俺の凡高での日常 (ブリザード)
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プロローグ

ニセコイの漫画見てたら書きたくなりました。
るりちゃんが大好きです。ということでヒロインは
るりちゃんです。


「ふあぁ、もう朝か………」

 

7時に設定したアラームが部屋中に鳴り響いて目が覚める。起き上がり、カーテンを開けると朝の光が部屋に射し込んできて、俺は反射的に目のまえに手をやる。今日も晴天。清々しい朝だ。

 

 

 

 

 

「おはよー。ばあちゃん、じいちゃん」

 

自分の部屋を出て1階に下りるとじいちゃんとばあちゃんが飯を作って待っていてくれた。

 

「あら、おはようクロちゃん。昨日はよく眠れたかしら?」

 

「まぁな。昨日は少し疲れてたし、ゆっくり眠れたよ」

 

「お前も部活とかで忙しいじゃろうに。あまり無茶をするんではないぞ」

 

「わかってるよ、それぐらいは」

 

食パンをかじりなから、俺は笑ってじいちゃんに答える。

 

この2人は俺が家庭の事情で中2の時にこっち転校してきてからずっと面倒を見てくれている俺の大事な家族だ。

 

「じゃあ行って来るよ!!」

 

「はいはい、行ってらっしゃい。今日もがんばってきてね」

 

「おう!」

 

玄関のドアを開けて外に出る。太陽の日差しが当たってとても気持ちいい朝だ。

 

ズボンのポケットからFRISKを2粒取り出して口の中に放り込んで学校に向かう。

 

神崎 黒。凡矢理高校に通っているごく普通の高校生。………ごく普通の高校生である。

 

 

 

 

 

 

「…しまった、家に弁当忘れた。……まぁいっか。購買でパンでも買うとするか」

 

学校の校門近くまで鞄の中を探り弁当がないことに気づく。ばあちゃんに悪いことしちまったな……

 

『おい見ろよ、あいつ神崎だぜ』

 

『神崎ってあの殺人者の息子の神崎か?』

 

『あぁ、絡んだりするとボコボコにされるって噂だ。近づかないでおこうぜ』

 

後ろの方からそんな会話が聞こえてくる。

 

「殺人者の息子……か」

 

俺、神崎 黒は幼い頃に俺の親父が人を殺してしまったせいで殺人者の息子って呼ばれるようになった。親父は警察に捕まったが、そのせいで俺の小学校での生活は差別され、いじめられと散々だった。

 

「まったく、誰だよ。この学校でもそんな事言いふらした奴はよう」

 

愚痴を言いながらも下駄箱で靴を履き替えて教室に向かう。

 

教室に入ると俺に気づいた奴が目を背ける。俺は何もしてねえのになんでこんな仕打ち受けてんだ?……まぁ、このクラスでは俺の数少ない友達がいるから別に何も寂しいわけではないけど。

 

俺は教室での自分の席に向かう。

 

「おっす、宮本、小野寺」

 

俺の隣と斜め前に座っている人物に声をかける。

 

「おはよう、クロ君」

 

「おはよう。何か今日もみんなに目線逸らされてたね」

 

宮本 るりに小野寺 小咲。俺の数少ない友人の2人で中学からの付き合い。

俺の家の事情を知っているにもかかわらず俺と仲良くしてくれる。ちなみに2人ともかなり可愛い。

 

「まぁな。いつもの事でもう慣れたよ」

 

「……慣れって怖いわね」

 

「でも、そんなのクロ君がかわいそうだよ。クロ君は何も悪い事してないのに」

 

「ありがとう、小野寺。そう言ってくれるだけでも俺は嬉しいよ」

 

そう言って俺は小野寺に微笑みかける。すると、小野寺は照れたように顔を赤くして下を向いた。

 

俺は苗字で呼ばれるのが大嫌いなため友達には下の名前で呼んでもらってる。

 

「オース、ってうわ!」

 

「い、一条君!?どうしたのその怪我?」

 

いきなり小野寺が顔を上げて声をあげるので俺は後ろを見た。そこにはある意味俺と似た境遇の人物が立っていた。……何故か鼻血を出して。

 

一条楽。集英組というヤクザの組長の1人息子。ヤクザという間柄のおかけで楽は今までの学校生活が大変だったらしい。話しを聞くに『楽に近づいたら殺される』など今まで中々友達が出来なかったらしい。ちなみに俺の友達でもある。

 

「………何があったか知らねえけど楽も大変だな」

 

「そうね。でも、教室入って来る時に鼻血出してるのって中々笑えると思わない?」

 

「ははっ、確かにな」

 

どうでもいいような話しをする俺と宮本。もう1度楽の方を見ると小野寺が楽の鼻に絆創膏を貼っていた。……意味あんのか、それ。

 

「てか、あんなにイチャつきやがって。これで何であいつら付き合ってないんだ?」

 

「それはあんたとあたし達が仲良くなってからずっと疑問に思ってる事だと思うわよ」

 

「何度か俺達が付き合えるように手伝ったのに全部不発だったよな」

 

「互いに思いあってるのに何でかしら?」

 

「こうなったら、もういっそばらしちうか?お前ら2人両想いだぞって」

 

「……それも面白いかもね」

 

宮本は少しだけクスッと笑った。それを見た俺は咄嗟に顔を背ける。

 

「どうしたの?」

 

「何でもねえ。何でもねえから」

 

そう、と言って宮本はさっきまで読んでいた本を読み出した。

 

すると、朝のHRを知らせる予鈴がなった。

 

廊下にいる生徒や教室で喋っていた生徒が自席に座って行く。楽や小野寺も自席に座っていた。

 

予鈴がなってしばらくするとクラスの担任のキョーコ先生が入って来る。そして、いつもの日常のようなHRをして連絡も終わる。

 

「よーし、じゃあ最後に。今日からこのクラスで一緒に過ごす転校生を紹介するからな。入って、桐崎さん」

 

キョーコ先生が扉に呼びかけるように言うと、廊下から1人の女の子が教室に入ってきた。

 

「初めまして。アメリカから転校してきた、桐崎千棘です」

 

 その転校生は俺が今まで見てきた女の子の中の誰よりも可愛い気がした。長い金髪に碧い目にチャームポイントみたいなうさぎの耳のような赤いリボン。その他の全てが桐崎さんのいい所を表している。

 

「うわぁ……………」

 

あまりの可愛さに少し顔を赤くして見ていると隣の宮本に肘打ちをくらった。

 

「グフッ!…いきなりなんだよ!」

 

「……別に」

 

そう言うと宮本は窓の方を見つめた。

 

「母が日本人で父がアメリカ人のハーフですが、日本語はこの通りバッチリなので、みなさん気軽に接してくださいね」

 

 ニコッと自己紹介を終えると男女両方から声が上がった。

 

「うおおおおぉぉ!かわいい!!」

 

「すっげー美人」

 

「キャ――――!!足細ーい!」

 

「何あのスタイル!モデル並みじゃね?」

 

「おい、ハーフだってよ」

 

「あんな可愛い子見たことねぇ!」

 

クラス全員が俺と同じ事を思ったのかまるで何かのコンサートのように声が響き渡る。それほどの美しさを桐崎さんは持ってるって事か……

 

「じゃーひとまず、テキトーに後ろの空いている席に座って」

 

「はい」

 

キョーコ先生はしばらくこれを止めることは出来ないと思ったのか、生徒達を無視して桐崎さんに座るように指示をする。その時……

 

「「あ――――!!!」」

 

先生でも止められなかった声援を2人の大声によってそれが止まった。

1人は転校生の桐崎さん。そして、もう1人はヤクザの組長の息子であり俺の友達の一条楽だった。

 

 

「あなた、さっきの……」

 

「さっきの暴力女!!」

 

暴力女って事はあの鼻血はこの桐崎さんのせいってことか?見かけによらず怖いことするんだな……

 

「ちょ……な、なによ、暴力女って!?」

 

「さっき校庭で、オレに飛び膝蹴りを食らわせただろ!」

 

「ちゃんと謝ったじゃない!」

 

「あれが謝っただ!?あれのどこが!!」

 

「謝ったって言っているじゃない!何よ、ちょっとぶつかったくらいで被害妄想やめてよね!」

 

「どこが?どこがちょっとだよ!こっちは気絶しかけたっつーんだよ!!」

 

「へーそう。血圧低いんじゃないの?こっちは謝ってんだから許してもいいでしょ!?女々しい人ね!」

 

言い合いをしてるうちに2人だけの空間に入ってしまった楽と桐崎さん。こうなってしまえばもう誰も口出しすることも止めることも出来なくなってしまう。てか、転校生の美女とあって1分もたたないうちにこんなに喋りあえるなんて楽しかいねえよ。ある意味、あいつのスキルだろ。

 

そして、楽は桐崎さんの態度に腹が立ったのか。

 

「それが謝っている態度かよ!この猿女!!」

 

こんな美女に猿女。いくら、腹が立ったからってそこまで言う楽もどうかと思うぞ。

 

「誰が猿女よ!!」

 

転校生の怒りが頂点に達したのか、勢い良く楽をぶん殴った。そのパンチの威力は、1番後ろの席よりも後ろの床まで吹っ飛ばす威力だった。吹っ飛ばされた楽に俺は近づき言った。

 

「今のはお前が悪い」

 

その言葉にクラス全員が一斉にごもっともです、と頷いたような気がした。

 

転校生にぶっ飛ばされた楽と、楽をぶっ飛ばした転校生の桐崎さん。この2人の関係はあんな関係になるなんてこの時の俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 




どうでしたか?
感想や訂正があればお待ちしております。


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第1話 遊ぶヤクソク

楽が殴られて、しばらくして起き上がるとHRは終了した。そして、楽は自席についた途端、いきなり桐崎さんに引っ張られて廊下に出て行った。

 

「………楽も大変だな」

 

「そうね。まぁ、私には関係ない事なんだけどね」

 

「でも、凄いよね。ある意味一条君って」

 

「確かにな。でも、それがあいつのスキルなんだろ」

 

俺達は一条が連れて行かれて出て行った扉を見つめながら言う。

 

ちなみに休み時間はたいてい俺達3人でひと時を過ごしている。宮本はどうか知らないけど、小野寺はクラスの中でもだいぶ人気が高い。そのため、俺と小野寺が仲良く喋ってるのを妬んだり、羨ましがったりする奴がいる。まぁ、そいつらを見つめたらすぐに逃げられたりするんだが。

 

「あ、戻ってきた。2人一緒に戻って来るってやっぱりあいつら仲いいんじゃねえのか?」

 

「仲がいい……」

 

2人が戻ってきたのを見て小野寺が羨ましそうな顔をしている。ちょっとからかってやろう。

 

「どうしたんだ、小野寺?まるで『私も一条君と一緒にいたいな。いいなー桐崎さん』みたいな顔をしやがって」

 

「どんな顔なのそれ!!てか、心読まないでよ!」

 

小野寺が顔を真っ赤にして俺に怒る。やっぱり、小野寺は面白えな。

 

「ははっ、ごめんごめん。あんまりにもわかりやすい顔してたから」

 

「もう……からかうのもほどほどにしてよ」

 

「でも、一緒にいたいのは確かだろ?」

 

「うっ………そうです」

 

何か反論しようとしたのか。でも、思いつかず結局本音を喋った。

 

「小咲。そう思うのならもっと自分からアプローチしなさいよ」

 

「……そう言われても何したらいいのかわからないよ」

 

「仕方ないわね……」

 

宮本が俺にアイコンタクトを送ってくる。それに俺は頷いて返事した。

 

「おーい!らk『わぁ!!別に今はいいから!!』何だよ、折角小野寺のためだと思ったのに」

 

楽を呼ぼうとした俺を小野寺が身を乗り出して遮る。楽がこっちを見てクエスチョンマークを浮かべてる。

 

「あ、キョーコ先生がきた」

 

先生が来たのでみんながぞろぞろと座っていった。

 

 

 

 

 

「キョーコ先生。これはどういうことですか?」

 

楽がキョーコ先生に言う。

 

「うん?いやー、お前らが廊下で仲良く話してるのをみたからな。それに桐崎だって日本に来て全然慣れてないんだからと思ってさ。まぁ、何だ。先生の優しさってやつ」

 

「抗議する!断固抗議する!!」

 

「ダメだ。じゃあ、頼んだからな一条」

 

楽と桐崎さんが抗議している理由。それは、楽と桐崎さんだけを席替えして隣同士にしたことである。

 

結局、先生には逆らえず2人は隣同士になった。

 

そのまま時は流れて昼休みに……

 

 

 

「やっと、昼休みだ……授業疲れた」

 

「本当だよね。私も何か疲れちゃったよ」

 

「小咲はずっと羨ましそうに一条君を見てたもんね」

 

「るりちゃん!?」

 

見てたの!という感じでばっとこっちに振り向く。

 

「そりゃ、もうわかりやすそうに……ねぇ?」

 

「あぁ。これ以上にないくらいに乙女な顔をしてたぞ」

 

「うぅ、恥ずかしい……」

 

手に顔をやり、顔を真っ赤にする小野寺。そんな小野寺を見た後、俺は鞄の中を探り財布を取り出そうとした。

 

「あ!………しまったな財布も家に忘れたまった。…しゃあねえか。腹が減るけど今日は何も食わずに乗り切るか」

 

「クロ君。お弁当忘れたの?」

 

「あぁ。だから購買で何か買おうと思ったのに、財布まで忘れちまった」

 

はぁ、と溜息をついて机に突っ伏す。

 

「………クロ君。これあげるわ」

 

宮本が机に出した4つのパンのうちの2つを俺の机に置いてくれる。

 

「いいのか?これお前のお金で買ったんだろ?」

 

「いいわよ、別に。隣でお腹の音をぎゅるぎゅる鳴らされるよりいいもの」

 

「いや、でも『何?私のパンが食べられないの?』はい。何でも、ありません」

 

宮本に睨まれた俺はすぐにパンの封を開けてそれを食べる。……うん。美味しいジャムパンだ。

 

「サンキューな、宮本。このお礼は必ずするから」

 

「じゃあ、ハーゲンダッツのアイス2個ね」

 

「了解。また、遊びにいったりした時にちゃんと奢るよ。いつならあいてる?」

 

「次の日曜ならあいてるわよ。小咲もどう?」

 

「うーん……2人の中に行ってもいいなら別にいいかな?」

 

「小野寺、それって『小咲、それはどういうこと!!』はやっ!」

 

宮本が小野寺の胸倉を掴んでブンブンと揺らす。

 

「だ、だってるりちゃんにハーゲンダッツを奢るために行くのに、そこに私が入ったら……」

 

「そんなの私達が気にするわけないでしょ!」

 

(流石に宮本と2人なら俺は緊張するけどな)

 

「じゃ、じゃあ私も行くよ」

 

ブンブンと揺らされた小野寺はすごく疲れていた。

 

「おう。……結局遊ぶ時はこの3人なんだな」

 

「別にいいじゃない。ここに一条君がはいってみなさいよ。小咲が大変な事になるわよ」

 

「確かに」

 

「うぅ………」

 

小野寺は顔を赤くして俯く。

 

「あーーーーーーー!!!」

 

いきなり1人の男子の叫び声がクラス中に響き渡った。

 

 

 




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第2話 部活=スイエイ

一条side

 

「ない!俺のペンダントが……」

 

一体いつだ?いつ落としたんだ?今日学校に行く時には首にかけていたから…………

 

