私は陽葉の生徒会長 (浦賀)
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私は生徒会長の日花里藍だ。

 長い授業が終わり、放課後の時間が訪れた。ある生徒は家路を急ぎ、またある者は部活動や友人たちと遊びに出かける者もいる。そんなどこにでもあるような学校の放課後。

 

 外の喧騒を気にせず、書類に挑んでいる銀髪の少女が私こと、陽葉学園生徒会会長日花里藍(ひかりらん)だ。

 

「会長、来週のライブスペースの使用申請書類と掲示板の使用申請書の一覧です」

 

 申請書類の入ったクリアファイルを私に差し出して来た茶髪の少女が生徒会副会長兼会計の平塚美星(ひらつかみほし)だ。

 

「来週、ライブスペース3を使用するグループはPeaky P-key(ピーキー ピーキー)で申請先に被りはなし」

 

 申請書にサインをして時計を見ると後10分で下校時刻だった。

 

「今日の執務は終わりだな、副会長は鍵を掛けて先に帰って良いぞ」

 

 美星にそう言って自分の鞄を持ち生徒会室を出て職員室へと歩き出した。

 

さっきの申請書は?なんで学校にライブスペースがあるの?と皆は疑問に思うかもしれないので説明させてもらうとこの陽葉学園は普通の学校とは違う所がある。

 

一応言っておくが学校の地下に巨大のロボットの基地だとか超能力の研究施設とかではないとだけ言っておこう。

 

 DJと言うのをみんなも一度は聞いたことはあるだろう。クラブとかでよく見るディスクで音楽を繋いだりするあれだ。そのDJがこの世界では流行っている。

 

 そしてこの陽葉学園もまたDJ活動に力を入れているだから学校にライブスペースと言う普通の学校ならあり得ない物があるわけだ。

 

 さっきの申請書に書かれていたPeaky P-key、生徒の皆はピキピキと呼んでいるグループもこの学校の生徒が作ったDJユニットだ。

 

「失礼します、生徒会の陽花里です申請書類を届けに来ました」

 

 私は職員室のドアをノックし用件を伝え入室する。

 

「陽花里さん、いつもありがとうね」

 

 職員室にいた女性の先生が書類を受け取りお礼を言う。

 

「来週のパフォーマンス、ピキピキなんだ見に行きたいなぁ」

 

 申請書を見た先生が羨ましそうに言う。

 

「陽花里さんは見に行かないの?生徒会ならチケットも……」

「いえ、まだ仕事も残っていますし次の陽葉祭とかも考えなといけないので」

 

 先生が私がライブに行かないのを不思議がって聞いてくるが、それをはぐらかし職員室を出る。

玄関へ向けて歩く中、ふと外を見るとライブの帰りなのか生徒たちが楽しそうに家路に向かっていた。

 なぜだろうか私はそれを見て羨ましく思ってしまった、私も彼女たちの輪に加わりたいそう思って外を見ていると。

 

「あら、藍会長、また生徒会ですか?」

 緑色のツインテールをリボンで止めた少女が話しかけてきた。

 

「清水さんか、すまないが後5分で下校時刻だが他のみんなはどうした」

「響子たちは先に、今回は来てくれると思ったのに」

 

 緑髪の少女は残念そうに言う。この緑髪の少女の名前は清水絵空(しみずえそら)、先ほど申請書を出して来たDJユニットPeaky P-keyの自称ラブリー担当だ。

 

「すまないね、あまり私も時間が取れないのでね、それではまた明日」

 

 私は絵空に悟られないように短く帰りの挨拶をしその場を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 (私はこれで良いのだろうか?)校門を出て家路へと向かいながら一人考える。この学校に通う皆が幸せに過ごせれば良いそう考え、私はライブなどには積極的には関わりはしないかと言って彼女たちがやる事にケチを付けたり妨害するような真似もしない、いわゆる中立の立ち位置を常に保って生徒会と言う形で彼女達が誰にも邪魔されずに輝けるように陰で尽力し続けてきた。

 

 でもこれで良かったのかと最近何度も考えるようになってきた。

 

「誰かがやらねばいけないなら私がやった方が良いに決まっている」

 

 そう呟きながら歩いていると家のドアの前に付いていた、私はドアを開けた。

 

「ただいま帰りました」

「お帰りなさいませ、今日の学校はどうでしたか」

 

 玄関を開け居間へ向かうと私の家のお手伝いさんが今日の自分の様子を聞いてきた。

 

