本当にあったとは言い切れない、それぞれの日常 シーズンF (JUBIA)
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虚栄~救急猫隊の夢
<<虚栄>>
ここは、とあるハンターのガーデン。
このガーデンで働く猫達を取り仕切っているのが、麦わら猫だ。
麦わら猫は、猫達を取り仕切る一方で、ハンターである主人の留守中に近くの密林などに出掛け、素晴らしき目利き術によって掘り出し物を見付けてくるのが仕事だ。
そんな忙しい日常を送る麦わら猫のところへ、主人がやってきた。
仕事から帰ってきた主人は、あちこちが傷だらけだ。
『おや、ご主人。今日も狩りは失敗ですかニャ?』
麦わら猫は、傷の直りが早くなるという秘薬を主人へ手渡した。
『して、今日は誰にやられたのかニャ?』
「ガルルガだよ」
『(ギクッ!)ガ、ガ、ガルルガさん……と言いましたかニャ?』
「ああ、まったく傷一つ付けられなかったよ、片目に傷があったけど、アレ付けた奴すごいよな~」
『(あわわ、あわわっ)』
麦わら猫は、走馬灯のように先日の出来事が頭の中を駆け巡り、軽いめまいに襲われた。
これは、いつものように麦わら猫が、掘り出し物を探しに密林へ出掛けた時のこと。
崖の上に、何か秘宝らしき匂いを嗅ぎ付け、崖をよじ登り、その匂いの元を探し始める。
匂いの元は、マタタビだった。
(コレは帰ってからの自分へのご褒美とするのニャ)
マタタビを葉にくるみ、大事そうにポーチにしまう。
(さて、そろそろ帰るとするかニャ)
登ってきた崖とは違うほうの崖から降りようとした。
(コッチのが帰るのに早いのニャ)
降りている途中、一匹の虫が麦わら猫の回りをブンブンとしつこく飛び回っている。
それを払い除けようと持っていたピッケルを軽く振り回した時、足元が滑って崖から転げ落ちる格好になってしまった。
と、その時、崖下にはなんと! イャンガルルガがいるではないか!
『あーーっ、危ないニャーーっ、そこをどくニャーーっ!!』
何かと思い顔を上げたイャンガルルガの頭に、落ちてきた麦わら猫が激突した。
この時、持っていたピッケルがイャンガルルガの片目をひっかきながら、ズリズリと落ちていく。
あまりの痛さにイャンガルルガは我を忘れて怒り狂い、激しい咆哮をあげながらジダンダと激しく足踏みをしている。
『(あわわっ、だからどいてと言ったのニャ……)ごめんなさいなのニャ~』
危うく踏み潰されそうになりながら麦わら猫は謝ったが、イャンガルルガの耳には届かず、むしろ激しく暴れだした。
(あわわっ、コレはもうダメだニャ、ココは退散するに限るニャっ)
麦わら猫は、その場から逃げるように立ち去った。
それ以来、密林へ出掛ける時は、あのイャンガルルガに遭遇しないよう、抜き足差し足で掘り出し物を静かに物色する日々が続いた。
(はぁ~、もうあんな思いはしたくないのニャ)
あの日の出来事を思い返した麦わら猫は、プルプルと硬直していた体を揺さ振った。
「ん?どうかしたのかい?」
『あの~、ご主人、ガルルガさんの片目の傷は、私が付けたのニャ……それで……』
と、言い掛けた時、
「お゛ーーっ?! スゴイなお前っ!! だてに麦わらかぶってたワケじゃないんだな~。いやぁ~、ほかのハンターに自慢してやるよ、ウチの麦わらはスゴイって!」
(あ、あぁ、片目のガルルガさんを討伐して欲しいんニャけど……なんか言えない雰囲気ニャ)
『ま、まあ、昔とったキネヅカだニャっ』
<<救急猫隊の夢>>
ガラガラガラガラーッ!
ドサッ!
「いったーーいっ!! もうちょっと静かに降ろしてよー、こっちは怪我してんだかんねっ!」
狩りの途中、モンスターの攻撃をまとにくらって動けなくなった私は、荷車救急猫隊にキャンプ地へ運ばれてしまった。
ガラガラガラガラ……。
私を乗せてきた荷車が帰っていく。
「まったくもうっ、髪がグチャグチャじゃないっ! 何、あのピンクゴリラ、アタシに向かってオナラかますなんてっ! 匂い取れたかなぁ?」
クンクンと装備の匂いを確認してみる。
すると、一匹の救急猫が何やらニヤニヤしながら立っているのが視界に入ってきた。
「なっ、なんなのよアンタ! 帰ったんじゃなかったの?」
『帰ったのは後輩ニャ』
「……で? アンタはそこで何してるワケ?」
すると、先輩猫は待ってましたとばかりに、
『キミに見せたいモノがあるのニャ』
「な、なによっ?」
思わず、身構えてしまう。
たとえ相手が猫だからって、
先輩猫はコホンと一つ咳払いをすると、右腕をくの字に曲げ、何やらリキんでいるご様子。
私には、先輩猫が何をしているのか理解できなかった。
「あの~っ、……何してんのアンタ?」
『あー、全然ダメニャ、見て分かんないかニャー。我ながらホレボレする、この素晴らしき筋肉をニャ』
よく見ると、先輩猫の力を込めているであろう右腕の二の腕部分に、ぽっこりと小さな山ができている。
それがアタシと何の関係があるのよっ?
『この五年間、一日も休まず、
「……で?」
『それまでの一ヶ月間、後輩を立派な後継者になれるよう教育しなくてはいけないニャ』
「……はぁ」
『やはり教育実習は現場が一番ニャ』
「……
『実践でたたき込むには、未熟なハンターさんが必要ニャ』
「……なんか嫌な予感がするんですけどぉ~?」
『そこで白羽の矢をキミに決めたニャっ』
「あーやっぱり、そうなっちゃいますぅ~?」
先輩猫は、アタシに毎日最低でも5クエ(重たいクエは、なお可)は回してもらわないと困る的なことを言ってきたけど、そんなのこっちも困るっつーの。
もう、アタシに死ねと言ってるよーなもんじゃない。
でもコイツ、なんだか面倒くさそうな性格してそうだから、適当に返事だけでもしとくか。
『筋肉入魂祭で優勝したアカツキには、キミもロックラックへハンター留学させてやるニャ。これから一ヶ月間やられっぱなしじゃ、ハンターとして成長しないニャ』
あー、どこまで面倒臭い奴なのよ!!
そうこうしてるうちに、クエスト達成のベルが鳴り響いた。
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運命
私はキエル。
今、一人で森丘のとある洞窟の中にいる。
なぜこんな場所に一人でいるかって?
子供の誕生日にアプトノスの卵をプレゼントしようと、卵を取りにきたってワケ。
こんな田舎町だけど、昔は女ハンターとして名を馳せたもの、運搬ぐらい一人で十分よ。
それに、プレゼントが卵なのも意味があるの。
命あるものを育て、命の重みをわかってもらうだけじゃない。
私達が食用としているアプトノスをあえて育てさせ、食べ頃になった時に、どうすべきか考えさせるの。
どっちが正解とかじゃない。
物事をよく考え、理解し、一方的じゃなく、色々な意見を交換しあえる、そんな大人なって欲しいと思ってね。
どこかの学校でもモスとプーギーを飼育させて、どっちがどうとかやってたわね。
まぁそれよりも見て。
私はこの日のために、パートでキャラバンの案内役をやりながら、地道に貯めたゼニーで特注の卵ケースを作ったわ。
運搬する時って、みんなは胸に抱えて走るじゃない?
