ロウきゅーぶ!!!~エリーゼ・ルタスの大冒険~ (藤林 明)
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異次元からの転校生編
第0話 プロローグ~転校生side~


エリーゼさんの設定です!
本文名前:エリーゼ・ルタス

年齢:12歳

身長:145cm

体重:?

ポジション:?

容姿:原作では薄い金髪のセミロングで紫のドレスを着ている。本作では基本的に慧心学園の制服または体操服を着ている。

性格:特殊な環境で育った為話す時はもじもじしてしまうが、決して人嫌いではない。(いわゆる人見知り)慣れれば普通に話せるようにはなる。ただし世間知らずなので若干天然じみた発言も多い。

原作との相違点:エリーゼの両親は生きていて一緒に暮らしている。

備考:ティポはお気に入りのぬいぐるみとして登場しますが、喋りません。あとエリーゼはリリアルオーブをペンダントとして持っています。(ちなみに体力と敏捷にメチャ振りしてるためちょっとチートかも…)

設定:愛莉の件から少し経った7月に転校生として出てきます。

現時点ではこんな感じです。
以降エクシリアのキャラを足すかは検討中です\(^ー^)/
更新はかなり不定期になります上に駄文ですが、宜しくお願いしますm(_ _)m


本文~エリーゼside~

 

 

えっと…おはようございます。エリーゼです。

今日は7月1日、私の初めて学校初日です。凄く緊張します。…友達、出来るかなぁ…?

 

「エリーゼ、準備出来たの~?」

 

…お母さんが私を呼ぶ声がします。

私はそれに返事だけを返して手元へと視線を戻します。

 

……今日は、もうひとつ大事な日でもあります。それは…

 

「………お休み、ティポ」

 

そうです。今日は今までずっと一緒だったティポを眠らせる日でもあります。…少し寂しいですが、我慢します。

 

「………これでよし、いってくるね」

 

……もうティポは喋らないけど、側には居てほしいので机の隅に飾ります。…友達が出来るまで、側に居てね…?

 

なんて感傷に浸ってたらまたお母さんに呼ばれちゃいました。…最初から遅れたらダメだもんね…。

 

 

 

~~~~~~~♪

 

 

 

 

 

 

お母さんに連れられて来た学校の名前は…えっと、けい…しん…がく…えん?

…やっぱりこの「世界」の言葉は難しいです。これからはもっと勉強しないと!

 

…なんて考えてるうちに教室の前まで来ていました。見上げると「6ーC」と書かれたプレートがあります。…どうやら、ここが私が入るクラスの様ですね。

 

「ここが今日からエリーゼが通うクラスだ。クラスメートも悪い奴はいないからすぐに友達作れると思うぞ…ってエリーゼ?」

 

………急に私の担任の先生になる篁(たかむら)美星さんが不思議そうな表情で私の顔を覗いてきました。…私の顔、何か付いているのでしょうか?

「…?」

「いや…感動してるのは分かるが、まさか涙が出る程とは…」

「えっ?……っ!?」

 

…どうやら私は知らないうちに泣いていたみたいです。…少し、いやかなり恥ずかしいです…///

 

「にゃふふ~感動してくれるのは嬉しいが、それじゃあ皆に笑われちゃうよ~?」

「はぅぅ…」

 

…先生に笑われてしまいました…恥ずかしい…

 

「ごめんごめん。じゃ私は先に中行くからエリーゼは私が呼んだら入って来て。…それまでにはその顔なんとかしとけよ~にゃふふ」

「うぅぅ…………はぃ…」

先生は私にそう言うと教室の中に入って行きました。…………それにしても、「こちらの」先生は皆こんな感じなのでしょうか?…この先もこうしてからかわれ続けるのは…ちょっと大変です。

…なんて考えながらしょげていたら先生が中から呼んでいるのが聞こえましたのでその声に「はい!!」と返事をします。…よし、頑張りましょう!!……あ、顔拭かないと。

 

 

 

 

~sideout~




後書きスキット:次回予告(仮)

愛莉「か、香椎愛莉です!…わ、私が最初にこんなことして大丈夫なのでしょうか…?」

作者「別に良いよ~」

愛莉「そ、そうですか…えっと、次回は私達女子バスケ部がメインのお話みたいですね?」

作者「いや、次回予告で質問口調は…」

愛莉「はぅっ!?…ご、ごめんなさい…」

作者「いやだから俺に言われても…」

愛莉「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

作者「…………人選、ミスったかなぁ…」
おわり

作者「…と、まぁこんな感じで後書きはテイルズみたいなスキット形式でやっていく予定です!本日は御愛読ありがとうございました。それでは!!」


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第0話:プロローグ~在学生side~

改めて書いてて思った。…紗季とエリーゼさんの口調で書くの難しいわ…

それではどぞ!



〜紗季side〜

 

皆さんこんにちは!永塚紗季です。今日は7月1日、私の誕生日です♪…え?テンションが高いって?それはもちろんよ!なんせあの真帆より1日早くお姉さんになれる日なんですもの!これでテンション上がらない事は無いわ!!…でも、そんな心境は絶対表には出さない。何故なら私はクラス委員長…常に冷静でなければ務まらないものね。…っと!私の事はひとまず置いておきましょう。

今日はなんと時期外れの転校生がうちのクラスに来るそうです!何でも話によると外国人だとか。…真帆辺りが喚きそうだからちゃんと監視しとかないと転校生さんに迷惑かけそうね。気をつけなきゃ!

 

「おはよう紗季」

「おはようトモ」

 

そんな感じで考えてたらトモ達が教室に入って来ました。…あ、トモって言うのはあだ名で本名は湊智花(みなとともか)。私達慧心学園女子ミニバスケットボール部のエースで、普段はすごく大人しいのにバスケの試合になると人が変わったように積極的にゴールを狙いにいったり高校生相手でも果敢に向かっていったりして凄く頼りになるんだけど……普段は凄い奥手だからバスケの時みたいな積極さがもう少し欲しいのよね〜…恋愛的に。

 

「おっす紗季!なぁなぁ!今日転校生が来るってホントか!?」

「そうよ…あんまりはしゃがないでよね?」

 

っと、コイツは三沢真帆。私の幼なじみで…見ての通り目茶苦茶元気で、チーム内ではムードメーカー的な役割なんだけど、普段から落ち着きが無くて苦労してるのよね〜…そこ!顔がにやけてるとか言わない!!

 

「おはよう紗季ちゃん。転校生さんが来るって本当なの?」

「おはよう愛莉。みーたんからそう言われたから間違いないわ」

 

この娘は香椎愛莉。スタイル抜群で身長がずば抜けて高い我がチームの中心選手(センター)…なんだけど、凄い怖がりな上に身長がコンプレックスだからあんまりこの話題には触れられないし「背が高いね」は禁句だからちょっと大変なんだけど、皆の足を引っ張りたくないからって言って怖くても頑張る優しい子なの。…それに、この前の騒動以来ちょっとずつ変わってきてるみたいだし、私も足引っ張らない様に頑張らなきゃね!

 

「おー、転校生さんは、バスケ出来る人?」

「いやそこまでは分からないわよ…あ、でもみーたんの話だと転校生は女子らしいわ」

 

この子は袴田ひなた。チーム内で1番小さいけどうちのバスケ部には欠かせない選手の1人よ。何せこの娘は普段はいつもニコニコほんわかした雰囲気で周りの人達を和ませてるけど、その裏では皆に追いつこうと凄い努力をしてるのよね。…球技大会の時も思ったけど、1番上達してるのって実はヒナなんじゃ…。

……………ま、負けられないっ!

 

…っと、これで全員分の紹介終わったかな…えっ、私?私は…最初にしたでしょ!!///

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜♪

 

 

 

 

 

 

あれからチャイムが鳴るまで皆とガールズトーク(主にトモいじり)をしてたのだけど…みーたんがなかなか来ません。

あ、みーたんというのはこのクラスの担任で本名は篁美星先生の事で、確かに普段はいい加減な所もありますが、打ち合わせや朝の会、帰りの会には遅れないのでちょっと心配です。

 

「美星先生遅いね」

「そうね…どうしたのかしら?」

 

どうやらトモ達も気付いたみたいで愛莉とトモは心配そうに、ヒナと真帆はちょっと怒った感じに。ちなみに私は割と気にしてなかったりします。理由は…

 

「わりー遅くなったー」

 

と、モノローグしてたらみーたんが入って来ました。…どうやら解決したのかな?

 

「みーたん遅い!」

「みほし、おねぼうさん?」

 

なんて考えたら真帆から文句が。というかヒナ、いくらなんでもそれは…

 

「わりーわりー、ちょっと転校生の事で手間取っちまってな。…てことで知ってる奴らもいると思うが、今日からうちのクラスに新しい仲間が来ます。皆、仲良くしてやってくれよ?…あ〜、ちなみに転校生は女子だ。よかったな〜男子。にゃふふ〜」

 

…という感じで謝罪と説明と報告(?)をしてからみーたんは教室のドアに「入って良いぞ〜」って声をかけてます。…いい加減だとか言わないの!一応良い先生なんだから。

…さて、転校生さんはどんな子なのかしら?楽しみね。

 

〜sideout〜

 




後書きスキット:やっと…?

昴「やっとプロローグ終わったな」

作者「ですね~」

昴「これでやっと俺の出番が…」

作者「あ~、あと1、2話先だね~」

昴「なんで!?」

作者「そりゃあ主人公がエリーゼだからさ~」

昴「理由が地味に酷い…」

作者「ま、気長に待ってなさいな!」

昴「……次回、初めての学校!…ってえ…!?」


御愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第1話:失敗した自己紹介

うーん……友達になるまで行きたかった(泣)

それではどぞ!



~エリーゼside~

 

 

 

あれから持っていたハンカチで涙を拭いてから気合い一閃で扉を開けたのですが…

 

バタン!!

 

………勢いつけすぎました。皆も先生も驚いた感じで目を丸くしています。

 

「…え、エリーゼ?いくらなんでも緊張し過ぎだぞ?」

 

…さっき私をからかってた美星さんも、からかうのを忘れて呆然としてます。…私、そんなにガチガチなんでしょうか?

 

「しっ、失礼しましゅっ!?」

 

痛い…舌を噛みました…どうやら緊張はしてるみたいです。さらに驚いたことに身体が凄い動きをしています。…例えるなら、今日の朝見たテレビに出て来た「両手と両足が同時に動いてる人」みたいな感じです。…どうやら架空の話の中だけじゃなかった様ですね。

 

 

 

……当然、自己紹介も緊張のあまり舌を噛んでしまいながら自分の名前を言うのが精一杯だったので、見かねた美星さんが「エリーゼの席はあそこの1番後ろの真ん中の席な」と言ってくれたのでこの時は特に質問や騒ぎ等は何もありませんでした。(というより皆さん唖然としてます…うぅ)

…………はぁ……こんな状態で、友達なんて出来るのでしょうか…グスン。

 

 

 

~sideout~

 

 

 

~真帆side~

 

えっと、アタシ三沢真帆。今は転校生の紹介…のハズだったんだけど……

 

「えっ、エリーゼ…ルタス…でひゅっ!?……~~~!!!あうぅぅぅ~っ!!」

 

あ、噛んだ……えっと、うん、なんだか、昔のアイリーンみたいな子でさ、とてもじゃないけど早速質問、って空気じゃないんだよね……ん?あ、アタシだってちゃんと場の空気位読めるよもう!!

……まぁそれは良いんだけど、結構恥ずかしがり屋みたいだし、ホームルーム終わった後で話し掛けてみよう…かな?…あ、みーたん見かねて席を教えてるや…ってもっかんの後ろか!…こりゃあ話し掛け無い手は…無い…けど…

 

…あんな誰でも分かる位泣きかけてたら、難しい…かなぁ?

 

 

 

 

~sideout~

 

 

 

~愛莉side~

 

か、香椎愛莉…です。えっと…転校してきたエリーゼちゃんはちょっと前までの私に似てる様に見えました。

だって、今こっちに…私とひなちゃんの間の空いてる席に来ているエリーゼちゃんはとっても悲しそうな顔をして、今にも泣きそうな顔をしてるの…昔の、泣いてばかりだった頃の私みたいに――――――

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

5年生に上がった時に最初にやった自己紹介。私はクラスに馴染めるか、友達は出来るか、ちゃんと自己紹介出来るか。凄く不安で、緊張して……結局、喋ってる途中で舌を噛んで失敗しちゃった。今さっきのエリーゼちゃんと同じ様に……。

…だからあの時は凄く怖かった。もう絶対に友達なんて出来ない。きっと虐められるって思うと、凄く悲くて、泣きたくて……。

だから――

 

 

 

「ねーねー、アイリーンって凄いね!」

 

 

…って声かけてくれた真帆ちゃんには凄く感謝してるんだ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

……でも、実はあの後に続いた「背が大きくて」って言葉を聞いて大声で泣いちゃったんだよね。…あの時は真帆ちゃんに悪い事しちゃったなぁ~。真帆ちゃん、紗季ちゃんと美星先生にすごく怒られちゃってたし……。

…だから、今度は私の番だ。真帆ちゃんにしてもらったみたいに――彼女を、助けてあげるんだ!

 

~sideout~




後書きスキット:デジャヴュ!?

智花「転校生の子、エリーゼって言ってたよね?あの子も恥ずかしがり屋さんなのかな?」

ひなた「おー、エリーは恥ずかしがり屋さん」

智花「エリー?…あ、もしかしてエリーゼのあだ名?」

ひなた「おー、そうだよ~。エリーゼだからエリー。ひなもひなただからひな」

智花「そ、そうなんだ…と、ところでさ、エリーゼの自己紹介なんだけど、私なんだか何処かで同じ様な光景を見た様な気がするんだけど……」

ひなた「おー、ひなもそう思ってた」

智花「う~ん…何処でだろう?」

ひなた「むーん……」

智花「うーん…」

智花&ひなた「「う~~ん」」

おわり


御愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第2話:友達

何と言うか…他の人達より目茶苦茶短い(-.-;)
…修正しながらとはいえもう少し増やした方が良い、かなぁ?

あとやっぱりエリーゼ口調は難しい




…それではどぞ!



~エリーゼside~

 

 

こんにちは。エリーゼです…自己紹介に失敗した私は今凄く泣きたい気持ちでいっぱいです。…だって、第1印象っていうのが1番大事だってこの前読んだ本に書いてあったんだもん。完全に失敗ですよね…あれじゃあ……

そんな感じで絶賛ネガティブゲイト~みたいな心境の中、美星さんに言われた席まで来ると、そこに居たのは…

 

 

…涙を流してる大きな女の子でした。

 

 

…正直、ジュード達以外の友達がドロッセルとティポ位しかいない私にはただただ驚くしかありませんでした。…もちろん何て声をかければ良いのかもわからないので、ただその場でアタフタとしてるしかなかったのですが…

 

「…エリーゼちゃん、大丈夫だよっ!エリーゼちゃんは、独りにならないよっ」

 

そう私に言って…私よりも大きいその女の子は、私の事を抱きしめてくれました。…優しい人、みたいです。

「……えっと、感動的な所すまんが……」

 

そんな事を考えながら自分の気持ちが落ち着き始めた頃に急に美星さんが申し訳なさそうな表情で切り出してきました。…どうしたのでしょう?

 

「…そろそろホームルームの続きしても良いか?」

 

「…あっ!ご、ごめんなさいっ!エリーゼちゃんもごめんね」

 

…そういえばホームルームの最中でしたね…すっかり忘れていました。…でま……ううん、きっと、この人とは良い友達になれそうです。

 

 

 

 

 

~~~~~~~♪

 

 

 

 

 

 

その後のホームルームと1時間目の授業もスムーズに進み、今は休み時間になった所…なのですが…

 

「ねーねー、エリーゼちゃんって何処から来たの?」

 

「エリーゼちゃんって何が趣味なの?」

 

「好きなもの何~?」

 

…………何故か凄い勢いで質問攻めにあってます。…私、そんなに珍しいのでしょうか??

 

「あの…えっと、その……」

 

…どうしよう…何を何処から答えて良いのかわかりません…ジュードが話かけてきた時以上に困りました…。

…と、そんな時

 

「こらー!!エリーゼが困ってるでしょ!?質問はひとつずつにしなさい!!」

 

…前から鋭い声が聞こえ、皆が静まりました。

前を見てみると、とても長い青い髪をみつあみにしている、眼鏡をかけた女の子が仁王立ちしてました。…ちょっと怖そうですが、助かりました。

 

「なんだよ~、サキ~?」

 

眼鏡の女の子の声に1番早く反応したのは、金髪の長い髪をツインテールにしたレイアみたいな元気の塊みたいな女の子。…多分、私の苦手なタイプですね。

 

「って何でアンタまで質問攻めに加わってるのよ!?ってひとまずそれは置いといて…コホン、自己紹介の時もそうだったけど、エリーゼって受け答えが苦手そうだったから、やっぱり誰かが間に入らないとマズイだろうなって思ったのよ!それで様子を見てたら案の定、というか予想以上だったけどね…」

「ふ~ん…ま、確かにさっきから昔のアイリーンみたいにアタフタしてるからな~…ふむ、てことで皆!ここはこのまほまほに任せたまえ~!」

 

「「「何でそうなるんだよ!?」」」

 

……なんだか、よく分からないことになってきました。

青い髪の眼鏡の人が私を助けてくれようとしているのはわかりますが、どうやら金髪のレイアみたいな人もなんだかんだで助けてくれるみたいです。…レイアもそうでしたが、こういう元気な人は皆こうなのでしょうか…?

 

 

 

 

そんなドタバタとした休み時間も終わり授業が始まる直前、私の席の両隣の女の子から声をかけられました。

 

「さっきはいきなりあんな事してごめんね?あ、私は香椎愛莉です。よろしくね」

 

さっきの大きな女の子はカシイアイリさんと言うそうです。

 

「おー、ひなは、袴田ひなた~。よろしくお願いします♪」

 

そしてカシイアイリさんの反対側の席の、彼女とは対照的なとっても小さなピンク色の髪の女の子はハカマダヒナタさんと言うそうです。

 

「えっと…エリーゼ・ルタス…です。よろしくお願いします…です」

 

私も自己紹介してもらったので改めて自己紹介をします。…よかった…今度は噛まずに言えました…。

 

「えへへっ、そんなに固くならなくて良いよ♪」

 

「おー、エリーゼ、リラックスリラックス~」

 

…けどやっぱり、緊張はしちゃうみたいです。…でも

 

「えっと、…カシイアイリさん」

 

「えっ?…あ、私の事は愛莉で良いよ?あと同じクラスなんだし普通に話しても大丈夫だよ♪」

 

「あ、はい。えっと、…愛莉…さっきはありがとう…です」

 

さっきのあれはね、とっても嬉しかったんだよって、ちゃんと伝えたかった。だからお礼を言っておきたかった…。

 

「エリーゼちゃん……ううん、私、エリーゼちゃんとお友達になりたかったから…だから、ね?」

 

「おー、ひなも、友達になりたい。エリーゼも、ひなのことひなって呼んで?」

 

二人は笑顔でそう答えてくれました。

 

「愛莉…ひな…うん!私も、二人と友達になりたい…です」

 

…私も、二人とは友達になりたかったので、本心を「自分の口から伝えたかった」からそのまま言葉にして伝えました。…ちゃんと伝えられたか分からないけど…でも、これが私の本心。だから…

 

「うん!…うんうんっ!これからよろしくねエリーゼちゃん」

 

「わーい、これからもよろしくお願いします♪」

 

この二人になら絶対伝わるって信じていました。…やっぱり、友達が出来るのは嬉しいです。

 

 

~sideout~




後書きスキット:バリボーふたたび!

エリーゼ「抱きしめてくれた時に思ったのですが…愛莉って凄いバリボーです!」

愛莉「えっ?バリボー?」

ひなた「おー、エリーゼにも、わかる?」

エリーゼ「はい!アレはとても柔らかくて、とても気持ちよかった、です!…私もいずれはああなりたい」

ひなた「おー、エリーゼには、難しい」

エリーゼ「うー…」

愛莉「………。(ね、ねぇひなちゃん)」

ひなた「?(おー?)」

愛莉「(バリボーって、何の事かな?)」

ひなた「(むーん…ひなもよく分からない。)」

愛莉「(ひ、ひなちゃん…)」

エリーゼ「愛莉!愛莉はとってもバリボー…です!…羨ましい…!」

愛莉「ええっ!?(い、一体何の事なのー!?(泣))」

おわり


御愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第3話:仲間 前編

今回は今は亡きサイトにて投稿していた名残で前半・後半に分かれてます。
……短いだろうけどご容赦ください。
ちなみに片言をカタカナ表記にしてますので漢字で紹介すると

湊  智花
永塚 紗季
三沢 真帆
香椎 愛莉(本編紹介済み)
袴田 ひなた(本編紹介済み)

となります。…多分1話で紹介したかもですが改めて。

それではどぞ!


〜エリーゼside〜

 

 

「にしても、まさか愛莉が1番最初の友達になるなんて、本当に驚いたわ〜」

 

「えへへっ」

 

休み時間や授業のグループ分けは、愛莉とひなのおかげで無事に乗り切れました。…特に愛莉に紹介してもらった青い髪の眼鏡をかけた女の子、ナガツカサキさんはクラス委員長という事で、色々とサポートしてくれました。…第1印象は?って聞かれた時に思わず「ちょっと怖そうな人」って答えたら凄く落ち込んでしまったのはごめんなさいです…。

 

「でも、アイリーン凄かったよな!まさかホームルーム中にあんな事するとは思わなかったよー」

 

「はうっ!真帆ちゃんそれは言わないで……」

 

…この私より濃いめの金髪をツインテールにしたレイアみたいに騒がしい人はミサワマホさん。…もし愛莉の友達じゃなかったら、あんまり関わりたく無いのが本心だけど…愛莉が「昔私の事助けてくれたのが真帆ちゃんなんだよ」って言ってたのでやっぱり悪い人ではないんだと思います。…好きか嫌いかは置いておいて。

 

「ふふっ、でも私には真似出来ないよ。やっぱり強くなったよね、愛莉!」

 

「智花ちゃん…」

 

…このショートカットの髪を片結びにした、優しそうな人はミナトトモカさん。この人の事はまだよく分からないのですが、愛莉と同じ様に優しい人なんだなっていうのは雰囲気でわかります。…この人とも、きっと仲良くなれそうな気がします。

 

「…おー?エリーゼ、どうしたの?」

 

「…あ、ううん、何でもないよ?」

 

…いけないいけない。今は昼休みという時間で、皆とご飯を食べながらお話してる所でした。

 

「ホント?転校初日なんだし、あんまり無理しちゃだめよ?」

 

…ナガツカサキさんに心配されちゃいました。でも…

 

「ううん、大丈夫だよ。…ありがとう、ナガツカサキさん」

 

私は大丈夫。だから素直に本心を言ったのですが、…皆が何故か困惑した表情を浮かべています。…私、何か悪い事しちゃったのでしょうか?

…なんて事を考えながらオドオドしてたらナガツカサキさんが

 

「…ねぇエリーゼ、エリーゼの前居た所って、私達みたいな名前の人居なかったの?」

 

って聞いてきました。なので

 

「…はい…居なかった…です。…あの、私何か酷い事言っちゃいましたか?」

 

質問に答えながら、ちょっと気になってた事を聞いてみます。…レイアの時みたいに知らないうちに傷つけてたら嫌だから。……でも、返って来たのは

 

「いや別にそんな事は…ただ、ずっとフルネームで呼ばれるのもな~って思っただけよ」

 

というちょっと困った様な返事でした。…なるほど、確かにフルネームで呼び続けるのは変ですよね。…でも……

 

「あの…皆さんの苗字と名前って、何処で区切るんですか?」

 

…まず「この世界」の名前の区切る位置がわかりません。愛莉とひなの時は「こう呼んで」と言われたのでそう呼んでるけど…

 

「あ~、やっぱりそこからか……」

 

ナガツカサキさんはこめかみに手を当ててため息を吐いています。…むぅ、私ってそんなに世間知らずなのでしょうか?

 

「あれ?でも愛莉とひなたの事はちゃんと下の名前で呼んでるよね…?」

 

ミナトトモカさんは疑問形のニュアンスでナガツカサキさんに応えました。

 

「あ、それは先に私達がエリーゼちゃんにそう呼んでって言ったからなの。なんだか発音がおかしかったからもしかしたらって…」

 

ミナトトモカさんの疑問に愛莉がそう答えます。…それにしても…

 

「愛莉…どうして、教えてくれなかったの…?」

 

これだけはちゃんと聞いて置きたかったので言っちゃいます。…いじわるとか言わないでください…

 

「あっ!えっと、ね?…説明したかったんだけどあの後すぐに先生に怒られちゃったでしょ?それでじゃあ次の休み時間にでもって思ってたんだけど…結局タイミング逃しちゃって…ごめんね…」

 

最初は慌てながら話してた愛莉は、最後の方には段々と涙声になってしまいました。…酷い事、しちゃったな。

 

「愛莉…ごめんなさい。」

 

なのでちゃんと謝ります。…だって、ローエンはちゃんと謝る事が大事だって言ってたから。

 

「ううん、私の方こそごめんね」

 

そう言った愛莉は目に少し涙を溜めながら、笑顔で許してくれました。…本当に、優しい人です。

 

「…さて、それじゃあこれから皆でエリーゼの知らない事を教えてあげましょ」

 

…私達の様子を見計らった様なタイミングで、ナガツカサキさんは私達に提案してきました。

 

「おっ!良いね~、アタシ賛成!!」

 

「うん、良いんじゃないかな?」

 

「おー、ひなも賛成~」

 

「うん、私も賛成だよっ♪」

 

…皆が私の為に色々と教えてくれる事で話が進んでいます。でも…

 

「あの…私…みんなに迷惑かけてるんじゃ…」

 

皆、とっても優しい人達だから、世間知らずな私の為にって思ってそう言ってくれてるんだろうけど…

…きっと、こんな世間知らずな奴迷惑だって思ってるんじゃないか?って、そう思ってしまう自分がいます。けど皆は

 

「んな訳無いっしょ」

 

ミサワマホさん。

 

「そうそう。私達がそうしたいからするのよ。」

 

ナガツカサキさん。

 

「…確かに私も昔はそう思ってた。けど今は違うよ!だって、それが仲間なんだって事を皆が教えてくれたから。だからね、エリーゼも気にしないで良いんだよ」

 

ミナトトモカさん。

 

「智花ちゃんの言う通りだよエリーゼちゃん。私達がそうしたいからそうしてるの。だから迷惑なんて事は無いよ」

 

愛莉。

 

「おー、ひな、みんな一緒が良い。だからひな、エリーゼに協力したいな♪」

 

ひな

 

…皆、笑顔で私にそう言ってくれました。…だから

 

「皆、ありがとう…です。これからも、よろしく、お願いします。」

 

私も笑顔で、皆に応えました。…私、今とっても幸せです。

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~♪

 

 

 

 

 

 

それから午後の授業も、皆のおかげでスムーズにこなすことが出来ました。…正直、皆に頼ってばっかりなのがとっても申し訳無い位です。

 

そして帰りのホームルームが終わったのでこれから帰ろうかなぁと思い、愛莉に話し掛けてみました。

 

「愛莉、その…よかったら、一緒に帰りませんか?」

 

…あ、ちなみに何で愛莉なのかと言うと、実は愛莉の家と私の家がご近所さんらしい事がお昼休みに判明したからです。…でも

 

「ごめんねエリーゼちゃん。これから皆とバスケ部の練習なんだ」

 

と断られてしまいました。…少しショックです。

…でも、私の知らない単語がいくつか出て来たのでめげずに聞いてみます。

 

「バスケ部…って何ですか?それに皆って、ひな達ですか?」

 

「そうだよ!智花ちゃんと紗季ちゃん、それに真帆ちゃんにひなちゃんと私の5人で慧心学園女子ミニバスケットボール部なんだよ♪…あ、もしかしてエリーゼちゃん、バスケ知らなかったりする?」

 

…どうやら予想通り事情があったみたいです。この5人はそのバスケ部というもので一緒だから仲が良い様です。…とは言え私の居た世界にバスケ部なんてものは存在してなかったので首を縦に振って応えます。すると愛莉が

 

「じゃあ今から一緒に行かない?バスケって楽しいんだよ♪」

 

と提案してくれました。私も特に予定は無かったので「はい」と言ってついていく事にしました。…バスケってどんなものなんだろう?楽しみだなぁ~♪

 

~sideout~




後半へ~続くっ!(ドヤァ

…駄文感ハンパないなぁ…(泣)


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第4話:仲間 後編

昴さんようやく登場~  そしてやたら長い(笑)
…てか誤字やら脱字が多い上に意味わからんことになってる描写が多くて直すのしんどい…(泣)
昔の俺……いい加減過ぎないか…?…まぁ今もだろうけどw



…それではどぞ!


~エリーゼside~

 

それから日直だったひなと合流した私と愛莉は、3人で体育館へと向かいました。…行く途中に教わったのですが、体育館とは室内で運動が出来る所なんだそうです。…私の居た世界でいう「闘技場」みたいな所でしょうか?…なんだか懐かしいです。

…そして、体育館に着いた私は、色々な意味で驚きました。例えば…床が地面ではなく木製であった事とか…何故か見知らぬ男の人が居た事とか…

 

……なにより1番驚いたのは…

 

 

ダンダンダン…シュッ…パスッ

 

 

ボールを地面に突いてから空中へボールを投げて小さなリングへ入れている智花の姿でした。…とっても綺麗、です。

 

「えへへっ、いつ見ても智花ちゃんのシュートって綺麗だよね」

 

「おー、ともかのシュートは、いつも見ても綺麗」

 

…2人は見慣れた様な感じで話してます。…やっぱり、誰が見ても綺麗なんですね。

そんな感じで見とれていたら、智花と真帆がこちらに気が付いて近付いて来ました。

 

「ひな、日直お疲れ!あれ、どしてエリーゼがここに?…あ!もしかして入部してくれるのか!?」

 

…等と興奮気味な真帆が一気にまくし立てます。…早とちりで人の話を聞かない性格はまるでレイアそのものです。

 

「本当なのエリーゼ?…だったら放課後もずっと一緒に居られるし嬉しいな」

 

智花も嬉しそうに話に合わせて来ます。…確かに一緒に居られるのは私も嬉しいのですが…

 

「智花ちゃん真帆ちゃん、今日はバスケを知らないエリーゼちゃんにバスケってどんなものかを見て貰う為に連れて来たの。だから今日は見学だよ」

 

そう説明する愛莉に首を縦に振って返事を返します。…そうなんです。私はそもそも「バスケットボール」も「バスケ部」というのも知らないのですぐに入るって言えないんです。

 

「おー、でも、きっとエリーゼも気に入ってくれる。ひなはそう思うな♪」

 

満面の笑みで私にそう言ってくれるひなに、私も笑顔で返します。…ジュード達もそうでしたが、本当に私は良い友達に恵まれてます。

 

…5人でそんな話をしていたら、紗季と知らない男の人が一緒にこっちへ来ました。…人見知りな私はついつい愛莉の後ろに隠れてしまいましたが、男の人は特に気にした風でもなく

 

「こんにちは、俺は長谷川昴。皆のバスケのコーチをしてる者です。」

 

と自己紹介をしてくれました。私も愛梨の後ろに隠れながら「……エリーゼ・ルタス…です」と小声で自己紹介をします。…私、ティポが居ないとホントダメだなぁ…。

 

「よろしくエリーゼ。あと俺の事は昴でいいよ。…今日は見学、で良いのかな?」

 

…でも、ハセガワスバルさんはまるで全部わかった様な感じで話し掛けて来ます。…あ、そっか。さっき…えっと、昴さんと紗季だけ離れた所で話してたけど…私の事、事前に昴さんに話してたからなんだ。…流石紗季です。

…等と考えながらも、昴さんに「はい…よろしく…お願いします」と答えます。すると

 

「ああ、よろしく。それじゃあエリーゼは俺と一緒にここで皆を見てようか。皆は準備運動をしたら練習を始めます」

 

「「「「「はい!よろしくお願いします!」」」」」

 

昴さんは皆に指示を出し、皆はそれぞれ行動を開始します。…皆、慣れてるなぁ〜。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜♪

 

 

 

 

…練習風景は私が予想してたよりも凄く激しい感じでした。特に驚いたのは、皆の体力がジュード達前衛組と同じ位じゃないかという事です。…後衛組の私じゃ半分ついていけるか怪しいのが本心です。…バスケ部、恐るべし!

 

「よし!じゃあ5分休憩!」

 

「「「「「はーい!」」」」」

 

昴さんが皆にそう指示を出し、皆は元気に返事をして座って飲み物を飲んだりタオルで汗を拭いたりしています。…昴さんも今は手に持ってる白いボードに色々と書き込んでいるみたいです。…最初からずっと質問攻めを私がしていたので結構貯まってしまったのでしょう。…申し訳ない限り…です。

 

「ふふっ、エリーゼも大分興味を持ってくれたみたいね」

 

紗季がそう言って私にウィンクしてきました。

 

「はい…私にも出来ないか、聞いたりしてました。…でも、難しそうですね」

 

なので苦笑いしてそう返しました。…実際、結構難しそうでしたので遠慮とか嘘じゃないですよ?

 

「そんな事無いわよ。私達だってまだ始めて3ヶ月位だし」

 

「……えっ!?」

 

……紗季、いくらなんでもそんな嘘は――――

 

「ふふっ。今、嘘だって思ったでしょ?…で・も、実際本当なのよ?ね、長谷川さん」

 

……どうして、私の考えてる事が分かったんだろう?…紗季にもティポみたいな能力があるのでしょうか?

 

「ああ、智花以外は皆始めたばかりだよ」

 

…なんて考えてたらいつの間にかこっちへ来ていた昴さんも、紗季の意見に同意してました。

 

「…皆、凄い…です」

 

「そんな事無いわよ。…むしろ凄いのはトモ位なもんよ」

 

感嘆している私に紗季はそう言います。…あ、でもその言い方だと…

 

「なにお〜ぅ!!アタシだってもっかん程じゃないけど凄いんだぜ!?」

 

近くにいた真帆はそう紗季に言い返しました。…ほら、やっぱり。…前にレイアも似たような事でジュードに対抗意識燃やしてましたから…絶対反応すると思いました。

 

「何言ってんのよ…アンタは私と大して変わらないじゃない」

 

紗季はため息を吐きながら真帆にそう言いました。…あ、その言い方だと…

 

「なんだとー!!アタシはサキなんかより全然上手いだろうが!?…そうだよねすばるん!?」

 

……やっぱりそうなりますよね…だって、そのまんまレイアだもん…あ…昴さん、苦笑いしてる。…お疲れ様です。

 

 

 

 

紗季と真帆が言い合いを始めてしまったので、私は愛莉達に話し掛ける事にしました。…昴さん、後は任せます。

 

「ひな、愛莉、智花…お疲れ様…です」

 

「ありがとエリーゼちゃん♪」

 

「ありがとうエリーゼ」

 

「おー、エリーゼ、どうしたの?」

 

「えっと…ひな達って、凄いんだねって、言いたかっただけ…だよ」

 

ひなにどうしたのかって聞かれたので、素直に思った事を伝えます。…うん、1日で少し言いたい事言える様になってきたかな…?

 

「おー、せんきゅー♪エリーゼも、ひな達と一緒に練習したら、きっと凄くなれるよ~…ひな、エリーゼとも一緒が良いな♪」

 

ニコニコ満面でひなは私にそう言います。…私にも、出来るのでしょうか?

 

「そうだね!昴さんに教わればエリーゼだってきっと上手くなれるよ。ね、愛莉?」

 

智花もそう言ってくれます。…愛莉は

 

「うん!私はまだまだへたっぴだけど、エリーゼちゃんならきっとすぐに上手くなれると思うな♪」

 

智花やひなの言葉に頷きながらそう私に言ってくれました。

 

「そうね、長谷川さんもいらっしゃいますし、エリーゼもすぐに私達位にはなれるんじゃない?」

 

いつの間にかこっちへ来ていた紗季も同意してくれます。…昴さんって凄い人なんですね。

 

「じゃあじゃあエリーゼも入るって事!?よ~し、負けないぞ~エーりん!!」

 

真帆に至っては既にバスケをやることもバスケ部に入る事も確定事項の様です。……私、まだ入るって言ってないのになぁ…やっぱり性格がレイア…です。「レイアニズム」って、言っても良い…です。…それにしてもエーりんって…私の事、でしょうか?…これは流石に恥ずかしい…です。

 

「…皆もこう言ってるし、興味はあるみたいだから皆と一緒にバスケ、やってみないか?」

 

むー…昴さんも、こう言ってますし、もちろんやってみたい気持ちもあります。…なんだ。気持ちは決まってるじゃないですか。

 

「…あの…わかりました…私も…参加させてくだい」

 

という事で早速本心を皆に話します。すると…

 

「やったー!!よろしくなエーりん!」

 

真帆。…後でエーりんは止めてって言わなきゃ…

 

「ふふっ。これは強力なライバル登場ね」

 

紗季。…ふふっ、ライバルは当分先の話しですよ。

 

「うん、よろしくねエリーゼ」

 

智花。…こちらこそ、よろしくお願いします。

 

「うん、これからは同じチームの仲間だね♪一緒に頑張ろ♪」

 

愛莉。…とっても嬉しそう…です。

 

「わーい、これからはエリーゼもいっしょだね♪」

 

ひな。…全身で嬉しさを表現してくれてて、こっちも嬉しくなります。

…よし、じゃあちゃんと昴さんにも挨拶しなきゃですね。

 

「…昴さん…これから…よろしくお願い…します」

 

お辞儀をしながら昴さんへ挨拶します。

 

「ああ、こちらこそよろしくなエリーゼ」

 

昴さんも笑顔で返してくれます。…やっぱり、良い人ですね。イメージは…ジュード、かな…?