「問題はない、それよりお父様とお母様は」

「お父様は遅くなるそうです、お母様はもうお夕飯を頂いてお休みになられるそうです」

 

 どうやら今日も父は遅くなるようだ、政治家をしている父が家に帰るのが遅くなる事などはよくある事であったし母親は体が弱く喘息持ちで家に帰った時には眠りにつくことも時々あった。

 

「そうか、すまないが私も少し休む、あと薬用の水を用意してくれ」

 

 そして私も母と同じようにあまり体が強くない上に喘息を患い16歳まで薬で発作を抑えながら生きてきた、当然こんな体では激しい運動は禁止、体育も調子によっては見学、ダンスやパフォーマンスなど言語道断だ。だから生徒会長と言う名前と聞こえは良いが実質的な雑用のような仕事をやっている訳だ。

 

「それに私の体では皆に迷惑をかけてしまうだろうしな」

 

 手慣れた手つきで喘息を抑える薬を取り出しながら呟く、いつの間にかお手伝いさんが机の上に水が注がれたコップを置いておいてくれたのでそれで薬を流し込む。

 

 

 

「これで良いんだこれで」

 そう呟き自分の部屋へと向かい眠りについた。




ここまで読んで下さりありがとうございます。

感想等ございましたらお気軽にどうぞ。


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生徒会長と転入生

 どうも浦賀です。
お気に入り登録ありがとうございます。
それでは第二話どうぞ。


気が付くと部屋に朝日が入り込んでいた。どうやら薬を飲んだ後、そのまま朝まで眠ってしまっていたようだ。

 

「藍様、お目覚めですか?」

 

 部屋のドア越しにお手伝いさんの声が聞こえる。私は体を起こしながら答える。

 

「すまない、すぐに降りる」

 

 自分の着ている服が寝間着に代わり制服がハンガーにかけられているのを見るに、どうやら眠ってしまった後に制服から寝間着へと着替えさせてくれたようだ。

 

 時計を見ると登校しなければいけない時刻まではまだ時間がある、それを横目に制服に着替え居間へと降りた。

 

「藍様、おはようございます」

「ああ、おはよう」

 

 お手伝いさんに朝の挨拶をして椅子に座る。

 

「今日はいつお帰りになりますか?」

「今日は生徒会の仕事も少ないから昨日ほど遅くはならない」

 

 朝食のトーストと目玉焼きの乗ったお皿を置きながらお手伝いさんは今日の帰りがいつぐらいになるか聞いてきたの昨日の書類の量から答える。

 

「お父様とお母様は今日はパーティーに出かけていますので今日は家には帰らないとの事です」

 

 食べながら話を聞く限りでは父と母は今日は帰っては来れないようだ、二人が仕事で家を空ける事はよくある事なので気にする事ではなかった。

 私は短く「そうか」と答え朝食を食べ、部屋に戻って今日の準備を始めた教科書や学校で使うタブレットを鞄にしまい携帯を見ると美星からメッセージが届いていた。なんでも図書委員会の蔵書に関して要望があるそうだ。そのメッセージに対して「了承する」と返信した。

 

 次に部屋にある鏡の前に立ち身だしなみを確認する。スカートから2年生を表す紫色のリボンの角度、生徒会の腕章まで確認する。

 

「まぁここまで厳しくやる事はないんだがな」

 

 この学校は校則で制服のアレンジが自由なので服装についてとやかく言う必要はない、むしろ無駄な行為ではあるが私は自分の服に対してはしっかりとしていたいので毎日やっている。

 私は鞄と携帯を持って学校へと向かった。

 

 私の家、から学校へは歩きで迎える距離なので体調が良い時は歩いて向かうようにしている。その結果か分からないが最近少しだけ体調が良い時が増えた気がする。

 

 そう考えながら歩いていると校門についていた。どこを見てもまだ生徒は少なくいるとするなら朝練に来ている運動部ぐらいしかいないそんな時間だった。私は自分の教室に向かい席に着いた。

 

 それから一日授業を受け放課後の時間がやってきた。私は放課後は生徒会の仕事がある為、職員室まで鍵を取りに向かっていた。するとその途中で金髪で髪の左側に赤いリボンを巻き1年生の制服を着た少女が何かを探すように顔をキョロキョロさせていた。

 

「君、何か探しているの?」

私は少女に聞いた。

「えっと、宿題のプリントをコピーしたいけど場所、分かんなくて」

少女は手に持ったタブレットを私に見せながらコピーができる場所を聞いてきた。

 

 私はその少女の顔を見て思い出した少し前に結成し学内のユニットランキングを駆け上がったユニットたしかHappy Around!(ハッピーアラウンド)の|愛本りんくだった。

 

「コピー機ならそこの階段を下りて右奥に行ったあたりにコピー室があるよ、愛本さん」

私は愛本さんにコピー室への道を教えた。

 

「えぇ?なんで私の名前を?なんでなんで?」

愛本さんは驚いた顔をして私に迫りながら聞いてきた?

