Maskd Rider Wizard Re:Magic (バルバトスルプスレクス)
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魔導士の序章
ウィザードは二番目に好きなライダーでして今回書こうかと思い亀更新になるかもしれませんが新連載として始めました。
因みに、一位から好きなライダーは、
一位 クウガ
二位 ウィザード
三位 オーズ
四位 真
五位 ディケイド
五位タイ The First
みたいな感じです
"希望の太陽と絶望の月交わりし時、呪われた儀式が開かれ、聖なる者と邪なる物が誕生する"
それはある古文書の書き出しだった。それ以降は文字が潰れていて満足に読む事さえ出来ず、文面を除いていた二人の小学生の子供は読むことを諦め、もとあった本棚の一部に戻していた。
「全然読めないね」
「早くおっちゃん来る前に出ようか。バッタリ会って怒られたくないし」
琴林邸の書斎に、主の娘琴林コヨミと幼稚園来の幼馴染みの刀魔ハルトの二人はいた。興味本位で入ったコヨミの父、琴林ソウの書斎の宝探しをしていて、本棚に戻した古文書を見付けたのだった。物理学者であるソウの部屋の内装が気になったハルトが言い出しっぺのお宝探し。何か面白いものはないかと言う子供らしい理由だ。
ソウの書斎を出た二人はコヨミの母である琴林キョウコに見つかった。ソウの書斎に入った事に軽く怒られはしたが、それ以上厳しくはされなかった。
やがて時間も過ぎていき、ハルトは琴林邸を後に自宅へと戻るのだった。
◇
それから、五年近く後の事。その年は日食の年。この時高校生のハルトとコヨミは、気が付いたら何処かの岸辺に複数の男女と共に居た。
ここが何処で、自分たちがどうしてここに居るのか分からないハルト。思案している間に空では太陽と月が重なり始めていた。その瞬間、ハルトとコヨミを含めた全員が苦しみ始め、次第に立てられなくなっていく。
彼らの顔には紫色の罅が走る。ハルトも、コヨミも、男も、女も、子供も、大人も皆苦しみながら、今まで自分だった殻のような何かを割って、違う姿に変わる。
「……よ………」
「は……と……」
「こよ………み………ぃ…!」
「は………ると……………!」
ハルトとコヨミが互いを呼び、手を伸ばす。
そこで互いの意識は途絶えた。
◇
それから数か月が経った。ハルトとコヨミは住んでいた町に、戻っていた。大量誘拐事件で帰ってこれたのがその二人だけ。残りは全員行方不明で、現在も尚捜索中との事。通っている高校にも未だ行方不明の生徒がいるそうで、二人が戻ってきたことにクラス中以上に学校中ではお祭り騒ぎだった。
下校して、二人はハルトの部屋にいた。遊びでも、勉強会でも、ましてや不純な行為でもなかった。
学校では誰も気にしなかったベルトのバックルが手形に変わっていた。どのベルトに変えても、必ず小さな手形のアクセサリーが現れる。そして、懐にあった手形模様の指輪。あの日食の事件からだ。
「……だれも気付かないなんてな」
「昔お父さんの書斎で読んだアレを覚えてるハルト?」
コヨミがバックルと指輪の正体に悩んでいるハルトに対して引き合いに出したのは、かつてソウの書斎で読んだあの書物の事だ。
"希望の太陽と絶望の月交わりし時、呪われた儀式が開かれ、聖なる者と邪なる物が誕生する"と書かれていたあの書物。その一文の"聖なる者"と"邪なる物"が今の二人の最大の謎でもあった。
その謎が解き明かされるのは、それから間もない……すぐの頃だった。
続く
次回、初変身!
因みに、どっちがウィザードで、どっちが白い魔法使いか分かった人は感想欄にお答えをどうぞ!