 

「さて、エーりんの入部も決まった事だし、早く練習始めようぜ!すばるん」

 

もはやテンションMAXな真帆が昴さんの腕を掴んで急かしてます。…うん、もう色々と、疲れました。

 

「了解、それじゃあ智花以外の皆はシュート練習をやろう!…あ、エリーゼは着替えある?」

 

昴さんは手慣れた様に真帆をいなして指示を出します。

 

「はい…今日は体育があったので大丈夫…です」

 

私も着替えはあるので昴さんに返事をします。

 

「うん、じゃあ今から着替えて来て貰えるかな?今日はあまり時間無いけど、少しなら智花と一緒に基礎練習位なら出来るしさ」

 

「わかりました。更衣室…行ってきます」

 

そう答えてから更衣室に走って行きます。…ふふっ、楽しみだなぁ。

 

 

 

 

 

~~~~~~~♪

 

 

 

 

 

 

その後、着替え終わった私は智花達に混ざって練習を行い、気が付いたら午後6時半を指す頃になってました。…楽しい時間は過ぎるのが早いです。

 

「よし!じゃあ集合」

 

「「「「「「はい!」」」」」」

 

「今日の練習はこれで終わりにします。お疲れ様でした」

 

「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」

 

昴さんにお礼を言って、今日の練習は終わったみたいです。…むー、ちょっと、もの足りない…です。

 

「あはは、エリーゼはちょっともの足りないって思ってる?」

 

「えっ!?」

 

私は驚いて昴さんの方を見ます…紗季も昴さんも、どうして私の心が読めるのでしょうか?

 

「どうやらエリーゼは顔に出やすいタイプみたいだからね。…まぁそれはともかく、次の練習からは最初からやってもらうから結構大変だと思うよ」

 

「が…頑張ります!」

 

もちろん望むところなので、昴さんに決意表明をします。

 

「アタシ達の特訓は大変だぞ~エーりん!」

 

真帆…恥ずかしいから…その呼び方はやめて…

 

「えへへっ、これでエリーゼちゃんも仲間だね♪」

 

愛莉…すごく、嬉しそう…です。…あ、そういえば…

 

「あの…仲間って、友達とどう違うんですか?」

 

「エリーゼ、仲間って言うのは同じチームで一緒に練習したり戦う人達の事だよ。でも、友達同士で組む事が多いから友達と似たような意味だって思ってくれて良いと思うな」

 

智花は私にそう説明してくれました。…なるほど、仲間…ですか…

 

「…かっこいい、です」

 

「ふふっ、エリーゼも今日から私の仲間で、友達よ」

 

紗季はそう言って喜んでくれました。…私も嬉しいです。

 

「わーい、エリーゼも、これから一緒。ひな、嬉しい♪」

 

ひなも満面の笑みを向けてくれます。…やっぱり友達…ううん、仲間が出来るのは嬉しいです。

 

「おーい!お前ら、早くしないとスクールバスに乗り遅れるぞー!!」

 

…皆で盛り上がってたら、美星さんが私達にそう言ってきました。…バス、すっかり忘れてました…。

 

 

 

~sideout~

 

 

 

~昴side~

 

 

「…んで、どうだった?」

 

皆が更衣室に入って行った後、ミホ姉にそう聞かれた俺は、少し考えてから

 

「…エリーゼの事か?」

 

と聞いてみた。…まぁ大体察しがついてるけどな。

 

「それ以外に何があるんだよ。…んで、どう?バスケ出来そう?」

 

「うーん、正直まだ何とも。…なんせパスとかドリブルを知らないからそこからやってたしさ」

 

そう。エリーゼは驚いた事にバスケの基本であるパス、ドリブル、シュートを全く知らなかったんだ。正直、小学校6年生で知らないのは普通ありえない《・・・・・・・》。何故なら体育の授業で必ず1回はやったことがある《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》からだ。…だからこそ、ミホ姉は事前に俺にこうメールを送って来たんだと思う。

 

『今日の練習にエリーゼって転校生が多分バスケ部に行くと思うんだけど、そいつ特殊な環境で育ったみたいで重度の人見知りな上にかなりの世間知らずだ。だから色々と気をつけろよロリコン!』

 

…と。…ってか俺はロリコンじゃねぇ!!

……とは言え、正直ミホ姉からメール貰って無かったら危なかった。紗季に具体的な話は聞いたのだが、エリーゼの世間知らずは俺が予想してた以上に凄かったからだ。

 

「そっか。…ま、これからも頼むよ」

 

ミホ姉はそう言ってこの話を終えた。…気のせいか、珍しく悩んでいる感じがしたのでこれ以上は話し掛けられなかった。

 

 

~sideout~




後書きスキット:エリーゼも…?

――更衣室にて――

紗季「それにしても、まさかエリーゼまで長谷川さんの事を昴さんって呼ぶなんてね」

エリーゼ「えっ?…あの…それはs――」

真帆「おおーっ!あおいっちに続いてまたしてもライバル登場か!?どうするもっかん?」

智花「ふぇっ!?そ、そんなライバルなんて……」

ひなた「おー?エリーゼもお兄ちゃんの事好きなの?」

エリーゼ「えっ…!?おn――」

愛莉「ええっ!?そうだったの!?」

紗季「愛莉まで反応してるし……」

真帆「で?どうなのどうなの?」

エリーゼ「え…えっと…」

5人「うんうん」

エリーゼ「あの…その…」

5人「その?」

エリーゼ「…………(うぅ~皆の視線が凄く怖いです…なんて言えない…)」

おわり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第5話:意外な再開意外な事実!?

それにしても、めちゃくちゃ長くなってるせいで誤字脱字を全部見切れない…(泣)
しかも口調が段々キャラらしくなくなってきた感が否めない文体…(汗)
あと真帆の扱いがひでぇ(笑)

…それではどぞ


〜美星side〜

 

エリーゼが転校してきてから10日が経って、最近ではバスケ部も色々と慌ただしくなりつつある。あいつらが楽しそうにやってるのはまぁ嬉しいんだが…正直、忙しいのは困る!…教師だからやらない訳にはいかないけど。

…というのも実は今、私は3つの悩みを抱えている。

 

1つ目はエリーゼの世間知らずっぷり。

これはまぁ7月2日(登校2日目)辺りから真帆達が色々と教えてやってる様で、最近ではなんとか私でも対処出来るレベルになってきたんだが…問題はエリーゼが「友達を疑わない」という所なんだよなー…。

なんせ紗季や智花、愛莉といった真面目組が教えてる分には大丈夫でも、真帆が教える事の中にはイタズラ要素が多分に含まれてる訳で…後は、察してくれ。……ちなみにひなの教える事はエリーゼには刺激が強かったりよくわからない事が多いからそれはそれで困る訳だが…ひな本人に自覚が無いのが難しいところだ。

 

そして2つ目は練習試合。

実は今、私の所には2つの学校からのお誘いがあるんだ。その内の1校は硯谷女学園。…こっちは葵が友人から貰って来た奴で、正直かなりの強豪らしいから私はあんまり気乗りしてないんだよな〜…山でキャンプは魅力的だけど。

そして2つ目は確か…聖祥大附属小学校って名前だったかな?…ここはつい昨日連絡を貰った慧心と同じ私立の小学校で場所も近いから私としては正直即答したいって思ったんだけどね〜…なんせ相手5人だけのチームだし。

でも、日程的に出来るか怪しいんだよね〜…3泊4日の合宿の次の日とか無茶だろ…

……まぁつまりは、日程調整が酷なんだわ。マジで。

 

んで最後の3つ目。…ぶっちゃけこれはバスケ部、というより6年C組の担任としての問題。

 

それはだな……明日また…転校生が私の担任クラスと別のクラスに数人、要は6年のクラスに何人かの転校生・転入生が来るんだよ……転校生入ったばっかりのクラスにまた転校生入れるとか理事長何考えてんだよ…

 

 

……ああーちくしょう!!なんでこんな急に忙しくなるんだよホント!これじゃあネトゲが出来ないじゃねぇかー!!

 

プルルル♪

 

…誰だよこんな時に電話とか。マジ空気嫁…読めし。

 

「…もしもし?」

 

「ミ、ミホ姉…何でそんなに不機嫌なんだ?」

 

…んだよ昴か。後で殺《や》ろう。確定事項だ。

 

「別に。んで用件は?」

 

「あ、ああ…今日うちの高校に転校してきた奴を2人連れて行きたいんだが、構わないか?」

 

「別に構わないけど…まさかお前と同じロリコンじゃないだろうな?」

 

ロリコンはまずいからな。昴1人で充分だし。

 

「だから俺はロリコンじゃねぇ!!お前に脅迫されたのが始まりじゃねぇか!!ついでにそいつらもロリコンじゃねぇよ!どんだけ失礼なんだよお前は!!……はぁ」

 

…ふむ。事実を述べたら逆ギレされたか。…後でサブミッション確定だな。

と、今後の昴処刑プランを頭で考えてた私だが、次の昴の一言で思考が全てフリーズした。

 

「つーかそいつらさ、どうやらエリーゼの知り合いっぽいんだよ」

 

…………ナンダッテ?

 

「…ど、どういう事だよ?」

 

「俺にもよくわかんないんだけど…エリーゼの名前出したら会いたいって言っててさ…」

 

「…それで?」

 

「それで、どういう事か聞いたら前に一緒に旅をしていた仲だって言ってた。…まぁ実際に会わせてみないとわかんない事ばっかりなんだけどな」

 

「そうか……うーん……」

 

…確かにサッパリわからん。旅の仲間?小学生の女の子連れた旅とか…一体いつの時代だよ全く。……とにかく、そいつらに直接話を聞いてみるしか無さそうだな。

 

「…わかった。じゃあ学校着いたら連絡くれ。私もそっち行くから」

 

「了解。じゃあ後でな」

 

 

ピッ

 

 

……また厄介事が増えたな~…しっかし

 

「旅…か」

 

…エリーゼ、お前は一体どういう人生を送って来たんだ?

 

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜♪

 

 

 

 

 

 

放課後、昴から連絡が来たから校門まで迎えに行った。そこには昴以外に男女のカップルがいた。…うん、それ以外の表現があるなら言ってくれ。

 

「ミホ姉、何頭抱えてるんだ?」

 

「いや…気にすんな。それよりそいつらか?電話で言ってたエリーゼの知り合いかもしれない人達ってのは」

 

「ああ、そうだよ。こっちがジュードでこっちがレイア。…2人共、この人が一応この慧心学園の女子バスケ部顧問でエリーゼの担任の篁美星だ。…ついでに俺の叔母にあたる人だったりする」

 

……最後がやけに投げやりだったな昴の奴。…帰ったらジャーマンかますか。

 

「あははは…えっと、先生初めまして。僕はジュード・マティスっていいます。最近七芝高校に転校してきて昴とは隣のレイアと同じクラスの荻山葵さんに紹介してもらって知り合いました。よろしくお願いします」

 

ほう…このジュードって男は随分礼儀正しいな。あと心なしか昴の雰囲気に似てるな。

 

「私はレイア・ロランドです!。同じく七芝高校に転校してきましたー!…ちなみに私は昴君と同じクラスです!!よろしくお願いします!」

 

…こっちの無駄に元気な女子がレイアか。…絶対真帆と気が合うタイプだよな…

 

「私は篁美星。エリーゼの担任教師でバスケ部の顧問をしているが、普段は忙しいからそこのロリコンに練習とかは任せてる。…んじゃ、早速だが体育館に案内するよ。あいつら待たせたら悪いしな」

 

まぁ悪い奴ではなさそうだし、詮索すんのは後でいっか。

 

 

…ま、それに昴達を連れて体育館へ向かって行く途中にジュードが「絶対僕達の存在って場違いだよね…」って昴に話してたから、あいつは間違い無くロリコンではないのがわかったしな。…演技だったらレイアに殺されそうだしな…あいつさっきからジュードに向けて殺気丸出しだし…

…頼むから校内でいざこざ起こすなよ…面倒事はもう沢山だから。

 

 

〜sideout〜

 

 

 

 

 

〜エリーゼside〜

 

 

こんにちはエリーゼです…今日は月曜日なのでバスケの練習日です。そして今日はどうやら別のコーチも何人か来るって昼休みに智花は話してました。…一体どんな人達なんだろう?

 

「ねぇトモ、今日って長谷川さん以外にも人が来るって言ってたけど本当なの?」

 

紗季も気になるみたいで智花に聞いています。…でも

 

「ごめんね紗季。実は私も詳しくは聞いて無いんだ。…でも」

 

そう言った智花は私の方を向いてから

 

「昴さん…エリーならその人たちのことわかるかもしれないって言ってたの」

 

って言いました。…えっ?私?

 

「確かにそれは気になるわね…エリーは何か聞いてるの?」

 

「私…何も聞いてない…です」

 

紗季が私に聞いてきましたが、私も初耳なので何の事かよくわからないのでそう答えます。…そもそも智花から聞くまでコーチが複数来るって話しも知りませんでしたし…あ、ちなみにエリーは私の呼び名です。…エーりんは流石に恥ずかしかったのでこう呼ぶ様にお願いしました。

 

「そう……となると、ますますわからないわね。トモが知らなくてエリーならわかる長谷川さんの知り合いなんて…」

 

「「紗季が何を考えてるかわからないけどそれはない(からね!?)(です!)」」

 

私と智花は口を揃えて紗季に抗議します。…お願いだから変な妄想しないで…

 

「や、そんな息ピッタリ合わせなくても。…ま、冗談はともかく」

 

「「(今の冗談だったの!?)」」

 

「実際に来ないとわからないって事ね…」

 

私と智花の心の声をスルーするかの様に、紗季はため息を吐きながらそう話をまとめました。…むー、ため息吐きたいのは私達の方…です!

 

「シイクイインの仕事終わり。さ〜て、練習練習…ってどったのエリー、もっかん?」

 

ジト目で紗季を見ていたら、飼育係の仕事を終えた真帆がこっちへ来て話し掛けて来ました。…なので

 

「別に…何でもない…です」

 

…と、むくれてみました。すると

 

「おー?エリー、ご機嫌ななめ?」

 

と、いつの間にか私の前にいたひなに聞かれました。…小首を傾げる動作がとっても可愛い…です。

 

「…ううん、また紗季がからかってきたから、ちょっと凹んだだけ」

 

「ってヒナには話すのかよ!?最近エリーってば私に対する態度酷くね!?」

 

…あ…あまりに可愛い仕草だったのでつい本当の事を話してしまいました。…無垢なる魔性(イノセント・チャーム)、恐るべしです。…真帆が何か言ってたみたいですが、気のせいだと思って

 

「スルーします」

 

「心の声だだ漏れだよ!?そんなに嫌だったのエーりんって呼ばれるの?!」

 

…あ、ついつい声に出してしまいました。…でも、事実なので今度は無言でスルーします。

 

「ってアタシの事無視すんなー!!」

 

…真帆が騒いでいますが、スルーして愛莉達の所へ行きますか。

 

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜♪

 

 

 

 

 

騒ぎ出した真帆を紗季や智花が宥めた後、私達は昴さん達が来る前にウォーミングアップをしておこうという話しになったので準備運動をしていました。

そして、一通り終えて身体も準備万端となった頃、いつも昴さんが入って来ている扉が開く音が聞こえたので皆で一斉にそちらを見たのですが…

 

「皆お疲れ!今日は昴の学校から友達を連れて来たよ〜」

 

いつもの調子で現れた美星先生と

 

「よし、じゃあ早速で悪いけど一旦集合してもらって良いかな?」

 

少し複雑そうな顔をした昴さんが入ってきて、私達にそう言いました。…多分あの事でしょう。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜♪

 

 

 

 

「…実は智花には朝話してたんだけど、今日は俺と葵のクラスに転校してきた人達に来て貰いました。…ジュード、レイア、入って来て良いよ」

 

いつも通り体育館のステージ近くに集まった私達にそう言った昴さんは、入って来た入り口の方へそう呼びかけました。…あれ?何処かで聞いた様な名前ですね…。

そして…

 

「…えっ…!?」

 

扉を開けて入って来た人達を見て、私は凄く驚きました。何故なら…

 

「…あ」

 

「あはははっ、ほーら私の言った通り!やっぱり本物のエリーゼじゃん!!」

 

…そこには、「この世界」には絶対いないハズの人達がいたからです。

 

 

 

~sideout~

 

 

 

~昴side~

 

 

「え…ジュード…レイア…どうして?」

 

2人を中へ呼ぶと、エリーゼとジュードは唖然とし、レイアはまるで予想通り!と言わんばかりの勢いで胸を張っていた。…レイアには何か確信出来る要素があったのだろうか…?

…そして、俺が1番驚いたのは

 

「やっぱり2人はエリーゼの知り合いだったのか…ということは2人の話は本当だったのか…?」

 

この部分。そう、ジュードとレイアがエリーゼの知り合いだという点。

 

「確かに私の友達…です。…でも、どうして会えたのか、わかりません…」

 

今だに動揺しているエリーゼからそんな返事が帰って来た。…ん?どういう事だ?

 

「そう…だね。僕もまさか本当にエリーゼと会えるなんて思って無かったよ。」

 

「だよね~。私も最初に昴君からエリーゼの話を聞いた時は本当に驚いたんだから!」

 

2人もエリーゼと似た様な事を言ってるな…

 

「ど…どうなってんだ?私達にも詳しく説明してくれ」

 

ミホ姉も驚きを隠せないみたいだ。アイツにしては異常なまでに焦ってやがる。

 

「あれ?美星さんに話して無かったの昴君」

 

レイアが俺に話して無かったのかと聞いてきた。…いや、話しはしたが…

 

「昴からは一応聞いてる。一緒に旅をした仲だと…な」

 

「「「「えーーーっ!?」」」」

 

ひなたちゃんとエリーゼ以外の女バスメンバーは全員驚きの声をあげた。…そりゃあ驚くなって方が無理だよな…俺も驚いたし…

 

「な~んだ!ちゃんと説明してあるじゃん昴君!」

 

なんてレイアはこっちを見ながら呑気に笑ってやがる。…ってかなぁ

 

「レイア、いくらなんでもいきなり小学生に会いたい理由が「私達と一緒に旅をした友達と会いたい」じゃ、普通信じないぞ…」

 

マジで…俺じゃなかったら間違い無く通報されてるから…

 

「あはは…そうだよね…」

 

むくれるレイアの隣で苦笑いしているジュード。…お前も苦労してるんだな。

 

「あの…」

 

ジュードに対して俺が「お疲れさん」とアイコンタクトしていると、エリーゼがこちらに来てジュードに声をかけていた。

 

「エリーゼ久しぶり!元気だった?」

 

「はい…この学校で友達、沢山出来ました」

 

「そっか…良かったね、エリーゼ」

 

「はい!」

 

ジュードとエリーゼが普通に会話している所を見る限り、確かにかなりの知り合いである事は分かる。なんせエリーゼはかなりの人見知りだからな。

 

「エリーゼ久しぶり!」

 

「レイア…久しぶり…です」

 

「もー、久々の再会なのにどうしてそんなに不機嫌になるのさー!」

 

「別に…何でもない…です。…レイアの気のせいじゃないですか?」

 

「嘘!そっぽ向いて膨れてるじゃない!?」

 

「レイアには関係無いです…でも」

 

「でも?」

 

「……2人に会えたのは…嬉しい…です」

 

「エリーゼ…うん!私も嬉しいよ!!」

 

…どうやらこっちも久々の再開を喜んでる様だな。…さてと

 

「コホン!…感動の再開の所すまないが…」

 

…タイミングを見計らって話し掛けるミホ姉。そうだな、そろそろ本題に入らないと…

 

「あっ!すみません」

 

「はい」

 

「どうしたんですか?」

 

「…うん、改めて聞きたいんだが…エリーゼ、この2人とは本当に旅をしていた仲なのか?」

 

…なるほどな…エリーゼからなら本当の事を聞けるって踏んだんだな…ミホ姉らしい。

 

「はい…少し前まで一緒に旅をしていました。…とても楽しかったけど…お別れもあったから、悲しい事も沢山ありました…」

 

苦笑いしながらそう答えたエリーゼの表情は、とても複雑なものだったが、ハッキリと肯定を意を示した。

 

「そっか…………わかった。エリーゼ、すまないが練習終わったら少し話を聞かせて貰えないか?ジュードとレイアも頼む」

 

エリーゼの話を聞いたミホ姉は大きく深呼吸をしてから、3人に後で話を聞かせて欲しいと頼んだ。

 

「わかりました」

 

「はい」

 

「もちろん!」

 

3人もそれぞれに了解の意を示し、この話しは練習後に改めてすることになった。

 

「智花達も悪かったな。んじゃ昴、後はいつも通り任せた。私は少し仕事してくるわ」

 

「…了解」

 

そういうとミホ姉は職員室へと向かう為に体育館から出て行った。…さてと

 

「…それじゃあ皆、遅くなっちゃったけど練習始めようか」

 

女バスメンバーにそう呼びかけたのだが…

 

「「「「「……………………」」」」」

 

…返事が無い。皆一様に呆然と立ち尽くしているようだ……まぁ、無理も無いが。

 

「…エリーゼ、悪いけど皆を目覚めさせるの手伝って貰える?あ、ジュードとレイアもできれば手伝ってくれ」

 

「あ…はい」

 

「あはは…了解」

 

「オッケー!」

 

 

…それから、頭が完全にフリーズした女バスメンバーを現実に戻すのにおよそ1時間掛かったのは、言うまでも無い…。

 

 

~sideout~




後書きスキット:旅その1

―――ジュード達が話している間にて――――
~女バスside~

真帆「まさかエリーがあの兄ちゃんと姉ちゃんと旅してたなんてな!」ヒソヒソ

紗季「そうね…意外だわ」ヒソヒソ

智花「旅かぁ…私も一度はしてみたいな~」ヒソヒソ

愛莉「あ、私も旅してみたいなー♪今度エリーちゃんと皆で行ってみない?」ヒソヒソ

ひなた「おー、さんせーい♪」ヒソヒソ

紗季「ちょっ!?アンタ達ねぇ…」ヒソヒソガックリ

真帆「よーし!じゃあ皆でエリーに旅をするには何が必要か聞いてみようぜ!」ヒソヒソ

紗季以外の4人「おーっ!」ヒソヒソ

紗季「…はぁ…」ガックリ

おわり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第6話:事情聴取

あかん……もうひとつの小説が進まない(T_T)
しかも本編は駄文で短いしタイトルは苦し紛れですが、生暖かい目で見て頂ければ幸いです。

それではどぞ!


~ジュードside~

 

それから意識を取り戻したバスケ部のメンバーはエリーゼと昴、僕とレイアを含めたメンバーで練習をした。この時、エリーゼが結構上手かったのには僕もレイアも驚きを隠せなかったりする。…昴は教えるのが上手いんだろうな。

…余談だけど、バスケを知らない僕達は雑用と球出ししか出来なかった。…今度、僕達も同好会行こうかな…。

 

そして、日も暮れかかった午後18時半には全ての練習が終わり、片付けも終わったのでエリーゼを含めたバスケ部のメンバーは更衣室にて帰りの支度をしている。(ちなみに着替えついでにレイアもエリーゼ達に付いて行った)先に着替え終わった僕と昴は、お互いに気になっている事を聞いていた。

 

「ところでさ、昴は高校でバスケ同好会に参加してるのに、どうしてわざわざ小学校に来てまでコーチしてるの?」

 

「あぁそのことか…実はうちの学校、今部活停止中なんだよね……それで事情を聴いて色々心配してくれた葵と一成が創ってくれたのが今のバスケ同好会って訳」

 

「そ、そうなんだ……部活停止の理由は…聞かない方が良い、よね…?」

 

「……部長がさ、駆け落ちしたんだよ…顧問の娘(小学生)とね」

 

「ええっ!?じゃ…じゃあここでこんな事してるのばれたら…」

 

「……ま、バレたら色々とオシマイだな」

 

「そんな……じゃあどうして……?」

 

「ミホ姉……さっきの先生にさ、脅迫されて無理矢理やらされた。…ってのが最初でさ。…でも」

 

「でも?」

 

「今は違う。智花が、……いや、皆が俺に大切な事を思い出させてくれたんだ。だから俺はその恩返しがしたい!皆とバスケがしたい。…ミホ姉の強制とかじゃなくて、自分の意志で、そう思ってるんだ」

 

「昴……」

 

自分の意志で……か。

なんだか懐かしい気持ちでいたら突然昴が何かを思い出した様に聞いて来た。

 

「あっ、そうだ!…なぁジュード」

 

「何?」

 

「2人はどこかを旅してたんだろ?エリーゼとも一緒にさ」

 

「うん、…まぁ僕やレイア、エリーゼを含めて6人位でだけど…どうしたの?」

 

「ああ……それで、さ…旅してた時のエリーゼってどんな子だったんだ?…こう言ったら失礼だが、俺もミホ姉もどう接したら良いのかわかんないんだ。だから――「普通に接して大丈夫だよ」…え?」

 

昴の台詞を遮る様に、そう言い切る。そう、だって

 

「エリーゼはね、ああみえて誰よりも「平和な普通の生活」を望んでるから。…だから、特別な扱いは要らないよ」

 

「ちょっ、ちょっと待て!それは一体どういう――」

 

「えっと、それについてはまた後で話すよ。…そろそろ皆出て来るみたいだからね」

 

「えっ!?……!!」

 

昴にそう言った僕が更衣室の扉の方を見ると同時に、話し声と共にバスケ部のメンバーとレイアが出て来た。…ってレイア……もう真帆と仲良くなったのか…そして僕の横では昴が驚きを隠せないでいる。…まぁ無理もないか。

 

「さて、じゃあ行こうか昴。詳しい事はまた後で。…エリーゼ!レイア!美星先生の所行くよー!!」

 

「「はーい!」」

 

そして、2人をこっちへ呼びつけてから4人で美星先生の所へ向かう事となった。

 

 

 

~sideout~

 

 

 

 

 

 

 

~美星side~

 

昴達と別れた後、私はこの後話し合いで使う会議室の手配をしてから定例の職員会議に顔を出し、それを終えた後に先程手配した会議室で昴達が来るのを待っていた。

 

コンコン

 

…おっ、来たな

 

「入って来て良いぞ~」

 

そう言った後に昴、エリーゼ、ジュード、レイアの順に入って来た一行を、私とは反対側の席に座る様に促した。

 

「…よし、じゃあ早速さっきの話の続きをしたいんだが、構わないか?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「わかった。じゃあいきなりですまんが、お前達の旅がどんなもので何の目的があって旅をしていたのか聞かせて貰えるか」

 

「それについては僕から。…あの、結構長くなりますが構いませんか?」

 

「構わない。話せ」

 

「解りました。では…」

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

「…と、まぁ僕達の旅はこんな感じでした」

 

…ジュードが話を始めてから約2時間が経った。ジュードがメインで説明をし、間にエリーゼとレイアが補足を入れて行くといった形で進んで来た話は、20時半を過ぎた今ようやく一段落した訳なのだが――――

 

 

……………………………………………………………………………………結論。正直サッパリわからん。

 

「…え~っとだな、…つまりはアレか?お前らはどっか別の世界から飛ばされて来た異世界人って事なのか?…バカ言うなよ!いくらなんでもファンタジーものの見すぎじゃねぇのか?」

 

「ミホ姉……気持ちは分かるが落ち着けよ。エリーゼが怖がってるから」

 

「っ!……悪いな。いきなり怒鳴って」

 

「…いえ、私は大丈夫…です」

 

話を聞き終えた私は思ったままをつい口に出してしまったので少し怯え気味のエリーゼに謝る。…にしても、まさか私が昴に忠告される事態になるとはな。私も確かに取り乱し過ぎたが、私は正直驚いたぞ。

 

――お前が話を聞き終えた「今でも冷静に」座っていられるのにな。

 

「それにしても昴君はあんまり驚いて無いよね?普通は美星先生みたいになると思うんだけど……」

 

そんな私の心境を知ってか知らずか、レイアはそう昴に問い掛ける。すると昴はため息を吐きながら

 

「まぁ、そりゃあ驚いて無いと言えば嘘になるけど……エリーゼの異常なまでの世間知らずっぷりとジュードのあの鋭い観察眼を見せられたらな。…むしろ、話を聞いたおかげで納得した部分の方が多いよ」

 

こう言いやがった。…くっ、確かに言われてみればそうか。にしてもジュードの観察眼ってのはなんなんだ?そんなに鋭いのか?

 

「……うー。私、もう世間知らずじゃないもん…」

 

……若干1名が別の意味で納得してないけどな。

 

「あはは……まぁともかく、僕達はこういう事情で知り合った訳です」

 

エリーゼの言葉を聞いて苦笑い気味のジュードはそう言って話を締めくくった。なので私は気になった所を聞いてみた。

 

「お前達の事情は解った。だがそうなると気になるのは、何故エリーゼの両親が生きているのか、だ。それはどうやって説明するつもりだ?」

 

「それは……」

 

「………………」

 

返って来たのは困惑一色。そして返って来た返答は

 

「それについては僕達にも良く解りません。一体、僕達に何があったのかも。なので僕達はこれから学校へ通いながら色々と調べていくつもりです。……それに、ひょっとしたら僕たちの仲間がまだこの世界にいるかもしれませんから」

 

というものだった。……まぁ、こればっかりは本人達が分からないんじゃ仕方ないか。

 

「……わかった。とりあえずお前たちの話を信じる事にするわ。…でも忘れんな。最終的な選択は、絶対後悔しない方を選べ。…いいな?」

 

「はい…」

 

「うん!」

 

「解りました」

 

「…特にエリーゼは、ちゃんとその時までにしっかり考えてから答えを出しなよ……でないと、絶対に後悔するからな」

 

「……はい。ありがとう…ございます」

 

私からの忠告に三者三様の返事を返して来た3人に対して、私はエリーゼにだけ更なる忠告をしておく。…そう。違うのだ。

 

2人と違ってエリーゼには「ここにしか」親がいないのだから―――――

 

 

~sideout~

 

 

 

 

~昴side~

 

「さて、と。話も一段落した事だし、そろそろ解散するか~」

 

ミホ姉は話は終わったとばかりにひと伸びしてそう宣言をした。するとその宣言を聞いたジュードが

 

「そうですね…もう夜も遅いですし、今日は解散にした方が良いでしょう。…外にいる5人(・・・・・・)の親御さんも心配してるでしょうし、ね」

 

と、体育館で見せた鋭い視線を入口に向けながら同意した。…ってえ!?ちょっと待て!

 

「外の5人?……ってまさか!」

 

ミホ姉も俺同様気付いたらしく、慌てて入口へ行き扉を開いた。するとジュードの言う通り

 

「「「「「あ……」」」」」

 

スクールバスで帰ったハズの女バスの5人がそこに居たのだった。

 

~sideout~




後書きスキット:旅その2

~その頃廊下にて…~

智花「エリー…」

紗季「トモ…気持ちは分かるけど、あんまり気にしちゃうとエリーに悪いわよ。…きっと、心配かけたくなくて黙ってたんだろうから」

智花「紗季……そうだよね…うん」

愛莉「…エリーちゃん達の旅って、とっても悲しいものだったんだね。…私達、何も知らなかったとは言え、エリーちゃんに嫌なこと思い出させちゃったんだよね…」

ひなた「おー。エリー、時々悲しそうな顔してた」

智花「愛莉…ひなた…」

紗季「2人共、あんまりそういう事言っちゃ駄目よ。…そういうのめちゃくちゃ気にするのが1人いるんだから」

真帆「…………っ!」

ひなた「真帆…」

愛莉「真帆ちゃん……ごめんね、そんなつもりじゃ…」

真帆「わかってるよアイリーン。だからそんな顔すんなって!……な?」

愛莉「真帆ちゃん…うん…ごめんね。ありがとう」


…続く?
終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第7話:転校生再び 前編

遅くなってすいません…m(_ _)m
クラス分けやキャラ設定に手間取っていました(>_<)
…そしてご報告。次回は前サイトで投稿したキャラクター・設定と異なります。なのでそれらをまとめるのに少々時間がかかるので今週中に続きがあげられるかわかりません。

それではどぞ!


~エリーゼside~

 

練習後に行われた話し合いも、予想外の出来事がありましたが無事に終わり、今日は夜も遅いという事で解散して今は自宅の自室で普段は机の上に飾ってあるティポを抱きしめながら今日の出来事について考えます。

 

「…ティポ、今日ジュードとレイアが学校に来てくれたよ。最初は驚いたけど、凄く嬉しかった」

 

…もちろんスイッチを入れてないのでティポは喋りません。…でも、1日1回はこうして話し掛けてます。…初めての友達…だから。

 

「それでね、昴さんや先生に皆で旅をしていた頃の話をしたんだ。2人共、凄く驚いてた」

 

懐かしいですね…あれからまだそんなに経って無いハズなのに…もう、何年も昔の事みたいに思えます。

 

「…あ、でもね!その後愛莉達も外で聞いてた事が分かってビックリしたんだよ」

 

そうなんです!なんと先に帰ったハズの愛莉達が帰らずに私達が話をしている会議室の外…廊下からこっそり聞いていたんです。…ちなみに気付いたのはジュードだけです。私達は話すのに夢中で気づきませんでした…。

 

「でもね、バレちゃった5人は美星先生から追加で宿題出されちゃったから大変そうです」

 

…ちなみに私は無いです。…後で真帆からメールか電話が来そうなので実質課題があるのと変わらなさそうですけどね…。

 

 

――ぼくらがただじゆうで~♪(着メロ)

 

 

……早速来たみたいです。なので

 

「ティポ、ちょっと真帆と電話してくるね」

 

と、ティポを机に戻しながらそう言って真帆からの電話に出ます。…今日の夜は寝れるのでしょうか…。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~♪

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………眠い………です」

 

…おふぁよふござひまふぅ~…エリーゼでちゅ~……顔洗って来まひゅ。

 

 

~~~~~~♪

 

 

…ふぅ。ようやく目が覚めました。…けど…ふわぁ~…まだ凄く眠い…です。…実はあれから4時間近く真帆の予想通りのお願いに付き合っていたので、寝ようした時には日の出が見えてました。…ちなみに現在時刻は朝7時です。………紗季の苦労と昨夜の忠告の意味、昨日1日でわかった様な気がします。…眠い。

 

 

そして、ずっとこんな感じ→(ρд-)zZZな私は、お母さんにスクールバスのバス停まで連れて来て貰った挙げ句、バスへ乗せて貰うと言う醜態(以前紗季に意味を教わったので意味は知っている)をさらしてしまいました。…凄く…恥ずかしい…です。

 

…そして、私はスクールバスに乗ってる間、一度も起きませんでした。しかも学園に到着してから先生に起こされるまで爆睡…。…真帆のバホー…

 

そして…寝ぼけ眼で歩いていた私は、教室の入口が閉まっているにも関わらずにそのまま…

 

ガツン!!

 

「痛っ!」

 

扉にぶつかってしました。…はうぅ~…おでこが痛い…。

 

「だ、大丈夫!?エリーちゃん」

 

「…おでこが痛い…けど、大丈夫。ありがとう…愛莉」

 

ぶつかった音を聞いて、愛莉が扉の前で尻餅をついている私に手を貸してくれました。私は愛莉にお礼を言って立ち上がります。

 

「本当に?…あっ!おでこすりむいてる…エリーちゃんちょっと待ってて」

 

そう言って愛莉はポケットからバンソウコウというものを取り出して、私のおでこに貼ってくれました。

 

「愛莉…ありがとう」

 

「ううん、困った時はお互い様だよ♪…あ、そろそろ美星先生来ちゃうから早く席行こっか♪」

 

私がお礼を言ったら愛莉は笑顔でそう返してくれました。…本当に優しい人です。

 

 

 

~~~~~♪

 

 

 

「よ~しお前らよく聞け!今日はエリーゼに続いて転校生がうちのクラスに来るぞー!」

 

私と愛莉が席に戻ってすぐに教室へ来た美星先生は、入って来るなりいきなりそう私達に宣言しました。…転校生というのは珍しくないものなのでしょうか?

 

「こんな短期間に珍しいわね…」

 

…………訂正。珍しいものみたいです。…紗季が言うのなら間違いありません。…という事は

 

「…私達と「同じ」なのかな…」

 

「おー?エリー、大丈夫?」

 

「あ…うん、大丈夫だよひな」

 

…どうやら声に出してしまった様で、ひなに余計な心配をさせてしまいました。…ごめんねひな。

 

 

「入って来て良いぞー!」

 

ひなと話していたら美星先生が扉に向かってそう呼びかけました。…ふふっ、懐かしいです。

…なんて考えていたら転校生が入って来ました…が…

 

 

ガラガラガラ…

 

 

…ざわざわ…ざわざわ…

 

………えっ…と……クラスが騒がしくなるのも仕方ありません…よね?

 

「うひゃー!沢山いるなー」

 

「……はぁ…これはこれで大変そうね……」

 

真帆が興奮半分驚き半分なのも、紗季がこの先に見える騒ぎの予感にため息吐きたくなるのも仕方ありませんよね?…だって…

 

「静かにー…まぁ皆も驚いたと思うが、ここに居る「3人」が新しくこのクラスに入る事になった!仲良くしてやってくれよ~にゃふふ…てことで、自己紹介よろしく!」

 

 

…転校生が「3人」も同時に来たんだから…。

 

 

続く




後半へ~続くっ!


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第8話:転校生再び 後編

8話修正版です。その影響でこの先の話も改稿していきます事をご了承下さい。…ちなみにエリーゼさんが難しい言葉を知っているのは紗季に教わっているのと本で知ったからという設定になってます。


大変遅くなりましたが、後編どーぞー!



~続:エリーゼSide~

 

「お台場小学校から来ました八神ヒカリです。よろしくお願いします!」

 

最初に自己紹介をした人は、茶髪のショートカットに黄色のヘアピンを付けた愛莉と同じ位の身長を持つ女の子でした。…それにしても、手足が長い…です。

 

「俺は剛田剛憲です。湘南小学校から来ました。好きなスポーツはバスケで、前の学校ではクラブチームに入ってました。よろしくお願いします!!」

 

次に自己紹介した人は、…凄い体格の少し怖い感じもする男の人でした。角刈りの頭に鋭い眼光。加えてコーチの昴さんよりも大きいんじゃないかという身長に鍛えられた筋肉質な体型……うん、同じ歳には見えません。…あ…そういえばさっきバスケのチームに入ってたとか言ってた様な……………え?…まさか…この先この人と関わる事とかあるって事?……うぅ…正直、あまり関わりたくは無い…です。

 

「私は神無月瑞穂です。光が丘小学校という所から来ました。皆さん、よろしくお願いしますね」

 

最後に自己紹介した人は、最初に自己紹介をしたヤガミヒカリさんよりも少し低い位の長身で、綺麗な黒髪を腰の辺りまで伸ばした凄く清楚な印象の女の子です。…私達女の子から見ても魅力的な笑顔に丁寧な口調は正直同じ女子として羨ましいです…。

 

そして、自己紹介を終えた3人を見て私は思いました。

 

――どうして皆あんなに「背」が大きいんだろう…と。

 

…そんな事を考えていると、ちょうど転校生の3人が美星先生に席を指示されて移動している所でした。すると転校生のうちの1人が愛莉の通路を挟んだ隣に来ました。…えっと確か…

 

「は、初めまして香椎愛莉です!」

 

「初めまして、八神ヒカリです。ヒカリって呼んでね。…えっと、あとできれば普通に接してもらえると嬉しい、かな?」

 

…そうです!最初に自己紹介してたヤガミヒカリさんです。…なんて私が思い出してる間に愛莉が緊張しながらも彼女に話し掛けてました。…凄いなぁ愛莉は。私には無理だよ…。

 

「あ…うん、ごめんねひかりちゃん」

 

「ううん、謝られる様なことじゃないから気にしないで愛莉ちゃん。席近いし、これからよろしくね」

 

「うん!よろしくねひかりちゃん♪」

 

なんて感心してたらいつの間にか2人は打ち解けてました。…私も愛莉を見習わなきゃ!

 

「おー。あいり、エリーに話し掛けてから、とっても積極的になった~♪」

 

等と1人で決心してたら後ろ(愛莉の方を向いてる為)からひなの嬉しそうな声が聞こえてきました。するとその声に反応して

 

「ふふっ。そうね、少し前の愛莉からは考えられない行動よね」

 

「そうだね。愛莉、変わったよ」

 

「だな~。それもこれもすばるんとあおいっちのおかげだよな!」

 

なんて声がバスケ部の皆から聞こえて来ました。…真帆の呼び名が誰なのかは相変わらずよくわかりませんけど。

 

「そっそんなことないよぅ!…でも、少しずつ変わってきてるなら皆のおかげだよ♪」

 

愛莉も最初は謙遜してたけど、最後は嬉しそうに皆にお礼を言ってました。…ふふっ、やっぱりこの5人は仲良しですね。

 

「…少し羨ましいなぁ」

 

「えっ?どうしたのエリーちゃん?」

 

「ううん、なんでもないよ…ふふっ」

 

愛莉が私の独り言に反応してたけど、なんでもないよって伝えます。…この位の嘘なら良いよね?

 

 

~~~~~~~~~~~~♪

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン~♪

 

 

…それから時は過ぎて今は昼休み。あれから特に騒ぎも起きずにホームルームは終わりましたが、クラスの皆が待ちに待った授業終わりの休み時間はとんでもない騒ぎ様でした。…どんな感じだったかと言うと…

まず最初に標的となった八神ヒカリさんと神無月瑞穂さんは、男子バスケ部のタケナカ(真帆と同じ呼び方が嫌だったのでひなと同じ呼び方にした)以外のクラスの男子半数ずつにひたすら質問の嵐をぶつけられています。当人達もその勢いには驚き当惑している様ですが、私も似た様な経験をしているのでわかります。…アレを乗り越えるのは「戦争」でお互いの命をかけて戦うという事を経験している私ですら、恐ろしいと感じてしまう程に凄いのです。…とは言え、この2人には私の時みたいに委員長の紗季がフォローに入って行ってたのと、…これは余談ですが、2人共彼氏がいると公言した為、予想外に早く終息しました。…ただ、それを間近で聞いた紗季が「好きな人がいる…か…」と呟いていたのは、近くに居た私だけが知っている事だったりします。

 

…そして予想外に凄かったのは転校生で唯一の男の人だった剛田剛憲さん。あの人には転校生2人と私達女子バスケ部以外の女の子全員+タケナカが話し掛けていましたが……不思議な事に質問の嵐に対してとってもスムーズに受け答えをしてました。…「転校生」に慣れているのでしょうか?

なんて考えていたら、いつの間にか剛田剛憲さんは居なくなっていました。…もちろん何処へ行ったのかわかりません。

 

…そんな感じで休み時間は過ぎて行き、授業に関してはグループ学習が無い日だったので特に問題も起きずに今に至ります。

…ちなみに私達女子バスケ部のメンバーは、愛莉や私と仲良くなったヒカリと、ヒカリと一緒に質問攻めされていたミズホの2人を合わせた8人で、今日は給食ではなくお弁当だった事もあり教室ではなく外でお昼ご飯を食べています。

 

「ふいー。たまには教室じゃなくて外で皆と食べるのも良いな!」

 

「ええそうね。真帆にしては良い提案だと思うわ」

 

「んだとー!サキ!アタシにしてはってどーゆー意味だよ!」

 

…そして恒例となってるコレ。最近になってようやく慣れてきましたけど……いつも思うのですが、毎日喧嘩ばっかりしてるのに何で仲間になれたのでしょう?…2人は幼馴染だって愛莉に聞いたけど……私には幼馴染という関係がよくわかりません。…そういえばジュードとレイアも幼馴染だったような…今度詳しく聞いてみようかな……。

 

「言葉通りよ。…それよりも真帆、今日は八神さんと神無月さんも一緒なんだから少しは大人しくしてなさい」

 

そんな感じで心の中でため息を吐いていると、紗季が真帆にそう言っていました。…確かにいきなり喧嘩してたら…

 

「ふふふっ♪」

 

「2人は仲が良いんだね」

 

「「そんなこと(無いわ!)(あるか!)」」

 

紗季と真帆、相変わらず言葉の共鳴(リンク)凄いです…ってあれ?2人共驚く所か楽しそうです。…確かに2人の仲はとっても良いのですが、これを見てそれを言えるのは…凄いです。

 

「あらあら、仲が良いのは悪い事ではないですよ?」

 

「だからそんなんじゃ…ってもう良いわ。これ以上はボロが出そうだから…あぁ、それより八神さんは私達に話しがあったんだっけ?」

 

みずほの言葉を聞いて額に手を当てながらため息を吐いた紗季は、何かを思い出した様に話し掛けます。

 

「あ、うん…えっと、ここの小学校にチアリーディング部ってあるの?」

 

紗季の質問にいすみは思い出した様に質問してきました。…あれ?

 

「あの…部活ってバスケ部だけじゃ無いんですか?」

 

私は疑問に思った事を言ってみます。すると紗季が

 

「エリー…それについてはまた後で話すわ」

 

と、返してきました。

 

「むー……」

 

「…それより部活の事なんだけど…ごめんなさい、チアリーディング部っていうのは聞いた事が無いわね」

 

そしてむくれる私を無視して紗季はさっきの質問に答えます。

 

「そうなんだ……教えてくれてありがとう永塚さん」

 

そして紗季の答えを聞いたヒカリは、少し残念そうにしてましたが笑顔で紗季にお礼を言いました。…紗季の事を気遣ってあげていて良い人です。

 

「…部活どうしよっかなぁ~」

 

そんなことを考えながら3人の事を眺めていたら、ヒカリがそんなことを呟いていました。…あ、ここでそんなこと言ったら…

 

「あ!じゃあさじゃあさ、アタシ達とバスケしよーよ!うちのバスケ部、アタシが創ったんだぜ!」

 

…やっぱり真帆がここぞとばかりにそんな主張を始めました。

 

「え?…う~ん、私、体育の授業でやってた程度しかできないし…足手まといだと思うよ?」

 

ヒカリも急な提案に戸惑っている様です。そんな所へ紗季が

 

「そんなこと無いわよ。私達だってちゃんと部として始めたのは4月からだからそこにいるトモ…湊さん以外は全員まだ初心者だし…今から始めればむしろ大きな戦力よ!」

 

と、珍しく眼鏡を光らせながら真帆の提案に乗っています。そして

 

「ううん私だってまだまだだよ。…でも、仲間が増えるのは今よりもっと色んな練習が出来るし入ってくれたら嬉しいな」

 

と、智花が言えば

 

「うん♪仲間が増えれば今よりもっと沢山色んな事出来るもんね」

 

「おー。ひなも、ヒカリと一緒にバスケしたいな♪」

 

と、愛莉とひなも智花の意見に同調。そして

 

「ヒカリさん、皆さんもこう言ってますし、やってみてはどうですか?」

 

今まで話し聞いていただけだったミズホまでもがヒカリに入部を薦めていました。…あれ?どういう事なんでしょうか?

 

「瑞穂さん……うん、いいよ!何処まで出来るかわからないけど私、入部するね。これからよろしく!」

 

そしてヒカリは、ミズホの勧めもありバスケ部に入ってくれる事になりました。…仲間が増えるのは私も嬉しいです。

 

「――あの、もし良かったら私も一緒に入部しても宜しいですか?」

 

そしてヒカリが入部を決めたのと同時に、ミズホがそう言って来ました。それに対して

 

「ええ、もちろん!宜しくね神無月さん」

 

紗季が答えていました。…ちなみに真帆はヒカリの入部に興奮していて紗季が了承した事に気付いていません。…否定はしないでしょうが、後々一悶着ありそうです。…そこは皆でフォローすれば大丈夫…だよね?