 

「それはまぁ君とハピアラは有名だからね、学校やこの国には慣れたかい?」

 私は愛本さんに名前を知っている理由を答え、最近の学校での様子について聞いてみた。ふだんならあまり人にこういった事は聞かないが愛本さんはつい最近までアフリカの方に住んでいたいわゆる帰国子女であった。なので慣れない日本での暮らしや学校で困っている事がないかそれとなく聞いてみる事にした。

 

「全然だよ、えっと?」

 愛本さんは嬉しそうに答えるが、私の名前を教えるのを忘れていた。

 

「すまない、自己紹介がまだだったね、私の名前は陽花里藍だ藍で構わないよ」

「よろしくね藍ちゃん」

 愛本さんは私の手を取りながら答える。

 

「それより行かなくて良いのかい?」

 私は愛本さんが持っているタブレットを指さしながら言うと。

「あぁ~そうだった、ありがとう藍ちゃん」

 愛本さんは慌てて私が走らないように声をかける間もなく階段を駆け下りていった。

 

(大丈夫だろうか)私は少し気になったが生徒会の仕事に集中するため頭を切り替え職員室へと向かった。

 

 

「はぁ危なかった」

 宿題のプリントをコピーして慌てて終わらせて提出した後、愛本りんくは学園内の広場でハピアラのみんなを待っていた。

 

「いたいた、りんくの宿題、間に合ったの?」

 そこに制服の上にパーカーを着て髪に黄色いメッシュを入れると言うこの学校(陽葉学園)以外なら退学処分物の格好の少女がりんくに話しかけてきた。

 

「バッチリ間に合ったよ真秀ちゃん、藍ちゃんが場所を教えてくれたおかげで」

りんくから真秀ちゃんと呼ばれた少女の名は明石真秀(あかしまほ)、HappyAround!のDJでりんくの友達だ。

 

「良かった、学校のあれこれで活動できないとかはひとまず大丈夫そうでって藍ちゃん?」

 リンクの報告を聞き安堵したような顔をする真秀であったが、その後の藍ちゃんと言うくだりに反応する。

 

「うん、コピー出来るとこが分かんなくて迷ってたら道を教えてくれてたんだ、それにね学校はどうとか聞いてきたよ」

りんくはさっき藍との間にあった出来事を話す。

 

(あれ藍ってたしか)真秀は藍と言う名前を聞いて思い出した顔をした。

「りんく、その藍って人のフルネームって何だった?」

 真秀はりんくに藍のフルネームを聞いた。

 

「たしか、ひかりって言ってたような?」

 りんくは首をかしげながら藍のフルネームを答えた。

 

「他に何か特徴は何年生だとか?」

 真秀はさらにりんくに聞いた。

「あ、そういえば2年生のリボンを付けてた」

 それを聞いた瞬間、真秀は自分の額に手を当てながら答えた。

「たぶんそれ、うちの生徒会長だよ」

「えぇ~」

 広場にりんくの驚く声が響いた。

 

 

 一方、生徒会室では。

 

「陽花里会長、あなたはと言う人はまったくもって羨ましい」

 私は美星と共に書類を整理しながら美星の小言を聞き流していた。なぜ私が美星から小言を言われているのかを説明すると15分ほど時間を遡る事になる。

 

 愛本さんにコピー室の場所を教えた後、職員室に向かうため階段を降りたところ生徒会室の鍵と図書委員からの書類を持った美星と合流し生徒会室へと向かった。

 

「図書委員からの要望だがどうだった?蔵書に関してだそうだが」

 私は朝メッセージ出来ていた図書室の蔵書について美星に聞いた。

「なんでもDJ雑誌の図書室での扱いを増やしてほしいとの要望だそうで」

 なんでも雑誌の扱いを増やしてほしいとの要望であった。

 

「なんでもわが校のユニットが有名になったので同じようにDJに興味を持つ生徒も増加しているとの事でして」

 美星が図書委員から聞いた理由を言う。

 