「あの時か!!」

 

俺は桐崎に蹴られた時のことを思い出した。

 

それを思い出した瞬間、俺は教室を飛び出していった。

 

 

 

 

 

クロside

 

「なんだ……あいつ」

 

「何かいきなり叫んだ後、慌てて出ていっちゃったね」

 

走って飛び出した楽を見て、俺と小野寺が呟く。

 

「あ、それよりさ。さっきのハーゲンダッツを買いに遊びに行く時に映画行かないか?久しぶりに見てみたい映画があってよ」

 

「私はどっちでも。小咲は?」

 

「私もいいよ。何時からなの?」

 

「んー、それはまた調べとく。わかったらメールするからそれから集まろうぜ」

 

「わかった」

 

「了解」

 

よし。ただ、ホラー系なんだけど小野寺は大丈夫なのかな?……まぁいいか。あ、楽が戻ってきた。

 

「はぁ?何で私がそんなもの探さなきゃいけないのよ!!」

 

「お前の膝蹴りのせいでなくしちまったんだぞ!!お前も一緒に探すべきだろ!」

 

「そんなのあんた1人で探せばいいじゃない」

 

「探して見つからなかったから頼んでるんだろ!!」

 

折角の昼休みにうるさい2人だな……少し話しに入ってみるか。

 

「おい、楽。どうしたんだ?」

 

「どうしたの、一条君」

 

「クロ、小野寺。いやちょっと大事なもんなくしちまってよ」

 

俺と小野寺が楽に話しかけると、楽は気づいたようでこちらに向いた。小野寺を見た瞬間、一瞬顔を赤くしたのは気のせいだろうか。

 

「探すの手伝おうか?」

 

「おう。1人じゃ大変だろ?」

 

「いやいいよ。こいつのせいでなくなったんだ。こいつが探すのが筋ってもんだろ」

 

「なんですって!!」

 

2人がにらみ合う。だが、桐崎さんが先に溜息をついた。

 

「で、それどんなペンダントなの?」

 

「ん?あぁ、これぐらいの大きさでこんな形をした……」

 

「えっ?」

 

楽がジェスチャーしながら説明していく。すると、それに小野寺が反応した。

 

「それって……」

 

「小野寺、知ってるのか?」

 

「ううん。勘違いかも……多分」

 

手をブンブン振りながら否定する小野寺。

 

「わかったわ。その代わり、そのペンダントが見つかったら今後、学校で私に話しかけないで!私嫌いなのよね。過ぎたことをグチグチいう人って」

 

「はぁ!?………わかったよ、望むところだ!」

 

「あと、探すのは放課後だけだからね」

 

それだけ言うと桐崎さんは椅子に座った。楽は腹が立っているようで乱暴に自席に戻った。

 

「あ、いたいた。一条に桐崎」

 

キョーコ先生が教室のドアからひょこっと顔だけ出して2人を呼ぶ。

 

「桐崎に学校の事を色々教えてあげたいからさ。桐崎をお前と同じ飼育係にしたから。頑張ってー」

 

それだけ言うとキョーコ先生は何処かに行ってしまった。

 

「な…………」

 

「「何ーーーーーー!!??」」

 

 

 

 

 

2人は嫌々という感じで飼育小屋の方へ向かった。

 

「小野寺。さっきの楽のペンダントの話しに何か心当たりがあったんだろ?」

 

「えっ?ないない!何にもないよ。ただの勘違いだったからさ!」

 

「嘘吐くな。あの反応のしかたは明らかに不自然だ。……多分、お前がいつも首から下げてる鍵と関係してんだろ。楽のやつは錠のペンダントだしな」

 

「つっ!?……いつそれを知ったの?鍵の話しはるりちゃんにも話してないのに」

 

「………1年の頃、お前と遊びに行った時に公園で俺がトイレ行って戻ってきたら、お前がベンチで寝てた時があったんだ。その時、偶然その鍵が見えたんだよ。かなり、古そうに見えたから家の鍵ではないって事はわかってた。今日ではっきりしたよ。その鍵は楽のペンダントに何か関係があるんだろ?」

 

あの時か……と呟きながら小野寺は溜息をついた。

 

「………また、今度ちゃんと話すよ」

 

「……わかった。その代わり、本当にちゃんと話せよ」

 

「うん。ごめんね」

 

それだけ言って俺達は自席に戻った。

 

 

 

 

 

放課後

 

「なぁ、宮本。今日って部活あったっけ?」

 

「あるわよ。そろそろ、泳いでも大丈夫な頃だと思うわよ」

 

「っしゃあ!そうとわかれば早く行こうぜ、宮本」

 

「はいはい、わかったわよ。じゃあね、小咲」

 

「うん。また明日ね、るりちゃん、クロ君」

 

「おう、また明日!」

 

そう言って俺と宮本は教室を出て、凡高の水泳部に向かう。俺と宮本は男子水泳部と女子水泳部に所属している。まぁ、人数少ないからいつも一緒に練習してるけど。弱小と言われていた凡高の水泳部は俺達が加入してからそれが変わった。中学から数々の記録を塗り替えてきた宮本は当然高校でも活躍して今では『凡矢里高校のマーメイド』と呼ばれるようになった。同じく俺も昔から運動と水泳だけが取り柄だったので中学でも高校でも活躍できた。俺の二つ名は『クロールのライトニング』か『マーメイドの彼氏』と二つ目がよくわからない名前になっている。

 

「さてと、泳ぐか!!」

 

「その前に準備体操しないとダメでしょ」

 

「あ、忘れてた」

 

男子水泳部の部室ですぐに着替えて泳ごうとすると、宮本に止められた。

 

「てか、お前女子なのに着替えるの早いな」

 

「着替えるの面倒だから、今日は下に着ていたのよ」

 

「ふーん。まぁ宮本がそれでいいなら別にいいか。じゃあ、準備体操もしたし泳ぐか!」

 

最初に1番得意なクロールから、平泳ぎやバタフライと色々泳いでいく。

 

「………相変わらず、泳ぐの速いわね」

 

「そうか。俺は宮本の方が速いと思うんだけどな。勝負してみるか?」

 

「お世辞はいらないわ。それに勝てる気がしないから別にいいわよ」

 

「……お世辞じゃないんだけどな」

 

今日はタイムを計らずに、ただ普通に色々泳いでおわった。部活終了時刻となりみんながプールから上がって部室に戻る。

 

「さて、俺も着替えて帰るとするかな。宮本、今日一緒に帰ろうぜ」

 

「いいわよ。てか、部活ある日はいつも一緒に帰ってるじゃない」

 

「それもそうだな。じゃあ、校門前で待ってるから」

 

そう言って俺は部室に向かう。俺と宮本の家は100mと全然離れていないため用事とかない時はいつも一緒に帰ってる。

 

「今日の弁当の事、ばあちゃんに謝らないとな」

 

「お待たせ。待った?」

 

「全然。じゃあ、行こうぜ」

 

恋人同士のデートの時みたいな会話をして俺達は歩き出す。………そういえば、楽のペンダントは見つかったのかな?また明日聞いてみるか。

 

「ねぇ、今日の昼に言ってた映画の話。あれってどんな映画なの?」

 

「ん?ホラー映画だけど」

 

「あんた小咲を悶絶させるつもりなの?それは流石にどうかと思うわよ」

 

「うん。それは俺も話した後に気づいた。……でも、悶絶してる小野寺を見るのも面白そうだなって思ったからもういいやってなった」

 

「それには同意するわ。私も怖いシーンとか出てきたらクロくんに抱きつこうかしら。私も怖いの苦手なんだ」

 

「えっ!?」

 

「冗談よ」

 

あまりに真剣な感じで言うから本気かと思ったぜ。てか、抱きつかれるって………

 

「クロ君、何で顔赤いの?」

 

「なんでもねぇよ。今日はちょっと暑いからな」

 

「今は涼しいくらいだと思うけど」

 

宮本がじっとこっちを睨んでくる。そして、納得したように手をうった。

 

「クロ君はこういうことをされたかったのね」

 

そう言って宮本は俺の方に体を寄せてくる。

 

「ちょっとまて、それはマジでやばいって」

 

「………そうね。悪ふざけが過ぎたわ。悪かったわ」

 

あれ、意外に素直に離れた?でも、何か寂しいな。もうちょっと寄せてくれてても………て、俺は何を考えてんだ!

 

「あ、もう家に着いちゃったわ」

 

「本当だ。じゃあ、また明日だな」

 

「うん。また明日ね」

 

お互いに手を振りあって別れる。明日は部活ないし、あいつのペンダントが見つかってなかったら俺も手伝うか。

 

 

 

 

「…………あんな事しなければよかった。今の私の顔が真っ赤な気がする」

 

身を寄せたのを後悔した宮本だった。




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第3話 10年前のヤクソク

少し遅くなってすいません。
自分的に1週間に1、2回投稿できたらいいなと
思っています。


楽がペンダントをなくしてからもう1週間が立った。だが、未だにペンダントは見つからず、それでも、俺と小野寺は何処かにある事を信じて楽を手伝い続けた。

 

「もーーーーー!!やってられない!なんで、1週間探して見つからないのよ!」

 

桐崎さんが溜まったものを全て吐き出すようにいきなり叫んだ。

 

「そんな事言われたって知るかよ」

 

「そうそう。そんなこと叫んでるならペンダント探すべきだよ、桐崎さん」

 

「なんなのあんた達!よくこんな地味な作業続けられるわね!」

 

俺達に指を指しつけて怒る。

 

「桐崎さん。人を指で指しちゃダメって親に言われなかったのか?」

 

「あんた何か腹立つわね!」

 

「この前クラスの子に言われたのよ。『放課後、毎日一条君と一緒にいるけど、2人ってもしかして付き合ってるの?』って」

 

「なっ!………」

 

楽が桐崎さんの言葉に呆気を取られてる。そりゃそうか、探し物を探してるだけでそう言われてるんだから。

 

「楽、大丈夫だぜ。俺も今日、クラスの奴に言われたんだ。『クロって最近、小野寺と一緒にいるけど、お前らって付き合ってるのか?るりちゃんに続き、小野寺まで………』って言って妬まれたから大丈夫だ」

 

「なんの励ましだよ、それ!!てか、それ言ったの集だろ!」

 

集、本名は舞子集といって、俺の友達。楽とは幼稚園からの付き合いでかなり仲がいい。ちなみに宮本、小野寺、楽、集が俺の友達。カメラで色々撮っていて、クラスのみんなに写真を売っている。宮本や小野寺の写真があれば、俺も時々世話になっている。

 

「別に俺は小野寺とお前のペンダントを探してるだけなのにな。なぁ、小野寺?」

 

「えっ!?」

 

小野寺が顔を真っ赤にしてこっちに振り向く。あいつ、俺と付き合ってるとか言われたのを気にしてるのか?

 

「う、うんそうだよ」

 

「笑えるよな!はははっ!」

 

「何が笑えるのよ!!」

 

桐崎さんが俺の襟首を掴んでぶんぶん振ってくる。

 

「ほら、仲良く楽しく話しながらでも探そうぜ」

 

「何が仲良く楽しくよ!冗談じゃないわ!探し物をしてるのは私の親切心でやってあげてるっていうのに!」

 

「はぁ?お前のせいだろうが!いきなり膝蹴りしてきやがって!」

 

「あんたがちゃんと持ってないから悪いんでしょ!!」

 

あ、やばい。これ絶対喧嘩になる。止めないと。

 

「おい、お前ら。そろそろ……」

 

「大体、もう1週間も見つからないのよ!諦めなさいよ!もう誰かが何かと間違えて捨てちゃったのかもしれないじゃない!」

 

「そんなのわかんねえだろ!!」

 

2人が声が荒れてきた。もうこれじゃ俺が止めることは不可能だろ。

 

「それにあれは俺にとって………」

 

「何よ!男の癖にペンダント一つなくしたくらいでピーピーと」

 

「何?」

 

「どーせ、昔好きだった子に貰った物とかなんでしょ?あーやだやだ。昔の事ズルズル引きずって、女々しすぎるわ。その相手だって、あんたにそんなもんあげた事なんて忘れるに決まってんのに、ホントにダサいわ!!『そこまでだ』!?」

 

「お前な。確かに1週間探し続けて見つからないから腹が立つのはわかるけど、それはないだろ。楽にとっては大事な物なんだぞ」

 

「あんたは何も思わないの!?」

 

「楽が信じてるならそれでいいじゃねえか。俺達がどうこう言う必要なんて全くねえ。大体、お前だって嫌だろ。ずっと大事にしている物がバカにされたりとかしたら」

 

「………私はそんな物持ってないからわかんないわ」

 

「はぁ………とにかく、今日はこれでおしまいだ。楽も小野寺も帰ろうぜ」

 

そう言った途端に雨がポツポツと降り始めてきて、雷が鳴った。流石にこんな中で探すのは危ないな。

 

「……私はもう探すのはやめるから」

 

それだけ言うと桐崎さんは俺達と反対の方向へ歩いていった。

 

「ほら、楽。いくぞ」

 

「あぁ………悪いな」

 

楽もそれだけ言うと、トボトボと歩いていく。

 

「一条君!」

 

「小野寺、今は楽をそっとしといてやれ。あいつもあんだけ言われたらさすがに堪えるだろ。俺達もこのままじゃ風邪引いちまうしな」

 

俺は小野寺の腕をとってとりあえず教室に向かった。

 

 

 

 

教室に戻ると、教室の隅の椅子に座って本を読んでいる人がいた。

 

「はい」

 

本を読んでいた宮本が俺達にタオルを渡してくれる。

 

「サンキュー。ほら、小野寺も」

 

「うん、ありがとう」

 

俺達は雨で冷えた体を拭く。

 

「で、2人揃ってびしょびしょで帰って来るなんて、あなた達は外で何をしてたの?……クロ君が小咲に手を出したとか?」

 

「いやいや!何もしてねえから!」

 

「うん!本当に何もなかったからね!」

 

「………まぁ、いいわ」

 

机に向きなおるとまた本を読み出した。本当に本好きだよな。

 

「てか、何で宮本はタオルを二つも持ってたんだ?」

 

「今日は天気予報が雨っていってたから。行き用と帰り用に一応タオルを持ってきといたのよ」

 

「ふーん。まぁ、何にせよ助かったよ。ありがとな」

 

「べ、別にいいわよ。そんなの」

 

俺がにっこり笑ってお礼を言うと宮本は少し顔を赤くする。……可愛いな。

 

(どうしてこの2人って付き合ってないんだろ……)

 

「小野寺、どうかしたのか?」

 

「へっ?……ううん、なんでもない」

 

今、小野寺の様子がおかしかったのは気のせいか?