 

 

~~~~~

 

 

それから昼食を食べ終えた私は皆と一緒に教室へと帰っていたのですが――

 

「…………あと3人」

 

「えっ…?」

 

「…あっ!ううん、何でもないよ!気にしないで!」

 

智花が不意にそんな不思議な事を呟いていたので聞いてみました。でも返って来たのは何でもないという返事だけでした。…けどその時私は思いました。

 

 

――――智花は、私達に何かを隠している(・・・・・)のだろう…と――――

 

 

~sideout~




後書きスキット:恋の話

~とある休み時間にて~

瑞穂「永塚さん、ちょっとよろしいですか?」

紗季「ん?どうしたの急に?」

瑞穂「いえ、少し聞きたい事がありまして…」

紗季「聞きたい事…?」

瑞穂「はい♪先程の私達の言葉を聞いて何か呟いていたみたいでしたので気になってしまいまして…」

紗季「んなっ!?」

瑞穂「うふふ♪…その様子ですと、いるみたいですわね…好きな方が」

紗季「ななななな何言ってんのよ急に!?わ、私には…そんな人……」

瑞穂「隠さなくてもよろしいですわ。他の方には話しませんから」

紗季「…………真帆とトモ……智花には言わないでよ?面倒な事になるから」


瑞穂「わかってますわ♪こんな面白そうな事、他人に話したりなんてしませんわ!ふふふ~」

紗季「………………。(…あれ?まさか私初対面の人に弱み握られた?)」

おわり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第9話:体育と組み合わせと転校生と

今回は非常に短いです…。
…まぁ、前回の続き要素が強すぎるから仕方ないけど。
あと試合は次回からです。すみません……



それではどぞ!


~エリーゼside~

 

……5時間目の授業が終わって今は休み時間。今日最後の授業は体育…なのですが…

 

「…えっ?合同…授業?」

 

「そうよ。エリーは始めての体験だと思うんだけど、今日D組の先生が出張で6時間目の授業が出来ないみたいでね。それならC組と合同でやらないか?ってみーたんが提案したのよ。そしたらD組の先生もそういうことならお願いしますってなったから今回は合同授業になったみたいね。…あ、でもみーたん的には別の目的もあるかもしれないわ」

 

…そうなんです。どうやら私が朝寝ぼけてる時に言ってたらしいのですが、今日の体育はD組という隣のクラスと一緒にやるみたいなのです。

 

「別の目的…ってもしかして昨日の話に関係あるって事?」

 

智花は「別の目的」という所に反応して紗季に問い掛けます。

 

「流石トモね。その通りよ。……あー、エリーはホームルームの最後の方寝てたから聞いてないかもしれないけど、実はD組にも4人転校生が来たのよ」

 

「えっ…じゃあもしかして…」

 

「ええ、エリーの想像した通りの可能性が高いわね」

 

驚く私に紗季は眼鏡を光らせてそう答えます。…転校生、どんな人達なんでしょう。

 

「うぅ~…久しぶりの合同授業、緊張するなぁ~」

 

そんな感じで紗季と智花と話していたら、着替え終わった愛莉がこっちへ来てそう言いました。

 

「ふふっ、大丈夫よ。授業自体はいつもと変わんないんだし、気楽にいきましょ」

 

「そうだよ愛莉。私達も一緒だから大丈夫だよ」

 

そう言って2人は愛莉を励ましてあげてました。…はぁ…私も気が利いた事言えたらなぁ…。

 

「おー?エリー、元気ないけどだいじょうぶ?」

 

「えっ…あっ!うん…大丈夫…です」

 

なんて落ち込んでいたら愛莉と一緒に来ていたひなに心配されてしまいました。…うー…情けない…です……。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

そんな感じで沈みっぱなしのまま始まった合同授業の内容はというと…なんとバスケでした!

…しかもチームはクラス関係無しでランダム(というより既に美星先生が勝手に決めてきた)に決められてしまいました。

ちなみにチーム内訳は…

 

Aチーム

紗季、C組女子2人、D組女子2人

 

Bチーム

真帆、智花、D組女子3人

 

Cチーム

C組女子3人、D組転校生1人、D組女子1人

 

Dチーム

私、みずほ、D組転校生1人、D組女子2人

 

Eチーム

愛莉、ヒカリ、C組女子1人、D組女子2人

 

Fチーム

ひな、C組女子1人、D組転校生1人、D組女子1人

 

…こんな感じになりました。…よーし、頑張ろっ!

 




登場キャラ(一部)紹介

名前:八神ヒカリ

年齢:11歳

誕生日:12月23日

身長:170㎝

好物:?

ポジション:?

特技:?

備考:身長や誕生日は本作のみのオリジナル設定。不思議な力は継続中。

容姿:茶髪のショートカットに長い前髪を止める黄色いヘアピン、小学生離れした長い手足を持つ。体型としては小学生らしいスレンダーさが際立つ美人で普段は首からデジカメをぶら下げている。

設定:エリーゼと数日違いで転校してきた転校生で、昼休みに学級委員長の紗季に転校前に所属していた「チアリーディング部」がないことを聞き、成り行きでバスケ部に入部することになった。性格は明るく活発な印象を受けるが、その実内面は非常に脆く初対面の竹中のような荒い性格や暗闇をイメージさせられる雰囲気が大の苦手。美人を形容する容姿に誰もが一目で癒されるような笑顔を持つことからクラスだけでなく学校中から人気があり、転校初日は人だかりができるほどだったが、質問攻めの最中にでた「彼氏はいるか」という質問に「はい」と答えたことにより、執拗に言い寄ってくる男子は少なくなった様子。
なお、バスケについては本人曰く「体育で多少やった程度」しか経験は無いが、部活での練習と彼女曰く「彼氏」との毎日の特訓によってすさまじい勢いで成長していくことになる。
家族構成は父、母、兄に特殊な事情から猫(?)、恐竜(!?)と「同棲」という一応4人家族+ペットな感じ。そして重度の「ブラコン」らしい。


名前:神無月瑞穂(かんなづきみずほ)

年齢:12歳

誕生日:7月7日

身長:150cm

好物:母親特製肉じゃが

ポジション:?

特技:パス、スティール

備考:得意@パス全般、トリックプレイ、フェイク。苦手@フリースロー(10本に1本入るか入ん無いかレベル)、ミドルシュート(試合中は全く入らない。入っても奇跡レベルw)

容姿:色んな意味で小学生離れした容姿のメンバーが多い中で、唯一の小学生相応の体格の持ち主。だが普段着のセンスは残念極まりなく、制服を着ている時とのギャップが激しい。髪型はシンプルな黒髪ストレートロング(自覚は無いが女子達から羨ましがられる程に綺麗)で髪色と同じ黒い瞳を持つ典型的な大和撫子。

設定:ヒカリ同様エリーゼ達のクラスに転校してきた転校生の1人。昼休みに成り行きで一緒に居たヒカリと女バスメンバーとの昼食中にバスケ部についての話を聞いていて面白そうだと思い入部を志願した。また性格は非常に温厚で物腰も落ち着いておりその振る舞いは口調も相まってお嬢様を連想させるようなものなのだが、その反面チーム随一の腹黒キャラで、チームメイトもクラスメイトも関係なくその人物の秘密を盾にした交渉術を使って手玉に取る事を本人曰く「人生の楽しみ」としていたりする。(ちなみに出会った初日に紗季の秘密を握っている)
バスケプレイヤーとしては初心者ながらその抜きん出た腹黒さと上品な立ち居振る舞いとのギャップから繰り出される変則的なプレーで、紗季とは違った司令塔としての才能を覚醒していくことになる。
家族構成は母親との2人暮らし。所謂「母子家庭」で母親はとある会社の社長…らしい。


…あれ?本文のが短くね?(笑)


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第10話:衝撃!脅威の転校生

という事でバスケパート入りますが…出来はかなり酷いです(泣)
しかも…かなりのチートっぷりが目立ちます(-.-;)
そして前後編を付けてはいませんが、一応今回のは前編に当たります。(次話で決着予定)
…もちろん微妙に改稿してるんだZE☆


それではどぞ!
……夏休みは投稿完全休業になっちゃったのでこれからは頑張るお


~美星side~

 

よっ!篁美星だ。今日最後の授業はバスケにした。…理由は合同授業でマット運動とかだりーからだ。…サボったとか言うな。

で、チーム分けも終わってこれから試合をやっていく訳だが…

 

「なぁみーたん、ヒナのチーム1人少なく無いか?」

 

…まぁそう言って来るとは思ったよ。だから

 

「そりゃあD組の女子が1人欠席してるからな~。…それに」

 

「…それに?」

 

「…ひなのチームに入れた転校生。…アイツの身体能力は桁外れだってヤマが言ってたから大丈夫だろ」

 

と、予め考えておいた理由を話しておく。…まぁこう言っておけば

 

「なるほどなー。それならだいじょうぶか!…よーしヒナ!いざ勝負だー!!」

 

「おー。ひな達負けないぞー」

 

…真帆なら納得して始められると確信してたからな!流石私。

 

「…うし!じゃあ早速始めるぞー。…最初はBチームとFチームの試合だ。他の奴らはステージの上な~…あ、紗季は私と審判してくれ。あとエリーゼと愛莉は得点頼むわ」

 

「「はい」」

 

「わかりました」

 

…よし、役割分担も終わったし試合始めるか!

 

「よし、じゃあこれからBチームとFチームの試合を始めます。礼!」

 

「「よろしくお願いします!」」

 

「ジャンプボールから始めるから各チーム代表1人はこっちへ」

 

「おっしゃー!」

 

「よろしくお願いします」

 

…ジャンプボールは真帆とD組の御坂か。…こりゃ面白そうだな。

 

「それじゃあいくぞ!…レディー…ゴー!!」

 

そして私は2人が位置に着いたのを確認してから開始の宣言をしてからボールをトスした。

 

~sideout~

 

 

~実況side~

 

ジャンプボールを制したのは真帆だった…が、弾いたボールはなんとひなたにダイレクトで渡り、それをしっかりキャッチしたひなたはすぐにドリブルを開始した。

 

「いかせないよ!」

 

「…おー…ともかがとうせんぼー…困った~」

 

…のもつかの間。すぐさま智花のディフェンスがひなたのドライブを遮る。…そして

 

「ごめんねっ!」

 

「おー。取られたー」

 

すかさずひなたからスティールを決めた智花は電光石火の勢いでそのままレイアップを決めた。

 

 

Bチーム 2ー0 Fチーム

 

 

「やるな!もっかん。よっしゃーアタシも負けねー!!」

 

…ここからしばらくは慧心女バスコンビの独壇場だった。智花がレイアップで決めれば真帆がすかさずミドルシュートでゴールを揺らし、智花がスティールすれば真帆はリバウンド奪取からの速攻でコートを駆け、気が付けば開始僅か1分半で智花が10点、真帆が8点を決めていてもはやスコアは

 

Bチーム 20ー2 Fチーム

 

と大量リードとなってしまった。…そこへ

 

「すみません、少し時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

 

と、D組転校生の1人  「藤林すず」 が、審判の美星先生へと声をかけていた。

 

 

~~~~~~

 

 

美星先生の「じゃあ1分だけな」という一言で試合は一時中断となり、提案者である彼女はずっと1人でボール運びをしていたひなたへと質問を始めた。

 

「袴田さん、ひとつ聞きたいのですが、この「ばすけっとぼーる」という競技はさっき袴田さんがやっていた様にそのボールを叩きつけたり、あちらの方々がやっていた様にあのリングにボールを入れるという競技なのですが?」

 

「…おー?そうだよ。…すずは…バスケ…したこと…無いの?」

息を切らせながらもすずの質問に答えるひなた。

 

「はい。以前私の住んでいた所ではこのような競技はありませんでしたので」

 

「おー…じゃあ、エリーと…一緒だ…」

 

「エリーさん…ですか?」

 

「おー。…すず、今から簡単なルールを…教えるね。ともかたちお待たせしちゃってるから」

 

「あ、はい。お願いします」

 

~~~~~~♪

 

そして、ひなたの簡単なルール説明の後に試合は再開されたのだが…

 

「忍法・不知火!」

 

「うえっ!?何で!?ボールが無い!?」

 

再開してすぐ、掛け声と同時に藤林すず(以降すず)は一瞬で真帆の横を過ぎ、ボールを奪う。当然盗られた真帆は何が起きたのか全く理解出来ていない為激しく動揺した。

 

「っ!真帆!…させないよっ!」

 

真帆がスティールされたのに気付いた智花は驚くと同時にすかさず、すずに対してマンツーマンで対峙する。…のだが

 

「この距離なら……忍法・飯綱落とし!」

 

「ふぇっ!?うそっ!!」

 

…智花が驚くのも無理は無い。…何故ならすずは、智花どころか「ゴールリング」をも遥かに上回るジャンプをし、「一瞬」でゴール上空から現れ、そのまま宙返りをしながらダンクシュートを決めたのだから。…しかもセンターライン付近から「跳んで」、だ。

 

 

Bチーム 20-4 Fチーム

 

「勝負はまだまだこれからです。…頑張りましょう袴田さん、桐沢さん、御坂さん」

 

試合を見ていた全員が唖然とする体育館に、すずの凛とした声が響く。そしてそれを聞いたひなた達は

 

「おー、すず凄い。ひなもすずといっしょにがんばる。みんなでがんばってまほ達に勝とう♪」

 

「そうだね!頑張ろう!」

 

「うん!すずちゃんが居ればあの2人のチームにもきっと勝てるよね!」

 

と、満面の笑顔ですずに返事をした。

 

一方、試合を見ていた美星は

 

「(…あの子、凄いな…敗色濃厚な雰囲気をたったワンプレイで逆転出来る空気にしやがった…しかもあの動き…まるで本物の(・・・)忍者だろ。……藤林すず…一体、何者なんだ?)」

 

と、驚きを隠せないでいたのだった。

 

 

~~~~~~♪

 

 

「忍法・飯綱落とし!」

 

「くぅっ、またっ…!」

 

ガコン!

 

「ナイスシュートすずちゃん!」

 

「…はぁ…はぁ…ありがとう…ございます…ふぅ」

 

…そして、試合の流れはFチームへと傾いた。何故なら真帆はおろか智花ですらすずのスティールの嵐を防げず、挙げ句の果てにはコート中央付近からのスーパーダンク。…もはや成す術も無いのである。

…そして、そんな猛攻が2分近く続き、スコアは

 

Bチーム 22-24 Fチーム

 

という大接戦となり、残り時間は90秒を切ったのだった…。

 

~sideout~




後書きスキット:バスケって…

~試合中のステージ上にて~

ヒカリ「……………………」

瑞穂「………………………」

ヒカリ「………ねぇ、瑞穂ちゃん」

瑞穂「……どうしましたか?」

ヒカリ「………………これ、本当にバスケの試合…だよね?」

瑞穂「ええ、…そのはず…ですわ…」

ヒカリ「……私、前の学校でバスケの試合見に行った事あるけど…男子でもあんな事出来る選手見た事ないわ…」

瑞穂「……ええ……私も…こんな試合はテレビでも見た事ありませんわ…」

ヒカリ「……しかも、コレをやってるのが同じ小学生だなんて信じられないわ…」

瑞穂「そうですわね……」

ヒカリ「…………私たち、バスケ部入っちゃったよね?」

瑞穂「……ええ……そうですわね……」

ヒカリ「…………私たち、死なないように隅っこで頑張ろっか?」

瑞穂「……ええ」

~~~~~~

紗季「………………」

紗季「(…なんだか、あの転校生のせいで私達のバスケは命の危険があるって思われちゃったみたいね……はぁ…どうやって誤解解こうかしら…)」

…続く…?
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第11話:意外な決着

…にしても、10話と11話をまとめるのに時間掛かりすぎてしまったな…。やっぱり文才が乏し過ぎるお(泣)

…それでは第11話です!どぞ


※:今回の後書きは長いです。



~~~~~~

 

ーーガールズ・トーク~得点板にて~ーー

 

愛莉「………………」

 

エリーゼ「…………すごい……です」

 

愛莉「……うん…そうだね……」

 

エリーゼ「……愛莉」

 

愛莉「どうしたの?」

 

エリーゼ「バスケって……なんだか凄いですね!」キラキラ

 

愛莉「えっと……そ、そうだね……(どうしよう…あんなの私達は出来ないなんてあのキラキラした目を見て言えないよぅ…)」

 

 

 

~実況side~

 

現在スコア

Bチーム 22ー24 Fチーム

 

 

 

「はぁ……はぁ……やるな、あの転校生」

 

試合時間残り1分半で劣勢な中、ふと真帆は智花にそう話し掛けた。

 

「そうだね……あの動き……エリーと同じ感じがする……真帆はどう思う?」

 

智花も気になっていた事を真帆に質問した。

 

「んー、もっかんがそう思うならそうなんじゃないかな?…それよりあんま時間も無いし早い所逆転しちゃおうぜ!」

 

「…うん!そうだね。細かい事は後であの子やひなたに聞こう!…じゃ、行こう真帆!」

 

「おーよ!もちろんアタシ達のチームが勝つ!!」

 

真帆も智花もそう言って詮索するのを止め、眼前の試合に集中する事にした。…もちろん2人共すずについては気になるが、残り時間わずかで逆転しないといけない為、まずは試合に勝つ事に集中する事にした。そこへ

 

「あの、2人共ちょっと良い?」

 

と、同じチームでD組の高橋が真帆と智花へ話し掛けてきた。

 

「ん?どしたの?」

 

元来人見知りな所がある智花に代わって真帆が応える。すると高橋は

 

「実はさっき3人で話してたんだけど、藤林さんを私と音無、藤村の3人でマークしてみようと思うんだけど、どうかな?」

 

と、提案してきた。

 

「えっ!?大丈夫なのか?」

 

真帆は高橋の提案に驚いてそう聞き返すが、それに対して高橋は自分達が気付いた事を話した。

 

「うん。三沢さん達はあの技に気を取られ過ぎてて気付いて無いかもしれないけど、あの子ずっと技を使った(・・・・・)『シュート』はしていても、『ドリブル』と『パス』は1回もしてないの。だから私達がマークすれば多分動けないんじゃないかと思う」

 

「なるほど~そういう事か!…よ~し、もっかん!」

 

「うん、私はそれで良いと思うよ。後は真帆がひなたをマークして私が残りの2人を抑えれば」

 

「「「この試合勝てる!」」」

 

 

そう。気付いたのだ。

 

脅威の転校生藤林すずの『致命的な弱点』に――――

 

「よーし!作戦開始だー!!」

 

そう叫んだ真帆は張り切って走って行った。

 

「じゃあ私達も藤林さんのマークに行きます。…湊さん、頑張って下さい!」

 

高橋もそう言って智花を激励した後、音無と藤村を連れて走って行った。…そして

 

「チームの皆や昴さんの為にも…私はどんな時でもバスケの試合で負ける訳にはいかない!」

 

皆の勝ちへの想いが、慧心学園女子ミニバスケットボール部のエースに火を付けたのだった。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~♪

 

 

 

 

「来ました…忍法・しら…っ!」

 

智花がドリブルしながらハーフコートのラインまで来たのを確認したすずはスティールをしようとしたが、出来なかった。

何故なら

 

「藤林さん」

 

「あなたは」

 

「私達が止めます!」

 

すずは気付かないうちに3人の敵に囲まれてしまっていたからである。…しかも

 

「(この方々を強引に抜こうとしたらさっきみたいに反則を取られてしまう。…これでは動けませんね)」

 

そう。彼女は再開直後にファウルを取られていたため、ファウルを恐れて身動きが取れないのである。…つまり

 

「…真帆!」

 

「おーよ!」

 

スパン!

 

前半戦の様に真帆達がコンビプレイでシュートをするのがたやすくなるという事になる。

 

 

Bチーム 24ー24 Fチーム

 

 

そしてディフェンスだけではなくオフェンスにも影響は出る。

 

「すずー」

 

「はい!…くっ、これは!」

 

そう。すずへのトリプルチームはオフェンス・ディフェンス問わずにオールコートで付けられてしまうので、満足に動けないのである。…そして

 

「…袴田さん!」

 

「おー。…!きゃー」

 

「ぐはっ!…いってー…ってひなた!?大丈夫か?」

 

すずのこの試合初めて出したパスはボールごとひなたを『吹っ飛ばして』隣のコートで同じようにバスケをしていた竹中夏陽に見事命中したのだった。

 

「…おー。ありがとうたけなか。ひなならだいじょうぶだよ」

 

「そか、それならよかった。…てか何でひなたはボール抱えてここまで飛んで来たんだ?いくら隣でやってるって言ってもそれなりに距離あるしよ」

 

竹中はひなたの無事が分かってホッとしたが、疑問もあったので聞いてみる事にした。

 

「おー、それはね、すずからのパスをもらったらここまでとんできてたの~」

 

「パス貰ったらって…どんだけ強く投げたんだよそいつ…」

 

ひなたの答えを聞いた竹中は驚き半分呆れ半分でそう呟いた。そして

 

「まぁその……怪我しない様に気をつけてな」

 

と、ぶっきらぼうに言った。不器用な男である。

 

「おー、ありがとうたけなか」

 

竹中の激励に答えたひなたは自陣のコートへと戻って行った。余談だが、最後にひなたが見せた天使スマイルを見た竹中は自らの試合で30得点の大活躍をしたそうだ。…鼻血をだしながらだが。

 

 

 

~~~~~

 

 

 

ひなたが戻った事で試合は再開された。が、しかし流れはBチームに傾こうとしていた。

 

「もっかん!!」

 

「うん!」

 

 

シュッ!…パスッ!

 

 

Bチームボールから始まった攻撃は、智花のロングシュートであっさりと決まり、スコアは

 

Bチーム 26-24 Fチーム

 

とあっさり逆転したのだった。

 

「くっ…これはまずいですね…」

 

そしてこの時、すずにしては珍しく焦っていた。何故なら先程からマークしている3人の存在。そして

 

「(この方々を強引に振り切ってしまったらまた反則を取られてしまう…それだけは避けなければ!)」

 

これなのである。そう、すずは前半戦に強引にシュートへ行こうとしてオフェンスチャージングのファウルを取られてしまったのだ。それによりバスケ素人のすずは囲まれただけで身動きが取れないのである。…しかしそこへ

 

「おー。すず、ここはひなにまかせて?」

 

ひなたがいつものニコニコ顔でそう提案してきた。

 

「…お願いします。今の私はあの方々を引き付けるのが精一杯なので…すみませんお役に立てなくて」

 

ひなたの提案に対してすずは肯定と自分の不甲斐無さを謝罪する。…しかし

 

「おー?どうしてあやまるの?すずがいなかったらここまでこれなかったよ」

 

ひなたはすずに対してそう答える。そして

 

「すず、バスケはみんなでやるからたのしいんだよ?だから、ひな達はすずがこまってたらたすけるよ。すずがひな達にしてくれたみたいに」

 

と、笑顔でひなたは言い切ったのだった。

 

「袴田さん……そうですね。皆で協力して戦いましょう!」

 

そしてすずも、ひなたの励ましで再び闘志を燃やすのだった。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

そしてFチームからプレイが再開された。当然すずには3人のマークがつく。…しかし

 

「…御坂さん!」

 

桐沢は近くにいた御坂へとパスを出し、そのままドリブルをしていく。当然智花がディフェンスに行こうと御坂の方へ向かうが

 

「来た…桐沢さん!」

 

と、こちらへ走って来たのを見計らって御坂はフリーとなった桐沢へパスを出す。…そして

 

「くっ!…袴田さんお願い!」

 

桐沢と御坂のコンビプレイでフリースローラインまで持って来たボールはゴール下に走っていたひなたへと渡り

 

「とりゃー」

 

ガン!…パスッ!

 

竹中直伝シュート(仮名)を決めてスコアを

 

Bチーム 26-26 Fチーム

 

とした。

 

「やるなヒナ!よ~し、ソッコーだもっかん!!」

 

「うん!」

 

対する智花と真帆もすぐにプレイを再開し

 

「…ふっ!」

 

パスッ!

 

宣言通り速攻でレイアップを決めた。…そして試合はそのまま点の取り合いとなっていったのだった……。

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

 

 

ビーーーッ!

 

「試合終了!…ってありゃ、引き分けか」

 

そう。美星先生の言う通り最終スコアは

 

Bチーム 32-32 Fチーム

 

と、なったのだった。

 

 

 

~sideout~

 

 

 

~エリーゼside~

 

…どうやら試合が終わったみたいですが…とても凄い試合でした!…それ以外に言葉が出て来ません。

 

「あ、エリーちゃんごめんね。私次試合だから行くね」

 

感動に浸っていたら隣の愛莉が私に声をかけてきました。

 

「…あ、はい!…愛莉、頑張って!」

 

そうでした!次の試合は愛莉のチームと紗季のチームでしたね。…という事で私は愛莉を激励します。

 

「えへへっ、ありがとうエリーちゃん♪…私も智花ちゃんやひなちゃんに負けない様に頑張るね♪」

 

愛莉は笑顔でそう言うと、コート中央へ走って行きました。…この試合も楽しみです!

 

~side out~




後書きスキット:仲間入り

~~試合終了直後の移動中にて~~


真帆「ちくしょー!引き分けかぁ~」

智花「仕方ないよ。ひなた達強かったもん」

真帆「だよな!特にあの転校生!バスケ初めてなのに凄かった」

智花「そうだね。私も沢山スティールされちゃったし…ごめんね真帆」

真帆「別にもっかん責めてる訳じゃねーって。…あ~あの転校生入れられないかな~。もっかんやあたしと組んだら無敵だろーし!」

智花「あはは…無敵かどうかはともかく、一緒にバスケ出来たら楽しいだろうね」

真帆「だよな~。…ヒナ!勧誘頼んだぞ!」

~~~~~~~~~~

ひなた「おー。すず、おつかれ~」

すず「お疲れ様です袴田さん」

ひなた「おー。ひなのことはひなってよんでいいよ?」

すず「そうですか?…分かりました。それでひなさん、私に何か用事でもあるのですか?」

ひなた「おー。そうだった。…あのね、ひな、またすずとバスケしたい。だからひな達のぶかつに入らない?」

すず「部活…ですか?……すみません。私ではまたひなさんの足を引っ張ってしまいますから遠慮します」

ひなた「だいじょうぶだよ。おにーちゃんがどうしたらいいかおしえてくれるから…それにひなもまだまだへたくそだから、これからたくさん練習する。だからいっしょに練習しよ?」

すず「ひなさん………分かりました。私もひなさんと修行して、ひなさんのお力になりましょう」

ひなた「わーい。ありがとうすず。これからよろしくおねがいします♪」ペコリ

すず「いえ、こちらこそこれから宜しくお願いします」ペコリ

こうしてすずは女バスへ入部しましたとさ。


終わり。
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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キャラクターの設定資料 ~転校生編~

今回は登場キャラのプロフィールです…今回は3人分+1人補足。

ということで、すずまでやっちゃうよー
……え?見覚えのある設定のキャラがいた?…いやいや、キノセイダヨキット(・_・;)
ちなみにヒカリは前の章で紹介していたので今回は補足と修正をいれました!


名前:八神ヒカリ(やがみ ひかり)

 

ポジション:センター/ポイントガード

 

備考:登場作品名・デジモンアドベンチャー02

 

容姿:茶髪のショートヘアーに黄色いヘアピンで前髪を止めている。また、ピンクに近い赤い瞳に首から下げたデジカメが特徴で、全体的にピンクを基調とした服を着ることが多い。部活の時はタケル同様体操服を着用している。

 

設定:エリーゼが転校してきてから10日後に来た3人の転校生の1人。明るくお茶目な性格の持ち主で転校してきた慧心学園でもクラスメイトからの人気は絶大なのだが、本人はそのことに対してはほとんど無関心を貫いている。タケル同様とある事情で慧心学園へとやってきたのだが、一人暮らしに対して両親・兄から強い反対を受けた為、タケルの家へと下宿するという強硬手段を用いて無理やり転校してきた。(もちろん別の意味でもの凄い反発もあったが、とうの本人は完全に無関心だったりする)プレースタイルはチア部で培った器用さと高い身長を生かしてポイントガードとセンターの両方をこなす万能タイプ。

家庭環境は前述のとおり父・母・兄の4人家族だが、現在は高石家へ下宿している。

 

名前:高石岳(たかいし たける)

 

年齢:11歳

 

誕生日:8月5日

 

身長:169㎝

 

好物:?

 

ポジション:スモールフォワード

 

特技:ドライブ

 

備考:登場作品名・デジモンアドベンチャー02

 

容姿:イギリス人ハーフな為金髪に青い瞳を持ち、常に帽子を被っている。また緑色の服を好   んできている節がある。部活では試合以外学校指定の体操服を着ている。

 

設定:母親の都合で転校してきた(という設定になっているワケあり)転校生。周知のとおり転校前は男子のミニバスケットボール部に所属していたので今作でも慧心学園男子ミニバスケットボール部へと入る。ドライブが上手く切り込んでからのかく乱が得意。逆に身長に対してかなり華奢な体格なためポストプレーは苦手だったりする。

とある本業(?)の都合で半ば無理やり慧心に転校して来たので、ヒカリ共々女バスのメンバーと積極的に関わっていく予定。ただし大人の事情(学年主任のカマキリこと小笠原先生の独断)でD組編入となった。

家庭環境は、とある事情により母親との母子家庭。

 

名前:剛田剛憲(ごうだたけのり)

 

年齢:11歳

 

誕生日:8月15日

 

身長:173cm

 

好物:バナナ、焼肉

 

ポジション:センター

 

特技:ハエ叩き

 

備考:得意@ポストプレー。苦手@フリースロー、歌

 

容姿:角刈りの頭に鋭い眼光、鍛えられた筋肉質な体型を持ち、コーチの昴よりも高いと思われる長身でもある。普段着は基本的にタンクトップにゲーパンで、私服は慧心の制服なのだが、制服を着ている時は小学生には見られないというのが悩み(本人談)との事。

 

設定:エリーゼが転校してきてから10日後に来た3人の転校生の1人で唯一の男子。性格は真面目で綺麗好きな為、掃除は他の人より念入りにやる事が多い。また清潔感のある印象があるためか、ゴツい容姿の割に女子からの人気は高く、常に彼の周りには女子が居たりする。

バスケの名門チームに居たためか、プレイヤーとしての彼の技術は慧心の男子バスケ部員よりも遥かに高く、センターとしての彼は県内では名の知れた名手で「ゴール下のジャイアン」の異名を持つ程。

家族構成は父・母・叔父・姉・妹の6人家族。また姉は高校1年生、妹は小学3年生で姉は七芝高校、妹は同じ慧心学園に通っている。

 

名前:藤林すず

 

年齢:11歳

 

身長:135cm

 

好物:和食

 

ポジション:フォワード→スモールフォワード

 

特技:忍法・飯綱落とし、忍法・不知火

 

備考:得意・忍法を使ったダンクとスティール。苦手・ドリブル(現状皆無。練習によって多少は改善される予定)、パス(コントロールが良い為出来無くは無いが、パスした相手が吹き飛んでしまう程速い。これも後に改善される予定)

 

設定:基本はTOP時と同じ。本作ではエリーゼやさくら達同様転校生として慧心学園にやってきたが、クラスはエリーゼ達女バスのメンバーがいるC組ではなく隣のD組で、体育の合同授業の時にひなたのチームメイトとして交流を持ち、試合後にひなたから勧誘されてバスケ部に入る事になる。バスケプレイヤーとしては、他の転校生達と比べ突出した身体能力を持つが、バスケをやった事が無い為素人丸出しな部分が多く、ディフェンスやドリブルといったバスケの基礎は皆無である。しかし、「忍者」として厳しい修業を積んで体得した数ある「忍術」を応用したスティールやダンクを多用したオフェンスは昴曰く「人外の境地」らしく、バスケ経験者であっても初見では止められないとの事(ただし、あくまで「初見殺し」なだけで試合経験豊富な竹中や昴、葵には一回見ただけで弱点がわかってしまったが)で、オフェンスとしての素質は部内でも3強に入れる程。

しかし一見するとフォワードタイプの適性だが、昴曰く本来の適性はガード向きらしい。




後書きスキット:忍者です!


真帆「なぁなぁ!すずっちがやってたあの宙返りシュートすっげーカッコイイな!」

すず「ありがとうございます」

智花「それにあのスティール…ボールを盗るのも凄かったよね。私なんて何回も盗られちゃったよ」

すず「いえ、私よりも湊さんの方が凄いと思います」

智花「そ、そんな事無いよ~。私にはあんなに綺麗なスティールもダンクも出来ないし…」

真帆「確かにあたしやもっかん…いや、多分アイリーンも無理だなアレは」

ひなた「おー。ひなもむりー。ぴょんてしたらきえるのも、すってやってボール盗るのも」

智花「うん。確かに私達じゃ出来ないよね」

真帆「なぁ、すずっちは何者なんだ?」

すず「忍者です」

真帆・智花・ひなた「忍者?」

すず「はい、私は忍者です」

真帆「うぉースゲー!…って事はアレも忍術なのか!?」

すず「はい。ひなさんへバスケについて聞いた時に使えそうな忍術を選んでそれを応用しました」

ひなた「おー。すずすごい」

智花「(ふぇぇぇっ!?忍術使ってバスケしてたの!?…てっきり運動神経が凄いのかと思っちゃったよ~)」

※:すずの身体能力は素でかなり高いです。

真帆「なぁなぁ、50m走何秒だった?」

すず「50m…ですか…50m走は計ったことありませんが、100m走は計った事ありますよ」

真帆「えー!そーなんだ。それでどーだったの?」

すず「計測不能と言われてしまいました」

真帆・智花「えーーーーっ!?」

終わり。
次回からはまた本編にもどります!


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第11話:中心選手(センター)VS中心選手(ポイントガード)~過去と現実(いま)、才能と努力~

今回はタイトルがあまりにも大仰なんですが、大して内容は濃くないかもです…すいません。
……にしても、改めて読み返すと転校生が皆チート過ぎて「こいつら本当に小学生か?」ってなりますね…自分で書いといてなんですが、女バスメンバーかわいそうかも。

という事で、前置き長くなりましたが、それではどぞ!



~美星side~

 

よ~美星だ。第1試合は智花のいるチームが一方的かと思ったが、すずやひなたの活躍でまさかの引き分けで終わったな!いや~見ててつい私も熱くなっちまって紗季に何回か指摘されちまったわ~。…ん?この場合どうするかって?もちろん両者敗退だな!…理由?もちろん時間とか短縮出来るし何よりどっちのチームからも承諾を得られたからだ。…決して面倒だからとかじゃないからな!そこ勘違いすんなよ!…にゃふふ。

 

そんな訳で次は第2試合な訳だが…こりゃまた凄い組み合わせだな~こりゃ。

なんせ

 

「ふふっ。授業とは言え手加減しないわよ愛莉」

 

「えへへっ。こっちも負けない様に頑張るね!紗季ちゃん」

 

 

紗季の居るAチームと愛莉のEチームの対戦だかんな~。しかも紗季のチームも愛莉のチームもバスケ経験者が誰もいないからどういう試合になるか全く想像がつかないときた!…にゃふふ~、これもまた楽しみな試合だな。流石私!

 

~~~~~~~~~~

 

「よ~しそれじゃあジャンプボールやるから代表一人はこっちにこ~い」

 

第1試合同様に各チームの代表1人をセンターサークル(そう呼ぶらしい)の中心に呼ぶ。…そして私は驚いた!何故なら

 

「ふふっ、負けないよ!香椎さん」

 

「私だって…もう逃げない!だって、センターだもん」

 

身長コンプレックスの愛莉がジャンプボールをしに来ていたからだ!…Aチームの北条は、まぁ分かる。あのチームでは1番の長身だからな。…けど、Eチームの代表は愛莉だった。八神という高身長の選手が一緒に居るのに、だ。

 

「(……こりゃあ6月に何かあったな?…まぁ多分あん時だろうけど)」

 

と、私は心の中である程度の当てはつける。

 

「…よし!そんじゃあ始めるぞ~…レディー、ゴー!!」

 

そして、開始の合図と共にボールをタップした。…さ~て、どうなるかなぁ~…にゃふふ。

 

~sideout~

 

 

 

 

~実況side~

 

 

ジャンプボールを制したのは身長差と体格差で愛莉の方だった。…しかし

 

「もーらいっ!…流石は愛莉ね。私の予想通り圧勝だったわ。これで計画通り…水上さん!」

 

「えっ、ええっ!」

 

ボールを手にしたのは紗季だった。…そう。これは紗季が仕掛けた巧妙な罠であり最初からこうなる様に仕向けられた作戦だったのだ!…そして

 

「はい!……えいっ」

 

シュッ!

 

予めゴール近くまで走っていた水上は、紗季からのパスを受けてそのままシュートした…が

 

「やっ!」

 

バスン!

 

水上の動きに合わせて着いて来ていたヒカリは、水上から放たれたボールをハエ叩きの要領ではたき落とした。

 

「ドンマイ愛莉ちゃん!試合は始まったばっかりだよ!」

 

ボールを叩き落としたヒカリは、センターサークル上で口元を押さえて青ざめていた愛莉に大声で声をかける。

 

「香椎さんお願いっ!」

 

ヒュッ!

 

そしてヒカリがブロックしたボールをD組の不二が拾い、そのまま愛莉へとパスを出した。…のだが

 

「甘いわ!」

 

バシッ!

 

不二が出したパスを紗季がスティールしてしまった。

 

「そんな…」

 

「ドンマイドンマイ!切り替えていこう」

 

落ち込む不二にまたしてもヒカリが大声で励ます。…その一方で

 

「(ヒカリちゃん凄いな…私や周りの皆を励ましながらプレーしてるよ……本当なら私がやらないといけないのに…)」

 

愛莉は自分の無力さを痛感していた。無理も無い。いくら葵のおかげで少しは自信を持てる様になったと言っても、プレー等が激変する事なんてそうそう無いのだ。加えて長い間怖がっていた事に対して勇気を出して立ち向かい、その結果が利用されていた。…精神面の幼い少女にこの現実はあまりにも辛い結果だろう。…だが

 

「愛莉ちゃんディフェンスお願い!私一人じゃ止められそうに無いわ!!」

 

ヒカリの少し切羽詰まった大声がまた聞こえた。愛莉に対する明らかなSOSを込めている声音で。

 

「あっ!うんごめんね!今行くよ!(そうだ…こんな所でくじけてたらまた皆の足引っ張っちゃう…変わるんだ…ここから…私はっ!!)」

 

かつて弱かった少女は走り出す。…自ら過去を断ち切る為に。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

「あちゃー…やっぱり失敗だった、か…」

 

紗季はドリブルをしながらそうぼやいた。

 

「(愛莉が落ち込んで本来の力が発揮出来ない様に仕向けてその間に点を稼ぐつもりだったけど…ダメみたいね…しかも以前と比べて表情に自信が表れてるわ……ふふっ、チームメイトとしても友人としても嬉しい事だけどこうして敵対すると、ある意味トモよりも厄介よね……)」

 

ボールをキープしながら、今は敵対している心強くなったチームメイトの事を考える。

 

「さてと、どうやって攻めようかしら。(こっちは私というポイントガードが居るけど向こうには居ない…けどこっちは相手よりも背が低いからゴール下は相手の方が上…となると……)」

 

言葉に出しつつも紗季は現在の戦力状況を冷静な頭で整理していく。まずこちらはパスを出せてボールを運び、時にはシュートも打てる実質シューティングガードとポイントガードを兼任した「コンボガード」と呼ばれる自分と、自分と大して差の無い体格の女子4人に対して、相手にはセンターの愛莉に素人とはいえ長身のヒカリ、智花位の身長の子と瑞穂位の身長の子がいる。

 

「(センタークラスの身長が2人居る以上、ミドルシュートやポストプレーは除外ね……しかもこの試合は間違い無く2対0とかの低得点勝負(ロースコアゲーム)になる…なら、やることはひとつね!)…佐藤さん!」

 

バン!

 

考えをまとめた紗季は、左サイドに居た佐藤へとバウンドパスを出す。理由は空中パスは長身コンビの餌食になるから。…そして

 

「佐藤さん!」

 

ある位置まで移動した紗季が叫ぶ。…そう、その場所は紗季が最も得意とする『左斜め45°』…だが

 

「永塚さんお願い!…あっ!」

 

パスを出そうとした佐藤は驚いて声を上げる。…何故なら

 

「今よっ!……ふぅ、やっぱり見た目より難しいね」

 

佐藤がパスを出そうとした瞬間を狙っていたかの様にスティールを仕掛けられてボールを奪っていたからだ。そして、スティールを仕掛けた張本人のヒカリは奪ったボールを高い位置で持ちながら苦笑いでそう言っていた。…しかも

 

「愛莉ちゃん、こっちのゴール下での守りは任せるわね!私達4人は頑張ってゴール決めて来るから」

 

等と言い出した。そしてこの宣言を聞いた愛莉は

 

「えっ!?どうして?」

 

と、驚いて聞き返していた。…そしてその理由は更に驚く様な内容だった。

 

「やっぱり私達初心者じゃシュートしたりドリブルしたりパスしたり…つまり攻撃は出来るんだけどディフェンスはやっぱり経験者の愛莉ちゃんしかまともに出来ないの。…だから、私が攻めの起点、愛莉ちゃんが守りの起点って感じで攻守の役割を分けてみたんだけど…それじゃあじゃダメ、かな?」

 

頬を掻きつつ苦笑い気味にヒカリはそう説明した。そう、つまりヒカリの提案した作戦とは攻守の役割を分担する≪分業制≫なのだ。そして、それを聞いた愛莉は

 

「ううん、そんなことないよ!…うんわかった。私、点取られない様に頑張る。だからヒカリちゃん達も頑張ってね!」

 

と、ヒカリの作戦を快諾したのだった。

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

 

愛莉とヒカリが作戦を話し合っている間、チームメイトとの打ち合わせも早々に切り上げた紗季は、残り時間と現在の状況を整理して待ち構えていた。

 

「(試合時間は残り5分か…さっきの攻撃で点を入れられなかったのは痛いけど、こっちも守り切れればまだチャンスはある……ここ1本重要ね)…さぁ来な…さ…い…?」

 

紗季は思わず自分の目を疑ってしまった。何故なら

 

「よーし!ここ1本決めるよ、皆!!」

 

そう。ボールを運んで来たのが愛莉ではなくヒカリだったから。そして何より1番の理由は――

 

「…どういう事?愛莉が『自陣のゴール下から動いてない』なんて…!(…愛莉はインサイドの要で唯一の経験者の筈よ。それなのに、どうして?)」

 

チームで唯一のバスケ経験者にしてインサイドの要である筈の愛莉が自陣から動かず攻めて来る気配が無い事。紗季にとってこれ程予想外な展開も無いので、驚くのも無理は無い。そして

 

「……どういうつもりよ?」

 

目の前まで迫って来たヒカリに対して、紗季は無意識のうちに質問をしていたのだった。

 

 

 

~~~~~~~

 

 

 

「さてと、確か……」

 

自分の目前にいる紗季が驚いて固まってる間に、ヒカリは攻撃手段を考える為にその場で停滞していた。

 

「(愛莉ちゃんにはああ言ったけど、実際どうやって攻めようかなぁ……このままシュートしても確率はそこまで高くないし、ドリブルで経験者の紗季ちゃんを抜くのはハッキリ言って論外だし……うーn)「…どういうつもりよ…?」…え?」

 

思考が上手くまとまらず悩んでいると、目の前の紗季が睨みつける様な表情でそう聞いてきた。

 

「え?じゃないわよ。どういうつもり?八神さん私の事ナメてるの!?」

 

「え?いや、別にナメてるとかそんなつもりは全然無いよ?むしろどうしようか悩んでるくらいだし…」

 

ヒカリの間の抜けた返事に紗季は明確な怒りを込めてそう怒鳴りつけていた。それに対してヒカリは、苦笑気味にだがつい言わなくてもいいようなことまで言ってしまった。そして――

 

「シラを切るつもりならそれでも良いわ!だったら力の違いを解らせてあげる!!」

 

「…っ!…と、危なかった~」

 

そう叫ぶと紗季はヒカリのボールを奪う為にスティールを仕掛ける。が、取られる直前にボールを身体で守り、更にはそのボールを『自身の頭より上』の位置へと持っていく。

 

「っ!!…やるわね。でもそこからどうするつもり?」

 

自らの届かない場所までボールを上げられた紗季は苦し紛れにそう言うが…

 

「えっと……江口さん!!」

 

ピュッ

 

「はい!…っ!」

 

そのままの高さから両手投げのパスでゴール下に居た江口へとパスを出す。

 

「えっとあとは――っ!」

 

「っ!行かせ…ないっ!」

 

ヒカリはパスが通ったのを確認してすぐにフリースローラインへと走る。行く途中に紗季の妨害もあったが、無事にたどり着き…

 

「江口さん頂戴!」

 

「オッケー!お願い八神さんっ!!」

 

ピュッ

 

「…よし!」

 

江口からパスを受け再び高い位置でボールをキープするヒカリ。…ここまでは作戦通り。後は

 

「やーーっ!」

 

シュッ!……パスッ!

