 

 

「なので僕の()()()()()()()()()残してモーガンさんに影武者になって「大将参謀ハジメ」をやってもらうんです。そうすればモーガンさんの姿を見ても僕だと勘違いしますので」

 

「いや、いやいやいや!!!

それでも俺がハジメになる理屈にはならんだろうが!!

どうやってそういう風に思わせるんだ!?」

 

「モーガンさんにも()()()()()()()()()()()()()()()()を止めるんです。そしたらモーガンさんに抜けた「いたという事実」が、僕の存在がはまって完成するってわけです」

 

 

それには納得できなかったが理屈は分かった。

あのハジメだ、そういったということはそれをするだけの自信というか確実性があるのだろうと。

 

まぁ本人は「うん、出来るはず」ぐらいしか思っていないが。

 

 

「そこまでして海軍をぬけて何をする気だ?」

 

「あっ、完全抜けませんよ。

いない間はモーガンが僕を。僕が抜けているときは賞金稼ぎとなって世界を回ろうかと思っているんです。

あとすぐに抜けませんから。僕になるために2~3年はかかると思いますし」

 

 

するとさっきまで黙っていたハンコックが

 

 

「それなら妾の船に…」

 

「ハンコックは好きなように海を渡ってほしいんだ」

 

「妾は兄様のお役に…」

 

「ありがとうハンコック。

でもハンコックには自由にやってほしいんだ。

そんなハンコックを僕は見ていたいんだ。たまに顔を出すからさ……ダメかな?」

 

「兄様のためならッ!!!!!!」

 

 

よし、話がまとまっ

 

 

「いやちょっと待て!

ハジメの代わりをしているときは「モーガン」は消えるのか?」

 

「消えますね」

 

「消えますね、じゃねえよ!!!!ふざけんなッ!!!!」

 

「一時的ですよ。問題ないですよね」

 

 

これ以上は絶対に話を聞かないと諦めたモーガンは「くそがッ!!!!」といいながらソファーに座った。

 

 

「それで大将をやめてまでなにする気だ?」

 

「将来の海賊王の手助けですが何か?」

 

「頭イカれているのかッッ!!!??」

 

 

また罵倒されたハジメだが呑気にあくびしている。

 

 

「いかれてませんよ。元々海軍なら色々出来て将来融通が効くんじゃないかと思ったので……」

 

「頼むから…マトモに話を……」

 

「ハジメに常識というものを当てはめようとしていてはダメだ」

 

「そうね、お兄ちゃんだもん」

 

「さすが兄様じゃ」

 

 

なんかここにいるとモーガンの精神がおかしくなりそうだと感じているが、抜け出せないもの分かっている。ここまでドップリと嵌まってしまった時点でもう手遅れ。

 

 

「しかし……私はハジメに付いていくとは言いましたが、それが海賊王の手助けとなると……」

 

「オックスさん…」

 

 

それはそうだろう。純粋に海軍としていたオックス。

「正義」のためにハジメの元にいたのだ。それが「悪」の定義である海賊の手助けなんて……

 

 

「八咫烏にも話を広めますがいいでしょうか。

そのほうがより良い手助けが出来ます」

 

「私も月兎に話しておくわ」

 

「おまかせします。その時はこのビブルカードを…」

 

「お願いだから…もうお腹…一杯……」

 

 

急展開に急展開。本当にモーガンの頭はパンク寸前。

 

 

「ビブルカードは僕の生きている証。つまりは存在を証明してくれます。それに一時停止をかけてますので持っている限りはモーガンに代わっても僕を認識出来ます。

あとは必要だと思う人に最低限の話とそれを渡して下さい」

 

 

そういってみんなにビブルカードを渡す。

みんなに渡し最後にモーガンに渡すと渋い顔で

 

 

「……納得はしてねえからな。

大将はやってやる。だがハジメが海賊になるなら……俺はてめぇを捕まえるぞ」

 

「ええ。それが海軍ですので」

 

「あぁーもうー!!!!

もう勝手にしやがれッ!!!!ダメだっていってもやるんだろう!!!」

 

「やりますね」

 

 

そのやり取りにレイリーは思わず笑っていた。

 

 

(海軍と海賊。いや、そんな枠では収まらないほどの男が応援したい男か………楽しみだ……)

 

 

…………………………

 

 

「で、まさかそれだけのことで呼んだわけじゃないのだろう」

 

「いや、そんな…」

 

「はい」

 

「はい、じゃねぇ!!!」

 

 

レイリーの言葉に簡単に反応するハジメ。それにモーガンはもう止めてくれと頭を落とす。

 

 

「ちょっと色々…やってほしくて」

 

「その顔、怪しすぎるッ!!!!」

 

「いやですね。なにも…企んでません」

 

「企んでいるよなッ!!間違いなく企んでいるよなッ!!!!!!」

 

 

別に普通にしているつもりだが、そこまでハジメの表情を見極めるなど……ハジメに染まってきたな…

 

 

「それは……」

 

 

慎重に言葉を選ぶように緊張感を出しながらハジメは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白ひげさんの文通相手になってあげてくれませんかレイリーさん」

 

「それ呼び出す内容かああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

ハジメは真面目である。白ひげがしつこく言ってくるのだ。直接話は出来ないしでんでん虫は盗み聞きされるかもしれない。でも気軽に話したい。

 

なので文通である。

最近は配達に白兎が絡んでいるようでどこの機関よりも恐ろしいと誰も手をつけないようだ。

なので安心して文通しているようだが、月兎はその文通を渡す前に()()()()()()()()ということは誰も知らない。というか知らないほうがいい。()()()()()()()()()

 

で、レイリーはOKを出したそうです。



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ジェルマ66

「で、なんで俺はここにいる?」

 

「強さを身に付けるならお手本になるものの側にいよ。って誰かが言ってました」

 

 

東の海(イースト・ブルー)

その海のある島、そのから少し離れた所に海軍船が停泊している。まだモーガンに影武者してもらうことは無理なためこうして連れてきている。少しでもハジメの思考や行動を理解してもらうためだ。

 

 

「…はぁ。よく考えたら俺はハジメの真似をしないといけないんだよな……頭が痛くなる……」

 

「失礼な。僕ほどマトモな人間はいませんよ」

 

「……おい、これはツッコミいれていいんだよなッ!!!!!!」

 

「さて、あんなに戦いをしたいジェルマには僕たちが相手してあげましょう」

 

「…くそっが!!なんで引き受けたんだオレ……」

 

 

後悔してももう遅い。

ハジメに関わった時点で大抵の人は本編と大きく外されるのだ。もちろんそのことに気づくものはいない。

 

 

「でもいいのか?この戦争、海軍が関わっていい案件なのか?」

 

「??何を言ってるんですか?

民を助けないのを関わったになんて入りませんよね。ジェルマがどんな理由であの国を狙ったかは知りませんけど、あの国で戦争している時点で国民に被害はあります。僕はその人達を助けにいくんです。ジェルマは二の次でいいです」

 

「……………………マトモだ」

 

「本当に僕をどんな人間だと思っているんですか?」

 

 

海軍に入ってなくても助けれるなら助ける。

僕は別に鬼じゃないのだ。どうも周りの僕を見る目がおかしい。

 

と、疑問に思っているようだが普段の行動からおかしいのはハジメだとここにツッコミをいれるのはモーガンだけだがモーガンもまた強くツッコミを入れられないのでここで話は終わる。

 

 

「さっき言った通り優先は国民の安全確保です。

ジェルマ及び軍隊は後回し、速やかに退避させるように」

 

「「「はっ!!!」」」

 

 

この姿を見てモーガンは思った。

あれ、やっぱりマトモなのかなーと。

 

 

「言っておくが新入り。あれ、後は大将参謀ハジメとニコル中将が無双するから離れろってことだ」

 

「………ヴェルゴ中佐、どういう……」

 

「知らなくていい。俺はハジメ様のツッコミ兼サポーターなのだから」

 

「ハジメ様ッ!!!??ってかツッコミ兼サポーターってなにッ!!!!」

 

「おおっ。なかなかのツッコミ。

だがツッコミだけでは話は進まない。それはこれから覚えていくだろう」

 

「いらない!!そんなのいらない!!!

ヴェルゴ中佐ぐらいがマトモだと思ったのになにココッ!!!!!!」

 

 

徐々にハジメ色に染まるかと思うと恐怖もわくモーガンだが、すでにヘルメッポを()()()()()()()()()()時点で手遅れなのだ。

 

 

…………………………

 

 

「ぐっ……」

 

 

国王に仕える軍隊が倒れていく。

そんな中で国王は後悔していた。

どうしてあそこで終わらなかったのか、どうして欲望に負けたのか?

 

そのために国民に裏切られこうしてジェルマ66という夢物語だった軍隊が攻めてきたのだ。

 

………もう、この国は終わりかもしれない。

 

 

「邪魔をするぞ国王」

 

「き、貴様が……ジェルマ!!!」

 

「いかにも我が名はヴィンスモーク・ジャッジッ!!!!

貴様の首、もらい受けにきたッ!!!!!!」

 

 

もうそこに絶望がいた。王室まで入ってきた。

どうしようともなくても最後まで国王であることに違いないと国王は剣を取り対面する。

 

 

「ふん。ただ堕落した国王とは違うか…しかしどのみちこの国は終わりだ」

 

「だとしても…最後一矢報いる!!!!」

 

 

鞘を投げ捨てジャッジに飛びかかる国王。

しかし簡単にその刃は受け止められ、すぐさま反撃を食らってしまった。

 

 

「ぐふッ!!!」

 

「その程度で国王か……落ちるして落ちた国だったわけだ」

 

 

そういって負傷し片膝ついた国王にトドメの一撃を放つジャッジ。国王はそれを受け止めたのか目を閉じ抵抗をやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい。反省したんですからここまでですよ」

 

「「ッッ!!!??」」

 

 

突然現れた者にジャッジの攻撃は止められた。

すぐさま体勢を整えようと後退したジャッジの目に映ったのは

 

 

「大将参謀…ハジメだとッ!!!!!!」

 

「よくご存じで。

ジェルマ66、もうここまでにしてくれませんか?

国王も反省しているようですし」

 

「ふざけるなッ!!!

ジェルマ66は戦争屋。それを自ら止めろというのかッ!!!!!!」

 

「どうせお金が欲しかった。軍事力が欲しかったというところでしょう?お金ならこの国から持っていけばいい。でも命をとる必要はないはずですよ」

 

「戦争はその国が滅びるか、配下に下るまで続けるもの。ましてや国王が責任を取らずに終わる戦争なぞない!!!」

 

 

いや、ありますけど。と言いたかったがジャッジが飛びかかってきたために会話を一時中断となった。

別に攻撃を受けてもいいが余裕で攻撃を避けるほうが精神的にくるだろうと逃げまくる。

 

 

「それでも国民はどうなるんですか?

どうやら大元はこの国の人達からのSOSですよね。

それが別の国に知れ渡り貴方達に依頼があった。

ならその国民の日常を戻すためにやるのが筋ではないかなーと思いますが」

 

「どこまでも青二才なことを。

戦争にそんなものはいらん!!勝つか負けるか!!!

勝てば全てを取り、負ければ全てを失う。それだけだッ!!!!!!」

 

 

まったく話にならない。

結局この国から貰うものは貰うって言っているのだ。

だったら命までは取らなくてもよくない?って言ってるのにどうして話を聞かないのか……

 

 

「仕方ないですね……こんな手使いたくないのですけど……」

 

 

入ってきて!!と声をあげると王室の扉が開きそこにニコルと捕らえられた()()()()がいた。

 

 

「お前たちッ!!!」

 

 

イチジ・ニジ・ヨジ・レイジュは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。逃げ出そうとしているが武装色ー硬化ーにより鎖を引きちぎるように出来ない。そしてそれぞれが各自の力を出そうとすると

 

 

「ガッ!!」

「グッ!!」

「ゴッ!!」

「ッッ!!」

 

 

それぞれにあった対象法により止められる。

といってもやり方は同じ。殴り付ける、なんて野暮なことはせずに()()()()()()()()()()()()()()()

これはロビンの能力だからこそ、そして覚醒により生える手を大小様々に変えれることが出来る技のため。

そのためにナノの大きさでありながらも力は数十倍もあるのだ。軽く心臓を握ればどうなるか分かるはず。

 

しかしナノから心臓を握れとなれば相当の数がいる。

それを四人、トンでもない数を出している。

 

ちなみにレイジュだけは女同士なのか、レイジュが女だからなのかは分からないが胴体の縛り付けだけのようだ。

 

 

「貴様ッ……海軍のくせに脅す気かッ!!!」

 

「いや海軍だから脅さないってだれが決めたんですか?

第一に戦争屋であるジェルマ66にそんなことを言われてもって感じですけどね」

 

 

さらにジャッジを煽るハジメ。

 

 

「まあ人質的なものを取りましたし交渉に移りましょうか。交渉ですよ、交渉。要求じゃないんですからいいですよね?」

 

「ふざ」

「ほら、()()()()()()()?」

 

 

攻撃を避けながらハジメはジャッジの肩に手を置き呟いた。すると力が抜けその場に座り込んでしまったジャッジ。

 

 

「な、何をしたッッ!!!??」

 

「そこはどうでもいいんで。はい、お話をしましょうね」

 

 

ハジメもその場に座り込む。

そんな様子を国王はどうしていいか分からず見ていたが、この隙にと逃げようとするが

 

 

「どこへ行くんだ?」

「てめぇの国だろうが!」

 

「ひっ!!!」

 

 

目付きの悪いヴェルゴとモーガンにより制止された。

ロビンは四人をジャッジの元へ送り届けたがまだ解放はしていない。

 

 

「それじゃ……4つ話を聞いてくれたら四人とも解放しますね」

 

「ふざけるなッ!!!それは脅しではないか!!!」

 

「………じゃ、脅しで」

 

「ふざけているのかッッ!!!!!!」

 

 

ふざけてはいないが……なんか悪いことしたなーとちょっと反省。

なので初めは簡単なことを言ったみた。

 

 

「じゃまず国王は殺さないで一つでいいですよ」

 

「………そこまでの価値はないぞ」

 

「価値はいりませんよ。国王ですから」

 

 

その問いかけにジャッジは頷く。

ということでまずはイチジを解放。

 

 

「てめぇら…よくも……」

 

「言っておきますけど()()()()()()()いってませんよ。だから暴れないで下さいね」

 

「……くそがッ!!!」

 

 

措かれた状況をすぐに判断してくれて助かった。

さて次の交渉、じゃなくて脅しは

 

 

「じゃどうせ僕たちのことを詮索するだろうと思うんで、それを外部に漏らさない……ことかな」

 

「詮索をするなではなくか?」

 

「どうせするでしょう。

別にそれはいいですけど、その情報を漏らしてほしくないかなーと思うので。

あっ、もちろん漏らしたら制裁は受けてもらいますよ。ニコルに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は理解してくれると思いますので」

 

 

その言葉に四人とも冷や汗を流す。

正確にはレイジュには何もしていない。

本編では何度もサンジことを気にかけて、ルフィまで助けてくれた人なのだ。そこはロビンにあとでいえば問題ないないだろう。

しかしレイジュにはといったが実際は出来ない。

いや、どんなに遠くても一度触れていれば能力で生やすことは出来る。ただナノのようなものは繊細なためこうして接近していなければ出来ないのだ。それでも十分に脅しとしては効果がある。

 

さて、そのロビンの恐ろしさにジャッジも気づいたのが大人しく頷く。なのでニジ解放。

 

 

「あとは一気に行きますか。

今日あったことを口外しないこと。あと一つはいつかの時に「絶対実行券」としてとっておきますね」

 

「き、貴様ぁッ!!!!」

 

「大丈夫ですよ。無茶なことはいいませんから」

 

 

そういって全員を解放したのだが、全員が明らかな敵意を向ける。まぁそうなるよねー

 

 

「お詫びってわけじゃないですけど、手伝いますよ」

 

「なにをだ??」

 

北の海(ノース・ブルー)に戻りたいんですよね?」

 

 

その言葉に目が見開いた。おお、いい反応。

 

 

「征服を、手伝うというのか?海軍が??」

 

「いやいや、征服なんて手伝いませんよ」

 

「では何を」

 

「ですから北の海をまとめる「北の国王(ノース・キング)」になればいいんですよ。征服ではなく国民に認められる、悪ではなく正義で勝ち取るんですよ」



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白ひげとハジメ

ジェルマ66にあんな大口を叩いたが僕はなにもしない。

いや、だって正直ジャッジを手懐けるのは骨がおれる。ロビンの「お話し」があれば大丈夫だろうがそこまでして言うことを聞かせるつもりもない。

 

なのでやることはない。

まぁ手助けとして助言やたまにロビン(分身)を派遣させるぐらいはしてもいいけど。それでも極力関わりたくない。あそこにいったのは原作でサンジの扱いが酷かったからむしゃくしゃしてやっただけ。後悔はしてない!!

 

 

さて、来年から本当に忙しくなる。

この一年でモーガンを出来るだけ「ハジメ」に近づけないといけない。

それにまだやることがある気がするのだが、どうしてもそれが思い出せないでいる。

 

思い出せないのなら大したことではないかもしれない。

それよりこの一年でやりたいことをやってほうがいいかもしれないなー。じゃないとあとは本編の改竄で忙しくなるし。

それに会っておきたい人にも会いに行こうかな。

 

 

「それじゃいこうか」

「まてまてまてッ!!!!

理由も無しに引っ張るなッ!!!!こっちはお前の書類をやってるんだぞ!!!!」

 

「大丈夫です。グザンがいます」

「怖いもんなしかッ!!!!同じ大将だろうが!!!」

 

「怖い?クズなクザンが怖いってどういうことですか?」

 

「………もう、いい。とにかく引っ張るな……」

 

 

何かを諦めたモーガン。うん、素直でよろしい。

 

 

「で、どこに行くんだ?」

 

「とにかく会いたい人に会いにいくって感じですかねー

来年からからは色々忙しいですし。モーガンさんにも付いてもらうのは来年に向けて僕をより良く知ってもらうためです」

 

「来年か……マジでやるんだな……」

 

「すぐに影武者はしませんよ。それでももしかしたら1日ぐらいはお願いするかもですので」

 

 

まったく予想が出来ていない。

来年はやることが多過ぎてどれから手をつければ自分の思い描くストーリーになるのか分からない。

だからこそこの色んな準備が必要となる。

 

といっても僕の体が自由に動かせればある程度はうまくいくだろうと考えているので、そのためのモーガンを鍛えるしかないわけである。

 

 

「で、最初はどこからだ?」

 

 

…………………………

 

 

「お久しぶりです」

「来たかハジメ」

 

「最初がヤバすぎるんだよッ!!!!」

 

 

安定のツッコミに誰もがなんか戻ってきたなーと感じる今日この頃。白ひげ海賊団の人達は相変わらずハジメに対しての順応が早い。初めて見るモーガンのツッコミさえ受け入れる懐の深さたるや。流石です。

 

 

「聞いたぞ。海軍止めて賞金稼ぎをやる気だってな。

そんなのになるぐらいなら家に正式に入りやがれ」

 

「ですからもし入るなら決めている所があるので」

 

「ったく、オヤジが勧誘なんざしねえってのに。

相変わらず掴み所がねぇよい」

 

「それでも家族として受け入れてくれるだけで感謝してますよ」

 

 

その言葉に白ひげ海賊団はちょっと照れくさそうにする。普段から家族、家族と言っているのにどうしてハジメがいうとちょっと嬉しそうにするのだろうか?

 

 

「で、今日はどんな用件だ??」

 

「いや、しばらくこうして会いに来るもの難しくなりそうなので。

もしかしたら数十年は無理かも」

 

「………そうか。まぁ文通があるからな」

 

「そこはでんでん虫じゃないところが白ひげさんらしいところですね」

 

 

白ひげ=文通ともうこの世界では当たり前。

ハジメが知っている限り大物は大抵白ひげと文通している。ある意味白ひげに情報を聞こうとすれば世界中の重要な情報が手にはいるといっていい。

 

そうだ。と何かを思い出したハジメはマルコさんと白ひげさん二人だけ呼んで

 

 

「そうです。久しぶりに予言していいですか?」

 

「いやいや、前のやつもまだ起きてねぇのにか?」

 

「あれは最悪、この船から死人さえでなければいいので。とにかく悪魔の実が手に入ったら気を付けてくださいね」

 

「その前にこの船に誰か乗るんじゃねえのか?」

 

「そうなんですよ。いま鍛えあげてますので」

 

「…………お前がか??」

 

「いいえ。ニコルが」

 

「………………」

「………………」

「………………」

 

「…………廃人にならないようにな」

「…………無事に送り届けろよ」

「ニコルにちょっと失礼じゃないですか?」

 

 

真の姿を知らないとはいえ、なんとなくロビンがヤバいやつだと直感が教えてくれているようだ。

そのロビンがこの白ひげ海賊団に入るというのに、入る前にヤバい奴にならないように祈る二人だった。

 

 

「そういえばニコルはいねえのかよい」

 

「あの娘、ハジメから離れると発狂しそうなのにな」

 

「いますよ。ここに」

 

 

ハジメが指を指す方向は胸のポケット。

何がと思っていると、ひょっこりと顔が出てきたのだ。

その胸のポケットから見覚えのある顔が。

 

 

「本体はちょっと集中しないといけない状態だから」

 

「「………………………」」

 

「聞いているのかしら?」

 

「…………もう、なんでもありだな…………」

 

 

そう思ってしまうのは仕方ない。

だって親指サイズのロビンが胸のポケットから顔を出したのだ。非常識にもほどがある。

 

これはロビンがナノサイズの能力を使えると分かってから、もしかしたら小さいロビンもいけるんじゃないかと頑張って発現させたのだ。

 

出来たのはいい。小さいから使い勝手もいい。

良すぎてロビンはいまハジメが出会いに向かうだろう人物の元へ先回りしているだ。

小さいから能力もそんなに使わないが、沢山の分身を操るとなると精神統一しないと難しい。

 

なので今回はこの小ロビンがハジメに付き添っている。

 

 

「おいおい。そんな小さくて大丈夫なのかよい?」

 

「小さくても実力は変わらないわ。試してみる?」

 

「………いや、遠慮しておくよい……」

 

 

そう、と不適に笑いポケットに潜り込んだ。

会話が終わったからと思ったがどうやらずっと三人でひそひそと話しているのが気に入らなかったのか、横やりをしてくるバカが近づいてきたからのようだ。

 

 

「おいおい、三人で話さずに俺達とも」

「てめぇはお呼びじゃねえんだよ。帰れ」

 

「相変わらず俺にはキツいな。仲良くしようぜ」

「なら死んだほうがましだ。ってかてめぇを殺すぞ」

 

 

相変わらずティーチを見るだけで暴言が出てくる。

家族であるティーチに「殺す」なんて言ったら普通は白ひげが黙ってないが、あのハジメが理由もなく毛嫌いするとは思えないと考えている白ひげはとにかくそんなティーチを警戒だけすればいいとハジメの発言には口を出していない。

ちなみに周りからはハジメとティーチが喧嘩しているが、実は仲良しなんじゃないかと噂が流れているようだ。もちろんハジメの耳に入れないようにはしてます。

 

 

「その辺にしとけハジメ。

とにかく今日は飲んでいくんだろう?」

 

「はい。せっかくですし」

 

「野郎共ッ!!!!宴の準備をしやがれッ!!!!」

 

「「「もうできてますッ!!!!!!」」」

 

 

…………………………

 

 

「………で、正直なところどうなんだ?」

 

「………気づきますよね……」

 

 

散々騒ぎまくり、1日とは言わず三日間ぶっ続けで宴が続いた。流石に白ひげ海賊団とはいっても三日間は堪えるようで白ひげを残して息子たちはダウン。付いてきたモーガンもダウン。今回のロビンは影に隠れると徹しているのでカウントせずにとなると残るはハジメだけ。

 

 

「不安…ですかね……もうやると決めてますが、やっているんですが……どうも…大丈夫なのかと…」

 

「なにがだ?」

 

 

 

「………すみません。話せません。

それは僕がこの世に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それがどんな影響を及ぼして何を犠牲にするか分からないというのに……それでも歩みを止めずに来ました」

 

「それはまだやり直せるとなんとなく思っていたかもしれません。でも……もう少しで本格的に入ってしまいます。一度入ったら多分何が起きても止まれないです」

 

「それがどんな幸福でも絶望でも。きっと何もかもこの世界には起きた出来事の原因は……きっと僕になると思います」

 

「背負う覚悟はあります。ただ不安なのは…それがその人たちが本当に望んでいることなのか……と……」

 

 

その言葉に白ひげは何も答えなかった。

何かを背負っているとは思っていたがまさか世界に強い影響を、それに伴う原因全てを背負うなんて……

 

正直どんなものか理解なんて出来ない。

だからこそ、いまはこうして隣で飲むしか出来なかった。

 

でもたった一言だけ。

 

 

「お前ならやれる。俺の息子だからな」

 

「ッッ!!!??

………ありがとう、ございます……」

 

 

それだけで何が変わるとは思わない。

だけど少しだけでもハジメの心が救われたらと思いながらその酒を一気に飲み干した。



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この世界と革命軍

「おい、もういくのか?」

 

「はい、まだまだ回るところもありますので」

 

 

一週間近く白ひげ海賊団のところでお世話になった。

相変わらずティーチだけは完全拒否をしていたがそれ以外のメンバーとはまた一段と親しくなった。

そういえばいつの間にかマルコさんとモーガンさんが意気投合していたのにはビックリした。

 

一応海賊と海軍なので仲良くなるのはおかしい(自分が一番おかしいとは自覚してます)のだが、とくに「やっぱりそっちの大将もか…」「どうして上に立つ人間は2つも3つも癖が強いのか……」などと愚痴っていた。

たまにそこにヴェルゴさんも加わって酒が入ると手が付けられない。

 

……内容は言いません。彼らの名誉もあるので。

まぁ、白ひげさんがキレかけて船が転覆するんじゃないかと思った出来事があったぐらいです。

 

 

「まぁ、俺が文通しているやつらにはいく予定なんだろう。話が通りやすくしてやったぞ」

 

「それは助かります。でも先に行きたいところがあったのでそっちが終わり次第ですかね」

 

「ほう。何処だ??」

 

「それは………」

 

 

…………………………

 

 

とある島。

そこは名もなき島。

辺りは岩と砂で覆われ人が生きていくにはとても厳しい場所である。

 

と、いってもそこが島である限り船でいけば食料も水も手にはいる。環境さえ慣れれば住めなくはない島ではある。

しかし好き好んでそんな島に住み着くなんて輩はいない。

 

そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()とかないかぎり……

 

 

「ヴァナタ、ドラゴンは何処にいるのかしら?」

 

「それならあちらに行かれたようですが…」

 

「そう、またあそこね」

 

 

全身を覆い隠す布。しかしそれでも隠しきれないその大きな顔と体。……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだが。

 

 

「やっぱりここにいたのね」

 

「イワンコフか」

 

 

イワンコフ。革命軍幹部。

カマバッカ王国の女王(永久欠番)であり「ニューカマー拳法」の使い手で、肉弾戦にも長ける。

そして悪魔の実“ホルホルの実”の能力者。

 

 

「風に吹かれている時ヴァナタ、どこにいても…同じ方角を向いているわよね…」

 

「……そうか?

妙な所に気づく奴だな――特に意識したことはない」

 

 

イワンコフと話している相手。

その人物が革命軍総司令官であり

 

 

「――じゃあ動物の帰巣本能ってヤツかしら。

そっちに故郷があるのでは。東の海に想う家族があるの?………どう??」

 

「素性の詮索はよせ……イワ……!!」

 

 

ルフィの父である、モンキー・D・ドラゴン。

 

 

「そうね。やめておきましょう」

 

「それで何かあったのではないのか?」

 

「そうだったわ」

 

 

そういいながらイワンコフが懐から出したのは一通の手紙。その差出人の名にはエドワード・ニューゲート。

 

 

「またきてたわよ。

……ったく、どうなっているのかしらね。ここは革命軍しか知りえない場所。それを()()()()()()()()()()()()()()()なんて……」

 

「調査はどうなっている?」

 

「まったくもって分からないわ。

白ひげ海賊団にそれほど潜入に長けた人物はいない。

かといって革命軍からなんてありえないわ」

 

 

ある日を境に革命軍の棲みかに手紙送られてきた。

もちろん怪しんだ。この場所に手紙が送られるなんてあり得ないのだから。

 

差出人はエドワード・ニューゲート。

四皇である白ひげが革命軍に送る手紙など怪しさ満点でありすぐさま破棄された。

 

しかしそれからというものの定期的に手紙が送られる。

その度に中身を見ずに破棄している。

もちろんその行為自体白ひげに喧嘩を売っていると思われていても仕方ない。しかしそれでも送られる手紙。

 

 

そう白ひげ海賊団が乗り込んできてもいいはずなのに、決まって手紙しか寄越さないのだ。

 

正直手紙を破棄すればどうなるかなど子供でも分かるようなこと。白ひげ海賊団と革命軍の全面戦争への引き金を引くことなんて分かりきっていること。

もちろん白ひげ海賊団もそれは分かって送っているはずなのだ。

 

なにも関わらず何もしてこない。

いくら何かの駆け引きがあってもだ、これだけ手紙を無視続けているのになにもないなんて怪しすぎる。

 

元からここに送ってくる手紙について調査をしていたが本格的に調べることになった。手にしたことといえば白ひげはとんでもない大物達と手紙のやり取りをしているということだけ。

 

その手紙を配送している者達がまったく掴めていないのだ。

 

 

白ひげ海賊団から送られた手紙。

ここまで来たら一体どのような内容なのか気になってくる。

 

 

「イワ、開けてみるか?」

 

「そうチャブルね。

ここまできて開けないってのもないわね」

 

 

しかし万が一を考えて開けるのはイワンコフ。

ここでドラゴンに何かあったならばとんでもないことになる。

 

そぅーと封を開けるイワンコフ。

その中身をはただの羊皮紙であり、罠の類いはなかった。

 

念のために手紙の内容もイワンコフが読むことに。

 

 

[拝啓。グランドラインに至っては様々な四季や天候もありお互いに辛い日々をお過ごしかと思いますが、夜に見える星空は何処にいても変わらず綺麗であり、ドラゴンに至っても変わらずお過ごしていることを思いながらこうして手紙を出させてもらいました。

 

今回こうして手紙を出したのには理由がありますがまず分かっていただきたいのは、この手紙に戦争などの敵意が無いことです。

 

ってか、もう口調戻すけどいいよな?

堅苦しいのは無しだ。用件だけいうぞ小僧。

俺と………文通しろ]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「訳が分からナッシブルウウウウゥゥッッ!!!!!!」

 

 

耳を塞ぎたくなるような大声を放ちながら手紙を破ったイワンコフ。ドラゴンは平然を装っているが内心何が起きているのかと驚いている。

 

 

「な、何なのよこれはッ!!!??文通ってなにッ!!?

そんな下らないことの為に毎回毎回手紙を送っていたというの!!!??狂ってるわッ!!!」

 

 

まぁ、普通の反応ならそうだろう。

でも白ひげはハジメに会う前からこうである。

なので()()()に関係はしていない。

それでもおかしいのはおかしい。

 

 

「敵ではないとはいえ一歩間違えれば敵対する危険性を犯してまで文通って何なのよッ!!!」

 

「落ち着けイワ」

 

「これが落ち着けるもんかッ!!!

ドラゴン、あんたも分かっているのでしょう!!この異常性をッ!!!!!!」

 

 

ただの手紙ならまだましだ。

しかし相手は白ひげであり、内容はただ文通をしないかというお誘い。

 

あれだけ警戒してこんなのだったのだ。叫びたくもなる。

 

 

「そう異常性だ。だからむしろ落ち着けと言っている」

 

「何を言ってるのよドラゴン。ヴァナタまで……」

 

「異常性。俺達が知っている白ひげが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ならその原因があると考えないか?」

 

「ま、まさか……そんなこと…あり得るの?」

 

 

思い付く異常性。

世界的に放送されどういうわけか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あの出来事。

 

海賊、海軍が集まり、それもそれぞれのトップがそこに集まっているという()()()()受け入れていたのだ。

 

そこに疑問を持っていたのは……革命軍だけ。

海賊も海軍も一般人さえも異常だと気づかず、革命軍だけがそれに気づいていた。

 

しかしいくら調べても何も出てこない。

出てこないが、いつの間にか…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「大将参謀ハジメ。恐らくソイツが全ての元凶だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっしゅん!!……風邪かな?」

「お、お兄ちゃんが死んじゃうッ!!!??」

「今すぐ名医を呼んでこいッ!!!」

「ってか、くしゃみだけどんだけ騒いでるんだよッ!!!」

 

 

今まで風邪を引いたことはなかった。

もちろんくしゃみもしたことのない。

だって僕の体の周りに一時停止で()()()()()()()()()()()()()しているのでホコリやウイルスさえも入ってこない。

 

なのにくしゃみなんて……噂されてる?

 

 

「大人しくしてたはずなんだけどなー」

「いやッ!!いやああぁッ!!!お兄ちゃんッッ!!!!!!」

「まだ付かねぇのか島にはッ!!!!」

「どんなに急いでも半日は…」

「大将参謀ハジメを失うわけにはいかねぇ!!!!」

「なんでもいいッ!!!どんな手を使っても医者を」

 

「お・ま・え・ら………

一旦おちつきやがれえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!!!」

 

 

向かうはドラム王国。

いまだにワポル一族が支配する王国。

そこに会いたい人物を求めて冬島へと船を進めている。

 

 

「大体なんであんな救いようのない島にいく必要があるんだ?確かに医者としてのレベルはトップクラスにしてもだ」

 

「だから行くんですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……まぁ、考えがあるなら止めねぇが」

 

 

確認したいこと。

この一年でどうしても確認をしておきたいことが何個かあった。

その1つがドラム王国に。

そして1つが……革命軍にある。

 

 

(白ひげさんがドラコンさんに送っている手紙。

今までの流れなら文通をしてもおかしくないのに未だに決裂している……それが普通の反応だけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

 

ハジメがこの世界にきて初めての出来事。

ハジメが間接的にも関わっているのになんの影響もなく話が進んでいること。

 

世界規模で間接的に関わったハジメは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と分かって世界へあの放送を流したのだ。

 

なのにどういうわけか革命軍だけは変わっていない。

確かにあまり本編にも出てきてないかもしれないが、それでも白ひげの文通に対して拒否を起こすなんて()()()()()()()()()()()()()

もちろん白ひげはそんなことを気にせずに手紙を送り続けている。それこそが本編ではないアクション。

 

 

(白ひげさんからドラゴンさんに手紙を出したと言われた時はなにやってるんだ!!と思ったけど、まさか何度も出し続けている手紙に反応がないなんて……()()()()()()()()()()()()()()()())

 

 

………一応言っときますが革命軍の反応が普通で、ハジメ達のような反応がおかしいのだ。

 

 

(とにかく今は…様子見だよね。

手紙だけなんだし大袈裟なことにはならないよね)

 

 

さて、その見積もりは合うのか……

 

 

「何を考え込んでいるか知らねぇけどな、さっさとあいつらをどうにかしろッ!!!!」

 

 

出来るわけもなく冬島に着くまでこんな状況が続いた続かなかったと聞く………



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トメトメの実の運命

「ここまでする必要があるのか?」

 

「ありますよ。ここの国王は超クズなので僕達海軍だと分かっていても「ここは俺様の国なんだぁ!!」と難癖つけてあり得ないことを要求、追及、暴言などなどやりかねない王国なんです」

 

 

ドラム王国についたのだが船は見つからないようにと()()()()()()()()()()()()()()。そしてハジメ達も白い布を被り見つからないように潜入した。

 

 

「とはいっても国民の人達はとてもいい人達。

村についたら必要に応じて布は脱いでもいいですけど気をつけてくださいね。()()()()()()()()()()()()()()

 

「……やる気はあるのか……」

 

 

騒ぎを起こしたくない。

しかしいつかやる。そうとも聞こえる言葉に頭を抱えるモーガン。

 

 

「ここには二人ほど会いたい人物がいるんです。

出来れば()()と行きたいところですけど、ひとまずある医者を探さないと……」

 

「なんだ??そいつはかなりの腕があるのか?」

 

「……そうですね……やぶ医者と自称お若い医者と呼ばれてますかね…」

 

「はぁっ!!?」

 

 

…………………………

 

 

「ヒヒヒヒヒッ、ハッピーかい?」

 

「ハッピーです、Dr.くれは先生にお会いできたので」

 

 

船から一番近い村に向かうとそこでまるで悪魔のように多額の料金を請求するDr.くれはがいた。

流石に海軍の立場としては見逃せないと思い自腹を切ったのだがトンでもない金額を取られてしまった。

まあ、大将参謀についてから結構貰っていたけどあまり使い道がなかったから問題はないけど

 

 

「で、小僧が何のようだい?

マトモな医者ならイッシー20に見てもらったほうがいいってこと、この島に入ったら誰でも分かるようなことを無視してまで」

 

「僕は……トメトメの実を食べたんです」

 

「ッッッ!!!??

………いいだろう、料金はタダだ。

ただし小僧だけ来な。」

 

 

一体なんだ?とハジメ以外の者達が動揺するなか、ロビンはこっそりとDr.くれはの体の何ヵ所に耳を取り付けた。

それでもロビンも「お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!」と慌てているのだが演技なのか素なのか本人しか分からない。

 

とにかく強制的に近くの家に上がり込み(家主は面倒ごとは御免だと自ら出ていった)その家の一番のいい椅子に座り込み勝手に取った酒を飲みながら

 

 

「で、何が聞きたいんだい?」

 

「トメトメの実を食べたものは()()()()()姿()()()()()()()()()()

でも寿命は変わらずに老いていけば自然死する。

そんなこと…()()()()()()()()?」

 

 

立ち上がったDr.くれはは触れることもせずにまずはハジメの周りをジィーと観察しながら正面に立ち、右手でハジメの頬に触れようとした。

 

しかし能力によりそれは止められて皮膚に触れるというよりも、今まで触ったこともない得たいのしれない何かに……

 

 

「…生命活動に必要な最低限の栄養素とエネルギーを吸収している。その皮膚を見るだけでもキチンと皮膚呼吸はしている。

しかしそれは動物として最低限生きていくために必要な内臓や筋肉、心臓や脳などだけみたいだね。

あんた能力者になってから髪や爪、伸びたことないだろう?」

 

 

その言葉に頷くハジメ。

Dr.くれははやはりと呟き結論を言った。

 

 

「結論はちゃんと寿命で死ぬよ。

しかしそれは内臓や心臓や脳の活動低下による死だ。

それも最低限の栄養を取っていてそれ以外の害になるものは排除している。

自然死は間違いなく来る、しかし()()()()寿()()()()()()()()()()()つまりはあんたは人よりも長生きをするって訳さ」

 

 

なんとなく分かっていた。

だから衝撃を受けることはなかったが改めて突きつけられた真実に動揺がなかったことはなかった。

 

 

「……どれくらい…生きるんですか?」

 

「なにもしなくても120才は越えるよ。

知ってたかい?生き物に必要な細胞活動は常にその能力が低下に向かっているんだよ。だけどあんたの体は違う。同じ低下でも最低限の低下しかないんだ。そしてその低下に影響する原因でもある余計な栄養素は排除されているんだ。」

 

 

そんなことをいいながらソファーに座りまた酒を飲むDr.くれは

 

 

「皮膚や骨などの生命活動に必要ではないものは全部停止している。それどころか外傷も内傷もない。普通はそれらのダメージが蓄積されて死に至ることが大半なんだ。しかしあんたにはそれがない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……()()1()5()0()()。これがあんたの未来だよ」

 

 

最低でも150才。そんなに生きるなんて……

どうしようもない感情にどうしたらいいのか分からなくなっているハジメ。

 

しかしここでDr.くれはから

 

 

「しかしそんなあんたにも早く死ぬ可能性はあるよ」

 

 

それを聞いたハジメはDr.くれはに飛び付く勢いでその目を見た。

 

 

「……こっちは医者だよ。人を生かすのが医者の仕事さ。これからいうことはそれに反する。

…………あんたは私に医者をやめろっていうのかい?」

 

「…………」

 

 

そうそれは医者の意思に反する。

そんなこと……言えるはずがない。

人としてもあるけど、この先の未来、チョッパーの師匠となる人だ。そんなこと言えない。

 

 

「すみません。大丈夫です」

 

「いいのかい?無理やりすれば私が吐くかもしれないよ」

 

「可能性があると分かればそれだけで。

それに普通は長生きすることは嬉しいことですもんね」

 

 

無理やり笑っているのが分かるハジメ。

もちろん普通に生きても周りの人が自分より早く死ぬことなんて普通にある。それが間違いなく自分が長生きするというだけのこと。

 

そうそれだけのことなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、盗み聞きしていたロビンは何でそこで泣いてるの?」

 

「………だって………」

 

 

外に出ると隠れることもなくロビンが泣いていた。

まぁ、聞いているだろうと思っていたけどなんでロビンが泣いてるのかな?

 

 

「長生きするんだよ。いいことじゃない?」

 

「でも、お兄ちゃん……独りになる…から……」

 

 

必死に涙を堪えるロビンだけどその涙は止まらない。

こんなにも感情が豊かになった。本編よりもずいぶんと変わってしまったけど、ハジメとしてはこんなロビンでもいいんじゃないかと思い始めていた。

 

ハジメは頭をポンポンと優しく撫でたあと

 

 

「ありがとうロビン。

でも大丈夫、Dr.くれははヒントをくれたから」

 

「ヒント??」

 

「それ以上はいうんじゃないよ。医者の前で自殺の話をするなら私が殺すからね!」

 

 

メスを両手に持ち威嚇するDr.くれは。

やっぱりこの人、怖いわー

 

 

「Dr.くれは。Dr.ヒルルクに会いたいんですけど」

 

「……なるほどね。そっちが本命ってかい。

今度は医者を否定する気かい?」

 

「そうですよね。仕方ないですね、また来ます」

 

「諦めないのかい?」

 

()()()()()()()()…それこそ医者としてどうかと思いますよ?どんなことしても生きる、正攻法ではなくてもいつかのためにだったらいいのでは?」

 

「…………」

 

 

黙りこんだかと思いきやそのメスをハジメに投げつける。もちろんそれはハジメの皮膚には届かないが

 

 

「だとしても医者であるアイツが決めることだよ!!

用がすんだなら……」

 

 

どうやらこれ以上は

 

 

「さっさと帰んなあああああぁぁぁッッ!!!!」

 

 

どうやら本編でよく見たメスの乱れうち。

これマジで怖いわッ!!!!

 

 

…………………………

 

 

「おい、ハジメッ!!!一体何の話をしたのか教えろッ!!!」

 

「だから世間話を…」

 

「な、わけあるかッ!!!その為にこんなところに来るはずないだろうがッ!!!!」

 

「「「えっ、やりかねませんけど」」」

 

「お前ら理解ありすぎたあッ!!!!」

 

 

少し離れたところで待機していたモーガン達だったがDr.くれはから追いかけられているハジメと一緒にドラム王国から追い出される形となった。

 

それはいいとしてあんな真剣にDr.くれはと話し合う形となったのだ。ただの世間話で終わるはずがない。とモーガンが言ってくるが他の人達にとってはいつも通りらしい。

 

 

「……おれ、本当に()()()にならないとダメなのか?……自信ねぇよ………」

 

「大丈夫。素質はあります」

 

「嬉しくねぇよッ!!!!」

 

 

くそがっといい諦めた様子のモーガン。

そんなモーガンにハジメはあるものを渡した。

 

 

「エターナルポースか?…シモツキ村?」

 

「さて、助けにいきますよ」

 

「おい、なにする気だ?」

 

「医者じゃなくても助けちゃダメなんて言ってませんからね。それに運命を変えれるのは僕の運命みたいなものですし」

 

「頼むから会話をしてくれ……」



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高みを目指す二人の剣士

「おおっ、ハジメ君久しぶりだね」

 

「コウシロウさん、あの時はキチンとお礼も言わずにすみません」

 

「いいんだよ。君の活躍はここまで届いているから安心していたよ」

 

 

 

久しぶりに来たシモツキ村。

久しぶり来たというのにあまり景色は変わっておらず、変わったといえば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どうやら改築したようだ。もちろん手すりもついている。

 

 

「これかい?

あの日君が階段から落ちたときは私もくいなも青ざめたよ。普段使っている階段にあんな危険があるなんて知らなかった……だからこの村ではどこの家もこんな風に改築したんだ」

 

「それは素晴らしいことですね」

 

 

それは良かった。

まぁそれでもまだあの運命が変わったか分からない。

それを確かめるためにもここに来たのだが肝心のくいながいない。

 

 

「くいなの姿見えませんが…」

 

「あぁ、あの子なら……」

 

 

…………………………

 

 

「もう終わりなの?」

 

「くそッ!!まだだッ!!!!」

 

 

コウシロウさんの家の裏庭、そこには青空の剣道場がある。もちろん家の中にもあるのだが実践的にという計らいでコウシロウさんが用意したそうだ。

 

で、その裏庭で成長したくいなと、()()()()()()() ()()()()()()()()が試合をしていた。

それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

…………あれ?剣術はどこに行った?

 

 

「あれから学びました。いくら剣術が強くともその身を守ることが出来なければ意味がないと。それから私は剣術と柔術を取り入れることにしたのです」

 

「じ、柔術?」

 

「はい。柔術は無手あるいは短い武器をもって、投げる、抑える、挫(ひし)ぐ、絞める、打つ、突く、蹴る、捕縛するなどして相手を制するもの。そこにはいかにして我が身を守るかという考えも学べます」

 

 

あ、あれ?じ、柔術って……あれ?

これは流石に予想外。確かにくいなの死を回避するためにだとは思うがまさか柔術って……

 

でもこの柔術なら確かに剣術では学べないことを学べる。それは攻撃だけではなく防御も。

 

ゾロが剣を取り()()()()()()()()()()()()()()()。それを見るだけであり得ない状況だ。あの剣を、剣士の誇りが高いゾロが簡単に剣を投げた。

 

くいなは最小限の行動で回避したあと鞘を手に取り、ゾロの腹部に突き当てた。

 

 

「ゴフッ!!」

 

 

仰け反るゾロにくいなが背後を取り絞め技をかけようとする。しかしゾロもそれを察知したゾロはくいなの手を取り投げ技をかけた。

それはくいなが頭から落ちる形になっている。

 

これは不味い!!と助けようと踏み出そうとするがコウシロウがそれを止めた。

 

くいなはとっさに両手で頭をガード()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その行動はゾロも予想出来ず未だに手を離していなかったのが災いして

 

 

「脇が…甘いのよ!」

 

 

その手を掴み返してそのままぐるぐると振り回して手を離した。遠心力で吹き飛ばされたゾロは稽古に使うかかしにぶつかった。

背中に激しい激痛が走るがそんなことお構いなしにくいなが迫る。すぐにかかしが持っている竹刀を取り

 

 

「…一刀流…三十六……」

 

 

おいおいおい!

まだ少年だよねッ!もうそんな技使えるのッ!!!

 

 

煩悩鳳(ポンドホウ)ッ!!!!」

 

 

飛ぶ斬撃がくいなに向かって放たれた。

くいな慌てる様子もなく腰の木製の小刀で斬撃をいなし受け流したあとに

 

 

「一刀流…斬魔……」

 

 

まるで複数の手と小刀がくいなの周りの幻覚のように増えていく。しかしそれは幻覚というにはあまりにも立体的でその動きから生まれる音はまるで蜂の羽音のよう

 

 

蜂吹突き(ホウフヅキ)ッ!!!」

 

 

一斉に襲いかかる攻撃をなんとか竹刀でいなしていくが最後の一撃がゾロの鳩尾に入った。

 

 

「ゴッフッ!!!!」

 

 

そしてそのままさっきぶつかったかかしに再び激突した。

どうやら稽古が終わったのか小刀をしまい、ゾロの元へ近づくくいな

 

 

「まあまあだったわよゾロ」

 

「くそ……」

 

 

悔しそうにするゾロは竹刀を杖代わりに使って立ち上がる。

 

 

「なんだよアレッ!!!俺知らねぇぞッ!!!」

 

「それはそうよ。私のオリジナルだから」

 

「なっ!!?一緒に考えるんじゃないのかよッ!!!」

 

「それだと手の内がバレるでしょう。

ゾロ、素直なのはいいけど少しは勝つための策も考えないとね」

 

 

「きたねぇーぞ!!」と叫ぶが全く相手にしないくいな。

するとやっとコウシロウとハジメに気づいたようだ。

 

 

「お父さん…は、ハジメさんッ!!!」

 

「おっ!」

 

 

抱きついてきたくいなに驚くハジメ。

コウシロウは温かい目で見て、ゾロは面白くない表情をしている。

 

 

「な、なんだか、活発になったね……」

 

「私も大きくなったのよ。あの頃とは違うわ」

 

 

そう微笑むくいなにちょっと苦笑いする。

なんだかより女の子っぽくなったくいな。

 

 

「元気そうで良かった」

 

「はい!

ハジメさん、今日は泊まっていきますよね!!」

 

「そうだね。でもそろそろ離れないと」

 

 

 

 

「私のお兄ちゃんから、離れて」

 

 

 

ハジメ以外気づかない内にくいなの背後を取り語りかけてくるロビン。これにはくいなもゾロもコウシロウさんも驚いている。

 

 

「だ、誰ッ!!!??」

 

「お兄ちゃんの妹のニコルよ。

いいからお兄ちゃんから離れなさい。じゃないと……()()()()

 

 

何をッ!!!??と心でツッコむハジメだが決して声には出さない。

くいなも何をされるのか分からないがロビンの圧に負けてハジメから離れた。

 

 

「泊まっていくなら宴会の席を用意しないとね」

 

「食材は僕の船から提供しますね」

 

 

…………………………

 

 

「あっ、師匠ッ!!!それ俺のッ!!!」

 

「名前が書いてないんだ。誰のものでもないよ」

 

「いや、俺の皿にあるんだから俺のだろう!!!」

 

 

意外にお茶目なコウシロウさんを見ながらロビンとくいなが持ってくる料理を食べていた。まぁ、くいなの懐き方は妹のよう。………あっ、ロビンの妹ではなく「真」の妹のよう。

 

 

「お兄ちゃん、なんか失礼なこと考えなかった?」

 

「イイエ、ソンナコトアリマセン」

 

 

恐ろしいッ!!!!

もちろんロビンも可愛いよ。それでも別の可愛さがあるのだよ。それにくいなも兄のように慕ってくるし。

ロビンのストーカーのようなものではない。ないのだ。

 

 

「おい、ハジメ」

 

「なんですかモーガンさん」

 

「お前ってマトモに人に慕われることあるんだな」

 

「殴られたい。そういってるんですね。いいですよ」

 

 

直ぐ様に逃げるモーガンを先回りしてガープさん直伝の拳骨をお見舞いしてやった。

 

 

「いってぇな!!!加減しろよッ!!!冗談だろうが!!!!」

 

「くいなに悪い影響を与えないでもらいたい」

 

「常にその元凶であるお前に言われたくねぇよッ!!!!」

 

 

勝手に仕掛けてきて不機嫌になり去っていくモーガンに「何なんだ?」と思っていると、人混みから少し離れたところにいるコウシロウさんが手招きしているのを見つけた。

 

なんだろうと思いロビンとくいなに席を外すと言い聞かせて(主に喧嘩をするなと)コウシロウさんの元へ。

 

 

「君達海軍は、というより君達は本当に変わってますね」

 

「そうですか?」

 

「あのくいながあんなに活発になり、キチンと自分の夢を追いかけてます。未だに女性剣士は男性より弱い。これが定着している中でもくいなは必死に頑張っている」

 

 

確かにいまのくいなからは迷いというものはなかった。

それだけでも嬉しいことなのに、自分を守るすべをキチンと学び夢に向かって頑張っている。

 

 

「夢というと世界一の大剣豪ですか?」

 

「はい。ゾロ君と同じ夢ですから二人で競いあい協力していき、どちらかが世界一の大剣豪になるまでライバル(ゾロ・くいな)以外は負けないと」

 

 

それならきっとなれるな。

本編でも強かったゾロがくいなと一緒なら尚強くなる。

ルフィもニコルの指導で強くなっているみたいだし、他のメンバーも本編が始まる前にどうにか出来ないか考えてみようかなー

 

そんなことをなんとなく考えていると

 

 

「あの子らがもう少し成長したら貴方に二人を預かって貰いたいのですがどうでしょうか?」

 

「………はい?」

 

 

なんかトンでもないことを言い出したコウシロウさん。

いや、僕剣術はからっきしなんだけど!!!??

 

 

「いや、剣術とか分かりませんよ」

 

「それは分かってます。ただ貴方の元なら二人を守ってくれるだろうしいい経験も出来ると思いまして」

 

 

それは大将クラスの仕事があるから、東の海では得られない経験値は稼げるかもだけど……

 

 

「………あっ。いいところがありますよ」

 

 

…………………………

 

 

一週間後。

のんびりとこの村で過ごしてさて次に向かおうとしたのだが、ここで問題が発生した。というか文句を言っているやつがいる。

 

 

「おいッ!!!なんで俺様がこんな田舎にッゴフッ!!!」

 

「お前は黙ってろッ!!!」

 

 

一週間滞在したのには理由があった。

今までモーガンの息子、ヘルメッポをルフィの所において一緒に修業させていたけど、こいつの態度にロビンがキレてしまいヘルメッポが死ぬ前に海軍本部へ、そこで僕がなんとなく鍛えてあげていたが、未だにこの上から目線、「俺は偉いんだぞ」感が取れないのでどうしてやろうかと思っていた。

 

で、もう鷹の目にお願いして教育してもらうかなーと思ったが流石に()()()()()と思いここに来てもらった。

 

 

「ヘルメッポ。ここでゾロとくいなと一緒に修業ね。

あっ、一回威張る毎にコウシロウさんから愛の一刀をお願いしてるから」

 

「ふざけるなッ!!なんで俺がこんな平民とゴフッ!!!」

 

「確かにこれは叩きがいがありますね」

 

 

ニコニコしながら竹刀でヘルメッポの頭に一刀。

ゾロもくいなも真面目でいい子だからこんな変化球があったほうが刺激になると考えた。

 

 

「三人とも強くなってくださいね」

 

「当たり前だ!」

「私、強くなる!」

「ふざけるな!俺はゴフッ!!」

 

「ヘルメッポ君は自分のことを「僕」と言いましょうか。自信があるのはいいですが意味のない自信は入りません。なので謙虚というものを身につけましょうね」

 

「ふざけるなッ!!!俺の親父は大将の傍付きゴフッ!!」

 

「それ、ここでは意味ありませんよ」

 

「よくモーガンさんや、僕の前で言えますねそれ……」

 

 

その性格が治る時まで時間がかかりそうだ。

さて、そろそろあの子らの所に行きますか。

物凄い量の手紙が来てたもんなー

………ロビン、怒らなきゃいいけど………



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女心、1人でも3人でも分からない。

「ロビン。ロビンに特別任務を与えます」

「なにかしら」

 

 

船内の船長室。船長といっても全くやる気のないハジメなので船長の代わりはオックスかモーガンがしている。緊急事態じゃないと基本ハジメはなにもしない。

というかモーガンがさせてくれない。余計なことが増えると失礼なことを言っていた。

 

それはともかく船長室を能力で密室にして話しているのだが、その内容とは

 

 

「革命軍に潜…」

「イヤ、絶対にイヤ」

 

 

即断られた。

まぁ、分かっていた。この子ならそう言うことなんて分かっていた。

 

 

「ロビン。革命軍はロビンを探している。

そして僕についても探っているみたいなんだ。

僕が直接会うのは立場としても不味い、でもニコルではなくロビンなら」

 

「イヤ、絶対にイヤ」

 

 

この子…全然話を聞いていない!

 

 

「あのね、僕の為に行ってほしいだけど……」

「いくらお兄ちゃんの頼みでもイヤ」

 

「でも調べてくれないと…のちに痛い目にあうかも」

「私がお兄ちゃんを守るから大丈夫」

 

 

めっちゃカッコいいこというね!!!

でもそれ任務を断るところで使わないで!

 

 

「これ大将参謀である僕が中将のニコルに、いや、ニコ・ロビンに命令しているの」

 

「別に海軍じゃなくてもお兄ちゃんの傍にいれる術を身に付けたからやめても大丈夫」

 

 

全然大丈夫じゃないよそれ!!!

前のストーカーみたいなことを言ってるよこの子ッ!!!

大人しく、大人らしくなったと思っていたら…変わってないのね……

 

 

「じゃロビンのお兄ちゃんである僕が一生のお願いだとしても」

 

「だとしてもイヤ。代わりにお兄ちゃんと一生一緒にいる」

 

 

上手くないよッ!!

もう全く引いてくれない。

いつもならこの手口?で言うことを聞いてくれるのに、今日に限って、この案件に関しては全くダメである。

 

 

「……なんでダメなの?」

 

 

先に観念したハジメがロビンに理由を聞く。

すると真っ直ぐ扉を指差す。いやその扉の向こう、ガラス窓の向こうに映る景色が物語っていた。

 

コノミ諸島。

今回の目的地で、もう目の前まで来ていた。

しかしそのコノミ諸島は……変わってしまっていた。

大きな看板、それはある人を応援している。

コノミ諸島全体でその人を応援して、海軍からも絶大な後押しをされており、本編ではありえないほど大きな建物やリゾートが出来上がっていた。

 

もちろんコノミ諸島の名産はミカン。

巨大なミカン畑が広がり、その一角にも看板が設置されている。

 

さて、その看板に映っている人物とは?

 

 

「お兄ちゃんが上陸したら、私、コノミ諸島を消滅させないといけないの」

 

「上陸だけで消滅させるな!!!!

ってか、なんでバスターコールのボタンを持っているのかなああああああああああぁぁぁぁッッ!!!!!!

 

 

あの日のトラウマが無くなったのは嬉しい。本当に良かったと思うよ。

でもね、上陸しただけでバスターコールを押そうとしないのッ!!!!

 

 

「これは保険。あくまでも私一人で消滅させるから心配しないで」

 

「むしろそっちが怖いよッ!!!

もう完全に「悪魔の子」になるから止めてッッ!!!」

 

「お兄ちゃんの為なら悪魔の子でも構わない」

 

「カッコいいセリフみたいに言ってもダメエエエエエエエエエェェェェェッ!!!!」

 

 

直ぐ様バスターコールを取り上げる。

取り上げてもロビンが単身で乗り込めばコノミ諸島は消える。だからこの特別任務に行ってほしいのに!

 

 

「絶対にイヤ。

あのコノミ諸島、絶対にお兄ちゃんを誘惑、いや、今までの中で一番お兄ちゃんをダメにする危険な人がいるはずだから」

 

「おい。それだと元からダメだといっ」

 

「言ってないわ。

でもお兄ちゃんは女関係は危ないの。

ハンコック、マキノ、くいな、などなど……

お兄ちゃんは私のなの!!!だからこれ以上は要らないのッ!!!!」

 

「いや、お兄ちゃんはお兄ちゃんのものだよ……」

 

 

まぁ、確かに女関係に関してなんかハーレムみたいにどんどん好意を持たれているのは分かっている。

でもそれに答える気はないんだけどなー

少なくとも今はない。今は麦わら海賊団のために

 

 

「いまは良くても数年後が危ないからダメ」

「なんで心読んでるのッ!!!??」

 

「妹だから。最近やっと身につけた特技」

「怖い、もうこの妹怖いよ……」

 

 

こんな調子で本当に麦わら海賊団に入るのか?

……最悪、僕が入る……のはダメだよな…

いくら本編に従っていないとはいえ、麦わら海賊団の冒険はあのメンバーだからいいんだ。そこに僕が入ったらダメだよな。

 

………でも、なんか…もう遅いと感じるのは何故?

 

何人かは強くなっているだけだよね?

ロビン以外はマトモで強くなっているだけだよね?

 

なんか不安になってきたところでロビンが

 

 

「いくなら私も行く」

「いや、それは……」

 

「これ以上お兄ちゃんハーレムの人員はいらない」

「作る気ないからね」

 

「天然で出来るお兄ちゃんもカッコいいけど、今回は絶対にダメ」

 

 

なにがカッコいいのか分からないけど。

分からないけど、ここまで拒むなんてな……

でもコノミ諸島にはナミがいるし……

 

 

「ナミ、ノジコ……これは大丈夫…

……やっぱりこのベルメールという女ねぇ……」

 

「心を読むなッ!!!

というか、目がめっちゃ怖いよッ!!!!」

 

 

悪魔というか鬼ッ!!!

完全に殺る気な目をしてるよこの子ッ!!!!

ってかさ、

 

「いや、ベルメールさんはないよ…」

「なに、何を言ってるのお兄ちゃん?

一番警戒するべきは大人の女、それも気が強く子供のためならなんでもする女。だからこそ男との縁が少なく、お兄ちゃんみたいな完璧な人が現れるとコロッとやられる……」

 

「何を分析、というかなんでそんな事が分かるのかなッ!!!??」

 

 

会ったことないよねッ!!!!

なんでそんなことが分かるわけッ!!!女の勘かッ!!

それだけでそこまで分かるものなのかッ!!!

 

 

「そして外堀は完璧に固めてある。

あのコノミ諸島に一歩でも入ればもう終わり。

…お、お兄ちゃんが……誰ともしれ…ない…女に……奪われ…る……」

 

 

……そんな泣かなくても……

そんなこと起きないと言っているのに…

だけどロビンの言っていることも分かる。

どうもナミとノジコはベルメールさんと僕をくっつけようとしている。

 

だからこそのあの看板。

あれだけアピールすれば街の人もその周りの島の人も「ハジメはいい人」となり、あとはベルメールがOKを出せばトントン拍子で話が進む寸法なのだろう。

 

そんな事僕にも分かる。

それでもナミは麦わら海賊団の大切な一員。

欠けるなんてことはありえない。

だから僕も引くことなんて出来ないのだ。

 

なら、どうすればいい?

ロビンが納得してベルメールさん、いや、ナミに会える手段はないのか……

 

 

「お兄ちゃん…そんなの簡単……」

「ナチュラルに読まないの……」

 

 

…………………………

 

 

「初めまして。私は大将参謀ハジメの部下のニコル。

そして()()()()()()()()()()()()()

 

「「「「「「「ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!??」」」」」」」

 

 

そうなるよね。僕も混乱中です。

お迎えムードだった、いや、早速デートさせようとしていたナミ、ノジコ、街の皆、そしてバッチリとおめかしをしたベルメールはなんか灰のようになっている。

 

………ごめんね、なんか謝るのおかしいかもだけど、うん、ごめんね。

 

 

「お、お兄さん……」

「な、なんか、ゴメンね……」

 

「どうして…ハジメさん…」

「どうして、だろうね……」

 

 

本当にゴメンッ!!!

怒られても仕方ないよね!

思わせぶり……はしてないけど、いつまで経ってもハッキリしなかったのは悪いよね……

 

二人ともワナワナと体が震えている。

うん、殴られるくらいは覚悟は出来てる。

もっと他のやり方があったはずだ。こんな子供の心を傷つけることはなかったはずだ。

 

 

「……お兄さん……」

「……ハジメさん……」

 

 

近づいてくる二人。

それを止めようとベルメールは一歩踏み出すが、頭に風車をつけたゲンさんに止められた。

一番楽しみしていた二人を裏切ったんだ。

 

意識的に能力を止めて「殴られる」体勢をとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「愛人でもOKなんですかッッ!!!??」」

 

「……………はい?」

 

 

………えっ、なに?何を言っているの?

周りを見ても誰もが言葉を無くしていた。

そしてそんな訳の分からないことをいう二人は目をキラキラさせて

 

 

「別にお父さんって感じがしないの。

お兄さんはどちらかというと…うん、ベルメールさんの愛人がお似合いだと思うわけなの」

 

「ちょっ、ちょっとナミッ!!!??」

 

「というかもうベルメールさんに結婚は無理よね。

でもこんな男勝りのベルメールを貰ってくれる奇特な人……ハジメさんしかいないと思うわ」

 

「ノジコまで何を言っているのッ!!!??」

 

「いま、僕、ディスられたよね?」

 

 

なんか勝手に盛り上がっている二人を止めようとするベルメール。こっちとしてもベルメールには頑張ってほしい。

 

 

「愛人ならOKよ」

「おい、コラ。何言ってるんだニコル、コラッ!!!」

 

「オックスさん。すぐに全世界に私とお兄さんの婚約発表を」

「止めなさいッ!!!おい、オックスさんも動くなッ!!!!」

 

 

もうー!!カオスッ!!だよッ!!!!

 

 

…………………………

 

 

とにかくロビンとの婚約は止められた。

コノミ諸島の皆様には広がったがそれも他言しないようにしてもらえた。

 

……しかしその代わりに、ベルメールを()()()()ということになってしまった。

 

いや、愛人とかいらないから。

しかしそんなことを言えば今度こそナミやノジコを傷つける。

 

それを考えると……言い出せずにいた。

……情けないな僕は……

 

 

「なんか、悪かったね」

「いいえ。こちらこそ」

 

 

久しぶりに会えた、そして愛人候補にもなれた。

ということでデートしましょうとナミとノジコの最初の目的を言われて、街の人達にも囃し立てられ、ロビンも特別と見送られた。

 

なので見渡しのいい丘へ案内されながら二人で歩いている。

 

 

「この年で独り身だからね。二人の親なんだけど、それでも私には幸せになってほしいって……十分幸せなんだけどね……」

 

「ベルメールさんのことを思ってくれているんですね。いい子達ですね」

 

「当たり前よ。自慢の娘なんだから」

 

 

そんな事を話ながらいると()()()()()()()

本編ではベルメールのお墓があるあの丘に。

 

 

「……無理しなくていいよ」

「何をですか?」

 

「分かってるでしょ。愛人なんて……そんなこと……」

「…………」

 

 

まぁ、普通はダメだろうな。

だけど僕はベルメールがイヤというわけではない。

ただ愛人なんてことが、なんか、嫌なだけだ。

でもそれを僕から言うのは…違う気がする……

 

 

「…上手く、言えませんが……無理…してませんので……」

 

「………このッ!生意気言ってッ!!」

 

 

頭を軽く叩かれた。まあ能力で痛くないけど、でもこれって痛いというか……なんか暖かくなりそうなものだったのかな…と思った。

だって、ベルメールの表情がとても輝いていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…やっぱり潰していいかしら?」

「ダメだって言ってるだろうがッ!!!!」

「押さえてくださいニコル中将ッ!!!!」

 

 

必死でニコルを止めるモーガンとオックス。

二人のデートが終わった時には使い古した雑巾のように なっていたという。



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その影響力に、

「おい、ハジメ」

「なんですかモーガンさん」

 

「マジでニコルと結婚するのか?

まあ、兄妹じゃないのは薄々分かっていたけどよ」

 

「する気はないですね。

だってストーカーですよ?ストーカーとは結婚しませんので」

 

「またハッキリと……

…まぁ、お前のことだからどうでもいいが……」

 

 

未だにロビンの中ではハジメと()()()()()()となっている。 勝手に勘違いさせておけばいいと。

 

普通ならクソみたいな奴だと感じる。

 

でもハジメにも言い分はある。

あのころ何故かどこにいても追いかけてくるストーカー。逃げるために海軍に入ったのにその海軍さえも入ってきたのだ。ロビンの為にと変装させて兄妹として海軍にいれたのだが……なぜいまこんなことになっているのか………

 

……一体どこで、なにを、どう、間違えたのか………

 

 

「……で、なんでロビンを革命軍に潜入させたんだ?」

 

「あれ?僕ニコルをロビンって話しましたか?」

 

「覚えてねぇーのか……その力を教えたときにハッキリとな」

 

「失言でしたか。これは気を付けないと」

 

「それよりてめえのことの方が凄すぎて今まで忘れていたのが本当だけどな……」

 

「…そんな凄いこと言いましたか?」

 

「うるせぇ、黙っていろ」

 

 

最近、モーガンさんの発言にトゲが多くなってきた。

まぁ、僕の影武者になるのだからそれぐらい上司に向かってハッキリと言わないといけないのでいいですけど。

 

 

「でもよ、本当に良かったのか?

革命軍のやつら、ロビンを革命軍に入れるつもりなんだろ。それにハジメのことも探っているようだしな」

 

「だからですよ。ロビンにはある程度の情報を出してもらうようにしてます。それを条件に革命軍には入らない。あくまでも情報の交換として接してもらうために」

 

「なるほどな。

ロビンとして革命軍に接触すれば、ロビンは革命軍と繋がりが出来る考える。誰もロビン=ニコルだとはさらに気づかないわけか」

 

 

そういえば気にもなってなかったけど、なんでロビンがツインテールしてるだけでバレないのか?モーガンも名前を聞くまでバレなかったんだもんなー。やっぱりクールビューティーなロビンがツインテールなんてあり得ないからなのか??これは世界的な強制力が働いているのか?

 

 

…………どうでいいか。あれはもう手遅れだし。

 

 

 

「まぁ、ロビンが帰ってくるまでここに待機ですね」

 

「仕方ねぇな。でもよ……」

 

 

「看板撤去手伝えやコラアアアアアアアアァァァァァ!!!」

 

「イヤです」

 

 

コノミ諸島にあるハジメを称える看板。

それをいま急ピッチで撤去しているのだ。

もうベルメールさんは愛人候補となったのでと前向きに捉えたハジメはゲンさんに撤去の許可を直ぐ様取りこうやってモーガン達にやらせている。

 

 

「イヤです。じゃねえよ!!

てめえの看板だろうが!!これが仕事というならパワハラだぞてめえ!!!」

 

「なんでパワハラという言葉を知っているかは言いとして、僕が直接するのはなんか「照れくさいから」みたいに観られるのが嫌なので」

 

「乙女かあっ!!!!」

 

「五月蝿いですね。周りを見てください」

 

 

こう文句をいうのはモーガンだけ。

あとの部下たちは黙々と作業をこなしている。

いや、黙々というのは間違いだ。

 

 

「ふざけるなッ!!その大将のキメ顔貰っただろうが!!」

「イヤです!この何気ない表情も欲しいんです!!」

「オックスさん!!また向こうで奪い合いの喧嘩が!!」

「止めさせろッ!!それとヴェルゴにこれ以上力ずくを行使するなら俺が相手になるといえ!」

 

「ああっ!!オックスさん!!!それレアものじゃないですか!!!」

「これはダメだぞ。八咫烏のリーダーとしての特権だ」

「オックスさんが横暴してますよー」

「「「ふざけるなッ」」」「「「帰れぇぇッ!!」」」

「お前らッ!!!!って何処に帰るんだッ!!?」

 

 

と、なんか楽しそうにしている。

 

 

「楽しそうですよ」

「目がイカれてるのか……」

 

 

モーガンは俺がしっかりしないと!!と心の奥から思った。

そして同時にここから抜け出したいとも思った。

 

 

「お疲れ様です!!」

「おにぎりと、デザートのミカンゼリー持ってきました!」

 

「「「うおおおおおっ!!!!!」」」

 

 

そこに現れたのはナミとノジコ。二人は両手におにぎりとミカンゼリーの入ったバスケットを持ってやって来てくれたのだ。

そして二人の後ろからもう一人。

おめかしをしてきたベルメールの手にもバスケットがあり

 

 

「……はい。これ、食べていいから……」

「ありがとうございます」

 

「な、ナミとノジコと一緒に作ったついでだからッ!!

そんな感謝されても困るんだよッ!!」

 

 

なんか怒られたが、まぁ、嬉しそうな表情しているようなので気にしないことにした。

バスケットを受け取りさっさと帰ろうとするベルメールをナミとノジコが止めて、なにやらこそこそは話し始めた。

 

 

「ちょっとベルメールさん!!

なんで帰ろうとしてるの。デート誘わないと!!!」

 

「無理よナミ!!

だって忙しそうだし……」

 

「もう!!いつものベルメールさんなら強気で押してるじゃない!それを出せればハジメさんだって」

 

「イヤよ!!ハジメさんが男勝りの私なんか…」

 

「まだそんな事言ってるの!!

ベルメールさんはもう愛人候補なんだよ!早く()()にしてもらわないとこっちが不安だよ」

 

 

こそこそしている割にはそれとなく聞こえてくる会話。

まぁ、気にせずにおにぎりを食べることに。

 

 

「とにかくベルメールはスタイルはいいんだから、その体を使って…」

 

「何を言ってるのノジコッ!!?そんなこと出来るわけッ!!!!」

 

「じゃちゃんとデートに誘わないと!!!

いつここを離れるのか分からないんだよ!!!」

 

「それは…そうだけど……」

 

 

デートかぁ……

ロビンがいない今、そういうことをしたほうがいいのかなー

 

 

「ベルメールさん」

「は、はい!!」

 

「ちょっと行きたい所があるんで一緒にどうですか?」

「え、えぇ!!」

 

 

それを聞いたベルメールは真っ赤になり、ナミとノジコはベルメールの代わりに「行きます!!絶対に行きますッ!!」と言ってくれた。

 

 

「なら良かったです。

実際は旅行の方がいいんでしょうけどその船の料理は美味しくてですね」

 

「ふ、船ですか!!」

 

「ハジメさんナイスチョイス!!!」

 

「流石お兄さんです!!」

 

「客船オービット号っていうですけど、行きませんか?」

 

 

…………………………

 

 

「こ、これは驚いたチャブルね……」

「この数年間、姿を隠していたはずだが……」

 

 

革命軍総本部。

そこに突如現れたニコ・ロビン。

これにはイワンコフもドラゴンも驚きを隠せなかった。

 

 

「お兄ちゃんから言われなかったら来なかったわ」

 

「お、お兄ちゃん……なに、あんた、兄妹いたの?」

 

「えぇ、貴方達が知りたがっている大将参謀ハジメの妹よ」

 

 

「「「な、な、なにいいいいいいいいいいぃぃぃぃッッッ!!!??」」」

 

 

その言葉に革命軍全土から驚愕の声が上がった。

いくら調べても海軍入隊以降が分からないハジメに対して、こんな所で繋がりのあるものが、それも世界政府から追われているニコ・ロビンの兄なんて驚かないわけがない。

 

 

「何を言ってるのヴァナータはッ!!!

そんな信じら」

「オハラ」

 

「な、なにを…」

()()()()()()()()()()()()。お兄ちゃんが助けたの」

 

 

……今度ばかりは言葉が出なかった。

バスターコールにより滅びたオハラ。

そしてその唯一の生き残り、ニコ・ロビン。

しかしそのロビンからいま、オハラの人達は生きていると……

 

 

「そ、それこそ…信じら」

「クローバー博士、お母さん、()()()

 

 

いままで気づかなかった。

突然と現れたのは考古学の世界的権威であるクローバー博士。そしてニコ・ロビンの母であるオルビア。

 

そして元海兵ハグワール・D・サウロ。

 

オハラを滅びた原因となり、世界政府に消された三人が目の前に現れた。

 

 

「「「「「え、え、………ええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!??」」」」」

 

 

隣の島まで聞こえるんじゃないかと思われるほどの大声。何もかもが予想外すぎる。

 

 

「な、何なのよこれはッ!!!??」

「……まさか…生きていたとは……」

 

「なに冷静になってるのドラゴンッ!!!??

これは大事件ナッチャブルよ!!!」

 

 

そう世界政府が消したはずのオハラの重要人物が生きている。そして何より

 

 

「これ程の人達をあの大将ハジメが助けたッ!!!??

これが知られたら海軍はおろか、世界政府も落ちるわよッッ!!!!!」

 

 

そう、それほどのことをやらかしている。

そしてそれを本人は気にしていない。

クザンもこの事は知らない。知っているのはロビンがニコルとして海軍にいることだけ。

 

……それも大分ヤバいですけどね……

 

 

「クローバー博士」

「革命軍総司令官、ドラゴン……」

 

「空白の100年とは?」

「ッ!!!??…そうか、君もそれを……」

 

 

誰もが固唾を飲む。

オハラが滅びた原因である「空白100年」

それをいまドラゴンがクローバー博士に聞いたのだ。

どう答えるのか、誰もが、静かになる。

 

 

「……知識とは、すなわち「過去」である」

「………………」

 

「しかし、今の我々は「過去」と同じぐらい「未来」を大切にしたいのだ」

「……つまり……」

 

「まだ、早い。「未来」のために「過去」がある。

「過去」を気にするあまり「未来」を失くしては意味がない。

私達は学んだ。一人の男に。

その命消えるその時まで気づかなかった私達を救ってくれたのだ……この命はもう、「過去」ではなく「未来」に繋げるためにあるッ!!!」

 

 

 

その言葉にドラゴンは暫し黙りこんだ。

聞いていた「オハラ」の印象から離れていると。

目的は違えど世界政府に喧嘩を売った「オハラ」

その意思は世界政府、いや、世界そのものに影響を与えるものだった。

 

例えその命がつきようとも……

 

しかしいま違う。

その「知識」は「過去」は、「未来」のためにあると。

その未来に自分たちも含まれていると。

遅すぎたかもしれない。しかし今からでも出来ると。

ここにいるクローバー博士、オルビア、サウロはそんな目をしていた。

 

そしてクローバー博士にドラゴンは

 

 

「……私達も、「未来」のために戦っている。

どうか、我々に、協力をしてくれないか?」

 

 

その右手を差し出した。

 

 

「ちょっ、ちょっとドラゴンッ!!!」

 

 

何もかもが突然すぎる事態にいうことしか出来ないイワンコフ。そしてその差し出した右手に対してクローバー博士は

 

 

「あぁ、そのつもりだ。

知るべき「知識」を授けよ。その代わり、我々の代わりに世界に「真実」を」

 

「あぁ、任せろ」

 

 

ドラゴンとクローバー博士が手を繋いだ。

ここに海軍、いや、世界政府を脅かす最大の敵が誕生した。そしてそれは誰も知られることなく確実に世界政府を苦しめることになる。

 

 

「ということで、私は革命軍には入らない。

あとお兄ちゃんを詮索しないこと。じゃないと私が世界政府より先に潰すわ」

 

 

歴史的瞬間かもしれないこの状況に、そんなもの関係と言わんばかりに自分の要求を言ってくるロビンに対してイワンコフはげっそりなりながら……

 

 

「…も、もう……わ、分かったチャブルよ…

……好き、勝手にしなさい……」

 

 

倒れこむことはなかったが頭は地面につきそうな勢いで下がってしまった。

その日イワンコフは体重が激減したという、あの能力を使わずに超スリムにへと。

 

 

 

 

 

 

 

すべては、ハジメの思い通り。

巨大すぎる爆弾のおかげでスムーズにロビンの入隊拒否とハジメの詮索拒否が出来た。

 

何もかも思い通りになっていた。はずだった。

しかし、これがいけなかった。

 

ハジメは知っていたはずだった。だが忘れていた。

革命軍には自分の影響力が通じていないことに。

 

だからこそ、接触させるべきではなかった。

例えそれがロビンだとしても。

ハジメに関わった()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれがニコ・ロビン……

……ふ~ん、色々やってくれてるみたいだけど……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………あの()()だけは私が救うわ。

だから……邪魔なのよ。()()()()()()



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ヤスミ・コガ

「いやあああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「五月蝿いですね。黙らせますよ」

 

「何なのッ!!!私はあんたと違って」

 

「お兄ちゃんを侮辱する気なのかしら?」

 

「痛たたたッッ!!!ギブギブギブギブギブギブッッ!!!

なんでこんなに容赦ないのッ!!!??」

 

 

現在、なんか怪しい人だとロビンが連れてきた女の子を取り調べしている。

取り調べ、というか脅しというか、実力行使に出ている。

 

なんか出会った時から気にくわなかった。

だって出会った瞬間に、

 

 

 

「あんたじゃ無理よ。あの二人は私が救うだから」

 

 

と、いきなり言うもんだからどこのどいつか知らないけどとにかくムカついたのでココヤシ村の空き家をお借りして拷問タイムに入った。

 

 

 

「貴女のせいでお兄ちゃんが愛人とデートすることになったのよ。死んで詫びなさい」

 

「関係ないわよねソレッ!!!??」

 

「殺しちゃダメだよ。拷問って生きたまま苦痛を与えるのが…」

 

「拷問ッ!!!??いま拷問って言ったッ!!!??

私がなにをしたというのよーッ!!!!」

 

 

関節を決められてもジタバタと動くこの女。

短髪で動きやすいTシャツとズボン、胸の膨らみなんて僅かにあるぐらいの女と思えない女。

 

 

「ちょっと。いま失礼なこと考えたでしょう」

 

「スゴいですね。やっぱり胸がないと男に間違われるものなんですね」

 

「直接言ったッ!!!!

そこはオブラートに包みなさいよ!!あと胸あるわッ!!!!」

 

 

こんな状況でも歯向かってくる度胸。

それとも単に置かれている状況が分からないバカなのか。

 

 

「で、なんでこんなもの連れてきたの?

元にあった所に返してきなさい」

 

「私はネコかッ!!!!」

 

「私をジィーと遠くから隠れて見ていたから気持ち悪くて……でも処分するにもなんか変なこと言っていたから連れて帰ってきたの」

 

「き、気持ち悪いって……

……私は別にそんなつもりは……」

 

「うわぁー。上級ストーカーからそんな風に言われるなんて……マジでヤバいね、真・ストーカー……」

 

「ヤメテッ!!!そんな汚物をみるような目で見ないでッ!!!!」

 

 

流石に汚物は触れたくないのか能力を解除してハジメの背後に隠れるロビン。

その行動にさらに傷ついた女はとうとう泣き出した。

 

 

「なによ…なんなのよ……

私が…何したと……いうのよ……」

 

「「存在」」

 

「悪魔かッ!!!!」

 

 

嘘泣きのようだ。

なので遠慮なくさらに関節技を強くしてもらう。

 

 

「痛いッ!!!痛いってばッ!!折れるうううぅッ!!!」

 

「なら吐け。革命軍と一緒にいたわりにロビンを見る目が違った時点で革命軍も海賊も海軍でもない。

…………お前は"世界政府"か?」

 

「ぢがうッ!!!ぢがうがらッ!!!お願いだがらやめでぇーッ!!!」

 

 

泣きじゃくりながらも許しを乞う女。

世界政府ならこんな風に偽るぐらい楽なんだろう。

しかし…情けないにも程がある。

もう、女として見れるような表情じゃない。

顔はぐちゃぐちゃでメイクが剥がれ落ち化け物みたいになっている。

 

……それを見て、またロビンが無意識に能力を解いた。

こんな風に怯えるロビンはなんか久しぶりに見た。

まあ怯える種類が違うけど……

 

 

「……なら、誰ですか?」

 

「……転生者……」

 

「ッ!!!??

…………ロビン、ちょっとの間二人にして」

 

「お兄ちゃん?」

 

「あとでちゃんと説明するから、ね?」

 

 

うん、と首を縦に降って部屋から出たロビン。

念のために部屋に一時停止をかけて完全遮音にした。

 

 

「で、なんですか?僕の邪魔をするなら同じ者だろうと……」

 

「違うッ!!!違うッ!!!!

邪魔なんてしないッ!!!!というか能力的に勝てないから無理よッ!!!!」

 

「能力的に、ということは能力者なんですね?」

 

「あっ。

………はい。ベツベツの実を食べた"物質・行動を分ける"能力を手にしてます」

 

 

能力者。それも本編とは別のオリジナルの実。

僕と同じ、転生者。

 

 

「まあ、能力者というのはおいたいて。

君は転生者なんだよね。記憶ある?」

 

「き、記憶あるって…前世の?あるけど…ないの?」

 

「ないね。この"ワンピース"という世界観・歴史・未来を知ってるだけ。未来といってもいま出てる話までだけど」

 

「ちょっと待って。なにそれ?

前世の記憶がなくて、"ワンピース"を知ってる?

それも"いま出てる話まで"ってどこまでッ!!!!」

 

 

なんかいきなり食いついてきた女。

…うわぁー面倒くさいなー。

 

 

「えぇーと……」

「待ってッ!!!!ネタバレはダメだからちょっと待ってッ!!!!」

 

 

本気で面倒くさい。

 

 

「………ドフラミンゴよりも先?」

 

「それがドレスローザの話なら、大きくくくったストーリーの2つ先まで知ってる。というか更新中」

 

「更新中ッ!!!??

なにそれッ!!!!もしかして毎週の話が分かるの!!!??

あのジャンプを読んでるように分かるのッ!!!!」

 

「まぁ。別にここで新しい事実が出てももう変更出来ないし気にしてなかったけど、そうだね」

 

「なんでそんなにテンションが低いのよッ!!!!

転生してもう読めない"ワンピース"を読んでるのよ!!!!さああああああっいこうじゃないのよッッ!!!!」

 

 

………ウザい。マジでウザい。

そんなに目をキラキラさせているみたいだけど。

 

 

「言わないよ。君の知っている先は」

 

「な、何でッ!!!??教えてよッ!!!??」

 

「メリットがない。というかウザい。グザンよりウザい」

 

「ウザくないもんッ!!!!ってかグザンって……クザンのことをいっ」

「知らない。僕は知らない」

 

「………まぁ、いいわ。その人については別に」

 

 

おおっ。ここでも見放されるクザン。

やっぱり日頃の行いが悪いからだね。

 

 

「お願いッ!!!!教えて!!!

出来るならマンガにしてッ!!!!」

 

「出来るわけがないだろうが」

 

「お願いだがらおじえでッッ!!!!」

 

「泣くなッ!!!引っ付くなッ!!!!」

 

 

ウザい。本当にウザい。

転生者ってこんなにウザいの?

もしかして前世の記憶を持った人ってこんな感じなのか?

 

 

「とにかく。とにかくメリットがない。

貴女に教えて何が出来るの?余計なことをされたら困るんだよ」

 

「これだけ世界観をめちゃくちゃにしてどの口が……」

 

「ああっ?」

 

「何でもありませんッ!!!!

それに私はただ救いたい人がいるからその人だけでもって考えなの。それ以外は好きにしても構わないから」

 

 

そういえばなんか救いたい人が二人いるって。

 

 

「誰なのそれ二人って??」

 

「そんなの決まってるじゃない。

この"ワンピース"において失くなって欲しくなかった二人といえば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白ひげ海賊団、二番隊隊長ポートガス・D・エース。

そして船長のエドワード・ニューゲートよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう。じゃ頑張って」

 

「ょっと、ちょっと待ちなさいよッ!!!!」

 

 

あんな貯めなくても冒頭で分かったし、確かに死んでほしくないから応援したのに。

 

 

「なんでそんなに反応が薄いの??

こんなめちゃくちゃな世界を作ってるあんたが邪魔をされるかもしれないって思わないの?」

 

「でも能力的に僕が上だし。それに二人とも助けたいのは同じだし。……拒む理由がない」

 

「いい子かッ!!!!

まぁ、邪魔をしないならいいんだけど…あっ、だから私も邪魔をしてないということをお忘れなく」

 

 

いや、邪魔をするなら消すから」

 

 

「漏れてる!心の声が漏れてるッ!!!」

 

「おっと。邪魔をするなら消すからね」

 

「直ッ!!!??」

 

 

…………………………

 

 

「じ、じゃ帰るわ……」

 

「送っていこうか。ずいぶんとニコルが気に入ったみたいだし」

 

「送るわよ。天へ」

 

「怖いわよッ!!!普通の人いないわけッ!?」

 

「普通かぁ………………………………モーガンさん」

 

「おい。なんでいま考えた。そんなに考える必要があるのか、ああっ?」

 

 

話しも終わり解放。

無理やり連れてきたわけだから革命軍のところまで送ろうかと言ったのだが、なんかモーガンさんが文句があるようだ。

 

 

「モーガンさんは知らないだろうけど、ここまで変わったのモーガンとニコルとヴェルゴさんぐらいだよ。

あの3大将は準予備軍」

 

「何を言ってるか分からないが、喧嘩を売ってるなテメェ!!!!」

 

「理解が及ばないなら、黙っていろ!」

 

「上等だッ!!!ぶったおゴブッ!!!!」

 

 

久々にキレたモーガンさんはニコルの手によって討たれた。

 

 

「お兄ちゃんに、謝れ」

 

「い、いや…俺は………」

 

「殺ぐわよ」

 

「すみませんでしたああああああっ!!!!」

 

 

と、なんか久しぶりに見たこの光景。

それを見て呆然としている女に

 

 

「あっ、名前聞いてませんでしたね。名前は?」

 

「ここでッ!!!??

こんな訳の分からない所を見せられている状態でッ!!!??」

 

「日常なので」

 

「……狂ってる……やっぱり狂ってるわ……」

 

 

なんかぶつぶつ呟いているがなんとかたち直したようで

 

 

「ヤスミ。ヤスミ・コガっていうの」

 

「ヤスミですね。改めまして大将参謀ハジメです」

 

「……やめて。これ以上知っていてもいらない情報を、混乱する情報を言わないで……」

 

 

本当に面倒くさい人だ。



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突然の出来事

「ヤバい」

 

「おいおい、いきなりなんだ?」

 

 

同じ転生者と出会って3ヶ月。

ロビンにヤスミを送り、「少しは抑えてよね」と何に対して言われたか分からないが伝言を受け取った。

ベルメールさんとデートをして少しは親しくなったかな?サンジには会えなかったけどまぁどうにかなるか?

 

あとは、なんか気の向くまま、いつも通りに行動したけど1ヶ月で終わった。

 

なんか思ったよりも出来ることがなかった。

というのは後の麦わら海賊団のメンバーは直接関わらなくてもなんとか回避出来るんじゃないかと思ったのだ。

 

と、言ってもチョッパーだけどうにか出来ても、あとのフランキーやブルックは改善するわけにはいかない。悪いけどあのスタイルが今後の海賊団に大きな影響を受けるのだ。ここで僕が関わるわけにはいかない。

 

あっ、ウソップ??

後回しにしても問題かと思うのは酷いかな?

 

 

とにかく、麦わら海賊団はこれで大丈夫なはず。

その周りの人達も直接関わらなくてもなんとか回避できることが多いのだ。

 

なのでハジメは思ったのだ。

自分の性格上間違いなく直接関わらなくてもいいことを関わってしまうと。

 

そうなると本当に予想できないことが起きて対応できないじゃないかと考えた。

 

 

………まぁ、すでに遅いと、ハジメの企みを知っているものがいたらそうツッコむだろう。

 

 

で、いつも通り書類整理をしていたハジメが

 

 

「くそッ!!なんで…こんなに多いんだッ!!!」

 

「板についてきましたねー」

 

「…こいつ、俺よりも出来るッ!!」

 

 

出来るッ!!じゃねえよ!

なに感心しているんだとムカついたのでクザンに書類追加。

ガタガタと文句をいう前にさっさとやれといってやった。

 

 

「…で、なにがヤバいんだ?」

 

「気にしなくていいですよ」

 

「なるに決まってるだろうが。

お前ならやらかす、間違いなくやらかす」

 

「酷い言われようです」

 

「妥当だと思うがな」

 

 

なんですか?ここには助ける人はいないんですか?

それはともかく「ヤバい」というのは、そろそろしっぺ返しが来そうな予感がしたのだ。

 

この世界にきて色々やからしたからなー

何か悪影響的なことが起きてもおかしくはない。

むしろよくここまでマイナス的なことが起きなかった。

 

だからなんかあると感じた。

あと半年もせずにルフィがゴムゴムの実を食べて、シャンクスがルフィに麦わら帽子を預ける。

 

その瞬間から始まるのだ。「ワンピース」の世界が。

それと同時に自分が変えたかった運命がどう影響するのか、プラスかマイナス、なににしろ本編とはまったくかけ離れた物語が始まる。

 

なので、というわけではないが、

始まる前に積み重ねてきた膿が、悪意が、世界の運命をねじ曲げた影響が跳ね返ってくると感じた。

 

 

ただどんな風になるのか分からない。

それこそ予想できない出来事を味わう可能性もある。

 

 

「……僕にも対処出来ないことが起きそうな、予感がしただけですよ」

 

「対処ね……大体全て対処出来ると思ってる時点でおこがましいだがな」

 

「思ってねえよ。バカテメェは」

 

「お前なッ!!いくら同じ階級だからといって、年齢は俺が上なんだぞ、敬えッ!!!!」

 

「なら、それに値することをしたから出直してこいや」

 

(……おれ、こいつ(ハジメ)の影武者なんだよな…嫌だな……)

 

 

1人遠い目しながら黙々と書類を片付けるモーガン。

なんやかんやいってちょっとずつハジメの思考になってきたとはいえ、この理不尽的なことはどうも共感というかものに出来ない。………ようは体が、心が、拒否をしているのだ。

 

まぁ、そんなことを思っても"起きるときは起きる"もの

そしてハジメが恐れていたことは、ハジメが意識したことにより起きたと言っていいほどタイミングよく訪れたのだ。

 

 

「し、失礼しますッ!!!!」

 

「なんだ、そんなに慌てて」

 

「オックスさん?確かジェルマ66の様子を見に行っていたんじゃ」

 

「おい、なんだそれ?そんなこと聞いてねぇぞ!!」

 

「テメェに話すことはねぇよ」

 

「そんなことをしてる場合ではありませんッ!!!!」

 

 

なんかめちゃくちゃ焦っている。

オックスさんとロビン、そしてヴェルゴさん達でジェルマ66の今の様子を見てもらうことにしていたのだ。

 

前回のようにロビンが離れても大丈夫になったので(もちろん条件付き)こうして大将の仕事をすることにしていたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニコル中将率いる船が、行方不明なんですッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな事になるなら、ストーカーとして、妹として、大切な人として、傍に、隣にいてくれたらそれだけで良かったと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この帽子をお前に預ける」

 

 

迎えた「ワンピース」の物語が始まる瞬間。

しかしハジメはそこに立ち合っていたが、心はそこにない雰囲気であった。

 

ニコルが行方不明になって半年。手がかりなし。

八咫烏や月兎にも懸命になって捜索してもらったが見つからなかった。

 

噂ではその時予想できないハリケーンが突如発生したらしい。それも今までのなかで経験のない規模が……

 

その船にはヴェルゴも乗っていた。

その船にはクザンの元部下達もいた。

その船にはロビンが乗っていたのだ。

 

なのに誰も帰ってこない。

ハジメが恐れていた出来事が起きてしまったのだ。

"神隠し"それが世界を変えたハジメの罰となった。

 

 

「俺の大切な帽子だ」

「…………………!!」

 

 

大切。

当たり前にいた。

自分がいなくなっても探してくれた。

それでもそれが当たり前のように感じていた。

 

だって求められていると分かっていたから。

また会えると分かっていたから。

 

 

だけどその大切がいなくなることは考えられなかった。

だからこうして失ったとき何も出来ずにいるのだ。

 

 

「いつかきっと返しに来い。立派な海賊になってな」

 

 

いつか、なんて期待できなかった。

あのロビンがもう半年も帰ってこないのだ。

絶望が、喪失感が、悲しみが、一気にハジメの心を蝕んだ。

 

あの日から何も出来ずにいた。

流石のサカズキもこんなハジメにはいつものように強く言えずにいた。ボルサリーノは冗談が言えずにいた。クザンはただ傍にいることしか出来なかった。センゴクはハジメに休みを与えるしか出来なかった。

 

 

ハジメに関わった人達がハジメを心配してくれた。

しかしその言葉はハジメには届かない。

それでもなんとかこの瞬間だけは思いだし、重たい足を動かして見にきた。

 

 

そして、始まったのだ。

"ハジメが作り出したワンピースの世界が"

"大切なロビンがいない世界が"

 

 

こんなはずではなかった。

望んだ世界、なのにそこにいてほしい人がいない。

たったそれだけでその世界が意味を失くした。

こうして見ているものも普通なら感動すること。

なのにいまはただ見ているだけにすぎなかった。

 

 

「おい、ハジメ」

 

 

すると船に乗り込んだシャンクスが話しかけてきた。

一体なんだと思いシャンクスを見ると、なにか強い意思を感じた。それがどことなく誘っているように感じたハジメは弱々しい足取りでシャンクスの元へ。

 

 

「ニコルのことは聞いている。だがまだ諦めるな」

 

「……気休めはやめてください」

 

「おいおい。一番信じてやらないといけない奴がそんな事でどうする?」

 

 

そんな事を言われても、半年も見つからない状況で何を信じろというのか??

 

 

「こいつはお前の友達である俺からのアドバイスだ」

 

「頼れ。お前は1人で抱えすぎている」

 

「あと、もう少し人を信じろ。どうも自分にどうも出来ないものを拒む癖があるぞ」

 

「こんな世界だ。何が起きてもおかしくはない。」

 

「だが、世界はそこまで残酷でもないはずだ」

 

「だから頼れ。人だろうがなんだろうが()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

………と、その言葉がちゃんと心に響いたのはシャンクスの船が見えなくなりその港に誰もいなくなった後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャボンディ諸島。

 

 

「本気かハジメ?」

 

「はい。しばらくの間お願いします」

 

「と、いっても私に出来ることは少ないだろうね」

 

「それでもいいです。あとこれを白ひげさんに」

 

 

レイリーに渡したのは沢山の手紙。

そしてその一つ一つに相手先の名前があり、ある日付が書かれていた。

 

 

「自分で渡さないのかい?」

 

「家族ですから…あまり心配をかけたくないといいますか……」

 

「……そうか。ハジメがそういうなら……」

 

 

手紙が渡したハジメはシャボンディ諸島を出た。

もうハジメの周りには誰もいない。

 

ロビンもオックスもモーガンもヴェルゴも八咫烏も月兎も。

サカズキもボルサリーノもクザンもセンゴクも。

白ひげもレイリーもハンコックも。

 

色んな人に出会い、変化を起こしてきた。

そしてそのツケがこうしてハジメを追い詰めた。

 

そしてその日、

 

 

 

 

 

"ハジメ"の時は止まってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年後……

 

「……な、なんだろう……これ…」

 

「棺桶だろ」

 

「それは分かりますが……流れ着いたのでしょうか?」

 

「そうじゃねえのか、知らねぇけど」

 

 

とある島。とある海岸。

そこにはついさっきある海賊からもらった小舟に乗り島を出ようとした二人の少年がいた。

 

次の島へ向かおうと思ったが海賊が不審なことを言っていたのだ。

 

 

「海岸にうち上がった"アレ"には関わるな。呪われる」

 

 

そんな言葉を聞いたコビーは震え上がり、ルフィは面白そうだとコビーを引きずって海岸へと向かったのだ。

そこはルフィが入っていた海岸の場所から少し離れた小さな海岸。

 

そこに真っ黒な棺桶があったのだ。

()()()()()()()()()()()()がそこにあった。

 

 

「なにが入ってるんだろうな~!」

 

「あ、開けるんですかッ!!!??

中には死体しかありませんよッ!!!!」

 

「んなもん分からねえだろう。もしかしたらすっげぇお宝が入ってたりするかもしれねぇだろう!!!」

 

「棺桶ですよッ!!そんなもの入ってるわけ……」

 

 

しかしルフィはコビーの話も聞かずにその足を空へ上げた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ゴムゴムの……斧ッ!!!!」

 

 

悪魔の実を食べた、全身ゴム人間、モンキー・D・ルフィ。

そんな悪魔の能力が放った一撃。だが

 

 

「こ、壊れないッ!!?」

 

「なんだこの棺桶ッ!!めっちゃ硬ぇ!!」

 

 

壊れない、いや傷も入らない棺桶。

一体その中身は何が入っているのか……

 

 

時は、十年前。

ある大将参謀が己の望む未来のために世界中を()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして現在、その変えた未来がハッキリと分かる時代を迎えた。

 

 

ここから再び始まる。

"ワンピース"という世界を思うがままに変え、己の理想を、願いを、全てを手にしようとする。

 

ある意味海賊王よりも難しい夢に向けて時代は走り出す。



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本編の始まり
3人兄妹


「ついた!!海軍基地の町ッ!!」

「はい!!ついに!!」

 

 

そこはルフィとコビーで出会って近くにある海軍基地。

そこでコビーは海軍に保護、いや海軍に入るためにここにきた。

ルフィは仲間を増やすために、そして

 

 

「お前すげぇーなコビー」

「えっ?」

 

「ちゃんと目的地に着いたよ」

「当たり前ですよ!海に出るもの最低限の能力です」

 

「ルフィさんだって毎度漂流してちゃ海賊になんてなれませんよ。

せめて航海士を仲間にするとか」

 

「ああそうする!!飯食おう」

 

 

 

コビーに着いてこないと再び遭難する恐れがあったため。

と、そんなの建前でなんとなくコビーと一緒にいたいと思ったのが一番だったりする。

 

そして小舟の後ろには

 

 

「その前にですねルフィさん」

「なんだよ。腹へったんだ飯食おう!」

 

「それは分かりますが……アレ、そのままですか?」

「だって壊れねぇからな」

 

 

コビーが指差したのは小舟の後ろにロープで繋いである棺桶。そうあの棺桶を後ろに繋いで運んできたのだ。

 

 

「いやいや!!絶対に怪しいですよ!!!

海に濡れても棺桶に水滴すら付かないなんてあり得ません!!」

 

「そうなのか?」

 

「そうなんです!間違いなくあの棺桶呪われてますよ!!」

 

「じゃやっぱりとんでもないお宝があるかもなッ!!」

 

 

目をキラキラさせるルフィ。

それを見たコビーはガックリとした。

 

あのあと、ルフィが繰り出す()()()()()を使っても破壊出来なかった棺桶。

なら持っていこうと嫌がっているコビーを無視してここまで運んできたのだ。

 

 

「この先のルフィさんが心配です……」

「なんとかなるって!!!」

 

 

と楽天的に笑うルフィに苦笑いをするコビー。

すると突然、爆発音が鳴り響いた。

 

 

「な、なんですか!!!??」

 

 

驚くコビーと、冷静に爆発音がする方向を見るルフィ。

するとこの町の海軍基地からだというのが分かった。

加えて粉塵が立ち上ぼり爆発の衝撃の頻度が分かった。

 

 

「一体なんでしょうか…」

 

「さぁな。でも()()()()()()()()()()()()

 

「奴ら?それにいるなってどういう……」

 

 

するとさっきまで普通の賑わいだった町から、建物から多くの人が出て来てなにやら騒ぎ始めた。

さすがにあの爆発音だ。誰もがビックリして出てきたかと思ったのだが

 

 

「始まったぞぉー!!!」

「おっしゃー!!!俺はバンダナ男にかけるぜ!!!!」

「なら俺は短髪嬢ちゃんに!!!」

 

 

なにやら賭けごとが始まったようだ。それもさっきの爆発音が関係しているよう。

気になったコビーは恐る恐ると1人の男性に話しかけた。

 

 

「あ、あのー何が始まったんですか?」

「おっ、見かけねぇ顔だな。ここには初めてかい?」

 

「は、はい。いまさっきついたばかりで」

「そうかい。これはこの町の名物でね。痴話喧嘩でどっちが勝つか賭けてるんだ」

 

「ち、痴話喧嘩?」

 

 

なんのことだが分からないが町の人達はゾロゾロと増え出していき、みんなで海軍基地に向けて歩きだした。

コビーはルフィの元へ戻るといつの間にか骨付き肉を買っていたようでムシャムシャと食べていた。

 

 

「どうしましょうかルフィさん。

どうやら町の人達は海軍基地で起こっている痴話喧嘩を見に行っているみたいですよ。それも賭け事として」

 

「痴話喧嘩?なんだそれ?

普通の喧嘩じゃねえのか?」

 

「えーと痴話喧嘩とはですね……」

「まぁいっか。見に行こう!」

 

「い、いくんですか!!?」

「そこにいる奴らは強ぇからな!!出来るなら仲間にしてぇな!」

 

 

ちょっとルフィさん!!と制止を促すコビーを無視して海軍基地に向かうルフィだった。

 

 

…………………………

 

 

「いいぞーやれッ!!!」

「そこだ、負けるなッ!!!」

 

 

海軍基地の敷地内。

そこに入らずにそこから内部が見えるところに町の人達は集まっていた。

その人達の先には海兵が日々のトレーニングで使うグランドがありどうやらそこでさっき言っていた痴話喧嘩があっているようだ。

 

 

「凄い熱気ですねー」

「そうだなー」

 

 

呆気にとられるコビーとなんかワクワクしているルフィ。

人混みを掻き分けながら二人は様子が見れる位置まで向かってみると

 

 

「鬼、切りッ!!!」

「虎、狩りッ!!!」

 

 

双方が技を繰り出し互いの衝撃や力が均一し根比べの状態になっていた。

 

 

「あら、パワーだけの割に私の技を受けるしか出来ないのかしら?」

 

「あぁッ!!?テメェこそちょこまかとしやがって…剣士なら真っ正面から来やがれッ!!!!」

 

 

二人は一気に距離を取ったあと、

 

 

「残念でした。私は"柔剣士"よ。ゾロの"剛剣士"と一緒にしないで」

 

「勝手に名前をつけんなッ!!!!」

 

 

少女の名前に不満だったのだろう我慢しきれなくなったゾロという少年が仕掛ける。

 

 

「だいたい、くいなッ!!

俺とお前の剣術は変わらねぇだろえがッ!!」

 

「そうかしら。ゾロは力タイプ。

私は女であることを受け入れてその分男で難しいしなやかさを重視した"柔"を使ってる。ほら違うでしょう?」

 

 

ゾロの繰り出す3刀流をその身のこなしだけで避けていき、危ないと感じた攻撃だけ左手の短刀でいなし、カウンターを仕掛ける際に右手の長刀で切りかかる。

 

 

「勝手に路線変更したのはてめえだろうがッ!!」

 

「何がいけないのよ。別に剣士であることを諦めたわけじゃない。方向性を変えたただけよ」

 

「それが……気に食わねぇんだよッ!!!!」

「だから……しつこいのよッ!!!!」

 

 

つばぜり合いをしながらお互いにらみ合う。

そんなことをしていると二人ともニヤッと笑い再びお互い距離を取る。

 

 

「やっぱり……これで決めるしかないようね」

「みたいだな。後悔…するなよなッ!!」

 

 

するとゾロとくいなはそれぞれ次の一撃で決めるための構えを行う。

 

 

「"三刀流"…」

「"二刀流"…」

 

 

ゾロの背後からまるで牛が怒り迫り来るような……

くいなの背後からは大蜂が狙いを定めているような……

 

 

「"牛鬼(ぎゅうき)"……」

「"火蜂(ひばち)"……」

 

 

瞬間、刹那、二人の姿が消え、二人のいた中心に激しい衝撃が走る。

 

 

「"勇爪(ゆうづめ)"ッ!!!!」

「"針彗(しんすい)"ッ!!!!」

 

 

 

誰もが目に映った時は互いがすれ違ったあとだった。

そして………

 

 

「……あ~あぁ、私の負けかぁ」

 

 

ゾロの一撃がくいなの肩を掠め切っていた。

そして振り返ったゾロには刀傷はない。

 

 

「……いや、俺の負けだ」

 

 

ゾロの体には傷はない。

しかし体よりも大切な剣が、時間を忘れていたかのように割れ落ちた。

 

 

「くそッ!!

……くいな、なにしやがった……」

 

「うん?まず長刀の一撃でしょう。そのあとに控えていた短刀で突きによる10連撃」

 

「なっ!!!??

………見破れなかった時点で俺の負けかッ!!」

 

「そんなことないよ。私は小細工しか出来なかった。

でもゾロは正面からでしょう。ゾロの勝ちよ」

 

 

しかしそれでは納得いかなかったのか「いや、俺の」「いや、私の」と言い合いが始まった。せっかく決着がついたというのに……

 

すると見学していた町の人達は

 

 

「また始まったよ痴話喧嘩ー」

「こっちは賭けねぇぞ!」

「まったく犬も喰わねぇよ、そんな甘いやつはな」

 

 

とヤジを入れながら笑って帰っていった。

そんなヤジを入れられたことさえ気づかずにまだ言い合いをしている二人を見ていたコビーは

 

 

「な、なんだったんですかね…」

 

 

正直戸惑っていた。

物凄いものをみたのだがいまの様子をみると力が抜ける感じがして、どうすればいいか分からなくなる。

 

すると黙っていたルフィが一歩二歩と歩きだし二人の元へ。

 

 

「ちょっと、ルフィさん!!?」

 

 

コビーの言葉も聞こえず二人の近くによると流石に気づいたようで

 

 

「あっ?なんだテメェは?」

「見たことない人だね。旅のひと?」

 

 

一方は好戦的。一方は非好戦的。

しかしそんなことルフィには関係なく己が思った事だけをいい放つ。

 

 

「いいなお前らッ!!!よし、お前ら二人とも俺と海賊をしようッ!!!!」

 

「「はっ?」」

 

 

そんな気がしていたコビーはただ頭を抱えるしかなかった……

 

 

…………………………

 

 

「なるほどね。海賊王かぁ……」

「なんで普通に話を聞いてるんだよ……」

 

 

いきなりのことで分からないとくいなが言ってきたのでコビーを呼んでキチンと経緯を話す。

 

 

「いいじゃない。この島じゃゾロと稽古ぐらいしかやらせてくれないんだから」

 

「それはそうだが……」

 

「お二人は海兵さんですか?その割りに服装が……」

 

「違う違う。私達雇われてるの。

海賊狩りでね、結構有名なんだよ。知らないかなー"海賊狩り兄妹、ゾロ・くいな"って」

 

「っんなことを自分で言うなッ!!!!」

 

 

恥ずかしかったのだろう、そっぽを向くゾロ。

そんな姿をみてクスクスと笑うくいな。

 

 

「兄妹なんですか?」

 

「違うわ。兄妹のように一緒にいるけどね。

それにもう1人"弟"みたいな子もいるのよ」

 

「弟?」

 

 

すると海軍基地の扉が勢いよく開き、中から1人の海兵がこちらに向かって歩いてきた。

 

 

「お前らああああああぁぁぁ!!いい加減にしやがれええええええええぇぇぇ!!!!」

 

「あれがここの海軍基地の司令官で大佐で弟の"ヘルメット"よ」

 

「"ヘルメッポ"だアアアッ!!!」



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ヘルメッポとハジメ

「ヘルメット?確かにヘルメットみたいな頭だなー」

 

「ヘルメッポだッ!!!

なんだこいつはッ!!いきなり俺様のチャームポイントをッ!!」

 

「まだ言っていたのかそんな下らねぇこと…」

 

「うるさいぞロロノアッ!!」

 

「大丈夫よヘルメッポ。海兵の女性達が「気味が悪い」って言っていても自信を持てばいいわ」

 

「くいなのせいで丸坊主にしたくなったよチキショーッ!!!」

 

 

なんかコントみたいな状況にルフィは大笑いをしてコビーは若干引いていた。

するとヘルメッポがゾロの持っている刀を見て

 

 

「ロロノアッ!!お前ッ!!また刀を折ったのかッ!!!」

 

「うるせぇなー。まだ俺に合う刀に合わないだけだ」

 

「どんな言い訳だッ!!見てみろ、くいなはちゃんと刀だな!!」

 

「いやー、今回は私が折った……んだよねー」

 

「……もう、何なんだよお前ら…仲良しかよ…」

 

 

サングラスで目がハッキリと見えないが泣いているようだ。そんなヘルメッポをお姉さんであるくいながよしよしと慰める。本当に兄妹のように見えてくる。

 

 

「楽しそうだなーなぁ、お前も入らねぇか?」

 

「なにいってるんですかルフィさん!!?」

 

「ルフィ?……そういえばお前ら誰だ?見たことねぇな……」

 

 

するとルフィはこの目の前にいるのが誰なのか分かっていないのか……あの言葉を言い出した。

 

 

「俺はルフィ。()()()()()()()()!!!」

 

 

自信満々に答えるルフィにコビーはびくびくとこれからのことに怯え、ゾロは呆れたような表情をし、くいなは苦笑いをしている。

 

ルフィのいるところは海軍基地。

ルフィの敵対するものは海軍。

ルフィの目の前にいるのは海軍大佐。

そして、ゾロとくいなと一緒に修業をした仲。

 

 

 

「………そうか……なら……」

 

 

ヘルメッポを腰からククリ刀を取り出して

 

 

「テメェを捕まえるだけだああああ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そういって切りかかっていったヘルメッポ。

流石のコビーもこれは見てられないと目を閉じる。

そして次の瞬間には……ドンッと何が叩きつけられた音がした。

 

ルフィさんがやられてしまったと思った。

だけど……なにかおかしい。

ククリ刀を出したのに……叩きつけられた音……

 

そぅーと目を開けてみると

 

 

「やっぱり、分かってなかったのね……」

「修業が足りねえんだこいつは……」

 

「なんだこいつ?よえぇーなー」

 

 

目に映ったのはルフィに殴られてのびているヘルメッポ。そしてそんなヘルメッポに呆れている二人だった。

 

 

…………………………

 

 

「痛いッ!!痛いって!!」

 

「我慢しなさい。修業をしないから悪いのよ」

 

 

海軍基地の中でも治療を受けているヘルメッポ。

しかしケガといっても()()()()()()()

それでも消毒液は染みるようで、くいなに文句ばかりいう。

 

 

「うるせぇーな!!お前らみたいな修業出来るかッ!!

こっちは一般人なんだぞッ!!」

 

「昔は「俺の親父は偉いんだぞッ!!」って威張っていた奴が一般人ねぇ……」

 

「いいじゃないゾロ。自覚することはいいことよ。

もっとも修業しないといけない自覚も欲しいところだけどね」

 

 

「うるせぇーよ」と小さな声で言ったヘルメッポに絆創膏をパンッと張ったくいな。イテェと叫ぶヘルメッポを無視してくいなはルフィ達に話しかける。

 

 

「さっきの話だけど断るわ。こんな弟だけど目が離せなくって」

 

「俺達がいなかったらすぐにあの海賊にここをやられるだけだしな」

 

「べ、別にお前らがいなくてもなッ!!」

 

「「いなくても……」」

 

「……ぐっ!!」

 

 

どうしてもそれから先が言えなかったようだ。

すると話を変えようとするヘルメッポ。

 

 

「言っておくけどな、いくら1人でも海賊なら俺はお前らを捕まえるぞ」

 

「ぼ、僕は違いますッ!!」

 

「そうなのか?だがその麦わらと一緒に…」

 

「そ、それは……」

 

 

ドッカーンッ!!!!

 

 

「「「!!!??ッ」」」

 

「な、なんだ!なんだッ!!!」

 

「なんですか!これッ!!!」

 

 

するとゾロとくいな、それにルフィが直ぐ様外へ駆け出した。それをヘルメッポとコビーは必死に追いかける。

 

海軍基地のグランドに出てみるとそこにはガラの悪い連中がおり、その中央に二丁拳銃をもった男が叫んでいた。

 

 

「出てこいいいぃッ!!!ヘルメッポ大佐あぁ!!」

 

「なんだあいつら?」

 

「あいつらよ。必要以上にヘルメッポを追いかけるやつら」

 

「証拠にもなくまた来やがったか……」

 

 

ゾロとくいなは刀を抜き構える。

それをみたルフィはニヤリと笑い両手の関節を鳴らす。

そして追いかけてきたコビーとヘルメッポ。その姿をみた男が

 

 

「出てきたなヘルメッポ大佐ッ!!」

 

「なんだよお前らはッ!!毎回毎回追いかけてきやがって!!!こっちにはなゾロとくいながいるんだぞッ!!」

 

「いるんだぞじゃねえだろうが、戦えよヘルメッポ」

 

「ふざけんなッ!!俺の位は親父のお陰だけだからなッ!!」

 

「昔に比べたら正直になったけど……まだ難アリだよね…」

 

「やっぱり先生の元に一回返すかアイツ……」

 

 

そんなこといいながら戦闘体勢を崩さない二人。

そして相手もそれぐらいでは引かない。

 

 

「そうだ……テメェの親父には世話になったんだ……

だからテメェを餌にしておびき寄せるんだよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大将参謀ハジメをなッ!!!!」

 

「………なんだって?」

 

 

するとルフィが一歩二歩と歩きだす。

ゾロとくいなの制止を聞かずにどんどん近づくルフィに男が逆上し

 

 

「なんだテメェは!!!引っ込んでいやがれッ!!」

 

 

そういって二丁拳銃で同時に撃つ。

避ける気配のないルフィ。しかしルフィはゴム人間。

弾丸は効くはずもない。しかしルフィはあえて()()()。その弾丸を()()()()()()()()()

 

 

「なっ!!?」

 

「ほぅ…」

 

「やっぱりね…」

 

 

驚く男に対して、ゾロは感心し、くいなは納得していた。

止めた弾丸を離して地面に落とすとルフィは

 

 

「ハジメに息子だって?……なに言ってやがる…」

 

「は、はぁ!?し、知らねぇのか!!

そいつは大将参謀ハジメのむす」「ゴバッブバッッ!!!!」

 

 

しかし、最後まで言えなかった。

一瞬でその場から消えたルフィがその男を殴り吹き飛ばしたのだ。

 

 

「なにも知らねぇやつがハジメを語るなッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らハジメを知ってるのかッ!!」

 

「知ってるも何も、ハジメお兄さんのお陰でこうして剣士でいられるんだから」

 

「そっか。やっぱりハジメはすげぇーな」

 

 

そのあと吹き飛ばされた男を他の奴らが拾い逃げていった。あのあとヘルメッポに聞いたらどうやら昔ハジメにやられた海賊、それもその現場から逃げ出したやつらのようだ。

 

そして逃げていた男達がヘルメッポの事を知り、さらによく"ハジメ"と会っていることを知った。それもまるで親子のように接していたのでヘルメッポを捕まえて仕返しをするつもりだったようだ。

 

……しかし……

 

 

「あれがハジメなわけがないだろうが!」

 

「そうよね。マトモ過ぎるわ」

 

「イカれている。それがハジメだ」

 

 

「よ、よく分かりませんが…ディスってますよね?」

 

 

なんか気があったようでハジメについて語りだした三人。しかし話すことはどれだけハジメが規格外で常識外れで人外なのかを話していてコビーからしたらただの悪口を言っているだけしか聞こえない。

 

そしてそれはヘルメッポも同じようで

 

 

「お前らなッ!!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!」

 

 

と、言ってくるが

 

 

「お前…まだそんなこと言ってるのか?」

 

「どう考えてもハジメじゃないよ?」

 

「あんなマトモなわけがねぇ」

 

「お前らッ!!フォローしてるのしてないのかハッキリしろッ!!!!」

 

 

そういうが事実なので仕方ない。

というかなんかヘルメッポが変なことを言っている感じだが、普通に考えればルフィ達がおかしい。

 

 

「で、でもヘルメッポのお父さんですよね?

そんなお父さんを間違えるわけが……」

 

「?? なにいってるんだ?」

 

「誰もヘルメッポのお父さんじゃないなんて言ってないわよ」

 

「ちょっ、ちょっとまてお前ら…どういうことだ?」

 

 

どうやらヘルメッポも本気で分かっていないようだ。

なのでハッキリと真実をいうことに。

 

 

「ヘルメッポのお父さんは間違いないわ。ただ」

 

「イコールでハジメではないだよ」

 

「という、どう見てもハジメじゃねぇよ。バッカだなー」

 

 

「「え、え、ええええええええぇぇぇッ!!!??」」

 

 

何故かヘルメッポだけではなくコビーも驚いていた。

 

 

「ま、まてッ!!じゃ誰だよアレは!!!」

 

「だからヘルメッポのお父さんは間違いないの。

ただ"ハジメ"じゃないの。本当に気づかなかったの?」

 

「……なんかいきなり、大将参謀になったなーと、驚いたけど……」

 

「せめてそこで気づきやがれ……」

 

「で、でもッ!!なんで親父はそんな別人になってるんだッ!!!」

 

 

 

「だから海に出たんだ」

 

 

 

その言葉に誰もがルフィを見た。

首からかけているロケットを握りしめているその姿を。

 

 

「あれはハジメじゃねえ。でもハジメが意味もなくそんなことする必要もねぇ。そしてあの日……師匠が消えたのも関係があるはずなんだ」

 

「どういうこと?」

 

「ハジメが変わるまえ、俺の師匠が突然消えたんだ。

シャンクスが言うには海軍でなにかあったらしい」

 

「ちょっ、ちょっとまてッ!!

お前の師匠って海軍なのか!!!」

 

「あとから聞いたけどな。確か名前は"ニコル"」

 

 

どうやらルフィとハジメが知り合いだとハッキリ分かったようだ。ハジメの隣には必ずニコルがいる。

ハジメを知っているものなら誰しも知っていることだ。

そしてそのニコルが突然消えた。つまり

 

 

「ニコルお姉さんが消えたからハジメお兄さんも消えたの?」

 

「分からねぇ。分からねぇから海賊王になるのと一緒にハジメと師匠を探してるんだ。そして……海賊になってもらう!!!!」

 

「お前ッ!!!バッカかッ!!!!

それが本当なら、例え見つかっても相手は大将参謀と中将だぞ!!!海賊になるはずがねえだろうがッ!!!!」

 

 

そう普通はそう考える。

だがルフィは、いや、ゾロもくいなも同じ考えだ。

 

 

「なるわね。だって、ハジメお兄さんだもん」

 

「だな。ニコルもハジメが一緒なら、なるな」

 

「だろう!!ニッシシシ!!楽しみだなー!!!」

 

 

あり得ないと頭を抱えるヘルメッポ。

そして完全に話についていけないコビーはただ呆然とするしかなかった。



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オレンジ町

「あ、あり得ねぇ……」

 

「まだ言ってるのヘルメッポは」

 

「なんで俺の軍艦で次の島までコイツらを送らないと行けないんだッ!!!」

 

「いいじゃない。海賊っていってもまだ1人の駆け出し。それにハジメお兄さんの知り合いなんだからそれぐらい融通しても」

 

 

ルフィ達は次の島オルガン諸島へ。

その諸島への航海をヘルメッポ大佐が所有している軍艦により送ってもらっている。

 

 

「……くそ、色々思い出してきたが……確かに"ハジメ"はめちゃくちゃなやつだったよ!!

というか麦わらッ!!俺達は一緒に修業した仲だったじゃねえかよ!!」

 

「……うーん……忘れたっ!」

 

「忘れんなよッ!!あの師匠に挑んで一撃を食らわせたヘルメッポだッ!!」

 

「……あったかな~」

 

「…………………超まぐれで、運良く、師匠に一撃を食らわせたら、思ったより強くかったらしくて……」

 

「ああっ!!師匠に関節技で折れる寸前で反省するまでずっと拘束されて泣き出していた泣き虫ヘルメッポかッ!!!!」

 

「そうだよッ!!!!なんでそれで思い出すんだよッ!!チキショーッ!!!」

 

 

一時期とはいえ同じ師匠の元で修業をしていたルフィとヘルメッポ。それを聞いていたゾロとくいなは

 

 

「お前…ルフィと同じ師匠に教わっていたのにその実力かよ…」

 

「これはダメだね。やっぱりお父さんに稽古し直してもらおうか」

 

「ふざけんなッ!!あの人が一番コエんだよッ!!

ニコニコしながらしごいてくるあの異常者ッ!!ハジメと同じぐらいになっ!」

 

「失礼な。まだお父さんはハジメお兄さんの域には達してないわよ」

 

「達しなくていいんだよッ!!!」

 

 

さっきからずっとこんな調子で全く話に入れないコビーはずっと水平線を眺めることしか出来なかった……

 

 

…………………………

 

 

「ほらついたぞ麦わら。さっさと行きやがれ」

 

「よっ、と。ありがとうなー!」

 

 

オルガン諸島についたルフィは軍艦から飛び降りてヘルメッポに感謝を告げた。

 

 

「いいか!!今度見つけたら俺はお前を捕まえるからな!」

 

「ニッシシシ!!ならもっと強くなれよなヘルメッポ」

 

「うるせぇー!さっさといけッ!!」

 

 

照れ隠しかさっさと船内に戻っていくヘルメッポ。

 

 

「ごめんねルフィ。いい子なんだけど…」

 

「いいよ。よく知ってるし」

 

「しかし世界は狭いもんだな。ハジメだけじゃなくヘルメッポと知り合いなんてな……」

 

「狭いというか、ハジメがすげぇんだ。

よくニコルから話を聞いていたんだ」

 

 

 

『お兄ちゃんはいつかこの世界を塗り替えるわ。いえ、もう塗り替え始めてるわ』

 

『いや、塗り替えって…ハジメは大将参謀なんだろ。海賊でも革命軍でもないのにか?』

 

『お兄ちゃんをそんな枠で押さえられるわけがないわ。そうねあえていうなら……』

 

 

「……なんだったけ?」

 

「ちょっとルフィー」

 

「肝心な所を……」

 

「わりぃわりぃ!!」

 

 

すると今度はコビーの方をみて

 

「ここまでありがとうな!!」

 

「こちらこそありがとうございますルフィさんッ!!」

 

「おう!!頑張れよコビー!!」

 

「は、はい!!ありが」

「ヘルメッポ大佐ッ!!!大変ですッ!!」

 

 

タイミングよく見回りに言ったいた海兵が慌てた様子で帰って来た。

 

 

「この町に、海賊が、"道化のバギー"がオレンジ町を侵略しておりますッ!!」

 

「なっ!!!??なんでこんなところでッ!!

クソッが!!一班は引き続き偵察、二班は住民の安全確保、三班と海賊狩り兄妹は俺と一緒にバギーの所に向かうッ!!」

 

 

「「「「はっ!!!」」」」

 

 

「おおっ!!なんかヘルメッポみたいじゃねえな~」

 

「こういう時は頼りになるのよー」

 

「あとは実力だな」

 

「うるさいぞお前らッ!!」

 

 

そんなことを言いつつ軍艦から降りてくる三人。

コビーはどうしようかとオロオロしていると

 

 

「おい、新人ッ!!ボサッとしないでいくぞ!!!」

 

「い、いいんですか!!!」

 

「海軍なら市民を助けるだろうが!!急げぇ!!」

 

 

「はいッ!!」と元気よく返事したコビーは軍艦から降りてきた。そんな様子をみて一安心したルフィは

 

 

「手伝おうか?」

 

「バカいえ!海軍が海賊の手を借りるか」

 

「そっか。じゃ頑張れよ」

 

 

そうやってルフィを残しヘルメッポ達はバギーを討伐に向かったのだった。

しかし、ルフィがこれで大人しく引き下がるわけもなくこっそりと後をつけることにしたのだった。

 

 

…………………………

 

 

「なんだこの犬?」

「ワン!!」

 

 

適当にぶらつくルフィはある店の前にいた犬を見つけた。

その犬は傷ついており、しかしルフィが近づいても一歩もそこから動かず、まるでその店を守っているかのように見えた。

 

そして、それはルフィにも伝わったのか

 

 

「……この店、守ってるのか?」

「ワン!!」

 

「そっか。大切なんだな」

「ワン!!」

 

 

意思の疎通が出来ているように見える。

しかし回りからしたらたまたま吠えたしか見えないのだろう。

 

ルフィはその犬が気に入ったのか隣に座って、軍艦から貰っていた肉を食らいつく。そしてその肉の一部をその犬に渡す。

 

 

「食っておけよ。ここで暴れているやつらからこの店守るならな」

 

「ワン!!」

 

 

そう吠えてガツガツと食べる犬にルフィも一緒になって肉を食べだす。するとそんな様子を遠くから見ていたのか棒切れを持っていた老人がそれを捨ててルフィに近づく。

 

 

「こいつは驚いた……シュシュがこんなにも懐くなんて……」

 

「シュシュ?この犬か」

 

「あぁ。この店はシュシュのご主人の店だ。

昔失くなってな、それからシュシュがこの店を守っている」

 

「偉いんだなシュシュは」

 

 

気が向いたのか、あのルフィがまた肉を千切ってシュシュに分け与えた。

 

 

「あまり肉をやるなよ。食べすぎは良くないんだ」

 

「?? 肉だぞ。元気が出るじゃねえかよ」

 

「それを人間に当てはめたらいかん。食べすぎは毒になるんじゃよ」

 

「へぇーー」

 

 

あまり関心がないのかあとは黙々と肉を食べ進めるルフィ。それをみた村長はなんとなく悪いやつではないと悟り

 

 

「いまこの町はある海賊に支配されとる」

 

「みたいだな」

 

「戦おうとしたが……この年じゃ。

それに相手は強すぎて儂らじゃ……」

 

「心配いらねえよ。いま海軍が戦っているしな」

 

 

その言葉に村長はルフィの両肩を掴んで

 

 

「それは本当かぁッ!!」

 

「一緒に来たからな。ヘルメッポは心配だけど、ゾロとくいながいるし大丈夫じゃねえかな」

 

「そ、そうか……」

 

 

それを聞いて力が抜けた村長。

どうやらよっぽど悔しい思い、心配をしていたのだろう。ホッとして腰から砕けたかんじになっている。

 

 

「見に行ってみるか?俺は戦えねぇけど守ってやるよ」

 

「…すまぬ」

 

「気にするな!俺はルフィ!!」

 

「オレンジ町の村長、ブードルじゃ」

 

 

…………………………

 

 

「所で気になっていたんじゃが…」

「なんだ?」

 

「……その棺桶は…一体……」

「盗まれないように持って歩いてる!」

 

 

そうルフィの腰にロープ、その先に棺桶が取り付けてある。ルフィが軍艦から降りたときにも棺桶をキチンと下ろしておいたのだ。

 

 

「……いや、棺桶は盗まれんと思うが……」

 

「そうなのか?でももしもがあるからな!!!

前にも俺が大事にしていた肉を師匠に取られて時があって、「大切なものはちゃんと目の届く所に!!」って教えられたんだ」

 

「まぁ、間違ってはないが……」

 

 

それにしても棺桶?と思ったブードルだが口にするのを止めた。人の大切にしているものは色々あるものだと思うことにしたのだ。

 

 

「ったく、ゾロやヘルメッポも「棺桶なんて乗せんなッ!!」って怒るしよ!」

 

「そ、そうか…」

 

 

なんか同じ船に乗っていた人達に同情していた。

まず棺桶を持ち物として所持している人なんていない。

そしてそれを大切にしている人なんてみたことがない。

その中身がお宝か、死体か、その認識の違いでここまで大きく差が空くものである。

 

 

「しかし軍艦に乗っていたとは、見習いさんか?」

 

「一緒に乗っていたコビーはそうだな」

 

「ならお主は…」

 

「俺は…」

 

 

ルフィの答えるタイミングで目の前から何かが飛び出してきた。

それはライオンと一緒に気絶しているアフロの男と、一輪車の下敷きになっているいかにもナルシストのような気絶している男。

 

そして吹き飛んできた先から現れたのが

 

 

「おいルフィ。戦闘は俺達がやると言ったはずだが」

 

「しねえよ。このオッサンが様子を見たいって言ったから来た」

 

「来たってルフィ……お年寄りをこんな危ない所に連れてきたらダメだよ」

 

 

そこに現れたのはゾロとくいな。

どうやら二人が倒れている二人を倒したようだ。

 

 

「コイツらは海賊の幹部ッ!!」

 

「らしいな。ったく歯応えがねえ」

 

「アハハハ。確かにちょっと弱かったかな」

 

「幹部が弱い……なんてやつらじゃ……」

 

 

歯が立たない幹部達を見たかぎり無傷で倒している。

海軍がきて嬉しかった反面、本当に倒せるのかとブードルは心配していた。

しかしその心配は必要なかったかもしれない。

 

 

「あれ、ヘルメッポは?」

 

「赤っ鼻と戦ってるよ」

 

「赤っ鼻?」



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ヘルメッポの意地

「くそがッ……」

 

「ぎゃははははははッ!!!

手も足も出ないとはまさにこの事だなッ!!!」

 

 

身体中に傷があり片膝をついているヘルメッポ。

目の前には海賊"道化のバギー"がいる。

そしてその後ろにいる人質がヘルメッポをここまで追い込むことになった。

 

時間は遡り、30分前。

ヘルメッポとゾロ、くいながバギー海賊団が拠点としている建物へたどり着いた。

 

 

「ここだな。よし、ゾロ、くいな頼む」

 

「働けヘルメッポ」

 

「なに私達だけやらせようとしてるのよ」

 

 

「いや、分かるだろうッ!!

俺はか弱いのッ!!お前らみたいな化け物と一緒にするなッ!!!」

 

「ったく。自分の実力の評価が高すぎたり低すぎたり……」

 

「大佐なんだからしっかりしてよヘルメッポ。

私達はあくまでも雇われなんだから、指揮官が戦闘に立たないと」

 

 

 

しかし頑固として行かないッ!!と言い張るヘルメッポ。

ルフィとの対決で心がポキッと折れてしまい、ヘルメッポの実力なら捕まえられるのだが「勝てない」と心に刻まれてしまっている。

 

 

「……仕方ねぇ。俺達だけでもいくか」

 

「もうヘルメッポ!ちゃんとしないと私達離れるからねッ!!」

 

 

その言葉にズキッと心に突き刺さった。

いまのヘルメッポ率いる海軍はゾロとくいなのお陰であるのが大きい。その二人が離れてしまうと間違いなくヘルメッポは大佐の地位を失うことになる。

 

 

「ま、まっ」

「なんだお前ら、ここに何か用か?」

 

 

すると建物の屋上から2つ影が落ちてきた。

一つの影は一輪車に乗っており、もう一つのは獣の背中に乗っている。

 

 

「おお、海軍か。こんな所までくるなんてな」

 

「後ろにいるのはそうだが、あいにく俺は違うぜ」

 

「コイツら見たことがある。"海賊狩り兄妹"のゾロとくいなだ」

 

「どうも。狩りにきました」

 

 

そういってくいなとゾロは刀を抜く。

すると向こうも戦闘体勢に入った。

 

 

「ヘルメッポ。コイツらをここから引き剥がすから」

 

「頭の方はよろしくな」

 

「ちょっ、ちょっと待てッ!!」

 

 

しかしそんなことを聞かずにゾロとくいなは攻撃を仕掛けながら建物から離れていく。残されたのはヘルメッポと部下だけ。

 

 

「た、大佐……」

 

「い、いくぞぉ!!こっちはこれだけいるんだ!」

 

「おおおっ!!!」

 

 

そういいながらヘルメッポ達は建物の中へ。

待ち構えている海賊を確実に倒していきながらバギーの行方を探す。

しかしバギーは見つからず最後に残された屋上へと足を踏み入れると

 

 

「ぎゃはははははは!!!来たな海軍ッ!!」

 

「ッ!!??海賊がぁ……ッ!!」

 

 

そこで見たのはこのオレンジ町に住む住人だろう。

女性二人が檻の中に捕まっている。

そしての周りに銃を持った海賊。つまり人質を取っていた。

 

 

「あぁ、そうさ、海賊だ!だからこうやって人質を取ったんだよ!!」

 

「その人達を解放しろッ!!」

 

「バカかぁ!!人質を解放するバカが何処にいるッ!!

傷つけたくないなら部下を下げさせろッ!!」

 

 

そうバギーがいうと海賊が人質に銃口を向ける。

それに怯える姿をみてとっさにヘルメッポを部下達を後退させた。なにより人質の安全が最優先である。

 

 

「よし、いいぞ。

どうして海軍がここに来たのかはもうどうでもいい。

こちらはいままで散々海軍にやられてきたんだ。

悪いが……サンドバッグになってもらうぜ!いけぇお前らッ!!!」

 

 

ヘルメッポに襲いかかろうとする海賊。

相手はヘルメッポでも勝てる相手、しかしカウンターを食らわせようとしたとき人質側にいる海賊が銃の引き金を引こうとした。

 

抵抗するなら撃つ。

分かりやすく卑怯な手口に気づいたヘルメッポは反撃をするのを止めた。

 

 

そして話は元に戻る。

海賊に袋叩きにあったヘルメッポだが、耐久力は人より優れておりボロボロになっても意識はハッキリしている。

 

 

「なかなかやるじゃねぇか海軍」

 

「コイツらが…弱いだけだ……」

 

「そうか……ならもっとハデにやられろッ!!」

 

 

その号令と共に海賊がヘルメッポに襲いかかる。

しかしそんな時、海賊とヘルメッポの間に誰かが入ってきてヘルメッポの攻撃を代わりに受けた。

 

 

「ああっ!!?なんだテメェはッ!!!」

 

「……も、もういいじゃないですかッ!!!」

 

「……こ、コビー……」

 

 

そこに現れたのはコビーだった。

ヘルメッポの印象ではルフィの腰巾着みたいに見えていたあのコビーが、ヘルメッポの為に盾になったのだ。

 

コビーの頭からは血が流れている。

それでもコビーは海賊から一歩も引かない。

 

 

「海軍……じゃなそうだな…

……だが、邪魔をした礼だ。ハデにヤれッ!!」

 

「待てッ!バギーッ!!」

 

「俺様はこうやって楽しみを邪魔されるのが一番嫌いなんだよッ!!!」

 

 

訓練もしていないコビーはヘルメッポ以上に速くボロボロになっていく。ヘルメッポはすぐに助けに入ろうとするが自分もボロボロで思うように体が動かない。

 

やっとの思いでコビーの上に覆い被さり、攻撃を引き受けたときにはコビーはすでに気絶していた。

 

それからどれだけ時間が経ったのか。

バギーの指示でやっと攻撃が収まった。

コビーの海軍服はもうボロボロで地肌も見え、青いアザや傷口が絶え間なく刻み込まれている。

 

しかしヘルメッポはまだ、意識はあった。

 

 

「…こ、これで終わりか…なら、人質を、解放しろ……」

 

「「ッ!!??」」

 

「まだ意識があるのか…しぶといな……」

 

 

あそこまでやられて未だに人質の安全を優先する。

その姿に人質になっている二人は息を飲んだ。

 

 

「も、もう!いいからッ!!!

私達が悪いのッ!!!こうなったのは自業自得だからッ!!!」

 

「海賊からお宝を盗もうとしたのが悪いのッ!!!

だから私達は悪い人だからッ!!だからッッ!!!」

 

「……それでも!!それでも…助けないと……」

 

 

その言葉に何も言えなくなった二人。

一方でバギーは腹を抱えながら笑いだし

 

 

「ぎゃははははははッッ!!!!!

こんなやつらも助けるなんてなんていい海軍なんだ!

決まったッ!!こんなやつには……」

 

 

バギーが手をあげると海賊達があるものを持ってきた。

それは大砲、そしてそれに使われるバギーのマークがついた爆弾。

 

 

「特性バギー玉を食らわせてやるよ!」

 

「や、やめてッ!!」

 

「その人が死んじゃうッ!!」

 

「だろうなッ!!だが、万が一生き残ったら…人質もお前らも解放してやるよ」

 

「………本当だな?」

 

「ぎゃははははははッ!!こういうのは嘘をつかないタチなんだよ!!!」

 

 

100%嘘である。

ただ単に特性バギー玉を使ってみたかっただけ。

それも善人面をしたヘルメッポを吹き飛ばしたくなったのだ。

 

バギー玉の導火線に火をつけて大砲へ挿入し砲撃方向をヘルメッポに向けた。

その方向にはヘルメッポだけではなく、後方にいる海軍達にも範囲にはいる。しかし

 

 

「お前ら…離れていろッ!」

 

「離れません!!大佐がこんな姿になっても一歩も引かなかった勇姿、我々もお供いたしますッ!!」

 

 

一斉に敬礼をする海軍。

それをみたヘルメッポは「…バカ、やろう……」と小さく呟く。

 

 

「ぎゃははははははッ!!なら予定変更だ!!!

テメェら1人でも倒れたらすぐに人質を殺す。

逃げだすなら今見逃してやるぜ!」

 

 

しかし誰もその場から動かない。

全員の意思は一緒であり固く動かない。

 

 

「だったら……ハデ吹き飛べッッ!!!」

 

 

バギーの合図でバギー玉は発射され、そして

 

 

ドッカンッッッ!!!

 

 

と町中に響き渡る爆音が鳴り響き、ヘルメッポのいた所は土煙で覆われ後方にあった建物は吹き飛んでいた。

 

あまりにもショッキングな出来事に人質二人は青ざめ、バギー達はそれをみて大いに笑いだした。

 

 

「ぎゃははははははははははははッッッ!!!

マジで吹き飛んだぞアイツらッ!!バカじゃねえのかッ!!!」

 

 

そのあまりにも非道なやり方に人質の1人がバギーを睨み付ける。その視線に気づいたバギーは顔色を変えて近づき

 

 

「なんだその目は?せっかく助かったのに…ハデに死にたいか?」

 

「や、やめてッ!!!」

 

 

もう1人の人質が止めようとするが、その女はニヤッと笑って

 

 

「…良いことを教えてあげる。

私のお母さんは、あの大将参謀ハジメの愛人なの。

つまり私達に手をだしたら貴方達は間違いなく潰されるわ」

 

「大将参謀、ハジメだぁ…」

 

 

バギーも聞いたことぐらいはある。

むちゃくちゃで、しかし3大将よりも強く、海軍の真の指導者と噂される人物を。しかし

 

 

「ぎゃははははははッ!!

なにホラを吹いてやがる?あの絶黒のハジメには悪魔のニコルがいるんだぜ。アイツに睨まれた女共は消されていく。それが愛人だと?ハデに笑わせるなッ!!!」

 

「それにだ、だったら何故あの海軍がやられる前に言わなかった?」

 

「そ、それは……」

 

「自分の保身のためだろうがッ!!

だとしても……もうちょっとマトモな嘘をつくんだったなッッ!!!」

 

 

向けられる銃口。もう1人の人質が泣き叫び、その銃口が向けられた人質はバギーを睨み付ける。

 

絶対に引けない。と。

あの人だったら絶対にここでは引かない。

 

 

「ハデにし、ブッガッグラバッ!!」

 

 

奇声を上げながら何かにぶつけられたバギーはぶっ飛んだ。

一体何かと飛んできた方角をみると、そこはさっきまで土煙がたちこんでいたところであり、そしてその土煙が晴れそこに1人の少年が立っていた。

 

その少年を起点に爆発が四散され、後ろにいたヘルメッポやコビー、海軍達は無事。そしてかけ上がってきたゾロ、くいな、村長が目にしたのは

 

 

「本当に頑丈だなー」

 

 

ナッハハハハッ!!!と笑うルフィ。

爆発の瞬間ルフィは棺桶を盾にして爆発を凌いだ。

そのあと撃たれそうになった人質を助けるためにバギーに向かって棺桶を投げた。

 

 

「……おい、ルフィ。

そいつは大事なものじゃなかったのか?」

 

「頑丈だからいいかなーと思って!!」

 

「……絶対にバチが当たりますよ……」

 

 

呆れ返っていると吹き飛ばされたバギーが立ち上がり

 

 

「くそがッ!!!!誰だテメェはッ!!!!」

 

「俺か?俺はモンキー・D・ルフィ。

海賊王になる男だッ!!!!」



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開花

「海賊王だぁ……笑わせるなッ!!」

 

 

するとバギーは銃をルフィに向けて躊躇いもなく引き金を引いた。

その弾丸はルフィの腹部に命中し、ルフィの体は前のめりに……

 

 

「ルフィさんッ!!」

「あのバカッ!!油断しやがって…」

 

 

くいなとゾロはルフィが撃たれたことに後悔し、村長は思わず目を瞑った。

しかし次の瞬間、倒れこんでいた体を一歩踏み出した足が支えて

 

 

「き、かあああああんッ!!!!」

 

 

と叫びながら両手を広げて体を大きく背伸びをした。

その瞬間、ルフィに当たったハズの弾丸が跳ね返りバギーの横を通過したのだ。

 

 

「ル、ルフィさん…」

「なにをしたんだアイツ……」

 

 

起きた現象に戸惑う二人。

しかしバギーだけは違った。冷静に起きたことを考えて

 

 

「テメェ、悪魔の実の能力者か?」

 

「あぁ。俺はゴムゴムの実を食べたゴム人間だッ!!

ゴムゴムの……」

 

 

そういってルフィは右手を思いっきり後ろへと降った。

するとその腕は伸びていき、

 

 

「悪魔の実だとッ!!」

 

 

驚くゾロの所まで伸びた腕は停止して元に戻ろうとして戻っていく。

その反動を利用しようもしているのだろう。

ルフィはバギーに目掛けて走っており、そして伸ばした腕が戻ってきた瞬間にその腕を手をバギーに向けて突き出す

 

 

拳銃(ピストル)ッ!!!!」

 

 

当たれば間違いなく大ダメージを受ける攻撃。

しかしその攻撃は当たらなかったのだ。

目の前には確かにバギーの顔がある。

だが、バギーの顔があるだけで、その下が無いのだ。

 

 

「そんな単調な攻撃、食らうと思うかッ!!

バラバラ、フェスティバルッ!!!!」

 

 

バギーの体がバラバラに分解されて宙を動き回っている。さっきのルフィの攻撃はこれにより回避されたのだ。

 

伸びた腕はすぐに戻り、バギーの体はルフィを取り囲むように宙を漂う。

 

 

「残念だったな、麦わら。

俺様もバラバラの実を食べた"全身バラバラ人間"なんだよッ!!」

 

 

するとバラバラになった体が砲弾のようにルフィに襲いかかる。ルフィにとっては大したダメージではないがたまにナイフを持った手が襲ってくるため油断できない。

 

 

「ぎゃははははははッ!!

俺様に勝てると意気がっていたようだな」

 

「く、クソッ!!」

 

「悪いがこっちはもうド頭にきてんだああぁ!!!

さっさと終わらせてもらうぞッ!!!!」

 

 

バギーの能力の使い方が上手い。

ナイフを持った手を他の体の一部で隠して、四方八方から攻めたてて混乱しているところでナイフを持った手を近づける。

 

ルフィもこんなことは未経験だったのだろう。

無作為に飛んでくる体を殴ろうとしても上手く当たらず、更に冷静さをなくしているため自分のおかれた状況を把握しきれずにいる。

 

しかしとっさの判断、勘のようなものが働いたのだろう。ルフィはバッ!!と背中を地面に向けて仰向け状態にした。そして次の瞬間

 

 

「ゴムゴムの…散弾銃(ガトリング)ッ!!!!」

 

 

ゴムの性質を利用し、一気に複数の手で殴りかかるように動かす。それにより散らばっていた体にルフィの拳が届いて吹き飛ばすことに成功した。

 

そしてその攻撃は、ダメージはバギーを襲う。

いくら体をバラバラにしても体は体。打撃は通るのだ。

 

 

「グブッ!!!」

 

 

バギーの体は元に戻り片膝をついてしまった。

今だ!とルフィは一気に距離を縮めようとしたが

 

 

「動くなッ!!!」

 

 

バギーの体は、すべて戻ってはいなかった。

ある一部だけが戻らずに人質の元へ。

その一部は、その手は、人質が閉じ込めてあった檻を持ち上げて建物の外へ乗り出したのだ。

 

 

「それ以上動くとこの手を離すぞ」

 

「て、テメェ……」

 

「ぎゃははははははッ!!

おいおい、マジで動かない気か?

こいつらはお前には関係ないだろうが!見捨てれば俺様に攻撃できるぜ!!」

 

 

バギーもやぶれかぶれで行ったことだった。

そうルフィにとって、海賊にとって、一般人がどうなろうとも関係ない。そう思っていたバギーだがもしかしてと思いこの作戦に出た。

 

さっきバギーに向けて投げた棺桶。あれはもしかして人質を助けるためにやったのではないか?

 

そうバカらしいと思ったがまさか本当になるとは思っていなかったバギー。思わず笑いが出てしまう。

 

 

「海賊である俺達がこんな奴等を助けてどうする?

搾取されるやつらを助けてどうするんだ麦わらッ!!!ぎゃははははははッ!!!!」

 

 

こんな風に脅しても一歩も動かないルフィ。

しかし、ルフィにはちゃんとした理由がある。

 

 

「そいつらはヘルメッポが助けようとした。だからだ」

 

「はぁ?海軍が助けようとしたから助けるだッ??

テメェ……海賊を舐めているのかッ!!!!」

 

 

するとバギーのもう一つの手が、ナイフを持った手が、ルフィの腹部を刺した。

 

 

「グッ!!」

 

「ルフィさんッ!!」

「ルフィッ!!」

 

「…あ、の……バカ……」

「…ルフィ…さん……」

「……………」

 

「……どうして…そこまで…」

「……もう、やめて……」

 

 

抜かれたナイフ、その傷口から血が流れ出す。

流石のルフィでもその場に片膝をつき、傷口を手で塞ぐしか出来なかった。

 

 

「……本当にコイツらを助ける為に死ぬのか?」

 

「……死なねえよ…テメェを、赤ッ鼻をぶっ飛ばすッ!!!!」

 

 

その言葉にバギーはキレた。

バギーには禁句があったのだ。それはその赤い鼻。

それを言ったものは誰であろうと制裁を加えた。

そしていま、目の前にいる重症の麦わらに

 

 

「誰が…誰が赤ッ鼻だあああああぁぁぁッ!!!!」

 

 

人質の檻を持っていた手を離し、近くにあったナイフを掴んで2つ同時にルフィに襲いかかる。

 

とっさにくいなは檻を、ゾロはルフィを助けるために走り出す。

 

しかし両方とも間に合わない。

檻は地面に向けて落ちていき中の人質が叫ぶ。

ナイフはルフィの心臓を目掛けて飛んでいき、ヘルメッポやコビーがルフィの名前を叫ぶ。

 

 

 

 

そして檻が、ナイフが、その目的地についてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ、あれ……」

「……これ…なに……」

 

 

地面に叩きつけられたハズの檻は、クモの巣のようなものに包まれて直撃を間逃れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだ、それはッ!!?」

 

 

バギーの声に誰もが注目をした。

ルフィに刺さる筈だったナイフはその皮膚ギリギリで止まっている。

そしてそれを止めたのは……地面から生えた"手"

 

それと同時にギギギギィと何かが開く音がした。

それと同時にルフィの顔色が真っ青になった。

死ぬかもしれなかったことに対して?

いや、違う。むしろこれから()()()()()()()()ために顔色が変わったのだ。

 

 

「ルフィ。何回この棺桶に攻撃したのかしら?」

 

「い、いや、それは……」

 

「なにより、なんで負けそうになっているの?

これは……修業のやり直し、ねッ!!」

 

「ギャアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

するとルフィの全身から手が生えてきてルフィに関節を決め始めた。ゴム人間であるルフィにだ。

 

しかしルフィの体は見事に関節が決められており、苦痛により叫んでいるその口をまた生えてきた手で塞いだ。

 

 

あまりの光景に誰もが動けずにいた。

そして棺桶は完全に開きって、その中からある女性が出てきた。

 

ルフィやヘルメッポの師匠であり、大将参謀ハジメの側近であり、そして世界政府から狙われている危険人物と、"悪魔の子"と呼ばれた女性。

 

 

「ゾロ、くいな。お兄ちゃんはどこにいるのかしら?」

 

「も、もしかして……ニコルさんッ!!!??」

 

「ニコルッ!!??」

 

 

本編よりも()()()()()()()()()()()()()ロビン。

しかしそれはゾロやくいなにとっては気づかないもの。

それよりも気になることがあったのだから。

それは能面のようなものを被っているから。

以前あったときはそんなものはしていなかったのに…

 

 

「どうしてニコルさんが棺桶から?

ルフィさんが大事にしているものだって言っていたけど中身は知らないって……」

 

「それはいつか話すわ。それよりお兄ちゃんは?」

 

「いや、ハジメは…知らない」

 

 

すると一気に気温が下がった。

誰もが恐怖してロビンから離れていく。

関係ないバギーでさえもチビりそうになっている。

 

 

「知らない?それ、どういう意味かしら?」

 

「ハッ…ハッ………ハジメさんは……行方不明…で……」

 

「……ニコルが、いなくなったと、同時に……」

 

 

それを聞いたロビンは少し考え込み、恐怖を感じさせる圧を抑え込んだ。それにより誰もが息を整えるために深呼吸をしている。

 

 

「………そういうこと」

 

「ニ、ニコル、さん……??」

 

「もう大丈夫よ。お兄ちゃんの真意は分かったから」

 

 

そういって座り込んでしまったくいなに手を貸して立ち上がらせるロビン。ゾロはギリギリ耐えていたが自分の未熟さに悔しがっていた。

 

 

「ゾロ。これからよ。焦ると自分の道が見えなくなるわ。キチンと前だけ向いて一歩づつ歩きなさい」

 

「……」

 

 

返事はないが理解したようだ。顔つきが変わった。

こうしてロビンが出現したことにより一気に形勢は逆転。というよりもう終わっていた。

 

 

「ギャアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

ロビンがすでにバギーを捕獲していたのだ。

それもバラバラになったパーツを生やした手が確保してボコボコに殴っている。

そしてパーツが少なくなったバギーはまるで子供の体のようになっており

 

 

「ルフィ。チャンスをあげるわ。

この道化、遠くまで吹き飛ばしなさい」

 

「わ、分かったッッ!!!!」

 

 

拘束から解けたルフィはロビンの言うとおりにした。

両手を後ろに大きく振って伸ばして、その腕を、戻ってきた両手をバギーに向けて繰り出す。

 

 

「ゴムゴムの、バズーカッッ!!!!」

 

 

渾身の一撃はバギーを地平線の彼方まで飛ばした。

それを呆然と見ていた海賊共は一目散に退散。

バギーのパーツを取り返すとこもなく逃げ出した。

 

 

「及第点かしら。晩御飯食べていいわよ」

「ありがとうございますッ!!!!」

 

 

しっかりとお辞儀をしたルフィは、気が抜けたのかそのまま倒れこんだ。お腹に傷口があるのを忘れていたのだった。

 

 

「仕方ないわね」

 

 

と、いいロビンはルフィの傷口を見ると、ウネウネと何かが生えて傷口を塞ぎ出した。

 

 

「こ、これって……」

「私の能力よ。

そういえば言ってなかったかしら、私"ハナハナの実"を食べたのよ。こうしてあらゆるところに"花"を咲かせる。フフフ、キレイでしょう?」

 

 

は、はい……と苦笑いしか出来なかったくいな。

だってその花はまるで糸のようにルフィの傷口を縫っていくのだ。

昔から少し気味が悪いと感じていたが、改めて思った。

 

 

絶対にこの人には逆らったらダメだ。と。



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ニコルの正体

「えっ、お、お、お姉さんッ!!?」

「に、ニコルさんなのッ!!?」

 

「久しぶりね。ナミ、ノジコ」

 

 

檻から解放された二人の前にいたのはロビン。

いや能面により初めは誰かと疑っていたが声や口調によりロビンだと分かった。

恐怖から解放された反動か二人とも一斉にロビンに抱きつく。

 

 

「二人とも成長したのに甘えん坊ね」

 

「だって…だって……」

「本当に、心配したんですから……」

 

 

二人の元にも届いていた。ニコルが行方不明だったこと。

初めはあんなに敵対していたベルメールとも仲良くなった矢先に起きた出来事。二人ともショックは大きかった。

 

 

「ちゃんとここにいるでしょう。

だからいい加減に離れなさい。暑苦しいわ」

 

「ひ、ひどいお姉さんッ!!」

「本当に、変わらないのね……」

 

 

引っ付いてくる二人を引き剥がすロビン。

そしてさっきからソワソワしている二人に目をやる。

 

 

「ところでルフィ」

「はいッ!!」

 

「悪魔の実を食べたみたいだけど、その能力に頼りすぎてるわ。いいというまで能力使用禁止」

「えええええっ!!!!!」

 

「いいわね?」

「はいッ!!」

 

 

全く逆らえない。

じいちゃんであるガープよりも逆らえず勝てる気がしない。

 

 

「そして…ヘルメッポ」

「はいッ!!」

 

「あなたは……そうね、ちょっとこっちでお話するわよ」

「…いや、……いや、……イヤだああぁッ!!」

 

「大佐ッ!!?」

 

 

まさかの逃走に驚く海兵達。

しかしロビンから逃げれるわけなく、すぐに身体中に"花"を咲かせて拘束された。

 

 

「貴方達もよ。上司共々しっかりとお話してあげる。

ソレを運んで付いてきなさい」

 

 

全員が絶望の顔をするが逃れないと諦め重い足取りでロビンに付いていく海兵達。

 

 

「お、お姉さんってあんな感じだった?」

「いや、もっとクールなイメージだったわ」

 

「お前ら…ニコルがいなくなった途端にそれか…」

 

 

さっきまでTHE、妹!的な感じだったナミとノジコ。

しかしロビンが見えなくなると猫を被っていたように態度や雰囲気が変わった。

 

 

「当たり前よ。どうしてお姉さん以外のやつに媚を売らないといけないわけ?」

 

「こ、媚って…」

 

「私達はニコルさんに恩があるの。

それ以外にも色々あってね、あんた達もこっちのほうが接しやすいだろう」

 

「対応するこっちの身にもなりやがれ……」

 

「うっさいわね。お金取るわよ?」

 

「なにに対してだこのアマッ!!?」

 

 

親指と人差し指で円を作り、"お金"を表しながら理不尽な請求をするナミ。

それにキレるゾロをくいなが宥める。

 

 

「なによ。せっかくのビジネスを邪魔されたのよ。

お金を取られないだけありがたいと思いなさい」

 

「うん、捕まってなかったか?」

 

「それは違うわ麦わらの坊や」

 

「坊やじゃねえ、俺はルフィだぁッ!!」

 

「ルフィね。ルフィ、私達はあえて捕まっていたの。

船に運ばればあの檻を"コレ"で解除してお宝を盗んで逃げる。私達海賊専門の泥棒なのよ」

 

「海賊よりタチが悪いなー」

 

「ありがとう。誉め言葉よ」

 

 

大人な対応を見せるノジコ。

ノジコの手にはピッキングするための道具を胸の谷間から取り出した。それを見ても動じないルフィをみて少し興味を持ったノジコ。

 

ちなみにその動作をした瞬間にくいなはゾロの目を刀で塞ごうとしていた。

 

 

「ッテメェ!!!何しやがるッ!!失明させる気かアッ!!?」

 

「………仕方ないもん」

 

「なわけあるかッ!!?」

 

「ああぁ~分かるわくいな!!

それはそうよね。()()()()()()()()()()()()()()()()()~!!!」

 

「ちょっとッ!!ナミッ!!?」

 

「あら、そうなの。

堅物っぽいから仕留めるのは大変よ。頑張って」

 

「ち、違うッ!!そんなんじゃないッ!!!!」

 

 

否定をするが顔が真っ赤なくいな。

何が起きているのか分からないゾロ。

いいオモチャがいたと楽しんでるナミとノジコ。

腹減ったーと座り込んだルフィ。

 

 

「………どうしたら、いいんでしょうか……??」

「………ワシに、聞くな………」

 

 

同じ空間にいる筈なのにコビーと村長だけは取り残されている感じになった。

 

 

…………………………

 

 

「結婚資金?」

「そう、結婚資金。

もちろんニコルさんの許しを得てからするけど、ハジメお兄さんとベルメールさんの結婚式は盛大にしないといけないから」

 

「普通にお金を集めてもダメだからさ。ナミと相談してこの稼業をね」

 

 

オレンジ町にある食堂。

そこでルフィ達は食事をしていた。

そして未だにロビン達は帰ってきていない。

 

 

「で、でも、怒られなかったんですか。そのベルメールさんって二人の親なんですよね?」

 

「それはもう激怒。家にあったもの投げられて「勘当よッ!!」って追い出された」

 

「でも、それから一度だけ帰ったときベルメールさん「あの子達が私のために~」って嬉しそうに村のみんなに話してたの。それを見たからこうして続けてるわけ」

 

 

海賊専門の泥棒。

命の危険があるというのにそれでも母親であるベルメールに盛大な結婚式を開くためにやっている。

普通なら激怒、勘当もの。だけどやはりそこはナミとノジコの母親。どんな形でも娘が自分のためにしてくれていることが嬉しいのだ。

 

 

「しかし愛人って言ってなかったか?

愛人ってそもそも結婚出来るのか?」

 

「五月蝿いわよゾロ。

それはそれよ。これはこれよ。いくらお姉さんの言うことでもそれだけは譲れないわ」

 

「まあ、すぐにとはいかないわ。だからニコルさんに許しをもらうまでは()()()()()()()()()()()()()。もちろんニコルさんは好きよ。でもそれ以上にベルメールには幸せになってほしいの」

 

「……こえぇ……」

 

「そうかな?素敵だと思うけど」

 

 

ナミ達の真意を聞いて怖いと感じたゾロ、くいなはいいなーと感じているがあまり口にしないようにとそこでやめた。また弄られると感じたのだ。

 

 

「大丈夫よ!くいなをお祝いするときは私達に任せてッ!!」

 

「みかんで作った特性ケーキを用意するわね」

 

「なっ!!!?ちょっとッ!!!!」

 

「お祝い??くいなの誕生日はまだだったよな?」

 

「「ッ!! へぇーーー!」」

 

「もう変な勘潜りをしないでッ!!そしてゾロは黙っててッ!!!!」

 

 

なぜ怒られたのかよく分からないゾロだったが、なんか必死なくいなに大人しく従うことにした。

 

するとお店の扉が開くとロビンを先頭にヘルメッポ達が入ってきた。後方はやつれた表情をしているが……

 

 

「結婚ならまず私とお兄ちゃん、それからよ」

 

「き、聞いてたんですかお姉さん……」

 

「ふふふ。私、地獄耳なの。

まぁ、早く結婚式を上げたいなら他のライバルをどうにかしないと。お兄ちゃんはモテるから」

 

「やっぱりそうですよね……」

 

 

昔だったらその"結婚"というワードだけで錯乱していたロビンだが、そこら辺もちゃんと成長しているようだ。大分心に余裕が出てきたと思われる。

 

……それでも優先順位は変わらない所は、本当に変わらない……

 

 

「ハジメって、師匠と結婚するのか!!?」

 

「なに当たり前なことをいってるのルフィ」

 

「……当たり前なんだ……」

 

「五月蝿いわよヘルメッポ。

お兄ちゃんの一番は私。これが大前提なのだから同然よ」

 

 

そっかー、で終わらせたルフィ。それを別に気にしてないロビンは用意された紅茶を飲む。

 

 

「それはそうと…師匠は戻らなくていいのか?」

 

「どういうことかしら?ヘルメッポ、それは私が邪魔だといいたいのかしら?」

 

「言ってねぇよ!中将なんだろう!!!

それも海軍本部にいたんだから戻らなくていいのかってことだよッ!!」

 

「そうね。いまお兄ちゃんいないし別に海軍にいなくてもいいけど……」

 

 

そういうとロビンは腕をクロスさせると、ロビンの隣からもう1人のロビンが現れた。

 

 

「さぁ私。海軍本部のほうは任せたわ」

「了解よ、私」

 

 

確かにこれなら問題はない。

しかしこの出来事にゾロとくいな、コビーなど見たことの人達はびっくりしている。

 

 

「えっ、えーと……」

「気にしなくていいわ」

 

「いや、無理だろうッ!!」

「私が二人で、私が本体。問題あるかしら?」

 

「あぁ…ルフィさんの師匠だってことだけはハッキリ分かりました……」

「そうじゃの……」

 

 

ルフィとロビンは何のこと?と首を傾げている。

もう1人の弟子であるヘルメッポはだからイヤなんだよ…と嘆いていた。しかしそこで新たな疑問が出てきた。

 

 

 

「ちょっ、ちょっとまて。

師匠が分身を作ってまで残るのって……」

 

「お兄ちゃんが言っていた。

いつか世界を変える海賊が現れるって。

ということよ。ルフィ。期待に添えなかったらお兄ちゃんを捜しに抜けるわよ」

 

「……よ、よっしゃあああああぁぁぁぁーッ!!!!」

 

 

ルフィにとって初めての仲間。それがロビン。

海軍本部中将で、師匠で、ハジメの妹であるロビンが仲間に入るなんてルフィも予想していなかってようだ。

 

 

「本当に入ってくれるのか師匠ッ!!」

 

「ええ」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ師匠ッ!!

いくら分身を本部にやっても師匠が海賊になったら大問題だぞッ!!!!」

 

「五月蝿いわね。対策はあるわ」

 

 

そういってロビンはまず能面を取った。

その素顔に驚いたのがルフィとヘルメッポ。

 

 

「し、師匠がお面を取った……」

「ってか、マジでニコル中将だったのかよ……」

 

「信じてなかったの?失礼するわ」

 

「だ、だが、それだけじゃ俺たちの認識が変わっただけだろうがッ!!」

 

「焦りすぎよ。そこも直さないといけないわね」

 

 

そんなことをいいながらロビンはポニーテールをほどいた。すると……

 

 

「えっ。だ、だれ?」

 

「に、ニコルさん…ですよね……」

 

「お姉さん…が変わった?」

 

「どういうことなのノジコッ!!?」

 

「もう誰なのか分からねぇな……」

 

 

と、口々にポニーテールからストレートになったロビンを認識出来ない面々。

しかし一人だけ違った。海軍であるヘルメッポにはその素顔を何処かで見たことがあるのだ。

 

それもそれは指名手配書で、その写真は子供の頃の写真で……それでも面影が……

 

 

「……お、おい……ま、まさか……」

 

 

足がガクガクと震えだしたヘルメッポ。

その姿に周りの人達も注目をする。

明らかに怯えているのだ。

 

ついには腰を抜かして倒れたヘルメッポにルフィは

 

 

「お、おい、ヘルメッポッ!!」

 

「あ、ありえ、ねぇ……誰も…気づかなかったのかよッ!!?」

 

「なにいってるんだ!!師匠がどうしたんだよッ!!!!」

 

 

明らかに動揺しているヘルメッポに問い詰めるルフィ。

するとヘルメッポはゆっくりと語りだした。

 

 

「昔、一つの島が…消滅した。名をオハラ。

その生き残りが…いて、そいつは…ある男を見つけるために……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という……」

 

「それ、聞いたこと、ある…」

 

 

ヘルメッポの言葉に誰もが思い出した。

 

 

「私も…聞いたことがあるわ……どんな手を使っても目的を遂行する"悪魔の子"……って、もしかしてッ!!?」

 

「で、でも、その子供って亡くなったんじゃッ!!?」

 

「そうだッ!!!!海軍に捕らえられた()()()()()()()にってッ!!!!」

 

 

 

「そうだよッ!!だが間違いねぇッ!!!!

なんで世界政府に追われていた奴が、死んだはずのやつが海軍になんて入ってやがるんだッ!!()()()()()()()()!!!!!」

 

 

誰もがニコルを、いや、ロビンを見る。すると

 

 

 

 

 

「死亡説は私が流したの。

あと海軍にどうしてか?簡単よ。

 

そこに、お兄ちゃんがいるから

 

 

「「「「「「なるほど」」」」」」

 

 

誰もが納得のいく説明だったという。



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シロップ村へ

「こ、こんなの…なんて報告すればいいんだ…」

 

「しなければいいじゃない」

 

「んなわけいくかぁッ!!!

師匠とニコ・ロビンが同一人物なんて…い、胃がぁ……」

 

 

とうとうヘルメッポもセンゴクのように胃痛になってしまった……かわいそうに……

 

 

「まぁ報告してもクザンが揉み消すわ。彼、知ってるから」

 

「はああぁぁッ!!ニコ・ロビンだと知ってて海軍本部に入れたのかッ!!?」

 

「だってお兄ちゃんが海軍本部に入ったから。

あとのことはどうでもよかったの。だからかしら一応危険性はないも判断したらしいわ」

 

「……いや、むしろ危険性があったんじゃ…ぎゃああああっ!!!痛いッ痛いッッ!!!!!」

 

 

余計なことをいったので関節技でお仕置きをするロビン。

 

 

「お、お姉さん…私、これからなんて呼べば…」

 

「好きにしなさい。私にとってニコルもロビンもお姉さんも関係ないわ。唯一はお兄ちゃん。それだけよ」

 

「やっぱりブレねぇな師匠はッ!!」

 

 

その言葉にナミは「じゃロビンお姉さんねッ!!」といい、ルフィは変わらないロビンに喜んでいる。ヘルメッポは……泣いている。

 

 

「ヘルメッポ。海軍本部に向かうにしても足がないわ。グランドラインまで運びなさい」

 

「は、はああぁぁッ!!?

い、イヤだよッ!!なんであんなところにッ!!!!」

 

「いいじゃない。私達まだ船がないの」

 

「だったら船を見つけろよッ!!」

 

「船があっても航海士がいないわ」

 

「航海士も見つけろよッ!!」

 

「見つけてもヘルメッポを海軍本部に届けるの。

そして親子共々……説教よ」

 

「イヤだあああああぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

泣き叫びながら外へ逃げ出したヘルメッポ。

いくら逃げようともロビンに見られた時点で何処でも拘束は可能。逃げることは出来ない。

 

 

「いくらお兄ちゃんから影武者に指名されたとはいえ、あんな()()()()()()()お兄ちゃんじゃないの。つまりそれはお兄ちゃんをバカにしていること。普通は死刑に値するけど、私も優しくなったわ。半殺しで許してあげるの」

 

「……ば、ばい……」

 

 

捕まったヘルメッポはロビンにお仕置きされて顔が腫れあがっていた。言葉もマトモに発音できないぐらいに。

 

 

「ヘルメッポは修行をサボった罰。

一応麦わら海賊団を追いかける海軍としての設定にするわ。常に離れすぎずに付いてきなさい。もちろんそちらには私の分身がいるから逃れないわよ」

 

「…………………」

 

 

もう言葉も出なかった。出たのは涙だけ。

それを見ていたくいなは流石に可愛そうだと思い背中を撫でてあげた。

 

 

「それでルフィ。ヘルメッポ達はあなたに着いてくるけど行き先は全てあなたが決めなさい。これはあなたの冒険なのだから」

 

「ああっ。もちろんだッ!!

まずは船と航海士を探すぞッ!!!!」

 

 

その言葉にナミは思わず体がビクッとなり、それを隣でノジコが支える。

 

そして…ロビンはそれを見逃すはずがなかった。

 

 

…………………………

 

 

「なんだ、色々あったが世話になった」

 

「気にするなッ!アイツらはムカついたから吹っ飛ばしたんだ!」

 

「そうか…恩にきる!!」

 

 

こうしてオレンジの村長と別れて次の目的地へ向かう。

もちろんルフィやロビンが乗ってるのはヘルメッポ中将の船、軍艦である。

 

 

「すげぇーな。海賊になったのに堂々と軍艦に乗れるなんて!!」

 

「感謝しなさいルフィ。これもお兄ちゃんと私のお陰よ」

 

「俺が許可したからだろうがッ!!普通はお前ら牢屋なんだぞッ!!」

 

 

文句を言いながらも遠くから離れて言っているヘルメッポ。そんなのロビンには関係ないのだが本能的に離れたようだ。

 

 

「しかし良かったなーコビー!!海軍に入れて!!!」

 

「…なんか考えていた入り方とは違いますが…ありがとうございます!」

 

「安心しなさい。私が直々に鍛えてあげるわ。ヘルメッポと一緒に」

 

「俺を巻き込むなッ!!!!」

 

 

巻き込むも何も元々決まっているのだが。

それでもコビーは元気よくよろしくお願いしますッ!と返事をする。

 

 

「それでよゾロ。仲間になれ」

 

「どういうことだよッ!!」

 

「諦めてなかったのね……」

 

「師匠と知り合いみたいだしな。なら強いし、剣士だし、腹巻きだし」

 

「腹巻きは関係ねぇだろうッ!!?」

 

 

まぁまぁ落ち着いてと、くいなが宥める。

しかしゾロとくいなとしてはルフィと一緒に海賊をやるメリットがいまのところない。

こうして海賊にいるのも弟分のヘルメッポの手伝いしているに過ぎない。いつか本格的に旅に出るがそれはルフィ達と海賊をする理由にはならない。

 

 

「でも私達海賊するつもりないの」

 

「海賊はいいぞ!自由だし!!」

 

「うん。それは見てて分かるわ…」

 

「強いやつと戦えるぞッ!!」

 

「別にお前についていかなくても戦える」

 

 

いくら言おうがゾロとくいなには海賊になるつもりはない。しかしそれぐらいで諦めるルフィでもない。

 

 

「そっか。ならまた明日だな」

 

「おいぃッ!!まさか毎日いうつもりかッ!!」

 

「幸先いいなー師匠に剣士二人かぁ~」

 

「それももう入ってる私達ッ!!?」

 

「ふざけんなッ!!!!」

 

 

そんな文句などルフィの耳に入るはずもない。

すると操舵席の所にナミとノジコが海兵から何か話を聞いていた。

 

 

「どうしたんだナミ?」

 

「航海術を教えてもらってたの」

 

「も、もしかしてお前ッ!!?」

 

「期待しないで。私に航海士は…ダメなの…」

 

「そうなのか?」

 

 

ふんッ!!といい放ち離れていくナミ。

するとノジコが両手を合わせてルフィに謝ってくる。

 

 

「ごめんね。ナミのやつ悪気があるわけじゃないの」

 

「別に気にしてねぇ」

 

「そ、そう??……昔は積極的だったんだけど…いまは私が航海士をね」

 

「ならノジコが仲間に入ってくれよッ!!

ハジメとも知り合いなんだろう、それならッ!!」

 

「ゴメンッ!!!!」

 

 

強く拒否をするノジコ。

それにはルフィも少し顔色を変えた。

 

 

「……私はナミの為しか船を動かさないの。だから、諦めて……」

 

 

そういってノジコもその場から離れていった。

何が起きたのかいまいち分かっていないルフィは首を傾げるしかなかった。

 

 

「まぁ、そう簡単にはいかないわよ」

 

「師匠」

 

「焦らなくてもいいの。グランドラインまではこの船があるからゆっくり勧誘しなさい」

 

「……おうッ!!」

 

 

気合いの入ったルフィはそのまま食堂へ。

それをコビーとヘルメッポが追いかける。

もうすでに半分近くの食料がルフィの胃袋に消えたのだ。このままだと次の島につく前に食料がつきる。

 

なので二人は必死になってルフィを止めることにした。

 

 

…………………………

 

 

「……マジで…食いやがった……」

 

「……ルフィさん……」

 

 

なんとかルフィの暴走は止められたが、そのかわり用意された食事は()()()()()()

 

 

「いつも師匠が「勝てなかったらメシ抜き」ってしてたからなー。よくエースやサボとメシの取り合いしてたら……こうなっちまった!ナハハハハッ!!」

 

「笑い事じゃないですよ……」

 

「お前の胃はどうなってるんだよ……」

 

「でも、偏った食事はいけないわ」

 

 

そういって両手をクロスさせるロビン。

何をするかと身構えていると甲板のほうからドシンッ!と物凄い音が聞こえた。

 

 

「これを食べなさい」

 

「し、師匠…な、何を……」

 

「釣り上げたわ。イカよ」

 

「イ、イカッ!!?」

 

 

すぐさま甲板に向かうとそこには巨大なイカが、すでに足を全て切り落とされた哀れなイカが泣いていた。

 

 

「う、うまそうおおぉ~!!」

 

「イカごときが……」

 

「ご、ごめんね!!足はまた生えるからねッ!」

 

 

ゾロとくいなは甲板で稽古をしていたのだが、そこに巨大なイカが現れて躊躇もなくその足を切り落とした

謝っているが結構くいながその足を切り落としていた。

近くにいたナミやノジコはちょっと怖がっている。

 

 

「は、ハジメお兄さんの知り合いだから…それぐらいはって思っていたけど……」

 

「本当に強い人ばかりなのね……」

 

 

ルフィとゾロが協力してイカを海に返し、

 

 

「よし!!メシだあッ!!」

 

「お前は食い過ぎだぁッ!!」

 

 

そんなヘルメッポのことは聞かずにルフィ達がイカのフルコースを楽しんでいると次の島、ゲッコー諸島のシロップ村近くに来ていた。

 

そしてその島から軍艦を見ている少年が一人。

 

 

「か、海軍だ……これで、助けられるッ!!!!」

 

 

ここでもまた騒動が始まろうとしていた。



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それぞれ

「着いたぞ!メシだあッ!!」

 

「さっき食べましたよねッ!!?」

 

 

コビーのツッコミにも「そうか?」とさっき食べたことを忘れているルフィ。

 

 

「でもよ、島についたらまずはメシだッ!!

じゃないとその島の特徴が分からん!」

 

「いや、それ以外にも方法はあると思いますけど…」

 

 

どっちにしろこの島の村に向かい、船が調達出来るか確認をしないといけない。

なので、ルフィとコビー、ヘルメッポにロビンにくいなが一緒に行くことになった。

 

 

「行かないのゾロ?」

 

「行ったら何かに巻き込まれそうだしな。俺は寝る」

 

「何かあったらゾロを叩き起こしていいからね」

 

「分かったわ」

 

「俺を何だと思ってやがる……」

 

 

ナミ達も船に残るということなのでいざと言うときはゾロに頼れと伝えてルフィ達はシロップ村に向かうことに。

 

 

「いいか麦わら」

 

「前みたいにルフィって呼ばねぇのか?」

 

「海賊と海軍だぞ。最低でも仲良く呼び合うなんてことするわけないだろうが」

 

「面倒くさいな~」

 

「何とでもいえ。とにかくまだお前らは「お前ら?誰に、何を言ってるのかしら?」麦わらは海賊ということはまだ世間的に知られてないんだ。一緒に行動するならここは海軍の見習いとして……」

 

「イヤだッ!!俺は海賊だッ!!」

 

 

その言葉にピリッと空気が変わる。

流石のコビーもこれには気づいてアワアワと慌て出す。

 

 

「……いい加減にしろよ。

海賊を軍艦に乗せて航海するだけでもあり得ない話なんだぞッ!!少しぐらいはこっちの要求を聞きやがれッ!!」

 

「イヤだッ!!俺は海賊なんだッ!!

嘘でも海軍に入るなんて俺には出来ねぇッ!!!!」

 

 

その言葉にさらにムカついたヘルメッポは

 

 

「だったら勝手にしろッ!!!!

こっちはお前を助ける義理はねぇだからな!」

 

「ちょっ、ちょっとヘルメッポさんッ!!」

 

 

そう言ってヘルメッポは村とは外れの道へと歩いて行ってしまい、コビーはどちらにと迷ったが上司であるヘルメッポへ付いていくことにした。

 

 

「ルフィ君。良かったの?」

 

「軍艦に乗る分はいいんだ。でも海軍に、海兵に気はねぇ!!」

 

「…それが、ハジメさんから言われても?」

 

「関係ねぇ!!それにハジメが応援してくれたんだ。

俺はいつかハジメを見つけて……そしていつか倒すッ!!」

 

「……お兄ちゃんを、ねぇ……」

 

 

その意気込みにフッと笑ったロビン。

まるで成長していく子供を見るかのように…でも

 

 

「お兄ちゃんを倒す前に私を越えていきなさい。

というかいまここで越えてみる?」

 

「いてででででッ!!ギブッ!ギブッ!!ギブッ!!!!」

 

 

一気にマジな顔になりルフィに関節技を決める。

もちろん折れるかどうかギリギリを攻めている。

 

 

「……前から気になってたんですけど、ルフィ君ってゴム人間ですよね?なんで関節技が決まってるんですか?」

 

「それは…まだ秘密よ」

 

「まだってことは、いつか教えてくれるんですか?」

 

「ふふふふ。そうね、課題をクリアしたら教えてもいいわよ」

 

 

そういってロビンはくいなに課題を出す。

するとくいなはその内容に

 

 

「それって…お父さんが言っていた……」

 

「だったら頑張りなさい。

言っておくけどゾロも一緒じゃないと教えないわよ」

 

 

はい!と元気よく答えるくいな。

そんな移動中でもルフィの関節技は続いていた。

 

 

…………………………

 

 

「あの分からず屋が!!

フリだけだろうが、なんで嫌がるんだッ!!」

 

「ヘルメッポ中将……」

 

 

さっきからヘルメッポはずっとルフィへも文句を言っていた。それをコビーは後方から付いていっている。

 

 

「師匠も師匠だッ!!

ハジメが海軍に入ったから入った?何だよそれッ!!

それも世界政府に追われて……くそがッ!!!!」

 

「ヘルメッポ中将!落ち着いてください!!」

 

 

林の中の一つの木に拳を打ち付けるヘルメッポ。

その木は大きく揺れて葉っぱも大量に落ちてくる。

 

そして一緒にある少年も落ちてくる。

 

 

「イデッ!!!!」

 

「…何だ?」

 

「木に、登っていたんでしょうか?」

 

 

頭から落ちたようでゴロゴロと動き回りながら痛みを堪えている少年。

それを見てさっきまで怒っていたことを忘れてしまったヘルメッポ。

 

 

「く、くそ…こんなピンポイントでくるなんて…」

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

「…あぁ~悪かったな。登っていたんて知らなくてな」

 

 

駆け寄るコビーと謝るヘルメッポ。

すると突然なにかを思い出したように立ち上がり

 

 

「あ、あんた!!海軍なんだよなッ!!」

 

「お、おう。そうだが……」

 

 

するとヘルメッポの両肩を強く握って

 

 

「頼むッ!!カヤを!!この村を救ってくれッ!!」

 

 

…………………………

 

 

「…ナミ。あまり風に当たると体に悪いわよ」

 

「……うん。でももう少し、当たりたいかな……」

 

 

そんな事をいうナミにノジコは隣で付き合うことに。

甲板から見える景色はとても良く、空には海カモメも飛んでいる。

 

 

「どうしたのナミ。アイツらが気になるの?」

 

「……どうかな。いいやつらだと思うけど…」

 

「でも、自信がない。か」

 

「……………」

 

 

その言葉に黙ってしまったナミ。

ノジコもそれ以上は追及しなかった。

 

 

「面白いやつらよね。というか私達もか!」

 

「私達は違うわ。あんな規格外じゃない」

 

「一番はロビンさんだけどね」

 

「お姉さんは昔からだもんね……」

 

 

そういいながら昔の事を思い返す。

小さいころ初めてあったハジメ。

そこから生活は一気に変わり、ベルメールさんをどうにかしてハジメとくっ付けようとした。

 

そしてやっと愛人。ロビンからも許しをもらった。

それでもまだ「愛人」どまり。ナミもノジコもその上の幸せを手にしてほしいのだ。もちろんベルメールさんもその気がある。

 

 

「………貯まるかな、お金」

 

「貯めるのよ。絶対に」

 

 

改めて決意する二人。

でもそれは何処か泣きそうな表情にも見えた。

 

 

「……………」

 

 

そんな素顔を見てるわけでもなく。

なんとなく耳にしたゾロは寝返りをして寝直そうとしたのだが

 

 

「……あれは……」

 

 

…………………………

 

 

「誰も…いない…??」

 

 

シロップ村に来てみたのはいいのだが誰もいない。

いや、正確には家の中に閉じ籠っているだけで、外には誰もいないのだ。

 

 

「なんか、前みたいな雰囲気だな~」

 

「うん。オレンジ町に似てる」

 

 

そして窓の隙間からこっちを観察をし、視線があえば隠れてしまう。ルフィ達を警戒しているようだ。

 

 

「……どうやら、ここに海賊が攻めてくるみたいね」

 

「えぇっ!!?どうして分かったんですか?」

 

「ふふふふ。私に隠し事は無意味よ。

例えばゾロの腹巻きに…」

 

「ダメッ!!!!なんで知ってるんですかッ!!?」

 

「安心しなさい。お兄ちゃんに影響なければ興味がないの。好きにすればいいわ。

それより、ここの人達は私達をその海賊だと勘違いしているようね」

 

 

海賊ではあるがルフィもロビンも村をどうこうする気はない。しかしそんなのは村の人達から見れば見たことのない人で、このタイミングで現れたのは海賊じゃないのかと疑うのは仕方ない。

 

 

「……一回引き上げた方がいいじゃ……」

 

「ええええぇぇッ!!?メシはッ!!」

 

「流石にこの状況じゃ作ってくれないよ。

作っても毒を仕込まれるのがオチ」

 

「……メシが……」

 

 

すると村の奥から一人の男性が現れた。

その男は黒いスーツ姿に、メガネをかけて、にこやかな表情でこちらに近づいてくる。

 

 

「村のものがすみません。

貴方たちは……海賊、ではないようですね」

 

「なにいってるんだ?俺はか、ゴボラッ!!」

「海賊じゃないですッ!!」

 

 

ルフィが余計なことを言おうとしたものだからロビンは躊躇わずに殴り付けて抑え込み、くいなが変わりに否定をする。

 

 

「ルフィ。頬に蚊がいたわ」

 

「…ばりがどう…ございばす……」

 

 

涙目で感謝の言葉をいうルフィ。

自分が何かをやらかしそうになったと分かったようだ。

 

 

「そうですか。いまこの村は海賊にいつ襲われるかとビクビクしておりまして」

 

「その割には貴方は出歩いてるのね」

 

「執事ですから。買い出しのためです」

 

 

その笑みにロビンは不気味さを感じた。

だがそれをどうこういうつもりはない。

これはルフィの冒険である。

最低限のことはするが最終的にはルフィが決める。

 

 

「それならさメシ作ってくれねえかッ!!」

 

「ちょっとルフィ!!」

 

「構いませんよ。この村からのお詫びとしてどうぞ」

 

 

 

 

「我が主である、カヤお嬢様のお屋敷に」



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誰が騙し騙されて

「うほほほおおっ!!うめぇー!!!」

 

「ル、ルフィさん…もうちょっとゆっくり食べたら…」

 

「無駄よ、くいな。こうなったルフィは私でも止められないわ」

 

 

クラハドールと名乗る執事についてきたのはシロップ村の中でもお屋敷、カヤというお嬢様のお屋敷。そしてそのお屋敷で仕事をしているのがこのクラハドール。

 

 

「でも良かったんですか?

見ず知らずの私達にこんなことをして…」

 

「構いません。村のものは知らないのです。

貴方達が海軍の船から降りてきたことを。

いま、村では海賊に怯えてます。見知らぬ人達は皆海賊に見えてしまうのです」

 

「うん?でも俺もか、グブッン!!!!」

「これでも食べてなさい」

 

 

何かをいようとしたのでロビンがすかさずに肉をルフィに突っ込んだ。ロビンのこれ以上何も言うなということを汲み取ったのか後は大人しく食べることに専念することにした。

 

 

「しかし見たところ一般人ですよね、どうして海軍の船に??」

 

「えぇーと…」

「この子は賞金稼ぎ。私とルフィの見習いなの。

そしてあの船の大佐がこの子の弟弟子」

 

「なるほど。そうでしたか」

 

 

そういってルフィの前にある空になったお皿を下げて次の料理を出す。するとルフィはすぐさま食べ終わりクラハドールがまたお皿をさげて料理を出す。

それをさっきからテンポ良く繰り返している。

 

 

「何かの曲芸を見せられているのかな?」

 

「ふふふ。お兄ちゃんにも見せたかったわ」

 

 

すると扉からノックがしたあと扉が開き、そこから羊のような男性と少し顔色の悪い女性が現れた。

 

 

「どうも。この度は村の者がすみません。

私はメリーといいます。こちらがお屋敷の主の」

 

「カヤです。どうぞよろしくお願いします」

 

 

するとそれにルフィが反応して食事を一時中断して

 

 

「俺はルフィ。か、ゴブッ!!」

「黙って食べてなさい」

 

「容赦ないですね……この人がロビンさんで、私がくいなといいます」

 

 

ルフィの「海賊王になる男だッ!!」をまた肉を口に突っ込んだことにより阻止した。

それにメリーもカヤも苦笑いをするしかなかった。

 

 

「クラハドールから聞きました。

海軍の船から降りてきたのですよね。よければその船の船長さんにお話をしたいのですが」

 

「それはさっき言ってきた海賊についてかしら?」

 

「はい。

最近この近辺をぐるぐると巡回している海賊がいまして、住民も島へ外に出ることも難しく、漁も出来なくなりました。」

 

 

だからあんなに警戒をしていた。ということを納得したくいなは

 

 

「もちろん話が出来るようにはしますが、ここ海域の海軍に連絡は?」

 

「それが……」

 

 

どうやらこの近海の海軍は「忙しい」と一言で終わらせて来てくれない。ヘルメッポの管轄外だとしてもそれだけでこんなに扱いが変わるなんて……

 

 

「名前を教えなさい。消してあげるわ」

 

「えっ?」

 

「ロ、ロビンさんが言いたかったのは、そんな不届きものは許さないってことですよッ!!」

 

「そ、そうなんですね…てっきり怖いことを連想してしまいました……」

 

 

くいなは言えなかった。まさしくその通りだとは。

 

 

「それで名前は?」

 

「ネズミ大佐です」

 

「そう。ちょっと席を外すわ。

くいな、ルフィの監視をよろしく」

 

「ちょっ、ちょっとロビンさんッ!!」

 

 

そんな無理なことを言ったロビンはさっさと部屋から出ていった。今のルフィはロビンがいるから制御出来ているのに、くいながどうにか出来るルフィではないのだ。

 

これは不味い。

ここに長居したらルフィが「海賊」だと口走る。

そしたら間違いなく悪いことになる。

 

そう思ったくいなは

 

 

「ルフィ!!ヘルメッポを探しましょう!

村の人達の為にも早くどうにかしないと!!」

 

「ええぇー!!まだメシが」

 

「あとでいくらでも食べていいからッ!!」

 

 

いまいち乗る気のないルフィをどうにか引っ張ろうとしたときだった。

突然に扉が開いてゾロゾロと人が入ってきた。

 

 

「ここまでだ、クラハドールッ!!」

 

「ウ、ウソップさんッ!!?」

 

 

そこに現れたのは鼻の長い少年。

物を飛ばすパチンコを持って現れたのだがそれだけじゃない。

 

 

「お前ら…なにやってるんだ……」

 

「ヘルメッポ!!?どうしてここに?」

 

 

後ろから現れたのは噂をしていたヘルメッポとコビー。

それもヘルメッポもククリ刀を手にしており戦闘体制に入っていた。

 

 

「おい。ルフィ、くいな。

お前らその執事が何者か知っているのか?」

 

「何者って…」

 

「ったく、変なことに関わりやがって…

そいつはな、海賊なんだよッ!!」

 

 

その言葉にカヤとメリーはクラハドールの方へ振り替える。しかし未だにニコニコ笑顔のクラハドールは表情を変えずに

 

 

「私が海賊?何をバカな……」

 

「悪いがこっちはネタが上がってるんだ。

まさか、一般人を装っていたなんてな…だがここまでだ。てめえを」

 

「偽りの海兵」

 

 

クラハドールの突然の言葉にピタリと言葉を切ったヘルメッポ。

 

 

「知ってますよ。ヘルメッポ大佐。

あなた、自ら海賊を打ち取ったこと、ないんですよね。

常に一緒にいる賞金稼ぎに頼って手柄を横取りしている」

 

「……………」

 

 

このクラハドールという人は、くいなを「賞金稼ぎ」だと最初から知っていた。いや、この島に上陸した時点でこちらの情報を掴んでいたのだろう。

 

 

「そんな海兵の話、誰が聞くのですか?」

 

「……そうだとしても、てめえを捕まえない理由にはならねぇよ!!」

 

 

そういって一気にクラハドールに近づくヘルメッポ。

誰もが動けずにいた中で、一人だけ反応してクラハドールに当たるはずだった攻撃を防いだ者がいる。

 

 

「……なんのつもりだ、麦わらッ!!!!」

 

「……メシを作ってくれたいい人だ。そんな奴を…ぶっ飛ばすのは俺が許さんッ!!」

 

 

右手で攻撃をしたヘルメッポを止めたルフィ。

しかしヘルメッポの左手が空いており、すかさずに攻撃。

 

近すぎる攻撃に仕方なく手を離して距離をとるルフィ。

ヘルメッポも後退をして距離をとる。

 

 

「お前は……そんな理由で助けるバカが何処にいるッ!!!!」

 

「知るかッ!!いつもメシを止めるお前らよりよっぽどいいやつだッ!!!!」

 

「アホかッ!!止めなかったら船の食料がすぐに尽きるだろうがッ!!周りの奴らのことも考えろッ!!!!」

 

 

……なんかどうでもいい喧嘩が始まり、周りの者は本当にどうしたらいいのか分からなくなった。

そんな中クラハドールだけは、

 

 

(まさか…()()()()()()つもりがこんな風に役にたつとは……)

 

 

…………………………

 

 

「なんだ、こいつらは?」

 

 

軍艦にいたゾロは、いまある海賊船にいた。

この海賊船、軍艦を見つけてこちらに向かってきて攻撃してきたのだ。もちろん海兵は応戦していたがある二人の海賊に苦戦。

 

一般人のナミとノジコは軍艦の中の安全な所に避難。

ゾロは適当に敵を切っていたがその二人が襲いかかってきた。

 

それから、そんなに時間はかからなかった。

すぐさまゾロに勝てないと思った二人は海賊船に逃げ出し、ゾロはそれを追いかけて止めをさした。

 

 

「ったく、せっかくの昼寝の邪魔しやがって…」

 

 

そういってゾロはマストを切り落とし、舵など航海出来ないようにしてから船から降りた。

 

 

「ヘルメッポがいなくて良かったな」

 

 

見逃す。しかし相手はすでに戦闘不能。

完全にゾロ一人で海賊団に勝ってしまった。

それが()()()()だったとしてもだ。

 

ゾロが離れ、海賊船も波により島から離れて安全が確認されたあと、一室から隠れていて無事だった海賊が姿を現した。

 

 

「ふ、ふざけるな…たった一人で、壊滅だと……」

 

 

周りを見渡すと海兵やゾロ倒されたもの達が横たわっていた。見逃されたとはいえ完璧な敗北。

 

 

「こ、こんなの"キャプテン・クロ"にどう報告すればいいんだよッ!!」

 

 

キャプテン・クロからの命令。

「近くに軍艦がある。沈めろ」と。

しかし結果は惨敗。たった一人にやれれたのだ。

こんなことを知られたら……

 

 

「俺が…殺される……ッ!!」

 

 

その恐怖にジャンゴは気絶しているニャーバン・ブラザーズを叩き起こし、周りの海賊共も叩き起こした。

 

 

「いいかお前らッ!!

キャプテン・クロは言った。沈めろと。

だがそれは真っ正面から沈める必要はねぇんだ!!」

 

「ど、どういうことでしょうか…」

 

「つまりだッ!!

俺が海兵として乗り込む。お前らは俺が乗り込む隙を作れ。そしたら簡単だ。火薬庫を爆発させれば…」

 

「「「船は沈むッ!!」」」

 

 

全員がなんとも完璧な作戦だと喜んだ。

……だがいま現在も船が島から離れるように流されていることを理解していない。

 

帆も舵もないこの船をどうするつもりか……

 

 

…………………………

 

 

「ゴフッ!!ゴホゴホッ!!」

 

「カ、カヤッ!!?」

 

「カヤお嬢様ッ!!」

 

 

子供の喧嘩のように殴りあいをしていた中、突然カヤが咳き込んだ。しかしただの咳き込みとは違うようでウソップもメリーも心配している。

 

 

「カヤお嬢様は体が弱いのですッ!!

こんなに騒がしかったらお体に悪いッ!!出ていきなさいッ!!!!」

 

「ま、待てよッ!!その執事は本当に」

「出ていきなさいッ!!!!」

 

 

その激にさらにカヤが咳こむ。メリーは謝りながらカヤと共に部屋から出ていく。残されたクラハドールはウソップの方を見て

 

 

「ということだ。

君はカヤお嬢様の害しかならない。二度と来ないように」

 

「ふ、ふざけるなッ!!そんな納得」

「だ、ダメですよウソップさんッ!!

いま暴れたら本当にカヤさんに会えなくなりますよ!!」

 

 

その言葉に止まったウソップ。

それを見たクラハドールはフンといい放ち部屋から出ていった。

 

 

「……麦わら。ここに残るつもりか?」

 

「まだ、メシ食い足りねぇからな」

 

「だったら、次会うときは…敵だ」

 

 

そう言い残し出ていったヘルメッポ。

ウソップもなにも出来ないと部屋から出ていく。

残されたコビーはアワアワしていると

 

 

「大丈夫よコビー君。すぐに仲直りできるから」

 

「で、ですが……」

 

「私、ちょっと調べたいことがあるからもう少しここに残るわ。だからゾロによろしくいっておいて」

 

「は、はい……」

 

 

あの二人のストッパー役である、くいなからそう言われたコビーは素直に聞くことにした。

 

そして入れ替わるカのようにロビンが戻ってきた。

 

 

「それで、ロビンさん。

()()()()()()()()()部屋から出たんですか?」

 

「あら?どうしてそう思うの?」

 

「だってロビンさん。海軍に連絡取れる状況じゃないんですね。だったらさっきのは()()()()()()()()()()()()()()ことになりますよね」

 

「勘のいい子は好きよ。

詳しいことは後で話すわね。

どうやら騙して平穏な暮らしを手にしようと、その主を始末する。それが目的みたいよ」

 

「始末する……って!!」

 

「だったらこっちも騙してあげましょう。

最後の最後に騙されたと知ったときの絶望、味わってもらいましょう」

 

 

その時、くいなは空気が、気温がグンッと下がった気がした。やっぱりこの人を敵に回したらダメだと。本能がそういいっている。

 

 

「師匠、何かするのか?」

「ルフィは成り行きに任せなさい。大丈夫、私はお兄ちゃんの妹。全て掌握してあげるわ」

 

「おう、分かった!」

 

(そして、この二人をコントロールすることも難しいってことがハッキリ分かりました。……お願いだから早くここに来て下さいハジメお兄さんッ!!!!)

 

 

絶望が訪れるわけではない。が、希望でもない。

この手のひらに踊らされていてはいつか身を滅ぼす可能性があると直感するくいな。

 

しかし、例えハジメがここにいても、いや、さらに恐ろしい状況になる。ということは、いまだくいなに知れるわけがなかった。



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妹がゆえの掌握

「ということよ。分かったかしら?」

 

「……はぁ~。んなことだろうと思ったけど…」

 

「ルフィには内緒よ。あの子、嘘つけないから」

 

「だからって、ルフィさんを騙した状況なんて…」

 

「教えたら、暴走するわよ。責任、取れるかしら??」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 

少しお屋敷から離れたところでロビンが現れた。

文字通り、能力によって分身体が現れたのだ。

初めてみるウソップはともかくコビーも気を失いかけてロビンから平手打ちを一発づつもらい今説明が終わったところだ。

 

 

「しかしよ。こんな能力を持ってるならあんたがあのクラハドールを倒せばいいんじゃねえのか?」

 

「いやよ。私、お兄ちゃんの敵以外あまり興味がないの。ルフィと貴方達はお兄ちゃんが目をつけたから手を貸しているだけ。戦うのは貴方達よ」

 

「い、いや、でもよ…」

 

「それともなにかしら?私がこの手を穢れた血で染めてしまい、その手でお兄ちゃんに触れろとでも言うのかしら。それは私に死ねと言っているの?私は私の為にしかしないの。それを反してまでやれっていうなら私を殺してみなさい。もちろん抵抗はするわよ。その手を、足を、首を、曲がってはいけない方向へ曲がらせて、千切って、海の藻屑と化してあげても構わないけど……どうする?」

 

 

「すみませんでしたあああああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

 

全身に冷や汗をドップリとかきながら土下座をするウソップ。コビーも想像してしまったのだろう。顔が青ざめていた。

 

 

「わ、分かったから。師匠の言い分は分かったから…」

 

「そう??別に理解しなくてもいいわよ。

簡単にいえば私はお兄ちゃん以外はどうでもいいの。

最悪、ルフィが死んでも心痛まないわ。でもお兄ちゃんが悲しむから助けてるだけ。分かったかしら?」

 

「だから…もう、いいって…怖すぎるから……」

 

 

そう??と興味なさそうに話を終えるロビン。

ヘルメッポは短い間だがロビンとハジメの関係性を知っている。そしてロビンがハジメに対しての異常なほどの依存性を。

 

それは周りのことを全く見えていない。

誰がどうなろうとも、親しくなった者さえも、死んでも何にも感じない。あるのはハジメへの"愛"だけ。

 

だからこそ、ハジメに関わりのあるルフィやヘルメッポ達は優遇されている。普通なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という筋書きの道を歩んでいたのだろう。

 

しかし相手が悪い。

世界を、"ワンピース"という世界を変えたハジメの妹がいる。

何をどう変えたかロビンもまた知らないのだが、傍にいれば何をどう動いていたのかぐらいは分かる。そして望む未来をその手で掴む通りを知っている。

 

 

「軍艦の方に海賊が現れたわ。まぁゾロ一人でほぼ壊滅状態になったけど」

 

「ま、マジか……」

 

「ロロノアの奴…」

 

「まぁ、それでも諦めてないようだし。明日の朝には攻めてくるわね」

 

「あ、明日の、朝……」

 

 

海賊が攻めてくる。海賊に殺られる海軍。

その海賊をクラハドールが倒して英雄になる。

そしてカヤはルフィが殺したことにして、さらにそれを生き残ったヘルメッポに見せつけて信用を得る。

 

そんなことを軍艦が見え、ルフィ達が島に降りてきたときに思い付いたようだ。それもほとんど穴がない作戦。

しかし、それを文書として残し、それをロビンが見てしまった時点でアウト。

 

いくら分からないようにその文書を隠したとしても、相手は闇を生きたロビン。隠し事なぞ無意味だったのだ。

 

まぁ、そんなもの見つけなくてもロビンは最初からクラハドールは怪しいと睨んでいた。

 

初対面でお屋敷に呼んでご馳走する?ありえない。

海賊だと間違えたからお屋敷に呼んだ?ありえない。

ニコニコ笑顔で近づいてくる?ありえない。

 

すでに直感で怪しんでいたロビンは、その時点でクラハドールに関する情報を探していた。

 

キャプテン・クロ。

そんな()()()()の情報は早く分かり、その時点で目的の80%を把握。そして文書を見つけて日時などを見つけて100%となった。

 

 

「何を怯えてるの?あとは向かい打つだけよ」

 

「そ、そんなこと言ったって…相手は海賊だぞッ!!」

 

「だから??相手は人よ。同じ、人。倒せない通りはないわ」

 

 

怯えてるウソップに簡単に論破したロビン。

その言葉に呆然とするしかないウソップ。

 

 

「まぁいきなり大勢との戦い止めてあげるわ。

貴方はあのカヤって子を守りなさい。大切な人ぐらい自分で守ってみせなさい」

 

「ッ!!お、おうッ!!!!」

 

「ヘルメッポはまた明日お屋敷に来て。

一通りルフィと戦ったあとで、二人であの海賊を倒しなさい」

 

「……それ、やらないと、ダメですか…師匠……」

 

「修行よヘルメッポ。修行は実践が一番」

 

 

ま、マジか…と項垂れるヘルメッポ。

いくら嘘でやることとはいえ、ルフィとの戦いは嫌である。というか出来るなら戦うことさえしたくない。

完全に負け犬根性が染み付いている。

 

 

「くいなにはお嬢様をお屋敷から連れ出してもらうから外で合流すること。でも海賊の主力の一人ぐらいは向かうはずだから二人で撃退しないさい」

 

「しゅ、主力って…だ、大丈夫なのかよッ!!」

 

「くいなは強いわ。でも頼ってはダメよ。

最終的には貴方がお嬢様を守るのだから」

 

 

改めて言われたことにドキドキしているウソップ。

いきなり戦闘など、始めての出来事が明日には始まるのだ。緊張してもおかしくはない。

 

 

「ゾロにはあのネコみたいな二人組かしら?

()()()()()()()()()()なんて馬鹿げたことをやってのけるなら、当てるのはゾロくらいね」

 

「ぶ、部下はどうするんだ?」

 

「何を言っているの?海軍は人々を守るのが仕事なのだから町の人を守るように命令しなさい。それはあなたの仕事よヘルメッポ」

 

「は、はい……」

 

 

まさしく正論を言われてぐうの音もいえない。

完璧な作戦。むしろこれこそが完璧と呼べるもの。

しかしそこに疑問が出てくる。

 

 

「ちょっ、ちょっと待て師匠。

それだと師匠はなにもしないのか!!?本当になにもしないのかよッ!!」

 

「もちろん」

 

「いやいや!!ここまで言ったんだから少しは手伝えよッ!!」

 

「イヤよ。私はナミとノジコと一緒にお茶してるわ。

お昼までに終わらせなかったら人はお仕置きよ。

そうね……ヘルメッポの修行相手、一人三時間コースよ」

 

「ふ、ふざけるなッ!!!!なんで俺だけ地獄メニューなんだよッ!!!!」

 

「修行をサボった罰。しっかり周りをサポートしながらやり通りなさい」

 

 

そういってフワッと姿を消したロビン。

それに対してワナワナと怒りがこみ上げてくるヘルメッポ。

 

 

「や、やってやろうじゃねえかッ!!!!

完璧にこなした修行回避だあッ!!分かったなコビー!!ウソップッ!!!!」

 

「ぼ、僕もですかッ!!」

 

「当たり前だろうがッ!!すでに海兵の一員だ!!誰一人村に海賊を入れるなよッ!!」

 

「は、はいッ!!!!」

 

 

助けてもらうだけのはずが何故か最終的に修行に付き合わされる可能性が出てきたウソップ。

今さらだが……とんでもない奴らに助けを求めてしまったのではないか?と後悔し始めていた。

 

 

…………………………

 

 

「……どういうことだ、ジャンゴ…」

 

「す、すまねぇ!だが安心してくれッ!!

もう全員に催眠で強くしてある。今度は負けねぇよッ!!!!」

 

 

定期報告のためお屋敷から離れているクラハドール。

しかしその報告は予想出来なかったことだった。

いくらヘルメッポが率いる海軍でも、この人数なら倒せると踏んでいた。しかしそこにあの賞金稼ぎがいた。それもたった一人で……

 

 

「……まぁ、いい。賞金稼ぎにはニャーバン・ブラザーズを当てろ。あとは村を襲わさせろ。そしたら海軍は守りにくるだろう」

 

「直接軍艦を狙わなくていいのか?」

 

「あとでヘルメッポ大佐には帰還してもらわないといけないからな。ただ部下も賞金稼ぎもいらねぇ。全部……消せ」

 

「わ、分かった……」

 

 

最後の言葉にでんでん虫からの声でもビビったジャンゴは、話をそこで切り上げて連絡を切った。

 

 

「どいつも、こいつも、邪魔ばかりしやがって…」

 

 

怒りがこみ上げてくるクラハドール。いやクロ。

いつもの癖で手のひらでメガネをかけ直し、指先が天に向かうようにしている。

 

それはそこに武器をつけていたから。

指一本一本に長い爪のような刃物が。

それで自分で傷つけないようにメガネを直していた。

 

それを……見ていた。

あの時、最初に出会ったときから、そのくせを見て、怪しんだ。そう、その時点で、クロの計画は終わったのだ。

 

 

「こんな小物、()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「いいのよ。それより長い間、悪かったわね」

 

「そ、そんなッ!!

ロビン様に謝られるなんて…私、死にます!」

 

「ダメよ。私の手足なんだから勝手に死んだら。

死ぬならお兄ちゃんために死になさい」

 

「なんて寛大なお方!!私に死に場所与えてくれるなんて……()()()()()()()()()()()()()()!()!()()()()()()()()()!()!()

 

「だからダメよ、勝手に死んだら」

 

 

はい!と分かっているのか、分かってないのか…

こんなやり取りをマカナと呼ばれる女海兵と話していた。それも数キロ離れた場所から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「月兎。マカナとあと数人は私の情報部隊として見つからないように近くにいなさい。あとは不本意だけどこれまで通りにモーガンのお手伝いをするように言っておいて」

 

「了解ですッ!!」

 

「あとお兄ちゃん…は、まぁ()()()()()()()()()()()()()()これまで通りでお願いね」

 

「い、いいんですか…」

 

「お兄ちゃんにも考えがあるみたいだからね。

それに、再開したときは結婚式をあげるの。

結婚したらなかなか自由がきかなくなるわけだからいまは自由にさせてあげたいのよ」

 

「おおっ!!理解ある妻って感じですね!!」

 

「ふふふ、ありがとう」

 

 

これ、ハジメが聞いたらどんな反応をみせるのやら……



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目に見えるものだけでは

翌日

 

 

「おはようございます。お嬢様」

 

「おはよう、クラハドール」

 

 

いつもの日常。カヤが起きてきて準備していた朝食を出す。昨日体調を崩したカヤだったが一晩で随分良くなったようだ。

 

 

「ルフィさん、くいなさん、おはようございます」

 

「おう!おはよう!」

 

「おはようございますカヤさん」

 

「…あの、ロビンさんは?」

 

「ロビンさんは用事があるって朝早く出ていきました」

 

 

そうなんですね。とクラハドールにエスコートされて席につくカヤ。すでにルフィのテーブルの周りは大量の皿が置かれていた。

 

 

「朝からよく食べられるんですねルフィさんは」

 

「そうか?まだ全然だぞ」

 

「そ、そうですか…」

 

「ルフィさん、ちょっとは遠慮しないと…」

 

 

そんなこと聞くわけがない。

それでもクラハドールが次々に料理を出しているので問題ないようだが

 

 

「そうだカヤさん。良かったらこの後村を案内してくれませんか?」

 

「えっ?そ、それはいいですけど…」

 

「いけません。お嬢様。昨日の今日ですので」

 

「無茶はさせません。女の子同士話したいこともありますし」

 

「しかしですね…」

 

 

クラハドール、いや、クロにとっては面倒なことだった。ここでカヤに離れられては作戦に支障をきたす可能性がある。あくまでもここにいるルフィに殺害容疑を被せないといけない。

 

初めはジャンゴの催眠でカヤを操り遺書をかかせてから自殺するように仕向けるつもりだった。

そのためにも信頼を得るためにこうして執事をやって来たのだが、村の人が近くで待機していた海賊船を見つけてしまったのだ。

それを知ったクロはジャンゴ達を殺すつもりだった。

しかしそこで思い付いたのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

カヤが死に、遺産を手にすれば平穏な日々が待っている。そこにアイツらはいらない。ならこの際消してしまおうと。

 

そんなことを考えていたら海軍が来たのだ。

それもヘルメッポ大佐の率いる船である。

調べたら一緒に乗ってる賞金稼ぎがその手柄を渡しているという。

そしてさらにその船に一般人が乗っていたのだ。

 

この時クロの中、ある計画が生まれた。

海賊には海軍や賞金稼ぎを当てて倒してもらう。

そしてこの一般人を屋敷に誘い込み、クロの手でカヤを殺害したあとにそれを一般人に擦り付ける。

 

村一のお嬢様を殺した犯人を捕まえるとなると必ずヘルメッポ大佐はその手柄を欲しがるはず。実力ではなく賞金稼ぎからの手柄を貰っているやつだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

そしてその殺害の時は海賊と海軍の衝突の時。

そうすればこの一般人を"海賊"の仲間として印象を与えることが出来ると考えていたのだ。

 

 

いけると考えていたクロだが、すでにそれはロビンには簡単にバレてしまっていた。まだ長年かけて作った計画のほうがバレずにすんだだろう。

全ては海賊船が見つかったことから狂いだした。

いや、その見つかった"原因"となったのはこれまたロビンの手柄なのだろう。

 

本編と違い"軍艦"でこのシロップ村に近づいていたために、その軍艦に気づいた海賊が警戒して()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。

 

それさえなければきっとこんなずさんな計画はなく、本編通りになっていたはず。それでもやられることには変わりないが、それでも完全にロビンの手のひらの上で踊らされることはなかったのだ。

 

 

そして今から、クロの最後が始まる。

 

 

「麦わらッ!!!!」

 

 

突然扉が開きヘルメッポが現れた。誰もが何事かと驚いている。一番はクロなのだが

 

 

「まさかてめえが海賊だったとはな……今ここでてめえを捕まえるッ!!」

 

「ル、ル、ルフィさんが、海賊ぅ~!!?」

 

 

くいな、演技が下手である。棒読みにも程がある。

しかし周りは気づいていなかったのでセーフ。

 

 

「何言ってるんだ?くいなにヘルメッポ。そんなのし」

「うるせぇ!!!表に出ろッ!!ぶっ倒して捕まえてやる!!!」

 

 

律儀である。普通はここで飛びかかっていくのだが、演技による戦闘でお屋敷を壊したくないと考えてしまったのだ。常識的にそれが正しいかもだが、まずルフィが外に出たタイミングで言えば良かったのではないか?と疑問が浮かぶ。

 

まぁ、皆にこの演技を見せないといけなかったこともあるのでこうしてわざわざ外で戦うぞと言っている。

 

 

「よく分からねぇが戦うってならやるぞ!」

「よ、よし!!表に出ろ!」

 

 

やる気を出したルフィにちょっと怖じ気付くヘルメッポ。しかしもうやけくそだぁ!って勢いでヘルメッポと共に外へ行く。

 

 

「ク、クラハドール!」

「お、お嬢様…巻き込まれてはいけません…どうぞお部屋へ……」

 

 

予定外だったが二人が戦っている最中に巻き込まれたことにしようと、まずは執事らしいことをいって…

 

 

「カヤさんは私が!メリーさんも一緒に!!」

「は、はい!!」

 

「ちょっ、ちょっと!!」

 

「ルフィさんは究極ご飯を与えれば止まります!!

すみませんがクラハドールさんにはルフィのストッパー役をお願いします!!!」

 

「な、何を勝手にッ!!!!」

 

「クラハドールさんより私の方がカヤさんを守れます!!それにクラハドールさんはルフィさんからしたらご飯をくれるいい人なんです。近くにいても巻き込まれませんので!!!!」

 

 

と、何言ってるんだ?と思わせる言い分を言い放ちさっさとカヤとメリーを連れて逃げ出したくいな。

 

残されたクラハドールの額は血管が浮き出ており

 

 

「ど、どこまで邪魔をすれば…気がすむッ!!!!」

 

 

しかしここでカヤを追いかければいいだけの話。

なのにどういうわけかクロの考えはこうなった。

 

 

「だったら二人が弱ったところで…消してやるッ!!!!」

 

 

と怒りに任せてルフィとヘルメッポを消すという頭になっていた。もちろん料理をもってルフィを止めるわけもなく隠し持っていた"爪"を装備しにむかったのだった。

 

 

…………………………

 

 

「ど、どうですか?ロビンさん?」

 

「順調よ。あの二人に任せておけば大丈夫よ」

 

 

カヤとメリーを連れて森に入りウソップと合流。

あとは向かってくる敵を討つだけとなり、くいなは分身のロビンに報告していた。

 

 

「そ、そんな…クラハドールが……」

「……あの男は……」

 

 

二人は先ほどウソップとロビンからクラハドールの正体を聞いたところだった。ウソップは軍艦の来る少し前にクラハドールの正体を知ってしまい、そして近くにいる海賊の船長だということを知ってしまったのだ。

 

もちろんカヤやメリー、村の人に言ったが海賊は信じてもクラハドールが海賊だということを信じてくれなかった。

 

そこでロビンがちゃんとした証拠、手配書を二人に叩きつけたというところで信じてくれたのだ。

 

 

「ご、ごめんなさい…ウソップさん…私……」

「い、いいんだよ!!どうせ俺は嘘つきだ。信じられなくてもしかたねぇよ」

 

「それでも!!ウソップを傷つけたことは変わらないです…」

「私からも謝らせてください。申し訳なかったウソップ君……」

 

「だからもういいって!!!」

 

 

いきなりそんな風に謝られると困ってしまったウソップは慌てている。

 

 

「良かったですねウソップさん」

「あ、ありがとうよ…」

 

 

ちょっと照れ隠しでお礼をいうウソップ。

すると突然に、くいなが真剣な表情をした瞬間に長刀を抜き振り抜いた。

 

 

「うおっ!!!!」

 

 

もちろんウソップに当たらないようにして抜いた長刀は、くいながそのまま後方まで回りながら振ったところで何かとぶつかり火花が散った。

 

長刀に当たってきたソレは元のルートに戻っていき

 

 

「……いきなりクロに言われて来てみれば…本当にいやがった……」

「そ、その声はッ!!」

 

 

そこにいたのはウソップがクラハドールとでんでん虫で会話していた声の主だった。戻ってきた"チャクラ"をキャッチして改めてカヤの方を見て

 

 

「悪いがお嬢様。予定変更だ。

催眠での遺書と自殺だったが……そいつらを消してから遺書を書いてもらって……自殺へ変更だ」

 

「メ、メリーさんッ!!カヤさんを連れて逃げてッ!!」

 

「は、はいッ!!!!」

 

 

腕を引っ張られてその場から離れるカヤは最後までウソップの心配をしていた。そのウソップは足元を、いや、体全体を震えさせながら

 

 

「よ、よしー!!お前は俺が…倒すッ!!」

「言いきったねウソップさん。お手伝いしますね」

 

「いい気になりやがって…このチャクラの錆びにしてやるぜ」

 

 

…………………………

 

 

「次から次へと……お前らしっかり働けよ!!」

「はいッ!!!!」

 

 

ゾロはロビンが海賊が村へ向かってくるだろうルートまで来て、海兵達と共にいま海賊達を倒していた。

 

次々にわいてくる海賊をゾロが海兵の何倍もの働きをして倒していく。

 

 

「ったく…ヘルメッポといいロビンといい…」

 

 

人を便利屋だと思っているんじゃねえのか、と言いたくなったがそれは口にしなかった。

ロビンのことだ。どこかでいまの状況を見ているに違いない。下手なことをいうのは止めようと口を閉ざしたのだった。

 

 

「しゃあぁー!!!」

「ッ!!?」

 

 

突然に上から何かが落ちてくる。

とっさに反応したゾロはそれを回避したが、その先に別の奴が待ち構えていた。

その者は指先の鋭い"爪"を使って攻撃してくる。

いつもなら剣で弾き返すが、体勢が悪かったのかゾロの体の方が弾き返されたのだ。

 

 

「…てめぇら……」

「よう、ロロノア」

「リベンジに来たぜ」

 

 

そこに現れたのは昨日、一撃で沈めたニャーバン・ブラザーズだった。いや、正確には違う。顔つきも体つきもまるで変わってしまっていた。凶暴。まさに威嚇しているネコのように体を大きく見せるようなもの。それだったら良かったがどうやら見かけ倒しではなさそうだ。

 

 

「生まれ変わってきたぜ」

「ここでロロノアを倒すためにな」

 

「ったく…ちょっとは、根性見せろよ!」

 

 

それでもゾロにはあまり変わりない。

こんなところで、躓いて、いられない。

 

 

…………………………

 

 

「ふふふ。これでヘルメッポも一皮むければいいのだけど」

 

 

そんなことをいいながら紅茶を飲むロビン。

その姿はまさしく絵になる光景で、思わずナミやノジコは見惚れていた。

 

 

「それより貴女達」

 

「「は、はいッ!!」」

 

 

思わず強く返事してしまった二人。

お互いロビンに見惚れていたなんてバレたくないと咄嗟に反応したようで、自分達の声に自分がビックリしてちょっと落ち着くまでロビンは待ってあげた。

 

 

「こんなところでのんびりしてていいの?」

 

「えぇーと…それは私達も戦えってことですか?」

 

「ロビンさん。流石に私達は戦闘むきじゃ…」

 

()()()()()()()()()()()()

 

「「ッ!!?」」

 

 

その言葉に激しく動揺する二人。

ロビンは相変わらずゆったりと紅茶を飲んでいるが、二人は気が気でない。

 

 

「ど、どうして…」

 

「貴女達の勧誘はルフィがやるから、私は手出しするつもりはなかったけど。そうね…」

 

 

ゆっくりと右手の人差し指を動かしながら

 

 

「ナミが着ている服。とても似合わない。

まるで()()()()()()()()()()()()

 

「ッッ!!!??」

 

 

その瞬間、ナミの呼吸が速くなっていき過呼吸状態に陥ってしまった。すぐさまノジコが紙袋をナミに渡して袋口を口に当ててゆっくり深呼吸をさせる。

 

 

「……ロビンさん。それ以上は……」

 

「ごめんなさい。そこまでとは…ね」

 

 

大分落ち着いてきたナミはゆっくりと立ち上がってロビンの前に立ち

 

 

「……お姉さん。これ以上…関わらないで」

 

「私の強さ。知ってるわよね?」

 

「それでも!!それでも……これは…私達の、ううん、私の問題だから……」

 

「……ナミ……」

 

 

これ以上は無理だとノジコはナミを連れていった。

残されたロビンは変わらず紅茶を飲みながら考えている。

 

 

(…思った以上にキテるわね。

月兎の報告とあの様子……)

 

 

昨日月兎と再開して早速様子のおかしかったナミ達のこれまでの情報を集めてもらった。

確かにベルメールさんとハジメの結婚式の資金集めで海賊専門の泥棒としてやっている。

 

だけど……ある日を境に一度()()()()()()()()()。そして次現れた時にはすでに今の似合わない()()()()()着ている。何かを隠すかのように。

 

そしてあの慌てように過呼吸。

トラウマになるほどのことを味わったということ。

 

 

つまりは

 

 

「面白いことになってるわよお兄ちゃん」

 

 

返事が返ってくることもない。

だけど言いたくもなったわけ。

ロビンはハジメのやっていることを全て理解したわけではない。だけど()()()()()()()()()()()()()()()()ことは分かっている。

 

そしてそのしっぺ返しが一度目、()()()()

そして二度目がナミ達に襲ってきたようだ。

 

 

「でもお兄ちゃんなら、大丈夫よね」

 

 

それでも信じている。

こうしてハジメと会わずとも発狂しないのは()()()()()()()()()()()()()()

 

だからこうして待っていられる。

だからロビンはハジメが一番変えたかったルフィ達をサポートすることにした。

 

 

それが自分も含まれていることは流石のロビンも気づかないようだ。



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クロ海賊団戦①

『あぁ?? なんで能力者相手に攻撃が効くか?』

 

『それは…ムカつく相手を見つけることだな』

 

『まぁ、手にしても"アイツ"だけには勝てねぇよ』

 

『なにせ……"化け物"だからな』

 

 

そんなことを思い出しながらヘルメッポはルフィの攻撃を受けていた。顔面への攻撃を防ごうとしたらボディに入れられ、よろめきだったら攻撃のラッシュ。一旦離れようとしても常に付いてくるルフィ。

 

 

「なにやってるんだヘルメッポ?

こんなの師匠の修業より楽だぞ」

 

「……るせぇ…俺は…お前らと…違うって……」

 

 

完全なる一方的な攻撃。

ルフィも手加減はしているがそれでも一発一発の攻撃は重たい。なんとか意識があるのはヘルメッポが打たれ強いためか。

 

 

(……親父…ムカつく…やつ…いるけどよ……)

 

 

昔、まだモーガンがハジメの影武者になる前。

ヘルメッポをゾロやくいなと一緒に修行させるために、モーガンが直接ヘルメッポをルフィ達の所から引っ張ってきた時。その航海で海賊が襲ってきて、その中には能力者がいた。

 

能力自体は大したこともなくモーガン一人で倒せた。

しかしそれでも能力者。ヘルメッポからみたら倒せない敵だった。静電気を操る"バチバチの実"の能力は帯電させれば簡単に人を感電させる力はある。

 

しかしその能力は一度放出すると帯電まで時間がかかる。その隙に倒せるというものだった。

 

しかし放出されればやられるのだ。

それをモーガンは真っ向から向かい放ってきた放電を"殴り飛ばした"のだった。

 

それを見たヘルメッポはモーガンに聞いた。

 

 

『能力者と対等に戦える力があるのか?』と。

 

 

そして返ってきた答えが「ムカつく相手を見つけろ」

そんなの初めからいる。いま目の前にいる。

何度も何度も殴られて、自分勝手にやって、それもそれが"三人"もいたのだ。やってられるかと修業をから逃げていた。

 

 

その力を持っても勝てない。

そんなこと言われたら…どうしたらいいんだ。

俺はどうしたらこいつに勝てるのか……

 

 

『…あとは、"信じる"ことだな……』

 

 

………信じる?何を?何を信じるんだ?

 

 

「……これで終わりだヘルメッポ。一から鍛え直したほうがいいぞ」

 

 

そんなアドバイスを、こんな奴から……

それだけでムカついてくる。確かに麦わらのほうが強い。

でも…それが全てじゃない。俺は他のことなら一杯麦わらより勝っている。

 

 

今は…勝てないかも知れない。

だけど、すこしだけでも……

 

 

「はっ!!」

 

 

止めの拳が腹部に。もう意識のないヘルメッポは倒れそうになっていた。だが、最後の、最後の力を振り絞り……その手でルフィの頬にパンチを入れた。

 

 

「……くそ…が……」

 

 

そのまま倒れこむヘルメッポ。

ルフィは殴られた所を手で触っていた。何かを確認するかのように。それが()()()()()()()()に似たものだと確認するかように。

 

 

「流石ヘルメッポだな~」

 

 

ルフィは知っている。

いつも辛い修業から逃げたりしていたし、妙なところで神経質なヘルメッポだけど、いざとなったらルフィ達よりも強いところを見せると。

 

最後に殴られた頬。

ダメージなどほとんどないがそれでも()()()()()()()()

 

 

「……全く、役にもたたない海軍なんて、必要ありませんね」

 

 

その声の瞬間、ヘルメッポのいたところに鋭い爪が襲いかかる。地面をえぐり、このままだとヘルメッポの体は引き裂かれてしまう。

 

しかし間一髪のところでルフィがヘルメッポの体を掴み取りその場から離れた。離れた直後には"爪痕"がしっかりと残っていた。

 

 

「おいッ!!なんだよいきなりッ!!」

 

「いきなり?それはもう戦えないのだから消してしまおうとしただけだが?」

 

「ふざけんなッ!!ヘルメッポは俺の友達だッ!!!!」

 

「海軍が友達?

あははははっ!!!本当にバカなやつだッ!!!!」

 

 

爪が当たらないように顔に手を当てて笑うクロ。

ルフィはその間にヘルメッポを安全なところに避難させた。

 

 

「海軍などは自分の利益しか目のないやつらだ。

下手したら海賊より達が悪い。特にそいつは手柄を奪ってその地位を手にした男。そんなやつと友達だと?」

 

「うるせぇ!!!」

 

「まぁ、いい。

こちらとしてはお前も手負いの状態が望ましかったが……」

 

 

その瞬間、目の前にいたクロが消えた。

目に追えないスピード。それはルフィも見えなかった。

だが野生の勘だろう。とっさにその場から離れたお陰で地面から後ろの木にかけて爪痕がその身に刻まれずにすんだのだから。

 

 

「っぶねッ!!」

 

「ほう。見えてる…わけではないようだが…

……一体どこまでそれが続くかッ!!!!」

 

 

…………………………

 

 

「ちょっとウソップさん!!!

私の後ろに隠れてないで戦ってくださいよッ!!!!」

 

「あんな飛び道具飛ばされて前に立てるかッ!!」

 

「女の子を前に立たせて盾にしてるのはどうなんですかッ!!?」

 

「て、適材適所だッ!!」

 

 

と、言いながらも何もしないウソップ。

ジャンゴの攻撃は、くいなを警戒しているのか遠くからの攻撃しかしてこず、正直()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだが。

 

 

(ここはウソップさんに華を持たせたいけど……

…こんなんじゃいつまでたっても終わらないよー!!)

 

 

ちょっとウソップの男らしくない所を見て戦意が落ちているがゾロとの修業に比べれば準備運動程度しかならない。

 

するとジャンゴが攻撃の手を緩めて

 

 

「これじゃらちが明かねえ。

おい、お前ら。これをよく見てろッ!!」

 

 

そういって穴の空いた円形のものを紐で吊るしたものを手にして言ってくる。

 

 

「いいか。お前らはだんだん眠たくなる」

(まさか…催眠術?)

 

 

ゆらゆらと揺れている。

ジャンゴはそれを見ないように帽子を深くかぶり

 

 

「1・2・3・ジャンゴッ!!!!」

 

 

と、唱えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウソップさん。攻撃してください」

「お、おう。必殺、火炎星ッ!!!!」

 

「ギャアアアアアアッ!!!!!」

 

 

残念なことに常に"嘘"だと信じているウソップと、剣士として精神的に強いくいなに催眠術は効くはずもなかった。

 

 

WINNER ―ウソップ・くいな―

 

 

 

…………………………

 

 

「ば、バカな…」

「二人…がかりだぞ……」

 

 

ニャーバン・ブラザーズにはジャンゴの催眠術がかかっていた。

どんな奴よりも強く、最強のパワーを手にいれて、痛覚も恐怖もなく、ただ目の前の敵を倒す!

 

そんなジャンゴの中でも最上級の催眠術をかけられていたのに、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ガッカリだぜ。催眠術とやらは効いているみたいがだ、俺には届かなかったみたいだな」

 

「う、うるせぇッ!!!!」

「これでも食らえッ!!!!」

 

 

やけになったのか距離をとり、背中合わせになったニャーバン・ブラザーズはそのまま両手を上に向けて、ゾロに向かって突撃してきた。それも回転も加えながら。

 

 

「「ニャーバン・ダブル・アタックッ!!!!」」

 

 

回転により爪の軌道が読めない。

突撃と回転による攻撃の上昇。

そして息のあった攻撃。

 

さっきまでの攻撃とは全く違う。

これなら倒せると思うだろう。

 

しかし…相手はゾロなのだ。

 

 

「んなもん、押し切るだけだ。

"二刀流"……」

 

 

二本目を抜いたゾロは剣を逆手に握り直して胸から足にかけて盾ように構えたあと、同じようにニャーバン・ブラザーズに突撃をかけた。

 

 

「"(かつら)()・斬り"ッ!!!!」

「「ギャアアアアアアッ!!!!!」」

 

 

向かってくるニャーバン・ブラザーズの回転を利用しながらその回転に乗り、前方にある剣を相手の全身に、刀傷をつけたゾロ。切られた二人の体はまるで絡み付く蔦のように、大根の桂剥きのように傷痕が刻まれている。

 

回転も止まりその場に倒れこむニャーバン・ブラザーズ。

ゾロはふぅーと一息したあと

 

 

「余計なもん…切らせやがって……」

 

 

悪態をつきながら刀を鞘に戻した。

 

 

 

WINNER ―ゾロ―

 

 

 

 



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クロ海賊団戦②

「クソッ!技が使えねぇと…やりずれぇ!!」

 

「どうした小僧。さっきまで威勢は?」

 

 

リーチの長い爪にうまく潜り込めないルフィ。

能力で腕を伸ばせたらあの爪のリーチなんて気にしなくてもいいが

 

 

『いいというまで能力使用禁止』

 

 

と、師匠であるロビンに言われてしまったのだ。

別にいまはロビンがここにいるわけではない。

使えば戦闘は楽になるだろう。

しかし、それは師匠の言うことを破ることになる。

 

それに「見つからないなら大丈夫だろう」で何度も何度も見つかり酷い目にあってきたのだ。

 

間違いなく、今この戦いを、師匠は見てる。

 

どこから見てるなんてことは分からない。

視線も感じないが、ルフィの勘は()()()()()()

 

なにせ、視線を感じれるはずがない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ルフィの身に付けている洋服から、髪の毛まで。

相手にバレないナノサイズの目を死角がないように張り巡らせている。

 

直接死に関わる攻撃のみ、手助けをする。

ハジメがいない中で、これが最上級の手助け。

死んだらハジメが悲しむ。それだけは阻止をするという理由がロビンを動かしているのだ。

 

そんなことされているなんてルフィが知るわけもない。

視線は全てルフィから外へ向かっているのだから。

それでもルフィが何をしたかはバレるので勘は当たっている。

 

 

「ちくしょー!!!」

 

 

無理やり引っこ抜いた木をクロに投げるが、まるでケーキを切るかのように簡単に切断する。

ならばと岩を持ち上げて投擲するが、それさえもいとも簡単に切断。

 

 

「こんなもんか?

賞金稼ぎのわりには大したことがない」

 

「うるせぇ!!それに俺は()()()()()!!!」

 

 

その言葉にクロの足が止まった。

ルフィもなぜ動きを止めたのか分かっていない。

せっかくロビンやくいなが「海賊」であることを言わないでいたのに。

 

 

「くくくく……こいつは、面白いことを聞いた……」

「な、なんだ…いきなり笑いだして」

 

 

その行動に全く理解できないルフィ。

しかしクロの中では最高のシナリオが完成したのだった。

 

 

「……やっぱりてめぇには消えてもらう。

そしてカヤを殺してその犯人を……麦わら、お前に被ってもらう」

 

「お前ッ!!あいつの執事じゃなかったのかよッ!!!!」

 

「だったらいまお前に攻撃しているのは何のためだ?

まさか、危険分子だと判断したから攻撃でもしていると思っているのか?」

 

「いや、テーブルマナーが悪かったからじゃねえのか?」

 

「…………………はっ?」

「…………………えっ?」

 

 

あのときは止めなかったが、ロビンはルフィ達にマトモに生きていくようにと常識を叩き込もうとしていた。

エースやサボは理解もいいし、しつければキチンとやってくれている。

 

しかし問題はルフィ。

まるで野生化しているのように常識というものをしらない。その一つがテーブルマナー。

テーブルマナーといっても、上流階級のようなものを学べといっているわけではない。普通に一般的な常識を身に付けろと言っていただけ。

 

しかしルフィはそれが出来ない。

メシを前にしたらそれにかぶりつく。フォークやナイフの意味がない。

その度にロビンが直すようにと関節技を決めていたのだ。

 

ルフィ自身もテーブルマナーが出来ていないのは分かっている。分かっているがメシを目の前にするとついやってしまうのだ。

 

なのでルフィは突然襲ってきた()()()()()()はテーブルマナーが出来ていなかったルフィをしつけるためにしたのだと思っていたのだ。

 

これにはクロも完全に予想外だったようで間抜けな表情をしている。

 

 

「どういうことか分からねぇがカヤを殺すってなら、止めないわけにはいかねぇな」

 

「……海賊が。どうしてあの女を助けようとする。

全くの赤の他人だろうが」

 

 

そう、今回は「ウソップ」という接点がない。

なのにカヤを助ける必要は全くない。

それも海賊が一般市民を助けるなんて……

 

 

「メシ、食わせてもらったからな」

 

「……はぁ?」

 

「まぁ、そのメシはお前が作ったんだろうけど。

それでもお前のお嬢様には感謝しねえとな。

ハジメが言っていた。「感謝は必ず返せ」って。

そしたらまたウマイメシが食えるってなッ!!!!」

 

「……そんな馬鹿げた理由で……命を落とすなんてな……」

 

 

改めて戦う理由ができた二人。

すると森の奥から現れたのは

 

 

「やめてクラハドールッ!!!!」

「お嬢様!!危険ですッ!!!!」

 

「…………」

「……アイツ」

 

 

メリーに止められながらもクロに戦うのを止めろというカヤ。あの話を聞いてもまだ()()()()()()()()なら止めてくれると信じていたのだ。

 

しかし、そんなカヤの思いは一瞬で消えた。

 

 

「好都合だ。いまここでお前を殺して、その罪を麦わらに被ってもらう」

 

「ッッ!!!!……クラハ、ドール……」

 

「その名で呼ばないでもらいたい。

もうお前の執事ではない。俺はお前の遺産しか興味がないからな」

 

 

その直接の言葉に足から崩れたカヤ。

信じてきた人が、あんなに優しかった人が、いま自分を簡単に裏切り殺そうとしている。

それが信じられなくて絶望して、どうしたらいいのか分からなくなる。

 

力が抜け、必死にカヤをこの場から離そうとするメリー。

だがもちろんそれをクロが見逃すわけがない。

 

一気にカヤに近づいて殺そうとするクロに、ルフィも反応するが僅か足りない。

 

クロの爪がカヤの体を引き裂こうとする瞬間に

 

 

「必殺ッ!!鉛星ッ!!!!」

 

 

クロとカヤの前を鉛玉が通りすぎた。

それにクロは向けていた攻撃を止めて、視線を飛んできた方向へと向ける。

 

 

「や、止めろッ!!!!カヤには…指一本触れさせねぇッ!!!!」

 

「………ウ、ウソップ、さん……」

 

 

ビビりながらも威勢をかますウソップ。

そしてその後ろにはくいなが控えている。

 

 

「………目障りなやつだ。

いま思えばあの日君に見られたのが悪かった……

……つまり、お前が、元凶かあッ!!!!」

 

 

方向を変えてウソップに向かってくるクロ。

ウソップもこんなに速く移動して向かってくるクロに慌て何も対処できなかった。

 

しかしクロの攻撃はウソップには届かない。

ギリギリで、後ろにいたくいながその爪を刀で止めたのだ。

 

 

「そんなに速く動けるなら…サーカスとかどうですか?」

 

「あぁ?てめえから先に消されたいのか?」

 

 

すでに口調も変わり野蛮になっていくクロ。

くいなもクロ相手にするには骨が折れると分かっていた。

だけどそんな心配はいらなかった。

クロの後ろからルフィが殴り込みにきて、一発クロの横腹にお見舞をしたのだ。

 

 

「ぐふっ!!!」

「お前の相手は…俺だろうがッ!!!!」

 

「……だったら、すぐに消してやるッ!!!!」

 

 

と、向かってくると思いきや全身を脱力して腕や体を左右に降り始めた。

 

 

「な、なんだ…こいつ…」

 

 

訳の分からないことに戸惑い攻撃できなかったルフィ。

それが仇となるなんて分かるわけがなかった。

 

 

「"杓死(しゃくし)"ッ!!!!」

 

 

すると突然クロが消えた。

何が起きたかと思うと突然ルフィの背後にあった木が斬り倒された。すると次にはカヤの前の地面が抉れ、離れた木々が斬り倒されていく。

 

ランダムのように傷痕が出来ていく状況。

 

 

「な、なんだッ!!!!なんが起きてるんだよッ!!!!」

 

「……超高速で移動しながら攻撃してるみたい」

 

「はぁッ!!??ってか、アイツの動き見えるのか?」

 

「残像が見えるぐらいかな。ルフィ君は?」

 

「なんとか」

 

 

と、いっても無闇に攻撃を仕掛けられない。

次の瞬間にはカヤやメリーを巻き込む攻撃が向かっていた。とっさにルフィはクロの爪を横殴りして回避させたがそれでもまだ攻撃は止まらない。

 

くいなも残像から移動を予測してウソップの前に剣を置いて斬撃を回避する。

 

 

「このままだと、まずいかな」

 

「ど、どうにか出来ねぇのかよ!」

 

「そんなこと言われても…いつどこからくる攻撃を読んだとしても、速すぎてその場から私やルフィ君が離れたら次の攻撃からカヤさんやウソップ君を守れない」

 

「ち、ちくしょうッ!!!!」

 

 

このままなにも出来ずに切られるのか。

そんなことが頭をよぎる。

ウソップはカヤをあの執事から守りたかった。

親を無くして、それでもあの執事はカヤを守ってくれた。

それなのに裏切り、カヤを殺して、財産を奪おうとしている。

 

だからウソップは立ち上がった。カヤを守るために。

普段から嘘つきだと思われても、これだけは嘘に出来ない。

 

なのに……このままだと……

 

 

「クソッ!師匠もいねえし……()()()ならどうするッ!!?」

 

「………………ハジ、メ??」

 

 

その瞬間、ウソップの頭の中で何が駆け巡った。

それしてそれはこの状況を変える秘策となる。

 

 

「お、おいッ!!お前、()()()って知ってるのか!!!??」

 

「知ってるぞッ!!!」

 

「私も知り合いですよ。でもどうしてウソップ君が…」

 

 

しかし、くいなの言葉に反応しないウソップ。

なにやら考え込んでいる。

 

 

「………そう、だったのか……

……今日だったんだ……」

 

 

そして何か納得したウソップの目は何かを決意し

 

 

「おい麦わらッ!!俺が隙を作る!!後はやれるかッ!!!!」

 

「おう!任せとけッ!!」

 

「悪いがあんた、もう少しだけ俺を守ってくれよ」

 

「もちろんです。期待しますからね」

 

 

するとウソップは立ち上がり、何故か自らクロに切られるかのように開けた場所に歩き始めた。

 

 

「あ、危ないですウソップさんッ!!!!」

 

 

止めようとするカヤの声。

その言葉通りに何度もウソップに攻撃の手が回ってくる。その度にくいなが止めるが完全ではなく、くいなもウソップも軽い切り傷が出来ている。

 

それでも前と進めるウソップはど真ん中に立ち

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レディース、アンド、ジェントルマンッ!!!!

今から俺の華麗なマジックを見せてやるぜッ!!!!」

 

 

突然のことに誰もが耳を疑った。

いきなりここで()()()()??

こんな事情なのにマジックなんて……

 

しかしウソップはそんな批難された視線なんて気にも止めなかった。

いまのウソップは集中していたのだから。

 

マジックには集中力がいる。狙撃と同じだ。

 

 

自慢ではないがウソップは狙撃が得意である。

狙撃の名手である父親の背中をみていつか自分も勇敢な海の戦士なろうとしていた。

その血を受け継いでいるウソップなら狙撃は得意。

 

 

そしてもうひとつ。

あの日、何でもない日に届いた一通の手紙。

その内容は訳が分からなかった。

これからウソップ自身が必要なことが書いていた。

そしてそのアイデアを複数書いていた。

 

何のことか分からなかったが、その複数の一つにこの「マジック」があったのだ。

 

昔から嘘つきと呼ばれたウソップ。

そしてこのマジックは、「嘘」だと思われることを「現実」にする力がある。

 

それはウソップにとって魅力的なものだった。

その日からウソップはマジックに明け暮れた。

何度も何度も、繰り返し、失敗して、それでも「嘘」のようなことを「現実」にして、誰もが驚くところをみるために。

 

「嘘」で驚かせるのではなく。

「タネも仕掛けもある」「嘘」で驚かせるために。

 

そしてあの手紙の最後にこう書かれていた。

 

 

『あとは君次第だ。その選択を後悔しないように。

そしていつか来る仲間のために。 ()()()()()』 と。

 

 

ウソップは親指と中指の腹をくっつけて

 

 

「タネも仕掛けも…ございませんッ!!!!」

 

 

指を鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドーンッ!!!!

 

「ゴブッッ!!!!」

 

 

突然、ウソップとくいなの周りに()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それにクロは思いっきり体を打ち付け血を吐く。

それをルフィは見逃さない。

 

 

「"ゴムなしの"…"拳銃(ピストル)ッ!!!!"」

 

 

土壁にぶつかった反動で跳ねたクロの体をルフィはその拳で再び土壁に叩きつけた。

その力で土壁は崩れクロはその中で気絶してしまった。

土壁の中にいたウソップとくいなはいつの間にか元といた場所へと戻っている。

 

 

「す、すげぇーッ!!!!なんださっきのはッ!!!!」

「えへへー!!コレが俺のマジックだッ!!!!」

 

「ま、マジックという域を越えてるような…」

「でもちゃんとマジックだぜ。タネも仕掛けもある。まぁ教えないがな」

 

「ええぇー!!!」

「ええぇー!!!じゃねえよ!!マジックはタネをバラしたら終わりだろうがッ!!!!」

 

 

しかしくいなが言うとおり「土壁がせり上がってくる」なんてマジックの域を越えている。もしかしたらウソップは能力者……

 

 

「面白いのを使うのね」

「ギャアアアアアアッ!!!!!出たあああぁぁぁ!!!」

 

「黙りなさい」

「ゴブッ!!」

「ウソップさんッ!!?」

 

 

突然現れたロビンにウソップはお化けを見たかのように驚き、それにロビンはムカついたのだろう。気絶するレベルのパンチをウソップの腹部にお見舞いした。能力で関節技を使うのではなくパンチで。

 

 

「話すことは色々あるのだけど、まずはお兄ちゃんのことよ。ウソップ、なに気絶してるの?さっさとお兄ちゃんの手がかりを見せなさい。さもないとその鼻を砕いて捻って面白オブジェにするわよ」

 

「ろ、ロビンさん……さっきロビンが気絶させたんですけど……」

 

「あら?ついルフィやヘルメッポと同じ感じでしてしまったわ」

 

 

といいながらも全く悪気を見せないロビン。

せっかく勝ったのに、素直に喜べないのはどうしてなのか?誰もが疑問を覚えたという。



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マカナ

「す、すげええええぇぇぇぇーッッ!!!!」

 

「ルフィ君ッ!!落ち着いてッ!!

興奮しすぎて死んじゃうよッ!!!!」

 

「……いいんじゃねえか」

 

「ゾロッ!!!!」

 

 

目の前で骨付き肉を浮遊させているウソップに大興奮するルフィ。それはもう目から、穴という穴から血が吹き出るんじゃないかと思うぐらい興奮している。

 

それをくいなが落ち着くように言っているが聞かない。

そしてゾロはそれを離れて見ており、なんか拗ねているように言っている。それをロビンがクスクス笑いながら

 

 

「ふふふ。ゾロは構ってちゃん、なのかしら?」

 

「ああっ!!?」

 

「あら、斬りかかる?

いいわよ。久しぶりに相手してあげるわ。

剣士同士の戦いはともかく相手は私。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………チィッ!!!」

 

「あら?残念」

 

 

お屋敷の外でバーベキューをすることになり、そこに今回の功労者達を招いたカヤ。しかしそこには全員がいるわけではなく

 

 

「やっぱりもう一度呼んだほうが…」

 

「いいのよ。ヘルメッポは変なところで頑固なの。

あとで料理は私が持っていくわ」

 

 

そうここにはヘルメッポはいない。

海兵達は村のほうで飲んでいるがそこにもいない。

恐らく一人で軍艦を見張っているのだろう。

 

 

「でも驚きました。まさかウソップさんにあんな特技があったなんて……」

 

「あれは特技ってものじゃないわね。あの子の力よ。

そしてその力が貴女を守った」

 

「はい。私はまたウソップさんに守られたんですね」

 

 

それがどういう意味かロビンは聞かなかった。

嬉しそうで、寂しくもある表情。

きっとカヤにも秘めているものがあるのだろうと。

 

 

「でも伝えたいことは早くしたほうがいいわ。

きっとあの子は明日……」

「ルフィさんと一緒に行くんですよね」

 

 

今度こそロビンは口を閉じた。

何もかもお見通しのカヤ。知っているからこそというものもある。

 

 

「おいカヤ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!見なきゃ損するぞッ!!」

 

「う、うん!!!」

 

 

それでもウソップが自分のためにしてくれたこと。それがなによりも嬉しい。だから自分のためから"自分のために"することを止めれるはずがない。

 

 

…………………………

 

 

あんなにどんちゃん騒ぎだったバーベキューもいまは静まり、体の弱いカヤとメリー以外は外で雑魚寝で寝ている。海兵も村や軍艦の中で寝たりしたいるなか、見張りをかって出た者が一人、ある罪人を連れて誰もいない森の中の川へ

 

 

「ブハッ!!!はぁはぁはぁ……な、なんだ…」

 

「起きたわね。さあ私の質問に答えなさい」

 

 

罪人、クロは逆さまになった状態で木の枝から吊るされて下に流れる川に頭から落とされていた。

そしてクロの前にいるのは、ロビン。

 

 

「て、てめぇ……殺すぞッ!!!!」

「質問に、答えなさい」

 

 

そういってまた川へ落とされるクロ。

手足ともに縛られていて身動きが取れないなか必死にもがいている。

気絶する寸前になりやっと川から引っ張り出されたクロ。

 

 

「ガバッ!!ゴボッ!!……はぁ…はぁ………」

 

「いいわね。私の質問にだけ答えなさい」

 

「……………」

 

「じゃ質問をするわ。

まずネズミ大佐とどういう関係かしら?」

 

 

クロにとって答えにくい質問なのだろう。

川に落とされると分かっていても答えない。

しかしそれを見たロビンは微笑みながら

 

 

「それで十分よ。

じゃ次、その()()()()()()()()()()

 

 

その瞬間、クロの表情は明らかに変わった。

さっきのネズミ大佐の黙秘とは違い明らかに怯えているのだ。

 

 

「……予想は、的中ということね。

あとは()()()()()()()()()()そこは…時間が必要かしらね」

 

 

一人で納得するロビンにクロは

 

 

「知っている、みたいだが…お前じゃあの人には勝てねえ」

 

「あら?そうなの」

 

「お前らが来なければ…俺は安定した生活がッ!!!!」

 

「海賊になっておいて何を言っているの?」

 

 

そういって川へ落とすロビン。

じたばたしているクロを見ながらため息をつく。

海賊になった時点で安定した生活など送れるわけがない。

それが()()()()()()()()()()()

 

このまま溺死させてやろうかと思ったが、それではヘルメッポの手柄が、まぁなくてもマイナスになるようなことはしないでやろうと、仕方なく溺れる寸前のクロを川から引き上げる。

 

 

「ゴボッ!!ゴホッ!!!ゴホッ!!!」

 

「まだ意識はあるわね。

殺しは、しないわ。その代わり二度と…表には出れない」

 

 

朦朧とする意識のなか、ロビンの言葉はクロに届いていた。しかしその言葉の真意を朦朧とする中で考える前に

 

 

「マカナ」

 

「はいッ!!」

 

「好きにしていいわよ。でも()()にはしないように。その口で今回の出来事を包み隠さず話せるレベル、その二つを守れるなら好きにしていいわ」

 

「わっかりました!!!

ロビン様の期待に応えれるように頑張りますッ!!」

 

「よろしくね」

 

 

そういって吊るしていたクロを下ろしたロビンは振り返りもせずにその場を去っていった。

呼吸を整えようとするクロの首を掴み、マカナは自分の目の前にクロの顔がくるように引き寄せた。

 

 

「正直、私はロビン様のお側にいることが喜びなのです。貴方みたいな小物を相手など…ロビン様の命令がなければ……」

 

「……ガハッ!」

 

「あぁ、つい力を入れすぎました。

さてどうしてあげましょうか?犬以上の間抜けな思考で死ぬまで絶対的服従で尻尾を振るのとか、瞼を閉じる度に死にたくなるほどの幻覚とか……」

 

 

何かを考え込むマカナ。

それを聞いているだけでも何をされても最悪の結果しかない。朦朧とする意識の中で手を伸ばせば届く小枝を見つけたクロは

 

 

「……それか……」

「おっ、自ら決めますか。いいですよ、積極的なのはいいことで……」

 

「テメェが死ねええぇ!!!!」

 

 

一瞬だった。

素早く小枝を折り、手にしたそれをマカナの首に差し込んだ。全く動けなかったマカナは刺された首から夥しい血を吹き出しながらその場に倒れた。

 

クロはその返り血を浴びながらも、目の前で始末したそれを見て口元についた血を舐めながら

 

 

「舐めすぎたようだな」

「えっ、血って舐めないほうがいいですよ。

衛生的に絶対に体に悪いですし」

 

 

突然背後から聞こえた声に反応し、振り返らずその場から離れたクロ。しかしいまだ朦朧としているために足元が安定せずに倒れこむ。

 

 

「いきなり動くからですよ」

「…な、なんで…生きてやがる……」

 

 

そこにはピンピンとしているマカナが。

首に刺さった小枝もなく、それより()()()()()()()()()()()

 

 

「……な、なにが…何が起きてやがる…」

 

「あっ、私生まれた時から視線を合わせると"幻覚"を見るらしいくて、それを私はパワーアップさせて今では()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

 

つまりクロの思い描いたことをまるで現実であるように知覚などさえもそこにあるように仕向ける。

 

それはもう、偽物ではなくなる。

 

 

「それとロビン様は最初から貴方は怪しいって思っていましたよ。残念でしたね。貴方の計画はロビン様が現れた時点でご破算になったんですよ!!」

 

「く、くそがあああぁぁぁ!!!!」

 

 

マカナに攻撃しようとするがいつの間にか目の前にいることに気づかなかったクロは再び首根っこを掴まされて

 

 

「はいはい。大丈夫ですよ。

さっきいったのはあくまでも幻ですか。これからやるのは現実で、二度と解かれることのないものですから」

 

「や、やめろ……」

 

「いわば"洗脳"というやつですか?

これが一番得意なんですよーまぁ、やり過ぎないように普段は人と接近できませんが、ロビン様とハジメ様以外でこうして人の目をハッキリと見れる機会はあまりないので………やめるわけ、ないですよー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

「ど、どうなってるんだ……」

 

 

ヘルメッポは海兵に呼び出され来てみた牢屋。

そこではクロが閉じ込められているのだが

 

 

「アハハ…アハハ………アハハ……」

 

「朝見回りに来たときにはすでに…

異常行為をおかしてますが…今回の事件の容疑は全面的に認めてます」

 

「はぁ!?

こんな状態で確かなのか分かるわけが」

 

「しかし被害者や他の海賊などからの証言と一致はしてます。ただ……それ以外はもう……」

 

 

目の前のクロは両手を口に咥えたり、爪を噛んだり、自分の体をその爪で傷つけたり、昨日のクロとは全く変わってしまっていた。

 

 

 

…………………………

 

 

「貰って、いいのー!!!」

 

「は、はい…少ないかも知れませんが…」

 

「ううん!!ありがとうねカヤー!!!」

 

 

今回のことに全く関わりを見せなかったナミとノジコは、くいなとロビンの説得もあり渋々カヤのお屋敷に来たのだが。

 

カヤはナミ達に可愛い洋服やお屋敷のお宝をくれると言ってくれたのだ。

 

 

「でもどうして??私達なんにもしてないのに」

 

「お母さんの為の結婚資金。応援したくなりまして!

お洋服は私からのプレゼントです」

 

「可愛い!もう可愛いわ!!

お姉さん!!持って帰ってもいいかな!?」

 

「ダメよ。カヤはやりたいことがあるのだから置いていきなさい」

 

 

ええぇー!!といいながらカヤを抱きついて離さない。

カヤも満更ではないが、まさか連れ去られるかと思い軽く冷や汗をかいてしまった。

 

 

「いつか帰ってくる人のために、いつでも怪我を治せるように、医学を学んで、医者になるらしいわ」

 

「すてきー!!

で、誰よ。こんな可愛いカヤを射止めた男って」

 

「ち、違いますッ!!ウソップさんはそんな…」

 

「ウソッ!!!!あの長鼻がッッ!!!!

 

「こらナミ。失礼でしょう」

 

 

思わず言ってしまった言葉をノジコに指摘されすぐに訂正して謝ったナミ。しかしカヤは顔を赤くしていてそれどころではないようだ。

 

 

「でも待ってるだけじゃダメよ!ねぇ一緒に海に出ましょう!!」

 

「嬉しい申し出ですけど……私、体が弱くて……」

 

「……そっか。それはしか」

「ええええぇ!!!行こうぜぇ!!!!」

 

 

すると突然扉が開いてルフィが現れた。

その瞬間ロビンの能力が炸裂。

ありとあらゆる場所から手が咲き誇り、あっという間にルフィ全身を手が包み込んだ。

 

そしてどんどんその手は内側へと、捻りながら縮んでいく。

 

 

「ギャアアアアアアッ!!!!!」

 

「乙女の空間に無断で入ってきた罰よ」

 

 

ナミとノジコとカヤの耳はロビンの能力で耳を塞がれているので断末魔は聞こえていない。

しかしどういうわけか、くいなだけはそのまま。

 

 

「……あれ??ロビンさん。どうして私だけ……」

 

「??なにがあってもゾロがいるから問題ないでしょう。怖かったらあとで慰めてもらいなさい」

 

「い、いらない気遣いですッ!!」

 

 

…………………………

 

 

「…………何してんだおまえ?」

「い、いいでしょう!!ちょっと怖かったんだから!」

 

 

結局、ロビンの策略通りにゾロの側から離れずにずっと着いていくことになったくいな。

なんとなくのことは聞いたゾロだが、なんで隣から離れないのかは全く分からなかった。

 

 

「で、ルフィはこんな無惨な姿になったと……」

 

「………ぁ、……ぁぁ………」

 

 

全身が曲がってはいけない方向へと曲がっている。

ルフィの体はゴムだから骨折はないが、あの拷問中はゴムという能力は使えない。なので骨折による骨折をさせた。

で、解除はゴムに戻るが……骨折とダメージは治るわけがない。

 

折れてはダメなところ以外は見事に折られている。

ショック死しなかっただけ儲けものだ。

 

 

「あとで肉を与えればすぐに戻るわ」

「いや、どんな理屈だよ!」

 

「そんな理屈よ。

ルフィのことはいいからカヤ。早速皆にあれを見せてちょうだい」



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彼らの旅立ち

「お待ちしてましたよ。

少々古い型ですがこれは私がデザインしました船で、カーヴェル使用の三角帆使用の船尾中央舵方式キャラヴェル。

 

"ゴーイング・メリー号"でございます」

 

 

ルフィ達の前に現れたのは船首に羊の顔が飾った船。

ゴーイング・メリー号だった。

 

 

「うおおおおおっ!!!」

「こいつは…」

「いい船ね」

「すてきー!!」

「いいわね」

 

 

思い思いの感想を述べる。それを見てメリーも満足そうな表情を見せる。

 

 

「しかしルフィ君達が海賊とは驚きましたが、村の恩人です。出来ることはこれぐらいしかありませんが」

 

「んなことねえよ!サンキューなッ!!」

 

 

肉を食べて本当に元に戻ったルフィ。

それをみて一時周りはルフィから距離を置いたが本人は特に気にしていなかったようだ。

 

 

「それで操縦なのですが」

「それは私が」

 

「ではこちらで」

「ナミは内部を見てて」

 

 

ノジコが船の操縦方法を聞くことに。

ナミはルフィ達と一緒に船の内部を見ることにした。

 

お世辞に広いとは言わないが、それでも航海に必要なもの全て揃っており、これをタダでくれるとなると至りつくせりだと感じた。

 

 

「これが…俺達の船ッ!!」

「良かったわねルフィ。やっと海賊らしくなって」

 

 

弟が喜んでいるところを優しく微笑むような表情をするロビン。海軍の船に乗ったりしたりして"海賊"という感じではなかったがやっとこれで海賊と名乗れる。

 

 

「よし!!!ゾロ、くいな!!!

これで海賊になってくれるよなッ!!!!」

 

「「ならない」」

 

「ええええぇ!!!??」

 

 

何をどうしたら海賊になれると感じたのか。

速攻断られたルフィは落ち込むかと思ったが

 

 

「まぁ、いいか。

いい続ければ叶うってハジメも言ってたし」

 

「マジで止めろッ!!!」

「別に私達が入らなくてもロビンさんがいるじゃないッ!!」

 

「関係ねぇ。俺はお前達と海賊がしたいんだ!!」

 

 

その真っ直ぐな言葉と瞳に言い返せない二人。

そしてその視線は船を散策しているナミにも向けられ

 

 

「そしてナミ。お前も仲間にするからな!!!」

「……ならない。お兄さんに会えるかもしれないから着いてきているだけよ……」

 

 

一切ルフィの方をみらずに言うナミ。

それでも着いてきてくれるだけで嬉しいルフィはニッシシシ!!と笑いながら「おう!」と返事した。

 

 

「あとカヤはどうするんだ?」

「えっ?」

 

「ウソップ、俺の船に乗せるぞ。

あんな面白いやつ俺が欲しいからな」

 

「…………」

 

 

言葉が出てこなかった。

ウソップが海に出るのは分かっていた。

でも自分が海に出るなんて考えたこともなかった。

体が弱い。それがその考えを持つことさえさせてくれなかった。

 

でも、体さえ強かったら………

 

 

「……私が付いていっても邪魔しかなりません」

 

「そうか?」

 

「そうですよ。体は弱いですし、戦う力も…ない……」

 

 

いつの間にかメリーもカヤの言葉を聞いていた。

口を挟まずに、いまのカヤの気持ちを聞くために。

 

 

「それでも、私はウソップさんの傷を治したい。

きっと海賊になるなら怪我をしますから。私はそんなウソップさんのために医者に……」

 

「それ、海賊でも出来るぞ?」

 

「ッ!!?」

 

 

的の得た言葉にカヤの体がビクッと反応する。

それでも…それでも……私は……

 

 

「誰か……止めてくれええええぇ!!!」

 

 

するといきなり声が聞こえてきた。

振り向くと下り坂からウソップが、背中に抱えた大きなリュックを支えることが出来ずに下り坂を転がってくるところだった。

 

そしてその先にはゴーイング・メリー号が

 

とっさに船から降りたルフィとゾロが軌道上に立ち

 

 

「ガベバッ!!!」

「ウ、ウソップさんッ!!!!」

 

「…ありがどうよ……」

「「おう」」

 

 

二人の足の裏で顔面停止させられた。

かなりダメージを食らったが素直にお礼をいうウソップ。

 

足の裏を離すと鼻血を出しているウソップ。

それを見たカヤは慌ててウソップに駆け寄り

 

 

「大丈夫?ウソップさん!?」

「へ、平気だ…」

 

 

強がるが止まらない鼻血。カヤはそんな怪我を手早く処置をする。擦り傷には絆創膏を、鼻にティッシュを詰めて。

 

 

「悪いなカヤ」

「昔からよね。いつも怪我をして」

 

「それでカヤが手当てしてくれて」

「そうしないとウソップさん、自分じゃしないでしょう?」

 

 

そんな微笑ましいことを二人で言っている。

なんか甘い空気が流れている感じがして誰もそこに割り込むやつはいなかった。

 

くいなにいたっては、「……いいな……」と小声でいうぐらい。

 

 

「………お嬢様……」

「行かせたら?私が面倒みてもいいわよ」

 

「…どうして、そこまで……」

「……恋する乙女は、ほっとけないのよ」

 

 

…………それ、ロビンが語るのか?

と、ハジメがいたら絶対にツッコミをいれるがいないため、めちゃくちゃロビンが"大人の女性"に見える。

 

 

「サンキューなカヤ!」

「ううん」

 

 

あの二人を引き離してもいいものか?

メリーの心はどうするか決めかねている。

するとウソップが背負っていたリュックを下ろし深呼吸をして

 

 

「おい!()()()()!!!」

 

 

ウソップの叫びに真っ正直から見るルフィ。

 

 

「俺はいつか海に出たかった。

親父と同じように勇敢なる海の戦士になるために!!

でもあとひとつ!!」

 

 

ポケットから取り出したのはしわくちゃになった手紙。

ロビンに奪われてなんでかしわくちゃになった手紙。

 

 

「ハジメには大きな恩があるッ!!

あの人のお陰で俺はカヤを守れた!

だから俺はこの人が言っていた"仲間"がお前なら…

…ルフィ!!お前の船に乗っていくからなッッ!!!!」

 

「おうッ!!乗っていけええええぇッッ!!!!」

 

 

 

…………………………

 

 

「話は纏まったのかしら?」

「おう!!ウソップも今日から仲間だ」

 

「そう。この船は私が動かして上げる。

お姉さんやハジメさんにはお世話になったし」

 

「してもらわないと俺、目的地たどり着く自信はない!!!」

 

「威張っていうところかそれ……」

 

 

ノジコがメリーから船の操舵方法を聞いて航海士として手伝ってくれることに。

せっかく手にした船なのにルフィがやると遭難や下手したら転覆する可能性もある。

 

 

「ノジコ。私は本読んでるから~」

 

「はいはい。島が近づいたら連絡するわ」

 

 

よろしくね~とふらふらと手を降ってさっさと船室へ入っていったナミ。

 

 

「な、なんだアイツ……」

「悪いわね。あの子航海好きじゃないの」

 

「好きじゃないって、海賊専門の泥棒のいう言葉か?」

「本当にそうね。でも出来るだけ船に乗ってるという感覚を味わいたくないの。悪いけど航海中はナミをあてにしないでね」

 

 

ウソップから見てもナミの行動には違和感を感じていた。しかしノジコの言葉に素直に従うしかない。無理強いするわけにもいかないと。

 

 

「おいゾロ、くいな!!お前らはこっちだろうがッ!!!!」

「ふざけんなッ!!!!海賊になるつもりはねぇ!!!!!」

「もうお願いだからルフィ君諦めてよッ!!」

 

 

で、さっきからルフィは軍艦に乗ろうとするゾロとくいなを必死に止めていた。それでも諦めるはずのないルフィだが

 

 

「止めなさいルフィ」

「でもよ師匠…」

 

「同じ航海を共にしている。なら皆同じ。

って、お兄ちゃんならいうわ」

 

「??」

 

「つまり、ゾロもくいなもヘルメッポも海兵も同じ海賊よ」

 

「なるほど」

 

「「「「「どんな理屈だソレはあああぁぁぁッッ!!!!」」」」」」

 

 

ロビンに言われた全員が一斉に、タイミングよく、完璧なシンクロで叫んだ。

しかしそれでルフィは「ならまだいいか~」とさっさとメリー号に乗り込こみ、ロビンはそれを見てクスッと笑いながら

 

 

「二人とも諦めなさい。意地を張るのも必要だけど、それだけで考えを変える相手じゃないわよあの子は」

 

「チッ!知るか……」

 

「それでも…そう簡単に、海賊には……」

 

「言っておくけど海賊勧誘については私がルフィに"諦める"なんていわないわよ。そんな面倒くさいことしないわ」

 

((最後が本音だ……))

 

 

と、言えるはずもない。

それでも唯一の可能性が潰されたとなるとあとは自分達でどうにかするしかない。

 

 

「それに、変わるわ。その考えは」

 

「あっ?なわけ…」

 

「変わるわよ。だって…()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………知るか……」

 

「……アハハ……」

 

 

二人とも明らかに誤魔化した。

いまはルフィと一緒に海賊をするメリットかない。

しかしそこにハジメがいるだけで状況はグッと変わる。

それを二人は分かっているからこそなにも言えなかった。

 

とりあえずこの場をしのいだ二人だが、ルフィの目はまだ諦めていなかった。そうもう一人、勧誘する人物がいるからだ。

 

 

「なぁカヤ。お前は海賊やるだろう?」

 

「……えっ」

 

「ウソップも入ったしよ、それに怪我したとき手当てしてくれるやつがいたほうがいいしな。よく師匠に怪我させられたから治してくれるやつずっと欲しかったんだ!」

 

「つまり、私を非難したということね」

 

 

スゴい睨みを効かすロビンにルフィの冷や汗は止まらない。止まらないがそれでもいまはカヤを勧誘しようと頑張るしかなかった。

 

 

「た、頼むよ!来てくれたら…そうだ!!俺の肉やるよ!」

 

「それで誰が付いてくるんだよッ!!」

 

 

キレイなウソップのツッコミ。

「こ、来ねぇのか!?」と驚いているルフィを無視してウソップからカヤに

 

 

「どうするカヤ??俺として来てくれたら嬉しいけどよ」

 

「…う、嬉しい、の??」

 

「そりゃカヤが来てくれたら助かるしよ。

それにまだまだ見せたいマジックもあるしなッ!!」

 

 

そういいながらポケットからハトを出してニヤッと笑うウソップ。

カヤとして理由として()()()()()()()()のだが、それでも一緒に海賊になる理由には十分すぎた。

 

そう決意しカヤはメリーの方を向いて

 

 

「……メリー……」

 

「いいのですよ。それに彼がいるなら安心です。

体にはお気をつけて。無理だけはしないように」

 

 

その言葉にカヤはメリーに抱きつき泣き出した。

今まで献身的にしてくれたメリーに、そして自分のわがままでここから離れることを深く感じながら……

 

 

「いつでも帰ってきてください。

ここは貴女の家なのです。私はそこでお待ちしてます」

 

「……ありがとう……メリー……」

 

 

…………………………

 

 

「お待たせしました。これからよろしくお願いしますッ!!」

 

 

早速カヤとメリーはお屋敷に戻り荷造りをして大きなバックを2つ抱えて戻ってきた。

 

 

「おうッ!!」

 

「しかしすげぇーな。こんなにいるのか?」

 

「分かってないわね。女の子は男よりも色んなものが必要なのよ」

 

「それだけじゃないんですけど。医療関係の本や道具などを持ってきました」

 

 

お辞儀をしたカヤから荷物を取り船に運ぶルフィ。

その一つのバックに医療に必要な物が沢山入っているようだ。あとはノジコが言った通りに女の子に必要なものが入っているようだ。

 

 

「ルフィさん、ロビンさん。カヤお嬢様をよろしくお願いします」

 

「任せろッ!!」

「えぇ」

 

 

そしてメリーはウソップの方を見て

 

 

「特にウソップ君。よろしくお願いしますね」

 

「あぁ!!カヤのことは任せろッ!!」

 

 

自信満々に声を張るウソップに満足そうな表情をするメリー。カヤはちょっと照れているように見えるがそれをウソップが気づくことはまずない。

 

そして全員が船に乗り込み、ゴーイング・メリー号にはルフィ・ロビン・ウソップ・カヤ・ノジコ・ナミ。

軍艦にはヘルメッポ・ゾロ・くいな・海兵達。

 

海賊と海軍。

流石に同時に出航するわけにもいかないのでまずルフィ達から出航して距離をおいてから海軍が追いかける形になった。

 

そしてその2つを連絡手段としてロビン本体と分身を使った意志疎通。つまりヘルメッポはロビンから逃げることは出来ない。

 

 

「……マジで、着いていくのかよ……」

 

「文句があるなら聞くわよ。

言った瞬間にどうなるか、知らないけど……」

 

「行くよッ!!行けばいいんだろうチキショーッ!!!!」

 

 

もう涙目である。

これにはゾロもくいなも海兵も諦めている。

誰もこのロビン(悪魔)に勝てるわけがない。

勝てるとしてもハジメだけだが……それも難しい。

 

 

「さぁルフィ。行きましょうか」

 

「おう!野郎共、出航だあああぁぁぁッ!!!!」

 

 

こうして船を手にしたルフィ達"麦わら海賊団"はここに正式に立ち上がった。そして後方には海軍にも関わらず海賊の手助けをするという通常ではあり得ないことが起きる。

それは海軍本部・世界政府に目をつけられるのも時間の問題となるが……まだ先の話となる。



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狙撃の実力

「いいか…見てろよ……」

 

「…ゴクリ……」

 

「………はっ!!」

 

「す、すんげえええええぇ!!!」

 

 

 

シロップ村を出て、航海二日目。

のんびりと航海をしている中、ウソップは自慢のマジックをルフィに見せていた。

今回は冷蔵庫から持ってきたリンゴを肉に変えるマジック。リンゴに布を被せて瞬間に剥ぎ取るとそこには美味しそうな骨付き肉があった。

 

ビックリしたのと本能的に肉を手に取ったのはほとんど同じタイミング。そして一秒も経たずにその肉はルフィの口の中に入っていた。

 

 

「いや、早えよッ!!」

「ふぁにが?(何が?)」

 

 

なんかもうマジックがあったことさえ忘れているんじゃないかと思うぐらいムシャムシャと食べるルフィ。

そんな姿をみてクスクス笑いながらカヤはウソップに聞きたかったことを聞いてみることに。

 

 

「でもウソップさん。いつの間にマジックを??」

「ううーん……10年前ぐらいか……」

 

 

それは丁度ハジメが消えた時と同じ。

 

 

「突然手紙が届いてよ。

初めは手紙の内容はサッパリ分からなくてよ。それでもこの"マジック"だけは興味があってな。

それから独学で練習してたんだよ」

 

「でもそれならなんで…教えてくれなかったんですか?」

 

「いや…マジックの完成度……納得いかなくてな…

……それにこれが戦闘に使えるなんて考えたこともなかったし……あの時ハジメという名前がなかったら今も俺のマジックは趣味で終わってたかもな」

 

 

その言葉に嘘はない。

男の意地というのか、満足のいくマジックが出来るまでと考えていたウソップ。しかしそれはもう"マジック"の域を越えている。

 

 

「で、でも…()()()()()()()なんてマジック…もう趣味じゃないですよそれ……」

 

「そうか?宙に浮くマジックなんてあるから、それただ続けているだけなんだがな~」

 

 

そんな事を言っているがマジックでは説明がつかないのだ。昨日からずっとウソップの横を"鉛玉"が浮かんでいるのだから。

 

 

「それにこうして近くにあればすぐに対応出来るだろう。流石に"火薬星"は湿気ったらダメだからな~」

 

「他にも玉はあるのか?」

 

「あるぞ!煙星や卵星やタバスコ星や……」

 

「マトモなものがないわね」

 

 

グサリというロビンに凹むウソップ、すぐにカヤが慰めに向かった。「……う、うぉ……」と項垂れている所を見てもロビンは表情一つ変えない。

 

 

「戦力としてもう少し使えそうなものを作りなさい。

マジックは撹乱や使い方では戦力にも使えそうね」

 

「そ、そんなことぐらい…分かってるよ」

 

「そう。あとはその狙撃の腕を見てみたいわ」

 

 

そういってロビンは辺りを見渡すと海に漂う空き瓶を見つけた。

 

 

「あれを当ててみなさい」

 

「遠ーいなー」

 

「いいぜ。見てろよ」

 

 

バックからパチンコを取り出して、額から目元にゴーグルをつけて空中に漂う鉛玉を掴んでセットする。

ゴムを引っ張り海に漂う空き瓶を狙う。

 

船から空き瓶まで500m以上。

そして波によって浮き沈みする空き瓶を当てる。

それは普通なら当てることなど出来ない。

 

しかし

 

 

「っ!!!」

 

 

狙いが定まったウソップは伸びきったゴムを放すとセットされた鉛玉が空き瓶に向かって飛んでいく。

そして波の浮き沈みを読みきったウソップは見事にその空き瓶を撃ち抜いた。

 

 

「オラッ!!」

「すっげぇー!!!」

 

「スゴい…ウソップさん…」

「へぇ…ならこれならどうかしら?」

 

 

すると割れた空き瓶の破片の一つからロビンの手が生えて、飛び散った破片をその手から更に生えた手が全てつかみ取った。

 

そしてその破片を、こちらに向けて投げたのだ。

 

 

「これを撃ち落としなさい。

欠片一つでも落としてメリー号を傷つけたなら…その分自分の身に刻むから」

 

「こえぇよッ!!

……あぁーもうー!!やってやるッ!!!!」

 

 

バックをあさり、大きな黒い玉を手に取りパチンコにセットしたウソップは空から落ちてくる空き瓶の破片に目掛けて

 

 

「必殺!"散弾鉛星"!!!」

 

 

飛び出した黒い玉は空き瓶の欠片に当たる前に破裂。

そのあと飛び出した複数の鉛玉が欠片を撃ち抜く。

しかし、撃ち抜いただけで破片は細かくなっただけ。

このままだとメリー号が傷つき、ウソップの身も傷つく。

 

しかしウソップに焦りはない。

すでにパチンコにセットした物を打ち出した。

 

 

「必殺!"トリアミモチ星"!!!」

 

 

打ち出した白い玉は途中で破裂。

すると網目のような白いモチが飛び出して散った空き瓶の破片を全て取った。

そしてそのモチはグルッと丸まり海に落ちた。

 

 

「どうよッ!!」

「狙撃手兼マジシャン。面白い人材ね」

 

 

納得したのかそれ以上追及しなかった。

ルフィは興奮してウソップに抱きつき、カヤは隣で一緒に喜んでいる。

 

 

「すっげぇーな!!!」

「本当にスゴいですよウソップさん!!」

 

「そ、そうか~」

 

 

褒め慣れてないウソップ。

そこで調子に乗ったウソップは

 

 

「おーし!!!次はこの大砲であの岩を撃ち抜いてやるぜッ!!!!」

 

 

すぐさま大砲の口を離れた岩に、海のど真ん中にある小島とは言えないただの岩に向けた。

導火線に火をつけて発射する。

飛び出した砲弾は見事に岩を撃ち抜く。

 

 

「おおおおッ!!!」

「へへへ。狙撃は俺に…任せとけッ!!!!」

 

「カッケェェェェ!!!!!」

「アハハハハ……」

 

 

ちょっとはしゃぎ過ぎているウソップに苦笑いするカヤ。

ルフィはもうおおはしゃぎしてしまい止められない。

そんなことを船の舵を取りながら見ていたノジコ。

 

 

「………面白い…奴等ね……」

 

 

どこか、一線引いているノジコとナミ。

何かを隠している、それは誰もが気づいていた。

ルフィは分からないが明らかな態度で分かっている。

それでもここに居続けるということに対して誰も何も言わなかった。

 

あの時言った親であるベルメールさんの結婚資金の調達の話。あれに嘘はなかった。あんないい笑顔が演技なんて思えなかった。

でも、それでも、その関係で何があった。

それも確かだと思っているためロビンが動いた。

そのロビンも何も動かない。

 

そこまでのことを気づいているのはヘルメッポとくいなだけだった。

 

 

「ふざけやがってクソ海賊があッ!!」

 

 

突然の叫び声にノジコはハッとその声の方向へ視線を向ける。

すると水浸しの男が船に乗り込んできて刀を手に取り襲いかかろうとしている。

 

 

「ちょっ、ちょっと待ってよ!!!俺達が何したんだよッ!!」

 

「砲撃を喰らわせておいてなに言ってやがるッ!!」

 

「砲撃??…………あっ」

 

「テメエらのせいで……ヨサクがあああぁぁぁッ!!!」

 

 

そんなことを言いながらまずウソップに斬りかかろうとする男。「ちょっ、ちょっと待てッ!!!」慌てるウソップに逃げる術がない。そんな姿にカヤがウソップの名を叫ぶ。

 

斬られると思ったがその瞬間

 

 

「…な~んてな!!」

 

 

すると突然ウソップの体が浮き上がり、バックから「5t」と刻まれたハンマーが飛び出してウソップはそのハンマーの柄に腰かけた。

 

 

「う、浮いたあああぁぁぁッ!!!??」

 

「す、すんげえええええぇ~~ッッ!!」

 

 

男が驚き、ルフィは目を輝かせる。

カヤもその姿に驚いているが斬られずにすんでホッともしている。

 

そしてウソップはそのままカヤの前まで来て

 

 

「ほら、カヤも乗れ」

 

「い、いいの?」

 

「こういうのは船長の仕事だろう?

援護はするが前線は戦闘員に任せねぇとな」

 

 

するとハンマーの柄が伸びてカヤが乗れるスペースが出来た。恐る恐る柄に乗るとフワッと浮き上がり男の届かない高さまで上がった。

 

 

「ルフィ!そいつは任せたッ!!

俺達はヘルメッポの所に連絡してくる!」

 

「おうッ!!任せろ!」

 

 

そういって飛んでいくが、向こうにはロビン(分身)がいるのだ。すでにこの情報は知れ渡っている。しかしルフィがそこまで考えているわけでもなく満々とウソップとカヤの逃げに手を貸したのだった。

 

それでロビンはウソップ達にどうこうしないが

 

 

(………信じすぎるのも、困り者ね……)

 

 

と、密かにルフィの再教育をし直そうかと頬に手をあてて真剣に考えているロビンであった。

 

で、ルフィと乗り込んできた男の勝負だが

 

 

「……が、がみびどえ……」

「よぇーなー」

 

 

パンチ一つでノックアウト。試合終了となった。

 

 

 

…………………………

 

 

「……何やってるんだお前ら…」

 

「「ゾロのアニキッ!!!」」

 

 

その後ウソップが撃ち抜いた岩にこの二人、ヨサクとジョニーがいて、ヨサクが謎の病気にかかり休ませていたところを砲弾が飛んできたという。

 

で、怒り心頭のジョニーが単身乗り込んできたのだが見事に返り討ち。

 

事情を聞いたロビンがヨサクを船まで連れてくるとジョニーの病気は壊血病(かいけつびょう)とカヤが診断してライムなどの絞り汁を飲ませたところ……回復した!!と叫んだ。

 

もちろんそんな訳がなくカヤは休むようにいったが全然いうことを聞かないと悩んでいたところ、軍艦のほうにも二人の情報が伝わりゾロが知り合いかもということで合流したのだが

 

 

「どうしてアニキが海軍に!!?

というかこの状況はなんなんですか!!?」

 

「海軍と海賊が同じ所にいて何もないなんておかしすぎますよッ!!」

 

「っせえなー。こっちにも事情があるんだよ」

 

 

海軍が近づいたのに戦闘も何もなく、むしろ軍艦のトップと思われる人物とこの船の船長が言い合いをしているが兄弟喧嘩しかみえないため戸惑っているというところだ。

 

 

「ほん、とーうに!厄介事を増やすなッ!!」

「んなこといってもよ。海賊だから無理じゃねえかよ」

 

『間違いない』

 

「うるせぇッ!!!こっちはゆっくりしたかったんだよッ!!!」

 

 

ゆっくりしたかった。というか何もかも忘れてのんびりしたかったの間違いである。色んなことが立て続けで起きてもうやってられないと匙を投げようと部屋に閉じ籠っていたのだが、まぁ結局、ロビンの前ではそんなもの無意味だと改めて知らされた。

 

 

「しかし、そんな病気があったんだなー」

 

「普通はキチンとした食事をとればかかることのない病気なんですが、船の上ではその食事さえもマトモに取れないことがあります。しっかりとした栄養バランスの取れた食事を取ることは必要なんです」

 

「カヤってすげぇーな!!!そんなことも知ってるのか?」

 

「医者を目指すなら、といいますか…船に乗るなら知っておく必要のある知識なのですが……」

 

 

そんなことを言いながら周りを見渡すが、海賊の方はノジコとナミだけが知っており、海軍はゾロ以外知っているようだった。

 

つまりルフィ海賊団に必要なのは

 

 

「ルフィさん。コックさんを探した方がいいですよ」

 

「うまい飯食い放題になるのか?」

「食事代が(かさ)みますので、ダメです」

 

 

しっかりとしたツッコミだ。それに最高の笑顔で。

あまりにも的確というか、しっかりとハッキリと言われた為かルフィは「う、うぉ…」としか、いや、返す言葉をなくしてしまった。



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海上レストラン"バラティエ"

「海上レストラン?」

 

「ええ、そこなら料理人もいますし勧誘にはもってこいかと。あと先程のお詫びもさせてもらいます」

 

 

 

特にさっきの戦闘に関わったわけではないノジコ。

しかしレストランで奢ってくれるなら奢ってもらう。

ナミの気晴らしにもなるかもしれないと考えたノジコは

 

 

「それはいいけど船長の意見は??」

 

「もちろん行こうッ!!」

 

 

もう腹を空かせた犬か!というぐらいに舌を出してヨダレを垂らして叫ぶルフィ。「はいはい」とジョニーが教えてくれた場所を目指して舵を取る。

 

ここからだとまだ時間がかかるということなので、ルフィはこの海賊船のシンボルとなる海賊旗を書くことにしたのだが……

 

 

「……ひでぇ……」

「これは…ちょっと……」

「……うん、乗りたくないかも……」

「下手だな」

 

「そうか?」

 

 

出来上がった海賊旗はもう子供の落書き。

これで海賊旗を上げられたら乗組員達は逃げるだろうというぐらいに酷い。

 

 

「ったく、俺に任せろ!」

 

 

そういって今度はウソップが海賊旗を書き始めた。

するとルフィとは違い、なかなかいい海賊旗が

 

 

「よしッ!これで"ウソップ海賊団"の」

「「ふざけるな」」

 

 

ルフィと、珍しくロビンからの頭部へのツッコミを入れられたウソップ。ただのツッコミならよかったがこれがなかなか痛くて踞ってしまった。

そのあとキチンとやり直したい海賊旗をメインマストに張り

 

 

「ヨッシャー!!これで"海賊船ゴーイング・メリー号"の完成だッ!!!!」

 

 

誰もがそれを見ていい表情をするなか、いつの間にか流されるままに軍艦と海賊船を平行して走ることになり、ふて腐れているヘルメッポはツーンとしていた。

 

ロビンの命令だとしてもこんな風に航行するなんて…

これが親父にバレたらとか、それ以前に他の海軍にバレたらとか、どのみちこのままだと俺達も海賊と認定されるんじゃないかとか、色んなことが頭のなかを巡り最終的にどうにでもなれ!と自棄を起こしてふて腐れていることになった。

 

ということをロビンはすでに見抜いている。

 

 

 

「安心しなさい。戦力と必要人員が十分揃ったら解放してあげるわ」

 

「……師匠の満足のいく戦力って、絶対にハードルが高い」

 

「私としてはあと"戦闘員"が2名"料理人"が1名"航海士"が2名よ」

 

「……おい。それ……」

 

「私は何もしないわ。ルフィが決めることよ。

まぁ、予想ではグランドラインに入る前には解放になりそうだけど」

 

 

妖艶に笑いながら離れていくロビン。

それに対して舌打ちをするヘルメッポ。

ふざけたことを言ったことに対してのものではない。

ロビンがいった予言みたいな言葉。

 

ロビンが言ったこういう言葉の大体が"当たる"

それが……気に入らないのだ……

 

 

…………………………

 

 

「うん?おーい、なんか軍艦と変な船がが見えるぞー」

 

 

高台にいるウソップが見たのは変な船に向かって航行する軍艦だった。

 

 

「軍艦は気にしなくていいわ。その変な船の特徴は?」

 

「え、えぇーと……」

 

 

ロビンの言葉にちょっと戸惑ったウソップだったがすぐに切り返して再度見直すことに。そこにジョニーが

 

 

「い、いいんですかロビンの姉さん」

 

「こっちにはヘルメッポ大佐がいるの。

いざとなったら私が話をつけるわ」

 

「い、いやー海賊の姉さんが言っても火に油を注ぐだけじゃ……」

 

「魚をモチーフにした船?みたいだなー

これが言っていた海上レストランか?」

 

 

そうです!とロビンとの会話を打ち切られたジョニー。

それについてはロビンは気にしてなかったが、ヘルメッポのほうがどちらかというとヒヤヒヤしていた。

 

 

「し、師匠…頼むから余計なことは……」

 

「失礼ね。貴方が対応出来なかったらと言ったわよ」

 

「そ、そうだけどよ……はぁ~あの軍艦は俺が話してくるから先に海上レストランに行ってくれ」

 

 

そういってヘルメッポは自分の軍艦へ乗り換えて先にいる軍艦へ向かった。その時ゾロとくいなには麦わら一味のストッパーとして残していった。

 

 

「ヘルメッポのやつ……」

 

「いいじゃない。

それに先に食べてていいって、ヘルメッポの優しさよ」

 

「……だとしても、対価がストッパーって…そっちの方が面倒くせぇ……」

 

 

追い付いたヘルメッポの軍艦は幅寄せして停止した。

その間にメリー号はその横を横切り海上レストランへと向かう。その際もうひとつの軍艦から攻撃などはなかった。

 

 

「うまくいってるのかな?」

 

「そこら辺の海兵より口はたつんだ。問題ないだろう」

 

 

少し心配するくいなと、ヘルメッポを信じているゾロ。

なんだかんだといってヘルメッポをキチンと認めているのだ。あとはヘルメッポ自身が自信をつけたらいいのだが……

 

そんなことをしている間に海上レストラン"バラティエ"に到着した。

 

そして到着してそうそう、

 

 

「メシイイィィィィッッ!!!!」

 

 

と、叫びながらメリー号から飛び降りてバラティエの中へ突入していったルフィ。

 

 

「あのバカッ!!!」

 

 

いくら海賊でも失礼すぎるとウソップが苦言する。

しかし次の瞬間、ルフィが入っていった扉が外へ向かってぶっ壊れながら弾けとんだ。それと一緒に飛んできたのはルフィ。

 

海に落ちるギリギリで止まったが

 

 

「いってぇな……何するんだッ!!」

「ハエかと…思ってな」

 

 

すると、壊れた扉の向こうから現れたのは金髪でグルグル眉毛をした一人の男性。

 

 

「ここは海上レストランだ。

マナーの悪いやつは客じゃねえッ!!」

 

 

頭と片手に料理を持ってルフィに発言する男性。

 

 

「あと、壊した扉は払えよな」

「お前が蹴ったからなったんだろうが!!」

「マナーが悪いのが先だッ!!」

 

 

と、そんなことをしていると突然ルフィの体から手が生えて

 

 

「その人の…言うとおりよ」

「ぎゃああああああっ!!!!」

 

 

またしてもルフィはロビンによって罰せられた。

何が起きているかと後退りする男性だが、すぐに船に乗っているロビンを見つけると

 

 

「おぉー!麗しのレディー。

貴女が手にかけなくとも貴女のナイトである私がやりました。しかしながらもその美しさの前に何もかもが意味を持たない。

しかしながらこのバラティエの副料理長である私"サンジ"が貴方をもっと輝かせることが出来る料理を振るわせてもらいます」

 

 

何を言っているか分からないがとにかく、軽やかに船に飛び上がってきたサンジという男性は、意味もなくダンスのようにくねくねと動き回りながらロビンに近づいていく。しかし、ロビンにそんな口説きなんてものは

 

 

「いらないわ。私には"お兄ちゃん"がいるから」

「………へぇ?」

 

「でも、料理は頂くわ。

ただそれ以外のものは入れないで。それが愛情とかいうものだったとしても私は"お兄ちゃん"だけでいいの。余計なものをいれてみなさい。その身が無くなったほうがいいと思えるほどの苦痛をあたえるわよ」

 

 

ウソップから「こえぇよッ!!」と叫びが聞こえたが無視するロビン。そして目の前にいるサンジは呆然としていた。

今まで口説けなかった女性はいる。

しかしそれでも悪い気分にさせたこともなく、ましてやここまでハッキリと言われることもなかった。

 

どうしていいか分からないサンジの所へ

 

 

「おいチビナスッ!!何してる!!

さっさと仕事に戻れッ!!!!」

 

「うるせぇジジィッ!!!こっちは一世一代のチャンスをどうしたらいいのかワケわからなくなってんだよッ!!!」

 

「それがワケが分からないんだよッ!!」

 

 

サンジと言い争っている声。

それはサンジが現れた扉から出てきた。

長いコックの帽子を被り、特徴のあるヒゲ。

そして()()()()()()()()()()()()

 

それをみたロビンは

 

 

「あら?こんなところで隠居生活かしら“赫足のゼフ"」

 

「……てめぇの…その声……

……"悪魔のニコル"か?」

 

 

重たい空気が流れる。顔見知りのようだがロビンが海軍で、ゼフが海賊だとお互いがお互いを知っている。これは何が起きてもおかしくない状況。しかしロビンがクスクスと笑いながら

 

 

「ふふふ。懐かしい名前。いまはロビンで通しているのよ」

「ハッ。変わったやつだと思っていたが…まさか海賊になるとはな……」

 

 

どうやら何も起きないようだ。

むしろロビン自ら船を降りてゼフに挨拶に向かった。

 

 

「おいおい。大事なハジメはどうした?

居なきゃ発狂してただろう?」

 

「私も大人になったのよ。

それにお兄ちゃんは忙しいの。私は理解のあるいい女だから待てるの」

 

 

あのロビンが自分から好意的に向かうのを初めて見るルフィ達。そして同時に思った。「普段からこれでいて欲しい」と。

 

 

…………………………

 

 

「これはこれはヘルメッポ大佐」

 

「"鉄拳のフルボディ"か」

 

 

時間は少し遡り、ヘルメッポ達は軍艦に幅寄せして乗り移ってみるとそこには大尉であるフルボディが乗る軍艦だった。

 

 

「どうしてヘルメッポ大佐が海賊と一緒に?」

 

「あぁ…秘密の案件だ。あそこには"ニコル"がいる」

 

「ッ!!?"悪魔のニコル"が!!?

……なるほどな…この状況ってのは、それほど異常なわけか…」

 

 

ニコルという言葉を聞いて、この状況を理解とはいかずとも納得してしまうほど"ニコル"というのは海軍の中でもスゴいのだ。

 

 

「まぁ、自分も休日なので。

向こうから仕掛けなければ何もしません」

 

「それは助かる」

 

「しかし……見逃す、とは行かない」

 

 

その言葉に、態度に、睨みを効かすヘルメッポ。

フルボディは気にせずに続ける。

 

 

「俺だってヘルメッポ大佐の邪魔をしたくない。

しかし俺にも立場というのがある」

 

「立場だぁ?おい、お前何を言っているのかわかっ」

「まぁ、待て。ちょっとしたお願いがあるだけだ」

 

 

するとフルボディはヘルメッポに耳打ちをする。

その言葉を聞いて驚きの表情を見せるヘルメッポ。

 

 

「お、おまえ…ッ!!」

 

「判断は任せるが…応じたほうが懸命だな」

 

 

そういってフルボディは麦わらの一味を見る。

そしてつられるように見るヘルメッポの表情は苦悶の表情だった。

 

 

「………分かった。おい、お前」

「はい!」

 

 

近くにいた海兵を呼び出してヘルメッポはこう告げた。

 

 

「コビーをここに連れてこい。この手で()()をする」



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料理長と副料理長と……

「ほら、スープだ」

「ありがとう」

 

 

金を払えば客。腹を空かせていたら客。

なんとも海賊が襲ってくるかもしれないこの海では馬鹿げた言葉だ。

 

しかしそれが実現できるほどこのバラティエのコックや副料理長や料理長は強い。

 

特に料理長である“赫足のゼフ"

グランドラインで名を馳せた海賊。

その海賊がいまや東の海(イースト・ブルー)で料理長。

 

その料理長が自らロビンに料理を提供している。

 

 

「でも意外ね」

「なにがだ?」

 

「貴方が"弟子"を取ることよ。

仲間はいたようだけど、"弟子"を取る風には見えなかったわ」

 

「……ふん。気まぐれだ」

 

 

そんなことをいって厨房へ戻るゼフ。

出されたスープをスプーンで掬い優雅に口へ運ぶ。

そんな様子を周りの客が釘つけとなっている。

 

中身は超超超残念だが、見た目は絶世の美女。

サンジも簡単にメロメロになるのも頷ける。

しかし見た目と中身が天と地、いや、天国と地獄並みにかけ離れているため、未だにショックから立ち直れていないサンジだった。

 

 

「……あんなに…お美しいのに……」

 

「中身が残念、って絶対にいうなよ」

 

「当たり前だろうがッ!!

というか、なに普通にメシ食ってやがるッ!!」

 

 

そんなこといいがならキチンとルフィ達のテーブルに料理を運ぶサンジ。ルフィは出来るだけ散らからないように気を付けながら爆食い。ゾロは酒を飲み、くいなやナミやノジコはおしゃべりしながら食べている。ウソップとカヤはなんかカップルのように……なんてことはなく、ためにもならないうんちくをカヤに披露するウソップ。それを楽しく聞いているカヤ。

 

 

明らかに他の客達から浮きまくっている。

 

 

「いいじゃねえか。あのオッサンから修理代いらねぇって言ってくれたんだからよ」

 

「だとしてもそんな食い方をするやつをこのレストランにおけるかッ!!」

 

「サンジ君?って言ったかしら?

ルフィ君には私から言っておくから…ダメ?」

 

「ぜーんぜん!!大丈夫でーすッ!!!!」

 

 

ルフィに出ていけというサンジだったがノジコの言葉に簡単に手のひらを返した。もうロビンのことは諦めてターゲットをノジコ達に変えたようだ。

 

 

「よければスペシャルドリンクをご用意しますが」

 

「そうねー。ナミはどうする?」

 

「可愛いやつがいい」

 

「好きねー可愛いの」

 

「可愛いは正義よ、ノジコ」

 

「はいはい。私は少し度が強いの。くいなは??」

 

「せ、清酒があるなら…」

 

「渋いのね」

 

「お、お父さんが飲んでいたので……」

 

「カヤはどうする?」

 

「私はお酒はちょっと…」

 

「ならカヤにはオレンジジュースで」

 

「すぐにご用意しまーすッ!!」

 

 

クルクル回りながら厨房へ消えたサンジ。

野郎共のドリンクは聞かずにさっさと消えたことに「ひ、ひでー……」とウソップが呟いた。

 

すると外がなにやら騒がしくなり、その元凶となるものが店へと入ってきた。

 

 

「??なんだアイツ?」

 

「すげぇー格好してるなー」

 

 

ゾロとルフィが気になるもの分かる。

ピンクの髪の毛に、異様なワンピース、そして特徴的な()()をしているのだから。

 

 

「サンジいる?」

 

 

するとコックの一人が「サンジー客だぁー」と呼ぶと、さっき注文したドリンクを器用に持ちながら厨房から出てきた。

 

 

「あぁ。野郎じゃねえだ…ろう……な……」

「来たわよ、サンジ」

 

 

するとせっかくバランスよく持っていたドリンクを全て床に落としてしまったサンジ。

その姿にどうしたんだと周りの人達が注目する。

しかしコック達はニヤニヤしていてどうやら知り合いのようで……

 

 

「また来たのかよ()()()()ッ!!