またまた因みに、白い魔法使いのライダー名ってワイズマンらしいですね
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魔法 magic
ドライブが始まった今、「今更ウィザード?」何て声など『ディフェンド、プリーズ』して気にせず頑張ります。
応援や感想が自分の励みです。
ハルトが目を覚ます。視界に入るのは自分の部屋の天井。提げて十年近く経つハエ取りテープがいまだ健在で、同時に現役でもある。今日は休日。学校も休みだ。
休みならば丁度良い、指輪を試す必要もある。と、思っていたハルトは着替えを済ませるとリビングへと向かう。その途中で祖父で指輪づくりを趣味に持つ刀魔シゲルが、卸したてのヤスリを手にハルトに声を掛ける。
「おはようハルト。休日なのに早いな」
「おはよじっちゃん。若い内から健康意識しないとね」
「……そうだな、ハルト」
ハルトの身体は仏壇に向けられており、繁も同じ方に視線を向ける。
二人の男女の遺影、それはハルトの両親の遺影だ。二人が亡くなったのは、ハルトとコヨミがソウの書斎に入り込んだ日から一年後の寒い冬。共働きの両親が、ハルトのインフルエンザの一報を聞いて車を走らせて、信号無視で飛び出して来たトラックが激突。即死の状態で、遺体の状態は、体の半分程が言葉に出来ない程酷い具合で、事故の凄まじさが窺えていた。
それ以来シゲルはハルトの親代わりとなった。それは今も変わらない。
「…なぁじっちゃん。今度の墓参り、二人の好きだったプレーンシュガー供えようか」
「……そうだなハルト。それはそうとだ、コヨミちゃんが来てるぞ。今リビングに居るから顔洗いなさい。そしてひ孫の顔を見せてくれよな」
「…じっちゃん、痴呆が始まったのか?」
洗面所で顔を冷たい水で洗う。眠気スッキリ。顔に残る水滴をタオルでふき取り、ハルトはコヨミの待つリビングへと向かう。そこにはソファに座ってシゲルが出したであろう緑茶を飲んでいるコヨミ。訪問の理由は指輪とベルトの事で、コヨミはソウの書物で調べた事をハルトに伝えに来たのだ。
まずわかった事は、聖なる者は両の手に魔法石の輝きを宿した魔法使いである事。邪なる物は人の姿に偽り同胞を増やす傾向を見せると言う。それがソウの書物にあった事実。まるで夢物語にしか聞こえない。だがこれは現実。
「んで、おっちゃんにはもう言ったのか?バックルの事に指輪の事」
「……言える訳ないわ。父さんに母さんが心配するかもしれないし…ハルトのおじいちゃんだって」
「じっちゃんにはそんなに心配かけたくないしな」
言って後頭部を掻くハルトだが、コヨミがキョトンとした表情をしているのを見て、その視線を追うと、その先には『名前図鑑』と銘打った本を手に二人を生暖かい目で見るシゲルと、いつの間に来たのかソウまでそこにいた。その二人の視線は、ハルトとコヨミのバックルと指輪に向けられていた。
この状況にハルトは頭を抱え、座って目頭を押さえ、一息ついた所で二人に尋ねる。
「じっちゃんとおっちゃん、いつからそこに?」
『最初っから最後まで』
「父さん…」
「また私の部屋に入ったと思ったら……」
こうなると後々面倒な事が起きる。そう予感するハルトは、コヨミを一度見てただ一人の家族と幼馴染みの父親に、今日までの事を告白した。
日食のあの日の事、指輪とバックルの事、それらを包み隠さずに二人に伝えた。
それを聞いた二人…シゲルは孫の手を取り指に嵌めた指輪を見つめ、ソウは娘の頭を撫でる。
「…じっちゃんにおっちゃんは……俺とコヨミの」
「ハルト、もう良い何も言うな。しかしソウ…よもやこの二人が……」
「ええ、どうやら二人には真実を話さなければならないようですな」
シゲルとソウの二人が顔を見合わせていった。
◇
ソウの口から語られたのは、ハルトとコヨミが誕生する以前の話。
かつてシゲルは特殊な鉱石を使った指輪造りの一人であり、ソウはその指輪を使役する者としてこの世界を裏側から秘密裏に救っていたと言う。主に武装集団を相手に。