 

自らシュートを決めるだけ。…だが、正直彼女にそこまでの自信は無かっただろう。…だが、運は彼女に味方し結果的にシュートは音も無くリングへと吸い込まれて行ったのだった。

 

Aチーム 0ー2 Eチーム

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

…そして、そこからの展開は一方的に近かった。ディフェンスにおいては愛莉が軸となってロングシュート以外は全て防いでしまい、得点は紗季による0角度からのシュート2本のみで抑えてしまった。…そして何より一方的となってしまった要因は

 

「江口さん!」

 

ピュッ!

 

「はいはいっと!…金村さん!」

 

シュッ!

 

「はいっ!…お願いします八神さんっ!」

 

フワッ

 

「はいっ!…不二さんお願いっ!!」

 

ピュッ!

 

「っ!はいっ!」

 

シュッ!…ガコン、パスッ

 

「ナイッシュー不二さん!!」

 

「ありがとう。八神さんもナイスパスだったよ♪」

 

パンッ

 

「八神さん…どんだけ器用なのよ……まさかこんな短期間に『ポイントガード』の役割を覚えて実践ちゃうなんて…」

 

そう、これなのだ。彼女八神ヒカリはこの僅か5分という短い時間で、持ち前の器用さを活かしてポイントガードの役割であるパス回しの起点や周囲の状況を瞬時に判断してアシストをするといった事を『紗季の動きを見て覚えてしまった』のだ。その上身長差もかなりあるので元々の不利さも合わさってさらに状況が悪化してしまった。…そして、結果的に攻守に圧倒してしまったことで最終スコアは

 

Aチーム 6-18 Eチーム

 

となり、Eチームの圧勝で幕を閉じたのである。…合掌。

 

 

~sideout~




後書きスキット:心の中では

試合後半にて


真帆「うひゃー…あのてんこーせースゲーなー!」

真帆「とは言え、ありゃサキはそーとーショックだろーなぁー。アレはサキのせんばいとっきょだし」

真帆「帰って来たらバカにしてやろっかなー…………………………」

真帆「………(まぁ…ちょーーっとだけ心配だから、ここはチームリーダーとして試合終わったら声掛けて励ましてやろっかな……全く、世話の掛かる仲間だな)」



終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m
…スキットがネタ薄感MAXですが御容赦下さいませ(T_T)


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第12話:親友と幼なじみ ~天才と凡人~

いつも読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
投稿速度がナマケモノや亀にも劣ってる作者です…。楽しみにされてる方々、大変申し訳ありませんm(_ _)m

…あ、ちなみに今回と次回は会話パートになりますのでバスケパートはありません。悪しからずm(_ _)m

それではどぞ!


~真帆side~

 

ビーーーーッ!!

 

たった今、試合終了のブザーが鳴った。結果はサキ達のチームの惨敗。…普段なら戻って来たサキをからかいたい所だけど、今回はしない。…いや、『出来ない』。だってさ

 

 

――――あれだけ圧倒的な『「素質」の差』を見せつけられたら、多分きっと、アタシも今のサキと同じ顔してると思ったから――――

 

 

~sideout~

 

 

~実況side~

 

 

誠に突然だがこんな娘達の話をご存知だろうか。

 

片や、天性の才能を持ってとてつもない速さで成長し、ここぞという場面でシュートを決める事が出来る生粋のフォワード適性を持つ娘。

片や、特に秀でた才能等無くともその卓越した努力で前者に引けを取らない程の成長を見せ、視野が広く的確な指示とプレーでチームをまとめる司令塔としての役割を得意とする生粋のガード適性を持つ娘。

 

また一方はチームのムードメーカーとして持ち前の明るさを花火の如き勢いで振り撒く娘。

また一方はチームのお姉さん役として落ち着いた振る舞いと冷静な判断力でメンバーのまとめ役となっている娘。

…そして、この対極を成す性質を持つ2人の娘。前述の娘を三沢真帆。後述の娘を永塚紗季という。

この2人は旧知の『幼なじみ』であり永遠の『ライバル』でもある。

 

……何故突然この様な事を語り出したかと言うと……

 

 

~sideout~

 

 

 

 

 

~ヒカリside~

 

 

ビーーーーッ!!

 

「試合終了!選手はこっち来て整列な!」

 

試合終了のブザーが鳴り、美星先生が試合をしていた私達に向かってそう言った。けど、私はそれに反応することが出来なかった。…何故なら

 

「はぁ…はぁ…………っ!」

 

息を切らしながら俯き、触ったら膝から崩れてしまうんじゃないかと思ってしまう程にはかなげな永塚さんの姿があったから。

 

「おーい紗季ーヒカリー早くしろー」

その場から動かない私達2人を見た美星先生が私達を呼ぶ声が聞こえた。

 

「…………っ!」

 

「あっ、おい紗季何処行くんだよ!」

 

そしてその声を聞いた紗季ちゃんは、美星先生の制止を無視して外へ繋がる扉へと走り出してしまった。

 

「……あっ、追わなきゃ」

 

美星先生の声で我に返った私は紗季ちゃんを追いかけようとして

 

「ヒカリんは行っちゃダメ!」

 

三沢さんに止められた。…でも

 

「…永塚さん、追わないと「アタシが行く」…え?」

 

引き下がれなかった私の台詞に割って入って来た三沢さんは、私にそう言いました。そして

 

「こういうのは、付き合いの長い奴が行ってやんないとさ、色々と大変な事になっちゃうんだよね。…だからさ、ここはアタシに任せてよ」

 

三沢さんは苦笑い気味にそう言ってから

 

「じゃそーゆーことで、みーたんちょっち行って来るねー」

 

と、美星先生に言いながらこっちを向かずにサムズアップして走って行きました。…ごめん三沢さん、後は頼んだよ!

 

 

~~~~~~

 

 

「………なぁヒカリ」

 

「はい?」

 

三沢さんが永塚さんを追って出て行った直後、美星先生が話し掛けてきました。…が、その表情は少し険しいものだったので私は少し驚きました。

 

「アレはどういうつもりだったんだ?…いくらなんでも紗季の事ナメ過ぎだろ」

 

そんな私の心境を無視したかの様に美星先生は私にそう言ってきたけど…う~ん

 

「いえ、むしろ永塚さんが私達初心者より上手いと思ったのでどうしたら良いか考えたつもりだったのですが……そういえば永塚さんも試合中に先生と似た様な事言ってましたが一体どういう事なんでしょう?」

 

正直な話、何を言われてるのかサッパリわからなかったのが本音なので真剣な表情で聞く。…ここでちょっとでも変な表情をしたら確実に恐ろしい事が起きると確信していたから。すると美星先生は、困ってるんだか悩んでるんだかよくわからない様な複雑な表情で「おいおい天然かよ…」と呟いた後

 

「紗季はお前の作戦に対して「お前なんぞ愛莉が出る幕じゃない。私で充分」って思われたって感じたんだよ。んで結果は惨敗。…ここまで言えば分かるよな」

 

と言った。…えっ?てことは…

 

「つまり…私が思ってた事と真逆に捉えられたって事…ですか?」

 

「そういう事だな。…さてと、取り敢えず次の試合始めるから、お前は真帆達帰って来るまでステージの上で反省してな」

 

「………はい」

 

………何も言えなかった。…だって

 

 

――――――――『尊敬』の意味を込めた行動で、逆に『屈辱』を与えてしまった事に『今ようやく気付いた』のだから――――

 

 

…………私、次会った時どうしたら良いんだろう…。

 

ステージ上へと向かいながら、私は自己嫌悪していた。

 

 

 

~sideout~

 

 

 

 

~真帆side~

 

 

サキを追って来た私は体育館から校舎へと続く通路を走り、そしてサキが途中で止まった事もあって追いつく事は出来たけど…

 

「(しまった!どうやって話し掛けるか考えて無かった!!)」

 

そう。アタシは忘れてたんだ。…どうやって説得するかを。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

……気まずい。…なんて考えてたら

 

「…………アンタに、言われるまでもないわよ」

 

と、サキの方から話し掛けてきた。何も反応しないアタシの事を無視する様にそのままサキは続ける。

 

「八神さんが人を見下して楽しむ様な人じゃないって事位私にだってわかるわよ。…けどね……」

 

一度そこで区切ったサキは、こっちへと振り返り

 

「頭では分かってても、どうしても許せなかったし悔しいのよ!私は愛莉みたいに上背がある訳でも、ましてやアンタと違ってセンスがあるって訳でもないっ!…そうよ。これは…これは私の身勝手なわがままなのよ…」

 

と、一気にまくし立てて、また俯いた。…にしてもさ、アタシ的には…よかった…かな?

だって

 

「そっか……でも、サキはまだバスケを好きでいてくれてんだろ?…今はそんだけでアタシは嬉しいよ…それにさ」

 

別にバスケをキライになった訳じゃなさそうだったからさ。…だから素直に自白したる。…多分最初で最後の本音を

 

「正直アタシもサキと同じ事考えてた。」

 

「えっ!?」

 

驚いて顔を上げるサキを無視してアタシは続ける。

 

「だってそうだろ?アタシ達と昼一緒だった時に『私体育でやったことある程度だけど?』って言ってた奴がさ、その…あ…アタシよりパスとかドリブルとか上手いサキをぶっ倒しちゃったんだぜ?…そんで身長はアイリーンと同じくらい。…これは誰にも言ってないしサキが気付いたか知らないけどすばるんは最初、女バスメンバー5人の中でアイリーンの事を1番期待してたんだぜ……理由は――」

 

「分かってるわ。……愛莉が私たちの中で1番背が高かったから、でしょ?」

 

「そーゆーこと。――なんだ、やっぱりサキは気付いてたか」

 

この事はすばるんから直接聞いた訳じゃないけど、もっかんとすばるんがずっとアイリーンの事を気にかけてたし、何よりゲームや漫画でも大きい選手って有利だったから気になってたけど…サキが気付いたんなら間違いなさそうだな。

 

「当然よ。長谷川さんもトモも隠してたつもりみたいだけど……あれだけあからさまじゃあ愛莉はともかく他の皆が気付いていてもおかしくないとは思ってたわ。…で、真帆。アンタは私に何を言いたいわけ?」

 

と、アタシの方を見て聞いてきた。――んじゃ、さっさと言って楽になりますかな。

 

「…つまり、まだアタシ達とバスケしょうぜって事だ。こんな事で逃げないでさ」

 

「なっ!?だっ、誰が逃げるですって!!――冗談じゃないわ!こんな楽しいものを簡単に辞めてたまるもんですか!!そっちこそ、飽きっぽいんだから途中で投げ出す様なマネしないでよね!」

 

アタシの挑発じみた説得に、サキの奴も似た様な感じで言い返してきた。…こんだけ元気なら大丈夫だな。

 

「誰が辞めるかこんな面白いこと!……んじゃ、さっさと戻るぞ。きっとアイリーン達心配してっから」

 

と言って体育館への道を戻るアタシ。…実際アイリーン辺りは涙目か青い顔して待ってそうだしな。

 

「…………真帆………………ありがとう」

 

歩いてる途中でそんな声が聞こえたけどあえてそれには反応しないでおく。こーゆーコトはお互い様だろうしな。

 

 

~sideout~




後書きスキット:おっかしいなぁ?



エリーゼ「う~ん……」

愛莉「エリーちゃんどうしたの?」

エリーゼ「あ…ううん。ちょっと気になることがあって…」

愛莉「?」

エリーゼ「いえ…ただ、そういえばこの小説って主人公誰なのかなぁ~ってふと思って…」

愛莉「う~ん……どうなんだろ?――あの、作者さん」

作者「あ、はい――え~っと……この小説は一応エリーゼさんが主人公って扱いのつもりですけど……」

愛莉「だそうだよ?」

エリーゼ「……それにしては扱いが酷くないですか?」キーン

作者「ちょっ!?まて!話せば分かる!だからそれだけは」

エリーゼ「問答無用!リベール・ゴーランドっ!!」

作者「うぎゃぁぁぁぁっ!!!」


終わり。
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第13話:失意の底で

まだ修正が追い付かない…(泣)
そして風邪ひいた…
てかこの話、めっちゃ短いやんwww


~愛莉side~

 

ヒカリちゃんの様子がおかしい。

試合が終わってから美星先生と何か話をして後から凄く辛そうな顔をしてる様に見える。今すぐにでも話し掛けに行きたいけど――

 

「愛莉ー、点付け頼むわ!」

 

「あっ、は、はい!」

 

…と、頼まれてしまったので今すぐには無理そうです。………あんまり思い詰めて無いと良いけど…心配です。

 

 

~sideout~

 

 

 

 

~ヒカリside~  

 

 

…………………………。

…………………………。

……初めてかもしれない。

クラスメイトと関わって、真っ向から相手を傷つけていたなんて。

……正直、どうしていいのか分からない。

…………こんな時、お兄ちゃんだったらどうするのかな…?

謝る?

……けど馬鹿にされた相手から謝られるなんて、嫌だろうし――

 

「――あの!」

 

どうやら考えているうちにステージ上に着いていたらしく、さっきの試合を観ていたであろう湊さんが私に話し掛けてきた。……今はそんな気分じゃないんだけどなぁ……

 

「えっとね、紗季の事は真帆が追いかけて行ったから大丈夫だよ!…だから、その…ヒカリは気にしないでね。さっきの試合凄かったよ!!」

 

と笑顔で私にそう話す湊さん。……慰めてくれるのは嬉しいけど――

 

「……ありがとね。湊さん…褒めてくれるのは嬉しいんだけど……ごめん、今は一人で考えさせて貰えるかな?」

 

苦笑いしながら私はそう言った。

 

「そ、そうだよね!…気がつかなくてごめん……」

 

湊さんは困り顔をしながらも私にそう言ってから袴田さんのいる所へと移動していった。……悪い事しちゃったな。

 

「……湊さんが謝る事無いよ。――これは全部、私のせいなんだからさ」

 

私は、誰にも聞こえない様な声でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

私がステージ上の比較的人のいない所へと移動した頃には、既に次の試合が始まっていた。……でも、今の私には関係無い。何故なら

 

「(……はぁ…永塚さんにどうやって謝ろうかな……?)」

 

さっきの試合で傷つけてしまった彼女に対して、なんて言葉をかければ良いかが分からないから。

 

「(間違いなく永塚さんはものすごく怒ってるだろうし……きっと、私の話なんて聞いてくれないだろうから、謝れるか以前に話せる気がしないのよねぇ)」

 

そう。まず謝る以前に会話が出来るかが問題。――私にも経験あるけど、自分が怒ってる時って周りの人の話なんて聞く耳持てないからね。

 

「…………はぁ。ホントにどうしよう――」

 

「勝者が何でこんな所でしょげてんのよ……」

 

ネガティブ思考全開で落ち込んでいるところへ、聞き慣れた声が聞こえてきて驚いてしまった。そう、声の主は

 

 

――――呆れた表情をした永塚さん本人(・・・・・・)だったのだから――――

 

 

~~~~

 

 

「…………永塚…さん…?」

 

私は今、目の前の現実を理解出来ないでいた。そう、まさか『永塚さんの方から私に話し掛けて来るとは思わなかった』から。だから

 

「……………どう…して?」

 

なんて思わず聞いてしまった。

 

「……はぁ。まさか本当に真帆の言ってた通り落ち込んでるとはね。しかも相当堪えてるなんて。……みーたんは一体八神さんに何て言ったのかしら……」

 

と、永塚さんはため息を吐きながらそうぼやいた後、私に向かって指差しながら

 

「いい?私がショックだったのはあくまで体格とか運動神経の事で劣等感を感じちゃったからなだけでね、試合に負けて八神さんを逆恨みしてるとか、八神さんに対してどうこうしたいって訳じゃないわ」

 

と言い切ってから腕を組み

 

「確かに悔しいとかはあるけど、それであなたに当たるのは筋違いだしね。…それに、むしろ冷静に考えたらこれから仲間になる人の実力がこれだけ高いならこの先凄く心強いしね!」

 

と、言い切ってから私にウィンクしてくる永塚さん。

 

「……永塚さんって、優しいね」

 

私はそんな紗季ちゃんの言葉を聞いてそう思った。…ハズが、何故か声に出ていて

 

「ちょっ!?いきなり何言ってるのよ!!……ゴホン!まぁ、そういう事だからさ、もう気にしてないから皆と一緒に試合を見ましょう」

 

永塚さんを照れさせてしまった様です。…ふふっ、可愛いなぁ~。

 

 

ガツン!

 

 

「痛っ!」

 

そんな事を考えていたら永塚さんにゲンコツを落とされました……。…凄く痛い…絶対やり慣れてるよこの人。

 

「何考えてるかわかりやす過ぎよ。全く!…いいから、トモ達の所へ行くわよ。心配してるだろうから」

 

「うぅ~……う、うん。そうだね、いこ」

 

痛い頭を抑えながら、私は永塚さんと一緒に湊さん達の所へ向かいました。……それにしてもわかりやすいなんて初めていわれたなぁ~私。

 

 

 

~sideout~




後書きスキット:仲直り


ヒカリ「永塚さん、さっき言い忘れちゃったけど…本当にごめんなさい……」

紗季「もう。それはもう良いって言ったでしょう?あんまりしつこいと、またゲンコツ落とすわよ?」

ヒカリ「そ、それだけは止めて欲しいな…アレ、すっごく痛かったんだから。……でも、うん。わかった、そうするね。ありがと永塚さん♪」

紗季「お礼なんて別に良いわよ。――それより、これからはチームメイトになるんだし、私の事は紗季でいいわ。あと敬語禁止ね」

ヒカリ「あ、うんわかった。それじゃあ私の事もヒカリでいいわ」

紗季「りょーかい。それじゃあヒカリ、これからよろしく!」

ヒカリ「うん!こちらこそよろしくね♪紗季」


終わり。
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第14話:電光石火とアリウープ

ふぅ…バスケパートがヨボヨボ過ぎるな…。
…ま、いつもの事ですが(泣)

とりあえず体育バスケ編ラストです!

……台風すごかったなぁ…(棒読み)


~エリーゼside~

 

 

私とみずほのDチームは今、Cチームとの試合に出ています。そして今は開始から僅か1分半を経過した辺りなのですが…スコアは

 

Cチーム 18-12 Dチーム

 

というハイペースで進んでいます。そのせいで

 

「はぁ…はぁ………は、速い…です」

 

「はぁ…はぁ…そう…ですわね……ふぅ」

 

私も他のチームメイト『3人』も、既に体力の限界が近いです。…その原因は

 

「――あれま。この学園のバスケ部って、こんなもんなん?…こりゃあいくらなんでも弱すぎやわな」

 

「………………」

 

このD組転校生。確か名前は「宮城美佐子(ミヤギミサコ)」さん。薄い緑色の髪を後ろで結ったロングヘアーに、ミラみたいな凛とした薄めの紫色をした瞳、そして1番目立つであろう左耳にある小さなピアスが特徴のちょっと変わった喋り方をする女の子。

…そうなんです。私、もとい私達はこの方に振り回されてしまっているんです。身長は智花くらいしかないけど、とにかく速いです。どれくらい速いかと言うならジュードの回避アクション並に速いです。

試合展開も、とにかくボールを保持する時間が短い為にほとんど休み無しでコート内を動いている感じで、ボールを持ってから相手にボールがいくまでお互いに5~7秒と極端に短く、最初の智花達の試合並かそれ以上に速く進んでいるせいで最初のうちはついて行けてましたが今現在(試合時間1分半経過)では、もはや一方的な状態になりかけています。…悔しいですが、あの子の言う事を反論出来る様な余裕は既に私にはありません。

…と、そんな時

 

「……エリーゼさん、でしたっけ?」

 

「は……はい…!」

 

私達のチームで唯一疲れが見えないD組の転校生さんが、私に話し掛けて来ました。…名前は確か、「藤井有紀(フジイユキ)」さん。

黒髪をポニーテールにしている彼女は愛莉と同じ位の身長で、スレンダーな体型の方で…私としては背の高い彼女はとってもうらやましかったりします。

 

「お願いがひとつ。パスをゴールリングより少し高い位置に出して貰えませんか?彼女は『速さ』はあっても『高さ』は無いのでそこへパスを出せるなら、この試合逆転することも可能です」

 

そして突然、フジイユキさんは私にそんな驚きの提案をしてきました。…でも、なんで私なんだろう…?

 

「でも、さっきからドリブルしてる時にスティールされてしまってますよ…?」

 

「大丈夫。エリーゼさん達がある程度パスを出せる所まで来る間は私があの方の動きを封じてますから。…そのかわり、出せると感じたら迷わずすぐにパスを出して下さい。少しでも遅いとスティールされてしまうので」

 

…自信満々でそう語る彼女は、試合前と印象がちょっと違う気がしますが、今は気にしないでおきます。…さて、ここまで言われたら出来ないなんて事は言いません。なので

 

「…わかり…ました。フジイユキさんの案でいきましょう……みずほも協力お願いね?」

 

「…ええ、もちろんですわ」

 

彼女――フジイユキさんを信じてやってみようと思います。

 

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 

「さ~て、お手並み拝見といきますか…お?」

 

こちらの攻撃が始まり、さっき話し合った通りにユキ(さっきの話し合いの際にそう呼んでほしいと言われたのでそう呼ぶことに…)がミヤギミサコさんの動きを封じています。…でも見た感じディフェンスの様なこの役割は苦手みたいで確かにそんなに持たないかもしれません。なので

 

「えいっ!」

 

ハーフラインを越えた辺りからゴールへ向けて『パス』を出します。

 

「うお!ごっつ高いシュートやなぁ。…けど、あれは入らんやろなー」

 

彼女はどうやら今の『パス』が『シュート』に見えるらしく、ゆっくりとリバウンドコースへと向かいます。…でも

 

「ナイスパス。せいっ!」

 

ガンッ!!!

 

「なっ!!?」

 

ユキは私が投げたのと同時に走り込み、ボールを空中キャッチした後そのままリングへと叩き込みました。…カッコイイ…です。

 

 

Cチーム 18ー14 Dチーム

 

 

「今んはまさか…アリウープ!?んなアホな!」

 

ミヤギミサコさんが凄く驚いていますが…どうやら今のシュートはアリウープという技らしいです。…ユキ、凄いです。

 

「エリーゼさん、ナイスパスでした。この調子でお願いします」

 

「いえ……その…ユキも…かっこよかった…です!」

 

「……こんなんアリかいな~」

 

…ため息を吐きながら呆れ気味にそう呟くミヤギミサコさんには悪いけど、このまま一気に攻めよう…です!

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「はぁはぁはぁ……くっ!」

 

「せいっ!」

 

 

ガゴン!!!

 

 

Cチーム 24-24 Dチーム

 

……や、やりました!ついに同点です!!…ふぅ…。

 

「ふぃ~…やっぱ高さフルに使われたらきついっての…っ!」

 

ミヤギミサコさんのオフェンス・ディフェンス技術はやはり凄いです。あの後も何回かスティールされての速攻とかもされてしまいました…でも!

 

「…抜かせ…ませんっ!!」

 

私もようやくですが彼女の動きに慣れてきましたのでディフェンス時にはユキを可能な限り援護します。…確かこの陣形が…

 

「……ダブルチームとか体育の授業で堪忍やわぁ…」

 

そうです。ダブルチームです!…忘れてたなとか言わないでください……

 

「…勝つためなので」

 

彼女の呟きをユキはあっさりと受け流してディフェンスをしています。…それにしても、ユキはバスケがとっても上手な気がします。

 

「(……終わったら誘ってみようかな…バスケ部に…)」

 

そう結論付けた私もユキ同様ディフェンスに集中する事にします。…残り2分頑張ろう…!

 

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

 

ビーーーーッ!!!

 

 

「試合終了!選手は集まれ~」

 

タタタッ

 

「26-28でDチームの勝ち。礼!」

 

「「ありがとうございましたっ!!!」」

 

…はぁ…はぁ…や、やっと…お、終わりました。

あれからミヤギミサコさんは私とユキのダブルチームで身動きが取れず、私達も私とユキはずっと彼女のマークについていたのでオフェンスでの得点は無理でした。…でも最終スコアは

 

Cチーム 26-28 Dチーム

 

という事でなんとか勝てました。…理由?それは

 

「はぁ…はぁ…なんとか…勝てましたわね…ふぅ」

 

「お疲れ様です。あなたがいなければ負けてました。…瑞穂さん」

 

「いえいえ、有紀さんが宮城さんを抑えてくれていたからですわ♪」

 

そうなんです!相手にはミヤギミサコさん以外にシュートがまともに入る人が居なかったけど、私達にはみずほという『第3の得点源』が存在していた事で、最後の決め手になりました。…それにしてもみずほはいつシュートの練習をしたのでしょうか?

 

「お疲れ!いや~あんたら強いなぁ~。前言撤回。ここのバスケプレイヤーは強いわなー」

 

私達が話していると、ミヤギミサコさんがこっちに来て話しかけてきました。そして

 

「うん決めた!わいはここのバスケ部入るわ!!てことでよろしくな!…え~っと」

 

「…私はエリーゼ。エリーゼ・ルタス…です。」

 

「エリーゼちゃんか。わいは宮城美佐子や。ミサ、でええよ。んじゃ、改めてよろしゅう頼むわ!」

 

「は、はい!よろしくです…ミサ!」

 

ミサはバスケ部に入部すると宣言した後に私と握手しました。…友達が増えるのは本当に嬉しい…です♪

 

 

 

キーンコーンカーンコーン…♪

 

 

 

「ありゃ。結局決勝戦まで行けなかったか…。…よーしじゃあ全員集まれー」

 

私達が握手したと同時位にちょうどチャイムが鳴り、C組とD組の女子が全員集まって整列しました。

 

「じゃあ6時間目はこれで終わりな。みんなちゃんと汗の処理をしてから自分の教室に戻れ。解散っ!」

 

美星さんはそう言ってから倉庫へボール等を片付けに行きました。

 

「……疲れた」

 

「エリーちゃんお疲れ様♪私達も更衣室行こ」

 

「あ…はい」

 

私も着替える為に愛莉と一緒に更衣室に向かいます。…それにしても…

 

「(初めての試合で勝てました……バスケって大変だけど、勝つと気持ち良いんですね……よし)………これからも頑張ろう…です!」

 

「?何か言った?」

 

「…あっ!ううん、何でもないよ…行こう、愛莉」

 

タタタッ

 

「あっ、待ってよエリーちゃ~ん」

 

バスケは楽しい…です!

 

 

~sideout~




後書きスキット:成り行きで…前半


授業終わりの更衣室にて


宮城「そんで活動日はいつなん?」

エリーゼ「えっと…確か月曜・水曜・金曜だったと思います。」

宮城「ってことは今日もあるんか…ほんなら、改めて今日からよろしゅうな!」

エリーゼ「あ、はい…こちらこそよろしく、です」

宮城「あ、そだ。ついでやないけど、藤井も連れてってええか?あいつもなんやかんや経験者やからな!この先役立つと思うで?」

エリーゼ「え、えっと……その…本人は、この話の内容を知っているんですか……?」

宮城「いや知らんよ」

エリーゼ「即答!?」

宮城「まぁなんとかなるやろ。てことで放課後よろしくな!」

タッタッタッ…

エリーゼ「えっ?待って…!。…行っちゃった…」

後半へ…続く…


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オリジナルキャラクターの紹介2

オリキャラ2人の紹介です\(^ー^)/
…え?どっかで見たようなキャラクターがいるって?……気にしたら、その時点で負けだよ君ぃ~(笑)

…あと少しで追いつく…


名前:藤井有紀(ふじいゆき)

 

年齢:12歳

 

誕生日:5月5日

 

身長:173cm

 

好物:鮭の塩焼き(本人曰く朝食の味噌汁と併せるのがいいらしい)

 

ポジション:パワーフォワード

 

特技:アリウープ、リバウンドシュート

 

容姿:スタイルは愛莉と同等に良く、運動好きな為引き締まっている。髪型は黒髪セミロングで普段はツインテール、試合中はポニーテールにしている。服装は体操服やランニングを愛用しているが本人曰く周りからは不評との事(理由は色々と危険な為だが本人には全く自覚が無い)

 

備考:苦手・ミドルシュート、ロングシュート全般。ただしゴール下でのみフェイドアウェイシュートは打てる。(ただし入る確率は4割弱)

 

設定:口数はそれほど多くはないがバスケの経験者。多数の異次元漂流者が居る中で数少ない正規の転校生。運動好きな為身体能力は全体的に高く、特にジャンプ力はピカイチで最高到達点は部内ですず、エリーゼに次ぐ程に高い。転校前に入っていた部では補欠だったが、それは入っていた部が全国区だった為で決して本人が弱いからな訳では無い。性格はかなり人任せで自由奔放な為、基本的に自分で決めて行動する事は極めて少ない。が、一度戦闘モードになるとポイントガードが驚く程に的確な進言をしてくる為部内でついた呼び名は「コート上の参謀」。

家族は父・母との3人暮らしで、母親はバスケ選手で今でも現役で各地を転々としている。また父親も転勤が多いので結果的に転校が多い。

本来のプレイスタイルはジャンプ力を活かしてリバウンドの捕球を主体で戦うリバウンダーで、センター顔負けな位ゴール下で戦うフォワードタイプ。

 

 

名前:宮城美佐子(みやぎみさこ)

 

年齢:11歳

 

誕生日:1月1日

 

身長:140cm

 

好物:パスタ系

 

ポジション:ポイントガード

 

特技:スティール、ラン&ガン

 

備考:苦手@高身長の選手のプレー。 あだ名:ハイスピードガール(命名:前の学校のチームメイト)

 

容姿:智花と同じ様な体型で薄い緑色の髪を後ろで結ったロングヘアーと凛とした薄めの紫色をした瞳、そして左耳にある小さなピアスが特徴。ちなみに服装は常に体操服だったりするが本人いわく「動きやすいから」らしい。

 

設定:有紀と同じくバスケ経験者だが非常にやかましい程よく喋り、またとある世界からの漂流者なのだが、漂着した際に色々と変な情報が混ざってしまい変な娘になってしまったある意味かわいそうな女の子。ちなみに慧心を選んだ理由は「近いから」。性格は2重人格で普段は馬鹿な言動で紗希に怒られているのだが、要所では普段の馬鹿さが嘘の様な天才っぷりを発揮して周りを驚かせているが、彼女の本質がどっちなのかは本人にしかわからない。バスケプレイヤーとしては某バスケアニメのキャラクターの様な速攻を好み、ラン&ガンというプレイスタイルを好む。そのため体力はチームの中でも抜きん出ており、そのスタミナ量は高校生である昴や葵とほぼ同等程度はある。シュートやパスはもちろん、持ち前の速さと低さでスティールを得意とするがその反面、ジャンプ力がひなた程度しか無い為高さを武器とするプレイヤーとの相性は最悪で手も足も出なかったりする。

この世界では、母親が関西人(京都生まれ大阪育ち)で父親が関東人(京都生まれ神奈川育ち)ということで喋り口調はとってもおかしい。ちなみに家族構成は両親との3人暮らし。




後書きスキット:成り行きで… 後半

エリーゼ「えっ?…待って…!…行っちゃった…」

藤井「私は別に構わない」

エリーゼ「わひゃあっ!?」

藤井「という事でよろしく…じゃ」

タッタッタッ…

エリーゼ「……び、ビックリした…」

みずほ「不思議な方でしたね~」

エリーゼ「………です」

おわり。
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第15話:問題解決?前編

なんだかものすごく長くなってしまったので半分に分ける事にしました。

ちなみに前編は主にポジションについての話しになりました。後編は多分今後の展開についての核心…にいけたら良いな~と思います。
…あと少しで追いつくぞよ!

それではどぞ!


~エリーゼside~

 

体育での激しい(?)戦いの後、帰りの会(ホームルーム)が終わって今は放課後になりました。

 

「…随分人が増えたなぁ…」

 

いつも通りコーチに来てくれた昴さんは、開口一番にそう呟いてましたが…気持ちは分かります。だって…

 

「「「「「「「「「「こんにちは!よろしくお願いします!!」」」」」」」」」」

 

いきなり『11人の小学生』に挨拶されてましたから…。私もその1人ですけど。

 

「こんにちは…です…昴さん」

 

「こ、こんにちは。…なぁエリーゼ、今日は何でこんなに大人数なんだ?」

 

最後に挨拶した私に昴さんがそう聞いてきました。

 

「…実は今日体育の授業がD組と合同だったので美星先生の提案でバスケをやったんです。…それで、その時D組にいた転校生の方々がバスケ部に入りたいと…」

 

「…なるほどな…ミホ姉のやつ…」

 

事情を話したら昴さんは何故かあっさりと納得してました。…なんででしょう?

 

「長谷川さん、いきなり人数を増やしてしまってすみません」

 

私が事情を話し終えた辺りで私以外の9人が昴さんの元へと集まり、部内でも生真面目な性格の紗季が昴さんへと謝りました。

 

「あぁいや、それは大丈夫。紗季が気にする事じゃないよ」

 

「…それならよかったです」

 

昴さんがそう言うと、紗季は安心した様な表情でそう言います。…昴さんの性格ならあまり気にしなくても大丈夫な気がするけど…紗季はローエンみたいに少し心配性なのかもしれません。もちろん本人には言わないですよ?

 

「…エリー、何か失礼な事を考えてそうな顔してるわね?」

 

「!?」

 

……紗季はやっぱり鋭い…です。

 

 

~~~~~~♪

 

 

 

 

 

それから全員で改めて自己紹介をした私達は、昴さんの提案で5対5の試合形式での練習をしました。(みずほは体育で疲れ果ててしまったらしくて昴さんと観戦してましたけど…)チーム分けは転校生と在学生で分けて行ったのですが…結果はなんと私達の負けでした!しかもこっちの方が経験者の数が多いのに、です!……もちろん負けた理由は――

 

「チームワーク、やな!」

 

そう、チームワークが…って

 

「…ミサ、私の心の中読まないで…」

 

「いやいや…自分、口からだだもれやで?」

 

「えっ…!?」

 

……どうやらあまりの驚きに思わず口に出してしまっていた様です。…恥ずかしい…。

 

「あはは…まぁエリーゼは始めてからそんなに経ってないから仕方ないかな」

 

……どうやら昴さんにも聞かれてたみたいです。……あぅぅ。

 

「まぁ私達は長谷川さんに指導して頂き始めた頃からずっとパス練習してたからね。流石に急造のエリー達にそういう所で負ける訳にはいかないわ」

 

そう自信満々に話すのは紗季。…でも

 

「こj「個人技ならこっちの方が上や…って言いたいんやろ?それやったら間違い無くパス回しが重要になるで」…どうして、ですか?」

 

私の声に上乗せして答えたミサに対して疑問に思ったことを聞いてみます。

 

「そらもちろんマークがあるよりフリーで動ける方が尚更個人技が活きてくるからやな!だからこそ私と永塚さんのやってるポイントガードのポジションはチームの司令塔って呼ばれとるんや」

 

「…じゃあ、どうして体育の授業で2人は負けちゃったんですか?」

 

「ぐふっ!…そ…それはやなぁ…」

 

「ポイントガードがどんなに優れていてもそのパスを受け取る側のプレイヤーが初心者だと実力を発揮し切れないからだよ。元々ポイントガードっていうポジションの人は単独で得点を取りに行くのは苦手な人も多いし、体格だって他のポジションの人より劣ってることの方が一般的だしね」

 

膝から崩れ落ちたミサと紗季に代わって昴さんがそう答えてくれました。…なるほど。それなら納得です。

 

「それとな、私は自分より遥かに背の高い選手が苦手なんよ。だから藤井さんにはフルボッコにされもうたって訳や」

 

ダメージから回復したミサはそう説明してくれました。…なるほど。相性、ですね。

 

「私の試合は八神さんが私と同じポイントガードの役割をこなしてたから、身長差とかも含めて防ぎ切れなかったのよ。…でもまさか、あんなにすぐ出来ちゃうなんて思わなかったから流石に堪えたわね…」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

紗季も理由を説明し、ヒカリが試合を思い出して紗季に謝って「気にしないで良いって言ったでしょ?」と言われているのを見ながらまとめてみます。…つまりは

 

「どっちが欠けても機能しない…という事ですか?」

 

「そうだね。バスケは5人でやる競技だから1対5じゃ勝てないんだよ。…納得出来た?」

 

「…はい。なんとなくですが、わかりました」

 

「そっか。ならよかった」

 

私の答えに笑顔で答えた昴さんは、最後に私の頭を撫でてくれました。…昴さんのなでなで(命名:ひな)はとっても気持ち良い…けど…

 

「おおぅ、エリーがすばるんに頭撫でて貰ってる!」

 

「これはトモもうかうかしてられないわね!」

 

「ふぇぇっ!?どうしてそうなるの!?」

 

「…エリーちゃん、羨ましいなぁ」

 

「おー、エリー、うらやましいですなぁー」

 

「…はぅぅ」

 

…この視線だけは、どうしても恥ずかしい…です。他の5人も何か言いたそうにしつつ生暖かい目で見てきて、いつもより恥ずかしい…きゅうぅぅ…。

 

こうして私の思考回路はショートしました。

 

~sideout~

 

 

 

 

 

 

~昴side~

 

 

人数が倍になって初めての部活も、途中でちょっとした問題があったが無事終わって、今は自宅でちょうど宿題を片付け終えた所だ。

 

~~~~~~♪

 

「…ん?電話か…誰からだろ?」

 

ベッドに放置した携帯電話を取り、相手を確認すると

 

「…智花?どうしたんだろ?」

 

なんと智花からだった。…彼女からの電話なんて男バスとの試合前に愛莉の事で相談があると言って来た時以来だな。

 

「もしもし智花?」

 

『夜分遅くにすみません。…あの、今大丈夫ですか?』

 

「ああ、構わないよ。どうした?」

 

『あ、はい。実はさっきまで最後に話してた公式戦について話し合いをしていたのですが』

 

「ああ、確か公式戦前に2、3試合は練習試合をしたいなって話したやつか…。それがどうかした?」

 

そう。今日来た6人を合わせるとちょうど11人が揃うので女バス最大の問題である『10人以上いないと公式戦に出場出来ない』という最重要課題が解決したのでその辺りの事情を踏まえて話し合いをしたのだが、その時に出た意見が

 

《練習試合をしたい》

 

という内容だった。そこで俺やミホ姉が相手を探してみるという事でその場の話しは終わったのだが、どうやら智花達はさらに皆で色々と話し合ったみたいだ。

 

『えっと、昴さんと話していた時はポジションとか役割については何も話せなかったので、勝手だと思いましたが私達で少しまとめてしまったんですけど…』

 

なるほど。確かにそこまで話せなかったよな…

 

「あぁ、なるほどね。…もちろん、別に勝手にだなんて思ってないよ。むしろ相談する手間が省けたからむしろありがとう、かな?…それで、どんな感じになったの?」

 

智花の声は最後の方が沈んでいたから少なからず罪悪感を感じてしまっているのだろうという事がわかったのでいつも通りしっかりフォローしておく。いつものことだが、そんなに気にしなくても良いのにな……。

 

『あ、はい!…えっと、まずはヒカリにはセンターとポイントガードを兼任してもらおうと思うんですけど……』

 

なるほど、確かに良いかもしれない。彼女は練習中に誰が見ても分かるくらいのスピードでバスケの基本的な技術・動きを習得していっていた。正直、成長速度はあの真帆よりも早いんじゃないかとも思った程だ。…なにしろ智花や紗季から聞いた話では、5分という試合時間でポイントガードの基本を完全でないとは言え紗季のプレーの見よう見まねで体現してしまった程なのだ。…実際に俺から見てもヒカリの動きはとても初心者のポイントガードとは思えないレベルの完成度だった。

…だからこそ、そんな彼女なら難易度の高い複数ポジションの兼任も可能だとと思ったのだろうな。…俺も正直な所、彼女は身長が高いことからセンターとして愛莉との併用が出来るなと思ったが、ポイントガードとしての才能もある彼女をひとつのポジションに固定するのはもったいないと思っていたのでこの案は個人的にもチーム戦略としてもありがたいというのが本音だ。

 

「うん、そうだね。ヒカリさんがそれでも大丈夫なら俺としては賛成かな」

 

『あ、はい!ヒカリも私でよければって言ってましたので大丈夫かと』

 

「了解。じゃあ次からは愛莉と一緒にセンターの基礎から始めていこう」

 

『そうですね。じゃあヒカリには私から話しておきます。…あと相談したいのはすずと紗季とミサのポジションについてですね』

 

「なるほど…ん?あれ?紗季のポジションって、何かあったのか?」

 

すずさんのポジションは分かる。…正直俺もどうしようか悩んでたし、きっと女バスメンバーも気になったのだろう。…が、紗季については思い当たる節が無いし見当もつかない。

 

『あ、いえ!別に不満があるとかじゃなくて、その……紗季も複合ポジションをやりたいと言ってまして……』

 

…あぁ、そういう事か

 

「そうなんだ。それで、紗季は何処と何処を兼任したいって?」

 

まぁ正直紗季なら常識の範囲で言うだろうが…真帆が絡んで無い事を祈りたい。

 

『えっと……どうやら紗季はシューティングガードとポイントガードを兼任するコンボガードをやりたいみたいで……』

 

よかった。どうやら真帆は関係無さそうだな。…でも

 

「そうか…それなら今のポジションとも離れてないから全然大丈夫そうだけど…なんでそんなことを?」

 

突然言い出した理由が気になるな。

 

『…実は紗季、体育の授業でヒカリに負けてからライバル意識持っちゃって…それで、ヒカリが複数なら私は複合に挑戦したい!…と』

 

あははは…なるほど。紗季らしい発言だなぁ。

 

「なるほどね。…じゃあせっかくだし、シューティングガードとポイントガードの両方の練習をしていくか」

 

『わかりました。紗季にもそう伝えておきますね』

 

「あぁ、頼むよ」

 

理由が対抗心だとわかったのでそのままゴーサインを出す。…正直な所、紗季は近いうちにポイントガードへコンバートさせる予定だったから自然とコンボガードに近いプレイヤーにはなれたけどな。

 

『はい!…それでミサなんですけど…』

 

「…あれ?彼女はポイントガードの経験者なんじゃ…」

 

そう。彼女――宮城美佐子はそれなりに有名人だったりするんだ。

理由は彼女の兄貴にある。なんせそいつは俺と同じ歳でポジションも同じポイントガード。…まぁ、あっちは全中MVPでこっちは県中MVPだから実績は全然違うんだが。

…それは置いといて。そんな訳で彼女もまたポイントガードとしての能力や素質はかなりのものなので1番確定し易いと思っていたんだが…

 

『それが…「実は前々からシューティングガードやりたいなってずっと思ってたんや。せやけど私が行くチーム皆してポイントガード出来る奴がおらんかったんやわ。だから成り行きとは言えずっとやっとったけど…正直このチームはぎょうさんポイントガード適性あるやつおるし、ポイントガードだけそんな沢山要らんやろ?だからやらせてもらえへんやろか?」…って』

 

「…そうか…そういうことか…なるほど納得」

 

確かにありえるな。兄妹もとい兄弟プレイヤーにあるパターンのひとつに兄又は姉が、自分のポジションならちゃんと教えてあげられるという親心みたいなものを当人の意思を無視して押し付けてしまうというものがあるが、間違い無くそれだろう。

確かに体格や性格が似ている部分が多いなら理に適ってるが……本人の意思を蔑ろにしてまでやるのはおかしいだろう。だからこそ選択肢はひとつだな!

