ちょっと押しただけで落ちるチョロトレーナーとスズカが婚約する話 (うどんそば)
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ちょっと押しただけで落ちるチョロトレーナーとスズカが婚約する話
「トレーナーさん?」
「ん?どうした?」
とある昼下がり、俺の担当ウマ娘である、サイレンススズカから話しかけられた。
「トレーナーさんの好きな人のタイプってどんな人ですか?」
「は?好きなタイプ?」
珍しい。スズカは普段はこういう色恋とか、タイプだとか、そういうことは興味を示さず、走ることだけに集中しているような感じだったから、意外に思った。
しかし、スズカも高等部。こういう話題も気になる。ということだろう。
にしても安心した。
もしかしたら、走ることしか興味がないのかと思っていたので、こういう高校生が好きそうな話題にも興味があったことが嬉しかった。
しかし、この手の話題は、トレーナーである以上、振られたら困ってしまう。
担当の名前を出すなんてもってのほかだし、彼女たちの同級生であったとしても、問題である。
なんで俺は、
「うーん。強いて言うなら、好きになった人がタイプかな。」
逃げた。
私が、トレーナーさんのことが好きなんだと気がついたのはこの前でした。ある時ふとトレーナーさんのことがよく思い浮かぶようになったのです。
もしかしたら、大分前からトレーナーさんのことが好きだったのかもしれませんが、私の脳内は走ることに集中していて、他のことが入り込む余地はありませんでした。
しかし、今こんなにトレーナーさんを想ってしまうのは、きっと集中した脳でさえ、自覚せざるを得ないくらい、トレーナーさんへの想いが大きくなっているのだと思います。
私は、色恋がよくわかりません。
実際にしたこともなかったし、周りにそんな素振りをする人もいなかったし、そんなことにうつつを抜かしている暇があるのなら走ったらいい。なんて考えだったので、そう言うものに触れてきていないのです。そうすると、トレーナーさんを落とすためには、どうすればいいんでしょう。
誰か相談に乗ってくれる人はいないでしょうか...
「スズカさんが左回りしてる!」
あっ。スペちゃん!いやでも...
正直目の前のお腹を大きくさせているスペちゃんに相談しても意味ないような気がしました。
誰かいないか考えてみると、結構身近にそう言う系の知識がありそうな子が思いつきました。
「フクキタル〜!」
「はい!なんでしょうスズカさん!」
「フクキタルは、恋についてわかる?」
「エッ!?コ...コイですか...?」
「そう。フクキタルなら何か知ってるかもと思って。」
「ちなみに、どなたのなんですか?」
「私よ。」
「エッ!スズカさんですか?お相手は?」
「トレーナーさん。」
「おお、あのトレーナーさんですか!それでは、こう言う話題はシラオキ様に聞いてみるのが吉!フンギャロフンギャロ...」
どこからか取り出した水晶玉で私を占ってくれているような様子のフクキタルは、しばらく占ったあと、出ました!と声を上げた。
「スズカさん。好みのタイプを聞いてみましょう!」
というわけで、トレーニングが終わったあと、早速トレーナー室へ向かい、いつものようにトレーナーさんのお膝の上に乗って、直球に聴きました。
「トレーナーさんのタイプの人って、どんな人ですか?」
すると、
「は?好みのタイプ?」
と、明らかに焦った顔で、
「うーん。強いて言うなら、好きになった人がタイプかな。」
と、答えました。
...逃げましたね。
そっちがその気なら。と、火がついた感じがしました。
こうしてはいられない。すぐに作戦を立てなければ。
こうして、私は急いでトレーナー室を出ました。
「訳がわからん。」
俺は困惑していた。突然スズカから聞かれた、好みのタイプ。そしてさっき答えを聞いてすぐ、不満そうな顔から突然尻尾をぶんぶんさせながら、トレーナー室を出たこと。本当に意味がわからない。しかし、正直、どうしても意味は理解できない気がする。
「明日からのスズカの様子を見ながら判断するしかないか...」
結局、そんな結論に落ち着いて、今日のところは気にしないことにした。
「どうしてこうなった。」
朝、トレーナー室へ向かうと、まだ7時くらいなのにも関わらず、スズカがいた。
「おはようございます。」
「おはよう。なんでいんの?」
「トレーナーさんと一緒にいたいからです。」
そっかー一緒にいたいなら仕方ないね。
ってなるかー!
スズカはいつものように俺の膝に乗ってきた。スズカはとても寂しがりやなので、膝に乗るくらいはいつものことである。しかし、ここからが、俺の心を揺さぶった。
なんとスズカは突然頬擦りをしてきたのだ。
これには俺も、
かわいい。しか考えられなくなった。
もうやばい。大体俺はスズカが好きなんだ。
こんなことされて、冷静でいられる訳ない。
しかもここからだ。たっぷり15分ほど頬擦りしていたスズカは、学校へ向かおうと膝から立つと、
キスをしてきた。
は?