 

「さてと、今日は帰るか」

 

雨も少しマシになったのでカバンの中に教材や弁当を入れて宮本達と外に出る。

 

「うーん。まだ雨降ってるな」

 

「クロ君、傘は?」

 

「ないよ。しゃあねえ。濡れて帰るとするか」

 

頭の上にカバンを置いて学校から出ようとする。

 

「あんた、それじゃ私がタオルを貸した意味がないじゃない」

 

「あ……確かに」

 

宮本にそう言われてすぐに立ち止まる。

 

「私の傘に入ってもいいわよ」

 

「えっ!?………いいのか?」

 

「別にいいわよ。ほら」

 

そう言って傘を差し出してくれるので俺は傘を受け取り、相合傘をして校門を出た。

 

(本当に付き合ってない理由が私にはわからないよ……)

 

少し顔を赤くした小野寺は俺達の後ろを付いてきていた。

 

 

 

「………まだ見つからないのか?」

 

「ん?あぁ、クロか」

 

次の日は雨が上がって部活にも行けたが、休むことにして楽の探し物を手伝うことにした。俺が楽に話しかけると、俺に気づいてこっちを向く。

 

「うん。まだ、見つかんねぇよ」

 

「俺も手伝うよ」

 

「助かる。ありがとう」

 

そう返事をすると、楽はすぐに足下を探したので、俺もしゃがんでペンダントを探す。

 

それから、30分くらい探したがペンダントを見つからなかった。額に浮かぶ汗を拭いながら楽の顔を見ると、凄く悲しそうな顔をしていた。楽も本当は何処かにいってしまったのかと思っているのかもしれない。

 

「一条君!…クロ君も……」

 

楽と俺を呼ぶ声に顔を上げると、息を切らした小野寺が膝に手をついてこっちを見ている。おそらく、急いで来たんだろう。息を整えて楽に言った。

 

「桐崎さんが来て欲しいって」

 

「桐崎が?」

 

「あんなこと言ったのに、何の用だろうな?」

 

小野寺の案内の下、桐崎さんに指定された場所に向かった。

 

桐崎さんが指定した場所に来て見ると桐崎さんはそこにはいなかった。

 

「あいつ、呼び出しといてどういうことだ?」

 

楽がはぁ、と溜息をつきながら下を向く。すると、遠くの方から何やら人影が見えた。しかも、何か野球のピッチャーみたいに振りかぶっている………こっちに。

 

「楽!よけろ!」

 

「へっ?」

 

言うのが遅かったせいか、遠くにいる人影は思いっきり何かを投げた。投げられた物が楽の顔面に直撃する。楽……ご愁傷様だ。

 

「大丈夫か、楽?」

 

「あぁ、少し痛えけど問題ねえ」

 

あんなスピードで顔に直撃したのに無傷だと!?どんだけこいつ丈夫なんだよ。………そういえば、桐崎さんに膝蹴り食らった時も鼻血出してるだけで済んでたよな。 やっぱ、常人じゃねえな。てか、投げられたのって……

 

「ペンダントじゃん」

 

「あぁ、確かにこれだ。でも、なんであいつが……」

 

「私も昨日はクロ君と一緒に帰ったから。多分だけどあの後、探してくれてたんじゃないかな?」

 

「俺もそう思う。まぁ、よかったじゃねえか、ペンダント見つかったんだからよ。これで、あいつと仲直りしたらいいじゃねえか」

 

 楽は信じられないと思っているのか、凄く驚いている。あんなに喧嘩して、罵ったのに見つけてくれたのがまだ信じられないのだろう。

 

「2人もありがとな。ペンダント探すの手伝ってくれて」

 

「気にすんな。その代わりに桐崎さんに言われたことは気にするんじゃないぞ」

 

「………でも、あいつが言っていることももっともなんだよ……」

 

楽があからさまにしょんぼりする。その時、小野寺が口を開いて言った。

 

「ねぇ、一条君、誰かと約束したんでしょ?もし、その人が一条君と同じように約束を覚えてたら……きっとその人が絶対に悲しむよ。例え、それが十年前の子供の約束だとしても……その人にとっては大切かもしれないよ」

 

顔を少し赤らめながらも楽を説得するように言う小野寺。本当にいいやつだな、小野寺って。俺こいつと友達に慣れて本当によかったと思ってる。いつか、この言葉を小野寺に言いたいな。

 

「ありがとな、小野寺、クロ。少し元気出て来たわ」

 

「それは良かったよ。………なぁ、楽。今度の日曜日、俺と小野寺と宮本で映画館行くんだけど、お前もどうだ?小野寺がきっと喜ぶしな」

 

「クロ君!!?」

 

「うーん、悪い。気持ちは嬉しいけどその日は少しゆっくりしたいんだ」

 

(くっそー、本当は行きてえのに……)

 

とか思ってんだろうな。

 

「わかった。じゃあ、また明日な」

 

「あぁ、じゃあな小野寺、クロ!」

 

楽は俺達と反対の方向に歩いていった。

 

「…………残念だったな、小野寺」

 

「からかわないでよ!」

 

俺をポカポカと殴って来る小野寺を宥めながら、教室に戻った。

 

 




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第4話 三人でのキュウジツ

ランキング見てたらこの小説が日刊ランキング1位でした!
凄く嬉しくて仕方がありません。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!



「あ、宮本、小野寺!こっちだこっち!悪いな、昨日いきなりメールして知らせちまって」

 

「別に大丈夫だよ!それに連絡してくれないと何時にどこ集合とかわからなかったわけだし」

 

「右に同意」

 

約束通り日曜日になって宮本にハーゲンダッツを奢るついでに俺達は小野寺も連れて映画を見ることにした。……心配なのは小野寺がホラー映画が大丈夫なのかということだけなんだが。

 

「……そういえば、私は何の映画見るって聞いてないんだけど……るりちゃんに聞いても教えてくれないし……」

 

俺が宮本を見ると、宮本は咄嗟に顔をそらした。くそ、俺が言わないいけないのかよ……

 

「………ホラー映画」

 

「…………えっ?」

 

「だから、ホラー映画だよ。ほら、最近CMとかでやってるだろ。面白そうなやつ」

 

「全然面白そうじゃないよ!むしろ、怖いよ!私帰ってもいい!?」

 

「ここまで来たんだし、折角だから見ようぜ」

 

「大丈夫よ、小咲。私がちゃんと手繋いであげるから」

 

「おう、俺も手繋いでてやるよ」

 

「クロ君。それはちょっとしたセクハラかと思うんだけど……」

 

「はい、すいません……」

 

宮本に睨まれて少したじろぐ俺。

 

「うーん………まぁ、それなら頑張ってみる」

 

「よし、それじゃさっさと行こうぜ。早くしねえと上映しちまうしな」

 

俺達は映画館の中に入り、ホラー映画のチケットを買って、適当にポップコーンや飲み物を買ってからその映画が見れる場所に入った。休日のためか少し人は多かった。

 

「えっとー……あ、ここだ」

 

右から小野寺、宮本、俺の順で座る。

 

「うぅ…怖いよ、るりちゃん」

 

「安心しなさいな。私が手繋いでてあげるから」

 

そう言って小野寺の手を握る宮本。

 

「そう言って宮本はどうなんだ?実は怖いのが苦手とかあるんじゃねえのか?」

 

「………私がそんな女の子に見える?」

 

「あんま見えねえけど、もしかしたらってこともあるからな。まぁ、宮本なら大丈夫だろうけど……お、始まるぜ」

 

携帯電話の電源をお切りくださいだの、カメラの撮影はおやめくださいだの説明を聞いてから、映画が始まった。

 

 

 

 

 

 

『うわああぁぁぁああ!!!』

 

「きゃああぁぁぁ!!」

 

「ちょ、小咲。手握る力強すぎ!痛い痛い!」

 

「きゃああぁぁぁあああ!!」

 

あまりの怖さに小野寺は悲鳴をあげて宮本の手をギュッと握る。ただ、握る力が強すぎるせいか宮本は小野寺の肩をばんばん叩く。本人は怖がりすぎてまったく気づいてない。

 

怖いシーンがおさまって、少しの休憩?のようなものが入る。その時に小野寺は手の力を緩めたようだ。

 

「小咲。あんた手の力強すぎるわよ」

 

「ごめん、るりちゃん。あまりに怖かったから……」

 

小声で話す2人。それだけ言うと2人は静かにした。俺も映画に集中する。

 

映画では主人公とヒロインが夜中の廃校舎に入るというホラー映画ではありがちなシーン。俺は2人の様子が気になって横を見ると、宮本が少し寒そうにしていた。

 

「寒いのか?」

 

「えぇ。ここクーラー効きすぎなんじゃないかしら?」

 

小野寺は大丈夫だろうかと思いみると、やっぱり怖さでそれどころじゃなさそうだった。

 

「………これ着とけ。少しはマシになるだろ」

 

「えっ?でも、クロ君大丈夫なの?」

 

「あぁ、俺はむしろ暑いぐらいだから大丈夫だよ」

 

(本当は俺も少し寒いんだけど)

 

心の中ではそう思いながら俺は半袖の上着を宮本に渡した。宮本はしぶしぶという感じでそれを受け取って羽織る。

 

「………ありがと

 

『ぎやああぁぁああ!!!』

 

「きゃああぁぁぁ!!!!」

 

「ちょ、だから小咲。手痛い!」

 

お礼を言われかけたが、小野寺の悲鳴によりそれは遮られて、宮本は手を痛そうにする。そうそう以上に怖い系は無理だったんだな……

 

 

 

 

 

 

映画が終了すると、次々と他の人が席を立って出て行く。

 

「俺達も行こうぜ。ちょうど、昼時だしファミレスでもさ!」

 

「そうね。お腹も空いたし……あれ、小咲?」

 

「ごめん、あまりの怖さに腰抜けて立てなくなっちゃった」

 

「「はぁ!?」」

 

立ち上がろうとして頑張るが結局たちあがれない小野寺。

 

「しゃあねえな。ほら、おんぶしてやっから………って、何宮本はむすっとしてんだよ」

 

「別になんでもないわ」

 

少しイライラして顔を背ける宮本。俺なんかしたか?

 

「ありがとう、クロ君………って、身体が異常に冷えてるけど大丈夫!?」

 

あ、やべっ。ずっと寒いの我慢してたのに。宮本にばれちまったか?

 

「クロ君。もしかして、寒いの我慢して私に上着貸してくれてたの?」

 

「いやー、あんまりにも宮本が寒そうにしてたからさ。いや、俺は別に大丈夫だったから気にしなくていいぜ」

 

「いや、でも本当に冷たいよ。るりちゃんも触ってみてよ」

 

おんぶされながらも俺の腕をとって宮本の方に差し出していく。その腕を宮本は触った。

 

「………やせ我慢して……」

 

「あれ?もしかして心配してくれてる?」

 

「調子に乗るんじゃないわよ!」

 

「ちょ、痛い痛い!!」

 

両手で俺の腕をギュッと握りつぶしにかかる宮本。正直少し怖い。

 

「ほら、行くんでしょファミレス。さっさと行くわよ!」

 

少しキレ気味になりながらも歩き出した。俺はそんな宮本を少し可愛いと思いながら後ろをついていった。

 

 

 

 

ファミレス

 

「さてと、何食うか……宮本達は何食べる?」

 

「私はサンドイッチにしようかな」

 

「私はオムライスとホットドッグ」

 

「組み合わせもそうだけど、宮本、本当によく食べるよな」

 

「だって、お腹空いてるから」

 

さっきポップコーン食いまくってた奴がなにいってるんだと内心思いながらも俺も注文を決めて店員を呼ぶ。

 

「あ、本当にハーゲンダッツでいいのか?何ならここで何か豪華なデザート頼んでいいぞ?」

 

「……何、そんなに私を太らせたいの?ひくわー」

 

「ちげえよ!!てか、いきなりなに言ってんだよ!」

 

少し身を引きながら、俺を冷たい目で見てくる宮本に真面目に怒鳴る。

 

「冗談よ。それじゃこのアイスの乗ってるパフェでも頼もうかしら?」

 

「別に構わねえぞ。小野寺もどうだ?」

 

「えっ、いいの?」

 

まさか自分も奢ってもらえるとは思ってなかったのだろう。俺はニッコリ笑って小野寺にデザートが書いてあるメニューを渡した。

 

「うーん……じゃあ私はこれで」

 

そう言って選んだのはただ普通のバニラアイス。

 

「なんだ?もっと豪華な物頼んでもよかったのに」

 

「いいよ!そんなの何か悪いし」

 

俺は別に気にしないのにな。

 

「……そういえば、2人とも兄弟とかいるのか?今までそういう話一回もしてきてねえから少し気になったんだけど」

 

「私は一回話した気が……まぁ、いいか。私は一人っ子よ」

 

「私は寮から女子校に通ってる妹が1人いるよ。今中学3年生で来年はここ受験する予定だって言ってたよ」

 

「そうなのか。小野寺の妹か………小野寺に似て絶対可愛いんだろうな」

 

小野寺の顔と性格から小野寺の妹を想像していると、いきなり宮本に足を踏まれた。

 

「いってぇ!!いきなりなんだよ!」

 

「ごめん。何か今のあなたの顔をみてたら無性に腹がたっちゃって」

 

「何それ!スゲェ理不尽じゃねえか!」

 

(本当にこの2人は仲良いな。もういっその事付き合っちゃえばいいのに)

 

その後料理が来たため、俺達は仲良く喋りながらも昼ご飯を食べた。

 

………ちなみにデザートをあんまりにも美味しそうに食べる宮本を見て俺は無意識のまま携帯を取り出して宮本の写真を撮っていた。

 

 

 

 

 

 

他にも服屋に行ったりして何故か俺が着せ替え人形ごとく遊ばれたり、ゲームセンター行って3人でプリクラ撮ったりととにかく色々な事をして遊んだ。俺達がたくさん遊んで帰る頃には空が少し茜色になっていた。

 

「ふー、今日は楽しかったな〜」

 

「そうだね。また、3人で一緒に遊ぼうね!」

 

俺と小野寺がそう話す。宮本は黙っていたけど俺達が話しているのを聞いて少し笑っているのは見えたから本人も多分楽しかったんだろう。

 

俺達は帰路につきながらも公園に入った。

 

「にしてもちょっと歩き疲れたな………ん?あれは……?」

 

俺は歩きながら伸びをすると、俺の視線の向こうの方でベンチに2人で座っている人物が気になった。何故ならそこに座っていた2人が……

 

「楽………桐崎さん……」

 

俺の友達の楽と一週間前に転校してきた桐崎さんだったから。

 

「クロ!?何でお前がここに……小野寺に宮本まで!!」

 

楽が俺に気づいて立ち上がって驚く。桐崎さんも俺達がいる事に気付き楽ほどではないが驚いているようだった。

 

「俺達は折角の休みだから3人で遊びに行ってたんだよ………そういう2人は?」

 

「俺達は………まぁ、ちょっと色々あって遊ばないといけないというか……なんというか………」

 

なんだそれ?何こいつは意味わからないことを言ってるんだ?

 

「あー、もう!ちょっとあんた!さっさと行くわよ!」

 

「えっ!?おい、桐崎!ちょっと待てって!!」

 

桐崎さんに腕を引っ張られて楽は桐崎さんと何処かに行ってしまった。

 

「どうして一条君と桐崎さんが一緒に……まさかあの2人って」

 

「落ち着け小野寺。明日になればわかることだ。それにあの2人にそんなことがあるわけないだろ」

 

「うん………」

 

俺達は今日は本当に楽しかったけど、最後の最後でモヤモヤ感が残って何か嫌な感じだった。




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第5話 コイビト同士!?