正直、それってどうなの? と、思うワケ。
この特注ケースは、リュック型でフタ付き、内側にはプチプチの保護シートを張ってもらったの。
これさえあれば、多少の衝撃にも耐えられるし、難なく走れると思うわ。
さて、無事に卵もゲットしたことだし、アイツらに見付かる前にとっとと帰ろうかしらね。
巣から降りて洞窟を出ようとした時、羽音が聞こえてきた。
まずい、急がないと。
今日はアイツの相手をしていられない。
洞窟を出て、強走ティーを飲み干す。
あとは、ただ突っ走るのみ。
なんとか無事に自宅に到着できたけど、休みなしで走ってきたから汗だくね。
卵を置いてシャワーでも浴びようかしら。
と、その時、
ビシッ、ビシーッ!
あっ、私の背中の体温で温まり過ぎたかしら?
急いで子供を呼んでこなきゃ。
庭で近所の子と遊んでいた我が子を家に呼び戻す。
子供は歓喜の声をあげながら、卵から
ピキャーッ、ピキャーッ!
孵ったアプトノスの子は、少し異様な形をしていた。
「ママーっ、この子……翼あるよぉ?」
雛は、まだ鱗もなく、短い翼をパタパタと動かし、餌をねだるように鳴いている。
なんてこと!
よりによって、リオレイアの卵を持ち帰ってくるとは……。
どうしたものかしら。
今なら、まだあの巣に戻せばなんとかなるかもしれない。
自分が育てるんだと泣きじゃくる子供をなんとか説得し、孵ったばかりの雛を卵ケースに入れる。
……ふっ、卵ケースに生きた雛を入れることになるとは。
森丘へ急ぐため、冷蔵庫から強走ティーを一本取出し、グイッと一気に飲み干す。
卵ケースを背負い、家を飛び出して町の入口に差し掛かった時、向こうから何やら人を乗せた荷車がやってきた。
きっと不慣れなハンターが怪我でもしたのね。
それとすれ違う瞬間、誰が怪我をしたのか荷車に目をやったその時、一瞬で凍り付いた。
それは、キャラバンへ向かったはずの主人だった。
すでに通り過ぎて行った荷車を追い掛けようと来た道を引き返し、大声を張り上げて荷車を引いてるアイルー達を呼び止める。
アイルー達に事情をきくと、どうやら向かったキャラバンが満員で、しかたなく仲間達と森丘へリオレイアを狩りに行き、そこで事故に合ったらしい。
残った仲間達は、まだリオレイアを狩り続けているそうだ。
あぁ、ダメ。
そのリオレイアは、背中にいるこの子の母親なんだから。
でも、危篤状態の主人も放ってはおけない。
苦渋の選択を強いられる中、とにかく今は荷車と共に病院へ向かった。
病院に着いた時、息も絶え絶えの主人が何かを言おうとしている。
口元に耳を近付けると、
「……た……卵……ぐっ」
そう言い残すと、主人は息を引き取ってしまった。
いったい、卵が何だって言うの?
悲しみに暮れていると、背中で雛が鳴いた。
そうだ、この子だけでもリオレイアに返してあげないと。
涙で濡れた頬を拭い、急いで森丘を目指す。
急がなければ、狩り仲間達に討伐させられてしまう。
それはなんとしても阻止しないと!
森丘に着き、双眼鏡でリオレイアを探す。
……いた!
洞窟の上を旋回している。
そこへ急ぎ、洞窟に入ると、地上に降りたリオレイアと、それを取り囲む仲間達が武器を構えている。
「待ってーっ!!」
大きく張り上げた声も
爆炎を受けたリオレイアは、その巨体をゆっくりと地面に横たわらせた。
急いでリオレイアのそばに駆け寄り、その顔の前に卵ケースから取り出した雛を差し出す。
しばらく我が子を見つめていたリオレイアは私に目を向けると、何かを訴えかけるように何度か瞬きをし、そしてゆっくりと瞼を閉じた。
その様子を見ていた仲間達のうち、最年長の男が近付いてきた。
「……キエルさん、ご主人の仇は無事に討ちました。して、ご主人の容態はどうですか?」
すると、仲間達の中で一番小柄な男がウッウッと
「すんませんっ!! 全部、俺のせいです!」
小柄な男は泣きじゃくりながら、事の経緯を話してくれた。
仲間達は洞窟の中へ入り、リオレイアが現れるのを待っていた。
待っている間、主人が卵を見付けたらしく、今、親であるリオレイアを狩るのは止めようと言い出した。
しかし、小柄な男が血気盛んに、どうせいつかは狩るのだから今狩っても問題はないと言いだし、足元の卵を蹴り出した。
蹴った衝撃で卵が割れると、小柄な男は残っている卵も割り出した。
それを止めようと主人が小柄な男を突き飛ばした時、リオレイアが洞窟の上空から降り立ってきた。
主人の足元に散らばる卵の破片を見付けるや否や、リオレイアは主人に突進した。
卵に気を取られていた主人は、振り返るのが一瞬遅すぎて、突進を避ける間もなく勢い良く突き飛ばされ、洞窟の壁に全身を叩き打ち、そのまま下へ崩れ落ちていった。
「……あの人らしいわね」
そのすべてを聞き終えた時、最年長の男が話し掛けてきた。
「その雛はどうするつもりですか? まさかキエルさん、育てるつもりじゃありませんよね? 仮にも肉食ですし、成長したら……」
私は男に向けて、皆まで言うなと手の平を見せた。
残された家族同士……なんて傷の舐め合いじゃないけど、この雛の運命は、私達が今どうのと決め付けるのは何か違う気がする。
このまま巣に置いて行けば、ランポス達の餌食になるのは目に見えている。
自然の
かと言って、一生面倒を見れるわけでもない。
独り立ちできるまでは面倒を見るが、その先は……この子が自分の運命を決めるべきでしょ?
たとえ将来、どこかのハンターに狩られることになったとしても……。
「とりあえず、この雛は持ち帰って……子供とどうするかを相談して決めるわ」
そうタンカを切って洞窟を出てきたのはいいけれど、本当にこれでよかったのかしら?