「ああ、そういえばわが校のユニットで思い出した、愛本さんと話したぞその上にちゃん付けで呼ばれてしまった」

 私はさっき愛本さんとの間で起きた出来事を美星に伝えた。すると美星の私に対しての目線が途端に冷たく変わった。

 

「どうした、急に険しい顔をして?」

 私がそんな顔をする理由を聞くと。

 

「愛本さんと仲良く話してちゃん付けで呼ばれるなんて羨ましいにもほどがあります」

 愛本さんと仲良く話してちゃん付けで呼ばれることぐらい普通ではないか彼女の性格からして誰に対しても同じように感じると思うのだが。

 

「そんなに気にする事かね? それに愛本さんと話したいのなら話しかければ良いのでは?」

 私はさっき思った事を正直に口にした。

 

「何も分かってませんね、会長!推しと言うものは遠くから推すもので独占する物では……」

 美星が訳の分からないことを言いだしているが無視して書類にサインとハンコを押す。

 

「会長まだ話は終わっていません」

 どうやら私は気づかぬうちに美星のスイッチか地雷を踏んだらしい、この小言が早く終わって暮れの祈りながら書類に目を落とした。

 

 

 それから15分が立ち書類も少しめどがついたが美星の小言は終わってはいなかった。そんな時に生徒会室のドアをノックする音と共に「すいません生徒会の人はいますか?」と言う声が聞こえた。

 

 私は美星の小言で冷え切った生徒会室の空気を変えるために「はい、今行きます」と答え外へ出た。するとそこには愛本さんと同じハピアラの明石真秀さんが立っていた。

 

「愛本さんにそっちは明石さんだねどうかしたの?」

 私は二人に何でここにいるのか聞いた。

 

「「すいませんでした」」

 愛本さんと明石さんが同時に頭を下げてくる、事情を聴くとどうやら私が生徒会長であることに気づかなかったことを気にしてとの事だった。

 

 私は二人から事情を聴いたが別に気にする事ではなかった、なぜかって私からしたら生徒会長と言う名前にあまり価値を置いていないそれよりも大事なのはその名前に見合う行動が出来るかどうかだった。

「気にしないでいいよ、それより宿題は大丈夫だったかい?」

 私は愛本さんに宿題はどうだったのかを聞いた。

「はい、バッチリ出せました」

 私は二人の様子を見ながら考えた、彼女たちを利用するのは非常に心苦しいが美星の小言を聞くのも面倒だ。私はそう考え二人に提案をしてみた。

「そうだ、こう言っては何だが生徒会の仕事を見てみないか?」

 二人は何でと言いたげな顔をしているので、もう一押ししてみる。

「図書委員会からの陳情でDJ雑誌を置く数を増やして欲しいのだが私はどれを選んでいいの分からなくてね、出来れば君たちのような現役のユニット活動している人の意見も聞きたいなと」

 私がそれとなく二人を頼るように聞いたところ愛本さんは。

 

「私やってみたい、生徒会の仕事ってアニメみたいに色々やるんでしょ?」

 目を輝かせながら聞いてきた。

「りんくがやるって言うなら私もお手伝いできることなら」

 真秀ちゃんも控えめに了承してくれた。

 

 私は二人の前でドアを開けこう言った。「副会長、お客さんだ」そう言って二人を生徒会室に招いたところ美星は驚き半分嬉しさ半分な顔をしていた上に仕事のスピードが向上したことを記述しておく。

 

 生徒会の仕事が終わって部屋に鍵を掛けた私と美星に加えて愛本さんと明石さんは玄関にで話していた。

「今日はありがとう愛本さん、明石さん」

 私は二人をねぎらう。

「いえ、こちらこそ」

 明石さんがお礼を言う。

「あ、そうだ」

 何かを思い出したような声を上げ愛本さんはポケットから貝殻を2個、見せてきた。

 

「これ藍会長と美星副会長にあげる、私が昔住んでたティオティオの貝殻」

 愛本さんは私と美星の手に一つずつ貝殻を手に乗せた。

 

 貝殻を貰った私と美星は愛本さんに

「ありがとう、愛本さん大切にするよ それと会長は良いさっきみたいに藍ちゃんで」

「おなじく美星ちゃんでいいです」

 なぜか美星は今日一番の笑顔だったが。言ったそれに対し二人は

 

「私も愛本さんじゃなくてりんくで」

「私も明石さんじゃなくて真秀で」

 

 それを聞いた私は「改めて今日はありがとうりんく、真秀」と言い頭を下げそれぞれ帰りの道へと向かった。

 