「ええまた、来たわ」

 

 

どうやら知り合い、というかどことなく二人が似ているなーと思っていると

 

 

「……ったく、そんなに抜け出していいのかよ。

……重要な任務中なんだろうが…」

 

「えぇ。でも息抜きも必要よ。

こうして()の様子も見にこれるし」

 

 

弟。

どうやら二人は兄妹のようだ。

しかしどうも弟のほうは姉に苦手意識があるのか、距離を取っているように思える。

 

 

「だったらさっさとメシ食って帰れ。

俺はまだ"アイツら"を…許したわけじゃねえ」

 

「ふふふ。"アイツら"ね……」

 

「……なんだよ……」

 

「いいえ。私の弟は本当に優しい弟だなーと思っただけよ」

 

「う、うるせぇ!!さっさと席につきやがれッ!!」

 

 

照れ隠しなのか頬を赤くしさっさと厨房へ戻る。

サンジが受けたドリンクは別のコックがノジコ達の元へ持ってきてくれた。

 

レイジュという女性は辺りを見渡しながら、ある一つの席を見て驚いた表情をした。

 

そしてゆっくりと近づき、その席の女性がワインを飲み終わるのを待って

 

 

「……まさか、弟に会いに来て…貴女に会えるなんて……」

 

「久しぶりねレイジュ」

 

 

冷や汗をかきながらも冷静を装うレイジュ。

一方ロビンは懐かしいレイジュを見て優しい瞳で見ていた。

 

 

「貴女達を探していたのに、こんな風にいるとは…予想出来なかったわ……」

 

「達、ねぇ…言っておくけどお兄ちゃんはここにはいないわよ」

 

「ッ!!?……ハジメがいないのに…その落ち着きよう……

…………世界は滅びるの…かしら……」

 

「失礼ね」

 

 

いや、ロビンを知っているなら誰でも思うだろう。

と、心の中だけで止めることにした。

すると「ここ、座りなさい」とロビンに進められ大人しく座るレイジュ。

 

 

「お兄ちゃんとは、ちゃんとした約束があるの。

それを思えばいまの苦しみは快楽にでもなるわ」

 

「……ニコルがそういうなら…いいのだけど……」

 

「こちらとしてはレイジュが探していた弟がここにいたなんてね。それに、仲直りしたようね」

 

「私とサンジは喧嘩したわけじゃないから。

でも、他の家族とは……まだ無理ね」

 

 

あの超自己中で、サンジを"弟"だと思わない兄達。

実験で失敗したとサンジを"失敗作"という父。

いくらレイジュが間をとりもっても難しいようだ。

 

 

「そう簡単にいくわけがないわ。

特に身内の問題は、根深いものよ」

 

「……本当にどうしたの、ニコル……

…前ではそんなこと、いう人じゃ……」

 

「本当に失礼ね。

私にも親がいるのよ。私をなんだと思っているのよ」

 

 

その時全員が一斉に「悪魔」だと心の奥底から言ったことになんとなくロビンは気づいているだろう。

それでも言葉に出さない。その線引きさえしていれば特に制裁はしないのだ。

そこへサンジとゼフがそれぞれ料理を持ってきた。

それもお互いの料理を言い合いながら

 

 

「なんだその料理は?客を殺す気か?」

「ああ?こっちにはこっちの事情があるんだよジジィが。ジジィこそなんだそれはよ。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「バカ野郎が。この嬢ちゃんに変なもん入れてみろ。

この店は消えるぞ。それだけの相手だと分からねえからてめえは二流なんだ」

 

「はぁ!!?誰が二流だあッ!!!!」

「てめぇだと言ってるんだよチビナス!!!!」

 

 

親子喧嘩。

料理長と副料理長の喧嘩とは違って、まるで親子が喧嘩しているように見えた。

 

二人は言い合いながら料理を出したあと、そのまま厨房へ戻っていった。

その料理を二人は食べる。

サンジの出した料理は"毒抜き"をしていない料理。

しかしレイジュはその毒がご馳走になる。

それを知っているからこそその毒さえも料理の糧として作った一品。

 

ゼフが出した料理はどこでも食べれるようなもの。

しかしゼフは知っていた。余計なものはいれてはいけないことを。

サンジにも説明したが料理には"愛情"というものが入ると味が変わる。

しかしロビンにそんなものは必要ない。

もし"愛情"を取るとするならそれはハジメからしかない。

他のものを取るようなら……その瞬間に"終わり"だと知っている。なので前菜も肉料理も()()調()()()()()()()()()を提供するが正解となる。

 

 

というよりも、サンジのように料理で人を落とそうとするものに対して超敏感なだけ。

 

なので()()()()()()()()()()()()ならなんでも大丈夫なのだ。まぁ、文句はあるときもあるようだが……

 

 

「………どうして、いなくなったの?」

 

「………さぁ。何のことかしら?」

 

 

食事をしながら互いに顔を見ずに

 

 

「貴女がいなくなって…()()()()()()()()()()()()()()……もう、何が何だか分からなかったのよ……」

 

「お疲れ様。良かったじゃない任務終わったのでしょう?」

 

「………いえ。この目でハジメを見るまでは探し続けるわ」

 

「律儀ね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。やりたいことをやる。それがお兄ちゃん」

 

「……やっぱり、変わってないわ……」

 

 

お互いグラスを手にしてカンッと合わせ鳴らす。

何に対しての乾杯なのか…それは二人しか分からない。

 

 

「ちなみにどうして海軍本部にいるのがお兄ちゃんじゃないと分かったの?」

 

「あら?言ってなかった?

私、それなりにハジメには()()()()()のよ」

 

「そう。今さら増えても別にいいのだけど…

あまり余計なことはしないように」

 

「ええ、貴女を敵に回すつもりはないわ」

 

 

…………………………

 

 

「ど、どういう…ことですか……」

「いった通りだ。"海賊容疑罪"がお前にある」

 

 

突然のことに困惑するコビー。

せっかく海兵に、海軍に入ったというのに。

 

 

「ま、待って下さい!!ルフィさんとは友達ですが僕は海兵です!」

 

「友達だと。海兵が海賊の友達なんぞ…あり得るか!!」

「ゴブッ!!!」

 

隣にいたフルボディがコビーの腹部に鉄拳を喰らわす。

一発ダウンするコビーは、それでも立ち上がろうと、誤解を解こうとする。

 

 

「どうしてですかヘルメッポさん!!!

ルフィさんとは友達じゃないんですかッ!!!」

 

「……責任転嫁するつもりか?見苦しいぞ」

 

「ヘルメッポさんッ!!」

 

「……仕方ない……」

 

 

するとヘルメッポはコビーの首もとを片手で鷲掴みして持ち上げた。苦しそうにするコビーは両手でヘルメッポの手を掴みバタバタと抵抗をするが、それでもヘルメッポに対して攻撃はしない。

 

その後ろから見ているフルボディは面白そうにしばらく見ていると「ゴキッ!」と鈍い音がした後コビーが動かなくなり、ヘルメッポはコビーをそのまま海へ放り投げた。

 

 

「なかなか酷いことをするな」

「……聞き分けがなかったもんだからな……」

 

「まぁ、いい。次にうつるぞ」

 

 

ニヤリと笑うフルボディの横を片手を押さえてグッと我慢するヘルメッポ。その腕は真っ赤に膨れ上がっていた。



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おいしいもの

「……す、ずまねぇが…メジをぐれ……」

 

 

その生気のない声に誰もが振り向いた。

そしてその姿に誰もが驚いた。

高身長で全体がデカい男と、目付きが悪いがその男を担いでいる男。

 

どうみても一般人には見えない。

それもそのはず、その二人を見たロビンは直ぐ様何者か分かったのだから。

 

 

「海賊艦隊提督“首領・クリーク”と戦闘総隊長の"鬼人のギン"ね」

 

「あ、あの海賊かッ!!?」

 

「何を驚いているの?別に珍しいわけじゃないのでしょう?」

 

 

ロビンに取ってはとって足らない者。

しかしコックにとってはそうは行かない。

東の海でも一番の艦隊を持つ"ドン・クリーク"がこのレストランに来たのだ。

しかしそのドン・クリークは痩せ干そっていて、ギンの方もギリギリに見える。

 

 

「た、頼む…この人に…アイツらに…メシを……」

 

「…金なら…ある……頼む……」

 

 

しかし誰一人この二人のために動こうとはしない。

いまここでメシをやれば何をされるか分からない。

ならここで……と誰もが考えている。

 

 

「出ていけ。てめえらに食わすメシはねぇ」

 

「た、頼む……いくらでも…払う……」

 

「いいから出ていけぇ!!お前ら海賊はそういって後で襲ってくるだろうがッ!!!」

 

 

その言葉に火がつき、客やコック達が次から次へと「出ていけ!!」とコールをする。クリークとギンはそんな中頭を下げるしかなかった。餓死寸前、相手をどうこうする力さえないのだ。

 

するとそんな中、

 

 

「ちょっと待ってろ」

 

 

とサンジがいうとそのまま厨房へ向かった。

その言葉、つまりは二人にメシを作るということ。

 

 

「おい、待てよサンジッ!!!」

「なんだ?」

 

「お前はこんな奴らの為にメシを作る気かッ!!」

「あぁ、そうだ」

 

「何を考えてやがるッ!!!

そんな事をしたら元気になって何をされるか分からないだろうがッ!!?」

 

 

そう。誰もがそれを危惧している。

金を持って、腹を空かせて、レストランにやってきたやつは客である。

しかし、それが海賊、それも大戦艦を率いる海賊となれば話は別だ。そんな奴らに自ら危険にさらす必要はない。

 

 

「食いたいやつには食わせろ。それが俺のポリシーだ」

「サンジッ!!!」

 

 

制止を聞かずに厨房へ入りメシを作り始めるサンジ。

それを見たコック達は話にならないとゼフの所へ話をつけることに。

 

 

「オーナーゼフ!!こんなこと許していいんですかッ!!!」

「やらせとけ」

 

「しかしッ!!」

「それで、襲いかかってくるなら迎え撃つ。

それがこのレストランだと思ったが…違うのか?」

 

 

その言葉に誰もが何も言えなくなった。

"食いたいやつには食わせろ"

その重みを誰もが知っている。

ここにいる奴等は全員"あの出来事を経験している"からだ。

 

それから、料理を作る"コック"という仕事を誰もがやりだした。食べ物の大切さを誰もが身をもって経験したからだ。

 

 

「……そうですね。忘れてました……」

「それにてめぇら、あんな小わっぱ程度に負けるのか?」

 

「なわけないでしょう!!やってやりますよッ!!!!」

 

 

そう意気込んだコック達は一斉に自分達の役割を果たすために厨房へと入る。大量の料理が必要と誰もが必死になって調理していく。

 

 

「……変わってるなこの店は」

「でも、なんか素敵だね」

 

「カヤ、もしもの時は俺なら離れるなよ」

「はい、ウソップさん」

 

「それじゃルフィ君は私たちを守ってね」

「おう!」

「…………」

 

 

この状況を見てそれぞれが色んな思いをするなか、一人だけ、ナミだけは静まり何かを考えているようだった。

 

 

(……もし、戦いが始まるなら…その隙に……)

 

 

そう考えているとあっという間に大量の料理が完成し、その一部をクリークとギンの前に

 

 

「ほら、食え」

「す、ずまねぇ……ッ!!!」

 

 

クリークは手掴みで料理を掴み口に入れていく。ギンはスプーンを手にとっているが、もうテーブルマナーなんて関係なく口に入れていく。

 

 

「うめぇだろう?」

 

 

その言葉にギンは涙を流しながら食い進める。

そんな姿を見ていたルフィは

 

 

「いいな、アイツ」

「あのサンジって子が??」

 

「おう!俺アイツが欲しい!!!」

「終わったなアイツ……」

「アハハ……」

 

「終わったな……」

「それ…ブーメランしてない?」

 

 

ルフィがサンジを仲間にするといい、全員がサンジに同情する。いま現在でもナミやゾロ達に勧誘をしてくるルフィ。それが今度はあのコックに狙いが向かったのだ。同情となんだか親近感が沸く感じがした。

 

その間にメシを平らげた二人は、息を引き返したように立ち上がり、その表情はさっきとは別人のようになり

 

 

「感謝するぜ。そして……この船もな!」

「……て、てめぇらッ!!!」

 

「……悪いなサンジさん。この船はもらう」

「へぇ。俺達から何をもらうって?」

 

 

睨み合う両者。

するとクリークは残りの料理をまとめて抱えて

 

 

「これを部下に食わせてくる。

その間にここから逃げ出しておけ。そうすれば死なずにすむ」

 

 

そういって出ていったクリークとギン。

その言葉に周りの客達は一斉に逃げ出した。

そして残されたのはコックとルフィ達だけ。

 

 

「……お前ら、逃げなくていいのか?」

「ここで逃げたら師匠から殺される」

「殺しはしないわ。9割よ」

 

「……それほとんど死んでるじゃ……」

 

 

ウソップのツッコミは気にせず、バラティエから外へ出てみるロビン。するとそこにはいつの間にか巨大な戦艦があった。

 

そしてその戦艦から歓喜の声が聞こえてくる。

 

 

「ざっと100人かしら」

「ひ、100人ッ!!?」

 

「なに怖じ気づいているの?

海賊なんだからそれぐらい食事後の運動と思ってやりなさい」

「そんな簡単に割りきれるかッ!!」

 

 

ウソップはこの前が初めて戦ったのだ。

そして今度は100人を越える敵との戦い。ビビるなというのが無理な話だ。

 

 

「まぁ、主力はルフィとゾロがやるわ。

前線にくいな、中間に私、後方にウソップ。

でも、私は基本的に手出ししないからよろしく」

 

「ま、マジか……」

 

「ウ、ウソップさん。出来るだけそちらに行かないようにしますから……」

 

「た、頼むぜくいな……援護だけは任せろ!!」

 

 

と、もう完全にくいなに戦闘を任せるウソップ。

それを見てくいなとカヤは苦笑いをする。

実力的にもそうしないとウソップは危険だろうとなんとなく察したのだ。内心ロビンは不満はあったがまぁいいだろうと口に出さなかった。

 

 

「そういえばヘルメッポはどうした?」

「まだ来てないみたい」

 

「何をやっているのかしら?すぐに終わると思って監視を解除したの間違いだったかしら」

 

 

なんか、とんでもない言葉が聞こえたが気のせいだと誰もが思った。

 

すると、戦艦からこちらに向かってクリークが顔を覗かせ

 

 

「ほう。てめぇは逆らうってわけか」

「お前の指示に従うつもりはねえからな」

 

「いいだろう。戦いの前に…」

 

 

そういって降りてきたクリークはゼフの前に立ち

 

 

「“赫足のゼフ"だな。グランドラインに入ったことがあるようだな」

 

「あぁ、昔な。それがどうした?」

 

「ならあるはずだ。航海日誌、渡してもらおう」

 

 

その言葉にゼフの眉が上がった。

 

 

「この軍艦を見てみろ。もうボロボロでな。

どうやらグランドラインについて俺は何も知らなかったようだ。だからこんなことになってしまった。

 

だから今度はヘマはしねえ。だからてめぇらのこの船と航海日誌を足掛かりにもう一度グランドラインに」

 

「無理だな。お前らは」

 

 

その言葉にクリークは言葉を止めてゼフを睨む。

グランドライン、誰もが夢見て目指し、そして敗れる場所。

そこでクリークは敗れこの海に戻ってきた。

それでもクリークは再びあの海に戻ろうとしているのだが、経験者であるゼフがクリーク達では無理だと言ったのだ。

 

 

「……あっ!?誰が無理だっていんだッ!!」

 

「確かに俺は航海日誌を持っている。

だがそれがあってもてめぇじゃ無理だと言っているんだ」

 

「ふざけるなッ!!そいつさえあれば今度こそ俺はあの海を渡っていける!そして」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が"海賊王"になるんだッ!!」

「………なに??」

 

 

その瞬間、ルフィを取り巻く空気が変わった。

それが外へと広がり近くにいた仲間達を一歩交代させ、コック達には寒気のようなものを感じた。

 

それが何なのか誰も分からなかった。

いや、ただ一人だけ、ロビンだけはクスクスと笑っていた。

 

 

「バカな男ね。それをルフィの前で口走るなんて」

 

 

どうやらロビンの中ではこの先のクリークの運命が見えたようだ。さっき言っていた布陣から抜け出して、何故か出入口に勝手に用意してお茶を飲んでいるレイジュの隣に座った。

 

 

「いいの。一緒やらなくて」

「ルフィがあんな風になったらもう大丈夫よ。

ルフィ、"武装色"一回だけつかってもいいわよ」

 

「おう!」

 

 

周りは何のことか分かってなかった。

しかしその言葉に反応したのは二人の剣士。

 

 

「……"武装色"……」

「…きっと、私達の目指す…力……」

 

 

ルフィは一歩、二歩とクリークに近づこうとしたのだが、

 

 

 

 

その瞬間、

 

 

 

 

後ろにあった軍艦が、ガリオン船が、

 

 

 

 

"割れた"

 

 

 

「ふ、船が……割れたああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

斬られた船が海中へ沈んでいく為に起きる大波。

それは近くにあるバラティエなどにも影響を及ぼしている。

 

 

「何かに掴まれッ!!」

 

 

誰が言ったか分からないが誰もが近くにあるものにしがみつく。

その中でもレイジュとロビンだけは優雅に紅茶を飲んでいる。それも一滴も紅茶を溢さずに。

 

 

「………なんて、肝の据わった奴らだ……」

 

 

近くにいたゼフさえも手すりに掴まっているというのに…全くこの波に対して動じない。

 

 

「……これは、切れた……だと…」

「そんな…こと……できる……なんて……」

 

 

そんな中、ゾロとくいなは驚きに満ちていた。

あのガリオン船はどうやっても"斬る"ということは出来ない。いやしかし、目の前では確かにそれが起きている。

そしてガリオン船に乗っていた海賊の奴等は慌てた様子で

 

 

「一体どうなってるんだあッ!!」

「ふ、船が…切られましたッ!!!」

「切られたッ!!?んなバカなッ!!!!」

 

 

パニックが起きている中、その切られた海へ沈んでいく間を"何かが"航行している。

 

そしてそれは剣士二人の視線を外せない相手だった。

 

 

「………ゾ、ゾロ……」

「……まさか、こんな海で…会えるとはな……」

 

 

小さな小舟。しかしその乗っているものは圧倒的な存在感があり、分かるものにはそのものが只者ではないとハッキリ分かる相手。

 

背中に大剣を背負い、胸には十字架をつけていて、

特徴的なその瞳は()()()()()()()()()()()と錯覚してしまうほど鋭い。

 

ゾロはその相手に負けないほど睨みをきかせて

 

 

 

 

「……会いたかったぜ…"鷹の目"ッッ!!!」

「あっ、僕ですみません」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッッ!!!!」

 

 

"鷹の目"が見えるかと思った。

なのにその小舟の先端にいたのはずっと探していたハジメだった。

 

そしてハジメを見つけた瞬間、目にも止まらぬ速さでハジメに飛び付くロビン。

 

 

 

 

さぁ、ここからまたすべてがマトモですまなくなる。

それはここにハジメがいるから。

 

ハジメてみましょうか。

すべてを変えてでもハジメが思い描く最高のストーリーを。



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すぐに全てを仕切り引っ掻き回すもの

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!!お兄ちゃん!!!お兄ちゃんッッ!!!!」

 

「分かったから。ね、落ち着いて。そして嗅ぐな」

 

「お兄ちゃんだッ!!お兄ちゃんだッ!!!!え、えへ、えへ、えへへへ!!!」

 

「な、なに!!ちょっ、ちょっと、こ、怖い!怖い!!怖い!!!

ナニコレ!?見ない間にグレードアップしてるッ!!?」

 

 

もうハジメの言葉など聞かずにハジメの胸板に顔を埋めてハジメの名前を呼びながらクンカクンカしている。

 

………ドン引きである。もうあの"ロビン"は戻ってくることはないのだろう。

 

それでも無理やり引き剥がすことはしなかった。

10年もの間、会えなかったのだ。

よく我慢してくれたと思い少しだけ甘えてもいいかと思った。

 

 

「………どこにいたの?」

「色々とね。やりたいことがあったんだ」

 

「………私、いたらダメだった?」

「…ごめんな。もう大丈夫だから」

 

「なら、いいよ。もう離れないから」

「はいはい。最初からそのつもりだろう」

 

 

ハジメが何をしていたのか?

その間ロビンは何をしていたのか?

お互い聞きたいことがあるのにも関わらず二人とも許しあいそれで話を終えた。

 

これからずっと一緒にいるのだ。

時間はいっぱいある。これから沢山話せるのだと。

 

 

「うん!!だから、結婚式をあげます!!!!」

「うん!しないよ!!!!」

 

「………」

「………」

 

「なんでしてくれないのッ!!?」

「むしろなんでする気なんだ!!?」

 

 

でもこうやってすれ違うのがこの兄妹である。

 

 

「だってずっと一緒なんだよね!なら結婚だよ!!!」

「いや、結婚しなくてもいれるよね!!!」

 

「なんでベルメールは挙げられて私はダメなのッ!!」

「自分から妹だといったこと忘れているのかッ!!!!」

 

「義理だからいけるのッ!!つまり合法だよ!!!」

「だとしても、まだ誰とも結婚しないのッ!!!!」

 

 

するとその言葉にロビンがキョトンとする。

 

 

()()()()()ということは、する気はあると言うことよね??」

 

「………ノーコメント」

 

「証言をもらいました!!!これでお兄ちゃんと結婚出来るッ!!!!」

 

「もういいから黙れストーカーッ!!!!」

 

 

やったーと喜ぶロビンを止めようとするが聞く耳を持たない。ハジメはハァ~とため息をつくと"チャッキン"と何かヤバい音が聞こえてきた。

 

その方向を見てみるとミホークが静かに"黒刀"を抜いていた。

 

 

「…いい度胸だ。ここまでやられると清々しくも感じる」

「………えぇーと…怒ってます……よね?」

 

 

もう有無も言わさずに瞬間に黒刀でハジメに斬りかかるミホーク。直ぐ様その攻撃から抜け出したハジメとロビン。振り抜かれ斬撃となった攻撃はそのままルフィ達の所へ。

 

 

「いやややああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

おっ、ウソップが仲間に入ってる。と感激したのはいいがそのウソップもミホークの斬撃が襲いかかっている。

止めた方がいいかなーと思っていると

 

 

「ちぃっ!!!くいなッ!!刀だぁッ!!」

「うんッ!!!!」

 

 

直ぐ様斬撃の前に立ったゾロは刀二本と、くいなの刀を抜いてそれを口に加えて

 

 

「ほう"三刀流"か…」

 

 

ボソッと呟くミホーク。

そっか、くいなが生きてるから基本は二刀流になるのかなー。そしてこんな時にくいなから刀を借りて三刀流か。

 

そんなことをのんびり考えているとゾロは決死の覚悟でミホークの斬撃を

 

 

「うおおおおおおおおッッ!!!」

「"三刀流""鬼斬り"ッッ!!!!!」

 

 

交差した三本の刀は一点集中でミホークの斬撃に激突。

その瞬間に突風が吹き上がり、衝撃波は全体に広がる。

ミホークの斬撃はゆっくりとゾロの刀を押していく。

しかしゾロも負けじと力を強めていき

 

 

「負けるかああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

と、叫びながらミホークの斬撃を"反らした"

その斬撃は空へ飛んでいき雲を簡単に吹き飛ばして消えていった。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

たった一発の斬撃で体力を根こそぎ奪われたゾロ。

片膝をつかなかったのはもう意地である。

そしてギロッとハジメの方を見て

 

 

「こっちに飛び火を向けんなああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

「うん、ごめんね」

 

「謝りが軽いんだよッ!!!」

 

 

いいねー。ちゃんとツッコミが出来てる。

後ろのコックはビクビクしているようだけどゾロもルフィもいるしなんとかなるかなーと思ったけど頼もしくなったなー

 

 

「……知り合いか?」

「おっ。へぇー。あのミホークさんが他の人に興味を持つなんて」

 

「貴様ではのらりくらりとかわされて面白くなかったからな」

「いや、理由もなく誰が戦いますか」

 

 

もうこの戦闘大好きは手に負えない!

誰が好き好んで七武海の、それも大剣豪と戦うかッ!!

 

 

「面白そうだ。この海賊には私の暇潰しに付き合ってもらっていたが気が変わった」

 

「あのミホークさん?

散々僕を"非常識"っていってましたけど、暇潰しで海賊を潰すのは"非常識"には入らないのですか?」

 

「……場所を作る。戦えるようにしてこい」

 

「無視かッ!!都合が悪くなったら無視するんかッ!!!」

 

 

振り替えることもなく無慈悲にクリークの海賊船をステージに変えようと向かうミホーク。

あぁなったらもう無理だなー。と思い仕方なくゾロの元へ向かうことに。

 

 

「この野郎…会ってそうそうふざけたことを……」

 

「いや、斬撃を放ったの向こう」

「避けなくてもどうにでもなるだろうがッ!!」

 

「面倒くさい」

「ぶった斬るぞてめぇッ!!!!」

 

 

相変わらず短気だなー

するとサッとゾロの隣に立ったくいな

 

 

「お兄さんッ!!お久しぶりですッ!!!!」

「おお。くいな!すっかり剣士になって」

 

「ゾロとずっと稽古してますから。

それに今の成績は19998勝19995敗230引き分けで勝ち越してます!」

 

「へぇー。ゾロがね……」

「っとうに…斬るぞ!てめぇ!!!」

 

 

ニヤニヤしながらゾロを見ると襲いかかってきそうになったので、くいなが「まぁまぁ」と押さえてくれてあるので任せてルフィの元へ

 

 

「よっ。ルフィ」

「ハジメッ!!やっと会えたッ!!!」

 

「おいおい、まだロケットつけてるのか?

もう外してもいいだろうに」

 

「イヤだね。これはこの麦わら帽子と同じくらい大事なんだ。ニッシシシ!!」

 

 

それはありがたいけどこっちとしては、なんかちょっと気恥ずかしい感じになるんだよ。昔とはいえロケットをプレゼントで送って、それを今もつけているなんて……辱しめを受けている感覚なんだってーの!

 

そんなこといってもルフィは聞かないだろうから言わないけどね……

 

 

「で、ニコル…じゃなくてロビンで通していたな。

ロビンからの修行はどうだ?」

 

「……能力一切、使用禁止…」

 

「おお!厳しいなー」

 

「ハジメからなんか言ってくれよ!

これじゃ修行した意味が!!!」

 

「よし、ルフィのことはロビンに任せる!」

 

「え、ええええぇぇッッ!!!!!??」

 

 

そんなに喜ばなくても。

 

 

「ルフィも喜んでるし任せるねロビン」

 

「任されたわ。

………で、なにさっきのは?」

 

「い、いや……」

 

「はい、コレ。

海楼石効果薄めのブレスレットを常に身に付けなさい」

 

「……ばぃ……」

 

 

もう涙ぐんでいた。というか泣いていた。

せっかく解放されるはずのロビンの呪縛から抜け出せずに更なるお仕置き。……ルフィでも泣きたくなるなー

 

それでもルフィが強くなる。

今でもクリーク相手ぐらい一撃で沈めることは出来る。

でも未来を見据えたらこの時も修行させないと。

 

 

「……お……」

「うん?」

 

「…お前が、ハジメ…なのか?」

 

 

近づいてきたのはウソップと、その後ろに隠れるカヤ。

…………えっ?なんでカヤがいるの?キミ、あの村で医者を目指すんじゃなかったの!!?ここにいたら後のチョッパーの存在が薄くなるんだけど!!!

 

 

「はい。ハジメさんです」

「お前が……ハジメ……」

 

 

なんかワナワナと体や手が動いている。

感動しているのかなー。まぁ、ウソップの可能性を考えて色々書いておいてからなー

 

するとウソップは一歩近づいてきた。

おっ、抱き締めて欲しいのかな?

 

 

「分かりづらいんだよボケええええぇぇ!!!!!」

 

 

と、いきなり殴りかかってきた。避けたけど。

……えっ、なに??何が起きたの??何かした?

 

 

「……何が?」

「コレ読んで分かると思うのかッ!!」

 

 

『どうも。

さて、ウソップに無限の可能性を開くために何かをしましょう。何かといっても特別に鍛える必要はないですよーどうせ、鍛えても限界というものがありまして……って、限界を自分決めたらそこで試合終了って言葉があって、何事も自分の思っている以上のことが出来るってやつなんだけど、それでも肉体には間違いなく限界というものはあるんだよねー。で、何が言いたいかというと肉体的限界はあるかもだけど精神的限界は本当に自分自身で決めるものなんだよ!!ということでウソップに出来そうなものを書いておくから頑張って。

あっ、この手紙怪しいと思うよね。

いやいや、むしろここまで色々書くやつ大丈夫なんだよ。

だってストーカーは自分のことだけを永遠に書くし、何かを企んでいるやつはこんな風に書いたりしない。つまりこの手紙はウソップのために書いているのです!って、言っても信じてくれないようだからここでウソップしか知らないことを!

昔昔、父親ヤソップに連れられて海岸に向かったらカニに足を挟まれて、痛みのあまりに倒れこんだところにヤシの実があってそこに頭をぶつけたあと、高波に飲まれて揉まれて、やっとの思いで助かったときには服はズタボロに破れて大事な箇所は昆布が引っ付いていて、そこに偶然にカヤって女の子が目撃してしまい全速力で走って逃げたという話。

どう??僕のこと信じてくれた。

さてと、ウソップの可能性なんだけど僕的にこれだけしかなかったんだよね。まぁ参考にしてみて。

 

アクセサリー職人、靴職人、指輪職人、ベルト職人、帽子職人、メガネ職人、洋服職人、カバン職人、傘職人、自転車職人、朝起きれないあなたを起こす職人、夕飯のメニューを二択から一択に決める職人、仕事あとの上手い酒一杯を作る職人、マジシャン職人、天体職人、海水浴職人、空き樽職人…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長すぎんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!!」

 

 

ビッ、ビリビリに手紙を破りながら大声で叫ぶウソップ。思わずカヤは耳を塞いでしゃがみこむ。

そして目の前のボケッとしているハジメに対して

 

 

「もうワケわからねぇよ!!!

何を伝えたいのか分からねえし、だいたい「職人」につけばなんでもいいって感じで適当に書いてんじゃねえええええぇぇ!!!!!」

 

「で、何を選んだんですか?」

 

「………………………………マジシャン……」

 

「ほら、良かった」

 

「ありがとうございますチクショオオオオオオォォォォッッ!!!!」

 

 

泣きながら感謝してる。良かった良かった。

って、マジシャンって書いたかな……

……それ、戦闘に役に…立つんだよね……

…………まぁ、いいか。どうにでもなるね。

 

そんな風に安心していると慌てたようにバラティエの反対側から現れたヨサクとジョニー。おっ、出会ったんだ。

 

 

「ゾ、ゾロの兄貴ッ!!大変ですッ!!」

「ナ、ナミとノジコの姉貴が……海軍に捕まりましたッ!!!!」

 

 

「「「「「は、はあッ!!?」」」」」

 

 

おっ。予定外の事が起き始めたか。

でも問題ない。それさえもカバー出来るように()()()()()()()()()()()()()



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ルフィの決断

「お、おいッ!!それどういうことだよッ!!」

 

 

ウソップはヨサクの胸ぐらを掴む。

突然のことに誰もが動揺をするなかジョニーが言葉を進める。

 

 

「お、落ち着いてください!!」

 

「万が一と思い、俺らは船に残っていたんですが津波がくる前にナミとノジコの姉貴が戻ってきたんです」

 

 

それは少し前のこと。

タイミングとしてはクリークの船が割られて高波が発生する少し前。

 

 

「あんた達見ないと思ったらここにいたの?」

「ええ。船に何かあったら申し訳ないですので」

 

「まったく…律儀よね。そんなことしなくてもアイツらは怒らないわよ」

「流石姉さんたちですね!!」

 

 

その言葉に少し顔が曇ったように見えた。

しかしそれはヨサクとジョニーには分からなかったようだ。

 

 

「それでお二人はどうして?」

「汗をかいたから着替えにね」

 

「覗いたら……殺すからね(ニコッ)」

「へ、へい……」

 

 

そういって船内に入っていった二人。

ヨサクとジョニーは船に近づくものがいないか警戒をしていると、突然高波が発生したのだ。

 

 

「な、なんだ突然ッ!!」

「あんた達!!舵をとって船を安定させてッ!!!」

「へいッ!!!」

 

 

まだ着替えているのだろう。船内から出てこない二人の変わりに舵をきってりして船を安定させる二人。

その忙しさで全く気づかなかった。

ヘルメッポの軍艦と、説得に向かっていったその軍艦二隻がメリー号に近づいていることに。

 

 

「な、なんで軍艦が二隻もッ!!」

 

 

ゾロが乗っていた軍艦ということもあり少し様子を伺いながらヘルメッポが降りてくるのを待った。

 

しかし降りてきたのはもうひとつの軍艦から、フルボディが降りてきたのだった。

 

 

「ここに"泥棒猫姉妹"がいるはずだ。出せ」

 

「なんのことだ?」

「そんなやつ知らねぇよ」

 

 

と、シラをきる二人だったが次の瞬間フルボディの鉄拳がヨサクの顔面に突き刺さりそのまま海に落とされた。

 

 

「ヨサクッ!! てめぇッ!!」

 

 

反撃をしようとしたが簡単に返り討ちにあったジョニーも一緒に海に落とされた。

そして直ぐ様船に戻ろうとした二人だったが、いつの間にかメリー号が軍艦と一緒に去っていく所だった。

 

 

「ま、待ってええええぇぇ!!!!」

 

 

制止なんて聞くわけもなく3つの船は地平線へと消えたのだった。

 

 

「俺達が弱かったばっかりに…」

「しかしあのヘルメッポというやつはやっぱり"海軍"ですよ!」

 

 

悔しそうに言いながら拳を地面へと殴るジョニー。

しかし信じられないとルフィは

 

 

「んなこと、ヘルメッポがするか」

「そういいますが俺達は間違いなくこの目で見たんですよッ!!」

 

「ヘルメッポだぞ!!やるわけねぇ!!!」

「ルフィの兄貴ッ!!」

 

 

全く聞く耳を持たないルフィ。

しかしそこに決定的なものが……

 

 

「…おい、ルフィ。あれ……」

「ッ!!?コビーッッ!!!??」

 

 

ウソップが見つけたのは海に浮かんでいるコビーの姿。

後先考えずに海に飛び込もうとするルフィをウソップが制止してウソップがコビーを助けに海に飛び込んだ。

 

そしてコビーを連れて帰ってきたのだが、その姿はボロボロになっていた。

 

 

「コビー!!どうしたんだ!?」

「……ルフィ…さん……ヘルメ……ッポ…さんが……僕を……」

 

 

と、言葉が途切れて気絶してしまったコビー。

 

 

「おいおい…コビーをやったは…ヘルメッポなのかよ……」

「……ヘルメッポさん……」

 

 

誰もが信じられずにいた。

しかし目の前のコビーはボロボロになっている。

 

 

「ルフィの兄貴!!」

「やっぱりあの海兵は!!」

 

「うるせええええぇぇ!!!!!」

 

 

大声を出して一喝するルフィにヨサクもジョニーも黙ってしまった。

そしてコビーをカヤに預けてルフィはハジメの前に立ち

 

 

「…なぁ、ハジメ。おれ…」

「いいよ。好きにして。サポートはする」

 

 

その言葉にルフィは頷き

 

 

「俺、ヘルメッポを追いかける。

あいつがそんなことするはずがねぇ!!

そしてナミとノジコを助けてくる!!!」

 

「そうか。なら行ってこい」

 

 

おう!といい返事をするルフィに満足そうな表情をするハジメ。

 

 

(大分、というかもう本編とかけ離れすぎているからなー。もう好きにさせたほうがルフィが強くなる近道かもな)

 

 

と、判断した。したのだがさすがにルフィにヘルメッポを追いかける術はなく

 

 

「ヨサクとジョニーだっけ??ルフィを連れていってくれないか?」

「そ、そいつは構わねぇが…」

「だいたいあんたは誰……」

 

「お兄ちゃんに文句があるのかしら?」

 

「「ございません!!!」」

 

 

ハジメに疑問を持った二人だったが僅かな時間でもロビンの凄みを知っている二人は、この悪魔に逆らえられないと直感、いや野生の勘が言っていると素早く考えを切り替えた。

 

 

「まぁ、気を付けろよ。何があった知らないけどヘルメッポがこんなことになったのには理由があるだろうから」

 

「おう!」

 

「ルフィ。武装色二回に引き上げてあげるわ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

なんか、ロビンの命令に従うルフィは変な感じがする…

まぁ、昔からだけどやっぱりロビンをルフィの師匠にしたのは間違いだったかな?

それこそいまさらか。と気持ちを切り替えているとルフィとヨサク達はコックから小舟を借りてヘルメッポ達を追いかけるために海へと出た。

 

するとそこにサンジが不思議そうな表情で

 

 

「なんで信じられるんだ…どう聞いてもその海軍はお前らを陥れたんじゃねえのかよ……」

 

「かもね。それでも船長がそういうだから信じるよ」

 

「根拠ねえのにか?」

 

「ルフィは海賊王になる夢がある。

皆がバカにするかもしれないけどルフィはそれを命懸けでやろうとしてるんだ。

そしてそれと同じように"仲間"を信じてる。ヘルメッポは仲間とは違うけど同じ師匠の弟子、きっと理由はただそれだけだよ。それだけでルフィはヘルメッポを信じれる」

 

「……夢……」

 

「サンジにもあるんじゃない??

バカにされても叶えたい夢。その夢きっとルフィはそれをバカにはしないよ」

 

「……………」

 

 

変わっていないだろうなサンジの夢は。

"オールブルー"幻の海

それをいつか見つけると決めているはずだ。

だからきっとサンジは……

 

と、そこにMs.を指すように大声で怒鳴ってくる者が

 

 

 

「いい加減にしやがれてめぇらああああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

振り向くとそこにはクリークがいた。

おっ、クリークだ。それも顔を真っ赤にして。

そういえばミホークさんとゾロが戦うときにはその場にいて戦いを見ていたんだっけ?

 

 

「………あぁー。もしかしてクリークとやり合う予定だったのか?」

「すっかり忘れていたわ。お兄ちゃんが優先だから」

 

「ハジメの印象強かったしなー」

『うんうん』

 

 

その止めの言葉にクリークの怒りは頂点に達し

 

 

「お前ら……全員ここで死ねえええええぇぇ!!!!!」

 

 

と、叫びながら大きな盾を前につきだしてきた。

おっ。あれは猛毒ガス。いきなり使ってくる気か?

 

盾が変形し真ん中に打ち込み口が開くと同時にクリークはさっさと毒マスクをつけて

 

 

「M・H・5!!発射ッ!!!!」

「えっ。なんて?」

 

 

毒マスクをつけているから何て言ったか聞こえなかった。今回のクリークは間抜けだなー。

そんなことを言っている場合ではなかった。

飛んでくる砲弾には毒ガスが仕込まれている。

あれが広がったらここにいる人達は……

 

仕方ない。と砲弾を一時停止しようと一歩前に出た所で、ハジメの横を猛スピードで駆け抜けていった者達がいた。

 

 

「美味しそうなデザート、ありがとう」

 

 

と、レイジュが砲弾を真正面から受け止めて毒ガスを浴びる。いや、広まったと思った毒ガスはあっという間にレイジュの口へと吸い込まれていったのだった。

 

そして、もうひとりは

 

 

「ジジィのレストランに…余計なもんを入れるなッ!!!!」

「ゴブッッッ!!!!」

 

 

サンジがクリークの無敵と言われる黄金の鎧の上から蹴りをぶちかました。普通なら足の方が折れるというのにサンジの蹴りはその黄金の鎧を割りクリークの腹部へと貫通させ、その巨大な体は後ろへと吹き飛ばされた。

そしてその先にはやっと完成させたステージが、ミホークが暇潰しと作ったステージがあり

 

 

「元から、小物以下だったわけか」

 

 

と、胸の十字架から小刀を抜いて向かってくるクリークを下から上へと切った。すでにサンジの蹴りで意識のなかったため悲鳴はなかったが少しだけ哀れだなーと感じたハジメだった。

 

そのクリークの体は上空へと吹き飛んでいき見えなくなった。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

それをギンともうひとりの幹部の男が呆然と見ており

 

 

「く、クリークさーんッ!!!!」

 

 

正気に戻ったときにはもうクリークは空の彼方へ消えていた。

 

 

「さ、サンジさん!!!なんであんな不意打ちを!!!」

「いや、レイジュがあの砲弾に毒ガスが入っているっていうからよ。こちらとしては食事をするところにそんなもんをばら蒔かれたらたまったもんじゃないからな」

 

「だがよ!」

「それにお前らだって元からここを襲うつもりだったんだろうが。不意打ちも卑怯もねぇはずだ」

 

 

正論である。

正論なのだが、このやりとりはやっぱり違和感がある。

これじゃどっちが悪党か分かったもんじゃない。

 

 

「ほら来いよギン。メシを食ったお前はもう敵だ。しっかりとテーブルマナーを叩き込んでやる」

 

 

こうしてギンともうひとりの幹部対サンジの戦いが始まった。まぁ、クリークを吹き飛ばした実力を見れば楽勝で勝つだろうな。

 

そんなことをしているとクリークを切ったミホークがこっちを見てアイコンタクト送ってきた。

 

 

「……ゾロ。ミホークと一戦、やってみる??」

「ッ!!? 当たり前だッ!」

 

 

どうしてそうなったのか聞くとこもせず即答するゾロ。

 

 

「……ゾロ……」

「くいな。刀借りるぞ」

 

「……()()()()()()

「当たり前だ」

 

 

こうしてこっちも戦闘が始まる。

そして残された僕達は

 

 

「よし。ウソップは残りの残党をよろしく」

「いや、手伝えよッ!!!」

 

「いやだ。ミホークさんを見張ってないと加減を忘れそうだから」

「ならロビンが」

 

「お兄ちゃんを見てるから無理よ」

「…………はい」

 

 

横からカヤが「が、頑張って!!」と応援してくれただけでもやる気が出たウソップは「やればいいんだろうが!」と不貞腐れながら向かったのだった。

すると後ろから懐かしい気配がしたので振り返ってみると

 

 

「おおっ!ゼフさんじゃないですか!!」

「このクソガキが。てめぇのせいで余計なチビナスを入れることになったじゃねえか」

 

「荒くれものの集団が揃いも揃ってコックですもんね。

サンジの影響はやっぱり強かったですねー」

()()()()()()()()()()()()()()()()

ったく、アイツを見つけたときはてめぇを呪ったぞ」

 

「そう言いながらもゼフさんの夢、ちゃんと叶えたじゃないですかー」

「けっ!俺が考えていたものとは随分とかけ離れたものになったけどなッ!!」

 

 

ゼフとは何回か会った事があり、僕が姿を消したあとに手紙を送っておいたのだった。あの()()()()()()ことを止めるために。そしてサンジと出会いこのバラティエというレストランを作ってもらうために。

 

と、言っても『客船「オービット号」』にサンジという()()()()()()()()()()()()()()()と手紙に書いただけ。

 

ゼフはあんな顔をしていて義理人情にあつい人だと知っていたから、きっと手紙を無視しないだろうと踏んでいたけど

 

 

「でも、うれしそうですよ」

「蹴られてぇのかクソガキ。引退しても腐っても船長してたんだからよ」

 

 

そうやって片足を上げられるとこれ以上は言わない方がいいなーと思い、

 

 

「じゃサンジとの出会いとこれまでのお話ししてくださいよ」

 

「何が、じゃ、だ。んなこと誰が……」

 

「私も聞きたいわ。あの子自分のこと全然話さないの」

 

 

と、いつの間にか隣にいたレイジュ。

おお、随分と大人の女性になったこと。

というか、

 

 

「……なんでここにいるわけ?」

「失礼ね。貴方がいなくなってあの人が()()()()()って命令してきたのよ」

 

「一人で軍艦を沈める兄妹を僕を探すためだけに使わないの」

「「えっ?」」

 

「なに驚いてるのかな?特にロビン。今すぐ八咫烏と月兎をモーガンの元に戻しなさい」

 

「いや。月兎はもう散り散りになって「お兄ちゃんサポートセンター」として各地で奮闘しているから」

 

「なにやってるの?優秀な海兵をなにに使ってるの!?」

 

「ちなみに八咫烏は、特にオックスはいつでも海軍に戻れるように()()()の一人になりました」

 

 

 

 

「オ、オ、オ、オックスさんー!!!

カムバックウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥッッ!!!!」

 

 

やめて!!お願いだから僕のためにめちゃくちゃになるのだけはやめて!!ルフィ達のためならいいけど僕は脇役なの!本当にやめてよー!!



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サンジとゾロ

とにかく、とにかく、とにかく落ち着いて。

深呼吸をして気持ちを落ち着かせたハジメは

 

 

「じゃ、ゼフさん。お願いします」

「おい。なんで話す流れを作ってやがるクソガキ」

 

「いいじゃないですか。

どうせ、こっちは見物しかしないんですし」

「だとしてもチビナスの話なんざ……」

 

「サンジの夢。ルフィ達なら叶えられますよ」

 

 

その言葉に反応したゼフ。

"オールブルー"

世界中の魚が集まる料理人とっての楽園と呼べるもの。

それを探しだすのがサンジの夢。

 

 

「……ったく、どこから仕入れるその情報は?」

「教えませんよ。知っているから知ってるのです」

 

「……面白くねぇぞ」

「分かってますよ」

 

 

やっと話す気になったゼフ。

その間にもサンジは二人がかりに奮闘し、ゾロは入念に戦闘準備をしていた。本編なら考えられなかったなー無鉄砲に突っ込んでやられるのに、いまはこうして刀の手入れや準備運動とか……ミホークさんもちゃんと待ってくれているようだし、サンジの話をちゃんと聞けるかな?

 

と、いってもゼフから聞いた話は()()()()()()()ほとんど同じだった。

 

 

サンジが乗っていた船にゼフの海賊団が襲撃。

高波により沈没し、二人は遭難。

岩場の上に打ち上げられ脱出不可能。

食べ物はほとんどなく、その全部をサンジにあげたゼフ。

そして……餓死寸前で通りかかった船に助けられて、ゼフの夢だったこのバラティエを開業。そこにサンジも入り今に至る。

 

 

本編の流れ通り。だからここにサンジがコックとしているのだが、あくまでも流れが同じだけで中身は随分と変わっていた。

 

 

それはそうだろう。余計な"死"や損失はいらないから。

なのでまず、ゼフには"サンジ"というか名前を聞いたら真っ先に敵味方関係なく沈没しても助かる道を取るように説得するようにと書いておいた。

 

なので、ゼフが襲った船にサンジがいたことで、ゼフは突然に全員に高波に飲まれても助かるようにと小舟で避難したり浮き輪を手にしたり食料をかき集めたりなど、さまざまな対象をして……高波に飲まれた。

 

で、ゼフとサンジだけが高い岩場に打ち上げられた。

でも偶然にかき集めてた食料の袋が"2つ"流れ着いていたためにゼフは片足を無くす必要はなかった。

 

でもゼフならその食料さえもサンジに渡しそうだったので、手紙に「どんな状況でも"自分を犠牲にした助け"は相手に重い十字架を背負わせる」と書いておいた。

だからこそゼフは自分の食料を手放さず、しかしサンジに生き抜くための食料配分などを徹底的に仕込ませながら助けがくる船がくるまで生き抜いた。

 

そしてその船にゼフの仲間や、サンジがいた船のクルー達が"多く助かっていた"。

その人達と一緒にバラティエを開き今に至る。

 

サンジは食料の、食べ物の大切さを教えてくれたゼフに恩返しをしようとここでコックをしているが、サンジには夢がありそれに向かって追いかけたいという気持ちがあることをゼフは知っていた。

 

 

だとしてもサンジが自分から言い出すまでここに居させようとしていたようだが

 

 

「で、うちのチビナス。貰ってくれるのか?」

「僕としては。あとは船長次第ですかねー」

 

「その船長、ここにはいねえがどうするつもりだ?」

「そうなんですよねー。ルフィはサンジに勧誘してましたか?」

 

「知るか。アイツが言い出さない限りは認めねぞ」

「はーい」

 

 

うーーん、困った。

ゼフの話からすればルフィ達の仲間に入ることに対して本編より抵抗は無さそうなんだけど。

 

肝心のルフィがここにいない。

僕が勧誘するわけにもいかないし、だいたい船長がクルーを決めないと締まらないしなーどうしよう……

 

まぁ、後で考えよう!

サンジとゾロの戦いが終わってから考えればいいや。

 

 

というか、サンジの方終わりそう。

 

 

「あ、ありぇ…ねぇ……」

 

 

サンジの蹴りが"鉄壁のパール"の盾を蹴り崩した。

そう全身に硬い盾を纏ったパールをサンジはその脚一つで、真っ正面からその盾をぶち抜いて蹴りを喰らわせたのだ。彼方へと飛んでいったクリークのように。

 

こうしてパールは沈み、あとはギンだけ。

そのギンの姿もボロボロであり、サンジは汚れ一つも付けず息切れもなく立っている。

 

 

「もうやめろギン。お前じゃ俺には勝てねぇよ」

「……伊達に、“赫足のゼフ"の弟子じゃねえって…ことか……」

 

「誰がクソジジィの弟子だぁ!!?

これはあのジジィから盗んだもんだ!!弟子なんてなってねぇ!!!!」

 

「こっちも願い下げだチビナス」

 

「外野は黙ってろクソジジィッ!!!」

 

 

自分がいう分は良かったのか、ゼフから言われてちょっと不機嫌なっているように見えるサンジ。

片足を無くしたわけではないゼフは、その"脚技"をサンジに教えたことは間違いない。まぁ教え方がその身に味わってもらうという古いやり方ではあるが。

 

 

「それでも…俺は……あの人のッ!!」

「付け合わせってのは、メインを引き立てる物」

 

 

振りかぶった鉄球付きのトンファーをサンジはその脚で受け止め

 

 

「だが、メインが死んでたら…意味がねぇんだよ!!」

 

 

サンジは器用に脚でギンからトンファーを奪い取り、宙に舞うトンファーへ

 

 

「ガルニ(付け合わせ)・シュートッッ!!!!」

 

 

トンファーごとサンジはギンをその脚で蹴り飛ばした。

吹き飛んだギンの体は後ろで倒れているパールにぶつかりながら勢い止まらずに海へと落ちた。

 

そしてサンジは咥えていたタバコを離して

 

 

「次は、自身を引き立てるやつを見つけることだな」

 

 

WINNER サンジ

 

 

 

…………………………

 

 

「強いですね」

「当たり前だ。ここには海賊も来るからな」

 

「なるほど。じゃ"出張コック"よろしく」

「………はぁ?」

 

 

戦闘が終わったサンジを労い、そしてお願いした。

あまりにも訳の分からないことにサンジの口からタバコが落ちた。

落ちたタバコは直ぐ様ハジメが踏んで消したので燃え移ることはありませんでした。めでたし、めでたし。

 

 

「……おい、何言ってやがる?」

「いや、いま麦わらの一味にコックがいなくて。

ゼフさんに話したら"なら試しで連れてけ"って」

 

「クソジジィイイイイイイィィィッ!!」

「一回外を見てこいチビナス」

 

 

またサンジがゼフに飛び付き言い合いが始まった。

あとは二人に任せておいていいかなーと、さっさとその場から離れていく姿に変わらずにお茶をしているレイジュとロビンは

 

 

「……本当に変わらないのね。こうやって引っ掻き回すのも……」

「お兄ちゃんだもん」

 

 

なんか失礼なことを言われているような感じがしたけど無視をする。だっていまあのウソップが…活躍しているから!

 

 

「ほらほらほら!!」

 

 

5㌧ハンマーに乗り宙に浮かびながら、上空から鉛玉や火薬玉を乱れうちしている。

上空にいてさらに自由自在に動き回るウソップに、地上にいる海賊達は何もできずにやられていた。拳銃を持っていても当たるわけなく剣や素手なんて持っての他。

 

そして特に際立っていたのは後ろにいるカヤ

 

 

「9時から二人、そのあと2時、そして11時に三人よウソップさん」

「おう!!カヤが周りを見てくれるから助かるぜッ!!」

 

「人の顔を見てたら何をするかなんとなく分かるみたいなの。だからかな?」

「すげぇーなカヤ!!」

 

 

その言葉に嬉しそうな表情をするカヤ。

……なんだろう。いま無性にウソップを落としたいと思ったしまった。いや、やらないけど。やったらカヤも危ないしね。

 

 

「ウソップ~!降りてきたら一発殴らせてー!!

(ウソップ~!降りてきたら誉めてあげるよー!!)」

 

「何でだよッ!!!!」

 

 

あれ??誉めてあげるよって言ったのに何で怒られた?

よく分からないけどそれよりゾロかなーと移動することに。

 

 

「うっし!!もう大丈夫だ」

「そうか。なら始めるとしよう」

 

 

準備運動など律儀に待っていたミホークさん。

前だったら相手のことなんて考えずに突っ込むのに。

本当に面白い相手を見つけたって顔してるなー

 

 

「じゃ審判しますね」

 

「「帰れ」」

 

「酷くないですか?」

 

 

二人の間に入って審判しようとしたらあっさりと断られた。なんで?ちゃんと勝敗決めるのに。

 

 

「気が散る。消えろ」

「だな。邪魔だ」

 

「同じ剣士だからですか。息合いすぎです」

 

 

ここまできたらもう聞かないなーと諦めてロビンの所に戻る。隣に座ると直ぐ様椅子を近づけて体を密着させベッタリと引っ付いてきた。

 

 

「よくやるわ。負けると分かってるのに」

「いいじゃない。引けないこともあるんだよ」

 

「……くいなの前だから??」

「男。いや、"剣士"だからかな?」

 

 

向かい合うゾロとミホーク。

ゾロはまず刀2本抜き取った。

 

 

「3本じゃなくていいのか?」

「あぁ。こいつは"アイツ"だ。あまり傷つけたくなくてな」

 

「甘すぎる。それでよく剣士と名乗れるな」

「別にお前に認められなくても構わねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、アイツの為に(こいつ)を振るう。それだけだ」

 

「愛ゆえか。いいだろう。私の知らない力、見せてもらおう」



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ゾロVSミホーク

ゾロの瞳が見開き一気にミホークの元へ駆け出す。

ミホークは胸の十字架から小刀を抜き、ゾロの攻撃を受けようとした。

 

しかしミホークはそこで信じられないものを見た。

駆け出したゾロは突然片方の刀を()()()()()()()()()()

意味の分からないと動揺するミホークに対し

 

 

「うおおおっ!!」

 

 

刺した刀を手放さずに無理やり体を急停止させる。

その体は脚がミホークに向けて飛び出すようになり、そしてその瞬間にその手を離した。

 

謎の行動に動揺を隠せないミホーク。

だが次の瞬間行動の意味が分かった。

 

刺した刀からミホークに向けて、地面に亀裂が入った。

ミホークが用意したステージに亀裂が入ったのだ。

いまのゾロでは広いステージを切ることはできない。

しかしやり方次第では切るという現象を起こすことは出来る。

 

そしてその亀裂から飛び退いたミホークに、ゾロは()()()()()()()()()()()()

 

 

(束の先端に…ワイヤーだとッ!!?)

 

 

見えないワイヤーを引き寄せたゾロは両手に2本の刀を手にして

 

 

「"二刀流"……"奥義"ッ!!」

 

 

まさかの"奥義"という言葉にミホークは背中の刀を抜こうとした。しかしタイミング的に間に合わない。そう判断したミホークは小刀を()()()()()()()

しかしそんなことでゾロが攻撃を止めるわけもなく、左手の刀を逆手に持った状態で、上から下へ、下から上へと同時に、"始まり"と"終わり"のように

 

 

「"()(うん)ニ慈(にじ)"ッ!!!!」

 

 

放たれた攻撃は2本の柱が立っているかのように斬撃が残る。異なる2つの柱は"始まり"と"終わり"を意味し、それを喰らったものは生まれてからの時とその終わりまでの時を、走馬灯が一気に頭の中を駆け巡り、そして斬られたことを実感するという。

 

しかしそんな攻撃をミホークが喰らうわけもなく、見事に小刀一本で攻撃を受け止めた。ゾロにとってはそれは想定内。しかし……

 

 

(……まさか、俺に"黒刀"を使わせるとはな……)

 

 

不意打ちとはいえあのミホークが武装色硬化による"黒刀"を使うことになるなんて考えていなかった。

いくら面白い相手を見つけたとしても、弱者に対して全力で狩るなんて無様なことはしない。

 

しかしミホークは見誤った。

どんな方法を使ったとはいえミホークは目の前の者を"敵"と認識を改めていいと判断し始めていた。

 

 

地面についたミホークはすかさずに攻撃をしようとする。しかしゾロの追撃は終わらない。

 

 

鷹波(たかなみ)ッ!!(わし)(づか)()ッ!!!」

 

 

まず鷹波で撃によって波状の衝撃波を発生させる。

もちろん余裕で受け止めるミホークに、刀の攻撃ではく柄を使った打撃の三連撃。これには思わず逃げの行動してしまったミホーク。

 

剣士が…刀身を使わず束を使ってきた。

あり得ないとは言わないが…この戦いの場面で使うことを想定していなかった。

 

さっきから変わった攻撃方法に正直驚きを隠せないミホークは思わず笑みが溢れていた。

 

 

(……面白い。久しく変わった"強き者"を見つけた!)

 

 

だからこそミホークは一気にゾロから距離をとり、手にある小刀を……十字架の鞘に納めた。

 

 

「……後ろのそれを、使ってくれるのか?」

 

「そうだな。貴様には剣士の礼儀として、この世界最強の黒刀で沈めてやる」

 

「はっ!やってみろ!!!」

 

 

そういってゾロはやっと腰から三本目の剣を抜き、それを口に咥えて"三刀流"で戦うことにした。

 

しかしゾロは感じていた。

あの黒刀を振られたら……負ける、と。

手に取った瞬間に勝敗が決まってしまったと。

 

それでもやらないといけない。剣士として。

そして後ろで待っている……くいなのためにも!!

 

 

「"三刀流"……"奥義"ッ!!!」

 

 

両手の刀を時計回りと反時計回りに回しながらミホークに目掛けて走り出す。これが破れたら……負ける!!

 

 

「三・千・世界ッッ!!!!」

 

 

駆け抜けたゾロの体は……斬られていた。

全く見えないその攻撃は胴体を複数に斬られていたのだ。

そしてくいなの刀だけ残り、2つの刀は斬られてしまった。

しかしそれでいい。くいなの刀を守れたなら。

 

ゾロはくいなの刀を鞘に納めて振り向く。

するとそこにはすでにミホークが

 

 

「……なぜ、前を向く??」

 

「背中の傷は……剣士の恥だ」

 

「見事」

 

 

そのまま斬られると誰もが思っていた。

誰もがもう終わりだと思っていた。

ハジメ達だけは表情を変えずに見守っている。

 

しかし、まだ、終わりではない。

 

 

ガッキンッ!!!!

 

 

斬られるはずだったゾロだったが、ミホークの剣は届かなかった。

ゾロの刀を取り、二人の間に割り込み、使い慣れたその刀でミホークの一撃を止めた。

 

 

「ッ!!!斬らせないッ!!!!」

 

「……く、いな……」

 

 

そのまま斬ることは出来た。

いくら剣士とはいえ相手は女、押し斬ることなぞ簡単である。

 

しかしミホークは引いた。

くいなも斬られると思っていたがまさかの行動に安堵はあった。あったが気を緩めることはしなかった。

 

 

「剣士同士の戦いに割って入ってくることが、どういうことか分かっての行動か?」

 

「……分かってます。…それでも……」

 

 

真っ直ぐな瞳でミホークを見ながら言い放った。

 

 

「ゾロは斬らせないッ!!!」

「剣士だから死んでいいなんて理由にならない!」

「剣士同士の戦いだから、見捨てるなんて出来ない!」

「私は、剣士の誇りより、ゾロが大切なのッ!!!」

 

 

言い放った。二人の戦いに、剣士の誇りの戦いに。

その誇りよりも()()()()を選んだ。

そしてその瞬間に、くいなの刀「和道一文字」の刀身が一瞬()()()()()()

 

それを見たミホークは目を見開き驚きを見せた。

遠くから見ていたハジメも驚いていた。

ルフィのようにロビンから教えてもらう以外にそれをやり遂げるにはこの東の海では考えられない。

 

それをいま名も知れぬ、それも女剣士がやり遂げた。

後ろにいるものを助けるために握ったその剣が答えたのだ。

 

するとミホークはふっと笑いその剣を鞘へ納めた。

斬られると覚悟していたくいなは呆気に取られていると

 

 

「娘、名を名乗れ」

「く、くいな……」

 

「そうか。小僧名乗れ」

「ロロノア・ゾロ」

 

「くいな、ロロノア。貴様らがここで終わるのには惜しい」

 

 

そういいながら二人の前に立ち、

 

 

「我が名ジュラキュール・ミホーク。

貴様らが死ぬにはまだ早い。

 

己を知り、世界を知り!!

強くなれ、くいなッ!!!!

 

おれは、先、幾年月でも、この最強の座にて貴様を待つ!!

猛ける己が心力挿してこの剣を超えてみよ!!!

この俺を超えてみよ、ロロノアッッ!!」

 

 

 

その言葉に二人とも動けずにいた。

言葉を出せずにいた。

それを見ていたハジメはさっと二人の元にも向かい

 

 

「お疲れ様」

「…ハジメ……」

「……お兄さん……」

 

 

二人の頭にポンッと掌で撫でたあとミホークと対面し

 

 

「珍しい…いや、初めてですかね。

若い剣士にそんな事をいうなんて」

 

「……ふっ。貴様が鍛え上げるのだろう

我弟子"絶黒のハジメ"よ」

 

「いや、超無理やり指導してきただけですよね!!!

いいですか!!暇潰しで僕を鍛え上げるなんて非常識とい」

 

 

「帰る」

「聞けやボケエエエエエエエエェェェェッッ!!!!」

 

 

ハジメ以上のマイペースなミホークにとうとう言ったことのない関西弁が出てしまったハジメ。

しかし完全に無視して自分の船に乗り去っていった。

 

 

「あの野郎……いつか泣かす!」

 

 

毒を吐くハジメにくいなの肩を借りて近づくゾロ。

 

 

「……鷹の目の…弟子だったのか?」

 

「相手がいないからって無理矢理です!!」

 

「それでも…あの人の弟子なんて……」

 

「周りはよく驚くけどね、こっちは迷惑しかないの。

会うたびに斬りかかってくるんだよ!!そして新しい戦い方がみたいからって色々指導してきて……有難いもあるけど迷惑が多いんだよッ!! 1:9なんだよッ!!!!」

 

 

会うたびに斬りかかる。

それはどこででもだ。場所なんてとはない。

人の迷惑も省みずに斬りかかるミホークに、もう嫌だと本気で逃げたときもあったという。

 

最近大人しくなったから良かったけど、あの目、全く諦めてない。

 

するとこちらも諦めていない目でハジメの前に立ち

 

 

「……ハジメは、鷹の目に…勝てるのか?」

 

「勝てないよ。まぁ、()()()()()()()()()勝てるけど。それじゃあの人は満足しないからね」

 

「……それでもアイツの強さに一番近いはずだ…」

 

「どうかなー世界は広いし」

 

「……ルフィに、付いていくのか?」

 

「色々暗躍してたけどそっちの方が手っ取り早いし対処も出来るからね」

 

 

まぁ、なんとなく、ゾロの言いたいことは分かる。

分かるけど……麦わらの一味に入る理由、それでいいのかなー

 

 

「なら!!」

「ストップッ!!!それ以上は船長に言ってね。

それ僕の一存で決められないから」

 

 

その言葉はルフィが一番聞きたい言葉なんだから。

世界最強の剣豪であるミホークさんを倒すために、僕に修行をつけてもらう算段なんだろうねー。

まぁ強くなってもらいたいからいいけど負担がねー

 

 

「とにかくまずはその傷を治してからルフィを追いかけよかな。ロビンよろしく」

 

「分かったわ」

 

「わ、私も見ます!!」

 

 

ウソップからゾロの所まで連れてきてもらい二人で治療にあたる。

 

 

「縫合は私がやるから他を任せるわね」

「はい!!」

 

「手際いいわね」

「ロビンさんこそ…ものすごく速い……」

 

 

二人に任せとけば大丈夫かな?

あとは残党かー

 

 

「ウソップー!!手伝おうか?」

「いや、いい!!!俺一人で大丈夫だぁ!!」

 

 

なんとも頼りがいのある返事。

それ、本編でも聞きたかったなー

 

まぁ、これで大体のことは終わったかなー

まさかヘルメッポがフルボディとね……

なら()()()と関わりがあるわけかー

 

最高の対策は状況を確認してからでいいかな。

 

 

「ゼフさーん!終わりましたよー」

「みたいだな。メシ食ってけ奢ってやる」

 

「ありがとうございます!」

 

 

やったー!!

ゼフさんの料理を食べたくて早く終わらせて帰って来たかいがあったよ!



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旅立ち

「ダメね。-30点」

「ち、チクショーーー!!!」

 

 

ロビンの前に出したスープさえ口にせずに採点され涙目になりながら厨房へ消えた。

そのスープは隣のハジメやウソップが食べることに。

 

 

「すげぇーうめぇーのに、なんでダメなんだ?」

「気持ち悪いのよ。下心がある料理なんて、生ゴミ以下よ」

 

「表現。こっちはそれを食べている気になるからね」

 

「あのー……こんなことしてていいんですか?」

「どういうことカヤちゃん?」

 

「いや、ナミさんとノジコさんが連れていかれたんですよね。こんな風に食べてていいのかなーと……」

「大丈夫、大丈夫。ルフィ以外にロビンの分身が潜入してるから」

 

「なら、大丈夫ですね!」

 

 

度胸があるのか、ロビンを信じているのか、もう料理に集中しているカヤに隣のウソップも苦笑いしている。

 

 

「おい、コック。酒だ」

「あぁ!?ケガ人が何言ってやがる!」

 

「ゾロの血はお酒みたいなものだから、お願いできませんか?」

「は~い!!!くいなちゃんの為なら!」

 

「くいなにあまり近づくんじゃねぇよエロコック!!」

「てめえの意見は聞いてないんだよクソマリモ!!!」

 

 

本編では喧嘩する理由が小さかったけど、今回はくいなに対してか~。ご本人は満更でもないご様子で頬を赤くしてるなー

で、一通り喧嘩したあと緊張した表情でまたロビンの元へ料理を持ってくるサンジ。さて次はどうだ?

 

 

「ダメね。-50点」

「なんでダメなんだッ!!!」

 

 

サンジの下心はもう病気だからなー

あれをロビンに対して無くさない限り一切れも食べてくれないだろうなー

 

………あっ。もしかしたら。

 

 

「サンジー。それ頂戴」

「それはいいが……」

 

 

さりげなくウソップににやるつもりの肉料理をハジメの所に持ってきてもらう

 

さて、肉料理をフォークとナイフで取り分けて

 

 

「はい、ロビン。あ~ん」

「ッッ!! あ~ん!!!

……うーーん!!美味しいッ!!!」

 

「は、はぁーッ!!?」

 

 

やっぱり普通に食べた。いや、フォークをねぶるように食べてるから普通ではないか……

 

 

「いや、サンジの料理でも僕からの経由なら食べれるかなーと思ったけど」

「うん、お兄ちゃんだから大丈夫。+1億点」

 

「1おくッ……」

 

 

料理は美味しいのに、下心というものを入れてしまったらダメ。ロビンという最上級のストーカーは人をやめてますからねー

 

 

「しかし大きくなったねサンジ」

「会ったことあったか?」

 

「昔ね。客船の見習いコックで働いていたでしょう。

そこに食べに行ったことがあるんだよ。そのときに」

 

「も、もしかして!!?」

 

 

そういって厨房へ戻っていき、直ぐ様何かを持って戻ってきたサンジ。

 

 

「この包丁をくれたのって…」

「うん、僕だよ」

 

「ハジメだったのか!!

あの時これをくれたお陰で俺はッ!!」

 

 

どうやらまだ半人前だったサンジは包丁さえ持たされずに雑用ばかり。そこに僕がサンジに包丁をあげてから腐らずにコックをやってこれたそうだ。

 

 

「小さな包丁だがよ、おれはこいつがあったから…」

「それなら良かったよ」

 

 

少しでも早く料理に対しての認識を変えてほしくて渡した包丁だったけど、いい方向に進んでくれてよかった。

 

 

「なに感傷に浸ってやがる。さっさと持ち場に戻れチビナス」

 

「うるせぇぞクソジジィ!!てめえより前の恩人なんだ!とやかく言われる筋合いはねえ!!」

 

「俺は料理長だ!言うに決まってるだろう!!!」

 

 

クソが!と文句を言いながらもちゃんと厨房へ戻っていくサンジ。律儀だねー

 

 

「そんな話は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それ、本人に言わないと意味がないですよ」

 

「けっ。湿っぽいのは苦手なんだ。ほらよ」

 

 

そういうとゼフは二通の手紙を渡してきた。

 

 

「これは?」

「ひとつはアイツが海賊になると決めたときに渡してくれ。

もうひとつはてめえの知り合いからだ」

 

 

もうひとつの手紙、それは

 

 

「白ひげさんからだ!!」

「…ったく、あの白ひげから手紙事態あり得ねぇのに、内容が変わった奴がきたら渡してくれって……まさかそれがお前さんとはな……」

 

 

でも、どうしてここに?

分からないけどとにかく手紙を読もうとゼフさんに一室お借りしてロビンと一緒に見ることに。もちろん部屋には一時停止をかけて完全密室状態。

 

そして手紙にはこう書いていた。

 

 

『久しぶりだなハジメ。

おめぇが鷹の目の船に乗ってるって見かけた奴がいてな』

 

 

そういえば白ひげさん達のところには長くいたから存在を消しても見えやすいんだ。その時に見かけられたのかなー

 

 

『まぁハッキリみたわけじゃねえが、あの鷹の目と一緒いれるバカはおめえぐらいだからな』

 

 

五月蝿いですよ。

 

 

『で、これからの航行の予想してそこにいくだろうと思ってな。当たっていりゃ儲けもんだ』

 

 

いや、ドンピシャすぎて怖いですよ白ひげさん。

 

 

『これからが本題だ。入ってきたぜ、()()()()()()()()。あの時言っていたことが本当だって分かったときは鳥肌がたったぜ』

 

 

来たかエース。本編よりもさらに強くなったかなー

 

 

『これでハジメが言っていたことが本当になったわけだ。つまり……ティーチのやつがやらかすというわけか』

 

 

そう、その通り!!

 

 

『そしてハジメがいなくなる前に言っていた悪魔の実、こいつが引き金になるってわけか』

 

 

流石白ひげさん!!

 

 

『まぁ、なんとなくこれからのことも想像はついた。

そんな最悪な結末が来るなら、こちらとしても掟を強引に変えてでも息子達を守る必要がある』

 

 

そう、悪魔の実を手にしたやつがどうするか権利が持てる。これがサッチが殺される理由。

 

 

『とりあえずは手にした悪魔の実は俺が保管しておく。あとしばらくは三人一組で行動するようにと言ってある。なにか変化あったらまた連絡をする』

 

 

すげぇーな。あんなちょっとしたヒントで完璧な回答。

 

 

『P.S.この前オックスと()()()()が遊びに来たぜ。

モーガンはずっとハジメの愚痴ばっかりで、オックスはずっとハジメの自慢話。二人の大将がハジメの話してるところにエースも加わって盛り上がっていたぜ』

 

 

それはよかったねー。久しぶりにエースに会いたいなー。

モーガン。後で、しばく

 

 

…………………………

 

 

手紙を読み終わり広間に戻ってみるとすでに出発の準備を終えているようで、ゾロ達はゼフからもらった小舟に乗り込んでいた。コビーもすでに乗っていてまだ目が覚めていないようだ。

 

 

「いいんですか?小舟にしてはいいやつですよコレ」

 

「せっかくコックが乗ってるんだ。厨房がなきゃ意味がねぇだろう」

 

 

ゼフの粋な計らい。いやなにからなにまでお世話になります。

キチンとゼフにお礼を言ったあと船に乗り込むとそこにはまだサンジの姿はなかった。

 

というか、

 

 

「レイジュ。君も来る気なの?」

「せっかくだからグランドラインまで送ってもらうことにしたわ。ちゃんと船に乗せてくれる分の働きはするわよ」

 

 

それについては疑ってないけど…

なんか…本編に関わって覚悟はしてたけどずいぶん麦わらの一味に人が増えたなー。一味に入ってなくてもこんなに乗船したことなかったよね。

 

そんなことを考えているとサンジが準備を終えたのか、手提げ袋を1つ持ち現れた。

そしてコック達に「じゃ行ってくる」といい、コック達は「帰ってくるな!」と嫌みをいう。

 

それはそれだけ言い合える仲間なんだなーと感じるところ。そして最後にゼフの前に立ち

 

 

「帰ってくるまでくたばるなよジジィ」

「はっ!てめぇもな」

 

 

まぁ、すぐに戻ってくる。

サンジ的にはそう考えているのだろう。

しかしゼフは違う。もうここには…と送り出しているはずなんだけど……湿っぽいのは苦手と言ってたからなー

 

だからか、それだけ言ってサンジは船に乗り込もうとする。ゼフも何も言わずにこのままお別れかと思ったが

 

 

「……風邪、引くなよ。サンジ」

「ッッ!!!!」

 

 

その言葉に一気に涙腺から涙が止まらなくなるサンジ。

コレって……もしかして……

 

 

()()()()()()()()!!!!!」

 

 

ゼフのほうに振り向きながら涙を流し、そのまま土下座をして

 

 

「長い間クソお世話になりましたッ!!!

このご恩は一生忘れませんッッ!!!!」

 

 

……やっぱり、分かっていたようだ。

お試しでサンジを連れていくなんて…そんな虫のいい話はない。

それでもサンジはこうしてゼフの元を離れて着いてきてくれる。それはきっとものすごく大変な決断だったはず。

 

それを"またすぐに会える"という程でやっていたのに、ゼフの優しい気遣いがサンジの心を打ったようだ。

 

 

「……バカ野郎が……

…演じるなら…最後までしやがれ……」

 

 

そういいながらもゼフも一粒の涙を流していた。

こうしてサンジはハジメ達と一緒に着いていくことになった。いまはまだ入っていない麦わらの一味になるために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………

 

 

「……で、なんでいるの?」

「お願いします!!!!」

 

 

出航してすぐに気づいた。

どういうわけか()()()()()が一緒に乗っているのだ。

 

 

「ちょっとサンジ!!」

「俺に言うな!」

 

「ウソップ!!」

「関わりなかったろうが!!」

 

「ゾロ!!……は、いいか」

「最初からいうな!!!」

「大声出さないの!!」

 

 

傷口が開くかもしれないのに何やってるんだか。

ということは……

 

 

「……ロビン」

「連れてきた」

 

「だから、勝手に連れてきたらダメだって。

ヤスミ・コガみたいなやつだったらどうするの?」

 

「捨てるわ」

「なら、拾うな」

「………す、捨て犬じゃないんだが……」

 

 

もう…ここで下ろすわけにもいかないし…

改めてギンの方を見ると意気込みを見せるためか

 

 

「初めは断ろうと思ったんだ!!だけど俺は()()()以外の強さを知ったんだ。だから見てみてぇ!!俺の知らない強さを見たいんだ!!!」

 

 

そ、そう言われると……否定するわけにもいかないしなー

 

 

「……僕が決めるわけではないですからね」

 

「そ、それじゃ!!」

 

「頑張ってください」

 

 

ヨッシャー!!と喜んでいるギン。

まだ一味に入った訳じゃないのに……

というか、麦わらの一味っていま"ロビン"ウソップ"カヤ"だけなんだよなー

 

残りの"僕"ゾロ"くいな"サンジ"ギン"ナミ"ノジコ"って……7人が海賊になるかどうなるか分からない状態って……

 

 

「超斬新な海賊団だな……」

「??」



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海のかいじゅう

「なぁ、ハジメ。

俺たちはいまどこに向かってるんだ?」

 

 

バラティエを出発して1日。

まだ目的地に着かないことに、行き先を知らされていなかったためかウソップからそんなことを言われた。

 

 

「第16支部」

「………はっ?

いやいや、そんな支部とか言われても」

 

「海軍支部か」

「へぇ?」

 

「そういうこと。

いまルフィ達はココヤシ村に着いたみたいだけど、どうせ落ち合うのはその支部だからね。直接向かうことにしたんだ」

 

 

しかし未だにウソップは固まったままである。

そして数秒してやっと覚醒したウソップは

 

 

「な、何いってるんだお前はよッ!!!」

「まぁ、そう言いたくなるよねー」

 

「なるよねー。じゃねえよ!!!

海賊が海軍支部に乗り込むって…正気かあッ!!?」

 

「でも乗りこまないとナミ達やメリーも取り返せないよ」

 

 

それにぐっ!!と思わず声が出て図星のことを言われたためにそれ以上ハジメに言い返せないウソップ。

 

 

「ならメリーだけでいいじゃねえか!」

「ちょっとウソップさん!?」

 

「だってよあのナミやノジコっていまいち信用出来ねぇ。

元は海賊専門の泥棒なんだろ。たまたまロビンがいたから一緒に船に乗っていたけどよ。俺達からすれば敵みたいなもんじゃねえか」

 

 

ウソップの言いたいことは分かる。

そしてカヤが引き留めることも分かる。

 

いまナミやノジコは危うい立場にいる。

仲間なのか、敵なのか、一緒に過ごしていたけどそこまで関わりを持っていないというのが全員の意見だろう。

 

 

「ふざけんなウソップ!!!

ナミさんもノジコさんも、レディを助けるのが男だろうが!!!」

 

「いや、お前は下心が大きいだろう」

「ええ。姉が太鼓判を押すわ」

「うるせぇぞレイジュ!!」

 

 

しかしサンジはこれがゾロだったら正直助けるのか…

もちろん助けるだろうが文句をいいながら、嫌みをいいながらになるだろうなー

 

 

「でも、なんでルフィさん達はそのココヤシ村に?

直接向かった方がいいじゃないんですか」

 

「それは私がそこに向かわせたからよ」

 

「ロビンさんが?」

 

「その村はナミとノジコの故郷。

それに今回の出来事に関することを聞けるかと思ったからなの」

 

 

…………………………

 

 

時間は少し戻りルフィ達が乗る船の出来事。

 

 

 

「し、師匠……どうして…ダメなんだ……」

「弱るか文句をいうか、どちらかにして」

 

 

海楼石のブレスレットを付けたルフィは力が抜けており、なんとか歩くことができるがフラフラの状態。言わば高熱を出して力が出ないような感じである。

 

 

「どうしてナミ達が拐われたか、理由も分からず乗り込むのは無能がすることよ。それとも何??ルフィは私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()としたいのかしら」

 

「……ご、ごめんなざい………」

 

 

それでいいのよ。とぐうの音も言わさずに目的地をココヤシ村に変更したロビン。ガープに対する苦手意識よりも数段ロビンに対してダメな感じなのだろう。

そして海楼石の効果もあるのだろう。

いつも以上にメンタルが弱い……

 

 

「お二人の故郷ですか…そこにいけば分かるんですかい?」

 

「少し違うわ。私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言ったほうが正しいわ」

 

「は、はぁ…」

 

「理解しなくてもいいわよ。

私を理解出来るのはお兄ちゃんだけだから」

 

 

いや、ハジメも理解出来ない。なんて突っ込んだら最後なんだろうなー。とルフィの頭を考えが駆け巡ってすぐに消え去った。

 

 

「……いくぞ…師匠の言うとおりに……」

「い、いいんですかルフィの兄貴」

 

「……師匠が決めたんだからな。俺には…分からねぇけどきっとなんか意味がある。……理解出来るか分からねぇけど……」

 

「ええ。半分は無理ね」

 

「よし!………ぃごぅ………」

 

「「ハッキリしろッ!!!!」」

 

 

…………………………

 

 

「と、いう感じよ」

 

「ル、ルフィさん……」

「…同情するぜぇルフィ…」

 

 

ルフィ達の大まかな会話をロビンが話すとウソップとカヤは項垂れた。ロビンやハジメという強い人はいる。いるけどその分"人として足りないものが多すぎる"と改めて自覚してため息をつくしかなかった。

 

……この海賊団で、大丈夫だったのか、と。

 

 

「そこがルフィのいいところよ。お陰であや……操りやすいから」

 

「言い直してないッ!!?」

 

「止めなさいロビン。アレでも船長なんだから」

 

「……楽しんでるよな。絶対にルフィで楽しんでるよなッ!!?」

 

 

知らない。僕は知らない。

あんな純粋な思考の持ち主で遊ぶなんてこと。

 

 

「昔に比べたら数は減ったかな」

「そのお陰で私やお兄ちゃんには逆らえない」

 

「お前らは本当の鬼かあッッ!!!!」

 

 

失礼な。

 

 

「……っるせえな。寝てられぇだろうが」

「だとしても横になってて」

 

「おい、コック。酒だ」

「ふざけんなクソマリモッ!!!俺を顎で使うなんていい度」

「コップ一杯の水でいいですので」

 

「喜んでぇー!!!」

 

 

あっちはあっちで面白いことをしている。

酒じゃねェ。と文句をいうゾロ。いまはそれで十分。と言い聞かせるくいな。特製ドリンクはどうですかー!!とくいなに接近するサンジ。

そして近づくサンジの前に立ち「近づくなエロコック!!」と睨みをきかすゾロと、「邪魔だクソマリモ!!!」とにらみ返すサンジ。そして「二人とも止めて!!」とヒロインのような扱いのくいな。

 

 

「仲が良くていいですね」

 

「「「どこがだッ!!!??」」」

 

 

そういうところが。

 

 

「いや、もういい。

とにかく飯にするぞ。あと半日以上はかかるんだろう」

 

「そうですねー。それぐらいはあるかと」

 

「なら食べとけ。腹が減ったら勝てるもんも勝てねぇ」

 

「俺はチャーハン!!!!」

 

「分かったよ…どんだけチャーハン好きになったんだコイツは……」

 

 

飯の話をした途端にギンがチャーハンと言ってきた。

どうやらバラティエで飢餓状態で食べたあのチャーハンが大好物になったようだ。……あれ??本編はピラフだったような……別にいいけど。

 

サンジが料理の支度をしている間に

 

 

「ロビン。ナミとノジコに何があったのか、話してくれる?」

 

「もちろんよお兄ちゃん」

 

 

…………………………

 

 

それからサンジが料理を作り終えるまで話は続いた。

思っていた以上に過酷な過去。

そして……間違いなくそれは"ハジメが改変したことによるもの"だってことがハッキリと分かった。

 

……ルフィの旅だ。手出しをするつもりはなかったけど、どうやら僕自身がケジメをつける必要がありそうだなー

 

 

「……なるほど。それは"航海"をしたくなくなるな」

 

「……ナミさんに、そんなツラいことが……」

 

「…………」

 

「…酷すぎるよ……」

 

「おのれー!!クソ野郎共が!!」

 

「人を…なんだと思ってやがる……」

 

 

それぞれ思うところがあるみたいだ。

さて、どう潰してやろうか……

 

 

「……お兄ちゃん、悪い顔してるわ」

「たまには、やる気、ださないとね」

「じゃ、その支部()()()()()()

 

 

誰もが意気込んでいると、突然近くの海面が競り上がって

 

 

「ぎゃあああああぁぁぁー!!!

()()(()()()()())()()()()()()()()()()()!!!!」

 

 

海面から顔を出したのは大きな牛。

いや体は魚のような姿をしているので海牛だろう。

というか、これって……モームか?

 

……ってか、ウソップ五月蝿い。

 

 

 

「…こ、こんな…化け物……()()()しか見たことなかったのに……」

 

「ギン、知ってるのか?」

 

「グランドライン。あそこにはこんなやつがウヨウヨいたんだ……で、一隻がこいつらに沈められた……」

 

「ぎゃあああああぁぁぁ!!!行きたくねぇぇぇぇ!!」

 

 

どうやら根っから変わったわけではないみたいだ。

でも五月蝿いのでロビンにアイコンタクトを送り、強制的に静かにした。正確には生やした二つの手でウソップの口を塞いだ。

 

 

「……旨そうだ」

「こら、ゾロ!やめなさい!!」

 

 

舌を出し口元を舐めるゾロをくいなが止める。

うん、止めてあげて。これでもモームは臆病なんだから。本編ではこのあとトラウマを埋め込まれるだから。

 

まぁ、初見である僕達にまだ恐怖心はないのだろうけど……

 

 

「面白いわねココは」

「それはなによりで」

 

 

さっきから傍観していたレイジュはそんなことを言ってきた。基本的に関わりは持たずに必要な時だけやるみたいだ。

 

するとモームはこっちに近づきながら鼻をクンクンと動かしている。

 

 

「……お腹、空いてるみたいですね……」

「ふぅがうがんんが!!!」

 

「多分サンジさんの料理じゃないかと思うけど」

「うんががんふふん!!!」

 

「うん、試しに何かやってみたほうがいいかも」

「どうして会話が成立しているのかしら?」

 

 

何を言っているのか分からない。

それでもウソップとカヤには分かるようだ。

そして珍しくあのロビンがマトモなツッコミをした。

今日は何かとんでもないことが起きるかなー

 

 

「ったく、海牛にやる飯はねぇってのによ……」

 

 

そういいながらサンジは皿の1つを手にして

 

 

「ほらよ。食うか?」

 

 

そういってモームのほうに皿をつきだした。

するとモームはゆっくりとサンジの方に近づき

 

 

「死ねぇ!コラッッ!!!!」

 

 

と、モームの顎をダイレクトに蹴り飛ばした。

 

 

「何やってんだおめぇはッ!!!」

「俺を食おうとしやがったからだ」

 

 

いや、サイズ感的にそうなるよ。

すると怒ってきたモームがモウウウゥ!!!と突っ込んできた。

 

あぁ~止めたほうが……

 

 

「やる気か?」

「このクソウシが」

「や、やってやるぜッ!」

「お兄ちゃんに危害を出すものは、許さない」

 

 

あまり直接的に海に能力は使いづらいみたいだが、それでもロビンは海中にある一番高い岩石2つから大量の手を生やして海面へ伸びそのまま空へ。それを大きな2つの手を作り出したのだ。

 

その手はモームの頭と尻尾を掴み空中にあげて。

 

 

「"万紫万紅(ディミル・フルール)""巨大樹(ヒガンテスコ・マーノ)""ブリッジ"」

 

 

大きな橋がかかったようにモームをガッシリと固定。

そしてゾロがくいなから刀を借り抜き構え、

サンジがウソップの空飛ぶハンマーに乗り頭上に、

ウソップはどこから出したのかモームの背後に巨大な雲が現れていた。

 

 

「…うわぁ……」

 

 

これから起きることにハジメは予想できた。

出来たのでモームに対して可哀想にと本気で同情した。

 

 

 

「眼・耳・鼻・舌・身・意…

人の六根に好・悪・平!

またおのおのに浄と染……一世三十六煩悩」

 

「口を閉じろ、風味が逃げる。

コショウを最高のミニョネットに仕上げたければ大切なのは強く粗くためらわず……砕ききることだ。

そうすれば閉じ込められた素晴らしい風味はこれによって一気に開放される」

 

「レディース、アンド、ジェントルマンッ!!!

これからお見せしますのはかの有名な孫悟空が愛用していたあの武器ございます。

さてさて、出せることが出来たら拍手喝采お願いしたします!!」

 

 

ゾロが居合いをするかのように刀を振るい斬撃が空中

を走り

サンジはハンマーから上空へと飛び回転しながらモーム頭上へと

ウソップは大きな雲の中央から突然と巨大な棍棒を出現させて

 

 

 

「"一刀流"!"三十六煩悩砲(ポンドほう)"ッ!!!」

「"粗砕(コンカッセ)"ッ!!!」

「"天上(てんじょう)如意棒(にょういぼう)"ッ!!!」

 

「モッヴヴヴヴウウウウウウウゥゥゥッッ!!!!」

 

 

うわっ。

やり過ぎ。マジでやり過ぎ。

煩悩砲とか粗砕とか、本編ではまだ先の技なのに…

そこにさらにウソップの棍棒って…それもあの孫悟空の如意棒って、マジかよ……

いくらマジックでもやり過ぎたからね。

ってか、それ本当に種も仕掛けもあるのか!!?あるほうが怖くなってきたよ!!!!

 

さらにロビンがモームを完全ロック。

悲鳴をあげているけど、アレだけの攻撃でもビクともしないなんて……マジで強くなりすぎだ……

 

 

……モーム。泡ふいてるけど…生きてる?



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ココヤシ村、ニコルの変化(こっちがメインかも…)

「…ニ、ニコル…ニコルか……」

 

「あら、ゲンさん。お久しぶりね」

 

 

ルフィ達はロビンに連れられてココヤシ村へ足を踏み入れていたのだが、さっそくその村に入った途端に知り合いに会ったようで。

 

 

「お前は……お前は、今まで何をしていたんだッッ!!!??」

 

 

突然にロビンにキレたヒゲと()()()()()()()()()()年配者に怒られた。

そしてその瞬間にルフィの顔が青ざめる。

あのロビンにキレたのだ。あの悪魔のロビンに。

そんなことをしたら死にたいと思わせるほど拷問をして、それでも死ぬことを許されずに1ヶ月間生死の境をさ迷うという……もう、それを思い出しただけで全身から汗が吹き出て手足は震える。

 

というか、海楼石ですでに弱っている。

 

 

「ル、ルフィの兄貴ッ!!?」

「ね、熱中症ですかッ!!?」

 

 

的外れなことをいうヨサクとジョニーは無視して

 

 

「色々あったのよ」

「あったのよだけですまされるか!!」

 

「親でもない貴方に言われても響かないわ。

それにお兄ちゃんとは再会したの。これで満足??」

 

「……ったく。心配をかけさせるな……」

 

 

どうやらゲンさんという人はそれを聞いて落ち着いたようだ。しかしまだルフィの方がダメなのようで

 

 

「で、後ろの麦わら坊主の様子がおかしいが…」

「気にしないで。いつもの症状だから」

 

「いつもルフィの兄貴は熱中症に!!?」

「ヤバくないですかロビンの姉御ッ!!?」

 

「ヤバイのは貴方達の頭よ」

 

 

どうもこのメンバーだとたまにロビンがマトモに見えてくる。それを見ていたゲンさんも「…あのニコルが…」と感心するほどに。

 

 

「とにかくベルメールに会っていきなさい」

「元よりそのつもりよ」

 

「ったく、どうして最近の若い奴らは言葉遣いを…」

 

「それをそのままあの子達に言ってあげたらどうかしら?」

 

「それは不良娘と言いたいのか!!!

あの子らは天使だッッ!!!!」

 

「ツンとデレの落差が激しすぎるわ」

 

 

ため息をつくロビン。

ここまでのカオス、あまり見たことがない。

と、自己評価できるあたり大人になったのか、たちが悪くなったのか……あまり考えたくはない……

 

 

…………………………

 

 

「ニ、ニコルッ!!!!」

 

 

ミカンの収穫作業していたベルメールの元にゲンさんと一緒に現れた()()()()()()()()()が現れた。作業をやめ突発的にニコルに抱きつくベルメール。

 

 

「もうッ!!どこで何をしていたの!!!」

「ゲンさんも貴女も、どうしてそこまで他人を心配出来るのかしら?」

 

「他人じゃないでしょう!友達よッ!!」

 

「10歳も離れているのに?

分かってるの貴女、もう40歳なのよ」

 

「言わないで!!!年齢を言わないで!!!」

 

 

子供じゃないのだから……と言わんばかりにため息をつくロビン。

どうもこの村はロビンにとって苦手な場所。

恋敵(ライバル)でさえもこうして接してくる。

そしてほとんどの場合ロビンがツッコミ役となる。

嫌いではないが……苦手であるのは間違いない。

 

 

 

「そんな歳になっても婿をもらわないなんて…

本当にお兄ちゃんと結婚する気になの。本妻は私なのよ?」

 

「そ、そんな…け、結婚なんて……///」

 

「やめて頂戴。40歳の照れなんて見たくないわ」

 

 

本当に頭が痛くなってくる。

いくら自分が本体ではなく分身でも、本体とは繋がっているのだ。きっと向こうも頭痛が止まらないのだろう……

 

 

「もういいわ。お茶を出しなさい」

「あんたね…こっちが年上なのよ……」

 

「知らないわ。本妻なのだから愛人は黙っていうことを聞くこと」

「……本当に、変わらないわね……」

 

 

文句をいいながら自宅に向かうベルメール。

そんな後ろ姿を見ていたロビンは、どこかの二人の姉妹の面影と重なった。

 

 

「……んとうに、そっくりね……」

「?? そっくりって??」

 

「中で話すわ。色々あったから落ち着いて話したいのよ」

 

 

…………………………

 

 

「……まさか、ナミとノジコがニコルと一緒にね…」

 

 

とりあえずバラティエ前までの話を終えたロビン。

その話を聞いたベルメールは嬉しそうに話を聞いていた。

 

 

「あの子達、私の結婚式を挙げるって……

でも費用が高いからって海賊から盗みよ。こっちは元とはいえ海軍に入っていたというのに……」

 

「むしろよく貴女のような不良が入れたわね」

「私としてはそれをニコルに言いたいわ」

 

 

そうかしら?と真顔で不思議がるロビンにベルメールは軽くため息をつく。周りをよく見ているはずのになんで自分のことはそこまで分からないのか?と

 

 

「……でも、それでも…嬉しいものね…

あの子達が一生懸命にしてくれるのは……」

 

 

その表情は本当の母親のように見えた。

一瞬だが自分の母親と重なった気がした。

だからこそ…告げないといけない……

 

 

「それであの子達は??

というか……いいの?後ろの子は……」

 

「…ひゅぅ……ひゅぅ……」

 

「構わないわ。修行中だから」

 

 

長時間の海楼石と、精神的に弱ったことで過呼吸になりかけているルフィ。しかしロビンは甘やかさない。それぐらい()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

 

 

「さて、私としてもそこが本題なの」

「…ちょっと待って。あの子達に何かあったの?」

 

「それをいう前に私の質問に答えて」

「あの子達に…何があったというのよッッ!!!!」

 

 

テーブルを叩きロビンを問い詰める。

そんなことで動揺するわけがないが、予測していたことだったのだろう。はぁーとため息をついたロビンは

 

 

「落ち着きなさい。そうやって取り乱したり考えてなしで行動するから言いたくないの。少なくとも()()()()()()()()()()()

 

「そういう状況にあるだけでもうダメでしょうッ!!!!」

 

「ニコルッッ!!!!」

 

「ゲンさんも落ち着いて。

……本当に感情で動く人種は……」

 

 

……それ?貴女がいうこと?とつい言いたくなったヨサクとジョニー。しかし二人は分かっていた。いま自分達は影のように潜んでいることが正しいと。

 

 

「ここに私と、私と繋がりのある海軍は来たことあるかしら?」

 

「ないわよ!!それが!!」

「いいから落ち着きなさい。

あと1つの聞いたら教えてあげるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「育ちの悪いミカンはあるかしら??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あるけど…それがナミとノジコに関係するの?」

 

 

その問いに、ロビンははぁ~と小さいため息をつく。

どうやら関係があるようだが問い詰められない。

いま、目の前のニコルは()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

 

「……ここまでクズだったとはね……」

 

 

するとロビンは懐からでんでん虫を取り出し

 

 

「コード256」

『ッ!!!?? ニコル!?ニコルかッ!!!??』

 

 

そこ声は突然の連絡に驚いているようだ。

それはそうだろう。いままで音沙汰がなかったのだから。

 

 

『お前は今まで何をッ!!!!』

「五月蝿いわね。いいからモーガンを出しなさい」

 

『も、モーガンだと?』

「そうだったわ……()()()()()()()()()

 

 

とても、とても、嫌な言い方で発言するロビンに向こう側の相手も「な、何があったのだ…」と信じられないような声を出していた。

 

 

「良いから早く。直接の連絡先を知らないのよ」

『あ、あり得んッ!!!!ニコルがアイツの連絡先を知らないなんてッッ!!!!』

 

「良いから早く」

 

 

本当に面倒くさい。

基本的にお兄ちゃんがやることに文句はないが、本当に、本当ーに!1つだけ言っていいなら()()()()を作ったことだろう。

 

どうして…()()()()()でもないやつを、()という言葉でも言いたくないというのに…

 

すると向こうからドタバタと音がしたあと

 

 

『ニコルッッ!!!!お前は一体今までどこにッ!!!!』

「本当に五月蝿い。黙って()()()()

 

『ぎゃあああああぁぁぁッ!!!!

痛い!痛いッ!!!やめろニコルッ!!!!』

『何が起きているッッ!!!!

反抗期かッ!!!ニコルの反抗期かッッ!!!??』

 

 

あまりにも五月蝿かったので遠距離からの関節技を決めてやったロビン。するとさらに騒がしくなり頭が痛くなってきた……

 

そう、ハジメの影武者であるモーガンに連絡をとったのだ。そしていくら影武者だろうがハジメ以外に「お兄ちゃん」なんてロビンがいうわけがない。

 

だからこの状況が本当に面倒くさいのだ。

 

 

「いいからさっさと東の海の第16支部に来なさい」

『ま、待て…聞きたいことが……』

 

「五月蝿いわよ。貴方は私の言うことを聞けばいいの。

それとも何??()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『いけばいいんだろうチクショー!!!』

『本当にどうしたんだニコッ!!』

 

 

面倒くさいくなったので連絡を切ってやったロビン。

向こうでは騒ぎになっているだろうが知ったことではない。

一番大切なのはお兄ちゃん。そしていまは()()というものを作ってもいいと思っているのだ。

 

それを二番にするためにもいまこれを解決しないと意味がない。だからやれることは全力でやる。

 

 

それが……ニコ・ロビンであり、ニコルだから。

 

 

「さ、さっきのは…」

「気にしなくていいわ。それより行くわよ」

 

「ど、どこにじゃ??」

「聞いていたでしょう?第16支部。海軍支部よ」

 

「ま、待って!!!どうしてそこに!!

……ッ!!?まさか!!!!??」

 

 

そうか。

やっと解ったようだ。

そして私も、分かった。

 

 

 

「私の…私の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに()()()()



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二人の過去①

「さっさとスピードを出しやがれクソウシ」

 

「モ、モウウゥゥッ!!!」

 

 

散々とやられたモームの地獄はその後からだった。

ロビンの大きな手により平手打ちで起こされたモームに待っていたのは、モームから見たらロビンと同じように見える悪魔三人だった。

 

剣を持った者。タバコを吹かす者。小さなハンマーから5㌧ハンマーに変える者。

 

その三人を見た瞬間に逃げだろうとするモームだがロビンから逃げれるわけがなく

 

 

「モ、モウウウウウウウゥゥゥゥッッ!!!!」

 

 

ただ叫ぶしかなかった。

で、強制的にハジメ達が乗っている小舟を引けとロープを繋がれていま第16支部へ向かっている。

逃がさないように頭にサンジ、背中にウソップ、尻尾の付け根にゾロが待機している。

 

 

「………鬼か、お前らは」

 

 

流石にハジメもドン引きである。

特にウソップに関しては本編ではそんなに強いわけではないのに、狙撃手として活躍していたのに、もう主力メンバーになっているなんて……

 

 

「しかし…アーロンか……」

 

 

ロビン分身からの連絡で聞いた名前。

確かにこれからのストーリーでは"アーロン"はとても重要なやつではある。

 

しかしそのアーロンがこの海に来る原因であるタイガーは生きていて、いまは7武海として活躍している。てっきりタイガーと一緒にいると思いきや本編通りにこの海にきてナミを苦しめていたとは……

 

ナミには悪いがベルメールがまだ生きていたことにはホッとした。そしてベルメールが、いや、ココヤシ村が平気だった理由ってのは……アーロンと契約みたいなものをしたからだろうな。

 

さらにアーロンとネズミ大佐がドップリ繋がっているとは……

 

 

「お久しぶりですハジメ様ッ!!!!」

「おっ、マカナ。久しぶり」

 

「はい!!元気過ぎてウザいですよね!!死にます!!!」

「だから勝手に死んだらダメよマカナ」

 

 

いつの間にか背後に現れたマカナ。

この子、この子が"ハジメ信者"や"ロビン信者"を作った張本人。悪魔の実を食べたわけでもないのに不思議とマカナの目を見たものは精神支配される。

 

小さいころからそうやって言うことを聞かせていたマカナが唯一ハジメだけは操れなかった。そして…何故かそんなハジメに魅了され最初の信者と化した。

 

ちなみに昔、応援要請で向かった村がマカナの力で支配していてそれを止めさせた。そしてマカナはハジメに会い信者とかして速攻海軍へ入隊。そしてハジメの下で働くことになった瞬間にロビンと結託して"ハジメ信者"を作ったのだった。

 

 

そう、ロビンが海軍に来たのとマカナの入隊は同じ時期なのである。

そしてその後、オックスさん率いる八咫烏(ハジメ信者)と、マカナ率いる月兎(ロビン信者)が出来たのである。

 

 

「それでナミとノジコの詳細は分かったの?」

「はい。こちらがその書面です」

 

「読むのが面倒だわ」

「すみません!死にます!」

「止めなさい」

 

 

そして信者と化したマカナはやたら死のうとする。

どうやらハジメやロビンに対して失礼なことだと判断したらすぐに死んでもいいほど大好きらしい。

 

……ロビンに続いてこの子も危ないのだ。

 

 

「ロビン。みんなに聞こえるようにして」

「で、私が読み上げるのかしら?」

 

「ダメかな?」

「むしろご褒美だわ。お兄ちゃんに読み聞かせできるなんて……」

 

「いや、他のやつらにも……」

「もちろん。お兄ちゃんのためなら他の奴等なんて些細なことだから。全然問題ないわ」

 

 

……いや、その思考が問題あるよ。

と言ってももう絶望的に元のロビンに戻ることはないだろう。それにいまのロビンも……

 

 

「ッ!!!??いまお兄ちゃんが私を"好き"って言った!!?」

「言ってない。心の奥からでも言ってない。

言ったとしてもそれは"妹"としてな」

 

「…最高だわ。マカナ巨大でんでん虫を持ってきて。

全世界に読み聞かせするわ」

「アホかあッ!!!!バカなことをしないでいいから!!!

マカナも動くなああああッ!!!!」

 

 

「すみません!死にます!」というマカナをいつも通りロビンが静止する。

 

……もう、心の中でも思わないようにしないと……

どんだけ人の心が読み取れるんだか……

 

 

「お兄ちゃんだけよ」

「いいから早く読みなさい。そして入ってくるな」

 

 

もう!怖いッ!!!

やっとのことでロビンが能力を使い、モームの上に乗っているサンジ達とココヤシ村にいるルフィ達の所に「口」と「耳」を咲かせてナミとノジコのこれまでのことと、いま起きていることを話すことになった。

 

 

「ことの始まりは10年前。

私とお兄ちゃん、二人が"消えた"後の話になるわ」

 

 

…………………………

 

 

「ロビンさんが消えたッ!!!」

「どういうことなんですかッ!!!」

 

 

ロビンが消え、ハジメが消えて数ヶ月。

ハジメの代わりになったモーガンが、ハジメに関わり深い人達に直接話をすると回っている時の話。

 

今回はココヤシ村にいるベルメールの元へ。

愛人とはいえハジメと関わりが深く、目の前のモーガンを()()()()()()()()()()数少ない人達。

 

 

「それだけじゃねえ。恐らくロビンを探しにハジメも消えた」

「…そ、そんな……」

 

 

ショックを受けるナミ達。

しかし一番ショックを受けたのはもちろんベルメールで、

 

 

「……ぁ……」

「「ベルメールさんッッ!!!??」」

 

 

その場に倒れこんでしまったベルメール。

すぐさまナミとノジコは駆け寄るがベルメールの意識はなかった。

それを見ていたモーガンは頭をかきながら

 

 

「……こうなること…分かっていただろうが…バカ野郎…ッ!!」

 

 

それは自分自身へのか?それともここにいない者への言葉か?

とにかくモーガンがベルメールを抱き抱えて自宅へ。

それからベルメールが目を覚ましたときはすでに3日たっていた。それほどのショックを受けていたことを改めて自覚したベルメールだったが、

 

 

「…ナミ……ノジコ?」

 

 

ようやく意識がハッキリと覚醒したベルメールはナミとノジコがいないことに気づいた。

するとそのタイミングで扉が開いて

 

 

「ベルメールさんッ!!?良かった目が覚めたんだぁー!!」

 

「本当に良かった……」

 

「う、うん……」

 

 

娘達が心配してくれることはとても嬉しい。

しかしどうしてか二人の体は汚れて、服が破けていたり、小さいが怪我もしている。

 

 

「二人とも、どこに行っていたの?」

 

「そ、外で遊んでいただけよ!」

「うん!ちょっとヤンチャし過ぎたかなー」

 

 

二人がそういいお風呂に入ってくるとその場を離れたので深く追及出来なかったが、いままで一般的な子供の遊びより航海術を学んでいて、ノジコもそのサポートをしようと一緒に勉強していたぐらいだ。

 

それがここに来て外で遊んでいた?

なんか怪しい。と違和感をもったがその時はまだ追及するほどはなかった。

 

 

 

それから2年経ったある日。

 

 

「どうしたの二人ともッ!!!??」

 

 

二人はいつもの非じゃないぐらいボロボロで帰って来た。アザや切り傷、もしかしたら跡が残るんじゃないかというぐらいに。

流石にこれまで干渉しなかったベルメールだったがここまできたらそんなことを言えなくなり

 

 

「二人とも何をしてるのッ!!?

こんなになるまで一体何を!!!??」

 

 

それからはナミもノジコも言う覚悟をしていたのだろう。素直にいままでやっていたことを話した。その内容は

 

 

「…か、海賊から…お宝を盗んでいた…って…」

 

 

気まずそうな表情する二人にベルメールは一人ずつ平手打ちをして、抱き締めた。

 

 

「なんてことッ!!!もっと自分を大切にしなッ!!!!」

 

 

それを聞いた二人は大泣きをして、ベルメールも一緒に泣いたという。

そしてどうして盗んだかというとベルメールの結婚式のため。

いつかハジメが帰ってくると信じているベルメールにとやったことだった。もちろんそれを海賊から盗んだことにベルメールは怒った。

けど、それは娘たちのまえで。

いつかの夜、ゲンさんと飲んでいたいたときに口を滑らせて「あの子達が私のために結婚資金を貯めてくれていたのよー!」と喜んでいたようだ。

それを聞けただけでナミもノジコも嬉しかった。

 

それまで盗んだ宝は近くの海軍に引き渡しそれからしばらく平和な時間が過ぎた。

 

 

そしてそれから一年後。

とうとうナミは航海術と海図の知識を習得し、ノジコと一緒に海へと出た。ナミが舵をきりノジコがサポート。

自身で航海をして海図を書くナミはとても楽しそうだったという。

 

しかしある日、突然ナミがこんなことを言い出した。

 

 

「………サイクロンが、来る…」

「えっ。こんなに晴れているのに?」

 

 

周りを見渡してもサイクロンが起きる天気ではない。

しかしナミは急いでここから離れるようにとノジコに指示を出す。

普通はあり得ないとバカにするところかもしれない。

しかしノジコは知っている。ナミがどれだけ優秀な航海士かを。

 

指示通りにこの場から離れようと急いでいるなか、海軍の船がまさにそのナミ達が離れようとした場所へ向かおうとしていた。

 

このままではサイクロンに飲まれると思ったナミは

 

 

「ダメッ!!!ここから離れてッ!!!!

もうすぐここにサイクロンができるのッ!!!」

「サイクロンだと?こんな天気で出来るわけがない」

 

 

誰もがナミの言葉に耳を傾けなかった。

しかし船内の奥から聞こえてくる声が

 

 

「…そいつの言うとおりにしろ」

「はっ?いやしかし、子供の戯れ言にガバッ!!!」

 

「早くしろ」

 

 

大きな軍艦で何が起きているかナミには見えなかったがどうやら偉い人がナミの言葉を信じてくれたようだ。

しかし何か暴力的なことが起きたのは声で分かった。

あまり関わりを持ちたくないと思い、すぐさまここから離れようとしたときだった。

 

 

「な、なんだ…急に雲が……風が…」

「ッ!!!??急いで離れてッ!!!!」

 

 

突然変わりだした天気にナミや海軍も大慌てでその場から離れる。そしてその判断が良かった。

安全な場所に逃げたタイミングで、さっきまでいた場所から大きなサイクロンが発生したのだ。

 

それは今いる場所さえ危険が及ぶもの。

それでもあの場所にいたら間違いなく船はなくなっていた。

 

とにかくさらなる安全な場所へ避難する2つの船。

やっとの思いで難を逃れたときはもうナミもノジコもクタクタだった。

 

 

そんな二人の元へ軍艦からある男が降りてきた。

 

 

「チィチチチチッ。感謝するぞ娘。

こんな素晴らしい航海士は見たことがない」

 

「…ありがとう……良かったわね…」

 

「あぁ。本当に。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

これが地獄への始まりだった。



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二人の過去②

「ちょっと何するのよッ!!!」

「ナミを離しなさいッ!!!」

 

 

抵抗する二人。しかし子供が大人に力で勝てるわけがなくあっさりと捕まってしまった。

それは海賊ではなく、「正義」をかかげる海軍に。

ナミ達は強制的に軍艦に乗せられ甲板に叩きつけられた。

 

 

「あんたら…それが海軍のやり方なのッ!!!」

「こんなの許されるわけがないッ!!!」

 

 

そう、海軍が民間人を理由も捕まえるなんてあり得ない。そんなことをしたらその海兵が捕まるだろう。

しかしその海軍、第16支部の指揮官である"ネズミ大佐"は違っていた。

 

 

「許されない??チィチチチッ。何故許されない?」

 

「私はこの東の海の"総指揮官"」

 

「そんな指揮官に対して何が許されないと?」

 

 

そういいながらナミの腹部を蹴りあげるネズミ。

カハッ!!と口から空気がなくなり過呼吸のようになるナミにノジコは駆け寄ろうとするが

 

 

「勝手な行動を、するなッ!!!」

 

 

と、今度はノジコの腹部を蹴りあげる。

二人とも苦しくもがくその姿にニヤリとするネズミ。

 

 

「私はただ反抗期な民間人に教育しているだけ」

 

「それだけで捕まるわけがない」

 

「そしてお前らは教育の一環として」

 

「この私の元で働いてもらう」

 

 

その言葉に耳を疑う二人。

そんな強制的にするなんてあり得ないと。

 

 

「そ、そんなの…そんなの!ハジメお兄さんが許さないッ!!!!」

 

「ハジメ?…あぁ、あの大将ハジメか?

確かにこの近くの村ではハジメを待ちあげていたなー」

 

 

そうハジメがいる。こんなことして許されるわけが

 

 

「でもいいのか?そんなことしたら()()()()()()()()()()

 

「「なっ!!?」」

 

 

まさかの脅迫に言葉が出ない二人。

その表情を見てニヤニヤするネズミはさらに言葉を続ける。

 

 

「確かに大将ハジメに告げ口されたら終わりだろう。

あの男は、一度決めたら徹底的にするやつだからな。

しかしそれでも大将ハジメがこちらにつく間にあの村ぐらい簡単に消せる」

 

「…な、何を…いって……」

 

「信じられないか?

いくら海軍でも村を消すなんて?

確かにやってしまったらもう俺様は終わるな。

だが、()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

 

そういうとタイミングよく扉が開き船内から誰かが出てこようとしていた。

 

 

「シャーハハハハ!!!

本当によくそんなことが思い付く。やはり()()としては勿体ないな」

 

 

その言葉の意味が分からなかった。

分からなかったがその姿を見たときに理解した。

聞いたことがある。この世の中には()()以外の言葉を話せるものがいると。

 

そしてそれは人間よりも優れていると。

 

 

「き、魚人ッ!!?」

「な、なんで海軍とッ!!?」

 

「珍しいか俺が。てめぇらのような()()()()と一緒にいるのが」

 

 

明らかに人ではない。

手にはエラがあり皮膚も違う。一番の特徴は顔でありノコギリのような鼻をしている魚人。

 

 

「彼はアーロン君といってね。ノコギリザメの魚人だそうだ」

 

 

そしてアーロンの後ろからも続々と魚人が現れ、その多さにナミもノジコも顔が青ざめていく。

そこにアーロンがナミの目の前にたち

 

 

「さて取引だ。俺達の手足となれ」

「な、なんであんた達にッ!!!!」

 

「ならなきゃあの村は消えるぜ。

こっちはそれでも構わねえ。()()()()()()()()()()()()()

 

 

その言葉に魚人達がが「うおおおおおっ!!」と叫びだした。それを聞いたナミは本気だと悟った。そしてこのままだと本当にココヤシ村が滅びると……

 

 

「……なれば、助けてくれるの?」

「ナミッッ!!!!」

「あぁ。大人しくいうことを聞くならな」

 

 

悔しくて悔しくて、唇から血が出るほど我慢して出した答え。でもいま立ち向かってもダメだ。きっとハジメが来てくれると、そうハジメが来てくれたら……

 

 

「さててめえには…」

「やめてッ!!!ノジコは関係ないでしょう!!!」

 

「ダメだ。こいつはお前より盗みの才能がある。金はいくらあっても困らねぇからな。片一方が裏切れば片一方を殺す。いいな?」

 

 

最悪だ。ナミは航海士として、ノジコは泥棒としてアーロンに使われることになってしまった。

 

 

「きゃああああああああッッ!!!」

「ナミッ!!!!やめてッ!!!!」

 

「次はお前だ」

 

 

そしてその日。ナミの左肩に、ノジコは右肩にアーロンの海賊旗を焼き付けられた。それはアーロン海賊団の一味になったという証拠。そして

 

 

「言っておくがてめえらは"仲間"じゃねえ。

それは魚人がつければ仲間だが、人間がつければ"奴隷"だ」

 

 

…………………………………

 

 

「奴隷だとッ!!!ふざけんなッッ!!!!!」

 

 

ロビンの読み聞かせの途中でハジメがキレて小舟の縁に自分の手を叩きつけた。もちろん一時停止で痛くないがその心は大きな切り傷が刻まれた気分だった。

 

 

「あの野郎…人間が嫌いでもやってはいけないことをしやがって……タイガーさんがどんな目にあったか忘れたのかッ!!!??」

 

 

アーロンが人間嫌いだってことは知っていた。

それでもタイガーが入れば変わってくれると思いなにもしなかったのだ。

 

それがまさか人間に自分の海賊旗を焼き付け奴隷にするなんて、そんなことをするということは

 

 

()()()()()()()()()()()!()!()!()()()()()()()!()!()!()!()

 

 

初めてみるハジメの激怒に誰もが驚いていた。

どんなことをしても、何をしていても、ここまでの怒りを見たことがない。

 

しかしそこは妹というところ。

そっとハジメに寄り添い叩きつけたその手を握る。

 

 

「落ち着いてお兄ちゃん。いまは二人の状況を知らないといけないわ」

 

「………悪かった。続きを頼むよ」

 

 

ロビンの言葉に多少なりとも落ち着きをみせたハジメ。

そして続きを始めるロビン。しかしそれは更なる地獄を知ることになる。

 

 

…………………………

 

 

「あの船に潜入して沈めてこい」

「そ、そんな!!出来るわけない!!!」

 

 

口答えしたナミをアーロンが頬を()()()

しかしナミとってはそれだけで激痛が走る。アーロンの鮫肌がナミの皮膚を削っていくのだ。

 

とっさに離れたが頬からは血が流れていて激痛。

さらにアーロンは近くにあった紅茶を掌にこぼし、それをナミに目掛けて投げた。

 

するとそれはまるで弾丸のようなスピードで飛び

 

 

「きゃああああッ!!!」

 

 

ナミの横を通りすぎ壁に穴を開けた。

ただ紅茶を投げただけ。これが人間と魚人との差。

 

 

「次は当てる。沈めてこい」

「…出来ない……」

 

「出来ないじゃない。やらないだけだ

分かっているはずだ。てめえの航海術で船を難破させて沈めることが出来るってな」

 

「ッ!!!!」

 

 

そう、確かに航海士は船を目的地まで誘うのが仕事。

しかしそれは逆を取れば船を危険な目に合わせることも出来る。

それも上級な航海士になれば同じ乗組員にバレることもなく、難波させて船を沈めることも簡単である。

 

それをあの時のサイクロンで分かったのだ。

ナミはそこら辺の航海士とは違い間違いなく狙った船を沈めることが出来ると。

 

 

「……沈めて、どうする気なの?」

「簡単だ。沈んだお宝を奪う」

 

「たったそれだけで沈める気なのッ!!!??」

「人間も船も沈めば終わりだ。その点魚人は違う。それがお前らと俺達の徹底的な差だあッ!!!」

 

 

人の命を簡単に見ている。その目は虫けらのように見ている。しかし逆らって勝てる相手でもなく、ノジコや村の皆が危険な目にあうことだって……

 

 

「……分かったわ。やるわ」

「……やる……だと?」

 

 

するとナミの首を掴み持ち上げるアーロン。

苦しくて抵抗するがまるで意味がない。

 

 

「分かってないようだな。お前は奴隷だ。

奴隷は奴隷なりにご主人様に対して言い方があるはずだが?」

 

「…や、やらせ…て……ください……」

 

「いいだろう。やれ」

 

 

満足がいったのか手を離すアーロン。

苦しく咳き込むナミに、更なる追い討ちが

 

 

「目的地まで奴隷としての躾をしておけ」

「OK。任せとけ」

 

「い、いや……」

「ギャァハハハ!たっぷり叩き込んでやるぜ」

 

 

それからは酷かった。

普通一般人の扱いはなく"奴隷"としての扱い。

それはナミだけではなくノジコも同じだった。

違いがあるとすればナミが逆らえばノジコがその罰を受ける。ノジコの泥棒としての腕よりもナミの航海士のほうが貴重であり、その身を傷つけすぎて航海術が疎かになっては元も子もない。ならやるなら精神的に追い詰めるためにノジコにナミの分の罰を与える。

 

こうしてノジコや村の為にと魚人達の言うことを聞くナミは、ある日は間違った航路を教えて岩礁に当てて沈めたり、ある日は大渦に巻きこんだり、ある日は予想が難しいサイクロンに向かわせたり……

 

もちろんその船に乗っているナミも巻き込まれるが海の中では魚人が待機しており、沈む前に船から飛び降りて船と共に沈没から逃れていた。

 

海賊船、民間船、運搬船、ネズミ大佐と相容れない海軍の船など、ありとあらゆる船を三年の間にその手で沈めてきたナミ。

 

その罪悪感は凄まじく、一緒に奴隷としての扱いや人質のプレッシャーなどでもうナミの精神は崩壊寸前だった。

 

 

そんなナミを見たノジコが提案してきたのだ。

 

 

「一億、一億ベリー集めるから!!

だから私とナミをここから解放してッ!!!!」

 

 

一億ベリー。途方もない大金にネズミ大佐やアーロンは笑った。子供にそんなこと出来るはずがないと。

しかしノジコはそれをやり遂げるだけの力を見せるために小舟一杯に大金を乗せて持ってきたのだった。

 

 

「ここに5000万ベリーある。

とりあえずこれで私達を解放して。そしたら残りを払うわ」

 

 

僅か三年。

ナミが船を沈めている間にノジコは独自にお金を貯めたのだ。もちろんノジコ一人で集めたわけではない。()()()()()()()()()()()()()ここまで集められたのだ。

 

 

「たった三年で…これだけを……」

「キチンと払うわ。だから私達を…」

 

 

案の定ネズミ大佐は5000万ベリーに目が眩んでいる。これならいけると思った矢先

 

 

「2億5000万ベリー」

「えっ」

 

「人質は"村"もあるだろう。それも解放してやる。

だから2億5000万ベリー集めろ」

 

 

とんでもない額を言ってきた。

5000万集めるのにどれだけの苦労と時間がかかったと……

しかし…その金額を払えば……すべて解放される。

 

 

「……契約書を書いてもらうわよ」

「当然だな」

 

 

こうしてアーロン達と契約を結び、ひとまずナミとノジコはアーロン達から解放された。

しかしまだココヤシ村が人質となっている。

その為にもお金を集めないといけない。

 

 

…………………………

 

 

「それで今年2億まで集まったみたい」

「ちょっと、ちょっと待てよ!

つまり五年で2億も集めたというのかよッ!!!??」

 

「ええ。その()()()()()()()()()()のお陰で随分速く集められたようね。そして今回の航海で5000万ベリーを集められる算段になっていたそうよ」

 

 

ウソップがいいリアクションをするなかハジメだけは深刻そうな表情をしていた。

 

 

(カリーナって…確か映画版でテゾーロと手を組んでいた……確か昔はナミとも手を組んでいたけど……)

 

 

それでもあのカリーナが二人のために手伝いをした??

きっとノジコとカリーナとの間に交わされた交渉が鍵となるのだろう。

 

そして最も気になることが

 

 

(第一どうしてアーロンとネズミ大佐が手を組んだ?

アーロンは人間嫌い。いくらネズミ大佐がアーロンに融通を聞かせてもここまで友好的にしていない。

………()()()()()()()()()()()()()()()()()……)

 

 

ハジメの読みは確かだった。

その元凶は、以前ハジメと出会っていたなんてことは……その時はまだ知るよしもなかった。



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ヘルメッポの考え

第16海軍支部

表向きは東の海の半分近くの海軍の指揮を任されているとても大きな支部。

しかしその裏では気に入らない村、海軍などを次々に()()()()()()で戦力を削ぎ落として支配してきた。

 

その大元で、海軍支部のトップネズミ大佐。

そして協力者でもある魚人アーロン。

 

 

支部の最上階にある大広間には捕まったナミとノジコが座らさせられていた。

 

 

「アーロンッ!!!ネズミ大佐ッ!!!!」

 

「チィチチチ。そう睨むな。

まさか海賊と()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったのだから仕方ない」

 

「あぁ。だから俺達が助け出した」

 

「そんなの頼んでないッ!!!!」

 

 

ノジコが睨みをきかせるがそんなの聞くわけもなくずっとニヤニヤしながら二人を見下している。

 

 

「しかし本当に()()()()使()()()()()()()()()()

 

「ッ!!!??」

 

「あんたらッ!!!あんたらのせいでナミはトラウマになってるのよッ!!!!この子はもう……船を動かせないッ!!!!」

 

「チィチチチ。それは甘えだろう。

それとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その言葉にビクッと反応するナミ。

両手で自分を抱きしめ震えを止めようとする。

しかしそれは止まらずいつの間にか涙も流れていた。

 

そう、ナミはロビンが乗っているあの船を、"仲間"が乗っているあの船を扱いたくなかったのだ。

 

三年もの間、いくつも沈めてきた船。

それはもう息をするように難破させてしまうだけの航海術を身に付けてしまったのだ。

 

それが無意識にその"仲間達"に向けてしまったら…

そう考えただけで震えが止まらない。

ずっと会いたかったロビンを、気の許せる"仲間"を……この手で殺さないように……

 

 

「シャハハハハッ!!!

こいつは傑作だ!五年もの間、海賊船から逃げるために何度も難破させたやつの態度とは思えんなッ!!!」

 

「ッッ!!!??なんでそれをッ!!!

……あんたらまさか!!!?」

 

「あぁ。ずっとつけさせてもらった」

 

「くそ野郎がッ!!!」

 

「誉め言葉としてもらっておくよチィチチチッ!!!」

 

 

そう、ナミは航海出来ないわけではないのだ。

ただそれをすると難破させて沈めてしまう。

ノジコのために、村のためにしてきたことが、いまナミを一番苦しめている。

 

海図を書くことも止めてしまい、舵の前に立つことも出来ない。

 

海図を見れば"どこにいけば沈めれるか"と考え、舵の前に立てば"どの海流に乗れば沈めれるか"と考えてしまう。

 

それがノジコや、ロビンや、仲間と思える人達の命を預かる。そんな航海術をその手でやろうとするなんて……いまのナミには出来ない。

 

 

「さぁ、ナミ。お前に沈めてもらいたい船がある」

 

「あんたらッ!!!」

 

「これが()()だとしてもか?」

 

 

その言葉にナミが反応した。

 

 

「……それ、どういう意味??」

「ナミッ!!!」

 

「いいのノジコ…。で、どういう意味??」

「言葉の通りだ。お前を縛っているもの全て返してやる」

 

「……で、その船は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大将ハジメが乗っている船だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………えっ?」

 

 

訳が分からなかった…

沈める船が……ハジメお兄さんの…船……

いや、違う…だってお兄さんはロビンさんを探しに向かって消えて……

 

……そうだ。あの時。

ロビンとお兄さんが同時に消えたあの時。

"ハジメ"と呼ばれていた別人の人がきて……

 

……そう、そうだ!

どうして今まで気づかなかったのか!

確かウソップと出会う前にそんな話を……

 

 

 

…………

………

……

 

 

 

「ヘルメッポ。海軍本部に向かうにしても足がないわ。グランドラインまで運びなさい」

 

「は、はああぁぁッ!!?

い、イヤだよッ!!なんであんなところにッ!!!!」

 

「いいじゃない。私達まだ船がないの」

 

「だったら船を見つけろよッ!!」

 

「船があっても航海士がいないわ」

 

「航海士も見つけろよッ!!」

 

 

 

「見つけてもヘルメッポを海軍本部に届けるの。

そして()()()()()()()()()

 

「イヤだあああああぁぁぁぁッッ!!」

 

 

 

 

「いくら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、あんな手・緩・い・や・り・方・は・お兄ちゃんじゃないの。つまりそれはお兄ちゃんをバカにしていること。普通は死刑に値するけど、私も優しくなったわ。半殺しで許してあげるの」

 

「……ば、ばい……」

 

 

 

……

………

…………

 

 

(ヘルメッポのお父さんッ!!!??)

 

 

「知っているぜナミ。

お前と大将ハジメは知り合いなんだろう?」

 

 

 

(お兄さんの影武者。その影武者がヘルメッポのお父さん。

つまりいま向かっている"お兄さん"は別人!!)

 

 

 

「なら簡単に乗り込めるはずだ。

そして船を難波させ、沈めてこい」

 

 

(……そ、そんな…の………)

 

 

 

「楽な仕事だ。それで全部」

「で…出来るわけないじゃないッ!!!!」

 

 

アーロンの言葉に頭に血が登りアーロンの胸ぐらをつかむナミ。その姿にアーロンの部下達がナミに近づこうとしたがアーロンが手を上げてそれを止めた。

 

もしアーロンが止めなかったらナミはとても危険な状態に陥るところだった。いや、いまもそれは変わらない。

ナミも理解している。アーロンなら簡単に自分を始末出来ると。出来るからこそこうしていまは何も手を出さないということを。

 

それでもアーロンは、魚人は、いつその態度を変えるか分からない。常に危険と隣り合わせの状態なのである。

 

 

しかしナミには引けない。

例えそれがハジメじゃなくてもその人は……

 

 

「やれナミ。じゃないとお前の大切なものが無くなる」

 

「………ダメ、ダメよ。……あの人はッ!!!」

 

 

すると突然、扉が開いたと思いきや突風が吹き、その瞬間にナミはどうしてか床に顔をつけていた。

いや無理やりつけられている。ナミの体の上から頭を押さえつけられているのだ。

 

 

「これ以上喋るな」

「へ、ヘルメッポッ!!!??」

「あ、あんたッ!!!」

 

「お前も黙れ。

こんなに聞き分けがないとはな。

ネズミ大佐、アーロン。俺に任せてくれないか?

言うことを聞かせてやるが」

 

「……いいだろう。俺じゃやり過ぎるからな」

「チィチチチ。連れていけ」

 

 

 

…………………………

 

 

 

ナミ達が連れてこられたのは牢獄。

そしてその牢獄の中でも拷問部屋があり、そこは囚人達から情報を聞き出すための部屋。

 

二人はヘルメッポにその部屋に入れられ

 

 

「あとは俺がやる。出ていってくれ」

「あぁ??てめえ誰に口を……」

 

 

一緒についてきた魚人。

ヘルメッポに任せるとアーロンは言ったが信じていないのだろう。

しかし、それは当たっていた。

 

 

「お前に…だよッ!!!」

「カハッ!!!……て、てめえ……」

 

 

的確に魚人の鳩尾を殴り、さらにエラに攻撃を加えた。

それによりヘルメッポでも魚人を気絶させることは出来た。

 

その様子を見ていた二人はなにが起きているのかと混乱している中でヘルメッポが二人の方を向き

 

 

「お前らは……バカかッ!!!」

 

「なっ!!?な、なによ!!その言い方ッ!!!!

貴方のお父さんなんでしょう!!いま"ハジメ"って名乗って大将しているの!!

だったらそんなこと……」

 

「だからバカって言ってるんだ!

船を難破して殺す?アホか!!仮にでも"大将"がそれぐらいで死ぬかッ!!!!

それよりあの場で口走っていたらお前らと一緒に俺もやられていたんだぞ!!!」

 

 

それを聞いたナミは冷静になった。

あの時口走っていたらヘルメッポが言うとおりに殺されていた。

 

 

「ったく……余計なことをしてやがって…」

「もしかして…裏切ってないの?」

 

「当たり前だ。お前ら"泥棒"なくせに見抜けなかったのか?あんなクソ共と一緒にするな」

 

 

その言葉になにも言えなかった。

最近ロビンに色々見抜かれていて精神的に参っていたこともあり、普段なら分かるものも分からなくなっていた。

 

 

「それにだ。お前らもよくあの時逃げなかったな。

いくらあそこに俺やフルボディがいても逃げることぐらいは出来ただろうが」

 

「…………………って…………」

 

「あっ?」

 

 

よく聞き取れなかったヘルメッポはもう一度とナミに近づくと

 

 

「…逃げたらアイツらの船……取られるって……」

 

「………」

 

 

その言葉に開いた口が塞がらなかったヘルメッポ。

そして次の瞬間には大声で笑いだした。

 

 

「アハハハハハッ!!!

マジか!そのために命張ったのかよ!!」

 

「な、何よ!!笑わなくてもいいでしょう!!!」

 

「あんだけ海賊嫌いみたいな態度しておいて…もう完全にお前らアイツらの"仲間"じゃねえか!!!」

 

「う、うっさい!!!//」

 

 

まさかの答えに笑うのを止められないヘルメッポ。

それに対してナミは耳を真っ赤にさせている。

ノジコはそんな二人をみて軽くため息をついて

 

 

「はいはい。そこまで。

それでこれからどうするの?」

 

「さぁな。なにも考えてねぇ」

 

「はあ!?ちょっとあんたね!!」

 

「でも大丈夫だ。

どうせ師匠がこっちに向かってる。俺達は来るまで生き抜いたらいい」

 

 

そうヘルメッポは最初からロビンが自分やナミ達を追いかけてくると考えていた。そしてロビンさえくればこの支部は終わる。

 

 

「もう…なにもかもあんたの掌の上ってわけね…」

 

「そういうなよ。

………これ終わったら俺は師匠に殺される……

…絶対に「私を利用するなんていい度胸」っていって殺される………」

 

「「………あぁ」」

 

 

それには激しく同意した。

だってロビンだから。下手したら想像より上をいくお仕置きかもしれない。

 

 

「あんたも苦労してるのね」

 

「してるよ!!!昔からアイツらのストッパーがどれだけ大変かあッ!!!」

 

「んとうに……今回は私もナミも…まんまと騙されたわけか……」

 

 

でも悪くない。そんな安堵感を感じているなか

 

 

「ナミイイイイイイィィッ!!!ノジコオオオオオォォォォッ!!!」

 

 

突然の大声。それはこの支部からではなくこの建物の外から……そして聞き覚えのある声。

拷問部屋から外が見える格子に近づき外を見てみると、こちらに向かってくる沢山の小舟。

 

そしてその小舟にはナミ達が大切に守ってきた人達が

 

 

「…ど、どうして……ゲンさん…ベルメールさん……」

 

 

武器を手に向かってくるのだ。

誰も皆その目はいまから魚人と海軍と戦うという意識がある。

 

そしてその小舟の先頭にはメリー号から突き落とした二人と、待ち望んでいたお姉さん。そして…いつでもどこでもこんな私達を"仲間"に引き込んでくれようと言ってくる少年。

 

 

「……なに…何してくれ…たのよ……ルフィ……」

 

 

せっかく皆を助けようとしたことが全てパァだ。

こうして来てしまったからにはもう逃げられない。

だけど……だけど、嬉しさが…込み上げてくるのだ。

 

 

「助けに、来たぞオオオオオォォォォッ!!!!」



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第16海軍支部、攻防戦①

「なんだ?何が起きている?」

 

「ネズミ大佐!!ココヤシ村の連中がここにッ!!!」

 

「ほう。すぐにアーロンに伝えてこい。

そして私の所に数名付いてこい」

 

「えっ。ど、どちらに?」

 

「せっかくのチャンスだ。この機会を逃すかチィチチチ!!!」

 

 

…………………………

 

 

「な、な、なにやってるんですかルフィの兄貴ッ!!!」

「相手は魚人ですよ!!そしてこちらはまだ海の上!!

襲われたらヤバイじゃすみませんぜッ!!!」

 

 

初めは海軍支部に乗り込んでからルフィが大声を出して囮になりヨサクとジョニーと一緒に足止め。

その間にロビンとベルメール達がナミ達を探し、混乱させるために武器庫に火をつけて逃げる算段だった。

 

しかし見事にルフィがその作戦を無視して大声を出した。

それに対してロビンは

 

 

「……はぁ。仕方ないわ。

ヨサクとジョニーはベルメールを警護しながらナミ達を探しにいきなさい。私はルフィのサポートするわ」

 

「わ、分かりました」

「お気をつけて」

 

 

ヨサクとジョニーは船を乗り換えてすぐに支部へ向かって漕ぎ出した。残されたのはルフィ達の小舟一隻。

 

 

「本当は拳骨の嵐だったけど変更よ。

海上での戦いも必要だからここで修行よ」

 

「おう!!!」

 

「この船とあっちの船は任せなさい。

ルフィは()()を守りながら戦うのよ。

いい?私に傷ひとつ付けてみせなさい……私が殺すわよ

 

「はいイィッ!!!!」

 

 

ロビンからの喝も入れられたタイミングで海から魚人が飛び出してきた。

それもルフィ達だけではなくベルメール達の所にも。

しかしそれがどうした。ここにはロビンがいるのだ。

 

 

「"千紫万紅(ミル・フルール)"十本樹(ディエス・マーノ)""クラッチ""スラップ""スパンク"」

 

 

次々に現れる魚人に対してロビンの大きな手が関節技・ビンタ・突飛ばしを喰らわせていく。

それによりベルメール達の所は完全防御の出来上がり。

海中からなにか仕掛けようとも瞬間的発動する能力は地上と同じ力を持つ。

 

つまり海の中だろうが外だろうが魚人から攻撃を受けることはない。

その間に無事ベルメール達は支部へたどり着いた。

 

一方ルフィの所には基本的に海の中からの攻撃をロビンが塞いでいるが地上はルフィに任せている。

 

 

「ゴム無しの…(ピストル)ッ! 鞭ッ!! バズーカッ!!!…銃乱打(ガトリング)ッッ!!!!」

 

 

能力使用禁止に加えて効果薄の海楼石のブレスレットにより力が抜けている状態。

それでも向かってくる魚人に対して有効打撃を与えている。

 

 

「ルフィ。あとは任せるわ」

「どこか行くのか」

 

「えぇ。やはりあの二人だけだとベルメール達が心配なのよ。ルフィ、海には落ちないように気を付けなさい」

「おう!」

 

「"万紫万紅(ディミル・フルール)""フイング"」

 

 

背中から羽を生やしたロビンは颯爽とその場から離脱してベルメールの所へと向かった。それを見てルフィは改めて思った「やっぱり師匠は普通じゃないなー」と。

 

そんなのんびりと考えていると新手の魚人が攻めてくる。もちろんルフィが苦戦することはないが数が多く面倒臭くなってきた。

 

 

「ッ!!!そうだ!」

 

 

何かを閃いたルフィは襲いかかってくる魚人を気絶させずに捕まえて

 

 

「お前、あの建物まで引っ張っていけ」

「ふ、ふざけるな人間ッ!!!誰がお前の」

 

 

するとルフィは表情を変えずに()()()()をする。相手の気力が無くなるまで、気絶しない程度に何度も……

 

これ、ロビンがよくやる手。

……師匠が師匠だから、弟子であるルフィも影響が……

 

 

「……やびばすがら…やべで……」

「よし!いけぇ!!」

 

 

ルフィもまた…手遅れなのかもしれない……

 

 

「ニッシシシシ!!

あそこなら足場が多い方がいいし、ちゃんと師匠が言うとおりに"海上"だから問題ねぇ!」

 

 

いや、ダメだろう。

と、ツッコミを入れるものがいないために自由に行動するルフィ。きっとあとでお仕置きがくることも知らずに本能で動いているのだろう。

 

その間にも魚人がルフィを襲っていくのだがどれもこれも進行の妨げにもならない。それ以前に

 

 

「な、なんだあの人間はッ!!!」

「後ろに"目"でも付いてるのかよッ!!!」

「クソッ!!!もっといけぇ!!!」

 

 

前後左右、海から現れるタイミングさえずらして襲っているのにも関わらずに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ルフィの優れた身体能力と反射神経だけで済ますことの出来ないもの。

 

 

《第6感》《超直感》《野性的本能》

 

 

きっとそれらは新世界ではこういう。

《見聞色の覇気》と。

 

 

とはいえ、ルフィはその第一段階に足を踏み入れているだけ。なんとなく"いる"という感覚を信じて行動しているだけなのだ。

小さいころにエース、サボと一緒にロビンに修行をつけられ、ルフィは見聞色、サボは武装色、エースはその両方が得意と分かった。しかし得意というだけで皆3つの覇気を"発現"をしているのだ。

 

とはいえ、ロビンは武装色の覇気しかハッキリとして教えていない。何故?というと

 

 

『信じる力なのでしょう?なら、より感覚的に身につける見聞色は自然に身に付けた方がいいわ。もし見聞色に気づいたら修行をして高める方針よ』

 

 

と、モーガンに話していたことがある。

なのでいまはまだ"見聞色"ではなく、どちらかというと"超直感"なのだ。

 

そしてルフィ本人はこう思っている。

 

 

「師匠の殺気に比べれば楽だな!」

 

 

………結局、ルフィはロビンにお仕置きされる運命なのだ。

 

 

…………………………

 

 

「…ね、ねぇ。こっちであってるの?」

「問題ないわ」

 

 

ベルメールと合流したロビンはナミ達のいる拷問部屋へ向かっていた。しかしどうしてロビンが自信満々に知らない支部の中を歩いて向かっているというと……

 

 

「ここの地図は頭に入れてるの。

あとヘルメッポがナミ達を連れてある意味最も安全な場所。それを考えたら簡単に場所は絞り込めるわ」

 

「そ、そう…なの…」

「相変わらず規格外なやつだ……」

 

 

呆気に取られるベルメールとため息をつくゲンさん。

しかしこうして敵陣の中を歩いているというのに全く敵と遭遇しない。それは……

 

 

「あと私の部下が私に敵を接近させないようにしてるわ。だからそんなに緊張しながら武器を構えなくてもいいわよ。来ても私が対処するから」

 

「…………」

「…………」

 

 

流石にもう言葉に出来なかった。

ここにはほぼ行き当たりばったりできたようなもの。

それなのにここまで……何をどうしたらここまで出来るのか……

 

 

「あとこれはお兄ちゃんのお手伝いをしていたら自然に身に付いたの。あと部下に関しては勝手に育った。それだけよ」

 

 

………ちなみに、ロビンはベルメールやゲンさん達の疑問点を見聞色でなんとなくフワッと読んでいるだけ。何もしなくても自然に分かるため大体のことはスルーしているがこうして使用していることもある。

 

……つまり、ルフィの考えはお見通しであり嘘はすぐにバレる。もちろんそれはルフィ本人も知っているがやってしまうところがルフィらしいのだろう。

 

そんなことしていると拷問部屋近くまできたのだが、その場所からなにやら戦闘音のようなものが聞こえてくる。

 

 

「はぁ。まだ終わったなかったのね」

 

 

そういってロビンは手をクロスさせて

 

 

「"クラッチ"」

 

 

すると姿も見えていないのに戦闘音がする方向から決して鳴ってはいけない骨が折れる音が鳴り響き同時に苦痛の叫びが木霊した。

 

それを聞いたベルメール達は「……絶対に逆らわないでおこう……」と改めて決心したそうだ。

 

そして廊下の角を曲がった所で拷問部屋とその部屋の前に倒れる魚人と海兵。そして立っているのは

 

 

「ナミッ!!!ノジコッ!!!!」

「「ベルメールさんッ!!!!」」

 

 

三人は駆け出しお互いを抱き締めあい無事を確認しあう。

 

 

「っとうに、このバカ娘達はッ!」

「ご、ごめんなさい…」

「ベルメールさん、ごめんなさい……」

 

「でも無事で…よかったよ……」

 

 

その姿にゲンさんや村の人達は涙を浮かべ、ロビンはたまには母親に会いたいなと感じていたところに

 

 

「なんで俺まで攻撃してんだよ師匠ッ!!!!」

 

 

魚人と海兵と一緒に倒れていたヘルメッポ。

さっきまでの戦闘音はヘルメッポが一人で二人を守っていたのだが突然現れた手に魚人も海兵もやられていった。しかしそこで何故かヘルメッポも手が生えてきて止めようとしたのだが遅く関節技を決められて一時意識を失っていた。

 

 

「段取りが甘い。コビーに伝言役を任せたのならキチンと伝えるように手加減しなさい。あと手首を骨折させて相手に首の骨を折ったように見せかけるとしても自分にダメージをおってこうして苦戦するぐらいなら最初から破綻しているの。前に教えたわよね?ナイフを使って腹部を刺すさいに確実に急所を外してナイフを刺したままなら人間はしばらく生きれるの。大量出血を危惧していたのなら気絶させて海に落とすだけでも相手は「死んだな」と錯覚するの。例え海に落としたとしても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()沈むことはないのよ。能力者でも沈まないようにごく一部だけ作ってあげたのにどうして活用しないの?だからこんな爪が甘くて私がこうして来ないと行けなくなるのよ。普通ならベルメール達が支部に乗り込んだ時点でナミ達を引き合わせる段取りだったのでしょう。あとは私が支部を壊滅させる算段だったのだろうけど私はしないわよ。そんな面倒なことはルフィに任せなさい。というか貴方がもっと修行をしっかりすれば一人でこの支部を壊滅することぐらい簡単なのよ。いまのルフィは能力使用禁止に海楼石のハンデがあってもね…」

 

 

「全部俺が悪かったから、止めてくれええええぇぇぇぇッッ!!!!」

 

 

容赦なく畳み掛けるロビンにヘルメッポは頬がゲッソリになるほど精神的ダメージを負い両手で耳を塞ぎながら叫び拒絶し始めた。

 

 

(む、ムゴイ……)

 

 

誰もがヘルメッポに同情した。

詳しい事情はしないけど感張ってくれたことは分かったヘルメッポに対して余りにも扱いが……

 

 

「それでも私がいないのにやれたほうね」

「………えっ?」

 

「さぁ、いくわよ。もう少しでお兄ちゃんが来るわ。

このままいると巻き込まれるわ」

 

 

さっき、あのロビンが聞きなれないことを言われたと…聞き直そうとしたがそれより気になることを。

 

 

「そうだ!どうして親父がここに来るんだッ!!!

師匠がなにかしたのかよ!?」

 

「失礼ね」

 

「ち、ちが」

 

「命令したの。来るのは当たり前。

拒否出来るわけないじゃない」

 

「やっぱり師匠かよッ!!!!」

 

 

五月蝿いわね。とヘルメッポを相手せずこの場から離れようとするが

 

 

「でもなんで親父を!!」

「言ったでしょう。親子一緒に説教するためよ。

お兄ちゃんがいないのをいいことに好き勝手言ってくれたみたいだから、ヘルメッポとモーガンの親子を私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

もう、反抗どころか生きる希望を失くしたように項垂れるヘルメッポ。その姿に初めて会うゲンさんが優しく肩を叩いて励ましてくれたという。



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第16海軍支部、攻防戦②

「どうやら"ネズミ"が紛れ込んだようだ」

「……………」

 

「中将がどうした?俺は魚人だ!」

「……………」

 

 

第16海軍支部の最上階。

そこでアーロンと暗闇で姿が見えない人が話し合っていた。

 

 

「ハジメには借りがある。

アイツのせいでタイのお頭はおかしくなった。ジンベイもだ!!人間に味方するなんて……頭がおかしくなったとしか言いようがねえ!!!」

 

「……………」

 

 

「あぁ。お前には感謝してるよ。

ナミ達のお陰で邪魔者は消え資金も貯まった。

このままグランドラインに戻り仲間を集めて……タイのお頭に戦争を仕掛けるッ!!!」

 

 

そうアーロンがこの海に来たのは東の海(イースト・ブルー)が最弱の海だという判断できただけだ。この海で軍資金を集めてグランドラインで仲間を募り、魚人を裏切ったタイガーに復讐する気なのだ。

 

この計画を順調に進めるためにお金とアーロンを邪魔する者を消す必要があった。だからナミに船を難破させ、ノジコにお金を集めさせた。

 

 

「お前は"人間"としては勿体ない。

どうだ?この刺青をいれるなら…仲間として受け入れてもいいが?」

 

「……………」

 

 

それは仲間ではない。アーロン達にとっての奴隷。

分かっていながらアーロンはその者に刺青を入れろという。しかしその者は何も返事することはなかった。

 

 

「…まぁいい。気が変わったらいってくれ。人間でも仲間として最高のもてなしをしてやるよ、シャハハハハハハハッ!!!」

 

 

そういってアーロンはそこから離れていった。

残されたその者は小さく、分かりづらいが口の端が上へ上がり

 

 

「………"もてなし"ね……」

 

 

 

…………………………

 

 

「おい!ハチ、クロオビ、チュウッ!!!」

 

 

アーロンは支部の建物中段辺りにある幹部の部屋へ。

そこにはアーロン一味の幹部であるタコの魚人"ハチ"エイの魚人の"クロオビ"キスの魚人"チュウ"がいた。

 

 

「アーロンさん。やっと俺達の出番か?」

「ここの海軍は弱いものばかりだからな、チュウ」

「ニュ~。モームが帰ってこないな……」

 

「ここにハジメの部下のニコルがいる。潰してこい」

 

 

その言葉に目を光らせるクロオビとチュウ。

ハチは少し気まずそうな表情をしているが覚悟を決めてたようだ。

 

 

「やっと仕返しが出来るわけか」

「やってやるぜチュウ」

「お、おう…」

 

「油断はするな。人間でも小賢しいやつだからな」

 

 

 

それぞれの思いで部屋から出ようとした。

 

 

 

瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「モヴヴヴヴォォォォォォォォォッッ!!!!」

 

 

突然に、壁が壊れた。

いや、何が突き破ってきた。

いやいや、支部の中段から上を吹き飛ばしながらぶつかってきたのだ。

そしてそれは……仲間のモームだった。

 

部屋から出ようとした三人は無事だったが部屋の中心にいたアーロンはモームに激突し、支部の上部と一緒に海へと落ちていった。

 

 

「「「アーロンさんッ!!!!」」」

 

 

大きな音と水飛沫が三人のところまで届いた。

アーロンがあれくらいでやられるわけがないがそれでも心配はしてしまう。

 

そしてどうしてモームがこんなところに飛んで来るかと疑問を持ったところで空から

 

 

「お前ら…降りろッ!!!

ここは2人乗りなんだよ!!三人は定員オーバーだッ!!!」

 

「だったらクソマリモが降りろッ!!!

クソウシに刀で脅したから岩礁に乗り上げるんだよッッ!!!!」

 

「てめぇこそ何度もウシに蹴りを入れていたじゃねえか!!!スピードを上げた原因はエロコックだろうがッッ!!!」

 

 

「「アァッ!!!??」」

「お前ら二人が降りろッ!!!

墜落するうううううぅぅぅぅッッ!!!!」

 

 

 

ふらふらと宙に浮いていたハンマーだが定員オーバーのために急激に飛ぶ力を失くしたように落ちていった。

そこは建物の上だったからまだ落差はなかったが

 

 

「お前ら……ふざけんなッ!!!降りろっていったろうが!!!

お前らと違ってこっちは一般人なんだよッ!!!!」

 

「一般人がハンマーを宙に浮かせるか?」

「てめぇも十分化けもんだ」

 

「なんでこういう時だけ揃うんだお前らはッ!!!??」

 

 

といいながらウソップも大した怪我はしていない。

しかしウソップは背中から落ちてダメージはあり、ゾロとサンジはきちんと着地したようだ。

 

そしてやっとその部屋にいる魚人に気づいた三人は

 

 

 

「おっ。コイツらがハジメがいっていた魚人か」

 

 

そう言いながらゾロは腕についたバンダナを額に巻き付け、サンジはタバコに火をつけ咥え、ウソップはハンマーをパッと消したあとにパチンコをバックから取り出し

 

 

「俺は…あのタコにする」

「なら俺はエイにするか」

「俺はキス…なのか?」

 

 

出会っていきなり戦闘体勢に入った。

それに対して困惑する魚人達。

一体いまなにが起きているのか?と。

 

しかしすぐに頭を切り替えて

 

 

「生意気だな人間。勝てるとでもニュ~」

「魚人と人間の差を教えてやろう」

「てめぇはここで終わりだ」

 

 

魚人達も戦闘体勢に入る。

こうしてアーロン一味の幹部と麦わらの一味??との戦いが始まろうとしていた。

 

 

「ここで勝てば刀が買える…ッ!!」

「鍵付き冷蔵庫…ッ!!」

「マジックの道具…ッ!!」

 

 

なんか不純な動機があるのだが、これには理由がある。

ここにモームが突っ込む数分前の話。

 

 

…………………………

 

 

「さて、ゾロ・サンジ・ウソップに朗報だよ」

「うおっ!!?いきなり現れるなッ!!!」

 

 

モームの上に乗っていた三人の元へハジメが赴いたのだが気配を消すことが得意なハジメは背後から話しかけた。

 

 

「ナイス反応」

「楽しむなッ!!!」

 

「いや、ロビンに鍛えられただろうかどんな反応するかなーと思って」

 

「お前ら兄妹はロクでもねぇなッ!!!」

 

「こんな男がロビンちゃんのお兄さんかよ……」

 

 

1人だけ妙な反応しているがまぁ満足する反応。

 

 

「で、何しにきた?」

「随分な言い方だね。()()()()()()()

 

 

それに反応したゾロ。

そうだよね。和道一文字はいまくいなが持ってるからゾロは刀無し。次の島にいけば買えるかもだけどここはモチベーションを上げるために。

 

 

「アーロン一味には幹部がいるんだよね。

その幹部を倒す。無傷で。そしたら()()()()()()()()()()()()

 

「ッッ!!!??……言ったな!!!」

 

 

俄然とやる気になったゾロ。

さらに残り二人のために

 

 

「サンジ。ルフィって隠れて摘まみ食いするからね。

そして大食漢という料理人にとっては死活問題。

で、あの魚人を調()()してくれない?

そしたら…鍵付き冷蔵庫買って上げてもいいよ?」

 

「…ほう。確かにそいつは欲しいな」

 

「ウソップ。マジックにも色々材料いるでしょう。

もし苦戦せずに倒せるなら…奢ってあげるよ。欲しいもの全部」

 

「ぜ、全部ッ!!?」

 

 

 

その言葉にさらにやる気になった三人。

さて、あとは勝手に暴走するだろうからとさっさと小舟に戻り、モームと繋がっていたロープを()()()

 

 

「ウシッ!!さっさと支部に連れていけッ!!!!」

「このクソウシがッ!!もっとスピードだせッ!!!」

「いけぇー!!!ウシイイイイイィィィッ!!!!」

 

 

なかなか見ない三人の妙なテンションでモームに激を飛ばして一気に加速する。

それに引っ張られないようにロープを切ったのだが…

 

 

「………やり過ぎた……」

 

 

遠くに消えたモームが何故か一瞬空に飛んだ。

そしてそのまま海へと消えたのだった。

 

 

「………よし、作戦通り!!」

「………お兄さん………」

 

 

くいなは頭を抱えていた。

まあゾロは無事だと分かっているから気にしてないが、これは流石にと……

 

するとニコニコ笑顔のカヤが

 

 

「ハジメさん。これどういうことですか?」

「あ、あのね…ちょっとやり過ぎた……」

 

「答えてください」

「いや、それは……」

 

「答えになってない」

 

 

と一蹴してハジメから離れていった。

こ、こわッ!!!なにカヤ!めちゃくちゃこわッ!!!!

まあハジメに害を与えたわけではないということでロビンからどうこうはなかった。

 

 

「………よし!ギン、漕いで」

「な、なんで俺が!?」

 

「八つ当たりだよ。文句ある?」

「ふざけんなッ!!俺は」

 

「お兄ちゃんのいうこと…聞けないの?」

 

 

 

「チクショウー!!!」と叫びながらオールを手に漕ぎはじめたギン。これならあと数分で支部に着くかな?

 

もちろんギンが文句をいうことは分かっていた。

でも言い返したところでロビンが反応した。

ということはやっぱり超正論をいうカヤには何もないというわけか。

 

 

「…スゴい。カヤってもしかしたら今まで会ってきた人の中でもダントツに"真人間"かも!!!」

 

「ぇ、えぇーと…喜んで…いいんですかそれ?」

 

「お兄ちゃんがここまで誉めることはないわ

私がお兄ちゃん以外に他人に感心するのは初めてよ。

よってカヤは私と同じ"同士"として認めるわ。

一緒にお兄ちゃんを高みへ連れていきましょう」

 

 

「あ、あれ?なんか巻き込まれた?」

 

 

そんなことをしていると船内からやっと回復したコビーが現れて

 

 

「こ、ここは……」

「おっ。やっと起きたんだね」

 

「あ、貴方は?」

「僕はハジメ。ルフィの……友達かな?」

 

 

ロケットに写真が入るほどの仲かもしれないけどそれを自分からいうのもおかしいし、まだ麦わらの一味に入ってないからなー友達でいいだろう。

 

 

「ハ、ハジメさんって…ルフィさんが探していた……

ッッ!!!?? そ、そうだ!!大変なんです!!!

ヘルメッポさんが!!ヘルメッポさんがッ!!!!」

 

「はいはい。落ち着いて落ち着いて」

 

 

ヘルメッポに深呼吸をさせて落ち着かせたあと

 

 

「そのヘルメッポを助けに行ってるところだから。

コビーもヘルメッポが()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「は、はい…海兵としては海賊を捕まえるのは間違ってません……でも、あんな方法で…僕を殴ってまでナミさんを連れていくのは何か理由があったと思うんです!!!」

 

 

これをもっと早く聞かせないとダメだよヘルメッポ。

もう目的地に着くんだから、ちゃんと手加減とかしないからこういうことになるんだよ。

 

コビーが一人でパニックになってて可哀想に……

 

 

「大丈夫。あとでヘルメッポにお仕置きするから、主にロビンが」

 

「任せて」

 

「どうしてそういうことになるんですかああああああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

あれ?僕、間違ってる?



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第16海軍支部、攻防戦③(ウソップVSチュウ)

「な、なんだ、なんだ!?」

 

 

支部にたどり着いていたルフィはちゃんとした陸地ということもあり、向かってくる魚人を次々と沈めていた。

そんな中突然支部の上空から爆音がして見てみると

 

 

「な、なんだありゃああああああああああぁぁぁぁぁ!!!??」

 

 

それは叫びたくもなる。

なぜなら空から巨大なウシが、いや、下半身は魚なのでウシではない何かが支部の上部を破壊して瓦礫と一緒に落ちてくるのだ。

 

そしてこのままだと巻き込まれる。

 

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

 

…………………………

 

 

「お前が俺の相手か?」

「お、おう!」

 

 

支部の中段ではウソップとチュウの戦いが始まろうとしていた。

チュウは完全にウソップのことを舐めている。

見た目てきにも他の二人より弱々しく、それ以前に人間と魚人という圧倒的な差があるのだ。

 

負けるはずがない。と。

 

 

さて、ウソップはというと内心ビビっている。

というかそれがおもいっきり表に出ている。

 

 

(は、ハジメにあんなこと言われて盛り上がったけどよ……相手魚人なんだろう!!?人間の何倍も力があるっていうじゃねえかよッ!!!!)

 

 

ここにきて相手が"魚人"だということに気づいた。

それを気づかないほどハジメのご褒美は魅力的なのだ。

 

マジックはとにかくお金がかかる。

もちろんそれを思わせないようにマジックとは奇術・能力などと思わせて相手をビビらせるのが目的。

 

というのは建前である。

正直ウソップは戦力になっていると実感している。

さっきのモームへの攻撃も威力的にはゾロやサンジには劣るがそれでもいいところまで来ていると感じている。

 

 

そして更なる力を手にするためにはマジックの道具などが必要なのだ。

バレないための仕掛け、相手を倒すための武器、そして閃きと工夫で麦わらの一味の主力メンバーになるために。

 

だから自然に笑みがこぼれた。

それを見たチュウはそんなウソップに不信感を覚え

 

 

「何がおかしいチュウ?」

「……なーに。これから俺が見せるマジックに驚くお前の姿を思ったらな……楽しくなってきただけだ」

 

「マジックだと??」

 

 

バカらしい回答。何を言い出したのかと唖然としたチュウだが次の瞬間には笑いに変わってしまった。

 

 

「な、なんだそれッ!!?

そんなんで俺様に勝てると思ってるのかッ!!!!」

 

 

バカにせずにはいられなかった。

そんな"こけおどし"みたいなもので勝つ気でいる人間をバカにせずにはいられない。

 

しかしウソップにとっては好都合。

マジックを信じない。つまりは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それだけでマジックはより良く輝くことが出来る。

 

さらにそのマジックで戦うなんて端から否定するだろう。それは不意打ちなどウソップにとってやり易い戦闘スタイルなのだ。

 

 

「レディース&ジェントルマンッ!!!」

 

 

両手を上げそう叫ぶウソップ。

それに対してチュウは呆気にとられていた。

チュウだけではない。ハチもクロオビも何が始まるんだと疑問を持ち目の前の戦闘に集中出来なかった。

 

その二人の対戦相手、ゾロとサンジはニヤリと笑い

 

 

「終わったなあの魚人」

「ウソップ相手じゃ力不足だ」

 

 

ウソップが勝つと信じお互いの相手に攻撃を始めた。

一方、チュウはこれから何が始まるかと気が気でなかった。

 

 

「今回のゲストはキスの魚人だぁ!!

果たして俺はこの魚人に勝つことは出来るのか?

さて会場の皆様、最後までごゆっくりと」

 

 

そうしてウソップがまず取り出したのはトランプ。

 

 

「さて、ここにあるのは普通のトランプ。

種の仕掛けもございません。ご確認…お願いしますッ!!」

 

 

そういってトランプ一枚を手首のスナップで飛ばしたウソップ。そのトランプは回転とスピードが速く当たれば刺さるほどの威力を持っていた。

 

しかし、それは人間だったらの話。

 

 

「…これがマジックか…チュウ!」

 

 

チュウの皮膚に当たったがやはり魚人。

壁に当たったように弾かれ地面に落ちた。

そして仕掛けしとばかりにミネラルウォーターのビンを手に持ち口に含んで、それをウソップに目掛けて吹き飛ばしてきた。

 

人間ならそれはただ含んだ水を飛ばしただけ。

しかし魚人がそれをやったなら…その水は"弾丸"と化す。

 

拳銃から放たれた弾丸かのようなスピードでウソップに目掛けて飛んでいく水の塊。当たればウソップは…

 

 

「えぇ。これが"マジック"だあッ!!」

 

 

二枚目のカードがウソップの手から離れて瞬間、突然に巨大化しチュウの放たれた水弾を弾いた。

それだけじゃない。カードが巨大化するタイミングでチュウの所で落ちたカードもまた巨大化したのだ。

 

そのためまるで足払いされたかのように両足が宙に浮き、身体ごと宙に投げ出された。

 

しかしウソップのマジックはそれで終わらない。

宙に投げ出されたチュウの身体はそのまま()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「な、なんだッ!!?」

「どうだ?魚人が宙に浮くなんて考えたことないだろう!」

 

 

必死にもがいて地上に戻ろうとするが全然効果無し。

諦めてのか今度は口に水を含み水弾を放ってきた。

しかしこれも宙に浮いているためか狙いが定まらずに当たらない。

 

 

「下ろしやがれッ!!」

「下ろすわけないだろう。さて、これから見せますのは……マジックの定番ッ!!」

 

 

指をパチッと鳴らすとチュウの身体の周りに煙が発生してすぐに消えた。消えたと同時にチュウの身体は箱の中に入れられてしまった。

 

 

「チュウッ!!!??」

「おい、これは…なーんだ?」

 

 

驚いているチュウにウソップは呼び掛けた。

その声に反応し見てみるとそこには取手がついた仕切り板。しかしその仕切り板の先端は刃物のように鋭くその仕切り板をウソップは二枚手にしている。

 

 

「な、なにを……」

「何をって……分かるだろう」

 

 

そう言いながらウソップは仕切り板を持ちながらチュウに近づく。そしてチュウは気づいた。閉じ込められている箱の中央に切り込み線のようなものがあると。

 

 

「ま、まさか……や、やめろッ!!!」

「そう。いまから"人体切断マジック"をお見せしますッッ!!!!」

 

 

チュウも気づいた。

確かにマジックの定番かも知れないが…いまこれは、戦いの真っ最中なのだ。ウソップのいうことを、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!

 

 

「や、やめろ…そんなことしたら…死ぬッッ!!!!」

「ご安心を。これは"マジック"。死ぬことはありません」

 

 

笑っていうウソップだが、チュウはその顔が楽しんで殺しをする表情に見えた。ウソップが何を言おうがこの状況でマジックなんてあり得ない。そう、この男はいまからこの身体を切断しに……

 

 

「やめろッ!!!やめろッッ!!!!やめろッッ!!!!」

 

 

気が動転して暴れまわるチュウだがびくともしない。

その仲間のピンチにハチもクロオビも助けに入ろうとするが

 

 

「おいおい、邪魔するな」

「あれはマジックなんだぜ」

 

 

ゾロとサンジがそれを邪魔しチュウを助けにいけない。

その間にもウソップは仕切り板をチュウの胴体の上に持っていき

 

 

「や、や、やめろおおおおぉぉぉぉッッ!!!」

 

 

ザックリ!!

その仕切り板はチュウの胴体を()()した。

続けて二枚目も刺したウソップはその仕切り板を境目に箱を動かして、完全にチュウの身体が真っ二つに割れてしまった。

 

 

「チ、チュウウウウウゥゥ!!!」

「て、てめえええぇぇッ!!!」

 

 

それを見たハチとクロオビは怒り叫ぶ。

しかし次の瞬間

 

 

「ぎ、ぎゃあああああああああぁぁぁぁ!!!お、俺の身体がああああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

そう、チュウは身体が真っ二つになっても生きていた。

ウソップがいった通りにマジックで切断しただけなのだ。

 

しかしチュウにはそれだけで十分に効いた。

切られたと、真っ二つになったと錯覚したチュウは泡を吹いて気絶し戦意喪失となったのだから。

 

 

「おいおい。まだまだやることがあったのにな…」

 

 

そういいながら割れた箱をくっ付けたあと仕切り板を外した。そして指をパチッと鳴らすと箱が一瞬で消えて胴体の繋がったチュウが現れた。

 

 

「マジックを否定するやつほどマジックにハマるんだ。良く覚えとけッ!!!」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「っぶねえな……」

 

 

なんとか落ちてきたモームから回避できたルフィ。

そのモームは泡を吹いて二度目の気絶。

そしてさっきまでルフィに襲いかかってきていた魚人達はモームの下敷きになり撃沈。

 

何が起きてるんだ?と建物の上を見てみると何やら戦闘音だけが聞こえてくる。この中で聞き覚えのある声が

 

 

『レディース&ジェントルマンッ!!!』

 

「……ウソップか?

ということはハジメ達も来ているのか~ニッシシシ!!」

 

 

笑いが止まらないルフィ。

ここの一番強いやつをぶっ倒すのは間違いないがハジメがいるならどんな状況でも必ずどうにか出来る。

なら安心して戦えるとつい笑ってしまったルフィ。

 

するとルフィの勘が危険を察知した。

反射的に身体を動かした瞬間に海から何が飛び出したきたのだ。

 

それはルフィの服を裂き通りすぎて建物へ突き刺さる。

間一髪よけれたルフィだったが動かなければ胴体に穴が空いていただろう。

 

 

「勘のいいやつだ。これを避けるとはな」

 

 

後ろを振り向くとそこには鼻がノコギリのような形をした魚人がいた。そしてその魚人の横にはさっき空いた穴が、分厚い壁に穴が空いていたのだ。

 

 

「お前が…アーロンか」

「なんだ貴様は?あの村の住民ではないようだが…」

 

 

常にナミ達を観察するように部下の魚人に任せていたが、報告では()()()()()()()()()とその仲間しか報告を受けていなかった。

強すぎてルフィ達の印象があまりにも低くなったようだ。

 

それでも"麦わら帽子を被った男"という報告を思い出したアーロンは

 

 

「そうか。お前か。俺様の"奴隷"に手を出したのは」

「………アァッ!?」



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第16海軍支部、攻防戦④(サンジVSクロオビ)

「ふぅー。じゃこっちも始めますか」

 

 

タバコを吸いながらそう語ったのはサンジ。

相手のクロオビはいまだにチュウが倒されたことに動揺していた。

 

そしてそのチュウを倒した相手であるウソップはというと

 

 

「あれは……ハジメか?

やっと追い付いたみたいだな」

 

 

バックから単眼鏡を取り出してこちらに向かってくる小舟を確認していた。モームの猛スピードのせいで離れ離れになっていたがどうやら追い付いたようだった。

 

しかしその小舟に向かって波が細かく揺れて動いている。

 

 

「おいおい…あれって魚人の群れか!?」

「なに!!?あそこにはくいなちゃんやカヤちゃんやロビン様もいるんだぞッ!!!!」

 

「カヤをちゃん付けで呼ぶな」

「くいなもだ」

 

「うるせぇリア充共ッ!!!!」

 

 

サンジからしたら二人はリア充である。

しかし当の本人達は

 

 

「なに言ってるんだアイツ?」

「エロコックだからな、気にするな」

 

「てめぇら…二人を泣かせたら俺がオロすぞ!!!!」

 

 

と言っても何を言っているのかいまだよくわかっていない。

 

 

「というかロビンを様付けって…」

「アイツはやめとけ」

「うるせぇ!!!ただロビン…様っていうしかないんだよッ!!!!」

 

 

それは本能的なものである。

仕方ない。あれは規格外なのだから

 

 

「とにかくウソップッ!!レディ達を守ってこい!!!」

「いや、ハジメもロビンもいるんだから問題…」

 

「い・い・か・ら・い・けッ!!」

 

「こえぇよッ!!ったく…いけばいいんだろう!!」

 

 

涙目で訴えてくるサンジに観念したウソップ。

サンジ的には自分が助けに行きたいがこの距離も未だに倒していない相手がいることも、全てがそれを邪魔しサンジの心はダメージを負っていた。まだ戦ってもいないのにダメージを負っていた。

 

ウソップは取り出したハンマーに乗りハジメのいる船に。しかしそれを大人しく見ているはずもないクロオビは

 

 

「逃がすわけには…いかんッ!!」

 

 

と、ウソップとの距離を縮めて攻撃を喰らわせようとしたのだが

 

 

「させるかよッ!!」

 

 

サンジがすぐに対応しクロオビの攻撃を止めた。

それと同時にハンマーは宙に浮きハジメ達の元へ向かっていった。

 

 

「本当に…邪魔ばかりしてくれる」

「それはこっちのセリフだ。てめぇらがいなければ俺は…俺はレディ達のナイトになれていたんだッ!!」

 

 

どうしてもくいな達の前でいいところを見せてチヤホヤされたいらしい。それが相手がいるだろうレディでもサンジには関係ない。レディは等しくレディなのだから。

 

……まぁ、ついこの前その概念を打ち砕く出来事があったのだが、その傷はまだ癒えてはいないのだが……

 

 

「ナイトだと?貴様が?」

 

 

するとクロオビをサンジの言葉に対してクククッ笑いだした。それに対してサンジの瞳は厳しくなった。

 

 

「聞いているぞ。貴様はナミと一緒にいたやつだろう。それもまだ日が浅いと聞いた」

 

「……それがどうした?」

 

「だから教えてやる。ナミという女が助けられる価値がないというのことをなッ!!」

 

 

それを聞いただけでもぶちギレそうになるサンジだったがそこを堪えてクロオビの話を聞くことに。

どんな形であれナミのことを知っていることには変わらない。いまはその情報を知ることが大切だと判断したのだ。

 

 

「あの女は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「そうでなければ次々に船を難破させ、俺達に奴隷として扱っても壊れずにいたことに説明がつく!!」

 

「知っていたか?

アイツは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「それだからアーロンさんはナミを手放さない。

あんなに奴隷としての資質があるやつはハジ、ゴボブバッッ!!!」

 

 

クロオビの話している最中にも関わらずにサンジはクロオビの顔面に蹴りをお見舞いした。それにより吹き飛ばされたクロオビは壊れた柱に激突し口から血を吐く。

 

 

「……もう…口を閉じてろ……ッ!!」

 

 

僅かな時間だった。ナミとはコックと客との間柄しかなかった。

それでも"ナミ"という人物がどういう人なのか分かっているつもりだ。

 

いつも隣にいるノジコが大好きで、お姉さんであるロビンのことが大好きで、可愛いものが大好きなレディ。

 

 

…そんなレディを、レディを、レディを……

 

 

「……てめぇが、"魚"で良かったぜ……」

「な、なんだと…俺達を…"魚"だとッ!!!??」

 

 

魚人は自分達を"至高の生物"だと思っている。

そしてそれをバカにされることを極端に嫌う。

それが人間から言われたものならすぐさま殺したくなるぐらいに

 

 

「魚人を…ナメるなッ!!!!」

 

 

完全にキレたクロオビは怒りに任せて突撃する。

一方サンジは同じキレているが頭の中は冷静を保っている。

 

料理にとして"調理"するさいは常に冷静であれ。

怒りなどの感情を出したままだとそれが料理に現れて不味くなる。

 

常日頃からオーナーゼフに言われ鍛え上げられ、こうして一流の料理人になったサンジ。

 

向かってくるは"魚"であり、自分はコック。

そして常に腰に装備しているのは"包丁"

 

 

「料理人には、どんな場所でも、どんなものでも、それが"食材"である限り"調理"することが一流」

 

 

包丁を手に取りサンジは向かってくるクロオビに向かって包丁を……

 

 

「まずはエラの外を沿うように切る。

いくら軟骨魚類とはいえ、エラの周りの骨は分厚い。

少しエラから外れた場所は軟らかいので、無理に切り込むよりも外側を切っていく」

 

 

そして包丁を布で拭いたところでクロオビに異変が

 

 

「……カッ、アッ……」

「とはいえ、俺は料理人だ。

それが"魚"であれ自我があり生きているならこの手で傷つけることは俺のポリシーに反する。

だから…お前の"神経"を切らせてもらったぜ」

 

 

そう、サンジが切ったのは神経。

 

 

「とはいえ、本当に切られると思ったか?

お陰で"肝が冷えた"だろう?保存するにはこれが一番だ」

 

 

包丁を収めて改めてクロオビと向き合う。

しかしクロオビはすでに倒れる寸前。サンジは呼吸器官にもある神経も切ったのだ。死ぬほど切った訳ではないが過呼吸になっているクロオビ相手に負けるわけがない。

 

 

フォワ()・シュートッ!!」

 

 

クロオビの肝臓にあたる部位を蹴るサンジ。

くの字に曲がった身体は吹き飛び再び壊れた柱にぶつかるが、今回はそれだけでは終わらずにサンジも一気にクロオビとの距離を縮めて

 

 

 

「てめぇはレディに対して…マナーがなってねぇ!!」

 

 

前屈みになりそうなクロオビの懐に入り

 

 

反行儀(アンチマナー)キックコースッ!!!!」

 

 

 

そのままクロオビの腹部を蹴りあげた。

血を吐きながら空へと舞い上がったクロオビはすでに意識はない。

 

しかし、サンジがそれで終わるはずもない。

落ちてきたクロオビに対して

 

 

首肉(コリエ)ッ、肩肉(エポール)ッ、背肉(コートレット)ッ、鞍下肉(セル)ッ、胸肉(ポワトリーヌ)ッ、もも肉(ジゴー)ッッ!!!」

 

 

瞬間的に複数の部位を蹴り僅かの間、地面につく前に宙に留まったクロオビの身体。その間にサンジはトドメを指すべく体勢を整えて

 

 

羊肉(ムートン)ショットッッ!!!!」

 

 

後ろ蹴り(ソバット)を叩き込んだ。

後ろにあった壊れた柱ごと吹き飛ばされたクロオビはそのまま海へと落ちていく。

そんなクロオビに向けて咥えていたタバコを向けて

 

 

「デザートは……要らねぇか」

 

 

…………………………

 

 

「ハデに飛んだなー」

 

 

もう数分で支部に到着するハジメ達の乗っている船。

しかしそんな船を妨害しようと魚人達が攻めているが

 

 

「三十六煩悩(ポンド)砲"ッ!!!」

「「「ぎゃああああぁぁぁ!!!」」」

 

 

くいながゾロが見せた飛ぶ斬撃を放ち

 

 

「2時9時4時10時」

「ほい、ほい、ほい、ほい!」

 

「11時1時7時3時12時」

「ほら、ほら、ほら、ほら、ほらよッ!!!」

 

 

カヤをハンマーに乗せたウソップは、その的確なカヤの指示に従い狙撃し

 

 

桃色(ピンク)毒矢(ホーネット)ッ!!!」

 

 

レイジュの口から放たれる毒により魚人達は次々に倒れていき

 

 

「違う。一撃で沈めなさい」

「はいッ!!」

 

「そこじゃない。何度言えばいいの??」

「すみませんッ!!」

 

「謝る暇があるならあの子達に奪われる前に一撃で倒せるようにしなさい。ほら、まだ意識があるわ」

 

「イエスッマイロードッ!!!!」

 

 

……いつの間にかギンを完璧に手中に納めたロビン。

なにやってるのかな?まだギンを"飼う"か決まってもないのに。

 

確かに普段はいい人だよ。でも戦闘時に人が変わるのはいただけないだよねー

それって理性がないということ。つまりは暴れまわる可能性がある。

 

………まぁ、もうその可能性はないだろうけど。

ロビンが手を加えたならもう暴走の心配はないけど……

 

 

最終的にはルフィが決めることだからなー

この大人数を受け入れるか……多すぎるよねー

まぁそこを心配しても無駄だと考えたハジメはのんびりと船を漕いでいる。

 

みんなが頑張って魚人と戦っているから何かしようと漕ぎ手に回ったのだ。一緒にコビーも手伝ってくれている。

 

 

「楽出来るのはいいけど…さて、どうしようかなー」

「何かするんですか?」

 

「うん、何かしたい」

「…なんか…ルフィさんにスゴく似てますね……」

 

 

 

そうか?と思いながらも何かしたいなーと考える。

そこにロビンのポケットに入っているでんでん虫が鳴り始めた。

気づかれないように抜き取ったハジメはでんでん虫からの応対をする。そして聞こえたきたのは

 

 

『おいニコルッ!!特急で来てやったんだ!返事しろッ!!』

 

 

その声は聞き覚えのある声。

そういえばロビンが呼んでいたなー

 

 

『なんだあの船はッ!!

なんの動力を持ったらあんなスピードがッ!!

………い、いや……やっぱ……いい………聞きたくない……巻き込まれ……たくない……』

 

 

なんか一人で勝手に盛り上がっているなー

やっぱり大将は荷が重たかったかなー

いきなり大将だもんねーそれも僕の影武者だし。

ストレスを相当抱えているだろうなー

 

 

『と、とにかく…近くに待機しているッ!!

俺は何をしたらいいんだニコルッ!!』

 

 

指示待ちしているようだし、ここは

 

 

「待機」

『ふざけんッ!!っておいッ!!お前ッ!!!??』

 

 

すぐさまでんでん虫を切って一時停止をかけてやった。

これでこっち連絡は取れない。

というかさっきの一言で分かるんだ。流石ー

 

 

「えっ。よ、良かったんですか?」

 

「いいのいいの。

ロビン。もう来ているみたいだけどどうするの?」

「お兄ちゃんに任せるわ。私はなんとなく呼んだだけだから」

 

「分かった。じゃ放置で」

「放置ね。分かったわ」

 

 

その時会話を聞いていた人達は思った。

特に一番近くにいたコビーは思った。

 

 

 

(この人……マジ不憫……)



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第16海軍支部、攻防戦⑤(ゾロVSハチ)

サンジの戦闘が始まるタイミングでゾロの戦いも始まった。

 

 

「ニュ~?なんだお前?素手で戦う気か?」

「さっきから()()を使っていただろうが…」

 

 

ウソップとサンジへの妨害をしようとしたハチをゾロが妨害する。相手はタコの魚人もあって6本腕で6本の刀を使ってくるのだが、対してゾロはガレキに埋もれた()()を使って足止めをしていた。

 

しかしタコの魚人特有の腕の多さと軟体とその剣術、そして一本300㎏の剣を軽々と振り回す力。それには鉄筋もすぐにダメになり鉄筋を捨てて今は何も持っていない状態。

 

 

「素手で俺とやる気か~」

「…そうだな。それも面白いかもしれねぇな」

 

「バカめ。素手で魚人に勝てるわけが…ないニュー!!

いくぞ!蛸足奇剣ッ!!!」

 

 

そういってハチはゾロに向かって刀を振り下ろす。

それも斬り込む場所もタイミングも全て違う。

タコの魚人だからこそ使える"6刀流"

 

そんなハチに対してゾロはミホークに敗れ折られた刀の先端をポケットに忍ばせておいたことを思い出した。

長年連れ添った刀。簡単に折られたがそれでもゾロにもその刀には愛着があった。

 

そしてその一本が昔からくいなと共に過ごしてきた刀。

簡単に手放すことが出来ずに一部だけでも持ってきていた。

 

 

(…まだ……いけるなッ!!)

 

 

咄嗟に刀の先端を取り出し人差し指と中指で挟み込み

 

 

「"小太刀""一刀流""刀狼(とうろう)流し "」

 

 

次々に斬り込んでくるハチの刀をすり抜けていき、ハチが気づいたときには後方へゾロが抜けており

 

 

「ニュ、ニュウウウウゥゥゥー!」

 

 

ハチの手の甲に無数の刀傷がつけられており、6本中2本も刀を握れなくなってしまった。

 

 

「な、何をした……」

「避けた。切った。だ。」

 

「ふ、ふざけるなッ!!そんな折れた刀でッ!!」

 

「信じられねぇか?6本扱うお前がこの折れた刀で()()()()()()()……」

 

 

その瞬間、ハチは殺気のようなものを感じた。

それは獰猛な動物が放つような殺気。

思わず後ろに下がってしまったハチ。

 

ハチがいたところには手放した刀があり、ゾロはそれに目をつけて

 

 

「ニュ、ニュ~!!お前じゃそれは扱えねぇ。

その刀は一本300㎏あるんだ。人間じゃ無理だニュ~」

 

「……そうか」

 

 

ハチに言われ興味を持ったゾロ。

一本300㎏、それを振れるなら……

 

いったん折れた刀を腹巻きに納めてゾロは300㎏の刀に手を伸ばした。

 

束を握り持ち上げようとするが流石300㎏、びくともしない。

 

 

「言っただろう。人間じゃそれを扱うのは無理だニュ~」

 

「……そうか」

 

 

確かにびくともしなかった。いつもの感覚で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

300㎏もあるのだ。普通に持ち上げることは出来ないと分かっていたがどうしても確かめたくて普段通りに持ち上げてみようと思ったのだ。

 

つまり力を入れ腰を入れれば

 

 

「ニュ、ニュウウウウゥゥゥー!!?」

 

 

300㎏の刀でも普段通りに持ち上げられる。

そして普段通りに振れるかと何回かその刀を振ってみたが違和感なく使えそうだった。

 

 

「な、なんで人間が!」

「そこら辺のやつと一緒というのは心外だ。鍛え方が違う」

 

 

ニヤリとゾロが笑うと悔しそうに睨むハチ。

しかしそれでも相手は1本でこっちは4本も差がある。

 

 

「その刀が持てたところで、お前と俺様には圧倒的な差があるんだ!」

 

「へぇー」

 

「人間と魚人。そして1本と4本。

どう考えても俺様の方が強いに決まっているッ!!!」

 

 

確かに普通に考えればそう思うだろう。

人間と魚人。その身体能力の差は明らかに違う。

そして刀の本数も違えば攻撃の手数も変わり差が生まれる。

 

でもそれはあくまでも()()()考えればの話だ。

 

 

「だったらまずは……」

 

 

そういってゾロは落ちていたもう一本を掴み

 

 

「てめぇの手数を減らす」

 

 

両手合わせて600㎏の刀を平然と掴んだゾロ。

それには驚いた表情を見せたハチだがすぐに冷静さを取り戻し

 

 

「そんな状態でマトモに刀が振れるか!!

それに2本に増えてもこっちが優勢だッ!!!」

 

 

そういってゾロに突っ込んでくるハチ。

対してゾロは両手の刀を外へ広げて独特な構えを見せる。

ハチはそれに気にもせずに

 

 

「食らえ!!六刀改め、四刀の円舞曲(ワルツ)ッ!!」

 

 

六刀流の剣技にして六刀流の「奥義」。

6本の刀を扇風機のように回旋させ、巻き込まれた相手を挽肉のように切り刻む。

 

しかし現在は4刀しかなく威力も落ちるがそれでも当たれば同じ結果を招く。

 

 

だがそれは、当たればの話。

ゾロは小さく息を吐き

 

 

「"二刀流"……"(たつ)"」

 

 

目を見開いた瞬間。

ゾロは身体を軸に刀を外側へと振るう。

 

 

「"巻き"ッッ!!!!」

 

 

その遠心力により何度何度回転が発生しながらハチを斬っていき、ゾロの身体が停止した時にはハチの身体は宙を、ゾロの頭上には竜巻が発生したように宙を舞った。

 

ハチは刀全て手放し意識もなく、これで終わりに見えた。しかし

 

 

「に、ニュウウウウゥゥゥ!!!!」

 

 

根性だろう。意識を取り戻し真下にいるゾロに向かっていく。刀はないがそれでもこの6本の手で繰り出されるパンチは柱も簡単に破壊し当たれば海の彼方へ吹き飛ばす。

 

 

「タコ焼きパンチッ!!!」

 

 

相手は2本の刀を捨てている。すでに勝負が決まったと油断している!!これで勝ったとハチは確信した。

 

しかしゾロはそんなミスはしなかった。

 

腹巻きから折れた刀を取り出し人差し指と中指で挟み込み、落ちてくるハチの方を向いて

 

 

「言ったろう。"てめぇの手数を減らす"ってな」

 

 

そう、最初からこの折れた刀でトドメを指すつもりだったのだ。だからトドメをさせただろうあの龍巻きでは加減をしたのだ。

 

敵の刀で終わらせるよりも、己の長年連れ添った刀で終わらせたかった。ただそれだけの理由なのだ。

 

 

「"小太刀""一刀流"……"獅子(しし)(とう)"」

 

 

その瞬間、ハチは獅子を見た。

指に挟んだ折れた刀がまるで獅子の牙のように…

その牙がまさに自分を喰らうべく狙っているかのように……

 

 

「"渦羅歯(がらし)"ッッ!!!!」

 

 

刹那に刻まれたハチの胴体に大きな歯形。

そして猛スピードで放たれた斬撃によりハチの身体は吹き飛ばされた。

そのタイミングで隣で戦っていたサンジも同じようにトドメを指しクロオビが吹き飛ばされていた。

で、ハチとクロオビの間に倒れていたチュウも巻き込まれ三匹一緒に海へと落ちていった。

 

 

「……俺の方が飛んだな」

「ああっ!?どう見ても俺だろうがッ!!」

 

 

せっかく終わったのに、不毛な戦い(喧嘩)が始まった……

 

 

 

…………………………

 

 

「あった。ゴーイングメリー号ッ!!」

 

 

支部の船置き場に一隻だけ姿形が違った船を探すだけで良かったのですぐに分かった。ここには軍艦しかないのだ、見つけるのは楽だった。

 

そしてそこにはもちろんココヤシ村の人達が乗ってきた小舟もあった。で、その小舟の周りには倒れた海兵達が……

 

 

(…なんか、海兵の人数が少ないような……)

 

 

そんなことを思ったナミだったがそんなことする前に突然近くの壁が内側へと吹き飛んできた。

 

 

「きゃあっ!!!」

 

 

衝撃と突風に吹き飛ばされたナミ。

ノジコ達はすでに船に乗り込んでいたのだがナミが抱えたいた違和感のために乗り遅れていた。

 

 

 

「な、なんなの……」

 

 

何が起きたのかと壊された壁の方を見ると、辺りに舞った粉塵がゆっくりと収まっていき人影が見えた。そしてその人影には特徴のある"麦わら帽子"のような……

 

 

「ル、ルフィッ!!」

「おおぅ!ナミッ!!!」

 

 

いま立ち上がろうとしていたルフィはナミに気付き近付こうとした。しかしハッと何かに気づいたナミは咄嗟に

 

 

「……ッ!! なんで来たのよッ!!!??」

「……ナミ?」

 

 

一瞬安堵の表情をしていたナミがすぐに表情が険しくなり、何が起きたのかと驚いているルフィ。

 

それを見ていたロビンはせっかく船に乗っていたのにそこから飛び降りてナミ達に近づく。

 

 

「ナ、ナミ……」

「そこにいなさいノジコ、ベルメール。

いざとなったらその船で逃げなさい、いいわね」

 

 

いまゴーイングメリー号にノジコ、ベルメール、ゲンさんと複数の村の住人が乗っていた。ここに来るとき無理して小舟に乗っていたのでゴーイングメリー号に乗せてもらっていたのだ。

 

なのに肝心のナミが乗らずに、ここまで助けに来てくれたルフィにまるで敵対するかのように威嚇している。

 

誰もが何が起きているのかと心配する。

 

 

「……なんで、来たのよ……」

「そりゃ"仲間"だからな」

 

「私は仲間になんてなってないッ!!」

 

 

誰もが聞こえるほどの大声で叫ぶナミ。

しかし目の前のルフィには響いてないようで

 

 

「……そっか。まだ仲間じゃなかったな。

じゃ"同士"だ!一緒の船に乗ったんだ。助けるに決まってるだろう」

 

 

すぐに仲間という言葉から同士に切り替えた。

といってもルフィの中ではすでに仲間。

でもロビンからじっくりと仲間にしていきなさいと言われているため、あとナミの様子を見て言葉を変えた。

 

しかしそんなことナミにも当然分かっている。

 

 

 

「ふざけないでッ!!

仲間?同士?そんなものになったつもりなんてないッ!!」

 

「私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()

 

「お金が欲しかったのッ!!船が欲しかったのッ!!

それを全部あんたが持っていただけよ!!!」

 

「そこにたまたまお姉さんがいたから何もしなかっただけ。でももうそんなことはどうでもいいのッ!!」

 

「私が一番大切なのは"家族"なのッ!!村の皆なのッ!!」

 

「だから消えてッ!!!!私の前に二度と現れないでッ!!!!」

 

 

今まで溜まっていたものを吐き出すかのように叫ぶナミ。その瞳には涙が溢れていた。それでも泣かないように必死に堪えている。

 

 

「……ナ」

「まったく、その通りだ」

 

 

ルフィがナミの名前を言おうとした瞬間。

土煙のさらに奥から現れたのは

 

 

「…アーロンッ!!」

 

「ナミの言うとおりだ。麦わら。

てめぇはもうナミの前に現れないようにしてやる。

そしてナミ、お前はその"大切なもの"を守るために一生俺様の"奴隷"なんだからなッ!!」



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第16海軍支部、攻防戦⑥(ルフィVSアーロン)

「ど、奴隷って……」

「何をいっとるッ!!」

 

 

初めて聞く言葉に動揺を隠せないベルメールとゲンさん。もちろん村の皆も何が起きているのかと慌て出している。

 

するとロビンはナミに近づいて、ナミの左肩の袖を破った。

 

 

「ニ、ニコルッ!!?」

「ベルメール。これが真実よ」

 

 

娘の現状を確認させるためにロビンはナミの長袖を破り、その内側にあるものを見せたのだ。そこにあるのは"ある刺青"だった。その刺青はまるでさっきナミを奴隷と言った魚人のようで……

 

 

「この刺青はそこの魚人の海賊旗。そしてその刺青を入れられた人間は"奴隷"となる」

 

「なっ!!?」

「そ、そんな……」

 

「そしてナミには沈めたい船に乗せてわざと難波させて沈没させて、ノジコはその船や海賊船などから盗みを働いていた。それを約五年間」

 

 

それを聞いたベルメールは涙を流しその場に座り込む。ゲンさんはベルメールに付き添っているが表情はやはり険しい。

それを見たナミは初めてロビンに向かって睨み付け胸ぐらを掴み

 

 

「どうしてこんなことをするのッ!!!??」

「あなた、まだ誤魔化す気でいたの?

ナミ、あなたがあの時、ゴーイングメリー号を見捨ててあの場から逃げなかった時点で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その言葉に思わず手を離してしまう。

しかしその言葉に気にくわないと睨み付けてくるやつがいた。

 

 

「……なんて言った、下等生物がッ!!」

「聞こえなかった?魚人が人間より優れていると言っている割には耳が遠いのね」

 

 

その瞬間にアーロンはロビンに攻撃をしようと動作を起こそうしていた。しかし、相手が、悪い。

 

 

「そこを動かないで。黙ってなさい」

 

 

刹那。アーロンの身体の周りに手が生えて全身をロックした。ついでにアーロンの口元も塞ぎ目が見えている状態。

 

 

「暴れたいならもう少し待ってなさい。相手はルフィだけど」

 

 

それいいアーロンから視線を外す。

もちろんもがくアーロンだが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そしてロビンは改めてナミと向かい合い

 

 

「ここはお兄ちゃんがカッコよく言うところだけど…」

 

 

と、そこで何故ハジメが出てきたのか謎だが

 

 

「もう相手にも自分にも誤魔化すのは止めなさい。

苦しんで苦しんで、やっと見つけた"仲間"を手放す必要はないの。奴隷?なにそれ?そんなの誰が決めたの?そんなものはあの魚人が言っただけ。それだけで自分が()()()()()()()()だと思って、ルフィ達から、私から離れようとするなら………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私がいまここで、殺してあげるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!!??」

 

 

その言葉に我慢が出来ずにボロボロと涙を流しその場に座り込むナミ。

それを見たノジコ、ベルメールはすぐさまナミの元に。

 

 

「ノジ…ゴ…ベル、メールざ…ん……ごべん…なざい……」

 

 

マトモに言えていないがハッキリと言い切ったナミに、二人も泣きながらナミを許した。いや元々怒ってもいなかった。ただいま、ロビンのキツイ言葉だが救われた言葉に涙を流すだけだった。

 

 

「ひでぇな師匠~」

「私が普通に言うとでも?」

 

 

ねぇ!!とあまりにもハッキリ言ったものだからルフィから一回り大きな手が生えてその頬を思いっきり叩いた。

もちろん大ダメージを食らったルフィだが

 

 

「に、ニッシシシ…でもやっぱり師匠だぁ!」

 

「何がやっぱりなのか…聞かないでおくわ……」

 

 

面倒くさくなったのかこれ以上ルフィの相手をするのをやめた。その変わりにずっと抵抗し続けるアーロンの方を見て

 

 

「さて、これで私の実力は分かったはずよ。

まぁそれでも怒りが収まらないならルフィとやりなさい。ルフィ以外に手を出そうならこの時点でその命は消えるわよ」

 

 

その言葉にアーロンの瞳は更に鋭くなる。

どうせ言っても聞かない。まぁそれでも少しは牽制になればと言った程度だった。

 

 

「ルフィ。その海楼石取っていいわ。

能力は……一撃だけ。武装色も一回だけ。工夫して使いなさい」

 

「おうッ!!!!」

 

「あと、お兄ちゃんが来た時点で終わってなかったら……私が相手してあげるわ、()()()

 

「頑張りますッッ!!!!」

 

 

さらに気合いの入ったルフィを見てロビンはアーロンの拘束を解く。その瞬間にアーロンはルフィではなくやはりロビンに向かっていくのだが

 

 

「お前の相手は、俺だッ!!!」

「どけぇ!下等生物がッ!!!」

 

 

…………………………

 

 

「酷いこというなロビン」

「お兄ちゃんが隠れていれば問題ないわ」

 

 

そう、すでにハジメはこの場にいたのだ。

ただ姿を一時停止で消しているため誰にも見えていない。……いないのにどういうわけかロビンだけには見えるのだ。いや、見えてないけどハジメがそこにいることが分かるらしい。

 

……流石ストーカー。能力よりも"ハジメ"が上らしい。

 

 

「くいな達はどうしたの?」

「残党狩り。あとは上で喧嘩している二人を回収しに」

 

「ったく…お仕置きが必要かしら?」

 

 

その言葉にハジメがクスクスと笑いだした。

それに対して珍しく不機嫌な表情をみせ

 

 

「何がおかしいの、お兄ちゃん?」

「あのロビンが()()()()()()()()()()()()()()()()()()って思って」

 

 

そう、あのストーカーがこんなにも人間らしく……

 

 

「だって、()()()()()()()()

「うん、黙れ」

 

 

やっぱりダメだった。

 

 

…………………………

 

 

「くそがッ!!!!」

 

 

さっきから海から掬い上げた水を、撃水(うちみず)という掌に掬い上げた水を手首のスナップで相手に撃ち出していた。

 

人間とは地力の違う魚人の腕力にアーロンの実力もあり、放たれた水しぶきの衝撃力は散弾銃並み。

 

しかしそれは当たればの話。

そうルフィは先ほどからその撃水を避けているのだ。

 

といっても大きく仰け反ったり、その場から離れたりなど動作があまりにも大きいのだが、アーロンからすればまるで()()()()()()()()()かのように感じていた。

 

そしてそんな撃水の中をルフィがうまく潜り抜けてアーロンの懐に入り

 

 

「ゴム無しの…"(ピストル)ッ!!!"」

 

 

アーロンの顎を思いっきり殴り付けた。

その力は凄まじいものでアーロンの身体は吹き飛び軍艦一隻に激突しそのまま沈没した。

 

 

「す、スゴい…」

「な、なんなのあの子は……」

 

 

ノジコもベルメールも驚いていた。

いや、ルフィのことを知らない村の皆驚いていた。

魚人の身体能力がどれ程のものか分かっているつもりだ。

例え()()()()()()()()()()()()()()()魚人が普通では倒せないということを。

 

それなのに()()()()()()()()()()()()()()()

その出来事に誰もが驚いているのだ。

 

 

「あの人と同じ…能力者、というやつか…」

「ですが"ゴム無し"って…」

「それに普通のパンチに見えましたが……」

 

 

なんかルフィの強さが能力なのか実力なのかと議論になっているようだ。まあ僕としては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()いけないのだけど…

 

 

「しかしよく能力使用を許したね」

 

「だって、ルフィがやらなかったら私が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思ったからルフィに任せたのだけど………ダメだったかしら?」

 

 

いや、それダメって言えないよね?

言うことはまずないけど、アーロンがアーロンじゃなくなるって……流石に同情するな……

 

すると軍艦が沈んだ所から水柱が立ちその中からアーロンが飛び出してきた。

 

 

「くそがッ!!」

 

 

天井に一瞬張り付いた後に足場にしてルフィに突撃をする。さっきのように避けようとしたルフィだったが"直感"がさらに避けろと警告してきた感じを受けた。

 

だから直ぐ様その場を飛び退いたルフィ。

するとそこをアーロンが通過したのだが()()()()()()()()()()()()()退()()()()()()()()()()()()()()()()という状態だったのだ。

 

そして地面に激突したと思われる場所はクレーターと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()状態だったのだ。

 

 

「な、なんだそれぇーッ!!!」

 

「てめぇが折った歯だが、鮫の歯はすぐに生え変わる。そしてこんな風に…」

 

 

するとまるで豆腐を箸で切るかのように僅かな力でコンクリートを粉々に砕いたのだ。

 

 

「圧倒的な力を持っているッ!!

分かるか?これが魚人の力ッ!!!」

 

 

誰もが息を飲んだ。

あんな簡単にコンクリートが砕けるなんて…

と、そんな中でルフィが壊れた壁の塊を掴み()()()()()

 

 

「俺にでも出来るぞ」

「…て、てめぇ……」

 

 

どや顔、ではなく普通にアーロンを見るルフィ。

しかしアーロンにとってはそれは挑発しかなかった。

だがそこでアーロンは無闇に向かっていかなかった。

行ったとしてもさっきのように避けられるなら意味がない。

 

しかしさっきよりも速いスピードならどうだ?

 

そう考えたアーロンは素早く移動しながら

 

 

「だったら…見せてやる。魚人が下等生物よりも優れていることをッ!!!」

 

 

そんなことを言いながらアーロンは海へと入っていった。

 

それをみたハジメは思い出した。いや、これから始まることを想像していた。これまでほとんど本編とは違うことが多かったがこれに関しては何が起きるか分かる。

 

あのスピード、いまのルフィなら避けられるだろう。

しかし本編から大きく逸脱した今はもしかしたらそのスピードも上がっている可能性がある。

 

簡単にやられるとは思っていない。

しかしあの一撃は……死を招く恐れもある。

 

 

(…どうする……どうする……?)

 

 

手助けすれば簡単にアーロンを倒せるだろう。

しかしそれでいいのか?これはルフィの物語。

確かにもう取り返しのつかないことばかりやらかした。

それでも"ルフィの冒険"だけは出来るだけ手出ししないように心掛けているのだ。

 

そう、これはルフィの冒険なのだ。

 

 

(…負けるな、ルフィッ!!)

 

 

そんな事を考えている中でルフィは何してるんだ?と迂闊にも海へと近づいていく。

もちろんそれはアーロンにとっては好都合。

 

海の中からルフィの姿が見えてきた。

頭から首、そして胴体がハッキリと。

 

そうこの瞬間だ。ここであの胴体を貫ければ…ッ!!!

 

 

(シャーク)ON(オン)DARTS(ダーツ)ッッ!!!!」

 

 

鋭い鼻先を相手に向け、魚雷のように勢いよく突撃を仕掛けたアーロン。

その鼻は()()()()()()()()()()()自慢の鼻。

だからこそ超スピードで突撃し壁や地面に突き刺さろうとも折れることはないのだ。

その強度とスピードにより壁などに風穴を開けるほどの威力を誇り、水中などで十分な加速を得ればその威力はさらに跳ね上がる。

 

つまりいまアーロンは水中からルフィに向けて最高のスピードで、最強の鼻をルフィの胴体に当てるべく飛び出したのだ。

 

 

「ッッ!!!??」

 

 

異変に気づいたルフィ。

しかしアーロンのスピードはルフィの回避する前に……その胴体に鼻を突き立てたのだ。

 

 

「ルフィイイイイイイィィィッッ!!!!」

 

 

ナミの声が響き渡る。

突然飛び出したアーロンの鼻がルフィの胴体を貫いたのだ。

あれではもう…ルフィは……

絶望で足に力が入らず倒れそうに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぶねぇ!!!」

「なにッ!!!??」

 

 

その言葉に力が入り踏みとどまったナミ。

何が起きたのかとルフィの方を見てみると

 

 

「でも、ここで使っちまったな……」

 

 

何を言っているのか分からない。

でもアーロンの鼻はルフィの腹部に当たっている。

当たっているだけで刺さっていないのだ。

皮膚にその鼻を挟まれて留まっている状態。

アーロンの鼻先がルフィの()()()()に拒まれているのだ。

 

 

「なにを…なにをしやがったてめぇッ!!!??」

 

 

何が起きたのか分からずキレるアーロンに対してルフィはそのままアーロンの胴体を蹴りあげた。

すると抜けない鼻はその蹴りあげにより折れてしまい、それで鼻は抜けたが未だに勢いそのままにアーロンの身体は上空へ投げ出された。

 

天井に叩きつけられたアーロンは血を吐くがまだ終わってなかった。

 

 

「これなら……どうだッ!!!!」

 

 

アーロンは次に口を前回に開けて更に回転を加えてルフィに向かって突撃する。海からの突撃よりスピードは落ちるが、こちらは少しでも当たれば回転する歯で獲物の肉を抉り取る。

 

 

 

(シャーク)ON(オン)歯車(トゥース)ッッ!!!!」

 

 

 

アーロンの必殺技のようなもの。

これが決まればルフィは負けるかもしれない。

しかしルフィにはまだ()()使()()()()()()()()()()()

 

 

「なら…これでも喰らえッッ」

 

 

まるでアーロンが何かすると予知していたようにすでに()()()()()()構えていた。

そして親指を咥えて息を吹きその腕をまるで()()()()のように大きくさせ

 

 

「"ギア3""骨風船"ッ!!!」

 

 

その右手を、腕を、後ろへと十分に伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけでは終わらず()()()()()()()()()()()()()アーロンに向けて放つ。

 

 

「ゴムゴムの……"業火隕石(ヘル・メテオ)"ッッ!!!!」

 

 

 

巨人なその拳はアーロンの開いた口をそのまま吹き飛ばし、後ろの停滞していた軍艦10隻以上と一緒に吹き飛ばし破壊したのだった。

 

もう、誰も何も言えなかった。

何が起きたのか…本気で分からなかったから。

ゆっくりゆっくり、出来事を思い返しても…分からないものは分からない。

 

そして元の大きさに戻った腕は()()()()()()()()()()()()も、問題がないか確認し大丈夫だと分かったルフィは

 

 

「よっしゃーッ!!!間に合ったああああぁぁぁッ!!!」

 

 

……よっぽどロビンとやりたくなかったようだ。

 

でも、大丈夫か?

さっきの技、無意識に武装色硬化使ってるんだけど…ほら、隣のロビンの表情ちょっと険しくなってるし。



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その後ろにいたのは

支部に大穴をあけてその周辺には軍艦の残骸。

それのほとんどがルフィの攻撃による炎で燃えている。

そんな中でアーロンは海面を漂っていた。

意識もなくただユラユラと……

 

 

「…圧倒的にやられたな…アーロン…」

 

 

いつの間にか現れた男。

宙に漂う無数の()()()()()()()が集まり、その上に乗ってアーロンを見下ろしていた。

 

 

「でも、まぁ、お前のお陰で"ヤツが"現れた」

 

 

そういいニヤリと笑う男。

そしてその男の足場になっていた黒い何かの一部がアーロンの元へ向かう。

そしてそれはアーロンの頭部に集まり

 

 

「さて、仕上げだ」

 

 

アーロンの口や耳、穴という穴へ黒い何かが入っていく。すると気絶していたアーロンが突撃叫ぼうと口を開くが直ぐ様黒い何かがそれを塞いだ。

 

 

 

「俺の為に、もう一度やってもらうぞアーロン」

 

 

 

…………………………

 

 

「え、ええぇー!!?いたのかよハジメッ!!」

「まぁね」

 

「…ということは……」

「さぁ、二回戦よルフィ」

 

「イヤだああああぁぁぁッッ!!!!」

 

 

やっと戦いが終わりホッとしていたところにハジメが現れた。そしたルフィの戦いを見ていたというと顔が青ざめていき結局ロビンとの二回戦が決定したようだ。

 

 

「ひ、卑怯だぞ師匠ッ!!!それもう決定…じ、事項じゃねえか!!!??」

 

「よく言えたわね。でもお兄ちゃんの気配を読めなかった時点でアウトよ

というか、無意識でも武装色硬化を使った時点でアウトよ」

 

(それ読めるの……ロビンだけだからね……

あと、やっぱり気づいてたんだね……)

 

 

と、心で思ってもそれを口にしないところハジメもなかなかいい性格をしている。

 

そんなやり取りをするなか突然ハジメの腹部に衝撃が走る。まぁ一時停止で痛みはないのだが、そちらに視線を向けると

 

 

「…ナミ……」

「……待ってたんだから……ずっと……」

 

「うん。ごめんね」

「…ダメ。許さない…」

 

 

そうだろうなーと悩んでいるとナミの後ろからノジコとベルメールが歩いてきた。

 

 

「お兄さん…遅すぎ……ですよ…」

「本当にごめん」

 

「…………」

「…ベルメールさん……」

 

 

嬉しくて涙が溢れて、でもそれを見られないようにそっぽを向くベルメール。それを見たナミはゆっくりとハジメから離れてくれた。そして無理やり笑いハジメにベルメールの所にと言ってくれた感じがした。

だから視線を合わせないベルメールの元へいき

 

 

「ベルメールさん……」

「…しらない……」

 

「……遅れて、ごめんなさい……」

「……しらない……」

 

「……会えて、嬉しいです……」

「ッ!!!?? ……それ、私の…セリフ……」

 

 

そう言ってハジメに抱きついてきたベルメール。

ずっと我慢していた感情が一気に爆発したように、大声で泣きながら沢山の涙を流す。

 

それを見ていたナミもノジコも村の人達も笑みがこぼれた。約10年も待っていたのだ。そしてこうしてまた出会えたのだ。感動のさいか

 

 

 

「いつまで引っ付いてるの、離れなさい」

「ちょっ、ちょっとニコルッ!!!」

 

「私のお兄ちゃんなの。そして貴女は愛人なの。

優先順位はどっちかなんて分かりきったことよ」

 

「お前は少し空気を読みなさい」

 

 

流石にこれはあかん。とロビンの頭にチョップをする。

すると硬直したロビンはそれから動くことも言葉を発することもしなくなった。

 

……や、やり過ぎたかとロビンの顔を覗いてみると…

 

 

「……エヘヘ。エヘヘ。お兄ちゃんから…お仕置き……」

 

「うわぁ…こいつはもうダメだ…」

 

 

頬を赤くして喜んでいた。

ため息をつきベルメールに近づいて

 

 

「…あとで話があるから」

「は、はい……」

 

「ロビンもあるからねー」

「分かったわ」

 

 

すぐにトリップから回復したロビン。

本当にハジメのことになると……

 

 

「むぎばだああああぁぁぁッッ!!!!」

 

 

大声と共に海から水柱が上がった。

周囲には雨のように海水が落ちてきた。

そんな中をゆっくりとこちらに歩いてくるヤツがいた。

 

 

「う、うそ…でしょう……」

 

 

ナミは目を疑った。その人物とはさっきルフィにやられたばかりのアーロンだった。それも関節が手足一本づつ曲がっており胴体は大火傷を負っておりとても動ける状態ではないはずなのだ。

 

目も焦点が合っておらず意識があるのか疑わしいほどに酷い状態。

 

そしてそのアーロンの後ろからもう1つ人影が

 

 

「……久しぶりだな。ハジメ」

 

 

その声、姿、見覚えがあった。

そしてこの一連の出来事の黒幕なら納得がいく人物。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの時の……人拐いかッ!!」

 

 

その顔を忘れる訳がない。

昔、現在の海賊女帝"ボア・ハンコック"が人拐いをしようとした人物。あの時の海兵に引き渡し人拐いのグループを壊滅させたのだけど……

 

 

「覚えてくれたようだなハジメ。

改めて自己紹介だ。クルード・フィンザーだ」

 

 

そして片手を上げるとその腕が黒い小さな何かに変わり

 

 

「そして"ムシムシ"の実を食べた、虫人間だ」

 

 

あの黒い小さなものは"虫"

それが何百、何千とクルードの身体を作っている。

 

 

「悪魔の実ッ!!」

「お前にやられたあと軍艦にあった悪魔の実を偶然に食べることが出来た。お陰で俺はこの力を手にいれた」

 

 

あのあとでそんな事が…

いやでもそれなら僕の所に報告が

 

 

「どうして逃げられたと報告が上がらなかったか?って顔をしてるな?

簡単だ俺の虫の特徴は"寄生虫"。相手の身体に入り自由自在に操れる。だから俺は逃げることが出来た。そしてその海兵やコイツらを手にすることが出来た」

 

 

指でパチンと鳴らすと何処に隠れたいたのか沢山の海兵が現れた。いやそれだけじゃない様々な人達がここに集まってきたのだ。

 

 

「しかしこの虫には難点があって気絶させて自我を失ったときしか効果が発揮しない。それでもあの日からずいぶんと集めたと思わないか?」

 

 

支部の建物を埋めつくほどの人、人、人。

その人全てが意識がなく白目を向いている。

そしてその海兵以外の人達をみたナミやノジコは驚いていた。

 

 

「……う、そ……」

「…なんで…生きて、いたの……」

 

 

そう。ナミが船を難破させ沈めた船の乗組員達だったのだ。もちろんそれ以外の人もいるが多くはナミやノジコと関わりのあるものばかり。

 

 

「何人かの魚人も操っていてね。海中に沈んだ者達を密かに回収していた。あの難破の本当の目的は()()()()()()()()()()()()()()()()だったんだよ。そしてここには選りすぐりした精鋭2000人ッ!!!」

 

 

 

そうこれまでのあの苦しみは全てこの為。

この瞬間のためだけに、ナミを苦しめて集めた人々。

直接ではないとはいえ人を殺めてきた罪を背負い、それでもノジコやベルメール、村の人達のためにやって来たこと。

 

しかしそれは全て

 

 

「それもこれも、全ては"ハジメ"ッ!!

お前に復讐するためだけにやってきたんだああああぁぁぁ!!!!!」

 

 

一度目、ロビンの失踪。

そして二度目がナミを苦しめた。

 

どうしようもなく複雑な感情が渦巻く。

それでもいまはこの目の前のヤツをどうにかする必要がある。

 

 

「ロビン。いけるかな?」

「もちろん」

 

「ルフィ。手伝ってもらうよ」

「おう!!!」

 

 

いまどんな感情が生まれていても、この目の前のヤツを倒す必要がある。そのあとだ。この感情に向き合うのは。

 

 

「たった三人で……何が出来るッ!!?」

 

 

その言葉に一斉に襲いかかる操られた人達。約2000人。

ナミもノジコもベルメールも誰も彼もやられると目を閉じようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に数も(パワー)もスピードも無意味よ」

 

 

しかし、その前に、終わる。

いくら人を集めてハジメを倒そうとしても無意味。

だって、ハジメの隣には最強の"妹"がいるのだから。

 

 

「"万紫万紅(ディミル・フルール)""ロック"」

 

 

そしてそこからがロビンの恐ろしいところ。

一度深呼吸したロビンは目を見開いて

 

 

覚醒咲き(エヴェイユ・フルール)

 

 

それはハジメも初めてみるものだった。

ロビンが覚醒していたことは知っていた。

分身体の遠隔操作に、意識と記憶のリンク。

さらに一万本まで操れるようになっていたことを。

 

しかしいま見ている光景はとんでもないものだった。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

そしてロビンに捕まった者達は容赦なくその手に吸い込まれていった。ロビンのことだから殺すことはないにしろ……

 

 

「と、とんでもないな……」

「お兄ちゃんの為だから。これぐらい出来て当然よ」

 

 

本当に、別にここまでならなくても…

でもまぁそのお陰で色々助けられているが。

それにナミ達も、村の人達も、そしてゾロ達もいつの間にかこの掌の上に集まっていた。

 

あのロビンがハジメ以外の者をしっかりと守ったのだ。

これは前のロビンなら想像出来なかったこと。

成長…したんだなーと思ったハジメは

 

 

「ったく……後で抱き締めてあげるよ」

「ッッ!!!??」

 

 

もう言葉に出来ないほど驚きと喜びにより足から崩れ落ち歓喜に満ちている。

 

……これ、ハンコックじゃないよね?ロビンだよね?

 

と、下らないことをしているとやっと敵さんが正気に戻り

 

 

「な、なんだこれはッ!!!!」

「あ、あぁ……まぁ~今はロビンは取り込み中だから話は聞けないかな?」

 

「ふざけるなッ!!!!

俺がどれだけの思いでここまでやってきたと!」

 

「いやいや、知らないし。

悪いことしたのはそっち。今回もそっち。

だから……()()()()()()()()()

 

 

その言葉に一歩引いたクルード。

しかしすぐに気持ちを切り替えて

 

 

「や、やれぇ!!アーロンッ!!!!

魚人プラス俺の虫でパワーアップしてるんだッ!!

痛みも疲れもない!!!だからそいつらを倒せえぇッ!!!!」

 

 

正気を完全に失っているわけではないようだ。

アーロンは何を言っているか分からないほど意識はないが、ルフィを倒すという怨念のようなものだけがこうしてアーロンを立たせているようだ。

 

 

「はぁー。ルフィ。もう一回使用していいよ」

「いいのかッ!!!??」

 

「その代わり二度と向かってこないようなとびきりのやつを与えてあげてね」

 

「おう!!任せとけッ!!!!」

 

 

いまルフィが出来る最大限の技。

流石にギア4はまだできないだろうけどギア3までは使えている。さっきも無意識に使っていたようだけど、なら間違いなく()()も…

 

 

「ギア(セカンド)ッ!!!」

 

 

腕を横に上げてポンプの要領で血液循環を速めて身体能力を向上させて

 

 

「ギア(サード)ッ!!!」

 

 

親指から骨へ空気を送り肥大化させて巨人のような大きな手を作り出し

 

 

「ゴムゴムの……」

 

 

両手を後ろに伸ばしてアーロンに狙いを定めた。

対するアーロンももう一度、ルフィに負けたあの技で勝負しようとするが……相手が悪すぎる。

 

反動で戻ってきた巨人な手は炎を纏いて、瞬間的にアーロンへと向かって放たれた。

 

 

 

「"ツイン業火隕石(ヘル・メテオ)"ッッ!!!!」

 

 

先ほどの攻撃は後ろに軍艦がありクッションとして遠くまで吹き飛ぶことはなかったがここはロビンの手の上。遮るものはなにもなくアーロンは地平線の彼方まで吹き飛んでいった。

 

しかし、ルフィのやつ……

すぐに僕に見えないように右手を隠したけど……

まぁ、あとでお説教ということで。

 

 

その光景に口をパクパクしているクルード。

まぁ、作戦がずさん過ぎるのが悪い。

 

選りすぐりした精鋭2000人?足りない。

なら操った人々全ての人々?足りない。

それならクルードの能力を使って魚人を攻めさせる?足りない。

 

他にも色々あるけどもう面倒くさい。

それほどずさん過ぎるのだ。この計画は。

なによりも"力"が足りなさすぎる。

 

クルード。分かっているのかな?

いくらノリで雰囲気で決まったとはいえ僕は海軍"大将"

その程度で倒せるなんて考えが甘いとしか。

 

 

もっともこの"麦わらの一味"に手を出した時点で全てがアウトなんだ。僕がどれだけ頑張ってここまで引き上げたか……勝手に引き上がったのが多いけど!!そこは、うん、気にせずに。とにかく!!!

 

 

「終わりだよクルード」

「ふ、ふざけるなッ!!まだ俺がッ!!」

 

 

パチンッ!!

僕は指を鳴らした。そして終わった。

これ以上なにかをさせるわけがない。容赦もしない。

だからもう終わらせてやったのだ。

 

クルードは指を鳴らしたその体勢のまま"停まった"

文字通りクルード自体を一時停止してやったのだ。

 

 

「??どうしたんだアイツ」

「全身鉄のように固まったんだよ。ロビン、動き出す前に動けなくなるように拘束しておいて」

 

「分かったわ。海楼石の手錠や首輪などで指一本動かせなくなるようにするわね」

 

 

いつもはやり過ぎといいたいけど今回はやってくれてOK。

さて、仕上げをとルフィの背中を叩いてナミの方を向かせた。

 

流石のルフィも何が言いたかったのか分かったらしく

 

 

「これでお前は俺の"仲間"だあッ!!いいなッ!!!」

「……うん……」

 

 

こうして、ナミの呪縛は解けた。

いや、そういえばあと1つあったなー

さて、今頃いい思いをしてるだろうけどこれから"地獄"を見せてあげるからねー

 

ふふふ、待っててねネズミ大佐。

 

 

「……あいつ、すげぇー悪い顔してるぞ…」

「……ハジメさんのあの顔ってヤバそう……」

「……ロビンより酷いことしやがるからな……」

「……うん。ロビンのアレはお兄さん直伝だもん…」

「……そ、そんなにヤバイのか?」

「……これから頑張りなさいサンジ」

「……ハジメさん……」

 

 

おい、今のいままで大人しくしていると思ったら最後になんてことを言いやがる!!

特に最後のコビー!そんな諦めた目で僕を見ないでッ!!



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ネズミが狩られる

「い、いってえええええええぇぇぇッッ!!!!」

「当たり前です!なんでこんな風になるまで使()()()()()()()!?」

 

 

ゴーイング・メリー号でココヤシ村へ向かっている道中。いまルフィはカヤに治療を受けていた。

特に怪我をしなかったように思えたが実はルフィの両腕、特に右腕は重度の火傷を負おっていたのだ。

 

 

 

「だ、だってよ…とっておきを……」

「アホか。怪我してまで使うのは"とっておき"とは言わないの」

 

「ええええぇぇッ!!!??」

 

 

……ダメだ。やっぱりどこか抜けているルフィに頭を抱えるハジメ。

あの時、一発目の業火隕石(ヘル・メテオ)の後、なんか右腕がプスプスと煙を上げていたのが気になっていた。しかし特にルフィの様子も変わらず見た目も火傷していない。だからそのまましていたが

 

 

()()()()()()()()()()()……

こんなの初めて見ます…とにかく冷やさないと……」

 

 

そう。ルフィの腕は皮膚の内側が火傷を負おっていたのだ。あのギア3の組み合わせによる"火拳銃(レッドホーク)"のグレード版。

 

多分あの大きさが腕内部に熱を溜め込んでしまい火傷をしてしまったと思う。だからか本編ではまだギア3での使用がないと思われる。

 

ギア2も乱発したところは見たことがない。

使い過ぎると熱が籠り火傷するためなのだろうか?

 

 

とにかく怪我を、火傷する技を使わせるわけにはいかないので。

というか、なんで表面に火傷が出てこないのか?

……やっぱり本編とは違うからか?よく分からないけど

 

 

「ルフィ。火傷しないように改善するまで使用禁止」

「そうね。そしてこれまで通り能力禁止・海楼石ブレスレット着用よ」

 

「そ、ぞんばぁ~」

 

 

涙を流しながら悲しむルフィ。

でもダメ。怪我をすることを黙っていたのはダメ。

しかしパワーアップしたアーロンを一撃で倒したのも事実だしな

 

 

「……はぁ。サンジ、ルフィに骨付き肉を」

「いや、このタイミングで肉って…」

 

「ルフィの体はどうしてか肉があれば大抵治る。」

 

「な、わけあるわけが……」

 

 

……とにかくサンジに骨付き肉をルフィに与えたら

 

 

「治ったああああぁぁぁ!!!!」

「な、わけあるかああああぁぁぁ!!!??」

 

 

しかしルフィは腕をブンブン回しても痛がる様子もなく、念のためにカヤに見てもらったら……

 

 

「な、治って、ます……」

「どうやってるんだよオイ…能力者、だからか?」

「いや、能力者になる前からこうだったよ」

 

「マジで何なんだよッ!!!」

 

 

言いたいことは分かるが治るのだから仕方ない。

ルフィを診察したカヤは「…これ私、いらなかったのじゃ…」と落ち込んでいるのでウソップにそこら辺を任せておいて

 

 

 

「さて、ロビン。()()()()()()()()()()()

「もうすぐ()()()()

 

「え、えーとお兄さん、お姉さん…

……一体何が始まるの?」

 

 

気になったナミは思わずハジメとロビンに聞いてみた。

周りの人には「とにかくココヤシ村に帰って話す」としか言われてなかったから気になっていたが

 

 

「うーん……やっぱりもう少し待ってて。

悪いようにはしないよ。村にもあの()()にも」

 

「ッッ!!!?? ど、どうしてそれを知ってるの!!?」

 

「ロビンに隠し事はやめた方がいいよ。しなくても見透かされるから」

 

 

それを聞いたナミは思わずノジコの後ろに隠れてしまった。本能的なものだろうなー

 

 

「失礼よナミ」

「ご、ごめんなさ…」

 

「私、()()()()()()()()()()()()()()()()()

これからも徹底的にするわ。というか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だから。拒否権なんてないわ」

 

 

………誰もが青ざめた。

ウソップにいっては泡を吹いている。

だからその所有物発言止めなさいって言ったのに……

 

 

「お兄ちゃん。お兄ちゃん。

みんな顔色が悪いわ。何かあったのかしら?」

 

「本気で言ってる?それ本気で言ってるのッッ!!!??」

 

 

…………………………

 

 

「チィチチチチチ。ここだ」

 

 

ココヤシ村。その中の一角にあるベルメールやナミ達が住まう家。そこにはオレンジ畑があり、今そこにネズミ大佐がいた。

 

オレンジ畑の1つに発育が悪いオレンジの木があり、その木の下だけが()()()()()()()()()()がある。

 

 

そう、この下にナミやノジコが溜め込んだお金がある。

ベルメールに見つからないようにオレンジ畑でも端っこのほう。日当たりも悪く成長が遅いのはそのせいだと思っていたベルメールだが、何回も掘り返し土に異物があるのだ。成長が遅くなっても仕方ない。

 

 

「まさかこんな所に隠しているとはチィチチチ」

 

 

笑いが止まらない。

アーロンと結託して邪魔な海軍や近隣の人達を襲わせて思い通りにしてきたネズミ大佐。そして今度はアーロンが復讐の対象を見つけた瞬間に縁を切ってお金を手にして別の支部へ向かいあらゆる手を使ってもっと上の階級を手に入れる。

 

出世とお金しか目がないネズミ大佐。

だから気づかないのだ。

 

部下がオレンジの木を掘り返しお金の入った箱を見つけて蓋を明け歓喜したとしても

 

 

「こ、これほど溜め込んでいたとは……これで俺はもっと上にッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いくと、思うか?ネズミ大佐」

 

 

その言葉に、声に、ネズミ大佐の身体に寒気と緊張感が一気に駆け巡った。

 

ゆっくりと後ろを振り向くと、そこにはいるはずのないものが……

 

 

「ど、どうして…ここがッ!!!??」

 

「お前、ニコルに目をつけられた時点で終わりなんだよ。アイツは"悪魔のニコル"、悪魔が簡単に獲物を見逃すと思うか?」

 

 

そこには無表情で、しかし()()()()()()()()()()()()()()()、それでもこの海軍のトップであることには変わらない、元3大将を手懐けて、今では5大将まで作り上げた人物。

 

 

「た、大将…ハジメッ!!!」

「…ッチ、やっぱり()()()()()()()()…クソッ」

 

 

何を言っているか分からないがとにかくここは!!と慌ててネズミ大佐は

 

 

「こ、これはこれは大将ハジメ様。これはですねあなた様に差し上げるべく」

 

「そんな嘘は入らねぇんだよアホが。

言ったろうが、ニコルに目をつけられた時点で終わりだとな。

お前がやったきた悪事、全て把握してるんだよ」

 

 

そういって"ハジメ"は懐から厚い紙の束をネズミ大佐に投げつけた。それを見てみると間違いなくネズミ大佐が関わったことばかり。それもアーロンやナミと会う前のことまでびっしりと。

 

 

「こ、こ、こ、こ、これは……」

「いいわけは後で聞く。まさか…俺から逃げれる、なんて思ってねぇだろうな」

 

 

そう大将から逃げ切る訳がない。

しかしやっと手にはいる金が目の前にあるのだ。

簡単に諦めれる訳がないッ!!

 

とっさにネズミ大佐は懐から何かを取り出して地面に叩きつけた。すると煙が吹き出して辺り一帯を包み込む。

 

 

「ッざんなッ!!!!」

 

 

斧を振り回して煙を吹き飛ばす"ハジメ"だが、晴れたその向こうにはネズミ大佐と部下の一部はおらずお金も多少持っていかれた。

 

多少とは2億5000万ベリー中からなのでそれでも大金である。

 

 

「あの野郎ッ!!」

 

 

…………………………

 

 

「チィチチチチチ!!少ないがこれでなんとか…」

 

 

部下と共に森を走り回るネズミ大佐。

ここで捕まるわけにはいかない。

必死で逃げようと走るネズミ大佐だが

 

 

「なんとか、なるとでも?」

 

 

その声の瞬間、部下やネズミ大佐の身体の周りに手が生えて身体の動きを止められた。突然のことでそのまま地面に倒れたネズミ大佐達。何が起きたのかと顔を上げると

 

 

「私から逃げれると思う時点で、愚かね」

「あ、"悪魔のニコル"ッ!!!」

 

「さて、私の"所有物"にずいぶんと面白いことをしてくれたわね……"クラッチ"」

 

 

するとネズミ大佐以外の部下が関節技、いやそんな生易しいものではない。骨が折れる音が森の中でも響いたのだ。

 

 

「ひぃいいいいいッ!!」

 

 

流石のネズミ大佐もこれには恐怖の表情をする。

ロビンの能力を話で聞くのと、実際目にするのでは全然違う。

そしてそれが次に自分に向けられていると思うと

 

 

「ま、待てッ!やるから!金ならいくらでも、いや全部やるから」

 

「いらないわ。私はお兄ちゃんさえいればいい」

 

「………はっ?」

 

「理解しなくてもいいわ。マカナ」

「はい!」

 

 

するとネズミ大佐の後ろにマカナが現れ、突然のことにビビり声を上げずにはいられないネズミ大佐は

 

 

「ひぃいい!!!」

 

「失礼ですね。殺していいんですか?」

「ダメよ。それはお兄ちゃんに献上するのだから」

 

「なるほどですね。生意気いいましたので死にます!」

「だから勝手に死んだらダメよマカナ」

 

 

なんとも物騒な話をする二人。

ロビンの分身体はそこで消えてしまったのでマカナはのんびりとネズミ大佐の襟を掴んで引きずる。

もう抵抗する気力さえなくなってきたネズミ大佐はズルズルとマカナに引きずられて森から出ていった。

 

 

 

…………………………

 

 

「やっほー」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!!!!」

 

 

()()()()は途中で合流したマカナと共に海岸へいくとそこにはゴーイング・メリー号とその船の持ち主である海賊達、そして長年探し続けたハジメとニコルの姿があった。

 

マカナと合流したときは他人だが軍服とネズミ大佐を確保していることを見てとっさにニコルやハジメに関わりがあると思い付いてきたら、いた。

 

ので、早速モーガンはハジメの胸ぐらをつか…もうとしたが逆にロビンに拘束されて

 

 

「お仕置きよ」

「何でだよッ!!!??」

 

「当たり前なことを聞かないで」

「おいハジメッ!!!こいつの性格酷くなってるぞッ!!!」

 

 

いや、僕に言われてもと思わず頬をかくハジメ。

するとロビンの手が花道のように咲き、その先からモーガンと一緒に拘束されたヘルメッポがコロコロと転がされてきた。

 

 

「へ、ヘルメッポッ!!!」

「お、オヤジッ!!!!」

 

「さぁ、貴方達は今からお説教よ。

モーガンはお兄ちゃんがいない間に好き勝手にしたこと。ヘルメッポはこれまでの修行のサボり。

共々徹底的に指導してあげるわ。いくわよマカナ」

 

「はい!」

 

 

ということで感動の再開なんてものはなく、モーガンがハジメを激することもなく、何故かロビンにお説教タイムとなってしまった。

 

 

「ふ、ふざけんなッ!!!!

むしろハジメのイメージを良くしてやった方だろうがああああぁぁぁッ!!!!」

 

「あんなのお兄ちゃんじゃない」

 

「大将が悪ふざけで海賊を捕まえたり、ノリで住民を助けることが正常だというのか!?バカかお前らッ!!!」

 

「お兄ちゃんの影武者として引き受けたならそこまでやって一人前よ。そこを含めてせんの…………洗脳しても変えてあげる」

 

「言い直せッ!!!言い直そうとしたら言い直せッッ!!!!」

 

「イヤだああああぁぁぁッ!!地獄の修行はイヤだああああぁぁぁ!!!!!」

 

「うるさい」

 

 

もう、慌ただしく過ぎ去っていくまで見送るしか出来なかった。

 

……帰ってきたら少しだけ優しくしようと思った。

 

 

「さて、ネズミ大佐。

いま色々混乱しているようだけど…()()()()()()()

 

「な、な、何を…いって……」

 

「気にしなくていいよ。

それじゃ僕はネズミ大佐とクルードに"地獄"を見せないとね」

 

「い、い、い、い、い……や……」

 

「拒否権なんて……あるわけないだろう」

 

 

ドスの聞いた声。

その場にいる誰もが初めて聞く声。

それはもう"恐怖"としかいいようがないもの

 

 

「さて、行きましょうか」

 

 

そういって涙を流しながら叫ぶネズミ大佐と未だに気絶しているクルードを引きずりなから暗闇へと消えていくハジメ。

 

その姿ついさっきみた光景と同じような……

そしてルフィは呟く。

 

 

「師匠とハジメには、逆らわないほうがいいぞ」

「「「「「「「「はい」」」」」」」」

 

 

仮にこの人数が麦わらの一味なら、なんて気のあう仲間なんだろう……

もしくは恐怖の対象があるからかもしれない……



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親心と、女心。

「……こ、ここ…は……」

 

 

目を覚ますと真っ暗で何も見えない。

手足の自由が効かない。

クルードはそれらを確認しすぐさま思い出した。

 

 

「ハ…ジメッ!!」

 

 

そう訳も分からないままやられたのだ。

攻撃も何も出来ずに気づいたらここにいる。

何が起きたのかと記憶を探ろうとしたとき

 

 

「や、や、やめて…ぐぎぼばらァッ!!!」

 

 

聞いたこともない叫び声と音。

何が無理やり曲げられて折れていく、千切れていくような……

 

そして少しずつ暗闇の奥から何が近づいてくる音が

 

 

「目を覚ましましたか?」

「ハジメッ!!!」

 

「さっきネズミ大佐の"罰"が終わったところで。

もうあまりこういうのはしたくないんですけどね」

 

 

さっきの悲鳴となにか関係があるのか?

すると徐々に目が暗闇に慣れてきてその奥にある"何が"ぼんやりと見えてきた。

 

そしてそれは……

 

 

「う、うわあああああああぁぁぁッッ!!!!」

 

「いや、そんなに叫ばなくても。

人拐いとか奴隷とかしてたんですから()()()()()()()()()()()知ってますよね?」

 

 

そこに見えたのは軍服を着た()()だった。

それしか言いようがないのだ。

手足は千切れ皮一枚で繋ぎ止められ、胴体からは内臓が、そして首は()()()落ちていた。

 

ハッキリと見えていたら気を失っていただろう。

しかしこの暗闇、目が慣れてもぼんやりとしか見えなく、それでもそれはあまりにもショッキングなもの。

クルードはその場で胃の内容物を全て吐き出した。

 

 

「あんなことして耐性がなかったんですか??

大丈夫ですよ。いまからクルードも()()()()()()()()()()()()

 

「…や、や…やめ……」

 

「それ、ナミが言った時止めました?他の人を拐うとき止めました?止めてませんよねーそれが()()()()

 

「……や、や、や、やあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

 

ゴギグバビドゥザッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、鹿の解体ショーを見せてるだけなんですけど」

 

 

暗闇の奥にあるものは鹿の解体途中の肉。

そしてそこに軍服を着させているだけなのだ。

首?……ヤシのみに顔を描いただけ。

音?……適当に木や木の葉や骨付き肉の骨や金属などなどから音を出しているだけ。

 

ようは演出。人をどうこうしてません。

ってか、やりません。化物じゃなんだから。

 

あの声?

近くにネズミ大佐がいて先にクルードと同じ事をしただけ。

 

 

「いやー助かりましたサンジ」

「……えげつぇな……」

 

「そうですか?殺さないだけマトモですよ」

 

 

協力者サンジ。鹿の解体してもらいました。

 

 

 

「ウソップもありがとうね」

「……怖い…ハジメ、怖い……」

 

「失礼ですよ」

 

 

暗闇担当ウソップ。マジックで暗闇を。

じゃないと夜でも光があるからねー

 

 

「コビーもゾロもルフィもあり……あれ?」

「音を出しきった後に……気絶やがった…」

 

「どんだけメンタル弱いのかな?」

「きっとハジメと師匠だけが異常だと思う」

 

 

音演出。コビー・ゾロ・ルフィ

しかし使い物にならないなー

コビー達の周りにギンがすでに気絶している。

ギンってメンタル弱かったんだなー

 

 

「次連れてきました」

「麻酔バッチリです」

「五月蝿いのは軽い毒を与えたわ」

 

「はーい。じゃ、次いくよー

音にウソップ回ってねー」

 

 

残された魚人や海軍へのお仕置きをするために補充係がくいなとカヤとレイジュ。

 

くいなは力で気絶させ、カヤは麻酔薬、レイジュは毒で大人しくさせてから連れてきている。

 

 

「……順応している俺が怖ぇ…」

「いうなウソップ」

「いまは逆らわないほうがいい」

「こっちに向けられたら…終わりだ……」

 

 

なんかこそこそと言い合っているが気にしない。

あのストレスをここで解放しないとやってられないからねー

 

 

「さぁ次いくますよ!!」

 

 

もう、本当に逆らわないほうがいいと誰もが思った……

そしてクルードとネズミに関したはそのあと二度三度と起こしてはトラウマを埋め込んで気絶させての繰り返しを行い……戦意喪失というより、自我崩壊レベルまで追い込んだという………

 

 

…………………………

 

 

 

「……良かったのかな?みんなお兄さんの手伝いしてるけど……」

 

「なに言ってるのよナミ?いまナミが一番休息が必要なのよ」

 

「そうよ。いまはあの子らに任せておきなさい」

 

 

ベルメール親子は我が家に戻り夕食を取っていた。

久々に食べる料理は本当に美味しい。

それでもやっぱり気になるのだ。

 

 

「でも…ナミが私達以外でこんなに気になる人が出来るなんてね~」

 

「ベルメールさん。それだとナミが好きな男が出来たみたい」

 

「ダメよナミッ!!!ナミは変な男に引っ掛かりやすそうなんだから!!!ちゃんと私が見定めして…」

 

「いたとしても、それに関しては遠慮しておくね」

 

 

その言葉になんで!!?と驚くベルメール。

いや、あんたの婚約者は"変な男"なのだから。

小さい頃はそれも分からず進めたけど、いまじゃちょっと大丈夫なのかと心配してしまう。

 

 

「それでどうするのナミ?」

 

「ど、どうするって…」

 

「村への脅威は消えた。もうあんたを縛るものはないんだよ」

 

「え、えっ??」

 

「本当に分かってないわけ?アイツらと"海賊"続けるんでしょう?」

 

 

その言葉でやっと理解したようだ。

慌てた様子でナミは二人の顔を交互に見ながら

 

 

「ちょっ、ちょっと待って!私ベルメールさんや皆のためにやったけど、それは私の日常を取り戻すためだったんだよ!私はもう離れたくないの。せっかく戻ってきたのにそれを手放すなんて……」

 

 

そう言いながら声が小さくなっていく。

その時浮かぶのはルフィ達の笑顔。

 

 

「一週間」

「えっ?」

 

「お兄さんから聞いたわ。一週間ここに滞在するみたい。それまでに決めなさい」

 

「わ、私は……」

 

「ゆっくりでいいのよナミ」

 

 

それを言われてもいまのナミにはモヤモヤが膨らむだけだった。

 

 

…………………………

 

 

「やっぱりかっけぇーな!」

「そ、そうか…」

 

「おう!!俺も付けようかな~」

 

 

一日目の夜。

ココヤシ村から麦わらの一味へおもてなしという名の宴が始まっていた。

皆が騒ぎ、酒を飲み、踊り、語り合っていた。

そんな中食事中のゲンさんの元にルフィが近づいてきた。

 

そしてゲンさんの頭にある風車を見てそんなことを言ってきたのだ。

 

 

「これは習慣、みたいなものだ」

「習慣?」

 

「いまではもう、意味もないかもな…」

「そうなのか?」

 

 

ゲンさんの頭に、帽子には風車が一つ。

それは昔小さなナミがゲンさんの表情を怖がって泣いていたときにつけた風車。それからナミはゲンさんの顔を見ても泣くことはなかった。

だから、それからずっと付けていた。

ナミが泣かないように、泣かせないように。

 

 

「おい、麦わら。

お前はナミを、ノジコを連れていくのか?」

 

「連れていきたいけどな~。

何度も断れてるし、ここを出る前にもう一度いってダメなら諦める!」

 

「そうか……

ならもしナミが付いていくと決めたら、これだけは絶対に忘れるな。それを守れるなら許す」

 

「なんだそれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナミを絶対に泣かすな。

その姿をノジコに見せるな。

もし、破ったら…お前を殺しに来るぞ」

 

「破る気はねぇけどよ…」

 

 

「いいなッ!!!」

 

「……お、おう……」

 

 

ゲンさんの高圧的な、それでいて二人に対する深い愛情にうまく言葉が出なかった。

 

そんな二人の元にベルメールがお酒を片手に近寄ってきた。

 

 

「まるで父親ねゲンさん」

「ベルメール。お前も一言言え」

 

「言わないよ。あの二人の人生だからね」

「ったく…だから不良娘は……」

 

 

アハハと笑いながらお酒を飲むベルメール。

その姿に呆れるゲンさんだがどこか安心している様子。

 

 

「あの子らはあんたに付いていくよ。ただまだ時間がいるのよ。長かったからねここまで来るのに…」

 

「でもその時は頼むよ。

本当のナミはすぐ思ったことを言う子でね。それでも周りのことを良く見ていて面倒見のいい子。それにあぁ見えて可愛いものがスゴく好きなのよ」

 

「ノジコはナミのお姉さんとしてスゴくしっかりしてる。そして人一倍心配性なの。だからナミ以上に無理をしてしまうから気をつけてあげて」

 

 

言わない。といったがやっぱり母親だ。

二人のことを思いつい言葉が出てしまう。

それに対してルフィはキチンと話を聞いている。

何度も頷きながら頭に刷り込んでいるように。

 

 

「そんなに心配なら付いてくればいいじゃねえか?」

「バカいってるんじゃないよ。元でも海軍だよ?」

 

「ハジメも師匠も海軍だけど海賊だぞ?」

「あの二人は別よ。それにもういい歳だし、あんた達みたいに戦えないわ」

 

「カヤも戦えないけど仲間だぞ」

「だとしても、私は……」

 

「それに"ハジメ"がいるんだ。来るんじゃねえのか?」

「ッ!!!」

 

 

明らかにその言葉に反応し、私選を、顔をルフィから見えない方向へ向いて

 

 

「…とにかく、私はここにいるの。

あの子らがいつでも帰ってきてもいいよにね」

 

 

そういってその場を去ったベルメール。

その後ろ姿を見ながら肉を食べるルフィ。

隣にいるゲンさんははぁ~とため息をつく。

 

 

「ハジメのこと好きじゃなかったのか?」

「だから、いけない……ということだ……」

 

 

なんでだ?という表情をしながら考えたが結局答えは出なかった。

 

 

 

…………………………

 

 

 

「……行けるわけ…ないじゃない……」

 

 

海の見える、この村で一番景色のいい場所。

そこに座ってお酒を飲みながら呟くベルメール。

ナミとノジコ、そしてハジメと一緒に海へ出れたらどれ程楽しいだろうか……

 

でも、どうしても自分の年齢や体力などを考えてしまう。そして最も考えてしまうのが……

 

 

「……邪魔…したくない……のよ……」

 

 

きっとあの一味の一番のお荷物なる。

あの時、遠くから見ていても分かった。現役の時の自分よりも皆凄かった。

そして彼ら彼女らはまだ成長期。もっとスゴくなっていくのだ。

 

そんな中年齢も離れていて、これ以上伸び代もない自分がいたら……きっといつか"邪魔"だと思われる。

いや、きっとあの子らはそんなこと思わないだろう。

そう、そう思ってしまうのは自分自身。

 

はぁ~とため息をついて、またお酒を飲む。

そして視線を海へ向けたとき

 

 

「ここにいたんですね」

「きゃぁっ!!!」

 

「なに女の子みたいな声を出してるのベルメール」

 

 

そこにはいつの間にかいたハジメとロビン。

そしてロビンは年上のベルメールでも容赦はない。

 

 

「…あのね、私も女の子ですからね」

「何言ってるの??40代を女の子とは呼ばないの。

良くて女性、悪くて老婆」

 

「それはいつかあんたも来るのよッ!!」

 

 

思わず声を張り上げてしまったベルメールは自分自身に驚いて口を両手で塞ぐ。

 

 

「やっと調子が戻ったようね」

「……いや、あんな風に言ったの初めてよ……」

 

「それでも私と"対等"に言えるのは貴女だけよ」

「………何が、言いたいの?」

 

 

含みのある言葉に警戒するベルメール。

しかしそれは思わぬ言葉により、一切合切忘れてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると、ハジメがベルメールの左手を取り()()()()()をはめたのだ。

 

 

「……へぇ?」

 

「喜んでいいわよ」

 

「………はぁ?」

 

「言葉が足りなかったわね。

お兄ちゃんとの()()()()()()()()()()()()と言ったのよ」

 

「は、はぁああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!??」

 

 

村中に響き渡るじゃないかと言うぐらいの大声だったという。



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婚約

ベルメールの元へ婚約の話をする少し前。

 

 

「さぁ、抱き締めてお兄ちゃん」

「だとしても、堂々と言うな」

 

 

ロビンは二人のお仕置きが終わり、ハジメもアーロンとネズミ大佐の部下のお仕置きが終わり、二人が出会った瞬間ロビンが言ってきたのだった。

ちなみに周りに人はいます。ルフィ達います。

 

 

「でも、してくれるのよね?」

「はいはい。そうだね。

ルフィ達は先に宴の方に向かってて」

 

 

この空気、どうしたらいいのかと悩んでいるときにハジメからのパス。正直ここで何が始まるか分からないがもうさっきまでやっていた内容に精神的にきていたのでさっさとこの場から離れたかった。

 

でも、どうしても気になることが一つ。

 

 

()()()どうするんだ?」

 

 

ゾロが指差したのはロビンが襟を掴んでここまで引っ張ってきた()()()()()()()

 

 

「…………………手当て、かしら?」

「悩む所かッ!!!」

 

 

あのゾロが珍しくツッコミ入れた。

すぐにカヤが駆け込んで状態を確認する。

 

 

「……重度な過労と、重度な精神的ダメージによる瀕死状態ですね……」

 

「ちゃんと加減してるわ」

 

「これの何処がですか?

知ってますか、加減という意味を。知らないなら教えますけど?」

 

「あら?なら後で教わりに向かうわ」

 

 

お互いに笑っているが目が怖い。

すぐにウソップが間に入り「い、いくぞカヤッ!!」と無理矢理引っ張っていった。あの時も怖かったけど、カヤは怒らせんとこうと思った……

 

ちなみに親子はゾロとサンジが足を握って引っ張っていった。扱いが雑だなーと一瞬だけ思い皆を見送った。

 

 

そして誰もいなくなったあと、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お、お、お、お兄ちゃんッ!!!??」

 

 

流石にロビンもテンパる。

いつもならここからさらに引っ張ってやっと抱き締めてくれるはずなのに、何も言わずにこんなにも強く抱き締めてくるハジメ。

 

 

「ど、ど、どうしたのお兄ちゃん?

もしかして寂しかったとか?じゃないよね…」

 

 

恐る恐る聞いてみるロビンの問いに

 

 

「……寂しかった……」

「えっ?」

 

「当たり前、だろうが……

……たった一人の"妹"が…いなくなったら……」

 

「………うん……」

 

 

思っていた以上に思ってくれていたハジメに対して嬉しくなったロビンは抱き締め返した。

こんなにも幸せなことはハジメが"お兄ちゃん"になってくれたとき以来かもしれない。

 

 

「……もう、いなくなるな……」

「……うん……」

 

「僕から……離れるな……」

「……うん……」

 

「本当に分かってるのか?」

「分かってる。私はお兄ちゃんから離れない」

 

 

そう、もう離れない。

気持ちを新たにロビンはハジメから離れないと決めた時、ハジメはロビンの両肩を握って二人の距離を開けて、お互いの視線が合うように、見つめ合えるようにして

 

 

「分かってないな。こういう時ぐらい察してくれよ」

「……どういうこと?」

 

「……結婚、するんだろう?」

「……えっ?」

 

 

ハジメからのその言葉に固まるロビン。

そこに更なる追い討ちをかけるハジメは、ロビンの左手を取り()()()()()をはめたのだ。

 

 

「…式はまだ、待っててくれ。だから代わりに…と……」

 

 

婚約指輪。

指にはめられたその指輪をジィーと見つめて

 

 

「犯していいの?」

「台無しだよ」

 

 

割りと、いうか、ガチで言ってきたロビン。

もちろん真顔で、ハジメの目を一点に見つめて。

他のやつならコロッと落ちるだろう。

内心ハジメも心がグラグラ来ているがそんな状態ではない。

 

 

「もうこれヤリましょうの合図よッ!!」

「マジでふざけんなッ!!こっちがどんな思いでそれを渡したと思ってんだッ!!!」

 

「こっちがどんな思いで我慢してきたと思ってるの?

もう一人で、自分でなぐ」

「アホかあッ!!!!そんなの聞きたくないわあああああああああぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

……何かしらアクションがあるとは思ったが予想の斜め上、いやロケット一直線で宇宙に行くぐらいに予想外だよ……

 

 

「お兄ちゃんは私が好きじゃないの?」

「……嫌いだったら、渡さないよ……」

 

「なら、身体を重ねるのは自然じゃないの」

「段階を飛ばしすぎだ」

 

「……放置プレイ……」

「お願い。会話をしてください」

 

 

どうしてこうも噛み合わない。

壊れすぎている。本当にロビンからそんなの聞きたくなかったわ……

もちろんそれは幻想なのだろうが…本編を知る身としてはそう割りきれないのである。

 

 

「……でも、初めてお兄ちゃんから"好き"っていうものを貰ったわ」

 

 

そして、こうやって不意打ちを仕掛けられると本当に困る。

こっちは必死に堪えている部分もあるというのに、それを簡単にぶち破ろうとしてくる。

 

それでも…ロビンの欲求を満たすとなると此方が本当に持たない。きっと数時間後には死んでるな……

 

 

「……なら、特別サービス…だ……」

 

 

でもこれぐらいなら。

きっとこれぐらいならいいだろう。

あまり男からするのは見たことないけど。

 

ロビンの不意をついて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……………………………ひぇ?」

 

 

これこそロビンから聞いたことのない声。

徐々に真っ赤に染め上がるロビンの顔。

そして頭から湯気が出るんじゃないかというぐらい赤くなったところで

 

 

………きゅ~………

 

 

倒れた。

いままで倒れたことのなかったあのロビンが。

 

 

「……え、えぇーーー………」

 

 

それだけで気絶するならさっきいった過激な発言はどうなるんだ?と思ったがすぐに頭から削除した。

 

……ずいぶんと自分もロビンに染まってきたなーと顔が熱くなってきたのだった。

 

 

 

…………………………

 

 

 

そしてその後起きたロビンが「ベルメールにも用意してるのよね?」と言ってきた。完全見透かされていると白状したハジメに対してロビンは

 

 

「いいわよ。本命で、特別で、正妻が私ならいくらお兄ちゃんに女が出来ても大丈夫」

 

 

と、信じてくれるのは正直嬉しかった。

そして……正直、かなりの恐怖を感じた。

 

本命で、特別で、正妻というのを一つでも誤ったら……殺しにくるんだろうなーと想像してしまうぐらいに……

 

寒気がする中で「さぁ行きましょう」と引っ張られて来たところにベルメールがいたので渡したのだった。

 

 

 

「ほ、本当に…私で…いいの?」

「……はい。ベルメールさんが……はい……」

 

「お兄ちゃんはこういう時ハッキリ言わないの。

それが美徳なのかもしれないけど、私は物足りなかったわ」

 

「お前は黙れ」

 

 

ハッキリ言えずに悪かったな。

言えないものは言えないのッ!!これでも勇気出してるんだからねッ!!!

 

 

「……40代のおばさんよ……」

「えっ。見えない」

「若作りし過ぎね」

 

 

一言多い。

はぁ、とため息をついたロビンは

 

 

「それと婚約を受けるなら一緒に付いてきなさい」

「ちょっ、ちょっと待って!

わ、私はもう体力も戦闘も……」

 

「知らないわ。

ベルメールが自分に価値がないと決めつけるのは勝手だけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。文句があるならそれを海に捨てなさい」

 

 

おいおい。別に価値のあるなしで決めたんじゃないだけど。

……まぁ、一緒に行くための口実的なものだとは思うけど…ちょっと言い過ぎだよロビン。

 

 

「………返事は待っててもらっていいかしら…」

 

「へぇー。いい度胸ね。お兄ちゃんから求愛にすぐに求めな」

ちょっと黙ってようか。

……ナミやノジコのことなのかな?」

 

 

すると首を縦にするベルメール。

そうだよなー。心配しないわけがないかー。

 

 

「いいじゃない。どうせ来るのよ」

「……まだ、あの子から聞いてないから」

 

「そう。お兄ちゃんがいいなら私は構わないわ」

「うん。待ってます」

 

 

 

…………………………

 

 

 

「と、いうことで帰りなさい。目障り」

 

 

おもてなし会場。ルフィ達と合流。

やっと起きたモーガンにロビンが一言。

 

 

「ふざけんなテメェエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェッッッ!!!!」

 

 

うん。だよね。

無理矢理呼んでおいてお説教して帰れ。

誰でもキレるわこれ。

 

 

「分かってるのかッ!!!大将だぞ大将ッ!!!!

階級社会の海軍ならあり得ない失態だぞニコルッ!!!!」

 

「知らないわ。私の絶対はお兄ちゃん。

影武者()()()が威張らないで」

 

「……おい、ハジメ。

テメェの妹、マジでどうにかしろよッ!!」

 

「出来ていたらとっくにやってます」

 

 

クソがッ!!と地団駄を踏むモーガン。

ちなみに未だにヘルメッポは起きない。

チィッと盛大に舌打ちをして酒を飲むモーガンは

 

 

「……もう、戻らない気か、ハジメ……」

 

「たまにぐらいなら顔を出してもいいかと思いましたけど、もうモーガンさんが"ハジメ"として認識してるならいいかなーって」

 

「…最初から、その気だったろうが……」

「モーガンさんの働き次第でしたね」

 

 

別に未練がないわけではない。

でもいまの大将にはモーガンさんが必要だと思う。

 

 

「でもオックスさんは大将の座から引きずり落としてください。

 

「い、いや…アイツ、お前のために……」

 

「僕の為に?

アハハハ!それで大将になるとかマジでふざけんな、ですよ!」

 

 

八咫烏はどうもやり過ぎてしまうことが多い。

ロビンの月兎はロビンの意見を意思を汲み取ってやるけど、八咫烏は好き勝手にやっていままでプラスに働いていたけど……

 

これはダメ。

理由が僕を海軍に戻すためにとか、絶対にダメ。

僕も他人事に言えないのだから、だから尚更ダメだっていっている。

 

 

「だが、無理だろうよ。

アイツもお前に似て頑固だからな」

 

「……はぁ~。暴走しないように見ておいてくださいね」

 

「でも今の所なにも……」

 

「そのうち()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という前代未聞なことを仕出かしますけど」

 

「……あり得る……」

 

 

そう、やりかねない。

ヘルメッポの方はルフィ達を追いかける形をとったが、オックスさんは先頭にたち近づいてくるものを蹴散らしそう。

 

もうそれルフィの冒険じゃなくなるの。

海軍引率の遠足じゃないんだから。

 

 

「ということですでにこちらに向かっているだろうオックスさんを止めるべく、帰れ

 

「最後の一言だけなんで辛辣なんだよクソがッ!!!!」

 

「それと指名手配書。一週間後で。

写真はヘルメッポに渡しておきますねーよろしくー」

 

「アホかッ!!!出来るわけないだろうがッ!!!!」

 

「これもダメ。あれもダメ。

それでは大将なんてやれませんよ」

 

「現在進行形でやれていないテメェがいうなあああああああああぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

 

でも、オックスさんという危機的な(海軍にとって)状態は理解してくれたようですぐさまこの場から駆け出していったモーガン。

 

ちなみにモーガンさんがこちらに来たときに乗ってきた船は一人用。イメージではエースが乗っていたような()()()()()()()()()()()()()()()()()()ようなもの。

 

あれは僕の力作で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その2つをブースターにセットしたら超加速します。

なのでここから海軍本部まで楽に来れますよ。

もちろん非売品。海軍でもごく一部。

 

ということでもっと罪深いクリードを無理矢理乗せたモーガンは真っ暗な闇の向こうへ。

海を駆ける赤と黄色のラインが綺麗で、それを肴にお酒を飲みました。



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ハジメ的な修行①

「今日から五日間、修行をします」

 

 

その言葉にやる気を見せるもの、ワクワクしているもの、恐怖で震えているもの、衝撃的なことに足から崩れるもの、様々なリアクションに付いていけずに呆然としているもの。

 

見ていて面白いけどずっと見ているわけにもいかず

 

 

「まぁ修行といってもね、普段から鍛える人もいるし人それぞれに特技やまだ見ぬ力なんかを発見していくようなものかな?」

 

「………えっ?」

 

「うーとね、用はこれからの事を考えると少しでも"個性"的なものの底上げかな?

ウソップだとマジックが個性で、戦闘向きだったりするかもだけど、援護や後方支援だって立派なものだからね」

 

「つまり私みたいな」

 

『それは、ない』

 

 

ハジメさえも言われてしまったロビンはそれ以上追及はしなかった。というか言わなかったら間違いなく男共はやられていただろうなー

 

 

「と、いってもカヤ以外は戦闘出来るし、まずはカヤを見てみますか」

 

「お、お願いします」

 

「何かあったらすぐに呼べよカヤ」

「う、うんウソップさん」

 

「オイ。どういうことだ、オイ」

 

 

失礼だなーと思いながらまずはカヤの個性を見つける。

一体どんな潜在能力というか特技というか、どんな力を持っているのだろうか……

 

 

「あっ。僕がいない間はロビンの分身による指導だからねー」

 

「「「「「地獄じゃねえかあああああああああぁぁぁぁ!!!!!」」」」」

 

「失礼ね」

 

 

 

いや、だから合宿っていったじゃない。

つまりは教える先生がいるから合宿なんだよ。確か。

 

文句をいうなかロビンは容赦なく人数分の分身体を生み出し一人一人に付いた。

 

 

「「「「「「「「覚悟しなさい」」」」」」」」

 

 

一斉にいうと怖いわー。

ほらウソップやコビーとか泡吹いてるし。

すると一人手を上げてきたので指差して

 

 

「はい、レイジュ」

「私、必要かしら?」

 

「この船に乗るなら」

「………間違えたかしら……」

 

 

だってこの船、いつどんな敵が現れるか分からないからね。一人でもレベルアップしてもらいたいので。

すると隣のカヤが恐る恐ると

 

 

「あ、あの…もしかして私にもロビンさんが…」

「もちろん。(本体)、直々に」

 

「ウ、ウ、ウソップさんーーーッ!!!!」

「カ、カヤッ!!!逃げろッッ!!!!」

 

「本当に失礼ね」

 

 

 

逃げ出そうとしたがすでにロビンに捕らえられているカヤ。

 

 

「僕達は悪人か。まったく、ふざけないでいくよ」

「大丈夫よ。()()()()()()()

 

 

「いやあああああああああぁぁぁぁ」と大袈裟に言ってるけど、()()()()()()()()()()()()()()()のだから楽だと思うんだけどなー

 

 

…………………………

 

 

 

目的地に付いたのはいいけどカヤは体力がないのを忘れていて、目的地にたどり着いたときには女の子座りで肩から呼吸をするように息を整えていた。そしてたまに咳き込んだりと少しでも気分が良くなるまで待っているけど……

本編とは多分雰囲気変わったし、ロビンみたいに言いたいことも言えて、ウソップのサポートをして、まだ先の仲間の代わりに医者をしてくれているカヤ。

 

お嬢様で、体も弱く、優しい心を持っていて、言いたいことをハッキリと言える強い子。

 

そんな印象だったんだけど…こんなに怖がれるとなんかウソップの女版を見ている感じなんだけど……

 

 

「いい加減にしなさい。お兄ちゃんが困ってるわ」

「……そ、そう言われても…仕方ないですよ……」

 

 

まぁ、そうなんだけどね……

 

 

「さっきも言ったけどルフィやゾロみたいな修行をするわけじゃないんだよ。どちらかというとウソップみたいに個性を生かせる何かを見つけたいだけ」

 

「…は、はい……」

 

 

元々体の弱いカヤ。ふらつきながらも立ち上がったけど、やっぱりその体調をどうにかしないとなー

 

 

「カヤの体調が悪くなるのって体力を使ったあと?」

「い、いえ…もちろんそれもありますけど興奮とか、感情の起伏が激しいと……」

 

 

なるほど…

 

 

「えっ??

じゃさっきの叫びで悪くなったの!?」

 

「………はい………」

 

 

それだと非戦闘だとしても支障がでるな。

なら、ここは……

 

 

「カヤ。自分のその症状しっかり言える?」

「えっ。それは言えますけど…なにを……」

 

 

ならいいな。とハジメはポケットからでんでん虫を取り出して何処かにかけた。

 

 

『ハッピーかい?』

「ハッピーですよー」

 

『ったく…あんたかい。今度はなんの用だい小僧』

「症状は本人が話しますので聞いてあげてください」

 

『医者は患者を見て診断するんだ。なにふざけたことを!!!』

「言い値以上、3割増しでお支払しますので」

 

『………チッ!()()()()()()()()()()()()()()()ッ!!』

「よろしくお願いします」

 

 

ということで、でんでん虫をカヤに渡してみると恐る恐るとでんでん虫に語りかける。

 

 

「も、もしもし?」

『ハッピーかい?小娘』

 

「は、はい……」

『なんだい。あの小僧の知り合いならもっと変わった返しをすると思ったんだけどね』

 

「あんな規格外と一緒にしないでください」

『物事はハッキリいうようだね。気に入ったよ』

 

 

……カヤ。それウソップも含まれるって分かってる?

 

 

『で、小娘の症状教えな』

「あ、あの…私別に病気というか、体が弱いだけで……」

 

『口答えしないよッ!!さっさといいなッ!!!!』

「はいッッ!!!!」

 

 

あとはでんでん虫の向こうの医者、Dr.くれはに任せとけばいいね。

 

 

 

…………………………

 

 

30分後。

 

 

「あ、ありがとうございました」

 

 

でんでん虫を持って近づいてきたカヤ。

ハジメとロビンは仲良く砂遊びをしていた。

お城、なんてものじゃなくてグザンを作っては景気よく破壊するのを繰り返していたのだ。うん、ストレス発散出来たなー

 

 

「どう??なんか良くなりそう?」

 

「は、はい…未だに信じられないですけど…

教えてもらった薬草で調合したものを毎日飲めば一般人と同じぐらいにはと……」

 

「へぇー!!よかったね!!」

 

「まだ実感が……あの人は一体……」

 

「あれ?名乗らなかったの?」

 

 

そういえばあまり人と関わりもつの好きじゃなかったね。

そのわりにはどんな人でも高額な治療代を請求するけど。

 

 

「ドラム王国のDr.くれはだよ」

 

「……………………えっ?」

 

「あれ?知らない??」

 

「し、知ってますよ!医学において最先端の医療技術を持っているあのドラム王国ですよね!?」

 

「そうそう」

 

「……………………」

 

 

驚きすぎて言葉に出来ないようだ。

そうだよねー。僕の「トメトメの実」についても色々知っていたし、あの人自体もとんでもない人だし。

 

 

「………なら、本当に、治るんですね……」

 

「だね。まずは調合した薬を作らないと」

 

「………は、はい………」

 

 

嬉しくて涙が溢れて、思わずその場に座り込むカヤ。

カヤの修行は後回しかな?

ということでロビンに()()()()()()を呼び出してもらった。

 

すると一分もせずに空から一人。

 

 

「カヤあああああああああぁぁぁぁ!!!」

「ウ、ウソップさん……」

 

 

速いよ。いや、マジで。

もう化物って言われても否定できないよあんた。

 

すぐさまカヤの元にたどり着き

 

 

「大丈夫かぁ!!?なにもされてないだろうなッ!!!」

「う、うん…」

「だから、何もしないって言っただろう…」

 

 

「お前らの言葉に信用性があると思ってるのかッ!!!!」

「喧嘩売ってるなら買うぞコラ」

「お兄ちゃんを侮辱するなら、消すわよ」

「黙ってください。うるさい」

 

 

…………………………

 

 

とにかく。とにかく、カヤはウソップに任せて薬草の買い出しに向かわせて薬の調合に専念してもらうことに。

 

まぁ、カヤの修行については()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので心配はいらないだろうな。

 

 

なので繰り上げて次の方。

 

 

「何してたの遅いわよ」

「す、すみません!」

 

「お兄ちゃんに無駄な時間を使わせないで」

「イエス!!マイ・ロードッ!!」

 

 

いつから主従関係を…

あっ、あの時にはなってたか。

 

 

「……ロビン。何から何でも手中に収めないの」

「?? でもこれ、使()()()()()

「や・め・な・さ・いッ!!」

 

 

本人目の前になんて事を言ってるのこの子ッ!!??

 

 

「あ、ありがとうございますッ!!!」

「おいこら、ロビン。もうマカナに会わせたのか」

「いいえ。元々の素質ね」

 

 

そ、素質って……

 

 

「重症じゃねえかよ」

「だから、私も若干引いてるわ」

 

 

それは分かる。いままでロビンに改良されて"ハジメ信者"や"ロビン信者"になる人はいたけど元から持っていたとなると……

 

 

「…いまからでも、返品出来ないかな…」

「サンジが吹き飛ばしたから何処にいったか知らないわ」

 

 

……こんな奴隷になりたいような表情する人いらない……と、いってももう無理だろうけど……

 

 

「人格どうこうは後回しにして、ギンの武器は鉄球付きのトンファーだよね?」

 

「あぁ。そうだ」

 

「お兄ちゃんにも敬語よ。というか、私より立場は"神"の域なのだから。それなりに対応しなさい。じゃないと殺すわよ」

 

「イエス!!マイ・ロードッ!!!

失礼しましたマイ・ゴッドッ!!!!」

 

 

おい、誰が神だ。誰が。

そして僕はギンと主従関係は持ちたくありません、

 

 

「マジで止めて。

ゴッドとか……恥ずかしすぎる……」

 

「し、しかし……そうでなければ私はなんとお呼びしたらッ!!!」

 

「ハジメでいいから」

 

「ダメですッ!!!!マイ・ロードより下になるような呼び方などッ!!!!」

 

 

うわぁ……面倒くさいな……

するとロビンが何かを悟るように語りだした。

 

 

「ギン。お兄ちゃんの名前は"ハジメ"。

それはこの世の全てに対して生み出す"(ハジメ)"の存在。つまりは……」

 

「ッッ!!!!?? か、神ッ!!」

 

「そう。でもそれを知るもの少ないわ。

でもギン、貴方は知った。ならその名を呼ぶときは最も威厳のある呼び方があるはずよ」

 

「……ハ、ハジメ、"様"……」

 

 

いや、感動するところなにもなかったよ。

なんで涙流しているか知らないけど、結局神扱いかよ!

 

 

「失礼しましたハジメ様ッ!!!」

「……う、うん。もうそれでいいや……」

 

「ありがとうございます!」

「しっかりやりなさい」

「はいッ!!!」

 

 

……こうやって"信者"作ってるのかな……と、嫌な所を見た気がした。

 

 

「じゃ、じゃ早速やろうか」

「よろしくお願いしますッ!!」

 

「まずはその武器を新調します。

()()を使ってすでに作ってもらったから」

 

「こ、こんな俺の為に……」

 

 

また泣きだそうだったんでさっさと武器を渡した。

それはなんの変哲もないトンファー。

しかしそれは以前より機能性がアップしている。

 

 

()()()()()()()()

僕が思い付く限りの物を詰め込んだからそれを使いこなす修行がギンのテーマね」



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ハジメ的な修行②

「うわぁ……」

 

 

1日目終了。

今日はカヤの可能性を確かにして、ギンの戦闘スタイルを大きく変える事が出来た。

修行も終わり皆のいる広場に戻ってみると、()()()()()()()()()()()()()()

 

その中でも割りと大丈夫そうなルフィに話を聞くことに。

さすが長年ロビンの修行をやっていたこともあり耐久力はあるなー

 

 

「大丈夫かールフィ?」

「ハ、ハジメ……し、死ぬぅ……」

 

「大丈夫。まだ息あるから」

 

 

まぁ、耐久力があるといっても全力走りながら山を登り降りするぐらいにはキツいはず。()()なので実際はもっとキツいかもだけど……

 

 

「でもどんな修行したの?」

「し、師匠との……()()組み手……」

 

「………あぁ………」

「………また、悪夢が……」

 

 

ロビンの千本組み手。

言葉通りならロビンと千回組み手をするという。まぁこの世界ならありえなくもない話だが。

 

しかしそれは、それでもそれは、()()()なのだ。

 

ロビンの千本組み手とは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というあり得ない修行方法。

 

その一本の強さは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()らしい………

 

………いや、これ……レイリーさんより厳しいじゃないかと思うよ……上手くいけば一分でも千本倒すのに16時間かかるんだよ…休みなしで………

 

するとロビンがルフィの足元に立ち

 

 

「これしきで根をあげないの。

最終日にはラスト一本を()()()()()()()()()()()とやってもらうのだから」

 

「む、無理ッ!!!!」

 

「弱音は聞かないわ。

ダメだったら………これから遭遇するだろう敵とあなたが戦うとき常に私も()()として参戦するわよ」

 

「やりますッッ!!!!」

 

 

ロビンが敵側って……考えたくないな……

そして向こう側も何が起きたんだと!?と混乱するだろうな……

 

 

「あなたたちも分かったかしら?」

『はいッッ!!!!』

 

 

頑張れ。みんな。

実際強くなるのだからあまり口出しはしない。

というか、間違いなくロビンの方がうまいし。

というか、本当に敵側にロビンを立たせないで。

 

こっち(海賊)向こう(向かってくる敵)も可哀想だから……

 

 

「そして、この(修行)の最終目標は分身体1000人よ」

 

「せ、1000……」

 

「そしたら、そうね……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かしら」

 

 

その言葉に……みんな真っ白になった……

あのゾロやサンジ、レイジュさえもとても顔色がいいとはいえなかった……

 

というか、あの化物と同じにしないで。

流石に違うよ、うん、違うよ。

 

 

…………………………

 

 

「サンジー肉ッッ!!!!」

「うるせぇ!!いま作ってる所だろうがッ!!!!」

 

 

()()()()()()()()()()

ここはどうやら本編通りになってるようで、名目は『東の海(イースト・ブルー)奪還ッ!!』となっており、ネズミ大佐の悪事はこの海全体まで影響があったようだ。

 

幸いヘルメッポがいたところは手が出しにくいということで影響もなく、その周りの島も牽制されていたようだ。それでもネズミ大佐がいなくなったことによりココヤシ村の周りの島からお礼の品をもってくるものだから本編通りに一週間近くはこの宴は続くだろう。

 

 

「それでルフィは何本倒したの?」

 

「えぇーと……忘れた!」

 

「200よ。次、忘れたらさらに1000本増やすわよ」

 

「……は、はい……」

 

 

自信満々にいうから……

 

 

「ゾロとくいなは?」

 

「俺は180」

「同じぐらいかな?」

 

「くいなー」

 

「………185」

 

「はい、ゾロ。腕立て1000回。明日までに」

「クソがぁッ!!!!」

 

 

ゾロには別メニューでくいなに負けたらペナルティを用意した。しかし5本差かぁ……まだくいなの方が上手かぁ。

それにしてやっぱりくいなは優しい。

二人を見ていて微笑ましいけど修行だからね。

 

 

「コビーとヘルメッポは?」

 

「い、一本……」

 

「……100……」

 

「へぇ。一本ってなかなか筋がいいねー

ヘルメッポの時はその一本を倒すのにどれだけ時間がかかったか~」

 

「う、うるせぇ!!」

 

「100本?? 減ってるわよね。以前よりも。

今すぐ修行再開よ。100本倒すまで寝かせないわ」

 

「い、いやだあああああああああぁぁぁぁ!!!」

 

 

泣き喚こうがロビンには関係ない。

首根っこを持ちヘルメッポをズルズルと森の奥へ連れていくロビン(分身体)。

 

その後断末魔が響き渡るとコビーはブルブルと震えていた。

 

 

「………こ、こわ、いよ………」

「失礼ね」

「ガンバ」

 

 

今回不参加になったウソップとカヤが怯えるコビーを慰めてくれることになったので任せることに。というか喋るなと二人に言われた。それ以上喋ると本当にコビーが壊れるとか……失礼な。

 

 

「レイジュは流石だねー

分身体100は倒したみたいだね」

 

「……私、もう帰りたいのだけど……」

 

「自分から乗せてといっておいてなに寝ぼけたことを。

こうなったら向こう迎えがくるまで一蓮托生よ。()()()()()()

 

「……サンジ……」

「俺を見るなッ!!

俺はまだ分身体も倒せてないんだよッ!!勝てるかッ!!」

 

 

あのレイジュが弱気になってるなー

でもそれでサンジに求める姿はなんか兄妹らしくていいなー

 

 

「当たり前よ。千本中、ランダムで強さ大佐500本、少将450本、中将50本をいれているのだから」

 

『勝てるかッ!!!!』

 

 

いや、勝ってもらわないと。

いつかはそれ以上の化物と戦うんだから。

 

プルプル、プルプル。

 

おっ、専用でんでん虫が鳴ったということは

 

 

「はい。落ち着いて」

『ハジメエエエエエエエエエエエェェェェェェェェェェェ様ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!』

 

「はいはい。落ち着いてオックスさん。

昔の呼び方に戻ってますよー」

 

『ハッ!?失礼しました大将ハジメ』

 

 

大興奮したら呼び方戻るんだー

なんかそっちの方がいいんだけど…なんでか今が落ち着く僕もいるんだよなー

 

 

『本当に……本当に……心配しました……』

「ごめんね。色々心配と迷惑かけて」

 

『いえ。モーガンから聞きました。

なにやら色々されていたそうで、詳しい話は後日でも』

 

 

色々って、詳しいこと何もいってないのに…

よくそれで信用できるね。まぁありがたいけど。

 

 

『それでは本題なのですが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

電話越しでも分かる。雰囲気が一気に変わった。

声色が変わったのもあるけどそれだけでは説明できない何かが……

 

 

「そうだね。前から言っていた通り今の海賊が求めていたものなんだ」

 

『………そうですか………』

 

 

さて、オックスさんはどうでるか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『指名手配の写真は私が取ってもッ!!!!』

「一昨日来やがれ」

 

 

すぐさま通話を切った。

なにいってるんだこいつ。自分の立場は分かってないのか?

 

するとすぐにでんでん虫が鳴った。

はぁーとため息をついて

 

 

「なに?」

『それでは昔の写真でも』

 

「ふざけんな。

だからこっちから送るってヘルメッポに言い渡しただろうが」

 

『海賊になる一世一代の時なのですよッ!!!!

私も立ち合わせて』

 

「大将になったんだよね?真面目に仕事しろ」

 

 

再び通話を切った。

大将という仕事をなんだと思っているんだ?

……本当に人には言えないけどね。

 

するとまたでんでん虫が鳴り

 

 

「……最後だよ」

『もちろんです。

ハジメ様はともかくロビン様についてはどうお考えで?』

 

「だよね」

 

 

そう。昨日はモーガンを無理矢理帰したけどそういうわけにもいかないかー。

そう、ロビンはすでに()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()

 

つまり、海賊になるならニコルのように誤魔化しが効かない。

 

…………………あれ?

 

 

「ねぇロビン。そういえばハッキリと僕達の前以外で能力使ったことある?」

 

「お兄ちゃんが使ってなかったから絶対にバレないように使っていたわ。もしバレていてもマカナに揉み消してもらうわ

それに()()()()()()()()()()()()()()()みたいなものだったし」

 

「…………」

「…………」

『…………』

 

 

「問題ないね」

「ないわね」

『では分身体をこちらに。本体は"海賊ロビン"として』

 

 

なんにも問題なかったかー

 

 

『あるわあああああああああぁぁぁぁ!!!』

 

 

うおっ!!

この声はどうしてそこにいるのかな?

 

 

「お久しぶりです。てか、仕事しろよ()()()

『久しぶりの会話がこれかあッ!!!!』

 

「うるさい。なにオックスにくっついてるんだ、あぁ!?

そこに三人大将がいるってどういう状況だ!あぁッ!!?」

 

『いや、あの……ごめんなさい……』

 

 

戻った来ただけで三人も大将が動くとか…バカじゃねえのッ!!!!

 

 

『じゃなくてな!!おい、ロビン!!!!』

「なによ」

 

『お前!!自分の立場忘れてるじゃねえのかッ!!!!』

 

「………お兄ちゃんの妹」

 

『悪魔の子だろうがあああああああああぁぁぁぁッッ!!!!』

 

 

………あぁーそうだったー。

 

 

「もういいんじゃない?」

『アホか!!世界政府が狙ってるんだぞッ!!!』

 

「別にきてももう問題ないわ。

というかお兄ちゃんが一緒だから問題ないわ」

 

『…………………………………………………………

…………………………ない、かも…しれん……が……』

 

 

 

おっ、あと一押しかな?

 

 

「まだ文句があるなら世界貴族に攻めても」

『もう勝手にやってろッ!!!!』

 

 

はい、論破。

いやー。ロビンが攻めたらすぐに終わるだろうなー

正直センゴクさんやサカズキさんやボルサリーノさんがきてももしかしたら倒せるじゃないの?

 

 

『知らないからな!!何があっても知らないからな!!』

 

「勝手にしなさい」

 

『"闇"が来てもなにも出来ないからな!』

 

「大丈夫よ。むしろ私が"闇"」

 

 

その言葉に誰もが頷いた。

うん。本人に自覚があるなら間違いない。

 

 

『……でも…お前ら……本当に…無事で良かったよ……』

 

 

…………クザンさん。そんなに僕らのことを………

 

 

「気持ち悪い」

「死んでちょうだい」

 

『なんで俺だけそんなにしん』

 

 

今度こそでんでん虫を切って一時停止で繋がらないようにしてやった。



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ハジメ的な修行③

「……はぁ~……」

 

 

あれから4日目。

ルフィ達は厳しい修行をやり徐々に強くなっていると聞いている。

夜になればベルメールさんやノジコが料理を持っていったりしている。

 

でも、ナミはどうしてもルフィ達に近づけない。

別に何かをしたわけではない。

ただいまあったら何が変わりそうで…その変化を恐れているのだ。

 

やっと手に入った平穏。

でもルフィ達との冒険は今までの中でも楽しかった。

そしてルフィが諦めずに"仲間"と言ってくれた。

あの時、つい「うん」と返事したけどいまはどう思っているのだろうか?

 

そんなことをずっと考えているけど答えがでない。

だからこうして自分の部屋で、深くため息を何度も繰り返している。

 

するとコンコンとノックの音が鳴り

 

 

「入るわよナミ」

 

 

返事する前にノジコが部屋に入ってきた。

それで怒ることはない。姉妹でそこまで線引きをしているわけもなく互いに部屋を自由に行き来している。

 

でもいまは少し遠慮してもらいたい。

こうしてノジコが現れたのはいま毎日のように行っているルフィ達との会話などを話してくるから。

 

 

 

「あの子達本当に何者かしら?

ロビンさんの凄さは知っていたけど、それに食らいつくあいつらも相当スゴいわ」

 

「……そう……」

 

「ハジメさんも相変わらずマイペースで引っ掻き回していたわ。今日なんかあの剣士の二人をからかって、流れで長鼻君達も巻き込んで、最終的にロビンさんが入ってきて自分達のことでオチたって感じで……」

 

「……そう……」

 

 

興味がない。というより興味をもたないようにしている。

それはもちろんノジコも分かっている。

それでもノジコは彼らの話を、ベルメールのことを話す。

 

 

「ベルメールさんもずいぶんと積極的になってるわよ」

「あっ、それは見たい!」

 

「本当に可愛いわよー」

「可愛いッ!!?行きましょう!」

 

 

そしてこの妹はずいぶんと扱いやすい。

 

 

 

…………………………

 

 

「ほらベルメールさんッ!!」

「いまやらないとッ!!」

 

「もう!横から言わないのッ!!」

 

 

勇気を出してハジメの隣に座ったまではいいが、その反対側からロビンがいつものように甘えてくるため、ベルメールがそれからなかなか攻められない。

 

と、どうしようかと悩んでいると長女が次女を連れて戻ってきて「ここはアーンをしましょうッ!!」と何処からか持った来た串に刺したお肉を持ってきた。

 

で、それから5分ずっとモジモジしながら行動出来ずにいる。というか隣のハジメもここまできたら待つしかないと待っているが……

 

 

「あ、あのーベルメールさん?」

「ひゃぁいッ!!」

 

「なに可愛い子ぶってるの?オバサン」

「ロビン、やめなさい」

 

 

こうしてハジメから手を差しのべるが緊張して体が更に固まり、隣のロビンがちょっかいを出すのでなかなか進展できない。

 

 

「無理しなくても、いいんですよ?」

「む、む、む、無理じゃ…にゃい……」

「きゃぁー!!可愛い!ベルメールさんッ!!!」

 

 

さっきまで悩んでいたナミは何処にいったのか……

本編ではこんな性格じゃなかったんだけどなー

いや、初めてあったあの時からこんな風になったんだろうけど……まぁ、可愛いものが好きなナミなら別に問題ないかー

 

 

「ベルメールさん!!衣装を変えましょう!!

着るものが変わればきっと勇気も変わるわ!!!」

 

「………えっ?あ、あ、あれに……」

 

「うん!!いまのベルメールさんならきっと後押ししてくれるわッ!!!」

 

「ま、待ってナミ…あれはちょっと……」

 

「さぁ行きましょうベルメールさん!!!」

 

 

話も聞かずにナミはベルメールを引っ張っていった。

何が始まるんだと疑問を持つハジメに残されたノジコが

 

 

「あの子ね、可愛い洋服やぬいぐるみや小物があると収集するクセがあってね」

 

「えっ。前あったときはなかったですよね?」

 

「あのベルメールさんの照れてる所を見て"可愛い"が好きになったみたいだよ。それからずっと集めて酷いときは着せ替え人形のようにベルメールさんを……」

 

「うわぁ……」

 

 

そんな風に変わったんだ……

まだロビンほど壊れた人はいないだけマシかぁ…

 

と、しばらく待っていると全身を覆い隠す布で衣装を隠して顔を赤くするベルメールとニコニコのナミが戻ってきた。

 

 

「さぁ!ベルメールさん!!皆にその可愛いを見せてッ!!」

 

「や、やめないナミ…これはちょっと……」

 

「いいから見せるッ!!!」

 

 

強引である。

無理矢理布を奪い取り取ったナミ。

そしてベルメールが着替えさせられた衣装とは

 

 

「……メ、メイド…だと……」

 

 

まさかのメイド服。それもスカートがミニ。

スラッとした体つきのベルメールさんだからこそ、グッとくる何がハジメに襲いかかってきた。

 

 

「もうー!!!可愛い~!ベルメールさん!!!!」

「……や、やめて…見ないで……////」

 

 

両手で顔を覆い隠し恥じらうベルメール。

ハジメはその姿に不覚にもドキッとしてしまう。

そしてそれを見ていたロビンは

 

 

「気持ち悪いわ」

「う、五月蝿いわよ!!///」

 

 

無表情で感想を、心の底からから言ったようだ。

 

 

「さぁ、これで「ご主人様、アーン」ってすればお兄さんもイチコロよベルメールさん!!!!」

 

「む、無理ッ!!出来るわけないッ!!!!」

 

「ベルメールさん!!!!」

 

「ご、ごめんなさいーッ!!!!」

 

「逃げたッ!!!待てぇッ!!!!」

 

 

逃げ出したベルメールを追いかけるナミ。

あんなにも行動力があったなんてなー

隣にいるノジコははぁーとため息をつきながら二人を追いかけていった。

 

 

「な、なんだったんだ……」

「さぁ。所でお兄ちゃん。さっきトキメいた?」

 

「なんのこと?」

「そう。ならいいわ」

 

 

感情。もっと抑えれるようにならないとな。

 

 

「私も、借りて着てみようかしら?」

「だとしても、今はやめて」

 

「分かったわ。()()()()()

「…もう、好きにして……」

 

 

そしてロビンがこう言うことに関して上手だからもっと切り返しとか上手くならないとな。

 

 

 

…………………………

 

 

 

「もう、ベルメールさんったら……」

 

 

結局逃げられてメイド服を脱がれてしまい部屋に閉じ籠ったベルメール。何度も出てくるようにと言い続けたが出てこずノジコが「あとは私に任せて」と言ってくれたのでナミはそんな二人のために宴をしている会場から料理を持ってこようとまた外へ出ていた。

 

 

 

「可愛いで攻めたら絶対にお姉さんにも負けないのに……」

 

 

今度は何を着させようとブツブツ言いながら悩んでいると、宴の会場から少し離れた所から何か音が聞こえてきた。

 

何かと気になり音のする方へ向かってみると

 

 

「うおおおおぉぉぉぉ!!」

(な、なに……??)

 

 

そこで見たのは"麦わら海賊団"船長"麦わらのルフィ"だった。そしてそのルフィは"自身を中間地点として周りに手が生えたモノと戦っていた"。

 

それもただ生えるだけではなく手と手が繋がって伸びたり、手と手が重なり防御したりなど様々な行動をしており、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだった。

 

そう、この手はロビンの能力。

だけど見渡したかぎりロビンの姿はないので遠隔でオート操作みたいなことをしているのだろう。

 

ルフィの先を読んでいるかのように攻撃したりかわしたり、でもルフィも負けじと食い下がり一本づつ確実に倒している。

 

するとルフィがナミに気づいたようで

 

 

「おお!ナミ!!」

 

「…こんな時間まで修行してるの?」

 

「船長だからな。誰より強くねぇと!」

 

 

ルフィの言い分は分かる。

それでも何か言いたくなったナミは近くの岩に腰かけてルフィの修行を見ながら話しかけた。

 

 

「でも、お兄さんやお姉さんがいるから別にすぐに強くなる必要あるの?」

 

「すぐには強くなれねぇけどやってればいつか勝つッ!!」

 

「それいつの話よ」

 

「いつかは、いつかだッ!!」

 

 

妙な自信にはぁーとため息をつく涙。

でも意地悪なことをいったのにそれでもハッキリと答えた。いつになるかも分からないことに、本当に叶うか分からないことに、自信満々に答えた。

 

 

「でもあんたが強くなっても周りはどうなの?」

 

 

こんな事言うつもりはなかった。

でもあまりにも自信満々に答えたルフィに思わず言葉が出てしまった。

 

 

 

「あの中ではカヤが弱いわ。いまはウソップが傍で守っているけどいつか一人で戦う時がくるわ。それが海賊。弱くてもその船に乗ったら戦わないといけない」

 

「そうだな」

 

 

自分が受けたツラさが頭を巡る。

近くにノジコがいても、それでも孤独を感じ、どうしようもない時でも自分でどうにかしないといけない恐怖感や孤独感。

 

 

 

「でもルフィが言ったようにすぐには強くなれないの。そんなのどうしようというのよ!戦うすべがない奴はどうしたらいいのよ!!」

 

 

思わず八つ当たりをしてしまった。

でももう止めれそうにもない。ドンドン溢れてくるのだ。

いまナミが抱えているものが湧水みたいにドンドン出てくるのだ。

 

 

「人を殺したと長年思ってトラウマになったやつはどうするのよッ!!いざとなったとき身動きが取れなくなったらどうするのよ!!」

 

「なにも出来ない。なにもやれない。意味をもたない」

 

「そんな私はどうすればいいというのよッ!!!!!」

 

 

気がついたら肩で息を切らしていた。

優しくしてくれたやつに、仲間だといってくれたやつに、否定してもそれでも傍にいていいといってくれたやつに………

 

ナミの視線は下を向き涙が溢れ膝を濡らしていた。

こんなつもりはなかったのにと後悔して遅い。

もうどうすればいいのかと頭の中がぐちゃぐちゃになっていると

 

 

ポフッ

 

何が頭に乗せられた。いや、()()()()()()

思わず視線をあげるとそこにはいまだに修行をしているルフィがいた。

 

でもそのルフィはさっきと様子が違う。

頭にあった麦わら帽子がないのだ。

そしてフッと頭を触るとその麦わら帽子が

 

 

「わかんねぇ」

「えっ?」

 

 

修行をしながらルフィがそんな事を言ってきた。

どういうことなのか理解出来ないままルフィが

 

 

「俺はバカだから。難しいことはよく分からねぇ。

でもナミが悩んでいることだけは分かるッ!」

 

「俺は、ナミについてきてほしい!

別にナミが強くなくても俺が守ってやる!

それでも不安ならハジメや師匠に聞けばいい!

そしたら絶対に大丈夫だぁ!!!」

 

「それでも無理矢理はしねぇ。

師匠が言っていた。「自由に生きることが海賊なら縛るな」って。勧誘しても無理矢理だったら縛ることになるからな」

 

 

そんな言葉にいつの間にか聞き入っていたナミ。

そしていつの間か沢山あった手は全部倒していたルフィ。

息を切らすルフィはナミの前に立ち、一呼吸おいて

 

 

「だからそれを預ける!」

 

 

ルフィが指差したのはいまナミが被っている麦わら帽子。

 

 

「……えっ??で、でも、これ…ルフィの大切な…」

 

「おう!でもナミに預ける!

いつか俺達の仲間になるときに返してくれ!!

それならきっとシャンクスも許してくれる!!!」

 

「ッ!!?」

 

 

 

断ち切れないものを。"仲間"というものを。

ルフィは自分が大切にしているものを渡すことでどれだけナミを必要としているのか示した。

 

それはナミの心にも届いた。

麦わら帽子をギュッと抱きしめた。

 

 

「いいかナミ。

今度会った時はお前は俺の"仲間"だからなッ!!!!」

 

「………バ…バカぁ………

……結局、縛るんじゃ…ない……」

 

 

ニッシシシシと笑うルフィに、麦わら帽子を深く被り顔を見せないようにしているナミ。

それでもその見えない瞳からは雫が溢れだしていた。



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親子の決意

5日目。

 

「あなたたち、ふざけてるのかしら??

誰一人分身体を出せずに終えるなんて……消すわよ?

 

『ごめんなさいッッ!!!!』

 

 

一斉に謝る麦わらの一味。

………なんだ、この光景は………

 

 

「もうやめなさい。

ほら、ゾロとくいな以外涙目だから……」

 

「なるほど。あと二人を泣かせたらコンプリート」

 

「「ッ!!!??」」

 

「だからやめなさい」

 

 

結局、最終日になっても1000本の手を倒す者は現れなかった。最大ルフィが()()()()()()()()()いったが最後の10本は時間制限に倒さないとカウントされないのだ。つまり900本まで倒したのだった。

 

ということでロビンの分身体を出すまでには至らなかった為にロビンがご立腹なのだ。というかこの修行相当キツいのによくルフィがここまでやれたと言える。

 

次に良かったのはゾロとくいな。そしてサンジ。

ここは()()()()()()()()()()が、その僅かな差で言いあいしていたのだが割愛させてもらう。

 

次がレイジュとウソップ。そしてギン。ヘルメッポにコビーと続いていた。

 

 

そして非戦闘員であるカヤは

 

 

「ハジメさん。OKもらいましたよ」

「流石だねカヤ」

 

「いいえ。ハジメさんやロビンさんに比べたらまだまだです。私はただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけですので!」

 

 

………そう。今回ネズミ大佐を裁くのはもちろん関係した海兵を裁くために強い後ろ楯が必要だった。

あんなことをネズミ大佐やアーロン一人で出来るとは思えない。ましてや二人の部下でも限界がある。

 

モーガンに頼んでも良かったけど、今回はカヤの成長を見るためにあえて直接センゴクさんに通話をしてもらった。

 

センゴクさんにカヤについてどう話をつけようかも思ったけどロビンが「これから私の()()からはなしがあるわ。聞きなさい」と命令。もちろんセンゴクさんは怒ったり心配していたけど結局それはロビンの耳に届くことなくカヤと交代。

 

その後カヤとセンゴクさんの交渉が始まったのだが

 

 

「はい?それどういうことですか?」

 

「確かにネズミ大佐やその周りもモノ達は罪をおかした。しかしそれを"海軍"として認めたら信用が」

 

「なにいってるんですか?

信用??大人はいつも"信用"という言葉に縛られてますね。それがどれだけ悲劇を起こしたかまだ分かってないんですか。"信用"というのは長年積み重ねて出来たもので簡単に崩れるかもしれません。でも海軍を信じる人達を危険にさらしておいてそれを隠蔽する信用など信用とはいえません」

 

「し、しかし…」

 

「しかしもクソもありませんよ??

信用を勝ち取るためなら国一つ消しても心が痛まないと?どれだけ人が傷つこうが構わないと?よくそれで"海軍"と呼べますね。それなら革命軍のほうがよっぽどいいです」

 

「ちょっ」

 

「海軍が海軍としてあるためにはどんな些細なものから大きなものまで包み隠さず公表すべきです。

もしそれでつぶれるぐらいのものなら…最初から"海軍"と名乗る資格はありません」

 

「き、きい」

 

「聞きません。いいですか?

もし今回の件に関してどうしても解決をしたいというのなら海軍を下した"麦わらの一味"を指名手配にしても寛大な譲歩をすべきです。その"海賊"は膿となった海軍を蹴散らしてくれたのです。上層部はそこに関してもっと真剣に…」

 

「わ、わかっ……分かったから………」

 

 

と、いうことでネズミ大佐に関わった海兵をすべて処分。そして麦わらの一味に対して海軍からあり得ないことが発令されたがそれはもうちょっと後の話。

 

ということで、

 

 

「今回はカヤだけね。それ以外は男には20キロ、女は5キロの重りを両腕につけて三日間過ごしなさい。もし外したら………首に20キロの重りをつけるから」

 

『はいッ!!!!』

 

「やり過ぎ、やり過ぎ」

 

 

と言っても聞くわけがないロビン。

しかしカヤがここまで成長するとは…

あのセンゴクさんにぐうの音も言えないほど圧倒するとは思わなかったな……

 

非戦闘員だけどカヤには喧嘩売らないほうがいいな…

 

 

こうして修行も終わりココヤシ村から出航することになった。

メリー号に必要な物資を詰め込み後は乗り込むだけとなったのだが……

 

 

「ええぇー!!!ナミさん来ねぇのかよッ!!!!」

「おう」

 

「おう。じゃねえ!!なに麗しい女性を減らしてくれてるんだテメェ!!!」

 

 

相変わらずなサンジ。まぁナミが来なければノジコもベルメールさんも来ないだろうからな。

一気に人数が減る。まぁ、ルフィやナミが決めたことだしな。

 

 

「それで大切な"麦わら帽子"を渡したと?」

 

「シャンクスにはちゃんと謝る。それにいつかナミは来るからなッ!!」

 

 

信じているならいいか。

ここまで本編とかけ離れたんだからこうなっても仕方ない。ちゃんとナミがルフィ達と"絆"が生まれたなら文句をいうのは違う気がするし。

 

それにここでハッキリさせたほうがいいことも、まだあるから。

 

 

「じゃ、()()()()()()とはお別れだね」

 

「………へぇ?」

 

「次の島はグランドライン手前の島だし、あそこには"口うるさい"人がいるからね。この状況を見たら流石に庇いきれないから」

 

「ちょっ、ちょっと待て!!」

 

 

いきなりすぎて混乱するヘルメッポ。

まぁそうなるよな。

 

 

「お、俺は師匠をグランドラインまで」

「それはいいわ。あのグザンがその内迎えを寄越すから」

 

「ご、護衛…」

「あら?私たちじゃ()()()()()()()()()()()()

 

 

言い方、言い方。

ごときとか言わないの。一応僕達海軍に入ってるので。

 

 

「………………」

「もう終わり。なら終わりよ」

 

「………ってだ……」

「なに?ハッキリと言いなさい」

 

「勝手だって言ったんだよクソがあああああああああぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

大声を出して何処かに走っていくヘルメッポ。

心配してコビーはヘルメッポを追いかける。

そしてその文句を言われたロビンは

 

 

「私、そういう性格よ。いまさら何言ってるのかしら?」

 

(((((……そういう問題じゃ………)))))

 

 

でもまぁ、ここでハッキリさせないとヘルメッポもズルズル来るだろうし、それにちゃんとした"海軍"をダメにするわけにもいかないしな。

 

 

「ヘルメッポはリタイアということで」

 

「いや、ひでぇなお前ら」

 

「そう??

じゃ酷いついでにゾロもくいなともお別れだね」

 

「「はぁ?」」

 

 

いや、はぁ?じゃないし。

 

 

「だってヘルメッポの用心棒というかお手伝いしていたんでしょう。ヘルメッポ、ここで抜けるから二人ともお別れ……」

 

「ざけんなッ!!!!

ミホークをぶっ倒すまでテメェに付いていくっていっただろうがッ!!」

 

「でも僕はルフィに付いていくよ。

まぁ、立場上"海賊になる"ではなく"居候"みたいものだけどね。あっ、ロビンは麦わらの一味だから」

 

「つ、つまり…麦わらの一味に入らないと……」

 

「ここでお別れだね」

 

 

ロビンから聞いたが散々ルフィの勧誘を断ってきた二人。さて、どうするか?

 

 

「なら話は早ぇ」

「そうだね」

 

 

くいなは腰にさした刀を抜き地面におき、ゾロは片膝をついてルフィの前に

 

 

「ルフィ。散々断ってきたが俺達はお前に付いていく理由が出来た」

 

「調子のいいことだと分かってるけど」

 

「ロロノア・ゾロ」

「くいな」

 

「「大剣豪になるために麦わらの一味にッ!!!!」」

 

 

律儀な人達だ。

ルフィの元に下ると見せるためにルフィより低い位置から一味に入れてくれと懇願する。

 

 

「もちろんだッッ!!!!」

 

 

ルフィならそういうだろうな。

ニッシシシシと笑いながらルフィはサンジの方を向き

 

 

「そういえばなんでサンジがいるんだ?」

「今更かよッ!!