それがどうだと言う事なのだが、ソウはハルトとコヨミの付けていた手の平型の指輪をベルトのバックル部分に近づける。
<ドライバー・オン、ナゥ!>
聞こえてきたのは電子音の様な音、現れたのはバックル部分が手の形をしたベルトだった。続けてバックルを操作すると、低く一定の歌のような詠昌がベルトから聞こえて来る。そのバックルに、ソウは左手の指輪を翳す。
<チェンジ、ナゥ!>
すると、ソウの背後から魔方陣が展開し、ソウを包み込む。そうして現れたのは、白いローブを纏ったヒトだった。
「私達はこの姿を、魔法使いと呼んだ。今の私の姿はワイズマン。以前は白い魔法使いと言う通り名で通っていた」
言い終え、ワイズマンは足元から魔法陣を展開して変身を解き、元のソウの姿に戻った。
ソウの変身の一部始終を見て、ハルトは右手の手の形をした指輪をバックルに翳す。
<ドライバー・オン、プリーズ!>
ハルトのはソウと違い歌の様な音がやけに甲高く、ナゥがプリーズと変わっていた。それは分かるが、その後の動作、所謂『変身』に使う指輪が分からないでいたハルトは、ベルトにホルダーがある事に気が付き、そこから無造作に取った赤い宝石…一般的にはルビーの宝石に似た指輪を左手の中指に嵌めてバックルに翳した。
◇
それから、一週間近くが経とうとしていた。
ハルトとコヨミの通う高校の生徒会室では、最近の生徒たちの素行不良等の問題を議題にしていたのだが、ある人物を除いて殆ど聞き流したりのらりくらりといい加減に聞いているだけだ。
一人白熱しているのは御門リンコ。生徒会唯一の真面目ちゃんの通り名で知れ渡っている。
「聞いた限りでは、無断欠席等の校則違反が良く目立ちます。それを何故、見逃すようなことが目立つのでしょうか?!」
リンコの怒りの矛先、生徒会長の
「ま、君の意見は間違いないね。でも、我が校の風習を忘れたわけじゃないよね?生徒の自主性を重んじ、過度の規制は枷となるって」
「ですが会長!」
「それにだ、主に君が言っているその校則違反者の共通点、下手に刺激しない方が賢明なのだよ御門クン」
「…くっ!」
副会長、書記、会計やその他の役員が半目でリンコを睨みつける。彼らにとってリンコは目の上のたんこぶ。鬱陶しいこの上ないと内心思っていた。
生徒会に入ってからこれだ。自分自身真面目に、いけない事はいけないとはっきりと言ったつもりが、それを鬱陶しく感じる彼らには届かないようだ。
会議が終わり、蝦夷島とリンコだけが残る。
「…君は知らないようだね、この学園の黒い所を」
「………え…?」
蝦夷島が言った事に、リンコは一瞬思考が停止した。
「……君が校則違反だと言う連中、その共通点を知ってるね」
「…彼らの親族がこの学園の教師、理事、県議と言う事ですか?」
「あとは、この学園の……いや、これ以上は話せない。とにかく、おとなしくすることが利口だよ?」
蝦夷島の表情が一瞬だけ曇るのをリンコは見逃さない。何かある、そう核心する彼女は蝦夷島と別れて自分の教室へと向かう。
生徒会室での出来事がとても気に入らないようで、やや地団太に近い歩き方になっていた。
自分は至って真面目だ。なのに何故自分をうとまうのだろう。生徒会は生徒の模範となるべき組織であり、模範となる生徒でなければならないのだ。それなのに何故彼らは堕落しているのだろう。
何故だ何故だと自問自答していると、誰かがリンコを呼び止めた。リンコはその方へ視線を向けると、生活指導でありリンコの憧れの教師の御原ウシオが眼鏡の位置を直していた。数か月前の日食の日、ハルトとコヨミが行方不明になったあの日から日にちも経たない内にこの学校に赴任してきた。
「御原先生、どうしたんですか?」
生徒会とは別の生徒を正す役割を持つ教師の彼をリンコは目標とし、憧れを抱いていた。
リンコはウシオには自分の不満は吐かず、アドバイスを受ける。それだけでよかった。
「それじゃ、そろそろ会議だからね」
「はい、ありがとうございました」
ウシオと別れても尚表情が明るいリンコは自分のクラスへと歩いて行く。