 私は家に着くといつものように着替えて布団をかぶった。しかし今日はいつもと違う部分があるそれは家の机の上に今日貰った貝殻がある事だった。それを横目で見て私は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 読んでくださりありがとうございます。

 良いと思ってくださったのなら幸いです。


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星の光に願いをかけて

 今回、咲姫ちゃんの共感覚に独自解釈を含みますご了承ください。


愛本さん、いやりんく達と仲良くなってから少したったある日放課後、その日は雨がふっていたがそんな日であっても学校はある。そんな訳で雨による頭痛で少し沈みそうな気分を抑えながら生徒会で仕事をしている訳だが特に今日のような雨の日は他の委員と一緒に校舎の安全を守る為の見回りも仕事に入ってくるので放課後は忙しのだ。

 

「まったくこうも雨が続くと仕事にも気が入らんな」

 頭痛の原因である今の天気に文句を言いながら私は校舎の見回りを始める、まずは1階、ライブスペースや控室のあるエリアだ。どうやら今日はハピアラのライブがあるようなので大勢の生徒がライブスペース周辺に集まっていた。

 

「あ、藍会長、ライブを見に来たんですか」

「いや、今日は雨だからな雨漏りや壊れた個所がないか見回りだよ、今からライブかい楽しんでいってくれ」

 頭痛を我慢しながら私は話しかけてきた生徒の問いかけに若干ひきつった笑顔で答え見回りを続ける。

 

「地下のライブスペースは問題なし、副会長たちは他の階を見てるからあとは10階だな」

 他の生徒会や風紀員会の生徒たちの担当か所を思い出しエレベーターで10階に向かった。

 

 陽葉学園の10階は教室や特別教室が多くそのため昼間は多くの生徒で廊下はぎわっていたが放課後しかも雨の日とあってか生徒の姿は少なく静かな光景が広がっている。私は窓が開いていないかどうかを確認しながら見回りを始めた。最初は奥側の教室から見回りを始め窓のカギを触ってしまっているかどうかを確認する。次に特別教室のカギが閉まっているもしくは部活動等で使用している生徒がいるなら声を掛けた。

 

 最後にこの学校は外の光を入れるために大きな窓が天井に着いている。今はあいにくの雨だが晴れているときは日の光に照らされ居心地が良いのでベンチも置かれている。私はベンチ方を見るとそこには暗くて良く見えないが人のような何かの影がベンチに座っていた。

 誰か具合の悪い生徒がいるのかもしれないと思い近づくいてみるとそこには銀の髪をした少女がまるで童話のお姫様の様に眠っていた。私はその少女の顔をよく見ると一年生に転校してきた芸能事務所所属、平たく言えばアイドル系のDJユニット、PhotonMaiden(フォトンメイデン)のDJ、出雲咲姫(いずもさき)だった。

 

 私は出雲さんを起こすべきか迷ったが、今日はそこまで気温が高くないと思いだして風邪をひいてしまうと思い出雲さんを起こす事にした。

 

「出雲さん、出雲さん、起きてくださいこんなところでは風邪を引きますよ」

「誰ですか?」

 私は出雲さんの肩をゆすりながら声を掛けた。出雲さんは目をこすりながら話しかけてきたので私は出雲さんから手をどけ出雲さんに目を合わせ話しかける。

 

「おはよう、出雲さん、ぐっすり眠っていたようだけど大丈夫?」

「たしか、生徒会の人ですよね、私は大丈夫です」

 私は出雲さんに目線を合わせられるよう身を屈めながら話しかける。すると出雲さんの意識もはっきりとしてきたのかこっちを見ながら答える。

 

「そうか、ならいいんだ、出雲さんお仕事の方も頑張ってるし辛いなら新島さんや花巻さんに言うんだよ」

 私は出雲さんの答えに安心したが、念のため出雲さんの事を気遣う、特に彼女の様に芸能人として活動している場合特に学業だけでなく仕事も入るので体や精神負担が多くなりがちとなるから特に注意しなければならないからだ。

 

「会長さんこそ、大丈夫ですか?こんな雨の日なのに見回りは大変だと思いますけど」

 出雲さんは心配そうな顔で聞いてくる。

 

「大丈夫ですよ、いつもの事ですから」

 私は出雲さんに頭痛を我慢している事を気取られないように表情や声に気を付けながら会話を続けた。

 

「嘘、ついてますね」

 出雲さんは、きれいな透き通る声で私が嘘を言っていると鋭く指摘してきた。

 