………ったく、お試し期間のつもりが……」

 

 

すると腰に着けていたナイフを抜き取り、刃先を向けるのではなくナイフ全体をルフィの方へ向けて

 

 

「やってやるよお前らのコック。

こっちは"オールブルー"って夢がある。馬鹿げた夢物語はお互い様だからな」

 

「ヨッシャーッ!!!!」

 

 

すんなりとコックもゲット。

ゼフさん、思い通りになりましたよ。

ということでゼフさんから渡されていたモノを

 

 

「はいサンジこれ、ゼフさんから」

「ジジィ……」

 

 

きっと感動的なことが……

 

 

『ニコルに料理を作るならその下心を完全に捨てろ。

直接食ってもらえるまで帰ってくるな』

 

 

と、それだけだった。

 

 

「く、クソジジィがッ!!!!」

「破り捨てた紙切れ拾っておいてねー」

 

 

ビリビリに破り捨てたサンジ。

気持ちは分かるけどロビンに料理をだすならゼフが言った通りに下心を捨てないとねー

 

 

…………………………

 

 

全員が船に乗り込んだ。

しかし船を動かせる航海士がいないのだが

 

 

「私がやるわ」

「おお!師匠出来るのかッ!!?」

 

 

キラキラとした眼差しでロビンをみるルフィ。

しかしそれは……

 

 

「ダメ。やめなさい」

「おいおい。いいじゃねえか船を動かせるならよ」

 

「ウソップ。甘い、とても甘いよ。

ロビンは"乗り物系"の操縦が死ぬほど下手なんだ。

確かに動かせることは出来る。けどそれだけ一分に一回はトラブルが発生するけどいい」

 

「ロビンにやらせるなーッ!!!!」

 

「失礼ね」

 

 

手のひらをすぐに返したウソップ。

でも今回は本当にやらせたらダメ。

海軍でも航海術を習ったけどなんど転覆しかけたか…

それでもロビンの有能さは凄かったので良かったけど、普通は海軍に入れもしなかっただろうなー

 

 

「いまは2分に一回よ」

「ダメだッ!!!出航前に死ぬぅぅぅぅ!!!」

 

「おいおい。他に動かせねぇのか!!」

「は、ハジメはどうなんだ!!?」

 

「僕は5分に一回」

「ダメだ!この兄妹ダメだッ!!!!」

 

 

おい。

 

 

「ならここにいるやつで扱えるやついるの?」

「…………………」

 

「出来てからものを言えやコラ」

「ぶち殺すわよ」

 

「誰かッ!!誰かいねぇかッ!!!!」

 

 

殺されるのを恐れて半分混乱しながらウソップは叫び駆け回り始めた。カヤはそんなウソップを止めようとするが

 

 

「ったく、全く航海術を知らずに航行するきだったわけ?」

 

「ノ、ノジゴーッ!!!!」

 

 

神様が現れたように両ひじをついて祈るウソップ。

その姿にもう笑うしかなかったカヤ。

ノジコも苦笑いをしながら

 

 

「私がやるわ。あんた達の航海士」

「あら、いいの」

 

「返しきれないほどの恩が出来たしね。

それにあんたらといたら退屈しなさそうだしね!」

 

「それは間違いないな」

「なぜこっちを見るゾロ?」

 

 

失礼な。僕は普通の人です。

 

 

「あ、あの…ノジコさん……

……ナミさんと、ベルメールお姉さまは……」

 

「こないじゃないの。家に手紙は置いてきただけで会ってないから」

 

「そ、そんなッ!!」

 

 

本当に女に関して感情の起伏が激しいなー

 

 

「はいはい。もう出航するよー」

「ナミざあああああああああぁぁぁぁぁぁん!!!ベルメールおねざばあああああああああぁぁぁぁ!!!」

 

「身内より泣けるなんて……」

「おい、ハジメ。このエロコック捨てていこう」

 

 

くいなとゾロの気持ちは分かるけど捨てないの。

もうノジコもドン引きしてるけどコックはサンジしかいないんだから我慢してねー

 

そして全員が船に乗り込み出航を迎える。

沢山の村の人がお迎えに来てくれていたけどナミとベルメールの姿だけはなかった。

 

 

「……まぁ、しょうがないか……」

「……ありがとう………お兄さん……」

 

 

それは誘ってくれてありがとうなのか、すんなりと諦めてくれてありがとうなのか、何に対してなのか、そこは聞かないことにした。

沢山の人の中にはゲンさんもいて「元気でいけぇー!!!!」と応援している中、突然その人々の後方から

 

 

「船を出してッ!!!!」

 

 

集団の後ろ。そこにナミが立っていた。

そしてこちらに向かって走ってくる。

その意図を汲み取ったのかルフィが

 

 

「船を出してくれ」

「……了解」

 

 

ノジコもこの後の展開を分かったらしく船を出す。

走るナミ、旅立つ船。その両方の行動に村の人達は困惑する。

 

 

「ナ、なっちゃんッ!!待ってくれッ!!!!」

「まさか…このままお別れするつもりかッ!!」

「あんた達も待ってくれッ!!!!」

「こんなお別れ方なんてッ!!!!」

 

 

しかし少しずつ離れていく船。

そしてナミは自分を止めようとする人々の間を掻い潜って、離れていく船に向かってジャンプした。

 

 

「ッ!!なんでッ!!?」

 

 

こんないきなりのお別れなんて……

と、誰もが思い困惑する中、なんか違和感を感じる。

 

無事にたどり着いたナミは一呼吸を置いてシャツの裾を捲ると、そこから大量の財布が

 

 

「お、おい…あれってッ!!?」

「ない!!財布がないッ!!!!」

「私もッ!!!!」

「俺もだッ!!!!」

 

 

そこにいた誰もが財布がないことが分かった。

そしてその財布の行き先はいまあの船に、ナミの足元にある。

 

 

「こう見えても私、ノジコと同じぐらい手癖悪いの」

「「「「なっ!!!??」」」」

 

 

財布の一つからお札を抜き取るナミ。

そしていつの間にか隣にたったノジコもポケットから沢山の宝石や指輪を取り出した。

 

 

 

「おまッ!!!??」

「先立つもが必要だったのよ!」

 

 

「それじゃ、みんな。バイバイッ!!」

「「「「や、やりやがったなあのアマ共ッッ!!!!」」」」

 

 

 

おいおい。本編より酷いぞこれ。

姉妹揃ってなにやってんだか……

 

 

 

「おいおい…大丈夫なのかコイツら…」

「反省…っていっても無理みたい……」

「何を仕出かすか分かったもんじゃねぇ…」

「アハハ……」

「ナミさんもノジコさんもぐぅー」

「いい性格してるわ」

「流石マイ・マスターのお仲間!!!」

「なっははははははッ!!」

 

 

お別れに水をささないようにとそれぞれバラバラに離れていく。それに見習ってロビンと一緒にその場を離れることにした。

そしてお金等をスラれたみんなは口々に文句を言っているが、途中でナミ達への励ましの言葉やお別れの言葉に変わっていった。

 

 

「みんな!行ってきますッ!!」

「それじゃね!!バイバイッ!!!」

 

「「ベルメールさんッ!!言ってきますッッ!!!!」」

 

 

その場にはいない母親に向けて一番の声で、一番の想いを込めて叫んだ。

涙目になるノジコ。涙を流すナミ。

やっと日常が戻ってきたのに、それでも"仲間"といってくれた人達に、自分の夢を叶えるために……こうして別れも言わずに飛び出してきた。

 

 

 

別れをいったらこれ以上に泣いてしまうから。

 

 

 

ベルメールから離れなくなってしまうから。

 

 

 

だから離れたこの場所からベルメールさんへ。

 

 

 

きっとその声は届くと信じて………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってらっしゃい。()()()()()()()()()()()()()

 

 

その声に、言葉に、ハッとして振り向いた二人の前にいたのはニコッと笑ったベルメール。

肩からリュックを一つ、そして足元には()()()()()()()()()()

 

 

「もう、離れない。ナミがそう言ったでしょう?」

「……べ、ベルメールさんッッ!!!!」

 

 

抱き合う親子。

ベルメールはきっとナミとノジコなら乗り込むと信じてさきに船に乗っていた。

それを知っていたのは……いや、()()()()()()()()()

 

 

「ゲンさーんッ!!行ってきまーす!!!!」

「この不良親子共ッ!!元気でやってこいッ!!!!」

 

 

 

旅立つ。長年縛られていたものから解かれ、やっと自分の意思で、親と子の決意で、広く過酷な海へと。

 

 

…………………………

 

 

「「「「「こ、婚約したあああああああああぁぁぁぁッッ!!!??」」」」」

 

 

やっと落ち着いたと思いきやずっと気になっていたとくいなとカヤがロビンとベルメールさんの左手の薬指にはめている指輪について聞いてきた。

 

まぁ、この二人はなんとなく分かっていただろうけどやっぱり野郎共は気づかなかったかー

 

 

「おいおい!まてまてッ!!

二人とか!?二人と婚約したのかハジメッ!!!!」

 

「だね。ロビンいわく自分が本妻であればあとは僕次第だって」

 

「僕次第って……おい。ちょっとまて。

それって……テメェまだ他のレディと関係性を持ってるのかクソがああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」

 

「やっぱりズレてんなこいつは……」

 

「流石ハジメだなッ!!!!」

 

 

祝ってくれるのはルフィだけか。

あのロビンが珍しくルフィの両手にある重みを外していいって言ってくるほどにロビンも喜んでいるようだ。

 

すると空からニュース・クーが1羽。

ナミが手をあげて新聞を一つ購入した。

ちなみにナミが被っていた麦わら帽子はちゃんとルフィへ戻ってきた。

 

 

「やっぱりあった。お兄さん、指名手配書出てるわ」

「おっ。来たか」

 

 

指名手配書を受けとるハジメ。

誰もが気になる指名手配書にあげられた者は

 

 

『"麦わらのルフィ"5500万ベリー』

 

 

おっ、本編より上がってる。

でも金額が安い気がするだけど……まぁいいか。

 

 

『"悪魔のニコ・ロビン"1億5000万ベリー』

 

 

高ッ!!

いや、実際ならもっと高いか…

なんか実力と値段が合ってないよな……

 

……オックスさんの仕業かな……

これ以上あげると目立つから抑えたってところだろうなー

 

 

「ヨッシャー!!!!」

 

「安すぎるわ。ちょっと抗議の電話を……」

「やめてくれッ!!!!」

「自分から懸賞金を上げないでくださいッ!!!!」

 

 

ルフィは喜んでいるけどやっぱりロビンは不服だったか。

でんでん虫で海軍に電話しようとするところをウソップとカヤで必死に止めていた。

 

これ以上上がるとさらに色んなやつから狙われるからね。

 

 

「しかしルフィのマヌケな手配はともかく」

「そうか?」

 

 

言ってやるなゾロ。

こっちで写真手配しようとしたけどどっかで隠れて撮影したみたいだな。

 

本編と同じくらい笑ってるルフィ。

その後ろにウソップとカヤと後頭部が…

あぁ、これでカヤも巻き込まれたなー

 

 

「なんでロビンは()()()()調()してるんだ?」

「…………うわぁ………」

 

 

その言葉に長年一緒いるくいなが引いた。

さっきまで指輪の話をしたのにまったく理解してない。

そしてロビンのことをまったく理解してないな。

 

………僕も理解してないことが多いけど………

 

 

「記念撮影だから」

「だよね。絶対に指名手配の顔写真と分かっていて写られたよね?カメラ目線だし婚約指輪強調してるし」

 

「これで世界的に発表されたわ」

 

「100%それ狙いだよねッ!!?」

 

 

ニコルとロビンとの違いが分かるのは限られているけど、まぁこれぐらい大丈夫かな?

 

それにきっと()()()()()()()()()()()()というのが本音だろうし。

 

 

するといきなり船が揺れた。

メリー号の近くで何か落ちたのだ。

そしてそれは後方から飛んできたもので

 

 

「か、海軍ッ!!!!」

「ちょっ!!速すぎるだろうッ!!!!」

 

 

ウソップやサンジ達は慌てているけどあれ。

 

 

「やっぱり、付いてくる気だ」

「えっ。………あれって……」

 

 

その言葉に冷静になったカヤがよく目を凝らして見てみると

 

 

「ヘルメッポさんの船!?」

「このまま付いてくる気だね」

 

「じゃ俺達を捕まえる気なのか!!?」

「いや、あっちにロビンの分身体"ニコル"がいるからそれはまずない。そんなことしたらあの船沈むよ。これは威嚇みたいなもの。そして……」

 

 

その言葉を遮るように

 

 

『絶対に捕まえる(ついていく)からなッ!!!!』

 

 

と、ヘルメッポの声が聞こえてきた。

でもそれは本当に"捕まえる"とは聞こえなかった。

もちろんハジメにもそれはわかっており

 

 

「付いていく。だってよルフィ」

 

「ニッシシシ!!おもしれぇ!!

絶対に捕まるもんかッ!!!!

ノジコッ!!!!全速力で逃げろッ!!!!」

 

「OK、船長ッ!!」

「私も手伝うわ!」

「親子が揃えれば、そう捕まらないわよッ!!」

 

 

主にノジコが操縦し、ナミとベルメールがサポートをする。ナミのトラウマも二人がいれば乗り越えられる。

このストーリーでは親子の絆がナミを、ノジコを、ベルメールを強くする!!

 

 

「っとうに、面白い感じになってきなー」

 

 

こうして、本編よりも大人数となった麦わらの一味。

そして後方から追いかけてくるヘルメッポ。

 

こんなこと想像できなかったなー

きっとこれからも想像の出来ないことが起きるかな。

でも、このメンバーなら…大丈夫だな。

 

そしてルフィが一言。

 

 

「ところでよ。なんでギンとサンジの姉ちゃんがいるんだ?」

「「「「「今更かよッッ!!!!」」」」」

 

 

で、オチがギンとレイジュってのもいいかも。



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―幕間― 指名手配書が出る、前と後

・出る前(海軍本部)

 

 

「ニコルが東の海(イースト・ブルー)にねぇ…」

「何を考えとるのじゃ!!」

「……考えがあると思うか……」

「ニコルだからな」

「流石、ニコル様です!!」

 

 

海軍のトップ。3大将から4大将、そしていまは異例の()()()まで増えた。

上からボルサリーノ、サカズキ、クザン、ハジメ(モーガン)、オックスとなっている。

 

そしてその上に立つ元帥センゴクは

 

 

「ニ、ニコルが…ニコルが反抗期に……」

 

 

いまだにショックを受けていた。

いままでやってもクザン(これ当たり前)にしか攻撃しなかったのに、まさかの()()()()()()()()()()なんてあり得ない。

 

そしてセンゴク的にニコルは"孫"みたいなもの。

いくら"お兄ちゃん愛"が強くてもセンゴクから見れば、兄を慕う可愛い妹としてか見えなかった。

 

で、その孫が喧嘩を…それもあの"大好きなお兄ちゃん"を攻撃したのだ。反抗期と呼ばずなんという。

 

 

「ひとまずそれはおいといてだ」

 

「おくなッ!!可愛いニコルがッ!!」

 

「なに言ってるんだアンタはッ!!?」

 

「こんなに小さいころから見てきたんじゃ!!!

ようやくガープの言っておったことが分かった……孫は可愛いッ!!!!」

 

「……やめてくれ…ほんとうに……」

 

 

()()がニコ・ロビンだと知ったときはどうなるのか……考えただけで胃が痛くなる……と、胸を押さえるクザン。

 

 

「ともかく、ともかくだ!!

真っ先に考えるのはこの女だッ!!!!」

 

 

そして自らその危険をおかしているのだ。

ニコル=ニコ・ロビンとバレても仕方ないと、ものすごく胃が痛くなったとしても。

 

ニコルが()()()()()()として出てきてしまったのなら問題として上げるしかない。

 

 

「ニコ・ロビン……まいったね~」

「いままで何処に隠れておったんじゃッ!!!!」

 

(ずっぅぅぅぅぅぅぅぅぅと隣にいました……)

 

 

言いたくてしょうがない。

髪型を変えてメガネをかけていたとしても、こっちとしては「なんでバレないのッ!!!!」と当初凄く気にしていたのに………慣れってコワッ!!!!

 

 

「…でだ。ニコ・ロビンを()()()()()()という話だが……」

 

 

懸賞金を1億5000万ベリーに()()()()()

間違いなく実力と懸賞金の金額がおかしいと分かっているが、あくまでもそれはここにいる6人中3人だけが事実を知らない。というか、知られるわけにはいかない。

 

なら、()()()余計な戦力を投入しないようにしないといけない。

 

 

 

「それはもちろん捕まえないとね」

「悪は消さんとならんわッ!!」

 

「……まぁ、捕まえるだな……」

「……ですね……」

 

 

後半二人は「いや、無理だろう」と分かっていて簡単にしか言わなかった。クザンももちろんそう思っている。

しかし建前上「なら止めとく?」なんてできない。

 

 

「……当面は、いま"麦わらの一味"を追いかけている"ヘルメッポ大佐"に任せるしかないと思っているけど……」

 

「いいじゃないかい?

目立った行動はしてないみたいだしね~。それにどういうわけかその船に()()()が乗っているんだろう。なら大丈夫じゃないのかい?」

 

「…………まぁ」

 

 

あのニコルの()()()()()()()については報告してない。

したら絶対に"バスターコール"が麦わらの一味に向けられる。でもそんなことしてもあそこには"ハジメ"がいる。そんなことしても返り討ちになるのが目に見えている。

 

だから戦力を()()()()()()()いかないので言ってはない。

 

そしてヘルメッポの船にニコルがいる。

それだけで十分だと判断してくれたようだ。

 

 

「グランドラインに入れば終いじゃ!!

ハジメ!!オックス!!お前らで潰してこいッ!!!!」

 

「分かりましたッ!!!!」

 

「……はい……」

 

 

しかしサカズキはそれでは終わらない。

勢いよく返事をするオックスはともかくハジメ(モーガン)は歯切れが悪い。それに対してサカズキが

 

 

「なに腑抜けた返事をしているッ!!!!

貴様がもっとよく探しておればこんなことにはならなかったはずじゃ!!!!」

 

「行きますよ!行きますって!!!」

 

 

モーガンが東の海に行ったことはみんな知っている。

その時ニコルから罪人を受け取り、いつの間にかニコルが消えたので探したが見つからずにこっちに向かっていたオックスと合流。

 

その後どういうわけかニコルがヘルメッポの船にと分かり、罪人をそのままにするわけにも行かずに帰って来た。ということにしている。

 

つまりニコルを探す過程でどうして麦わらの一味を見つけられなかったのかと怒られているわけだ。

 

しかし流石に大将二人を向かわせるって……

面倒くさいがここは止めるしかない。

 

 

 

「あのさサカズキ。やっぱり大将二人を向かわせるのはやめた方がいいよ」

 

「はぁっ!!なにを言っておるのかワレわあッ!!!!」

 

「そんなことしたら()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()だって思われるよ。

それにあのニコ・ロビンだ。ただの海賊があの女を扱えきれるとは思えない」

 

 

それっぽいことを言っているけど、向かったら倒すどころかヘルメッポはロビンに、オックスはハジメにある意味やられるのだ。

そんなこと本当に海軍の地位を一気に落としかねない。

 

 

「確かに、そいつは困るね~」

 

「だからいまは様子見だ。

それでもあの海賊が残り続けて問題を起こすようなら……君ら二人で。いいね?」

 

 

その言葉に二人は頷き、サカズキもボルサリーノも納得してくれたようだ………

はぁ~本当に胃が痛いと胸を押さえていると

 

 

「私はいくぞッ!!」

「ふざけんなよッ!!立場を考えろッ!!!!」

 

 

突然バカなことを言い出すセンゴク。

それに対してさらに胃も頭も痛くなるクザン。

 

 

「直接ニコルに会って話すをするッ!!」

 

「やめろ!!マジで止めろッ!!!!

ニコルはいま……そう!!"家出"だ!!

だから帰ってこないんだ!だから落ち着くまでは止めとけッ!!!!」

 

「い、家出……なんでそんなことに……

……ハジメッッ!!!!ニコルに何をしたッ!!!!」

 

「俺ッッ!!!!??

なにもしてねえってんだよッ!!!!」

 

 

親が兄に対して怒っている様を見ているようだ。

もう、ハジメがいなくなったらなったらでめちゃくちゃになっている海軍。

 

 

……本当にこの海軍、大丈夫なのか………

 

 

 

…………………………

 

 

・ココヤシ村

 

 

「…………ニュ~?」

 

 

目が覚めると一隻の小舟に乗せられていたハチ。

周りを見渡すとそこにはチュウとクロオビも。

 

 

「た、確か……ッ!!?」

 

 

思い出そうとすると全身が震える。

呼吸も荒くなり心拍も早くなる。

とにかく落ち着かせようとするハチ。

 

……ハジメの"アレ"がトラウマになったようだ……

 

 

「はいはい。落ち着いて」

 

「に、ニュ~ッ!!!?」

 

 

さっきまで三人しかいなかったのにいつの間にか海の上に人が立っていた。

 

 

「な、なんだお前ッ!!?」

 

「だから落ち着いて。

ハチ、レイリーさんの所にいかない?」

 

「な、なんでオレの名前を?

というかレイリーさん知ってるのか!?」

 

「色々お世話になったからねー」

 

 

そのあとハジメからレイリーさんとの出会いなどを話した。すると懐かしそうにするハチ。

 

 

「そうかーレイリーさん元気にしてるのかー」

 

「それでどうする?レイリーさんの所にいくなら手助けできるけど?」

 

「ううん。遠慮するニュ~

やりたいことがあるしな~」

 

「あぁ、たこ焼き屋ね」

 

「なんで知ってるッ!!?」

 

 

まぁ、色々とね。と誤魔化したハジメ。

ハチもそれ以上詮索しないことにした。

 

 

「でもどうして俺達だけ助けてくれたんだ?」

 

「さっき言った通りにレイリーさんと会ってるだよ。

その時に君のことをね」

 

「なるほど~」

 

「まぁ、ゾロ達や僕ので罰を受けたということにしてあげるよ。幸い主犯がアーロンとネズミだからね」

 

 

ということで残りの二人を叩き起こす。

 

 

「な、なんだ……」

「一体……」

 

「はい、注目」

 

 

こういう奴等にはハッキリと上下関係を分からせるために軽く殺気を放ちながら

 

 

「解放してやるからハチの手伝いをしろ。

もし、余計なことをしたら俺やレイリーさんがお前らを消しにくる。いいなッ!!」

 

 

言葉も言えず頷く二人。

これなら大丈夫だと殺気を消して

 

 

「よし。じゃ頑張ってねハチ。

今度会えたときにたこ焼き奢ってねー」

 

「ニュ~~!ありがとうなー!!」

 

 

 

…………………………

 

 

・出た後(東の海編)フーシャ村

 

 

「ふふふ……ふふふ………」

「…ど、どうしたんだいマキノの奴は……」

 

「今はそっとしておくんじゃ……」

 

 

ここはフーシャ村。ルフィが育った町。

そしてマキノを見て村長はそっとしておいてくれと村の人に言っている。

 

そのマキノはというと、"包丁をずっと研いでいる"

ロビンの指名手配書を見てからずっと。休むこともなく……

 

 

「あのバカ……どうしてくれるんじゃ……」

 

 

ハッキリとしたハジメに対しての好意を見せたことはない。それでもグイグイと攻めていれば誰でも分かる。分からないのはハジメだけ。

 

そしていまこうしてマキノが壊れてしまった……

 

 

「………どうして…あげましょうか…ね……」

 

 

いまは、自然に収まるのを待つしかない………

 

 

…………………………

 

 

・シロップ村

 

 

「頑張っているみたいですね……」

 

 

ルフィの後ろに立つ、2つの後頭部。

それはメリーから見ればすぐに誰か分かる。

顔は見えないがそこからでも元気よくやっているということは分かる。

 

そしてメリーぐらいになると

 

 

「それにして…ずいぶんと体調が良くなっている…

……何かあったということでしょうか……」

 

 

カヤがDr.くれはから教えてもらった薬を調合して飲んでいて、それがさっそく効果として出ているようだ。

しかしその違い、きっとメリーだからこそ分かる違い。

 

もしくは隣にいる少年にも……

 

 

「……頑張ってください、カヤお嬢様……

…頼みましたよ、ウソップ君……」

 

 

…………………………………

 

 

・バラティエ

 

 

「いきなりトータル2億ベリーオーバーかぁ……」

 

 

指名手配書を見ながら呟くゼフ。

ロビンとハジメがいる時点でとんでもない海賊になるとは思っていたが、たった二人でこれだけの懸賞金をかけられると改めて知ると

 

 

「……気張れよ……」

 

 

ちょっとだけ、サンジの心配をするゼフだった。

 

 

 

…………………………

 

 

・グランドライン、女ヶ島

 

 

「……は、はぁ~ん………」

 

「姉様ッ!!」

「気をたしかにッ!!」

 

 

目眩がしてハンコックはその場に崩れた。

すぐにマリーとサンダーが駆けつける。

どうやら指名手配書を見て体調を悪くしたようだが

 

 

「どうしたのじゃ蛇姫?」

「ニョン婆様ッ!!」

「急に姉様がッ!!」

 

 

すぐにハンコックから指名手配書を奪い取り見てみると、そこにはロビンの左手の薬指に指輪が

 

 

「………あの男…なんてことを……」

 

「それって…兄様のこと?」

「一体何をしたというの?」

 

 

ニョン婆もハンコックとハジメの関係性は知っていた。

普段は"男"に対して汚物を見るような目で見ているのに、ハジメに関してはもう"愛"すら感じるほど慕っていた。

 

それが、こんなものを見せられたらショックを…

 

すると突然ハンコックは立ち上がり

 

 

「……船を、出せ……」

 

「姉様?」

「体のほうは?」

 

「大丈夫じゃ。すぐに船を」

 

「待つのじゃ蛇姫。まさかお主ッ!!?」

 

 

そう、慕うハジメを取られたと腹いせにロビンを…

 

 

「わらわも…指輪が欲しい///」

「だと思ったわいッッ!!!!」

 

 

…………………………

 

 

グランドライン、とある島

 

 

「……久々の連絡がきたと思ったら…あの子、何してるのかしら?」

 

 

冷静に指名手配書を見るオルビア。

そして「ふふふ……」と微笑みながらクローバー博士に話しかける。

 

 

「どうして私より博士が涙を流しているの?」

「や、やっと…あの娘に……婚約者が……」

 

「といってもハジメよ。信用も信頼もしてるけど……」

 

「……ハジメ、だったな……」

 

 

嬉しい。それは間違いなく嬉しい。

しかし"ハジメ"と。というのが…どうしても100%喜ぶことが出来なかった……

 

 

…………………………

 

 

・ゴーイングメリー号、????

 

 

『…ありがとう。こんなにいっぱい人を乗せて走れるなんて夢みたいだよ』

 

「良かったね」

 

『僕、()()()()()()()()()()()()()()()()今度は君がいてくれるから大丈夫な気がするよ』

 

「最後まで来てもらうよ。その為に色々やらせてもらったんだから」

 

『こんなに人が多いのにどうして重たくないの?』

 

「"質量"と"重さ"。メリー号に触れた時にかかるエネルギーを()()()()させたんだ」

 

『どういうこと?』

 

「そうだねー

"重さ"は停止しているもの。例えば砲台とか。"質量"は重さを持った動くものかな。例えば僕とかね。

もっと簡単にいえばメリー号に一時停止の"膜"を張っていて、それに触れたものはメリー号に対して働くエネルギーがゼロになる。でもそれはメリー号に対してだから実際のものの重さは変わらない……って、分かるかな?」

 

『なんとなく、分かったと思う』

 

「それでも許容範囲もあるしあと三人までかなー」

 

『まだ乗せてくれるの?』

 

「出来るならねー。一時的に乗る人もいればずっといてくれる人もいるだろうし」

 

『これから楽しみだよ!

僕はずっと皆を運べるなんて!』

 

「よろしくねー。

それで、ちなみにここはどこ??」

 

『夢のようで夢じゃないところ』

 

「…………不思議空間かぁー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……大丈夫、お兄ちゃん?」

 

「……夢、だったのか……」

 

 

どうやらいつの間にか寝ていたようだ。

メインマストの柱にもたれ掛かった状態で。

 

 

「珍しいこともあるのね。お兄ちゃん、いままでお昼寝とかしたことなかったのに」

 

「……だな。なんか、つい眠たくなって……」

 

「…………奪っとけば良かったかしら………」

 

「おい、何をだ。何を奪う気だった?」

 

 

ったく、油断もスキもない……

 

 

「おいッ!!ハジメッ!!!!」

 

「なんですかウソップさん」

 

「なんで俺らの部屋が格納庫になってるんだよ!」

 

「いや、女性が増えましたから。

ロビンとレイジュとくいな。ナミとノジコとベルメールさんとカヤ。この2つの部屋を確保するためだったので」

 

「いや、だからってッ!!!!」

 

 

そう、部屋のスペースというか寝る場所が一気に足りなくなった。誤魔化しでやってきたけどこうなったら女性優先でやらないと。

 

 

「まさか女の子に格納庫やラウンジで寝ろ。なんて言わないよね?」

 

「そ、そうだけど……」

 

「それとも、()()()寝たかった?」

 

「なっ!!!?か、勝手にしろッ!!!!」

 

 

おおぉ!!面白い反応するなー。

ほら、少し離れたところでこっそりと()()()こっちをみて頬を赤くしてるよ。

 

 

「青春だねー」

 

「お兄ちゃんから聞かない言葉ね」

 

「あのー」

 

「なにギン?」

 

「俺の寝床は……」

 

「見張り台よ。文句あるかしら」

 

「……………」

 

 

あんな青春、いいねー



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ローグタウンへ

「ローグタウン?」

「そ。そこがグランドラインに入る前の最後の島」

 

 

次に向かう島。

ナミから話を聞いたルフィはまだまだ着かないのにワクワクし始めていた。

 

 

「いよいよかぁー!!!」

 

「と、いってもさっき言った通りグランドラインに入る最後の島。つまり数多くの海賊がよる島なの」

 

「つまり??」

「つまり。強い海軍がいるわけ」

 

 

そう。数多くの海賊が来ると分かっているならそれを捕まえる海軍もそこにいる。

そしてそこにはハジメも知っている二人がいる。

本編の知識だけではなく実際に会っている二人が。

 

 

「や、やべぇーじゃねえか!!このままグランドラインにいくぞぉー!」

 

「物資が足りないから無理よ。

このままいったらまず食料がつきて餓死ね」

 

「いくぞーローグタウンッ!!!!」

「オオオッ!!!」

 

 

コロコロ変わるウソップ。

しかし食料が無くなるのは死活問題。

さらにその死活問題を作っているルフィは自覚なし。

 

 

「それに…くいなやカヤ、ノジコやベルメールさん、そしてレイジュさんに着せる可愛いお洋服を探さないとッ!!」

 

「それが目的じゃねえか」

 

「なによ悪い??可愛いは正義なの。

海軍よりも正義なの。正義を掲げてなにが悪いの?」

 

「いや、可愛いはいいけどよ…

海賊が"正義"って………」

 

 

ウソップの言いたいことは分かるが、何故か可愛いもの好きになったナミに何を言っても無駄である。隣にいるロビン(ストーカー)並みに無駄である。

すると恐る恐るとベルメールがナミに

 

 

「あ、あのね、ナミ…普通の服で……」

「いや。もっとベルメールさんには可愛くなってもらわないとお兄さんに飽きられたらイヤでしょう?」

 

「そ、それは……」

「というか、私が着させたいの。

こんなに沢山の着せ替えにん……着せ替えしがいのある人達に囲まれたらやらないと失礼だわ!」

 

「誰に対しての失礼なの?」

「それにいま、着せ替え人形って言おうとしたわよね?」

 

 

ロビンとレイジュのお姉さま二人から追求され「あ、あははは…」と笑い誤魔化すしか出来なかったナミ。

そんなナミに気になったことを聞くレイジュ。

 

 

 

「でもどうしてロビンはしないの??」

「そんなことして嫌われたくないから」

 

「………そ、そう……」

 

 

真顔で、間をおかずに返事をしたナミに若干引き気味のレイジュだった。

 

 

「それじゃ強い海軍に船を襲われないように留守番する人を決めたいと思います」

 

 

そういってハジメの手には細長い木の棒が複数握られていた。

 

 

「1人1人取って先端に赤い印があった人が留守番ね」

「えええええぇぇぇッ!!!!」

 

「じゃ、ルフィは留守番よ」

「うし!!やるぞお前らッ!!!!」

 

 

文句を言ったと思ったらロビンの一言で変えるルフィ。

なんか、このやり取りウソップと似てるなー

 

 

「うん?なんか棒の数少なくねぇか?」

 

「ナミとノジコとベルメールさんは除外。

カヤはどうしようかと思ったけど今回まで除外」

 

「よく分かってるじゃねえかハジメ。

レディに留守番なんて……ありえねぇ!!」

 

「ということでくいなとレイジュとロビンが赤を引いてもサンジが変わりますので」

 

 

なっ!!?と驚いたが自分が言ったことを取り消すわけにもいかなくて「お、おう……」とOKをもらった。

 

と、いうことで四人以外の者が棒を掴み一気に引き抜く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「処刑台かぁ~行ってみるか!!」

 

 

ローグタウン。

海賊王が処刑され、大海賊時代が始まった町。

そしてハジメがルフィ達を、いやこの世界を自分が思ういい方向へ変えると決意した場所。

 

そんな町に上陸したルフィはさっそく処刑台へと走りだした。

 

 

「迷子になるなよー!海軍にお世話になるなよー!」

「おおっ!!!」

 

 

元気のいい返事だけどきっと無理だろうなー

特に最後、あの人に追いかけられるだろうなー

 

 

「さて三人にはこれ」

 

 

ルフィを見送りハジメは三人に、ゾロ、サンジ、ウソップに大金を渡した。金額は50万ベリー。

 

 

「こ、こんなにいいのかッ!!」

「約束は守るよ。使えきってもいいし、残すならその分この船の資金にしてもいいし」

 

「皆さんッ!!節約しましょう!!

必要最低限で買い物してください!!!」

 

「カ、カヤ……」

 

「お金はいくらあっても困りません!!

この先のことを考えるなら少しでも多くですね……」

 

 

まだ話が続きそうだったためにウソップが手を引いてカヤと一緒に町へと向かった。

 

 

「じゃ、お金がかからずにいい刀を探さないとね」

「んな刀あるのか……」

 

 

文句をいいながら二人で刀を売っている店へ。

そんな四人を見ていたサンジは

 

 

「クソ長ッ鼻に…クソマリモめええぇぇ……ッ!!!!

どうしてあんなステキなレディと一緒にッッッ!!!!」

 

「目から血が出てるわよサンジ」

 

「うるせぇ!!!なんで俺にだけ連れ添うレディがいないんだああああぁぁ!!!!!」

 

「それじゃ出来るまでは私が連れ添ってあげるわ」

 

 

「クソが、クソが……」と文句をいうサンジに慰めながらレイジュはサンジと一緒に買い出しに向かった。

 

大丈夫、いつかちゃんといい相手がいるからね。

と、もちろんそんなことは言わずに見送ったあと

 

 

「じゃみんな行こうか」

「ええ」

「うん」

「そうね」

「行きましょう」

 

 

と、移動しようとしたところで

 

 

「お前が一番おかしいだろうがッッ!!!!」

 

 

と反論する声が後ろから聞こえてきた。

振り替えるとそこにはロビンの能力で縛られたヘルメッポとコビー。そして赤い棒を引いたギンが残されていた。

 

 

「また文句ですか?」

 

「当たり前だボケええぇぇッ!!!!

ついこの前まで俺が「捕まえる」って言ったんだぞッ!!!!」

 

「それが?」

 

「ならこんな仕打ちをするやつがあるかッ!!!!

海軍捕まえて見張り番にするなんてバカなのかお前はッ!!!!」

 

 

と、言われても。

 

 

「なら一緒にいきます?

大歓迎ですよ。あの()()()()()()()()()の相手してくれるなら僕にとってかなりうれ」

「見張ってますッ!!!!」

 

 

このやろッ!!

会いたくない気持ちは分かるけど少しは僕のためにやってくれても良くないッ!!?

 

 

「まぁ、ただ見張りだと面白くないだろうと思い帰ってくるまでギンと手合わせしてくださいね。

勝利回数が少ないほうには……罰ゲーム」

 

「ぼ、僕もですかッ!!?」

 

「コビーはないけど参加してね。

いい加減強くならないと…ロビンのしごきだから」

 

「頑張りますッ!!!!」

 

 

さてさて、これで少しはヘルメッポもコビーも強くなるかなー。ギンも新しい武器を使ってみたいとウズウズしていたみたいだし。

 

しかし自分で言っておいてなんだけど……

どうして()()()()()なったのかな、スモーカーさんは……

 

 

…………………………

 

 

「ねぇお兄さん。さっき言っていたスモーカーさんって?」

 

「あぁ…気になるよね……」

 

 

両手に花。どころではなく両サイドに二人ずつついてくる完全ハーレム状態。

ちなみに右にロビンとベルメールさん、左にナミとノジコ。

 

ヘルメッポがおかしいッ!!と言っていたのはこれも含まれるのだろうなーと思ったけどこれは途中まで。

 

流石に海軍でもない三人を連れていくわけにもいかないし、ナミは二人の洋服を買うと張り切ってもいたし。

 

 

「そうだねー。昔いきなり喧嘩をふっかけてきた人」

 

「えっ?頭おかしいのその人?」

 

「言葉。言葉がひどいよ」

 

「だってその人も海軍なんでしょう。それでお兄さんに向かっていくなんて……頭のネジ外れすぎ」

 

「なんか…ロビンに似てきたね……」

 

 

懐かれているのは分かっていたけどこんなこというほど懐いていたなんて……

 

 

「でも理由もなく仕掛けてきますか?」

 

「そこなんだよねー

ねぇノジコ、例えば自分の探し物を探していてその影響でその人が探していたものが手に入らなかったならどうする?」

 

「悪気があるわけでもないですけど…文句ぐらいは言いたくなるかも」

 

「そこ。その人はそれが行き過ぎたの。

その人欲しい悪魔の実があったらしくて、その時僕もある悪魔の実を探していて。その影響で手にはいるはずだった悪魔の実が手に入らずに」

 

「喧嘩を、ふっかけてきた」

 

「その通り」

 

「「やっぱり頭、おかしいんじゃないですか?」」

 

 

姉妹揃って言わないの。言いたくなるだろうけど。

 

 

「そのあとちゃんとスモーカーさん目的の悪魔の実を見つけて渡したんだけどねー。どうも僕の性格とかロビンの態度とか気にくわなかったらしくてね。僕がいうのはおかしいけど海軍でも僕を目の敵にするおかしい人、ってなったわけ」

 

「「「うん、おかしい」」」

 

 

ベルメールさんも参加しないの。

 

 

「やっぱり殺していいかしら?」

「止めなさい」

 

 

で、やっぱりロビンが一番怖いよ。

そんなことを話ながら洋服店が建ち並んでいる場所に来たところでベルメールさん達と別れた。

 

別れる際に「あとでファッションショーねッ!!」と意気込んでいたナミと、そのことに苦笑いをする二人。

 

 

で、二人でこの町の海軍基地へ向かうことに。

もちろん何もなく終わるわけがない。

さて、どんなことが二人を待っているのか……



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それぞれの買い物①

「おっ。安いなこれ」

「ウソップさん。これなんかどうです?」

 

「ナイスだカヤ!!あとは…」

「向こうのほうにありましたよ。行きましょう」

 

 

仲良くお買い物。

それは周りからしたらなんとも可愛らしいカップル。

そしてそのカップルはあるお店に着いた。

 

 

「いらっしゃ……い……ませ……」

 

「へぇ~いいの揃ってるな」

「でしょう!これなんていいじゃない?」

 

 

なんともカップルらしい会話。

しかしこの店の主人、このカップルの様子をみて言葉を失っていた。

 

 

「に、兄ちゃん、それは……」

 

 

気になった主人はウソップが抱えているものを指差した。

それはあまりにカップルとして持つには相応しくないもの。

 

 

「千枚通しか?それとも万力か?」

「きっとその"やっとこ"じゃないですか?」

 

(全部なんだけどなッ!!)

 

 

閻魔が罪人の舌を抜く道具を"やっとこ"ということを初めて知った主人。

一体何をするつもりなんだと思いながらとにかく接客をすることに。

 

 

「え、えぇーと、な、何にしますか?」

「そうだなー。ノコギリあるか?」

 

「ええ。切れ味抜群の」

「いや、()()()()()()()()()()

 

「…………はっ??」

 

 

ノコギリは切れやすいのがいいに決まっている。

なのにこの客は、切れにくい、と言った。

ハッキリと、そう言ったのだ。

 

 

「でもウソップさん。それで大丈夫なの?」

(お、おう。お嬢さんのほうがまと…)

 

「途中で引っ掛かると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なるほどな。ならナイフのほうがいいか。

おっちゃん!!ナイフをあるだけくれッ!!」

 

「ちょっとウソップさん。お金が…」

 

「大丈夫だカヤ。ちょくちょく隣の島にいって稼いできたお金があるからよ」

 

 

もう主人はなにも考えずに言われた通りにあるだけのナイフを売ったのだった。

「きっとあれは"拷問"に使うんだ。関わるな」と心に何度も言い聞かせて接客をした。

 

そして、お店を一週間お休みしたのだった。

 

 

「でもこの工具、マジックに使えるの?」

 

「こういうのは人に使わないと分かっているからこそ、そういう風に使っていると思わせればマジックにかかりやすいからな~」

 

 

それを、主人に教えてあげてほしかった…

 

「ねぇ、ウソップさん…」

「うん、なんだ?」

 

「私も…ウソップさんみたいに強くなりたい」

「俺は別に強くは」

 

「ううん。強いわ。ウソップさんは強い」

「そ、そう言われると、何か、照れるな……」

 

 

カヤを喜ばせるためでもあったウソップのマジックは十分に戦力となっている。それに加えて狙撃が含まれている。カヤにとっては身近な人のそんな一面を見たら自分にはと考えてしまった。

 

 

「ハジメさんとロビンさんからは"交渉術"を教えてもらったけど…」

 

「いや、あれは交渉じゃなく"脅し"だからな」

 

「きっとこの先私1人でも戦わないといけない時がくる。そのためにも私もッ!!」

 

「無理する必要はねえだぞカヤ。

まだ体も()()()()()()()だからよ」

 

 

Dr.くれはから教えてもらった調合した薬を飲み続けて少しずつ体調が良くなってきたカヤ。だからこそいま何かをしたいと思ったのだ。体調のために出来なかったことをやりたいと強く思い始めてきたのだ。

 

 

「だから少しずつでもいいの。なにかしたいの」

「………カヤ……」

 

「………お願い、ウソップさん………」

「………まだ先だと思ってたんだけどな……」

 

 

するとウソップはバックの中からトランプを取り出した。

 

 

「今日から練習だ。これを投げて最終的には()()()()()()()()ところまでやるからな」

 

「ウソップさん……」

 

「言っておくけど俺はまだカヤが前線に出るのは反対だからな!!でもこれなら中距離からだし移動手段も考えているから……」

 

「ありがとうウソップさんッ!!!!」

 

 

思わずウソップに抱きつくカヤ。

それにはビックリしてしまうウソップはもう顔を真っ赤にしててんやわんやとなっている。

 

その姿に町の人達は「若いな~」と微笑んでいたという。

 

 

 

…………………………

 

 

「こいつはいいな~」

「兄ちゃんお目が高いなー!!」

 

 

魚を目利きするサンジに素直にお店の主人は褒めた。

主人としては常に良いものを提供することを求めている。しかしどうしても全てが"同じ"良いものを提供できるわけではない。

 

そしてそれは素人はもちろん、何十年目利きした人さえも分からないことだってある。

 

この主人もそれなりに自信はあるほうだが、目の前の客はその物を目利きする時間が異常に速い。

触ったりしなくても見ただけですぐにそれが良いものかを見分ける力。

 

 

「まさかそれを分かるなんてな…

兄ちゃんは名の知れた人かい?」

 

「船長がそうなるかな。それを支えるコックだからな」

 

「なるほど。どうりでいい目利きしてるわけだ」

 

 

この世界の"サンジ"に対してやったこと。

料理に対しての更なる向上心のためにあのナイフを上げたことだけ。

しかしサンジにはそれだけで十分なくらい。

 

まぁゼフさんには色々書いたような、書いてないような気がするけど……

 

 

「オニトラフグはないのかしら?」

 

「んなもんあるわけないだろう!!!

触るどころか近づくだけでも毒にやられる超危険魚なんだぞッ!!!!」

 

「まさにその通りだが…ここら辺なら"カームベルト"の近辺にいるって話だな……」

 

「あら。ならあとでノジコに頼もうかしら」

 

 

あんなものに何の用があるのか?と疑問に感じた主人だが「とにかくこれとこれと…」とサンジの注文により考えをやめた。

 

沢山の食材を手にしたサンジは直ぐ様近くを通った美女へ向かっていったために結局あんな猛毒物をどうするのか聞けなかったが

 

 

「ねえ。ここら辺に"薬"を売っているお店はないかしら」

 

「あるが、なんだ?怪我でもしたのか?」

 

「いいえ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

どうして食事の物足りないで"薬"が関係するのか?

結局あの二人組はなんだったのか………

 

で、その二人はというと

 

 

「この町はいいな~!美女・美少女が多いくて~ッ!」

 

「お父様もお母様もあの子達…は別として。あの人達は"そんな性格"ではないのに…やっぱり遺伝子操作に失敗したせいかしら?」

 

「だとしたらそれだけは感謝してやってもいいかもな」

 

「まだ"感謝"出来ること、あるわよね?」

 

「……知るか……」

 

 

そっぽ向くサンジ。隣のレイジュはクスッと笑った。

こうして並んで歩けばちゃんとした兄妹。

あの家柄さえなければきっと上の兄達とも……

 

 

「……あいつら…どうしてる?」

「気になるの?」

 

「なわけあるか。くたばったかと思っただけだ」

「元気よ。相変わらずサンジを弟だと思ってないけど」

 

「そっちのほうがいい。俺も思ってねぇしなッ」

「でも、私とお母様は"家族"なんでしょう?」

 

「ッッ!!?」

 

 

 

ニヤリと笑うレイジュにサンジはギクッと反応を。

図星をつかれたように、的を得るような言葉に

 

 

「……あ、あぁ~もう~ッ!!!!

さっさと次に行くぞッ!!ルフィのバカのために買い貯めないといけないんだッ!!!!」

 

 

話を変えて急ぎ足になったサンジ。

その後ろ姿を見てクスクスと笑いながらレイジュはその後ろをついていく。

 

 

 

…………………………

 

 

「くっ! コビーッ!!!!」

「はいッ!!!!」

 

 

ククリ刀で攻撃を弾き、その隙にコビーが攻撃をする。

しかし相手はあのドン・クリークの右腕だったギン。

そしてついこの前ハジメにより戦闘力がグンッと上がったためヘルメッポ・コビーのタッグでもなかなか攻められずにいる。

 

そしてコビーがギンに迫るが、ギンの武器"仕込みトンファー"がそれを遮る。

 

 

「簡単に、近づけさせるかッ!!」

 

 

トンファーの短い方の先端が()()()()()()()()()()。狙いを定めて放たれた弾丸はコビーの足元に着弾。

 

咄嗟に飛び退いたがすぐに何発も撃ってくるために近づけないコビー。

 

するとその隙にと反対側からヘルメッポが攻めてくる。が、今度はトンファーの長い方の先端が()()()

 

外れた部分、接続していた部分にはチェーンで繋がれており、さらに先端部分から根元にかけて何回も外れていく。それはまるでしなる鞭のように、しかし鞭なんて生易しいものではなく、当たれば致命傷になりかけない代物。

 

それがヘルメッポにむけて飛んでいく。

向かってくる先端部分はトンファーの中でもとても高く簡単に岩を砕く物。

 

 

「ッッ!!!!」

 

 

2本とククリ刀で弾くヘルメッポ。

しかし力いっぱい入れてやっと軌道を反らしてだけ。

そしてヘルメッポはその攻撃でククリ刀を弾かれる。

 

しかし冷静なヘルメッポはそのままギンへ。

コビーをある程度遠ざけたと判断したギンは攻撃をヘルメッポだけに集中することに。

 

接近戦において必要なのはその人の戦闘スタイルによって変わるが、ギンにとってはトンファーによるパワーとさらに回転させることによる更なるパワー。

 

一方ヘルメッポはギンほどのパワーはないが、昔から地獄の修行から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がある。

 

最近になって"再教育"されたためにその2つは

 

 

「オラッ!!!」

「ッッ!!!!」

 

 

いまのギンよりも上手である。

接近戦では強いギンでもいまのヘルメッポは苦戦する相手。

ギンの繰り出された攻撃をそのスピードと身のこなしでかわしたあとにボディ目掛けて拳を。しかしそこはギンもトンファーで防ぐ。

 

そしてその瞬間。ギンが秘策に残しておいたボタンを押し

 

 

「アバッアバッアバッババッッ!!!!」

 

 

ヘルメッポの体に電流が流れた。

それもそれなりの高圧で。

一般人なら下手したら死ぬかもしれない電流を「まぁ大丈夫だろう」と使用してみたら一部の髪が逆立ち目が虚ろになりながら倒れてしまった。

 

 

「………もう少し電圧抑えててもらうか……」

 

 

きっと、そういう問題ではない。

と、次は僕に回ってくるのかなーとビクビク怯えるコビーであった。



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それぞれの買い物②

「ううーん!!いい買い物したわーッ!!!!」

 

 

お店から出てきたナミは両手に一杯の洋服の入った袋を持って出てきた。

そしてその後ろからは……屍のような生気のない表情をするノジコとベルメールが出てきた。

 

 

「ナ、ナミ…も、もういい…でしょう……」

「そ、そうよ……そろそろ…船に戻りましょう……」

 

「ダメよ二人ともッ!!!!

今度はいつゆっくり買い物出来るか分からないんだから!さぁ、次に行くわよッ!!」

 

 

おっー!!!とやる気を出して歩くナミと本当にゾンビのようにフラフラと歩く二人。

 

ここまですでに7店舗を見て回りここでやっと買い物をしたのだが、その間にも全ての店でノジコ&ベルメールのファッションショーが繰り広げられていたのだ。

 

あるときにはゴージャスなもの。

あるときにはエレガントなもの。

あるときにはエロエロなもの。

 

そこのお店の一番良いものを試着されされ着替えさせられ、しまいにはランウェイを歩くように試着室からナミまで五メートルの間を歩かされたりなどさせられた。

 

こんなことをしていたら神経的に疲労する。

 

ちなみにこんなことをやっているとそこのお店で買わなくても「いいなー」と回りのお客さんが興味を示して、どのお店でもナミが訪れたお店はその日これまでの最高額を叩き出したという。

 

 

そんなことをしている3人の行く先になにやら人混みが。

その先のお店に用があったナミはついでにとその人混みの中心の様子を伺うことに。

 

そこには二人の体格のいい男と、刀を持った一人の女の子が向かい合っていた。それも明らかに男二人がいままさに襲うところ。

 

とっさにナミは荷物をその場に落として駆けつけようとしたが、

 

 

「ッ!!!!」

 

 

一瞬にして二人の男を切り捨てた。

ゾロやくいなの姿を何度も見ているナミでもこの人は凄い剣士だと分かった。

 

しかしそこまで。

その女剣士は自分で自分の足を引っかけてその場に転んだのだ。

さらには眼鏡も外れてしまい、かなりの近眼なのだろう。まったく眼鏡を探しきれずにいる。

 

 

「な、なにあの子……」

 

 

いつまでたっても眼鏡を見つけられない女剣士に、はぁーとため息をついてナミは眼鏡を拾いそれを渡した。

 

 

「はい。これ」

「ご、ごめんなさい。

あ、ありがとうございます!」

 

 

いままで背後しか見えなく、眼鏡を探していたときも顔が見えなかったのだが、眼鏡を見つけたとその顔が正面に来たときナミは衝撃を受けた。

 

 

「く、くいなッ!!?」

「えっ。ち、違いますけど…」

 

 

ハッキリと否定され女剣士は眼鏡をかけて「本当にありがとうございました」と一礼して去っていった。

 

残されたナミの元にノジコとベルメールが近づいてきて

 

 

 

「あれ…くいなじゃないの?」

「瓜二つだったわね…」

「あれは、ゾロ君でも間違えるわ……」

 

 

不思議な出来事にあいなんか買い物する気もふせて、ぶらりぶらりと観光することにした3人だった。

 

 

………………………

 

 

「ここか」

 

 

この町の唯一の刀が置いてある武器屋。

店内に入ってみるとそこには沢山の武器があり、この中でも「刀」が多く置いてあった。

 

 

「いっしゃいませ~」

 

「すまねぇ。ここに50万ベリーある。

いいやつを2本、いや3本見積もってくれねぇか」

 

 

お店の奥から現れた店主は正面の男を確認してそれその金額以上は持っていないだろうと判断して

 

 

「あのな。買えてもせいぜい一本だよお客さん」

「やっぱり3刀流にするの?」

 

「あいつに勝つにはこれしかねぇからな」

 

(チィッ。女連れかよ。……って)

 

 

それも男の影で見えないが声からして女がいる。

こんな武器屋に女連れとは、と、さっさと追い返そうと考えていた店主だったが男の方が移動し後ろの女が見えた。すると店主は

 

 

 

「なんだお前さんか。今日は男連れてくるなんてな。

刀しか興味がないと思っていたが……ったく…」

 

「えっ?」

 

 

くいなの顔を見るやいなや、お店の奥へ向かう店主。

何だったんだと思いながら二人はお店の刀を見始める。

 

 

「誰と勘違いしたのかな?」

「知るか。お前のそっくりさんでもいるんじゃねえか?」

 

「えぇー。それで刀に興味あるって…それもう私だよ」

「いや、お前ではないだろう……」

 

 

と、バカらしい会話をしながら見回るゾロとくいなの元に店主が戻ってきて

 

 

「ほらよッ!!この”時雨(しぐれ)”を取りに来たんだろ!」

 

「わっ!わああぁ!!」

 

 

突然投げられた刀に上手く掴めず慌てるくいな。

すぐにゾロがその刀を手に取り落とさずにすんだ。

 

 

「…ったく。

ひょろ剣士のくせに立派な”業物”を持ちやがって…

それに男作ってここに来るとはいい度胸してんなッ!!!!」

 

「えっ。えっ?な、なんのことですか?」

 

 

何か分からないが物凄く怒られている。

それもかなり理不尽なことを一方的に。

 

困惑しているくいなの横では投げられた刀をじっーと見ているゾロは

 

 

「なぁ。こいつと同じぐらいの刀はねぇのか?」

 

「業物だぁ?あのな、そんな刀は……」

 

 

ねぇよ。と言おうとした店主。

しかしその前に店主の目に写ったものがあった。

それはくいなが腰から下げている刀。

 

 

「お、お前ッ!!いつからそんな刀を持ってるんだッ!!!!」

 

「えっ。剣道し始めた時からお父さんに貰いましたけど……」

 

「はぁッ!!?そんなもん持っておいて刀のメンテナンスはそいつだけだとッ!!!!てめえふざけてんなッ!!!!」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!!!

さっきから誰かと勘違いを…」

 

「いいか!!今度からそいつも一緒預けねぇとメンテナンスなんて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ!!"和道一文字"でしょう!!?」

 

 

突然現れた女。

くいなの刀を凝視するかのようにしゃがんで間近でジッと見つめる。

 

 

「和道…??」

「一文字…??」

 

「………はぁ?はあッ!!!!

なんで!!お前がッ!!?えっ!ハァッ!!!??」

 

 

一人だけパニックになっている店主。

そんなこと気にせずにしゃがんでいる女は

 

 

「すみません!もっとじっくり見てもいいですか?」

「い、いいですけど……」

 

 

腰から刀を外してその女に渡すくいな。

渡されて興奮する女は立ち上がり鞘から刀を抜く。

そしてその刀の向こうには信じられない光景が

 

 

「なっ!!!??」

「えぇッ!!!??」

 

「きれいな直刃。これは”大業物21工”の1本の名刀ですよっ!!これ買おうとすれば1千万ベリー以上はくだらない代物です!!!こんないい刀初め…て見……た……」

 

 

興奮して周りが見えなかった女。

しかし最後の感想を直接言いたかったと正面の持ち主にと視線を向けると

 

 

「……………ここに鏡、ありました?」

「あるわけないだろうボケエエエェェェッッ!!!!」

 

 

誰もが驚いている中で一人だけボケる女。

しかし自分が口を動かしているのに向こうが動かない。

むしろ驚いている表情をしているではないか。

おかしいなーと思い正面から一歩横へと移動すると

 

 

「ッ!!!??鏡じゃないッ!!!!」

「今頃かッ!!!!」

 

 

店主のキレキレのツッコミもありやっと鏡ではないことに気づいた女。改めて正面に立つと本当に鏡がそこにあるのかと思うぐらいそっくり。

 

違うのは服装と、眼鏡をかけているかどうか。

服装も眼鏡も、すべて条件が一緒なら見分けがつくかどうか……

 

 

「……本当に、そっくりですね」

「ですね……」

 

「……………」

「……………」

 

「なに固まってるんだお前ら」

 

 

ゾロの言葉にハッ気がつく二人。

あまりにも似すぎてお互いに見つめてしまっていた。

 

 

「は、初めまして!"くいな"といいます!」

「私は"たしぎ"です」

 

 

自己紹介がすむとそこは女の子同士なのか、女剣士同士なのか、なんかスムーズに会話が始まり盛り上がる二人。

 

 

「そうなんですッ!!

"女"っていうことだけで剣士に向いてないなんて…

私はそんな人を見返したいと常々思ってましたッ!!」

 

「そうですよねッ!!

確かに男の人より筋肉は付きにくいですけど、その分しなやかさだったり、立ち振舞いだったり、男の人が出来ないことだってあるんです!!!」

 

「分かります!

"剣士"は"男"だって決めつけないでほしいです!!」

 

「はい!!"女"だって立派な"剣士"ですよね!!!」

 

 

ガシッ!と握手を交わす二人。

なにやってるんだかと呆れたゾロはさっきの続きを店主に問いかける。

 

 

「で。あるのか、ないのか?」

「あっ。あぁ…あることにはあるが一本しか買えねぇぞ」

 

 

ゾロの問いかけに正気に戻った店主。

店の奥へ向かい戻ってきたときには立派な刀が一本。

 

 

「良業物で名は"夕紅(ゆうべに)"

持ち主の技量によって刀身の"赤み"が変わる品物だ。

しかしこれまで持ち主になったどんなやつでも()()()()しか分からなかった為につけられた名だ」

 

 

そういいながら鞘から刀を抜く店主。

するとその刀身は名の通り"夕焼け色"までしか赤みがない。

 

 

「でもよ。持ち主の技量によって変わるだ。

つまり刀身の"赤み"が変われば名も変わる。

 

夕焼け色が"夕紅(ゆうべに)"

紅葉のような赤みが"唐紅(からくれない)"

そして最も深みのある"深紅(しんく)"

 

この深紅まで、一番最高だとコイツに思わせれたら、名の知れた剣士になれるだろうよ」

 

 

そういいながら店主は鞘に納めてからゾロにその刀を渡した。持っていた"時雨"をくいなに渡し、受け取ったそれをジッと見つめたあとゾロはゆっくりと鞘からその刀を抜きた。

 

刃先を天井に向けて見ていると、ゆっくりと下のほうから上に向かって色が"変わっていく"。

 

つまり夕紅よりも技量を持つということ。

そしてさらにその色は深みを増していき

 

 

「ま、マジかよ……」

「キレイ……」

「素晴らしい…です……」

 

 

三者三様の言葉が響く。

ゾロが変えた色は"深紅"

つまり一番強いと刀に認められた瞬間だった。

 

 

「気に入った。コイツを貰う」

「お、おう……」

 

「いくらだ?」

「ちょっ、ちょっとまて!!!

そいつはついこの前仕入れたばっかりなんだ!!!」

 

「はぁ!?じゃ売られねぇのかよ!」

 

「んなこといってないだろうが!

値段をつけてねえんだ!!少し待ってろ!」

 

 

そんなことをいってゾロから"深紅"を奪い取る。

するとみるみるうちに"夕紅"に変わっていった。

聞こえるように舌打ちをしてカウンターへ引っ込んでいった店主。

 

 

(くそがっ!!まさかこんなやつにッ!!

しかし…あいつは間違いなくコイツが欲しいはずだ!

売り渡すのは勿体無いがその分踏んだ食ってやるッ!!!!)

 

 

完全に足元をみて値段を引き上げてやろうと考える店主。

しかしそんなことを吹き飛ばすワードが耳に入ってきた。

 

 

「"三代鬼徹"ッッ!!!!

これ、これにすべきです!!!」

 

 

視線を向けた先にはあのヘッポコ剣士が持っている一本の刀。しかしそれは"5万ベリー"しかない刀を一つの樽に入れていた刀。普通はそこで終わりなのだが

 

 

「これは本当にすごいですよっ!!

れっきとした”業物”で普通は100万はする品で、この前代の”二代鬼轍”は”大業物”で、”初代鬼轍”は”最上大物業”に位列しています!!!」

 

「へぇ……」

「そんなに凄いんだ……」

 

「そうなんですよ!!!

でもどうしてこの樽に?本当に5万ベリーなんですか?」

 

 

気になったたしぎは店主に問いかける。

するとまるで図星をつかれたように心を乱す店主は

 

 

「そ、そいつは売らねぇ!!!別のやつを選べッ!!!!」

「ええッ!!そんな!!!」

 

「そんなもくそもあるか!!俺がこの店の店主だ!!俺の勝手だろうがッ!!!!」

 

 

せっかく見つけた名刀だと喜んでいたたしぎだったがまさかここに来て売らないと言われるとは思わなかったようで……なんとか食い下がろうとするたしぎにゾロはその刀を手に取り

 

 

「………妖刀か…」

「ッ!!?…分かるのか?」

 

「なんとなくな」

 

 

手に取った瞬間感じ取った力のようなもの。

それは明らかに今まで感じたことのないものだった。

そしてそれは当たっていたようで……

 

 

「お前の言う通り、”初代鬼轍”を初め、鬼轍一派の刀は、優れているが悉く”妖刀”だったのだ!!!名だたる剣豪達がその”鬼轍”を手にしたことで悲運の死を遂げた。今となってはこの世に”鬼轍”を使ってる剣士は一人もいねェ。知らずに使った奴でもこの世からいなくなるからだ。」

 

 

そんなことを言われたしぎもくいなも生唾を飲む。

店主も顔色を悪くしながらこう告げた。

 

 

「かといって捨てるわけにはいかなくてよ…

そんなことしたら呪われそうで…売ってしまっても後で不幸があったと聞いたときには……後味が悪くなりそうでよ……」

 

 

つまりは処分も出来ずに売れずにいるこの刀をこの5万ベリーの樽に入れておいて"売れ残っている"ということにしたかったのだ。

 

しかしここでたしぎが余計なことをしてしまい

 

 

「分かったかこのとろま剣士ッ!!

なにから何でも鑑定しやがってッ!!!!」

 

「ご、ごめんなさいッ!!!!

貴方にも謝ります!期待させてこんな刀を…」

 

「いや、気に入った!これをもらう!」

 

 

と刀を高くつきあげたが、店主は「お前が死ぬ!!」と言って売るのを断った。

 

それはそうだろう。

さっきいったように様々な剣士が悲運な死を遂げているのだ。それがこの店から出たなんて、それより間接的にでも殺してしまったと思ってしまう。

 

しかしゾロはニヤリ笑いながら

 

 

 

「じゃあこうしよう。

おれの”運”と、”鬼轍の呪い”

どっちが強ェか試してみようか……」

 

 

「おれが負けたら、しょせんおれはそれまでの男だ」

 

 

 

と言うと、刀を振り上げ、その落下軌道に腕を出しゾロは涼しい顔で目を瞑った。

 

 

「バカ野郎ッ!!!!切れ味は本物だぞッッ!!!!」

「ッッ!!!!」

「ッッ!!!!」

 

 

店主の言葉は届かず刀はそのままゾロの腕へと。

くいなもたしぎも言葉に出来ない悲鳴を上げ、そして

 

 

 

ストンッ

 

 

 

刀はスルリとゾロの腕を()()()()床へと落ち刺さった。

 

 

「もらってく」

 

 

あっという間の出来事に腰を抜かす店主。

あんなバカげたことをするゾロにもそうだが、それでも腕が切り落ちていないのだ。悲運を運ぶあの"鬼徹"がなにもなくいま床に突き刺さっている。

 

たしぎは腰を抜かしてしまい、くいなはすぐさまゾロの元へ駆け寄り

 

 

「バカああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

と、思いっきり和道一文字で頭を殴ってやった。

もちろんそんなことをすれば間違いなく痛いため踞るゾロに追い討ちをかけるように殴りまくる

 

 

「バカッ!!バカッ!!!!なんでそんなことするのよ!!!

もう少しで腕が切れ落ちるところだったのよッ!!!!」

 

「や、止めろ!くいなッ!!!!」

 

「最強の剣士なる夢はどうするのよッ!!!!

私1人でやれっていうの!!!本当にバカなのッ!!!!」

 

「バカバカうるせえなッ!!!!」

 

 

やっと和道一文字を握って攻撃を止めたゾロ。

仕返ししてやろうとかとくいなを見ると目からは溢れる涙が。それを見てしまったゾロは「いっ!?」と固まり

 

 

「……もっと、自分を…大事にしなさい…よ……」

「………わ、悪かった………」

 

 

素直に謝るしかなかった。

それだけのことをやらかしたとやっとここで分かった。ようだ。

 

未だに泣き止まず自分の胸の中で泣いているくいな。

ずっとこのままだとなんか耐えきれないと判断したゾロは

 

 

「あぁーもうー!!泣き止めくいな!!

おい!お前!!あと一本決めてくれッ!!」

 

「へぇ!?いや、ちょっと待って下さい!!

こ、腰が抜けてしまって……」

 

「はぁ!?なにしてんだよ…ったく……」

 

「お、おい!!!ちょっ、ちょっと待ってろッ!!」

 

 

すると店主が血相を変えて再び店の奥へ。

しばらくすると店主が一本の刀を持って現れた。

 

 

「造りは黒漆(くろうるし)太刀(たち)(こしらえ)、刃は乱刃(みだれば)小丁字(こちょうじ)

”良業物・雪走(ゆばしり)”!!

斬れ味はおれが保証する!!金はいい!!もらってやってくれ!!!

もちろん”鬼轍”も"深紅"の代金もいらねェ。

久しぶりにいい剣士の目を見た。刀は持ち主を選ぶという。

 

お前さんの幸運を祈る!!!」

 

 

「なら、もらってく」

 

 

新しい刀、深紅・三代鬼徹・雪走を腰に差し、くいなの頭を優しくポンっと叩いて「いくぞ」と先に店を出た。

それによりやっと平常心にもどったくいなは改めて店主の「いっぽんマツ」にお礼を言い残し、「また会えたらいいね」と自分そっくりのたしぎに挨拶をすましてゾロを追いかけていった。



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それぞれの買い物③

「大佐!!スモーカー大佐!!大変ですッ!!!」

 

 

海軍支部内をそんな声が響く。

そしてそのスモーカー大佐はいま石を上にと重ねながら慎重に次の石を積もうとしていた。

 

ただの普通の石。

それを積み重ねるということは石通しの接地面や重心を見極めながらゆっくりと積んでいく、かなりの集中力がいることをしていたのだ。

 

しかしこのスモーカーの名を叫ぶ声はその本人の部屋の前まできて

 

 

「海賊が死刑台の広場で騒ぎをッ!!!!」

 

 

バンッと思いっきり扉を開けた海兵。

その瞬間積み重ねていた石は倒壊してしまった。

それは見た海兵は一気に顔色が悪くなり

 

 

「あ……さ、騒ぎを………!!」

 

 

一睨みするかと思いきや

 

 

「……ぷはっ!!

こういうのはど~もダメだ。気が張っちまってよ。

俺には俺のペースってもんがある。そうだろう?」

 

 

ジャケットを着ながらそんなことをいうスモーカーにすぐさま海兵が謝りを述べる。

 

 

「はっ!

どうも……申し訳……」

「で?なにがあったって?」

 

「え…えーとですね……」

「海賊が死刑台の広場でバカやってるんだったな。思い出した」

 

 

すぐさまその現場に向かおうと足を進めるスモーカー。

しかしそこでさらに海兵から

 

 

「あとですね。スモーカー大佐にお会いしたいという方が……」

 

「あとにしてもらえ。いまはその海賊を捕まえる」

 

「しかしですね……」

 

「文句なら後でいくらでも聞いてやるといってやれ」

 

 

あくまでも死刑台の広場にいる海賊を捕まえるというスモーカー。しかし部屋から一歩出てみると

 

 

「じゃ文句をどうぞ」

 

「ハジメエエエエエエエエエエエエエエエエエェェェッッッ!!!!」

 

 

海軍支部がスモーカーの声で倒壊するんじゃないかと思うぐらいの声量で叫ぶ。そして直ぐ様ハジメの胸ぐらを掴んで

 

 

「テメェ!!よく俺の前にそのツラを見せにきたなッ!!!!」

 

「近く寄ったのでついでにと」

 

「いつまで遊んでやがるッ!!!!

()()()()()()はテメェの仕事だろうがッ!!!!」

 

「もう。本当に正論しか言わないんですね、相変わらず」

 

 

一体何が起きたのかとワラワラと海兵が集まり出す。

このままだと余計なことを聞かれるとスモーカーは判断して

 

 

「さっさと死刑台の広場に行ってこいッ!!俺はコイツと話があるッ!!!!」

 

「「「「「は、はいッ!!!!」」」」」

 

 

スモーカーの一声で一斉に死刑台の広場へ向かう海兵。

そして残されたのはスモーカーとハジメと

 

 

「いい加減、お兄ちゃんからその手を離さないと……()()()()

 

「…ニコルッ!! やっぱり生きてやがったか……」

 

 

こんなにも真面目な海兵なのにどうしてもニコル=ニコ・ロビンにはならないようだ。確かに今は"ニコル"になってもらっているけど髪型ぐらいしか変えてないよ?なんでそれだけでロビンにならないのか……不思議である。

 

 

「とにかく部屋に入れ」

「入ってください、でしょ」

 

「ッ!!いちいちムカつく奴だッ!!」

 

 

完全にスモーカーとロビンは犬猿の仲である。

端から見ればスモーカーが一方的に見えるが「存在が嫌い。暑苦しいから」とロビンも毛嫌いしていた。

 

 

「お客で貴方の上司よ。お茶を出しなさい」

「客でも上司でもねぇ!!勝手にしろッ!!!!」

 

「直属ではないにしても上司なのに何言ってるの?

相変わらず話が通じないわね」

 

「テメェだけには言われなくねえぇッ!!!!」

 

 

こうしているとよく自分が普通じゃないと言われるが、絶対にこの二人だと思うのは僕の気のせい?

 

 

「ったく……で、何しに来やがった?」

「嫌ってますね相変わらず。僕もですけど」

 

「はっ。ならさっさと用件をいえ。

こっちはテメェらに割く時間も勿体ねぇんだ」

 

「はいはい」

 

 

ピリピリしてるなー。

心なしか加えているタバコが短くなってる。

 

 

「えぇーこの度、ニコルと婚約することになりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知るかああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!帰れエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェッッ!!!!」

 

 

テーブルを叩き割って能力を使って追い出そうとするスモーカー。その能力は"モクモクの実"による煙。

その力は自身の体を自由に煙に変えて相手を攻撃・捕縛する便利な能力。

 

しかし、相手が悪い。

 

 

「落ち着いてください。

短気なのはスモーカーさんの悪いところですよ」

 

 

向かってくる煙を片手で止めるハジメ。

もちろんちゃんと武装色の覇気を使っている。

トメトメの力の方が早いけどそれだと能力者だとバレるので。

 

もちろんロビンも同じように止めている。

 

 

「貴方ごときが私達に勝てるとでも?

本当に成長しないわね。死んだほうがいいじゃないかしら?」

 

「あぁっ?いつかテメェのその自慢気な顔を変えてやるからなッ!!!!」

 

「言ってること、悪人ですよスモーカーさん……」

 

 

 

どうしてそう喧嘩腰になるのかぁー

 

 

「ジャブが終わったところで…」

「まだあるのか…いい加減……」

 

()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出ていえエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェッッッ!!!!」

 

 

と、強引に外に追い出された。

もう、本当に短気なんだから。

 

あぁ言わないとこの街でルフィ達と出会ったときに言い訳がとっさに出るか分からないからね。先手打たないと。あそこまでいっておけば無闇に上層部に問い詰めることはしないだろうし。するにしても直接僕にくるだろうし。

 

 

だけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

勝手に見つからないと勘違いして僕のせいにして、それからずっと逆恨みのように接してきたスモーカーさんをここまで付き合って上げているのに……

 

 

「……潰していいかしら、()()()()()()

「止めなさい。あれは病気だと諦めよう」

 

 

荒れているのだろう。

一向に支部から破壊音が鳴り響く。どんだけ怒っているのか?

 

するとこちらに向かって走ってくる一人の剣士。

 

 

「は、ハジメさんッ!!?それにニコルさんもッ!!?」

 

「おおっ、たしぎ!!」

「久しぶりね」

 

 

向かってくるのはいいけどあと少しというところで、何もないのに何故か転けたたしぎ。

 

……この子のドジっ子も相変わらずか……

 

 

「何してるの?相変わらずだね……」

 

「痛てて……」

 

「本当に…手間のかかる子…」

 

 

そう言いながらロビンはたしぎを起き上がらせる。

そういえばロビンが海軍で初めて女の子と仲良くなったのたしぎだったなー

 

他の女海兵はどうも一癖二癖あるしなー

 

 

 

「ありがとう、ございます……」

「まぁ、これぐらいで感謝されるならいいね」

「そうね」

 

「それはどういう……って、なんですかこれッ!!?」

 

 

やっと気づいたのか。

今では海軍支部はスモーカーの煙により火事が起きているのかと思うぐらいモクモクになっている。もちろん火はついてませんよ。

 

 

「あとは」

「よろしく」

 

「スモーカーさんなんですかこれッ!!?

ちょっ、ちょっとお二人!!ちゃんと説明をッ!!!!」

 

「あのボケ共おおおおおおおぉぉぉぉッッ!!!!」

 

「落ち着いてくださいッ!!!!

何をしたらこんなに怒らせ……って、ハジメさん!!?ニコルさんッッ!!!!??」

 

 

一瞬の隙を狙って脱出しました。

あんな相手(スモーカー)をしたら心身が疲れる……

 

 

…………………………

 

 

「もうー何やってるんですかスモーカーさん」

「…うるせぇ……」

 

 

一通り暴れまくったスモーカーはやっと冷静さを取り戻したがもう部屋はめちゃくちゃになっていた。

あのドジっ子たしぎがマシに思えるほどいまのスモーカーは残念になっている。

 

 

「昔からですけどどうしてあんなにハジメさんやニコルさんのことになると感情がコントロール出来ないんですか?」

 

「……自分が撒いた種とはいえ、あの野郎…「感謝してくださいね。これ探すの大変だったんですよ?全ての海から情報を集めて八咫烏の皆さんにも協力してもらって。ですから大切に使ってくださいよ」と恩着せがましく言いやがって……」

 

「いや、感謝しましょうよ。そこは……」

 

 

まさに正論。本当にこういう時はたしぎがマシに見える。

 

 

「それにあいつは「大体モクモクの実が欲しかったのも自分が極度のヘビースモーカーを隠すためですよね?いや、隠しきれませんよ。大体煙草を大量に吸っている時点でアウトです。煙草が悪いとは言ってませんよ。それ自体は精神を安定させるために一部の人には効果的ですから。ですけど貴方みたいに「吸いたいッ!!」っていう人は別ですよ。それも悪魔の実を隠れ蓑にしてまで煙草を吸いたいとか……正気の沙汰ではないですね」とか抜かしやがってエエエエエエエエエエエエエエェェェェェェェッッ!!!!」

 

「……………………」

 

 

もう言葉も出なくなったたしぎ。

そこまでハジメの言葉を覚えているなんて、本当は嫌いではなくその反対なのではと思ってしまった。

 

……それはそれで気持ち悪いので絶対に言わない。

と、心に強く決意を固めたたしぎだった。



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処刑台

「「「「「「「「「あっ」」」」」」」」」

 

 

処刑台広場近くで全員と出会った。

ここはやっぱり本編通りなんだなー

 

 

「みんな買い物楽しんだみたいだねー」

 

 

ウソップはマジックに使うための道具が……うん?

 

 

「ウソップ……それ、なんに使うの?」

「マジック」

 

「錆びついたノコギリはマジックには使いません」

 

 

戦力になったのは嬉しいけど、なんかウソップが変な方向に向かっている気がする……

 

そしてその横でカヤは

 

 

「で、カヤは何やってるの?」

「ウソップさんに貸してもらったゴムボールです」

 

「じゃなくてね」

 

「手のスナップを鍛えるのにはいいらしいので。

医学にも筋肉の使い方も詳しく書いてありましたし、今度じっくりと読んでみようかな……」

 

 

………何をする気だこの子。

まぁゴムボールをニギニギしている分は問題ないけど、その人体の筋肉について調べるって……

 

……よし、次にいこう。

 

 

 

「サンジはまた大量に…」

 

「あのバカ船長が食うからな~しかし鍵付き冷蔵庫がなかったのは痛かったぜ……」

 

「腐りかけでも食べさせたら??」

 

「コック(医者)として認めるか(ません)!!!!」

 

 

レイジュの言葉に息ピッタリに答えるサンジとカヤ。

多分、腐りかけでもピンピンしてるだろうなルフィは。

あっ、でもレイジュによるものなら……させないけど。

 

 

「ところで……何持ってるのレイジュは?」

「青酸カリ」

 

「…………何に使うの?」

「もちろん、食べるためよ」

 

「…………………」

 

 

いや、毒を食べれるのは知っていたけど。

食事にするほど好きだったけ?

なんかこの子も本編改変の影響受けてるなー

 

……うん、次。

 

 

「ゾロは()()にしたんだ」

「あぁ。こっちのほうがしっくりくるからな」

 

「へぇー。"三代鬼徹"に"雪走"かぁ。あと一本はちょっと知らないか……」

 

()()()刀マニアかよ…」

 

「お前も、ってことは……あぁ、会ったんだねあの子に」

 

 

まぁ、このイベントは面白くなるだろうなーと思っていた。くいなとたしぎ。本当に瓜二つだもんな。双子以上に双子っぽいもん。

 

 

「知っていたんですかハジメさん」

「それは知ってるよ。似てたでしょう自分に」

 

「もうびっくりしましたよ~」

「あはは。それも同じ剣士だしね」

 

 

どうやら悪い印象はなかったようだ。

まだ向こうがこっち二人を"海賊"と認識していないからだろうけど。

 

 

「で、最後にお三方ですけど……」

「なに、お兄さん?」

 

「……後ろの二人、大丈夫なの?」

 

 

ナミはもう幸せそうな表情をしており、対照的にノジコとベルメールはやつれていた。

 

 

「もう…一段と、酷かったわ……」

「一気に爆発…したみたい……」

「あぁ、御愁傷様です……」

 

 

やっと呪縛から解放されたようなものだからな。

好きな"可愛い"をトコトンやったんだねー

 

 

「……それで、ウチの船長は?」

「ここにいるはずよね?」

「服が痛まないうちに帰りたいのに…」

「またトラブルに巻き込まれてるじゃねえのか?」

「ま、まさか……」

「いや、ルフィだぞ」

「あり得るわね」

「やめろよ。お前らがそんなこというと…」

「本当になにかありそうです……」

 

 

ノジコ、ベルメール、ナミ、ゾロ、くいな、サンジ、レイジュ、ウソップ、カヤとそれぞれが感想を言っている中、ずっと黙っていたロビンが口を開く。

 

 

 

「お兄ちゃん。あのバカ、私が先に殺していいかしら?」

 

「止めなさい。船長なんだからね。あれでも」

 

 

どうやらロビンはすでに気づいているようだ。

他の者たちは何のことか分かってないようだが、それはすぐに分かった。

 

それは処刑台広島のメイン"処刑台"

そこはかつて海賊王が処刑された場所。

そしていま、そこで

 

 

「罪人!モンキー・D・ルフィは"つけあがっちまって俺様を怒らせた罪"により、ハデ死刑を公開執行する!!!!!」

 

「「「「「「「「な、なんであいつが処刑台にッ!!!!??」」」」」」」」

 

 

……本当に、そこまで再現しなくていいんだよ、ルフィ。

 

 

そんなこといってもどうしようもない。

さて、ここからが正念場だ。

本編改変によりどうなるか?まったく分からない。

ルフィの首が飛ぶかと思った瞬間、雷が処刑台に落ちて助かったルフィ。

 

あれが、今回も起きるとは限らない。

色々弄くったけどそれが天気まで影響しない。と思いたいがそんな軽い感じですむとは思えない。

 

………いざとなったら自分がやるしかないか。

 

 

「ナミ、ノジコ、ベルメールさんは先に船に戻っていつでも出航出来るように。レイジュとくいなは三人の護衛」

 

「残りのメンバーはルフィを救出。

何が起きてもすぐに対応できるように僕とロビンはここから指示をだす」

 

「何があってもルフィを奪還してこの島を出るよ。いいね?」

 

『おうッ!!!!』

 

 

すぐに指示された通り行動する皆。

それ見ていたロビンが一言。

 

 

「もう、お兄ちゃんが船長のほうがよくないかしら?」

 

「やめて。それは本当にやめて」

 

 

…………………………

 

 

「この島に、嵐が来るッ!!」

「ほ、本当にッ!!」

 

 

船へと走る中ナミがそんなことを言ってきた。

確かに雲行きも怪しい感じではあるが、嵐が来るなんてまったく思えない天気。

 

 

「で、でも、ここから嵐なんて……」

 

「来るわ。早く出航準備もそうだけどルフィ達が嵐が来るまえに来てもらわないとこの街から抜け出せない」

 

「あなた、航海士ではないのよね。

どうしてそんな事が分かるの?」

 

 

レイジュが言いたいことは分かる。

この海賊団の航海士はノジコ。ナミはあくまでもサポートである。

それなのにまるで自分が航海士のようにいうために対して聞いてきた。

 

 

「………別に、航海術は船を動かすだけじゃないの」

「確かにそうね。でもここは航海士の意見を」

 

「分かってる。でもここで判断を間違えると」

「だからその判断を」

 

「二人ともやめて!!」

 

 

ノジコの声にナミとレイジュは言葉を止めた。

 

 

「こんな非常時に言い合ってる場合じゃない。

レイジュ、私はナミの言葉を信じる。だからレイジュは()()()()()()()()()()()()()()

 

「航海士の貴女がそれでいいなら文句はないわ」

 

「ベルメールさんもくいなさんもいい?」

 

「もとより反対なんてないわよ」

「はい!!二人を信じます!」

 

 

とにかく急いで船に戻らないといけない。

しかしそんなところに厄介なもの達が現れた。

 

 

…………………………

 

 

「ところで、なんであそこにバギーがいるんだよ…」

「あのやたら目立つ赤っ鼻のことか?」

「すげぇー赤いなー」

 

「誰がクリスマスの飾り付けより目立つ赤っ鼻だあぁッッ!!!!」

 

「「「いってねぇよ」」 」

 

 

結構離れた距離から言ったというのにルフィを斬首しようとするバギーの耳に届いた。悪口は遠くからでも聞こえるって本当らしい。

 

 

「ったく、何してるんだうちの船長は…」

「ルフィのことだ。何も考えてねぇさ」

「空から行った方がいいか?」

「そんなことしたらウソップさんが的になりますよ…」

 

 

 

刀を抜くゾロと、タバコに火をつけトントンと足をならすサンジ。空を諦めてパチンコを取り出すウソップと、トランプを何度も切りなおすカヤ。

そんな4人の前にはバギー海賊団のメンバーと知らない戦力が加わっていた。

 

 

「邪魔しないでもらいたいね」

 

「うほぉー!!なんだあの絶世の美女はッ!!!!」

 

 

サンジがここまで興奮するほどの美女。

そしてその美女とは

 

 

「あの男は私の()()()()()()()()()()()。返してもらいにきたのさ」

 

「ルフィテメェ!!!こんな美女の何を奪ったんだッ!!!!」

 

「知らねぇよそんなやつ!!!」

 

「まぁ、分からないのも無理はないかもね。

私は"スベスベの実"を食べたのさ。そしてより完璧な美貌を手にいれた"アルビダ"さぁッ!!」

 

 

と、周りに知れ渡るように言っているアルビダ。

このアルビダは昔コビーと出会った時に雑用として扱っていた女海賊。そのあとルフィにより吹き飛ばされたが、のちにこうして悪魔の実を手にしたようだ。

 

 

"この小説ではアルビダのことは書いてません。

何故かって?あの時はあのアルビダを言葉で表現するのが嫌だったので"

 

 

ということで、姿がガラッと変わったアルビダを見てもルフィは「あんなやつ知らねぇ」としか言えなかった。

それでもアルビダは「まぁ、これから思い出せばいいさ」と特に気にしてないようだ。

 

まぁ、これから処刑されるかもしれない男を気にかけるのも変な話だ。

 

 

「まぁ、うちの船長とどう知り合いか知らねぇが…」

「美しい女性の願いでも…」

「邪魔するってなら……」

「押し通るだけです」

 

 

 

「「「「そこを、どいてもらうッ!!」」」」

 

 

「いいね。あんた達ッ!!出番だよッ!!!!」

 

「はい!!姉さんッ!!!!」

 

 

どういう経緯でバギーと組むことになった知らないが"個"では楽勝な相手でも"集"で来られると骨が折れる。

 

 

それを分かっていても今はあの処刑台に近づいて助けるしかない。

 

 

…………………………

 

 

「あいつらは"金棒のアルビダ"と"道化のバギー"か…」

 

「はっ。アルビダの方は随分と姿が変わりましたが間違いないかと……」

 

 

 

処刑台の広場についた海軍。

しかしいま騒動を起こしている海賊をどうしてか捕まえようとしない。

スモーカーは少し離れたところから広場の様子を確認しており、その隣にいるたしぎはどうして踏み込まないのですか?かと聞いた。

 

 

「海賊のやり合いだ。勝手にやさせておけばいい。

俺達はあの"麦わら"がやられたら踏むこむぞ」

 

「別にいま踏み込んでも問題はないのでは?」

 

「てめぇ…手配書見てねぇな」

 

 

本編ではスモーカーは手配書を見ていなかった。

そして今回も手配書を()()()()()()()()()()()()()()

 

しかしそれを見ることになった要因。

ハジメがスモーカーの元に行ったためだった。

スモーカーがハジメによって大暴れして海軍支部を散らかしたさいに目に留まったのだ。()()()()()()()

 

スモーカーは懐から二枚の手配書をたしぎに渡した。

そこにはいまにも処刑させそうな男が書いてあり

 

 

「『"麦わらのルフィ"5500万ベリー』……『"悪魔のニコ・ロビン"1億5000万ベリー』ッッ!!!!??」

 

 

そう、スモーカーが気にしているのはルフィではない。

もう一枚の手配書にあるニコ・ロビンだった。

 

 

「まさか、こんな海にニコ・ロビンがいたとはな…

そしてどういうわけかいま殺されそうになっている麦わらの一味に入ってやがる」

 

「それじゃまさか…ニコ・ロビンを誘きだすために!!」

 

「あぁ。麦わらを助けに間違えなく現れる。

雑魚はてめぇらが捕まえろ。たしぎ、お前は俺と一緒にニコ・ロビンを捕まえる」

 

「………出来るでしょうか……」

 

「やるんだよ!!

あの女をグランドラインに入れさせねえ!!!!」



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"天"が決めた運命

「おれ死刑って初めて見るよ」

「てめぇが死ぬ本人だよッッ!!!!」

 

「ええええええぇぇぇッ!!?

ふざけるなーーッッ!!!!」

 

「てめぇがフザけんなッッ!!!!」

 

 

 

……どうやら一味の危機だというのに、いまのいままで自分が死ぬと分かっていなかったルフィ。

すると突然真剣な表情に変わったルフィは

 

 

「ごめんなさい。許してください」

「そんなもんで許せるかッ!!!!」

 

「なんだよー。別に遠くに吹き飛ばしただけだろう」

「なに開き直ってるんだてめぇはッ!!!!!」

 

「そんなことでキレてたら師匠の相手は無理だなー」

 

「てめぇの師匠なんか知るかああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!!!!」

 

 

 

いちいちルフィの相手をする必要もないのに律儀であるバギー。

しかしバギーははぁはぁと息を整えながら

 

 

「…まぁいい。俺もその"師匠"ってやつに用があるからな。

おい、麦わら。どうしても助けて欲しいなら条件がある」

 

「条件?」

 

 

 

バギーがルフィを未だに処刑しない理由。

あの時、ルフィを追い詰め捕らえていたナミ達を殺そうとしたあの時。

 

たった一人がその場の戦局を一気に変えてしまいあっという間にバギーは海の彼方へ吹き飛ばされた。そう、その時現れた者とは

 

 

「その師匠、"悪魔のニコル"をここに連れてこい」

 

「ッ!!?」

 

 

ルフィにも逆恨みがあるが最も恨みがあるのがニコルだった。そしてバギーはあの僅かなルフィとニコルとの会話で師弟関係にあることに気づいた。

 

というか思いっきり"師匠"といえば分かるけど。

 

とにかくルフィよりニコルのほうが恨みがあるらしい。

しかしバギーは知らない。ニコルが()()()()()()

 

それについては色んな言葉が出てくるので割愛させてもらいます。

 

 

「バ、バギー…お前……」

「どうした麦わら。ここにきてビビったか?

ギャハハハハハハッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前そんなに……"死にたかったのかッ!!!??"

「だから死ぬのはてめぇだあああッ!!!!」

 

 

この時、バギーはもうなんの猶予もなく首を落としてやろうと結構ガチで思ったらしい。

 

 

「いや、だってよ。"師匠"だぞ。

逆らったら世界だって壊せる"師匠"だぞ」

 

「おちょくっているのかてめぇはッ!!!!」

 

「しかたねぇなー。俺が"師匠"について教えてやるよ!」

 

「今から処刑されること忘れてるんじゃねぇええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」

 

 

 

…………………………

 

 

「なにやってるんだアイツら……」

 

 

まったく緊張感がない。

殺す、殺されるという明確な立場があるのにどうしてあんな風に漫才が出来るんだ?

 

まぁ、そのおかげで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので良かった。

 

やはり本編通りに進むとは限らない。

こうしてルフィが処刑台にいることも、ゾロ達が助けに向かうのも本編通り。

 

しかし、ゾロ達を遮る海賊の量が多いのだ。

バギー海賊とアルビダ海賊の人数にしても、本編よりも多い、倍近くはいる。

 

ゾロとサンジだけだった本編に加えてウソップとカヤが参戦しているが、それはどちらかというと()()()()()()()()()()()()()()。まぁカヤはサポートのつもりがちゃっかり参戦するとは思ってなかったけど。

 

で、相手の人数。つまり僕の知らない人達。

まぁ、見た限りではゴロツキだったりスモーカーに捕まり海を渡れなかった海賊達をまとめた。という感じだろう。

 

しかしバギーにそんな統率力はなかったはず。

あってもインペルダウンからだったはず。

………すべて運が味方してくれたから上手くいった話である。

 

 

まぁ、なんにしても…

 

 

「三刀流"刀狼流し(とうろうながし)緋那型(ひながた)"ッ!!!!」

 

 

猛スピードで突っ込むゾロは相手の攻撃を"いなし"ながら攻撃を加える刀狼流しを使っている。だけどどういうわけか口で加えている新しい刀"深紅"がやたらと赤々と輝いている。まるで生き血を吸って喜んでいるような…………まさかね。

 

 

 

反行儀(アンチマナー)キックコース・輪舞曲(ロンド)ッ!!!!」

 

 

サンジはバナナワニを蹴り上げたあの技を人へ使っている。大丈夫なの?あれ食らったらあばら骨折れるどころか内臓潰れない?。それをまるで踊っているかのように連続的に繰り出している。懐に入るのが()()()()()のは僕の気のせいだろうか……

 

 

 

「轟けッ!!八岐大蛇(ヤマタノオロチ)ッ!!!!」

 

 

 

さて、一番問題というか、想定外の成長を遂げたウソップさんですが………なに出してくれてるの?

ヤマタノオロチって何??この世界にもそんなのあるのッ!!?

 

ってか、バックから複数の大蛇が飛び出てきてるし。

それもパクリッと人をまる飲みしてるけど、その人達死んでないよね?マジックで何処かに飛ばしてるんだよね?貴方だけ規格外し過ぎて怖いんだけど。

 

 

そしてその規格外の人の懐で迫ってくる海賊から守っているカヤが素晴らしい!

 

つい最近まで全くの戦力もなかったのに、いまではトランプを投げて相手から武器を奪ったり、動きを止めて連携でウソップが攻撃したりして……もう、この子は本当に化けたと思います。

 

 

これだけ戦力があればすぐにでもルフィの所に行けるだろう。しかし……

 

 

 

「うるせぇッ!!!!

もう死刑決行だあああぁッ!!!!」

 

「バギー。本当に師匠にそんな口を聞いたら死ぬぞ」

 

「だから黙れってんだこのスットコドッコイッ!!!!」

 

 

我慢ができなくなったのか大きな剣を振り上げるバギー。もういつでもルフィの首を落としにいける。

 

 

「最後に、言い残したいことはあるか麦わら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は、海賊王になる男だああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!」

 

 

どこまでも届くんじゃないかと思う大声。

その声を皮切りに一気に天気が崩れてきた。

厚く黒い雲がドンドン迫ってくる。

 

そう、もうすぐあの名シーンが始まる。

 

 

「………お兄ちゃん……いいの?」

 

 

そしてロビンは何が起きるか知らない。

だからこそ今から起こる予想は"死"しか見えない。

それでも僕が動かないから行動していない。

 

 

「私なら、簡単に……」

「ロビン。見ていて」

 

「なに、を…」

 

 

そう、これから起こること。

それはルフィが天から選ばれたんじゃないかと思わせる出来事。

 

それしてこの世界をぶっ壊した状態でも、あの"奇跡"が起きるなら僕は………

 

 

「それが最後だな。終わりだ麦わらッ!!!!」

 

 

剣の束に力が入るバギー。

そしてルフィは何かを悟ったようにこう呟いた。

いや、もう少し前から呟いていたのだ。

 

 

 

「……ゾロ、くいな、ウソップ、カヤ、サンジ、レイジュ、ナミ、ノジコ、ベルメール、ギン、ヘルメッポ、コビー……」

 

 

仲間の名前を呼び、

 

 

「……師匠……ハジメ……」

 

 

僕達の名前を呼んだルフィ。

そしてバギーが構えた剣をルフィの首に向かって落とされ……

 

 

「わりぃ。おれ死んだ」

 

「「「バカなこと言ってるんじゃねえぇッ!!!!」」」

 

 

最後の、最後の、最後の言葉。

そしてルフィは()()で、それを言葉にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これが、お兄ちゃんが……見せたかったもの?」

 

「………あぁ………」

 

 

黒い厚い雲はローグタウンを包み込み、ゆっくりと雨が落ちてきた。そしてその雨は次第に強まりどしゃ降りへと変わっていく。

 

その雨の中、ルフィの被っていた麦わら帽子がゆらゆらと宙を舞う。

 

そしてその帽子が落ちた先には

 

 

「なっははは。生きてた。もうけっ!」

 

 

処刑台が()()()()、近くにはバギーが黒こげになっている。

そして処刑されるはずだったルフィは()()()()()

 

 

切られたと思われた瞬間に雷が落ちてきた。

バギーが持っている剣に向かって一直線に。

その膨大なエネルギーと衝撃波により処刑台は崩落。

雷により処刑台に火がつき今もまだ燃えている。

 

あの雷さえ落ちてこなければ助からなかったルフィ。

いや、ロビンとハジメなら助けられているその命。

それでもハジメがそれを止めて、この一か八か、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……おい、神様って信じるか?」

「何を下らないことを言ってやがる……」

 

「私は、信じたくなりました……」

「ドビィィィィーいぎででよがっだああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

遮る海賊を倒してルフィの元へたどり着いた四人。

特にウソップは号泣しながらルフィにしがみつき本当に生きているか確かめているようだ。

 

 

「つ、捕まえろおおおおおぉぉぉぉッ!!!!」

 

 

突然のことで静かだった広場に海軍の怒涛が響き渡る。

それに気づいたルフィ達は「逃げろ~!」と港に向かって走り出す。

 

 

「ルフィー!先に行ってな。足止めしておくよ」

「サンキューハジメッ!!!!」

 

 

すれ違うタイミングで声をかけて追ってくる海軍の足止めを引き受けたハジメ。

 

しかし、実際はそんなことはしない。

そんなことしたらスモーカーさんがうるさい。

ほら、そのうるさい人が近づいてきた。

 

と、いうかいきなり胸ぐら掴んで

 

 

 

「テメェッ!!まさかアイツらの船かッッ!!?」

「大正解」

 

「分かってるのかハジメッ!!!!」

 

 

たしぎがスモーカーを宥めようとするがロビンがそれを制止する。それはロビンもハジメに聞きたかったことと繋がるため。そうでなければいまスモーカーはハジメの胸ぐらを掴んだ時点でロビンにやられている。

 

 

「22年前……ッ!!

この街のあの処刑台で笑った海賊王G(ゴールド)・ロジャーと同じ様にッ!!」

 

「そうですね。そっくりでした」

 

「これが全て偶然っていうのかッ!!?

まるで"天"があの男を生かしているようだというのかッ!!!!」

 

「これで分かりましたか??()()()()()()()()()()()

 

 

するとスモーカーは「くそがッ!!!!」と言いながら地面に叩きつけるようにその手を離した。そんなことするからバランスがとれにくくて転けそうになったじゃないですか。

 

 

「言っておくがいくらテメェが潜入してても俺はアイツらを捕まえるッ!!!!邪魔するならテメェらも捕まえるぞッ!!!!」

 

「出来るものならやってみなさい。というかいまここで()()()()()()()()()()()()()()??」

 

「やめなさい。ほらたしぎ、スモーカーさん連れていって」

 

「は、はいッ!!!!」

 

 

暴走しがちな二人。たしぎ。お互いに大変だねー

と、その気持ちは分かったようで深々と頭を下げながらスモーカーを引っ張っていった。

 

 

「さて、海軍は止められないけど"海軍"として止めていいものがあるということで」

 

 

そろりそろりとこの場から離脱しようとするバギーとアルビダ。さっきの会話を聞いておおよそのことは理解したようだ。ロビンはともかく、"僕"がどういう人なのか。

 

 

「バギー。まったくその通り。

スモーカーさんの()()()()から言わせてもらうけど君達。"ここで終わらせてあげよう"」

 

「ええ。そうね。

私のことも散々コケにしてくれたようだし。

久々に"正義"というものを掲げてみましょうか」

 

 

ギィギッ!ギィギッ!!と油の切れた歯車が動いているような音が聞こえてくる感じで振り向くバギー海賊団とアルビダ海賊団。

 

 

「え、えぇーと……ごめんなさい?」

 

「許すわけがないわ」

「全員、捕まえます」



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一味VS海軍①

「離しやがれッ!!!!」

「いやいや、離すわけがないでしょう」

 

「"スベスベ"の筈なのに、どうして……ッ」

「実力の差ですね」

 

 

一分ももたなかった。

ロビンがほぼ海賊達を捕まえ、ハジメがバギーとアルビダを捕まえた。

 

能力を過信している二人。

ハジメが能力を使って捕まえずとも武装色で十分だった。

ともかくコイツらをどうにかしないとな。

なのでさっきの出来事を見て驚いている海兵に

 

 

「ねぇ、君。あとはスモーカーさんが帰ってきたら引き渡しておいて」

 

「あ、あなたは一体……」

 

「気にしなくていいよ。ってわけにはいかないかー

じゃ、ここにいる海賊は"ニコル"が捕まえた。ということにしておいて」

 

「ッ!!?で、では貴女があの"悪魔のニコル"ッ!!!!」

 

 

軍服を着てないため、いや、髪型が違うからニコルだと認識出来なかったようだ。………いや、昔からだけどなんでたったこれだけの変装でバレないかな……

 

 

「私、プライベートだったの」

 

「は、はぁ……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて報告しないわよね?」

 

「も、もちろんでありますッ!!!!」

 

「あと、()()()()()()()()

いいわね。間違えでもしたら……折るわよ」

 

「は、はいいいッ!!!!」

 

 

 

普通なら報告書には細かく記載しないといけない。

しかし上司からの命令。それもただプライベートという言葉を抜くだけでいい。まったく報告自体に問題はない。

そして最後の脅しは間違いなく言ったらやるやつ。

すぐさま判断出来た海兵は力を込めてロビンの言葉に従うことにした。

 

しかし海兵が思う"ただのプライベート"はロビンにとって"ニコルがロビン"だとバレるかもしれない情報なのだ。

 

……まぁ、バレても問題ないとロビンは考えているが……

 

ハジメが止めてというから言わないだけ。

ロビンにとって海軍はその程度。

いまのロビンの優先順位は

 

1位、お兄ちゃん

 

これ、一択なのだから。

まぁ、最近"付属"として"海賊の人達"は入れてもいいと思ってきた。勝手に他のやつが振り回されたり、酷く扱われたりするとイライラする。つまりこれは()()()()()()()使()()()()()()()()。と、認識しているから。

 

 

「それじゃよろしくねー」

「あ、あのッ!!どちらにッ!!!!」

 

 

バギーとアルビダを押し付けてこの場を去ろうとしたが海兵に呼び止められた。まぁこのまま行っていいのだが

 

 

「えぇーと、応援かな??(ルフィ達の)」

「わかりましたッ!!(スモーカー大佐の)」

 

 

と、すれ違ってあるが問題は、ない。

 

 

 

「嵐か……ということは……」

 

 

さて、どうしようかな……

 

 

 

…………………………

 

 

「な、なぁ!だ、大丈夫なのかよ!!」

「何がだ?」

 

「ハジメだよ!いくらなんでもあの数の海軍を相手なんて……」

 

「あぁ、………ハジメな……足りないよな…海兵が…」

「そっちかよッ!!」

 

 

なんとなくウソップも分かっていた。

ルフィが言ったようにあの人数、()()()()と言われたほうがしっくりくる。それにあのロビンもいるのだ。むしろ可愛そうなぐらい……

 

 

「しかし相手の海軍もハジメとロビンが()()()()()()()知ってるんだろう」

 

「う、ううーん……知ってるの僅かしかいないって言ってたけど……」

 

「いまいちハジメとロビンの立場というか、置かれている状況が分からねぇんだよな……」

 

「今さらだろう」

 

「あんな強く凛々しい女性に悪いやつはおらんッ!!」

 

「スゴい偏見だよサンジさん……」

 

 

 

各々の意見をいいながら急ぐ四人の前に一人の男と一人の女が立っていた。

そしてすぐさま反応したのはその女のほうで

 

 

「あ、貴方はッ!!?」

 

「ちっ!!面倒くせぇな……

おい、アイツは俺に任せろ」

 

「おい、クソマリモッ!!!!レディを傷つけたら蹴り殺すぞッ!!!!」

 

「うっせぇなッ!!!!さっさといけッ!!!!」

 

 

向かってくる女剣士"たしぎ"にゾロが応戦する。

近づいてきたたしぎの顔にルフィ達は驚く。

 

 

「く、くいなッ!!?」

「なんでくいなちゃんが海軍なんかにッ!!!!」

「どうなってるんですかッ!!!!」

 

()()()()()()()()ッ!!

いいからさっさといけッ!!!!」

 

 

立ち止まろうとしたルフィ達を一喝して走らせるゾロ。

もちろんたしぎはそのルフィ達を止めようと刀を向けるがゾロに止められた。

 

 

「……貴方、海賊だったんですね……」

「言っておくけどな、騙すつもりはなかったぜ」

 

「ええ。ではあの人も」

「そうだな。ついこの前、入ったばかりだ」

 

「そうですか……では」

 

 

一度体勢を整えるために後ろに引いたたしぎは

 

 

「海軍本部曹長"たしぎ"です」

「麦わら海賊団"ロロノア・ゾロ"だ」

 

「ッ!!?

……なるほど。では貴方達があの"海賊狩り兄妹"ですか……」

 

「名乗った覚えはねぇけどな」

 

 

するとたしぎは握っていた刀をより強く握りしめた。

それほどゾロとくいなの名は知れ渡っている。

勇ましく荒々しい剣士と、可憐で素早い剣士。

海賊ではなかったため懸賞金はついてなかったが、もしその懸賞金がついていたなら……

 

 

(……いや、いまは目の前の相手を……)

 

 

そんな僅かな油断のスキに一気にゾロが距離を詰める。

 

 

「こんな時に、考え事かッ!!」

(ッ!!?しまっ!!!!)

 

 

…………………………

 

 

「クソッ!!やっぱり俺も!!!」

「戻るなッ!!誰が俺を助けるんだッ!!」

 

「なに自信満々に助けてもらう話してんだッ!!!!

だいたいテメェも強いだろうがッ!!!!」

 

「ほ、褒めるなよ~!」

 

「面倒くせぇなッ!!!!」

 

 

と、漫談しながら船に向かうウソップとサンジ。

カヤは苦笑いしながら二人に付いていっている。

 

 

「でも、本当にルフィさん一人で大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫だろう。アイツは船長だ。

やるってときはやってもらわないとな」

 

「あれ?でもさっき戻るって……」

 

「もちろんあのくいなちゃんに似た子の元へッ!!!!」

 

「………………」

 

「相手するなカヤ。サンジはこういうやつだ」

 

 

決して言葉にしなかったが心では「うわぁ……」と感じているカヤだった。

 

 

…………………………

 

 

「単なるバカか…自信過剰なバカか……」

「おい。流石にバカバカ言い過ぎだぞお前」

 

 

スモーカーを前に立つルフィ。

相手がどれくらい強いかハッキリ分かっている。

それでもいまはサンジ達を逃がすことを優先した。

 

 

「お前一人で止めれると思ってるのか」

「止める。じゃないとこの先も()()()()()()()()()

 

 

何に、とは聞かなかったスモーカー。

恐らく、いや、間違いなくハジメのことだろう。

格上がいるのに船長としていま自分の前に立つ。

それは船長として必要なものである。

 

しかし

 

 

「気合いだけでどうにか出来るほど……甘くねぇぞッ!!!!」

「"ホワイト・ブローッ!!!!"」

 

 

 

二人の距離が空いているし状態でスモーカーはパンチを繰り出した。普通なら届かない距離だが、"モクモクの実"の能力により腕は煙のようになり拳だけがルフィに向けて飛んできた。

 

能力同士の戦い。

初めてではないルフィでも飛んできた拳に驚き避けるのに少し時間がたった。ギリギリで避けたがすぐさま次の攻撃がくる。

 

 

「"ホワイト・ランチャーッッ!!!!"」

 

 

今度はスモーカーも両足が煙になり、ジェット噴射のようにスモーカーの体を浮かして向かってくる。

手には十手がありそれをルフィに向けて振り下ろす。

 

今度は早く反応出来たルフィはその攻撃を避けたあと、スモーカーにパンチを繰り出した。

それをスモーカーが十手でガードしたとき

 

 

「いいッ!!?」

 

 

違和感に気づいたルフィはすぐにパンチした手を引っ込めてスモーカーから距離を空けた。

 

 

 

「それって、"海楼石"かッ!?」

「やっぱり知ってやがったか……」

 

 

知らないやつなら油断している間にこの十手で能力ごと相手を押さえつけるつもりだった。

しかしハジメが乗っている船。もしかしたら知っていると思っていたが……

 

 

(知っていようが…関係ねえ!)

 

 

スモーカーにとってはたった一つ、戦法が消えただけ。

それだけでスモーカーが海賊を逃がすということにはならない。

そう、分かっているなら"分かっている戦い方"があるのだ。

 

 

 

「"ホワイト・スネークッ!!!"」

 

 

今度は十手ごと飛ばしてきた手をくねくねと、まるで蛇のようにしならせながら攻撃をしてきた。

それによりいつ攻撃が何処に当たるか分からない。

そのためルフィは大きく移動し避けたのだが

 

 

「こっちが本命だ」

「ッ!!?」

 

「"ホワイト・バインッ!!!!"」

 

 

いつの間にか全身を煙に変化させルフィの避けた先に先回りしていたスモーカー。煙となったその体を竜巻のように渦巻きながら上昇していく。その煙にルフィの体は捕まり身動きが取れなくなり、その煙は完全にルフィの体を捕まえた。

 

 

「な、なんだこりゃ!?動けねぇッ!!!!」

 

「動く必要はねぇ。ここで捕まるんだからな!」

 

 

いつの間にかルフィの上空にあった十手で一気に落下する。それにより十手がルフィの体を押さえつけながら地面に叩きつけたのだった。

 

 

「ゴフッ!!!」

 

 

"海楼石"の十手によっていまのルフィは生身。

よって地面に叩きつけられたダメージはそのまま受けることになる。

 

煙に変わっていたスモーカーの体はルフィの上で形となり全身で押さえつけながらルフィの頭を地面に押し付ける。

 

 

「これが"大佐"の力だ。分かった麦わら」

 

「ち、ちくしょ……ち、力が……

……"制限"さえなきゃ……こんなやつ……」

 

「ハッ。負け惜しみを。

テメェが5500万ベリーってのは、間違いだったようだ……」

 

 

もう一つの手、十手をルフィの体から離して確実にルフィにダメージを与えようと振り上げる。

そう、いま押さえている頭に向けて一直線に。

 

 

「悪運、尽きたな」

 



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一味VS海軍②

カキンッ!!!!

 

 

金属と金属が弾く音が響く。

そして次の瞬間には刀が宙を舞い地面へと突き刺さった。

刀を失ったたしぎはゾロの2つの刀で逃げ場を奪われ今にも切られてもおかしくない状況へと陥られていた。

 

しかしいくら待とうともゾロは刀を振るわない。

やっと動かし覚悟を決めたというのにしまいにはその刀を鞘へと納めたのだった。

 

その行為に怒りを覚えたたしぎはゾロに食いかかった。

 

 

「どうして斬らないのですかッ!!?」

「……俺の勝手だ……」

 

 

そういいこの場から離れようとするゾロ。

その姿に俯き拳に力が入るたしぎは

 

 

「………私が、女、だからですか?」

 

 

その言葉に足が止まり振り向くゾロ

 

 

「女が男より腕力()がないからって、真剣勝負に手を抜かれるなんて屈辱です!」

 

「………………」

 

()()()()()()()()()()()()()なんて気持ちあなたには分からないでしょう………ッ!!」

 

 

そこまで聞いたゾロはそのあと何かを言おうとしたたしぎの言葉を遮り

 

 

「バカかテメェは?」

 

「なっ!!?ば、バカってなんですかッ!!!!

こっちは真剣に悩んでいることをッ!!!!」

 

「だから()()なんだよ。

それも分からねぇやつが真剣勝負だぁ?笑わせるな」

 

「なんですか貴方はッ!!!!

何も知らないくせに!!私の苦しみなんて分かるわけッ!!!!」

 

 

すると、目の前にいたゾロが突然と消えた。

そして次に感じたのは通りすぎる男と風。

最後にたしぎに訪れたのは腹部に強烈な衝撃。

 

 

「ガハッ!!!!」

 

 

あまりの激痛にその場に踞るたしぎ。

それでもゆっくりと振り向くとゾロがこっちを見下ろしながら

 

 

「さっきの攻撃を受けられねぇやつが"真剣勝負"だと?

こんな攻撃、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それも出来ない奴が、()()()()()()()()()()()()()()()

 

テメェはくいなに似てるが()()()じゃねえ。

お前はただの"パクり女"だぁ」

 

「……………ッ!!」

 

 

今度こそゾロはその場を立ち去った。

くいなは握りしめたその手を強く地面に叩きつけた。

 

言い返したかった。あんな理不尽な言葉許せなかった。

なのにどうしても言えなかった。言い返せなかった。

言葉に出してもそれがすべて嘘っぽくなると……感じたのだ。

 

 

………………………

 

 

「そうでもなさそうだが……!?」

 

「!?………!!!??」

 

 

突然聞こえてきた声。動かない十手。

何かと思い振り向くとそこにはフードを被った男がいた。

 

 

「…………テメェは…………ッ!!?」

 

「な、なんだ??誰だ?誰だ?」

 

 

そこには想像出来なかった男がいたのだが、ルフィはスモーカーに頭を押さえられているために誰がいるのか全く分からない。

 

 

 

「政府はテメェの首を欲しがってるぜ」

「世界は、我々の答えを、待っている……!!!」

 

 

 

その瞬間、突然に

 

 

「突風だぁッ!!!!」

 

 

誰が言ったか知らないがそれと一瞬に突風が吹き抜ける。その突風に飛ばされてきた物や人が飛んできて、スモーカーもその突風に思わずその体を飛ばされそうになる。

 

その僅かなスキを狙ったように押さえていたルフィがその手からすり抜けていった。

すぐに捕まえようとするがあまりの突風に身動きが取れない。

 

 

そんな突風の中、フードの男だけは佇んでいた。

いや、1人だけではない。

この突風にも関わらず平然と歩いてくる()()がいた。

 

 

「何してるんですかドラゴンさん?」

「……ふん。ただの気まぐれだ……」

 

「気まぐれでくる距離じゃないんですけど、まぁいいでしょう。用件は一つ、ヤスミを出せ、コラ」

 

「…………この先にいる………」

 

 

あっという間に突風とその者達がスモーカー達の横を抜けていった。

それでも嵐のように吹く風は変わらず、スモーカーにはさっきの会話は聞こえなかったようで

 

 

 

「なぜあの男に手を貸す!!ドラゴン!!!」

 

「男の船出を邪魔する理由が何処にある?」

 

 

なんとなく締まらない感じがした。

 

 

 

…………………………

 

 

「会わなくて良かったの?」

「あぁ。いいんだ。()()()()()()()()()()()()()

 

 

離れた所からルフィ、スモーカー、ドラゴンの様子を見ていたフードを深く被った二人組。一人は男で()()()()を持ち、一人は女で瞳が大きく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()がとてもカワイイ。

 

 

「でもなんで私まで会ったダメなのッ!!?

ロビンさんとハジメお兄ちゃんと会うのすっごく久しぶりなんだよ!!!」

 

「俺だって二人には会いてえよ!!

だけどドラゴンさんがいま会うのは止めとけって言われたろう」

 

「そこが分からないのよねー

ドラゴンさんやヤスミちゃんはいいのに…」

 

「…むしろ、ヤスミがいるからだろうな……」

 

「……あぁ。ヤスミちゃん()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

どうやら革命軍にいてもヤスミの評価は良いとは言えないようだ。

 

 

「何をしている?出航準備だ」

「ドラゴンさん」

 

 

いつの間にか側まで近づいていたドラゴン。

さっきまでいた所にはスモーカーだけではなく他の海兵達も集まっていた。

 

 

「ハジメお兄ちゃんと何を話していたんですか?」

「……ヤスミの居場所だ」

 

「うわぁ……」

「間違いなく説教コースじゃねえか」

 

 

可哀想だと思うがそういうときの二人に会うと巻き込まれると思い、三人はヤスミを身代わりとしてさっさと出航準備を進めることにした。

 

 

…………………………

 

 

 

スモーカーがルフィを取り逃がししばらく時間が経った後の話。

バギーとアルビダを捕まえたと報告された為に、まずはとスモーカーがバギー達を確実に縛り上げようとしたのだが着いたときには逃げられていた。

 

こうしてバギーも探していた為に人員が()()()()()()()()とはいかなかったために何もかも逃がしてしまった。

それに苛立ったスモーカーは

 

 

ガキッン!!!!!

 

 

「追いかけるぞたしぎ。グランドラインだ」

「こ、ここの警護はどうするんですか!?」

 

「知るかぁ!!!それよりいまはやらなきゃいけないことがあるだろうかあぁッ!!!!」

 

 

持っていた十手を地面に突き刺した。

それは地面に亀裂を四方八方へ広げさせた。

 

 

「"麦わらのルフィ"そして"悪魔のロビン"ッ!!!!

アイツらは間違いなくこの世界をひっくり返すッ!!!!

捕まえなきゃいけねえんだッ!!!!」

 

「は、はいッ!!!!」

 

 

しかし、まだ気づいていない。

その二人よりももっと気を付けないといけない者がいることを……



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その上に"願い"を乗せて

「はぁ~……いいもの見れたな~!」

 

 

なにかに余韻に浸るヤスミ。

この女、こっそりとルフィとスモーカーの勝負を見ていた。

それどころかゾロとたしぎ、というか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだった。

 

その最後のドラゴンの出現。

あのシーンはいい。親だと悟られずに息子を助けるなんて…カッコいいッ!!と感動していた。

 

まぁ、なんでここにいる??と思うだろう。

いや、どうしてここへ来たのかとヤスミはドラゴンに聞いたけど、重要なことを喋らないドラゴンさんには正直頭を抱えたようだ。

 

ヤスミはこの展開を知っているからいいが、それ以外の革命軍の面々は「何しに行くんだ?」と疑問に思っていた。

 

普段から多くを語らないドラゴンだが今回は喋らなすぎて誰もが怪しいなーとはいかないが不満に思うぐらいはあった。

 

で、たった一人満喫していたヤスミの…背後、に……

 

 

「何してんだテメェはよ」

「ぎゃあああああああぁぁぁッ!!!!」

 

 

女の子が出してはいけない声を出すヤスミ。

でも仕方ないかも、しれない。

だっていまヤスミの頭をロビンの特性の()()()()()がリンゴを握りつぶすかのように握っているのだから。

 

 

「悲鳴はいらないから、さっさといいやがれ」

「全くの情け無しとかッ!!!!」

 

「まだ余裕があるのね」

「や、やめ、ぎゃあああああああぁぁぁッッ!!!!」

 

 

さらに強めるロビン。

もう女の子なんてなに?というぐらいの悲鳴を上げているが周りには誰もいない。突風を利用して人を遠ざけたりしたのでいくら大声を出そうとも誰も来ない。

 

 

「か、観覧ッ!!!!観覧してました!!!!!」

「いいご身分だな、おい」

 

「だ、だってこんな名シーン!!見ないと死んでも死にきれませんッ!!!!」

 

「だったら一回死んでみる?」

 

「例えッ!!!!例えばな…ッ!!ぎゃあああああああぁぁぁッッッ!!!!」

 

「うるさい」

 

 

本当にうるさいのでロビンにアイコンタクトして掴んでいるその手を離してもらった。まぁ、壁に叩きつけるというオマケがあったけど……

 

 

「…私、ここまでされる理由…ないと思うけど……」

 

「「ない」」

 

「本当になんなのよッ!!?」

 

「と、ここまでは冗談として」

 

「冗談にしてやり過ぎ……」

 

 

もっといってやりたかったヤスミだが、これ以上いうと間違いなく自分に返ってくる。

 

 

「それで何の用なのよ?」

 

「確認だ、ヤスミ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

ハジメとヤスミ。二人の共通点は多い。

まずは転生者であり、ほぼ同じ時代・同じ世界の者。

そしてこの"ワンピース"の世界でやりたいことがある。

その中でもヤスミの"エースと白ひげ"を助けるという共通認識。

 

そしてハジメとヤスミが出会ってからこの二人に関してはヤスミに任せていた。

 

あの日、ルフィがシャンクスから麦わら帽子を受け取ったあの日から、ハジメは"この世界から姿を消した"のだ。

手紙である程度自分の理想に近づけようとし、現にウソップが大きく成長していた。

 

で、ここでその手紙でエースと白ひげに関しては何もしなかったのだ。まぁ白ひげに関してはいつも通りの文通だったが余計なことはしていていない。

 

強いて言うならヤスミと会う前。

白ひげに"ティーチ"という脅威や"エース"のことを匂わせるようにはしたが。

 

つまりは、それ以降に関しては全く手をつけていない。

なのでこうしてヤスミがここに現れるだろうと予想してドラゴンに居場所を聞いたら……という感じてある。

 

 

「な、何をしたって……」

「何を、したのか、言え」

 

「こ、怖いんだけど……」

「言え」

 

「分かったからッ!!真顔で近づかないでッッ!!!!」

 

 

もう涙目になるヤスミ。

そんなことは知らずに少し距離をとるハジメ。

グスンッと涙を堪えながらバックから束ねた用紙を取り出し渡した。

 

 

「これまでの記録よ。

最初に言っておくけど貴方が"消えて"から大変だったんだからねッ!!!!

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()

 

「ということは突然の別れではなく、ちゃんとルフィ達と別れたわけか。よく二人が革命軍行きを、いや、サボを革命軍に引き抜けたね」

 

「だから苦労したって言ったでしょうッ!!!!

出来るだけドラゴンさんに説得してもらうにしても、ルフィに会わせないように、感づかれないようにしないといけなかったし……やっと革命軍に興味を持ったと思ったらエースが絶対にダメだといって聞いてくれなかったし……その度にドラゴンさんに説得よッ!!!!ルフィにバレないようにどれだけ苦労したかッ!!!!」

 

「いや、苦労してるのドラゴンさんじゃんか」

 

 

正論をいうとグッと言葉が詰まったヤスミ。

でもヤスミがやったことは正解かもしれない。

サボが生きていればあの"頂上決戦"も大きく変わるだろう。つまりはエースが生きる可能性が増える。

 

 

「あとはエースとルフィの修行を手伝った。と」

 

「それはもう…大変でしたよ。

想像以上の暴れ馬……私の能力がなかったらどうなっていたか……」

 

「そういえば能力者だったわね」

 

「完全忘れてましたかッ!!?

"ベツベツの実"を食べて、物や行動などを"別々"に分ける能力ですッ!!」

 

「で、具体的になにが出来るの?」

 

 

そうするとバックからリンゴを取り出して

 

 

複数分離(セパレート)

 

 

するとリンゴの形はそのままに中身の種が分離された。

 

 

均等分離(ディバイド)

 

 

今度はそのリンゴがキレイに6等分に切れて別れた。

 

 

「なるほど。"便利ナイフ"ね」

 

「違うッ!!!!

分かりやすいように見せたのに何そのダサいネーミングッ!!!!」

 

「つまり、その能力のは"分離や分かれる"といった現象を起こすわけか」

 

 

「そうよ。あと攻撃変えたり行動を変えたりとかもね。

攻撃や行動も1パターンだけじゃない。いろんな考えがあってその中で最良のものを"選ぶ"。だから私はその攻撃や行動を"別のもの"へ変えることが出来るわけ。

 

これであの子達の攻撃や行動を変えたから良かったけど……私に預ける前に強くしすぎよッ!!!!」

 

 

そんなこと知ったとこたか。

しかし使いようでは随分と便利な能力だ。

つまりそれがあれば危機的状況でも一発でひっくり返る可能性がある。

 

 

「で、制限は?」

「……私を中心に二メートル内……」

 

「使えないわね」

「さっさと"覚醒"しろよ」

 

「あんた達みたいなチートと一緒にするなああああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!」

 

 

…………………………

 

 

そのあと話を聞いたが特になにもしてないようだ。

まぁエースも白ひげも簡単に人の話を聞くタマでない。

とくにヤスミみたいな胡散臭いやつの話は聞かないだろうし。

 

エースは"サボ"と"ルフィ"でOKとして、問題は白ひげかぁー

 

まぁここもヤスミに任せよう。

あの頂上決戦の白ひげさんはもう自分の時代ではない。子供達の時代だと割りきり、あの場所で骨を埋める覚悟だった。

それが黒ひげか海軍か…それだけの違いだったかもしれない。

 

でも、生きてくれるなら助けたい。

ルフィ達が優先だけど出来るのなら……

 

 

「ハジメェー!!師匠ォー!!」

 

「二人とも走ってよッ!!」

 

 

しかし一切走らない。

どしゃ降りの中だが全く問題ない。

だって一時停止で全く濡れない。もちろんロビンも。

メリー号にも一時停止による強化してあるし、嵐や砲弾でもビクともしない。

 

これならずっとメリーと一緒。

 

 

「海軍も追いかけてるんだぞッ!!さっさと走れッ!!」

「五月蝿いわね。喉、潰すわよ?」

 

「なんで俺だけコエェーこと言うんだよッ!!」

 

 

それはウソップだから。

しかし、ここでなんか足りない気がした。

そう、それはあの剣士達。

 

 

「あれ、ゾロとくいなは?」

 

「あ、あぁ……ゾロの姿が見えるところまで帰ってきたんだが……」

 

「あのクソマリモ、何故か変な所で曲がって行っちまっただよ」

 

「で、くいなが探しに……」

 

 

あぁ~。

そういえば超方向音痴だったなゾロは。

そんなことを考えているとガヤガヤと後ろの方から声が

 

 

「なんであんな所で曲がるのッ!!」

「近道かと思ったんだがな」

 

「目の前に船があるのに近道なんてないのッ!!」

「ッ!!? う、うるせぇ!!俺の勝手だぁ!!」

 

「その勝手にやった人が、向かいに来られる人が、勝手なことを言わないの!!!」

「うるせぇな!!!あのパクり女といい、なんでお前みたいなやつはそう口がうるせんだあ!!!」

 

「たしぎちゃんをパクり女とか言わないのッ!!!!

それに五月蝿くしてるのはゾロが!!」

「なんだとッ!!!!」

 

 

完全に痴話喧嘩である。

とにかく走らずに歩いて船に乗ったハジメ達と、言い合いしながら乗ったゾロ達を確認したノジコは手際よく出航させた。

 

 

「本当にマジで走れよお前らッ!!」

「てめえもう一人で行動するなッ!!」

 

「急いでもグランドラインは逃げないから」

「俺の勝手だ」

 

 

ウソップとサンジの言葉に対して全く反省しない二人。

 

 

「お前ら分かってるのかよ!

いま俺達は海軍から逃げないといけないだろうがッ!!」

「スモーカー()()に手間取っていたらこの先大変だよ」

 

 

するとルフィの肩がビクッと跳ねた。

……おい、ルフィ。

 

 

「……ルフィ。まさか……」

「ま、負けてねぇよッ!!」

 

「負けてはない。でも」

「捕まりそうになった!!」

 

 

バシッ!!バシッ!!バシッ!!!!

 

 

「武装色を勝手に使わなかった。という考慮を入れてこれで許してあげるわ」

 

「……ア"リガドウ"…ゴザイマズ……」

 

 

真っ赤に腫れ上がったルフィの両頬。

いくら使わなかったとはいえ、いまのルフィなら逃げるだけなら出来るのに…ったく。

 

 

「そういえば……なんかお前らだけ"濡れてないよな"??」

 

「一時停止で雨を弾いてる」

 

「ハァーッ!!?

なんだよそれ俺達にもッ!!!!」

 

「ざけんな。サンジの病気とは違うけど野郎共にしてやる筋合いはない」

 

 

「び、病気って…」と軽く凹んでるサンジを無視して女性陣だけロビンと同じように"雨"だけを弾く一時停止をかけてあげた。

 

 

…………………………

 

 

「進水式??」

 

「そ。ちょっと遅れたけどグランドラインに向けてやっておこうと思ってね」

 

 

ヤスミが言っていた名シーン。

ここは僕もお気に入りである。

やっておいて損はないだろう。

 

 

「酒樽持ってきたぞ」

「なんで2つも?」

 

「叶えたい願いがある人。叶えさせたい願いがある人。

それぞれ違うからね。人数的ってのもあるけど、皆自分の"願い"がある樽へ」

 

 

2つの樽を並べる。

その一つにルフィとゾロとくいなとサンジ、そしてここでも意外にウソップとナミがの樽に集まった。

 

 

「俺は海賊王だぁ!!!」

「世界一の大剣豪に」

「もちろん私も大剣豪に!」

「オールブルーを見つけために!」

「私は、この手で……世界地図を描くためッ!!」

「俺は……勇敢で"カッコいい英雄"になるために!!」

 

 

航海をノジコに託しても、それでもまだ世界海図の夢を諦めてなかったんだ………

ウソップは海の戦士じゃなく"英雄"かぁ。

それ、海賊じゃ難しいと思うけどな~

 

そしてもう一つの樽にカヤ、ノジコ、ベルメール、ギン、レイジュ、 僕にロビン。

 

 

「私はウソップさんのサポートを。皆さんのサポートを!」

 

「何処にでも連れていくわよ。ナミと私がいるんだから安心して!!」

 

「この歳で夢ってなら、この子達の成長を最後までみてやるわ!!」

 

「マイ・マスターとマイ・ゴッドが行く所に付いていきますッ!!」

 

「それじゃ、サンジの結婚相手でも探そうかしら」

 

 

妬けるなウソップ。死ねばいいのに。

この親子は僕が守ります。

ギン。正式に八咫烏に入る?

……あぁー。そうだね。一応…()()()()んだっけなー

 

皆がそれぞれの思いを胸に樽の上に足を乗せる。

こんなに色んな人、願いがあるんだなー

やっぱりこの一味、面白いよ。

 

 

「ほら、早くしろよー!」

 

 

船長、ルフィがそういうと全員がこっちを見る。

僕の願い。それは最初から決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここに、この場所に。

()()()()()()()()()()()()()"全て"を使って。

ルフィを"海賊王"にしてやる」

 

「私の全てはお兄ちゃん。

お兄ちゃんの為にこの身を捧げるわ」

 

 

全員が樽から足を上げてそのまま振り下ろす。

 

 

「行くぞぉ!!"偉大なる航路(グランドライン)"ッ!!!!」



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グランドラインへ

「なぁ。思ったんだけど。

 ハジメの力なら"海王類"に見つからずにグランドラインに入れるんじゃねえ?」

 

「「「「「「「「「「ッ!!?」」」」」」」」」」

 

 

 

グランドラインに入るために目指すは"赤い土の大陸(レッドライン)"

ローグタウンの岬、灯台の光が指す先にグランドラインに入るための"入り口"がある。

 

そこを目指して航海していたのだが、突然嵐だった天候から空が真っ青の快晴に変わったのだ。

 

そう、"凧の帯(カームベルト)"

ここは無風の地帯。ここを横切れば簡単にグランドラインに入れる。

入れるのだが、そこには"海王類"が大量にいる。

つまりは無風の地帯をオールで漕ぎながら海王類を相手にするというムリゲーなのだ。

 

 

さて、いまはそのカームベルトから荒れている()()()()に戻ってきたところなんだけど……

 

 

しかし、ここでウソップが気づきやがった。

あの野郎。妙なところで頭が冴えるんだよなー。

 

 

「な、何いってるのウソップさん。そんなこと出来るわ…」

 

「まぁ、出来るね」

「私でも可」

 

『マジかああああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!』

 

 

あっ。つい素直に。

だって"存在"を一時停止すればバレないもん。

それはメリー号にすれば楽にいけるね。

ロビンの場合は()()()()()()のだけどね。

 

 

「言っておくけどしないからね」

 

「はああああぁぁぁッ!!!!

ショートカット出来るんだぞッ!!使わない手がッ!!」

 

「あのね……これ"麦わらの一味"の冒険でしょう」

 

 

すると食いかかるように向かってきたウソップが止まった。この際だ。ハッキリ言ってやろう。

 

 

「僕はあくまでも"サポート"

つまりは行き先も敵も仲間も全て()()()()()()が決める。もちろん暴走するならルフィでも止めるけど基本はルフィが決める」

 

「い、いや、でも、よ……」

 

「はぁ~。

じゃ更に言ってあげよう。

僕、一味には"入ってない"から。ロビンは入ってるけどね。

そしてロビンが海軍本部中将ってことは知ってるだろうけど…………僕、()()()()()()()()()()()()()だからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「はああぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!??」」」」

 

 

あれ?四人も知らなかったけ?

ウソップとカヤ。まぁ、知らないよね。

サンジは……レイジュ、教えたなかったの?

あとギン……は、どうでもいいと。

 

 

「た、た、た、た、大将ッ!!!!」

「なんで海軍本部大将がッ!!!!」

「ざっけんなッ!!!!」

「流石マイ・ゴッドッ!!!!」

 

 

一人だけ反応が違うな……

ウソップとカヤは驚いてるけど、サンジだけはめちゃくちゃ警戒してるなー

 

まぁ、それはそうか。海軍本部大将だもんね。

 

 

「でも、いまはヘルメッポの親父さん"モーガンさん"に任せてるけどね」

 

「待て待て待てッ!!!!

情報が多過ぎてワケわからねぇよッ!!!!」

 

 

仕方ないなぁー

グランドラインの入り口まで時間もあるし話すかな。

 

 

…………………………

 

 

「………ハァ~……()()()()()()()()

 

「その感想が出ればもう大丈夫だな」

 

 

話したのに感想がそれかよ。

それとゾロ、大丈夫ってなんだ?

 

 

「しかし…どうなってるんだ海軍は……バカばっかりなのか?」

 

「否定はしない」

 

 

話したのは僕とロビンの海軍本部の話。

ルフィの為に暗躍したことは伏せてどんな経緯があったか話した。

 

まぁ、大分ハショッタけどそれでもめちゃくちゃって……そんなにおかしいかな?

 

確かにニコル=ロビンって見抜けないのはダメだな。

まぁ、こいつらも同じだけど。

でもあの"グザン"だけかな??一発で見抜けたの。

そう考えると…優秀なのか?グザンだけど。

 

 

「でもよ、なんでそんな大将の座から海賊に?

海賊の俺らがいうのもなんだが、大将のほうが良くなかったか?」

 

「いや。グザンのやつ、仕事しないし」

 

「えっ。それが理由なの?」

 

「とても大きな理由ですッ!!」

 

 

大きい声をだした為にビクッと震えるカヤ。

ごめんなさいと謝ってちょっと冷静さを取り戻して

 

 

「……あとは、まぁ、ルフィを見たからかな?」

「ルフィって……まだ赤ん坊だろう?」

 

「それでも、なんとなくね。

なにか大きいことをやってくれる。そんな気がして。

そしてそれを手助けしたい。まぁ直感みたいなものだよ。こうしてここにいる理由は」

 

 

曖昧な答えかもしれない。

それでもウソップ達にはむしろそれが良かったようだ。

だって、ウソップもサンジ達もルフィが船長で海賊王を目指しているのを分かって、それでも付いてくるって決めたのは自分の直感みたいなものもあるだろう。

 

だから僕の言葉に共感したようだ。

 

 

「だから安心していいよ。

海軍に入ったのもニコ・ロビン(ストーカー)から逃げるために入ったんだから。全くの未練もない」

 

「お兄ちゃんがいれば何もいらないわ」

 

「やっぱ似た者兄妹だわお前ら」

 

 

そうかな。似てないと思うけどなー

 

 

…………………………………

 

 

「な、なんだありゃーッ!!!!」

 

 

しばらくすると見えてきたレッドライン。

その大陸は雲の上まで伸びる絶壁の大陸。

あの上にクソ共がいるんだもんなー。消してこようかな?

 

 

「おいおい。このままだとあの大陸にぶつかるぞッ!!!!」

 

「でもこの絶壁、見渡してもずっと続いてる!!!」

 

「ノジコッ!!ナミッ!!なんとかしてくれーッ!!!!」

 

 

ゾロとくいなが周りを見渡したが全く逃げ道がない。

そして海流はその大陸に向かって流れているのだ。

このままだと大陸にぶつかって船が大破する。

 

………まぁ、一時停止してるからしないけど。

 

 

「大丈夫よ。ねぇナミ」

「ええ。グランドラインの入り口。それは"山"よ」

 

「山ッ!!?」

 

「山なんだろうが、この船で行けるのかよッ!!?」

 

「えぇ。いけるわ。

だってその山には"川"があるからそれを使って"登る"のよ」

 

 

ということでナミ解説。

グランドラインへ入る為には、海流がぶつかる"山"の入り口にある"川"から登る。

 

この山には海流がぶつかるのだが、そこに川がありそのに海流が()()して"リヴァース・マウンテン"を登るのだ。

そしてその海流はグランドラインへと流れる。

 

と、ずいぶんと簡単に説明した。

これはナミの概説を更に砕けた説明。

 

 

「……なるほど。"不思議山"かぁ~」

 

「ルフィと同じように分からないやついるかぁ~」

 

 

するとギンが手を上げた。

なるほど、なるほど。

 

 

「カヤ。()()()()()()()()()()

「はい!」

 

 

――――十分後。

 

 

「リヴァース・マウンテン…リヴァース・マウンテン……」

 

「……4つの海流……海流が逆流……」

 

「……カヤ。すげェな」

「私だってお役にたつのわ」

 

 

あのルフィがちゃんと覚えている。

理解してかは別として。だが。

 

ハジメとロビンのタッグによる会話術。

カヤ、めちゃくちゃ恐ろしい子になってない?

 

 

「見えたッ!!!!入り口だぁッ!!!!」

 

 

サンジの叫びと共に廃人と化していたルフィの目に生気が戻り船首に飛び乗る。

 

 

「いけぇーッ!!!!」

 

 

興奮するのはいいけど、

 

 

「おいおい…なんかズレてねぇか……」

「このままだと、ぶつかりますッ!!!!」

 

 

そう、海流に乗っているがその海流は必ずその川に流れている訳ではない。それ以外はこのレッドラインの下へ流れ込むのだ。

 

つまりこのままだと大陸にぶつかる。

メリー号は大丈夫だけどそのまま荒れ狂う海流に飲まれながら深海へご案内。となる。

流石にシャボンディ諸島のシャボン玉のコーティングをしてないから、いま船内にいない僕たちは飲まれるな。

 

 

「ルフィ。どうにかしなさい」

「おうッ!!!」

 

 

気合いをいれるルフィだが、もうまもなく大陸へぶつかる。

 

 

「ルフィッ!!!!」

 

 

ウソップが叫ぶなかルフィは突然船の外へ。

いや、メリー号と大陸の間に飛び込んだのだ。

そして大きく息を吸い込んで

 

 

「ゴムゴムの風船ッ!!!!」

 

 

大陸にぶつかったが間にルフィという緩衝材により大破は間逃れた。そのままルフィは自身の体を回転させて無理やり運河へメリー号を誘導する。

 

 

「ルフィッ!!!!」

 

 

うまくいったが取り残されたルフィはそのままだと海へ落ちる。とっさにウソップがルフィの方へ手を伸ばす。

それを見たルフィはすぐさま手を伸ばしてウソップの手を掴む。

 

引っ張るウソップにカヤやギンも加わりルフィを引っ張ると、ゴムの反動で船と戻ってくるルフィ。

なんとか無事船へ帰還したルフィはそのまま船内に戻ると

 

 

「す、すげぇッ!!本当に船が山を登ってるッッ!!!!」

 

 

ルフィが言ったとおり"不思議山"だな。

こんな経験、深海へ行った以来かなー

 

そして船は頂上へ。4つ海流がぶつかり噴水のように舞い上がる。船も舞い上がってそのままグランドラインへの海流へ乗ったメリー号。

 

今度は降りるほうだからグングンと下っていく。

そして立ち込める霧が消えていく。

その向こうには僕たちを待っていたようにあの

 

 

偉大なる航路(グランドライン)が見えてきたぞッ!!!!」

 

 

さぁ、始まる。

ルフィという未来の海賊王が、なるべくしてなる未来への航海が。



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グランドライン"バロックワークス編"
ラブーン


さて、見事にグランドラインに入りました。

ここからだなー。大事だなー。

 

と、考えている間にあの場面です。

 

 

「く、クジラだああああああああぁぁぁぁぁッ!!!!」

『ブオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォッッ!!!!』

 

 

 

あぁー"ラブーン"の回だったなー。

このままラブーンに突っ込んでも船首は壊れないけどあの男がやらかすだろうなー

 

よし。

 

 

「ウソップ。メリー号を飛ばして」

出来るかあッ!!!!マジックの限界超えてんだよッ!!!!」

 

 

いや、すでに超えてる気がするけど。

そんなことしている間にドンドンと近づく。

ラブーンと絶壁の間に僅かな隙間があり、そこに舵を向けようとゾロ・サンジ・ギンが必死に動かしているが船は真っ直ぐラブーンの元へ。

 

本編では舵はここで折れるけど誰がヤらすか。

 

ということでそのままラブーンへ直撃……

 

 

ドカンッ!!!!

 

 

「なっ!!!??」

 

 

……やりやがった……ルフィのやつ……

船首の下にある大砲で、ラブーンに当たるギリギリで大砲を放ったのだ。

 

お陰で勢いは随分と軽減されたがどのみちぶつかる。

はぁ、仕方ない。あまり手出ししたくなかったが……

 

 

「いきなさい、ウソップ」

俺かよッ!!やるけどよッ!!!」

 

 

なら、早くして。

と、睨みを効かすロビンにビクッとしたウソップは両手でパンッ!!鳴らした。

するとラブーンとメリーの間にクッションが現れた。

しかしこのままだとメリー号の衝撃が船首に一気にかかる。まぁ、折れないけど"折れないとおかしい"ということになる。

 

まだルフィ達には隠しておきたいからね。

ということで、さらにロビンにアイコンタクトでお願いをした。

 

するとメリー号の側面から大きな腕が2本生え、水面を叩くように突きだした。

するとメリー号の進路が変わり、そのままメリー号と絶壁の隙間へ流れる海流に乗れることが出来た。

 

 

「た、助かったぁ~」

 

 

安心したウソップはその場に尻餅をつきカヤが心配そうに付き添う。

これで無事にメリー号は海へと流れ着いたので良かったと安心としたところでルフィが

 

 

「ニッシシシ!!うまくいったな!!!」

 

 

と、自慢そうにデッキ上がってきた。

全員が冷たい視線を送るが全く気にしてない。

はぁーとため息をついて、ルフィに嫌でも"やらかした"ということを自覚してもらうために

 

 

「………ロビン」

「分かってるわ」

 

 

ドンッ!!!!

 

 

「ぎゃああああああああああああぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

肥大化したロビンの腕+武装色でおもいっきり殴った。

それもラブーンの方に向けて飛ばしてやった。

ラブーンも飛んできたルフィが分かったらしく、大きく口を開けて………パクリ。

 

 

「…………へぇ??」

 

 

誰が間抜けな声を出したが問題ではない。

いや、問題はない。である。

 

 

「よし。船に損傷がないか確認しようか」

「そんな場合かああああああああぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

ウソップがハリセンを取り出して叩いてきた。

うおっ、流石ツッコミ担当!!

グランドラインに入ったウソップは輝いてるなー!

 

 

「大丈夫、大丈夫。

簡単には溶けないから。胃液でも溺れないように近くの樽も一緒に飛ばしたんだから」

 

「そういう問題かッ!!!!食べられたんだぞッ!!!!

どうするだよッ!!どうやってルフィを助けるんだッ!!!??」

 

 

確かにマトモな意見だ。

しかしそこは問題ない。

 

 

「あそこから」

「…………へぇ?」

 

 

そう、ラブーンには体内に入る特製の"扉"があるのだ。

そうだ。せっかくだ。

こんなに調子がいいなら

 

 

「うん。ウソップ君。

今回は"君に"決めた!!」

「へぇ?」

 

 

 

…………………………

 

 

「じ、じぬ"がどおもっだぁー!!!」

 

 

最近泣いてばかりのルフィである。

でも仕方ない。ロビンの攻撃をフルに受けているのだから。あんなの受け続けていたら廃人になる。それをこうして精神を保っているルフィはスゴい。

 

……まぁ、もう、手遅れなのかもしれないけど……

 

飛ばされた時に一緒飛んできた樽のお陰で、必死にしがみつきこうして溺れずにすんでいるが。

 

 

「………飲み込まれたよな?」

 

 

周りを見ると海で、上には空がある。

確かに巨大な鯨に飲み込まれたと思ったのだが……

 

 

「…………花?」

「………………」

 

 

そこには島があり、家があり、椅子があり、頭から花のようなものを付けた人がいた。

 

 

「上がってこんのか?」

「おれ、泳げねぇから」

 

「……能力者か。しかし手伝いはせんぞ」

「まぁ、ばた足ぐらい出来るから大丈夫だ」

 

 

といっても力もあまり入らずゆっくりしか進まない。

それを見かねた老人は家からロープを持ってきてルフィへ投げた。

 

 

「ありがとう!」

「礼はいい。こんな所で()()()()()()()()()()()()()

 

「死体?」

 

 

なんこ事か分からなかったルフィだがなにか変な臭いがしてきた。それも自分の周りから。

自分自身を見てみると服がどんどん溶けていっているのだ。

 

 

「ぎゃああああっ!!!溶けるッッ!!!!」

「だからさっさと捕まらんか」

 

 

ロープに捕まり老人に引っ張ってもらい溶ける海から脱出したルフィ。

 

 

「あ、ありがどうございます"……」

「気にするな。なにせここは鯨の胃のなかだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

その言葉に絶句するルフィ。

ここはやはり鯨の胃のなか。そしてこの老人が言った言葉はここで……生涯を………

 

 

「ふ、ふざけるなッ!!!!ここにずっとなんていられねぇ!!!!」

 

「と、言っても仕方ないことだ」

 

「俺には仲間がいるんだよッ!!!!

アイツらが俺を待ってる!!!帰らなきゃ行けないんだよ!!!!」

 

 

こんな所で死ぬわけにはいかない。

しかしこの老人がいうことがどうしても頭を過る。

それでも必死にそれをはね除けて

 

 

「どうやったら外に出れるんだッ!!?」

「あの"扉"から出れるが」

 

「出れるのかよッッ!!!!」

 

 

珍しいルフィのツッコミ。

でも仕方ない。あんなこと言われたら誰でもここで胃酸に溶かされて死ぬ。なんて考える。

 

 

「ただ今は鯨が海に入っとる。そんなタイミングで外に出たら今度こそ死ぬぞ」

 

「なるほど。ありがどうございます」

 

 

素直にお礼をいうルフィ。

確かに冷静ではなかったがもう少し言い方を考えてほしかった。なんてことはルフィは考えない。

 

 

「でもよ。なんで鯨になんかに扉があるんだ?」

「鯨ではない。"ラブーン"だ」

 

「あれ?さっきまで鯨って」

「言ってない」

 

 

言っていたような気がしたがそう言われると言っていない気がする。というとこで言っていなかったことにするなんとも軽すぎる頭のルフィだった。

 

 

「で、なんで扉があるんだ?」

「治療のためだ。ここまで大きいとこうして入るしかないのだ」

 

「うおっ!!でけぇ扉もある!!!よく生きてるなッ!!!!」

「生かすための処置だ。生きてもらわなければ困る」

 

 

そっかーと軽い感じで受け流すルフィ。

老人はそのルフィの言葉にどう思ったのか新聞をたたみ立ち上がった。

 

 

「せっかくだ小僧。一緒に来い」

「小僧じゃねえ。俺はルフィだ!!」

「そうか。ワシはクロッカスだ」

 

 

………………………

 

 

「な、なぁ…どうして俺なんだよ……」

「ウソップが一番対応力があるから」

 

「ならロビンだけでもいいだろうがッ!!」

 

「五月蝿いわね。

その鼻、折って引きちぎったあとに貴方の喉に突き刺すわよ」

 

 

「こええぇぇよッ!!カヤああああああああぁぁぁぁぁ助けてくれええええええええぇぇぇぇぇッ!!!!」

 

 

叫んでも無駄である。

ラブーンが海に潜る前に体内へ入ったのだ。

聞こえるわけがない。

 

しかし揺れるなー

というか上下左右、様々に動くから普通なら壁に何度もぶつかったりするだろう。

 

僕は一時停止で()()()()()()()()()()()状態。空気を止めてそこを足場にしているなので関係ない。

ロビンは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ので滑らない。

ウソップは僕と似ている。()()()()()ので問題ない。

 

ようはこれが出来るか出来ないかで選んだのだ。

じゃないと……

 

 

『マズイぞミス・ウェンズデーッ!!!!

下は胃酸の海だぁ―――ッ!!!!』

 

『いやああああああああぁぁぁぁぁ―――――――ッ!!!!』

 

 

………………。

 

 

「ウソップ。対応力あって良かったね」

 

「マジでありがとうございます!」

 

 

ザバァッン!!!!!

 

 

遠くから聞こえてきた声と波しぶき。

この時ウソップはハジメからの手紙が届いて本当に良かったと思った。

 

 

「だけどよ。さっきの声は誰なんだ?

やっぱりこの鯨の扉や通路を作ったやつか」

 

「………まぁ、ちょっとばかり黒歴史を作ったお姫様…ってところかな……」

 

「………たまに、マジで何言ってるのか分からねぇこというよな……」

 

「お兄ちゃんだからいいのよ」

 

 

何の解決にもなってね…とぼやくウソップ。

まぁ、色々ツッコミたいことあるだろうけどこれでげっそりしていたらこの先やってられないよー

 

そして通路の先に光が見えてきた。

その向こう側に見える景色とは

 

 

「………なんじゃ、こりゃ……」

「こんなものだよ。グランドラインって」

 

「つまり"ツッコミの宝庫"かぁ……いらねぇ……」

「頑張ってねぇ」

 

 

リゾート地みたいな鯨の井の中。

そしてそのリゾート地の海にバタバタと暴れまわる二人組がいた。

 

 

「お、おいッ!!!!助けてくれぇ!!!!!」

「こんな所で死にたくなぁぁぁいいいぃぃぃ!!!!」

 

 

いや…こんな感じ会いたくなかったなー。

あれが()()()()()()なんだよなー。

しかしそんな人が()()()()()()()

事情があるにしろ、それでラブーンを……ってのは流石にねぇ……

 

ということで、自分たちがやろうとしていたこと分からせたほうがいいかな。

 

 

「おーい。質問に答えたら助けてもいいよー」

 

「ほ、本当かぁ!!」

「答えるから助けて!!」

 

 

それでは参りましょう。

 

 

「第一問!ここには何しに来ましたか?

素直に答えなければペナルティです」

 

「く、鯨の生態を調べにッ!!」

 

「ペナルティ」

 

 

その声と同時に男のほうが突然胃酸の海に沈んだ。

簡単である。手足をロビンの力で拘束すればいいだけ。

十秒したら解放。そしたら浮き上がってきた男は

 

 

「こ、殺す気かぁッ!!」

 

「ペナルティ。理解できましたか?

嘘は止めたほうがいいですよ。僕、そういうの()()()()()()()

 

 

と、言ってやったら顔面から血の気が引いたようになった二人。ついでに隣のウソップも同じになってるけど気にしない。

 

 

「それでは実際はどうですか?」

「鯨を殺って食料にしようとしたのよッ!!」

 

「なるほど。では第二問。

そんな事すればどうなりますか??」

 

「な、何を分からないことをッ!!」

 

「ペナルティ」

 

 

再び胃酸の海に沈む男。

もう隣の女はガタガタ震えている。

また十秒で解放してやるともう反撃する気も起きないようで

 

 

「お、俺達の…食料が…か、確保…される……」

「なるほど。では最後の問題。

間違えたら両方沈めます」

 

「い、いやぁ……」

 

「ダメですー。

それではこの体内で殺したとしてそのあと"どうなるか"考えてください」

 

 

その問いかけにウソップはすぐに分かったらしく、「こ、こええぇぇ……」と想像して怖がっているようだ。

 

僕も流石にそんな()()()()()()()。多分死なないだろうけど。

 

 

「まさか……出られないの……??」

 

「正解です。

というかどうしてそれが分からないのですかね?ここは鯨の胃のなかですよ。そこで死んでしまったらあとは沈むだけって理解できないんですか。もしかして浮くとか考えてます?それはこんな風に治療のための改造してなければの話なんですよ。いいですか?こうやって穴が空いていればどこから空気が漏れるんです。それでもこうして中に入らないのは鯨が生きているから。それが死んでしまったらどうなるか分かるでしょう?まぁ例え空気が漏れなくても鯨は腐敗するのが速いのですぐにアンモニアが滞留して人なんて簡単に殺ってしまいますけど。それどころかここはいま海の中。死んでしまえばそのまま鯨は深海へ流されますね。乗る海流が悪ければ一生空を拝めなくなりますね。分かります?そんな危険なことをしようとしていたんですよ。それを、食料の為?バカなことを言わないでください。大体鯨をとったとしてもさっき一通りに腐敗が速いんですよ。こんな大きな鯨の肉をどうやって持ち運んで保存できるか教えてほしいですね?えっ、もしかして分からずに殺るつもりでした?まさかそんなバカな。ことは考えてませよね。ねぇ、どうなんですか?そこところが重要になってきますよ。こんな大きい鯨を食料にするぐらい()()()()()じゃないかぎりはそんなバカなことをするわけがないですし。いや、むしろバカか。鯨の保管方法も知らないやつを寄越す時点で組織がどれだけかってのが分かりますね。はい。ダメな組織ですね。もうやってられないでしょう。なんでそんな組織に入ったのか?やっぱり給料が良かったですか?それだけで入ったならもう組織というか()()()()()()()()()。うん?元々貴方達がダメだからここに送られてきたとか?あぁーなるほど。だからこんな大きな鯨を食料にしてこいと指令が来たわけですね。全く残念な人をやれば失敗するのは目に見えてる。でも組織としてはまったく痛くも痒くもない。これは残念でした。まさかすでに見放されていたとは。でも大丈夫ですよ。ここからやり直せばいいんです。別に鯨の肉を持って帰らずとも他にも食料があるんですから。そうですね。ここで一番近くて大きいのは海王類ですかね。そうだ!僕がカームベルトまで送ってあげますよ。あそこなら大きな大きな海王類がいっぱいいますから。食料には困らないですし、倒せば認めてもらえるかもですね。大丈夫。()()()()()()()()()()()()()()()()行きましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ご、ごめんなさい……」」

 

 

あれ?泣いちゃった……

で、隣のウソップも青ざめてるし……何かしたっけ?



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ネフェルタリ・ビビ

「それじゃこの"ラブーン"は仲間が帰ってくるのを信じてるのか?」

 

「あぁ。こうしてレッドラインに頭をぶつけるのも、この向こう側にいき故郷に()()()()()()()()()()()()()()()。しかしもう……」

 

 

ラブーンに鎮静剤を打ち元いた胃酸の海に帰る途中。

ルフィはどうしてこんなに振動がスゴいのかとほんの疑問程度で聞いてみた。

 

するとそこにはラブーンの想いがあった。

もう、会えない仲間の元に帰るため。

無理だと分かっていてもレッドラインを壊しても故郷に帰るために。

 

 

「何度も告げた。しかしラブーンは聞き入れてくれなかった。"ここに帰ってくる"それだけを信じてな……」

 

「……………」

 

 

この話が終わった頃に胃酸の海に戻ったきた二人。

するとクロッカスがいたあの小島に複数の人間が見えた。

 

 

「ッ!!?あのゴロツキ共めぇッ!!!!」

「待ってくれッ!!!!あそこに俺の仲間がいる」

 

 

クロッカスがいうゴロツキはきっと男女ペアのこと。

そしてその他の人間はルフィの仲間。

で、ここからが問題です。

 

さて、何をしているのでしょうか?

 

 

「吐け。何もかもすべて吐け」

「いいなさい。楽になるわよ」

「これ以上、()()()()()()()()()()??」

 

……こぽ…じで……

……パパ………たず…けで……

 

 

それは男女がボックスの中に閉じ込められて、外から、上下左右から、剣で刺されている姿だった。

もちろんマジック。血なんて出るわけない。

 

しかしマジックは"信頼"というものがあって"安心"が出来る。

 

"信頼"という「摩訶不思議なことが起きても何も問題ない」というマジックをしないといけない。そしてそれをお客様に見せないといけない

マジックをする側がお客様に()()()()()という信頼を得て成功するのだ。

 

これがなければマジックは破綻。

そしてここに破綻しているマジックがある。

これは脅迫に使えばとんでもないものとなる。

 

"いままだ大丈夫"

"だけどいつか刺される"

"だって敵なんだから"

 

それは人の精神を破壊するにはうってつけ。

恐怖との戦いである。

並みの人間ならこれで何もかも吐いてしまう。

 

 

「……あいつらは、悪魔か……」

「みたいなもんだなー」

 

 

…………………………

 

 

「で、泡ふいて気絶してコイツらどうするんだ?」

「どうしましょう?」

 

「考えてから行動しやがれッ!!」

 

 

珍しくゾロから指摘された。

まぁ、やり過ぎ感は否めないな。

隣ではウソップがカヤに説教されてる。

完全に巻き添えくらっただけ、ではなく、あのマジックの時はノリノリだったからー助ける必要なし。

 

僕も反省はしてるよ。後悔はしないけど。

隣にいるロビンなんか全く反省も後悔もないからね。

 

 

とにかくいつまでもラブーンの体内にいるわけにはいかなかったので外へ出てきた。で、この気絶している二人も一緒に連れてきたのだ。中で目が覚めてまたラブーンを狙うならそのままにするわけにはいかないしね。

 

その辺にポイッと捨てても良かったけど。

まぁ、これでも王女様なんだよねー

 

 

…………お話だけでも進めたほうがいいかなー

次の島は別にどうでもいいし。ロビン初登場!ってのもないし。寄ってもすぐに出ればいいし。次のログが貯まるまで半日だし。

 

よし!!そうと決まれば!

あの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を教育してあげましょう!

 

 

「ゾロ。そっちあげる」

「あぁ??あげるって……」

 

「ロビン。もう一人連れてきて。

僕が直々にOHANASHIしてあげるから」

 

「楽しみだわ」

 

 

ロビンは王女様をベルトコンベアで運ぶように能力を使って運ぶ。そしてガチャっと扉がしまったあと残されたメンバーは

 

 

「………終わったな……」

「………助けられない、よね……」

「ハジメだぞ。ロビンよりキツイよな……」

「廃人で、すめばいいですけど……」

「レイジュ。昔からの知り合いなら…」

「無理ね。あぁなったハジメは止められないわ」

「私達は航海の準備をしましょう」

「そうね。ベルメールさん手伝って」

「分かったわ」

「そういえば船長は?」

 

 

全員が喋ったと思いきや一人足りない。

周りを見渡すとルフィが

 

 

「く、クソッ―!!!全然折れねぇッ!!!!」

 

 

メインマストを折ろうとしていた。

 

 

『なにやってんだこのバカああああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!』

 

「ごぶばべだじがざッッ!!!!」

 

 

全員からの総攻撃によりルフィ。死亡。

 

 

「…………なんだこの海賊は………」

 

 

そう思いたく、言いたくなりますよねクロッカスさん。

 

 

 

…………………………

 

 

「……ぅ……ぅ………」

 

 

なんだか悪い夢を見ていたような……

 

ゆっくりと目を開けるミス・ウェンズデー。

ぼやけた視界の先には

 

 

「おはようございます」

「き、きゃああああああああぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

 

悪魔がそこにいたかのように叫ぶミス・ウェンズデー。

叫ばれたハジメは平然としてミス・ウェンズデーから距離を取って

 

 

「あら?トラウマになりましたか?」

「な、なによ貴方達はッ!!?」

 

「大将です」

「中将よ」

 

「んな嘘、信じれるわけがないわッ!!!!」

 

 

えぇー。

信じてもらわないと話にならないしなー。

 

 

「じゃ海軍の上層部。それも大将クラスしかしないことを一つ。

…………コブラさん。よく娘さんの成長を確かめる為だと着替えとか入浴とか覗きにきて、その成長具合をよく酔っぱらって海軍の……」

 

「止めてええええええええぇぇぇぇぇッ!!!!////」

 

 

恥ずかしくて縮まるミス・ウェンズデー。

ちなみにその海軍の情報部、というか、ロビンの配下の月兎、マカナが得た情報なのだけどね。もちろん()()()()()は知りませんよ。

 

 

「これで証明されたかな、()()()()()()()()()()()

「………もう、ビビでいいわ。…もうパパったら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰ったらお仕置きね♪」

 

 

………なんだろう。

また、一切手を加えてないのにS化している気がするのは………

 

 

「まぁ、最近"アラバスタ"で不審な動きがあるって報告はあったから探りは入れていたけど……まさか、王女様まで()()()()()()()()()()()()()()とは思わなかったよ」

 

 

その言葉に悔しそうな表情するビビ。

そして意を決したように表情を変えて

 

 

「お願いです!

Mr.0を、()()()()()()()()()を捕まえてくださいッ!!!!」

 

 

グランドラインに入って長期に渡る決戦の一つ。

この物語でロビンとチョッパーが仲間になる。

まぁ、ロビンはいるけどね。面影一つないけどね。

 

でもドラム王国へ行く必要があるのは確かだ。

そのためにも"リトルガーデン"にいく必要がある。

これは物語を変更するわけにはいかない。

 

つまり、ビビには悪いけど

 

 

「いまの僕には、出来ない」

 

「ッ!!?どうしてッ!!!!

貴方が大将で、私の国のことを知っているなら出来るハズよッ!!!!」

 

「逆だよビビ。()()()()()()()()()()()()()()()

これは僕の意見ではないんだ」

 

「……まさか……ッ!!?」

 

「そう。"世界政府"が揉み消そうと、いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

この世界のお偉いさんはバカだ。

確かに世間的にミスをおかせば信頼は失われて、世界のバランスが大きく崩れるかもしれない。

 

それでも人が傷ついていい理由にはならない。

でもそれを世界政府は見ないフリをするのだ。

 

 

「……だったら…どうすればいいのよ……」

 

 

せっかく助かると思った道。

なのにこんなにもアッサリと途絶えたら絶望もするだろう。

だけど、そんな絶望をする必要は、ない。

 

 

「簡単だよ。僕を()()()()()()()()()()

「……えっ?」

 

「ここの海賊ね。人がいいんだよ。

きっとこの現状を話せば力になってくれる。

そしたら僕も手伝うよ。僕は"麦わら海賊団の監視役"だからね」

 

「ほ、本当に……」

 

「僕としては"色々条件をつけるけどね"

それでも最終目標"クロコダイルを倒す"は果たせる。

さぁ、どうするビビ??君はここで立ち止まるかい?」

 

 

その言葉に、溢れる涙を拭ってビビは

 

 

「私は……アラバスタを救いたいッ!!!!」

「OK。契約成立だね」

 

 

…………………………

 

 

「そ、そんなことで、いいの?」

「重要なんだ僕にとっても。君達にとってもね」

 

「……よく、分からないけど…分かったわ」

「そう。なら、行こうか」

 

 

ビビに"ある条件を"言ったところそれについて不思議がっていたが問題なく了承を得た。

これなら僕の思うストーリーになるはず。

まぁ、そんな上手くいくほど世の中出来てはいないけど。

 

と、あまり喋らなかったロビンの隣につき

 

 

「どうしたのロビン。何かあった?」

「…いえ。なにかあの子…()()()()()()()()ような気がして……」

 

「ッ!!?」

 

 

その言葉に戸惑うハジメ。

しかし戸惑うのは仕方ないとしか言えないのだ。

 

 

(あ、あり得ない……ッ!!

だってロビンはずっと僕と一緒にいたんだ!それにいなかった時期もあってもロビンが隠れて()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()

偶然なのか??偶然に会ったことがあるというのか!!?)

 

 

なにか見落としがあるのかと頭をフル回転されるハジメ。そんなハジメの様子にロビンは心配になり

 

 

「お、お兄ちゃん…大丈夫?」

「ぁ、あぁ……」

 

「間違ってもお兄ちゃんの不利になるようなことはしてないわ。でも違和感があるの。それだけは信じて」

 

「大丈夫。信じてるよ。

でも……その違和感が、何かありそうで……」

 

 

そんな不安そうな表情をするハジメを見たロビンはずっと気にしていたことをもう一度頭の中で考え始めた。

 

 

(いまのお兄ちゃんに"ラブーン"のことは、伏せた方がいいわね……それにお兄ちゃんのことだから()()()()()()()()()()()()()()()()()。ふふふ、()()()()())

 

 

となりのハジメが"世界が狂ったために起きる代償"のようなものがまた来るのではないかと心配している中、ロビンは今後が楽しみと微笑んでいる。

途中で後ろをチラッとみたビビは

 

 

(ほ、本当に…大丈夫なのかしら……)

 

 

二人に任せて良かったのかと心配していると

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアッッ!!!!」

 

「ウソップッ!!?」

 

 

その叫び声にダッシュでデッキへ。

するとウソップとギンは腰を抜かしており、ルフィとゾロは緊張で固まっている。女性陣はどうしたらいいのかと動けずにいて…サンジが()()()()()()()

 

 

「この不届き共がッ!!!()()()()()()()()()()()!()!()!()!()

 

「さ、サンジ~ッ!!!!

な、何なんだよッ!!いきなり来てサンジを"石"にするなんてよッ!!!!」

 

「五月蝿いの。それは妾が()()()()()()()!!!」

 

 

…………なんか、聞き覚えがあるぞ………

ってか、なんでこんな所にいるんだよ……

あんたの出番はずっ―――――――――――――と先なんだけど。まだルフィ達に会わせるつもりなかったのに……とくに固まっているサンジには……

 

 

「……おい、ルフィ。…勝てるか?」

 

「師匠から全力出してもいいって言われても…厳しいかもな……」

 

「チィッ!おい、ウソップ!!!手伝えッ!!!!」

 

「は、はぁ!!?勝てるわけねぇだろうッ!!!!

分かるだろう!!どんだけの"化物"かぁ!!!??」

 

「勝たなきゃ…やられるだけだ……」

 

「師匠達はいつ出てくるか分からねぇしな」

 

「ち、チクショッ!!!!やってやるよ!!!!!」

 

 

なんか、勝手に盛り上がってるな……

まぁ、経験させるためにもいいかな?

ということで、船内に戻って気付かれないようにした。

ちなみにルフィ達はハジメがこういう時、どんなに呼んでも出てこないということを知っている。だからこそいまは自分達でどうにかしないといけないと判断力したのだ。

 

 

「ふん。向かってくるなら振り払うだけじゃ」

 

 

王下七武海の1人、ボア・ハンコック。

マジで、何しに来たんだこの女は………



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ボア・ハンコック

「で、ルフィ。あの"力"使えるのか?」

「バレたら殺される」

「おいッ!!そんなんで勝てんのかッ!!」

 

 

使っても勝てないだろう。流石にまだ実力が足りない。

 

 

「……"能力"までなら…半殺しかぁ………」

「いや、悩むなよッ!!やらなきゃやられるんだぞッ!!」

「悪いがルフィ、やってもらうぞ」

 

 

 

まぁ、それぐらいは許すか。

それにここからの戦いはほとんど能力との戦いになる。

少しでも強くなるためにもそろそろ解禁だとは思っていたけどここでもいいかな。

 

 

「いいかなロビン?」

「お兄ちゃんがいいなら。負けたら望み通り半殺しだけど」

 

 

………残念でしたルフィ。

こうなったロビンは僕でも止められないよ。

 

さて、能力解禁となったルフィ、そしてゾロとウソップ。

どこまでやれるのか見物だなー

 

 

「「「いくぞッ!!」」」

 

 

いきなりウソップがポケットから一つの弾を手に取りパチンコにセット。ハンコックに、足元に目掛けて放った。すると破裂した弾は一気に煙が立ち込めた。

 

そこにゾロがいきなり大技を放つ。

 

 

「"三刀流""百八煩悩(ポンド)(ほう)"ッッ!!!!」

 

 

3つの刀から放たれた"飛ぶ斬撃"は煙の向こうにいるハンコックの元へ。しかしそれでは勝てないなんて分かっている。だからルフィはゾロの技の背後に回り走り出した。それと同じ時、ルフィの両手は後方へ大きく伸びていた。

 

 

「小賢しいわッ!!!!」

 

 

大きく振り抜くその美しい脚が煙幕とゾロの一撃を一瞬で消し去る。

分かっていたことだがいとも簡単に受け止められたこのに舌打ちをした。

 

しかしまだゾロの攻撃の背後にはルフィがいる。

完全にハンコックの懐に入ったルフィは両手を戻して全力でハンコックに向けて放つ。

 

 

「ゴムゴムの、バズーカッ!!!!」

 

 

完全に入ったと、攻撃のタイミングも完璧に思えた。

しかし、

 

 

「バズーカ?さっきの者も同じようなものを言っておったか?」

 

 

しかし、ルフィの攻撃はハンコックの"脚1本"で受け止められたのだ。それも戦いが始まってから一歩も動いていない。

 

 

「こんなものが、砲撃とは、片腹痛いわッ!!!!」

 

 

攻撃を受け止められた脚でルフィの腹部をおもいっきり蹴り飛ばした。血を吐きながらルフィの体は後方へ吹き飛ばされウソップがとっさに出した"わたあめ"のようなフワフワしたものでキャッチした。

 

 

「話にならん。こんな奴らになぜ"兄様"が……」

「兄様??」

 

「そんな砲撃よりも妾の"銃"のほうが上手じゃ」

 

 

すると人指し指にキスをするハンコック。

あっ。あの技は能力者のルフィでもマズイな。

その人差し指を、指をピストル型にしルフィ達に向け

 

 

ピストル()キスッ!!」

 

 

すると出てきたのはハートの弾丸。

なんとも可愛らしい。と油断なかれ。

放たれた弾丸は普通の銃弾よりも速く、そして能力者であるルフィ。それも"ゴムなら効かない弾丸"なのにそれはルフィの体を貫いた。

 

 

「ぐっ!!」

「ちっ!!」

「ってぇ!!!」

 

 

三人の足や腕や横腹などにハートの弾丸が当たり怪我を負う。致命傷とはいかないが足止めには十分な攻撃。

 

 

「ふん。これさえも避けれぬとは……これで終いじゃ」

 

 

ルフィに近づいたハンコックはそのピストル型の手を、人差し指をルフィの頭に向けた。

逃げようにもルフィは足を撃たれており逃げられない

それでもどうにかしようと、諦めないそのルフィの眼にハンコックは……

 

 

(なんじゃ…その眼は……

なぜ諦めぬ。もう勝てぬと分かっているはずじゃ……)

 

 

明らかに、もう逆転しようがない。

実力差を埋める手だてもない。

それなのにまだ、諦めていないの眼。

 

 

「何故諦めぬ。勝てぬと分かっているはずじゃ」

「あぁ。勝てねぇ。でも諦めねぇ!」

 

「意気込みだけあっても無駄じゃ。これで…」

「………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「何を言って……ッ!!?」

 

 

その瞬間、ルフィの体から蒸気が発生した。

皮膚も赤くなっていき高熱を帯びているかのように。

同時にルフィの腕が一気に後方へ伸びて

 

 

「こっちの"ピストル"なら、どうだッ!!!!」

 

 

とっさの事でハンコックは避ける体勢に入れなかった。

そのためこれから放たれる一撃を受け止めるために脚をボディの前に

 

 

「ゴムゴムの…"JETピストル"ッッ!!!!」

 

 

ハンコックと同等のスピードを持った拳がハンコックの脚へ一撃を与えた。その衝撃は止めることは出来ずに後方へと飛ばされる羽目に。

 

 

「き、貴様ッ!!!!」

 

 

その瞬間、ハンコックを中心に何が広がった。

それはルフィやゾロ、後ろにいたナミ達も巻き込み片膝をつかせた。

 

 

「く、くぅっ!!!」

「な、なんだこれはッ!!?」

 

「な、何なのッ!!!!」

「なんでレイジュだけは立ってるんだよッ!!!!」

「………ギリギリよ。私もね……」

 

 

ハンコックの放った覇気。

 

数百万人に1人しか素質を持っていない。世界で名を上げる大物はおおよそこの資質を備えているという。

“王の資質”を持つとされ、戦うまでもない程の圧倒的な力量差がある相手をこの覇気で一瞬で気絶させることができる。

 

これが"覇王色の覇気"

 

しかしルフィ達は身動きが取れなくなったとはいえ、誰も()()()()()()()()()()()

 

 

「ほう。妾の覇気に堪えるとは……」

「もうそこまでにしてあげてね。ハンコック」

 

 

そしてそんな覇王色の覇気の中を平然と歩くのはハジメとロビン。

 

 

「は、ハジメ……」

「お疲れ様。もう大丈夫だよ」

 

 

ルフィの傍に立ちポンっと肩を叩く。

そして目の前のハンコックは下を向きワナワナと体を震えさせて

 

 

「兄様あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 

もう一瞬、刹那、誰もとらえられないほどのスピードでハジメに抱きつくハンコック。そんなスピードで抱きつかれたら普通はぶっ飛ぶがハジメクオリティで問題なし。

 

 

「お久しぶりでございますッ!!兄様ッ!!!!

妾はずっと、ずっと、ずっと!!この時をお待ちしておりましたッ!!!!」

 

「久しぶりだねハンコック。元気にしてた?」

 

「はい!!妾はずっと……」

「そこまでよハンコック」

 

 

更にスキンシップを取ろうとしたハンコックに制止を求めたロビン。

 

 

「久しぶりでございます姉様」

「ええ。ソニアとマリーも来ているの?」

 

「もちろんです。…良ければこれを引いては……」

「あら?そうね」

 

 

ルフィ達には分からなかったがハンコックの急所にナノの手で作った黒いナイフのようなものがいつでも切り裂き、突き刺す体勢に入っていた。

 

それをハンコックはロビンの問いかけにすぐさま反応してスキンシップを止めた。あと一秒でも遅かったら……

 

 

「で、何をしにきたの?」

「確かに。あまり七武海が勝手に動くのは…」

 

「七武海ッッ!!!??」

 

 

その言葉に反応を示したのはビビ。

まぁ、驚くの仕方ない。クロコダイルと同じ七武海。

そんな奴がこの船にいるのだから。

 

 

「なんじゃあの娘は?」

「気にしなくていいよ。それより…」

 

「何を言ってるんですか!!その人はッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黙って。何も知らないだろうが」

 

 

無意識とはいえ、思わず睨んでしまったハジメ。

もしかしたら"覇気"を使ったのかもしれない。

ビビはさっきまで耐えていたのにその場で気絶してしまった。

 

 

「………やっちゃった……」

「仕方ないわ。カヤ、介抱してあげて」

 

「は、はいッ!!」

 

 

くいなとカヤ、ベルメールさんも一緒になってビビを船内へと運んでいった。なんか申し訳ない表情で見送るハジメ。

 

 

「やはり持っていたのじゃな兄様」

「当たり前よ。お兄ちゃんだもの」

「それはいいから、どうしてここに?」

 

 

ルフィ達は何のことか分からなかったが聞ける雰囲気ではなかった。何が起きたのか分からないが、いま下手に声をかけたらヤバイと本能的に理解したのだ。

 

 

「妾も、その…()()()()()()……」

「何を?」

 

「婚約指輪ぁ♪」

「マジで自分の立場考えろッ!!!!」

 

 

俺も人には言えないかもだけど!!

それでもあえて言う。何しに来てるのマジでッ!!!!

 

 

…………………………

 

 

「…………ッ!!!」

「気がついたみたいだね」

 

「……あの人は……」

「ロビンと話してるよ。まだ10分も経ってないから」

 

 

ビビの所にきたタイミングで起きて、真っ先にハンコックのことを聞いてきた。

まあ言いたいこともあるだろうから、カヤ達には退席してもらって話す事にした。

 

 

「僕はね、七武海の"管理"もしてるんだ」

 

「ッ!!!??

………な、なら、どうしてクロコダイルをッッ!!!!」

 

 

そういって掴みかかってきたビビ。

……そうだよね。僕がしっかりしていれば……

でも、言えない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて……

 

きっとこの先、ビビにとってもかけがえのないものを手にする。でも、その為に"国"を"国民"を犠牲にするのはおかしい。って知ったらビビはそういうだろう。

 

 

「完全に僕の私用のせいかな。ある日から僕は()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それは…どういう……」

 

「影武者。いまの大将"絶黒のハジメ"は僕の影武者なんだ」

 

「ッ!!!??」

 

 

 

「そして僕は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「だから全くといっていいほど大将の仕事どころか七武海の管理を全て任せていたんだ。まぁその影武者のせいにすれば済むかもだけどそうはいかないよね」

 

「でもね。それでも他の七武海を"悪"だとは決めつけないで。海賊だから"悪"だと認識するのは分かるけど、それでも、少なくともハンコックは()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「どうかそれだけは分かってほしい。

納得いかないなら、僕を糾弾すればいい。

だから、お願いします。ハンコックを責めないで」

 

 

伝わるか分からない。

それでも言わないといけないと思った。

ハンコックは本編と同じ傲慢かつ超が付くほどのわがままで高飛車。威圧的で唯我独尊な態度を崩さず、相手を見下すような言動が目立つ。自分の通り道にいた子猫や子アザラシなどの小動物を蹴飛ばしたりと自分勝手。

 

かもしれない。

 

でも、それでも、むやみに一般人を傷つけない。

石にしないようにしてくれているのだ。

僕が、少しでもハンコックを変えたくて。

少しでも人の痛みが分かるようにと……

 

 

「…………信じられません………」

「…………」

 

「………あの人は、信じられません……けど……

…………ハジメさんは、信じられます………」

 

「………ビビ……」

 

「だからあの人を信じる、ハジメさんを、私は信じます。それで…いいですか?」

 

「うん。十分だよ」

 

 

……………………………

 

 

「嫌じゃ!!妾も欲しいッ!!!!」

「ダメよ。貴女はまだダメ」

 

「なぜその者がよくて妾がダメなのか分からぬ!!!

まさかッ!!!そんな()()()()()()()()()()()()()()()!()!()?()

 

「ありえないわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()私がすでにバー……」

 

「なんで私、巻き添え食らってるのッ!!!??」

 

 

戻ってみるとハンコックとロビン、そしてなんか巻き込まれているベルメールさん。

どうやら"婚約指輪"について揉めているようだ。

 

 

「五月蝿いわね。第一、貴女は私のオマケのようなものよ。お兄ちゃんがどうしてもというから婚約指輪を認めたけど、普通はありえないわ」

 

「いや、ちょっと待って。

認めてくれたじゃない!なんでそんなこというのよ!!」

 

「歳よ」

「なるほどの。"情け"というわけじゃな」

 

「勝てなくてもそのケンカ買うわよアンタらッッ!!!!」

 

 

………………よし。

 

 

「船から降りて今後の作戦会議だ」

「いや、無視するのかよ」

 

「飛び込むな。逃げは敗けではない。

って、誰かが言ってましたので」

 

「そいつ呼んでこい」



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描かれた絵

「「兄様(あにさま)ッ!!」」

 

「久しぶり、ソニアにマリー」

 

「全く…お主のせいでこんな所まで……」

 

「アハハ…すみませんニュン婆さん……」

 

 

船から降りた後ルフィの暴走やハンコックの出現、その前にラブーンのことなどを一通り話したあと"九蛇海賊団"の船が現れた。

 

ちなみにビビのことは伏せている。

ここで次の島に行ってからで十分である。

どうせあの人にも会って話さないといけないのだから。

 

で、船から降りてきたのはソニアとマリー。そしてニュン婆だった。本当にニュン婆には頭が上がらないや。

 

 

「お主が婚約なんぞするからこんな羽目に…」

 

「それ、ロビンに言ってくださいよ。

手配書で全世界にアピールとか……分かると思います?」

 

「……無理じゃな……」

「でしょう」

 

 

お互い苦労してますねーと慰めあっている頃。

 

 

「おめでとうございます姉様ッ!!」

「これで正式に"姉様"になるんですねッ!!」

 

「ふふふ。そうね。結婚式は貴女達の島でやりましょうか」

 

「それは皆も喜びますッ!!!」

姉様(ハンコック)姉様(ロビン)が一緒に結婚式なんて最高ですッ!!!!」

 

 

勝手に結婚式のプランを考えてるけどまだやらないからね。というか僕は蚊帳の外ですか、そうですか。

ちなみにここにいるロビンは分身です。

本体はまだハンコックとベルメールと言い合っている。

 

 

「まぁ、ハンコックに婚約指輪さえ渡せば大人しく帰るじゃろう。あまりここに長居はせんほうが良さそうじゃ」

 

「ですね。海軍が嗅ぎ付けたら面倒くさいですし」

 

「しかし大将であるお主が海賊とはな……

何を考えておるのじゃ?」

 

「昔から"ある男を海賊王に"ですよ」

 

「…………あれをか?」

 

 

ニュン婆が指差す方には麦わら海賊団が集まって"ある会議"していた。それは…

 

 

「ふざけんなッ!!!どう見ても俺だろうがッ!!!!」

 

「おいおいルフィ。そんな落書きじゃ分からねぇだろう?

やっぱりここは昔から絵心がある俺様のだろう!!」

 

「なに言ってるのよアンタたちはッ!!全くダメよッ!!

"カワイイ"が全く入ってないのなんて論外よ!この絵にすればラブーンの可愛さがアップするのよッ!!」

 

「ダメよ。それではダメ。

私のこれこそが芸術と呼べるものなのよ」

 

 

コイツら。さっきからラブーンの傷の上から描く絵について話し合っているのだ。

ここにハンコックがいたお陰になる。

あの時、覇王色の覇気でラブーンも当てられて興奮状態から落ち着いてくれたのだ。

 

そしてラブーンにしっかりと話が出来て"またここに帰ってくる"という証の為に絵をプレゼントすることになったのだが……

 

 

「はっ。どれでもいいだろう」

 

「「「「ふざけるなッ!!」」」」

 

「…ゾロ。いまそれを言ったらダメだよ……」

 

 

揉めに揉めているのだ。

あの麦わら海賊団の海賊旗のマークで。

 

ルフィはあの絵心のない絵。

ウソップはしっかりとした絵。

ナミはカワイイを押し出した絵。

ロビン(分身)はカン十郎が書いたような絵。

 

本当に昔からロビンはあのタッチの絵が好きだよなー。

そしてナミはまさかの参戦。どんだけ"カワイイ"が好きになってるの?

 

で、後の皆はそんな絵を見比べてどれにするか多数決しようか、どうしようか?じゃんけんでもいいじゃない?とか、色々話し合っている。

 

そんな麦わらの一味を見たニュン婆が一言。

 

 

「お主の影響が酷すぎるわ」

「何もしてません。とは言えませんね」

 

 

実力は間違いなく上がったんだけど……

なんか、残念海賊団になった…のかな?

 

 

…………………………

 

 

「では妾は帰ります。

兄様、何かあれば言ってくだされば妾は何処へでも駆けつけます!」

 

「その時はお願いね」

 

「はい♪

おい、麦わら!!兄様の足を引っ張るではないぞッ!!

お主は見込みがあるが今のままでは全くダメじゃ。もっと精進せよ!!」

 

「おう!ありがとうなハンコック!!!」

 

「妾をその名で呼んでいいのは()()()()()()()()!()!()!()!()

 

 

婚約指輪をはめて幸せそう表情で帰っていったハンコック。結局、渡さないと終わらないと判断したロビンは「形だけよ。本当に結婚したいのなら…」と色々条件をつけたようだけど僕にはそれを教えてくれなかった。

 

まぁ、これで少しは二人の仲が良くなればいいけど。

それにルフィに対してもハンコックの反応は良さそうだ。

 

このままハンコックとルフィ。ってのがいいけど…

こればかりはどうなるか分からないなー

 

で、もう1つの問題はというと。

 

 

 

「出来たぁー!!!!」

「おっ。なかなかいいんじゃねえーか!!」

「もっとカワイイが欲しかったわ……」

「これも1つの芸術ね」

 

 

 

ドクロの骨格や"X"の骨はウソップが。

表情や歯などをルフィが。

"背景"に花やぬいぐるみ等をナミが。

その花などに戯れる蜂や動物をロビンが。

 

 

「「「「「「「「カオス」」」」」」」」

 

「「「「失礼な」」」」

 

 

まぁ、ラブーンも喜んでいるみたいだから僕はいいけど。

これが海賊旗だと思うと……こわッ!!!!

 

 

「………ハッ!!ここはどこだぁ!!!」

 

「やっと起きたのね、Mr.9……」

 

 

あっ。いたの忘れていたわ。

というか、ハンコックの登場で完全に"アラバスタ編"について忘れていたな……

 

 

「やぁ、Mr.9」

「ギャアアアアアアアアアアアッッ!!悪魔ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」

 

「誰が悪魔だ」

 

 

そんなに怖いことはしていない。

()()()()()()()()()なのに失礼な。

 

 

「まぁ、それは置いておいてだ。

君ら、どうやってここまで来たの?」

 

「も、もちろん船だが…この近くで沈んで……」

 

「帰りの船がないと……どうする??()()()()()()

 

「「えっ?」」

 

 

いや、Mr.9は驚くのは分かるけど、なんでビビまで驚いてるの?話したでしょう?

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って。

 

そういえば合図送るまで"演技"しておいてっていったなー。だとしたら上手いよビビ。本気で驚いているかに見えたから。

 

 

「い、いいのか?」

「もちろん。馬車馬のように働いてもらいますから」

 

「ヒィッ!!」

「ちなみに拒否権は、ない」

 

「単なる脅しじゃねえか」

 

 

五月蝿いよゾロ。

もちろんルフィが最終決定するからね。

いやなら……まぁどうにかするしかないけど……

 

 

「ルフィはどう??連れていっていいかな?」

「構わねぇぞ。気に入らなかったらまた一周すればいいしな!!」

 

 

そういう器がデカいのがルフィの良いところだな。

もしくは単に考えてないのか……だな。

 

 

「よし!!野郎共!!出航準備だあ!!」

 

 

ルフィの合図と共に出航準備が始まった。

その間僕はクロッカスさんとお話でもしようーと。

 

 

「お騒がせしました。クロッカスさん」

「こんな海賊、初めて見た……」

 

「そうでしょうね。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!!?…知っていたのか……」

 

 

はい。と頷くと懐かしそうな表情をするクロッカスさん。

そうだ!!と思い僕はポケットからあるものを渡した。

 

 

「これをどうぞ」

「なんだこれは?」

 

「シルバーズ・レイリーへの手紙です」

「レイリーだとッ!!!??」

 

 

慌てるクロッカスさんはその手紙を奪い取るように手にして中身を読み始めた。まぁ、内容は見ないことにしよう。流石に無粋だもんねー

 

この手紙はもしかしたらとレイリーさんにお願いして書いてもらったもの。少しでも近況報告的なものが出来ればいいかなーと思ったのだ。

 

 

「………そうか。中々面白い経歴と経験をしているのだな……」

 

「どちらかというとこれからのほうが面白くなりそうですけどね」

 

「違いない。あの麦わらの小僧は、どこか、"船長"を思い出させる……」

 

「そうですか。それはいいお墨付きをいただきました」

 

「私もレイリーに書こう。少し待っていてくれ」

 

「分かりました」

 

 

ここで"白ひげ郵便"を使う手もあったけどこれも無粋かなー。

 

ちなみに白ひげ郵便とは、白ひげさんが頻繁に手紙を、文通をするものだから僕が極秘で作った組織みたいなもの。

 

知ってるのはもちろん文通仲間。

なのでセンゴクさんもネプチューンさんなども知っている大組織、ではないけど"超極秘情報部隊"と別に呼ばれている。

 

書いてる内容、日常的なものばっかりなんだけどねー

 

 

「さて、これで出航出来ますね」

「出来るかぁボケエエェッ!!!!」

 

 

ウソップのハリセンで思いっきり叩かれたハジメ。

痛くはないが

 

 

「痛くはないですけど心が痛いですよウソップ」

「じゃかわしいわッ!!!

サンジを()()()()()出航できるかぁ!!!」

 

 

と指差す方を見ると今だ石になってるサンジ。

しかしその表情はとても幸せそうで

 

 

「あのままでも、本望だと思いますが」

「いいかさっさと呼び戻せエエェ!!!!」

 

 

ルフィの「出航準備だ!」の時はノリノリだったのに、なんか理不尽だ。

 

 

…………………………

 

 

すぐにハンコックを呼び戻してサンジに()()()()()()()()()()()石化を解いてもらった。

そしてすぐにハンコックには帰ってもらったのだが

 

 

「てめぇ!!なんで帰したんだよッ!!!!」

「アホかぁ!!また石にされるんだぞッ!!!!」

 

「美女を見て石になるなら…本望だッ!!!!

 

「ほら、言ったでしょ」

「次はもう助けねえよチキショー!!!!」

 

 

やっぱりおかしいことを言っているサンジ。

もうダメなんだよ。多分死んでも治らない。

チョッパーやDr.くれはが見てもダメだと思う。

 

 

「クロッカスさん」

「なんだ?」

 

「僕達を追いかけて海軍が二隻来ます。

初めのほうは僕達の行き先を、二隻目は適当に誤魔化してください」

 

「それは構わんが……」

 

「もしタバコ咥えた男が文句を言ってきたら「ヒントがなければ追いかけてこれないんですか?」と「しつこいと嫌われますよ」と僕が言ってましたと言ってください」

 

「ケンカ売る気満々か……」

 

「いつも向こうが意味もなく仕掛けてくるので」

 

 

絶対違う。と、誰もが心の中でツッコミを入れた。

ノジコの腕につけたログポース。クロッカスさんからもらったログポースが指す先にはウイスキーピークがある。

その前に"アレ"を経験するんだよなー

みんな耐えられるかな?

 

 

「野郎共ッ!!出航だぁッ!!!!」

 

 

ルフィの掛け声と共に動き出す船。

さて、どうなることやら……



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ウイスキーピークへ

「な、何なのよこの海はッ!!!??」

「ノジコッ!!ログポースは合ってるのッ!!」

 

「ううん!!ちょっとズレたわッ!面舵よ!!」

「面舵ッ!!」

「二人とも気張りなさいよッ!!」

 

 

姉妹の連携により荒れているグランドラインの洗礼をなんとかこなしている。荒波は常にあり、雷雨やアラレ、強風が吹いたと思ったら無風になり、海王類ほど大きくはないが怪物と呼んでいいイルカやタコや………とにかくこんな不安定な環境の中、さらに気を抜くとログポースの針が"反対側"を指しているときがある。

船がいつの間にか逆走するなんてことも常にある。

 

グランドラインの初めの航海は様々な磁気や海流によって天候がコロコロと変わってしまい、次の島に着く前に沈んでしまうなんてざらにある。

 

そんな海で麦わらの一味も洗礼を受けていた。

ノジコがログポースで行き先を伝えナミが舵を取る。

ベルメールはそんな二人を支え応援している。

そして他のメンバーはというと

 

 

「帆を畳んでッ!!オールで乗り切るわッ!!!!」

「喜んでノジコちゃんッ!!!!」

「あんた達もキビキビ働きなさいッ!!!!」

「「はいッ!!!!」」

 

 

サンジとレイジュが帆を畳み船に乗せてもらっている二人がオールを持ち漕ぎ始める。帆を畳み終わったサンジ達もオール漕ぎに加わる。

 

 

「おい!!前から"海猫"が現れたぞッ!!」

「ルフィさん!!どうします!!?」

「ゾロッ!!くいなッ!!」

「任せろ!」

「こっちは任せてッ!!」

 

 

ギンが見張り台から前方に海猫を見つけた。

すぐにルフィに指示を仰ぐとゾロとくいなにそれを任せる。

しかしその海猫は一匹だけではなかった。

次々現れる海猫に対してルフィは

 

「ウソップとカヤで後ろからサポートしてくれ!」

「分かったぜ!」

「はいッ!!」

 

 

前衛と後衛。それでやっと凌げるがこれ以上人員を割くと船の方が持たない。

 

 

 

「ギンは俺と変わって、レイジュとギンで上から落ちてくるもんをどうにかしてくれッ!!」

「いいわよ」

「了解だ船長ッ!!」

 

 

そして更に空からは大きな雹が落ちてきている。

これをどうにかしないと船ごと沈没する。

こんなにもあたふたしている中、あわただしく動き回る面々の中で、

 

 

「頑張れー」

「足は支えて上げるから頑張りなさい」

 

『手伝えやッ!!!!』

 

 

テーブルとイスとパラソルを用意してのんびりとお茶をしていた。荒れ狂う中でもハジメとロビンは普段通り。大きく揺れる船の中でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あのね。これぐらいで根を上げていたらこの先やってられないよ」

 

「こうしてサポートしてるだけでも有り難いと思いなさい」

 

 

手伝わない。なんてことは最初から分かっていたが、こんな非常事態なのにと誰もが思っている。

 

 

「でもよ、も、くそもないわ。

さぁお兄ちゃん。私達は中で待機しましょう」

 

「船は沈まないし、傷つかない。

君達も海に落ちないけど()()()()()()()()()()()

 

 

船内に入るなかガヤガヤと文句を言われていたが無視をする。

ここで一度徹底的にグランドラインの洗礼を受けた方が今後に役に立つと判断したのだ。

 

それにハジメとロビンとしてはここで連絡を入れたいところがあったのだ。でんでん虫を手に取り連絡をしようとした相手は

 

 

「コード256。わた」

『ニコルウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥッッ!!!!』

 

「五月蝿いわよ」

 

 

とにかく五月蝿かった。部屋に一時停止をかけてなかったら嵐の中にいるルフィ達にも聞こえていただろう。

というか、なんでこんなに叫んでるんだこの人は…

 

 

『お願いだから正気に戻ってくれええええぇぇぇぇッ!!!!』

「正気に戻るのは貴方よ」

 

『ハジメが好きなニコルに戻ってくれええええぇぇぇぇッ!!』

「お兄ちゃん第一よ。何を言っているの?」

 

 

そういえば、モーガンを呼んだときに"ハジメとして扱ってなかった"。そして側にはセンゴクさんもいてロビンがおかしくなったと勘違いしたわけか………

 

とにかくずっと戻ってくれと叫んでいるので自分の声は聞こえないだろうとハジメは小さな声でロビンに

 

 

「ちゃんとモーガンを僕だと思って喋らないと…」

「お兄ちゃんの頼みでもいや」

 

「ほら。僕はここにいるからあとはセンゴクさんがここにいる程で話したらいけるでしょう?」

「……お兄ちゃんがそこまでいうなら……」

 

 

仕方ないとため息混じりで息を吐いたロビンは

 

 

「反抗期だと思わせた方がお兄ちゃんがすぐにでも来てくれると思ったからやっただけよ。実際あの時も力入れてなかったわ」

 

『そ、そうだったのか……』

 

 

いや、なんですぐに信じるの?

見てないから分からないけど、どうせロビンがモーガンに関節技決めたんでしょう?力いれてない、わけがない。

それを見てるか分からないけどなんですぐに信じれるの?

 

 

「本題に入るわよ。

今すぐにアラバスタ王国の港に停泊している船を()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『アラバスタ王国だと?

それに違法性とは……』

 

「詳しいことは見つけて見たら分かるわ。

でもこれだけは言っておくけどそれは()()()()()()()()()()()()

 

『い、言っている意味が分からん!

何をやらせたいんだお前は!!』

 

「察しなさい。ここまで言えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()。じゃ、また連絡するわ」

 

『ま、まさかクロ…』

 

 

強制的に電話を切ったロビン。すぐに電話がかかってくるのででんでん虫に一時停止をかけて電波を受けないようにした。

 

 

「これでいいの?」

「あぁ。OKだ」

 

「それでそろそろ私にも教えてくれるのよね?」

「もちろん。ロビンには教えておかないと……」

 

 

しかし何故かその時、ロビンに()()()()()()()という不安が駆け巡った。いままでそんなことはなかったのに……

 

 

「どうしたのお兄ちゃん?」

「……ううん。なんでもないよ……」

 

 

話しておいたほうが絶対に上手くいく。

なのにどういうわけか、それが裏目に出る。

そんな曖昧な予感がロビンに告げることを拒む。

 

 

「お兄ちゃん、無理しなくてもいいのよ」

「……ロビン……」

 

「甘えたいならドンドン甘えて。

お兄ちゃんが求めてきた分以上に甘やかすわ」

 

「……それだとダメ人間になりそうだなー……」

 

 

でも気持ちを汲んでくれてこういうことを言ってくれたのだろう。ここで話しても展開的にはまだ大丈夫なはず。

 

 

「わかった。もうちょっと待っててくれ」

「ええ」

 

 

…………………………

 

 

「終わったみたいだねー」

 

「…い、今頃…出てきやがって……」

「つ、疲れましたぁ…」

「こんなに人がいるのに…舐めてたわ…」

 

 

ハジメとロビンは話も終わり外へ出る。ことはせずにまたのんびりと船内で過ごした。

頃合いを見計らって出てみればグランドラインの洗礼も終わり、どうやらもうすぐウイスキーピークに到着するようだ。

 

 

「お疲れお疲れ。

あとは休憩してていいよ。もうすぐで着くから」

 

「そ、そうなの?」

 

「気候が安定しているのが何よりの証拠。

それにほら、あれ」

 

 

ハジメが指差すほうを皆で見てみるとそこには無数のサボテンと中央にある大きなサボテン何個も存在する島、目的地ウイスキーピークが目の前に現れたのだ。

 

「し、島だぁー!!!」

「デケェサボテンがあるぞッ!!」

「つ、着いたぁー!!!」

「これがグランドライン初めの島……」

 

 

大変な思いをしたからこそこうして島にたどり着いた喜びは強かったようだ。

するとMr.9とミス・ウェンズデーが船の縁に飛び乗り

 

 

「それでは我々はここら辺でお暇させて頂くよ!ここまで送ってくれてありがとうハニー達」

「縁があったらいずれまた」

 

「「バイバイベイビー」」

 

 

とうッ!!といいながら海へ飛び込んだ二人。

………うわぁー。ビビ、また黒歴史が増えたよそれ……

いくら潜入捜査だとしてもそこまでしなくていいと思う。

 

突然海に二人が飛び込んだので常識人である人達は驚き、そうでもないものは目の前の島に興奮して、関心のないものはただ見ていた。

 

 

「な、何だったのあの人達は…」

 

 

と、くいなが呟き

 

 

「そんなことより早く島に行こうぜ!!」

 

 

と、ルフィがワクワクして

 

 

「……………」

「……………」

 

 

レイジュとロビンは二人が去ったのを惜しむかのように…ということはなく、どちらかというと冷めた目でみている感じだった。

やっぱりあの口調はね、女の子として、どうよ?って感じだもんねー

 

そんな二人がいなくなったことよりこの船が島に近づくとウイスキーピークにいる人達から歓迎の言葉の嵐が

 

 

「海賊だぁ!!!」

「ようこそ我が町へッ!!」

「グランドラインへようこそッ!!!!」

 

 

さてさて、茶番劇が始まるぞ。

でも向こうとしても乗ってくれた方がいいんだろうし()()()()()()()()()()()()()()



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宴の席で



とりあえずここまで更新してます。
あとは夜かな。出来れば今日中には元に戻したいですね。
はぁー評価とか感想とか、色々と消してしまって…………
本当に良ければ感想でも評価でも下さい。
元に戻らなくてもモチベーションは上がるので助かります。

わがままな言い分ですが、どうぞ、これからもよろしくお願いします。

では、最新(現在の)をどうぞ。




「いら"ッ………!!ゴホン!

マーマーマーマーマ~~~~♪

いらっしゃい。私の名前は"イガラッポイ"」

 

 

いや、イガラムだろ。というかもっと名前のセンスが。

こうして向き合って自己紹介されるとついついツッコミを入れたくなったハジメだがそこは抑えることにした。

ここで変に警戒されるわけにもいかない。

 

海賊だというのに異常に歓迎され警戒しながら上陸するとこの町の代表というこの"イガラッポイ"が現れた。

 

 

「変な髪してるな~!ちくわだ、ちくわッ!!」

「へ、変……」

 

「やめなさいルフィ。人の感性はそれぞれだからね」

「……遠巻きにおかしいって言ってるよな……」

 

 

聞こえてるぞウソップ。

苦笑いするイガラッポイはとにかく麦わらの一味に対して

 

 

「ここは酒造と音楽の盛んな町、ウィスキー・ピーク。もてなしは我が町の誇りのです。自慢の酒で歓迎の宴の席を設けたい」

 

 

いや、100%嘘やん。

しかし、さっきの疲れもあるのだろう。

「ま、マジか…」「ここじゃ(グランドラインは)海賊はヒーローみたいなもんか?」「飯だぁ!!!」「喜んでッ!!」とか口々に歓迎されようと喜んでいる。

 

おい。少しは警戒しなさい。

ほら、レイジュやロビンやベルメールさんまで疑いの目で見てるよー

するとノジコがイガラッポイに近づいて

 

 

「ねぇ。ここのログはどれくらいで溜まるの?」

「そんなことは後でもいいじゃないですか。

さぁさぁ。まずは楽しみましょう!」

 

「ちょっ、ちょっとッ!!」

「押さないでよ!」

 

 

イガラッポイはノジコとナミを無理矢理押しながら宴の会場へ。

 

他の皆もそれぞれ誘導されていく。

そんな中、ハジメとロビン、レイジュとベルメールの大人組は一同に集まって

 

 

「……どうするのハジメ?」

「乗ってあげましょう。何が起きても僕が対処します」

「面白そうね。じゃ大いに楽しんでいいのね」

「いいですよー」

「お兄ちゃんがそういうなら乗ってみましょうか」

 

 

…………………………

 

 

「おかわりッ!!!!」

 

「し、食料が底をつきそうだぁ!!!」

「な、なんだあの麦わらのやつはッ!!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!」

「コック達がドンドン倒れてるぞッ!!!!」

 

 

まず、ルフィに対して「ドンドン食べてください」とか「好きなだけ食べてください」とかいってはダメだ。

この男、どこで身につけたか知らないけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という離れ業を身に付けたのだ。

 

ルフィの体は大きな達磨のように膨れ上がって、しかしそこから一切体型も食べるスピードも変わらない。食事をしても満腹しても()()()()()()()()()()()という、とんでもないものを身に付けているのだ。

 

なので、普段は"制御しろ"と口酸っぱく昔から言い続けてきた。

そこ効果もあり普段は満腹しても食べないようにしていたのだが、今回は"もてなしたい"と罠をかけてきたのだ。だったら乗るしかない!ということでストッパーを外してあげたのだ。

 

 

「いくぞ……1,2,………3ッ!!」

 

「き、消えたッ!!?」

「一瞬だけ幕が張っただけだぞッ!!!!」

「どこ行ったんだあのお嬢ちゃんはッ!!!!」

 

「はいッ!!」

 

「なんであんな所からッ!!」

「すげェぞあの二人がッ!!」

「こんなもの見たことがねえ!」

 

「ビックリし過ぎてドンドン気絶してるぞッ!!」

 

 

ウソップはというと、カヤと共にマジックを見せていた。

それもウソップがマジックをより良くするためにやり続けた「見せるマジック」である。

 

マジックは常に冷静でいないといけない。

不安や緊張した表情は見てくれるお客様に不安感を与える。

お客様に与えるのはドキドキ感と緊張感と期待感だけでいい。

そのためにウソップは地元にくる船に乗せてもらい他の町にいきマジックを見せ続けた。

 

それによりマジックをしている間は緊張をすることが減った。

減っただけで、内心はかなり動揺しているのは内緒である。

 

そして戦闘に使うマジックは「見せつけるマジック」

必要以上の緊張感を与えて、全く分からないと思わせるものを出して、精神的に追い詰めることを目的としている。

 

それでも説明がつかない現象については、トップシークレットである。

 

 

「なんだあのコックッ!!?」

「料理しながら同時に女を複数口説いてるぞッ!!!!」

 

「コラッ!ルフィッ!!!!てめぇ食べ過ぎなんだよッ!!!!

……でも、レディ達はもっと食べた方がいい。真の花は何があっても変わらないのですから」

 

「で、言ってることが全く分からねぇッ!!?」

 

「でも食べるなら私が作った物を。私が貴方を虜に……

って、まだ作ってる最中だろうがボケェがぁ!!!!!」

「ギャァッ!!」

 

 

「一瞬で攻撃して一瞬で戻ってきたぞッ!!!!」

「そして何もなかったように料理してやがる!

それにあのコックの料理に女の子達がノックアウトされてるぞッ!!!!」

 

 

サンジの料理はプロの中のプロの()()

ここに倒れているコックの仕事、五人でやる仕事をたった一人でこなし、尚且つ女の子を複数口説きながら、さらにルフィをしつけるという離れ業をやっている。

 

そんなことをしているのに料理一つ一つは洗礼させていて、豪快で、美しく、そしてどれもが食べた瞬間に体が弾け飛ぶと思わせる料理を出している。

 

現に女の子の中には()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()()ぐらい。

 

しかし驚くことにサンジがそんな女の子なバスタオルを渡していた!!

バラティエからそんな現象が起きていたようで、それでも女の子はそれを食べに来ているという。

 

ちなみに男はならない。

何故なら"興味がない"から。

この男、自分の力を完全コントロールしてこんな風にやっている。

ようは確信犯。最低である。

それでもまだ麦わら一味に手を出してないだけましではあるが。

何故?それはもちろん"悪魔"がいるからね。

 

ということの一部を、そんな現象を起こしているとゼフから聞いていたハジメはこの光景を目の当たりしてこう思った。

 

 

"あのエロエロなサンジがそんな紳士的なことをしているなんて!!!"と。

 

ゼフから聞いたときは最低だと思っていて、一味に入り料理を出して女性陣が食べたときに"それをやったら""どうしてくれようか"と考えていたが、これまでまったくならなかったので安心していたが

 

 

"どのみち…最低だな"と。

 

 

冷たい視線を送りながらお酒を飲み干す。

そう、遠くから見ているハジメはというと

 

 

「こ、こ、これでハジメが50人抜きだッ!!!!」

「隣の女も負けてない!!!!」

「というか、この一味の女共、全員強すぎだろうッ!!!!」

 

「私、酔ったことないわ」

「奇遇ね、私もよ」

 

「ゾロー遅れてますよー!」

「ウルセェ!!!てめえ化物と一緒にするなッ!!!!」

「アハハ……」

 

「………ウプッ」

「すみません。また吐きそうなので連れていってください」

 

 

さらに恐ろしいのはここ。

まずハジメはのんびりとお酒を飲んでいた。一番度数の高い酒を。

すると飲みに自信のある者達から挑戦があったので「いいですよ」と気軽にOKをした。

 

するとまったく顔色を変えずにここまで30人抜き。

それも飲むスピードも変えずにまるでいま飲み始めたような感じでずっと飲んでいる。もちろん一時停止を使用している。

 

そしてそれに続きはロビンとレイジュ。

レイジュは猛毒でも平気なのだ。酒の度数など水を飲んでいるのと同じ。

ロビンの場合は"素"である。

そう。なにもしていない。純粋に酒に強い。

ハジメとお酒を飲み続けるために身につけたものと言っていたが、それが本当なら……本当に化物である。

 

 

「でもハジメとロビンがこんなに強かったなんて。

私の周りは全然ダメだったから今とても楽しいわ」

 

「それは光栄です。

僕もずっと飲み続けてくれるのはロビンと上層部だけでしたので。それもそのうち一人はほとんど一緒に飲んだことなかったな」

 

「私的には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。お兄ちゃんは優しいから寂しいあの人達に付き合ってあげていたのよね」

 

「そんなつもりはなかったんだよ。

でも飲み過ぎると()()()()は笑い上戸になって、()()()は泣き上戸になって、()()()()()は訳も分からずに躍り狂うですよ。その上の人はずっと説教してますけど、内容のないことを」

 

「本当に面白いわね。一度会ってみたいかも」

 

「この船に乗ってれば会えますよ」

 

 

と、これを聞いたらウソップが失神するんじゃないかと思うとんでもないことを喋っているハジメ。

そして海軍トップの人達のそんな酔い方、ハジメだから見れることだが絶対に外部に流したらダメな情報である。特に大将については。

 

さて、その隣の席ではゾロとくいなが二人で飲み勝負をしているが、隣のハジメ達に比べると飲んでいるスピードは遅い。

というか、ハジメ達が速すぎるだけなのだが…

 

 

「ったく、やっと師匠に勝てたというのによ……」

「お父さんも強かったけど、ハジメさんは別次元だよね…」

 

 

もう、ハジメと張り合う気持ちなんてとっくに捨てたゾロ。

途中まで負けずと飲んでいたがまったく顔色もスピード変わらないハジメに"化物"だと位置付けてくいなと飲むだけにした。

まぁ、飲むだけはつまらないと勝負し始めたが、くいなはくいなで酒に強い。父であるコウシロウと飲み比べでやっと勝ったが更に強かったのが娘のくいなだと分かった時は流石のゾロもガックリきたという。

 

 

「ほらゾロ。遅れてるよ」

「っせえな!!なんでこんなに飲めるやつばかりなんだよッ!!」

 

 

酒が強いというアドバンテージ。

ここで奇しくも幼なじみと現師匠という存在に負けているゾロだった。

 

で、更にその隣の席でギンが負けずと飲んでいたがさっきから戻しては飲み、戻しては飲みの繰り返し。ハジメ的にもそろそろ退場させようと考えている。

 

だけどその席を外せない理由があった。

それは目の前にあるステージ。その前には沢山の観客。

そしてそこに現れたのは

 

 

「次はお兄さんとダンスパーティーに着るドレス!!!」

 

 

現れたのは黄色の大胆なドレス。

胸元は大きく開けて足は太ももがギリギリ見えるぐらいのスカート。

そしてその両隣にはノジコとベルメール。

 

 

「…も、もう…やめて……///」

「…た、助けて………///」

 

 

ノジコは黒のスラッとしたドレス。

ナミとは違いスカート部分は長いが背中を大胆に開けてあるもの。

 

そしてベルメールは薄いピンクのドレス。

きっちりとしたドレスだが、所々にアクセントになる刺繍がありそれを見事に着こなしている上級向けの大人なものである。

 

 

「お兄さんー!!!どうですかー!!!??」

「とてもよく似合っているよ」

 

「やったあ!!!じゃ、次にいきますね!!!」

「まだやるのッ!!?」

「もうやめてナミッ!!!!」

 

「ダメよ二人とも。三人でお兄さんをメロメロにして最終的にはお兄さんさんにベルメールを襲ってもらわないといけないだから」

 

「おそッ!!!??/////」

 

「まぁ、ナミがいうことだから許してあげるけど。

相変わらずにその年で照れるなんて、キモいわ」

 

 

と、遠くから嫌みをいうロビンだがまったく耳に入ってこないベルメール。もうノックアウト寸前なベルメールと嫌がるノジコを連れてステージ奥へと消えていった。

 

こんなにも楽しい宴。

しかしこのあとにあることを考えると油断できないなーと考えているハジメだが

 

 

(まぁ、そこはゾロに任せればいいかな。

加勢してくれそうな人もいるし、僕は僕で動きますか……)

 

 

そう考えながらすでに55人抜きをしているハジメだった。



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100人切り①

「状況はどうだ?」

()()()()()()あとは全員寝てるぜ。M()r().()

その三人も気にせずずっと飲み続けてるから大丈夫だと思うが……」

 

「油断は出来ん。

とにかく場所を変えて監視をつけておけ」

 

 

Mr.8と呼ばれる男はこの町の村長であるイガラッポイ。

そしてその隣には途中でメリー号から飛び降りたMr.9とミス・ウェンズデー。さらにMr.8の相棒であるミス・マンデーがいた。

 

 

「しかしなんでアイツらにここまでやるんだMr.8??

クジラ捕獲失敗してここに連れてきたのは俺達だがここまでする必要があったのか?」

 

「そうよ。おかげで食料もお酒も無くなる寸前よ!」

 

「お前ら。何も考えずにあの海賊を連れてきたのか

……まぁ、今回はとんでもない大物を捕まえたからいいとしよう」

 

 

そういいながらMr.8は二枚の手配書を出した。

そこにはルフィとロビンの指名手配書でありその金額が

 

 

「なっ!!!??なんだこの金額はッ!!!!」

「あんな奴等がこんな金額をしてるのかい!!!」

 

 

Mr.9は連れてきた海賊が大物だったと知り驚き、ミス・マンデーはさっきまで飲んでいた奴等から想像できないと驚いている。

しかしそれを見ても驚かないのは1人。

 

 

「どうしたMr.ウェンズデー?驚かないのか?」

「い、いえ…もしかしたらって…気がしてたから……」

 

「ほう。ならMr.8よりも優秀だな

それを分かって連れてきたのだ。これはボスにいい報告ができる」

 

 

そういって悪い顔をするMr.9。

しかしミス・ウェンズデー、もといビビは別のことを懸念していた。

 

 

(ほ、本当に大丈夫なの?

正体を明かさずに組織の目的通りになってくれなんて……

あの人が本当に"大将"なら問題ないけど…周りの人達は強いのかしら……)

 

 

ハジメが協力するさいに出した条件とは"このまま正体を明かさずに当初の目的通りにやってほしい"だった。

なのでビビは正体を明かさずにここまでやってきた。

だが、いま現状はハジメを含む三人は場所を変えて飲み続けて、残りのメンバーは酔いつぶれている。

 

そしてもうひとつ、ビビはある条件を果たすためにMr.8に近づく。

 

 

「Mr.8。ちょっといいかしら??話があるのだけど…」

「なんだ?いまから一斉に海賊を捕まえるという時に」

 

「そうなんだけど、ちょっと気になることがあって……」

「ここで言えばいいではないか?」

 

「構わねえよMr.8。酔いつぶれている奴らを捕まえるぐらい俺達だけで十分だ」

 

「それに起きたとしても酔っている。私達だけで大丈夫よ」

 

 

Mr.9とミス・マンデーのいいパスが入り「なら、頼む」とMr.9とミス・ウェンズデーはその場から離れた。

 

そしてこの場を仕切るのはMr.8のパートナーであるミス・マンデー。

 

 

「いいかい。生け捕りにして政府に渡せば金が入る。

気合い入れていくよッ!!!!」

 

『うおおおおおおおおッッ!!!!』

 

 

どこから出てきたのかいつの間にかミス・マンデーとMr.9の周りにはこの町にいる人達が全員出てきていた。それも()()()()()()()()()

 

 

「気合いが入っているところ悪いんだが、あいつら寝かしといてやってくれないか。昼間の航海でみんな疲れてんだ」

 

『ッッ!!!!??』

 

 

その声に誰もが振り替える。

町の人達が集まっている中で一番高い所から見下ろしている()()()()

 

ひとつは酒ビンを持ち口に含んで飲んでいる男。

ひとつはすでに戦闘体勢に入り刀をもつ女。

 

 

 

「優しいねゾロ。私、てっきり叩き起こすかと思ってた」

「こんな安い手に落ちる方がワリィんだ。ほっとけ」

 

「ふーん。そうなんだ」

「ちっ。変な感くぐりするな……」

 

 

そんな夫婦漫才をしている二人にミス・マンデーが

 

 

「あんたらッ!!泥酔してたんじゃ!!!!」

 

「剣士たる者、いかなる時も、酒に呑まれる様なバカはやらねェもんさ」

 

「流石にハジメさん達みたいにはなれないけどね……」

 

 

 

飲み終えた酒ビンをおいてゾロも1本の刀を抜く。

 

 

「知ってるぜ、お前ら。

ここは"賞金稼ぎ"の巣。そうだろう"バロックワークス"」

 

「ッ!!!!??……どうしてそれを……」

 

「昔おれらも、お前らの会社がスカウトを受けたことがある。ケッたけどな。社員達は互いの素性を一切知らせず、コードネームで呼び合う。

もちろんボスの居場所、正体も謎、ただ忠実に指令を遂行する犯罪集団"バロックワークス"」

 

 

二人とも戦闘体勢に入ると、下にいるミス・マンデーがこういった。

 

 

「残念だよ。大人しくしてれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

そう、このウイスキーピークのサボテンの針は()()

大きな岩に無数の墓碑が立っているのだ。それが遠くから見たらまるでサボテンのようになっている。

 

それはまるでここが海賊の墓場と言っているような場所。

 

 

「やりなッ!!!!」

 

 

攻撃命令に銃を持っているもの達は一斉にゾロ達に向けた。

しかしそこには誰もいない。

「どこに行ったッ!!」と探すバロックワークス。

するといつの間にか二人の姿が、大勢集まっている集団の中に現れていた。

 

 

「うしッ。やるか」

「どっちが多く倒せるか勝負ね」

 

 

突然現れた二人に対して動揺したがすぐさま武器を目の前の二人に合わせて攻撃する。

しかしまたあっという間に二人が消えた為に、お互いがお互いを傷つけあう形になった。

 

 

「何やってるんだいッ!!!!

確実に1人ずつ倒しなッ!!!!」

 

 

そう指示するミス・マンデーの言葉を聞いていたように、ゾロとくいなは2手に分かれ、バロックワークスの面々のその多くは女であるくいなに向かい出した。

 

 

「おいおい。これだと勝負にならねぇだろうが」

 

 

まさかこんなにハッキリと分かれると思わなかったゾロは舌打ちをした。しかしそれでさらにやる気になり

 

 

「まぁ。こいつら全員速攻で倒せば…くいなの分もやれるな」

 

 

ニヤッと笑っているとさっそくバロックワークスの社員が攻めてきた。一気に殺ろうと前後左右、上空からも仕掛けてくるために八方塞がりになったゾロ。それも完璧なタイミングで向かっているためにひとつだけ押さえても他の者がゾロを仕留めるという作戦。

 

しかし、それはゾロが相手なら意味がない。

 

 

「一刀流…"ハ利刃(はりは)慄衝(りづ)け"ェッッ!!!!」

 

 

刹那の攻撃。中心部から外へと吹き上げる嵐のように四方()()への斬撃。

バロックワークスの社員達は誰もが切られたと目をつぶってしまったがいつまで経っても切られた感覚がない。

 

確かめようと目を開けると標的であるゾロはそこにはいなく、離れた所で刀を振っている動作を見せた。

 

切り損ねたな!と誰もが思い近づこうとした時

 

 

「やめとけ。()()()()()()()()

 

 

その瞬間、少しでも動いた者から身体中に斬り口が裂けて血が溢れだす。それに驚き動いてしまいまた斬り口が広がる。

さっきのゾロの動作は刀についた血を振り落とすためだったのだ。

そしてゾロに攻撃をしようとしたもの全て倒れてしまった。

 

 

「ずいぶんと軽いが、いい刀だ」

 

 

まず使ってみたのは雪走。

刀を手にしてから何回か使ってはいるが"試し切り"という、その刀の特徴や性能を見極めてはいなかった。そんなことせずともこの雪走以外は()()()()()のような感じではあった。

 

雪走は軽くて扱いやすいのが特徴のようで、それでいて切れ味も十分に鋭く、斬られた敵がそのダメージに一瞬気付かないほどだった。

 

一方、近くを通りかかったくいなも負けじと敵を斬り倒している。

 

 

「一刀流…"渦叉身(かざみ)(どり)"ッ!!!!」

 

 

握った束を地面に立て、それを起点に周りながら斬り込む。

とっさの方向転換もこれなら無理なく、回転を利用も出来て攻撃力も上がる。

 

この技、ゾロは"名前は似てるが別の技"を持っている。

 

しかしこれは近距離だから出来ること。

遠くからくいなを狙い狙撃しようとする者が

 

 

「いくら強くても、この距離なら…」

 

 

と、狙いを定めていたがくいなはその視線を感知して男の方を見た。それに驚きはしたがどうせなにも出来ないと銃の引き金に指を引っかける。

 

 

「一刀流…"(とん)……"」

 

 

しかし男はその引き金を引けなかった。

何故か標的である女の刀に吸い寄せられるように見てしまっている。まるで自分を()み込むかのように……

 

 

「…"擲"(てき)ッッ!!!!」

 

 

次の瞬間、くいなは刀の柄を蹴りあげて狙っている男に刀を飛ばしたのだ。男も当たる寸前に気付きとっさに避けたが銃は刀に壊された。

 

くそッ!!と悪態をつく男だがすぐに代えの銃を用意しようとしたがその時、壁に突き刺さった刀の柄に細い糸が付いていることに気づいた。

 

それを見た時男は分かった。しかし遅すぎた。

その糸を手繰り寄せてくいながこちらまで飛んできたのだ。

とっさの防御も叶わずに斬られる男。

 

 

「ふぅー。成功して良かった」

 

 

この"吞擲(とんてき)"は投げの技。つまり命中率が鍵となる。

この技を練習しているが未だに6割は狙ったところより外れることがある。それでも刀の柄にワイヤーを仕込みそれを辿って向かえば斬りかかれると使ってはいる。

 

それでも吞擲は刀を少しの間でも手放すことになるので出来るなら使いたくない技でもある。

 

ゾロはどうだろうーと周りをみると丁度向かい側の同じ高さの建物の屋上にいるのを見つけた。

そしてゾロとくいなが近くにいるため多くの敵が下に群がって銃口を向けてくる。

 

改めてゾロを見るとアイコンタクトをしてきた。

そしてその意味を理解したくいなはゾロと同じタイミングで下にいる敵に向かって飛び降りて

 

 

「「鷹波(たかなみ)ッッ!!!! 」」

 

 

斬撃によって波状の衝撃波を発生させ広範囲の敵を斬り倒した。

それでもまだ群がってくる敵にゾロとくいなは背中合わせで刀を構える。

 

 

「私36人」

「ちっ、……33人」

 

「この勝負、私の勝ちかもね」

「言ってろ。こっからだ!」

 



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100人切り②

ゾロは雪走を鞘に納めて次に三代鬼轍を抜き()()()()()()()()()に向かって走り出した。壁にぶつかる瞬間に壁を細かく斬り部屋に突入する。

 

するとそこには部屋から飛び出してゾロを倒そうと構えていた敵が()()()()()()()()()()()。それだけではなく()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして決め手になったのはいつの間にか後ろから接近していた大男が大きな石の斧をゾロに向けて振っていたのだ。

 

とっさに鬼轍でその斧を受け流そうとしたのだが、なんと鬼轍はその石の斧さえも切り落としたのだ。

 

 

「なっ!!?」

「ッ!!!?? やべぇな…」

 

 

大男も驚いたがゾロも驚いた。

すぐに大男を斬り倒したが思った以上に切れる鬼轍。

 

 

「……こいつは、使い方を考えないといけねぇな……」

 

 

何から何まで切ってしまうのはよろしくない。

思ってもいないものまで切るのは剣士としては失格である。

ふっと壁を切った方向を見てみるとくいなが身軽さをいかして次から次からへと家の屋上へ飛び移ったり、地上に降りたと思えばまた屋上とすばしっこく移動しやがら敵を切っていた。

 

負けられねぇと鬼轍を鞘に納めて、雪走を抜き、そして最も赤く染まった深紅(しんく)を抜いた。

 

部屋から出るとここまで乗せてきたMr.9が金属バットを持ちゾロに向かってきた。それもただ走っているわけではなくアクロバットを駆使して宙返りを何度もして速度や遠心力を利用してゾロに攻撃しようとしている。

 

そんなもの簡単には受け止められると雪走で金属バットを迎え撃とうしたとき

 

 

(なっ!!!??)

 

 

ゾロの意思とは別に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()M()r().()9()()()()()()()()()

それもただ斬りつけたわけではなく血を多く噴き出すような切り方をしたのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁ!!!!」

 

 

Mr.9も思った以上に噴き出す血に戸惑い逃げ出した。

あんなに血が出てるのに()()()ではないようだ。

そしてそんなことをした深紅を見ると

 

 

「…な、んだ…こいつは……」

 

 

さっき切って溢れだした血が深紅にべっとり付いていたのだが、それがドクン!ドクン!と()()()()()()()()()()()()()()()、そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

これまで意識して使っていなかったとはいえ、この刀は前の2つと比べて明らかに異常である。ゾロが気づかない間にもこうして血を求めたいたとしたら……

 

 

「……とんだ()()()だな……」

 

 

とんでもないものを貰ったなと思いながらもゾロは次の敵へ向かう。

 

 

…………………………

 

 

「そ、それは本当ですか()()()ッ!!!??」

「えぇ。あの人は信用していいと思うわ」

 

 

誰もいない一軒家。そこにイガラッポイ改めイガラムとミス・ウェンズデー改めビビが密会していた。

ここまでの本当の経緯とハジメとの約束をイガラムに話終えたところだった。

 

 

「…まさか、海軍の、それも大将が……」

「直接は無理だと言っていたけど、あの人達をって…」

 

「大丈夫なのでしょうか…」

「賭けてみたいの。なんとなくだけど、大丈夫のような気がするの……」

 

 

ビビの曖昧な言葉。

普通なら国の一大事にそんな曖昧なものに賭けるなんて馬鹿げていると言っていただろう。

しかし、そんな馬鹿げたことを、藁をもつかむ思いでビビは賭けてみたいと発言したのだ。

 

 

「では今すぐにでもアラバスタにッ!!!」

「それは、やめておきましょうか」

 

「な、何奴ッ!!!??」

「待って!!イガラム!!!!彼よ、彼が海軍大将なの」

 

 

突然現れたハジメに警戒するイガラム。

キチンと目を合わせて挨拶にしたのに失礼だな。と感じたハジメだが、まぁ、話してきた内容が内容だから仕方ないと割りきった。

 

 

「おそらくですけどミス・ウェンズデーが王女ビビだってバレてますよ」

 

「ど、どうしてッ!!!??」

 

 

すると隣にいたロビンが自信満々に

 

 

「甘過ぎるのよ。変装が。

私のように()()()()()()()()()()良かったのに」

 

「そ、そんな……」

 

 

そんな……って、いや、モロ王女の姿じゃん。

服装とかの問題じゃないよ。そしてポニーテールの問題でもない。

写真が出回っているんだよねー。それはバレるよ。

 

まぁ、その理屈をいったらロビンは?ってなるけど。

この子は…別格ということで。知らない方がいい。

もしくはやっぱり海軍がダメなだけかな。

 

 

「とにかくもうビビを捕まえるか、消しにくるか、それは知らないけど刺客を送ってくるんじゃないかな。もしくはもうすでにここに来ているか」

 

「に、逃げましょうビビ様ッ!!」

 

「逃げるって……何処に?

もうバレたのよ!!むしろ一刻でも速く帰らないと!!!!」

 

「ですからそれが向こうの狙いですから。

ここからのアラバスタへ直行。つまりはいくらでも待ち伏せが出来る。それこそ自分から捕まりにいくようなものですよ」

 

「だったらどうしたらいいのよッ!!!!」

 

 

大声で叫ぶビビ。

国を、国民を思っているからこそ表に出てしまう感情。

しかし感情で動いたら間違いなく捕まる。

 

 

「ですからこの海賊を隠れ蓑にしてアラバスタへ向かうんですよ。もちろん直行はさせていくつか島を経由しますが」

 

「で、でもッ!!」

 

「でもじゃないです。

この際ですからハッキリいいますよ。

貴女の判断一つで()()()()()。その自覚がありますか?」

 

「も、もちろんよッ!!!!」

 

「だったら分かるはずですよ。

自分がどれだけ重要な人物か。捕まればアラバスタは何も気づかずに滅びる。それが分かるなら感情で動くのはやめろ

 

「ッッ!!!!」

 

 

その言葉に自分がやろうとしたこと。自分のこと。

それがどれも自分が守ろうとするものを失うことになるなど考えていなかった驚きをする。

 

…いや、本当は分かっているのだ。

それでも、それでも、すぐにでも戻って国を救いたいと考えているのだ。

 

 

「イガラムさん。貴方はアラバスタへの永久指針(エターナルポース)を持っているんですよね」

 

「え、えぇ…」

 

「それなら……」

 

 

…………………………

 

 

「あれ?丁度50:50だったみたいね」

「ちぃっ!…引き分けか……」

 

 

あっという間に100人を斬り倒した二人。

二人ともまったく息を切らさずにまるで準備運動をしていたかのようだった。

 

 

「ねぇねぇ。その深紅ってそんなに"わがまま"なの?」

「あぁ、満足したら切れ味が変わりやがって……」

 

 

この深紅、勝手に相手を斬り、血を多く求め、そしてその血を満足したら勝手に大人しくなり、さっきまでの切れ味を変えてきたのだ。

その切れ味に戸惑ったがそこはゾロの腕ですぐに元の切れ味に戻した。

 

刀の良さで剣士の腕が決まる。

そして普通の刀でも、剣士の腕があればその刀は上級の刀の切れ味と化す。

 

 

「でも血を吸うって……なんか怖い刀だね…」

「そうか?使いこなせば面白い刀だと思うけどな」

 

「……鬼轍みたいに無茶なことはしないでよ」

「……ってるよ」

 

 

ゾロも反省しているのだろう。小さな声で返事をする。

その声はくいなの耳に入ったのだろう。

ニコニコと表情を変えて、それに気づいたゾロはそっぽを向いた。

 

と、次の瞬間。

 

 

「ゾロオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォッッ!!!!」

 

 

その叫びと共に瞬間的に刀を抜いて振り向いた。

そこには何故か激怒しているルフィがゾロに向かって、いや攻撃を仕掛けてきたのだ。

抜いた刀で"刃"ではないほうをルフィに向けて放たれた拳を防いだ。

 

しかし力の入ったその拳はゾロが立っていた位置から後方へと押したのだ。

 

 

「何をしやがるルフィッ!!!!酔ってるのかッ!!!!」

「何してるは、こっちのセリフだ!!!!

てめぇはやったらいけないことはしたんだッ!!!!」

 

 

なんのことか分からないゾロはとにかくルフィを押し返して距離を開けた。すぐに突っ込んで来ないところをみるとまだ話をする余裕はあるようだが

 

 

「俺が何をしたいっていうんだよ!!!」

「お前がこんなに親切にしてくれた人達を斬ったことだああぁッ!!!!」

 

「なっ!!!??

ルフィ!!お前勘ち……」

「言い訳するなッ!!!!」

 

 

するとギア2を使ったわけでもないのに瞬間的にゾロの間合いに入り殴りかかってきた。なんとか避けたゾロだったが後ろにあった岩がその拳によって砕けた。

 

 

「て、てめぇ!!!殺す気かッ!!!??」

「あぁ。死ね」

 

「なっ!!!??」

 

 

どうやら本気で怒っているルフィにゾロはなんとか避けている。

するとくいながルフィに向けて

 

 

「ルフィさん待って!!!ゾロはそんなことしないから!!!」

「俺は聞いたんだ!!!ゾロが鬼ように斬りまくって血の海にしたってなッ!!!!」

 

 

そこで理解した。

ルフィは斬られて倒れていた奴から話を聞いたのだ。

向こうも意識が朦朧とし仲間だと思って話したのだろう。

そして血の海にしたというのはきっとゾロ。

ゾロというか深紅が血を求めたために起こしたことだ。

 

 

「そ、それはゾロの刀が勝手にッ!!!!」

「そんな訳があるかッ!!!!」

 

「嘘だと思うけど本当にッ!!!!」

 

 

一向に話を聞こうとしないルフィ。

完全に頭に血が登っているようで冷静さが欠けている。

普段から話を聞かないタイプだったがこうなると……

 

 

「もういい、くいな」

「もういいって、どうするの?」

 

「……やるしか、ねぇだろう…」

「まさか…戦う気ッ!!ダメよ!!殺しあいになったらッ!!?」

 

「だがコイツはそこまでしねぇと分からねえバカなんだ。

それに…こいつは一対一だ。手を出すなよ……」

 

「ちょっ、ちょっとゾロッ!!!!」

 

 

止めようとするくいなだがゾロは聞かずに額にバンダナを巻き、3本の刀を抜いた。

 

 

「死んでも恨むなよ、ルフィッ!!」

「挑むところだッ!!」

 

 

ゾロは両手をクロスさせ、ルフィは両手を後ろに伸ばして、

 

 

「鬼切りッ!!!!」

「バズーカッ!!!!」

 

 

そのぶつかりあう轟音は島全体に響いた。



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ゾロVSルフィ

「カルー!!」

「クェー!!」

 

 

話も終わりお互い移動しようとなったとき遠くからこちらに向かってきたのが"超カルガモ"のカルー。

 

 

「それではよろしくお願いしますハジメ殿」

「打ち合わせ通りに」

 

 

イガラムとはここでお別れし先にアラバスタに向かってもらうことにした。もちろんこれが一番危険なことだが誰かが囮になる必要がある。

 

それを引き受けたのがイガラム。

そして本編ではこのあとロビンに一度爆破されやられるのだが、そのロビンはここにいる。

その他の手でイガラムを妨害する可能性があるということで

 

 

「よろしくね私」

「ええ。任せて頂戴」

 

 

そうここでロビンの分身体をイガラムにつけることにした。

これなら大将クラス、もしくは大艦隊を何十隻用意しないと止めることは出来ない。

 

これなら間違いなくアラバスタに着くことが出来るだろう。

そして先制さえ打てれば余計な血を流す必要はないはずだ。

 

 

「しかし…こんな能力があるとは……」

「行きましょうか。私達は速く着いたほうがいいのよね」

 

 

は、はい!!ともう主導権を握ったロビンと共に港へ向かっていくイガラム。こちらはビビとロビンがカルーに乗りルフィ達と合流することに。

 

 

「……ロビン、気づいてる?」

「ええ。増えたみたいね」

「ど、どうしたんですか?」

 

 

なんやら"見聞色"でひっかかるものを感じた。

おそらくビビを捕まえるために来たのだろう。

やはりここは本編通りに進むようだ。

しかしそれはこちらではなくいきなり向こうに向かっているようで……

 

 

「まぁ、あれだけ大きな音を出していたら向かうかな」

「引き付け役として役立ったようだし、今回は許してあげましょうか」

 

「……な、何を言ってるのか分からない……」

 

 

ク、クェ……とカルーもビビと同意している。

まあ、知らなくてもこれから向かえば分かることだと思いとにかくルフィ達の元へ向かうことにした。

 

 

…………………………

 

 

「「うおおおおおおおおおッッ!!!!」」

 

 

最初の技からルフィとゾロは離れずに近距離での戦いが続いていた。ルフィはその能力を使えば遠距離からでも攻撃出来るが相手はゾロ。その刀で伸びた体を斬られる可能性を捨てるために近距離で勝負していた。

そしてゾロはその勝負を真っ向から受けている。

剣士とはいえゾロには"飛ぶ斬撃"がある。しかしルフィは有利な遠距離を捨てて近距離で仕掛けてくる。わざわざ離れずともここで仕留めれると仕掛けている。

 

そしてお互いに攻撃はするが"技"と呼ばれる攻撃は一切使わなかった。いや、使えなかったと言ってもいい。お互いがお互いに強い攻撃を出さないようにと攻撃している。

 

そう、いまは、ただの殴りあい。

戦いと呼ぶほどのものではない。気にくわないから殴っているという"戦い"というより"喧嘩"のようなものだった。

 

しかしそれでもお互いの攻撃一つ一つは致命傷になるほどの攻撃力を持っている。それを二人とも何発も受けていてそれでもまだ止まることはない。

 

相手が倒れるまで、ただ、殴るだけである。

 

それは離れたところからハラハラと見ているくいなは、何度も止めようと思ったが

 

 

(………どうして、止められない…だろう……)

 

 

頭では分かっている。でも体が、心が、それを許してくれない。

これを止めるのは間違っている。と。

こんなことをしても無意味なのに、どうしてもそれに対して違うと反応してしまっている。

 

一歩間違えれば重症になるような攻撃。

それを何発もお互いに受けているのだ。

そんなの違う。仲間通しでやるなんて違う。

 

でもゾロは真っ正面から受け止めている。

"戦い"ではなく"殴りあい"をしている。

それは拳でルフィに分からせるため。

それを……本当に止めていいのかと………

 

 

「こいつらがここの奴らをやったのか?」

「キャハハハハハハッ!!そうみたいね」

 

 

そこに現れたのは天パーでサングラスの男と、傘を差し全身が黄色の服を着た女。

それを見たくいなは静かに刀を抜いてゾロ達の邪魔をさせないようにと前に立った。

 

 

「貴方達は、そこの人達と一緒なの?」

 

「一緒だと?ふざけるな。

"オフィサーエージェント"である俺達と転がっているザコを一緒にするな」

「失礼しちゃうわ」

 

 

"オフィサーエージェント"……

ゾロと話した"バロックワークス"の組織の位置付け的なものだろうか。確かに対峙して普通の人とは違うと感じた。

 

 

「しかし、ただの海賊ごときにやられるなんてな…」

 

 

そういって近くに倒れていた仲間に近寄る男。

すると気がついたのかその男に向けて手を上げて

 

 

「た、たすけ…て、くれ……」

 

 

助けを求める仲間に対して男は表情も変えずにその足を後ろへ振り上げ

 

 

「汚い手で触ろうと…」

 

 

一気に仲間へその足で蹴りあげた。

 

 

「するんじゃえねぇッ!!!!」

 

 

ドカンッッ!!!!

 

そしてその瞬間に大爆発を起こしたのだ。

爆発により仲間は大きく吹き飛ばされサボテン岩へと激突した。

 

 

「なっ!!!??」

 

 

突然のことで戸惑うくいなに、さらに苦しむ声が聞こえてきた。

そちらを見るとミス・マンデーがさっき現れた女に椅子のように乗られていたのだ

 

 

「グハッ!!」

 

 

しかしただ乗られていただけで苦しむほどにはならない。

ミス・マンデーの体が地面にドンドンめり込んでいっているのだ。まるで"重たい何かに乗られている"ように。

 

 

「仕事が出来ないなら、消すしかないわね」

「や、やめなさいッ!!」

 

 

とっさにくいなはミス・マンデーの上に乗っている女に斬りかかった。しかし曲芸のようにふわっと上へと飛び上がった女はそのまま一緒に来た男の隣に着地した。

 

 

「なんだお前??コイツらに情でも移ったか??」

「もう戦う意思はないのよ!!そこまでしなくても!!!」

「甘いわ。組織に入っている以上失敗したら償う。そしてそれはその命なのよ」

 

「だからだとしてもッ!!!!」

 

「本当に甘いな。それでも海賊か?」

「……海賊だからって、奪っていい命はないわ……」

 

「あぁ。確かにな。……だが、逆はどうだ?」

 

 

何を言おうとしたのか分からない。

だがその男は人差し指をそのまま鼻へ、鼻の穴の中へ……

 

 

くいなにッ!!

変なものをみせてるんじゃねぇッ!!!!」

「ゴフッ!!!!」

 

「Mr.5ッ!!!!」

 

 

殺しあっている奴らを相手しなくてもいい。

そう考えて無視していたのだがここで突然介入してきた。

ルフィから重たい一撃を喰らいながらもMr.5が人差し指を鼻の穴に入れる前に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

途中からルフィとの戦いで刀ではなく拳でやりあっていたためについ殴ってしまったようだが、その拳は重く吹き飛ばされたその体は何軒も突き破った。

 

 

「いきなり何をッ!!?」

「ゾロとの勝負に……邪魔するなッ!!!!

 

「カハッ!!!!!」

 

 

突然吹き飛ばされたMr.5を見たミス・バレンタインはゾロに向かって文句を、攻撃もしようとするまえだった。

ゾロと戦っていたルフィは突然離れた理由がミス・バレンタイン達に有り、さらにまだ邪魔をしてくると判断して、女だろうが関係なく邪魔するやつをぶっ飛ばした。

 

 

「続きだ、ゾロ」

「分かってるよ」

「ちょっと、もう、やめてよッ!! 」

 

 

終わったと思った戦いだがまだ治まらない。

 

 

「「うおおおおおおおおおッ!!!!」」

 

 

どちらかが倒れるまで止まらないのか。

それもと私が……。

このままではダメだと意思を固めて二人の間に飛び込もうとしたが

 

 

なにを、やっているのかしら。貴方達は??

 

 

消えそうな、しかし、ハッキリと聞こえた声。

ルフィは大量の汗を流して、ガクガクと震えだした。

ゾロはルフィとまではいかないが冷や汗をかき呼吸が乱れる。

 

ゆっくりと、ゆっくりと、そこにいないことを願いながら。

ゆっくりと、ゆっくりと、絶望ではないことを祈りながら。

ゆっくりと、ゆっくりと、見たくない真実と向き合うために。

 

声の聞こえたほうへ振り向くと………

 

 

「そんなに元気が有り余っているなら、私が相手をしてあげるわ

 

 

悪魔。

そう呼ばずにはいられないほどに、禍々しい微笑みで、消えそうなその声は、確かに二人の耳に届き、だからこそ、一層、"悪魔"と呼ばずにはいられない。

 

震えるルフィを強制的にあり得しない関節技で決めて、ゾロは手足を拘束し、ロビンの手が一列にサボテン岩の方まで咲き誇り、そこへとそのゾロとルフィの体を運び始めた。

 

 

「くいな」

「は、はいッ!!!!」

 

「よくこのバカ達を止めようとしたわ。

それがなかったら……まぁ、なかったことは関係ないわね」

 

「ア、アハハハハハハハ……」

 

「お兄ちゃん達はナミのところに向かったわ。

先に合流してて。私は"処分したあとに"戻ってくるわ」

 

 

処分ってなんですかッ!?とは聞けなかった。

それを聞いたら戻ってこれなくなりそうで……

とにかく、ゾロにさっきのことを感謝しながら、無事生き残ってと強く祈ってハジメの所へと向かった。



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王女との交渉

「「「お、王女ッ!!!??」」」

 

「そう。だからビビ王女をアラバスタまで送り届けるから」

 

 

寝ていたウソップ達を起こして事情を話したハジメ。

予想通りのリアクションを見せたが一人だけ納得した表情をしたものが

 

 

「やはりそうだったのね」

「レイジュ!!知っていたのかお前ッ!!!!」

「ええ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

でも確信はなかったわ。そんなに会う機会はないから」

 

 

その言葉に疑問をもったビビはレイジュに話しかけようとするが先にウソップが質問した。

 

 

「そういえばサンジの姉ちゃんは何してる人なんだ?」

「それはね……」

 

「そんなことはどうでもいいだろうが!!!!

いまそれよりビビちゃんだ!!追われているなら助けるのが騎士(ナイト)の役目だからなッ!!」

 

「またこいつは……

…でもまぁ、うちの船長に話したら連れていくっていうだろうな」

 

「ふふふ。ルフィさんだもんね」

 

 

話を反らされて聞くことが出来なかったビビ。

でも確かにいまそんなことをしている場合ではない。

 

 

「勝手なのは分かりますがどうかお願いです!!

私をアラバスタまで届けてくれませんかッ!!!!」

 

「俺達はいいぜ!ルフィもいいっていうだろうな!!」

 

「言わなかったら蹴り倒す!」

 

「大丈夫ですよ。ルフィさんは優しい人ですから」

 

 

その言葉に安心してのかジワリと涙が溢れるビビ。

すぅーとレイジュはハジメの隣に立ち

 

 

「ずいぶん、厄介なものと相手すること、分かってるのよね」

「まぁ。これでも海軍大将ですから」

 

「そう。分かってるならいいわ。

あそこのサソリは美味しいから楽しみだわ」

 

 

レイジュはなんか別の目的が出来たようだ。

するとウソップが何かに気づいたようで

 

 

「それでルフィとゾロとくいなはロビンが迎えに行ってるとして、あの親子姉妹は何処にいった?」

 

「知らないんですか?しっかりしてくださいよ」

 

「いや、なんで俺が保護者みたいにアイツらまで見ないといけないんだ」

 

「えっ。ツッコミ要員のトップの人は常に周りのボケを探しているのですぐに誰がボケたか、誰が離れたか分かるんじゃ……」

 

「分かるかボケエエエェェッッ!!!!」

 

 

一番いいツッコミを頂きました。

 

 

「それにもう少ししたらくいなが戻ってきますよ」

「おい、ちょっと待て。ルフィとマリモとロビンちゃんは?」

 

「ロビンが二人にお仕置きしてるので一人ですけど」

 

「それを先に言いやがれッ!!

くいなちゃん!いま俺が迎えにいくよ~!」

 

 

この男、くいなにはゾロがいるのにデレデレと…

まぁ、仕出かすことはしないだろうけど……

 

 

「弟の監視、お願いします」

「……そうね。私も同類とは思われたくないわ…」

 

 

血は繋がっているけどレイジュは大丈夫だと思うけど。

むしろ他の兄達が似てるのかな。"美女、美少女"に関しては。

するとその美女に反応したかのように家の屋上から

 

 

「なにかあったの??」

「おい、お前な。

いままで何処に…って、なんだその袋はッ!!!??」

 

「なにって、戦利品よ」

「海賊から奪うなんて、奪われても文句言えないわよね」

「私、元海兵なのに……」

 

 

屋上から現れたナミが担いでいたのは金品が詰められた袋。

それも隣にいるノジコも同じように担いでいる。

親であるベルメールは流石にと武器しか入ってないが…

 

 

「なに言ってるのよベルメールさん。

海賊なんだから盗るのは当たり前よ。

それにアイツらは悪人。遠慮する理由がないわ」

 

「ナミの言うとおりよ。

散々私達を体を見たんだから観覧料を取らないと」

 

「そこは"一人5万ベリー"取ったからいいの。

ただ取りすぎじゃないかなーってね……」

 

「もうベルメールさんは真面目なんだから…」

「いいところなんだけどね」

 

 

その会話を聞いてやっぱり親子なんだなーと理解した。

とにかくナミ達にもこれからのことを話すと

 

 

「分かったわ。10億ベリー払ってくれるのね」

「何がどう分かったんだお前はッッ!!!!」

 

 

きっちりとツッコミをいれるウソップ。

やっぱりツッコミ要因なんだよなー

 

 

「えっ。王女なのよ。タダで引き受けるなんてしないわよ」

「なにさも当たり前なことを言ってるの?みたいな顔をするな!」

 

「あんたね。少しでもお金のこと考えたことある?

いまはカヤがお金の管理してるけど、私にやらせたら一切の余裕なんてないわよ。ってかすべて私達親子とハジメお兄さんの物よ」

 

「ふざけんなッ!!マジでカヤにやってもらって良かったぁ~」

 

 

なるほど。考えは本編通りなんだ。

でもカヤがいることや、ナミが受けた事情によりお金の管理や立場みたいなものが変わったわけか。

 

でも、隣のカヤは何か考えているようで

 

 

「……やっぱり、報酬金はもらったほうがいいかも」

「お、おいカヤ!!なんでお前までッ!!!!」

 

「いや、これはお金が欲しいからというか、もちろんお金があったほうがいいけど、そうじゃなくて……

ほら、私達は"海賊"なんだから無償でしちゃうと、もしかしたら"国"自体に迷惑がかかるかもしれないし……」

 

「ど、どういうことだ?」

 

「アラバスタからしたら一国の王女を敵から助けただけじゃなく連れ戻してくれた。そうなるとアラバスタの立場というか"国"のとしても何かしらしないと面目丸潰れ。そうなると"海賊"というものに対してどうすればいいかと悩む。

……だから、私達が王女に"お金を請求した"とすれば国としてはそれさえ払えば終わりとなって、それ以上のことはしなくていいことになる……って考えなんだけど……」

 

 

そう言いながらカヤはハジメの方を見る。

ここに海軍大将がいるからね。海軍の手柄に出来るという手もあるって言いたいのだろうけど

 

 

「それでいいと思うよ。

正直、海軍というか政府は王下七武海であるクロコダイルの暴虐を認め……」

 

「「「「「「王下七武海いぃッッ!!!!」」」」」」

 

 

………あれ?言ってなかったけ?

唖然とするみんなだったがすぐに正気に戻り

 

 

「ダメだ!ダメだ!ダメだ!!

王下七武海ッ!?そんなやつな関われるかッ!!!」

 

「流石に王下七武海相手に喧嘩を売るのは……」

 

「そ、そんなッ!!?」

 

「そういうことだから!行きましょう!!」

 

 

そういってこの場から逃げようと振り返るナミの視線の先に

 

 

「……………」

「……………」

 

「……………」

 

 

鳥とラッコがこっちをジィッと見つめて、一気に用紙に何かを書き始める。そしてその書いたものをこちらに向けると

 

 

「うわぁ~そっくり!!」

 

 

それはここにいるメンバーの似顔絵だった。

そしてその用紙を持って何処かへ飛んでいく。

 

 

「何なのよあれはッ!!!!」

「お、お仕置き専門で、た、多分…ボスの所へ……」

 

「逃げ場なしってことッ!!!??」

 

 

まさか、グランドラインに入っていきなり強敵に、それも王下七武海の一人となんて……

あまりの絶望にその場に崩れるナミ。

すぐさまノジコやベルメールがかけより慰める。

 

 

「ご、ごめんなさいッ!!!!

す、少ないけど私の貯金なら……」

 

「そんなのじゃ足りないわよ…貰うけど……」

 

「あ、アラバスタに届けてくれたら、父に掛け合ってみるから……ッ!!」

 

「絶対によッ!!!!こっちは命かけてるんだからねッ!!!!」

 

 

なんか、本編のナミっぽいなー。

まぁ、あのトラウマなことがなければ普通のナミだったんだもんなー。

少しずつだけど仲間に囲まれて素が出てきたのかな?

 

 

「よし。皆から合意を貰ったところで」

『強制だけどなッ!!』

 

「はいはい。とにかく船を出す準備をしようか」

 

 

…………………………

 

 

「おーい。生きてるかぁー!」

「……………………」

「……………………」

 

「脈はあるわ。心配ないわよ」

「ロビンさん。植物状態って知ってますか?」

 

「知ってるわよ。だとしてもこの子達が悪いわ」

 

「何を言ってるんですか?

前から言おうと思ってましたけどどうしてそうやり過ぎるんですか?ルフィさんやゾロさんは貴女のオモチャじゃないんですよ。だいたいどうしてそんなに人を人だと思わないでやろうとするんですか?言っておきますけどハジメさんが全てという考え方、やめたほうがいいと思いますよ。そんなことをしていると間違いなく自滅してしまいますよ。まぁすでに人格が崩壊れべるかもしれませんが」

 

「言ってくれるわね。

ちょっとお兄ちゃんから話術の訓練を受けたからって調子に乗るのはやめたほうがいいわよ。大体ね、貴女にとやかく言われる筋合いもないわ。私にとってお兄ちゃんが至高・全て・全知全能なの。それを実力も経験も年月もいかない小娘ごときがお兄ちゃんについて語ることが烏滸がましい。そこの二人は訳の分からないことでやりあっていたの。制裁を加えて何が悪いの?」

 

「はぁ?」

「なによ?」

 

「頼むからやめてくれええぇ~ッ!!!!」

 

 

船の上ではロビンによる"おしおき"により気絶しているルフィとゾロ。ルフィはよくこの状態を見てきたけどゾロはなかなかないなー。よほど強烈な"おしおき"をされたんだろう。

 

で、それを見た医者見習いのカヤがロビンに噛みついた。

恐らくロビンに噛みついて楯突くのってカヤとベルメールさんだけなんだろうけど、カヤに話術というか有無を言わせないための話し方を教えたのだけど、あのニコニコ笑顔というか、普段怒らないカヤがこういう時に怒っているのはかなり怖い。

幼なじみのウソップが泣いて止めようとする理由が分かるなー。

 

僕としては口論している姿は、問題ないのでそのままにしておこう。

 

 

「それで、バロックワークスのオフィサーエージェントって言っていたんだね。つまり組織の中でも選ばれた"殺し屋"ってところかな」

 

「まさか、Mr.5とミス・バレンタインが来てるんなんて…」

 

「それもこちらの何人かは似顔絵をかかれてクロコダイルの所へか……ちょっと不利だな」

 

 

まぁ、ここまでは本編通りなんだろうけど。

さてここからどうこちら側に有利に働くようにするか…

出来るならこの先の2つの島は行っておきたいし、行くにしても最短で向かうためには……

 

 

「……………」

「ど、どうしたんですか?」

 

「ちょっとね。ロビン、二人起こして」

「分かったわ」

 

 

口論の途中でハジメの指示に従うロビン。

カヤは「まだ終わってません!」と言うが無視をする。

そしてロビンは

 

 

「早く起きないと、消すわよ

 

「はいいいいいいいぃぃぃぃッ!!!!」

「ッざけんなああああああぁッ!!!!」

 

 

まるで魔法の言葉のように目覚めたルフィとゾロ。

 

 

「な、何されたら、それで起きれるんだ……」

「知りたい?」

「知りたくないわッ!!」

 

 

興味があるならウソップにも教えようとしたけど拒否された。

まあ、嫌がるのは分かる。いまだって顔が青ざめていて息づかいも荒い。まるで悪い夢でも見たような症状だ。

 

 

「ほら船長。出航しないと」

「うん?どこに行くんだ?というか宴はッ!!!??」

 

「ねえよ。さっさと次の島に行くんだよ。

じゃないとビビが困るだろうが、あぁ?」

 

「そうなのか??」

「そうなんだ」

 

「じゃ野郎共ッ!!出航だぁッ!!!!」

 

 

強引にルフィから出航の合図を貰ったところで

 

 

「で、ビビって誰だ?」

『分かってから言いやがれッ!!!!』

 

 

いやー実に操りやすい。



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接触

「なるほど。ビビをアラバスタって国に送ればいいんだな」

「は、はい。でも私、アラバスタには敵が……」

 

「別にいいぞ。師匠との修行より怖えもんないしな」

「褒め言葉として聞き流してあげるわ」

 

「しかし王女自ら潜入とはな。肝が据わってるな」

「それしか、私には出来なかったから…」

 

「あのちくわのオッサンが護衛かぁー」

「それも先にアラバスタに向かってるんだろう??」

「囮としてな。向こうのほうが危険が大きい」

 

「でもロビンがいるなら大丈夫じゃないの?」

「うん。お姉さんは強いし!」

「あとはこっちがどのタイミングでアラバスタに入るか…」

 

「その前に相手は王下七武海なんだぞ!!!」

「いままでの敵よりずっと強いよね……」

 

 

それぞれが意見を出していくなか、島から船が離れていく。

Mr.5とミス・バレンタイン以外の奴等には港に停めていた船に運んでおいた。主にロビンが。

 

そしてMr.5とミス・バレンタインは小舟に乗せてメリー号の後ろにロープで繋いで連れていっている。

 

 

「それで、なんでアイツらを連れてきてるんだ?」

「うん?ダメだった」

 

「ダメだろう、どう考えてもよ。敵だぞ」

 

 

確かにサンジの言うとおりである。

敵をわざわざ運んでいるなんて危険を増やしているだけ。

まぁ、普通はそうなんだろうけど。

 

 

「いや、あの二人の能力がね」

「能力?そういえば足が爆発したり、重さが増えたりって…」

 

「そうそう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「キチガイかてめえはッッ!!!!」

 

 

失礼な。

 

 

「便利だよ。全身爆発人間ならその能力を()()()として使えるし、体重を変えられるなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことも出来る」

 

「たったあれだけの情報でよくもまぁそんなに思い付くな…」

 

「とにかくあの能力は欲しいの。

大丈夫、殺したりはしないよ。そんなことしたら次はどこに"悪魔の実が出現するか"分からないしね。

そんな事しなくても優秀な人がいますから」

 

「ま、まさか……」

 

「私よ」

 

 

そう、こういう手のことはロビンに任せておけばOK。

……初めは止めろ!!って思っていたけど使い方を間違わなければいい方向にいくしね。

 

そういえば……ヴェルゴはどうなったんだろう?

あの日、ロビンと一緒に消えてしまって、こうしてロビンは見つかったけどヴェルゴはどうなったのか……

 

 

「ねぇ、ロビン。ヴェルゴのことなんだけど……」

「…………………」

 

 

すると、ロビンはまるでお化けを見ているかのように恐怖した表情を見せた。……あの、ロビンが。

 

 

「ど、どうしたのロビン!!」

「………お、お兄ちゃん……」

 

 

今にも泣きそうなその声。昔なら自分の為にそういう表情を見せたり声を出したりていたけど……

いまのロビンは、その視線は自分ではなく別の場所に向いている。

 

 

「……お、おい…ちょっと……まて……よ………」

 

 

そして……さっきの声。

どうしてこんなに、ロビンがこんなに近くにいるのに!!

どうして()()()()()()()()()()()()()()()!()!()?()

 

嫌な予感が頭を過る。現実を見たくないと体が硬直する。

それでも無理やりロビンが見ている方へ向きを変えると、そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ。やっと振り向いてくれたわね()()()()()??」

 

 

そこにいたのは、船室の上の欄干に腰かけていたのは……

間違いなく()()()だった。

 

服装は真っ黒なスーツ姿で、黒いサングラス、髪はショートボブ。

ロビンがしない服装で、髪型で、それでもハッキリ分かる。

 

あれは、確かに……ロビンだ。

 

そしてさらに驚いたのはその隣にいる者。

 

 

「久しぶりだな。()()()()

「………ヴェルゴ……」

 

 

おいおいおい。嘘だろう…

なんでここにヴェルゴがいる!

そしてどうしてロビンの隣に立っている!!!

 

するとふふふ。と笑いながら

 

 

「久しぶりの再会なのだからもっと喜んでくれると思ったけど、よほど()()()()()()()()()()()()()()

 

「な、なにを…言っている……」

 

「分からないのかしら?それとも気づかないフリをしてるの?

ならハッキリと分かってもらうように言うわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッッ!!!??」

 

 

あ、あ、あ、あり得ない……

そんな、ロビンが……分身体って……

 

 

「ありえないッ!!!!」

「現実を見てお兄ちゃん。ならどうして"私"はここにいるの?

私が分身体ならそこの私が私を消せばいいだけ。

なのにそれをしない。それが……証拠よ」

 

 

ロビンの方を見るが、ロビンは震えて何も出来ない状態に陥っていた。まるで本編にあったバスターコールや仲間を失う恐怖を味わったときのように。いや、それ以上に怖がっている。

 

そ、そんな…まさか……

 

 

「第一、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()本当に思っていたのお兄ちゃん?。それは私が仕掛けたの。知っているでしょう?本体と分身体は情報を共有出来る。つまりそこにいる私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なの」

 

「……や、めろ……」

 

「ふふふ。それにもうお兄ちゃんも気づいてるでしょうけど、いま私達はクロコダイルの下にいるわ。その目的は王家に隠されたポ…」

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!」

 

 

久しぶりに大声を出し息切れを起こすハジメ。

その大声にまたふふふ。と笑う向こう側のロビンは

 

 

「今日は挨拶に来たの。

大丈夫、そこのロビンは消さないであげるわ。だってお兄ちゃんには"私"がいないとダメだから。アラバスタで待ってるわ。そこで"私は、私になる"」

 

「ま、待ってロビンッ!!」

 

「それではハジメ様。八咫烏の面々にもよろしくお伝えください」

 

 

そういって横付けしていた船に乗り込み二人は去っていった。

あまりの出来事に誰もが放心状態のなか

 

 

「……お、お兄ちゃん……わ、私……」

「………大丈夫だ。僕が、いるから……」

 

 

もうメンタル的に限界にきていたロビンはそのまま気絶してしまった。ロビンはお姫様抱っこして室内へ向かおうとすると

 

 

「……なんのつもりかなゾロ?」

「……それはこっちの台詞だ」

 

 

ゾロは刀を抜き、その刃先をロビンに向けていた。

それを見ていた誰もがゾロを止めようとするが

 

 

「その()がいると向こうに情報が筒抜けになるんじゃねえのか?」

 

「……だとしたら?」

 

「ワリが、()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

最後まで聞くまでもなくハジメはこれまで見せたことないスピードでゾロに近づき首もとを掴み持ち上げた。

 

 

「おい。何を言おうとしたテメェ」

「グゴッ!!!」

「ゾロッ!!お兄さん!!!!」

 

 

駆け寄るくいなを睨み付けるハジメ。

たったそれだけでくいなの体は、いや、ここにいる誰もが体を動かせずいた。

 

 

「な、なんだ…よ………これは……」

「ハ、ハジメさん……」

「……これほど…の…覇気を………」

 

 

まぁ覇王色の覇気に一時停止を混ぜただけなのだが。

それでもそれを食らったものは誰も動けなくなる。

よっぽど我の強いやつか、同じような覇王色の覇気を持っているもの。

 

つまりは

 

 

「…ハ、ハジメ……」

「やっぱり動けるかルフィ。でもそこで大人しくしてなさい」

 

 

ゆっくりであるが動くルフィだが、それでもそれだけだ。

いまはこの男にお仕置きをしないと気がすまない。

 

 

「一方的に言われたことを真に受けて、それで、ロビンをどうするって?なにも真実が明らかになってもいないのに、ロビンをどうするっていうんだ、あぁ!?」

 

「グッ…ガッ…」

 

「………やめた…」

 

 

その言葉をいいその手を離したハジメ。

その場に落ちたゾロは必死に酸素を吸おうとし咳き込んでいる。

同時に束縛から解放されたくいなは直ぐ様ゾロにかけより背中をさすっていた。

 

 

「しばらく格納庫にいるから、あとは僕たち抜きでやっていて」

「ハ、ハジメ……」

 

「……大丈夫。ゾロ、ごめんね。

確かにその可能性はある。けど…決めつけないで。

……ロビンはしばらく皆と接触を断つから……」

 

 

そう言い残して、誰も言葉をかけれられずに、ハジメとロビンは船内へと入っていった。

 

 

…………………………

 

 

「で、実際のところどうなの?」

「恐らく分身体の"突然変異"的なものかしら」

 

 

誰もいない格納庫に入り一時停止で完全遮断したのを確認すると()()()()()()()()()()()()ロビンはハジメの腕から離れて立ち上がった。

 

 

「突然変異かぁ……覚えはないの?」

 

「あの大嵐の日かしらね。人手が足りないから何体か出したときに珍しく焦ってしまったからその時に生まれたのかもしれないわ」

 

「つまり平常心で作った分身体ではないために、完全な"個"として生まれてきたと」

 

「それもずいぶんと妄想癖が強いわ。

船が沈むからヴェルゴが私を棺桶に入れて海へ出しただけなのに。きっとそのあと遭難してあの子とヴェルゴが都合よく記憶を失った。ってところかしら」

 

「で、向こうのロビンは自分が本物だと思ってヴェルゴも都合よく"しつけ"直したわけか。本当、二人が現れたときはビックリしたよ」

 

 

はぁ~とため息をつきながら適当なものに座るハジメ。

その隣にロビンがさりげなく座って体をくっつける。

 

 

「ふふふ。とっさの演技だったけどやっぱりお兄ちゃんも才能があるみたいね」

 

「どれだけ変わった人に会ってると思うの?対応するためにはそれなりの技術もいるからね。まぁ、ゾロには悪いことしたけど気を引き締めるためにはあれぐらいしないとね」

 

「私的には一度"地獄"を見せてもいいレベルだったわ」

 

「やめなさい。

とにかくしばらくはここにいて。向こうのロビンとの"繋がり"だけでも一時停止できたら良かったけど」

 

「そうね。でもいままでよく私に気づかれずにいれたものね。やっぱり突然変異だからなのかしら?」

 

 

不思議なのはそこだ。

突然変異っていっても要はロビンの能力なのだ。

つまりはロビンが親で向こうが子。

強さはこちらが上のはずだけどそれでもロビンがいままで気づかなかったというのは不思議である。

 

 

「でも、お兄ちゃんは何も疑わずに"私"が"私"だって思ってくれていたのね」

 

「それは妹だし"婚約者"なんだから。

いくら分身体でも本物と分身体の違いは分かるよ。

問題はこれからあの二人をどう対処するか………って、ロビン?」

 

 

フッと気づくとロビンが顔を赤くしている。

どうしたのかと覗き込もうとするとそれさえ嫌がる。

 

 

「……えぇと、ロビン?」

「そ、そんな不意打ちに…婚約者なんて……言わないで…///」

 

 

間違いなくこの子は本物です。

なんで普段はあんなに積極的なのにこういう時すぐに照れるのだろうか?



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二人のいない。麦わらの一味

格納庫でしばらくロビンと過ごした頃、残されたルフィ達は

 

 

「ゾロッッ!!!!なんであんなことしたのッ!!」

「……うるせぇ……」

 

「まあまあくいなちゃん落ち着いて…」

「サンジさんは黙ってて」

 

「怒ってるくいなちゃんも可愛いッ!!」

「ごめんなさいね。こんな弟で…」

 

 

くいながゾロに対してさっきまでの行動を問い詰める。

本人も罪悪感があるのか誤魔化す形でそっぽを向いた。

サンジは相変わらずでレイジュはそんなサンジにため息をつく。

 

ハジメとロビンが離れ、残された者達が少し落ち着いてきたところで今後の噺をすることにした。

ロビンもハジメも、あんな風になるのは始めてであり、そして自分達がどれだけ二人に依存していたかも明るみになった。

 

だからそこ、いまここでハッキリさせておきたいということだろう。サンジがタバコに火をつけ一服したところで真剣な表情で

 

 

「でもくいなちゃん。正直このマリモがやったの正しいよ」

「なんでッ!!」

 

「いまから俺達が相手するのは国を陥れようとしているやつで王下七武海だ。ただでさえ不利な状況でそんな奴等にこっちの情報が筒抜けなんて死にいくもんだ」

 

「…で、でも……」

 

「まあやりすぎだってのは賛成だよ。

このマリモがそんな繊細なことまで考えるわけねぇしな」

 

「…三流コックが……」

「なぁッ!!!テメェなんていいやがったクソマリモがあッ!!」

 

「いい加減にしなさいッ!!!」

 

 

一喝をいれたベルメールの声に黙る二人。

こういう時、年の功というかお姉さん的な存在でゾロ達よりも経験のある者はこういう時頼りになる。

そしてもう1人、この中で最も色んな経験をしたものに視線を向ける。

 

 

「貴女の意見が聞きたいのだけどレイジュ」

 

「……そうね。分身体の"どうのこうの"はこの際無意味ね。

向こうのロビンが来たことを考えると()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というメッセージ的なものもあったはずよ」

 

「つまり、これまでの私達の行動も予測される…」

 

「ええ。どっちが分身体とか問題は本人に任せればいいわ。

それよりこれ以上の余計な情報は渡さないようにするというのは必要。本物、偽物が分からない以上、ロビンを隔離するしかないわね」

 

 

それがいま出来ること。と付け加えたところでビビが

 

 

「……私、船を降ります」

「ちょっと!何を言ってるのビビ!?」

 

「私が降りれば……このままだと皆さんにご迷惑をッ!!」

「…あのね~。もう似顔絵を描かれてこっちも狙われる立場なの。

まぁ、それが海軍から海賊に、それも王下七武海に変わっただけよ」

 

「いや、グレード上がってるよな…」

「言わないのウソップさん」

 

 

ここで、いままで黙っていたルフィが口を開く。

 

 

「ビビ。お前はどうしたいんだ?」

「わ、私は……国を救いたい」

 

「俺はバカだからよく分からねぇけど、どうやったら国を救えるんだ?」

 

「どうやるって…元凶であるクロコダイルを倒すしか……」

「それを、俺たち以外ですぐにやってくれるやつはいるのか?」

 

 

何が聞きたいのかよく分からない。

でも、いまの質問はまるで何かを見透かされているようで…

 

 

「……いないわ……」

「なら、ここに残ればいいじゃねえか?」

 

「でもッ!!

そんなことしたら皆さんに迷惑がッ!!」

 

「お前は…お前は何がやりたいんだッ!!!!

 

 

怒鳴り声でビビに問いかけるルフィ。

その迫力に呑まれそうになりながらも

 

 

「アラバスタを!!みんなを助けたいッ!!!!」

 

「ならここにいろッ!!

シャンクスが言っていたんだ!!

『頼れ。人だろうがなんだろうが()()()()()()()()()()()()()()()()』って。

いまお前が頼りたいものは、なんだッ!!!!」

 

 

その言葉に、下唇を噛みながら溢れる涙を必死に堪えてビビはこう言った。

 

 

「ここにいる、みんなですッ!!!!」

 

 

ビビの言葉に、誰もが微笑んだ。

そうだ。いまはここに助けて、頼りになる人がこんなにもいる。

 

 

「ニシシシッ!なら、決まりだ!!

野郎共ッ!!!改めて出航だ!目的地はアラ()パスタ(麺類)ッ!!!」

 

「アラバスタだッ!!!ボケッッ!!!!」

 

「どんだけ腹減ってるんだテメェはッ!!!!」

 

 

いい感じだったのに結局締まらないのがこの海賊団。

でも、少し安心したのかビビから少し笑顔が見えた。

それが一時とはいえ、心から落ち着ける所が見つかったのだろう。

 

そしてしばらく航海しているなかで、こんなことも話し合っていた。

 

 

「なるほどね。確かにお兄さんが言った通りにしたほうが良さそうね」

 

「護衛のイガラムさんが直接アラバスタに向かって敵を引き付ける。でもこれもう無意味じゃ……」

 

「それでも敵の分散にはなるわ。もっともどれくらい意味があるか分からないけど……」

 

「さっき言っていたエターナルポースをどうにか入手出来ないかしら??」

 

「なら、向かってくる敵を倒して奪うってのは?」

 

 

ナミ、ノジコ、ベルメール、レイジュ、サンジの頭脳係が話し合っている。いままでのようにハジメやロビンに頼るわけにもいかなくなったためだ。

 

本編ではロビンがルフィにアラバスタのエターナルポースを渡したがそれを破壊。ルフィいわく"勝手に進路を決めるな"と怒っていた。

しかし今回は違う。あの時のロビンは明確な敵意はなかったが、今回はそれがある。なのでエターナルポースを渡すということにはならなかった。

 

それでも直接目的地にたどり着くエターナルポースがあれば敵から逃れつつ目的地にたどり着く。

ハジメが当初から言っていた通りにやったほうがいいのだが、その肝心なエターナルポースがない。

 

ないなら、奪うしかない。

 

ロビンがあの様子だとしばらくハジメも付きっきりになる。

ということは最大戦力の二人が抜けた穴を埋めるには全員が一つになって事にあたらないといけない。

 

でもその判断は二人に決めてもらうことに。

まず1人はももちろん当事者であるビビ。

 

 

「……もしかしたら幹部クラスなら持ってるかも知れませんが……」

 

「どうルフィ?」

 

「ねぇな!!食い物も持ってないぞ!」

 

「あるわけないだろうが!」

「きゃははははッ!!バカね!」

 

 

 

サンジのアイデアでルフィがMr.5とミス・バレンタインの身体検査をしたが何も持ってなかった。

正直こんなやつはさっさとお別れしたいが、いま下手に離すと余計な情報が相手に伝わるかもしれないとそのまましてある。

正確にはログ・ポースはあったがエターナルポースがない。

 

 

「ということは、やっぱり次の刺客から奪うしかないわね」

「いいじゃないかしら。海賊らしいわ」

 

「ビビちゃん、ルフィ。ということで進めるがいいか!?」

「はい!!」

「分かった!ぶっ飛ばせばいいんだな!」

 

「それはエターナルポースを手に入れた後よ。

その後なら自由にしなさい」

 

「おう!」

 

 

なんか船長なのに船長らしいことしてない気がする。

まぁ、本編もそんな気配はあったから気にしないでおこう。

 

さて、残りのメンバーのウソップとカヤは

 

 

「ウソップさん。ちょっと右に」

「OK。いいか、ゾロ。何か来たら斬れよ」

「…お前でも出来るだろうが」

 

「あのな。お前に舵や方角を任せたら迷子になるだろうが!!

たった10秒でなんで真反対に進んでるんだよ!!!」

 

「う、うるせぇ!!

あの雲に向かってまっすぐ進んだだけだ!!」

 

「アホかッ!!!!雲は動くだろうが!!!!!」

「絶対にゾロさんには任せないようにしないと……」

 

 

腹のたつことを言われてイライラしているゾロだが、ウソップがいうように真反対に航行していたのは事実。

ぐうの音も言えないゾロはさっさと何か出てきてこないかと、出てきたらぶっ斬ると決めた。

 

 

「……なぁゾロ」

「…なんだ?」

 

「やっぱり…偽物なのか?」

 

 

あの場ではもうその議論は終わったのだがそれでも気になる。

ウソップはその偽物かどうかの判断はつかない。

しかしゾロやカヤは何度か会ったことはある。

だから、どうなのかと、聞きたくなった。

 

 

「よく分からねぇけどよ、偽物ってあんなに堂々としてるもんなのか?悪魔的なことばっかりするけどよ、やっぱり偽物だって思えなくてよ……」

 

「うん。私もそう思う。

だってあんなに良くしてくれて、私を強くしてくれた。

そんな人が偽物なんて……」

 

「偽物じゃねえ。分身体だ。

別物とは違う。"本物と一緒"だから面倒くせぇんだよ」

 

「なら、その分身体って可能性も…」

 

「あるだろうな。だがハジメが違うっていった。

なら九割は本物だろう。だが一割ある。なら疑うべきだ」

 

「そ、そうなんだ…なら大丈夫かな」

「だな!脅かすなよゾロ!!」

「テメェら…話聞いてたのか?完璧じゃねえんだぞ」

 

 

するとウソップとカヤはお互いを見て笑い、そして

 

 

「「その一割は俺達が(私達が)信じればいいだけだ(です)!!」」

 

 

なんとも息のぴったりな二人。

それをみたゾロはハァーとため息をつき頭をかいて

 

 

「なら、信じてろ。俺は分かるまで疑ってやる」

 

「素直じゃねえなゾロは!」

「信じてるって言えばいいのに」

 

「うるせぇなこのバカップル!!黙って進路見てろッ!!!!」

 

 

…………………………

 

 

「すぅっげえええなああああぁぁぁ!!!」

「ルフィの感情値がマックスまで上がってるぞ…」

「こういう時ロビンさんがいないと困りますね……」

 

 

ログ・ポースが導いた島にたどり着いた一行。

そこは島全体が木々に覆われてまるでジャングルのようだ。

 

 

「なあなあ!!冒険がしてえ!」

「お前な…こんな時に何いってるんだ!」

 

「知らないのかよウソップ。

ジャングルを見つけたら迷わず飛び込め。そして迷え。

って、ハジメが言っていたんだぞ」

 

「あいつが原因かあッ!!!!」

 

 

ウキウキ、ワクワク、ドキドキと感情をコントロール出来ないルフィは今にも船から飛び出そうとしている。

これは止められないと諦めたノジコは

 

 

「なら、船に残る組とルフィと一緒に向かう組、そして食糧確保する組に別れましょう」

 

「確かに。ルフィの食欲のせいで冷蔵庫の食材も心許ないからな。なら食糧確保は俺がいく」

 

「なら付いていくわ。こういうところに美味しい"毒"がありそうだしね」

 

「なにか無性に斬りてぇからな。ついでになにか取ってきてやる。テメェより大きい獲物をな」

 

「カッチンーッ!!

だったら勝負するか!!?」

 

「「どっちが大きい獲物をとって来るか勝負だぁ!!」」

 

 

食糧確保はサンジとレイジュ、そしてゾロ。

サンジとゾロは何か勝負事になったが問題ないだろう。

 

 

「私はルフィさんに付いていくわ。面白そうだし」

「おぉ。王女様にしてはアクティブだな」

「敵地に潜入してるしね…」

 

「それにカルーもいるし」

「ッ!!!??」

 

「声にならないほど驚いてるぞ…」

「アハハ……頑張って……」

 

「何いってるんだ?二人ともいくぞ!船長命令だぁ!!」

 

「「ッ!!!??」」

 

「二人もカルーみたいになってるわ……」

 

 

冒険組がルフィ、ビビ、カルー、ウソップ、カヤ。

 

 

「じゃ、残った私達が見張りね」

「くいな。あんただけが頼りだからね!!」

「いや、ベルメールさんも戦えますよね?」

「戦闘力が違うわ。まあ援護ぐらいわするわよ」

 

 

残り組はノジコ、ナミ、くいな、ベルメールとなった。

 

 

「サンジ!!海賊弁当ッ!!」

「分かってるよ…ちょっと待ってろ」

 

「ハジメさん達には言わなくてもいいのかな?」

「最悪船が壊れても生きてるだろうから問題ねぇよ」

 

「あるに決まってるだろうが!!」

「勝手に船を壊さないでください!!!」

 

「ベルメール、くいな。もしもの時はあの二人を人質に取りなさい。少しは時間稼ぎになるから」

 

「レ、レイジュさん……」

「海賊だし、あることだろうけど…よく思い付くわね……」

 

「これを空に向かって打ち上げればいいのね?」

「おう。赤い煙幕が出れば緊急事態。黄色は帰ってこいだ」

「あんた達。十秒で戻ってきなさいよ!」

 

「戻ってこれるかッ!!」

「か弱い女の子が四人も船にいるのよ。根性見せなさいよ!」

「本当に、いい性格に変わってきやがって……」

 

 

三チームに別れて行動をする。

それも初めて、ハジメやロビンがいない。

誰も彼もが少なからず不安を覚えながらそれぞれの目的のために行動をする。

 

そしてルフィ達とは別に、この島に上陸したものがいた。



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巨人

「な、なんなの…これ……」

「でけえええええぇぇ!!!!」

「き、恐竜なのかッ!!?」

「そんな、恐竜は大昔にッ!!」

 

 

ルフィ率いる冒険組はジャングルの奥で出会ってしまった。

それは何もかもが大きく、そして特徴のある長い首。

そして現代では見ることの出来ない特徴のあるその生き物は"恐竜"

 

 

「い、いいかルフィ…刺激させしなければ襲ってこねぇはずだ……」

「……ここは距離をおいた方がいいよね……」

「……はい。ゆっくりと距離を開ければ……」

 

「ク、クエェ……」

 

 

まだ恐竜に見つかってない。

ということでゆっくりと恐竜から距離を開けようとしているなかカルーが諦めたような声を出した。そしてジェスチャーである方向を指すカルーに皆がその方向を見てみると

 

 

「たけぇーなぁー!!!」

「「「なにやってるんだッ!!!!」」」

 

 

恐竜の頭上に立ち景色を眺めているルフィ。

下にいる三人はハラハラとそれを見守ることしか出来ない。

そんななか恐竜が頭上にいるルフィに気づいて、ルフィを上にと飛ばすと

 

 

パクッ。

 

 

「ぎゃあああああああぁぁぁぁ!!!!」

「ルフィさんッ!!!!」

「ど、ど、ど、ど、どうしようッッ!!!??」

 

 

油断していたルフィは呆気なく恐竜に食べられたしまった。

しかし次の瞬間、その恐竜の首が()()()()に斬られた。

 

 

「おっ」

 

 

呑気に助かったという表情をするルフィは空中に投げ出されたのだが何故かすぐに()()()()()()

いや、地面と思われるほど広いがそれは"地面"ではなかった。

 

大きな、大きな、掌。

 

 

「ゲギャ、ギャ、ギャ、ギャ、ギャ、ギャ、ギャ、ギャ、ギャ、ギャ!!!

生きのいい人間だなッ!!久しぶりの客人だッ!!

我こそがエルバフ最強の戦士!ドリーだ!!!」

 

「き、巨人ッ!!!??」

「で、でけぇッ!!!!」

「は、初めて見ました……」

「す、スゴい……」

「く、クェ………」

 

 

ルフィが食べられたことで動揺し気づかなかった。

こんなにも大きい人間が近くにいたというのに……

 

 

「歓迎しよう客人。いまいい肉を手に入れたしな」

「きょ、恐竜って食べれるんですか?」

「わ、分かりません……」

 

「く、食いてええええぇッ!!!!」

「お、俺もだあッ!!!」

「く、クエェッ!!!!」

 

「男性陣は乗る気ですね……」

「どのみち逆らわないほうが懸命みたい……」

 

 

…………………………

 

 

「…………なにか、来ますね」

「くいな!!貴女だけが頼りなんだからね!」

「よろしくお願いします!」

「頼りにしてるわ!」

「み、みなさん……」

 

 

頼られるのはいいけど年上のベルメールさんまで…と苦笑いするくいな。

ベルメールは海軍にいたのだから少しは戦えるはず。と言いたかったがそれよりもズシン!ズシン!と大きな音が近づいてくるほうが気になった。。

 

 

「…………わ、私、この島、知ってる気がする……」

「やっぱりそうよね…私も、本で見たような……」

「も、もしかしてッ!!!」

「ちょっ、ちょっとベルメールさん!?」

「少しの間娘達をお願いしますね!」

 

 

と、ベルメールが船内に戻っていった。

そこまで頼られてもと思ったがなんとも悪いタイミングでそこに現れたのは

 

 

「と、トラッ!!?」

「それにしては大きすぎよこれッ!!」

「……トラって、食べれましたか?」

 

「なに怖いこと言ってるのくいなッ!!」

「お願いだから早くやっつけてッ!!」

「こっちから手を出さなければ襲ってこないと思いますけど…」

 

 

仕方ないか…と諦めて刀を抜こうとした時、音と共に強い振動が襲ってきた。

その振動はメリー号さえも揺らしている。

そんななか船内から出てきたベルメールさんが慌てた様子で

 

 

「ここから離れないとッ!!この島"リトルガーデン"は……ッ!!!??」

 

 

続きをいう前に、突如現れた。

ベルメールが分かったというものは、それは近づいてくる音の正体だった。

 

 

「おい、お前ら。酒は持っていないか?」

「「ッッッ!!!??」」

「き、巨人……」

「お、遅かったぁ……」

 

 

そこに現れたのは巨人。

ナミ達の何百倍もの大きさにベルメール達は腰を抜かし、くいなもその圧倒的な大きさに呆然としていた。

 

 

「?? 聞こえなかったのか?酒は持ってないのか?」

 

「「持ってますッ!!」」

 

 

ナミとノジコはお互いを抱きしめあいながら震え、それでも逆らわないようにしないと!とすぐに答えた。

その言葉にニコニコ笑顔で喜ぶ巨人は

 

 

「そうか、持っているか………ギャアッ!!!」

「「キャアアアアアッ!!!」」

 

 

突然叫んだ巨人のお尻に先ほどのトラが噛みついていた。

そしてナミ達は今にも泡を吹いて気絶しそうな勢いで叫んだ。

突然の攻撃に怒った巨人はあっという間にそのトラの首を切り落とし

 

 

「歓迎するぞお前ら!!今日は宴だぁッ!!」

「……行った方がいいみたいですね……」

「同感よ。……やっぱり海は広いわ……」

 

 

あんなものを見せられて歯向かえないと諦めた。

しかしこのままだと船に誰もいなくなる。

ということで、

 

 

「ふざけんなお前らッ!!」

「人質にしても扱いが雑すぎよッ!!」

 

「暗殺などをしている人達が何を言ってるんですか?

船、壊したらお兄さんが怒りますからくれぐれも注意してくださいね」

 

 

ルフィの訓練用に用意してあった海楼石の錠。

能力を完全に失うものではなく最低限動けるまで弱めているもの。

それでも能力は使えない。ので鉄パイプをMr.5とミス・バレンタインに渡したらキレられた。

 

 

「さっきみたいなトラが来たらどうするんだッ!!」

「頑張って倒してください」

「勝てるわけないでしょうッ!!」

「頑張って倒してください」

 

「「ふざけんなッ!!!!」」

 

「ビビさんを捕まえようとしたり、仲間を仲間だと思わない人に何を言われても。

お兄さんが貴方達を構ってなければ……私は切ってましたからね。それを忘れないでください」

 

「「ッッ!!!?」」

 

 

その殺気を含めた睨みに身震いする二人。

本気で切り殺されると思わせるほどの殺気に何も言えなくなった。

 

 

「さぁ、行きましょう」

「この人間、強いな……」

 

「強くてマトモな、くいなが……」

「やっぱりゾロと一緒にいることだけはあるのね……」

「怒らせないようにしましょう……」

 

 

きっとこの一味でハジメとロビン以外に怖いとするならそれはくいなだろうと、この瞬間心の奥底から感じた三人だった。

 

 

…………………………

 

 

「ハッ。いまか弱い女の子が俺を呼んでいる気がッ!!!??」

「そんなことはないわ。信号弾、出てないもの」

 

「俺には聞こえたんだよ!!こうしちゃおけねえ!!

いますぐにでも戻らないとッッ!!!」

 

「くいなもいるんだから大丈夫よ。

それより食料を……」

 

「お前が近くにいるから獲物が逃げてるんだよッ!!!!」

 

 

そう。さっきから獲物と獲物が、虫さえも一匹二人に近づかないのだ。それはレイジュが体内にある毒のせい。

本能的に"危険だ"と察知した生き物はレイジュに近づかない。

ちなみにカルーも同じでレイジュが近づくと離れていた。

 

その時はまだ慣れていないだけだと思っていたが……

 

 

「昔からなのよね。私、動物好きなのに」

「知らねえよ。ったく、あの()()()()に文句を言え」

 

「………へぇ……」

「な、なんだよ……」

 

 

なんか暖かい目で見てくるレイジュに警戒するサンジ。

 

 

「まだ()()だって思っていたのね……」

「ッッ!!!??

………許してねぇ。許してねぇが………」

 

「………そう……」

 

 

そんな二人の前に現れたのは明らかに肉食だと思われる恐竜。

獲物を見つけたと吠える恐竜に対して二人は

 

 

「毒抜きが大変なんだからな。気を使えよレイジュ」

「心配要らないわ。麻痺する程度に抑えるから」

 

 

このあと恐竜は思うだろう。

獲物としての相手を、間違えたと。

 

 

「ところで、もう一人は?」

「知るか」

 

 

…………………………

 

 

「アイツら………迷子だな」

 

 



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決闘

「ゲギャギャギャギャギャギャギャギャッ!!

なかなか上手いなこの弁当は!量は少ねぇがな!!」

 

「当たり前だッ!!不味いと言ったらブッ飛ばすぞ!」

 

「や、止めろルフィッ!!ほら!この肉もうまいんだからいいだろうッ!!」

 

「むっ!確かにそうだぁ!悪かったな巨人のオッサンッ!!」

 

「おい!!言い方ッ!!!」

 

「じゃ、ドリーのオッサンだ!」

 

()()()()()()()()ってんだよボケッ!!」

 

「クエエェッ!!!」

 

「呼び方なんぞなんでもいいッ!!!今日はいい日だからなッ!!!」

 

 

「……私、ウソップさんは普通だと思っていたんですけど……」

「普通ですよ……ハジメさん達に比べたらですけど……」

 

 

さっき倒した恐竜の肉をルフィ達に、ルフィ達の弁当をドリーにと交換して食べながら交流を深めていた。

ルフィならまだ分かるがウソップまでもこんなにドリーと意気投合するなんてと幼なじみのカヤもちょっとビックリ。

 

その隣のカルーは身震いしている。怖いのだろうが男なのだろう。恐怖に負けないようにと頑張っている。

 

そんな様子を少し離れた所からカヤとビビが海賊弁当を食べながら観察している感じである。

 

 

「110年ッ!!!??そんなにもここにいるのかッ!!!」

 

 

驚いたルフィの声に何事かとカヤ達もルフィ達の元へ向かう。

 

 

「そうだ。俺ともう一人ブロギーと決闘をな。

かれこれ110年経つだろうな……」

 

「そ、そんなに……

……一体何が原因で決闘なんて……」

 

「忘れた」

 

「えっ、ええっ!!!?

内容を忘れたのに決闘なんて……バカげてるッ!!!!」

 

「お前らには分かるまい。

これはエルバフの掟。エルバフの神の加護を信じ、互いの誇りを懸けて一切の手加減をせずに決着がつくまで戦う。それが"エルバフの誇り"だッ!!!」

 

 

決闘。手加減なしの、すなわち殺しあい。

どちらかが死ぬまで、そんな狂気を110年も……

そんなことに意味があるのかと理解できないビビ。

カヤはその話に唖然とし、男共は夢中で聞いている。

 

 

「あそこを見ろ。あの火山が噴火が決闘の合図だ」

 

「誇りがなんだと言うんですかッ!!

そんな無意味な決闘なんてッ!!」

 

「ビビッ!!!!」

「ッ!!!??」

 

 

ルフィが大声でそれを静止させた。

ビビの言葉はドリーのいう"エルバフの誇り"を汚しかねないもの。

それを本能で感じたのか、ドリーはビビの方を睨みつけ、それでも()()()()()()()()()()のだった。

 

自分のやらかしたことに気づき冷や汗が止まらないビビ。

寄り添うカヤも「大丈夫?」と心配をする。

 

 

「悪かったな。悪気はねえんだ」

「理解されたいとも思わんが、気をつけることだな」

 

「………ごめんなさい……」

「ゲギャギャギャギャッ!!!!もういい!

それより今を楽しもう!!それが一番だぁッ!!!」

 

「「おおおおッ!!!」」

「クエェッ!!!!」

 

「………心まで大きいのね……」

「……そうですね……」

 

 

少しだがドリーの言っていた"誇り"がどれだけ大切で、どれだけいい人たちなのか分かった気がしたと感じながら一緒に笑いながら一時の楽しさを味わうことにしたビビだった。

 

 

…………………………

 

 

「へぇ。エルバフの男は"気高い"のね」

「おおっ!女のくせに分かってるじゃねえか!!」

 

「これでも元海軍なのよ。男が多い世界にいればね」

「肝っ玉据わってるわけだなッ!!」

 

「……時々、ベルメールさんが本当に遠くに感じるわ……」

「……言っておくけど、それ、私もナミに感じてるからね……」

「……とりあえず、私の後ろから離れませんか?」

 

 

飲み相手が欲しかったブロギーは自分にそんなに驚かないベルメールと恐竜の肉とこの島での決闘を肴に飲んでいた。

一方ナミとノジコは未だに怖がっているのか、くいなの後ろから全く離れる様子がない。

 

そんな中、この島の中心にある火山が噴火をした。

それはさっき言っていた決闘の合図。

 

 

「さて、続きはアイツに勝って祝勝会にするか」

「私も見に行ってもいいかしら?」

 

「おお!来い来い!」

 

「ベ、ベルメールさんッ!?」

「ちょっと私達はッ!!?」

 

「くいなとここで待ってなさい。

こんな戦い、滅多に見られないんだから!」

 

 

そんな事を言ってベルメールはブロギーの肩に乗り決闘へ。

あんなアクティブなベルメールを見て

 

 

「………なんか生き生きしてるわねベルメールさん……」

「……私達を育てる前はヤンチャって聞いていたけど……」

 

「とにかく離れてくださいよ……」

 

 

…………………………

 

 

「おおっ、ブロギー。今日こそ俺が勝つぞ!!」

「いや、俺だ!それに今日は客が見に来ているからな!」

 

「おっ。お前にも!!」

「お前もいるのか!!」

 

 

それぞれ肩に乗せているのは同じ仲間。

ブロギーの肩に乗っているのはベルメールであり、ドリーの肩に乗っているのは

 

 

「あら。ウソップ君に、ビビちゃん??珍しい組み合わせね」

「私は、この決闘がどういうものか気になって……」

「俺もだ。というかオイ。船の見張りはどうなってるんだよ!!?」

 

「大丈夫よ。捕虜を脅して任せてるわ。

少しでも傷つけたら……ねぇ?って感じで」

 

「…………やっぱり、あの二人の親だな…………」

「ハジメさん達ががいるから、船は大丈夫と思うけど……」

 

 

それでも捕まえた二人を脅して船を任せるなんて……

ネジが飛んでいる。と言いたいところだがよく考えなくともこの船にはそう言うやつらしかいない。

 

心から俺達、私達はマトモでいようとアイコンタクトで理解しあった二人だった。

 

しかし周りからしたらもすでにウソップはその"マトモではない"に両足が浸かっている状態である。

 

 

「お互い観客がいるのだ。無様なものは見せられんな」

「あぁ。そして今日こそ勝つッ!!」

 

 

お互いに武器を強く握りしめ一歩と足を前へ。

もういつ戦いが始まってもおかしくない中、

 

 

「……やっぱり、分からないわ……」

「ビビちゃん?」

 

 

肩から下ろされた三人はまとまって観戦することにしたのだが、目の前で始まる決闘にやはり納得のいかないビビ。

 

 

「これに…一体なんの意味があるの……??」

「おい!ビビ!!お前なッ!!」

 

「ビビちゃん。よく覚えておいて。

男にはね、時に、意味のないことをする時があるわ。

本当に意味のないことをすることの方が多いけど、それでもそこに何かあるとするなら……」

 

 

 

「それは"誇り"よ」

「………誇り………」

 

 

ベルメールのその言葉にドリーとブロギーはニヤリと笑い、それが決闘の合図かのように武器を振り上げた二人が答えた。

 

 

「そう、誇りだ。理由など……とうに忘れた!!

 

…………………………

 

 

「まいった・・・デっケェ」

「ふふふ。そうですね」

「クエ」

 

 

間近で観戦するとウソップとビビがドリーの肩に乗り向かい、ルフィは残っていた肉を食べながら見ることにした。

カヤもここからでいうことで、カルーは……単純に行きたくなかった。

 

それでもここまで戦いが見え、振動や音がダイナミックに伝わってくる。

 

あまりのことにルフィは肉を食べるのを止めて大の字になった。

 

 

「ルフィさんもなれると思いますよ」

「なりてぇ気持ちはあるけど、なるなら師匠だな!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お、おう。……カヤは師匠が嫌いなのか?」

 

 

真顔で拒否するカヤに直球で聞くルフィ。

まったく隠さないルフィに思わず笑いながら

 

 

「違いますよ。ロビンさんは好きですよ。

ただロビンのような性格は二人もいりません。ルフィさんはルフィさんらしいく大きな人になった方がいいかなーと思ったんですよ」

 

「俺らしくかぁ~」

(……まぁ、仲間としては好きですけど個人でいうなら……ですかね………)

 

 

と、なんか軽くカヤの闇が見えてしまった…ウソップがいないとこんな性格なのかもしれない。

 

 

…………………………

 

 

「一体何をやっていたんだガネ?」

「す、すまねぇ……」

「油断しただけよ……」

 

「油断。よくそれでここまで成り上がったものだ。

これがボス知れたら、消されていたかもしれないガネ」

 

「あ、あぁ。助かった……」

 

 

Mr.5とミス・バレンタインの拘束が解け、いつの間にこの島へ誰かが上陸し二人を助けたのだった。

 

 

「正面からいくから失敗するのだガネ。

作戦を立てて正しく実行すれば成功するのだガネ」

 

「…………くぅ…………」

 

 

頭に"3"のついた男とずっと寝ている女の子。

Mr.5よりも格上であるMr.3とミス・ゴールデンウィーク

 

 

「優れた犯罪者は、優れた頭脳によって目的を遂行するものなのだカネ。私達が、そいつらに教えてやろうじゃないカネ。『犯罪組織』を敵に回す怖ろしさを……」

 

「…………くぅ…………」

 

「いつまで寝てるガネッ!!?」

「……朝?」

 

「仕事に来てるのだガネ!!しっかりしろガネッ!!!」

 

「…………くぅ…………」

「ふざけるなガネッ!!!!」

 

 

怒っているMr.3を無視し寝るミス・ゴールデンウィーク。

このコントのようなことにツッコミをいれるべきか本気で悩んだMr.5とミス・バレンタインだった。



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誰ガイル…

「さて、ちょっと出掛けてくるね」

「手助けしてくるの?」

 

「手助けというか、暗躍??」

「ふふふ。そう」

 

 

嬉しそうに微笑むロビン。

しばらく二人きりがなかったせいか今回は随分と時間が取れた。

甘えてくるロビンはこう、新鮮だったし、自分もそれが良かった。

 

ルフィ達には悪いと思ったけどたまにはロビンにも息抜きさせないとね。

 

その成果があったのか少し離れるでも素直に応じてくれる。

いつもなら是が非でも付いてくるか、条件付きなのに。

 

 

「あの子達が戻ってくる前に戻ってくるのよね?」

「そのつもりだよ。この島では僕がやることは一つだけだし」

 

「じゃ、また……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「沢山頭を優しく撫でたり、耳元でロビンの名前を言ったり、体勢を変えながら抱擁したりするのが()()()()()()()()なら帰ってきたらしようかな」

 

「もう、襲っていいのに」

「じゃ、行ってきますッ!!」

 

 

ヘタレ?うるさいッ!!!

ずっと妹としてしか見てなかったんだから、簡単に割りきれるかッ!!!

 

 

…………………………

 

 

「ゲギャギャギャギャギャギャギャッ!!

なかなか上手いなこの酒もッ!!!」

 

「だろうッ!!」

 

「カヤもくれば良かったのによッ!!

あんな決闘はなかなか見れねぇぞ!!!」

 

「えぇ!!

あんなに激しい戦い、それでも相手に敬意を払ってやっている姿は素晴らしいわ!」

 

「ビビちゃんもすっかりハマったのね……」

 

 

ドリーとブロギーの戦いはまたしても引き分けた。

しかしそれでも二人は清々しくその結果を受け入れて終わったのと同時に親友のようにお互いの客人のことを語り出した。

 

そこでナミ達のほうにお酒があるということでそれを分けてもらいお互いのところで宴が始まったのだ。

 

ルフィとドリーは恐竜の肉を肴に酒を飲み、間近で決闘を見ていたウソップとビビは来なかったカヤとカルーに熱意を持って話している。ついさっきまで"決闘"に対して悪いイメージしかなかったビビが一番この戦いに魅せられたのかもしれない。

 

 

「あれが真の男の戦いってもんなんだ!!

あの二人は自分の胸に"戦士"という1本の旗を掲げている。それは命よりも大切なんだ。ソレを決して折られたくねェ……!!

その為に100年かけて戦ってきたんだ。わかるか?

これは紛れもなく"戦士達"の"誇り高き決闘"なんだよ!!!」

 

 

ウソップの熱の入った言葉にビビも力強く頷く。

 

 

「まさにこれなんだ!!

おれの目指す"勇敢なる海の戦士"ってのは。

おれはこういう誇り高い男になりてェ!!!

こんな戦士達の暮らす村に、おれはいつか行ってみてェなァ……!!!」

 

「私も行ってみたいわッ!!」

「クエエェェッ!!!??」

 

「あっ。カルーちゃん。

自分も同行するわけだからとんでもなく驚いている……」

 

 

いまのビビは本当にエルバフに行くのかもしれないと恐怖するカルー。未だに目の前の巨人に慣れていないのにそんな巨人が沢山いるところに……と考えてしまい涙目になっている。

 

 

「もうカルー。男の子でしょう。

カルーもドリーさんみたいな大きな男の子になりなさい!!!」

 

「クエッ!!クエ!!クエエエェェェッ!!!」

 

「言葉が通じなくても分かる気がする……」

「だな。絶対になれないから行きたくないって拒否ってるな……」

 

 

カルーは後悔していた。

初めは意地を張っていたが、こんなにもご主人が巨人と関わりを持とうなんて思わなかった。きっとこの島だけだろうと考えていたのにどうしてこうなった!?と言葉の通じないビビ相手にジェスチャーで訴えている。

 

 

「違うのカルー?」

「ク、クエ!」

 

「ドリーさんよりも大きい男の子になりたいのねッ!!!」

「グエエエェェェッ!!!??」

 

「あのご主人、ずいぶんプラス思考なんだな……」

「頑張ってカルーちゃん……」

 

「おおッ!!俺よりも大きくかぁ!!!どんなもんか見てみてぇな!!」

「おっしゃー!!!俺も付き合うぞカルーッ!!!」

 

「ク、ク、グエエエェェェッッ!!!!!!!」

 

「ちょっ、ちょっとカルー!!?」

 

「逃げたな……」

「アハハ……」

 

 

ドンドン話が進みいつの間にかドリーとルフィによる"カルーを大きい男の子にさせよう作戦"が決まってしまい、もう必死にその場から逃げ出したカルーだった。

 

まぁ、普通なら逃げ出したくなる……

 

カルーの逃亡に「戻ってきたらやるか!!」と諦めていないドリーはまた一つ酒を口に流し込む。

 

 

ドゴオオオンッッ!!!!!!!