と、そこへ小柄な男が追い掛けて来た。
ハァハァと息を切らしながら、その男は、
「キエルさん、この先、何か困ったことがあったら、なんでも協力しますんで、なんでも言ってくださいっ!!」
「うん、ありがとう」
私は振り返らずにそれだけ言って、右手を天高らかに振り上げた。
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モスと僕の章
生い茂った木々から木漏れ日が差す中、男が一人、草むらに寝転がっていた。
男は、この場所がよほど気に入ったのか、暇を見付けてはこの樹海へやって来るのだった。
ただし、今この男は、暇を見付けるどころか、暇を持て余している次第だ。
どの仕事をしても長続きせず、嫌なことはすべて人のせいにし、家族も皆あきれ果て、村人達からも相手にされないつまはじき者だ。
今日もいつものようにボケーッと仰向けに寝転がり、真上に見える生い茂る木々を黙って見つめている。
と、そこへ一匹のモスがやって来た。
どうやら、男の近くに生えている茸を食べに来たようだ。
男はゴロンとうつぶせに体勢を変え、両肘をつきながら茸を食べるモスをじっと見つめた。
(いつ見てもモスって、常に何か食ってるよなぁ~)
(そんなに食ったら太るぞ)
(あっ、こいつらは食われるために、たくさん食って太らなきゃダメなのか)
(しっかし、ブサイクだよな~)
(頭のコブとか背中の
『私達モスにとって、この姿に不便を感じたことは一度もないのですよ』
「うわっ、なんで声に出してないのに分かるんだよっ?!」
『いかにも
「不便じゃないって、思いっきり不便そうじゃないか! 空を自由に飛びたいとか思ったことないのか?」
『空を飛ぶ必要がないから、翼はいらないのですよ』
「あ、足だって長けりゃ高い木に生えてる茸だって、たらふく食べれるかもしれないだろ?」
『地面に生えている茸で十分なのですよ』
「その姿だって……もっと可愛いければ、みんなから可愛がられるじゃないか」
『あなたの言う“みんな”とは、一体、誰のことを言ってるのですか?』
「……う、ウチの母さんとか……村長さんとか、……む、村の人達だよっ!」
いつのまにか男は、起き上がってあぐらをかいていた。
『私達はペットではないのですよ? むしろ、村人達にとって私達は、食料でしかありません』
「うっ、だったら逆に、食う側のランポスとかになりたいとか思わないのかっ?!」
『……ついこの前、ランポスに生まれたばかりの子供を食べられました』
「えっ?! ……あ、ほ、ほらやっぱりアイツらのほうが全然いいじゃないかっ」
モスは、男をジッと見つめている。
『ですが、ここではそれも極自然のことなのです。私達はいくら食べられても、それ以上に子供を増やさなくてはいけないのです』
「なんかおかしいじゃんよ、自分の子供が食われたのに悔しくないのかよ? 悲しくないのかよっ?!」
『私達には捕食者に歯向かう牙や爪がありませんし、歯向かおうとも思いません。子を増やし続けることが、せめてもの抵抗なのです』
「……やっぱり嫌だよ、そんなの……うっ。食われた子供が可哀想じゃないか、ひくっ……」
いつのまにか体育座りになっていた男は、抱えた膝へ涙と鼻水でぐしゃぐしゃの顔をうずめている。
これまで、口喧嘩では誰にも負けたことがなく、ましてや誰かに涙の一つも見せたことのない男だったが、自分ではどうしようもないくらいに涙が止まらなくなっていた。
『あなたが悲しむ必要はないのです。……もちろん、子を亡くした時には悲しみました。でも、いつまでも泣いていたら日が暮れてしまって、新しい住みかを探すこともできなくなってしまうのです』
「…………」
『私達、モスにはモスとしての領分があり、それを超えることなく、ただ暮らしていければそれで満足なのですよ』
「……それでも」
『では逆にお聞きします。あなたは毎日何をして生きていますか?』
「何って……いろいろだよ」
モスは、男が毎日のように樹海にやってきては別段何をするわけでもなく、ただ茫然と寝転がっているのを遠くから見ていた。
『あなたの食事は、どなたが用意しているのですか?』
「そんなの母さんに決まってるよ」
『あなたが生きていくのに必要なゼニーは、どなたが稼いでいるのですか?』
「父さんだよ」
『もし、あなたのご両親がいなくなったら、これからあなたはどうやって生きていきますか?』
(親がいなくなるなんて、今まで考えたこともないよ。……僕は、どうやって生きていけばいいんだろう?)
男は黙り込んでしまった。
『あなたは、あなたのできることをやればいいだけなのです。ここでは何もしない生き物はいません。仮に何もしない生き物がいたとしたら、その生き物は絶滅することでしょう』
遠くの山々に、赤く染まった夕日が沈みかけてきた。
『日が暮れてしまいますので、そろそろ私は住みかに帰りますね』
モスはそう告げると、くるりと男へ背中を向けて歩きだした。
「あっ、おいっ、……その、よかったら家で僕と一緒に暮らさないか? 敵もいないから安全だし、茸だって毎日たらふく食わせてやるよっ。なんなら子供も連れてくればいいさ」
モスは、ゆっくりと男へ振り返った。
『私の居場所はここであり、村の中ではありません。外敵もいれば茸が不作の時もありますが、私達はそういったことを乗り越えて今を生きています。それはこれからもずっと変わりません』
「……そ、それじゃあ、明日も来るから、またここで会おうよ」
『私達には明日の保障がありませんのでお約束できませんが、運がよければまたどこかでお会いしましょう』
モスは男の返事を待たずに、二度と振り返ることなくゆっくりと草むらを歩いて行く。
その小さな後ろ姿が見えなくなるまで、男は静かに見送っていた。
モスの姿が見えなくなってから、しばらくして男は家路へと歩きだした。
しかし、その足取りはひどく重く感じられた。
モスと話した内容を一語一句思い出しながら男は歩き続ける。
男の家が遠くに見えてきた頃、男の足取りは軽くなっていた。
家に到着した男は、玄関の前で深呼吸をすると、勢い良く扉を開けた。
「ただいまーっ。母さん、父さん、僕、明日から仕事探しに行くよ!!」
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メラルーノート ~ インタビュー ウィズ ホルク
<<メラルーノート>>
あるところに、一匹のメラルーがいた。
彼は、各地に生息する様々なモンスターの生態を独自に調べている。
のちに誰が名付けたのか、それはメラルーノートと呼ばれるようになった。
ある日、沼地の
『あー、かいーっ!』
カムは、後ろ足で首の付け根を
『やーね、またどこかでノミでも付けてきたんじゃない?』
近寄らないでと言わんばかりに、ノノは不機嫌そうな顔をしている。
そんなオルガロン夫妻へ、メラルーが近付いていく。
『やぁやぁ、これはこれは、カムの旦那にノノの
ノノがキッと睨むと、メラルーは『二ャッ』と声をあげ、一歩飛び下がった。
『え、えーとですニャ、何やらカムさんがノミでお困りだと風の噂で聞きましてですニャー…』
メラルーは、たすき掛けしているポシェットを開け、ゴソゴソと何かを取り出した。
『ニャニャーン!!』
取り出した袋には、“ノミ取りニャン粉”と書かれている。
『これは今、メラルー達の間でホットな話題になりつつある、ノミを取る魔法の粉なのですニャー』
『それは俺にも効くのか?』
カムは、その粉に興味を示しているようだ。
『もちろんですニャー! 同じ獣種だから効くハズですニャー。ものは試しに、カムの旦那にこの粉を付けてあげるですニャー』
(同じ獣種って……)
内心そう思ったノノは、あえてそれをスルーし、静観することにした。
『ちょっと失礼するですニャー』
メラルーはカムの背中に飛び乗ると、首の付け根に粉を振り掛けた。
『しばらくしたら効いてくるから、それまでじっとしててほしいですニャー』
『お、おう、サンキューな』
メラルーは、『お大事にですニャー』と軽く礼をすると、どこかへと走り去っていった。
『おまえも粉、付けてもらえばよかったんじゃないか?』
カムはゆっくりとノノに近付いた。
『ちょっと、こっち来ないでよっ、ニャンコ臭いっ!!アタシ、猫アレルギーなの知ってるでしょ!』
ノノは歯を
『あっ、お、おいっ、ノノっ……』
ポツンと取り残されたカムは、バツが悪そうに首の付け根を後ろ足で掻き毟った。
『あっ、しまった!』
後ろ足の爪には、先ほどメラルーに振り掛けてもらった粉が付いてしまい、カムは深いため息とともにうなだれている。
メラルーはその場を去ったフリをして、実は遠くの
そして、メラルーノートへ何やら書き込んでいる。
“カムは恐妻家のようだ”
<<インタビュー ウィズ ホルク>>
えー、本日はホルクのホロンさんへ、仕事やプライベートなどについてインタビューしたいと思います。
あっ、ホロンさんが見えましたね。
バサッ、バサッ、バサッ。
ここは、海岸沿いのちょっとした入り江にあるホルク専用の訓練場。
少し突き出た岩の頂上に、一羽のホルクがやってきた。
記者である私は、訓練場の教官に許可を得てから岩の手前に椅子を置くと、インタビューの準備をした。
【ホ】おまたせ~。
【記】いえいえ、それにしても立派な龍色の羽ですね。
【ホ】ご主人様が龍属性になるようにって、貴重な古龍の肉をくれるのよ。ふふんっ。
古龍の肉が食事とあってか、気分はすっかりセレブのご様子だ。
【記】食事は古龍の肉と(メモメモ)。色々な古龍を食されて、すっかりグルメさんになったのではありませんか?