 

「…わかった。それなら彼女の好きな様にさせてあげようか。…うちは「楽しく勝つ」がモットーだしな」

 

『昴さん……はい!私達は「皆で楽しく勝つ」です』

 

「そうだな」

 

智花も俺の答えに嬉しそうに返す。

 

『それでもうひとりの経験者の有紀なんですが、有紀がずっとやってきたパワーフォワードでと言っていたのでその場で特に異議も無かったのでそのまま決定しちゃいました』

 

「うん、本人の希望ってことなら俺からも特に意見は無いし、それで良いんじゃないかな?…有紀は遠くからのシュートが全体的に苦手そうだけどゴール下での動き…特にリバウンドに対してはしっかり対応できてるから、シュートが得意な真帆との併用が出来れば頼もしい限りだよ」

 

『そうですね。真帆はシュートが得意だけどリバウンドはあまり得意ではないので良いペアだと思います。…最後にエリーとすず、あと瑞穂についてなのですが……』

 

今まで饒舌だった智花が急に歯切れ悪く切り出してくる。…まぁ、おおよそ検討は付くが、おそらく

 

「…話し合いでは決まらなかった?」

 

『はい…』

 

「だろうな…正直俺もまだどうするか決めかねてるし…」

 

そう。2人に関しては正直俺もどうやって成長させるか悩んでいる。…理由は2人共別々で、すずは初見の今回では見定められなかったという理由。エリーゼは体格こそ華奢なのだが、パスやシュートを始めとした基本的な技術やポジション別にある動作等を全体的に器用にこなしてしまうため、下手するとオールラウンドな選手になってしまうという理由からだ。…その結果、2人のポジションの固定が出来ないという事態に陥ってしまった様だ。…俺と同じで。

……けど

 

「…ただまぁ一応、瑞穂についてはポイントガードの練習を、とは思ってるけど……すずとエリーゼのポジションはまだなぁ…」

 

『そうですよね…』

 

「ごめんな、力になれなくて」

 

『あっ!いえ、私達が勝手に話してただけなので昴さんは気にしないで下さい!』

 

「そっか…」

 

『はい!あ、それと――――』

 

そして、しばらくエリーゼとすずのポジションについてや明日以降の個人・チーム練習について話し合い、智花の寝る時間となったのでお開きとなった。

…これは余談だが、電話を切ってからこんな長電話するならこっちからかけ直してやればよかったと後悔したのは内緒の話である。

 

 

~sideout~




後書きスキット:ガールズトーク!~恋話編~


帰りのスクールバス内での一コマ


ミサ「それにしてもあれやな」

真帆「んあ?どったのみさみさ?」

ミサ「みさみさて……まぁええわ。いやな、こんだけ美人な女の子多いのに、何で彼氏いる奴ひとりもおらんのかなぁ~ってな」

紗季「あぁ、そういう事ね」ニヤニヤ

智花「っ!?」ゾクッ…

ヒカリ「?…どうしたの智花ちゃん?顔色悪いよ?」

智花「(ドキッ!)ふぇっ!?べ、別に平気だよ??」

みずほ「なるほど……ふふっ♪」

ミサ「……あ~…そかーそういう事かー」

紗季「へぇ、2人共流石ね。今ので分かるなんて♪」キラーン

みずほ「いえいえ。…ふふふっ」

ミサ「せやなぁ…クククッ」

智花「ふ、二人共怖いよ~ぅ」(泣)

愛莉「あ…あの、すずちゃんは好きな人っている?」

すず「私にはそういう殿方は居ません。忍者ですから」凜!

愛莉「そ、そうなんだ……(忍者なの関係あるのかな…?)」

ひなた「おー、ゆきはいるの~?」

有紀「居るよー彼氏」

ひなたと有紀以外の8人「えええーーーーっ!?」

終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第16話:問題解決? 後編

という事で小説家になろうで掲載していたロウきゅーぶ!!~異次元からの助っ人編~のラスト投稿話ですっ!
次回からは次章の硯谷合宿編、異世界の少女達編、公式大会編、異世界冒険編…と続いていく予定になっています。…安定の不定期更新ですが、これからもこの作品を宜しくお願いします。
それでは長くなりましたがどぞ!


~エリーゼside~

 

昨日の帰りに皆と話していた時、智花達に『ポジション』というものについて聞いてみたのですが、どうやら戦闘時の役割分担みたいなもので私以外の皆は割と簡単に決まっていきました。…けど

 

 

 

…結局決まりませんでした。…私のポジション。

 

「…昴さん、何て言ったんだろうな……」

 

最近やっと慣れてきたスクールバスに乗りながら、昨日智花がスクールバスから降りる時に言った「昴さんに電話して聞いてみるから落ち込まないでね?」という言葉について考えながら、結論が出ないまま私はうたた寝してしました。…この揺れ具合は非常に眠くなりますね…

 

 

 

 

~~~~~♪

 

 

 

 

「それにしても、相変わらずエリーはバスの中では気持ち良さそうに寝てるわよねー」

 

「……………どうしていつも、起こしてくれないですか?」

 

「あはは…エリー、紗季も悪気があって起こさない訳じゃないから許してあげて?」

 

「うー……でも!毎日…ですよ?」

 

「ごめんね。エリーちゃん、すごく気持ち良さそうに寝てるから紗季ちゃんも私もつい起こしそびれちゃって…えへへ」

 

「むー…愛莉はずるい…です」

 

「え?」

 

朝のホームルーム前、私は起こしてくれない紗季に文句を言って、皆になだめられるといういつものやり取りをしています。…それにしても、私は愛莉に頭が上がらな過ぎな様な気がします。…何でだろう?

 

「…あ、そうだ!昨日昴さんと瑞穂とエリーのポジションについて話し合ってたんだけど」

 

「おっ、流石もっかんだな!仕事が早い。んで、すばるんは何て言ってたんだ?」

 

私がむくれていると、智花が昨日昴さんと電話で話したという事を報告していました。……結局どうなったんだろう…?

 

「えっとね、瑞穂は試しに私と同じシューティングガードをやらせてみようかなって言ってたよ」

 

「うおー!ついにもっかんにもライバル登場かぁ!!…だが!もっかんを先に倒すのはあたしだかんな!」

 

「あーはいはい。とりあえず真帆は少し黙ってなさい。「なんだとー!!サキ!そもそもあたしが…」…それでエリーについては何て?」

 

流石紗季です。真帆を完全にスルーして上手く軌道修正しました。

 

「あはは……えっと、実は昴さんも結構悩んでるみたいで…昨日は聞けなかったんだ」

 

「そう……。まぁ長谷川さんには何か考えがあるだろうし、エリーのポジションについては長谷川さんに任せましょう。トモの事だから私達の意見は全てお伝えしてあるだろうし、ね?」

 

「うん。もちろんちゃんと伝えてあるよ」

 

「そう。なら、私達は長谷川さんを信じましょう。今までも、長谷川さんはどんな状況も打ち破ってくださいましたしね」

 

「うん!私もそのつもりだよ。…あ、それと昼休みに皆に話しておきたい事があるんだけど…」

 

「おー?いまじゃだめなおはなし?」

 

「うん。エリーを含めた『6人』にとっては大事な話だから。…ダメかな?」

 

私を含めて?…どういう事だろう…?

 

「おっけー!んじゃ女バスメンバーは昼休みにミーティングだな!」

 

「そうね。ひょっとしたら長谷川さん絡みかもしれないし」

 

「うん、私も大丈夫だよ。それに紗季ちゃんの言う通り智花ちゃんひとりで抱えてた事じゃなさそうだよね」

 

「おー、ひなもいいよ」

 

「皆…ありがとう…エリーはどうかな?」

 

真帆も紗季も愛莉もひなも、智花の提案に賛成らしく、どうやら私の返事待ちの様です。…とは言え私も断る理由は特に無いので

 

「私も皆に賛成…です」

 

と答えました。…私としては友達のお願いを断りたくは無いですから……。

 

 

 

~~~~~♪

 

 

 

それから午前中の授業も終わって今は昼休み。ちょうどご飯を食べ終わった辺りで

 

「エリー、これから会議室行くから着いてきてくれないかな?皆も、良い?」

 

と、智花が言ってきました。

 

「ついて行くのは構わないわ。けど、朝言ってた大事な話の事よね?だったら今ここでも話せるんじゃ……」

 

智花の提案に対して紗季は疑問に思う事を聞いています。…確かに、話すだけならここでも良い気が…

 

「ごめんね紗季。…実は美星先生からの指示なんだ」

 

「えっ!?みーたんの?」

 

これは意外でした。まさか美星先生が関係しているとは思いませんでした…。…でも何でだろう?

 

「ま、行ってみりゃ分かるんじゃね?とりあえず行こうよ」

 

「…それもそうね。考えてても仕方ないし。…愛莉とひなもそれで良い?」

 

「おー、ひなはいいよ♪」

 

「うん。私もそれで良いよ」

 

「皆……ありがとう」

 

「ふふっ、お礼なんて良いから。それよりも早く行きましょ。昼休み終わっちゃうし」

 

「うん。じゃあエリーも一緒についてきてね」

 

「わかりました」

 

…きっと、行けばわかりますよね。

そう考えながら、私は皆についていきました。

 

 

 

~~~~~♪

 

 

 

「よし、皆集まったな」

 

会議室に行ってみると、1番奥の席に美星先生がいました。…やっぱり今回の件は美星先生にも関係がある様です。

 

「みーたん一体どうしたんだよ」

 

「真帆、それは今から話すから、今は席につけ。皆も好きな所に座りな」

 

……珍しく、といっては失礼ですが、美星先生はすごく真剣な表情で私達に指示をしました。…何が始まるんだろう…

 

「…それでみーたん。皆に、というか『私達6人』に話というのは…?」

 

全員が用意されていた席に座ったのを確認した紗季が美星先生に問い掛けました。

 

「ああ。実は「美星先生」…智花…」

 

紗季の質問に答えようとした美星先生の言葉を遮る様にして智花が声を出してきました。

 

「美星先生。この話は私からしても良いですか?…結局皆を…騙してしまったので――」

 

「――先に言っとくぞ。今回の件、智花は何も悪くない。…皆も、これから智花が話す事は智花に非は無い事だと思って聞いて欲しい」

 

「先生……でも」

 

「でももへちまもねぇよ。言うなっつたのは私と昴なんだからな」

 

「……よくわかりませんが、要は別にトモが悪い訳じゃない、って事ですか?」

 

2人のよくわからないやり取りに対して紗季が皆の思いを代弁して聞いてくれました。

 

「ああ。そういう事だな」

 

「…なんだかよくわかんないけどさぁ、そろそろ話してくれよ~」

 

「おぉ、すまんな真帆。んじゃ智花、これ以上待たせるのも悪いし、頼んだぜ」

 

「は、はい…では………実は、ね」

 

~~~~~

 

……智花の話を聞いて思った事があります。それは智花に非、どころか罪なんて何も無いという事です。――だって、『10人いないと公式戦に出れない事を隠してた』って本人は言ってますけど…実際隠せと言ったのは美星先生と昴さんですし、仮にまだばれてなかったからこういう展開になっていたんだとは言え、もし誰かが試合のルールについて調べていたら間違いなくアッサリとばれていたことです。

――――何よりも今は人数が10人いる以上別に謝られる様な話ではない気がします。…でも、どうやら皆はそうは思わなかったみたいですね。

 

「……話はわかったわ。まぁ確かにみーたんの言う通り別にトモが悪いとかは思わないわ。長谷川さんやみーたんの指示じゃ仕方ないしね…けど、嘘吐かれてたってのはちょっと思う所があるわ…」

 

「そうだなー。もっかんもすばるんもみーたんもさ、もー少しアタシ達の事信用してくれても良いのになー!」

 

「わ、私もそう思うかな。…頼りないかもしれないけど、迷惑じゃなかったら相談とかしてほしかったかも」

 

「ぶー、ひなも、そーだんしてほしかった。おにーちゃんもともかも、ひとりでなんでもやりすぎ」

 

…どうやら、相談しなかった事を皆は気にしているみたいです…ひなも珍しく怒ってます。

 

「皆……ごめんね」

 

「ふふっ、それはどういう意味でのごめんなのかしらね。長谷川さんとふたりっきりの秘密にしちゃった事?――それとも相談しなかった事?」

 

「紗季…」

 

紗季はこんな時まで智花の事を弄ってます。…何となくですが、紗季の持つアイス・エイジの二つ名の意味がわかった様な気がします…。

 

「ま、そういう訳で、10人無事揃ったからひとまずこの問題は解決した訳だ」

 

「おぅ!てことは試合出来るって事だよなみーたん!?」

 

「ああ!だから試合の心配はしなくて良いからな。お前らも練習頑張れよ!にゃふふ」

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

「んじゃ、休み時間も終わる頃だから早く教室戻れ…遅れんなよ~」

 

「「はい!(おぅ!)(はーい♪)」」

 

話し合いも終わったので私達は教室へと帰りました。

…この後に待つ予期せぬ出来事が起きる事など想像せずに……

 

 

~sideout~




後書きスキット:首脳会談(笑)


電話にて(美星視点)


昴『ミホ姉どうした?』

美星「いや、あいつらの練習試合と合同合宿について相談したくてな」

昴『なるほど。それで、どこかみつかったのか?』

美星「まぁ、7月頭に1校だけうちに連絡してきた所があってな。そこと葵の友達の紹介してくれた学校の2校が今のところ候補なんだが……」

昴『ん?なんか問題でもあんのか?』

美星「実は日程がかなりハードでな。葵の友達が紹介してくれた学校は7月の最後の週から8月頭辺りまでの1週間で予定の変更がきかないらしいんだよね~。んで、最初話した所は8月の第1週の週末で同じく変更がきかないんだと」

昴『つまり、試合と合宿が連続するって事か……』

美星「そゆこと。…そこでアンタに聞きたい訳」

昴『何をだ?』

美星「……両方、組みたいなぁ~って」

昴『…………ミホ姉なら言うと思った……俺もせっかくだし良いんじゃないかとは思うんだが……』

美星「だが?」

昴『…いくらなんでも厳しくないか?』

美星「そうかな…」

昴『普通はそうだ。始めてまだ間がない子ばっかりなんだから当たり前だろ……だがまぁ、智花達に相談してから決めても良いんじゃないか?』

美星「つまり、本人達がやりたいならやらせても良いと?」

昴『あぁ。それに、初めての対外試合だからな。経験は積ませたいよ』

美星「そうか!んじゃあ早速聞いてみるわ!!んじゃね」

昴『あ!おい』

ブチッ

美星「にゃふふ~。明日から忙しくなるぞ~」

ズキッ!

美星「ぐっ!!…ちくしょう。頼むから試合までもってくれよ…」

終わり

ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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硯谷合宿編
第17話:波乱の幕開け


新年あけましておめでとうございましたm(_ _)m(笑)

いやー、深刻なスランプに陥ると全然抜け出せませんね……ものすごく時間がかかりました(ーー;)申し訳ありませんです。

…ということで今回から硯谷合同合宿編が始まる訳ですが、展開はオリジナル要素9割原作1割くらいになる予定ですので気長にお待ち頂ければ幸いです。

それではどぞ!


~エリーゼside~

 

「合同合宿…ですか?」

 

今日は7月20日、学校は「夏休み」という長いお休みに入るそうで、今日はその前日「終業式」の日…なのですが、学校に来ていきなり智花から言われた一言はやっぱり私には聞いたことが無い単語なので聞き返してしまいました。

 

「合同合宿ってのは簡単に言うと知らない誰かと何日も生活を一緒にすることだぞエーりん!結構楽しiグハッ!!」

 

「真帆…その呼び方はやめなさい…です!」

 

「グッ…最近エリっちがサキ化し始めてrへぶしっ!!」

 

「失礼ね。私だって言って聞くならわざわざ殴らないわよ!…どっかの誰かさんが、言うこと聞かずに勝手な事するから仕方なくやってるだけでね」

 

「…です!」

 

うるさい真帆に制裁を与えたら、紗季も同じ様に制裁を加えました。…当然の処罰、です!

 

「あはは……けど、確かにエリーは紗季に似てきたよね」

 

「えへへ。エリーちゃん、紗季ちゃんと同じ様に真帆ちゃんと仲良くなったよね」

 

「おー、エリー、まほともなかよくなった♫それはとってもいいこと」

 

「……むー、最近智花と愛莉とひながイジワル…です」

 

一連の流れを見ていた智花、愛莉、ひなは笑顔でひどいことを言ってきます。…最近の3人はなんだかイジワル…です。

 

「まぁまぁエリーちゃん、3人も悪気があって言ってるんじゃないんだからさ」

 

むくれる私に対してヒカリはそう言いますけど……

 

「……ヒカリも面白がってます…よね…?」

 

「えっ!?い、いや、そんなつもりは……なくもない…かな?」

 

「…………ヒカリは素直過ぎ…です。もういいです…知りません」

 

顔が笑いを堪えてるのが丸わかりです…!

 

「あらあら…ふふっ」

 

瑞穂もこっちを見ながら笑っています。…隠す気が無さ過ぎてもう何も言いたくないです…。

 

「…さて、エリー弄りはこの辺にして本題の合宿について話しましょう?これ以上やると口きいてくれなくなりそうだし」

 

「そうだね」

 

「むぅ…」

 

紗季のため息交じりの言葉に苦笑い気味の智花が反応したけど…誰も否定してくれないのは正直ショック…です。

 

「…それで合宿なんだけど、本当は真帆ん家の別荘でやるつもりだったんだけど、みーたん…美星先生が葵さんの知り合いが経営している私立の小学校に3泊4日で合宿に行くから親御さんに話しておいてくれって言ってたのよ。…特に今月入ったメンバーにはちゃんと聞いておいてもらいたいみたいだから先行して聞いておくように私が頼まれたの」

 

「なるほど…それで、合宿というのはどんなものなんですか?」

 

「合宿っていうのは仲間達といろんな所へ行って練習したり遊んだり…あと皆で同じ所で寝泊まりすることよ」

 

「…つまり、短い旅みたいなもの…でしょうか…?」

 

「旅??」

 

「…エリーはここに来る前に世界を旅したことがあるのよ」

 

「まぁ!」

 

「そうなんだー…私と同じだったんだね」

 

私がかつてジュードやミラ達と旅をしていたことは最近入ったヒカリや瑞穂にはまだ話していなかったので瑞穂は口に手を当てて驚いていましたが…ヒカリは最初こそ驚いていましたが、瑞穂の声が聞こえると笑顔で予想外なことを言いました。

 

「えっ!?じ、じゃあヒカリもいs「ゴホン!」――仲間と旅をしていたの?学校にも行かないで??…その割にはエリーよりも全然常識知ってるわよね?」

 

紗季が動揺して秘密にしている「異世界で旅をしていた」という事を話そうとして真帆のあからさまに嘘の咳で我に返った後、この場にいる全員が疑問に思った事を聞きました。…最近知ったのですが、紗季って予想外の出来事に弱くて意外とうっかりさんなんですよね。

 

「あぁ、私は4年前の夏休みと去年の冬休みの短い期間だけだったから私生活には全然影響無かったのよ」

 

「あぁ、そういうことね。…でも4年前の夏休みってことはあの事件(・・・・)の頃よね?大丈夫だったの?」

 

「あ…えっと、うん、おかげさまで…あははは……そ、それよりもエリーちゃん、合宿っていうのは短い旅みたいなもので間違ってないよ」

 

紗季の質問に明後日のほうを向きながら答えてから私にそう答えるヒカリはどこか焦っているようにも見えます。…でも人には言えない事情のようですし、ここは流してあげたほうが良さそうなので

 

「なるほど…わかりました。それなら大丈夫そうです」

 

紗季に答えるだけにしました。

 

「え?…で、でもお父さんやお母さんに聞かないで大丈夫なの?」

 

虚を突かれたのか、ヒカリは驚いた顔で私に聞いてきます。

 

「はい…あの、何か変ですか?」

 

「…エリー、一応言っとくけど普通の小学生(・・・・・・)は遠出する時保護者の人に許可を貰うものだからね?」

 

「…………えっ!?そうなんですか?…知らなかった…です」

 

私は紗季の言葉でそのことを初めて知りました…けど、今まで両親がいなかった私には知る術なんてありませんから知らなくて当然だと思うことにします。

 

「…紗季、そろそろ朝のホームルームが始まっちゃうからとりあえずまとめよう?」

 

私への説明の間ずっと何も言わなかった智花が紗季に話をまとめるように言いました。…こういうところはエースという感じがしますね。

 

「……そうね。エリーの誤解とかその他諸々はこの際後回しにして、とりあえず皆にはご両親にこのことを話しておいてほしいってことでいいよね?」

 

「うん、分かった」

 

「許可を貰えたら紗季ちゃんに報告すれば良いのかな?」

 

「ええ、全員の参加の可否が分かったら私から報告することになってるからそれでお願いね」

 

「「「「「「「「了解」」」」」」」」

 

…合宿、楽しみです。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

翌日、私たちは全員無事保護者からの承諾を得られたので慧心学園初等部の職員駐車場に集合することになり、朝一番(昨夜は興奮してあまり眠れなかったのは内緒です)で来たのですが……

 

「…早く…着きすぎました」

 

時間は…朝6時を少し回ったところですね…確か集合時間が朝8時だったハズなので…

 

「…あと2時間…何してようかな…」

 

…昔の旅では一番最後に来ていた私なので、気持ち早めに出てきたつもりだったのですが…早すぎたようですね…

 

「…あ、そういえば校庭にゴールできてたな…よし」

 

皆が来るまで軽く練習してようかな…?

 

 

~sideout~

 

 

 

~紗季Side~

 

現在の時刻、7時30分。今日の集合時間、8時。…よし、いつも通り30分前に着いたわ。

 

「…さて、最初に来るのはだれかしr」

 

 

――――ダム!・・・ダムっ!・・・パスッ――――タタタッ・・・

 

 

!?わ、私より早く来ている人がいるの!?……転校生組の誰かかしら…?

 

「……気になるわね…誰も来てないし、行ってみましょう」

 

 

~~~~~♪

 

 

「――えいっ!」

 

シュッ・・・・・・パスッ!・・・ダン、ダン、ダン、

 

…私は今、最近できた校庭の隅にあるバスケットゴールの近くに来ている。理由は校庭の方から音が聞こえたから。…そしてこの光景を見た。

 

――――エリーがかなり遠くからものすごく≪低い≫ループでリングに当てずにシュートを決めているのを。

 

「(え…エリーって最近バスケの存在を知ったのにいつの間にこんな高等技術を…!?)」

 

「ふぅ…とりあえず今日のノルマ(・・・・・・)シュート練習200回終わり。…ティポ、今何時かわかる?」

 

・・・ん?えっ…ちょっ!?シュート1日200本って真帆の日課より多いじゃない!!どうりで上手いw「7時40分だよー!そろそろ行った方が良いんじゃない?」…え?今の声一体どこから…?

 

「うん、わかった……今日の合宿楽しみだなぁ」

 

エリーは時間を聞いて、ボールをバックに仕舞うとタオルを1枚出して顔を拭きながら自分の荷物を背負って駐車場の方へ戻っていった……ってのんきに実況してる場合じゃないわ!私も早く戻らないと……!

 

「…それにしても最後に聞こえたあの声は一体なんだったのかしら?」

 

最後に聞こえたエリーとは反対の活発そうな声の主について気になるけど、多分教えてはくれないだろうなぁ……。

や、無理には聞き出さないけど。

 

~Sideout~

 

 

 

~エリーゼside~

 

2時間位自主練習をしてから駐車場の方へ行くと、すでにバスが来ていて美星先生がドアの前に立っていました。

 

「遅いぞエリーゼ。どこ行ってたんだ?」

 

「えっと…早く着きすぎたので校庭で練習を…」

 

「おいおい…これから嫌って位練習するのに朝から飛ばしてるなぁ!本番でバテんなよー」

 

「はい…大丈夫です…頑張ります!」

 

先生とそんなやり取りをしてからバスに乗り込むと、後ろから足音が聞こえてきました。…私より遅い人居たんですね。

 

「はぁ…はぁ…み…みーたん…エリー、来ましたか…?…ふぅ」

 

足音の方を向いてみると、息を切らした紗季が膝に手をつきながら私のことを先生に聞いてます。…え?私?

 

「あぁ、ついさっき来たよ。もう乗ってるから早く乗れ」

 

「はい…ふぅ…」

 

紗季に早く乗る様に促した美星先生は運転席へと移動します。…ちなみに紗季は

 

「…おはようエリー。車内でゆっくり事情を聞かせてもらうから覚悟なさい」

 

私の前に来ると、眼鏡を光らせながら私にそう言って自分の席へと向かいました。…なんと言うか…後が怖い…です…。

 

〜sideout〜

 

〜昴side〜

 

ここ数日で一気に増えた女バスのメンバーに俺と葵、ジュードにレイアを含めたコーチ陣を乗せたバスは、ミホ姉の運転で硯谷女学園へと向かっていた。

 

「あ…あの、昴さん」

 

「ん?どうした智花?」

 

「実は朝、おにぎりを作って来たんですけど…もしよかったら昴さんも食べませんか?」

 

ふむ、おにぎりか…確かに今日は朝早くて朝食食べそびれてたし、ここは素直に頂いておこうかな。

 

「今日は朝早かったから朝ごはん食べて来れなかったし、智花が大丈夫なら是非頂きたいな」

 

「!ほ、ほんとですか!ではそちらに持って…きゃっ!」

 

「危ない智花っ!!」

 

智花がおにぎりを手に持ってこちらに来る途中に突然バスが急ブレーキで停止した。…幸い俺も智花の方へ行こうとしてたからギリギリかばえたけど、一歩間違えたら大惨事になるとこだったぞ…

 

「ーー大丈夫?智花」

 

「は…はい、なんとか……庇って頂きありがとうございました。昴さんは大丈夫でしたか?」

 

「あ、あぁ。俺は大丈夫…おいミホ姉!いきなり過ぎるぞ」

 

智花の無事を確認して安心した後、ミホ姉を糾弾したのだが……

 

「……………………………………………」

 

…あれ?反応が、無い?

 

「…おいミホ姉どうしt」

 

ミホ姉にしては無反応なのが気になったから運転席まで行ってみたが、そこには…

 

「……わりー……限界、みたいだわ……」

 

腹を抱えて力尽き、ハンドルに倒れかかっているミホ姉の弱々しい姿があった……。

 

〜sideout〜

 




後書きスキット:旅

〜合宿へ向かう車内にて〜

ひかり「そういえばエリーちゃんって昔旅をしてたって聞いたけど、どんな所を回ったの?」

エリーゼ「えっと…そうですね…リーゼ・マクシアならカラハ・シャールやイル・ファン、シャン・ドゥやカン・バルク。エレンピオスならトリグラフですね…あと世精ノ途(ウルス・カーラ)という不思議な所にも行きました。…ひかりはどこに行きました?」

ひかり「ウルス…カーラ?…あ、え、えっと私は中国とかかな?…あとはファイル島とかスパイラルマウンテンにも行ったけど……」

エリーゼ「ちゅう…ごく?…って何処ですか?」

ひかり「えっ!?…え、えっと…ってそれよりリーゼ・マクシアとかエレンピオスって何処なの?全然聞いた事無いけど…それってデジタルワールドにあるの??」

エリーゼ「デジタルワールド…ですか?…うーん…それも私には聞いた事がありませんよ…?」

ひかり「えー…」

エリーゼ「うーん…」

愛莉「……(わ、私には中国以外全く分からない…けどそれ以上に中国を知らないんだエリーちゃん…うー、すごく言いたい事があるのに何て言えばいいか分からないよぅ)」

おわり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第18話:硯谷女学園

ようやく学校来たー…長かったなぁ~ここまで。

ということで硯谷女学園編2話です。
…野火止先生が若干悪役っぽくなってますがご了承下さい。色々焦って作った結果なので(汗)

それと、エリーゼもジュードもレイアも一応回復技使えますがジュードとレイアは気づいていませんしエリーゼは周囲には隠してます。理由はまたいずれ書く予定ですが…TOXと似たような理由ですね。

それではどぞ!


~エリーゼside~

 

美星先生が体調不良で倒れてしまい、救急車で運ばれていきました。

紗季や真帆、ひなは、心配そうに。愛莉と智花は涙目になりながらも救急車を見送り、それ以外のメンバーは何が起きたのか理解できてないように見える位放心しています。…私はというと、ちょっとした罪悪感で皆を見ていられず、おそらく私と同じ心境であろうレイアとジュードのところに逃げて来ました。……何故なら私たちは≪治癒術≫が使えるのにも関わらず黙って使えないふりをした(・・・・・・・・・・・・)から。

 

「…ごめんエリーゼ。≪あっち≫では使えても≪こっち≫で使えるかはまだ分からないから……」

 

…ジュードが辛そうな顔でそう言ってくれてますが……ごめんなさい。実は私、以前家の近くで怪我をした猫相手に治癒術をかけようとした時に知ったんです。あの子を使えば治癒術が使える(・・・・・・・)ことを…。

 

「ジュード……と、ところで昴君、この場合今回の合宿ってどうなるの?やっぱり…その、中止、かな…?」

 

…レイアが暗い雰囲気を変えようと別の話題を出しました。…でもレイア、この場でその話題は――――

 

「あ、うん。今あっち学校の先生に連絡したら来ること自体は問題無いそうだから取りあえず向かうことにはなるけど……」

 

「ここから皆で歩き、なんだよね……私たちはともかく、小学生には厳しい距離なのよね」

 

昴さんとその幼馴染である葵さんは移動手段について悩んでいるようですが…どうやら合宿自体は大丈夫なようですね……。

 

「あー…確かに、エリーは大丈夫だけど他の皆にはちょっと厳しいかぁ…」

 

レイアも説明を聞いて悩むようなポーズをしてます。…確かにここから目的地までは多分5キロ以上ありそうですからね……

 

「あ、それくらいなら皆大丈夫ですよ」

 

突然声が聞こえたので私やジュード達が声の聞こえた方へ振り返ると、そこには手を挙げているヒカリ達女バスのメンバーがいました。

 

「え?でもまだここから5キロ以上あるよ?」

 

「でも5キロ程度しか(・・・・)ないんですよね?」

 

ジュードの問いに笑顔で答えるヒカリ。…確かに私たちは旅の経験があるから大丈夫かもしれませんが、他の皆は荷物を持って長距離歩くなんて経験したことないですよ?

 

「それなら最近始めたランニングより距離短いですから大丈夫ですわ」

 

みずほも笑顔でグーサインしてます。…けど…

 

「…けど皆、荷物を持って長距離歩いたことあるの?」

 

そこですよ重要なの。…と私が心の中で突っ込んでいると有紀とミサが

 

「「…確かに歩いた事(・・・・)は無いです(あらへん)ね。走った事(・・・・)はあります(ある)けど」」

 

「「「「「……………………………」」」」」

 

なんてとんでもないことを言い出したので私たちは絶句(最近覚えました!)してしまいました。

 

「…なんて経験してんよ…ってかどっから突っ込んでいいかわからないわ…ゴホン、まぁそういう訳みたいなので私たちは大丈夫です」

 

紗季に至っては眼鏡がずれていることにも気づいていないくらいに脱力しています。…まぁ気持ちはわかりますけどね…。でもそんな状態でもまとめてしまう辺り、やっぱり紗季は皆のまとめ役にピッタリです。

 

「それに、新人に負けっぱなしなんて私は嫌ですからね。ここで見返したいです」

 

ですよねー…紗季ですから…

 

「…エリーは着いたらお説教ね」

 

なんで!?

 

「エリー…思ってること全部洩れてるよ…」

 

「あはは…が、頑張ってね?」

 

智花と愛莉が苦笑気味にそう言ってくれます。……ううー…ちゃんと直さなきゃ…

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

話がまとまったので早速歩き出すこと約2時間。ようやく学校らしきものが見えてきました。…すごく、広そうです…!

 

「みんなー!あと少しよ!頑張ってー!!」

 

私の隣で元気な声を出して応援しているヒカリはまだまだ余裕そうですね…でも…

 

「「「「「「「なんでそんなに余裕なんだ(なの)(なんや)!?」」」」」」」

 

私とヒカリ以外は限界寸前のようで、理不尽な叫び声をあげています。…なので

 

「「鍛え方が違います(違う)からね」」

 

と応えておきます。…ヒカリとハモるなんて珍しいですね…なんか少しいやです。

 

「…え、エリーちゃん?またダダ洩れてるよ?あと本人の前ではやめようね?傷つくから」

 

「……ごめんなさい」

 

…またやっちゃったみたいです。

 

「あはは…その様子なら二人はいつものメニューで大丈夫そうだな。…けど…後ろの皆は軽めのメニューにしとく?」

 

「「「「「「「「そ…そうしてください…」」」」」」」」

 

「あ…あははは…はぁ、こんなことならバテたフリしとけばよかったわ…」

 

「……理不尽…です…」

 

「…お取込み中のようだけどよろしいかしら?」

 

!?

…と、突然後ろ――校門の方――から声が聞こえてきてびっくりです!

 

「あっ…えっと、硯谷のコーチの方ですか?」

 

「そうです顧問の野火止です。…失礼ですけど、どなたが長谷川昴さんですか?」

 

野火止と名乗った女の人は険しい表情でこちらに問いかけてきました。…うう…なんだか怖い雰囲気です…。

 

「あ、それは俺のことです。…本日はお呼びいただきa「挨拶は結構ですので皆さんついてきてください」…わかりました」

 

しかも昴さんの挨拶を遮ってさっさと歩き出してしまいました…まるで怒っているようにも見えますけど、私たちなにか悪いことでも…あ、遅刻、してますね…

 

「なんだよアイツ!すばるんに向かってしつれーだな!」

 

「真帆、怒りたい気持ちは分かるけど私たちは遅刻してるんだからそんなこと言わないの」

 

後ろでは野火止先生の言葉と態度で怒る真帆を紗季が宥めてますが…心なしか口調に怒気を感じますから、きっと紗季も内心ではきっと怒っているのでしょう…。

 

 

それに、今ここにいる私たちの中で怒ってない人はいないみたいですしね。

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

「…着きました。こちらが慧心さんに使って頂く宿泊施設です」

 

「ってここ外じゃん」

 

野火止先生の言葉に突っ込みを入れるレイア。…でも気持ちは分かりますよ?だって――

 

「…つまり、僕たちは野宿。ということですか?」

 

私たちが経験した旅でよく使っていた道具が一式置かれてるだけ(・・)の一角ですからね。…ジュードが珍しく怒ってるのも無理ないですよ。私も少し怒ってますし。

 

「そうです。…と言っても最低限の食材や設備はこちらで用意しておりますので、野宿というよりもキャンプという方が近いですが」

 

「……それでも俺たちは何も聞いてなかったのでキャンプの用意なんてしていませんが…?」

 

「…………顧問の方にはこの条件でも問題ないということで伺ってましたのでこの合同練習会について合意しました。なのでこの条件が無理なようでしたら残念ながら中止ということでお帰り頂きますがどうしますか?」

 

「…………………………………」

 

昴さん達はその言葉に沈黙してしまいました。……でもですね?私としてはここまで来て中止は流石に納得出来ません。なので

 

「…あの、それなら私たちと試合してください。私たちが勝ったら、練習に参加させてください」

 

「…それで?あなたたちが負けたらどうするの?」

 

「……私たちが負けたら「帰ります!」…紗季」

 

…私が言おうとしたことを取らないでください…

 

「そう。ですが仮にあなた達が勝ったとして、それ以前にあなたたちの衣食住をどうするつもりなの?今はその話をしてr「もちろんそちらの条件のままで構いません!」…はぁ、わかりました。あなたたちの気持ちに免じて練習には参加させてあげます」

 

「ありがとうございます先生」

 

「…ですが、今日は既に練習が始まってます。なので明日から合流してください。それでは」

 

手を額に当てながら野火止先生はそれだけ言って校舎の方へ歩いて行きました。…練習会、中止にならなくて良かった…です!

 

~Sideout~

 

~昴side~

 

「……成長したね、エリーゼ」

 

「そうだね…私たちもテントはるの手伝おうジュード!」

 

ジュードとレイアは二人で会話してから皆の元に走って行った。…多分旅の経験を生かして色々アドバイスしてくれにいったんだと思う。

すると二人が行ってから葵が

 

「ね、ねぇ昴?あの子凄い度胸あるみたいだけど、この学校のレベル知ってるの…?」

 

と、苦笑気味に聞いてきたから

 

「知らない…と思う」

 

と正直に答えた。…だって、戦績について話してた時エリーゼだけ何のこと?って顔してたし。

 

「でも」

 

「…でも?」

 

「…この先どうなるか楽しみだ」

 

「…はぁ、このバスケバカは…まぁ、気持ちは分かるけどね」

 

拳を握りながらそう言うと葵に呆れられたが、何か思う所があるのか苦笑気味にそう返ってきた言葉には同意の意味が含まれていたんだと思いたい。

…さて!明日が楽しみだ!!

 

~Sideout~




後書きスキッド:テント張り

先生・コーチ組が会話中の小学生’s

ヒカリ「テントかぁ~。懐かしいな~」

愛莉「ヒカリちゃんキャンプしたことあるの?」

ヒカリ「えぇ、何か月かガールスカウトに所属してた時期があってね。その時に」

紗季「へぇヒカリもなんだ。実は私も低学年の頃はガールスカウトに入ってたわ。だから私もテントの張り方は分かるから二手に分かれて作業しましょう」

ヒカリ「うん、わかった」