 

 

突如ドリーの口から爆炎が吹き出てきた。

 

 

「ドリーのおっさんッッ!!!!!!!」

「た、大変ッ!!!??」

 

 

爆発の規模からして重症なのは間違いない。

ドリーの体は後ろへと倒れこんでしまった。

すぐさまカヤはドリーに駆け寄ろうとしたが、

 

 

「カ、カヤッ!!!」

「離してウソップさんッ!!!ドリーさんを見ないとッ!!!」

 

「ダメだッ!!!いまはここを離れないとッ!!!」

「どうしてッ!!!ドリーさんを見捨てるなんてッ!!!」

 

「違うッ!!!

あの爆発はきっと()()()()()()()()!!!

この人がなにも知らない状態ならこの爆発の原因の矛先は…」

 

 

「貴様ラ…ヨクモ……」

 

 

いつの間にか起き上がっていたドリーはルフィ達を睨み付けていた。

そう、これは嵌められたのだ。ルフィ達にドリーを仕向けるように。

 

 

「ち、違うのッ!!私達はやってないッ!!!」

 

「ブロギーガ……誇リアル者ハ…シナイ……

………ナラ、貴様ラ…以外…誰ガイル………」

 

「本当に私達じゃッ!!!」

 

「やめろッ!!!……言っても無駄だ……」

 

 

そういってルフィは屈伸を始め肩を慣らし始めた。

その行動に気づいたウソップもデカハンマーを取り出した。

 

 

「ま、まさか……戦う気ッ!!!??」

「む、無茶ですよ!相手は巨人ッ!!!」

 

()()()()黙らせるしかねぇ…」

「やらねぇと……こっちがやられるんだ…!」

 

 

ルフィは拳を、ウソップはハンマーを構えた。

 

 

「ウソップ、注意を引いてくれ。()()()()()()

「オッケーだ、船長」

 

 

そういってウソップはハンマーを真上へ高く投げた。

意識が朦朧としているドリーでもその行動に警戒したのかハンマーに注目していると

 

 

「巨人には、それなりの武器だぁッ!!!」

 

 

最高到達地点で、一時宙に停滞するタイミングでハンマーが少しずつ大きく、大きくなっていく。

それはウソップが発言したように巨人であるドリーを倒すべく大きくなったハンマー。

 

 

「クラ、ウカァッ!!」

 

 

ドリーは拳でそのハンマーを返り討ちにしようと振り抜く。

今のドリーにそのハンマーの一撃があれば簡単に沈むだろう。

しかしこれは、"注意を引く"ための一手である。

 

殴り飛ばそうとしたドリーだったが、ハンマーに拳が触れた瞬間に爆発を起こしたのだ。

 

いや、違う。爆発ではなく、()()()()()()()()()()割れたのだ。

 

なのでダメージはないドリーだが、ハンマーが破裂するなど想像出来るわけがなく、突然の出来事と破裂音でビックリしたドリーは未だに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ギア2(セカンド)ッ!!ゴムゴムの……」

 

 

ルフィはドリーの懐に入り腕を伸ばす。

その行動にドリーが気づいたときにはすでに遅く、伸びきった腕は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ロケット・スピアッ!!!!!!!」

 

 

ただ真っ直ぐにドリーに向けて放たれる拳は下顎に命中。

そのまま拳は上へ上へと伸びていきドリーの体ごと上空へ吹き飛ばした。

 

アッパーなんて言葉では足りない。

まさに一本槍が空へと昇る龍のように真っ直ぐ空へと延びていったのだ。

 

そんな一撃。ドリーは気を失い仰向けで地面に沈んだ。

 

 

「うっしッ!!」

「カヤ。今のうちにドリー師匠を見てくれ」

「分かったわ」

 

 

当たり前のように話を進めるなかビビは固まっていた。

ルフィからしたら()()()()()使()()()()()()()()()

しかしそれを見たビビは違った。

 

 

「う、うそ……

…ダメージを負っているにしても…たった一撃で……」

 

 

ビビが衝撃を受けているなかルフィとウソップでドリーの口をこじ開けて固定し、カヤが口の中を診察し始めた。

口の中は爆発により重度とまではいかないが重たい火傷を負っている。

 

その先、喉から先は分からないがこれだけでも重症なことは明確だ。

 

 

「恐らく口のなかだけの爆発だと思うわ。

食道から先はハッキリとまで分からないけどそんなにダメージはないと思う。爆炎を見た限り殆どが口から出てきていたから。だから口の中の爆発、つまり脳に近いところで重たい衝撃を受けているからどのみち安静にしておかないと……」

 

「あの野郎……汚い真似しやがって……ッ!!」

 

「取っ捕まえてぶっ飛ばしてやるッ!!!」

 

 

ドリーの敵討ちだ!!と意気込んでいるとドカンッ!!!と山が噴火した。そう、これは"決闘の合図"。

 

その噴火に起こされたのか、意識がなかったドリーが目覚め立ち上がろうとしている。

 

 

「お、おい!止めろよ!」

「そんな体でいったらッ!!」

 

「……すまなかった……お前ら…では、ないのだろう……」

 

「そんなことはいいですから今は安静にッ!!!」

 

「悪いな…嬢ちゃん。…それだけは譲れねぇ……」

 

 

なんとか立ち上がり武器を手にするドリー。

決闘へ向かおうとするとその前に立ち塞がるビビ。

 

 

「……どけ。踏み潰すぞ……」

「退きません。もうこの決闘が無意味なんて思ってませんが私もこれだけは譲れません!」

 

「エルバフの誇りに……邪魔するというのかッ!!!」

「違うッ!!!そんなつもりはないッ!!

でもこんな状態で貴方が負けてもブロギーさんは喜びませんッ!!!」

 

「ふざけるなッ!!俺が負けるだとッ!!!」

「ええ、負けますッ!!!万全な状態で戦えば()()()()()()()()ッ!!!」

 

 

ハッキリと断言したビビの言葉に次の言葉が出てこなかった。

睨み合う両者。するとドリーが先に口を開こうと

 

 

「くそが。揺れてるんじゃねえよ」

「キャハハハハッ!!」

 

 

その声がする方へ振り向くとそこには捕らえていたはずのMr.5とミス・バレンタインが。そして足元には

 

 

「カルーッ!!!??」

「…グ、グエェ……」

 

 

爆発によりやられたカルーの姿が。

意識はあるもののもう立てる状態ではなかった。

 

 

「そこら辺をウロウロしててな。目障りだったんだよ」

「キャハハハハッ!!ちゃんと手綱握ってなきゃダメよ」

 

 

そういってカルーの腹部を蹴り上げる。

その瞬間に爆発が起き爆発の衝撃で吹き飛ばされたカルーはビビの方へ。

 

しかしそこにウソップが割りこみマジックでマットを取り出してカルーの体をキャッチする。

すぐさまカヤがカルーの体を見ようと駆け寄る。

 

 

「簡単には殺さねぇ。お前らには地獄を…」

「もう、黙れ」

 

 

一瞬、いや、刹那の動きだった。

二人の目の前に殺気を放つルフィが両手でその二人の頭を握っている。

突然の出来事。しかし本能で二人は悟った。"勝てない""殺られる"と……

 

 

「まっ…」

「ちょっ……」

 

 

二人の言葉も聞くこともなく一気にその頭を地面に押し付けた。

そこには大きなクレーターが出来るほどに力を込められていたために二人はそこでリタイアとなった。

 

 

「ウソップ。行くぞ」

「了解だ、船長」

 

「二人はここでドリーのオッサンとカルーを見ててくれ」

「ど、どこに行くの!!?」

 

 

いきなりの行動についていけないビビ。

だがルフィとウソップ、カヤには分かっていた。

いや、ビビも気づいているのだろう。しかしそれを認められないのだろう。

 

それでもやらないといけない。

いま、この現状をどうにか出来るのは自分等だけ。

頼りになるハジメやロビンはいないのだから。

 

 

「「()()()()()()()()()()()!()!()!()」」



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Mr.3とミス・ゴールデンウィーク

「全く、さっさと諦めるガネ」

「……冗談ッ!!」

 

「お願いよ、くいなッ!!

早くそいつをぶった切ってッ!!」

 

「ゴホッ!ゴホッ!

ナミ、あまり喋らないほうがいいわ…」

 

「肺に"この粒子"が入ると…先に肺から固まるわね」

 

「イヤァァァァ!!お願いッ!!!」

 

 

それは突然のことだった。

本日の二度目の噴火がありブロギーは武器を手に決闘の場所へ向かう。しかしいつまで経ってもこないドリー。

おかしいと感じたブロギーはドリーの元へ向かおうとしたのだがそこで襲撃にあったのだった。

 

突然足の動きを封じられ身動きが取れなくなったドリーの体はそのまま前に倒れこむ。すると今度は胴体さえも動かせなくなったのだ。

 

何が起きたのかと周りを見ると"白い物体が体を覆っている"のが分かった。

 

そしてそこに現れたのが

 

 

「まったく、アイツらは何をやっているのだガネ」

「さぁ?」

 

 

この島に上陸しMr.5とミス・バレンタインの拘束を解いたMr.3とミス・ゴールデンウィークだった。

 

 

「なんだ貴様らはッ!!」

「自己紹介はしないガネ。これから死ぬものにしても意味が」

「ミス・ゴールデンウィーク」

 

「なんで言っちゃうのガネッ!!!??」

「こっちはMr.3」

 

「私までバラすなガネッ!!!!!」

 

 

なんとも緊張のない二人にペースを崩されそうになるが、それでも聞きたいことがある。

 

 

「貴様ら…ドリーに何かしたのか!?」

「勘は、いいみたいだガネ。どのみち死ぬやつにお…」

「お酒に爆弾しかけたの。ここにいる麦わら一味を嵌めるために」

 

 

「だからなんでそんなに簡単にバラすなガネッッ!!!!!」

 

 

ペアのわりになんかとても相性の悪い二人。

プロの殺し屋みたいに言おうとすることをすぐにミス・ゴールデンウィークが話してしまう。それもまったく悪気もなく、単なるド天然によるもの。

 

 

「まぁ、いいガネ。どのみち向こうの巨人が来ないということは"そういうこと"なのだろうガネ」

 

「き、貴様ッ!!!??」

 

「私的には重症の負った状態で貴様にトドメを指してもらう予定だったのだガネ。勝利して喜んでいるところに真実を話して絶望してもらう。というのが面白かったのだが仕方ないガネ」

 

「悪趣味、最低」

 

「お前は一体どの立場から言っているのだガネ!!!??」

 

 

本当にペアなのか疑うぐらいに仲の悪い二人。

しかしそんなこといまのブロギーには関係ない。

怒り、"友"の無念を晴らそうとその白い物体を力ずくで

 

 

「流石巨人。"鉄の強度を持ったロウ"が破壊させそうだガネ」

 

 

そんなこと言いながらも全然余裕の表情。

何故ならMr.3は手からロウを出してそれを剣の形に変えたあと

 

 

「だから……大人しくしてろだガネッ!!!」

「グガアァッ!!!!!」

 

 

片手にその剣を突き刺したのだ。

そしてすぐさまもう片手、そして両足と動きを止めるために。

 

 

「さて、準備も出来たところでメインを出そうかガネ」

 

 

今度は両手でロウを出して大きな大きな物を生み出していく。

それはまるでケーキの形。しかしそれはあまりにも不気味で、そして上段には蝋燭が突き刺さったパンプキンの顔をしたケーキが。

 

その上段の下、中段には()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ここから出しなさいよッ!!!」

「なんなのこれ……」

「よくもブロギーさんを……」

 

 

捕まっていたのはナミ・ノジコ・ベルメールの親子。

足元をロウで固められて身動きが取れないのだ。

 

 

「確かもう一人女剣士がいたはずだガネ。何処にいったガネ??」

「言うわけないでしょう!」

 

「それもそうだガネ。なら()()()()()()()()

 

 

そういうと大きなケーキの上段にある蝋燭に火が灯りそして回転を始めたのだ。

 

 

「これは特大キャンドルサービスセットだガネ。

よく自分の周りを見てみるだガネ」

 

「……これって…霧……」

「……違う……もしかして、ロウ?」

「……ッ!!?あなた、まさかッ!!!??」

 

「頭の回転がいいみたいだガネ!!

そうその霧状のロウはゆっくりとお前らの体についてきいやがて全身をロウで包み込む。つまり"ロウ人形"の完成だガネッ!!!」

 

 

なんとも悪趣味な攻撃。

しかし確実に、相手を殺すことが出来る。

そしてじわじわと追い詰めるという拷問のような攻撃。

 

 

「というわけだガネ。さっさと吐くことだガネ!!」

「……見つけて、どうするつもりよ?」

 

「もちろんお前たちと同じロウ人形にして私の"コレクション"にしてやるガネ」

 

「悪趣味。糞。死んだ方がいい」

 

「だからお前はどっちの味方なんだガネ!!!??」

 

 

とにかくつっかかるミス・ゴールデンウィークなら話が分かるかと思いナミは交渉相手を変更し

 

 

「ねえ貴女!!」

「なに?」

 

「あんなやつよりも私達と…」

「なにか、勘違いしているようだけど」

 

 

しっかりとした目でナミ達の方を向いて

 

 

「私はBWの人間。そして貴女達はターゲット。

この関係性は変わらないわ。この人が生理的に無理でも仕事だからやるだけ」

 

「さらっと悪口を入れないと喋れないのかガネッ!!」

 

「うるさい。黙れ」

 

「いつか思い知らせてやるガネ……」

 

 

Mr.3としてはミス・ゴールデンウィークは最高のパートナー。

しかしこの難すぎる性格は今すぐにでもパートナー解消したくなるのもまた事実。

罵倒されてもパートナー解消されないためには我慢するしかない。

もしかしてミス・ゴールデンウィークを抱き込めると思ったが無理だと思い知ったナミ達だが

 

 

「……まぁ、()()()()()()()()その話ではないけど」

「えっ?」

「な、何を言っているのだガネ!!!??」

 

「こっちは給料もいいし、自由だし、罵倒してもミスしてもこの人を殺そうとしても怒られないし」

 

「怒るわッッ!!!!!」

 

「という感じで、私が貴女達を助けるメリットがないわ。

それにそんなに喋ると死期が早くなるわよ」

 

「くっ!!」

 

 

もしかしたらこうして会話をさせて少しでも肺にロウを…

と、危機感を覚えていたところで森のほうから

 

 

「"三十六…煩悩(ポンド)(ほう)"ッッ!!!!!」

 

 

飛ぶ斬撃がMr.3に向かっていくがとっさにロウによる壁を作りガードした。

 

 

「いきなり背後から攻撃なんて卑怯だと思わないのかガネ?」

「仲間をロウ人形にするって人には言われたくないですね」

 

「「くいなッ!!!」」

 

「遅くなりました。向こうはもう片付いてました。

ただルフィさんとウソップさんが…行方不明です」

 

「もしかしてやら」

「迷子ですッ!!」

 

「考えなしに突っ走ったわね……」

 

 

頭を抱えるベルメール。

しかしこの状況を変える人物が現れた。

それだけでナミもノジコも歓喜した。

 

 

「ブロギーさん。ドリーさんは負傷してますが大丈夫ですよ」

「ほ、本当か……」

 

「はい。ですから待っててください。すぐに終わらせます」

「すまん!」

 

 

伝えたいことを伝え終わったくいなは改めてMr.3と向き合う。

 

 

「攻撃、しなくて良かったんですか?」

「構わないガネ。相手は"剣士"なら問題ないガネ」

 

「よっぽどその能力に自信があるんですね」

「当たり前だガネ。このロウは鉄の強度なのだ。剣士ごときが勝てるとでも??」

 

「私が、負けるとでも??」

「納得いかないなら、かかってくるガネ」

 

 

その挑発に乗ったくいなは一気に間合いを詰めた。

そのままMr.3の胴体を切ろうとしたのだが"弾かれた"のだった。

さっきまではなかった"胴体を守るロウ"によって。

 

 

「なるほど。つまり私が鉄を切らないと勝てないと」

「無理なことは止めることだガネ」

 

「冗談ッ!!」

 

 

あらゆる角度から斬りかかるくいなだが、悉くその攻撃はロウによって弾かれた。

それでも諦めずに何度も何度も斬りかかるくいな。

 

 

「全く、さっさと諦めるガネ」

「……冗談ッ!!」

 

「お願いよ、くいなッ!!

早くそいつをぶった切ってッ!!」

 

「ゴホッ!ゴホッ!

ナミ、あまり喋らないほうがいいわ…」

 

「肺に"この粒子"が入ると…先に肺から固まるわね」

 

「イヤァァァァ!!お願いッ!!!」

 

 

そして刻一刻とナミ達は霧状のロウにより体を硬直させられている。くいなの攻撃が通るのが先か、ロウ人形になるのが先か……

 

そんな矢先、くいな攻撃がロウの壁を突破しそうになった。

僅かだが刀の刃がMr.3の体に触れて斬ったのだ。

咄嗟に距離を置いたMr.3はその切れた箇所を見ると

 

 

「まさかッ!!」

 

 

そう、同じ箇所を何度も何度も斬りかかっていたのだ。

それも全身に複数同じものが見られた。

ランダムに無意味な攻撃と思わせて、確実に同じ所を斬りかかるようにしていたのだ。

 

しかしその攻撃は浅く大したダメージもなく気づかれた。

 

すぐさまロウを塗り直したMr.3

 

 

「上手くいくと、思ったのに…」

「残念だったガネ。やはり無駄な努力だったガネ」

 

「……そうでも、ないけどね」

 

 

何のことか分からないことをいうくいなに疑問を持った。

その僅かな隙がこの勝負を、決めた。

 

 

「ゴムゴムの……"回転弾(ライフル)ッッ"!!!!!」

「ゴボガッッ!!!!!」

 

 

森の中から放たれたその腕は回転も加わり、Mr.3のロウをあっという間に貫通してその体ごと吹き飛ばした。

 

 

「どいつだッ!!!ドリーのオッサンにあんなことをしたやつはッッ!!!!!」

 

「そうだ!出てこいッ!!!」

 

 

森から抜け出したルフィとウソップ。

気合の入ったルフィだがウソップはそのルフィの後ろで隠れながら叫んでいた。やっぱりまだ怖がりは抜けないようである。

 

 

「さっきルフィさんが吹き飛ばしましたよ」

「なにぃー!!!もう一回ぶっ飛ばしてくるッ!!!!」

 

「ちょっとルフィッ!!!これどうにかしていきなさいよッ!!!」

「ウソップ、任せたッ!!」

「おう!行ってこい!」

 

 

戦闘にならずにすんだから態度が急変してやる気になるウソップ。

ルフィはさっき吹き飛ばしたMr.3を追いかけてまた森に入った。

 

 

「しかしなんだこれ?ケーキなのか?」

「そんなことはいいからさっさと壊してッ!!!」

 

「お、おう!じゃいくぞッ!!!」

 

 

そういってバックから何かを取り出そうとしたが

 

 

「な、なんだッ!!バックが、開かねえ!!?」

「ちょっとウソップッ!!!何してるのよ!」

 

「バックが開かねえんだよ!!ってかなんだこの"絵の具は"ッ!!」

 

「"カラーズトラップ"『開かずの黒』」

 

 

そこにいたのはミス・ゴールデンウィーク。

さっきまで傍観していた彼女だがMr.3がやられても逃げずにこっそりとウソップのバックに細工をした。

 

 

「黒い絵の具に触れたものは絶対に開けなくなるの」

「くそッ!!催眠術の一種か!!?」

 

「ちなみに、こんなことも出来るの。

"カラーズトラップ"『停止の赤』」

 

「う、動けねえ……」

「な、なに、これ……」

 

「ウソップッ!!くいなッ!!!」

 

 

足元に塗られた赤い絵の具はウソップとくいなの体を完全動けなくした。

 

 

「催眠術なんて、そんな小さいものじゃないわ。

"ある力を"混ぜた究極の"カラーズトラップ"よ」

 

「ま、まさか…"能力者"……」

 

「違うわ。能力者なんてなりたくない。

泳げなくなりたくないから」

 

 

このままではまずい。誰もがそう感じた。

ナミ達はもちろん、ウソップとくいなは敵の近くにいるのだ。

いつ攻撃されて殺られることだって………

 

 

「じゃ、私は帰るわ」

 

「…………はっ?ちょっ、ちょっと待てッ!!!

仲間を助けに行かねぇのかよ!」

 

「嫌よ面倒くさい。私、あの人嫌いだから」

 

「ハッキリというなッ!!!」

 

「それにここに来た目的は"別にあるから"あとは勝手にして。

そのマークの一部でも消えたら効果無くなるから頑張ってね」

 

「ちょっ、ちょっと待てッ!!!!!」

 

 

しかし振り返りもせずにミス・ゴールデンウィークは去っていった。

 

 

「ウソップッ!!くいなッ!!!」

 

「分かってるよ!こういうときに使うんじゃねえんだが…仕方ねえ。

必殺ッ!!"嘘泣き"ッ!!!うおおおおおおおぉぉぉッ!!!!!」

 

 

何を始めたんだ?と誰もが思うなかウソップの目から大量の涙が溢れてくる。それはウソップの頬から下へどんどん流れていき、ついには絵の具まで到達してマークの一部を消し去った。

 

 

「よ、よっしゃー!解けたぜッ!!!」

「……うわぁ……あぁやってカヤに泣き落としを……」

 

してねぇよッ!!!!!

言われると思ったから見せたくなかったんだよチキショーッ!!!」



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Mr.0

「どこいった"3"ッ!!!」

 

 

吹き飛ばしたMr.3を追って森に入ったのはいいが途中から薙ぎ倒された木々が無くなり目印が分からなくなったルフィは宛もなくMr.3を探すことになった。

 

 

「くそッ!!師匠みたいに"周りが分かれば"いいんだけど…」

 

 

前に見せてもらった見聞色の覇気。

しかしルフィの見聞色は周りの物を見渡すことに関してはあまり才能がなかった。

 

あくまでもいま使える見聞色の覇気は"相手からの殺気の先読み"である。身を隠しているMr.3の殺気は僅かなもの。それを見つけ出すのは至難の技である。

 

そして探し続けているとなんとも異様な光景が広がっていた。

 

 

「な、なんだこりゃ?」

 

 

そこにあったのは沢山のMr.3。

どれも本物のように佇んでおり、見分けが付かない。

 

 

『相手が悪かったガネ麦わら。

この中に私がいる。見つけられずに背後を見せたら終わりだガネ』

 

 

どこから聞こえてくるMr.3の声。

しかし声が反響して何処にいるのか分からない。

 

 

『さぁ、どこに私がいるか…分かるかガネ?』

『分かりたくもない。気持ち悪い』

 

『お前はさっきからなんだガネ!!

文句ばかりいって私に何の恨みがあるのだガネ!!!??』

 

『存在』

『ふざけるなガネッ!!!!!』

 

 

どうやら近くにもう一人いるようだ。

しかしMr.3が言ったように何処にいるのか分からない。

見聞色の覇気でも隠れた師匠達を一回も見つけたことがなかった。

 

分かるのは、動作して現れる殺気のみ。

つまりはわざと背後を見せて動きたMr.3を倒せばいいのだが

 

 

「うーーん…………面倒くせえッ!!!」

『はっ?』

 

 

そういってルフィは両手の親指を口に咥えて息を入れた。

するとたちまち両手は大きくなっていきまるで"巨人の手"

そしてルフィは思いっきりジャンプしてその両手を背後に回した。

 

それを見たMr.3は、悟った。

 

 

「ま、待つのだガネッ!!!そんなの食らえば死んで…」

 

 

しかし聞こえる訳がなくそれを迎える。

 

 

「ゴムゴムの"巨人の圧力(ギガント・プレス)"ッッ!!!!!」

 

 

巨人な両手は周り一帯を押し潰した。

木々も草も恐竜も、待ち構えていたMr.3と蝋分身も一緒に。

大きなクレーターには様々なものが土に埋まっており、その中にピクピクと動いているMr.3の姿があった。

 

 

「巨人のオッサン達の怒りだ!!分かったかッ!!!」

 

 

ふんすッ!!と思いっきり息を鼻から吐くルフィ。

よっぽど怒りをぶつけたかったのだろう。ひと暴れして満足したルフィはあることに気づいて周りを見渡してみる。

 

 

「あれ?もう一人いたよな?」

 

 

…………………………

 

 

「冗談。あんなの"化物"じゃない」

 

 

ミス・ゴールデンウィークは森を掻き分けて少しでも遠くへルフィから離れようとしていた。自身の"カラーズトラップ"を使えばきっと簡単だろう。あのタイプは手を加えなくてもすぐに引っかかる。

 

しかしそれは"カラーズトラップ"に引っ掛かればの話。

不意打ちが失敗すれば簡単にヤられるのは目に見えている。

 

それに()()()()()()()()()()()()()()()()

こんなところで終わるわけにはいかない。

 

しかし、それは叶わぬ夢となる。

 

 

「ん。誰だてめぇ?」

(いやああああぁぁぁッ!!)

 

 

まさかのタイミング。

いきなり目の前に麦わらの一味でも戦闘員に位置付けされている"ロロノア・ゾロ"が現れたのだ。

 

いきなり斬りかかってくることはないだろう。

そう信じて言葉を発しようとしたが

 

 

「おい、お前。俺の乗ってある船知ってるか?」

「……ッ!!!!!」(コクコク)

 

「なら案内してくれねえか。どうもアイツら迷子になったみたいでよ。先に船に戻ろうと思ったんだが()()()()になったようでよ」

 

(1000%、あなたが迷子ッ!!!!!)

 

 

と、言いたいがここで斬られないようにグッと我慢してゾロを船があるほうへ案内することにした。

 

 

…………………………

 

 

「はっ!!ついお茶に耽ってしまった!!」

「サンジ。おかわりいいかしら?」

 

「んなこと言ってる場合かッ!!

どれだけ時間が経ったんだ…さっさと戻られねぇと!!」

 

「せっかちね。姉弟水入らずの時間なのに」

 

「しょっちゅう店に顔を出してただろうがッ!!」

「当たり前よ。可愛い弟を見守るのが姉の役目なんだから」

 

 

舌打ちをしてティーセットを片付け始めるサンジ。

突然にジャングルに現れた"白く四角い家"

その中はとても快適であり、ティーセットの入った鞄もあったためいつの間にここでティータイムを過ごしていた二人。

 

そんなことをしていると突然何処からか音が聞こえだした。

周りを見渡すとレイジュかでんでん虫を見つけた。

 

どうしようかと悩むサンジだったがすぐさま受話器を手に取り

 

 

「もしもし、こちらクソレストラン。ご予約で?」

『何をふざけている。定期連絡はどうした?』

 

「えぇーと、どちら様で?」

『声を忘れたのか?まぁ、いい……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Mr.0だ』

 

 

その言葉に息を飲む二人。

Mr.0、その呼称はビビの国を落とそうとしている黒幕。

七武海の一角、"サー・クロコダイル"である。

 

『それでMr.3。王女ビビと麦わらの一味は抹殺できたのか?』

 

 

その問いかけにサンジは考えて答えた。

 

 

「ああ、任務は完了しましたよ。

全員消し去りましたから、追手は必要ありません」

 

『そうか。"アンラッキーズ"にアラバスタの『永久指針(エターナルポーズ)』を運ばせている。アラバスタへ入って次の指示を待て』

 

 

なんとも嫌な予感がする名前。

するとサンジの予感は的中した。

サンジの視線の先にサングラスをかけたラッコと鳥がジィーとこちらを見つけていたのだ。

 

ヤバいッ!!と咄嗟に回避しようとしたがその二匹は突然口から泡 を吹いて地面に落ちた。

 

どうやらレイジュが毒を二匹に浴びせたようで、レイジュはサンジに向かって"終わったわよ"とウインクで合図をした。

 

油断していたサンジが悪いのだが助けられたことに内心で舌打ちをするサンジ。

 

 

『どうした?返事がないぞ?』

「すみません。恐竜が目の前を通ったもので」

 

『……まぁいい。さっさと戻ってこい』

 

 

そういって一方的に切られたでんでん虫。

しかしこれで相手はこちらが死んだと思い込んだ。

これは大きなアドバンテージになる。

 

 

「お手柄じゃないサンジ」

「うるせぇ。さっさと戻るぞ」

 

 

…………………………

 

 

「サンジッ!!レイジュッ!!!お前ら何してたんだよ!」

「わりぃ、わりぃ。ほら恐竜の肉だ」

 

「よし!許すッ!!」

「簡単すぎるわッ!!お前らがいない間に大変だったんだぞ」

 

 

船に戻ってみるとそこにはルフィとウソップ、ナミ達親子だけしかいなかった。

そこでいままで起きたことを聞いていると

 

 

「……なるほど。そいつは悪かった」

「そうね。次は活躍するわ。

それでその巨人二人は?」

 

「二人ともカヤが診察して安静すれば大丈夫だって。

向こうはくいなが見張ってるわ。ったく、あとあのバカだけね……」

 

「本気で首輪つけましょうか」

 

「それでも迷子になりそうだけど……」

 

 

そんな話をしていると見覚えのある剣士が

 

 

「やっと戻ってきたのかお前ら」

「「「「「お前が言うなッ!!!」」」」」

 

「自覚なし、もう病気ね…」

「…カヤも匙を投げ出す病気だわね……」

 

 

その一言でナミとノジコから拳骨をもらったゾロ。

本当になんで悪いのか分からないようで文句を言っていると、ゾロが歩いてきた道の後方から、木の影からこちらを覗きこむ女の子がいた。

 

 

「ちょっとゾロ。なんであの子がいるのよ?」

「なんだ知り合いか?ここまで道案内してもらったんだよ。

ここまで来たらいきなりあそこで見てるって」

 

「あんたね……あの子は敵よ、敵!!」

「…ほう。なら…斬っていいんだな?」

「止めてッ!!出てくるから止めて!!!!」

 

 

ここまで送ったのに恩義も無しに斬ろうとするゾロの異常さにたまらず出てきたミス・ゴールデンウィーク。

そのまま正座をして

 

 

「ごめんなさい。許してください」

「あのね。そんな簡単に許すわけ…」

 

「いいぞ」

 

「あんたは黙ってなさいッ!!!」

「ゴブッ!!!」

 

 

ルフィの呑気な解答にナミが思いっきり殴り吹き飛ばした。

それを見たミス・ゴールデンウィークは「絶対にこの人には逆らわないようにしよう……」と心に決めた。

 

 

「さて、まずは出すものを出しなさい」

「海賊か」

「海賊よ」

 

 

ウソップのツッコミも簡単に流すぐらいいまのナミには死活問題なことがある。

 

 

「な、何を……」

「何でもいいからエターナルポースを出しなさいッ!!!

こんなところで無駄に"一年も"待ってられるわけないでしょうがッ!!!」

 

 

そうこの島で、次の島へ向かうためのログポーズが貯まるのには"一年"かかるというのだ。

それを聞いたナミはすぐさま倒したMr.3の身体検査をした。

しかし何も持っていなかったためミス・ゴールデンウィークを探していたのだ。

 

 

「も、持ってない……」

「はぁ!んな嘘をついても」

 

「ここにはリトルガーデンの行きしか貰ってないの。

ボスに任務完了の報告してからじゃないと……」

 

「う、嘘でしょう……」

「お、落ち着いてナミ……」

「大丈夫よ。向こうもまだ私達を狙っているはずだから……」

 

「その心配はないわ」

 

 

その言葉に誰もがレイジュを見た。

どういうことかと思っていると手には

 

 

「はい。アラバスタのエターナルポースよ。

サンジが機転を効かして私達が死んだことにしておいたわ。これならいくつか有利になるでしょう」

 

「レ、レイジュ!!!大好きよッ!!!!!」

 

 

思わずナミはレイジュに抱きついた。

ノジコもベルメールも安堵した表情をしているなか

 

 

「ねえ、二人とも。俺に抱きついても…」

「「持ってるならさっさと言いなさいよ!!」」

 

「え、えぇッ!!?なんで俺だけッ!!!」

 

 

レイジュには感謝しているのにお手柄だったサンジには変わりの拳骨をもらった。さっさと言わなかったサンジが悪いが少しは誉めてもらいたかったのだろう。

するとサンジの肩が叩かれたので振り向いてみるとルフィとウソップが親指を立てて

 

 

「ナイスサンジ!!」

「よくやったよサンジ!!」

 

「野郎からの慰めはもっといらねえよッ!!!

………レイジュが来てから俺につく女の子がグッと減ってきたんだよな……くそ、モテてぇ……」

 

「そんなこと言ってるからよサンジ」

「元凶がなにいったやがるッ!!!クソッ!!!」



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リトルガーデンの宴

「宴だああぁッ!!!」

「ちょっとルフィ。あまり時間がないんだから、一時間ぐらいにしておきなさいよ」

 

「「「「ええぇ~ッ!!!!!」」」」

 

「うっさいわよ男子共ッ!!!」

「まぁまぁ、少しぐらいなら大丈夫だと思いますから…」

 

(……最近、ナミちゃんイキイキしますね……)

(元々こんな感じだったのよ)

(母親として嬉しいわ…)

(このまま"あのことも"……)

(そう簡単じゃ、ないと思うけど……)

 

 

巨人二人の治療も終わり、目的のアラバスタへのエターナルポースも手にはいった。ここでルフィが宴を開こうと船から更にお酒を持ってきたので男共はみんなやる気になっていた。

 

ナミはそれを止めろとは言わなかったが時間短縮しようとして反感を食らったので怒ったのだが、カルーの怪我の様子を見ていた当事者のビビが言いといったのでさっさと準備を始めた。

 

 

「本当に良かったのビビ?」

「ええ。カルーも少しここで安静にしておきたいから」

「クエ……」

 

「なら、ノジコ!ベルメールさん!!着替えてッ!!!」

「「なんでよッ!!!」」

 

「ジャングルって言ったらコレよッ!!!」

 

「ちょっ、ちょっとッ!!!」

「む、無理ッ!!無理よッ!!!」

「大丈夫よ!!私も着るから行きましょうッ!!!

先に始めてていいからねー!」

 

 

そういってナミは二人を連れてサンジが見つけたロウのハウスに着替えに向かった。

 

 

「………もしかして、ナミさんが一番楽しんでる?」

「間違いないな」

「可愛いもん好きだもんな」

「あとファッションショーな」

 

 

宴=ファッションショーという感じで今のところ身内を使って楽しんでいる。正直くいなとカヤはハラハラしている。レイジュはなんとなく巻き込まれないだろうと感じているが自分達はあり得ると考えているのだ。

 

 

「おい、麦わら」

「なんだ?」

 

「今回は世話になったな」

「いいよ。元は俺達を狙ってたんだ。悪かったな」

 

「いや、我々も油断していた。

それを今回改めて思い知った。小さくとも強いやつはいる。

当たり前なことだったがこう長く二人だけだと忘れてな」

 

 

ドリーとブロギーが改めてルフィ達にお礼をいう。

そんなこと気にしていないルフィは「よし!飲もうッ!!」と二人に酒を配る。

 

 

「ちょっ、ちょっとルフィさんッ!!

ドリーさんにはお酒はダメですよ!重度の火傷をッ!!」

 

「ダメなのか?」

「問題ない」

「あるに決まってますッ!!!」

 

 

カヤに怒られてせっかくのお酒を取り上げられたドリーは少しガッカリしていた。変わりに渡されたのはただの水。

 

 

「せめて味がするやつを」

「ダメですッ!!せめて一週間はダメですからね!!!!」

 

「お、おいッ!!!」

 

いいですね。

医者に逆らうなんて真似、しようものならどうなるか……巨人であるドリーさんにも分かるように……してもいいんですよ?」

 

 

凄みのある賑やかな笑顔でそんな事をいうカヤ。

でも、思いっきり目は笑ってない。むしろ殺気が…

それには巨人であるドリーも一歩引いてしまいそうになるぐらい……

 

 

「に、人間の女は……怖いんだな……」

「こういう時のカヤには逆らわないのが鉄則なんですよ師匠」

 

「そ、そうか…分かった、言うとおりにする」

「はい。お酒は置いていきますので治ってから飲んでくださいね」

 

 

それでも完全にお酒を絶つわけではない。

その優しさに「感謝する」と頭を下げるドリー。

お酒も行き渡ったところで

 

 

「それじゃー乾杯ッ!!!」

『乾杯ッ!!!!!』

 

 

…………………………

 

 

「どう??やっぱりジャングルといったらコレでしょう!」

「うひょーーーうッ!!!最高ですナミさんッ!!!!!」

 

「いいぞ!いいぞ!なかなか人間の女は話が分かるな!」

「だな!まさか"踊り子"を出してくれるとは!」

 

「……う、うぅ……////」

「これ、は…恥ずかしいわ……////」

「恥ずかしいところなんてないわよ!とても可愛いわッ!!!!!」

 

 

ナミ達が来てきたのは迷彩色でまるでビキニを着てるんじゃないかと思うぐらいの布の小さい服だった。

いわば女版ターザンみたいなものだった。

これを巨人二人は踊り子と勘違いしているが訂正せず

 

 

「いっておくけど、踊らせるなら一人五万ベリーよ」

「金取るのかよッ!!!」

 

「当たり前よ。タダなのは私がこうして見たい時だけよ。

これ以上要求するならお金よ。お金」

 

「しっかりしてんな~」

 

「ナミ、それはちょっと……」

「ええ。………十万ベリーよ」

 

「親子揃って鬼かッ!!!??」

 

 

ガヤガヤと宴も盛り上がったころ、今までの中でも一番の驚愕の出来事を目撃することになった。

 

 

「おいおいルフィ。そんなに食いもん集めなくても誰も取らねぇよ」

 

 

ルフィは自分が食べている分とは別に食いもんをどんどん集めていく。そして大体()()()集まったところで

 

 

「ウソップ。これを包むやつ持ってねえか?」

「なんだよ。船に持って帰るのか?サンジに頼めば食えるのによ」

 

「でもルフィさんが食べ物を残して後で食べるなんて珍しいですね」

 

「こちらとしたら節約出来るから助かるが、別にそんな風に残さなくてもいいだぜ」

 

 

誰もがルフィの行動に驚きながらも「無理しなくていい」と優しい言葉をかける。しかしルフィは首を横に傾け、なに言ってるんだ?という表情で……言ったのだ。

 

 

「これ()()()()()()()()()()()()()

宴してんだからな、飯ぐらい持っていかねえと」

 

 

その言葉が皆の耳に入った瞬間、持っていたグラスや食器類、食べ物を落としてしまった。

ドリーとブロギーはどうしたのか?と分からずにいた。

 

ワナワナと震えるウソップはルフィを指差し

 

 

「に、……偽物だああああぁぁぁッ!!!!!」

「ど、どこからルフィそっくりがッ!!!??」

「くそが!全然気づかなかった!!!」

「あのルフィさんがそんなことをするわけがッ!!!」

 

 

誰もが混乱するなか存在を否定されたルフィは

 

 

「失礼だなお前ら。俺はルフィだぞ」

「なら証拠を見せなさいよ!」

「そ、そうよ!ルフィ君だけしか知らないことを!!」

「あの大食らいのルフィ君がそんな人に食べ物をッ!!!」

 

「本当に失礼だなお前ら」

 

 

と、言っても誰も信じないようなのでここで一つ。

 

 

「言っておくけどな、ハジメがよく「食べ物を粗末にするやつは死刑。食べ物を分け与える行為は()()()()」だっていっていたんだぞ。それに師匠が大変な時に全く誰も相手しないと………………………………殺される」

 

 

一時の間が空いたあと突然に全員が

 

 

「片付けろッ!!!」

「今すぐ片付けるのよッ!!!」

 

「お、おい!せっかく宴を…」

「んなこと言ってる場合じゃねえんだよドリー師匠ッ!!!」

 

「こんな所を見られたら私達……死んじゃうかもしれないのッ!!!!!」

 

「…いや、ただの宴だろう……」

「甘いだよお前らッ!!!あの()()()()を知らねえから言えるんだよッ!!!!!」

 

「あんたも呑気に飲んでるんじゃないわよッ!!!」

「俺まで巻き込むなッ!!!」

「ゾロ!!!いいから片付けるの手伝ってよッ!!!」

 

「レイジュ!!!ルフィと先に言って説明しておいてくれッ!!!!!」

「いいわよ。行きましょうか船長さん」

「おうッ!!!」

 

 

この時ドリーとブロギーは思った。

これだけ騒いでいたというのにたった二人の名前を出しただけでこの慌てよう。一体どんな、人物かと……

 

 

…………………………

 

 

コンコン!!

 

格納庫の扉をノックするルフィ。

いつもならガバッ!!と扉を開くがそんなことはしない。

この向こうには師匠(ロビン)とハジメがいるのだ。

 

昔なら、最低限のマナーを叩き込まれたルフィ。

それは普段上手く出来ていないが"ある条件"が重なれば発揮するのだ。

 

それがこの二人。

嫌というほど"地獄"を見せられたのだ。主にロビンに。

ロビンのいうことは絶対的。逆らえば"死"

ロビンが不機嫌になることをしたら"半殺し・地獄・死"の三択

 

これを幼い頃から教育されたのだ。

こうして食料を持ってきたのも習慣というか恐怖というか…己の身を守るために本能的にやっているとしかいいようがない。

 

ノックしてもしばらく反応がなかったが

 

 

「………どうしたルフィ」

「ハジメと師匠に食料だッ!!!」

 

「………………ルフィ。宴、してたでしょ?」

「ッッ!!!??………し、知らねえ……」

 

 

ズバリと言われつい嘘をついたルフィ。

隣にいるレイジュに視線を向けるとニコッと笑ったので

 

 

「ルフィ。嘘をついたら…」

「すみませんでしたッ!!!!!」

 

 

もの凄い勢いで土下座をするルフィ。

……………これが未来の海賊王か………と、ハジメも思ったがこんな風にしたのも自分だなーと少しだけ後悔して

 

 

「まぁ、何かあっての宴だろうし、こうして食べ物を持ってきたから今回は許してあげるよ」

 

「ふぅ……師匠はどうなんだ?」

 

「落ち着いてはいるけどね。アラバスタまではでない方がいいだろう」

 

「それについて報告があるの」

 

 

そこでこの島で起きた出来事を話したレイジュ。

途中でルフィも説明も加わり詳しい詳細を聞いたハジメは

 

 

「……なるほどね。それでこのままアラバスタに向かうのか?」

「………分からねえ。でも、違う気が……する……」

「根拠は?」

「ねえ」

 

 

直感なんだろう。

やっぱり"あの島"へ向かうことは決まりなのだろう。

まぁ、反対しても無理やり向かわせるつもりだったが。

あそこには新たな仲間がいるのだから。

 

 

「分かった。

みんな集まったらまた呼んで。今後の話をしようか」

 

「おうッ!」

 

 

そういって走っていったルフィ。

残されたレイジュはハジメをジィーと見て

 

 

「何を企んでいるのあなた?」

「やっぱり分かるんだねレイジュには」

 

「ふふふ。きっとベルメールもね。

それでも船長さんや皆と足並みを揃えてるわよ」

 

「それは助かるよ。

二人には後でお礼しないとな」

 

「楽しみにしてるわ。

それで本当にロビンは"大丈夫なのよね"??」

 

 

その大丈夫はどういう意味なのか?

レイジュは昔からこういう駆け引きや勘の良さはずば抜けていた。ハッキリなことは分からなくてもおおよそのことは何となく感じているのだろう。

 

 

「あぁ。"大丈夫だよ"」

「そう。ならいいわ」

 

 

そういってレイジュもこの場を去ったあと扉を閉じたハジメ。

部屋の中にはにこやかなロビンが

 

 

「やっぱりレイジュには分かってるみたいね」

「何となく、だろうけど。演技はバレバレみたいだね」

 

「構わないわ。それだけの演技しかしてないもの」

「アハハ……さて、さっき聞いていた通りだけど…」

 

「ここからなら"あの島"が近いのよね。

それに()()()()()()()()()()よね」

 

()()()()危ないだろうな……全く、いざとなったら助けるけど……」

 

 

そういって小瓶の中には小さな小さな"生き物"が動いている。

これがあの島へ、向かわせることになる起点。

わざわざ危険な目に合わせなくてもとは思ったが

 

 

「本当に優しいわよねお兄ちゃんは。

私達がいなくても"出来る"って自信をつけさせるためにしてるんだから」

 

「頼りすぎないようしておかないといざとなったら大変な目に合うのはあの子らだからね」

 

 

そんな事をいいながらハジメはでんでん虫を手に取り

 

 

「さて、もう一手二手打っておこうかな」

 

 

受話器を手に取り連絡をした先は

 

 

「もしもし、生きてる?」

『ハジメエエエエエエエェェェェッッ!!!!!何処にいるんだてめぇはッッ!!!』

 

「うるさいな。ヒント残したでしょ?」

『そういう問題じゃねえ!!!なんだあの倒された人の山はッ!!!??』

 

「えっ。バロックワークスの社員さん達だけど?」

『お前は一体何と戦うつもりだボケッ!!!!!』

 

 

連絡をした先はヘルメッポ。

双子岬に進んだ航路を残しておいたからきっと"後片付け"して、その最中に()()()()()()()()()()分かっただろうなーと思って連絡を取ったらビンゴだった。

 

 

「それよりも」

『置くなッ!!!』

 

「先にアラバスタに……」

『核心につく話をするなッ!!!行かねえぞッ!!!絶対的行かねえぞ俺はッ!!!!!』

 

 

こういう時の勘は誰よりもいいんだよな。

仕方ないと受話器をロビンに渡して

 

 

「行きなさい。"殺すわよ"」

『分かったよチキショーッ!!!!!』

 

 

流石ロビンの鶴の一声。

受話器を叩きつける音がしたのでヘルメッポが強制的に連絡を切ったようだ。

 

 

「あとは……」

 

 

次に連絡を繋いだのは

 

 

「仕事しろグザン」

『てめぇは何処かで俺を見張ってるのかハジメ』

 

「見張ってなくてもしてないでしょうが」

『………してる』

 

「マジで真面目にしやがれ。モーガンさんに負担を回すな」

『主にお前が負担かけてるだろうがッ!!!

………で、なんのようだ?なにを仕出かす気だ??』

 

「七武海の一角であるサー・クロコダイルを徹底的に落としますけど何か?」

 

『………………………………………はぁ~…………………』

 

 

なんか凄く長い間とため息ついたクザン。

まぁ、気持ちは分かるよ。すでに海軍でもなにかをやらかすぐらいは理解しているだろうから。

それでもハッキリしないと手を出せないからね。

 

あの国ではいまクロコダイルは英雄だもん。

そんな英雄を海軍が捕まえようとするには証拠がいる。

でもその証拠がないいまは手を出せない。

 

出せないなら同じ"海賊"がどうにかするしかない。

こっちは海軍のようにしがみつく世間体はないからね。

 

 

「分かった。なにすればいい?」

『いいんですか?』

 

『情報だけでもこっちは入ってる。

お前が目をつけたなら、クロコダイルは終わるだろう。

なら後片付けでも情報操作でもやってやるよ』

 

「流石話が早い。

まあある程度はそっちに任せるけど一つだけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロコダイルの部下を何人か引き抜くからよろしく」

『ふ、ふざけんなッ!!!んなこと出来るかッ!!!??』

 

「えっ。でもすでに二人は確保してるよ」

『おいおい!!勝手なことをするなッ!!隠蔽するのにどれだけ大変か……』

 

「知るか。やれやグザン」

『落差が激しいなクソッ!!!!!』

 

「大丈夫。こっちの船とロビン(月兎)の船だから」

『ならいいな。こっちには回すなよ。絶対だぞ』

 

「つまり、回せと」

『振りじゃねえよッ!!!!!』



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カラー

「「「「「アラバスタにはまだ行かないぃぃッ!!!??」」」」」

 

「おう」

 

 

ルフィの発言に誰もが驚く中、当事者であるビビがルフィに詰め寄った。

 

 

「待ってルフィさん。どうしてそんなことを…」

「勘」

 

「あんたね…そんなので納得出来るわけないでしょうがッ!!!」

 

 

ビビに変わってナミがさらにルフィに詰め寄る。

しかしルフィの意見は変わらずに

 

 

「でもダメだッ!!!」

「ルフィ、いい加減に……」

 

「ちょっと待って。私が説明するわ」

 

 

このままだと面倒くさいことが起きると思いこういうことにはあまり関わらないレイジュが話をした。

 

 

「これにはハジメから船長さんへ聞いてきたの。このままアラバスタに向かうのかって。そしたら船長さんがまだな気がするって」

 

「おい、それで納得したのかお前は」

 

「カリカリしないのよサンジ。

ほら、早く説明しないと不満で暴動が起きるわよ」

 

「そうですね。ちゃんと説明するから皆落ち着いてください」

 

「うおおおっ!!!いつの間にッ!!!」

「さっきからいましたけど」

 

 

いつの間にかウソップと隣で話を聞いていたハジメ。

気配を消して(一時停止で)ずっといたため誰も気づかなかった。

丁度気配を消すのをやめたタイミングでレイジュに気づかれたということなのだ。

 

するとビビはルフィからハジメの方に進行を変えて詰め寄った。

 

 

「それじゃどうしてアラバスタに行ってはダメなんですか?」

「仲間を増やすため。そして仲間を失わないため」

 

「ど、どういう……」

 

「この先相手は七武海だよ。

そして今回僕とロビンはほぼ手を出せない。つまりはルフィ達だけで戦わないといけないんだ。

それで問題、いまこの船に足りないものは?」

 

「音楽家ッ!!!」

「なわけあるか」

 

 

珍しくハジメからのお仕置きで拳骨を食らったルフィは「痛ってエエエエエエエェェェェ!!!」とゴロゴロと地面を這いずり回った。

 

それを見たウソップは手を上げていたが引っ込めた。

ルフィと同じちょっとした冗談を言おうかと思ったが止めた。

するとカヤが手をあげたので「や、止めとけッ!!」と制止するウソップの言葉を苦笑いで受け流して

 

 

「人数に対して……医者の数ですか?」

「その通り。そして技術という意味でも」

 

「…………」

「おいハジメ!!てめえそれは!!!」

 

「悪いけど!悪いけど、このさき間違いなく専門的な医療技術が必要になる時が来る。いまのカヤ一人じゃそれを補えない。下手したらこの中の誰かが……死ぬよ?」

 

「…………ッ!!」

「んなこと言わなくてもカヤはずっと勉強をッ!!!」

 

「それだけじゃ埋まらない物があるんだ。

ハッキリいうよ。()()()()()()()カヤはトップクラスだ。

だけどこの先の海ではそれは通用しない。

必要なんだ。この先を見据えて、誰も欠けないためには」

 

 

それを聞いたウソップもハジメの真剣な言葉と瞳に何も言えなくなった。

 

 

「……言葉が足りなかったなら謝るよ。

カヤには更なる医術の向上を目指してもらうためだってあるんだ。こういうのは側でその医術を勉強するのが一番だって聞いたからね。

それにカヤに取っても悪い話じゃないよ。

だって向かう先は()()()()()だからね」

 

「ほ、本当ですかッ!!!??」

 

 

するとさっきまで沈んでいたはずの表情から一気に顔色が良くなりハジメに詰め寄った。

 

 

「一度でいいから行ってみたかったんですッ!!!

それにDr.くれはにもお礼をッ!!!」

 

「分かった!分かったからッ!!落ちついてッッ!!!!!」

 

「なんだよ~そういうことなら早く言えよハジメ」

 

「だからゴメンって」

 

 

三人だけ話がまとまっているが他の者には何があったのかわかっていない様子。その後ハジメとカヤの話でどういう経緯だったのかとかどんな人物なのかと話した。

 

 

「トンでもねぇ婆さんだな~」

「患者からそこまで搾取するか普通……」

 

「言っておくけど下手なことは言わないようにね。

それでビビ、どうする?ここからアラバスタに行く??

それともドラム王国に迂回してから向かうか?」

 

「………………」

 

「まぁ、そんなに簡単には決められないか…

とにかくここを出発しよう。そして1日あげるよ。

向かう先はアラバスタ、もし僕の意見を取り入れてくれるならそこからドラム王国に向かうから」

 

「……はい……」

 

 

いまは時間が必要だろう。

しかしドラム王国、あの()()()()を仲間にはしたいのだが無理だというならアラバスタが終わってからでも向かってもいいかなー。

 

まぁ、ほぼドラム王国行きなのだろうけど。

 

 

「さて、そろそろ僕は格納庫へ戻ってるから。

その前に……これは何?」

 

 

ハジメが指差す方にはカルーの影で怯えているミス・ゴールデンウィークの姿が。隣では未だに気絶しているMr.5とミス・バレンタインの姿もあった。

 

 

「う、売り込みに来たの…

この二人を利用しようとしていたと聞いたから、なら私の力も役に立つはず」

 

「へぇ。組織を裏切ってでも海賊に?」

 

「いいえ。海賊ではなく貴方に」

 

「………よし、なら面接だね。

この子は連れていくからそっちの二人はよろしく」

 

「お、おい!ちょっと待て!!考え直せッ!!!」

 

 

ウソップが必死な表情でハジメに…近づかずに隣のミス・ゴールデンウィークに詰め寄った。

 

 

「下手したら人格そのものを変えられて破滅するぞッ!!!」

 

「ウソップ。なら望み通りにしてあげようか、君から」

 

「ヒィッ!!!」

 

「えっ。えっ??大丈夫、なのよね……」

 

 

その問いに誰も視線を合わせなかった。

とんでもない人に交渉してしまったとどんどん顔色が悪くなるミス・ゴールデンウィーク。

 

さっきまでのやり取りを見てMr.3を倒した者より、こっちの方が偉く話も分かるかと思ったから提案したのだ。

 

なのに開けば……闇だった。

 

 

「と、取り消し……は?」

「(ニコッ!)さぁ、行きましょう」

 

「い、いや……いやああああぁぁぁッ!!!!!」

「はいはい。一名様ご案内ーッ!!!!!」

 

 

必死に抵抗するミス・ゴールデンウィークだが、ハジメにズルズルと引っ張られて船内へと連れ込まれた。

そしてその場にいた誰もが手を合わせて無事を祈った。

 

 

…………………………

 

 

「それじゃドラム王国までが試験よ。

それまでに成果をだせば合格。ダメだったら…()()()()()()()()

 

「はいッッ!!!!!」

 

 

格納庫へミス・ゴールデンウィークを連れ込みさっきまでの話をロビンに聞かせると、とても、とても、いい笑顔で彼女を引き寄せて何かを話すともう顔が真っ青になり体が震えだし泣きながら「た、たすげでぐだざいッ!!」と懇願してきた。

 

何を言ったか、聞かない方が言いと思いロビンに「優しくね?」と言ってみたところこんな提案が上げられた。

 

多分強制的に入れるというのは()()なのだろうな…

それを聞かされてあんな風に怖がるなら納得かも…

もしくはそれ以上ってことも十分あり得るけど………

 

 

「それでカラーは」

「えっ??…そ、それ私の名前?」

 

「そうよ。呼びにくいから。

本当は色彩女か、彩取女とか……」

 

「カラーでお願いしますッ!!」

 

「それでそのカラーズトラップに込めた"力"って何かしら?」

 

「よ、よく分からないけど…こうやって……」

 

 

すると()()()()()()()()

そしてそれで書いたトラップはいつもより効果が上昇したという。

 

 

「やっぱり武装色の覇気ね。

でもこんな使い方あったかしら?」

 

「筆から絵の具に影響して、その書かれた物さえ影響する…

なくはない話だけど、これ誰に教わったの?」

 

「知らない人。

ずっと前に、組織に入る前に教えてもらって……

いざというときしか使わずに人には話すなって……」

 

 

……また、僕の意思とは違う何かがある……

それも覇気を教えるほどの手練れ。

これは、警戒レベルを引き上げないと危ないかな……

 

 

「その人の特徴は覚えてる?」

 

「えぇーと…身長が高くて、ボケェーとしてた。

旅行に来ていて、絵を描いていた私に「面白い力だなー」って。

色々話している内にこの力があるって教えてくれて「俺と一緒に来ないか?」って誘われたけどでんでん虫がなってよく聞こえなかったけど「さっさと帰ってこいこの()()」って。

そしたら慌てて帰って……それからは会ってない……って、ど、どうしたの?」

 

 

………ほう。なるほど、なるほど。

あの野郎……サボりぐせだけじゃくて幼いカラーにまで手を出そうとしていたのか……

 

すぐさまでんでん虫を取り、あの"ボケ"に連絡を入れた。

 

 

『今度は何のよ…』

「おい、てめぇグザン。何してくれてんだアァッ!!?」

 

 

「ヒィッッ!!!!!」と隣のカラーは怖がっている。

そして向こうのグザンも声にならない声を上げた。

 

 

『な、なんの、話だ……』

「まさか、まさかとは思ったが…てめぇ"幼女"好きだったのか?

 

 

その瞬間に受話器の向こうから慌ただしくもド派手な音を鳴らし始めた。完全動揺、正解かよ。

 

 

『は、はぁッ!!!??な、何を言ってッ!!!!!』

 

「お前、だからロビンを助けたのか?

幼い幼いロビンを助けて自分色に染めるつもりだったのか?

それなのにハジメという存在のせいで何も出来なくなったから今度はカラーに手を出そうとしたとか……」

 

『ま、まてッ!!!!!そんな趣味はないッ!!!!!

第一"カラー"って、誰だよッ!!!!!』

 

「絵が得意な女の子。武装色を教えた女の子」

 

『ッッ!!!??』

 

 

またしても声にならない声を上げたクザン。

はい、裁判長。こいつが犯人です。

 

 

「てめぇ。マジでふざけんな。

人に散々バカをやるなとか言っておいてお前は幼女漁りですか?

海軍トップがロリコンとか…マジで止めろよ。ふざけんなよ。

それもその手掛けた子が今回の騒動に関わってるんだぞ」

 

『なっ!!!??』

 

「……お前。責任とってアラバスタに来い」

 

『ちょっ、ちょっと待てッ!!!??』

 

「拒否権無し。来なかったら"グザンロリコン"って広めるぞ」

 

『………わ、分かったから止めてくれエエエエエエエェェェェ!!!!!』

 

 

マジで最悪だ。この男。

頭が痛くなり連絡を切ろうとしたがロビンが受話器を奪い取り

 

 

「ねぇ。グザン」

『ろ、ロビン……こ、これは………』

 

「大丈夫よ。私は分かってる」

『ろ、ロビン……』

 

「アラバスタで死刑確定だから。楽しみにしてるわ」

『いやああああぁぁぁッッ!!!!!』

 

 

五月蝿いのですぐさま連絡を切った。

……まぁ、警戒レベルは引き上げずにはすんだけど、グザンな対しての評価はダダ下がりになったな。

 

そしてロビンがカラーの肩に手を当てて

 

 

「気が変わったわ。

ドラム王国までに成果を上げたら特別待遇。ダメでも優しく歓迎してあげるわ。かわりに……一緒にグザンを殺しましょう」

 

「はいッッ!!!!!」

 

()()()()で留めてね。あれでも必要なんだから」



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覇国

「そうか、行くか」

「おう。オッサン達も元気でなッ!!」

 

 

ドリーとブロギーに挨拶を済ませて方角はアラバスタへ向ける。

未だに迷うビビに時間はあるがそれでも少しでも速く進めるようにと出港を決めた。

 

 

「いいですか。一週間後ですからね」

「あぁ。分かってる。約束を破るようなことはせん」

 

「俺はいつかエルバフに行くからな師匠ッ!!」

「おう。楽しみにしているぞ」

 

 

そんな挨拶もをしている中この二人は違った。

 

 

「はぁ!?ふざんなよクソマリモ!!

どう見ても俺の方が大きいだろうがッ!!!」

 

「バカかてめぇは!!俺の方が大きいんだよ!」

 

 

それは刈ってきた恐竜の大きさだった。

横に並べても全く同じ大きさだというのに……

 

 

「同じよ。こんな不毛なことで言い争わないで」

「そうですよ。いいからゾロもサンジさんも恐竜を小分けして」

「そうだぞ、お前ら。腹に入れば同じだ」

 

「「見も蓋もないことをいうんじゃねえッ!!!!!」」

 

 

レイジュ、くいな、ルフィから言われて結局勝負つかずに恐竜は船に乗る分だけ切り落とした。その際も「俺の方が多く乗せた」「俺の方が多い」などいうものだから最終的にこの中の最年長のベルメールが「いい加減にしなッ!!」拳骨を喰らわせて沈めた。

 

 

(……大きさ?)

(……狩り?)

 

 

なんとなくどこかで聞いたことがあるのか、ドリーとブロギーはそのキーワードを頭の中で何度も流して思い出そうとした。

しかし結局ハッキリとは思い出せずに船は島の東側の沿岸にたどり着いた。

 

すると突然ドリーとブロギーの二人から大きな声で

 

 

「この島に来たチビ人間達が、

次の島へたどり付けぬ最大の理由が、この先にある。」

「お前らは、我らの誇りを守ってくれた。」

 

「ならば我らとて……いかなる敵があろうとも、友の海賊旗は決して折らせぬ…!!!」

「我らを信じてまっすぐ進め!!!」

 

「たとえ何が起ころうとも、まっすぐにだ!!!

……いつかまた会おう。必ず」

 

 

その言葉に戸惑いを見せるなかルフィはその2人の思いを汲み取ったのか。

 

 

「ナミ。ノジコ。"まっすぐだ"」

「そ、それは進路はまっすぐだけど…」

「いやな予感がするわね……」

 

 

その予感は的中することになる。

突然目の前の海が競り上がりそこから現れたのは

 

 

「な、なんだありゃーッ!!!」

「か、海王類ッ!!!」

 

 

そこに現れたのは金魚の海王類。

とんでもなくでかく、常に口は開いたままこちらに向かって泳いできている。

 

巨人二人が言っていた次の島にたどり着けない理由。

それがこの金魚の海王類なのだ。

 

 

「ノ、ノジコッ!!!」

「う、うんッ!!!!!」

「ダメだッッ!!!!!」

 

 

その言葉に全員がルフィを見る。

 

 

「"まっすぐ"だッ!!!!!」

「ちょっ!!ふざけている場合じゃないのよッ!!!」

「このままだと食べられてッ!!」

 

「"まっすぐ"だッ!!!!!」

 

 

航海士であるノジコ、フォローするナミの言うことを聞かずにただ"まっすぐ"としか言わないルフィ。

いい加減にしなさいと言おうとしたとき

 

 

「ルフィの言うとおりだ。"まっすぐ"行こう」

「ウソップさんッ!!?」

 

「だな。いざとなれば腹の中からでも切って出てやる」

「ゾロッ!!!??」

 

「金魚は煮ても焼いても食えないと言われてるが…こりゃ捌きがいがあるな」

 

「サンジまで…」

 

 

男四人。船の中でも戦力として突出した彼らがただ"まっすぐ"進めという。何を根拠にと文句を言おうとしたナミだったがビビが肩に手を当てて

 

 

「行きましょう。どうせ今から逃げても飲まれるだけですよ」

「ちょっ!!ビビまで……」

 

「ほら。行くよ。私の娘ならこれぐらい乗り切れるはずよ」

「ナミ。行きましょう!」

「もうー!!!どうなっても知らないからねッ!!!」

 

 

ナミの説得に応じ言われた通り"まっすぐ"進むことにした。

船はどんどん金魚に近づき、ついに広げた口の中へ侵入してしまった。

 

 

「まっすぐ、まっすぐだッ!!!」

「もう逃げられないわよッ!!!!!」

 

 

何回も繰り返すウソップの言葉に自棄になるナミ。

するとゆっくり船に当たっていた光が消えていく。金魚が口を閉じ始めたのだ。

 

 

「もうダメだわ。金魚に食べられて人生を終えるなんて…」

「大丈夫よナミ。………たぶん」

「ベルメールさんッ!!!」

 

「……正直、こんな経験は初めてだけど、大丈夫よ……」

 

 

強気の姿勢を見せるベルメールにすがり付く娘二人。

 

 

「そうね。サンジ達がダメでも私が内部から"溶かして"あげるから安心して食べられましょう」

 

「それ、何一つ安心出来ないんですけど……」

「溶かすほどの毒ならその気体も危ないですよねッ!!」

 

「最終手段としてよ。その前にどうにかするでしょう」

 

 

レイジュの提案は更に悪く、くいなもカヤも反対をするがどうしても出ないと行けないときは覚悟しないといけない。それでもまだ手があるなら早くうってほしいところだが

 

完全に船は()()()()()()()()()()()()()

 

 

そんな中、ドリーとブロギーは目の前の金魚に向かって武器を構えていた。

お互い未だに回復していないのにも関わらずに全身に力を入れて吹き出す血さえも無視しまっすぐに金魚を捕らえる。

 

 

「我らに突き通せぬものは、”血に染まるヘビ”のみよ!」

「エルバフに伝わる巨人族最強の”槍”を見よ!!」

 

 

未だに金魚に食べられたルフィ達は「まっすぐ!!まっすぐ!!」と二人の事を信じて進み続けている。

 

そして二人の巨人が、海に向けてその武器を、大斧と大刀を、同時に振り切った、瞬間、

 

 

 

覇国(はこく)っ!!!!」

 

 

 

その衝撃波は怪物金魚の腹にぽっかり穴を空け、船は空いた穴からまっすぐその先に飛び出して行った。

 

 

「振り返るなよ!!!いくぞ まっすぐーーーーーーっ!!!」

 

 

ルフィは体中で感動を覚えていた。

これまで体験したことのない感動を体の震えを覚えながら

 

 

「でけェ……!!!なんてでっけェんだ!!!!」

 

 

ウソップはより体の震えと涙が止まらなかった。

いまだかつて感じたことのない、大きな大きな感動だった。

 

 

「海ごと……斬った……これが…エルバフの……戦士の力!!!」

 

 

友の乗る船が、大きな波しぶきを立てて無事海に着水したのを見届けた巨人達は「さァ行けェ!!!!」と船の進む方角を指して見送った。

 

 

…………………………

 

 

「………凄かったな……」

「だな…あれは、凄かった……」

 

「もう分かったからさっさと働きなさいよ」

 

 

ルフィとウソップは未だに余韻に浸っていた。

決闘でも凄いものを見せられたが"アレ"はそれよりももっと凄かった。

 

そんな二人を見てため息をつくナミ。

この二人だけならまだ良かったのだが

 

 

「あれは力業じゃないはずです。

全身の力を一点に凝縮するイメージに見えました」

 

「凝縮かぁ……こんな感じ?」

 

「うーん…それだと外に力が抜けますね……

ゾロさんも、腕だけに力が入り過ぎてますよ」

 

「こうか?」

 

「違いますよ!さっきと同じ事をしてます!

"力の流れ"をイメージしないとダメですよ」

 

「ゾロはこういう繊細なのダメだもんね」

「……うるせぇ……」

 

 

こっちは医学の観点から"体の使い方"を学んでドリーとブロギーが放った"覇国"をどうにかものに出来ないか模索していた。

二人が見てもただ力業で出来たとは思えなかったため、他の意見を聞くためにカヤに指導をしてもらっていたのだ。

 

 

「もう…緊張感という言葉、知らないのかしら?」

「いいですよナミさん。こっちの方が気が楽だから」

 

 

未だにカルーは体調が悪く横になっており、それを看病するビビはナミにそう告げた。

ずっと張りつめていたがここに来てから少しだけ気が休まった気がしていた。

 

それでも早く決断をしないといけない。

このままアラバスタに向かうか、それとも……

 

 

「それよりナミさん。なんか船が別の方角に行ってませんか?」

「えっ。……確かに…ノジコ何してるのかしら?」

 

 

ルフィ達の事で頭が一杯になっていたり、ノジコに操舵を任せたりしていた為に船が航路から外れていることに気づかなかった。

しっかりしないと!と気合いを入れ直してノジコを探していると

 

 

「ッ!!!??ノ、ノジコッ!!!??」

 

 

船内の入り口近くで倒れていたノジコを発見した。

息が荒く、熱もある。これは間違いなく何かしらの病気に…

 

 

「ベルメールさんッ!!!!!ノジコがッ!!!!!」

 

 

しかしベルメールを呼んでも返事がない。

何か起きたのだ?と誰もがナミ達の元へ駆け寄ってきた。

そしてベルメールがいないこと知り探すとすぐ近くで

 

 

「おいッ!!ベルメールさんも倒れてるぞッ!!!!!」

「そ、そんなッ!!!!!」

 

 

さらに船内奥で、ベルメールが倒れていた。

症状はノジコと全く一緒でどうやら同じ病気にかかったようだ。

 

 

「ノジコッ!!ベルメールさんッ!!」

 

 

二人の意識はなくすぐさまベッドのある部屋へ連れていくことにした。

 

 

 

…………………………

 

 

「げ、原因が分からないッ!!!??」

「こんな症状、初めて見ました…

体温が異常に高いんです…普通こんなにならない……」

 

 

カヤが診察をして色んな医療関係の本を読み返したのだが、いまの症状にあうものが見つからなかった。

 

 

「ど、どうにかならないのッ!!!??」

「いまは手元にある薬では誤魔化しか出来ません。

それに恐らくですが……コレが原因かと思います」

 

 

そういって二人の腹部を見せるカヤ。

そこには"赤く腫れているアザ"があった。

 

 

「これが原因………」

 

「ナミさんにはなかったですよね」

「え、ええ…カヤに言われた通りにくいなに全身見てもらったけど……」

 

「…運が良かったとしかいえません。

多分ですが虫などに刺されたことによるものです」

 

「虫って、虫刺されただけでこうなるのか?」

 

 

なにも知らないルフィはそういうと、カヤが一冊の本を取り出してそれを見せた。

 

 

「"アガス蚊"これに刺された人はたった1日で全身マヒを起こして、2日までにワクチンを射たないと……」

 

「ただの蚊がかッ!!!??」

 

「そうです。こんな蚊でさえも危ないんです!

いまは医術、医療も発達しましたけど昔は"謎の病気"で……」

 

 

すると突然黙りこんだカヤはブツブツ何かを復唱しながら

 

 

「…()()()()()()……()()()()……ッ!!!!!」

 

 

ノジコとベルメールの病気を探すために読んでいた本。

近くに山積みになっていたのだがそれを崩してある本を探し始めた。

 

そして見つけたのは周りの本よりもずっと年季の入った本。

ペラペラとページをめくっていき、そして見つけた。

 

 

「………う、うそ……そんな……」

「な、なんなの!!なんの病気なのカヤッ!!」

 

 

誰もが注目するなか、カヤは語った。

 

 

「この症状は"ケスチア"という()()()()()()()()()()()()()()症状に似てます。」

 

「太古の虫って……まさかッ!!?」

 

「間違いなく"リトルガーデン"に潜んでいたと思います。

ケスチアは100年前に全滅したんですがあそこには"恐竜"がいました。"ケスチア"がいてもおかしくありません。そしてこのダニに刺された者は傷口から細菌が入り、40度以下に下がらない高熱・重感染・心筋炎・動脈炎・脳炎などを引き起こし…………」

 

 

その先が言えなくなったのかカヤの口が閉じた。

それだけでももう嫌なことしかないと分かったナミは意を決して

 

 

「…お願い、教えて……!!」

 

 

その覚悟を決めた眼差しにカヤも応じようと決め、ギュッと目を閉じたあとまっすぐナミを見てこういった

 

 

「……5()()()()()"死に至る"。別名、"5日病"です」



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最大の秘密を

「さて、そろそろだろうな……」

 

 

その言葉に疑問を持つカラー。

いまはロビンの"メイド"なようなことをしている。

服装はそのままだがロビンが望むものをすぐさま察知して叶えるようにと"訓練"という名目でやっている。

 

要はパシリである。

初めは嫌がっていたカラーもロビンの"話術"により少しずつそれが快感になってきており軽くトリップしていたタイミングで正気に戻った。

 

 

「何か始まるの?」

「まぁね。さて、誰になったのか……」

 

 

するとハジメが言ったとおりに扉にノック音が聞こえてきた。

それも何度も何度も、急いでいるかのように。

 

ロビンとカラーにはカーテンの向こう側に待機。そのカーテンに一時停止をして二人に対して"認識しない"ようにした。

これで扉が開いても"ハジメだけしかいない"と認識される。

 

鳴り止まないノック音を止めるために扉を開くとそこにはナミ・カヤがそこにいた。

 

 

「お兄さんッ!!!お願いッ!!力を貸してッ!!!!!」

「どうしたの?そんなに慌てて」

 

「ノジコとベルメールさんが……ケスチアにッ!!…五日病にかかったのッ!!!??」

 

「ッッ!!!??」

 

 

それには…ハジメも驚いた。

ルフィ達の()()()にと覚悟していたが、まさかベルメールさんがと聞いたら自分でも予想以上にショックを受けていた。

 

これはこれから先のために、どれだけ酷いことをしているのか分かった上でやったこと。

 

それでも、やはり……と胸を無意識に押さえるハジメにカヤが近づき

 

 

「だ、大丈夫ですか……??」

「ッ!!…だ、大丈夫………」

 

 

本当に、思っていた以上にショックを受けていたと改めて自覚したハジメ。

それでもこれなら……

 

 

「カヤはとにかく二人を容態を、看病をしていて」

「分かりました」

 

「ナミ。もう分かってると思うけど……」

「………うん。私が()()()()()()

 

「出来る?まだ辛いんじゃ…」

「やらないと……それに二人の苦しみに比べれば平気よッ!!」

 

「……分かった。でも無理はせずにね。

あとでそっちに行くから。ちょっと待ってて……」

 

 

二人は頷き部屋を後にした。

一度扉を閉めると力が抜けたようにその場に座り込むハジメ。

それを見ていたロビンはすぐさま近寄り

 

 

「大丈夫、お兄ちゃん?」

「あ、あぁ……思っていたより、ずっと辛かったよ……」

 

「……妬けるわ。

ベルメール、そんなにお兄ちゃんに思われていたなんて」

 

 

薬指の指輪を眺めたあとハジメの腕に抱きついたロビン。

 

 

「こんな思いをさせたのだからベルメールには文句の一つぐらい言わないといけないわ。だから…よろしくねお兄ちゃん」

 

「分かってるよ。ロビンはアラバスタまで我慢してて」

 

 

……………いい雰囲気を出しているがここにはカラーがいる。

声をかけようにも部屋を出ようにも、体を動かさないといけないのだが、僅な動きをしただけで"地獄"を見るような気がして動けなかった。

 

というか目の前で行われているイチャイチャを見せられているのもある意味"地獄"である。

 

しばらくすると立ち上がりカラーに気づいたロビンは一言。

 

 

「存在そのものを消せないの?役に立たないわね」

 

「ッッ!!!??」

 

「言い過ぎ。かなり言い過ぎだから」

 

 

空気を呼んで存在感を消したのにまさか"死ね"と言わんばかりの言葉をもらうと思わなかったカラーはもう涙目。

言葉にならない。言えば殺られると判断したのかカラーはハジメに強い視線を送りながら何度も何度もロビンに指差しながら「何なの!!!何なのアイツはッ!!!」と言わんばかりに抗議する。

 

 

「はいはい。落ち着いて」

「そうよ。落ち着きなさい」

 

「ッ!!!ッ!!!!!」

「ほら、ロビンも煽らないの」

 

 

地団駄踏みながらブンブンとロビンを指差すカラー。

うんうん。完全逆らうと地獄見るからね。これが最大の抵抗だもんね。

 

 

…………………………

 

「よし。もう面倒くさいからさっさと終わらせよう」

「いや、いきなり何言ってるんだハジメ?」

 

ノジコとベルメールを看病している寝室に集められている中に現れて突然そんなことをいうハジメ。

ちなみに航路はMr.5とミス・バレンタインに強制的にやられている。余計なことをしたら海に沈めると脅して。

 

なのでここには麦わらの一味とビビしかいない。

ウソップの疑問に答えるためにハジメは寝込んでいる二人に近づいて

 

「……ごめんね。最初からこうすれば良かったのに…」

「……お、お兄……さん……??」

「………ハ……ジメ……??」

 

二人に何かの謝罪をしてハジメは二人の手を握った。

するとどういうわけか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして十秒も経たないうちに完全さっきまでの症状は消えて普段通りの二人に戻ったのだ。

 

「えっ……」

「なに、これ……」

 

「ノジコッ!!!ベルメールさんッッ!!!!!」

 

二人に抱きつくナミの目からは溢れる涙。

二人もつられて涙を流しながらお互いを抱き締める。

それを見たハジメは良かったと安堵の表情をするがそこに

 

「ハ、ハジメさん…一体何を……」

「そうだね。こうして隠しているのも、バカらしくなったし……ここら辺で"秘密を共有"してもらおうと思って」

 

カヤからしたらあり得ないことだった。

ケスチアは薬がなければ刺されて5日後に失くなる病気。

それを手を握っただけで治すなんて…ありえないのだ。

 

「言っておくけどここで見ないフリしたほうがこれからの君達の為でもあるから。これを知ると……世界そのものを敵に回るようなものだから」

 

真剣な表情で、その瞳で、一人一人にその秘密の恐ろしさを伝える。何のことか分からないがそれでもそれを知れば想像以上の事が起きると誰もが連想出来るほどに……しかし

 

「関係ねえ!ハジメは、ハジメだああぁッ!!!!!」

 

ルフィの一言に誰もが頷く。

その言葉に誰もが共感し、誰もが覚悟を決めた。

それを見たハジメは意識的に深呼吸をして

 

「なら、話そうか。僕が持っている()()()()()()

 

 

…………………………

 

「「「「「トメトメの実いいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」」」」」

 

複数で大声を出すものだからすぐに部屋全体に一時停止を使った。危なッ。他の奴に聞こえたらどうする気なんだ…まったく。

 

しかしハジメが心配している内容なんてちっぽけだ。と思わせるぐらいに全員がパニックになっていた。

それはそうだろう。あのルフィさえも知っているのだ。

悪魔の実、その中でも最強と呼ばれる悪魔の実。

 

"トメトメの実"

 

ありとあらゆるモノを止め、能力や、"時間"さえも止めることのできる。いわば"神"にでもなれるそんな悪魔の実。

 

遠い昔からおとぎ話などでも語られ、知らないものはいない。

空想の実。そして誰もが一度は欲しいと願う実。

そしてそれを手にすればどうなるか、世界中がその実を求めて争いが始まるほどに。

 

覚悟をしていたがそれでも想像を越えてきた。

あり得ないものが、目の前にある。

人はそれだけで驚くものなのだ。

 

「じ、じゃ、ハジメはずっとそれを隠してきたのかッ!!」

「知っている人は何人かいるよ。もちろんロビンは知ってる」

 

「師匠よりもハジメが"怖い"って感じてたのはこれか~」

「何のんきにしてるのルフィッ!!!

お兄さんッ!!!本当に余計な人には話してないのよねッ!!!」

 

驚いていたが相変わらずのルフィに一括を入れるナミ。

こちらもさっきまで泣いていたのが嘘のように動揺している。

 

「してない、してない。

海軍は大将一人と影武者しか知らない」

 

「終わりよッ!!!もう終わりよッ!!!!!」

 

「な、ナミさんが壊れたあッ!!!!!」

「これが普段のナミよ……」

「いや、戻ってくるタイミングが悪すぎるけどね……」

 

とんでもないカミングアウトを聞かされてとうとう素に戻ったナミにサンジな驚き、元気になったノジコとベルメールは複雑ではあるが昔のナミに戻ってくれて喜んでいる。

 

「まぁ、まてナミ。

ほら、最強なんだろう。俺達が出る暇なんて…」

 

「あっ。海軍相手の時は全くもって手を出さないから」

 

「終わったッ!!!!!もうダメだッ!!!!!」

「お、落ち着いてウソップさんッ!!!!!」

 

こっちもこっちでネガティブになっているウソップ。

そこに追い討ちをかける。

 

「で、これが世界政府にバレたら…」

「「バ、バレたら………」」

 

「世界中のありとあらゆる海賊、海軍、革命軍がここに攻めてくるかもね♪」

 

「「いやあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!」」

 

「ってことは、ないだろうけど……って、聞いてる?」

 

「冗談にしてはやりすぎですよ…」

 

絶叫してハジメの声が聞こえない二人を見てため息をつくくいな

驚きながらも大人しくしていたゾロから

 

「で、ハジメは()()()()()()()()()()()()()()()

「何に対してかな?」

 

「…………戦力()()()()()()()()

相手は王下七武海、それによってずいぶんと戦い方が変わるからな」

 

実際は()()()()()()()()()()()()()()()()()()も含まれていたが、それよりも優先されるこれからの戦力を聞くことにした。その能力を使って手伝うのか??手伝ってもどこまでの範囲なのか?知る必要があるからだ。

 

「サポートに回る程度、かな」

「戦力には数えるな、ということか」

 

「表に出過ぎるとさっきいった通りにこの一味が、そこで聞いちゃったビビも狙われるかもね」

 

「わ、私もッ!!!??」

 

「それはもちろん()()()()()()()()()()()()()()()だからね」

 

 

そ、そんな~と完全巻き込まれただけのビビはその場に崩れて思わず涙する。そんなビビにサンジがすぐにかけより「大丈夫かいビビちゃん?」声をかけている。

 

「どのみちビビは僕の正体を知った時点でアウト。

恨むならラブーンに酷いことしようとした自分を恨んでくださいね」

 

「……私の、バカ………」

 

本気で自分自身を呪いたくなるほど後悔しているビビ。

そしてずっとなにかを考えていたレイジュは

 

「なるほど。その得体の知れない力は何かと思っていたけど…

でも私にも教えて良かったの?お父様に知られたら……」

 

「利用してくるかもですね。まぁ、返り討ちにしますし、レイジュは言わないでしょう?」

 

「……そうね。言わないほうが懸命かも」

 

元よりいうつもりはなかったのだが信用してくれるハジメにレイジュは思わず笑みがこぼれた。

 

「ということで、ドラム王国にはいきますが()()()()()()()()アラバスタに向かいましょう。二人の病気は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「最短って、どうやって……」

 

…………………………

 

「はい。馬車馬の如く」

「ッざけんなッッ!!!!!」

 

メリー号のスピードアップを図るためにMr.5を船の船尾に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことにした。

 

もっと先にできるサウザンドサニー号にある『クー・ド・バースト』をイメージしてみたのだ。一気に飛距離を稼ぐ本来のものとは違うが連発生があるために長距離移動に向いている。

 

「このまま組織に戻って消されるか、僕に記憶を消されて一般人として過ごすか、僕達の下で働くか………どれにする?」

 

「一般人ッ!!!」

 

「なるほど。廃人になりた」

「入るよッ!!!入ればいいんだろうチキショーッ!!!!!」

 

「なら、スピード落とさないように。

()()()()()()()を見張っててね」

 

組織を抜けるに当たり新しいネーミングがいるだろうから簡単に付けた。見た目で"レモン"とか"アフロ"でも良かったけど流石に可哀想な気がしたから止めました。

 

「頑張れ」

「ッ!!?貴女も乗っていたのミス・ゴールデンウィークッ!!!」

 

「今は"カラー"」

「ならカラー!!俺に体力と精神力アップするまじないを」

 

「いや」

「なんでだよッ!!!」

 

「男は全員敵。ハジメは違うけど、敵はいや」

「ふざけんなッ!!!」

 

「むしろ能力を使い続けないと苦痛になる"苦しみの紫"を書いてあげる」

 

「や、止めろッ!!!止めろよキロロッ!!!!!」

「……巻き込まないで」

 

「止めろおおおおおぉぉぉぉッッ!!!!!」

 

後方で仲良く何かしているのだろう。

そんなことは気にせずに

 

「あと1日もあれば着くかな」

「鬼だなお前」

 

ツッコミありがとう。

あとでシバくからなウソップ。

 

いいペースだ。これなら色々変えられる。

ずっとルフィ達のためだと言い聞かせてやったけど、それで苦しむのはやっぱりおかしい。修行のためならともかくストーリーとかそんなものの為に目の前の人が苦しむのは見たくない。

 

あとでどんなしっぺ返しがきても後悔しないように、やれることをドンドンやろう。

 

そんな事を決意していると舵を握っていたナミから

 

「……ありがとうお兄さん」

「何が??」

 

「本当はノジコもベルメールさんも、私の"これも"全部計算の内だったんでしょう?」

 

ニコッと笑うナミ。

そんな計算なんてしてない。でもいつか元のナミに戻ってくれたらとは思った。………まぁ、手遅れな所はあるけど。

 

「何のことかな?」

「まぁ、お兄さんだからそういうと思ったけど、それでもありがとう」

 

するとノジコやベルメールも一緒にお礼と頭を下げてそれぞれの持ち場に戻った。本当、そんなつもりはなかったけど……

 

 

「ナミ。すこし舵を切るから。もっとスピードが出そうな感じがするわ」

 

「OK。でも雲行きが怪しくなってきたから波に注意して」

 

「もうちょっと後ろの爆発させる位置を後ろにずらしたほうがいいかも……」

 

海の気象を体で感じとるナミ。

ジンベイとまではいかないけどかなりの操舵の腕を持つノジコ。

そんな二人をまとめ、臨機応変な対応をするベルメール。

 

きっとどんな船よりもこの三人がやる"航海術"には叶わないだろうな。

 



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働け、バカ共

「風が気持ちいいな~」

「だな~」

 

「働け、バカ共」

 

メリー号スピードが増し風が気持ち良く切り抜ける感覚を楽しんでいるルフィとウソップ。呑気にお茶まで飲んでやがる。

 

「別にいいだろうハジメッ!!!」

「そうだ!そうだ!!ほとんどやることないだろう!」

 

確かに見渡せばこの二人以外は働いている。

ゾロとくいなは障害物でスピードを落とさないように進路に邪魔になるものを見つけたら排除するように見張っている。

二人がいればほとんど問題ないためここはいらない。

 

カヤは未だに回復していないカルーを見ていて助手にレイジュとビビが付き合っている。

レイジュみたいに医療をかじっていないし、ビビみたいに二人に習って手伝うことも出来ないためここでも二人は邪魔なのでいらない。

 

サンジはみんなの食事やおやつなどを作っており、野菜の皮むきなどをルフィ達にさせていたが食材が無駄になると止めさせていた。なのでいらない。

 

ナミ達の所は問題外。船尾もいらない。

こうしてハブられた二人は呑気にしていたのである。

 

「だとしてもな……なら、なにか見つけろよ」

「敵をぶっとばすッ!!!」

「マジックで笑顔を作る」

 

「それ以外をしろってんだよ」

 

そういえば本編ではウソップは常になにか作っていたなー

確か"クリマタクト"だったかな?

ここではマジックに目覚めて作ってないけど、いまのウソップがそういう武器を作るならどんなものが出来るのか……

 

「はぁー……じゃウソップ。

これからのことを考えて非戦闘員でも戦える武器を作ってくれないかな?」

 

「武器をか?そんなこと言ってもよ、どんなのいいんだ?」

「作るのはいいの??」

 

「面白そうだしな!」

「やる気があるならいいけど、そうだね……」

 

と、言ってもそんな急には思い付かないし

 

「そこはウソップが各自聞いて作って」

「丸投げかよッ!!!……まぁ、面白そうだからいいけどよ」

 

何を作ろうかなーとやる気になったウソップは早速カヤの所に向かいどんなものがいいか聞くことにしたようだ。

アラバスタではここでみんな一段強くなったからな。

此処等で"変化を見せても"いいかもしれない。

 

「よし!ルフィの方針が決まりました」

「なんだ。なにするんだ!?」

 

「これからルフィには"常に全力で最小限の力を使ってもらおう"かな」

 

「……………はい?」

 

…………………………

 

「ぎゃあああッ!!!」

「こっち来るなッ!!うわっ!!!」

 

「動くなッ!!!指一本動かすな!!」

「で、でもよ……」

 

「船の中がめちゃくちゃになるでしょうがッ!!!!!」

 

ルフィにやらせているのは"常に全力で"ということで"ギアセカンド"を"いつもかけている状態"で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というやつである。

 

幸いメリー号には一時停止をかけてるから壊れないけどあとは知らない。さっきから各方面に迷惑をかけているルフィ。少しでも動こうとすると倍の力が働くためにやり過ぎてしまう。

 

海軍が使う"(ソル)"に似ている一瞬に何度も足踏みをして高速移動する移動方があるけど、それをしなくてもギアセカンドは体内の血の巡りを活発にしているために身体能力が向上している。そのためにそんな状態で普段の動きを、ましてや繊細な動きは出来ないだろう。

 

現にまたウソップの所に突っ込むルフィ

 

「だから動くなッ!!!」

「バランス取るためにやってるだけなんだよッ!!!うおっと」

 

「こっち来るなッ!!」

「んなこといってもよ!!うわっ」

 

「ナミさん達に近づくなッ!!!」

「上手くいかないんだよ!!!おっととと」

「これ以上カルーに傷を負わせないで!!!」

 

これ見てて面白いなー

でもルフィがこれをマスターすれば"全力の全力"はとてつもなく強くなるはずだ。まぁ、時間はかかるだろうけど。

 

「とにかくドラム王国につくまでね」

「その前にこっちがやられるわッ!!!」

 

「これも訓練だよ。常に最悪を想定せよ。

って、誰かが言っていた気がする」

 

「気がするようなことを言うなッ!!!!!」

 

…………………………

 

ドラム王国に近づいてきたのだろう。

季節は冬となりコートを着ないと凍えてしまうほどに寒くなった。

雪も降り始めていよいよ目的地につくと思っていた矢先

 

「な、なんじゃありゃッ!!!!!??」

 

水平線の向こうから"淡いピンク"が見えてきたのだ。

それも夜の海に光るそのピンクはとても幻想的で

 

「あれがドラム王国。いまは"さくら王国"だったかな?」

「さくら王国……いつの間に…」

 

「やっぱり知ってたんだ、ドラム王国」

「え、えぇ……ずいぶん前ですけど……

でも、名前が変わっていたなんて……」

 

「まぁ、最近変わったみたいだし知らないのも当然かも」

 

しかし綺麗だなー

頭ではどんなものか知っているけどこうして目の当たりすると全然違う。やっぱり生で見るのはいいものだなー。

 

「お兄さん。ここに名医がいるのは分かったけどなんでそんなに詳しいの?」

 

「そこはいけば分かるよ」

 

「??」

 

はぐらかされたがもう目的地には目の前。

特に追及することなくメリー号はドラム王国改め"さくら王国"へと向かった。

 

…………………………

 

「お帰りハジメッ!!!!!」

「やっと帰ってきたんだなッ!!!!!」

「ねぇねぇ!!いっぱい旅のお話ししてッ!!!!!」

 

船着き場には沢山の人が出迎えていて、一部には垂れ幕を持ち「お帰りハジメッ!!!」と歓迎していた。

何処かでみたデジャブにナミ達親子は困惑し、ルフィ達はその歓迎に驚いていた。

 

「な、なんだ、なんだッ!!!??」

「どうなってるんだよコレ!!!??」

 

船着き場に集まっていたことや垂れ幕など()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

しかしその疑問はすぐに消えることになる。

 

「お久しぶりです()()()()()()

 

そこには目の下にクマがあり、ハジメを神だと崇め、()()()()()()()()()()()()()()()()がそこにいた。

 

「悪かったね()()。こんなことさせて」

「いえいえ。ゴットのためなら私は何でも……」

 

『ギ、ギンんんんんんんんんんんんんッッ!!!??』

 

久しぶりの再開をしてるというのにいきなり叫びだしたルフィ達。しかしちょっと油断して移動しようとするものだからルフィは制御出来ていないために近くの木に激突した。

いまは動くなって言ってるのに……

 

「ルフィはそこから聞いてなさい」

「は、はい……」

 

その間にも他の皆がなにやら驚いている様子だけど

 

「えっ。なに。何を驚いてるの?」

「ちょっ、ちょっと待って!!なんでギンが!!?

いや、ここで()()()()()って……はぁッ!!!??」

 

「だ、だって……ずっと船に乗って……」

「お、おい……いつから()()()()()()()()()()()

 

「グランドラインに入るところまではいましたよねッ!!!??」

「もうワケわからねえッ!!!どうなってるんだよッ!!!??」

 

冷静なレイジュを除いて各々様々なリアクションをしながら狼狽えている。

 

「やっぱり気づいてなかった……

あのね、それギンに失礼だからね」

 

「いいのですゴット。私にはゴットとマスターが入れば」

 

「本当に悪かったね。いっそう八咫烏に入る?」

「いえ。自分は麦わらの一味ですので。

それでもゴットとマスターにはついていきます」

 

そのギンの言葉に胸を痛める面々。

本当に誰も気づいていなかったのだ…可哀想である。

 

「で、何処からいなかった。だっけ?

双子岬を出発した時点でいなかったよ」

 

「で、でもどうやってここに……

あそこには他の船なんて……」

 

「いや、あったでしょう。僕達意外にも」

 

「………九蛇海賊団の船に乗っていったのッ!!!??」

 

正解である。

ちょっとギンには"野暮用"を任せることにしたので先にさくら王国に行ってもらっていた。そしてあの場で最短で付ける船といえばハンコックが乗っている船。

 

それが判明した途端にサンジがギンの胸ぐらを掴み

 

「テ、テメェッ!!!!!

つまりは美女が集まる花園にずっと乗っていたというのかッ!!!!!ウフフ、キャハハしてたのかッ!!!!!!!!??」

 

「い、いえ……個室に監禁状態でしたので、乗り降りしか会ってませんが……」

 

「当たり前だッ!ボケッ!!!!!

なんてうらやましい………俺になんで教えなかったんだッ!!ゴラアアアアァッッ!!!??」

 

「はいはい。そこまで。カヤ」

「はい」

 

的確に睡眠効果のある薬を注射してサンジを眠らせた。

こうなると思ったから言わなかったのに。

だいたいハンコック見て固まっていたやつがなにいってるのか……

 

「とにかくみんな。いうことがあるよね」

 

「「「「「ギン。ごめんなさい」」」」」

 

「い、いえ…気にしてませんので……」

 

そんなバカなことをやっていると人混みから体格のいい人がこちらに歩いてきて

 

「久しぶりだね。ハジメ君」

「ドルトンさん。お久しぶりです」

 

「誰なんだこのおっさん?」

「こら。失礼だよルフィ」

 

「構わないよ。ハジメ君の知り合いだしね」

「そうはいきませんよ。()()()()()()()()()()()

 

「こ、国王だったのかッ!!?」

 

だからため口を止めろって。

しかしドルトンさんは気にしないでくれというから止めたが、ちょっとルフィのフレンドリーなところはもう少し改めないといけないなーと考えていると

 

「ドクター・くれはに会いに来たのだろう。

お城まで案内しよう」

 

「つまりは……王国専属の医師!!??」

 

「と、いっても私は城に住んでいない。

昔からあの城はドクター・くれはの"家"だ」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ……

もう色んなことが起きすぎて訳が分からねえよッ!!!!!」

 

ウソップの言いたいことは分かる。

 

「まあ、歩きながら話そうっか」

 

そういって先頭に立って歩き始めるハジメ。

その後ろに誰もが付いてくる。

すでに本編とは違うここは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(ここで起きた出来事……

()()()()()()()()()。そして()()()()()()()()()()()()……話さないとな……)



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登ってきてね。という悪魔。

「は、はぁッ!!!??

じゃここにずっといたのかッ!!!??」

 

「というか拠点の一つですよ。

ここからロビンを探しにいってましたし、滞在期間的には()()()()()()()()ですよね」

 

「にしてもどうしてここなんだ?

ここの人達には悪いが、環境的にな…」

 

「言いたいことは分かりますよサンジ。

でもここじゃいけないこともありましたから」

 

村の人達と一味を連れて近くの村に向かう。

その道中で"どうしてこんなにもハジメが歓迎されているのか?"について話していたところだった。

 

その()()()ロビンを探すために拠点にしていたということだった。

 

「それにですね冬島はいいですよ。

ここに長く滞在すると肌が強くなりますし、尚且つ肌艶も良く……」

 

「つまりはナミさんやノジコさんや()()()()()()()()()、ビビちゃんやくいなちゃんやカヤちゃんがより一層綺麗になるんだなッ!!!!!」

 

「……………ですね」

 

「よし!1日でも多く滞在するぞッ!!!!!」

 

本編とほとんど変わらなくないか?

少しはマトモになったと思ったが……

 

「どうして私は言ってくれないのサンジ?」

「あぁ?()()()()()()()()

 

「……………ふふふ。そう、十分なのね」

「なんだ。いきなり笑いだして……」

 

訂正。

この男、まさかの隠れブラコンになってるのか。

レイジュはなんとなくその気はあったけど……

 

「こんなエロコックはどうでもいいとしてだ」

「ああんっ!!?なんだクソマリモがッ!!!!!」

 

「拠点にしたぐらいでここまで歓迎されるもんか?」

「無視するんじゃねえッ!!!!!」

 

もう喧嘩すると話が進まないのでアイコンタクトでカヤにまた麻酔薬をサンジに射ってもらうことに。

どこかでサンジを()()()したほうがいいかな……

 

いまのところはいいけど変な方向に言ってもらうと困るしな…

とにかく寝てしまったサンジはゾロに足を掴んで引きずって運ぶことにした。

 

「なんで俺が……」

「喧嘩を売るような言い方したゾロが悪い。

なんならゾロも眠らせてあげようか?」

 

「チィッ。

……で、さっきの質問だが……」

 

「それについてはDr.くれはも一緒にいたときに話すよ。

じゃないと説明するのも大変だからね。一人は」

 

しぶしぶ納得したゾロはそのあと文句も言わずにサンジを引きずるだけに集中してくれた。

すると今度はビビが近づいてきて

 

「いまから村に向かうんですよね??でもそのDr.くれははお城にって……」

 

「あぁ。そのお城ねあの山頂にあるんだ」

 

そういってハジメが指差したのはこのさくら王国の由来にとなった高く高くそびえ立つ山。その周りを"ピンクの浮遊物が舞い綺麗な桜木のように見える"ことからさくら王国となった。

 

で、その山頂にはこの王国の城があり、そこにDr.くれはがいる。

 

「ちょっ、ちょっと待ってッ!!!??あれを登るのッ!!!」

「大丈夫だよ。ロープウェイがあるからね」

 

「そ、そうですよね」

「ちなみにルフィ・ゾロ・サンジ・ウソップ・ギンは自力で登ってきてね」

 

「「「ふ、ふざけるなッッ!!!!!」」」

 

いきなりキレだす三人。

ギンは唖然としてるし、未だにサンジは寝ている。

 

「あんな壁みたいな山を登れっていうのかよッ!!!」

「そうだね」

 

山を指差して文句を言うウソップ。

 

「ロープウェイ使えばいいだろうがッ!!!」

「いや、鍛えるには丁度いいからね」

 

まったく正論をいうゾロ。

 

「ち、ちなみに能力は使っていいのか?」

「ギア・セカンドまでね。あっ。"ロケット"使ったら海に沈めるから」

 

恐る恐る質問してくるルフィ。

 

「分かりましたゴット!!!」

「もの分かりが良くて助かるよ」

 

流石ギンである。

文句ばかりいう三人には分かりやすく説明をしてあげよう。

 

「大体、ここにはノジコとベルメールさんの治療と有望な医者を仲間にするため。つまり戦闘要員はいらない。なら少しでも強くなってもらった方がいいからね。あっ。2時間内に登りきれなかったらまた最初からだから、はいスタート。」

 

「お、鬼かッ!!!!!」

「いいからいくぞウソップッ!!!時間が勿体ねえ!!!!」

「サンジさんッ!!!!!起きてくださいッ!!!」

「な、なんだよ…ギン……って、いってえっ!!!」

「早く起きろサンジッ!!!もたもたするな……ゴヘッ!!」

 

「「「「よそ見すんなッ!!!!!」」」」

 

突然のスタートに慌てる一同。

ギンが無理やりサンジを起こし、引きずられていたサンジはゾロに文句を言おうとしたところを止めようとしてルフィが近づこうとしたらコントロールを失敗して勢い良く木に激突した。

 

結局サンジからルフィに引きずられる人が変わり、五人は急いで山の麓まで走っていった。

 

「あ、あの私は……」

「ちょっとくいなッ」

 

ゆっくり手をあげるくいなにナミが止めにかける。

今から言うことが分かったのだろう。

"あの山を登りたい"と。

しかし女の子が行くにはあまりにも辛い環境なのだが

 

「行きたいなら止めないけど、大変だよ?」

「…このままだと、ゾロに抜かれそうなので…」

 

と言ってお辞儀をしたくいなもゾロ達を追いかけていった。

本当によく頑張る子だなー。

それを見ていたドルトンが心配そうに声をかけてきた。

 

「だ、大丈夫なのかい。とてもあの山は登れるようなものでは………それにさっきの女の子にはとても……」

 

「大丈夫ですよ。いざとなったらゾロもいますから」

 

「し、しかし…山だけじゃなく麓には……」

 

「"ラパーン"ですよね。それこそ大丈夫ですよ。

いい準備運動になるはずですから」

 

ここまでいうと「そ、そうか…」と引き下がったドルトン。

まぁ、ラパーン自体は大丈夫だけど問題は……

 

「さて、何人が登りきるかな……」

 

…………………………

 

「ロープウェイはいまお城にあるから降りてくるまでウチで待っているといい」

 

そういって通されたのはドルトンの家。

ハジメは外で村の人達と話しており、中にはナミ達親子とカヤとレイジュとビビ。

 

特にノジコとベルメールは少しでも安静にと暖炉の側に誘導してくれた。ハジメからある程度のことは聞いているがそれでも()()()()()だということで親切にしてくれたのだ。

 

「どれぐらいで降りてくるんでしょうか?」

「向こうに連絡はいれたからね。30分はかからないはずだ」

 

「………あの、ドルトンさん?」

「なんだい?」

 

すると、ビビがソファから立ち上がりドルトンの前に立った。

そして意を決したような表情で

 

()()()()()()()()()()()()()()

「ッ!!!??

……では、やはり君とは昔会ったことが……」

 

「はい。小さい頃ですけど……」

「そうか。ではあのときの……」

 

二人だけ分かる会話に疑問を持つナミ。

しかしそれに気づいたビビはすぐにドルトンとの思い出を話した。

 

昔出会ったことがあり、その時()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを。

そしてそれは国際問題になりかねない出来事。

 

一国の王女が理不尽に痛め付けられたのだ。

戦争にもなりかねない出来事に、当時のビビは

 

「……スゴいのねビビ。もうその年で"王女"だったのね……」

「そ、そんな大したことはしてません……」

 

「いや。あそこで君が断罪せずにこちらが悪かったと言ってくれたお陰でこうしてこの国はあるんだ。本当に、あの時はすまないことをした。そして――――ありがとう」

 

そんな小さな頃のことに対してお礼を言われて戸惑うビビ。

するとそれを聞いていたレイジュが

 

「思い出したわ。貴方、あの()()()の手下だったわね」

 

「君は……もしかして"ヴィンスモーク"の者なのかい?」

 

「ええ」

 

更なる突然のことでナミはおろかビビさえも戸惑っている。

しかしビビはすぐに気づいたのだった。その"名"について。

 

「"ヴィンスモーク"ってあのッ!!!??」

「どうしたのビビ?」

 

それに気づいたビビはすぐさまレイジュから距離を取り、ナミ達を守ろうとレイジュの前に立ちはだかろうと手を横に伸ばした。

 

困惑するナミ達。ドルトンはそのヴィンスモークについて思い出したようで驚いていた。そしてビビがヴィンスモークについて語りだした。

 

「ヴィンスモーク。それは()()()()()()

国土を持たない海遊国家「ジェルマ王国」の王族で、戦争屋と呼ばれる科学戦闘部隊ジェルマ66のトップだってはず」

 

「よく知ってるわね王女様」

 

微笑むレイジュにビビの緊張は高まる。

まさかずっと乗っていたのがあの……

するとビビは武器を手に取り構えだしたのだ。

 

「ちょっとビビッ!!!!!」

「何を考えているのッ!!!この"戦争"は貴女達が仕掛けたの!!答えなさいッ!!!!!」

 

ナミの呼び掛けに答えずにずっとレイジュを睨み付けるビビ。

レイジュは特に表情を変えずにビビの問いに答える。

 

「いいえ。そんなことはしてないわ」

「だったらなんでこの一味にいるのよッ!!!??」

 

「簡単よ。弟が麦わらの一味に入ったからよ。

ついでに我が家に送ってもおうと思ってね」

 

「嘘よッ!!!

あのジェルマが何もしないでなんてッ!!!!!」

 

「何を聞かされたか知らないけど、()()()()()()()()()()()()()。すでにハジメのお陰で国土を手にしたいジェルマは戦争を仕掛ける必要も参加する必要もない。()()()()()()()()()()()

 

その言葉に嘘はない。

レイジュとは長く一緒いて、そしてこういった嘘をつかない人だと知っている。もちろんナミ達と比べれば短いがレイジュのことは知っているビビ。それでも、それでも…疑心暗鬼にならずにはいられないのだ。

 

「ならどうして私が王女だったといった時に教えなかったのよッ!!!!!」

 

「いま以上に警戒している中でも言うわけないでしょう?」

 

「でもッ!!!」

 

「いつまで駄々をこねるのか知らないけど、私が言っていることは本当よ。それでも気に入らないなら…攻撃しなさい」

 

「ちょっとレイジュッ!!!!!」

 

「いいのよ。

私は別に貴女のような王女じゃないし、王国がどうこうにもならないわ。でも()()()()()()()()()()()()()()ということだけは分かってやってほしいわね」

 

武器を握りしめたままビビはレイジュを睨んだ。

ついさっき話したばかりだ。王女の行動一つで国が栄えるのも滅ぶのも選択出来ることを。

 

目の前には戦争屋と呼ばれたヴィンスモーク。

しかし目の前のレイジュは信用出来る、一人の人。

 

少しの間に睨んでいた視線は徐々に落ちていき、握っていた武器は自然と地面に落ちた。

それを見たナミ達はホッと一息。レイジュは相変わらず表情は変えなかった。

 

「最後に、もう一回だけ。

……本当に関わりないのよね?」

 

「ええ。ならサンジを差し上げてもいいわよ」

 

「いいえ。いりません!

 

あまりにもハッキリと、ニコニコ笑顔で言うものだから、流石のレイジュもそんなビビに対して一歩引いてしまった。



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ラパーン

「さ、寒すぎる……」

「今ごろですか……」

「ハイテンションで麻痺していたのかも…」

「くいなちゃん寒かったら俺の胸に!!」

「邪魔だクソコック!」

 

「まったく~情けないぞウソップ!!…………さむッ!!!??」

 

「「「「お前もかよッ!!!??」」」」

 

船から降りるときキチンと防寒していたゾロ達。

その中でウソップも着ているのだがそれでも薄いもの。

雪を見てテンションか上がったり、ハジメのことで異常な興奮などがあり感覚的に麻痺していたようで今ごろになって薄着だと気づいたようだ。

 

ルフィは例外。

()()()で出てきていたのだ。

まぁ防寒着を着ようにもギア・セカンドのせいで上手く制止出来ないために無意味だったのだが…

 

それでもいまの今まで気づかなかったルフィ。

ギア・セカンドは血液の循環を向上させるもの。つまりは暖かい血液が常に身体中に巡っている。あとただ鈍感だったのもある。

 

なので、足元から徐々に冷えていきやっと寒いと気づいたようだ。

 

「お前らズルいぞッ!!!そんな温そうなもん着やがってッ!!!!!」

「船から降りるまえから着てただろうがッ!!!」

「ちゃんとルフィさんにも着た方がいいっていいましたよ…」

「でも、お前ずっと動き回ってたしな。どうしようもなかったんだよ」

 

「なら、仕方ないねな。でも寒みぃッ!!!」

 

しかしどうしようも出来ない。

いま着ている防寒着を渡すわけにもいかないのだ。

そんなことしたらこっちが凍え死ぬ。

 

「な、なんかねぇか……」

「こんな雪山にあるわけ……」

 

「デケェエウサギだあッ!!!よっしゃ!皮を剥いでやるッ!!!!!」

 

「何恐ろしいこと言ってるんじゃお前はッ!!!!!」

「…間違いなくロビンさんの影響よね…アレ……」

 

目の前に現れた大きいウサギ。ラパーン。

凶暴なウサギはこの国でも危険だと認識している。

しかしルフィみたいに突っ込んでくるものはいなかったのかラパーンも一瞬油断したがすぐさま戦闘体勢に入る。

 

「ゴムゴムの、JETピス…ギャッフン!!」

「何転けてんだお前はッ!!!??」

 

とっさに攻撃しようとしたがいまは()()()()()()()()()()()()()()をしていたのだ。突然普段通りにしようとするなら感覚的に麻痺している状態になり、思ったより体が動いたために思いっきり躓いたのだった。

 

それを逃さないラパーンは大きくジャンプしてルフィの真上へと。そのまま自由落下により押し潰そうとしたのだ。

 

それに気づいたルフィはとっさに逃げようとしたが、こちらもやり過ぎてしまい大きく回避のために横に跳ねて木々にぶつかった。

 

「余計な動きすんなルフィ!!」

「んなこと言ってもよ……」

 

「刃物だと毛皮がダメになる。蹴ってもいいが足元が悪いからな。……ギン、頼むぜ」

 

「オッケーだサンジさん」

 

トンファーを取り出したギンはグルグルと回転させながらラパーンに近づく。すると攻撃してくる意図が分かったのか攻撃対象をルフィからギンへと変えてきた。

 

さっきのジャンプとは違いギンへと走っていくラパーン。

雪山育ちだからこそだろう。素早い動きはここにいるルフィ達よりも速いかもしれない。しかし

 

「それじゃ、ダメだぜ」

 

前足の爪で攻撃しようとしたラパーンを僅かな動きで、紙一重で避けたギンは振り上げたトンファーを思いっきりラパーンの頭上へと叩きつけた。

 

回転による攻撃力が向上しておりたった一撃でラパーンを黙らせた。

 

「やるじゃねぇかギン」

「いや、サンジさんやゾロさんに比べればまだまだ」

 

「よし、削ぐか」

「えっ。やめようよゾロ。なんか可哀想よ」

 

「まぁルフィのせいだしな。そこまでやる義理はねえな」

「なんだよお前らッ!!!凍え死んでもいいのかよッ!!!??」

 

「「寒さで死ぬクチか、お前は?」」

 

「いや、死なねぇな。でもよ、それでも寒ぃんだよッ!!!」

 

少し動いたからルフィの顔色はよくなったがそれでも冬の雪山。舐めていたらどうにかなるだろう。

 

すると何かに気づいたルフィ。ゾロもサンジもくいなも。

ギンだけはどうしたのかという表情だったがすぐにその原因が分かった。

 

ルフィ達を取り囲むようにラパーンの群れが集まってきていたのだ。

 

「良かったじゃえねえルフィ。()()()()()()()()()()()

「なぁ、サンジ。ウサギって食えねのか?」

 

「止めとけ止めとけ。あそこまで凶暴だと肉質も硬いんだよ。……いや、待てよ。その分いい脂身もあるかもな……」

 

「お願いだから撃退だけにしてよ……

可愛いウサギを食べるなんて私は嫌だからね」

 

「……えっ。可愛いですか…あれが……」

 

どういうことかな?とくいなに睨まれたギンは即座になんでもありません!!と首を横に振るう。

とにかくルフィ達の意見はこうなった。

 

「山登り前の準備運動だ!!来いウサギッ!!!!!」

 

一斉に飛びかかってくるラパーン。

ルフィはとにかくその場から動かない。

移動しようとするとまたコントロールが乱れる。

そのためしっかりと雪の中に両足を埋めてその場から対応することにした。

 

そして背中を地面につけるギリギリまで仰け反ったルフィは瞬間的に多方向へ拳を突き上げる。

 

「ゴムゴムの、JET噴火ッ!!!」

 

火山が噴火して周り全体に広がるようにルフィの拳も360度全体に攻撃が広がった。

飛びかかってきたラパーンは無条件にその拳を食らいぶっ飛ぶ。

 

 

ルフィの攻撃を受けないように離れたゾロとくいな。

襲いかかる鋭い爪を刀で受け止めながらラパーンに斬りかかる。

初めは個別で攻撃してきたラパーンも連携をして攻撃を仕掛けてきた。

 

しかしそれはゾロとくいなも同じ。

そして連携に関しては二人の方が上手だった。

 

「「一刀流……"(かがみ)開軌(びらき)"ッ!!!」」

 

背中合わせでラパーンからの攻撃を凌いでいた二人が攻撃パターンを()()()()()()()()()()()最後に全体に広範囲の斬撃を放った。

 

 

「くいなちゃんにあんなにくっ付けやがって……」

 

離れたところから二人を見て怒りが湧いてくるサンジ。

そんなことは関係なしでラパーンはどんどん襲ってくるのだが

 

「おい、ウサギ共。俺はな料理人(コック)だ。

だからこの手で攻撃することはねぇ」

 

そんなサンジの言葉が伝わるわけもなく攻撃してくるラパーンにまだ話しかける。

 

「だがな、相手が"食材"なら別だ。

コックは時に自ら食材を求めて狩りをする。つまりだ…」

 

落ちていた石を軽く上に投げたサンジは瞬間的に何発も蹴りを繰り出して、落ちてきた"刃がついた石"を手に取る。

 

「向かってくるならテメェら。俺の食材にするぞ」

 

すると1頭のラパーンが飛びかかってきた。

サンジは刃のついた石でラパーンのアキレス腱や筋を切断した。

地面に倒れて動き回るラパーンに対して見下ろすサンジは

 

「"ジビエ・ナイフ"

新鮮が一番だからな。テメェは後で捌く」

 

そういってラパーンの顎を蹴り気絶させたサンジはさらに向かってくるラパーンに対して()()()()()()()()()をすることにした。

 

 

それを唖然として見ていたギンは

 

「ここじゃサンジさんが一番怖いな……」

 

あの本気の目で次々にラパーンを生け捕りするサンジは、本当にあとで料理するんじゃないかと思うぐらいの気迫がある。

それに負けじとギンもトンファーに備わっている一部の機能を解放した。

 

「こっちは単純なものだ。期待するなよ、なッ!!!」

 

トンファーの先から無数のトゲが現れてラパーンにトンファーが当たるたびに肉に食い込む。そして一部には"反し"が存在しているために力ずくでトゲを抜くと

 

「……絶対にギンのほうが怖ぇよ……それも笑ってるし……」

 

 

そんなギンを見て引いているウソップはというと

 

「おいウソップッ!!!お前もやれッ!!!」

「これだけ人数で倒せるなら、俺は監視役に回る」

 

「ふざけんなッ!!!降りてこいッ!!!!!」

 

「だから俺を近距離戦闘要員にいれるなッ!!!

主は攻撃スタイルは遠距離なんだよ!!!!」

 

空飛ぶハンマーに乗り上空から援護射撃をするウソップ。

放っているのは"火炎星"であり、雪山では見ない炎に戸惑うラパーン達。そこにルフィ達が攻撃を仕掛けている。

 

「そこからでもマジック使えるだろうがッ!!!」

「いや、使ってるだろうがッ!!!」

 

ウソップの周りには銃器が宙に浮いて展開していた。

もちろんそこからは鉛玉ではなく火炎星。

マジックを使ってはいるが今までのものを見ると

 

「………地味」

「ふざけんなッ!!!コレがどれだけ大変か知らねぇから言えるんだよッ!!!!!」

 

複数の銃器をラパーンに向けて放つ。

それがどれだけの集中力がいるか……

これはマジックなのだ。種があるのだ。

言ってしまえばその銃器一つ一つをウソップがコントロールしているのだ。とんでもないことをサラッとしている。しているためにスゴさが伝わらないらしい。

 

…………………………

 

「ふぅー終わった!」

「結局何匹いたんだ?」

「さぁ。立ち替わり入れ替わりだったから…」

「一匹ぐらいマジで捌いとけば良かったぜ……」

「……サンドバッグが……」

「お前ら…その思考怖ぇよ……」

 

途中から実力差が分かったラパーン達は重傷なものを先に離脱させるために、入れ替わりしながら全ラパーンが逃げるように戦っていた。

 

それはルフィ達も分かっており途中からは撃退させるだけの攻撃しかしなかった。

 

「……というか、ウソップ。お前のマジックで防寒着出ねぇのか?」

 

「………あっ。」

 

全員が殴りたくなる気分になった所で奇妙な"音"が響いていた。

ドンス!ドンス!と一定のリズムでなる音は空気から響くものと、地面から響くものと二つだった。

 

そして、だんだんとその音は速くなり……

 

「……ねぇ、ゾロ」

「いうな。聞きたくねぇ…」

「あのクソウサギ共がッ!!!」

「に、逃げましようッ!!!」

「よし!!俺は空にッ!!!」

 

「「「「逃がすかッ!!!」」」」

 

「ふざけんなッ!!定員オーバーなんだよッ!!!!!」

 

「なにしてんだお前ら??」

 

ルフィだけは分からなかったようで慌てるゾロ達に問いかける。

 

「わかんねぇのか!!!ここに"雪崩れ"が来るぞッ!!!!!」

「なんだ~雪崩れかぁ!!………雪崩れだとッ!!!??」

 

緊張のない船長が気づいたときにはすでに山の上から雪崩れがルフィ達へ向かって降りてきていた。



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"OVER"

ナミ「な、何の音?」

ドルトン「ッッ!!!??まさかッ!!!」

 

突然地響きのような音が聞こえたと思ったらドルトンが慌てて外に出ていった。

ナミ達も続けて外に出てみると山の方から何が迫ってくるのが見える。

 

ドルトン「………げろ……」

ビビ「ドルトンさん?」

 

「逃げるんだッ!!!()()()()()()()()()!()!()!()!()!()

 

 

…………………………

 

 

「ふざけるなッ!!あのウサギ共が!!!」

「文句言わずに走ってッ!!!」

「ぎゃあああああぁぁぁッ!!!!!」

「久しぶりに会ったばかりなのに、こんなのあんまりだッ!!!!!」

「もっと速く走れサンジッ!!!」

 

「ウルセェッ!!!!!背負われてる分際がッ!!!!!」

 

必死になってルフィ達は山を下っていた。

いや、正確にはルフィはサンジに背負われていた。

ギア・セカンドならすぐに逃げれるだろうがまだ制御出来ていない上に焦っている中で雪で足がおぼつかない。すぐに転倒するルフィを見かねてサンジが背負っているのだ。

 

しかし雪崩れに人間が勝てるわけがなくどんどん詰められている。

 

「どうするんだよッ!!!」

「た、高い所に避難をだなッ!!!」

「こんな所に高い場所なんて!!!」

「ゴラッ!!!ウソップッ!!!一人で逃げようとするなッ!!!」

 

一人だけハンマーに乗り逃げようとするウソップをサンジが糾弾しギンがそれを止めた。涙目になりながら

 

「死にたくねんだよッ!!!」

「俺達も同じだってえぇのッ!!」

「サンジッ!!!!!俺を()()()()()()!()!()

 

ルフィと突然の言葉に戸惑うサンジ。

 

「こんな時に何を…」

()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()

 

「なっ!!!??んなこと出来るわけッ!!!!!」

 

「やるッ!!!!!」

 

ルフィのその一言はそこにいたもの達の心に響いた。

根拠なんてない。言ってしまえばただの強気な言葉。狂言。

しかしそれを誰も否定は、しなかった。

 

「ったく、やってやろうじゃねえか」

「さ、サンジさんッ!!」

 

「ギン。お前は下がってろ」

「ゾロさん。あんたまでッ!!!」

 

「大丈夫ですよ。あれぐらい」

「あぁーもうーッ!!やってやるよッッ!!!!」

 

「お二人まで……」

 

動けないルフィを足の上にのせて前方へと投げ飛ばしたサンジ。

すぐさまルフィを追いかけるようにスピードを上げて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

現状、何も出来ないギンだが、それでも下唇を噛んでその情けない気持ちや、己の無力さや、悔しさを必死に抑えてこれから起きることをキチンと目に焼き付けようと瞳孔を開く。

 

「ウソップ。抜かるなよな」

「ウルセェッ!!こっちはビビりながらなんだよッ!!!!!」

 

サンジはその場で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ウソップははぁーと息を吐きバックから()()()"(つい)"()()()()()()

 

「二人の()()()()って久しぶりよね」

「…こんなところで使うなんてな……」

 

お互いの抜刀の邪魔にならないようにくいなが左側でゾロが右側に並び立ち、体勢を低く、目の前に迫る雪崩れに全神経を向ける。

 

「ニッシシシシシッ!!!

このメンツなら大丈夫だなッ!!!!」

 

そういってルフィはギア・セカンドのまま()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ギンは思った。

……これ、ヤバイんじゃないか。と。

さっきよりも遠い場所に移動した所で雪崩れがルフィ達を飲み込もうとしたその瞬間。

 

「香り高く仕上げるには火酒に限る…悪魔風脚(ディアブルジャンブ)……ッ!!」

「特とご覧あれ!!神様が放つはこの(つい)ッ!!!」

「「天に浮かび橋に立つ先は国生(こくしょう)ッ!!

一刀流、居合い………ッ!!!!!」」

「ゴムゴム…ゴムゴムの、JET……O()V()E()R()……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火酒焼焦(フランベ)ストライクッッ!!!!!」

「ミョルニルハンマーッッ!!!!!」

伊邪那岐(イザナギ)ッッ!!!!!」「伊邪那美(イザナミ)ッッ!!!!!」

「レッド・キャノンッ!!!!!」

 

 

サンジの左足から放たれたのは料理する際に用いられる調理法"フランベ"のように綺麗な炎。

しかし料理の炎のような調理する炎なんてものではない。

その炎は"悪魔"でさえも焼き殺すと思わせる程の超高熱を持っている。そのためたった一発で脚にはとてつもない負担と熱が籠るためにしばらく安静が必要となる。幸いここには大量の雪がある。片足をその雪に突っ込んで冷やすことにした。

 

 

ウソップのバックから出てきた鎚は雷を纏い、振るわれた鎚からは神の怒りのような雷が落ちた。

とはいえ、ウソップの攻撃はあくまでマジック。種も仕掛けもある。………あるのだが、ここでウソップはこう思っている。

 

(……あれ??なんで"雷"が出てきたんだ……??)

 

そう、このミョルニルハンマーはあくまでもハンマーなのだ。

なのに何故かそのハンマーから雷が出てきた。

周りの仲間は「流石ウソップだなー」と言ってくれるために何で出てきたのか知らないなんて言えない。この出来事はウソップの心の中に閉まった。

 

 

ゾロとくいなは共に居合い切りを行った。

但しそれは全く異なる居合い。"静と動"。

激しくも力強い居合いの"動"はゾロ。静かで繊細な居合いの"静"はくいな。

異なった居合いだがそれは重なった瞬間に()()()()()()()()()()()。とんでもない一撃。

しかし未だに使いこなせていないために二人とも刀を握った手は麻痺して痙攣を起こしていた。

 

 

そしてルフィは普段では出来ない"ガトリング"の技法をギア2により瞬間的に爆発的に上昇させ物凄いスピードとパワーが出る。

 

以前からハジメがルフィにギア2を使い続けさせ()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

これによりルフィの技はさらに"進化した"。

ギア・セカンドを越えたまさに"OVERセカンド"

さらに摩擦熱が今までよりも高熱を帯びてそれを全て一点に集約させ、これまでにない超高熱の"砲弾"を放った。

サンジの火酒焼焦(フランベ)ストライクとは違い一点集中しているためにか、サンジ以上にルフィの両腕は大火傷するんじゃないかと思うぐらいに熱を持ってしまい、すぐにその腕を積もった雪の中に突っ込んだ。物凄い勢いで雪が溶けていくのでブルドーザーのようにドンドン雪のなかに入っていくルフィ。

 

 

そんな中みんなの一撃は迫り来る雪崩れを押し返すどころか一瞬にして消滅させ、そこから直角にそびえ立つ山の"壁"までまっすぐに焼け野はらのように何もかも消し去った。

 

その山の"壁"も抉れておりクレーターのようになっている。

そんな景色を目の当たりしたギンはもう開いた口が塞ぐことが出来ずにいた。するとやっと雪のなかから出てきたルフィは消し飛んだ地形を見ながらその両腕に息を吹きかけながら

 

「ふぅ~ふぅ~ふぅ~………よしッ!!!!もう熱くねえ!!

しっかし、キレイに吹き飛んだなー!!」

「……ねぇ、あれ……やりすぎ、だよね……??」

「いいんじゃねえのか?これで雪に足を取られずにすむ」

「あのクソウサギ共逃げやがって…やっぱ焼いとけば良かったぜ」

「だから怖ぇこと言うなよな……」

 

それぞれが感想を言っているが遠くから見ていたギンは

 

(…いや、……地形を変えるとか…バケモノかよッ!!!)

 

それなりに強くなった気でいたギンだったが全く足りなかった。

一人一人の技でも()()()()()()()()()()()()()はあったように見えた。それが五人分、地形も変わる。

 

自分が未だにその域に達していないとギンは悔しさで拳を強く握りしめ

 

(……絶対に、追い付いてやるッ!!!!)

 

また一人、"バケモノ"へと進化しようとしているものが増えたのであった。

 

…………………………

 

「な、何だったんだ…今のは……」

 

雪崩れ来ると思い避難を指示していた矢先だった。

雪崩れとは違う爆音が鳴り響いたと思いきや、さっきまでこの村に向かっていた雪崩れが消えていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

村のみんなも、ドルトンも、ナミ達も、ビビも驚いている。

しかしそこで平然と、いや、キレかかっている人物が一人。

 

「……あの、バカ共……ッ!!」

「ヒィッ!!」

 

避難誘導していた村人の一人が驚き怖がってハジメから離れていく。その様子をみたベルメールを落ち着かせようと近寄るのだが

 

「もう少し、自分の力を把握できないのかな……ッ!!」

「ハジメ……落ち着いてね……」

 

「ベルメールさん……大丈夫です。落ち着いてますよ……」

「ほ、本当に…??」

 

「はい。いまはすぐにリフトに乗って山頂に向かいたいです。

そこで()()()()()()()()()()()()()()()()()としか考えてませんから♪」

 

「落ち着いて!お願いだから落ち着いて!!ねぇ!!?」

 

ここで止めないと本当にルフィ達が死んでしまうんじゃないかと思い必死に落ち着かせようとするベルメール。

そこにナミもノジコも加勢に入るが、全く目が戻らない。

完全に殺るつもりの目である。

そんなハジメの元に"ソリ"を引っ張ってきたものが

 

「おーい。ハジメー!!!迎えにき…たぞ……ッ!!?!?」

()()()()()……久しぶりだ……ねッ!!」

 

「怖えぇよッ!!!!!なにがあったら人殺しみたいな目になるんだよッ!!!!!」

 

「それはもちろん……あのボケどもを殺すためだッ!!!!!」

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

「ハジメッ!!!ちょっと!!本当に落ち着いてッ!!!!!」

「というか、なに、"この可愛い生き物"!!もらっていいの??」

「ナミッ!!いまは自重しないさいッッ!!!!」

 

(……本当に、この人達に国を任せて、大丈夫かしら……)

 

ハジメが落ち着くまでしばらくかかったという。

そして"この謎の可愛い生き物"の正体はいかに?



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Dr.くれは

「おいッ!!コラッ!!ハジメッ!!!

これどうにかしろよッ!!!!!」

 

呼ばれたハジメは一度、かけられた声の方を向き

 

「いや、ムリ」

「諦めるなッ!!!」

 

現在リフトに乗り山頂を目指しているハジメ一行。

しかしその輪の中でも久しぶりに会ったというのに、その相手(ハジメ)から無視されるチョッパー。

 

トナカイでありながら()()()()()()()()者、名をトニー・トニー・チョッパーという。

 

そのチョッパーはいまナミの豊満な胸にギュッと押し付けられている。というかホールド、背骨が折れるんじゃないかと思うぐらいに抱き締められている。

 

「可愛い~~ッ!!!なにこのマスコットッ!!!」

「誰がマスコットだあッ!!!俺はトナカイだッ!!!」

 

「もちろん分かってるわよッ!!!!!

でもこんなに愛くるしいのに喋るだけじゃなく医者なんて……もううううううううううぅぅぅぅぅぅ~~ッ!!!!!」

 

「ぎゃああああぁぁッ!!!折れるッッ!!!!!」

 

可愛さの限界値をとっくに振りきっているナミにとってチョッパーは完全に原形を留めないぬいぐるみのように扱われている

 

するとそんなチョッパーの肩にトントンと叩いてノジコとベルメールは優しい眼差しで

 

「この(ナミ)はね、こうなったらもうムリなのよ」

「お医者なんでしょう?私から頼むわ。治してあげて」

 

「ふざけんなッ!!!!!こんな重症患者は診れねぇよッッ!!!??」

 

「モコモコ~!愛らしい蹄~ふふふふ……」

「ぎゃああああぁぁッ!!!目がッ!!目が怖えぇぇぇよッ!!!!!」

 

こんな風に騒ぎながらリフトは山の頂上へ。

するのそのリフトの終点には酒ビンを持ったとてもお年寄りには見えない女性が仁王立ちしていた。

 

「ったく、来るたびに問題を持ってきて…疫病神かい?」

 

その女性を見たチョッパーは強引にナミの拘束を抜け出して女性の後ろに隠れた。なのにどういうわけか()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ここは原作通りだなー懐かしいなーと思っていると

 

「なら、Dr.くれはに治してもらわないとですね」

「ヒーッヒッヒッヒッヒッ!!

生意気なこというじゃないよ、若造が」

 

そういって酒ビンをラッパ飲みするD()r().()()()()()

サングラスを額の方へ押し上げてハジメ以外の"身体"を確認する。

 

「そこの二人。なにかしらの病気かい?

ハジメの能力で止めてるみたいだけどかなり重症みたいだね」

 

「わ、分かるんですか?」

 

「こっちは医者だよ。そしてそこの小娘、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……ど、Dr.…くれは……ッッ!!!!」

 

感極まったカヤはDr.くれはに抱きつき涙を流しながら

 

「貴女の…貴女の、お陰で……私は………」

「薬の調合は自分でやってんだろう。なら自分の腕さ。

私は知識しか話してないよ」

 

「それでも…それでも……私は、救われました……ッ!!!!!」

「勝手に助かっただけだろうに……ったく……」

 

文句をいうがつけ離すことはしないDr.くれは。

カヤをそのままにし、次に見たのは

 

「で、あんたは……ずいぶん特殊だね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えぇ。そのつもりはないからいいわ」

 

レイジュの身体のことも診ただけで分かったDr.くれは。

しかしそんなDr.くれはでも、すでに安定、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかしレイジュにとってはこれは普通。

そしてこの先、万が一、弟を助けるために必要なもの。

簡単に手放すわけがない。

 

そして最後にずっとチョッパーを抱き締めてきたナミを診て

 

「……………。さぁ、城に入りなガキ共」

「…あれ?私にはないんですか?」

 

「健康体が何いってるんだい。

言っておくけどね、その()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。治したいなら神様でも祈るんだね」

 

「???よく、分からないけど……その(チョッパー)を下さいッ!!!!!」

 

「………そんなに目がイッている小娘にやれるわけがないだろうが……なんて患者を連れきてんだ小僧……」

 

「え。でも、ナミを治せるならロビンも治せますよね?」

 

「あんなキチガイ!私でも無理だよッッ!!!!!」

 

…………………………

 

クシュンッ!!

………お兄ちゃんが……"愛してる"って言ったわ!」

 

(……これ、ツッコミ入れるの?私が!!?)

 

…………………………

 

「はああああああぁぁぁッ!!!

この山を登ってくる!!!??道具も無しでか!!!」

 

「まぁ、ウソップもいるし何かしらは持ってるかな。

でもルフィはダメだ。()()()()()()()()()()()()()

 

「バカかお前はッ!!!!!

そんなことしたら!!というかもう凍傷になってるかも知れないんだぞッ!!!!!」

 

城の暖かい暖炉がある部屋。

ここにはハジメとナミ、レイジュとチョッパーがいた。

ノジコとベルメールはDr.くれはが隣の部屋で診察をしている。

一時停止を解いた途端に二人とも倒れたがすぐにベッドに乗せて"ケスチヤ"に対しての治療が始まった。

 

カヤは少しでもDr.くれはの医療技術を盗もうと助手としてここにはいない。なのでチョッパーにはハジメ達の相手にとDr.くれはが言い渡したのだった。

 

で、ここまでの出来事を話したのだがこうしてチョッパーが怒っているのだ。

 

「"知らねぇよ"。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………」

 

「頼むから!!その突然ブラックにならないでくれよッ!!!ビックリするんだよッ!!!!!」

 

未だにルフィ達を許してないハジメの逆鱗に触れ怖がるチョッパー。そんなチョッパーに「さぁ、この胸においで!!」と両手を広げているナミを無視してチョッパーは

 

「………じゃ、そいつらがハジメが言っていた"海賊"なのか?」

「あぁ。きっとチョッパーも気に入る"海賊"だ」

 

「……そうか……」と少しだけ興味を持ったようにいうチョッパーにレイジュから話しかけてきた。

 

「気になるの"海賊"に??」

「海賊というか"この島の向こう"が気になるな。

その手段がよく"海賊"ってハジメから聞いていただけだ」

 

「そう」

「特に"海軍"はダメだって言っていたな。

全く頼りない上司に、好き勝手に暴れる上司に、のらりくらりとかわす上司。極めつけが"神"のように扱ってくる部下。全く自由がないって。俺もそこには入りたくねぇ」

 

「………そう」

 

こんなに間接的に愚痴を聞かされると思っていなかったレイジュはどうしたらいいのかと珍しく困惑していた。

すると未だに両手を広げていたナミが真面目な顔で

 

「なら私達の海賊団に入ればいいじゃない!!」

「なっ!!!?なにいってるんだお前ッ!!!!!」

 

「そしたら私が毎日毎日…あんなことやそんなことを…ふふふ…………」

 

「マジで何いってるんだお前ッッ!!!??」

 

一気に残念になるナミに怒鳴るチョッパー。

すると隣に繋がる扉が開き

 

「五月蝿いね。隣に患者がいるんだ。

騒ぎたいなら外へ出な」

 

「ということは二人とも無事なんですね」

「当たり前だよ。私を誰だと思ってるんだい?」

 

「ピチピチの139歳のDr.くれはです」

「ヒーッヒッヒッヒッヒッ!!分かってるじゃないかい」

 

そういってテーブルに置いた酒ビンを手にしてまたラッパ飲み。

その後ろからカヤも現れてナミに近づいて

 

「もう大丈夫ですよ。二人ともすぐに完治します」

「はぁ~~!良かった~~!!!」

 

力が抜けるナミを支えるカヤ。

あんな素振りをしててもやっぱり家族を心配していた。

それはそうだろう。それでも気丈に振る舞っていたのは

 

「ありがとうお兄さん。本当にありがとうッ!!」

「僕じゃなくてDr.くれはだよ」

 

「ありがとうございます!」

「構いはしないさ。そこの小僧からたんまりと治療代と診察代を取るからね」

 

ヒーッヒッヒッヒッヒッと笑うDr.くれは。

元々カヤの診察から始まり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。この島の住民なら破綻どころかとんでもない借金を負うことになるだろう。

 

「ちゃんと払いますよ。

どうせ使い道のないお金ですからね」

 

「いや、それを海賊の資金には当てないの?」

「当てませんよ。()()()()()()()()()()()()()

「………そう………」

 

どうもここにきてツッコミ側に回っている気がしていると感じたレイジュはしばらく聞き手に回ろうと決意した。

酒ビンを持ったDr.くれはは椅子にドカッと座りサングラスをかけてこう言葉を放った。

 

「で。()()()()()()()()()()()()()()()()()??」

「なわけあると思いますか?それでも押さえつけてますよ」

 

「んな甘いことせずに()()()()()()()()()()()()()()()。それだけのことをしたんだ」

 

「お医者さんなのにずいぶん物騒なことをいいますね」

「こいつは医者の意見じゃないよ。"私"という個人の意見だ」

 

睨みあう両者に戸惑う周りの者達。

何を言っているか分からないが気まずそうな表情をするチョッパーは何かを知っているようだ。

 

するとハジメが扉の方へ移動し

 

「ルフィ達。もう着くと思うので迎えに行ってきます。

あと、ふざけたことに対して鉄槌をお見舞いしてきます」

 

「やめろおおおおぉぉッ!!重症だったらどうするんだッ!!!!!」

 

チョッパーの制止も聞かずに突き進むハジメ。

慌ててチョッパーも追いかけてしまいこの部屋には気まずさしか残らなかった。

 

そんな空気を読まずにいられるとしたら

 

「あの"カバカ"とは誰のことかしら?」

「ちょっとレイジュッ!!?」

 

「知ってどうするだい小娘??」

「何もしないわ。知りたいだけだから」

 

「………チョッパーが戻ってくるまでの暇潰しだよ。たまには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

と、釘を指すDr.くれは。

しかしそれはもう「勝手に話すから勝手に聞け」と言っているようなもの。

 

だからレイジュ達は静かにそれが始まるのを待った。

Dr.くれはは「………はぁ……」とため息をつきこう話を始めた。

 

()()()()()()()()

そういって私と()()()()()()()()の元に小僧が現れたのは"大将ハジメ"が()()()と知って半年ぐらいだったよ………」



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とある医者の偉業①

約10年前。

人気のない森の中、ある二人が恒例のように言い合っていた。

 

「このヤブ医者がッ!!また患者を重症化させたそうじゃないかッ!!!」

 

「うるせぇ!!向こうの同意をもらってやったんだ!

それに無償でやってんだ!!てめえの悪徳医者とは違うんだよッ!!」

 

「金を貰って何が悪いッ!!!??

人の命はその"金"以下じゃないだろうが!!!」

 

「金の払えないやつは診ないって言ってるもんだぞッ!!!

医者が患者を診なくてどうするッ!!!」

 

「あんたが"医者"を語るんじゃないよッ!!!!!」

 

いがみ合う二人。

数年前にこのドラム王国に現れたDr.ヒルルク。

この男はどんな病の治療も無償で請け負う医者として色んな所を巡っていた。

しかし、実態は無免許医な上に相当のヤブ医者であり、押し売り同然に押しかけて重病人の容態を悪化させたり、止めようとする母親を麻酔銃で撃ち抜いて昏倒させたりと素行が非常に悪いため、評判はすこぶる悪い。

 

いわば"ヤブ医者"

高額な治療代を奪い取るDr.くれはとはウマが合わない。

今日も今日でこうしていがみ合っている。

 

「ったく…医師免許も持ってないヤブ医者でも"アイツら"よりはマシだってのが腹が立つよ……」

 

「"イッシー20"かぁ……一体国王は何を考えてるんだ?」

 

「あんなバカのことなんて知らないよッ!!!」

 

思わず酒ビンを木に投げつけた。

その国は医療が発達した国であり、そしてその医療を、医者を"権力"で牛耳っている国王がいる。

そのため村の人達には医者がくることがなく、いまこの国の人達が病気で死なないのは大金を巻き上げるDr.くれはやヤブ医者のDr.ヒルルクによるもの。

 

「この国はおしまいだよ。あのバカが国王をやめない限りは"死に続けるのさ"」

 

「んなことはねぇ!!俺が蘇らせてみせるッ!!!」

 

「バカバカと思っていたが、本当のバカなのかいッ!!!!!

なんにも策も力もないあんたがどうするってんだい!!!??」

 

「俺に起きた"奇跡"をこの国で起こす!」

 

その言葉に呆れ言葉も出ないDr.くれは。

昔、Dr.ヒルルクから聞いたことのある"奇跡"

絶対に治らない病を"ある出来事"が奇跡を起こし病気を治したという。

 

それをこの男はこの国でやろうとしている。

しかしそんな"奇跡"で…

 

「そんな夢みたいなことを言ってるんじゃないよ。

"奇跡"??そんなものがないからこうして"医者"がいるんだよッ!!!」

 

「その医者でも治せなかった病気を治したんだッ!!!

きっとこの国にも奇跡を起こせるッ!!!!!」

 

「いい加減にしなッ!!!!!

"桜"を見て感動したら病気が治った?バカいうんじゃないよッ!!!!!

それは治ったんじゃない!!身体の免疫力が向上し死期を遅めたに過ぎないのさ。現にあんたのその身体にはッ!!!」

 

「それでも俺はまだ生きてるッ!!!!!」

 

その言葉に目を見開いたあと深くため息をつくDr.くれは。

何度、この不毛な言い合いをしたことか…その度にこの男は何の根拠もないことをここまで断言する。

その度に思い知らされる。

確かに人の思いは時に医療を越えたことを起こすことがある。

しかしそれを鵜呑みにすればこの手にある技術を、積み重ねてきた経験を否定することになる。

 

その奇跡は最後の手段。色んなことを積み重ねてやっと起きるもの。

それをこの男は分かっているのか?いや、本能的なのだろう。

だからこうして奇跡を信じているのだ。

 

(ったく…医者だと名乗るなら、そんな曖昧なものにすがるんじゃないよ……)

 

それでも完全に否定も出来ない。

現にDr.くれはも何度も奇跡というものを見てきた。

だから、それにすがりたいという気持ちも分かる。

しかしその前に医者であるのだ。その手で出来ることをやり尽くさない限りそんな奇跡は………

 

「喧嘩している中すみません」

「ッ!!!??な、なんだお前はッ!!!」

 

突然二人の間に現れた男にDr.ヒルルクは後ろに後退し尻餅をつきながら銃をその男に向ける。しかし銃を向けられているのにその男は全く驚くこともなくDr.くれはに向けて

 

「お久しぶりですDr.くれは」

「顔を出さないと思ったら突然だねハジメ。で、その腕にあるのはプレゼントかい?」

 

Dr.くれはも一切驚くこともなく当たり前のように会話をする。

そしてその男、ハジメの腕の中に抱えられていたのは小さな動物。全身毛むくじゃらで、頭から角が生え、鼻はなんとも珍しい"青色"をしていた()()()()だった。

 

「プレゼント、ですか。そうですね。()()()()()()

「ほう。こっちに寄越しな。治療してやるよ」

 

「よろしくお願いします。治療代は」

「いらないよ。プレゼントなんだろう」

 

そう言ってくれたDr.くれはにトナカイを預けるハジメ。

するとDr.くれははDr.ヒルルクに向かって鋭い視線を送りながら

 

「何をボサッとしてるんだいッ!!!この子を死なせる気かいッ!!!??」

 

「なっ!!お前が治療するじゃ…」

「あんたがするんだよ!ついでにこれからの世話もねッ!!」

 

「ふ、ふざけるなッ!!!なんで俺がッ!!!??」

「さらにハジメの世話もやるんだよッ!!!」

 

「ふざけんなッ!!!!!」

「僕は動物扱いですか?」

 

…………………………

 

文句を言いながらもDr.ヒルルクはDr.くれはの家にある医療器具を使ってトナカイを治療することに。治療している最中、隣から家主であるDr.くれはが小言のように「なんだいそのメスの使い方はッ!!!」とか「集中しなッ!!!」など言ってくるのを我慢しながら。

そしてトナカイの腹部に刺さった枝の除去と折れた腕を固定、打撲などを治療し終わったときにはすでに翌日の朝を迎えていた。

 

「お、終わった……」

「ったく……どれだけ時間をかけるんだい。

こんなんじゃ重症患者は死んじまうよ」

 

「隣からうるせぇだよババァッ!!!!!」

「私はまだまだ若いんだよジジィがッ!!!!!」

 

Dr.くれはにメスを投げられ間一髪避けたDr.ヒルルク。

これをきっかけにまた言い合いが始まると思ったがここにもう一人いたハジメにより続かなかった。

 

「Dr.くれは。しばらくここを拠点にしてもいいですか?」

「拠点?あんた海軍なんだろう。それなら支部を……」

 

「いまの僕は()()()()()()()()()()()

そして僕はこの先のためにやらないといけないことがあるんです。そのためにはここに置いてもらわないといけません」

 

何があったのかハッキリ言わないハジメだが、それでもDr.くれはにはどれだけ重要なことを言っているのかなんとなく理解した。あの目は……覚悟を決めた目だと。

 

「………さっきも言ったけどあんたの世話はそっちだよ」

「なるほど。よろしくお願いします」

 

「勝手に話を進めるなッ!!!なんで俺がそんなことをッ!!!!!」

「"奇跡"。見たくありませんか?」

 

その言葉に反応するDr.ヒルルク。

どうやらハジメはDr.ヒルルクをうまく丸め込むための秘訣を知っているようだ。とその様子を観覧する側に回ったDr.くれはは酒ビンを手にしてソファに座った。

 

「……さっきの話を聞いていたのか?」

「警戒したくなるのは分かります。でも僕の力があれば…」

 

「断るッ!!」

「……どうしてですか?」

 

「知ってるんだぜ俺は。なんの力か知らないけど持っているのは"悪魔の実"の力なんだろう?」

 

「はい。それならDr.ヒルルクの…」

「ふざけんなッ!!!こっちはこれでも医者だッ!!!

そんな"まやかし"に頼るわけがないだろうがッ!!!!!」

 

さっきまで散々"医者"について話していたDr.ヒルルクも"医療"という力以外を認めていない。そしてその延長線にある奇跡だけを信じている。

 

「Dr.くれはと同じなんですね」

「誰が一緒だぁッ!!!」

「ふざけんじゃないよッ!!!」

 

「じゃこっちはとりあえず後回しにして、」

「後回しするな」

 

「このトナカイと一緒にお世話になります」

「それが一番ふざけんなッ!!!!!」

 

…………………………

 

こうして奇妙な()()()()()()()()()()

助けられたトナカイ、ハジメと同じ"悪魔の実""ヒトヒトの実"を食べたトナカイであり、世にも珍しい喋るトナカイであった。

 

目覚めたトナカイはこれまでの経緯を話してくれた。

生まれた時からこの青色の鼻で仲間外れになり、偶然食べた悪魔の実の力で人の言葉を喋れるようになった。

 

しかしこれが更なる不幸を呼んだ。

トナカイの中では更に気味の悪いトナカイとなり群れから追放。

ならと人として生きていこうとするが()()()()()()()()()()()()()ために化け物扱いされた。

 

こうしてこのトナカイはトナカイの群れからも人からも嫌われてしまった。

 

そして目を覚ましたトナカイの目の前にその人間がいて、また攻撃されると思い治療をしていた男に攻撃をした。

それでも何度も近寄ろうとする男に何度も何度も攻撃して、洞窟から飛び出して逃げ出そうとしたのだが………

 

『俺は……医者だぁッッ!!!!!』

 

身に付けていたものを全て脱ぎ捨てて極寒の冬の中を両手を広げてトナカイに敵意がないことをアピールした。

その行動にトナカイは驚いた。自分を見た人間は誰も恐がり攻撃してきたのだ。なのにこの男は………

 

そんなことをしていると男は寒さに負けて倒れてしまった。

どうしようかと慌てていると

 

「不器用でしょう。もっとスマートに出来るはずなんですけどね」

「な、なんだお前ッ!!!??」

 

「これから貴方とあそこに倒れているDr.ヒルルクと一緒に住むハジメと言います」

 

その時、不思議とこの人間は他の人間とは違うと思った。

だからそのあと一緒に倒れた人間を抱えて洞窟の中にある住まいに戻ったのだった。

 

翌日、目を覚ましたDr.ヒルルクはトナカイを見て

 

「なんだ?喋れるのか?」

「凄いですよねー」

「……怖くねぇのか?」

 

「なに言ってるんだお前は?

俺のほうがベラベラに喋れるぞッ!!」

 

「なにと張り合ってるんですか?」

 

その一言でトナカイは、この二人ならと心を開いていった。

そしてトナカイにはDr.ヒルルクから"トニー・トニー・チョッパー"と名前をもらったのだった。



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とある医者の偉業②

「いやーハジメ君が来てくれてから本当に助かるよー」

「だな。それにこの子も凄く優秀だし」

「……なんで、あんた医者やってるんだ?」

 

半年経ったぐらいだろう。

Dr.ヒルルクの元でお世話になるので少しでもお役にと思いお手伝いに付いていったのだが……この男、本編で知っている以上に酷い。

 

ただの腹痛なのに薬を飲ませて何故か呼吸困難になり、捻挫だけなのに骨折させるし、死にかけの患者の心臓を止めるなんてこともしやがった。まぁ、なんとか助けましたけど。

 

と、なんの研究のためにこうして治療しているのか?ということは知っているけど、その為に()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「こちらこそこれまで本当にすみません」

「ほ、褒めたって嬉しくねぇーぞコノヤローッ!!!」

 

ハジメは丁寧にお辞儀をして、チョッパーは言葉としてはキツいが身体や顔はもう嬉しさを表現していた。

こうして町で楽しく交流していたのだが、その隣で凹んでいるのが

 

「……お前ら……医者かぁッ!!!??」

「医者である貴方がなに言ってるの?」

 

驚愕した表情でこちらに対して怒っているDr.ヒルルク。

そりゃこの半年間、Dr.ヒルルクの暴走を僕が止めて、その間にDr.くれはにチョッパーの医者としての最低限の医療技術を教えてもらっていた。

 

もちろんDr.くれはは拒否をした。メスも投げてきた。

でもそんなもの僕には効かないし、これまで貯めていた貯金()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

口約束だからなー。

これ、すぐに反故にされるかと思ったら今のところまだ続いている。もちろん僕やチョッパーが無理な患者はDr.くれはに回す。そして高額な治療代の大半を僕が支払う。

それだから、なのか?昔に比べてDr.くれはの僕やチョッパーに対しての風当たりが柔らかくなった気がする。

 

たまにDr.くれはからの指導を受けているチョッパーの所に見に行ったりすると、D()r().()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()あのDr.くれはから!!!

 

お金の切れ目が縁の切れ目。

そういう言葉があるけどこうしてお金で縁が深まることもあるんだなーと思った。

 

「あのババァめ…余計なことしやがって……」

「チョッパーのお陰で日用品とか研究資金とか稼いでいる件については?」

 

「チョッパーサマサマダナァァァァッ!!!!!」

「目がイッたままコッチ見るなッッッ!!!!!」

 

目から血が吹き出るんじゃないかと思うぐらい目を見開いて嫉妬を我慢、我慢しながらお礼をいうDr.ヒルルクはもう怖すぎる。チョッパーも驚いてすぐに僕の後ろに隠れた。

 

「そう思うなら一緒に学んだらどうですか?」

「誰があんなババァに教わるかッ!!!」

 

「どうしてそう毛嫌いしますかね…まぁ、向こうもですけど…」

「ウマが合わないんだよ。昔からな。

だからハジメもいちいち引き合わせようとしなくても……」

 

「なら、今日ご飯にお呼ばれしましたけどいかないんですね」

「行くに決まってるだろう!」

 

……………………………

 

「プライドってもんがないのかアンタは……」

「それで腹が一杯になるならなッ!!」

 

これもいつもの光景。

Dr.くれはから夕飯のお呼ばれして三回ぐらいしてからDr.ヒルルクが「家主の俺も食わせろッ!!」とよく分からないことを言ってDr.くれはの家に襲撃をかましてきたことがあった。もちろんDr.くれはは撃退するけどこれこそゴキブリ並みの生命力というのか、何度もやられても夕飯を食べようとするDr.ヒルルクに根負けして"ネコまんま"を外に放り投げたのが始まりだった。

 

それから徐々に料理がマトモになり今では家で食べるようになった。それでもまだ同じテーブルではなく簡易テーブルで食べている。

 

ちなみに今日はクリームシチューと柔らかいパンである。

これをDr.くれはが作っているんだからなーなんか感動するよなー

 

「チョッパーが多少なりとも()()()()()()()()()()()()からいいものの…基本的にはアンタの仕事だろうが」

 

「毎回毎回うるせぇな。こっちはやることがあるんだよ」

 

「あんな訳の分からない研究にこの子らを巻き込むんじゃないよッ!!!!!」

 

「だったらてめえが引き取れッ!!!!!」

 

そしてこれもお決まり。

毎回毎回、こうしてDr.ヒルルクの更正と僕とチョッパーの世話の押し付け合いをしているのだ。

まぁ、僕としてはチョッパーだけでもDr.ヒルルクにお願いしたいのだけど……

 

このままいくとそのうちDr.ヒルルクは死ぬ。

"奇跡の桜"を見て延命したとはいえ、もうすでにその時間もなくなっているのだ。

 

だからDr.ヒルルクは焦っていた。

この研究を早く完成させることを。そしてチョッパーや僕にこれ以上感情移入しないようにと。

 

残されたものの悲しみを知っているから、残された時間が短いから、こうして少しでも嫌われようとしているのだろう。……まぁ、素で怒っていることもあるんだろうけど。

 

ここで問題なのが、Dr.ヒルルクの死を速めたのがこの国の王であること。

そしてその王がそろそろ何かをやらかそうとしていること。

 

本編で違うのはすでにイッシー20が町の人達の治療をしていないこと。イッシー20が全員病気でどうにもならないと。これを知ったDr.ヒルルクがお城に向かうとそこには元気な姿を見せるイッシー20。これはDr.ヒルルクをおびき寄せるための策。目障りというだけでDr.ヒルルクを消そうとしていたのだ。しかしそれをすでに悟っていたDr.ヒルルクはそこで……

 

(…だけど、すでにDr.くれはとDr.ヒルルクがこの国の治療を一手に引き受けていた。今じゃチョッパーも戦略となっているし……さて、どう出るか……)

 

美味しいシチューを楽しみながら考えているとフッと全員がこちらを見ているのことに気づいた。

 

「えーと…なに?」

「なんかとんでもないことを考えてるね小僧」

「うん。悪い顔してた」

「こっち飛び火するなよなー」

 

まだ半年なのに、なにこの僕に対しての一体感は?

 

…………………………

 

「どうなってるんだッ!!あのカバはッ!!!??」

「どうやら最近新しく弟子を取ったようで…」

「それも"喋るトナカイ"だそうです」

 

「喋るトナカイだぁッ!!!??」

 

ドラム王国、山頂にある城の奥の王室。

そこには深々と王座に座るワポル。そして側近のチェスとクロマリーモが立っていた。

そしてその更に後ろには自分の感情を押さえているドルトルがいた。

 

「さらに優男のような者を見た情報も……」

「これではイッシー20を取り上げた意味がないだろうがッ!!」

「それも少しずつ対応しているとか…」

 

ハジメが考えていた通り思いどおりにいかない二人をどうにかするために嫌がらせでイッシー20を一切医療させないようにした。これでこの城に来るだろうと思ったのだが…Dr.くれはは元々この作戦に気づいているようで、Dr.ヒルルクは止まった医療に自分が対応しようと奮闘していた。悉く失敗しているが……

 

そしてここにきて弟子や客人が現れて完全に計画が失敗した。

しかし、それで終わるワポルではない。

 

「なら、簡単だな。()()()()()()()()()()()()()()()()()

「なるほどですね」

「流石ワポル様!」

 

その言葉に後ろにいたドルトンは信じられないと驚きの表情をしていた。ただ従わないだけで、気にくわないだけでここまでするかと……

 

(これが…一国の王が…やることか……ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(って、ほとんどやること変わらんのかい)

 

というのを()()()()()()()()()()()()()ハジメ。

一時停止を使い自身の存在を消して観察していたのだ。

そしてハジメが考えていた通りに目標を変えた。

それがチョッパーになるのも想像していた。

 

でもこのままだとDr.ヒルルクのような遠回りなことはせずに直接的にくる可能性がある。

 

ということは、

 

(あれ?もしかしてここでワポル、吹き飛ばしても良くねぇ?)

 

そう、よく考えたらルフィと会うまで待つ必要がない。

だってすでにチョッパーはDr.くれはの弟子。

Dr.ヒルルクもチョッパーのお陰で研究が進んでいる傾向にある。本人は否定しているようだけど。

 

つまり、チョッパーに必要な"医者"というカテゴリーは出来始めている。あとはルフィ達の船に乗せる、仲間になってもらうようにするのはこれからの時間でも十分ある。

 

なら、ここにいるワポル、要らなくない?

 

(……………よし、ぶっ飛ばそう!)

 

ワポルをルフィが吹き飛ばすところ。かなり見たかったけど。

自分で吹き飛ばすってのもオツかな。



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とある医者の偉業③

「これだけ買えば大丈夫かな?」

「十分だよ」

 

「そっか。ドクター、喜んでくれるかな?」

「喜ぶよ。チョッパーがしてくれるんだからね」

 

そっか。とニコニコと笑うチョッパーの腕の中には沢山の食材が入った紙袋を持っていた。

チョッパーからDr.ヒルルクに感謝したいと相談を受けたハジメは「なら、料理を作ってあげたら?」と提案した。

 

そして町に降りて買い出しに向かうと「これを持ってけー!」と色んな人から感謝を込めて色んなオマケを持ったりした。

これには二人とも驚いたが人々からの感謝の気持ちはこんなにも嬉しいものだと感じよりDr.ヒルルクにお礼をしたいと思った。

 

「ハジメにも感謝してるんだぞ。俺を助けてくれたんだからな」

「それはどうも。でもチョッパーの生き方を教えてくれた二人にお礼してあげな」

 

「うん。ドクトリーヌには別の日にするんだ。

流石にお酒は買えねから何にするかまだ決めてないけど」

 

「気持ちが込めてればなんだって嬉しいよ。

まぁ、Dr.くれはは表には出さないだろうけど」

 

こんなにもいい子に育ってくれたチョッパー。

昨日潜入して見てきたワポル……いや、"カバカ"と比べれば天と地以上に差があるなー

近々あのカバカを吹き飛ばそうと計画を練るハジメ。

 

しかし、それはあまりにも早く訪れることになる。

 

なにも変わらない日常。

だから普通にDr.ヒルルクと一緒住む洞窟に戻ってきた二人だったのだが、扉の向こうから話し声が聞こえてきた。チョッパーは思わず扉を開くのやめて誰だろうと聞き耳をたてた。

 

『……あんたもバカだね……』

「ドクトリーヌ?ここに来るなんて初めてだな……」

 

そこで中に入ればよかった。

しかし邪魔したらいけないと思ったチョッパーはその場にとどまった。いま思えばそれが悪かった。

 

『バカでも構わねぇ。"アイツ"を、いや、アイツらを頼む』

『そんなことをいうぐらいならなんであの時引き受けたんだい?』

 

『なにいってやがる。元々お前が押し付けたんだろうが。

それを返すだけだ。問題はないはずだ』

 

『言った覚えはないね。それに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

………タイミングが、悪かった。

まさかそんなことをここで話すなんて……

本編からすでにかけ離れたストーリー、何が起きても仕方ないとは思ったが…まさかこの展開が始まるなんて……

 

自分の死期が近づいてきたと悟ったDr.ヒルルクがDr.くれはにチョッパーを預けるシーン。そして最後にこの国を治療しようと単身城へ向かい、病にかかったイッシー20を治そうとした。

しかしそれは真っ赤なウソ。カバカの言うことを聞かないDr.ヒルルクを始末しようとした作戦だった。しかしDr.ヒルルクはそれを知った上で向かったのだ。()()()()()()()()

そしてカバカに殺されるまえに、毒キノコで死ぬまえに、人として死ぬまえに、いや"人は人に忘れられた時"とメッセージを伝えるために盃に入った液体を飲んだ。そしてDr.ヒルルクは消え強く強くチョッパー達の心に刻まれた。

 

だけどDr.ヒルルク。いまこの時、それはあまりにも……

 

『なら、どうしようってんだ?

アイツらに俺の死に様を見せろっていうのか?』

 

『医者だったら分かるだろう。

この世に生きるものは必ず"死"が訪れるんだ。

あの子だって例外じゃない。ただ寿命が長いってだけさ。

だから医者はその死が訪れるまで諦めないのさ。ましてや自分の病に対してね』

 

『別に諦めたわけじゃねえ。

だが、俺にはやらないといけないことがある。だから…』

 

『だから私に預けるってかい?ふざけるんじゃないよッ!!!

だからアンタはヤブ医者って』

 

「その通りだッ!!!」

 

その大きな声にチョッパーの肩がはねあがった。

ここで聞くのを止めればいいと思ったがすでに遅いと思ったハジメは全てを聞いてもらうために、そしてDr.ヒルルクの思いを知るために聞き耳をたてる。

 

『ヤブ医者でもこの国を治療したいと思ってる!

そのためにはアイツらを治療しないといけないんだ!』

 

『分かってるのかい?向こうに行ったら最後。…()()()()()

 

『死なねぇよ。………知ってるかババァ。

人が死ぬときはな……()()()()()()()()()()()()………』

 

まさか…そのセリフをここで聞くなんて……

本当に死ぬ気なんだ。と思ったその時ガサッと音がし思い耽っていたハジメが現実に引き戻された時にはチョッパーが何処かへ走り出した後だった。

 

「チョッパーッ!!!!!」

 

もしかして!!と思い声をあげるがすでにハジメの声は届かずチョッパーは森の奥へと消えた。すぐさま追いかけようとしたが先に扉が開き二人が姿を現した。

 

「……聞いてしまったか……」

「Dr.ヒルルク。どうしてあんなことを……」

 

「そんなこと言っている場合かい!?

追いかけないとあの子、死ぬよ!!」

 

そうだ。いまは追求している場合ではない。

チョッパーが行くところは分かっている。

 

…………………………

 

「まっはっはっはっ!!!

カバめッ。こっちが仕掛ける前に来るなんてな!!」

 

「……どうなってるんだ……」

 

チョッパーは知らなかった。

イッシー20が病気であることは知っていたがDr.くれはやDr.ヒルルクから「アイツらは大丈夫だ」と言われていたから。でもさっきの話しを聞いてきっとイッシー20が重たい病気なんだと思い、それを治療すればきっとDr.ヒルルクはあんなことは言わないと思って、チョッパーはイッシー20を治療するためにきたのだ。

しかし、イッシー20がそれが仮病だと聞かされていなかった。

Dr.ヒルルクはDr.くれはから聞いてはいたが、医者として半人前のチョッパーに"医者が仮病する"なんてことを"医者が病人を診ない"ことを知ってほしくなかったのだ。

 

だから隠していた。

全てが一人の国王の手により自らの国を"病気"にさせていることを。

 

「このトナカイが!!お前が来なければもっと早くあのカバがここに来たのにな。まぁそれでもトナカイがこうして釣れたんだ。良しとしてやる!!!」

 

「……なに、言ってるんだ……」

 

状況が読めないチョッパーにチェスとクロマリーモが嘲笑うように言い放ってきた。

 

「この国はワポル様のもの。

それに従わないヒルルクの存在は邪魔しかない」

 

「だから始末するためにここにおびき寄せようとしたわけだ。

結果、作戦を失敗に導いたお前が釣れたという訳だ」

 

そこで初めて知ったチョッパー。

何もかも、この国王一人のせいで国が悲鳴をあげていたことを。

そしてそんな卑劣なことをする奴らのためにドクターは……と、怒りがこみ上げてきたチョッパーは「……ウオオオオッ!!!」と叫びながらワポルへ向かって走り出す。

 

しかしそれを阻止したのは()()姿()()()()()()()()()

 

「は、離せッ!!!アイツらは!!アイツらはッ!!!!!」

「ダメだ!!このまま行かせると君は殺されてしまうッ!!」

 

「おい!!何をやっているドルトン!!!

せっかく向かってきた化け物を止めるなッ!!!」

 

「なんの罪もない子を殺めるなんて…間違っているッ!!!」

 

チョッパーを抑えながら国王であるワポルに指摘するドルトン。

その言葉に怒りが爆発したワポルは

 

「間違っているだと……誰に口を聞いているんだドルトンッ!!

俺様は国王だッ!!!俺様が絶対なんだッ!!!

チェス!!構わねぇ!!ドルトンごとやれッ!!!!!」

 

「はっ!!!」

 

そういってチェスは持っていた弓矢を引き放った。

チョッパーに覆い被さったドルトンの背中に矢が突き刺さる。

 

「ぐっ!!!」

「なにやってるんだお前らッ!!仲間だろうッ!!!

お前も離れろ!!!死んじまうよ!!!!」

 

しかしドルトンは一向に退かない。

そしてそんな動かないドルトンに容赦なく矢が突き刺さる。

そんな中ドルトンは弱っていくその声を振り絞って

 

「……す、まなかった……」

「……えっ……」

 

「私が…もっと……しっかりしていれば……こんなことには………

……もう、この国は…ダメだ……でも…君が…死ぬことは、ない………」

 

「だけどッ!!それでお前が死んだらッ!!!!!」

 

「これは……私の、贖罪だ……だから……」

 

と、何かを言い終える前にドルトンの身体はチョッパーを抑える力を無くして横へと倒れた。

 

「お、おい!!お前ッ!!!!!」

「まっはっはっはっ!!!!!カバめッ!!無駄死にしおって!!!」

 

「…お前ら……ッ!!!!!」

「あとは化け物、お前だけだ!!やれチェス!!!!」

 

放たれた矢はチョッパーにめがけ飛んでくる。

しかしチョッパーは目を開けたまま後ろにドルトンにこれ以上やらせないためにもその場から動かなかった。そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ったく、むちゃ…しやがって……」

 

チョッパーを守るかのように手を広げて背中で矢を受け止めたのは、

 

「ド、ドクターッッ!!!!!」

 

とあるヤブ医者であり、一人のトナカイをその身で守った。



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とある医者の偉業④

初めはただ死んでほしくなかった。それだけだった。

それだけなのに、それだけなのにどうして……

 

「ドクターッッ!!!!!」

「ったく…この、バカ息子…が……」

 

ゆっくり見えていた。

自分を庇ったドクターが倒れていく様を。

なにも出来なかったと後悔しながらその姿を見るしか出来なかった。

 

ボフッと雪に倒れこんだところで現実に引き戻されたチョッパーはすぐにDr.ヒルルクに駆け寄り声をかける

 

「ドクターッ!!ドクターッ!!!」

 

しかし返事はなく矢が刺さった背中から血が溢れだしていく。

すぐに治療をしないと!!と刺さった矢を抜こう手を伸ばすが

 

(ダ、ダメだッ!!!ここで抜いたら血が大量に抜けてしまう!!

それに出血多量どころかこんな場所じゃ低体温症だって……)

 

すぐに医者とやるべきことが分かったチョッパーは矢は抜かずに傷口を抑えることにした。それでも激痛には変わりなくDr.ヒルルクから悲鳴に似た呻き声が聞こえる。

 

「しっかりしてドクターッ!!!医者ッ!!医者を呼んでくれッ!!!」

 

一人では無理だと、誰かに手伝ってもらわないとダメだと悟ったチョッパーはワポル達の方を見て叫んだ。しかしそこに写ったのは目を反らすイッシー20とバカにした表情で笑うワポル。

 

「カッバじゃない!!??誰が始末しよとしたカバを助ける!!?」

「ドクターはお前らが病気だと信じてここに来たんだぞ!

それに目の前に患者がいるんだよッ!!医者なら救え…」

 

「ここは俺様の国だぁッ!!!俺様に逆らうやつなんて死んでしまえばいいんだッ!!!!!」

 

まっはっはっはっ!!!と叫ぶワポルに驚愕するチョッパー。

こんなにも酷い奴だと、少しでも良心があると思っていたのに…

さっきからワポルの後ろにいるイッシー20と思われる人達も全員が視線を背けている。

 

いまこの場にいる医者はチョッパーだけ。

 

「……お、お前ら……それでも"医者"なのかよ」

「ッッ!!!」

 

「ドクターはアンタらみたいな奴らでも救おうと、治療しようとしたんだぞッ!!!それなのにどうしてこんな奴の言うことを聞くんだッ!!!」

 

「こんな、奴だと……このカバめぇ!!!!」

 

チョッパーの言葉にイッシー20は戸惑いの表情を見せた。

しかしワポルがクロマリーモから拳銃を受け取り銃口をチョッパーに向けて引き金を引いた。

銃弾はチョッパーの頬を掠め傷口から血が流れる。

それでもチョッパーはその場から動かない。後ろにはDr.ヒルルクがいるのだから。

 

「町じゃみんな苦しんでるんだぞッ!!

それをドクターやドクトリーヌや俺が診察してるけど足りないんだッ!!!患者や苦しんでいる人がいるのに救おうとしないなんて()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!!」

 

チョッパーがイッシー20に語りかけている中でもワポルは容赦なく引き金を引いた。腕や足に掠ったりその何発かその身体を貫通している。

激痛が走る中でもしっかりと意識をもって、

 

「いまこの国は()()()()()()!!!

治療する方法も分かっているのにやらないのはッ!!」

 

「いい加減黙れッッ!!!」

 

そしてついに銃弾はチョッパーの胴体を捉えてしまった。

よろめくチョッパーの姿に喜んでいるワポル。しかしチョッパーはグッと足に力を入れて踏みとどまり

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!!」

 

周りの空気がビリリと振動したかのような感覚だった。

チョッパーの声はワポル達を威嚇し萎縮させ、イッシー20には怒りと渇を感じさせるものだった。

 

そして"とある二人"には称賛と感動を与えた。

 

「ったく、知らない内に"男"になって……

一人前の言葉をいうにはそれなりになってもらわないとね」

 

「素直に"良く言った"と言えばいいと思いますよ?

それに僕は感動しましたけどね。ヤブ医者よりヤブ医者って、なかなか的を得てると思えますよ」

 

振り返るとそこにはDr.くれはとハジメ。

そしてその側には重症だったドルトンが治療を終えて包帯で巻かれていた後だった。

 

「ドクトリーヌッ!!ハジメッ!!!」

 

涙目で二人の名前を叫ぶチョッパー。

手を振るハジメと、何も反応せずにDr.ヒルルクの元へ向かい

 

「チョッパーが表現している"ヤブ医者"が死にかけたら説得力がないからね。治療してやるよ」

 

「………ババァ……めぇ……」

 

「それだけ言えればまだ死なないよ。

ほら小僧。止血しな!」

 

「分かりました」

 

そういってDr.くれはが注意深くDr.ヒルルクの背中に刺さった矢を引き抜く。そこから夥しい血が流れる前にハジメがその傷口を触ると

 

「血が…止まったッ!!?」

「あれ?チョッパーは初めて見たんですね」

 

「いいからさっさと治療するよッ!!!

チョッパーッ!!!そいつらは小僧に任せてこっちを手伝いなッ!!!」

 

「は、はいッ!!!!!」

 

チョッパーが受けた弾丸は幸いにも致命傷を外れ、傷口を押えればDr.ヒルルクよりもまだ軽症だった。それでも足取りは重く、そしてそんなやり取りをみすみすワポルが逃すわけもなくチョッパーに銃口を向け引き金を引いた。

 

だがその銃弾がチョッパーに当たる前に、間にハジメが割り込むことによってチョッパーには被害はなかった。

 

「ハジメッッ!!!」

「大丈夫ですよ。こんなの何発撃たれても意味ないですから」

 

撃たれた!!と心配したチョッパーだが、ハジメは何ともない表情で受け答え、さらにさっき当たった銃弾をチョッパーに見せた。

「はぁッ!!?」と驚くチョッパーだが「さっさとしなッ!!!」と激怒するDr.くれはに急かされて一旦そのことを忘れることにした。

 

しかしそれを忘れられないもの達もいる。

それは撃った本人であるワポル。ポカーンと口を開けて何が起きたのかと驚いている。

 

「な、なんだお前はッ!!?」

 

「知る必要はありませんよ。

正直"インペルダウン"送りなんですけどね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何を訳の分からないことを言っているんだッ!!!」

 

「さて、確か方向は………あっちか。

後は角度とパワーを……こんなものでいいのかな?屋根から吹き飛ばしからなかなか難しいかも………」

 

「人の話を聞けよッ!!?」

 

ガン無視するハジメに戸惑うワポル。

チェスやクロマリーモが「いまの内にッ!!!」と言ったことによりもう一度銃口をハジメに向けようとしたが

 

「ど、何処に行ったッ!!?」

 

一瞬目を離した隙に消えたハジメを探すワポル達。

すると突然ワポル達三人の身体が動かなくなってしまい

 

「な、なんだこれはッ!!?」

「い、いうことを…」

「きかないッ!!?」

 

「どうやら本編よりも角度がいるようなのでかなり強めで行きますね。まぁ、死にはしません」

 

「な、何をする気だッ!!?」

 

「早めに向こうに行くんですからちゃんと改心してくださいね。ダメだったら定期的に"お仕置き部隊"を派遣しますから。ちゃんと人のために役にたってくださいね」

 

「会話をしやがれええぇッ!!!」

 

そんなこと聞くわけもなく「それでは行きますね」と動けないチェスとクロマリーモをワポルと一纏めにして、両手をワポルの胴体にそっと添えたあと

 

「白ひげさんの一撃。解除」

「「「ドギャバアアアアァァァァァッッ!!!!!!!」」」

 

以前にこっそりと白ひげが放った一撃を一時停止したことがあった。ここぞッ!!て時に使おうと思っていたものだがワポルに相当イライラしたのかついつい使ってしまったハジメだった。

 

でも世界最強の一撃である。

ハジメが思っていた以上にぶっ飛んだので着地地点に落ちるか少し不安になってきたところである。

まぁ、それでも"ワポメタル"は出来るだろうと楽観視するハジメは、あのワポルならすぐに八咫烏が見つけてくれるだろうし、出来ていなかったら強制させればいいと考えていた。

 

そんなことは知らず吹き飛ばされたワポルの姿を見たチョッパーは

 

「………す、すげぇ……」

「……ほら、手を止めるんじゃないよ」

「は、はいッ!!」

 

つい呆けてしまいDr.くれはに注意された。

そのDr.くれはもハジメの力には驚いていたようで

 

(確かに"大将"と呼ばれる力はあるようだね…だけど"優しすぎる"ってのが弱点かね……)

 

と、縫合を終えて一息をつく。

しかし傷口とは別にDr.ヒルルクの病気について気づいてしまった。

 

(……もって"半月"だね……

このバカ、私を騙そうとしてたのかい…ったく……)

 

これまで目視しかDr.ヒルルクの症状を診ることが出来なかった。だが今回の治療でついでにどれだけ病気が侵攻しているのか診てみたら()()()()()()()()()()()()()()

それはDr.くれはにバレないようにと()()()()()()()()()()()()()()。診ただけでも分かるだろうとDr.くれはの医療技術を知った上で。

 

(この子に、心配をかけないようにしてたのかい……

……本当に、男ってやつはどうもこう意地を張るのかね……)

 

思わず傷口を叩こうとしたのをグッと押えて、このバカなヤブ医者に一つイジワルをしようと考えた。

 

「手伝いな小僧ッ!!!」

「?? 何をするんですか?」

 

「バカとハサミは使いようってね。使ってやるよ!!」



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とある医者の偉業⑤

「………ってなことがあったのさ」

「いや、一番気になるところはッ!!?

ヒルルクさんはどうなったの!!?」

 

途中で話が終わりついツッコミをいれてしまったナミ。

チョッパー(カワイイモノ)がいなければナミの性格は本編に近くなってきている。

 

そんなナミにため息をつきながらDr.くれはは、

 

「死んだよ。()()()()()

 

その言葉になんて言っていいか分からなかったナミは口を強く結んだ。しかしそんな表情するナミに「小娘が気にすることじゃないよ」といい続けて

 

「私はね、小僧(ハジメ)と一緒にジジィの色々身体を弄くってやったのさ。()()()()()()()()()()()()()()()()と小僧の(一時停止)を使ってね」

 

あのあとDr.くれはは医療技術の限界を越えたものをDr.ヒルルクの身体に刻んだ。ハジメの一時停止。それは出血多量や内臓機能停止などを無視するもの。出血を止めて、内臓も"その時を止め"()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまりそれはどうしても届かない医療の限界を軽く越えるもの。

それによりDr.ヒルルクの病気は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「で、でもお兄さんの力ならずっとその病気を止めることも……」

 

「言っておくよ。小僧の力は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いつかその時は進み出す。治ったんじゃないのさ。そして医者は()()()()()()()()()()()()()

 

そしてDr.ヒルルクは延命したものの二年前に亡くなった。

それでも本編よりも長く、この世にいたことはチョッパーにとっても本人にとってもDr.くれはにとっても……

 

「……ったく、その生きた分を……あのクソジジィは……生意気なジジィの、その相手をしてやった私に感謝してもらいたいぐらいだよ。なのにあのクソジジィは毎日毎日……」

 

文句をいいながらナミ達に背を向け酒を飲むDr.くれは。

あんなにも毒舌を吐こうともきっとDr.くれはにとってDr.ヒルルクは………

 

すると突然扉が勢いよく開き、部屋に入ってきたのは

 

「いい加減にしろよなッ!!!!!

みんなハジメみたいな()()()じゃないんだぞ!!!

診てみろよ!低体温症になりかけてるじゃねぇかッ!!!!!」

 

「なればいいのに」

 

「医者の前でふざけるなッ!!!」

 

先頭にチョッパーとハジメ。

そしてチョッパーがロープで引きずってきたソリの中に凍えて動けないルフィの姿があった。

 

そのさらに後ろにルフィまではいかないが凍えているゾロ・くいな・サンジ・ギンの姿があった。

 

どうやらルフィだけ防寒着を着ていなかった為に低体温症になりかけていたようであり、ハジメはそれを見ても「もっと酷い目にあえばいい」と思ったようだ。

 

「チョッパー。君はルフィの身体の仕組みをしない。

ルフィはね、こういう時"肉"をやれば大抵治る」

 

「治るかッ!!!」

 

「それにドラム王国の地形を変えるような奴らに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「だから突然ダークになるなよッ!!!!!」

 

睨んだだけで人を殺せると思うぐらい強く睨み付けるハジメの視線の先にはルフィはもちろん、残りの四人にも向けられ冷や汗をかいていた。

 

「本来なら、元に戻してこい。とこの山頂から突き落としてやるところだけど次も控えているからね。今回は大目に見てあげる。でも今度はないからね」

 

「「「はいッ!!!!!」」」

 

ゾロ以外が元気よく返事をする。

まぁプライドの高いゾロは頭を縦に振るだけしか出来なかったがそれでも許してやることにした。

そしてルフィはもちろん返事さえも出来ないので

 

「冷蔵庫、肉入ってますか?」

「原価の10倍だよ」

 

「ルフィが払います」

 

と、勝手に約束したところでハジメは冷蔵庫のある部屋に向かった。

一方、ルフィ以外の四人は素早く暖炉の前に移動して暖を取る。

 

さっきまでのシリアスな雰囲気が一気に崩れた。

そしてずっと黙っていたDr.くれははいきなり「……ヒッヒヒヒヒヒッ!!」と笑いだし

 

「ったく…騒がしいね。チョッパー。念のために低体温症の治療準備をしな」

 

「はいッ!!!」

 

「そこの小僧小娘ッ!!!

いきなり身体を暖めるんじゃないよッ!!!

見習い小娘ッ!!!そこのバカ共にちゃんと説明して治療しなッ!!!」

 

「分かりましたッ!!!!!」

 

チョッパーはすぐに治療室へ向かい、カヤはゾロ達に足元からゆっくりと身体を暖めるようにと指導をし始めた。そしてDr.くれはは凍えているルフィの元へ向かい

 

「なんだいこれは……低体温症に手足の凍傷…でも()()()()()()()()()()()()()()()()……何をどうしたらこうなるんだい……」

 

長年患者を診てきたDr.くれはでもルフィの症状は異常。

火傷と凍傷。こんな訳の分からないものの原因としたら…

 

「能力者…ってことかい……

ったく、毎回毎回変な患者を……」

 

「言っておきますけどルフィのそれは自分でやったんですからね。火傷に関しては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

またキレそうになっているハジメの手には生の肉が。

それをルフィの口元へポイッと投げ捨てる。

するとルフィの鼻がピクッと動き、

 

「に、にぐぅぅぅぅぅッ!!!」

 

と、奇声を上げながら生の肉を食らい始めた。

それを見たDr.くれはも流石に引いたのか、ルフィからゆっくりと遠ざかり始めた。

 

「……食中毒、生肉に含まれる菌による病状……別料金だよ」

「あぁ。大丈夫です。"肉"に関しては超耐性持ってますから」

 

「だとするならこの小僧は"獣"か何かかい?」

「それに近いですね」

 

そこで"違う!"と言いたいところだったが何故か誰もが心の何処かで同意してしまい、その言葉を発せられることはなかった。

 

…………………………

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()?()

 

「……頭、おかしいんじゃないかい……ここでも"バカ"は治せないよ………」

 

結果を言えばルフィの凍傷も火傷も"肉"だけでほぼ完治した。

それを診たDr.くれはも流石に理解が及ばず「勝手にしな…」と匙を投げたのであった。

それでも低体温症は無理なようでゾロ達と一緒に足湯からゆっくりと心臓へ向けて身体を暖めることになった。

 

で、その凍傷や火傷の理由を聞いていたのだが火傷はハジメの想像通りに使うなと言っていた技を使ったことによるもの。なので武装色"硬化"による拳骨を何発もお見舞いすることになった。

 

喋れなくなるまでお仕置きを食らったルフィに変わりくいながここまで登ってきた経緯を話したのだが

 

「あまりにも吹雪いていたのでウソップさんの"浮遊"は使えない。サンジさんの"噴射"でも煽られる。ゾロと私は刀を突き刺して登るにしても流石に人一人が限度で……」

 

「で、ルフィの奴が「なら俺が背負って登るッ!!」って言い出したんだよ。言っておくけど俺は止めたぜッ!!」

 

「まぁ、あの時はルフィの身体は強化されているもんだったからな。いけると思ったんだが……」

 

「先にルフィの奴が凍えてしまってな。もうその時は"交代"出来る環境じゃなかったからな」

 

と、くいな・ウソップ・サンジ・ゾロの順で喋っているが

 

「もう一回登ってこいよお前ら」

「「「「鬼かッッ!!!!!」」」」

 

平然ととんでもない事をいうハジメに四人が抗議する。

元々修行で登ってこいといったのだ。ズルは良くない。

 

「仕方ありませんね。()()()()()()()

「つ、次ッ!!?いま次って言ったのかよッ!!!!!」

「……この感じは、やりますよ……」

「だな。諦めろウソップ」

「ずいぶんと物分かりがいいんだな」

 

「エロコック、抵抗すれば増えるぞ。ロビンの修行よりマシだ」

「あぁ……だな」

 

「なんでそこだけ仲良くなるかな……」

 

なんか納得いかないが、キチンと修行するならまぁいいだろう。

そんなことを決めていると

 

「治ったああああああぁぁぁッッ!!!!!」

「治るかッ!!!安静にしてろよッ!!!」

 

隣に診療室から飛び出してきたのはルフィとチョッパー。

ついさっきまで火傷と凍傷と低体温症でヤバかったというのに、やはり"肉"でほとんど治っているようだ。

 

「いや、でもよ。ほら治ってるぞ。まださみぃけどよ」

「ふざけるなよッ!!!医者を医術を舐めてるのかッ!!!」

 

「うるさいよチョッパー。実際治ってるんだ。

でもね小僧、あと一時間は動くんじゃないよ。じゃないと私が殺すよ」

 

「おい、いま医者が殺すって…」

「俺は聞いてないからな……」

「流石、ハジメと渡り合うだけの人だな…」

「ほらルフィさん。大人しくしてましょうね」

 

Dr.くれはが診察してみると確かに低体温症以外はもうほとんど治っていた。そしてその低体温症ももう治りかけており"化け物並みの回復力"である。

 

「でもよ、早くビビの島に行かないといけないだろう?」

「いや、でもルフィさんの体調が……」

 

「なら、大丈夫よ」

 

ここで何故かチョッパーの身体が大きく震えた。

"恐怖"というのがしっくりくるぐらいのものが背後から…

すると突然その背後からガバッと掬い上げられ

 

「この子を"医者"として船に、仲間にすればいいのよッ!!!!!

というか私が欲しいわあああッ!!!!!

 

「ギャアアアアアアアアアァァァァァッッ!!!!!」

 

大人しいと思っていたらナミ(ヤバイ奴)はチョッパーが診察しているのを邪魔しないように気配を消していたのだ。そして頃合いを見計らってチョッパーを抱き締めたのだ。



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とある医者の偉業⑥

「で、なんでこんなことになってるんだ?」

 

どういうわけか今は城の外。

いや、"どういうわけか"というのはおかしいな。

これにはちゃんと明確な理由がある。

そしてウソップ達が見ているのはルフィに対峙しているチョッパーの姿。

 

「ナミが余計な事をいったからだろう」

「うっさいわね。女の子のわがまま一つぐらいいけないの」

「あれはわがままじゃなくて欲望だろうが」

「なんですって?」

「なんでもありませんッ!!」

「ウソップさん……」

「そんな我が儘なナミさんも素敵だああッ!!」

 

ガヤガヤと騒いでいる中でもルフィとチョッパーはまだ動かない。そしてそんな二人の間にはハジメが立っており

 

「一本勝負。

ルフィはギア2使用不可。勝利条件は5分間チョッパーの攻撃を避けること。攻撃はあり。

チョッパーは一撃でいいからルフィに当てること。ダメだった場合は()()()()()()()()()。いいね?」

 

「おう!やってやるッ!!」

 

「ルフィ。手加減してもバレるからちゃんとするように」

「もちろんだッ!!!」

 

さて、どうしてこうなったのか?

話は30分前に戻ることになる。

 

…………………………

 

「ったく、何を言い出してるんだい小娘」

 

酒ビンを持った手で指差すDr.くれは。

 

「そいつはやれないよ。どこの海賊とも知れない奴らに渡すほど()()()()()()()()()()

 

「……………医者なのッ!!?」

「いままで何を見てきたんだよお前はッ!!?」

 

ナミの中では"カワイイ、シャベル、トナカイ"しか見えていなかった為に、目の前でやっていた医療行動さえも()()()()()()としか見えていなかったのだ。

 

「医者が欲しいなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

丁度今から会合でここに集まるからね、選び放題だよ」

 

「イヤッ!!このカワイイのがいいのッ!!?」

「子供かよッ!!?」

 

さっきから抵抗しながらツッコミを入れるチョッパー。

しかししっかりとホールドしているナミの腕の中から出ることは出来ずにいる。

 

「というか、ビビは何処にいるんだ?」

「ルフィ……今頃気づいたのかよ……」

 

「ビビちゃんはドルトンさんと話したいことあるって麓の町にいるのよ」

 

「……いや、いま()()()()()()()()()()()()

 

するとチョッパーの鼻がヒクッと動くとそんなことを言い出した。チョッパーの鼻は遠くの匂いをかぎ分ける。

城にいるチョッパーの地点からドルトンがリフトから降りたところまで距離があるのにも関わらず。

 

「どうやら会合の時間みたいだね」

「ちょっ、ちょっとッ!!!」

 

「しつこいよ小娘。

第一、チョッパーはまだ行くとは言ってないんだ。勝手に連れていこうとするなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そういってドアを思いっきり閉めて出ていったDr.くれは。

すこし気まずい雰囲気の中、そのチョッパーから

 

「……うん?ドルトン以外に知らない匂いがあるな…

なんか()()()()()()()()()()()()

 

…………………………

 

「ノジコさん、ベルメールさんッ!!もう大丈夫なんですか!!?」

「もう大丈夫よ。ごめんなさいね。こんな時に…」

 

「いいえ。ここにきたお陰で()()()()()()()()()()()()()()()

「そうか。ドルトンさんは現王様だったわね」

 

チョッパーが言っていた匂いはビビのもの。

ずっと一緒にルフィ達いたために似た匂いがついたのだろう。

そしてそんなビビはドルトンに今のアラバスタの状況を聞いていたのだ。

 

現国王。ドルトンも初めは嫌がってはいたが適任者だとDr.くれはやDr.ヒルルクから推薦されて国王となった。

 

しかしそんな国王は常に町の人達と交流を深めて、家も山の麓の家であるために、"国王"という感じには見えなかった。

それでも国王であるドルトンはビビが欲しかった情報を持っていたのだった。

 

「「「「反乱軍と国王軍が今にも戦争を起こしそうッ!!!!??」」」」

 

「…まだ、猶予はあると思ってました……

……だけど、国王軍が……一般人に…手を……」

 

「おいおいッ!!待てよ!!!そんなことってッ!!!」

 

「私も信じたくありませんッ!!!

ですが現に激突する寸前なんです……ちょっとした"キッカケ"が生まれれば…もう、止められない………ッ!!!」

 

ドルトンから聞いた話はビビにとって最悪だった。

この情報はドルトンの個人的な情報源、それは昔()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

情報は武器。

その伝がなかったドルトンにとってはありがたい申し出。

そして今回その情報はビビにとっても助けとなった。

最悪。でもまだ終わりではない。

 

いますぐにでもアラバスタに向かわないといけない。

誰もがそう考えていると

 

「言っておくけどそこの小娘二人はまだここにいてもらうよ」

「ど、どうしてッ!!?」

 

「あんな病気を持っておいてもう完治したと思っているのかい?あと一週間はここにいてもらうよ」

 

「そんな悠長なことはッ!!?」

 

ブスッ!!

ノジコの足元に"メス"が刺さった。

それはDr.くれはが投げたメスであり、そしてその手にはまだ他のメスが握られている。

 

「いいかい。ここを出ていくときは完治するか()()()()()()()()()

 

「そ、そんなッ!!?」

 

それでは間に合わないッ!!!

しかしDr.くれははそれを許してはくれない。

どうすればいいのか…と、その時、ノジコとベルメールの前に立ったのは

 

「……どういうつもりだい()()()()()??」

 

仲間にいれるか、いれないのか。

そんなことを言われてもハッキリと口出ししなかったチョッパーがDr.くれはの前に立った。

 

「……なら、俺がいけば問題ないはずだ」

「そいつらに情でも移ったのかい?やめな。身を滅ぼすだけだよ」

 

「ハジメはッ!!!()()()()()()()()()()()()()()!!!!!」

 

突然の大声に誰もが、いや、大声ではなくその言葉に驚く。

 

「そんなハジメが…ずっと前から言っていた海賊なんだ……

……ドクターが、最後に言っていたの覚えてるドクトリーヌ……『お前がやりたいことをやれ』って……きっとこの事なんだと思うんだ……だからッ!!!!!」

 

「ふざけんじゃないよッ!!!!!」

 

感情が爆発したように大声を上げたDr.くれはにビクッと震えるチョッパー。

 

「いまのいままでお世話してやったのは誰だい?

あのジジィを長生きしてやったのは誰だい?

お前は、そんな恩人に逆らってのかいッ!!?」

 

「か、感謝してるッ!!!こんな俺を"医者"にしてくれたんだッ!!

でも俺は…今度はハジメの夢を、一緒に追いかけてみたいんだッ!!!!!」

 

「バカなことを言ってるんじゃないよッ!!!!!

海賊?あんたがあんな荒くれ共と渡り合うってのかいッ!!?

笑わせるんじゃないよッ!!!医者は何処までいっても医者なのさッ!!!!!」

 

「でも俺は"男"だッ!!!!!」

 

ハッキリと、Dr.くれはの目を見ながら続けて

 

「"男"なんだよドクトリーヌッ!!!

俺はこうして医者になったんだッ!!!それは俺を"医者"に"男"にしてくれたドクターやドクトリーヌのお陰なんだッ!!!だから俺はそれを貫くために、ハジメの夢を、兄弟の夢を叶えたいんだッ!!!!!」

 

ハジメの夢。

それはルフィを"海賊王"にすること。

それをチョッパーが支えると言ってきた。

でもそれは医者だけではなく戦闘ということにもなる。

 

「……言ったねチョッパー……

そこまで言いきったんだ。生半可な覚悟なら今すぐ捨てな!」

 

「俺はやるんだッ!!!」

 

「いいだろう。でも条件ある!!」

 

するとDr.くれははルフィの方を指差して

 

「その海賊の船長に勝ってみせな。

それだけの実力がないと分かったらあんたは一生ここにいるんだよッ!!!」

 

………………………

 

ということがあり、全快ではないルフィのことを考えギア2使用禁止。チョッパーへの攻撃はいいがあくまでも避けることに専念。そしてチョッパーも一撃を五分以内に決めるという条件となったのだ。

 

うまくいけばルフィに一撃を入れれるかもしれない。

しかし本編と違いすでにルフィの実力は上をいっている。

つまりはハジメと分かれた後、チョッパーがハジメと再開するまでにどれだけ実力を身につけたかが勝負を分ける。

 

ハジメもいまのチョッパーの実力を知らない。

本編ではここでワポルと対決するがすでにその元凶はいないのだ。

ここで初めてチョッパーの実力が見られる。

そしてチョッパーが仲間になるかの運命もここで決まる。

 

たったの五分。たったの一撃。

しかしそれはこの先のストーリーを大きく変えかねない重大な出来事となる。

 

「それでは…いいね?」

 

それでも公平にしないといけない。

チョッパーが見せた覚悟を、見届けないといけない。

 

「……はじめッ!!!!!」



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とある医者の偉業⑦

チョッパーがどう動くのか?

本編ではルフィとチョッパーには明確な差があった。

ルフィの"ゴムゴム"の能力とチョッパーの"ヒトヒト"の能力。

"パラメシア"と"ゾオン"。それだけでも明確に違う。

 

そして決定的な"差"はこの"ヒトヒト"の能力だった。

これは"人になれる"という力が備わるもの。

チョッパーのように元四足歩行だったのに二足歩行になり、完全に人間になれずに半獣半人となる。動物の言葉が分かり三段階の()()()()()()()()()()があるが、言ってしまえば"それだけ"なのである。

 

こう言ってしまえば聞こえは悪いが、特化した能力は強い。

現にチョッパーは

 

「"重量強化(へビーポイント)"ッ!!!」

「す、すげえええぇぇぇッ!!!!!面白トナカイだああああああぁぁぁッ!!!!!」

 

突然巨大化。いや元の姿から人型に変わった言うべきなのだろう。そんな姿に、チョッパーに感動するルフィ。

元々すでに"喋るトナカイ"を見て感動していたが、ナミにギューーーーウと抱き締められ悲鳴を上げていたチョッパーを見て押えていたのだがこの姿を見て感情が爆発した。

あのルフィが我慢したのである。ハジメとしては誉めていいと思った出来事だった。

 

で、感動しているルフィに一気に近づくチョッパー。

そのまま腕を振りかぶりって攻撃をするのだが、ニヤッと笑ったルフィは大振りな攻撃を簡単に交わした。

 

諦めずに何度もルフィに攻撃をするが今のルフィにただの攻撃が当たるわけもなく全て交わされていた。

 

だったらと次にチョッパーは

 

「"脚力強化(ウォークポイント)"ッ!!!」

 

今度は脚が強化された姿はまさにチョッパーが"トナカイ"になった姿。脚力に特化した姿はさっきよりスピードが上がり一気にルフィと距離を詰める。

そのまま攻撃を当てようとするのだがそれでも紙一重に攻撃を交わされてしまう。いや、ルフィはまだ余裕がある。

 

「……やっぱり、()()()()()()()()()……」

 

するとチョッパーは()()()()()()()()()()()

 

「ハジメが言っていた通りの海賊なんだなお前は」

「なに言ったか知らねえけど、俺は海賊王になる男だッ!!!」

 

「それなら、それに似合う力を見せないといけないよなッ!!!」

 

そういってチョッパーはその丸薬を歯で挟み込み一気に噛み砕いた。

 

「ランブルッ!!!!!」

「なんだそれ?」

 

何が起きるのかとワクワクしていたルフィにチョッパーはウォークポイントのままでまたルフィに突撃をかける。しかし嘲笑うかのようにピョンとチョッパーの上を飛び越えた。

 

しかしチョッパーの口角は上がった。そう、狙いどおり。

すぐに停止をかけた後にチョッパーの身体はまた姿を変えた。

 

「"飛力強化(ジャンピングポイント)"ッ!!!!!」

「た、高けぇぇぇぇッ!!」

 

ルフィが飛び上がった高さよりも上へ飛び上がったチョッパーの姿は上半身が人型、下半身が獣型と変わった姿となっていた。ジャンプ力に特化した姿に続けて、今度は両腕の筋肉が大きく膨れ上がり

 

「"腕力強化(アームポイント)"ッ!!!」

 

腕力に特化した姿に変わったチョッパーは空中で動けないルフィに一撃を食らわせようとその腕を振り下ろす。

しかしルフィはとっさに腕を伸ばして城の一部を掴み、引き戻す力を利用してチョッパーの一撃を回避した。

 

空振りを食らったチョッパーは勢い良く地面に落ちていくが、今度はチョッパーの全身が毛に覆われていき

 

「"毛皮強化(ガードポイント)"ッ!!!」

 

落下による衝撃をその体毛で吸収してダメージを無くした。

一方ルフィも城に激突する前に手を離してうまく地面に着地をした。

 

互いににらみ合う中ルフィからチョッパーに

 

「面白れぇなお前。でも、それじゃ勝てねぇぞ」

「みたいだな」

 

「あと2分」

 

「もう打つ手はないのか"化け物"」

「へへへ。なら"とっておき"を見せてやるよ"化け物"」

 

するとチョッパーの姿はまた"脚力強化"に変わった。

いや、その形から更にチョッパーの角は複雑に枝分かれしながら大きくなっていき、腕は人間のように大きく肥大した。

 

「"角強化(ホーンポイント)"ッ!!!」

 

しかしこのままではルフィに一撃を食らわせることは出来ない。

だからチョッパーは、

 

…………………………

………………………

……………………

…………………

………………

……………

…………

………

……

 

 

「えっ??"ランブルボール"を改良??」

 

"ランブルボール"は言わば

「本来不可能な変形を無理矢理可能にする劇薬」である。

これを服用することで動物系特有の形態変化による汎用性の高さが強化され、汎用性が高いどころか特化の使い分けによってあらゆる状況で平均以上の力を発揮出来るようになる。しかし劇薬ゆえに服用すれば通常有り得ない形態への変形を可能とするが、一度に使用できるのは6時間に1つしか使えない。

 

チョッパーはワポルのような人が来ても追い返すための力をつけようと己の能力に目をつけた。

三段階に変わるその姿を更に変えることが出来ればきっとあの惨劇を生まずにすむと。

 

それからチョッパーはランブルボールを研究して完成させたのだが

 

「あぁ。6時間に一つってのはあまり使えねぇな」

「そ、そんなッ!!ハジメも誉めてくれたぞドクターッ!!!」

 

あの出来事からDr.ヒルルクはベッドから動けない身体になってしまった。それでも無理をすれば部屋のなかを動けるまでは出きるがこれ以上はDr.くれはが殺しにかかるので止めている。

 

チョッパーはこうしてたまにDr.ヒルルクの元を訪れるが基本的にはDr.くれはの元で医者になるために住み込みで勉強をしていた。ハジメはそんなDr.ヒルルクのお世話はがやったり、チョッパーの助手として手伝ったりしていた。

 

こうしてランブルボールが出来上がりハジメに見せたあと、絶対に喜ぶと思いDr.ヒルルクに見せに来たのだがまさかの返答に困惑するチョッパー。

 

後ろで見守っていたハジメもこれには驚いた。

本来ならこのランブルボールはDr.ヒルルクは知らない。

だからDr.ヒルルクが生きている間にそのチョッパーの研究の成果を見せたくて手伝ったのだがこんな回答は予想していなかった。

 

チョッパーは弱々しい声を出しながら

 

「で、でも、ドクター……

これ以上やると能力の波長が乱れて……」

「何言ってやがる。誰が威力を上げようといった??」

 

「ち、違うのか??」

「ったく、あのババァの元で何習ってるんだお前は……」

 

ため息をつきながら頭をかくDr.ヒルルク。

そして優しく微笑みながらチョッパーの頭を撫でながら

 

「お前は"医者"なんだ。

"劇薬"なんて薬は"薬じゃねえッッ"!!!!!

作るならノーリスクで作ってみろ!!!!」

 

「む、無茶だよドクターッ!!!

波長を変えるだけで身体に負担がッ!!!」

 

「なら"身体に慣れるしかねぇなッッ"!!!!!」

 

ニヤッと笑いながら当たり前なことを言うなと言わんばかりにチョッパーへ語りかける。

 

「いいかチョッパー。

薬ってのはいきなり強いやつを使えば身体が悲鳴をあげるのは当たり前なんだ。異物が入るんだからな。拒否するのが当然だ。

それをクリアするためには()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッ!!!!!」

 

その言葉に驚くチョッパー。

まさに盲点。強くなるためにとそれだけを見ていたチョッパーは作っていた"薬"というものを完全に見落としていたのだ。

 

「や、やっぱりドクターはすげぇ……」

「ですね。流石Dr.ヒルルクです」

 

「誉めろ誉めろ!

しかしこんな面白い研究が見れて最高の気分だッ!!!」

 

そういってDr.ヒルルクは無理やりその身体を起こしてベッドから立ち上がり

 

「やるぞチョッパーッ!!!!!

最高のランブルボールを作り上げるぞッ!!!!!」

 

「おおぉッ!!!!!」

 

 

……

………

…………

……………

………………

…………………

……………………

………………………

…………………………

 

「"槍変形(ニードルモード)"ッ!!!!!」

 

枝分かれしていた角の先端が全てが鋭い槍状な変形。

これがDr.ヒルルクとチョッパーが作った"ランブルボール"

使用後の禁止時間もなく、"変形"以外の"強化"はランブルボール無しでも使用可能。

 

ただし"変形"を使うためにはランブルボールを使ってから"三分"待つ必要がある。

 

効力を弱めたランブルボールを()()使()()していたことによりチョッパーの身体は本来のランブルボールの効力に打ち勝つことが出来たのだ。

 

「か、かっけええええええええぇぇぇぇぇッッ!!!!!!」

 

目玉が飛び出るんじゃないかと思うぐらいにチョッパーの"変形"な心奪われるルフィ。しかしこれだけでは終わらない。

 

「ランブルボールを使えば"十分間"、他の"強化"と"強化"を組み合わせる事が出来るんだ。こんな風になッ!!!!!!」

 

するとチョッパーの後ろ足が肥大化。

そういま"角強化"と"脚力強化"を掛け合わせたのだ。

それによりさらに"強化"が向上し、複数に枝分かれしていた先端同士がくっつきだし、それぞれ計五つの"星形"に集まった槍が誕生した。

 

「"星の槍(スターニードル)""状態(モード)"ッ!!!!!」

 

「す、す、すげええええええええぇぇぇぇぇッッ!!!!!」

 

完全に我を見失い感動しているルフィにチョッパーは駆け出す。

さっきまでの脚力強化とは違いそのスピードは何倍も上がった。

一瞬にしてルフィの目の前まで距離を詰めたチョッパー。

そこでやっと正気に戻ったルフィだが時すでに遅い。

 

「"刻角(こっかく)""星々(スターズ)"ッ!!!!!」

 

その声と共に突撃してルフィの後方へ駆け抜けたチョッパー。

ルフィはその場を動かずチョッパーも"状態"を解いた。

 

「…………まいったな…負けたッ!!!」

 

ルフィの腹部が裂けそこから血が流れる。

とっさとはいえルフィはチョッパーの攻撃を避けようと行動したのだが、チョッパーの角はルフィの腹部をかすり"一撃"を与えたのだ。

 

「勝者!トニー・トニー・チョッパーッッ!!!!!」

 

歓声が上がり誰もがチョッパーの元に駆け寄る。

特にナミが突撃してチョッパーをこれでもかと抱きしめた。

そんな姿を見ながらルフィの元へ向かうDr.くれは。

 

「手を抜いたのかい小僧?」

「んなことしねぇよ。強ぇなチョッパーは!!」

 

「当たり前だよ。こそこそと私に黙ってあのジジィと研究してたんだ。負けてたらあの丸薬は取り上げていたさ」

 

「うん?チョッパーに負けてほしかったじゃねえのか?」

「そんなことは気にしなくていいから……()()()()()()()()()()()

 

その声に一気に大量の汗が流れ、動悸が激しくなり、震えながらゆっくりと後ろを振り向くと……"鬼"がいた。

 

「手は抜いていない。確かに抜いてない。

だけど……()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

「そ、そ、それは………」

 

すると鬼のようなオーラが消えニコッと笑ったハジメが一言。

 

「登り直してこい」

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

武装色を纏わせた脚でルフィを思いっきり蹴り上げて頂上であるこの山から競り落とした。

あまりにも理不尽な光景に誰もが言葉を無くし、万が一にとルフィの為に持っていた肉を同じように頂上から落とした。

 

「な、な、な……何してんだよハジメッッ!!!!??

 

必死にナミの拘束から抜け出して思いっきりハジメの頭を叩くチョッパー。全くダメージはないが叩かれた部分を手で触りながら

 

「えっ。罰ゲームですけど何か??」

鬼かぁッ!!?アイツ怪我していたんだぞッ!!!!!!」

 

「肉も落としたから怪我も治った状態で戻ってくるよ」

「そういうことじゃねえよッ!!!!!!

少しは優しさはねえのかよッ!!!」

 

「優しさ?なにそれ?」

 

真顔でそんな風にいうものだからチョッパーはこれ以上ハジメを問い詰めることは出来なかった。



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万能薬の出航

「準備終わった?」

「う、うん…でも……」

 

「仕方ないよ。きっとDr.くれはは、分かってくれるから」

 

一刻も早くアラバスタに戻らないといけない。

そんな中、頑張って麦わらの一味に入れることになったチョッパーにDr.くれはは何も言わずに部屋に籠ってしまった。

 

……あの言い方だと()()()()()()()()()()()()だったのかも知れないけどそれをチョッパーに知られたくないのだろう。

本編でも「湿っぽいのはキライ」と言っていた。だからといってメスや包丁を投げて追い出すのは怖すぎたけど……

 

「そうかな…ドクトリーヌ……怒ってないかな……」

「まぁ、もし怒っていたらいつもどおりに強制的に止めようするはずだよ。メスを投げつけて「なに勝手なことを言ってるんだいッ!!」ってね」

 

「あぁ…………うん。そうだよな。

……でも、ちゃんと挨拶したいんだ。だから…」

 

「いいよ。チョッパーの荷物は持っていておくから30分後に船に」

 

「ありがとう」とチョッパーはお礼をしてハジメはチョッパーが荷造りした荷物を運び始めた。

本編では最低限のものだけだったけど"ランブルボール"や医療に必要なものがあるのだろう。結構な量がある。

その荷物は城の入り口に集められていたので後は運ぶだけ。

 

「……こんなに、いるのか?」

「何が起きるか分からないからね。医療とは"最低限"じゃなく"最大限"にしないといけないの」

 

「す、凄い。私こんな医療器具みたことない…」

「色々チョッパーに教えてもらったらいいよ。

あの子、誉めるとドンドン調子が上がっていくタイプだから」

 

「??"調子に乗る"じゃねえのか?」

 

「どこぞの奴と一緒にしないでもらいたい。

ウチのチョッパーは他の所に出しても十分以上に出来る子なんだら。どこぞの奴と違って」

 

ベタ誉めかあッ!!!

って、さっきから"どこぞの奴"って……」

 

ウソップとカヤから質問を受け受け答えをしているとウソップが気になったのだろう。"どこぞの奴"について誰なのかと。

 

そんなのは決まっている。

荷物の横で倒れていて、頭に大量のたんこぶをつけている者。

 

「おーい。生きてるか?」

「……ザンジ……ニグ……」

 

「やらなくていいからね。

登るのに10分30秒。30秒も遅れただから」

 

「……時間、測るって言ってました?」

「言わなくてもそれぐらいは分かるはずだよ。長年ルフィ達を鍛えたんだからね。まぁ、ロビンがだけど」

 

「んとうに、容赦ねえよな」

「船長なんだからもっと強くなってもらわないと。

いつかロビンを越えるぐらいに……」

 

「「「「絶対に無理ッ!!!!!」」」」

 

「ロビンがいないからってよくもそうハッキリと……」

 

まぁ、ハジメのやり方よりもロビンの方が厳しいからだろう。

こう見えてもハジメの方がまだ優しさはある。ロビンは優しさ?という感じなのだ。

 

……まぁ、ついさっきハジメも同じようなことをした気がするが気のせいである。

 

「ほらほら。みんなで荷物を運ぶよ。

ルフィ。一番多く持っていくなら船で肉を食べていいよ」

 

「ニグウウウウウウウウゥゥゥゥゥッ!!!!!」

 

「うわっ…半分以上持っていったぞウチの船長……」

「これが"飴と鞭"の使い方です」

「不憫だな…ウチの船長……」

 

何でか涙を流すウソップ。

そんなことより早く荷物を運ぶように催促していると

 

「もう行くのかい?」

「お世話になりました」

 

話し合いも終わりイッシー20とドルトンが見送りに来てくれたようだ。

 

「いや、ここはもう君の故郷みたいなものなんだ」

「そうですね。じゃ"行ってきます"が正しいですね」

 

「改めて君のお陰でこの国は救われた。ありがとう」

「僕がしなくてもきっと皆さんが救ってましたよ」

 

イッシー20からも感謝されるけど正直イラついたからやった。とは言いにくい。素直に受けた方がいいと思いそれ以外は何も言わないことにした。

 

するとビビもドルトンにお礼を言いに来たようで

 

「ありがとうございましたドルトンさん」

「あんな情報しかあげられずにすまなかった」

 

「そんな!!

それにまだ間に合う。私はまだ諦めてません!!」

 

「強いのだね。大丈夫。ハジメとこの海賊達ならきっと」

「はい!」

 

そう言ってもらえるとなんか気恥ずかしい感じもする。

しかしあまり話しても入られない。チョッパーが来たらすぐに出航出来るようにしないと。

 

「それでは"行ってきます"」

「あぁ。"いってらっしゃい"」

 

…………………………

 

「………ドクトリーヌ……」

「………………」

 

扉の向こう。そこにDr.くれはがいるのはなんとなく分かった。

それでも扉を開けなかったのはそうしたほうがいいと思ったから。

きっといまは面と向かって会うと決意が揺るぎそうで……

 

「行くよ。俺」

「……………」

 

「ドクターやドクトリーヌみたいな立派な医者になって"俺が万能薬"になるから」

「……………」

 

「どんな人でも、どんな怪我でも、どんな病気でも治せる"万能薬"に、俺はなるからさ………」

「……………」

 

感謝しても感謝しきれない。

姿が違うとトナカイの群れから追い払われ、人間に溶け込もうとするが怪物と攻撃されたあの日。

 

でもハジメが見つけてくれて、ドクターが歩み寄ってくれて、ドクトリーヌが医者を教えてくれて、二人がいまの自分を作ってくれて、こうしてハジメが外の世界に連れて行ってくれる。

 

どう返したらいいのか分からない。

だから医者にしてくれた二人のために"どんなものでも治せる万能薬"になると決めた。

これを知ってほしかった。

これまで育ててくれた恩人に……"母親に"

 

「だがら"…だがら………

……"いっでぎまず"……"お母さん"……ッ!!!!!」

 

涙を流しながらも必死に言葉にして感謝を込めた。

すると突然に扉が開いてチョッパーの身体が何かに包まれた。

 

「………このバカが………」

「ド、ドクトリーヌ……??」

 

いままでこんな風にしてもらったことはなかった。

研究がうまくいってもドクターやハジメが抱きしめてくれたり喜んでくれたけど、ドクトリーヌだけはツンとしていた。

だからこんな風にしてくるドクトリーヌにどうしたらいいのかと戸惑っていると

 

「………頑張りな……"バカ息子"……ッ!!!」

「ッ!!!!!……う、う"ん……ッ!!!」

 

…………………………

 

「………見送りは、良かったのですか?」

「五月蝿いね。"バカ息子"にはこれで十分さ」

 

「……本当に、貴女は変わられた……」

「誰に言ってるんだい?私は何一つ変わってないよ」

 

すでにチョッパーも下山し、今頃は船に到着しただろう。

山頂からは小さくて見えずらいが船はまだ出航してない。

Dr.くれはは酒ビンを手にしているが未だに口をつけていない。

 

()()()()()()()()()。それだけさ」

「………。やはり、変わられました……」

 

「しつこいよ」と睨みながらドルトンに言っていると船が港から離れていく。それを確認したDr.くれはは用意していたコップに酒をつぎそれをドルトンへ

 

「門出だ。あんたも祝いな」

「えぇ。喜んで」

 

島から離れていく船を見ながらドルトンは慣れない酒を一気に飲みほし、Dr.くれはは一口だけ酒を飲むとその酒ビンを船に向けて突き出し

 

「行ってきな……バカ息子………」

 

…………………………

 

「チョッパーの歓迎会をしたいところだけど、いまは優先することがあります」

 

「えぇ。一刻も早くアラバスタに……」

 

これでやっとアラバスタへ行ける。

ビビの気持ちは最高潮に高まっていると

 

「ロビンに紹介してきますね」

「え、ええぇッ!!?」

 

「大丈夫ですよ。

バースト達が懸命にやってくれてますから。それでも()()()()()()()()()。アレがサボらなければ」

 

そう現在はサクラ王国から離れて爆発の影響を受けない所から超推進力を使って目的地アラバスタに向かっている。

 

「くそッ!!!くそッ!!!くそおおぉッ!!!!!」

「キャハハハッ!!!頑張ってバーストッ!!!」

 

「お前も何かしろよッ!!!」

「自分の体重しか操れないからムリよ」

 

向こうは向こうで騒がしい。

キチンとメリー号の機動力になってもらわないといけないのに。

 

「じゃキロロと一緒にバーストの監視していたらどうです??

おど……話せばもっと速くしてくれるかもですよ」

 

「お前ッ!!いま脅せばとか言いそうになったろうッ!!!!!」

 

「五月蝿いですね。食事抜きにしますよ」

 

「鬼かあッ!!!!!」

 

いや、1日ぐらい大丈夫でしょう?

ビビも一刻も早く着きたいのだろう。ハジメの案に乗り「速く、してくださいね?」とニコニコ怖い笑顔で要求していた。

ああいう人が一番怖い……

 

それはともかく、新しく入ったチョッパーを紹介すべくロビンがいる部屋に来たのだが

 

「ダメよ。元の場所に帰してきて」

「ええええええええぇぇぇぇぇッッ!!!!!」

 

仲間として認めないではない。帰してこい。やっぱりか。

流石に想定外だったチョッパーは目が飛び出そうなリアクションを取っている。

 

あっ、ちなみにカラーはもう完全にロビンのメイドになってる。

というか服装からメイドである。もう、この子は何をしているのか……

完全に"お嬢様気分"を味わっている。

カラーはテキパキとロビンの先を読んでいまは紅茶を用意してそれを渡していた。続けてハジメにも渡している。

 

でもそんなカラーの存在は無視されているのかロビンは続けてチョッパーに

 

「お兄ちゃんの兄妹は私だけよ。

弟?そんな死にたいならもう一回発言していいわよ。

その首を180度回転してあげるわ」

 

「怖ええぇよッ!!!!!

本当に妹なのかよハジメッ!!!!!」

 

「そうよ。そして婚約者」

 

「俺の知らない間に何してるんだッ!!?」

 

きっとチョッパーの知らないことのほうが多いだろう。

とにかくもっと詳しくチョッパーとの成り立ちを話すために一度チョッパーとカラーには部屋から出てもらった。

 

そしてロビンと再開するまでの話を語り始めた。

 

「………そう」

「あの時は"大将"って肩書きは邪魔だったし、一人で探したかった。それでも……ごめん。見つけられなくて」

 

「……私も、()()()()()()()()()()()()()

それでもきっと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ずっと話せなかったお互いの10年間。

ハジメもロビンも、お互いを探しながらも()()()()()()()()

いまだにロビンはその経緯を話してくれないが

 

「……聞かないの?」

「いつか話してくれるなら、いまはいいよ」

 

「うん」

 

そういってロビンは両手を広げてきた。

本当にこういう甘えん坊なところはまだ子供だなーと思いハジメはゆっくり優しくロビンは抱きしめた。

 

 

 

ガッカリホールドを決められたけど。

 

 

 

「ロ、ロビンさん……」

「ふふふ。やっと…やっとお兄ちゃんを……

もう、我慢出来ないわ……ふふふ……」

 

「チョッパーッ!!!カラーッ!!!ヘルプッ!!!!!ヘルプッ!!!!!」

 

…………………………

 

「チッ。あと少しだったのに……」

「た、助かった……」

 

「なぁ、ハジメ……本当に"妹"なんだよな?」

 

扉の近くにいて、尚且つ一時停止を直ぐに解いたから良かった。

あと少しで喰われるところだったわ……

それでも服を半分以上破かれていたのだ。本当に…助かった……

すると助けに入ったチョッパーに向けてロビンが

 

「なかなかの腕、流石お医者ね」

「拘束を外すために医者になったわけじゃねえよ……」

 

「いいわ。兄弟はダメだけど、"従兄弟"なら許すわ」

「ほ、本当かぁ!!??」

 

「トナカイが従兄弟って……」

 

気持ちは分かるけど口に出さないようにねカラー。

ということで、チョッパーも含めてこれからのことを話しておこう。

 

ここにいる四人。

言ってしまえば一人でも失敗したら()()()()()は取れなくなる。

 

そしてその作戦を話すと

 

「い、いきなり重要なポジションなんだな俺……」

「な、なんで私も……」

 

「基本的にルフィ達だけど、こっちの裏方が上手くやらないと簡単に形勢が悪くなるからね。その中でも一番なのは、ロビン」

 

「ええ。やっと()()()()()()()

 

「やりすぎないようにね」

「ふふふ。でも()()()は潰すわよ」

 

ビビの知らないところでアラバスタ救出作戦は決まった。

クロコダイルには悪いけど()()()()の1つや2つ植え付けさせてもらいましょう。



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アラバスタ前のお話①

サクラ王国を出航して3日目。

麦わらの一味は順調にアラバスタへ向かっている中、()()()()()()もアラバスタへ向けて航海していた。

 

「本当に……信じていいのでしょうか?」

「手がかりもねぇんだ。行くしかねぇだろう」

 

一人は腰に刀を付け眼鏡をかけている女性。

そしてその容姿は麦わらの一味にいる"くいな"にそっくりなたしぎ。

 

そしてその上司であるスモーカーは麦わらの一味を捕まえるために勤務していた場所から離れてグランドラインまで追いかけてきた。

 

「信用しないのね」

「あるわけないだろうがッ!!!!!」

 

「ス、スモーカーさん!!落ち着いてッ!!!!!」

 

さらにそのとなりには"悪魔のニコル"がいた。

もちろんこちらは分身。

そしてその後ろにコビーとヘルメッポがボロボロの状態で立っている。

 

「てめえのイカれ具合はおかしいんだよッ!!!!!

サイクロンが現れたから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()

 

「えっ。モーガンでも出来たのよ。子であるヘルメッポにコビーを足せばいけるでしょう」

 

「当たり前みたいな感じ言ってるんじゃねえッ!!!!!」

 

「ス、スモーカーさんッ!!!!!これ以上は血管が破けますよッ!!!!!」

 

ちなみにここでの会話は箝口令が出ている。

といってもなんと変な会話も含まれているが……

 

「ったく……で、麦わらの一味に潜入ってのは本当なのか?」

「ええ。これも信用出来ない?」

 

「……こっちはしっくりくる。あの男は"あの時笑った"。ゴールド・ロージャーと同じように死ぬ間際にな。

必ずこの先麦わらは何かをやらかす。それを見越しているから潜入しているのだろう」

 

「さぁ。お兄ちゃんに聞いたら?」

 

「チッ。食えねえやつだ」

 

スモーカーはハジメとニコルから別れ際に聞いていたことを思い出していた。ある海賊に潜入すると。

そして今回スモーカーの勘でアラバスタへ向かっていた所、偶然に居合わせたヘルメッポの軍艦。そしてその軍艦に乗っていたニコルに問いただしたのだ。

 

どうしてこの船に乗っている?ハジメはどうした?と。

そしてその答えがハジメだけが"あの麦わらの一味に乗っている"という情報だってのだ。

 

あの"大将"であるハジメが潜入している。

それはスモーカーが麦わらの一味に対して危機感を覚えた通りになったと分かった瞬間だった。大将が自ら潜入するほどの海賊と。それは十分に警戒を、捕まえる必要がある海賊と判断出来る。

 

すると大人しく聞いていたたしぎが手を上げて

 

「でも、どうやって潜入を?

といいますか、大将ハジメはいま本部にいるのでは……」

 

「おい、説明してなかったのか?」

「貴方こそ。部下にちゃんと説明しなさいよ」

 

「てめえらの問題だろうがッ!!」

「こうして巻き込んだのよ。貴方がやりなさい」

 

「てめえッ!!!」

「いいわよ。来なさい」

 

一触即発。睨みあう2人の威圧感に周りの海兵達が気絶していく。すぐさまたしぎが間に入り

 

「止めてくださいッ!!!どうしてこうお互い喧嘩腰なんですか!!?」

 

「ムカつくからだ」

「生理的によ」

 

「あぁっ!!?」

「なによ?」

 

「だから止めてくださいッ!!!!!」

 

もう頭が痛い。

ヘルメッポの軍艦から交信が来て一緒にアラバスタに向かうことになったときはニコルに色々教えてもらえると喜んだ。

女性としてあの"大将"に最も近い人物。

ハジメの側近であり、ウワサでは"青雉"を打ち負かす力を持っていると聞いたこともある。

 

力がないとバカにされてきたたしぎにとってニコルは憧れの存在。

 

現にニコルに稽古をつけてください!と申し込んだら快く了解を得た。剣でも全く歯が立たなかったがそれでもどうやったら強くなるか教えてくれたりした。

 

ただここまでだった。

そのどうやったら強くなる?という疑問に一緒の軍艦に乗っていたコビーという少年とヘルメッポ大佐。

 

スモーカーさんと同じ大佐なのにどういうわけか"大佐"という肩書きが合わない気がした。きっとニコルさんが強すぎるからだろう。

で、その二人にいきなり斬りかかり「よく見てなさい。これが貴女の動き」といい、私の動きを真似たのだ。そして次に「これが改善点よ」と一つ前の動きとは全く変わってしまった。

 

その動きはまさに私が理想としていたもの。

 

終わった時には二人はボロボロになっていたのだが、その時は感動で全く見えてなかった。

 

それから私の指導の旅に二人は駆り出され、さっき言っていたように無茶振りなどもやらせたりしていたのをみたり、スモーカーさんとの喧嘩をみて「あれ?教えてもらう人間違った??」と感じてしまった。

 

それでもニコルさんにはとても感謝している。

一人では到達出来なかった剣の道に近づいたことに。

 

と、感動していたたしぎだが

 

「は、はあああああぁぁぁッ!!?

な、な、なんですかそれはッ!!!!!!」

 

「他の人に話したらダメよたしぎ」

「い、いえませんよ!!!!

(まさかいま本部にいる大将ハジメがヘルメッポのお父さんであるモーガンさんなんてッ!!言えるわけがないッ!!!)」

 

もうパニックになっているたしぎを見ていたニコルが何かを思い出したような表情のあと、ふふふ。とイタズラをするようなそんな表情をして

 

「そうね。もうこの際だから話すけど……」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください!」

「おい、ま、まて……何もいうな…それは絶対にヤバい……」

 

あのスモーカーさんが咥えていたタバコを落としてまでニコルがいうその先の言葉を止めようとした。しかしニコルはニコッと笑って結んでいた髪をほどいて

 

()()()()()()()()()()。ニコルは"ニコ・ロビン"よ」

 

「…えっ。えっ………ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!???」

 

「巻き込むなっていっただろうがあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

「で、私は分身体だから。本体はお兄ちゃんと一緒よ」

 

「やめろって言ってるだろうがボケええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!」

 

止められないニコルの、いやロビンの暴走に困惑しまくる二人。

 

(あ、あのニコ・ロビンがニコルさんッ!!?で、分身体ってッ!!?

ちょっ、いや、ちょっ、ちょっとまって!!!!

じ、じゃ、あのオラハの生き残りであり"悪魔のニコ・ロビン"って……ニコルさんってことッ!!?

じゃ、じゃ……ずっと前からニコルさんは海軍の潜り込んで……

いや、それよりも、じ、じゃ……)

 

さっきから"じ"を連発しているたしぎはもうパニッていたが、少しずつ頭も周り始めた。しかしここで新たな疑問が出てきたたしぎは恐る恐る聞いてみる。

 

「も、もしかして大将ハジメも……」

「お兄ちゃんは違うわ。お兄ちゃんは最初から海軍よ。

ただ私がお兄ちゃんを追いかけて海軍に入った。ただそれだけよ」

 

「ふざけるなッ!!!海賊が海軍にだとッ!!!!!てめえッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、余計なことをしてくれたね"ニコル"」

「やっときたの。遅いわよグザン」

 

襲いかかろうとしたスモーカーを止めたのは突然現れた青雉。

 

「青雉……ッ!!!てめえ、知ってたのかッ!!?」

「言っておくけどこの事はトップシークレットだから。

他に話したら君の首だけじゃ足りないだろうね」

 

「知るかッ!!!そいつは海賊ッ!!!捕まえるに…」

「本部が()()するとしても、かい?」

 

その言葉に全く勢いの止まらなかったスモーカーの勢いが止まった。

 

「言っておくけど物理的も含まれるから。

いまの海軍に"ハジメ"と"ニコル"がいなくなったら壊滅に陥る。もうそこまで二人の影響は大きいんだ」

 

「だったらそんな海軍なんぞッ!!!」

 

「出来るかい?そんなことになれば他の海賊が暴れ世界は間違いなく終わる。2人がいたからこそ治安が守られているほうが圧倒的に大きいんだ。

それにいったはずだよ。二人は麦わらの一味に潜入している。

つまりは…………」

 

「ッ!!?まさか……てめえ……ッ!!!」

 

()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に驚きを隠せない二人。

いまの現状、海軍が出来ないことは多い。

特に"国"というものに関わるとなると政治的判断を仰ぐ必要があり、下手をしたら海軍自体にも大きな影響を及ぼす。

それを世界政府が容認するわけもなく海軍が手出しできないということが多々ある。

 

それを"海賊"という枠でやるとどうなるか?

ただの争いのなかで元凶を討ったとしてもそれは海軍にとってもプラスに転じる。むしろ何かしらの闇があってもそれさえもその海賊に負わせればいい。

 

つまり海軍に手出しできないことを海賊にやらせてその功績を奪うということ。

 

「正気かッ!!!

海軍が海賊に手を借りるなんぞッ!!!!!」

 

「現に今麦わらの一味にアラバスタ王国、王女"ネフェルタリ・ビビ"が国を救うためにその船に乗っている」

 

「…な、んだと……ッ!!」

 

「つまり王女様は海軍に手を借りずに海賊に手を貸してもらっている。それが()()()()()()()()()()()()()()

 

海軍は当てにならない。つまりそういうことだ。

だから海賊に手伝ってもらっている。

それは自分が信じてきた"海軍"というものがどれだけ信用されていないか分かるものだった。

 

「まぁ、今回は乗っていた船にハジメがいるから良かったものの……あの王女様も無茶をする……」

 

「まさか、その為にハジメが乗っているのかッ!!?」

「まぁ、麦わらの一味を見張るためでもあり、こうして利用するためでもあるかな?」

 

「……私達は何も出来ないのですか?」

 

国の危機にも関わらず海軍にいってもらえない現状にたしぎは悔しさを覚えるが、それでも何かをとクザンに問いかける。

するとそれを"ニコル"が入ってきて

 

「サー・クロコダイル。

反乱軍と王国軍を誘導して戦争を仕掛けようとしてるわ。

そして共倒れしたところで"国の英雄"となっているクロコダイルが実権を握る」

 

「なんてことを…ッ!!!」

 

「お兄ちゃんはそれを食い止めようとしてるの。

そこに海賊や海軍なんてものは必要??それでも文句を言いたいならそれらを全て片付けた後にしなさい」

 

「……はいッ!!!!!!」

 

「ということだけど、構わないよね?」

「元よりあの国に、麦わらの一味に用がある。

麦わらの一味を利用してでも助かるものがあるならやってやる。ただしッ!!麦わらの一味は俺が捕まえるッ!!!!!!」

 

方針も決まりスモーカー達はさっそく他の海兵達に指示を出したり準備に取りかかった。

残されたのはクザンとニコル。

 

「……という筋書きだけどいいんだよな?」

「まぁ、お兄ちゃんだったらいいというわね」

 

そこで肩の力が抜けたのかハァーとため息をつくクザン。

そう、さっきのはとっさにでっち上げた嘘。

そんな海軍に出来ないことを海賊にやらせるわけがない。

しかしここでそう言わないと"ハジメやロビン"が"何故海軍にいるのか?"ということを追及される。

 

ロビンが追いかけてきた。ぐらいはまだいい。

問題はハジメが"ロビンから逃げるために入った"となれば元凶はハジメじゃないかとなり、そのハジメは大将という肩書きを持っているためにそれこそ海軍的に、世界政府的に問題になってしまう。つまりは海軍や世界政府の信頼が失くなってしまう。

 

クザンとしてそれだけは避けないといけない。

そして最も避けないといけない理由は

 

「………で、書類なんだが……」

「自分でやりなさいグザン。だから"グズ"の"クズ"の"グザン"と呼ばれるのよ」

 

「でも手伝ってもらわないと終わらないんだよーッ!!!」

「はぁ。むしろこの姿を世間一般に見せたらダメね……」

 

涙目になりながら大きな袋に入っている書類を見せて訴えるクザン。それはすぐにでも終わらせないといけないものばかり。

 

「いいわ。その代わりアラバスタでは馬車馬のごとくやってもらうわよ」

「い、いや…あまり俺が関わると……」

 

「書類に埋もれて死にたいなら、いいわよ??」

「やらせてもらいますッ!!!」

 

ちゃんととします!!と姿勢を見せるためにもその場で書類を片付け始めたクザン。流石に床で書類整理はと思いニコルは近くにいた海兵に机を持ってきてもらうように指示。

 

用意された机で黙々と書類整理をしていると

 

「……で、いつ俺は殺されるんだ?」

「なに?そんな自殺願望あったのね」

 

「ち、違うッ!!って、あれ、本体から何も聞いてないのか?」

「ちょっとトラブルがあったみたいよ。いまは"パス"は切られてるの」

 

「……だから殺されなかったのか……」

「で、何をしたの?」

 

「言わねえよ。言ったら二度死ぬ羽目になる!」

「そう。殺される覚悟があるようだし私はやめておくわ」

 

優しさのように聞こえるが結局は殺される運命なのである。



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アラバスタ前のお話②

「また来たのか()()()

ここに俺がいることを知らんのか?」

 

アラバスタ王国のとある街にある豪華な建物の中。

顔に大きな傷があるが光の屈折によりハッキリとは見えない。

それでもその男が"サー・クロコダイル"だということはハッキリと分かった。

 

そしてその部屋にはもう2人。

クロコダイルにこの街に海賊が現れたと告げてきたショートボブでサングラスをかけた女と、その背後に同じくサングラスをかけた男が立っていた。

 

「さぁね。

でもサー・クロコダイルにとってはいいカモでしょう?」

 

「人聞きの悪いことをいうんじゃねえ。

()()()()()それが仕事なんだよ」

 

「流石王下七武海ですね」

 

「思ってもねえことをいってんじゃねえよ()()()()

それより海軍がこっちに向かっているのは本当なんだろうな()()()()()()

 

ロビンの分身体が突然変異により性格が変わったロビンと、そのロビンに記憶書き換えられたヴェルゴ。

どういう経緯でいまのクロコダイルと繋がったのか不明である。

 

「ええ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

ふふふ。そして国民の前で"王女を亡き者にした海賊共は許せない"といえば、もう誰も貴方を"英雄"と疑わないわ」

 

「そうか。ならあとやることは……」

 

そういってクロコダイルは最終確認するために書類に目を通し始めた。外にいる海賊は"任せる"ということなのだろう。

これ以上この国に"英雄"という印象を与える必要はなくなった。

そう、あとはこの国を落とすだけ。

 

ロビンは軽くお辞儀をしてヴェルゴを引き連れて部屋から出ていく。向かう先は報告した海賊への元。

そのままにしておいてもいいが、いま面倒事を残すわけにはいかない。

 

しばらく会話もないまま歩いていると、後ろから付いてきていたヴェルゴから

 

「……どうしてあのような嘘を?」

「海軍がこの国にくる前に"私"がくると踏んだからよ。

パスが切れていてもその思考は"私"と同じ。ならどう動くか簡単に分かるわ。

ならいまはクロコダイルにいい思いをさせて地獄に叩きつけるのも一興でしょ?」

 

「……本当に恐ろしいお方だ……

…しかし、いいのですか?こんなことをされても……」

 

「どうして?

すでにこの国は調()()()()()()()。それでも見つからないということは後は国王だけが知っている。ならこの国がどうなろうとも国王さえ生きてれば私は問題ないの。例えクロコダイルの野望が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()私には関係ないわ。それに……」

 

そしてゆっくりとヴェルゴの方を向いてニヤリと笑いながら

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……いいえ。全くもって思いません」

 

そういうことよ。とまた前を向き会話は終了した。

このロビンにも目的はある。そのためにクロコダイルと手を組んだだけなのだ。もちろんそれはクロコダイルも。

ただ一つ誤算があるとするならクロコダイルは知らない。

この女、ニコ・ロビンの本当の"力"を。

 

…………………………

 

「おーい()()()()()。この資料なんだが……」

 

確実に上司にいう言葉じゃないと分かっているが、いまモーガンは"ハジメ"の影武者として振る舞っている。そのために正体を知っているクザンにもため口とまではいかないがラフにいう必要があり、初めのころは胃に穴が空くんじゃないかと思ったぐらいだった。

 

いまはこうして出来るようになり資料について意見を聞こうとしたのだが、部屋にはそのクザンの姿はなく

 

「…………おい。何処に行きやがったあの()()()()ッ!!!」

 

こうして怒ることも"グザン"と言えるようになったので影武者として立派にやっているモーガンだった。

と、そんなことをいってもいられずにぶちギレそうになっている"ハジメ"の姿を見て狼狽える海兵達の元に

 

「落ち着いてください()()()。周りが怯えてます」

「知るか。というよりグザンは何処に行きやがったあのグズはッ!!!!!」

 

流石に見ていられなくなりオックスは耳元で

 

ハジメより口が悪くなってますよ…

「うぅ……わ、悪い……」

 

「しっかりしてください。

ちなみに"グザン"はアラバスタに向かっているスモーカー大佐の船に乗ってます。ついでにニコルもいます」

 

止めろよオックスッ!!!!!

出来ていたらやってますッ!!!!!

 

そんな会話に飛び込んできたのが

 

「ワシの孫がスモーカー大佐の船に乗っているのかッ!!!」

「あんたの孫じゃねえよッ!!!()()()()()()()()()ッ!!!」

 

突然現れたのはこの海軍のトップであるセンゴク。

もう海兵達はこのビックな三人がいる空間に怯えている。

 

「五月蝿いッ!!!

いつもニコルに冷たく当たっとるお前にいう筋合いはないわッ!!!

それにスモーカー大佐がニコルに手を出したらどうするつもりじゃ!もちろん簡単に返り討ちにするだろうがそれでも心に傷が残ったらどうするのだッ!!?」

 

「「10000%ありえない」」

 

そしてこういうやり取りでちょっとした覇気を使うものだから精神的に弱いものから倒れていくのだ。

 

「とにかくセンゴクさんは動かないでください。

青雉も一緒ですし、いざとなれば私も出ますので」

 

その言葉に落ち着いてきたセンゴクはオックスが用意したお茶を飲みなが

 

「……アラバスタかぁ……

いまあの国にはクロコダイルがいたな」

 

「ええ。

クロコダイルがニコルに余計なことをしなければいいのですが……」

 

「………()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「怖いことをいうな……」

 

これから起こるだろう予想を立てる。

ハジメがいないこの状況で果たしてクザンだけでニコルの暴走を止められるのか?それ以前にクロコダイルがニコルに対して余計なことをしないか?

 

そんなことを考えていたタイミングでオックスの小型でんでん虫が鳴り響いた。

それも個人的な連絡をかけてきたと分かったオックス席を外しますといい部屋を出たあと

 

「……お久しぶりですロビン様」

「要件だけいうわ。

"ニコ・ロビン"本体から逸脱した分身体がクロコダイルについたわ」

 

「なっ!!!??」

「すでに本体との"パス"は切れているけど"この私と向こうの私のパスは残っているの"つまりこの会話も聞かれている可能性があるわ。それを踏まえても今度の相手は、分身体だとしても"ニコ・ロビン"よ。私の思考も本体の思考も読まれている可能性が高いわ。」

 

「……どうされるのですか?」

「お兄ちゃんが鍵ね。

私や"私"の予想を越えたことをすれば……ね……」

 

とんでもないことを聞かされて戸惑うがオックスはしっかりとニコルからの言葉に耳を傾ける。

ニコルが、ニコ・ロビンが敵にまわるという最悪の状況。

それでもハジメがこの状況を変えると聞き少しは安堵する。

 

「でもあくまでもお兄ちゃんと本体は"向こうの私"だけしか手を貸さないと思うわ。クロコダイルは麦わらの一味がやるわ」

 

「海賊が王下七武海をですか……

これは海が大きく荒れることになるんですね……」

 

「手柄はスモーカーとヘルメッポにでもあげなさい。

グザンはその見届けにするから」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「こちらから連絡するわ。

まぁ()()()()()()()()()()()()()()ということをしているのだからこれもただの建前になるのだけど」

 

この言葉を聞いてなんとなくのことを理解したオックス。

麦わらの一味、ハジメやニコル、青雉、そして自分の立ち位置を。

元々そんなことをしていなかったのだ。ということは何かのために作り上げた設定。それが海軍が麦わらの一味を使って裁けない"悪"を裁く。ということになったことをとっさに理解したのだ。

 

「分かりました。お気をつけて」

「ええ」

 

連絡を切り軽く息を吐いたオックスは続けて別の所に連絡を入れ始めた。

 

「八咫烏。全団員"アラバスタ"に向けて出航。

ハジメ様、ニコル様の援護。そしてアラバスタの住民の避難。

()()()%()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()

 

『おおおおおぉぉぉぉッッ!!!!!』

 

会話を終了させたオックスは最後に

 

「月兎。知っていると思うが…」

「ええ。全て知ってます。

私達は常にニコル様のお傍に。都合の悪い記憶はこちらで」

 

こうして全て整った。

分身体であるニコルは言ってはいたがこの出来事、麦わらの一味がクロコダイルを倒して海軍が手柄をもらう。()()()()()()()()()()()()()()

 

きっとそれ以上の何かが起きる。

だからこそ我々は全力でそれを受け止めないといけない。

オックスがこうして大将の立場になったのは全てハジメやニコルのサポートなのだ。

 

"ハジメ"としてやっているモーガンにも手助けをしているが、この話しはするつもりはなかった。モーガンは"海軍"。きっとこの事を話せば妨害する可能性がある。モーガンがやることは"ハジメ"としての振る舞いをするだけでいいのだ。

 

「さて、私も準備をしないと……」

 

そしてすでにオックスの頭にはモーガンのことなんてなく、ハジメのために何をするかという思考になりながら行動を始める。



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アラバスタへ

「ニ"ャーーーッ!!!」

「なんか出たッ!!?」

 

アラバスタに向けて五日目。

突然現れた"海ネコ"に驚くルフィ達。

しかしここで海ネコに会うとなると……

 

「いいか…絶対に逃がすなよ……」

「当たり前だ……」

「もう食糧もすくねぇんだから……」

「まったく、一体誰のせいだ?ちゃんとしろよな」

 

「「「「お前のせいだこのボケッ!!!!!」」」」

 

「ご、ごべんなざい……」

 

じわりじわりと海ネコに近づくサンジ・ギン・ゾロ・ウソップ、そしてルフィなのだが、ここにきてまさかの食糧不足一歩手前ときた。理由はルフィが必要以上に食べてしまうこと。全員に割り振った料理を手当たり次第につまみ食いをしてしまい、その度に追加の料理を作ったり、ルフィに躾をしたり……

 

結局ルフィの本能による食欲は抑えられずこうなってしまった。

ここにロビンがいればルフィも抑えられただろうけど、どうしてもハジメはルフィに対して甘くなってしまう。それがここにきて……

 

まあ、それはさておき!

 

「やめなさい」

「やめて!!」

 

ハジメがゾロとルフィとウソップを、ビビがサンジとギンに拳骨を食らわせた。おもいっきりやったために痛みで海ネコの捕獲が中断になりその隙に海ネコは海の中へと潜っていった。

 

「なにするんだよハジメ!ビビ!!」

「海ネコはアラバスタでは神聖な生き物なの」

「それを、海ネコを食べるなんてバチ当たりなことをしないの」

 

「いや、言ってることは分かるけどよ……」

「こっちももう食糧が……」

 

確かにあと一食分だけ。

 

「私が魚を取りましょうか?」

「お前がやると魚全部"毒まみれ"になるだろうがッ!!!」

 

レイジュは前向きに魚を取るというけど、流石に毒入りはね…

いくらチョッパーが新しく入ってもそれはさせられないね。

 

「私は大丈夫よ」

「おれ、食えるぞ」

「ちなみに僕も」

 

「どんな胃袋してんだお前らッ!!!!!??」

 

ウソップの完璧なツッコミありがとう。

ルフィはロビンの修行で、ハジメは一時停止すれば問題なし。

 

「ねぇ。チョッパー。

毒入りのお魚、どうにか出来ない?」←ノジコ

 

「いや、流石に魚は……」

 

「なら食べたあとに治療すれば……」←ベルメール

 

「いやいやッ!!!レイジュの毒は何十種類も混ぜたような毒なんだぞッ!!!まだ俺にも分からない毒だってあるんだ!そんなの絶対にするなよなッ!!!」

 

「……私、チョッパーに診てもらうなら…食べるわッ!!!」 ←もちろんナミ

 

「ふざけんなあああああぁぁぁッ!!!

医者を舐めてるのかッ!!!」

 

何を考えてるのかこの親子は……

すると突然真顔になるナミにどうしたのかとビクつくチョッパー。そして、

 

「えっ。舐めていいの!!?」

「い……医者あああああぁぁぁッ!!!

誰か医者を呼んでくれええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!」

 

「チョッパー。君が医者だよー」

 

本編通りに変なことをいうチョッパー。

でも、こんな感じだったけ?このセリフ使ったの?

 

「でももう少しでアラバスタにはつくよ」

「そうなのか?」

 

「ええ。海ネコが出たならアラバスタには近いんです」

「つまり、いよいよ決戦ってことか!」

 

「なんでウキウキしてんだよゾロォ~」

「きっと暴れたりなかったんだと思いますよ……」

 

「気楽でいいな脳ミソ筋肉バカは」

「あぁ!!?脳ミソ花畑エロコックよりましだ」

 

「やるかてめぇ!!決戦前に卸すぞコラッ!!」

「サンジやめなさい。こんなところで体力使わないの」

 

「チョッパー君。これはどう扱うの?」

「これか。これはこうして…こうすんだ」

 

「はぁ~。癒されるわ~!!一家に一匹チョッパーね!!」

「……ベルメールさん」

「……ムリよ。この子はもう……」

 

「確かに可愛いわね~それに喋るタヌキなんて見たことないわ!」

「誰がタヌキだッ!!!」

 

「いや、スワン!スワン!!ついでになんか食べ物はないかしら?」

「おいおい。図々しいぞ。いきなり現れて……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………って、誰だお前ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!!」

 

違和感なく会話に参加していた人物。

いや、その前に気づこうか?なんで誰も気づいてないの?

 

「いや~突然船が爆発しちゃったのよ~!!

でも周りには軍艦とか海賊船は何もなかったのよ!もう~本当にジョーダンじゃないわよッ!!!」

 

なにかプリプリ怒っている人物。

すると疑似クードバーストをしていたボムが耳打ちで

 

(す、すまねぇ……イライラして、その…特大のやつを投げたんだ……まったくいない方向だからいいと…思って……)

 

なるほど。速くここにくればこの人物と会わずにすんだのにボムの余計なお陰で……お仕置きが必要かな?

するとその人物、こっちの方向を見て驚きながら

 

「えっ、なんでMr.ファ…」

「はい。確保」

 

「ちょっ、ちょっとッ!!!!!ジョーダンじゃないわよッ!!!!!」

 

…………………………

 

「つまり、このオカマが戦争を吹っ掛ける要だったわけか…」

「ですね。まぁ、こうして捕まえることも出来たのでお咎めなしですかね」

 

「た、助かった……」

 

流石のMr.2も複数から確保されれば抵抗も出来ずに捕まった。

腕を後ろで海楼石の錠で拘束していて死なれたらダメなので残っていたパンを口に突っ込んでやった。

 

「お、俺のパン……」

「諦めろルフィ」

 

「で、でもよ……」

「はぁ…アラバスタについたらまずご飯を食べますか…」

「よっしゃーッ!!!」

 

そんな餓死寸前みたいな顔で見られたらそうするしかないじゃないですか……

するとパンをモグモグと食べ終わったMr.2が

 

「…敵に情けなんて、海賊にしてはなかなかいいやつみたいね」

「まぁ、こうして捕まえましたし死なれても困りますし」

 

「でもあちきを捕まえた程度でこの戦争は止まらないわよ」

「それ、どういうことッ!!?」

 

「……うん?あああああぁぁぁッ!!!王女様ッ!!?

って、ことはこの船"麦わらの一味"だったのッ!!!」

 

「今更かよ」

「ってか、パン食っておいて良く言えるな……」

 

なんとも抜けているMr.2。

ウソップがツッコミたくなる気持ちは分かるよ。

 

「こ、これって非常にマズイんじゃない~!!」

「捕まった時点でアウトだろう」

 

「これほどきなさいよッ!!!」

「で、定番な言葉にってか……誰がほどく……」

 

「はい。どうぞ」

「え。ありがとう」

「「「なにほどいてるんだお前はッ!!!!!??」」」

 

ほどいたといっても海楼石の錠はそのままで、胴体ごと縛った縄をほどいただけなんだけどなー。

 

「ふふふ。油断したわね。アチキの真骨頂は能力じゃないのよ……」

 

その言葉に全員が警戒するなか冷静なハジメとレイジュは

 

「麻痺毒をお願いします」

「分かったわ」

 

「見なさいッオカマ拳法うおおおぉうぅぅぅぅぅ………………………し、痺れるぅぅ……」

 

起死回生を狙っていたようだけど残念。

海楼石もいらないぐらいに全身麻痺を起こしているMr.2。

 

「な、なにが、したいのよ…あんたは……」

「簡単ですよ。解放はしますから"スパイ"になってくれませんか?」

 

「は、はぁ?」

「はあああああぁぁぁぁッ!!?」

 

突然の言葉にMr.2よりも仲間のほうの驚きの声が大きかった。

色々訳の分からないことをやるとは思っていたが、今回は数段と訳が分からない。

すると一番このことに敏感なビビが

 

「な、何を言っているんですかッ!!?敵ですよッ!!!!!」

「ですね。だからスパイに適してるんじゃないですか。

上陸したらロビンも出てきます。そうなると向こうの"ロビン"とのパスが繋がる。そうなるとあとは時間との勝負です。こういう時、何が命運を分けると思いますか?」

 

「……相手の情報……ッ!!?」

 

「はい。ですからMr.2にはスパイとして送りましょう。

ついでにMr.5達も連れていっていいですよ。向こうとしても戦力は欲しいはず。いきなりミッション失敗で殺しはしないでしょうし」

 

確かにそれなら…と、考え込むビビ。

しかしそれに疑問をもったベルメールが手を上げ

 

「でもMr.2が裏切らないなんて保証は?

こっちに情報を渡すなんてリスクをおかすほどのメリットがないと……」

 

「あぁ。それは大丈夫」

 

するとハジメはMr.2に耳打ちをし、数秒でMr.2の表情が驚きに変わり目を見開く。

 

「ほ、本当なの……??」

「ええ。どうです、魅力的なものだと思いますけど……」

 

するとう~ん!!と悩み始めるMr.2。

ハジメの上げた提案というものがバロックワークスを裏切ってまで魅力あるものらしい。

 

そしてはぁ~とため息をついたMr.2は

 

「………いいわ。やってやろうじゃないの」

「決まりですね」

 

「そんな!簡単に信用してッ!!?」

 

ビビのいうことはもっとも。

しかしそんなビビにMr.2は

 

「ええ。その通りよね。

あちき、スパイをやるにしてもボスの命令には逆らわないわ。そんなことしたらあちきが殺されるからね。

でも戦争が起きる前に止めるんでしょう貴方達は?」

 

その言葉に全員が頷く。

それを見たビビはみんなの覚悟に改めて感謝し同じように頷いた。

 

「なら問題ないわね。

スパイとしてのでんでん虫による連絡は二回だけよ。

直接会ってもあちき達は敵同士。それでいいのよね?」

 

「はい。二回目の連絡の時にさっきの情報を教えますね」

 

「分かったわ。ほらMr.5、ミス・バレンタイン行くわよ!」

 

メリー号の後方にロープで繋いでいた小舟に乗り込むMr.2。

しかしあのサボテン島からここまで超特急できてためにもうボロボロになっている小舟だけど……まぁ、アラバスタまでなら持つかな?

 

「俺達…ここに残ったほうが生き残れるよな?」

「キャハハハ……諦めましょう……」

 

二人はすでに「イヤだッ!!!」などと反対もせずに受け入れていた。抵抗しても無駄だと分かったのだろう。

ハジメからも「いけ」、Mr.2からも「こい」という圧力。

逆らっても勝てるわけがないので諦めるしかない。

 

「それじゃね。麦わらの一味に、()()()()()()♪」

「今度その前その名前を言ったら……殺しますよ

 

「ッ!!!!??………そ、それじ、それじゃーねぇーッ!!バイビィーーーーッッ!!!!!」

 

ハジメの消えかかったようなマジガチトーンにビビったMr.2は急いでその場から離れようとMr.5と共にオールを全力でこいで逃げ出した。

 

…………………………

 

「はぁ…ハジメのやることは昔から分からなかったけどよ…」

「まさか、敵をスパイに引き込むなんてな……」

 

Mr.2の接触でいつ誰が敵になるか分からなくなった。

"マネマネの実"触れた人物を真似ることの出来る能力。

それを使ってクロコダイルはビビのお父さん、つまり国王に成りすまして戦争を起こそうとしている。

 

それは絶対に阻止しないといけないが、なによりMr.2を拘束する際にルフィ・ゾロ・サンジ・ウソップと主力メンバーがMr.2に触れてしまったのだ。実際にマネマネの実の実力を知るために真似してもらったのだがパッとみただけでは間違いなく騙される。

 

「そのための、包帯か…」

「でもよ、ゾロにしてはよく思い付いたな」

 

「……ッ!!?もしかしてすでに入れ替わってる?」

「はッ倒すぞテメェッ!!!!!」

「なんだ…ゾロかぁ……」

 

ふぅーと汗をふくウソップ。

このイベントはとても有名だけど、そうなるとビビは…

無意識にビビを見ていたハジメに本人が気付き

 

「どうかしましたか?」

「いや…ここで確実に終わらせよう」

「はいッ!!!!!」

 

全員が輪になり左腕に巻かれた包帯を見せあう。

そうしてここでルフィがあの言葉をかける。

 

「これから何があっても左腕のこれが仲間の印だ」

 

誰もが微笑みあい互いの"印"を確かめあう。

そして負けられない戦いが、始まるのだ。

 

「いくぞッ!!!飯屋えぇッ!!!!!

あとアラ()パスタ(麺類)

 

「アラバスタだ!ボケッ!!!」

「何度も間違えるなッ!!!!!」

 

………なんで、本編よりしまらないかな………



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再会

「飯屋あああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

 

……よっぽど、お腹が減っていたのか……

まぁルフィにしては我慢したほうか。

昔はお腹が減りすぎてカブトムシかと思うぐらい"樹液"を舐めたり、毒あるなし関係なく草を食べてたんもんなー

そのお陰で毒の耐性が、いや、これはロビンがつけさせたんだよなー

 

アラバスタに着いた瞬間に荷物も何も下ろすことなく全速力で、ギア2を使って飯屋まで走っていってしまった。

本編よりもスピードが速いなーと思いながらルフィのお昼ご飯は抜きにしようと考えながらルフィの分の荷物を下ろしていると

 

「ルフィさんが行っちゃいましたけど……」

「いいんだよビビちゃん。あのバカ船長は無視しよう」

 

「そのうちに戻ってくるだろうよ。

それでこれからどうするんだハジメ?」

 

「必要な物資の調達と情報収集。

それが終わり次第メリー号に集合。そこでロビンに出てきてもらって、あとは時間との勝負となるだろうね。

だから各自必要なものはここで買い揃えておいて。お金は僕から出すよ」

 

そういってハジメが指を鳴らすと突然その背後にマカナが姿を現した。

 

「1人10万ベリー配っておいて」

「じゅ、10万ベリーッ!!?」

「んな大金いいのかよッ!!?」

 

ナミとウソップが驚くけどこれは必要経費である。

 

「負けるわけにはいかないからね。

じゃ、一時間後にここに集合。チョッパーは少しここに残ってね」

 

マカナからお金は受け取った人から必要な物を買いに向かう。

そして残されたチョッパーほとても不安そうな表情でこっちを見ている。

 

「な、何をやらせるんだよ……」

「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。

予定通り()()()()()()()()()()

 

「わ、分かった!任せとけッ!!!」

 

声は強張っているがそれでも「やるぞ!」という気持ちを表すチョッパーも必要な物を買いに向かった。

するとさっきまでお金を配っていたマカナが

 

「やはり私は誰も必要ないのでしょうか…

驚くような登場シーンだったのに……」

 

「ああぁ………えーと、マカナ……??」

 

「やっぱり私は、私は、私は……」

 

昔から自分に自信のないマカナ。

それでもロビンが必要だと言ってくれたからロビンのためにどんな事もやる優秀な人物。

でもロビンがいないところだとマイナスなことを"本気で"考えてしまう癖がある。

 

「マカナ。一時間、ロビンに会ってきたら??」

「い、いいんですか!?」

 

「他の"月兎"達に比べて優秀だからね。特別だよ。

あとこれから後輩になる"カラー"もいるから指導もよろしく」

 

「分かりました!指導失敗したら舌を切ればいいんですね!」

 

「言ってない。言ってないよ」

 

いつもの調子に戻ってくれたマカナ。

さて、他の月兎にも働いて貰わないと……

 

「"リリーサ"」

「お呼びですかハジメ様」

 

リリーサ。

高身長でスレンダー、ロングの髪の彼女は月兎のNo.2

実力はもちろん月兎のまとめ役をやっている。

そしてそんな彼女は眼鏡をかけていてスーツ姿でそれが正に"秘書"である。

 

「出来るだけアラバスタの情報を集めて。

だけど踏み込むすぎないようにね。すでに"エージェント"が動き出しているからね」

 

「はい。

接触した場合はいかように?」

 

「そうだね……

出来るだけルフィ達の"経験値"になってもらいたから()()()()()()()()()()()()()()

 

「了解しました。一時間後にご報告をいたします」

 

…………………………

 

ナノハナ。

そこがルフィ達が訪れた街の名前。

そしてその街のある店の一つで事件が起きていた。

 

「えっ?死んでるの?」

 

不吉な言葉が店内に響き渡る。

その現場を見ていた1人が語り出す。

 

「あぁ。店主と会話をしている途中で死んじまったらしい。

こいつは旅の男だ。旅路で知らずに"砂漠のイチゴ"を口にしたんじゃねぇかとみんな言っているよ」

 

「"砂漠のイチゴ"??」

 

「赤いイチゴの実のような姿をした毒グモさ。

間違って口にいれちまったら数日後に突然死ぬ。

そしてその死体には数時間、感染型の毒がめぐる」

 

それを聞いたもの達は一歩二歩と()()()()()()()()()()()()()()()()から離れた。

 

「仏さんには悪いがこっちまで感染するわけにはいかないからな……」

 

「そういえばついさっき近くの店でも()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「ええ、知ってるわ。

()()()()()()()()()()()()相手をしていた人が困っていた時に突然にって……」

 

「まさか立て続けになんてな……」

 

人が立て続けに死んだ。

関わりのない人だとしてもそれが目の前に起きたのなら悲しみが込み上げてくるものである。

そんな男にせめて天国では幸せにと……

 

「ブハッ!!!!」

「ッ!!!??」

 

誰もが思っていたところで突然その男の体が起き上がり

 

「~~~~~。……まいった………寝てた」

「寝てたァッ!!!??」

 

"生き返った"ということよりも驚きの事実。

何せついさっきまで会話していたというのに突然倒れたのだ。

それがただの"寝てた"なんて…それも口に入れていたものを再び噛み始めていた。

目の前にいた店主も驚きはしたが相手はお客様だ。敬意を払って対応をする。

 

「だ、大丈夫なのかい?」

「うん?なにがだ?」

 

「い、いや…大丈夫ならいいんだ……」

「そうか。しかし何の騒ぎだ?」

 

「君の…と言っても分からないだろうね……」

「??」

 

何事もなかったように食べ進める男に店主も深くため息をつき気にしないようにした。死んでいなかったのだから良かったと。

 

「ところでおやっさん。聞きたいことがあるんだが」

 

するとその男はポケットから一枚の"指名手配書"を出した。

そこに写ったものは"麦わら帽子"を被った男。

 

「こんなやつ、町に来なかったかい??」

「いや、見てないと思うが…」

 

「よくもまぁ、こんな大衆の面前でぬけぬけと飯が食えたもんだな」

 

男の背後にから声が聞こえてきた。

それは明らかにいま店主に話しかけている男に向けている。

 

「"白ひげ海賊団"の"二番隊隊長"がこの国に何のようだ??

"ポートガス・D・エース"」

 

「「「「「し、白ひげ海賊団ッッ!!!??」」」」」

 

いきなり正体を言われ周り客は一気に距離を取る。

エースは頭をポリポリとかきながらもニヤけた顔で振り返り

 

「それはこっちのセリフだ。お前こそこの国に何のようだ?

一つ教えてくれないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"革命軍参謀総長"の"サボ"」

 

「「「「「か、革命軍参謀総長ッッ!!!!!??」」」」」

 

ついさっき"ハット帽子"の話をしていたのがこのサボという男。

こちらもニヤりと笑いエースに向かって歩き出す。

エースも椅子から降りてサボに向かって歩き出す。

 

客や店主はびくびくと怯えながら見ることしか出来なかった。

ビックな二人が出会い、いま正に激突するのだ。

止めることなんて出来ない。出来ることはただ被害が最小限にすむことを祈るだけ………

 

そして互いに拳が届くところまで来たところで二人が同時にアクションを起こす。もうダメだ!と誰もが目を閉じて現実を見ないようにしたところで

 

「「久しぶりだあああああぁぁぁッッ!!!!!」」

 

「「「「「ええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!!??」」」」」

 

まさかの抱き合う姿に戸惑いを隠せない。

いくら海賊と革命軍だとしても衝突は避けられないものだと思っていたのだ。

それがお互いがお互いを抱きしめあうなんて誰が想像できただろうか……

 

「なにしてるんだよサボッ!!!

お前とうとう白ひげに入る気になったのか?」

 

「白ひげのおっさんには悪いが手伝いをしたいのは"あっち"なんだ。お前こそこっちにくる気にはなったか?」

 

「わりぃが俺のオヤジは白ひげだ。

ルフィには悪いとは思うが、これが俺の道だ」

 

「いいんじゃねぇのか?俺だってルフィのために入ったわけじゃねえからな」

 

「だな!そういえばルフィを知らねえか?」

「エースもルフィを探してたのか?」

 

その会話の内容はよく分からないが、ハッキリとわかることは互いが互いに自分の組織にいれようとしていること。

いまとんでもない会話を聞いているのでは?と誰がびくびくしていると

 

「ルフィもそうだが、確実に挨拶をしないといけない人がいるからな……」

「だな……この前仲間が会ったんだが…メンタルズタズタにされていたぞ…」

 

「おいおいマジか……生きて帰れるか、俺ら……」

「どうだろうな……未だに勝てる気がしねぇ……」

 

同時にため息をつく二人。

それを聞いて誰もが思った。

 

(((((この二人よりも圧倒的に強いやつって……)))))

 

そんなことを考えていると突然に店の扉が勢いよく開き

 

「おっちゃーんッ!!!飯くれええええぇぇッ!!!!!」

「あ、あんた……」

 

麦わら帽子を被り、元気よく注文をする男。

そしてその男は店の中央にいる二人を見て目を見開て

 

「エ、エースッ!!!!??サボッ!!!!??」

「「ルフィッッ!!!!」」

 

まさか、探していた人が現れるなんて思わなかった人達はもう困惑を極めていた。

三人はお互いを抱き合いながら会話を進めていく

 

「久しぶりじゃんかよッ!!!!!なんでこんな所にいるんだッ!!!!??」

 

「お前を一目見ようとな」

「まぁ、それだけじゃないんだが……」

 

「やっぱりハジメと"師匠"に会いに来たのかッ!!?」

 

特にルフィは強調したわけではないのだが、エースとサボにはハッキリと"師匠"というワードが耳から入り脳天に突き刺さった。

その瞬間にテンションがバク下がりして凹んだような顔つきになり

 

「やっぱり……乗っていたのか……ッ!!」

「できれば……間違って欲しかった……ッ!!!」

 

「よく分からねぇけど、それ師匠が聞いたら殺されるぞ」

 

きっと、この瞬間は、ルフィが間違いない。とロビンを知るもの達はいうだろう。



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3バカ共

「上陸しないとはどういうことですかッ!!?」

「そんなに怒らないでよ。()()()()()ってことさ」

 

麦わらの一味から遅れること30分後のこと。

青雉を乗せた軍艦二隻はアラバスタに入港したのだがここで青雉ことクザンが自分は上陸しないと言ってきたのだ。

これに対してたしぎが詰め寄り真意をたしかめようとしているのだが、そこをニコルが肩に手をおいて

 

「構わないわ。どうやら「私」に会いたくない理由があるみたいだから。ただ、恐怖は引き伸ばせば引き伸ばすほど密度が増すだけなのに」

 

「……まだ、ここで死ぬわけにはいなかいだけだ……

アラバスタには来たんだ。俺はここから指示する」

 

「……マトモな指示なのかしらね」

 

俺にはやるべきことがある!死ぬわけにはいかない!といったカッコいいセリフの感じを出しているが、ただ単に怖くていけないし死にたくないから船から降りないとワガママをいっているだけなのである。

 

これには分身体であるニコルも呆れて必要以上の言葉を言うのをやめるほどだった。

スモーカーは葉巻に火をつけて口に加え、

 

「とにかくだ。まずは麦わらの一味の情報がいる。

それと平行してこの国の状況を確認する必要もあるな……

2つに分かれるぞ。俺とたしぎ達は麦わらを、ヘルメッポとコビー達はこの国を調べろ。分かったら青雉に連絡。そこから各自指示を受けて行動だ。いいなッ!!!」

 

「「「「「はいッ!!!」」」」」

 

…………………………

 

「それじゃエースもサボも俺に会いに来たわけじゃねえのか?」

 

「ついでだな。俺は"ある男"を追っている」

「俺はこの国にだな。どうやら"内乱"が起きそうだという情報が入ってきたからきたものの……いつ起きてもおかしくねぇ状況だ……」

 

そうなんだといいながら3つ引っ付けたテーブル上に大量の料理が置いてあり、それをものすごい勢いで三人がそれを食いつくしている。

店主ももう目が回り倒れそうなところを踏みとどまりながら必死に料理を作り続けている。

 

「内乱か……だったらこの国の王が相当悪いやつなのか?」

「それがそういうわけじゃねえんだよな……

いま調べてもらっているけど、どうやら黒幕がいるみたいなんだよ」

 

「あぁ、クロコダイルな」

 

「そう。クロコダイルが怪しいだ。

秘密結社みたいなもんでこの国を引っ掻き回しているみたいだ」

「クロコダイル……王下七武海がふざけた真似をしやがる……」

 

「まったくだッ!!!お陰でビビが凄く困っているんだよ!!!」

 

「そういえば国王の娘がビビだったな………

………………うん?……おい、ルフィ?……なんでビビやクロコダイルの名前を知ってるんだお前?」

 

「うん?そりゃビビが俺の船に乗ってるからな!!でよ、クロコダイルがビビの国を乗っ取ろうとしてるんだよッ!!!だからよ、俺がクロコダイルをブッ飛ばしにきたんだッ!!!!!」

 

そんなことをいいながら黙々と食べるルフィを二人はじぃーと見ながらワナワナと握った拳を震わせながら

 

「先に言えッ!!!このバカァッッ!!!!!!!」

「ガバブァッ!!!」

 

ルフィの頭を思いっきり殴り付けた二人。

それでもテーブルが壊れない程度で料理に顔面から突っ込む形ですんだのだが

 

「おいルフィ、一から全部話せッ!!!

何がどうなったら一国の王女様が海賊の船に乗るんだよッ!!!」

「お前の実力なら()()()()()()()()()()()()かも知れねぇけどこの案件は簡単に手出ししていいものじゃねぇんだぞッ!!!!!」

 

聞こえているのか分からないのに説明しろと要求する二人にあまりのお客は「よ、容赦ねぇ……」と心の底から同情したという。

 

…………………………

 

「なにやってるんだルフィのやつは……」

「あのバカがマトモに帰ってくるわけないがなかったな……」

 

一時間経過しルフィ以外がメリー号の前で揃った。

ゾロとサンジがそうぼやいていると船から降りてきたハジメが周りを見渡してため息をつく。

 

「はぁ…ルフィはまだか……」

「どうするんですかハジメさん」

 

「そうだね。

()()()()()()()()()()()()()()からそろそろ行動しようと思ったんだけど……」

 

「それは本当ですかッ!!!!??」

 

一刻も早くこの現状をどうにかしたいビビにとってハジメが持っている情報などはすぐにでも聞きたいもの。

ハジメに一気に近づいて何が起きているのか教えてほしいと熱い視線を送る。

 

「そんな目で見ないの。

まだ王国軍と反乱軍は膠着状態だよ。

でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そ、そんなッ!!!!!」

 

無事だという知らせと、もう時間がないという知らせに戸惑うビビ。それこそ少しでも早くどうにかしないと!と焦っているビビは

 

「早く"ユバ"にいかないとッ!!!反乱軍を止めればまだ間に合うッ!!!」

 

強く握った手から血が出るんじゃないかと思うぐらい強く、強くその手を握る。

 

今回の出来事は国王が"ダンスパウダー"と人工的な雨を降らせるものを使ったことが原因となる。

もちろんそんなものは国王が命じたことはない。クロコダイルの仕業である。

しかしそんなことを知らないものたちは国王がそのダンスパウダーの使用による"自然に起きる雨が降らせなくなるもの"だと知っていて使った信じてしまう。

 

そしてそれが引き金となり国王を引きずり下ろそうと反乱軍が結成され、それがもうまもなく国王軍と衝突しようとしていた。

 

ビビはそんな反乱軍を止めようとしているのだが

 

「どう止めるんだい?」

「どうって……それはもちろん私が説得をッ!!!」

 

「"国王の娘である王女"の話を聞くとでも?

ビビ、もう一度聞くよ。君のは()()()()()()()()()

 

「そ、それは……」

 

言葉が詰まるビビ。

ハジメは何も言わずに待っていると、何だか少しずつ騒がしい声がこちらに近づいてきた。

 

始めは何かが騒いでいる程度しか思わなかったが、ふと、本編のことを思い出したハジメはもしかしてと思ってジィーとその声のする方へ視線を移すと

 

「………あのバカ共……

ビビ、その答えはまたあとで。すぐに出航するんだろう?」

 

「は、はいッ!!」

 

「ちょっ、ちょっと待てよッ!!!ここから向かうんじゃねえのかよッ!!!」

 

「ここは買い出しと情報集めだけ。

こんな所にメリー号を置いていたら盗んでくださいっていっているもんだよ。

それにホラ、あそこを見てみて」

 

そうだな…。と納得したウソップもハジメの指差す方を、ドンドン近づく音に対してそっちに視線を向ける。周りのカヤ達もそちらを見ると、なにやら喧嘩をしながらこちらに向かっている人の影が見える。

 

「このバカルフィッ!!!

お前が余計に肉を頼まなきゃ見つからなかったんだぞッ!!!」

 

「そういうエースも酒を追加してたんじゃねえかよッ!!!」

 

「その前にお前らなんで金を持ってないんだよッ!!!」

 

「「サボが持ってると思ったから」」

 

「ふざけんなッ!!!!」

 

と、ルフィの隣に見知らない二人の姿が見える。

しかし知り合ったばかりというか、昔から連れ添っているような感じに見える。

 

そしてその後ろを、

 

「逃げんじゃねぇ麦わらッ!!!」

「ロロノア・ゾロッ!!!くいなの居場所を吐きなさいッ!!!」

 

「「「「「なに、海軍を連れてきてるんだお前はッ!!!!??」」」」」

 

飯屋で結局スモーカーがくるまで注文をしまくり、挙げ句の果てにその見つかった要因がお金が足りなくて店主に通報され、すぐ近くにいたスモーカーに見つかったという……なんとも残念なものである。

 

ともかく、こうして逃げてきた方向がなぜ仲間のところなのか……

 

「この3バカ共め……あとでお仕置きだな……」

「んなこと言ってる場合かあッ!!!」

 

「みんな船に乗り込んで。

ルフィが乗ったら出航。僕は足止めしておくから」

 

「ハジメさんッ!!!」

 

「いまは時間がないんだ。

あとはロビンがどうにかしてくれるから、頼んだよ」

 

そういってルフィ達の元へ駆け出すハジメ。

ビビはそれを申し訳なさそうに見つめナミが優しく肩に手を置いて「行きましょう」と合図

それに気づいたルフィの表情は元気いっぱいから、怯えた表情に一変し

 

「ハ、ハジメ……」

「ルフィ。()()()()()()♪」

 

「イヤだあああああぁぁぁッッ!!!」

 

このやり取りに即座に、いや、ハジメが見えた瞬間に逃げようとしたエースとサボだが

 

「お前ら。逃げたら……()()()()()()まで行かせるぞ♪」

「「すみませんッッ!!!!!」」

 

すぐにルフィの進むコースに戻った二人。

本当に何をしてるんだとため息をつくハジメの元にたどり着いたのはルフィ達を追いかけていたスモーカーとたしぎ。

 

「ハジメ……てめぇッ!!!」

「さて、これでも一味に入ってるからね。そちらの事情もあるだろうけど、いまだけは……邪魔させて貰うよ」

 

睨みあう二人。

スモーカーの性格ならハジメを無視してでもルフィを追いかけるだろう。しかしいま目の前にいるハジメには聞きたいことが山ほどある。

 

「だったら……てめえを捕まえて洗いざらい話してもらうぞハジメええええぇぇッッ!!!!!」

「あまり怒ると本当に血管切れますよ」



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開戦前の一戦

「がはッ!!!」

「スモーカーさんッ!!!」

 

「……う、うそだろう…あの人が…まるで子供みたいに……」

 

夢を見ているかのような衝撃に海兵達は驚いていた。

ずっと付いてきたスモーカーがこんなにも簡単にやられる姿を見るなんて……

 

(報告では"麦わらの一味"を使って国を救う。という設定で納得したと聞いたんだけどな……やっぱり完全に納得したわけじゃなかったのか……)

 

本当に子供か?と思うぐらいに「そこをどけッ!!!」「邪魔するなッ!!!」と駄々をこねるスモーカーに一発腹部に食らわせてあげたハジメ。

なんとか意識があるスモーカーはハジメに苦しみながらも睨み付ける。

 

「言っておくけどこの拳は"ガープ中将の一撃"ぐらいの強さだからね」

「て、てめぇ……」

 

それでも諦めないスモーカーは足元を煙に変えて上空で全身を煙に変えた。その煙はハジメの視界を奪い、いつ、どこから攻撃してくるか分からないように……

 

「はぁ~……これでも僕は"大将"なんだよ」

 

そういって"何もない空間を握る"ハジメ。

正確には()()()()()()()()()()()()。そして掴んだ煙をまるで一本背負いのようなフォームで動かす、その煙がドンドンハジメに握られた部分集まっていき、その煙が地面に当たる前にスモーカーの身体は元に戻り激突した。

 

「ガッッ!!!」

「そんな小手先じゃ僕には勝てることも、いや、ここから抜け出すことも出来ないよ」

 

それでも諦めそうとしないスモーカーにはぁ~とため息をつく。

仕事熱心なのはいいが今は時間がないのだ。

まぁロビンに任せておけば大丈夫なのだけど、それでもこの目で確認したいこともある。

 

と、考えていると隙が出来たと思ったスモーカーが力を振り絞って十手をハジメに目掛けて

 

「執念だけは、認めるよ」

 

あっさり十手をかわしたハジメはスモーカーの腹部に拳をかました。悶絶する声もなく気絶したスモーカーにたしぎは駆け寄り「スモーカーさんッ!!!」と身体を揺らした。

 

「目が覚めたら頭に登っていた血も落ちて冷静になれるだろうね。本当に昔から沸点が低いんだから」

 

「で、ですがどうして邪魔を!

どんな理由があろうとも相手は海賊でッ!!?」

 

「なら、潜入している僕も……捕まえるかい?」

 

その瞬間に放たれた殺気に周りの海兵達は次々に倒れていく。

覇気ではなく純粋な殺気。なんとか意識を保つたしぎだが指一本も動かせることが出来ずにいた。

 

(こ、これが……大将"絶黒のハジメ"の実力……ッ!!!)

 

改めて思いしらされる実力差。

これからどうなるのかと、不安感を必死に抑えているたしぎの耳にでんでん虫の着信音が聞こえてきた。

 

するとそれがハジメの耳にも届いたようで殺気を抑えでんでん虫を取り出した。そのお陰で殺気から解放されたたしぎは「はぁ…はぁ…」と乱れた息を整え始めた。

 

「はい、もしもし」

『これからあちきらオフィサーエージェントと社長・副社長の面会があるわ。通信は切らないでおくから好きに聞きなさい』

 

「助かります」

『分かっていると思うけど大声とか出さないで頂戴よ。

ここでバレるなんてジョーダンじゃない!だからね』

 

そのあとガサガサとなにか細工しているのか、しばらくそんな音が続く。その間にハジメも受話器に近くにあった布で音が届かないようにグルグル巻きにしていると

 

「い、一体なにが……」

「相手の1人に情報を流してもらうようにしてね。

うまくバレないようにしてくれればコチラが大分有利になるんだけど」

 

「信用していいんですかッ!!?」

「それを今から聞くんだよ。結局は自己判断。

どれが有益な情報なのか見定めないとね。ほら始まりそうだよ」

 

ガサガサとしていた音も静まってきたところで受話器の向こうから声が聞こえてきた。

 

…………………………

 

「遅かったわねMr.2」

「いいじゃないのよトイレぐらいゆっくりしても」

 

「ここでボスが来ていたら殺されていたなお前」

「ふふふ。心配してくれるなんて優しいじゃないMr.1」

 

「さっさと座りなよこの"バッ"!!!」

「せ~~き~~は~~~そ~……」

 

Mr.2の目の前にはMr.1とミス・ダブルフィンガー、Mr.4とミス・メリークリスマスがすでに着席していた。Mr.2の座席はミス・ダブルフィンガーとMr.4の間。いまもゆっくりと喋るMr.4の隣にMr.2も着席した。

 

「ッ!!?」

「どうしたのMr.2??」

 

「な、なんでもないわよ…」

「もしかしてあなた…痔だったの?」

 

「なわけないでしょうッ!!!ぶっ殺すわよッ!!!」

「はいはい。悪かったわ」

 

座った時に見せた苦悶の表情にミス・ダブルフィンガーはそうじゃないかと悟った。本人は否定しているがすでに彼女は、いや、周りはMr.2は"痔持ち"だと認識してしまった。

 

しかし実際はそんなことあるわけもなく、Mr.2のマリモみたいな膨らんだパンツの中にでんでん虫を隠している。そしてそれはポケットではなく股の間に仕込んでいるのだ。

普段からバレーのような動きをするMr.2なら股が開いた歩き方をしても何の不思議にもならない。だからこそそこにでんでん虫を隠したのだが、着席でそのでんでん虫が足に当たるなんて……ましてや貝の部分が皮膚に刺さるなんて思わなかったのだ。

 

(もし、生きて帰れてハジメちゃんに会えるなら……文句の一つぐらいはいってやるわよ~ッ!!!!!)

 

自分がおかしている危険がどれだけのものか分かっている。

見つかれば即殺される。それでも知りたい情報を持っているハジメに協力をしたのだ。文句の一つぐらいは言っていいだろうと改めて生き残るために行動しようと決めたMr.2。

 

そんな所に突然風が吹き、いや、なにかしらの粒子が風と一緒に流れ

 

「集まったようだな」

 

突然、上座に座った人物に全員がそちらを向いた。

そしてその瞳に映った人物は

 

「……おいおい、まさか社長が……」

「王下七武の"サー・クロコダイル"なんて……」

 

いままで顔を見たこともなかった社長の素顔。

それがまさか王下七武海なんて…と誰もが驚愕しているなか、一人さらに驚いている人物がいた。

 

(ジョ、ジョ、ジョーダンじゃないわよーッッ!!!!??

お、王下七武海なんて…見つかったら即死じゃないのよッッ!!!!!)

 

思っていた以上に危険なことに首を突っ込んだと後悔するMr.2。

しかし必死に表情を隠しているのでなんとか動揺はバレていないようだ。

 

「不服か?」

「「「「「ッッ!!!!??」」」」」

 

その言葉と共に放たれた殺気に誰もが表情を変えその圧力に耐えた。これだけでどれだけの実力の差があるかハッキリと分かった所でMr.1が口を開き

 

「いや、構わねぇ。社長が何処の誰であろうともやることは変わらねぇからな」

 

「それでいい。

まずは話し合いと行きたいところだが……どうしてここにいる?Mr.5、ミス・バレンタイン?」

 

クロコダイルの視線の先には海楼石の錠とロープで拘束されたMr.5とミス・バレンタインの姿があった。身体中にアザがありすでに抵抗出来ないほどやつれている……という"演技"をいましている二人はものすごく焦っていた。

 

(ほ、本当に大丈夫なんだろうなMr.2ッ!!!!!

化粧だけでこんなに怪我している風には見えるけどよッ!!!)

 

(キャハハハハハッ!!!バレたら殺されるわね……)

 

この街"レインベース"にある"レインディナーズ"の建物に入る前にMr.2から何ヵ所か服を破かれ、化粧で傷があるようにメイクされて、抵抗出来ないような感じ振る舞うようにと演技指導まで入った二人。

 

二人はすでにリタイアしている身。

ここで無傷のような感じでいくと殺される。

まだ望みを繋ぐにはMr.2と段取りした設定を押し通して信じてもらうしかないのだ。

 

それが二人が生き残るための方法。

 

「じょ、情報を持ってきたんだ……それで俺達にチャ、チャンスを……」

 

「ほう。じゃ聞かせてもらおうかその情報を」

 

「い、生きているわ。あのお姫様…それも海賊と手を組んでこの島に……」

 

しかしその情報を聞いても顔色を変えないクロコダイル。

するとバカにしたような表情で

 

「何を言ってやがる?そのお姫様の"亡骸"が海軍の手によって運ばれている」

 

「は、ハァァァッ!!!!??」

「な、何よそれッ!!!!??」

 

「知らなかったようだな。

ということはてめぇらにはもう用がないということだ」

 

まさかの"死んだ"ということに動揺する二人。

ついさっきまで一緒にいたのに死ぬはずなんてない。

ましてや乗っているのは海賊であり海軍なんて……

 

しかしそんな疑問を解いている暇はない。

クロコダイルの身体が砂となり宙を舞い、そしてその砂が二人の首もとに集まり

 

「グッ!!」

「ガッ!!」

 

手へと形を変えて首を絞められる二人。その手からクロコダイルへと形を取り戻し

 

「良かったなお前ら。俺の手で殺されるなんて」

 

あくまでもクロコダイルは絞殺しようと絞めている。

その能力を使えばすぐに身体にある水分を奪い取り"ミイラ化"させることも出来る。しかしそんなことはせずに苦しませて殺そうとあえて絞殺にしたクロコダイル。

 

そこへ慌てた様子でMr.2が

 

「ま、待ってボスッ!!!!!

そいつらはアチキの部下にしようとしたのッ!!!殺されるわけにはいかないわッ!!!!!」

 

「だったら……てめぇも殺られたい訳だな?」

 

さっきよりも濃い殺気に冷や汗を大量にかくMr.2。

この先間違った言葉をいえば二人よりも先に殺されると分かったMr.2はその先の言葉が、行動が起こせずにいた。

 

もう、何もかもダメかと思いきや

 

「その辺にしないクロコダイル?」

「……何のつもりだ?ニコ・ロビン」

 

いつの間にか部屋に入ってきていたロビンとヴェルゴ。

クロコダイルとロビンが睨みあうなかドンドンその手は二人の首を絞めていく。

 

「ガバッ!!」

「ゴボッ!!」

 

「殺さなくてもいいじゃない。

本人達は有益な情報だと信じてボロボロになりながらここまで来たのよ。少しは優しくしても」

 

「何のつもりだと言ったんだニコ・ロビン。

コイツらを生かすメリットが何処にある?」

 

「メリットならあるはずよ。

今から始まる"ユートピア作戦"には人手がいる。

特に"オフィサーエージェント"である二人にはやってもらいたい仕事があるの。確かに失敗はしたかもしれないけどここで()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に誰もが息を飲んだ。

明らかにクロコダイルに対しての暴言。これでは殺されると誰もがそう思った。しかし

 

「……なるほど。そいつはいただけねぇな」

 

するとあっさりと手を離したクロコダイル。

二人は咳き込みながらも必死になって空気を吸い込み生きていることを実感した。

 

「いいだろうニコ・ロビン。てめぇの案に乗ってやる。

だが何をやらせるかは俺が決める。いいな?」

 

「ええ。この作戦の指揮はあなたなのだから当然よね」

 

するとまたクロコダイルは砂となり元の席へと戻っていった。

その上座の席の後ろにロビンが立ち、さらに後ろにヴェルゴが立つ。

 

「それが"ユートピア作戦"の全貌だ。よく頭に入れとけ」

 

そういって目の前に作戦の書かれた紙を手に取り内容を確認。

そして目の前にある蝋燭の火に紙を近づけてそれを燃やした。

その間に新たに紙に作戦を書いたクロコダイルはそれをやっと息の整った二人に投げ捨てた。

 

それを拾った二人は作戦を読み、それを処分するために()()()()()()()()()()()()()()

 

その姿をみたクロコダイルはニヤッと笑い忠実な部下だと感じとり

 

「Mr.5。ミス・バレンタイン。

次はねえ。ここで成果をあげなければ……分かるな?」

 

「「はいッ!!!」」

 

「では、始めよう。"ユートピア作戦"を」

 

…………………………

 

そこまで聞いたハジメは受話器を元に戻して連絡を切った。

それに驚くたしぎは

 

「なんで切るんですかッ!!!!??どこでその作戦があるのか聞かないとッ!!!」

 

「いや。もうこれ以上は無理だろうね。

それに目星はついているよ。作戦場所は"アルバーナ"だ」

 

「アルバーナ……王宮のあるッ!!?」

 

「あとはどんな作戦か……多分王女様の亡骸を手にする王国軍と、それを阻止しようとする反乱軍。王女の亡骸を巡って戦争が始まる……とか、王国軍も反乱軍もお互いに戦争をさせるための仕掛けを発動されるとか……どっちみちロクな作戦じゃないだろうね」

 

ハジメの知っている本編ではMr.2が国王に化け国民に攻撃するという非道なもの。そして王国軍にも反乱軍にも潜入しているバロックワークスが戦争を始めるようにと仕掛けてくる。

 

しかし今回は"王女の亡骸"というものがあった。

これは本編ではなかったこと。そして王女、ビビは生きている。

なのにこの"王女の亡骸"を利用しての作戦に疑問があるハジメ。

 

(……ロビンの仕業、なのか?でもだとしたらなんの意味が?

そんな作戦が壊れてしまうかもしれない嘘をどうして……??)

 

理由が分からないがどのみちあのロビンとは対峙しないといけない。そしてこの戦争は絶対に止めないといけない。

なら、やることはたった一つ。

 

「たしぎ。全軍をアルバーナに。

きっと王国軍にも反乱軍にも潜入している組織の人間がいるはずだ。こちらも潜入して炙り出して排除するんだ」

 

「で、ですがそんな簡単にッ!!?」

 

「いや、むしろ今だからこそ分かるかもしれない。

もう作戦は最終段階だからね。失敗してもゴリ押ししてくるはずだ。ならちょっとしたハプニングを起こせば必ず向こうからアクションを起こす。そこを」

 

「一網打尽にする。ってことか……」

「スモーカーさんッ!!!!??」

 

意識を取り戻したスモーカーは腹部に手を当てながらそう発言した。そしてハジメに鋭い視線を送りながら

 

「いいだろう。乗ってやる!

ただしこの戦争を止めるまでの間だ!その後は麦わらを、てめえを捕まえるッ!!!」

 

「協力してくれるならなんでもいいよ。

あと()()()()()()()()()()()()()()()()()()

じゃないと……()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その目は、まるで闇。

これには逆らえねと悟ったスモーカーは「あ、あぁ…」としか言えずに了承した。

 

「そういえばそっちのニコルは?」

「コビーさんとヘルメッポさんの付き添いで……その……」

 

()()()。ちゃんと言おうね。怒らないから♪」

 

しかし顔が笑っていても、目が、笑ってない。

 

「あ、アラバスタの現状を知るために…その…情報収集をかねて………アルバーナに………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッ!!? いま、お兄ちゃんが私を呼んだッ!!?」

「し、師匠……流石に幻聴じゃ……」

 

「なに、ヘルメッポ。死にたいの?

私のお兄ちゃんへの愛が、幻だというの?」

 

「言ってねぇだろうがッ!!!

こんな所にハジメがいるんわけがないと言ったんだよッ!!!」

 

「ふ、二人とも落ち着いてくださいッ!!!!??」

 

とある建物の中。

そこの壁にはなにかしらの()()()()が書かれてあるがコビーもヘルメッポもなんのことか分からなかった。

 

「でもよ。こんな()()になにがあるんだよ師匠」

「そうね。いまとなったら私にとって()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ?アラバスタの現状を知るために入ったんじゃないんですかッ!!!!??」

 

「そんな情報、こんなところにあるわけがないわ」

 

簡単に切り捨てられたコビーは呆気に取られてしまった。

なら何があるのかと口に出そうとしたとき、開けた場所についた。

 

「あったわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()鹿()()()()()()

 

「な、何ですか……これは……」

 

そこには強大な正方形の石があった。

そしてその石の表面には読めない古代語が彫ってあり、それが六面にびっしりと刻まれている。

 

なんのことか分からないコビーに対してヘルメッポはガクガクと膝が震えだししまいには転倒して、震えながらその石に指差してこう言った。

 

「な、なんてものを探してるんだ師匠ッ!!!!??コイツはッ!!!!!」

 

「何か知ってるんですかヘルメッポさんッ!!?」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()

……なんてことしてくれたんだ師匠……これで俺もコビーも……()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()

 

「ま、抹殺ッッ!!!!??」

 

突然のことでわけの分からないコビーとパニクっているヘルメッポ。

そしてそれでも冷静なロビンは

 

「大丈夫よ。ここに来たことを知られなければいいのだから」

「んなことッ!!!!」

 

「ちょっと待ってくださいッ!!!ここに来ただけで抹殺対象になるんですかッ!!!!??」

 

「正確には探すだけでもダメよ」

 

「そ、そんな……」

「こんなところに何しに来たんだよ師匠ッ!!!!??」

 

「簡単よ。ここにくるの。もう一人の私も。私たちを裏切った私が」

 

それを聞いた二人は目の前の石についての驚きよりも更に驚愕した。

 

「ふふふ。本体の私に手間をかけさせる前に終わらせれば少しはお兄ちゃんも私にご褒美をくれるかしら?」

 

「ま、まさかそのために来たのかよ!ここにッ!!?」

「抹殺対象になるかもしれないのにッ!!!!??」

 

「そんなもの、些細なことよ。

いまの私にとってポーネグリフはお兄ちゃんに比べれば()()()()()()()()()()()()。でもあの私は違うみたい。だからここに来たの。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その含みのある言葉にコビーもヘルメッポは一瞬分からなかった。しかし次の瞬間、背後からの気配を感じて振りかえると

 

「分身体の癖にずいぶん生意気なことをするわね。

まぁ、おかげでここを見付けれたのだから感謝するべきかしら?」

 

「その分身体にいまからやられるのよ()()()()()()()??」

 

「まだあれを本体だと信じてるの?哀れな()()()()()??」

 

「ここまでくると天晴れよね、残念頭の()()()()()??」

 

そして、そんの一瞬だけ間が空いたあと、刹那に動きだした。

互いが互いに前方に大きな手を作り出して、その拳を相手に向けたのだ。

 

ぶつかりあう拳と拳。その風圧と衝撃により周りの壁や天井にヒビが入る。そしてコビーとヘルメッポはなんとかその衝撃に耐えていると二人のロビンが同時にこう叫んだ。

 

「「貴女が偽物よ。ここで消えなさいッッ!!!!!」」



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二匹と一人

「ただいまー………………なにこれ?」

 

スモーカー達に先にアルバーナに向かわせたハジメはすでに出航していたメリー号に()()()()()()()()甲板に上がってきたのだが、そこでハジメが目にしたのはルフィとエースとサボがボロボロにノックダウンしている姿だった。

 

周りの連中は唖然としている様子で、その中に一人、満足しているような表情をするものが

 

「もう、外に出てきてよかったの()()()

 

「えぇ。()()()戦っていてみたいで、パスを切った私のところまで雑音が入ってきているから五月蝿くて五月蝿くて………ムシャクシャしてたからこの子達に八つ当たりしたわ」

 

本当に満足で気分爽快って顔をするロビン。

よっぽどストレスが貯まってたんだな……

それもずいぶん強くなった三人相手に呼吸を乱さずに全くの無傷で……

 

するとエースが目を覚ますや否や

 

「…あのな…ッッ。……俺達は、サンドバッグじゃねんだぞ。師匠ッ!!!」

「だったらもっと抵抗しなさい」

 

「んな"覚醒"した相手に勝てるかッ!!!!」

「だらしないわね」

 

その言葉にエースは怒りマックスみたいだがこれ以上は間違いなくやられると判断して言葉に出さないように必死に堪えている。

そんなやり取りをしている間にサボが目を覚ましていたようで

 

「で、でもよ…マジで"覚醒"は大人げないというか……」

「あら?敵だった場合そんなこと言えるのかしら」

 

「いや、それは、そうだけどよ……」

「つまり、修行が足りないのよ。お分かり?」

 

今度はぐうの音も言えないことを言われて黙り込むサボ。

そして最後にロビンはルフィを見るや否や思いっきり腹部を蹴りあげた。「ゴバッブッッ!!!!??」と声をあげ上空に飛ばされたルフィはそのまま落下して悶えながら……

 

「……はぁ、はぁ……し、師匠……」

「一番貴方がだらしないわ。ルフィ。

ここまで修行をしたのにも関わらず……これは、追加メニューが必要ね」

 

すると小刻みに震え出すルフィは

 

「……い、いやだ……し、死んじまう……」

「大丈夫よルフィ。人はそんな簡単には、死なないわ」

 

物凄い笑顔で言うものだから心が折れたルフィはまるで野良猫のように怯えてハジメの後ろに隠れ震えていた。

 

もう本編の、あの、自信満々のルフィはいないんだね……

まあロビン相手によくここまで耐えきったと言うべきか……

 

「そこまでにしとこうか。

ルフィにはクロコダイルをやってもらわないといけないから」

 

「…………………え??」

 

「ちょっとまってロビン。なにする気だったなわけ?」

 

「大丈夫よお兄ちゃん。

人は無意識でも動けるから。私はルフィ達をそういう風に鍛えてきたから」

 

「いやダメだから…ッ!!それはやり過ぎだからねッ!!!」

 

そう…分かったわ。と残念な表情をするロビン。

この子マジでルフィの精神をぶち壊す気満々だったようだ。

すると涙に鼻水に、あらゆる穴から水が出てるんじゃないかと思うぐらい精神的に崩壊する寸前のルフィが

 

「あ、あ"りがどう…バジメッッ!!!」

「泣くほどに……もう…ちょっとやり過ぎだからねロビン」

 

「いつもより少しハードだったかしら?」

「そのパワーは、今回は他に回してね」

 

「そうね……じゃエースとサボで」

「そういうことじゃないよッ!!!!??」

 

名前を呼ばれた瞬間に二人ともルフィと同じようにハジメの後ろに隠れた。まったく…イライラしているのは分かるけど、今回はちょっとやり過ぎなんだよな……

 

「あのねロビン。今回のことが()()()()()()()出きる範囲だよ。なにか要望があれば聞いてあげるから、だからちょっ……」

 

「結婚式。結婚式がいいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「は、はああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!??」」」」

 

四人の声が重なり大空へと響いた今日この頃。

一人はもちろんハジメ。

なに、このタイミングで言っているんだと驚いている。

次に驚いたのはエースとサボ。

そう、この二人はハジメとロビンが婚約していることを知らない。

そしてもう一人は、そのハジメのもう一人の婚約者であるベルメールである。

 

「なに言ってるのッ!!!!??」

「ダメかしら?なら婚前旅行でいいわ」

 

「それより結婚とか…ハジメと師匠ってそういう関係なのかよッ!!!!??」

「ルフィッ!!!!」

 

「あれ?言ってなかったか?」

「「言ってねぇよこの愚弟がッッ!!!!」」

 

「結婚式も婚前もダメよッ!!!なに考えてるのよッ!!!!!」

「五月蝿いわねベルメール。この余り者が」

 

「はっ倒すわよッ!!!!!