【ホ】とんでもないっ! いつもナヅチばっかりよ!! たまにはラオとかラオとかラオとか食べたいんだけどねっ(怒)
同じメニューばかりで、少しご機嫌斜めになってしまったようだ。
【記】でっ、でも、最近は食事のメニューが少し変わったとか?
【ホ】龍属性がMAXになったとかで、最近は虫ばっかりね。まったく腹の足しにもならないわ。私、こう見えて肉食ガールズだからっ。
虫も貴重なたんぱく
【記】えー、まずは、お仕事についていくつか質問したいと思います。ホロンさんは、ハンターの補助役としてクエストに同行しているんですよね?
【ホ】ええ、そうね。
【記】主にどういった補助をするのでしょうか?
【ホ】突いたり、爪で引っ掻いたり、威嚇したり、あとはご主人様からの指令によるわね。
【ホ】あっ、依頼達成後は、頑張ったご褒美に私の羽をプレゼントすることもあるわ。まぁ、その時の気分によってだけどね。
【記】「学びの書」なるものもハンターへ渡す時がありますよね?
【ホ】それはギルドからの支給がないとあげられないのよ。別に私が溜め込んでイジワルしてご主人様へあげてないワケじゃないからねっ! ふんっ。
【記】羽にしても書物にしても、それをもらったハンターは喜ぶでしょうね?
【ホ】そういえば最近、
ホルクは、悲しそうに小さなため息をついた。
ここは、話題を変えたほうがよさそうだ。
【記】……で、では、視聴者の皆さんが心待ちにしている、プライベートについての質問したいと思います。
【記】同じホルク同士での繋がり、などはあるのでしょうか?
【ホ】えっ、えぇ、あるわよ。最近は村雨君と仲が良いわね(ポッ)
【記】村雨氏とは、よく狩りが一緒になるんですか?
【ホ】えぇ、ほぼ毎回一緒だわね。依頼達成後に一緒に飛び回って、お互い近況報告とかし合ってるの。昨日何食べた?とか。うふっ♪
【記】村雨氏とは、どんなホルクなんでしょうか?
【ホ】そーねぇ、真っ白に輝いてて、まだ私が習得していないブレスとか吐けて、とっても優秀なホルクだと思うわ。
【記】すでに世間では、ホロンさんとの熱愛報道がチラホラとあるようですが?
【ホ】(ポッ)ご想像におまかせします♪
プーポー!!
遠くでクエスト出発のお知らせ音が鳴り響いた。
【ホ】あっ、ごめんなさい。ご主人様が出発する時間だわっ。
【記】では、この続きはまた後日ということで……。
【ホ】今度、私にアポをとる時は、ルコ刺しなんかがいいわね♪
そう捨て台詞を吐いて、ホルクは旅立って行った。
短い時間ではありましたが、熱愛報道の真相には迫れませんでした。
次回は、
以上、訓練場からお送りしました。
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男達の美学
あるところに、とても潔癖症な男が住んでいた。
この男、ハンター学校を卒業してすぐにハンターの職に就いたが、いかんせん潔癖症が行き過ぎていた。
どんな依頼にも必ず消臭玉を持ち歩き、少しでも何かに触れるとすぐに消臭玉をばらまき、家中のあちらこちらには抗菌石をインテリアのごとく飾っている。
学校に通っていた頃、採取しようと間違ってモンスターのフンを手に取った時には、三日三晩高熱とともに悪夢にうなされる日々を送ったという過去も持つ。
狩りの腕前はソコソコだが、異臭を放つババコンガだけは、なるべく関わらないように狩りをしていた。
「ただでさえ不潔そうな
これは、彼なりの自論だった。
彼の得意武器は弓。
それは、裸で地べたを歩き回るようなモンスターに、あまり近寄りたくなかったからだ。
最初に生産した弓はハンターボウ。
そろそろ大型モンスターを相手にするため、男は貫通弓を作りたかった。
しかし、手持ちの金は2,000z。
手頃な値段で、なるべく簡単な素材で作れる弓がないか、武具工房で貫通弓の生産メニューをジッと見つめる。
すると、工房の店主が声を掛けてきた。
「貫通で探してるのかい?」
「あっ、は、はいっ」
「予算は?」
「えっと、2,000z以内で……」
「うーん、2,400zならワイルドボウをおすすめするよ。素材も簡単だしな」
「素材は……と、え? 桃毛獣って……」
「ババコンガさ、お前さんには簡単だろ?」
「いやー、そのー、ババコンガだけは……」
男は、頭をカリカリと掻いている。
「なんだ? ババコンガ苦手か? ハハハッ、よっしゃ! 特別にババコンガ狩ってきたら2,000zにまけてやるよっ」
「いや、あの、ほかに……」
「なんだ? なら大出血サービスで、1,500zにしてやんよ!」
男は店主に押し切られてしまった。
ここは密林。
男は
こうして来てしまったものの、やはり帰って別の弓を作成しようかと思ったその時、遠くに桃色の獣らしき生物が見えた。
「あぁ、アイツだ! うん、見なかったことにしよう……」
男はくるりと体の向きを変え、足早にその場を離れようとした。
ドタドタドターッ!
男を見つけたババコンガが、勢いよく男の元へ駆けてくる。
「うわーっ! 近寄るな! 俺に近寄るな!!」
男は持っていた弓を棍棒のように振り回した。
ババコンガは、そんな男の様子が面白いのか、鼻をほじりながらその無様な様子をうかがっている。
「コ、コイツ……俺をバカにしてんのか!?」
男は少し後ずさりすると、弓を構えた。
パスンッ、パスンッ!
矢を数発放ったが、ババコンガは
パスンッ、パスンッ!
男はさらに弓を引いた。
すると、怒り出したババコンガは男へ背を向けて、あろうことか放屁した。
「おわっ! やめろ、やめろ、なんてヤツだ!!」
慌てて消臭しようと、ポーチから消臭玉を取出そうとした。
が、その隙を狙ったように、ババコンガは男めがけてダイブしてきた。
その衝撃で、男はポーチの中身を辺りへぶちまけてしまった。
「あぁ、俺の消臭玉がー」
消臭玉は、コロコロと四方八方へと転がっていく。
男は急いで拾いに行こうとしたが、転がる消臭玉をババコンガが片っ端から踏み散らかしていった。
「……くっ!! なんてことを……!」
男の顔には、まるでこの世の終わりを告げる絶望感がにじみ出ている。
「やめろ、やめろ、これ以上、俺を臭くするな!!」
グローブをはめた手で、急いで体についた糞の破片を払った。
そして、鬼のような形相でババコンガを睨むが、ババコンガはニタリとした表情でまた鼻をほじっている。
プチンッ!