~~~~~~~~~~~~~~

有紀「………………」

ミサ「ほぇ~、藤井さん器用やなぁ」

有紀「…親と」

ミサ「親と?」

有紀「修行してた頃によく使ってたから」

ミサ「……そ、そうなんや…」


~~~~~~~~~~~~~~~~


瑞穂「…よいしょっと。すずちゃーん、これで大丈夫ですかー?」

すず「はい、大丈夫です。ありがとうございます」

ひな「おー…すずはてんとはるのとくい?」

すず「そうですね、任務に出る時はいつも持ち歩いてましたので」

瑞穂「(テントを持ち歩かないといけない任務って一体…)」



という事で原作と違ってものの数分で設営作業は終わりましたとさ(笑)
…え?ジュード達の救援?…もちろん皆の荷物を搬入しただけですよwww

終わり
ご愛読ありがとうございました!


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第19話:合宿の始まり

ということで19話です!…下級生との試合まで行きたかったなぁ~(>▽<)

そして今回はTOXからあの人が登場します!!(あの方らしく衝撃的な感じですw)

……にしても、ジュード君って「THE 主夫」の典型だと思いません?…あれは絶対「男の娘」だ「殺劇舞荒拳!!」よねぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


???「それでは、本編どうぞ」


〜昴side〜

 

色々あった初日から一夜明けた朝、俺は凄い光景を目にしていた。

 

「ジュードのご飯、久々ですね♪」

 

「久々って……ねぇエリー?もしかしてだけど…」

 

「?」

 

「…旅してた頃に、こーーーんな豪華な食事を毎日食べてたの?しかもキャンプで?」

 

そう。今目の前に用意された朝食は、紗季の言う通りキャンプで出てくるレベルを完全に超えたものなんだよな…なんせ、軽食の野菜満点サンドイッチにコーヒー、足りない人用なのか分からないがご飯ものとして目玉焼きにスクランブルエッグとベーコンにこれまた野菜の盛り合わせ。…挙句の果てには和食派用の鮭の塩焼きに味噌汁と、まさに朝食フルコースで準備されていたのだからもはや家、というよりホテルで食事をしている気分になってくる。(ちなみに昨夜の献立は紗季のお好み焼という女バス定番のメニューだった。もちろん味は最高)

 

「うん、そうだよ。しかもジュードの料理は美味しいから何度でも食べたくなっちゃうよー!ね?エリーゼ」

 

「はい。ジュードの料理はプロレベル…です!」

 

紗季の問いに答えたレイアはエリーゼと笑顔で口をそろえた。…まぁ確かに美味そうである。うん。…ただ…

 

「…この量、食べきれるのか?」

 

そう。量が半端ないのである。…ざっと見て一人当たり3人前計算だ。……しかし

 

「え?これくらいなら大丈夫じゃない?」

 

と作った張本人であるジュードがこれまた以外そうに答えてくれた。

 

「え、えっと…ちなみに何でか聞いてもいいかな…?」

 

葵が若干声を震わせながらそう問いかけるとこれまた意外な回答が飛んできた。

 

「ん?それは真帆ちゃんと紗季ちゃんに聞いたからかな…聞いたら結構食べる子がエリーゼ含めて3人以上いる(・・・・・・)そうだからね。それに、残ったらお昼に回せるでしょ?」

 

あー、なるほど。つまり昼食分もあるから余計に作ったってことか。

 

「まぁでも、これくらいなら全部無くなると思うから安心していいよ。さ、食べよう皆」

 

「「「「「「「「「「はーい!いっただっきまーす!」」」」」」」」」」

 

 

 

その後、あれだけあった朝食が15分足らずで完食になった。…その時思ったのは、ジュードが料理し慣れているということと、同じ男としてどうしようもなく負けているなという絶望感だった――――

 

 

~Sideout~

 

 

 

~葵Side~

 

朝食を食べ終えた私たちは早速体育館へと向かった。理由はもちろん朝練から合流する為。…それにしても、プール騒動の一件以来顔合わせてなかったとはいえまさかこんな都合よく人数がそろうなんて思わなかったなぁ…てっきり5人のままだと思ってたからショージに頼んで紹介してもらったけど…これなら普通に対戦をお願いしても良かったような気もするわね……。

…さて、新人さんたちの実力、見せてもらおうじゃない!今から楽しみだわ。

 

~sideout~

 

~昴Side~

 

「本日からお世話になる慧心学園女子ミニバスケットボール部です。短い間ですが宜しくお願いします」

 

パチパチパチ…

 

「それでは今日のスケジュールですが・・・・・・」

 

朝練習前の挨拶を代表で紗季が行いまちまちながら拍手が返ってくる。それが一通り静まるとあちらの顧問の先生――野火止初恵先生――が本日のスケジュールを発表していく。

 

「…結構キツそうだね」

 

「そうね…流石は名門校。練習の量が違うわ」

 

「にししし。でもアタシたちの方が練習してるぜ」

 

おいおい…そんなこといつも声量で言うなよ真帆…先生がこっちを睨んでるじゃないか…

 

「オホン!…では最後に、本日の午後最後に2軍チームと慧心さんは練習試合をして頂きます。…負けたら荷物をまとめて帰って下さい」

 

「ちょっ!?お、お姉ちゃん!それは流石にあんまりじゃないかな?」

 

野火止先生に対して抗議したのは先生の妹に当たる俺や葵にとっては先輩の野火止麻奈佳さん。…昨日食材やら水やらの必要物資の搬入を手伝ってくださった御庄寺の友人で、今回の合同練習を提案してくれた人だ。

 

「…私は昨日そちらのお嬢さんに申し込まれた条件を飲んだに過ぎません。…しかし、1軍に負けてあっさり帰られてもこちらとしては困る事情もあるのでこういった形で譲歩したに過ぎません」

 

「……本当なの昴君?」

 

野火止先生の言い分に対してそう聞いてくる麻奈佳先輩。…ってことは多分あの時のだよなぁ…

 

「…はい、昨日エリーゼが先生に合宿成立を賭けた試合を申し込んでました…しかし先生、事情というのは…」

 

「それは私ですよ」

 

麻奈佳先輩に答えた矢先に背後――体育館の入口――から声が聞こえた。そして振り返ってみると白髪の、いかにも貴族というような出で立ちをしたご老人が笑顔で立っていた。そして

 

「「「ローエン!?」」」

 

同じく振り返ったジュード、レイア、エリーゼは同時に驚いた様な声を出した。

 

「…理事長」

 

「「「理事長!?ローエンが!?」」」

 

野火止先生の溜息じみたつぶやきに3人はさらに驚いていた。…声がハモっていることにも気づかすに。

 

「……長谷川君達の知り合いでしたか…まぁ、そういう訳で試合は組むという流れになりました」

 

こめかみを抑えながらため息と共にそう話す野火止先生は何故か非常に疲れてる様にも見えなくはない。

 

「ほっほっほっ…本来なら来客を追い返すなど言語道断、ですが…エリーゼさんが新しい仲間と一緒にプレーする姿を見たいという個人的な思いもあったので不謹慎ですが、野火止先生に無理を承知でお願いしちゃいました」

 

そう穏やかな表情で語るローエンさんは何故だかいたずらっ子のようなおどけた口調だった。…この人、意外とおちゃめ、なのか…?

 

「…ローエン、あんまり先生を困らせないであげてね?」

 

ジュードも先生と同じポーズで窘めているということは…昔からこんな感じだったのかな……。

 

「ほっほっほっ。では、皆さん試合楽しみにしています。…エリーゼさん」

 

「はい…?」

 

「試合、頑張ってください」

 

「…はい!」

 

エリーゼにそう言ってからローエンさんは2階に行くための階段の方へ歩いて行った。……それにしても、エリーゼを見るローエンさんの表情が、凄い慈愛の強いものだったのは何故だったんだろうか…?

……とはいえ、この試合、皆の為にも負けられないな!俺も気合を入れないと…!

 

~Sideout~




後書きスキッド:練習中IN慧心

~~午前練習中の一幕~~

紗季「…さ、流石に名門っていうだけあって、下級生の方の練習なのに結構きっついわね…」

愛莉「そ、そうだね…」

ひなた「おー、それに、みんなばすけじょうず」

ミサ「せやな。流石に常勝硯谷復活か?って言われてるだけあるわ…皆しっかり練習しとる。な、有紀」

有紀「…………おしゃべりしてる余裕……私には無い」

ミサ「さ…さよか…」

真帆「ふぃ~スポドリうまー…んじゃ、次行こうぜもっかん!」

智花「う、うん」

ミサ「……あいつら化けモンかいな…」

紗季「真帆は昔から体力バカだからで、トモは単に慣れてるだけよ」

ミサ「う、うーん…なんつーか、自分ら規格外すぎないか…?」

紗季「そうでもないわ…アレに比べたら、ね…」

ミサ「アレ?……!!!?」


【エリーゼ「ヒカリ!次行いきます…」・ヒカリ「はいはーい!」・すず「いつでもいいですよ」】

ダムダムドガシャッ!!!

ミサ「……………」

紗季「……ね?」

ミサ「…ホンマ、あいつらが味方で良かったわ…」

紗季「ええ…」

ミサ「…うちらは常識人でいような?」

紗季「そうね…そうだといいわ…」ズーン


終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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新キャラの設定および立ち位置

野火止姉妹とローエンさんの立ち位置について
…とおまけ


ローエン(本名:ローエン・J・イルベルト)

(詳細情報はTOX時のローエンを参考に)

 

役職:理事長

この世界での設定:この世界に舞い込んだとき、「たまたま」硯谷女学園の初等部には理事長のイスが空席だったので成り行きで就任。(この世界で助けてくれた人が「偶然」硯谷女学園本部の人だったからというのが主な理由)たまたま職員室で今日の体育館の予定欄と施設利用団体の掲示を見て推理し、事前に得ていた情報でエリーゼが慧心のバスケ部にいることを知っていた彼は野火止先生に相談(――――)をし、試合観戦というよりエリーゼがこの世界で上手くやっていっているのかを確かめる為に試合を組ませた。

立ち位置:基本的にはチームの指揮をしたりはしない。ガチでただの先生ポジション。

     ただし、試合観戦と解説役としてはちょくちょく出てくる(笑)

 

 

野火止初恵(詳細情報はロウきゅーぶ!時の初恵先生を参考に)

 

役職:教諭・バスケ部顧問

この世界での設定:ローエンの理事長就任に一番反対していた人物で原作以上の堅物キャラと化し、ローエンのお茶目に一番悩まされている人物。…要は一番キャラが変わった人。

立ち位置:悪い意味でキャラ崩壊が少ない人。そしてローエンに一番振り回されている人物。…合掌。

 

 

野火止麻奈佳(詳細情報はロウきゅーぶ!時の麻奈佳先輩を参考に)

 

役職:臨時コーチ

この世界での設定:基本的に原作通りの人物。ただし、恋愛関係には無関係。でも正義感はそのまんま。そんな感じ。(そして一番影薄い・・・ドンマイ!)

立ち位置:基本的には先生の補佐。あとはローエンと初恵先生の喧嘩の仲裁。…え?コーチ業?…ちゃんとやってるよ?…うん

 

オマケ

 

藍田未有

 

所属:硯谷女学園小学部6年1組・ミニバスケットボール部キャプテン

 

誕生日:11月23日

 

身長:140cm

 

得意技:ダブルクラッチ

 

原作での彼女(wikiの一部抜粋):非常に高飛車な性格。男嫌いで、最悪な出会いをした昴を一方的に嫌っている。言葉の後に「そして、」とつなげる独特の口癖を持つ。能力は高いものの気分屋で斑気が強く、弱い相手には手を抜き勝てないと思うとあっさり諦めるなど問題のある行動も多い。その影響からか今年のチームは勝率は高いものの、優勝を経験していない。慧心学園との練習試合ではその斑気が災いして足を引っ張り、麻奈佳と初恵からメンバー交代を告げられてしまうが、自身の問題点を反省し試合に復帰した後は好プレイを見せる。

 

この世界での設定:原作のような男嫌いは露見しない。(夜中に妖怪(笑)を見てないしね)が、原作以上に非情で冷徹になっている。しかしそれは見下していたチームに惨敗した後輩を許せない気持ちが威圧感となって出てしまった結果であり実際はただのツンデレ。

 

 

立ち位置:硯谷のキャプテンでありエースなのには変わりない。…けど原作よりボケるし突っ込みもする。…とにかく疲れるポジションなのは間違いない。(ただしひねくれている時はただのボッチw)




文字数稼ぐの大変…

次回は本編!頑張って早めに仕上げます。。。


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第20話:圧倒する新星たち

約半年ぶりの投稿となりました…本当に申し訳ないorz

最後がすごくグダグダになってしまったが勘弁す><

それではどぞ!!


〜紗季side〜

 

午後の練習が終わって今は試合前のミーティング。長谷川さんを中心に今日の作戦について話し合いをしていた。

 

「それですばるん、今日の試合はどんな作戦でいくの?」

 

真帆がいつものように待ちきれないと言わんばかりに長谷川さんに詰め寄っている。…まぁいつも通りの展開なんだけど。

 

「そうだな…今日は最近加入した5人を中心にしたスタメンで行こうと思うんだけど…それでもいいかな?」

 

「ってことはうちらがメインっちゅうことやな!」

 

「えー!なんでなんで?!」

 

やる気十分なミサと異を唱える真帆。…まぁ真帆の気持ちも分からなくはないけど

 

「真帆、ひょっとしたら昴さんはエリー達の実戦データが欲しいんじゃないかな?だから試合数をこなしている私たちじゃなくてエリーやヒカリ達を先に出すんだよ。本番(・・)に備えて。…そうですよね昴さん?」

 

「智花の言うとおりかな。本番に向けての練習試合だから試運転も兼ねて今日はそうしたいんだけど…ダメかな?」

 

トモの言う通り、確かに最近入った転校生組は、長谷川さんの前での試合経験自体が無いから長谷川さんも知っておきたいと考えるわよね。…さて、そういうことなら

 

「そういうことでしたら私たちはそれで構いません。…そういうことだから真帆も今回は我慢しなさいよね」

 

「うむむ……確かにミサミサ達の試合をすばるんは見たことないからな…仕方ない!ここはてんこーせー組みに譲るぜ」

 

「ありがとう真帆。さて、肝心な作戦の方だけど…今回はミサのポイントガードとしての実力も見たいからコート内での細かい指示や判断は任せるよ。…けど、さっきも言ったように転校生組の実力を見たいからパスやプレーが偏らないようにゲームメイクすること。…できそう?」

 

うーん…長谷川さんの指示を聞いている限り、実質作戦自体はフリーってことか……

 

「そらもちろん問題あらへんよ。…ただまぁ、そういうことなら今回はこうしますわ。ボール権がこっちに来たら必ずウチに戻す(・・・・・・・)こと。つまりは速攻は一切ナシでいこいうことや」

 

「……それで皆の実力見せれるの?」

 

有紀の指摘は正しいわ。だってもし速攻が得意だったとしたら実力が出せないということになるからちゃんとしたデータが取れないことになる。

 

「もちろん大丈夫や。練習見た限りうちら5人の中で速攻が一番得意(・・・・・・・)って選手はおらへんからな」

 

「そう…ならそれでいい」

 

なるほど…ってミサはそこまで観察してこの提案をしたってこと!?……や、やるわね…私ももっと頑張らないと…!

 

「…決まったかな?よし!それじゃあいっておいで!」

 

「おし、ほんならいきましょか!」

 

「「「「おー!!」」」」

 

……この試合、おもしろくなりそうね

 

~Sideout~

 

 

 

~昴side~

 

今回の硯谷低学年戦のスターティングメンバーは

 

PG(ポイントガード)、宮城美佐子

C(センター)、八神ヒカリ

SF(スモールフォワード)、藤林すず

PF(パワーフォワード)、藤井有紀

SG(シューティングガード)、エリーゼ・ルタス

 

という転校生だけで構成した。…もちろんいつもの5人も途中から出す予定だけど、今回は試合を見たことがないメンバーのデータを収集したいからというのが狙いだからね。

 

「それじゃあ皆、いつも通り楽しんでいこう!!」

 

「けいしーんっ!ファイッ!!」

 

「「「「「「「「「「オーーッ!!」」」」」」」」」

 

 

 

~sideout~

 

 

~実況side~

 

「それでは慧心学園対硯谷女学園の練習試合を始めます。礼!」

 

「「「「「「「「「「お願いします!!」」」」」」」」」」

 

整列を終えた10人の選手が各ポジションへと移動し、センターサークル内には両チームのセンターが向き合った。

 

「よ…よろしくお願いしますっ!」

 

「うん、こちらこそよろしく♪」

 

両チームの選手が挨拶を終えたのを確認した審判役の野火止先生は試合開始を告げる電子音と同時にボールを真上にあげる。

 

「やっ!」

 

「もらいっ!」

 

ジャンプボールを制したヒカリはボールをミサの方へはたき、それをミサは難なくキャッチした。

 

「それじゃ、まずは一本気楽にいこかー」

 

「…ミサは気抜きすぎ」

 

「…相変わらずうちにはキッツイなぁ有紀は」

 

などと軽口を言いながらも難なくフリースローエリアまで到達したミサは少し思案してから

 

「……最初は……ここや!…ヒカリ!!」

 

「はいっ!」

 

ゴールポスト周辺にいるヒカリへとパスを出した。

 

「行かせません!」

 

「お、すごい気迫だね!…でもっ!」

 

「えっ!?」

 

ヒカリはセンターをやっている5年生と思われる女の子にかけていた力を抜き、彼女の体勢が崩れるのを見てからスピンムーヴでかわしてレイアップを決めた。

 

慧心 2 - 0 硯谷

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「ナイッシュやでヒカリ」

 

「ありがと、ミサもナイスパスだったよ!」

 

お互いの健闘を讃えてハイタッチを交わした二人は油断なくディフェンスに戻る。…が

 

「ドンマイ!次はこっちが攻めるよ!!みk「そうはさせません」えっ!?」

 

相手がボールをコートに入れた瞬間を狙って動いたすずがスティールを成功させたせいで二人は敵陣から一番遠い位置になってしまった。

 

「ミサさん、どうしますか?」

 

いつもの無表情でボールを抱えたままミサに問いかけるすず。それに対してため息を吐きながら

 

「……すずの好きにしぃやー!!」

 

と大声で叫んだ。…そしてその後後悔した。何故なら――――

 

「わかりました。ーー忍法、飯綱落とし!」

 

「え!?」

 

「嘘…でしょ…」

 

ズガーン

 

「「「「「「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」」」」」」

 

ボールをスティールしたその位置から飯綱落としを使いそのままダンクを決め、…そしてそれを見た女バスメンバー以外のこの場にいる全員が呆然と、対戦相手の少女たちに至っては絶望の表情を浮かべて半泣き状態で崩れ落ちていたからだったりする。

 

「(あちゃー……こらミスったわ…)」

 

「ぐすっ…ヒック…」

 

「怖いよぉ…」

 

「…………」

 

「こ、こんなことって…」

 

「よしよし、泣かないの…もう少し頑張ろう?……グスン」

 

「(…まさかこんなにカオスな事になるとは思わなかったなぁ……うちら、知らんうちに感覚麻痺してもうたんかなぁ……)」

 

「…ミサさん、どうしてあの方達はあんなに取り乱しているのですか?」

 

「……(しかも本人は自覚ゼロかぁ…)……はぁ……」

 

「?」

 

そして、とてつもなくカオスな現状を作り出した張本人であるすずはミサの溜息の意味が分からずただ首を傾げるだけなのだった――――。

 

 

慧心 4 - 0 硯谷

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

 

 

「…えー、それでは試合を再開します。硯谷エンドから始めますので選手はポジションに就いてください」

 

時計を止めてから硯谷の選手を宥めること10分。混沌とした空気から試合を再開させようと審判役の野火止先生がコートの選手へと声を掛ける。硯谷の選手たちはまだ多少ダメージは残っているもののなんとか精神状態を安定させコートへと戻るが最初よりも明らかに暗い。

 

「……まぁ、その、なんだ。さっきはウチの部員がすまんかったなぁ」

 

「…気にしてない。と言えばウソになるけど、全国にはこれくらいのレベルの相手もいるでしょうし彼女たちにはいい経験になったわ。だからそっちは気にしなくていいから」

 

「……おおきにな」

 

ミサが硯谷の6年生選手に声を掛け謝るも、苦笑しながらとはいえ気にするなと手を振られ頭を下げた。

 

――――――――

 

「先輩、お願いします!」

 

「おっけ!それじゃあ気を取り直して取りに行くよー!!」

 

硯谷の最年少選手の少女がミサと話していた6年生の選手へとパスをして試合を再開するも、やはり5年生や4年生の選手は先程のこともあり動きが消極的になる。そして――

 

「――あっ!」

 

フリースローラインでボールを貰った5年生の選手から有紀がスティールを決めてターンオーバーとなる。――しかし

 

「……ミサ」

 

「ん?どうしたんや有紀?」

 

「…………どうしていいかわからないから戻す」

 

「……ん。わかった」

 

明らかに怯えている硯谷の選手を見た有紀は速攻をする気になれずミサへとボールを返した。

 

「……さて、真面目にどないしよか…」

 

「…ひっ!」

 

「……………………」

 

ただ独り言を呟いただけで5年生と思われるポイントガードの子が涙目で悲鳴を上げるのを聞いて本気で困る慧心学園の選手。

 

「ミサー!」

 

するとベンチからジュードの声が聞こえ、指示が飛んできた。

 

「タイムアウト取るから一度ボール外に出してー」

 

「…了解や」

 

声が聞こえるやすぐに近場のサイドラインにボールを放り投げるミサ。

 

ピィィィッ!

 

「アウトオブバウンズ硯谷ボール!!タイムアウト!慧心学園!!」

 

審判である野火止先生の声とともに両チームの選手がベンチへと移動した―――――――――。

 

~sideout~

 

〜ジュードside〜

 

すずのシュートによって起きた一連の騒動によって硯谷の選手は完全に戦意を喪失してしまった。そんな相手を見ていられなくなったのか、昴がタイムアウトを申請しに行くという事で僕がミサへと指示を出すとあっという間にタイムアウトの声と笛が体育館に響いた。

 

「…すまんなぁコーチ、まさかここまで影響があるなんて思わなかったわ」

 

「いや、今回の事は完全に俺の落ち度だったよ。すまない皆」

 

困り顔で謝ってくるミサへ昴は苦笑気味ではあるが気にしなくていいと伝えた。…まぁ確かにこんなに影響が出るなんて正直僕も思わなかったから仕方ないと思う。

 

「……昴さん…この後の試合はどうしますか?」

 

エリーゼは皆を代表して昴に質問するも答えあぐねていた。――そして逡巡した後

 

「……少し早いけど、すずちゃんとひなたちゃん。ヒカリと愛莉を交替して相手の様子を――」

 

パアン!

 

交替と方針を伝えていると硯谷ベンチから頬を叩く乾いた音が響いてきた。

 

「情けないわねあなた達。それでも硯谷の選手なの?」

 

パアン!

 

声が聞こえる度に聞こえる乾いた音

 

「たかだかあの程度のシュートで泣き出すなんて」

 

パアン!

 

「恥ずかしいと思わないの?」

 

パアン!

 

「…しかもあなた、未侑と同じ6年生よね?どうしてもっとしっかりしないの?…先輩としての自覚、ある?」

 

「ご、ごめんみ――」

 

パアン!!

 

「そんな無様なことするからあなたはレギュラーになれないのよ…わかった?」

 

「……………………」

 

そして、自分の事を未侑と言った少女は試合に出ていた選手全員に強烈なビンタをし、その場から去っていった。

 

「……なんか感じ悪いわねあいつ」

 

「自分のチームメイトを、しかも後輩まで叩くなんて……酷過ぎる!!」

 

紗季の言葉に同意しつつ少女が去った方を睨みつけるヒカリは最早怒り心頭といった表情だ。

 

「…皆、今のやり取りを見て思うところがあるかもしれないけど、今は目の前の試合に集中しよう」

 

「そうだよ、昴さんの言う通り、まずは試合に勝って、それからお話(・・)すればいいんだよ」

 

「……と、智花ちゃん?言葉のニュアンスがなんかオカシイよ?」

 

昴にも思うところがあるようだがそれを押し殺して皆に集中を促すものの、普段落ち着いていて抑止力になるハズの智花が何やら不穏な物言いをしたのでレイアを含めた女性陣は少々表情が引きつっているものの

 

「…んじゃ、キャプテンもそう言うてるし、とりあえず勝ってこよか。みんないくで!」

 

「「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」」

 

皆の結束力は心なしか最初――試合が始まる前――より強くなっている気がするので、何か起きるまでは静観することにした。

 

 

~sideout~

 

~昴side~

 

タイムアウトが終わり試合は硯谷ボールから再開されたが、タイムアウト前と大して変化のない硯谷は自滅。こちらはミサを中心に試合展開をコントロールしながらデータ収集のみを目的とした何とも言えない機械的な試合となった。――――そして

 

ビーーーーー

 

「試合終了。30-6で慧心学園の勝ち、礼!」

 

「「「「「「「「「「ありがとうございました!!」」」」」」」」」」

 

最終スコア(と言っても前後半6分ずつの2Qのみだが)30-6という大差で勝利したが、こちらの皆は非常に不服そうだった。

 

「勝ったから合宿を続行できるのは嬉しいけど……」

 

「まぁ、完全に硯谷の自爆やったからなぁ……」

 

「……でも、勝ちは勝ち。とりあえずは安心。そうでしょコーチ?」

 

「あぁ、これで1軍とも試合ができるし合宿も最終日までこなせるんだ……もちろん内容には皆思うところがあるだろうけど、相手よりまずは自分たちの課題をみつけて練習しなくちゃな!」

 

複雑な心境で神妙に話す紗季とミサに有紀は当初の対戦理由を言ってたので俺も乗っからせてもらうことにした。

…年上としてはどうかと思うが。

 

「……はい、次はあの小さい人もチームを倒したい…です」

 

「そうだねエリー、あの子に皆でやるバスケの強さをみせつけよう!」

 

エリーゼの意気込みに、珍しく熱くなっている智花が同意して場を盛り上げる。

 

「おー、次も勝って、お兄ちゃんに褒めてもらおう」

 

「えへへっ。ひなちゃんがんばろうね♪」

 

「おーし!あのちびリボンにあたしたちの力みせてやろうぜ!!」

 

「うん!」

 

こうして、硯谷合宿参加初日の日程は終了した。……もちろんその後の夕食や風呂時、就寝前にいろいろあったのだがそれはまた別の話だ。

 

~sideout~




後書きスキッド:試合を観て…

試合終了後・ローエン視点

ローエン「ほっほっほっ……良いご学友を持ったようですねぇエリーゼさんは」

ローエン「しかし、うちの生徒にあんなやんちゃな子がいたとは…やはり日頃の授業だけでは分からないものですな…しかし、エリーゼさん達なら彼女を立派に変えてくれる。…そんな気がしますね」

事務長「先生!こちらにいらしたんですか…探しましたよ!」

ローエン「おやおやどうしたのですか?」

事務長「あぁそれが例の海外チームも代表が、選手の一人が先行してこちらに向かってしまったそうで、着いたら保護しておいてほしいとの連絡が……」

ローエン「そうですか…では、その件を野火止先生に報告しておいてください。あと一人分の宿泊施設の利用申請の準備をお願いします」

事務長「わ、わかりました。それでは」

事務長out

ローエン「……さて、私も行きますか。久しぶりにジュードさん達とお話したいですし」

おわり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第21話 激突!!硯谷女学園VS慧心学園 ~はじまり~

気が付けば、前の投稿から1年以上……。
忙しかったとはいえ遅すぎやな……orz

ということで今回は朝と試合前のブリーフィングです!
……すいません。試合は次回からです…とほほ

それではどうぞ!


~ジュードside~

 

合宿最終日の朝、小学生組は妙な静けさで朝食を食べていた。

 

創設時の初期メンバーである真帆、紗季、愛莉、ひなたは実質初めてだという他校との練習試合前の緊張で。転校生組と智花は合宿継続を賭けた模擬試合の際に見た相手チームのキャプテン――名前は藍田未有(あいだみゆ)ちゃんというらしい――の理不尽かつ横暴な振る舞いに対する怒りを押し殺しつつ、今日の試合のイメージや集中力を高めるといった準備をしている。――――そんな雰囲気を僕は感じていたのだった……

 

 

~side out~

 

 

~昴side~

 

「それじゃあまず、今日の試合のスタメンを発表します」

 

両チーム共試合前のアップが終わり、最後のミーティングをするために集まった皆にそう切り出す。――そう。今日この時まで皆には試合のメンバー…スタメンを言ってなかったりする。

 

「ちょっと昴!あんたまだ言ってなかったの!?」

 

「あぁ、ちょっと考えがあってな。もちろん皆がオッケーしてくれたからでもあるけど……」

 

「はい!昴さんの考えが私たちには解りましたので皆納得してます」

 

「智花ちゃん……でもだからって試合直前まで隠すなんて――」

 

「葵さん、直前やないとむしろ意味あらへんのよこれは。……まぁそれより時間もあんまり無いさかい、早よスタメン言ってや」

 

「ああ」

 

確かに葵の指摘も間違ってはいない。実際、このタイミングでサプライズ発表なんてしたら完全に捨てゲームになってしまうからな。……でもま、この辺詳しく説明してたら作戦や方針を言う暇がなくなるから葵には悪いけど試合中に説明するとして、今はスタメンを伝えないとな

 

「じゃあまず第1Q(クォーター)の5人だけど、ここは敢えていじらずに創設メンバーで行こうと思う。ポジションは、PG(ポイントガード)を紗季、SG(シューティングガード)を智花、PF(パワーフォワード)を真帆、SF(スモールフォワード)をひなたちゃん、C(センター)を愛莉で。……紗季はいきなり初めてのポジションで大変だと思うけど頑張って!」

 

「はい!自分の持てる力を出して頑張ります!」

 

「うん、そして第2Qは転校生メンバーでいくんだけど、ポジションはPGをミサ、SGをエリーゼ、SFをすずちゃん、PFを有紀。そしてCをヒカリでいきたいんだけどいいかな?」

 

「ま、無難な振り分けやろな」

 

「1、2Q共異議はないです」

 

「開幕を創設メンバー、2Qを転校生メンバー。当然の決定だから異論はない」

 

「私もそれでいいわ!」

 

「…………(コクン)」

 

上からミサ、すず、有紀、ヒカリ、エリーゼの順に快い返事がきたので一先ずは安心。さて、あとは――

 

「それと、転校生メンバーの方は第2Qではすずちゃんの飯綱落としとエリーゼの”アレ”は無しでお願い」

 

「なるほど、オッケーや」

 

「ち、ちょっと昴!?すずちゃんのはまぁわからなくはないけどエリーゼちゃんの”アレ”ってなによ?」

 

「……わかりました……」

 

「ごめんなエリーゼ。せっかく練習してたのに」

 

「ちょ!?また無視!?」

 

「昴さん、私の方は第2Q何をすればいいでしょう?」

 

「すずちゃんは第2Q、相手のボールをスティールすることだけ(・・)に集中してほしい。お願いできる?」

 

「わかりました。相手の全てのボールを盗ります」

 

「な…なんかニュアンスが怪しいけど……とりあえず最初の指示はそんな感じでいいかな?」

 

「私らはOKやで?」

 

「私たちもだいじょぶです!!」

 

「よし!じゃあ皆、思いっきりやろう!!」

 

「「「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」」」

 

「……ふん。昴のバーカ……」

 

……作戦会議の短い間に説明してる暇無いの知ってていじけるなよ葵。……まぁ言わないけどさ。蹴られるし…

 

 

~side out~

 

 

 

~ナレーションside@硯谷ベンチ~

 

 

慧心サイドが試合前ミーティングを行っている頃、硯谷ベンチ内は異様な雰囲気に包まれていた。

 

「…相手はどうやら素人達が先のようね」

 

「いや、皆素人でしょ」

 

「弱い方が先って、昨日あたしらに勝って慢心しちゃったのかな?」

 

試合には出ない下級生の3人――昨日の試合に出ていて泣き崩れた選手――が漫才のような掛け合いをしていると

 

「あれだけ無様に負けた恥晒し達が何偉そうに語ってんのよ」

 

「「「ひ…っ…!」」」

 

硯谷のエースであり昨日の試合で後輩やチームメイトを引っ叩いた藍田未有が2人を睨みつけながらそう吐き捨てた。

 

「まぁまぁ、それくらいにしときなって未有。そんなにビビらせたら後輩たちまた漏らしちゃうよ?」

 

「……ふん」

 

未有の隣で準備をしていた6年生のセンター塚田 久美(つかだ くみ)が昨日の惨状を思い出し、苦笑いしながらキャプテンを諌める。――そう。昨日の試合後、負けた自分たちは制裁されるのではないかという恐怖から試合に出た下級生たちはベンチ内で放心して膝から崩れ落ちた後、お漏らしをしてしまったのだ。

それを先生やコーチと一緒に片づけた塚田以下6年生達は自分の試合前にそんな面倒は嫌なのもあり仲裁したのだ。――――勿論、塚田や他の部員も昨日の惨敗には思うところ(主に素人相手に対する醜態)はあるが、まずは自分も戦ってからにしよう。という結論になり今は(・・)特にお咎めはなしということにした。

 

「……さて、昨日の試合で思う事が多い子も多いでしょうが先に言っておきます」

 

生徒達が落ち着いたのを見計らい、顧問である野比止初恵(のびどめ はつえ)はいつもの厳格な表情で告げた。

 

「慧心は間違いなく今の我々より強いです」

 

「「「「「「「「「「えっ!?」」」」」」」」」」

 

試合に出るメンバー10人は驚きの表情で先生を見上げる。そこへコーチの野比止麻奈佳(のびどめ まなか)が同意しながら説明をする。

 

「……そうだね。私もお姉ちゃん…初恵コーチの言う通りだと思う。だって今の皆、慧心さんを見下してる様に見えるから」

 

「「「「「「「「「「!!!」」」」」」」」」」

 

「……ハッキリ言うよ。慧心さんは強い。だから皆、最初から全力で点獲りに行くよ!!」

 

「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」

 

「……………………」

 

「……………………」

 

今目の前にいるメンバーの弱点を見抜き、自分が今言おうとしていた事をすべて言った妹を隣で見た姉は思う。

……やっぱりこの娘には才能があるのだと。――そして願わくば……

 

「……何よ皆して。あんな素人連中未有がいれば瞬殺だってのに……バカみたい」

 

――この未完の天才を…問題児エースを真の意味で覚醒させてほしいと。

 

 

~@sideout~

 

~実況side~

 

「それではこれより、硯谷女学園対慧心学園の練習試合を始めます。礼!!」

 

「「「「「「「「「「宜しくお願いします!!」」」」」」」」」」

 

コート上に2つのチーム、10名の選手に公式審判団から派遣された女性(硯谷が2日後に行う国際親善試合の為に呼んでいた方)が立ち、試合前のあいさつをする。

そして、最初のジャンプボールをする為に2人のセンター――慧心の愛莉と硯谷の塚田――がセンターサークル内で視線を交える。

 

「よろしくお願いします(10人揃っての初めての試合……頑張らなきゃ!!)」

 

「よろしく。(へぇ……ずいぶんと大きいな此奴。……でも、このままならアタシの相手じゃないね…!)」

 

そして……

 

準備……(ready)

 

試合開始!(Tip Off)

 

慧心学園女子バスケ部の10人揃っての最初の試合が今始まった。

 

~sideout~




後書きスキッド:聞こえてるんですけど…

真帆「……なあ?」

紗季「言わないで。皆分かってるから」

美佐子「アレはすごかったなぁコーチ?」

昴「…………ノーコメントで」

智花「……………………」

ひなた「おー?ともか、どうしたの?」

智花「ふえっ!?な、何でもないよひなた」

ひなた「?」

紗季「トモ…あなたまさか…」

智花「それ以上は言わないでね紗季♪」

紗季「!!……は、ハイ……」

エリーゼ「……智花が怖い…です……」

葵「すーばーるー?」

ドカッ

昴「ぐふっ!……どうして……こうなった……」ガクッ

相手ベンチの雑談でとばっちりを受ける昴であった……合掌

終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第22話 静か過ぎる幕開け

今回は文字数少ないのもあって早い投稿になりました(笑)

そして、この小説を読み返して思ったこと。それは……

修正箇所が全く修正・訂正されてないやん!!

ということ。……はぁ、早急にやらないとあかんなぁ……


愚痴が長くなりましたが、それでは本編をどぞ!


~実況side~

 

 センターサークルでのジャンプボールは愛莉が制し、慧心からの攻撃でスタートした試合は開始から3分近くが経過したが驚く程静かに進んでいた。

 

――――バシュッ!

 

「ナイスよトモ!」

 

「紗季もナイスパスだったよ」

 

この試合がポイントガードとしての初めての試合である紗季からエースの智花へのパスが通りそのままレイアップでゴールへと沈めて得点し、今現在のスコアは

 

慧心 8ー6 硯谷

 

となった。……が

 

「うーん……」

 

「……………………」

 

入れられ、ただのワンゴール差とはいえリードされた硯谷のメンバー…とくにエースの未侑とセンターの塚田はそれぞれ無言だったり首を傾げて唸っているだけでこの状況を気にした風ではない。

 

「……はぁ。久美、言いたいこととか気持ちは分かるけどもう少し試合に集中してくれない?未侑も、無言で睨んでないで連携に入ってきてよ!」

 

エンドラインからボールを受け取ったポイントガードの甲本みすずが塚田久美と藍田未侑へ抗議の声をあげる。

 

「んー……そう、だな。考えるのは後にするか」

 

色々と考えたが答えの出なかった塚田は甲本の抗議に謝り走っていった。

 

「……このQ(クォーター)はあんた達に任せるわ。ディフェンスは自分の持ち場だけはやるけどオフェンスはパスしかしないから」

 

未侑は甲本にそう言うと歩いて相手の陣地へと向かう。

 

「……はぁ。また怒られるよこのパターン……」

 

未侑の我儘で過去にキツーイ罰を受けた経験のある甲本は誰にも気づかれずにため息を吐くと、ドリブルを開始して相手のコートへと走って行った。

 

 

~~~

 

一方、ベンチでは未侑と甲本を見ていた野火止姉妹が同時にため息を吐いていた。

 

「……お姉ちゃん、まーた未侑が投げてるよ」

 

「……そうね。しかし、慧心はどういうつもりなのかしら?昨日のアレを使えば瞬殺だろうにこんな地味な子たちを重要な第1Qに起用するなんて」

 

「うーん……聞いた話だと、今出てる彼女たちがこの部活を作ったんだって。だから多分、バスケ選手としての経歴の長さで選んだんじゃないかな?…昨日の子たちはほぼ全員7月に転校してきた初心者らしいから」

 

妹麻奈佳の話を聞いた姉初恵は神妙な顔で頭を抱えると

 

「…そんな初めて1か月も経ってない素人に昨日は惨敗してたのね…」

 

と独り言の様に呟いたのだった……

 