目的の教室に入ってすぐ馴れ馴れしくひ弱な男子生徒がハルトとコヨミを連れてリンコに近づいてきた。見慣れたくしゃくしゃな黒髪、人懐っこい表情。リンコの双子の弟の御門シュンペイだ。
「あ、姉さんハルトさんがよんでるよ!!」
「ちょっとシュンペイ一体何よ!」
「あーゴメンリンコちゃん。別にそんな急用じゃないんだけど…」
「シュンペイが勝手に何かを勘違いしてたらしいの」
「シュ・ン・ペ・イ?」
人騒がせな弟の折檻をする姉を見て、ハルトがリンコのちょっとした変化に気が付いた。コヨミも同じように気が付いたようでそれについて追及すると、先程のウシオとのやり取りを自慢するかのように語り始めた。それを聞いていく内にシュンペイは呆れてしまうが、ハルトとコヨミは違っていた。何かを感じ取っていたのだ。
以前にも…日食のあの日から今日までの間に見たウシオのあの感覚。人とのそれとは違う異様な感覚を二人は感じ取っていた。しかしそれをリンコに言う必要はない…と、ハルトとコヨミはアイコンタクトする。
◇
数日後の放課後、校舎裏で一人の生徒が複数の生徒に壁際に追い詰められていた。生徒会でも問題にあげられていた生徒がグループで一人を相手にいじめをしていた。
追い詰められていた生徒は助けを請う。そこを離れた場所でリンコが目撃して助けに行こうとしたその瞬間、突然金縛りにあったかのように体の動きが止まった。
「な…ん……」
『君に絶望を味わわせるためだ。悪く思わないでくれ、これも同胞を増やす為でね』
校舎の陰から現れた牛と人を合わせた様な異形…ミノタウルスそのものが後ろ手でリンコの眼前に現れて言った。
突然の出来事で理解が追い付かないリンコ。眼前に現れた怪物と奥で起きている多対一の一方的な暴力を目に、自分が自分でなくなる恐怖に突然襲われてしまった。
それを見てミノタウルスはほくそ笑んだ。が、脇からハルトの跳び蹴りが決まって即座にリンコからそちらに標的を変えたミノタウルスは鼻息を荒くして抗議する。
『一体何のマネかな?邪魔するなんて余程のバカなんだね』
「バカはあんただよ。コヨミは向こうの方を頼むよ、ここは俺がやる」
「うん」
コヨミが追い詰められている生徒を助けに向かった後、ハルトはミノタウルスを見据えて右手に指輪を付けながら問う。
「悪いけど、リンコちゃんは俺の友達だからあんたなんかに絶望させて貰っちゃ困るんだ」
<バインド、プリーズ!>
何もないミノタウルスの周りに、赤い魔方陣が浮かび上がると中心部から赤い結晶が鎖となって絡みついた。
魔法。科学が進んだ現代に生きて来たリンコは、信じられないと言った様な表情でゆっくりとハルトと鎖を交互に見やった。視線に気が付いたハルトは、軽くウィンクして右手のバインドの指輪を手の形をした指輪に代え、左手にまた別の指輪を嵌めて、ミノタウルスに言い放ちながらバックルを操作する。
<ドライバー・オン、プリーズ!>
「さてと、付き合えよ。俺の最高のショータイムにな」
<シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!>
「変身!」
左手の指輪のバイザーを下ろし、それをバックルに当てると魔法石の指輪から出る魔力が具現化され、現れた赤い魔方陣がハルトを包み込んだ。
<フレイム、プリーズ! ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!!>
『まさか……貴様は…っ!!』
「俺は希望の魔法使い。お前みたいな
今この瞬間、
続く
小説版平成ライダーもフォーゼまで出ているんですけど、ウィザードも出るのかなと疑問に思っている今日この頃。
因みに、現在自分が所有してりるのは、クウガ、W、オーズ、フォーゼの四冊でお気に入りはクウガです。
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さぁ、ショータイムだ
幽霊ライダーゴーストも佳境に入り、新ライダーエグゼイドのレベル1に驚き、クウガのブルーレイ購入に悩む今日この頃皆さまはいかがお過ごしでしょう。
まずは遅れました事、マジですんませんでした!