男の脳内で、何かが弾けた音が聞こえた。
「よくも、よくも、俺の命より大事な消臭玉をーーーっ!!」
男は弓を構え、何発もババコンガめがけて弓を引いた。
ババコンガは、それを避けるように右へ左へと走り回っている。
男がビンを装填している隙を狙って、ババコンガはまた男に向かって放屁した。
「クセーーーッ! コイツめ!!」
男は自分自身を見失っていたのか、異臭を放つ自分の装備には目もくれず、ババコンガに向けて猛攻を仕掛けた。
ババコンガも負けじと放たれた矢をかわし、男に向かって突進していく。
いったいどれほどの時間が経ったのか、両者ともにスタミナ切れのせいか、ハァハァと息を切らしている。
疲れ果てたババコンガは、その場にゴロンと仰向けに寝そべった。
男もその隣でゴロンと寝そべった。
生い茂る木々の間からは、雲一つない青く澄み渡った空が見える。
静かに目を閉じると、森林浴のマイナスイオンをたっぷりと含む、澄んだ空気がとても美味しい。
ふと、隣のババコンガへ目を向けると、ババコンガも目を閉じながら静かに呼吸している。
今まで汚いと思っていた地べたに今、自分が寝転んでいる。
男は伸ばした手で、その辺に生えている草をむしると、それを自分の顔の上に持ってきた。
その草には、小さな虫が付いている。
「ははっ」
男が手を離すと、草はバラバラと自分の顔に落ちてきた。
そして、ゴロゴロと地べたを転がり、男は大地と一体になった。
しばらくして、ババコンガはむくりと起き上がると、クンクンと食べ物の匂いを嗅ぐように、どこかへと走り去ってしまった。
男も装備に付いた草や実を払いながら起き上がってみると、辺りには大乱闘の末か、ババコンガの毛が散乱している。
「アイツとは、また会うことになるだろう」
今回の依頼は失敗だったが、男は拾ったババコンガの毛を武具工房へ持って行った。
「おう! どうだった?」
店主は男に気が付くと、声を掛けてきた。
男はババコンガの毛を4本と、ほかの素材、そして1,500zを店主へ差し出した。
「おぉ、でかした! ちょっと待ってな」
数分後、店主がワイルドボウを持ってきた。
男がそれを受け取ると、なぜか店主は顔をしかめている。
「お前さん、なんかクセェな」
男はハハっと笑いながら、弓を片手に店を出て行った。
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3卓談義(焼肉編)~ハンターさんと私の10の約束~グークの鍋奉行
<<3卓談義(焼肉編)>>
とある焼肉屋の3卓では、4人のハンターが祭りの打ち上げで、大いに盛り上がっていた。
A「すみませーんっ、ゴム皮一皿くださーいっ」
B「お前、ゴム皮よく食べれるなぁ」
A「えー、美味しいじゃん! あの食感がたまらないのよねー♪」
C「今日のオススメに、最上皮ってのがあるよ」
A「えっ!! マジ!? あっ、オバちゃーん、最上皮に変更してー」
D「フフっ、皆さんわかってないですねぇ。ゴム皮には、さらに極上皮というのがあるんですよ、フフフっ」
A「えーそーなのー? ……って、メニューにないじゃんっ!!」
D「フフっ、極上皮はそれはとてもとてもレア過ぎて、滅多にお目にかかることはできないそうですよ、フフフっ」
B「俺は皮だったら、断然ブヨ皮派だな」
A「あー、ブヨ皮も美味しいよねぇ♪」
D「フフっ、フルフルの部位だったら、腹かみが最もレア度が高く、脂ものってて……」
B「おばさーん、黄金芋酒おかわりヨロシク」
A「オバちゃん、私、ザザミソね」
D「フフっ、蟹は皆さんよく脚を食べますが、実は爪の方が美味なんですよ、中でも絶爪というのが……」
C「じゃぁ僕は、クックのミミガーでももらおうかな」
B「おっ、いいねぇ。ミミガーはツマミに最高だよなっ!!」
A「おつまみならポポタンじゃない? あのベロさいこー♪」
C「ベロって言わない! 僕は白レバーも好きだけどな」
A「うへーっ! レバー嫌いっ!!」
B「あれっ? さっきからお前、何食べてんだ?」
D「フフっ、これはガレオスから採れるキモと言って……」
ABC「うへっ! キモっ!!!」
<<ハンターさんと私の10の約束>>
私は、グークです。
3日前に卵から
孵った時、目の前には世話焼き猫さんがいました。
最初は、猫さんがお母さんかと思いましたが、猫さんは違うと言いました。
本当のお父さんとお母さんは分かりません。
きっと、今ガーデンにいるグークのどなたかでしょう。
ハンターさんから、素敵な名前をもらいました。
ハンターさんは、私をとても可愛がってくれます。
でも、少しすると、ほかのグークのところに行ってしまいます。
ハンターさんは狩りに出ると、長い時で一晩中戻って来ない時があります。
少し寂しいです。
ここにハンターさんが来てくれた時、私がどれだけ寂しい思いをしているか訴えても、少しの間抱っこしてくれるだけで、私の気持ちはまったく伝わりません。
そこで私は考えました。
一生懸命考えて、猫さんからもらったメモに次のことを書きました。
猫さんはハンターさんとお話しできるようなので、通訳してもらおうと思います。
1 私と気長に遊んで下さい。
2 私を抱っこしてください。それだけで私は幸せです。
3 私にも思うところがあるのを忘れないでください。
4 ハンターさんの欲しい素材を持ってこない時は、理由があります。
5 私にたくさん話し掛けてください。ハンターさんの言葉は理解できないけど、話し掛けられると、とても嬉しいのです。
6 私を怒らないでください。本気になったら、私のクチバシのほうが強いのを忘れないで。
7 新しいグークが生まれても、私と仲良くしてください。
8 私はガーデンから出られません。だからできるだけ私と一緒にガーデンにいてください。
9 あなたには狩りもあるし、ハンター仲間もいます。でも私にはあなたしかいません。
10 お別れのキャンセルで、私をもてあそばないでください。ですが、たとえお別れの時がきたとしても、どうか覚えていてください。私がハンターさんを愛していたことを。
猫さんから話を聞いたハンターさんは、何か短い言葉を掛けてくれましたが、どんな意味だったのかは分かりません。
猫さんに何て言ったのか聞いても、答えてくれません。
でも、ハンターさんには私の気持ちが伝わったはずです。
嬉しいなぁ、わーい、わーい。
トテテテテ、ドテっ。
「ピッ(痛っ)」
きっと、ハンターさんは転んだ私を心配してくれてるでしょう。
チラッと振り返ってみました。
でも……ハンターさんは、ガーデンから出ていったあとでした。
<<グークの鍋奉行>>
私は、グークです。
最近、私がもらうご飯は薬草ばかりです。
薬草だけだと足りないので、いつもお腹をすかせています。
ほかのグーク達にはこんがり肉をあげているのに、どうして私には薬草だけなのか、世話焼き猫さんに聞いてみました。
猫さんは、たぶん私が少しぽっちゃり体型になってきたから、ダイエットとして薬草にしたんじゃないかな、と言いました。
私の健康を考えてくれていたなんて……。
私のことが嫌いになったわけじゃなかったんだと実感しました。
それでもお腹はすきますが、ダイエットのために我慢しようと思います。
ところが、最近、グーク鍋が流行っていると、ほかのグーク達がおしゃべりしているのが聞こえました。
えっ?!
グーク鍋?
もしかして……。
ハンターさん……。
私のことが嫌いになって、鍋にして食べてしまおうと……?
私を美味しく食べるために、わざとぽっちゃり体型にして、もう十分だからとご飯を変えたのでしょうか?
うぅぅぅぅっ……。
そんなの嫌です、嫌ですうぅーーーっ!!
トテテテテ、ドテっ。
「ピッ(痛っ)」
うぅぅぅぅっ……。
私は起き上がれずに、そのまま泣き続けていました。
そうしているうちに、ハンターさんがガーデンにやってきました。
何やら猫さんに話し掛けて、鍋の用意をしています。
とうとう、食べられてしまうんだ……。
……最後くらい、ハンターさんの喜ぶ顔が見られたら、私は何も思い残すことはありません。
私が鍋に入る決心をした頃、ハンターさんは鍋の中に具を入れるとフタをして、私をそのフタの上にそっと乗せました。
あれっ?
ハンターさんは、ニコニコと笑顔で私を見ています。
どうやら鍋の具にならずに済んだようです。
ホッとしたと同時に、やっぱりハンターさんは私のことが嫌いになったんじゃなかった、と嬉しくなりました。
嬉しいなぁ、嬉しいなぁ。
すると、なんだか足の裏が少しずつ熱くなってきました。
あっ、熱いっ、熱いよぉっ!!