可愛すぎる。反則やろ。はい。もう無理でーす!
そんな気持ちになりながらぽけーっとしていると、スズカが、
「ファーストキス。ですよ?トレーナーさん♪」
なんて言ってきた。
スズカはすぐにトレーナー室を出て行ったが、
俺は心中おだやかではなかった。
スズカという好きな子からファーストキスを奪われた喜び、突然キスされた困惑。
ただでさえ、ほぼスズカのことしか考えられなかったのに、もう無理。
本当の意味でスズカのことしか考えられなくなった。
今まではスズカのことは好きだが、担当として、一線を引こうという想いが強かったが、
今は、あのキスした後に見せた蠱惑的な瞳、いい匂いのする髪など、スズカの全てが欲しくなった。
簡単にいうと。もう大好き。他のこと考えられないくらい。結婚したい。という感じだ。
正直、自分でもちょっと押されたくらいで、こんなに即落ちするチョロトレーナーだとは思ってなかったけれども、普通好きな子にあんなことされたら、好きが溢れ出てくると思う。ずっと隣にいたい。ただそれだけでいいんだ。
取り乱してしまったが、正直今日の朝のようなことをされてもスズカの好意に気がつかないほど朴念仁ではない。
ここまで女の子にさせたんだ、腹を決めよう。
今日の夜、ターフの上で。
トレーナー室に私が着いてすぐに、トレーナーさんも来られました。
トレーナーさんは、
「なんでいるの?」
と聞かれましたが、これも作戦です。
メロメロにする作戦!
トレーナーさんが、私を女性としてみざるを得なくさせる作戦です。
その作戦の一環なのですから、正直に答えるわけには行きません。
適当に、
「トレーナーさんと一緒にいたいからです。」
と、濁しておきました。
早速作戦開始です。
まず、いつものようにトレーナーさんのお膝の上に乗ります。
ここからです。私はトレーナーさんの頬に自分の頬をつけて、すりすりしました。
いわゆる頬擦りです。
思ってたよりずっと恥ずかしいです。
でも、頬があったかくなってきました。
トレーナーさんも恥ずかしいんでしょうか、お顔がまっかです。
かれこれ15分くらい頬擦りしていたでしょうか。
一通り満足した私は、頬を離し、トレーナーさんのお膝から退きました。
ここでトレーナーさんの真っ赤なかわいいお顔を見て、つい、
キス。してしまったんです。
もちろんお付き合いの経験なんてないので、
ファーストキスというやつです。
トレーナーさんも初めてだといいな。なんて、妙に冴えた私は、呆然とするトレーナーさんに、
「ファーストキス、ですよ?トレーナーさん♪」
なんて言って、トレーナー室を出ました。
廊下を少し歩いて、いまさら私がやったことを理解しました。
わ、私、トレーナーさんと、キ、キス。しちゃいました。
恥ずかしくなった私は、真っ赤な顔を隠すため顔を押さえて、しゃがみ込みました。
練習が終わった後、夜、ターフでトレーナーさんが待っていました。
「スズカ?」
「はい。」
なんだろう。と、トレーナーの話をいろいろ予想していると、
「なあ、スズカ。俺、流石に今日の朝みたいなことされても気づかないほど鈍くないんだ。」
もしかして、私の好意のことでしょうか。
朝のことを思い出して赤面してしまいます。
「はい。」
と短く返事をすると、トレーナーさんは...
「好きだ。」
スズカにそう伝えると、真っ赤だった頬に涙が伝い、
「はい。...はいっ!私もです。」
そして意を決して、こう伝えた。
「俺と付き合ってくれないか?」
「えっ?」
とスズカがいったので、
「えっ?」
と返すと、
「結婚じゃないんですか。」
と言われた。
「スズカは本当に俺と結婚でいいのか?」
と問うと、
「逆に、貴方と結婚したいんです。」
と言われてしまった。
それじゃあ。と、
人生に一度しか言うつもりのない言葉をスズカに言った。
「結婚してくれ。スズカ。」
この言葉を聞いて、用意していた言葉を彼に言いました。
「はい喜んで。」
私はあまりの嬉しさに涙が溢れました。
そんな私が泣き止むまで、トレーナーさんも泣きながらそばにいてくれました。
やはりトレーナーさんの隣にいるのは心地が良いです。
あの後、二人で話し合いした結果、今は婚約。と言う形で落ち着きました。
しかし学園内にいるときはつけている、左手薬指のこの指輪が、彼との婚約が本物だと証明しています。
スペちゃんや、フクキタル、タイキにも祝福してもらいました。
とにかく今は、トレーナーさんと一緒に走り切る。という目標に向かって走っていきます。
この道を走り切ったら、
トレーナーさんと、幸せな家庭を作れたらと思います。
「スズカ?くっつきすぎじゃないか?」
「いいんです。だってトレーナーさんは、私の旦那様になる人なんですから。」
「そうだな。」
「俺、今幸せだよ。」
「私もです。」
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