小説家になろうページの方とも並走してやってますが、中々進みませんすみません。
ですが、エタるつもりは毛頭ありませんのでこれからも応援ご感想よろしくお願いいたします。
黒きローブを靡かせた一人の魔導士の登場に、リンコは勿論ミノタウルスでさえも驚きを隠せずにいた。しかしその隙にコヨミがリンコを連れて退避。それに気付きつつも、現時点で厄介な魔導士に注意を向ける。
黒いローブを翻し、真紅のルビーの装甲と仮面。極め付きはベルトと指輪。
「…さぁ来いよ、バケモノ!」
指をくいっと動かした挑発行為をミノタウルスに向けてするウィザード。バックルを操作し、コネクトの指輪を使役して出現した魔方陣から魔法銃剣ウィザーソードガンを召喚し、刃先を撫でる。
対するミノタウルス。懐から灰色の小石の様な物体を取り出すと、それを辺りにばら撒いた。そしてそれは間をおかずヒトの様な形を成した。”
『魔法使いが出るとは何とも分が悪い!』
「あ、おい…!逃げんのかよ……!」
「ハルト、今は!」
「だよな、おし!」
ミノタウルスを追いかける前に、ウィザードは右手の指輪を交換。バックルを操作して右手をかざす。
<ルパッチマジックタッチゴー!ルパッチマジックタッチゴー!>
変身の時とは違う歌の様な音声が響き、ウィザードは右手をバックルに翳す。
<コネクト、プリーズ!>
魔方陣を浮き上がらせそこに右腕を伸ばして何もない空間から銀色の剣を取り出した。片刃の刀身を軽く撫で、目の前の使い魔達を見据えて切りかかる。一振り、二振りと剣を振るって使い魔を一体一体確実に処理していく。指輪をしているため、パンチなどの攻撃は指を痛める為に出来ないがそれの代わりか流れる様な蹴りを交えた攻撃が使い魔達に直撃する。
やがて最後の一体を切り捨てたウィザードは魔方陣を展開し、変身を解いた。
リラックスの一息ついた後のハルトはリンコとコヨミの無事を確認してまた一息ついた。
「コヨミ、リンコちゃん大丈夫だった?」
「大丈夫。逃げられちゃったね」
既にどこかへ消え去ったミノタウルス。今度いつまたリンコを狙うだろう、だがその時に仕留めるしかない。
その狙われたリンコは、未だに理解が追い付かないでいた。自分を狙う化け物が出たと思ったら、級友のハルトが変身して化け物を追い払った。端的に言ってしまえばそうなのだが、この事実を認めてしまえば今まで自分が体験したことが殆ど否定してしまいそうだったから。
尚も困惑している心境のリンコよりも、ハルトとコヨミは次の授業の時間を確かめていた。
◇
ミノタウルスは廃工場の一角に逃げ込んでいた。
当初の目的は果たす事は出来なかったが、それ以上の収穫はあった。今はそれだけで十分だと一息つくと、突然背筋が凍るような鋭い視線を感じた。振り返ってみると、そこには三体の怪物がそこにいた。緑色の身体に堅牢な体躯をした亀に似た怪物シェンウー、朱色の身体に美しい一対の翼を魅せ付けた怪物フェニックス、そして白亜の身に鋭い爪を生やした怪物タイガー。
『よーミノタウルス。何ここに戻ってきてんだよ』
シェンウーがミノタウルスに掴みかかってそう言った。
『ま、待て待ってくれよ……俺だって好きで逃げたわけじゃねーんだ!』
今度はフェニックスがミノタウルスに問いかける。
『ではなぜ逃げた?貴様には楽な仕事を押し付けた筈だ』
『ま、魔法使い……魔法使いが出たんだ、本当だ!!』
『魔法使い……か』
タイガーはそう言って自身の爪を二度三度ほど軽く振りながら呟いた。
三体の怪物は、ミノタウルス以上の魔力を有しており、その他の同胞たちからはリーダー格として扱われており、部下の怪物たちに指示を出す事が主だ。
今回ミノタウルスに指示を出したのはフェニックスだった。彼は短く『ふむ』と小さく呟いた後、シェンウーに蹴り伏せられているミノタウルスに視線を合わせる。