私がフタの上で足をバタバタさせていると、ハンターさんは笑顔で私をそっと降ろしてくれました。
やっぱりハンターさんは、優しい人だと思いました。
ところが、地面に足を降ろすと、足の裏がなんだかヒリヒリして、火傷のようにとても痛くなりました。
慌てて猫さんが、足の手当をしてくれました。
きっとハンターさんも私を心配してくれてるでしょう。
チラッと振り返ってみました。
ハンターさんは、鍋の中のものを大喜びで取り出すと、そのままガーデンから出て行ってしまいました。
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3卓談義(ことわざ編)~インタビュー ウィズ 勝ちネコ~勝ちネコ日記~管理人の憂鬱
<<3卓談義(ことわざ編)>>
とある酒場の3卓に、いつも仲良し4人組のハンターが酒を
A「ねーねー、ことわざゲームやらないっ?」
B「あん? なんだそれ?」
A「みんなが知ってることわざの動物をモンスターにして、ほかのみんなが面白くなかったらホビ酒一気飲みっ!!」
C「面白そーだねー」
D「フフフっ」
A「じゃぁ、アタシからっ! 『モスに真珠』プーちゃんだったらカワイイよね♪」
BCD「クリアー!」
C「『テオの手も借りたい』火傷するけどねー」
ABD「クリアー!」
B「『カムドドの仲』仲悪いっつーか、こいつら会ったことないんじゃねー?」
ACD「クリアー!」
A「『ナナに小判』小判溶けちゃうぅぅ」
BCD「クリアー!」
B「『ゴゴも木から落ちる』寝てる木をぶっ叩いたら落ちるよなっ?」
ACD「クリアー!」
C「『逃がしたガノは大きい』ガノ自体が大きいけどねー」
ABD「クリアー!」
A「『グークが魚しょってくる』ガーデンでいつもお世話になってまーす♪」
BCD「クリアー!」
B「『キリンの耳に念仏』雷落ちるっつーの」
ACD「クリアー!」
C「『能あるガルルガは爪を隠す』爪隠してないけどねー」
ABD「クリアー!」
B「おいっD! さっきからニヨニヨしてばっかで、一つも言ってねーじゃねーか!」
D「フフフっ、では秀逸な私の作品を……『ラヴィに噛まれて朽ち縄に怖じる』大巌竜と呼ばれしラヴィに誰しもが噛まれたら……」
ABC「なにそれ? 一気飲みぃぃぃぃ!!!」
<<インタビュー ウィズ 勝ちネコ>>
えー、本日はメゼポルタ広場の高台にある席をお借りして、勝ちネコさんへ主に狩人祭についてのインタビューをしたいと思います。
あっ、勝ちネコさん、すでにいらっしゃるようです。
高台に向かって歩きながら記者が中継していると、テーブルの上でゴロンと横になっている勝ちネコの姿が見えてきた。
【記】ずいぶんとお早いですねー。
【勝】暇だったからニャン。
【記】では少し早いですが、インタビューを開始させて頂きたいと思います。
【勝】……オッケーニャン。
勝ちネコは、テーブルの上で相変わらず横になったまま、微動だにしない。
【記】ではまず、勝ちネコさんご自身についての質問です。勝ちネコさんの本名は何とおっしゃるんですか?
【勝】本名は秘密にしとくニャン。謎の多いネコは、メスとして魅惑的だニャン。
【記】そ、そーですね。本名は非公開……と(メモメモ)。
【記】では、本題の狩人祭について質問したいと思います。勝ちネコさん的には、いつも狩人祭をどのように見ていますか?
【勝】褒賞祭で勝ち負けの勝負が付いて、天国と地獄を味わっているハンター達を上から目線で眺めることだニャン。
【記】えっ?
【勝】努力が報われたハンターと、そうでないハンターの差は歴然で、新たなドラマを生み出すニャン。
【記】……ハ……ハハ……、鋭い角度からの考察ですね。勝負の運の先にあるドラマを見出している……と(メモメモ)。
【記】では、勝ちネコからの挑戦状として開催される狩人祭についても質問したいと思います。いわゆる勝ちネコ祭では、毎回、目標とされる入魂数が大幅に上がってますよね?
【勝】ハンター達には、前回以上にいっぱい楽しんでもらうためニャン。
【記】ハンターサービスの拡大は常……と(メモメモ)。
【記】では、勝ちネコさんの休暇の過ごし方を聞いてみたいと思います。狩人祭が開催されない時、勝ちネコさんは何をして過ごしているのでしょうか?
【勝】受付カウンターの上でゴロ寝しながら、道行くハンター達を考察してるニャン。
【記】休みを返上しての出勤……と(メモメモ)。
【記】ほかにご趣味とかはありますか?
【勝】寝ることと、道行くハンター達の会話を聞くことニャン。
【記】睡眠補給と、人間考察……と(メモメモ)。
【勝】このテーブル、寝心地悪いからもう帰るニャン。
【記】では、この続きはまた後日改めて、ということで……。
【勝】今度アポとる時は、褒賞祭の初日に来るといいニャン。物凄いドラマを伝えることができるかもしれないニャン。
勝ちネコはシュタッとテーブルから身軽に降りると、その場からゆっくりと立ち去った。
今回も短い時間ではありましたが、勝ちネコさんの
次回は、狩人祭受付担当の女性にスポットを当ててみたいと思います。
以上、メゼポルタ広場の高台からお送りしました。
<<勝ちネコ日記>>
○月×日
今日は、テレビの取材を受けたニャン。
記者の人、土産のマタタビを忘れてきたニャン。
平和主義の私は何も言わなかったけど、素っ気なく対応してやったニャン。
それでも、私のことだからきっと、とっても可愛く映っているニャン。
でも、明日からオスネコ達がカウンターに群がるのは、ちょっとウザいニャン。
○月△日
褒賞祭も今日で終わりニャン。
ハンター達がまた祭りの受付嬢にイチャモン付けてるニャン。
受付嬢も気苦労が絶えないニャン。
最終決定は、ギルドマスターの爺ぃなのにニャン。
でも、ハンター達は爺ぃの前だといつもペコペコしてるニャン。
さて、今回はいっぱい働いたニャン。
そうだ、爺ぃを垂らし込んで、新しい服を買ってもらうことにするニャン。
○月□日
今日は暇だニャン。
寝て過ごすニャン。
○月○日
今日も暇だニャン。
寝て過ごすニャン。
しばらくは、以下同文だニャン。
<<管理人の
私は、マイトレ管理を一手に引き受けている三姉妹の長女。
ここ最近、ハンターさんが少し私に冷たいような気がします。
単なる狩り疲れならいいのですが……。
昨日も、いきなりマイトレに駆け込んで来ては、
「ちょっとぉー!! 私の盾蟹の小殻勝手に取ったわね?! ねぇ、取ったでしょ!!」
と、言いがかりを付けられてしまいました。
「すみません、ハンターさんに許可を得てから拝借したのですが」
「え? え? いつ? 何時何分? 誰が持って行っていいって言った?!」
「先日、いろいろとお話をしている時に、小殻が欲しいのですがと申し上げたら、快く承諾してくださったと記憶しております」
ハンターさんは、あごに手を当てて思い出そうとしていました。
「あっそー、でもなんでいつも小殻とかブヨ皮とかなのさ? 小殻なんてイザ集めようとしてもなかなか入らないし、ブヨ皮は特典防具とかの強化に使うしさー、アンタ一体何に使ってんの?!」
「えーと、すみません。ちょっとプライベートで……」
「さっき、武具工房で小殻が足りませんって言われて大恥かいたけど、今度からはクックの鱗にしてよね! いっぱい余ってるんだから!!」
クックさんの鱗……は、何に使えばよろしいのでしょうか。
そして、今日も……。
「ちょっとぉー、なんで豚が病気になってんのぉぉ?!」
「ここ最近の暑さで、少し夏バテしたようですね」
「何のためにアンタを雇ってると思ってんの!! 高い時給出してんだから、しっかり世話してよね!!」
「すみません、私、お給金を頂いてないのですが……」
ハンターさんは、またあごに手を当てて考え込んでいるご様子です。
「で、でも服とか買ってあげてるじゃないっ(ポイント使ってるけどさっ)」
「はい、素敵なお洋服でとても嬉しいです。特にこの水色のお洋服が気に入ってます」
「……ちょっとアンタ太ったんじゃない? なんか腹回りがさ……。豚の世話しててアンタが豚になってどうするよ?!」
えっ?