「いや、どういうことかね私はとても健康的だぞ」

 私は表情でバレたかと思い取り表情を繕いながら私が健康であるとごまかして切り抜けようとする。

 

「会長さんの声、痛いのを我慢している人と同じ色が見えましたから」

 出雲さんはまるで人の感情が見えるような発言をしていた。そういえば、私は出雲咲姫と言う少女が陽葉学園にやってくる前、担任と生徒会の一部だけに先生から見せられた出雲さんのプロフィールの内容を思い出していた。

 

 今から少し前、陽葉学園学長室。

 

「学園長、出雲咲姫さんのプロフィールについてご質問が?」

 私は学園長を前に、出雲さんの書類の一部を指さしながら問いかける。

「この共感覚と言うのは出雲さんの場合、具体的にどのタイプに当たっているのでしょうか、後具体的には我々も支援などを行う必要がどうかをお聞きしたく」

 私は出雲さんがこの学校に来るに当たって心配していたことがあった、ただでさえ芸能活動と言う周囲から浮きやすい状態である上に共感覚と言う。多くの人間との差異を抱えている。

 もちろん私はこの学園の生徒の善性、いわゆる人の心の光と言うべき物を信じてはいるつもりだ。しかしどこかのロボットアニメの特殊能力者の様に排斥されたりいじめを受けるなどと言う事態はないと信じたい。

 しかし万が一と言う場合に備えるのも生徒会、ひいてはその長である生徒会長の役割であると考え、生徒会としても支援する事があるかどうかを確かめておく必要があった。

 

「藍会長、心配はするな我々や出雲さんの担任予定の先生もしっかりと出雲さんの事を理解して最適な対策を準備している」

 学園長は落ち着かせるように優しい顔と口調で対策をしていると言ってきた。

 

「ですが学園長、この陽葉学園では今までにそういった生徒の受け入れの経験は多いとは言い難いと思われます、特に出雲さんのような人のケースは」

 私は学園長に思っている不安を投げかけてみる。

 

 学園長はコーヒーを手渡しながら、諭すように問いかけてきてきた。

「もしかして生徒が彼女を排斥したりするのではないかと疑っているのかね?」

 学園長は顔に少し笑みを浮かべながら、私の懸念を言い当ててくる。

 

 私はコーヒーに軽く口を付けながら答える。

「我々人間は、歴史が証明するように自分や集団と違うものを恐れるものです、警戒をするに越したことはないと考える次第です」

 私はこの状況を見て嘘を言ってもメリットがないと判断し白状する事にした。

 

 学園長もコーヒーに口を付け私をまっすぐ見据える。

「君の父譲りの警戒心と用意周到さは美徳だが、君を生徒会長に選んだ生徒たちを信じてあげなさい」

 学園長はコーヒーを飲み続ける。

「それが、君に教育者として言える事かな」

 

 私は学園長に言われた事を反芻しながら出雲さんを傷つけないように言葉を絞り出した。

「出雲さん、見ていたのか君の眼の力で?」

 すると出雲さんは、少し呼吸を置いていたずらが成功した子供のような笑顔で言った。

「嘘です、流石に話し声だけじゃなんとも言えません、けど頭が痛そうなのを我慢している顔をしていましたから」

 どうやら私は無意識的に痛みを我慢するのが顔に出てしまっていたようだった。

 

「なんだ、そうだなこれが終わったら保健室で頭痛薬でも貰うさ」

 などと出雲さんに答え安心させると。

 

「咲姫ー!」

 と遠くから元気が湧くような少女の声が聞こえてきた、私はそっちに向くと見事な銀髪をポニーテールにし制服には同じ2年のリボンを付けた、元気はつらつとしている少女が咲姫をよんでいた。

 

 彼女の名は新島衣舞紀(にいじまいぶき)、先と同じくアイドル系のDJユニットPhotonMaidenのリーダーでスポーツが得意だ。

 

「藍会長もいるの?」

 驚いたように新島さんは私に話しかけて来た?