大体そんなことしたら()()()()どうなるかッ!!!!??」

 

「………そう、だったわね。

あとから面倒くさいのは嫌ね。……はぁ、なら丸1日デートでいいわ」

「あっ。それ私も」

 

「要らないでしょう貴方は?」

「本当に、その喧嘩買うわよ?」

 

とんでもないことをぶっこんできたロビンに頭が痛くなり座り込むハジメ。

そのハジメとロビンの関係性を話してなかったルフィはエースとサボにまたしても思いっきり頭を殴られる。

そしてこの元凶であるロビンは勝手にベルメールと共にこの戦いが終わった後のデートプランを練り始めた。

 

…………いまからクロコダイルとの決戦前である。

 

なのに、こんなにやりたい放題な現象にもう笑うしかないビビ。

つられて周りの者達も苦笑しながらアルバーナに近い海岸線に向かって船を進める。

 

…………………………

 

「こ、これって……」

「おお。それなりに揃ったね」

「へへ。カルーにも手伝って貰ったんだ」

「クエェッ!!!」

 

海岸線にある岩場。その影に船を止めた一行の目の前にはカルーが隊長を勤める超カルガモ部隊の六匹。

そしてふて腐れた表情をするラクダ一匹に大きなカニが一匹。

 

「や、ヤサラクダに、ヒッコシクラブまでッ!!!」

「なんだ珍しいのか?」

 

「え、えぇ…特にヒッコシクラブは幻と呼ばれているの…私も始めてみたわ……」

 

「このラクダの友達らしいんだ。

でも初めはかなり嫌がったんだぞ。こいつら」

 

というかいまでもヤサラクダはかなり不安そうな表情で全くこっちを見ていない。おいおい、まさかコイツら……

 

「チョッパー。もしかして女の子の話、した辺りぐらいから乗り気なったんじゃ……」

 

「なんで分かったんだ!?そうなんだよ。

ロビンとナミとか女の子が多いと言ったら引き受けてくれて」

 

「……本編、通りかよ………」

 

カルガモ部隊は予測していたけどこの二匹はまさかだった。

だってアレ、ヤサラクダはユバに向かうときに出会ったんだよな。そのあとヒッコシクラブだったけど……

 

「なんか、都合が悪かったのか?」

「いや……でもそいつら女友達しか乗せないとか言ってるんじゃねぇのか?」

 

「本当にすげぇなッ!!!女の子以外は死んでも嫌らしい」

 

「やっぱり……」

 

それを聞いた男子共は不満があるようでヤサラクダとヒッコシクラブに抗議をしているのだが全く聞く気もたないようだ。

 

「いいから乗せろよッ!!!」

「ヴォッ!!!」

 

「俺達は女しか乗せない主義だ。って言ってるぞ」

「ふざけんなッ!!!」

 

それでも諦めないルフィとウソップ。チョッパーに通訳して貰いながら説得しているようだが全く効果なし。

なら、あの手しかないのだけど……あまり気が進まない。

 

「ナミ。ちょっと」

「なに、お兄さん?」

 

「…………って、事なんだけど」

「いいわよ。ノジコもベルメールさんもやってくれるって」

 

「言ってないわよ私達……」

「……まぁ、想像は、つくわね……」

 

ノリノリのナミにため息しか出ない二人。

準備のために一度船に戻ってもらい三分後。

 

「これでどう、お兄さん?」

「もう、恥ずかしい……////」

「私、こんな服、いや………////」

 

三人はこの国の民族衣裳、その中でも露出が高く、まるで踊り子のような服装で登場した。

肌にはビキニのような面積が少ないものしか付けておらず、あとはスケスケのシースルーのようなものを羽織っているだけに過ぎなかった。

 

「「ッッ!!!!??//////」」

「うひょおおおおおぉぉぉぉッッ!!!!」

 

「おい。関係ねえやつも壊れたぞ」

「アレはとっくに壊れてる」

 

ヤサラクダとヒッコシクラブのために着替えて貰ったのになんか一人混じって興奮している奴がいるな……

 

とにかく二匹に素直に聞いて貰うためにナミ達にはその姿で説得を頼んだのだが

 

「ねぇ。私達を、男達も一緒に乗せてくれない?」

「「ッッ!!!」」

 

「主義を曲げてでも乗せてやる。って興奮気味に言ってるぞ」

 

「「「「「だろうな」」」」」

 

本編はナミとビビが交渉したけどこうやって親子ってのが聞いたんだろうな。

よし、これで一気にアルバーナに迎える。

 

「じゃ、誰がどれに乗るのか?

そしてアルバーナについてからの行動を決めようか」

 

「クロコダイルは俺がぶっ飛ばすッッ!!!」

「オッケイ。元々ルフィに当てる気だったから。

でも圧倒してもらいたいから移動の間にサボに"力の使い方"を教えてもらう」

 

「あぁ。それぐらいなら協力出来るな」

「頼むぜサボッ!!!」

 

ニシシッと笑うルフィ。こうしてサボと一緒に何かをやれるのが嬉しいのだろう。

 

「で、ゾロとくいなには僕が。

そろそろ次のステージに上がってもらおうかな」

 

「いいぜ。やってやる」

「よろしくお願いします!」

 

「サンジはエースから。

きっと面白いものを掴めると思うよ」

 

「確か"火拳のエース"だったな……確かに面白そうだ…ッ!!!」

「ルフィがお世話になってるしな。やるか」

 

「あとの人は、ロビンにお願いしてますので」

「「「「「「「待て待て待てッッ!!!!!」」」」」」」

 

ハジメに呼ばれなかったナミ・ノジコ・ベルメール・ウソップ・カヤ・ギン・ビビは一斉に同じ言葉を綺麗なハモりでツッコミを入れてきた。

 

「なんでそうなるんだよッ!!!」

「それはもう、短時間で強くするためにだよウソップ」

 

「なら自分達でどうにか……ッ!!!」

「出来ないからロビンに頼んだんだよカヤ」

 

「む、無理よお兄さん……」

「大丈夫だよナミ」

「無理だってッ!!!」

「頑張ろうねノジコ」

「それ、私も、なの?」

「ですよ、ベルメールさん」

 

「よ、よろしくお願いしますッッ!!!」

「元気がいいねビビ」

 

「忘れられて、なかったんですね……ッッ!!!」

「えっ。いま感動するところなの、ギン……」

 

それぞれ説得のような会話をしていると肩を叩かれたハジメ。

振り向くと未だに呼ばれなかったレイジュが

 

「で、私はどうするのかしら?」

「そうだね……レイジュは何が得意?」

 

「暗殺」

「なんかどっかで聞いたことがあるフレーズだなオイ」

 

「お兄ちゃん。それ私も得意よ」

「知ってるから。もう分かりきってるから」

 

いまここでレイジュに暴れてもらったらルフィ達の修行にならないからな……かといってなにもしないのは………

 

「じゃ、先に言ってもらってビビのお父さん。国王を守ってもらおうかな?」

 

「お、お願いしますッッ!!!!!」

 

「いいわよ。ヴィンスモーク、いえ、ジェルマ66としてアラバスタの国王と縁が出来るのは好ましいから」

 

その言葉に初めは喜んだビビだがその裏にある政治的なことに微妙な表情へと変わった。それでも助けてもらえるならとお願いを取り消すことはせずに再度「…お願い、します……」となんとも煮え切らない感じでレイジュにお願いをした。

 

「それじゃカルガモ部隊から一人お願いしていいかな?」

「クエェッ!!!」

 

「この俺"ケンタロウス"が運ぶぜッ!!!って言ってるぞ」

「よろしくお願いするわ」

 

名乗り出たのは葉巻をくわえ、ギリシア風の兜をかぶっているワイルドなカルガモ。その背中に乗ったレイジュを連れてケンタロウスはトップスピードで駆け出した。

 

「はえーな!!」

「カルガモ部隊のスピードでどれくらいで着くのかな?」

 

「……一時間。頑張ってもらえればもう少しは……」

「そっちのヒッコシクラブとヤサラクダは……」

 

「ハサミとマツゲよッ!!!」

 

なんか、自信満々に言ってくるナミ。

えーと、超聞き覚えがあるような……

 

「……ちなみに、それって……」

「この子達の名前ッ!!!"カワイイ"でしょッ!!!!!」

 

笑顔で言ってくるナミ。

「どうして止めなかったの!?」と親子であるノジコとベルメールを見るが、視線があった瞬間に反らした。いつもの暴走で止められなかったのかよ……

まぁ、そのハサミとマツゲは未だにナミ達にメロメロで(人間も一人混ざってるけど)本人も気に入っているようだしいいのかな……

 

「………ハサミとマツゲは、とうか、ハサミはどれぐらい走れるのかな?」

 

「舐めるなよな。少し劣るがそれなりに早ぇーぜ。って、言ってるな」

 

「(こんな口調だっけ?)じゃ、振り分けようか」

 



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私よ。

(さて、どうしたものか……)

 

月兎No.2のリリーサは今王宮へと忍び込んでいた。

八咫烏のような"戦闘向き"とは違い"暗殺"に長ける月兎はこういう潜入の類いは朝飯前。

 

それに対しては苦にはならないのだが問題はいま王様とその家来が話しているないようだった。

 

「ビビがすでにアラバスタに帰ってきていると?」

「バァッ!……マァーマァー。その通りです」

 

「先にイガラムの言葉を聞いていなかったら…」

「ええ。()()()()()ということを聞いていた時点で戦争がはじまっていたかもしれません……」

 

「その黒幕があのクロコダイルとは……」

 

リリーサが潜入し、王様達の話しに聞き耳をたて始めたタイミングでアラバスタに向かっていたイガラムが到着した。そしてビビはアラバスタに着いていますと話したタイミングで慌てて入ってきた兵から()()()()()()()()()()という言葉が入ってきた。

 

もちろん王や家来、チャカとペルは慌てたが、イガラムの決死の言葉に落ち着きを取り戻して、そしていま黒幕の話が出たところである。

 

「しかし…いくらイガラムの言葉でも信じられん。

なぜ海賊がこの国のために手伝いをする?」

 

「ルフィ君やハジメ君にとっては"国"というよりも"ビビ様"のためだと思います」

 

「娘のために。か……

完全には信じられんが、生きていてくれたならそれでよい」

 

報告を上げた兵から話を聞くと、その情報はアルバーナに一番近い港に入ってきた船からもたらされた情報のようだ。

そしてその情報をすぐに消そうとチャカが進言したところで

 

「いや。これを利用しよう」

「ど、どうしてですか国王ッ!!!!??」

「このままだとこちらの軍と反乱軍が戦争をッ!!!!??」

 

「分かっておる。しかし戦争を止めてもクロコダイルは残っておる」

 

「「ッッ!!!!??」」

 

「もちろん戦争などはさせぬ。

軍の方には"ビビは生きている"と情報を流せ。

相手がこの戦争を起こそうとするならきっと仕掛けてくるはずだ」

 

つまり王国軍のみビビが生きている情報を流せば、王国軍達が"死亡説"は誤解だと広め始める。しかしその中にもしその"死亡説を広める者"がいれば

 

「つまり……王国軍にスパイが……」

「いると考えたほうがいいだろう。炙り出すためにも国民には悪いがビビが亡くなったという情報はそのままにしておこう」

 

「では止めていた噂を広めたのちに、軍に生きているという情報を流させる」

「そしてその中から亡くなったという情報を流すものを探すのですね」

 

確かにそれをすれば敵を炙り出すことは出来るだろう。

しかしその分危険が伴う。Mr.5のような敵と対峙したとき国王軍では太刀打ち出来ないだろう。

 

それに敵を炙り出すには国王軍だけではダメである。

反乱軍にもきっと侵入しているものがいるはずだ。

 

(ハジメ様の命は情報収集。そして経験値となる敵と交戦は控えること。……なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()())

 

どこで、なにが、きっかけで、どんな流れで、など。

そんなものを全て短縮させて見ただけで分かるような構図を。

そんなこと、こんな戦争寸前の、ましてや邪魔となる敵を巻き込んで進めるなんて不可能だと思われる。

 

しかしリリーサの思考はすでに分かりやすい構図を作り出すために計画を練りだしていた。人の心が、憎しみが、簡単には変わることがない以上、そう簡単に思う通りに動かせないというのに。

 

しかし、だから、こそ、

 

(成功させれば、間違いなくロビン様はお喜びになるッ!!

そうすればきっと私を………ッッ!!!!!)

 

と、興奮するあまり口元から()()()()()が出てきたのはご愛嬌である。

 

………………………

 

「………この世の……終わりかよ……」

 

ヘルメッポが見ているのは正に地獄。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

腕を折り、足を折り、首を折り絶命させた途端に手が生えて首を折られる。

そんな人を人だと思えない状況、淡々と人形を壊しているかのように……

 

その光景に耐えられずにコビーは隣で泡を吹いて気絶している。ヘルメッポもいっそう気絶したかったのだが

 

「人の死角から攻撃するのは当たり前なのよ。その死角をどうやって勘ぐられずに攻めるのかを考えなさい」

 

「こんな時に言わなくてもよ……」

 

「つまりヘルメッポの方に私達を差し向けても……」

「凄く師匠の話が聞きたいですッッ!!!!!」

 

こうやって脅しをかけてくるのだ。気絶したら殺される!

すでにリタイアしたコビーも複数生えたロビンの手により往復ビンタされて起こされていた。

 

()()()()()()()()()滅多にないのよ。つまりそれは世界最高峰の戦闘が見れるということ。気絶なんてしてる暇ないわよ」

 

「……は、はい……」

「世界最高峰どころか、この世の終わりだろう……」

 

「終わらせてあげましょうか?」

「怖えよッ!!!ってかどっちが言ったか分かんねぇよッ!!!」

 

「「私よ」」

「どっちもかよッ!!!」

 

こういう時だけ息がぴったりなロビン。

その反応に苦笑いをするしかないコビー。

 

「時間稼ぎ、というわけではないようね」

「貴女を生み出した責任、取らないといけないから」

 

「しなくていいわよ。この世界に払ってもらうから」

「それだとお兄ちゃんの邪魔になるのよ」

 

「そうよね。でも()()()()()()

「だからこそ、()()()()()()()()()()

 

「「うっとしいわ!早く消えなさいッ!!!」」

 

………………………

 

「どういうことなのよッ!もうジョーダンじゃないわよッッ!!!」

 

クロコダイルの計画。

それはMr.2が国王になりすまし戦争のキッカケを作るというものだった。

しかしそのためには反乱軍が強く国王軍に不信感や怒りを持たないといけない。そしてその不満が爆発するキッカケが王女ビビの死。

反乱軍でもビビという存在は大きい。そのビビが死んだとなると反乱軍や王国軍は戦争以外の選択肢を取れなくなる。というのがクロコダイルの狙いだったのだが……

 

(どういうことなのよッッ!!なんで王女様が生きているという情報が出回っているのよッ!!!!)

 

ビビ王女は死んだ。確かにその情報はすぐに王国軍にも反乱軍にも広まった。そのために戦争が始まり大混乱に陥る予定だった。

なのに出撃前にビビ王女の生存と、その王女がこの国に戻ってきたという情報が出回り始めたのだ。

それが抑止力となり出撃が止まったのだ。

 

(でも、ハジメちゃんとの契約を考えるならこっちのほうがいいのよね〜。クロちゃんにつくか、ハジメちゃんにつくか……)

 

一旦王様の姿を解除して悩むMr.2。

クロコダイルにつけば失敗すれば殺される。

ハジメにつけばクロコダイルを討てさえすれば殺されることは低いだろう。

しかし暗殺者としてはそれはどうだろうと考える。

 

Mr.2も命はほしい。

生き残るために、何をするべきか……

 

思考を巡らせたどり着いたMr.2はでんでん虫を取り出し

 

「もしもし、ハジメちゃ……ハジメン」

『………まぁ、それならいいでしょう。なんでしょうか?』

 

もう少しで逆鱗にふれるところだったMr.2の額には冷や汗。

呼吸を整えて心を落ち着かせて

 

「いまどこにいるか知らないけどアルバーナではもう戦争が始まりそうよー」

『そうですか……』

 

「でね。どういうわけか王女様が死亡したって情報が出回っているのよ。で、いまは生きてるって情報が…もう何が起きてるのよ!!」

 

『……………………なるほど』

「えっ。どういうことなのよッ!!!??」

 

「いえ。でもこれで大体の全容把握が出来ました。

お約束した情報を教えますね」

 

一体さっきの情報だけで何をどう理解したのか分からなかったが、ハジメとの約束である情報をMr.2は

 

「それ、ちょっと待ってくれないかしら?」

『どうしましたか?』

 

「あんた達は本気でクロちゃんを倒すつもりなのよね?」

『それは手段であり、国を救うのが目的。なんですけど……ルフィは完全にクロコダイルを倒す。と分かってますので』

 

「………なら、アチキを含めた"バロックワークス"を倒した後でもいいわよ」

『……おかしなこといってますよ?』

 

そんなことMr.2も分かっている。

でも確認しないといけないことがあるのだ。

 

「大丈夫よ。それにこの情報はホンモノだからね」

『それは信じますけど……』

 

「なら、次に会った時、麦ちゃん一味の誰に当たっても敵同士だからね〜」

 

そういってでんでん虫を切ったMr.2。

全てが終わったとき、どうなっているのか……

今まで思い描いていた未来が少し面白くなり思わず微笑んだMr.2は、敵である麦わらの一味を倒すために動き出した。



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開戦開始

「なにが、一体、どうなってやがるッ!!」

 

多少のトラブルがあったとはいえ順調に物事は進んでいっていたはずだった。

しかしクロコダイルの思惑は最終局面で大きく狂い始めたのだ。

 

違和感を感じたのはニコ·ロビンがいなくなったこと。

元より()()()()()()()()クロコダイルだが、それでもニコ·ロビンは最後の最後しか裏切らないだろうと思っていた。

目的のものを手に入れるために手を組んだのだ。

それを無下にするほど愚かではないと理解していた。

しかし最終会合の後に姿が見えず連絡も取れなくなった。

ここにきて目的を達成せずに離脱なんてありえない。

 

かといってニコ·ロビンを探すなんて手間はかけたくなかった。

どちらにしろ必ずニコ·ロビンは現れる。あのポーネグリフを読むために。

 

なのでこちらは後回しにして戦争を始めようとした。

港にビビの遺体が届き、そして後戻り出来ない戦争が始まると。

 

なのに、戦争が始まらないのだ。

突然に広まった王女ビビの帰還。

すぐにその噂を消そうとしたのだが、ことごとく社員が捕まっていく。中には行方不明になるものさえ。

 

ならばとビビの遺体を直接見せつければと思い港についたクロコダイルだったのだが……

 

「どうしてここに"青雉"がいやがるッッ!!!!」

 

海軍大将青雉。その男がビビの遺体が乗っている船にいるのだ。

こんな情報は入っていない。いくら王女だとして遺体を運ぶだけで大将を使うわけがないッ!!

 

すぐさまその場から離脱したクロコダイルだがすでに腹の中は沸くり返っていた。

 

(あの女……ニコ·ロビンがああああああぁぁぁッッ!!!)

 

体を砂に変えて一気にアルバーナへと向かうクロコダイル。

しかしこの判断が後に間違いだったと気づくのはそう遠くない未来であった。

 

……………………………

 

「はい。連絡ありがとうございます。

あとはしっかりと書類整理してて下さい。終わった量で罰の重さが変わりますので」

 

『無くなったりしないのかよッ!!』

 

「ふざけるな。このクソロリコンが」

『だからちがッ』

 

言い訳を聞く前にでんでん虫を切ったハジメ。

軽い殺気にビビなど慣れていないメンバーは冷や汗をかいている。チョッパーにいたっては涙目でナミの後ろに隠れている。

 

……でも、気をつけて。ハァハァと息を切らしている今のナミは危険ですよー。

 

「クザンからかしら?」

「そう。どうやら港にクロコダイルが現れたみたいだよ」

 

「方向違うじゃねえかよッ!

おい!カニッ!方向を返ろッッ!!」

 

「変えなくていいよ。ルフィ、ちゃんと話を聞こうね」

「でもよ。クロコダイルが港にいるんだろう?」

 

「そのクロコダイルがこっち向かっているみたいだよ」

 

その言葉にニヤッと微笑むものと、緊張するもの、顔が青ざめるものもいる。

戦闘力は大分良くなったんだけどなーまだメンタルが追いついてないんだよねー

 

「まあ、どうやってもアルバーナに着くのが先だろうから。

ルフィ。やるならそこで暴れていいからいまはサボの講座を聞きてなさい」

 

「でもよーよく分からねえんだよー!」

「ったく、昔から直感しか働かないやつだからな……

ハジメ。ルフィは実戦じゃなきゃ無理かもしれねえぞ」

 

サボが丁寧に言葉で教えているがどうも理解していないようだ。本編でもなんか感覚的や直感が多かったような……

 

「いいから根気強く言ってあげて。

じゃないとルフィに身につかないからね」

 

「んなこといってもよ……」

「お兄ちゃんの言うこと、聞けないの?」

「やるからッ!やるからこの手をどけてくれ師匠ッッ!!!」

 

いくらおバカなルフィでも何回も言い聞かせたらいざとなったら思い出すだろう。

すると袖口を引っ張る感覚があり振り向くとそこにビビが何やら気まずそうな表情をしていた。

 

「どうしたのかな?」

「いえ……さっきの会話を聞いていたら、なんかクロコダイルをワザと逃したような気がして……」

 

「逃したね。

あんな港で戦闘が起きても被害が増えるだけだし、最悪船にに乗られて逃亡、なんてこともあるかもと考えて……」

 

「それでも!……それでも長引く戦争を止めるには…」

 

「前にも言ったけど、クロコダイルを倒しただけじゃ止まらないよ。そこにキミが、ビビが声を出して皆を説得させる必要があるんだ。

この国は国王の声が届かないかもしれない。でもまだキミの声は届くはずだからね。アルバーナで全て終わらせよう。大丈夫、フォローは任せておいて」

 

「……はい。よろしくお願いします…ッ!!」

 

……………………………

 

「本当に来るのかMr.2??」

「間違いなく来るわよ〜」

「まさか副社長が、ニコ·ロビンが裏切るなんてね……」

「バッ!私は最初から信じてないさッッ!!」

「そ〜〜〜う〜〜〜だ〜〜〜ね〜〜〜」

 

アルバーナへの入口。

その入口は東西南北に一つずつあり、その1箇所をバロックワークスの最高戦力が固めていた。

 

「でも、いいの?社長に、Mr.0に報告しなくても」

「さっき部下から王女を乗せた船がある港で目撃したって情報があったから問題ないわよ〜」

 

「……なら、あとはここに来る愚かな海賊どもを始末すればいいわけだな……」

 

「そんなの朝飯前さッ!!このバッ!!」

 

こちらは最悪海賊共を足止めすればいい。

そんなことせずとも"ただの海賊"なら問題ない。

あるとするなら………

 

「Mr.3を倒せるほどの実力者ってのは、頭に入れたほうが良さそうね」

 

「たかがMr.3程度……」

 

「そういえばMr.5ペアはどうしたのよ?」

 

「混乱を広げるために国王軍に向かわせてるわ。

Mr.5の能力なら敵からの爆撃だって思わせられるからね」

 

慎重なミス·ダブルフィンガー。

強者の余裕なのか、ため息をつくMr.1

クルクルと回るMr.2。

常に起こっているミス·メリークリスマス

そして

 

「さっきから何を黙ってるんだいMr.4ッ!」

「む〜〜〜こ〜〜〜う〜〜〜か〜〜〜ら〜〜〜」

「さっさと喋りなこのバッ!!!」

 

途中から話に入ってこないMr.4に激を飛ばすミス·メリークリスマスだが、ゆっくり話しているMr.4の指差すほうを見てみると、こちらに向かってくる土煙が

 

「敵が来てるじゃないかいッッ!?」

「き〜〜〜て〜〜〜る〜〜〜よ〜〜〜」

「遅いんだよこのバッ!!!!」

 

まさか土煙が見えるところまで気づかなかったなんて。

しかしプロの殺し屋。バロックワークスの社員はこの程度では動揺しない。

 

そう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「土煙でよく見えないな……」

「ええ。でも、なにかおかしくないかしら……??」

「そうかしら??()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッ!! それだッ!!!!この距離であんな影が見えるわけが……ッッ!!!??」

 

気づいたときにはすでに見えていた。大きなものが蠢いているのを。

とんでもないサイズのカニがこちらに向かってきているのを。

そしてその足元には超カルガモ隊が爆走している。

 

「な、何なのよアレはッ!!!!??」

「ヒッコシクラブ……なんでこんなところに……ッ!?」

「それに……フードで顔が隠れてやがるッ!!!!!!」

「どうするのさ!!このバッ!!!!」

 

ヒッコシクラブの上に複数人。もちろん超カルガモ隊にもフードを被った者達が乗っている。

これだと王女が誰なのか全く分からない。

 

「あのカニを止めるぞ」

「なら、動けなくすればいいわね」

 

()()()()()()()()M()r().()1()()()()()()()()()()()()·()()()()()()()()()

その二人が向かってくるヒッコシクラブに向かって激走し、その足を切断し止めようとその手をあげ……

 

「やめてもらおうか」

「ハサミさんには、手を出さないでもらいたいです」

 

ヒッコシクラブから降りてきたフードを被った()()()()()()Mr.1とミス·ダブルフィンガーを止めた。

しかしヒッコシクラブだけじゃない。

Mr.2とMr.4ペアが超カルガモ隊を止めようとしたが

 

「やらせると思うか??」

「あら、いい男ね〜」

 

「やりましょうウソップさんッ!」

「やる気だな、カヤ……」

 

「邪魔するんじゃないよ!このバッッ!!!」

「じ〜〜〜ゃ〜〜〜ま〜〜〜」

 

Mr.2にはサンジが。

Mr.4ペアにはウソップとカヤが。

 

「ビビはチョッパーと一緒に国王様の所に向かって。

ナミ達とギンは中央広場に」

 

「わかったわお兄さん」

「3人の護衛はおまかせを」

 

超カルガモ隊に乗ったナミ、ノジコ、ベルメール、ギンはそのままアルバーナへ向かう。

そして残ったハジメとロビンとルフィ

 

「いいルフィ。クロコダイルはビビを狙う。

そして港からアルバーナに向かってきてるから」

 

「ここでぶっ倒せばいいんだな!!!」

「アホ。砂の能力者に向こうに有利な砂漠地帯で戦うな」

 

「お兄ちゃんは王宮でやりなさいって言ってるの。

民家が壊れるより王宮のほうがいいと考えたのよ」

 

王宮が壊れても()()()()()()()()()()()

そう考えれば戦う場所は決まってくる。

 

「だったらビビと一緒でも良かったんじゃねえのか??」

 

「何が起きるか分からないから分かれたんだよ。

それにビビを囮に使うと本人が知ったらクロコダイルに向かうだろうしね」

 

「ビビにやらせるのはダメだな!分かったッ!!」

「本当に分かったのかしら………」

 

はぁーとため息をつくロビン。

きっと被害は王宮以外にも広がるだろうけど仕方ない。

それでもこうして言っておけば少しは変わるだろう。

 

「僕とロビンは分身体と合流するから。

きっとそこが一番激しい戦いだろうからね」

 

「おう。分かった!」

 

「手伝いにきてもいいわよ」

「…………………………………はい」

 

随分間が開いたあと返事をするルフィ。

イタズラな表情をするロビンにもう泣きそうな表情をするルフィに少しだけ同情するハジメ。

 

「それじゃ、クロコダイルのことは任せたよ」

「おうッ!!」

 

「エース、サボ。ルフィの邪魔にならない程度に側にいなさい」

 

「………手は、出さないからな師匠」

「一人で決められる案件じゃないんで」

 

「構わないわ。むしろ手を出したら……もぐわよ?」

 

「「こえぇーよッッ!!!!!」」



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VS Mr.4ペア①

「なるほど……うまく誘導してるわ……」

 

先にアルバーナへとついたレイジュが見たのは中央広場で大規模な戦闘を起こしているところだった。

ビビの死から生きているという情報を流して撹乱させても結局本来の原因を取り除かなければこの戦いは終わらない。

レイジュは知らないが本編よりも参加人数が減っているとしてもそれでもこうして戦いは行われている。

 

"ダンスパウダー"

この雨を降らせる粉を使用したことにより砂漠地帯であるアラバスタに雨が降らなくなった。そしてそれを指示したのが国王。それにより国民は反乱を起こして今にいたる。

つまりは"雨"という原因を解決しなき限りは止まらない。

 

「まぁ、私の仕事は国王を守ることだから関係ないわね」

 

そういってその場から離れるレイジュ。

それは別の人がやる。緊張した表情で佇むあの子に任せたのだった。

 

………………………

 

「私達の邪魔をするんじゃないよこのバッ!!」

「あっぶねッ!!くそ!地中からなんて……ッ!!」

「ウソップさん。背中合わせです。これなら死角は消えます!!」

 

地中から現れたミス·メリークリスマスの鋭い爪をギリギリかわしたウソップ。すぐさまカヤの助言でお互いの死角を補うために背中合わせになるのだが

 

「そんなもの無意味だよッ!やりな!Mr.4ッ!!」

「………フォッ!!!」

 

Mr.4が持っていたボールが宙に浮きそれをバットで振り抜く。

まっすぐに飛んだ先にはウソップ達が。

 

「カヤッ!!」

「キャッ!!」

 

とっさにカヤを突き飛ばしたウソップ。

さっきまでいた所にボールが通り抜け地面に当たると爆発を引き起こした。

 

「なんだあのボールはッ!!!??」

「なかなかやるね。でもこれならどうだい??」

 

するとMr.4がミス·メリークリスマスが掘った穴に入り身を隠した。すでにウソップ達の周りは穴だらけになっておりどこから奇襲してくるのか分からなかった。

すぐにウソップとカヤは背中合わせになり周りを警戒をする。

 

「……ウソップさん……」

「分かってる……あの訳のわからない()()()()()()()()()()()()()が出したボールなんだろうな……」

 

Mr.4等ペアとウソップペアが戦闘開始となった合図が"ラッシー"と呼ばれる生き物なのか銃なのか分からない存在がクシャミした瞬間に飛ばされたものが爆発した時だった。

 

あまりの速さと突然のことで何が飛んできたか見えなかったがさっきの出来事により正体が分かった。しかし分かったところであんなに速いものが当たったり近くで爆発されたら無事ではいられない。

 

そして向こうはペアとしての戦闘が格段に強い。

ミス·メリークリスマスが地中から奇襲し、そちらに警戒している好きにMr.4が攻撃を仕掛けてくる。

 

一方ウソップ達はペアとしての戦闘は初めてだ。

連携のようなものが取れずにMr.4ペアに翻弄されている。

 

「ってか、なんだあの犬はよッ!!!?」

「犬、なんでしょうか……その割には銃の形を……」

 

『そんなの簡単だよッ!!』

 

すると近くにある数カ所の穴から声が響いてきた。まるでエコーがかかったように。

 

『銃に()()()()()()()()()ってだけさッ!!』

「なっ!!?銃に悪魔の実をッ!!!」

「そんなできる訳ッ!!?」

 

『現に存在してるんだよこのバッ!!!

それに雑談は終わりだよ。いまから始まるラッシュにあんた達はヤラれるんだよッッ!!!!!』

 

すると離れた穴からラッシーが顔を出してクシャミをした。すると口からあの爆発するボールがウソップ達目掛けて飛んできた。すぐに避けたウソップ達だがボールが過ぎた先に穴から現れたMr.4がバットでボールを打ち返した。

そのスピードはさっき飛んできたボールより速く間一髪避けたウソップ達だが、通り過ぎた瞬間にそのボールが爆発した。

 

幸いスピードが出ていたボールのお陰で爆発に巻き込まれることはなかったが、爆風に二人は吹き飛ばされ地面に倒れてしまったカヤに穴から現れたミス·メリークリスマスが奇襲をかける。

 

しかしすぐにきづいたウソップがミス·メリークリスマスに向けて"鉛星"を放ち、それを避けるためにカヤから離れたミス·メリークリスマスはまた穴へと隠れてしまった。

すぐさまカヤの元へ駆け寄り立ち上げたウソップは怪我がないことを確認してまた背中合わせをする。

 

「ごめんなさいウソップさん。足を引っ張って……」

「何言ってるんだカヤ。そんなことはねぇ!!」

 

しかしカヤは自覚してしまっていた。

いくら戦闘技術を覚えてもそれを利かしきれてないのなら意味がないと。いま正にウソップのお役に、いや、肩を並べて戦えるというのに……

 

ロビンに教えてもらったカヤだけの戦闘スタイル。

ウソップを真似てトランプを使ったりしたがしっくりこず、色々やった結果最近になってしっくりとするものが見つかった。

 

……………………………

 

「へえ。いいわね。そのスタイルはカヤに合ってるわ」

「ほ、本当ですかッ!!?」

 

アルバーナへ向かう道中で行われている個々の強化。

その中でカヤはある一つの攻撃手段を見出しのだがそれは《ある二人の人物からヒントを得て作り出したもの》》。

しかし、それはカヤにとって躊躇してしまうものでもあった。現に喜ぶはずの表情ではなく気まずそうな表情であった。

 

「でも、納得してないようね」

「……はい。医師の端くれとはいえ、これはいいのかと思いまして……」

 

「いいんじゃねえのか??」

 

するとその様子を見ていたチョッパーが声をかけてきた。

 

「ドクトリーヌがよく言っていたんだ。言うことを聞かない()()は時には強行手段に出ろって」

 

「い、いいのかな??」

「カヤは人を生かす医者だ。それは俺が知ってるからな!!」

 

チョッパーの言葉に心が少し楽になったカヤ。

そしてそこに影響を受けた人物であるレイジュが近寄り

 

「それにそれは私のように無闇に撒き散らすものじゃないわ。貴女だから出来るやり方。それで十分じゃないかしら??」

 

「………はい!!」

「それじゃ私が持ってる毒なんだけど()()()()()()()()()()()()?()?()

 

「医者に即死毒を勧めるなッッ!!!!!」

 

…………………………

 

「…………ウソップさん。あの女の人、任せてくれない??」

「おい、カヤ!」

 

「大丈夫。私は医者だから。

だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………分かった。無茶はするなよ」

「うん!」

 

タイミングを見計らったようにまたラッシーが顔を出してクシャミをする。飛び出したボールはウソップ達に向かっていくが

 

「飛んでくる方向が分かれば……ッッ!!!!!」

 

素早く鉛星を放ち空中でボールを爆発させたウソップ。

そしてそのボールを打ち返そうとして穴から出てきていたMr.4はそれを見て驚いていると

 

「驚くのは……これからだぜッ!!!」

「フォッ!!!??」

 

…………………………

 

「どうしたんだいMr.4の奴は……」

 

普通なら穴に戻ってくるはずのMr.4が戻ってこない。

不意打ちをするには問題はないがこうも戻ってこないのはおかしいと感じ地上へ出るのを躊躇ってしまう。

 

どうしようかと悩んでいるとこちらに近づく足音が

 

「何やってるんだいこのバッ!!!!!」

 

振り向きMr.4を罵倒しようと声を上げた所で突然肩に違和感を感じた。なんだと思い腕を動かそうとするが

 

(なっ!!!?腕が動かないッッ!!!!!??)

 

緊急事態が発生したと察知したミス·メリークリスマスはすぐさまこの場から逃げ出そうとしたのだが、次の瞬間に両足にさっきと同じ違和感を感じた。

もしかしてと動かそうとするが腕と同じように足が動かなくなっていた。

 

「医療では、ツボを押せば各所の動きを良くすることが出来るんです。でもそれを逆に利用出来れば動けなくなるんですよ」

 

真っ暗闇からこちらにゆっくり向かってくる人影。

いや真っ暗だから人影なんてものはないのだが"モグモグの実"を食べたモグラ人間であるミス·メリークリスマスにはその姿が見えていた。

 

モグラは目が退化して鼻が目の代わりになっているがモグラ人間である為に目は暗闇でも見える使用へと変わっていた。

そして今回それが、仇となる。

 

ハッキリと見えてくるのだ。

少女の手に、その指と指の間に挟み持った"細い針"を。

そして無表情でこう言ってくる。

 

「この針には更に麻痺毒が塗ってます。

ツボに刺さらなくても部分麻痺を簡単に起こすだけの強さあるんですよ」

 

そういってカヤは腕を振った後にミス·メリークリスマスの喉に針が刺さったのだ。その細い針自体に人を殺す程の殺傷力はない。刺さったとしても痛くもなく違和感さえないと言われるほどの細い針。モグラ人間となり人間より感覚が鋭くなったために違和感を感じたが普通の人には気づきにくいのだ。

 

(こ、声が…出ないッッ!!!??)

 

これも麻痺毒の効果なのか、喋ろうとしても喉が喋ろうとが口が動かないのだ。

 

「安心してください。私は医者です。

患者の動きを止めることはしても殺しはしません。

でも………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

そういって一瞬で持っていた針を入れ替えたカヤ。

その針にはさっきとは違う毒が塗られてある。ミス·メリークリスマスの視界からも見えるほどに毒々しい色をした毒が……

 

「や、やめろ……やめろこのバッ!!!!!!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()



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VS Mr.4ペア②

「……君が、私の護衛を、かね??」

「お下がり下さいッ!!!」

 

王室へと()()()()()()()()()()()警戒するチャカとペルー。この王室までは何人もの兵士がいたはずなのにそれを無傷でここまで来たのだ。それだけで十分に警戒するべき相手。

しかし、そんな緊迫な状況になりそうになったところで

 

「お待ちください!!この者はビビ様をここまで連れてこられた海賊の仲間です!!!」

 

「この者が……しかし、先程"ヴィンスモーク"と……」

「ええ。私はジェルマの人間よ。でも訳あってあの海賊団にお世話になってるの」

 

排除しようとする殺気は解いたがそれでも警戒は緩めないチャカとペルー。

 

「あれだけの軍事国家を持つジェルマが何故一介の海賊に……」

 

「弟が、いるのよ。それが理由だけど…まぁ、いまじゃ貴方の娘さんと同じようにあの海賊だからいるのかしらね……」

 

その言葉を聞きチャカとペルーに警戒を解くように指示をだす国王"コブラ"

そしてレイジュは改めてお辞儀をして

 

「私はヴィンスモーク·レイジュ。麦わらの一味の船長であるモンキー·D·ルフィからの指示のもと国王であるコブラ様を護衛させてもらうために参上いたしました」

 

…………………………

 

「ヘクシュンッッ!!!」

「危ねえッ!!!」

「こっち向いてクシャミするなルフィッ!!!」

 

…………………………

 

ドカンッッ!!!!!と砂漠に鳴り響く爆音。

ラッシーのクシャミによる放たれるボール型の爆弾。避けるのはなんとか出来るのだが避けた後にたまに背後から打ち返してくるMr.4の攻撃の方が厄介なのである。

 

しかし穴から奇襲からミス·メリークリスマスがいなくなったのは正直助かった。

 

(カヤのやつ…上手くやってるみたいだな……ならッ!!!)

 

男なら女の前では大きくあれ。

どんな嘘をついても、たった一人のために、信じてくれる人のために、勝つと。

 

しかし、そんな僅かな考え事、Mr.4が見逃すわけもなく

 

「フォッ!!!!!」

「やッッッ!!!??」

 

ラッシーからの砲撃とMr.4の打ち返し。

それが同時にウソップに迫る。

すぐさま逃げようとするが足元には飛んでくるボールが複数転がっており

 

(時限ッ!!くそッッ!!!)

 

気づいた時には遅かった。

向かってくるボールと落ちているボールの爆発はほぼ同時。

この戦闘一の大爆発がウソップを巻き込んだ。

 

…………………………

 

人は"死"を間近にすると走馬灯を見るという。

そしてそれはウソップも。

それは昔、ハジメから手紙を貰ってマジシャンを目指し始めたこと。

隣の島へ出掛けたことがあった。その島にウソップが目指しているマジシャンが公演にくると知ったからだ。

間近でみたそのマジックはとても凄く、ウソップがハッキリと目標と出来た瞬間だった。

 

そしてその帰り、ある露天で見つけたのが

 

「おっ。なかなかイカスバックだな!!」

「兄ちゃん。お目が高いね。コイツは一点物だよ」

 

「マジか!!でもな…値段が……」

「買うなら今しかないよ!!」

 

一目惚れ。というのか、どういうわけか欲しいと思った。

値段は高いが今日という日、こうして目指す強さを見つけたウソップは感情が高ぶっており

 

「よっしゃッッ!!!!買うぜッッ!!!!!」

「いい判断だぜ兄ちゃんッ!!!!オマケだ!!!1割引きだぁ!!!!」

 

いい買物をしたと喜んで帰ろうとしたところで店主が

 

「おっと言い忘れた!!そのバック!!!()()()()()()()()()()()!!!!!」

 

「食いしん坊?なんだそれゃ??」

 

()()()使()()()()()()()!()!()!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()

 

「だから何をッッ!!!!」

 

人混みに流され、視界からのその店主が見えなくなった。

そして次にその場所にはその店主はいなかった。

まるで今日見たマジシャンの奇跡を見たかのように……

 

…………………………

 

「……………フォッ!??」

 

確実に倒したと思ったMr.4。

倒れた姿を確認しようと爆発した所を見ていたのだが、いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

確かに爆発し巻き込まれたのだ。なのにその爆発がある1箇所に吸い込まれていくのだ。

 

何が起きていると見ていると爆発による爆炎も爆風も衝撃も全て吸い込まれていき、その1箇所に立っていたのは爆発に巻き込まれたはずの相手だった。

 

「…ったく。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

先程の爆発はウソップが持っているバックの中に吸い込まれていったのだ。一体何が起きたのかと驚いているMr.4に

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉を聞いてMr.4はラッシーのところまでダッシュで移動した。相手のいう事が本当ならラッシーと同じ"物に悪魔の実"を食べさせた物になる。

 

つまりそれは未知なる驚異になる。

より確実に、完璧に、叩き潰す必要がある。

 

ラッシーはそれを感じ取ったのか軽い咳込みで沢山のボールを生み出しMr.4はそれを一斉に宙に投げて一瞬ですべてのボールを撃ち抜いてみせた。

 

広範囲による爆発。さっきの吸い込みがあったとしてもこれだけのボールが一斉に爆発すれば吸い込みは追いつかずに倒せる。と、そう睨んだのだが

 

()()()()

 

確かにMr.4の耳にそう聞こえた。

だが一斉に放たれたボールは確実に爆発を起こし巻き込んだ。

 

そう、巻き込んだのだ。なのに……なのに、未だに爆炎と爆風がある中でも油断できないと本能が告げていた。

そしてその予想は的中することになる。

 

「ふぅ〜。危ねえ……」

 

生きていた。それも無傷で。

なぜ、あの爆発の中をそんなにも何も無かったかのようにいられるのか……

 

「な〜〜〜に〜〜〜を〜〜〜し〜〜〜た〜〜〜」

 

「それを教えたら"マジシャン"として失格だからな

その変わりに楽しんでもらえるように頑張るからよッ!!!!」

 

ウソップは両手をパンッと叩いた後に広げるとその空間から、何もなかった空間からステッキが現れた。

本当にマジシャンなことをするウソップに対して理解できないMr.4。いままさに"命の奪い合い"をしているのだ。そこにマジックなんて……

 

「レディース&ジェントルマンッッ!!!!」

 

今度は両手を空に広げた瞬間にまたもや何もない空間からハトが複数現れ羽ばたいた。

本気でマジックを始めるウソップに呆れる。なんてことはなく、むしろ警戒を一気に増した。

 

ここまでくるとこのマジックは何かあると直感が働いた。

そう、さっき見た爆発を防いだのもこのマジックだとしたら()()()()()()()。それごとねじ伏せればいいと考えたMr.4は何が来てもいいように身構えた。

 

「まずお披露するのは瞬間移動。成功しましたら拍手をッ!!!」

 

パチンッと指を鳴らすと突然ラッシーの上に布が現れてラッシーを覆い被った。モゴモゴと動くラッシーにウソップはまた指を鳴らすと、突然動きを止めて布からでも分かったフォルムが消えて布が地面に落ちた。

 

まさかと思いラッシーに向けていた視線をウソップに向けるMr.4の視界には口を縄でグルグルに縛られたラッシーの姿だった。

 

「ッ!!!??」

「おっ。驚いてくれたみたいだな。

次にその機動力を止めさせてもらうぜッッ!!!!」

 

すると特にアクションもしていないというのにMr.4の足元が液状のようになりドンドン砂の中へ沈んでいく。抜け出そうと足掻くが、足掻けば足掻くほどに沈んでいく。

 

「フォーッ!!!」

 

ゆっくり喋るMr.4もこんな時は普通に声が出るようだ。

焦っていたMr.4だがその体は腰まで埋まったところで止まり、

全身が砂に埋もれることはなかったので安堵していたのも束の間

 

「そういえばどうしてあの爆発の中で助かったのか気になっていたよな。トリックは教えられないけどその正体を見せてやるよッ!!!」

 

するとバックから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を取り出した。Mr.4がそれを見てもハッキリ分かる。それは明らかに普通じゃない。その玉から強烈なプレッシャーを感じ取れるのだ。

 

そしてウソップは、本来パチンコで放つその火炎星を地面に叩きつけたのだ。普通ならそこで火炎がウソップを襲うのだが、まるで意思があるかのようにその炎はウソップの周りを浮遊して上空で集まり、そしてそれは徐々に形を帯びていき

 

「"火炎型""鳳凰星"」

 

その姿、ただの炎にあらず。

確かにそこに"存在"するもの。

圧倒される存在感にMr.4は持っていたバットを無意識に手放し涙を流していた。

 

「わりぃが早くカヤの所に行きたいんでな」

 

……その後、気絶していたMr.4はのちにその戦闘をこう語った。

美しくも気高い炎の化身が、自分が持っていた"悪"を全て燃やしたと。

 

…………………………

 

「カヤッ!!!!」

「ウソップさん。そちらも終わったんですね……」

 

「怪我はないか!?体調は大丈夫かッ!!?」

「大丈夫ですよ。Dr.くれはの薬は本当に凄いですから」

 

念の為にハジメから持たされていた海楼石の錠をMr.4ペアにかけて一安心していた。ラッシーについてはどうしようかと悩んでいるとでんでん虫から連絡が入り

 

『貰ってきて』

「いや、一応敵さんの武器だぞ……」

 

『そうは言ってもウソップも気になっていたんでしょう』

「そりゃ、まぁ……」

 

戦いの詳細とバックやラッシーのことをハジメに話すとラッシーを持って帰ろうと言ってきた。

確かにこれがあれば、とは思ったけど

 

『意志のある武器。でも所詮は犬だからね。

カヤに"躾けて"貰ったらすぐにでもご主人様が誰なのか理解すると思うよ』

 

「んな、簡単に……」

 

と、視線をラッシーの方に向けると

 

「はい。お手」

「バウッ!」

 

「はい。いい子ね。無闇にボールは出さないようにね」

「バウッ!」

 

『懐いてるでしょう??』

「どうしてだろうな……あの犬の尻尾が尋常じゃないぐらいに振ってるのは……」

 

『喜びと、恐れって……似てるよね』

「カヤに何吹き込んだんだお前らああああああぁぁぁッッ!!!!!!!!」

 

いや、ロビンほどじゃないよ。

ただ普通の動物なら簡単にしは……懐かせることが出来るぐらいだよ。



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VS Mr.2。と、Mr.5ペア①

「さて、Mr.2。俺的には戦う意思がないなら戦わないつもりだが……」

 

場所を変え、アルバーナの出入り口の一つの前に向き合う二人。サンジはタバコに火をつけて、Mr.2はふふふ、と不敵に笑いながら

 

「敵を目の前にして戦わないなんてナンセンスよ。

次にあった時は敵だって、そういったわよ」

 

「確かにそうだ。だが、じゃなぜ嘘の情報を流さなかった?」

 

「こっちも欲しい情報があるからよ。その為の取引」

「だったら、あの時その情報を貰わなかったMr.2」

 

声の大きさは変わらずともその強い言葉にたじろぐMr.2。もちろんそんな素振りは見せない。しかし僅かに口元が変化したことに気づいていなかった。

それを見逃さないサンジはさらに

 

「一回目の連絡、お前らクロコダイルの元にいるのが嫌になったんじゃねえのか??部下を部下だと思わねえ組織なんぞ破滅するだけだ」

 

「……だとしてもアンタには関係ないわよ」

「だったら()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

その言葉通り、サンジの背後にある岩陰からMr.5とミス·バレンタインが姿を現した。

 

「不意打ちなんて、それこそナッシングよ。

アンタ達は手を出すんじゃないわよッッ!!!!」

 

「作戦と違うじゃねえかッ!!!」

「そうよ!!ここでコイツに勝たないと私達……」

 

「どのみち消されるわよッ!!!アキチ達はあぁッッ!!!!」

「「ッッ!!!??」」

 

そう、Mr.2は理解していた。

もし麦わらの一味を倒して国を乗っ取ることが出来たとしても、そこに自分達はいないことを。

 

「ボスは間違いなくアキチ達を消すわ。

余計なことを喋られないように、少人数、もしくはボス一人だけで十分って考えよ。ここで勝とうが負けようがアキチ達の未来は変わらないわ」

 

「だったらなんで………」

「一度引き受けた仕事を放り出すなんてッ!!その程度の覚悟でこの世界に入ってきたのかアンタらはッッ!!!!!」

 

それは二人に向けた言葉、だけではなかった。

自分自身にもケジメをつけないといけないと分かっていた。

ただ嫌になったから抜ける。その程度の覚悟でこれまでやったきた行いが全て帳消しになるわけがない。

その罪を償うわけではないが、少なくともこの仕事はまっとうしないといけないと。

 

「ここで抜け出そうとしてもボスにヤラれるなら、麦ちゃん達に破れたほうがいいわ。もちろん簡単にやられるわけにはいかないけどね」

 

「………ったく、なんて難儀な組織に入ったんだ俺達は……」

「キャハハハハハハッッ!!!でも気持ちがいいわ!」

 

何が抜け落ちたようにスッキリとしたような表情になる3人。

これで心置きなくたたか……

 

「さぁ、はじ……」

「三点切分(デクパージュ)ッッ!!!!」

「ボブビッ!!!!!??」

 

「「……えっ。ええええぇぇぇぇぇッッ!!!!!??」」

 

一気に距離を詰めたサンジはMr.2の首元・胸・腹の三点を()()()()()()()()()()。正確には蹴りの速度があまりにも速いために足が3本に増えた様に見えたのだ。

 

その仕打ちに防御を取れなかったMr.2はアルバーナと都市を支える岩壁へと吹き飛ばされ、衝撃のあまりにクレーターが出来てしまうほどに強烈な一撃だった。

 

「結局は殺し屋だろうが。躊躇する気もねぇ」

「だとしてもお前は鬼かッ!!!??」

「そうよッ!!不意打ちなんて卑怯なッ!!!」

 

「犯罪集団のお前に言われなくない」

「「海賊も同じようなもんだろうがッッ!!!!!!」」

 

全くもって正論だがそれをとやかく言うつもりはないサンジは

 

「とにかくお前はどっかにいけ。用があるのはあのオカマだけだ」

 

「………見逃すのか??」

 

「俺達の誰かがお前らを倒す。

あとは()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……行きましょうMr.5。二人がかりでもコイツには勝てないわ……」

 

不意打ちとはいえサンジの実力を見た二人はそこに圧倒的な実力差があることが分かった。

手も足も出ずにやられる。直感で理解した。

だからこそ、ここはMr.2に任せるしかない。手助けなんて言葉はただの足手まといになるだけ。

 

ならばと見逃してくるいまこの場を離れようとそそくさと走り離脱したMr.5ペア。

その間に一本吸い終わり新たにタバコに火をつけた所で

 

「いきなり何するのよッ!!!このスットコドッコイがッッ!!!!!」

「俺とお前は敵同士。問題はないはずだが」

 

「戦う気はないって言っていたでしょうがッ!!!!!」

「油断していると思わせた所で仕掛けるつもりだったんだよ」

 

プンプンと怒りながらサンジに近づくMr.2。

完全に舐められていると、もう許さないと気合を入れ直したところで

 

「さて、てめえには個人的に用があったんだよMr.2」

「……なにかしら??」

 

「それは………」

 

…………………………

 

「はぁ、はぁ……」

「何なんだアイツらは……」

 

アルバーナの中央へ向かうMr.5ペア。

息を切らして立ち止まった二人はそこから聞こえる戦場の音に耳を傾けた。

 

「これを、どうにかする気なのか??」

「馬鹿げているわ……」

 

戦争をただの海賊が止めれるわけがない。

しかし、それでもクロコダイルを止められない。とは思ってはいなかった。

 

あの船に乗っていてハッキリと分かった。

異常すぎるほどに強い。出鱈目な思考の持ち主も何人かいるが……

 

それを差し引いてもボスであるクロコダイルを倒す可能性はある。そうなるとその後の身の振り方を考えないといけない。

Mr.2は言った。組織に入ったのならそれなりの覚悟とケジメをつけろと。

 

Mr.5ペアなりのケジメの付け方。

なにをすればいいか分からない。分からないが……

 

「とにかく俺らは……」

「何やってるのアンタ達??」

 

「ぎゃあああああああああぁぁぁぁッ!!!!!!」

 

突然背後から話しかけられたMr.5ペアは飛び上がり慌てながらその場から離れる。その際に周りにある箱なども物を倒しながら無様な姿で建物に背を向けて、息を切らしながら話しかけてきた人物を診る。

 

「な、なんでここにッッ!!!??」

「お兄さんから中央広場に向かってと言われたのよ」

「随分お疲れみたいね」

「大丈夫なの??」

 

ベルメールが何気に手を差し伸べようとするがそれをギンがとめる。

 

「やめたほうがいいと思います。コイツらは敵ですよ」

「でも、ここまで一緒に来た仲じゃない」

 

「お忘れですか??もう一度あった時は敵だと……

いまのコイツらは敵なんです」

 

するとニヤッと笑ったMr.5は

 

「あぁそうだとも!俺らはお前らの敵だッ!!」

「キャハハハッ!!!!そうね。貴女達を倒す敵よ!!」

 

立ち上がり戦闘態勢を取るMr.5ペア。

それに対してギンもトンファーを手に取り戦闘態勢に入るが、ナミ達親子は「……ったく、もう……」と呆れた表情でため息をついて

 

「そんな芝居はいいから、ほら、行くわよ」

「ハジメさんが中央広場に向かってと言ったんだから何かあるはずだし」

 

「バロックワークスに入っていたのなら何をするか判るんじゃない??」

 

敵だという認識ではなく、協力者というわけでもなく、まるで"仲間"のような感じで話しかけてくるナミ達。

それに呆気に取られたMr.5だがすぐさまに

 

「ふ、ふざけるなッ!!俺達は嫌嫌あの船にッ!!!!」

「だったら逃げだせばいいじゃない??」

「ルフィ君辺りにうまく言えばできたでしょうね」

「で、その後にハジメさんに怒られるのよね」

 

全く動じないナミ達に思わずMr.5はその手を後ろの建物に強くぶつけた。その瞬間、触れた場所から大爆発を起こして後ろにあった建物は吹き飛んだのだ。

 

カランカランとミス·バレンタインの目の前に落ちてきた鉄鍋の上に足を置いて()()()1()0()0()()()()()()()()それを潰してみせた。

 

「分かってるのかッ!!?

この力があればお前らなんて簡単に潰せるッ!!!!」

 

「そうよ。やられたくないならさっさと何処かに……」

 

するとナミはノジコとベルメールに視線を送り、苦笑いをしながらMr.5ペアに対して人差し指を指して

 

「舐めてもらったら困るわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

その言葉にMr.5ペアに緊張が走る。

この親子は言うならば航海士をやっていて、そして娘の一人が頭がおかしくてよく着せ替え人形のように扱われている者達としか思っていなかった。

 

なのにここにきて……

 

「あの船に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

()()()()()()()()()という事実にやっと気づいたのだった。

 

…………………………

 

「歴代の女の子に化けてくれええええぇぇぇぇッ!!!!!!」

「…………頭、大丈夫なのかしら??」

 

マトモな奴、いません。



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VS Mr.2。と、Mr.5ペア②

キロキロの実。

それは能力者の"重さ"を自在に操る能力。

自身の体重を5グラムにも出来、何トンという重さにも変えられる。

使いようによっては強い能力だと言えるが、それをまだミス·バレンタインは気づいていなかった。

 

使うとするなら体重を軽くして上空へ飛び上がり傘による浮遊、そして狙いを定めて重さをトンへ変えて攻撃をする。

 

「キャハハハハッ!!逃げてばかりじゃ負けるわよッ!!!!」

「お気遣いどうも。こちらにもやることがあるんだ」

 

「そう。ならその前に倒すわよッ!!!」

 

ジャンプするに重さを変え、狙いを定めて重たくする。

自分自身が投石のような役割をなし、明確に当てに来るためにギンは避けるだけでもかなり必死になっていた。

しかし、それでもギンは未だに攻撃をしない。

 

ギンがいうやりたいこと。

それはここに来るまでにロビンに仕込まれたものであった。

 

…………………………

 

「仕込みトンファーね。確かに火力はあるけどそれだけじゃこの先負けるわ」

 

ハッキリと言われたギン。

以前に修行をした際に思いついた攻撃スタイルだったのだが、ここにきてそれを否定され戸惑う。

 

「ど、どうしてですかゴットッ!!?

自分がゴットのようになるにはこうして工夫してやらなければッッ!!!??」

 

「工夫??なるほど。ギン。

貴方まだ()()()()()()()()()()()()()()()

 

次の瞬間視界が変わった。

何をされたのか分からないまま、見える景色は横になり、やっとそこでロビンに頭を地面に押さえつけられていることに気づいた。

抵抗しようにも頭以外にも身体全体が手によって押さえつけられ身動きが取れない。

 

「ナミ、ノジコ、ベルメール。

あの親子は元々素質があるの。特にナミはね。

そしてカヤ。あの子はウソップの影響があるからすぐに伸びるわ。

でも、貴方は違う。どうしてなのか分かるかしら??」

 

どうして??全く分からないギンはその問に答えられなかった。

元々それさえ分かればここまでする必要がなかったので当然といえばそれまでなのだが、それでもロビンは本人に気づかせようと期待していたが

 

「だからダメなのよ。

貴方があの男からこちらに鞍替えしても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あの男。ドン·クリーク。

その強さに惹かれて付いていき、しかしその男は破れ、新たにこの麦わらの一味に付いてきた。そして"ゴット"と呼ぶにふさわしい人物に出会えた。

 

それだけで満たされ、そして貢献するためにやってきたというのにそれを否定されたのだ。

 

「こ、根本的な……もの……」

「ええ。ギン。貴方は持っているの??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そんなもの、あるなんて、知らなかった……)

 

ミス·バレンタインの攻撃を躱しながらギンは思い返していた。

ドン·クリークに命令され、人形のように従い仕えていたことを。

そしていまもまた、それを自ら行おうとしていたことを。

 

でも、いまは違う。

誰かが誰かの為に戦う。それを見てきた。

強者も弱者も関係なく、他人のために戦う姿を。

 

それがどれほどの力を、常識を覆す力を発揮するのかを。

 

そしていま、ギンが思い描く"守りたい"ものは……

 

……………………

 

「な、なによコレッ!!!??」

 

ナミはウソップに武器を、ビビを助けるためにも、と武器を作ってくれと頼んでいた。

それはハジメも知っている。現にそれを目の前で確認したのだから。

 

そしてウソップが作った天候棒(クリマ·タクト)は本編通りに半分近くが使え物にならない宴会芸の道具になり果てる予定だった。

 

それでもナミが僅かに使えるものを利用し、己の力量"天候を感じ取る"その力を使ってナミしか出来ない戦闘スタイルを確立したのだ。

 

これまでがハジメの知っている本編。

しかしここはハジメが介入したことにより大きく歪んだ世界。

そしてそれはナミにも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ウソップから預かったメモを頼りにまずは"ファイン=テンポ"というのを使ってみようと天候棒を三角形に組みボタンを押してみたのだ。

 

ちなみに本編ではそこにハトが2羽出てくるのだが

 

「く、くまああああああああああああああぁぁぁぁぁぁッッッッッ!!!!??」

 

現れたのはクマ2匹、白いクマと、黒いクマ、2匹だった。

どういう原理であの天候棒から出てきたのか分からないがとんでもないモノを呼び出してしまったナミは慌ててメモを読み直した。

 

"ファイン=テンポはその場にふさわしい動物を呼び出すことができるぞ。その天候棒で呼ばれた動物はナミのいうことを聞くから安心しろよな!"

 

と、書いてある。

 

(安心できるかああああぁぁッッ!!!!)

 

最もな意見である。

なにせ、クマなのだ。凶暴なクマなのだ。

そんなクマに驚いているとMr.5がそのクマに向かってリボルバー拳銃を向けた。

 

そよ風息爆弾(ブリーズ・ブレス・ボム)ッ!!!」

 

Mr.5の吐く息さえも"爆発"する。

それを利用してリボルバーのチャンバーに息を吹き入れ銃弾の変わりに引き金を引くと、その息が対象物に当たると爆発するという()()()()()()を撃ってくるのだ。

 

そしていまMr.5はクマに向けて2発撃った。

初見であるナミ達は何をしているのか分からず佇んでいるが、クマは野生的な勘で向かってくるその息を手で弾こうとした。

 

しかし、それは爆弾。

触れた瞬間に息は着弾し爆発した。

 

「きゃあああああああぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

近くにいたナミは吹き飛ばされそうになるぐらいの爆風が広がり、直撃を食らったクマの周りは煙で姿が見えなかった。

 

「ふん。クマごときが……」

 

そういってさらに追加の弾丸を撃とうとしたとき、その煙から何かが飛び出しMr.5に接近した。

 

「「クマアアアアアァァァァァッッ!!!!」」

「なっ!!!??クソがッッ!!!!!」

 

そう全く無傷のクマがMr.5に向かって飛び出してきたのだ。

慌てて引き金を引くが、簡単にクマに弾かれ、爆発しても平気な感じで追撃をしてくる。

 

マズイと思ったMr.5は地面に弾丸を打ち込み爆発させ、その爆風により一気に距離を開けた。

 

ただマジックで呼び出しただけのクマに、自分の能力が効かないなんて……と焦るMr.5にナミは腕を組んでこう言い放った。

 

「いい調子よ!!そのまま倒しちゃって"シロッ!!" "クロッッ!!!"」

「………また…そんな……」

「もう少し…ひねりなさいよ……」

 

戦いの最中だというのに安直なネーミングセンスに肩をおろすノジコとベルメール。

しかし、ナミの戦いを見ていたベルメールは

 

「さて、あの子に任せてばかりじゃいられないわね」

「うん。私達もやれるところを見せないとッ!!」

 

…………………………

 

「皆さん……大丈夫かしら……」

「問題ねぇよ。それよりも……俺達二人の方が心配だッッ!!!」

 

「そ、そうね!!早くレイジュさんと合流しましょうッ!!!」

 

まっすぐに王宮を目指すビビとチョッパー。

チョッパーの背中にビビが乗り最速で向かっているのだが、ビビリな二人は敵に遭遇しないでくれ!といいながら向かっていた。

 

カルーはビビを乗せずに走ったほうが速いということで、先導して王宮に向かってもらっている。速ければすでに着いているはずなのだが

 

「……く、クェ………」

「か、カルーッッ!!!?!」

「どうしたんだお前ッッ!!!?()()()()()()()()()()ッッ!!!!??」

 

すでに王宮に着いていると思っていたカルーが目の前で倒れていた。そしてそのカルーの前には()()()()()()

すぐさまビビはチョッパーの背中から飛び降り駆け寄る。

状態を起こすとカルーの頭から血が流れており重症を負っているように見られた。

 

「ビビッ!!カルーの体を動かすなッ!!」

「で、でも……」

 

「首の骨が折れていたらヤバいんだ…ここで治療しないと……」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

「「ッッ!!!??」」

 

その声の方を見るとさっきまで通っていた道が白い壁により塞がっていた。そしてその前に立っていたのは頭に"3"の数字を付けている男。

 

「……Mr.3……ッッ!!!!!」

「ここで王女を捕まえてボスに献上すればまだチャンスは巡ってくるカネ。だから大人しく……」

 

そしてMr.3はその壁に手を触れるとその壁から無数の手が生えてきて

 

「捕まるといいガネ」

 

チョッパーとビビ、倒れているカルーに襲いかかった。



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VS Mr.2。と、Mr.5ペア③

「クマアアァッ!!!」

「ク、マアアァッッ!!!」

 

「何なんだこのクマ共はッッ!!!!」

 

動きは速いわけではないがそれでも息のあったコンビネーションでMr.5は苦戦を強いられていた。

そよ風息爆弾(ブリーズ・ブレス・ボム)の弾丸に当たろうともあの分厚い毛のお陰で爆発自体が無効化されている。

そしてクマの一撃は、避けた後にそのクマの手が壁を簡単に抉った所を見れば一目瞭然である。

 

その間にナミは天候棒(クリマ·タクト)をライフル型に組み変えた。これも本編ではボタンを押すと銃口からお花が飛び出る宴会技なのだか、

 

「クラウディ=テンポッッ!!!!!」

 

その瞬間にその銃口から飛び出したのはモッコモコした雲のような物体。それが物凄いスピードでMr.5にぶつかった。

その雲はMr.5の身体を包み込み込んだ。

 

「何だこれはッ!!!!!」

 

その雲はモコモコで身体から離れない。

さらに密度も高く圧迫されて身動きが取れなくなっている。

どうにかしようと足掻くMr.5だがまるでダルマ、左右に揺れるが一歩も動かない。

 

そしてそこに本編で出てくるもの。だったのだが名前が変わっていた。

 

「エレメント=テンポッッ!!!!!!」

 

本編では"サンダー·テンポ"という天候棒をスリーポインテッドスターの形に組み、一つの棒からマジックハンドの先にボクシンググローブが付いたやつが「ばいーん!!」と飛び出るアレが出てくる予定だった。

 

もちろんマジシャンウソップの手で作られた天候棒はコレさえも変化しており、そしてサンダーからエレメントとなったこの天候棒から出てくるのは、文字通り多数の属性が飛び出てくることになる。

 

そして今回出てくるのは炎。

ボクシンググローブだった場所が黒い球体に変わり、そこから火炎放射器のような炎が放出された。

 

その炎はモコモコ雲に包まれたMr.5の方へ。

そしてモコモコ雲はかなり燃えやすい素材のようでいとも簡単に燃え上がり、その炎は空も焦がすようなほどに……

 

「…………………へぇ??」

 

でも、その威力はくり出したナミでさえも想像の斜め上にいっていたのだった。

 

…………………………

 

「な、何なのアレは………」

 

思わず戦闘中というのにその炎が空へ伸びる姿を魅入ってしまった。離れたところで相手メンバーの中でも1人の男と戦っていたミス·バレンタイン。

 

しかし、これを油断、というのは違う。

何故ならミス·バレンタインの足元にはギンがボロボロになって横たわっていたのだから。

 

うぅ……とうめき声があるので意識はあるが立ち上がる力はなく、さらに横たわっているギンの上に椅子のようにミス·バレンタインが乗っているのだ。

 

「あの親子の中に能力者がいたなんて…驚かせてくれるわね……」

 

「能力者、なんて……いない……」

「あっそ。でもあれぐらいでパートナーがやられるとでも??」

 

そういいながらミス·バレンタインはその帽子を深く被させながらこう呟く。

 

「80㌔、100㌔、120、150……」

「カッ!!グフッ!!!!」

 

「何キロまで耐えられるかしら??180…200……」

 

吐血するほどに内臓を痛めながらも身動きができないギン。

このままだと押しつぶされる、となっていたところに

 

「どいてもらえないかしら??」

「…へぇ。なかなか凶暴な武器持ってるのね」

 

そこに現れたのはノジコ。

そしてその手に持っているのは"大鎌"だった。

ナミ同様にコンパクトにたためるものであり、それを組み立てれば大鎌へとなる。

 

「安心していいわよ。死を届けにきた。なんて言わないわ。

ただ()()()()()()()()()()()()()()姿をこれ以上見てられないの。そんなにやりたいなら相手してあげるわ」

 

「言ってくれるわね。いいわ、選手交代よ」

 

そういってギンの上から退いたミス·バレンタインはわざと離れた所へ移動した。それを確認したノジコはすぐさまギンに駆け寄り

 

「なんで攻撃しないのッ!!!死にたいのッッ!!!!!」

 

咳き込むギンはなかなか声が出てこない。

しかし、なんとか振り絞って声を出した返答は

 

「自分は……サンジさんに……命を、救われ、ました……

その人の…"信念"を……自分も、持てば………強く………」

 

と、最後まで言葉が出て来ずに気絶してしまったギン。

何かを守るという強い意識。しかしそこにギンは何も持っていなかったと悩んだすえに、恩人であるサンジの信念をリスペクトすることにしたのだ。

 

それを貫けば"強さ"が分かると……

しかし、そんなときに当たったのがミス·バレンタイン。

なぜ、こんな時にサンジの信念をとは思うが

 

「………だったら、防御ぐらい、しなさいよ……」

 

ギンの頭をポンポンと優しく叩くノジコ。

それでもそんなギンになんとなく理解出来ると感じた。

あんな強い人達の中で強さを求めるなら普通では無理だ。

だから無理を押し通しても貫く姿勢。

 

それでも全くの抵抗せずに、というのは違うとギンが起きたら説教しようと思い立ち上がるノジコ。

 

「待たせたわね」

「非戦闘員だった貴女がどこまでできるのかしらね??」

 

一途期とはいえミス·バレンタインは同じ船に乗っていた。

そして麦わらの一味の人達を見ていたのだ。そこで航海士であるノジコが戦闘にたったことがないことは知っていた。

だからこうして大鎌を持っているのが不思議に感じていたのだが、

 

(……それでも、警戒はしたほうがいいわね……)

 

…………………………

 

これは少し前の話。

Mr.2にMr.5達が付いていったあとの話。

 

「はい。これから選んで」

 

そういってハジメが看板にズラリと並べたのは様々な武器。

剣から銃、見たことのない武器などなどと見ただけで武器専門店かと思うぐらいに勢揃いしていた。

 

「お、お兄さん……これ、何処から……」

「え。届けてもらったんだけど??」

 

そういって指差すほうを見ると中型の船がメリー号に横付けしていた。そしてそこにいたのは

 

「ハジメ様ッ!!!こんな感じでよろしいでしょうか!?」

「ありがとう。オックスさんにもありがとうって伝えておいてー」

 

「その言葉だけでオックス様は感動されること間違いないです!!

終わりましたらお声がけを」

 

その船は普通だが服装は完璧な海軍。

普通なら警戒するのだが、あのハジメが気楽に話しているのだからとすぐに警戒をといた。

 

「海軍からくす……貸してもらった武器だよ」

「おい。いまくすねて、って言おうとしたよな」

 

「気のせいだよウソップ。さあ、選んで」

 

選んでもらうのはナミ達親子。そしてギン。

カヤは何やら思うことがあるので今回は外れている。

ナミはそうそうに使い慣れたものを選び、ベルメールもコレだというのを選んだ。ギンは持っているトンファーの良いモノを選んだのだがノジコだけが長い時間悩み続けていた。

 

「随分悩んてるわね」

「ロビンさん。コレだ、というのはあるんですけど…何個かあって……」

 

「珍しいわね。こういう武器選びはその人の直感で多くても2つぐらいなものだけど……何個あるの??」

 

「………9つ………」

「欲張りね」

「言われると思ったわよッ!!!」

 

で、どうしようかと悩んでいるノジコにロビンは

 

「なら、全部選びなさい」

「えっ。で、でも……」

 

「普通なら一つの武器の扱いを極めるものだけど、いるのよたまに。器用貧乏というかマルチタスクをできる人がね」

 

…………………………

 

「それじゃいくわよ」

 

そういってミス·バレンタインは体重を軽くして一気にノジコに迫る。そして近づき繰り出そうとする拳に体重を、重さを一気に上げた。

 

見た目はただの女が繰り出す拳だが当たった瞬間にとんでもない重さを加えるためにダメージが大きいのだ。

しかしその違和感に気づいたのかノジコはすぐさまに大鎌でガードした。そして一気に重さのかかった攻撃に思わず声を出し後ろに後退してしまった。

 

「さあ、ドンドンいくわよ」

 

そういってノジコに近づくミス·バレンタイン。

今度はガードではなく回避するようにしたノジコだが、どうしてもガードしないといけない場面が出てくる。

その度に後退させられ大鎌を持っている手が痺れる。

 

しかし攻撃しないと勝てないと思い大鎌を振るう。

だが相手は殺し屋。簡単に避けられ刃は地面に刺さる。

そしてその隙に攻撃をすればと近づこうとするが

 

突然、()()()()()()()()

 

何が起きたのか分からなかったミス·バレンタインは目の前で起きることに驚きを隠せない。そして崩れたと思ったハンドル部分、棒の中から鎖が見え、そして鎌の部分にもその鎖がついており、そして鎌と棒が分かれた。

 

そしてその棒の方を両手に持ちミス·バレンタインに攻撃をした。その突然のことに防御出来ずにマトモに攻撃を食らう。

 

くぅッ!!と声を出し後退しながらもすぐに体制を整えたのだが、目の前ではノジコが棒を振り上げ鎖に繋がった鎌が抜けて片手でキャッチされた所が見えた。

 

そしてその鎌から手を離し鎖に持ち直して鎌をブンブンと振り回す。

 

「な、なによ………ソレッッ!!!!??」

「"トリックスター"それがこの武器の名前よッッ!!!!」

 

そして振り回されたカマはミス·バレンタインに向かって飛んでいく姿を最後にこの戦いは終わったのだった。



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VS Mr.2。と、Mr.5ペア④

「これ……やりすぎたんじゃ……」

 

目の前で燃え上がる炎。

想像以上に高く燃え上がる炎に、出したナミ自身が引いていた。

そして同時に持っている天候棒(クリマ=タクト)の威力に少し怖さを感じた。

 

いつまでも弱いまま。というのを変えたくてウソップにお願いしてみた。もしかしたらウソップのマジックの力で強くなれると考えたのだ。

これにはハジメも「いいじゃないかな」と背中を押してくれた事もあり、ウソップに出来るだけ"強いもの"をと注文した。

 

そして出来たのがこの天候棒。

本編より大きく変わってしまったこの天候棒はナミが引くレベルまで強くなってしまっていた。

 

しかし()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なかなか、良かったけどな」

「ッッ!!!!!??」

 

「相手が悪かったな。"爆撃"じゃない分、炎はそれなりダメージはあるんだがな……」

 

そういってそびえ立つ炎の中からMr.5が歩いて出てきた。

Mr.5が言ったとおりに身体のあちこちにヤケド跡があるが歩き方を見る限りダメージがないように見えた。

 

「それでもテメェをぶちのめす力はあるんだよッッ!!!!!!」

「ッッ!!!!??シロッ!!!クロッ!!!!」

 

Mr.5は一気にナミに近づきラリアットを喰らわせようとした。

爆弾人間であるMr.5は息さえも起爆するという能力。

そのラリアットが当たれば打撃と爆撃を同時に喰らうことになる。

 

当てる寸前にクロが二人の間に割り込んだがMr.5は気にせずに

 

腕爆(アームボム)ッッ!!!!!!」

 

その威力は凄まじく、すぐにシロがナミの背後に周り受け取めたのたが勢いは殺せずに2匹と1人は建物を破壊しながら吹き飛ばされた。

 

「ナミッッ!!!!!」

 

優勢だったとはいえ油断していたベルメール。

一瞬の出来事とはいえ飛ばされるまで動けなかった自分を恥じながらもすぐにナミの元へと走り出す。

 

しかしすぐさまそれは阻止される。

リボルバーの銃口はベルメールに向けられ引き金を引かれた。

それを横目で見ていたベルメールはとっさにその場を離れると見えない弾丸が地面に当たり爆発する。

 

爆風や衝撃に飲み込まれないように転がりながらすぐに体勢を整えて走り出した。立ち止まるといつ届くか分からない弾丸に当たる可能性が出てくる。

 

しかしずっと逃げていてもいつか仕留められる。

なら接近戦なのだが相手は全身起爆する能力者。

こちらから触れても爆発するのなら打撃は無謀である。

 

それならばやることは一つ。

 

「ぶっつけ本番ってことねッ!!!!!!!」

 

…………………………

 

「弾丸の装填を速くすること出来ない??」

 

ナミとノジコの武器を作り上げていたウソップの元にベルメールが話しかけてきた。嫌な顔したわけではないが不思議な表情をするウソップは

 

「いや、その銃ってスピードローダー付いてるよな?!?」

 

スピードローダーとは、リボルバーのチャンバーに一気に弾丸を詰め込むことが出来る品物。これがあれば装填時間が一気に速くなりリロード時間が短縮できる。

これにより戦闘勝率が上がるためリロード時間の短縮は銃の改善点の中でも重要なものである。

 

「それでも空薬莢(やっきょう)を抜いて、装填してセットする。どんなに速くやっても3秒かかるの」

 

「そりゃそうだろうよ。スピードローダーがなきゃもっと掛かるところを3秒まで縮めたんだぞ」

 

「ええ。分かってるの。それでも私にはその3秒さえも勿体ないの」

 

「って、言ってもな……」

 

こればかりは仕方ない。

その3秒を埋めるために物陰に隠れたりするのが普通なのだ。

人によっては相手に接近戦を持ち込み打撃などを与えながら装填するのだ。

 

あとは狙撃。つまり相手の攻撃が届かない範囲からの銃撃となる。

 

「リボルバーの弾丸の飛距離は1.5〜2.0㌔だけど、そこまでいくと目標に当てるのも難しいんだよな……まぁ、俺様なら出来るがなッ!!!!」

 

「ホラはいいからどうなのよウソップ」

「うっさいぞナミッ!!!本当だってのッ!!!!

俺はな、遠く離れたアリンコの眉間でも………」

 

「手、動かしてよねウソップ」

「やってるだろうがノジコッ!!!!

一体何なんだよ、お前ら親子はッッ!!!!??」

 

「…………もう…褒めないでよー!」

「耳が可笑しいんかッ!!!!!」

 

…………………………

 

「ふぅ……」

 

立ち止まり呼吸を整えるベルメール。

それを見たMr.5はその好機を逃すわけもなく

 

「諦めたかッ!!!」

 

リボルバーのチャンバーに息を吹き込みベルメールに向けて引き金を引く。見えない弾丸が迫る中、ベルメールは同じようにリボルバーをMr.5に向けて引き金を引いた。

 

二人の間で互いの弾丸が当たり、Mr.5の弾丸が爆発を起こした。

 

「ただの銃で、俺に勝つつもりかッ!」

 

またチャンバーに息を。と、していたところで粉塵により視界で見えなかった向こうから何が飛んできた。6発中2発が、Mr.5に、当たったのは右足と左肩だった。

それも弾丸ではなくゴム弾。貫通はしなくとも激痛なのは違いなく

 

(速すぎるッ!!リボルバーを2丁持っていたのかッ!!!)

 

ベルメールを見ていたが持っていたホルスターは1丁だけ。

だからまったく警戒していなかった。

その6発を凌ぎきれば装填中に倒せると踏んでいたからだ。

さらに弾丸など身体に触れた瞬間に爆発を起こせば問題ない。

 

しかし、当たったのだ。それもただのゴム弾が。

 

(何だ……何が起きてる……ッ!!!?!)

 

混乱しているMr.5に、さらなる衝撃が。

粉塵から今度はベルメールが直接こちらに抜けてきたのだ。

接近すればMr.5に有利。そんなの分かっていないのか。

どちらにしろこれは好機と、手を伸ばそうとするが、Mr.5は見てしまった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その行動、僅か1秒も満たない。

そしてすぐに引き金を引いたベルメール。至近距離で撃った弾丸は全てMr.5に当たる。そうまたもやゴム弾は能力者であるMr.5に全て効いているのだ。

 

「ガ!!バッ!!!」

 

よろめくMr.5になんとベルメールは蹴りを入れた。

しかし触れれば爆発する。故意的にも爆発出来るのに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それどころか、能力自体が………

 

蹴り倒されたMr.5の上にベルメールが乗っかった。

しかしそれでもMr.5は能力を使えない。

そう、分かった。こんな事が出来るのは……

 

「か、海楼石……かぁッ!!!!」

「効いて良かったわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

簡単にいうがそんなことできるものではない。

海楼石はとても硬く、加工するのにも一苦労するのだ。それこそ手錠や、スモーカーが持っている十手など。

 

それを独自で作り上げるなど……

 

「と、いってもこの服は洗ったら取れちゃうから結局ゴム弾しか残らないのが難点なのよね……」

 

「ふ、ふざけ…る……な……」

 

「まぁ、いま取りあえず寝てなさい。

起きたらロビンにもっと強くしてもらえるようにお願いしておくから楽しみにしてなさい」

 

「いや!!!マジでふざけッッ!!!!!」

 

言い切る前に眉間に数発ゴム弾をお見舞いするベルメール。

至近距離から撃たれた為に気絶してしまったMr.5。

ふぅーと深呼吸し立ち上がるベルメールの元に

 

「流石ねベルメールさん」

「ナミ。大丈夫だったみたいね」

 

「うん。シロとクロのお陰で」

 

そういってナミは両隣にいるクマを撫でると「クマァ〜」と喜ぶクマ達。そんなことしているとノジコとギンもこちらに向かって歩いてきていた。

 

「そっちも終わったのね」

「ノジコ!!って、なんでギンはそんなにボロボロなのよ…」

 

「信念の賜物、ってやつよね」

「す、すみません……」

 

「「??」」

 

……………………………

 

「ガハッ!!!!……ハァ、ハァ……」

「しぶといわね〜いい加減…倒れなさいよッ!!!!」

 

Mr.2の蹴りがサンジの腹部にマトモに当たる。

吹き飛ばされるサンジは建物の壁を貫いていった。

 

「まさか……女の姿をしたらこんなに弱くなるなんて……

あんた、海賊やめた方がいいんじゃないの〜〜」

 

と、いいながらこれまでMr.2が溜め込んだメモリーの中から女の姿をする。すると見えていないはずなのにそれを感じ取ったのかサンジが瓦礫の中から飛び出して

 

「お姉さん〜〜ッッ!!!!」

「本当に何なのよアンタはッッ!!!!!」

 

オカマから引かれるサンジ……笑えねぇ………



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VS Mr.2。と、Mr.5ペア⑤

「な、何なのよッ!!コイツはッ!!!!」

 

攻撃もせずにただ一方的にやられている。

そしてその理由が

 

「……まだ、だ……まだ、いるだろう……」

「いい加減に、しなさいよッ!!!!」

 

Mr.2からの強力な蹴りがサンジの腹部にマトモに入った。

口から血を吐きながら後方へ吹き飛ばされるサンジ。それを眺めながら乱れた息を整えるMr.2。

 

さっきからこんな風に同じ事を要求してくる。

Mr.2の能力は"触れた相手を真似る"ことが出来るもの。

それを知っているサンジはMr.2にこう告げた。

"いままで会った女の子になってくれ"と。

 

初めはするつもりもなかったがやたら請求してくる相手に嫌気がさし、美女を見せて油断している間に攻撃をとやってみると………面白いようにそのトラップに引っかかった。

 

デレデレで、メロメロで、だらしない顔で近づいてくる敵に攻撃を当てるのなんて目を瞑っても出来る。

だからドンドン見せてやり、ドンドン攻撃を喰らわせた。

なのに、なのにだ。もう倒れてもおかしくないのだ。なのに、まだ立っている。そこにまだ立っている。

 

タバコを咥えて、頭から血を流し、身体が痙攣を起こしても尚、サンジはその場に立ち続けている。

 

「……もう、一体何なのよ貴方はッッ!!!!!」

「……ふぅ。………一流の、コックだ……」

 

…………………………

 

「"炎"ってのはな、"エネルギー"そのものなんだ」

「エネルギー??」

 

メラメラの実を食べた、炎を操るポートガス·D·エース。

そのエースが修行の相手として見ることになったのがサンジ。

サクラ王国でやらかした時の報告を聞いてハジメはすでにサンジが悪魔風脚(ディアブルジャンブ)を使っていることを知った。

 

ならば、炎を操るエースに修行を、アドバイスをもらえば1段階上に行けるんじゃないかと考えたのだ。

 

「炎は()()()()()()()()()()()()()()()()

その炎自体にエネルギーがあり、燃やすことでエネルギー量が増えるってわけだ」

 

「……なんとなく、分かったけどよ……それがどうなるんだ??」

 

「まぁ、見せたほうが早いか」

 

そういってエースは人差し指に炎を出し、それを前方にある岩に向けてその炎を放った。岩にぶつかった炎は爆発し岩の一部を砕いた。

 

「ここから炎を圧縮する」

 

今度は手のひらから大きな炎を生み出して、それをドンドン小さく圧縮させていく。それをさっき撃った炎と同じ大きさにして同じように岩に向けて撃ってみると、ぶつかった瞬間に大爆発を起こして岩を消滅させたのだった。

 

「こういうことだ」

「こいつは、スゲェ……」

 

こうして間近で見せられると分かった。

ただの炎で扱うのではなく、それをエネルギーとして考え凝縮させて使うことで威力がこんなにも上がる。

熱量や燃焼だけではない。その炎自体を扱う。

エースだからこそアドバイス出来ることであった。

 

「と、いっても俺みたいな能力者はこう扱うものがほとんどだ。ただ放出するだけなら火炎放射器と同じだからな」

 

「なるほどな………」

 

「ところでよ、その炎は摩擦熱から生じたものとは分かったんだがよ……その"エネルギー"はなんだ??」

 

「エネルギー……」

 

「能力者じゃないかぎり炎を燃やし続けるには""酸素"と"可燃性物"が必要だからな。だがお前の足からその可燃性物は見当たらない。つまりは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。思い当たるものはないのか??」

 

…………………………

 

「だったら……一つしかねえよな……」

 

そういってサンジは片足を軸に高スピードで回転し

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)……ッ!!」

 

右脚にオレンジ色の炎を纏わせた。

その熱はMr.2にも伝わるほど。だが、

 

「今更なにしてもムダよッ!!!!」

 

Mr.2はまた女性へ変わろうとその右手を頬へ……

 

「させるかよ……ッ!!!!」

「グペバッ!!!!!??」

 

一瞬にしてMr.2に詰め寄ったサンジはその腹部に右脚を喰らわせた。熱を帯びた蹴りはその脚力と熱エネルギーにより普段の蹴りよりも数段強烈になっていた。

 

蹴りを喰らったMr.2は吹き飛ばされアルバーナの外壁へ激突しクレーターが出来上がったのだった。

 

それでもまだ意識はあるようで気力で立ち上がったMr.2は

 

「な、なんで……」

「あれだけ見せられば変身する行動も分かる。

それにな、俺がただ女の子達を見ていただけだと()()()()()()()()()()?()?()

 

その言葉に唖然とするMr.2。まさか変身させることが目的なんて……

 

「女の子を見て(もえ)(燃え)ないのはオカシイだろうがッッッ!!!!!!!!」

 

「あんたの頭がオカシイわよッッッ!!!!!!」

 

Mr.2はふざけていると思われているようだが、サンジは本気であり事実である。

本編で見せた地獄の思い出(ヘル・メモリーズ)のように想いを炎に変えることを()()()()()()()()()()()()()()()

しかしまだ全身に纏わせたり、軸足回転による発火、そして思い出によるエネルギー変換は出来ないが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

つまりサンジはワザとMr.2に女の子になってもらいながら、燃え上がる恋心を、湧き上がる情熱を貯め続けて、そして摩擦熱により発火させて強烈な炎を作り上げたのだ。

 

そんな事実を知ったMr.2は小さな笑いから大声で笑い出し

 

「いままで会った敵の中でずば抜けて面白いわよ〜ッ!!!!」

「そいつは、どうも」

 

「全く急に強くなるなんてジョーダンじゃない……………けど、あちしも燃えてきたわよッ!!!」

 

「はっ。…………きやがれッッ!!!!」

 

Mr.2は普段から背中に背負っている白鳥の首を足先に装着し、

 

爆撃白鳥(ボンバルディエ)ッッ!!!!!!!」

 

Mr.2の両足に白鳥の頭部分、そのクチバシは鈍く光った。

蹴りを繰り出すMr.2。それを脚で受け止めようとしたがそれがヤバいッ!と察知し紙一重で避ける。するとしなやかに、物凄いスピードで伸びる白鳥のクチバシは近くにあった岩を貫いた。

そして岩から抜かれた白鳥のクチバシから焦げるような匂いがして、貫かれた岩は()()()()()()()()()()

 

(ざけんなッ!!どんな風にやったらあんなにキレイに穴が開くんだよッ!!!!!)

 

攻撃を喰らえば身体に風穴があく。

それどころかあと一撃喰らえば倒れるだろう。

女の子への想いを貯めるとはいえ、大ダメージを負っているサンジには一撃も喰らうわけにはいかない。

 

しかしMr.2もそれを分かって避けられないような攻撃を繰り出していく。回転をかけて連続攻撃をしたり、体勢を崩す一撃の後で強烈な一撃を入れようとしたり。

 

それでも炎によるエネルギーを使いギリギリ回避した所でサンジは一気勝負をつけようと連続蹴りを叩き込む。

 

肩ロース(バース・コート)ッ!!!」

 

まずは肩を上から下へと蹴りを放つ。

地面に叩きつけられる、とその前にサンジは炎により加速して続けて技を繰り出した。

 

腰肉(ロンジュ)ッ!後バラ肉(タンドロン)ッ!腹肉(フランシェ)ッ!

上部もも肉(カジ)ッ!!尾肉(クー)ッ!!

もも肉(キュイソー)ッ!!!すね肉(ジャレ)ッ!!!」

 

フラフラになるMr.2に燃え上がる右脚を、飛び蹴りにより敵の身体に打ち込む。

 

仔牛肉(ヴォー)ショットッッ!!!!!」

 

その蹴りの衝撃は筋肉・血液によって敵の体の隅々まで行き渡り、大ダメージを与えた。そして行き場を無くしたそのダメージはMr.2の身体を上空へと吹き飛ばした。

 

そして地面へ叩きつけられたMr.2を確認したサンジの身体は一気に力が抜けて膝から崩れ落ちた。

 

(や、ヤバかった……)

 

すでに限界を超えている。

そこで連続蹴りによりサンジの身体にも負担がのしかかりもう立っていられないほどになっていた。

 

それでも敵を倒したと、息を整えゆっくりと立ち上がりながら

 

「メインディッシュは、どうだった……??」

 

聞こえていないだろう。それでもMr.2に声をかけてその場から去ろうと歩き出した。

速くナミ達に追いつこうと走れなくとも早足で進もうとしたところで、背後から何か動いたことに気づきた。

 

「……待ちなさいよ……まだ、終わってないわよ……」

 

信じられなかった。

あれだけ蹴りを喰らっていたというのに、振り向いた先にはフラフラになりながらもMr.2が立っていた。

 

あと一撃喰らわせば確実に倒せる。

しかしサンジのその一撃を入れる体力はもうなかった。

Mr.2と同じようにすでに限界なのだ。一撃を避けられたらもう蹴りを入れることが出来ないだろう。

 

そしてそれはMr.2も同じだろう。

たった一撃をいれれば終わる。でもその一撃を確実に入れないと負ける。

 

それを互いに理解した二人は

 

「一撃、みたいだな……」

「そう、ね。恨みっこ、なしよ……」

 

お互いに距離を取っているこの状態で最後の一撃を。

戦闘態勢に入り、目の前にいる敵を、倒すために。

この蹴りを、力の全てを、この一撃に乗せる。

 

「オカマ拳法…………ッ!!!!」

「リア·悪魔風脚(ディアブルジャンブ)……ッ!!!!」

 

本編で見せるMr.2の最強の一撃。

対してサンジの一撃は消えかかった炎にMr.2の変身で見た数々の女の子を走馬灯のように頭の中を一気にかけ巡らせ、そこに女の子が自分を応援しているという幻覚を、リアルで見ているかのような妄想を膨らませて炎をエネルギーに変える。

 

そう()()()()()()()()()()()()()()()がある。

それが想像を膨らませていき色んな女の子とのデートなど、イチャイチャ、イチャイチャ、イチャイチャと………

 

考えるだけでドンドン、ドンドン、想いが萌え上がる(燃え上がる)

サンジの右脚は最高潮に炎が強く輝き出した。

そしてその一撃は、一点に、

 

「白鳥アラベスクッッッ!!!!!」

甘恋焼焦(キャラメリゼ)·ショットッッッ!!!!!!」

 

Mr.2の蹴りを、その身体ごと、高密度の炎と強烈な蹴りで吹き飛ばした。

近くの大きな岩に激突したMr.2だがクレーターと同時にクレーター全体が炎により焦がれ、Mr.2の身体は岩で止まることなく突き破り、砂漠の地平線の向こうへ飛んでいった。

 

「デザートは、恋に焦がれる……想いを、添えてだ……」

 

そして今度こそ力尽きてしまったサンジはその場へ倒れてしまった。

 

…………………………

 

「………………う、ん…………」

「あら、目が覚めたわね」

 

柔らかく甘い匂い。

ここは天国か、と思うぐらいの幸せにそのままでいたいと強く思うサンジ。

 

しかし目の前にあるその顔は見覚えがあり、そして仲間の顔だった。

 

「ノ、ノジコちゃん……」

「もしかしたらあの変身能力に苦戦してるかも。と思って戻ってきてみたら……本当に迷惑な信念ね………」

 

どうやらこの状況を理解しているようだが、最後に言った言葉はよく聞こえなかった。

しかしずっとこの態勢、膝枕を味わっている訳にもいかない。

本当に、本当は、ずっとこのままがいいが!そういうわけにもいかなく立ち上がろうとするが

 

「このまま寝てなさい」

「で、でも……」

 

「カヤちゃんをナミが呼びに言ってるわ。それまではこのままでいいわよ」

 

「………じゃ、お言葉に甘えて………」

 

普段なら嫌がるだろう。と、その行動に戸惑うサンジ。

間違いなく自分の普段の行いが悪いのだから仕方ないが、こんな風に向こうから攻められるとどうしていいか分からなかった。

 

「…………頭、撫でてくれたりは……」

「やってもいいわよ。その代わり切り刻むけどいいかしら??」

 

ニコリと笑うノジコの表情を見て、調子に乗らないようにしようと心に決めたサンジだった。



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VS Mr.1ペア

「ふっ。お嬢さん一人でここまでやれるなんてね……」

「だが、それもいつまで持つかな??」

「くっ!!」

 

ミス·ダブルフィンガーとMr.1の猛攻撃に防御しか出来ないくいな。それでも殺し屋二人にたった一人で防御できる辺りかなりの実力者だと相手は理解した。

だからこそ、今のうちに"倒せるだろう敵を叩く"

 

後ろであくびをして待機している男が出てくれば間違いなく負けると分かっているからだ。

 

「手助けは…まだ、いらねえな」

「当たり前よ。これぐらい、なんてことはないわよッ!!」

 

ゾロの声がけに更に気迫が増したくいな。

防御だけだったはずが少しずつ攻撃へ転じてくる。

しかし相手も強い。同時に攻撃を仕掛けて防御したくいなの身体ごと後方へ押し込んだ。

 

「まさか、ここまでやれるとはな……」

「えぇ。正直驚いているわ」

 

「それは、どうも……」

 

「だが、それでも俺には勝てない。貴様らが剣士でいるかぎりは」

 

そういって両手を"刃物"に変えるMr.1。

隣のミス·ダブルフィンガーも指先を棘に変えてきた。

両方とも攻撃型の能力者。特にMr.1は全身刃物に変えられる。

 

つまり、剣と剣が切りあうだけであり相手に攻撃が届かない。

現に隙をついて当てた攻撃はその刃物にぶつかったような感触。いまだに傷一つ付けられない。

 

ならミス·ダブルフィンガーにと思ったが伸びてくる棘に間合いを一気に埋められ、くいなから攻撃をなかなか仕掛けられない。

 

二人なら、ゾロと一緒なら倒せる相手。

しかしそれをくいなは……

 

…………………………

 

「私一人でやらせて」

「はぁ?何言ってやがる!!?」

 

ハジメからの修行を終え自信がついたのか、くいながゾロにそんな事を言い出した。

 

「ゾロとの勝負は勝ち越しているけど、それは"ゾロ"だから出来ることだと思う。ならゾロ以外の相手にどれだけ通じるか試してみたいの」

 

「んなこと言ってる場合か。お前も分かってるだろうが」

「それでもやってみたいの。迷惑はかけない」

 

強い意志でゾロに懇願するくいな。

こうなってはゾロが言っても聞かないことは分かっている。

しかしいまはそんな実力を試すようなことをしている場合ではない。

国が落とされるまえにクロコダイルを、バロックワークスを潰さないといけないのだ。

 

それを一番分かっているビビがくいなに

 

「私は構いません」

「おい、ビビッ!!?」

 

「皆さんなら必ず止めてくれる。そう信じてますから。

だから、そんな風に言ってきたくいなさんにはやってもらいたいです。そして勝ってください」

 

「ビビちゃん……ありがとうッ!!」

 

そういってビビに抱きつくくいな。

ここまで言われたらゾロも否定出来なくなった。

だからこそ、ゾロはくいなにこう言った。

自分で言った言葉を実行してもらうために言った。

 

「なら、俺は手助けしねぇからな。

最悪の状況だけ、一回は助けてやる」

 

「だったらその一回はないようにしないとね」

 

………………………

 

(一人でやるって、決めたんだ。だから……ッッ!!!)

 

目を見開き、一度刀を鞘に納めた。

その行動に諦めたかと思った相手二人だが、すぐにそれは違うと思い知る。

 

「一刀流"乱刃"……式伐(しり)滅裂(めつれつ)ッッ!!!!!」

 

駆け出したと同時に刀を抜きMr.1に斬りかかるくいな。

しかし分かりやすい軌道に腕を出し防御を取ろうと、したのだが

 

(鞘は、どこに…ッッ!!!!??)

 

いつの間にか刀を振るっていた両手が片手になり、そして空きとなった左手にいつの間にか鞘が握られ、それがMr.1の脚に向かっていた。

 

刀は防御出来た。しかし脚までは防御出来なかった。

出来なかった、だが、それだけ。全身刃物であるMr.1に打撃も効かないのだ。

 

ただ打ち込まれただけの鞘の攻撃にすぐに警戒をとく。

しかし今度はさっきまで振るっていた刀の姿がなかった。

そしてくいなは回転しながら体勢を低くして小刀を手に取りMr.1の腹部に付き立てる。

 

しかしそれも刃物の身体に防がれた。

だがそれが終わったと同時に今度は握っていた鞘と小刀を手放し、上空へとジャンプした。

そこに上へ投げていた刀を手に取り振り下ろす。

力を込めた斬撃にMr.1は両腕で防御をした。

 

響き渡る金属音。

しかしくいなは攻撃を止めない。

すぐさま刀を後方へ投げ、着地したと同時に鞘を手に取り連続でMr.1の胴体に叩き込む。

 

「ッ!!!小賢しいッ!!!!!」

 

脚を刃物に変えて蹴りを入れるMr.1。

しかしいつの間にか手に取っていた小刀で防御され、すかさずに目の前にその小刀を投げられた。

 

全身刃物とはいえ目の前に飛んでくる小刀を手で払う。

その一瞬、視界が遮られた隙にくいなは刀の柄に結んでいたワイヤーを引き寄せて刀を手に取る。そして今度は首に斬りかかった。

 

「な、なんなの…この子……」

 

呆気に取られるミス·ダブルフィンガー。

すぐにでもMr.1の加勢をしたほうがいいことなんて分かっているが入る隙がないのだ。

 

斬りかかった首も刃物へと変えられ防御される。

それでもすぐに刀を手放し、鞘や小刀、また刀と不規則に攻撃を繰り返していく。

 

「……ったく、暇だな……」

「ッ!!?」

 

「おっ。なんだ、やるか??」

 

気を抜いていたわけではない。

しかしいつの間にか相手の男が背後にいたのだ。

ミス·ダブルフィンガーは後方へ飛び距離をあけ戦闘態勢に入る。

 

「おい、くいな。さっさと終わらせねぇとこっちをやるぞ!!」

「うるさいゾロッ!!!!そこで待ってなさいッ!!!!!」

 

文句をいいながらも手を止めないくいな。

ミス·ダブルフィンガーとしては助かったが、それでも一歩でも動けば間違いなく男が切りかかってくることは分かっていた。

動けない。ここはMr.1に任せるしかない。

 

「鬱陶しいぞッッ!!!!!!」

 

イライラが募り、全身を刃物に変えて回転しながらランダムに周囲を切り刻み始めたMr.1。

 

刀と小刀で何とか攻撃を受け止められたが

 

発泡雛菊斬(スパークリングデイジー)ッ!!!」

 

両手首を合わせ、掌底を繰り出すように斬撃を放った。

至近距離からの攻撃に防御していてもその強烈な攻撃に突き飛ばされてしまう。

くいながいた周りは放射状に広がる斬撃であり、周りに建物があればケーキのように切り分けられるほどの威力だろう。

 

吹き飛ばされながらも刀を地面に突き刺し勢いを殺す。

すぐに体勢を整えようとするが

 

微塵速力斬(アトミックスパート)ッ!!!」

 

脚の裏を刃物に変え、スケート靴の要領でこちらに迫ってくる。両腕が刃物と化しているためにスピードとパワー、そして斬撃が加わると

 

(あれは、ヤバいッッ!!!!)

 

危険を察知したくいなはそれでも逃げない。

刀を刃を地面に向け、手を伸ばした状態で待ち構えた。

 

「一刀流"刀化"……十ニ(じゅうに)時雨(しぐれ)

 

その時、Mr.1だけは見えていた。

いや、()()()()()()()()()()

見えていたのは刀だけ。そこに敵であるくいながいなくなったのだ。

 

しかしそれが幻覚だと悟りその刀をに斬りかかるMr.1。

だがその刀は右往左往と動き、Mr.1の攻撃全ていなし防ぎきったのだ。

 

通り過ぎ振り返るとそこにはくいなの姿があり、そして

 

「なっ!!?……なん、だと………ッ!!!??」

 

攻撃していた両腕が逆に斬られていたのだ。

刃物と化していたのにも関わらずに、その腕は斬られ血を流していた。

 

「やっぱり"刀化"だけじゃ無理か……」

 

その言葉を聞いて分かった。理解した。

文字通りにくいなはその刀に、和道一文字に同化したのだ。

周りからすれば普通に攻撃をいなしていただけだが、対峙したMr.1には分かる。

 

刀化。刀へと同化したからこそ、斬られたのだと。

この女はマズい!!ここで逃せばいずれ最大の敵となるッ!!!

そう悟ったMr.1はもう一度気を引き締め

 

「……螺旋抜斬(スパイラルホロウ)ッッ!!!!!」

 

腕に巻き付くような独特な形状の刃物を浮き上がらせ、それを超高速で回転させるために腕そのものを凶器と化し、それを振り回して接近戦を展開する危険な技。

 

そして再び脚の裏を刃物に変え、スピードとパワー、そして斬撃に螺旋の威力を付け加えた。

鉄が切れようとも回転している刃物に真っ向からくれば跳ね返される。そしてそれがこの女の最後となる。

 

そんな風に考えるMr.1に対してくいなは

 

(さっきより、ヤバい……なら、もう斬り伏せるしかないッ!!!!)

 

刀を自分の横側へ。横に振るうような態勢に入った。

ゾロのような"居合い"は使えない。

正確には使えるがどうしても威力が落ちる。

なら、全力で振るう。鞘を使わずに"居合い"を行うだけ。

 

「一刀流"刀化"………ッ!!!!」

 

目の前に迫るMr.1に未だにその刀を振るわないくいな。

だが、一瞬、刹那、誰もが認識出来ないその時間で、そしてそれ受けようとしたMr.1には

 

(…な、んだ……動きが………お、そ……く……)

 

感じ取れない時間。その動きを捉えようとすれば周りの景色は止まったかのように見える。そして

 

「"一刻(いっこく)千愁(せんしゅう)"ッッッ!!!!!!!!」

 

気づいたときには斬られていた。

身体から溢れる血を、走る激痛を、薄れゆく意識を……

何もかも遅れてやってきた。

 

地面に倒れ込むMr.1。

背後からはふぅーと息をはく、さっきまで相手していた女。

 

「ここまで、斬られるとは……今度はダイヤモンドかぁ……」

「勿体ないわよ。それに、それは女の子としては付けたいの」

 

「………そうか………」

 

それを最後に気絶したMr.1。

刀を収めて一息をつくくいな。

それを見ていたミス·ダブルフィンガーは逃げようと方向転換したのだが

 

獅子(しし)……噴迅(ふんじん)ッッ!!!」

 

 

ミス·ダブルフィンガーの敗因は、素直に逃げればよかった。

その逃げる様を見せて油断したと思ったところで全身を棘に変えて倒さなくても少しでも攻撃を与えればとやったのだ。

 

しかしそれが悪かった。

その殺気さえ見せなければゾロは手出しするつもりはなかった。

だが殺意を向けられば話は別だ。

 

くいなの一刻千愁の物静かな一太刀とは違い、ゾロの獅子噴迅は激しい一太刀。

 

Mr.1とは違いもう意識はないミス·ダブルフィンガー。

さっきまで激しい攻防とは違い、一瞬で片がついた。

 

「そんなの見せられたら……自信なくすな………」

「はっ。同じ流派でも剣筋は違うだけだろうが……」

 

…………………………

 

「で、何だったんだ。コイツ……」

「す、スゴい……」

 

「……ご、ぶぃ……」

 

手足を拘束させてMr.3を治療するチョッパー。

カルーはすでに治療を終えている。意識もある。

 

襲いかかってきたMr.3をチョッパーが軽く倒した。

正確には腕強化(アームポイント)で、頭脳強化(ブレイン·ポイント)で以前ルフィにやられた古傷を狙って攻撃をしたというわけである。

 

「カルーはこの人を見張っていて。チョッパーさんと私はお父様の所へ」

「そうだな、いこう!」

 

…………………………

 

「とにかく、こうなるのは必然なのよ」

 

「……ひぃ……ゆぅ………」

「………うぅ……しゅ………」

 

そこには()()()()()()()()()()()()()()()

複数のニコ·ロビン。そしてその山の麓にはボロボロになっているコビーとヘルメッポが横たわっていた。

 

そして山の頂上、バロックワークスのロビンは海軍のロビンの首を掴んでいたのだ。

 

「ど、どうして……」

「私が"本体"だからよ」

 

「なにを、言っているのかしら……あの人が"本体"よ」

「言ってなさい。それじゃ、"私によろしくね"」

 

ゴキッ!と、骨の折れる音が響き渡った。

分身体のロビンは殺され、死体で築き上がった山の一部へと異端者であるロビンがそこへ手を離し落とした。

コビーはその音に涙を流し、ヘルメッポは恐怖で混乱している。

 

「さて、ここで貴方達を殺してもいいけど……どうしましょうか………」

 

綺麗に見えるがそれは悪魔の笑み。

死の恐怖でもう言葉も行動も出来ない二人に近寄るロビン。

避けられないその手が、ロビンの手が、そこへ、二人へ…………………………。

 



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ふざけるな。

「なんだ、これは………ッ!!!!」

 

急いで港から戻ってきたクロコダイル。

そしてやっとアルバーナに戻ってきたいうのに……

起きているはずの国王軍と反乱軍の争いが、

 

「お茶が、美味しいですね〜」

「そうですね〜」

 

中央広場に集まっていた国王軍、反乱軍の全ての人間が呑気に茶を啜っていたのだ。

その異常な光景にブチ切れ寸前のクロコダイル。

そしてこの現象が何故起きているのかは、分かっている。

 

「……裏切ったのかッ!!!ミス·ゴールデンウィークッッ!!!!!!!!」

 

全体を見渡せる屋上にいるクロコダイルはその怒りをその建物にぶつけた。

触れたものの水分を吸い取る。枯れ果てる。

建築物さえも脆くしてその建物を崩落させた。

 

そんなもので怒りが止まるわけもなく砂を刃に変えて次々に建物を破壊して回るクロコダイル。

 

「あまり、街を破壊しないでもらおうかサー·クロコダイルよ」

「………国王か………」

 

いつの間にか人が住む街並みから遺跡のような柱が多く建っている場所へ来ていたクロコダイル。

そしてそこにはこの国の王であるコブラ。

その後ろに守護者であるチャカとペル。そして……

 

「………見たことがあるぞ。てめぇ"ジェルマ"の人間か!?」

「王下七武海である貴方に記憶にあるなんて光栄だわ」

 

「ジェルマがどうしてこんなところに、いや、その国王の隣にいやがるッッ!!!??」

 

「私の弟が入っている海賊が、この国を救おうとしているの。だからその手伝いよ」

 

「手伝いだと………ふざけるなッ!!!」

 

真実を話しているがそれでもクロコダイルには悪ふざけとしか思えないだろう。その怒りに巻き込まれないようにすぐさまコブラの前にでるチャカとペル。

 

「どう思われても構わないわ」

「…………さっき、海賊といったな………なら、てめぇは……」

 

さらに切れさせようといった言葉だったのだろうが、クロコダイルは冷静にレイジュが放った言葉を思い出した。そして確信した。

 

「……麦わら、かああぁぁぁぁッッ!!!!!!!!」

 

怒りで地面にその右手を、拳を叩きつけるだけだと思った。

しかし触れた瞬間に瞬間クロコダイルの周りを、レイジュやコブラ、さらにその周り、広範囲の地面を一気に砂へと変えてしまった。

 

浸食輪廻(グラウンド・デス)

本編で出てくる技だが技名を言うことなく、怒りに任せてやったのだ。

しかしレイジュもペル達も危険を察知し、地面が砂に変わる前にジャンプして回避をした。

 

そして辺り一体砂に変わった為に、立っていた柱も支えがなくなり次々に倒れていく。

 

「どいつもこいつも、小馬鹿にしやがって……ッ!!!!!」

「だから上に立つ器ではないのよ、分かるかしら??」

 

その言葉が引き金となりその腕を砂に変えたクロコダイルは

 

砂漠の宝刀(デザート・スパーダ)ッッ!!!!!!!」

 

右手を砂の刃に変え、巨大な斬撃を放ち、大地を容易く両断するほどの威力を誇るその技をレイジュは

 

桃色毒壁(ピンク·ウォール)!!」

 

ふぅーと吹いた息と共にピンク色の毒霧が吐かれ、その毒が厚い壁と変わりクロコダイルの砂の刃を受け止めた。

 

「こっちは貴方とやり合うつもりはないわ」

「知ったことかッ!!!てめぇはここでぶっ殺すッ!!!!」

 

「怒りで周りが見えてない感じね。いいわ、あの子が来るまで相手してあげる」

 

余裕のないクロコダイルと、さらに挑発するレイジュ。

二人の戦闘が始まる。

 

…………………………

 

「あっ。こんなところにいたのね」

「そっちも終わったみたいだな」

「無事みたいで、って………」

 

「サンジさんッ!!ちょっと大丈夫なんですかッ!!?」

「大丈夫じゃないから診察してくださいカヤちゃ〜んッ!!!」

「オイッ!!!カヤに近づくなッ!!!!!」

 

「あら、ウソップ君が見ないうちにたくましく……」

「それよりなんなのあの犬ッ!?」

「やたらカヤ様に懐いてますね……」

 

アルバーナに入り、とある路地で敵を足止めしていたメンバーが揃った。

ナミはゾロとくいなの安否を確認し安堵し、ボロボロなサンジを見たカヤに抱きつこうとしたその男をウソップが阻止する。

そしてその姿を母親のように微笑ましく笑うベルメールに、隣でカヤの足元でやたら懐いているラッスーに驚くノジコ。そして…………

 

「「「「「「「って、"様"ってなんだよッッ!!!!!!???」」」」」」」

 

言われたカヤ以外が一斉にギンにツッコんだ。

これにはビックリしたギンは2、3歩後退しながら

 

「い、いや……皆々様には敬意を払うようにとゴッドから……」

「ハジメかよ……」

 

「止めてくださいッ!同じ仲間なのに"様"付なんてッ!!!!」

 

両手で自分を抱えるように身悶えするカヤ。よっぽど嫌だったのだろう。女性陣は全員ギンから離れる始末。

 

「そ、そんなにダメでしたか……」

「ダメね。マイナス100よ」

 

「……なんかノジコのやつ、厳しすぎじゃねぇか??」

「ノジコって、辛辣よ。たまに私以上に」

「とんでもねぇ姉妹だな」

 

「そこにベルメールさんがトドメを指すの」

「まずは"仲間"ってという意味を覚えてもらいましょう」

「とんでもねぇ親子だなッッ!!!!!!!」

 

漫才をしているのか……

と、周りに思われてしまうようなことをしていると

 

 

 

突然に、現れた。

 

 

 

「少しよろしいでしょうか??」

「「「誰だッッ!!!!??」」」

 

 

目の前に、突然に、唐突に現れた人物にとっさに戦闘態勢に入るゾロ·サンジ·ウソップ。

くいなはとっさに前に出てきたゾロに圧倒され、サンジやウソップもナミやカヤ達の前に立った。

 

「始めまして。私は"月兎"のリリーサといいます。お見知りおきを」

 

丁寧にお辞儀をするリリーサに戸惑う一行。

そこに前に出てリリーサへ聞くことにしたゾロは

 

「"月兎"だと??」

「ご存知ではない??私はニコル様、ここではロビン様の海軍直属の部下であり、ハジメ様の忠実な海軍の一人です」

 

以前に聞いたとこがある名前。

ハッキリと聞いたとこはなかったが………

 

「その月兎がなんのようだ??」

「いい警戒心です。それは大事にしたほうがいいですよ

もっとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「「ッッ!!!!!??」」」

 

その言葉に全員が背後へ振り向いた。するとそこにはニヤニヤて笑っているマカナがいた。

 

「始めましてッ!!マカナといいますッ!!!!!!」

「………いつか、いやがった……??」

 

「リリーサと同じですよ。それに皆さんにお小遣い渡したの私なんですよー気づきませんでしたか!

それにしてもでもバレなくて良かったです。

もしバレていたら死なないといけませんから!!!!」

 

「「「ッッッ!!!!!??」」」

 

「こらマカナ。ニコル様とハジメ様の許しなしで死んだらいけませんよ」

 

「はーいッ!!!!」

 

これだけの会話でマカナという女の子の異常さがハッキリと分かった。ハジメやロビンとはまた違う"異常"。このマカナは

 

(狂ってやがる……ッ!!!)

 

自殺をまるでゲームのように、いや、子供がバツをつけるように、自分の死を軽く見ている。そしてそれを平然と注意するリリーサという女も………

 

(どれだけヤバい奴がいやがるんだッッ!!!!)

 

ハジメとは昔から頻繁に交流がある一同だがロビンに関しては少ないか無いのだ。だからここ数ヶ月の印象でロビンがどれだけヤバい奴か分かったつもりだったが、まさか直属の部下までも異常なんて……

 

「さて、ここに来た理由なのですがお話してもいいでしょうか??」

「……あぁ、始めましてくれ」

 

「それでは。すでにバロックワークスは崩壊寸前。

エージェントのほとんどを皆さんが倒して下さったお陰で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()あと残るはクロコダイルと()()()()()()()()()()()()だけです」

 

端々にとんでもないワードがあったが今は話を聞こうと誰も口を挟むものはいなかった。

 

「王女様達はまもなく国王の元へ。

そこにはすでにクロコダイルとレイジュ様が戦っています」

 

「レイジュの奴がッ!!!?」

 

「あくまでもレイジュ様はそこへ向かうルフィ様の為の足止めのようなことをしているだけです。到着すれば()()()()()()()()()()()()

 

そう言い切ったリリーサ。

しかしそんなことに対して疑問として発する前にとんでもない爆弾が投下した。

 

「しかし異端ロビンが分身体ロビン様を打ち負けしました。

これから本体であるロビン様と異端ロビンの戦闘が始まりますので()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「「なッッ!!!!!??」」」

 

分身体でありながら本体というロビンと、ずっと共にいた異常な本体のロビン。その二人の激突…………

 

「ちょ、ちょっと待てよッッ!!!!余波ってなんだよッ!!!!」

 

「言葉の通りです。ロビン様はいまアルバーナの外へと移動しています。そこへ異端ロビンが向かっているのも教えていただきました。

そしてロビン様が「私達がぶつかれば間違いなくアルバーナが吹っ飛ぶからよろしく」と」

 

『ふざけるなッ!!!!!!』

 

「ちなみにハジメ様は審判役ですので一切手をだしません」

 

『だから、ふざけるなッッッ!!!!!!』

 

「あと中央広場に国王軍と革命軍を一度に吹き飛ばせるだけの爆弾がありますのでこちらの処理もお願いします」

 

『マジで、お前ら、ふざけるなよッッッ!!!!!!』

 

 

次々に爆弾発言を打ち込まれ、もう誰も冷静な者達はいなかった。



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アルバーナ最終決戦①

「どうやら苦しくなって来たようだな」

「……そうね……」

 

余力を見せながら戦っていたレイジュだが、今ではそれさえもなくなっていた。頭に血が登りレイジュしか見えていなかったクロコダイル。しかし冷静になればどう戦術を取ればいいか簡単に分かる。

 

「ほら、そっちが…お留守だぜッ!!!!」

「チィッ!!」

 

レイジュの隙を狙い後ろにいるコブラに目掛けて砂の刃を放つ。咄嗟に間に入り毒の壁を作るレイジュだが続けざまにチャカやペルを狙い始める。

 

この二人なら無視しても問題ないだろう。

国王を守る親衛隊なら。しかしこの先の事を考えるならいまは戦闘不能にさせるわけにはいかなかったのだ。

 

「やはり、私達もッ!!!!」

「貴方達は国王を守るのが仕事!!そちらを取りなさい!!!」

 

「し、しかし……」

「こっちは、船長が来ればいいのよ。それまでの時間稼ぎ、わざわざ相手してする必要もないわ」

 

そうやって笑って、いや、苦笑いして心配をかけまいとするレイジュ。しかしそれが気に食わないクロコダイルは

 

 

「……そうか。だったら、さっさと沈めッッ!!!!!」

 

続けて繰り出される砂の刃に、毒の壁が削られていく。

周りは砂が多くいくらでも操作出来、砂の刃の強度も増していく。そのために始め受けた毒の壁はほとんどただの壁のような感じになっている。

 

そしてついに毒の壁が破られ

 

(マズッ!!?)

 

受けきれなかった砂の刃が2発分レイジュに迫る。

弾丸を跳ね返す身体としてもあの刃を喰らえばただでさすまない。

 

しかしその刃がレイジュの身体に届く前にその間に何かが割り込んできた。

 

「"毛皮強化(ガードポイント)"ッ!!!」

 

そこに入り込んだのは毛皮モフモフの物体。

 

「なんだコレはッッ!!!!??」

「トナカイ君ッ!!」

 

砂の刃はチョッパーの毛皮により霧散された。

正確にはその毛皮の一部が切られてしまったが、元の姿に戻ったチョッパーにはなんともなかった。

 

「良かった。間に合ったみたいだな」

「助かったわ」

 

クロコダイルに向き合うレイジュとチョッパー。

そして後ろにいるコブラの元へ

 

「パパッッ!!!!!!」

「ビビッ!!!!」

「「ビビ様ッ!!!!!!」」

 

攻撃されているレイジュの為にチョッパーがひと足早くこの場に駆け寄り、ビビはその足でコブラの元まで走ってき抱きついた。

 

「パパが無事で良かったわッ!!!」

「いまの所は、だがな……それで、そちらは……」

 

コブラの視線の先には毛むくじゃらから一気に小さくなった

 

「……タヌキは??」

トナカイだよッッ!!!!角あるだろうがあぁッッ!!!!!!!!!」

 

「し、失礼した………」

 

こんな事を言っているがチョッパーはこの状態でクロコダイルからの攻撃を角強化(ホーン·ポイント)()()()()()()()()()()()

砂の刃は簡単に岩を引き裂く鋭い刃。

しかしホーン·ポイントで強化されたその角は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「次から次へと………ッ!!!!」

「ここじゃ、邪魔になる……なら…ッ!!!」

 

素早くランブルボールを咥えて砕き、脚力強度(ウォーク·ポイント)で脚を強化させて、そしてもう一つ

 

腕強化(アーム·ポイント)ッ!!!!」

 

腕を太く強化させ、さらに

 

槌変化(ハンマー·モード)ッ!!!!」

 

膨れ上がった両手がハンマーのように変化。

そしてその手は黒く、いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

戦鎚状態(ウォーハンマー·モード)ッッ!!!!!!」

 

危険を察知したクロコダイルはとっさに砂の刃は立て続けに放ったがそれを左手で砂山を簡単に壊すかのように破壊しながら、先端部分が熱を持ち赤く赤く燃えるそれを、クロコダイルの懐に潜り込み

 

「刻帝、"烙印(エンブレム)"ッッッ!!!!!!!!!!」

 

危険と察知したクロコダイルはとっさに砂の盾を何重にも重ねて防御に徹した。しかしチョッパーのそれはあまりにも強烈で砂の盾を簡単に崩し、目の前の砂の盾が熱を帯びて赤くなり溶けていった。

 

サンジの悪魔風脚(ディアブルジャンブ)とはまた違う。

チョッパーの場合はランブルボールとなる。

己の形態を変えるランブルボール。それは言わば骨格や整体、さらには遺伝子レベルまで変えてしまう品物。

そしてそれをチョッパーは見事に自分意思で変えることが出来るようになった。

 

そこで出来た副産物。

ある生き物は体の一部を熱くして敵を撃退するものがいる。

それをチョッパーは己の身体へと応用することが出来たのだ。

 

砂の盾を突破したハンマーはクロコダイルの腹部へ。

普通ならその攻撃は喰らうことはない。

クロコダイルは己の身体を自由に砂へと変えることが出来る。

当たる前に砂へと変えれば回避出来るのだ。

しかしチョッパーはすでにそれを見抜いていた。

 

初めにガードポイントを使った後に密かにブレーンポイントを使っていたのだ。そしてそこで"砂は水があれば固まる"という弱点を把握した。

 

そしていま大気中にある水分を自分の体毛に集めて、それをハンマーの方へ流し、熱により水蒸気と化した水分もまた水。

クロコダイルはそこから砂へと変わることもなく、マトモにチョッパーの攻撃を喰らったのだ。

 

「ガバッッ!!!!!!」

 

くの字に折れ曲がった身体はそのまま吹き飛び後方にある柱などを壊していく。

 

(ふ、ざ……けるなッ!!!)

 

辛うじて意識はあるがまさかの攻撃のヒットに混乱もしているクロコダイル。確かに水は自分の天敵であり、だからこそこの砂漠の国であるアラバスタは最高の環境だといえる。

 

油断していた。たかが海賊如きにやられるなど考えてもなかった。しかしいまとなっては考えは変わる。驚異。この海賊団をそのままにしていると……

 

意識もハッキリとしてきて、すぐさまあのトナカイへ反撃をと左手の義手のフックを地面に突き立てて勢いを殺し停止した。矢先、

 

「クロコ、ダイルッッッ!!!!!!!!!」

 

意識を飛ばした相手に向けすぎていた。

普段なら不意打ちなんてものは効かないのだが、それでも言わせてもらえるのなら気づいた時には顔の横に敵の拳があったのだと。

 

完全な偶然。ルフィ達は王宮に向かっていた。

しかしこの三人、集まれば知恵が増えて迷わないなんてことにはならなったのだ。だから良かった。突然現れたクロコダイルにルフィがとっさに反応して攻撃を繰り出せたのだから。

 

「ガッッ!!!!!」

 

思いっきり顔を殴られたクロコダイルはアルバーナの外側近くまで吹き飛ばされやっと停止した。

予想外のダメージ。なにもかもが予想外。計画は全て台無し。

何もかもうまくいかなかった作戦。完全にブチ切れているクロコダイルは浅く息をしながら立ち上がりフッとアルバーナの外へ視線を向けた。

 

すると遠くで良くは見えないが、ハッキリ分かる。

そこには現況である女が、ニコ·ロビンが………

 

「ニコ·……………ロビンッッッ!!!!!!!!!!!

 

痛みなど忘れた。それほど激しい怒りに身を任せてクロコダイルはロビンの元へ飛び出した。その先に()()()()()·()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかし、その進路を先回りしたルフィが

 

「ゴムゴムの〜"銃乱打(ガトリング)"ッッ!!!!!!!」

 

ゴムの伸縮を加速させ、無数の拳を機銃の如く連射。

普通ならクロコダイルはそれを砂に変わり避けるのだが、チョッパーとの戦いで理解した。もう油断はしないと。

腕を前にクロスさせ無数の拳を防いだ。

案の定、ルフィの攻撃はクロコダイルに届いた。

それを知ったクロコダイルは

 

「もう油断はしねぇ。テメェを殺して、あの女を殺すッッ!!!!」

「お前じゃ、師匠には勝てねぇ。その前に……」

 

「俺が、お前を、ぶっ飛ばすッッ!!!!!!」

 

…………………………

 

「白ひげの部下に、革命軍のナンバー2が……」

「まぁ、俺らはあまり関われねぇが……」

「それでも、ルフィなら勝てる」

 

ルフィを見送ったエースとサボはコブラの元へ。

そこではチョッパーが念の為にコブラ達を診察していたが特に問題はないようだ。

 

「しっかし強いなお前!!」

「あぁ。革命軍に欲しいぐらいだ!!!」

「ほ、褒めたって、嬉しくねぇーぞ!コノヤローッッ!!!」

 

「かなり喜んでいるのね……」

 

盆踊りしながら否定している。全然言葉と態度が違う。

 

「なら、ここは大丈夫そうだな」

「どこか行くのかね?」

 

「まぁ……なんか、()()()()()()()()()()()()()()()()………」

「余波がここに来ないようにしないと、守ったことにならねぇしな」

 

「何を、言っているのか……」

 

分からないだろうが、ある意味クロコダイルよりもそっちの戦いのほうが危険である。

海軍大将と四皇が一斉に戦うような感じだと、なんとなくそんな風に感じている。

 

なぜならそんな戦い、見たことがない。

なにより()()·()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()

 

「とにかく住人には建物じゃなくて広い場所に避難させてくれ」

「それが出来るのはあんたらだけだろう」

 

そういってエースとサボは()()()()()()()()()()()()走り出した。残されたコブラ達だが

 

「パパ!すぐに住人を避難させないとッ!!!」

「しかし、あんな合間なものでは……」

 

「必要なら私の毒で移動させるわよ!!」

「ダメですッッ!!!」

「医者の前でふざけるなッッ!!!!」

 

二人に怒られたレイジュは表情は変えずとも少し拗ねたように見えた。しかしそれが良かったのか必死な二人を見たチャカとペルが

 

「王。ここは避難させるべきかと……」

「なにかあっては、せっかく救えた国もダメに…」

「………そうだな。国とは"人"だ。建物など、どうにでもなるな………すぐに住人を王宮へ!!!あそこなら大抵の衝撃にも耐えるッッ!!!!!」

 

「「ハッ!!!!」」

 

すぐさまチャカとペルは駆け出した。

 

「ビビと王様は俺に乗ってくれッ!!!」

「すまない。面倒をかける」

 

「レイジュさんは?」

「私は残党でも探すわ」

 

チョッパーはトナカイの姿に変わり、さらに脚強化(ウォークポイント)でスピードを上げることに。レイジュは振り返らずに街の方へ向かい、チョッパー達は中央広場に向かうことにした。



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アルバーナ最終決戦②

「来たわね、私」

「ええ、来たわよ私」

 

アルバーナの外。

ただ広大な砂漠しかないそこに二人のロビンとハジメがいる。

今から始まるのは"ニコ·ロビン"という存在を賭けた戦い。

 

「随分とこの国に肩入れするのね」

「ええ。ビビは私の物に…………仲間にするつもりだから」

「おい。本音出てるぞ」

 

そして相変わらずな会話も始まる。

やっぱりマトモには進まないか……

 

「そう。確かに可愛らしいわねあの子。

特に幼なじみの男と過ごしているときなんかね」

 

「あら、あの子にそんな色恋沙汰が」

 

「ええ。反乱軍のリーダーをしてるのよ。

あの子が必死に止めようと近づくとさり気なく距離を取ろうしてるの。すると少しむくれるのよ」

 

「やっぱり女の子ね。どう思うお兄ちゃん??」

 

「こんな状態でも友達かよ!?と言うぐらいに仲良く話しているお前らに驚きだよ!!」

 

やっぱり、ダメだ、この妹達は。

決戦という舞台なのに全く緊張感がない。

いまから戦うの君達だよね?なんか他人事みたいにしてない??

 

「あぁ。そういえばお兄ちゃんは私達のパスの会話は聞こえないのよね」

 

「ついお兄ちゃんとは常に繋がっていると思っているから」

 

「ええ。そうよね。早くアッチでも繋がりたいわ」

「ダメよ。それは私が先よ」

「いいえ。私よ」

 

「知らない所で変な事を話してるなお前らッッ!!!!!」

 

こいつ等、どちらが本物か偽物かで揉めていたんじゃないのか………

なんかこっちが真面目にやっててバカらしくなってくる……

 

そんな事をしていると遠くの方からコチラに一直線に向かってくる………というか、クロコダイルだ、あれ。

 

「ニコ·……………ロビンッッッ!!!!!!!!!!!

 

あっ。もしかして裏切ったの気づいた。

というか、今回のロビンは本当何が目的なのか分からないんだよな……

 

本編ではお互いがお互いを利用していたけど、今回はロビンが一方的にクロコダイルを操ってる感があるんだよな。

月兎からの情報だとビビが死んでいることにしたのはそこにいるロビンだ。理由は分からないが明らかに罠に落としれようとしているのは分かる。

 

それを気づいてこうしてキレているようだが、間にルフィが割り込むクロコダイルを足止めしている。

 

「ちゃんとやっているようねルフィ」

 

「ここでクロコダイルがあの子にやられる姿を間近で見れるなんて最高の気分だわ」

 

「随分とクロコダイルを嫌ってるな」

「そうね。でも私も分かる気がするわ」

「そうなのよ。アレ、私をエロい目で見てるくるのだから」

 

…………………………………………は。

いま、なんて言ったのかな??

……エロい目で、なんて、言った………………………

 

「……ルフィ」

「なんだよハジメ…………ッッッ!!!!!!!???」

 

少し離れているけど聞こえて良かったよ。

あれ??怖がってるの??全然、全く、怒ってないよ。

そんなー顔を青ざめて、恐怖してます。みたいな表情にならなくてもいいじゃないか??

 

僕はね、ただ一言。一言だけ言いたいだけなの。

 

「トドメ、僕がやる。OK!?」

「オッッケイですッッッ!!!!!!!!!!」

 

返事よし!!!

とりあえずスッキリしたところで視線をロビン達の方を見るとなんか二人共ムズムズと身体を動かしている。え、なに??

 

「………か、カッコいい………/////」

「………軽く、………ねぇ……/////」

「…………えぇ………濡れ」

「喋るなバカヤロオオォォォォォォォッッッ!!!!!!!!!!」

 

…………………………

 

「というわけだ。ぶっ飛ばすけど最後はハジメだッ!!!!」

「ふ、ふざけるのも…………大概にしやがれ……ッ!!」

 

完全にブチギレたクロコダイルは義手のフックを右手で掴み()()()()()()()()()()()()()()()一直線にルフィに向かってきた。

初めはそんな攻撃なんて、と受け止めようと考えたがそのフックから垂れる液体が岩を溶かしたのを見たルフィはとっさにその場から離れた。

 

地面に突き刺さったフックからは紫色の液体が出てきて、それが砂をドンドン溶かしていく。

 

「サソリの毒。じゃねぇぞ。その何十倍の濃度をもった毒だ。

触れたら最後。簡単にテメェなんて殺せる」

 

「そっか。触れなければいいんだな」

「その余裕……いつまでも続くかッッ!!!!!!」

 

今度は脚を砂に変えてスピードを上げてきた。

それでもまだルフィは攻撃から逃げれる。

しかし避けようとした瞬間にクロコダイルの身体が全て砂に変わり辺りの砂と混ざってしまった。

 

「あのヤロウ……何処に行きやがったッッ!!!!!」

 

砂漠の砂と一体化。それは何処から現れるか分からない。

そしてロビンVSロビンの戦いの余波で周りの砂が巻き上がり足元だけではなく360度全方位に砂があり、どこから現れてもおかしくない状態に陥った。

 

「残念だったな麦わら。砂漠じゃなければ少しは勝機があっただろうけどな」

 

「出てこいクロコダイルッ!!!!」

 

「あとはコイツで一突きすれば終わりだ。

その後にニコ·ロビンをやる。あの男もだ」

 

「絶対に勝てないから止めとけッッ!!!!」

 

素直な気持ちなんだろうけど敵に言う言葉か??

しかしこのままだと、何処から現れるか分からないために攻撃を避けようがない。

 

「お前みたいなルーキーが海賊をやっている時点で終わってるんだよ」

 

「………なに!?」

 

「俺はこの国を頂くだけでは終わらねぇ!!!アレを手にすれば世界を手にする事も夢じゃねえッッ!!!!!!!」

 

「…………けんな………」

 

脚を曲げ、体勢を低くして、片腕を地面に付けた。

足から上半身へ血液が上がっていく。

血流を上げて身体能力を向上させるギア2(セカンド)

 

この状況でギア2を使えばどうなるか??感覚的に危険だとルフィは分かっていた。

 

一撃でも毒を喰らえば死ぬ恐れがある。

それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる。

 

一撃で死ななくとも、それをやれば自ら死を早めることを。

それでもいま、目の前にいる敵が言ったことを、否定するために。

 

「ふざけるなッ!お前みたいな奴がなれるもんかッ!!!」

「……あぁ!?」

 

「海賊王になるのは、俺だあぁッッ!!!!!」

「テメェみたいな、海賊が夢に破れるのをどれだけ見たと思う!!!!!」

 

ルフィの背後、死角、ゼロ距離からのフックの攻撃は避けられなかった。

肩にフックが刺さり、ルフィの身体に毒が回る。

もうまもなく死ぬ。そう、だからクロコダイルは油断した。

 

ルフィは刺さっているフックを手にした。

悪あがきとクロコダイルはその手を振り払おうとするが

 

(な、なんだ……動かねぇ!!?)

 

力を入れても動かない。そしてルフィはそのフックをそのまま()()()()()()()()()()

突然のことで動揺するクロコダイルにルフィはその手で顔面に拳をぶつけた。

 

またしても心が乱れたところで攻撃をされた。

すぐに砂に変わりこれ以上の攻撃をされないようにしたが

 

(か、身体が………あの時かッッ!!!!)

 

殴られたあの拳。この壊れたフックを握りつぶした手だった。

つまりあの手には毒がある。そして殴られた際に毒が体内に入ったのだ。

 

それを知り砂になる状態を維持出来なかったクロコダイルは元の姿に戻ってしまい地面に倒れてしまった。

しかしそれはルフィも同じ、いや、ルフィのほうが酷い。

血流の流れが速いルフィはもう限界である。意識を保っているのがスゴイくらいに。

 

(……残念だったな……こっちには………)

 

ルフィが動けないいま、隠し持っていた解毒薬を使えば何の問題もない。しかし早く使わないと元の体調に戻るのに時間がかかる。

無理矢理手を動かし懐から解毒薬を取ろうとした時、フッと周りが暗くなった。なにかが影になっている………

 

「………はぁ、はぁ、はぁ……」

「……て、テメェ………」

 

そこには立っていられるはずのないルフィがいた。

未だにギア2を解いていないため毒はもう全身に回って意識も無くして死んでいてもおかしくない。

 

なのに、そこに立っている。

 

「…………はぁ、はぁ……俺は………」

 

フラフラになりながらもしっかりとクロコダイルの目を見ながらルフィは

 

「俺は、お前を超える!!!

海賊王に俺はなるううぅぅッッッ!!!!!!!!!!!!!



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アルバーナ最終決戦③

「さて、お兄ちゃんにも話をしたほうがいいわね」

「そうね。じゃないと進められないわ」

「その原因が何言ってるの??」

 

あの発言から何がどうあったのか、もう話したくないので以下省略。

しかし、キチンと聞かないといけないだろう。

そして語りだしたのは分身体のロビン。

 

「さて何処から話しましょうか……

そうね、船が転覆する寸前の話かしら」

 

「いえ、そこは省いてもいいと思うわよ」

「なら、どうして"私"がいるのか、でいいわね」

 

そう、そこが重要な点である。

ロビンと話してロビンはロビンだとを確信はしたが、こっちのロビンが語る話とは一体………

 

「結論からいうわ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に、驚きはなかった。

分身体ではない。それは納得出来る。

少なくとも分身体と本体の間には上下関係がある。

しかしこの二人にはそれがなく、どちらかというと……

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

切り離された、存在……つまり、それって……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"()()()"。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そうではないかと、思っていた。

しかし確証もなにもなかったけど、納得いったというべきだろう。

 

ロビンに似て、ロビンに似ていない。

本編のロビンとはかけ離れているが、こうしてクロコダイルの元へ身を起き麦わらの一味の敵として現れた。

 

その理由は至極簡単だ。

“偉大なる航路”各地に存在する石碑「歴史の本文(ポーネグリフ)」を解読し、歴史上の「空白の100年」の謎を解き明かすために。

 

そうだ。あり得る話なのだ。

僕という存在がいなければきっと本編のようなロビンが存在していたはずだ。

 

あの日、ロビンを助けた。オルビアを助けた。皆を助けた。

その為にロビンの人生をかけて解こうとしていた「空白の100年」という楔を背負う必要が無くなった。

二度と狙われ無いように一時停止によって消された島で皆は過ごし、そしてロビンだけが僕に付いてきた。

 

逃げても逃げても追いかけてくるストーカー。

ただの恩だけではないのは分かっていた。好意も知っていた。

 

それは僕が作り変えたことによるもの。

 

いわば"考古学"というロビンにとっての存在理由が、"ハジメ"というロビンにとっての存在理由となった。

 

だから……この先の話は大きく変わるだろうと考えていた。

ここに来てもロビンは全くポーネグリフに興味がなかった。

それはきっと"ワンピース"という物語に欠かせないものだったのに………

 

しかし"世界"がそれを許さなかったのだろう。

だから、生まれたのだ。必然だったのだ。

 

"考古学者のニコ·ロビン"

それはあるべき姿のロビンなのだろう。

 

「…………なるほど。そういう、ことなんだ……」

「お兄ちゃんには感謝してるわ。お母さんもクローバー博士も生きているのだから。でも、私は私の夢を叶えたいの」

 

そう、こっちのロビンは「空白の100年」を解き明かすために暗躍していたのだ。

 

「あの日、貴方達の前に現れたのは、そう、嫉妬かしら??」

「だって私だけ夢の為に捧げている人生なのに」

「どうして貴女は自由に生きているのかって」

「それを恨むことはないわ。私がやりたいのだから」

「さっきいったように、嫉妬、なのよ」

「私もお兄ちゃんが大好きなの。だから、かしら」

「私が私になりなかったの。お兄ちゃんの傍に私が立つために」

 

たった、それだけ。いや、それが全てなのだ。

世界を変えることによる影響。こんなにも………

 

「そんな悲しい顔をしないでお兄ちゃん」

「そうよ。お兄ちゃん。全てはお兄ちゃんのおかげ」

 

「私は、私の為にやるの」

「私は、私が私であるためにやるの」

 

「「これは私が私のために、お兄ちゃんを賭けた戦いよ」」

 

その瞬間、二人のロビンの背後から巨大な両腕が生えてきてまるでプロレスのように手と手が組み合った。しかし人間サイズの組み合いではない。それも武装色を纏わせた同士の組み合い。

ぶつかった瞬間に衝撃波が全体に走り、周りの砂を巻き上げ、その瞬間に自然災害級の現象が起きた。

 

その衝撃波を間近で受けているハジメ。

しかしそんなの気にしている余裕などあるわけもない。

いま、二人が戦っている理由を知ったから。

 

ロビンがロビンであるための戦いだと思っていた。

なのに、ここにきてそれが"ハジメ"を賭けての戦いなんて……

 

だけどその戦いを止めることなんて、出来ない。

二人共、ハジメが影響を与えてここにいるのだ。

そしてそんな二人が自分の為に戦っている。

やめろ。なんて、軽々しくいえるわけがない。

 

ハジメはただそこで、戦いの行く末を見るしかなかった。

 

…………………………

 

「「百八煩悩(ポンド)(ほう)ッッ!!!!!!!!」」

 

迫りくる衝撃波。一つでもそれを逃すとアルバーナに被害が及ぶ。

始まったロビン同士の戦いは自然災害級の破壊力。

気合を入れていないと簡単に打ち負けてしまう。

 

ゾロとくいなの斬撃の砲弾でやっと衝撃波の一つを消せるが、一回の衝撃波で終わるわけがない。

何度も何度もぶつかり合う度に起きる衝撃波を全て打ち消す必要があるのだ。

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)一級挽き肉(プルミエール・アッシ)ッッ!!!!!!!!!」

「ヤマタノオロチッッ!!!!!!」

 

次に迫りくる衝撃波をサンジとウソップ。

一人では打ち消せない衝撃波を二人でならなんとか消せる。

しかし何度も大技を繰り出せるわけもなくこうして交互にやっている。

 

しかし、

 

「火拳ッッ!!!!!!」

竜爪拳(りゅうそうけん)·竜の羽ばたきッッ!!!!」

 

白ひげ海賊団二番隊隊長と革命軍ナンバー2の実力は違う。

エースの火拳で一つ消え、サボの拳と拳をぶつけ合う衝撃波で一つ衝撃波を打ち消す。

 

それを間近で見せられ落ち込む、かと思いきや

 

「やっぱりルフィの兄貴だってことはあるな!!」

「本当に強いですね!!!」

「しかし、それでもあの化け物共の弟子なんだよな……」

「どんだけ強いんだよ………」

 

間近で更に化け物がいるのだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

こうしてもっと強くなれる見本がいるのだと自分に言い聞かせ向かってくる衝撃波を打ち消す。

 

「いい仲間を持ったなルフィ」

「それでもずっと師匠と同じ船にいたくねぇーな……」

「だな……」

 

こっちはこっちで常にロビン達と一緒にいるゾロ達に対してスゴイ奴らだと感心していた。

 

…………………………

 

「なんでこの人達呑気にお茶なんて飲んでるのよッッ!!!!」

「異様な光景ね……」

 

ゾロ達と分かれナミ達は中央広場に隠されている爆弾を探しに来たのだが、そこには王国軍と反乱軍全員が呑気にお茶を啜っていたのだ。

 

戦争を、戦いをしていたはずなのにこの状態に混乱する面々。

 

「カラーズトラップ"和みの緑"」

「カラーッ!!!」

 

そこにいたのはメイド服を着た元バロックワークスのミス·ゴールデンウィークこと"カラー"。

戦争を無くすためには要は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だけと考えたハジメはカラーに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という限定的なトラップを仕込んだのだ。

 

本編ではそんなことは出来るわけもないが、あのクザン…いや、グザンのお陰というべきか、被害者というべきか……ともかくカラーの活躍によるすでに戦いは終わっていた。

 

「良かったあ!!!これならあとはこの人達を広場から退去させれば最悪なことは起きないわね」

 

「良く分からないけど、広場から一歩でも出たらまた元に戻るわ」

 

「じゃなんでアルバーナ全体にしないのよ!!!!」

 

「この広場だけでも大変なのよ!!!

アルバーナ全体って何日かかると思ってるの!!!!!」

 

つまり広場から出せばまた戦いが始まる。

しかし出さなければ最悪死人が大勢出る。

 

「ナミちゃん!爆弾を探すしかないと思う!!」

「えっ。爆弾って何それッ!!?」

 

「カラー。無理だと分かるけどお願い!!!

できるだけ多くの人を避難させて!!!」

 

「………分かったわ。でも一人じゃ無理だから」

「ギン、お願い」

「ええ。任されましたナミ様」

 

「今度言ったら削るわよ」

 

何を削るのかは分からないが怖いことを言っていることだけは分かった……

そこにチョッパーに乗ったビビとコブラが

 

「ナミさんッ!!みんなッ!!!!」

「ビビ!!無事だったのね!!!!」

 

チョッパーから降りてきたビビを抱きしめ、さらにノジコとベルメールも加わる。チョッパーとカヤはお互いに負傷者はどうだったか?話し合っている。

 

「君達が、ビビをここまで連れてきてくれた……」

「海賊よ。まあ、信用ないのは分かってるけど」

 

「いや、ビビの姿を見ればわかる。いい海賊なのだな」

 

「それ、絶対にルフィさんには聞かせないほうがいいですね」

「間違いなく怒るなルフィは」

 

「それじゃ手分けして爆弾を探しましょう。

チョッパー、爆弾どこにあるのか嗅ぎ分けて」

 

「んなこと出来るかッ!!!!」

 

緊張感のない会話だが、緊張しすぎても駄目な場面では効果的というべきなのだろう。突然の爆弾発言にも関わらずにビビやコブラが動揺せずにすんだのは幸いだった。

 

「みんな銃を持ってるからな。火薬が全体にあるみたいで爆弾の火薬なんて嗅ぎ分けられねぇよ」

 

「なかったら分かったの?」

「分かるな。鼻強化(ノースポイント)があるから」

 

「チョッパー君ってかなり優秀よね……」

「しかしその爆弾なら心当たりがある」

 

サラッと爆弾の在り処が分かったと発言する隣で「う、嬉しくねぇーぞコノヤローが!!!!」と喜んでいるチョッパーをスルーして話を進める。

 

「この中央広場を全て巻き込むのならそれは中央に爆弾を置くのが筋ではないか??」

 

「そうね………って、もしかして!!?」

「そうだ。あの時計台。あの中にあるはずだ」



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アルバーナ最終決戦④

話が少しだけ戻り、爆弾発言をもらった時に戻る。

 

「はぁー!?12時に爆弾が爆破する!!!??」

「時限装置ですね。お気をつけて」

 

最後にとんでもないこと伝えられて驚くウソップ達を尻目に、リリーサとマカナはその場から去ろうと背中を向けた。しかしすぐさまビビがリリーサの肩を掴み

 

「待ってください!!!」

「なんでしょうか??」

 

「お願いです!!探すのを手伝ってください!!!!」

 

「お断りです。私達"月兎"はロビン様の者。

ロビン様の為ならともかく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()??」

 

本気で、心からそう言ったリリーサの目は怖くすぐさまビビは肩から手を離した。

これ以上無意味だと分かっていてもどうして手伝って貰いたいという思いが見えるビビを見たリリーサは「はぁー」とため息をつき

 

「爆弾を見つけ、どうしようもなく、爆破寸前の時、呼んでください」

 

「えっ??」

 

「そうですね。残り10秒あれば事は足ります。

それまでは諦めずにやってもらいますよ」

 

「じゃあーねー!!!!!」

 

リリーサとマカナはお辞儀をして今度こそその場から去っていった。

残り10秒。そんな時間で一体何が出来るというのか………

 

…………………………

 

「ちょっ!!!こんな所を登っていくの!?」

「これしか道はないんです!!!」

 

時計台の内部に入るとそこは空洞のようになっており時計が設置されている場所までは螺旋階段を登っていくしかない。

しかしあまりにも高すぎであり、そして

 

「間に合うのコレ!!?」

「言っている暇があるなら登らないと!!!!」

 

そういいながら階段を駆け上がるがどうも間に合いそうにない。それどころか体力的にも限界が近い。

「チョッパー!!ビビを連れて駆け上がって!!!!」

「よ、よし!!任せろ!!!!」

「お願いチョッパー君!!!!!!」

 

人の足では無理だと判断してチョッパーに任せることに。

獣型に変わりビビを乗せて一気に階段を駆け上がる。

残されたナミ達もそれでも何とか階段を上がっていく。

 

「……どうして君達はここまで……」

「どうしてって、何がですか??」

 

年には勝てないのかコブラは最後尾で必死に登っていくが、それ以上にベルメールやノジコ、ナミ達がこんなにも必死になってくれている姿を見て疑問をもった。

 

「君達は海賊なのだろう。どうしてこうして助けるようなことを………」

 

「理由が欲しいなら終わったら多額の報酬を貰うわよ」

「ナミ、アンタね……」

 

「ただ仲間だと思っているあの子を助けたい。それだけじゃダメかしら??」

 

「………いや、一番納得がゆくな………」

 

にこやかにそう言い切ったナミの表情に疑う余地もなかった。

本当にビビの為にここまでして助けてくれると。

心から感謝をと感じていると上から声がした。

 

「み、みんな!!!大変なのッッ!!!!!!!」

「どうしたのビビッッ!!!!!!」

 

「この爆弾、止められないッッ!!!!!!!」

 

…………………………

 

時計台の最上階。その時計盤の裏側に爆が爆弾が、砲台が設置してあった。

そこにいたバロックワークスのエージェントはチョッパーが一撃で倒してしまい脅威にもならなかったのだが

 

「よし!!導火線はもう大丈夫だ!!!!!」

「チョッパー君!!!コレ!!!!!」

 

ビビの声に反応し近づいてみると未だに爆弾の針は止まらない。導火線は切ったがそれだけじゃ止まらない。

 

「時限装置って言ってたな……どこか解除する所は!!?」

「全体を見渡したけど、どこにも!!」

「ならこの時計盤を外した裏に……」

 

と、手を伸ばそうとするが手が止まった。

そしてすぐさま頭脳強化(ブレーンポイント)を使ってみると

 

「………ダ、ダメだ、これ………」

「どういうことなのチョッパー君!?」

 

「解除しようとしたら爆発する!!

元々から解除する気がないんだ!!!!!」

 

「そ、そんなッッ!!!!!」

 

導火線を切られて爆発しなくとも時限装置を解除する気のない爆弾を作れば後は爆発させるだけ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふざけんなッ!!命を何だと思ってるんだ!!!!!」

 

憤慨するチョッパー。ビビはすぐさま下にいるナミ達にこの事を伝えた。砲台の導火線を切ったが爆弾の針は止まらない。さらに解除するための解除がトラップになっていることも。

 

「チョッパー!!!砲台から爆弾を発射しても、爆弾自体少しは耐えられるのよね!!!!」

 

「そ、そうだけど……」

 

砲台から打ち出された爆弾がそこで爆発するなら砲台の意味がない。砲台は中央広場目掛けて打つためのもの。

打ち出されてもしばらくは爆発しない。

 

「ならチョッパー!!()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()

 

とんでもないことをいうナミに誰もが驚いた。

 

「ナ、ナミッ!!!何を言って」

 

「いいから早く!!もう時間がない!!!

どうせ爆発するなら私の案にかけてみて!!!!」

 

すでに1分を切っている。

すぐにでも行動に移さないと何もかもが終わる。

 

「分かった!!!!どの方向に飛ばせばいいんだ!!!!」

「あの砂嵐があるほうに!!!()()()()()()()()()()()()()()()!!!!!」

 

ナミが考えたのは爆弾をあの砂嵐がある方に。

そこにいるだろうロビンとハジメに爆弾を丸投げにする作戦なのだ。

 

「こ、ここからアルバーナの外へ!!!??」

 

これにはコブラも驚いているがその瞬間ノジコはさっきよりも速く、全力以上で階段を駆け上がる。

 

「な、何を……」

「ノジコは風と気温の変化を確認しないといけないから。

見渡せる最上階がベストなの」

 

「ここから落ちてくる砲台の導火線に火をつけるタイミング。さらに打ち出した瞬間に方向を砂嵐の方角にって………無茶をいうわね」

 

「私だって導火線に目掛けてなんて……

ここはベルメールさんの腕が頼りなんだから!!」

 

「ウソップ君に変わってもらいたいわ………」

 

一体何を、と言っている間に頭上から物凄い音が鳴り響いた。

 

…………………………

 

「ランブルッッ!!!!」

 

ランブルの使用は一日一回。

それは本編と同じ。しかし決して使えないわけではない。

100%発揮するためには短時間使用。

 

なのでチョッパーはすぐに角強化《ホーンポイント》から

 

槌変化(ハンマーモード)ッッ!!!!」

 

腕に使ったハンマーモードを角に使ったチョッパー。

角の先が槍変化(ニードルモード)と同じように枝分かれするが無数に分かれるのとは違い合わせて10個に分かれた。

そして枝分かれした角は丸く円になり

 

十柱戯状態(ボーリングモード)ッッ!!!!!!」

「砂嵐より左よりにッ!!!!!」

 

なんとか間に合ったノジコは駆け出す前のチョッパーに大声で叫んだ。

脚強化(ウォークポイント)に変え力を入れて一気に砲台に向けて、光の様な速度で突撃をする。

 

刻角(こっかく)!!月閃光(ムーンライト)ッッ!!!!!!」

 

砲台ごと吹き飛ばされ壁を破壊し外へ飛び出る。

無理矢理吹き飛ばした為にその場所の足場は壊れチョッパー達は下へ落ちていく。

 

「ナミイイィィィィッ!!!!!!」

「ベルメールさんお願いッ!!!!!!」

「私の指差す方にッ!!!」

 

重力に従い落ちてくる砲台へ指差す。

しかし砲台の、大砲の口が地面に向いているのに気づいたナミは

 

「シロッ!クロッ!!お願いッ!!!!」

 

マジックというよりもう召喚された二匹のクマ。

クロがシロを抱えて壁を貫きながら砲台への方へ投げ飛ばした。

シロは砲台に着くなり主の意図を察して大砲の口を砂嵐の方へ向けた。

 

「今よッ!!!」

「エレメント=テンポッ!!!!!!」

 

マジックハンド型に変わったクリマタクトの先端、黒い球体から火柱が大砲目掛けて放たれた。

その火柱は導火線ではなく大砲に直接つけれた為に上手く砂嵐の方へ向けて爆弾が放たれた。

 

「「「いっけええええぇぇぇぇッッ!!!!!!!!」」」

 

やや上空へ向けられた爆弾はいまだ爆発せず。

時間が過ぎ爆発するか、地面に激突し衝撃で爆発するか。

勢いよく飛んでいく爆弾だが、やはり距離がありすぎた。

まだアルバーナの外へにはまだ距離がある。やっと半分近くだというのに………

するとチョッパーが胸板を喉元を肥大化させてた。

声強化(エコーポイント)()()()()()()()()()()()()()()()

 

「誰か!!それを!飛ばしてくれええぇ!!!!!!」

 

アルバーナの外まで届きそうな大声。

ナミ達に助けられたチョッパーはそこから大声を出すものだから皆耳を塞ぐがそれでも強烈な大声は脳を揺らす。

 

大声を出したチョッパーさえも声を出し切ると耳から血が流れそのまま倒れてしまった。

 

「チョッパーッ!!!!!」

「チョッパー君ッ!!!!!」

 

駆け寄るナミとカヤ。

すぐに診断をするカヤを見たノジコはすぐに爆弾の方を見るとそこへ向かう、空を翔ける人影を見た。

 

「面白いことを考えるのね」

 

そこに現れたのはレイジュ。

その足元、地上には倒れているバロックワークスの残党と思われる者達が。

 

桃色毒網(ピンク·ネット)ッ!!!!!!」

 

爆弾には毒は効かない。鉄も溶かす毒ならダメだろうがそれ以外を使えば問題はない。ネットで爆弾を包みその先を両手で持ちグルグルと振り回して砂嵐の方角へ飛ばす。

爆弾を包んでいた毒は飛行する風圧に耐えきれずに霧散。

そこで見えた残り時間は30秒。

 

そしてまたもや爆弾は地上に向けてゆっくり下降。スピードも落ち地上へ落ち続ける爆弾に、今度は空高くから何が近づいてくる。

 

「失敗はするされないぞペルッ!!!」

「あぁ!!分かっているともッ!!!!!」

 

「ペル!!チャカッ!!!!!」

 

ハヤブサに獣化したペルの背中にチャカが乗り爆弾に向けて飛んでいる。爆弾が地面に当たれば爆発するために特攻で爆弾に近づくのだがそれよりも早く爆弾が地面につきそう。

 

「お願い二人共ッ!!!!!」

 

祈るビビの思いが届いたのかギリギリで爆弾を掴んだペル。

しかし今度はそこからが大変なのだ。

アルバーナの外から迫りくる衝撃波。一撃でも喰らえば墜落して爆発するだろう。

 

そして早速、目に見える衝撃波が目前に。

空気を揺らし景色を変える衝撃波がハッキリと。

上昇も下降も間に合わない。と察した瞬間に

 

「「獅子(しし)歌歌(そんそん)ッッ!!!!!」」

 

ゾロとくいなと同時に繰り出された居合斬りにより衝撃波が、その後に続く衝撃波なども一気に斬られ霧散した。

消された部分を一気に飛行するペル。

しかし、もう時間がない。すでに15秒前。

 

どんなにスピードを上げてもアルバーナの外側近くになる。

一層上昇して少しでもアルバーナを巻き込まないように……

 

「それを私に預けてくれますか??」

「なっ!!!!??」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

何もない所で足踏みをして地を蹴るかのように走っている。

 

「ここまでくればあの方も喜んでくれますので」

「………頼むッ!!!!」

 

敵から味方も分からないが任せて大丈夫だろうと直感したペルはその女性に爆弾を渡した。そう渡した。手渡しだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()残り10秒、さらにスピードを上げて宙を翔ける女性。

 

「あの者は一体………」

 

あっという間に砂嵐の中に入り数秒後。

砂嵐の中から大爆発を起こしてアルバーナに被害が及ぶことはなかった。



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アルバーナ最終決戦⑤

「何も出来ないのか麦わらッッ!!!!!!」

「クッ!!」

 

ロビン対ロビンの戦いにより巻き上がった砂をクロコダイルは上手く利用してルフィを中心に巨大な砂嵐を、砂嵐(サーブルス)を能力で作り上げたのだ。

 

その砂の竜巻にクロコダイルは自らの身体を砂に変えて混ざり、超高速による全方向からの攻撃をしていた。

ルフィはその攻撃をただただ防御で受けている。

 

「毒はどうだ!!もう意識もあるまい!!!

だが簡単に殺さねぇ!!!テメェは苦しめて殺すッッ!!!!!!」

 

そしてクロコダイルは砂漠の宝刀(デザートスパーダ)を全方向から繰り出してルフィの身体を切り刻んでいく。

もうフラフラで立っているのもやっとだったルフィの身体はとうとう限界をむかえ片膝がついてしまった。

 

それを見たクロコダイルはさらに追い込んでやろと近づく。

 

三日月形砂丘(バルハン)ッッ!!!!!」

 

三日月のような砂を纏わせてラリアットする技は、当たった部分は一瞬で水分を奪われてミイラ状態になってしまう。

それをルフィの下半身に、主に脚を狙い喰らわせて立てなくしようとした。

 

だから気づかなかった。

一瞬にしてこの砂嵐の上空に、砂嵐の中を一気に駆け抜けて入ってきた女性に。

 

「これは、ほんのお手伝いよ」

 

その声が聞こえ上空を見上げるクロコダイル。

そこにはここにはあるはずもないものが。

アルバーナにいる国王軍と反乱軍を一掃するために仕込んでいた巨大な爆弾が現れたのだ。

 

「ふざけんなあああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!」

 

すぐに方向を変えるしかなかった。

見えている爆弾の針はあと5秒。

ここに落下して爆発するのとタイミングは同じ。

逃げようにも広範囲に広がる爆発にクロコダイルも巻き込まれる。

 

ならいまはあの爆弾をさらに上空へ。

この砂嵐をさらに回転数を増やして高く高く!!!

 

砂嵐(サーブルス)ッッッッ!!!!!!!」

 

砂嵐の内側からもう一つの砂嵐を発生させ更に爆弾を高く……

 

「……………………ゴムゴムの………」

 

だから、気づかなかった。

いまクロコダイルの頭は自分を殺しかねない爆弾。

そしてルフィはもう虫の息と判断して気にも止めていなかった。

それが悪かった。いや、すでにクロコダイルは()()()()()()()()()()()()()()

 

本編ではルフィは真っ直ぐな攻撃をする。

もちろん戦いにおいて真っ直ぐすぎる攻撃は避けられるために工夫したりしているが、そこに騙し討ちのようなものはなかった。

 

しかしルフィの師匠はあのロビンである。

徹底的に鍛え上げられており、戦闘における相手の油断を誘う方法も知っている。

 

毒で身体が()()()()()。毒で頭が()()()()()

直感で動くルフィに、いま"静"が出ている。

そしてそこにロビンの教えを思い出した。

 

弱らせた姿を見せて近づかせろ。と。

 

爆弾というサプライズに驚きはしたがいまのルフィは超冷静。

どっちにしろ近くに近づき、意識を爆弾に向けたクロコダイルに()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()あの技を使うことにした。

 

いまこの場面、状況、状態だから最大限に使えると判断した技。

 

大きく息を吸い込む胴体を大きく肥大化させ無理矢理その身体を捻りを入れる。そして口を地面に向けて一気に体内の空気を吐き出しながら捻りを解いていく。

 

その際渦巻いている砂嵐の遠心力を加えているために、さらに回転力は増していき、ルフィ自身が竜巻のように周りの砂嵐を巻き込んでいく。

 

そこでやっと気がついたクロコダイル。

すでにルフィは目の前に近づいている。

そして下から砂嵐を自分の力のように巻き込んでいく姿に背筋が寒くなったのを感じた。

 

まるで自分がいまから強烈な砂嵐に、いや、一瞬にして死を招くような暴風に巻き込まれていく感覚に……

 

砂漠の金剛宝刀(デザート・ラスパーダ)ッッッ!!!!!」

 

悪あがきでもクロコダイルはやらずにはいられなかった。密度の濃い砂を使うことでさらに殺傷能力を上げた斧のような刃を飛ばしてあの暴風ごとルフィに止めをと。

 

しかしそこでクロコダイルは見てしまった。

その暴風の中央から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()

 

火炎(レッド)暴風(ストーム)ッッッ!!!!!!!!!!」

 

クロコダイルの刃は簡単に崩され、その身体に連続で炎を纏わせた拳が激突する。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッッッッッッ!!!!!!!!」

 

クロコダイルの身体ごとそのまま上空へ押し出し、そして先に上昇していた爆弾にぶつかったまま、さらにさらに、クロコダイルと爆弾ごと上へ上へ押し上げていく。

 

そして最後に渾身の一撃をクロコダイルの腹部にお見舞いして一気にクロコダイルと爆弾を上昇させた。

 

そして…………

 

…………………………

 

大爆発が起きた。

それはルフィとクロコダイルが戦っていた場所。

そちらを見ると砂嵐から炎を纏った暴風が出来ており、それが霧散すると同時にルフィが地上に向かって落ちていく姿を。

 

あの爆発。もしかしなくてもクロコダイルが巻き込まれた??

おいおい。この先クロコダイルの活躍する所あるんだけど死んでないよな??

 

流石にあの爆発に巻き込まれたら……まぁ、ペルも大爆発からいきのこっていたし、大丈夫だろう。

 

それよりやっぱりルフィが心配かなと考えていると。

 

「……………私の、負けね………」

 

その声にハジメはハッとしてロビンの方を見た。

勝ったのは……………

 

()()()()()()()()()()………」

「当たり前よ。ニコ·ロビンは私なのだから」

 

そう、ここまでずっとハジメを慕ってくれた()()()()()()

巨大な手や足、そして分身体を使いながらも、最終的には二人の戦いだった。

 

それはまるで組手のよう。手を生えたのを手でもぎ取り、もぎ取った手をまた手を生やしてもぎ取る。その手を拘束したり、ミクロの手を無数生えさせて刃のように使ったり……

 

そんな姿を間近で見ていたハジメはこれを他の者にどう伝えればいいだろうと悩む程に混沌とした戦いだった。

 

それでも詰将棋にようにドンドン本体であるロビンが追い詰めていったのだ。僅かな戦略が、手の出現速度が、まるでこうしていけば終わりが、勝ちに続くかのように、焦りもなく淡々と………

 

「……どうして、そんなことが出来るの……」

 

一方、負けたロビンは焦りが見えていた。

同じロビンなのに追い詰められていた。

実力など僅かな差なのに、それでも圧倒されているかのように必死になっていく姿が見えていた。

 

だから最後はその身体に無数の手が生えて急所という急所にロビンの手刀が狙いをつけていた。

 

そんな状態で勝った目の前のロビンに問いかけた。

同じロビンなのにどうして、と……

 

「私が"お兄ちゃんの妹"だからよ」

「!!!!??……………ほんと、敵わないわ………」

 

力が抜けて地面に座り込んだ。

敵意も消えたと判断したロビンは負けたロビンの身体に生えていた手を消し去り

 

「そう。なら、最後に言う言葉はあるかしら??」

「………そうね。貴女とお兄ちゃんに一言でも……」

 

諦めたように、それでも清々しいその表情でロビンは

 

「いい。避妊はしなさいよ」

「いやよ。しないわ」

「最後までふざけんなお前らああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生きてるかールフィ」

「……ハ、ハジメ……師匠……」

 

大の字で倒れているルフィの所に来てみるともう死ぬ一歩手前のご様子。おいおい、そこは本編通りにならなくてもいいんだけどな……

 

「何してるのルフィ。そんなにボロボロで。

今すぐ立ちなさい。鍛え直してあげるわ」

 

「ひ、ヒィィィイイイィイイィィッッッ!!!!!!」

「やめなさい。ルフィが聞いたことのない声を出してるから………」

 

もう、泡を吹いて倒れそうな…·って気絶してしまったルフィ。

どうするかなーと考えているとフワフワと上空を浮いて近づいてくる絨毯が

 

「おーい!!!ルフィ!!ハジメ!!ロビン!!!」

「おっ。ウソップ。カヤかチョッパーいるー??」

 

「いますけど?」

「急患か?」

 

ヒョコッと顔を出した二人に軽く

 

「ルフィ、死ぬ一歩手前」

「「呑気に言ってる場合かああぁぁ!!!!」」

 

めちゃくちゃ怒られながら絨毯から飛び降りてルフィを速攻で治療し始める二人。よし、二人に任せれば大丈夫だな。

絨毯に乗っていたのは麦わら海賊団と二人だけ。

 

ということは

 

「ビビ。戦争を終わらせにいったんだ」

「ええ。もう大丈夫でしょうこの国は」

 

"国"のことをよく知っているレイジュがいうならもう大丈夫なのだろう。あとは王国がこの国を立て直せばいい。

それ以上はこちらが関わらなくてもいいこと。

 

「それでクロコダイルのやつは……」

「どっかに飛んでいった。としかいえないね。爆発の中心にいたようだし」

 

「おいおい。流石にそれは……」

「なんとなくだけど生きてるよ。まあしばらく指一本も動かせないだろうけど」

 

ゾロとサンジはまだやる気だったのだろう。

クロコダイルの最後を聞いて残念がっている。戦闘狂か。

 

「ったく、なんて戦いをしてんだ師匠は……」

「勝てる気がしねぇ……|」

 

「心配しなくてもいいわよ。ルフィが起きたら本格的に3人一緒に修業よ。その錆びついた心を徹底的に叩き直して上げるわ」

 

「「い、嫌だああああああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」」

 

だから、本編にないようなリアクションを取ってるよ。

 

「ふふふ。これで国から多額の報酬を……」

「ノジコ。私、これが欲しいんだけど……」

「私はカワイイ物が欲しいわ!!!!くいなはどうする??」

「えっ。ええぇーと………」

 

どこから出したか分からないけどパンフレットを手にとって何を買うか相談している親子と一人。くいなは巻き込まれたか………

 

「とりあえずギンは船に戻って海軍に取られないようにしてて」

「了解です!!!」

 

「カラーは後で海軍の方に行こうか。

大丈夫。あのグザンの止めはカラーがやっていいから」

 

「…それ、大丈夫、なの……??」

 

あと、この国でやることは少ない。

それでも今は、やっと終わったこの戦いに安堵していいだろう。

 

ここから大きく物語が分かっていくことを自覚しながら。

分かりながらも本編ではありえないことを繰り返し、それでも自分が思い描くハッピーな物語の為に。

 

そして…………

 

「どうしたのお兄ちゃん。私をジッと見て??」

「そ、そうだったかな………」

 

「ハッ!?欲情した!!?」

「だったとしても女の子がそんなことをいうものではありません!!!!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………

 

雨が降る。乾いた大地に雨が降る。

これが戦争の終わりを告げる恵みの雨である。



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出港する。その前に①

「…………………………」

 

戦いが終わり三日目。

未だに眠るルフィの傍らにはビビが付きっきりで看病をしていた。事実上この国を救ったのはルフィだと言えるだろう。

ロビンでもハジメでも、全く活躍していないクザンでもない。

だから、こうして看病している。というのも違うがどうしても自分の手でやりたいと思った。

 

結局、すべてルフィ達が解決してくれた。

何かをしたといえば住民の避難や、戦争が終わったとキチンと説明したことぐらい。

もちろんそれは戦争を終わらせ、大切な民を思えば必要なのことは分かっていた。それでも………

 

「私、どうしたら……皆に返せるのかな………」

 

返ってくる言葉もなくただ静かな時間が流れる。

そう、戦争は、終わったのだ。

降り続いた雨もやっとあがり、久しぶりにという感じで誰もが外へ繰り出した。

 

………………………

 

「ったく、どいつもこいつも……」

「どうしたのサンジ。随分不機嫌ね」

 

「なにが悲しくてお前と買い物なんて……

本当はナミさんやノジコさん!!!ビビちゃんと買い物したかったんだよッ!!!!!」

 

「くいな辺りの名前を出さなくなったのは、まぁ、成長したと思うべきなのかしらね」

 

いつでもルフィが起きて飯が食べれるようにとこうして毎日雨が降ろうが買い出しに行っているサンジ。その付き添いでレイジュがこれもまた毎日付き添っているのだ。

 

「………あんなの見せられて、入れるか……」

「大丈夫よ。いい人が見つかるまでお姉ちゃんが傍にいるわ」

 

「いらねぇよッ!!!!ってか、自分でお姉ちゃんとかいうなッッ!!!!!!」

 

お姉ちゃんで間違いはないのだが、その単語をレイジュがいうとかなり不気味で鳥肌が立っているサンジ。

 

「この際だからハジメとロビンとまではいかなくても仲良くしない??」

「このままで十分だろうが」

 

「あの二人を見ていたら、なんかそんな欲求が………」

「俺は何も聞いてないぞおおおおぉぉぉッッ!!!!!」

 

とうとう耳を塞いで聞こえないよう実力行使しだしたサンジに小さな声で「冗談よ」というレイジュ。

正直こんな姉弟な関係でも十分に満足している。

 

未だに上の兄達や父親には厳しいがこうしてまた"家族"として……

 

「なにニヤニヤしてるんだお前……」

「そんな顔、してたかしら??」

 

「自覚ないならいいけどよ……」

 

そんな理想を思い描いて幸せな気分になったのだと自覚がなかったレイジュ。少しだけ、もう少しだけ弟に甘えてみようかなーと考えるレイジュに

 

「ところでよ、ルフィの毒、本当に大丈夫なんだろうな??」

「ええ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ルフィが猛毒を受けたと知ったレイジュはすぐさま毒消しを行った。もう体力もないルフィに一秒でも速く毒を抜かないと危険だった。

そう、アレは緊急事態によるもの。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それは仕方ないことである。

 

「…………………」

「??」

 

そしてそれ以降、どういうわけか弟のサンジが王宮に帰るまで黙ってしまったことにレイジュはその理由が全く分からなかったという……

 

…………………………

 

「「あっ」」

「「あっ」」

 

いつでも出港出来るように備品の買い出しという()()()に勤しんでいたゾロとくいな、ウソップとカヤ。

 

デートという気分でいるのはもちろんくいなとカヤ。男共は単に買い物だと思っている。「それはデートだろうが!!!」とサンジが入れば言ってくるかもしれないが、それを言ったら本当に自覚するだろうと絶対に言わないと決めたらしい。

 

「おいおいゾロ。なんで酒ばっかりなんだよ……」

「うるせぇな。テメェだって訳の分からないものばかりだろうが」

 

「このステッキは訳わからなくねえ!!!

こうして2回地面を叩けば………ハイッ!!!」

 

そうしてステッキの先に出てきたのは花束。

 

「使えねぇじゃねえか」

「バカ野郎!!!これを研究すればゾロの刀からでも出せるんだぞッ!!!」

 

「いらねぇよ!!!!!」

 

「でもそこに炎や氷、電気や光線が出たら………」

「…………………………」

 

そこで黙ってしまうところやはりゾロも男。

そんな夢のようなものが出るならと考えてしまう。

まあすぐさま否定するがそんなやり取りを二人の女の子は

 

「カヤさんは何か買ってもらいました?」

「はい。()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…そ、そう、なのね……」

 

お嬢様のイメージがあったカヤの姿は今や女医師。

黒いシャツに白衣と白いパンツ。目立たないくとも清潔感あるあの洋服の何処か、もしかしたら全体に"仕込み"があるとなるとそれはプレゼントとは違うような……と言いたかったがグッと我慢したくいなだった。

 

「くいなさんはどうなんですか?」

「見ての通り本当に買い出し付き合っただけ。

まあこのあと稽古に付き合ってもらうけど」

 

「なんだか熟年夫婦みたいですね」

「嬉しい………とは言いづらい例えよね……」

 

そんなやり取りをしているとカヤの足元にラッシーが近寄り頬ずりをしている。

 

「本当に懐かれたのね……」

「可愛いですよね。でもナミさんには受けないんですよ」

 

(いや、これは可愛いとは思えない……)

 

ちょっと変わったセンスだなーと思ったが、そういえばそれ以上の人もいたなーと思いこれもグッとこらえた。

 

「なんだこいつ付いてきたのか?」

「カヤにベッタリでな。ロビンとハジメのせいで……」

 

ウソップとしてはこの状況はあまり好ましくない。

このラッシーも元は敵。それをカヤが"躾"をしてこうなった。

なんか…カヤがドンドン変わっていくようで、正直喜べないというのがウソップの感想である。

 

…………………………

 

「もう〜〜〜可愛いわ〜ッッ!!!!!」

 

カーテンの向こう側から出てきたのはゴスロリ姿のカラー。

頬を赤めてモジモジしながら試着室から出てきたカラーをナミは思わず抱きしめた。

 

「いいわ!もう!!ノジコやベルメールさんとは違う可愛さがあってサイコーッ!!!!!!」

 

自分は一体、何をしているのか……

いまはそれさえも考えずに黙々とやっていないと心が折れそうだと無心でナミの着せかえ人形になっているカラー。

 

「次はコレをお願いね!!」

「いや、あの……」

 

しかし試着室に押されてすぐにカーテンを閉められ、はぁーとため息をつきながらゴスロリを脱いでいく。

今回、初めて人の役にやった。

"呪術"と言われていた過去、そしてある人のお陰でそれをさらに昇華させることも出来た。まぁ、それをあの二人に言ったら怒られるのだろう。

 

それでも暗殺しか使えないと思いやってきたことがこうして人の役に立てた。それがなんとなく……

 

「どう着替えた?」

「えっ。ま、まだ……」

 

「なんなら手伝ってあげようか!?」

「それは遠慮します!!」

 

とにかくいまはこの残念な人を私一人に押し付けて逃げたあの親子をどうしてくれようかと考え込むカラーだった。

 

…………………………

 

「お疲れ様!」

「差し入れ持ってきたわよ!」

 

「お疲れ様です!!!」

 

メリー号を守ってくれていたギン達に差し入れを持ってきたノジコとベルメール。流石にあのままナミから逃げてるだけではと思い、思いつきで差し入れを持って来たのだが、思いの外好評だったらしく

 

「た、助かった……キロロの料理は絶命的だったからな…」

「キャハハハ!!次は大丈夫よ」

「やめてくれ……サンジさんの料理が食えなくなる……」

 

そこには海軍からなんとか逃げてこれた"バースト"ことMr.5と"キロロ"ことミス·バレンタインがギンと一緒にメリー号を守っていたのだ。

 

船には食料はあるが肝心な料理できるものがいなく、女の子ということでキロロが頑張って作ったのだが、塩と砂糖の区別もつかず味見をしないというテンプレを起こしていた。

 

料理で人が死ぬわけではないが二人の精神的負担は大きかったようだ。

 

「でも、ここにもいないのね……」

「うん?誰のことだ??」

 

「ハジメお兄さんとロビンさん。

昨日から二人を見てないから……」

 

「今頃あの女に別の意味でおそ…」バンッ!!!!

 

まったく目で追えなかった。

気づいた時には頬に傷、そして後方の海に何が着水した音。

そして目の前のベルメールが銃口をこっちに向けていた。

 

「死にたいなら……続けていいわよ?」

「……す、スミマセン………」

 

…………………………

 

「メシイイイィイイィィィィッ!!!!!」

「ルフィさんッ!!!」

 

突然目を開き上半身を起こして両手を上に突き上げて叫ぶルフィ。その姿にビビは目に涙を溢れさせながら

 

「良かった!本当に良かった……ッ!!!」

「うん??なんかあったのか??」

 

「ううん…なんでもないの……」

「はっ!?帽子!!!ペンダントッ!!!!!」

 

頭に帽子か乗っていないことに気づいた。

すぐにそれは見つけたが次にペンダントはどうなったかと慌て、首元にあることに気づいてはぁーと息を吐き落ち着いた。

 

「帽子は大切なものだって聞いたことあったけどそのペンダントもそうなの??」

 

「あぁ。小さい頃の俺とハジメが写ってるんだ」

 

見せてもらったロケットペンダントの中身はハジメに抱かれた小さなルフィの姿だった。そして一言。

 

「えっ!?ハジメさん全然変わらないッッ!!!!!」

「そうなんだよな…全く変わらねぇよな……」

「俺、師匠よりもハジメのほうが化け物だってたまに思うぜ……」

 

「エースッ!サボッ!!」

 

いつの間にかそこにいたエースとサボ。

その手には大量の食べ物があり、持っていた買物袋の一つをルフィに渡した。

 

「三人はハジメさんとロビンさんと昔からの知り合いなんですよね」

 

「ハジメはともかく師匠は師匠だからな……」

「あの容赦ないしごきは……」

「俺、未だにやられてるぞ……」

 

ロビンの話題が出て一気にブルーになった三人。

あまり踏み込まないでおこうとビビは別の話題を

 

「そ、そういえばお二人は今まで何処に??」

 

「ちょっと野暮用でな」

「そろそろ俺達もここを出ようと思っていてな…」

 

「ええぇー!!!もう行くのかよッ!!!」

「って、言っても師匠には挨拶してぇんだが……」

「場所が場所だからな……戻ってくるまではいるよ」

 

「そういえばハジメと師匠は何処にいるんだ??」



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出港する。その前に②

「ふざけるなッッ!!!!!!!」

 

怒りが身体から溢れ出るようなそんな勢いでテーブルを叩き壊すスモーカー。隣にいたたしぎもオロオロしている。

そしてそんなスモーカーを怒らせたのは目の前にいる青雉。

 

「俺達は何も出来なかったッ!!

例えテメェに邪魔されなくても麦わらの一味がすべて終わらせたッ!!!!なのに手柄全て俺達にやるだと!!!舐めてるのかッッ!!!!」

 

「まぁ、そうなるよな…

だが世間は海賊が国を救ったなんてのは望んでない。

それがましてや王下七武海なら尚更な……」

 

頭をかきながら怒り狂うスモーカーに説明をする。

一度キチンと話をしたのだが、やはり納得してない。

海軍がやったことと言えばバロックワークスの残党討伐や倒された幹部の逮捕。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

なにもしていないに等しいこの状況で国を救った英雄になれ。

それはスモーカーにとって馬鹿にされているのと同じ。

 

「知るかッッ!!!!

こっちは何も出来ずに腹わた煮えくり返っているんだ!!!」

 

「だとしても、上はすでにスモーカーがクロコダイルを倒したと筋書きを作っている」

 

「ならテメェがなればいいだろうがッ!!!」

「今回の件でお前を昇進させるためのものだ。覆ることはないよ」

 

その言葉にスモーカーに向けて拳を放った。

ハッとたしぎは止めようと動いたが、その拳はクザンの横を過ぎて壁に。

 

「これを……狙っていたのか青雉ッ!!!!!」

「お前さんをずっと放置するわけにはいかないからね。

麦わらの一味を追うのならそれなりのものがいるのさ」

 

勝手に持ち場を離れてここまで来たスモーカー。

それを許すなら今の地位ではダメだという。

ならその地位を用意するだけ。そして今回の騒動が都合よく現れたということ。

 

「………いま、上の人間だって言ったな……

もしかしてとは思うが、これはアイツが……」

 

「どうだろうね。いつも無茶をやからす人だから」

 

それを聞いて拳を下げるスモーカー。

テーブルが壊れ残された椅子に座りタバコをハァーと吐き出し

 

「…………乗ってやる」

「あら、まだ駄々を言われると思ったけど」

 

「それどころじゃねぇだろう………テメェはよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オイ。何を、やってるんだ。テメェ」

 

ギギギと潤滑油を無くした機械が動いているような鈍い音がするように小刻みに震えながらゆっくりと振り返る。

するとそこには、鬼の形相で仁王立ちしているハジメの姿が……

 

「言ったよな。アルバーナに来いって。

なんでテメェはそこに踏ん反り返っていたんだアァ??

上の方が決めたから従え?何言ってるんだグザンさんよ。その上って立場が分かってるならなんでこの僕の命令を聞けなかったのかな??えぇ??それともまだ立場が分からないのかな??あれだけ書類整理を人に押し付けて、自分はのらりくらりとやっていたグズ中のグズが、人様の上に立ててるのはその戦力があるだけで、それプラス働いている人達にとっては下位だってことにまだ気づかないと。ほう、そうかそうか。バカだバカだと想っていたけどここまでバカだと思わなかったよ………………………死刑。

 

その瞬間にグザンの両側に現れたリリーサとマカナ。

そしてその背後に陣取ったのが

 

「ふふふ。久しぶりね、グザン」

「……に、ニコ·ロビン…………ッ!!!」

 

「イヤね。()()()()()()()()()()()()()

さぁ、始めましょうか。楽しい楽しい再教育よ」

 

「ざ、さげんなッ!!!!死ぬだろうがッッ!!!!!」

「ですから死刑なのです。諦めを」

「私は死ななくていいから青雉さんをって、言われたので!!!」

 

「さぁ、行きましょうか。あまり時間をかけられないのよ私も」

 

「い、嫌だ……嫌だッ!!!!!助けてくッッ!!!!」

 

最後までその声は届かなかった。

トビラが閉まった瞬間に声がかき消えたのだ。

それがとても不気味でくいなは寒気を覚えたという。

 

「さて、あんなグズはどうでもいいんですよ僕は」

「………容赦ねえなテメェは」

 

「あると思いますか??あんなグズに」

「………いいから本題に入れ。用があって来たんだろうが」

 

そうでしたと思い出したハジメは

 

「クロコダイルに会わせてくれませんか??」

 

無表情で定番だったあのハジメが()()()()()()()言ってきた。それが何よりも恐怖だとここにいる者達は本能的に生理的に感じ取った。

だからだろう。普通なら上司の命令だから聞かないといけない命令に対してスモーカーは

 

「………知らねぇな」

「知らない??そんなはずはありませんよ。

こっちは情報戦に長ける八咫烏の"リーマ"がいますから。

アラバスタ南西に2キロ。流木に引っかかっていたクロコダイルを"ヒナ大佐"が確保したということは知ってます」

 

そう。確かに同期であるヒナ大佐からクロコダイルを引き取っている。そしてそのヒナ大佐はいま麦わらの一味を確保するために陣形を固めている。

 

「海賊ではなく大将としていいます。"サー·クロコダイル"に()()()()

 

その瞬間に放たれた殺気。部屋にいないのに近くにいた海兵達はバタバタと倒れていく。近くにいるたしぎでさえ意識を保つのに必死な状態。スモーカーも冷や汗をかきながらも

 

「……テメェからは、私情が見える……そんな奴に会わせられるか………」

 

「それはそうですよ。僕がこの手で()()()()()()()()()

 

そしてさっきよりも濃い殺気にとうとう立つことが出来ずに座り込んでしまったたしぎ。スモーカーもどうすることも出来ずに、それでも真っ直ぐハジメを見て

 

「……だったら、力づくで…来やがれッッ!!!!」

「なるほど。分かりました…………では」

 

もう、誰もがヤラれると覚悟した。

しかし譲れないその正義のために…

 

「帰ります」

 

「…………………はっ??」

 

突然元に戻ったハジメ。殺気もなくなり座り込んでいたたしぎも深呼吸して息を落ち着かせていた。

一方スモーカーは「では」と本当に帰ろうとするハジメに

 

「ま、まてッ!!!!ヤル気じゃなかったのかッ!!!!!」

 

「はい。あぁ、言葉が足りませんでしたね。

ヤル気といっても殺すじゃないですよ。一発殴るってヤルのヤル気ですから」

 

「分かるかッ!!!!!」

「スミマセン。でもそうですね、私情を出したらいけない。

確かにそうかもしれないと僕がそう思ったのでそれもやめます」

 

頭をかくスモーカー。

ここまでハッキリと引かれるとコッチが悪者のような気がしてくる……

 

「一発だッ!!!それ以上は見逃さねえッ!!!!!」

「そうですか。でもそれだけで十分です」

 

……………………………

 

軍艦に備わっている牢獄。

それは捕えた海賊を収容する場であり、能力者対策として鉄格子と手錠に海楼石が使われている。

 

そのため見た目はただの手錠なのに大人しくしているクロコダイル。義手は完全に壊れていて包帯をしているがすでに真っ赤になっている。いや、義手が壊れているのに見た限りそれ以外は失っている部位はなさそうだ。しかし()()()()()()()()()()()()()()()()包帯がしてあり顔色も悪かった。

 

「………何しに来た、絶黒のハジメ………ッッ!!!!」

「殴りにきました」

 

弱っていても喧嘩を売るクロコダイルにハッキリと要件を伝えるハジメ。それに対してクロコダイルは花で笑いながら

 

「殴りに来ただぁ??俺がテメェに何をした??」

「それはまた後で。さて、色々話したいこともありますが…」

 

牢屋の前に椅子を置きそこに座るハジメ。

クロコダイルが万が一手を伸ばしても届かないギリギリの所で。

 

「まずは………()()()()()()()()()()()!!!」

 

手錠の先についている鎖を引きちぎり鉄格子にぶつかってまでハジメに近づき手を伸ばすクロコダイル。しかし鉄格子で更に力が抜けていき膝をついてしまった。

 

「く、クソがあぁ……ッ!!!!!」

 

「まぁ、海賊ですから何かをやらかすなんて目に見えてますのでそこは仕方ないですよ。しかしよくもまぁここまで杜撰(ずさん)な計画をしましたね」

 

「なんだと…」

 

力が抜けると分かっていながらも鉄格子を握りハジメを睨みつける。それはもう意地である。

 

「敗因といいますか、ぶっちゃけ全く他人を信じなかった貴方がニコ·ロビンの言葉を信じたから駄目だったんですよ」

 

「……あの女ッッッ!!!!!!!!」

 

「それは十分に分かっているでしょう。

あとはビビを王女だと知ってて放置したことですかね。あれがなければ…………まぁ、関係なく破綻はしてましたけど」

 

その言葉に驚きを隠せないクロコダイル。

それを見て「アレ?」と首を傾げるハジメ。

 

「えっ。あれだけ分かりやすく活動しておいて完璧に国を乗っ取れるとでも思ってましたか??無理ですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。泳がせて泳がせて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉にクロコダイルは言葉にならないほどの暴言や奇声を上げながら牢獄の中を暴れだした。その姿を見てハジメは何を思ったのか

 

「どうですスモーカーさん。これが国を落とそうとした人の成れの果てです」

 

「………テメェは、イカれてるのか……ッッ!!?」

 

「あれ??そこでその言葉が出ますか……

経験値って言葉は悪かったですかね…………」

 

「そういうことを言ってるんじゃねえッッ!!!!」

 

ハジメの胸ぐらを掴み吊り上げるスモーカー。

 

「人を何だと思ってやがる……ッッ!!!!!」

「あぁ。アラバスタの人達ですか??大丈夫です。すでにマカナに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ここ数年の出来事はまるで夢を見てるような感覚……」

 

その瞬間、スモーカーはハジメを殴った。

ダメージが通らないと分かっていても、自分の拳が壊れると分かっていても殴るという選択を選んだ。

吹き飛んだハジメを見下ろしながら

 

「テメェは海軍じゃねえ!!!!海賊でもねぇ!!!!ただの異常者だあぁ!!!!



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出港する。その前に③

「……異常者、ですか……」

 

ゆっくりと立ち上がりしっかりとスモーカーの目を見て

 

「そうですね。異常者ですよ」

「なっ!!?」

 

「いや、何を驚いてるんですか??

あの大将達の相手をしてるんですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

風の噂で聞いたことはある。

全く仕事をしない青雉。のんびりと自由にやり過ぎて人の話を聞かない黄猿。常に怒っているが妙なところでツンデレのようなことをする赤犬。そして絶黒のハジメを追いかけて大将の座をもぎ取った隠れていた実力者"燈狐(とうこ)のオックス"

 

そしてそれを仕切る絶黒のハジメ。

 

そう。マトモな訳がないのだ。

それは間近で見てきたつもりだったのだが……

 

「大体僕が気づいた時点でクロコダイルはすでに動き出してましたよ。そしてそれを潰すとなるとそれなりの理由がいる。まさか何も出ないところでクロコダイルを捕まえろ。なんて言いませんよね??」

 

「……………」

 

「泳がせる。これにつきます。

もちろん誰も死なせるつもりはありませんでしたよ。八咫烏が未然に防いでましたから」

 

「……何だと…!」

 

やっと正気に戻ったクロコダイル。

あれ、まさかそれさえも気づいてないの??

 

「想像できるじゃないですか。僕が貴女と会った時点で何もかも知っていたんですよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ、ありえねぇッッ!!!!!!」

 

「現実的ではない。ですか。でもオックスさんがドンドン八咫烏の人数を増やすから大変だったんですよ。それをそちらに回した。それだけです。なのでここに着いた時点であらゆる戦況が情報が分かったんです。まぁ、最後の作戦までは無理だったのでM()r().()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「アイツかあああぁぁぁッッ!!!!!」

 

また激怒しているクロコダイル。大変だねー

 

「いやいや、Mr.2がいなくてもすでにお終いだったんですよ。ただどうやってこれを終演させるか、それだけだったんですよ」

 

それを聞いてやっと大人しくなったクロコダイル。

自覚したのだろう。全てハジメの掌の上だったことに。

 

 

「さて、あとは貴方を殴るだけですね」

「…………………」

 

「無言ということはオッケイだと受け取りますよ。

まぁ、()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ。感謝してるわ。()()()()()

 

その瞬間。クロコダイルの首を絞め上げ両手両足の自由を奪った。

牢獄の闇の奥から現れたのは……ニコ·ロビン。

 

「ニコ……ロビンッッ!!!!!!」

「そうね。()()()()()()()()

だからその前にここに来たのよ」

 

「テメェ!!!!いつの間にッ!!!!」

「さぁスモーカーさん。僕達は退出しますよ」

 

「ふざけんなッッ!!!!あのままにできる訳がッ!!!!!」

 

「ケジメなんですよ。僕の分は全部任せてますので。

……………お願いします」

 

初めて見たハジメが頭を下げた姿を。

いつも無理難題、無茶苦茶なことをするあのハジメが。

それを見たスモーカーの腕の力が抜け

 

「………………殺すな、いいな??」

「えぇ。分かってるわ」

 

そうして牢獄のある部屋には、牢獄にクロコダイルとロビンだけが残った。

 

「なぜ邪魔をしたニコ·ロビンッッ!!!!!!」

「何故って。別に貴方、私を信用してなかったでしょう。

だから同じよ。私も貴方を信用してなかった。というか早く消えてほしかったの。いつもいつもその視線が気持ち悪かったの………そのイヤらしい目で私を見る目が…………」

 

そういいながらロビンは、クロコダイルの左手を折った。

 

「ッッッッッッ!!!!!!」

「あら、叫ばないのね。

まぁ、男なのだから仕方ないけど。私にはね、決まった人がいるの。()()()()()()()()()()()()()()()

 

続けて今度は右足を折る。

 

「私に歴史の本文(ポーネグリフ)を、古代兵器の在り処を知りたかったようだけど、私には興味がないの。ついでだけどそんな記述はなかったわよ」

 

「……な、わけが………ッッ!!!」

 

「信じなくてもいいわ。もう貴方は外には出られない。

インペルダウンで余生を過ごしてなさい。その前に……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで、地獄を見て、からよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

念の為にあの牢獄があった部屋に一時停止をかけておいた。

きっととんでもないことしてるんだろうな……

 

しばらくかかると思いきや2分後にロビンが出てきた。

 

「もう、終わったの??」

「ええ。終わったわ」

 

「そう。良かったよ」

 

ハジメは手を差し出しロビンをエスコートして甲板へと向かう。

その間、何も会話がなかった。ただその手を、その温もりを感じるためだけのように………

 

甲板へ上がるとそこには海兵達。たしぎ。スモーカー。

……………そして、()()()()()()()·()()()()がいた。

 

「終わったようね、私」

「ええ。二人には感謝してるわ」

 

ロビンとハジメは分身体であるロビンを消さなかったのだ。

異分子であるロビンを。かけ離れたロビンを。いや、本当はそのまま本編通りに進むはずだったロビンを。

 

「これが……"ハナハナの実"の力……」

「……バカげてる……」

 

説明は本体ロビンとハジメには聞いていた。

しかしこうして見るまで信じられなかったのだ。

悪魔の実の力は未知数。そうだとしてもこれは異常だと誰でも分かる。

 

そう、異常なのだ。だから……

 

「もう満足よ。好き勝手やって得るものはなかったわ…

ただ駄々をこねて逃げていただけ。悪かったわねヴェルゴの記憶を勝手にイジって」

 

「それは大丈夫」

「もっとしていいわよ」

 

「本当に容赦ないわね……」

 

すでにヴェルゴの記憶は元に戻りいまはこの軍艦の医務室で寝ているようだ。そうそこには気絶してずっと悪夢にうなされているコビーとヘルメッポの姿もあった。ついでにグザンも。

 

「あの二人、面白かったわよ。鍛えればいいところまでいきそうね」

 

あの時、伸ばした手は親指が中指のストッパーとなりコビーの額にきた所で親指を外して中指をその額に、いわばデコピンをお見舞いしたのだ。

 

しかし武装色によるデコピン。

ただの頭にそんな強力な攻撃は受け止めれるはずなくコビーの身体は吹き飛んで気絶してしまった。そして続けてヘルメッポもデコピンをお見舞いして気絶してしまった二人を地上へ運んだのだった。

 

分身体同士の戦いですでにこの二人に"戦い"を見せようと思っていたようだ。そして最後まで見れたこの二人の潜在能力に可能性があると感じた。

 

やることはやった。

何もかも上手くはいかなかったが、それでも満足だろう。

 

「…………………いいわよ。私を、消しても」

 

その言葉に、時間が止まったかのように感じた。

誰もが知っているロビンではない。何もかも全てが私中心、そしてその全てをハジメに捧ぐというあのロビンでは、ない。

 

「本体は貴女。私は分身体。なら分身体は元に、いえ、能力として消えるべきよ」

 

「ま、待って下さい!!!そんな!!!!!」

 

「たしぎ。だったかしら??私にはね、貴女との記憶はないの。あるのはクロコダイルを利用していた嫌な記憶。もちろんその前のお兄ちゃんとの記憶はあるわ。でもそれは偽物であって私は………」

 

そこで言葉が途切れた。そう、どう言ってもそこにいるロビンはロビンではないのだと………

 

ただの能力で生まれたロビン。

異分子で分身体であるロビン。

 

それは避けることのできない事実なのだ。

 

「……テメェは、それでいいのか??」

「いいも何も、私は分身体で能力の作られた偽物。

本体が消えろと念じれば消える存在」

 

「いままで消えなかっただろうがッッ!!!!!!」

「それは私が異分子で、"考古学"の私と知らなかったから。

全てを知っている本体には私を消す権限があるわ」

 

その言葉にスモーカーはロビン、ではなく沈黙していたハジメの胸ぐらをまたもや掴み

 

「なんで何も言わねんだテメェはああぁ!!!!!!」

 

またもや殴ろうとするスモーカーに本体であるロビンが、分身体のロビンが能力を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや。消すつもりないので。その手離してください」

 

その言葉に、スモーカーはもちろんたしぎも海兵も驚いている。

そして……一番驚くはずのロビン二人が()()()()と笑っている姿を見た瞬間に、

 

 

「「「「「やりやがったなテメェらあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

…………………………

 

「ええぇー!!!それじゃ()()()()()()()()()()()()!!!??」

 

「本体の師匠はそのまま。分身体の師匠は海軍だってよ」

「まぁ、海軍にも身をおいていたから問題はねえだろうけどよ……」

 

「そっか~………師匠が二人……………」

 

「「「絶対に殺されるウウウウウウゥッッ!!!!!!!」」」

 

…………………………

 

「ということで改めて"ニコル"を海軍本部に送り届けてねー!!!!」

「テメェはいつか絶対に泣かすッッ!!!!!」

 

そう、異分子であり、分身体であり、考古学であるロビンは海軍である"ニコル"として生きることにしたのだ。

しかしそれでも分身体。つまりは能力。

ロビンが一度でも能力を解くか気絶をしてしまえばニコルは消滅してしまう。だから………

 

「いやッ!!!!!絶対にいやッ!!!!!!!!!」

「そんな言わないで………」

 

「だって()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という理由でニコルがお兄ちゃんをあんなことやこんなことするなんてッッ!!!!!」

 

「いや、させないから」

 

消滅を阻止するためには本体のロビンが()()()()()()()()()()()()()()()()()ということ。いままでは考古学だったがそれがなくなった為に新たに作らないといけないのだ。

 

「大丈夫よロビン。()()()()()()()()()()()()()

「この女!!!!処女膜破るつもりなのよお兄ちゃんッ!!!!!」

 

「マジで黙ってろお前らッッッ!!!!!!!!!」

 

結局、ニコルが消滅しないためのコアが何だったのかは()()()()()()()()()。ロビンが知る訳にもいかずにニコルは軍艦に乗り港を後にした。

 

そして残されたのは頬を膨らまかせて怒っているロビンと困っているハジメ。

 

「………機嫌、治してよ……」

「…………………ふん……」

 

どうしようかと悩むハジメはハァーとため息をついて、ロビンの真正面に立ち

 

「ロビン」

「……………」

 

「ニコ·ロビン!!」

 

ハジメはロビンの両頬を両手で挟んで無理矢理顔を自分の方へと向けた。それでも視線はそらしてくるロビンに

 

「ニコルには悪いけど、一番大切に思っているのはニコ·ロビンだけだよ」

 

「………しんじ、られない……」

 

ニコルを消滅から防ぐためだといってもロビンも知らないことを二人でやったのだ。例え()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

一体何を信じればいいのか分からない。

そんな表情をしているロビン。その顔は突然に挟まれている両手に引っ張られて………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ッッ!!!!??」

 

状況が、分からなかった。

突然、視界が変わり、気づいたときにはいままで見たことのないほど接近しているハジメの顔。顔というより()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして気づいたのだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

時間にしたらとても短かったのかもしれない。

しかしロビンにとってはとても長く感じた。

そして離された唇は、呼吸することを忘れているかのように開きっぱなしになり、その視線の先にいるハジメは頬を赤くして

 

「初めては、ロビンに。って………決めてるから……」

 

乙女か!!というような言葉に対してロビンは

 

「にゃ、にゃあい………/////」

 

どういうわけか猫語のように返事をしたあと気絶してしまったという。



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ありがとう。

「えっ??明日には国を出るんですか!?」

「そうよ。抑止力になっていたニコルとグザンが本部に戻ったことによって、海軍が一斉に襲いかかる算段をしてるわ」

 

王宮の大浴場。

そこには王女であるビビ、元海軍であり"ニコル"を明け渡した本物の"ニコ·ロビン"。そして麦わらの一味の女性陣にカラー。

キロロは船番のためにいない。不憫である。

 

「それ大丈夫なんですか!?」

「ここに"私"がいるのよ。現実的に勝てるとでも思う」

「「「「「「「負けますね」」」」」」」

 

「…………なのに、どうして……」

「体裁よ体裁。最も海軍は本気で捕まえようと考えているのだろうけど」

 

ここには美人に美女、美少女。

バスタオルを巻いているのがくいな、カヤ、カラー、ビビぐらい。

他はスタイルを見せびらかすかのように、堂々とその芸術的と呼ぶにふさわしい裸体を晒している。

 

「ロビンさんの声じゃ止まらないの??」

「もう"ニコル"は渡したのよ。向こうにとったら()()()()()()()()みたいなものよ。

まぁ、向かってくるなら潰すだけよ」

 

しかしロビンに至っては一段も何段も違うように見えている。

一つ一つの動作が魅力的で、女しかいないのに誰もが見惚れてしまうほどに妖宴で、男じゃなくても襲いかかってしまいそうになるほどに………

 

「………………どうしたのかしら??」

 

誰もが自分を見ていることには気づいていたが、急に会話が停止するほどに見られていては気になる。ロビンの言葉にハッと我に変えるくいな達。レイジュは気にもせずにお風呂を楽しんでおり、ベルメールはなんか一人で落ち込んでいる。そして問題が動く。

 

「ロビンさん!!抱きついてもいいですかッ!!?」

「素直なナミは好きだけど、今はやめましょうか」

 

しかしその言葉は届いてない。

正確にはすでにナミの身体はロビンに向かって突撃をしようとしていたのだ。それをノジコがナミを羽交い締めで止めているが止まる気配がない。なので

 

「カラーならいいわよ」

「ちょっ!!!!!」

「はーーーーーいッッ!!!!!!」

「いやあああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

もう変態なのでは??と思わせるほどのナミに本気で逃げ回るカラー。助けを求めようにも身内であるノジコとベルメールは完全に観覧を決めている。

ようやくナミを相手してくれる人が現れた。

恋愛ではないが、それでもあの辱めが少しでも他の者に移るのなら………

 

「頑張ってカラー!」

「私の娘を、どうぞよろしく」

 

「最悪の親子だあああぁぁ!!!!!」

 

ここでロビンが手を生やして捕まえるという選択がないだけまだマシだなーと考えているくいなは

 

「ルフィさんも起きたし、この後の食事会が終わればそのまま国を出るために移動するんですよね」

 

「そうね。少しぐらい飴をあげてもいいと思ったのよ。

まあ、終わったら移動中あの三兄弟は修業だけど」

 

「よ、容赦ないんですね……」

 

それでも好きなだけ食べれるのだからこれ以上口出ししないようにした。するとビビは視線を下にして俯いており

 

「…………私、どうしたら返せますか??」

「返すって、何を……」

 

「ここまで連れてきてもらった上に国を救ってもらったんです。私は……何も返せないのかな……と………」

 

国にある財源の内僅かだがそれは貰っていたナミ達。

しかしそれはすぐさま消えた。必要な物資に洋服など"この国でお金を回すように"して経済を回す。

 

だからなのか。ビビはまだ何も返せてないと考えていた。

お金だけじゃ返せない。しかしいま出来ることなんて……

 

するとさっきまで聞いていただけのレイジュが

 

「海賊になって恩を返す。なんてバカな考えなら止めなさい」

「ちょっと!!レイジュ!!!それはビビが」

 

「一国のお姫様よ。そして私達は海賊。

一緒に旅をしただけでも際どいのに、仲間になってみなさい。

この国は"海賊と手を組んでいる"と思われるわ。それもクロコダイルによって危険だったこの国がまた海賊と手を組むという印象が植え付けられると海軍は、いえ、政府は黙ってないでしょうね」

 

「そ、それって……」

 

「今後、海軍·政府の手が借りれない。

つまり海賊などの無法者が自由に行き来する事のできる()()()()()()だということになりかねないわ」

 

それを聞いたビビの身体は震えた。

そう、クロコダイルがもしこの国を乗っ取っていたらもしかしたらそんな国になっていたかもしれない。

よそ者が好き勝手になって、住民がつらい思いをする国に。

 

そんなことにするわけにはいかない。

そんなこと、頭では分かっているが……

 

「選択するのは貴方よ。私は国を持たないことがどういうことか……知っているから………」

 

そう言い残して大浴場を後にするレイジュ。

軽くではあるがレイジュの昔のことは聞いていた。

国を持たずに"戦争屋"としてやっていたことを。

それでどんな目にあってきたかを。

 

「珍しいわね。あの子があんなに喋るなんて……」

「そう、なんですか……」

 

「私やお兄ちゃん。身内のサンジくらいよ」

 

…………………………

 

「だそうだけど、どうなの??」

「……知るかぁ……」

 

隣の男湯ではバーストを除く男共が風呂に浸かっていた。

そしてハジメの返事が薄いサンジの頭にはタワーかと思わせるぐらいのタンコブが。

 

これはもちろん、サンジが女湯を覗こうとしたため。

隣にいるハジメがロビンの裸体を見せるわけもなく、いや()()()()()()()()()()()()()()()()

それを見た残りの者達は立ち上がることさえしなかったという。

 

「仲良くなったじゃないのレイジュとは」

「……だとしても、ハジメには関係ねえよ……」

 

「えっ。なに。本当にレイジュとなんかあった??」

「うるせぇな!!なんでもねえよッ!!!!」

 

そういってその場を離れで風呂の端っこに逃げたサンジ。

その際にルフィを横目で見ていったのはルフィも気づいたが、一体それが何なのか分からなかった。

 

「ありがとう」

 

そして今度は突然そんな事をいいだすコブラ

 

「えっ。まあビビの裸体なんて見せるわけにも行きませんもんね」

「そういうことではなく……」

 

「良かったんですか??」

 

「見た瞬間に死刑確定だ!!」

「右に同じです!!」

 

「良かったねーサンジ!!死ななくてー!!!!」

「ッ!!!! うるせぇー!!!!ありがとうよッッ!!!!!!」

 

あの国王と護衛である二人のマジ殺気具合に、ヤケクソになりながらもハジメにお礼をいうサンジ。

本編では娘なんて関係なく覗いていた国王だけど、ビビと同じでなんか互いに妙に親密度が高くなっているような気がする。

 

するとコブラが、国王が、ルフィ達に向けて頭を下げながら

 

「ありがとう」

「国王ッ!!!そんな簡単に頭を!!!!」

 

「簡単ではない。私の頭を下げ、感謝することは、この国を救ってくれた恩人達に向けての礼儀だ。それにいまは風呂に入っている。裸の王などいない。これは1国民として、親としてのお礼なのだ」

 

そしてもう一度「ありがとう」とお礼をいうコブラに続けてイガラムもお礼をいう。

 

「ニッシシシ!!気にするな!!!」

「いい修業にはなりましたから」

 

「………敵わないな、君達には……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うひょおおおおおおおおぉぉぉぉッッ!!!!!」

 

大広間に用意された長いテーブル。

その上には沢山の料理が置いてありそれをみたルフィは今にも飛びつこうとするほどに喜んでいた。

 

「こいつはすげぇーな」

「ってか、いいのか?俺たちまで」

 

「お二人はルフィ殿のご兄弟と伺っています。でしたら是非にと国王が」

 

イガラムが丁寧にエースとサボを接待する。

この二人がどれだけの大物か、それを知っての行動だろう。

 

「……コネには期待するなよ」

「勿論です。それにすでにコネはありますから」

 

そういって料理に飛びかかろうとしているルフィを抑えているウソップとサンジ達の方を見るイガラム。

 

「確かに!あれ以上のコネはねぇな!!」

「はい。ですので気兼ねなく」

 

なら。と席につく二人。

それが合図かのように次々に席につく面々。

最後に国王が席につくと

 

「ささやかなものではあるがね、遠慮なく楽しんでくれ」

 

と、一言を言った瞬間にルフィ·エース·サボの目の前にあった料理が一瞬にして無くなり一言。

 

「「「遠慮なく。」」」

 

「「化け物かッッ!!!!!」」

「「遠慮しやがれバカ兄弟ッ!!!!」」

 

無礼講だとしてもそれなりのマナーがあるというもの。

それを無視して料理を手を出したこの三人。

もちろんそれを許すわけもなく……

 

「決定ね」

「地獄メニューだな」

 

「あそこで、とんでもないことを言ってる兄妹もいるぞ……」

「いまのお兄さんとロビンには触れないほうがいいわよ……」

 

近くに座っていたウソップとナミはそうやってささやく。

カヤとノジコ、ベルメールも聞こえてはいたがこれ以上いうと巻き込まれると思い発言をしないことにした。

 

ともかく、ともかく始まった食事会というなの宴。

ルフィはとにかく肉を食べまくるが今回にかぎってロビンからお許しが出ているのが救いだろう。このあと地獄を見るのだから……

エースもサボもルフィに負けずに食べる食べる。

この三人はいくら羽目を外しても決定した地獄があるため皆温かい目で見るしかなかった………

 

ゾロはくいなとナミ、ノジコとベルメールとの飲み勝負。

前回はナミがファッションショーをしていたために実現しなかったが、この親子思っていた以上に飲めるようで、とくに…

 

「ぷはぁーッ!!!おかわりッ!!!」

「ベ、ベルメールさんって……」

「ザルの上の"クワ"っていうやつね」

「酔ったところ見たことないわ……」

「おもしれぇ……勝負だッ!!!」

「ふふふ。勝てるかしらね」

 

まぁ、上には上がいる。

大人しく飲み食いしているハジメとロビンにはベルメールさえも勝てない。

ハジメはアルコールを一時停止で、ロビンは元からだろう。

この兄妹にはあの海軍達でも負けたことはない。

 

「レディース&ジェントルマンッッ!!!!

人体切断マジックにようこそッ!!!!参加してくれるのは名医チョッパー先生だぁ!!!!!」

 

「め、名医って……嬉しくねぇぞコノヤロウッ!!!!」

「はーい。チョッパー君。この中に入ってね」

 

テーブル席から離れたところではウソップとカヤによるマジックショー。今回はこれをメインということでナミがファッションショーを降りたという。

 

しかし気分がよくなっているチョッパー。

箱に入ったあと取り出されたものを見て、後悔する。

 

「では参加してくれるチョッパーを切るのは……この名刀"雪走(ゆばしり)"だッ!!!!!」

 

「え、ええええええぇぇぇ!!!!!!!」

「ウソップ!!!!テメェッ!!いつのまにッッ!!!!!!!」

 

「ちゃんとくいなに許可をもらいました!!!」

「おい!!!」

「マジックなんだからいいじゃない」

 

いくらくいなの手を借りたとはいえ、ついさっきまで持っていた雪走を取られたゾロは驚いた。緩みきっているとはいえ剣士の命といえる刀をマジックとは取ったのだ。

 

己の未熟さに腹はたったがそれ以上にこれにくいなが関与していたことに苛立ちを覚えた。それでも笑っているくいなに強く言えなかったゾロもゾロなのだが………

 

「うめぇーな。これ」

「そうね。これ船でも作れないの??」

 

「良かったら教えましょうか」

「そいつは助かる!!」

 

「ねぇ。サソリは出ないかしら??毒があるものを」

「えっ??」

「あるわけねぇだろうが!!!!!」

 

「でも、この犬の餌あるのだからあるんじゃないの」

「バウッ!!?」

「おい。餌に何を仕込みやがったッ!!!!」

 

こちらはこちらで、普段通りの姉弟に戻っている。

というかラッシーが犠牲になっている……

レイジュいわくこんな生き物にはどんな毒が効くか試したかったらしいのだが……ご愁傷さまです。

 

しかしレイジュの言葉に料理を運んでくれていた者も困っている。苦笑いである。

いくら毒がレイジュにとってご馳走でもそんなものはない。

そしてそんな様子を、

 

「……賑やかね」

「まぁ、たまにはいいよ」

 

完全にバカ騒ぎしている中で極端におとなしい席。

すでにルフィは腹踊りして、エースもサボも鼻に割り箸をつめて変な顔をしながら騒いでいる。

それを見ながらゾロやベルメール達は酒を飲み、ウソップは雪走でチョッパーの体を切断。悲鳴をあげて気絶したチョッパーに呼びかけるカヤ。

レイジュは料理を組み合わせて()()()()()()()を作ろうとしてサンジに止められている。

 

こんな姿にコブラ達はあ然としている。

しかしビビは初めからずっと笑い続けており、周りにいる兵隊達もそんな様子に驚いていた。

 

しかし徐々にそのおかしな空気に当てられて最終的に全体がバカ騒ぎとなった。

 

「お兄ちゃんは参加しないの??」

「柄じゃないんだよね」

 

「そうだったわね」

「ロビンはいいの??」

 

「私は、お兄ちゃんの隣がいいの」

「そうだったな」

 

しかしこんなバカ騒ぎの中にある外れた静けさでも違和感はなかった。

これがこの世界の、大きく外れてしまった二人の兄妹の世界だというように……



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黒槍

「あ、あば…ばぁ………」

「……じ、じ……どぅ………」

「………が、…ぐぐ……ぅ……」

 

息絶えていた。

楽しい楽しい宴はあっという間に終わりを迎えた。

気持ちよく寝ている三バカをアルバーナの外へ連れ出してレイジュが持っている"麻痺""激痛""思考低下"を引き起こす毒を生成してもらいそれを眠気覚ましにと飲ませたのだった。

 

昔からロビンに毒の耐性をつけるためと食事や修業に使われていたが、今回の毒はそれを上回る猛毒。死ぬことはないがこの世とは思えない激痛を知ることとなる。

 

「さぁ、修業よ。

ここからメリー号まで走りなさい。10分事に最下位はラッシーの爆撃を受けてもらうわ。あと速度はヒッコシクラブより速いこと。遅れたら爆撃だから」

 

説明をしているがもう死にかけている三人に届いているのか怪しいところである。

 

「みんなも走ってねー。最下位とかヒッコシクラブより遅れても爆撃はないけど、男共はロビンのゲンコツ。女性はロビンのビンタだから」

 

「こっちのほうが酷くないッ!!?」

 

えっ。そうかな。

遅れなければいいだけの話だけどなー

というかそれぐらい出来ないとこの先大変だよ。

 

「昼間だと流石に死んじゃうから夜にしたんだよ。優しさ優しさ」

 

「間違ってる……優しさの方向が間違ってる……」

 

うるさいなウソップ。君もルフィ達に混ぜるよ。

 

「俺は、ルフィ達と同じでいい」

「俺もだ」

 

と、ここで名乗りを上げたのがゾロとサンジ。

いややるのは構わないけど……

 

「やるならレイジュの毒、受ける必要あるけど」

「構わねえ」

「これ以上ルフィ達に引き離されてたまるか」

 

覚悟はいいんだけど………

ご本人がそういうならとレイジュに頼んで二人にも毒を浴びせると

 

「…………あだ、だ…ぁ………」

「………じ、じじぇ………ぇ……」

 

ルフィ達と同じように死にかけることになるのに……

こいつらは昔からこういう修業をしてるからある程度大丈夫なんだけど、ゾロとサンジには流石に……

 

「やっぱりレースは参加しなくていいから、とにかくヒッコシクラブより速く走ることね」

 

さすがに素直に首を縦に振るう二人。

ロビンとレイジュはヒッコシクラブの背中に乗り、ハジメは準備運動をしてラッシーをかかえた。

 

「ハ、ハジメも走るのか!?」

「走らないとあそこら三人は狙えないからね」

 

ハジメでもヒッコシクラブの背中からルフィ達を狙えない。

ましてやラッシーは生き物で武器。狙いを定めるなら接近するしかない。

 

「さぁ、始めるよ。よーい、スタートッ!!!!!!」

 

…………………………

 

「………なぁ、俺は夢を…見てるのか……」

「……違う、はずよ………」

 

ゴールであるメリー号で船番をしているキロロとバースト。

遠くから聞こえてきた大きな音に警戒をしていたのだが、近づくにつれて何か見覚えのあるものが見えてきた。

 

爆炎が上がる中をひた走る者達。

そしてそれを後ろから見覚えのある武器で当たらないように攻撃している人物。そしてヒッコシクラブの上でのんびりとくつろぎでいる人物。

 

どれもこれも……これから共に冒険するだろう人達だ。

 

「………俺、やっぱり粛清されたほうが良かったかも……」

「………キャハハ…………もう、遅いわよ…………」

 

これからアレに巻き込まれるのかと思い胃がキリキリと痛む二人だった。

 

……………………………

 

「ビビ様ッ!!!」

「あら、どうしたのイガラム?」

 

今日は国民にビビの姿をお披露目、元い、成長したビビの姿と声を届けることになっていた。

そのためドレスコートをしていたビビは、突然扉を開けてきたイガラムに驚く。

 

「あ、あれ……」

「本当にどうしたの?悪い夢でも見たの?」

 

「い、いや、それは………」

「いいからさっさと出ていきなさいッッ!!このバカ亭主ッ!!!!!」

 

イガラムの妻である女性がビビの着付けをしていたのだが、いつまでも出ていかない夫に対して物を投げて退出を促した。そそくさに外へ逃げ出すイガラムはずっと胸に引っかかるモヤモヤにまだ苦しめられていた。

 

「いや……まいった……」

「国王」

 

声がする方へ向いてみると

 

「娘の着換え姿を見に来ただけなのに…あんなに怒られるとは……」

「何やってるんだアンタはッッ!!!!!」

 

どうやら自分と、いや、自分よりもおかしい行動をしていたコブラ。まさか娘の着換えをみるなんて……と頭をかかえるイガラムだった。

 

「それで、どうしたのだイガラムよ」

「いえ…ビビ様が……また国を出る夢を……見まして……」

 

そう、ここに来たのは嫌な予感がしたのだ。

イガラムが見た夢では「私、海賊女王になるわ!!」と決意を決めたビビの姿だった。その瞬間に起きたイガラムはそれが夢だと分かったがどうしても確かめたくてここに来たのだ。

 

普通なら夢だと分かった時点で安心するのだが、ビビがここにいると確信したいまも未だに不安が消えずにいた。

 

「国王……もし、ビビ様がまた海に出たいと申し出たら……」

「………………そう、だな……………」

 

その不安の原因は分かっていた。

ここまで送り届けてくれた、元凶を倒してくれた麦わら一味。

あの人達に、あの人達の生き方に憧れを抱いていると。

そして大きな恩を返そうと考えていることを。

 

しかしビビは王女。危機的だったこの国の為にやらないといけないことがあることも分かっている。そしてなによりビビは国を、国民を愛している。だからこそ離れることはないと分かっている。

 

分かっている。のに、ずっと不安が取り除けずにいる。

 

そしてイガラムからの問いに対して考えていたコブラが

 

「…………きっと、それはビビの中で最善だと導き出した答え……なら、私はそれを応援するのみ……」

「国王ッ!!?」

 

「私は、ビビに、何もしてやれなかった……

国が酷い状態でも何もな………あの子は一人で、イガラム、君と共に外へ出た。その間も何も出来なかった私がこれからのビビの人生をとやかく言えるものか………」

 

国王として、表とはいえ海賊から国を守っていたクロコダイルを無下には出来ない。しかしそんなクロコダイルを怪しいと潜入したビビも止められなかった。

 

何も出来なかったのだ。

国を思うあまりに自ら雁字搦めに……身動きが取れずに……

 

「しかし、あの状況では……ッ」

「分かっておる。それでも…もう少し何か出来なかったのかと……考えてしまうのだ………」

 

「……………………」

 

そしてビビが連れて帰ってきた海賊のお陰で国は救われた。

クロコダイルと同じ海賊なのにも関わらず、まるで"仲間"だと思わせるぐらいに仲良くなって………

 

そんなビビが麦わらの一味と共に行くと行っても……

……二人の頭にはそんなビビのその後の未来を想像し

 

「しかしッ!!まだビビを嫁にはやれんぞッ!!!!!」

「どんな想像してんだアンタはッッ!!!!??」

「五月蝿いわよアンタ達ッッ!!!!!!!!」

 

…………………………

 

「ったく……あの男共は………」

「あはは……」

「ではビビ様。暫し休憩を。また呼びに来ます」

 

そういってビビとカルー以外いなくなった部屋。

カルーの怪我もすっかり良くなりぐっすりと眠っている。

そんなカルーを優しく撫でながら窓の外を見るビビ。

そこから見える景色は晴れ渡る空と砂漠。

その向こう側にルフィ達の船が…………

 

「私、どうしたらいいんだろう………」

 

返事が返ってくることはない。

それでも呟きたくなるその思いは2つあった。

国に残り王女としての務めを果たすこと。

海に出て麦わらの一味として世界を見ること。

 

国を出るまで何も知らなかった。と思わせるぐらい世界は広かった。特に麦わらの一味と出会って驚くことばかり。しかしそれでも楽しかった日々。

この先そうやって過ごせたらどれだけ楽しいか……

だけどそれと同じくらいにこの国と国民が大切。

これから復興していかないといけない状況で王女である自分が抜けることなんて出来ない。

 

どちらもビビにとって大切で譲れないもの。

しかし選ばないといけない。それもあと数時間の内に。

一度だけアルバーナに近い海岸に寄せてくれると言ってくれた。

仲間になるなら歓迎すると言ってくれた。

 

でも、それはビビが決めてとも言われた。

 

ルフィ達と共にいけばそれは海賊になるということ。

王女であるビビが海賊になるなんて…アラバスタ王国を捨てたと思われても仕方ない。さらに隣国や世間ではアラバスタの印象がグッと悪くなることも間違いない。

 

そんな考えがずっと駆け巡っていた。

本当に自分がやりたいこと。そして誰にも迷惑をかけないこと。

そんな都合のいいことなんて起きないと分かっていても、無駄と分かっていても考えてしまう。

 

そうして今でも答えが出せずにいた。

 

「………本当に、どうしようか……ねぇ、カルー……?」

 

答えが返ってくることがないと分かっていてもついつい問いかけてしまう。一人で考えないといけないのに………

 

「やっぱり、悩んでいたのね」

「えっ?」

 

声がする方へ向いてみるとルフィ達と一緒にメリー号に向かっていたはずのロビンがそこにいた。

 

「ど、どうして……ここに……」

「私は分身よ。そして一度でも行った場所、知っている人の所に私を咲かせることが出来るのよ」

 

それを聞いて呆気に取られた。

しかしすぐに「あっ、出来るのか」と思い立った。

あの戦いの最終局面で大きな手や足が現れたのはロビンの仕業だと聞いている。なら、こんなことも簡単かと……

 

「で、どうするのかしら?」

「そ、それは………」

 

その言葉に焦るビビ。まだ決めきれていない状況で問いかけられて軽くパニックするビビにロビンは珍しく謝った。

 

「あぁ。ごめんなさい。

問い詰めるつもりはなかったのよ。」

「い、いえ……」

 

「私はね、貴女に言いたいことがあったの」

「なんで、しょうか……」

 

警戒するビビ。

これまでのことを考えるとトンデモナイことを言われそうと思い出したからである。特にルフィに対して。

 

「それは…………」

 

…………………………

 

「どうだった?」

「ええ。随分と驚いていたわ」

 

ビビに向けた分身体を戻して記憶を見たロビン。

常時記憶を、現状起きていることを見ることも出来るが繋がり過ぎるとこっちに集中しないといけないために、必要な記憶だけを見たりこうして分身体を戻して全ての記憶を見たりしている。

 

「でもお兄ちゃん、これで良かったの?」

「まぁ、後はビビが決めるだけだし、いいんじゃない?」

 

二人だけしか分からない会話に誰も入れない。

というか、入れる余裕がないのだ。何故なら……

 

「お、おいッ!生きてるかお前らッッ!!!!」

「………これは、笑えないわね………」

 

ルフィ達はともかく、ナミやカヤ達の"普通組"もメリー号の甲板でぐったりとしていた。

常に爆炎、爆撃、爆風が浮きあげる中を必死に走らないといけないのだ。その原因がルフィ達。というかシステムである。

常に誰かが最下位になるので確実に爆発があるのだ。

それに巻き込まれるナミ達はヒッコシクラブに遅れないようにと必死に走った為に肉体的にも精神的にもダウンした。

 

「なんの毒を使ったんだよレイジュッッ!!!」

「普通よ普通」

 

「薬の効き目が遅いんだけどッ!!!」

「……サービスかしら」

「いらねぇよッ!!!!!」

 

この二人も走ったのだがチョッパーは獣形態、脚強化させていたために問題なし。レイジュに至ってはもう余裕があったので途中からロビンと一緒にヒッコシクラブの上で寛いでいた。

 

どっちにしろこの二人には後でルフィ達の解毒をしてもらうつもりだったので修業を甘めにしておいた。まぁレイジュはすでに強いのでお遊び感覚による参加ではあるがそれでもなにか掴めるものがあるということで参加してもらっている。

 

「な、なんでこんなに……キツイの……」

「飲みすぎよ」

「修業内容が濃くなってないですか?」

「気のせいよ」

「にしてもちょっと……」

「貴女の場合は歳よ」

 

「………上等だわ…ッ!!買うわよ。ロビンッ!!」

「あら、私に勝てると思ってるのベルメール?」

 

「「お願いだからいまはやめて〜!!」」

 

クタクタなのにそんな喧嘩をされたら止められないと本気でお願いする二人。しかし実際にそんなことをしている暇はない。

 

「はーい!起きてください。

そろそろ軍艦が来ますよー」

 

「そんな旅行感覚で言われてもな……」

 

「相手はスモーカーと同じ大佐のヒナ大佐ですから。

油断してると捕まりますよー!!」

 

その言葉の後、突然メリー号の近くで爆発があった。

そうここからでも見える位置に軍艦が来ていたのだ。

 

「や、野郎共…出航だぁ……!!」

「おお…」「おお…」「おお……」

 

元気は無いがそれでも捕まらないようにと必死に身体に鞭打って出航するために動き出す。しかしそんなに海軍は甘くない。

メリー号に向けて大砲を準備して玉を放つ。

しかしその玉は普通の砲弾ではなく

 

「や、槍だとッッ!!?」

 

放たれた黒槍はメリー号の胴体へと…………



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みんな……私、

「一体どうなってるの…ヒナ困惑……ッ!!」

 

ヒナ大佐が得意とする黒槍の陣。

敵船の全方位に軍艦を配置し大砲から砲弾ではなく"黒槍"を撃ち込む。砲弾とは違い爆発するわけではないが突き刺さり敵船に大きな枷として残るそれは相手を捕獲するのにはうってつけの戦法である。

 

しかしいま目の前にいる敵船、麦わらの一味も同じように黒槍を撃ち込み足止め、もしくは船を沈める算段だった。

 

「大佐ッ!!!黒槍が効きません!!!!」

「チィッ!!!」

 

親指の爪を噛み苛立ちを抑えているヒナ。

敵船に放たれた黒槍が全て胴体に刺さる前に落とされているのだ。

 

伸びる手、飛ぶ斬撃、燃える脚、ありえない神蛇、黒槍を溶かす毒。

それだけではなくあの海賊は一人一人が実力があり、放つ黒槍を確実に防いでいる。

 

そして一番やっかいなのは……

 

「………ニコ·ロビン……ッ!!!」

「ふふふ。お久しぶりね、ヒナ」

 

憎しみを帯びた視線を送るヒナ。

目の前には敵である海賊ニコ·ロビン。

捕まえる。のが目的だが捕縛が得意とするヒナの能力でも非常に厳しいと肌で感じている。

 

突然軍艦に、自分の目の前に生えたニコ·ロビン。

それは明らかに悪魔の実を………

 

「こんな殺気を放った貴方は知らないわよ……」

「………知らない。そう、そういえばそうなるのかしら……」

 

はぁとため息をつくロビン。

油断しているように見えるが全く隙がない。

周りの海兵も息を飲み臨戦態勢を取り続けている。

 

「さっきから何を言っているのか知らないけど……貴女を捕らえるわ」

 

「そういうことは、」

 

するとバタバタと周りから音が聞こえる。

周りの海兵の両肩に手が生えてきて、その手が海兵の首を締め始めたのだ。

ここにいた全海兵が一斉に首を締められて落ちる。

残されたのは、ヒナ。ただ一人。

 

「私を倒せる実力を持ってからいうものよ」

 

そしてヒナのまた肩から手が生えて、そして意識はゆっくりと薄れていき、霞んでいく視界には微笑むロビンの姿がうつっていた。

 

…………………………

 

「………………マジか……」

「とんでもねぇな、師匠は…………」

 

飛んでくる黒槍にうんざりしたロビンが「もう、面倒くさいわ」という理由で、周りにある軍艦を、海兵をたった一人で倒してしまったのだ。

 

ルフィを始め麦わらの一味はもう慣れた光景なのかもしれないが久しぶりに見たロビンの恐ろしさにエースとサボは恐怖を思い出していた。

 

この前起きたロビンVSニコルの対戦は規格外すぎて実感はなかったが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あれ?ヒナも気絶させたの?」

「えぇ。どうやら私を正しく認識してないみたいだから」

 

「そっか。もうニコルとして向こうもいるから、こっちが言わない限りはニコル=ロビンって分からないか……」

 

「私としてはあの子はしつこいからこれでいいのだけど……」

 

なんか周りには分からない会話をしている二人。

とにかく海軍を倒したいま、目的地へと船を急がせるのだった。

 

…………………………

 

「………何を心配するイガラムよ…」

「そうはいいますが国王…ビビ様ですぞ…」

 

もうまもなくビビのスピーチをする時間。

それでもイガラムは未だにビビがこの国を出るのではないかと危惧していた。

 

あの麦わらの一味との日々はビビにとってとても大切なもの。

それはきっとこの国を天秤にかけるほどに……

 

でもビビには王女としてこの国を守る使命がある。

だからこそこの国に残る。そんなこと分かりきっているが…

 

「私は、ビビ様が何かをやらかすかと……」

「おいおい、そんなこと……」

「酷いわイガラム。そんなこというなんて……」

 

その声の方を見るとそこには正装したビビ。

ちょっとむくれた表情でイガラムを見たあとに

 

「でも、そうね……ルフィさん達と一緒にって…思ったわ……」

「ビビ様……」

 

「お前が決めたなら何も言わん」

「ありがとう()()()!」

 

にこやかに笑うビビを見たイガラムの心はやっと落ち着いた。

そしてスピーチをする場所へ歩むビビの後ろ姿をコブラは何処と無く淋しげな表情をしていた。

 

そしてスピーカ用のでんでん虫の前で止まると、そこから下に、広場に集まっている住民が一斉にビビの名前を叫んだ。

一通り皆に向けて手を振ったあとにマイクを取ったビビはスピーチを始めた。

 

『……少しだけ冒険をしました』

 

その声が聞こえると誰もが声を出さなくなった。

スピーカ用のでんでん虫はこのアラバスタ全土に広がるようにしてある

 

『それは暗い海を渡る“絶望”を探す旅でした

 

国を離れて見る海はとても大きく

そこにあるのは信じ難く力強く

 

島々見た事もない生物、夢とたがわぬ風景波の奏でる音楽は

時に静かに小さな悩みを包み込む様に優しく流れ時に激しく

弱い気持ちを引き裂く様に笑います』

抽象的なそれは国民から実体験ではないかと話ものもいた。

一部の人間しか知らないのだ。この国を救った英雄が本当は誰なのか……

 

『暗い暗い嵐の中で一隻の小さな船に会いました

船は私の背中押してこう言います

「お前にはあの光が見えないのか?」』

 

国民にはこの話が海軍と共に救った話だと思っている。

何もしてくれなかった海軍。そして海賊に救われた国。

そんな真実は世間からも疎まれる。下手したら拒絶もある。

だからビビとしても抽象的なことしか言えない。それでも…

 

『闇にあって決して進路を失わない

その不思議な船は踊る様に

大きな波を越えて行きます

海に逆らわずしかし船首はまっすぐに

たとえ逆風だろうとも、そして指を差します

「みろ、光があった」

歴史はやがてこれを幻と呼ぶけれど

私にはそれだけが真実』

 

他の人に届かなくとも、それを知っている人達に。

この感謝の気持ちと、そして決断したこの思いを届ける。

 

…………………………

 

少し時間が戻る。

ビビとの待ち合わせに指定した海岸にたどり着いた一行。

しかし時間になっても来ないビビ。それでも待ち続ける一行にビビのスピーチの声が聞こえた。

 

そう、ビビは国を選んだのだと……

 

「行くわよルフィ」

「ちょっと待てよ!!!きっと来るからッ!!!」

 

「無理よ。分かるでしょうあの子は国を選んだのよ」

「そんなことねぇ!!海賊は自由で楽しんだぞッ!!」

 

「そこまでにしろルフィ。俺達とビビちゃんじゃ立場が違うんだ……」

 

ルフィだけじゃない。ナミもサンジも、誰もがビビが来ると信じていた。それでもここにはいない。スピーチが流れている。

なら、ビビが選んだ道は国だと………

 

「で、でもよ……」

「ルフィ。こいつはどうも出来ねえよ」

「あぁ。それに一生懸命に選んだ道なんだ。そいつをお前が応援するもんじゃねえのか」

 

「……………………………」

 

黙り込んだルフィ。二人の兄の言葉には確かに自分でも納得がいくものだった。

でも、それでも、ビビが仲間になると信じていた。

 

………『歴史はやがてこれを幻と呼ぶけれど

私にはそれだけが真実』………

 

しかし聞こえてくる声はビビである。

これ以上は無理だと、ルフィでも理解したのだろう。

 

「………出航だ…」

「おいルフィッ!!!」

 

その言葉に待ったをかけようとするウソップ。

しかしその手を優しくカヤが止めた。

そしてウソップが見たのが血が出るんじゃないかと思うぐらいに握りしめたルフィの手だった。

 

同じ気持ちなんだ。

それでも船長として決断したそれをヤスヤスと変えれない。

ウソップもその決断を受け取りながらも苦しみの表情をしながら出航の準備を始めた。

 

「ッ!!!?海軍が追いついてきたぞッ!!!」

 

出航を決断したタイミングで海軍が追いついてきた。

直様出航をしないといけないと誰もが己の役割を努めようとしたとき

 

『そしてみんなァ!!』

 

その言葉に誰もが振り向いた。

海岸のそこに、いるはずのない姿が……

 

「ビビだぁッ!!!!」

「来たぞッ!!船をつけろッッ!!!!」

「海軍なんて関係ねえ!!!!」

 

そう誰もが、ビビが海賊を選んだと思った。

しかし、ここからでも見える。その瞳は潤んでおり

 

『お別れを!!! 言いに来たの!!!』

「…………ビビ…………」

 

涙を流さないように必死に堪えるビビ。

それを誰もが、ビビの言葉を待った。

 

『私一緒には行けません今まで本当にありがとう!!!

冒険はまだしたいけど

私はやっぱりこの国を愛してるからだから行けません!!!

私は─私はここに残るけど…!!!

いつかまた会えたら!!!

もう一度仲間と呼んでくれますか!!?』

 

その言葉にルフィは「もちろんだぁ!!!!」と叫ぼうとした。

しかしナミにそれを止められたのだ。それを言ったら近くにいる海軍にビビが海賊と関わりがあるとバレてしまうから。

 

だから何も言わずにその場を去るしかなかった。

ビビの目からは誰もが背を向けて、その場を去ろうとする姿が……答えはそういうことだと見せられているようで

 

もう我慢できずに溢れてきた涙、だったが……

 

「ッッ!!!!!??」

 

仲間の印が見えた。

アラバスタに上陸する前に腕に書いた"☓"の印が。

あの時ルフィが放った言葉が鮮明に浮かんできた。

 

『これから何があっても左腕のこれが仲間の印だ』

 

そうだ。この印がある限り私は仲間だと。

それが分かったビビの瞳からは沢山の涙が、それでもしっかりと去りゆくメリー号を目に焼き付けて………

 

「出航だああぁぁッッ!!!!!!」

 

…………………………

 

「もう海軍は追ってこないようだな……」

 

背後から来ていた軍艦はもう追ってきていない。

それを確認したゾロが甲板へ目をやると

 

「「「「「「ざみじいぃぃーッ!!!」」」」」」

「まだやってるのかよ……」

 

ルフィを始め、一味の殆どがビビのお別れに涙を流していた。

予測していたとはいえ訪れた別れには相当堪えたようだ。

平然としているとすればゾロを始め、レイジュとハジメとロビン。そしてエースとサボはそんな様子を苦笑いしながら眺めている。

 

バーストとキロロとカラーは航海するためにそれぞれ分担して作業をしていた。もちろん常にロビンが監視しているがいまこの一味より頼りになるのは間違いない。

そしてゾロもそんな頼りにならない者達に対して

 

「アイツが選んだ道だろうが。いつまでもクヨクヨするな」

「うわぁ。サイテイ」←ナミ

「鬼」←くいな

「悪魔」←カヤ

「鬼畜」←ノジコ

「バカ」←ベルメール

「ボケ」←ギン

「アホ」←ウソップ

「クソ」←サンジ

「ハラマキ」←ルフィ

 

「ぶった斬るぞテメェらッッ!!!!!!!!」

 

いままでにないほど悪口を言われたゾロはすでに刀を抜いて本当に切ってやろうと思うほど激怒した。

それを遠くから見守る残りの3人。

レイジュはサンジが作ったジュースを飲みながら

 

「海賊なのだから、仲間の別れなんてあるでしょう」

「まぁ、別れも初めてなんだから」

 

「生きて別れるのだからいいほうよ。死に別れ。その時が来たらどうするつもりなのかしら?」

 

「マイナスなこと言わないの」

 

そう。海賊なのだからそういう仲間との別れがある。

本編ではそんな別れは………いや、それはいま気にすることではない。それさえも変えてしまえばいいのだ。

 

「そうよ。それにお兄ちゃんが()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「それって……」

「ロビン。言い方、言い方」

 

そんな事をしている3人をよそに、ゾロ達はまだあんなやり取りを続けていた。

 

「ハラマキって悪口なの??」

「ちげぇーのか?」

「いや、それただの特徴だろ」

「なら剣士ッ!」

「ルフィ君。それ私も含まれるから…」

「なら三刀流ッ!!」

「それ褒めてねぇか……」

「じゃ……緑頭ッ!!」

「だから特徴だよね……」

「方向音痴ッ!!!」

「「「「それだッ!!」」」」

 

「お前ら………」

 

頬がピクピクと動いている。

必死に我慢しているが、ルフィ達はアイコンタクトをして

 

「うわぁ。サイテイ」

「鬼」

「悪魔」

「鬼畜」

「バカ」

「ボケ」

「アホ」

「クソ」

「方向音痴」

「ハラマキ」

 

「マジでいい加減しやがれテメェらッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「「…………うん??」」」」」」」」」

 

なにか、違和感があった。

確かにゾロへの悪口はうまく言ったのだが、何故か"ハラマキ"が抜けていない。

 

そしてその声は、皆が集まっている甲板からではなく船内に入る扉から…………一斉にそちらを見ると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビ、ビビイイイイイィィッッ!!!!!!!!」

 

照れ隠しをしながら手を振るうビビの姿が、ここにいるはずのないビビがそこにあったのだ。

その喜びにビビに抱きつこうと本能的に動くはずだった。

そう。そのはずだった。

 

しかしビビの様子が違ったのだ。

いや、見たことのあるものとビビが掛け合っている状態であり、決して想像出来なかった光景に誰も彼も頭がパンク寸前。

 

そしてトドメを指したのはビビ本人だった。

 

「みんな。私………海軍に入ったの!!

 

「「「「「「「「「「は、はあああああああぁぁぁッッッ!!!!!??」」」」」」」」」」

 

そこにいたのは海兵が着る軍服を着こなしていたビビの姿だった。そして後ろにはカルーもいた。

 

そんな姿を見てハジメはこう呟いた。

 

「………さてさて……()()()()()()()()()()……」



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ー幕間ー 前と後の話を①

まずは前の話をしよう。

つまりはビビが海兵になる前の話を。

そこで重要となるのがこの人物だろう。

 

「………ふへへ……むにゃ……」

 

吹き飛ばされたのにも関わらず呑気に寝ている。

海に落ちて奇跡的にも海岸に流れ着いたと連絡がきたからこうしてある情報をもってきたというのに……

 

すると隣にいる人物が、というかロビンが

 

「さっさと起きなさい」

「ぎゃあああ!!!!!」

 

関節を、本当に折れるんじゃないかというギリギリのラインできめている。流石のこの人物も、というかMr.2なのだが寝ている余裕もないようだ。

 

「ギフ!!ギフよッ!!!!!」

「こうして来てあげたのに呑気に寝ているなんて……死罪よ」

 

このままだと本当に殺しそうだったのでロビンには止めるように声をかけてやっと止まった。

すでに首をしめて落とすじゃなくて殺す気だったよ……

 

「はぁ……はぁ…本当に、ジョーダンじゃないわよ………」

「貴方の存在が冗談なのに?」

 

「いつそんな話をしたのよッッ!!!!!」

「やめたほうがいいよ。きっと勝てないから」

 

それはMr.2もハッキリ分かっているのだろう。

言いたいこともあるだろうがそれ以上言わないように口をギュッと閉じて言うのを止めた。

 

「それで何しに来たのよ?」

「あれ?取引の情報はいいんですか??」

 

「いらないわ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「おお。大正解です」

 

オカマだからなのか、本当に頭が回る人である。

本編でもその頭脳のお陰で何度ルフィ達が助かったか…

まぁ、今回は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「言っておくけどアチシは何もしないわよ。

絶対にロクなことじゃないのでしょう」

 

「大正解」

「大正解じゃないわよ!!!!!」

 

しかしそんなに拒否をするのか。

このままいけばインペルダウンに行くことになるからこうして止めに来たのに……

それはルフィの今後の助けにはなるよ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のでMr.2はシャバにいてもらわないといけないのだ。

 

「でも話を聞くだけでもしませんか?」

「嫌よ」

「どうしても?」

「嫌よ」

 

「そうですか………仕方ありませんね………」

 

これで終わったと思い気を許したMr.2。

その瞬間Mr.2の周りに大量のロビンが生えてきて

 

「「「「「死刑」」」」」

「ふざけんじゃないわよおおおおおぉぉぉッッ!!!!!!!」

 

そうなることは分かっているはずなのに……南無三。

 

……………

…………

………

……

 

3分後。

 

「アバ……バ……バ…………」

「生きてますかー」

 

よく持ったほうである。

あの大量のロビンに対して3分も持つなんて

 

「いきなり呼ばないでくれる?」

「いいじゃないの。ニコル」

 

「はいはい。じゃあね」

 

なんか知らないけど分身体から個体になったはずのニコルも召喚されていた。………自由に呼べるとか、ロビンは召喚士なのかな??

 

「随分丸くなったわ、あの子」

「まぁ個体というか、個人になったんだから性格も変わるだろうね」

 

「……………気持ち悪いわ」

「それでも君なんだから、そういうことを言わないの」

 

ニコルの口調がすっかり"お姉さん"みたいな感じになっている。辛辣を貫くロビンとは違い優しさが見えてくるニコル。

きっと海軍本部は混乱してるだろうなー。気にしないけど。

 

それよりも気絶しているMr.2の頬にロビン手が何発も平手打ちをしてやっと起きた時には両頬は赤く腫れ上がっていた。………なんかどこかで見たような………

 

「……いう、通りにするから…もう、やめて………」

「いい心がけね」

 

……本当に、周りの皆様。ロビンには逆らわないようにと改めて警告を鳴らしたいと思った瞬間だった。

 

「それでやってもらいたい事だけど潜入、というか入れ換わりしてもらいたいんだ」

 

「なによ……確かにアチシならどこでも潜入出来るけど……」

 

「違う違う。潜入じゃなくて"入れ換わり"だよ」

 

そのニュアンスに疑問を持つMr.2

どういうことか考えるが分からなかったようで

 

「それ、どういう意味なのかしら??」

「だからある人物と入れ換わりにこれから生活してもらうの」

 

「……………いつまで」

「その人物が満足するまで」

 

それを聞いたMr.2は固まり、そして

 

「じゃ!」

 

といい逃げようとしたのでロビンが脚を拘束して動かないようにした。そのまま倒れ込んだMr.2はそれでも抵抗しながら

 

「ジョーダンじゃないわよッッ!!!!!

潜入じゃなくてそいつになって人生を送れっていうの!!嫌よアチシは!!!!縛られる人生なんてまっぴら御免よッッ!!!!!!!」

 

「まぁまぁ。そう言わずに。

変わってくれたら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「アンタ!!?まさか……」

「はい。"ネフェルタリ・ビビ"です」

 

…………………………

 

そして時間が少し進み、ルフィ達がメリー号に向けて修業をしている最中、悩んでいるビビの元にロビンが来た時の話となる。

 

 

「私はね、貴女に言いたいことがあったの」

 

「なんで、しょうか……」

 

警戒するビビ。

 

これまでのことを考えるとトンデモナイことを言われそうと思い出したからである。特にルフィに対して。

 

 

「それは…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴女、"月兎"に入るつもりはないかしら?」

 

「………………………………………はい??」

 

訳のわからない。という表情をして固まってしまったビビ。

しかしそんなビビに対してもロビンは変わらず話を進める。

 

「センスがあるのよ貴女は。

国のためとはいえ敵の懐に潜入、その敵と同じ海賊に助けをこい、こうして国を救える術を持っているところが」

 

何を言っているのか分からないという表情をするビビにロビンは立て続けにこう話した。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

「ロ、ロビンさん…に……」

 

「私もお兄ちゃんの為なら敵である海軍にも潜入した。

たいして興味のない三兄弟の師匠にもなった。行方不明のお兄ちゃんのために入りたくもない海賊に入った。いまもお兄ちゃんがいなければ抜けても………という、感情は薄くなったかしら………ふふふ、私も丸くなったわ………」

 

そんな呑気に語るロビンだが、ビビの頭は混乱を極めていた。

自分がロビンと同じ……そして、海軍に入らないか……なんて………

 

「ま、待ってくださいッ!!!!どうして海軍に私がッッ!!!!!??」

「ヘルメッポ大佐。あの子は私には逆らえないわ。

そしてヘルメッポは麦わらの一味を捕らえるという名目でこうしてここまで連れてきた。あの子は海軍でありながら私達の味方よ、分かりやすくいうのならね」

 

「だから、その人の下に……」

 

「違うわ。あくまでも分かりやすく言ったのよ。

ビビ。貴女には私の、いえ、いまはニコルが率いる月兎に入ってもらいたいの。もちろん強制ではないけど、入れば間違いなくルフィの助けにはなるわ」

 

確かに、麦わらの一味の助けになる海軍に入れば助けになるだろう。この恩を返したい思いは強いけど……

 

「む、無理ですよ!!潜入なんてッ!!!!」

「別に潜入だけが仕事じゃないわ。情報収集、情報操作、人心掌握、記憶操作などなど……まあ、裏工作なのは間違いないけど」

 

「ですからそれが……ッ!!!」

「そして最も重要な要素が…"暗殺"よ」

「ッッ!!!!!??」

 

その詞に息を飲むビビ。

暗殺、バロックワークスに入っても下請けの仕事しか回って来なかったがいざというときは覚悟を決めていた。

それでも、それでも出来るならしたくない………それが…

 

「ごめんなさい。また言い方が悪かったわ。

隠蔽工作。そう、ルフィに見つからずに危険分子を排除する。そこに殺しはいらないわ。ついつい()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ふふふ。と笑うロビンの表情はとても怖かった。

それが当たり前の世界で生きてきたからこそいえるセリフ。

そしてそれが悪いことなんて分かりきっており、ハジメの為なら何でもやるという揺るがない決意があることがハッキリと……

 

しかしロビンの言葉に初めて心が揺らいだ。

直接ではなくても手助けができる。

そしてロビンが海軍を勧めたのは万が一なにかあっても海軍、その上の政府がどうにかしてくれる算段があるのだろう。

 

このまま麦わらの一味に入ったらアラバスタがどうなるか分かりきっている。ならダメージの少ない海軍なら………

 

「………でも、それならパパに……」

「それは問題ないわ。というか親に意見を聞く必要もないのだろうけど、まぁ、国の運命があるのだから今回はコチラで手を打つわ」

 

「手って……」

 

「超短期スパルタ"覚醒"コース」

「えっ。な、なんですか……それ………」

 

聞き覚えはないがとんでもなく恐ろしそうな名前にビビる…

 

「これに耐えれたものはいないわ。

それでも覚醒の領域に僅かながらも触れることが出来るの」

 

「えぇーと…ロビンさん……??」

 

「それで今回は上手く予想していた覚醒の能力にがヒットしたから開放したのが………」

 

すると扉が開きそこからボロボロになったMr.2が、全身から生えた手によって操られてここに入ってきた。

 

「オカマ野郎よ」

「み、Mr.2ッ!!!!??」

「………………」

 

もう、声も出せないほどにやられている。

その無残な姿にビビも引くほどに………

 

「さて、この能力は知っているわね。

今回覚醒により"他者の過去の記憶もコピー"することが可能になったわ。これでビビの姿、記憶をコピーしてこのMr.2が貴方の変わりにこの国に残るわ」

 

「そんなことが………」

 

確かにそれならどんな会話をしていても記憶を手繰り寄せれば違和感なく会話できる。それはもう本当に本人に変わってしまう。

 

「で、でも…パパにはバレてしまうんじゃ……」

「だからそこは貴方の人生でしょう。貴女が決めなさい。

少なくともずっと国を開けないように定期的にここに送って上げるし、いつでも辞めたいときに辞めなさい。

それでもこうしてビビ、貴女を勧誘したのは……そうね、後悔しないようにと思ったかしらね……」

 

その言葉が、ビビの心に……

 

「私に後悔はないわ。大好きなお兄ちゃんのためにやることをやってるから。だから貴女にも選択があってもいいと思ったのよ」

 

「………ロビンさん………」

 

似ている。だからだろうか。

いまとなってはその言葉がしっくりきていた。

普通ならなびく事もない言葉なのに、どうしてこんなにも……

 

「……………分かりました」

「そう、良かったわ」

 

それだけなのに決意したことがわかったのだろう。

やっぱり、どこか似ているのかもしれない。

 

「なら()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………??

あの…さっきからなんでルフィ君の名前しか出てこないんですか??そこは麦わらの一味じゃなくて………」

 

そこで今日イチで目を開くロビンに、何か間違ったことを言ったのかと不安になるビビ。

しかしこのあと、トンデモナイ爆弾が投下される。

 

「まさか、自覚なかったの?」

「えっ。な、何が………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……………へぇ??」

 

自覚。なんてあるはずもなかった。

頭の中には恩返しするためにどうしたらいうことだけ。

しかし今思い返せば、ルフィが寝込んでいたときも、ロビンがここに現れる前も頭に浮かんでいたのは…………

 

「こんな所で大声出されて人が来るのは好ましくないから」

 

と、いいながらビビの口を塞ぐロビン。

まさにその瞬間に顔を真っ赤にして声を張り上げるビビだが見事に声はおさまっていた。

 

「じゃ行きましょうか。一足先にメリー号で手続きをしましょう。そしてそのまま隠れた状態で出航してある程度時間が経った出てくるサプライズよ」

 

「……ッ!!……ッッ!!!!!」

 

「きっとルフィは喜ぶわよ。あの子だから抱きついてくるわね。ふふふ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

「ッッ!!!!!!!/////」

 

「カヤやくいなは新鮮さに欠けるから、こうして遠距離恋愛の貴女をイジれるなんて………楽しみが増えたわ」

 

「ッ!!!!??」

 

「それとMr.2にはそれとなくビビの身内に分かるように国王のことを"パパ"じゃなくて"お父様"にするように言っておくから。それなら娘が考えて国を出たってことが分かるでしょう。安心しなさい。お兄ちゃんがいうには一ヶ月にはまた帰ってこれるわ」

 

「ッ!!!!………ッ!!!!」

 

「何言ってるか分からないわ。さぁ行きましょう」

 

最終的に有無も言わさずにその場から"ウイング"を使って王宮を抜け出してメリー号へ向かった。そして到着から一時間後にルフィ達が到着。

 

その後は知っているだろう展開に入ることとなった。



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ー幕間ー 前と後の話を②

これはビビがトンデモナイ爆弾発言と登場した後の話。

そしてまずはアラバスタのお話。

 

「で、君は誰だね??」

(ど、どうしてこうなってるのよ〜〜ッ!!!!!??)

 

そこには国王であるコブラ。チャカとペル。国王を守る王国騎士達。

 

そしてその真ん中に何故かスピーチを終えたばかりのビビが正座をして尋問を受けていた。

 

そう、もちろんここにいるのはビビではない。

ビビの姿をしたMr.2である。

あのスピーチはビビから渡された原稿。

あの涙はあの船に乗っているMr.5達に向けての涙。

この世界ではそこまで麦わらの一味と仲良くはなってない。

 

なればなるだけMr.2は不幸になる。

それを知っていたハジメが意図してやったこと、偶然街重なってそんなに思入れのない麦わらの一味が出来上がった。

 

しかしそこで問題が出来た。

ならなんでこうしてビビになりすましているのか?

そしてビビはどこに行ったのか。

 

それをいまから敵にの真ん中で公開して後悔するハメになる。

 

「な、何を言っているの"お父様"??」

「それだ。まずビビは私をお父様と呼ばない。パパだ」

(それを真剣にいうアンタもオカシイわよッ!!!!!)

 

ツッコミを入れたいが入れたらバレる。

必死にこらえていると

 

「それにビビ様はあんな感動的なことはいわない」

(それ本人が傷付くやつよーッッ!!!!)

「あぁ。ビビ様ならもっと熱く感情的にいう!!」

(やめてッ!!!!それ、本人が知ったらアンタ達も傷付くやつよッッ!!!!!)

 

いつの間にかMr.2の危機ではなく、ビビじゃないだろうと見破ろうとするあまりに、ビビと自分達を傷付けることを言い出していることに気づかないヤバイやつが出来上がっていた。

 

「そうだ!!ビビ様はもっとお転婆なんだ!!」

「あんなおしとやかにいうはずがねえ!!!」

「すぐに反発して困らせるんだ!!」

「お前みたいに完璧な行動はしない!!!!!」

 

(……………あの子、国を出て正解だったわね…………)

 

まさか、こんなにも周りの人達に変なイメージを持たれていたなんて……せっかく国を救ったのに、これを聞いたらビビは倒れてしまうだろう………

 

すると突然Mr.2の首元に刃物が突きつけられ

 

「さぁ吐いてもらおうか??ビビ様は何処だッ!!!!!」

(ぎゃあああッッ!!!そういえばアチシがピンチだったわッッ!!!!!)

 

あまりにも可愛そうなビビに感情移入して自分がピンチだったことを忘れていたMr.2。

打ち明けても地獄、言わなくても地獄。

 

なんて、なんてとんでもないことになったのか……

すでにMr.2の瞳から無意識に涙がポロリと流れていた。

 

するとそんな中で

 

「お待ち下さい」

「ッ!!!!?誰だッ!!!!」

 

突然現れた一人の男。

その姿は海兵だが、離れていても分かるぐらいに強い者だと誰もが理解した。

 

「初めまして皆様。私は絶黒のハジメが率いる"八咫烏"の一人"セバス"といいます」

 

そんな圧倒的な人物が丁寧にお辞儀をする姿にまた驚く。

ここにいるものなら威圧すれば簡単に制圧出来るのにまるで上の人間に対しての態度に

 

コブラは慎重に言葉を選び

 

「……どのようなご用件か?」

「私はいま起きている現状に対して説明をしにきました。

そしてこれは王女であるネフェルタリ・ビビ様のご意思であることをご理解下さい」

 

すると周りの者達は互いに見合いながら言葉を交わす。

これがビビ様の意識だというのかと。

真正面からセバスを見るコブラは

 

「理由は、話して下さるのですか??」

 

「勿論です。そのために私がここに来たのですから。

ビビ様はいま"絶黒のハジメ"の部下、ニコルが率いる"月兎"に、つまりは"海軍"に身をおいております」

 

「か、海軍ッ!!!??」

 

コブラの予想ではルフィ達のいる麦わらの一味に入ると思っていたのに予想外のことに驚く。周りの者はそれすら知らないために動揺が隠せない。

 

 

「これはビビ様の身元がバレた際に海軍ならば情報操作出来ると判断、さらに一国の王女が世界を見るためという献身的な行動を行っていると印象づけることが出来ます」

 

「そして月兎の仕事は主に"主人であるニコルと兄であるハジメに関係する者達への最善に導くための行動"となっております。つまりは麦わらの一味の支援を目的としていると認識してください」

 

「さらに定期的にこちらにビビ様を里帰りする手筈です。

一ヶ月後には戻ってこられますので、その間王女不在となると国民が不安になると思いまして、そこにいる"マネマネの実"を食べた物がビビ様の代役を務めさせてもらうことにいたしました」

 

「触れた者の姿、記憶をコピーし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。こちらにいなかった際の辻褄合わせも問題ないかと思います」

 

 

流れるような説明に横から入ることは出来なかった。

しかし最後まで話を聞けば確かに問題になるようなことはなかったと思う。それでも懸念されることはある。

 

「………この月兎に入って危険は……」

「ビビ様が潜入していたバロックワークスよりはありません。基本的に支援に回っていただきます。さらにはベテランの海兵を二人つけますので」

 

「……なら、そのビビになっている者は本当にビビのために、国のためにやってくれるのか?」

 

「勿論です。

私は"ヤクヤクの実"を食べた制約人間です。

条件は厳しいですが一度制約をすればこちらが解かないかぎりその制約から逃れなれない。

この者には"ネフェルタリ・ビビが満足するまでその役を真っ当すること"となっております。破ろうとすれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のでご安心を」

 

それを聞いたコブラはゾッとした。

こちらとしては喜ばしいことだが、やられた相手にとったら命を握られているに等しい。そのことを淡々と説明しているこのセバスに恐怖を感じた。

 

そしてその制約をさせられたMr.2もまた

 

(き、き、き、き、き、聞いてないわよそんなの〜ッ!!!!!??

無理矢理制約させた癖に何よそれッ!!!本当にジョーダンじゃないわよッッ!!!!!!!)

 

完全に恐怖していた。

ロビンがいた為に逆らうことも許されない状態で制約を交わしたのだ。あんなのただの脅しである。

 

「………………分かった」

「「国王ッ!!!!??」」

 

「ビビがそうしたいなら……父親としては叶えたい。

同時に王女としての役割を忘れていなければ、それでも構わない」

 

「しかしッ!!!この者はビビ様ではないのですよッ!!!!」

「そうですッ!!!そんな奴をなぜ我らが守らないとッ!!!!」

「決定事項だッ!!!!!」

 

その一言で一気に静寂が訪れた。

そして偽物であるビビに向かって頭を下げる。

 

「国王ッ!!!!??」

「娘の我儘につきあわせてすまぬ。

せめてアナタの安全は絶対に……」

 

「い、いえ……」

 

「良かったら元の姿を見せては」

「すみません。制約で解除すると死ぬことになってますので」

 

(ちょっとッ!!!!初めて聞いたんだけどッッ!!!!!!!)

 

その言葉に国王はあることを気づいた。

 

「………それでは…その者は、ビビの姿でこれから生活をするというのか……」

 

「………あぁ。ご安心を。この者はガチのオカマです。

男、女という性別を超えたものですのでご安心を」

 

「い、いや…それでも、嫁入り前の……」

「では死んでもらいましょう」

 

「いや、ちょっとまってくれッ!!

………それをどうにか出来ないのか………」

 

「無理ですね。あるとするなら私を強制的に気絶させるか殺すかですが、その場合他の制約も全て解除しますのでその場合色々責任をとってもらうことになりますが……」

 

それを言われると……みたいな表情でなき崩しに諦めるしかなかったコブラ。Mr.2にとってはかなり複雑である。

 

するとコブラがMr.2肩を掴み至近距離で

 

「極力ビビの身体に触れるな!!いくら偽物とはいえビビなのだ。そしてその身体も見るなッ!!!」

 

(んなこと言われてもッ!!!!!)

 

「そうです国王ッ!!!!お手伝いにもろもろやってもらうというのは!!?」

 

「そうです!!風呂もトイレもやってもらえば問題ありません!!!!」

 

「それだ!!!すぐに手配をしろッ!!!!!!」

 

……………こうして、ビビ(Mr.2)の箱入り娘計画が始まったのだった……………

 

 

…………………………

 

(何をバカなことをしてるのかしら……??)

 

遠くの、アラバスタでの一部始終を見ていたニコル。

あの王宮でも謁見の間にたどり着いたのはニコルだけだった。

というかロビンは元々興味がなかったので行く必要がなかっただけである。

 

しかしこうして()()()()()()()()()()()()()()()ことについてニコルは少し頭が痛くなっていた。

 

(これ、大丈夫なの??ハジメに"私"にビビって……偽物多くないかしら………)

 

現状ニコルだけは"本物"ではあるが、同時にどうしても偽物。

ロビンに命を握られているという点では二人よりヘビーだが、それでも"個人"としての自由がきくのでいい点もある。

 

そしてニコルとして生きるとなりニコル自体が思うところがあったのか、自分でも分かるぐらいにロビンではないところが大きく出てきた。

 

例えばこの口調。

少し丸くなり海軍本部に出会った者達みな驚いていた。

そして態度も少しだけ柔らかくなり、なお驚いていた。

 

(まぁ、気にしても仕方ないか…それより……も……)

 

そして一番ロビンからニコルに変わったことにより変わったのが

 

「うおおおおおおあおおぉぉぉぉッッッッッ!!!!!!

ニコルが!!ニコルが反抗期を!!!反抗期をやめてくれたああああああぁぁぁぁッ!!!!!」

 

出会った瞬間に抱きついてきたセンゴクを突き放さずにそのままにしている時点で本当に変わったといえる。

ロビンだったころは「気持ち悪いわ」と避けていたが、なんとなく可愛そうだという気持ちが出てきて自分でもビックリしている。

 

しかし、これはこれでウザい……とも思い始めている。

 

「…………。いい加減、離れないともう一度反抗期起こしますが??」

 

「よく帰ってきたニコルよ」

 

手のひらを返すように変わるセンゴク。

海軍トップがこれでいいのかと頭が痛くなりそうだ……

前はお兄ちゃんだけで良かったが、いまは海軍に居続けるために、少しでもお兄ちゃんのためになるように色々海軍を変える必要がある。…………まぁ、すでに残念な海軍に変える必要があるのかというのはあるのだが…………

 

「久しぶりだね〜ニコル」

「そうね」

 

「このお土産、ありがとうね〜」

「それはいいのだけど………どうしたのそれ??」

 

そこにいたのはガリガリにやせているボルサリーノの姿。

以前は太っていたことがあったが今度はヤバいくらいに細い。

 

「大丈夫だよ〜。ちょっと書類の量が増えただけだから」

「なるほど。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

で、ニコルの足元にはボロボロになっているクザン。

そしていま、またお仕置きが追加された。

 

「久しいのニコル」

「ええ」

 

そしてドンと構えているのがサカズキ。

こちらは相変わらずに敵意のようなものを向けてくる。

不真面目でやっていたから目の敵になっていたのは分かっていたが

 

「で、どうしてお主がアラバスタにいて、海賊なんぞに手柄を奪われたか説明してみッッ!!!!!!!」

 

そう、一番はこれだろう。

海軍にはヘルメッポの船に乗り麦わらの一味を追っている体で話していた。だからだろう。麦わらの一味を逃し、更にはアラバスタを海賊が救ったことになっているのだから。

 

実際はそこで倒れているクザンだけは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という話を知っている。さらにスモーカー達にそれを知らせてあるのだが、もちろんそれをここにいる者達に話せるわけがない。

 

「別に誰かクロコダイルを倒しても問題はないはずよ」

「大アリじゃああぁぁぁッッ!!!!!!」

 

「そうかしら?現に倒したのはスモーカーになっているわよね」

「そんなもん建前じゃッ!!!!!」

 

「建前が出来ているのだからいいじゃない。

どうしても許せないのなら、また海に出てもいいわよ」

 

「それは許さんッ!!!ここにいろッッ!!!!!!!」

 

………………なんか、頭の固いお父さんと話しているような感覚である。

 

「……………仕方ないの。罰としてクザンの変わりに書類整理をせえ」

 

「ええ。分かったわ」

 

これで許されるのなら。

しかし………………本当に大丈夫なのだろうか海軍は………………

 

(…………"ニコル"という選択、間違えたかしら…………)



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空島編
落ちてきた。


「「「「「月兎に入るううううぅぅぅぅぅッッッ!!!!!!??」」」」」

 

「う、うん………」

 

私、海軍に入るの。よりも大きなリアクションにビビるビビ。

まぁ、最近マカナやリリーサに会ったようだしどんな人がいるのか知っているのだろうけど

 

「ビビッッ!!!!考え直せッッ!!!!!」

「人として終わるぞッッ!!!!!」

「あれは人外がいるんだッッ!!!!!!」

 

特に三兄弟が必死にビビを説得している。

まぁ、2度3度月兎と八咫烏の訓練に参加させたことがあったけど……やっぱりトラウマになってたか……

しかしルフィが近づくと焦ったような表情になりながら後退していくビビ。

どことなく顔が赤いような、なんかおかしいとは思ったが、それよりも

 

「………トラに丸呑みされて、そこから出てこいって……ロープでグルグル巻きにされて本当に飲まれたこととか……」

 

「崖から落とすのは優しいって、雲と同じ高さからロープでグルグル巻きにされて落とされるとか………」

 

「俺なんて……能力者だから泳げねぇのにロープでグルグル巻きにされて大渦に投げられた………」

 

「………ロープでグルグル巻き、好きだな………」

 

丁寧なツッコミありがとうウソップ。

何かを思い出してブルブルと震えだしていた。

しかしあれ、考えたのロビンだからね。僕はこういう練習方法もあるよって言ったらアレンジを加えたのを使ったのはそっちだからね。

 

「とにかく止めとけビビッッ!!!!!!」

「ルフィ。ビビが決めたことよ。口出ししないで」

 

ロビンの言葉にそれ以上何も言えなかった。

そう、ビビが決めたのだ。そしてここにいるのだ。

それがどれだけ覚悟を決めてきたのか分かっている。

 

「だ、大丈夫よルフィさん……きっと皆さんのお役に立てるように頑張るから……」

 

「ビビ………貴女って子は……」

「無理しなくていいからね……」

「たまには顔を見せに、来れるのよね?」

 

「……それぐらい、融通を効かせてあげるわ」

 

ベルメールの言葉に珍しく素直に受け取ったロビン。

まぁずっと海軍に身を置くよりもこうして気の許した仲間と話せば()()()()()()()()()()()()()()()

それに、いまロビンはベルメールを相手にしている余裕というか、ターゲットが違っていたからね。

 

「で、貴方たち。私の訓練に文句があるようね。聞かせてくれるのよね??」

 

「「「………………………」」」

 

あっ。三兄弟が燃え尽きたように無表情になってる。

そしてそんなこととは別にさっきから考え込んでいるレイジュが

 

「ねえ、それならさっき海岸にいたのってビビじゃないのよね?」

「そうだね」

 

「なら、あれってあのオカマなのかしら??」

「ビビが不在中を任せてます」

 

「つまりさっきのお別れは、ビビではなく全く関係ないオカマに『これから先も仲間だあ』という意思表示をしたというわけなのね」

 

「うん。まさかMr.2もノリノリだとは思わなかったよ。

まぁビビの記憶もコピーしてるから感情移入したんだろうけど…………って、みんなどうしたの??」

 

するとさっきまで元気だった皆様が凹んでいる。

そして一部は顔を真っ赤にしている。

 

「だって、それ……本物のビビはここで見てたのよね…////」

「何なのよ!!この恥ずかし目を受ける感じはッ!!!/////」

 

「……ありえねぇ…………」

「……何してたんだ、俺達は…………」

 

「ご、ごめんなさい…みんな…………ッ!!」

 

………あぁ、こんな感じになるとは予想しなかったな………

 

…………………………

 

「い、いやだあああぁぁぁッッ!!!!」

「か、帰してくれえええぇぇぇぇッッ!!!!」

「だから帰してあげるわよ」

 

「「ハジメエエェェッッ!!!」」

「頑張ってね」

 

必死に抵抗する二人だが簀巻きにされているのでマカナ一人でも十分に押さえつけれる。

そしてロビンがリリーサにビビのことについて話をし

 

「分かりました。ではお預かりします」

「ええ。あっちはキッチリとお仕置きをお願いね」

 

簀巻きにされたエースとサボだが、なんとなく流れでここまで船に乗ってきたというこのバカ共。

まあそれは黙認していたハジメも悪いが、たちが悪いのが自分達の船はアラバスタにあるというのだ。

 

だったら送ってやろうということで月兎を呼び出して軍艦にその簀巻きになった二人を渡してアラバスタにつく間にお仕置きを決行することにした。

 

ルフィは?すでに3体のロビンに滅多打ちにされてます。

 

「それじゃねビビ。頑張ってね」

「身体には気をつけてね」

 

「皆さんもお元気で!!!」

 

くいなとカヤのお別れの挨拶が終わり、最後にビビが皆に声をかけた。そしてゆっくりと船がメリー号から離れていく。

 

「また会いましょうッッ!!!!」

「バイバイ、ビビッッ!!!!!」

 

軍艦が見えなくなるまで手を振る。

最後まで抵抗していたエースとサボに対しては誰も触れなかった。そんなことしたら目をつけられると誰もが分かったんだろうな…………

 

「で、()()()()()()()()()()()()()?()?()

「クエッッ!!!!!!」

 

そう、どういうわけかさっきまでカルーは気配を消していた。

まあ分かってはいたけど上手く隠れていたようで他の者達は気づかなかったようだ。

 

「"ここで修業すればオレも強くなる。ならご主人がまたここに来るまでに強くなりたい"って言ってるぞ」

 

「つまりビビにもナイショで来てたのか………ロビン」

「えぇ。気づいたときには船が出航したあとだったわ。

この子、あの距離を………そして……ふふふ、()()()()()()()()………」

 

「クエッ!?」

 

「これは通訳しなくても分かったぞ。後悔してるな」

 

同意見ですサンジ。

顔を真っ青にしてビクビクと震えている。

多分ビビと一緒に行ったほうが良かったんじゃないかコレ…

 

…………………………

 

「……………はぁ……」

「あら、どうしたのお兄ちゃん?」

 

久々にのんびりと船旅が続いている。

またに海は荒れるがそこはナミ達親子がいれば問題なく、ここにバーストとキロロ、ラッシーとカラーとバロックワークス3人と一匹を()()()()()()()ので効率がよくなった。

 

仲間、とは違うのだろう。

それでもその実力はこれから大いに役立つ。

バーストはいままで通りにいざ言うときのメリー号の推進力。

キロロは船が不安定の時に"重り"としてのバランサー。

ラッシーはウソップの狙撃の腕前を使い大砲よりもコンパクトな砲台としての役割。

カラーは後方支援で味方の援助と敵へのトラッパー。

 

それを見込んでお金による契約。

もちろん皆が仲間になりたいなら止めないけどいまはこれで十分だと納得してくれた。

 

なのでこれまでとは違い積極的に行動してくれているので、本当にやることがなくなった。

なので海をのんびり眺めながら色々考えていたのだが、そこで思わずため息が出て、そこにタイミングよくロビンが現れたのだ。

 

「いや、ね……これからのことを考えたら……」

「そう。でも大丈夫よ。式場は私が押さえるわ」

「うん。そんなこと言ってないよ」

 

隙あれば結婚をねじ込んでくるな。

あのキスの後からさらにご機嫌になったロビンはアピール力が強くなってきた。

そうなるだろうとわかっていたからいいけどね

 

「知ってるでしょう。こういう安定してるときは絶対になにかあるって」

 

「そうね。私もそう思うわ」

 

そう、これから起こる出来事。

それによりまた大変な日々が始まる。

 

「………あぁ()()()()()()()……」

「じゃ船内に入りましょう」

 

見聞色の覇気により()()()()()()()()()()()()()

避難の為に船内に戻ろうとしているとやっと回復したルフィが

 

「どうしたんだハジメ?体調が悪いのか??」

「悪くないけど……まぁ()()()()()()

「よく分からねぇけど任せろッ!!!!」

 

なら任せたと船内に入り、一分後。

 

『ガ、ガレオン船が落ちてきたああああぁぁぁッッッ!!!!!!!』

 

と、大声と大きく船が揺れ始めた。

そう、始まるのだ。"アラバスタ編"が終わると始まる

 

「……空島か……」

「あら、バカンスは空島にするのね」

「…………じゃなくて……」

 

「ええ、分かってるわ。

そう、やっぱりさっき落ちてきていたのは空島からだったのね」

 

「行きたがるだろうな…ルフィのやつ……」

「でも、止めないのよね?」

 

「経験としては行かせてやりたいからね」

「なら付き合うわ。それに空島なら高所による身体強化が期待されるから」

 

ふふふ。と楽しそうなロビン。

大変な日々だけど、楽しい日々でもある。

きっとまた本編とは違ったことも起きるだろう。

 

そしてこれから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それを、潰す。

それをずっと考えていたのだ。

そしてきっと()()()も来るだろう。

 

「忙しくなりそうだな……」

 

それよりまずはやることがある。

ルフィ達に空島への関心を持ってもらうために甲板へと向かった。



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サルベージ

「ハジメッッ!!!ガレオン船が落ちてきたッッ!!!!」

「良かったね」

 

「いや、どういう感想なんだよッッ!!?」

 

いや、なんか嬉しそうだったから……

実際、ルフィの頭にはボロボロの王冠を付け、ウソップは錆びついた短剣を持っており、ナミ達親子は金銀財宝を探している。

 

「はぁーお宝になりそうなのはなかったわ……」

「やっぱり、あのガレオン船にあるでしょうね」

「なら、引き上げるか潜り込むか……」

 

もうサルベージなどの計画を立ててるよ。

結局アラバスタからお金は貰ってないからね。

ルフィの食費は本編より抑えてあるけど人が多いから結局同じ感じだろう。……あとは"お金"が好きだからだろうね……

 

「おい、ハジメならなんで船が空から落ちてきたか知ってるんじゃねえのか??」

 

「そうだね……でもまずは皆で色々調べてみようか。

そうしないと楽しみが無くなるよ」

 

「…………確かに一理あるな。よし、調べるぞッ!!!」

 

ゾロが珍しく質問してきたけど、こういうのは調べたほうが楽しいというとサンジを筆頭に皆が僅かな手がかりを探し始めた。

 

すると落ちてきた物の中には白骨もあり、それをチョッパーとカヤが検死することになった。

本編はロビンが調べていたけどこの二人なら問題ないだろう。

そして意外なところから………ベルメールが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「こ、これって"ダイヤル"ッッ!!!!!??」

 

その言葉に驚いた。

まさかベルメールからその言葉を聞くなんて……

 

「ベルメールさん。それってなんなの??」

「昔、海軍で見せてもらったことがあるの……

滅多に出回らないこの(ダイヤル)は"空島"の特産みたいなものなのよ」

 

「「「「そ、空島ッッ!!!!!」」」」

 

うわぁ。めちゃくちゃ目を輝かせてるー

特にルフィとウソップとチョッパーとギン。

………ってか、ギン、いたのね。ってレベルで影が薄いよ……

 

「なんだそれッ!!!空に島があるのかッ!!!」

「当たり前だろうッ!!!だから空島なんだろうがッ!!!!」

「行ってみてええぇッッ!!!!」

「自分は昔から空に行ってみたかったんですッ!!!!」

 

気持ちは分かるけどまずは落ち着きなさい。

そうしないと…………

 

「うるさいわよ。貴方達」

「「「「す、ずみばぜん………」」」」

 

あぁーあ、だからこうなるって分からないかなー

言う前にロビンにボコボコにされた4人だった。

 

「ほ、本当にあるの、空島って……」

「私も……噂程度で捉えていたから……」

 

「……使えないわね……」

「言いたいこと、あるのかしら!!?」

 

「使えないわね、本当に」

「何様よアンタはッッ!!!!!!」

 

どうも、余裕が出てきたロビンと焦るベルメールの格差が大分見えてきた。…………まぁ、何かとは問わないけど……

 

「なら……探すしかないわね……」

「どういうことだナミ?」

 

「だから、潜って探してくるのよ。手がかりをね!」

 

…………………………

 

「あはははは。容赦ねぇな本当に!」

 

珍しく的確なことをいうルフィ。

まぁ言いたいことは分かる。ウソップの即興手作り潜水スーツ(樽で作られた)のようなものを作ったのだ。

 

「大丈夫!設計に不備はねえ!!!」

「んな問題か……ならお前がいけよ………」

「水中マジックはまだだから無理だ!!!」

 

そんな堂々と言ってくるウソップに若干引き気味のサンジ。

潜水スーツを着るのはルフィ、ゾロ、サンジと本編通りだが

 

「この子を連れていきなさい」

 

と、手渡したのはロビン分身体。それも10センチサイズ。

見た目はカワイイが中身は全く同じなので

 

「溺れるようなことがあったら……分かってるわね?」

「………ぞ、ゾロ…サンジ……」

 

それは爆弾を抱えて沈むと同義。

助けを求めるルフィに二人は

 

「さぁいくぞ」

「だな」

「無視するなお前らッ!!!!!」

 

男気の強い二人も、爆弾を抱えて海に潜るリスクは取らなかった。

 

「待ちなさい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「…………………………………………ッッ!!!??」」

 

声にならない叫び声が皆に届いたという………

 

…………………………

 

「そっちはどうだ?どうぞ」

『タコが泳いでるぞ、どうぞ』

『刺身にして食いてェ!どうぞ』

『サメがウヨウヨいる。どうぞ』

 

「問題なしね」

「大アリだわッッ!!!!」

 

呑気に言っているゾロもおかしいが、それを聞いても平然としているロビンもまたおかしい。

 

「障害は私がすべて排除しているのよ。なんのために私の分身体が一緒に同行していると思っているの??」

 

そう、見つけたと同時にロビンがサメをサバ折りにして撃退していた。危険な爆弾だが、使い方を間違わなければ頼もしいものとなる。

 

「ルフィ達のことを思って……」

「ただお兄ちゃん以外の懐なんて拒否反応が出ているから、あと5分で出てこないと………………サメのような結末を迎えるわ」

 

「急いで調べて戻ってこいッッ!!!!!」

 

ウソップはサメがどんな最後を迎えたか、それを見てはいないが、きっと二度と会えなくなるということは分かった。海にいるルフィ達も慌てている声がスピーカーから聞こえる。

 

「本当に大丈夫かアイツら……」

「心配しなくても私が解除すればいいだけよ」

 

「そ、そうだよな……」

「えぇ………」

 

「……………」

「……………」

 

「………するんだよな?」

「するわよ」

 

…………どうしても信用が出来なかったウソップ。

しかしこれ以上踏み込むと間違いなく自分がヤラれる。

ツッコミをいれたいのをグッと我慢して

 

「と、とにかく俺達は待ってればいいだけだしな」

「そういうわけには、いかないみたいよ」

「へっ?」

 

ロビンが見ている先に、大きな大きな船が接近していた。

それも音楽を鳴らしながら賑やかに。

船首には何故かサル。というか全体がサルをイメージした船、いや海賊船だった。

 

「な、なんだありゃ……」

 

呆けているとその海賊船はメリー号の横につけて停止。

そしてその船から顔を出してきたのは

 

「俺達の縄張りで何してやがるッッ!!!!」

 

これはまたサルのような顔をした男が出てきて威嚇してきた。

 

「ちょっと休憩中」

「休憩中だと!?ならさっさと出ていけッ!!!!」

 

好戦的な態度にイラッとしたのかロビンが手をだそうとするがそれをハジメが止める。

何かあるのかとロビンは見守ることにし、ハジメはさらに話しかける。

 

「そちらは何をするんですか??」

「俺達はサルベージだ!!ここに船が沈んだからな!!!!」

 

「……どうしてここに、だと……」

「船が沈むときの振動だ。それで位置が分かる。

ほらさっさと出ていけッッ!!!!!」

 

本編の展開通りに勧めたほうがいいだろうと判断したハジメはここであのセリフを

 

()()()()()()()()()()()()()??」

「猿上がりだと!?……そんなに褒めるな!!!」

 

いや、何一つあってない。

なんでそう都合よく解釈できるのか………

まぁ、それでいいのだけど……

 

「見学、してもいいですか??」

「いいぜ!!!野郎共!!!サルベージを開始しろッッ!!!!」

 

勝手に褒められたと勘違いしていい気分になった男"マシラ"は部下達にサルベージの指示を出す。

 

「どうして止めたのお兄ちゃん?」

「いや、ここで交戦してもルフィ達を引き上げるには骨が折れるでしょう」

 

「そうね。ルフィ達の骨を折ってでも分身体を脱出するつもりだったわ」

「なら、ここは大人しく見てようかなーってね」

 

「………さり気なく恐ろしいことを言わないでください………」

 

ゾロが心配なくいなにとってはその会話は本当に恐ろしいものだった。

 

「まぁ様子でも見てくるよ」

「それってどういう……」

 

「潜ってくる」

「はぁッ!!!??」

 

突然の言葉にウソップは驚く。

最近知ったことだがハジメは能力者。つまりは

 

「いやいや!!溺れるだろうがッ!!!能力者だろうハジメはッッ!!!!!」

 

「言わなかった??"トメトメの実"の能力は"あらゆるものを止める"んだよ。つまりは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことになるから泳げるよ」

 

「いやいや!!!!なんだそれりゃ!!!!!???」

 

明らかにおかしい。

そんなことが起きるなら悪魔の実として最大のデメリットが無くなり、それこそ最強の悪魔の実になる。

そうだから誰もが求める実。知られたら誰もがその実を求める。

 

「まぁ、普段から能力自体使わないようにしてるから真人間だと思われているから仕方ないけど」

 

「それはねぇ」

 

一発殴ろうかなーと思ったけどまぁいい。

それよりもいまは手がかりを、()()()()()()()()()()()()()()()

 

本編からかけ離れてきたからこういうちょっとしたことも起きなくなってきてるなー。絶対に必要、というわけではないけどどうして空島に"大地"があるのか、"黄金都市"はどこに消えたのかというヒントにはなるからな。

 

「それじゃ行ってくるけど、くれぐれもロビンの言うことを聞くようにね」

 

(((((……全て聞いていたら終わるだろうな……)))))

 

「アナタ達、いま失礼なこと考えたわよね」

 

ロビンの睨みに誰もがオドオドしている中ハジメは海へ。

ルフィ達のようにホースを繋いで空気を確保する必要はない。

一時停止で圧縮した空気を少しずつ開放すれば息は出来る。

水圧も関係ない。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

嵐で船が転覆しても、魚人に水中に引きずり込まれても、拘束され重りをつけられて落とされても、息は出来る。戦闘も問題ない。深海だろうが海王類だろうが何が来ても問題なんて何もない。

 

それなのにそのことには気づかないのがハジメ。

ただ"水中で息ができて便利"程度しか思っていない。

単独で魚人島に行けることさえ頭にない。

 

どこか抜けている。それを本人は自覚していない。

 

「おっ。もうガレオン船の周りに空気が」

 

サルベージするためにガレオン船ごと空気で包み込み浮上される技術。大胆だけど確実だなーと思い、これ浮上だけならシャボンディ諸島のシャボン玉無しでもいけるかなーと考えながらガレオン船の中へと潜入した。



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怪物。

「サルみたいな顔をしてるな!!」

「そんなに褒めるなよ〜」

 

「褒め言葉か?」

「知るか……」

 

ガレオン船ではあのマシラとルフィが何故か意気投合していた。本当になんでそこで仲良くなるかなー

まあ、今のうちにこちらは手がかりでも探そうとハジメは船内を調べ始めた。

 

正直、ハジメは空島への行き方を知っている。

もちろんそれは本編からの知識。

だけどそれだと黄金都市というワードが欠落する。

空島にいけば否応なしに分かるのだろうけどルフィにはこの冒険を楽しんでもらいたいしね。

 

そんなことを考えているとお目当ての地図があった。

船内にあったということはやっぱり本編からズレている。

思いっきりズラしている僕がいうことではないけど道筋になるものがこうやってズレるのは困る。

 

地図をポケットにいれて甲板に戻ると

 

「お前らッ!!!!ここの宝を狙っていたのかッ!!!!!!」

 

と、目的がバレてマシラが怒り出しルフィに襲いかかっていた。

まぁ、あれだけ両手に物を持っているならそうなる。

 

「ルフィ。そんなもの持って帰ったらナミが怒るよ」

「ハジメッ!!?」

「お前ッ!!!!どうやってここに来たんだッ!!!!!」

 

「それはいいから。そんなものはくれてやりなさい」

「「「えええぇ〜〜!!!!!」」」

 

「…………ロビン」

「分かったわ」

 

するとルフィ達各自のポケットにいるロビンが能力を発動させて、両肩から手を生やしてそのまま首を締め出した。

 

「さっさと手放しなさい。殺すわよ」

「……………い、いやだ……」

「………もったい、ねぇ……」

「………手放、すか………」

 

このバカ共。なんでこういうときだけ意地を張るのか……

それはせっかくかき集めたものだとは分かるけどハッキリいってゴミなんていらないんだよね。

 

もう顔色も真っ青になってるのにまだ粘る。

このままいけば本当にロビンが手をかけることになるな。

 

「分かった、分かった。その中から"コレだ!!"っていうもの3点だけにしなさい。いいね?」

 

すると一斉に首を縦に振る。

ロビンの肩に手を置くとハァーとため息をつきながら能力を解除した。ゴホッ!ゴホッ!と咳込み新鮮な空気を吸うために息を荒くしている3人。それを見ていたマシラは

 

「………や、やるぜ、それ…………」

 

…………なんか、いや、かなり引いてるな。

おバカだけど強気なマシラがあんなに引くなんて……これも本編を変えてきた影響かな??

 

「………………………あっ」

「はぁ、はぁ………どうしたんだハジメ??」

 

「カメ、忘れてた」

「カメってなん………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上がってこねえな……」

「ねえロビン。下はどうなってるの??」

 

一向に上がってこない四人を心配するウソップ達。

いつでもこの場から離脱出来るようにバーストには準備してもらいナミとノジコは船の操作をするために待機。

 

ベルメールは状況を把握するためにロビンに聞いてみたのだが

 

「そうね。カメに食べられたわ」

「はっ?……いや、こんなときにそんな嘘を」

 

「貴女に嘘つく必要性はないわ。

事実を見せてどん底に叩き落とすのが生きがいなのに」

 

「……………ほんとーーーに殴るわよッ!!!!!!」

 

拳を突き出そうとしたとき少し離れた所で海から何が浮上してきた。それも山のように大きな大きな何かが………

 

「な、なんだありゃーッ!!!!!」

 

そこに現れたのは巨大な、巨大なカメ。

それは山のように大きく島だと間違えて上陸してもおかしくない。

 

「カメよ」

「あんなカメいるわけがッ!!」

 

「常識なんて捨てなさいベルメール。

お兄ちゃんがいる時点で全ての常識はないのと等しいのよ」

 

「………………褒めてるのよねロビン……」

「当たり前じゃない。最高の褒め言葉でしょう」

 

そう……と、それ以上ツッコミを入れるのをやめたベルメール。

そんなことしている場合ではないのだ。あのカメの口から出ているホースはこのメリー号から、ルフィ達へ空気を送るホースである。

 

「おい!!まさか食べられたのかッッ!!!!」

「だからそういってるじゃない」

 

「なんでそんなに冷静でいられるのッ!!!?」

「お兄ちゃんがあそこにいるからよナミ」

 

「ひ、引っ張られてるッ!!!どうにかしないとッ!!!??」

「ホースを切りなさい。大丈夫、後はお兄ちゃんがなんとかするわ」

 

冷静なロビンの指示を聞き即座にホースを切るノジコ。

これでなんとかカメに引っ張られて、最悪海に引きずり込まれることはなくなったが

 

「これからどうするのロビン」

「どうもしないわ。お兄ちゃん待ちよ」

 

「そ、そんな!!!」

「何を慌ててるのカヤ?お兄ちゃんよ、問題ないわ」

 

「いや……正直ロビンさんよりも強いってのが…誰も信じられないみたいですよ………」

 

レイジュはともかく、他の面々はハジメの実力を目の当たりにしたことはない。基本的にハジメは傍観を決めているためにやるのはロビンだった。

 

確かにハジメが大将"絶黒のハジメ"だとしても見たことのないその姿を信じれるわけもない。

 

「なら見てなさい。お兄ちゃんの実力を」

 

そうロビンに言われて誰もがカメの方へ向いた。

未だにマシラの方のロープは繋がっており、船内の海賊達もロープを切るか切らないかで抗議していた。

しかしそんな間もカメはゆっくりと海の中へ入ろうとしていた、が…………

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんな光景に驚いていていると、次のアクションが起きた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

何が起きたのか分からないナミ達は開いた口が塞がらなかった。こんなことが現実に起きるのかと……

 

しかし見たことが一つだけあった。

リトル·ガーデン。あの恐竜がいたあの場所で、その恐竜が切られる時と似ているのだ。つまりは、

 

「あ、あのカメを……切った………」

 

誰がその言葉を言ったのか分からなかったが、誰もがその答えに行き着いたようであり、落ちていくカメの身体から何が飛び出てくるまで呆けていた。

 

「お兄ちゃん達が出てきたわ。ウソップ、迎えにいきなさい」

「お、おうッ!!!」

 

ロビンの呼びかけに意識を現実に戻したウソップ。

すぐさま絨毯を取り出してルフィ達の元へと飛び出した。

 

「急いで船をあのカメから引き離したほうがいいわよ。大津波がくるわ」

 

「な、何が起きたのよッ!!!!」

 

「何って、お兄ちゃんが内部から殴り上げて、その後に斬っただけよ」

 

「そ、そんなッッ!!!!??」

「ベルメール。お兄ちゃんの強さや優しさに惚れたことについてはとやかくいわないわ。ウザいけどね。でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それが貴女のためよ」

 

何をッ!!?と言い返そうとしたがそれを無視してロビンは空を見上げた。するとそれと同時に一気に空が、周りが暗く、夜のように真っ暗になった。

 

「な、何なのよこれはッ!!!!」

「五月蝿いわね。見てれば分かるわ」

 

その言葉に言い返そうとするベルメールだったが、次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()3()()()()()()()()

 

「「「か、怪物だああああぁぁぁぁッッ!!!!!!!!!」」」

 

そのあり得ないほどの大きさにマシラ率いる海賊団はそそくさとその場から逃げ出した。ナミ達もすぐにその場から逃げ出そうとするがロビンが生やした手により阻止された。

 

「何してるんですかお姉さんッ!!!!!」

「逃げなくていいのよナミ。あれは影だから」

 

「だからあんな大きな影があるならッ!!!!」

「遠近法による影絵」

 

「…………なるほど。そういうことね」

 

ロビンの言葉にレイジュは理解したようだ。

しかし未だに分からないナミ達はどういうことか聞こうとしたがそのタイミングでウソップ達が帰ってきて

 

「に、逃げるぞッ!!!!」

「あれはヤバすぎるッ!!!!!」

「船を出せッ!!!!!」

 

ルフィ達もあの影にビビり逃げ出そうとしていた。

ゾロも焦っているようだったがロビンやレイジュの冷静な姿を見て

 

「………あれは、無害なのか??」

「そうよ。だから貴方達も落ち着きなさい」

 

「でもよ師匠ッ!!!!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

「よし!!!お前ら!!!落ち着けッッ!!!!!!!」

 

さすがルフィである。

ロビンの一言で巨人の大きさによる恐怖よりも目の前のロビンの恐怖が勝ってしまった。

どのみちロビンが船を動かせないようにしているために動けないのだが、その動かない船に対して待機していたバースト達も現れて

 

「なんで逃げないんだよッッ!!!こっちは準備してるんだぞッ!!!!!!」

 

「五月蝿いわね。殺すわよ」

「普通なことを言ってるのにッ!!!!!??」

 

…………………………

 

「つ、つまり、あの影は"空島"からの影なの??」

「ええ。上空にいる人の影。それが怪物、巨人の正体よ」

 

「……………つまり、オモシロ人間だな!」

「絶対に分かってないだろうルフィ……」

 

冷静になりロビンの言葉に耳を傾ける一向。

大津波もなんとか回避することができ、少し落ち着いたところで大影の説明を聞いていた。

それでも分かっていないルフィ。巨人じゃないと分かっただけでいいみたいなのでロビンはそれ以上は言わなかった。

 

「でもよ!それなら本当に空島はあるんだよなッ!!!