そ、そうでしょうか?
今日から、プーギーさんの駆け足運動用施設でもお借りした方がいいのでしょうか?
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決起大会~グークの恩返し
<<決起大会>>
■タイトル
決起大会開催!!
■内容
世間話・愚痴なんでもOK、今後の人生について語り合おう!!
■参加資格
モンスターなら誰でも可
※ハンターは参加不可
■参加費
無料
飲食付き(持ち込み、大歓迎)
■開催日時
○月△日(夜~)
■開催場所
砂漠エリア2
※目印は中央付近の焚き火
■特記事項
冷え性の方は、要防寒対策
持込みOK
気軽なオフ会だと思ってください
■連絡先
クアルセプスまで
カタッ!
Enterキーを押す。
クアルセプスは、某サイトに『決起大会』という名のオフ会参加者募集を投稿した。
ここ最近、あまりにも暇だったので、ほかのモンスター達の近況が知りたかったのだ。
決起大会当日。
クアルセプスは、砂漠のエリア2の中央付近で誰もいないのを確認し、焚き火の準備を始めた。
パチパチパチ……。
クアルセプスは焚き火の前に座り、参加者を待った。
それからしばらく経って、ようやく最初の参加者がやって来たようだ。
?「よおっ、久しぶり」
ク「やぁ、アビオルグ君じゃないか」
短い手を振りながらやってきたのは、アビオルグだった。
ク「まぁ、その辺に座っててよ」
クアルセプスは、アビオルグに振る舞う飲み物を用意している。
ク「はい、どーぞ」
ク「最近どぉ?」
ア「うーん、……暇だぜっ!」
ク「そっかー、僕と同じだね」
ア「お前はまだいいさ、証だって俺よりも一枚多いし……」
ク「…………」
しばらくの間、沈黙が続く。
ク「でもさ、引っ越してきた当初は、これでもかなり賑わってたんだよね」
ア「俺もさ。でもそのうち挙動不審だとか、ヌルヌルした動きがイヤだとか言われてさ、メンタル的にもキツイぜ」
ク「そうだよね、そういうのが一番こたえるよね」
ア「起死回生によ、とっておきのお宝とか出したらまた賑わうと思うか?」
ク「お宝?」
ア「宝玉、とかだよ」
ク「うーん、でもそれを活かせる職人さんがいないとね」
ア「そっかぁ……」
またしばらくの間、沈黙が続いた。
ア「ベルの野郎とかは、忙しいんだろーなー」
ク「彼は人気者だからね」
ア「……。おっ? 開始時間とっくに過ぎてるけど、まだ誰も来ねーな」
ク「うん、……来ないね」
と、その時、
ズーン……ズーン……ズーン……!
辺り一面が揺れ始めた。
ク・ア「あっ」
?「ごめんなさい、遅れちゃったかしら?」
大地を揺らしながらやってきたのは、シェンガオレンだった。
ク「まだまだ全然大丈夫だよ」
シ「よかったぁ~」
ク「遠い所、ご苦労様だったね、迷わずに来れたかい?」
シ「ええ、障害物が合っても壊しながら来たから迷わなかったわ」
ク「そ、そーだよね」
シ「私、ブレスワインを頂こうかしら」
ク「今、用意するね」
シェンガオレンは、アビオルグの横にズシンと座った。
シ「どっこいしょ、ふぅっ。あら? あなた、初めまして……かしら? 私、シェンガオレン、よろしくね」
ア「あ、あぁっ、俺はアビオルグ……と申しますっ」
シ「噂はかねがね聞いてるわ。はぁーっ、久々に長い距離を歩いたから、脚がむくんでパンパンだわっ」
ア「た、大変でしたね……」
ブレスワインを持ったクアルセプスがやってきた。
ク「はい、お待たせ」
シ「ありがとう」
シェンガオレンは、ブレスワインを一気に飲み干した。
シ「はぁー、やっぱりワインはブレスワインよねー♪」
ク「最近、シェンさんのほうはどう?」
シ「どーもこーもないわよっ」
シ「ハンター達ったら、HR100になった途端、私のことなんて見向きもしないんだからっ」
シェンガオレンは、遠い目で焚き火を見つめている。
シ「おかげで暇で暇で。いっそのこと、世界一周旅行にでも行こうかなって思ってたところよ」
ア・ク「そ、それはやめたほうが……」
シェンガオレンの登場により、今まで葬式会場のようだった決起大会は、大いに賑わった。
と言っても、ほとんどがシェンガオレンのおしゃべりで、決起大会はその幕を閉じた。
<<グークの恩返し>>
私は、グークです。
今日、私が落ち込んでいると、世話焼き猫さんがエプロンのポッケからマタタビを1つ取り出して、私にくれました。
ありがとう、猫さん。
でも、私はマタタビが食べられません。
このマタタビをどうしようか考えました。
いつも私に優しくしてくれる猫さんへの恩返しに、このマタタビを植えてマタタビがいっぱい増えたら、それを猫さんにあげようと思います。
猫さんが見ていない隙に、ガーデンの隅っこへマタタビを埋めました。
早く大きくなるといいな。
それからしばらく経って、また私が落ち込んでいると、猫さんがエプロンのポッケからマタタビを1つ取り出して、私にくれました。
ありがとう猫さん。
……あれ?
前にも、猫さんからマタタビをもらったような気がするのですが、そのマタタビをどこにやったのでしょうか?
うーん、うーん。
しばらく歩きながら考えていました。
でも、いくら思い出そうとしてもすっかり忘れてしまったようで、思い出すことができませんでした。
それよりも、今もらったこのマタタビをどうしようかと悩みました。
いつも私に優しくしてくれる猫さんへの恩返しに、このマタタビを植えてマタタビがいっぱい増えたら、それを猫さんにあげようと思います。
猫さんが見ていない隙に、ガーデンの隅っこへマタタビを埋めようとしました。
……あれ?
そこには、何かが埋まっているようです。
よく見ると、干からびたマタタビが1つありました。
そうだった、前も今と同じように埋めたんだったと、ようやく思い出しました。
この辺りは雨が当たらないから、マタタビが干からびてしまったんでしょうか。
それなら今度は、池の近くに埋めようと思います。
ここなら水分もあるので、きっと大丈夫でしょう。
早く大きくなるといいな。
それからしばらくすると、ガーデンの大工事が始まりました。
どうやら私達の施設を改装するようです。
……あれ?
何か大事なことを忘れてる気がするのですが……。
うーん、うーん。
しばらく歩きながら考えていました。
でも、いくら思い出そうとしてもすっかり忘れてしまったようで、思い出すことができませんでした。
職人さん達がいっぱい出入りして、みんな一生懸命に施設を作ってくれています。
何ができるのかなぁ。
楽しみだなぁ。
私は嬉しくて、嬉しくて、職人さんの回りをぐるぐると走りました。
トテテテテ、ドテっ。
「ピッ(痛っ)」
また転んでしまいました。
職人さんに、心配をかけてしまったでしょうか。
チラッと職人さんを見上げてみます。
職人さんは、私を指差しながら猫さんに大声で何かを言いました。
猫さんは、ペコペコと頭を下げています。
なんだかよく分からないけれど、……ごめんなさい。
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インタビュー ウィズ リオレウス~3卓談義(ペット編)~グークの旅立ち
<<インタビュー ウィズ リオレウス>>
えー、……ゴホッ。
……失礼しました。
本日、私は命懸けのインタビューをお届けすることになるかもしれません。
と、言いますのも、このコーナー始まって以来、初の大型モンスターに対するインタビューとなったからです。
しかもそのお相手は、なんと! あのリオレウス氏です!!