 

「あぁ新島さんか、見回りの途中で眠っている出雲さんを見つけてね、私はまだ仕事があるので失礼するよ」

 私は出雲さんを新島さん預け足早にエレベーターへと向った。

 

 

 ベンチへと残された咲姫に衣舞紀は話しかける。

「そういえば咲姫って藍会長と話すの初めてだっけ? どう、だった?」

 衣舞紀は咲姫に藍と話した感想を聞いてみた。

 

「どうだったと言われても、悪い人じゃないと思います」

 咲姫は先ほどの自分の体験を踏まえて答えた。

 

 それを聞いた衣舞紀は苦笑交じりに

「私、藍会長と同じクラスなんだけどなんだか近寄り辛いなって、悪い人じゃないと思うんだけど」

 衣舞紀は自分が藍に抱いている感覚を正直に言った。

 

「前、りんくさんや真秀さんと楽しそうにしてたので今度はこっちから話しかけてみましょう」

 咲姫は自分が前に見た光景を思い出し衣舞紀に提案する。

「今度話すときはこっちからで決まりね」

 そういい二人はこちらから話しかける事を決めた。

 

「はぁ~私は頭痛薬の副作用でぼーっとしながら考えていた」

 もう少し新島さんや出雲さんと話すべきだったかなど頭の中で考えがぐるぐるしていく。

「まぁくよくよしてもしょうがないかと、窓の外を見ると雨は上がり少し星が見えていた」

 私は少し星に願ってから眠るとする内容は(次は積極的に話せますように)と。

 

 




 お楽しみいただけたでしょうか、次はピキピキ編です。

 次回もお楽しみに


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最頂点と生徒の長

 お待たせしました、ピキピキ編です。

 響子の口調が少し変化していますのでご了承ください。


 出雲さんと話した雨の日から少し経ち梅雨も明けそうになったある日の放課後、いつものように生徒会長として書類への記入や陳情への対応をこなしながら忙しく働いていた。

 

「副会長、ハッピーアラウンドが次のライブで使うフライヤーのデータを送ってきたので確認をよろしく頼むよ」

 

 生徒会の仕事の中にはDJユニットをしている生徒たちがライブの宣伝用のチラシ、そっちの方の用語ではフライヤーと呼ばれているものを始めとした掲示物の管理も生徒会の業務の1つである。しかも来週には陽葉学園はオープンスクールを控えており、奨学金などの団体のチラシや各部活動のポスター張りなどの作業が一気に入ってきており私や副会長の美星を始めにとても忙しくなっていた。

 そんな中、美星の携帯に電話がかかってくる。

 

「もしもし平塚です、はい、本当ですか分かりました」

 電話を終えた美星が私のところに向かってきて言った。

 

「会長、少しまずいことになりました」

 美星の話を聞くに来週末のオープンスクールの生徒代表で出る予定の一年生、たしか美川さんだったかのご親戚に不幸があったらしく、出られなくなってしまったようだ。

「そうか、彼女にはご愁傷様と何とかするので心配しないで欲しいと伝えておいてくれ」

 彼女の親戚の冥福と後の事は心配するなと伝えるように美星に伝えると、今後の予定が変更になったことから次の手を考える。

 

 「しかし、参ったこれでは生徒代表の代役がいるかと言うとフォトンメイデンは時間とギャラ諸々を抑えつつ準備するのは不可能、ハッピーアラウンドは呼べそうか副会長」

 私は相手の生徒代表の代役を依頼する相手を考えるが、芸能人であるフォトンメイデンは交渉が時間やギャラ等の準備がある為気軽に呼ぶなどという事は出来ないため、ハッピーアラウンドを呼べないかと美星に聞いた。

 

 

「会長、ハッピーアラウンドですが、来週末のオープンスクールの日お泊り会だそうです」

 美星は昔見た映画で援軍が来ないことを伝える軍人のようにハッピーアラウンドが出られない事実を理由付きで無慈悲に私に伝えてきた。

 

 

 私は観念したように息を吐き、美星にいった。

「分かったよ副会長、山手さんと清水さんにいつ時間が空いてるか聞いてこよう今の時間帯ならまだ練習用部屋を借りてるはずだ」

 そういうと私は椅子から立ち上がり響子たちのいる一年の教室へ美星を連れて歩き出した。

 

 

 

 「はぁ~疲れたぁ~」

 陽葉学園の中にはDJユニットなどの音楽活動を行う生徒達の為の練習スペースがあり、ここもその中の1つだ。その部屋の机にだらけ切った表情で突っ伏しているピーキーピーキーの清水絵空がいた。

 

「もう疲れたの?」

 それを横目に見ている栗色のロングヘアで制服にパーカーを羽織った少女が話しかける。

 

「響子や由香たちが体力お化けなだけでしょ」

 名前を響子と言った少女に対して絵空は反論する。

 

「次のライブも有るから少しは動けるようにしないと」

 それを見ながら次のライブに関して話している少女こそが陽葉学園最強のDJユニットとも呼ばれているピーキーピーキーのリーダーである山手響子その人だ。

 

 