「ふわぁ、もう朝かよ……早すぎるだろ。もっと寝たい……」

 

愚痴を言いながらも身体を起こし、俺は一階のリビングに向かう。

 

「おはよう。じいちゃん、ばあちゃん………ばあちゃんどうしたんだ!?」

 

「ん?あぁ、クロちゃん。おはよう……ゴホッ、ゴホッ!」

 

リビングの方に行くと布団を敷いてばあちゃんが寝込んでいた。いつもなら俺の弁当を作ってくれてるのに、何か今日は顔色悪いし、咳もしている。

 

「おぅ、クロ。ちょっと婆さんが風邪をひいてしまってな。今日は弁当を何処かで買ってくれないか?」

 

「それは別に大丈夫だけど……俺も休もうか?俺だってばあちゃんの事が心配だし………」

 

「大丈夫じゃ。わしがしっかり看病しておくからのう。お前は学校に行ってくるといい」

 

「………わかった」

 

自分で適当に何か作って、洗面所に向かい歯を磨き、学校の準備をして玄関に向かう。

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

「おう、行ってらっしゃい。気をつけてな」

 

ばあちゃんもじいちゃんも俺が中2の時から世話してくれてるとはいえども、2人とももうすぐ七十歳になる。

俺の事はいいからそろそろ2人で仲良く田舎の方でのんびりと暮らして欲しいんだけど………

 

扉を開けて外に出て、ポケットの中にあるフリスクを2個口の中に放りこむ。何か、朝フリスク食べないと調子出ないんだよな………

 

 

 

 

 

学校に向かって歩く途中に宮本を見かけて俺は声をかけた。

 

「おはよう、宮本」

 

「クロ君!?……おはよう」

 

何だ?いきなり俺を見た瞬間驚いて……何かを携帯の空いてる所に貼ってるみたいだったけど……

 

「まぁいいか。……あ、今日の部活休もうと思うんだけど、別にいいかな?」

 

じいちゃんとばあちゃんが心配だから今日は早く帰って看病してあげたいんだよね。

 

「私は別にいいけど、あなた最近部活休むこと多い気がするわよ。大会もまだまだってわけじゃないんだし……何か用事でもあるの?」

 

うっ、それを言われると少し痛い。最近は楽の探し物を手伝ってたりしてたからな。

 

「用事っていうか、俺のばあちゃんが風邪を引いちまってよ。心配だから俺も早く帰って看病したいんだよ」

 

「………なら、仕方ないわね。部活終わったら私もクロ君のおばあさんに何かお見舞いでも渡そうかしら」

 

「本当に!?ありがとう、絶対喜ぶよ!」

 

俺のじいちゃんとばあちゃんは時々学校まで来て俺達に差し入れを渡してくれる時がある。だから、宮本もお世話になってるんだよな。つまり、そのお礼って事か?

 

「………ねぇ、昨日の一条君と桐崎さんの事どう思う?」

 

話しているうちに学校について靴を履き替える時にそう聞かれる。

 

「やっぱり宮本も気になるか?まぁ、桐崎さんみたいな美人な女の子が楽を好きになるとは思えないけど……」

 

「………私達の友達の美人な子は一条君を好きになったんだけど?」

 

「あれは美人っていうより、可愛いだろ。どっちかっていうと」

 

そんなことを話しながら教室に入って自分の席に着く。

 

「まぁ、俺が今日楽に聞いとくから。それで、多分解決するだろ」

 

「そうね………ところで、何かクラスのみんなそわそわしてない?」

 

「言われてみれば………」

 

何かクラスのみんなが異様にそわそわしている。何かを言いたそうにしてるよな……

 

「なぁ、城野崎。何かみんなそわそわしてるけど、一体どうしたんだ?」

 

俺は俺の右隣りにいる男子、城野崎に声をかける。俺の事をあまり嫌がらずに普通に接してくれる凄えいい奴。

 

「ん?何だ、知らないのか。一条と桐崎さんの2人がカップルになったそうだぞ」

 

「はっ?」

 

それを聞いた俺と宮本が素直に驚く。昨日のアレ、マジの方だったの?

 

「お!噂をすればって奴だ!!」

 

廊下を見ると、楽と桐崎さんの2人で一緒に歩いている。そして、教室のドアに手をかけて開けた瞬間……

 

『おめでとーーー!!!』

 

クラスにいる全員が楽と桐崎さんに声援と拍手を送った。

 

「「はい?」」

 

2人は一体なんの事かわからないという顔をしている。

 

「もうネタは上がってんだよ!昨日この2人がお前ら2人でデートしてるのを見たって言うのをな!」

 

よかった!本当によかった!俺が小野寺と宮本と一緒に遊びに行ったのはばれてない!

 

「楽ー!!羨ましいぞ!俺より先に彼女ができるなんて!」

 

集が楽の両肩を掴んでブンブン揺らす。

 

「桐崎さん………どうしてこんなもやし野郎の事を……」

 

「おい、まて城野崎!どこの誰がもやしだ、この野郎!」

 

泣きながら桐崎さんを見る城野崎に楽が睨みつける。まぁ、今のは怒っても仕方ない………

 

「じゃなくて!おい、どういうことだよ、楽。桐崎さんと付き合うって!」

 

「クロ!違うんだ。これには深い事情が……!?」

 

いきなり、楽の言葉が止まる。何だ、あいつ?何を見てるんだ?

 

『何だよ、深い事情って……』

 

『一体なんなんだ?』

 

『お前ら付き合ってるんだよな?』

 

クラスの男子がざわざわしだす。すると……

 

「そうそう!俺達は最高のラブラブカップルなんだよ!!」

 

さっきとは雰囲気がガラリと変わりいきなりバカップルをしだした。

 

「もう、ダーリンったら……変なこと言わないでよ!」

 

「ごめんよ、ハニー!クラスのみんなをちょっとからかいたくって」

 

あはははと笑いながら2人は肩を取り合う。何だこいつらいきなり。凄ぇ怖いぞ。

 

「はっ!?そうだ、小野寺は……」

 

後ろに振り返り小野寺の方を見ると、まるで石のようにカチンと固まっていた。

 

「ダメだな、これは。宮本、小野寺を屋上に連れて行ってくれ。俺は何か飲みもん買ってくる」

 

「それはいいけど……授業はどうするの?」

 

宮本は少し不機嫌になりながらも俺と会話している。やっぱり、楽の事が許せないのだろうか。

 

「どうせ、こんな状態で授業受けても一緒だろ。俺達は成績がいい方だし大丈夫だしな」

 

「………それもそうね。じゃあ先に行っとくわ。ほら、いくわよ小咲」

 

宮本は小野寺の手を引いて屋上に向かった。俺も鞄を持って、食堂の方へ向かい、3人分の飲み物と昼飯のパンを買って屋上に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、大丈夫か?小野寺」

 

俺は買ってきたミルクティーを渡しながら小野寺に聞く。

 

「うん。ありがとう、2人とも。私のために……」

 

「いいよいいよ。俺たちは小野寺の方が心配なんだし」

 

「でも、2人とも授業が……」

 

「私達は成績いい方だから別に気にしないわ。それより、あんたは今自分の心配をしなさいな」

 

小野寺は半泣きながらも頷いてミルクティーを飲む。今泣きかけなのは楽と桐崎さんが付き合ったせいか、それとも、俺たちの優しさになのかどっちかわからない。

 

「にしても、どういうことだ?あいつらなんで付き合いだしてんだよ」

 

「さっきまで、あの2人が付き合うことなんてないとか言ってたくせにね」

 

「うっ………それ言われるときついからやめてくんない?」

 

「そうね。今更こんなこと言っても仕方ないもの」

 

宮本ははぁ、と溜息をついて、ミルクティーを口に含む。

 

「で、どうするのさ、小咲」

 

「どうするって?」

 

「一条君の事よ」

 

「そんなどうするって言われても……」

 

「もういっそのこと告っちゃいなよ」

 

「えぇ!!?でも、付き合ってるんだよ!」

 

「そんなの知らないわ。あんたが一条君が好きなら好きで告ればスッキリするでしょうが」

 

「いや、でも………」

 

小野寺はまたうつむいてしょんぼりする。

 

「あぁ、もう!じれったいわね!じゃあ、クロ君で告白する練習でもしなさい!!」

 

「はぁ!?」

 

「ちょっと、るりちゃん!何でそうなるのさ!!」

 

いきなりすぎることでびっくりする俺と小野寺。てか、何で今の流れから俺で練習することになるんだよ!

 

「中学を見る限り、あんたと一条君は凄いお似合いそうだったわよ!高校に入ってもそう!だから、あんたと一条君は付き合うべきなのよ!」

 

「だからって何でクロ君で練習する事に!?」

 

「今のあんたには告白する勇気が足りないんだわ!だから、このイケメンでかっこいいクロ君を使って練習するの!」

 

宮本にイケメンでかっこいいって言われた。すげぇ、嬉しい。

 

「でも、クロ君だって告白されるのは好きな人がいいに決まってるよ!そうでしょ!?」

 

「いや、まぁ………そうだな」

 

「ほら!!だから、私が告白を練習するのは悪いことだよ!………それに」

 

「告白するならやっぱり、一条君が誰とも付き合ってない時に私はしたいよ。そうじゃないと、桐崎さんがかわいそうだよ………」

 

頬を赤らめながらも小野寺はそう言い切った。

 

「……やっぱり小野寺は小野寺だな」

 

「へっ?どういうこと?」

 

「いや、別に。気にしなくていいよ」

 

小野寺が頭にクエスチョンマークを浮かべてる。てか、マジで小野寺に練習とはいえ告白させたらどうしたようかと思ったぜ。大体、俺は告白されるなら小野寺より………

 

「宮本に告られる方がいいしな……」

 

「へっ!?」

 

………………しまったー!!!声に出しちまった!!何てことだ。これじゃ俺めっちゃ変なやつじゃん!!

ちょっと待って今他2人どんな反応してるか超気になる!気になるけど、そっちへ向きたくない!!!

 

「……クロ君」

 

宮本に呼ばれそっちへ顔を向ける。小野寺は顔をゆでダコのように顔を真っ赤にさせていて、宮本は少し顔を赤らめながらも俺を見ている。

 

「はい?」

 

「今のはどういうこと?」

 

「いや、えっとー……その」

 

嫌だ!!助けて、この空気。俺もう耐えられないんだけど!!今なら屋上からダイブきても生きてられる気がするぐらいだぜ!!

 

「もしかして………今の反応……」

 

宮本が一歩前に近づいてくる。それにつられて俺は一歩下がる。

 

「もしかして………クロ君って私の事…………好

 

「コラアアァァアア!!!お前ら授業サボってなにしてるじゃあぁぁ!!」

 

いきなり、屋上のドアを蹴り破ってキョーコ先生が入ってきた。

 

「キョ、キョーコ先生!?」

 

「もう一限目は始まってるんだ!!さっさと教室に戻ってこい!!」

 

「………わかりました」

 

そう言うと、宮本は俺から離れて鞄を持ってきた。

 

「はい、クロ君の鞄」

 

「あ、あぁ。ありがとう」

 

何だかいきなりでよくわからないけどキョーコ先生最高!!マジでありがとう!あの空気から何とか抜け出させてくれて!!!

 

(さっきのクロ君の言葉はどういう意味だったんだろう……また、今度ちゃんと聞こう)

 

(やっぱり、クロ君ってるりちゃんのこと………じゃなくて、今は人の事より自分の事だよね!2人の期待に答えられるように頑張らないと!)

 

(キョーコ先生、マジ助かりました!ありがとうございます。……でも、本当に宮本に告られたら、俺どうしてただろうな………)

 

それぞれ何を思ってたのかわからないけど取り敢えず俺達はキョーコ先生の言う通り、一限目を受けるために教室に向かった。

 

 

 

 

 




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第6話 トモダチの疑問と相談

明日、投稿するつもりが時間が空いて今日
投稿できた。明日明後日と部活休みなので
投稿できるように頑張ります


「おはよう、ダーリン!早く会いたかったわ〜!!」

 

「おはよう、ハニー!僕も会いたくて待ち遠しかったよ〜!!」

 

小野寺を屋上で励ましてから(俺が宮本に爆弾発言してから)次の日、昨日と同じように楽と桐崎さんはクラスだけでなく他のクラスにもバカップルぶりを見せつけていた。

 

「よくやるわよね、あの二人」

 

「そうだな。でも今時ダーリンとハニーって呼び合うのもどうかと思うぞ。いつの時代だよ」

 

頬杖をつきながらバカップルの2人を見て宮本と話す。宮本は昨日の事をどう思ってるかはわからないけど、昨日、ばあちゃんにお見舞い持ってきてくれた時も特に何もなかったから多分大丈夫だろ。ただ、じいちゃんがお見舞いに来てくれた宮本に『二人ともそんだけ仲がいいのなら結婚すればいいのに』と言われた時は本当に焦ったけど。俺達顔真っ赤だったからな、あん時。

 

「……ねぇ、小咲。一回一条君に『おはようダーリン!』って言って見てくれない?」

 

「えぇ!!?何それ!?」

 

小野寺が楽にか………おそらく言った瞬間二人とも顔赤くして何も言えなくなるんだろうな。

 

「何かおもしろそうでしょ。だからお願い!」

 

「嫌だよ。大体、それだったらるりちゃんがクロ君に言えばいいんじゃないの!!」

 

「俺に!!?」

 

いや、まて。それは結構嬉しいけど、小野寺ってこんな人の事をからかうやつだったか?

 

「何で私がクロ君にそんな事しないといけないのか説明してくれない?」

 

宮本が小野寺の肩を持って力を込める。

 

「だって……クロ君とるりちゃんって凄くお似合い

 

「そんなふざけた事を言うのはこの口か?この口なのか!!」

 

宮本が小野寺の両頬を力いっぱいつねる。やばっ、凄くいたそう……

 

「痛い痛い痛い!!痛いよ、るりちゃん」

 

「まったく、何で私とクロ君がお似合いなのよ」

 

「………るりちゃん、顔さっきより赤いよ?耳まで赤いし」

 

「誰のせいだと思ってるのよ!」

 

「痛い痛い!ごめんなさい、もう二度と言いません」

 

何か俺はもう蚊帳の外って感じだな………あ、そう言えば今日予習がいる日だったな。取り敢えず、それやるか。

 

 

 

 

 

三限目

 

「あぁ、もう疲れたな……」

 

三限目はキョーコ先生の授業。キョーコ先生は凄くわかりやすいんだけど、何か今日は少しやる気が出ない。

 

ブー、ブー、ブー

 

「ん?何だ、メールか?」

 

こっそり携帯をつけると、宮本からメールがきていた。俺は宮本の方を見ると、『早くメール欄を開けなさい』と伝えるジェスチャーのようなものがかえってきた。

 

メールボックスの方を開けて見ると、こう書かれていた。

 

from 宮本

 

『昨日のあれって一体どういうことなの?』

 

「ブフッッ!!!」

 

「ん?何だ神崎。トイレか?」

 

「いえ、何でもありません」

 

「そうか?よし、じゃあここの問題を………城野崎、答えてみろ」

 

「えぇー!?キョーコ先生、それはないですよ………」

 

ブツブツ愚痴を言いながら前の黒板に書きにいく城野崎。その隙に俺は携帯に文字を打っていく。

 

『別にそんな深い意味はねぇよ』

 

送信、っと。しばらくすると左の方でブー、と音が聞こえた。おそらく俺が送ったメールが届いたんだろう。

 

すると、メールを見た宮本はすぐに携帯に文字を打ってくる。そして、また俺の携帯に送信されてくる。

 

『深い意味がないなら教えて』

 

そう言われても………

 

『ただ、単純に小野寺に言われるより、お前に言われる方が嬉しいってだけだよ』

 

送信。改めてこれ見ると、何か告白みたいだな。

 

『小咲の方が私より可愛いのに?』

 

そんな事ないと思うんだけどな……

 

『俺的には小野寺より宮本の方がずっと可愛いと思うぞ』

 

………うん。これは流石にやめよう。宮本が勘違いするかもしれないしな。俺が一度打った文字を消そうとしたその時。

 

「おい、神崎。さっきからずっとした向いてるけどどうした?本当に腹痛いのか?」

 

「えっ!?いえ、大丈夫です!」

 

いきなり、キョーコ先生に声をかけられてびっくりする。……さっきびっくりした時に何か携帯のボタンをポチ、っと押してしまったのは気のせいだろうか。

 

「そうかー?まぁ、しんどかったら保健室でも行けよ」

 

そう言ってまた授業を再開し出す。俺はなるべく下を向かないように携帯をいじろうとすると、さっきの告白のような文字を打った画面が消えていた。というか、今まで送られてきたメールがズラリと並んでいる。

あれ?さっきの文章は?