念のため「元気のみなもと」を飲んでからインタビューを開始したいと思います。
記者は「元気のみなもと」を一気に飲み干し、大きく深呼吸をした。
えー、今回お送りするこの場所は、森丘のとある洞窟内です。
洞窟最上部にはポッカリと穴が開いており、ここからでも青空がクッキリと見えます。
バサッ、バササッ、バサササッ。
あっと! リオレウス氏が登場したようです。
【リ】待たせたかな?
【記】い、いいえ、ほんの少し前に着いたところですっ。
【リ】
【記】あっ、これツマラナイものすが……。
記者は手土産に持参した生肉3kgを差し出した。
【リ】うむ。気を遣わせてしまったね。
【記】そ、それではインタビューを開始したいと思いますっ。
記者のマイクを握る手が震えている。
【記】ではまず最初に、リオレウス氏から見て、ハンターと呼ばれる狩人達についてはどのような見解をお持ちでしょうか?
【リ】うむ。あの者らはこぞって我々を狩りに来くるが、こちらとしてはあの者らを狩る側として真剣に
【記】なるほど、対等の立場で狩猟……と(メモメモ)。
【記】ではその狩猟内容として、リオレウス氏にとって最も困るハンターの攻撃は何でしょうか?
【リ】うむ。打撃というのかな? あの固いので頭を叩かれると、脳震盪をおこすので好きではないな。ほかにも、あの者らはやたらと尻尾を斬りたがる。尻尾を斬られると飛行のバランス調整が難しくなるが、あえてソレをあの者らには見せまいと、必死に飛行しなくてはならないところか。
【記】なるほど、部位破壊は止めて欲しい……と(メモメモ)。
【記】リオレウス氏は、ご親戚が多いことで有名ですが?
【リ】あぁ、貴殿らに言わせると、亜種・希少種・変種・奇種・若個体・激個体・特異個体やらいるようだね。
リオレウスはそう言って、小さなため息を吐いた。
【リ】しかし、我々はまだ良いほうだ。リオレイアはさらにひどいことになっている。えーと、何だったかな? 刃……派……破……。
【記】……覇種、ですかね?
【リ】あぁ、それそれ。突然親戚が増えて困ったと言ってたな。
【記】家系図の拡大に困惑……と(メモメモ)。
【記】リオレウス氏と最も交流のあるご親戚の方は、どなたになるのでしょうか?
【リ】家内のリオレイアはもちろんだが、一番は蒼坊かな。
【記】亜種と交流あり……と(メモメモ)。
【記】では、最後の質問です。最近の噂では、なにやらG級なるモンスターが発見されたそうですが、その中にはリオレウス氏のご親戚もいらっしゃるのでしょうか?
【リ】……、聞いてないな。
【記】……G級は不明……と(メモメモ)。
【記】それでは、今回はインタビューにお付き合い頂きまして、本当にありがとうございました。
【リ】……うむ。
【記】……それではまた何かありましたら、よろしくお願いします。では失礼します。
記者とカメラマンは揃って一礼すると、洞窟を後にした。
えー、手に汗握るインタビューで、寿命がほんの少し縮んだ気がしますっ。
今回は、初の大型モンスターということで原種のリオレウス氏でしたが、次回はなんとっ! 奇種のリオレイアさんにインタビューを試みたいと思います。
以上、森丘洞窟前からお届けしました。
—————————————————————————–
【カ】ふーっ、最後の質問、あれヤバかったんじゃないっスか?
【記】いやー、俺もそう思ったんだけどさー、上からの命令だからさー。
【カ】何はともあれ、無事でよかったっスよ。何かあったら労災おりるんっスかね?
【記】バカっ、来る時に書いた念書読まなかったのか?
【カ】えーっ? 字が細かすぎて、あんなの読んでないっスよぉ。
【記】全部自己責任だとよっ。
【カ】えーっ? マジっスかぁ? ……ところで次がリオレイアなんて、俺聞いてないっスよぉ?
【記】番組的に、こうなるって予想ぐらい付くだろっ。
【カ】えー、やってらんないっスねー。
【記】あーっ、疲れたっ。帰りに一杯行くけどどぉ?
【カ】いっスねー♪ ゴチでーっす。
【記】……ん? ってか、お前なんでまだカメラ回してんの?
【カ】えっ? あれ? ……ヤベっ。
<<3卓談義(ペット編)>>
ここは、とある酒場。
今日も3卓では、いつも仲良し4人組のハンター達が酒を酌み交わしていた。
A「ねー、ねー、もしペットにするなら、どのモンスターがいい? 私はねー、ヒプノック! 言葉を教えてインコみたいにおしゃべりするのっ♪」
B「俺は断然カムだぜ。散歩する時、カッコよくね?」
C「うーん、僕はやっぱりアイルーかな。色々と家事を手伝ってくれそうだし」
A「広い庭にエルペたんがいるのもカワイイよねぇ♪」
D「フフフッ」
B「でっかい牧場でディアブロスもいいなぁ。俺の牛、見に来る?とか言いてぇぇッ」
C「だったら僕は、大きな水槽でガノトトスを飼いたいなぁ。アクアリウムは見てて癒されるし」
A「エスピたんと一緒に寝たら熟睡できそう♪」
B「リオレウスの背中に乗って、空飛ぶの悪くないな」
C「冬になったら、ドドブランゴと雪合戦するのもいいね」
B「じゃ俺はラージャンと腕相撲してみたいぜ」
D「フフフッ」
A「チャチャブー達とキャンプファイヤーも楽しいカモ♪」
B「おい、お前だったら何のモンスターがいいんだ?」
D「フフフッ、私はですね、ランゴスタとカンタロスを同じ虫カゴに入れて……」
ABC「む、虫ッ?!」
<<グークの旅立ち>>
私は、グークです。
ここしばらく、ハンターさんの姿を見ていません。
何かあったのでしょうか?
それとも、私のことが……嫌いになってしまったんでしょうか?
このガーデンにいたほかのグーク達が1羽……また1羽と、どこかへと旅立っていきます。
そして、とうとうグークは私1羽だけになりました。
みんなのように、私も旅立ったほうがいいのでしょうか?
でも……もしかしたら……。
私は、チラっとガーデンの入口に目をやりました。
でも、誰も来る気配がありません。
あと1日だけ待ってみようと思います。
翌日も、その翌日も、誰もこのガーデンにはやって来ませんでした。
私は、世話焼き猫さんへ相談してみました。
世話焼き猫さんは、私の好きにしたらいいと言ってくれました。
そして最後に、家出したグークをハンターさんが探しに行くこともあるよ、と言ってくれました。
もしも私が旅立ったなら、ハンターさんは……探しに来てくれるでしょうか?
もし探しに来てくれなかったら……。
……いいえ、ハンターさんならきっと探しに来てくれるはずです。
でも、もし……。
あと1日だけ待ってみます。
……あと1日……。
…………。
あれから何度目かの朝を迎えた私は、ハンターさんが今まで私にくれた、たくさんの洋服をしまっている箱を覗いてみました。
その中から、鬼神のような洋服を取り出しました。
これならどこにいても、きっと目立つはずです。
私は、鬼神の洋服に身を包んで世話焼き猫さんへ、今までのお礼と最後の挨拶をしてガーデンを飛び出ました。
ハンターさん……。
私……待っていますね。
ハンターさんが迎えに来てくれるまで……ずっと……待っています。
そして、いつの日か……今よりももっと
親愛なるハンターさんへ
あなたのグークより
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