それも人もいるんだよなッッ!!!!!」

 

「そうね。お兄ちゃんが持って帰ってきた地図によれば島もあるみたいよ」

 

「島ッ!!?……まぁ、空島っていうぐらいだけどよ……あんのか島なんて…………」

 

「どっちでもいいじゃねえか!!行けば分かるッッ!!!!!」

 

確信に変わった空島にルフィのワクワクは最高潮に上がっていた。それに乗せられてウソップやギン、カルーと一緒に「空島ッ!空島ッ!!」と騒ぎ出す始末。

 

「にしても……アンタ達、マトモなお宝や手がかりはなかったの??」

 

「そんなこと言わないでくれよナミさーん!!!」

「ハジメが選べっていうから選んだだけだ。他にもあったんだ」

 

「いや、選んでこれなら他もゴミね」

「ええ。ゴミね」

 

いつも通り、こういう反応には冷たいベルメール親子。

サンジだけはそれでも喜んでいるが……

 

「でもこれだけじゃ空島なんていけないわよ」

「なんでだよ!!!いくぞ空島ッ!!!!」

 

「「「おおおおぉぉ!!!!「クエェッ!!!!」」」」

 

「行けるかッ!!!」

 

空島があるなら行ける。という楽端的な考えに頭が痛くなるナミ。ノジコもその地図を見るが手がかりになるようなことは何もなかった。

 

「………近くの島に行ってみるしかない、のかな?」

「ノジコもそう思うわよね……」

 

手がかりがない。でもこうしてログポースは空島に向かっている。

ならどうにかして近くの島に向かい、そこで手がかりを掴むしかない。

 

「さっきの海賊、あっちの方角から来たのよね」

「船が沈没したのが分かってから来たみたいだったわ。それに逃げた先もあっち………なら、拠点にしている島があるッ!!!」

 

そう導き出したナミとノジコは、早速その方角に向けてどのようにして向かうか話しだした。

ここはグランドライン。勘でたどり着くほど甘くない。

 

「なら、先行して島があるか見てこようか」

「で、出来るのお兄さんッ!!!!」

 

「ロビンと一緒に行って見つけたらこっちに残す分身体とのパスを使えば一直線。どう??」

 

「それはありがたいけど……いいの??」

 

そう、ハジメは基本的に麦わらの一味の手助けはしない。

導いたり、鍛えたりはするがこうして進む進路に口出し、さらに誘導なんて……

しかし今回は先に次の島"ジャヤ"に行く必要がある。

だからロビンがあのマシラから奪った"エターナルポース"を皆の前に出さないようにとこっそり言っておいたのだ。

 

しかし、グランドラインの海は変わりやすいのに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

ナミに加えて、ノジコとベルメールもいるから更に航海術に磨きがかかったんだろうなー

 

「まぁ今回だけね。空島っていう進路は変わらないなら、そこに行き着く島はセーフってやつかな。」

 

「…………お兄さんがいいなら……お願いするわ」

「ということで、ルフィもそれでいい??」

 

「おう!!!空島にいけるならなんでもいいぞッッ!!!!!」

 

船長の許可も貰いハジメとロビンが先行して島を見つける。

そして船に残した分身体とのパスを使ってルフィ達を誘導。

しかしそこまでの移動手段というと

 

「よし!!いくぞ!!!!」

「ふざけるなッ!!!!」

「せ、せまいわ……」

「私に抱かれるなんて、光栄に思いなさいカラー」

「ひゃ、ひゃい………」

 

小舟に5人がぎゅうぎゅうに詰め込んで乗り込んでいる。

バーストは船の推進力として、キロロは船の安定に、カラーは何かあったの時の保険に。

 

小舟の後ろからバーストとキロロ、カラーはロビンに抱かれており、先頭にハジメが並んで座っている。

 

「そっちにもロビンはいるけど、あまり無茶なことはしないようにね!」

 

「いや、いま目の前にいるお前らが無茶してるよ」

 

ウソップのツッコミも少し聞けないとなると寂しいなと、軽くスルーしてバーストに出発と合図を送る。

小舟にも一時停止をかけているので壊れたりはしないが、メリー号と違って小さな小さな小舟。バーストの爆発一つで

 

「「「ぎゃあああああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」」」

 

放ったバースト本人も驚く程に一気に吹き飛んだ小舟。

ハジメ達と小舟が離れないようにこっそり小舟と自分達を一時停止で固定しているので海に落ちることはない。

 

しかし海に落ちたほうがマシだと思う。

 

「はい。次」

「ぎゃ、ば、だ……」

「早くやりなさい。死にたいの?」

 

そう、その後もハジメとロビンによる強制的な加速のお陰で島につく頃には3人は死にかけの表情をしていたという……

 

…………………………

 

「さっきからどうしたのゾロ?」

「…………見たか、ハジメの剣技……」

 

どうも様子のおかしいゾロに話しかけたくいな。

しかしゾロの言葉に首を縦に振って神妙な表情で

 

「うん………今まで見てきた斬撃の何よりもキレイだった……

剣豪ミホークの剣技が"剛"ならハジメの剣技は"静"……」

 

「……アイツは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。名刀でもなんでもない即興の剣でだ……ありえねぇ……」

 

剣士として腕は確かに必要ではある。しかしそれと同時に名刀であるかも必要なのだ。

しかしハジメはそれを己の技量、力だけで海王類と同じ大きなカメを一刀両断したのだ。

 

そしてそれはゾロとくいなに力の差を見せつけられ落ち込ませる、ものではなかった。

 

「是が非でも盗むぞ!アイツから全て奪ってミホークを倒す!!!」

「そして、私とゾロ。どちらかが……」

 

「「大剣豪になるッッ!!!!」」

 

………………………………

 

「………なぁ、サンジ」

「なんだルフィ?」

 

「お前、ハジメみたいにカメを蹴り飛ばせるか??」

 

ルフィもまたハジメの力を見て考えていた。

そしてサンジもそんなルフィがどんな思いをしているのか理解しているつもりだった。

 

「………無理だな。いまのままだとな……」

「片脚ぐらいなら出来そうだんだけどな……」

 

そういいながらも落ち込んではいなかった。

どう見てもルフィの目は力強く、新たな目標が出来たようで。

それを見たサンジもまた、あの強さに追いつくと決意し

 

「…………サービスだ。何か食うか?」

「肉ッ!!!!」

「オッケイ。待ってろ船長」

 

あの強さに追いつき肩を並べるように………いまは力をつけると沢山の肉を食べることにした。

 

「………………食べ終わったら"地獄のメニュー"よ、ルフィ」

「ッッ!!!!!!??」

 

そして調子に乗ってしまったことを、不気味に笑うロビンを見て激しく後悔したという………



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ツリー·ウォール

気候が安定した。という実感は湧かなかった。

普通ならその島の範囲に入れば気候が安定するので、これが一つの島の近くまで来たという証明になる。しかしいまもこの小舟は小舟ではあり得ないほどのスピードで"ジャヤ"に向けて進んでいるのだ。気候など気にしていられない。

 

「し、死ぬかと、思った………」

「気もぢ悪いわ…」

「もう、いや………」

 

途中から小舟の先端に空気の壁、空気抵抗を軽減するように矢印みたいな感じで向かい風を浴びないように工夫した。

それによりGだけのキツさになったが、それでもキツイものはキツイ。

 

目の前に島が見えてやっと減速してこうして息を整えている3人に対して

 

「じゃ、ここで待機していてくださいね」

「は、はぁッ!!!?ふざけんなッ!!!!」

「私達も島でゆっくりしたいわよッ!!!!」

「(コクコク)」

 

言い分は分かる。ここまできてお預けなんてと。

しかし次の言葉に3人は諦めるしかなかった。

 

()()()()()()()()()()()()()()?()

「「「待ってますッ!!!!!」」」

 

「カラーは付いてきなさい」

「ッッ!!!!!!??」

 

目を見開き恐怖の表情をして固まっている。

…………可愛そうに。

 

改めて目の前の島を見える。

"ジャヤ。"そこは"無法地帯"と呼ばれており海賊共が好き勝手にやっているという場所。

そしてここにこの先の展開に影響する"二人"がいる。

 

一人がベラミー。

バネバネの能力を持ち、ここではルフィにやられるがその背後にいるドフラミンゴに目をつけられるという展開になる。

そしてベラミーとドフラミンゴはまた後に会うことになるが、ベラミーについては()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そしてもう一人、マーシャル・D・ティーチ。

ハジメがだっーーーーーーーーーーい嫌いな人物であり、白ひげ海賊団の一人で、サッチから"ヤミヤミの実"を殺して奪ったこの"ワンピース"における最悪の敵である。

 

しかし前からティーチに警戒をしていたハジメは、白ひげの船にいた頃から毛嫌いをして、白ひげにある予言じみたものを言っていた。

 

そのお陰である運命が一つ変わったのだ。

 

……

………

…………

……………

 

 

少し話を戻してルフィ達がアルバーナに向けて進軍していた時のお話。

 

「……つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということ、()()()()()()()()()のために……」

 

「あぁ。アイツはやってはいけねぇことをやりやがったんだぁ……ッ!!!」

 

「で、白ひげさんにはなんて言ってきましたか??」

 

「……………………………………」

 

そこで黙るエースにハジメはハァーとため息をついた。

そう、本編通りにキチンと話さずに飛び出してきたのだ。

 

「何やってるんですかもう……」

「だけどアイツはッ!!!!」

 

「それでもエースの身を案じた。それぐらい分かるでしょう」

「そ、それは……」

 

それは分かっているのだろう。

でも、それでも、家族を傷つけたティーチを許せなかったのだろう。

"家族"に敏感なエースだからこそ人一倍に……

 

「………帰りなさいエース」

「なッ!!!ティーチをそのままに出来るかッ!!!!」

 

「ティーチは僕に任せて帰りなさい」

「ふざけんなッ!!!アイツは俺が!!」

 

するとさっきまで黙っていたロビンが殺気を放ってエースの両肩から手を生やして首を締め出した。抵抗するエースだが勝てるわけもなく

 

「お兄ちゃんがやるって言ってるのよ。聞き分けなさい」

「…………ぎゃ………だ………」

 

「エース。僕を信じて待ってて下さい」

「……………………(コク…コク)」

 

ゆっくりと頷いてくれたエース。

そっちのほうがいい。あのクソは僕の手で……

と、考えていたが一向にエースの首を締め続けるロビンに

 

「ロビン……もういいよ?」

「ダメよ。お兄ちゃんに逆らった時点で死刑よ」

 

「エースになにか起きないようにしてるのに、ここで何かを起こさないでッッ!!!!!!!」

 

 

……………

…………

………

……

 

サッチさんは生きてる。エースも白ひげさんの所に帰った。

それでもあのクソは七武海になるために"大物"を狙っているはずだ。

 

その一番がエース。そしてルフィ。

あの更新した懸賞金を見て狙っていたしな……

そうか、今頃ルフィ達の懸賞金を上げてるのかな海軍は

 

まぁ、それはどうでもいい。

あのティーチにはどちらとも会わせない。その前に潰す。

 

バーストとキロロには小舟に残ってもらい3人は()()()()()()()()()()()()()()()

 

「こ、こんなの……アリなの……」

 

先頭にハジメ、ロビン、カラーの順番で歩いている。

ハジメが歩く所には一時停止により海の表面が止まり歩くことが出来る。

 

一気に海全体を停止出来るが、やり過ぎると後で面倒な事が起きる場合もあるのでそれはやめておいた。カラーは普段通りに歩いている二人について来ているが、一歩でも踏み外せば海に落ちるかもしれない恐怖になかなか足が進まずにいた。

 

「何やってるのカラー。さっさと来なさい」

「お、落ちたら………」

 

「骨は拾うから問題ない」

「死んじゃう前提で話さないでッッ!!!!」

 

助けて。なんて求めても無駄だとは分かっているカラー。

瞳に涙を溢れさせながら必死に二人に付いてきてなんとかジャヤの地に、砂浜に足を踏み入れた。町があるところまでは距離があるがいきなり出くわすのもいけないと思ったので離れた場所にした。

 

「こ、怖かった………」

「お疲れ。とりあえずカラーはここで待機。また後で呼びに来るから」

 

「りょ、了解……」

()()()()()()()()()修行してなさい」

 

「ッッ!!!!!」

「いや、止めてあげてロビン。もう精神ヤバそうだから……」

 

ロビンの追い打ちにもう限界なのだろう。

ボロボロと涙を流しながらこっちを見てくるカラーに対して流石に「頑張って」という言葉は出てこなかった……

 

まあ何かあったらと思い分身体のロビンにはカラーを見てもらうことにしてこの砂浜から少し歩いていると

 

「やっと、ついたようね」

 

茂みから現れたのはもう一人の協力者。

そこにいたのはハジメと同じ転生者である。

しかし、残念なことに………こいつはウザイ」

 

「だから心の声を言わないでよッ!!!」

「おっと。…………ウザイ」

「言うなッッ!!!!!!!!」

 

と、本当に面倒くさい………女?である」

 

「正真正銘の女よッ!!!ってか、また声が!!!!」

「五月蝿いわね。消すわよ」

「もう何なのよアンタら兄妹はッ!!!!!」

 

転生者でも意見が違えば衝突するのがお決まり。

しかしこのヤスミ·コガはエースと白ひげさんの死を回避したいという目的がある。意見が一致しているので協力はするが

 

「そう言われてもさっきみたいにカッコつけて登場されると……イライラして仕方ない」

「オブラートって言葉知ってますかッッ!!!!??」

 

ハァハァと息を切らすヤスミを見て二人は

 

「「イジるのはここまでにして」」

「本当に、いい性格してますね二人とも……」

 

これ以上は無駄な時間と、文句を言うのを止めたヤスミは真剣な表情で

 

「で、サボに伝言を預けてまで呼び出したんだから……()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()

 

「どうにもなにも、ただぶっ飛ばす」

「動けないようにへし折る」

 

「ノープランってわけね………分かったわよ、やるわよ!!」

 

…………………………

 

「ぎゃあああああぁぁぁぁッ!!!」

 

誰の悲鳴だろうか。

それが分からないほどに町は混乱していた。

町の人間はすでに退去済み。残されたのは海賊だけ。

その海賊のだけかの叫びだろう。そしてそれは一人だけではない。

 

「な、何なんだアイツらッ!!!」

「に、逃げるぞッ!!!!」

()()()()()()()()()()()()()うわあああああぁぁ!!!!」

 

逃げようにもロビンが作り出した"万紫万紅(ディミル・フルール)""樹木壁(ツリー·ウォール)"により町から誰も逃さないように巨大な手の壁を作り出していた。近づけば捕獲されてやられる。そして()()()()()()()()()()()()

 

完全な包囲網の中、それでも足掻いているのが

 

「はぁ、はぁ、…………ゼッハハハハハッ!!!

まさか本当に攻撃してくるなんてな……俺のこと、気に入っていたんじゃねぇのか、なぁハジメッ!!!!」

 

「ずっと言っていただろうが。テメェは死ね。

その方が世の中の、僕の為になるから死ね」

 

こいつはここで壊す。最悪殺す。

それが"ワンピース"の物語にとってやってはいけないことだとしても、こいつはここで終わらせる。



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ゴッテスハンド

さて、いまの現状を話そう。

ロビンによるツリー·ウォールにより周りの海賊は逃げられない。もちろんそこには()()()()()()も含まれる。ロビンには倒さないように、捕獲する形にはしてある。

 

そして目の前には片膝をついたティーチ。

他に"チャンピオン” ジーザス・バージェス、"音越” ヴァン・オーガー、"死神” ドクQもそこにいる。あともう一人いたけど今頃海軍にいるんだよなー

 

確か名高い海賊を捕らえて献上して七武海に入る算段。

その対処がルフィだったが逃げられて、追いかけてきたエースと戦い勝利して海軍に引き渡したことにより七武海に入った。

 

これがターニングポイント。

これによりエースが公開処刑となり、助けに入った白ひげとエースが命を落とす。

 

 

………………………ふざけるな。

 

 

それはまあ、本編、というか、この"ワンピース"を書いている作者さんのご意思だから、展開だから僕一人が言ってもどうも出来ないし、作者さんが作っているストーリーに文句をいうのはおかしいだろう。

 

だけどここは違う。

複数ある中の一つの"ワンピース"

前世の記憶はないけど、それだけは分かる。

これは沢山ある"ワンピース"の中の一つだと。

 

なら、変えよう。

僕の思い通りに変えてやろう。

今まで通りに、好き勝手にこのワンピースを変えてやる。

 

そしてこのターニングポイントは、確実にやってやる!!!!

 

「恨み、なんてものは元よりない。

ただテメェが嫌いだティーチ。だからここで消す」

 

「ゼハハハハッ!!!そいつは困る」

 

「知るか。死ね」

 

その瞬間にヴァン·オーガーが目にも止まらない速さで狙撃してきた。

狙うは頭と心臓。確実に一撃で殺せるようにと2段構えで。

並の海賊や海兵なら殺られていただろうが、こちらは……

 

「………覇気、ですか……」

「やはり使えるかッ!!!!」

 

分かっておいて狙撃してきたようだ。

武装色の覇気。これにより弾丸は命中しても貫通しない。

それがなくても一時停止により止められるがティーチにこの能力を明かすわけにはいかない。

 

間違いなく狙ってくる。

白ひげさんの能力を狙うように、世界最強の悪魔の実の能力を。

 

なのでここで使う能力といえば、その白ひげさんの一撃をティーチに喰らわせること。あとの奴らは……

 

「ロビンとヤスミで他の3人をよろしく」

「ええ。あのデカブツと、お兄ちゃんを撃ったやつは私がやるわ」

「じゃ私は……ドクQかぁ……」

 

はぁ、と落ち込むヤスミと、すでにイライラマックスなロビン。

そしてそんな女性を相手相手することになった3人は

 

「そんな細い体で何が出来るッ!!!!」

「海賊いえど、所詮は女……」

「………運が、なかった…な、お前ら………ゴフッ!」

 

一人だけ死にそうなのだが、まあいい。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まずはテメェからだぁッ!!!!」

 

さっそくジーザスがロビンへ突撃。

………しようとしたが、そんなものロビンの前では意味を持たない。

 

六輪樹(セイス·マーノ)、"クラッチ"」

「ガバッ!!!!!」

 

「ジーザスッッ!!!!!」

 

ロビンにとって()()()()()()()()()()

それだけでジーザスは、地面から生えた巨大な六本手によりその体、首・腕・足を掴まされて、体を反り返らせて背骨を極められた。

 

少しだけ進化した六輪咲き"クラッチ"の上級版。

それでも、それだけでジーザスを倒したのだ。ロビンの実力は本当に物凄いことになっている。

 

「ッ!!!!」

 

すぐさまに反応したヴァンだが、すでにその身体には()()()()()()()()()()()()()()()構えようとした腕は動かず、全身をロックした上で、小さな手が武装色を纏い一斉にヴァンの身体を殴りつける

 

小花(ナノ)·千紫万紅(ミル・フルール)、"クラッシュ"」

 

「ブォフッ!!!!!!!」

「ヴァンッッ!!!!!!!!」

 

全身から血が吹き出てくる。

…………うわぁーロビンのやつマジギレしてるな。

未遂とはいえ、完全に殺しにかかっていたからお兄ちゃん大好きロビンには逆鱗に触れたのも当然ってやつか………

 

さて、あっちはどうなっているのかというと……

 

無効分離(デタッチ)

「あ、あり得ない……」

 

ドクQからの毒攻撃を喰らっていたようだがどうやらそれを無効化したようだ。"ベツベツの実"による様々な"分離"能力。

そして今回は毒を"毒"と"それ以外"に分離、体内から毒のみを摘出させたようだ。ヤスミの掌の上にはその毒が浮いており

 

「はい、返すよ」

「くっ!……だが私には解毒が…」

 

毒のみになった濃度の高い毒をドクQに打ち返した。

かなりの苦しみを伴っているようだがニヤリと笑いながら懐から解毒剤を取りだし

 

断絶分離(セーヴェル)

「なっ!!!!??」

 

ヤスミが唱えたことにより突然ドクQの手から解毒剤が離れた。落ちていく解毒剤を必死に取ろうとするがどういうわけか()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ドクQまでも……」

「大人しくください。じゃないと解毒剤、飲ませませんよ」

 

「て、テメェ………ッッ!!!!」

 

ブチギレているティーチ。

しかしその一瞬のスキをハジメは見逃さず、ティーチの懐に入り掌を腹部に当てて

 

「ガバッッ!!!!!!」

 

白ひげさんの一撃を喰らわせ、ティーチの身体はくの字に折れ曲がり、吹き飛ばされ次々に建物をぶち抜いていく。

 

「手応え、ないわね」

「いや、貴女が強すぎるのよ……」

 

3人を拘束したロビンとヤスミ。

しかしロビンが言った通り手応えがなかった。まぁ実力はあるだろうが油断していた相手だ。

 

「トドメを刺しに……って、いかないか……」

闇穴道(ブラック・ホール)ッッ!!!!!!」

 

ヤミヤミの実の能力。辺りに闇を広げ、その中へあらゆるものを引きずり込む。

その闇はロビンのツリー·ウォール近辺まで侵食し周りの建物などをドンドン吸収していく。

ハジメ達はすぐさま離脱。ジーザス達はその闇に飲まれていく。

 

引き込まれたものは無限の引力によって極限まで凝縮され、原型を留めない程に押し潰される。

闇が広がる範囲全てが攻撃対象となるため、街一つを呑み込むことも可能である。

 

まぁ自分の能力なのだから仲間まで押し潰すなんて真似はしないだろう。そしてそんな闇から

 

「ったく、本当に強えなハジメはよ…ッ!!!」

 

口から血がでていたのだろう。

付いていた血を拭うティーチはかなりダメージを負ってフラフラしている。

 

「悪いが逃げさせて、もらうぜ!!

解放(リベレイション)ッッ!!!!!!!!

 

ティーチは地面に手をやりそこからさっき闇に飲み込んだものを一気に開放した。まるでロケットのように空に飛んだティーチはそこから仲間を取り出して抱え込み逃げ出した。

 

「じゃあなハジメッ!!!!!」

 

そう言い残して空の彼方へと………

 

覚醒咲き(エヴェイユ・フルール)

 

逃がすわけがない。

ティーチが吐き出した建物の残骸をすべて"手"に変えだした。

 

「なっ!!!??」

 

いまも吐き出しているティーチまでその手は行き渡り、その手が一つの大きな手へと姿を変えた。

その手はまるで()()()()()()()()()()()……

 

億華神掌(ミリアルデ·フルール)、"ゴッテスハンド"」

 

その手でティーチを握り、ギチギチに握りしめる。

断末魔のような悲鳴が聞こえるなか、ティーチを上空へ軽く投げたあとそこに向けて手の平で振りぬいた。

 

一瞬にしてティーチ達は地平線の彼方へ。

バットのように振りぬいた手からの風圧によりジャヤ全土に嵐が通り過ぎたような惨事になっていた。

 

「……なっ!!」

 

あっという間の出来事に固まるヤスミ。

ジャヤという島から生えた巨大な手。それが倒すべき相手を虫を払うかのようにあしらいぶっ飛ばした。

 

「あれで生きていたなら奇跡だわ」

「生きてるだろうね。生命力、ゴキブリ並みだから」

 

「全身の骨をへし折ってからのトドメの平手だけど……そう、お兄ちゃんがそういうなら今度は()()()()()()

 

巨大な手を消し去ったあとツリー·ウォールを解除したロビン。

開放されたと海賊達はこの島から逃げようと走り出す。

そんな中にこの島で用事があった人物が現れた。

 

「な、何なんだテメェらはッッ!!!!!!」

 

ルフィ達をバカにして、そして一撃でやられる男"ベラミー"

すでに仲間は逃げ出したのだろう。たった一人でハジメ達の前に現れた。

 

「こちらは革命軍の………コメディ担当だっけ?」

「革命軍"作戦実行部隊隊長"ですぅッ!!!!!」

 

「えっ。なにそのエセ役職」

「ほ、ん、も、の、で、すッッッ!!!!!!!」

 

「僕達は………とりあえず海賊で、いいよね??」

「私に聞くなッ!!!!!」

 

「あっ。さっきの質問は後で。今からルフィ達呼ぶので」

「…………………………………」

 

おかしいペースに戸惑い、言葉も返せなかったベラミーだった。



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手を上げて

色々説明を兼ねてルフィ達を呼ぼうとロビンに頼んだのたが、「もう近くまで来てるわ」と言われ少し待っていると現れた………のだが、なんだか様子がおかしい。

 

とくにロビンに対して誰もが距離を置いているような……

 

「お、お姉さん……あれ、なに??」

「アーロンの所でも見たでしょう。あれと同じよ」

 

「き、規模が違いすぎますよ!!!」

「気にしないの。あの力はナイショよ。分かったわね」

 

あんなものを見せられのだ。誰も彼も首を縦に振るうしかない。待機していた場所からもあの"神の手"が見えたようで、あとはナミの航海術で近くまで来れたようだ。

ちなみに他の海賊共はすでにマカナによって記憶を書き換えられている。

 

"黒ひげと名乗る海賊がやった"ということにして。

 

「悪かったわねマカナ。忙しかったでしょう??」

「そんなことはありません!忙しかったといった瞬間に私は死にます!!!」

 

「死ななくていいわマカナ」

 

はい!!と報告を終えて帰ろうとしていたマカナをくいなが引き止めた。

 

「あ、あの!!……ビビちゃんは、どうしてますか??」

「とても素晴らしいとリリーサが言ってました。特に"暗殺"にかけては一流だと」

 

「そうですか………………暗殺ッッ!!!!??」

「はい!闇に潜んで誰にも気づかれずにヤル。完璧な暗殺術を会得しています!!!」

 

あの子、完全に本編から逸脱してきたなー

では!と元気よく帰っていったマカナ。本当によくやってくれる。

 

するとビビと仲が良かった女性陣がロビンに

 

「お、お姉さんッ!!!ビビは本当に大丈夫なのッ!!?」

「大丈夫よ。立派な暗殺者になれるわ」

 

「海軍なんですよねッ!!!??」

「海軍も、やらないといけないことがあるのよ」

 

「王女ですよ!!!やり過ぎですよッ!!!!!」

「大丈夫よ。技術を取得しても()()()()()()()()()()()

 

「つまり……技術だけで、実際の暗殺はしなくていいのね」

「敵の制圧は別に"死"だけじゃないわ」

 

「気絶させたり拘束も出来る。そして暗殺術なら顔を見られないから王女様にはうってつけ。というわけね」

 

「だから、最初からそう言ってるわよ」

 

 

ナミ、カヤ、くいな、ノジコ、レイジュと次々聞かれる問に答えるロビン。そして最後にベルメールが聞こうと視線を合わせると

 

「………と、いうことで質問は終わりね」

「本当にッ!!!最近何なのよアンタはッ!!!!!!」

 

「えっ。私何かしたかしら??」

「そのわかりやすい態度は何なのよ!!!」

 

「そういうことよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。心の余裕、まぁ元から貴女と私じゃ次元が違うけどね」

 

その言葉に離れていこうとした女性陣が一気に戻ってきた。

そう、"新たなるステージ"というその単語に乙女心が高ぶったのだ。

 

「ど、どういうことなのお姉さんッ!!!!!??」

「ふふふ。それは言えないわ」

 

「で、でも!!いつもとは違うですよねッ!!!」

「もちろんよ」

 

「ちょっとベルメールさん!!!やっぱり奥手はダメだって!!!!」

「そうよ。相手はお姉さんなんだから!!!!」

「そ、そうは、言っても……」

 

「貴女、こういう時は慎重なのね。意外だわ」

「私は、レイジュがこの手の類に興味あるのが意外よ……」

 

「私も女の子よ。興味ぐらいあるわ」

「じゃあ、気になる人でもいるの??」

 

 

「弟」

 

 

「「「「「……………えっ。」」」」」

「冗談に決まってるでしょう」

 

………………………………

 

「………何言ってるんだ、あのバカは………」

 

聞き耳を立てていたわけではないが、その単語だけはハッキリと聞こえてしまったサンジ。しかしそこから何かいうと更にややこしくなりそうだった為にサンジはハジメとベラミーとの会話に集中することにした。

 

「ば、バカかテメェはッ!!!!空島があるだぁ!!?なに子供みたいな夢を見てやがるッ!!!!!!」

 

「いや、あるものをあると言っているだけですよ」

 

「この先の海賊時代はな……夢なんか見ねぇんだよッ!!!!

そんなものを追いかけるやつは(ふるい)に落とされる!!

そんな馬鹿げた夢を追うやつは生き残れねぇ!!!!!!」

 

「………………えぇ〜…………」

 

改めてこうして見ると、本当にガキみたいなことを言っている。

今自分がどういう状況なのか分かっていないのか?

ロープで縛られて麦わら海賊団の主力メンバーに囲まれている状況。

 

一つ間違えれば"死"しか訪れない。

 

それを分かって……いないだろうなー

相手が強者どうかさえこんな側にいるのに分かっていないんだからな。

 

「それはまぁ、いいとして。

ベラミー。君、背後に大物、いるよね??」

 

「ッ!!!!………あぁ、そうだ!!!

こんなこと仕出かしたんだ!!!テメェらもう終わりだぁ!!!!!!」

 

ずいぶんと息巻いているベラミー。

それは背後にいるのが七武海ならそうだろうねー

 

「おいおい、大丈夫なのかハジメ……」

「なに弱気になってやがるんだウソップ」

 

「うるせぇ!!!ゾロ、お前みたいに俺は神経が図太くないんだよッッ!!!!!」

 

「まぁまぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()()()()()()()?()?()

 

「おう、ねぇ!!!!!」

 

その言葉に暫く沈黙があったが

 

「「「「「し、七武海いいいいいぃぃぃぃッッ!!!!!!??」」」」」

 

ウソップを筆頭に、ナミ、ノジコ、ギンに、チョッパーが叫んだ。いや、気持ちは分かるけどね。

 

「おいふざけんなよッ!!!ついこの前七武海倒したのに連チャンなんてイヤだぞオレはッッ!!!」

 

「いいじゃねぇか。ぶっ倒せばよ」

「そんな簡単に出来るかぁッ!!!!!!」

 

確かに七武海を相手に簡単に倒せるなんて舐めた考えは捨てたほうがいい。七武海は海軍に認められた選ばれた海賊と考えていい。つまりはそれなりに実力もあるのだ。

しかしルフィはそんなウソップにハァとため息をついて

 

「あのなウソップ。考えてみろ」

「な、何を……」

 

「いざとなれば師匠もハジメもいるんだぞ。負ける要素あるか?」

「ねぇな」

「おい」

 

完全に当てにしてやがる。

まぁ、あんなロビンの力を見せられたらそうなるか。

()()()()()()()()()()()()()()()()()当てにされても困るところはあるんだけどなー

 

「まぁ、それは置いといて。君の頼みの綱は意味を成さないよ」

 

「何を言ってやがるッ!!!そんなバカな話ッ!!!」

 

「うーーーん、口で説明するの面倒くさいですね。だったら……」

 

ハジメはベラミーの頭に手を置いた。

いったい何が起こるのか分からなかったが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そしてその時あまり見せないハジメのニヤリとした表情に誰もが寒気を覚えて、ロビンとベルメールはその表情にウットリと頬を赤くして見惚れていた。

 

そんな中()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なッ!!?な、にしやがるつもりだあぁぁッッ!!!!!!!??」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

なんの事か分からないが、明らかにヤバい。

そう直感したベラミーは逃げ出そうとするがさっきから身体が固まって動かないのだ。ハジメに頭を触られた時から指先一本動かせない。

 

「や、やめろ……どうなってもいいのかあぁッッッ!!!!」

「実力もない人が、後ろ盾の力を振りかざしたところで……何一つ響かないということをお先にあの空の上でじっくりと考えて実感していてください。気が向いたら助けに来ますよ」

 

何かを言おうとする前にハジメは思いっきりベラミーを振り投げた。遠くに投げる。というよりも空にある雲を撃ち抜くように投げたのだ。実際にベラミーの身体は一直線に空にある雲を一気に突っ込み消えた。その手法は何処ぞの頭のおかしいクソジジィの技を使い、さらに推進力にまたそのジジィの力を付け加えたのでいとも簡単に雲のところまでベラミーを届けることが出来た。

 

その行動に唖然とする皆々様に対してハジメは

 

「はい。次、空島に行きたい人、手を上げて」

『誰が上げるかあああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!!!』

 

ロビンの巨大な手を見た衝撃よりも、こんな非常識なことをやってのけるハジメに対して衝撃を受けて逃げ出したくなる一行だった。



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ハリボテの家

「モンブラン・クリケット??」

「えぇ。夢を語って町から追われた人。もしかしたら空島について知ってるかもしれないわよ」

 

逃げ出す海賊共の何人かを拷問というなのお話で引き出した情報。空島への直接の手がかりはなかったがこの夢を語っていたということにひかかったロビンはルフィに提案したのだ。

 

「でも、夢を語っていただけじゃ分からないんじゃないんですか??」

 

「そうかしら?ログポースは空島を指しているのよ。

つまりはそう遠くない所にはある可能性があるわ」

 

「そうだぞ、ナミ。気にせずに行こうぜ!」

「ルフィ……アンタね……空島よ空島!!!

どうやって空にある島に行くのよ!!!!あったとしてもマトモじゃないわよッ!!!!」

 

「大丈夫!!!それに見つからなかったら仕方ねぇ。ハジメに任せる」

 

「任せるって、そんなこと言って………」

 

無理ですよね。とハジメの方を見るとキョトンとした表情をしておりその後ニコリと笑いながら

 

「メリー号に皆が乗り込んで、僕がメリー号を空島の方向へ投げ飛ばす。っていうのがいいならやるよ。………加減できないから着地さえ怪しいけど………

 

手がかりを探すわよ皆ッッ!!!!!!

 

全力で行きたくない所へ全力で向かうことになったナミだった。

 

…………………………

 

「オウオーーウニーチャン!!

人の縄張りで何してるんだ!ウォーーーーホーーー!!!」

 

島の反対に行くには船でと思い乗ったのが間違いだった。

そういえばこの辺りを縄張りにしているショウジョウという海賊がいることを忘れていた。

マシラの兄だったけど、マシラのほうが印象が強かったので本当に忘れていた。

 

「……………お兄ちゃん、沈めてもいいかしら?」

「やめてあげて」

 

「猿って、知能がある割にバカだから嫌いなの。

同じ猿でもルフィの方が千倍マシよ」

 

「し、師匠が………褒めてくれたああぁッ〜!!!!!!」

 

いや、違う。

のだが目をキラキラしてるし、ロビンも否定する気もないようなので言わないでおこう……

ほら、周りをよく見て。可愛そうにって視線で見られてるよー

 

とにかくロビンが暴走しないようにと

 

「とにかく沈めるのはダメ。いいね?」

「…………分かったわ。ルフィ」

「はい!!!」

 

しぶしぶ諦めたロビンだったが、別の手があったようだ。

ロビンの一言で直立して元気な声で返事をするルフィ。

あぁ、これ、嫌な予感しかしないな……

 

()便()()()()()()()()()()()()()()

「分かったッ!!!!!」

 

これ、完全にルフィを使いやすくするために否定しなかったよなロビンのやつ。止めようとしたがすでにルフィは腕を伸ばしており、あの距離をあの技で一気に縮めるようである。

 

「ゴムゴムの〜ロケットッ!!!!」

 

宙に放たれたルフィの身体は一直線にショウジョウの海賊船へ。突然のことで向こうは狼狽えているようだが、そんなのルフィには、放たれたルフィにはどうすることも出来ずに突っ込むしかできない。

 

なので、せめて()便()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…からの、大槍(ランス)ッ!!!!!

 

僕の知らない技を繰り出してきやがったルフィ。

そのランスという槍のようなスタイルでショウジョウに突っ込むルフィ。もちろんランスなので攻撃範囲は広くショウジョウだけではなくそこまでの直進線の近くにいる部下も巻き込まれて吹き飛んでいく。

 

そして直撃したショウジョウは血を吐きながら後ろに吹き飛ばされていく。それでもいまだルフィの追撃は止まれずに海賊船のマストや恐らく船長室などがあるだろう船内を壊していきながら、ついにはその海賊船の上部を貫いてしまった。

 

「や、やり過ぎたああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッーーー………………………………」

 

叫び声が聞こえるが未だに飛んでいくルフィ。

数秒後に聞こえなくなったと同時にチャポンと音が聞こえてきた。

 

「……………………………ロビン。やらせるのもダメ」

「……………………………分かったわ」

 

んな、のんびりと感想を言ってる場合かああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!

 

そういうけどキチンとウソップが救出することがわかってるからやっていたんだけどなー。

しかし、マシラが吹っ飛ばなかった分が兄であるショウジョウに当たるなんてな。それも海賊船が半壊するほどに。

 

「……よし。モンブランの所にいこうか」

「絶対に、マトモな死に方しねぇなハジメはよ……」

 

褒め言葉として受け取るよサンジ。

 

…………………………

 

「なんだコリャ!!!!」

「大見栄を張っているようね」

 

それは突然に、丁度出発地点から反対側についたころに現れた。大きな城がそこにある。と思ったのがどうも様子がおかしく回り込んでみるとただのハリボテだった。

 

そのハリボテは半壊した家を塞いでいるかのように、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「こんなところに、住んでいるのよね……」

「にしても、面白ぇ家だな」

 

上陸して改めてその家を見るが、何かで切り取られているかのように家が半分しかないのだ。それだけでもおかしいのにハリボテまでしているから尚更である。

 

「置いていくなよなお前らッ!!!……って、なんだコリャ!!!!」

「いや。もうリアクションはいらねぇよウソップ」

 

ルフィを回収して追いかけてきたウソップも同じように驚いていた。ルフィはすぐにチョッパーとカヤが診てくれて問題はないらしい。

 

「ロビンちゃんが言っていた夢って城に住むことなのか……」

「いや、そんなわけあるかバカコック」

「あぁッ!?脳筋マリモに言われたかねぇよ!!!!!」

 

また不毛な喧嘩が始まったが無視しておこう。

ロビンも完全無視しているので話を進めておこう。

 

「ロビンが聞いた夢って?」

「このジャヤは莫大な"黄金"が眠っていると言われている。って聞いたわ」

 

「「「黄金ッッッ!!!!!」」」

 

はい、そこの親子反応しない、五月蝿いよ。

しかし黄金は多めに手にしないとなー。きっとこの先必要になってくるだろうし。

 

「ねぇ、ハジメさん。これ見たことある??」

 

するとくいながハリボテの家の近くにあった絵本を手に持ってきた。それを見たレイジュが

 

「"うそつきノーランド"。懐かしいわね」

「知っているのレイジュさん?」

 

「えぇ。北の海(ノースブルー)では有名な童話よ」

 

そう、これは有名な童話であり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



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"モンブラン"

『むかしむかしのものがたり。

それは今から400年も昔のお話。

 

北の海のある国に、モンブラン・ノーランドという男がいました。

探検家のノーランドの話は、いつもウソのような大冒険の話。

だけど、村の人達には、それがホントかウソかも わかりませんでした。

あるとき、ノーランドが旅から帰って、王様に報告しました。

 

「私は偉大なる海のある島で、山のような黄金を見ました。」

 

勇気ある王様は、それを確かめる為、200人の兵士をつれて、偉大なる海へと 船を出しました。

大きな嵐や、怪獣達との戦いをのりこえて、その島にたどり着いたのは、王様とノーランドと、たった100人の兵士達。

 

しかし、そこで王様達が見たものは、何もないジャングル。

ノーランドは、うそつきの罪でついに、死刑になりました。

ノーランドの最後の言葉はこうです。

「そうだ!山のような黄金は海に沈んだんだ!!」

王様たちは呆れてしまいました。

もう誰もノーランドを信じたりはしません。

 

ノーランドは、死ぬときまでウソをつくことをやめなかったのです』

 

 

読み聞かせが終わりナミはその絵本を閉じたと同時にウソップを見た。そして一言。

 

「そう。死ぬまでウソをやめませんでした」

「おい、なんでこっちを見てるんだ」

 

しかし見ていたのはナミだけじゃなくカヤを除く全員がウソップをジィーと可愛そうな目で見ていたのだ。

 

「ふざけんなよお前らッ!!!!」

「お、落ち着いてウソップさん!!」

 

「いや、名前に"ウソ"って付いてるからよ」

「"ウソ"が染み付いてるのかと……」

「息をするような"ウソ"をな……」

 

「こっちは"ウソ"を"本当"にするマジックをしてんだよッ!!!!!!」

 

いまのウソップは"嘘を真"にする力があるからなー

それでもマジックだからタネはあるんだけど。

 

「うん?ちょっと待てよ。その絵本の名前……」

「えぇ。同じ"モンブラン"。つまりは子孫に当たるはずよ」

 

ここに来て手がかりが!と思った矢先

 

「お前らッ!!!ここで何してやがるッ!!!!!!」

 

全員が振り向くとそこにはさっきまでいなかった人物がずぶ濡れで現れたのだ。そう、この男こそが"モンブラン·クリケット"

 

「"黄金"目当てか……帰れ!テメェらになるもんはねえ!!!!」

 

「「やっぱりは黄金はあるのねッ!!!!!!!」」

「これでやっと貧乏生活から脱出出来るわ……ふふふ……」

 

「何煽ってるんだお前らッ!!!!!」

 

ナミ、ノジコ姉妹は黄金に目がくらみ、ベルメールに至ってはこれまで続けてきた節約の日々が終わると歓喜している。

それによりさらに警戒心が膨れ上がったクリケットにウソップが

 

「ま、待ってくれ!!俺達は"空島"に行きたいだけなんだよ!!行く方法があるなら教えてくれッッ!!!!」

 

「空島、だと……お前ら、そんなもん…を……しん………じて……」

 

徐々に弱くなる声。それに比例するようにクリケットは意識を手放すかのようにその場に眠るように倒れた。

 

「オッサンッ!!!?」

「い、医者あぁッ!!!!!」

「お前だよ」

 

………………………………

 

「………こ、ここは……」

「気づいたかオッサン」

「貴方の家ですよ。覚えてますか?」

 

気づいたクリケットは近くにいるルフィ、ハジメ、そして診察してくれていたチョッパーを知り

 

「そうか……助かった……」

「別にいいですけど、あまり無茶な潜水はやめたほうがいいよ」

「そうだぞ!!」

 

「………そうだな。医者である君のいうことは間違いない……」

 

しかしその目はまだ諦めていなかった。何かを成し遂げるための強い意思。それはルフィから見てもハッキリと分かったようで

 

「海の中に何かあるのか?」

「………そうだな。助けてくれた礼だ。話ぐらいはいいだろう」

 

と、何かを話そうとした瞬間に扉が勢いよくあき

 

「「オヤッサン!!!!」」

「お前ら……」

 

「「オヤッサンが無事で良かったーッ!!!!!」」

「分かった!分かったから入ってこようとするな!お前らじゃ入れねぇだろうが!!!!」

 

そこにいたのはマシラとショウジョウ。

少し前、二人でここに現れた時は大暴れしようになったが今度こそキチンと"お話し"できる体制にするようにルフィが奮闘してくれた。

まぁ、奮闘というか、ちゃんと加減をしろというやつではある。またやり過ぎて吹き飛ばさないように。

 

大人しくなったところでずっと二人が言っていた「オヤッサン」についてのことを話してやっと大人しくなったのだ。

 

「お前らありがとうな。オヤッサンを助けてくれて」

「今まであったことは水に流せる。それだけの人なんだ」

 

にこやかに話す二人に照れながら「いいから外に言ってろ!!」と怒るクリケット。入れ替わるかのように外からロビン、ナミ、ノジコ、ベルメール、サンジ、レイジュが入ってきた。

 

「なぁ、アンタはあのモンブラン·クリケットの子孫なのか?」

「ほう。それを知ってるということは」

「ええ。北の海出身よ」

 

「そうか。あぁ、その通りだ。子孫だ」

 

「ならよ。あの絵本にあることは……本当なんだな?」

 

「違うッ!!!!」

 

大声で否定するクリケット。

それに思わずたじろぐサンジではあったが

 

「ち、違うって……」

「あれは事実じゃねえ!!間違いなく"黄金都市"はあるッ!!!」

 

「やっぱりあるのねッ!!!」

「どこにあるんですか!!!」

「この近くにあるのね!!そうなのよね!!!!」

 

「はいはい。落ち着いて。3人で攻めないの」

 

どうも黄金と聞いてからこの親子はおかしくなってる。

まぁ、元々お金大好きナミだったんだよな。本編とは違った形になったと思ったけどやっぱり本質は同じか。で、そのナミの姉と親も似ていると…………

 

「つまりは、それを確信できるものがある。ですよね」

「…………あぁ。その通りだ」

 

そういって立ち上がり何かを取りに行ったクリケットは、大きな袋包を持ってきてそれを皆の前に置き

 

「これが、確信出来る証拠だ!!!!」

「「「「「おおおおおおおおおぉぉぉぉッッ!!!!!」」」」」

 

その包の下から現れたのは見事な黄金。それも精巧に作り上げられた像だった。

 

「分かるか!これがこの海の底で見つけたんだ!つまりここには"黄金都市"はあるッッ!!!!」

 

「ま、マジかよ……」

「すげぇーなッ!!!!」

「こ、これで、お、億万長者に………」

 

と、喜んでいたが突然腰を落としため息をつくクリケットに違和感を持った。

 

「だが、あったのはあと数個ある黄金だけ。これじゃ黄金都市とはいえねぇ。だから探してるんだよ海の中をよ」

 

「だからって無茶な潜水は、潜水病は命を落とす危険があるんだぞ!!!」

 

「だからといって止められねぇのさ。こいつは先祖と俺の"戦い"なんだからなッ!!!!」

 

それからクリケットがどうしてそんなに黄金に執着するのか話してくれた。本編通り"モンブラン"という性は"嘘つき"の家系と見られており何処にいってもそんな風に見られていたようだ。

なら本当に黄金都市はあると証明してやる!と、ここで長年黄金都市を探し続けていたのだ。

 

それも全く手がかりがない。というわけではない。

そうクリケットには先祖が残した航海日誌があったからだ。

 

「……おいおい。まじかよ……」

「"ウェーバー"に"ダイヤル"………それに"黄金都市"ッ!!!」

「な、なぁ!!これってッ!!!!」

 

「間違いなく黄金都市も、空島もあるッ!!!!これがそれを指し示しているんだッッ!!!!!」

 

そんな力説にルフィ達は大はしゃぎ。

半信半疑だった2つがあると分かったのだ。

そんななか、ハジメがクリケットに近づき

 

「クリケットさん。これをどうぞ」

「こいつは……」

 

「映像でんでん虫です。それとも一緒に来ますか?」

「…………いや、こいつで十分だ。ありがとうな」

 

本気で空島に行く。そう決意した目だと分かったクリケットはハジメからでんでん虫を受け取った。

すると後ろからハジメをビシバシと叩いてくるチョッパー。

 

「何考えてんだよハジメッ!!!!

空は平地と違って気圧が違うんだぞ!!潜水病になっている人をそんなところに連れて行ったらどうなるか分かってるだろうがッッ!!!!!」

 

「いや、()()()()()()()()()()

 

「医者いらずかお前はッ!!!」

 

「いいことだよね??医者いらずは」

 

………………………………

 

「積帝雲??」

「あぁ。この辺りの海を突然襲う"夜"は、その上空に太陽光を一切通さない"積帝雲"という雲の化石が来ている証なんだ。"空島"があるとすればそこにしか可能性はねえ」

 

行くことは決まったが、そこへどういうか。である。

幸いにもクリケットには心当たりがあるようで、ハジメによる力技で空島に行かなくてすむと話を聞いていた。

 

「そこに上がるには月に5回程この海に現れる"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"と呼ばれる爆発海流の乗って空に舞い上がるしかねえ。そして例えそれに遭遇しても無事でいられる保障はねえがな」

 

「さらに"ノックアップストリーム"の発生場所と"積帝雲"の位置が一致するという奇跡のタイミングが必要になるが……………ツイてるな。そのタイミングが明日の昼だッッ!!!!」

 

一気に話してくれたクリケット。それを聞いてさらに目をキラキラにする者と、絶望をした表情になっている者で別れた。

 

「確かに、それはツイてるな」

「ヨッシャー!行くぞ、空島ッッ!!!!」

 

ゾロはニヤリと笑い、ルフィは喜んでいる。

が、それを止めようとする者達が

 

「待て待て待て!!!!

どう考えてもおかしい単語が山程あっただろうがあぁ!!!」←ウソップ

 

「そうよ!!その話が本当ならその海流に乗った時点で船が大破するわよッッ!!!!!!」←ナミ

 

「もっと安全な方法が……」←ギン

 

 

「メリー号は僕の力で傷一つ付かないので大丈夫ですよ」

「「「それはどうもありがとうッッ!!!!!!!!」」」

 

 

ありがとうといいながら完全にブチ切れている。

余計なことをいうなと、ビシビシ伝わってくる。

 

「ウソップさん。諦めましょう」

「そうよナミ。黄金が待ってるわ」

「覚悟を決めろギン」

 

しかしそれでも渋るように了解をしない3人に対して優しくこう告げた。

 

「なら僕が小舟で()()()()()()()()()

もちろん小舟が壊れないようにしますし、なんなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。これなら怖くないですよね?」

 

「「「一番怖いわボケエエエエェェェェェッッ!!!!!!!」」」

 

なんか納得行かないなー。



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空島へ

「サウスバード??」

 

「あぁ。そうだ。その鳥は必ず"南"しか首を振らねえ、奇妙な鳥だ。しかし空島へ行くための"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"はこの海ではそいつ無しではいけねぇ」

 

「南いけばいいんだろう。いらねぇんじゃねえのか??」

「バカねルフィ。ここはグランドラインよ。海に出れば方角は分からなくなる。だからログポースがあるんでしょうが」

 

「……………つまりは、不思議鳥かぁ」

「まぁ、間違ってはないね」

 

「とにかくだ。そいつを捕まえてこい」

 

クリケットさんが持っていた黄金の一つ。それはこのサウスバードの像だった。クリケットさんがサウスバードを思い出す時間ももったいないと思ったのでこの鳥ってなんですかね?と訪ねた所でやっと思い出してくれたのだ。

 

「「船の補強は俺達に任せろ!!」」

「いらないので大丈夫です」

 

「………………………………」

 

「おいハジメ!あの二人メチャクチャ落ち込んでるぞ!!!」

 

そうはいっても一時停止で傷一つ付かないからいらないんだけど………まぁ、あの羽があったからほぼ水柱に対して垂直に飛んだというのもあるのか………落ち込んでいるマシラとショウジョウに優しく

 

「じゃ、出来るだけ傷つけないようにお願いします」

「「 おう!任せとけ!!!」」

 

というとこでサウスバードを探しに森に向かった。のだが…

 

 

「はい。さっそくゾロがいなくなりましたので探す対象を一つ増やしますー」

 

「ゾロが本当にすみません!!!」

 

ベラミーの件を早々と解決してしまったために起きた想定外。

本編では仲間と一緒だったから良かったけど、ここに来て一緒にいても迷子になるとか…………

 

「気にしなくていいよくいなちゃん。あのバカは……諦めよう」

「んなこと言ってる場合かよ!!サウスバードも見つけないといけないんだぞ!!!」

 

「幸い姿はあの黄金と同じって言ってましたから。あとは鳴き声が…………」

 

『ジョーーーーー!!!!!』

 

「「「「「これだ」」」」」

 

分かりやすい鳴き声のお陰で簡単に見つけれる。

と、思っているだろうなー皆は。

そう簡単にいかないから大変なんだよね。

 

それでも捕まえなきゃ話にならない。

それぞれ分かれてサウスバードを捕まえにむかいその場に残ったのはハジメとロビン、そして……

 

 

「さっさと行きなさいよベルメール」

「嫌よ。これ以上差を広げられる訳にはいかないわ」

 

どうも、この間からこの二人が白熱してる。

原因は分かっている。やたらとロビンがベルメールを煽ってるからだ。その理由はアラバスタの()()。心に余裕が出来たと言っても明らかに上機嫌でベルメールを煽るから、

 

「何を言ってるの?天と地の差があるのに」

「本当に……少しはその口を閉じてなさい!」

 

二人でハジメを取り合いみたいな絵図になった。

これまでここまでなることはなかったのに、痺れを切らしたベルメールが積極的に詰めてきた。具体的にはハジメの腕を絡め取り密着する形で。その反対側はもちろんロビンです。

 

「あのね、サウスバード探さないと……」

「だから私と行きましょう()()()

「あら、やっと呼び捨てした貴女は邪魔よ」

 

「知らないわよ。同じ婚約者でしょうが」

「私は本妻で貴女は愛人よ。すでに差があるわ」

 

「"お兄ちゃん"って呼んでいる貴女には言われたくないわ」

「…………そう。ここで潰れたいのね。ベルメール!」

「上等よロビン!」

 

と、言いながら一向に離れない。

二人共分かっている。離れた瞬間にハジメを連れてこの場から離れると。

ロビンは能力を使えば簡単に拘束も出来るが()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()

 

それだけロビンはベルメールを認めている。

それと同時にライバルであり、対等の相手と見ている。

 

だからベルメールに対しては遠慮がない。

自分が認めた相手なのだから不甲斐ないところなんて見たくない。というのがあるのかもしれない……

 

「………………ねぇ………探さないの…………」

 

しかし巻き込まれているハジメはもうグッタリである。

結局、他の面々がサウスバードを持ってくるまで続いた。

夜から朝になるまで、ずっと……

 

………………………………………

 

「マジでふざけんなよ!!!!」

「そうよ!そうよ!!」

「どれだけ待ったと!!!!」

 

「五月蝿いわね。"私"が呼びに来たのだからいいでしょう」

 

「それでも何時間待てせてるんだ!!!」

「置いていかなかっただけ有り難いと思いなさい」

 

クリケットさんの所へ帰ってくるとそこにはバーストとキロロ、カラーが飯を食っていたのだが、こっちを見た途端に飛びつくように向かってきて文句を言い出したのだ。

 

そういえばバーストとキロロは小舟で海上で待機、カラーは海岸で待機してもらってたなー……………忘れていた。

なので素直に謝ることにしました。

 

「はい。僕は忘れていたよ。ごめんなさい」

「「「ふざけるなッッ!!!!」」」

 

ですよねー。

 

「お兄ちゃんが謝ったのにふざけるなってなによ。

貴方達がふざけるなよ。というか死刑ね」

 

「ぎゃああああぁぁッ!!!!」

「ご、ごめんなさいッッ!!!!!!」

「許してッッ!!!!!!」

 

100%こっちが悪いのにね。

どうしてこう可愛そうなんでしょうか。と、少しだけ思うよ。

 

ロビンはまだ何もしてないけど雰囲気というかオーラが見えたのだろう、もう完全に萎縮してしまっている3人だった。

 

「ロビン。こっちが悪いんだからね。今回は何もしないの」

「分かったわ。次回に取っておくのね」

「違う。完全に無しだよ」

 

本当に"ハジメ"になると周りが見えなくなるからなー

ほら。もう3人が、肉食動物に捕獲される寸前の草食動物みたいになってるから。

 

「あ、ありがとうよ、ハジメ……」

「いえいえ」

 

「そ、そうだ!!待っている間になんか海賊船が妙な動きをしていたんだが!!!」

 

「…………妙な動き?」

 

ロビンが呼びにくる10分前のこと。

ジャヤ方面から逃げ出してきた海賊船が双眼鏡で見えるギリギリの遠くの海上で何やら集まっているように見えたという。

それも何隻というものではなく、ほぼジャヤにいた海賊が集まっているという。

 

そしてバースト達がこちらに合流する少し前、ジャヤに向けて進軍しているように見えたという。

 

「こっちは小舟だったから見つからなかったけどよ、ありゃなんかやらかす気だぜ」

 

………………なるほど。そういうことね。

懲りてないというか、海の上ならと考えてるんだろう。

そしてきっと向こうはバースト達に気づいてきた。それでも見逃したのはバースト達が僕達の仲間だという確信を持ちたい為と、奇襲を仕掛けるための算段をするためなんだろう。

 

ロビンの方を見ると軽くウインクで返してきた。つまりは知っていてそのまま放置か………

 

せっかく空島までの移動が楽になると思ったのに、これ、アイツラよりも面倒くさいんじゃないの??

 

「……………バースト」

「なんだ。役にたったろう!!」

 

「………可哀想に………」

「なんで同情されてんだよッッ!!!!!??」

 

もっと冷酷なイメージだったのにスッカリこちら側に染められてしまって………もう自分がどんなやつだった覚えてないだろうなー…………………一切後悔なんてものはないけど。

 

「さて。おバカなバーストの報告が遅れたせいでこれから"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"に向かう道中は沢山の海賊と戦うことになりましたので気合いいれてくださいね」

 

「なっ!!!!??」

 

本当に気づいていなかったバーストは仰天って表情をしている。そして一斉に向けられる冷たい視線に冷や汗をドバドバをかき始めている。

 

「い、いや、ちょっ、ちょっと、まって………」

「キャハハハハハ。言い訳、必要なの??」

「気づいていたのに、残念だと思う」

 

「お、お前らッ!!!」

 

まさかの同胞と思われた二人からの攻撃。

確かに気づいていたのはバースト一人だがそこまで突き放すとは思っていなかったようで、ハジメの提案に対してルフィ、ゾロ、サンジが案を出す。

 

「さて、罰は何がいいでしょうか」

「師匠との修行」

「月兎の一時加入」

「海賊船の殲滅」

 

「の、三択ですけど、どれにしますか??」

「どれもこれも沈めてくればいいんだろうチクショーッッッ!!!!!!!!」

 

そういって小舟に乗り爆発の勢いで沖に出ていったバースト。

本当に一人であの大群を倒すつもりらしい。

 

「もうー。冗談が分からない人ですね」

「いや追い込みすぎだろう」

「仕方ないですね」

 

そういって懐から出したのはでんでん虫。

そのでんでん虫から繋げた先は

 

「もしもしヘルメッポ。ジャヤの海域に海賊がウヨウヨいるから討伐を………」

『やってるんだよチクショーが!!!!』

 

「おお。仕事が早い。

僕達はこれから"空島"に行きます。一緒に来ますか??」

 

『…………………………この海賊共を連行しないといけねぇから無理だ』

 

「いま、葛藤しましたよね?」『してねえ』

 

まあ、行かないならそれでもいいけど。

 

「じゃ、そっちにバーストが単身で向かっているので保護をお願いします」

『お、お前!!海賊を保護なんてッッ!!!!!』

 

「じゃロビンを付けますよ」『さっさといけチクショーッ!!!!』

 

ガシャン!!!と勢いよく連絡を切られた。

しかし今日はよく"チクショー"って聞くな。流行ってるの??

 

………………………………………

 

サウスバーストの示す方角を目指して航海は始まったのだが

 

「クソッ!!!海賊船、多すぎだろうがッッ!!!!!!」

「どうやら思っていた以上にいたみたいですね」

 

ヘルメッポ達とバーストが海賊船を減らしてはいるがそれでも数が多すぎたようで、こちらにも5、6隻の海賊船が追いかけてきている。それも大嵐の中を移動しているのだ。一つの判断ミスで何が起きるか分からない。

 

ちなみに"メリー号、ウイングモデル"という明らかにニワトリみたいな羽と装飾を付けられているのが目立つ原因ではない。

 

「ってか、なんで俺達狙われてるんだよ!!!

いくらロビンがやらかしてもここまでやるか普通ッッ!!!!」

 

「いい度胸ねウソップ。沈めるわよ」

「で、で、でもよ!!!可笑しいだろうこの状況はッッ!!!!!!」

 

やられると分かっても噛みつくウソップにロビンの目はガチになってる。まあ、ウソップのいうことも分かるから抑えるように宥めてはいるけど

 

「ロビン。いまは少しでも戦力を残そうね。

基本的には僕達は手出ししないんだから」

 

「…………………デコピンは?」

 

「まぁ軽いかもだけどきっと頭が吹っ飛ぶからダメ」

「トマトみたいになるのは……見たくないわ私も」

 

「どんだけ力込める気だよッッ!!!?」

 

冗談はさておいて、本当にどうしてこうも狙われるのか。

…………あぁ、そういえばそろそろ出回って来ていたっけ。

新聞を取る暇なかったから情報がないんだよなー

 

ということでまたでんでん虫を取り出して

 

「もしもし。ヘルメッポ」

『ガチャ!!!!』

 

速攻切られた。やっぱり忙しいかー

なら、暇そうな奴は………いたな。

 

「もしもし。賞金額どうなりました??」

『開口一番に何を言ってるんだお前はッ!?』

 

「いや、新聞取る暇なかったので。それにこれから空島の旅なので」

 

『………ったく。海賊が海軍に、それも大将に賞金額を聞くなんざぁ前代未聞だろうよ』

 

「同じ大将ですよ。それでもテメェは一番下だグザンが」

『それが人にたずねる態度かあぁッッ!!!!!』

 

五月蝿い。さっさといえ。もうそろそろ到着しそうだし。

そんな思いが伝わったのかブツブツいいながらクザンは手配書を手に取り

 

『"海賊狩りの姫、くいな"7500万ベリー』

『"海賊狩りの鬼、ゾロ"7400万ベリー』

 

それを聞いたくいなは喜び、ゾロは悔しそうな表情で飛んでくる砲弾を切り捨てた。

 

「僅かだけど一歩リードね」

「うるせえ!すぐに追い抜いてやるよッ!!!

ってか、なんだ海賊狩りの鬼ってのはッ!!!!!??」

 

「私は気に入ったわよ。海賊狩りの姫って」

 

でんでん虫の向こう側からは続けて

 

『"麦わらのルフィ"1億6000万ベリー』

 

と聞こえたルフィは

 

「ヨッシャー!!!師匠を超えたあぁぁ!!!!」

 

初めての賞金ではロビンは1億5000ベリーだった。

しかし、よくロビンの賞金を覚えていたなルフィの奴。

だけど、そんなものはすぐに終わるよ。

 

『"悪魔のニコ・ロビン"3億5000万ベリー』

「「「「「「「なっ!!!!!!!!!??」」」」」」」

 

おいおい。エニエスロビーのルフィの賞金より上って……

まあこれでも安いと思うよ正直。きっと四皇でも倒せないんじゃないのこの子。

 

「やっぱり安いわ。クザン、まだ上げなさい」

『ふざけんな!!!!お前まだ自分の立場分かってねぇのか!!!!!』

 

「お兄ちゃんの妹」

 

『………本当に、お前ら兄妹は…………もうかけてくるなッッ!!!!』

 

おう、久々にキレたなクザンのやつ。

まぁ、向こうにはニコルがいるからお仕置きしてもらうとして

 

「お、おい!!嘘だろう!!!俺のは!?」

「ないですよ」

 

「もう一回確認してくれ!!」

「いや、ないですよ」

 

ゾロに賞金がついてまさか自分がないとは思っていなかったサンジは取り乱してハジメに確認を迫っていた。しかし分かる。サンジは確かにMr.2を倒したけど、そいつは捕まってないし、むしろアラバスタの重要な位置にいるからね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そしてそんなこと、してる暇はなくなったんだよ。

 

「お兄さん!!!前方に巨大な渦がッ!!!!!」

「クリケットさんが言っていたように、そこに向かって下さい」

 

「あ、あんな渦に飲まれた一巻の終わりだぞ!!!!」

「それでも信じていくだけですよ」

「信じましょうウソップさん」

「ち、チクショー!!!やってやるよ!!!!!」

 

"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"はいわば海底火山。マグマ溜まりの所に冷えた海水が入り込むことによりこうして大渦が発生する。そして満タンになりマグマの熱で温められた海水はヤカンの蓋のように上部へと吹き出る。つまりこれが空へ、天まで届く海流の正体。

 

だからこの大渦に入り込まないといけない。

ギリギリまで近づいて、ピタッと中央にいないと簡単に吹き飛ばされてしまう。ここからは運との勝負。メリー号が壊れることはないけどこの一回で成功させないと………

 

「これを成功させないと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「絶対に成功させろよナミ!!!!」

「頼むぞノジコッ!!!!」

「お願いしますベルメールさんッ!!!!!」

 

おい。どれだけ嫌がってるんだよ。

大丈夫。ちゃんと空島まで届けるのに。

………………行き過ぎる可能性はあるけど。

 

どんどん大渦の中心に引き寄せられるメリー号。追いかけていた海賊船はいつの間にかいなくなっている。逃げたのが、飲まれたのか………近くでは海王類がこの大渦に飲まれているのが見えるけど

 

「この渦に飲まれたら……助かるかなー」

「アホかルフィ。流石に無理だ」

「でもよ。エースとサボはこんな感じの渦なんとか抜けてきたぞ」

「マジか!!いや……あの兄共ならやるな……」

「ルフィさんはどうなんですか?」

「泳げたら多分大丈夫だ!!!」

「いや、根拠になってないですけど……」

「でも師匠はその渦自体消してたけど」

「………貴女、本当に人間なの??」

「失礼ね」

 

残っているメンバーはこんなふうに緊張感もなく駄弁っている。

 

「お前らちょっとは緊張感をだな!!!………って!!!!??」

 

ウソップのツッコミが炸裂、したと思った矢先、突然に大渦が消えた。つまりはマグマ溜まりに海水が満タンになったということ。ならあと少しで

 

「さあ、始まりますよ"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"がッ!!!!」

 

「みんな!!!何かに掴まってッッ!!!!!」

 

全員がメリー号から振り落とされないように柱などに掴まった。あと数秒か、数分か、まもなく始まる。という時に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフフフ。随分と久しぶりじゃないか"絶黒のハジメ"」

 

誰もがメリー号にしがみついて気づかなかった。いや、レイジュ、ロビン、そしてハジメは気づいていた。近づいてくる"強者"の気配を。

 

「とんでもない化け物がジャヤを襲ったと聞いたからな。全ての予定をキャンセルにして来てみれば…………面白いことをしてるな」

 

そしてこの男には影武者の効果をつけていない。

いくらモーガンが強くなっても、能力者ではないモーガンに絶対に勝てる要素はないのだ。そしてこの男は"ハジメ"を狙わせるように色々仕込んできていた。

 

まさか、それがここで来るなんて…………

 

「わざわざ、それを言いに来たんですか??

王下七武海の一人"ドンキホーテ·ドフラミンゴ"

 

僕が嫌いなタイプの一人。ドフラミンゴ。

ローを助ける時に色々やったし(記憶はないようだけど)初めての会合の時もブチギレていたもんなー

 

大きな船に乗って、ファミリーまで連れて、本当に、何しに来たんだこの男は………

 

はぁーとため息をついていると、離れて階段の縁にしがみついていたウソップが近づいてきて

 

「な、なぁ……さっき、とんでもない言葉が聞こえてきたんだが…………」

 

「王下七武海の一人ですよ」

 

「今すぐに"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"起きろッッッ!!!!!!!!!」

 

いやーたくましくなったのか、"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"より七武海が怖いなんて。すぐさま元の位置に戻るからむしろ後退したような気もするけど………

 

「おいおい。どこかにお出かけでもするのかハジメ」

「そうですね。ちょっと"空"に」

 

「そう急ぐなよ。テメェの為に余興を用意したんだ」

 

まぁ、見せなくても想像も、予測も、断定さえできる。

そしてもうまもなく始まる。見る必要さえない。

 

「ロビン。上空に投げ飛ばして」

「わかったわ」

 

「こいつ等………ッ!!!!なんだとッ!!!!??」

 

余興。こいつのいう余興なんてのはこの場合は人質だ。

そしてその人質を確実に捕まえるとするなら近くにいるヘルメッポ、コビー、バーストだろうと予測はつく。

 

この3人じゃドフラミンゴには勝てない。

でも命を繋げるための手段は知っている。

一瞬だけみえた3人はボロボロだが回復出来ない姿ではなかった。ならあの3人の勝ちだ。

 

その一瞬でロビンは3人を捕まえている敵を倒して一気に上空へと投げ飛ばした。

 

そんな出来事に目を奪われたドフラミンゴは気づかない。

すでにメリー号の下の海面が迫り上がって来ているのを

 

「じゃ。しばらく会いたくないですので」

「ま、待ッッ!!!!!」

 

待てと言われて待つ人はいません。

少なくともこの状況では止められません。

ドフラミンゴの船が近づこうとするがすでに迫り上がった海面の高い場所にいるメリー号に追いつくことはない。

 

そして次の瞬間、ドッカンッ!!!!と、まさに噴火のごとく一気に海水が、海流が天へと吹き上がった。

近くにいたドフラミンゴの船は木っ端微塵に散った。

 

「す、すげえええええぇぇぇッッ!!!!」

「感動はいいからあの3人捕まえないと」

 

目をキラキラさせているルフィを現実に引き戻して同じように空に向けて飛んでいく3人をルフィが伸びるその腕で捕まえた。

 

あまりの出来事にバーストとコビーは気絶しているがヘルメッポだけは意識があるようで

 

「気絶する前に答えて。海兵達はどうなったの??」

「に、逃したぜ……今頃はアンタらの部下が助けに来るように……しておいた……」

 

「よくあのドフラミンゴからそんなこと出来たね」

「ば、バーストの爆発による……え、煙幕が………」

 

「なるほどね。これなら許してやるか」

「…………とうに、容赦………ねえ………………………」

 

ダメージと疲労だろう。眠るように落ちたヘルメッポ。

まぁ、今は気絶したほうがいいだろうな。

そう、この状況でメリー号は勢いよくこの水柱に乗ってはいるが、垂直に上がる水流にいつまでもメリー号が乗り続けるのは厳しいだろう。

 

しかしハジメが助言するまえにナミ達が気づいたようでベルメールを軸にメインマストを開き、舵をノジコ、海流と風をナミが読みながら

 

「これなら…ッ!」

「絶対に……ッ!!」

「いける……ッ!!!」

 

徐々に離れていくメリー号。しかししっかりと風と海流の動きを見切ったナミは素早くノジコに舵を切らせる。その瞬間海流から離れてしまったメリー号は…………海面から吹き上げる暴風をうまく捉えて、空へと伸びる海流と共に空を飛び始めたのだ。

 

「と、飛んでるぞッッ!!!!!!」

「す、すげえええええぇぇぇメリーッッッッ!!!!!」

「や、やっぱりすげぇぞ……め、メリー………」

 

「バカかッ!!!一番スゴイのはナミ達は親子だろうがッッ!!!!」

 

ルフィとチョッパーははしゃぎ、ウソップは感動で泣いている。サンジにいたっては「スゴイよナミさーん!!」と感動して抱きつくという名目で飛びかかろうとして3人に見事に避けられている。

 

「あれぐらいじゃドフラミンゴは死なないだろうし、さて、どうしようかなー」

 

「もう潰してしまえばいいんじゃないの??」

 

「…………………………一応ルフィの対戦相手の予定だからな………………」

 

いや、もう倒してもいいかなーとは思うけどね。

でもいまブチ切れているだろうし、国に帰ってなにかやらかしそうかな。先手でも打っておこうかな。

 

「ルフィ。今後の話だけど……」

「いくぞ!!!空島ッッ!!!!!!!」

 

「…………まぁ、いいか」

 

やれることは僕が、僕達がやればいい。

いまは滅多体験できない空島を体験するのだ。

少しぐらいは楽しんでもバチは当たらないだろう。



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ペガサス

「もう少しで到達するぞッッ!!!!」

 

"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"も、もう少しで終わりを告げようとしていた。上空には積帝雲が目前となっておりこれを突っ切れば"空島"に到着する。

 

さて、この先はあの"神様"の範囲に、領域に入る。

でも到着する分は届かなったっけ??

そういえばなんか"梅干し顔"のおばあさんがいたな。確か不法侵入者を密告する的な………

 

まぁ、念の為に僕の存在を消した状態で………

 

「お兄ちゃん。()()()()()()()()

「よく分からないけど、ロビンがやるなら私もお願い」

 

本当に野生の勘なのか、妹の勘なのか……

それでも存在を消すってことを、なんのヒントも無しで分かるものなの??なんなの君は??

 

そしてロビンの様子を観察して察したベルメールさんもベルメールさんだよなー

 

「ちょっと嫌な気配があるからね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「流石お兄ちゃん」

「えっ。………でもハジメならやるわよね…………」

 

ロビンはともかくベルメールさんが納得してるなー

無理に僕のことを理解しなくてもいいだけどな。

 

「まぁ、ちょっと様子見だから問題なかった解くから」

「でも、嫌よ。私も一緒」

「そうね。傍にいないと何をするか分からないし」

 

…………これ、信用されている……のかな??

少なくともベルメールさんは違うな。

これ以上言ってもきっと意見を変えることはないだろうと思いロビンとベルメールさんも一緒に"存在"を消した。

手を繋ぐとかで僕の身体のどこかを触っていればイイのだけど二人とも腕をつなぐ必要あったのかな??

 

「抜けるぞおおおぉッッ!!!!」

 

そんなことをしていると積帝雲に突入していたメリー号は真っ暗の雲の中を突き進んでおり、そして目の前から光が差し込みはじめ、入口という雲の上へに出る道筋が見えてきた。

 

そして雲を抜けて飛び出した世界は………

 

「ついたぞ!!空島だあああぁぁッッ!!!!!」

 

どこまでいっても白。雲が無数に連なるこの世界は地上から見る空とはまた違う。

飛び出したメリー号はどういう原理なのか()()()()()()()()()()()()()()。その雲自体が"海"のような性質を持っているのだろう。

現に雲に入ってから身体はビショビショに濡れている。

抜けてきたのは空島では"海"に当たるのだろう。

 

「な、なんだこりゃー!!!!」

「……ほ、本当に、空まで来たんだ……」

「お、おい!船が雲の上に浮いてるぞ!!!!」

「どんな原理なんだ………」

 

驚いているがみんな興奮気味である。

空島があると信じていたが目の前にして現実になって興奮しないほうがおかしいのだろう。

 

「何言ってるんだお前ら。雲だから浮くだろう??」

「「「浮かねぇよ!!」」」

「でも浮いてるじゃねえか!!」

 

そう、ルフィを否定するほうが普通は正しい。

しかしこれを目の当たりにするとこれ以上ルフィを否定できない。だってもう経験したのだから。

 

「なんでもいいじゃねえか!!よっしゃ!!この雲が海みたいなら泳げるよな!!!」

「「いけぇーウソップッッ!!!!」」

 

あのバカ。それだときっとこの雲の底までいって落ちるぞ。

ここは海じゃない。雲の上なんだ。そして僕達は

 

「ダメよウソップさん!!!!」

「な、なんだよカヤ……少しぐらい……」

 

「もしこの雲の底、ううん、雲なんだから底なんてないの。

調子に乗って潜り過ぎたら……空から地上まで落下することになるの」

 

「なっ!!!!??」

 

おおお。さすがカヤ。ちゃんとウソップの手綱を握ってるな。

それに気づいたウソップの顔色が青くなり、自分がやろうとしていた恐ろしさに気づいたようだ。

 

「こ、怖い……空島、怖い………」

「な、な、なら俺たちも沈むのか!!!?」

 

「それはないと思います。いまメリー号は"浮力"で浮いているので………でも本当にどんな原理なんだろう………」

 

それを聞いたチョッパーは良かった〜と安堵している。

そんな間も周りを警戒、何があるのかと双眼鏡で確認していたノジコが

 

「ねぇナミ。あっちの方角を見て」

「………船だわ。私達以外にも来てるのね」

 

この空島は初めてで、何も知らない。

もしかして見えている船はこちらを敵とみなしてくるかもしれないがそれでもそんなリスキーを負っても今は情報が欲しいとメリー号をあの船へと向かわせようとした、瞬間。

 

ドカンッッ!!!!

 

勢いよくその船が爆発して飛ばされた破片などがゆっくりと雲の中に沈んでいくのが見えた。

 

「な、なんだいきなりッ!!!!」

「ふ、船が爆発ッ!?」

「船って爆発するのか!!!」

「んなわけねぇだろう!!!!…………()()()()

 

爆発した船の方から何かが近づいてきていた。

たった一人。足に変わった靴履いており、その靴から何かが噴射してこの海と呼べる雲を滑走しているのだ。

 

「な、なんだアイツ!!!」

「この雲を走ってやがるッ!!!!」

 

驚く面々だが明らかに向こうはこちらを敵視していた。

持っているバズーカのようなものを向けて弾頭を放ってきたのだ。

 

すぐさまゾロが弾頭を切り捨てメリー号に被害はなかったが、その一瞬で近づいてきた敵はメリー号の甲板へ向かい大きくジャンプをしていた。

 

「返り討ちだ」

 

冷静なサンジは向かってくる敵に蹴りを

 

「ヴッ!!!」

 

食らってしまったのだ。あのサンジが蹴りを。

それでもとっさにその蹴りを片脚で軌道を逸したのでクリーンヒットではなかった。

それを見たゾロもすぐさま斬りかかろうとするが相手のほうが速くゾロの腹部に蹴りを入れようとした。しかし辛うじて刀で防ぐことは出来たが防御体制に入っていなかったために吹き飛ばされる。

 

その二人の動きに違和感を感じたルフィは本能的にマズイと思い、向かってくる敵に対してとっさにギア2を発動させた。

さっきと同じようにルフィを倒せると思った敵だったが、その蹴りは躱されて変わりにルフィの拳をマトモに喰らい飛ばされ入道雲の中へと消えていった。

 

「なんだアイツ。いきなり襲ってきやがって……」

「ゾロ、サンジ!!大丈夫かぁ!!?」

 

「問題ねぇ」

「ちょっと調子が悪かっただけだ」

 

怪我はしていないようだが確かに調子が悪いようだ。

現にルフィがギア2を解いた瞬間に膝から崩れてしまい息が荒くなったのだ。

 

「お、おい!!ルフィ!!!」

「な、なんだコレ……身体が、重い…ぞ……」

 

普通ならあれぐらいの運動で身体がキツくなることなんてなかった。しかしルフィ、ゾロ、サンジが、いや、ここにいる皆が違和感を感じていた。

 

「チョ、チョッパー君……これって………」

「うん。酸素が薄いんだ。だからみんな思うように身体が動かないんだ……」

 

ここにいる誰もがそう感じているだろう。

いくら強くともこんな酸素の薄い場所にいたことはない。

まぁ、僕は問題ないですけど。動けなくても止めればいいから。

 

となりにいるロビンは、うん、問題なさそう。

しかしベルメールさんはそうはいかない。ルフィ達と同じようにこの酸素の薄い場所では思うように身体が動かないようだ。

 

「ゆっくりでいいので呼吸をしてください。

そうすれば徐々に身体が慣れてきますので」

「え、えぇ……」

 

「老体なんだから無理したらダメよベルメール」

「…………絶対に……後で、殴る………」

「できない事を言わないの」

 

こればかりは様子を見るしかない。

それでも化け物のようなルフィ、ゾロ、サンジ、そしてくいなも、もうこの環境に慣れてきたようだ。

 

「なにかあったと思ったら、撃退したのか……」

 

突然聞こえてきた声に振り向くと、そこには鎧を纏った老人と鳥がいつの間にかメリー号に乗り込んでいた。

 

「なんだお前はッ!!!!」

「私は"空の騎士"!!ピンチと思い馳せ参じたが、無用だったようだ」

 

「空に人がいるぞッッ!!!!」

「さっきの敵も人だったろうが」

 

ウソップの華麗なツッコミをされるチョッパー。

空の騎士というこの人から話を聞くとここには"ゲリラ"と呼ばれるものがいるようで、その者が襲いかかったという。

 

「でも襲いかかる理由なんてないぜコッチはよ!!」

「色々あるのだ。ここでは思ったように身体も動かないだろう」

 

そういうと空の騎士はホイッスルを一つ渡してきた。

 

「1ホイッスル、吹けば私が助けに飛んでくる。一回分はサービスである」

 

「いや、身体も慣れてきたからいらね」

「だな」

「コツを掴めば、な」

「もう遅れは取りません」

 

「イヤイヤイヤ」

 

この4人は本当に慣れたのだろうな。

いや、正確にはシレッとレイジュも身体を慣らしているように見える。すでにバカンスを楽しもうとティータイムをしている……

 

「そこの人達はいらないわよ。どうせならカヤが持ってなさい」

 

「お、俺はッ!!!!??」

「男でしょう。自力でどうにかしなさい」

 

「アハハ……じゃ遠慮なく」

 

決して弱いというわけではないが、カヤはつい最近までカラダが弱かったのだ。こんな酸素の薄い場所では何が起きるか分からないのだから持つのはカヤがいいと珍しくレイジュが進言した。

 

でもチョッパーも不安だったようでホイッスルを貰うつもりだったのだが、これもレイジュに一蹴されてしまった。

 

「それでは失礼する」

「そういえばオッサン、どうやってここに来たんだ?」

 

「私は空の騎士、ガン·フォールッ!!!!。

我が相棒"ピエール"は鳥にして"ウマウマの実"を食べたことにより、そう!!つまりそれはッッ!!!!!」

 

相棒であるピエールが姿を変えていき、それはまさに

 

「ペガサスッ!!!!!!」

(((((いや、微妙………)))))



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班分け

「ということで、これから作戦会議を行います」

「いままで何処にいたんだよ…」

「……ふふふ………あなたの、後ろに………」

「おい。怖い感じに言ってもダメだ!!」

 

空の騎士が飛び去りひとまず周りには誰もいなくなったということで存在を消していたのを解除した。するとすぐ近くにいたというのに誰も気づかなかった皆さんがいっせに驚いたのだった。突然現れたようなものだからね。仕方ない。

 

でも、それでは許されないようでこうして尋問を受けている。

 

「まぁ、ちゃんと理由はありますよ。言わないですけど」

「いや、そこは言えよ」

「いうとですね、とんでもないことに巻き込まれますけど……」

「よーし!作戦会議だぁ!!!!!」

 

そういうところ好きですよ。扱いやすくて。

でもまぁ、エネルが僕達をすでに捉えていたらまだ解除してませんでしたけど、ここまでは届かないようです。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「では、空島で行動する上でグループを作ります」

「全員一緒じゃダメなのか?」

「ルフィ。小難しいことを聞きたい?? 」

「ハジメに任せる!!」

 

はい。本当に扱いやすくて助かります。

 

「小難しいといってもこの空島についての調査。まずこれを冒険というなの調査する班と、地元の人や地形などで探る情報班。そして……………暗躍する班です」

 

「確かにこれまで体験したことのない場所だからな………って、おい。最後、何って言った??」

 

はい、そこ。引っかからないの。

いくらウソップでも全てのことに対して答えないよ。

 

「僕はさっき見せたように存在を消して暗躍します」

「やっぱり暗躍って言ったんかいッ!!!!」

 

うっさい。

 

「ハッキリ言っておけど今回の"敵"は相性が悪い。

かといって僕が手出しするのも嫌がるだろう。だから僕は裏で相手の嫌がることをやろうかとね」

 

その言葉に誰もが黙った。

ハッキリと言ったのだ。この空島にルフィ達に対して"敵"がいると。そしてこれまでの戦闘より苦労しないといけないということが…………

 

「……ちなみに、どう相性が悪いのかは……」

「いわないね。そこは頑張って」

 

「だよなー」

「それでもここでそいつに"一撃"でも入れられるようなら………教えてあげるよ。()()()使()()()()

 

『ッッ!!!!!!??』

 

これまで有耶無耶にされてきた覇気を教えてくれる。

その瞬間、ゾロやサンジ、くいなにウソップ、ここにいるほとんどの人が目を見開いた。

 

「……言ったな。守ってもらうぞ」

「いいよ。"一撃"入れたらね」

「………………」

 

ハジメの言い方にゾロは眉をひそめた。

その言葉にどんな意図があるのか、いや、これまで経験した中ですでに糸口は見えている。あとは自分の実力次第………

 

「おいハジメ。俺はもう使えるぞ!!!」

「使える?()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()。ルフィには別に修行をしてもらうよ」

 

その瞬間に何かを悟ったのかダッシュで逃げようとしていたルフィをロビンが即座に複数の手を生やして止めた。

 

「はい。逃げないの。

軽めの効果のある海楼石のブレスレットを手足につけて、ギア2の使用禁止。覇気も"見聞色"のみね。で、一撃喰らう度にミニロビンが攻撃します」

 

するとルフィを捕らえていた手から分離するかのように小さなロビンが複数体生まれてきた。それがルフィのカラダにワラワラと飛びついて服の中や髪の毛、とにかく目には見えないところに隠れてしまった。

 

「い、い、嫌だッ!!!!死んじまうよッッ!!!!!!」

「一撃喰らわなければいいだけだよ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()!()

 

「だから修行なんだよ」

 

なんの罰もなく修行なんてものは小さい頃に終わりました。

ルフィは涙目になりながらゾロやサンジに助けてと視線を送るが流石にそれは嫌なのだろう。すぐさま視線を外して

 

「俺は調査する方にいく」

「私も行くわよ」

「俺はナミさん達の護衛ですッ!!!」

「じゃ私達は情報にするわ。あのウェーバーのことも分かるかもしれないし」

「私はハジメについていくわ」

「来なくていいわ」

 

「ウソップさんはどうする?」

「冒険かなールフィ一人じゃアブねぇしな。トラブルメーカーだし」

「なら私も付いていく」

 

「ならカヤがそっちなら俺はナミ達に付いたほうがいいな」

「私は、サンジについていくわ」

「いや、来なくていい」

「つれないわね。ついていくけど」

 

ルフィを置いてどんどん話が進んでいく。

ガックリとするルフィは置いておいて

 

「じゃ、ギンは暗躍ね」

「了解ですマイ·ゴッドッ!!!!」

「バーストとキロロは調査。カラーは情報」

「「……………はい……」」

「ほっ」

「カルーは、暗躍で」

「クエッ!!!?」

「なんで!!?と驚いてるぞ」

「ビビも暗躍みたいなことを取得してるからね。うん頑張ろうねカルー」

 

久しぶりにハジメからの命令に気合の入るギン。

というか、かなり久しぶりに見るような気がする…

バーストとキロロは逆らっても無駄だと分かっているので落ち込んだ様子で返事をして、キロロは安全だと安堵する。

そしてカルーは泣いているけど無視をしよう。

チョッパーが励ましているけどビビのお役に立ちたいならカルーも頑張らないと。

 

「あっ。ヘルメッポとコビーは調査」

「なんでだよッッ!!!!!!??」

 

さっきまで気絶していたのに急に起き上がりツッコミをするヘルメッポ。流石だねー

 

「はい。おはよう。調査だよ」

「朝ごはんですよ。みたいな軽いノリでいうなあああああああぁぁッッ!!!!!!!」

 

それだけ元気があれば大丈夫だね。

 

「ドフラミンゴ相手に遅れた時点で修行だよ。

ということで、ルフィと同じように…ロビン、お願い」

「もうやったわ」

 

「ざけんなチクショーッッ!!!!!」

 

五月蝿いのでさっそく忍ばせたミニロビンがヘルメッポをボコり始めた。まったく見えないところから攻撃しているので周りからは突然ヘルメッポの身体が見えない打撃を受けているようにしかみえない。

 

「文句があるなら強くなる。オッケイ??」

「……ひゃ……ひゃ、い………」

 

「寝たフリしているコビーだよ」

「ッッ!!!??は、はいッッ!!!!!」

 

…………………………

 

で、暗躍するハジメ、ロビン、ベルメール、ギン以外が船を操縦してこの雲の更に上にある階層に向かうために"門"がある場所へと向かう。

といっても門があることなんてハジメ以外は知らないので、ここからでも見える"雲の滝"を目指すように言ってある。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ハジメ達はここから姿を、存在を消して共に行動はするが基本的に手出しはしない。建物などにある閉鎖空間が出来るところならハジメが一時停止を使って会話できる場を作るということになった。それでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なぁ、なんで俺こんなもん付けてんだ??」

「知るか。いやなら外せばいいだろう」

 

「外したら殺されるッッッ!!!!!!!」

 

「うわぉッ!!!!いきなり叫ぶなッッ!!!!!!!!」

 

海楼石のブレスレットを付けている理由さえも覚えてないのだ。そこにはハジメが関わっているため存在を消している今は記憶が思い出せなくなっている。それでもそんなことをしたらヤラれるという恐怖だけは魂に刻まれているので拒否反応は起きるようだ。

 

【こんなに大勢存在を消した事なかったけど、こんなふうになるんだ……】

【これ、ちゃんと思い出しますよね??】

【貴女の記憶、いるの?】

【なんでそんなに嫌味ばっかり言ってくるのよッ!!!】

【嫌いだから】

【アンタねッッ!!!!】

【と、これだけ騒いでも気づかないから喋ってもいいよギン】

【は、はい………】

 

すぐそばにいるのに誰も気づかない。

例えぶつかりそうになっても()()()()()()()()()()()()()()()()()という動作が入るために物理的にも見つかることはない。

 

【例えば、こっちから接触した場合はどうなるんでしょうか?】

【何もないところから、何かが触ってきた。という感覚。いわば幽霊になった感じになるからね】

【……気をつけます……】

【まぁ、ルフィぐらいになるとたまに近づくだけで振り向かれる時はあるね。まだ修行が足りないからダメだけど】

【極めると、見えるものなんですか?】

【見えないわ。でも私はお兄ちゃんの存在なら完璧に察知できるわ】

【10キロ離れても見つけられたね】

【アハハ……そんな、冗談……ですよね………??】

 

アハハ。マジだよ。

この子は生粋のストーカー体質なんで。

そんな昔の頃を思い出してちょっとだけウルってきたな…

 

そんなことをしていると"雲の滝"の滝壺についたのだが、そのには"天国の門"と書かれた門があった。

 

「なぁ、生きてるよな俺…………」

「なんでいきなりマイナスなこと言ってるんだルフィ……」

 

死ぬような修行していたからね。本当にルフィの魂にはツラい記憶が刻まれているんだね………

 

すると門の影からお婆さんが現れてカメラを片手にカシャカシャと写真を取りながら

 

「観光かい?それとも戦争かい?

どっちでも構わないが入国料1人10億エクストル置いていきな」

 

「10億エクストルって………いくらだ?」

「払えなかったらどうなるの?」

「お金がなくても通っていいし、通らなくてもいい」

 

その言葉に困惑する一同。

どのみちエネルに狙われるから払わなくてもいいけどね。

 

「なら通る!!」

「そうかい。"白海"名物「特急エビ」を呼ぶよ」

 

するとメリー号の船底の下から大きなエビが現れてメリー号がガッシリとホールドされた。そして目の前にある雲の滝をグングンと登っていく。

 

「うおおおおおぉーッ!!!!!行くぞッッ!!!!!!」

 

そんなメリー号を見ながら門番としていたお婆さんがニヤリと笑いながら

 

「天国の門、監視官アマゾンより、全能なる"神"及び神官各位、神の国"スカイピア"への()()()()()1()5()()、"天の裁き"にかけられたし」

 

と、そんなことを報告しているアマゾンの言葉を近くで耳だけ生やしたロビンが聞いていた。

 

【私達は数えられてないわね】

【…………よく考えたらよくメリー号にこんな大人数乗ってるねー】

【本当に、今更よね……】



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ダイヤル

「すげぇー!!!どんどん登っていくぞッ!!!」

「ってか、これどれだけ登ってるんだ……」

「おおよそですけど、1万mは……」

「い、1万ッ!!?」

 

カヤのおおよそはあっている。

さっきの階層が確か7000m、そして次に向かうのが1万m。

その1万m目前にある門には「GODLAND SKYPIEA」と書かれた看板があり、そこを通り過ぎ飛び出すと

 

「うひょおおおおー!!!!空島だああああぁぁぁ!!!!!」

 

そこには確かに島があった。

こんな地上から遥か彼方、とても人が住んでいるなんて想像できない場所に確かに人が住んでいると思われる建物や風景がそこにはあった。

 

「な、なんだここはッ!!!??」

「本当に空島、あったんだ……」

「もうー我慢できねッ!!!!上陸だあぁぁ!!!!」

「待てよルフィッ!!!俺も行くぜッ!!!」

「お、俺もッ!!!!!」

 

まだ船を何処に止めるのかさえ決めていないのに肝心な船長が先頭になって空島に上陸をした。それに続いてウソップやチョッパー、他の面々も興奮を抑えることが出来ずに上陸を果たす。

 

「ったく、子供か……」

「いいじゃない。こんな所に来たら誰だってそうなるわよ」

「そうね。サンジも昔みたいになってるわ」

 

冷静だったのはゾロとくいなとレイジュ。

錨を降ろそうにもこの空島では海の底は無いために錨を降ろせない。そのためにこの空島ならではのフワフワとした地面に錨を突き刺して固定することにした。

 

「なんだこの貝ッ!!見たことねぇ!!!!」

「おおおッ!!!!」

「おいルフィ!!!いい魚を捕まえたぞッ!!!!」

「おおおッ!!!!!食いてぇ!!!!!」

「こんな植物見たことない……」

「本当だ……薬草になりそうなのあるかな……」

「………夢じゃねえんだな………」

「キャハハ………みたいね………」

「天国みたい………」

「ねぇ、ナミ。あそこに人が」

「ラッキーだわ。ここの事を詳しく教えてもらいましょう」

 

それぞれが空島に感動していると近くの岩場でハーブを奏でている女の子を見つけた一行。そこに近づいていると向こうもこちらに気づいたようで

 

「………………。へそ!!」

「あっ!!?」

 

いきなり訳のわからないことを言い出す女の子に誰もが困惑していると

 

「私は()()()。なんでもきい……」

「「「「「「「「遠慮しますッッッ!!!!!!!」」」」」」」」

 

「……………えっ???」

 

とても、とても親切なコニス。

初対面だというのになんでも聞いてくださいと言ってくれようとした。

 

しかし………名前が悪かった…………

 

ルフィ達は完全に忘れている。いるが、魂に刻まれた恐怖はそんなものでは消せない。

ニコルとコニス。いや似てるかもしれないけどそれでも反応する所は本気でニコルの事を恐怖の対象だと認識しているのだろう。

で、それはもちろん近くで本人は聞いていたので

 

【…………お兄ちゃん。出ていってもいいかしら?】

【止めてあげて。過半数が気絶するから】

【こ、怖いわよ……ロビン……】

 

それはもう、オーラで人を殺せそうなぐらいに……

 

【それにもう()()()の名前はあげたでしょう】

【それでも不愉快だわ。あの反応は間違いなく私よ】

【それだけのことしたでしょうが】

【お兄ちゃん。愛の鞭よ】

【うん。言いたいことは分かるけどきっとそれは誰にも響かないね】

 

ハジメもハジメで鬼のようなことをしていたからロビンに強くは言えない。でもここはロビンに抑えてもらわないと存在を消した意味がなくなる。

 

【………まぁ、いいわ。その分お兄ちゃんに払ってもらうから】

【はい??】

【なに言ってるのロビン。()()()()()()

【本当に、今回は邪魔よベルメール。()()()

【嫌よ。しがみついても離れないわ】

 

【はい。そこまでにしてね。ギンもカルーも二人の迫力で気絶してるから………】

 

二人の強調した単語に含まれた殺気で耐えられずに気絶してしまったギンとカルー。こっちはこっちで大変だが……

 

「あ、あの……どうされましたか??私、変なことを言いました??」

 

「い、いや……」

「わ、分からねぇ、けど……」

「……甘い蜜を、吸ったら……」

「………地獄に落ちるような………」

 

「…………は…はぁ…………」

 

流石のコニスも困惑してしまった。

本編では空島に着いて最初の人として、親切な人という()()をもらっているのだ。掴みが悪ければ信用されない。だからある程度のことは親切だなと思われるように色々と話さないといけなかったのだが……

 

するとそこにこの空島の海を奇妙な乗り物でコチラに近づく者が

 

「はい、すみません。止まりますよ」

 

この海岸に止めようとしたのだろう。ブレーキのようなものを触っていたが止まる気配はなく、どういうわけかそのまま海岸に上陸し、それでも止まらないその乗り物は小さな岩場に当たるで進み続けた。

 

「な、なんだありゃッ!!?」

「あれって……」

 

「父上ッ!?」

「お前の父ちゃんなのか??」

 

岩場に激突して止まったが衝撃で飛ばされたコニスの父親はふらふらになりながらも上体を起こして

 

「お怪我は、ありませんか……??」

「お前のほうだよ」

 

「え、えぇ…私はパガヤ……コニスの父です……」

「いや、自己紹介してる場合か??」

 

その後チョッパーとカヤがパガヤを診察したが、大したことはないということだった。

 

…………………………………………………

 

治療をしてくれたお礼だとパガヤは自分の家にルフィ達を招いた。普通は警戒するのだがパガヤが取ってきたスカイロブスターをごちそうするということで簡単について行ったのだった。主にルフィとサンジが。

 

どのみち色々と情報が欲しかったので冷静なゾロ達が警戒をしながらパガヤが作った料理を食べながら空島について色々と話を聞いた。

 

と、いってもこの空島が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()??について理解したものはほとんどいなかった。理解できたのはナミ、ノジコ、レイジュ、ロビン。ハジメはすでに頭にあるので問題はない。

 

まぁ、それを知ったところで。という感じで他の面々は次に話題となった()()()()に食い付いた。

 

「そんなに色んなダイヤルがあるのか??」

「えぇ。例えばこの風貝(ブレスダイヤル)。風を30分間当て続けると、その分だけ風が吹き出てくるのです」

 

「なんだそれッ!!!?よーしッ!!!!」

 

ルフィはパガヤからブレスダイヤルを受け取りグルグルと腕を回して風を当てる。そしてダイヤルの真ん中を押してくださいと言われて押してみると、さっきルフィが回して風を集めた分だけ風が吹き出してきた。

 

「お、おもしれぇ!!!!!」

「他にも、音を録音·再生出来る音貝(トーンダイヤル)、光を蓄積する灯貝(ランプダイアル)、炎を蓄積する炎貝(フレイムダイアル)、匂いを蓄積する匂貝(フレイバーダイアル)、映像を記録できる映像貝(ビジョンダイアル)などいろいろな貝があります」

 

「「「す、すげえええええぇぇぇッッ!!!!」」」

 

このダイヤルは空島にある特産品である貝の死骸を利用しているために半永久的に使うことが出来ると話してくれたパガヤ。それを聞いたハジメは何かを閃いたような表情をし

 

【ギン。君に特別任務を与えるよ】

【了解ですマイ·ゴッド。あらゆる貝を採取してきますッ!!!!】

 

【カルーも一緒にお願いね。なにかあったらこのビブルカードを追ってくれば僕の所に来れるから】

【く、クエェッ!!!!】

 

【いくぞカルーッ!!!俺達の初任務だぁッ!!!!】

【クエェェェッッ!!!!!!】

 

張り切ってパガヤの家から飛び出していった二人。

ギンがこの海や海岸から貝を採取して、カルーがその荷物と何かあった時の足となる。それならある程度は安心出来るだろう。それにギンもソコソコ強くなってるし

 

【これで邪魔者がいなくなったわ。あとは貴女だけよ】

【誰のこと??もしかして自分自身を言ってるの?】

【言うようになったわね。消すわよ】

【現在進行系で消えているわよ。分からないのかしら??】

 

【もう、本当にやめて…………】

 

本気で、いや、マジで本当に。ギンとカルーを送り出したことを後悔してしまったハジメだった。

 

………………………………………

 

「うーーん!!!サイコーッ!!!!!」

「ナミッ!!!そろそろ交代よッ!!!」

 

「………なんと…あの"ウェイバー"をいとも簡単に……」

 

パガヤが乗っていたウェイバーは海中に沈んだ船から見つけたものと似ていた。だからそのウェイバーを見せるとやはりこの空島からの物だと判明した。

そしてナミとノジコはそのウェイバーに試しに乗せてもらうことになったのだが、普通は何年もかかる複雑な乗り物にも関わらずに簡単に乗りこなしたのだ。

 

「そうでもないわ。波と風、ウェイバーの癖を読まないととてもじゃないけど乗れない品物ね。私もやっとよ」

 

「それでもスゴイですよ……青海人は皆そんなのですか?」

「いや、それはないと………」

 

「ナミッ!!!俺にも乗らせろッ!!!!」

「ちょっとルフィ!!!やめなさいッ!!!!」

「行くぞッ!!!……って、うわっ!!!!!!!」

 

「だから言ったのに………」

 

快適そうに乗っているナミを見てルフィはずっと乗りたかったようで、ノジコも交代するために海岸に戻ってきた所でウェイバーを奪い、颯爽と空の海を満喫しようとしたがすぐに転倒してしまった。

 

「あんな風ですので……」

「な、なるほど……」

 

納得するパガヤ。しかしいつまで立ってもルフィが姿を現さない。

 

「………上がってこねぇな……」

「………もしかして、空の海でも……同じ……」

「ッッッ!!!???ルフィッ!!!!!」

 

すぐさまウソップとサンジが空の海に飛び込みルフィを助けに向かった。案の定、引き上げられたルフィは力が抜けてどんどん空の海を落ちていっていたようだった。

 

「ったく……能力者は、こんな海でもダメなのかよ……」

「ルフィ!お前はもうウェイバーに乗るなッッ!!!!!」

「お、落ちるかと、思った…………」

 

パガヤの説明を聞いていれば、いや、理解していれば分かっていたはずなのだ。この雲は下にある海の成分と同じだということを言っていた。もちろんそれはナミも分かっていたから止めたのにルフィは全くいうことを聞かなかったのだ。

 

「だからやめなさいって言ったでしょう」

「だ、だってよ……お前らだけズリィじゃねえかよッ!!!」

「素質の問題よ」

「………………ケチッ!!!!」

「どんな悪口よそれ……」

 

文句の言いようがないと分かったからだろう、ルフィなりの精一杯の悪口をナミにぶつけたようだ。

 

「でもこのウェイバーがあれば何処にでも行けるわね」

「えぇ。ですが決して上陸してはならない場所があります。

このスカイピアには、何があっても絶対に足を踏み入れてはならない場所があるんです。

 

……聖域なのです。神の住む土地"アッパーヤード"は……」

 

 



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またあとでね。

「な、なんだありゃ……」

 

その光景に誰もが言葉を無くした。

そんな出来事が起きる1分前から話が始まる。

コニスが"アッパーヤード"の話をしたところから始まる。

 

「"決して上陸してはならない場所"で、"何があっても絶対に足を踏み入れてはならない場所"かぁ………」

 

そうやって復唱するルフィにウソップは、いや、ここにいる誰もが同じ気持ちになっていた。

 

「おい、ルフィ。絶対に行くなよ。入ったらダメなんだからなッッ!!!!」

「んなこと分かってるよ!!!!………"絶対"か………」

 

(((((行く気満々だコイツ………)))))

 

ルフィにそんなことを言えばどんなことしても行くなんて分かりきっている。入ってはダメなのに……

 

そんなワクワクしているルフィ達の元にゆっくりと何かが近づいていた。正確にはほふく前進でコチラに向かっていた。どう見えてもバレバレでほふく前進の意味が無いのに……

 

「な、なんだありゃ……」

 

と、ルフィが呟くところからまた話が始まる。

先頭でほふく前進するものがコチラを睨みつけるかのように

 

「へそッ!!!」

「へそ」

「はい、へそ」

「マジで何言ってるんだお前らッ!!?」

 

ここの特有の挨拶なのだろうか。

隊長のような男が"へそ"というとコニスやパガヤが当たり前のように"へそ"と返したのだ。

見たことのない世界はとても奇妙なことがあると知ったところで隊長が立ち上がり

 

「あなた達ですね!!?"青海"からやって来られた不法入国者15名は!!」

 

「ふ、不法入国ッ!!?」

「そ、そんなッ!!!?」

 

「何言ってるんだ??」

 

ルフィ達には覚えはないだろう。

しかしこの国ではそういう法律なのだろう。まぁ、ただの独裁政権みたいなものだろうけど……

 

「落ち着いてください。

不法入国は、『天の裁き』で第11級犯罪でしかありません。15人で1500億エクストル支払えば帳消しになります」

 

「ま、待ってくれッ!!!なんだそのエクストルってやつはッ!!!??」

 

「通貨単位を知らない……まさか、"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"でここに登ってきたというのですかッッ!!!!??」

 

「あ、あの海流をですかッ!!!!??」

「うそッ!!!??」

 

こっちが"1500億エクストル"という訳のわからない単位で驚いているのに、向こうは向こうでここまでに来た経緯について驚いていた。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ……ッ!!

おい、その感じだと、まさか…………他にも、ここに来る方法があったのかッ!!?」

 

ウソップが恐る恐る聞いてみるとパガヤ親子がゆっくりと口を開いた。

 

「…………ここにはハイウエストと"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"の2つがあるのです」

 

「ハイウエストなら島を2つ3つ通過してくる方法なのですがそのルートでは100人で空を目指しても、何人かが生き残って到達できるかの賭けで、"突き上げる海流(ノックアップストリーム)"のルートは、全員死ぬか、全員到達するかの2択の賭けなんですよ……」

 

「あんなイチかバチかの化け物のような海流を………信じられない……ッ!!!」

 

驚愕。というハッキリとした表情でこちらを見てくる。

空島にいる人達でもあり得ないというほどにあの海流は恐ろしいものだったんだなー。まぁ、メリー号は完璧な防御があるから壊れないし、例え途中で落ちたとしても()()()()()()()()()()()()()()()()心配さえなかったけどね。

 

それでもその事実を知ったルフィ達は

 

『他にも方法があったんじゃねえかああああああああああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!』

 

きっと。きっと僕に向かって言ってるんだろうなー。

現在は記憶がないから"誰に対して"なのかは分かってないだろうけど……

 

「あんな脅迫を受けてまでここに来たのに!!!!」

「まだ他に行き方があったんじゃねえかよッ!!!!!」

「私達に選択肢はなかったのッッ!!!!!」

 

まぁ、普段は言えない愚痴をこぼしてるなー。

気持ちは分かるよ。ロビンが聞いていたら確実にやられていたね。隣で聞いてるけど。

 

【……………………ヤルわ………】

【ダメだよ。ややこしくなるからダメ】

 

【いまルフィ達が言っているのは、要は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり普段から私達に不満があったということ。…………………ヤルわ】

 

【だからダメ。

ロビンだって思われているのを分かってやってるでしょう?】

 

【それとこれは……そう、実際に言われるのは違うわ】

【気持ちがいいぐらいにハッキリ言ったね】

 

とにかく話を変えないとロビンがずっと不機嫌なままに。

まぁ、あの隊長さん。もう痺れを切らしてツッコミを入れるからいいんだけど。

 

「さっきから何をッ!!

 

「うるせぇッ!!!!」

「こっちの問題にッ!!!!」

「口出しをッ!!!!!」

「してるんじゃ!!!!!!」

「ねえぇッッ!!!!!!」

 

バガギャッッッ!!!!!!!」

 

……………あぁ。

面白いぐらいに定番なことをしたなー

あの集団にツッコミを入れるから、ルフィ、くいな、ゾロ、サンジのグゥ、パーの混ざった制裁を受けるんですよ。

 

変な声を上げながら吹き飛んでいく隊長の身体はキリモリしながら周りの木々を倒しながら林の奥へと消えていった。

 

「「「た、隊長ッッ!!!!!!」」」

 

部下は急いで隊長さんの後を追って走っていった。

確か隊長さん達に手を出したら罪が重くなるんだよなー

まぁ、最初からここの神様に用があったからいいけど。

すると、震えながらパガヤとコニス

 

「な、なんてことをッッ!!!」

「つ、罪が重くなりますよッッ!!!!!」

 

「罪って言われてもな」

「海賊になった時点で善人ってわけじゃねえし」

 

「で、で、ですが、このままだと貴方達がッッ!!!!!」

 

しかしそんな話す間に林から何かが飛んできた。

飛んできた矢の後ろから雲が噴射の煙のように出ながら近づいてきた。

 

その矢は簡単に叩き落とせたがその雲を、まるでレールのようなその雲の上を、部下達の足に履いているスケートで使うような刃が付いているもので、その踵に何かしらの動力源により加速してコチラに近づいてくる。

 

そのスピードは速く、並のものならヤバかっただろう。

しかしその初めてみる2つに興味津々な二人が

 

「それを……ッ!!!」

「よこせッッ!!!!!」

 

部下4人が攻めてきていたがウソップとルフィがここでしかないものに興味を持ってしまった為に、ウソップが二人を狙撃で撃ち落とし、ルフィがパンチでその雲の上から叩き落とした。

 

そして持っていた矢と履いていた特殊な靴を剥ぎ取り

 

「なんだコレッ!!!!矢から雲が出てきたぞッ!!!!」

「面白いなー。ウェーバーの小型版みたいなやつかー」

 

どんな仕組みなのかと楽しんでいる。

もちろんそれにチョッパーやサンジなどの男共から、ウェーバーに興味があったナミやノジコ達も加わり、いまのこの状況を忘れて楽しんでいる。

 

それを見ていたパガヤとコニスは開いた口が塞がらない様子で、冷静なレイジュが二人にこう呟いた。

 

「海賊は自由なのよ。罪が増えようが、邪魔なら全てを押しのけて自分の道を進む。というのがここにいる私が知る限りの海賊の生き様かしら?」

 

「……生き様……」

 

「でも面白いわねここは。どんなに荒れ果てた国でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ッッ!!!!??」

 

まだ何も告げていないのに、この先の展開を言われて焦るパガヤにコニス。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その瞬間、空が、天が、光った。

何かしらの前触れなのか、その光に誰もが注目し、そして近くにいたパガヤとコニスは慌てた様子で、いや、必死にレイジュに訴えかける。

 

「逃げてくださいッッッッ!!!!!!」

「殺されてしまいますッッッッ!!!!!!」

 

しかし、レイジュは逃げなかった。

それよりも一緒に巻き込まれてしまうパガヤとコニスを突き飛ばしたのだ。そしてすでに逃げるには遅いとその光がレイジュに向かって、落ちてくる。

 

だから、なのか。レイジュはサンジに向かって。

 

「大丈夫よ。またあとでね」

「レ、」

 

その瞬間。天から落ちてきた眩い光が、エネルギーの塊がレイジュの周りを貫き、豪ッ!とあり得ないほどの音と衝撃波が広がった。

 

そして一秒も満たずに莫大なエネルギーが止んだあとには、レイジュがいたその場は、周りの雲と一緒に消し去ってしまい、巨大な穴だけしか残らなかった。

 

「レイジュウウウウウウウウゥゥゥゥゥッッ!!!!!!!!!」

 

サンジの叫びだけが広がった。

一瞬の出来事に誰もが反応出来なかったのだ。

そして受けがたい事実に誰もが言葉を出せずにいたところに

 

「ハ、ハハハハハハッ!!!!

神によって裁かれたのだ!!!!哀れな仔羊めッ!!!

そして貴様らも、もはや第2級犯罪者!

"神の島(アッパーヤード)"の神官達の手によって、お前達は裁かれるのだ!!!!!へそ!!!!」

 

ずいぶんと痛手を負った隊長が高笑いしながらそう言ってきた。

下を向き表情が見えなかったサンジが、その場から一瞬で消え、次には隊長の目の前に、顔面の前には赤々と燃え上がる悪魔の足の裏が迫っていた。

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)ッ!!焼印(ブランディングアイアン)ショットッッッッ!!!!!!!!」

 

軽々と吹き飛んでいく隊長の顔は真っ赤に、すでに原型をとどめておらずに、木々や岩を砕き、最終的に大岩に激突したときには、その顔に一生残るだろう焼跡がくっきりと出来上がっていた。

 

そんな隊長が飛んでいった方向へ向きながら、咥えていたタバコを消し、もう一度つけ直して

 

「あのバカが"大丈夫"って言ったんだ。余計なことを言ってるんじゃねえよ」

 

端からレイジュが殺られたと思っていなかった。

それでも感情的にはいられなかったサンジでもあった。

そしてここにはいない敵に、レイジュをやった敵に対して。

 

「どこのどいつだか知らねぇが、テメェは一番怒らせたらダメな奴を怒らせたぜ。その身体の髄まで徹底的にマナーを叩き込んでやるぜッッッッッ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【らしいよ。レイジュ】

【嬉しいこと言ってくれるわね。ふふふ】

【また増えたわ……】

【そんなこと言わないの】

 

レイジュ的には毒の膜である程度のダメージは軽減出来ると踏んでいた。しかしそんなことを検証する前にハジメがレイジュを助けていたのだ。

 

落ちてきたエネルギーがレイジュに当たる前にレイジュに触れて、一時停止による絶対的な防御と、姿()()()()()ことによってその場から消えたように見えたのだ。

 

存在を消してしまうと更に闘争心が増えたものが無くなってしまう。なので離れた場所の景色を停止、ここにいる者達の目に映る景色を止めたのだ。

 

要はサンジ達から離れた場所には一枚の大きな景色が広がっており、その後ろにレイジュ達がいる。ようなもの。

なのでこっちにきたりその停止画を超える場所に移動されたらバレるがいまはこれで十分である。

 

【いまのレイジュにも思考が読まれないように一時停止はしてるけど、流石に本当に姿を消すには存在を消さないと行けないから、しばらくメリー号で待機していて】

 

【そうね。サンジの活躍は見たいけど……あの子が強くなるなら我慢しましょうか】

 

あっさりとメリー号へ向かったレイジュ。

いまはまだレイジュを戻すのは速い。サンジには悪いけど、いまの状態はきっとサンジを強くする。あの神に一撃を最初に喰らわせるのはサンジだ。

 

そうすればあの神も焦るだろうなー。

ルフィ以外の者に、能力者以外に攻撃されるんだからねー



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シャツを、着てやがる

「じゃ、予定通りに2班に分かれましょう。

この空島を内部から捜索する調査班。ルフィ、ゾロ、くいな、ウソップ、カヤ、バースト、キロロ、ヘルメッポ、コビー。

 

そして私達、空島の周りと聞き込みによる情報班。私とノジコ、サンジ君、チョッパー、カラー

まぁ、メリー号を動かさないといけないから私とノジコとカラーで空島の周りを行くわね」

 

「ええぇーッ!!!!俺は野郎と聞き込みかよ……」

「さ、サンジ………」

 

サンジの言い草と、さっき起きた出来事に対してのその態度。

チョッパーの中ではサンジの評価はダダ下がりである。

 

「………まぁ、ひょっこりとレイジュのやつも戻ってくるかもしれねぇからな。………仕方ねえな………」

 

頭をかきながらコニスから教えてもらった町へと歩きだすサンジに、軽くため息を付きながら後に付いていったチョッパー。

 

「行く前にサンジ!!海賊弁当を作ってくれッッ!!!!」

「締まらねぇだろうがこのバカ船長ッ!!!!」

 

せっかく格好良くこの場を去ろうとしたのに台無しである。

とにかく準備をしなければならないのでサンジはパガヤから台所を借りることにして、ナミ達女性陣は動きやすい格好になるためにメリー号へ乗り込んだ。

 

「動きやすいってことは、やっぱりビキニかな〜 」

「船長、船長。このコックヤバイであります。どうぞ」

「最初からヤバイであります。どうぞ」

「おろすぞテメェらッ!!!!!!」

 

なんとなくサンジの周りに集まっていたルフィ達。

さっきの出来事があり、無意識的に集まったのだろうがサンジ的には野郎どもより女の子が良かった。

 

「行く前にナミさん達の素晴らしい姿を目に焼き付けて行くんだ!!じゃなきゃやる気なんて起きねえ」

 

「…………心配しなくて良かったな………」

「まぁ、サンジだしな」

 

こういうとき何故かルフィがマトモに見えるのだから不思議である。

 

「第一、アッパーヤードって森林みたいなところだろう。そんな布面積が少ないやつは着ねえんじゃねえのか??」

 

「なんでだよッ!!!海なのにさっきも水着になってくれなかったからやるんじゃねえのか!!!!」

 

「お前の希望で着ねぇよ」

 

ウソップ。ナイスツッコミ。

未開な場所に、それも肌を出した状態でいくなんて、また謎の病気をもらいたいのかい?と言いたいところです。

 

まぁ、あそこの女性陣はそこら辺の男よりずっと強いですよ。

 

だからこれから起きることもこっちとしてはそんなに問題視はしてないけどね。

 

「お、おいルフィッ!!!なんか船の様子がおかしいぞッッ!!!!」

 

異変に気づいたウソップ。その声に全員がメリー号の方に視線を向けると何やら船が揺れていた。ウソップが持っていた双眼鏡をサンジが奪い取り覗いてみたら

 

「う、嘘だろう……ッ!!!」

「なにかあったのかッ!!!??」

 

深刻な表情をするサンジに最悪なことが思い浮かぶ。そして…

 

 

「…………………………みんな、シャツを、着てやがる…………」

 

「ふざけんなよお前はッッ!!!!!!」

 

思わず近くにあったフライパンでサンジの頭を叩くウソップ。

(ウソップのような完璧なツッコミだからこそ出来る芸当です。普通ならとても危険ですが、ウソップなら"痛い"だけに留まることが出来るのです。決して皆様は真似をしないようにお願いします。)

 

「何するんだテメェは!!?」

「真面目に様子を見ろッ!!!!」

 

「………………クソッ!!……露出がすくねぇ………」

「こいつに天の裁きを与えてくださいーーーーーーッッ!!!!!!」

 

まだ見ぬ神様にお願いするウソップ。止めてね。本当にあの通称神はやりかねないから。

 

「んなことやってる場合かぁッ!!!メリー号が持っていかれるぞッ!!!!」

「な、なんだあのエビッ!!!??」

「うまそぉーッ!!!!!」

「言ってる場合かッ!!!!!!」

 

メリー号が巨大なエビの背中に乗り上げ、大きなハサミで押さえられながら何処かへと遠ざかっていく。

そしてそれを見て美味しそうなどというバカに、とうとう第2のツッコミ役であるバーストがツッコんだ。ナイス。

 

「さっさと追いかけねぇとマズイんじゃねえのかッ!!!」

「何言ってるんだお前はッ!!!!!エビはマズくねぇッ!!!!!」

「味の感想を言ってんじゃねえよッ!!!!!!」

「真面目にやれルフィッ!!!!」

 

ツッコミが二人いると楽だね。

しかし、このままだと面倒くさそうになるな。

確かこの後、なんか試練みたいなやつがあるんだよな。

あれは修行の一環になるからいいけど………

 

「とにかく別れて追いかけるぞッ!!!!

この海から行く奴らと陸路から行く奴らだッ!!!!」

 

「くじで決めようぜッ!!!」

「なんでもいいからさっさと決めろッ!!!!」

 

こんな状況でも楽しむルフィ。まぁ、これぐらいのトラブルはトラブルとも捉えないだろうな。小さい頃はこれ以上の地獄を見せたからなー

 

それでくじで決まったのは陸路の班はルフィ、サンジ、ウソップ。海路がゾロ、チョッパー、バースト。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いいかお前ら。絶対にこのアホマリモから目を離すな。少し目を離しただけで迷子になるからな」

 

「わ、分かった……」

「そんな簡単になるのか……」

「クエェッ!!!!」

 

「エロコックが……ウソップ!コイツの手綱はちゃんとしとけよッッ!!!!!!」

 

「ただでさえルフィがいるのに………わ、分かったよッ!!!!」

 

この中で一番大変なのは間違いなくウソップだろう。

頑張れウソップ。僕は君を応援するよ。

 

………………………………………

 

「カワイイお姉さんッ!!!私と、お茶でもしませんか??」

「お約束みたいにやるんじゃねえッッ!!!!!!」

 

ゾロ達の方は特に問題ないだろうと思いルフィ達に付いてきたが

 

「う、美味そうな…に、匂いが……ッ!!!!」

「堪えろルフィッ!!!!誘惑に負けるなッ!!!!!」

 

「そこのお姉さんッ!!!!待ってーーーッ!!!!!」

「テメェは少しは自重しろッ!!!!!!」

 

……………あのルフィがマトモに見えるほどにサンジが荒れてるな………

次から次へと引っ掛けることのないナンパを繰り返してさ断られている。

いくらレイジュが大丈夫だと信じてもやっぱり心配なのだろう。それが空回りしてこうやって手当り次第ナンパしているわけだが………

 

「に、賑やかですね…本当に………」

「なんか悪いなな。道案内なんかさせちまってよ」

 

「い、いえ……気にしないでください……」

 

この町に来たのはコニスがこの町にくれば持っていかれたメリー号にたどり着けると言われたからである。

こうして町に来れたのは良かったのだが、コニスの様子がおかしい。

 

……………そう、あのシーンが始まるのだ。



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なんで俺達に言うんだッ!!!!

「これが皆さんが乗る"カラス丸"です」

 

ニコニコと笑いながらコニスはアッパーヤードに向かうために乗る船を紹介してくれた。

そこにはカラス丸の他にもイカス乗り物があるのだがその中でもとびきりダサいのがこのカラス丸であった。

 

「ええぇーッ!!!!俺こっちがいい!!!!」

「す、すみません……ちょっと予算が………」

「このボケがッ!!!!コニスちゃんの親切を無駄にするなッ!!!!!」

 

ルフィが選んだのは多くの船の中でも豪華なもの。

だからこそ、それを選ぶならそれなりのお金が必要となる。

ただでさえこの空島の通貨街を持っていないのに、船を借りるお金なんてあるわけがない。

 

だからサンジが行ったとおりにこうして無償でここまでしてくれるコニスには感謝しかないのだが……

 

「いえ。気にしないでください。

これでも十分に皆様を運んでくれますから」

 

ルフィにあんなことを言われてもニコニコと笑うコニス。

それを見ていたベルメールは

 

【……あの子、何か隠してる??】

【そうね。ここに来るときからずっとね】

 

ロビンがそう答えるなか、ハジメを見たベルメールだったが動こうとしないハジメに傍観しか出来ないと悟り見守ることにした。

 

そしてその違和感に野性的なルフィは

 

「なぁ、コニス」

「はい。なんですか??」

 

「お前…()()()()()()()()()()()()()()?()?()

「ッッ!!!!??」

 

ルフィの言葉に肩が上がり、表情が強張る。

それでも必死に表情を作りルフィに心配されないように

 

「な、なんでもないですよッ!!さぁ、行きましょう!!!!」

「なにもないことはないだろう。体調が悪いのか??」

 

「そうなのかいコニスちゃん!!!なら俺が看病を!!!」

「お前は見なくていい。でもよ、本当に体調が悪いなら……」

 

「大丈夫なので気にしないでくださいッッ!!!!!!!」

 

突然の大声でびっくりする3人。

そしてそれを皮切りにさっきまで騒がしかった町が突然に静かになる。そんな雰囲気に妙な感じがするとサンジとウソップは感じ取っていた。

 

(……おいおい…まさか………)

(チィッ!………ハメられたか………)

 

何が起きてもいいように身構える二人に対して、ルフィはまだ気づいていない。周りの異変よりもいま目の前のコニスを心配しているからだろう。

 

そのコニスは下を向いてルフィと顔を合わせない。

そんな様子を遠くから離れて監視しているのがあのボロボロにやられた隊長さんだった。

 

(余計なことを言うなよ!!お前はただその船に乗せればいいのだッッ!!!!!)

 

しかし、そんな思いは、コニスには、届かない。

いまコニスの心にあるのは、

 

「逃げてくれませんか……?」

「よせ!!!何を言うんだ!!!!」

 

この町いる周囲の人達が悲鳴にも似た声を、避難を上げる中も、コニスには届いていないようだった。涙をボロボロと流しながら崩れ落ちながら

 

「ごめんなさい!!!

超特急エビ呼んだの、私なんですよね……!!

犯罪者を確認したら、裁きの地へ誘導しないと、私達殺されてしまうから!!!これが国民の義務なんですよね……!!!

ごめんなさい!!!おかしいですよね……!?何もかも……!!!」

 

その衝撃的な言葉にルフィが

 

「バカヤロー……」

 

サンジもウソップも、叫んだ。

 

「何でおれ達に言うんだ!!!!」

「……………えっ??」

 

その言葉に驚くコニスの肩を揺らしながらルフィは

 

「お前が狙われるんだぞ!!!何考えてるんだッッ!!!!!」

 

そんなルフィ達の上に、何が、光りだした。

住民達は「も、もう…遅い……終わりだ!!!」と、慌てた様子で何処かに逃げていく。

その様子にすぐさま周りを警戒するとサンジがルフィの上部に何かが起きようとするのを見つけた。

 

「ルフィッ!!!今すぐそこから逃げろッ!!!!!!」

 

サンジの声に上を確認することなく移動しようとしたが、空に集まったエネルギーは一直線にルフィとコニスに向けて放たれた。ルフィの足なら簡単に逃げられるかもしれないがついさっきまで泣き崩れていたコニスを連れて行くとなると思ったように進まず、そしてそのエネルギーの範囲が広く

 

「だめだ。でけぇ」

 

諦めるつもりはないがルフィはとっさにコニスだけでもと思いっきり突き飛ばした。そしてルフィは

 

「「ルフィイイイィィィィィッッ!!!!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれば出来るじゃないのルフィ」

「し、師匠ッッ!!!!!!」

 

それはあっという間の出来事だった。

雷のエネルギーがルフィにぶつかる瞬間に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

こういう時、ロビンはきっと出ていくだろうと解除したけど……やっぱりロビンは優しいな。

 

「ロ、ロビンちゃんッ!!!!??」

「一体何処から出てきたんだッ!!!!」

「そんなことはどうでもいいのよ。私はお兄ちゃんのために生きているのだから」

 

まぁ、ロビンならそういうだろうが……そこはルフィの為に出てきたでいいじゃないの……

 

「ぇ、し、師匠に、お兄ちゃん……」

「い、いたか……」

「記憶にねぇ………」

 

「そう。私は覚えているということはやっぱり私とお兄ちゃんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

……やっぱり僕のことは忘れてるよね。

…………で、やっぱり、ロビンは覚えていたかぁ……

なんなのかな、あの子は………

普通は一時停止で消した存在は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「とにかくお兄ちゃんについては今はいいわ。

それより、コニスって言ったかしら??」

「は、はい……」

 

「自分の身より他人を心配する人。私は好きよ」

「あ、ありがとう、ございます……」

 

「いいのよ。そんなことよりさっき言っていた法律かしら……もう一度ハッキリと言ってくれないかしら

「…………………は、はぃ……………」

 

殺気、出てる出てる。

何にキレているのか分かってるけどそれをコニスに当たらないの。ほら気の弱い人達はそれだけで気絶してるから。

 

「は、犯罪者を確認したら……裁きの地へ誘導しないといけない………これが国民の義務なんですが…………」

 

「なるほどね。お金を払わなかったから、取り締まる人を殴ったから、犯罪者を見逃したから。そういう理由なら裁くという国の方針としてはまぁ分かるわ」

 

そういいながら木が、道路が、建物がどんどんぐにゃぐにゃと何かに変わっていく。あぁ、やる気だーあの子。

 

この子、言葉に出さずに「覚醒咲き(エヴェイユ・フルール)」を使ったね。突然されると困るからって言ってねと言っておいたのにな……まぁ、こんなの見せられたら忘れてしまっても仕方ないなけどねー

 

「でもね。女の子を、涙を流してまで逃がそうとしたこの子をまるで虫のように消そうとした()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

壊れていく町を見て人々が「やめてくれッ!!!」「悪魔だッ!!」などと叫んでいる。しかしそんなことロビンに通じるわけがない。ここら一体の物が大きな、大きな手へと姿を変え、そして

 

億華神掌(ミリアルデ·フルール)、"ゴッテスハンド"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………なんだこの女は。どこから現れた……??」

 

ここは神の神殿。

そう神として君臨する"エネル"のいる場所。

 

空島全体を"見聞色の覇気"で人の心が読めるエネルがいつも通り裏切りがいないか探していた所でコニスの裏切りが発覚。

 

離れた場所からでも自分の能力、()()()()()()を食べた"雷人間"であるエネルは簡単にその場所に文字通り"天罰"を与えたのだ。

 

しかしその天罰は当たらなかった。

突然現れた女の手により雷が弾かれたのだ。

その弾かれたことよりも、ずっと見聞色で探っていたのに見つけられなかったことが不思議だった。

 

「まぁいい。避雷針のようなものを持っていたのだろう。ならもう一度…………ッッ!!!!?」

 

避けられないようにその女の思考を読もうとしたのだが、その瞬間にある単語が大量に流れてきたのだ。

 

『お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん。お兄ちゃん…………………』

 

「なんだこの女はあああぁぁぁぁッッ!!!!!!!??」

 

あまりにも異常なほどの熱量と呪いと思わせるほどの執着。

それがたった一つの単語にこんなにも集約されて一気に体調が崩れてしまうほどに響いてくる言葉に片膝をついて苦しむエネル。

 

これには耐えることは、いや、もう聞きたくないその声を、とっさに女に対してだけでも見聞色を切ろうとした、その時だった。

 

『"ゴッデスハンド"鉄槌(アイゼンハンマー)

 

突然、エネルからして100メートルも離れていない雲の下から巨大な何が迫ってきていた。それが何か分かった時には既に目の前。さっきまで怨念のような言葉によりダメージを受けていたエネルはとっさに動けなかった。

 

それは巨大な手。握り拳が、まるで神の鉄槌だと言わんばかりのそれが神であるエネルに当てられたのだ。

 

ただ一瞬にしてエネルと神殿は吹き飛び、叫び声も聞こえることなく、そこにあった雲全てを無に返した。

 

………………………………………

 

「…………ダメね。やっぱりここからだと仕留められなかったわね」

 

「し、師匠……」

 

「しばらくは余計な手出しはしないと思うけど、油断なんかしてみなさい。私は常に見てるわよルフィ」

 

「了解ですッッ!!!!!!!!」

 

すると、周りにいた住民達がロビン達を囲み始めた。

その中にはあの隊長もいるようだが、口出しはせずにこの状況がどうなるか確認するためのようだ。

 

「アンタだろう!どうしてくれるんだ!!!!」

「そうだ!!ウチの家が無くなったんだぞッ!!!」

「だいたい、その女が余計なことを言うからッ!!!」

「お前らなんてさっさと裁かれたらいいんだッ!!!!」

 

さっきから好き勝手にいう住民達にルフィ達も不満が溜まっていた。ここまでして自分達が大切なのかと、自分達が何をやったのか忘れたのかと……

 

するとロビンがシビレを切らしたのだろう。

非難してくる住民達全員の肩に手を生やして腕を首の周りを囲むようにロックする。

 

「言いたいことは、まだあるなら聞くわよ」

「「「「「ッッ!!!!??」」」」」

 

首はまだ締められてない。

軽く首に添えてある状態ではあるが抵抗しようとロビンの手を外そうとするがビクともしない。だからだろう。このままだと絞め殺されると恐怖し始めた住民達が

 

「こ、コレは外せッ!!!!!」

「外せ??命令出来る立ち場なのかしらね」

「ゴブッッ!!!」

 

非難した住民が一気に首を締められて落とされた。

それを見た他の住民達の一部は涙を流しながら外して懇願する。それでもまだ気の強い者達は

 

「こんな事すれば天罰がッ!!!!」

「自分で制裁出ないやつがなにを言ってるの??」

「ガバッ!!!!!」

 

「こんなことして恥ずかしく……」

「さっきまでやっていた貴方達よりもマシよ」

「ギャァッッ!!!!」

 

「や、やめてくれッ!!!!」

「というか、全員、しばくわ」

「「「「「ガバッ!!!!!!!」」」」」

 

結局、ここにいた住民達全員絞め落とされた。

それにはルフィ達も引いている。確かにここの住民達は酷いやつらだと思っていたけど、ここまでしなくてもいいんじゃないかとは思った。

 

そして残されたのは隊長のみ。

その隊長にロビンの視線が向いたと分かるとすぐさまこの場から逃げようとしたので

 

「クラッチ」

「ゴバッ!!!!!」

 

動けなくするためには関節技を決めたロビン。

普段こんな風に関節技を決めるとき技名をいうことはなかった。そんなことしなくても普段から気に入らないやつにはやっていたから息をするかのように簡単に出来ていた。

 

それでも言葉に出したのはハッキリと明確に"壊す"と意志があるとき。つまり

 

「特に、貴方のように弱者を守らないといけない立場が、上の言いなりになって、それも何も考えずにただ非道の限りを尽くす。なんて輩は特に嫌いなのよ」

 

「ま、まっ!!!!」

「スラップ、スラップ、スラップ、スラップ、スラップ、スラップ……………」

「アババババババババババッッッ!!!!!!!!」

 

往復ビンタに往復ビンタ。それを何度も何度も、顔が変形するぐらいまで喰らわせた後に

 

「クラッチ。ツイスト。…………スパンク!!」

 

バキバキと隊長の身体は悲鳴を上げていき、最後に正面から大きな掌が現れて掌底を喰らった。吹き飛んだ隊長は何も無くなった町を通り過ぎていきそのまま空の海に何度もバウンドしながら空の海に沈んだ。

 

「誰も裁かなくても私が裁くわ。例え神というバカなやつでもね」

 

もう、何も言えなかった。何も出来なかった。

圧倒的なロビンを前にもう、何もかもついて行けなかった。

 

「後は任せたわ。頑張りなさい」

 

それと同時にロビンの姿が消え、また、ロビンがいた事が消えてしまった。しかししっかりと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

【ちょっ、ちょっと……さっきの何なの……??あの巨大な手は何なのよッッ!!!!??】

【お兄ちゃんへの愛よ】

 

【アンタね……真面目に答える気はないのね………】

【答えてるじゃない。その想いがないとあんなの出せないわよ普通】

 

【えっ。じゃ、本当に………】

【どうも気持ちがマックスになると出来るのよね。

最近になってやっとコントロール出来るようになったの。ちょっとしたコツがあって………】

 

【いい。聞きたくないわ。なんか………怖いから……】

【本当に失礼ね】

(エネルのやつ…ロビンの"アレ"聞いたのかな………)

 

昔、ハジメも誤ってロビンの"声"を聞いたことがあるが普段からあの異常なまでの"お兄ちゃん"という単語を呟いていた。もう妹兼婚約者ではなかったら完全に上位、いや、異常なストーカーである。

 

【それも愛よお兄ちゃん】

【心読まないで。で、そんなのは愛でないと言いたいよ】

 

そんな事をしていると出遅れた空の騎士が現れ

 

「な、なんだ、コレは………」

「あぁ……気にするな。それよりコニスちゃんを頼めるか?」

 

町の住民が全員倒れている状況に驚く空の騎士。

サンジが気にするなとはいったがこれをやったのは彼らではないかと疑いはした。したがコニスが首を横に振ったので一応信じることにして

 

「ああぁ。その子は私が面倒を見よう。

先程ので目をつけられたはずだ」

 

「そうか。なら頼む。俺達は仲間を見つけて、こんな事をした奴をぶん殴るからよ」

 

「なら気をつけるのだぞ」

 

そういってペガサス(??)にコニスを乗せた空の騎士は離れていきルフィ達はカラス丸に乗り込み、裁きの地へ向かうことにした。

 

 



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神官サトリ

「な、なんだここはッ!!!!??」

「妙なもんが浮いてるな…」

「あれ、絶対に触らないほうがいいぞ……」

 

カラス丸に乗り様々なトラップをかい潜り、そして4つの道の一つ"玉の試練"を選んだルフィ達。ここまで本編通りだけどまぁ、ここの神官に楽勝で勝てないぐらいじゃ覇気については教えられないなー

 

ミルキーロードは玉の試練へルフィ達を導き、そしてそこには白い玉が無数に浮いている場所だったのだが

 

「……………白玉みたいだなー」

「間違っても食うなよルフィ。腹壊す」

 

「俺、腹壊したことねえぞ!

…………毒を仕込まれて死にそうにはなったけど………」

「そっちの方がコエェよッ!!!!」

 

その毒は僕達が仕込みました。小さい頃から死なない程度の毒を喰らっていれば免疫力がつくと思って。現にクロコダイルの毒をもらってもある程度は動けたでしょう。

 

ちなみにハジメ達は後ろからカラス丸よりもグレードの高い船で追いかけてます。

 

「で、ここは試練なんだろう。何が起きるんだ?」

「白玉を全部食う」

「白玉から離れろッッ!!!!!」

 

そんな事をしていると何処から現れた男が

 

「ほーーっう、ほうほう!!へそッ!!!!」

「だから何なんだ"へそ"ってッッ!!!??」

 

気にしたら負けだよウソップ。

 

「その雲の名は「びっくり雲」。何が出るかはお楽しみ」

 

「なんだテメェはッ!!!」

「私は神官サトリ。さぁ試練の始まりだ!!!」

 

そういってサトリは近くの玉をルフィ達の元へ蹴り飛ばした。

見た目は何でもない白い玉。ウソップもサンジもそこまで警戒はしていなかったのだが

 

「ッ!!!回避だッ!!!!!」

「ッ!!!??」

 

ルフィの必死な声にウソップがすぐさまオールで漕ぎ出して玉の軌道から逸れた。そして玉が船からミルキーロードへぶつかった瞬間に大爆発を引き起こしたのだ。

 

「な、なにッ!!!!??」

 

爆発の衝撃で船は浮き上がり転覆するかにみえたが、すぐさまサンジとウソップがオールで体勢を戻したために助かった。

 

「ほうー。なかなか勘の鋭いやつがいるなー」

 

楽しそうに玉の上でクルクルと回るサトリ。

ずいぶんと余裕なその姿に怒りを覚えているサンジだが

 

「なんださっきのはッ!!!まさか全部が爆弾かッ!!!!」

「……多分、それはねえと思うな。アイツしか分からねようにしてるんじゃのか。じゃなきゃ反撃食らうからな」

 

「チィッ!面倒くさい試練を選んじまったな………」

 

ウソップが言った通り、この玉は様々なものが隠されている。

それを見破れるのはサトリだけ。不容易に触ればまた爆発する可能性がある。

 

「そんなの関係ねぇ!!ぶっ飛ばせばいいだけだ!!」

「お、おいルフィッ!!!!」

 

ウソップの静止を聞かずにサトリに突っ込む。

こんな時こそ冷静じゃないといけないのだが、仲間が連れ去られコニスが狙われこんな風に遊ばれている状況で心が落ち着いてはいなかった。だから、

 

「そんな分かりやすい攻撃、当たると思ったか??」

「ッッ!!!??」

 

ギア2を使ってなくとも本編より速い攻撃にも関わらずサトリはルフィの攻撃を簡単に避けた。あれはここでいう心網(マントラ)、いわば見聞色の覇気による相手の動きを見極める力だ。

 

さっきルフィが回避出来たのもコレだが、いま冷静さを欠けているルフィにそんな芸当は無理だった。

 

だから避けれるはずのサトリの攻撃を真っ向から受けることになった。ただ顔にサトリの手のひらが当たっただけでルフィは思いっきり殴られたかのように後方へと吹っ飛んだのだ。

 

「ル、ルフィッ!!!!」

「何しやがったアイツッ!!!!!」

 

警戒するウソップとサンジ。吹っ飛んだのだルフィの鼻と口から血が出ており

 

「き、効いたぁ………」

「なっ!!?ただの打撃じゃねえのかよッ!!!!!」

「クソが…………覇気ってやつか…………」

 

「多分ちげぇ……だけど…やべなぁ…アリャ…………」

 

打撃の効かないルフィにダメージを与えるには武装色の覇気が有効。それは知ってはいたがここにきてまさか使える奴がとウソップとサンジは警戒をした。しかし、攻撃を受けたルフィはそれは違うと確信した。何かをやらかす度にロビンから受けていた攻撃に比べたら当たった感触が違うのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「ようこそ禁断の聖地"神の島(アッパーヤード)"へ。

ここは"迷いの森"。生存率10%の玉の試練!!!」

 

………………………………………

 

【何をやっているのかしらルフィは……】

【冷静じゃないね……あれじゃやられる一方だね】

 

後ろから冷静に分析をしている二人。

そんな二人にとうとう我慢ができなくなったベルメールは

 

【私達は、ハジメは何もしないの】

【どうしたの急に??】

 

【暗躍するのよね。これじゃただの傍観者じゃないの!!】

【といっても、肝心の"神様"はロビンが虫の息にしたから回復まで時間がいるし……こっちとしてはルフィ達には修行を兼ねて経験を………】

 

【ナミ達になにかあったどうするのッッ!!!!!】

 

その声に目を見開くハジメ。

ベルメールの手は強く握りしめられて今にも血が出てきそうなほどに………

そんなベルメールに対してロビンは冷静に

 

【どうするの??って、海賊になった時点で覚悟はあるはずよ】

【そんなの!!ただ見てるだけなんて!!!!】

 

【言ったわよね。この暗躍に、お兄ちゃんに付いてくるなら一切の干渉を避けるようにって】

 

【……アンタはさっそく破ったわよ】

【そうね。でもいま貴女が表に出て何が出来るの??】

 

その言葉に何も返せないベルメール。

しかしそれでも心配にはなるのだ。こんな風に試練という危険が迫っているのに親として何も出来ないのだ。身が割かれるほどにもどかしくて辛い。

 

【別に出ていっても構わないわ。ただ、ここにいる道を選んだのはベルメール、貴女なのよ。お兄ちゃんの側にいるために、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

【……………………】

 

【だから選びなさい。ここでお兄ちゃんを選ぶか?娘を選ぶか?】

 

………………………………………

 

どうも様子がおかしかった。

おかしくなったのはアラバスタで騒動が終わってから。

ハジメもロビンも普段通りにしているけど見たら分かった。

これは私が知らないうちに進展があったんだと。

 

昔からロビンは積極的に攻めるがハジメがそれを全ていなしていた。久しぶりに二人にあっても変わらないその姿に私はホッとしていた。

 

こうして婚約者になれはしたがロビンと差は歴然。

ハジメとの繋がりも、絆も、時間も、何もかもロビンに負けている。

それでも選んでくれたことはとても嬉しかった。

たとえ2番でも、こんなおばさんを選んでくれたことが嬉しかった。

 

初めはナミやノジコの悪ふざけでハジメとの交流だったけど、いつの間にか本気になっていた自分がいた。

ロビンが夢中になるのは本当に分かる。やることなすことロビンと同じでめちゃくちゃだけど根が優しい人。周りを見てくれて、娘を大切にしてくれて、そして私という一人の女をしっかりと見て大切にしてくれる。

 

だから安心していた。いや、見ようとしていなかった。変えようとしなかった。

このままずっとこんな関係で良かったと………

 

だけど状況は変わった。

初めから分かっていたけどハジメの一番はロビン。

そして私はロビンから二人目。一番じゃない。

 

事が起きるのもロビンが始め。私は二番目。

もしかしたら何も起きないかもしれない。

私はただ"婚約者"という立場なだけ。2番目というだけ。

 

その事があの二人を見ていたら急に怖くなった。

このまま置いていかれると。見捨てられると。

だから焦った私はハジメにアピールを始めた。ロビンにもいつも以上に噛み付いた。

 

私はここにいる。って。

私を置いていかないで。と。

 

なのに、なのに、ナミやノジコが危険な目にあっている中で二人は何もしようとしない。これは修業だといってただ見てるだけだと。

 

そんなの……耐えられない!!

あの子達は私が守ると決めた!!あの子達を見つけたあの日から!!

 

でもここで離れればきっと、もうロビンとの差は埋まらない。

そんな気がしてすぐに二人の元へ行くことが出来ない。

 

もう私は、ハジメのことを本当に娘達と同じ位に大切なのだ。

だからこんな選択肢を与えられても私は……………ッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【…………残るわ】

 

下を向いたままベルメールはそう言った。

何か口にしたかったが、いま何を言ってもダメだとハジメは口を開かなかった。だけどロビンは違う。ロビンだからこそいま言えることが……

 

【そう。娘は見捨てるのね。まぁ、くいなもレイジュもいるから心配は………】

【見捨てないわ】

 

その言葉に、ロビンの目は鋭くなった。

そしてベルメールの胸ぐらを掴んで

 

【出来もしないことを言わないで。2つを選ぶなんて、実力も何もない貴女が】

 

【分かってるわ。私は……一つしか選べない】

【だったら……】

 

【だからッッ!!!!!!】

 

真っ直ぐロビンの目を見て、ハッキリとこう言ったのだ。

 

【ロビン!貴女が娘達を救ってッ!!!!そしてハジメの隣を私に譲りなさいッッッ!!!!!!!】

 

何の迷いもなく。ただ真っ直ぐに伝えた。

いま出来ることをするために。2つを同時にするために。

出来ないことを、例えライバルであるロビンにお願いする形になっても………

 

【………自分が言ってること、分かってるのかしら??】

【えぇ。間違いなくロビンが不利になること、私がお願いしているわ】

 

【………それを、私がやるとでも??】

【やるわ。ずっと有利だった貴女がさらに有利になった。

なら、少しぐらい私に譲っても余裕はあるから】

 

【私は強欲なのよ。お兄ちゃんは渡さない】

【渡さなくてもいいわ。奪い取るつもりもない。

でも…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッッ!!!!!!】

 

今度はベルメールがロビンの胸ぐらを掴んだ。

両者に睨み合っている。互いに譲れないものを守るために。

 

そして…………

 

【…………刺激物??笑わせないで】

【……………………………】

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

【ッッ!!!!!!】

 

【お兄ちゃん。そういうことだから行くわ。

まぁ、私が表に出ることになっても問題はないわよね】

 

【そうだね。きっと自称神もすでにロビンを危険視してるだろうし、下手に攻撃もしないだろうから。むしろロビンに集中してマークすればこっちも動きやすい。だからよろしくね】

 

【えぇ。お兄ちゃんの為だから。

……だからベルメール。お兄ちゃんと自分を対等にしなさい。それが長年お兄ちゃんの側にいる秘訣よ】

 

【そんな老夫婦の仲良し秘訣みたいなことをいわないの】

 

はぁ、とため息をつくハジメだが、それはきっと分かりあえているから。そんな二人をみてやっぱりかなわないと思うベルメールだったが

 

【なら、ロビンより凄いことをしてやるわ!】

【やれるならやってみなさい。私達はすでにセ………】

 

【やってないことを言おうとするなああああああああああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!!!!!!】

 

 

………………………………………

 

「クソッ!!!あの玉が邪魔だッ!!!!」

「ついでに、俺達の動きも読んでやがる……」

「ルフィ!!!お前も同じことすれば捕まえられるじゃないのかよッッ!!!!!」

 

「んなこと言ってもよ!!こんな状況じゃ……うわッ!!!!」

 

「どんどん行くぞ!!!お前らここから出られない。

このミルキーロードから離れればもうこの森から………って!!!!」

 

すると突然サトリの動きが止まった。

すでにカラス丸に乗っていない3人は、カラス丸を見失わないようにサトリと戦闘していたが、なにが出てくるか分からないびっくり玉に翻弄されて未だにサトリを倒せずにいた。

 

サトリの手に仕込んである【衝動貝(インパクトダイアル)】を気をつけながら、びっくり玉を避けながら、サトリの動きを読む力をどうにかして攻撃を決める。というこの3つを同時にクリア出来なかったのだが

 

「な、何だコレッ!!!??」

「様子がおかしいぞ………」

 

なにか慌てふためいているサトリ。

身体に何かあるのか、慌てたように手や足を動かしているがすぐに動かなくなった。

 

「ルフィ。何をしているのかしら??」

「ッッッ!!!!!??」

 

「お、おい、この声………」

「聞き間違えるか………コレは………」

 

恐る恐る、その声の方へ。サトリが乗っているびっくり玉の更に上にあるびっくり玉の方を見てみると……

 

「心を乱すなんて………もう、ここからお仕置き決定ね」

「し、師匠ッッ!!!!ギ、ギバグガジラバッッ!!!!!」

 

「「ル、ルフィッッ!!!!!」」

 

ロビンの武装色の覇気でルフィの打撃が効かないは無効。

普通の人間より身体が強いだけに成り下がったその身体にロビンの関節技は………あまりにも無慈悲だった。

もうありえないほどに鳴る骨の音とルフィの叫び声。

 

「こ、これッ!!大丈夫なのかよッ!!!!!」

「知らないのかしら。ゴムは元に戻ろうとする性質があるのよ。ゴムの体質に戻れば問題ないわ」

 

「つ、つまりロビンちゃんがルフィを触っている限りは」

「普通の人間ね。まぁ、これぐらいじゃ死なないわ。まだ地獄一丁目ですものね」

 

「…………ぶぁい…………」

((……マジでコエェよッ!!!!!))

 

言葉にはしてないけど顔が引きずってますよ二人とも。

そして更に恐怖した表情をしているのがサトリである。

 

「な、何なんだよお前はッ!!!!!」

「五月蝿いわね。サンジ、ちょっと黙らせなさい」

 

「お安い御用だレディ」

「今度そのセリフを言ったら………もぐわよ」

「す、すみませんでしたッッッ!!!!!!!!」

 

綺麗なお辞儀をして謝罪するサンジ。

うん。何をもぐのか…分かったんだね。

 

「クソ!!離せッ!!!!!」

「離すわけないでしょう」

「動きを読めるのはいいけど、避けられなかったら

読める意味がない。ということか………」

 

タバコの煙を一気に吸って吐くサンジ。

サトリの方をジッと睨んで同じ目線の高さにある木まで飛び上がる。この後、何をされるのか悟ったサトリだがロビンの拘束で逃げることが出来ない。

 

「俺は”神”に仕える神官だぞ!離せ!!

神官に裁かれないという罪はこの国では第一級犯罪に値するんだぞ!!

俺に手を出すと言うことは

全能なる”神・エネル”への宣戦布告を意味するのだ!!!」

 

そう必死に言うサトリだが……そんなの聞く余地もない。

 

「口を閉じろ風味が逃げる。

コショウを最高のミニョネットに仕上げたければ

大切なのは強く粗くためらわず……砕ききることだ

そうすれば閉じ込められた素晴らしい風味はこれによって一気に開放され、そして熱を加えることによりより一層の香りが広がる」

 

その場で回転をして摩擦によりサンジの脚は赤々と燃え上がる。本編とは違いこれはずっと先で使われる技なのだが、まぁいいかな。

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)……ッ!!」

 

サトリの上空へ飛び上がったサンジはそこで縦回転を加えながら真下へと落ちていく。

 

「やめろー!!!痛いからやめろー!!!!!」

「”粗砕(コンカッセ)”ッッ!!!!!」



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基準がぶっ壊れている。

生贄の祭壇。

そこにメリー号が神への献上物かのように水面から上げられていた。そしてそのメリー号には海賊団のロビンを抜いた女性陣達がいるのだが

 

「「ちょっと周りを調べてくるわ」」

「………二人ともちょっと待って………」

 

現在、くいなは頭を抱えていた。

この祭壇についてからしばらく時間が経つ。その間敵への攻撃を警戒していたが一向になにも起きない。

 

それをいいことにナミとノジコはこの周りの調査をするために向かうと言い出したのだ。

 

「この祭壇に置かれたのにはなにか理由があると思うの。なら下手に出たら何が起きるか………」

 

「だからレイジュお姉様にも付いてきてもらうわ!」

「…………見つかるなんて、思わなかったわ……」

 

ハジメのお陰であの攻撃から助かり、怒りでヤル気満々のサンジのモチベーションを落とさないように存在を停止させるわけにはいかないために、思考だけを読まれないように一時停止を使用した。だから姿は見えるのでメリー号に隠れていたのだが

 

「いや、普通にシャワー使っていましたよね……」

「紅茶も飲んでた」

「細かいことは言わないのよカヤにカラー」

 

そんなの守るレイジュではなかった。

しかしいま自称神様は周りを探る暇はなく結果的に見つかっても問題はなかった。見つかったらまた攻撃を受ける可能性があるのだが

 

「もう大丈夫よ。体面に非伝導率の高い毒を纏っているから」

「…………私達が使ったら………」

「皮膚が爛れるからオススメはしないわ」

 

あの謎の攻撃からの対抗策が!!!と思ったがやはりそう簡単に物事は進まないらしい。はぁ、くいなはため息をつき

 

「じゃ私とカヤ、カラーはここに残ってます。くれぐれも余計なトラブルは持ってこないでくださいね!!」

 

「ルフィやお兄さんじゃないんだから大丈夫よ!!」

 

じゃ行ってくるわね!!とナミとノジコとレイジュはメリー号から降りて散策に出かけた。

残されたカヤは「珍しそうな植物があったら取ってきてくださいねー」と調合の準備や資料などを片っ端から引っ張り出していた。

 

「カヤって薬の調合も出来るんですね」

「最近ですけどね。Dr.くれはから色々と教えてもらいました。チョッパー君もいるから色んな薬や危険物を作ってるんですよ」

 

「………………危険物って、言った??」

 

なんかカヤの口から言ってはいけないような言葉が聞こえてきた気がした……しかしくいなの予想は、耳は確かだったようで見るからに頑丈そうな箱や、分厚い袋から小瓶を取り出した。

 

「こっちが吸っただけで死んじゃう薬品で、こっちが骨まで溶かす薬品。こっちなんて凄いですよ。空気に触れただけで半径500メートルは吹っ飛んでしまうやく………」

 

「なんでそんなの持ってるのッッ!!!!!!」

 

この海賊団の中でもマトモな部類に、いや、一番マトモな人だと思っていたカヤがなんかとんでもなく怖いことを言っているのだ。

両肩を握って前後に揺らすくいなにカヤは笑って

 

「何が起きるか分かりませんからね。

ウソップさんのサポートするなら少しでもお役に立てるようにと思ったんですよ。ほら、この針だって的確に身体に刺せば回復から心臓停止まで出来るんですよ!!!!」

 

「お願いだから私を一人にしないでッッッ!!!!!!!!!」

 

目の前にカヤがいるのになんか遠くに行ってしまっているカヤに思わず叫んでしまったくいなであった。

 

(……………ここにいる時点でマトモな人、いるのかな……)

 

と、紅茶セットを取り出して現実逃避をし始めるカラーだった。

 

………………………………………

 

「……くいなの声か…近いな……」

 

アッパーヤードの端をグルっと回りながら探索していゾロ達。

初めは船で来ていたがこのアッパーヤードを見つけたゾロは「上陸するか」と言い出しこうして歩いている。

 

本当に言うことを聞かないゾロにチョッパーとバーストは海岸線に沿って歩くということ、ゾロの前にバースト、後ろにチョッパーでゾロを挟んで歩くということで上陸することにした。

 

「聞こえたか?」

耳強化(イヤーポイント)を使えば分かるかもしれねぇけど……」

 

「こっちだな」

 

「「だから勝手に動くなッッ!!!!!」」

 

ちょっと目を離すとどっかに行こうとするゾロをバーストとチョッパーは叩いて止める。

 

「なんでいちいち叩くんだテメェら!!!!」

「お前が勝手に動くと迷子になるんだろうがッ!!!!」

「こんなところで逸れたら、誰が俺達を守るんだよッ!!!!!」

 

「いや、お前らでどうにかしろよ……ってか、お前は元バロックワークスの一員ならどうでもできるだろうが……」

 

「あんな不意打ちな攻撃をどうにか出来る技量はねえ!!!!」

 

またハッキリというバーストに白い目で見るゾロ。

対立、敵として戦った時はまだ力強さというか自信があったのに今では「守ってくれ!!」と気持ちいいぐらいに自信を無くしているようだ。

 

「あのな、こんな海岸線ばっか歩いてもいつか島を一周して終わるぞ」

 

「大丈夫!!ハジメがなんとかしてくれるッ!!!」

「だな!!俺達はとにかく迷わない!無理しない!!だ!!!!」

 

「テメェらは…………」

 

しかし放っておくわけにも行かずにここはゾロが折れるしかなかった。はぁーとため息をつき歩き始めるゾロ達だったが

 

「おい、アレって………」

 

ゾロが指差す方へチョッパーとバーストは目を向けると、遠くの方の海岸線で見たことのある()()を着た二人が言い争っていた。

 

「おい!!また海岸線に出たぞッ!!!」

「だから言ったんじゃないですか……」

 

「うるせぇ!!!コビーだって納得しただろうが!!!」

「ヘルメッポさんが無理矢理行き先を変えたんじゃないですかッ!!!!」

 

「お前がもっと強く止めたらなッ!!!」

「それでもヘルメッポさんはッ!!!!!!」

 

なんか、こんなところまできて変わらない二人を見て安心はしたが一つ、気になることもあり駆け足で二人も元へ

 

「なんでこんなところにいるんだお前ら」

「ゾロさん!!!!みなさん!!!!」

「やっときたのかお前ッ!!!!!」

 

そこにいたのはコビーとヘルメッポ。

ここに来るまでに大変だったのだろう、軍服が汚れて箇所箇所で切れている所もあった。

 

「僕達は一足先にこのアッパーヤードを調査していたんです」

「メリー号が置いてある場所も分かってる。アイツらは無事だ」

 

「そうだったのか…」

「でもよ。いつから抜けていたんだ。全然気づかなかったぞ」

 

バーストがそんなことをいうとズーンと沈む二人。

どうやら言ったらいけなかったことらしいが……

 

「そういえばナミ達が連れ去られた後にお前らいなかったな」

「そういえばじゃねぇよ!!!!!!なんで気づいてねぇんだ!!!!」

「その時まだいたんですよ……でも、僕達だけ抜けた状態で班を決められて………」

 

それを言われて思い出した。

確かにナミ達が連れ去られる前まではいたのだ。

その後、なんでか見当たらなかった二人だが、それでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いくら海軍かもしれませんけど、海賊の一味じゃないかもですけど……そんな……忘れないでくださいよ………」

 

「俺なんて……ゾロ!!長年一緒にいたのに気づかなかったのかよ!!!!!」

 

「気づかなかったな。わり」

「軽すぎるんだよボケがあああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

しかしまったく反省のいろがないゾロ。

これ以上は無駄だと分かったヘルメッポは深くため息をついて

 

「とにかく付いてこい!!皆がいるところにいくぞッ!!!!」

「調査はもういいのか?」

「優先順位は皆さんとの合流です。さぁ行きましょ」

 

………………………………………

 

「こ、これって………」

「そう……そういうことなのね……」

 

アッパーヤードの端。そこに行き着く前ナミとノジコの目にある者が映った。それを見た瞬間に二人は走り出し残されたレイジュもわけも分からず二人を追いかけた。

そして見つけたのが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「この家……もしかしてあの家の片割れなの??」

「はい。きっとそうですよ……」

「つまり、島は沈んだんではなく……ずっと空にあったんです………」

 

モンブランが、先祖が探し続けた黄金郷。

それはこの空島に長年浮き続けていたのだ。

 

………………………………………

 

「エ、エネル様ッ!!!!」

「いっ、一体これは………」

「何が起きたのですか…??」

 

紐の試練"シュラ"、沼の試練"ゲダツ"、鉄の試練"オーム"

ここにはいないサトリを含めたエネル直轄の神官である。

エネルに呼ばれて神壇へ来てみれば建物は全て破壊され、足場である雲は大穴が開いており、そして()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「騒ぐではない……これ程度…明日になれば問題ない……」

 

自ら包帯や布を切り身体に巻き付けていたエネルを見てとてもそうとは思えなかった。しかし神であるエネルにそんなこと言えるわけもなく、むしろエネルの言葉だ、それを信じること以外ないのだ。

 

「これは、敵が攻めてきたのですか??」

「まさかあの野蛮人共がッ!!!」

「いや、それは違う……」

 

確かに。これ程の戦力があるなら一気に攻めていただろう。

しかしここで留まっているというなら……

 

「まさか、青海人だというのですか……ッ!?」

「あり得ないッ!!!!!」

「んんッ!!!んんんッ!!!!!」

「口が開いてないぞッ!!!!」

「ッ!!!!??」

 

いつものようにゲダツは口を開くのをウッカリ忘れてしまうようだ。しかしオームが言ったように青海人がやったというエネルの言葉に驚く事になるが更に

 

「あぁ、そうだ……そしてその中にいるある女には手を出すな」

「なっ!!!」

「んんッッ!!!?!」

「何故ですかッ!!!その女がコレをやったのではないのですかッ!!??」

 

いくらエネルの言葉でも手を出すなという命令に疑問を持つ神官達。主であるエネルがやられたのだ。やり返さないなんてと抗議をしようとしたがエネルが

 

「あの女は……異常だ。何を考えているのか……私でも分からぬ……」

「「「ッッ!!!!!??」」」

 

「いいな。これから1()0()0()()()()()()()()()()()()()()()5()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()神に逆らった罪を嫌というほど味あわせてやる………ッッ!!!!!!!」

 

………………………………………

 

「どうしたのアイサッ!!!!」

「な、なに、この声……ッ!!!!!」

 

女でありシャンディアの戦士であるラキは苦しんでいるアイサに駆け寄る。頭痛のように手で頭を押さえているがこの症状は普通ではない。

 

「お、同じことを…ずっと………こ、怖いよ………」

「もしかして、ここに来た青海人のッ!」

 

コクコクと頷くアイサ。そんな様子を離れたところから見ているワイパーにラキが視線を送り

 

「これは、異常だよッ!!!

いくら神官の一人がやられたからっていま行くのはッ!!!!」

 

「だったらいつやるッ!!!!!!」

 

この空島に突然打ち上げられ、住んでいた場所をお追い出された先祖。そして先祖が約束した"シャンドラの灯"を灯すために。

 

「この機会を逃せというのかッ!!!!いまだ!!!!これで全てを終わらせて取り戻すのだッッ!!!!!!」

 

「「「「「シャンドラに灯をッ!!!!!!」」」」」

 

…………………………………………

 

「と、どいつもこいつも失礼なことを言っているのよ。消していいかしら??」

 

「し、師匠……そんなことしたら…俺がやる意味が…」

「なに??文句あるの??」

「ありませんッ!!!!!!」

 

もう完全に心を折られているルフィ。

かといってウソップもサンジの声も届くわけがない。

このままだと一瞬にしてこの空島が蹂躪される。

 

まさにカラス丸の船内はいま地獄である。

 

「……………まぁ、やったら貴方達の修行にならないから手は出さないわ」

 

「「「………ホッ」」」

 

「でもそうね。何もしないってのも暇だからこの島の調査でもしようかしら」

 

すると周りにある木々から()()()()()()()()()()()()()()()()()。それを見たルフィは泡を吹いて気絶、ウソップもサンジも顔を青くしている。

 

「これぐらいの島ならこれで足りるかしら」

「足りるわね」

「さて、それなら時間は」

「寝る前には終えるわよ」

「そうね。面白そうなものがあったらいいわね」

「あと、ゾロやナミ達も探さないと」

「それでは行きましょうか」

 

一斉に島全体に行き渡るかのように広がっていく小さなロビン達。あの一体でもここにいるロビン同様の力を持っているのだ。それを考えるとたった一人で簡単に国を滅ぼすことが………

 

「…………魔王かよ……」

「あら、魔王なんて失礼よウソップ。

でもそうね、お兄ちゃんの隣にいるためには()()()()()()()()()()()()()

 

「き、基準がぶっ壊れてる…………」



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サバイバルゲーム前

「つ、つまりだ……ここは地上であのおっさんが探している島で、黄金郷がこの島だっていうのかッッ!!!??」

 

「ええそうよ!!!!なんとしても黄金を見つけるわよッッ!!!!!」

 

「見つけるぞオーゴンッッ!!!!!!!!!」

 

全員が無事に生贄の祭壇にたどり着いた。

あの後敵からの襲撃があると思ったが何もなくこうしてメリー号の置かれている祭壇から離れた陸で宴をしていた。

 

「黄金があればもう食料に困らないな!!!」

「だな!!これでマジックに必要な物の買えるぜ!!!」

「欲しかった本と薬品があったんです!」

「俺は酒だな」

「飲み過ぎよゾロ……私も欲しいけど……」

「これで思う存分ファッションショーが出来るわ!!!」

「「それはちょっと………」」

 

大いに盛り上がっている麦わらの一味だが、そのノリについていけてない者もいる。

 

「分かっていると思うけど、すでにメリー号は人数オーバーよ。黄金なんて重たい物乗せたら沈むわよ」

 

「何言ってるんだレイジュ。全く分かってねえな…」

「だな。ちゃんとあるだろう……」

 

はぁーとため息をつくサンジとルフィ。

そしてコビーとヘルメッポの肩を二人がポンッと叩き

 

「「そのための海軍船だろ」」

「ぶん殴るぞテメェらッッ!!!!!!!」

 

完全に保管庫として使用する気満々である。

 

「いいじゃねえかよ。少しぐらい黄金やるからよ」

「んな問題かッッ!!!!こっちはその船は地上にあるんだよッッ!!!!!!!」

 

「ッッ!!!!??じゃ、じゃどうすんだよッッ!!!!!!」

「んなもん、乗せれるだけだろう……」

 

するとさっきまで盛り上がっていた皆様が一気に萎れた。

まるで一気に水分を抜かれた花のように……

 

「それじゃ…何をしにここに来たんだよッ!!!」

「黄金のない空島なんて……ただの空島よッ!!!!」

「黄金が全てなのに……どうしてッ!!!!!!」

 

「なに、訳のわからないことを………」

 

本当に黄金が欲しかったのだろう。普段冷静なナミやカヤが意味不明なことを言っている。

 

「ウソップのそのバックに入れればいいじゃない。

それ()()()()()()()()()()()()()()()??」

 

「………あっ。そうだった………わりぃ、忘れてたわッ!!!」

 

ロビンの爆弾発言と、ウソップの軽い謝り。

しかし普通は激怒するところなのに皆が黙ってしまった。

あ、あれ??と不安になっているウソップだったがいきなりカヤがウソップの両肩を掴んで

 

「ほ、本当なのウソップさんッッ!!!!!」

「ちょっ!!!あ、あぁ、そうだけどよ……ここに入れれば()()()()()()()()()()()()…………」

 

その瞬間にカヤはウソップを抱きつき、周りは大いに喜んだ。

 

「ありがとうウソップさんッ!!!!!!」

「い、い、いい、言ってことよッ!!!!!!!」

 

あまりの出来事に言葉が上手く喋れていないウソップ。

これで問題なく大量の黄金が手に入ることになったが

 

「でも、んなもんよく持ってたな」

「これか?これは前に露店で売っててな」

「おいおい……悪魔の実を食べさせたバックを売ってるか普通………」

 

「だよな………だから一回問い正したかったんだよな……」

「誰に?」

「えっ??それは、えーーーと……あれ??」

「忘れていたら意味ねぇだろうが……」

 

この場にいるが全く見えていない。それどころか存在を忘れられているハジメとベルメール。ロビンだけはどうしてか覚えているのだが…………

 

「私は知っているわよ。というか元凶」

「やっぱりかッ!!!!!」

 

「ちなみにその露店の店主は"オックス"よ」

「お、オックスって、海軍大将のッッ!!!!!」

「なんてやつにやらせてんだよッッ!!!!!!!!」

 

当時はまだ大将ではなかったが間違いなくウソップなんて小指で倒せるほどの実力はありました。

 

「五月蝿いわね。お兄ちゃんが渡しておいてと言ったからやったのよ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()つべこべ言うなら…………千切るわよ」

 

「何をだよッッ!!!!!ってか、白ひげって……まじかよ……」

 

「"ポケポケの実"食べた者のポケットは無尽蔵に物が収納出来る。これなら大量の武器も入るのだけど……まさかマジック道具を保管していたなんてね……」

 

これにはロビンも頭を痛めた、いや、呆れていた。

ウソップなら多種多様の武器を保有してそれを使いこなせると見込んだのだ。本編ではブラメンコという白ひげ海賊団の隊長が使いこなしていた。まぁ、隊長クラスだしこの能力が無くても問題ないだろうと身勝手な考えでポケポケの実を譲ってもらったのだ。

 

現にブラメンコは体中に武器を仕込んでいるようなので、海を泳げるようになったという利点も加えて良かったと思う。

 

とにかく、ハジメの予想では武器を入れていると思ったがまさかこんなにマジックに浸透してしまうとは……

 

「って、いうかよ……"お兄ちゃん"って誰なんだ??」

「いまは覚えてなくてもいいわ。その代わりにその言葉を言うたびに思い出したときの"お仕置き"を楽しみにしてなさい」

 

「楽しめるかッッ!!!!」

「ぞ、ゾロ……お、オレ、し、死ぬかもしれねえ………」

「ひっつくなッッ!!!!!!」

 

冗談よ。と小さな声は届くわけもなくルフィはガクガクブルブルと震えだしていた。正直本当にお仕置きする気だったが、流石のロビンも全く記憶にないハジメに対してのお仕置きは……………

 

「………やっぱり"お兄ちゃん"を覚えてないなんて、罪よね。………全員、お仕置き」

 

「「「「「理不尽ッッッ!!!!??」」」」」

 

………………………………………

 

なんやかんやと楽しんでいる姿をベルメールはジッと眺めていた。ナミもノジコも自分のことを忘れてあんなにも……

それはハジメの能力だと分かってはいるが………

 

「はい。ベルメールさん。少しは食べたほうがいいですよ」

「…ありがとう……」

 

サンジの作った石焼きシチューを注いで持ってきたハジメはベルメールの隣に座り

 

「やっぱり解除しましょうか??」

「……いいえ。ここで出てきたら二人に「なんでチャンスを逃すのよッ!!!」って怒られるわ……」

 

そう言いながらシチューを口にするベルメールだが、それでも未だに沈んだ様子。なんとかしたいとハジメは思うが

 

「…ごめんなさい……」

「な、なんでハジメが謝るのよ……」

 

「僕、ロビンとしかマトモに女の子と話した、というか接し方が分からなくて……あっ、ハンコックは別で」

 

「あぁ……あの子もロビン寄りだったわね……」

 

一度だけしか会っていないがかなりのインパクトを残した。

初対面ではあったがロビンと混じえて言い争ったときにそんな印象を受けた。

 

「だからって、言い訳ですけど…普通の話、というか……うーーん、マトモな?会話ができる気がしません」

 

「自覚があるだけ十分よ」

 

かなり辛口なコメントだが、ハジメにとっては真実だからか苦笑いをし

 

「…………別にいつものハジメでいいわよ。私だってナミやノジコに頼りきりでこうして話すのかなり久しぶりで緊張してるんだから………」

 

二人で話すのは故郷を離れる前。まだそんなに日にちは経っていないのだが、もう何年も経った気になっていた。

 

「それに……私はハジメに好きに…はなってもらってるわよね?」

「疑問はやめてくださいよ」

 

「ごめんなさい。……だから、私は、愛して…欲しいの……」

 

両手をギュッと握り一呼吸おいて

 

「あ、愛してほしいって、言っても……特別なものはいらないの………ただ、ロビンとは違うものが欲しいというか………もちろん、私もハジメに何かしないととは思うけど………」

 

ロビンのように圧倒的な言葉を言ったり出来ない。

相手が嫌になるほどの愛をぶつける事は出来ない。

でも、少しでも何かをとは思っている。そして欲している。

 

それがいま、このチャンスを活かそうとしているが、何も出てこなくて……

 

「"愛されるより、愛したい"……何処かで聞いた言葉だけど、私はそれが一番の愛の形だなーって思うわ。だから、なんて、いうか………」

 

ハジメの胸元を両手でギュッと握って、そして上目遣いで

 

「…………愛しても、いいですか……??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(って、手を出したら殺されていただろうなーロビンに……)

 

チキン。と言われたらそこまでだが、こんな状況下でそんな不謹慎なことは出来ない。というか"そんな"とはなにかよく分からない。"手を出す"という言葉もなんとなく使ったが意味が分からない。

 

…………分からないったら、分からないのだ。

 

まぁ、現在ベルメールさんからギュッと抱きしめられた状態であるのでコレはコレで色々ロビンに追求がきそうな状況である。

当本人はスヤスヤとこの状態で寝ていて、ガッチリホールドしてるので脱出も出来ない。

 

(しかし……ベルメールさんがこんなことを言うなんて……

いや、僕が目を背けていた…というのもあるか………)

 

変わろうとしてたベルメールは知っていた。

でもここまでやるなんて思いもしなかった…知ろうと、しなかったのかな…………

 

「……………まいったな………」

 

きっと、この先も、これ以上に、僕についてくるだろう。

それを僕は拒むなんて、そんな権利はない。

色々と引っ掻き回した負い目もあるだろうけど、きっと、僕も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「………覚悟が足りなかった、わけか………」

 

ベルメールさんはきっと守られるだけの存在なんて求めてない。

こうして僕やベルメールさんに食いついてくるのは、僕らに追いつきたいため。

 

それは急激に変わることはないから焦りもあってこんな形で現れたのだろう。

 

………………なら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ベルメールの髪をそっと触りながら微笑むハジメ。

見せたらきっと手にするだろう。そんなの簡単に想像出来てしまったのだ。

 

思い出すのはウソップのバッグの奥底に眠るものは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



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サバイバルゲーム開始

少しだけ話を戻す。

全員が祭壇に集まった時の話である。

 

「レ、レイジュッッ!!!!」

「心配してくれていたのねサンジ」

 

レイジュの肩を強く握り本当に存在しているか確認したあと、全身くまなく見渡した後にレイジュにそんな事を言われたサンジは

 

「なっ!!!??な、なわけあるかッ!!!!!!!」

「いや、誤魔化せねぇよ……」

 

サンジがどんなに否定してもこの様子を見ればかなり心配していたようにしか見えない。

すぐさまレイジュから離れたサンジは「ば、晩飯の用意だぁッ!!!」と誤魔化して逃げ出した。

 

「嬉しいわね。…本当に、優しい子になったわ……」

「なんだ。昔は荒れていたのか??」

 

「荒れていた、わけじゃないけど……そうね私の家族がちょっとね………」

 

それ以上は語る様子はなかったので空気が読めないルフィもそこで聞くのをやめた。そんなところにロビンが近づいてきて

 

「それで、まだ荒れているのあの愚兄達は」

「劣等と見下していた弟が、今まで全勝していた勝負に、()()()()()()()()()()()()()()仕方ないわ」

 

サンジは一度だけ、離れた家族と向き合ったことがあった。

レイジュがサンジを見つけ出し時は今のよう仲ではなかったが兄妹の中でもレイジュとは良い方だった。だからコツコツレイジュが話をしていくうちに「………一度だけ……なら…」と家族の元に帰ったことがある。

 

しかし、イチジ達や父親の対応は変わらなかった。

ハジメのお陰で国を取り戻したというのにサンジに対して変わりはしなかった。

 

そしてその時サンジとイチジ達は戦うことになったのだ。

イチジ達的には一方的のハズだったが、まさか逆に一方的にヤラれることになるとは………そして父親も…………

 

「よく連絡はくるわ。「サンジを連れてこいッ!!」「俺達が強いッ!!!!」ってね……もう面倒だから最近は無視してるけど」

 

「……いざとなったら私かお兄ちゃんに言いなさい」

 

「………………………………」

「…………………何よ………」

 

「貴女も大概おかしいけど、本当に、変わったのね……」

「喧嘩、売ってるの??」

 

………………………………………

 

「それじゃ、今日のプランを話すわ」

 

翌日。

朝食も食べ終わり黄金探しを始めるぞー!!と意気込んでいたルフィを一撃で沈めたロビンは全員を集めてそう告げた。

 

「お仕置きコースを選びなさい。

関節技24時間耐久。ミニ分身体による蹂躪。私との訓練。

さぁ、どれがいいかしら??」

 

「「「「「黄金はッッッ!!!!!??」」」」」

 

「もう見つけたわ。敵も追尾してるわ。

あとは全て蹴散らして奪うだけ。だからお仕置きを決めなさい」

 

ミニロビンを大量に放ってそんなに時間は経っていない。

昨晩としても7〜8時間しか経っていないのに………

それよりもロビン的には仕方ないとはいえ、やはりハジメを忘れたということが気に食わないらしい。

 

「け、軽減する方法は……」

「………そうね。予定通り"お兄ちゃん"が言っていたようにあの"クソ雷"に一撃入れればチャラね。それか1人20人以上か、神官1人かしらね」

 

「ま、まだ、大丈夫だな……」

「が、頑張らないと………」

 

「ルフィ。貴方はダメよ。お仕置き全コース決定」

「なんでッッ!!!!!!??」

 

お仕置きが回避出来ると安堵していたルフィだったが、突然のロビンの言葉に驚く。

 

「嫌なら、私をここまで不機嫌にさせた奴の心も身体もズタボロにしなさい。そしたら……そうね……そろそろ常時ギア2までの使用を認めてもいいわ」

 

「ほ、本当かよ師匠ッッ!!!!!??」

 

「あとお兄ちゃんの許可もいるけどね。今回も一撃だけギア2は使っていいわ。言っておくけど"レッド"なんて使ったら……………私が貴方に天罰を与えるわよ」

 

「はいいいぃッッ!!!!!!!」

 

その時、本当に神……というか邪神に見えたことは、ここにいる皆は絶対に口に出さないようにと強く、強く誓ったという……

 

…………………………………………………

 

「俺はやるぞおおおおおぉぉッッ!!!!!」

「「うおおおおおッッッ!!!!!!」」

 

「うるせぇな……」

「でも、私達も頑張らないと……お仕置きなんて……」

 

ロビンの指示により2班に分かれることになった。

どちらとも敵を倒すことを前提に"黄金回収班"と"メリー号脱出班"で分かれたのだ。

 

黄金回収は文字通りであり、すでにロビンがどこにあるか把握しているのでそこまで取りに行くだけ。しかし向こうは心が読める為に場所は教えてもらっていないので各自にミニロビンが渡されている。

 

『言っておくけどこんな私でも』

『一秒もいらずに貴方達を』

『沈めることなんて簡単よ』

『よく、理解しておきなさい』

 

と、各自に渡されたミニロビンに言われているので下手なことをすればその場でお仕置き決定になるので……すでに、緊張感がマックスなのは間違いない。

まあ、基本口出ししないということなので各自のポケットなどに待機している状態ではあるが………悪口なんて言った日には即反応して対応する優れたミニロビンなのである。

 

で、その黄金回収班に任命されたのが、

ルフィ、ウソップ、チョッパー、カヤ、ゾロ、くいな、コビー、ヘルメッポ。

 

残りがメリー号脱出班で、

サンジ、レイジュ、ナミ、ノジコ、キロロ、バースト、カラーである。

 

………………ちなみにギンとカルーは未だに帰ってきてません。

というか、迎えに行ってないのでまだダイアルをかき集めているはずである。

 

『それじゃ貴方達』

『ここからバラバラに別れて』

『行動してもらうわ』

『目標人数に達しなかったら』

『その場でお仕置きよ』

『さぁ、散りなさい』

 

「ま、待ってくれよ!!黄金回収はどうなるんだよッッ!!!!」

『心配しなくていいわウソップ。私達の言うとおりの道を辿れば最終的に全員が黄金の場所にたどり着くわ』

 

「ま、マジかよ……」

 

『ナミ達にも()()()()()()()()()()()()()()()()()。それでも、全員が合格出来ないようになってるから……言ってしまえば早いもの勝ちね。あまりのんびりしてると……お仕置きが待ってるわよ』

 

それを聞いた瞬間に、あのマトモなカヤでさえ危険を察知して一斉に飛び出した。

 

「カヤーッッ!!!無理はするなよ!!でもクリアしろッ!!!!」

「うん!私、頑張るわ!!!!」

 

「お、オレ!!自信がねぇーよッ!!!!」

「チョッパーさん!!手伝いたいのは山々ですが僕もお仕置きは……」

「コビー!!さっさとしないとルフィとゾロとくいなに人数を持ってかれるぞ!!!」

 

「いい機会だ。久しぶりに勝負するか?」

「いいわよ。人数が多いほうが勝ちね」

 

「雷野郎はどこだああぁぁぁッッ!!!!!!」

 

それぞれがお仕置きを回避するためきに走り出す。

 

………………………………………

 

『ということで、ここにも敵はくるわ。最悪メリー号は手放しても大丈夫よ。この子はお兄ちゃんの力で傷一つつかないし、私が残っていればメリー号にたどり着くから』

 

「つまり、俺はレディ達を守るナイトを………」

「何言ってるのサンジ。本気で数をこなさないとお仕置きがくるわよ」

 

「んなことは分かってるだよ!!……最悪、覚悟を決めて守るぐらいはあるってことだ……」

「そう。姉としても無意味なお仕置きは避けてほしいから頑張りなさい」

 

ナミ達の所にもミニロビンが説明をし、サンジがヤル気になっていたところだった。それもキチンと自分のことも勘定に入れていることを知ったレイジュはそれだけで十分だった。

 

『言っておくけどレイジュ、貴女も参加対象よ。分かってるのかしら??』

 

「ええ。()()()()()()()()()

 

『そう。ならいいわ』

 

そんな会話をしていると早速敵が、それもゲリラ部隊がこっちに向かって来ている。見た限り歩兵的な者達だがそれでもざっと見て20人はいるだろう。

 

『さっそく来たわよ』

 

まだ距離がある。

それぞれ戦闘態勢に入る中プランを決めていると言ったレイジュは、戦闘態勢に入るどころかマストに背を預けて腕組みしている。

 

「ちょっ、ちょっとレイジュ!!!??」

「私はいいわ。やる相手は別にいるから」

 

その余裕の態度に少し戸惑ったがキチンと考えがあるのだろうと頭を切り替えて目の前の敵を迎える。

しかし何故だろうか……やたらとゲリラ部隊の目が怖い気がするのは……

近づいてくるゲリラ部隊達が何かを言っているようで、近づいてくるその声に耳をすますと

 

「青海人殺す!青海人殺す!!」

 

と、かなり叫びながらキレているのがハッキリと分かる。

なんでここまでキレているのか、ほとんど関わりがなかったゲリラ部隊に対してそんな疑念を持ち言葉にしたところで

 

「なんか物騒なこと言ってるわよッッ!!!!」

 

『あぁ。敵勢力全てに"このアッパーヤードは青海人の物だからさっさと出ていけ。この部外者共"って言っておいたの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「余計なことを言うんじゃないッッッッッ!!!!!!!!」」」」」

 

と、トンデモナイ爆弾発言が落とされました。

ただでさえ敵になる相手をさらに激情させるなんて……

 

『どうせ倒すのだから過程なんて関係ないでしょう』

 

「「「「「悪魔かあぁッッ!!!!??」」」」」

 

しかしそんな事を言っていても敵は攻めてくる。

ロビン以外の誰もがため息をつき

 

「でも、まぁ」

「向かってくれるのは」

「いいことよね」

「確かに、こいつは楽だな」

 

「一気に蹴散らす!!」

「こっちにも回してよね」

「倒すって、戦闘不能ってことでいいの?」

 

『構わないわ』

「なら、やりようは、ある」

 

始まるサバイバル。果たして何人残るのか??

その開戦がここから、始まる。



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"毒蛇"(ピンク·スネーク)

「ガハッ!」

「これで、終わりね」

 

敵の襲来にあれだけ騒いでいたのに戦ってみればあっという間に圧倒的な大差で勝っていた。

ナミの棍棒が敵の頭を直撃したところで向かってきた敵全てが倒れており、誰一人息も上がらずに倒せたようだ。

 

「へぇ。強くなっているじゃない」

「そりゃ、あんな地獄のような特訓に比べたらな……」

 

タバコに火をつけながら特訓を思い出すと寒気がし、思わずタバコを落としそうになるサンジ。この姉弟、結局なにもせずにナミ達に任せた状態で観戦していた。

初めはサンジも出る気だったが「やめなさい。ザコの人数くらい上げても問題ないでしょう」とレイジュが静止しさせていた。

 

実際に向かってきた敵はザコであった。

それなりに強かったとしたら昨日戦ったあのサトリという神官だけ。

 

そしてその神官と同等の強さを持ったのがあと3人、そしてゲリラにも数名いるとミニロビンから話は聞いていた。

 

『貴方達は親玉か神官だけにしなさい。そうしないと確実に誰かがお仕置きになるわよ』

 

「その言い方だと、したくないような感じね」

 

『しなくていいならしたくないわ。お兄ちゃんとの時間が減るのだから』

 

そこは仲間の心配じゃないのかよ。と会話を聞いていた周りは思ったが絶対に口にはしなかった。

 

『とにかく、そこら辺のザコをやるよりも"マトモな相手"を倒しなさいということよ。ここは空島。普段よりも身体を酷使しているようなものなのだからここでの経験は地上に戻ってきたときに数段強くなってるわ』

 

酸素の薄い場所での特訓では酸素が足りないために身体に負担が大きくかかる。しかしそれを乗り越えれば身体能力の向上が見込めるのは確かである。

 

『ということで、いまから来る奴はサンジとレイジュで対応しなさい』

 

「それって……」

「青海人もなかなかやるようだな」

 

ロビンの言葉に聞き入っていたから気づかなかった。というわけではない。文字通り突然このメリー号に現れたのだ。

一斉に背後に振り向くとそこには耳たぶがやたら長く、そして人を見下すような、そんなニヤついた表情でリンゴを噛りながら立っていた。

 

「て、テメェは……」

「私は"神"だ」

 

「神だと?なに、ふざけ」

 

最後まで言葉は続かなかった。

神と名乗るものは人差し指をサンジの方に向けるとそこから電撃が放たれたのだ。

天から放たれるその神の雷がその指先から放たれてサンジの身体を貫いた。

 

一瞬にして電撃に打たれたサンジの身体から煙が吹き上げその場に倒れ込む。

 

「サンジッッ!!!!!!」

「ほう。貴様は私の放った"神の裁き(エルトール)"を耐えたのか。それとも……まぁ。いい」

 

次はその指をレイジュに向け電撃を放った。

サンジと同じように身体を貫かれると思ったが、レイジュの身体全体に非導電率の高い毒を纏っていており、さらにその毒の表面に逆に電気の通りやすい毒を張っていたため、その毒を伝って電撃は地面に流れた。

 

「なるほど。私の電撃を受け流したか……面白い」

「受け流すだけだと思う??」

 

今度はレイジュが毒をまとめ上げて作り出した毒蛇を

 

「"毒蛇(ピンク·スネーク)"ッッ!!!!」

 

さっきと同じように非導電率の高い毒により作ったそれで攻撃すればダメージを与えられる。しかしそれは向こうも分かっていたようで、そして攻撃してくる軌道が分かっているかのように最小限の動きで攻撃を躱した。

 

「受け流す程度のモノで私に攻撃が当たるとでも思ったか?」

「その割にはしっかりと避けたわよね」

 

「得体のしれないものに触れたくないだけだ」

「ただ怖かった。だけじゃないの??」

 

その言葉に怒りが見えた。飄々としていたのに目つきが変わりレイジュを睨んでくる。レイジュも対抗するように睨み返す。

 

「…………面白いな、女。我が名は"エネル"」

「レイジュよ」

 

睨み合いからただの自己紹介。で終わるわけもなく、次に放つ言葉がトンデモなかった。

 

「私の、"女"になれ」

「嫌よ」

 

と、エネルの爆弾発言からのレイジュの即断り。

急展開なこの状況にナミ達もどうしていいのか分からない。

そんな中、倒れていたサンジが

 

「……なに、寝ぼけたことを…言ってやがる………ッッ!!!!!!」

「ほう。あれだけの電撃を受けてもう立ち上がるか」

「…サンジ……」

 

ふらふらになりながらも立ち上がったサンジはエネルの方をしっかりと見たあとに

 

「そいつが欲しいなら……まずは俺を倒してみやがれッッ!!!!!」

「いいのか?すぐに終わるぞ」

 

瞬間に、一瞬にして目の前から姿を消したエネル。

そして瞬きも出来ない時間でエネルはサンジの背後に回り込みその手から放出している電撃の塊をぶつけようとした。

 

しかしサンジは野生の勘。というものなのか。本能なのか。

背後に回り込まれるという想定もしていなかったのにも関わらずに自然に身体が動いたのだ。

 

片脚を軸に一気に後ろにいるエネルに蹴りを。

その行動に多少なりとも驚いたエネルは少しだけ回避するタイミングが遅くなり、手に集めていた電撃をサンジの蹴りでかき消されてしまった。

 

もちろん蹴ったものは電撃のために一気にサンジの身体を電撃が駆け巡ったが、それを喰らったような表情も行動もせず平然に

 

「すぐに、何が終わるんだ……??」

「なるほど。少しは、楽しめそうだ……」

 

またしても一瞬にして姿を消したエネル。

また背後にと警戒をするが現れず四方八方と見渡すがエネルは姿を表さない。この状態で死角からの攻撃はマズイと冷や汗をかくサンジにレイジュがその背中を、背中合わせにより互いが互いを守る形を作った。

 

「おい。レイジュ。背中がピリピリしてイテェんだが」

「しょうがないの。この毒は麻痺系なんだから」

 

それでも離れない二人。

いまここで背後を取られるのは非常にマズイ。

ただでさえ移動する瞬間がほとんど見えないのだ。

せめて正面から来てもらわないと………と、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なるほど。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に反応し振り向いた先。エネルはメリー号から離れた木の枝に座ってこっちを眺めていた。どうやらどんな動きをするか確認するためだろう。

 

「あの女がいるのならばと、離れてみたが……無駄だったようだな………ゲームは始まったばかりだ。貴様らは最後に狩るとしよう。それまで精々生き残れ」

 

「待ちやがれッッ!!!!」

 

サンジが制止しようとした時にはすでにエネルの姿は消えていた。

いなくなったことが分かり張り詰めていた緊張が溶けてナミ達はその場に座り込んでしまった。

 

「あの野郎……完全に遊んでやがった………ッッ!!!!」

「そうね。そして私も、全然届かなったわ………」

 

分かっていた。見逃されたことに。

ここでエネルが本気になれば簡単にここにある仲間達は倒されてしまう。サンジとレイジュがエネルに興味を持たれそして気まぐれで帰ったことで助かったが………

 

「………一撃。なんて…甘えたことは言えねえな……」

「そうね。やるからには……」

 

「「アイツをぶっ飛ばすッッ!!!!!」」

 

………………………………………………

 

「…………………………ザコね」

 

エネルが警戒していた女。ロビンはいま黄金の鐘楼の前にいた。

サンジ達のポケットの中にいるミニロビンから情報をリアルタイムで見ていたが、ロビンからすればエネルは全く話にならなかった。

 

現にエネルが見つけられなかった鐘楼も、ここにロビンがいることさえまだ気づいていない。

 

いくら見聞色の覇気が、ゴロゴロの実によって増幅された覇気だとしても()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

近いレベルか同等ならば察知出来るがここに来ない時点で底が見えた。

 

「まだ始まったばかり。二人とも、いえ、()()はこのサバイバルゲームでどれだけやれるか……」

 

それはここにいない剣士達に向けたもの。

そしてその二人は…………

 

「…………くいな……」

「………また、なの………」

 

別れた筈なのにすぐさまに出会うこの二人。

ゾロは迷い、くいなは目的通りに進むのにどうしてかお互いがお互いに引かれるように出会ってしまうのだ。

 

「マジでいい加減にしろよな!!」

「こっちのセリフ!!!ゾロ、いい加減に自分が迷子体質って分かってよ!!!!」

 

「何言ってやがる!!!お前だろうが!!!!」

「お願いだから付いてこないでよ!!!!!」

 

そう言い合いして別れた二人だが、これから敵に出会うまで何度か二人が遭遇して言い合いするのは必然であった。



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77人

「本当に大丈夫かな…カヤのヤツ……」

『心配性ね。いくら愛しい彼女だとしてもやり過ぎは嫌われるわよ』

 

「か、彼女じゃねぇッッ!!!!!////

それに、ロビンにだけは言われたくねぇな………」

 

『死にたかったのね。ごめんなさい。気づかなくて』

「俺が馬鹿でしたッ!!!だから殺さないでッッ!!!!!!」

 

周りからしたら一人でも騒いでるだけに見えるがポケットに潜んでいるミニロビンとコントのようなやり取りをしているウソップ。

 

ミニロビンの指示通りに進んではいるが

 

「しかし、全然敵に会わねぇな……」

『心配しなくてもあと2分で遭遇よ』

 

「いるのかよッ!!!!ってか、どんだけ掌握してんだ………」

『そうね。いまはお兄ちゃん達以外の空島全てかしら…』

「か、神かよ………」

 

違うわ。とキッパリと否定するミニロビンだがウソップからしたらそんな規格外なことが出来るのは神様ぐらいだと思う。

それでもそんなロビンよりも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と気になってはいた。

 

しかしそれを聞こうとすると間違いなく制裁がくる。

覚えてない。ロビンからしたら忘れているようだが……とにかくこの話を続けるとマズイと思ったウソップは

 

「じゃ、そいつを倒したらお仕置きは無しなのか??」

『そうね……いいわ。ただし、"マジック"の使用は禁止よ』

 

「ちょっ!!!ちょっと待てよッ!!!!んなもんされたら俺はッ!!!!」

『貴方のマジックは相当なものよ。それは認めてあげるわ』

 

突然の使用禁止に戸惑うウソップだが、ロビンからまさかのお褒めの言葉に言葉が詰まる。

 

『マジックは所詮マジック。だけどウソップのマジックは間違いなく戦闘に特化してゾロやサンジの次に強いわ』

 

「そ、そんなに褒めなくてもよ〜〜ッ!」

 

『だけどそれだけよ。さっきも言ったように所詮はマジック。ネタが尽きたときウソップ、貴方はどうやって戦うの??』

 

「そ、それは………」

 

『ここまで言えば分かるわね。やってみなさい』

 

そしてタイミングよく、ウソップがこれから試されるために用意された相手が現れた。大きな鳥の背中に乗り大きな槍を持つ敵が

 

「祭壇から出てきたのか。あぁ、なんとも腹立たしきッッ!!!!」

 

ウソップを見てすぐに怒り狂う敵は、額にゴーグルをつけており、まるでパイロットのような姿をしている。

後ろに控えている部下たちも同じような格好をしており、部下たちはウソップを取り囲むように配置についた。

 

「我が名はシュラ。

愚か者への怒りの求道思い知れ!!!紐の試練ッッ!!!!」

 

…………………………………………

 

「みんな、大丈夫かな……」

『心配性ね。まだ誰も死んではないわよ』

 

「いや。そこまで考えてねえけど……」

『そう。でもチョッパーは猛獣のエサとして狙われやすいから気をつけなさい』

 

「俺が一番危険なのかよッッ!!!!??」

 

敵には遭遇しないが確かに大型の猛獣が現れては追い払ったり逃げたりしていたチョッパー。なんかおかしいなとは思ったがまさかエサとして見られているなんて

 

『トナカイなんて所詮はシカの仲間。肉食動物にとっては格好の餌になるわね』

 

「はっ!!!そういえばドラム王国でもよくオオカミに狙われていたような…………」

 

『大丈夫よ。サンジに頼んで残骸は、骨さえも残さずに使い切るわ』

 

「喰われる前提で話すなよッッッ!!!!!!」

 

ヒルルクやドクトリーヌ達とよく街へ向かうときに会うオオカミがジィーとこっちを見ていていた。襲われたことはなかったが今思えばあの目は獲物を狙う目。ただチョッパーがすでに倒せない獲物だと分かっていたので遠巻きでしか見れなかっただけであり、チョッパーは常に肉食動物のいい餌として見られていた。

 

『それじゃ生き残って見せなさい。もう敵は来るから』

「おっしゃーッ!!!!やってやるッッ!!!!!!」

 

どんな獰猛な動物でも倒してやると気合を入れるチョッパー。

ガサガサともの音がし、その茂みから現れたのは

 

「ン!!ンンンンンッ!!ンンンンンンッッ!!!!!!!」

「な、なんだコイツはッッッ!!!!!??」

 

獰猛な動物ではなかったが、ある意味それよりもヤバイのが茂みから現れた。

 

………………………………………

 

「いいわね!!絶対に私達を守りさないよ!!!!!」

「ふざけるな!!!自分で自分の身を守りやがれッッ!!!!」

 

「こっちはカワイイ女の子よ。何言ってるの??」

「マトモなやつはいねえのかよこの一味はッッ!!!!!」

 

神と名乗るエネルが離れたのだが、それを追いかけるとサンジとレイジュがメリー号から飛び出したのだ。あんな速さ追いかけれるわけがないといったが「おおよそなら私が分かるわ」とレイジュが言った為にナミの静止も聞かずに飛び出したのだ。

 

その為に主力となる人がいなくなった為に残された男であるバーストに白羽の矢が立ったのだが、こうやってタダをこねていたのだ。

 

「ワガママ言わないの」

「おい。言っとくけどお前は絶対にねえぞ」

 

「どうして?私もカワイイ女の子」

「ふざけるな!!俺達3人の中で一番怖ぇー奴が何言ってやがるッッ!!!!!!」

 

決して戦闘力が高いわけではない。

しかしカラーの使う"カラーズトラップ"は武装色の覇気を使用したものであり本編よりも効果が強くなっている。

深層心理を利用して催眠術のような効果だったが、それよりも遥かに強力であり()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と思われるほどの実力。

 

それだけ力があればMr.3よりも上の人間と組むだろうが、カラーとしてあまり働きたくないので手も抜いていたためにポジションがあそこであった。

 

つまりはどうあがいてもカラーズトラップが発動すれば勝てる見込みがない相手。なのでそんな相手を守る必要はないと言っているのだが

 

「あのコックを見習うべき。だからモテないのよ」

「余計なお世話だッッ!!!!」

「キャハハハッッ!!!!ウケるわ!!!!!!」

 

キロロは完全に傍観を決めていた。いくらペアでも"守る"という概念はない。あくまでもビジネスパートナーだっただけでありいまはただの同じようにこの一味の為に働く一人である。

 

賑やかにしているそんな様子をノジコは舵を手に取りながら眺めていた。もちろん周りからまた敵が現れると警戒していたのだが……

 

「………あれって……ナミ!ちょっと来てッ!!!!」

 

何かが見えたノジコは判断を仰ごうとナミを呼ぶ。

どうしたのかとノジコの指差す方を見てみると

 

「お、お前らッ!!!ここから出てけッ!!!!」

 

小さな身体で、両手でナイフを構えて震えながら、どう見てもこのメリー号まで来る手段もなく、ミルキーロードの外、アッパーヤードから叫んでいる女の子がそう叫んでいた。

 

それを見たノジコはなんでこんな所に子供が、と考えたがすぐにその考えはある懸念に一気に書き換えられた。

 

何故か隣からの息遣いが荒くなっている。

そぅーと見てみると目がまるで獲物を取られるかのような……

あぁ。これは久々にみるナミの病気。

 

「に、逃げてッ!!!!」

「へぇ?な、なに………」

 

「か………か、かわ………」

 

ノジコが女の子に逃げろと叫んだが時すでに遅し。

ナミはメリー号の縁に立ちそして女の子目掛けてこう叫びながら飛んでいった。

 

「カワイイ女の子見つけたあああああああああああああぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!!!」

 

「きゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!!!!!!」

 

いくら見聞色の覇気を、ここでは心網(マントラ)を使えていても、避ける力と異常な人の前では無力だということをここで初めて知ったアイサだった。

 

………………………………………

 

「あぁ!?アイサがいねえだと……」

「そうなの……途中で逸れたみたいで……」

 

エネルを倒すために進めていた兵を止めて女戦士であるラキから話を聞いていたワイパー。ここはアイサを探すために力を貸してと言おうとしたラキだったが

 

「知るか。勝手に付いてきたんだ。自業自得だ」

「そんなッ!!!アイサはまだ子供でッッ!!!!」

 

「俺達は"戦士"だぁッッ!!!!ここで止まるわけにはいかねんだッッ!!!!!!」

 

ワイパーの言葉と迫力に思わず後退するラキ。

しかしここでアイサを見過ごせないとまた一歩踏み出すその姿に

 

「仲間をそんなものに引き裂かせれねぇ。探すならテメェ一人で探せ」

 

「ワイパー………」

 

「行くぞお前らッ!!!!!エネルを倒すんだッッ!!!!!!」

『おおおおおおぉぉぉッッ!!!!!』

 

止まっていた軍が一気に動き出しラキだけが取り残された。

止めようにもあんな仲間を止めることは出来ない。

ラキも同じようにエネルを倒したい思いは強いのだ。それでもいまはアイサを見つけないと気持ちが強いだけの話で……

 

とにかくアイサを見つけないと、気合を入れ直して、

その場で方向転換して、振り向いた、先に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見捨てられたか小娘??」

「ッッ!!!!??エ、エネ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これであと77人」

 

身体から煙を出し倒れるラキを無感情で見下ろすエネルはまたその場から一瞬にして消えたのだった。

 



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ナミ&カラー戦

「なんなのこの生き物(女の子)はッ!!!もう離さないわッッ!!!!」

 

「ぎゃあああああぁぁぁッッ!!!!!」

 

完全ガッチリボールドによって抜け出せないアイサは叫びながらジタバタしていた。強気なのに身体は震えて、涙目になりながらも堂々した態度を取ろうとし、決め手が背中に生えた羽である。ナミからしたら"エンジェル"としか見えてない。

 

「私に舞い降りたエンジェルなのね!!!離さない!!離さないからねッッ!!!!!」

「は、離せッッ!!!!私は"戦士"なんだ!!!!!」

 

「ええ。"天使"よね」

「都合のいい解釈するなッッ!!!!!!」

 

こうなったらどうあっても離さない。

見た限りでは襲ってきたゲリラ達の仲間ではあるがこんな幼い子が戦闘に立つのは考えづらく、心配になったノジコの"お姉さん"が出てきて

 

「もしかして迷子なの??」

「誰が迷子だッッ!!あたいはお前らを倒しにッッ!!!」

 

「"あたい"って……なんてカワイイのッッ!!!!!」

「もう!!何なんだこの女はッッ!!!!!!!」

 

ナミのせいで話が進まないので姉であるノジコが強制的にアイサから引き剥がした。それでも抵抗するの隣で"待て"と待機状態にしておいた。

 

これ以上余計なことをすると本気で引き剥がすと脅したら効果テキメンというやつである。

 

「それで貴女達も黄金を狙ってるの??」

「なんだ"オウゴン"って??私達はこの"大地(ヴァース)"を取り戻すために戦ってるんだッ!!!!」

 

「ヴァースって……これのことを言ってるのよね??」

 

ナミが下に視線を向ける。

普段から見るこの光景、それがこの空島では

 

「そうだ!青海人では当たり前でもここでは貴重なものなんだ!!!そしてこのヴァースは昔先祖がこの空島の住人に奪われた…………私達のヴァースなんだぁッ!!!!!」

 

その言葉を聞き色々と背景が見えてきたナミ。

かつて地上にあった土地、黄金郷。突如消えてその黄金郷がこの空島にあり、そしてその住民達と空島の人達の戦い……

 

「………なるほどね。エンジェルから見れば空島の住民がこの土地を強奪した悪者。で、空島の人達からすれば願ってもない巨大な土地。お互いに譲れなかったわけね………」

 

「………だけど、アイツらが来てからは違うんだ……ここではない何かを探しているんだ………そいつらが来てからここは…」

 

つまりあの"神"と名乗っているエネルは余所者らしい。

そして強引にその神の座を奪って好き勝手にやっていると……

 

「あんなやつら………さっさと出ていけばいいんだ……ッッ!!!!」

「……エンジェル………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一生懸命背伸びしてる………カワイイわ

 

「人の話をちゃんと聞けよッッ!!!!!!!!!」

 

カワイイのがいる時点でシリアスなんてものは、ない。

 

………………………………………

 

「あ奴らは……何をしているのだ……??」

「さ、さぁ………」

 

空の騎士、ガン·フォールにお願いをしてナミ達のいるここまで連れてきてもらったのだが、さっきから奇妙なことをしている姿にどうも近寄れずにいたコニス達。

 

上空から見ていたのだが突然背後から気配を感じた空の騎士はピエールの手綱を引き急旋回。その直後にさっきまでいた場所へ炎が通り過ぎていたのだ。

 

「こんな所にいたのか空の騎士」

「ここで仕留めればエネル様もお喜びだ」

 

「お、お前らは………ッッ!!!」

 

そこに現れたのは瓜二つの顔をした神官。

双子である、いや、()()()()()()()()()()()()()ホトリとコトリが襲いかかってきた。

 

「だけどまずは……」

「弱いやつから、だッ!!!」

 

「しまったッッ!!!」

 

まんまるな身体付きの見た目とは裏腹にとんでもなく速く空の騎士の横を通り過ぎてメリー号に一直線に降下する二人。

大樹の幹を踏み台にして勢いを増したために、ピエールの飛行速度ではどうやっても追いつかない。

 

ナミ達はまだ気づいていない。このままでは不意打ちにヤラれると焦っている空の騎士を余所に、ホトリとコトリは攻撃態勢に入っていた。

 

「まずは」

「一人だ!!」

 

確実に仕留めるためにホトリとコトリは手に仕込んであるダイヤルを……

 

「クッ!」

「マッ!」

「「はっ!!」」

 

突然、ナミとホトリ達の間に現れた2頭のクマ。

その白黒のクマ達の手がホトリ達に襲いかかる。

 

「「クママアアアァァッッ!!!!!」」

「「アバボベザガッッ!!!!!」」

 

見事に右フックが決まった。ホトリとコトリは頑丈なメリー号の甲板を滑りながら壁に激突した。こちらも壊れてない。

 

「シロ!!クロ!!!」

「また敵襲かよッ!!!!」

 

危機一髪な所を助けられたナミはシロとクロに抱きつく。

突然の敵襲にバーストは周りを見渡してみるとさっきより敵の人数が増えている。

 

「クソがッ!!!どんだけ狙われてるんだよッ!!!!!」

『私が誘導してるからよ』

「ふざけんなッ!!!!」

 

そう。結局はロビンの掌の上。

悪態を付きつつもメリー号から降りたバースト。それに続いてキロロとノジコ。

 

「加勢するわ。あっちはナミとカラーで十分でしょうから」

「キャハハハハ!!!そうね、きっとザコは全部こっちに回ってくるんじゃない」

「本当に………面倒くせえッ!!!!!!」

 

………………………………………

 

「向こうに行かなくていいのカラー」

「うん。このクマ達と一緒の方が生き残れそうだから」

 

打算がスゴイカラー。それでもこちらも一筋縄では倒せそうにはない。

シロとクロの攻撃を喰らってもまだ立ち上がるホトリとコトリ。そしてこの二人は本当にそっくりであり

 

「さぁ、どっちがどっちか分かるか??」

「ホトリの左手には『炎貝(フレイムダイヤル)』、右手には『斬撃貝(アックスダイヤル)』。コトリの左手には『衝撃貝(インパクトダイヤル)』、右手には(ガス)をためた『匂貝(フレイバダイヤル)』が装備されているんだぞ」

 

クルクルと周りながら自分達の持っている武器を説明する。

普通ならそんな馬鹿なことはしないが、今回に限ってはそれが精神的に追い詰める。

 

全くそっくりな二人が持っている個々のダイヤル。

警戒すれば問題ないが、こうやって誰が何を持っているか認識出来ないと対応しづらくなる。

 

下手に動けばやられるのは自分達。

踏み出せないと迷っているとホトリなのかコトリなのか、一人が手をこちらにかざした。

 

とっさにシロとクロがナミを守ろうと防御を取ったのだが、出てきたのは(ガス)

そのクサさに思わず鼻を押さえてしまった。

 

そしてもうひとりが手から火を……

 

「"カラーズトラップ"『停止の赤』」

「う、うご……」

「けない……ッッ!!!?」

 

ガスに引火して爆発寸前のところでホトリとコトリが動けなくなった。足元を見るといつの間にかカラーが書いたカラーズトラップを二人が踏んでいたのだ。

 

「足元を見ないなんて、ダメダメ」

「た、助かったわ……」

 

「いいの。それより……」

 

いきなりカラーはナミの顔に急接近して

 

「な、なに……!?」

「私も、可愛がりたいの」

 

「………えっ??」

「貴女ほどではないけど、カワイイは好きなの」

 

「えーと、つまり……」

「あそこで隠れている子をあとで一緒に、モフりましょう」

 

「乗ったわッッ!!!!!」

「乗るなバカアアァァァァッッ!!!!!!!」

 

いつの間にかナミ達から離れて隠れていたアイサだったがまさかの厄介者が増えたことにより思わず叫んでしまった。

そして新しい"カワイイ"仲間が増えたことによりやる気になったナミは、さっさと終わらせようと未だに止まっているホトリとコトリを交互に見て

 

「ということで、2度と私達の楽しみを奪われないように……彼方へ吹き飛ばすわね♪」

 

クリマ・タクトをTの形に変えたナミはその上部を空に向けた。すると上部がグルグルと回転しだし、その回転力が増せば増すほどそこから強烈な風が生み出されていき、そしてその風は巨大な竜巻となっていく。

動けなくなったホトリとコトリの前にシロとクロが立ちボクサーばりのアッパーカットを食らわせて舞い上がった二人に向けて、風の渦が放たれた。

 

「サイクロン·テンポッッ!!!!!!!!」

「「ギャアアアアアアアアァァァァッッ!!!!!!!!」」

 

飲むこまれた二人はそのまま空へと飛んでいき、サイクロンごと空の果てへと消えていった。

 

しかし、こんなことがあったのに未だにメリー号は無傷である。

 

「な、なんなの……これ………」

 

そんなあり得ない出来事に呆然としていたアイサは、残念ながら逃げ遅れてしまった。そう、気づいたときには両隣に、悪魔が………

 

「ねぇカラーは、どんな風にモフるの??」

「やっぱり頬ずりが一番。でもセットとしてヒラヒラ洋服は欠かせない」

 

「分かってるわねー!!なんでもっと早く言わなかったのよ!?」

「"カワイイ"はとてもデリケート。見極めが必要だった」

 

「で、私はどう??」

「完璧」

 

普段のカラーからは見せないグゥーサイン。それに応じるナミ。

二人はもう同志。そんな二人からアイサは、生きて帰れるのか??

 

「じゃ、まずは……」

「ヒラヒラ洋服にチェンジ」

 

「い、い、イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァッッッ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだ、アイツラは………青海人とは、分からん………」

 

メリー号から離れひと休憩していた所に襲いかかるゲリラ達。

しかしすでにエネルにより倒されており、立っているのはただ一人。そしてさっきまで刺客を送り込んだ二人の様子を伺っていたのだが、ある青海人二人が訳の分からないことをしているために困惑していた。

 

しかし、そんな思考はさっさと切り離し、改めていまいる人数を数え直した。

 

「これであと52人、いや………」

 

エネルが倒した分とメリー号の周りにいた者達から"声"が聞こえなくなった。これで半数近くかと思っていたのだが、

 

「どうやら5()0()()()()()()()()…なッ!!」

 

離れたと、撒いたと思っていたがどうやらしつこかったようだ。

エネルの前に現れたのは倒した筈の二人組。

そして未だに向かってくる、異常な二人組。

 

「……うるせぇ。テメェは俺がオロすッ!!!!」

「とても不愉快なの。だから消すわ」

 

残り少ないタバコを咥えているサンジと、普段では見られない怒った表情をするレイジュ。

 

ここに来るまでに何度も雷に打たれ、気絶しそうになる所を踏ん張って耐えてきたのだ。そして再びエネルに追いついた。

 

「それはコチラの台詞だ。

もう我が物にならずともよい。………ここでまとめて消えろッッ!!!!!!」



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ウソップ、紐の試練。

「実に腹立たしい。生贄という自覚はないのか??」

「あるわけねぇだろうチクショーッッ!!!!!」

 

フザという鳥の背に乗りシュラはウソップにフレイムダイヤルを埋め込んだ槍を突き立てる。間一髪避けるが後ろにあった大木は突き刺さった場所から燃え上がりあっという間に大木全体に火が回った。

 

たった一撃でも喰らえば火傷では済まない。

下手したら壊死するほどの……

それを本能で理解したウソップはとにかく逃げる。

 

「普通なら昨日の時点で生贄の祭壇に置かれたお前らの仲間を処分する予定だったのだ。しかし我が神エネル様の負傷によりズレ込んだとはいえ、貴様らは裁かれないといけないのだ」

 

「知るかよッ!!!こっちはなにもしてねぇだろうが!!!!」

 

「この国への不法侵入。そして神聖なアッパーヤードへの入った時点で死刑だ」

 

「んなムチャクチャだッッ!!!!」

 

何度も何度もシュラは槍を繰り出すがウソップもそれを避けている。普段ならハンマーやジュータンに乗って宙を舞い、シュラが持っている槍を花束に変えてしまい、驚いているところにその花束から肉食植物を放って倒す。そんな算段なのだが

 

(チクショー!!!マジック無しって……こんなにもキツイのかよッッ!!!!!!)

 

いまはロビンにマジックの使用を禁止されている。

戦闘の基盤になっていたマジックを取り上げられどう戦えばいいのかパニックになったウソップは反撃も出来ずに逃げ回っているのだ。

 

しかし逃げ回っているウソップをシュラがそのままにするわけがない。

これは紐の試練。その意味がやっと分かるときが来た。

 

「ッ!!!!な、なんだ!!?身体が…動かねぇッッ!!!!??」

 

突然身体の動きが止められたのだ。

逃げようにも()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「やっと掛かったか」

「何を、しやがった……!!」

 

「ここいら一帯に見えない"紐"が張り巡らせてある。

分かるだろう??貴様はいま"蜘蛛の巣"にかかった状態なのだ」

 

よく見れば確かに細い細い紐が身体中に絡まっている。

そして見えづらいが光の具合で周りにも無数の紐が張り巡らせてあるのが分かった。

 

つまりさっきまで逃げ回っていたのは、避けているじゃなく《避けさせられていた。つまりは誘導されていたということ》。

 

気づくのが遅すぎた。紐は完全にウソップに絡みついている。このままだと……

 

「さぁ、喜べ。貴様はエネル様に捧げられる供物となるのだ」

「ふ、ふざけるなッッ!!!!」

 

どうにかして逃げないといけない。

しかしウソップの力ではどうにも動かない。

いまそれが出来るとすれば…………

 

(な、何を考えてるんだ俺はッ!!!!そんなことしたら死よりも恐ろしいお仕置きが間違いなく待ってるぞッッ!!!!!)

 

顔を出さないミニロビンだがきっとここで助けを頼んだ時点でお仕置き確定。それも味わったことのない地獄を受けることになる。

 

いやそれよりも

 

(カヤに………こんな情けない姿をカヤに……見せて、たまるかああああぁぁぁッッ!!!!!!)

 

動けない右手を、紐が肉に食い込み血が流れていても、それでも力づくでバックに手を伸ばしてあるものを取り出した。

 

「ワリィ。一緒に、燃えてくれッッ!!!!」

「なにッッ!!!!!??」

 

取り出したのは火薬星。それも一つではなく手に溢れる程に握りしめたそれを二人の間に投げつけ一帯を爆炎へと変えた。

 

………………………………………

 

「ねぇ。どうして狙撃、しなくなったの??」

「な、なんだよいきなり……」

 

マジック道具を手入れしている時にフッとカヤに聞かれた事があった。ウソップの父親、ヤソップは狙撃の名手。その息子であるウソップも間違いなく腕利きの狙撃手。

 

しかしいまは狙撃よりもマジックで戦闘に立っていた。

それはウソップにとって"強さ"そのものといっていい。

だからそのマジック道具をこうして整備していたのだが

 

「ウソップさん。昔はお父さんのようになりたいって言ってた。でもマジックを手にしてからドンドンしなくなって……」

 

「………なんだよ。マジックを止めろって言いたいのか??」

 

「違うわ。そうじゃなくてマジックと同じぐらいに狙撃はウソップさんの力じゃないの??」

 

カヤの言っていることは分かっている。

離れた場所からアリンコの眉間を撃ち抜く。そんな父親と同じ狙撃に憧れて、そして間違いなく狙撃の腕はあると自分でも思っている。でも

 

「……狙撃は、遠距離による後方支援だろう。誰にも気づかれずに敵を討ち取る。まさに隠れた花道だ」

 

「なら……」

 

「でもよ………そしたら間近でお前がピンチな時に俺は力になれねぇ!!!!!!」

 

狙撃が嫌いになったわけではない。

むしろ狙撃こそ自分のやるべきものだと分かっている。

それでもマジックを主力として使っているのは"守る人"の存在。

 

「どうしても近戦闘じゃ狙撃は不利だ!!!!ならそれにあったマジックを使うしかねぇんだよッッ!!!!!俺はお前を守るって決めたんだッッ!!!!!!」

 

マジックならどんな状況でも対応出来る。

近戦闘も長距離も、カウンターなんて息をするように使える。

肉弾戦になろうがその場から姿を消して背後やトラップなんてものも用意出来る。

 

でも狙撃だけじゃ、()()()()()()()()()()()()()()()

 

自分の意地よりも、守りたいものを守るために……

 

 

するとハァーとため息をついたカヤが、両手でウソップの顔をパシッと挟むように叩いた。

 

「か、カヤッッ!!!!??」

「ウソップさんのバカッッ!!!!!!」

 

まさかのバカ発言に動揺するウソップ。

しかしカヤを守るためにやっている行為をバカと言われたウソップもまた腹がたち言い返そうと

 

「お前ッ!!!俺はお前をッ!!!!」

「絶対にそれは間違ってる!!!!ウソップさんには狙撃は必要なのッ!!!!!」

 

そんなことをいいながら涙目になるカヤを見たウソップは毒気を抜かれたように大人しくなり、目の前の、守りたい人を見つめていた。

 

「嬉しい。ウソップさんがそんなにも私のためにしてくれるのはとても嬉しい。………でも、それでウソップさんが我慢するのは間違っている」

 

「……カヤ………」

 

「私を見て。私はもう、元気なったの。

昔の私とは違うわ。いまはウソップさんの隣で一緒に戦える。いられるの。だから我慢しないで。忘れないで。ウソップさんが一番やりたかったことを」

 

まっすぐ見つめてくるカヤの瞳に吸い込まれそうな気分だった。その言葉に胸が熱くなっているのも感じた。

 

「それに、ウソップさんなら、マジックも狙撃も、完璧にこなして、お父さん以上の人になれるって……信じてる」

 

………………………………………

 

吹き上げる爆炎と煙の中を後ろへとジャンプして回避したシュラ。少しでも回避が遅れれば巻き込まれていた。

 

「ッ!!!ヤケを起こしたか……」

 

燃え上がる炎に、もう助からないと悟ったのかシュラはその炎を背にしてこの場を去ろうとした。が

 

『………やってくれたわね』

「こうしないと抜けれねぇと思いまして………許してくださいッッ!!!!!!!」

 

声が、聞こえた。

あの炎の中から声が()()聞こえてきたのだ……

そして感じたのだ。その片一方が

 

(な、なんだ…それはッ!!!!)

 

とんでもなく巨大な何かだと感じるほどのプレッシャーを…

そして、エネルが言っていたように頭に流れ込んでくる意味不明な言葉の数々を………

 

気が狂いそうになる。すぐに心網(マントラ)を解除したが冷や汗を大量にかくほどに精神的にやられてしまった……

 

(あ、アレは…ヤバイッッ!!!!エネル様、いや、それ以上の……ッッ!!!!!)

 

恐怖で動けなくなった自分に、驚くシュラ。

全身がガクガクと震えている。まさに恐怖に負けた敗者のように………

 

『……まぁいいわ。あと1分。あと1分で片付けなかったら……分かるわね??』

「イエス!!!マムッ!!!!!」

 

掛け声と同時に炎が上空へと移動し、そして煙だけになったその場所に目掛けて炎が落ちていく。そして()()()()()()()()()()()()炎も煙も一気に消え去り、その場所に残ったのは炎によって焼かれたと思われた人物。服は焦げているがどういう訳か目立った外傷がないウソップ。それを見て一瞬たじろんだシュラだったが

 

「……わりぃが、時間がねぇから一気にいくぞッ!!!!」

「ッッ!!!!青海人如きがッッ!!!!!!」

 

そんな言葉に怒りで、さっきまで動けなかった身体を動かしウソップに襲いかかるシュラ。フザは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。もう一人で戦うしかないがそれでも十分だと確信していた。

 

あの爆発で周りの紐は千切れはしたが向かってくる敵とシュラの間にはまだ紐はある。このまま直進すればまだ紐にひっかかり動きが止まったところで確実に仕留める。

 

そんな算段だったシュラだったが、読みが甘かった。

もしかしたら心網を解除しなければ少しは違っていたかもしれない。それでもこの戦いは…………ウソップの勝利に終わる。

 

もう少しで仕掛けた紐にウソップが引っかかるところだったが突然、その紐を支えていた大木が爆発したのだ。それも一つ二つではない。二人の間にあった全ての紐が爆発により解けてしまったのだ。

 

何故!と思ったシュラだったがすぐにそれは分かった。

上空から何かが落ちてくる。それが紐を固定している大木に当たっているのだ。

 

そう。ウソップはすでに見切っていた。

火薬星により紐から開放されたウソップはその爆風により揺らめく紐を()()()()()()()()。そしてすぐに上空に大量の火薬星を打ち上げ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかしこんなこと普通は出来ない。打ち上げれば上空は風がある。ましてやいま爆風が拭き上げていて、さらに今から炎と煙をバックへ収納するさいに起こる風。そして見つからないようにギリギリで大木に当てるタイミング。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そしてそれを目の当たりにしたシュラはヤケを起こしたのか単調な攻撃を、槍をウソップにぶっ刺すしか思いつかなかった。

 

「クソがあああああぁぁぁッッ!!!!!」

 

ヤケになった相手を倒す。いまのウソップにそんなこと

 

「見なくても、当てれるぜッ!!!!」

 

取り出したのは灰色に蠢く玉。

それはさっきバックに入った炎と煙の集合体。

煙で炎を包み込んだその玉を手に取ったウソップはなんの迷いもなくシュラに向けて放った。

 

「必殺!!火炎爆発星(フレイムバースト)ッッ!!!!」

 

煙に包まれ熱が逃げ切れなくなった炎は、シュラに当たった瞬間に酸素を大量に消費しながら周りに広がり、瞬間的に大爆発と大炎上を引き起こした。

 

シュラの槍は完全に破壊され身につけた服も焼け落ち、爆発によって吹き飛ばされたその身体は大木を次々になぎ倒し最終的にミルキーロードに落ち沈んでいった。

 

さっきまでいたシュラの場所はメラメラと炎が立ち上り、さっき炎が上がっていたものよりも倍以上の炎が辺りを燃やしている。それをみたウソップは

 

「………………へぇ??」

『やるじゃないウソップ。自然破壊者の称号をあげるわ』

 

不名誉な称号を持ったウソップだが、そんな言葉は届いてなかった。ウソップ的にただ自分に受けた爆発と炎をそのまま返しただけだったのに…………

 

それにとっさに手に取ったあの玉も()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。というかいくら悪魔の実でもこんな芸当が出来るものなのか………

 

いま分かっているのは、何もかもハジメが関わっている。

 

「…………お前ら、兄妹って……何なんだよ………!!」

「結婚を決めた世界一幸せカップルよ」

 

聞きたかった言葉は帰ってこなかったが、とにかく。

とにかくウソップのお仕置きは回避されたのだった。



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光芒

「し、師匠……ッ!!」

 

『気をつけなかったルフィ、貴方が悪いわ』

 

無駄な戦いは体力を消費してしまうとミニロビンに誘導されながら移動していたルフィだったが、「警戒しなさい」と言われた矢先に足を滑らせてしまい現在()()()()()()()から抜け出せなくなっていた。

 

初めは殴って壊して出ようとしたがその瞬間に洞窟が動き出し上下左右へと()()()()()()()()()()()()()()。何度も何度も壊してしまおうと試みるがそのたびに動き出す洞窟に目が回り今は休憩を取っている。

 

()()()()()()()……どうやったら抜けれるんだ……」

『…………はぁ……』

 

「な、なんか変なこといったのか、オレ……」

『大丈夫よ。今更だから』

「…お、おう……」

 

どうしてなのか?と聞きたいが経験上間違いなく自分が悪い事だけは分かっているルフィは蒸し返さないように黙ることにした。

 

『まぁ、ここはいい隠れ蓑になるわ。時期が来たら最終的に私が出してあげてもいいから。とにかく今は大人しくしてなさい』

 

「で、でもよ……その間にあの神様って奴が……」

 

『そうね。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……』

 

「??」

 

………………………………………

 

首肉(コリエ)シュートッッ!!!!!」

 

確実な一撃をと放った蹴りだがいとも簡単にエネルはそれを避けてしまう。そしてまるで大人が子供を相手しているかのように息も切らさないまま

 

「100万V(ボルト)……」

 

そっとサンジの肩に手をおいて

 

放電(ヴァーリー)

「ガハアアアッ!!!!」

 

「サンジッッ!!!!」

 

放電による攻撃でサンジの身体はプスプスと音を立てながら煙を出していた。両膝をつきそのまま倒れ込むサンジへレイジュが駆け寄ろうとするがその前にエネルが立ち塞がる。

 

「こんなザコ、捨て置けばよい」

「……私の、弟よ……」

 

「だから何なのだ。弱ければ血縁など無意味だ」

「それは、貴方が決めることではないわッッ!!!」

 

毒を生み出しそれを小さな個体へ。形からいえばそれは集団で襲われたらひとたまりもないと言われるもの。

 

毒蜂(ピンク·ビー)ッッ!!!!!」

 

毒といえばの代名詞。レイジュの周りに無数の蜂を作り出しランダムに飛ばしてエネルに襲わせる。

 

「なるほど。無意識なら当たりと考えたのだろうが……」

 

いくら意識を外して攻撃をしようとも、エネルの雷の速さには追いつけるわけもなく簡単にかわされたあと

 

「当たらなければ無意味。そして…」

 

上空へ移動していたエネルを見つけたレイジュ。

蜂を上空へと差し向けたのだがエネルはニヤリと笑い、背中の太鼓を一つ鳴らすとそこから雷が現れエネルの上空で滞留し

 

「これが()()()()()()()()()()()

 

大きな塊から小さな塊へと別れ、その小さな雷はその姿を変えた。

そしてそれまさにレイジュがいまエネルに攻撃しようとしている個体とそっくり。

 

「100万V……」

 

マズイ!と判断したレイジュはサンジを守ろうと覆いかぶさったのだが、そこへ無情な攻撃が、蜂の形からまるで光の矢のように、いや、その一つの光が大きな束となり二人がいる周辺を一気に襲う。

 

光芒(サンピラー)ッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふん。青海人にしては、それなりに楽しめたな……」

 

高いところから見下ろすエネル。その光景は一面が雷により空いた穴が出来ており、その全てが焦げた臭いと煙を出し、どれほどの強烈な攻撃なのかが分かる。

 

そしてレイジュとサンジはその攻撃を喰らい倒れている。

 

エネルの心網でも二人の声は聞こえないのでもう終わったと思いその場から去ろうと、したのだが、

 

「ッッ!!!!??」

 

確かに声は聞こえなかった。

なのに背後から気配を感じたエネルが振り向くとそこに

 

「……………………」

 

さっきまで倒れていたサンジがそこに、立っていた。

もう立つ事さえ出来ないほどの雷をその身に受けていてなお、その場に立っている。

 

(な、なんだコイツは…ッ!!!??)

 

ここまでしてもなお立ち上がる者は見たことがなかった。

だから、冷静にはいられなかった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして冷静ではなかった為に心網がうまく使えなかったのだろう。本能だけで立っているサンジはエネルを敵と捉え瞬間的に跳躍をしてエネルとの距離を縮め顔面に蹴りを、

 

「………………………」

「………………………」

 

ここでサンジが意識があれば当たっていたのか??

意識がないからこそここまで接近出来たのか??

結局、サンジの蹴りは直前で避けられエネルの顔の横を通り過ぎて止まってしまった。

 

そしてそのまま横へと倒れてしまい動かなくなった。

 

「………。………ッ!!!!」

 

動かなくなったサンジを見てホッとしたエネルだが、フッと頬に何かが伝う感覚があった。頬に手をやり拭った手を見てみるとそこには赤い液体が………

 

「……コイツはッッ!!!!!!!」

 

油断したとはいえ攻撃を食らったのだ。

この能力を手にしてから受けたこともない攻撃を、いや、心網を開花し使いこなせていた幼いときから受けたこともない攻撃をここで受けたのだ。

 

その怒りは計り知れず、気づかない内にエネルの上空に黒い雲が集まり初め、ゴロゴロと異様な音がなり始める。まるでエネルの怒りとリンクしているかのように……

 

「生かしてはおけんッッ!!!!!!」

 

まさに神の裁き(エルトール)を放とうとしたときだった。

ここでもまた怒りで冷静さにかけていたエネルは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………毒濃霧(ピンク·ミスト)………」

 

ゆっくりとゆっくりと周りを毒の霧が広がっており、エネルがそれに気づいたときにはすでに毒の霧を吸ってしまっていた。エルトールを放とうにも身体の痺れや頭痛、目眩などを引き起こしており、このままだと危険だと本能的に察知したエネルはとっさに目的地も決めずに雷に姿を変えてその場から去った。

 

倒れていて呼吸も浅かったサンジは、毒を吸っても恐らく軽症だろう。それを確かめたかったのだがレイジュもまたその場に倒れ込んでしまった。

 

………………………………………

 

「二人とも大丈夫ッッ!!!!!??」

 

意識を無くした二人の元へ駆け寄るベルメール。

その後ろを歩くハジメはエネルが飛び去った方角を気にしながら二人に元へ。

 

「…………大丈夫。ミニロビンが頭と心臓に電流が流れないようにはしてくれたみたい」

 

「そ、そうなの……」

 

「それでも並の人じゃ死んでるね。やっぱりジェルマはスゴイよ……」

 

「よ、良かった……」

 

ロビンならそれぐらいはやってのける。

死なないようにミニロビンが避雷針代わりになったのだろう。

それでも一発二発ぐらい耐えれるのだろうが、あの()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。エルトールのようなものが一気に降り注ぐようなものだ。流石にあれはミニロビンでは耐えられなかったみたいだ。

 

それでもサンジとレイジュの身体が特別製ということもあり助かったのも大きい。レイジュほどイジってはないようだけどサンジも少なくとも小さい頃は色々と実験のようなものを受けただろうからなー

 

………まぁ、いま()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「さて、二人はリタイアかなー。気づいたら参戦するって言ってきそうだけど……いまは安静にさせたほうがいいかな??」

 

「でもどこに二人を??こんな戦いが色んなところでやっていたら休めさせる場所なんて……」

 

「一つ、いいところがあるんですよ」

 

………………………………………

 

「……………消えたか……」

 

エネルは遺跡の一番高いところで腰を据えて休憩を取っていた。ランダムとはいえ一度は来たことはある場所。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そしてさっきまで戦っていた二人の様子を探ろうとしたが"声"が聞こえなくなった。こうなると戦闘不能になったことを意味する。

 

最後の最後に、悪あがきでの攻撃。

それでも確かにその攻撃はエネルに届いた。

しかしそれはあくまでも心を乱してしまったため……

 

そう、これは心網が発動しなかったからだ。

そう自分に言い聞かせて毒が抜けるのを待つことにし、そしてまた、新たに"声"が1つ、2つと消えるのを感じた。



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チョッパー、沼の試練。

「げ、ゲダツ様ッ!!!唇を噛んでいては喋れません!!」

「ッ!!!!!??」(うっかり!!)

 

『バカなのね』

「シィー!!!聞こえたらどうするんだよッ!!!!!!」

 

ゲダツのうっかり具合に毒を吐くミニロビン。

そんなのが聞こえたら襲いかかって来るだろう!!と必死に静止するチョッパー。まぁ、うっかりなゲダツなので聞こえていないが………

 

「ここは、一度嵌まれば抜け出せない…

貴様はここで足を取られ身動きも取れずに終わる……そう!沼の試練ッ!!!!」

 

と、いいながらドンドン雲の中に沈んでいくゲダツ。

 

「お前が沈むのかよッ!!!!」

『やっぱりバカね』

 

自分が仕掛けた沼にハマるゲダツ。しかしそのゲダツは不敵に笑いながら

 

「間抜けめ。それぐらい、対策してあるわッ!!!」

 

するとゲダツの身体が急激に上昇して沼から抜け出した。

その足には何かしらのダイヤルを仕込んでいるようだ。それが沼からゲダツを脱出させたもの。

 

空中に飛び出したゲダツはそのまま岩の上に立ちチョッパーを見下ろしながら

 

「よくも…よくもやってくれたなッッ!!!!!」

「何言ってるんだお前はッ!!!??」

 

「ゲダツ様はもうさっきの出来事を忘れているのだ!それぐらい察しろッッ!!!!!」

「それ、もううっかりどころじゃねえよッッ!!!!!!」

 

………どうも、今回は完全チョッパーはツッコミ側に回らないといけないようだ。いつもツッコミを入れてくれるウソップがいないのだ。頑張れチョッパー。

 

「ならば貴様には、真の"沼"の恐ろしさを見せてやろう!!!」

 

そういってゲダツは両手を上に向けてその手のひらから雲を作り出した。

 

「くらえッ!!!沼雲バーガーッ!!!!!」

「ちょっ!!こっちは仲間ッ!!!!!!」

「何やってるんだお前ッ!!!!??」

 

うっかりにも程がある。まさか自分の味方に技を放つなんて…

その沼雲バーガーは敵の頭にすっぽりハマり、それの沼雲も抜こうとするが………手がすり抜けて抜け出せない。それどころかドンドンハマっていく。

 

(沼雲だからだ……!!沼だから手じゃ抜けないんだ!!)

 

そしてこの雲は水分を大量に含んでいるのだろう。まるで溺れているように口から空気が抜けていき、そして雲に溺れて倒れてしまった。

 

それを見たチョッパーはとっさにその者の足を掴んだ。そして沼雲から一気引っ張り上げた。纏わりつくようなその沼雲は今や地面にくっついている。だから足を持ち引っ張れば抜けると思ったが正解だったようだ。すぐさまに心肺蘇生を行うと時間もあまり経っていなかったためにすぐ蘇生できた。

 

「………なぜ、それいつを助ける??敵だぞ」

「お前こそ!!味方なんだろ!!間違ってやったなら尚更普通は助けるだろうッッ!!!!」

 

「それはそいつがそこにいたから悪い。そしてそいつは俺よりも弱い。それだけだ」

「…………お前ッッ!!!!」

 

命を簡単に見ている。それがハッキリと分かった。

そうこの空島の、神官と呼ばれる奴らはどいつもこいつも"命"を軽く見ているのだ。

 

「命を……命をなんだと思ってるんだッッ!!!!!!!

 

だから、さっきまで怖がっていた心が今やコイツは許せないと怒りに震えていた。そして蘇生した敵の男が

 

「た、助かった……あの野郎………」

「お、おい。無理するな…!!」

 

「いや、ヤラせてくれ!!コイツは俺が……………ッッ!!!!??」

 

次の瞬間、男の目の前にゲダツが現れ、そして見たこともないスピードの拳が男の身体を撃ち抜いた。

あっという間の出来事。男は後ろへ吹き飛びいくつもの木々をなぎ倒しながら飛んでいった。

 

「ふん。敵に情けをかけれて、更に歯向かうとは、愚かな」

「な、何してるんだッッ!!!!!!」

 

「こいつは噴射貝(ジェットダイヤル)。ここから繰り出されるパンチの威力は、岩も簡単に打ち砕く」

 

全く話が噛み合わない。それもうっかりしているからか……

すぐさまにチョッパーは距離をあけて攻撃へと後方へ飛んだが、ゲダツはそれを足に搭載しているダイヤルを使い一気に距離を縮める。

 

「無駄だ」

(速いッ!!!!)

 

もう一度繰り出されるジェットダイヤルによるパンチを回避するためにとっさにガードポンイトを使う。あっという間にチョッパーの身体は毛玉のように膨れ上がり衝撃を吸収して攻撃を無効化しようとした。

 

だが、放たれたジェットダイヤルのパンチは思いの外強くまるでピンポン玉が跳ねるようにチョッパーの身体はあちこちに跳ね回ったのだった。

やっと止まったところでガードポンイトを解いたが

 

(……ぜ、全部は、無理だった………)

 

衝撃を全て吸収出来ずに半分近くがチョッパーの身体を襲った。ふらふらになりながら立ち上がるチョッパーにゲダツは高い所から容赦なく沼雲は大量に放り投げる。

 

「……ッッ!!! 脚力強化(ウォークポイント)ッ!!!!!」

 

当たらないように逃げ回るチョッパーに、ゲダツはさらに沼雲を投げる。一つでもチョッパーが当たらればさっきのように溺れて簡単に始末出来る。外しても足元に残る沼雲が身動きを取れなくする。

 

そこまでのこと。考えているのかは怪しいゲダツではあるがそれがいまチョッパーを追い詰めているのは間違いない。

 

(クソッ!!!どうする!?どうしたら倒せるッッ!!!!)

 

思考を巡らせるチョッパー。

逃げ回ってもいつか捕まる。接近したらあのパンチが襲いかかる。そんな状態でどうやっ倒せばいいのか……

 

『なにを、してるのかしら。チョッパー』

 

ここで、ドスの効いた声が、聞こえてきた。

思わず足を止めてしまいそうになるぐらいの重たく冷たいその声にチョッパーは感覚的に心臓を掴まれているように感じた。

 

『まさか、このまま、逃げないわよね??』

 

そんなつもりは全くない。

ないのに、めちゃくちゃ悪い気分になっている。

 

『私が、こうして分身体を作ってまで監視してるのよ。もしも無様な真似、姿、声、態度を見せてみなさい…………』

 

チョッパーは思った。

あれ、いま自分は誰に攻められているのか、と……

 

『その皮を剥いで肉を削ぎ落とし、☓☓☓を取って、☓☓☓をくり抜いて、☓☓☓☓を☓☓☓☓にして、余すことなく使い切ってあげるわ。それなら本望でしょう??人の、役に立つのだから………』

 

「…………ぎゃ…………」

 

 

 

そうだ。悪魔だった。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァッッッ!!!!!!!!!!!」

 

混乱しているのかなんの考えもなしにチョッパーはランブルボールを噛み砕いた。

ゲダツから見れば突然悲鳴を上げて何かを噛み砕いた可笑しな生き物に見えただろう。そして立ち止まり動かなくなったチョッパーを見て毒を飲んだのかと思ったゲダツはトドメを刺そうと念の為にチョッパーに向けて沼雲を放った。

 

頭に沼雲が覆いかぶされば溺れ死ぬ。

例え抜ける事があってもこのジェットダイヤルによるパンチで終わりだと思っていたゲダツに、まさかの出来事が起きた。

 

突如肥大化した腕を持つ生き物が沼雲をまるで煙を飛散させるかのように消し飛ばしたのだ。体格と肥大化した腕が釣り合わない程に、その攻撃が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして、分かってしまった。タイミングでゲダツは終わった。

さっきまで見下していた生き物が目の前に、突如現れたのだ。

これから何をするのか手にとるように分かっていても、この至近距離にして、まるで飢えた肉食動物が放つ殺気のようなものに押されているゲダツはもう、回避することは出来なかった。

 

「刻帝………」

 

腕と一緒に肥大化した蹄が大きさを更に大きくしていく。

それはまるでハンマーのように、それは硬い扉をぶち壊す破城槌のような………

 

破城槌(ブレイクハンマー)ッッ!!!!!!!」

 

その重たい一撃はジェットダイヤルの威力を遥かに超え周りを衝撃波で吹き飛ばしてしまった。

軽いクレータが出来た場所にチョッパーが息を上げながら立ち、ゲダツは離れた場所で沼雲へ頭からドンドン飲まれていっていた。

 

「…………はぁ、はぁ、…………アレ??」

 

しかし、やられたゲダツは可哀想だと言ってもいい。

確かに思考も読めていた。油断もしていなかった。

ただ、チョッパーは恐怖のあまりに普段見せない野生の力が目覚めたのだろう。そしてそれは生きるための生存本能。つまりは思考というよりも生きようとする本能に負けたのだ。思考よりもずっと早く動く身体にゲダツは遅れを取ったのだ。

 

そして、倒したその本人は、それを覚えていない。

 

「な、なんで、あんな所にアイツが……」

『はぁ………まぁ、倒したのは間違いないから、良いとしましょう』

 

ミニロビンの言葉にえっ!?と驚くチョッパー。

舞っていた記憶にないのだ。覚えているのはミニロビンに脅された所まで。

 

『二度はないわよ。さっきの力を、使いこなしなさい』

「えっ。ちょっとまってくれ。何が何だか………」

 

『心配しなくてもいいわ。お仕置きは回避したけど、"特別メニュー"を今からこなせばいいのだから』

 

よく、よく分からないが、お仕置きは回避した。

なのに、なんでだろう。さらなる地獄を見るような………

 

「い、イヤだあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!」

 

『拒否権はないわよ。大丈夫。()()()()()()()()()()()()()()

 

全然安心できない!!とツッコミを入れるところだがいまのチョッパーは恐怖でそんな言葉も出る余裕はなかった。

 

そしていつの間にゲダツはその場にはいなかった………

本編通りに沼から抜け出そうとして沈んだと思われるが、それは誰も知らない…………



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トンデモナイ事

「はぁ〜まさに、天使だわ」

「ええ。これはもう、嗜好の存在」

 

「……………ッッ/////////」

 

堪能し満足なナミとカラー。そして完全な着せ替え人形に成り果てたアイサ。真っ白ワンピースにフリルが沢山ついたまさに"天使"と呼べる装い。頭の輪っかは断固として拒否したが……

 

そんな風に楽しんでいたから、だから気づかなかった。

 

「…………はっ!!」

「どうしたの??」

 

「ノジコ達が……いないッ!?」

「そんな。いつの間に……ッ!!!」

 

そう。その船には誰も乗っていなかった。

3人だけを残してメリー号には誰も…………

 

「あんた等がこんな事してるから静止を呼びかけていた奴らをおいて行ったんだッッ!!!!!!」

 

「………あれ?」

「確かに、何か言っていたような………」

 

メリー号から降りて敵を撃退していたノジコ達はドンドン進むメリー号に再び戻ろうとした。したのだが、完全に"カワイイ"に取り憑かれた二人にノジコ達の声は届かずにその場に置いてきてしまったのだ。

 

『やっと、正気に戻ったのね……』

「ミニお姉さん!!!」

 

『この私が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()……どれだけ執着してるのよ貴女達は………』

 

いくらミニロビンとはいえ、確実に格上であるミニロビンの拘束をまるで"邪魔だから"という簡単な感じで拘束をといてしまっていたのだ。

 

それはもう()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

………ナミとカラーの前に、"カワイイ"の前に、武力は無力だということなのだろうか………

 

「…………だって、カワイイだから仕方ないわッッ!!!!!!

 

「うん。カワイイは正義

 

『はいはい。好きにしたらいいわ……』

 

二人の圧力にもう面倒くさくなったミニロビンはそのままポケットの奥へと引っ込んでしまった。

ここまで呆れ返られるなんて……ロビンをよく知るものなら驚愕の表情をしていただろう……

 

そんなことをしていると突然アイサが頭を抱えた。

何かに怯えるように身体を震えさせ、涙目になりながら

 

「ちょっ、ちょっと!!どうしたのよッ!!!!」

「ま、また…声が………消えてく………」

 

「声って……何も…………」

 

「もう!やめてッ!!!!!」

「ッ!!!!何処に行くのよッッ!!!!!」

 

メリー号から飛び降りて何処かへ走り出すアイサ。

ただでさえこの森には猛獣や、ゲリラや神官達がいるのだ。

そんな中を女の子一人が………

 

「カラーッ!!!!悪いけど船番をお願いッ!!!!!」

「私、操作なんて」

 

「ミニお姉さんがいるわ!!とにかくそこに誰かいないとメリー号に誰も帰れなくなるからお願いねッッ!!!!!」

 

「ちょっ、ちょっとッ!!!!!」

 

ナミの言っている事も行動も分かる。

しかしたった一人で、それも基本的に手出ししないミニロビンがいたとして、どうやってメリー号を守れば………

 

「……………」

 

そんな中、目についたのはメインマストにかけられた一つのホイッスル。

空の騎士がくれたお助けに来てくれるホイッスル。

 

初めはカヤに渡されたのだが「やっぱり皆さんで…」ということでここにかけられていたのだ。

 

万が一。の時に使うようにと決めていたが

 

「…………」(スゥ………)ピィーーー!!!!!

 

カラーに迷いは、なかった。

そして、

 

「いや……敵もいないのに使うか…これを………」

「アハハハ………」

 

アイサの着せ替えパーティに入り込めなかった空の騎士とコニスはずっと上空でメリー号を追いかけながら待機していた。

だからなのか、そこにはとても気まずい雰囲気が流れてしまいしばらく互いに目線を合わせづらかったという…………

 

………………………………………

 

「………これって……」

「はぁー。()()()()()()()()()()()()()()……」

 

ハジメの背中にサンジ、ベルメールの背中にレイジュ。

二人は倒れたこの二人を安全な場所へと運ぼうと歩いてきたのだが、その行く先、大きな洞穴の中へ入ってみるとそこには……

 

「………これって、まさか()()()!!!??」

「そう。ただし海じゃなくて()()()()()()()()()()

 

そこは本編でも出てくる方舟"マクシム"だった。

明らかにエネル一人だけじゃ大き過ぎるこの船。

まるで自分の持ち物のように歩くハジメの姿にベルメールは

 

「こ、これって敵の船じゃ……ッ!!!」

「大丈夫大丈夫。しばらくは戻らないから」

 

「で、でも……」

「それにこいつを動かしてもらいたいしね。どうせ後からこれに乗るつもりだったから、なら初めから乗ってても問題ないでしょう??」

 

そういって歩き出すハジメにこれ以上なにもいえなかったベルメール。いや、なんて声をかけたらいいか分からなくなったのだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

でもそれをどうやって聞いたら、いや、知ってもいいのかと恐れる方が強い。それを聞いたらきっと何が大きく変わってしまうと予感したから…………

 

(………一体、何を抱えているの………)

 

そしてきっとそれはロビンもまだ知らない。

だから、ここは何も聞かずにハジメの後を追うことだけにした。

 

………………………………………

 

「これって…………」

『どれもかなり昔のものね……ニコルが喜びそうだわ』

 

ゲリラや神官達を倒しながら進むカヤ達の前にこの打ち上げられた"ジャヤ"の一部が、歴史を知る手がかりとなる遺跡の一部が姿を表したのだ。

 

『そう。大きな遺跡はすでに見つけていたけど、こんな風に一部が散乱しているとなると………打ち上げられた時の衝撃は相当なものね………』

 

「分かるんですか??」

 

『そうね。例えるなら……ルフィの大技の100倍が良いところかしら。お兄ちゃんなら………出来るわね』

 

「………トンデモナイ事が聞こえたような…………」

 

気の所為よ。と言われ考えるのをやめたカヤ。

それにしてもアチコチに遺跡の跡があり、大規模な大陸移動があったことがハッキリと分かる。

 

あの災害級の海流は、こんなことを……

 

「あれ??でもさっき、まるで初めて見たようなことを……」

 

『ええ。建物だけでは駄目なのよ。あらゆるものが、その生活と歴史がとても必要なの。何気ないこんな岩のようなものだって………って、ニコルの知識よ。そこまで興味はないわ』

 

そういってまるで興味がないようにふるまうミニロビン。

でも何だか真反対に興味があるように見えたカヤ。

詳しくは知らないが、ロビンとニコルは同一人物でありながら、その基本となる思考や考えとなる核が違うと聞いた。

 

ロビンが"ハジメ"であり、ニコルが"歴史"。

だから対立もして、戦いになり、そして2人は"2人"になった。

でも、別れても、それでも、二人は同じ"ニコ·ロビン"ならやっぱり……

 

「ンフフフフフ」

「ッッ!!!!」

 

不気味な笑い声の方へカヤは振り向くとそこには体格のデカい大男がこっちを見て笑っていた。男の名はヤマ。

 

「まだいましたか。神に逆らう愚か者が」

「…………一人、なの……??」

 

「すぐに折れてしまいそうな腕をする貴女に、大人数なんていらない。さぁ、神への供物となりなさい!!」

 

「……お断りです!!」



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カヤ&その仲間達戦

落下(ドロップ)満点(マウンテン)ッッ!!!!!!」

「クッッ!!!!!」

 

ヤマがカヤに向けて飛び上がり重力とその大きな体型による広範囲の攻撃が襲いかかる。明らかに100キロなんて超えているだろうその体重が空中から落ちてくる。下敷きになるようならカヤの身体は簡単に全身骨折となるだろう。最悪それだけで死亡となる可能性がある。

 

広範囲とはいえ飛んで落ちてくるだけ。

ある程度何処に落ちるかは分かるので何とか避けることは出来た。しかしプレスのようなその攻撃は近くにあった岩や木々を破壊しその欠片や衝撃が周りに広がりカヤの身体にも影響を与えた。

 

胴体や頭はは腕や足で防げたが、その代わりにその腕や足は切り傷が………

 

「避けるだけですか??何もできないのならただ私にやられればいいのです!」

 

傷の事を考えている暇はない。

ヤマはすぐさま立ち上がりパンチを打ってくる。それも避けれたがその一撃を食らっただけでも戦闘不能になるだろう。

 

そしてこうして逃げ回っているこの状況もいつまでも続かないことも分かっている。

 

(……い、息が…………苦しい…………)

 

いまは通常の女性と同じ身体能力まで回復させたカヤだが、それでもつい最近までは体の弱い状態だった。そしてこの空島は高度が高く酸素が薄い。こんな風に激しく身体を動かし続ければすぐにでも体力がなくなってしまう。

 

ヤマを倒すなら短期勝負。

しかしカヤには困った状況が起きていた。

 

(あの脂肪………ツボまで針が届かない……ッッ!!!)

 

身体の動きを止めるツボを刺激しようにも分厚い脂肪をつけたヤマに針がツボまで届かない。かといって持っている薬品を使えば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それは医者の端くれとしてもやってはいけない。

 

それ以外。あるとするなら幻覚を見せるものと催眠効果のある薬品ぐらい。

 

しかしどちらとも飛散によるものでは効果が薄いために直接体内に入れるしかない。つまりは薬品を飲ませる。

それをヤマが大人しく飲まれるわけもなく決定的な決め手がいまのカヤにはないのだ。

 

そんな風に考えていたからだろう。いつの間に遺跡の一つ、壊れた部屋のようなところに追い込まれ逃げ道を奪われたカヤ。

 

すぐさまに逃げだろうとするがすでにヤマの巨体が迫っていた。

 

遺跡ごと押しつぶそうとするその大きな腹部。

言ってしまえばただの突進ではあるがその大きな身体で攻められればそれだけで兇器となり攻撃となる。

 

腹部(ストマック)満点(マウンテン)ッッ!!!!」

「ッッ!!!!!」

 

………………………………………

 

「これは、へぇー。なかなか……」

 

これはアラバスタを出発してしばらくしてカヤがハジメにあるものを見てほしいと披露した時のこと。

 

「これは才能、なのだろうね。まさか医者以外にもそんな才能があるなんて」

 

「私もびっくりしました……でも私なにかしたわけじゃないのに………」

 

「何もしなくてもカヤのその優しさはどんなモノにも影響を与えるだろうね。うちのロビンとは真反対」

 

「えっ。お兄ちゃんが私を褒めた!?」

「どんな耳をしてるんだ!!」

 

皮肉を言ってもプラスに取るロビンはこれ以上相手をすることをやめていまはカヤとの会話である。

 

「それにチョッパーには聞いてみたんでしょう??」

「は、はい……好きで付いてきているって……」

 

メリー号の周りにはイルカが並行して泳いでいるのだが、それがどうも()()()()()()()。カヤがイルカを見て"カワイイ"と発して"一緒に行こう"といった後にイルカがドンドン増えたのだ。

 

ちなみにナミも同じように言ったが、まるで呪いのようなその重い"カワイイ"はイルカの防衛本能が働きナミから離れていったのはしょうがない。

 

「ならいいじゃないの??向こうは野生だし食料も勝手に取っているみたいだし。ナミのところのシロとクロみたいにマジックで出てきた召喚獣じゃないからなかなか使い勝手か難しいけどね」

 

「………………いま、召喚獣って……」

「あっ。………気にしないで」

「まさか、あの武器にもなにか仕込んでるんですか!!!??」

「気にしない。気にしない。そのうち分かるから」

 

ものすごいことを聞いたのにハジメはこれ以上話すつもりもないようで、この場にナミもいなかったためにこれ以上は追求することも出来なかった。

 

「とにかく、その才能は素晴らしいと思うよ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いま、なんかオレの悪口を言ったなああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!!」

 

離れていて会話が聞こえるわけがないのに、流石チョッパー。

 

………………………………………………

 

「バフウッ!!!!」

 

迫る巨体だが、そんな声が聞こえた瞬間にヤマの身体は横から来た何かによって爆発に巻き込まれて吹き飛ばされた。間一髪の所で助かったカヤの前に現れたのは

 

「ラッシーッッ!!!!」

「バウ!!」

 

アラバスタでMr.4ペアとの戦いで遭遇した武器にイヌイヌの実を食べたラッシーだった。あのあとラッシーはカヤに懐いて一緒に付いてきてはいたが所詮は武器と言う事でウソップのバックに入っていた。

 

生物が入ることはないのだが、半分は武器と言う事でバックに入っていてその間はまるで冬眠のように寝ていたようだ。

 

しかし()()()()()()()()()()()()()()()()ラッシーはウソップのバックから飛び出して匂いを嗅ぎつけてここまで来たのだ。

 

「な、なんだいきなりッ!!!!」

 

ヤマの方は直撃はしたが厚い脂肪のおかげで倒せるほどのダメージは与えられなかった。しかし、

 

「ラッシー!私に力を貸してッ!!!」

「バウッ!!!」

 

「ラッシー!!!集中砲火ッッ!!!!!」

 

カヤの命令を聞きラッシーの口から、銃口から大量の爆弾型のボールが飛んでいく。ヤマもその攻撃がヤバいと分かったのかすぐさま回避をしようとしたのだが

 

()()()!()!()()()()()()!()!()!()!()

「ジョーーーーーーーッッ!!!!!」

 

「な、なんだこの鳥はッ!!!!!」

 

今度は近くにいた多くのサスウバードが爆弾から逃げようとしたヤマの頭を突きだした。まるで本当に命令を来ているかのように爆弾が爆発するその瞬間まで邪魔をしたサスウバードは一気にヤマから離れると爆弾は一気に爆発を起こした。

 

「……………………カハッ……ッッ!!!」

 

爆発により全身黒焦げになりながらも未だに立っているヤマ。

そしてまだ意識はあるようでその目はさっきまでとは違い完全にキレた目になっている。

 

「き、キサマアアアアアアァァァッッ!!!!」

 

肩からかけていたタスキのようなものを引っくり返しカヤに向かってくるヤマ。そのタスキには大量の斬撃貝(アックスダイヤル)であり、あれを喰らえば突進の衝撃+斬撃にくらい間違いなく倒れてしまう。

 

ラッシーにどうにかしてもらうとしたが、咳き込むラッシーをみたカヤはどうやら弾が出ないことを悟り言葉が詰まった。

サウスバードはこれ以上巻き込めない。しかしこのままだと……と、焦っていた所に()()()()()()()()()()()()()()()()()()。しかしいまどうにか出来るとしたらそれしかないとカヤは一か八かの賭けに出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大蛇ッ!!!!私を助けてッッ!!!!!」

 

その瞬間、こちらに気づきもしなかった大蛇の動きが止まった。そしてハッキリとその大きな眼がカヤとヤマを視界にとらえて、

 

「ジュララララララッラッッッ!!!!!!」

 

その大きな巨体を動かして、大蛇は尻尾うまくカヤとヤマの間に置いた。

 

「な、なんだとッ!!!!!大蛇がいうことをッ!!!!」

 

そしてそれだけで終わらなかった。

大蛇の尻尾はそのままヤマの方へと迫り

 

「大蛇とはいえ神逆らえば同じ!!!!斬撃(アックス)満点(マウンテン)ッッッ!!!!!!!」

 

むしろ攻撃を仕掛けるヤマだが、その斬撃が大蛇の鱗を壊すことはなく、しなりの効いた尻尾はヤマをまるでハエを叩くかのように簡単に吹き飛ばして見せた。

 

何が起きたか、大蛇にお願いしたカヤさえも分からず、この勝負はカヤが勝利した。そして特典として

 

「ジュララララ〜!!」

「…………もしかして、ついてくる、の??」

 

『モテモテね、カヤ』

「これからは、気をつけます…………」

 

ヤマを倒してくれた大蛇に付いてこないでなんて言えず、大きく目立つ大蛇を引き連れてさらにジャングルの奥へと突き進むことになった。

 

……………………………………………

 

動く洞穴にいるルフィはついさっき起きた振動によって逆さまになっていた。

 

「な、なんだ!!さっきのはッッ!!!!」

『カヤが勝った衝撃よ。喜びなさい』

 

「よ、よく分からねぇけど……ならいい!!!!」

『(まさか、大蛇までも……ね……これって………)』

 

ミニロビンには思い当たる節があったがそれよりもまたこの洞穴を拳で開けようとする学習しないルフィに次にどのような関節技を決めるから考えるほうが先決だった。

 

………………………………………………

 

「騒がしいな……」

 

随分と開けた場所にゾロはいた。

ちょうど座るにはいい岩に腰掛けて休憩をしていたところに遠くから物凄い音が聞こえてきたのだ。

 

戦い、というよりゾロにとってはじゃれ合いのような工程が終わって一段落していた時に聞こえてきたそれは少し不快になってはいたが

 

「そろそろやらねぇと、くいなに負けるな…こりゃ……」

 

岩から降りて周りを見渡すと20人以上が倒れていた。

その全てがゾロが簡単にあしらった者たち。

そろそろ歯ごたえのあるやつらと、考えていたことろに

 

「こんなに倒したのゾロ??」

「そっちはどうなんだくいな」

 

のんびりとした感じで現れたのはくいな。

こちらも大した怪我もなく元気のようだ。

 

「うーん。多分ゾロと同じぐらいかな」

「誤魔化す、ってわけじゃねえな」

 

「正直歯ごたえがね……途中で数えてなかったから」

「それには同意見だが…勝負がつかねぇぞ」

 

どうしようっか??と話していると突然二人に向けて何かが飛んできた。それは二人にとっては簡単に避けれるものだったが、さっきまでいたところには白く伸びた雲が、トゲトゲしいものが地面に突き刺さっていたのだ。

 

「これって」

「有刺鉄線か!!?」

 

それに気づいたときにはすでに遅かった。

ゾロとくいながいる場所を中心に何かが走り回り、それにそって白い有刺鉄線が次々に放出されていく。

 

「力に溺れ、為す術もなく散りゆく存在よ」

 

取り囲んでいく白い有刺鉄線の内側にゾロとくいな、そしてもう一人入り込んでいた。サングラスをしボウズ頭。そこら辺に倒れている神官達よりもずっと強い相手。

 

そして白い有刺鉄線がゾロ達を囲むように、ドーム状に形成され全くの逃げ場がなくなった状況を作り出したものがそのサングラスをした者の隣に降り立った。

 

「い、犬ッ!?」

「ただの犬、じゃないようだな……」

 

まるで自分が"人間"かのように二足歩行するその犬はシャドーボクシングをしながらこちらを挑発している。

警戒するゾロとくいな。そして男はこう語る。

 

「それでも抗うとは… 哀しいな… ……だが救いの道は一つある」

 

サングラスに手をやり涙を拭うかのような仕草をする。

しかし行動は全く違う。剣を取り今から戦う意思を、いや、自らの手でやることこそ救いだというかのように

 

「みんな死んだらいい」

 

「ふざけるな。ならまずはテメェが死にやがれ」

「大人しく、やられません」

 

 

「生くる術なし 哀しみの求道 ここは生存率0% “鉄の試練”!!!」



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白荊(シロイバラ)デスマッチ

白荊(シロイバラ)デスマッチ。

といってもそのデスマッチにはゾロとくいな。相手はオームとホーリーだけ。本編ではまだ複数いたがそれはすでにゾロが倒している。

 

「で、どっちがどっちをやる??」

「男の人。っていいたいけど、あのワンちゃん。できるなら捕えたいかな。だからそっちは任せるから」

 

「捕まえてどうする気だ……??」

「カヤちゃんならもしかしたらいうこと聞かせられるかもって。もしくはナミちゃんの戦力に取り込もうって」

 

「いつからこの海賊団はサーカス業を始めたんだ……」

 

ゾロの言いたいことは分かる。

だが、それでも間違いなく戦力としてはアップするのは分かる。だから下手に拒否も出来ない。

 

「やるのは構わねぇけどな、やるからには」

「分かってる。ちゃんと"しつけ"てくるから」

 

刀を抜く2人を見たオームは深いため息をつき

 

「抵抗しなければ苦しまないというのに……ホーリー」

「ワンッ!!!」

 

「やれ。"お手"だ。徹底的にな……」

「ワンッッ!!!!!!!」

 

主人であるオームの言うことを聞いたのか犬の、動物の瞬発力で一気にくいなに近づいたホーリーはそのまま噛みつこうと口を開いた。

とっさに剣でホーリーの牙を防いだが勢いそのままにゾロと分裂させられてしまった。

 

「……さて、神に変わって死を届けてやろう。願えば苦しみは減るかもしれぬぞ」

「わりぃな。……神に祈ったことはねぇ」

 

「浅はかな……」

 

………………………………………

 

「ワン!ワン!!」

「ちょ、ちょっと……」

 

ゾロと切り離されたくいなは一方的に攻撃してくるホーリーに苦戦………というより

 

「これの何処が"お手"なのッ!!?」

 

よく犬が主人にするお手。

しかしそのお手の破壊力が強く、お手を受けるようならお手を避けた際に砕けた岩のようになる。

 

そしてくいな的にはホーリーは出来るだけ傷つけずに倒してしまいたいところではあるが

 

「……そんなこと、言ってられない……かなッ!」

 

まるで人間のように二足歩行で、そして殴りかかるホーリーはまるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ここまでしつけだけでこんな芸当が出来るなんて………

 

しかし、二足歩行で格闘が出来たとしても、所詮は犬は犬。

一定の距離を取りくいなは深く息を吐き、集中力を高めた。

 

「ッ!!!」

 

今回は切ることは出来ない。

なら打撃による攻撃と言えば、ということで昔からよく使っていた技の一つを使うことに

 

向かってくるホーリーの懐に一気に近づいたくいな。

ホーリーもすぐに近づいたくいなに"お手"をしようとその手を振り上げるが

 

「無刀流………」

 

断然に速いくいなの攻撃にホーリーはただ喰らうだけしか出来ない。

 

刺百(しも)(ばしら)ッ!!!!!!」

 

鞘に収められた状態で連続で突く剣技。

"刺突"を一瞬にして百近く付きあげるそれはまるで"霜柱"のように見えることからついた名である。

 

ゾロが使う"牛針"にも似ているがこちらは懐に入り上へと付きあげる技。相手の体重を利用するために攻撃力が増すという技。

 

突き上げられ舞い上がったホーリーはそのまま地面に叩きつけられ気絶してしまった。呆気ない勝負に物足りなさを感じてはいるが

 

「……手出しは、駄目よね……」

 

それじゃどうしようかと考えるくいなの視線に、ここを取り囲んでいる白荊が目に入ってきた。

 

…………………………………

 

鉄の鞭(アイゼンウィップ)ッッ!!!!」

「チッ!!!!」

 

オームの視界から消えている筈なのにゾロに向ってくる刃。

すぐに終わらせれるかに思えたがゾロの攻撃がことごとく避けられてしまう。ならば奇襲をかけようと身を潜めようとするがすぐに居場所がバレ、なおかつ離れた場所から伸びてくる白い刃に手を焼いている状態。

 

「私からは逃げられぬ。大人しくその命を差し出せ」

「冗談ッッ!!!」

 

隠れても無理。避けられる攻撃。

なら一気に距離を縮めて攻撃を避けられないほどに素早く攻撃を仕掛ける。

ゾロは物陰から飛び出してオームに迫る。

 

あと一歩というところでオームが持つ白い刃が姿を変え

 

「なっ!!?」

「ほう。避けたか」

 

突然に現れた白い壁。

あと少しでも反応が遅ければその壁に自ら突っ込んでいただろう……間一髪白い壁を踏み台にしてオームから距離をあけた。

 

「こいつは"鉄雲"。雲に、決まった形があると思うか??」

「そういうことか………」

 

伸びてくる白い刃も、白い壁も、全ては雲。

そしてその雲の性質が"鉄"であり、自由自在に形を変えてくる。

 

型のない攻撃。

いままで戦ってきた相手としては一番やりにくい相手である。

 

「攻撃してこないのか??なら、鉄の雨(アイゼンスコール)ッッ!!!!」

 

白く伸びた雲がゾロの上空で広がり、そこから下へ向けて複数の槍がゾロ目掛けて降り注ぐ。

まさかの攻撃にゾロもすぐさま回避はするが肩と足にかすり傷を負ってしまう。

 

岩や木々などの影へ向かい少しでも攻撃をと移動するが

 

「そこはやめたほうがいい」

「ガハッ!!!」

 

何かを踏みつけたようで足元から白い荊が飛び出してきた。

これには避ける術はなくゾロの腹部を抉ってしまった。

腹部を押さえてそのまま岩陰に隠れたゾロ。

 

上空からの攻撃もやみ息を整えようとする。

 

「取り囲む白荊があれだけとは言っていない。

あまり無闇に走ると自滅する、ぞッ!!!!」

 

「ッッ!!!?」

 

再び鞭に似た伸びる白い刃。

すぐに飛び退いたその場所は、岩は簡単に切られて刃先が地面に刺さっていた。

 

下手に動けずに、心を読まれ、自由自在に攻撃を仕掛けてくる。

 

ドンドン追い込まれていくゾロに、焦りが……

 

(………なんだ、この男は……)

 

優位に立っている筈のオーム。

しかしいつまで立っても相手の男から焦りや不安という負の感情が見えてこない。

それどころかドンドン高まっていくのだ。

闘争心や集中力が、追い詰めれば追い詰めるほどに……

 

(早く終わらせねば、危ういのは………)

 

そう危惧したオームはここで初めてゾロに向かって走り出した。余裕を持って倒すのではなく、確実に相手を仕留めるために。

 

まずはゾロに確実なダメージを与えて動きを制限させる。

そのためにはとオームは再び白い壁を作り上げ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

広範囲に仕掛けた壁にゾロは上空へ逃げるしかなかった。

そこへ地面に当たっていた壁が、仕込んでいた(ダイヤル)に当たり白荊を発動させた。

一斉にゾロめがけて飛んでいく白荊。空中では避けることも出来ない。3本の刀で防御出来たがそのまま押し込まれていき、背後にある白荊デスマッチの茨へと……

 

「龍、巻きッッ!!!!!!」

 

とっさに回転による斬撃で押し込んでくる白荊と背後の茨を同時に弾いたゾロ。そのまま真下の岩に着地後にオームに向かって跳躍する。

 

「突っ込み、自滅しろッッ!!!!」

 

ゾロの目の前に三度白い壁。

そして今度は空中で回避も不可。勢いもあるためにぶつかればただでは済まない。だが、ゾロは

 

「三刀流……」

 

また同じように龍巻きを使うかのように見えたが刃先が白い壁に向かうように……

 

弧牙螺刺(こがらし)ッッ!!!!!」

 

回転をしながら白い壁を長径1メートルの円状の切り傷を作り出し、そこを何度も何度も削っていき、そして白い壁をくり抜いた。

 

「なっ!!!!!??」

 

それは一瞬でやり遂げたゾロは白い壁にぶつかる事なくくり抜いた穴からオームに向かって飛んでいく。

すぐさまオームは白い壁から、白い鞭へ形を変えてゾロに向けて放つ。

 

「いくら読めても……避けなきゃ意味がねぇ!」

 

刀を後方へ構え、まるで大砲を打つかのように……

 

「百八煩悩(ポンド)(ほう)ッッ!!!!!!」

 

鉄の鞭を切り裂きながら伸びる斬撃はそのままオームの身体を切り裂いた。壊れたその柄を手放しながら倒れ込むオームの横を無事着地したゾロは

 

「いい経験になった」

 

まるで修行相手になったかと言わんばかりのセリフをはき刀を鞘へと収めた。

 

『口出しさえもいらなかったわね』

「……向こうはどうなった??」

 

『もう終わってるわ。いまはこの茨から抜けるために……』

 

ミニロビンが最後まで言い切る前に遠くから声が

 

円日(えんにち)ッッ!!!!」

 

ゾロの弧牙螺刺(こがらし)のように一刀に円を描くかのような斬撃。鉄で出来た白荊も切り取られ出口が出来上がった。

ふぅ、と息を吐き剣を鞘に収めた所でゾロが現れ

 

「あの犬っころは??」

「それが…少し目を話したすきに……」

『"私"をつけているわ。帰る前に回収すれば問題はないわ』

 

「いつの間に……」

 

とりあえずやることは終えてその白荊から抜け出そうとした、その時だった。何かを感じ取ったミニロビンが

 

『足元、注意しなさい』

「えっ??」

 

その瞬間、足元が、いやこの周り一帯が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()



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"お前が消えろ"

「早くいけえええええぇぇぇッ!!!!!」

「私から、逃げられるとでも思わないことだ」

 

静止を聞かずに視界から消えたメリー号を追いかけていたノジコ、キロロ、バーストの3人。途中で神官やゲリラ達を倒しながら進んでいたが、突如圧倒的な力を持った者が現れた。

 

いきなり雷を打たれたバースト。

すぐさまキロロが反撃をしようとするが雷のスピードに勝てるわけもなくあっという間に倒された。

残るはノジコ、だけかと思ったところでバーストが立ち上がり地面に向けて爆発させて周りを土埃で視界を悪くさせた。

 

「そんな置いていけるわけ……」

 

「うるせぇ!!さっさといけ!!!

能力者と非能力者じゃ力の差が違うんだ!!!だからいけッ!!!!」

 

「ッ!!!!!!!」

 

バーストの言うとおりここにいては足手まといになる。

悔しさを抑え込みこの場から離れようと駆け出すノジコ。

それをエネルが許すわけがないが、

 

「悪いが、いかせねぇ」

「そうか。しかし貴様も爆発の力を持っているようだが……」

 

ノジコが逃げれるようにエネルの正面に立つバースト。

そのまま両腕でエネルに触れて爆発させようとしたが

 

「ガガガガガバッッ!!!」

「爆発程度で、"雷"に勝てるとでも思ったか??」

 

その手はエネルの身体を通り抜け、そして自ら雷に触れてしまった。全身に浴びる電流。あっという間にバーストの意識を失い倒れてしまった。

 

その僅かな時間でノジコはなんとかエネルの視界から消えたが

 

「本気で、逃げれるとでも??」

「ッッ!!!!!??」

 

一瞬で距離を詰められ目の前に現れたエネルにノジコは為す術もなかった。

 

………………………………………

 

「ウソップさん!!」

「おお。カヤ!無事だっ……ってなんじゃそれりゃ!!?」

 

カヤに呼ばれて振り返るウソップ。

あの雷野郎にやられずにすんで良かったと安堵していたのだが、そのカヤの後方にはラッシーを始め大蛇やトラ、サルやサウスバードなどなどがカヤの後ろに付いてきていた。

 

「みんなありがとう。もう大丈夫よ」

 

そうカヤがいうと分かったかのように一斉にカヤの元から離れて残ったのはあの大蛇だけとなった。

 

「おいおい……すげぇ~なカヤ……」

「そうかな?それよりウソップさんは目標達成した??」

 

「あぁもちろんだ!!」

「私も!この子のおかげなの」

「ジャアアアッ!!!」

 

尻尾を振り"どうだ!"とアピールしているような動作をする大蛇。その動きだけで周りの木に当たり軋んでいる。

 

「…………なあ、カヤ……」

「なにウソップさん??」

 

「将来の夢って、医者になること、だよな??」

「そうだけど、どうして??」

 

これを見て"動物の王女"になるんじゃないかと思ってしまった。なんてことは絶対に言葉にださない。そんなことしてみろ、「なってみようかー」とか言い出した日には………考えたくもないと必死にそんな思考を切り替えようとするウソップだった。

 

「いや、なんでもねえ!!

それより他の皆はどうしてるんだ?」

 

「ねえロビンさん。皆はどうしてるの??」

 

『気にしなくてもいいわ。それより……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『足元、気をつけなさい。落ちるわよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稲妻(サンゴ)ッッ!!!!!!」

 

「「ッッ!!!!!??」」

 

落ちてくるものだと思っていた。

それが、雷が突然下から、地面から吹き出してきたのだ。

とっさにウソップはカヤを腕を取り自分の懐へ。

 

雷は地面を這うように広がり一気に辺り一帯を破壊し、そして()()()()()()()()()()()()()()()

 

「う、ウソップさん!!」

「捕まってろよカヤ!!!」

 

最悪このまま青海に、地上に落ちる可能性を考えながらとにかくこの状況をどう切り抜けるのか必死頭を回す。

 

………………………………………

 

「一体、何が起きたんだ……ッ!?」

 

突然地面が壊れ自身の身体が落下することに気づいたワイパー。落ちる中地面や岩の残骸を踏み場にして無事地面に着地をしたのだが、その場所は大きな空間であり、さらには今まで見たことのない………

 

「ジュ、ジュアアアアアァァァッ!!!!」

「ッッ!!!!こんな時にッ!!!」

 

周りを確認しようとしたとき聞き覚えのある声に警戒するワイパー。このアッパーヤードの動物達の頂点である大蛇。その大蛇が同じこの場所にいる。

 

持っているバズーカを大蛇に向けるが様子がおかしい。

いつのなら襲いかかってくる大蛇がワイパーを無視し、それどころか辺りの遺跡を見ながら喜んでいるようにも見える。

 

そして一番大きい遺跡。その建物をみた大蛇は、その大きな頭を空に向けて「ジュアアアアアアアアァァァッッ!!!」と今まで聞いたことない声を上げて涙を流している。

 

それを見たワイパーは悟った。

あの大蛇は昔から生きている。そしてあの喜びようは……

 

「……まさか、ここが……」

 

先祖が住んでいたアッパーヤード。

この空島に打ち上げられ、空島の住民達に追い出され、長い年月帰ってくることの出来なかった故郷。

 

「ここが……俺達の、先祖の………」

 

歓喜が溢れようとするのを必死にこらえるワイパー。

やっと見つけた。見つけたがまだここはヤツの、エネルが支配する場所。喜ぶのはアイツを倒して………

 

「私を倒すか??果たして貴様に出来るのか疑問だな」

「…エネル……ッッ!!!!!」

 

突然現れたエネル。

すぐに攻撃しなかったのさ後方にある遺跡のため。

しかしすぐにそれが愚かだった後悔する。

 

「貴様の仲間はことごとく倒れたぞ。いや、あと一人いるが、子供などすぐに終わる。数にも入らんな」

 

「………お前、まさか………」

 

「心網があるのだぞ。バレてないと本当に思ったのか??」

 

その言葉で全てが分かった。

エネルは隠れていた同胞達を、戦えない者達まで手にかけたのだ。それを知ったワイパーはバズーカを放つが一瞬にしてその場から消え攻撃を躱しまたその場に現れた。

 

「怒る必要はない。()()()()()()()()()()

「エネルウウウウゥゥゥゥゥッ!!!!!!」

 

再び攻撃をしようとしたがその瞬間にあるものが見えた。

エネルの背後から刀を持った二人組が一斉にエネルに襲いかかる姿を

 

「「鷹波ッ!!!!」」

 

背後からの攻撃だろうが2人の攻撃は届かなかった。

エネルには届いた。しかし二人の刀はエネルの身体を通り抜けまるで実体のないものを斬ったような……

 

そのまま着地をした二人は攻撃をしようとしていたワイパーの近くへ。すぐさまワイパーがゾロへバズーカを向けようとするが、向けられる前に刀でバズーカを押さえられ

 

「やめておけ。いまはあっちだろうが」

「指図するな青海人!!!!貴様らも邪魔をすれば敵だッ!!!!」

 

仲間を全てやられた上、エネルを倒すのに邪魔になるゾロ達が現れ気が立っているワイパー。

一触即発の状態の中、エネルにとっては関係ないとワイパーとゾロを同時に攻撃を仕掛ける。

 

気づいたときには目の前に雷が。

くいなの叫び声も聞こえないほどの雷撃音。本格的にマズイと察した時にはすでに遅かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャアアアアアァァァァ!!!!!!」

 

ゾロにも分からなかった。

完全に雷の中へと飲まれたと思っていたが、いつの間に移動していた。いや、正確には何かに引っ張られて間一髪助かったのだ。

そしてそれをやってのけたのが脚強化と角強化で()()()()()()()()()()()()()()

 

「怖えぇよッッ!!!!!なんだよアレッ!!!!??」

「ワリィなチョッパー……」

 

未だに軽くパニクっているチョッパー。

すぐさまくいなはゾロに駆け寄り本当に無事なのかと問いかける中、呆然とするワイパーは歯をギリッと鳴らし

 

「なぜ俺まで助けたッ!!!??」

「俺は医者だ!!そんな負傷をしてるやつを見捨てたら俺は医者じゃなくなる!!!」

 

今までの戦いの怪我を一瞬で見抜いたチョッパー。

確かに包帯している部分もあるが一番は服の内側で見えない場所にあり、それをちょっとした動きで見破った。

 

「…………礼は言わんぞ……」

「見返りなんていらねぇ!!!」

 

立ち上がるワイパー。その姿を改めてみたチョッパーはどうして今動けているのか不思議でならなかった。すでに重症なのに、動けるはずがないのに……

 

(コイツ……なんか、ルフィみたいだ………)

 

そんなこと話したら絶対に違うと言うだろうなー

ちょっと吹き出しそうになったのをグッと堪えたところで、バンッと少し離れた場所で煙がたち、その中から大きな箱が現れた。

 

何が起きたのかと思っていたらその箱の枠が四方に倒れ

 

「あ、危なかった〜」

「一体何が起きたんですかね……」

 

そこに現れたのはウソップとカヤ。

落下途中でウソップが出した風呂敷に包まれた2人はそのままこの箱へと移動した"瞬間移動マジック"をやってのけたのだ。

 

「どっから出てきてるんだお前ら……」

「おお!ゾロにくいな!!!」

「チョッパー君!!……と、誰ですか……」

 

「また青海人が……」

 

次から次へと増える青海人にイラつきが募るワイパー。

ここまでくるとエネルが言ったように自分以外のゲリラはほぼ全員やられたと思うべきだと。

 

「ふむ。1、2、3、4、5……」

 

エネルが指を指しながら人数を数えていくそれを姿に全員がエネルの方を向き見ている。

 

「あと、1、2、3、4、5人か……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それが誰なのかは分からないが未だに倒れていないものがいることがそれで分かったが、同時に一味全員が無事ではないことも分かってしまった。

 

「思った以上に残ってしまったな。なら、まずは…」

 

その視線の先にはこの遺跡を見て感動している大蛇が、

 

「ッッ!!!にげッ」

神の裁き(エルトール)!」

 

上空から放たれる神ごときの一撃。

過去この大蛇に傷を負わせるのも難しかったそれを、たった一撃で沈めてしまった。

 

「そんな…ッ!!」

「これで邪魔はなくなった。さぁ始めようじゃないか!!!」

 

両手を広げて歓喜に満ちるエネルはここにいる残りのメンバーを見渡し

 

「ここで生き残った一人が私と共に"あるべき場所へ"と向かおうじゃないか!!」

「さぁ戦え!!ここで消える者は果たして誰になるか!見物だな!!!」

 

その言葉にゾロがくいなが、ウソップがカヤ、チョッパーが、ワイパーが、明らかな敵意をエネルに向けて

 

「「「「「なら、お前が消えろ」」」」」

「………不届きが………」

 

 



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神の衣

戦闘開始の合図、先手必勝を放ったのはワイパー。

持っていたバズーカを打ったがエネルはその場から動かずに

 

電光(カリ)ッッ!!!!」

 

絶大な光熱を放つことでバズーカから放たれたエネルギー全てを消し去ってしまった。全体に広がる眩しい光。マトモに目が開けられない状況の中、一人だけ、ウソップだけがさっき使った瞬間移動マジックでエネルの背後に回っていた。

 

巨人の手(マジックハンド)ッ!!!!!」

 

大きめの箱から飛び出したのはまさに巨人の手。

それが2つの箱が出てきたことによりその手は両手、その両手でエネルを挟み込む。

 

バンッッ!!!とエネルが座っていた岩ごと挟み込んだと思われたが

 

「面白いことをする」

「ガッ!!!」

 

エネルの背後を取っていたウソップだが、思考が読めるエネルには、雷の速度を持つエネルには、その攻撃さえも届かなかった。ウソップの肩に触れたエネルはそこから電流を一気に流したのだ。

 

「ウソップさんッッ!!!!!!」

「野郎ッッ!!!!!」

 

倒れ込むウソップをくいなが、エネルにゾロが向かう。

不敵な笑みを見せるエネルにゾロは刀2本で

 

紅々朱(かかあ)……」

 

刀2本の刃先を地面に擦りながらまるで電光石火の如くエネルとの距離を縮める。そのスピードによって地面に当たる刃先が摩擦熱により赤々と熱を持ち

 

電乂(でんか)ッッッッ!!!!!!」

 

逆手握りにより二刀の振り上げ。

エネルの両腕が切り取られたなかゾロはそれでも攻撃を止めずに

 

帝狩(ていしゅ)……」

 

刀の持ち手を戻し両手をくっつけて2つの刀をまるで一つの刀にするかのように合わせて

 

冠剝(かんぱく)ッッッッ!!!!!!」

 

脳天へ合わさった二刀が振り下ろされる。

確実にエネルをとらえたのだが、やはり雷状態になっているものを斬ることは出来ずに攻撃を無効化されてしまう。

 

「なかやか速いな。油断とはいえこの私が遅れるとは」

 

真っ二つにされながらも喋るエネル。

しかし一瞬でその場から消えたエネルはゾロの背後に現れ

 

「しかし、人が"雷"に…"神"に勝てるとでも思ったか??」

 

その手が再び、ゾロの肩へ向けられる。

逃げようにも時間が足りない。そんな時

 

「エネルッッ!!!!!!」

 

ゾロとエネルの間にワイパーがバズーカを放った。

その爆発によりゾロはエネルからの攻撃から逃れたが、それでとその爆発にダメージを負ってしまった。

 

エネルはせっかくの獲物を、と代わりにワイパーへ近づき

 

「ならば、先に終わらせよう」

「やれるならなッッ!!!!」

 

至近距離でのバズーカを放つ。

さっきとは違い"電光"を使う暇を与えずにバズーカを当てればとやったがその爆風と煙の中から手が伸びてきた。

 

「終わりだ」

 

エネルはワイパーの肩に触れて電撃を放つ。

これで終わったと思った矢先、エネルはワイパーの思考を読み危険を悟った。しかし

 

「……0距離…なら、避けれねぇよな…………ッッ!!!!!」

「貴様ッッッ!!!!!!!」

 

バズーカで倒すつもりだった。

しかし直接電撃を受けている中で思いついたのだ。

だからこそ、避ける暇を与えなかった。

 

その右の手のひらにはある"貝"が仕込まれている。

そしてさらにそこには能力者が嫌うある物が、海楼石が含まれていたのだ。そのためにエネルも力が抜けてしまい動けない。

 

排撃(リジェクト)ッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

右の掌を押し当て”排撃貝”を起動させ、壮絶な衝撃を相手の心臓がある胸の部分叩き込む。 放出されるエネルギーは”衝撃貝”の10倍と言われ当たればどんな者でも確実に死が訪れる品物。

 

しかし、"衝撃貝"でも相当の衝撃が使用者の腕にかかる。

それが10倍なのだ。これを使えば二度は撃てなくなる。

だから最後の最後。どうしようもない時にと思っていたために普段の戦闘で使うという思考がなかってのでここまで出来たのだ。

 

地面に倒れたエネルに、ワイパーは息を上げてそれを見る。

吹き飛ばされたゾロの元へくいなが、ウソップのもとへカヤとチョッパーが向かい治療を始めていた。

 

「た、倒したのか……」

「喋らないでウソップさん」

「しばらく動くなよ。身体が痙攣を起こしてる」

 

チョッパーの診断しなくともいま口が動かせるだけで指先のさえも動かせない状態。これでエネルが倒れてもらわないと……

 

ドン!ドン!!

 

突然鳴り響く音。

いきなりエネルの身体が光だし、音と共にエネルの身体が跳ね上がっている。

それを見たチョッパーとカヤは

 

「ま、まさか……」

「心臓マッサージを一人でッッ!!!!??」

 

あり得ない光景。しかし確実に心臓マッサージをしているのだ。止まっていた心臓を電流で動かして蘇生する。

そんなことワイパーが知るわけもなく奇妙な動きに何が起きているのかまるで分かっていなかった。

 

だから、油断してしまった。

 

「まさか、この私に土をつけるとは………」

「エ、エネルッッ!!!!!!」

 

「褒美だ。受け取れ」

 

続けて排撃を打つことが出来ないと本能的にバズーカをエネルに向ける。しかし今度はエネルの方が一歩上手だった。

向けられたバズーカの口に電撃を放ちバズーカを内部から破裂させたのだ。

 

それにより破裂による破片や爆発が直接顔や肩に当たり悶絶するワイパー。エネルは背中の太鼓の一つを叩いて

 

「3000万V(ボルト) 雷獣(キテン)

 

至近距離からまともに放たれた電撃の鳥はワイパーの身体を貫いた。電撃の衝撃とエネルギーにより身体中から煙を出しその場に倒れてしまった。

 

そしてエネルは立ち上がり残りのメンバーを見て

 

「遊びは終わりだ」

 

再び背中の太鼓を、今度は2つの叩いた。

その2つから大きな電流の塊がそれぞれ現れて何かしらの形へと

 

「3000万V雷鳥(ヒノ)ッ!!雷狼(クトネシリカ)ッッッ!!!!!」

 

一つからは鳥の形をした電撃。そしてワイパーを倒した雷獣に似た電撃が姿を現した。いやよく見たら雷獣とは違い電狼の胴体部分からは"刀"のような鋭利なものが出ているのだ。

 

電鳥はウソップ達へ。電狼はゾロ達の方へと向かいだした。

 

これ以上ウソップに電撃は!とチョッパーが毛皮強化(ガードポイント)をして防御しようとした。しかしそれはあくまでも打撃だけ。簡単にチョッパーの身体を貫いた電鳥はウソップとカヤに襲いかかった。

 

一方電狼はまずくいなの方へと襲いかかろうとするところをゾロが電狼を倒そうとしたのだが、くいなが視線で"任せて!!"伝えてくる。

僅かなやり取りでゾロは電狼を無視してエネルの元へ。

 

 

電狼はくいなに飛びかかろうし跳躍。

くいなは浅く呼吸をして目を瞑った。

電狼から生える刀全てへし折り電狼を切り捨てるイメージを

 

「一刀流……」

 

目の前に、身体に触れられずとも、すでに電狼から放出される電撃を浴びながらも、それに耐え倒れずにくいなは、鞘から刀を抜いた。

 

剪体(せんてい)伐殺(ばっさい)ッッッッ!!!!!!!!」

 

電狼から生える刀を全て切り捨て、電狼そのものを一刀両断してみせたくいな。しかしこの技は相手の攻撃を捌くことと敵を斬る工程を同時にするために徹底した倒すイメージ力が必要となる。

 

くいなが刀を抜くまでに電撃を浴びてしまったくいなは無情にもその場に倒れてしまった。

 

同時時間。くいなが電狼と対峙していた時ゾロは確実な一撃をエネルに与えようと必死に思考を巡らせていた。

 

いくら斬っても届かない。

ならそれを届かせるために必要なもの。武装色の覇気。

 

ヒントはいくつも貰っていた。

ルフィやロビンが使うあの黒くなる現象はまるで"鎧"のよう。

防御にも攻撃にも使えるあれを刀に纏わせれたら自然系(ロギア)も斬れると。

 

ハッキリとした使い方はまだ教わっていない。

それを知るためには、斬ってこいと言われたのだ。つまり

 

(斬る実力はある。………なら!!!)

 

あとは斬ると信じて敵を討つだけ。

深く深呼吸し、刀に鎧を纏わせるイメージをする。

 

「そんなもので倒せるとでも??」

「やってみなきゃ、分からねぇだろう!!!!」

 

「ならば知れ!!!神の裁き(エルトール)ッッッ!!!!!」

 

真上から放たれる大きな雷。

もう避ける暇もない。あとは自分を信じてエネルを斬る。

 

マトモに神の裁きを受けたゾロ。

これで終わりだ。と背を向けたエネルはとっさに感じ取った思考に振り向いた。

 

そこにはただ根性だけで神の裁きを抜けてきたゾロだった。

それを見たエネルは焦ってしまった。

あの攻撃は当たれば確実に終わらせる事の出来るものだと。

だからまた心が乱れてしまいゾロに接近を許してしまったのだ。

 

「きさッッ!!!!」

「三刀流……」

 

二度目となる心の乱れをすぐに持ち直しゾロの思考を読む。

その攻撃を避けるために身体を動かしそうとしたが、

 

火天(かてん)炎卍(えんまん)ッッッッ!!!!!!!」

 

神の裁きをその身に受けた際に電流を通しやすい刀に熱が帯びた。それは真っ赤に燃え上がり、そしてそれを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その炎さえもエネルには届く攻撃。

腹部と腕、そして足3箇所に切り傷と火傷を負わされたエネルは怒りに任せて

 

神の衣(カムイ)イイイイィィィィッッッッ!!!!!!」

 

 

エネル身体から電流が溢れ出しまるで雷の衣を纏っているかのように見えるそれを一気に全方位に放出した。

電光とは違いエネルを中心に雷が放出するようなもの。

これにはゾロも打つ手なくその雷に身体を貫かれてしまった。

 

……………………………………………

 

「……………………何なのだ。コイツ等は………」

 

神の衣により周りが燃えていた。

高エネルギーである電撃があらゆるものを壊して燃やしてしまった。

 

そしてその中にゾロやくいな達が横たわっており、結果的にエネルの圧勝となった。

だが、それでもエネルは不満だらけだった。

 

今まで攻撃が当たったことがなかった。

心網もそうだが加えてこの雷になった日から攻撃など喰らったことがなかった。

この空島に来てもそうだ。誰も自分に攻撃を当てるものなどいなかった。

 

なのに青海人が現れてその中の二人に、いや、3人に攻撃を喰らっている。

 

ありえないことなのだ!!

自分は"神"であり、下民が触れることなどッッ!!!!

 

その中の一人がいま足元に倒れている。

まだ息があるその者にトドメを………

 

「………プさん!!!!…ソ……さんッ!!!………ウ……プさんッッ!!!!!」

 

声が聞こえてきた。

それにハッとまるで夢を見ていたかのような感覚に襲われるエネル。どうやら怒りに任せて心網を完全に停止させていたようなのだ。その声で冷静さを取り戻し足元にいるゾロをそのままに声のする方へと向かう。

 

「ウソップさんッ!!!!ウソップさんッッ!!!!!!」

「ほう。あの雷から無傷で生き残ったか」

 

「ッッ!!!??」

 

とっさにウソップを庇うようにエネルの前に立ち塞がるカヤ。

雷鳥がウソップとカヤを襲う前にウソップがカヤの足元に穴を空けてそこに落としたのだ。そしてその穴を覆いかぶさるようにウソップが身体をはり雷鳥とその後の神の衣を受けることになったのだ。

 

そして戦闘音が消えたあとカヤがどうにか塞いでいたウソップを押しのけて穴から出てくると、心停止しているウソップが…………

 

すぐに心臓マッサージをし続けるカヤ。

そしてエネルが現れるまえに何とか心臓を動かせることが出来たがそれでもまだ危険な状態なのだ。

 

これ以上はやらせない。ウソップが守ったように次は私が守ると。

しかしカヤの決意はエネルの言葉であっけなく壊れた。

 

「喜べ女。貴様が私と新たなる地へ向かうものとなった」

「な、何を………」

 

「来い。そうすればもうこの者たちには手を出さん」

「ッッ!!!!!!」

 

エネルの提案に乗ればもうウソップに危害がなくなる。

でもエネルの手を取れば、それは………

 

「………ダメだぞ、カヤ………」

「チョッパー君!!!!」

 

「そんな言葉を信じ……」

「黙れ。獣如きが」

 

「ギアァャアアアァァァッ!!!!」

「ヤメてッッ!!!!!!!」

 

意識を取り戻したチョッパーだが、エネルの機嫌を損ねあっという間に雷により再び気絶してしまった。

その姿に涙を流すカヤ。それを冷たい目でみるエネルが

 

「さぁ来い。我らはこの地から飛び立つのだッ!!!」

「……………はい」

 

選択の余地がない。

それでもウソップを助けれるならとエネルの後を追うカヤ。

そして一度だけウソップの方を振り向き「ゴメンナサイ」と一言言ったあと振り返ることなくエネルの後を追った。



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4人の強者

「ッッ!!!??……ワイパー??ワイパーッッッ!!!!!!」

「……本当にいた……みんな、倒されるなんて…………」

 

アイサを追いかけてきたナミがたどり着いた先にあったのはこの空島で一番の遺跡がある場所であり、そしてゲリラとゾロ達が倒れていた場所だった。

 

ワイパーにしがみつき泣きじゃくるアイサ。

雷によりダメージよりその右手の負傷のほうが重症に見えた。

そして強者であるゾロとくいな、ウソップとチョッパーが倒れている……

それを目の当たりにしたナミも動揺はし、叫びたくなるのをグッと堪えた。ここで感情的になったらダメだと抑え込み、そしてウソップと隣で倒れているチョッパーを見て

 

「さっさと………起きなさーーいッッ!!!!!」

「えええええぇぇぇぇッ!!!???」

 

倒れている仲間を、それも"タヌキ"みたいな動物に対してまさかの水をぶち撒けたのだった。

それを見たアイサは驚いた。いや、何をやっているんだと目を疑ったのだ。

するとチョッパーが目を覚まして、そして見たナミの表情と言葉は

 

「なんでお医者のチョッパーが倒れてるのかしら??

さっさと治療しないと…………思いっきりデコるわよ??」

 

「了解ですッッ!!!!!」

 

ダメージはまだ残っているはずなのに直立して敬礼する。

よっぽどナミによる着せ替え人形みたいな扱いが嫌なのだろう。

そこでハッとチョッパーは近くで倒れていた顔色の悪いウソップを発見し駆け寄った。

 

「お、おいウソップッッ!!!!!!

………心拍が弱い…アドレナリンを投与しないとッッ!!!」

 

ウソップの胸に耳を当てて心拍を聞くと弱々しいことに気づく。

手早くバックから薬と注射器を取り出してウソップにアドレナリンを投与する。その後徐々に心拍が速くなったのでまずは一安心。

 

そのあと冷静さを取り戻したチョッパーは器具を取り出してウソップの身体を一通り確認をしたところ

 

「………大丈夫みたいだな」

「なら良かったわ。じゃあとくいなとゾロも見てあげて」

 

おう。と言ったあとにその場から離れようとしたチョッパーに

 

「終わったら、その人も見てあげて」

「えっ?でもよ……」

 

「いいのよ。それに倒す敵はハッキリしてるわ」

「分かった!」

 

その言葉にアイサは涙目の状態でナミを見る。

その表情は何か訴えているようで

 

「アイサの仲間でしょう。悪いようにはしないわよ」

「な、ナミ………」

 

「あとでアイサが"身体"で払ってくれるでしょう!!?」

「あっ。大丈夫です」

 

……………きっと、これをワイパーが聞いていたら微妙な表情をしていただろう…………

 

そんなことをしているとバキッと何かが折れる音が鳴り響いた。どこからかと見渡してみると倒れている大蛇からだと気づき視線を向けると

 

「外だあああああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!」

 

大蛇の歯と歯の隙間から現れたのがルフィだった。

さっき聞こえた音は大蛇の歯を無理矢理引っこ抜いた音。

久しぶりに外に出れたのか思いっきり背伸びをするルフィは、改めて外の様子を見ると

 

「おおナミ!!!チョッパー!!!無事だったんだな!!!!!」

「何してたのよアンタは!!!!!??」

 

「いやーどうやらこの蛇に食われたみたいでよ。

師匠から蛇か大人しくなるまで何もするなって言われて、ついさっきまで"不思議洞窟"に入ったと思ってた!!!!」

 

「あ、アンタは…………」

 

こんなお馬鹿なルフィにゲンコツぐらい食らわせたかったナミだったがロビンがあえて何も言わなかったことを考えて殴るのをやめた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と感じたのだ。

 

そしてすぐにその効果が、ルフィが倒れている仲間を見つけた。

 

「ウソップ!!!??それにゾロとくいなもッ!!!!!」

 

すぐにウソップの元へ駆け寄るルフィ。しかしその間にチョッパーが入り込み

 

「いまは絶対安静なんだ!!!!ゾロもくいなも感電で動けない状況なんだ!!!!」

 

「…………アイツが、やったのか??」

 

「………そうよ。ねぇ、何してたのよルフィ……あんたがいればここまでッッ!!!!!」

 

いや、それはきっとロビンとハジメのいう"修行"の一環なのだろう。そうじゃなきゃ大蛇に飲まれたルフィをすぐにでも出したはず。そうだと、そうだと分かっていてもこんなにも近くにいて助けられなかったのかと言いたくなった。

 

ルフィがいればきっと。

 

もしかしたら何も変わらなかったかもしれなかったそれでも、可能性があると分かってしまった頭が、心が、どうしても押さえつけられなかった。

 

『やめなさいナミ。倒せなかったのはゾロ達の未熟さよ』

 

そしてずっと黙っていたミニロビンがルフィの麦わらの下から顔を出してそんなことを言ってきた。それを聞いたナミはルフィの胸ぐらを掴んでミニロビンに接近し

 

「修行で死んじゃったら意味ないじゃない!!!!!!ウソップだって危なかったのよッッ!!!!!!!」

 

『そんな下手な真似、私がするとでも思う??

ちゃんと蘇生術も知っているわ。ギリのギリまで追い込まないと学べないものもあるのよ』

 

「でも!!!!!」

 

そんなナミの手をそっと触れた。

それにハッとし、その手の先を見るとさっきまで倒れていたくいなが息を切らしながらもそこに立っていた。

 

「大丈夫よ、ナミちゃん……私は大丈夫……」

「ぜん、ぜん……大丈夫じゃない……」

 

「心配してくれてありがとう。でも、ロビンさんが言うとおりなのよ。やっぱり未熟だから招いた結果だから………強くなるわ」

 

それでも悔しい。っていう気持ちが伝わってくる。

だからだろうナミもこれ以上は言わないと決めてルフィを掴んでいた手を離して

 

「……何十倍にも返してきなさいッッ!!!!!」

「おうッッ!!!!!」

 

ルフィの背中を思いっきり叩いて気合いと願いを込めた。

それに答えるようにルフィも周りに響く声で返事をし振り返らずに歩きだす。

 

………………………………………

 

「これって………」

「これが我らを"神のみが到達する場所"へ運んでくれる」

 

カヤはそれを見ただけで何か分かった。

かつての執事のメリーが船を作っていたとき色々と学んだ事があった。それでも目の前の船は明らかに海を走るものではない。

 

「………空を、飛ぶ………ッ!!?」

「察しがいいな。この"方舟マクシム"は空を駆けるのだッ!!」

 

ヤッハハハハハハ!!!と高笑いするエネルの横でカヤは焦っていた。このまま連れて行かれたら完全にアウトだと。空の上では仲間が助けにくるなんて………

 

「期待するな」

「ッッ!!!??」

 

「どのみち()()()()()()()()。何をしようが無意味だ」

 

ここでやられると分かって逃げるのは愚かだ。

そう自分に言い聞かせカヤはエネルの後を追いマクシムに乗るしかなかった。

 

………………………………………

 

『ずいぶんと、調子に乗ってるわね』

「お姉さん………」

 

かなり、いやもう破裂寸前じゃないかと思うぐらいに切れているミニロビン。ルフィがエネルを追いかけたあとすぐさまゾロ、くいなを治療して今はワイパーの治療している最中の中、そのドス黒い殺気は近くにいたアイサを簡単に気絶させてしまうほどだった。

 

そしてそのアイサをここぞとばかりに膝枕して頭を撫でているナミの姿はどう見ても緊張感などないようにしか見えない……

 

『貴女じゃないわよ。もうそれは手遅れだわ』

「………えっ??」

 

『分かってないなら、それでもいいわ……

私が言いたいのはあのクソ(エネル)よ。

神はお兄ちゃんに相応しい称号なの。他の奴が使うだけで絞め殺したくなるわ』

 

まぁ、確かにロビンが介入すればすぐにエネルは終わる。

それだけロビンを信用……というか、決定事項に疑問さえも持たない。

 

でも、それでもロビンが言った言葉がちょっと引っかかる。

 

「お姉さん。なんか含みがあるような感じがしたんだけど……」

『そうね。さっさとこの空島から離れればいいのに神気取りなんでしょう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えええぇぇッッ!!!!??」

 

その言葉にナミは驚き、ついさっき目覚めたゾロやくいな、チョッパー達もその言葉に耳を傾ける。

 

『バカでかい雷雲を作り出しそれをこの空島にぶつけるんでしょう。それなら空島ぐらい吹き飛ぶわ』

 

「な、なんだよそれ!!!!」

「あり得るのか……」

「ロビンさん。それ本当に……」

 

『あのバカ一人の能力じゃ無理よ。たかが知れてるわ。

でもどうにかして雲を1箇所に集めれたら、そこに雷を含ませれば膨大なエネルギーが出来上がるわね』

 

「そ、そんな………」

 

『それでもまだ探しものが見つかってないから、神経をそっちに持っていったり、ルフィの対処に思考を回さないといけなくなるから簡単には使わないはずよ』

 

その言葉に少しは猶予があると知りホッとする。

しかし未だに危険は去っていない。その探しものが見つかれば

 

「でもその探しものって………」

『問題ないわ。だって…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『「そこに"私"がいるのだから」』

 

ミニロビンと同時に発せられた言葉。

それは本体であるロビンである。

サバイバルが始まってすぐに姿が視えなかったロビンは、ミニロビンを返して全てを状況を把握していた。

 

誰もが探しているものは何か。それはすぐに分かり、ミニロビンによる空島中を散策した結果、ある仮説にたどり着いた。

 

誰も見つけられなかった黄金はどこにあるのか??

 

「だから安心しなさい。最終防衛ラインは守ってあげるわ」

 

一つはエネルが船に利用した黄金。

一つは大蛇の身体の中。

そして最も巨大で価値のある黄金。それは、この空島の更に上にある雲の上にあり()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「たどり着いた瞬間。全てが終わるわ」

 

ふふふ。と微笑むロビン。

それこそハジメよりロビンの方が神ぽっく見えてしまうのは背後にある黄金の鐘桜のせいなのか………

 

………………………………………

 

「……コイツらは………」

 

こんな状況の中、一人、ジャングルを彷徨う者がいる。

そしてそんな中で倒れている男と女、いや、離れた場所にも女一人倒れている。

 

そしてその3人は見覚えのある顔。

自分をこんな状態にした元凶の仲間。

 

「………こいつ等を、使えば………」

 

口の端が上がる。

ゆっくりと近づき最も弱そうな女へと、その手を伸ばす……

 

………………………………………

 

「エネーーーーールッッ!!!!!!!!」

 

マクシムが隠されていた洞窟に鳴り響く声。

その声はついさっきまで気配を感じなかった。

どんな奴だと見下ろしてみれば麦わら帽子を被った者がいた。

 

「どこに隠れていた??私の予想は絶対なのだぞ」

「知るか!!!!お前、俺の仲間に………何をしたあああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!