 

「…………まさか」

 

恐る恐る左を向いて見る。すると、そっちには顔を真っ赤にさせて、こっちを睨んでいる宮本るりの顔があった。俺は無言で携帯と宮本の顔を見る。

 

さっきのポチっとボタンを押してしまったような気がするのは、気がするじゃなくて、送信ボタンを押してしまっただった。

 

俺は無言で携帯画面に向かい文字を打ち出す。

 

『すまん。それを送信しようか迷った時に、キョーコ先生がいきなり声をかけてきて、びっくりした時に思わず送信ボタンを押してしまったみたいだ』

 

送信。頼む、誤解よとけてくれ!!

 

『送信しようか迷ったって事は、私をそういう風に思ってるって事よね』

 

はい、ダメでしたー!!そりゃそうですよね。あの宮本にこんな誤解が解けるなんてあるわけないですよね。

 

『まぁ、そうだけど………本当に深い意味はない。ただ、俺的に小野寺より宮本の方が可愛いって思っただけなんだ!』

 

………送信!

 

また、少しずつ顔を左に向けて宮本の方を見ると、いつもの宮本ではまったく見られないくらいに顔を真っ赤にしていた。いや、本当にすいません。でも、宮本も宮本だぜ。このタイミングで昨日の事聞いて来るなんてよう。

 

『………そんな事言われたの初めてだから反応に困る。………でも、ありがとう。嬉しかったわ』

 

うわっ!こんなに素直な宮本も初めてかもしれねぇ………

 

『いや、何か俺も悪かった。取り敢えず、授業に集中しようぜ』

 

それだけ送信すると、俺は携帯を閉じて黒板に書かれた事を板書していく。少し遅れて宮本もノートに板書しだした。

 

だが、授業終わるまで宮本の顔は赤いままだった。

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「で、何で俺は貴重な昼休みをお前の相談にあげないといけないんだ?この腐れリア充が!!」

 

「ちょ、腐れリア充は言い過ぎだろ!頼れる奴はお前か集くらいしかいなくて集は今、何か忙しいみたいなんだよ……」

 

集が忙しいって…あいつの事だからそこらへんの女子の写真でも撮ってるんだろ。

 

俺達がいるのは食堂。何故か、楽に呼び出されて今は向かい合わせで飯を食っている。まぁ、何が言いたいのかわかった気がしたけど。

 

「はぁ…まぁ、いいよ。それで?相談ってなんだ?お前のことだし桐崎さん関係なんだろうけど」

 

「……どうしてわかったんだ?」

 

「俺に相談してくるのってそれぐらいしかねえだろ。で、一体なんなんだ?」

 

「あぁ、実はさ……」

 

ふむふむ。纏めると楽が言った言葉に桐崎さんが怒った。けど、その怒った理由がまったくわからないと。

 

「ふーん、お前も大変だな。彼女を持つと彼女の事を考えないといけないんだもんな」

 

「えっ!?あ、あぁ。そうだな。結構苦労してるんだぜ」

 

何だ?何で今こいつ彼女がいるとって言うと少し動揺したんだ?

 

「まぁ、いいか。……てか、お前らって喧嘩するんだな。あんなに仲良さそうなのに」

 

「ん?そう見えるか?」

 

「逆にあれを見せられてそう思わねえ奴の方が怖ぇぞ。なんだよ、ダーリンとハニーって」

 

「あ、あれが俺たちなりの愛って奴だ」

 

うわっ、こいつ本当になにいってきてんだ。正直キモいぞ。

 

「話を戻すか。桐崎さんが怒った理由ね…………関係ないかもしれねえけど桐崎さんってお前以外と誰かと仲良くしてるって言うのをあまり見たことがない気がするぞ」

 

「はっ?んな事ねえだろ。あいつこの前誰かと喋ってるの見たぞ」

 

「喋ってるのはだろ。一緒に行動してたりとか、弁当食ったりとかは見たことがない」

 

おぉー、楽が結構驚いてるな。今のこいつの口が魚みたいにパクパクしてる。

 

「そういうことだ。だから、きっと桐崎さんも何か悩みがあるんだよ。そういうのを悩みを察してあげたり聞いてあげるのが彼氏なんじゃないか?」

 

「うーん。そういうもんか?」

 

「そうそう。じゃあ、俺は次の授業の準備にいくからな」

 

「あ、あぁ。サンキューな」

 

「気にすんな。また、何かあったら聞いてやるからよ」

 

そう言って俺たちは別れた。

 




るりちゃんのキャラが安定しない……
感想と訂正あればお待ちしております。


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第7話 ミンナデ勉強会

自分でおもった。タイトル無理矢理すぎる……
変なのですいません


「……そういえばさ、中間テストがもうすぐ迫って来てるような気がするんだけど気のせいかな?」

 

俺は昼休みに宮本と話してるときにふと思った。

 

「中間テスト?……確かにもうすぐだった気がするけどそれがどうかしたの?私もクロ君も成績はそれなりにいいんだし大丈夫でしょ」

 

「そうじゃなくて………」

 

小野寺にはあまり聞かれたくない事だ。

 

「宮本、ちょっと耳」

 

「だから、何よ」

 

宮本が俺の方に顔を近づけてくる。やばい。宮本めっちゃいい匂いがする。って俺は一体何を考えているんだ!

 

「だから、………………って事」

 

「…なるほど。そんな事考えるなんて流石クロ君ね」

 

俺達は小野寺を見ながらニヤニヤして笑う。小野寺は首を傾げながらこっちを見ている。

 

「どうも。って事で宮本は小野寺うまくを誘っといて。なんなら、あいつの家でも大丈夫だから」

 

「了解。メンバーはこの3人に一条君でいいの?」

 

「うーん……桐崎さんも多分くるだろうな。集は『却下!!』…了解」

 

うん。どうやら宮本は集のことが苦手みたいだな。てか、ヘタしたら嫌いなんじゃないのか?

 

「まぁ、いいか。じゃあ楽を誘ってくるから小野寺にいい感じに頼むわ」

 

「了解。頼んだわよ」

 

「おう。そっちもな」

 

楽を探しに教室を出ようとした瞬間、小野寺の叫び声が聞こえた気がしたが、聞かなかったことにしておこう。

 

 

 

 

「……というわけで、今日お前の家で勉強会をしようと思っているんだけど、別にいいか?」

 

「別にいいけど。ハニーはどうする?」

 

てか、何でこいつらは屋上で2人で飯食ってんだよ。どんだけ仲良しだよ。羨ましいぞ、この野郎!

 

「勉強会!?行く行く!絶対行くわ!私友達と勉強会なんて始めてなんだけど!!」

 

目をキラキラさせて、手をブンブン振りながら行くことを了承してくれる桐崎さん。

 

「サンキュー。じゃあ、放課後校門前で集合な」

 

そう言って俺は屋上を後にした。

 

 

 

「オッケーもらえたぞ」

 

「ありがと、というわけよ小咲。あんたはこの勉強会で一条君との距離を少しでも縮めなさい」

 

「そんなの無茶だよ!私に出来るわけないよ」

 

「出来る出来ないじゃなくてやるのよ!いいわね!」

 

「でも『いいわね!!』……はい」

 

何か無理矢理でかわいそうな気もするけど、これもお前と楽のためなんだ。我慢してくれ。

 

「………まぁ、出来るだけ私達がサポートしてあげるから。頑張りなさいな」

 

「るりちゃん……」

 

「勉強教えてもらってるときに勢いで押し倒せばいいのよ」

 

「私の信頼返してよ!!」

 

そんなこんなで昼休みが終了した。午後の授業はノートを取りながらも今日の勉強するメンバーを見てみた。楽と小野寺はお互いに見合っては視線を逸らしあったり、桐崎さんはよっぽど楽しみなのか凄くそわそわしていた。俺としては少しでも2人の距離が縮まればいいんだけど。

 

 

 

 

「……デカイわね」

 

宮本達と楽の家に来た一発目の感想がこれだった。

 

「そうだな。楽もよくこんなとこに暮らしてるよな。息苦しくないのか?」

 

「俺はもう慣れたよ。子供の頃からいるからな」

 

「いや、高校生なんだから楽もまだ子供だろ」

 

「うんうん。俺も楽の家久し振りに来たけど、何も変わってねえよな」

 

俺の右隣にいるメガネをかけた人物が楽の家を見渡しながらも言う。

 

「で、どうしてあなたがいるのかしら、舞子君」

 

「やだなー。こんな楽しそうなものに俺が嗅ぎつけて来ないわけないでしょうが」

 

「帰れ!!」

 

やっぱり宮本は集の事が嫌いなのか?結構いい奴だし、面白いと思うんだけどな………

 

「取り敢えず、上がってくれ。龍、茶を頼む」

 

「ヘイ、了解です坊っちゃん!」

 

返事をして台所に向かった龍さん。その間に俺達は勉強する部屋に向かった。

 

「坊っちゃん、お茶が入りました」

 

「お、おぅ、サンキューな」

 

「私も手伝うよ」

 

龍さんが部屋にお茶を持ってくると、楽と小野寺が立ち上がっておぼんを受け取ろうとする。だが、受け取ろうとした時に二人の手が触れ合った瞬間、二人はおぼんを上にあげた。当然、おぼんの上にあるお茶もぶちまけてしまった。

 

「どわー、大丈夫ですか、坊っちゃん!!」

 

「うおお!?大丈夫か、小野寺!」

 

「ごめんっ、ごめんなさい、ごめんなさい!!」

 

なんだこいつら。手が触れ合った瞬間お茶をぶちまけるって。あれか、ラブコメ展開でよくありそうなあれなのか。

 

「すまん、龍。タオルか雑巾を頼む」

 

「へ、ヘイ!」

 

龍さんがまた何処かに行ってしまった。その間に宮本は鞄の中を探ってタオルを取り出した。

 

「はい、小咲。これで拭きなさいな」

 

「あ、ありがとう、るりちゃん」

 

テーブルやら、床やらを拭いた後に勉強道具をテーブルの上に置いた。取り敢えず、今日出された宿題をやろうと言うことになり、俺達はプリントを広げて始めだす。

 

 

 

 

暫く勉強に集中し出した頃。俺は数学の問題で苦しんでいた。

 

「………るりちゃん、ここわかる?」

 

小野寺は自分のわからない問題を宮本に聞いた。そういうことを楽に聞いたらいいのに………ん?何だ、宮本がアイコンタクトを………

 

「ごめん、小咲。私もこれわかんないから一条君に聞いてくれる?私はクロ君にこの問題を教えてもらうから」

 

「えぇっ!?るりちゃん、この前もっと難しそうな問題を解いてたよね?」

 

「知らん。ねぇ、クロ君。これってどうやって解くの?」

 

何のためらいもなく俺の隣に座る宮本。小野寺は戸惑いながらも楽の隣に座った。

 

「なぁ、お前この問題わからないの嘘だよな?」

 

「当たり前でしょ。小咲と一条君をくっつけるためよ」

 

こいつはしれっと何してるんだ。まぁ、結果オーライだろうけど。

 

「ところで、この問題わからないから教えてくれない?」

 

「何で私とクロ君の立場が逆なのよ」

 

「すまん。でも、どうしても解き方がわからないんだ」

 

「仕方ないわね……」

 

少し俺の方に身を寄せて、途中式を書きながらも俺に問題を教えてくれる。宮本は本当に凄いよな。頭いいし、運動もそれに出来るし……可愛いし。

 

「……っていうわけ。わかった?って何でそんなに顔が赤くなってるの?熱でもあるの?」

 

「へっ!?いや、大丈夫大丈夫。ただ、何かちょっと暑いなって思っただけだから」

 

「………それ本当に大丈夫なの?」

 

「うん、大丈夫!大丈夫だから」

 

そう言って俺は宮本と反対の方向を向いた。落ち着け。落ち着け俺。

 

「クロ君」

 

「どうし………!?」

 

落ち着いた俺は宮本の方を向いた。だが、俺の顔はまた真っ赤になっていく。何故なら、宮本のおでこが俺のおでこに当たってるから。

 

……マジで、これは反則。宮本の顔がこんなに近くにあったらダメだって。ますます真っ赤になるから!

 

「ちょ、凄く熱いわよ!熱でもあるんじゃないの!?」

 

違う熱じゃない。他に理由があるに決まってるだろ!