 

~~~

 

第1Q開始から5分。お互い特に熱くなる事もなく得点を重ね、スコアは

 

慧心 20-20 硯谷

 

の同点で硯谷からの攻撃が始まろうとしていた。

 

「さてと、大体実力は分かったし……そろそろ点数取りに行くか……」

 

残り時間1分となり、甲本はパスを受け取るとそう呟き塚田へと目配せをする。

 

「(なるほど……あたしの所からか……了解!)」

 

甲本の意図を悟った塚田は不敵に笑いそれに応えると、敵陣のインサイドまで突っ走った。

 

「!愛莉、速攻来るよ!!」

 

「はいっ!」

 

甲本・塚田のファストブレイク狙いにいち早く気付いた紗季が愛莉へと指示を飛ばすが、ゲーム開始から塚田をマークしていた愛莉は既に自陣のインサイドで相手を待ち構えていた。――が

 

「読みは良いみたいだけど」

 

「!!」

 

「そんな身体じゃあたしは止められないよ!!」

 

「ぐぅぅっ…!」

 

塚田は自身の持ち味であるフィジカルの強さを活かしたパワードリブルで一気に押し込んできたが、愛莉はそれに必死に対応する。だが

 

「それっ!」

 

「あ…っ!?」

 

必死になり過ぎた為に相手のロールへの対応が遅れてしまい得点される。

 

慧心 20-22 硯谷

 

「ごめん紗季ちゃん」

 

「大丈夫!まだ時間はあるわ!ここしっかり決めるよ!!」

 

「うんっ!……紗季ちゃん!」

 

謝る愛莉に紗季が励ます。そして、エンドラインから愛莉がボールを紗季へと投げ入れて再開する……ハズだった。

 

「遅い」

 

スパン!

 

「え……」

 

不機嫌な声が聞こえたと思った次の瞬間には既にボールがリングへと吸い込まれていたのだった。

 

慧心 20-24 硯谷

 

ビーーーーーッ

 

そして、呆然と、何が起きたか分からない中第1Q終了のブザーが鳴り響いたのだった……。

 

続く…




後書きスキット:試合中のベンチ内~慧心side~

葵「……ねぇ昴、なんか静かすぎない?」

昴「そうだな……」

レイア「え?そうかな?皆しっかり声も出てるし、むしろうるさいくらいだと思うけど……」

ジュード「違うよレイア。二人が言ってるのは内容の事だよ…ほら、ここのチームって全国でも指折りの強豪だって言ってたでしょ?」

レイア「あー、そういえばそんな事言ってたよね」

ジュード「レイア……まさか聞いてなかったの?」

レイア「い、いや?ソンナコトナイヨ?」

ジュード「全く…レイアったら…」

昴「……お互い、幼馴染には苦労してるんだな…」

ジュード「あははは……」

葵「昴~?後で体育館裏に集合ね?」

レイア「じゃあ、ジュードもね!」

昴・ジュード「はぁ……」

終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第23話 実力差 ~第2Q前半戦~

最近、サクサクし過ぎてて薄い様な進んでない様な複雑な感じの本小説。
……はい、すいません。修正サボってます。頑張ってやらな…

それではどぞー


〜実況side〜

 

慧心の選手は一様に唖然としていた。何故なら…

 

「お…おいサキ。い、今何が起きた?!」

 

「……ごめん真帆。私にもよくわからないわ…一体何をしたのあの子は?」

 

「……皆、とにかく今はベンチに戻ろう?…愛莉も、まだ試合は始まったばっかりだから今のは気にしないでね?」

 

「うん……ありがとう、智花ちゃん…」

 

「…………」

 

驚きと分からなさから半ば興奮気味に紗季へと質問する真帆と、呆然と真帆の質問に答える紗季、事態を把握し半泣き状態の愛莉を慰めベンチへと戻ろうと気丈に振る舞う慧心のエース智花。無言で未侑を――彼女にしては珍しく――睨みつけるように見続けるひなたと、それぞれが違う意味で普段の彼女たちからは想像つかない様な行動をしていたから。

 

「ふん……やっぱこんなもんか…つまんないの」

 

硯谷の選手がベンチへと帰る中、そのうちの一人である未侑は誰にも聞こえないようにボソッと愚痴るのであった。

 

~side out~

 

~昴side~

 

第1Qのラスト、硯谷のエースとして聞いていた少女藍田未侑のスティールからのシュートというプレーで呆然としている智花をはじめとした創設メンバー達。だが、それとは対照的にベンチでは…

 

「…………」

 

「……あの人、あれだけの事言っといて大したことない?」

 

「…あれならまだすずの方が速い…です」

 

「…相手のエース、上手いけど弱い」

 

「……なんや、ここまでぼろくそな言われ方されてるの聞いてたらえらい同情したなってきたわ…」

 

「あはは……」

 

「そうだね……」

 

「すずちゃんに至っては最早相手に興味なし、って感じだしねぇ…それより昴、あの子たちのケア。しっかりやんないと」

 

「ああ、わかってる」

 

俺の予想に反して酷評を始めた転校生メンバーと苦笑いが止まらないジュードとレイア、葵に説教される俺というカオスな会話がされていた。すると

 

「あの…昴さん」

 

まさに意気消沈、とでも言うような智花の声と、苦しそうな顔をしている紗季に真帆。最早涙を堪えているだけという状態の愛莉に本当に珍しい(というより俺は見たことが無い)暗い怒った顔をしているひなたちゃんがそこにいた。

 

「ん。…皆、最後の展開には思う所があると思うけど、今はまだ試合中だ。次はエリーゼ達の出番だからしっかり応援しよう!」

 

「…………」

 

「そうだな、応援するのも大事だよな……でもすばるん、あたし達負けてるのに怒らないの?」

 

「っ!」

 

まぁ確かに真帆の言い分もわかる。……でも

 

「真帆、確かに負けてるかもしれないけど、まだ負けた(・・・)わけじゃないよ。だから今はそういうのはナシ!……だから愛莉も、そんなに気にしないで?」

 

「……グスッ……はい…」

 

「……そうだな。こんな弱気なんてあたしらしくないよな…うん、ありがとすばるん!」

 

ビーーーーッ!!

 

「…よし、じゃあ第2Q頼んだよミサ!」

 

「ほいほい、一気に大差つけてくるわ…ほな皆、いくで!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

インターバル終了のブザーが鳴ったのでミサ達転校生組5人がコート中央へと歩いていく。それを見届けながら俺は……

 

「智花、ひなたちゃん。ちょっと俺と一緒に外来てもらえる?…少し話がある」

 

真剣な表情で二人にそう言うと

 

「はい」

 

「…お兄ちゃん…いいよ?」

 

と、言ってくれた。すると

 

「あれ?すばるん達は応援しないの?」

 

と真帆から声を掛けられた。…まぁそうだよね。俺がしっかり応援しようって言ったのにその当事者がしないんじゃね。

……でも

 

「ごめんな真帆、…でも、二人との話は第3Qに必要な事だから…」

 

「そっか……ん、分かったよすばるん!!こっちはあたしにまかせとけ!」

 

「ありがとう真帆。…葵、ジュード、レイア、すまないが…」

 

「はいはい、なんかあったら呼びに行くから、早く行きな」

 

「ん。頼んだ…じゃあ二人とも」

 

「はい」

 

「うん…」

 

葵に試合を頼んだ俺は二人を連れて体育館の入り口まで行った。……文字通り、第3Qの作戦会議をする為に――

 

~side out~

 

~実況side~

 

第2Qの開始が審判から宣言され、硯谷から攻撃が始まった。――はずが

 

「ほな、早速攻めますか。――すず!」

 

「はい、――忍法・不知火!!」

 

すずがそう叫ぶと、一瞬でボールを持つ硯谷PGの手からボールを奪い去り慧心の攻撃に変わる。

 

「ミサさん」

 

「ほいほい、おおきになすず」

 

「え…ちょっ!?何が起きたの!?」

 

ボールをミサにパスしたすずはそのまま自陣のコートへと戻っていく。…もちろんボールを盗られた硯谷の選手は動揺を隠せない。

 

「混乱してるとこすまんが……一気にいくで!!」

 

そう言うとミサは相手PGをいとも簡単に抜くと相手コートまで一気に走っていく。

 

「ちょっ!?早すぎっ…!!」

 

「あんたらが遅いだけや」

 

スパンッ

 

誰にも追い付かれる事もなくあっさりとレイアップを決めたミサは冷たく言い放った。

 

慧心 22-24 硯谷

 

 

「……あんたに恨みは無いけど、あんなもん見せられて黙ってらんないんはわいも一緒やから手加減なんてせんで。……一気に潰す!!」

 

「ひっ…!」

 

そして、普段は比較的笑った顔の方が多いミサが鋭い眼光で相手を睨み、それを見た硯谷PGの少女は怯えた声を出す。

 

「ほな皆、いくで!弔い合戦や!!」

 

「……ミサ、ひなたたちは死んでないから」

 

ミサが真剣な顔でそう言うのに対して有紀が冷静にツッコミを入れる。それを聞いたミサは

 

「そうや…こんなキレのいいツッコミを待っとんたんや…!」

 

と、感動したように呟く。……やはり彼女にシリアスは向かないようだ。

 

「未知子落ち着いて!次獲れば良いんだから」

 

SGをしている少女がPGをしている少女――未知子というようだ――へと声を掛ける。そしてボールをエンドラインから投げ入れるが・・・

 

「遅いっ!」

 

そう声が聞こえた直後、再びボールはすずの手の中にあった。そして今度は

 

「ヒカリさん」

 

と、相手ゴールの丁度上位にボールを投げる。それを空中でキャッチしたヒカリは

 

「はい…っ!!」

 

と、ゴールへ叩き付けた。――ダンクシュートで

すると

 

ビーーーーッ!!「タイムアウト!硯谷!!」

 

という声とブザーの音が鳴り響いたのだった……。

 

慧心 24-24 硯谷

 

続く




後書きスキッド:ギャップ怖い

第1Qラスト。慧心ベンチでは……

ミサ「なんやあいつ、思ったより早いやないかい」

エリーゼ「え…?あんなにゆっくりなのに…ですか?」

ミサ「…………じぶん、感覚おかしいんやないん?」

ヒカリ「え?私もゆっくりだなぁって思ったけど……私たちおかしいのかなぁエリーちゃん?」

エリーゼ「……ヒカリと一緒はちょっと……」

ヒカリ「ちょっ!?どういう意味よー!」

有紀「そんなことよりも大事な事」

ミサ「あぁ、…すまんがわい、いまのプレーはちょっとばっかしキレたわ」

ミサ・すず以外の3人「え……っ!?」

ミサ「精神的なダメージを狙ったクラッチプレー…ああいうのはほんと気に入らん」

有紀「それは私も賛成。あれは完全に狙ってやった。許せない」

ミサ「せやからすずとヒカリには最初に大ダメージをあたえてもらうわ。……昨日の再現しちゃる」

エリーゼ・ヒカリ・有紀「(…ミサのことは怒らせない様にしよ。あとが怖い…)」

終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第24話 天使たちの負 ~体育館外~

短めですが割と早めに投稿できました。
そして、修正も無事終わりました!…もしまだ変な部分がありましたら教えて頂けるとありがたいです。

因みに今回は先にベンチ裏の3人にスポットを当てています。
……多分、あの子のあんな感じは何処の二次小説でも無さそうだと思うので、出来れば批判は勘弁頂けるとありがたいです。…きっと誰よりも仲間思いなんだと思うから。

それではどぞ!


~昴side~

 

智花とひなたちゃんを連れて体育館の外(と言っても試合中だから扉を挟んで外というだけだけど)へと出る。すると智花が不意に

 

「…………がっかり、しましたよね?」

 

と、問いかけてきた。その顔を覗くと――今にも泣きそうな表情をしていて、葵の言っていた言葉の本当の意味を知った気がした。だから

 

「そんなことはないよ。智花なら、この後いくらでも挽回できるって俺は信じてるから…それに、あの奇襲を読めなかったのには俺にも責任がある。だから謝るのはむしろ俺の方だ。……ごめんな、2人とも(・・・・)

 

そう言って俺は2人に頭を下げる。すると

 

「あ、あの頭を「お兄ちゃんは悪くない!!!」っ…ひなた?」

 

智花の声を遮りひなたちゃんの叫び声に近い大きな声が聞こえた。

 

「……お兄ちゃんはわるくない……わるいのは……あの人で……」

 

驚いて固まっていた俺と智花の前で――――ひなたちゃんは今まで堪えていたのか、大粒の涙を零しながらぽつぽつと喋りだした。

 

「グスッ……あの人が……あんなことしなければ……あいりも…ヒック…ともかも……かなしいかお…しなかった……」

 

「ひなた…………」

 

「……お兄ちゃんが…こんなおかおで…ごめんなさいしなかった…っ!!!」

 

「ひなたちゃん…………」

 

普段、天使のように可愛らしくふわふわとチームの輪で笑顔の花の中にいる純粋無垢な少女が、仲間や俺なんかの事で悔しそうに…泣きじゃくる姿を見て俺は……

 

「!…~~うわあぁぁん」

 

抱きしめて、気が済むまで泣かせてあげる事しか、できなかった。……正直、この子たちのコーチを引き受けてから初めて、己の無力さを痛感した。

 

「……ひなた……昴さん……私……」

 

そして、泣きじゃくるひなたちゃんを見ながら思いつめた表情の智花が話しかけてきた。

……けど、こういう時の智花は変な事を言い出しかねない。だから

 

「……智花、一つだけ相談したい事があるんだけど、いい?」

 

と、本題を切り出すことにした。――もちろん

 

「ふえっ!?…え、えっと、…はい。なんでしょう?」

 

智花はいきなり話を切られてあたふたしたが、それでも先に俺の話を聞いてくれるようで先を促してきた。

 

「第3Qだけどさ、瑞穂を1Qフルで出さないといけないから混成でいきたいんだけど……、智花以外で(・・・・・)未侑ちゃんと1対1でつけれる人いないかな?」

 

「え……それ…って…」

 

まずい!!

智花もメンタル崩壊寸前だったんだ!!!俺のバカ!!

 

「私……は……もう……い…いら「そうじゃない!!」っ!!!」

 

顔面蒼白・涙腺決壊寸前の小学生に大きな声は拙いけど、今はとにかく説明しないと!

 

「…大声出してごめん。でも聞いてくれ智花、これは作戦なんだ」

 

「……作……戦……?」

 

「そう!後半で逆転負けしない作戦なんだ。……もちろん智花が体力切れなんてしないのはわかるよ?でも他の皆はそうじゃない……次のQで必ずどこかが崩れる……もしそうなった時、どうすることもできないじゃ勝てないんだ」

 

「……けど……私以外で…って…」

 

「あぁ、確かに言った。……でもそれは要らないからじゃない!これは第4Qへの布石なんだ……これだけは……信じてくれ」

 

それだけ言って俺は、可能な限り頭を下げた。……本当は土下座でもするべきだろうけど、今はひなたちゃんを抱きしめている状態だからできない。…それでも智花は

 

「……わかりました、私は…昴さんを信じます。だから頭を上げてください」

 

「ありがとう、智花」

 

困り笑いをしながらだが納得してくれたみたいで頷いてくれた。……本当に、この子には頭が上がらないなぁと思う。

 

「…あ、それで昴さん。先ほどの質問なのですが」

 

「うん」

 

「多分――――なら」

 

「なるほど……」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

それから少し打ち合わせをしてから戻る為に体育館の扉を開ける。(ひなたちゃんは途中から泣き止んで話に入ってきてくれた。ひなたちゃんにも関係あることだから話せたのは良かった)

――そして、目に入ってきた光景に俺たちは言葉を失った。

 

「えっとぉ~……昴、さん…?」

 

智花も呆然とそう呟くのがやっとの様で先の言葉が出てこないみたいだ。……ひなたちゃんに至っては理解すら追い付かないようでビックリしたって顔のままで立ち尽くしている。

 

「……これは……想定外だな……うん」

 

俺も苦笑いしかでてこない。何故なら・・・

 

慧心 124-26 硯谷

 

というとんでもないスコアがついていたからなんだよね……この短時間に何があった…orz

 

~sideout~




後書きスキッド:大人の心配(笑)

葵「(昴にはああ言ったけど大丈夫かなぁ……アイツ女心と微塵も分からないからなぁ…)」

初恵「(長谷川君……あの子たち連れてどこへ行くのかしら?……頼むから問題だけは起こさないでよ~…あの理事長だけで厄介事はお腹一杯なんだから……)」

美星「(くぅ~腹痛ぇ……あのロリコン、問題起こしてなければいいが……頼んだぞ、葵!)」

レイア「(……葵ちゃん、我慢しないでついていけばよかったのに…不安なのが顔に出ちゃってるよ~……ふふっ、まぁそれだけ昴の事好きなんだろうけどな~)」

ジュード「(智花とひなた、大丈夫かなぁ……頼んだよ、昴…!)」

真面目なジュード君は平常運転だとさ、めでたしめでたし。
終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第25話 地獄の無限ループ ~無慈悲なる逆鱗~第2Q中・後半戦

んー…長い割には話進まない…orz
サクサクいかないのがこの作品よなぁ…

今回は遂にあの方がオリジナルの2.5倍ほど怒ります。
……これで更生…は甘いかな?(笑)

という事で本編どぞ!


~実況side~

 

スティールからの速攻にスティールからのダンクという小学生離れした試合展開にたまらずタイムアウトを取った硯谷サイドは困り果てていた。

 

「あ、あの先生……この後どうしたら……?」

 

「高さ・スティールの技術。この辺りはまず間違いなく相手の方が上だよね……うーん、となると、ドリブルより遠投をキャッチしてすぐシュートするしかない……かな?…どう思うお姉ちゃん??」

 

コーチである麻奈佳は頭を抱えながら考えられる手段を言ってみるも、内心では「それじゃあ素人男子の体育バスケじゃん…ないな」と思っていたりする。なので本当の顧問である姉・初恵に聞いてみる。――だが

 

「…………体育で男子の子たちがそんな事をしていましたが……まさかこんな形でやらせなければならない(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)とは思いませんでしたね」

 

というとんでもない答えが返ってきた。

 

「ちょっ!?お、お姉ちゃんそんなんでいいの?!他にもっと……」

 

「そうね、確かに久美以上の長身選手がいれば他にもやり様はあったけどね……今の戦力じゃ、間違いなく瞬殺されます。……だから相手がシュートを入れるまでの時間を長くする事が今は最優先事項だと思って言ったまでよ」

 

「……確かに、自陣にパス渡したらその時点で相手がボールを奪って回してシュート。なんて繰り返さえたら点差が開きすぎて取り返せえなくなるか…」

 

姉の言葉に腕を組んで考えていると不意に

 

「……ごめんなさいコーチ……私たち、役立たずですよね……」

 

と、控えのキャプテンを務めるPGの未知子がそう自嘲気味に言ってきた。

 

「い、いや!皆は頑張ってるよ!!…ただ、相手があまりにも規格外なだけで…」

 

「そうです。彼女たちがおかしいだけであなたたちのプレーに問題はありません。…ですが、この後のプレーはさっき麻奈佳が言った通り遠投でできるだけ時間を使わせる様にゲームメイクをして下さい」

 

慌てる麻奈佳に対していつも通りの冷静な初恵の指示に「わかりました……」と力無く答えた未知子はそのままチームメイトの元へと戻っていった。

 

ビィーーーーーーーーッ!!

 

「……時間ね。皆、まだ諦めるには早いです。しっかり食らいついていきなさい」

 

「「「「はい!!」」」」

 

「…はい」

 

そうして、硯谷のタイムアウトは終わったのだった…………。

 

 

 

~~~~~~

 

 

「……なんや自分、えらい落ち込んでるけど大丈夫かいな?」

 

試合が再開し、硯谷のエンドラインから始まった攻撃は初恵の指示通りコート中央までの遠投に成功した硯谷の攻撃から再開されるも、電光石火で回り込んだミサによってコート中央で足止めされた未知子にそう質問をしたミサ。……しかし

 

「…………正直に言うとね…今すぐ泣き叫びたいわ」

 

「……そか」

 

諦めに近い声音で返事をする未知子にミサはそれしか声を掛けられなかった。……それが本音なのが目に見えて分かったから。……でも、だからこそ

 

「……うちらも友達があないな事されなければこんな残酷な事はせんつもりやった。…わいらも試合はしたいし。……けどな、あんたらのキャプテンに泣かされたあの子ら見たら本当に許せんのや。…せやから先に謝っとく」

 

そこで言葉を切り、言い切った。

 

「泣かせるような事してごめんなさい」

 

「!!」

 

試合中だというのに頭を下げるミサに驚く未知子。そんな未知子にミサは

 

「早よいけ。これっきりやから…あんたらが点獲るのは」

 

と頭をさげたままそう言い放つ。

 

「…ありがとう、…うちの先輩がごめんなさいっ!!!」

 

ミサの好意に未知子は謝罪を返すとそのまま抜き去りミドルシュートを放ち――――

 

パシュッ

 

綺麗なフォームで得点を入れた。

 

慧心 24-26 硯谷

 

 

~~~~~~

 

それからは本当に一方的な展開だった。

そう。遠投をすずやエリーゼ、ヒカリや有紀が相手より先にキャッチし、すずが飯綱落としで超遠距離ダンクシュート(・・・・・・・)を決めるという作業を延々と繰り返し続けたからである。

 

「……これで良かったの?」 

 

「…………せや。ここで相手に情持ったら智花ちゃんたちに顔向けできひんからな…」

 

「っ!……それは……そう……だよね……」

 

あまりにも一方的になり、第2Qの途中から相手に対して同情的になりつつあるヒカリはミサに対して聞くも、ミサは仲間の気持ちを想い心を鬼にして残酷な言葉を返す。――ヒカリが「仲間」という言葉には何も返せない事を知っていてこう言ったのだから……

 

「(すまんなヒカリちゃん…けど、今は……)……すず!」

 

「はい――忍法・飯綱落とし!」

 

シュッ……ガシャン!!

 

慧心 124-26 硯谷

 

ビーーーーッ!!!

 

「第2Q終了!!ハーフタイムの後第3Qに入ります!!!」

 

そして、すずの飯綱落としが決まると同時に第2Q終了のブザーが鳴り響き、それぞれの選手が自陣のベンチへと帰って行った……。

 

~sideout~

 

 

~ジュードside@慧心ベンチハーフタイム~

 

目の前で起きた正に「蹂躙」とも呼べる光景に、慧心側のベンチは何も音を立てられずに茫然としていた。……勿論、僕もその一人で例には漏れず、昴と智花、ひなたの3人が隣に来るまでずっとコートに視線が釘づけだったので……

 

「――な、なぁジュード?」

 

「――――うわっ!!」

 

昴が声を掛けてきた時は物凄く驚いた。

 

「ひゃっ!」

 

「おー??」

 

「うわっと!」

 

そして驚いた僕に対して驚く3人に「ごめんごめん…」と謝った。

 

「あ、あのジュードさん、一体何が起きたのですか?」

 

謝る僕に対して智花はそれどころではないとでも言うように慌てた様な感じで質問してきた。

……まぁ、直に”アレ”を見たわけじゃないしねぇ……

 

「え、えっと…」

 

「もっかん……あたしらの見せ場、無いっぽいよ」

 

僕がなかなか答えられずにいると、後ろから真帆の声が聞こえてきた。……振り返りながらその顔を見ると苦笑いだったが、多分心境は複雑なんだろうな……

 

「真帆、気持ちは分かるけどそれじゃあ伝わらないわよ」

 

「そか……じゃあサキ、説明よろしく~」

 

「はいはい……それでは長谷川さん、真帆の代わりに簡単な説明をしますけど…トモならちょっと考えれば分かるわよ?」

 

ため息をひとつ吐いてからそう言う紗季は智花に向き直ってそう言ってるけど……どうして分かるのかな?

 

「私なら?」

 

「そ。あとひなもね?」

 

「おー??……もしかして、すず?」

 

「正解」

 

「えっ!?……じゃ、じゃあもしかして……」

 

「ええ、そのまさかよ……全く、規格外もいいところよ…すずの忍術は」

 

呆れ半分感心半分な紗季の呟きに思わず僕も同意したくなった。……流石にアレは凄い以外考えられないよなぁ…

 

「えっと……つまりこのとんでもない大差はすずちゃんが?」

 

話についてこれてなかった昴が苦笑気味にそう紗季に聞いている。…まぁ、半分冗談ってくらいには聞こえるよね。

 

「そうなんです……すずが相手のボールをタイムアウト明けに相手がシュートを決めた1本以外全部スティールしてシュート(・・・・・・・・・・・・・)してましたからね…第2Q中ずっと」

 

「そんなまさか……もしそれが本当だとしたらすずちゃんのスタミナがまずいんじゃ……」

 

「嘘やないんよコーチ」

 

昴が紗季の話に動揺していると、コートから引き揚げてきた美佐子がそう言った。

 

「すずにこのQ中は全部スティールとシュートしてもろたわ。……勿論、コーチの指示を無視したんは申し訳ないと思っとる。…けど、どうしても許せへんかったんや。あの女のやり方がな」

 

「ミサ……別に俺はそれを責めたりはしないよ。勿論指示を無視するのは良くないけど、それが仲間の為ならラフプレイとか以外なら仕方ないよ」

 

ミサの何かを押し殺したような呟きに昴は不問の意を示すように言ってあげる。…ま、確かに仲間が泣かされたの見てなんとも思わない人間はそういないとは思うし、今回ばかりは仕方ないかなぁって僕も思う。

 

「コーチ……おおきにな」

 

「いいって。…さて、それじゃあ第3Qなんだけど……すずちゃんは…」

 

と言って皆が一斉にすずの方へと視線を向けると……

 

「…………」

 

「……長谷川さん…」

 

ベンチの後ろで横たわるすずと、それを介抱する愛莉からの首を横に振るジェスチャーがすべてを物語っていた。

――――すずのスタミナは限界だと。

 

「……わかった。愛莉はそのままの姿勢で聞いてくれ。他の皆もいいかな?」

 

愛莉の方を向いて一度頷いた昴は皆に向き直ると話を続けた。

 

「ミニバスの規定で登録選手は第3Qまでに一度全選手が1Q以上プレーしないといけないから瑞穂は予定通りに出てもらう」

 

「はい、私の準備はOKですわ」

 

「了解、ゲームメイクは任せるから自由にやってみて」

 

「畏まりましたわ」

 

合宿に来てからあまりしゃべっていなかった瑞穂(本人に聞いたら実はあがり症(自称)らしくて緊張しているらしい)が意気込んで答える。…試合スイッチが入ると大丈夫みたいだね。良かった。

 

「あとの4人はそれぞれ真帆、ヒカリ、エリーゼ、ひなたちゃんでいくけど、状況に応じて交代していくから出てない人でも何時でもいける様に準備しておいてね」

 

「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」

 

「……すみません、少し、よろしいですか?」

 

「ん?」

 

皆が返事をした直後、突然すずから声が掛けられた。……勿論一人で立てないすずに愛莉が手を貸した状態ではある……って!?

 

「動いて大丈夫なの!?」

 

「はい、怪我を負った訳ではないので…動くだけなら。…それよりひとつだけお願いがあるのですが……」

 

少しだけ苦しそうにしながらもいつものポーカーフェイスでそう言ってきたすずは、ビックリするような提案を僕にしてきたのだった……

 

~@sideout~

 

 

~麻奈佳side@硯谷ベンチハーフタイム~

 

衝撃的だった。

絶望的だった。

そして……信じられなかった。

 

「……やはり、だめでしたか……」

 

もはや諦めに近い呟きが、隣にいるお姉ちゃんから聞こえた。……無理もない、よね。

 

「ハァ……ハァッ……ッ……すみ……ません……役立たず…で…」

 

「……タイムアウトの時にも言いましたが、あなたたちには何にも責任はありません。……責任があるとするならば何一つ手を打てなかった我々コーチ陣に全てあります。……辛い思いさせたわね。ごめんなさい」

 

「っ!!?」

 

息も絶え絶え謝罪する未知子にお姉ちゃんは全面否定をした後、子供たちに頭を下げ謝った。

…もちろん

 

「……うん、お姉ちゃんの言う通り。悪いのは相手の実力を読み違えたあたし達コーチが悪いんだから、未知子は気にしないで休んでて?」

 

「……はい。……本当に…すみませんでした…っ!」

 

そう言うと、未知子はその場で声を殺して泣き始めた。……きっと、悔しいんだろうな。

 

「――で、コーチ。この後どうするんですか?」

 

あたしが未知子の背中をさすっていると、不意に後ろからあからさまに不機嫌な声が聞こえた。

――そう。未侑だ。

 

「第3Qは勿論あなた達正レギュラーの5人でいきます。これ以上点を取られる訳にはいかないですからね。……何か不服でも?」

 

お姉ちゃんはいつも以上に冷たい声音で未侑に答える。……そりゃこんな言われ方したら頭にもくるか。

 

「いえ、別に不服はありません。……ただこんな消化試合のような点差で未侑たちが出る意味あるのかなぁとは思いましたけど?」

 

「っ!!」

 

そう言って未侑は声を殺して泣いている第2Qのメンバーの方を見た。

……見下したような目線で。

それを見てあたしの中で何かがキレた。

 

「未侑!!!いい加減にしなよ!!それでもあんたは硯谷の選手か!?」

 

「っ!」

 

「点差が開けばいつも試合投げ出して!そんな子が試合出てたら士気が下がるってまだ気づかないの!?」

 

「で、でもコーチ…」

 

「うるさい!!言い訳なんか聞きたくない!!」

 

あたしの剣幕に冷や汗を流しながら未侑は引くが、今のあたしにはお構いなしだ。

 

「今日の試合だってね、あんたが昨日やり過ぎたりしなければこの子たちもこんな悲惨な状況にならなかったし、なによりね……」

 

そう言ってあたしは未侑の胸倉を掴む。

 

「あんたが第1Q最初から本気出してさえいれば良かったのに、手は抜くわ最後にあんなマネして慧心さんの選手泣かせるわ……あの強い子たち怒らせてこんな状況作ったのは全部あんただろ!?なのに試合が大差だからって温存~みたいな言い方して自分一人だけ逃げようとか卑怯なんだよ!!!恥を知れ恥を!!!分かったか!!!!」

 

「は…はい…すみませんでした……」

 

「……麻奈佳、その位にしときなさい。…ここで漏らされたら試合が止まってしまうわ」

 

「!……ごめん、お姉ちゃん」

 

私の剣幕を見て流石にヤバいと感じたのか、お姉ちゃんがとめてくれた。…流石に言い過ぎたかな?

……でもあたしは許せなかった。この行いを。

 

「……とにかく、第3Qの最初は第1Qと同じでいきます。点差は確かに絶望的ですが、次のQやこれ以降にあの非常識な技は絶対にきません。とにかく点を獲る事に集中してください」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「では時間まで待機」

 

そう言ってお姉ちゃんはチームの輪から少し離れた。あたしもそれについて行くと

 

「…あの子はもう出て来ないと思う?」

 

と、不意にそんな事を聞かれた。…確かにあれだけの動きを延々とやっていた以上スタミナ切れはあり得ない話ではない……けど

 

「……多分、第4Qには出てくると思う。だから次が勝負だと思うかな?…けど」

 

正直、いくら怒っていてもあんな暴走はしないと思う。絶対にスタミナ切れで試合続行ができなくなるのは見えている。――なら、何故それを承知でやってきたか。それは間違いなくスタミナ切れの心配が無いからだとしか言えない。でも相手に知られたら?と考えれば必然的に……

 

「もしこっちがそれに気づいたら間違いなく第3Q終盤には出てくるから、いかに気づかないフリをするかが勝負だね……」

 

「……ええ、とにかく。1点でも多く返さないといけません。……最悪、秘密兵器(・・・・)の投入も」

 

そう言ってお姉ちゃんはベンチより遠くにいる……観客席から見ている少女の方へと視線を向けた。

 

 

~@sideout~




後書きスキッド:不穏な会話

エリーゼ「あの…瑞穂…ちょっといいですか?」

瑞穂「はい、どうしました?」

エリーゼ「……私、あの人が許せない…から…試合始まった最初のボール…ください」

瑞穂「ええ…わかりました。思う存分潰してください♪」

エリーゼ「うん、ありがとう瑞穂…」

瑞穂「いえいえ、私もあの女には心底頭に来てましたから…ふふふ♪」

紗季「(……この二人は怒らせないように気をつけよ……何されるか想像もつかないわ)」

終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第26話Aパート 理不尽と猛反撃と不穏な空気 ~第3Q~

なんやかんやで長くなりすぎて収拾つかなくなってきたので分割することに。

今回、未侑が中心となって大暴走します(笑)
…でないと点差が縮められなかったので、かなりの凶キャラになります。

原作、どこへいったんだろう・・・?w


という事で本編どぞ!


~実況side~

 

ピッ!

 

「瑞穂っ!」

 

「はい!」

 

第3Qは慧心からの攻撃で始まった。

エンドラインからヒカリがこのQでPGをやる予定の瑞穂へとパスされ、コート中央までボールを運ぶ。するとそこに意外な人物が現れた。

 

「……次はあんたがポイントガードなの?」

 

そう、硯谷のエースにしてついさっきのタイムアウトでコーチに胸倉を掴まれ説教されていた未侑だ。

 

「……ええ。前の2人程は上手くありませんが一応。…それにしても、わざわざエース様が私の相手だなんて光栄ですわ♪」

 

「……ふん。お世辞なんて言ってる暇無い位にボコボコにするから覚悟してなさい」

 

瑞穂の皮肉に不機嫌そうに返すと未侑はディフェンスをする為に身構えた。

それに反応して瑞穂も戦闘モードになる。…だが

 

「……すぅ……はぁ……すぅ……はぁ……」

 

未侑は突然目を閉じて深呼吸を始めた。

 

「……(?…どういうつもりか知りませんが、今のうちにパスを…)…っ!?」

 

未侑の様子に最初疑問を持った瑞穂はパスをだそうと動き出してから目の前の人物の異変に気付いた。

――だが、それでも瑞穂の行動は早かった。

 

「エリーゼちゃん!!…?…!?」

 

雰囲気の変化に気付いたと同時に前方にいるエリーゼへとパスを出した瑞穂は瞬時に前を見るも本来前にいるハズの人間がいない事に気付いた。…そして同時に驚愕した。――なぜなら

 

「……………………」

 

「……早い!」

 

ボールをキャッチしてシュート体制に入ろうとしていたエリーゼの前にその人――――さっきまで瑞穂のマークをして目を閉じ深呼吸をしていたハズの未侑がシュートブロックの体制に入っていたのだから。

 

「……………」

 

「……っ!ヒカリ…っ!?」

 

「そんなっ!?」

 

シュートブロック体制の未侑が見えたエリーゼは慌ててシュートからパスに変え、ゴール下でポジション取りに成功していたヒカリへとボールを放った直後に未侑はそのパスを自らの手に当て弾き飛ばしたのだ。

 

「……………………!」

 

「っ!?未侑っ!!」

 

未侑が弾いたボールを偶然キャッチした甲本は、手を前に出し走り出した未侑に対してパスを出す。…当然甲本をマークしていたひなたが阻もうとするもわずかに届かずそのボールは未侑の手に収まった。

 

「………………」

 

「い、いけない…!皆戻っt…っ!?」

 

「…………」

 

状況を見ていた瑞穂が指示を出しつつも未侑の侵攻を阻止しようと自らディフェンスに向かうも一瞬のうちに横を抜かれ言葉を失う。…だが

 

「そう簡単にアタシは抜かせないぜ!!」

 

「…………」

 

瑞穂よりも早く自陣へと戻っていた真帆が未侑の進路を塞ぐが……

 

「?………………」

 

「え…………?」

 

パシュッ…トントントン…

 

「……」

 

真帆を一歩も動かすこともなく一瞬で横を抜きレイアップを決めた未侑。――そう。未侑は実質ヒカリ以外の4人を全て一息で抜き去りゴールを決めたのだ。

 

「……な……何…何だよ今の……」

 

ビィィィィーッ!!

 

タイムアウト・慧心!!

 

真帆が呆然と呟いたと同時にブザーとタイムアウトを告げる審判の声が体育館に響いた。

 

慧心 124-28 硯谷

 

~side out~

 

~昴side~

 

……信じられないモノを見た。

まさか…小学生のミニバスであんなとんでもないスキルが出るとは思わなかった。

…今は、それしか言えない。

 

「…昴さん、今の…何ですか?…あの子の動きが、急に……」

 

「それは…「ゾーンや」…ミサ?」

 

呆然と質問してきた智花に答えたのはミサだった。

 

「極限の集中状態でのみ発動することができるらしいそのスキルの本質は雑念、…つまり試合に不要な思考を全て捨て心を『無』にすることで本能的にかつ効率よく動けるようにするっちゅうもんや。でもな、その反面体力消費も激しいんや。せやから高校生でも本来第4Qまで使わんのが普通のこのスキルをここで使ってくるってことは恐らくあの子になんかあったんやろな」

 

簡潔に説明をしたミサは思案顔で自身の考察も話す。

 

「なるほど…つまり、相手が切り札を切ってきたという訳ね。…でも何でミサはそんなに詳しいの?」

 

ミサの考察を聞きながら紗季はミサへと質問をする。…確かに詳しすぎるような気も…俺だって噂程度でしか知らないゾーンの仕組みを知り過ぎているような気もするが。

 

「…兄ちゃんが春の大会で戦った相手に今のあの子と同じ状態になった人がおって、客席にいたおっちゃんから聞いたんよ。…なんかえらい踏ん反り替えってるから「アレ何かわかるんか?」って聞いたんや。」

 

そうか…確かにミサの兄貴ならゾーンを知っててもおかしくない。なんせあの地区にはとんでもなくバスケの上手い5選手の一人が在籍しているチームがあったからな。…確か、『海常』だっけ?

…でも、その兄貴から聞いたならともかく、その場にいたおじさんから聞いた、というのはちょっと腑に落ちないな…アレはまだ未知数のスキルだって話だし……

 

「とにかくや。早いうちにアレ破らんとこの点差でも危ないで!」

 

「「「「!?」」」」

 

「…………」

 

ヒカリ、瑞穂、エリーゼ、ひなたの4人は驚愕の表情となり真帆は無言で下を向いた。

 

「コーチ、最悪早い段階で智花ちゃん使わんとチームの士気にも関わるから動くなら指示今のうちにたのむで!」

 

「あ、あぁ」

 

……参ったな。どっちがコーチかわからないな…。

……よし、じゃあ早いけど――

 

ビィーーッ!!

タイムアウト終了!!

 

「……指示してる場合やないな。とにかく皆集中してや!!頼むで!!」

 

「「「「「うん!!」」」」

 

「……ごめんミサ、ありがとう」

 

「気にせんでええよ。あんなんがこんな身近におるなんて誰も思わんからな……それよかベンチへの指示、頼むわ。こうなったら自分含めて総力戦でいかな逆に潰される…!!」

 

「……あぁ、わかった。皆!ちょっと集まって!!」

 

ミサの真剣な表情を見て確信した。――この試合、第4Qまでに追い付かれる。なら俺がこれから取る作戦は――――

 

~side out~

 

~実況Side~

 

タイムアウト明け最初のパスをエンドからエリーゼが瑞穂へと出して試合が再開した。…が、しかし

 

「……………………」

 

「……っ!?」

 

瑞穂の前にはゾーン状態の未侑が両の手をブランと垂らした自然体の状態で佇んでいた。そう。まるで――

 

第2Qでの自分たち(蹂躙劇)の前触れとでも言うように……

 

静かに……

 

ボールを……

 

掻っ攫って……

 

行こうと……

 

するかのように……

 

狙い澄ましていた……

 

「(あぁ……私、あの子の気持ちが痛いほどわかりましたわ……これが……)」

 

「…………………」

 

「(才能の差…そして…)」

 

パシュッ…

 

慧心 124-30 硯谷

 

「(無力な自分に対する悔しさ。なのですね……)」

 

そして、

このワンプレーで

瑞穂の心は

 

――――完全に折れた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

それから数分、未侑の一方的なスティールとシュート(ヒカリがディフェンスの際にダブルクラッチを混ぜながら)で得点を重ねられたスコアは

 

慧心 124-80 硯谷

 

となった。

心が折れたのは瑞穂だけではなく、チームのムードメーカーである真帆もであった。

失意の瑞穂に代わって真帆がパスを受け取るも全てスティールされ、ディフェンスも止められないどころか一歩も動かしてもらえないという状況に流石の真帆も最初こそ対抗心から挑み続けるも、段々とそのやる気を削がれ、今では一歩も歩けない位に呆然としていた。――だがそこへ

 

ビィィーーッ!

メンバーチェンジ慧心!

 

救世主が現れた。そう慧心のエースが、満を持してコートに立つ。そして――

 

「みんな!!試合はここからだよ!!!」

 

コートに立つとそう声を張り上げる智花だった。。。

 

IN  湊 智花

OUT 袴田 ひなた

 

~~~~~~~

 

「ヒカリ!ちょっといい?」

 

メンバーチェンジ後直ぐにヒカリを呼んだ智花は昴から伝えられている作戦を伝えた。

 

「――ということなんだけど…ぶっつけ本番でやれそう?」

 

「……できなくはない、と思う。…でもいいの?それだと瑞穂が……」

 

「うん、……本当はこんな策取りたくないって昴さんも言ってた。でもこのままじゃ余計に彼女の心を壊しかねないからって……」

 

「……わかった。じゃあ私たちで頑張りましょう!…私は皆の心の『光』になれるように頑張るからね!!」

 

「お願い!多分残りの対抗策はコレしかないから」

 

~~~

 

「ヒカリ!」

 

「はいっ!」

 

自陣エンドラインからボールを入れる智花と受け取るヒカリ。……そう。今度は

 

「皆!!ここから立て直すよっ!!」

 

ヒカリがPG(ポイントガード)として動く事になったのだ。……しかし彼女は体育の時以来PGを練習はおろか実戦でもしていないのでこれは慧心としてはかなりの博打だった。しかし――

 

「エリーゼっ!…っ!!」

 

「…………!」

 

「すごい……!」

 

「パスフェイクからのドライブ…」

 

そう。ヒカリはいきなり高等テクでもあるパスフェイクからの高速ドライブを、ゾーン状態の未侑相手に決めたのだ!

 

「(……でも彼女はついてくるからっ!)」

 

さらにヒカリは次の手に出る為にゴールポストへとペネトレイトを仕掛ける。

 

「…………」

 

そしてヒカリの目論見通りに未侑はヒカリを追従するが、それこそがヒカリの思惑通りだった。そうヒカリは――

 

「――今っ!!智花ちゃん!!」

 

「…………!!」

 

「ナイスパス!!」

 

シュッ!

スパン!!

 

インサイドからのアウトサイドパスを自らの持ち味である高さをを最大限に使ったジャンピングパス(・・・・・・・・)で放ち確実に通すというシンプルな方法で得点に繋げたのだ。

 

慧心 126-80 硯谷

 

「……へぇ、やるじゃない」

 

と、そこにゾーンに入ってから一言も話さなかった未侑が、ヒカリと智花に対して声を掛けてきた。

 

「……あなたには、絶対に負けないから」

 

「そうね。確かにゾーンに入った所で身長が伸びたりするわけじゃないから高さを最大限に使われたら未侑でも取れないわ。……でもあなたは大事な事を忘れてるみたいだからそれを思い出させてあげる」

 

そう言うと未侑はチームメイトからボールを受け取るべく戻っていった。

 

「……皆!ここから乱打戦になるから集中力切らさないでね!!」

 

「「「「うん!!」」」」

 

未侑のセリフに引っかかるものがあった2人だが、それでも不安が杞憂に終わる事はないと思い改めて気を引き締めるべく智花が声を掛けた。

 

「(……私が大事な事を忘れてる?…気になるけど、今は試合に集中しないと!)」

 

その隣でヒカリは未侑のセリフを反芻していたが、今はそれどころじゃないと気持ちを切り替えたのだった。

 

 

~~~~

 

久しぶりの得点に歓喜したものの、ゾーン状態の未侑を止める術は無く一瞬で返され得点は

 

慧心 126-82 硯谷

 

となった。そして慧心ボールでスタートしヒカリが相手コートへボールを運ぶが――――

 

「?…この陣形…」

 

非常に妙だった。未侑がマンツーで相手PGに付きそれ以外がゾーンで守るというゾーンシフトから最初の…第1Qの時と同じ3-2ゾーンに戻っていたのだ。

 

「(……何も無い。なんてことはない、よね……ん?)……あ…れ…?」

 

そして気づいた。相手の本当の目的は――

 

 

 

”外からのシュート以外の選択肢を潰す”

 

 

一見するとシンプルだし当たり前だとも思える思惑だが、この場合硯谷にとっては最善で最高でも現状の慧心にとっては最悪手となっている。そう、今は本来センターとしてインサイドにいるはずの人間がアウトサイドでボールをキープしている。つまり肝心要のインサイドがスカスカなのだ。

 

「中には入れさせないよ!!」

 

「ううっ…くっ…」

 

ヒカリの代わりにセンターとしてインサイドにいるのは低身長に華奢な体格のエリーゼ。万に一つもポジションを取れないし、硯谷のセンター・塚本は愛莉よりもさらに体格のいい選手だ。そんな彼女はオフェンスでもディフェンスでも現状やりたい放題なのでディフェンスのゾーン、オフェンスのスクリーンと、センターとしての機能を充分にこなしている。

その結果。

 

「…………」

 

「……あっ!!」

 

脚を止めて考える時間が増え、スティールをされる。そして――

 

パスッ

 

慧心 126-84 硯谷

 

失点に繋がるという最悪のシナリオを生んでしまうというまさに負のスパイラルを発生させていた。

 

「くっ…!」

 

「……だから言ったでしょ。あなたは大事な事を忘れてる、って……じゃ、精々頑張りなさい」

 

カウンターでシュートを決め、自陣のコートへと戻る際に未侑はそうヒカリにそう言い捨てていった。

 

「…………チーム、プレイ……あはは……なるほど。それじゃあ気付かない訳だ…」

 

未侑に気付かされたヒカリはその場で天を仰いだ。

不思議と悔しくはなかった。…言われた事が正論過ぎてスッキリとしていた自分に驚くと同時に、自分に足りないものが全て見えたとも感じていたからだ。

 

「…ヒカリ!今のはしょうがないよ、次取り返そう!!」

 

だからなのか、智花の普段通りな言葉に対して今まで感じたことのないものを感じたのは。

 

「……智花ちゃん、今のは確実に私のミスよ。しかも次以降もまた同じようにやられるわ。……だから少し作戦を変えよう」

 

「……ヒカリ?」

 

「ディフェンスはもうどうにもならない。だからオフェンス時のPGの役回りを智花ちゃんにお願いしたい。それでインサイドにボールを入れて欲しいんだ…ここからは落とせない。やり方は任せるよ。」

 

「え!?あ…う、うん、わかった…やってみるね」

 

ヒカリの聞いた事のない声音に驚きつつも智花はヒカリの指示に従って動く事にした。

……智花にとってそれは他ならない敬愛する昴からの指示だったが故に。

 

気付かなかったのだ。

 

彼女の変化に――

 

 

続く・・・




後書きスキッド:ベンチ会議?

~智花が出た後の慧心ベンチ~

昴「お疲れひなたちゃん!次は第4Qで出るからそれまで体を冷やさないようにね!」

ひなた「おー、わかった~」

昴「ミサ、すずちゃんの状態は?」

ミサ「やっぱりこのQで出るのは無理やな。4Q中盤以降がいいとこや」

昴「そうか……わかった」

紗季「……あの、長谷川さん」

昴「ん?どうしたの紗季?」

紗季「相手のキャプテンの動き、第3Q最初よりも遅くなってます」

昴「なんだって?それは本当か?」

紗季「はい、間違いありません。…最初は目に見えても動けない印象でしたが今では体も反応出来る範囲まで落ちてます。…おそらくは限界が近いのかと」

ミサ「……確かに、前半より話しかける回数増えてるな。あれは集中力が落ちている証拠やな…現にまたヒカリに話しかけとる」

昴「……なるほど、確かにそう見えなくは……」

葵「ねぇ昴?それなら次のディフェンスの時に――」

続く…
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第26話Bパート 消耗戦 ~第3Q終盤~

明けましたおめでとうございました(笑)
今年も宜しくお願いします。
だんだん迷走してきたこのロウきゅーぶ。ようやっと第3Q終わるなー
第4Qはもっとスピーディに進めたい今日この頃。…まぁグダるやろなw

ということで本編どぞ!


~実況Side~

 

ヒカリの指示でパスを貰いセンターサークルまでボールを運ぶ智花。

しかし相手はゾーンディフェンスの形を崩さず未侑共々自陣ゴール付近で各々のポジションに付いていた。

 

「(おかしい……今までは未侑さんがPGへのマンツー(1対1)という部分だけは変えて来なかった。なのに今は全員がゾーン……なにかあるのかな……?)」

 

その相手陣形を不審に思い警戒していると物凄いオーラを目の前から感じた。

 

「っ!(考えるのは後。今は…)ヒカリっ!!」

 

ゾーンディフェンスの頂きで待ち構えていた未侑が安直なスティール(・・・・・・・・)を仕掛けてきたので反射的にヒカリへとパスを出す。――しかし

 

「よしっ!予想通り」

 

パスが出される直前に動き出していた甲本がそのパスをスティールし、ターンオーバーを決める為に速攻を仕掛けた。

 

「っ!!ごめん!戻っt「……させない」…くっ!」

 

パスを盗られた智花は自身も追おうとしたがそれを未侑に阻まれてしまい釘付けにされてしまった。

 

「よし、これで…っ!?」

 

「あなたには入れさせないよ」

 

「なっ!?」

 

これで硯谷の得点か?!

誰もがそう思ったがそれをヒカリが阻んだ。――敵陣奥から自陣ゴール下まで瞬間移動したかの様な速さで、だ。

 

「自分のミスは自分で取り返さないとね…いくよ」

 

「っ!?」

 

今までのヒカリとは似ても似つかない平坦な声音でヒカリはそう甲本に言うと未侑と同じ様に(・・・・・・・)一瞬で甲本を抜き去った。

 

「…………」

 

「…………」

 

そのままセンターサークルまで行くと未侑がヒカリを待ち受けていた。

だがここでヒカリは誰もが予想しない行動にでた。

 

「…………!」

 

「!?」

 

「…ナイスパスだよヒカリ!」

 

そう、未侑の反応できない速度で智花にパスを出したのだ。

それに誰もが驚愕するなか未侑は光速移動で智花とマッチアップした事に更に驚くが

 

「――ヒカリっ!!」

 

「!!」

 

「……ていっ!」

 

ガゴン!!