 

エネルは見下した冷ややかな目で答えた。

 

「口を慎めよ・・・私はだ」

「お前のどこが神なんだ!!!」

 

ここで初めて対峙し、そしてこの二人が空島の行く末を決めることになる。

そしてそんな2人を、エネルと同じマクシムから見ているハジメとベルメールは、人知れずに離れた場所から観戦。

 

「勝てるの……ルフィ君は??」

「どうだろうねー。まぁどのみちエネルは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕が徹底的に()()()()

 

 



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マクシム

「な、何なんだアイツは……」

 

無意味だと分かっているがアイサはエネルに見つからないようにと岩陰に隠れている。

ルフィがエネルを目指して歩き出した時に自ら志願したのだ。

エネルがいる場所が分かると…

 

ワイパーがやられた今、あの"神"を倒すにはこの麦わらに賭けるしかないと判断したアイサは()()()()()()()()()()()()()()()()()とルフィを誘導したのだ。

 

そしていま面と向かって"どこが神なんだ"と言い切ったのだ。

それはエネルを倒してもらいたいがいきなりすぎではないかとハラハラしながら成り行きを見ているのだが、ルフィはその腕を伸ばしてマクシムにしがみつき船に乗ってしまったのだ。

 

「エ、エネルと同じ……ッッ!!!!」

 

突然伸びた腕に驚くアイサだが、もしかしたらと思考を切り替えて何処からか登れないかとマクシムを見渡していると

 

超人(パラミシア)系か…話にならん。

オレの前では全てが無力!」

 

モーションもなくいきなりルフィに向けてその腕を雷に変えたエネルがエルトールを放ったのだ。

ルフィはついいまマクシムに乗り込んだために体勢が、逃げるための行動が出来ずにいたのだ。そして、そのままルフィはエルトールに飲まれた。

 

「麦わらッッ!!!!!」

 

まさか、あんなに呆気なく……

同じ能力者ならエネルをと、思ったのだが目の前で回避不可能な攻撃を受けたルフィを見たアイサは絶望を………

 

「…………………??」

「…………………ハッ??」

 

どういうわけか、なんともないように、無傷のルフィがキョトンとした表情でそこに立っていた。

 

………………………………………

 

助けに来てくれたルフィ。

しかし避けられないその攻撃をまともに食らった姿を見たカヤはアイサと同じく絶望を感じる……はずだった。

しかしエルトールが消えたその先に、ルフィがキョトンとした表情でそこに立っているのだ。

 

確かに当たったはずだとカヤが感じていると

 

「……ふん。避けたか。……ならッ!!!」

 

エネルも同じようにルフィが避けたと思ったらしく、背中の太鼓を叩いて雷を生み出し形を変えた。

 

「6000万ボルト"雷龍"(ジャムブウル)ッッ!!!!!!」

 

それは龍。長く伸びたその雷はルフィを確実に捉えた。

 

「ルフィさんッッ!!!!!」

 

あれはダメだ。今度は間違いなく当たった。

ウソップと同じようになってしまったらと駆け出しをしようとしたカヤの目に

 

「…………………??」

 

またしてもキョトンとした表情のルフィが立っていたのだ。

確かに目の前で攻撃は当たったのだ。

なのになんともないその姿に駆け出しかけた足は動きを止めてしまった。

 

エネルも若干焦りを見せたのか、全身を雷に変えて瞬間的にルフィの目の前に現れ、両手をルフィに触れ

 

「1億ボルト…"放電"(ヴァーリー)ッッッ!!!!!!!!」

 

直接ルフィに膨大な雷を放った。

目の錯覚。というものさえもなく、確実な攻撃。

先程の攻撃よりも威力の増した攻撃は確実にルフィを倒した。

 

…………そう、思っていた。

 

「……さっきから、何やってるんだあああぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

エネルが触れていたその手をはねのけたルフィ。

そう。全く効いていないのだ。 その姿にエネルは

 

「………………ッッッ!!!!??」

 

"神"という風格も何もなく、ただ驚いている。

そんな平凡でなんとも笑ってしまう表情をしているエネル。

しかしすぐさま気持ちを切り替えたエネルは、向かってくるルフィに対して

 

(何をしたか知らんが、私に攻撃など………)

 

何度も冷静さ失って食らった攻撃。

しかしいまは冷静。ならば相手が攻撃しても自然(ロギア)系である自分には攻撃は当たらないと確信した。

 

しかしエネルは気づいていなかった。

ならなぜさっき()()()()()()()()()()()()()()()()()ということに。

攻撃ではなくともあの時も冷静であり攻撃していたのにも関わらずに"触れられている"のだ。

 

「ゴムゴムの………」

 

ルフィは腕を伸ばしながら捻じりを加えていく。

そしてエネルの目の前にきたルフィはその伸びた腕を引き戻しながら捻れた腕も元に戻そうと"回転"させながら、エネルの腹部へと拳を叩き込む。

 

回転弾(ライフル)ウウウウゥゥゥゥッッッ!!!!!!」

 

超人(パラミシア)系が自然(ロギア)系に勝てないのは"攻撃が当たらない"という点が大きい。その2つは大きな力の差が確かにあり、普通なら攻撃は通らないだろう。

 

しかしルフィにはそれを埋める術を持っている。

武装色の覇気。これがあれば実体を捕えて攻撃が通る。

だが今のルフィはロビンやハジメから武装色の覇気の使用を一回までと決められていた。

 

だからこの攻撃はただの普通の攻撃。

なのにその攻撃がいまは通り、エネルの身体はくの字に折れて吹っ飛んでマクシムの縁でぶつかり止まった。

 

カヤもルフィが武装色の覇気の使用が一回だけと聞いている。

そしてもし使ったとしたらルフィの腕は黒く色が変わっているはずなのだ。しかしその様子もなく攻撃は当たり、そしてエネルギの攻撃は無効となっていた。

 

それをみたカヤの頭にある仮説が、いや、確信が出来た。

 

(もしかしてエネルは”ゴム”という素材を知らない??

電気を通さない天敵(ゴム)がこの世にあることを、知らなかった??

もしそれが………ううん。間違いなくルフィさんは、エネルにとって世界でたった一人の・・・”天敵”になる……ッ!!!!)

 

エネルにとっての天敵。

武装色の覇気有る無し関係なく、悪魔の実上位下位関係なく、"電気とゴム"という性質による完全な関係。

 

それはどうあがいてもルフィには電気が、雷が効かないことを意味する。

 

それを身に持って理解したエネルは口から血を出しながらもゆっくりと立ち上がりルフィを睨むように向き合った。

 

「………なるほどな。どうやら、相性が悪いらしい……

しかし、見たところ"斬撃"は利きそうだな」

 

「あぁ。効くな」

(なんでバラしてるんですかッッ!!!!!!??)

 

せっかく優位に立っているのに態々不利になることを明かすなんてと目を疑うカヤ。それが分かったエネルは近くにあった黄金に触れてそれを()()()

 

「金に電気を流せば熱を持つ。熱を持てば金は溶け、こうして色んな形に作り変えることが出来る」

 

そういって作り出したのは三叉槍。

槍の先が3叉に分かれている武器の一つ。

 

エネルはそれを振り回し足を雷に変えて一気にルフィに近づく。顔に向けて突かれる三叉槍を避けたルフィはすぐさま拳をエネルの腹部に。

 

しかし読まれているのか簡単に避けられ、それどころかルフィの攻撃からのスキを伺っていたかのように、とっさに三叉槍の先を変化させて、まるで反しがついたような形状を作り引き戻す。

 

その際にルフィの顔をその反しで当てるつもりだったようだが、ルフィもそれを読んでいたようで、手で頭を掴み強制的に反しに当たらないように伸ばした。

 

それだけではなく伸ばした首を利用してそのままエネルに向けて手を離して頭突きを食らわせようする。しかし雷の速度では捉えられずにエネルはまた一定の距離を取った。

 

お互いに姿勢をただし、向き合う。

言わなくても分かる。お互いに相手が"自分の攻撃を読んでいる"と………

 

こうなったとき、攻撃を当てるためにはいかに相手より先の攻撃を読みきること。

 

「………どうやらこれからのことを考えればここでは狭い。移動しても構わぬな」

 

「あぁ。その前に………カヤを降ろせ」

 

「それは出来ぬ相談だ。この者は連れてく」

「ふざけるなッ!!!」

 

一気にカヤに向けて走り出すルフィ。

手を伸ばせば届く距離だったが、目の前に三叉槍が現れて道を塞がれ吹き飛ばされた。背後にある建屋にぶつかり止まったルフィだがそこへエネルが

 

「ひとまず、大人しくしてろ!」

 

建屋の壁に手を触れ、黄金である壁を変形させてルフィの手足を拘束させた。身動きが取れないルフィを無視しエネルは床から飛び出ている突起物に両手をついて

 

「さぁ、まずは"空"だぁ!!!!」

 

一気に電気をその突起部に流す。

すると突起部から床へ、床から建屋へ、建屋から内部へと電気が流れていく。

そしてこのマクシムからゴンゴンと音が鳴り響き始め、マクシムの両側から飛び出ているオールのような羽が動き出し、徐々に動きが速くなりマクシムがゆっくりと浮上し始めたのだ。

 

「う、浮いたッ!!?」

「ヤッハハハハハハッ!!!!!」

 

高笑いをするエネルにルフィは力を込めて、拘束された両手を、両足を強引にぶち壊し

 

「エネルウウウウゥゥゥ!!!!!!」

「そんな状態では、私には届かぬ!!」

 

………………………………………

 

「な、何よアレッ!!!!??」

 

地響きがなり、何事かと思っていると離れた場所から巨大なものか現れた。それはどうみても船。しかし水面を走るはずの船がいま空に浮いているのだ。

 

『マクシム。あのクソ雷が空島の住民達を強制労働させて作り出した空を走る船よ』

 

「あんなものを作って一体何をする気なの……」

 

勝手にサバイバルゲームを始めそしてカヤを連れて行った。

そしていまはこうしてマキシムという空を走る船に乗り何かをしようとしている。

 

その船に圧倒されているとルフィと一緒にエネルの元に向かったはずのアイサがこちらに向かって走ってきた。

 

「アイサ!!ルフィはどうしたの!!?」

「麦わらならあそこに!!女の子を助けようとしたけど船が動いちゃって……」

 

「まだ戦ってるのね……でも、援護したくてもあれじゃ……」

 

すでにマクシムはずいぶんと高い場所まで上がっている。

周りの遺跡や高い木からでも届かないほどに……

 

「………なら、ついてくるか…ナミ」

「ウ、ウソップッ!!!まだ起き上がるなッ!!!!!」

 

チョッパーの静止を聞かずに上半身を起こすウソップ。

心臓が一時的にも止まっていたのだ。身体が思うように動かないのに……

 

「オレなら運べるぞ。アソコにカヤがいるなら行かなきゃならねぇしな」

 

「何言ってるだよウソップ!!ルフィがいるんだ。ルフィに任せていまは安静に………」

 

「惚れた女を他の奴に任せるほど俺は出来てねえんだよッッッ!!!!!!!!!!」

 

その言葉に言い返せないチョッパー。そのウソップの目は覚悟を決めた目だと分かるから………それを見たナミはハァーとため息をついて

 

「分かったわ。でも無茶はダメよ。あくまでもカヤだけを助けるわ。すぐにその場から脱出、あとは船長に任せとけば問題無いわ」

 

「んなもん、分かってるんだよ。うちの船長は強えからな」

 

「絶対に無茶するなよなッ!!!!」

 

方針も決まりウソップは重たい身体を無理矢理動かして立ち上がる。しかしちょっと気が抜けると足に力が入らなくなり倒れ………

 

『手伝ってあげるわ』

「す、すまねぇ………」

 

『愛しい彼女を王子様が救う。ふふふ、そういうの好きなのよ私』

「だろうな。ロビンとハジメじゃどっちがどっちか分からねぇけどよ…………」

 

『何言ってるの。真の相思相愛はそんな次元じゃ収まらないわ』

「……はい。すみません…………」

 

マジ顔で言われて返す言葉もないウソップ。

バックから大きめのゴムボートを取り出しそこへ乗り込む。

先頭にナミ。オール位置にウソップ。二人のポケットからミニロビンが待機する。

 

「って、これ行けるかッッ!!!!」

 

どこで覚えたのか。完璧なツッコミをするアイサ。

相手は空飛ぶ船。対してこっちはゴムボート。

普通なら絶対に無理だと思うが

 

「そっか。アイサは見たことなったわね」

「な、なにが………」

 

「ウチの狙撃手は()()()()()()()()()()()()!!」

 

「行くぞ!!振り落とされるなよッッッ!!!!!」

 

川もなく、水に浮いてもないのにオールを漕ぐウソップ。

周りからすれば頭のおかしいことをしているように見える。

だが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その光景にアイサの口は塞がらずに放心状態。

ドンドン浮き上がりそしてマクシムに向けてゴムボートが動き出す。

 

「待ってろよカヤ!!!助けにいくぞッッッ!!!!!!」



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人質

「はぁはぁ……くそッ!!!」

「そんな単調な攻撃では当たるわけがない」

 

冷静さを無くしたルフィに対してエネルはただ遊んでいた。

確かにルフィは雷の効かない相手であり、攻撃無効出来るこの身体も当たるという天敵と呼べる相手。

 

しかしエネルの軽い挑発に乗ってしまったルフィがいま冷静さを無くしていることすら自分自身気づいていない。

 

もちろんポケットにいるミニロビンが忠告すれば終わる話だが、ロビンは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから本当にヤバイ時以外は手出ししないようにしている。

 

しかし……

 

(これがまだ続くなら……()()()()()()()()()()()()()()()()()……)

 

と、頭を悩ませながらポケットからルフィを睨みつけるロビン。

もしそれが実現するなら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それを本能的に感じたのだろう。

ルフィの全身から震えが起きて顔が青ざめる。

突然のルフィの不調にエネルも何が起きたかと警戒をする。

 

(なんだ??……何が起きたというのだ………)

 

涙目になり歯をガタガタ言わせるルフィ。

まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()そんな姿にさらに困惑するエネル。

 

「あ、あ、あぶ、あぶぶぶぶぶぶぶ…………」

 

まるで壊れた人形のように言葉になっていないルフィは必死に冷静になろうとしながら

 

「ぶぶぶぶぶぶなかったああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

それは心の底から助かった!という生還したような、ギリギリの縁をなんとか耐えきり生き残ったかのような………

 

「し、師匠!!!セーフ!!!セーフだよなッ!!!!!」

(師匠??何を言っているのだコイツは………)

 

突然の挙動不審に困惑するエネル。

しかしルフィは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。でも話す相手がいない。いや、()()()()()()()………

 

そう考えたがそれだとおかしいのだ。

エネルの見聞色の覇気に引っかからないからだ。

普通の見聞色とは違いエネルの場合はその能力、雷の力を利用しているのだ。広範囲に広げた電磁波に見聞色の覇気を乗せてこの空島全土の心を掌握している。

 

だからサバイバルゲームの時も空島で戦う者達の人数を言い当てることが出来た。

 

だが、このルフィは違った。

エネルからしたら自分の見聞色の覇気から逃れ、そして能力を無効化され、いまもこうして謎の行動をしている。

 

ハッキリと誰かと会話しているのに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

何もかも想定外で、危険な男。

今まで格下と舐めていたがもうそんな事は思わない。

 

「………いいだろう。ハッキリと敵と認識してやる」

「な、なんだ。いきなり??」

 

「光栄に思え麦わら。この私に"敵"と認識されたことを。

そして、"敵"は確実に始末するッッ!!!!!」

 

「よく分からねえけどやる気になったわけだな!!!」

 

ニシシ!と笑うルフィ。

しかしルフィとエネルが考える"敵"は違っていた。

ルフィはその拳で、相手を倒す。

だがエネルにとっての敵は、

 

「さて、動くな麦わら」

「お、お前えええええぇぇ!!!!」

 

一瞬に移動しカヤの背後に回り込んだエネルは、持っていた三叉槍の先をカヤの首元に押し当ててきたのだ。

つまりエネルはどんな手を使っても確実に倒すということ。

 

「貴様は危険だ。ここで確実に始末するにはこれが手っ取り早い。動けば私を倒せるかもしれぬが、そんなこと出来るか??」

 

その言葉に奥歯を噛みしめるルフィ。

エネルに気づかれずに一気に近づけばカヤを助けれるかもしれない。しかし何度も見たあの雷に変わっての移動速度。ギア2を使えば同等ぐらいの速度は出るはず。だがそれをする場合その思考を読まれればカヤに届く前に詰まれる。

 

エネル以上の速度を持たないルフィにとってそれをやるのはリスクが大きすぎる。

 

握りしめた手を解き全身の力を抜くルフィを見たエネルはニヤリと笑う。カヤはそれはダメだ!と声をかけようとするが首筋に刺さる三叉槍がまた突き刺さる感触がその一歩を止めてしまう。

 

「それでいいのだ。では"神の裁き"を始めようではないか!!」

 

………………………………………

 

「もっと速くできないの!!!」

「無茶をいうな!!!これは"マジック"だって忘れてねえかお前ッッ!!!!??」

 

確実にマクシムに近づいてはいるがそれでも焦れったい速度にナミはウソップに問い詰める。助けたい気持ちはナミ以上だろうウソップもそのもどかしさに腹を立てているがそれでもこれ以上の速度アップは望めない。

 

「知らないわよ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()

 

「マジックを便利屋と勘違いするなッッ!!!!」

 

無茶苦茶な理屈をこねるナミ。

他のものからしたらなんでも出来るようには見えるだろうが、この浮遊自体にもタネがあるのだ。それを超えていくものはもう"超常現象"と呼べる次元になる。

 

「言っておくけどな、怪我を直したり死人を生き返させるみたいなマネは出来ねからな。あくまでもマジック。タネをバレないようにしてるだけでそこにはタネ(仕掛け)はあるんだよ!!!!」

 

「使えないわね」

『ええ。使えないわ』

 

「マジでふざけんなお前らッッ!!!!!」

 

その理不尽すぎる言葉に大声を出すウソップ。

コイツラは俺をなんだと思っているんだと言いたい言葉を飲み込んで所でマキシムの下部まで到達した。

 

すると上部のほうから何か叫び声が聞こえてきた。

それは聞き慣れた声。ウソップはそれが聞こえてきた。

 

「カヤッッ!!!!!!」

 

上げたい速度。しかしそれは叶わないためにグッと堪えながら登り続けるゴムボートに頼るしかない。そしていきなり攻撃を喰らわないように少し離れた状態でマクシム本体よりも上空へと上がったゴムボート。そこから見えた景色は

 

「もうやめてッ!!!!」

「ヤハハハッ!!!!なかなか頑丈だな麦わら」

 

背後にある大きな黄金の建造物にエネルの手が触れる。

するとまるで生き物かのようにエネルの手に纏わりつきながら形を変えて三叉槍へ。そしてそれを離れているルフィに向けて投擲しているのだ。

 

ルフィはそれを避けずに真正面から受ける。

腹部をかすり血が流れる。すでに腕や足、胴体から顔まであらゆる箇所から血が流れており足元は血の海と化している。

 

「ルフィイイイイィィィィッッ!!!!!」

「あんなの……もう拷問じゃないッ!!!!!」

 

ウソップもナミもすぐに分かった。

エネルがカヤを人質に取っているためにルフィが手出し出来ないことを。それをいいことにジワリジワリとルフィを苦しめていると………

 

すぐにでもどうにかしたい!と気持ちは焦るがその手をミニロビンが制する。

 

『いまはダメよ』

「な、何でだよ!!!あのままだとルフィがッッ!!!」

 

『あれぐらいで死ぬ鍛え方はしてないわ。

そうね、あと2時間は頑張れるかしら』

 

「そんな悠長な!!!」

 

『あの自称神(バカ)は気づいていないようだけどルフィは致命傷にならないようにギリギリで避けているわ。あの血も見かけ倒し。血が出やすい所にわざと当ててるわね』

 

再び立場が上になったエネルはその興奮にうまく見聞色を使えていない。その分ルフィは回避と防御に徹するだけになったので相手が弱っていく姿を見せるように動いているのだ。

 

それを聞いたウソップは

 

「………………いや。イヤイヤイヤイヤ!!

なんでそんな器用なマネをルフィが出来るんだよッッ!!!!??」

 

『むしろルフィを舐めすぎよ。普段はアレでも鍛えたのは私よ。いまやっているのも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

 

それを聞いてウソップもナミもゾクッと恐怖した。

つまりそうやって相手の目を欺くようにしないという状況の中で、あのルフィが考えて編み出したその行動に。そしてそこまで追い詰めているロビンに対して本当に恐怖してしまった。

 

『とにかくあの自称神(バカ)が気づかないうちにカヤを助ける算段を立てなさい』

 

「って、言ってもよ……ルフィならともかく俺たち二人だけじゃ……」

 

『私が止めるまで一人で突っ込むつもりだったのに??』

 

「そ、それは、そうだけどよ……」

 

冷静さを取り戻したウソップに微笑むミニロビン。

助けたい一心になるのはいいがキチンと相手の力量、自分の実力を見定めないと話にならない。それが分かればいい。

 

『ならあと二人と協力するならどう??』

「えっ。それって……」

 

『この船にはあとサンジとレイジュもいるわ』

「二人がこの船にッ!!!??」

 

『起こしてあげるから協力しなさい。

そして私が手を出さないようにして、カヤを救い出したら貴方達には"見聞色の覇気"を教えてあげる』

 

………………………………………

 

『さっさと、起きなさい』

「ヘブジッ!!!」

 

マクシムの制御室で横たわっていたサンジは突然のビンタによって目が覚めた。ただ普通のビンタではないので吹き飛ばされて壁に激突したのだが………

 

「な、なんだ!なんだ!!!?」

『やっと起きたわね。私の一声で起きないなんて……落とすわよ』

 

「はあぁー!殺伐とした感じのロビンちゃんは最高だぁ!!!!」

 

『はぁ……貴女の弟。どうにかできないのレイジュ??』

 

未だに気絶していると思ったがロビンの呼びかけで目を開けるレイジュ。どうやらサンジを起こそうとしていた時には起きていたようだ。

 

「無理よ。さすがの貴女もサンジはお手上げなのね」

『人格崩壊か殺していいなら出来るわよ』

 

「その時は私が貴女を殺すわ」

『出来る実力もないのに言わないで』

 

互いが互いを睨み合う。流石のサンジもこれには軽口を、何も口出し出来なかった。しばらく睨み合いは続いたが

 

『………まぁ、お兄ちゃんが決めたモノだから最悪半殺し程度にしてあげるわ』

 

「そう。それは良かったわ」

 

(………何も良くねえよ………って言えねぇな…………)

 

ここでツッコんだら間違いなく消される。と判断したサンジは大人しくすることにした。

 

「それで、ロビンちゃんは俺達に何をやらせたいんだ??」

『ウソップと連絡を取りなさい。そして協力してカヤを奪還するのよ』



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空島に響く鐘の音①

「ヤッハハハハッ!!もう立っているのもやっとだろう!!」

 

ルフィの背後には沢山の三叉槍が落ちておりどれにもルフィの血がついている。投げられる全てを避けてはいたがエネルの動くなという言葉に一歩も動かせずにいた。

 

エネルもマトモにルフィに当てようとしていなかったために、なんとか致命傷は負ってはいないがそれでも血を流しすぎているためにもうフラフラの状態。

 

「………ハァ……ハァ………」

「そろそろトドメといきたいところだが、念には念を入れておこう。両手を外側へと突き出せ」

 

言われた通りに両手を外側へと突き出したルフィ。

ニヤリと笑うエネルは黄金の壁に両手を付き黄金を溶かし生成し始めた。そして片方ずつに取り上げた黄金をルフィの両手へと

 

「ギャアアアアアアァァァッッ!!!!」

 

雷による高熱で溶かした黄金を両手に流し込まれたルフィ。

あまりも高熱に身悶え絶叫し、その手には片方ずつ黄金の球体がつけられてしまった。

 

「これで動きも制限されたぞ麦わら。しばらくそこで蹲っていろ。貴様にもこの空島の終わりを見せてやる」

 

何かを噛みしめるかのようにゆっくりと歩きながら床から生えている黄金の棒状に両手で触れた。そして自らの雷をその棒状に流し込んでいく。

 

それはそのままこのマクシムの内部へ伝わりある機械へ電力が伝わる。そしてそこから生成されたものが外へ出ようと配管を伝わり上へ上へと上がっていき、このマクシムの上部にある煙突から黒い煙が吹き出してきたのだ。

 

それがドンドン上空へと上がりある一定の高さで止まった煙は横へ横へと広がっていく。煙ならとっくに消えるそれはまるで雷雲のような黒く空を真っ暗闇へと変えていった。

 

「まずは第1段階だ」

 

そしてエネルはその片手を雷に変えて雷雲へ向けて雷を放った。すると雷雲がその雷によって活性化したかのようにバリバリと音がしだし、そして雷雲全体から光るものが落ちてきた。

 

「"万雷(ママラガン)"ッッ!!!!」

 

………………………………………

 

「こ、これはッ!!!!」

「エネルめ……なんてことをッッ!!!!」

 

メルキーロードを走るメリー号。

そこからでもハッキリ分かる。突然現れた雷雲、あれはエネルがやったことだと。そして次に起きたのが色んな場所へと落ちてくる複数の雷。その一回の雷は大木など簡単に切り裂き砕くほどのエネルギーを持っている。これが続くようなら雲で出来た空島も、雲に浮かんでいるだけのヴァースも破壊されいつか消えてしまう可能性はあるのだ。

 

「ち、父がッッ!!!」

「待ちなさい!!こんな中を行くなんて無謀だ!!!」

「でも!!!」

「空を飛んでいきたいが、これだと雷に落とされる可能性が高い……どうする………」

 

…………………………………………

 

「逃げろッッ!!!!」

「もうお終いだあぁ!!!」

「下層に逃げろ!!!!!」

 

街でも万雷の影響はあり次々に建物を破壊していく。普通の落雷ではないことぐらい誰にでも分かる。エネルが怒りこの惨状を引き起こしていると。

 

「勝手なことはやめなさい!!!エネル様に殺されますよ!!!!」

「何言ってるんだアンタは!!!まさにいまがそれじゃねえかよ!!」

 

「そ、そんな……私達は見放されたのか……」

 

マッキンリー隊長は崩れ行く街を見て現実を知った。

前神であったガン・フォールを裏切り()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それさえも裏切られてこうして全てを消そうとしているエネルに怒りとなんとも情けないと悔しい気持ちが押し寄せてくる。

 

「早く逃げましょう」

「……貴方は………」

 

「私も娘があのアッパーヤードにいます。ですがここで立ち止まってしまえば再会することも叶いません。貴方も、辛かったと思いますが今は行きましょう」

 

「私は、私は……ッッ!!!!」

 

この男の娘をエネルの天罰を受けるべきだと進言してしまった。そして実際裁きは実行された。例え当たっていなくともそれは逃げることの出来ない真実。

 

それをこの男に伝えないといけない。

怒り、罵られ、それこそ裁きを受けようとも……

だが、いまはここにいるものを、空島の人達を、

 

「全団員!!!全力で逃げるぞ!!!!誰一人見捨てるなッッ!!!!」

「「「「「へそッッ!!!!!」」」」」

 

………………………………………

 

「な、なに、これ……」

 

空飛ぶマクシムから黒い雲が噴き出していると思いや、そこから沢山の雷があちこちに落ちてきている。

たった一つの雷だけでもかなりの威力。それがアッパーヤードを壊している。

 

「み、皆が………」

「雷にやられたのか!!!??」

 

「う、ううん……でも、いつ当たってもおかしくないよ……」

 

奇跡的にまだあの雷を直撃しているものはいない。

しかしそれも時間の問題。アイサの震える手は無意識にチョッパーの手を握っていた。

 

「心配するな!!!ルフィがどうにかしてくれる!!!それに俺達にはもっとスゲェ奴がいるんだ!!!!!」

 

「ルフィよりも………そんなやついたっけ………」

「いるんだよ!!!まだ名前は思い出せねぇけどよ!!!俺は知ってるんだ!!!!!」

 

………………………………………

 

『右』

「右!!右よ!!!!」

「ギャアアアァァァ!!!!」

 

「一発でも当たったら死んじゃうのよ!!!しっかりしなさい!!!!」

「マジックだからそんなに瞬発力がねえんだよ!!!!」

 

特に危ないのはナミ、ウソップ達。

マクシムよりも上空にいるので雷が多く落ちてくる。

それをミニロビンが見聞色の覇気で先読みしているからこそなんとか避けれているが、一発でも当たれば落下、まっ黒焦げにされてしまう。

 

『左』

「ウソップッッ!!!!!」

「クソがッッ!!!!!!!」

 

ギリギリ避けれたがこのままだと本当にヤバい。

いくらゴムボートでもこれだけのエネルギーだと簡単に壊される。しかしまだ突撃が出来ないでいた。

 

「早くしろよサンジッッ!!!!!」

 

そう。いまはサンジ待ち状態。

未だにでんでん虫からの連絡は来ない。

 

『真上』

「ップ!!!!!!!」

「ッッッッ!!!!!!!」

 

もう言葉にならない状態が続くようだ。

 

………………………………………

 

「これで、どうだ!!!!」

 

バキッと歯車が外れ停止した。

そしてレイジュがまたその歯車を埋め込められないようにと毒で溶かしていく。

 

「ここまですればいいんじゃないかしら?」

「だな。さてウソップに連絡を………」

 

と、でんでん虫を手に取り連絡を入れたが間髪いらずに

 

『何してたんだテメェはッッ!!!!!』

「んだよ。こっちも色々……」

 

『いいからサンジ君早く始めて!!!!!』

「わっかりましたーーッッ!!!!!」

 

ダッシュでその場から走り出すサンジにハァ、とため息をつき弟を追いかけるレイジュだった。

 

…………………………………………

 

「な、何が起きた……??」

 

突然マクシムから出ていた雷雲が動きを止めた。

広がっていたその雲も広がりを止めてしまい完全に空島を覆えずにいる。

 

するとサンジが船内から飛び出してエネルに向けて走ってくる。

 

(………コイツが何かした………??)

 

高揚感でしっかりと見聞色の覇気を広げずにいたエネルは船内で行われていた事が分からずにいる。しかし船内から出てきたサンジがなにかしたぐらいは簡単にも推測できた。

 

「小賢しい……青海人があぁッッッ!!!!」

 

突っ込んでくるサンジに片手を雷に変えてエルトールを放つ。

真正面から放たれるエルトールをジャンプして避けたサンジはそのままエネルに向けて

 

三級挽き肉 (トロワジエム・アッシ)ッッッ!!!!」

 

空中から連続の蹴りを放つサンジ。

しかしそれを避けるだけの冷静さはあるようでいとも簡単に避けていく。

サンジもそれぐらいは分かっていたのだろう。

あくまでも時間稼ぎ。ここでエネルの後ろから

 

「ゴムゴムの……」

「貴様ッッ!!!!」「………斧ッッ!!!!」

 

あれだけ血を流しているのに動けるルフィに驚くエネル。

両手が使えないルフィは足を振り上げてエネルに向けて踵を落とす。背後からの、死角からの不意打ち。決まったかと思いきやそれさえも避けられる。

 

「小賢しい猿共めえええええぇぇぇ!!!!神の衣(カムイ)イイイィィッッ!!!!!

 

再び放たれた神の衣。エネルから溢れ出す雷が四方八方に放たれていく。ルフィはともかくサンジはすぐさまその場から離脱。

 

「サンジ!!!いたのかッ!!!」

「ルフィ!!お前アレが効かないのか!!!??」

 

とっさに離れて雷に当たらずにすんだサンジだがルフィは完全に雷に何回も打たれていた。それにも関わらずに平然としている姿にサンジは驚いていた。

 

「うん。効かねえ。あと攻撃も当たるぞ」

「……なるほどな……いいじゃねえか。

……おい、ルフィ。手を、いや。()()()()()

 

「おうッッ!!!!!!」

 

悪巧みをするルフィとサンジ。

その考えがエネルにも伝わったのだろう。初めてエネルの額から汗が出てきた。



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空島に響く鐘の音②



はい。最新まで再投稿終わりましたー!!
そして次の投稿は間違いなく日曜日に行います!!
で、今年最後。12/31に投稿します。

さらに出来れば翌年の1/1にも。
こっちは未定なもんなので、あまり期待はしないでね(笑)





「………ッ!!」

「ゾロッッ!!!具合はどうだ!!?」

 

目が覚めたゾロの視界には空全体に雷雲が広がっており異常なほどに雷が地上に向けて落ちている光景だった。

それがあのエネルによるものだということに気づくのは簡単なこと。

 

「あぁ、問題ねぇ。……ただ」

「ただ、なんだ??」

 

深刻そうな表情をするゾロにチョッパーは……

 

「…………酒はあるか??」

「あったとしても渡さねぇよ!!!」

 

「寝覚めには酒がいいんだがな……」

「そんな医学的根拠のないことはするなッッッ!!!!!!」

 

見事なチョッパーのツッコミである。

そんなやり取りをしていると「…………ん………」と声が聞こえてきた。隣で気を失っていたくいなも目が覚めたようで

 

「………ゾロ。お酒持ってる??」

「お、お前ら一体何なんだよッッ!!!!!??」

 

 

まさかのくいなも酒を求めてくるとは思わずについ持っていた聴診器をゾロへと投げてしまったチョッパー。

もちろんそんなものゾロに当たるわけもなく簡単に掴まれてしまった。

 

「おはようチョッパー君。……えーと、なんか不機嫌だね??」

「……いや、くいなといいゾロといい……剣士はみんな寝起きは酒を飲むのか??」

 

「私は飲まないよ。匂いでこう"カッ!!"と目覚めるだけ」

「俺は飲むな」

「ゾロには聞いてねぇ」

 

辛辣なチョッパーの返しにムッとするゾロ。

しかしいまはそれどころではなかった。

 

「で、チョッパー。一体何がどうなってやがる??」

「いまルフィとカヤ。ウソップとナミがあそこにいる」

 

そういって指さした方を見てみると宙に浮かんだ船があり、その上空をゴムボートが浮遊していた。もうゴムボートにいたっては豆粒みたいになっているが奇妙な動きをして雷を避けているからそれはウソップが動かしていると分かった。

 

「なるほどな。で、親玉も乗ってると」

「それとこの雷はその親玉の仕業ってわけね」

「ウソップとナミがカヤを救出するはずだったんだけど、あの雷が邪魔してるんだ」

 

「んなもん、ウソップに任せとけ。俺達は」

()()()()()()()()()()()()()()()()()

「………何する気だお前ら………」

 

ニヤリと笑うゾロとくいなを見たチョッパーはとても嫌な予感がした。そして二人はマクシムの高度に最も近い大きなツタへ向かって歩き出した。

 

…………………………………………

 

黄金玉(ゴールデンボール)ショットッッ!!!!」

 

サンジはエネルに向けてルフィの右腕に付いている黄金を蹴り飛ばした。普通なら黄金を蹴ること自体が無理であり足を痛めるだけなのだがサンジは違う。そして例え飛んだとしてもルフィも一緒に吹き飛ばされるがゴムであるルフィの腕が伸びるだけなのでこちらも問題ない。

 

一直線に飛んでいくる黄金に対してのエネルは先が分かっていたかのように簡単に避けた。

 

「ルフィ!!()()()()()()()ッッ!!!」

「おうッ!!!!」

 

避けられた黄金の先には壁しかなかったが、黄金の塊から手首だけ出ているその手。大きく息を吸いその空気を右手に向けて流し込むとパンッと膨らんだ。

 

それがクッション代わりになり、そしてまるでゴムボールのように跳ね返る性質が生まれたため、その黄金が付いた手がまたエネルに向けて跳ね返ってきたのだ。

 

「なっ!!!??」

 

これにはエネルも驚いている。

攻撃を避けることは簡単だ。しかしこの跳ね返ってきた攻撃には()()()()()()()()()()()()が見えない。だからギリギリで避けれたがエネルの腹部に掠ってしまった。

 

そして続けて跳ね返ってきた右手をまたサンジが蹴る。

今度もそれを簡単に避けて、跳ね返ってきた右手を警戒した。

しかしそれが来る前に見聞色がサンジの攻撃を読んだ。

 

そっちを見ると残った左手もサンジがエネルに向けて蹴ってきたのだ。攻撃が読めているから避けれるがその間に右手のほうが跳ね返ってきたために余裕で避けることが難しくなっていた。

 

そして今度は左手が跳ね返ってきたのでそれを避けようとするとサンジがまた右手を蹴ってくる。こうして四方八方から読める攻撃と読めない攻撃がエネルに飛んでる構図が出来た。

 

(…鬱陶しいッッ!!!)

 

簡単に避けれる筈が見事に相手の作戦に乗せられてしまっている。しかしここから逃げることも簡単だ。跳ね返ってくる壁があるからいけない。しかしマクシムの為にもこれを無くすわけにはいかないが、その腕をの持ち主をここから消せれたら問題はなくなる。

 

つまりは、倒せなくともここから退場させたらいいのだ。

 

だからエネルはあるタイミングを見極めるために攻撃を避け、そして右手と左手が同時に向かってきたタイミングで

 

「エルトールッッ!!!!!!」

 

両手が雷に包まれてエネルに向かっていた黄金が吹き飛ばされた。大きく外へ飛んでいくその両手。未だに黄金が付いているためにこのままいくとその2つの重さのせいでルフィがこのマクシムから退場してしまう。

 

「ヤッハハハハ!落ちていけ、麦わらッッ!!!!」

 

そして伸び切った腕に限界が来てしまいルフィの身体が引っ張られ始めた。

 

「や、ヤベッッ!!!」

「このクソ野郎がッ!!!!!」

 

そしてサンジはルフィからダッシュで離れて、サンジ、ルフィ、エネルが一直線になる場所へ移動して

 

「文句言うんじゃねえぞルフィ!!!!!!」

 

そしてルフィに向けて一直線に走り出したサンジ。

それを見たエネルには

 

(麦わらに攻撃をする気か??なんの為に??)

 

感情が昂り見聞色の覇気が上手く使いこなしてない。

その先のことが読めれば()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「猛進!!猪鍋シュートッッ!!!!!」

「ごふッ!!!」

 

ルフィの腹部に思い切っきり蹴りを入れるサンジ。

ダメージはないが体内の空気が抜けてしまうために声が出てしまった。

その蹴りの勢いは止まらずにルフィと一緒にそのままエネルに向けて飛んでいく。そこでやっと気づいたエネルは回避しようと雷になろうとしたが思ったように身体が動かない。

 

そこで気づいた。離れたところからゆっくりと攻撃されていたことに。いや、攻撃というものではなく足止め程度、もしかしたら効けばいい程度だったのだろう。だからエネルでも読めなかった。

 

「生身なら私の毒も効くことは検証済みよ」

「き、貴様ッッッッ!!!!!!!!!」

 

吐息を吹きかけるかのようにゆっくりとエネルの周りを麻痺毒が囲んでいたのだ。それも無色無透明。見聞色の覇気で読めなければ気づくことは出来なかった。

 

そして気づけたとしてももう遅い。

サンジは一度片脚を地面につけてスピードを落としてルフィとの距離を開けたあと

 

「膨らまずに全体に広がれッッ!!!!」

「おうッッ!!!!!!」

 

ゴムゴムの風船のように身体を膨らませることはせずに、まるで生地を綿棒で伸ばしているように広がるルフィの身体。

そしてサンジは再び走り出してルフィに、いや、エネルに向けて蹴りを、入れる。

 

肉叩き(アプラティール)ショットッッッ!!!!!!!!」

 

全体に広がったルフィの身体を満遍なく蹴りを入れていく。

その蹴りはルフィのゴムの身体を通してエネルの身体に撃ち込まれていく。サンジの蹴りは利かなくてもルフィの身体を通して攻撃をすれば確実に攻撃は当たると考えたのだ。

 

そして蹴り終わったサンジ。エネルはそのまま後ろの壁に激突し、そしてサンジの手で一緒に吹き飛んでいくのを止められたルフィは

 

「これも、もらっていけッッ!!!!!!」

 

空からルフィに向けて返ってくる両手。

それは黄金が2つ付いており普段の攻撃よりもずっと破壊力が増している。

 

「ゴムゴムの…………」

 

戻ってくる両手に捻じりを加えてそして自分に戻ってきたタイミングで捻じりを開放。そのままエネルに向けて放つ。

 

「ツイン·黄金ライフルッッッッ!!!!!!!!!!」

 

まるでドリルかのように建屋を破壊していく両手。

そのあまりにも大きい破壊力により両手についた黄金は砕けていき、そして両手が建屋全てを吹き飛ばしてマキシムよりも向こうへと伸びきった。

 

………………………………………

 

「カヤッッ!!!!!」

「ウソップさん!!!!」

 

「怪我はしてねえか!何かされたかッ!!?」

「大丈夫。なにもないから、もう大丈夫よ」

 

そうか…と安心しきったウソップはその場に座り込んだ。

エネルを倒したとウソップはゴムボートをマクシムにつけてカヤの元へと走ったのだった。ミニロビンのおかげで雷に一撃も食らうことはなかったが

 

「乗るんじゃなかったわ……寿命が縮んだと思ったわよ……」

「ナミさんもありがとうございます」

 

「気にしなくていいわよ。それより後で良いものがあるから」

「??」

 

なんのことか分からなかったがそれを聞こうとする前に

 

「ナミすわーーーんッッッ!!!!!俺の為に来てくれたの!!!?」

「んなわけないでしょう。レイジュが側にいるんだから私はいらないでしょう」

 

「そ、そんなこと言わないでよー大体レイジュは関係な……」

「はいはい。姉弟仲良くするものよ」

 

そっけない態度をするナミにこれ以上は踏み込まないサンジ。

別に嫌いとか拒絶とはないが別に仲良くなる必要は……

 

「サンジ」

「な、なんだよ……」

 

「疲れたわ。何か甘いものが欲しいわ」

「……………地上に降りたらな…………」

 

かといって、今更態度を変える必要もない。

いまの関係は別に悪くないと思ったサンジに優しく微笑むレイジュ。

 

そんなやり取りを見たあとに黄金から開放され「取れたー!!」と陽気なルフィにナミが

 

「ルフィ。あんたあの雷雲どうにか出来ない??」

「ぶっ飛ばせばいいのか??」

 

「うーーん。出来ればそれがいいけどかなりのエネルギーというか破壊力が必要なのよ??それだけのやつあるわけ??」

 

エネルを倒したというのにまだ止まない雷。この雷雲がある限り止まらないだろうと推測したナミは無理だと思いながらルフィに聞いてみたのだ。

 

「まだギア2を使ってないけどよ………師匠ならできると思うぞ」

『いやよ。面倒くさい』

 

「って、さっきからいうから言ってんのよ………」

 

いくらルフィの大技を使ったとしても一部の雷雲だけしか消せないだろう。そうなると規格外のロビン。しかし本人はやる気がないようでこれ以上言っても無駄だとナミも分かっていたのでこうしてルフィに期待したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………るさん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すると微かな声と共にガラリ。と音が聞こえた。

全員がその音の方を向くとさっきまであった建屋の瓦礫から、そしてその一部からガラガラと音を立てて瓦礫の山が崩れているのだ。

 

「ウソップッッ!!!今すぐ俺以外を連れてここから離れろッッ!!!!!!」

「お、お前はどうするんだよッ!!??」

 

「もう一回ぶっ飛ばす!!!」

 

ここにいるメンバーで瓦礫の下にいるエネルを倒せるとするならルフィしかいない。だからすぐにでもルフィ以外は離れてほしかったが

 

「俺は残るぞルフィ」

「サンジ!!」

 

「俺のフォローには回らなくてもいい。ヤラれたら捨て置け。どうにかして隙を作ってやるよ」

 

「やらせてあげてルフィ。弟のこと、お願いね」

 

そこまで言われると何も言えなくなったルフィはただ「おう」というしかなかった。そしてゴムボートにウソップ、カヤ、ナミ、レイジュが乗り込んでマクシムから離れていく。そんな姿を見てサンジが

 

「ウソップッッ!!!!」

 

真剣な表情で見てくるサンジにウソップは

 

「全員無事に地上に届けるぜッッ!!!!!!」

 

親指を立ててグッと合図するウソップに

 

「そんなハーレムは認めねえからな!!!!あとで覚えてやがれえええええぇぇぇぇ!!!!!!!!」

「お前は何言ってるだああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!??」

 

遠ざかっていくゴムボートからは未だに絶叫が聞こえてくる。

しかしルフィとサンジはそれどころではなかった。

ガラガラと瓦礫が一気に流れ落ち、そして瓦礫の下から現れてきたのだ。

 

全身がボロボロで背中の太鼓も曲がってしまっている。

そんな状態でも一瞬でも目が離せずにいた。

いまのエネルはさっきまでのエネルとは違うと。

 

「……………何も、何も、いらぬ……………」

 

バチバチと全身から電気が、電流が、雷が迸る。

そして雷雲から落ちてきた雷がエネルを直撃する。

その閃光に目が開けづらくなるのを耐えながら二人はエネルを見ると少しずつエネルの身体が大きくなっていくのだ。

 

「………空島も……黄金も………ここにあるものはすべて、いらぬ…………」

 

そして降り注ぐ雷がエネルに吸い寄せられるかのように集まって落ちていくのだ。その度に身体が大きくなりそして

 

「………消す。ここにあるもの全てをだ。麦わら。神の怒りをとくと味わえッッッ!!!!!!!」

 

そして出来上がったのが本編でも見た"MAX2億ボルト、雷神(アマル)"と姿を変えるのだが、それよりももっと大きく禍々しい何かへと姿を変えてしまったのだ。

 

「MAXIMUM10億ボルト。雷神王(トール)ッッッッ!!!!!!!!」



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空島に響く鐘の音③



どうも。
この小説の元となった物を消してしまってから初めての投稿。
いやー本当に読んでくれてる皆様にはご迷惑をかけました。
ということで今回投稿して、次回の12/31投稿は確定です。
なので是非読んでください。予想外の展開も含まれているかと思いますので。

あっ、安心して下さい。エネルは倒されますよ!!

では、どうぞ(笑)





「ゾロ〜!!くいな〜!!!」

 

地上へと戻ってきたウソップ達。そこでは刀を抜いて何かをやろうとしている二人の姿だった。

 

「カヤちゃん!!良かった無事だったんだね」

「うん。心配をかけました。それより何をするの?」

 

その場所はかなり高く伸びているツタがあり、ゾロ達はその根本にいるのだが

 

「コレを斬って傾けて、そこを走ってジャンプすればあの船に届くんじゃねえかと思ってな」

 

「い、いけるか…これ……」

「スピードもいるけど、なかなかの高さよ……」

 

考えている二人の案に少し引き気味のウソップとナミ。

届かなかったことを考えると身の毛がよだつ思いになる。

 

「それよりウソップに送ってもらったら??」

「いくか!!あんな人間ビックリショーに俺を巻き込むな!!!」

 

「私からすればある意味その域に達してるわよ」

「おいおい……レイジュがそんなこというとマジっぽいだろうが………」

 

"毒"の性質を持っているレイジュ。そんな規格外な者からウソップも規格外と言われると本当に聞こえてくる。

しかしウソップのマジックはすでに"マジック"の域を超えている。どんなにタネがあってもどう考えても現実離れしていると誰もが思っている。

 

「問題ねぇ。つまりまだあそこでルフィとコックがやってるってわけだろう。なら行かない理由にはならねぇな」

 

「だけどよ!ただ走ってジャンプぐらいじゃ届かねぇよッッッ!!!!」

 

「……………方法は、ある………」

 

その声の方を向くとそこにはゲリラの中でも一番強いワイパーがそこにいた。足元にはアイサが付き添いながら涙目になってワイパーの顔を見ている。

 

「………だから、俺を…運んでいけ………」

「ダメだよワイパーッ!!!!これ以上使ったらッ!!!!!」

 

「あの麦わらは、なんの為に戦っている……??」

「知るか。お前らには関係ねぇだろう」

 

「ちょっとゾロ!?……少なくとも今はこの空島の為に、やってくれているはずですよ」

 

「……………なら、問題ねぇな……この手が吹っ飛ぼうがな……」

 

ゾロ達は知っている。あのエネルを瀕死に追いやった強力なダイヤルを。つまりはその衝撃を利用してゾロ達をあの船に届かせようとしているのだ。

 

「だが、これだけじゃ足りねえ……」

「それは大丈夫。私が二人を途中まで届ける」

 

「やれるのか、くいな??」

「私だって少しは活躍しないとね、やるわ」

 

そのやり取りを見たウソップは両手で頭をかきながら悩み、そして「チクショー!!!!」と叫んだところで

 

「俺だってやってやる!!!ナミ!!あのクマ達を出してくれ!!!!」

「シロとクロに何をさせる気よ??」

 

「もうこれはアラバスタの時と同じなんだろう。だったら全員で出来ることをやった方がうまくいくだろうが!!!!」

 

ウソップが思いついたのはアラバスタでやった爆弾を遠くへ飛ばす方法だった。しかし今回はゾロをあのマクシムに届ける方法。ならここにいる全員でやればきっと………

 

「分かったわよ!!このツタを走るのはどうするの??」

「俺に任せてくれ!!!ウソップ、皆が乗れるもの出してくれ」

「おう!!とっておきがあるぜ!!!!」

「なら私はそのサポートをしましょうか」

 

ゾロ、くいな、ウソップ、ナミ、チョッパー、レイジュ、ワイパー。

そして残ったカヤとアイサは

 

「皆の落下時は俺が何とかする。だけど取りこぼしたときは」

「私ですね。分かりました」

「ア、アタイなら正確な場所、教えられるよ!!!」

「頼りにしてますね」

 

どうしても高所から全員を落下から救うのは難しい。

万が一ウソップが取りこぼした時にカヤにそのものを助けてもらう役割をお願いしたのだ。アイサはそのものの"声"を聞いて正確な場所を探り当てる。

 

「ならまずはこのツタだな」

「そうだね。斬りがいがある」

 

ゾロとくいながツタの正面に立った。

その方角にマクシムが浮いている。この方角に切り倒せばいいのだが

 

「ゆっくり倒れるように斬り過ぎたらダメだからね!!!!」

「加減しろよお前らッッ!!!!!」

「頼むぞ加減だぞ!!!!!」

 

「こいつ等………」

「アハハ………」

 

全く信用されていない。

それもどうもくいなというよりゾロに向けて言われているようで、それを本人も気づいているからこそ苛立っているようだ。

 

しかし一気に雰囲気が変わった二人に誰もが押し黙った。

斬り過ぎない。それを守るためだろう、ゾロは二本の刀をしまいくいなと同じように一本でやるようだ。

 

そして構えはゾロとくいなが左右逆。

ゾロが左でくいなが右。どちらとも鞘に収めた状態にして深く息をした。そうこれは居合いの構え。

 

「「一刀流、居合い………」」

 

前に二人の合わせ技"伊邪那岐(イザナギ)""伊邪那美(イザナミ)"という居合いを使ったことがある。しかしこれだと()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()使()()()()ので、威力を抑えたある居合いを使うことにした。

 

「「滅獅(めっし)砲紅(ほうこう)ッッッ!!!!!!!!!」」

 

刹那に抜かれた刀から放たれた2つ斬撃がまるで獅子の牙のように合わさり、その強烈な斬撃の為か、斬撃が合わさったためなのか、その斬撃には"紅い斬撃"と呼べるほどに色が見えた。

そしてその斬撃は簡単にツタの一部を食い千切ったように切り取り、その部分はその"紅い斬撃"の影響なのかジリジリと燃えている箇所が見られたのだ。

 

ツタの一部を切り取った為にゆっくりとツタがマクシムの方へと倒れ始めた。

 

「失敗は駄目だからね!!!行くわよ皆!!!!!」

「「「おう!!!!」」」「「「「「はい!!!!!」」」」」

 

………………………………………

 

1()()()()()ッッ!!!!

雷鳥(ヒノ) ! 雷獣(キテン)!! 雷狼(クトネシリカ)ッ!!!!」

 

一気に背中の太鼓から3体の雷による獣を生み出したエネル。

しかしエネルの周りの帯電はさらに勢いをまし、そしてエネルの前に現れた大きな太鼓から

 

5()()()()()ッッ!!!

雷龍(ジャムブウル)ウウウウゥゥゥッッ!!!!!」

 

最後に現れた本物の龍のような大きさの雷が前触れもなしにルフィを正面から襲った。ただの雷ならともかく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それをとっさに感じ取ったルフィは噛み付いてくる龍の牙を押さえ付け喰われずにはすんだがそのまま宙へと飛び出してしまった。

 

「ルフィッッ!!!!!」

「問題ねぇ!!!そっちは頼んだぞッ!!!!!」

 

ルフィを喰らおうと縦横無尽に飛び回る龍。

喰われないように押さえている手も高温で手が焼けている。

一刻も速くルフィの手助けはしたいがサンジはサンジで目の前に3体と雷とエネルが待ち構えている。

 

「まずは、ザコからだ」

「………ザコか、どうか………」

 

片脚をトントンと地面をノックし気合を入れて

 

「試してみやがれッッ!!!!!!」

 

………………………………………

 

「クソ!!どんどん離れていく!!!!」

 

ルフィを倒すために生み出された龍。

しかし本当はこの場からルフィを追い出すために作り出されたもの。

 

ルフィだからこそ抑えられているが普通ならその一撃で死んでしまうほどの威力を持っている。

 

エネルもそれが分かっているからこそまずはサンジを始末しようとルフィを遠くへと飛ばそうとしているのだ。

 

「このヤロー!!!離しやがれ!!!!!」

 

動かせる足でガンガンと口の中を蹴るが相手は生き物ではない為にダメージが通らない。速くしないとマキシムからドンドン遠ざかると焦るルフィに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なにを、してるの??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷で出来た龍からバチバチと周りの音をかき消す音が鳴り響いている中、ハッキリとその声と言葉が聞こえた。

ポケットに潜んでいる者からではなく、本物の声が、視線が、威圧がルフィの全身に貫かれるように伝わってきたのだ。

 

恐る恐る。なんて出来る状態ではない。

こういうときの()()は速く返事しなければヤラれるのだ。

 

「すみません()()ッッ!!!!!!」

「ダメよ。許さない。今すぐに死刑よ」

 

すると龍の全身から手が生えてきて、その手が何箇所かに集まり大きな手となり

 

「"クラッチ"」

 

そう唱えた瞬間に龍の身体はあり得ない方向へと折れ曲がり咥えていたルフィを手放して消えていった。

落ちたルフィは偶然にも雲の上に落ちたために助かったが、本人は雲から落ちたほうが良かったと思う展開へ発展していた。

 

そう、落ちた先はもちろん。黄金の鐘とロビンがいる雲の上。

 

「さあ、処刑執行の時間よ」

「ま、ま、ま、ま、ま、ま、ま、待ってくれよ師匠ッッッ!!!!」

 

一歩、一歩とルフィに近づくロビン。

しかしすでに後ろは雲がなく逃げられない。

いっそう落ちてしまうかと思ってもすでに両足は押さえられている。

 

「いやよ。私は待つのが嫌いなの」

「頼むから待ってくれよッ!!!!」

 

「己の未熟さを反省してイキなさい。大丈夫よ。あのクズは私が消すから」

 

「お願いだから待ってくれ!!!!師匠!!!!!!」

 

しかし全く聞く耳を持たないロビン。

すでにルフィの体から()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ロビンの処刑執行が行われたら間違いなく目覚めることはない。(実際に死ぬわけではないが、死ぬほど痛い目にあうので目覚めてもしばらく身体を動かすのも嫌になり一週間以上は廃人状態になってしまう)

 

もう絶体絶命の瞬間に、ルフィの頭にあるものが駆け巡り

 

「ハジメに活躍を見せずにオレは、オレはここで終われないんだあああああああぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………合格よ、ルフィ」

「…………??………………へぇ??」

 

怖くて目を瞑っていたルフィ。

しかしロビンの声に目を開けると全身に生えていた黒い手は消え伏せており、ロビンからもさっきまで感じていた絶対的なオーラのようなものが消失しているのだ。

 

こんなことはいままでなかった。

許してもらえたとして一撃ぐらいは喰らう覚悟はとっくにしていたのでここまでハッキリとなにもない状況に頭がパニックを起こしている。

 

「いくらお兄ちゃんの"能力"だとしても長年一緒にいれば"お兄ちゃん"という存在を忘れることは無いわ。自分のなかで"お兄ちゃん"が"一時停止"されて定着いくものなのよ」

 

「……えーと、つまり………」

 

「お兄ちゃんを思い出せなかったらキル。だったわね」

「危なかったあああああああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!」

 

また一つ。ロビンの試練??を乗り越えたルフィ。

その様子に満足そうな表情を見せるロビンだったが、すぐに通常通りの表情に戻り

 

「気分がいいからあのクズのところまで送ってあげるわ。

それとそこで"お兄ちゃん"を見つけれたら"アレ"を使えるか交渉してもいいわよ」

 

「い、いいのかよ師匠ッッ!!!??」

 

「お兄ちゃん次第よ。どっちにしろいまの貴方じゃアレを制御出来ないでしょう。ならお兄ちゃんを見つけてみなさい。そのご褒美、欲しいならね」

 

その言葉に「ヨッシャー!!」と子供のようにはしゃぐルフィ。

それを見ながらロビンの分身体を作りここで見張るようにと言いつけて背中から羽を、能力の手で出来た羽を生やした。

 

「いくわよルフィ。制限時間は5分。到着してお兄ちゃんを見つけて倒すか、自力で倒すか、どのみち5分過ぎた時点で……」

 

「じ、時点で…………」

「…………ふふふ」

 

「エ、エネルをぶっ飛ばすぞッッッッ!!!!!!!!!」

 

多くを語らないロビンの微笑みがルフィにとってはマジでヤラれると悟った。






あっ。そういえば元々読んでくれていた皆様。
この新規の小説になったときどうやって見つけましたか??
やっぱり"ロビン""悪魔""人外"的な感じですかね(笑)




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空島に響く鐘の音④



どうも。
今年最後になりました。
そしてエネルとの決着となります!!
やっと終わったーーー。長かったよー
後は空島での後処理して降りましょう!!
…………マトモに終わればいいけどね(笑)

そこらへんはまだ詰めてないので来年の僕に任せます(笑)
では、どうぞ。





「す、スゴイ!!!こんなにもスピードが出るなんてッ!!!!」

「だろう!!チョッパーの脚とこの潤滑油のような液体を分泌する木が作ったソリなら摩擦抵抗が少なくてスピードも上がるッッッ!!!!!」

 

ソリを引くチョッパー。

そしてそのソリにはウソップ、くいな、ゾロ、ナミ、レイジュ、ワイパーが乗っている。

 

そんな場違いのようなところでずっと怖い顔して黙っているワイパーにナミが

 

「ねえ、どうしてそこまでしているの??」

「………………」

 

「貴方達が地上から来た青海人って呼ばれる人達というのは分かってるわ。だから一緒に来たこの大地を守りたいのも分かる。でもそんなにボロボロになってまでやろうとするのは理解出来ないわ」

 

「ナミ、やめとけ」

 

ゾロの言葉に疑問を吐くナミ。「だっておかしいでしょう!!」とワイパーの身体を見ていうその言葉はそれほどに傷ついている。

そして口を開かなかったワイパーが

 

「…………なら、なぜ、あの麦わらは戦う??」

 

そう、それこそワイパーは分からなかった。

全く無関係な人間がこんなにもなって戦うということが。

しかしそれについてナミは、すぐに、ハッキリと答える。

 

「黄金のためよ」

 

「……オウ、ゴン……??」

 

「あとはあのエネルが私達に手を出した。それだけで戦う理由には充分なのよ!!」

 

その言葉にワイパー以外のメンバーが頷く。

なぜ戦うのか。ワイパーもヴァースの為、仲間の為と戦っていた。そして一番の理由があるのだ。

 

「………俺達は鐘楼を探しだし、約束の鐘を鳴らす。それが先祖から伝わる守るべきものだ」

 

『だったら丁度いいわ。その鐘楼"私"の所にあるわよ』

「本当なのお姉さん!!?」

 

『そしてそれをあのクズも狙ってるわね。

丁度いいわ。手伝いなさい。そしたらこの鐘楼を守ってあげるわ』

 

ポケットから顔を出すミニロビンに驚きバズーカを向けようとしたが、その前にミニロビンがガッチリホールドをしたために身動きが取れない。

そして提示された内容にワイパーは

 

「……元よりそのつもりだ。鐘を鳴らしてくれれば俺は、俺達は………報われる………」

 

『だったらあのクズを倒したら鳴らしてあげるわ。

青海に届くような大きな鐘の音をね』

 

「…………頼む………ッ!!!!」

 

頭を下げるワイパーにミニロビンは拘束を解く。

そして見えてきたツタの先端。この先は予定していた通りにやれば届くはず。

 

「ほ、本当に大丈夫なんだよなッッ!!!!??」

「5秒ぐらいなら大丈夫よ。信じて走りなさい」

 

まもなく先端というところでレイジュがソリから手を伸ばしてツタに触れて

 

毒の架け橋(ピンク·ロード)ッッ!!!!」

 

ツタの先端から約10メートル以上の簡易的な道が出来た。

その毒は麻痺毒を使っているので、蹄が付いているチョッパーの脚でも歩き続ければ麻痺毒にやられるだろう。

 

そんな道を駆け抜けるチョッパー。

ビチャビチャと毒が脚へ回っていくのを感じながらも一気に駆け抜け

 

「後は、頼むぞッッ!!!!!!」

 

チョッパーとソリを繋いでいたロープを外し、毒の道の先端から下へ落下するチョッパー。ソリも同じように落ちる所を、ワイパーがソリの後ろから手を突き出して

 

排撃(リジェクト)ッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

手が放たれる衝撃波。

それはワイパーを、乗っているソリ自体を吹き飛ばす。

一気に空中へ飛び出したソリは安定せず全員が宙へ放り出されそうになるところで

 

「シロッッ!!!クロ!!!!お願いッッッ!!!!!!」

 

ナミが召喚した2体のクマがゾロとくいなを持ち抱えてマクシムの方へめがけて投げ飛ばした。

 

「二人とも!!頼むわよッッ!!!!!」

 

落ちていくナミ達。

その中にはウソップもいるのでキチンとキャッチしてくれるだろう。だからくいなとゾロは目の前のマクシムの方へ、敵のいる場所だけを見つめて。

 

………………………………………

 

首肉(コリエ)………シュートッッ!!!!」

 

雷獣(キテン)の首を蹴り抜いたサンジ。

壁に当たり消滅したところで今度は雷鳥(ヒノ)が襲いかかる。

 

とっさにその場から離脱し嘴による突き刺さりを避けたが、上空にいる雷鳥は中々厄介な相手ではあった。

そしてまだ地上には雷狼(クトネシリカ)がサンジの隙を伺っていた。

 

そして仕掛けしてきのは雷鳥。

もう一度サンジに目掛けて飛行し、今度はその爪で引き裂き感電させるようだ。しかしサンジはそれを避けたあとに

 

胸肉(ポワトリーヌ)シュートッッ!!!!」

 

雷鳥の胸目掛けて一撃を喰らわせた。

作られた鳥なのに苦しむような表情を見せながら消える雷鳥。

それを狙っていたかのように雷狼はサンジ目掛けて走り飛びかかる。

 

そして簡単に避けられないように雷狼の身体から電流が四方八方に流れ近づけないように、当たれば感電するように対策していた。

しかし、それをサンジは()()()()()()()()()()()()()()()()

 

腹肉(フランシェ)……シュートッッッ!!!!!!」

 

腹に強力な一撃を喰らわせ、雷狼をそのままエネルに向けて蹴り飛ばした。当たり隙が出来ればと思っていたサンジだがエネルは雷狼を片手で、まるで飛んできた虫を叩き付けるかのように簡単に消してしまった。

 

「やはり偶然にも当ててきたわけではなかったか……」

 

何か考えている様子を見せるエネル。

しかし次の瞬間にはその場からエネルは消え去り、とっさに振り向きながら蹴り上げた先に三叉槍とぶつかり合い襲いかかるところだった。

 

「そして、勘も悪くない」

「そいつは、どうもッッ!!!!」

 

三叉槍を払い除けエネルに一撃を入れようとするサンジ。

しかし見聞色を使っているエネルにその一撃は入らない。

だが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(何が、起きている……あの麦わらだけではないというのか………この()に振れる事が出来る者がッッ!!!)

 

焦りがありつつも平常心を保ちつつ連続蹴りの攻撃を避けるエネル。それが脅威になる。僅かでも可能性があるならこの男はと手を伸ばそうとしたとき

 

「エーーーーネーーーールーーーーーッッッ!!!!!!!」

 

叫び声の方向を見るとルフィがエネルに向かって空から一直線に落ちてくるのが見えた。とっさにその場から離脱し体当たりを回避するエネル。

立っていた場所からは粉塵が舞い先が見えない状態。

それでもそこに立っているのが分かっているエネルはそこから視線を外さなかった。

 

さっきまで戦っていた麦わらと、いまいる麦わらがまるで別人のように雰囲気が変わっているからだ。

 

少しでも選択をミスればヤラれるのは自分だと思わせるようなプレッシャーが襲いかかってくるのだ。

 

(な、何なのだコイツらは!!!?何故神である私に逆らうッ!!!??)

 

もうなりふり構っている場合ではない。

そう判断したエネルは上空に向けて放電を行い始めた。

そのタイミングで粉塵が消えルフィの姿が見えたがエネルはそれを脅威とは感じず()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「終わりだ麦わらッッ!!!!

貴様らは、貴様はここで終わるのだッッ!!!!!」

 

「何言ってるんだ…………ッッ!!!??」

 

突然の言葉にわけも分からず問い詰めようとしたとき上空からいままで聞いたことのない鈍い音が響いてきた。

雷雲から少し雷が、いや、雷雲が固まって出来た何かが地上に向けて落ちてきているように見えた。それがバチバチと雷がなり風のうねりなどが響き合いながら、その大きさがこのマクシムの倍ぐらいあるような大きな雷雲の球体が落ちてきているのだ。

 

「"雷迎"ッ!!」

「な、なんだありゃッッ!!!!」

「なんつうもんを……ッッ!!!!」

 

「もう私でもアレは止められないぞ麦わら。

あれがアッパーヤードに落ちればここら一帯、空島を含む全てが消える。

さぁ選べ!!雷迎を消しに向かうか、私に挑むかッッ!!!!」

 

脅しではない。それはすぐに二人も直感した。

膨大なエネルギー。あんなものが当たれば確かに全てが消えてしまう。

 

かといって目の前のエネルを逃がすというのもあり得ない。

だが唯一、雷に勝てるルフィがどちらかを選ばなければならない。

 

どちらを選ぶか。ルフィの決断は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任せたぞ()()()()ッッ!!!!!」

「「了解!!キャプテンッッ!!!!!」」

 

マクシムの横を下から上へと飛び上がってきたゾロ。

そしてそれと並行して飛び上がってサンジ。

この二人があの"雷迎"に挑む。

 

上がってきたゾロの周りは竜巻のような気流が身体を押し上げていて、サンジもその気流に乗ってゾロと共に上昇する。

 

「なに乗ってやがるグルグル!!!」

「あぁ!!?くいなちゃんのおかげだろうが!!!テメェに言われる筋合いはねぇだろうが!!!!」

 

「「ああぁッッッ!!!!?」」

 

目標をマクシムにしていたゾロとくいな。

しかし突然現れた巨大な雷雲の塊に驚いているとくいなが「私がゾロを運ぶ!!!」と言い出して"無刀流·龍巻き"を使ってゾロを"雷迎"へと方角転換したのだ。

 

そしてそれはマクシムの下にいるときに行ったこと。

それをルフィとサンジは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………チィッ!……一瞬だ。手をかせ」

「妥当だな。さっさと終わらせるぞ」

 

雷と乱気流によって雷迎の内部はかなりのエネルギーが蓄積されている。それは触れれば爆発する爆弾のようなもの。

それを阻止するなら内部のエネルギーを消し去るか、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「色は苦なり」

 

近づく雷迎に向けてゾロは深紅を抜く。

最も深く赤く染まるその刀身はまるで炎を纏った刃のよう。

相手が剣士ではないとはいえくいなを守れずに倒れたそれを、その悔しさを込め、そして黒く鈍い色と交わりつつあるその刀を

 

「受想行識も苦なり」

 

深紅を、両手で握り、振り上げる。

 

 

 

 

「出来上がった上質な肉を」

 

燃え上がるその脚に黒く光るものが見える。

そして燃え上がる炎はウソップが経験したあのハーレムのような状況を自分だと置き換えて妄想することを。

 

アハハ、ウフフ、と楽しい楽しい時間が待っていたというのに……あんなゴムボートという狭い空間で、女の子と……姉をレイジュを守らずにいた自分の怒りと煩悩を自ら断ち切ったサンジはいま静かに燃え上がる青い炎と化し

 

「繊維を傷つけずに、躊躇わずに断ち切る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一切塊空(いっさいかいくう)ッッ!!!!!」

肉の輪切り(ルウェル)バーストッッ!!!!!」

 

ゾロの一振りの斬撃は雷迎の右側半分を消し去った。

切り離したでもなく、切り飛ばしたでもなく、言葉の通りに消し飛ばしたのだ。

 

サンジの蹴りは雷迎の左側半分を切り取った。

まるで肉の塊からナイフで切り取るように、それが完成形だと思わせるかのような形に変えてしまった。

 

二人の一撃が、雷迎を爆発させることもなく、むしろ二人の一撃による余波が周りの雷雲さえも吹き飛ばした。

 

 

 

 

「あ、あ、あり得ない……あり得ないッッ!!!!」

 

それを見たエネルはパニックを起こしていた。

自分で言ったのだ。雷迎は自分でも止められないと。

なのに、それをたった二人で消し去ったのだ。

 

「ごちゃごちゃうるせぇな」

「ヒィッ!!」

 

だから、そんな間抜けな声を出したエネル。

冷静さを無くしたエネルからはルフィがまるで()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()。俺はコイツをぶっ飛ばす!!」

 

さっきからずっとエネルを見ていたルフィ。

いや、違う。ルフィの視線はエネルではなくその後ろに……

 

「やっとロビンの域に一歩入った。というところか」

「ッッッ!!!!!!???」

 

まるで気づかなかった。

その声は背後から、それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()。見聞色の覇気が全く見抜けなかった。その声が、言葉が聞こえるまで、一切見つけられなかった。

 

「お願いだから、ルフィはあの子みたいにはならないでね……」

 

そしてもう一人そこにいることも気づかなかった。

一人ではない。二人も。ずっと気づかなかったのだ。

あまりのことに言葉が出ないエネルの横を通り過ぎる2つの影。

そして視界に映った男女は、とても強者には見えなかった。

 

「な、な、な、な、なんだ……なんだお前らはッッッ!!!!」

 

一歩踏み出しそうとするが動けない。

その間に二人がルフィの元へたどり着く。

 

「ロビンからは聞いてるけど、特別サービスだからな。

肉体が追いついてないから使えないんだ。もっと鍛えないと」

 

「えっ。ちょっ、そんなに危険なやつなの??」

 

「内部も外部も焼けるからね。もっと武装色の覇気を使いこなさないといけないのもある。やっぱり修行を厳しくするべきかな」

 

「い、嫌だああああぁぁぁ!!!!!!」

 

まるでコントをしているようにふざけているとしか思えない状況なのに、それでも動かない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

だから下を見たエネルの瞳に映ったのは()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「な、なんだコレはッッ!!!!??」

「さっきからうるさいな。それは"フニャフニャの実"の能力で床を柔らかくして埋めた状態だよ。ちなみに雷化出来ないのは僕が()()()()()()()()()

 

「な、な、何を、言っている………」

 

「"な"が多いな。そこまで冷静さを無くせば()()()()()()()()()()()()()()()()ということだよ」

 

つまり、エネルが雷迎が吹き飛んだあの時。冷静さを無くしたあの時に背後からのベルメールが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これ以上は説明しないよ。あとは吹っ飛べ」

「ふ、ふ、ふざけッッッ!!!!!??」

 

叫ぼうとした口が、手が、胴体が全て抑えられた。

無数の手がエネルから生えて取り押さえているのだ。

そしてそれをやった人物はハジメの背後から現れ

 

「喋らないで。私、貴方嫌いなの」

「ッッッ!!!!!??」

 

「それとルフィ。お兄ちゃんはあぁ言ったけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。調子に乗らないことね」

 

「は、はい………すみません…………」

 

頭を垂らすルフィだが気持ちを切り替えて前を向く。

ハジメはルフィの肩に触れて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()"()()"()"()"()()()()()()()()()()()()

 

「ギア(セカンド)ッッ!!!!」

 

ルフィの身体から蒸気が発生し身体能力が一気に向上する。

そして片手を後方へ伸ばしていき、そこにネジリを加える。

これは一度エネルに喰らわせた"ライフル"という技。

 

しかしただの"ライフル"じゃルフィの身体に負担がかかるわけがない。ここからもっと威力をスピードを加えるのだ。

 

 

「ゴムゴムの……JET………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"OVER"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………えっ??」

 

気づいたら後方へ伸ばしていたルフィの手が前へ伸びており、その手から腕からボウッボウッと火が出ていた。

何が起きたのかと驚くベルメールだが何かをしたのだろうと、倒す方を、標的であるエネルの方を見たらさらなる驚愕なものを見た。

 

そこには大きく肥大していたエネルの身体の真ん中に()が空いて、そこを伸びたルフィの手が通り抜けているのだ。

 

貫いたのか。と思いきや、その穴は人の形をした穴であり、

 

「も、もしかして……」

 

その穴から外側へ一気に霧散して消えていった。

そう、これはあまりにも速いスピードでエネルに一撃を放ったために肥大化していたエネルの本体だけを吹き飛ばして皮が残った状態になっていたのだ。

 

まるで、至近距離で殴ったような。動作が全く見えない攻撃。

 

 

至近発(ゼロ)(マグナム)

 

 

これがハジメとロビンに禁止された技。

これを制約なしで使えばルフィの腕は一瞬にして炭と化し二度と使うことが出来ない禁断の技である。

 

「終わったわね。終了の鐘、鳴らすわね」

「頼むよ」

 

そして聞こえてくる鐘の音。

空島のさらに高い所にあった黄金の鐘楼を鳴らすロビン。

それはルフィ達に、ナミ達に、アイサ達に、空島の人達に、青海にいるクリケット達に………

 

 

 

「あ、あいつ等……」

「やりやがったのか………」

 

「ったく、心配させやがって………」

 

地上からでも聞こえる鐘の音。

そして雲に映る両手を広げた麦わら帽子を被ったシルエットが見える。

 

 

 

「うううぅぅ………勝ったぞおおおおおおぉぉぉぉぉぉッッッッ!!!!!!!!!!!」

 

その声は、空島を救った人物の声は、鐘楼の鐘の音にかき消されていたが、ハッキリとハジメやロビン達には届いていた。






あっ。今年一年。ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
できれば"ウォーターセブン編"が終わる。というところまで進みたいものです(笑)

まぁ、終わらないか。ロビンが一番活躍する場面なので(笑)


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ターニングポイント。その選択が世界を変える。前編



どうも。
改めまして明けましておめでとうございます。
まさかの更新しちゃいました!!!
いやーめでたいから書ける書ける!!!!
昨日のKinKi Kidsコンサート+新曲決定+CM決定となると気分がいい!!もう指が動く動く!!!!!

そしてここにきての含みのあるタイトル!!
さぁどうなるのか??楽しんでください。①なので続くよ(笑)

ではどうぞ。







「これが………鐘楼か……!!」

「大切に保管してくださいね」

 

ゲリラの長へ黄金の鐘楼を渡すことにしたハジメ。

元々先祖が守ってきたのだ。返すのが通りだろう。

 

「しかしいいのか??お主らが探していたという"オウゴン"なのだろう」

「これは流石にデカすぎますか。船に乗せれるぐらいので」

 

「そうか……ならこの鐘楼の欠けた柱はどうだ??」

「それぐらいなら。ロビン、ウソップ呼んで」

 

と、近くにいたロビンに話しかけたのだが返答がない。

アレ?と周りを見渡してみるとロビンが鐘楼の台座に刻まれた文字を真剣に見ていた。

 

「それって………古代文字??」

「えぇ……まさかここに……」

 

「なんて書いてあったの??」

『我ここに至り この文を最果てへと導く "海賊ゴール・D・ロジャー"』

 

「ッッッ!!!!??」

 

そうだ。そうだった。

この台座に刻まれた文字はあの海賊王が来た証であり、古代文字を知り、"文字を彫れる一族"がいることを証明した場所。

ここから"ワノ国"の伏線が始まったんだ…………

 

「………来てたんですね……」

 

しかし、海賊王との出会いもつい最近のように感じる。

気まぐれで会ってみた海賊王はなんとも能天気というか掴みどころがないというか、本当に不思議な人だった。

 

「これ、ニコルに教えたほうが良くない??」

「そうね。呼びましょうか」

 

ロビンが両手をクロスさせて「召喚咲き(サモンズ·フルール)」と唱えると、空気椅子の体勢でペンを持ち、まるで書類を片付けていたニコルが現れて尻もちをついた。

 

「きゃあッ!!!」

「なに、カワイ子ぶってるの。消すわよ」

 

「呼び出しておいて理不尽ッッ!!!!」

 

同じ顔なのに、言わば双子みたいなのに、"ニコル"という名をもらってから本当に変わったな…………

……………いや、ここにいるロビンも本編とはかけ離れすぎているけど…………

 

「もう……なによ……速く帰らないとまた海軍本部が大騒ぎになるのよ………」

 

「貴女如きがいようとも問題ないわ」

「自分の分身体に対して本当に酷すぎだと思わないのッッ!!!??」

 

「いいえ。まったく」

 

「この女は……」と本体であるロビンに腹を立てるニコル。

気持ちは分かるけどきっとロビンには勝てないよ。

 

「それで何なの??要件は」

「自分で調べなさい」

 

「何なのアンタはッッッッ!!!!??」

 

このままだときっと長くなる。

はぁーとため息をついたハジメはニコルに近づき

 

「まぁまぁ落ち着いて」

「お兄ちゃん。本当にこの本体どうにかして」

 

「出来ると思う??」

「…………私が間違っていたわ……」

「存在が間違いなのに何をいまさら」

 

「もう消してッッ!!!いっそうこのまま消してッッ!!!!」

 

可哀想である。ニコルとして頑張っているのに可哀想。

それを見てロビンはかなり上機嫌のようだ。さっきから笑った表情が戻っていない。こんな風に笑うのも久しぶりに見たかなー

 

「……………お兄ちゃん。本当に、助けてよ……」

「ごめんごめん。ほらロビン」

「しょうがないわね。ほらそこよ」

 

やっとニコルイジりをやめたロビンは鐘楼の台座へと指を指した。その先を見たニコルは一瞬緊張が走ったように動きを止めたがすぐに駆け足になり近づく。

 

「これって!!!??ゴールド·ロジャーはここに来たのッッ!!!!

いや、それよりもどうして彼がこの文字をッッ!!!!」

 

「そんなに真剣になることなのかしら??」

「淡白なアンタがおかしいのよッッ!!!!」

 

まぁ、本編でも表情にそこまで出してなかったけどね。

それでもかなりの驚きはあったんだけど……

本当に"考古学"というものをごっそりとニコルに持っていかれてるな〜

 

「………もう、いいわ……貴女に話してもムダね」

「だからニコルを呼んだのよ。察しが悪いわね」

 

「アンタは毎回毎回悪口を言わないと死ぬのッッ!!!??」

 

………………………………………

 

「…………で、どこにいったのあの子らは………」

 

キャンプをしていた場所まで戻ってみたがそこにはいるはずのルフィ達の姿はなかった。まあ、なんとなく予想はついてある。あの大蛇の口が大きく開いてあり、閉まらないように大木で口を塞いでいるからだ。

 

その状態でも寝てられるこの大蛇って………

 

「まぁ、いいや。出ておいで()()()

 

その言葉にハジメとロビン、ニコルの背後にマカナ。そして月兎と八咫烏の少数精鋭がそこにいた。

 

「遅くなりました!!死んだほうがいいですか!」

「死ななくていいから。まず報告」

 

「はい!!!

月兎5名、八咫烏3名が空島に来ております!!!

リリーナが現在吹っ飛んだエネルの確保に向かっています!!」

 

()()()()()()()()()()。確実に捕まえてね」

 

「はいッ!!!!!」

 

ニコニコ笑顔で元気よく返事をするマカナ。

ここに来るのにリリーナの()()を使ってきたようだけどそれでも随分と時間が掛かったな。

 

その疑問に、まるでわかっていたように八咫烏のセバスが手を上げ

 

「よろしいでしょうか??」

「あぁ」

 

「実はこちらに向かう際にある方にお会いしまして」

「ある方??」

 

「はい。それでここまでお連れに……」

 

すると森の奥からドドドッ!!と地響きが鳴りそれがこっちに近づいてきている。もうなんとなく、いや、分かってるけど……この雰囲気、もう誰だか分かってるけど……何してるのマジで。

 

「兄様ああああああああああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

なんで空島にボア·ハンコックがいるの??

それに後ろにソニアとマリーが必死にハンコックを追いかけている。

 

「兄様ッッ!!!!お久しぶりですッッッ!!!!!」

「そうだね。で、なんでここにいるのッッ!!!??

 

軽く覇王色の覇気を使用して威嚇するがどうやらそれは効かなかった。というか………

 

「……うん……濡れたわ………/////」

「あはぁああぁぁぁ〜〜!!!!さ、流石……兄様………/////」

 

ロビンは妖艶な微笑みをしながら舌なめずりをし、ハンコックは腰が砕けたように座り込み頬を赤らめながら物欲しそうにこっちを見ている

 

「……お前ら……マジで黙れッッ!!!!」

 

本当にコイツはダメだッッ!!!!!

 

「お互い、大変ね……」

「ええ。本当に……」

「ニコル。アンタも苦労してるね……」

 

向こうは向こうで何か共感してるし……

はぁ……なんでこうなるのかな…………

 

………………ッッ!!!??

 

「あ、あれ??僕ソニアとマリーに"ニコル"の話したっけ??」

 

そう、そうなのだ。

なんか普通にしていたけどここにロビンとニコルがいる。

別に普段から分身体を作っているロビンだからニコルを分身体と認識するぐらいだろうと思っていたけど、いまハッキリと"ニコル"って言ったよね。

 

「それ、私が直接言いに言ったの」

「………えっ??」

 

「そうね。実は"ニコル"として名前はもらったけどそれでもどうしょうもなく分身体なの。だからさっきロビンが使った召喚咲きの移動版みたいなものを使ったの。

簡単にいうとロビンが各箇所に置いている分身体やミニロビンを経由すれば何処へでも"咲き出せる"ってこと」

 

「つまり……それを使って色んな所に報告したの。自分がロビンではなく"ニコル"として名を受けたことを」

 

「えぇ。でもオルビアに会った時は疲れたわ……

『娘がもう一人できたわッッ!!!』ってクローバ博士達と一緒に宴会まで開いてなかなか帰してくれなかったのよ……」

 

嘘だとは思ってないがオルビアの様子が目に浮かぶ感じ、本当にそんなことが出来るのだろう。

…………そういえば、ニコルも元はロビンだったなーー

 

「…………お願いだから、ニコルはロビンにならないでね……」

「なんか、腹の立つ言い方だけど…含みを聞きたくないわね…」

 

 

…………………………………………

 

 

「し、師匠が二人ッッ!!!」

「いや、ロビンとニコルだろうが」

 

エネルを倒したとはいえもっとスマートに倒せなかったのかと、現在ルフィの両手両足に海楼石の錠(弱い)が付けられている。そしてその際にまたトラウマになるぐらいのお仕置きがあった為に現在ロビンに敏感である。

 

それでも元敵、という頭があるゾロやサンジは警戒心を解かずにそれぞれ()()()()()()()()()()()()()()

 

「そう睨まなくても何もしないわよ。

そんなことしたらすぐにロビンに消されるわ。いまはパスが繋がっているから息をするように簡単にね」

 

その言葉を裏付けたいのか二人ともロビンに視線をやり、ロビンが何も反応しないのを見て納得したのか警戒心を一段階下げた。

 

「それで………その大量の貝殻(ゴミ)はなんなの……」

「クエエェッッ!!!!」

「これはカルーと私で集めたダイヤルです!!」

 

そういえばそんなこと頼んだなー。すっかり忘れてた。

だけどこれ…………半分以上ただの貝殻だな。

それはもちろんロビンにもニコルにも分かった。

ニコルに関しては初見だがロビンからの情報を貰えばすぐだろう。だから二人で一気に手を咲かせていらない貝殻を空中へ飛ばして

 

「「"巨大樹(ヒガンテスコ・マーノ)"、"ダブルスパンク"ッッ!!!!」」

 

「ああああああァァァァッッ!!!!!」

「クエエエエエェェェェッッ!!!!!」

 

巨大な1本の腕を咲かせ、敵を突き飛ばす技。

それをロビンとニコルのダブルで、まるで合掌かのように合わせる。その間にあった貝殻はもちろん、粉々になりましたとさ。

 

「ダイヤルと貝殻の区別もつかないの」

「ダメね。全くもってダメね」

 

よ、容赦ね………

涙を流すギンと放心状態のカルー。可哀想に……

心の中で合掌しているとウソップが慌てた感じで

 

「ちょっ、ちょっ、ちょっ………ッッ!!!!??」

「なに壊れた機械みたいになっているの??」

 

「なんで七武海がここにいるんだよッッ!!!!!??」

「月兎の一人がここまで運んできたからね。そのおかげで月兎や八咫烏が遅くなったけど………」

 

「目的を聞いてるんだよ!!!!!」

 

お怒りのウソップ。

まあまあ。そんなに怒らないの。血圧上がるよ。

 

でも確かにどうしてここに来たのかは聞いてなかったなー

 

「ねぇ。ハンコック。どうしてここまで来たの??

ニコルがそっちにいけるならワザワザ来なくても連絡出来たよね」

 

「それは直接お伝えしたほうがいいかと思いまして……」

 

なんか、さっきまで緩かったハンコックの空気がビシッと引き締まったというか………何かを警戒している??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒ひげ。あの男が………フィッシータイガーに決闘を申し込み……………七武海に入ったのじゃ。

そして…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………()()()()()()()()()………エースとタイガーは瀕死の重症を負っておる………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はっ??」






それと1月1日から一時的ですがまさかの総合ランキング20位!!!
一度消えてやり直しで投稿したこの作品がまたこうしてランキングに入るなんて……本当に皆さんのおかげです。

ありがとうございます!!

これからもどうぞよろしくお願いします。m(_ _)m




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ターニングポイント。その選択が世界を変える。原点




どうも。
タイトルで"原点"と書いてますが言ってしまえば(中編)なのです。それでも意味もなく"原点"とは書きませんのでまぁ、今後どうなるか楽しみに。

そして明日も更新します。
それではどうぞ。






ハジメがハンコックから話を聞く数分前。

別の場所にはゾロ·くいな、サンジ·レイジュ、ナミ·ベルメールがノジコを探していた。

正確にはバーストとキロロも同じように見つかっていない。

だから声を、仲間の声を聞いてもらうためにアイサも同行してもらっているが

 

「な、何なのこの扱いッッ!!!!??」

「はぁ〜〜懐かしいわ…この感じ………」

「可愛いわ〜〜!!!!」

 

アイサの両手側に、右側にナミ、左側にベルメールがアイサの手を握り、まるで"親子姉妹"かのように歩いている。

ベルメールはアイサを"我が子"のように、ナミは妹のように。

とても満喫しているようだが、この人達、これでも本当の我が子·姉を、ノジコを探しています。

 

「どうにかしろよこの親子をッッ!!!!」

「諦めろ。こんな時のソイツらはある意味エネルより強い」

「同感だな」

「が、頑張って!!!」

「微笑ましい姿よ」

 

「本当に何なんだお前らはッッ!!!!??」

 

後悔しても遅い。捕まった時点で逃げられる訳がない。

はあぁ〜〜と深いため息をつくアイサだが、そんなタイミングで何かが聞こえてきた。

 

「おい。向こうから"声"が聞こえてくる」

「それってノジコ!!?」

 

「よく分からないけど女2人と()2()()いるな」

 

「あぁ??いるのは3人じゃねえのか??」

 

…………………………………

 

「来たな。()()()()()()!!」

「お前は………」

 

向かった先には簡易の家のようなものと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そしてその簡易の家の前にはノジコ、バースト、キロロがロープで縛られており、特にバーストは全身をグルグル巻きにされていた。

 

そして3人の後ろ側に立っていたのは見覚えのある男。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()……ッッ!!!!!」

「覚えてくれていたか!あぁ!!!」

 

そういいながらバーストを蹴り倒すベラミー。

そのやり方に飛び出そうとするゾロとサンジ。しかしその前にベラミーがノジコの首元に手作りの石のナイフを当ててきた。

 

「テメェ!!!!!」

「いい表情だな!!コイツらは人質だあ!!!!

さぁ!!俺の要求を聞いてもらおうかあぁッッ!!!!!」

 

その気になればあのナイフがノジコの首を切る前に斬り、蹴り倒す事が出来ると考えている2人だが、そんな危ない賭けを、それもナミとベルメールの前でできる訳がない。

 

それにこの男はここで随分と修行をしたようだ。

ハジメから聞いていた。ベラミーの能力を。

だからその実力も分からないまま強行することは………

 

(ねぇ。ちょっといい??)

(あぁ??いまはな………)

 

アイサの呼びかけに少し苛立ちを覚えるゾロ。

しかし臆せずアイサはゾロにこう告げる。

 

(アタイがアイツの()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

そうアイサもエネルと同じように相手を読むことが出来る。

それを使えばナミやベルメールから逃げられると思うが、そういう時の思考は怖すぎて読みたくないそうだ。

 

(………出来るな)

(なら、アタイに任せて)

 

そういい、アイサはとんでもないことを仕出かす。

 

「アタイはアイサッッ!!!!

人質を取るなら子供のアタイにすればいいよッッ!!!!」

 

「アイサ!!!!??」

「何言ってるのッッ!!!!!!??」

 

「麦わらの人たちには恩があるんだ!!!だからアタイを……」

 

「バカかお前はッッ!!!!」

 

大声で叫ぶベラミー。

その際に少し動いたせいでノジコの首に当てられたナイフが皮膚を斬り血が出てくる。今すぐにでも助けたい気持ちをグッと押さえてベラミーを睨みつける。

 

「俺は、俺はハジメに用があるんだッッ!!!!

アイツの絶望する表情を見るためならどんなことでもしてやるッッッ!!!!!!!」

 

ここまで吹き飛ばしたハジメに恨みを持っているベラミー。

しかしそれは反省の色を見せないベラミーのせいであり、完全な逆恨みと言える。しかしそれをいえばきっとベラミーは逆上を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コ·ロ·ス……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ッッッ!!!??」

 

どす黒く、深く、"闇"というべき何かが、広がってきた。

まるで水に何かが落ちて波紋が広がるように、その波紋に当たったかのようにゾロ達に襲いかかってきたのだ。

 

とてつもない深く、悪意に満ちた声。

いや、アレを"声"と呼んでいいのか。もう、あれは……

 

その声にヤられたのか。ベラミーは泡を吹いて倒れてしまった。アイサも泡を吹くことなかったがオバケにびっくりした表情をしながらバタッと倒れてしまった。

 

ゾロ達はなんとか意識を保ったが、それでもナミやベルメールは恐怖で身体が動かなくなり、くいなとレイジュは顔が青ざめていた。

 

「な、なんだこりゃ……」

「ヤバいって、もんじゃねぇぞ……」

 

その発信源、その方向は拠点にしていた場所。

一体なにが起きたのかと考えていると

 

「…………マズイわね……」

「ッ!!!! なにかしってるのかレイジュ!!!!」

 

冷や汗を流しながらレイジュは重たいその口を開け、こう言った。

 

「………ハジメが………暴走する……ッッ!!!」

 

………………………………………

 

広まった()()は、空島だけではすまなかった。

雲の下にあるジャヤ。近くにあるアラバスタ。ドラム王国に、リトルガーデン。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だから気づいた。

その()()()()()()を、いくら遠くともハジメに関わったものなら誰しもその影響を受けている。

 

双子岬でも

「………ハジメ」

 

リトルガーデンでも

「…ハジメ」「……ハジメ」

 

ドラム王国でも

「これは……」「こいつは…マズイね……」

 

アラバスタでも

「ッ!!国王ッッ!!!!!」「あぁ、これは……」

 

そして、マリンフォードにある海軍本部でも

 

「これはッッ!!!!」

「……こいつは、マズイね……」

「……全く…何をしてるんだかぁ………」

「今すぐにハジメを見つけろッッ!!!!!」

 

 

()()()()()()!()!()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()

「クソがッッ!!!!何してやがるんだハジメ!!!!!!」

 

どこもかしこも、ハジメの影響を受けており、そして、それを一番受けていたのはもちろん空島の発信源である。

 

………………………………………

 

倒れていた。人々が倒れていた。

ハジメに一番近い拠点となった場所にいたゲリラ達やウソップやカヤ、ギンやカルー、ソニアやマリーも気絶してしまった。

 

あっという間の出来事。

ハンコックが伝えた内容を聞いた瞬間に覇王色の覇気が、いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それでも、そんな地獄な場所でも意識を保ち立ち続ける者達がいた。

 

「………ハ、ハジメ………??」

 

全身に警告が鳴り響くように恐怖に満たされている。

それでも、それでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だからだろう。

ハジメの悲しみと憎しみと怒りとは違う、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

どうすればいいのか、と、考えているうちはまだ甘い。

そう思わせるほどに3()()()()()()()

 

「やはり…ダメだったか……」

「お兄ちゃんは優しいからね」

「そうね。だからこそ、よね」

 

この3人は、ハンコック、ロビン、ニコルは違った。

それは"妹"だからか??それもと何かあるのか………

 

ハジメが一歩踏み出しただけでクレータが出来、衝撃波が全体に広がり近くにあったものは破壊された。

それでもビクともしない3人。ルフィは必死に踏ん張っているのに………

 

見たことのないハジメ。

そして思い出した。遠い昔、こんな感じを感じたことが……

 

「あの時はわらわ一人で大変な目にあったが今回は問題なかろうて」

 

「私としては()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お兄ちゃん。大丈夫よ。私達がいるから」

 

ハジメを中心に右側にロビン、左側にニコル、後ろかにハンコック。取り囲むように移動し、またハジメが歩もうとするのを三人が一斉にハジメに優しく抱きつき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「大丈夫だから。"ここ"にいる」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一言だけでハジメから放たれたソレは、霧が晴れたかのように消え去り、3人に支えられながら気を失った。

 

たったこの数分の出来事が、この出来事が起きる前と後の"選択"が、後の運命を大きく変える。

しかしそれは、ハジメがどうこうできる事ではなかった。

ハジメがこの世界に来てからの"行い"がここで大きく"うねり"となっていく。

 

さぁ、見届けてくれ。

ハジメが目指す"ハッピーエンド"は来るのか??を。



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ターニングポイント。その選択が世界を変える。後編



どうも。
さぁ、後編です。これでどう変わるのか。変わらないのか……
どうなるのかはこれからのお話を楽しみにしてください。

それではどうぞ。






「ハジメッッ!!!!」

 

数秒だったのか、一瞬だったのか。

それほどに時間感覚が狂うほどに動揺していたルフィだが気を失ったと分かったいまハジメの元へと駆け出した。

 

未だに何が起きたか分からなかった。

それでもハジメが"ハジメ"ではない。肌で感じたあのプレッシャーはとにかくヤバかった……

 

3人に寄りかかり気を失っているハジメの表情はいつもの優しい感じ。それ見てホッとしたルフィは緊張が溶けたのか腰が抜けたようにその場に座り込んだ。

 

「よ、良かった〜〜ッッ!!!!!」

 

「よく気絶しなかったわねルフィ。褒めてあげるわ」

「確かに。海賊王になるならそれぐらいわね」

「うむ。流石ハジメが見込んだ男よの」

 

3人から褒められどう反応したらいいのか悩むルフィ。

正直なにも出来なかったから何かをしたという意識がないために微妙な感じ。

しかし褒めてくれた3人を見るとそれぞれ額から夥しい冷や汗をかいていることに気づいた。間近でアレを浴びたのだ。

普通でいられるわけがない。それでも普段どおりにしている。

 

それだけ、それだけの差があると自覚させられる………

 

「………ハジメは、ハジメは大丈夫なのか??」

「わらわが鎮めたときは1ヶ月は目覚めんかったわ」

 

「いっ、1ヶ月もかッッ!!!??」

「安心せぇ。今回は()()()()()()()。一週間では目覚めんとはと思うがな」

 

それだけ精神的にやられたのだろう。

そう、それだけの出来事が…………………ッッッ!!!!??

 

「エ、エ、エースが瀕死の重症おおおおぉぉぉッッ!!!!!??」

「うるさい」

 

「ぐふえ」

 

一発で絞め技を喰らわせられて落とされたルフィ。

ハジメと同じように鎮めてくれるとは限らないのだ。

しかし、ハジメより兄弟であるルフィにとってのエースの悲報。

なのにこの扱いは、きっと、ルフィが可哀想である。

 

………………………………………

 

シャボンディ諸島のとあるバー。

そこではついさっきまで緊張していた女性が力が抜け気を落ち着かせるためにお酒を飲んでいた時だった。

 

カランカランと鳴り響くと扉が開きそこから現れたのは

 

「シャッキー。大丈夫か??」

「あぁ……レイリーさん。ええ、大丈夫よ……」

 

いつもふらりと何処かにいくレイリーも、今回のことは無視できないと戻ってきたのだ。

 

「前ほどじゃないけど、凄まじいわね…相変わらず……」

「そうだな。そして今回は落ち着くのが早かった」

 

「ロビンちゃんが側にいたからでしょうね」

「そして原因が………これか……」

 

レイリーが持っていた新聞をテーブルに広げる。

そこに書かれていたのは『マーシャル·D·ティーチを王下七武海に!!繰り広げられた戦闘によりフィッシャー·タイガー及び"火拳"のエースが瀕死の重症!!?』と。

 

その()()()()()()()()()()コレを見て今回の出来事が起きたことは簡単に想像できた。

 

「あの子が、ロビンがいなくなった時はもう駄目かと思ったよ………」

 

「それほどのものだったの………」

 

「《《なにせハジメと深い関わりがあるものだけが動ける世界など、下手をしたらこの世は全て止まっていた可能性もあった。そして私達の呼びかけは一切届かなかった……あの時に限ってはハンコックがいたことに感謝するしかない》》」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ふふふ、本当にハジメちゃんがきてから退屈しないわ〜」

 

本当に楽しそうにするシャッキーに苦笑いするレイリー。

あの時のことはその場にいたものしか知らない。そしてその時に誰も知られないようにと情報制限を決めたのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

シャッキーに関してはその場にいなかったが、それでも"その世界"にはいたので説明してある。もちろんシャッキーと同じように来ていた者たちにも箝口令が引かれている。

 

(……動かない世界(ディスピア)。あれを再び引き起こしてはならない……ロビンとハンコック…彼女らがそれを回避する鍵とするなら………"()"というそれはまるで…………)

 

………………………………………

 

「……ん、んん………」

「起きたかルフィ。良かった〜」

 

さほど時間はかからなかったが、それでもロビンによる気絶は恐ろしい、危ないとすぐにチョッパーが診察·看病していた。

カヤは他に気絶した者たちを見ており、その中にはベラミーの姿もあった。

 

周りを見渡しハジメも横になっているのを確認してホッとしたところでまたエースの事が一気に心を支配し

 

「エーッッ!!!!」

「また騒ぐなら、今度はその喉、潰すわよ??」

 

ルフィの両肩から手が生え首を締める体勢に入った。

もう汗がダラダラとかくルフィにチョッパーが

 

「もうやめろよな!!!!なんなの何回も続いたら危ねえだぞ!!!!」

「大丈夫よ。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何やってるんだよオイッッッ!!!!??」

 

しょうがないわね。と手を消すロビン。

助かったと思いきや今度は目の前にハンコックが立ち

 

「お主が動いたところで何も出来ん。二人ともインペルダウンに捕らえられておるからの」

 

「「「「「「「イ、インペルダウンンンンンッッ!!!!!!」」」」」」」

 

ハンコックの言葉に周りが驚いている中ルフィはピンときていない。一体何に驚いているかと聞いてみると

 

「何で知らないのよ!!!!大監獄に入ったら最後、2度と出れないと言われる監獄よッッ!!!!」

 

「歴代の大海賊も捕らえられていて、誰も脱走出来ていないという世界一の監獄………」

 

「そんな所に投獄されたら………」

 

ナミ、救い出されたノジコ、ベルメールがそれぞれの意見をいう。ノジコは特に怪我をしている様子はなく、問題なのは一緒に捕まったバーストとキロロだった。重症とはいけずともそれなりのダメージを負っていたのだ。

 

そんな状況の中ルフィの頭の中には"エースを助けたい"という思いが溢れていた。しかしそれには……

 

グッと堪えるルフィを見たロビンがハンコックを押しのけて

 

「ここでハッキリさせましょうか」

「し、師匠……??」

 

「お兄ちゃんはいま眠っているわ。そして貴方は船長。

まぁ、私が決めてもいいけどお兄ちゃんならこういう時ルフィに決めさせるだろうから」

 

上半身だけ起きていたルフィの胸ぐらを掴み無理やり立たせる。それにチョッパーが「おい!!!」と静止をかけようとするがニコルがチョッパーを抱きかかえてそれを止めた。

 

そんな様子を全員が見ていた。

ゾロもくいなも、サンジもレイジュも、ウソップもカヤも、ナミもノジコもベルメールも、チョッパーもギンもカルーも、コビーもヘルメッポも、バーストもキロロもカラーも、ハンコックもソニアもマリーも、八咫烏と月兎も。

ハジメとルフィに関わる全員がルフィとロビンのやり取りに注目している。

 

「いま、ルフィの頭には"エースを助けたい"という気持ちが溢れて、いいえ、浸食されてるわね」

 

「ッッッ!!!!??」

 

「それが悪いとは言わないわ。

兄弟を助けたい。いいじゃない。私もお兄ちゃんがそんな目に会ったら()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉にルフィは恐怖を覚えた。

ただ助けたい。それだけだったのに、身体中に電気が走る感じだった。

ロビンは言いたいことを理解したルフィに、それでも現実を突きつけようと言葉を続ける。

 

「インペルダウンは、あなたの実力じゃ帰ってくることは不可能よ。どんな偶然、奇跡、強運がルフィの味方についたとしても」

 

「それでも行きたいなら()()()()()

引き止めないわ。その代わり理解しておきなさい。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に衝撃を受ける。

それはルフィだけではない。ここにいる仲間全員が同じように衝撃を受けていた。

 

誰も助けられるならエースを助けたい。

しかしそれと引き換えにするのはルフィが手にしていたもの全て。

 

そこにウソップが慌てた様子で

 

「な、なら俺達も一緒にエースをッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺すわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスと恐怖を込めた声に思わず失禁してしまいそうになるウソップ。それだけの逆鱗に触れたのだろう。いままで見たことのない表情を浮かべていたがすぐにいつも通りに戻り

 

「ここにいるのはそれぞれがそれぞれの夢を追いかけているはずよ。そしてその中でもルフィの夢と元に行くことが近道であると、手助けしたいと感じて付いてきた。

なのにここで船を降りる船長に付いていく??ふざけないで。

降りるのはルフィだけよ。あとは私達が引っ張ってあげるわ。お兄ちゃんが船長で私が副船長かしらね」

 

ふふふ。と笑うロビンの表情はとても怖い。

さっきの表情と同等と思うほどにその表情は怖い。

 

「お兄ちゃんと私なら貴方達の夢を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()お兄ちゃんを説得するのには時間がかかるかもしれないけど、それでもお兄ちゃんならきっと私を選ぶわ。だって"妹"だから」

 

そしてロビンは改めてしっかりとルフィの目を見て問いかけた。

 

 

「さぁ、選びなさいルフィ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

どちらともなんて情けない答えは認めないわ。

2つに1つよ。ここで貴方と仲間の未来が変わるわ」

 

 

「ッッ!!!!! お、お、俺は……………ッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………ここは、」

「私の膝枕よ。どう、寝心地は??」

 

「いいね。流石ロビンだよ」

「ふふふ。素直なお兄ちゃんはカワイイわ」

 

どうやら迷惑をかけた。というのがすぐに分かった。

それでもこうして看病してくれる妹に邪険に扱えるわけがない。

満足そうな表情をするロビン。このまま膝枕してもらうわけにもいかないので上半身を起こすハジメに、少しだけ不満そうな表情を見せたロビンをハジメは見逃さなかった。

 

「ありがとう、ロビン」

う、うん………よかったわ……////」

 

頭を撫でてあげると喜ぶ表情に素直にカワイイと思ったが、それは決して言わないと決めた。言ったらいいだろうけど、なんか負けた感じがすると思ったのだ。

 

そしてずっと気になることがあった。

ここはメリー号の中。そしてこの揺れは明らかに空島にいた時に感じた波ではなく地上にある青海の波。

 

つまり気を失っている間に戻ってきたようだ。

そしてその気を失った原因となった出来事、その後を聞かないといけない。

 

「ロビン。あの後は………」

「えぇ。説明するわ」

 

そういってロビンはハジメを連れて甲板へと向かうことなった。そしてどうしてなのか……とても嫌な予感がした。

なんの根拠もないけど、胸騒ぎが収まらないのだ。

 

聞きたくても聞けない。

教えてくれたのは気を失ってから一週間経ったということ。

その間時間が、これから聞く真実を、これから知る恐怖がハジメの足をゆっくりさせていたことにロビンから言われるまで気づかなかった。

 

「大丈夫お兄ちゃん??」

「ッ!!? だ、大丈夫……」

 

呼吸を落ち着かせながら、もう少しで甲板に出るところまできた。ドドドと心臓が高鳴る。この世界にきてこんなになるのは久しぶりな気がする。

 

そして扉を開けた先には、

 

「………………………えっ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静か、だった。

そして、

誰もいなかった。

 

普段は賑やかな甲板には誰もおらず、メリー号は何処かの海岸で停泊されていたようだ。

その光景にハジメは一番恐れていたことが頭を駆け巡った。

 

「賭けに、出たんだ……」

「えぇ。馬鹿よね。そんな無駄なことを」

 

エースを助ける為に。

入ったら出てこれないインペルダウンに全員で。

本編では奇跡的に出てこれたインペルダウンへと。

 

でもそれは本当に奇跡があったからだ。

しかしその奇跡は起きない。だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ビビとアラバスタの為にMr.2を影武者にしたあの時から、インペルダウンへの話を、あの奇跡のような出来事をどうするか考えていた。

 

しかし何度考えても答えは出なかった。

あれはMr.2がいたから起きた奇跡なのだ。

 

最後の難関である"正義の門"を開けるためのレバーを、Mr.2により開けたのだ。奇跡を起こしたのだ。

 

それを知るよりもないルフィ達が、作戦もナシに、いや、あったとしても帰る奇跡は……………

 

そう考えるとハジメの身体から力が抜ける音が聞こえた。

気づいた時には両膝は地面についていた。

 

「……そっか。行っちゃったか……」

「止めたほうが良かったかしら??」

 

「ううん。これはルフィの冒険だから。

でもあの時、僕が暴走しなければ、とは、思うかな……」

 

不思議と涙は出なかった。

それだけ薄情なやつだったのかとなんか情けない気持ちになる。そんなハジメの横にロビンがいて、一緒に甲板で座ってくれた。

 

「………どうすれば、良かったのかな……」

「私には、分からないわ」

 

「……なにが間違い、だったのかな……」

「それも、分からないわ」

 

「………無駄、だったかな………」

「分からないわ」

 

優しい言葉がこない。

でも、いまはそれがとても優しい言葉に聞こえた。

ほんの一瞬、自分の心に勝てなかった自分が起こした。

 

ロビンがいなくなった時に起こした"動かない世界(ディスピア)"。感情値がMAXになると引き起こす()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それは、心が拒絶反応により引き起こされる。

 

弱い自分が殻に引きこもるための技はその後ハジメを目覚めさせてくれない。心が落ち着くまでずっと眠りにつかせる。

 

一回目はハンコックが来てくれたらしい。

ハジメとの絆が強いものは止まることなく動ける。

そして二回目は近くにハンコックも、ロビンも、ニコルもいた。だから早めに起きることが出来たんだろう。

 

なにもかも、全部、自分が…………

 

「全部、無意味だった、のかな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはないわ」

「………え??」

 

「お兄ちゃんがやったことが無意味なら私はここにいないわ。

私はお兄ちゃんの妹。それが全てで、それ以外はいらないわ」

 

「でも、でも、ここにルフィ達がいないッッ!!!!!」

 

「だとしてもお兄ちゃんに間違いはないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間違っているのはあの子達。

()()()()()()()()()()()()()()()"()()()()()()()()()()()"()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………うん??」

 

な、なんか、聞き覚えのある単語が聞こえてきた。

あれ??いまルフィ達、いないよね。なのにさっきなんて……

 

「あぁ……ごめんロビン。

いま現在進行で状況を教えて」

 

「どっかのキツネ海賊がハンコックと私とニコルを引き抜こうと"デービーバックファイト"を仕掛けてきたの。私的にはお兄ちゃんが目覚めてからお兄ちゃんがカッコよく全てをなぎ倒す姿を見たかったのに、ルフィが勝手に受けたのよ。それで一回戦が始まりそうになってるんだけどお兄ちゃんが来るまでに待ちなさいっていま相手を脅しているわ。お兄ちゃんがいないところで勝手に賭け事なんてお兄ちゃんが許しても私が許さないわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!!まだなのかよ!その"お兄ちゃん"ってやつはよッッ!!!!」

「待たぬならそこら辺に転がる石を砕くぞ」

「そして貴方の首を、いえ、全身を砕くわ」

 

「コエエェよッッ!!!!!」

 

一回戦、まだ選手も決まってない状態でハジメを待っていた。

ロビンから「もうすぐ目覚めるから待ちなさい」という言葉に従いフォクシーを脅して進行を妨げていた。

 

その間にフォクシー海賊団が建てた屋台やステージをフル活用して麦わら海賊団が満喫している。

 

ルフィは屋台にある物を食い尽くし、ゾロとくいなとレイジュとノジコとベルメールはお酒を飲んでいる。

サンジは新たな料理を試しながらウソップとカヤのマジックショーを綿菓子を食べているチョッパーと共に楽しみ、ナミとカラーがここにいる女子を集めてファッションショーを行わせて、バーストとキロロが周りのノリに置いてけぼりされ、コビーとヘルメッポがソニアとマリーと交流を深めていた。

 

そしてハンコックとニコルはそのフォクシーを囲んで引き止めている。ハンコックはフォクシー海賊団3分の1の男も女も魅力して石にして人質にして、さらに3分の1をニコルが全身から手を咲かせて関節技を決めようとしている。

 

そんな中で、こっちへと、メリー号がある方角からとんでもなく速いスピードでこっちに何かが近づいていた。

 

二人はすぐに分かった。

お互いに目線を合わせてアイコンタクトを取り、フォクシーを二人がかりで宙に浮かせて

 

「お、おい。何をする気だッ!!!"デービーバックファイト"はなッッッ!!!!!!!」

 

何かを言おうとしたようだが無駄だった。

だってもうフォクシーの目の前に"拳"があったから。

いままでの中で最速のスピードを出してここに現れたハジメはフォクシーの顔面に拳を叩きつけながら、こう叫んだ。

 

 

「何してやがるクソギツネがああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!

 

殴られた時の悲鳴も、声も聞こえぬ程に一気に吹きとばされたフォクシーは一瞬にして吹き飛ばされて海に叩きつけられながら何度もバウンドして地平線の彼方の手前でドボンと海へと落ちていった。

 

「「「「「お、オヤビンイイイイイイィィィィィィッッ!!!!!!!」」」」」

 

あまりにも理不尽な攻撃にハジメに文句を言ってやろうとフォクシー海賊団がそっちを見た。そして見て、後悔した。

 

「あ、あ、あああぁぁぁぁッッッッ!!!!!」

「な、な、な、なんでこんなところにッッッ!!!!!!」

 

全員が震えだしているこの状況にルフィ達は戸惑う。

これにはニコルも分からないでいた。ロビンからの記憶でもまるで知り合いだったという記憶はないのだ。

 

それでも知っているということはきっと、ロビンがいなくなってからの出来事。

 

「お前ら。何してやがる??」

『ヒヒィッッ!!!!!』

 

「言ったよな。()()()許可なく勝手にやることは許さねぇってな………」

 

あっ。ブチ切れている。

誰もがそうだと分かった。しかしこの前のとは違い理性もありながらのブチ切れではあるが、あれはあれで本当に恐怖そのものだと感じた。

 

 

「全員ッ!!!!そこになおりやがれえええええぇぇぇぇッッ!!!!!!」

「はいいいいいぃッッ!!!!!!!!!!」

 

 

結局、ハジメの勘違いによるストレスの全てをフォクシー海賊団が引き受けることになりました。







さあ、いきなりデービーバックファイトです(笑)
空島の事とか色々はこれから追々出てきますのでお楽しみに!



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デービーバックファイト編
突然のデービーバックファイトを




どうも。
昨日から新連載開始しました。
と言ってアニメに影響されただけなのですぐに諦めるかも(笑)

まぁ、気軽に読んでください。
…………うん??それより早く他の小説を書け??
いや、本当に、すみません!!(笑)

思った以上に展開が上手く出来なくて……
なんでこうもONE PIECEとの相性はいいのかなー

では、どうぞ。





「で、ちゃんと説明してくれるんだろうな!おい!!!」

「も、もぢろんでず………」

 

殴られ海の藻屑になる前に回収されてフォクシーだが、その後もハジメの怒りがある程度収まるまでヤラれたという。それはもう八つ当たりというか、憂さ晴らしのような……

 

しかしフォクシーにはそんな事は分からない。

とにかくハジメとの"約束"を破ったことについて言及されていると思っているのだ。

するとフォクシー海賊団のアイドル、ポルチェがゆっくり手を上げて

 

「あ、あの…ハジメの大オヤビン……」

「それ、やめろって………いったよなッ!?

 

「ひひひぃ!!!!!ハジメ様!!ハジメ様!!どうか話を聞いてください!!!!!!」

 

今にも殺しそうな表情をするハジメにもう完全に飲まれてしまい怖がっているポルチェ。このままでは話にならないとはぁーため息をついて漏れ出していた殺気を引っ込めた。

 

「も、もうあれから十年は経ってますよね。約束は"十年間デービーバックファイトの禁止"だったので……」

 

「でも"私利私欲や脅しによる開催は禁止。互いに納得のいく理由のもとに開催されるべし"ともあったはずだが??」

 

「んなこと言ってたら出来ねえだろうが!!!!!」

「やるなって言ってんだよッッッ!!!!!!」

「ごぶべばッッ!!!!」

 

「オヤビンッッ!!!!!!」

 

ゲンコツを貰ったフォクシーは顔が地面にめり込むほどに強烈なものをもらった。

ハジメはすべて取り上げたわけではない。

互いに納得いくならやっていい。その代わりにフォクシーの私利私欲、デービーバックファイトの参加への脅しはやめろと。

なのに、寄りにも寄ってハンコック、ニコル、ロビンを引き抜くためにやったとなると………それはブチギレる。

 

「……そうか、そうか。そんなに人との約束を破ってまで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「当たり前だあぁぁ!!!!こっちはデービーバックファイトを生き甲斐としてやってんだ!!!!簡単にやめられるかあぁ!!!! 」

 

「お、オヤビン!!!これ以上ハジメ様を怒らせるのは……」

「うるせぇ!!!!だいたいこんなやつに"様"なんてつける!!!!!」

 

するとハジメの背後に控えている面々が一斉に一歩踏み出したが、すぐにハジメが手を出して制止させた。

その一歩だけでもフォクシーが「ヒ、ヒヒヒィィ」と言っている時点で強がりなのは分かる。

 

それでも態度を、意思を曲げないフォクシーに

 

「………いいだろう。そのデービーバックファイト。認めてやる」

「え、ええぇ!!?ほ、本当に!!??」

 

「ただし、それで負けでもしたら分かってるだろうな…

今度はデービーバックファイトの賭けとして二度とデービーバックファイトを出来ないようにするからな」

 

「やってみろ!!こっちはあの時とは違う!!!!

あの時の恨みを含めてすべて奪ってやるよッッッ!!!!!!!」

 

………………………………………

 

「ということだ。ルフィ。一回でも負けたら()()()()()()()

「ええええええぇぇぇ〜〜ッッッ!!!!!!??」

 

突然の船長を降ろされてしまうということになったルフィ。

あまりのことに開いた口が塞がらないのだが、その口をハジメが片手で無理やり閉じて掴んで、さらに強く強く掴む。

 

「勝手にデービーバックファイトをやろうとしたバカは誰だ??あぁ!!?もし、一回でも負けたらハンコック、ニコル、ロビンの誰かが奪われていたんだぞ」

 

「ず、ずびばぜん…………ッッ!!!!!」

 

「……はぁ〜。まぁ、気を失っていた()も悪いけどね……ったく、もう少し考えて行動をしろ」

 

ゆっくり離したハジメ。武装色の覇気でやらなかったためにゴムで顔が変形してもすぐに戻った。もし使っていたら顎は砕けていただろう。

 

そしてその離した手を今度はルフィの頭に持っていき

 

「…………良かったのか??エース、助けに行かなくって……」

 

その優しい声に一度は俯いたルフィだったがすぐに顔を上げて

 

「俺が行ったらエースが怒るしな!!

それに今行ってもその監獄からぬけ出せる自身がねえ!!!もっと強くなって絶対に救い出すんだ!!!!」

 

「………そうか。なら、もう何も言わないよ……」

 

ルフィがそう決めた。

ならこれ以上言うのは野暮だろう。

 

「でも、あれだけ修行して()()()()()()()()?()?()

「これは、お仕置きね」

 

「り、り、理不尽だああぁぁぁ!!!!!!」

 

(((あのルフィが、"理不尽"って言った………)))

 

確かに理不尽だけど、それをルフィが言葉にするほどに理不尽だったということだろう。きっとどっちを選んでもこんな感じだったのかもしれない。

 

今はフォクシーの回復待ちで時間が空いているので、今までの情報を、状況を把握する必要があった。第一に聞くべきは、

 

「なんでここにハンコックがいるの??」

「何を言っておる兄様!!!兄様の元気な姿を見るまでは帰れませぬ!!!!!!」

 

………まぁ、そんなところだろうとは思ったけど……

にしても……随分と麦わらの一味と仲良くなってるな……

 

「随分と、麦わらの一味と仲良くなったね……」

「妾はその限りでは在りませぬ。ソニアとマリーは自由にさせておりますが妾は群れようとは思いませんのじゃ」

 

「そこは、まぁ、ハンコックに任せるけど………で、どうする??このデービーバックファイトぐらい見ていく??」

 

「まぁ、賭けの対象になっておりますので。それに久しぶりに兄様の勇姿を見とうございます!!!!」

 

いや、出る気ないんだけどなー

と、思っていたけど横から、ニコルとロビンからも熱い視線を送ってくる。

 

「……いや、あのね…出る気は、今の所ないからね……」

「なら可能性はあるわね!」

「あの怒った顔……良かったわ……////」

 

なんか出る気雰囲気を出してるけど、出ないよ。出ないよ!!

 

「はぁ……それで、あの後どうなったの??」

「ウソップにあの鐘楼の柱をバックに入れて、降りてきたわ」

 

「…………それだけ??」

「ええ」

 

「な訳ないでしょうが……

空島にいたベラミーは降りてきてからコビー達にジャヤに返すようにしておいたわ。あとアイサが挨拶したがっていたわよ。「今度来たときはめいいっぱいもてなすって」言ってたわよ」

 

そうか。そんな風に言えたということは大分環境も改善されたかな。元の空島の人達とも仲良くなってくれたらいいけど。

 

まだ聞きたいこともあったが、腹に響くような銅鑼の音が聞こえてきた。どうやらフォクシーが回復したみたいでデービーバックファイトの内容が発表されるようだ。

 

……………………………………

 

 

デービーバックファイト。

その中でも『3コインゲーム』という3本勝負を行う。

 

敗戦における3か条

○その1、1勝負ごとに勝者は敗者の船から、好きな船員を貰い受けることが出来、デービーバックファイトで奪われた全てのものは、デービーバックファイトでしか奪回できない。

○その2、勝者に選ばれて引き渡された者は、速やかに敵船の船長に忠誠を誓うものとする。

○その3、奪われた旗は、二度と掲げることは許されない。 賭ける獲物は"仲間"と"誇り"。勝てば戦力は強化されるが、負けて失うものはでかい、えげつないゲーム。

 

フォクシー海賊団はこれまでこのゲームを繰り返して船員を奪い取り、大人数を有する大海賊団となったのだった。

 

島の奥地から2発の砲弾の音が鳴り響いた。 ルフィが、フォクシー海賊団とのゲームを受諾した合図だった。

 

『デービーバックファイト』は開戦前に、3つのコインを海に投げ入れて、デービー・ジョーンズに開戦を報告するのが決まりだった。

 

デービー・ジョーンズとは、悪魔に呪われて、深い深海で今も生きていると云う伝説の昔の海賊の名だ。 海底に沈んだ船や財宝を全て自分の物として、甲板長だった彼のロッカーにしまわれると云う伝説から、敵から欲しい物を奪うことを、海賊達は『デービーバック』と呼ぶようになったのだと言う。

 

 

………………話が長い。

そんなことをどうでもいい。

誇り??そんなもんは命より大切かと言われたら時と場合だ。

今回はそれには当てはまらない。だけどここでフォクシーを見逃したらアイツはさらにつけあがるだろう。

 

なら、徹底的に潰す。

情けをやったあと時とは違ってイヤだと言われても無視して実行するぐらいに。

 

「で、何をするわけ??」

「第一回戦は「ドーナツレース」出場者3人。 第二回戦は「グロッキーリング」出場者は3人。 第三回戦の「コンバット」は一人だ」

 

「分かった。あと話が長い。見直せクソギツネ」

「し、辛辣……」

 

「もうヤメて!!!オヤビンの精神は崩壊寸前なのッ!!!!」

「プゥ!!ークスクスッッ!!!!」

 

フォクシーの頭が地面にめり込むほどに凹んでおり、それをポルチェとハンバーグが近くでフォローしている。いや、ハンバーグは笑ってるか………

 

しかし、なるほどね。そこは本編通りというわけか。

なら相手の手の内は分かる。というか分からなくても勝つけど。

 

「さあ、どう潰そうかな………」

 

「お、お兄さん……なんかやる気になってる……」

「お兄ちゃんは意外に勝負好きなのよ。本人は否定してるけど」

 

なんか聞こえたけど気にしない。

それよりもさぁ、どうイジメ抜こうかなーー

 

「………よし。一回戦は………」

 

………………………………………

 

『お、おぅーと!!これはなんということでしょう!!!!!』

 

フォクシー海賊団からはポルチェと魚人と魚。

そこの名前はどうでもいい。これに関しては加減なんてしない。

()()()()()()()()()()()()()()

 

『まさか一回戦から七武海"女帝ハンコック"に"悪魔のロビン"にぜ、ぜ、ぜ、"絶黒のハジメ"が参戦だあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!!!!』

 

その姿にさすがのフォクシーの空いた口が塞がらないようだ。

この一回戦はとにかく妨害し放題。ならそのすべてを跳ね除ける人物となればこれしかない。

 

「あ……終わったな」

「あぁ、終わりだ」

「終わりですね」

「終わった」

「終わりね」

 

「お、おい!!麦わら!!!!お前船長だろう!!!ハジメを降ろせッッ!!!!」

 

ルフィ達がこの光景を見て遠い目をしているとフォクシーが文句を言ってきた。さぁどう返すかな??

 

「??? 何言ってるんだお前。

()()()()()()()()()()?()?()

「なんで死ぬんだよ!!!!!」

 

いや、間違ってないよ。

どのみちヤるけど。殺してほしいと懇願するどヤるから。

それに隣のハンコックとロビンは目がガチでヤバイから。

 

「ふふふ。お兄ちゃん。このゲーム自体が終わったら…」

「妾達はアレを始末していいかの??」

 

「息が合うのはいいけど、流石にやめてあげて」

 

どう文句を言おうがそっちも卑怯な手を使うんだから問題ないはず。でもまぁ、潰すぐらいはいいよね??






あっ。次回またちょっとだけ時間が遡ります。
一気に進みませんがどうか許してね(笑)


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ドーナツレース①




どうも。
圧倒的な戦力で簡単に潰そうかと思いましたが、やっぱりそこはハジメ。色々遊びながらかなーと思いましたのでちょっとだけ話が続きます。といっても次回で終わりますが(笑)

それではどうぞ。





話は少し戻り、作戦会議の出来事。

 

「さて、誰がどのゲームをやるかだけど……」

「はい!!」

 

勝手な発言をせずに背筋を伸ばして手を上げるルフィ。

 

「はい、ルフィ」

「俺は最後がいい!!!!」

 

まぁ、本編通りだな。

ここはフォクシーと戦わせてもいいかもしれない。

あの"ノロノロビーム"はこれから先の経験としてもいいものだ。

 

「それじゃ許す。負けたら死刑」

「おう!!!!……………死刑ッッッ!!!??

 

「罪が重くなってる……」

 

ウソップ。言いたいことがあるなら手を上げなさい。

 

「当たり前だ。負けたらロビン達を取られるの。

他のやつが負けたら船長剥奪。ルフィ自身が負けたらそりゃ死刑だろう」

 

「安心しなさい。()()()()()()()()()()()()()()

「まだ死にたくねぇよおおおおおぉぉぉッッ!!!!!!!」

 

半べそをかくルフィ。

しかしそれぐらい、というかアイツら如き楽勝で勝ってもらわないと。

 

「で、最初ゲームはもう決まってるから……」

「おいおい。もう決まったのかよ??」

 

「ハンコック。ロビン。僕」

「海軍本部と戦う気かあッッ!!!!!??」

 

うるさいなサンジ。

それに嫌だなーー。本気でやるわけじゃないんだから。

ただ。どんな相手に手を出したか、それを思い知らせるだけだよ。

 

「とにかく二戦目はどうしようかなー」

「とにかくで終わらせれる話かぁ……」

「と·に·か·く。どうしようかなー」

「なら、私がやってみたい」

 

そういって手を上げたのはまさかのベルメールさん。

それに対してナミとノジコが慌てている。

 

「ちょっ、ちょっとベルメールさん!!!!」

「なんでいきなりッッ!!!!??」

 

「……ハジメの、ハジメの隣に立つなら実力が必ずいる。

それを証明できたら……認めてくれるのよね??」

 

そういった視線の先にはロビンとハンコック。そしてニコル。

 

「そうね。愛人から()2()()()まで上がれるかしら??」

「弱いものいらぬ。精々精進してみせよ」

「まぁ、頑張りなさい」

 

「ええ。やってやるわ!!!!」

 

やる気に満ちたベルメールさん。

空島で食べた"フニャフニャの実"は無機物をフニャフニャに出来る能力。まだ経験も少ないがロビンやニコルからある程度の教えをもらったようだから大丈夫と思うけど……

 

……

………

…………

……………

………………

………………………………………

 

 

「フニャフニャの実……!!」

「そう。これを食べる、覚悟はある??」

 

空島での出来事。

マクシムでルフィ達が現れる前の話。

 

ベルメールの覚悟を見たハジメがこっそりとウソップのバックから入れておいた悪魔の実を取り出したのだ。

 

「これを食べたら海では泳げない。

それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……………」

 

「あの二人は航海士として立派だよ。

でもこの世に絶対はない。ナミもノジコもいつかそういう目に合う日がくる。その時に助けられない、親として、娘を助けられないその苦しみを受け止める覚悟が、ベルメールさんにはある??」

 

想像を、する。

2人が目の前で溺れている姿を。

助けにいこうにも泳げない自分の前で海へ沈んでいく姿を……

胸が苦しくなる。頭が痛くなる。何もかも投げ出したくなる。

 

それでも、それでも、それでも、それでも………

 

「……食べるわ」

「いいの??自分の命以上のものが失われる可能性があるのに…」

 

「だったら私は海へ飛び込むわ。

あの子達はバカあ!!っていうかもしれないけど、もう見ているだけなんて……いやなの」

 

その目は確かに覚悟が決まっている目。

なら、それ以上は………

 

「分かったよ。能力を手にしてすぐに能力の把握をするから」

「ええ。お願いするわ」

 

そうしてハジメから受け取った悪魔の実を、食べた。

 

………………………………………

 

「もうー!!!ベルメールさんのバカあ!!!!」

「泳げない身体になって、どうするのよ……」

「ごめんなさい……でも、必要だったの……」

 

ハジメが倒れる少し前。

全員がキャンプする地点に集まった時の話。

 

事の顛末を聞き、そしてベルメールが能力者となったと知ったナミとノジコは泣きながら、怒りながら、ベルメールの懐に入り涙を流していた。

 

「………それって、お兄さんの為……??」

「ハジメというより、私の為よ」

 

「ロビンさんに負けないように……??」

「それもあるけど隣に立つために」

 

ハジメを好きだという人は、愛しているという人は、とても強いとベルメールは知っている。もちろんそんな強さがなくてもいいとハジメは言ってくれるだろう。

 

それでもやっぱりここまで旅をして思い知らされた。

誰かを守るために必要な力が欲しいと。

誰かに頼れると言われるだけの力が欲しいと。

そして、ライバル(ロビン)にまずは認めてもらうために。

 

「……はぁ〜しょうがないか。食べちゃったのはどうしようも出来ないし」

 

「ベルメールさんも結構後先考えなかったわ」

 

「私達の"お母さん"だもんね」

「私達の"お母さん"だからね」

 

「ナミ……ノジコ……ありがとう……」

 

二人に認めてくれたことに涙目になるベルメール。

それを見たロビンが一言。

 

()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「どうして棘のある言い方しか出来ないのアンタはッッ!!!!!」

 

………………………………………

………………

……………

…………

………

……

 

 

 

「それじゃベルメールさんとあと二人かぁ……」

 

本編ならゾロとサンジだけど、この二人だとオーバーキルするだろうからなー。………人の事はいえないけど。

 

なら、そうだね。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「よし。ギン行ってみようか」

「お、俺ですか!!!!??」

 

空島での収穫は上々。それを使って色々ウソップに作らせたからなー。それの試し打ちといこう。

 

「で、流石に何かあったらマズイから……ウソップかチョッパー。ジャンケンして決めて」

 

「「なんでそこだけ適当なんだよおおおおおおおおぉぉぉぉッッッ!!!!!!!」」

 

うるさいな。速く決めてよね。

なかなか決まらないジャンケンを待っている間にナミから

 

「ねぇお兄さん。さっき昔あのキツネに会ったような言い方してなかった?? 」

 

「あぁ。会ったというか、出会ったというか……

とにかくロビンがいなくなってちょっとしてからかな……

デービーバックファイトをしているのを見かけて止めるようにと言ったら喧嘩を吹っかけられたから懲らしめたの」

 

「………本当は」

 

「ムシャクシャしていたからやった。後悔はない」

 

やっぱりと頭を抱えるナミ。

いや、それでも強奪のようなやり方をするこれを見過ごせないよ。だから徹底的に潰しにかかってけど

 

「それでも一応優しさを込めて期限と条件つきにしたの。

期限はともかく条件を無視しやがったから()()()()()()()()………」

 

「お、お兄さん…口調が怖くなってる……」

「おっと。ついつい」

 

別に本性というわけでもないがここまでの口調になるのはこのキツネとガープのバカとグザンだけだな。

 

「やったああぁぁぁ!!!!」

「お、俺かよ……」

 

どうやらジャンケンの勝者はチョッパーのようだ。

 

「じゃ頑張ろうねチョッパー

「俺かよッッ!!!!!」

 

おおう。ウソップと同じセリフ。

 

………………………………………

 

『さあ、競技の説明をするぜー!!!

ここにある空樽とオールを使って即席の船を作り、この島をいち早く一周したほうが勝ちだあぁー!!!!!』

 

まぁ、分かりやすい説明。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そのことは把握している。

もちろんそんなことをフォクシー海賊団がいうわけもなく、きっとスタート開始同時になにか仕掛けてくるだろうな。

 

『じゃ両チーム共船を作ってくれー!!!!』

 

さて即席の船ねー

まぁ、まずは人数と安定した船となると……

 

「兄様」

「どうしたのハンコック??」

 

「妾はこんな船に乗りとうない」

「またハッキリいうねー」

 

もちろんそれは向こうが作っている簡易の船。

それをいまから作るのだが、やっぱりハンコックには厳しかったかなー

 

「なので、兄様の膝の上を所望したいのじゃぁ////」

「図に乗らないのよハンコック。貴女はお兄ちゃんの背中で十分よ」

 

「それでも良いのか!!!!??」

「お兄ちゃんの真正面は私よ。背中は譲るわ。

例えばここにベルメールがいたら……影ね」

 

「こんな時まで言わないと気が進まないのアンタはッッ!!!!!!!」

 

離れたところから罵声が聞こえる。

しかし、それめちゃくちゃ動きにくいんだけど……

それにそれだと僕が一人でオールを漕ぐの??

 

「大丈夫よお兄ちゃん。自己防衛。という名目で全て蹴散らすわ」

「妾も全て石に変えよう」

 

「やり過ぎ、でもいいか」

 

今回は容赦なし。

いつもは止めるけどこいつ等に慈悲はない。

 

そうやって完成した簡易の船の形は本編でウソップが作った船を参考にして作った。そこに一時停止で強化。何をしても破壊は不可能である。

 

もちろんそれて転覆はしないとは言わないけど、ここに誰がいると思う??

 

『両チームスタート位置についた!!!

じゃ、始めるぞ!第一回戦"ドーナツレース"!!!

よーい……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スタートッ!!!!!』「ザ、"ロック"!」「"メロメロ"、"甘風(メロウ)"!」

 

「「「「「ぎゃあああぁぁッッッ!!!!!!」」」」」

「「「「「ッッッッッッ!!!!!!!!//////////」」」」」

 

開始と同時にこっちに妨害をしようとしたフォクシー海賊団達をロビンの"ロック"とハンコックの"メロウ"で動きを止めたのだ。

 

………まだ攻撃されてないから正当防衛じゃ……いや、そういえばロビン、()()()()って言っていたなーー

 

そのあまりにも恐ろしい光景に固まっているフォクシーにハンコックとロビンが

 

「これは、なんじゃ。キツネ。妾はこのレースで"妨害あり"とは聞いておらんぞ」

 

「否定しようとしても無駄よ。こんなにも攻撃しようとした"証拠"があるの。つまり……」

 

「「そちらの負けということで文句はないはずだけど、なにか言いたいことはある言ってみなさい(いってるがよい)」」

 

確かに、あえて聞かなかったけどさ。

まさかスタート開始直後で終わるの??全く出番なしなんだけど……

 

すると恐怖か、怒りか、震えているフォクシーが

 

「う、うるせぇ!!!そっちも手を出したからドローだ!!!!

周りからの妨害なしの勝負!!これならいいだろう!!!!!!」

 

苦し紛れだなーとは思うけど、まぁせっかくだし

 

「二人ともそれでいいよ。まだ僕、何もしてないしね」

「お兄ちゃんはなにもしなくてもいいのに…」

「だが、兄様の勇姿を見るのも悪くはないの」

 

ということでドーナツレース再開。

しかし、相手チームの三人組さん。いいの??

ずっと固まってますけど、進みますよー。

 

 






という感じで、次回で叩き潰します(笑)
ノジコの能力については第2回戦でどう活躍するのか??
そしてあのギンがちょーーーーーーーーーーー久しぶりに活躍します(笑)
ぜひ楽しみにしてください!!



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ドーナツレース②





どうも。
ポルチェ達は活躍なしです。はい。この3人に飲まれます(笑)
そんなお話なのでどうぞ楽しんでください。

あっ、ハジメがちょーーーーー久しぶりに活躍もします。
では、どうぞ。





『か、開始直後から波乱の展開だあぁぁ!!!!

妨害何でもありのこの"ドーナツレース"でまさかの外野からの妨害禁止によるレースになったあああああああああぁぁぁぁッッ!!!!!』

 

興奮してるなー

しかし妨害行為は面倒だから嫌なんだよね。

というか、妨害行為が認められたらきっと……

 

「チィッ!!なんだ何も出来ねぇのか……」

「レディを傷つける奴らにテーブルマナーを打ち込む予定だったけどな……」

 

「ウソップさん!!それしまって!!しまって!!!!!」

「おっととと!!ふぅー危なかったぜー!!!!」

 

「なんで……俺だけ………」

 

 

やっぱり手を出そうとしてたなアイツら。

特にウソップ。君、いまは何出そうとしてた??

なんか()()()()()()()2()()3()()()()()()()……

 

ルフィに至ってはロビンが敵と一緒にロックしてます。

こいつが一番何かをやらかすからな。ナイスロビン。

 

「ありがとうお兄ちゃん」

「………読むな。心の声を」

 

「くっ!まだ妾には分からなかった…!!!」

「張り合わないの」

 

そんな事をしているとやっと正気に戻ったポルチェ達。

こちらとの距離は大分離れたけどあの魚ならあっという間に

 

「行きなさい!!!妨害ができなくても貴方の力であっという間に一位よッッ!!!!!」

 

船の上にポルチェと魚人。そして海に魚。

その魚が船を引っ張るという本編と同じ作戦のようだ。

さて、どうしようかなと考えていると

 

「お兄ちゃんの前に行かせるとでも思ってるの??」

 

あっ。これヤバいやつだ。

止めようとしたが時すでに遅し。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「き、きゃあああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!!!」

「ゆ、幽霊だああああああぁぁぁぁぁッッ!!!!!!」

 

パニックになるポルチェと魚人。魚にもその手がまとわり付き声にならずに気絶している。

 

『な、なんだアレはッッ!!!!!まさか本当に幽霊が出たというのかあああああぁぁぁぁッッッ!!!??』

 

もう島に残っているフォクシー海賊団もパニックパニック。

一応転覆させないように手加減はしているけど、まぁ、海からあんなに手が出てきたら恐怖だよな……

 

それも能力なら海からから出てくるなんてありえない。という頭があるからロビンの能力だということも理解していないだろうし。

 

するとルフィが遠い目をして何かを語りだした。

 

 

「………オレ、小さい頃…あの手で海の底まで連れて行かれた………」

 

「ま、マジかよ……」

 

「……きっと…能力者じゃなくても泳げなかっただろうな……」

 

そういえばまだルフィが能力者じゃないとき、能力で泳げなくなるとしても泳ぎ方を知ると知らないとでは違うはず。と思ってロビンに任せていたけど……

 

「ロビン。そんなことしてたの??」

「人は恐怖に打ち勝つとき信じられない力を発揮する。ってお兄ちゃんが言ってたからやったの。結局泳げたのエースとサボだけだったわ」

 

ということはエースもサボにも同じことをしたんかい。

強くなってもらうためだと任せたけど予想以上にトラウマが多く刻まれているみたいだな……

 

「お、お、お前ら卑怯だぞッッ!!!!」

 

と、涙目になりながら必死に訴えるフォクシー。

しかしそんなことをいうから、岸辺に近いフォクシーの足に海から現れた手がガシッと………

 

「……………キュゥ………」

 

恐怖のあまり白目を向いて気絶してしまった。

おいおい。ポルチェ達よりも度胸がないんかい。

 

「フォクシーが目を覚ましたら能力解除しようか」

「分かったわお兄ちゃん」

 

流石にこのままゴールするのは忍びないので、条件つきで能力解除することにした。さていつ目覚めるのやら……

 

…………………………………………

 

「……………はっ!!」

「やっと目覚めたかキツネ野郎」

 

起きたフォクシーの顔を覗き込むサンジ。

介抱していたわけではなく気付けに水を1杯だけ用意しただけ。

それでもフォクシーはそれを迷わずに飲み干し気持ちを落ち着けて周りを見渡した。

 

ハジメ達はすでに島の半分以上をのんびりと進んでおり、ポルチェ達は船の上でゼイゼイいいながら呼吸を整えていた。ハジメの言葉通りにフォクシーが起きた時点で能力を解除したので恐怖から解放されたがマトモな精神状態ではない。

 

「何していやがる!!!さっさとあいつ等を追えッ!!!!!」

「ちょっ!!ちょっとオヤビン!!!!さっきまで気絶しておいて何言ってるんですか!!!??」

 

「そうですよ!!!こっちはずっと怖かったんですからね!!!!!」

 

「うるさい!!!!さっさといけー!!!!!!」

 

あまりの理不尽な言い方に不満そうな表情をする3人。

しかしこのままだと負けるのは確か。だから渋々と態勢を整えてハジメ達に追いつくために動き出した。

 

「思ったより早く起きたな」

「今度は妾が目覚めないようにしようかの」

 

「それしたら一生目覚めないでしょうが」

 

ハンコックがやると間違いなく石になる。

それもいまのハンコックは本編より断然強い。

意識して相手を石にすれば強力なやつはハンコックでも石を元に戻せなくなるようだ。

 

それも生物に限らずに物体も石に変えるほどに……

 

いつの間にかハンコックの魅力は万物を超えてしまったようだ。

 

「そんなに褒められると妾……照れちゃう////」

「なんで都合のいいところだけ聞こえるの!!?」

 

「それが愛のパワーよお兄ちゃん」

「そのパワーを他に回せ」

 

本当に何なんだろうこの子らは……

えっ。もしかしたらベルメールさんも出来るとか言わないよね??

試したい気はあるけど………それは二回戦目で……

 

「聞こえなかったらそれまでの女よ」

「じゃな。指輪は返上じゃ」

 

「ナチュラルに読むな。そして勝手に決めるな」

 

やっぱりこの2人がオカシイということにしよう。

そうだ。きっとそうだよ。

ベルメールさんがこの二人と同じなわけがない。

 

……お願いだから。一人ぐらいはマトモな人がいてよ……

 

「何余裕をかましてるのかしら!!追いついたわよッ!!!!!」

 

すると背後からもうスピードで追いかけてくるポルチェ達。

あっ。あの魚人も船を引っ張ってる。マジかよ。ズルい。

 

引っ張る対象が軽いし、魚と魚人のタッグならスピードも速い。

これならあっという間に追いつくのも納得がいく。

 

 

だけどなーゴメンけど。ハンコックにも活躍させたいから

 

「ハンコック。()()()()()()

「面白いことを考えるの兄様は。"メロメロ" "甘風(メロウ)"ー!!」

 

ハンコックは上空にある小さく転々とある雲に向かってメロメロ光線を放つ。

 

さて、問題です。

万物を石に出来るハンコックですが、そのビームを雲に当てると一体何が起きるでしょうか??

 

「ま、まさか………」

 

ポルチェが気づいたようだけどもう遅い。

正解は、雲が石となり、その質量がそのまま落ちてくる。

つまり、それはどうなるかというと……

 

「に、逃げなさいッッ!!!!!!」

 

落ちてくる。落ちてくる。

ポルチェの上空から沢山の雲の石が落ちてくる。

なんとか避けれているけどそれだけ足止めされている。

 

「どうじゃ兄様ッ!!!」

「流石ハンコック。ありがとう」

 

「ハァ〜ン///この胸の高鳴り……やはり兄様が妾の運命の人…//////」

 

これでしばらく足止め出来たからのんびり進めるけど…

ロビンもハンコックもさっきからベッタリと引っ付いているからオールを漕ぐのが大変である。

 

「……ねぇ、ちょっとくらい離れても」

 

「「いや」」

 

「またハッキリと……」

 

どうしてこういう時は息がピッタリなのかねー

しかしもう目の前にゴールが見える。

まぁ、このままマトモに終わるならいいけど……

 

「く、クソが…………こうなったらッ!!!!」

 

ほら、きた。

是が非でも勝ちたいフォクシーなら何かするだろうと思ったよ。

ゴール前の岸沿いに来て何かをしようとしている。

もちろんロビンもハンコックもそれは分かっている。

何かを止めようとする二人を静止させてやらせることに

 

「"ノロノロビーム"ッッ!!!!!」

 

はい。現行犯ね。

有罪判決なのであとで刑を執行します。

 

しかしこのノロノロビームをマトモに受けたらノロノロとなって動けなくなる。しかしそんなものマトモに受ける必要がないので手を前に出して親指と中指の腹を合わせ指パッチン。

 

能力停止(ストップ)

 

たったそれだけ。

それだけで向かってきた能力が、ノロノロビームが停止した。

空中でアートのように、ノロノロ動いているわけでもなく完全停止したのだ。

 

「………………へぇ??」

 

間抜けな表情してるねフォクシー。

そんな様子を見ながらのんびりとゴールテープを切った。

 

『ゴ、ゴールッッッ!!!!!!

な、なんたさっきのはッ!!!!オヤビンのノロノロビームが停止してしまった!!!!!その間に麦わら一味がゴールを決めたあああああああああああぁぁぁぁッッ!!!!!!!』

 

いや。一緒にいますけど一味には入ってませんよ。

ロビンはそうかもだけど僕とハンコックは違いますよー

わざわざ訂正しませんけど。

 

「ハァン……惚れ直したわ………」

「腰が抜けて、動けぬ………」

 

「………いや、ほぼ何もしてないけど……」

 

この子らの感性、やっぱり分からないわー







と、いうことでおそらく"技"として使ったのは七武海VSハジメの話以来かなーと思います。
まぁ、ハジメ無双が始まったら誰も太刀打ち出来ませんね(笑)


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グロッキーリング①




どうも。
えぇーと、特にありません(笑)
ですからどうぞ。





「な、なんだよアレはッッ!!!!??」

「教えるわけがないだろうが。そしてこれを口外した瞬間に、」

 

「「「殺す」」」

 

「ヒヒヒィィッッ!!!!!!!」

 

ノロノロビームを止めたさっきの出来事を聞きに来たフォクシー。教えるわけないし、それに横にいるロビン、ニコル、ハンコックが脅しにかかるしね。

しかし本当に口外したらどうしようかなー

 

あっ。そうだ。

 

「セバス」

「はっ」

 

「「「「「うおっ!!!!」」」」」

 

当然ハジメの背後に現れた執事服の男性。

いままでいなかったのに突然の出現に誰もが警戒をする。

 

「ある程度はマカナでどうにかなるけど、このフォクシーだけはダメだ。悪いけど絶対に知られるわけにはいかないからね。強めでお願い」

 

「了解しました」

 

といってキツネの頭を掴んで何処かへと向かうセバス。

「た、助けてくれー!!!!」と言っているフォクシーだが誰も助けるわけもなくそのまま連れて行かれた。

 

「と、いうことでマカナ」

「はい!!!」

 

これまた突然現れたマカナ。

いつも以上にニコニコ笑顔な彼女に

 

「精神異常が出ないようにここにいる奴ら全員よろしく」

「失敗したら処刑ですね!!」

「勝手に決めない。あと殺さないからね」

「はい!!」

 

フォクシー海賊団の面々にはマカナに任せておこう。

さてあとは、

 

「言わなくても分かるだろうけど、ダメだからね」

「…………流石に自殺する趣味はねぇよ……」

「絶対にいいません!!!!!」

 

ゾロやウソップのようにハッキリと言ってくれたほうが助かる。マカナの記憶操作はスゴいけどなんか知らんけど僕を崇めるという余計なものが含まれるからなー

 

「マカナー!!本当に余計なものはいれなくていいからねー」

「ダメよ。お兄ちゃんの素晴らしさは入れなさい」

 

「分かりました!!!余計な記憶を消してハジメ様の素晴らしさを入れておきます!!!!」

 

「それがダメだって言ってるのッッ!!!!??」

 

「はーーい」と元気よく返事するマカナだけど本当に分かってるのか??

 

「じゃ皆さんーこっち向いてください!!!」

 

そういってフォクシー海賊団の全員をマカナに向けさせた瞬間、ニコリと笑ったあとにその瞳には黒よりも黒い何かが映っていた。

 

「ハジメ様が今日したことを全て忘れてください。思い出すことも、疑問には思うことも、思考として思い出すことも、欠片でさえもダメですよ。いいですね??()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()

 

たったそれだけでフォクシー海賊団は5秒ぐらい沈黙したあとにまるで何もなかったかのように散り散りになり、次の第二回戦のために準備を始めた。

 

「これでいいですか!!」

「いいよ。ありがとうね」

 

「お礼を言われてしまいました!!死にます!!!!」

「だから勝手に死なない」

「はい!!」

 

と、いい返事をしてまたあっという間に姿を消したマカナ。

それと同時にセバスが現れてその右手に掴んで引っ張ってきたのは泡を吹いて気絶しているフォクシーだった。

 

「制約で"他者にハジメの話をした瞬間に自殺する"というのをかけておきました。条件として"ハジメ様を見ていない"ということになってしまいました。申し訳ございません」

 

「いいよ。一回戦だけ出るつもりだったし。

あとはいつも通り隠れてるから。といってもそこら辺の人達には見えてるけどね」

 

「本当に羨ましいです。私もいつかそのような強い信頼を勝ち取れるように精進いたします。では」

 

と、マカナと同じように消えたセバス。

これで問題なく二回戦に……

 

「「「「「まてまてまてまてまてまてまてッッ!!!!!??」」」」」

 

「うおっ!!ど、どうしたの!!?」

 

いきなり詰め寄ってくる麦わらの一味。

ロビン、ハンコック、ニコル、ベルメール、そしてルフィは来なかったが…

 

「さっきの誰なんだよあの執事はッッ!!!」

「というか、あの記憶操作はなによ!!!!」

「まさかあんなことを俺達にもしてないだろうな!!!!」

「どうなんですかッッ!?」

「正直に答えなさい!!!!」

 

あぁ、そういうこと。

ハジメは珍しくニコリと笑いながら

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「「「「大アリだボケエエエエエエエエエエエエエエェェェェェッッ!!!!!!!!」」」」」

 

…………………………………………

 

「それじゃ誰を貰おうかしら」

「……………チィッ」

 

第2回戦を始める前にデービーバックファイトの掟にならって誰か一人貰えるのだけど、セバスの制約のためにフォクシーに見えないようにしているハジメ。まぁ数名見えてる人はいるけどね。

 

「でも本当に、誰もいらないからの貴方達の武器全部貰うわ」

「なっ、!!!??」

「さ、さ、さ………」

 

「最低だあああああああぁぁぁッッ!!!!!!」

 

いきなり全員で大声を出してきやがった。

本当にうるさい。耳が痛いだろうが…

 

『デービーバックファイトを完全有利に立つためにそんな外道を選ぶというのか!!!??』

「卑怯だ!!!」

「悪魔だ!!!!」

 

スゴい言いがかりだな。

というか、そんなこと言っていいのか??

もう完全にブチ切れるぞ。ロビンが。

 

「ふふふ。殺すわ」

「じゃな。手伝うぞ」

「私も切れたわ」

 

『やめろやめろやめろ』

 

もう殺気が、殺気だけで殺せるほどのオーラをロビン、ハンコック、ニコルが放つもんだからフォクシー海賊団の大抵の人間が気絶したじゃないか………

ロビン達には僕の声が聞こえるから本当に良かったよ…

じゃなかったらここら辺一体血の海だったな……

 

「でも、まぁ、やっぱり止めておくわ。

武器の回収が出来なくなったら意味がないしね。

……じゃ、試合出ないんだからウソップ、回収してきて」

 

「って、オレかよッッ!!!??」

 

「ゾロとサンジも使っていいから」

「「俺達を巻き込むなッッ!!!!」」

 

「いいからいきなさい。じゃないと()()()()3()()()()()()()()()

 

そういうと聞き分けたのか大人しくフォクシー海賊団から武器を回収し始めた。

そんな様子を見ていたフォクシーは

 

「すぐに3回戦が始まるだと??もう勝った気でいるのか??」

「まぁ、そうね」

 

「フォーフォフォフォ!!!!コイツらを見てまだそんな口が開けるかッッ!!!!!!」

 

第2回戦の場所はサッカー場のような白線が引かれたエリアで行う。そしてその反対側、敵チームには普通の人間からして倍の倍の倍の大きい巨人がそびえ立っていた。

 

確か一番大きいやつがビックパンで、2番がピクルス、3番がハンバーグだったかな??

 

「で、そっちは……」

 

そういいながらこっち側のメンバーを見るフォクシー。

メンバーはベルメールさん。ギン、そしてチョッパー。

 

「そんなメンバーで勝てるとでも思ってるのかッッ!!!!??」

「「「「「ぎゃあははははははッッ!!!!!!」」」」」

 

全員で笑ってるけど、こいつら分かってるのかな??

僕が一番目に出た時点で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

まぁ、それならそれで構わないけど……

 

「ベルメール」

「……なによ」

 

「貴女が"ボール"よ」

「……分かったわ」

 

こっちはこっちでかなりやる気だからなー

間違いなくヤバい試合になるだろうなー

 

「お兄ちゃんを手に入れたいなら、ホコリすらつけたらダメよ」

「分かってるわよ。……絶対に勝つわ」

 

「「頑張ってベルメールさんーーッッ!!!!!!」」

 

娘達に応援され片手を上げるベルメールさん。

………カッコいいなー。うん。頑張ってほしい。

 

「ギン」

「はい。マイゴッド」

 

「だからゴッドはお兄ちゃんよ」

「はい。マイマスター」

 

「まぁ、いいわ。ベルメールの補助に回りなさい。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「もちろんですッッッ!!!!!!!!」

 

そう。ギンは他のメンバーに気づかれていないけどサポートとして超一流である。だからこそ表舞台には出れないけど、それでも今日は堂々とベルメールさんのサポートとして動いてもらう。

 

「チョッパー」

「お、おう!!」

 

「撹乱よ。相手の意表をつきなさい」

「おう!!!!やってやるぞッッ!!!!!」

 

チョッパーは適任だろう。

あのランブルボールの効果は本当に様々な形態を生み出したからなー

 

「いいわね。お兄ちゃんに泥を1滴でも付けようなら私が消すわよ」

 

「「「おうッッ!!!!!」」」

 

士気を高めるのはいいけど、そんな脅しで士気を高めなくても良くない??








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グロッキーリング②



どうも。
さあ、ベルメール無双だああああぁぁぁ!!!!!!!
………しかし、どうしてこのワンピースは女性がやたら強くなるのか……というかハジメの周りの女性かぁ……

どっちみち、恐ろしいわ……(笑)

ということで、どうぞ。





『第2回戦は"グロッキーリング"ッッ!!!!

メンバーも出揃った!!いよいよ試合開始です!!!!』

 

さて。試合開始といきたいところだけどビックパン達の武器回収ってちゃんとしてるのかな??

 

「ウソップウソップ」

「な、なんだ!?どこから声がッッ!!!」

「ウソップさん……??」

 

あら〜まだウソップ達には見えてないか……

ルフィに聞いてもらえばいいかもだけどあの子は肝心な事が抜けるか余計な事をいうかが多いからな……

 

あと見える人でいうと……

 

「私はベルメールが一人倒すに賭けるわ」

「ほほう。あれだけ否定しておいて賭けるか!なら妾は二人に賭けようぞ!!!」

 

「………じゃ3人の方で」

 

見えている残りの3人、ロビン、ハンコック、ニコルはなんか賭け事してるし……それもベルメールさんが何人倒すかって賭け事を………

 

まぁ、倒せない。という選択がないだけ信用しているようだし無視しておこう。というか関わりたくない。

 

『試合………開始だあああぁぁぁ!!!!』

 

そんなことをしているといつの間にか試合が始まった。

そして速攻でハンバーグ手にはメリケンサックが付いている。

 

「何だよアレ!!?まだ武器を隠し持っていたのか!!!!」

 

やっぱり見落としていたか……

そして例のごとく審判はそっぽ向いていて見えていない。

 

「ちょっと!!!武器を持っているじゃないのよ!!!!」

 

「フォーフォフォフォフォフォ。()()()見えていないならしょうがないな〜」

 

本当にコイツらは……

ロビンの能力なら強制的にあの首を向けさせれるけど…ベルメールさんは一切動揺せずにこれからどうするか考えているようだ。

 

向かってるハンバーグに対してベルメールさんが出した答えは

 

「じゃ、まずは()()()()()()()()()()()()()()()

 

そういってベルメールさんは()()()()()()()()()()()

フニャフニャの実の能力は無機物をフニャフニャにする能力。

ベルメールさんが任意で触れた地面はフニャフニャとなって両手を地面に挿し込んでも何の痛みもない。

言ってしまえばゼリーに手を突っ込んだようなもの。

 

そして両手で地面を掴んで思いっきり持ち上げた。

すると連動するように波打ちながら地面がハンバーグに向けて盛り上がっていく。

 

『な、なんだアレはああああぁぁぁ!!!!じ、地面から波が発生したぞおおおおぉぉ!!!!!』

 

地面そのものを持ち上げることは出来なくても勢いをつけて隆起させれば反動で波のように広がる。その波にハンバーグの体は持っていかれてしまい、そしてビックパンやピクルス達も一緒に後方へと下がってしまった。

 

そしてたったそれだけの為に波を起こすわけじゃなかった。

これまでの中で大きな波が一気にハンバーグ達を飲み込もうと迫っていたのだ。

 

「ビ、ビックパンッッ!!!!」

 

飲み込まれる前にビックパンがその巨体を活かして波へパンチを喰らわせた。フニャフニャの実で柔らかくなっているとはいえその波の材質は地面であり土である。

殴り風穴を開けたのはいいがビックパンの手からは血が出ている。

 

そこを通り抜けてきたハンバーグとピクルスは再びベルメール達の元へ駆け出す。さっきと同様にハンバーグはメリケンサックを、そしてピクルスは肩に棘付きのサポーターをつけた状態からのタックルを決めようと近づいてきていた。

 

「行かせねぇよ」

 

二人の前に立ちはだかったのはギン。

特に武器も持たずに素手だけで二人を相手しようとしている。

 

「そんなヒョロナガで何ができるッッ!!!」

 

敵ではない。と判断したハンバーグはメリケンサックでギン仕留めようと急接近。追い込まれているギンは慌てるようすもなく軽く息を吐いて

 

「……基本は、"円"」

 

軽く後ろに後退しながらハンバーグのメリケンサックを紙一重で躱し、その腕を添える程度に握ったあと、ハンバーグの足に自分の足で引っ掛ける。

 

「うおっ!?」

「力をそのまま……」

 

バランスを崩したハンバーグを、ギンを中心に時計回りに回転。勢いのあったハンバーグの直進がただ添えられただけの手の誘導に連れられて半回転した。

 

そしてハンバーグの手を今度は一気に下へ方向転換すると、まるで操り人形のようにハンバーグの身体が前のめりになり、もう片方の手でハンバーグの腹部に手を当てながら上へと力を込める。

 

するとギンの体重の何倍もあるハンバーグの身体が簡単に宙を舞ったのだ。

 

「受け流す」

「うわあああああぁぁぁッッ!!!!!」

 

投げ飛ばされたハンバーグは、ギンを仕留めようとタックルで接近していたピクルスの元へ。

止まろうにも止まれず、曲がろうにも曲がれないピクルスにハンバーグの身体は激突。

 

トゲ付きのサポーターに見事に当たったハンバーグは傷つきながらその場に倒れた。

 

「ハンバーグッッ!!!!」

 

簡単に倒されたハンバーグに動揺するピクルス。

この状況を変えるためにビックパンに応援してもらおうと振り向くが

 

「こっちだ!こっち!!!」

「………………え……………??」

 

思考の遅いビックパンの身体の周りをウロチョロと周るのはチョッパー。いくら倒せないとはいえ撹乱だけなら動き回ればいい。さらにビックパンの身体は何かヌルヌルした液体が出て滑りやすいが、チョッパーにとっては雪国での環境に対応出来ているのでこれぐらい朝飯前なのである。

 

ビックパンは当てにならない。ハンバーグは気絶している。

こうなったらと隠し持っていた二本の剣を取り出してきた。

 

「お前ら……刻んでやるッッ!!!!!」

 

もう隠す気ゼロのピクルス。

高速回転しながら近づくピクルス。少しでも触れようなら簡単に刻まれてしまう。

 

だけど相手が悪かった。

 

「どんな力にも"回転"がある。その力を知り、利用出来れば……」

 

もう斬られる寸前まで追い込まれたギン。

しかしギンは避けるどころか目を瞑り、回転する音、振り回す剣の音を聞き分けて、目の前にきた瞬間を狙って

 

「ハッ!!!!!!」

 

ピクルスの両手を瞬時に捕まえて回転する動きを止めたのだ。

 

「ば、バカなッッ!!!!」

「動きを止めてしまうことは容易い。ぜッ!!!!」

 

そして今度は握った両手を離したあと、至近距離で殴る態勢に入ったのだ。こんなにも近づいた状態では繰り出されるパンチは弱い。しかし身体全体に回転の力を使い、それを打ち出すパンチに込めれば至近距離からでもトンデモナイ破壊力のあるパンチが繰り出される。

 

「ごぶっ!!!!!」

 

元々"鬼人ギン"と呼ばれていたのでパワーはなかなか。

そこに回転力を加えたのだ。大きなピクルスでも簡単に吹っ飛ぶ。

 

そして動き回るチョッパーに翻弄されているビックパンの足元がどんどん柔らかくなっていき、気づいたときには膝まで地面に埋まっていた。

 

「…………あっ」

「気づくのが遅かったですね」

 

フニャフニャにした土や石や岩など含まれた地面を上空へ上げたベルメール。

それを目で追っていたビックパンの顎にピクルスが激突して脳震盪を起こし、フラフラになっているビックパンへ上げた地面を硬め形を大きな龍の顔が出来上がった

 

「「いっけええええええぇぇぇぇッッ!!!!!!!!」」

 

ギンとチョッパーに声援されながらベルメールは、ビックパンの頭をゴールへ入れる為にその龍を打ち込んだ。

 

土石(ソイル)(ドラゴン)ッッッ!!!!!!!!」

 

まるで土石流がビックパンを襲ったかのように顔面から攻撃を受けたその体はそのまま後ろのゴールへ吸い込まれるかのように倒れてしまった。

当たりは土や岩や石まみれ。ビックパンの身体も汚れた状態で、頭がゴールにきちんと入った状態になっていた。

 

『ゴ、ゴ、ゴールッッ!!!!!!!!

見事に決まったあああぁぁ!!!圧勝で勝ったのは麦わらチームッッ!!!!!!!』

 

………………………………………

 

さて、見事に決まった第2回戦。

ここでもう一人相手から人材を奪うか、別の物を奪うかしようとしたけどロビンのこう言えと言っておいた。

 

「今回はいいわ。次でまとめて払ってもらうわ」

「……いいのか??次俺達が勝てば無効だぞ」

 

「いいわ。むしろ負けたら要求しなさい。応じてあげるわ」

 

特に欲しいものがないので次に持ち越しにしてあげたのだ。

さらにフォクシーの意力を上げるために負けたら無効どころか要求していいというプレゼント。

 

「吐いた言葉はもう戻せねぇからな!!!!」

「いいから始めましょう」

 

やる気になってくれたのは良かった。

いやー本当に良かった。圧勝しすぎてデービーバックファイトを中断する!とか言い出さずにすんだ。

 

ということで第3回戦。

 

『レディ………ファイト!!!!!』

 

と始まった瞬間に終わらせるようにとルフィに言っておいてとロビンに言っておきました。なので

 

「ゴムゴムの、"レッドホーク·ガトリング"ッッッッ!!!!!!!!」

 

「ガバギジジャグダビバッッ!!!!!」

 

瞬間にギア2を使ってのレッドホーク。さらにそれをガトリングという技に昇華させたようだ。一瞬で撃ち出された炎を纏ったパンチはまるで巨大な炎。それがフォクシーの身体全てを丸呑みにしてフォクシー海賊団の船を半壊させ、重度の火傷を負ったフォクシーは遠くの方へ飛ばされて海に落ちた。

 

『お、お、オヤビンーーーーーッッッ!!!!!!!』

 

半壊した船を動かしてフォクシーを回収しに向かう仲間達。

まぁ、あそこまで派手にやれば反省するだろうということで

 

「はい。デービーバックファイト終わり」

「いや、いいのかよコレでッッ!!!!」

 

言いたい気持ちは分かるけどねウソップ。

このままずっと隠れるのも面倒くさいのよ。

影から支援するのは好きだけど今回は表だってやりたかったからね。

それに3回戦とはやらなくていいの。

ノロノロビームさえ避ければルフィの圧勝。そしていまルフィはそのノロノロビームを避ける身体能力があるからね。

まぁ、オツムの足りなさでやられるかもしれないけど………まぁ、それでもやる必要性が感じなかったし、フォクシー海賊団から2つも何かを取るほどの物はないし、こんな終わらせ方でいいの。

 

プライド??だからそんなもんはない。

海賊になった時点で裏切る前提なのは当たり前なんだから。

昔のしきたりやらルールやら持ってきても意味がない。

 

特に奪い合うゲームなんてくだらないものに従う理由がない。

 

「さぁ文句があるならどうぞ。聞くよ」

 

だからこんなルール無用なゲームに真剣になる必要は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおう、そうかい。なら、言わせてもらうよ」

 

どこからか、聞こえてきた。

ここにいるはずのない男が……いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……その、ここに来る理由がない筈なんだけどな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてここにいるのかな"クザン"??」

「それはお前がここにいるからだろうがハジメ??」






はい。久々の"グザン"です。書き間違いではありません(笑)
デービーバックファイトの最終戦は超短縮でしたが後悔はありません。だって書くことなかったもん(笑)

さて、ここからが僕が好きなお話です。
そう!!ロビンのメインの話だ!!!!(ウソップ??んなも知らん)
もちろん本編とは色々変わってますのでみんな付いてきてくださいねー。僕も書いていて分からなくならないように気をつけます(笑)



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"青キジ"クザン。




どうも。
ここまでが"デービーバックファイト編"です。
超ー短いですがこれからが長い。長い。
いつ終わるのか僕も分かりません。(笑)
みなさん頑張りましょう。

では、どうぞ。





「良かったよベルメールさん。もっと使いこなせれば中佐ぐらいはすぐに届くね」

 

「まぁ、合格点ギリギリだけど……いいわ。認めてあげるわ。ギリギリだけど」

 

「もっと素直に言ってくれてもいいのよロビン??」

「嫌よ」

「アンタね……」

 

怒らない。怒らない。

 

「それとも取り消ししてほしいの」

「嫌よ」

 

「ならいいじゃない」

「……納得、いかないわ……」

 

「歳をとったオバサンの剥れ顔。誰得よ」

「イヤミ言わないといけないのアンタはッッ!!!!!!」

 

………まぁ、仲良くしているようだし後回しでいいよね。

 

「しかし、ギンもよく武器無しでやれたね。

というか………なに、あの体術は?? 」

 

「マイマスターに教えてもらいました」

「えっ。じゃ。なに??あれロビンも使えるの??」

 

すると分身体を作ってこっちに置いてくれた。

本体はまだベルメールと言い合っている。

 

こっち(能力)があるから必要ないけど使えるわ」

 

「えぇ……なにそれ……」

 

「魚人空手を習ったついでに会得したわ」

「ついで……で、あれですか……」

 

「今度は関節技も覚えましょうか」

「イエス!!マイマスター!!!!」

「もう…好きにして……」

 

で、早速指導が始まっているけど、一体ギンは何処を目指しているのか……

それも後回しにしよう。それより今は

 

「それでは妾達も帰ろうかの」

「「はい。姉様」」

 

僕の調子も良さそうだということで女ヶ島に帰ることにしたハンコック達。今回は随分と長く滞在したからなー色々と支障がなければいいけど

 

「兄様の為の時間を割いたことによる支障などありませぬ」

「うん。嬉しいけどナチュラルに心を読むな」

 

「ベルメールよ。強くなったとはいえまだまだ妾達とは天と地程の差がある。決して油断するでないぞ」

 

「もちろんよ。必ずハジメの為になってみせるわ」

「ふん。ならば示してみよ。兄様、それでは、またぁ…///」

 

「はいはい。………風邪、引かないようにね」

「兄様が妾を心配ッ!!……ハァン……これが相思相愛…////」

 

「間違ってないけど一番は私よ」

 

そんなところで張り合わないの。

まぁハンコックは満足そうな表情しているからいいけど…

こうして助けに来てくれたハンコックを見送り

 

「じゃ、次の島にいきますか」

「無視をするなあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!!!!!」

 

いきなり大声を出したのはクザン。

あぁ、そういえば………

 

「いたね。そういえば」

「お前!マジで忘れていたのか!!? 」

 

「書類整理出来ないやつの存在なんて覚える必要ない」

「最近はやってるんだよ!!!!」

 

「で、そんな最低限が出来て自慢してるのか??あぁ??

なら今度企画書とか始末書とか色々渡してやるよ」

 

「……………すみませんでした」

 

調子に乗って……そういうのは対等の立場にたって出来るものだと分からないかな……

 

「ってか、何なのそいつらは……これでもオレ"大将"なんだけどな……」

 

まぁクザンの言いたいことは分かる。

さっきまでの会話に参加していなかった奴らはフォクシー海賊団が置き忘れていった屋台を使って満喫していた。

 

「?? だってハジメがいたからな〜

それよりサンジ!!今度はやきそば焼いてくれー!!」

 

「うるせぇ!!!こっちはまだたこ焼き焼いてるんだよ!!!」

 

「なあなあ!俺にもやらせてくれよサンジ!!!」

「おっ。やってみるかチョッパー」

「なら俺と勝負だ!!」

「かかってこいウソップ!!!!」

 

「………なかなか美味い酒持っていたなアイツら」

「本当。これなかなか…」

「いい具合の度数だわ」

 

「いや、レイジュさん。それ……アルコール……」

「あら??大丈夫よ。飲めるから」

 

「ダメですって!!!いくら毒が平気でも飲むならお酒にしてください!!!!!」

「堅いわねカヤって」

 

「あとこれよ!!!!」

「いや、ナミ……もういいから……」

「ダメよベルメールさん!!!相手はロビンさんとボア·ハンコックなのよ!!!!!」

 

「ウェディングドレス選びは重要なの!!!

これでその後のベルメールさんの立場が変わるんだから!!!!!」

 

「だから、もう第2婦人になれたから……」

 

「「ダメッッ!!!!!」」

 

「………俺達、空気だよな……」

「…キャハハ…言わないで……」

「目立ちたくないから私は構わない」

 

………………………………。

 

「そんなもんだよクザン」

「本当に、お前さんが来てから俺の扱いって……」

 

まあ泣きたくなるのは分かるけどね。

 

「ほとんど自分が悪かっただけだろうがグザン」

「少しは励ますとかないのかよッッ!!!!!」

 

んなもん、ない。

 

………………………………………………………

 

「で、真面目な話。何をしに来たの??」

 

少し離れた場所に移動したハジメもクザン。

もちろんロビンとニコルも同席している。

 

「その前にだ………なんでニコルがここにいるんだよッッ!!!!!!??

 

あっ。そういえば言っていなかったね。

 

「それは本体に言って。私は"召喚"されただけよ」

「はあぁッ!!!!??召喚って、な、おい!!なんだそれは!!!??」

 

「五月蝿いわね。出来るのが真実よ。信じなさい 」

「…………相変わらず、規格外だな……ったく……」

 

私は悪くない。と堂々としたロビンの発言に言うのを諦めたクザン。うん、それが正解。

 

「なら、本題に入るぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………ハジメ。()()()()()()()()()()

 

その言葉に一気に殺気を放つロビンとニコル。

はいはい。どうどう。落ち着いて。

 

その殺気に気づいたルフィ達も何事かと食べたり衣装を見たりするのをやめてこっちに来てしまった。

 

もう、こうなると分かっていたから離れたのに、まさか、クザンの用事がそれとはね………

 

「で、なんで今さら??」

「分かってるんだろう。()()()()()()()()()()()()

このままここにいさせるわけにはいかない」

 

「そっちにはモーガンさんがいるでしょう??」

 

「他の海兵達には誤魔化せる。が、もう気づいてるんだろう。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()

 

真剣な表情でこっちを見てくるクザン。

その雰囲気に、ルフィ達も冷汗をかいている。

 

「…………で、戻った所で何するんですか??

言っておきますけどもう僕は書類整理は……」

 

「ハジメには海兵達の()()を任せる」

「……………へぇ」

 

まさかあのクザンからそんなことをいうとは。

確かに海兵の育成も大切な仕事の一つ。

それがあるかないかでは大きな差が生まれる。

 

「この前お前さんが暴れたアラバスタ。あそこで身にしみたよ。一人一人の海兵の力が足りなすぎる。ならそれに適した人物に教育を任せようってな……」

 

「それで、僕に回ってきたと??」

「このままだとモーガンがやることになるが、アイツは教えるのが下手だからな。やるなら本物しかいないだろう」

 

確かに言っていることは分かる。だけど

 

「なら、それこそニコルに任せればいいよ。僕より適材だ」

「んなもんは分かってる。だけど()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

「何をいって……」

 

「…………………………」

 

「「「ッッッ!!!!??」」」

 

「動き出したぜ。つまり、そういうことだ」

 

……………なるほど。嫌な所をついてきたな……

向こうには聞こえて無かったみたいだが、なにがなんだかと分からないルフィ達は置いてけぼりを食らっていた。それでもいまハジメがこのままだと海軍に戻るかもしれないということだけは分かったようで

 

「ダメだあッ!!!!ハジメや師匠は連れて行かせねぇ!!!!!!」

 

ルフィの言葉に他の者達も奮起したのか全員が戦闘態勢に入る。

 

「やめとけやめとけ。ハジメやロビンにかすり傷も負わせないお前らじゃ、オレには勝てねぇよ」

 

「うるせぇ!!!!やってみないと分からないだろうが!!!!!!!」

 

「ったく、聞き分けの悪いのは似てほしくないね………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷河時代(アイスエイジ)

 

「「「「「ッッ!!!!!??」」」」」

 

一瞬にしてクザンを中心に全体が凍った。

草も土も、水も海も、ありとあらゆるものが瞬間的に氷漬けされたのだ。

 

とっさに反応したルフィ、ゾロ、くいな、サンジ、レイジュ、チョッパーはジャンプをして回避したが、他の者達は地面から伝わってきた冷気により膝から下が氷漬けになり地面に貼り付けられた。

 

「み、みんなッッ!!!!」

 

チョッパーは野生の勘なのだろう。

ルフィ達とはまた違う経験の差がここで活かされたが、それでもこの目の前に広がる世界に恐怖していた。

 

「な、なんだよコレ…こんなのって……」

「チョッパーッ!!!他の奴らは大丈夫なのか!!?」

 

「う、うん。凍っているけどちゃんと対応すれば……」

 

「凍ってる部分が残っていれば、な??」

 

ちょっと目を離した瞬間だった。

一瞬でクザンはウソップ前に現れて何かを蹴る体勢に……

 

「あらら」

 

脚を振り抜いた時にはそこにいたウソップはおらず、()()()()()()()()()()()。もちろん目で追えていたクザンの視線の先にはウソップを抱えたルフィの姿があった。

 

「ル、ルフィッ!!!!」

「何する気だったお前ッッ!!!!!」

 

「それはもちろん。この先海賊としての道を閉ざすために()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

「ふ、ふざけるなッッ!!!!!!」

 

クザンに向かっていこうとした瞬間、

 

「はい。そこでストップ」

 

と、ハジメの声が聞こえて突撃を止めたルフィ。

しかしそれはあまりにもことで

 

「なんで止めるんだよハジメッッ!!!!!」

「勝てない相手に挑む。死ぬ気なら止めないよ」

 

「死なねぇし!ハジメも渡さねぇ!!!!」

「意気込むのはいいけどね……はぁ、しょうがない……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに、やってあげるよ。クザン」

「おいおい……お前さんとやり合うつもりは……」

 

「もちろん私もやるわよ」

「ええ。叩き潰す」

 

「ま、まぁ、まて…ちょっと待て……

3人がかりでやられたら流石に………」

 

「骨は、拾ってやるよ」

「…………チクショ!!!貧乏クジにもほどがあるだろうがッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………これが、"世界"………ッッ!!!」

 

やっと放った言葉はそれだった。

目の前で繰り広げられているのはもはや"災害"レベル。

一つの攻撃が島を、海を吹き飛ばす威力を持ち、それが4人全て使っている状態。

 

圧倒的な力の差。

ハジメに至っては大した能力を使わずに青キジと張り合っている。

 

少しは近づけたと思っていた。

昔から悪魔だと思っていたロビンに、目標であるハジメに近づけると思っていた。

 

だけど、思い上がりもいいところだった。

まだ何一つ近づいない。ロビンに言われた通り果てない荒野にやっと一歩踏み出せた程度。いや、もしかしたらまだ踏み出せてもいないかもしれない。

 

「………オレは、まだ……弱えぇ……ッッ!!!」

 

悔しさでいっぱいになり、涙も溢れている。

それぞれがそんな思いになり、ただ黙って繰り広げられている戦いを見守るしかなかった。

 

……………………………………………………………

 

「じゃ連れて帰るわ」

「向こうで生ゴミで出しておいていいわよ」

「ちゃんと書類整理しておけよ」

 

「て、てめぇら………絶対に、いつ、か……泣かす……」

 

そんな壮絶な戦いは10分も持たなかった。

なぜなら流石にクザンも3対1では分が悪すぎたのだ。

ポロ雑巾のようになりながらもまだ文句をつけいえるだけの生命力があるなら大丈夫だろうと、チョッパーとカヤの診断を無視してニコルに海軍本部へ返してもらうことにした。

 

「はいはい。次はお土産もよろしく」

「……な、かす……絶対に……なか、す………」

 

「出来もしないことを言わないの」

 

クザンの両肩から生えた手がクザンの頭を殴り気絶させた。

そして海軍本部への帰りなのだが

 

「これ、私以外が転移って…出来るの??」

「さぁ??まあ、グザンだから失敗してもいいわよ」

 

「そうね。じゃ帰るわ」

「ふ、ふざけ……」シュン!

 

「……よし。終わったな」

「「「「「いやいやいやいや」」」」」

 

突然消えたニコルとクザンに、流石にさっきまで固まっていたルフィ達も元に戻ってツッコミだした。

 

「いいのかよ!!あんな扱いして!?」

「グザンだからね。いてもいなくてもどっちでいい」

 

「えぇ………」

「というか師匠!!ワープ出来たのか!!?」

 

「一度行った場所は何処でもいけるわ。そこに"タネ"を置いているからいつでも()()()()()()()()()()。といっても食事の為に使う気はないわよルフィ」

 

「………はい。すみません」

 

図星かよ。

それでもまぁ、何事もなく終わって良かったー

 

「……なんか何事もなく終わった。みたいな雰囲気出してるけどよ………コレ、どうする気だよ……」

 

ウソップが言ってるのはたった10分で立っていた島が消し飛んだということ。そういまはメリー号の上で消えた島を見ていた所なのだ。

 

「……………さぁ。行こうか!」

「いや、誤魔化せられねえよ!!!!!!!」

 

…………やっぱりダメ??

 

 

 



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ウォーターセブン編
ウォーターセブン





どうも。
さぁ、始まるぞ"ウォーターセブン編"!!
何がどう本編と変わっているのか……お楽しみに!!
では、どうぞ。






ロングリングロングランドでログポースが溜まるまで1日。

次の目的地に向かって航海を進める中、麦わらの一味はいつものより大人しかった。

 

氷にされた足は無事に解凍し凍傷の問題はなかったのだが、騒がしい中心にいるルフィ、ウソップ、チョッパー達が大人しく釣りをしており、ウソップ、カヤはマジックの仕込み。

ゾロとくいなは筋トレや素振りをしたり、サンジは夕飯の仕込むをしてチョッパーとレイジュは薬の調合などで話している。

ナミ、ノジコ、ベルメールは操縦に集中しており、ギン、バースト、キロロ、カルーは周りに何かないかと警戒している。

 

それぞれがそれぞれ何かをしているがいつもの雰囲気ではない。

今まであれだけ賑やかだったのにこんなにも変わるほど大人しくなる原因となったのは………

 

「まぁ、僕のせいだろうなー」

「仕方ないわ。グザンが余計なことをしたのだから」

 

船内で話し合っているハジメとロビン。

そしてそこに未だにメイド姿のカラーもいた。

 

「なんであんなことしたの??

無視しても良かったはずじゃないの」

 

「……まぁ、いつか()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだけどね。……ちょっとやりすぎたかな??」

 

「あれだけで凹むなんて、やっぱり鍛えが足りないかしら??」

 

「……あれだけ……」

 

カラーから見てもあれはもう災害のようなもの。

そしてそんな力を持っている大将があと3人もいる。

さらにいつか超えたいハジメやロビンの実力が嫌でも分かったあの戦いに誰も彼もが自信を無くしていた。

 

「さて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……えっ??」

 

そのいきなりの発言に持っていたティーカップを思わず手から離してしまった。ロビンがすぐに手を生やしてキャッチしたから良かったが

 

「ど、どういうことですかッッ!!!??」

「心配しなくていいわカラー。貴方は月兎が引き取るから」

 

「いえ。結構です」

 

これは………麦わらの一味に残りたいという意味か、それとも月兎に入ることが嫌なのか……

 

「いやね。この間僕が暴走したでしょう。そしてクザン。

海軍本部が本格的に僕とロビンを()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「なっ!!?」

 

驚くカラーにいつも通りロビン。ハジメも特に表情を変えずに語っているが

 

「な、なんで、そんなことにッッ!!!!??」

 

「いやいや。ニコルはともかく"ロビン"は世界政府が捕えようと躍起になってるんだよ。いつまでも野放しにはしないよ。

それに僕は海軍には非公式だけど大将達には正体がバレているようだからね。こちらも躍起になって連れ戻そうとするだろうねー」

 

なんか他人事かのように話すハジメに驚きすぎて声が出ないカラー。そこにさらに追い打ちをかけてくる。

 

「そこで僕達は()()()()()()()()()()()()()()()

「……う、嘘ですよね……」

 

「本当よ。いつまでもおんぶに抱っこのあの子達を見るのも飽きてきたのよ」

 

「クザンにはあぁやって返したけど、きっとまた刺客を送ってくるだろうね。むしろ警告にきたんだろうから……ならもう潮時かなーってね」

 

二人の言葉に思わず後ずさるカラー。

身体が、本能が告げている。ここにいると危ないと。

海賊団から抜けるだけで、なんでこんなにも怖いと感じるのか……とにかく本能が逃げろと言ってくるカラーの身体は無意識にその場から逃げだろうと動いていた。しかし、

 

「どこにいくの、カラー??」

「…は、離して……」

 

もちろん逃げられるわけがない。

こんな重要なことを知ったカラーが部屋から抜けれるわけがない。

簡単にロビンに拘束されたカラーは

 

「知ったからには、どうなるか……分かるよ??」

「………や、やめ……」

 

「じゃ、いきましょうか」

 

………………………………………………………

 

「か、カエルだあ!!巨大なカエルがクロールしてるぞッ!!!」

 

甲板に戻ってきたハジメとロビンはタイミングよく大きなカエルがクロールしている場面に出くわしていた。

 

「なんだあのカエルはッ!?」

「えらく急いでるな…」

「何かと競っている、とか……」

 

と、カエルを観察しているのはいいけど、ならそろそろ危ないよなーー

 

「ベルメールさん。カエルと並走しないほうがいいですよ」

「えっ??わ、分かったわ…」

 

素直に話を聞いてくれたベルメール。すぐにナミとノジコも船の軌道を変えようと動いてくれている。

 

「おいハジメ!!なんで進路を変えるんだよ!!」

「そんなことしていたら、死ぬよ??」

 

と、言っていたタイミングで地平線の向こうから物凄いスピードで何かが近づいてきていた。

一体なんだと見ているとこっち向かってきていたのは

 

「き、汽車ッ!!?」

 

あっという間に目の前を通り過ぎた汽車。

あと少し進路を真っ直ぐにしていたら、遅れていたらあの汽車とメリー号がぶつかっていた。

 

「あ、あっぶねー!!!」

「まぁ、こっちは無傷だろうけど、流石に汽車は大破していただろうし、中にいた乗客もただでは済まなかっただろうからね」

 

それを聞いて冷や汗をかくルフィ達。

そしてなによりどうしてこんな所を汽車が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんなことをしているさっきのカエルが海の上に立ち、目の前から汽車が迫っていた。

 

「あ、危ないッ!!」

 

しかし後ろ足で立ち、前足で構えるその姿はまるでいまから汽車を受け止めようとするようで………でも、重量とスピードのある汽車にカエルは簡単に吹き飛ばされてしまった。

 

そんな光景に唖然とするルフィ達。

すると気づかなかったが近くに"シフト駅"という海の上にある駅があった。そしてその駅から

 

「こいつはまた、珍しいやつがいるね〜ヒック」

「お久しぶりです。ココロさん」

 

そこにいたのは酔っぱらいの駅長ココロ。

そしてその孫のチムニーと猫(ウサギ)のゴンベだった。

 

「知り合いなのかハジメ??」

「ちょっとね。それよりまたそんなにお酒を飲んで……」

 

「相変わらず五月蝿いね。飲みたいから飲むんだよ」

 

と、ハジメの忠告を聞かずに豪快に飲むココロ。

そしてそこでさっきの汽車とカエルのヨコズナについて話を聞いていると

 

「ウォーターセブン!!」

「そうさ。世界政府御用足しの造船業で成り立つ造船の島だよー」

 

「面白そうー!!」

「行きたいならこの線路を辿りな。そして私達も乗せていきな」

「いきなー!!」

「ニャー」

 

「ちょっとココロさん……」

「いいじゃないか!せっかくだアイツも交えて飲もう!!」

 

と、一切人の話を聞く気がないココロに頭を悩ますハジメ。

それでも元々ウォーターセブンに行くつもりだったからいいけど……

 

「先にヨコズナを手当してからですよ。チョッパー、カヤお願い」

 

「おう。もう準備は終わってるぞ」

「ウソップさん。近くまで連れて行って」

「おう!!」

 

ウソップの出した絨毯に乗り、傷口を舐めて治そうとしているヨコズナへと向かった3人。

 

「な、何あれ!!私も乗りたーい!」

「ニャー!」

「これはたまげたね……相変わらず妙な連中を連れてるね…」

 

「そうですか??」

「まぁ、一番はアンタなんだろうけど…2番はお前さんだよ」

「あら。光栄だわ」

 

ハジメの後ろに控えていたロビンを見てため息をつくココロ。

どうやらロビンとも面識があり、どういう人物なのか知っているようだ。

 

…………………………………………………………

 

「あれがウォーターセブンかあぁッッ!!!」

 

ヨコズナの手当ても終わり、ココロ達を乗せて線路に沿って走っていると巨大な噴水を中心とした島が見えてきた。

 

「よーーし!!あそこで"船大工"を見つけるぞ!!!」

「確かに。もうこれ以上人が乗ると寝る場所がねえぞ…」

「増築とか、あと、デザインも変えたいわー」

「俺としては鍵付き冷蔵庫がほしいな」

「酒だな」

「オレは医学書が欲しい!!」

「医療器具も新しいのに変えないと」

「マジックのネタとか材料も買わないとな」

 

と、それぞれの思いを言っているようだが

 

「黄金換金したら全額貯金だよ」

「「「「「「「「えええええええぇぇぇぇッッ!!!!」」」」」」」」

 

「近い、近い。……もう、分かったよ。3分の2は貯金だよ」

 

「それでもあんだけ大きな黄金なら……」

「えぇ!!100億…いや1000億だって夢じゃないわ!!」

 

「ってことは……最低でも30億かよ!!」

「それは人数分に振り分けたら……もう!!沢山よ!!!!」

 

めちゃくちゃ盛り上がっているみんな。

それに便乗してチムニーとゴンベも喜んでいる。

しかしそんな中、

 

「……………」

「……………」

 

ハジメとロビンだけは普通の状態だった。

それは確かにいつも通りかもしれないが

 

「……………、」

 

それがどこかおかしいと感じたのは、果たして何人いたのだろうか……

 

 



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変わっていく麦わらの一味①




どうも。
今回はなんとか間に合いましたが、やっぱり色々とストーリーの展開や伏線とか考えると週一は厳しいかもです。出来るだけ頑張りますが更新出来ないときもありますので。

では、どうぞ。





「いいのか……師匠……」

「何回聞いてるの??分身に任せるから私も行くのよ」

 

「で、でもよ……」

「くどい」

 

と、いいながら武装色の拳骨をお見舞いするロビン。

頭から沈んだルフィを無視してロビンは

 

「いいから行きなさい。

それともなに??私の優しさがそんなに気持ち悪いというなら今すぐにでも修行を……」

 

「「「「「行ってきますッッ!!!!!!」」」」」

 

あの地獄のような、というか地獄の修行に比べたらと考えダッシュで街へと繰り出す。ルフィはウソップが抱えていきました。

 

そしてロビンは分身体を作り「じゃお願いね」とお願いしたあと、ハジメの腕に抱きついて

 

「さぁ、デートを始めましょう」

「だろうと思ったよ……」

 

「嫌なの??」

「嫌だったら一緒にいないだろう??」

 

と、本当にバカップルのような浮ついたセリフを言いながら街へと繰り出した。

 

…………………………………………………

 

「それじゃ私とノジコとベルメールさん。ルフィとウソップとカヤは一緒に付いてきて」

 

「えええぇぇー!!」

 

「じゃ、預かっているお小遣い。渡さないわよ」

「行きます!!」

 

手慣れた感じでルフィを黄金の換金に付き合わせるナミ。

これから大金が手に入るのだ。用心棒としてルフィにはいてもらわないと困るという理由である。

 

「まぁ、ウソップのバックに入れるから問題はないとして…」

「いいんだけどよ……完全に荷物持ちだよなオレ……」

「まぁまぁウソップさん……」

 

「私達の洋服はどうしようかしら??」

「…………もう、いいでしょう……」

「……まだ買う気なの……」

 

当たり前よ!と言っているナミにノジコもベルメールも肩をガックリと落とす。着せ替え人形はまだまだ続くようだ。

ナミとしてはその大量に買う予定の洋服をどうするかと悩んでいると不思議そうにカヤが

 

「それこそウソップさんのカバン入れたらいいんじゃないんですか??」

 

「でもカヤ達は換金後に"デート"するでしょう??」

「デ、デ、デートって!!!!//////」

 

ハッキリと言われたデートという単語に顔を真っ赤にするカヤ。幸いウソップには聞こえていなかったようで良かったが

 

「まぁそこはルフィを使いましょう」

「なんか呼んだか??」

 

ウソップと話していたルフィがナミの言葉に反応し

 

「換金後は私達に付き合って荷物持ちよルフィ」

「えええええええええぇぇぇぇッッ!!!!!」

 

「ロビンさんには黙ってあげるわ。

だから()()()()()()()()()()()()()()

 

「行くぞお前らッッ!!!!!!」

「それでいいのかよルフィ……」

 

もちろんウソップの声は届くわけがない。

しかしそれよりももっと酷い状態なのが……

 

「………………はぁ………」

「べ、ベルメールさん…良かったのアレで??」

 

「いいのよ…強くなったと思ったら、あんなにも差があると見せつけられただけだから……そんな状態でデートなんて……出来ないわよ……」

 

今回ベルメールは大人しくロビンにハジメを渡していた。

いまこんな気持ちでデートをしたらきっと楽しくない。そんな思いをしてまでハジメとデートをしたら気を使わせてしまう。

 

「き、今日は楽しみましょう!ねぇナミ!」

「もちろん!いっぱいお着替えしましょう!」

「そういうことは言ってないの!」

 

娘たちに励まされる状況にこのままではダメだと気持ちを入れ替えて黄金を換金する場所を探すことにした。

 

「じゃ私達はどうしようか??」

 

くいなはそういいながらゾロに視線を向ける。

ウソップ達と同じように"デート"してくれるかと。

まぁ、本人はそんなこと微塵も思っていないだろうが、それでもゾロから誘われるのは嬉しいのだ。

 

でもここでサンジが片膝をついてくいなに

 

「お暇なら俺とデートでも……いててててッ!!」

「ごめんなさいね。この愚弟は私が連れて行くわ」

 

と、レイジュがサンジの耳を引っ張って何処かへと連れ出していった。それをみて呆然とするくいなにゾロが

 

「ほら。さっさといくぞ」

「えっ。どこに行くの??」

 

「酒だ、酒。お前の方がセンスがあるだろうが」

「う、うん!ゾロには任せておけないしね」

「うるせぇ」

 

こっちはこっちでなんか見せつける感じで歩いていく。

それを見たバーストが

 

「………いいな……」

「キャハハ。バーストじゃ無理ね」

「俺もそう思う」

「クエェ」

 

「なんだとお前らッ!!!?」

 

キロロ、チョッパー、カルーにも否定され、そして後ろからギンが肩をポンと叩いて

 

「バースト。どんまい」

「お前に一番言われたくねぇよ」

 

…………………………………………………………

 

「ひ、ひ、ひ、ひ……」

「「「「「「100億ベリーィィィィィィッ!!!!??」」」」」」

 

「き、今日一日では全ては無理ですので半分お渡ししますので残りを一週間後でお願いします………」

 

とんでもない金額に誰もが開いた口が塞がらない。

相当な金額を見込めるとは思っていたがまさかの100億ベリー。

 

驚かない。というほうが無理な話である。

 

「つ、ついにやったわ!!!これで私達は大金持ちの海賊団よ!!!」

「これなら毎日肉を腹いっぱい食えるよな!?」

 

「もちろんよ!!そのために大きな船を買いましょう。

メリー号と合わせて二隻。もう大海賊団の一員よ私達は!!!」

 

「ならメリー号の船長は俺だな!」

「「「「ごめんなさい」」」」

 

「反応がはえぇよ!!!」

「アハハ……」

 

夢が膨らむルフィ達。

お店の人から大量のお金の入ったアタッシュケースを渡されそれを全てウソップのバックに入れ、

 

「じゃ、行くわよ。服屋へ!!

「「造船所だぁ!!!!」」

 

…………………………………………………

 

 

「ンマー。それで大金があるから船を造ってか……」

「お金はあるのよ!何が問題なのよ!!?」

 

運よくこのウォーターセブンの市長であり造船所の社長であるアイスバーグに出会えた。周りには秘書や職人もいてどちらとも兼任して忙しそうにしている人物。

 

そんなアイスバーグに新しい船を造ってもらおうと打診したのだがどうも乗る気ではない様子。

 

「やっぱり海賊はダメなのか??」

「なんで自分からバラすんだ!!」

 

「そこは気にしてねぇ。金さえ払えばなんでも造ってやる」

 

「だったら!!」

 

「問題なのは"タイミング"だな」

 

何のことかと思っていると秘書のほうから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いまこの街に"海軍大将"が来ているのです」

 

「海軍大将ッッ!!!??」

 

誰もが驚くその名。しかし麦わら海賊団にとっては

 

「それってこの前襲ってきた青キジか!?」

「でもニコルと一緒に帰ったわよ!!!」

 

「おいおい。お前ら……あの青キジに出会って生き残ったのか……」

 

驚きながらも冷静なアイスバーグ。

そう、青キジとの遭遇によって生き残ったこの海賊団に驚いている。しかし同時にこいつらなら。と核心のないものだがそれが冷静さを保っている。

 

「だが、まぁ、青キジじゃねえ。お前ら残りの大将を言えるか??」

「そんなの当たり前でしょう」

 

「だったらこれも覚えておけ。

()()()()()()()()()()()()()()()()。比喩じゃねえ。文字通り何もかも奪われるぞ」

 

「ま、まさか…ハジメがッ!!!??」

 

「いや、そいつじゃねえ。どちらかというと海賊との交流が多い変わった大将だからな」

 

なら、一体誰なのか…

 

「"白熊のオックス"」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメ様。お久しぶりです」

「オックスさん!!えッ!どうしてここに!?」

 

「あんなことがあったのです。いてもたっていられずに…」

「それはご迷惑を……」

 

突然に目の前に現れたオックス。

海軍に入って間もないときからお世話になっている人。

 

「それで、すみませんが…」

「なんですか??」

 

「ロビン様を、どうにか…と………」

「貴方。随分と偉くなったわね。私とお兄ちゃんのデートを邪魔するなんて。いいわ。今ここで殺してあげる」

 

「待った待った待った!!!!!」

 

ナチュラルに話していたがロビンの手がすでにオックスの全身に生えており、身体からなってはいけない音が聞こえ始めていた。急いで止めに入って事なきを終えたが

 

「お、お、お、お久しぶりです…ロビン様……」

「ええ。そうね」

 

「……お邪魔をして、申し訳ございませんでした……」

「そう」

 

と、言ってオックスの全身から生えていた手を解除してもらった。全身のチカラガ抜けて座り込むオックスは額から大量の冷や汗をかいていた。

 

「し、死ぬかと…思った………」

「見ない間に怠けていたようね。ニコルに訓練メニューを言ってあげてもいいけど」

 

「いえ。キチンと鍛え直します」

「いや。鍛え直す以前の問題だからね」

 

そして相変わらずにロビンの言うことは絶対な人である。

前はもっとまともな人なのに、ロビンの洗脳第一号として変わってしまった人である。

 

「で、なんでここにいるのオックス」

「いや。さっき言ったよ……」

 

「そうだったかしら。デートを邪魔されたから怒りで聞いていなかったわ」

 

「いえ。本当にご無事のようで良かったです」

 

こんなにも心配してくれるなんて……

 

「いま全力を持って黒ひげを血祭りにあげようと計画しておりますのでもう少し待っていてください」

 

「気持ちはありがたいけど、ちょっとまとうか??」

 

そしてこんなにも感情的にというか劇場的というか……本当に僕とロビンの事になると周りが見えなくなるんだよな……

 

「どうしてでしょうか??

あんなクズは放置した分だけつけあがりますので早くと思ったのですが…」

 

「そうよお兄ちゃん。全身の骨を粉々にして手足の先から切り刻んであげないと気がすまないわ」

 

「ロビン様。その際は私もやらせてもらっても」

「もちろんよオックス。貴方は足から、私は手からやるわ」

「やるなって言ってんの!!!」

 

本当に恐ろしいことを。いや、気持ちとしてやって欲しいけどね。

 

「………あれを一度ルフィ達と当てたいの。僕も気持ち的にはやりたいけど…」

 

「「やりましょう」」

 

「揃えるな。……そしてそれをするためには超えてもらわない壁があるからね。それ次第かな。だからオックスさん。近くに張らせたままでいいからね」

 

「分かりました」

 

そう。これを超えないときっとこの先はダメだ。

だからルフィ達には試練を与える。

 

「それでオックスさん。まだ時間はあるんだよね??」

「え、えぇ。休暇をもらいましたので……」

 

「だったら一つ。やって欲しいことがあるんだけど」

「やります」

 

「いや……内容を聞いてからね……」

「ハジメ様のお願いを聞かないわけがありません」

「いい心がけねオックス」

 

それならこの先の出来事が随分と楽になるな。

 

「じゃお願いなんだけど………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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変わっていく麦わらの一味②


どうも。
前回のジャンプ読みましたか??
まさかの"オーバー"!!?これにはビックリしましたよ。
おこがましいですが似た技を作れて嬉しいのが半分、こんな僕がというのが半分ですね。

でも、やっぱりルフィが強くなっていくのは胸が熱くなります!!頑張れルフィッ!!!!

で、こっちのルフィも頑張ってもらいたい。うん、本当に(笑)

では、どうぞ。





「それじゃ、その白熊がいなくなるまで作れないのかよ〜」

「そういうことになるな。どうやら探し人がいるから見つかるまではいるだろうな」

 

「それまでは待ちってわけね……ねぇ、ちなみにいま乗っている船を診てもらうってことは出来る??」

 

「状態を確認したいのか。いいだろう、カク」

「了解だわい社長」

 

そういってストレッチをするカクにナミが

 

「ここから結構距離あるけどまさか歩いていくの??」

「んなわけがあるか。走っていくんじゃよ」

 

「いや、それでも……」

「ンマー。安心していい。カクは"山風"と呼ばれてるからな」

 

その瞬間に走り出したカクはあっという間に離れていき、まるで風のように縦横無尽にかけていく。

 

「十分もあれば戻ってくるだろう。

それまで少し待ってろ。」

 

「すげぇーはえーな!!」

「いや。アンタも相当よ……」

「そうか??」

 

なんともお気楽なルフィにため息をつくナミ。

するとそんなところに男性の耳を引っ張ってこちらに近づく肩に鳩を乗せた者が現れた。

 

「耳を引っ張るんじゃぇね!!」

『五月蝿い。この面汚しが』

 

「は、ハトが喋った!!!」

「いや、腹話術だろうあれは。でもすげぇなー」

 

「どうしたんだルッチ。またパウリーが借金でも増やしたか??」

 

『その通りだ社長』

「うるせぇ!俺が借金してもお前らには関係ねぇだろうが」

 

『それで借金取りが会社まで来るのが迷惑なんだ』

 

また濃い者達が現れた。

それでもまぁ、いつも見ている人達に比べればと考えるとルフィ以外はスゥーと心が穏やかになったという。

 

……………………………………………………

 

「……ったく、どれだけ私達のデートを邪魔すれば気が済むのかしら??」

「まあまあ。オックスさんに限っては許してあげてよ」

 

オックスと別れてデートを再開した二人。

そんな二人でもロビンを狙ってくる者達が(容姿だけで絡んでくる輩達)を蹴散らしたりしてイライラが募るロビン。

 

ハジメの言葉で大分マシになったとはいえ

 

「そうね。あとであの子達で発散するわ」

「サンドバッグじゃないんだから……」

 

と、結局誰かに八つ当たりする形になるようだ。

 

「それより私。欲しいものがあるの」

「珍しいね。ロビンがおねだりなんて」

 

「妹は常にお兄ちゃんに甘えたいものよ」

 

「それでそんな甘えたがりのロビンは何が欲しいの??」

 

すると頬を隠してキョロキョロと恥ずかしそうな表情を見せる。

こういう姿を見ると本当に女のコだなーと、それはそれで問題発言しているハジメだが、まぁ、普段のロビンを見れば当然とと取れるが………

 

そして上目遣いで、緊張した趣きで、潤んだ瞳でこう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………赤ちゃん……ッ////」

 

ハジメの中で何かが音をたてて崩れ落ちたという。

 

「もちろんお兄ちゃんがキチンと計画と雰囲気を考えてくれているのは分かってるの。でも…やっぱりそういうのも、もう……やりたいなーって、きゃぁ!!私ったら!!」

 

…………一体、ハジメの目の前で話しているのは誰だろう??

 

「早くお兄ちゃんの☓☓☓を私の☓☓☓に☓☓☓して欲しいわ」

 

いや、ただのヘンタイだった。

この一言に正気を取り戻したハジメは手を上げてロビンの頭にチョップをお見舞いした。

 

「お前、マジで黙れ!」

「痛い!」

 

「真面目に話を聞いた俺の気持ちを返せ!!」

「私も真面目よ!!見て!!もう"ロビン"というアイデンティティさえ関係なく話している私はとても必死だと理解して!!!」

 

「本当にマジで待てッッ!!!!!」

 

もうなんか色々ぶち壊しである。

いや、まぁ、ハジメも思うところはある。

こうして婚約者がいて未だに手を出していないのは……

キスもまだ一回。色々我慢させているのも自覚はある。

 

だけど………

 

「………悪いけど、まだ待って……」

「…お兄ちゃん……」

 

「本当に、ロビンには色々我慢させてると思ってる。でもあと少し待ってて。ちゃんと…言うから。俺からロビンに。

()()()()()()()とちゃんとというから」

 

その言葉に溢れ出す感情を必死に止めるロビン。

瞳に溢れる涙も、震える身体も、我慢出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱりいま、襲っていいかしら??」

「ダメに決まってるだろうがッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何を見せられているんだ……」

 

離れた場所から様子を伺う仮面の男。

どのタイミングで接触するか見極めていたのだが、どうも無駄な会話ばかりしておりうまく掴めない。

 

歩きすれ違う際にある言葉を告げればいいだけ。

それだけであの女は海賊をやめ、こちら側につく。

そうにらんだはずなのだが……

 

(……あの男は、誰だ……何者なんだ……)

 

どうも男から隙をつくのが難しいと感じてしまう。

たった一瞬だというのに、その一瞬で全てが台無しになるようなそんな………

 

「いい加減に出てきてくれないかしら??」

「ッッ!!!??」

 

背後を取られ瞬時にその場から離脱した仮面の男。

しかしその飛び退いた先には

 

「はじめまして""CP9"の人」

「……………」

 

さっきまで観察していた男と女がそこに立っていた。

そしてその男は自分の正体を知っている。

すぐに、今すぐに、この男を消さなければ……

瞬時に振り返り人指し指を男へと、

 

「なにお兄ちゃんに、指を指しているの??」

「ガアッ!!!」

 

女に人差し指を捕まれそのまま折られる仮面の男。

思わず声に出したがいまはそれどころではない。

なにもかも想定外。このままだと任務が失敗する。

一度引こうかと思考を巡らせていたところに男から

 

「さぁ、連れて行ってもらおうか」

「………何を言っている??」

 

「ロビンを連れ出すつもりだったんでしょう。

それに僕も付いていく。それだけだよ」

 

何を言っているのか分からなかった。

この男はあの麦わらの一味ではないのか??

そんなに簡単にロビンを引き渡し、さらに自分も連れて行けなんて……

 

「それを……簡単に信じれと??」

「そういうと思ってすでに"贈り物"は渡しておいた。

もう確認できたんじゃないかな??」

 

何のことか分からなかったが、突然仮面の男の懐から音が鳴り響いた。連絡用に持たされた電伝虫だ。

 

「どうぞ。それで分かるはずだよ」

「………………」

 

油断は出来ない。

警戒しながら電伝虫に出る仮面の男。

 

「…………なんだ??」

『参ったことになった。こりゃ仕切り直しかもしれん』

 

「どういうことだ??」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『麦わらの船の中で女が死んどる』

「ッッ!!!!??」

 

その言葉に仮面の男はとっさにターゲットであるロビン、そしてその男を見た。

つまりさっき男が言ったのは……こういうことなんだと……

 

「……それは麦わらの一味なんだな……」

『そうじゃな。以前はバロックワークスにいたエージェント。確か()().()()()()()()()()()()じゃったかな??』

 

仲間である一人を殺したから、ロビンと元に連れて行け。

どのタイミングでCP9からの接触があることを知ったのかは知らないが、この男は海賊を抜け、仲間を殺し、ロビンと共に行く道を選んだのだ。

 

「………任務は、続行だ…」

『おいおい。なんでお前が勝手に……』

 

「ここにニコ·ロビンがいる。抵抗せず付いてくると言っている」

 

『…ほう。そいつは……なら問題ないの』

「あと()()()()()()()()()()()()。一緒に付いていきたいと言っているがどうする」

 

『なんじゃその面白い話は!

……いいじゃろう連れてこい。そいつの処分は集まって決めようとするかの』

 

と、電伝虫での会話が終わった。

まさかの展開に正直仮面の男も焦ってはいるが

 

「というわけだ。付いてこい」

 

いま優先すべきはニコ·ロビン。

隣にいる男はいつでも消せる。しかし自分ではその男を消そうとすればロビンにやられるということも理解している。

 

だからいまは連れて行くしかない。

隙を伺い、ロビンを出し抜いて邪魔な男を消す。

何もない空間を切り抜き、まるで"ドア"のように切り抜いた空間を開けた。

 

その先は異空間。同じ世界のように見えるが能力者である仮面の男しか開けることのできない。そこには誰もいない。気づかずに移動が出来る。

 

仮面の男はそのドアをくぐり異空間へ。

そこに続くようにロビンも入り、そして男も入っていった。

そしてドアが閉まるタイミングで視界の奥から

 

「う、嘘だろう!!そんなはずがねぇ!!!」

「でも黒電伝虫が電波を傍受したのよ!!」

 

遠くて見えなくても分かる。

こっちに気づいていないようだが向こうはバーストとキロロが走ってくるのが分かった。

 

「俺は信じねぇぞぉ!!!!」

「とにかく急ぐわよ!!」

 

同期であるカラーの安否を確かめに走る二人。

話を聞いていたなら分かるだろう。ロビンの隣に誰がいたか。なんてすぐにでも答えが出るだろう。

 

これでお別れだ。

 

次会うときはどんな状況でどんな立場かは分からないけど、きっと今までの麦わらの一味ではなくなっている。

変化の時。どんな風に変わるかはこれからのルフィ達次第。

 

ドアが閉まり、そこをバーストとキロロが走り去る。

何もかもが手遅れ。ハジメが仕掛けたものはどんどん麦わらの一味という形を壊し始める。

 

 





これから色々仕掛けがありますので詳しいことは言えませんが出来るだけ皆さんからの感想に返事を書いていきます。



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変わっていく麦わらの一味③




どうも。
もうすぐ4月ですね。桜も咲き始めました。
花見したことありませんが、ゆっくりと眺めたいなーとこんな世の中だから思えてきましたね。安らぎがほしいのかな?

さて、こっちの世界は安らぎなんてものはありません(笑)
どんどん変わっていく展開をお楽しみください。

では、どうぞ。





「な、なんだこの船ッッ!!!??」

「全然刃が通らねえぞ!!」

「それどころか傷もついてねえ!!!」

 

海岸に停泊していたメリー号に怪しい者達が集まっていた。

手にはノコギリからハンマー、剣や爆弾もある。

 

こいつらはフランキー一家

ウォーターセブンの裏に奇妙な工場兼たまり場の「フランキーハウス」を根城に、ゴーグルと鎧と網タイツを付けた独特の格好で身を固めて、船の解体を営む。

というのが名目であるが、実際は海賊を襲撃して賞金を戴き、持ち主がいなくなって宙ぶらりんになった海賊船を強奪し、解体して売りさばくというのが主な生業である。

 

そんなやつらが今回目につけたのがメリー号。

海賊旗がついていればいつも通り解体する予定だった。

なのにメリー号に一切の傷も入らない。

 

「どんだけ丈夫な材木を使ってるんだ!!?」

「まさかアニキが言っていたあのッ!?」

「だったら尚更バラすしかねぇ!!!」

 

躍起になってメリー号をどうにか解体しようと大胆にも爆弾も使い始める。キレイに解体なんて考えてないフランキー一家はとにかくバラす。というだけで実行したようだが、爆破した箇所も全くの無傷に終わった。

 

「くそー!!大砲を持ってこい!!!!」

「あれだと船が大破するんじゃ…」

「使える所だけ回収すればいい!!!さっさと…」

 

そんなタイミングで船から何かが飛び出して街の方へと駆けていった。姿は見えなかったが特徴のあるある部分が見え

 

「あいつは、アイスバーグの所の……」

 

なぜそんな奴がこの船に、と考えていると少し離れた場所から爆発音と仲間の叫び声が聞こえてきた。

 

「一体何だ!!!」

「麦わらの一味です!!二人帰ってきました!!!」

 

「もう帰ってきやがったか……よし!そいつらも捕まえて金を作るぞ!!!!」

 

「「「おおおおォ!!!!」」」

 

海賊なら賞金首か、人質にすれば金が入る。

そう踏んだフランキー一家だが、相手が悪すぎる。

麦わらの一味でも()()()()()()()()それでも元バロックワークスの社員でありその中でもシングルナンバーを貰っていた二人だ。

 

「お前ら……!!!」

「そこを……!!!」

 

「「どけええええぇぇぇぇッ!!!!!!」」

 

………………………………………………………

 

(さて……これはどうしたもんかの……)

 

すぐにでもアイスバーグの元へ戻る予定だった。

いまはこうして職人としてやっているが、カクの正体はCP9。

任務はアイスバーグが持っている"古代兵器"の手がかり。

それを手にするためにこうして潜入し、いま新たに追加された"ニコ·ロビンを連れて帰る"という任務。

 

すでに後者は達成された。

どういうわけか素直に応じ、それどころか麦わらの一味から一人連れてくるという。そしてその一味の裏切りの証として仲間を一人殺した。

 

確かにカクはそれを見た。

息もなく、心臓も止まっていた。

辺りは血の海に変わり殺しを生業とするCP9も少し引くほどに…

 

そしてその仲間が死んだことを知った二人。

どうやら盗聴されていたと分かったがその相手が殺されていた元バロックワークスの仲間だとは知らなかったカク。

 

一人ならまだ分かる。あのニコ·ロビンが宿り木として選んだ海賊なのだからと。しかしそれが3人。ロビンを加えたら4人もいるのだ。

 

これには何かあるのではないかとカクは考えた。

もしかしたらあの死体もなにかの意図があるかと……

しかしあの暴れぶりをみるとその考えはすぐに無くなった。

大人数で向かってくるフランキー一家をたった二人でどんどん倒していくのだ。

 

傷ついても怯まず、攻撃を回避することもなく、ただ邪魔する奴らを倒していくその姿に、なにか策があるようには見えなかった。

 

(……考えすぎかの……)

 

どのみち"古代兵器"にも検討はついている。

今夜中にも行動を起こし、このウォーターセブンからおさらばする予定だ。

 

一介の海賊がどうなろうが知ったことではない。

そう結論したカクは遅れた時間を取り戻すべくさらにスピードを上げて街を駆けていく。

 

……………………………………………………

 

「いま戻ったぞ」

 

いつの間にか仲間であるルッチもいることを確認したカクは表の仕事をやり遂げるためにまずは船の査定をした。

 

「あの船。最近買ったのか??」

「いや。東の海(イースト·ブルー)から乗ってきたけど…」

 

「冗談を言うな。全くの新品同然でここまで来れるわけなかろう」

 

「いや。本当だって!!!ってか、やっぱりなんにも問題ねぇんだなー良かったー!!」

 

その安堵の表情に嘘はついていないと分かる。

だが、それだとあの船は()()()()()()

どんな船乗りでも全く傷つけずに、それにここはグランドラインで常識が通用しない場所。そんなことはありえないのだ。

 

しかしカクの発言も、ウソップの発言も、嘘ではないと理解したアイスバーグは

 

「ということはなにか??全くの無傷で、イーストブルーからここまで来たというのか………信じられん……」

 

「嘘は言ってねえよ!だって…フグムッッ!!!」

 

とっさにルフィの口を塞いだナミ。

しかしそれはなにか隠し事があると言っているようなもの。

そこに大いに興味を持ったアイスバーグ。

 

「なんだお前ら。何を隠している??」

「な、なんにも隠してないわよ!本当に運がよくて……」

 

「んなわけがあるか!小さい頃から船に携わってきた俺はいくつもの船を見てきたんだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()それが全くの無傷だと!?信じられるかッ!!!」

 

「だったらそっちの人の見間違い……」

「カクが嘘をつくわけがねぇ」

「それにそっちの長鼻も認めたろうが」

 

その言葉に強烈な視線をウソップに向けるナミ。

すぐに視線を外して口笛を吹くウソップに「…流石に誤魔化せないよ……」とカヤが囁いた。

 

「正直にいえ。でないと船は作らんぞ」

「ぐぅっ!!」

 

「べ、ベルメールさん…どうしよう……」

「でも、こればかりは……」

 

どうしようかと悩んでいるタイミングでノジコが持っている子電伝虫から着信が入った。

一応別れた面々の一人ずつ子電伝虫を持っているが、一体誰からと考えていると

 

「出ていいぞ」

「そ、それじゃ…」

 

追求してくるアイスバーグから連絡に出ていいと言われて対応する。しかし電伝虫に出たというのにも関わらず向こうから何も話しかけてこない。

 

「ちょっ、ちょっと。もしもし??」

『…………麦わらは、いるか??』

 

その声はどうやらバーストのようだが、なんか様子がおかしい。

とにかくすぐにルフィに子電伝虫を渡し

 

「なんだ。どうしたんだ??」

『……………んでる………』

 

「なんだ??よく聞こえねぇ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カラーがメリー号の中で死んでるんだよッッ!!!!!!』

 

そのバーストの言葉に誰もが驚き目を開いた。

一体何を言っているのかと、すぐに頭にきたルフィは

 

「何言ってるんだお前!!!デタラメいうなッッ!!!!!」

『言うわけねぇだろうが!!!!同じ仲間だぞ!!ふざけんな!!!!!』

 

ルフィの否定の言葉を否定するバースト。

それを聞いたカヤやナミやノジコは瞳に涙を溢れさせていた。

そんな中でもまだ信じられないルフィは

 

「だ、だってよ、ついさっきまで生きてたんじゃねえかよ…」

『………あぁ、そうだ。生きてた。()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()

 

「アイツって誰だ!!?誰がやったんだよッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お前のロケットに写っているやつだよッッ!!!!!!』

 

「ッッッ!!!!!!??」

 

どうしてなのか。そんなタイミングでロケットについているチェーンが切れたのは……

地面に叩きつけられたロケットは弾みで蓋があき、そこに写し出されているハジメと幼いルフィが露わとなった。

 

まるでハジメとの繋がりが切れたかのように………

 

「おい……ふざけんな…ふざけんなよ、お前ッッッ!!!!!!」

『こっちは黒電伝虫で、盗聴して聞いてんだ!!!!

言っておくけどな………お前の師匠もアイツも、両方ともこの一味から抜けたぞッッ!!!!!!!

 

さらなる発言に驚きを通り越して怒るルフィ。

何も言わずに一気にギア2になり、メリー号に向けて駆け出した。

 

「ル、ルフィッッ!!!!」

「や、ヤバいぞ!!いまのルフィは何をするか分からねぇ!!!!」

 

「ウソップさん!!!」

「マックスで飛ばすからな!!振り落とされるなよ!!!!」

 

と、いいながらウソップはバックから絨毯を取り出した。

その光景にアイスバーグもルッチ達も驚く中、さらにその絨毯は浮き出して、それを躊躇なく乗り込む一味。

 

「なんだお前ら!!!それは一体ッッ!?」

「ワリぃが説明は後だ!!!船も後回しでいい!!!」

 

アイスバーグの静止も聞かずに一気に浮き上がりメリー号に向けて飛び出した。それを見て未だに驚くアイスバーグ。そして他の面々は

 

(………あれは、なんだ……)

(……能力者…というわけでも……ないのかしら……)

(……ありえんの……)

 

カクと同じように潜入しているルッチとカリファ。

カクを含めて三人の前でウソップのマジックが見られた。

 

(………アレは、"危険"だな……)

 

そして目をつけられてしまった。

CP9史上、最も危険な(ロブ·ルッチ)に。

 

(…不安材料はすべて、消す……ッッ!)

 

 



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変わっていく麦わらの一味④



どうも。
いや、本当にジャンプのワンピース。
どんどん展開が、いや、もう、スゴい……
そんな風には書けませんが頑張りたいものです。

では、どうぞ。





「おいおい…何があったんだ…」

「……どうして……」

「……ルフィ……」

「……………」

 

何も知らずに帰ってきたサンジ、くいな、ゾロ、レイジュ。

そこにあった光景は………

 

 

……………………………………………………

 

4人が戻る数十分前。

ウソップの絨毯に乗ったルフィ達は一気にメリー号まで戻ってきたのだが、そのメリー号の周りでは無数に倒れている者達がいる。見ても分かるように一般人ではなく明らかに敵意を持ってここにいたことが分かった。

 

「な、何なの…コイツら……」

「もしかしてコイツらが……」

 

憶測で決めつけてはいけないとわかっているが、どうしてもロビンやハジメがカラーをやったとは思えない。思いたくない。

そういう気持ちが目の前に広がる光景を使い自分の都合のいい解釈へとしていく。

 

しかしそんな思いはすぐに消されていく。

メリー号の前でバーストとキロロを見つけたウソップはそこへ急降下し着地した。

 

「バースト!キロロ!!一体何がッ!!?」

 

二人の元へ近づこうとすると

 

「近づくんじゃねえ!!!!!」

 

その殺気のこもった大声に誰もが足を止めてしまった。

そして二人が振り向き、二人の間を開けたその奥にあったのは、真っ赤なメイド服に変わり果て目を開けないカラーの姿だった。

 

「カ、カラーッ!!!!」

「だから近づくんじゃねえ!!!!!」

 

ルフィがカラーの姿を見た瞬間に駆け寄ろうとするがバーストがそれを阻止しようと腕を伸ばしてラリアットを決めた。その瞬間に爆発が起きてルフィは後ろへと吹き飛ばされる。

 

「ルフィ!!」

「おいお前ら!何やってるんだよ!!!」

 

突然の攻撃に戸惑うナミやウソップ。

ノジコ、ベルメールは飛ばされたルフィの元へ駆け寄り無事かどうか確認に向かう。

 

「そこを通してください!まだ助かるかもしれないんですよ!!」

「こんだけ血を流して助かるだと……ふざけるな!!!」

「ふざけてません!!私は医者です!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()!()!()

 

そんな言葉に誰もが耳を疑った。

そして緊張が走る。バーストの言葉はこの先の一味を壊しかねないほどのものになると予感したからだ。

 

「俺達3人は、テメェらの一味じゃねえ……

あの女と男に脅されていただけだ。そして邪魔になったからカラーがこんな目に……」

 

「ま、待って!!お兄さんがやった証拠なんて!!!!」

 

「アイツがやっていない証拠もねえだろうが!!!!!」

 

バーストの言うとおりやった証拠もやってき証拠もない。

いま分かっているのはカラーがそこに横たわっていること。

 

「コマ扱い。奴隷扱い。上等だ。

生き残っていればきっとなにかある。そう思って俺達はここまで耐えてきたんだ………なのに、なのによ………結果がこれか!!!!

俺達は取引の材料のためにここまで連れてこられただけなんだなッッッ!!!!」

 

すると飛ばされたルフィが一気にバーストに詰め寄り胸元を握った。さっきとは違い武装色の覇気で握っているので爆発はしない。

 

「ハジメが、ハジメがそんなことするかあ!!!」

「だったらなんでカラーが死んでるんだ!!!!!」

 

胸元を掴み返したバーストは決して力では勝てないルフィを怒りのパワーで上回り、ルフィの身体を持ち上げたあとに地面に叩きつけ、引きずりながらカラーの目の前にルフィを連れ出した。

 

「見てみろ!!!!死んでるんだぞ!!!!カラーはもう死んでるんだ!!!!!!!」

 

「…やってねぇ……ハジメはやってねぇ!!!!」

 

「だったらなんでここにいないんだ!!!見張りの分身はどこだッ!!!!いつも暗躍しているアイツらが出てこないのは何でだあ!!!!!!」

 

それでも必死にハジメがやっていないと、頭をフル回転させて違うと否定しようとするルフィに対して、トドメを刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらは海軍!!!

俺達の敵だああぁぁぁッッッ!!!!!!」

 

その言葉にルフィは呆然としてしまった。

そう。分かっていた。ハジメとロビンは海軍だってことを。

 

力の抜けたルフィを持ち上げてウソップ達の方へ放り投げたバースト。ウソップとナミとカヤでルフィを受け止めた所でノジコとベルメールも戻ってきた。

 

するとさっきまで何も言わなかったキロロがゆっくりと口を開き

 

「……私達、降りるわ……」

「……えっ?…」

 

「元々一味でもない私は、船に残る理由もないわ……」

 

バーストはカラーを抱きかかえて、キロロはゆっくりと立ち上がった。

 

「これまで同乗させてくれたよしみよ…()()()()()()()()()()()()()()()

 

「お、おい!!それってどういう……」

 

引き止めようとしても無駄だった。

一切振り抜くこともなく立ち去るバーストとキロロ。

そこに残ったのは地面に染み込んだ血の跡だった。

 

……………………………………………………

 

そして座り込んだまま表情を見せないルフィ。

いつの間にか倒れていた者達も姿を消して、残されたのはルフィ達とさっきまで横たわっていたカラーの血の跡。

 

そこに戻ってきたゾロ達はウソップ達から話を聞き、

 

「そ、そんな……ハジメさんがそんなこと!!!」

「やるわけねぇ……だよなレイジュ!!!」

「…………………」

 

同様するくいなとサンジ。レイジュはどう思っているか分からないが険しい表情をしていた。

 

そしてゾロはルフィの前に立ち

 

「どうするつもりだ船長??」

「………………………」

 

顔を上げず声も出さないルフィにゾロは続けて

 

「ロビンはともかく、ハジメやバーストは一味に入ってねぇ。こちらとしては追いかける必要もねぇ」

 

「ちょっ、ちょっとゾロ!!」

 

「お前はどうするつもりだルフィ。

船長として一味であるロビンはこのまま抜けさせるつもりか??」

 

しかし一切反応しないルフィにゾロは胸ぐらを掴み無理やり自分の目線まで上げて

 

「答えろ!!モンキー·D·ルフィッッ!!!!!!!!!」

 

その激に火がついたのかルフィの手がゾロの胸元を握り返し、

 

「…………てる………」

 

両手でゾロの胸元を握り、真っ直ぐな目でゾロに対して

 

「師匠もハジメも見つけ出すに決まってるだろうがあああぁぁぁッッッ!!!!!!!」

 

その言葉に一同安堵する。

そうまだ決まってない。本人から何も聞き出していない。

これからどうするのかは二人を見つけ出して決めればいい。

 

「だったらさっさと行動するぞルフィ。

あの二人が本格的に隠れたら俺達じゃ見つけられねえ」

 

「おう!!」

 

そうとにかくいまは行動しないといけない。

特にハジメが隠れたら誰も見つけられない。あの能力は何もかも規格外すぎるのだ。

 

「でもまだチョッパーとカルー、ギンがいないけど……」

「この街にはいるんだ。見つけたやつが事情を話せ」

 

「俺とカヤは船番をする!!そこらへんに倒れていた奴らとかが来たら危ねえからな」

 

「じゃ残りは手分けして二人を探すぞ!!」

「絶対に見つけてやるぞおおおぉぉ!!!!!」

 

こうして手分けしてハジメとロビンを探すことになったのだが、この選択が更に麦わらの一味を窮地へと向かわせることになる。

 

……………………………………………………

 

『号外だ!号外!!!』

 

そのころ、街ではあるニュースが話題となっていた。

街の希望と呼ばれるものが殺害されそうになったのだ。

 

『ウォーターセブンの顔。市長アイスバーグさんが殺されそうになった!!!!!』

 

誰もが驚き、そして犯人を憎んだ。

どうしてアイスバーグさんが殺されないといけないのか。

そいつは一体誰なのか??絶対に許さない。と街中が騒ぎ出したのだ。

 

そしてその殺人未遂をしたものは、者達は…

 

『麦わらの一味!!モンキー·D·ルフィとその仲間がアイスバーグさんを殺害しようとした犯人だああぁッッ!!!!!』

 

 



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変わっていく麦わらの一味⑤



どうも。
いま連載中のジャンプ、展開がスゴいな……
そしてこっちは上手く話がまとまらずに苦戦中…
すみませんが次回は遅れる予定です。

まぁ、予告しなくても自分のペースでと言われますが、読んでいただいている皆さんには定期的にお届けしたいという気持ちが強いので……遅れても週2でやれたらと思います。

では、どうぞ。





「見つけだぞ麦わらの一味だぁ!!」

「逃がすなッッ!!!」

 

「何がどうなってるのよッ!?」

 

ハジメとロビンを探しだろうと街に繰り出した途端に街の人達から捕られられようと追いかけてきた。理由は誰もが口にしているものだが全く見覚えのないこと。

 

「よくもアイスバーグさんをッ!!!!」

「俺達のアイスバーグさんをよくもッ!!!!」

 

「殺そうとしたな麦わらの一味ッ!!!!!」

 

「俺達はそんなことしてねぇよッ!!!!」

「黙れ!!!絶対に許さん!!!!!」

 

ルフィの声も一切聞いていない。

よく分からないがアイスバーグが殺されそうになったようであり重症を負ったようだ。そしてそれが麦わらの一味の仕業と。

 

とにかく今は逃げるしかない。

一般人に手を出してしまったらさらに状況が悪くなる。

さっきから手を出しそうなルフィを止めながらナミ、ノジコ、ベルメールは出来るだけ人気のない場所を探しながら走り回っている。

 

「何処にいっても人だらけなんて……」

「かなり愛されているみたいねアイスバーグさんは」

「………ルフィ!とにかく屋根伝いで逃げるわよ!」

「おう!!」

 

3人を一気に抱えてジャンプをして屋根に登ったルフィ。

流石に屋根に登っているものはいないがそれでも地上からルフィ達にむけてモノを投げてくる。

 

「なんで俺達がアイスのおっさんをやったことになってるんだよ!!!」

 

「……多分だけどこれ、お兄さんやロビンさんが仕組んだものだと思うの」

 

「な、なんでそんなこと!?」

 

「ベルメールさん。ベルメールなら分かるんじゃない??

お兄さんとロビンさんなら全くありえないと思うことが関係するんじゃないかって………」

 

そう。なんの根拠も証拠もない。

完全な勘。でもナミにはなんとなくありえるじゃないかと感じている。そしてそれは最もハジメやロビンと密であったベルメールの勘を聞きたかった。

 

「…………ありえる。と思う。

それに"未遂"というのが気になるわ。もし暗殺とするなら失敗なんてことありえない。その未遂がわざとなら……きっと意味がある」

 

「理由は分からねぇけど師匠が何かを失敗するなんてねぇ!!」

 

「……なら決まりね。アイスバーグさんに話を聞きましょう!!」

 

……………………………………………………

 

「ふざけやがってッ!!!」

「ンマー。落ち着け」

「そうですよ。傷に響きます」

 

「麦わらの一味めッ!!船のことを追求されたぐらいでアイスバーグさんを殺しやがって!!!」

 

「いや、生きてるぞ……」

 

身体に、全身に包帯が巻かれるほどに重傷なアイスバーグ。

それでも会話出来るほどだったのはそれだけアイスバーグの身体の作りが強かったのか、それとも……

 

「しかし、ニコ·ロビンは何を考えて……」

「考えるのは後です。いまはゆっくりとカラダを休めてください。パウリー、貴方もここから出ていってください」

 

「うるせぇ!!アイスバーグさんを守らないと……」

「それは私がやりますので、さっさと出ていってください」

 

「近くづくなハレンチ女ッッ!!!!」

 

本編と同じように女に免疫のないパウリーはカリファに近づかれながら部屋から追い出された。部屋にはアイスバーグしかおらず、あのときもそうだったと襲われた時のことを思い出していた。

 

……………………………………………………

 

「ガハッ!!」

「抵抗はやめなさい」

 

突然現れたロビンに銃を向けたアイスバーグだが簡単に銃を取られ()()を与えられたアイスバーグ。身体は吹っ飛び机などにぶつかって止まった。

 

「私から聞かれることだけ答えなさい。いまはそれが貴方がやることよ」

 

「だ、誰が……」

「反対意見は聞いてないわ」

 

「グフッ!!」

 

ビンタを食らわせたロビン。

たった一撃で首が取れるんじゃないかと思うぐらいの衝撃がアイスバーグを襲う。

 

一体何が目的なのか??

衝撃で頭がおかしい回らないなかロビンがこう言ってきた。

 

「お兄ちゃんとはどういう…痛っ!!」

「…グッ……す、すまん。……もう一度いいか……」

 

ロビンの声がよく聞こえない。

それだけの衝撃が頭にダメージを負わせていた。

何かロビン以外にも声が聞こえるような……

 

「いい加減しろよ!!聞きたいことは他でしょうが!!」

「えっ。でもアイツらのいうこと聞きたくないわ」

 

「いや、聞かないとルフィ達がターゲットにされるんだよ!!」

「抜けたのだからいいと思うわ」

 

「バッサリしすぎ!!!いいから聞いて!!もうすぐ混乱が解けるから……」

「もう……そんな強引なお兄ちゃんも好き……////」

「抜けたからって変わり過ぎだろう……」

 

なんか幻聴が聞こえてくる……

しかし徐々にハッキリと意識が戻ってきたアイスバーグは目をこすり、頬を軽く叩いて意識を元に戻しロビンに向き合う。

 

「済まないが、もう一度いいか??」

「……………………プルトンは、どこ??」

 

「プルトンだと!!?お前!!あれをどうする……って、なんだその顔は……??」

 

まさかここにきて古代兵器"プルトン"が出てくるとは予想出来なかった。なぜそんなものを求めるのかとロビンに問い詰めようとすると、何故かとても面倒くさそうな表情をしている。

 

「知っているのね………はぁ〜……」

「なぜ、そんなリアクションになる……求めているのではないのか??」

 

「いらないわそんなもの。ないと言われたほうが良かったわ。

あったら探すという手間が増えるじゃない。面倒なのよ」

 

まさかのリアクションにどうすればいいか分からないアイスバーグ。襲ってきたぐらいだ。拷問をして聞き出すのかと思っていたのだが……

 

「なら、何故探す??」

「それが条件なのよ。麦わらの一味を無事にこの島から出られるためのね。私はもう抜けたからいいのだけど……」

 

本当に、本当に何を言っているのか分からない。

言っていることと、行動していることが噛み合わない。

まるで()()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「それで設計図はあるの、ないの??」

「…………持っていない」

 

「なら帰るわ」

「…………ま、まてッ!!!」

 

あっさりと引き下がるロビンに思わず止めてしまったアイスバーグ。

 

「……なに??もう用はないのだけど…」

「分からない……そんなに求めるものではなく、麦わらの一味を助けるわけでもなく、ならなぜお前は……」

 

「簡単よ。私の行動はすべて()()()()()()()()()()()()()()

 

「お、お兄ちゃん……??」

 

「あっ。この襲撃は"麦わらの一味"の犯行にしておいて。

そうすれば貴方の知りたいことも分かるかもしれないわ」

 

ま、まて!!と静止させようとするが今度は止まらずに出ていくロビン。残されたアイスバーグは立ち上がろうするが全身が痛み動くことが出来ずにいた。

 

……………………………………………………

 

(何を考えているニコ·ロビン……)

 

全く読めない行動に頭を悩ますアイスバーグ。

助けにきた職員達により麦わらの一味に襲われたというのが一気に広まった。

 

これが共にいた一味に対してやることか??

しかしプルトンの在処が麦わらの一味を救うことになる。

だがそのプルトンに興味がない。

 

チグハグすぎる行動が理解出来ない。

特に気になっているものは……

 

("お兄ちゃん"……つまり、あの行動も全てがそのお兄ちゃんの為にやっている……じゃ、麦わらの一味を抜けたのも……)

 

そのお兄ちゃんが理由ならありえるのか??

あんな行動を起こす理由も、一味を助けようとしたりしなかったりする理由も………

 

「アイスバーグさん。これからは交代で見張りを……ど、どうされたのですか!!?そんなに頭をかかえてッ!!!!」

 

「わ、分からん……女というのは、分からん……」

 

その言葉にどういえばいいのか??

秘書として、女としては聞き流したいセリフであり、流石のCP9のカリファでもその答えは出なかった。

 

……………………………………………………

 

「あ、アニキッ!!!!」

「借りは、返さないといけねぇな……」

 

捨てられた船の木材や部品を使い建てられた、家と呼ぶには合わない建物。その中でボロボロになった子分達から話を聞いたアニキと呼ばれる者が立ち上がり

 

「ここは俺に任せとけッ!!スーパーにやり返してやるぜッッ!!!!!」

 

「うおおおぉぉ!!!!流石アニキッッ!!!!!」

 

子分達から声援をもらい高ぶる感情。

そして子分がやられたという怒りの感情が"フランキー"を突き動かす。

 

建物から一歩出るとさっきまで晴れていた天気が急変していた。

嵐。確かにこのウォーターセブンではよく嵐が来る。

そのために津波が起き住宅が飲まれる恐れがあると高台に建ててある。そしてこの天候は……

 

「おい、お前ら……高台に避難しとけ…」

「へいアニキッ!!!!」

 

こいつは面倒くさいことになりそうだぜ。と思いながらも子分をやられたことに対しての報いは受けさせるとメリー号のある海岸へと歩き出す。

 

……………………………………………………

 

「いきなり天気が……ウソップさん」

「こいつはもっと酷くなりそうだな……こんなところじゃ波にメリーが持っていかれるぞ……ッ!!」

 

しかし、ナミ達のように船を動かせる技術はない二人。

一か八か船を動かして少しでも安全な場所へ、と考えていると

 

コンコン!

 

雨風を凌ごうと船内に入っていた二人の耳に扉からノック音がハッキリと聞こえてきた。

 

 

 

 






はい。久しぶりにコントみたいなことが書けました(笑)
こういうときは作りやすいのでサッと書けるんですけどねー





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変わっていく麦わらの一味⑥




どうも。
なんかこの"ウォーターセブン編"に入ってから、この章の観覧数が多くなってますね。やっぱりみんなここの章は好きなんですねー。僕も好きなんですよ!ロビンを思いっきりあそばせることができるので(笑)

ということで、どうぞ。





「一体、何が起きてるんだ……」

「クエ!」

「これくらい問題ねぇ。って言ってるぞ」

 

「だな。しかし追われてないのはいいけど、こいつは一回船に戻るべきだろうな……」

 

ウォーターセブンに着き、ここにいる3人。ギン、チョッパー、カルーと、バーストとキロロで街を散策していたのだが、突然バーストとキロロが離脱。

「すぐに戻ってくる!」と言われたので待っていたが戻ってこない。

 

そうしている間に今度は"アイスバーグを麦わらの一味が襲った"と街中で騒ぎになり、麦わらの一味狩りが始まっていた。

 

しかし麦わらの一味だと面が割れていないこの3人はビクビクしながら出来るだけ人のいない場所を通ってきたのだが、

 

「オレも戻った方がいいと思う…なんか嫌な予感がするんだ……」

「クエェ……」

 

「カルーも同じだって言ってる」

「野生の勘か…そうだな。戻るか……」

 

出来るだけ人と会わないようにしてメリー号までたどり着かないとなーと考えていると、

 

「クエェ!?」

「どうしたんだカルー」

 

「……………クエェ!!」

「お、おい!ちょっと!!」

 

突然反対方向へと走り出すカルー。

脚力強化(ウォークポイント)へと変わった後にギンを無理矢理背中に乗せてカルーを追いかける。

 

「ど、どうしたんだカルーのやつ!?」

「分かんねぇ!でも"見つけた!"って言ってるぞ」

 

「もしかしてバーストとキロロか??」

「オレより鼻が効くわけじゃねぇのに……」

 

ついさっきまではチョッパーの鼻を活かして二人を探していた。だが突然の嵐に匂いが消えてしまい見つけるのが難しくなったのだ。その嗅覚もチョッパーの"強化"によるもの。だからカルーの嗅覚よりも性能はいいはずなのだが……

 

「とにかく追いかけるぞ。カルーは何かを見つけたんだろ」

「あぁ。それは間違いねぇ」

 

さっきからチョッパーの耳には"見つけた"という言葉しか聞こえないために誰なのか判別出来ない。カルーとの距離もなかなか縮まらないので後方にいるチョッパーの声は雨風で消えてしまい届かない。

 

だからいまはカルーを追いかけるしか出来ない。

 

……………………………………………………

 

「………………………」

「どうしたのサンジ?」

 

手分けしてハジメやロビンを探している中でサンジとレイジュのペアで探していた。もちろんこちらにも麦わらの一味ということで追いかけられ逃げ切れたところだったのだが

 

「いや……ハジメやロビンちゃんにしては、なんか手ぬるい気がしてな……」

 

「……そうね。私達を足止めするなら海軍、それも少なくとも中佐ぐらいは絶対によこすわね」

 

「なら、なにかあるはずだ……この騒ぎで隠したいものが……」

 

しかし、それが何なのか検討がつかない。

そうしているうちにも嵐がどんどん強くなっていく。

 

「…これは、マズイわね……メリー号やあの子達は大丈夫かしら?」

 

「……ここは、アイツらに任せるしかね…

こっちは後手に回りすぎてるからな…どこかで流れを変えねぇと……」

 

と、いったところでいま何が出来るか正直分からない。

何処に向かうのが正解なのかも分からない。

だからこそ何かを見つければきっと突破口に……

 

「や、やべぇーぞ!!!"アクア·ラグナ"が来るぞッ!!!」

「早くしないと何もかも飲まれるぞッ!!!」

「高台に逃げろッ!!!!」

 

さっきまで麦わらの一味を追いかけていた人々が次々に高台に向けて走り出した。一体何のことか分からず一か八か逃げようとしている人を捕まえて話を聞くことに

 

「おい!その"アクア·ラグナ"ってなんだ!!?」

「知らねぇのか!!!ここでは珍しくない大津波がくるんだ!!!」

 

「大津波って、それってやべぇのか……」

「本当に知らないのか!!少なくてもここら辺は簡単に飲まれるぞ」

 

「なっ!!?」

「だから早く避難しな!!」

 

サンジ達を麦わらの一味と知らなかったのは良かったが、それ以上のことが起きようとしていた。

 

大津波、アクア·ラグナ。

そんなものがこのウォーターセブンへ……

 

「って、ここままだとメリー号がッッ!!!」

「サンジ……あれみて……」

「なんだこんな時に……っておい!!!」

 

次から次へと大変なことが起きる中で見つけたのは

 

「コビー!ヘルメッポッッ!!!」

「サンジさん!レイジュさん!!」

「やっと見つけたぜ……」

 

ここに来て追いついたコビーとヘルメッポ。

というか……

 

「最近見なかったが何処にいたんだお前ら??」

「やっぱり覚えてなかったなお前らッッ!!!!」

「デービーバックファイトまではいましたよ……」

 

そう。完全に存在を忘れられていた。

色々とありすぎて忘れていたが、あのデービーバックファイトが終わった直前にきた青雉。その青雉に見つからないように隠れていた二人は、ロビンからの指示でベラミーを近くの海軍支部へ連れて行くように云われていた。

 

そして搬送も終わりこのウォーターセブンにいまついた所なんだが、その説明を来て「あぁ…あのときにはいなかったのか…」とトドメを言われるのが一番きつかったという……

 

「そんなことよりだな!!」

「おい!!少しは労っても…」

「ハジメとロビンちゃんを見てないかッ!?」

 

「えっ??……いえ、見てませんが……」

「なんだ。またアイツらやらかしたのか??

当ててやろうか?そうだな……とうとう麦わらの一味に愛想つかして船を降りた。とかか??」

 

「ちょっとヘルメッポさん!!笑えない冗談を言わないでください!!」

「わりぃわりぃ」

 

「合ってるわよ」

 

その時、嵐の音さえも二人の耳には届かなかった。

そこまで衝撃的な言葉に二人共頭がついていかなかったのだ。

 

「………えーと、何が合っているんですか??」

「愛想つかしたかは知らないけど、抜けたは一味を」

 

「は、はぁッ!!!?な、なんでだよ!!! 」

「それが分からないから探してるんだよッ!!!!」

 

「ま、待ってください!!ハジメさんがもし、本気で抜けようとするなら見つかりませんよそんなのッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!!??」

 

その言葉に誰もが黙ってしまった。

分かっていたのだ。コビーの言ったことはもう皆の頭には浮かんでいたのだから。しかし言葉にしたくなかった。

もしそれが起きているなら見つけるのは不可能。

 

海楼石でさえ効かないあの能力で隠れられるなら……

 

「……いや、まてよ……ルフィだ…!」

「えっ、ルフィさん??」

 

「そうだ!ルフィならまだハジメを見つけられるッ!!!

空島でもルフィだけは見つけられただろうがッ!!!!」

 

「……確かにそうでした……なら、まだ可能性は…!!」

 

そう。まだ希望はある。

ルフィならまだハジメを見つけられる可能性がある。

しかしそこでレイジュが

 

「でも、見つけてどうするのサンジ??

あのハジメとロビンを説得するつもりならそれだけの覚悟と信念をぶつけないと動かないわよ」

 

「あぁ!?んなもん分かって…」

「分かってないわ。ただ戻ってこいとか、いないと困るとかじゃ戻ってこないわよ。何が理由かは分からないけど()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そんなことはない。と言いたい。

だがその言葉を言うだけの根拠が何もなかった。

いうだけなら出来る。それを確実に出来るものが……

 

「………確かに俺には二人を引き止めるほどのものはねぇ……」

「…サンジさん……」

 

「けどルフィならやるッ!」

「それこそ根拠がないわ」

 

「あぁねぇ!!

だけどアイツは、ルフィは……海賊王になる男だあッッ!!!!!

 

真っ直ぐにレイジュの目を見て言い放つサンジ。

しばらく睨み合う二人だが、先にレイジュが視線を外しため息をつきながら

 

「私はそれほどあの船長を信じてないわ。あの二人とサンジがいたからここまで付いてきたの。二人を止められないなら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に目を見開くサンジ。

コビーとヘルメッポは口を開き呆然としたあとすぐに

 

「な、何を言ってるんですか!?サンジさんは関係ない…」

「…いいぜレイジュ」

「サンジさん!?」

 

「乗ってやろうじゃねえかその賭け。

俺が勝ったら一ついうこと聞いてもらうぞ」

 

「ええ。いいわよ」

 

ハジメとロビンを説得出来なかったらサンジとレイジュも船を降りる。

その前にルフィが二人を見つけないと話にならない。

 

とてつもなくサンジが不利だというのに、サンジのその目は自分が賭けに負けることなんて一切考えていない。

 

「でもこの状況をどうにかする必要がある。

何も分からないままだと二人を説得するどころじゃねえ。そこは手伝ってもらうぞレイジュ」

 

「もちろんよ。フェアにいきましょう」

「ぼ、僕達も探します!!」

「なんでも言ってくれ!!」

 

「なら二人はこのウォーターセブンにいる海軍からなんでもいいから話を聞いてきてくれ。俺たちには聞けない何かを掴めばきっと突破口が見えてくるはずだ」

 

「分かりました!!」

「いくぞコビーッ!!!」

 

走り出した二人を見送ったサンジとレイジュ。

強まる雨の中、咥えていたタバコの火は消えている。

そのタバコを捨て、つけ直そうとしたが、それを止めた。

 

「……吸わないの??」

「追加だ。説得できなかったらこのままタバコも止めてやる。

でも、出来たら時はレイジュ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二度とルフィを信じられねぇなんて言葉を吐くなッ!!!!」

「………………分かったわ」

 

サンジに見られないようにクスリと笑うレイジュ。

こんなにもたくましくなったと嬉しくて頬が緩んでしまう。

 

「それで、私達は何処に行こうかしら??」

「それなんだが、行ってみたい所がある」

 

誰もがハジメとロビンを探していたらきっと見つからない。

なら、船を降りるとしてここからどうやって出港するのか。

こんな嵐の中を、大津波がくる中を。

 

そう考えたとき一つの事が頭の中を過ぎった。



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変わっていく麦わらの一味⑦




どうも。
さぁカレンダー通りのGWだ!!!!
ということでこれから3日間更新しますよー
毎日一話更新して、ニ日空けて、日曜日にもう一話。

そしたらまた二週間ぐらいお休みしますので。
さて、GW中に見てくれる人はいるのかな(笑)
みなさんーーよろしくお願いしまーーす!!

では、まず一話、どうぞ。






「………なんで俺達を助けた??」

 

警戒をするウソップ。そしてウソップの後ろでそれを見守るカヤ。

目の前には明らかに"変態"だと誰でも思う程の服装をしている大男が、海に繋がる大扉を閉じるために作業をしていた。

 

「んなもん。そんな立派な船を襲ったアイツらが悪いに決まってるからな」

 

そう言いながら海に繋がる扉を閉じたことにより、造船所のようなところにメリー号が避難でき、大津波にのまれる心配が無くなった。

 

「見れば分かる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

メリー号に触れれば更に分かる。

どんなに丁寧に扱ってもこんなに無傷でいられるはずはない。

それだけ異常な船だが、どう見ても普通の船。

 

何度見ても違和感しかない船を見つめるフランキーにウソップが

 

「そういってくれるのは嬉しいけどよ、それだけで助けるなんて……」

 

「信じられねぇか??まぁ、そうだろうな……

ならハッキリ聞いてしまうのがいいな。おい、この船は……"宝樹アダム"で作ったのか??」

 

……………………………………………………

 

「これは……どういうことだ……」

 

目の前の出来事に理解が追いつかないアイスバーグ。

ついさっきまで自分を守っていたパウリーが突然現れた仮面の者達に一瞬にしてやられたのだ。

 

そしてそこには一度ここに来たニコ·ロビンの姿があった。

さらには、ニコ·ロビンよりも知っている人物がいた。

 

「どうしてお前がここにいるだ……ハジメエエエェェッッ!!!!!

「お久しぶりですアイスバーグさん」

 

仮面は被っていなくともその服装は仮面の者達と同じもの。

つまりはこの襲撃にハジメが関わっていることを指す。

 

「前に話しましたよね??僕はまたアイスバーグさんに会いにくるって」

 

「誰がこんな再会を望むか……ッッ!!!! 」

 

「すみません。これも目的のためなんです」

 

素直に頭を下げて謝るハジメ。

しかしアイスバーグからすればそれはただ不快にさせる行為。

信じていた相手がまさかの敵になるなんて……

 

「いい加減にしろ。さっさと目的を果たせ」

「はいはい」

 

「お主が"設計図"の在処に心当たりがあるからこうして招き入れたんじゃ」

 

「目的が果たせないのなら…」

「我々は貴方を消すだけ」

 

「本当に怖いですね。CP9は」

 

本当に怖がっている様子には見えなかった。

しかしそれどころじゃない。アイスバーグの耳には聞き慣れた声が聞こえてきたからだ。それが目の前の仮面を被った者達から……

 

「ま、まさか……お前ら………」

「そういえば自己紹介がまだだったな」

 

そういって仮面を全員が脱ぎとった。

その素顔にアイスバーグは驚愕し、開いた口が塞がらなかった。

 

「我々が""CP9"だ」

 

そこにいたのはもっと信頼出来る仲間。

ルッチ、カク、カリファ、ブルーノの四人だった。

 

……………………………………………………

 

「な、なんだお前はッ!!?」

「だ、ダメよルフィ!!攻撃したらダメッ!!!!」

 

アイスバーグのいる屋敷に侵入したルフィ達。

もちろん待ち構えていた人達を出来るだけ傷つけないように倒してアイスバーグを探していた。

 

すると突然に現れた男にルフィが簡単に吹き飛ばされた。

それを見て驚くゾロとくいな。あのルフィが簡単に吹き飛ばされる姿なんて………よく、見るが。驚いている。

 

そして何より驚いているのはナミ達だ。

静止を聞かずに突撃するルフィに無駄だと判断して今度は相手に止まるように言い放った。

 

「止めてください()()()()()()()()!()!()!()!()

 

その言葉に、ベルメールの言葉にオックスもルフィも止まった。

 

「コイツを知ってるのか!?」

 

「名前だけじゃピンと来なかったけど……

……ダメよ。ルフィ君……その人は()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「まさか! "白熊のオックス"かあぁぁ!!!?」

「うそッ!!?」

 

昼間話に出てきた白熊のオックス。

それがまさかのハジメの右腕なんて………

 

「いえいえ。私なんてそんな……ハジメ様のファンクラブのNo.1です」

 

「何を言っているんだコイツ??」

 

本当に、本当に、ほんとーーーに珍しくマトモなツッコミをいれたルフィ。

 

「そしてロビン様は永久ファンですので神です」

「マジで何言ってるんだ??」

 

さっきまで殺伐とした空気がぶち壊れている。

それでもオックスは真面目な表情で言ってくる。

 

「そしてそんな二人からの要請です。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その瞬間オックスは姿を消し、気づいたときには目の前にオックスの拳があった。ルフィは避けることも出来ず武装色の覇気も間に合わずにモロに攻撃を食らい吹き飛ばされる。

 

「ルフィ!!!」

 

すぐさまゾロとくいなが二人がかりでオックスに向かうが、また消えたオックスに二人の剣は空回りした。

そして気づいたときには背後から飛ぶ斬撃が向かっており、なんとか刀で二人共防ぐことは出来たが勢いを止めることできずに、ルフィと同じように吹き飛ばされる。

 

「ゾロ!カヤ!!」

「邪魔をしないでください。そうすれば対象になりませんので」

 

駆け寄ろうとするナミとノジコに睨みを利かすオックス。

それだけで二人共動きを止めてしまった。

まるで直接心臓を握られているかのようなそんなプレッシャーに………

 

しかしそこにベルメールが

 

「やめて下さいオックスさん!!!」

「……ベルメール様。婚約者である貴女には決して手は出しません」

 

「なら私の話を……ッ!!」

「それは無理です。あくまでも優先順位はハジメ様、ロビン様、ハンコック様、そしてベルメール様です。いまの現状でそれを覆すことは出来ませんよ」

 

そういって一瞬にしてその場から消えたオックス。

プレッシャーから解放された二人はその場に座り込み必死に呼吸をしだした。ベルメールは立ち尽くしどうしようもない自分に腹がたち強く強く握りこぶしをつくった。

 

……………………………………………………

 

「なるほどな。やはり"設計図"はフランキーが持っておったか」

 

ロビンに拘束されカクに脈を測れながらルッチの質問を聞いてしまったアイスバーグ。それは簡易的な嘘発見器だが、それでも充分なほどにアイスバーグが反応してしまったのだ。

 

ここにいるハジメにかなりの動揺をしてしまったせいで……

 

「なら、お前さんはもう用済みじゃ」

「……オレを消すのか??」

 

「さっきも言ったが俺達は"殺しが許可されている"政府機関だ。命乞いしても無駄だ」

 

するとカリファが胸元からライターを取り出し、近くのカーテンに火をつけたのだ。あっという間に天井に火が回り、その火がどんどん周りに広がっていく。

 

「アイスバーグの死因は焼死。アイスバーグを襲撃してきた麦わらの一味によって屋敷に火が放たれて焼け死んだ。ということにする」

 

「なにもかも麦わらの一味に擦り付ける気か!?」

「海賊だ。それぐらいしてもなんの罪悪感もない」

 

どこまでも腐っているルッチの言葉に腹が立つアイスバーグ。

しかし現状なにも出来ない。いまも縛っているロビンの拘束を解くことなど出来ない。

 

「ニコ·ロビン。アイスバーグを動けない程度に骨を折れ」

 

そして下された命令にアイスバーグは痛みに耐えようと身体を強張らせた。

 

「嫌よ」

「……………………………はぁっ?」

 

来るはずの痛みがやってこない。

それどころか拒否する言葉にアイスバーグの思考は麻痺した。

 

「どういうことだ……ニコ·ロビン!!」

 

明らかにキレているルッチ。

いまにも襲いそうな表情に対してロビンはケロっとした表情で

 

「言ったはずよ。私はお兄ちゃんの為にしかやらないの」

「……なら!お前が命令しろ!!」

 

「えっ。する必要性ありますか??目的のものは分かりましたよね」

 

その言葉にルッチはハジメの胸ぐらを掴もうとする。

しかしそれよりも速くロビンの手がルッチの腕を掴んだ。

 

「いい度胸ね。貴方達につれていくだけじゃ飽き足らずにお兄ちゃんに八つ当たり的するなら………消すわよ??」

 

「………面白い……やってみろ!!」

 

その瞬間、ルッチの顔が変化したのをアイスバーグは見た。

……見たが、次の瞬間にはその目の前に破壊された壁の残骸と吹き飛ばされてきた麦わら帽子を被った少年が飛び込んできたのだ。

 

そして立て続けに二人が続けて壁をぶち抜いてきた。

一体何があったのかと混乱するアイスバーグ。

目の前の光景はホコリで全く見えてこない。

 

しかし何かが風を起こしたのか、一気に視界が開けるとそこには

 

「……麦わら……、白熊ッ!!」

 

壁にめりこむルフィと、いつの間にか現れたオックス。

そして近くには麦わらの一味である仲間が二人。

 

「な、なんだアイツは……」

「オックスさんの一撃に耐えたか。やっぱり成長はしてるな」

 

その声に身体を震わせるルフィ。

恐怖ではなく突然のことに思わず身体が反応したのだろう。

そして食いつくように前を向き、その声の元へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメッッ!!!!師匠ッッ!!!!!」

「追ってくるとは思ったけど、さて……どうしようかな??」



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変わっていく麦わらの一味⑧









さて、どうしようかなー

ここにいる時点でルフィが来るのは分かっていたけど、改めてこうやって現場に立つとどう振る舞おうか考えてしまう。

 

……まぁ、成り行きでいきますか。

 

「見つけたぞハジメ!師匠!!」

「……師匠?? ニコ·ロビンのことを……」

 

あぁ、そういえばコイツらは知らなかったなー

あとで説明となると面倒くさいし……

よし、ここは黙ってここから去ろう。

 

というのをロビンを見て合図を送った。

ロビンはウインクして返してきた。いや、わかってる??

そのアイコンタクトの意味を理解したオックスが機転を効かせて再びルフィに襲いかかる。

 

「よそ見とは余裕だな」

 

降り下ろされる拳から逃れたルフィ。

すぐさま攻撃に転じようとするがオックスが追撃をしてくる。

そのためにルフィが回避と防御しか出来ずにどんどんハジメ達から離されていく。

 

「は、ハジメッ!!!師匠ッ!!!!」

 

声をかけられるがそれを無視するハジメとロビン。

と、ここでゾロとくいなが同時にオックスに向かって剣を振るった。

流石のオックスもこの攻撃は防御するしかなく、懐から出した羽ペン2つで二人の攻撃を止めた。

 

「ふ、ふざけんなよッ!」

「ペンは剣よりも強し。そんな言葉知りませんか??」

「だったとしても実行できませんよ普通はッ!!」

 

だが実際に止められた攻撃。そして追撃も全てペンだけで凌がれているゾロ達。そんな悔しい思いのなか

 

「いけルフィ!!あの二人の所にいけッ!!!」

「お願いします!!」

 

「おう!!」

 

二人に託されたルフィはオックスの横をすり抜けてハジメとロビンの元へ……

 

「止まってもらおうか」

「な、なんだ、お前はッ!?」

 

目の前に立ちふさがったのはルッチ。

そうここはやっぱり本編通りに進みらしい。

いや、そうでもないみたいだ……

 

「ワシも手伝うぞ」

「必要ない」

 

「やらせてもらうぞ。確実にここで仕留めるためにの」

「……勝手にしろ」

 

そう。本編ではゾロの相手だったカクがルフィへと回った。

いくら本編より強くなったルフィでも()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そこを、どけええぇ!!」

 

なんのかんがえも無しに攻撃を仕掛けるルフィ。

そんな攻撃が通じるわけもなく簡単に避けられる。

そしてルッチとカクは一気にルフィとの距離を詰めて二人同時に

 

「「指銃(シガン)ッ!!」」

「ガッッ!!?」

 

両肩を指で突き抜かれたルフィ。そのまま後方へと吹き飛ばされてしまった。

 

「ルフィッ!!」

「なんで!?打撃は効かないんじゃ!?」

 

ルッチとカクの指には赤い血が…

ルフィの肩を貫いた証がそこにはあった。

瓦礫から出てきたルフィは両腕をぶらーんとさせていて、両肩から血が出ていた。

 

「な、なんださっきのは…」

「六式。といっても海賊が知るわけないか…」

 

「……どこかで、聞いたような……うーん……」

 

うーん、じゃないよ。

話したよね?随分前かもしれないけど話したよね!?

ルフィのギア2の高速移動を実現するためにも"六式"を全て見せたのに……そこからヒントを貰っただろうが……

 

「そういえば、さっきの移動って……もしかして、し」

嵐脚(ランキャク)

 

「うわッ!!!」

 

ルフィが余計なことを言おうとした所をオックスが察知してルフィに嵐脚を放った。ギリギリでかわせたルフィ。オックスはいま二人相手しているタイミングで放ったのだ。あれぐらい避けてもらわないと……

 

「てめぇ!二人がかりでも余裕ってことかッ!!」

「実際にそうですね」

「絶対に斬ってやる!!!」

 

さらに剣の速度が上がるがそれでも難なく捌くオックス。

一方でルフィは避けたあとからルッチとカクに攻められており、

 

「ゴムゴムの……ライフルッ!!!」

鉄塊(テッカイ)

 

今度は鉄のように硬くなる技術でルフィの攻撃を凌ぐ。

しかしルフィは負けじと、もう片方の腕で

 

「ゴムゴムの……火拳銃(レッドホーク)ッッ!!!!」

 

炎を纏った拳をルッチへ向けて放った。

また鉄塊で防ごうと構えていたルッチだが直前で

 

紙絵(カミエ)

「なっ!?」

 

ギリギリの所で避けたあとにルフィにカウンターで顔面に拳を入れられ、真下へ振り降ろされたためにルフィの体は床へと叩きつけられた。

 

「……コイツ……」

 

床に這いつくばりながら立ち上がろうとするルフィを見下ろすルッチ。

 

そしてルフィの放った技が運悪くカーテンに当たりそこから火が移りだし燃え始めた。たちまち火の手は上がりドンドン広がっていく。

 

「手間が省けたの。これでアイスバーグを縛り上げりゃおしまいじゃ」

 

「お、お前ら……ッ!!」

「悪く思うなよ。これも任務じゃ」

 

と、その前に。と前置きをしたあとにカクがルッチに

 

「そいつはどうする。ここで始末するのか??」

「……それも悪くない。だが、せっかくだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

立ち上がろうとするルフィを、ルッチはその脚を振り上げて

 

「終わりだ麦わら」

「ッ!!!」

 

「嵐脚ッ!!!」

「グガッ!!!!」

 

オックスの見せたよりも強力な嵐脚がルフィを襲いそのまま外へと吹き飛ばされてしまった。

 

「ルフィッ!!!」

「お前達も、そろそろ目障りだ」

 

そういったオックスは二人の剣を捌き、持っていた羽ペンを両手から放したあと、掌を二人の腹部に当てて

 

「吹き飛べ」

「「ダバッ!!!!」」

 

わけのわからないまま突然襲ってきた衝撃。

ゾロとくいなの身体はあっという間に吹き飛ばされてしまった。

 

「……麦わら……」

 

あっさりとやられたルフィ達に少なくとも期待したアイスバーグは絶望した。これで助かる道はなくなったと……

身嗜みを整えオックスはこの場から去ろうとしているとそこにルッチが

 

「どこに行く?」

「私には私のやることがある。少からずとも手伝いのような形を取ったのだ。詮索はやめてもらおう」

 

「…………勝手にしろ」

 

そういってオックスは自身がぶち壊してきた穴から去っていく。

残されたのはCP9とアイスバーグ。

囲まれるアイスバーグは息を飲み恐怖するしかなかった。

 

「それじゃまぁ、仕上げといこうかの」

「………ッッ!!?」

 

……………………………………………………

 

 

「はぁー!?ただの船が()()()()()()()()()()()·()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()

 

フランキーから宝樹アダムの話を聞いたウソップ。

その木で作られた船はかなり頑丈であり、そしてあの海賊王の船と同じ木材だと知った。

 

しかしそこでウソップがフランキーの思い込みに乗らずに真実を話したことにより、フランキーがウソップに突っかかってきたのだ。

 

「あるとするなら()()()()()()()()()()()()()()、それでもなく普通に作られただと……船大工をバカにするなッッ!!!!!!」

 

「お前は解体屋だろうがッ!!」

「うるせぇ!!揚げ足を取るなッ!!!」

 

白熱するなかこのガレージの扉が突然吹き飛んだ。

突然のことに3人ともそちらの方に目をやると、土煙の中から現れたのは

 

「な、なんだお前らッ!」

「アイスバーグの所の職人じゃねえか!!」

 

服装や雰囲気で一度会ったウソップじゃ気づかなかったが、フランキーは長年見てきたのですぐに分かった。そしてそれがいつもの違う。怖い雰囲気だということも……

 

「何の用だ??こっちは立て込んでるんだ…後に」

「"設計図"を渡してもらおう」

 

「…………なんの、設計図だ??」

 

「もう分かっている筈だ。

お前が持っている"設計図"を渡せ」

 

「…………てめぇら。アイスバーグは、どうした??」

「…………死んだよ」

 

「ッッ!!!!」

 

その瞬間フランキーがルッチに向けて飛び出した。

何のことか分からないウソップ達はとにかく戦闘準備だけ行い動けずにいる。

 

向かってくるフランキーの拳を簡単に止めたあと腹部に向けて蹴りを放ち吹き飛ばすルッチ。

 

「やはり隠していたのか。

まさかお前らがあの罪人"トム"の弟子とはな…」

 

「ふざけんな!!!トムさんは罪人じゃねえ!!!!」

 

「海賊王の船を作った男だ。当然の罪人だ」

「……船を作るだけで罪人だと……だったらお前らが求めているものも罪じゃねえのか!!?」

 

「だとしてもそれは世界政府が管理する。さぁ大人しく渡せ」

 

緊迫する空気の中、ウソップはバレないように仕込みを始め……

 

「……カヤ…ワリィが一足先に逃げてくれ…」

「ッッ!!!?待ってウソップさん……ッッ!!!!」

 

カヤの静止も聞かずにバックから取り出した布をカヤにかけるウソップ。その分からない行動に誰も何をしているか分からなかった。そしてウソップが指パッチンをすると布に被っていたカヤの等身が一気に消えて布が床に付いてしまった。

 

まさかの人間消失マジックに誰もが驚く。

その驚きをついてウソップはバックから新たに片手指に直径2センチの黒い玉を4つ挟み込みそれを地面に向けてぶつけた。

 

その瞬間、煙が発生しガレージは煙で充満してしまった。

 

「な、何しやがる長鼻ッ!!!」

 

これにはフランキーもふざけるなと怒る。

視界が悪い状態で攻撃なんてされたらと構えていると

 

「嵐脚·咲き乱れ」

 

カクの嵐脚。それも広範囲に複数の嵐脚を放ってきた。

それにより煙は嵐脚一撃一撃で消し去っていき数十秒でガレージの煙は消え去った。

 

フランキーは危険を察知して床に伏せていたので嵐脚を食らうことはなかったが、ガレージはカクの嵐脚でズタボロにやられていた。壁は切り裂かれ、天井も穴があき、海に繋がる扉もこの後にくるアクア·ラグナには耐えれそうにもない。

 

そしてそんな中でもメリー号は無傷。

ガレージがボロボロの状態でも傷一つ付かないメリー号にカクは思わず舌打ちをした。

 

「一体なんじゃこの船は……」

「本気じゃないとはいえ、カクの嵐脚でも傷がつかないなんて……」

 

「だが、目的のモノは処理できた」

 

そう。いまルッチの中で真っ先にやらないといけないのは()()()()()()()()()()()()使()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、長鼻あああああぁぁッッ!!!!!!」

 

メリー号に乗り込んで逃げるつもりだったのかメインマストにウソップはいた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()()()()()()………

 

フランキーの叫び声はウソップに届くない。

ピクリともしないその姿、血もすでに大量出血死になるほどに出しすぎている。

 

それでも希望を捨てないフランキーは立ち上がり近づこうとしたがルッチがそれを止める。片足をあげてフランキーの首元に向けて振り落とし地面に叩きつけた。

あまりの衝撃で声も出ない。そのままルッチはフランキーの両手に巨大な手錠を取り付けた。

 

「お前には用がある。我々に付いてきてもらおう」

「ふざけんなッッ!!!」

 

「抵抗するな。カク。その船を海に出せ」

「やめろ!!そんなことすれば!!」

 

「いくら丈夫な船でもあのアクア·ラグナで終わりだ」

 

ルッチの言葉に頷いたカクは船を固定していたロープを取り外し、海に通じる扉を開いた。すると物凄い風がガレージに流れ込んでくる。

そしてカクはメリー号に蹴りをいれて海へ向けて動かした。

ゆっくりゆっくりと流れていくメリー号。

 

「長鼻ああああああぁぁぁッッ!!!!!」

 

フランキーの声も虚しくメリー号は荒波の中に飲まれていく。

徐々にメリー号の姿は荒れゆく海の彼方へ消えていった。

 

 



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変わっていく麦わらの一味⑨








「……どうして、オレを助けた……??」

「そんなの、助けられる命だからよ」

 

燃えゆくガレーラカンパニー。

その中で炎に焼かれてしまうはずだったアイスバーグとパウリーは、図らずとも自分を襲ってきたロビンの仲間である麦わらの一味に、ナミ達に助けられた。

 

「それに…絶対にお兄さんやロビンがあんなこと……きっと何かあるの……だから、ここままにしたらあの二人が戻ってこれないと思ったからよ……」

 

あんな状況でもまだ信じているナミにアイスバーグは信じられないモノを見ている気になっていた。

明らかな敵対行動だというのに…それでも信じれるなど……

 

「それに、白熊に言われたのよ…」

「白熊だと……」

 

……………………………………………………

 

「なんなの、この煙……ッ!」

「二人共、姿勢を低くして!!」

 

黒い煙が他の部屋に広がっていく。

そんな中、ルフィ達を待っていたナミ達にも煙が襲いかかる。

 

「もう!3人ともどうして戻ってこないのッ!!」

「どうしようベルメールさん。戦闘音も聞こえなくなったし…」

 

「………二人はここにいて。見てくるわ」

 

いつまでもここにいられない。

白熊、オックスから警告されたがこのまま待っていても煙を吸いすぎて死んでしまう可能性がある。

どうなっているのかそれだけでも確かめようとしたとき、壊れた壁、空いた穴から誰かが出てきた。

 

「ルフィ!!………ッ!!!??」

 

ルフィかと声をかけたが相手はルフィではなかった。

その体格はルフィよりも大きく、服装は海賊の敵である海軍。

そう、そこから現れたのは

 

「白熊ッ!!!」

「オックスさん!!」

 

「やはりまだいたんですね」

 

その言葉はここにまだナミ達がいるだろうと考えてここにきたということになる。そしてさっきまでのオックスとは違い、雰囲気が柔らかくなっているように感じだった。実際に言葉も柔らかくなっている。

 

「この奥には誰もいません。いやアイスバーグさん達が縛られているので助けて上げてください」

 

「ルフィ達はッ!!!?」

 

「外へ吹き飛ばされましたが生きてますよ。

でも早くしないとアクア·ラグナがきます」

 

「どうして、それを……」

 

するとオックスは片足を上げた。

その行動に警戒する三人だが、踏みつけた床が抜け近くにあった柱を片手で取り抜いたあとにそれを斜めに取り付けた。

 

「ここから逃げられます」

「オックスさん!!」

 

「私はこれ以上言葉に出来ません。

私は"大将"。後はお任せします」

 

そういってオックスは2階の窓から飛び出していった。

一体何がしたいのか分からなかったがとにかく奥にいるアイスバーグを死なせるわけにはいかないと救いに向かった。

 

……………………………………………………

 

「……どうして白熊が……」

「ハジメとオックスさんは上司と部下の関係。

だから、きっと何かあるんです。そうじゃないと"大将"であるオックスさんが私達を逃すわけがない」

 

その言葉に妙に納得したアイスバーグ。

オックスのあのしっかりとした意思は何か絶対的なものに縋っているような感じだと何となく感じていた。そして隣で気絶していたパウリーが目を冷まし

 

「……ハッ!!アイスバーグさんッ!!!!」

「……パウリー……」

 

「って、お前ら……アイスバーグさんに何しやがった!!!!」

「待てッ!!!!!…………麦わらの一味は、嵌められたんだ……」

 

アイスバーグの安否を確認したあとパウリーは近くにいたナミ達に襲いかかろうとした。だがすぐにアイスバーグがそれを止め、さらに自分を襲った者達は麦わらの一味ではないと。

 

「それってどういう……」

「説明してくれアイスバーグさん!!」

 

パウリーの他にピープリー・ルルとタイルストンもここに来てアイスバーグに説明を求めた。周りはガレーラカンパニーについた火を必死に消そうとしててんやわんや。酷い雑音の中で大声を出さずに応えるアイスバーグの声は、ハッキリとみんなの耳に届いた。

 

「………犯人は、ルッチ、カク、カリファ、ブルーノだ……」

 

そしてまるでその空間だけが切り取られたように周りの声が、音が聞こえなくなった。その衝撃的な言葉にパウリー、ピープリー・ルル、タイルストンは固まったのだ。

 

そんな様子を見たアイスバーグはそれでも言葉を続ける。

 

「アイツは、世界政府の犬だ。それもCP9という暗殺専門の………麦わらの一味は俺を助けてくれた!!こいつらは無実だあ!!!」

 

ハッキリと聞こえた声にパウリー達の拳から血が流れる。

ずっと仲間だと信じていた者達が裏切り、あまつさえ恩人であるアイスバーグを殺そうとしたのだ。

 

膨れ上がる怒りに気がおかしくなるのを必死に堪える。

 

「パウリー!ピープリー!!タイルストン!!!

麦わらの一味と一緒に麦わらを助けてやってくれ!!もうすぐアクア·ラグナがここに来るッ!!!!!」

 

そうもうすぐそこに大津波が来ているのだ。

いますぐにでもルッチ達を捕まえてぶん殴りたい衝動を抑えてパウリーは

 

「おい女ッ!!!麦わらはどこにいった!!?」

 

……………………………………………………

 

「……………………やべ……抜けねぇ………」

 

一体どういう奇跡で嵌ったのか……

ルルフィは大きな建物と建物の間にピッタリと挟まってしまったのだ。

どう動いても全く抜け出せない。びくともしない。

大雨が降っているせいかルフィは力が入らずにいたのだ。

 

「こんな……こと、してる場合じゃ…ねぇのに……」

 

早く抜け出してハジメとロビンを追いかけないといけない。

焦る気持ちとは裏腹にピッタリと嵌った身体は抜けない。

もうどうしたらいいのか分からないルフィ。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

そんな中、こんな大雨の中を、アクア·ラグナが来る町中を走る者がいた。誰もこの町にはいない。すでに高台に逃げているというのに、下町に向かおうとしているこの者に対して町の人達は止めようとしたがそれを振り切りここまで来た。

 

「………はぁ、………はぁ……なに、……を……」

 

それもこれも、こんな状況でなにも出来ずにいる者に、ルフィに言いたいことがある。それだけでここまで来た。

本当は久しぶりにあった友達の背中に乗ってここまでくれば良かったが、目の前で飛んでいくその姿を見た直後にすでに走ってしまっていた。

 

「………なに、を……何を、してるんですか………」

 

大まかの話を聞いた。何が起きているのかを。

そしてついさっきでんでん虫で詳しい話も聞いた。

それなのに、いや、それを知らなくてもなんでそんな所で止まっているのか……()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしてるんですかルフィさあああああああぁぁぁぁぁんッッッ!!!!!!!」

 

ルフィから見える位置にまで屋根伝いに登ってきた。

そこからハッキリと見える。ルフィはその声の方向を見てみるとそこには、見慣れない服装をしており、でもそれはルフィ達の為に裏からでも、敵対する組織だとしても、少しでも役に立ちたいと自分の故郷を離れてここまできた女性。

 

そう、そこには海軍服を着た

 

「………………ビビ………??」

 

アラバスタで別れた仲間のビビがそこにいたのだ。

そしてその表情はいまにも泣きそうな、そんな表情に見えた。

 

「何してるんですかルフィさん!!」

「ビビ…ぬ、抜けないんだ……ここから……」

 

「そんなことしている場合なんですかッ!!!」

「だから…、抜けなくて……」

 

「なんでそんな泣きそうな表情をしてるんですかッッ!!!!!!!」

 

そのビビの言葉に、言葉が詰まったルフィ。

 

「ハジメさんがいなくなるからですか!?ロビンさんが師匠じゃなくなるからですか!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()!()

 

「なっ!!!??」

 

ビビの言葉にムカッときたルフィは言い返そうとしたがその前にビビが追撃をしてきた。

 

「そんなことでルフィさんは夢を諦めるんですかッッ!!!!

私の好きなルフィさんはそんなもんなんですかあああぁ!!!!!」

 

頭に鈍器で殴られたような衝撃を受けたルフィ。

するとルフィを挟んだ建物からヒビが入ってきた。

 

「…う、う、うおおおおおおおぉぉぉぉッッ!!!!!!!」

 

力をめいいっぱい入れだしたルフィ。

どんどん建物に亀裂が入ってくる。しかしそんな所で後ろから声が、悲鳴に似た声が聞こえてきた。

 

「クエエエェ!!!!!!!」

「逃げろッ!!!ビビッッ!!!!!!」

「…えっ??」

 

そう、ビビは気づいていなかった。

すでにアクア·ラグナは目の前まで迫っていたのだ。

ルフィが挟まっている建物よりも高い大津波。

 

カルーやチョッパーのいる高台はまだ安全だがビビのいるところはルフィの挟まった建物よりも低い。

このままでは飲まれる。逃げようとしたがここまで必死に走ってきた足が言うことを利かないのだ。もしかしたら恐怖で動けない状態かもしれないがそんなことはどうでもいい。

 

もう数秒後には巻き込まれる事実にビビはその場に座り込んでしまった。もうダメだと、諦めてしまった。しかし、

 

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉッッッ!!!!!ビビイイィィッ!!!!!」

 

一気に建物をぶっ壊したルフィはそのままビビの前に立ち、瞬時に両手を巨大化させたあとに交互に前に拳を突き出し

 

 

「ゴムゴムの……巨人乱銃撃(ギガントガトリング)ウウウウウウゥゥゥゥッッッッ!!!!!!!!

 

 

ルフィの巨大な拳が大津波にぶつかっていく。

それが何度も何度もぶつかりながら、徐々にその津波が崩れていき、ついにはルフィ達に大津波が覆いかぶさる瞬間にはルフィとビビの場所だけ切り抜かれたように隙間が空いた。

 

「ル、ルフィイイ!!!スゲェエエェ!!!!!!!!」

 

その切り取られた場所から左右に津波が崩れていきチョッパー達のいる場所にたどり着く前にその津波は手前で崩れ去った。

 

その出来事に目の前で体験したビビはまだ放心状態。

ハァハァと息を切りながらルフィはビビの方に振り返り

 

「お前も勝手に諦めてんじゃねええぇ!!!!

お前は俺が守るんだからなあああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!!!」

 

その、ある意味告白に似た言葉。

もちろんルフィとしては"仲間"を守るという意味だが、ルフィに惚れているビビからすればそれはもう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………は、ひ……ッ/////」

 

惚れ直すような言葉と行動と男気に、もう自分が何を言ったのか分からなくなるぐらいに惚けていた。

 

 



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変わっていく麦わらの一味⑩








「よがっだ…ルビイィィッッ!!!」

 

安心したチョッパーがルフィの足元に抱きついてきた。

あの大津波に飲まれるかとヒヤヒヤしていたのがホッとして感情が爆発したようだ。

 

「おう!ビビのお陰で助かった!!サンキューなビビッ!!」

「い、いえ……/////」

 

未だにマトモにルフィの顔を見られないビビ。

ここに来るときは別になんともなかったのだが、こうして改めてルフィの側に立ち、さらにさっきの言葉を貰ったビビはもうどうしたらいいのか分からなくなっていた。

 

「うん?どうしたんだビビ??」

「な、なんでもありません!!」

 

「ルフィ。いまビビは治らない病気になってるんだ…」

「ええぇ!!!!大丈夫なのかよそれ!!」

 

「問題ねぇ。しばらくしたら落ち着くから」

「そ、そうなのか……」

 

「とにかく不用意にビビにちかづかな…」

「本当に大丈夫かビビ!!!」

「ヒャッ、ヒャッイ……ッ!!!」

「近づくなって言ってんだよッッ!!!!!」

 

"恋の病"なんてルフィに言うわけにもいかず、とにかくいまは近づくなと言っている最中にビビに近づいたルフィ。そのためビビの顔は真っ赤になっていっていた。

 

すぐにチョッパーがルフィの頭を叩いて無理やりビビから引き剥がした。

 

「ク、クエエェ??」

「だ、大丈夫よカルー……」

 

心配するカルーに励まされるビビ。

とにかく近づくなッ!!と再度言われたルフィはぶうぶうといいながら少し離れた場所にいることになった。

 

「何してんだお前ら…」

「ゾロ!くいなッ!!!!」

 

「船の瓦礫が波に乗って迫っていたからそれごと切り崩すのに時間かかって……」

 

「き、切ったのか……大津波を……??」

「あぁ??ルフィもぶん殴っただろうが」

 

どうやらルフィの技が見える位置にゾロ達もいたようだ。

そして同じタイミングであの大津波を切り崩したようで、それでチョッパー達に届く前に大津波が崩れたようだ。

 

「で、ルフィ。これからどうするつもりだ??」

「ハジメと師匠を追いかける!」

 

「あてはあるのかよ」

「ねぇ!!」

 

自信満々にいうルフィに頭が痛くなるゾロ。くいなは隣で苦笑いをしていた。しかしだからこそどうにかなる。そんな根拠もない自信がみんなに伝わっていた。

 

「ルフィ!!みんな!!!」

「ナミ!!ノジコ!!ベルメール!!!!」

 

走ってきたのはナミ達。

そして一緒にガレーラカンパニーのパウリー達も走ってきた。

 

「良かった……無事だったのね…」

「ナミさんが飛んでいった方向を正確に教えてくれたお陰です」

 

「私は計算しただけよ。ビビがルフィを見てくれたから分かっただけよ」

 

ビビがナミと連絡したとき、大まかな方角を聞いたナミがいまいるガレーラカンパニーからビビのいる方向を確認し、大体の飛んでいったスピードと角度を聞いて計算して着地地点を割り出したのだ。

 

そのお陰で早くルフィの所にいけたので助かったのだ。

 

「おい麦わら。お前らアイツらを追いかけるのか??」

「俺らはハジメと師匠を追いかけるだけだぞ」

 

「なら俺らも連れてけ!!アイツを一発殴らねぇと気がすまねえ!!!!!」

 

その真面目な表情に見せられたルフィは「いいぞ!」と簡単に承諾した。それはいいのだが結局これからどうするのかと考えていると

 

「ル、ルフィさん……」

「カヤ!?どうしたんだおい!!」

 

ふらふらになって現れたカヤは声をかけたあと前へ倒れ出した。そこを近くにいたビビが受け止める。

 

「カヤさん!!ビビです!一体どうしたんですか!!?」

「……ビビさん……ウ、ウソップさんが……」

 

……………………………………………………

 

 

「早く乗り込めフランキー」

「……チィッ…」

 

手錠も外れないいまフランキーはルッチ達のいうことを聞くしかなかった。抵抗しても無理矢理連れて行かれるだけ。それだけの実力の差があるのはハッキリ分かっている。

 

フランキーが入れられようとしていたのは海列車。

そしてその行き先というのが…

 

「お前がこれから向かうのは"司法の島"だ」

「なっ!?」

 

「つまりだ。諦めろ」

 

フランキーも聞いたことがある。

司法の島に向かったものは誰一人として帰ってくることができない島。

そこへの線路がこのウォーターセブンから司法の島へと繋がっている。

 

まだ海は荒れているがそれでも海を走れるのが海列車。

そしてまだアクア·ラグナは終わっていない。

 

それができる前に抜けないといけないのであまり時間がないのだ。

 

そして無理矢理海列車に乗せられたフランキー。

車両を何個か歩いているとどうやら目的地についたようで、そこには先に二人が席に着いていた。

 

「ここで大人しくしていろ」

 

と、ルッチに無理矢理座らされたフランキー。

ルッチ達はそのまま前の車両へと向かい残されたのは3人。

その一人はフランキーも見たことがあった。

 

「確か、てめぇは……ニコ·ロビンか??」

「あら。変態に覚えられるほど名前が広がっているのね私」

 

「ほ、褒めるなよチクショー!!」

「耳、壊れてるんじゃないの??」

 

本編と違って、いや、元からフランキーにはドライだったが、それ以上にドライになっているロビン。

そしてその隣にはなんか見覚えのあるようで、ないような……

 

「久しぶりだねフランキー」

「え、えぇ……誰だ……お前…」

 

「そっか。アイスバーグさんは覚えてましたけど、フランキーには"初対面"になってるのか……」

 

昔、海賊王の船を作った船大工の弟子に会いにきたハジメ。

約十年前、ハジメがドラム王国に向かう際に寄ったのがウォーターセブンだったのだ。

 

そこでアイスバーグとココロさんに出会い、詳しくは話せなかったがそれでも胸の内を聞いてくれた二人と宴会をした。

その時にあとから現れたフランキー。その時はハジメの正体を教えていなかったのでハジメを見てもピンと来ていないのだ。

 

「まぁ、とにかくよろしくね。これから長くなると思うし」

「……てめぇらは何かやらかしたのか??」

 

「うーーんそうだね………これから、かな??」

「はぁ??」

 

……………………………………………………

 

「ウソップもメリー号もいないだと!!?」

「ガレージに戻ったら周りはボロボロになってて、そしてそこにあったメリー号もなくて……ウソップさんも……」

 

そのあと必死に周りを探したがメリー号は見つからなかった。

それどころかウソップもそこにいたフランキーも……

だからまずは合流しようと走り回ってやっと見つけたという。

 

カヤがガレージに来たのはあの大津波が去ったあと。

そしてガレージの大扉が開いていたということはあの大津波にメリー号が、そしてもしかしたらウソップも……

 

そんなことがカヤの頭に巡り巡っていたようだ。

顔色の悪いカヤをチョッパーが見ながらここまでの経緯を聞いたルフィは

 

「カヤ。オレ達はハジメと師匠を追う。

ウソップとメリー号を探すならオレは止めねぇ」

 

真っすぐにカヤの目を見ていうルフィに

 

「…………いえ。一緒に行きます」

「いいのカヤ??」

 

「ウソップさんなら、行って来い!っていいますから……」

「……カヤ……」

 

「それにウソップさんはマジシャンで狙撃手ですよ!

きっと大丈夫です!!」

 

明るくいうカヤだが誰が見てもやせ我慢している。

そんなカヤにビビとナミは二人でカヤを抱きしめた。

声を抑えて涙するカヤに、誰もが絶対にウソップが無事だと信じた。カヤがここまで言っているのに否定するわけがないと。

 

そんなタイミングでナミが持っているでんでん虫から着信があった。このタイミングで一体誰がと出てみると

 

『もしもしナミさんかい??』

「サンジ君!?一体どこにいるのよ!!」

 

『いま海列車の中だ。そしてそこにハジメとロビンちゃんもいる』

「ふ、二人がッッ!!!!??」

 

まさかの手がかりに誰もが息を飲んだ。

これからどうしようと考えていた矢先にまさかの手がかりがこんな形で手に入ったのだ。

 

『そしてこの海列車は"司法の島"に向かってる』

「は、はぁ!!!!??司法の島ですって!!!」

 

『どうにしてこっちに来てくれ。オレとレイジュはどうにかして二人を助ける』

 

その言葉に希望が見えてきた。

同じ海列車にいるなら取り戻せる可能性がある。

あとはどうにかして追いかけるだけ。

 

「お願いサンジ君!!二人を引き止めておいて!!!!」

『わっかりました!!!貴女の騎士はかん……プチッ』

 

途中で連絡が切れた。

多分だがこれは隣にいたレイジュが切ったのだろうと推測した。

それはともかくナミはすぐに近くにいたパウリーに

 

「ねぇ!すぐに海列車で司法の島に行けないかしら!!」

 

「バカかお前らッ!!!いまからがアクア·ラグナが来るんだぞ!!

さっきのは言ってしまえば序章だ。次が本物のアクア·ラグナだぁ!!!!いまから行ってもただ津波に飲まれるだけだ!!!!」

 

「それにこんな荒れた海を走る海列車なんてねぇよ」

「とにかくいまは海が落ち着くまで……」

 

「そんなに待ってられるかッッ!!!!!」

 

ルフィが叫ぶがそれがどうしようもないことだと誰も分かっていた。こんな荒れた海を、いくら海を走れる海列車だとはいえ無理だって言うことを……

 

「んがががッ!!オメェら死ぬ気があるなら、あるよ海列車」

 

その声に振り返るとそこにいたのはココロさんとチムニー達だった。

 

……………………………………………………

 

 

「す、すげえええぇーーッ!!!!」

 

そこには今にも飛び出しそうな海列車があった。

先端には顔が描いてあり、その表情がものスゴイスピードが出そうと見えてしまうのか……

 

「コイツは"ロケットマン"。一度走り出したら制御の効かない暴走列車だが、この海でも間違いなく走るよ」

 

「速そううう!!!!」

「カッケエエェ!!!!!」

 

盛り上がっているルフィとチョッパーを無視して、海列車の説明を聞こうとしたところで、その海列車の下から排出てきたのは

 

「やっと来たか」

「アイスバーグさん!!!」

「何してるんですか!?」

「安静にしてないと!!!!」

 

「ンマー。まぁ、これが終われば帰るよ。

それよりも整備は終わった。準備も出来てる。いつでも出れるぞ」

 

アイスバーグはここにルフィ達が来るだろうと予想して準備してくれていたようだ。寝ていないといけないのに身体にムチをうってまで……

 

「アイスバーグさん……俺ら…」

「行って来い。アイツらに"クビ"だといって来い!!!!」

「はい!!!!」

 

そして誰もが海列車に乗り込む中、ビビだけは乗り込まなかった。

 

「どうしたビビ。来ねぇのか??」

「…私は、海軍だから……これから行くところには……」

 

そう。これからいくのは言ってしまえば世界政府の真ん中に行くようなもの。そこに海軍のビビが行けばどうなるかはハッキリ分かる。

 

「私はここでコビー君とヘルメッポ君と一緒に待ってるから。何かあったらこのでんでん虫に連絡をいれてください」

 

そういってナミが持っているでんでん虫とは違うでんでん虫をルフィに渡した。何も出来なくてもこうして繋がっていると示すように……

 

「待ってろ!!絶対に二人を連れて帰るからなッ!!!!!!」

「うん!!」

 

ルフィが突きだす拳にビビも笑顔で拳で突き合わせた。

そして海列車がゆっくりと動き出し、司法の島へと向かい出す。

 

「待ってろよハジメ!!師匠ッッ!!!!!」



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その"一言"のために①




どうも。
さぁ、ここからさらに二転三転と展開が変わっていきます。……多分(笑)
僕自身も、本当に上手く終わらせれるのか??と不安に思ってます………

ですけど、ここを上手く終わらせないとこの先が進まないので、みなさん頑張っていきましょうー!!

では、このタイトルの意味が分かるまでお付き合いください。
ではでは、どうぞ。





「は、はああああぁぁ!!!??

お前が、あの、"絶黒のハジメ"ッッ!!!」

 

「あまり声を出さないでくださいよ……

一応車両全体を"遮音"しましたけど」

 

ルッチ達が一時的にハジメ達のいる場所から離れたのでフランキーに大まかな話をした。これまで麦わらの一味いたことや、自分とロビンのこと、そしてこれからやろうとしていることを。

 

「ってか、それを俺に話していいのか??」

「一人ぐらい分かって行動してもらったほうが目的に近づきやすいので」

 

「ってことは、俺も巻き込まれるのかよ……」

「ここにいる自体でそうですよね」

 

「まじかよ……」

 

ハジメの考えに巻き込まれる。

それは知らなかったほうがいいんじゃないかと思うほどに…

ため息をつくフランキーにロビンがハッキリと

 

「光栄に思いなさい。お兄ちゃんの手助けが出来るのよ」

「おい。なんだこのネェーチャンは……さっきから上から目線で……」

 

「上よ。当たり前じゃない。サイボーグになると思考は低下するのかしら??」

 

「おいハジメッ!!!!」

「ええぇーと、多分フランキーみたいな人はあまりお目にかからないから、どう接すればいいか分からない……みたいな??」

 

「その通りよお兄ちゃん」

「絶対に嘘だろうがあぁ!!!!」

 

しかしロビンを改善させろと言われても変わるわけもないのでここはフランキーに折れてもらうしかない。

さて、ルッチ達の誰かがそろそろ戻ってくるだろう……

 

「とにかくフランキー。やりたいことがあるならやっていいですけど、こちらにも協力させてもらいますよ。そうすれば全て丸く収まりますから」

 

「………やるけどよ。それ丸く収まるか??」

 

「収まりますよ」

「当たり前じゃない」

「……混乱するだけじゃねぇのか……」

 

自信満々にいう二人にフランキーは不安しか残らなかった。

 

 

……………………………………………………

 

 

「ふぅ。これで一息つけるぜ」

 

一方後方車両。そこにいた政府の人間を全て蹴り倒したサンジ。山に積まれた者達はうめき声を上げている。

前方車両に連絡が行く前に一気に倒しきったので少し疲れた感じがして休憩しようと懐からタバコを取り出そうとしたところで

 

「チィッ!……習慣はこえぇな……」

「別に意地張らなくていいのよ。賭けに負けてからでも」

 

「ふざけんな。男が一度約束したら簡単に覆せるか」

「そう。私はどちらでも構わないけどね」

 

そういいながら意識ある政府の人間にふぅ~と息を吹きかける。その息は麻痺毒が複数含まれているのでしばらくは身体を動かせれないだろう。

 

「それでハジメのいるところまでこのまま突っ切っていくつもりなの??」

「車両の上からでもいいが…ここは正面からいく」

 

「どうして??」

「正面突破がカッコいいだけだ」

 

そういって次の車両に移ろうとするサンジ。

しかしレイジュはその答えでは納得いかないようで

 

「貴方が、そんな理由で選ぶとは思えないのだけど??」

「……っせえな……てめぇが、風邪引くと後が面倒いだけだ!!」

 

クソッ!!と言い捨てて前方車両に移り八つ当たりのように政府の人間を蹴りまくる。そしてレイジュはそのサンジの答えに満足いった様子で

 

「本当に、優しい子ね……」

 

微笑みながら弟の勇姿を眺め、終わったらどんなご褒美をあげようかしらと考え始めるレイジュだった。

 

……………………………………………………

 

「しかしなんじゃあの男は…」

「ニコ·ロビンに兄妹はいないはずよ」

 

ハジメの車両よりも前方車両にいるルッチ達。

こちらも任務の半分以上が完了し一息ついているところ。

そして話題となったのがハジメについて。

 

「なぁルッチよ。ワシもあの男を連れて行くことに賛同したが、どうしてそれを許した??」

 

「ニコ·ロビンのアキレス腱になると判断したまで。

まさか、逆鱗だとは流石に分からなかったがな」

 

「このまま連れて行くつもり??」

「連れていかなければ恐らくここにいる全員殺られるだろう」

 

「「「ッッッ!!!!??」」」

 

まさかの発言に誰もが驚く。

あのルッチが"殺られる"ということを言うなんて想像もつかなかった。それだけの人物。それだけの重要人物だと。

 

「ニコ·ロビンはただの考古学者じゃないというわけか??」

 

「これまで世界政府から逃げてきた女。

それが我々の認識だった。しかしあの女と相入れた瞬間に感じた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……」

 

「それほどか……」

「なら、尚更どうして私達に付いてくるのかしら??」

 

「理由は知らん。だが油断をするな。

一つ間違えば我々が簡単に消されると……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

簡単に終わるはずだった任務。

しかし捕まえたのは制御装置が簡単に壊れるほどに危険な爆弾だった。

 

……………………………………………………

 

 

「なぁ!まだ追いつかねぇのか??」

「んな簡単に追いつくわけないだろう。大人しくしてな」

 

ココロさんからそう言われて大人しく従うルフィ。

と、いうわけもなく…

 

「なぁ!まだ…」

「いい加減にしなさい!!!」

 

と、ナミからゲンコツをもらうルフィだった。

チーンと床に倒れているルフィを無視して現状の確認をし直す。

 

「じゃあんた達の所の職人が政府の人間だったのね……」

「あぁ…アイスバーグさんにあんなことしやがって…ッッ!!!」

 

「で、こいつらは何なの??」

 

ロケットマンの後方。

ソドム&ゴモラという巨大な馬のような水陸両用の魚がフランキー一家のハウスを引いて、車両に無理矢理繋げて連結して付いてきたのだ。そしていま車両の中で

 

「お願いしますわいな!!!」

「連れて行ってほしいわいな!!!」

「フランキーの兄貴を助けてぇんだ!!!頼むッ!!!!」

 

と、フランキーの子分達が連れて行ってと言っているが

 

「で、フランキーって誰よ??」

「知らねぇ」

 

「お前らの船を解体しようとしてやられた奴らだよ!!」

「お前らがッッ!!!!!」

 

「待て待て!!!!もうやらねぇし!なんなら後で謝罪でも罰でも受ける!!!だけど頼むからよ!!!」

 

 

「……"解体屋"だからな。まぁ、性分としてやるだろうな。

でもなんで政府がフランキーを……」

「分からない事が多いわね……どう思うベルメールさん??」

 

意見を聞こうと話を振るナミ。

しかしなんか真剣な表情でナミの声が届いていないようで、これは無理だと思い聞くのを諦めた。

すると代わりくいなが手を上げて話しだした。

 

「人は多いほうがいいわ。相手は世界政府だし」

「それじゃ私達がやるのはハジメさん、ロビンさん、そのフランキーさんという人の救出ですね」

 

「いやハジメと師匠はやろうと思えば勝手に助かるぞ」

 

と、意見を出してきたルフィ。

またこんな所で口を挟んで……と、思ったが、ナミもそこには確かに不自然があると感じた。

 

「………そうよね。大体お兄さんもお姉さんも…海軍に所属している身。戻ろうと思えば簡単に戻れる……」

 

「なのにわざわざあの世界政府に捕まる理由がないですよね」

 

「………あるのよ。捕まらないといけない理由が……」

 

すると、さっきまで黙って考えていたベルメールが言い出した。そしてその表情は暗く、何か覚悟を決めたような…とても見てて辛い気分になるようなもの……

 

「ベルメールさん。何か知ってるの!?」

 

「……これは、口止めされていたの。

重荷になるって分かっているからみんなには話さないって……

でも、そういうわけにはいかないわね……」

 

そして語りだすのは誰も知らないハジメとロビンの秘密。

そしてそれは世界を変えるほどの重大な秘密。

 

「ニコ·ロビン。彼女は世界政府が隠し続けている"空白の100年"に最も近い女だと認識されているの。幼いころから賞金をかけられて捕まえるほどに……

 

そしてハジメさんは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……"()()()()()()()()()()()()()()()()()()"()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さて、どうしようかな……)

 

昔のことを思い出しながら荒れた海を眺めるハジメ。

ロビンもあのことは知らない。知っているのは海軍のトップだけ。

 

隠し続けることはできないとは思っていたがこんな場面でそれを引き合いに出すとは思いもしなかった。

 

クザンが申し出た軍人の育成。

表向きはそうだが、ハジメはそれが近々行われるだろう()()()()()()()()に向けての事だと悟った。

 

いまハジメを呼び戻し公開処刑の日、来るだろう白ひげとの対決にハジメという切り札を出すつもりだと。

 

そしてそれにハジメは乗ることになる。

そこにはハンコックもいる。戦争に紛れて何をするか分かったもんじゃない。

 

だからこれは従うしかなかった。

元々ルフィ達を強くするためにワザと抜けるという計画はあったが、まさか本当に抜けないといけなくなるとは……

 

(やめどき、なのかな……あとはルフィ達自身に任せるか……)

 

これから出会う強敵。

少なくとも本編とは違い苦戦することは減るだろう。

だが、その本編に介入したことにより敵も強くなっている気がするのだ。

 

まるでルフィに合わせて敵が用意されているかのように……

 

だとするなら、頂上決戦はきっと悲惨な結果になる。

エースと白ひげ、この二人が死ぬだけではなく他にも犠牲者が生まれる可能性もある。

 

それを阻止したいが、いま動けばきっと後悔する。

そんな風に勘が働いているいま、動けずにいるハジメ。

 

だけど、それでも、まだ希望はある。

 

(任せたよルフィ……君の動き次第で、僕も覚悟を決める……ッッ!!!)