『ミノタウルス、今回のミスは大目に見てやろう』
『ほ、本当かフェニックス!』
『だが、今度は魔法使いも一緒に……だ。それを忘れるな』
威圧感を漂わせながら言ったその指示をミノタウルスは短く返事してすぐにその場から立ち去った。
残ったシェンウー、フェニックス、タイガーの三人は、ミノタウルスの報告にあった魔法使いを気に掛ける。彼らの更に各上の存在で、自分ら怪物…総称をファントムなる魔力生命体の長・カーバンクルからその存在がいると言う事は聞いた事があった。もし、ミノタウルスの証言が嘘ではないとすると、こちらの目的達成の弊害になるかもしれない。
『んじゃ、俺はカーバンクルに魔法使いが出たって事伝えとくぜ』
『頼むぞシェンウー。しかし、魔法使いか……フェニックス、貴様は心当たりはあるか?』
『知らん。が、近い内に顔を見に行くとしよう』
『それもそうだな。貴様のゲートを見極める目、頼りにしているぞ』
そう言ってフェニックスは赤い鳥の羽根をまき散らしたと思ったら、まるで最初からそこにいなかったかのように消え去っていった。後に残った羽根は風に舞いあげられると、砂状に変化して消えた。
最後に残ったタイガーは、人間の姿に変わり懐から煙草を一本取りだして一服する。
「……もしかしてお前は、魔法使いと一緒にいるのだろうな。だとしたら、貴様は我々の敵だ…ドラゴン」
◇
その日の放課後、生徒会の仕事を終えたリンコはシュンペイをおまけに引き連れてハルトの家に招かれていた。家主のシゲルは二人を快く迎え入れると、ハルトのいる彼の部屋に通され、そこにはハルトだけでなくコヨミもそこにいた。
二人が幼馴染の関係を知っているリンコとシュンペイは、下世話な妄想を抱くが今はそんな場合ではないと直ぐに頭の中を切り替えた。
リンコがハルトとコヨミに聞きたかったのは、今日リンコを襲った怪物とハルトが変身した赤い魔法使いの事だ。彼女はいの一番に問いかけ、ハルトが「ここは実物を見せた方が早い」と、手形の指輪でベルトを現出し変身しようとするが、変身用の指輪を取るハルトの手をコヨミが阻止した。
「ハルト、無駄に魔力を消費しちゃダメ」
「だよなー。っし、ならこれはどうだ」
<ユニコーン、プリーズ!>
蒼い一角獣の模様が掘られた指輪をベルトのバックルに翳すと、ハルトの前に青白く発光する魔方陣から小さな
「他にもあるよ?」
<ガルーダ、プリーズ!>
<クラーケン、プリーズ!>
今度は真紅の
微笑ましい場面を提供したハルトは「な?」と小首をかしげてリンコとシュンペイに見せた。
「次は私だね」
次にコヨミもベルトを現出して紫と黒の指輪を手に取って、ハルトと同じようにバックルに指輪を翳す。
<プラモンスター、ナウ>
<プラモンスター、ナウ>
コヨミのベルトはハルトのそれとは違い、音声も低くまた魔法を顕現する声も違っていた。
現れた漆黒の
これである程度理解できたリンコは、まだ自分が狙われる理由が解明されていなかった。
「どうして……か。それは……」
先程までにリンコとシュンペイ向けていた視線を逸らすハルトとコヨミの表情は途端に曇らせ、終いには顔を俯かせてしまった。
余計な事を聞いてしまったとリンコは焦り、違う話題を切り出そうとするがしどろもどろで何の話題を出すかを迷っていた。身近に起きた出来事、笑い話等を話そうかと必死になって切り出そうと慌てだす。
「それは……追々話すよリンコ。でも今は……話すのにちょっと整理できてないから」
愛想笑いでコヨミがそう言ったが、その表情は一向に良い方には変わらない。
今日はもうそれで終わりとなった。
◇
翌日の通学路。リンコは寝坊したシュンペイを無残にも置き去りにして足早に学校に向かっていた。