 

完全に付かれる前に智花はヒカリへとパス――といってもフリースローラインより少し前の空中だが――を放ち、それを空中でキャッチ(・・・・・・・)したヒカリはそのままダンクする所謂”レーンアップ”でゴールへと決めたのだった。

 

慧心 128-84 硯谷

 

「あの子、さっきと動きが違う……どういうこと…?」

 

甲本はただ驚き呆然とそう呟く。

が、以外にも冷静に事を見極めた塚本が甲本に近寄り

 

「あの子、雰囲気がゾーン状態の未侑と似てる…多分だけど、あの子もゾーンに入れるのかも」

 

と自身の考えを伝えた。

 

「……なるほど。ならゾーンにはゾーry「いや、それは無理。むしろマンツーマンディフェンスに変えるべきね」…未侑」

 

甲本がマッチアップ相手を変えるように指示したところ、意外なことにそれを未侑が制した。

彼女は気づいていた。今の慧心の弱点に……

 

「ごめんだけど、これ以上ゾーンを続けたら4Q全部は持たなくなる。けど今の慧心は未侑がわざわざ1人で点を獲る必要はないわ。…相手はほとんどワンマンチームの状態だから全員でいけば逆転は可能よ」

 

そう。

未侑が早い段階で自身の切り札を切った理由。それは――――

 

慧心(相手)繋がり(チームワーク)を消し去る事”

 

だったのだ。

 

「……なるほど。じゃあ4Qは最初からマンツーでいくようにコーチに進言するわ」

 

「ええ。だから今は」

 

「「「「「離されないように獲られたら獲り返す!!」」」」」

 

この後仕掛ける大々的な作戦を決めた硯谷メンバーは「詳細はこのQが終わったらね」という甲本の一声で各自のポジションへと戻っていった……。

 

 

一方、慧心メンバーは…

 

「……このままいくよ」

 

ヒカリの声は酷く冷め切っていた。それを聞いた智花は

 

「ヒカリ…あんまり思いつめないでね?何かあったら…」

 

と心配して声を掛けるも

 

「私は大丈夫。それよりも瑞穂の事お願い」

 

と言ってヒカリは自身のポジションへと戻っていった。

 

「……つまんない」

 

その場で立ち尽くす智花の耳に届いた聞きなれた、それでいて信じたくないような言葉。

その発生源は……

 

「……真帆?」

 

俯き、全身を震えさせている少女――真帆の声だった。

そんな真帆に恐る恐る声を掛けると

 

「だってさ、今コートでプレーしてるのもっかんとヒカリンだけじゃん。……あたし達、何もしてない。だからつまんない。……ねぇもっかん?これが本当の”バスケ”なの?…そうだとしたらさ、こんなつまんないスポーツないよ」

 

俯いたまま真帆はそう言い放つと、そのまま歩いて行った。――ベンチの方へ

 

「すばるん。メンバーチェンジして」

 

「あ、あぁ……すいません、メンバーチェンジお願いします」

 

真帆に言われるまま昴はメンバーチェンジを審判に告げる。

そして昴から告げられたのは意外な人物だった。

 

「ヒカリ、交代だ。あと真帆も」

 

「!?」

 

「うん、…すばるんならそう言うと思った。流石すばるんだな」

 

「どうしてd「理由はベンチで話す。だから今は下がるんだ」……はい」

 

OUT 八神ヒカリ  三沢真帆

IN  香椎愛莉   藤林すず

 

「「「「!?」」」」

 

「……やっぱり、出て来たわね。望むところだ」

 

慧心のメンバーチェンジに硯谷メンバーも驚きを隠せないが、未侑だけはその登場に闘争心に火を点けた。

そして慧心のメンバーは……

 

「だ、大丈夫なのすず?」

 

「……はい、まだ動けます。ご心配をおかけしました」

 

「……あ、愛莉」

 

「うん…最初は私も心配だったんだけど、起きたらこんな感じで…」

 

すずを中心に心配そうに聞く智花にいつものポーカーフェイスで答えるすずと、その様子に苦笑いの愛莉という不思議な構図ができていた。そんな時

 

「……すず…後で少しいいですか?」

 

エリーゼがすずに声を掛けた。…そのニュアンスにはいろんな意味ですず以外の他のチームメイトの頭に「?」が浮かんだという。

 

「……わかりました」

 

すずがそう答えるとエリーゼは自分のポジションへと戻っていった。

 

「皆さん、今は試合に集中しましょう」

 

すずはエリーゼを見送った後にそう言って自分のポジションへと戻ろうとして

 

「……そう言えば智花さん、私の位置は何処になるのですか?」

 

と無表情の中に困ったようなニュアンスを含めてそう言ったのだった。

 

 

~~~~~~~~

 

メンバーチェンジで中断していた試合も、審判の笛が鳴り再開したが、両チームの雰囲気には大きな差があった。

片や希望の為にと一眼になって戦おうとする熱い集団。片やチーム内に生じた不協和音によって戸惑うものとやる気に満ちたバラバラな集団。

一見するとそれは戦況をひっくり返しかねない大きな違いのハズなのだが、1人のプレイヤーがそれを阻止し均衡を保っている。

 

「――忍法・写身!!」

 

「ちょっ!?」

 

「はいっ!」

 

バシュッ

 

慧心 132-90 硯谷

 

多少のターンオーバーでの連続失点こそあるがすずの写身による分身戦法でなんとか得点を挙げ均衡を保ってはいる。……いるが

 

「はぁ……はぁ……っ」

 

第2Qでの無理がすずの体力の限界を早めた事実は覆らない。自然と息が荒くなる。

 

「もう限界なの?未侑はまだまだ余裕だし…あんたが潰れれば第4Qで逆転して勝てるわね」

 

「…………ひとつ……約束…してください」

 

膝に手をつくすずに未侑が近づくと、それに気づいたすずは未侑の挑発を無視してそう言った。

 

「はぁ?そんな状態で未侑に勝とうとか馬鹿じゃないの?」

 

それを聞いた未侑は呆れたように返す。

まるで嘲笑うかのような態度の未侑を、すずは無視して言葉を紡ぐ。

 

「この試合に…私たちが勝ったら……あなたのチームメイト全員に謝って…ください…」

 

「あのさぁ…別に未侑は何も間違った事は言ってないじゃない。なんでわざわざ謝らないといけないわけ?」

 

「あなたは…仲間に手を出した…。…それだけは…例え誰でも許されません…だからです」

 

「ふぅん?……まぁ良いわ。その条件乗ってあげる。……その代わり」

 

シュッ

パスッ

ビィーーーッ!!!

第3Q終了!インターバルです!!

 

「あなたたちが負けたら、土下座か坊主ね♪」

 

「……わかりました。約束、忘れないでください」

 

硯谷の選手がブザービーターを決める音と終了のコールが響く中、二人のバケモノはそう約束し合った。

 

慧心 132-92 硯谷




後書きスキッド:あれ誰かな?

メンバーチェンジ後の慧心ベンチにて

紗季「真帆……」

真帆「ごめん紗季。ちょっと頭冷やしてくる」


・・・
外・水場にて

ジャー…キュッ
真帆「……ふぅ。思わず頭から水被っちゃったけどどうすっかなー…髪結び直すのメンドーだし、とりあえす軽くふいてゆっくり帰ろ」

タッタッタ

真帆「ん?」

タッタッタッ

真帆「銀髪…?金髪…?……光のせいでわっかんないけど、ガイジン…だよなぁ?目も…蒼っぽいし、…この学校の生徒かな?んー……」


~~~

???「ココガ、ススリダニジョガクエン……ン?アノキンパツノショウジョハワタシトオナジナノデショウカ……ココハタシカメ…」

~~~

真帆「……なんかこっち見てんなー…とりあえずすばるんに報告しに行こう!」

ダダダッ

~~~

???「アッ!……イッテシマイマシタ……ドウシマショウ……」


終わり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第27話 ワダカマリ ~第4Q開始~

どうも、確定申告の結果がひどくて凹んでいる藤林です…orz
そのせいかただでさえシリアス路線な現状でさらに凄惨な展開に……

だがこれで光明が差す!…そう信じたいですね。

頑張れエリーゼ!!
という事で本編どぞ!(>_<)

追記
今回の話から海王さんのオリジナルキャラクターを出演させています。国籍違ったらごめんなさいですが汗
明記が遅れてすみませんm(_ _)m


~実況Side~

 

両チーム共に最後のインターバルを終えて最終Qのメンバーがコートへ戻ってくる。

その両チームのメンバーはこの通りだ。

 

硯谷

 

塚田久美

甲本みすず

矢作蘭

北野若菜

???

 

慧心

 

三沢真帆

永塚紗季

香椎愛莉

エリーゼ・ルタス

袴田ひなた

 

「あれ?あんな人最初からいたかな?」

 

「いいえ。少なくともあんな選手はこの試合には出ていないわ。……真帆?どうしたの?」

 

硯谷側に見知らぬ選手を見た愛莉と紗季が怪訝な表情で会話をしている中、真帆だけは何故か頭を捻っていた。

 

「ん?いや、あの銀髪のガイジンどっかでみたなーって思っててさー」

 

「……で、それが思い出せなくて考え込んでいる、と?」

 

「そー。そんなカンジー」

 

「…はぁ。まぁいいわ。試合始まったらちゃんと集中してよね?」

 

「ほーい」

 

幼馴染の紗季は真帆が通常運転に戻った事を確認すると紗季は向き直り

 

「さ!リードしてるとはいえ油断してる暇はないわ。…もちろん皆の今の心境を考えたら平常心で、とはいかないだろうけどそれでもしっかり集中して確実にいきましょう!」

 

「あいよ」

 

「うん」

 

「…はい」

 

「おー…おー?」

 

紗季の呼びかけに各々が返事をするも、最初の様な結びつきが感じられない返事に紗季は言い知れぬ不安が大きくなるのを感じるのだった。

――――一方、硯谷陣営はというと

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「……参ったな……」

 

硯谷レギュラーの攻守、そして精神的支柱のエース未侑を外した代わりの人員に硯谷バスケ部メンバーがただただ困惑していた。

特にPGの甲本に至っては相手を含めたこのコートの雰囲気に対して困り果ててしまった。

 

「(先生の指示とはいえ、流石に未侑を外すとは思わなかったなー……しかもその代役が次の対戦相手のエース(・・・・・・・・・・)とかどういう状況よ…相手は予定通りに不協和音が継続中だから余計にコート上の雰囲気が悪い…)…ま、作戦自体は問題なくハマっている以上こちらはそのまま攻め切ろうじゃないの!頼むわよロシアのエースさん(・・・・・・・・・)

 

「ワカリマシタ。サイショカラゼンリョクデイキマス!」

 

甲本の言葉に謎のプレイヤー――――真帆が銀髪と称した白髪に色白の肌が際立つ比較的小柄な体格の少女――――は自信に満ちた表情でそう答えた。そして少女は今のチームメイトに対して向き直り

 

「ロシアダイヒョウ”マリア・オニール”。コノシアイゼッタイショウリニミチビキマス!!ミナサンヨロシクオネガイシマス」

 

そう言い切った。

 

~~~~~

 

これより第4Q開始します。ピッ!

 

「みすず!」

 

「オッケー」

 

第4Qは硯谷の攻撃でスタートした。塚田からパスを受けて甲本はゆっくりドリブルをしながら相手陣地へと行く。そこへ現れたのは本来とは違う相手だった。

 

「あれ?私の相手はあの青い髪の子だと思ったけど……貴女もPGできるのね」

 

そう。甲本の前に出てきたのはクリーム色に近い長い金髪をポニーテールに纏めたエリーゼだった。

そのことに甲本は不敵に笑いながらエリーゼに声をかけた。――そんな油断を誘う為の罠(・・・・・・・・・・・)だと気付かずに。

そしてそんなシンプルな罠にハマったと気付かずにドリブルを続ける甲本へエリーゼは答える。

 

「……私は紗季と同じことはできません。…でも」

 

「?…っ!?」

 

「そんな私でも…囮には…なれるんです…!」

 

エリーゼが答えるのとほぼ同時に背後から紗季がバックチップを成功させる。

…しかし

 

「しまっ!?」

 

「ユダンハシヲマネキマス。キヲツケテクダサイ」

 

バックチップでスティールに成功したと思いきや、そのボールを疾風の如き速さで掻っ攫う白髪の少女マリアは駆け抜けると同時に甲本へそう注意をする。

 

「い…いかせません!」

 

「アマイ…デス!!」

 

スティールと同時にペネトレイトに成功したマリアを愛莉がブロックに向かうがその前――フリースローライン付近――でドリブルを止めボールを掴んで跳躍の体勢に入りそのまま飛ぶ。

そしてそのタイミングは紙一重で愛莉がブロックできるタイミングでもあった。しかし

 

「うそっ!!?」

 

愛莉は幻視した。

彼女の背中から生える一対の羽を。

そう錯覚させるような空中移動を。

そして

 

ガゴン!!

 

綺麗な軌道でのダンクシュートを決めていった……。

 

慧心 132-94 硯谷

 

・・・・・・

 

香椎愛莉は驚いていた。

7月に入部したエリーゼをはじめとした転校生を相手に充実した練習の毎日を送っていたが、その際に離れたところから跳躍してダンクする”レーンアップ”というシュートの対処法を葵から教わっていた。実際、すずの協力もあり愛莉はわずか3回の練習日でレーンアップをはじめとした全シュートレンジからのシュートブロック(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)完全習得(マスター)し、ミニゲーム時は余程の事がない限りは自分の意志で止めに行ったブロックは成功する様になっていたのだ。

そんなある意味紫色の様なチートスキルを持つ愛莉が今のシュートを見てこう思わされた。

 

――このダンクは止められない

 

と。

そう考えた自分に対して、そしてそれをやってのけた少女に対しての両方で愛莉はただひたすら驚いたのだ。

 

「……この試合。エリーちゃんとすずちゃん次第って長谷川さん言ってたけど、本当にそうなるかもしれない」

 

「愛莉?」

 

「……ごめんね紗季ちゃんなんでもないよ。次オフェンス頑張るね!」

 

独り言のつもりで呟いた言葉を聞かれた愛莉はそう言って走っていった。

 

・・・・・・

 

「(愛莉の言葉聞こえちゃったけど、正直私もそう思う。けど……)今は自分の仕事に専念しなきゃよね」

 

紗季は愛莉の独り言が聞こえ、第3Q終了直後のインターバルでの作戦会議の内容を反芻し、愛莉の心情を察するも今はプレー中という事で気持ちを切り替える。それでも

 

「(あんな綺麗なダンク決められて動揺するなって方が無理あるわよね)」

 

状況の劣悪さに慧心正PGはため息を零さずにはいられなかった……。

 

 

~~~

 

ダンクの動揺でターンオーバーを二つ許しスコアが

 

慧心 132-98 硯谷

 

となった所でエリーゼが紗季に対して近寄ってきた。

 

「どうしたのエリー?」

 

「……ボール…ください」

 

「え?」

 

「そろそろパスしてください……誰もパスしてくれない…から」

 

 

・・・

 

エリーゼは我慢していた。

第3Qで一度パスを受けて以降、ずっと攻撃では蚊帳の外にされていたが、それでもいつかは回って来ると信じ待ち続けた。だが

……結局今の今まで一度もパスが回ってくることはなかった。

 

確かにSGというポジションはオフェンス時長距離からのシュートを役割とするのでスクリーン等のコンビプレーでのメインもしくはインサイドからのパスを受けそのままシュート、といった具合に限られたプレーしか無い為滅多にボールが来ないなんてことも珍しくはない。しかし、『滅多』にであって『一切』ではない。なにかしらの理由でボールは必ず回って来る。……今回のエリーゼはその一切(・・)が起きてしまったのだ。

ヒカリの暴走、未侑のゾーン開放、すずの無双…そして、紗季の氷の絶対女王政(アイスエイジ)による状況判断結果。

この状況で今まで耐え忍んだエリーゼを褒めたい。普通の小学生なら真帆のようにもっと早くに爆発してもおかしくない事態なのだから。

 

・・・

 

「ま、待ってエリー。今状況を整理してるから…「わかりましたもういいです」…ってちょエリー!?」

 

紗季の言葉を聞いたエリーゼは紗季の言葉を切り捨て走って行った。

 

「……っ!?(まずい!!今のやり取りで完全に雰囲気が…ど、どうしたら…)…真帆っ!…!?」

 

紗季は内心でかなり焦った。このやり取りを見た真帆・愛莉・ひなたの三者三様の表情をみて完全に心が離れてしまったと直感したからだ。

そして直感した悪夢は起きた。そう。紗季が真帆へ送ったパス。それをあろうことか味方のエリーゼにカットされてしまったのだ。

 

「…おいエリー、今のパス、あたしに対してのだったよな?」

 

「……」

 

「おい待てよ!」

 

パスカットをしたエリーゼに一言言おうとした真帆を抜き去り(・・・・)そのまま相手コートへと向かうエリーゼ。

 

「……ナンダカヨクワカリマセンガテカゲンハシマセンヨ!!」

 

「…望む所…です…!」

 

相手コートに行くエリーゼの前にマリアが立ちはだかる。

沈黙に包まれるコート。…そして

 

「えいっ…!」

 

「!」

 

エリーゼがロールターンを仕掛け抜き去りにかかる。だが

 

「ムダデス!」

 

マリアも負けじと食い止める。ロールの先へ回り込み逆にスティールを仕掛けるもそれをエリーゼがバックステップしながらボールを抱え込む。そして

 

「やっ!」

 

「!?」

 

着地と同時にそのまま膝のバネを使い跳躍してシュートを放つ。…その時間。わずか1秒。

 

ガシュッ

 

低弾道ながら、相手の虚を突いていた為誰にも反応されずにシュートを決めたエリーゼは

 

「私だって…慧心の…選手…です!」

 

振り返りコートにいる全ての選手にそう宣言した。

 

慧心 134ー98 硯谷

 

続く




後書きスキッド:ドーピング疑惑

第4Q開始直前の慧心ベンチ

エリーゼ「すず」

すず「はい」

エリーゼ「…これを…(食べて……MPを回復してください…)」

エリーゼ は すず に オレンジグミ を あげた

すず「っ!!…ありがとうございます…これで」

エリーゼ「勝ちましょう…あの人たちに…!」

すず「はい…!」

終わり
御愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第28話 チーム ~第4Q~

約2年ぶりの更新になってしまいました…
職場環境変わると難しいなぁ…

そして今回はバスケパートゼロです(久々でこれはひどい)
バスケは次回ちゃんとやります!(試合終了までいきたいなぁ…)


それは大きな響きだった。

今までの人生でエリーゼは声を大にして自己主張する機会なんて数えるくらいしかないが、それでも彼女の過去を知っている者達には只々驚きしかなかった。

そして、彼女の過去を断片的にしか聞いていない者達や知らない者達には困惑と動揺、いずれかの反応を示していた。

 

「え、ええ…それはもちろんわかって「紗季達はわかっていません…!!」…え?」

 

最初に硬直から解けた紗季がエリーゼに声をかけるもそれはまた彼女にしては大きな声での叫びに消される。

 

「バスケ、って5人で戦うんでしょ?…なのに皆んな、自分1人で戦おうとしてる…これじゃあ…」

 

――――仲間も敵じゃないですかっ!!!

 

大粒の涙を流しながら振り返り叫ぶエリーゼ。

それを聞いたチームメイトは

 

「「「「……………………」」」」

 

何かに気づいた者、目を逸らす者、エリーゼ同様涙を流す者等三者三様の反応をみせた。

 

「…ごめんなさいエリー。私たちが間違ってたわ」

 

「…………」

 

「……エリー、ごめん。あたしも悪かった。そうだよな…バスケは、…5人で。だよな…」

 

「………………ぎゅ」

 

「ひな…?」

 

紗季と真帆がエリーゼに謝罪していると、不意にひなたがエリーゼに抱きついた。

エリーゼの呼びかけを聞いたひなたは、顔をあげると

 

「…ひなは……ひなは、ずっとみかた。…エリーのてきになんて…ならないよ…」

 

と、泣きながらも真剣な表情でエリーゼの顔を見上げる。

――そんなひなたをエリーゼはしっかりと抱きしめた。

 

「ひなちゃんの言う通りだよエリーちゃん。…私たちはエリーちゃんの敵になんか絶対ならない。だから、…だからお願い。もう一度私たちを信じて?」

 

抱擁する2人にそう声をかけたのは愛莉。

彼女は、チームが空中分解していく様を、気づきながら何もできなかった。そんな無力な自分を痛感しながら聞いたエリーゼの叫びは、彼女に失いかけた想いを思い起こさせるには充分だった。

 

――そうだ…今はひとりじゃない…みんながついてるんだ!!

――だから…!

 

「みんなが居てくれるから……こんな私でもまだ戦える!一緒に戦おうよ」

 

――――みんなで!!!

 

「「「「!!!」」」」

 

~~~~~

 

一方、慧心ベンチでは

 

「昴さん……」

 

「あぁ。…これでもう大丈夫なハズだよ、智花」

 

昴と智花がコート上の選手たちのやり取りを見て安堵の吐息を吐き

 

「ミサ」

 

「……せやな。わいらが口出しするまでもなかったみたいで安心したわ。……だからま、あとは……」

 

「「……………………」」

 

「…あの2人次第、ということね」

 

「そゆことや」

 

有紀とミサの2人はそう言い合ってから揃って同じ方――――エリーゼからグミをもらって食べてからずっと正座で瞑想するすずと、交代してからずっと体育座りのまま顔をあげないヒカリ――――の2人を見ながら会話を続ける。

 

「うちらはまんまと相手の術中に嵌った。けどまぁ、相手の誤算はエリーゼだった……ちゅーことやな」

 

「……けどこっちも誤算はある」

 

「?…なんや、誤算って?」

 

円満解決には程遠い状況とはいえ、一応は解決に向かっているこの状況で何を…?

そうミサが思ったところで明後日の方向から言葉が飛んできた。

 

「私の出番、全くない」

 

「…………あぁ…………」

 

ミサが内心で綺麗サッパリ忘れて現実逃避にも近い感じで黄昏た、今の状況を、有紀はあっさりと言い放ったのだった……

 

 

~~~~~

 

「……しっかし、今回の合同合宿は大泣きする子多いなぁ……」

 

コートを見つめながら苦笑いで頭を掻く麻奈佳と「後であの理事長に何言われるやら……」と頭を抱える初恵が硯谷ベンチサイドで会話をしていた。

 

「……まぁそれはともかく、こっちの思惑。これでパーだけど……どうするの、お姉ちゃん」

 

苦笑いしていた麻奈佳がふと真剣な表情で隣にいる姉に声を掛ける。

 

「……心理戦で勝負が決するなんて、最初から考えてません。次のワンプレーで判断しますが、次のボールデットで未侑を戻します」

 

気を取り戻した初恵はズレた眼鏡を戻しながらそう答えると「わーお…」という麻奈佳の声が聞こえてきた。

 

「…ま、Wエースで追いつけない点差じゃないし、いいんじゃない?――未侑ーーっ!アップしといてねー!」

 

「わかりました」

 

初恵に答えると、少し離れたところにいた未侑へと声を掛けた麻奈佳。そして

 

「慧心さんは強い…けど最後は」

 

「硯谷が勝ちます」

 

姉妹揃ってここからの逆転劇を信じてやまないようなのだった。

 

~~~~~

 

「エリーゼがいて良かったねジュード」

 

「うん…そうだね」

 

一方の慧心ベンチではレイアとジュードの二人がコートを見つめて安堵していた。

 

「…さて、コートの中はエリーゼちゃんがなんとかしちゃったし、私たちはこっち(・・・)をなんとかしないとね!」

 

二人と一緒にコートを見ていた葵は隣にいる昴にそう声を掛けるも昴はコート見ながら「あぁ…」という生返事を返すだけだった。

 

「……ちょっと昴、聞いてるの!?」

 

「……聞いてるよ。でもな、こっちの問題はそんな簡単なものじゃないんだ。今考えてるからあんま大きい声出すな」

 

「ちょっ!?」

 

「昴!?」

 

痺れを切らした葵に静かに言い返す昴の言葉にレイアとジュードが驚く。

それもそうだ。二人は転校してきてそんなに日が経っていないのでこんなに低い声で(・・・・)抗議する昴の姿を見たことがないのだから。

 

「……はぁ、仕方ない。ジュード君、悪いけど昴とここで試合見ててくれる?私とレイアでヒカリちゃんと話してくるから」

 

「あ、うん、わかった」

 

「…………」

 

そうして、葵とレイアの二人はヒカリの元へと歩いて行った。




今回は後書きスキッド休止します。
次回のネタバレにつながってしまうので(笑)

エリーゼ「リベールゴーランド!!」

うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

…………チーン

エリーゼ「…御愛読…ありがとう…ございました…」オジギ


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第29話 「外国人」VS「異世界人」前編 ~第4Q~

祝・自室にPC環境完成!!
……だが長くなりすぎたので分割投稿にします。(一般よりは圧倒的に少ないですが)

さて、今回は本編ですが次回は幕間を投稿しようかなぁと思います。(スキットでやるには長すぎると思って・・・あ、内容は内緒っす)
多分あと2話で試合が終わる・・・と思いたい。

さて、長くなりましたが本編をどぞ!


~コートSide・硯谷陣地内~

 

長いボールデット(強制レフェリータイム)が明け、硯谷のメンバー(マリア以外)は慧心メンバーの変化に気づいた。

 

「みすず」

 

「うん。……まさかこんなに早く持ち直してくるとは思わなかった」

 

特に塚田・甲本のレギュラーメンバーは相手の予想より早いメンタル面の立て直しに少しの冷や汗と興奮を感じて自陣コートで守っていた。

 

「イズレニシテモ、ツギノテンスウヲアタエルノハトクサクデハアリマセン。ポイントガードノカタモセンターノカタモユダンシナイヨウニ」

 

そんな二人に冷静に声を掛けたのは、硯谷が慧心との軽めの調整(・・・・・)の後に予定していた交流試合の相手エース(・・・・・)でもあるマリア・オニールその人だった。

 

「…もちろん、油断なんてしてるつもりは無いわ。なんせこっちは絶望的に負けてる訳だし」

 

「そうそう。…それにあと少ししたらうちのエースも入るだろうし、それまでは頼んだよアメリカのクイーンさん」

 

「……ソコマデキタイサレタラシカタナイカ。ジャアミセテアゲル、ホンバジコミノバスケットヲ!!」

 

期待されていることを聞いたマリアはそう意気込むと、自分のポジション(今回はチーム編成上SG)の位置へと就いた。――――それを見ながらレギュラー組の二人は内心では好奇心で胸いっぱいだったりもする。何故なら・・・

 

「「(間近で敵のエース。それもあの全米で有名な”ファイヴ・クイーン”のプレーが見られる!!…硯谷でバスケしててよかったー!)」」

 

という訳である。集中せい

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~コートSide・慧心視点~

 

「紗季ちゃん!」

 

コートエンドから愛莉がパスを出して試合が再開された。

 

「はい!(愛莉とエリーゼのおかげでチーム崩壊は回避はできた。…ここから先の展開、多分私の様に時間を掛けるPGじゃひとつの間違えだけで負けかねない。…ここは慎重にいくべきか…?)…いや、ここは」

 

――攻めるべき!!

 

「エリーゼ!!」

 

「はい!」

 

普段慎重な紗季は、本来ならここは愛莉へのパスからの内→外→内のシンプルな攻めを選ぶ。

しかし、今回はこの悪い雰囲気・流れを壊したエリーゼへとパスを出した。――もちろん、意図はあるが。

”マリア”

そう呼ばれた白髪の少女の容姿が、たまたま見かけたバスケの雑誌に掲載されていた《全米のファイヴ・クイーン》という記事にあった写真に写っていた少女の1人とそっくりなのだ。

その上、彼女はこの合宿中で紗季の知る限り一切体育館で見かけていない。所謂”アンノウン”なのである。それ故に彼女の実力を見ておきたかったのだ。

 

「……ワンオンワン、ウケテタチマス!」

 

「……私は、1人じゃない……皆で…戦う…!」

 

マリアの言葉にそう返したエリーゼはフェイクをせずに右サイドへとドライブを仕掛ける。

 

「サセマセ…!?スクリーンッ!!」

 

「おー、とおせんぼーう!」

 

そう。マリアがエリーゼに意識を向けている隙にひなたはスクリーンを仕掛けていたのだ。

比較的小柄なマリアは意表を突かれたとはいえ、さらに小柄なひなたの存在に気づくのが遅れてしまい見事にスクリーンの餌食に。――誰もがそう思った。

 

「!?」

 

「コノクライナラダイジョウブ」

 

「うそ……一回転して追いついた!?」

 

スクリーンに就いていたひなたをスピンでかわしてキッチリと追いついたマリアに真帆が驚きの声を上げる。

――だが

 

「やっ!」

 

シュッ

ダンパスッ

ビィーーーーーッ

 

マリアが追いついた時には既にシュートを放っており、それがボードに当たって入った。

そしてブザーが鳴った事で両ベンチが動いた。

 

「硯谷、慧心、メンバーチェンジです」

 

慧心 136 - 98 硯谷

 

硯谷 IN藍田未侑  OUT北野若菜

慧心 IN湊智花   OUT三沢真帆

     八神ヒカリ    永塚紗季

     藤林すず     袴田ひなた

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~ベンチSide・硯谷~

 

硯谷ベンチは交代選手を見て驚いていた。

 

「これは……」

 

「葵ちゃんが裏で何かやってんなーとは思ってたけど……そこも再生してくるか、慧心さん…!」

 

「ええ…………まさか、あの二人をこの試合で再び出してくるとは流石ですね。…ですがこちらも現時点での最強メンバーを揃えました」

 

「そうだよね!試合はこれからだよね、お姉ちゃん!!」

 

「勿論です。(とはいえ、あの少女が万全なら難しいのは事実。…だからこその未侑投入な訳ですが)…頼みましたよ、エース」

 

盛り上がるどころか、想像以上の静寂に包まれている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~ベンチSide・慧心~

 

一方の慧心ベンチ。

 

「……大丈夫かな、ヒカリは」

 

「大丈夫だよ!もう、ジュードは心配性なんだからー」

 

ジュードは試合に出したヒカリの事を案じ、それをレイアが笑い飛ばすという割と日常的なやり取りが行われている。

 

「もう、レイアは……でもよかったの昴?紗季を交代させてまでヒカリを使うなんて…」

 

「…そうだな。普通なら愛莉と交代して入れた方がいい場面なんだけど、ここはミスマッチ(・・・・・)を突いていこうと思ったんだ。ヒカリはポイントガードとしての練習もしていたし、特に大きな混乱は出ないと思う」

 

「ミスマッチ?…………そうか!」

 

「ええ、今まではこっちがひなたちゃんの所でミスマッチを突かれてたけど、今度はこっちの番、ってこと!」

 

そう、慧心サイドは今まで130cm台の選手と150cm台の選手との身長差を利用され失点している部分もあった。そこで今度は140cm台の選手が多いPGに170cmオーバーの選手を起用して意表を突く事にしたのだ。――――ジュードはその事に気づき納得したが、それでも彼の心配性は収まらなかった様で

 

「ヒカリと紗季の交代の理由は分かったんだけどさ、ヒカリは体力的にも精神的にも大丈夫そうだけど…すずは体力の方が厳しいんじゃない?こんな早く出して最後まで持つの??」

 

今度はすずの心配を始めた。

 

「それなんだけど……実は俺も不安なんだよな…すず本人とエリーゼ(・・・・)が言ってきたんだよ。『あの人が出てきたらすずを出してください』って。何か理由分かるかジュード?」

 

ジュードの質問(心配)に対して昴は腕を組み、考える様にうーんと唸った後、ジュードにたずねてみた。

 

「え!?根拠分からずに出したの!?」

 

「あ、あぁ、葵もレイアも大丈夫だから出してあげてって言うのに理由は教えてくれないんだよ……」

 

「えぇ……しっかりしてよコーチ……」

 

「面目無い……」

 

「男ってやつは……」

 

「あはは……」

 

肩を落とす男性陣二人を見て呆れる葵と苦笑いするレイアの姿がそこにあった・・・合掌

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~コートSide・硯谷視点~

 

「マタ、アノシュートデスカ……」

 

「さっきからどうなってるのよあの子のシュート」

 

マリアはボールデットの球を拾いパスをしながら呟き、そのボールを貰いドリブルしながら甲本はボヤく。

 

「構えから打つまでが早過ぎる(・・・・)よ!あれじゃあブロックが間に合わない」

 

甲本に続き塚田も焦った様に叫ぶ。しかし

 

「落ち着きなさい久美」

 

それを冷静な声で制止するのは硯谷バスケ部のキャプテンにしてエースの未侑だった。

そして矢継ぎ早に指示を伝えていく。

 

「先生からの指示を伝えるわ。あの子にはマリア、貴女がついて」

 

「ワカリマシタ」

 

「久美はそのまま同じ人をマーク。みすずは少し大変だけどあの大きい子と、蘭はあの小さいのと。…多分向こうの中でもかなり巧い方だから最低限シュートを打たせないように頑張って」

 

「じゃあ」

 

「ええ。未侑はあの忍者娘とやるわ。……それじゃあ、いくわよ!!」

 

「「「おう!!!」」」

 

「ゼンリョクデイキマス!!」

 

~~~~~

 

「さて、どう攻めましょうか……」

 

「悪いけど、簡単に負けるつもりはないから」

 

センターラインを超えた辺りで甲本は相手のPGであると思われる選手(ヒカリ)と対峙した。

 

「あーごめんね?私未侑達と違って1対1にあんまり拘り無いからさ…ひょいっと」

 

「!?」

 

話しながらのノールックパス。勿論経験値の低い(と思われる)相手には効果的だった様で見事に決まる。

勿論、その相手は

 

「ナイスパス……さ、いくわよ忍者っ娘」

 

「望むところです。受けて立ちましょう」

 

硯谷エースはそう言うと臨戦態勢となりその場に静止した。何故ならこの相手にはある意味弱点がありそれが逆に強みでもあったからだ。

 

「(今のところこの子の技は全てに共通して常識はずれな速さが関わってる。スティールも、あのダンクですらそう……でもあの子はあくまでドリブル(・・・・)ブロック(・・・・)は一度もしていない。…という事は)はっ!!…っく」

 

ピィィィィィッ

 

「しまった!?」

 

「チャージング!!硯谷フリースローツーショット!」

 

「っっ~…やっぱりそうなのね…」

 

そう。未侑は――硯谷ベンチは、気づいたのだ。

 

”彼女はシュートブロックをしたことはないのでないか?”

 

と。

その予想は的中し、本来バスケの経験者から見れば小学生女子には無謀なサイドラインに近い位置からのシュートモーション…フェイクにすらならないそれに彼女は超スピードで反応し未侑の身体ごと(・・・・・・・)スティールしてきたのだ。

 

「……これで、あんたの攻略は終わり。ここからは何にもさせてあげないから」

 

「…………」

 

そう不敵な笑みを浮かべて言い放つ未侑に対して少女――すずは無言で未侑を見送ったのだった……。

――――そして、エースである未侑がフリースローを外すことはなくスコアは

 

慧心 136 - 100 硯谷

 

となった。




後書きスキッド:空気

ミサ「いやー、マジで出番無いなぁウチら」

有紀「そうだね……」

ミサ「昔見た漫画で「あたしらさながら背景ですぜ」って言ってたキャラがいたけど、わいらはむしろ」

有紀「空気」

ミサ「なんよなぁ……」

有紀「ドンマイ」

ミサ「いやアンタもやからな?!わいだけやないで?!」

有紀「知ってる」

ミサ「なんでやねん!?」

智花「……(……言えない……原作主人公なのに出番が全く無いよ~とか…もう少し昴さんとイチャイチャしたいとか言えない……この二人の前でなんてむりだよぉぉぉ…)」

ミサ「ん?何でここに智花ちゃんおるんか?」

智花「試合いってきまーーーーーーす!!!」ピューン

有紀「…………(智花にあとでO☆SHI☆O☆KI☆しないとね)」

おわり
ご愛読ありがとうございましたm(_ _)m


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第30話 「外国人」VS「異世界人」後編 ~第4Q~

何年か振りの投稿になります。
遅くなって大変申し訳ないですが、次話で対硯谷を終えてみせます。(打ち切りっぽく見えたらごめんなさい…)

それではどうぞ!!


~回想~

 

とある練習日の休憩中の事だった。

 

「長谷川さん」

 

チームメイトの輪から離れ、コーチ陣がいる所に来た紗季は昴へと声を掛けた。

 

「ん?どうした?」

 

「実は、すずの事なのですが……」

 

「すずちゃんがどうかしたの?」

 

隣で聞いていた葵が質問すると、神妙な表情で

 

「——さっき少し聞こえてきたのですが、すずにディフェンスを教えなくても大丈夫なんですか?」

 

と質問してきた。

 

「あぁ、そのことか」

 

「やっぱり、気になっちゃうよね…」

 

二人は顔を見合わせるとお互いに苦笑気味に話し始めた。

 

「確かに全く教えないとなると問題あるんだけど、型通りに全部をしっかり教えちゃうとすずのいいところが無くなっちゃうんだ」

 

「いいところ……?」

 

「うん。すずちゃんの動きって、全てが忍術をベースにしてるのは紗季ちゃんも知ってると思うんだけど…そもそもバスケにあんな動きも技も無いんだ」

 

「あぁ。だからすずにはディフェンスのルールだけを教えてあとは実戦で覚えてもらう方が伸びると思ってな。…だから今は、すずにしかできないすずだけの型を模索中…ってことさ」

 

「あっ!それで今は教えない、なんですね!?」

 

「そういう事」

 

そう。すずの動きは基本的には忍術をベースにしている。その為忍術にあまり詳しくない昴達は基本は教えられても実践的な応用までは教える事ができないのである。

 

「……まぁ、特殊なのはすずだけじゃないのも事実だけどね」

 

「エリーの事ですよね…?」

 

「あぁ、……運動神経が図抜けていいわけでもないし、かと言ってバスケの経験者でもないんだけど……何故か身体能力が高いんだよなぁ……」

 

「うん、普通ならあれだけの身体能力なら何かしらのスポーツ経験があってもおかしくないよね」

 

「旅の中でついた…って言ってましたけど……」

 

そう紗季が言うと3人は一様に「うーん…」と唸る。その中で最初に顔を上げたのは葵だった。

 

「あ、ねぇ昴。エリーちゃんにクイックシュートなんて教えた?」

 

「え?何だよ急に?」

 

「いやね?この前昴より先にこっち来た時にさ、ひなたちゃんとすずちゃんと3人でシュート練習してる所見たんだけど……その時にエリーちゃん、パス貰ってからすぐにシュートを打つ練習してたからさ…」

 

「あ、それ私も見ました。本人に聞いてみたのですが、どうやら真帆のゲームで知ったみたいです」

 

「あ、そうなの?」

 

「はい、エリーがバスケのルールを知りたいと言ってきて…その時に真帆がたまたまバスケのゲームを持っていたのでそれをやっていた時にエリーが興味深そうに聞いていたのを覚えています」

 

「……知らなかった…」

 

「それはそうですよ、学校の昼休みにあった出来事ですから」

 

「あぁいやそっちじゃなくて、シュート練習の事」

 

「それも仕方ないわよ。私も昴に内緒にしてくれって3人には言われてたしさ」

 

「マジかよ……」

 

「ごめんごめん、でも、無理はさせてないからそこは安心して」

 

「……あいよ」

 

「あの……」

 

ゲンナリする昴と苦笑の葵に、後ろから智花が遠慮がちに声を掛けてきた。

 

「あ、トモ。どうしたの?」

 

「あうん、もう休憩終わりの時間だから呼びに来たんだけど……お邪魔だった、かな?」

 

「大丈夫だよ智花、葵も紗季もいいよね?」

 

「ええ」

 

「はい!」

 

「よーし!じゃあ後半の練習始めようか!!」

 

昴の掛け声とともに練習は再開したのだった。

 

~回想終わり~

 

〜実況side〜

 

「……これで、あんたの攻略は終わり。ここからは何にもさせてあげないから」

 

未侑がそう宣言し、フリースローを決めた後の彗心ボール。

 

「皆さんすみません。次はやり返します」

 

リスタート直後にすずはヒカリへと謝罪した。

しかしヒカリは

 

「大丈夫だよ。まだ点差もあるし次頑張ろ!」

 

と笑顔で返した。

–-–そこでふと、ある事に気付いた愛莉はヒカリへと問いかけた。

 

「ヒカリちゃん…?」

 

「……心配かけてごめんね愛莉。…けど話は試合終わってからしよう」

 

「あ…う、うんわかった!…えへへっ」

 

少ない言葉数の中に愛莉が聞きたかった答えが入っていたのであえて続きは聞かない。

…けど、それでも嬉しかった愛莉は思わず笑顔になっていたのだった。

 

〜〜〜〜

 

「さて、今度はどうしようかな?」

 

「あれ?自分で来ないんだ?」

 

センターラインを超え、硯谷陣営へと攻め込むヒカリへと、半ば挑発じみた台詞をぶつけたのは硯谷のポイントガード・甲本みすず。

彼女は今、自分とのミスマッチを相手に知られている上であえて挑発している。そう、まるで−−–

 

"私のところが一番弱いよ"

 

とでもアピールするかの様な物言いだ。

 

「…何が言いたいの?」

 

「そんなの決まってるじゃない。自信があるんなら攻めて来たら?って言ったのよ!」

 

「っ!」

 

もちろんただ会話をする訳でもなく、隙あらばスティールを狙って動き続けている甲本に対して、パスもドリブルでの前進も憚られる状態に陥るヒカリ。

 

「…前の威勢の良さは何処へ行ったのかしらね?––隙ありっ!!」

 

「っ!…あっ!!」

 

僅かに緩んだドリブルの隙を突いてスティールを成功させる甲本。

そして––

 

「マリア!!」

 

「ハイ!」

 

スティール成功にいち早く気付いたマリアが、甲本からのパスを貰ってドリブルを開始。即彗心ゴールへと攻め込む。しかし

 

「やらせません!!」

 

マリアが反応したのを見たエリーゼが瞬時にディフェンスに入る。

 

「サッキノオカエシデス!!…ハッ!!」

 

「えっ!?」

 

マリアはエリーゼへとそう宣言するやいなや、ドリブルをしながら突然後ろへとバックステップをし、そこから2、3歩踏み出し飛んだ。

そして––

 

「ダンク!!」

ドガシャン!!

 

掛け声と共に繰り出されたダンクが起こした地鳴りの様な音が、体育館中に鳴り響いた。

 

慧心 136 - 102 硯谷

 

「コレガジツリョクノチガイデス!」

 

ゴールから降りたマリアがエリーゼに対してそう言い放つ。

しかし

 

「…私が負けても…試合に勝てればいい…です!…私は…私達は負けません!!」

 

そう言い返すエリーゼは、旅をしていた時の最後の戦いで見せた様な強気の姿勢でマリアへと言い返す。

そこへ未侑がやってきて宣言した。

 

「ま、確かにアンタの言う通り、マリア1人じゃ勝ち目は薄いかもしれないわね。けど今は未侑とマリア、2人のエースがいるの。だからこんな点差、すぐに逆転してやるわ!」

 

「そんな事にはさせない!…勝つのは私達だよ!!––行くよ皆!!」

 

「「「「おー!!」」」」

 

未侑の言葉に負けないくらいの宣言をして智花はチームを鼓舞する。

 

––残り試合時間5分。

勝敗が決まるまであと僅か。




あとがきスキッド:混沌とした空間

回想時の紗希以外のメンバー

智花「あれ?紗希と昴さん達何の話してるんだろう?」

真帆「んあ?また何時もの作戦だろ?もっかんは心配性だなー」

ひなた「おー?ともかしんぱい?」

智花「ふえっ!?」

ミサ「ははぁ〜なるほどな〜…智花ちゃんもしかしなくても…」

愛莉「はい♪智花ちゃんは長谷川さんの事がry」

智花「!!」ギュッ

愛莉「うー!うー!」バタバタ

ヒカリ「えっと……愛莉は大丈夫なの?」

真帆「あー…多分大丈夫。最近よくあるから」

愛莉「きゅぅ〜」(昇天)

すず「いけません。愛莉さんが息してません。ここは––」

エリーゼ「––かの者を死の淵より呼び覚ませ"レイズデッド"」

愛莉「––ハッ!私は何を!?」

ミサ「魔法って便利やなぁ…(トオイメ)」

真帆「最近もっかん容赦無いな…」

ひなた「おー…ともか、まほうしってからえんりょしなくなった」

ヒカリ「あはは…そうなんだ…」

智花「…そろそろ休憩時間終わるから昴さん達呼んでくるね」

・・・

すず「エリーゼさん、これをどうぞ。いつもお疲れ様です」

エリーゼ「…オレンジグミ…いつもありがとう…すず」

終わり
ご愛読ありがとうございました。


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