 

誰も知らないところでルフィが全ての運命を決めることになる。この救出劇は、世界にとっても大きな運命を決める出来事になるだろう。








あっ。余談ですけど"ワールドトリガー"の方はまだ時間がかかります。………やっぱり思いつきで書き始めるとこうなるんだよな〜


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その"一言"のために②




どうも。
もうすぐ梅雨ですね……
………特に書くことはなかったですね(笑)
また更新遅れるかもです。

それではどうぞ。




「クソが……なんだコイツは……ッッ!!!!」

「お前らはここで死ぬのだ!!!」

 

妙な技、というか麺を使って攻撃してくるワンゼにペースを崩されるサンジ。この車両に入ってそうそう訳の分からないことをいうワンゼにレイジュは呆れたようで『…私、ここだけ外から行くわ……』と勝手に車両の外へ出ていったのだ。

 

残されたサンジはレイジュを追いかけられないように足止めしていたが……

 

(食い物を粗末にしやがって……クソがッ!!!!)

 

ペースを崩された。というより怒りのボルテージがマックスに到達していることに気づいていない感じだった。

タバコを止めているサンジはすでにイライラが募りに募っている。だからこのバカな行為もムカついているのだが、それに対してどう動くのか?という考えが上手くまとまっていないのだ。

 

いわば混乱状態。

普通のサンジならすでに倒せている相手に苦戦しているのはそういう理由だった。

 

「こんな弱いやつが誰も取り戻せるわけないのだッ!!」

「……………あっ??」

 

しかし、沸点を超えれば後は沸騰するもの。

沸騰したものはエネルギーとなり溢れ出してくる。

 

「……誰が、何だって……??」

「お前じゃ何も救えないって言ったんだよ〜!!!!」

 

ワンゼは気づいていない。

静かに、静かに溢れ出すサンジの闘気を。

溢れ出したことにより頭が冴えてきたサンジは冷静になり、

 

「……ったく、こんな奴にここまで言われねぇと落ち着かねぇとか……無さけねぇな…」

 

「なにいってんだお前!?」

 

「おかげでてめぇを調理出来るって言ったんだよ」

 

そういってサンジは近くにあった包丁を2本手に取り、まるで曲芸のようにクルクルと包丁を手の周りで回しだす。

 

「やめとけ!!お前みたいな素人が扱えるもんじゃねぇよ!!」

 

「そうか。なら見てくれねぇか??

お前が言う素人が、どれだけの実力と覚悟を持っているかをよッ!!!!!」

 

……………………………………………………

 

「なぁ、なんか前から来るぞ」

「なんだありゃ……」

 

ロケットマンの前方から切り離された車両が一つ。

こっちに向かってくるというよりロケットマンが近づいている。

 

ワンゼと出会う前、敵と戦うのが面倒になったサンジが車両と車両の間の連結部分を蹴り壊したのだ。その車両三列分。敵の間を一気に駆け抜けたあと連結部分を壊し、慌てる敵の間を毒で麻痺させながら優雅に抜けてきたレイジュ。

 

そしてその三列分がこうしてルフィ達の前に現れた。

 

「困ったね〜ぶつかったらこっちも海に落ちるよ〜!!」

「ええぇ!!!落ちるのッ!!!」

「ニャー!!!!!」

 

「くそ!どうする!?」

「大砲でも打つか!!」

「バカ!!!線路が壊れたらどうする!!」

 

「ヤバいわいなッ!!」

「マズいわいな!!!」

 

 

 

ココロやチムニー、パウリー達やフランキー一家が慌てる中麦わらの一味は冷静に

 

「ゾロ、斬れ」

「了解。船長」

 

「「「いや、斬れって……」」」

 

そんなバカなことが、とツッコミを入れる一同。

しかし麦わらの一味は誰一人文句をいうものはいなかった。

 

「……くいな。奥の奴は任せるぞ」

「オッケイ。これには傷一つ、つかせないわ」

 

そういってロケットマンの外に出るゾロとくいな。

そこからハッキリ見える車両。このままぶつかれば互いに線路から外れてしまうだろう。

 

そしてここから見えないが()()、この線路を走っている者がいる。

 

なかなかの強敵。しかしそれを同時に相手するには距離が近すぎる。だからゾロとくいなは分けてやることにした。

 

そしてそれは向こうも気づいている。

 

「…………何か、来るッ!!!」

 

車両から飛び出し海列車を追いかけるT.ボーン大佐。

後ろから車両に乗っている仲間が静止を呼びかけるなか、突然後ろから強者の気配を感じた。

 

そしてそれは2つであり、そのうち一つが確実にコチラを捉えている。

 

「面白いッ!!!私に対して真っすぐくるかッッ!!!!」

 

目の前の車両。両者ともに邪魔なものだが。

 

「ーーー荒廃の世の自我(エゴ)。斬り裂けり」

 

ゾロの一つの刀を反対側、左側に一つ付け直し構える。

 

「ーー二刀流、居合い……」

 

そして車両とロケットマンが接触する瞬間、

 

「"羅生門"ッッ!!!!!」

 

車両のど真ん中から綺麗に左右に切り分かれた。

中にいた海軍達はそれは驚き両サイドで絶叫しながら海へ落ちていく。

 

そんな中、斬られた車両を利用してロケットマンの前を走るくいな。そしてそれを向かい打つ為に駆け出すT.ボーン大佐。

 

「曲がったこと大嫌い……"大鳥(オオドリー)"ッッ!!!!」

 

凄まじい斬撃が周りの車両を切り裂きながらくいなに迫る。

 

「ーー駆けるは、孤高たる空の王………」

 

襲う斬撃。しかしくいなはそれをまるで最初から分かりきったかのようにギリギリで交わし、いなし、斬撃をすべて弾き飛ばした。

 

(すべて、弾き飛ばした、だとッッ!!!)

「………一刀流、居合い"刀化"……」

 

そしてその全てがくいなの一振りの刀だと見えていたのたが、目の前に近づいていたくいなは"人"ではなく、まるで鋭い"刀"のようで…………

 

「"龍流(りゅうりゅう)爪走(そうそう)"ッッッッ!!!!!!!」

 

T.ボーン大佐の刀、鎧全てを切り裂き沈めた一撃。

線路に当たらないように斬撃の軌道を上部へ向けていたので、飛んでいった斬撃は空の雲を切り裂き一瞬だが晴れ間が出てきた。

 

それの光がゾロとくいなに当たり、まるで勝者を祝福するかのような幻想を見せた。

 

……………………………………………………

 

 

「…………あれ、くいなかしら??」

「いや、よく分かるね……」

 

「ふふふ。それだけ見てきたのよ」

「感心するよ。僕じゃ分からないから」

 

「大丈夫。お兄ちゃんは私だけ見てればいいの」

「そのカッコいい捨てゼリフ。ベルメールさんやハンコックの前では言わないでね」

 

「ってか、俺の前で言うんじゃねえ!!!!!」

 

車両から見えた一瞬の晴れ間。

それがくいなのものだと分かったロビンに素直に驚くハジメ。

そしてそんな話でイチャイチャしている二人に腹がたったフランキーがついに爆発したのだ。

 

「なんだお前らッ!!!捕まっている態度じゃねぇだろうが!!!」

「捕まってないわよ。ほら、手錠もないわ」

 

「そ、それはそうだがよ……連行はされてるだろうが…」

 

確かにハジメにもロビンにも手錠されていない。

というか手錠の意味がない。海楼石の手錠でも能力が使える二人にそんなものは意味がない。

 

もちろんそんなことルッチ達は知らないがこの海の上で、さらに抵抗しない二人に手錠はいらないとつけていないのだ。

 

「なら、お前らなら……オレをここから……」

「やらないわよ。そんなこと」

 

「何か、要求があるのか??」

「いえ。()()()()()()()()()()()()()

やるのはあの子達。助けてもらいたいならそうすればいいわ」

 

と言って、フランキーとの会話を終えるロビン。

まだ助かる見込みはあるとはいえ、どうしてこんな状況でも抜け出そうとしないのか………

 

「……それが、さっきの作戦と関係があるのか??」

「そうだね」

 

「一歩間違えれば…二度と会えないぞ、あいつらと」

「それはないけど、まぁ、会いづらくはなるかな。

その時はフランキーもこっち側で手伝ってもらおうかなー」

 

二度と戻れなくなる。そう考えていたのにこの二人は問題ないと平然としている。二度と戻れなくなる場所だというのに……

 

「……何者なんだお前らは……??」

「うーーん……まぁ、後で話すよ。それよりお客様が来たから」

 

「はぁ!?何言って……」

 

と、言っているそばから後方車両に繋がる扉が開いた。

そしてそこから現れたのはずぶ濡れになっている。

 

「……悪いけど、タオルないかしら??」

「持ってたよ。風邪を引かせてしまうと後でサンジに怒られそうだから用意してて良かったよ」

 

一足先にハジメ達の元へたどり着いたレイジュだった。

 

……………………………………………………

 

皮剥作業(エプリュシャージュ)ッッ!!!」

「ぎ、ぎゃあああああぁ………アレ、切れてない??」

 

「皮むき作業さえ愛情が欠ければマズくなる……

そして、包丁は食材を切るものだ。覚えておけ」

 

一瞬の出来事だった。

ワンゼのヌードルによる鎧を一瞬にしてパスタ状の長さへ切り揃え武装を解除させた。

 

これまでいくつもの(食材)を相手しただろうか。

その度にどうすれば一番食材に対して最善の方法かを考え扱い、調理してきたのだ。食べ物を粗末にするやつに負ける気がしないと内心心を燃やしてしたのだ。

 

そしてワンゼまだ抵抗を続け、近くにあった包丁を何本も手にとってはサンジに向けて投げ出した。

サンジにとってはそんなもの簡単に避けられる。

しかしあえてサンジは避けることなく全てその手で受け止めた。

 

「なっ!?」

「………てめぇ、料理人の"命"を何だと思ってやがる…ッ!!」

 

「曲芸が出来たぐらいで調子に乗るな!!!

秘伝、麺切り毒包丁ッッ!!!!!!」

 

「つくづく腐ってるなてめぇは……ッッ!!!!!」

 

そして怒りの限界を迎えたサンジの脚から炎が……

一瞬怯んだワンゼだがどうせ見掛け倒しとふんで毒包丁をサンジに向けて振り下ろした。

 

サンジはそのままその毒包丁へ向けて脚で受けようとする。

ワンゼの毒包丁は床を溶かすほどの猛毒。触れれば脚を失う可能性がある。

 

しかしサンジは躊躇わずに毒包丁を蹴った。

燃えるその脚が、その炎が毒を一瞬にして蒸発させ、その煙さえも焼き尽くした。

 

「なっ!!!??」

「その包丁もろとも、綺麗に浄化してやるよッッ!!!!」

 

そして炎は毒包丁さえも溶かしワンゼに向かう。

胴体、手、脚、顔全てに強烈な脚技と炎が襲いかかる。

 

毒抜き(デトックス)ショットッッッ!!!!!!」

 

蹴られた箇所からワンゼの丸い身体がドンドン細くなっていく。炎による蹴りがワンゼの脂肪を燃やし痩せさせたのだ。そして全て蹴り終えて吹き飛んでいくワンゼの身体はドシッとした丸い身体ではなく細い身体になっていた。

 

ワンゼの身体は車両と車両を繋ぐ扉を次々と貫通していく。

そしてワンゼが止まった車両にはルッチ達が……

 

「………どうやら、ネズミが紛れこんでいたようだ」

 

突然のことでも驚かずに座っているCP9。

そしてこの車両の後方にはハジメ達もいて

 

「うわぁー派手にやったなー」

「やるなら車両全抜きしないと、50点ね」

「貴女基準でやると満点は取れないわね」

「おいおい…何が起きてるんだ……??」

 

こちらも特に驚きもしてなかった。

それどころかレイジュもハジメ達の座っていた座席に座っているのだ。和みすぎている。

 

「おいレイジュッ!!!何してんだお前はよ!!!」

「ここでハジメ達ではなく私なのね。ふふふ」

 

「何喜んでんだよ!!!」

「喜ぶわよ。弟がこんなにも姐思いなんだから」

 

「ごちそうさまです」

「てめぇも普通にやってんじゃねえよハジメッ!!!!!!」

 

 

 



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その"一言"のために③




どうも。
どうやら来週ぐらいから梅雨入るかな〜
入ってもいいけどとにかく災害級だけは勘弁してほしい。
毎年この時期が怖くなっているから嫌なんだよなー
はぁ……普通の梅雨を過ごしたいよーー!!

では、どうぞ。






「ったく、本当にお前がいると締まらねぇな……」

「それはお兄ちゃんに対しての暴言なら、殺すわよ」

「サンジをヤルなら、私が相手するわ」

「はいはい。皆さん落ち着きましょうね」

 

侵入してきたサンジとレイジュ。

ついさっきまで緊迫していたというのにハジメとロビンに会っただけで雰囲気がガラッ変わった。

 

直ぐ側にCP9が控えているというのに……

 

「ずいぶんと余裕だな侵入者」

「こっちは二人に逢えればほぼ目的を済ませたようなもんだからな」

 

「ここから逃げられるとでも思ったか??

私達がどれ程のものか知って……」

 

「関係ねぇな。この二人に比べれば…他は雑魚だ」

 

その瞬間カクが蹴りを、嵐脚を放とうと脚を振りかざした。

しかしそれと同時にサンジも蹴り出して、カクの蹴りを止めた。

 

「ほう。なかなかやるようじゃな」

「てめぇ……いま、何するつもりだった!?」

 

「初見で見抜くとはな……じゃが…」

 

今度は横からルッチがサンジに向けて指銃を放つ。

これには避けることが出来ずに、辛うじて急所だけは外せた。

 

「ガッ!!」

「邪魔をするな。一介の海賊がどうにか出来る次元じゃない」

 

もう一度指銃を撃ってきそうなルッチを察知したサンジはすぐに後方へ飛び退いた。受けた傷は腹部ではあるが動けないほどにダメージは負ってはいなかった。

 

「チィッ。ずいぶんと妙な技を使いやがる……」

「あれは"六式"よ。海軍でも上位の人しか使えない」

 

「………つまりはあの二人も使えるのか??」

「使えるけど、使う必要がないでしょうね……」

 

もちろんその二人はいまルッチ達の後方にいるハジメとロビン。

未だに"仲間"だと信じているサンジは相手に情報を与えないように名前は出さず、レイジュも言う必要はないとサンジに乗っただけだった。

 

「そこの女は知っているようだな。なら諦めろ。

すでにニコ·ロビンは我々の手にある。そしてお前らではこの女の"闇"に飲まれて破滅するだけだ」

 

「………とっくに破滅してるようなもんだ。だから返しやがれ」

 

睨み合う両者。

そしてロビンはその二人の言葉に文句を言ってやろうとしていたがハジメに止められていた。

 

そんなカオスになりそうな状況に、追い打ちがかかる。

 

突然車両の天井が落ちてきたのだ。

爆発でもなく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()………

 

そして粉塵が舞う中、その中から2つの影が現れた。

 

「その前に…俺たちがお前らを吹き飛ばすんだよ」

「キャハハハ。ぶち潰してあげるわ」

 

そこに現れたのはメリー号に乗っていた時の顔ではなく、昔の、殺し屋をやっていたときよりも酷く怖い表情をしたバーストとキロロだった。

 

「お前らッ!!」

「まだネズミがいたと思ったが、とんだ期待外れ………ッ!!!?」

 

サンジ達は驚き、ルッチは鼻で笑うほど危機感がなかったが、次の瞬間咄嗟に避けたバーストのパンチが車両の壁を爆発させ抉り取った。

 

まるで違う。

バロックワークスの時の二人とはまるで違う。

別人のように変わった二人が、キロロが動き出した。

 

用があるのはハジメとロビン。

だから目の前にいるCP9が邪魔だったために目の前のカクを倒そうと持っていた傘で突きを放つ。

 

これも見た目は普通の突き。

しかしカクが紙一重で避けれる瞬間に一気にスピードが、"重み"が増した突きがカクの脇腹を掠めた。

 

「クッ!!!!」

 

そしてカクの背後に突かれた突きは、壁に綺麗な穴が空いていた。ヒビ一つ入らない程に綺麗な穴が……

それはどれ程の突きが、スピードと威力がなければ出来ない達人の領域のもの。

 

それを見たカリファが上段蹴りをキロロへ振り抜く。

しかしまるでふわふわ漂うホコリを掴めないようにふんわりと避けたキロロ。そのまま後方バク転をしながら蹴り上げていたカリファの脚にキロロが蹴りを放った。

 

「"重さのある蹴り(ウェイトキック)"!!」

「キャアァッ!!!」

 

とっさに鉄塊を使ったので大事には至らなかったがカリファの身体は簡単に吹き飛ばされハジメ達よりも後方へ吹き飛ばされた。

 

ただのキックじゃなかった。

蹴りが当たる瞬間に脚だけに重みを増やしたのだ。

スピードに重さが加われば衝撃が増す。

さっきの突きも当たる瞬間に傘に重さを増やしたので強烈な一撃となった。

 

逆に避ける時にゼロに近い体重にすれば空気の流れだけで避けられる。当たったとしても重さのないために衝撃は逃される。

 

これが、ハジメ達と共に過ごした時間で編み出した技術。

 

「"重さ"の前に攻撃も防御も無意味よ」

 

何処かで聞きたことのある似たようなフレーズだったが、そんなことを気にしている余裕はここにいる者達にはなかった。(ある二人は除く)

 

侵入したもう一人。

それを対処するルッチもまた困惑するほどにバーストに手を焼いていた。

 

「鉄塊ッ!!!!」

「"爆発砲台(ボム·キャノン)"ッッ!!!」

 

バーストの膝が爆発を起こしそのパンチが砲台から放たれた玉のようにスピードと威力を増した。そしてルッチに当たる瞬間にも爆発が起きルッチの身体は後方へと鉄塊そのままに押し飛ばされた。

 

キチンと鉄塊は効いている。

なのにルッチの両手と胸には衝撃のダメージと爆発の焼けた匂いがする。

 

(……なんだ、コイツらは……)

 

考える暇もなくバーストの両足が爆発し一気にルッチへ接近。

その間にブルーノが立ちはだかるのだが

 

「邪魔だ!!"叫びの爆発(エコーボム)"ッッ!!!!」

「ガバッ!!!!」

 

邪魔と言葉と技名を叫んだ声が聞こえた瞬間にブルーノの身体が爆発した。

至近距離、そして相手が自分に集中し、周りが音が聞こえていない状況のみ発動する技。

 

一対一のみでしか使えない技だが確実に当てることも出来て全身を爆発させることのできる技だが、一度見破られれば周りを警戒するだけで技が当たらないというもの。

 

それでも進行の邪魔なブルーノを吹き飛ばしたバーストはそのままルッチへ攻撃を仕掛ける。

 

……………………………………………………

 

「な、何が起きてるんだ…??」

「ここはあの子達に任せて、二人を連れて行くわよ」

「おいレイジュ!?」

 

「知っているでしょう。もうあの子達は船を降りたの。そして狙っているのはハジメとロビン。どのみち狙われる羽目になってもここじゃ狭すぎるわ」

 

レイジュの言い分は最もだ。

そもそも仲間としていたわけではない。

ハジメとロビンに強制的に船に乗せられていただけ。

そしてその二人がいまハジメとロビンを狙っているなら……

 

「……分かった。おい!てめぇはどうする!?来るのか!!」

「おう!ついて行かせてもらうぜ!!」

 

フランキーも一緒にまずはここから離脱する。

方針が決まったところで白熱する戦闘の中にレイジュが

 

「"困惑の毒霧(ピンクミスト)"ッ!!!」

 

毒の効果が薄いが目くらましになる毒を吐いた。

一気に広がる毒は口と鼻を布で抑えれば無効化出来るもの。

サンジはポケットからハンカチを取り出し口元を覆い、フランキーもとっさに椅子の革を剥いで口元を覆った。

 

そしてバーストやルッチ達は突然の毒霧にやられてむせて、吸い込んだ毒が軽い混乱作用が働き動きを鈍らせた。

 

その間にハジメ達の元に来ると

 

「これ、僕達じゃなかったら危ないよ」

「そうよ。やるなら"魅惑"にしなさい。お兄ちゃんを落とすから」

「絶対にするなよ」

 

「軽口はいいからいくわよ」

 

相変わらずのペースを保つ二人を強引に引っ張り、後方車両へ移る。そして最後にサンジが連結部分を蹴りで破壊して後方車両は切り離された。

 

動力を失った後方車両はゆっくりとスピードを落とし、前方車両はどんどん突き進む。これだけ差があれば追いかけるのは難しいだろうと確認したサンジは車両へと乗り込んだ。

 

しかし次の瞬間、その前方車両から爆発音がして再び前方を見る。すると車両の大部分が吹き飛び、内部が露わになる状況が見える中で、煙の無効で見えた光景が……

 

「キ、キロロちゃんッッ!!!!」

 

何者かに片腕を斬られたキロロの姿が……

その右腕は、左手で抑えられており、サンジから見える位置ではその右腕の断面図は見えないがハッキリと足元に切り落とされた右腕があった。

 

煙で見えない影がキロロを蹴り飛ばし海へと落とす。

近くにいたバーストがその者に向かおうとするが、その者が腕でバーストの胸を突き抜いてしまった。

 

「バーストッッ!!!!!」

 

そしてキロロと同じように海へと落とされたバースト。

逃げるために距離を開けたというのに、それが二人をこんな風にさせてしまったと後悔する中

 

「な、なんだテメェはッ!!!!」

 

今度は車内からフランキーの声がして振り向くと、そこには空間が切り取られたような穴からブルーノが現れてハジメとロビンをその空間へ入れ込む様子があり、そしてフランキーを指銃で大人しくさせて同じ空間に入れた。

 

近くにいたレイジュはいつの間にか離され、攻撃されて身動きが取れない様子が見えたところで

 

「これで分かったろ。相手が悪いことが」

「二人を返しやがれッ!!!」

 

一気に近づこうとするサンジ。

しかし一足先にその空間が閉じてしまった。

 

「く、クソがあああああああああッッ!!!!!!」

 

あと一歩というところで、奪われた。

いや、同じ船に乗っていた者を失ったことは、マイナスとなりサンジに深い傷を負わせてしまった………

 

……………………………………………………

 

「……なぜ、逃げようとした??」

「逃げてないよ。引っ張られただけ」

 

「お前らなら抵抗出来たはずじゃ」

「余計な運動はしたくないの」

 

「…………まぁ、いい。これで追いかける術はなくなった。

このまま司法の塔に行き、お前らを引き渡せば全て終わる」

 

逃亡の疑いはあったがどのみちここは海の上。

逃げるすべもないならと、さっきのことは不問として大人しく席につけと言いつけるルッチ。

 

それに素直に従うハジメとロビンを確認して、フランキーをむりやり座らせた後、今度は同じ車両の席に付いたCP9。

 

まもなく司法の塔へ到着する。

これで任務が終わると考えているCP9だが

 

(ここからが正念場だ……)

 

この先の展開。

きっと知っている本編ては違うことになる。

それがどう作用し、そしてルフィ達をどうさせるのか……

 

全く本編と違うロビン。

同じ船に乗っていた元バロックワークスの死亡。

そしてなにより、ここにいることがおかしいハジメ(異物)

 

ハジメが求める展開にならなければこの先の"ワンピース"の話が根本から覆る。

 

 

これまでやってきた全てをルフィが、麦わらの一味が出し切ることが出来ない限り、この"ワンピース"はここで終わりを迎えることになる。



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その"一言"のために④




どうも。
今回は後半の話がちょっと時間軸が違います。
のちのち出せばいい話なんですが、ここに入れたほうがやりやすいかな??と思って書いてますので混乱されないように。

次回からまた元に戻りますので。よろしくです。
では、どうぞ。





「う、ウソだ……ウソだと言えサンジッッ!!!!!」

「………………」

「本当よ。私も見ていたのだから」

 

後方から追いかけてきたロケットマンに拾われたサンジとレイジュ。そして何があったのか説明したところでルフィがキレてサンジの胸ぐらを掴んだ。

 

否定しろと要求するルフィに対してサンジは無気力になっており、代わりにレイジュが説明をしだした。

 

「爆発が起きたあと煙で相手は見えなかったけど、キロロは右腕を切り落とされて、バーストは胸を突かれて二人とも海に落とされたわ」

 

「…………ッッ!!!!!」

「ダ、ダメよルフィッ!!!!!!」

「離せッ!!!!!」

 

海に落ちたと聞いたルフィはすぐに海に飛び込もうと動き出した。それをすぐにナミが押さえ、続けてノジコやくいながルフィを止めに入る。

 

「まだ生きてる!!早く助けねぇとッ!!!!!」

「無理よ!!こんな波で二人を見つけるなんてッ!!!!」

「それに二人とも落ちる前に重傷なんです!!これじゃ……」

 

「ふざけんなッ!!!!助けにッ!!!!!」

 

するとドン!!!と車内に響く音がした。

そこへ視線を向けるとゾロが酒瓶を床に叩きつけていた。

 

「ルフィ。言ったはずだ。あいつらは仲間でもなんでもないってな」

「だ、だけどよ……」

 

「お前はハジメとロビンを連れ戻すんだろうが!!!!!

例えここにいる奴らが死んだとしてもお前は二人を連れ戻さないといけないことを理解しろッッ!!!!!!」

 

「ッッッ!!!!」

 

厳しいことをいうゾロにルフィは何も言えなかった。

いまやるべきことは二人を連れ戻すこと。

仲間が危険な目にあっても、例え死んだとしても、船長であるルフィが揺らいだら何も達成出来ない。

 

それが船長という立場だと改めて思い知らされた。

 

「………あと、コック。テメェはもうここで降りろ」

「ッッ!!!!」

「ちょっとゾロ!?」

 

「他の奴らもだ。

………俺達が相手にするのはそういう組織だ。世界を敵に回すというなら何かを失う覚悟をしないといけねぇことぐらい分かってるはずだ………」

 

ゾロの言葉に誰もが黙ってしまった。

覚悟はしていたつもりだった。しかしその言葉に足りなかったと悟ったのだ。

 

そしてその言葉はゾロ自身にも向けられていた。

 

(…………絶対に、取り戻す……ッ!!!!)

 

ここまで奪われなかったことによる覚悟の無さに嫌気がさすゾロは改めて覚悟を決めた。世界一の大剣豪。そのためにも見捨てる覚悟を………

 

「…………嫌だ…」

「ああん??何言ってやがるルフィ!?」

 

突然の言葉に、今度はゾロがルフィの胸元に握る。

 

「嫌だ嫌だで済む世界じゃねえんだよ!!

相手は世界政府だぞ!分かってんのかッッ!!!!」

 

「嫌だ!!!もう誰も失わせねぇ!!!!!」

「まだそんな甘いことを……ッッ!!!!!」

 

「そんな事が出来なくて海賊王になれるかああああああああああああああああぁぁぁぁッッ!!!!!!!!!」

 

 

ロケットマン全体に、周りの海にも響くような大声。

その覚悟を、誰も失わない覚悟を、ハッキリとゾロに、みんなに向けた。

 

そのルフィの目は本気で、そして確かに覚悟を決めた目だ。

それを見たゾロは一瞬ポカーンと呆けてしまったが、

 

「…………了解。船長。だったら見せてみろ!!!」

「おう!!!」

 

その覚悟に心を動かされたゾロは、みんなは、ここで改めて誰も失わない覚悟を決めた。

俯いていたサンジも立ち上がり両手で頬を叩いて

 

「………やってやる……ッ!!」

「そうね。やりましょう」

 

絶対に犠牲を出さずに二人を連れ戻す覚悟を決めた。

そんな奴らを乗せたロケットマンはまもなく司法の塔がある島へと到着する。

 

……………………………………………………

 

「だ、誰だコイツはッ!!?」

「始めまして。ハジメです」

「マジで誰だあッ!!?」

 

これはルフィ達が司法の塔にたどり着いた後の話。

 

いまいるのは司法の塔。

ハジメ達はすでに"正義の門"の一歩手前まで来ていた。

その正義の門を潜ればルフィ達がハジメ達に追いつくことは出来ない。

 

そんなギリギリのラインの前。

この司法の塔でCP9が全員揃ったところで、ロビンとフランキー、そして関係ないハジメを見たところでスパンダムが大声を出したのだ。

 

「一緒に付いてきたいというからの」

「それで連れてくるかフツー!?」

 

「いや、麦わらの一味の一味の一人を殺してまで付いてきたいと言ったからの」

 

「なっ!?……マジか……

……そんな面白いこと早く報告しやがれッ!!!」

 

ナッハハハ!!!とバカみたいに機嫌が治るスパンダム。

本編を知っているハジメは実物のスパンダムを見て思った。

 

「小物中の小物かよ……」

「あぁッ!!?お前…俺がどれ程偉いか知ってるのか、ああん!?」

 

「大将より偉いなら頭下げますけど??」

「なっ!?………お、同じぐらいだ!!!分かったかッッ!!!!!!」

 

「…………………はぁ……」

「舐めてるのかテメェはッ!!!!!」

 

短気なスパンダムはハジメを殴ろうとするが、もちろんあの御方が黙っているわけがない。

 

「死にたいのね。分かったわ。殺してあげる」

「ぎゃあああ!!!か、海楼石…、なんでッッ!!!!!!」

 

「そんなものでお兄ちゃんに対する愛が消えるわけないでしょう」

 

「いや。そんなこと言ってないから」

 

両手両足を決められ、折れるギリギリを攻めるロビン。

もちろんそれをハジメが止めるわけもなく眺めている。

 

「言っておくけど。僕に権利とか暴力とかで抑えられないから。そんなことしたらロビンが黙ってないし、ここにいる全員相手にしても……余裕だよ??」

 

「ル、ルッチッッ!!!!!!」

 

「………悪いが長官。そいつの言うとおりだ。勝てないことはしない」

 

「なっ!!!!!!??」

 

あのCP9が束になっても勝てない。

そんなことありえないと無理やり顔を動かしてルッチの方を見ると、あのルッチが冷や汗をかいているのがハッキリ見えた。

ほかのメンバーも平然としている顔をしているが全員冷や汗をかいている。

 

「君は特に弱いからね。君とフランキー以外に()()()()()()()()()()()()()()。これで分かってくれたかな??」

 

「な、何が目的だッ!!!!!」

 

「僕とロビンを予定通り連れて行ってよ」

「…………はぁっ!!!??」

 

その訳のわからない要求に顔がおかしなことになっている。

まぁ、気持ちは分からなくはないけどね。

 

「連れて行ってもらうためにわざわざ一人消したんだよ。それ以外目的があるとでも??」

 

「な、何を企んでるんだッ!!!!」

 

「例えあったとしても連れていくしかないでしょう。

それともそんな子供のお遣いみたいなことも出来ないの??

よくそれで長官なんてなれたね。返上したら??」

 

と、煽ってみれば面白いように食いつくのがバカのやること。

 

「や、やってやるよ!!!後悔しても遅いからなッッ!!!!!」

「口が悪いわ。言い直しなさい」

 

「ぎゃああああ!!!!!!や、やらせてもらいますッッ!!!!!」

 

分かればいいのよ。と、やっと拘束を解いたロビンはこの部屋で一番いい椅子にハジメを座らせて、その上にロビンが座った。

 

(な、なんだコイツらは…どうして俺に従わねぇッッ!!!!!)

 

今まで歯向かってきたものは多かったが、こんなにも屈辱を与えられたのは初めてだと、スパンダムは業を煮やしていた。

 

(今に見てろよ!!絶対にギャフンと言わせてやるからなッ!!!!)

 

…………これがフラグという。

決意を新たにしたスパンダムはカクとカリファを呼びつけ

 

「お前らに、コレをやろう」

「悪魔の実…ッ!!」

「それも2つも……どうしたんじゃ、これ……」

 

「俺には色々コネがあるからな。万が一に備えて食っておけ」

 

説明ではなんの実なのかは分からない。いわばギャンブル要素の多いものだった。それでも食べれば間違いなく強くなる。

ふたりともほぼ躊躇わずにその実を食べだした。

 

「………うっ!!」

「これは、想像以上だわい……」

「残さずに食えよ。もったいないからな〜」

 

その様子を見て笑うスパンダム。

どこまで言っても器が小さく見るに耐えない。

 

だからだろう。

ハジメがフッとポケットからあるものを取り出してスパンダムの方へ投げた。そしてロビンの手がそれをキャッチし

 

「な、なんだコレっ…、って!!おい!!!まさか……ぅんぐッ!!!!」

「余ってたやつ持っていたからあげるよ。残さず食べてね」

 

そう。持っていたのは悪魔の実。

それをロビンの手が無理矢理スパンダムの口を開けてその実を丸ごと口へと入れ込んだのだ。

 

抵抗するスパンダムだが、ロビンの魔の手から逃げれるわけもなく…………

 

「く、く、く、食うっちまったじゃねえかああああッッッ!!!!!!」

「ようこそ。海に嫌われた人類の進化の先へ」

 

慌てふためくスパンダムを見て笑うハジメとロビン。

それを見たカリファは思った。本気で狂っていると……

やっていることがハチャメチャ過ぎて目的が全く分からない。

それでも間違いなく自分達はそれに巻き込まれたと理解し、早くこの任務が終わって欲しいと切実に願った。

 

 



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その"一言"のために⑤




どうも。
いや、すみません。どうやらこの前の更新一つ飛ばしてますね。
ちょっと間違ってますのでここから読み直して下さい。
よろしくどうぞです。

では、どうぞ。





「な、なんだあの島はッッ!!!!??」

「あれが司法の塔だ。いいか麦わら、もう一回確認するぞ」

 

少し前パウリーから司法の塔の話を聞いていた。

しかしこのルフィにもう一度話したほうがいいと本能的に感じたのだろう。同じことをもう一度いうことにした。

 

「今いるのがこの正門前だ。

で、正門から"本島前門"、"裁判所"、"司法の塔"。そして"正義の門"の順番がある。恐らくだがあいつらはいま司法の塔にいるだろう。そして正義の門を潜ったら最後、連れ戻すことは出来ねぇからな」

 

「本当にギリギリじゃねえか……その正義の門を潜ってなきゃいいんだがな……」

 

「そいつはもう運次第だな……」

「うるせぇ!行くぞおおぉ!!!」

 

「向かってんだから静かにしろ!!」

 

ゾロに怒られても尚、うおおお!!と気合いの入るルフィ。

指揮が上がるようにと煽ったが、少しやりすぎたと後悔するゾロだった。

 

「敵地に乗り込むんだ。どれだけ敵がいるか分からねぇぞ…」

「んなもん関係あるか」

 

「だな。斬るだけだ」

「あぁ。蹴るだけだ」

「ぶん殴ってやる!!」

 

頼もしい言葉だがそれでも不安があるパウリー。

何せ相手は世界政府。どんな強者がいるか分からない。

そして間違いなくあのルッチ達もいるだろう。

 

「なら、あいつらに"クビ"だと言っておいてくれ。

俺らはお前らを司法の塔まで届けてやる!」

 

勝機があるとするならコイツらだけだ。

そう直感したパウリーやフランキー一家はルフィ達の為に援護すると決めたのだが………

 

「よし!先に行ってくる!!」

「無茶するなよ」

「少しは残しとけ」

「お気をつけて」

 

「へぇ??な、何をする気だ……??」

 

なんか当たり前のように見送るルフィ。

その行動に何をする気か分かっていないパウリー達だが、すぐに理解した。

 

ルフィはロケットマンの上部へ上がり、その煙突に手をかけて真っ直ぐ後方へ下がっていき

 

「ゴムゴムの〜ロケットッッ!!!!」

「「「「なあッ!!!!!!??」」」」

 

勢いよく飛び出したルフィはそのまま前方へと飛んでいき正門を超えて行ってしまったのだ。

 

「な、なんで行かせたんですかッ!!!??」

「危険だわいな!!」

「危ないわいな!!」

 

「あんなの自殺行為だぞ!!!!」

 

言いたいことは分かる。

それはルフィのことを知らないから言えることであり

 

「問題ねぇよ」

「この中ならルフィが一番"対大人数"の相手がうまいからな」

 

……………………………………………………

 

「続けて……ロケットッッ!!!」

 

正門を超え、勢いそのままに本島前門に手をかけてロケットで飛んでいった。その際にいた敵は無視をして飛んでいったために向こうも「な、なんだ…ったんだ……」とびっくりしていた。

 

そして裁判所がある本島上空からルフィは、真下のいるウジャウジャいる敵を見てあれを使ってみようと思った。

親指から空気を入れて全身を、胴体を大きくさせたあと自分の身体に両腕をぐるぐると巻き付け、そして一気に引いた。

 

「ゴムゴムの〜」

 

それによりぐるぐると勢いよく回転するルフィはそのまま着地するとそれはまるで

 

「"巨大(ビッグ)独楽(ごま)"ッッ!!!!!」

「「「「ぎゃあああああああぁぁぁぁッッ!!!!!」」」」

 

巨大な独楽が回っているよう。

それが高速回転で回り、敵を吹き飛ばしたり弾き飛ばしたりして一気に敵を一掃する。

 

そしてランダムで動くために敵もどこに逃げたらいいのか分からずにドンドン巻き込まれていく。

 

「とにかく距離を開けろッ!!!止まった所で一気に仕留めるぞ!!!」

 

同じ服を着ている世界政府の人間。

誰が位が高いのか分からないがそれでもその中の一人がそう周りに言い聞かせると、とにかくルフィから距離を取り当たらないようにしだした。

 

そしてちょっとずつ回転の勢いが落ちてくるとじわりじわりとルフィに近づいてくる。

 

しかしルフィもそのままなわけもなく、回転した状態で手を伸ばして建物に掴まる。するとその伸ばした手に身体が巻き付き、建物の方へと巻き付きながら近づいていく。

 

「ま、まさか……た、退避ッッ!!!!」

 

気づいたときには遅かった。

建物にピッタリとくっつく前に手を放すルフィ。

すると今度はルフィの身体を中心にまた回りだした。

それも今度は手がドンドン外へと伸びていくのだ。

 

「"回転(ロータリ)(カッター)"ッッ!!!!!!」

「「「「ぎゃああああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!」」」」

 

建物さえも伸びていく手が破壊していき、ルフィから半径200メートルは真っ平らになってしまった。

そして回転が止まると同時に伸びた手が戻ってきて

 

「よしッ!!大分減ったなー」

 

たった2回の攻撃で裁判所のある本島の半分近くの敵をなぎ倒してしまったのだ。

 

……………………………………………………

 

「おいババァ!!このままだと正門にぶつかるぞッ!!!」

「当たり前だ。この汽車にブレーキなんぞついてないよ」

 

「ふ、ふざけんなッ!!!」

「死んじゃうわいなッ!!!」

「嫌だわいなッッ!!!!」

 

しかしブレーキもないのに止まることなんて出来ない。

するとゾロとくいながロケットマンの外へ、続けてサンジとベルメールも続けて出ていった。

 

「おいおい……まだなにかする気かッッ!!!」

 

「いいから何かに掴まったほうがいいわよ!」

「ナミの言うとおりよ。ベルメールさんやる気だわ……」

「い、いけぇー!!!!」

 

「おいおい…マジで何する気だ……」

 

心配というか不安がっている車内とは裏腹に、ロケットマンの外に出た四人は相当気合いが入っていた。

 

「門は任せておいて」

「しくじるなよ弱虫コック」

 

「あぁッ!!!!??真っ先にテメェを三枚おろしにしてやろうかッッ!!!!!!」

「上等だあ!!テメェのヘナチョコな包丁捌きで出来るならな!!!」

 

「こんな所までいて止めてちょうだい……ほら、来るわよ」

 

いがみ合うゾロとサンジをくいなとベルメールが宥める。

本当に息の合わない二人だが、こういうときはしっかりと…

 

「三刀流……"鋼羅(こうら)(ざん)"ッッ!!!!!」

 

門に届いていない状態で刀を振るうゾロ。

その斬撃が全て飛び、目の前の扉を切り崩した。

 

「「「「ええええええぇぇぇぇッッ!!!??」」」」

 

その剣技に驚くパウリーやフランキー一家達。

しかしそれで終わるわけもなく

 

「塩分はそこそこに………"塩振り(ソプードレ)ショット"ッッッ!!!!!!!」

 

ゾロと同じく斬られた扉の残骸をその脚が届く前に空振りのように蹴るサンジ。その一つ一つの蹴りの風圧が、威力が、そのまま瓦礫に当たり吹き飛ばしていく。

 

そして正門と本島前門の間に控えていた世界政府の人間達にドンドン瓦礫が襲いかかっていく。

 

「「「ぎゃああああああぁぁぁぁッッ!!!!!」」」

「な、なんだ!!何が起きたッッ!!!!??」

 

「せ、正門が破られました!!!そしてその正門の瓦礫で被害がッッ!!!!!」

 

「今すぐに賊を捕らえろッ!!!!!」

 

すぐに戦闘態勢に入る敵に対し、侵入した麦わらの一味は

 

「ありがとうくいな。サポートをお願い」

「ええ。任せてください」

 

ロケットマンの前方に降り立ったくいなとベルメール。

さっきの瓦礫の一つに二人が乗っかりサンジに蹴ってもらい前方へと先に降り立ったのだ。

 

そのためロケットマンより目の前の二人に敵が向けられる。

しかし、そこにいるのはただの女のコではない。

 

「この能力で、本当に良かったわ!!

"岩石(ロック)線路(レール)"ッッ!!!!」

 

そこから真っ直ぐに本島前門まで石と岩で使ったレールを敷いていくベルメール。それを見た瞬間に本能でマズイと感じた敵はすぐさまそれを破壊しようとするが

 

「邪魔、しないで。一刀流……"つゆりの花"ッッ!!!」

 

雫が静かに落ちるかのような静けさ。

その瞬間に駆け抜けたくいなは、刀を鞘に収めると次々に敵が倒れていった。

 

そして本島前門にレールが届く寸前にゾロが再び切り落とし、サンジが瓦礫を蹴り飛ばした。

 

出来たレールに乗ったロケットマンは、落ちていたスピードを取り戻し

 

「ほら、さっさと乗んなッ!!!」

 

ココロさんの声にくいなとベルメールもロケットマンに乗り込みそのまま本島前門を突破した。

 

……………………………………………………

 

「おっ。来た来たあ!!!」

 

裁判所前広場。

いまだ半数を残している中、ルフィは未だに留まっていた。

それはここにロケットマンが来ると見込んで待っていたのだ。

そしてルフィはロケットマンの目の前に立ち

 

「ゴムゴムの………"ビッグゴム風船"ッッッ!!!!!!」

 

両手を頑丈そうな建物に掴みいつもより大きく身体を肥大化させたルフィ。そして突っ込んでくるロケットマンをその身で受け止め始めたのだ。

 

「ぐうううぅぅぅッッッ!!!!」

 

相手は暴走する機関車。それもブレーキもなく、さらにさっきレールに乗ったためにスピードもついている。

どんどん押し出されるルフィ。それと一緒に敵も巻き込まれていく。

 

「ぐうううぅぅ……、フンッ!!!!!」

 

そしてやっと思いで止めたロケットマンだが、残念なことに衝撃でレールから外れて横転してしまった。だがそんなことルフィは気にしてないのか

 

「ふぅー………止まった!!」

「止まった!!じゃないわよッッ!!!!」「いてッ!!!!」

 

ナミの華麗なるツッコミがルフィの脳天を揺さぶった。

 

「何してるのよアンタはッッ!!!!なんで止めたのよ!!!!!??」

「えっ。ここが目的地じゃなかったのか??」

 

「アホか!!お兄さんとお姉さんがいるのは司法の塔よ!!!

あと一つ裁判所を抜ける必要があったのよこのバカッッ!!!!!」

 

「おい!!!なんでそれを先に言わねえんだよ!!!!」

「聞いて理解してないアンタが悪いのよッッ!!!!!」

 

せっかく調子良くいっていたというのに止められてしまった。

ロケットマンも横転してしまいこれでは……

 

「んががが〜先に行ってな。コイツはまだ走るよ」

「だ、大丈夫なの??」

 

「問題ないよ。ほら、さっさと行かないと敵が寄ってくるよ」

 

ルフィとロケットマンの影響で大分敵の人数を減らしたがそれでもまだ敵はいる。

いまは先に進もうと裁判所に向かう麦わらの一味達。

 

「フランキー一家の何人かは残りな。こいつを起こすよ」

「で、でもよ……」

 

「見ただろう。あの強さ。あいつらなら大丈夫さ。

そのお陰で敵も向こうに行っている。ほらさっさと起こすよ」

 

……………………………………………………

 

スパンダムが悪魔の実を食べる少し前。

突然鳴り響いた音にビクッとするスパンダム。

まだCP9が全員到着しておらず待っている時に突然起きた。

 

「な、な、なんだ一体ッッ!!!!??」

 

するとでんでん虫から着信が入りすぐに受話器を取る。

 

「どうした!?」

『し、侵入です!機関車が侵入してきました!!!!!』

 

「はぁっ!!?何言ってやがるッッ!!!!」

『乗り込んで来たのはむ、…………』

 

「おい!!誰が乗り込んで来たんだ!!!!!………、くそッ!!!!」

 

誰が乗り込んで来たのか分からない。

しかし間違いなくこの世界政府に喧嘩を売りに来たバカだ。

と、内心怖がっているがまだCP9もいるし大丈夫だと安心仕切っているスパンダム。

 

そしてもう少ししたらとんでもないことに巻き込まれることをまだ知らない。

 

 



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その"一言"のために⑥





どうも。
もしかして……梅雨明けた?ってくらい今週から晴れるな〜
僕的には嬉しいけど水不足にならないか心配ではある……
しかし洪水になるほどに降られても困るし…本当にいい季節が巡るってくる一年はありませんねー

では、どうぞ。





「3つの首の裁判長!!左手にかかえるはオレ、左バスカビル!!」

「右手はわたし、右のバスカビル!!」

「そして中心にいるワシこそがッッ!!!!」

 

「「「邪魔だああああああああぁぁぁぁぁぁッッ!!!!!!!!!」」」

 

「「「あばぶぐざずッッッ!!!!!!!」」」

 

 

裁判所にいる裁判長。バスカビル。

登場より僅か十秒。ルフィ、ゾロ、サンジによる殴る·斬る·蹴るによる一撃で終了してしまった。

 

これにはパウリー達も開いた口が塞がらなかった。

 

「なんだこいつら??」

「うぜぇ」

「立ちはだかってるんじゃねえよクソが…」

 

あまりにも容赦なく沈められたバスカビルに敵であるチョッパーやカヤ達が可哀想にと思われるほどだった。

 

「それで、これからどうするんだ??」

「お、おお!!両サイドの塔にあるレバーを引けば跳ね橋が降りてくるはずだ」

 

「なら、二手に分かれるか……もちろんオレはナミさん達に付いていきますー!!!!!」

 

「ヘマするなマユゲ」

「あぁ!?テメェこそ迷うんじゃねぇぞアホ剣士」

 

「あぁ!!?」

「あぁ!!?」

 

「やめなさいって!!!!そんなことしてる場合じゃ……って、ルフィ??」

 

またいつものように喧嘩をする二人を制止するナミ。

するとルフィがジィーと天井の方を見上げていた。

特に何かあるわけではないが、その表情はとても真剣だった。

 

「…………俺は、この上に行ってくる」

「行ってくるって、何かあるの??」

 

「アイツらの仲間の一人がいる」

「分かるのッ!!!!??」

 

「なんとなくだけどな。そんな気がする……」

 

長年ロビンと共にいた為か、それとも僅かでもロビンに似た気配がするからか……ルフィの直感は敵がいると囁いていた。

 

「だったら先にいけルフィ」

「こっちは敵を減らしてから向かうからよ」

「そうね。集合はここの屋上。いいわね?」

 

……………………………………………………

 

「………来たか……」

 

裁判所屋上にいたのはブルーノ。

騒がしいと異変を感じたブルーノが能力"ドアドア"で司法の塔から裁判所の屋上へと移動してきたのだ。

 

そしてどう麦わらの一味が動くかと観察していたのだが、向こうから向かってくると分かって待ち構えていた。

 

そこへゴムの勢いを使って屋上へ上がってきたルフィ。

 

「………ハジメと師匠は何処だ??」

「知る必要はない。と言いたいがいいだろう」

 

そういってブルーノが真後ろにそびえ立つ司法の塔を指さした。

 

「あそこだ。だが、もうまもなく二人は"正義の門"へ向かう。

向かって来ようとも我々の前でお前は負ける。こんな無謀なことをするためにわざわざくるなんてな……」

 

バカにするブルーノの対してルフィは呑気にストレッチを始めた。

それを見たブルーノの方がイラつきだし

 

「分かっているのか??お前らが相手しているのは"世界"そのもので……」

「…………うるせぇな」

 

「なに??」

「いいから、かかってこい」

「ッッ!!!……き、貴様…ッッ!!!!」

 

……………………………………………………

 

「なんだコイツら……ザコばっかだな」

「いやいや!!あんたらが強すぎなんだよッ!!!!」

 

さっきの3つ首の裁判長並みの者がいない中ではサンジにとってはザコしかない。

それどころかサンジが守るといったナミ達も普通に敵を倒している。

 

「ねぇ。ここはあんたらに任せていいわよね!?」

「それはいいけどよ……」

 

フランキー一家の子分をまとめるザンバイに右側の塔を任せることにしたナミ。

しかしここからだと一度来た道を戻ることになるのだが

 

「"近道(ショートカット)"ッッ!!!」

「んなッ!!!?」

 

「シロッ!!クロッ!!!行くわよ!!!!」

「「クマッ!!!!!」」

 

「それじゃ、あんた達は全員退場…しなさいッッ!!!!!」

「「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!!!」」

 

いきなりの展開にザンバイは混乱してしまった。

まずはベルメールが壁に両手を当てて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして次にナミがシロとクロを召喚し、その2体に麦わらの一味が乗り込む。

 

トドメにノジコが"トリックスター"で大鎌を振り回し、さらに鎌の部分を分裂させて伸ばし敵を一掃したのだ。

 

「…………ど、どれだけ強いんだ……」

「ナミさん達を怒らせるなよ。てめぇらじゃ勝てねえからな」

 

サンジがザンバイの肩に手をおいて言ってくるが、その前にそんなこと言われなくても分かっている。と言いたいほどに目の前で行われた光景が目に焼き付いてしまった。

 

……………………………………………………

 

「ちょっとは戦ってよゾロ!!」

「……んなもん、そいつらにやらせとけ」

「ゾロさん!!!」

 

「力温存させたほうがいいぞ。中にはなかなかやるやつもいるからな……」

 

反対側の塔はゾロ達が向かっていたが、肝心の主力であるゾロが一向に参戦しなかった。変わりにくいなやカヤが戦っているがそれでもウォーミングアップ程度。

 

それを見ていたモズとキウイは息を切らしながら

 

「……す、スゴイわいな…」

「デタラメ、だわいな……」

 

力の差にただ驚くしか出来なかった。

そして先導していたチョッパーが戻ってき

 

「もうこの先には敵はいないぞ!!」

「なら後は任せていいな」

 

「それは構わないけど…どうするわいな……」

「こう…するんだよッ!!!!」

 

そういって抜いた刀を振るったゾロ。

すると壁がまるで紙を切ったかのように簡単に斬られてしまい中心に続く道が出来上がった。

 

「じゃゾロはチョッパーに乗せてもらって」

「おい!なんでそんなことしないと……ッ!!!」

「迷子になるんだから!!早く乗る」

「お、おい!!押すなッ!!!!」

 

そういってチョッパーの角に掴まるゾロ。

その後ろにくいなもカヤが乗り込んだ。

 

「大丈夫なのかチョッパー??」

「問題ねぇ。ナミ達も屋上目指してるみたいだな」

「ならナミ達を追いかけましょう」

 

別れた塔と塔の間を軽々と飛び越えて中心の屋上へと向かうチョッパー。それを見ていた双子は……

 

「「……………」」

 

もう何も言えなくなっていた。

 

……………………………………………………

 

 

「ゴムゴムの……ブレットッッ!!!!」

「ガッ!!!!」

 

ブルーノは困惑していた。

ウォータセブンでの麦わらの動き。明らかに自分達よりも下だった。なのにいまは拳を腹部に受けてしまっている。

 

とにかくこの場から離れようと(ソル)を使ってたのだが、

 

「大鎌ッッ!!!」

「クッ!!!」

 

広範囲の技を仕掛けられ、すぐに月歩へと切り替えた。

これならと思っていたブルーノだが、ルフィは一回の脚力によるジャンプでブルーノの近くまで接近し

 

「なっ!!!?」

「ライフルッ!!!!!」

 

いつの間にか捻れていた腕を戻しながらの打撃。

さっきの攻撃力よりも何倍もあるそれは間に合った鉄塊でさえもダメージを無くすことは出来なかった。

 

そして床に叩きつけられながらもなんとか立ち上がるブルーノ。ルフィは離れた場所に着地して近づいてくる。

 

(あ、ありえない……六式もつかない、こんな、やつに…ッ!!)

 

しかし現実はこの有様。

とにかくいまは回復しようと手を伸ばして空間を"ドア"にしようとしたら

 

「どこに、行くつもりだ??」

「ッ!!!!??」

 

伸びた手がブルーノの能力使用を防いだ。

そしてそのままルフィの元に引き寄せられるブルーノの表情はすでに青ざめており、戦意喪失してしまっていた。

 

「ピストルッッッ!!!!!!」

「ッッッ!!!!!」

 

引き寄せられたブルーノにもう片方の腕で顔面にパンチを食らわせたルフィ。そのまま委ねる床に叩きつけられたブルーノの身体は、天井から下へと突き破り落ちていった。

 

「こんなもんか……」

 

完全な肩慣らし。

そして司法の塔へと歩きだし、一番近い縁の上に立ったルフィは、大きく息を吸い込んで………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメッッ!!!!師匠ッッ!!!!!!!」

「迎えに、来たぞおおおおおおぉぉッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、まさか…、き、来やがったのか!!!!??」

 

そのルフィの声は司法の塔にいるスパンダム達まで届いた。

ハジメのせいで己も能力者となり混乱している中に追い打ち。

もう完全に慌てふためくスパンダムに、ニヤリとこの状況を楽しむかのように笑うルッチ達。

そしてハジメとロビンは

 

「……さて、ここから本番かぁ……」

「お兄ちゃん。私に任せてもらえる??」

 

「いいけど……ちなみに何する気なの??」

「ふふふ。"破門"よ」

 

そういって立ち上がったロビンはそのままベランダへと歩き出す。それを見たスパンダムは

 

「な、なに勝手に!!!」

「五月蝿いわよ。………でも、そうね。()()()()()()()()()()()()()??」

 

と、いいスパンダムの身体のいたる所に手を生やした。

そして足や手を掴み、まるで人形を操っているかのように強制的に動かしだしたのだ。

 

「や、や、や、や、やめろッッッ!!!!!」

「私のことについて好きなこといっていいわ。

こんな特別サービス。なかなかないわよ。そしてあの子達を追い込んで頂戴」

 

「な、な、な、な、何が目的だニコ·ロビン!!!??」

「知る必要はないわ。ほら、貴方達も来るのよ」

 

無理矢理動かされてベランダに向かうスパンダムを見て、抵抗しないほうがいいと判断したルッチ達。アイコンタクトをしてついていくことにしたようだ。

 

そして、ベランダに出ると裁判所の屋上の縁に立っているルフィがハッキリと見えた。

 

「し、師匠ッッ!!!!!!」

「来たわねルフィ。

さぁ、私の満足のいく言葉を言ってみなさい」

 

 






ついに、再会だぁ!
……ルフィ達死ななければいいな〜(笑)





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その"一言"のために⑦




どうも。
さぁ、このタイトルの意味が分かるときが…キタッ!!!
さて皆さんの予想外の展開ならいいのですが、まぁ、今回は予想している人多いかも。

それでもこの回は自身持ってお届ける出来ると!!
ではでは、行ってみましょう!!どうぞ。





「おい!!あれって!!!」

「……敵だな。一度見たことある」

 

「じゃ、この上にルフィはいるのね!」

「動いていなければね……」

 

「そんなことより…おい、クソマリモ!!!

そんなウハウハな場所から、そこから降りやがれ!!!」

「知るか」

 

途中で合流したゾロとサンジ達。

ベルメールの作った通路で屋上に向かう途中で、その屋上に面している天井が壊れ穴が空き、そこからブルーノが落ちてきたのだ。

 

一度見たことのあるゾロが敵だと確認し、屋上にまだルフィがいると見てスピードを速めた。

 

そしてそれとは別にサンジはゾロに怒っている。

理由は……まぁ、いつも通りだが……

 

「なんで俺だけ…いつもレイジュとワンセットなんだよ…ッ!!」

「お姉ちゃんと一緒は嫌なのサンジ??」

 

「ッッ!!俺はレイジュより他の女のコと仲良くしたいんだよッ!!!!」

「いいじゃない。あの二人を見たら私達も仲良くしたいと思うのだから」

 

「あの二人は異常なんだよ……」

「ロビンが聞いたら殺されるセリフね」

 

麦わらの一味の女のコ率はとても高い。

だからサンジにとってはハーレムのようなものだが、いつもいつも隣にはレイジュがいるために他の女のコと仲良く出来ない。

 

特にナミとノジコ。

他のレディには決まった相手がいるので狙えるのはこの二人なのだが………

 

「まぁ、どのみち貴方じゃ無理よ。

あの子達もハジメを心酔しているようなものだから」

 

「くそおおおおおおぉぉッッ!!!!!」

 

「……なに、バカやってるの……」

「そこらへんに落としていったらいいじゃないナミ」

「やめなさい。貴女達……」

 

シロとクロに分かれて乗っているため、近くにナミ達がいるのによくそんな話が出来るものだと、ナミ達も呆れている。

 

しかしレイジュがいう心酔まではなくともハジメには好意はある。しかしそれはどちらかというとラブではなくライク。

そしてラブは親であるベルメールのものであるから、と、言い聞かせているわけではないが……

 

(……やっぱりお兄さんは、お兄さんなのよね……)

 

結局、昔から同じ考えで終わったしまうのだ。

だからサンジに好意を持たれても問題はないが……

 

「うん。やっぱりお姉さんにベッタリなのは…」

「ないわね。うん」

 

「やっぱりテメェのせいじゃねえかあああぁぁ!!!!」

「五月蝿いわよサンジ。緊張感を持ちなさい」

「クソがああああああぁぁぁぁッッ!!!!!!」

 

「アホくさ」

「あはは……」

 

……………………………………………………

 

 

ルフィが立っている裁判所の屋上。

そこから司法の塔にあるベランダからロビンとスパンダム、そしてCP9の面々が現れた。

しかしそこに肝心のハジメとフランキーの姿が見当たらない。

 

「師匠ッ!!!!ハジメは何処にいるんだ!!?」

「それを知る必要はないわ。それよりルフィ、()()()()()()()??」

 

その言葉に一瞬思考が、時間が止まった感じがした。

しかしすぐに冷静に戻り

 

「迎えにきたに決まってるだろう!!」

「そう。そこで"助けにきた"と言ったら即"死"だったのに…」

 

「し、師匠……なに言ってるんだ……」

「知っているはずよ。私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉に、今度こそ時間が止まった。

その事は知っている。しかし信じたくなかった。

そんなことするわけがない。やるわけがないと。

 

なのにそんな言葉をハッキリとロビンの口から……

 

「嘘だッ!!!!」

「嘘じゃないわよ。ついでに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして続け告げられた言葉に、顔色が一気に悪くなるルフィ。

サンジが見た光景は、粉塵で見えなかったがロビンなら確かに出来る……それが分かっているためにルフィは……

 

「嘘だッッ!!!デタラメ言うなッ!!!!」

「私はお兄ちゃんと一緒ならいいのよ。知ってるでしょう??」

 

その言葉がトドメだった。

ロビンの原動力は"ハジメ"。他はどうでもいい。

そんなことはずっと前から知っている。知っているが……

 

絶望的な状況にルフィは下を見てしまう。

それを見たスパンダムはまるでイジメる子供のように

 

「ザマァーないな麦わらッ!!!!

取り返す筈のニコ·ロビンが自ら進んでこっち側にきたんだからなッッ!!!!!」

 

ついさっきまでロビンに怯えていたのに、立場が上になると分かったらこんなにも簡単に態度を変えてくる。

扱いやすくて助かるわ。と、あとはスパンダムに任せることにして黙ってみることにした。

 

「テメェらの海賊団にいたのもの、ただの一時的な避難先しか見てねぇんだよ!!こいつは小さい頃からあらゆる海賊団に潜入して"悪魔"の如く海賊を壊滅させてきたんだからなッッ!!!!」

 

と、スパンダムは言っているがもちろん事実ではない。

だってずっとロビンはハジメといたのだから。

これは海軍に潜入していたロビンが"ニコル"としているために、ロビンは別にいるという証拠がほしいという理由で、その頃から定期的にハジメが噂を流し、そして実際にロビンが海賊を壊滅したりなどしたからだ。

 

なので潜入という事実はないが壊滅させていたのは事実。

嘘と真実が混ざっているために"嘘"だと分からないのだ。

 

もちろんこれを知っているのは本人達とオックスとクザンだけである。

 

「そいつはな!!"最悪"なんだよ!!

世界中から嫌われ、そして命を狙われている存在!!!

テメェらごとき弱小海賊程度が抱えられる存在じゃねえ!!!!!」

 

「……………………」

 

未だに俯くルフィ。

それを見て更にテンションが上がるスパンダム。

 

「こいつ一人で世界が変わる!

!空白の100年も、古代兵器も、何もかもこの世界に重要な案件に関わってるんだ!!!!分かるか!!!??テメェらみたいな呑気なやつらと一緒にいたこの悪魔がどれだけの奴だってことがああぁッッッ!!!!」

 

息切れするほどにテンションが上がっているスパンダム。

それを聞いてCP9も口角が上がっていた。

どれだけ絶望した表情が見れるか?

俯いたその表情がどんな風になっているのか??

 

「そしてテメェらの仲間も殺した!!!それが事実だ!!!

この女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()!()

 

高笑いするスパンダム。

そのタイミングで、屋上に上がってきた他の面々。

ついさっきスパンダムが放った言葉はハッキリ聞こえていた。

遠くにいるためスパンダムからは一味の表情は見えないが、誰も言い返す言葉を出してこない。

 

そしてここで止めの言葉をと、ニヤリと笑いながら

 

「テメェが探しているハジメもこの奥でビクビク怯えて動けないで…、グボバラッッッ!!!!」

 

突然、スパンダムの身体中に生えた手が全身の骨を砕いた。

そのあまりにも無惨すぎる光景にあのCP9も引いている。

 

「お兄ちゃんの悪口。許した覚えはないわよ??」

 

そしてスパンダムの身体を持ち上げ室内へ投げ飛ばす。

捕まっているわけではない。そして支配されているわけでもない。

 

そこにいるのはまさしくルフィが知っている"悪魔"だ。

 

「それで、まだ私の納得のいく答え聞いてないわよルフィ??」

 

それでも答えないルフィ。

屋上に上がってきたゾロ達もルフィと同じように屋上の縁に立ち、そしてベルメールがロビンに向かって叫んだ。

 

「本当に!!!本当に抜ける気なのロビンッッ!!!!??」

「本当よ。お兄ちゃんが抜けるなら私も抜けるわ」

 

「ハジメを出して!!!あの人から話を聞きたい!!!」

「愛人ごときで私が言うことを聞くとでも??」

 

「私はハジメの婚約者よッ!!!」

「それでも第2よ。私が上だわ。だから…()()()()()

 

そのドスの効いた言葉にその身が震えたベルメール。

いままで沢山喧嘩もしてきた二人だが、このロビンは明らかに敵意を殺意を出してきたのだ。

 

なにも言葉が出なくなったベルメールにナミとノジコが寄り添う。

そんな姿を見たレイジュが

 

「……自分がやっていること。分かっているのよね??」

「えぇ。貴女も口出しする気なの??」

 

「……貴女達二人についていう気はないわ」

「じゃ、他にはあるのね」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

「ッッ!?…………堕ちたのね、本当に……」

 

もう、言葉が、出てこなかった……

ロビンを引き止めるほどの言葉や想いが届かないと……

ここまで来たというのに、何もかも無駄になる……

 

「……どうやら、ここまでのようね……」

 

軽いため息をついたロビンはルフィ達に背を向けて、そして決定的な言葉を放った

 

「CP9。後は、()()()()()()()()()()()()()()()

『ッッッッ!!!!!??』

 

「情のようなは……貴様にはないか…」

「よく分かってるじゃない。私達は"正義の門"に向かうわ」

 

世界政府によるものではなく、自らの意思で"正義の門"へ。

そして戦意喪失した麦わらの一味にCP9が向けられる。

この最悪な状況、ハジメは望んでいたのか??

 

そんなこと本人とロビンしか知らない。

ロビンの足は一歩一歩とその絶望へと歩き出す。

これが、"麦わらの一味"の運命となる………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロビンの、足が、止まった。

 

誰かがロビンの名を呼んだのだ。

決して逆らうことのしなかった、弱いものが。

一度もその名前を、"師匠"としか言わなかった者が。

いま、ハッキリと、呼び捨てにしたのだ。

 

そして、

 

 

「俺と、……決闘しろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!!!!」

 

 

あのルフィが、ロビンに逆らう事が出来なかったルフィが叫んだ。

確かにハッキリと"決闘"しろと、あのロビンに"決闘"を申し込んだのだ。

 

ゾロ達もそんなルフィを驚いた表情で見ていた。

CP9やフランキーは意外な展開に驚いている。

 

ロビンはその言葉に目を見開き、口角を上げて、まるで最高のおもちゃを見つけたような………

 

「…………きた……きたよ……」

 

そしてずっと黙っていたハジメは、興奮していた。

まるでその"一言"を待っていたかのように。

いや、待っていたのだ。ルフィがこれをいうかどうかを。

 

本編を大きく変えてきた。

そしてその中でも"モンキー·D·ルフィ"はロビンに次いで変わってしまった。

 

それは"強さ"ではいい結果を生んでいるが、それでも失敗したと思ったことがあったのだ。

 

それが()()·()()()()()()()()()

師匠と弟子の関係は、思っていた以上にルフィを縛ってしまった。

何をするにしてもロビンに伺い、決して逆らえない。

例えそれが間違っていてもそれを否定出来ない。

 

この先、ハジメやロビンがいない時、誰にも負けない強い意志はルフィをきっと助けてくれる。

 

だからハジメは見極めることにしたのだ。

ルフィがロビンに逆らって立ち向かうかを。

 

「待っていたよ…ルフィ。その"一言"を……ッッ!!!」

 

そして言ったのだ。ロビンにルフィが決闘という言葉を。

いままでのルフィでは決して言うのこと出来ない言葉を。

 

 

 

本編とは全く違う。

それでもこれがきっとこれからの"ワンピース"に必要となる。

 

 

 

「…言ったわね……ルフィ……」

 

そして、ロビンも待っていた。

完全に折れたルフィの心が自分に立ち向かってくるのを。

師匠と弟子ではなく、"ルフィ"と"ロビン"を。

 

「いいわ。ルフィ。破門よ

「ッッ!!!!!」

 

そして再びロビンはルフィの方を見てハッキリと言った。

 

「来なさい。その"決闘"。受けてあげるわ」

「うおおおおおおぉぉッッ!!!!やってやるうううぅッッ!!!!!」

 

 







ってな、感じでルフィ死亡確定です(笑)


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いざ、司法の塔へ




どうも。
さぁ、行きましょうか…地獄へッッ!!!
果たしてルフィ達は生きて帰れるのか……
どうか皆様見守ってください(笑)

では、どうぞ。





「こっちは終わったぞ!!!」

「なら、出発するよ!何処かに掴まってなッ!!!」

 

ロケットマンを起こし点検も終え目指すは裁判所。

もうすぐ架け橋がかかる頃だがそれでもココロさんはロケットマンを走らせるつもりだ。

 

「裁判所に突っ込むよッ!!!!」

「「「「「おおおおッッ!!!!!」」」」」

 

……………………………………………………

 

「準備出来たぞッ!!!」

「こっちもオッケイだわいなッッ!!!!」

 

架け橋を降ろすために裁判所の両側にあるレバーの所へ向かったパウリーやフランキー一家。

そして両サイドの塔にあるレバーを同時に下ろした。

 

「後は頼むぞ麦わらッッ!!!」

「「兄貴を助けてわいなッッ!!!!!」」

 

みんなも思いを乗せて架け橋がゆっくりと降りていく。

 

……………………………………………………

 

「架け橋が降りてきたわね」

 

それを見たロビンはその前にある要件を終わらせようと、フランキーの周りに手を咲かせて身体を持ち上げた。

 

「な、なんだッ!!!」

 

そのままロビンの方へと投げ飛ばされたフランキー。

手錠されているために受け身を取れずに床に叩きつけられた。

 

「な、何するんだテメェッッ!!!!!」

「出しなさい。あるんでしょう"設計図"??」

 

「なっ!!!??」

「その反応……やはり持っていたか……」

 

まさかのロビンからの追求につい驚いてしまったフランキー。

そしてその反応にルッチは確信を持った。

探しても見つからなかった設計図はやはり持っていたということを。

 

「………テメェも、それが目当てか??」

「いらないわそんなもの。だからさっさと破棄して頂戴」

 

「何を言ってんだテメェッッ!!!」

「五月蝿いわね。なら私が取ってあげるわ」

 

すると今度はフランキーの身体全体から手が生えてき、一気にフランキーの身体の隅々まで弄りだしたのだ。

 

「や、や、やめろニコ·ロビンッッ!!!!」

「知っているわよ。貴方、私と存在がいつか"古代兵器"を呼び起こすかもしれないって思っていたのでしょう」

 

「ッッ!!!」

「私にそんな意志がなくても他のものから利用される恐れがある。そんなときに対抗するために必要なもの。………全く、そんなもののために命を張るなんて馬鹿げているわ」

 

ガチャとフランキーの身体から音が。

そしてロビンの手が束になった用紙を手にした。

 

「まさか、それが……ッ!?」

「本物のようね」

 

そこに描かれていたのは"プルトン"とかかれた設計図。

これが島を一つ消してしまうほど凶悪な古代兵器。

 

「そいつを返せッッ!!!!」

「必要ないでしょう。私はそもそも古代兵器なんて興味がないの」

 

「だがお前を利用する奴らがッッ!!!」

「利用??出来るとでも思っているの??

私を利用するとするならそれは一人。お兄ちゃんだけよ」

 

「はい。引き合いにださない」

 

そこでやっと司法の塔の奥から現れたハジメ。

その姿はルフィ達にも見えた。

 

「ハジメエエエェッッッッ!!!!!!!」

「お兄さん……!!!」

「早く、出てきなさいよ……バカ……」

 

それぞれがハジメを見てそれぞれの反応をしている。

ここでそれに対して受け答えしてやりたいところだが

 

「フランキー。いや、()()()·()()()()

君に伝えないといけないことがあるんだ」

 

そんなタイミングで今度は裁判所の架け橋から爆音が。

何事かとみんなが見ると降りていた架け橋が途中で止まったのだ。

それをやったのは倒した筈のあの裁判長。

 

「今のうちです!!!早く罪人を"正義の門"へッッ!!!!」

「あの野郎ッ!!邪魔するなッッ!!!!!」

 

タイミング的には本編と同じだ。

なら、あとはフランキーの意思でこの古代兵器をどうするか決めよう。

 

「君の師匠であるトムさん。あの人から伝言を預かっている」

「と、トムさんからッ!!!!生きてるのかッッ!!!!!」

 

「それについては何も言えない。だが伝言はある。聞くか??」

「…………あぁ」

 

伝言。

と、言っても本当に短い言葉だ。

それでもきっとフランキーには届くだろう。

 

「『男なら………ドンとやれ!!!』、だ」

「……ト、トムさん……」

 

その短い言葉にフランキーの瞳から涙が溢れそうになっていた。

それほど尊敬していたのだろう。そして代々受け継がれてきた設計図を守ってきたのだ。

 

「……テメェが、どうやってトムさんから伝言を預かったは知らねぇ。……だが、間違いなく…トムさんからだ……」

 

そういってフランキーは無理矢理手錠を力技で破壊し、ロビンの手にあった設計図を奪い取った。

そして今頃になって気絶していたスパンダムが目を覚まし

 

「わ、渡せ……そいつは、俺の……」

「確かに、それだけの力があれば悪用もされねぇな……

……いいだろう。俺も腹をくくる時が来たみたいだな……」

 

そして設計図を空にかざし、大きく息を吸い込み……()()()()()()()()()()

 

「や、やめろッッッ!!!!!!」

「なっ!!!??」

 

するとスパンダムが、全身の骨を折らせたスパンダムが立ち上がり設計図を奪い取ったのだ。そしてそれだけではなく、そのままの勢いでフランキーに体当たりをかましたのだ。

 

あまりにも突然のことでフランキーもその体当たりに耐える力もなくそのままベランダから外へ、そこが見えない奈落の穴へ向かって落ちてしまったのだ。

 

「「あ、アニキーーッッ!!!!!」」

 

裁判所から轟く叫び声。

このままだとフランキーが死んでしまう。

 

『小僧共ッ!!!そこから飛び降りなッ!!!!!』

「えっ。ココロさんッ!!!!??」

 

『もうすぐそっちに着くよ。いいから飛び降りな!!!』

「なに言って!?」

「行くぞお前らッッ!!!!」

 

そう言ってルフィが両手を伸ばして両端にいるゾロとサンジを掴み

 

「お、おい……」

「まさか、お前…ッ!!??」

 

「飛べッ!!!!」

『うわああああああぁぁぁぁッッ!!!!!!』

 

裁判所から麦わらの一味が全員飛び降りたのだ。

それを見てあとは大丈夫だろうとハジメは、設計図を手にしたスパンダムに近づき

 

「これは君が持つものじゃないよ」

「うるせぇ!!!黙ってろ!!!!!」

 

「黙るのはアナタよ。死になさい」

「がばござるだいなばッッ!!!!!!」

 

今度は、スパンダムの身体がありえない方向へ曲げられ折られてしまった。これは流石に他の人には見せられないな……

 

あっ、カリファが吐き気を我慢して口を抑えてるよ……

そしてロビンはまた部屋の奥へその身体を放り投げた。

 

「ゴキブリね。アレは……」

「まぁまぁ。さて、設計図を手に入れたし、ルフィ達もやる気になったようだし……」

 

と、言いかけたところでルッチが殺気を放ってきた。

それに対してロビンが睨み、攻撃しようとしたがそれをハジメが

 

「じゃ、僕らは"正義の門"に向かうから足止めは任せたよ」

「……なに??」

 

「君達の仕事は僕達を"正義の門"の向こうに届けるんだろう。なら麦わらの一味を止めないと。ただでさえ人数では負けてるんだから」

 

「………何が目的だ??」

 

「知りたいなら足止めしないとね。ほら、こっちに来るよ」

 

 

ハジメの指差すほうをルッチが見ると、タイミングよく現れた海列車に飛び乗ったルフィ達。そして途中まで降りた架け橋をジャンプ台にして司法の塔へ大ジャンプしてきたのだ。

そして落ちていったフランキーも運良く海列車に乗ることが出来、そのまま司法の塔の一階に激突したのだった。

 

「早く足止めしないと。ルフィ達があれぐらいで死なないから」

 

「……いくぞ。お前ら……」

 

睨みつけるだけで言い返さなかったルッチ。

いや、言い返そうにも言葉がなかったのだ。

いまのルッチ達では束になってもニコ·ロビンには勝てない。

そしてそのロビンが慕うハジメという男。

見た目通り強そうでもなく、闘気のようなものもない。

だがそれでも()()()()()()()()()()()()()()()

 

動物(ゾオン)系を食べているから、その動物的本能が告げているのだろう。こういうときの直感は従ったほうがいい。

 

ルッチはCP9を連れて一階へと目指す途中でカクが

 

「…わざわざ従わんでもいいと思うがの……」

「もちろん素直に従う気はない。だが、あのハジメという男はどうやら麦わらの一味に執着している様子がある」

 

「……つまり、足止めとは言わず、殺すってこと??」

「あぁ。そうすれば動揺している隙間をつける」

「それでも勝てる気はしないが、まぁ、あの海賊とやるのは賛成じゃ」

 

「や、や、やってやろうじゃ〜〜あぁ、ねぇ〜か〜〜!!」

「ちゃぱぱぱッ!!面白そうだ!!!」

「なら、食い尽くしてやるよ」

 

……………………………………………………

 

「って、言ってるわよお兄ちゃん」

「こっちもやる気になってくれるなら理由はどうでもいいよ」

 

これでCP9対麦わらの一味の構図が出来た。

あとはCP9に勝てる実力があるかだな……

 

「それで私はルフィとどこでやりましょうか??」

「正義の門に向かう途中で来ればそこでいいけど、まぁ、来なかったら本当に船を降りることになるかなー」

 

「……本当にいいのよねお兄ちゃん??」

「どのみちここで"高み"に近づかないとどのみちこの先で負けるだけだよ。なら、ここで引導を渡すのがここまで面倒みた僕の責任かな」

 

「………やさしいわねお兄ちゃんは……」

 

そんなことはない。

自分の都合で、理想のためにあらゆる変化をもたらしてきた。

その影響をモロに受けたのがロビンとルフィ。

 

ロビンはまぁ()()()()()()()()()()()いいとして、ルフィは僕やロビンを頼らなくても強くなる意思をもっと、もっと、もっと強くしないといけない。

 

いつか本当に離れる日が来ても、ここでお別れになるとしても、仲間と一緒に海賊王を目指してもらわないもできませんといけないのだから。

 

 

「……………んん………ちょっと、ぬれ……」

「黙れ!!!マジで空気読んでッッッ!!!!??」

 

あと、いい加減に()()にツッコむ人を増やしたかったというのも正直あります。誰か暴走を止めてください……

 



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"契約"




どうも。
さて、三連休ですね。皆さんはどう過ごされますか??
僕は今日のコンサートを楽しんできます。

そして明日も更新しますので、よろしくです。
では、どうぞ。




「おい!!生きてるかッッ!!!!??」

「……こりゃ、困ったね……」

 

「オイ!!まさか…どこか怪我を……」

「「鼻血出た」」「ニャァー」

 

「元気そうだなオイ!!!!」

 

司法の塔へ突っ込んだロケットマン。

サイボーグであるフランキーはある程度の打撃は大丈夫だったが、一般人であるココロ達は……と、心配したのだが無駄に終わった。

 

「こっちはいいからさっさと麦わら達を探しな」

 

そう言われると確かに麦わらの一味はフランキーと一緒にロケットマンの外にいたのだ。

だとするならココロみたいに鼻血程度で済むわけが……

 

するとガレキから「うおおお!!」とルフィが現れ

 

「無事だったか麦わらッ!!!」

「おう!オレはゴムだからな!」

 

「他の奴らはどうなった!?」

「問題ねえよ。これぐらい」

 

「「「「お前と……一緒にするなッッ!!!!!!!」」」」

 

「ほらな」

「お前ら、大概化物だな……」

 

「で、お前誰だ??」

「フランキーだ!!お前らの船を襲おうとした!!!」

 

すると全員がフランキーを睨む。

それはそうだろう。未遂とはいえ大切な船を、メリー号を襲うとしたのだから

 

「待て待て待て!!!あのときは悪かったと思ってる!!!

だがいまはニコ·ロビンともう一人の男を助けるのが先決だろう??」

 

「いや、ハジメと師匠なら勝手に助かる」

「「「だな」」」

 

「………短い時間だったが……オレでもそれは分かった……」

 

この状況であの二人が"捕まっている"というのがどうしても思い浮かばない。

 

「だったらなんだ??何をしに来たんだお前ら……」

「どうして船から降りたのか。それを知りたかったのが一番だったけど……」

 

「ルフィの奴が勝手に決闘にしたからな……」

「お姉さん。きっと怒っているわよね……」

「………骨は、拾ってやる……」

 

「う、う、うおおお……か、勝ってやるから、なぁぁ…………」

 

「どんだけ怖がってるんだああぁ!!!!??」

 

全員がルフィを遠い目で見ている。

ルフィ本人も激しく後悔しているのか、もう涙目でヤケを起こしている感じである。

 

「で、でも、やるぞ俺はッ!!!」

「震え止まってから言えよ……」

 

「む、む、む、む、武者震いだぁ!!!」

「説得力のない武者震いですよそれ……」

 

"決闘"

これまでの修業とは訳が違う。

確実にルフィを殺しにかかってくる可能性が高い。

ならほぼルフィは死ぬ運命にあると誰もが思っていた。

 

「いまからでも謝ったら??」

「それはそれで殺されるッッ!!!!」

 

「……ロビンなら、やるわね……」

 

どのみちやられる運命にあるルフィ。

そんな絶望を抱えているルフィ達の元に

 

「ちゃぱぱぱッ!!!よく来たな海賊共」

「ッッ!!!??アイツは……」

「CP9の一人だ!!」

 

部屋の四角の天井付近に壁に張り付くようにいるフクロウ。

誰も気づかない内にそこに現れたことに驚いていると

 

「すでにニコ·ロビンともう一人の男は"正義の門"に向かってる」

 

「クソ!!急がねぇとッ!!!」

 

「だが、お前らはそこには追いつけない!何故なら……」

 

そういってフクロウが取り出したのはカギ。

それが一体何なのかと思っていると

 

「これはあの二人を拘束している"海楼石の錠のカギ"。

こいつがないとあの錠を外すのは無理だぞ。そして無理矢理外そうとすれば……」

 

「「「「「いや、いらねぇ」」」」」

「ちゃぱッッ!!!??」

 

予想外の返答に困惑するフクロウ。

明らかに、明白に、あの二人を助けにきたこの海賊達がいま、その二人を拘束している錠のカギをいらないとハッキリと言ったのだ。

 

「海楼石あっても強えぇからなあの二人」

「むしろそっちのほうがルフィ君の勝てる確率あがりますよね」

「いや、それでも1%上がったぐらいだろうな……」

「それでも可能性が上がるならいいと思うけど……」

「ないよりかマシだな……」

 

と、完全に仲間ではいわないセリフを言ってる。

油断を誘うための演技では?と思ったフクロウだったが明らかに心の底から言っているようにしか見えない。

 

だったらと、さらに真実を突き詰めてやろうと

 

「言っておくが無理矢理外そうとしたら爆発!!

間違ったカギを挿し込んでも爆発するんだぞ!!」

 

「「「「「だからどうした??」」」」」

「ちゃ!ちゃぱぱぱッッ!!!!??」

 

いや、本当に困惑した。

完全に見捨てている。この海賊達はあの二人を見捨てている。

そうしか思えない言動に開いた口が塞がらない。

 

「きっとこの塔を破壊する爆発があっても生きてるわよあの二人は……」

「ハジメがいる時点で何もかも無意味だからな…」

「お前ら。あの二人を分かってなさすぎだ」

「むしろ爆発で師匠か少しでも弱ってくれる…わけ無いか…」

 

フクロウ側のペースに引き込もうとしたのに全く通用しない。

こっちとしてはこの海賊達を足止めしないといけないのだが……

 

「俺らとしたらとにかくあの二人に会えばいいしな」

「で、ルフィを生贄に捧げる」

 

「……………やっぱり死にたくねぇよ〜〜!!!!」

 

「お、お前ら!!!言ってくることがめちゃくちゃだ!!!!!」

『あの二人に比べれば軽い』

 

もう"ぐぅのね"も言えない。

しかしここで引いたりしてしまったら間違いなくあの二人に………

 

 

 

 

 

 

「お取り込み中すみません」

『ッッッ!!!!??』

 

突然、麦わらの一味の背後に現れたセバス。

それだけではない。そこにはマカナにリリーサと言った"八咫烏 "と"月兎"の知った人物がそこにいた。

 

「ハジメ様からの"試練"をお伝えに参りました」

「し、試練って……」

 

「では、()()()()()()()C()P()9()()()()()3()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()·()D()·()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。です」

 

その瞬間に全員の掌に八咫烏の文様が現れた。

そしてルフィにおいてはまるで蝋人形になったかのようにガチガチに身体が固まってしまったのだ。

 

「な、なんだコレ……動けねえ……!!」

「テメェ!!何しやがった!!!??」

 

「"強制的"に契約させてもらいました。

これを破ればランダムで誰かに罰が与えられます。もちろんこれをかけた私は例外なく罰を受けます。罰の内容は最悪"死"です」

 

『ッッ!!!??』

 

「回避をするためにはこの契約を遂行してください」

「もちろんその間にお二人は"正義の門"へ向かっております」

「みんな。頑張って下さい!!!」

 

と、また一瞬にしてその場から消えふせた3人。

突然のことに困惑しているが現実は切羽詰まることになった。

海楼石の錠は別に問題ない。しかしこの契約をかけられたからには破るわけにはいかなくなった。

 

破れば最悪誰かが死ぬ。

それも敵味方関係とはいえ、そんなハイリスクを無視してしまうわけにはいかない。

 

「面倒なことに、巻き込まれたな……」

「おい、ルフィ。本当に動けないのか??」

「全然……動けねぇ………」

 

「ということは…やらないと……」

「誰かが死ぬ可能性が、あるんですね……」

 

「厄介ですね。やっぱり私も入ってますよね……」

『いたのかよギン!!!??』

 

「………いました。ずっといました……」

 

と、完全にのけ者扱いされているギンも含めてセバスの"契約"に縛られてしまった麦わらの一味。そしてCP9もこれには……

 

「これは、どうすれば……」

『おいフクロウ』

 

「ッ!? ルッチ、これどうすれば…」

『従う他ない。麦わらの一味と道連れになるなら兎も角だが……一度戻ってこい』

 

「わ、分かった……」

 

でんでん虫からルッチも困惑した声が聞こえてきた。

こんな展開誰も予想出来なかったが、それでも足止めにはなるということは分かった。一度作戦を立て直すべくフクロウは"覚悟しておけ!ちゃぱぱぱ!!"と捨て台詞を行ってその場から離脱した。

 

「向こうさんも慌ててるみたいだな……」

「だがこっちが圧倒的に不利だぞ。ルフィも拘束されてるからな……」

 

「向こうの人数はこっちより少ねえし、誰かルフィを守るために残るか??」

 

「いらねぇ!!!」

 

そのルフィの言葉に全員が耳を疑ったが

 

「……ったく、根拠もねぇのによく言うぜうちの船長は…、」

 

「だが実際、あのセバスとかマカナとかは一対一じゃ勝てる気がしねえのも確かだしな……」

 

「幸い他の人達はこっちにはいないようですし、CP9の誰かに当たらないようにすればルフィさんは大丈夫かと思います」

 

「それしかないか……」

 

CP9も契約を破ることはないと考えて、全員で相手をする。

そうすることでルフィ側に敵を当てないようにする。いま出来ることはそれぐらいしかない。

 

「まぁ、何もできねぇが私が見ておくよ」

「監視してる〜!!」

「にゃあー!!」

 

「それじゃココロさんお願いします」

 

戦力としては全くないがそれでもルフィを見てくれるとココロさんにルフィをお願いすることにした。

 

「…………お前らッ!!!」

 

そんなルフィは仲間達に向けてこう言った。

 

「絶対に勝ってこい!!!!!」

『了解、船長ッ!!!!!』

 

……………………………………………………

 

「ここを通れば"正義の門"に繋がる橋に行けるわけね…」

 

司法の塔。

その地下にある大きな扉の前にロビンとハジメは立っていた。

 

「地下トンネルを潜ればあの海を渡る必要はない。

………本当に良く出来てるよこの施設は……」

 

感心している所に二人の背後にセバスが現れ

 

「言われた通りに"契約"を済ませました」

「ありがとうセバス。セバス達の撃破の内容は任せるよ」

 

「……宜しいので??」

「見定めてきて。この先の海に通用するかどうか」

 

「分かりました。二人にもそのように」

 

と、また一瞬にして消えたセバス。

これで準備は整った。あとは彼らが乗り越えるしかない。

 

「………来るかしらルフィは」

「来るよ。あんな大見得を張ったんだから」

 

「でも、そしたらあの子……死ぬわよ??」

「本気で殺そうとしないでね。一歩手前までだよ……」

 

「分かったわ。瀕死まではオッケイなのね」

「……………頑張れ、ルフィ………」

 

仕掛けておいてなんだが本当にルフィには同情する。

そんなことを考えながら"正義の門"へ繋がる扉が開き二人は仄かに薄暗い闇の中へと歩き出す。

 

 



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司法の塔の戦い




どうも。
司法の塔なんですが、何階建てか分からなかったので適当に七階建てにしました。で、地下二階の合わせて9階です。
"CP9"の"9"に合わせました。でも、階層ごとにはいませんので。地下はオマケというか、地下がないと海を渡れませんので。

とりあえずこんな感じでいきます。
正式なものがあればそれに合わせますので知っている人いたら教えて下さい!

では、どうぞ。






「一番近いところにいるだろうと思ったが……さっきのやつか……」

 

「ちゃぱぱぱ!!お前、運がないな〜!俺は最初から手加減しないからな〜」

 

「……そうか。なら、良かった……」

 

この司法の塔にいるCP9やあの3人を撃破しないといけないとなると全員がバラける必要があった。それぞれが思い思いに走り出す中、ずっと隠れていたわけではないが存在を忘れられていたギンは冷静に状況を見極めていた。

 

もし、ここで全員が離れればルフィは間違いなく狙われる。

そしてそれを()()()()()()()()()()()()()と考えればこの一階に誰かいるだろうと探していたのだ。

 

そして見つけたのは麦わらの一味の前に姿を現したフクロウ。

一番近くで状況を知っているやつがここにまた戻ってきたことになる。

 

「こっちはいい加減周りに覚えて貰わないといけないわけだ。テメェを踏み台にしてアピールさせてもらう」

 

「ちゃぱぱぱ!!弱いから無視されているだけだろうが!!!」

 

「なら……試してみるか!!!」

 

……………………………………………………

 

「い〜や!!よ、よいよいよい〜!!!」

「…………なんだアイツ………」

 

なんか匂いを感じたチョッパーはギンと同じく一階。

部屋は全く違うがそれでもフクロウとは()()()()()()()()()()()()()に誘われて来てみたら………

 

「ペット一匹とは〜〜それでは暗殺することに〜躊躇いなし!!!」

「…………あっ。椿油だ」

 

クマドリの独特の喋りを全く無視し、この独特の匂いの方が気になったチョッパー。そしてよく嗅いでみると椿油だということが分かった。

そしてそれがクマドリの髪にタップリと………

 

「髪傷まねぇのかソレッッ!!!!??」

 

遅れて心配になったチョッパーの叫びにクマドリは怪訝な表情をし

 

「流行りを取り入れ者に浴びせられる悪口………その粋や良し!!!」

「何いってんだお前ッッ!!!!」

 

全く会話にならないと分かったチョッパーはとにかくこのクマドリを倒すことに専念することにした。

 

「わりぃけど倒させてもらうぞ」

「弱き者の戯言など〜〜もはや絵空事ッ!!いっそう楽にしてやると、そ、そ、そ、(そうろう)〜〜ッ!!!!」

 

……………………………………………………

 

·二階

 

「な、なによ…これ……」

 

ナミ達の目の前で信じられない光景が………

 

「と、このように紅茶を入れる際は茶器はもちろんのこと室内の温度や湿度も大切になります。ですが場面場面によっては出来ないこともありますので、こうやって茶葉にお湯を入れるときも細心の注意を払えば……」

 

「同じ物なのに……全然違うッッ!!!!」

 

「そして一番は入れたい相手を思い、心から尽くそうという精神が美味しさを変えます。潜入捜査という心が荒むようなことを続けていたら一流の秘書など届きません。秘書とは主の想いを汲むことも大切ですが、その先の未来を見据えて支えることもまた必要なのです」

 

「………、…………ま、負けました…………」

 

と、優雅に紅茶を飲みながら何かをしているカリファとリリーサ。そしていまなにかの勝負でリリーナが勝ったようだが

 

「あっ。皆様。紅茶、いりますか??」

「何やってるんですかッッ!!!!!!」

 

ここは戦場。なのに呑気に紅茶を飲んでいる場合なのか……

思わず声が出てしまったカヤ。いつもならウソップが言うべきところだが変わりにやっているご様子。

 

「私は皆さんを待つために最上階に向かっていたのですが、ここから紅茶の匂いがしましたので。そしてどうも茶葉をうまく活かしきれていないご様子。なのでイチから"紅茶と秘書とは??"ということを僭越ながら説いていました」

 

「……本当に何やってるんですか……」

 

本当にいつもこれをやっているウソップは凄いとここにはいない彼を褒めるカヤ。

 

「でも良かったです。()()()()()()

 

なんかコントをしているようでいきなりかけられた言葉にうまく反応出来なかったカヤ。それもそうだろう。リリーサは表情を変えず、声色も変えず、まるで機械かと思うぐらいに淡々と切り出してきたのだから………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………………………………えっ??」

 

本当に、空気が凍ったようだった。

リリーサの言っていることがまるで分からず、そして間違いなくカヤの触れてはいけないことに触れてしまったことが……とても怖かったと後にその場にいた仲間が語った。

 

「いまここは正念場です。

一人一人が死力を尽くしてやらないとロビン様の元へはたどり着けません。私個人の思いはさっさとこの海賊団に見切りをつけて頂きたいところですが、ハジメ様もロビン様も皆様を気に入っているご様子。でしたら私は御二人が望むものを………」

 

「………なに、言いましたか??」

 

表情は見えないが明らかに切れている。

それはリリーサも分かっているはずだが

 

「もしかして、ウソップ様のことですか??

いえいえ。貴女も見たはずですよ。真っ赤な血に染まった彼を。そして荒れた海へとメリー号と共に消えた姿を……」

 

「ッッッ!!!!!!!」

 

怒りに満ちた表情で顔を上げたカヤはポケットから針を取り出しリリーサへ向けて投げる。それは的確にリリーサの急所をつく軌道だったが、リリーサに当たる瞬間に()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「感情的ですね。医者として失格ですが、彼女としては満点なのでしょうね」

 

「…貴女は……ッッ!!!!」

 

「いいでしょう。私の相手は貴女です。

先に最上階にいってますので、どうかたどり着けなかったなどという展開で終わらないよう………では」

 

そしてまた一瞬にしてその場から消えふせたリリーサ。

そのリリーサの挑発に乗せられ駆け出そうとするカヤをベルメールが手を掴み止める。

 

「離して下さい!!!」

「いまここで感情的になったらあの人の思うツボよ!!!

絶対に私達がカヤを最上階まで連れて行くからいまは我慢してッッ!!!!!」

 

それでも今すぐに飛び出したいカヤ。

だがしっかりと力強く握られた手を無理矢理に引き剥がすことは出来なかった。

 

そう。ベルメールもまた今すぐにでもハジメの所に向かいたい。それでもこうしているのは………

 

「……ごめんなさい……」

「いいのよ。いまは無茶するところじゃない」

 

「いつまで、そうやって……茶番を見せるつもりッッ!!!!」

 

一番近くにいたカヤとベルメール。

その二人をターゲットにしたカリファが"剃"で一気に二人に近づき"指銃"で仕留めようと構える。

 

しかしそこはさらに近くにいたノジコが"トリックスター"を取り出して、鎌でその指銃を受け止めた。

 

「ここは私が相手します。ベルメールさん達は先に言ってください!!」

「ノジコッ!!!」

 

「ナミ!!ベルメールさん達を頼んだわよ!!!!」

「…………、うん!!!」

 

そういって3階へと駆け出すベルメール達を止めようとするカリファだが、すぐに目の前にノジコが立ち塞がる。

 

「ずいぶんお嬢ちゃんに似つかわしくない武器ね」

「それはどうも。言っておくけど…この武器はコレだけじゃないわよ」

 

そういって一気に武器の形状を変えて"槍"へと変えたノジコ

 

「貴女の針路を妨害させてもらうわよッ!!!!」

 

……………………………………………………

 

「あっ。きましたね。おーーい」

「あの子って……」

 

3階にたどり着いたのはいいが、今度は4階に上がる階段の前にマカナが立ち塞がっていた。

 

「皆様にロビン様の為に、この私を倒してもらいましょう!!」

「………一番やっかいなのが、ここで来たか……」

 

ゾロ達は知っている。

マカナという人間がこれまでどんなことをしてきたのか…

精神を破壊したり、記憶を操作したりなど、これが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だと感じていた。

 

「あっ。これ言ったら駄目だったんでした。

ちょっと待っててください。ここから飛び降りてきますので」

 

「そんなことしたら死んじゃうでしょうがああぁぁ!!!!!!」

 

そしてとにかく自殺願望の強い危ない娘だということも……

 

「えっ??死なないとロビン様に顔向け出来ませんので……」

「………ゾロ達…行って……ここは私とベルメールさんが受けるわ……」

 

「そうね。命の大事さを教えないとね」

 

頭を抱えるナミだったが、目の前の無邪気な女のコをほっといてはいられなかった。とくにいまロビンもいない状況でそのままにしていたら本当に死にかねない。

 

「なら、オレも残……ッ!!!」

「はいはい。行くわよサンジ」

 

例のごとく残ろうとしたサンジを無理矢理引っ張るレイジュ。

そして残った二人をみたマカナは

 

「それではお願いします。

キチンとやってもらわないとロビン様に殺して貰えないので」

 

「言わないでくれない……本当にやりそうだから……」

「その考えを……正してあげるわ」

 

 







明日も更新ですよーー


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司法の塔の戦い(ギン戦)




どうも。
三連休最終日。どう過ごそうかなー
で、次回の更新がまた伸びます。2週間後かな??
もしかしたら3週間空くかもしれませんが、どうが久々のギンに免じて許してね(笑)

では、どうぞ。





「こいつはうめぇーな」

「恐縮です」

 

「なんて言ってもこの酒がいいッ!!!どこで手に入れたんだ!?」

「企業秘密でございます」

 

「………また、なにかしてるな………」

 

海軍であるセバスとCP9。

やはり政府関係者同士気が合うのかもしれない。

セバスの用意したスルメイカと酒を楽しむジャブラ。

こっちは時間がないというのにふざけるなと思っていると、意外や意外、レイジュが毒霧を放ちジャブラの持っていたスルメイカを溶かしたのだ。

 

「何しやがるテメェッッ!!!!」

「食べ物を粗末にするなレイジュッ!!!!!!」

 

「あれは私が食べるわ。それならいいでしょう??」

「…………ったく、あんなことするな………」

「えぇ。分かったわ」

 

ジャブラだけではなく食べ物を毒まみれにしたレイジュに対してサンジも怒りだした。すぐにレイジュならその毒さえも食べれると冷静に分かったサンジだが、それでもそんなことをするなというと微笑みながら分かったと答えるレイジュ。

 

「なんだ女。俺は女だろうが手加減なんてしねぇぞ」

「えぇ。構わないわ。私達は向こうに行きましょう」

 

そういって違う部屋へと向かうレイジュとジャブラ。

そして残されたセバスはその場に置いていたものを片付け

 

「では私はどちら様のお相手をいたしましょうか??」

 

そうセバスがいうと一歩前に出たのは

 

「ここは私が残るわ。ゾロ達は先に行って」

「なら俺も残るぜ。お嬢さん残すわけにはいかねぇからな」

 

刀を抜いたくいなと、サイボーグのフランキー。

異色のコンビがセバスに当たる。

 

「面白いコンビですね。ではよろしくお願いします」

 

「負けんじゃねえぞくいな」

「負けないわよ」

 

「ルッチの野郎達は任せたぜッ!!」

「……あぁ。任せろ」

 

ゾロ達は更に上の階層を目指し階段のある方へと走る。

それを見届けるセバスにフランキーが

 

「……襲わねぇとは、お前紳士だな」

「執事ですので」

 

「戦わないという選択肢はないんですか??」

「確かに私の能力ですので解除も可能です。

ですが我が主たるハジメ様の命を破ることなど出来ませんよ」

 

そう言いながらジャケットの内側から取り出したのはナイフ。

それもただのナイフではなく、どう見ても肉などを切る鋭利さ以上のものを切るような鈍い光がそこにはあった。

 

「「…………………ッッ」」

 

「では、参ります」

 

……………………………………………………

 

 

「チャパーッ!!!!??」

 

予想外の攻撃を食らったフクロウは悲鳴を上げながら壁に激突した。完全な油断。麦わらの一味のことは事前に調べていて分かっていた筈なのに知らない人物がいま目の前にいる。

 

ギン。

麦わらの一味の一味にいるにも関わらずその仲間さえも忘れられる存在。

大した出番もなく、出たと思ったらすぐに消える存在。

 

しかしそれがイコール弱いとは限らない。

 

「あまり舐めた態度は取らないほうがいいぜ」

「ちゃ、チャパ……」

 

「こっちはマイマスターとマイゴッドの訓練に耐えてるんだ。………あれに比べればお前は子供の遊びだ」

 

そう言いながら遠い目をするギン。

航海中、夜の晩を積極的にやっているギン。もちろん誰も気づいていない。そんな中ロビンとハジメがそんな長い夜を使って訓練というなの地獄を見させ続けてきた。

 

そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という、まるでステルス状態まで陥っているギン。

 

だからこそ、出来ることもある。

常にサポートに徹し、ロビン達にやめろと言われない限りの事をやってきた。

 

気づかれない。

それはある意味……暗殺に適した能力といえる。

 

「だからと言って……俺に勝てると思うのか!!!獣厳(ジュゴン)ッッ!!!!!!!」

 

指銃の速度をそのままパンチへと昇格した技。

確かにこれは凄まじいスピードではあるが

 

「見えない。わけじゃないなら問題ない」

「チャパパパッ!!!?」

 

ギリギリで避けたギンはそのフクロウの腕を取り、フクロウの懐に入りながら自身の身体でフクロウを持ち上げた。勢いのあるフクロウの身体は簡単に持ちがあり、持った腕を引っ張ればそのまま投げ飛ばす形に持っていった。

 

しかしフクロウも2度も壁に激突することなく体勢を変えて壁に着地したあと

 

「これならどうだッ!!!(フクロウ)叩きッッ!!!!!!」

 

剃による残像が残るほどのスピードで全方位からギンに獣厳を打ち込もうとする。

 

しかしそれでも見えているギンにその攻撃は当たらない。

全てギリギリで避け、避けれないものを手でいなし、最終的に屈んだギンはフクロウの脚を払い体勢を崩した。

 

そして懐から取り出したトンファーで腹部を思いっきり殴りつけた。

 

「ゴブッ!!!!」

 

突き上げられたフクロウは天井にぶつかり落ちてくる。

それで終わらないギンは両手にトンファーを持ち、グルグルと回しながらフクロウに複数回の攻撃を加えたあとに再び壁へと吹き飛ばした。

 

それでもいまだに意識のあるフクロウに少しばかり驚くギン。

一気にフクロウの身体全体に動けなくなるほどの打撃を加えたというのに、ロビンからお墨付きをもらったものだというのに……

 

「頑丈だなお前。少し侮っていたよ……」

「き、貴様……ッ!!!殺してやるぞッッ!!!!!」

 

完全に切れたフクロウ。

剃によりその場から消えたフクロウはギンの背後を捉えた。

しかしそれさえも見抜いているギンは振り返らずにトンファーを振り回した。

 

「紙絵·軟泥(スライム)ッッ!!!!」

「ッッ!!!??」

 

言葉の通りにスライムのように身体が柔らかくなり、人間の骨格ではありえない程に身体の形が変わり攻撃を避けたフクロウ。

 

そしてそのまま不規則に身体の形を変えながらギンのスキを狙ってトンファーを吹き飛ばした。

 

「チッ!!」

「チャパパパッ!!お前こそ油断したな!これで終わりだッッ!!!!」

 

一定の距離を取り前後左右あらゆる角度に形を変えながら不規則に飛び回るフクロウ。そして自身の身体を回転させ、さらには剃によるスピード。

 

これにはギンも捉えられても直前に形を変えられる為に体当たりに似たその攻撃を掠める程度に受けてしまう。しかしそれだけでも当たった箇所が焼けるように痛い。摩擦によるものだとしてもこれをまともに喰らえば流石のギンも危ない。

 

「鉄塊玉·軟泥(スライム)ッッ!!!潰れろッッ!!!!!」

 

しかしこのまま削られてしまえばいつかやられる。

なら今のうちにあの攻撃をどうにかするしかない。

そしてその時思い出すのは、アラバスタの夜だった………

 

……………………………………………………

 

「………………へぇ??」

「なんて声を上げてるのギン。行くわよ」

 

「ま、待って下さいマイ·マスターッ!!!!!」

 

必死に訴えかけるギンにロビンはハァーとため息をつく。

近くにはハジメの姿もあり二人を見守っているのだが、そのハジメが止めようとしないためにギン自ら止めるしかなかった。

 

いや、止めなければ()()()()()()()()()()

 

「こんなの……受け止められるわけがないですッッ!!!!!」

 

眼の前には巨人族の腕。よりも何倍も大きい腕。

ロビンがアラバスタの砂を媒介にして作った

覚醒咲き(エヴェイユ・フルール)による億華神掌(ミリアルデ·フルール)、"ゴッテスハンド"。

まさに神の腕がこのアラバスタに降臨したのだ。

 

「何言ってるのギン。お兄ちゃんはこれを()()()()()()()()()()()()()()()()。なら一本ぐらい受け止めなさい」

 

「マイ·ゴッドの基準でやられたら死んでしまいますッッッ!!!!!!」

 

その神の腕がギンを押し潰そうとしていたのだ。

ハジメならそんなもの関係ないだろう。そしてロビンがとんでもない事を言葉にしたのだが、そんなこといまのギンが気にする余裕もない。

 

「………はぁ…仕方ないわね。なら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「………………えっ??そんなもの……あるのですか……??」

 

「あるわよ。ただし一つでも間違えれば死ぬわ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……………一本……槍………」

 

 

……………………………………………………

 

 

「…………片足を引き、片腕を伸ばし、手と身体と脚を……一直線に………」

 

奇妙な体勢。

回転しながらもギンの様子を伺えるフクロウは

 

(チャパ??ヤケを起こしたか……なら、ここで死ねッ!!!)

 

その奇妙な体勢はヤケを起こしたと勘違いしその直行する。

しかしギンの瞳はいまだに死んでおらずむしろドンドン集中を増していた。

 

「………俺は、槍……大地より、生まれし、一本槍……俺は……大地と、一体となる…………」

 

手も足も身体も一つも曲がることなく、まるで大地から綺麗な槍が生えてきたかのような体勢。

そしてフクロウが体当たりする直前に、教えてもらった鉄塊を使い黒い一本槍となり迎え打つ。

 

漆黒の一本槍(ブラッティー·ア·ランス)ッッッ!!!!!!」

 

地中より生えた一本槍の如く。

それは向かってるフクロウに取って危険なものになった。

いわば自分から破壊することの出来ない一本槍にその身をぶつけるようなもの。それも剃によってスピードもあるためにただで済むわけがない。

 

肋骨や内蔵、背骨までもがダメージを負う。

幸いなのは軟泥(スライム)だったために()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかしフクロウはこれ以上の戦闘は不可能。

そのまま地に沈むフクロウを見たギンは一言。

 

「マイ·マスターは……これの何百倍だったぞ………」

 

司法の塔、一階。フクロウ対ギン。

勝者………ギン。

 

……………………………………………………

 

 

「……………………ギン。埋まったね……」

「そういえばここ、砂漠だったわね……」

 

無事にロビンの攻撃による圧殺は逃れたものの、砂地の場所であれだけの衝撃を受けたギンの身体は砂漠の砂の中へと入り込んでしまった。

 

「……………助ける……べきよね??」

「悩む暇があったら助けなさいッッ!!!!!!!!」

 

助けられたころには酸欠と熱中症で死にかけていたという……



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司法の塔の戦い(チョッパー戦)




どうも。
ヤバい……今回めちゃくちゃ手こずった……
この一話書くだけでどれだけ時間経ったやら……
そして今後もまだ構成がうまくねれてない……

すみませんが、更新遅れますが温かい目で見てください。
では、どうぞ。







"生命帰還"

本来脳の命令で動かしたりすることのできない髪や内臓などを己の意識を張り巡らせることによって操ることができる技能である。

 

これを得意とするのがクマドリ。

そのクマドリがいま…………………

 

「な、な、な、な、な、な、なッッ!!!!??」

「………………………………」

 

「な、な、な、な、な、な、なッッ!!!!??」

「……………面倒くさいな………」

 

 

チョッパーが体格のいいクマドリに対して"体格(ボディ)強化(ポイント)"で、人型でクマと同じぐらいの大きさに変わった。

 

スピードは落ちるがその分パワーが断然に上がり、蹄の大きさも倍近く広がり、攻撃の幅が増える強化(ポイント)である。

 

で、クマドリはその劇的な変化に驚いているようだが……その歌舞伎かぶれがやたら長く、チョッパーも律儀に待っているのだ。

 

「な、な、な、な、な、な、なッッ!!!!??」

「……………………………………………………」

 

「な、な、なッッ「五月蝿いッッ!!!!!」ヘボッッ!!!!!??」

 

我慢できなくなったチョッパーはとうとう手を出し、クマドリのボディに刻帝(ロゼオ)をぶちかまし、くの字に曲がったクマドリの身体は吹き飛び壁に激突、貫通して見えなくなった。

 

 

「これで終わりならいいんだけどな………」

 

完璧に入った攻撃。しかしチョッパーもこれで終わったとは思っていない。相手は強敵だ。あの攻撃を食らってもそう簡単に……

 

「な、な、な、な、な、なんと、ひ、卑怯なりいいぃ〜!」

「……やっぱりか……」

 

なんともなく壁の向こうから現れたクマドリ。

それも本当にダメージを負っている感じにも見られないのだ。

 

「だが、しかし!!その程度の攻撃なぞ…、効くわけも、ガハッッ!!!!」

「効いてるのかよッッ!!!!!!」

 

思わずツッコミを入れなくなるほど、後からの高ダメージ。

それでも血を吐くとかではなく、普通に殴られて肺から空気が出ていったような感じではある。

 

それでもダメージは通っていると確信したチョッパーは、これなら勝てると考えていると、

 

「………かあっカッカッカッカッッ!!!!!」

「な、なんだ……」

 

「この程度のダメージで…勝てると考えたか??

笑止千万ッ!!!おいらが体得した"生命帰還"に死角なしいいぃ〜〜!!!!!!"指銃·Q"ッッ!!!!!!」

 

すると、突然自分が持っている杖を自分の太ももに突き刺したのだ。

 

「何やってるんだお前ッッ!!!!??」

「ッッ!!!!………この程度、かすり傷にもならないことを、ずずず、ずぃーと!!知らしめてやる〜〜!!!!」

 

すると傷ついた太ももが突然肥大化し、傷口を一気に塞いだ。

そして次の瞬間には傷口付近だけそのままで、周りの部分が元通りに戻った。

その傷口は自らを自害するかのように小さくなっていき、最後には元の太ももに、全く傷のない状態へ戻ったのだ。

 

「この生命帰還は、体内に含まれているエネルギーを自由に扱う事が可能ッッ!!!!つまりはどんな怪我をしようが瞬時に治すことが出来るのだッッ!!!!!

そして!!!私ぐらいになれば相手に触れるだけで()()()()()()()()()()()()()()()()()()!!朝飯、ま、ま、ま、前ええぇぇ〜〜!!!!!!!」

 

それを聞いたらチョッパーは衝撃を受けた。

その生命帰還さえあればどんな傷も自力で治せる。

うまくいけば病気も治せる可能のあるものだと……

 

だが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…………ふざけるな……」

「は、はぁ〜!!!!何をいって………」

 

「細胞を死滅だとッッ!!!!そんなことしなくても細胞を活性させるだけでどれだけの人が助かると思ってるんだああッッッ!!!!!」

 

そう。

クマドリがいう過剰反応は行き過ぎた行為。

それさえしなければ、いわば触るだけでどんな傷も治せるという魔法のような技なのだ。

 

それをまさかの細胞死滅させるために使うなんて……

そしてそのことにクマドリは

 

「何を言っているのだ…おいらはCP9ッッ!!!!

殺しが本業であるのにも関わらず、助けるとは!!!

へそで、茶を沸かししししし、で、候おおおおぉ〜!!!!!」

 

するとクマドリの髪がウネウネと動き出しチョッパーに向けて放ってきた。避けようとするが思っていた以上のスピードに回避する日まもなく髪の束に両手両足と首元を固定されてしまう。

 

「そして!!!貴様の敗因はその甘さなりッッ!!!

おいらの杖に射抜かれて幕を降ろすがよいッッ!!!!!」

 

先ほど自らの足を貫いた"指銃·Q"

あれをマトモに喰らえばボディ·ポイントを使っているチョッパーでもただではすまない。

 

しかしぎっしりと捕まらているために逃げ出すことも叶わないチョッパーに、無情にもクマドリの杖が突き出されるのだ。

 

 

……………………………………………………

 

 

「"モード"を進化……??」

「そうよ。貴方のその"ポイント"と"モード"は身体の一部を強化·状態を変えることが出来るのよね」

 

これは空島。ゲダツとの戦いの後、ロビンから"特別メニュー"を言い渡されていたチョッパー。

 

恐怖しながら話を聞いてみるとそれはチョッパーのランブルに関しての講義のようなものだった。

 

「だったらその部分強化·状態変化を"進化"させなさい。

そうすればもう1段階貴方は強くなるわ」

 

「いや、進化っていってもよ………」

 

ロビンの言っていることは分かる。

しかしその"進化"というのが難しいのだ。

本来動物が進化するのは長い年月をかけて、環境に適した身体になろうとしての行為。それをランブルボール一つで一気にやろうとするのだ。

 

そしてその進化には明確なものが必要。

例えばキリンが自分の身長より高いものを食べようとして首を長くしたように、その進化に適した理由が必要となる。

 

「色んな本を読んでいるのでしょう??ヒントなら沢山あると思うけど」

 

「それはそうだけどよ……そもそもその進化って出来るのかどうか……」

 

「"ヒトヒトの実"

まさかその実が()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

……………………………………………………

 

 

(そうだッ!!そんなわけがないんだッッ!!!!!!)

 

杖に射抜かれる寸前にチョッパーは体型を小さくし髪の拘束から抜け出した。そしてそのまま脚強化で素早くその場から離脱した。

 

「まだ足掻くか……もう諦めろッ!!!」

「わりぃけどまだ足掻くよオレはッ!!!!」

 

そしてランブルボールを取り出したチョッパーはそれを口に含み噛み砕いた。

 

「いくぞッ!!!たった1分の姿、見せてやるッ!!!!!!」

 

するとチョッパーの身体が大きく、元のチョッパーの姿なんて見る影もないほどに巨人していく。

それは上の階をぶち抜くほどに大きくなり、

 

『ウオオオオオオオオッッ!!!!!!!!』

 

「な、なにコレ!!!!??」

「なんなのこの化物はッ!!!!」

 

上の階のノジコとカリファの階を打ち抜き、さらに

 

「大っきいですねー!!!」

「ええっ!!!チョッパーッッ!!!!??どうしたのッ!!?」

「これがチョッパー君ッ!!!?本当なのナミッ!!!??」

 

その上の階まで到達した巨人化。

そしてそんな見る影もないのにナミだけはチョッパーとすぐに分かったようで

 

『流石ナミだな〜。そうだよ、チョッパーだよ』

「ほ、本当にチョッパーなの!!?」

 

『すぐに小さくなるから待ってて〜』

 

そしてチョッパーはもう一つ、ランブルボールを口に含んでこう叫んだ。

 

 

人間進化(エボリューション)ッッ!!!!!」

 

 

今度はチョッパーの身体が光りだしたと思いきや、その巨人の姿がドンドン小さくなっていき、誰もが見たことのある姿に………にはならずに、まさに"人間"へと変わったのだ。

 

手と味は長く、胴体も細く、チョッパーの顔は人間に近いものへと変わったのだ。

 

その姿にクマドリは口をぱくぱくさせながら、やっとの思いで出た言葉が

 

「な、なんとめんこい娘じゃあああああぁぁぁぁぁッッ!!!!!!」

「カワイイイイイイイイィィィィィッッッ!!!!!!!!」

 

「ヒィィィッッ!!!!!??」

 

飛び付こうとしたクマドリを間一髪避けたチョッパー。

そして避けた先で上の階から飛び降りてきたナミに捕まった。

それもうぬいぐるみをめいいっぱい可愛がるかのように……

 

チョッパーの姿はいわば"アイドル"のような容姿。

そして誰が見ても"カワイイ"

 

そしてどうやらクマドリの好みであったみたいだ。

なんとかナミから抜け出してがそれでもクマドリと共に追いかけてくるナミ。

 

「お主はおいらのものにする!!!!えぇーい、逃げるでないーッッ!!!!!!」

「ふざけないでッ!!!チョッパーは私のよッ!!!!!!」

 

 

「ぎゃああああああぁぁぁぁッッ!!!!!!!!」

 

 

戦いをしていたはずなのに何故か別のことで逃げ回る羽目になったチョッパー。しかしこのままだとランブルボールの効果が切れてしまう。

 

「やるしか……ないよなッ!!!」

「逃げるではないッ!!!!」

 

クマドリは髪を大量に伸ばしてチョッパーを捕まえようとする。対してチョッパーは逃げるのをやめてその髪の動きを

 

観察診断(サーチスコープ)ッッ!!!!!」

 

向かってくる髪の束から毛の一本まで、全ての動きとその予測を立てる。人間の頭脳を手に入れたチョッパーは普段の何倍の情報処理を行うことが出来る。

それでもクマドリの髪を全て読み取るのは苦行。

出来たとしても僅か3秒だけである。

 

しかしその3秒もあればいまのチョッパーならその2本脚で、軽やかに、最小限の動きで避けることが出来る。

そしてクマドリの懐に入り込んだチョッパーは蹄のように硬い拳をクマドリへと

 

腫瘍切除(リセクション)ッッ!!!!!!!」

 

何度も何度もクマドリの胴体に穴が空くかと思うぐらいの猛攻撃をするチョッパー。その攻撃はクマドリがこれまでやってきた修行で傷ついた内部組織、細胞を突き正常に戻しているのだ。

 

生命帰還という身体に負担が大きすぎる力。

いくら修行していたとしても全くのダメージがないわけがないのだ。

それを見抜いたチョッパーはその細胞に直接働きかけ正常に戻そうと行動に出た。

 

敵に塩を送るような行動だが、もちろんそれで終わるわけがなく

 

「これで………眠ってろおおおおおおッッ!!!!!!」

 

ルフィとまではいかないが、殴り飛ばす瞬間に巨大化する予定だったその体を一部だけ変えて、クマドリに巨人の、モンスターの拳で殴り飛ばしたのだった。

 

何枚もの壁を打ち抜き、外の大穴に落ちる前に止まったクマドリ。その姿は長かった髪も短くなり、大きかった身体も細くなっていた。

 

チョッパーの攻撃により、溜まっていた毒素のようなものが消えたことにより一気に活性化して身体が引き締まり、髪も傷まない長さへと自然に生え変わったのだった。

 

そして塔の中にいるチョッパーはすっかり元に戻っていた。

 

「はぁはぁ…、これでもう、使えねえからな……あんなもの、お前が持っていいわけが、ないんだ………」

 

体力を使い果たし、指一本動かせない。

やっと終わった……と、思いきや………

 

「ふふふ…チョッパー………」

「ヒィィッ!!!!!」

 

まだ少し時間があるため変形がとけない。つまりナミに捕まるのは当然であり

 

「これなら………勝てるわッッ!!!!いくわよチョッパーッ!!!!」

「ぎゃああああああぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

ナミに捕まったチョッパー。

シロとクロに乗り込みあっという間に元いた階層へ登っていく。

…………これからこの変形はナミの前では使わないようにしようと思ったチョッパーだった。

 

 

 

司法の塔 一階 チョッパーVSクマドリ

勝者 チョッパー。(ナミに誘拐、今後参戦あり??)






あっ。ナミが出てくると決めた瞬間に一気に書けました(笑)




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司法の塔の戦い(ノジコ戦)




どうも。
なんとか1話書けました……疲れた……
次の更新もまた遅れます。2週間で書けたらいいな〜
それでは、どうぞ。






「指銃ッ!!」

「きゃああッ!!!」

 

間一髪の所を避けたノジコ。

その背後の壁には丸い小さな穴が空いている。

 

その光景にゾッとしたノジコはすぐにカリファから距離を取った。

 

「ふふふ。私をただの秘書だと思っていたの??」

「……まさか。でも、こんなに強いとは……ね……」

 

「素直な子は好きよ。私の部下になるなら命は取らないけど…」

「お断りよ」

 

「……そう。なら……消すしかないわね!」

 

そういって一気に近づくカリファ。

ノジコも応戦しようとトリックスターを構え鎌を振るう。

しかし簡単に避けられ懐に入られたノジコに

 

「しまっ!!!」

「まずはその足、頂くわ」

 

やられる!と思いきやカリファはそっとノジコの足を撫でるように触り、

 

「ゴールデン(アワー)ッ!!」

「な、なによこれッ!!!??」

 

撫で触れた両足がのっぺりとツルツルしたフォルムに変わってしまった。長くスレンダーな足は見る影もなく、足の指さえもまるで一つの絵じゃないかと思うぐらいに一つとなり、立ち上がることが出来ずに倒れ込んでしまった。

 

「アワアワの実を食べた私は"石鹸人間"。

触れたものを汚れ一つなくすることも、そうやってツルツルに凹凸もなくするのも出来るのよ。欠点は、貴女みたいな整った体型が無くなってしまうけど……それでも最高の美白肌にはなるわよ」

 

そういってノジコ見下ろすカリファ。

やられたのは足だけ。すぐに鎌を振り回しカリファを遠ざけた。

だがツルツルになった足は丸みを帯びて立ち上がることが出来ない。

 

機動力を奪われたノジコはいま、完全に狩られる側に回ってしまった。

 

「全身をツルツルにするのも良かったけど、二度と逆らえないようにジワリジワリとやることにしたの。今後私の下で働くのだから」

 

「お断りよ!」

「どこまで強がれるか……楽しみだわ」

 

……………………………………………………

 

「…はぁ、はぁ……」

「……な、なんなの……この子………」

 

「もうバテてしまいましたか??」

 

ノジコのいる階層の一つ上。そこにはナミ、ベルメールとマカナが対決していた。しかし圧倒的な実力差に手も足も出ない二人。

そしてこの階層はありとあらゆるものが変わってしまっていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それに加えてマカナが複数存在しナミとベルメールに襲いかかっていたのだ。

 

「これ、月兎の入隊試験なんですよ。クリアしないと入隊出来ませんよ」

 

「いや、入る気ないから……」

 

「でもでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?()?()

 

その言葉は二人に突き刺さる。

あんなデタラメな二人についていくとするなら……

分かってはいるがそれでも力の差を埋めることが出来ずにいる。

 

「クリア条件は簡単。()()()()()()()()()()()()()。たったそれだけなんですけど……やっぱり麦わらの一味の中でも最弱な家族を抱えると弱くなるんですね」

 

「………………それ、どういう意味??」

 

その言葉にベルメールの顔つきが変わった。

ナミもハッキリと怒りの表情を見せるがベルメールのそれはうまく表現出来ないほどに静かでとても怖かった。

 

「私は逐一貴女達の変化を見てますから。それでいま現在分かっているのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その瞬間沢山のマカナのうちの3分の1が吹き飛んだ。

ベルメールが片足をあげ思いっきり地面を踏みつけた時、地面が盛り上がりそこから大砲の形をした物が作り出され砲弾が発射されたのだ。

 

それも一台だけではない。

ベルメールの周りに数十台の砲弾がマカナに向けて火を吹いた。

 

フニャフニャの実、触れたものの形を変える能力。

いままでは形を変えてぶつけていただけの力。

それだけだった能力にさらなる力をいまここで捻り出した。

家族をバカにされたベルメールの怒りが

 

「アンタが……あの子何を知ってるというのよッッ!!!!!」

 

能力のさらなる成長を遂げさせるとこになった。

 

 

……………………………………………………

 

「…………ッッ!!」

「よくやったわよアナタ。そんな状態になってもまだ立ち向かってくるなんて………」

 

ノジコの身体は右腕以外全てツルツルの角のない曲線美になってしまっていた。

かろうじてトリックスターを持つ右腕だけは守り抜いたが

 

「でももう終わりよ。あとはその腕を……」

「ッッ!!! "クラッシュ·ハンマー"ッッッ!!!!!!」

 

カリファの手がノジコの腕に触れる瞬間に、トリックスターの形態が変化を始めた。これまではノジコが組み立てていたが名前を叫ぶと自動的にそれも一瞬にして鎌からハンマーへと形を変えたのだ。

 

そして片腕では耐えきれないほどに頭身に重心が傾き、重さに耐えきれなかったハンマーはそのまま地面に落ちた。

 

そして名の通りに床が壊れ崩壊………どころではなく

 

 

『ウオオオオオオオオッッ!!!!!!』

 

「な、なにコレ!!!!??」

 

「なんなのこの化物はッ!!!!」

 

 

床が壊れそこから突き破るようにそびえ立ち上がる化物。

それはさらに上の階の天井を突き破ってしまった。

あまりのことに戦いを忘れて放心状態になる2人。

そんな中上の階層にいるナミ達が

 

「大っきいですねー!!!」

 

「ええっ!!!チョッパーッッ!!!!??どうしたのッ!!?」

 

「これがチョッパー君ッ!!!?本当なのナミッ!!!??」

 

 

まさかの仲間であるチョッパーという真実に驚くノジコ。

そして続けてチョッパーが人間の姿へと変わっていき、二階分ある場所から飛び降りていったナミの姿を確認し、うまく整理するまで身体が上手く動かせなかったノジコだが

 

「あ、ありえない……あの長鼻だけが危険人物だったはず……まさか、こっちも同じぐらいに……モンスターを生み出すことが出来るなんて………」

 

と、なにか大きな勘違いをしているようだ。

そのおかげでカリファから攻撃もこなかったので良かったが、改めてもっと自分はしっかりしないといけないと認識した。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()。私は、ハジメさんの娘になる者なのよね……だったらこれぐらいのことで………ッッ!!!!)

 

だから眼の前の敵を一人で倒さないとダメだ。

そのためにはまずはこの身体をどうにかしないといけない。

そこでノジコは気づいた。肩の部分が元に戻っていると。

 

その部分は濡れていることに気づき上を見上げると、壊れた天井の内部を通っていた配管が壊れて水が滝のように流れているのに気づいた。

 

もしかしたらとクラッシュ·ハンマーから鎌へ戻してリーチを伸ばして真上の天井を壊した。

流石にこの行動に気づいたカリファだったが時既に遅し。

破壊した配管から漏れ出る水がノジコ目掛けて落ちてくる。

 

そしてアワアワでツルツルになった肌はみるみる元に戻っていき

 

 

「なるほどね。石鹸だから洗い流せば元に戻る。

もっと早くに気づけばよかったわ」

 

「…………。そう。気づいたところで圧倒的な実力の差は埋まらないわよッ!!!!」

 

そういって嵐脚を放つカリファ。

なんとか鎌で攻撃を防げたがその威力に押し負けたノジコの身体は吹き飛んでしまった。

5、6メートル近く飛ばされたノジコだがすぐに体勢を整えカリファの方を向く。

 

「いくら足掻こうとも何もかも無駄。

でもそうね。せっかくだし私の能力で()()()()()()()()()()()()()()

 

するとカリファの全身に泡が溢れ出し包み込む。

そしてそこから生まれたものが

 

石鹸羊(ソープ·シープ)ッ!!!!」

「……………………」

 

こんな時にふざけるなッ!!と言いたいノジコ。

だが、ここで言ったら負けな気がしたのでグッと堪えた。

 

「ふふふ。この姿に怖気づいたようね……」

「……………………」

 

そしてカリファは本気でそのモコモコの姿が恐怖の対象だと思っているようだ。こちらからしたらカワイイ対象になるのに……

 

いまナミが下の階にいるから見えないが、見つけたらきっと飛びつく案件である。

 

「本当の恐怖はこれからよ。

今度は泡に触れれば力を削ぎ落とす特殊泡。それが………」

 

カリファに纏う泡がドンドン広範囲に広がっていく。

この状況にマズイと気づいたノジコだが一足遅かった。

 

「羊雲·大津波(ダイタル·ウェーブ)ッッ!!!!!!!」

 

部屋の両端まで広がった泡が波となってノジコへと向かってくる。逃れる場所がない。あの泡に当たればきっと全身の力が抜けてもう戦う術がなくなる。

 

クラッシュ·ハンマーならきっとあの泡を吹き飛ばすことは出来る。だがそこにきっとカリファが近づいて何かしらの攻撃をしてくるに違いない。

 

なら、やることは一つ。

 

「全部、吹き飛ばしてあげるわ」

 

 

……………………………………………………

 

 

「きゃああッ!!!!!」

 

轟音が鳴り響き辺りが騒然とした。

トリックスターをウソップから受け取り変形の型を教えてもらっていた最中のこと。

 

トリックスターの中でも扱いに注意すべき型があり、その形と威力を教えてもらっていたのだが

 

「な、なに、これ………」

「や、やべぇ……予想以上だ……」

 

「何やってるのよウソップッ!!!!!」

「いってッ!!!なんでナミが怒るんだよ!!?」

 

「ノジコに危ないものを持たせないで!!!」

 

あまりの破壊力にナミがウソップに拳骨を食らわせた。

それほどに高い威力を持つ型。

 

「いいじゃない。これだけ強ければいうこと無しよ」

「お姉さん……でも、危険よコレ……」

 

「使う人が決めることよ。いくら強くても使う人が無能なら意味がないわ。そして、貴方の姉はそんなに無能なの??」

 

「そんなことない!!………でも……」

「ありがとうナミ。でもこれは私にとっても必要なもの」

 

「ノジコ……」

「大丈夫よ。ちゃんと見極めて使うわ」

 

「発射口の大きさを変えてみる。そしたら分散したり出来るから威力も落ちるはずだ」

 

 

そういってウソップがまたトリックスターを改造しだした。

そのトリックスターが生み出した光景は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

……………………………………………………

 

 

「クラッシュバスターッッ!!!!」

 

トリックスターの形状を変えて作り出された型は"砲台"

クラッシュハンマーの頭の部分が動力源となり、柄がそれを支える脚となった。

 

そこから放たれるのは床を簡単に破壊する衝撃波。

それを発射口の口を広めて広範囲に広がるようにセット。

そして頭の部分をノジコが叩けば、

 

「吹き飛べッッ!!!!!」

 

部屋全体にクラッシュハンマーの衝撃波が広がる。

範囲が広がったために威力は落ちるが、泡は簡単に吹き飛ぶ。

そしてその衝撃波は迫ってきていたカリファにも当たり、防御したのにも関わらず後方へと押し返されてしまう。

 

「クッ!!」

 

その一瞬が命取り。

すぐにノジコは発射口の口を少し狭めて銃口をカリファへと向けた。そしてクラッシュハンマーの頭を思いっきり叩いた。

 

暴風砲撃(ストーム·バスター)ッッ!!!!!!」

 

説明で見たときよりも発射口の口を広めているためあの時よりも威力は落ちるが、それでもとっさに鉄塊で防御したカリファを簡単に吹き飛ばし司法の塔の壁を破壊。外へ落ちるギリギリに止まったカリファの口から泡を吹いて気絶してしまった。

 

トドメを刺した際に下の階からも同時にものすごい音がした。

何かなと空いた穴を覗き込んだら、人の姿をしたチョッパーを拉致ってきたナミがシロとクロに乗って駆け上がってきた。

 

「何してるのナミッ!!?」

「ノジコ!!終わったならこっちを手伝って!!!」

 

と、強制的にクロの口で服を掴まれ連行される形になった。

 

「これで役者は揃ったわよッ!!!!」

「引っ張らないでッ!!!」

「下ろしてくれッ!!!!」

 

飛び跳ねるシロとクロ。

そんな中を平気なのはナミだけ。残りの二人はまるで暴れ馬に乗っているような感覚でもう大変な思いをしていた。

 

 

司法の塔 ニ階 ノジコVSカリファ 勝者 ノジコ。

(ナミに誘拐、今後チョッパーと共に参戦あり??)







ということで、二人共拉致られました(笑)

話は変わりますがワンピースの映画、良かった!!!
詳しくは言いませんが"ウタ"をこの小説に入れたいぐらい!!
でもそしたら書くのがもっと大変になるので難しいですけど…………出来たら入れたいなーーと考えているこの頃です(笑)



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司法の塔の戦い(ナミ·ベルメール戦)





どうも。
久しぶりに超大作が出来たッ!!!(大げさです)
やはり一戦に対して人数が増えると書くのが大変!!
やっと書いたと思ったらこんなにも長くなって……

でもこうしないとマカナと戦えない理由が分かると思います。

では、どうぞ。






「スゴイ!スゴイですよ!!」

 

そんなことをいいながらもまるで遊んでいるかのように振る舞うマカナ。

ベルメールの砲撃でも沢山いるマカナを消すだけで本体を当てることは出来ずにいた。

 

それもドンドン砲撃自体も当たらなくなってくる始末。

 

「クラウディ=テンポッッ!!!!」

 

だったらとナミが天候棒(クリマ·タクト)で大量の雲を生み出した。これは以前バーストを倒す時に使った技。一度雲に捕まれば圧縮した雲が身動を止めてしまう雲。

 

その雲がマカナ達を一気に拘束し続けて

 

「エレメント=テンポッ!!!!」

 

これも以前は炎を出して燃えやすい雲を燃やして大炎上させた。

しかしこんな部屋のなかで使えば間違いなく巻き込まれる。

だから今回はその雲自体を使って攻撃をする。

 

そう、これは雲。ならここに高圧の静電気の塊をぶつければ…

クリマ·タクトの先から出てきた電気の塊が一つの雲に入った途端に次から次へと周りの雲に連動していき

 

 

「サンダー·キープ=テンポッッ!!!!!!」

 

 

まるで連動しているかのように一つの雲が雷を発生させれば隣の雲も続けて雷を発生させる。それがドンドン広がっていき一度だけではなく何度も何度も、雲が消えるまで連続して雷が発生した。

 

ナミとベルメールはシロとクロに覆いかぶさってもらいっていた。そしてどれだけ時間が経ったのだろうか。雷の音が消えてシロとクロから出てきた二人が見た光景は、全てのマカナが倒れている姿だった。

 

「や、やりすぎ……だったかしら……」

「まさかこんなに強いなんて……」

 

黒焦げになっているマカナを見てそう感じていた二人だが、すぐに異変に気づいた。そう、まだこのおかしな空間が元に戻っていないのだ。

 

つまりこれは………

 

「スゴイですよ!!本当にスゴイ!!!」

「「ッッ!!!!」」

 

声がする方へ振り向くとそこにはシロとクロを屈服しているマカナの姿が……

二匹ともマカナに怯え頭を抱えて地面に伏せているのだ。

 

「シロッ!!!クロッ!!!!」

「大丈夫ですよ。危害は加えてませんから」

 

確かに見た感じでは外傷はない。

しかしそれ以上にここまで怯えきったシロとクロにナミは

 

「戻ってシロクロッ!!!」

 

一旦召喚したシロとクロを戻した。

それを見たマカナはアハハと笑いながら

 

「さぁ、仕切り直しましょう!!

私にもっともっとお二人の実力を見せてください!!」

 

……………………………………………………

 

 

バキッ、ボキッ………

 

そんな音が部屋中に響き渡る。

もう何十分もこんな音が続いているこの部屋には誰もいない。

いや……正確にはいる。全身の骨を砕かれて死んだと思われていた者が一人。

 

壊れたマリオネットが不気味に動き回るような……そして手足や背骨などが徐々に元に戻っていく姿はホラーとしか言いようがない………

 

そして最後に首の骨が元に戻った所で

 

「く、クソがあああああぁぁぁッッ!!!!!」

 

スパンダムが大声で絶叫し、周りにある物に八つ当たりをしだしたのだ。見るも無惨だった姿はもうなく、完全に元通りになっているスパンダム。こんな異質なことが行えるものといえば………

 

「あの野郎ッッ!!!なんて物を食わせやがったんだッッッ!!!!!!」

 

"バキバキの実"

どんな複雑骨折でも元通りに治すことの出来る能力。

そして柱や木など"折れる"ものは何でも折ることが出来る能力。

 

ただし生物に関して折ることは出来ない。出来るのは無機物のみ。

 

それを分かっていてロビンはスパンダムをあんな姿になるまで骨を折ったのだった。

 

「クソがッ!!クソがッ!!!!絶対に許さねぇッッッ!!!!!

ニコ·ロビン……テメェはもういらねぇッッ!!!!!!

この司法の塔ごと消えやがれッッッ!!!!!!!」

 

そういってスパンダムは持っていたゴールデン電伝虫のスイッチを押してしまったのだ。

 

 

……………………………………………………

 

 

「うわぁ〜マジですか。バカだと思ってましたけどマジもののバカだとは………」

 

マカナの手元にある小型電伝虫から何か連絡があったようだ。

離れた場所で倒れているナミとベルメールにはどんな内容だったのかは分からない。

 

「ハジメ様に連絡入れないと……もしもし??」

『マカナ??連絡はいったかな??』

 

「はい!!二度手間ですみません!死にます!!!!」

『だから勝手に死なないの。で、そっちの状況は??』

 

「こちらは第2婦人候補とその娘一人と交戦中。

いまは気絶してますがまだやれると思います」

 

『分かった。こっちも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それまで足止めよろしく』

 

「わっかりましたッッ!!!!!」

 

ルンルン気分で電伝虫の通話を切るマカナ。

その瞬間にマカナは首を横へ倒した。そこを通過するのは弾丸。

 

ベルメールの片手には拳銃。片手は能力を。

そしてナミはクリマ·タクトとシロとクロ。

全力を出し切るために。マカナに一撃を入れるために。

 

「ふふふ。本気本気ですね〜!いいですね〜!!」

 

「私達じゃ、遊び相手ぐらいしかならないのね……」

「本当……どれだけ強いのよ………」

 

「ではいきましょうかッ!!!」

 

両手でパンッ!!と叩いた途端にさっきよりも沢山のマカナが現れた。それもこれも全て幻影。これはマカナがナミとベルメールに見せている幻。

 

それでも攻撃を喰らえば痛みがある。

皮膚から神経が脳へ、脳から神経にいき皮膚へ。

こうして痛みを感じるが脳から痛みを伝わるようにイジっている………と、いう話をカヤからいつか聞いたことがある二人。

 

だから幻影なのになんで!?と戸惑ったが、油断出来るものではないとハッキリいまは自覚している。

 

だからなりふり構っている暇はない。

持てるすべてを使ってやらないと本当にこっちがやられる。

 

「シロ、クロ!!やっちゃってッ!!!!」

「「クマアァッ!!!!!!」」

 

さっきのようにマカナに怯えずに向かっていくシロとクロ。

その爪で、キバで、体当たりで、次々にマカナを減らしていくが、その分以上にマカナが増えていく。

 

まるでねずみ算式のように。

一体から二体、二体から四体とドンドン増えてしまう。

 

ベルメールも砲台を生み出して乱射。片手で銃を扱い数を減らしていくが………

 

「無駄ですよー。"私"を見つけないとドンドン私が生まれて私に潰されますよー」

 

「嫌よッ!そんな死に方ッッ!!!!」

「死ぬならハジメの隣で死ぬわッ!!!!!」

 

「………ここで、それ言わなくても………」

 

たまに見せるハジメに対しての愛情は見てられない。

それはまぁ、二人がくっつくように色々やったし、誘導もきっかけもベルメールさんが奥手なためにやってきたこと。

 

でもこうハッキリと言ってしまうと娘として…気恥かしい気持ちになってしまう……

 

明らかにマカナを削るより増える方が多く、部屋がマカナで溢れてきた。

本当にこのままだとマカナに押しつぶされる。

いくら幻影だとしても認識がそれを本物にするなら間違いなく押しつぶされる形になるだろう。

 

「な、ナミ……ッ!!!」

「……こ、このま、ま……じゃ……」

 

もうマカナに囲まれ纏わりつかれ、あと数分もしないうちに…

そんな最悪が頭を過ぎったとき、何かが下から……

床が盛り上がり、天井に押しつぶされたマカナが消えゆく中、床が弾け飛びその破片が沢山のマカナを消し去った。

 

そして床から現れたのは……見たことのない化け物。

 

 

『ウオオオオオオオオッッ!!!!!!!!』

 

「大っきいですねー!!!」

 

「ええっ!!!チョッパーッッ!!!!??どうしたのッ!!?」

 

「これがチョッパー君ッ!!!?本当なのナミッ!!!??」

 

 

その一階からこの階層まで到達した巨大化したチョッパー。

チョッパーだと、そんな見る影もないのにナミだけはチョッパーとすぐに分かったようで

 

 

『流石ナミだな〜。そうだよ、チョッパーだよ』

 

「ほ、本当にチョッパーなの!!?」

 

『すぐに小さくなるから待ってて〜』

 

 

未だにチョッパーだと信じていないベルメールだが、確かに口調はチョッパー本人だと思っていると

 

 

人間進化(エボリューション)ッッ!!!!!」

 

 

今度はチョッパーの身体が光りだしたと思いきや、その巨人の姿がドンドン小さくなっていき、誰もが見たことのある姿に………にはならずに、まさに"人間"へと変わったのだ。

 

手と味は長く、胴体も細く、チョッパーの顔は人間に近いものへと変わったのだ。

それを見たナミは一瞬にして周りにいたマカナを蹴散らして

 

 

「カワイイイイイイイイィィィィィッッッ!!!!!!!!」

 

「ナ、ナミイイイイィィィッッ!!!??」

 

 

本当に人間かと思うぐらいの身体能力でマカナをクリマ=タクトで倒したナミは躊躇わずに三階から一階に向かってダイブした。

流石にこれは予想できなかったベルメール。

顔を真っ青にしてすぐにナミの安否を確かめる。

そんなナミはチョッパーを捕まえていた。

それもうぬいぐるみをめいいっぱい可愛がるかのように……

 

チョッパーの姿はいわば"アイドル"のような姿。

これは完璧にナミの範囲内である。

 

「よ、良かった〜………」

「行動力スゴイです!!!!」

 

増えていたはずのマカナが止まっており、そのマカナ達も一階の様子を見ている。

この状況にベルメールはあえて聞いてみた。

 

「………止まってて、いいの??」

「こちらは貴女達二人を、なので!!」

 

あの契約の縛りなのだろうか……

だとしたらベルメールにとっては助かったが……

 

「それに、どうやらあの人はアレがあった方が強いみたいですから」

「……それは、私もビックリしたわ………」

 

親であるベルメールでさえ、ナミがあんな動きをするとは思っていなかった。

そして二階ではノジコがカリファ相手に戦っている。

 

「娘さんお二人、本当にお強いですね!」

「えぇ。自慢の娘よッッ!!!!!」

 

そしてほぼ同時に一階と二階の戦いが終わった。

するとナミがチョッパーを誘拐し、ノジコを掴まえて三階まで駆け上がってきた。

 

「お待たせベルメールさんッ!!!」

「まったくアンタは……あまり無茶しないで…」

 

「え、ええッ!!!相手マカナなのかよッ!!!??」

「……連戦って……勘弁してよナミ……」

 

そんな様子をニコニコと見ているマカナ。

これで三階の最終決戦の舞台が整った。

 

「次はもう止めません!

押しつぶされるか、"私"に一撃を入れてくださいッッ!!!!」

 

その瞬間、さっきよりもさらに早く分身が増えていく。

しかしナミに焦りの色はなく、それどころかニヤリと何か確信があるような表情を見せる。

 

 

「ノジコとベルメールさんはマカナの数を減らしてッ!!!」

「「分かった!!!」」

 

「チョッパーはこの中からマカナ本体を探し出してッ!!!」

「うおおッ!!!やってやるぞッ!!!!!」

 

「私は絶対に避けれないやつを準備するからッッ!!!!!」

 

 

その声と共にノジコはトリックスターをクラッシュハンマーに変形。そしてそこから()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

トリックスターは組み立てに順番がある。

それはスムーズに変換することを可能にするのと、無理やりに変えたことにより、トリックスターが修復不可能なほどにバラバラに崩れ散る可能性があるのだ。

 

本来なら鎌からクラッシュハンマーまではあと3つ変形の工程を進めないと出来ない。それをましてや逆に組み立てるとなるとトリックスターがバラバラになる可能性が大きい。

 

しかしそれでもノジコは組み立てをやめない。

一つでもミスをすれば終わり。それもどれがミスに繋がるなんて分からないのだ。これは勘。勘だけが頼りでやっている。

 

そしてその勘に………ノジコは勝った。

出来上がったのは鎌ではあるが刃の部分に丸い突起物がついており、それを叩きたあとすぐに鎌を振るうと

 

 

「クラッシュサイズッッ!!!!」

 

 

ゾロが放つ飛ぶ斬撃のように鎌から放たれた衝撃波が次々とマカナを吹き飛ばす。クラッシュバスターの砲撃から斬撃に変えたことにより固定しての攻撃から開放された。

 

しかしその分ノジコの腕にはかなりの衝撃が襲いかかる。

そう何度も振るえない。やりすぎてしまえばノジコの腕が限界を迎えてしまい悪ければ折れてしまう。

 

 

それを親として分かったのかベルメールはより多くの砲台を作り出し、さらに片手にあった拳銃を手放しこちらも地面に突き刺した。

 

そして作り出したのはマカナ達を取り囲む大きな壁。

上下左右の方向感覚が麻痺するような空間に的確にマカナ達を壁で退路を断たせて、そしてそこからさらに巨大な手が、拳がマカナ達を襲う。

 

 

「コメットパンチッッ!!!!!」

 

 

右と左。

同時にまったく違うことを行っている。

それも的確に敵を倒すためにどちらともフォローし合うように。

 

それによりノジコの負担を出来るだけ減らしつつマカナ達を多く倒しているベルメール。

 

 

観察診断(サーチスコープ)ッッ!!!!!!!」

 

 

そんな中チョッパーはノジコとベルメールの後方からマカナ達を全て観察していた。

全く同じマカナの中から本物を見つけるにはちょっとした動き、思考、視線など変わった動きをしているマカナを見つける必要がある。

 

それでもそれがトラップという可能性もある。

だからこそ確実にマカナ一人を見つけ出す必要がある。

それには偽物と本物を完璧に分ける方法を探る必要があるが……

 

(………やべぇ……どれも"本物"に見える……ッッ!!!)

 

チョッパーにも同じようにマカナによって洗脳によりすべてがマカナに見えてしまっている。

それから本物を見つけるのは至難の技。

頭が誤解しているのをどうやって正しくさせるか………

 

もうあと十秒も立たずに"人間進化(エボリューション)"の効果が切れる。そうなればいま見えている複数のマカナの違いを同時に見極めることが出来なくなる。

 

そんな焦りがある中、チョッパーが思いついた。

そう、本物ならきっと偽物よりもハッキリ分かるものを

 

「あっ!!ハジメがマカナを許せないって言っていたかもッ!!」

「本当ですかッ!!?なら死にますッッ!!!!」

 

なんでこれで元気いっぱいに返事が出来るのか……

それでも沢山いるマカナの中からたった一人、自分の胸にナイフを向けるマカナを見つけれた。

 

「ナミイイイイィィィッッッ!!!!!!!」

「上出来よチョッパーッ!!!!後でめいいっぱい撫で回してあげるわッッッ!!!!!!」

 

そんなご褒美をあげる。みたいな事を言っているナミ。

チョッパーにとってはある意味罰ゲームだがそれは言わないでおこう。

 

「いくわよ……シロ、クロッ!!!」

「「クマアアアァァァッッ!!!!!!」」

 

するとクロが一気にマカナの元へと駆け出した。

そのクロの首にあるチョーカーにクリマ=タクトの一部が挟まっている。

 

そんなクロが一直線にマカナの元に向かうがもちろん他のマカナが立ち塞がり……

 

「「邪魔をするなあああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!」」

 

ノジコのクラッシュサイズとベルメールのコミットパンチが行く手を阻むマカナ達を一掃する。

そのおかげでクロは、ナイフが胸に刺さるギリギリでそれを弾き飛ばしマカナを覆いかぶさるように捕まえた。

 

「これじゃ一撃与えたことになりません。それにこれぐらいすぐにでも出れますよ」

 

「問題ないわ。こっちはもう完成してるからッ!!!」

 

覆いかぶさるクロの横から見えるのは、上空と呼べるか分からないが、真上側に当たる場所に対となるシロが、クロと同じように首にクリマ=タクトを付けて浮いていた。

そしてシロの背中に短くなったクリマ=タクトを持っているナミ。

 

「天光満つる所に我はあり……」

 

するとシロの体毛から放電が、電気が発生仕出した。

クリマ=タクトを持っているナミには感電しないようで平気なようだが、その電気の規模はまるでエネルが放つ"雷"のよう……

 

「黄泉の門開く所に汝あり……」

 

クロも同じように放電が始まる。

シロと比べて弱く、感電するほどにもないが髪が逆立つ程度には放電している。

 

そしてここでマカナが気づいた。

この位置関係。そしてシロとクロの放電。

 

 

「……これ、マズイですね……」

 

「……出でよ、神熊(かみぐま)の雷ッッッ!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その熊はッッ!!!??」

「どうしたんですかガン·フォールさん??」

 

空の騎士であり、元神様であるガン·フォール。

そんな彼だからこそ知っていることがあった。

それがナミが召喚したシロとクロのことだった。

 

「その2頭をどこで……??」

「どうって……マジックで召喚した??」

 

「んな訳のわからない……」

「と言われても……ウソップッ!!」

 

「ナミの意思で出してるから分かんねぇよ」

 

一体どうしたのか……

空の騎士の様子がちょっとおかしい。

なんか珍しいものを見ているような……

 

「この子たちのこと知ってるんですか??」

 

「………この2頭は空島でも特別な熊"スカイベアー"

一説ではスカイベアーが天候を操ると言われており、飼い慣らせば天気を支配できると言われているのだ………」

 

「そんなにスゴイのッ!?」

「クマァ??」

「クマァ??」

 

シロとクロ達はそんな自覚はないようだ。

しかし空の騎士を見る限りかなりスゴイ2頭らしい。

 

「このスカイベアーが覚醒したら…どんな天候も思いのまま…

もしかしたら()()()()()()()()()()()()()()……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インディグ·()()·ネイションッッッ!!!!!!!!!!!」

 

それはクマの怒りが呼び寄せた熊の神の雷。

大きな熊の顔のような形をした雷の塊がマカナに向けて降り注いだ。

 

マカナを抑えているクロにはそのダメージはない。

持っているクリマ=タクト。これと体毛のおかげで体内まで雷が届かないようになっていた。

 

つまり事実上マカナに直撃した雷。

その雷は床を突き破り一階へ、さらに下にある地下二階まで届いたのだった。

 

そのあまりにも強い雷により周りの空気に含む水分を一気に蒸発させてしまい、周りは水蒸気で見えない。

 

そんな中を嗅覚で見極めたのか、それとも野生の勘か、マカナを抑えていたクロが無傷で帰還した。

 

「ご苦労さまクロ。シロもありがとうね」

「「クマアァァッッ!!!!」」

 

2体とも疲れたのか霧が晴れるように消えていった。

それと同時に水蒸気も徐々に消えていき、元に戻ったチョッパーやノジコ、ベルメールがナミの側に集まり警戒する。

 

そして晴れた先に見えたのは………

 

「これは流石に、……効きましたッ!!!」

 

身体中に火傷の後があり、服もボロボロになっている。

しかし、あれだけの膨大な雷の一撃でもその程度。

ほとんどマカナにダメージを与えられていないのだ。

 

その姿にゾッとする一同。

これはマズイと最大級の警戒をしているが

 

「おめでとうございます!!貴女達の勝ちです!!!」

「……どう、いう、こと…??」

 

「初めに言いました通り契約では私に一撃与えたら勝ちです!」

 

「それを、信じろというの……??」

 

「契約には逆らえませんから!

なので私はこれで失礼します!お疲れ様でしたッ!!!」

 

そういって一瞬にしてその場を去ったマカナ。

するとあっという間に部屋が元通りになり、完全にここから消えたことが分かった。

 

「な、何だったの…あの子は……」

「本当に、化け物ね……」

「……強すぎよ…本当に……」

「こ、怖かった〜!!!」

 

全員がその場に座り込んでしまった。

もう力が入らない。それほどに最高潮に緊張した戦いだった。

 

 

司法の塔 ニ階

ナミ·ベルメールVSマカナ 途中参戦、ノジコ、チョッパー。

勝者 チョッパーを含む、"カワイイ同盟"。

 

 

「………オレ!?入ってるのかよッッ!!??」

「もちろんよ。ファッションショーの時は人間進化よろしく!」

 

「ッッッア!!!??」

「……頑張りましょう……」

「………ナミからは、逃げられないわ……」

 

 

……………………………………………………

 

 

「ご報告します!

ベルメール親子とトニー·トニー·チョッパーによって一撃喰らいましたッ!!!」

 

「へぇー。四人で一撃かぁ。()()()()()()()()()()

「私としてはベルメール親子でやってほしかったけど、まぁ合格点ね」

 

地下トンネルの半分を過ぎながら、のんびり歩いていた二人。

そこにマカナが姿を表して報告を上げていた。

 

「よくやってくれたよマカナ」

「死んでいいですかッッ!!!」

 

「ダメよ。それはいつか私がするのよ」

「ご褒美ですッッッ!!!!」

 

「だからそれも止めなさいって……はぁ……

じゃ、マカナは隠れて観察してて。特にカヤをね」

 

「分かりましたッッ!!!!!」

 

元気いっぱいに消えたマカナ。

どうしてこうも自殺、死にたがるのか……

本当に頭が痛くなるな…と考えていると

 

「あの子、このままだとリリーナでしょう??死ぬわよ」

「だから最低限、生きてもらえるようにマカナに任せたんだよ」

 

「でも……マカナよ??」

「…………人選、間違えたかな………」

 

ちょっとどころではなくかなり心配になってきた。

しかし直接介入するわけにもいかず、これはもうカヤが持っている運に任せるしかないと半ば諦めながら歩みを再開した。








最近この小説読む人、増えた??
やっぱりワンピース FILM RED はスゴイな〜
………あの化け物、ロビン一人でもいけそう………(笑)


あっ。分かっている人は分かると思いますがナミの技。
テイル○オブと、く○クマ熊○アーの合せ技です。
そんな技の名前ありえない??
はっ。そんなの雰囲気でオッケイなのです!!!

…………つまりは、深く考えないで下さい。よろしくです(笑)


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司法の塔の戦い(レイジュ戦)




どうも。
また台風が……ふざけんなッ!!!
前回と同じルートとかマジでやめろよ!!!

……と、祈りに似た何かを常に考えながら書きました(笑)

では、どうぞ。





「麦わらの兄ちゃん〜大丈夫〜??」

「おう!俺はゴムだからな。雷は効かねえ!!」

 

「っかし、室内で雷って……んががが!面白いことも起きるもんだ!!」

 

まったく動けないルフィの真上から天井を突き破ってきた雷が落ちてきた。そしてそのままルフィごと地下へと落ちていったがゴム人間であるルフィに雷は効かず落ちたダメージもない。

 

しかしそれでもまだ動けないルフィ。

立っている状態から倒れ横向きになってしまった視線の先に

 

「なんだあの扉??でけぇーなー!!」

 

……………………………………………………

 

「しっかし、おめぇ…いい女だな〜

俺が勝ったら俺のものになれッ!!」

 

「まずは弟の許可をもらって頂戴」

 

「なんだお前ら、姉弟のくせにそのクチかあ!!?」

「…………それ、あの二人の前では言わないことね。死ぬわよ」

 

いきなりナンパのようなことをするジャブラ。

レイジュはまったく相手してないというのにそれでも自分の意見を押し通そうとする。

 

そしてジャブラはレイジュにとっても禁忌的なことを口走った。

 

「まぁ、そのまえに私が……引導を渡すわ」

「へぇ……この俺に…勝つ気かあッ!!!!」

 

するといきなり全快で行く気なのだろう。

ジャブラの姿がオオカミへと姿を変えていき半獣人となった。

 

「鉄塊拳法ッッ!!!」

 

そして攻撃もしていないのに防御に特化した鉄塊を使用してきた。何をするつもりだと思っていると、その鉄塊を使用したまま動き出したのだ。

 

これにはレイジュも驚きすぐに後方へ飛び退いた。

ジャブラの振りおろした拳は簡単に床を破壊してしまう。

そのままいたからレイジュの身体も無事では済まなかった……

 

「勘のいい女だな〜」

「……鉄塊を使用したまま動けるなんて……」

 

「こいつは俺だけしか使えねえよ。だが鋼鉄以上の防御を持つ鉄塊で攻撃が当たりゃ……どうなるかは分かったようだな!?」

 

そして続けざまにレイジュに向けて攻撃を繰り出す。

伸びた爪までも鉄塊によって強度が増している。

少しでも当たれば簡単に皮膚、筋肉、骨は切れてしまうだろう。

 

レイジュの身体は弾丸を弾く身体。

そんなふうにいじられた身体でもこの攻撃はマトモに当たるわけにはいかない。

 

骨まで届かなくとも大ダメージを受けるのは間違いない。

 

「避けるだけでいいのか女ッッ!!!?」

「……ピンク……」

 

「おっとッッ!!!!」

 

攻撃をしようとした途端、ジャブラは一気に距離を取った。

その行動にどうしたのかと身構えていると

 

「………女、その身体……普通じゃねえな……」

「えぇ。毒を作り出せる特別製よ」

 

「………なら、テメェはいらねぇよ女ッ!!!

そんな()()()()()()()()()()()()()()()ッッ!!!!

"嵐脚"”群狼連星(ルーバスフォール)"ッッッ!!!!!!

 

月歩で空中へ駆けたジャブラはレイジュに向けて複数の嵐脚を打ち出した。その嵐脚は地面を抉りながら跳ねるようにして進みレイジュに襲いかかる。

 

 

……………………………………………………

 

 

「なかなかどうしたものじゃ」

「あぁ??」

 

「ワシとしたらさっきの剣士とやってみたかったのじゃが、どうも思い通りいかないようじゃな」

 

「はっ。あんなぺっぽこ剣士より…俺が強えよ」

「そいつは、楽しみじゃ。

ワシとしたからさっきの女がどうなるかの方が見たいがな」

 

「………あぁんッ!?」

 

……………………………………………………

 

 

「麦わらのルフィ。そしてあの長っ鼻の男。

それ以外の者は大したこと無いと踏んでいたが……面白い」

 

「そいつはどうも。

………テメェが斬られるところでも視えたか??」

 

「いいや。だが、万が一もあるだろうな。

だが、あの女にその万が一さえもない。すぐに終わるだろう」

 

「………テメェ、つくづく何も視えてねぇな」

「………なに??」

 

……………………………………………………

 

 

司法の塔の最上階。

ここまで皆が繋いでくれた。ここまで助けてくれた。

そしていま眼の前に、あの人がいる。

 

「ようこそ。最上階に」

「ということは、やっぱり貴女が一番強いってことですよね」

 

「ええ。もちろん。

しかし見事にバラけましたね。これで貴女方の勝ちは無くなりました」

 

「やってみないと、分かりませんよ」

 

「いえいえ。無理ですよ。

貴女の力はこの階の1〜2階あたり、私との力では雲泥の差があります」

 

 

もちろん、そんなことカヤでも分かっている。

だけど譲れない!ウソップのことをあんなふうにいう人に負けたくない!!

 

「もちろん時に気持ちで打ち勝つ、ということはあります。

しかし私がいくら指名したとはいえ、本当に一人で来るとは……()()()()()()()()()()()()?()?()

 

その瞬間に部屋が一気に重苦しいくなり気を失いかけた。

なんとか意識を保ったが片膝をつき、立っていられない状態にさせられてしまった。

 

「……なるほど。私の覇気を浴びても意識がある。

確かに最低限ラインギリギリにはあるようですね」

 

そう言い終わるタイミングで重苦しいものは無くなり、なんとか立てるようにはなった。それでも気分的には身体が重く完全ではない。

 

「では始めましょうか。

あのクズが余計なことをして時間がありません」

 

するとリリーサの背中から、背後から、透明で神々しい絹のような羽衣が現れ、リリーサの周りに纏い付きその身体を浮かせた。

 

「すぐに………ウソップ様の元へ、お送りしますよ」

「ッッッ!!!!!??」

 

……………………………………………………

 

 

毒霧衣(ピンク·ミスト)

 

 

するとレイジュの身体中から毒霧が噴出した。

ピンクのその霧は周りにあったものを溶かしていく。

そしてそんな霧がレイジュに纏わりつくように集まった。

 

「毒霧程度で防げると思うなっ!!!!!」

 

ジャブラの特別な嵐脚。

床を削りとりながら跳ねるようにレイジュに襲いかかろうと攻める。しかし、

 

「無駄よ」

 

そうレイジュが一言いうタイミングで嵐脚が毒霧に当たった瞬間に霧散した。その霧のように細かく散りながら……

 

「ナニッ!!!!!??」

「この毒は特別性。

一粒一粒が鋼鉄以上の硬度盛っているわ。

そんな柔な攻撃じゃ私には届かない」

 

「………あるな、最初から使えばいいじゃねえか」

 

「難点があるのよ。毒の製剤に時間がかかること。あとこの毒だと味方まで襲いかねないから一人じゃないと使えないのよ」

 

 

残りの嵐脚も毒霧を突破しようとするがすべて霧散する。

そして毒霧に当たる度に毒も周りに広がるためにドンドン周りの物を溶かしていく。

それはジャブラも例外ではなく、すでに全身が火傷のように毒に溶かされていっている。

 

 

その毒はレイジュの足元の床を溶かし穴が空いた。

その上を浮くレイジュはそのまま高度を上げていき

 

 

「さっき貴方は私をいらないと言ったわよね。

えぇ。問題ないわ。私には"弟"がいればそれでいいの」

 

「………そうかよ。

だが、テメェがここで倒れりゃそれで終わりだッ!!!!!」

 

するとジャブラは月歩を使いレイジュよりも高く飛んだ。

そして天井に脚をついて助走をつけてレイジュに使って突撃。

 

 

「月光十指銃(じゅっしがん)ッッッ!!!!!!!!!!」

 

 

両手首を合わせ10本の指で相手に喰らい付くように同時に「指銃」を打ち込もうと企む。

確かに当たればレイジュもただでは済まない。

そしてジャブラも毒霧に触れて全身が爛れる可能性もある。

 

しかしあの毒霧を破らなければ勝てない。

それは動物的本能なのか、経験からきたものなのか……

この攻撃はヤケになり捨て身の攻撃ではない。

 

確実に勝つために、その身を削っても勝利を手にするために。

その姿にレイジュの心が少し揺れ動いたのか……

 

「………見せてあげるわ。力の一端を」

 

毒霧が膨れ上がりレイジュの背後に溜まり、そして蝶が現れた。

 

毒蝶々(ピンク·バタフライ)ッッッ!!!!!!!!」

 

レイジュに纏っていた毒霧全て蝶に変わりジャブラに襲いかかる。両手による十個の指銃をその蝶にぶつけようとするが、霧程の細かい粒子一つ一つが鋼鉄以上の硬さ。太刀打ちも出来るわけもなく蝶に突き飛ばされそのまま天井に。

蝶も後を追いかけるようにジャブラにぶつかり、そして……

 

「………殺さないでおくわ。殺しの姿を見られたくないの」

 

全身毒による火傷を負うっているが死んではいない。

ほぼ無傷で勝ちを手にしたレイジュは

 

「さぁ、これからが……本番ね………」

 

この階には"化け物"がいる。

ジャブラとはかけ離れた力を持った者はいま麦わらの一味の女剣士とフランキーという解体屋が立ち向かっているが

 

「急いだほうがいいわね……」

 

ここからでも分かる程に危機的な状況。

肌に伝わる異常までの殺気にレイジュは二人の元へ走り出した。

 

司法の塔 三階

レイジュVSジャブラ 勝者レイジュ

続けて、同じ階の戦いに参戦。







あっ。ちなみに今回のレイジュの技。
どっかの毒野郎に似てるようですが違います。
向こうのように毒々しくありません。神秘的に近いです。
向こうが悪魔ならこっちは天使です。
くれぐれも同じにしないように………

じゃないと貴方の元にレイジュが来るかもよ………




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司法の塔の戦い(くいな、フランキー戦)①




どうも。
話が進まねぇ〜!!
仕方なく区切って投稿しますが、もう書くスピードも上がらなくて上がらなくて………

今年中にウォーターセブン終わるかな………

では、どうぞ。







「ストロングライトッッ!!!」

「一撃の重みはありますがまだ脇が甘いですね」

 

 

フランキーのヘビーなパンチを簡単に避けるセバス。

それどころかそこからフランキーの背後から腕と腰に手を回して

 

「いま触っている部分をもっと意識してください。

そうすれば打ち込む速さも上がります」

 

「うるせぇっ!!!!」

 

裏拳を当てようとするがすぐに避けられる。

セバスが引いた先にくいなが先回りしていた。

しかしあまりにも動作が遅い。

大して脅威にならないと判断しようとした、その時

 

「一刀流…陽炎……」

(……これは……ッ!!)

 

並大抵じゃ見抜けない。

その遅い動作が()()()()()()()()()()()()()()()

ワザとやっている。とは思えないほどのその動きに、戦いの中、それを見抜くのは至難の技。

 

セバスはそれをギリギリの所で見抜きお盆を取り出し防御に回した途端

 

「……(かた)·釣霧伐(つむり)ッッ!!!!!!」

 

まるで釣りに釣られたように近づくセバスにくいなは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことに成功した。

強敵になればなるほどにこれを使用すれば自分が先にやられる可能性がある博打的な技。

 

それでもくいなはセバスはきっと自分達を下と見ていると確信して使用した。

案の定刀を振るえる間合いまでおびき寄せたが切り込む瞬間に防御に回ったセバスに驚くくいな。

 

しかしそのまま振るった刀はセバスのお盆を切り裂きセバスの胴体に僅かだが切り口を与えた。

 

すぐさま飛び退いたセバスは斬られた切り口を確かめ

 

「私もまだまだです。完全に相手の力量を間違いました」

 

それでも平然としていたセバス。

斬れたのは服のみ。だがセバスの中では避けきれる気でいたのだ。その想像が違ったのはくいなの力を見誤った。

 

そしてくいなもまた斬ったと思っていたが

 

(………この人、やっぱり強い……ッ!!)

 

格上の相手。

ビリビリと肌を刺すような殺気が放たれているわけではないが、それでも隠せない強者の雰囲気を感じ取る。

 

ハジメやロビンとは違う強者。

 

改めて対峙するセバスに緊張感を持ったくいなの元にフランキーが駆け寄り

 

「おめぇ強ぇな。どうだ?アイツに勝てる算段はあるのか??」

「今のところは……ないですね」

 

「マジか。コイツはハズレくじを引いたか……」

「どうですかね……まだ始まったばかりですよ……」

 

そういうくいなだがそれは強がりだとフランキーも分かっている。まださっきの攻防に力の1割も出していないことは分かっている。

 

焦りが見える二人を見たセバスは何かを考える仕草を見せたあと

 

「そういえば私に勝つ条件をまだ言っていませんでしたね。

マカナと同様に私に一撃を入れる。というのは安直ですから……」

 

そういうとポケットから砂時計を取り出し

 

「いまから五分。五分で私に一撃を与えたら貴方達の勝ちです。五分過ぎましたら1分ごとにお二人のどちらかに私から一撃仕掛けます。もちろん五分過ぎても一撃入れれば勝ちとします」

 

「何をいって……」

 

「ただ私の一撃はきっと……それだけで戦闘不能となると思いますのでお早めに」

 

そういった瞬間に放たれた殺気。

立つのがやっと、と思える程の出鱈目な殺気に飲まれそうになるくいなとフランキー。

 

フランキーは片膝をつきそうになるのを必死に堪え、くいなは額から汗が止まらず、それでも刀を決して降ろさなかった。

 

威嚇だけの殺気だったのだろう。

すぐに鋭い殺気は無くなり元に戻った。

そしてセバスはニコリと笑ったあとに

 

「それでは始めさせていただきます。

お二人共、悔いが残らないように頑張ってください」

 

「「………ッッ!!」」

 

こうしてセバスが持っている砂時計が反転し、五分という短く厳しい戦いが始まった。

 

 

……………………………………………………

 

 

「皆様ご無事でしたか」

「ギン!!良かった〜これには当たらなかったんだな〜」

 

3階へ上がってきたギンはチョッパー達と合流をした。

そしてチョッパーが心配していたのはナミが放ったあの強力な雷である。

この塔の地下で貫いた雷、当たればひとたまりもないだろう。

 

「それについてご報告がありまして」

「なにかあったの??」

 

「船長があの雷に直撃され、地下へと落ちていきました」

「「ああぁ……………」」

 

頭を抱えるチョッパーとノジコ。

なんとも運の悪い船長。前に話を聞いた限りでは雷はルフィには効かないということなので無事だと分かってはいるが

 

「そういえばいまルフィ君は動けなかったわね……」

「はい。そしてマイゴット達はこの塔の地下へと向かったようです」

 

「…………つまり、この塔の地下から向こうの塔に向かう通路がある……ってことかしら?」

 

「恐らくは。確認はしていませんがここから移動するとするならそれが一番ありえるかと」

 

ロビンもハジメもその気になれば海の上も、空さえも移動出来る。しかしそんな目立つことをあの二人がするとは思えない。

 

…………まぁ、やるときはやるが………

 

 

「ギンとチョッパー君は上に上がって皆の加勢をして!

私達はルフィ君を連れてハジメ達を追いかけるわ」

 

「なるほど。契約が終えたときすぐに船長をあの二人にぶつけるためですね」

 

「勝てるとは思えないけど……それでも抑止力にはなるわ

問題は、どう説得させるか……よね………」

 

「ベルメールさん………」

 

「……ううん。絶対につれて帰るわ。

私だってハジメの……婚約者なんだからッ!!!」

 

そう胸を張って言い切るベルメール。

その言葉に誰もがきっと大丈夫だと感じた。

 

 

……………………………………………………

 

 

「マスターネイルッ!!!!」

 

口から無数の釘が飛び出す。それをまるで遊戯で楽しんでいるかのような余裕を見せながら全てナイフで撃ち落とすセバス。

その隙にくいなが、と、突っ込むが簡単にいなされて弾き飛ばされる。

 

「フレッシュファイアッ!!!!」

 

今度は口から炎が吹き出す。

これにはナイフで対応出来ずに持っていたお盆でその炎を受けながら距離を開ける。

 

そこへ炎の中からくいなが突撃し

 

 

楼卍(ロマン)……」

 

 

火傷を負いながらも刀に炎を纏わせ、燃える炎から出る火花はまるで桜の花びらのように美しい……

そしてその炎がひとまとまりとなり、一太刀の攻撃へと転じる。

 

 

火紅(ひこう)ッッ!!!!!!」

 

 

セバスはその攻撃に片手で受けていたナイフを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかし受けたナイフはドンドン溶け出していき危険だと察知したセバスは、溶けたナイフを捨て、すぐさま懐から新たなナイフを取り出してくいなの顔面に投擲。

 

至近距離からの攻撃にも関わらずに頬に傷を受けた程度に治まるように回避したくいなだが、その一瞬にセバスは二人から距離を開けてつつナイフを続けて投擲する。

 

フランキーは腕をクロスさせて防御。

鋼鉄の身体にはダメージはないがそれでもその作られた皮膚は傷ついていく。

くいなは刀でナイフを落としにかかるが全てとはいかず、急所以外の箇所はそのナイフに傷つけられた。

 

 

「おいおい…無茶するなおめぇ」

「これぐらいしないと……勝てませんから」

「そいつは同意見だが……あれでも届かねぇか……」

 

 

一撃を与えられると思った攻撃は防がれ、セバスとの距離もまた開いてしまった。無常にも時間だけが過ぎていく。

さっきの技も焦りの色も見せずに淡々と作業のようにこなすセバスに正直気味が悪いと感じていた。

 

どうすればいいのか……

考える暇も与えずに突然異変が起きた。

 

爆音と共に揺れる建物。

一体何が起きたのか状況が掴めないくいなとフランキー。それに比べ冷静なセバスは

 

「始まったようですね」

「な、何が起きてるんだッ!!!??」

 

「バスターコール。

海軍本部中将5人と軍艦10隻という国家戦争クラスの大戦力で無差別攻撃を行うものです」

 

「なッ!!!??」

 

「スパンダムというおバカがバスターコールのボタンを押したようです。

目標はこの司法の塔。対象者は……ここにいるもの全てです」

 

「ここにいるもの……って、同じ海兵も一般人もいるのにッ!!!??」

 

「発動すれば全てが更地になるまで攻撃はやみません。

さて、もうまもなく五分経ちますが……よろしいので??」

 

 

この状況でまだそんなことをいうセバスにくいなは

 

 

「何を言ってるんですか!!早く逃げないと貴方もッ!!!!」

「私はどうとでもなりますので。

さあ、五分。経ちました。一撃、入れさせてもらいます」

 

 

いつ砲撃が飛んでくるか分からない中、それでもセバスは戦いを続けると言ってきた。そして持ったナイフが鈍く光ると同時にセバスの身体が消え……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………油断、するんじゃ……ねぇ…よ………」

「フランキーさんッッ!!!!!!!」

 

僅かな迷いがくいなに牙を向いた。

セバスの強烈な一撃は間違いなく当たるはずだった。

しかしフランキーが間に入り、その攻撃を受けたのだ。

 

鋼鉄の体を持つフランキー。

それでも皮膚は裂け、鉄を斬り、切り口からは赤い液体が流れ出てきた………

 

 

「素晴らしいです。女性を守るためにその身を捧げた。

ですが、あと1分後には再び一撃がきますので」

 

「……に、逃げろ………」

「フランキーさん!!フランキーさんッ!!!!」

 

倒れ込むフランキーを揺するくいな。

しかしフランキーの意識はなく液体がドンドン流れていく。

 

 



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司法の塔の戦い(くいな、フランキー戦)②



どうも。
お久しぶりです。
一ヶ月内に投稿出来たので本当に良かったー
めちゃくちゃ難産で、もう、何度もやめようかなーと……
なんとか耐えきり投稿できました。

書いていて、"あれ、この設定で、このあとの展開、大丈夫か??"と思いましたが……そのまま突っ切りました(笑)

なので、ご不満はあると思います。ってか、僕が僕に対して大丈夫かと思うぐらいなので(笑)

それでもこれで進めていきますのでどうぞよろしくです。
ではどうぞ。





「うわぁ……これ、登らないといけないのか……」

「おんぶしましょうか??」

 

「いや、それは男としてダメな気がする……」

「私はお兄ちゃんの妹だからセーフ」

「むしろアウトだよ」

 

 

地下のトンネルを進みきり、ここから地上へと登る階段を上がっていかないといけない。こういう螺旋階段は遠回りしながら上がっていくので好きではない。

 

 

「しかし……こないね……」

「いまはセバスにフランキーとくいながやっているみたいね」

 

「大丈夫かな……セバスって、こういう時手加減しないからな……」

 

「手加減、必要だったの?」

「いや、いらないけど。ここでなにか一つ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

心配をしている。とはいえない。

これは必要なプロセスだ。この先の戦いはもっと過激になる。

セバスを倒すことは出来なくても一撃入れなれないなら、ここで終わってしまったほうがいいぐらいに……

 

「なら、くいなよりもフランキーがカギを握るわね……」

 

だけど今のフランキーだとそれは難しいだろう。

フランキーに至っては他のメンバーと比べてほとんど接点がない。

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「もしかしたら……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

……………………………………………………

 

 

「くっ!!」

「よそ見ばかりでは一撃なんて無理ですよ。あと30秒」

 

 

向かってくるセバスの攻撃をなんとか捌きながらフランキーの容態を気にするくいな。

見た限り致命傷は避けられていた。だけど傷が深い。

鋼鉄と言っていた部分を切り裂き内部まで届いている可能性がある。

 

早くチョッパーかカヤの元へ連れていきたいのに……

 

「捨てていきなさい。仲間ではないのでしょう」

「そんなこと……出来るわけがない……」

 

「何故です?一緒に戦ったから仲間というのですか?

そんな甘い考えではこの先、命を落としますよ」

 

セバスの鋭い攻撃によりくいなの刀が弾かれた。

大きくのけぞるくいなに、セバスは両手に持ったナイフで

 

「一分です」

 

避けられない一撃。

思わず目を瞑りそうになるくいなだったが

 

(まだ……負けてないッ!!!)

 

目を見開き、攻撃を受けると覚悟した。

いやまだ勝負は終わってないと強い意志をセバスに向ける。

 

「お見事」

 

容赦のない攻撃がくいなに……

 

毒霧壁(ピンク·フォール)ッ!!!!」

 

突然現れたピンクの壁。

セバスはそのままその壁を崩しにかかったが、あっという間にナイフが溶けた為にすぐにその場から離脱した。

 

何が起きたかいまいち分からないくいなの元に

 

「間に合ったみたいね」

「レイジュさんッ!!!!」

 

「状況は最悪みたいね。でも、まだ終わりじゃないわ」

「はい。ご協力お願いしますッ!!!」

 

レイジュの援軍。これならまだ戦える。

再び刀を構えたくいなと、ポケットから毒を取り出し飲むレイジュ。

 

離れたセバスは何事もなかったように懐から新しいナイフを取り出し一気に二人に

 

「第二幕のようですね。体力が尽きる前にどうか一撃を」

 

近づき、攻撃を開始した。

 

……………………………………………………

 

 

「………………くっ………」

 

 

気絶していたフランキーが目を覚ました。

セバスの一撃。くいなの変わりに喰らい倒れてしまったことを思い出す。

すぐに状況を確認したいがあまりにも大ダメージのために身体が言うことをきかない。

 

 

(なにが…どうなってる……アイツは、勝ったのか……)

 

 

意識は戻ったものの五感がうまく働かない。

視界はボヤけ、音も聞こえづらい。触覚に至っては麻痺しているようで斬られた部分の痛みがない。

 

それでもなんとか首だけでも動かして僅かに聞こえる方へ顔を向けると、ぼやけた視界が少しずつクリアになっていき

 

 

鈴鳴(すずめ)、蜂ッッ!!!!!!」

毒蜂(ピンク·ホーネット)ッッ!!!!!!」

 

 

二人の連携した攻撃がセバスに牙を向く場面が見えてきた。

強力な突きにより空気を震えさせ音が鳴り響く一撃と、毒を凝縮して鉄させえも簡単に溶かす一撃。

 

当たれば間違いなくセバスを倒せる。

そしてその攻撃はセバスの前方にくいな、後方からレイジュが迫ってきていて確実にどちらかの攻撃が当たる。

 

そんな風に見えていたというのに

 

「あまりにも正確過ぎます。それでは……」

 

くいなの一撃はセバスのナイフで側面から弾き、レイジュの一撃は3つのナイフを重ねて同じように側面から弾いた。

向かってくる勢いを殺さずに、正面に向かってくる攻撃をずらすことにより、セバスは一本も動かずに二人がただ通り過ぎるだけの形となった。

 

「こんな風に避けられますよ。

ここぞという一撃は相手を崩した時に放つものです」

 

「くっ!!」

「………」

 

この一撃を放つまでに二人でセバスの態勢を崩したつもりだった。そしてどちらかが当たると踏んだこの一撃を簡単に躱された。

 

「そろそろ一分ですが……ご覚悟はよろしいですか??」

 

その言葉に乗せた殺気が伝わってくる。

フランキーが目覚めるまでどれぐらい経ったか分からないが、二人を見る限りもう何回も一分事の一撃を凌いできたのが分かる。

 

そして今度の一撃は間違いなく二人のどちらかを、もしくは二人とも倒されてしまう……殺されてしまうと思うほどに鋭く禍々しい殺気。

 

「……ただでは、やられませんッ!!!」

「そうね。……一矢報いるわ」

 

「そうですか。では残り20秒……参ります」

 

 

再び始まる戦闘。

それを離れた場所から、倒れた状態で見ることしか出来ない。

なんとか身体を動かそうとするがビクともしない。

それが不甲斐なく、悔しく、腹が立つフランキー。

握りしめる事も出来ない指先を見ながら、ただこの状況を眺めるしか出来ずにいた。

 

 

(何してんだオレはッ!!!動けよクソがッッ!!!!!!)

 

 

何秒経ったか分からない。

しかしもう時間がないのだ。早くどうにかしたいというのに………

 

(動け……動け……動けよ身体ッッ!!!!!!

こんな時に動かないで!!なんでサイボーグやってんだッ!!!!!!!)

 

 

人よりも硬く、性能も普通の人と違うフランキー。

それは意図せずなった姿ではあったがそれでも今では気に入っている。

自身をイジり改造し、自分の為の力をつけてきた。

なのに、こんな時に全く役に立たない。

 

セバスの一撃を受けただけで何も出来なくなり、そしていま動けない状況で目の前で戦っている二人がピンチなのだ。

 

(動け!!動け!!動けぇー!!!!!!)

 

きしむ身体。それでも動かない身体に悔しさが込み上げてくる。

それでも必死に動かそうと、どうにかしようと考えるフランキー。

 

(なにか…なにか出来ることはねぇのかよッッ!!!!

くそ、くそ、くそ、くそおおおッ!!!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『フランキーこと、()()()·()()()()の身体状況の確認を開始します。

………、…、…………、胸部に重度のダメージ。

その衝撃により身体全体に影響。現在麻痺のような状況』

 

 

突然頭に鳴り響く声。

そして視界に映る世界は何故かスローモーションで動いている………

 

(な、なんだこりゃッッ!!??)

 

訳の分からないまま再び頭からさっきの声が聞こえてきた。

 

 

『麻痺の解除を試みます。

………、………、……、………一部成功しました。

内蔵されている武器のほとんどは使用できません。

しかし身体を動かくことに成功しました』

 

 

謎の声。

一体いまの自分に何が起きているのか分からないまま状況は進んでいく。

 

 

『これより主であるカティ·フラムの身体操作の実権に対してのアプローチを始めます。

………、……、………成功しました。身体の状態を踏まえて1分の活動制限つきによる自動運転(オートモード)に移行します』

 

(て、テメェ!!オレ様の身体で何するきだあぁッ!!!!!)

 

 

明らかに自分の身体を乗っ取られると分かったフランキー。

返答するかは関係ない。いまここで抵抗しなければ好き勝手に自分の身体を使われると危険視した。

 

 

『ご安心を。主であるカティ·フラムに対する実害が起こることはありません。私の望みは主に対する望みを叶えること』

 

(……叶える。だと??)

 

『お任せください。直ちにこの状況を打開します』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間切れです。それでは一撃、入れさせてもらいます」

 

「レイジュさんッ!!!!!」

「ッッ!!!」

 

遠くに飛ばされたくいなの目に映るのはまさにセバスに斬られようとするレイジュ。

どんなに飛ばしても、斬撃を放っても間に合わない。

それでも駆けるくいなをレイジュは少しも恐怖せずにまるで受け入れるかのように………

 

「ダメエエエエェェェッッッ!!!!!!!」

 

間に合わない。

伸ばす手は届かない。それでも必死に伸ばす。

それでもどうしようもないこの状況でくいなはないも……

 

『お任せください』

「ッッ!!!!??」

 

何が通り過ぎた。その時に声が聞こえた……

そして次の瞬間にはセバスとレイジュの間に誰かが割り込んで攻撃を防いでいたのだ。

 

そしてその人物は………

 

「ふ、フランキーさんッッ!!!!」

 

振り下ろされたセバスのナイフを左腕の肥大化した部分でガードしていた。

 

『ホシ·シールド』

「これは………ッッ!!!!!」

 

『マスターネイル』

 

口から吹き出す釘をセバスに向けて放つ。

咄嗟に離れたセバスだがその服に傷がついた。

ここにきて初めて手応えのある攻撃である。

 

そしてフランキーは続けて

 

『フレッシュファイア』

 

さらにセバスとの距離を開けるために炎を吹き出す。

そして部屋全体に広めてすぐにこちらに来れないようにした。

これで時間が稼げる。くいなもその意図が分かりすぐにフランキー達の元へ駆け寄る。

 

「ありがとう。助かったわ」

『いえ。問題ありません』

 

「………フランキー…さん??」

『はい。なんでしょうか??』

 

「えっ。フランキーさんなんですか??」

『正確に違います。私は主の体内に埋め込んである"アダマンタイト"です』

 

「……………えっ??」

『いま理解しなくても問題ありません。

やるべきは目の前の敵に一撃を入れることです』

 

 

そうだ。

フランキーがセバスの一撃を防いだことでまた一分の猶予が出来た。すでにあと40秒ぐらいしかないがそれでもまだやれる。

 

フレッシュファイアの炎の勢いが落ちてきた。

早くセバスを倒すための作戦を考えないといけない。

息を整えたレイジュは様子の変わったフランキーにいつものように

 

 

「ちなみにまたさっきの一撃は防げるのかしら??」

『不可能です。すでにホシ·シールドの耐久力は20%まで低下。

次受ければこの身体ごと切断されるでしょう』

 

「それでもサポートに徹することは出来るわね。

私と貴方でくいなが一撃を入れる隙を作るわよ」

『了解しました。サポートに徹します』

 

「ちょ、ちょっとッ!!!!」

 

勝手に話が進むことに慌てるくいな。

だがレイジュとフランキーはそんなこと無視し

 

「いいわね。確実に仕留めるのよ」

『よろしくお願いします』

 

「二人とも待ってッ!!!」

 

くいなの静止を効かず勢いの弱まった炎に突っ込む二人。

こんなの作戦ではない。ただの無謀だ。

………だけど、頼ってくれていると分かっているくいなはそれを、それに答える為に………

 

「…………お願い。力を貸して……和道·一文字……」

 

刀を鞘に納め、目を閉じる。

全ての感覚を一点に、ただ刀を振るい、敵を倒すために……

これまで以上の同化をするために深く深く、意識を愛刀へ向けていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マスターネイル』

「2度も同じ技は喰らいませんよ」

 

『なのでデストロイ砲』

 

口から放った釘を簡単にセバスに避けられた。

しかしその逃げた先に誘導したフランキーは肩からキャノン砲を放った。

肩が迫り上がり脱臼してしまうためになるべく使わないようにしていたが、いまのフランキーには関係ない。

 

そして狙い通りにセバスがキャノン砲の軌道に乗り……

 

「お見事。ですが」

『ッ!!!!』

 

まさかのキャノン砲を、その持っているナイフで切ったのだ。

左右に別れセバスには当たらず失敗に終わった。だが、

 

 

「ありがとう。守ってくれて」

「これは…ッ!!」

 

いつの間にかセバスの背後にレイジュが立っていた。

キャノン砲を当てるためではなく、その時に響く爆音とセバスの意識をレイジュから離すためにやったのだ。

 

毒一輪花(ピンク·フラワー)ッッ!!!!」

 

高密度の毒がレイジュを起点に拡散していく。

セバスは咄嗟にその場から脱出したが、吸い込んだ毒が身体中に回りだした。

 

「……くっ」

「あまり動かないほうがいいわよ。

その毒は特別。人のエネルギーを糧に毒を自ら量産していくの。ほら、貴方の肩にすでに出てきているわ」

 

セバスの肩から禍々しい花が咲いていた。

そしてそこからさっきと同じ毒が漏れている。

すぐにその花を刈り取るが今度は反対の肩から生えてくる。

 

「無駄よ。その毒は宿り主のエネルギーが枯れるまで咲き狂う。……………ロビンに似た技だからあまり使いたくなかったけどね………」

 

こんな凄い毒をがあったのに使わなかった。

理由がロビンに似た技だから……と、本人が聞けば確実にイジってくると分かったから使わなかったようだ。

 

「……なるほど。なら、そのエネルギーを使い切りましょう」

「ッッ!!!!」

 

丁度一分。

セバスはナイフを頭上に掲げ、自身の生命エネルギーをほとんどをそのナイフに込めてきた。

 

普通ではありえない。

しかしセバスの能力による"誓約"は自身の力を自由に扱うことも出来る。もちろんその分反動が大きいが……

 

そしてナイフに纏うエネルギーは大剣と化し、放たれればこのフロアは簡単に吹き飛ぶだろう。

 

 

「では、これで………終わりです」

 

 

振り下ろされるナイフ。

躱すことも出来ないその攻撃に

 

『いえ。終わりません』

 

フランキーの胸元が光り輝く。

そして前に突き出した両手が形を変えて()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

 

『コーラ燃料全て消費し、()()()()()()()8()5()%()()()()()()()。砲弾充電………完了』

 

迫る攻撃にフランキーは冷静。

そして当たる直前、その砲口から一撃が放たれた。

 

風来大砲(クー·ド·ラ·ヴァン)

 

本編よりも強力な一撃。

あのサニー号が放つクー·ド·バーストと同じくらいの威力。

踵から杭のようなものを床に打ち込んでいたのにも関わらずフランキーの身体は吹き飛びそうになる。

 

それを後ろからレイジュが支えるが、やはりその威力には耐えきれずに二人とも後方へと吹き飛ばされてしまう。

 

セバスの一撃とフランキーの一撃。

両者ぶつかり相殺してしまった。だがこれによりセバスは

 

「あれを耐えますか……なるほど。やはりハジメ様が見込んだお方達なのですね」

 

振り下ろした右手は真っ黒になって動かない。

代価としてセバスの右腕はしばらく使えなくなってしまったのだ。

それでもまだ戦える。

生命エネルギーもまだ残っている。

 

ここまでよく戦いました。と称賛しながら二人にトドメを。と考えたセバスだが………ここで、巻き起こる粉塵の向こうから見えてきたくいなの姿に目を奪われた。

 

「……これは……」

 

"刀"と呼べるほどに、刀身が光るように、美しく輝いて見えた。

錯覚するほどの闘気を放ちながらも、それはとても穏やかで、まるでそこに神がいるかのような………

 

「一刀流……刀化……」

 

ゆっくりの鞘から抜かれていくある瞬間、セバスはとっさに防御姿勢に入った。

そして、()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

天照(あまのてらす)

 

 

一撃、どころではなくセバスの全身に斬撃が迸る。

くいなはその場から動いていない。何度も打ち合いセバスを知ったくいなだからこそ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

しかしこれは高い集中力と体力と時間を大幅に使ってしまう。

くいなは刀を鞘に納めた途端にその場に倒れてしまった。

 

そしてその斬撃を受けたセバスは

 

「まさか、一撃ではなくここまでとは……驚きました」

「……う、うそ……」

 

全身に斬撃を受けたセバス。血も出て皮膚も切れている。

なのに平気な表情でまだそこに立っているのだ。

 

「これならロビン様の()()()()()()()()()()

よろしければ次の機会にやってみませんか??」

 

「お断り、します!!」

 

「そうですか。残念です。

この勝負は貴方達の勝ちです。それでは私は失礼します」

 

深くお辞儀をしたあとフッと消えたセバス。

セバスの気配が消えたのを確認したくいなは全身の力が抜けたように床に転がった。

 

 

「お、終わりました〜!!!」

「お疲れ様。大丈夫なの貴女??」

 

「レイジュさん。はい。大丈夫です」

「そう。フランキーは気絶しているわ」

 

近寄ってきたレイジュ。くいなから見たレイジュは疲労はしているものの目立った傷はないようだ。そしてフランキーの方を見ると切られた箇所から血は出ておらず、グゥ~スカ〜と寝ているようだ。

 

 

「そうですか……あれ、何だったんですか??」

「さぁ、わからないわ。まぁ、ハジメが関わっているんじゃないかしら」

 

「………ですよね………」

 

フランキーが豹変しなければこの戦いは負けていた。

こうなることも含めてずっと前から仕込んでいたとしたら…

と、そんな考えを持つがありえないとすぐに切り捨てた。

 

いまは、勝ったこの状況を喜び、そして上の階にいるゾロが勝つことを祈るだけ。

 

「……勝ちますよね」

「勝つわよ。私と弟と貴女のコレ、でしょ??」

 

そういって小指を立てるレイジュ。

その意味がすぐに分かったくいなは慌てて言葉が上手く出せずにいた。

 

 

司法の塔 四階

くいな·フランキー&レイジュVSセバス

勝者 くいな·フランキー·レイジュ

 

 








生命エネルギーって(笑)





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塔の倒壊



どうも。
さて、やっと話が纏まってきました。
これなら前より更新が速くなる……かも??(笑)
少なくとも今年中にこの章は終わりません!!
本当にすみません!!!!そして!!!!!
この回からさらに展開が変わってきますのでお楽しみに。

それではどうぞ。





「キリンねぇ……動物(ゾオン)系はそもそもの身体能力が向上するんだったか……クソ面倒くせぇな……」

 

「この姿を見てビビったか??」

「いや。それはねぇ」

 

 

カクが見せた能力。姿がキリンに変わりその後の攻撃が上昇したのは間違いない。しかしサンジにはどうしても"キリン"を見て恐怖する絵面が思いつかないのだ。

落ち着いた様子でタバコを吹かすサンジにカクは

 

 

「そう言っているのは今のうちじゃ。貴様はキリンの恐ろしさを知ることになる」

「そうかよ。だったら早くしやがれ」

 

「その減らず口……後悔するなッッ!!!!」

 

カクは両手に持った刀をサンジへと振り下ろす。

その攻撃を最小限の動きで躱したサンジはそのままカクの懐へ蹴りを入れる。

咄嗟に鉄塊を使用しダメージは受けなかったが、その衝撃はカクの身体を後方へと吹き飛ばす。

 

サンジは接近戦をするために一気に近づく。

そしてカクはサンジの戦闘スタイルを知り、すぐに遠距離からの攻撃へと変更する。

 

嵐脚(ランキャク)手裏剣(しゅりけん)ッッ!!!」

 

両手から手裏剣のような形状の斬撃を乱射するカク。

それをサンジはスピードを落とさずに突っ込み、まるで飛んでくる軌道が見えているかのように躱しながら向かっていく。

 

何かしら危険を察したカクは向かっていくサンジに向けて

 

「嵐脚·乱ッ!!!!」

 

嵐脚の乱れ撃ち。

避けるだけのサンジに対して隙間なく嵐脚を放てば当たると考えたカク。さっきの嵐脚よりも濃ゆい密度で向かってくる嵐脚に避けるスペースはない。

 

「だから……どうした??」

 

そう呟いたサンジは脚を真っ赤に燃やす。

摩擦によるエネルギーで燃やしていたその脚を今はイメージのみでやりのけた。

 

そして向かってくる嵐脚に対して

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)! 一級挽き肉(プルミエール・アッシ)ッッ!!!!!!!」

 

 

地面に垂直に飛んだサンジの怒涛の連続蹴り。

飛んでくる斬撃を尽く蹴り弾いた後、一度着地して前宙の要領で再び飛び跳ねて

 

腹肉(フランシェ)ストライクッッッ!!!!!」

「ガッッ!!!!」

 

カクの土手っ腹に強烈な蹴りを入れたサンジ。

熱を帯びた蹴りによりカクの腹部は高熱と蹴りの衝撃により後方へ吹き飛んだ。

 

着地してふぅーとタバコを吸い直すサンジ。

吹き飛ばされたカクは壁を破壊し土煙が舞っている。

これでは終わっていないと分かっているサンジだがそれでも迂闊に近づかずにその場から様子を見ている。

 

「てめぇら……なにか勘違いしてねぇか??」

 

ガラガラと音をたて瓦礫の中から出てきたカク。

腹部の服は焼け焦げ、肉体にも火傷を負っている。

それでも鉄塊により重傷まではいかなかったがダメージは確実にある。

 

そんなカクがサンジの問いかけに疑問を持つ

 

「何を勘違いというんじゃ??

あの二人を取り戻しに来たことか?儂らにいいように出し抜かれて頭に来てることか??」

 

「やっぱり分かってねぇな……お前ら()()()()()()()

 

 

……………………………………………………

 

 

「………どういうことだ??」

「言葉通りだが…やっぱり分からねぇか……」

 

同時期にゾロとルッチが戦いをしており、サンジと同じようにゾロもこの戦いについてルッチに進言していた。

その口調、上からの物言いに対して苛ついたのかルッチは、一気にゾロとの距離を縮めて指銃を撃ち込もうとした。

 

しかし簡単に刀でいなされて、そしてカウンターで斬り込まれそうになるのを躱したルッチ。

 

 

さっきから相手の力量の予想が大きく外れていることに違和感を感じていていた。

ウォーターセブンでは敵だと認識する必要もないと。

あるとすればあの奇妙な力を使う長鼻ぐらい。

あとは倒せない相手ではないと判断したのだが

 

「こっちはどれだけハジメとロビンに鍛えられてきたか知っているのか??」

「……何が言いたい??」

 

「テメェらが強いだろうが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それが逆鱗に触れたのだろう。

ゾオン系の中で豹の能力を宿したルッチ。

怒りが具現化したかのように毛が逆立ちハッキリとした敵意を殺意を向けてきた。

 

「アイツらもそうだが、貴様らは俺達を怒らせるのが得意と見てる……ッ!!!」

 

「その様子じゃ大分やられたみたいだな。

安心しろ。そこに立っているだけ優しくされているぜ」

 

「指銃ッッ!!!!!!!」

 

瞬きを許さないほどのスピードでゾロに近づき指銃を放つ。

しかしゾロをそれを見抜き刀でそれを防いだ。

 

黄連(おうれん)ッッ!!!!!!!」

 

だがルッチも受け止められると踏んでいたのか続けざまに指銃が連発させる。今度はそれをゾロは両手の刀でそれを全て受けきる。

 

(まだら)あああぁぁッッッ!!!!!!!」

 

今度は両手による連続の指銃。

それもさっきよりもスピードも威力も増した攻撃にゾロは目を瞑り三刀流で構える。

 

淡灯(えいこう)………」

 

目を閉じたというのにゾロには()()()()()

ルッチが繰り出す指銃が、どこに、どのスピードで、どれだけ近づいているのかが………ロウソクの淡い灯ような光が見えている。

 

それをなぞるように刀で捌き、全ての指銃から一回も当たらずに掻い潜った。

 

刀狼流し(とうろうながし)ッッ!!!」

「ガッッ!!!!!!」

 

そしてルッチの横を通り過ぎる際に全身を斬ったゾロ。

致命傷にはいたらなかったが確実なダメージを与えた。

加えた刀を取ったゾロは

 

「速く終わらせるぞ。この上の奴のほうがヤベェからな」

「き、貴様ッッ!!!!」

 

……………………………………………………

 

「あらら……バスターコールなんて……何してるのかね……」

「報告します!!まもなく司法の塔に到着します!!!」

「つき次第砲撃。特に"悪魔みたいな二人に集中砲火"だ」

「たった二人にですか!!??」

 

軍艦の上で海兵から報告を受けた青雉は、バスターコールに乗っとり司法の塔に集中砲火を命じた。特にある二人に対して。

 

「ニコ·ロビン」

「あの"悪魔の子"がッ!!?」

 

「ここで逃せば世界に莫大な被害が出る。

いいな。躊躇するな。やらなければやられるぞ」

 

「了解しましたッ!!!!」

 

敬礼をし、すぐに砲撃が出来るように準備に入る海兵。

その横を"ニコ·ロビン"によく似た人物が、しかし周りの海兵にはその人物が似ていることさえ気づいていない。

 

「効かないわよ()()()()()()()()()()()()

「んなことは分かってるさ。テメェの本体はよく知ってるよニコル」

 

ロビンの分身体。

反乱を起こし、クロコダイルと共にロビンを倒そうとして破れ、そしていまはロビンの変わりとして"ニコル"を演じている。

 

ロビンよりも常識があるため「人が変わったっ!!!??」と海軍内では騒がれていたが、それも今ではこのニコルがいいと評判を受けている。

 

そんなの本人に聞かれたときには海軍は滅びるだろう……

 

「じゃなんでバスターコールなんて馬鹿らしいことするの??」

「別にバスターコールは目標を消すだけじゃねぇんだよ」

 

「さっぱり分からないわ。まぁ私は高みの見物をしてるわ

ロビンに呼ばれたら私は抵抗出来ないから頑張って」

 

「少しは抵抗しろよ!!こっちが死ぬだろうか!!!!」

「あんたの命より私の命よ」

 

……………………………………………………

 

「ちょっ!!なによコレッ!!!??」

 

突然揺れる司法の塔。

バスターコール発動し、こっち砲撃は来ているがまだ塔には達していない。

なのに横揺れが酷い。明らかに意図的に行われている。

 

「なんかこの塔……傾いてない!?」

「ええぇー倒れるのかッ!!!」

 

「どれだけ激しい戦闘してるのよアイツらッ!!!」

 

一階にたどり着きこれから地下に向かうタイミングで司法の塔が大きく揺れだした。そして徐々にこの塔が傾き出したのだ。

ナミ·ノジコ·ベルメール·チョッパーは地下に落ちたルフィの元へ走っていたのだが、途中で合流したギンは

 

「退路を確保してます。後は任せてもいいでしょうか??」

「ええ。お願い」

 

と、逃げるための退路を探すために一人で何処かへと向かった。

そしてここでこの一階に残っていたココロ達とも合流。

 

「ココロさんッ!!!」

「こりゃマズイね……建物の外に出るか地下に逃げたほうがいいよ」

 

「麦わらのニイチャンが下に落ちていったよッ!!!!」

 

「ええ。分かってるわ。一緒に地下に行きましょうッ!!!!」

 

……………………………………………………

 

 

「倒れろッ!!!倒れろッッ!!!!!」

 

司法の塔に必要な柱に触りそして()()()()()()スパンダム。

バキバキの実を食べさせられたスパンダムは自身の身体がどんなに複雑骨折だろうか元に戻ることの出来る力を手に入れたのだが、さらに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

それに気づいたスパンダムは麦わらの一味とあの二人にやり返すためにこの司法の塔を倒して生き埋めにしようと考えたのだ。

それで一緒に生き埋めになることなんて考えずに………

 

「お前らはここで終わるんだッッッ!!!!!!!!!」

 

 

……………………………………………………

 

 

「キャッ!!!」

「…この塔を倒壊させる気ですか……なんて愚かな……」

 

ドンドン傾く塔に立っていられなくなったカヤ。

最上階は最も塔の傾きに影響が出る。このままでは戦うどころではなくなる。

 

「仕方ありません。処置を開始します」

 

そういってリリーサは後方に浮遊する羽衣を肥大化させていき、そこから何かしらの波動のようなものを発生させた。

 

「天上の(その)

 

すると羽衣から発生された波動に当たっている全てが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そして届かなかった箇所から塔が引き剥がされていき、ちょうどフランキーとサンジのいる階の堺から別れだした。

ギリギリで上の階に上がったくいなは助かったが、別れて最上階になった場所にはまだフランキーとレイジュが

 

 

「行きなさいくいな。弟のことは任せるわ」

「レイジュさんッ!!!フランキーさんッッ!!!!!!」

 

どんな理屈なのか知らないがくいなのいる階から上は空中に浮いている。だからくいなは助かったのだが、いまだに気絶しているフランキーの看病をしようもレイジュも残ってしまったために二人は倒れゆく塔と共に………

 

「こっちは……大丈夫よ」

「ダメエエェェッッ!!!!!!」

 

ゆっくり倒れゆく塔。

地面に近い階は地面に倒壊していくがナミ達がいた階から上は島の外。そう、この司法の塔の周りの空いている大穴へとフランキーとレイジュは堕ちていった………

 

 



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司法の塔の戦い(サンジ戦)




どうも。
もう12月ですよ……一年、早いッ!!
この小説も長いですけどよく続くよ……
見切り発車だったのにな〜。まだ続いてます(笑)
これも応援してくれる皆さん。感想くれる皆さんのおかげです。

…………どこからか「他の小説も更新しろ!!」と言われている気がしますが………すみません、なかなか展開が上手くいかなくて……

気長に待ってくれることを祈りつつ、こちらをお読みください。

では、どうぞ。






ものすごい地響きが地下にいるルフィの元まで届いた。

何があったのか、確かめたくても動けないルフィは口から血が出るほどに食いしばっていた。

 

そんな中、大勢の足音が聞こえてくる。

一体誰が来たのか……そんな事を考えながらもルフィにはきっと仲間が来たと感じていた。

 

そして現れたのは

 

 

「ルフィッッ!!!!」

「ナミッ!!!ノジコ!!」

 

「良かった無事みたいね…」

「やっぱりあの雷は効かなかったんだな〜」

「丈夫な身体してるね〜!!!」

 

「みんなッ!!!無事だったんだなッ!!!!」

 

ナミ、ノジコ、ベルメール、チョッパー、そしてココロ達。

まずは無事を確認して安心したルフィだったが、それでも残りの仲間がいないことに気づいて

 

「おい。他の奴らは??」

「まだ戦ってるわ。なによりまだあんたの拘束解けてないでしょうが」

 

「そうだったな!!!なっははは!!!!」

 

まだ戦っているならまだ皆無事だ。

そう安心したルフィは肩から力が抜けていくのを感じた。

 

「それよりいまからルフィをお兄さんの所に連れて行くから」

「残りの3人を倒せば拘束が解ける。そしたらあの二人を止めて」

「私の声だけじゃ止まらない。………お願いね、ルフィ」

 

「おお!!任せとけッ!!!!だから俺を届けてくれッッ!!!!」

 

ここからナミがシロとクロを呼び出し、シロにルフィとチョッパーとコロロ達を、クロにナミ達親子が乗り込み地下ある扉を開き、そこから伸びるトンネルへ駆け出した。

 

先導するシロ。そして後方から走るクロの上にいるナミ達は

 

「………良かったのナミ。いまの状況を言わなくても……」

「いまのルフィには必要ないわ。それに無事かもしれないし……」

「そうね。……希望はまだあるわ」

 

そう、まだ希望はある。

自分に言い聞かせながらいまはルフィは二人の元へと

 

 

……………………………………………………

 

 

「なんだったんださっきのは……」

「そんなこと、気にしとる場合か!!逆鱗(げキリン)ッッ!!!!!」

 

 

嵐脚から刀による斬撃から刀による斬撃、両手両足を駆使して立て続けに斬撃を繰り出し、休みなくラッシュをかけながらサンジに迫りかかる。

しかしそれはいつもゾロとの喧嘩が慣れている為か、躱したり鋭い刃を避けて足で捌いたりしながら攻撃を受け流している。

 

「しっかしゾオン系はどいつもこいつも丈夫なのか??

あれだけマトモに入ってここまで動けるとは………」

 

「鉄塊すればダメージなぞないわ!!!」

「そんなことはねぇだろう。実際、足震えてんぞ」

 

指摘されたカク。意識してしまった為かガクッと力が抜けてしまった。そこをサンジは逃さずに蹴りを腹部に入れる。

今度は鉄塊もさせる暇もなく蹴ったためにダメージをマトモに受けるカク。

 

吹き飛ばされながらも刀を地面に突き刺し勢いを殺した。

その痛みと呼吸を整えるカク。その間にサンジは新しくタバコに火をつけて咥えだしていた。

 

(どうなっとる!?アイツらの実力は確かに儂らより下だったはず!なのにここまでやられるとは………)

 

強敵、とは思えなかった。

のちに厄介だと思われる長鼻だけは先に消したが、それ以外は脅威になるとは思わなかったのだ。

 

しかしいまやられているのは自分。

そして相手はほとんど無傷で立っている。そしてまだ実力を隠している状態で………

 

(ここに来るまでに急成長したというのか…そんなことあり得るのか!?)

 

そうとしか考えられない。しかしそれを認めてしまっては自分が弱いと認めると同義になる。それを本能として否定するカクは、相手を弱いと考えずに強敵と捉えることにした。

そうして相手に向かっていかなければ、やられるのは……

 

「貴様はここで終いじゃ!!!!」

 

そう叫びカクはもう一度サンジに向かう。

再び斬撃の猛攻を受ける中でもその全てを受け流すサンジ。

それを見込んだカクはサンジの両足による防御が出来ないように

 

「嵐脚"龍断(ロウダン)"ッッ!!!」

「なっ!!?」

 

至近距離からの嵐脚。

それも両足を同時に振り上げ、垂直に真上に斬撃を放った。

その斬撃はサンジの両足をすくい上げたのだ。

本能で使いこなしていない武装色の覇気を使い斬撃は効かなかったが、

 

鼻銃(ビガン)ッッ!!!」

「しまっ!!!!!」

 

長い首を自在に動かせるキリンの筋力を利用した指銃ならぬ鼻銃。

両足を地面から離されたサンジの身体は宙を舞っている。

そこにカクの鼻銃がサンジの胴体へと迫る。

当たれば間違いなく胴体に四角い穴が空く。

しかし動揺しているサンジに武装色の覇気は使えるわけもなく、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀将斌(いっとうしょうひん)ッッ!!!!」

「く、くいなちゃんッッ!!!?」

 

サンジとカクの間に入り、鼻銃を刀一本で受け留めるくいな。

和道一文字の切っ先を地面に突き刺し、刃先を相手に向け、棟をもう片手で抑えて攻撃を耐えている。

 

鋼鉄並の硬度を持った大きな鼻の銃弾。

ぶつかり合う金属音。何とか耐えるくいなに対しサンジは宙から地面に着地しすぐさまカクに

 

首肉(コリエ)シュートッッ!!!!!」

「ガッ!!!!」

 

首元に蹴りを放ちくいなへの攻撃を中止させる。

大きく飛んだカクの身体は二度三度地面にバウンドしながら離れていった。

 

なんとか耐えきったくいなだが、強烈な攻撃に手が痺れて刀を思わず手放してしまった。

そんなくいなの元にサンジが駆け寄り

 

「大丈夫かいくいなちゃん!!?」

「ありがとうございます。……助けるつもりが助けられました……」

 

「いや。君が来なかったら危なかった…ありがとう」

 

ニコリと微笑むくいな。

それに心打たれるサンジだが、くいなは完全にゾロに惚れている。そう考えると怒りが湧き、これ以上くいなにちょっかいを出すのを躊躇ってしまう。

 

その間にくいなは刀を拾いあげたところでサンジが思い出したかのようにくいなに問いかける。

 

「そういえばレイジュとフランキーは??」

「ッッ!!!??」

 

「ここにくいなちゃんがいるんだから戦いには勝ったんだろうが………ど、どうしたのくいなちゃん!?」

 

動揺したのがバレたのか。くいなの様子がおかしいと心配するサンジ。ここで起きたことを話すべきか悩んだくいなは

 

「………下に……下に降りていきました。フランキーさんがもう気絶してしまったので」

 

「ったく。何してんだあの変態は……」

 

「レイジュさんからはサンジさんのことを任せると言われたのでここに来ました」

 

「そうか。それは助かる。けど……」

 

にこやかに助かると言ったサンジの表情が変わった。

サンジの見ている先を見るとカクが妙な姿になっている。

身体が真四角になり、手足が地面についておらずにジタバタしている。

 

その様子は滑稽だと笑いたくなる状態なのに、サンジは真剣な表情をしている。

 

「ここよりあのマリモの所に行ってくれ」

「えっ。で、でも……」

 

「アイツのことが心配だろう。大丈夫、もう油断しないから」

 

ニヤリと笑うサンジ。

その表情にくいなは"うん"と頷いて刀を鞘に収めた。

 

「上で待ってますから。必ず来てください」

「あぁ!!」

 

そう約束してくいなは階段の方へと駆け出す。

その間も手足をジタバタさせているカクに対してサンジは

 

「………それが、とっておきか??」

「こいつは前座じゃ。……逃げ場はないぞ」

 

すると近くの床が突然抉れた。

それが次々に床が抉れていく。それに気づいたサンジはすぐさま上を見ると天井におびただしい()()()()()がぶつかり地上へと落ちてきていたのだ。

 

「嵐脚"麒麟時雨(キリしぐれ)"ッッ!!」

 

それは雨。一つ一つが凶器となる斬撃の雨。

まとめに当たれば全身が切り刻まれてしまう。

 

「う、うおおおおおおおおぉぉぉッッ!!!!!!」

 

避けるなんてことは出来ない。

つまりはこの無数の雨を、斬撃を両足だけで凌ぐしかない。

回転により両足に高熱を纏わせ、さらに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)ッッ!!!」

 

逆立ちしたサンジが開脚し、そのまま高速回転を始めた。

 

「パーティーテーブルキックコースッッッ!!!!!!」

 

降り注ぐ斬撃を高熱を帯びた両足による高速蹴り。

胴体を足の下にしたことにより、斬撃が脚から上の部分に当たることはなかった。

 

だが、なかなかやまない斬撃の雨。

いま回転を止めれば斬撃の雨にやられる。

それは向こうも同じかと思いきや手足を、頭を縮めて鉄塊により防御している姿が見えた。

 

つまりこの斬撃の雨が止むまで回転を止めるわけにはいかない。

 

「クソッタレがああああああぁぁぁぁッッッ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ経ったのか……

降り注ぐ斬撃が止んだ部屋の床はズタボロになっていた。

見渡す限り抉れている床。そんな部屋に真四角となっていたカクが首を出して状況を確かめた。

 

「ただではすまんはずじゃが…………ッッ!!!??」

 

カクが見たのは、未だに回り続けるサンジの姿。

三半規管が異常という問題ではない。

人がずっと逆立ち出来るわけがないのだ。

血が頭に登ればいずれは意識を無くす。なのにサンジは

 

「な、何なんじゃお前はッッ!!!!!??」

 

いまハッキリと不気味と、倒さなければいけない敵と認識したカク。

手を床につけて軸にし、身体を何回も何回も横回転させながらスピードを増していく。

 

そう、カクはこのキリンの姿で最大の攻撃力を誇る技でサンジを沈めようと決めたのだ。

この技は貯めがいる。しかし相手は意識がないのか、未だに回転をやめない。

 

つまりいまが好機。こちらも回転による最大の斬撃を放つ。

 

「これで……本当に終いじゃああぁッッ!!!!!!」

 

そして最高の回転による一撃を、サンジに向けて解き放った。

 

「嵐脚"周断(あまねだち)"いいいいぃぃッッッッ!!!!!!!!」

 

 

巨大な斬撃。この塔なんて簡単に切り裂く程の強烈な斬撃。

鉄塊など無意味だと思わせるほどの最大の斬撃を放ったカク。

これならばサンジを倒せると確信したところ、だった。

 

「焼き上がった生地を………」

 

サンジは身体を傾けて斬撃の方へと動き出した。

そしてあと数メートルで接触する前で飛び上がり身体を横に向けた。それにより脚は上から下へいう回転に切り替わり

 

「切り分けるッッッ!!!!!!!」

 

斬撃にサンジの脚が接触し、一度ではなく回転により何度も何度も斬撃に蹴りを入れる。接触するたびにサンジの脚に斬撃が襲いかかっているがそんなこと気にせずに、何度も何度も何度も何度も何度も…………

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉッッ!!!!!!!!」

 

そしてその斬撃が変化を見せた。

そう斬撃という形無きものが、サンジの高速蹴りにより真っ二つに切り分けられたのだ。

 

「"ピザカッター(メッツァルーナ)"キックコースウウウウウウウウゥゥゥゥゥッッッ!!!!!!!!!」

 

 

そして一瞬地面に着地してそのままカクの元へと飛んだサンジは、その回転を更に活用して開脚を閉じて、両足による連続キックをお見舞いしだした。

 

 

筋切り(テンザライザー)ショットオオオオォォォォッッッ!!!!!!!!!」

 

 

ギリギリで鉄塊を発動させたカクだが回転と両足の連続蹴り。

そして的確にカクの筋肉の筋を切るように蹴りを入れていく。

すると鉄塊が徐々に解除していきそして最後には生身でその蹴りを受けるカク。

全身の筋肉の筋を斬られたカクの身体は最後に腹部に入れられた蹴りにより吹き飛び、塔の壁を突き抜けて外へと飛んでいった。

 

そして見事に着地したサンジはふぅ~と煙を吐き

 

 

「どこの世界に調理中に目を回す、プロの料理人がいると思ってんだ??」

 

 

司法の塔 五階

サンジVSカク 勝者 サンジ








メッツァルーナは、半月の形でピザカッターとは全然違います。
ただ"切る"ということと、これならピザもいける!?という作者の考えで付けた技名です。要はノリですので、気にしないでください(笑)



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司法の塔の戦い(ゾロ戦)①



どうも。
超ーーーーーーー久しぶりです。
ごめんなさい。プライベートのほうに気を回しすぎて気づけば半年以上になるなんて……本当にごめんなさいm(_ _;)m

まだまだ書くつもりではありますが、どうしても今はプライベートのほうを優先したくて、今度の更新もいつにやるか……(笑)

いい加減にしないとロビンがこちらにきて制裁を加えようとすると思うので頑張って更新は続けますので!!

ロビン「当たり前よ。じゃないとねじ切るから」
作者「こわっ!!!ってか、出てこないで!!!!!」


では、どうぞ。






司法の塔。一階。

いや、一階というのがおかしいと思うぐらいにその地上は瓦礫で一杯だった。

地上に落ちた司法の塔の一階から3階途中。4階は大穴へと堕ちていったためにここには3階までの瓦礫が落ちている。

 

そしてそんな瓦礫の中からガラガラと崩れる音が

 

 

「………く、く、クソがあああぁぁぁッッ!!!!」

 

 

そこから出てきたのはスパンダム。

瓦礫により全身はボロボロ、怪我もあるが骨折などはない。

そう、いくら瓦礫により骨が折れても元に戻る。

内蔵や頭を守るように蹲り、なんとか倒壊から切り抜けたのだ。

 

まぁ普通は倒壊から生き残るのは不可能。

いくら骨折がすぐに治るとしても。つまりは悪運が良かったのだ。

 

「はぁはぁ…、まぁ、いい。これでアイツらはこの大穴に……、って、えええええぇぇぇッッッ!!!!!!」

 

司法の塔を倒し見上げれば青空があると空を見たのだが、そこには司法の塔の上部が空中に浮いている姿だった。

 

「なんだありゃああぁぁ!!!??」

 

一体あれは何だとパニックになるスパンダムの耳にある音が聞こえてきた。

 

それはこの司法の塔の地下から。

スパンダムの落ちた場所が地下へと通じる階段の近くだったので物音が響いて聞こえてきたのだ。

 

そしてその音はこの地下にある大扉が開く音。

 

つまり、まだ麦わらの一味が生きている可能性がある。

そう察したスパンダムは瞬間に悪い知恵が働いた。

 

「こいつはいい!!一網打尽にしてやるッ!!!!」

 

するとスパンダムは地下へ向かう階段に向かい、そしてある配管の前にたどり着いた。

これは海水を真水に変えるための機械に海水を通すための配管。

 

この司法の塔でも一番デカい配管であるとどこかで聞いていたことを思い出したのだ。

 

そしてスパンダムはその配管に()()()

 

「これで、麦わらの一味は終わりだッッ!!!!!」

 

スパンダムの能力により配管は折れてしまい、そこから大量の海水が地下へと流れる。

そう、スパンダムは本編で起きた出来事を、麦わらの一味を溺れ殺そうとしている。

 

 

……………………………………………………

 

 

(なんだこの男はッッ!!!)

 

 

放つ嵐脚も、打ち出す指銃も避けられ受け止められている。

麦わらの一味の中には"麦わら"と"長鼻"ぐらいが注意するべき対象と考えていた。

 

なのに、いま目の前にいる剣士は………

 

百八煩悩鳳(ひゃくはちポンドほう)ッッ!!!!」

「嵐脚ッ!!!!!」

 

飛んでくる斬撃を向かい撃つ為に放った嵐脚は、まるで霧のように消滅してしまい、鉄塊で向かい撃つつもりだったルッチだが本能による紙絵で回避した。

 

「警戒するべきだった、ということか……」

「あぁ??」

 

「改めて貴様らをここで始末しなければならないと自覚しただけだ」

「そいつは、嬉しいねッ!!!」

 

飛びかかるゾロにルッチは冷静に対応する。

鉄塊を両腕に行い刀を受け防御をする。すでに鉄を切る。という呼吸を知っているゾロだが、ルッチのその鉄塊は鉄よりも固く切ることが出来ないと理解。

それでも押し切ろうと斬撃を打ち込むが尽く弾かれた。

 

「虎ッ!!!」

「嵐ッ!!!」

 

同時に構える両者。

 

「刈りッッ!!!!!」

「脚ッッ!!!!!」

 

片脚を鉄塊によって硬度を増した蹴りと3本の刀がぶつかり均等を保っている。

嵐脚の斬撃が飛ぶ前に阻止したゾロだが、それでも向けられた蹴りは予想以上に強く

 

 

「チッ!!あのコックと同じ蹴りしやがって!!!!」

「誰かは知らんが、弱者と同じにするな」

 

 

押し勝ったルッチはゾロを吹き飛ばす。

まさかの押し返しに体勢が上手く整えられないゾロにルッチが月歩と剃を連用した剃刀(カミソリ)で一気に近づいてきた。

 

「弱者だぁ?それをお前がいうのか??」

(なんだ、コイツは……ッッ!!!)

 

体勢が取れていないのにも関わらずにニヤリと笑うゾロ。

それを見たルッチは直感に従いその場から離脱した。

その瞬間に、さっきルッチがいた軌道上が斬られていた。

 

「なっ!!?」

虎々露(こころ)·此処(ここ)在等(あら)ズ」

 

刀を振っていなかった。

なのにまるで斬撃が放たれたかのように地面が斬られている。

あと一歩遅かったら斬られていた。

その現実がルッチの頭を駆け巡るがすぐに追い払う。

 

目には見えないほどに速かった。それだけだ。

予備動作を見ていれば見抜けたはず。ただそれだけだ。

 

そう言い聞かせるルッチだが現実は違う。

さっきゾロがやったのは()()()()()()である。

空間が斬られたと錯覚出来ないほどの瞬間的な斬撃。

ルッチのいう速すぎる斬撃は出したがそれはあくまでも空間を斬ったに過ぎない。

 

そしてルッチが斬られた空間に来ると、斬られたことに気づいた空間が斬られる。そしてその周りにの物にも同じように斬られるという現象が起きるのだ。

 

前にくいなとどれだけ速い斬撃を出せるかで競い合った時に生まれた技。

当たれば一撃必殺となるが、さっきのように勘のいい者には避けられることがある。

 

そうなると次は当たらない。

ゾロも巻き込まれないように、当たらないようにその場所から離れるためにどうしても設置した斬撃の場所がバレるのだ。

 

(当たれば終わりだったが……野生の勘ってやつか……)

 

当たれば儲けもの。程度でやっていたがそれでも無傷で避けられるのは少しくるものがあった。

初見で完全に避けられるとは思わなかったのだ。

多少なりとも傷をつけると思っていたのだが……

 

「悪かったな」

「……何がだ??」

「獣もバカには出来ねぇみたいだ」

「……貴様は、確実にここで殺す!」

 

 

頭に血が登ったルッチは猛攻撃を仕掛ける。

それはゾロは2刀で応戦。完全に防御に徹してしまった。

それでもゾロは冷静であり相手に隙さえあれば斬り込むつもりだが

 

 

(………こいつ、目が…イッてやがる………)

 

 

完全に舐めていた相手が自分よりも上だと、それを否定するためにバカにしたゾロを殺そうと怒りに任せてルッチは攻撃を仕掛けている。

 

無造作に攻撃を仕掛けてくるルッチ。

この攻撃パターンが読めず、尚且つ動物(ゾオン)系によるパワーアップがゾロに攻撃を暇を与えない。

 

 

「いい加減……に、しろッ!!!」

 

ゴリ押しでルッチを押し返すゾロ。

しかし離れる筈のルッチの身体が途中で止まり、そしてゾロ自身の身体も一緒に引っ張られる感覚に襲われた。

 

その違和感、ルッチの尻尾がゾロの腰に巻き付いていたのだ。

 

 

(しまっ……!!)

「六王銃ッ!!!!」

 

 

……………………………………………………

 

 

ゾロのいる階まで駆け上がってきたくいな。

その階に到着するやいなや真横を何かが通り過ぎた。

飛ばされた先を見てみると壁に叩きつけられたゾロの姿が

 

「ゾロッッ!!!?」

 

ぐったりとしておりくいなの呼びかけに反応しない。

すぐさま駆け寄り声をかけ続けるくいな。

飛ばされてもなおゾロは刀を手から離してはいないが、口に加えていた雪走が遠くへ飛ばされその刀身は折れてしまった。

 

 

(……コイツは……)

 

 

そんな中ルッチはさっきの出来事を思い返していた。

六王銃が当たる直前、ゾロはルッチのその手を切り落とそうとしてきた。なのでとっさに軌道を変え、その先に雪走があった為にその衝撃に耐え切れずに折れてしまった。

 

しかし、それでもルッチの手からは血が流れている。

六王銃は六式を極めたルッチだからこそ出来るいわば奥義。

つまりはその全身も鉄塊で防御しているのにも関わらずに、さらに不意打ちをかましたというのにここまでの攻撃をしてきたゾロに対してルッチは

 

(やはりコイツはここで、消すべきだッ!!!!)

 






ここから伏線も伏線。回収も回収って感じなのでちょっとずつ細かくやっていく感じだと思ってください。
と、いいつつ回収……ちゃんと出来るかな(笑)


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司法の塔の戦い(ゾロ戦)②




どうも。
ちょょーーーーーー久しぶりです(笑)
今年中に更新出来ました!なんとかなった〜
って、いっても休んでいる間に本編のワンピースがドンドンとんでもないことになってるー!?

……この小説ちゃんと終わるかな(笑)

興味はないでしょうけどプライベートも順調で落ち着いてきたのでもうちょっと更新を早めたらいいなーと思ってます。


では、どうぞ。





「一撃で倒せる技を教えろ??」

 

それは小さい頃の記憶。もういつの頃か忘れた記憶。

 

「剣士なら一撃で相手を倒さないといけない時があるんだろう??」

「いや、剣士じゃなくてもあるけどね」

「教えてくれよ!!」

 

ハジメがいる。

どのタイミングだったか忘れたが近くにはくいなもニコルもいる。この記憶はまだ小さい頃の交流があった時の記憶だ。

 

「私に勝てないからって……」

「ちげぇよ!!もうすぐここから出ていくんだろう。その前に教えてもらいたいだけだ!!」

「お兄ちゃんに懇願するのはいいことだけど、対価を払いなさい対価を」

「子供相手に何求めてるんだお前は……」

 

相変わらずニコルの当たりはキツイしそれに対するハジメもいつも通り。本当に楽しかった時の記憶を思い出しているみたいだ。

 

「そうは言っても……剣術は全くだぞ。あの目つきの悪い人から強制的に戦闘に巻き込まれているだけだし」

「前から聞こうと思っていたけどその人って誰なの??」

「それはまだ内緒。いつか分かると思うよ」

 

そういえば鷹の目に会った時、ハジメと鷹の目が知り合いだって事が分かった。そしてこの時に言っていたのが鷹の目だって事もいま………

 

「そうだな……いつか会った時に使える剣術……とは違うかもしれないけど……」

「あるのか!?」

「いま使いこなせないだろうけど、覚えていたらいつか使えるんじゃないか。それこそ大剣豪になるならいつか………」

 

………………………………………………

 

「女……そこをどけ」

「いや…です……」

 

すでに前の戦いで消耗していたくいな。

ゾロを庇いながらルッチの攻撃を凌ぐだけでもかなりしんどい。

そしてどんどんその攻撃が当たり始め、くいなも次の攻撃を喰らえばヤバいという状況まで追い込まれた。

 

「どのみちお前は死ぬ運命だ。先にいかせてやる」

「簡単には、やられません!!」

 

刀をルッチに向けて気合いを入れるくいな。

気を抜けば倒れてしまいそうになるのをグッと堪えている。

 

(ゾロが起きるまでは……私が……)

 

震える手を必死に止めようとするが握力ももうない。

それでもゾロの為にと頑張っていたくいなに対してルッチが駆け出して……

 

「こいつを借りるぞくいな」

 

一瞬の出来事だった。

目の前まで来ていたルッチに対して持っていた刀が奪われて、ルッチの攻撃を凌いだのだ。

そんなこと出来るのは見なくても分かる。

 

「……遅いのよ……バカ……」

「文句は後で聞いてやる」

 

ゾロが目覚めてルッチの攻撃を凌いだのだ。

お互い再び距離を取り、ゾロは和道一文字を口に咥えて三刀流を構えた。

 

「大·龍巻きッッ!!!!」

 

自身が回転し刀を振るい竜巻を発生させた。

黒縄(こくじょう)大龍巻き(たつまき)とは違い巻き込まれても斬られることはないが相手に向かって追っていく。

これにはルッチも嵐脚で応戦するが龍巻きに飲まれて消える姿を見て回避の選択をするしかなかった。

 

その間にゾロはくいなを安全な場所へ移動させ

 

「ハジメに教わった技を覚えているか??」

「いきなり何を……って、覚えてないの??あれだけお兄さんに懇願しておいて」

「ぐっ!」

「呆れた……てっきり鷹の目と対決しているときはまだその技量じゃないから使わなかったと思っていたのに……忘れていたなんてね………」

「う、うるせぇな!!覚えてるのか覚えてないのか、どっちなんだよ!!?」

 

痛いことろをつかれて誤魔化そうするゾロ。

その必死な表情にくいなは思わずクスッと笑い

 

「覚えているわよ。むしろあれだけ練習しておいて覚えていないゾロがおかしいわよ」

「っるせえな……使えない技を覚えていられるか……」

「本当にもう……いい??私の体力的にも一回しか出来ないからよく見ておいてね」

 

………………………………………………

 

「厄介なものを……」

 

その後も何度も嵐脚を放つがどうしても消えない。

むしろあの竜巻を大きくさせている感じさえする。

こうなったらとルッチは脚を地面に突き刺し、尻尾を地面に付けて自身を砲台のように固定させた。

 

竜巻に接近されれば巻き込まれて浮き上がる。

それを地面に固定した脚と、これから放つ技を尻尾で動かないように固定した所で、両手を閉じてくっつけて接近してきた竜巻に、実態のない竜巻に巻き込まれて飛ばされそうになるのを耐えて中心に向けて放った。

 

「最大輪六王銃ッッ!!!!!」

 

放たれた衝撃波はあっという間に竜巻を吹き飛ばした。

開けた視界にはゾロ達が移動しているのが分かり

 

「お前らは誰もここから生きては返さんッ!!!!」

 

強引に地面から脚を引き抜いたルッチ。

その瓦礫をそのままゾロ達に向けて蹴り飛ばした。

それに対してゾロはすぐさまそれを斬り伏せ、くいなに攻撃が行かないように移動を開始した。

 

ルッチにとっては刀を持っていないくいなは脅威ではない。

まずはゾロを倒して後でゆっくりくいなを消せば問題ないと判断した。

 

ゾロとしてもルッチがこっちに来てくれるのは助かる。

そしてさっき思い出した技を使う機会をもらったのだ。

だが、まだそれを実践するにはイメージが足りない。

 

「まずはお前からだロロノア・ゾロッ!!!!」

「ご指名ありがとうよッ!!!!」

 

指銃と嵐脚、猛攻するルッチに対してゾロはまたもや防御する側に回ってしまった。

いくら三刀流とはいえ相手はいわば4刀流と言えるほどに両手両足が武器である。

さらにヒョウという素早い攻撃にうまく自身の技を使う暇を与えてくれない。

 

しかしそれでもゾロは慌ててはいなかった。

冷静さを保ち、ルッチの攻撃パターンを読んでいた。

いくら野性的な攻撃だとしてもそこには必ずパターンがある。

それを見極めればスキを作り、いまも思い描いている技を当てることができるはず。

 

もちろんそれはルッチにも伝わっている。

相手がこの猛攻の中、冷静さを保ち何かを狙っていることを。

だとすればその冷静さを崩すには

 

「ッ!!!」

「チッ!!!!」

 

その動きはほぼ同じ。

ルッチが嵐脚をくいなに向けて放ったのだ。

それをほぼ同じタイミングで嵐脚を斬り伏せたゾロ。

その一瞬を掴んだルッチはゾロに向けて指銃を放つ。

片手剣でそれを凌いだゾロだが、いつの間にかルッチの尻尾が自分の腰を回されていることに気づかなかった。

 

気づいたときには遅い。

逃げようにもルッチの攻撃はもう目の前に……

 

「最大輪六王銃ッッ!!!!!!」

「ガッッ!!!!!!!」

「ゾロッッ!!!!!!!」

 

刀で防いだ時とは違いマトモに食らった六王銃。

全身の骨がバラバラになるような衝撃波はゾロを再び気絶させ……

 

「ッッ!!!!!」

「なっ!!!??」

 

気絶を踏みとどまったゾロは、しっかりとした目でルッチを睨みつけ両刀でルッチの脚の腱を切った。

それにはルッチも思わずよろめき、すぐにもこの場を離脱しようとするが思うように脚が動かない。

 

そしてその隙にゾロが2本の刀を収めて咥えていた和道一文字一本を手に上段の構えをした。

 

「闇より斬り裂け……奥義、」

 

油断もしなかった。躊躇わずに殺しにいった。

だというのになぜこんな結末になるのか……

その一瞬、ルッチの頭の中を駆け巡ったのは……ロビンの顔。

 

「ニコ、ロビンンンンンンッッ!!!!!!!」

「一刀流居合い……死地転(しちてん)抜刀(ばっとう)ッッ!!!!

 

一瞬にしてゾロはルッチに複数の斬撃を浴びせ、ルッチの身体はその斬撃の衝撃により7度転げ回ったあと壁に激突し、その身は塔の外へと飛んでいった。

気力のみで戦ったゾロはルッチを倒したと確認し倒れ……

 

「おつかれゾロ」

「……おう……」

 

すぐさまくいながゾロを支えた。

それほどにギリギリの戦いだったということが分かる。

ゾロが最後に繰り出した剣技は、ハジメにギリギリに追い込まれた時に教えてもらったもの。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

つまりは追い込まれてないと使えないという不憫な剣技。

その分威力は絶大だがあまりにも自身の負担がデカい。

ギリギリの状況で繰り出す奥義はゾロの身体を動けなくしてしまうのだ。

 

「悪いが、後は頼む……」

「うん。後は任せて」

 

久々にみるゾロのボロボロの姿。

しばらく休ませないと戦いなんて無理なほどに。

 

(あとは、私がなんとかしなきゃ……!!)

 

そう意気込んでいるとなにやらドタバタと足音が聞こえてきて

 

「くいなちゃ〜ん!!大丈夫かいー!!」

「サンジさん!!」

「!!?なにやってんだクソマリモ!!くいなちゃんの肩を使いやがって!!!」

 

「………うるせぇコックが来やがった……くいな、上に上がるぞ……」

「えっ。う、うん……」

「無視してんじゃねぇぞクソマリモが!!!」

 

……………………………………………………

 

「…はぁ、はぁ……」

「ダメですね。全然ダメです。よくそれで麦わらの一味に……」

 

完全に一方的な戦いになっていた。

まさに格の違いを見せつけられている。というほどに…

2人がいる部屋はすでに吹き飛んでおり、座り込んでいるカヤの周りはボロボロでいつ下に落ちてしまうか分からないほどに。

 

それでも落ちないのはリリーサの力によるもの。

 

悪魔の実"ヒトヒトの実"。モデル"天女"

リリーサを纏う羽衣はその力そのもの。彼女が望めば羽衣がその形となり具現化する。大剣だろうが、盾だろうが、銃だろうが……

 

生き物以外の形あるものは、リリーサの思いで具現化が可能なのだ。

 

そして最大の力は物体を浮遊させること。

とある悪魔の実で、重力に関係なく自在に浮かせる力がある。

それとよく似ているが、大きく違うのが対象が「生き物も可」ということ。

 

その代わり浮かせる対象が大きければ大きいほどに頭に痛みが走り、生き物を浮かせれば使用後に全身に脱力感が生じる。

 

それを差し引いてもこの力は強い。

羽衣の変幻自在に姿を変え、物体や生き物を浮かせることが出来る能力。

 

つまりはカヤもその能力で浮かせることが出来るのだ。

座り込んでいるカヤを、リリーサが人差し指で上に向けると簡単にカヤの身体が宙に浮かんだ。

 

そしてそのままリリーサの眼の前まで近づけ

 

「あたなには利用価値があると思いましたが……ここで私に傷もつけられないのなら、必要ございませんね」

 

人差し指から指を全て開いた途端にカヤにかけられていた浮遊の力が解かれ、重力によりその身体が地面へと……








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司法の島の戦い(カヤ戦)①





どうも。
何故か一気に書けてしまったので投稿します(笑)
次もいま書いてる途中なのでもしかしたら年内にもう一話いけるかも(もっと書けよ笑)

ではでは、どうぞ。






もう目の前が地面に迫る時に、カヤはとっさに()()()()()()()()()()()()()先端を地面に当て落下による衝撃を棍棒のしなりに吸収させようとしたが、その衝撃に耐えきれずに棍棒は折れてカヤは地面に叩きつけられた。

 

しかし衝撃をある程度無くしたお陰で打ち身程度で済んだ。

すぐに体勢を立て直して上空にいるリリーサを見る。

すると羽衣が姿を変えていき、細かく分断した後に鋭く切れ味のよさそうな円盤形に姿を変えた。

 

「そういえば貴女もマジック使えましたね」

「ウソップさんほどではないですけど」

 

「でしたらそんな腕でどこまで通用するか……」

 

リリーサは広げた両手を前でクロスさせると、それに連動するように展開していた円盤がカヤへと飛ぶ。懐から針を取り出して円盤を撃墜しようとするが円盤の方が強く簡単に弾かれる。

 

すぐに回避行動に出たカヤはギリギリまで円盤を引き寄せたあと、足元にバネを出現させそれに飛び乗り空中へとジャンプした。

簡単に避けれた。と思いきやこの円盤は追尾性もありすぐにUターンしてカヤに迫る。そこにカヤはまた手のひらに何かを出現させて一気に地面へと降りたことにより円盤を回避。

出現させたのは100キロと書かれたオモリ。これにより重力の力で回避をしたのだ。

 

しかしその衝撃はあまりにも強く未だに身体を起こすことができずにいるカヤ。

そんなカヤを待つことなく上空から円盤がカヤへと一直線に落ちてきて衝撃と土埃が一帯に広がった。

 

上空にいるリリーサからもこれは当たったと思い土埃が消えるまで見ていたのだが、その土埃か消えていれば様子が見えたとき少し驚いた表情を見せた。

 

なんとカヤの足元に円盤が突き刺さっており、円盤に襲われたはずのカヤはなんと無傷にたっていたのだ。

どういうことなのかとリリーサは観察すると両手には指と指との間に挟まれた針があり、手からは血が流れている。これを見たリリーサはある一つの可能性を見出した。

 

「……驚きました……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう。カヤがやったのは単純なことだ。

針単体で落とされるならパワーをつければいい。

つまりは針を握り、自分の手で落とせばいいと考えたのだ。

しかしいくら持ち手側が鋭利ではないとはいえ円盤を撃ち落とすとなればそれなりの衝撃がある。

皮膚が裂けたり、皮膚に刺さったりなどし血が流れるのは当然の結果である。

 

しかしリリーサが驚いたのはその行動ではない。()()()()()()()

 

いくら円盤を落とせる手があったとはいえ複数に飛んでくる円盤を無傷で落とせるほどにぬるい攻撃をしたわけではない。

なのに現にカヤはその円盤を全て落とした。

そしてそれについてカヤはこう答えた。

 

「私も、命中させるのは得意なんですよ」

「……なるほど。考えを改める必要があるようですね……」

 

身体が弱かったカヤ。それでもウソップが毎日来てくれてこっそりとマジックや狙撃について教えてくれた。

だから、だろうか。どちらとも秀でた力はないがそれでもこうやって「反射神経・洞察力・器用さ」といったスキルは高まった。

 

ウソップほどとはいわずとも、並の狙撃手よりも狙撃手。

そしてマジックも同じようにその力を発揮する。

ただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(手加減をしているとはいえ、あの攻撃でしたら海軍一個小隊なら簡単に倒せるものなんですが……)

 

()()()()()()()()()。つまりは今は一般人と同じように動ける。そしてそのスペックは一般人よりも遥かに上にあるということ。

 

「面白くなってきました。では合格ラインまで()()()()()()3()()()()()()()()()()()()

「まだ、上があるんですね……」

 

パチンっとリリーサが指を鳴らすと地面に突き刺さった円盤が消え羽衣となってリリーサの元へ戻ってきた。そして再び羽衣が姿を変えていく。それはドンドンと大きくなっていき…、

 

「……ちょ、ちょっとまって…下さい………」

「ではステップ1。パワーを見せて下さい」

 

それはとても大きな斧。まるで巨人族が使うような斧。

鈍く光る斧の先端に思わず生唾を飲むカヤ。

その音が聞こえたかのように、それが開始の合図かのように斧が動き出した。

 

単純な動き、まっすぐにカヤに向かって落ちてくる。

斧で攻撃されている。という感覚ではなく、大きな建物が自分に落ちてくるかのよう……

 

と、現実逃避をしていたら間違いなく斬られる。いや、あの刃先に押し潰される。

そう錯覚するぐらいの大きな斧がもう間近に迫ってきている。

 

回避は、もう無理である。避けたところで衝撃波によって倒される。ここから助かる方法はあの斧をどうにかするしかない。

 

「って、こんなのどうすればいいんですかー!?」

 

泣き言が出てしまい涙目になるカヤ。

もうそれだけパニックになり、どうしようもないと悟ってしまったのだ。

万事休す。となると思ったその時……、

 

「頭、下げていろ」

「ッ!!?は、はい!!!!」

 

その声に直ぐさま頭を下げて蹲るカヤ。聞き覚えのある声と足音。そして独特の金属音が鳴り響いたあと、こうカヤの耳に声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀流、奥義………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電光(でんこう)朝露 (ちょうろ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬雷が光ったかのような眩さが部屋全体を包んだ。

それにびっくりしたカヤは上空を見ると、ゾロが巨大な斧に対して剣を抜いた後が目に映った。

そして次の瞬間、まるで形が無かったかのように巨大な斧が溶け出していき姿が変わった時には物質であった斧が消え去り再びリリーサの羽衣として戻った。

 

降りてきたゾロが刀をしまうといきなり倒れ込む。

もしかして攻撃を喰らったのかと駆け寄ろうとするがカヤの横を誰かが通り過ぎてゾロに駆け寄る。

 

「なにカッコつけてるのよバカ!!」

「ば、バカとはなんだテメェ……」

「ゾロがやらなくてもサンジさんがいたでしょう!!」

「あんなグルマユに任せられるか……」

 

「どうオロしてやろうかこのマリモが!!!」

 

そこに現れたのはゾロとくいな、そしてサンジだった。

下の階にいた3人がそれぞれ敵を倒して上がってきたのだ。

 

「み、皆さん……」

「大丈夫かいカヤちゃん??」

「は、はい……」

 

そっと差し伸べてくれた手を握り立ち上がらせてもらったカヤ。

こういう時は本当に紳士だな。と心で思った。

 

「テメェは退いてろエロコック。どうせ女相手じゃ戦えねぇんだからな」

「あぁ!!?剣しか脳がねぇクソマリモには、レディに対して思いやりがねえのか」

「あぁ!!?」

「あぁ!!?」

 

「こんな所で喧嘩しないの!!」

 

ここで仲裁に入るくいなを見てホッとするカヤ。

これでなんとか助かる。と考えていたのが読まれたのか、

 

「確かに、運も一つの要素ではありますね」

「ッ!?」

 

その言葉にギクッするカヤ。突然挑まれた試練とはいえ確かに自分の力で倒すはずだった。なのに圧倒的な力を見せられ心が折れて泣き出す始末。そして助けられて安堵する。

 

それが悪いとは言わないが、それに対して思う方があったカヤは表情が一気に暗くなった。

 

(…私は、ウソップさんの為に……やっていたのに……私は、それから……逃げたの………)

 

ここまでやってきたのはウソップをバカにしたリリーサを見返すため。そして簡単に死んだといったあの言葉を訂正させるため。

それなのにカヤは自分がやられると思ったとき、その気持ちが薄らいだ、いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と…、

 

 

そしてそれをリリーサが見通してきた。

その瞳がそれが罪だと言わんばかりに見えてくる。

 

「でも2度はないです。天上の泡雲」

 

すると羽衣の三分の一が消失したと思ったらゾロ、くいな、サンジの周りに泡が突然現れ3人の身体を覆った。

 

「皆さん!!!」

 

そしてそのまま泡が宙を舞い、3人を空中へと誘ったのだ。

 

「なんだコリャ!!!?」

「刀が……持てない!?」

「蹴りが、入らねぇ!!?」

 

泡に捕らえられた3人は逃げ出そうとするが泡により滑りがよくなり刀が握れず、蹴りで割ろうとしてもまるで雲のようにユラユラと動き割ることが出来ない。

 

完全に3人の動きを封じてきたのだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「能力の………コピー…!?」

「いえいえ。あくまでも特性の強化に過ぎません。

ですが、これで運もなくなりましたね。」

 

 

まさかここに来て悪魔の実の模倣をしてきたのだ。

泡にという元々滑りやすい性質と、雲という形が変わり簡単に動く性質を掛け合わせて創り出した泡雲。

 

そんなもので強者である3人を簡単に捕らえ動けなくした。

そして残ったのはリリーサとカヤだけ。

 

「では次にいきましょう。ステップ2です」

「ッッ!!!?」

 

緊張が走る。

さっきの攻撃も躱せなかったカヤが次の攻撃を凌げるのか。

本当にリリーサに勝てるのか……どうすればいいのか分からないまま次のステップが始まる。






あっ。いまの励みは彼女とクリスマスデートすることです。
(全くいらない情報でした(笑))


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司法の塔の戦い(カヤ戦)②





どうも。
新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。(何日経ったんだい(笑))

長い事お待たせしましたが本当にちょっとずつ書き出しています。やっと構成もまとめ出して、一応頭の中では頂上決戦まではいけそうです。

しかしそこまでにあと何年かかるか……
出来れば皆様にはお付き合いして頂きたいと思いますが、無理せずにどうかこれからもよろしくお願いします。

ロビン「読まなかったら……捻り切るわ」
ハジメ「怖いこと言わないの!!!!」


……お気になさらずにご自由にどうぞ(笑)


では新年一発目、どうぞ。






「お、おい!!本当に落ちたりしねえだろうな!!」

「こんな高さから落ちたら能力者なんて関係なく死ぬわよ!!!」

「誰か助けて〜!!」

 

「お前らな……ちょっとは信用しろよ!?」

 

その声は何処から聞こえてくるのだろうか……

聞き覚えのあるその声は、一体どこから……

 

「マトモな移動手段はなかったのか!!」

「俺がこいつを置いていくわけねぇだろう!!」

「だったとしてもアンタなら他にもやり方が!!」

「だから()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()無茶をいうな!!」

「コレ自体が無茶苦茶よ……」

 

一つの誤解が解けるだけで全てが覆される。

その一手を彼らは持っている。

 

「いいからいくぞ!!もう目の前に見えてんだ!!!」

「クソがあぁ!!!」

「何もかも!!!!」

「ハジメが悪いッ!!!」

 

そしてやはり元凶はハジメであることに変わりなし。

 

…………………………………………………

 

 

天燕(あまつばめ)

「……ぇ………」

 

 

鋭利な円盤の比ではない。

それ以上の数の透明な燕が何百、何千匹と出現したのだ。

言葉を失っても仕方ないほどの圧倒的な数。

 

「この一匹はとても弱いです。

主に偵察用の子なのですが、これだけの数が貴女に当たれば……」

 

そっと触っただけで崩れてしまう燕。

一匹ならどうにでもなるほどなのに、それがこんなにも数があると怖いものなのか……

 

「ステップ2は、とにかく最後まで立っていてください。

では、始めます。」

 

有無も言わさずに開始の合図をするかのように上げた右手をカヤの方に向けて振り下ろした。

するとカヤの周りの燕達はカヤに向かって突撃する。

 

いくら一匹が弱くともそれがまるで壁のようにせまり、そのスピードが速ければかなりの衝撃になる。それも全ての燕が動いている訳ではないので周りも注意を払わないといけない。

 

ギリギリに避けた所に燕達が地面に激突する。さっきのように追尾性能はないようだがそれでも次から次へとカヤに向かって燕達が飛んでくる。

 

とにかくいまは逃げること。

とにかく最後まで。というのはこの燕から逃げ切ればいいということ。ならいまは回避続ければいいだけの話。

そう考えて逃げ回るカヤにリリーサがそれだけで終わらせるわけがなかった。

 

「燕返し」

 

するとギリギリに避けて壁や床に叩きつけられていた燕が急旋回してカヤへと向かってきたのだ。

こんなことされてはずっと逃げるのは難しくなる。

どうすればいいかと考える暇もなく、急に燕がカヤを追うことをやめてカヤの上空へと舞い上がった。

 

そしてその上空でぐるぐると旋回を繰り返し

 

「ま、まさか……」

 

嫌な予感が当たった。

旋回をしたまま、まるで竜巻のように下に向かって降りてきたのだ。その先がカヤの方へと向かう。

 

燕回(えんかい)

 

逃れ術もなくカヤはあっという間にその燕の竜巻に飲まれてしまった。

 

「カヤちゃん!!!!」

 

くいなの叫ぶ声は飲まれたカヤには届かなかった……

 

…………………………………………………

 

 

「ッッ!!このままじゃ……マズイ……」

 

直接燕がカヤを押し潰したかに見えたがまだ大丈夫だった。

燕の竜巻の中心そこはまだ……

 

しかし徐々に中心の幅は狭まってくる。

そして油断すれば旋回する燕がカヤに襲ってくる。

いまはまだうす皮を切られているだけだが、どんどん傷後が深くなっていく。

 

このままだと燕に切り刻まれてしまう。

かといって持っている針だけでは旋回する燕全てを捌くなんて不可能だ。

 

「どうすれば……どうすればいいの………ウソップさん…ッ!!」

 

 

……………………………………………………

 

 

「勇敢で"カッコいい英雄"??」

「あぁ!!そいつが俺の夢だな~バカらしいだろう!!」

 

 

まだウソップがルフィ達と会う前。

カヤに自分の夢を語りながらも自分の夢をバカらしいというウソップにカヤはちょっとムッとした。

 

「そんなこと思いません!ウソップさんが決めた夢を笑うわけないです!!」

「お、おお……ありがとうよ、カヤ……」

 

意外な反応に戸惑うウソップ。

村の人からは何言ってるんだと思われていたのにカヤはそれを笑わなかったのだ。

 

「でもどうしてカッコいい英雄なんですか??」

「初めはよ、勇敢なる海の戦士。ってのだったけどな……」

 

そこで言葉を濁らせだウソップ。

どうしたのかと思ったがウソップが話すまで待つことにしたカヤ。それに気づいたウソップは一度深呼吸をしたあと

 

「知ってるか??前に"海賊と海軍と七武海"が全面対決したことを」

「あの全世界に流れたアレのこと??」

 

 

大将参謀ハジメが全世界に大体的に広がった出来事。

全ての海賊へ、ハジメに対して不満を持つものへ向けた出来事は一つの抑止力として効果が出た。

 

化け物のようなその姿をみた海賊が続々と船を降り、海軍は続々とその人数を増やした。

七武海といえばハジメという制御により大人しくなり、人々に取ってはまるで"英雄"と呼べる出来事だったのだ。

 

「あんな風になりてぇ!!

誰にも負けず、どんな相手にも臆することなく、色んな人からも頼られるあんなカッコいい英雄によ!!!」

 

その目はキラキラとしていて、本当に子供が夢を語っている姿だなーと観じていたカヤだが、そんな純粋な姿が改めて……

 

「ウソップさんなら慣れるよ。カッコいい英雄に」

「そ、そうか!!そのためにカッコいい登場シーンも考えてるんだぜ!!」

 

……なにかおかしな方向に向かっている気がしたが気分が良さそうなウソップに対して余計なことは言わないようにしようと口を開くことをやめた。

 

「例えばよ。誰かが「助けて〜ウソップさまー!!!」って叫んだら……………」

 

 

……………………………………………………

 

 

「………て、……ソ………」

 

 

もうカヤの姿は燕により全身切られている。

明確な一撃があるわけではないがそれでも無数の傷から血を流している。

 

もう、意識も無くなりかけている。

そんな中でもカヤは薄れゆく意識の中で声を出したのだ。

昔教えてくれた、カッコいい登場シーンを見せるための言葉を。

 

もしかしたら言った所で来ないかもしれない。

言った所で無意味かもしれない。無駄かもしれない。

それでもカヤはその言葉を言わない。という選択はなかった。

 

 

「助けてー!!ウソップさーんッッ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、終わらせましょう」

 

カヤの声はこちら側まで聞こえてきた。

それがリリーサには不愉快にしか聞こえなかったのだろうか。軽くため息をつき燕達に指示をだした。

さっきよりも早くカヤの周りを周回し、そしてドンドンと範囲を狭めていく。もう人一人立っていられるかどうか分からないほどに……

 

「カヤちゃんッ!!!」

 

くいなの叫びは燕が起こす竜巻の音でかき消されている。もうそれほどに強烈なもので、それほどに絶望的な状況。

 

誰もがカヤの絶望的な事を考え、くいなの目からは涙が流れ………

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッツ・ショータイム!!!!!!!」

 

その瞬間、燕によって出来ていた竜巻が一瞬にして花びらとなり変わった。その色鮮やかな光景は誰もが見惚れてしまうほどに。

そしてその舞う花びらが落ちる場所には傷ついたカヤの姿があり、ダメージは負っているものの意識もあり無事生きていた。

 

そんなカヤは一体何が起きたのかと放心状態になっていたが、舞い落ちてくる花びらを眺めていたらフッと涙が流れていた。

 

分かっていた。こんな事が出来る人は1人しかいない。

信じていた。そう簡単に私の前から消える人ではないと。

 

パッチン!と音が響いたと同時に建物の屋根が一瞬にして消え去さった。そこから差し込む太陽の光。その光に導かれて空を見上げるとそこにはありえない光景があった。

 

「………う、うそ……」

「あの野郎……こんな事も出来るのか……」

「ったく、最初から使えってんだ……」

 

空に浮いているのはこの海を一緒に乗り越えてきたゴーイングメリー号。

そしてその船首の上に立っている姿を見たカヤは一気に感情を爆発させこう叫んだ!!!!

 

「ウソップさんッッッッ!!!!!」

「ようカヤ。待たせてしまって悪かったな」

 

船首から飛び降りたウソップの足元にパッと現れた絨毯。

それに乗り一気にカヤの元までたどり着くとウソップはカヤに手を差し伸べて

 

「あとは任せろ。遅れた分はちゃんとやるぜ!!」

「……うん。おかえりなさいウソップさん!!」

「おう!ただいま!!!!」

 

カヤを引き上げ、それと同時にウソップに抱きつくカヤ。

ちょっと戸惑ったウソップだが声を上げて泣くカヤに離れてとはとても言えなかった。

 

そんな甘い空気のなかメリー号から何か声が聞こえてくる。

ガヤガヤとする空気の読めない声にウソップが指パッチンすると巨大な箱が現れその中から

 

「こええぇよ!!いきなりマジック使うなッ!!!」

「ってか、私達を忘れないで!!」

「……死んだ状態の方が良かったかも………」

 

そこにはハジメに殺されたハズのバースト、キロロ、カラーの3人が()()()()()()()()()()()()()()

 

「キロロちゃん!!!カラーちゃん!!!生きてて良かったーー!!!」

「俺もいるんだろうがッ!!!」

「このエロコックには無理な相談だ………」

 

瞳がハートとなり拘束されながらもクネクネと動くサンジに対してため息をつくゾロ。

バーストは自分だけのけ者扱いされたのが少しショックではあったが気にしないように……

 

「……、残念」

「ワザワザ言うんじゃねえ!!!!」

 

空気の読めないカラーがトドメを刺した。








次でカヤ編完結です。
色々起きてますが次で明らかになります。

血まみれになっていたウソップ。死亡したハズのカラー。腕を斬られたキロロ、胸を貫かれたバースト達が何故生きているのか??

さて、皆さんの予想は当たってるかな??
って、ずいぶん前なので分からないですよね〜(笑)


・変わっていく麦わらの一味③④、カラー
・変わっていく麦わらの一味⑧、ウソップ
・その"一言"のために、バースト、キロロ

これが4人の出来事の回となりますので、よければ読んでみてください。






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司法の塔の戦い(カヤ戦)③




どうも。
久しぶりに2日連続投稿ですね。
この調子で投稿出来ればいいですが…、(笑)
では、どうぞ。






パチパチと拍手が鳴り響き、リリーサがウソップに向けて拍手をしていた。

 

「お見事です」

「そいつはどうも。ついでにこのまま帰ってくれねえか??」

 

「難しいご相談です。

私を退却させたいのでしたら一撃当ててください」

「なるほど。そいつは……分かりやすいな」

 

ウソップが両手を合わせてパンッと多いな音を響かせた。すると大気が震えウソップの背後に高密度の"圧"が集まった。それは形を変え大きな頭が8つある蛇へと姿を変えた。

 

「ヤマタノオロチッッ!!!!」

 

8つの蛇はそれぞれの角度からリリーサに向かって行く。しかしリリーサにとってそれぐらいでは捕らえられない。まるで妖精のように自由に飛び回りヤマタノオロチから簡単に逃げ回っている。

 

そんな中、突然リリーサの前に出てきた小さな黒い球体。危険を察知したのかすぐさまその場を離脱するとその球体が爆発を起こしたのだ。

 

ウソップの狙撃術の一つ。火薬星。

そしてそれがリリーサの行く先々に狙撃され爆発。鬱陶しいと思ったリリーサはウソップを撃退しようと向かうが

 

「出てこいッ!!"天上(てんじょう)如意棒(にょういぼう)"ッッッ!!!!!!」

 

ウソップのバックから考えられない質量の巨大な如意棒がリリーサに向けて放たれた。

これにはリリーサもギリギリで如意棒を交わし、これ以上は危険だとウソップに突撃するのを止めた。

 

「コレも、マジックだというのですか……」

「あぁ。そうだ。ちゃんとタネも仕掛けもあるぜ」

 

「ならそのタネが無くなれば終わりですね。

いつまで持ちそうですか??」

 

「それを明かさないのがマジシャンだぜ」

 

お互いニヤリと笑い攻撃が始まる。

再び羽衣も燕に変えて数で押し切ろうとするリリーサに対して、ウソップはバックから大量のトランプを出してきた。

 

お互いに数での勝負。

燕の突撃に対してウソップがトランプで迎撃する。トランプで崩された燕はすぐに新しい燕として再現され突撃をする。

一方でトランプには()()()()()

ウソップの狙撃手としての腕があるからこそ、一枚のトランプで複数の燕を迎撃しているが、やはり途中で勢いをなくして地面に落ちる物がある。

 

しかしウソップに焦りの色は見えない。

確実にリリーサに一撃を入れる手を持っているようだ。

 

それに対してリリーサも警戒をしている。

麦わらの一味の中でも最も()()()()()()()()()()()()()

 

他の者たちは自身の力、悪魔の実など考えれば、飲み込めれば納得するもの。

しかしウソップのマジックはそうではない。

悪魔の実でもなく、しかし自身の力で起こせるレベルを遥かに超えている。

ウソップのバックは悪魔の実を宿しているためその例外を省いても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ウソップが悪魔の実を食べているなら納得がいく。しかしウソップは海を泳げるのだ。

ならばウソップは能力者では……………

 

(ま、まさか…ッッ!!?)

 

何故気が付かなかったのか……

一人、いや、2人いるではないか。

能力者にとって天敵と呼ばれる"海"を克服した人物達を。

自分が尊敬し崇拝している、神と呼べる2人を……

 

リリーサの一瞬の動揺をウソップは見逃さなかった。足元にトランポリンを出現させて勢いよくリリーサの元へジャンプした。

それに反応したリリーサは燕を集中させて突撃させようとするが先にウソップが狙撃をしてきた。

火薬星だと思ったリリーサは燕でそれを撃ち落としたのだが撃ち落としたのは煙星。爆発せずにそこから大量の煙が溢れて出てきたのだ。

 

何かをしようとしている。

とっさに警戒を深め攻撃から防御にするために燕を羽衣へと戻して自身の周りを羽衣で固めた。

 

並の攻撃ではビクともしない羽衣。

これなら先程の如意棒でも防ぐことが出来る。

しかしそれが甘かった。

 

確かに並の攻撃どころか七武海達の攻撃さえも防ぐことも出来るだろう。

しかしそれを簡単に超える存在がいるとしたら……

 

「悪いわねリリーサ。借りを返すためよ」

「ロビン様ッッ!!?」

 

そこに現れたのはロビン。の小さいほう。

そうこれは空島でロビンが作り出した()()()()()

空島で役目を終えたミニロビン達は解除されて消されたはずなのだが、ウソップはそこでミニロビンをバックの中に咄嗟に隠したのだ。

 

そしてしばらく経ったある日。

大荒れの海の中を舵取りも誰もいない中で一人倒れ込んでいるウソップ。

 

そして不自然に動き出すバックから出てきたのがこのミニロビンだったのだ。

 

バックは悪魔の実を食べさせた品物。

それは()()()()()()()()()()()()()()()

しかし実際はそれだけではない。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ものだったのだ。

 

つまりはミニロビンはニコルと同じ存在。

ロビンと切り離され単独として生まれたミニロビンなのだ。

 

ただ消されるだけの存在がこうして生き残った。それを恩と感じたミニロビンはウソップを救助し、気配で感じだったバーストとキロロを拾い上げたのだった。

 

そしてこうして今もミニロビンはウソップのためにリリーサに向かっている。

あのロビンからは想像できない。

いくら恩を感じたとしてもウソップを助けた時点でそれは返済されたはずなのだ。

 

つまりミニロビンはまたロビンともニコルとも違った存在。2人には薄くしかと思われる"優しさ"というものが大きく出た個体といえるのだ。

 

「見事よリリーサ。褒めてあげるわ」

「……ありがとう、ございます」

 

そしてミニロビンから放たれた一撃によりウソップとカヤの勝利が決まった。

 

………………………………………

 

「それで、なんでコイツらがここにいるんだ??」

 

リリーサとの勝負は終わった。

ミニロビンの一撃は想像通りに強く未だに目が覚めないリリーサ。

 

気絶したことにより羽衣の効果は切れて解放されたゾロ達。そして切り傷の多いカヤを治療している中でゾロがバースト達に向けて行ったのだった。

 

「ハッキリと言ったはずだよな俺達の敵だとよ。ならここでやっても問題はねぇはずだ」

 

そういって刀を抜こうとするゾロにバースト達は萎縮してしまう。いくらあの頃より強くなったとはいえゾロやサンジに勝てる程ではない。

ましてやウソップに至ってはどうやれば勝てるのかさえ見えてこない。

 

だからバーストは必死になって事の顛末を伝えることにした。

 

「ま、待ってくれ!!

明らかにこっちが悪いのは分かっているが待ってくれ!!!

そもそもカラーが生きていたんだ。俺達がお前らを敵対する意味がなくなったんだよ!!」

 

「だがハジメに脅されていただけだとも言ったよな。いまここにハジメはいねぇ。そこにいるロビンも本体とはかけ離れているみたいだしな。縛るものはねえはずだ」

 

「そうね。私は私よ。あの2人とは違うわ」

 

そもそも敵対するもの同士。

ハジメに強制的に船に乗せられたことは間違えではない。するとバーストの前に立ったのはカラー

 

「違うわ。……2人を強制的に船に乗せたのは私。だから悪いのは私」

 

「カラー……」

「あなた……」

 

「それがなんだ。雇い主がいないテメェらをここで斬っても問題はなねぇ」

 

するとカラーが懐に手を回し何かを取り出した。少し警戒したゾロだがそれが紙だと分かると警戒を解いた。

 

「これを読んで。それで分かるわ」

 

………なんとも嫌な予感がした。

しかし見ないと分からないと感じたゾロはそれを受け取り中身をみることにした。そこには……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これを読んでいるのは恐らくゾロと言ったところかしら。キチンと考えている割に頭が硬いからどうせバースト達を斬るとか言っているのでしょうね。

 

いいからしらゾロ、貴方はバカよ。

私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どんな駒でも使い道はあるのよ。

大体カラーが死んだ。ってお兄ちゃんの能力を使えば()()()()()()にすることなんて簡単よ。いくらチョッパーでも死んだと誤認するほどに完璧な死体の出来上がり。

でもそれはチョッパーが悪いのではないわ。お兄ちゃんが優秀すぎるのよ。

そしてお兄ちゃんのことをよく分かっていない貴方は、いえ、貴方達は全員ダメよ。

 

これが終わったら修業よ。

ロビンより。

 

p.s これはルフィには見せないようにね。

あの子がどれだけ強くなったか確かめるまではね』

 

 

それを見たゾロは、いや他の面々は、ワナワナと怒りが体から滲み出るかのように怒りがこみ上げていた。そして、

 

『ふざけるなあああああああああああああああああああぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!!!』

 

怒りに乗せた技の数々は建物の床だけを残して全壊したという。

 

………………………………………

 

「はぁああぁぁ〜!!!?

その腕も胸の傷も()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()?()

 

やっと落ち着き治療を終えた所でバーストとキロロの負傷していたはずの傷跡がないことについて話が上がった。

バーストとともかくキロロは確実に腕が飛び、無いものと思われていたのにいまは確かに腕がありキチンと動いている。

 

なぜそんな事が起きたか。それはここにいるミニロビンが説明したのだった。

 

「宿り木。まぁ、これは木の特徴ではあるけど私に言わせれば花を咲かせるものは全て私の力なのよ」

「いや、理屈がスゲェんだが……そこは置いておいてそれがどうしてこうなるんだ??」

 

「いまから説明するのよ。聞きなさい。

枯れ果てる木に剪定した木を植え込む。すると剪定した木がその木を媒体として新たに成長する。というのが宿り木なのだけど、それを逆手に取ったやり方をしたのよ」

 

「……えーとつまりは、キロロさんの腕に花を咲かせて、それをキロロさんの腕として生まれ変わらせた。……ってことですか??」

 

「そうよ。ハナハナはどんな場所でも咲き誇る。それが腕だろうが胸だろうが。まぁ完全に自分達ものとして馴染むまでしばらく時間はかかるけど支障はないはずよ」

 

丁寧に説明してくれるミニロビンに違和感があるがそれは言わないでおこうと誰もが感じた。

 

これが独立した"優しさロビン"。

これが本体ならなお良かったのに……なんて考えるだけでも殺されそうなので絶対に考えないようにした一同だった。

 

すると改めてカラーはゾロに向かい

 

「私達はただあの2人に踊らされていただけ。そしてまだ解雇されてないわ。」

 

「…………チィッ。そうかよ……」

「斬らなくて良かったわねゾロ」

「あぁ!?なんでそうなるんだよ!!」

 

実は斬り事を躊躇っていた。

それは隣にいたくいなはよく分かっていた。

だがしこりを残さないためにあえてゾロが悪役に徹したのだ。

 

「はっ。似合わねぇことするんじゃねえマリモのくせによ」

「誰かが能天気だからこっちが大変なんだよグルグル眉毛が」

 

「あぁッッ!!?」

「あぁッッ!!?」

 

再び睨み合い喧嘩が始まる。

もう面倒くさいと無視することにしたくいな。

そのタイミングでリリーサが目を覚ました。

 

「大丈夫ですか??」

「…………幸せでした……」

 

「……えっ??」

「ロビン様の一撃。最近はご無沙汰でしたからもう感激で胸が………またよろしくお願いします」

 

「イヤよ。そんな顔をするから本体も嫌がってるのよ」

「そんなにおかしいのでしょうか??」

 

と、本人は分かっていないが光悦な表情、めっちゃ気持ちよさそうな表情をしているのだ。

もうこれはダメだ。と思わせるほどに。近寄ってはダメと思わせるほどに……

 

そんなことをしているとミニロビンの前に立ち

 

「今回の出来事、ルフィや俺達を強くするための演技だったということか??」

 

と、誰もが聞きたかったことをズバッと聞いてきた。

それでもミニロビンは動揺などしない。

いくら優しさのあるミニロビンでも、ロビンなのだから。

 

「途中までしか知らないけど本当に抜けるつもりよ。

少なくとも貴方達の誰かが負けるようなことがあれば完全に抜けるわ。そしてまだ終わってない。あの子が勝たないとお兄ちゃん達は貴方達の前から消えることになる」

 

「そうだ!!俺たち全員勝ったんだからルフィの拘束は解けたんだよな!!!」

 

「拘束??…………あぁ、セバスの能力ね。

条件は知らないけどクリアしたなら解けているわ」

 

「あとはルフィがロビンを……………………

…………………………………、………………、………………………勝てば…………………いい………………だけ……………………」

 

「随分と悩みながらの言葉ね。それに本体のことだからある程度譲歩した勝負になるんじゃないかしら。例えば……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニコ·ロビンに一撃を与えるとかね」

 

 

「「「「「……………うーーーーーーん…………………」」」」」

「気持ちは分かるけど、信じなさいよそこは…」








ニコ·ロビンが3人になりました。
えーと分かりづらいと思うので一応。

本体、ロビン(本当の悪魔)
海軍、ニコル(多少常識人)
ミニロビン、(優しさ多め)

と、なります。
ちなみにロビンとニコルはミニロビンの存在はいまは知りません。バックの中にいた為に世界と切り離されていたのでパスも切れていました。

この先接触すればパスも繋がるかもですが……どうしようかな~(笑)




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司法の塔の戦い(ルフィ戦)①



どうも。
今回は割と時間を開けずに投稿出来ました!!
まぁ、初めの頃に比べたらめっちゃ遅いですが(笑)
さて、皆さん待望のルフィ戦!!それも相手はラスボスです。
果たして髪の毛1本でも残る事が出来るのか!?

…………出来るよね(笑)
それではどうぞ。






「おっ!!動けるぞ〜!!!」

「ルフィッ!!」

「ということは、全員勝ったんだなッ!!!!」

 

シロの上で動けずにいたルフィだったが急に身体を縛り付けていた拘束が解けた。

つまりはセバスの能力による契約を見事にクリアしたことになる。

それは麦わらの一味が全員無事だということ。

 

「ルフィ!!ここは任せて先にお兄さん達を止めてきて!!!」

「もう随分と時間が経ってるの!!」

「任せたわよルフィ!!!」

 

「おう!任せておけッッ!!!」

 

瞬時にギア2になり一気に加速、地下トンネルを走り抜けだした。これなら間に合うかもしれない。

 

「……勝てるわよねルフィ…」

「ロビンさんだからね……」

「普通は勝てないわね……でもルフィ君なら……」

「そうだ!!ルフィならやれるぞ!!!」

 

ナミ、ノジコ、ベルメール、チョッパーと思い思いの言葉を出しルフィの勝利を願っていると、

 

「………ねぇ、何か聞こえない??」

「ニャー」

 

チムニーがそんな事を言い出した。ゴンベはなんの事だか分からず首を曲げながら鳴き、それを見たココロは孫のチムニーの言っていた何かを聞くために耳を傾けてみた。

 

すると確かに聞こえてきた。

聞き覚えのある音。そしてそれが背後からドンドン近づいてくる音が………

 

「こいつは…マズイね……」

「どうしたのココロさん??」

 

「もっとスピードを上げさせなッ!!」

「えっ!?ど、どうしたのよ!!?」

 

ここでシロとクロも野生の勘で感じ取ったのかナミが号令をかける前にスピードを加速させたのだった。あまりにもいきなりでチョッパーが振り落とされそうになるがなんとかなった。

 

「ど、どうしたんだいきなりッ!!?」

「分かんないわよ!!!ココロさんがいきなり…」

 

と、チョッパーに説明しようとした所でチョッパーの身体が震えたました。何かを感じ取った、それは身の危険を訴えるものである。

 

そこでやっとチョッパーも気付いた。

あまりにも疲れていた為に野生の勘が鈍っていたのだろう。こんな危機的なことにこんなにも遅れるなんて………

 

「や、やべぇーぞッ!!!!シロ!!クロ!!もっと飛ばせーーッ!!!!」

「「クマアアァァ!!!!!」」

 

さらに加速させるシロとクロ。

いまだに何が起きているか分かっていないナミ達。

しかし徐々に何か圧迫感を感じだしていた。

それは背後から徐々に徐々に迫ってくる。

 

「な、何よアレッッ!!!??」

「こんな所で巻き込まれたら……」

「一巻の終わりよッ!!!!」

 

誰もが絶望を見た。

背後から迫ってくるのは水。

ただ水が追ってくるだけではない。このトンネル内部を埋め尽くし、そして何もかも飲み込んでしまう強烈な水が押し寄せているのだ。

 

………………………………………

 

「はっ!!ナミさん達が俺を呼んでいる!!」

「ここまできたら病気だな……」

「……私は治せません……」

「まぁ、チョッパーでも無理だな」

「そっとしておきましょう」

 

今行くね!!と飛び出しそうになるサンジをウソップのマジックで鎖でグルグル巻きにして拘束。

特に脚を重点的に行い動けなくしたところで、

 

「それでは私はここで」

「そう。私のことはくれぐれも」

「もちろんです。では」

 

リリーサはこの場を一瞬のうちに消え去った。

未だにどういう理屈なのか……と、考えてしまうが、まぁハジメ・ロビン関係者だからなーと納得してしまう辺り、もう取り返しのつかないほどに常識というものをなくした一同。

 

だから。なのか。

この後に起こることも誰も気づかなかった。

それが起きる瞬間まで。

 

「な、なんだ……」

「建物が、揺れてる……」

 

突如建物が揺れだし、段々と強くなってきている。初めは地震かと思ったが普通のそれではないとすぐに気付いた。

壊された建物の外の景色が何故か変わりだしたのだ。

それも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ちょっ、ちょっと!!!」

「お、落ちるぞ!!!!」

 

リリーサの能力によって浮いていた司法の塔の上半分。ここでリリーサが抜けたことにより能力が解除されて宙に浮いていた塔は必然的に自由落下することになる。

 

「ウソップッッ!!!」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!()!()!()!()!()

 

「………はぁ、仕方ないわね」

 

するとミニロビンが腕をクロスさせ

 

巨大樹(ヒガンテスコ・マーノ) 巨大樹(スパンク)ッ!!」

 

地面に叩きつけられる寸前に司法の塔の下部から巨大な手を生やし、それを崩壊した司法の塔の地面に向けて放った。

 

衝撃によりウソップ達がいた司法の塔は完全に破壊され、シンボルとなっていた司法の塔は完全に姿を消してしまった。

 

そして瓦礫の山となった場所から

 

「………ッッ!!もっとやり方はなかったのかよッッ!!!」

「文句を言わないの。本体だったら殺されてもおかしくない発言よ」

 

「でもいいたくなりますよ……よく生きてるな私……」

 

瓦礫の中から生還したウソップとカヤ。そしてミニロビン。

その後ゾロやサンジ達も瓦礫の中から出てきて全員無事が確認された。

 

「……なぁ、やっぱりこのまま抜けたほうが良かったんじゃねえか……」

「キャハハハ。もう遅いわよ」

「何処に行ってもあの人から逃げれない」

 

一命を取り留めた3人。

しかしすくに死にそうな目にあい、すでにここから抜け出したいと感じだしていた。

 

「……………………」

「どうかしたのか??」

「……いえ。なにか踏み潰した感触があったのだけど……まぁ、あの子達じゃないから問題ないわ 」

 

「そういえばナミさん達は何処に!?」

 

また突っ走ろうとするサンジだが拘束されて動けないためにジタバタしている。

それよりもミニロビンが言っていた踏み潰した感触というのが気になるウソップだが、それよりも上回る出来事が起きてしまいすぐに忘れてしまうことになる。

 

『ニコ・ロビンッッッ!!!!!!!!!』

 

何処までも届きそうな大声。

強い決意を持って相手の名前を呼ぶ我らがキャプテン。

モンキー・D・ルフィがニコ・ロビンと対峙している姿を見た。

 

そしてニコリと微笑んだロビンが一言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2度も呼び捨ていいとは言ってないわよ??」

 

その声が、遠く離れたウソップ達には聞こえないハズの音量なのにこちらに届くほどの静寂が流れた。

 

ロビンの声が聞こえる前、ロビンに対峙していたルフィがいつの間にか吹き飛ばされて地下トンネルから上がってきた塔に叩きつけられ壁にめり込んだのだ。







はい。
一発目から敗北満々で始まりました(笑)
あっ。ここでミニロビンの名前を決めようかと思います。
正直僕が決めてもいいんですが、こんな天使のようなミニロビンは皆のアイドルになりそうなので皆で決めましょう。

アンケートをしますので是非とも参加を。
一つだけ他の名前がいい。というのもいれます。
これが一番多かった場合は皆さんからのリクエストから選ぶ形になりますのでどうぞよろしくです。




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司法の塔の戦い(ルフィ戦)②



どうも。
3月ですねーもうすぐさくらが咲きますね。
僕はさくらが好きなのでずっと咲いてて欲しいものです。
ということで、言いたいことも言ったのでここまで(笑)

では、どうぞ。




司法の塔。

ここから直接インペルダウンか海軍本部へと直行出来る事ができる場所。

そしてその入口前にハシメとロビンが立っている。

 

「久しぶりかなー海軍本部は」

「そうね。私も久しぶりだわ」

 

「ずっとモーガンに任せたままだったもんな。本当にモーガンには悪いことしてるなー」

 

「気にしなくてもいいのよお兄ちゃん。

ここまで強くなれたのはお兄ちゃんがいたからこそなんだから。感謝はされど文句をいうようなら消すわ」

 

門を潜れば引き返すことは出来ない。

その目の前に二人は立ち話し込んでいる。

もうすぐ出港準備が完了する。

それが終われば、麦わらの一味ともお別れである。

 

「ロビンは思い残すことはないの??」

「私が納得いく成長が見られなかったことかしら」

 

「いや、それかなり先の話だよね……」

「でも、お兄ちゃんも()()()()()()()()()()()()()?()?()

「……だね。ロビンも随分と素直じゃないか」

 

「……たまに、わね……。それなりの付き合いだったのだから……」

 

センチメンタル。というわけではない。

しかし全く割り切るほどに関わりがなかったともいえない。

 

麦わらの一味が出来る前から、ルフィにいたっては赤ちゃんの頃から関わりがある。

ここまでルフィや、ゾロ達を育て上げこの司法に塔にいるロブ・ルッチ達もそこまで苦戦なく倒せるだろう。

むしろ八咫烏の方が大変だろう……

 

しかし、それでも時間に間に合わなければそこまで。

それが麦わらの一味との別れとなる。

その先は彼らの物語が始まる。

 

ハジメという不純物が入ったことにより狂い狂いすぎた"ワンピース"。それがここから元に戻るのか。それとも………

 

そんな事を考えていると軍艦から2人の軍人が降りてきた。二人共圧倒的な強さをほこり、二人共ハジメ達との接点が一番ある海軍。

 

「お待たせしました。準備完了です」

「まさか、本当に戻ってくれるとはね~」

 

大将ハジメの部下であり、八咫烏のトップであるオックス。

八咫烏以外で海軍でハジメ達の内情を一番知っているだろう、大将青雉クザン。

 

その2人が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あんなに脅しておいてよく言うね」

「殺していいかしら??」

「お前がいうと本当にやりかねぇからヤメロ!!」

 

「何言ってるの。やるから言ってるのよ」

「ハジメ!!いい加減、ちゃんと手綱を握ろ!!」

「握った所で暴れるんだから無駄だね」

 

フランクに話すクザンとハジメ達。

もう訳が分からないと、ある大佐が思いっきってクザンに話しかけてみた。

 

「す、すみません。少し宜しいですか??」

「うん。なんだい??」

「この者達は海賊と見られるのですが、一体大将とどのようなご関係で……」

 

「……あぁ……そいつは……」

 

ハジメはあの大将"絶黒"と言葉に出そうとした瞬間、それを遮るかのように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメエエエエエエェェェ」

 

振り向いた先に、待っていた人物がいた。

肩で息を切らしながら、麦わら帽子を被った、小さい頃から育ててきたこの"ワンピース"の主人公たる人物が、ここにきた。

 

「……ルフィ」

「いかせねぇぞ!!!勝手に船から降りるなんて認めねえ!!!!」

 

こっち向かって近づいてくるルフィ。

しかしそれを感嘆に許せるわけがない。

ノーモーションでルフィの目の前に壁のように生えてきた複数の手。

 

壁を作るだけではなくルフィの顎を狙った攻撃は、ギリギリでなんとか交わしてのだが後方へと戻るしかなかった。

 

「誰がお兄ちゃんに近づいていいって、言ったのかしら??」

 

『ニコ・ロビンッッッ!!!!!!!!!』

 

その瞬間、空気が死んだ。

それほどに一気に殺気が周りに広がり、普通の海軍達はその場で気絶するほどの殺気。

覇気とは違う純粋な悪意によるもの。

 

そしてその殺気が放たれたと同時に

 

「2度も呼び捨ていいとは言ってないわよ??」

 

その声が、遠く離れたウソップ達には聞こえないハズの音量なのにこちらに届くほどの静寂が流れた。

 

ロビンの声が聞こえる前、ロビンに対峙していたルフィがいつの間にか吹き飛ばされて地下トンネルから上がってきた塔に叩きつけられ壁にめり込んだのだ。

 

この瞬間をかろうじて意識を保ち光景を見えており、この場において完全な部外者である大佐は目を疑った。

 

ルフィの進行を遮った手の壁が一瞬にして"ロビン"という人型へと姿を変えたのだ。本体であるロビンとは違い身長は半分ぐらいだが、そのロビンがルフィの懐に入り掌底を食らわせていたのだ。

 

そしてすぐにそのロビンは消えており、その刹那における行動によりルフィが勝手に吹き飛んだように見えたのだ。

 

「な、なんですか…今のは……」

「おっ。さっきのが見えるクチか。見込みあるね」

「ですね。是非とも階級を上げてこのグザンをどうにかしてもらいたいです」

「……いや、オレ最近マトモだぞ」

「それを続けろって言ってんだよ」

 

もう、訳が分からない。

大佐の目に映るのは雲の存在である大将に対して()()()()()()()()()()()()()()()()

普通ならすぐにでも殴り押さえつけてやりたいのに、それをすれば一瞬で自分の命がなくなると直感しており動けずにいる。

 

命など海軍に入った時に捨ててきた。そう思っていたのにどうして………

 

「あぁ……まぁ、気にするな」

 

そう言って大佐の肩を叩くクザン。

 

「な、何が起きて……」

「これ以上は踏み込まないほうがいい。

いま見ているもの、今から見るもの。すべてが幻だと思うことだ。それ以上踏み込めば……戻れなくなるぞ」

 

忠告をするクザン。その真剣な眼差しにこれから起きることはそれほどにヤバいものだと。

息を飲む大佐。これから何が起きるのかと考えているとガタッと物音が聞こえてきた。

 

その先を見ると吹き飛ばされたルフィが立ち上がった姿だった。

 

「…ハァ、ハァ……」

「気絶させるつもりだったけど、少しはまともになったのかしらね」

 

その言葉に気持ちは乗っていない。

淡々とこなすかのようにルフィを見るロビン。

それを正面から見たルフィは唇を噛み締め

 

「師匠ッッ!!!!!帰ってきてくれ!!!!!!」

「帰ってこい。と言ったら殺していたけど、成長したのね」

 

ここで微笑むロビン。

その微笑むを見たルフィは思わず一歩後退りしそうになるのを堪えて

 

「まだ教えてもらうことがいっぱいあるんだよ!!!!!」

「それはそうよ。あれで一人前なんて思っていたら殺していたわ」

 

「……。し、修行もまだつけてもらわないと!!!!」

「当たり前よ。一生かけて修行するのよアナタは」

 

「…………………。お願いします。帰ってきてください」

「折れるのが早いわ」

 

強気で頑張って発言していたルフィだが3ターンで終わった。

それでもルフィにしては頑張ったほうだ。

トラウマ=ロビンであるルフィにとって、そのトラウマに立ち向かったのだ。成長したと言ってもいい。

 

しかし最後の最後に土下座でお願いする所が未だにトラウマに勝てないということがハッキリと分かった。

 

しかし少しルフィの成長を見て心が変わったのか、さっきの微笑みとは違う感じで微笑んだロビンは

 

「…………いいわ。条件をクリアした戻ってあげるわ」

「ほ、本当にッ!!?」

 

土下座からすぐに立ち上がるルフィ。

泣いている子供におもちゃを与えて元気になるかのように単純に元に戻った。

 

「おいおい。勝手にそんなことを……」

「五月蝿いわよグザン。私に命令出来るのはお兄ちゃんだけよ」

 

「おい!!ハジメッッ!!!!」

「………任せるよロビン。好きにやってみて」

「ありがとう。お兄ちゃん」

 

その言葉にグザンはハジメの胸元を掴み

 

「今すぐに止めろッッ!!!」

「だったら止めてきなよ。大将でしょう」

「あんなバケモンに勝てるか!!!」

「つまりそういうことだよ。僕も……覚悟を決めたよ」

 

その言葉にクザンはイラつきながらも八つ当たりのようにハジメの胸元を強く押して話した。

 

「どうなっても知らないからな!!」

「一蓮托生。だよ。どうなるか見守ろうじゃないか」

 

「………それだけの男なのか、あの麦わらは……」

「……これからだよ。その為の試練が始まる……」

 

そう見守る。これをルフィが乗り越えなかったらハジメは、この先の麦わらの一味に関わることはない。

 

「ルフィ。アナタに与える条件は一つ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私に「参った」と言わせてみなさい」

「ムリだあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

………うん。頑張れ。







あっ。ミニロビンの名前。
意外にニコスが多いという(笑)
このルフィの戦いが終わるまではそのままにしてますので気兼ねなく一票をどうぞ。




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司法の塔の戦い(ルフィ戦)③





どうも。
もうすぐで本年度が終わりますね。
一年でいうと3ヶ月なんですけどこれはこれで寂しいものがあります。でも4月からは新しく始まると考えればいいものかもしれません。

って、毎年思っていることを普通に書いただけのことです(笑)

では、どうぞ。







「何が無理よ。私を倒せなんて言ってないでしょう??」

「それは死ねと言っているのと同義だああああぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

あっ。ルフィがバグって絶対に言わない「同義」なんて言葉を使ってる……

まぁロビンを倒せるやつなんているのかな…

 

「お兄ちゃんなら言葉攻めで一撃よ」

「心を読むな。あと勘違いしそうなこと言うな」

 

……本当に、本当ーーに、本編のロビンとは別人だもんな……

本人は興味ないだろうけどロビンなら海賊王になる!って言ってもなんの不思議もないもんな。

 

倒し方の分からない五老星も倒せそうだもん。

まぁ、僕もやろうと思えば出来ると思うけど、わざわざ向こうに攻撃する必要はないし……って話がズレたな。

 

「ルフィ。要はロビンに満足いくものを見せろってことだよ。死ぬ気以上の死ぬ気で挑まないとロビンから参ったなんて言わせられないから」

 

「なるほど。ならやることは一つだな!!」

「ああ、ルフィ。()()()()を許可しようじゃないか」

 

するとルフィは麦わら帽子を取り飛ばないように地下から上がってきた塔の中に置いてきて、ギア2に入る体勢に入った。

 

血流を人間では不可能だと思われる以上に加速させて身体能力を向上させるギア2。

しかしそれではロビンに追いつくなんてありえないなんてことはルフィでも分かっている。

 

だから()()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()()()()()()()

身体から熱くなり身体全体が赤くなり湯気が立つルフィ。

しかしそこから更に赤みが増していき服の一部から湯気ではなく焦げ臭い煙が立ちだした。

 

それが徐々に広がりある一定を超えた所で一気に燃え広がり上半身の服は完全に燃えてなくなってしまった。

その代わりに信じられないほどに真っ赤になったルフィの身体。そこから立ち込める湯気も凄まじく顔が見えなくなるほどに立ち上がっている。

 

「ギア2、TOPS(トップス)ッ!!!

 

打ち上がってくる海の波飛沫がルフィの身体に当たると一瞬にして蒸発している。

これはギア2の更に強化したものであり、ギリギリまで血流を上げて身体能力の向上させた捨て身の技である。

 

「な、なんですかアレは……」

「能力者が行き着く領域、その一歩に足をかけた姿と呼べるものだね」

 

「まったなぁ~。アレを出されていたら俺でも骨が折れるぞ」

 

大佐が目を疑うのも分かる。

いくら能力者といえどもその能力の範囲外の事が起きているのだ。これにはクザンも頭をかいて困り果てている。

 

「おいハジメ。本当にあの麦わらを海賊王にするつもりか??」

「そのつもりですよ」

「なっ!!?」

「ホイル大佐。いまは落ち着いて下さい」

 

クザンの問いかけに素直に答えるハジメ。

それに驚くホイル大佐。

自身の能力を使おうとしたがオックスにそれを阻止された。

 

「な、何故止めるのですか!!?」

「貴方では勝てません。それに騒いだところで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「何を…ッッ!!!!??」

 

ふざけるな!!!と叫ぼうとした瞬間にホイル大佐の懐にいつの間にかマカナが入り込んでいた。

そしてホイル大佐の周りに更にリリーサやセバスまでもが立っており完全に八咫烏に包囲されてしまっていた。

 

「これ以上何かをいうなら記憶を消しますが、それでも宜しいので??」

「ハジメ様のご命令なくとも害となすならすぐにでもやりなさいマカナ」

「はいッ!!!」

 

気づかずに接近された事もそうだが、そこにいるだけで恐怖により気を失いそうになる程のものに冷や汗が止まらない。

 

「やめなさい。そこまでしなくていいの」

「そうですか。3人共」

 

「分かりました」

「マカナ、いいわね」

「はーい!!!」

 

ホイル大佐に向けられた殺気を止めた所で、やっと息をしていなかったことに気づき呼吸が乱れる。

 

「すみませんホイル大佐。とりあえず最後まで見ていてください」

「……………、はい…………」

 

いまはこれしか言えなかった。

圧倒的な実力の差。拒否をしても一瞬にして記憶を消されるだろう。

いや、もしかしたら殺される可能性もあるのだ。いくなら命を落とす覚悟があってもここではないと理解したホイル大佐は引き下がることにした。

 

「それにこれを見れば"世界"の一端を見れますよ。損はしないですから」

 

そんな事をいうハジメ。

それを合図にしたかのようにルフィが一瞬にしてその場から消えた……と思った時にはロビンの懐に入り

 

「OVERピストルッッッ!!!!!」

 

いつの間にか伸びた手が戻りロビンの懐に突き刺さっていた。その手が通った軌跡には炎が舞い地面を焦がしていた。

しかし、ここで止まらないルフィは

 

「OVERガトリングッッッ!!!!!」

「OVERアックスッ!!!!!!」

「OVER………キャノンッッッッ!!!!!!!

 

次に繰り出したガトリングは千の腕がロビンを殴っているかのように見えるほどのスピードで繰り出され、アックスは一瞬にして雲を突き破った足が隕石のようにロビンに降り注いだ。

そしてガトリングの要領で千の腕が一箇所に集中して放たれた一撃がロビンの腹部に決まった。

 

これが、僅か3()()という時間の中で行われた攻撃なのだ。

 

攻撃を繰り出した後にその場から少し離れたルフィ。たった3秒の出来事でも本人はとんでもない動きをしたのだ。もうバテバテになる程に息切れを起こしていて身体の赤さも増しており危険な状態になっている。

 

すでに通常の人間では耐えきれない心拍数。

ゴムという性質だからこそ出来る品物でも熱に耐えれるわけではない。身体からの猛熱と空気摩擦による猛熱。これを同時に浴び続けなければならないのだ。

 

もう火傷なんて全身している。

立っているのだけでも奇跡な状態なのだ。

それでもそれに耐えて立っているルフィに対してロビンはというと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうね…………激甘で50点よ」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「少しは体勢を崩す攻撃や駆け引きをする攻撃もやりなさい。

本能も立派な戦術かもしれないけど、それが私に通じると思っているの??」

 

「……ずびまぜん!!!!」

 

一瞬にしてルフィの目に涙を浮かべさせるロビン。

圧が、修業をしている時以上の圧がルフィに襲いかかる。

もうメンタルはズタボロである。それでも立ち向かうのは修業の成果か、それとも2人を手放さない為の根性か……

 

 

「まぁいいわ。そこはのちにねっとりと教えるとして…」

「ねっとりイヤだあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

「五月蝿いわね。次は私が攻撃するから……()()()()()()()()()()()

 

その瞬間、上空とルフィの足元から巨大な手が出現し、その間にいたルフィは一瞬にしてその巨大な掌に押しつぶされてしまった。








あっ。お気づきかと思いますがいきなり出てきた大佐の名前。
思いつきで「ホイル」にさせてもらいました。オリジナルです。

この先どうハジメ達と関わるのか……関わらないのか……
…………自分でも全く分かりません(笑)





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