別に彼女も寝坊して遅刻と言う状況ではなく、昨日の事で自分自身に腹が立ち自然と歩く速度が速くなっただけだ。ハルトとコヨミの地雷を踏んでしまった事は事実だが、二人はリンコの事を責めていなかった。どころか少しよそよそしく感じた。
だから、今日会ったら謝ろう。昨日は言えなかったけど、今日はちゃんと言って謝ろう。
校門の前でそう決心したリンコ。潜ればいつもと変わらない学園生活の一日が始まる。
そうなるはずだった。
「………え?」
目の前に広がるのは、そんな願望が一瞬にして崩れ去るような光景だった。
多人数で一人を蹂躙し、花壇を彩っていた花々は踏みつぶされ、挙句に殺し合いに近い乱闘が繰り広げられていた。その中にはリンコの友人達や蝦夷島が居た。一人だけじゃない、ハルトとコヨミそしてシュンペイを除いた知人や友人の姿がそこにいたのだ。
膝から崩れ落ちるリンコだったが、視界の端で誰かの差し伸べる手が見えた。その主はリンコの憧れの教師、御原ウシオ。彼は心配ないと言った柔和な表情を向けている。
この人だけは私の味方だ。この人と一緒だったら……。
差し伸べられたウシオの手を握った瞬間、リンコの中で何かが割れた。
『君の知っている御原ウシオは半年前に既に絶望して死んだ。それにしてもやっと絶望してくれたなァ、御門クン』
ウシオの姿が、昨日自分を襲った
訳が分からない。状況が掴めないリンコは、ようやくある事実に気が付いた。自分の手が、腕が、身体が紫色にひび割れていたのだ。次第に彼女は自分は死んでしまうのか、と恐怖に駆られだした。
『何、心配いらん。俺ら仲間になるだけだ』
「仲間…?」
『ああ。ただ、人間としてのお前は死に、ファントムとしてのお前に生まれ変わる』
それだけだ、と最後に付け足したミノタウルス。その声音はヒトを安心させるものではなく、恐怖を与えるものだった。
ひび割れの速度が速まって来た。これでもう彼らに謝る事は叶わない。もう自分は死ぬのだ。文字通り自分は自分でなくなってしまう。そうなると自分はどんな怪物になるのだろう。どうせなら、天使の様な怪物に生まれ変わりたいとさえ思う。
ついには走馬灯さえも見えはじめるリンコ。信じていた人は怪物となって裏切り、自分は友を傷付けた。後悔からか、涙ながらに呟いた。
「……誰か、たす……け、て」
その時だ。五つの銀色の銃弾が、ミノタウルスに直撃した。
「悪いけど、リンコちゃんは友達なんだ」
「あんた達の仲間になんか絶対にさせないんだから!」
声のする方、自分に銃撃した相手をミノタウルスは目を向けた。そこにいたのは、校門を潜りながらこちらに歩いてくるハルトとコヨミの二人だ。彼らの腰には指輪の魔法使いの証であるベルトが出現しており、更にハルトの手には銀色の銃が握られていた。
『また邪魔をするか、魔法使い!』
「バケモノが存在する限り、俺とコヨミは大いに邪魔してやるさ。行くぞ、コヨミ!」
「うん!」
二人はバックルを操作し、左手に変身用の指輪をはめて変身する。
<シャバドゥビタッチヘンシーン!シャバドゥビタッチヘンシーン!>
<シャバドゥビタッチヘンシーン…シャバドゥビタッチヘンシーン…>
『変身!』
<フレイム、プリーズ! ヒー!ヒー!ヒーヒーヒー!!>
<チェンジ、ナウ>
ハルトが黒衣の、コヨミが純白の魔法使いにそれぞれ変身を遂げる。
対するミノタウルスは前回と同じように使い魔を複数体召喚し、拳を鳴らしてかかった。
『さぁ、ショータイムだ』
二人の魔法使いは友を掬う為に、ミノタウルスに果敢に立ち向かう。
続く
最後になりますがS.I.Cのウィザードインフィニティスタイル造形イイですね
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