 

「いや、そんなのないって!本当に大丈夫だから。だから………少し離れてくれるとありがたいです……」

 

「あなたは何をいって…………あ」

 

やっと気づいたのか。確かに宮本の顔があんな近くにあったら顔は赤くなる。だが、それだけではなく。今ここにいるのは俺達のクラスメイト。そいつらにこんなのを見られたらどうなるか。答えは恥ずかしくてさらに顔が赤くなる。

 

見ると、小野寺は顔を赤くしているし、集はニヤニヤ笑ってこっちを見ている。桐崎さんは察したような顔をしていて、楽は不思議そうな顔をしていた。

 

宮本を見ると、宮本の顔も俺と同じように顔がだんだん赤くなっていった。おそらく、俺達の今の顔はゆでダコ状態だろう。

 

「……勉強に戻ろうぜ」

 

「そ、そうね。いきなりごめん」

 

「いや、大丈夫。心配してくれたんだろ?ありがとな」

 

俺達はまた勉強に戻った。さっきの光景がフラッシュバックしまくって全然集中出来なかったけど。

 

 

 

 

「ねぇねぇ。俺もちょっと聞いていいかな?」

 

「いや、勉強しろよ」

 

また暫く勉強に集中し始めてやっと、はかどり出して来た時に集が口を開いた。

 

「いや、クロも気になる事だと思うからさ」

 

何かこいつの事だから読める気がする。

 

「まさか、楽と桐崎さんってどこまでいってるんだ?って質問じゃない

だろうな?」

 

瞬間、楽と桐崎さんがブフーッ、と噴き出した。

 

「ご名答。流石はクロ!で、どこまでいったんだ?」

 

「ど、どこまでって?」

 

「それはもちろんキ『集!ちょっとこい!』」

 

爆弾発言をしようとした集が楽に連れていかれた。

 

「何だ、あいつら」

 

「さぁ?何か二人きりで話したいことがあるんでしょ。私達は勉強でもしときましょう」

 

「そうだな。あ、宮本。ここ教えて。途中式が出来んのに何故か答えが合わないんだ」

 

「これ?これは………今日授業でやったところよ。ここはこうやって……」

 

「ねぇ、小野寺さん。あの二人って付き合ってるの?」

 

「付き合ってはないけど、何て言うのかな。友達以上恋人未満ってやつなのかな?」

 

「つまり、凄く仲が良くて付き合ってるように見えるけど、付き合ってはいないと」

 

「そういうこと」

 

「小咲、今桐崎さんに何を話していたのかしら?」

 

「えっ!?いや、何も話してないよ。単なる、普通の会話だよ」

 

宮本が座ってる場所から移動して小野寺の隣に座り、何の話をしているのかを問い詰める。………暇だな。

 

それから、暫くして楽と集がもどってきた。

 

「何でぇ、坊っちゃんと桐崎のお嬢ちゃんが何も進展してねぇじゃねえか」

 

「ここは一つ俺達が人肌脱ぐべきですね」

 

後ろから扉越しにそんな声が聞こえてくる。恐らく、龍さん達だろう。そう考えていると、俺の後ろの襖を開けて龍さんが入ってきた。

 

「すいません、坊っちゃん。ちょっと蔵からあれとって来てもらえません?桐崎のお嬢ちゃんと」

 

「はぁ?何で俺が。お前らだけでも十分だろう」

 

「俺達はちょっと組長に呼ばれてまして……とにかく頼みましたよ!入ってすぐ右にあるやつですから!」

 

「あ、おい!……行っちまった。仕方ないか、いくぞハニー」

 

「あ、ちょっと待ってよ、ダーリン」

 

今度は楽と桐崎さんが出て行った。いや、正確には龍さんのせいで出て行かされたと言った方がいいのか?まぁ、しばらくしたら戻ってくるだろ。勉強でもしとこ。

 

15分後

 

「二人とも遅いね」

 

「何してるのかしら?」

 

中々戻ってこない楽と桐崎さんを心配してなのか、小野寺と宮本が呟いた。

 

「小咲、クロ君。ちょっと見に行きましょう」

 

「うん、わかったよ」

 

「了解。集はどうする?」

 

「俺もいくよ。一人っていうのも寂しいしな」

 

結局全員楽の様子を見に行く事に。集が行くと言った瞬間、宮本は舌打ちしていたが、何人の人が気づいてたんだろうな。

 

「そういえば、さっき蔵って言ってたな。そこに行くか」

 

外に出て蔵を探す。暫く歩くと蔵を見つけた。その扉の前に誰か立ってるけど。

 

「あの人誰だろ?」

 

「さぁ?けど、どっかで見たことがある気がするんだよな………何処だっけ」

 

何か学校で見たことがある気が……まぁ、いいか。今は楽達の方が心配だし。

 

「おい、小僧。いくら恋人同士だからってそういうことはまだ早いんじゃないのか?」

 

そういうこと?どういうことだ?

 

「あ、一条君。ここにいたんだ」

 

「やっぱり二人ともここに来てたのか…………おい、それはやばいだろ?」

 

蔵の中で桐崎さんが楽を押し倒していて、二人はキスしそうなくらいに距離が近い。こいつら、蔵の中で愛を確かめようとでもしてたのか?

 

「し、失礼しましたーーー!!!」

 

これを見た瞬間、小野寺が俺と宮本の襟首摑んで蔵とは反対の方向へ走りだした。何だ?これが火事場の馬鹿力っていうやつなのか!?

 

結局、今回計画した勉強会は小野寺のためにあまり何も出来なかった。むしろ、俺と宮本。楽と桐崎さんがラッキーだっただけかもしれない。小野寺、本当にごめん。でも、まだきっとチャンスはあると思うから大丈夫だと思うぞ!多分。

 

 

 

 

 

 




感想や訂正があればお待ちしております。


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第8話 男子三人のアツマリ

今回はオリジナルです。
集がよく掴めてなくて変かもしれません。


日曜日。女子水泳部は他の学校と合同練習で呼ばれているため男子水泳部は休みとなった。ということで折角の日曜日で宮本達と遊ぶ約束をしていないため家でゆっくり過ごそうと思っていたのだが………

 

「何で俺がこんなところに呼び出されてるんだ?」

 

「まぁまぁ、いいじゃないかクロ君。たまには野郎どもだけで遊ぼうぜ」

 

「そうだぜ、クロ。みんな予定が入ってて俺達二人で遊ぶところだったんだぜ。流石にそれは嫌だからクロが来てくれて助かったぜ」

 

とあるファミレス。そこで待っていたのは集と城野崎だった。

 

「嘘つけ。お前ら二人が揃うって事はよっぽどの事の筈だ。てか、楽はどうした。あいつにも声かけろよ」

 

こいつらはウチのクラスの賑やか&変態コンビなのである。集も写真を撮ったりしているが、城野崎も集と同じくらい写真を撮ってそれをみんなに売ったりしている。俺も時々お世話になっている。

 

「楽の奴は桐崎さんと水泳の助っ人に呼ばれて行っちまった。だから、結局は俺達三人だけ」

 

「で、この三人で何をするかと言うと!!」

 

「「合コ『帰る』嘘だよ」」

 

こいつらが言うとマジに聞こえるからやめて欲しいんだけど。

 

「で、本当は?」

 

「あぁ。実は昨日偶然聞いたんだけど、キョーコ先生が何処かにお出かけするらしいんだ」

 

「は?」

 

「そうそう。で、俺達はそのキョーコ先生を見て写真を撮りたいわけだ。キョーコ先生の写真なんてレアだしな」

 

「ただ、俺達二人って言うのは色々不安なんだよ。もし、怒られたらと思うと」

 

「だから、どうせならクロもと思って連れて来たわけだ」

 

ふむふむ、なるほど。写真を撮りたいけど、集達だけ怒られるのもシャクだから俺も連れて来たと。

 

「それただのストーカーじゃねえか!!!てか、人を巻き込んでんじゃねえよ!」

 

ここがファミレスということも忘れて前にいる二人に叫んだ。それを聞いた周りの人達がいきなりこっちに注目が集まり、俺は顔を赤くして座った。

 

「まぁ、そういうことだ。クロには悪いと思ってるけど、ここは一つ頼むよ」

 

「断る!俺は帰るぞ」

 

俺は席を立ちそこから立ち去ろうとした。

 

「………宮本と小野寺のツーショットを今なら200円で『よし、付き合おう!』毎度ー」

 

くそー!何してんだ俺。でも、二人のツーショットに勝てるわけないだろ…………そうだ、これは俺の欲望のせいだ。決して俺のせいじゃない。

 

「で、俺は何をしたらいいんだ?」

 

「なーに。俺達が写真を撮ってる時に怪しく見えないように俺達に話しかけてくれるだけでいいよ」

 

「了解。でも、この格好じゃ見られたら終わりだよな」

 

「そんな事もあろうかと……ほら、これをつけたら大丈夫!」

 

そういって集は鞄からあるものをとりだした。

 

 

 

 

『ねぇ、ママ。あの人達何なの?』

 

『こらっ!危ないからあんなの見たらいけません!』

 

『うわっ、あの人達何?カメラ持って凄く怖いんですけど……』

 

『近づかないでおこうよ。ストーカーみたいで怖いから』

 

「………モロバレだぞ、おい」

 

キョーコ先生を見つけて後ろから追いかけ出して(尾行して)数分が経ち、周りの人達が俺達の怪しさ気付き始めた。俺達の今の格好はスーツにサングラスに帽子といった以下にも犯罪者的な格好である。

 

「おっかしいなー。何がいけなかったんだ?」

 

「舞子、いったろ。サングラスは赤縁より青縁の方がいいって」

 

「そういう問題じゃねえだろ!!」

 

あー、くそ。何でこんな事に……こんな事なら今日宮本達の方に行ったらよかったぜ。…………何で俺宮本に呼ばれなかったんだろう。

 

「仕方ない。いつも通りの格好に帽子にしよう」

 

「そうだな。じゃあどっかで着替えるか」

 

「…………今着替えたらキョーコ先生見失うぞ」

 

「「あ…………」」

 

集と城野崎が同時に口をポカンと開ける。

 

「………城野崎君。これはどうするべきだと思いますか?」

 

「舞子隊長、自分はここで着替えるべきだと思います」

 

「舞子隊長ー、俺もそう思うぞ」

 

なんかノリに乗ってみる。

 

「……仕方ない。じゃんけんで負けた奴が一人残って、後で、負けた奴が着替えるか」

 

結果、城野崎が残って俺と集はすぐ近くの公園で着替える事に。

 

 

 

 

 

 

「集、今日お前はキョーコ先生をカメラで撮りに来ただけなのか?」

 

「んー?クロも変な事を聞くんだなー。それ以外に何があるって言うんだ?」

 

トイレで着替えながらドア越しに会話をする。

 

「本当なんだな?」

 

「……………」

 

念押しに聞くと、集は俺の言葉を返さずに黙り込んだ。

 

「城野崎は写真に収めたいだけだろうけど、お前は違う気がする。間違ってたら謝るけど、お前…………」

 

「キョーコ先生の事……好きだろ」

 

「……………いつから気づいてた?」

 

「気づいたのは最近だ。………気持ちを伝えなくていいのか?」

 

「別に今はまだいいんだよ。今日は本当にキョーコ先生を撮りに来ただけだからな」

 

俺達は着替え終わったので扉を開けて外に出る。

 

「まだまだ、時間はあるからな。それより、俺にしたらクロに気づかれた事が何よりも悔しいよ」

 

「ははっ、俺は結構こういうことに関しては鋭いからな」

 

「何処が…………るりちゃんの事考えろよ」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「いや、別に。早く戻ろうぜ。城野崎だけじゃ不安だからな。あ、この事は秘密で頼むぜ」

 

「わかってるよ。集も頑張れよ」

 

「おぅ!じゃあ、戻ろうぜ」

 

 

 

 

 

『君はまだ高校生じゃないか。こんな格好で何をしてるんだ?』

 

「いや、その……ちょっと警察ごっこを……」

 

『一人でかい?君は本当に高校生なのか?』

 

「はい。あと、今トイレに行ってますけど、友達も二人います……」

 

さっきの場所に戻ると、城野崎が警察に事情聴取を受けていた。しまった。あんな格好させた奴が一人で居させたら本当に怪しいやつじゃないか。何で、俺はこの事に気がつかなかったんだ!すまない、城野崎。

 

「おい、集。これからどうするよ?」

 

「うーん。キョーコ先生が行ったのはあっちだろうから、出来ればその方向に行きたいんだが、その前に城野崎がいるからな………」

 

道で正座をして警察に色々聞かれてる城野崎を見る。何か惨めだな。

 

「全力ダッシュで切り抜けるって言うのはどうだ?」

 

「おぉ、それいいな。てか、クロも何か乗り気になってきてるじゃん」

 

「ここまで来たんだ。こうなったらとことんお前と付き合ってやるよ」

 

「よし、それなら………用意……ドン!!」

 

集の掛け声に合わせて俺達は全力で走り警察官と城野崎の横を通り過ぎる。後から、城野崎の声が聞こえた気がしたけど、聞かなかった事にしておこう。

 

 

 

 

「ふー、ここまでくれば大丈夫だろ」

 

「そうだな………って、あれキョーコ先生じゃないか?」

 

偶然デパートに入ろうとするキョーコ先生を見つけたため俺達もそこに入ることに。

 

「うわー、相変わらず広いな、ウチのデパートは…………」

 

集が全体を見渡してそう言う。

 

「確かにな。グズグズしてるとキョーコ先生を見失ってしまう。さっさと行こうぜ」

 

「そうだなー。キョーコ先生待ってろよ!このカメラであなたのハートも…………」

 

「…………おい、お前今から警察に突き出してもいいんだぞ」

 

「ご冗談を!!さぁ、行こう。クロ隊員!」

 

「了解、舞子隊長」

 

そう返事してキョーコ先生の後をつける。自販機でジュースを買ってから。……今考えれば集がキョーコ先生を好きになったのもわかる気がする。あの先生ウチの学校なら1、2を争うほどの可愛さだし、性格もすげぇいいしな。

 

「クロ。さっきのお返しでお前にも聞くけどさ。お前って」

 

「るりちゃんの事好きだよな?」

 

「ブフッッ!!いきなり何言い出すんだよ!」

 

あまりに唐突すぎたためさっき自販機で買ったジュースを少し噴き出した。

 

「だって、そうだろ。お前らって付き合ってないのがおかしいくらいだぞ。クラスの男子内ではお前とるりちゃんが真っ先に付き合うと思ってたんだぞ」

 

「なっ!?あいつは俺の部活仲間で俺の一番の友達で、俺の………恩人だよ」

 

「確かにあん時クロは昔の楽を見てるみたいで可哀想だったよ。でも、るりちゃんに救われたんだよな」

 

「あぁ。あいつの言葉がなければ今の俺はきっとないよ」

 

今でもあの時の宮本の言葉は覚えている。

 

『私はあなたのその真面目なとことか優しいところとか結構好きよ』

 

『周りの事なんか気にしなくてもいい。そんなに不安なら私があなたの友達になって、あなたのそばにいてあげるわよ』

 

「あの時は本当に嬉しかったよ。思えばあの時にはもう宮本の事を好きなっていたのかもしれねえ…………はっ!」

 

何俺は一人で話し込んでるんだ!