 私と美星は山手さんと清水さんたちピーキーピーキーが借りている練習スペースのドアの前に立ちノックする。

「山手さん、清水さん入っても良いですか?」

 

「はーい、大丈夫ですよ」

 清水さんの返事が部屋から聞こえたので私はドアを開けた。

 

「藍会長と美星副会長が二人そろってなんて何かあったんです?」

 椅子に座った清水さんは二人を見ながら何が起きたのか聞いてくる。

 

「いきなり押しかけてすいません、少しお願いしたいことが」

 私は部屋の椅子に座り清水さんと山手さんにいきなり押しかけた事を謝りつつ依頼を行う。

「実は来週のオープンスクールに出る予定の人が色々あって出られなくなって至急代役を立てる必要が出てしまって」

 私は個人情報が絡まない程度だが二人に対して状況を説明した。

 

「それで、私たちに?りんくちゃんたちは?」

 響子は私たち以外にりんくたちハピアラを呼べないかと聞いてきたが。

 

「本当に申し訳ない訳ですがハッピーアラウンドは出られません、フォトンメイデンは今から調整したのでは間に合わないと言うわけでしてピーキーピーキーの内から誰か一人出て頂けたらと」

 美星が状況について補足して説明した。

 

 それを聞いた絵空は軽く頷きながらスマホを取り出す。

「状況は分かりましたけど、私もその日はダメですね、たしかしのぶもダメだし、由香も忙しいって言ってるし」

 多分画面には全員の予定が映っているのだろうか時折指でスワイプしたり拡大しながら言う。それを聞いた私はダメかと思い違う方法を考え始めようとするが山手さんが清水さんのスマホの画面を見ながら「その日ならわたしは予定がないので行きましょうか?」と言ってきた。それは私と美星たちにとっては救いのように聞こえた。

 

「山手さん本当ですか? ぜひお願いしたいです」

 私は思わず山手さんの手を握り頭を下げて頼む。

「私からもお願いします」

 同じく美星も頭を下げた。

 

「わ、分かりました、その話引き受けます」

 それを見た響子は少し引き気味にと了承の返事をした。

 

「ありがとう山手さん本当に、本当にありがとう、今台本のデータを送るから本番までに目を通しておいて欲しい、まだ練習もあるだろからそろそろ失礼するよ」

 私はスマホを操作し山手さんに台本のデータを送り、お礼を言って部屋から出る。

 

 それから時間はあっという間に過ぎて来週末のオープンスクールの日を迎えた。

「山手さん、準備の方は?」

 私は講堂の舞台袖で待機している山手さんに声をかける。

「大丈夫」

 山手さんはそう言うと舞台に上がった、そこからはもう大盛り上がりだった。なんせ陽葉学園の最強のユニットで他の学校でも有名なユニットのリーダーが来てくれたのだ。盛り上がらない訳がない。

 オープンスクールは山手さんが盛り上げてくれたおかげで学校に来てくれた他の小学校や中学校の生徒や保護者達は大喜びで、プログラムが一通り終わった後、山手さんは話しかけてくる人たちを全て捌き切ってしまったのだった。

 

 オープンスクールが終わり、講堂に出していた机やパイプ椅子等を片付けて本日は解散となった。私は帰り道、山手さんに話しかけた。

 

「山手さん、今日は本当にありがとう。おかげで大盛り上がりだったよ」

 私は山手さんにお礼を言う。

 

「いえいえ、こっちも楽しかったですし、それに沢山のファンにも会えたので」

 私のお礼を聞いて山手さんは嬉しそうな顔をしていた。それは私からのお礼だけでなくファンと交流できたことが楽しかったと言う顔だった。

 

「そうですか、それなら良かったです、それではまた」

 私は山手さんが嬉しそうな顔をしているのを見て頑張った甲斐があったなと思えた。それに満足した。私は帰ろうと玄関へ足を進めた。

 

 

「山手さんじゃなくて、響子でいいですよ」

 すると後ろから山手さんが話しかけて来た。

 

 それを聞いた私は響子に向き直り言った。 

「それでは響子、また来週」

 

 その夜、私はベットに座りながら今日の事を思い出してみた。

 大成功のオープンスクール、山手さん、いや響子と仲良くなれた事も含めていろいろなことがあったと思い出しながら眠った。

 

(来週もまた、楽しくなるだろう)

 何故だが私の心の中では何1つの根拠もないのにそう思えてしまった。




 ピキピキ編、終了しました、次回もお楽しみに。

感想などよろしくお願いします。


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