 

「ほらなー。やっぱり好きなんだろ、るりちゃんの事が」

 

「…………まぁな。てか、あれを言われて好きにならねえ奴なんかいねえと思うんだけど」

 

「うんうん。わかるぞ、それは。そんなクロ君にいい事を教えてあげよう。恐らくるりちゃんも」

 

「お前の事が好きだぞ」

 

「はっ?」

 

またもや、いきなりすぎてびっくりする。宮本がおれのことをすきだって?そんな事……

 

「あるわけないって!大体、宮本と俺が釣り合うわけないだろ」

 

「…………そう思ってるのはきっとクロだけだぞ。るりちゃんを除けは」

 

ないない。宮本が俺の事を好きなんで。…………でも、もし本当に俺の事が好きだったら俺はどうしたらいいんだろう…………告白すべきなのだろうか。

 

「で、どうするんだ?」

 

「……………今はまだやめとく。確かに宮本の事は好きだけど、俺と宮本と小野寺っていう三人の関係をくずしたくないから。今付き合ったら小野寺に悪いよ」

 

小野寺も友達としては大好きだからな。この関係を崩さないためにもう少し待って見るさ。

 

「せめて、小野寺が楽と付き合ってくれればな…………」

 

「んー?なんか言った?」

 

「いや、なんでもない。お、キョーコ先生が店の前に立ち止まった。あれは…………服屋?」

 

キョーコ先生が立ち止まったのは服屋だった。けど、どうして立ち止まって。

 

「おい、舞子に神崎。いるんだろ?隠れていないでちょっと出てこい」

 

「「げっ!!」」

 

キョーコ先生がこっちを向いて俺達に呼びかける。どうしてだ!?一体いつばれたんだ?俺達は顔を見合わせた後、渋々出て行く。

 

「まったく、ついて来るならもうちょっと静かに行けよ。後ろから神崎の声が丸聞こえだったぞ」

 

嘘だろ!?これは俺のせいなのか…………

 

「まぁいい。後ろからついて来たのは怒りたいところだが、それをめんじょしてやるからちょっと手伝ってくれ」

 

そう言ってキョーコ先生は服屋に入る。俺達も後ろをついて行くように入った。

 

 

 

 

 

「これはどうだ?」

 

「キョーコ先生サイコーー!!」

 

「凄く……似合ってます」

 

集は顔を真っ赤にさせて、俺は少し照れながらもキョーコ先生の姿を褒める。

 

手伝い。それはキョーコ先生が着替えていく服を似合ってるか似合ってないか判断する事だった。だが、正直言ってどの服も似合っていた。

 

「そうか。いやー、助かったよ。一人じゃ似合ってるかどうかわからないからな」

 

いや、もう宮本には悪い気がするけど、こんな可愛い人の格好をいろいろ見れて最高です。

 

「さてと、じゃあこれとこれを買うとするか。ありがとな、二人とも。お詫びに何か奢るよ」

 

「いや、結構です!そんなの先生に悪いですから」

 

「気にするな。何がいい。アイスか?クレープか?」

 

ダメだ。この人本当に性格良すぎる。悪いことしてたの俺達だぞ。しかも、奢らせないと気が済まないって感じだな。

 

「じゃあアイスで」

 

「俺も俺も」

 

「よし。じゃあいくか!」

 

 

 

 

 

「ほれ。バニラとチョコだ」

 

「「ありがとうございます」」

 

一階のアイスの店に行ってキョーコ先生からアイスをもらう。

 

「で、何でお前らは私の後をつけてたんだ?」

 

「それは…………」

 

言えない。集の付き添いとはいえ、キョーコ先生をつけてました。何て。

 

「いやー、偶然ですよ偶然。デパートにクロと遊びに来たら偶然キョーコ先生を見つけて面白半分でつけてました」

 

ナイス、集!ごまかすのうまいな。

 

「男二人でデパート?お前らもっと青春をしろよ。折角、いい顔してるんだから」

 

「あ、ありがとうございます」

 

確かに男子高校生が二人でデパートってなんか気持ち悪いな。

 

「さてと、アイスも食ったし、そろそろ行くかー!」

 

「あぁ、そうだな」

 

俺と集が立ち上がり後ろを向くとそこに…………

 

宮本と小野寺が立っていた。

 

「クロ君。こんなところで何してるの?」

 

「…………おっす、宮本。こんなところで会うなんて奇遇だな。どうしたんだ?」

 

「部活帰りに小咲とちょっとよっただけよ。それより、どうしてクロ君はキョーコ先生と一緒にいるのかしら?」

 

あれー?おかしいな。宮本の頭に怒りマークが立ってるような………

 

「おい、集。ちょっと助けてくれ………ってもういないし!!」

 

何だ、あいつ!空気読んだのか!?

 

「おぉ、宮本に小野寺。私がこいつと一緒にいる理由はこいつと舞子が後ろからついて来てたのを見つけて私の着替えを見せてたんだ」

 

ちょっと待って!!その言い方はマジで誤解を招くからやめてくださいよ!!

 

「では、私はこれで失礼」

 

「あ、ちょっ!待ってください!」

 

椅子から立ち上がって去るキョーコ先生を追いかけようとするが、宮本に腕を掴まれ、それが出来なかった。

 

「キョーコ先生をついて行って、着替えも見たの?クロ君それって」

 

「ストーカーに変態行為じゃないのかしら?」

 

やばいやばいやばい。宮本が本気で怒ってる。現に今、掴まれてる方の俺の腕がすごく痛い。

 

「いや、その…『あ、いた!おいクロ!!』…………城野崎」

 

なんだこれは?ラスボスを倒そうしたが、ラスボスは仲間を呼んだ、みたいな展開。

 

「酷いぞ!お前らだけスーツにサングラスに帽子から着替えたと思ったら俺をほっていきやがって。おかけで警官に色々聞かれたじゃねえか」

 

「スーツにサングラスに帽子?クロ君。そんな格好でついて行ってたの?」

 

「いや、えと。なんと言いますか」

 

ダメだ。言い訳がまったく思いつかない。

 

「そう。クロ君は私達が部活で頑張ってる時にそんな事を……」

 

「えと……宮本さん?」

 

バシンッ!!

 

「ぐはっ!」

 

無言で宮本にビンタされた俺はなす術もなく倒れる。

 

「………行きましょう、小咲」

 

そう言って宮本はデパートを出て行った。

 

「うん。………クロ君はそんな事をする人じゃないって私信じてるから。何か辛いことがあったら相談してきてね」

 

「あぁ、ありがとう小野寺」

 

小野寺もデパートから出て行った。くそ。初めてかもしれない。宮本のビンタがこんなに痛いと感じたのは。明日、学校に言ったらちゃんと謝らないと………でも、許してくれるかな。許してもらえなかったら俺は…………

 

「えっ、何。俺何か悪いことしたの?」

 

何が起きたか理解していない城野崎だった。

 

 

 

 

 




キョーコ先生もよくわからなかった。
感想と訂正があればお待ちしております。


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第9話 ユウジンと仲直り

題名考えるの難しい。



るりside

 

はぁ、私何してるんだろ……クロ君に手を出すなんて最低ね。

 

「るりちゃん、ちょっと待ってよ!!」

 

「………あ、ごめん小咲。歩くの速くて」

 

「うん、それはいいんだけど……大丈夫?さっきのるりちゃん凄く怖かったよ」

 

「えぇ、大丈夫よ。迷惑かけてごめんね」

 

そう言って私達はまた歩き出す。今度は小咲にあわして。

 

「ねぇ、るりちゃん。クロ君は何のようもなく女の子をキョーコ先生をストーキングしたり、着替え見たりしないと思うんだ。だから、一度話しあってみようよ」

 

そんなの私だってわかってる。中2からの付き合いだし、部活も一緒。そんなに一緒にいたらクロ君がそんな事をするわけないって事は十分わかってる。でも…………

 

「何かクロ君がキョーコ先生と一緒にいたと思うと、腹が立って。なんでかな。小咲なら全然腹が立たないのに………」

 

(それってただの嫉妬なんじゃ……でもこれ言った方がいいのかな?)

 

「小咲はどう思う?」

 

「えっ!?そうだな………やっぱり友達だから余計腹が立ったんじゃないかな?」

 

「ふーん……やっぱりそうなのよね」

 

私がクロ君に嫉妬なんかするわけなんかないんだし、きっとそうよね。

 

「で、るりちゃんはどうしたいの?このままじゃクロ君と喋ることなんか出来ないと思うよ」

 

確かに、このままクロ君と喋らなかったら色々困る。部活でもそうだけど、やっぱり仲良くしていたいし。

 

「………私が一方的に悪いみたいになってるけど、よく考えたらクロ君も少しは悪いことあると思うんだけど」

 

「…………それはそうかもしれないね」

 

「だから、頑張ってクロ君と話し合って見る。今日何があったのかを」

 

「うん。それがいいと思うよ!私も協力するから一緒に頑張ろう!!」

 

「…………ありがとう、小咲」

 

明日から頑張らないと。

 

るりside out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「いっつも思うけど楽の弁当って凄い健康的だよな」

 

「舞子の言う通りだな。これってお前のお母さんの手作りか?」

 

「いや、俺の手作りだけど」

 

「マジかよ!この年で手作りとか……流石は一条だな。クロはどう思う?」

 

「………………」

 

「おーい、クロー?」

 

「へっ!?何だ、昼休みか!!?」

 

「いや、もう昼休みだぞ」

 

「おい、クロ。最近ちょっと調子おかしいけど大丈夫か?」

 

「あ、あぁ。大丈夫だから心配すんな」

 

あれから三日たったが、俺はまだ宮本にビンタされた事が立ち直れないままでいた。学校に来たら、実はそんな事がありませんでした。みたいな事を期待したけど、そんなのはなかった。いつもなら小野寺と宮本と飯を食ってる筈なのに最近は楽、集、城野崎の3人と飯を食っている。はぁ、俺どうしたらいいんだろ。このまま宮本と喋れない学校生活なんてやだぜ。

 

「………るりちゃんの事か?」

 

「あぁ。昨日お前がいきなりいなくなって散々だったよ。変な誤解を生むわ、宮本にビンタされるわ」

 

「いやー、悪かった。あの時に綺麗なお姉さんを見つけて思わず声をかけちまってなー」

 

「…………まぁ、過ぎたことをどうこういっても仕方ないし、もういいけどよ」

 

はぁ、宮本と仲直りしたいな……でもあいつ今小野寺と桐崎さんと食べてるしな…………

 

「まぁ、こうなったのも俺達のせいでもある。ここは俺達が手伝ってやろうじゃないか」

 

城野崎がいきなり立ち上がって自分の胸をドン、と叩いた。手伝ってくれるのは嬉しいけど。

 

「お前らが手伝われるとロクなことがないからやめてくれ。自分で頑張るよ」

 

「「えぇ!!?」」

 

コンマ0.1秒も狂わずに同時に声をあげる城野崎と集。二人はお互いの顔を見合わせて何故か笑った。

 

「とりあえず、宮本と二人きりにならないとな……」

 

 

 

 

 

 

放課後

 

「ダメだ。まったくそんな事が出来ないと」

 

小野寺も宮本も桐崎さんにつきっぱなしだ。昨日何かあったのかな?てか、これじゃ宮本に謝れねえよ。

 

「はぁ、どうしよう………」

 

「お、お困りですか、クロ君、じゃなくて少年」

 

外にあるベンチで悩んでいると何かの着ぐるみをした女子生徒が現れた。何でわかるかって?声でバレバレなんですよ。

 

「おい、小野寺。何がしたいのかわからないが、暑いだろ。とりあえずそれを脱ぐべきだと思うぞ」

 

「な、なんのことしょうか?私は小野寺ではありません。私は………えと………そう!森の妖精。森の妖精なのです!」

 

はぁ、誰の差し金だよ。小野寺にこんなことさせるなんて。でも、ほっとかないと聞きそうにもないし。

 

「まぁ、いいか。森がまったくない学校に現れた森の妖精さん。俺に何のようだ?」

 

「細かいことを気にしちゃだめ。校門の前である女子生徒が君の事を待っています。速く行ってあげてください」

 

女子生徒…………

 

「宮本か!?」

 

「そう。るりちゃ………女子生徒が待っています。速く行ってあげて下さい」

 

「わかった。サンキュー!!」

 

返事をして全力ダッシュで校門前まで向かった。

 

「………頑張って、クロ君。…にしてもクロ君のためとはいえこんな格好させられるなんて、舞子君もるりちゃんも酷いよ。絶対私で遊んでるよね、これ」

 

 

 

 

 

 

 

「宮本!!」

 

「………クロ君」

 

森の妖精(小野寺)が言ったとおり宮本は校門前で待っていた。全力ダッシュで来たため多少息を切らしながら宮本の正面に立つ。

 

「はぁ、はぁ…………宮本。そのこの前は『この前はごめんなさい』……へっ?」

 

俺が先に謝ろうとしたのに、何故か宮本に謝られた。どうしてだ?悪い事したのは俺なのに……

 

「いきなりビンタしちゃって。クロ君がストーカーとかしない人だって言うのはわかってるのに。何か事情があったじゃないかっていうのはわかってた筈なのに」

 

「いや、待て。確かにストーカーしたのは事情はあるけど、したのは事実だ。だから、宮本は悪くない。悪いのは全部俺の方だよ」

 

「ううん、いきなり突っ走った私が悪いの」

 

「いや!宮本に勘違いさせるような事をした俺が悪いんだって!」

 

「いや、私が…………って私達はいつまでお互いに謝りあってるの?」

 

「確かに。一回落ち着こう。そして、話し合おう」

 

深呼吸して、さっき走って来て疲れた息も整えて……よし、完璧!

 

「まず、聞かせて。何でクロ君はキョーコ先生をストーキングしてたの?」

 

「あぁ。実は…………」

 

俺は宮本に伝わるように説明した。何故、そうなったのか。何故、スーツをきていたのか。何故、キョーコ先生の着替えもみたのか。その全てを宮本に話した。

 

「…………なるほどね。多少はクロ君のせいだとしてもほとんどは舞子君達じゃない、悪いの」

 

「いや、あいつらの考えに乗った俺も悪いと思うしな」

 

「そこよ。私が腑に落ちないのは。どうしてその話にクロ君はのったの?断ればよかったのに」

 

「えっ!?いや、えっと………」

 

どうしよう。写真もらったからとか言えないしな……何かいい言い訳を。

 

「その、集達に泣いて頼まれたんだよ。ファミレスで土下座までされて。そんなことされたら断ることもできないだろ?」

 

「まぁ、それはそうね。私ならその二人蹴飛ばしてるけどね」

 

「はははっ、まぁそれは冗談だとして『冗談じゃないわ。本気よ』……そうですか」

 

なんだろう。凄え宮本が怖い。宮本だけは敵に回したくないな……

 

「宮本。3日前の事は許してくれるか?」

 

「さっきも言ったけど、私がいきなりビンタしたのもあるんだから許すも許さないもないと思うわよ」

 

「いや、でも何かスッキリしなくて」

 

「じゃあ、仲直りとして今度の日曜日に小咲もつれて三人で何処かに遊びにいくこと!これでいい?」

 

「……あぁ。それで仲直りなら絶対行くよ!!」

 

「じゃあ、約束ね」

 

「あぁ、約束だ」

 

こうして俺達は一応仲直りをしたことになったと思う。一時はどうなるかと思ったけど、何とかなるもんだな。

 

「…………そういえば、小野寺は?」

 

「小咲なら一条君に告白してる筈よ」

 

……………………what?

 

「お前ら俺がいない間に何があったんだ?」

 

「ちょっとね。私が念押ししといたから多分大丈夫だと思うんだけど……あら、小咲が来たわ」

 

校内から小野寺が出てくるのを見つけて俺達は小野寺に駆け寄る。

 

「るりちゃん、そのごめん」

 

「無理だったの?」

 

「うん。告白はしようとしたんだけどね」

 

「ちっ、この根性なしめ!!」

 

「えぇ!?」

 

宮本が舌打ちしながらも小野寺も睨む。だが、すぐに溜息をついた。

 

「まぁ、あんたにしたら頑張ったんじゃないの?」

 

「るりちゃん…………」

 

「けど、次は成功させなさいよ!」

 

「りょ、了解です」

 

告白出来なかったみたいだけど本人が納得してるから別にいいか。

 

「あ、クロ君も仲直り出来たんだね。おめでとう」

 

「あ、あぁ。小野寺もありがとうな。あんな恥ずかしい格好してまで俺に伝えに来てくれて」

 

「な、何のことかわからないよ」

 

この後に及んでまだしらばっくれようとしてるのか?仕方ない。

 

「とりあえず、帰ろうぜ。今日はなんか色々疲れた」

 

「うん、そうだね。るりちゃんも行こ」

 

「えぇ。また明日からよろしくねクロ君」

 

「こちらこそ、よろしく頼むよ」

 

校門を出て俺達はケンカする前の状態のように一緒に帰った。やっぱ、この二人と一緒にいると凄く落ち着くわ。もう、喧嘩しないようにしないとな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、今度の日曜日って水泳部男女共に部活だぞ」

 

「あっ、忘れてた」

 

結局遊びにいく話はなしになってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ、やっときたか。わざわざ向こうからご苦労だったな」

 

「いえ。クロード様のご命令とあれば、私は全然。それで、私はどうして日本に呼び出されたのでしょうか?」

 

「お前に二つ頼みたい事がある。まず一つがこれだ。実は千棘お嬢様がその写真の者と付き合っていてな」

 

「な、なんと!?そのような事は初めてお聞きしましたが………」

 

「あぁ、だが妙におかしいのだ。付き合ってるのに付き合ってるように見えない。おまけにお嬢様以外の女子ともイチャコラしてる最低のやつだ!!!」

 

「ゆ、許せませんね、その男」

 

「あぁ。だから、この男、一条楽の調査を頼む。そしてもうひとつはこれだ」

 

「この男は?」

 

「神崎黒。一条楽のクラスメイトなんだが、神崎というとあいつを思い出したんだ。調べてみると、実はこいつはあの男の息子だとわかった」

 

「なっ!?あの男の……………息子」

 

「あぁ。だから、お前には一条楽の調査と神崎黒の制裁を頼みたい」

 

「………………」

 

「誠士郎?返事は」

 

「あ、はい。了解です、クロード様……………神崎黒、貴様だけは許さんぞ」

 

 




次から鶫が出てきます。
感想と訂正があればお待ちしています。


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第10話 トツゼンの転校生

すいません、遅くなりました。
でも、7月いっぱいはこんな漢字続きだと
思います。8月からはマシになるはず。


宮本と仲直りした2日後。朝練に来ていた俺と宮本は一緒に教室に向かっていた。

 

「はあぁ、朝練疲れたな。今日の授業起きてられるかな」

 

「寝てたら私がしばき起こしてあげるから大丈夫。安心して寝てちょうだい」

 

「そんな事言われて寝ていられる奴がいるかよ!!」

 

2人で話し合いながら教室に向かう。だけど、廊下に立っている男子の目が凄く怖い。何睨んでるんだよ。別に俺達は付き合ってないぞ。ただの友達だぞ。

 

「おーっす、小野寺」

 

「おはよう、小咲」

 

「おはよう、クロ君にるりちゃん」

 

教室について最初に小野寺に挨拶すると、小野寺も俺達に気づいて挨拶を返して来る。

 

「今日、このクラスに転校生が来るそうだよ。舞子君が騒いでた」

 

「あいつ毎度のこと情報はやいな」

 

教室のみんなに言いふらしてる集をみて呟く。

 

「どんな奴だろうな。面白い奴だったらいいんだけど」

 

「女子だったらこっち側に率いれようかしら」

 

「………流石に男子1人に対して女子3人は気まずいだけど。どんなハーレム展開だよ」

 

「冗談よ。私もこの3人での居心地がいいもの。あと、ハーレムにはならないわよ。てか、させないわ」

 

やっぱり宮本もそう思ってるのか。宮本と付き合いたいっていうのはあるけど、小野寺に悪いからな……しばらくはこのままだろうな。って、何俺は宮本に告白したら付き合えるみたいな言い方してるんだ!振られる可能性だってあるのに!!

 

「よーし、早く座れよー。出席とるからな」

 

キョーコ先生が教室に入って来て、みんなが自席に座っていく。

 

「うん、今日も全員揃ってるな。突然だけど、今日はみんなに転校生を紹介するぞー。鶫さん、入って来て」

 

教室のドアを開けて入って来たのは美男子だった。………美男子。でも、何かわからないけど違和感を感じる。

 

「はじめまして。鶫誠士郎といいます。これからよろしくお願いします」

 

自己紹介が終わった瞬間、周りから歓声が起こる。主に女子から。鶫は凄いイケメンだった。外歩いてたらモデルのスカウトが来そうなくらいに。

 

女子の歓声は未だやまないけれど、その中で1人、いきなり立ち上がって鶫を指差す人物がいた。

 

「鶫!?」

 

いきなり立ち上がったのは桐崎さんだった。桐崎さんが立ち上がったのを見た瞬間…

 

「お久しぶりです、お嬢!!」

 

鶫が桐崎さんに抱きついた。

 

「ちょ、みんなの前でなにやってるのよ!!」

 

「会いたかったです、お嬢!」

 

「こら、抱きつくなーーー!!」

 

『うぉ、美男子転校生がいきなり桐崎さんに抱きついたぞ!?』

 

『これは一条君も負けてられないよ!さぁ、一条君も!』

 

「おい、なんでそうなる!てか、押すな!!」

 

抱きついて倒れた桐崎さんを見てみんながさらに騒ぎ出す。はぁ、楽も大変だな。フラグメイカーはよくやるよ。…………鶫は男だったな。桐崎さんと鶫はどんな関係なんだろうか。

 

「会えて色々話したいことはあるのですし、お嬢の彼氏の事も聞きたいのですが、その前に私は一つ済ませたい事があるのです」

 

鶫はゆっくりと立ち上がってこのクラス全体に聞こえる声で言った。

 

「このクラスにいる神崎黒という男は誰だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………俺?

 

「ほら、クロ君。呼ばれてるわよ」

 

「一体どういうことだ?俺はあいつのこと知らないぞ」

 

俺は立ち上がって鶫に近づく。

 

「神崎黒は俺だけど」

 

「貴様か!!貴様だけは…………貴様だけは絶対に!…………」

 

おい待て。何で俺はこいつに泣かれてるんだ?俺本当にこいつのこと知らないぞ。

 

『神崎君が転校生を泣かせたよ』

 

『一体どういう関係なんだ?』

 

『殺人者の息子だぜ。何しでかすかわかったもんじゃない………』

 

「つっ!…………」

 

そんなこと言われるとか流石に辛いよ。胸が苦しいわ………

 

「クロ君、大丈夫?保健室行く?」

 

「…………いや、大丈夫。ありがとな」

 

宮本が俺の背中に手を置いてくれる。胸が苦しいのが少しマシになった。

 

「……で、俺は鶫に何かしたのか?悪いがお前の事を俺は全く知らない。何かあったなら教えてくれ」

 

泣いていた鶫が涙を拭って俺を睨みつける。

 

「…………闘だ」

 

「は?」

 

「決闘だ!!今日の昼休みに私と決闘しろ!」

 

「はああぁぁぁ!!?」

 

「いいか!絶対にだぞ。逃げるなよ!」

 

それだけ言うといきなり走り出して教室を出て行った。

 

「…………決闘?」

 

 

 

 

 

 

 

「で、本当に何をしたのよ?」

 

「知らねえよ。こっちが聞きたいんだけど。てか、なんで決闘なんだ?」

 

1限目が終わり、俺と宮本は向き合って会話する。授業中、鶫に睨まれっぱなしで怖かったからこうやって話せる事が幸せだ。

 

「本当に?」

 

「あ、あぁ。本当だ」

 

宮本が俺の鼻の頭に指先がつきそうになるくらいに近づけて聞いてくる。でも、俺は本当に知らない。

 

「…………決闘を何するかは知らないけど、無茶はしないでね」

 

「おう。そんな大変な事にはならないと思うけどな」

 

この時はまだ鶫があんな事をして来るなんて全く思わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休みになり外に行くと、鶫と俺達の事を嗅ぎつけてか、ギャラリーがたくさん集まっていた。その中には桐崎さんや小野寺、宮本や楽もいる。

 

「……逃げずに来たようだな」

 

「逃げる理由がないだろ。大体何で俺をそんなに恨んでいるのか解決しないとスッキリしねぇ」

 

「何の事かわからないだと?」

 

元々怒っていたのに、俺の言葉にさらに怒りが増す。これが火に油を注ぐ、ということなのか。

 

「で、勝負内容は?」

 

「そんなの決まってる。決闘だ!このコインが地面に落ちたらスタートだからな」

 

「オーケー、と言っても俺はお前を殴ったりするつもりは一切ないけどな」

 

「そんな事を言ってられるのも今のうちだ!!」

 

鶫は親指でコインを弾いた。さてと、どうしようか。あそこまで言うと言うことは腕によっぽど自信があるはずだ。俺も喧嘩自体は弱いわけじゃないんだけどな………お、もうすぐコインが落ちる。勝負スタートか………

 

ジャキン!!

 

コインが落ちたのを見て鶫を見ると、両手にハンドガン。背中にマシンガンなどを背負っていた。

 

「そんなのありかよ!!!」

 

「待て!にげるのか!!」

 

鶫の装備を見た瞬間、俺はすぐさま後者の方へ走り出した。そんな俺を鶫は容赦無く追って来る。銃を撃ってきながら。

 

「あたったらどうすんだよ!!」

 

「そんなの気にするわけないだろうが!!」

 

「ちっ!!てか、なんであんなもの背負ってんのにあんなに走るのはやいんだ!?」

 

俺これでも一応水泳部だぜ。それも中学時代ではかなり強かったのに。足の速さは鍛えられないにしてもスタミナは相当のはずだ。その俺が何でこんな銃持ってる奴と同等なんだ?

 

「くそ、このままじゃラチがあかない。どうしようか………」

 

考えろ、考えろ俺。ここはどこだ?何階だ。どうすればこいつを静められる??

 

「…………そうだ!」

 

こうなったら一か八かだ!!

 

俺はとある窓の前で立ち止まった。

 

「ふふふっ、観念したか神崎黒!」

 

「いや、勝つつもりもねえけど、負けるつもりもねえよ。とりあえずお前には………」

 

俺は窓ガラスを開けて、そこから外に出る。

 

「待て!やはり逃げるのではないか!」

 

鶫もそれを見て窓ガラスから俺を追って来る。だが、ここは3階だ。普通に飛び降りたら死んでしまう。下に何かない限り。そう、下にあるのは……

 

「頭を冷やしてもらうぜ!鶫誠士郎!」

 

俺がこの学校で一番よく使う場所。この学校のプールだ。俺達はプールの方へと落ちて行った。

 

 

 

 

 

『おい、あいつら3階からプールにおちていったぞ!!』

 

『なんだと!?それやばいんじゃ…………』

 

「そんな………クロ君大丈夫かな、るりちゃん…………るりちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁはぁ、何とか助かったぜ。本当に死ぬ恐怖を味わった気がしたよ」

 

プールに落ちてすぐにプールサイドの方に上がる。

 

「ほら、お前も。手貸すから上がれよ」

 

「貴様の手助けなどいらん!自分で上がれる!」

 

俺は鶫に手を出したが、俺の手を払って鶫はプールサイドに上がった。

 

「何だよ、人が助けようとした…………の……に?」

 

「貴様、何人の体をジロジロと見ている?」

 

「いや、その格好……お前………」

 

「格好?一体なんの話をして……」

 

自分の状況を見て理解したようだ。鶫は今水で濡れたせいでブレザーを脱いでいる。つまり、カッターのみ。だが、カッターを水で濡れていて透けているのだ。その透けているのを見るからにして………

 

「お前、女だったのか!?」

 

俺の指摘に鶫は顔を真っ赤にさせる。

 

「くっ、最悪だ。まさか貴様なんかにこんな姿を………こっち見るな、変態!!」

 

拳銃を構えて俺を脅してくる。

 

「す、すまん!!」

 

俺はすぐに鶫と反対の方向を向く。そうか、朝に感じた違和感はこれだったのか。男じゃなくて女だから違和感があったんだ。

 

「まっ、とはいえこれで私の勝ちは確定だな」

 

「はっ?何を言って……!!?」

 

振り返ろうとすると鶫は俺を押し倒して頭に銃を突きつけてくる。

 

「お、おい。何のつもりだよ」

 

「黙れ。この決闘は私の勝ちだ」

 

「だから、落ち着けって。大体俺はお前に何をしたんだよ。本気で俺はお前の事を知らないんだ」

 

「ふん、当たり前だ。お前とは直接無関係だからな」

 

俺とは無関係?なのに、俺を恨む。一体どういうことなんだよ!

 

「本当に知らないようだな。なら、教えてやる!貴様の父親、神崎蒼は!…………私達の仲間を殺したんだ」

 

鶫は涙を流しながらそういった。だが、俺はその話に親父の名前が出て来た瞬間、俺の頭の中は真っ白になって、鶫の涙を気にする余裕が出来なかった。

 

 

 

 




クロの父親の下の名前はそうと読んで下さい。
感想や訂正があればお待ちしています。


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第11話 友達からのハゲマシ

今回、最初の方は少し暗いです。
ニセコイらしくないですが、もうこんな
暗い話は出てないと思います。…………多分。


「貴様の父親、神崎蒼は…………私達の仲間を殺したんだ!」

 

……親父が殺したのが……鶫の……仲間?

 

「嘘…………だろ」

 

「嘘な訳あるか!殺された仲間は私がクロード様に引き取ってもらってから私の事をずっとみて来てくれた。私は本当にあの人が兄のように思えた。…………だが、ある日、あの人は殺された」

 

銃を突きつけて涙をボロボロと流しながらも俺に訴えてくる。

 

「お前の父親を私は本当に憎んだ。殺してやろうかとも思った。だが、神崎蒼はすでに檻の中だった。復讐は出来ないと思った。そして、しばらく時が経ち、昨日の夜クロード様に言われた。神崎蒼に息子がいると」

 

「………………」

 

「神崎蒼には復讐は出来ない。だから、私はお前を制裁をして奴に私と同じ苦しみを与えてやろうと思った。大切なものがやられるのはどれほど辛いということをな!!………だから、私は今、お前をここで…」

 

「…………一つだけ言わせてくれ。悪いが、俺を殺したとしても親父は悲しまない」

 

「何?」

 

鶫の体がピクッと動くのを感じた。どうやら、少し動揺したようだ。

 

「親父はもう釈放されて今は違うとこで暮らしている。そして、俺は中2の頃に親父に会いに行ったことがあるんだ。友達に色々言われた事もあってな。その時、あいつは俺になんて言ったと思う?」

 

「そ、そんなの私にわかるわけがないだろ」

 

俺はその時の言葉を鮮明に覚えてるよ。

 

「『てめぇのようなクソみたいな息子が来る必要なんてねぇよ。さっさと帰ってミルクでもちびちび飲んでな』だぜ」

 

「つっ!!」

 

鶫が銃を下ろした。それをみた俺は鶫をどかして立ち上がった。

 

「わかったか?親父にとって、俺は何でもないんだよ。てか、どうでもいいとか思われてんだろうな。だから、俺を殺したとしても無駄だ。じゃあな」

 

そう言って俺はこの場が立ち去ろうとした。すると……

 

「クロ君!!」

 

いかにも全力ダッシュでここまで来てくれたと思えるほど息を切らした宮本が立っていた。

 

「宮本か………」

 

「大丈夫なの!3階から飛び降りてプールに落ちたって聞いたけど……」

 

そうか。俺を心配してここまで来てくれたのか。それも、1番最初に。

 

「あぁ、体は何ともない」

 

「体は?他に何処か痛めたりしたの?」

 

「…………悪い、今日は早退するって先生に言っといてくれ。今日はもう疲れた」

 

「えっ?ちょ、クロ君!」

 

「鶫を風邪ひかないようにどうにかしといてやってくれ」

 

それだけ言って俺は走って教室まで向かい、鞄を持って家に帰った。

 

 

 

 

 

 

「あら、おかえりクロちゃん。今日は早いのね」

 

家に帰るとばあちゃんが俺を出迎えてくれた。

 

「うん。今日は先生達が用事があったみたいで全員早く終わったんだ」

 

「そうなの?じゃあ、何か食べる?お菓子とかあるわよ」

 

「いや、いいよ。部屋で休んでくる。今日はちょっと疲れたから」

 

俺は階段を上がり自分の部屋に入った。部屋に入って服を着替えようとしたが、それもどうでもよくなり、靴下だけ脱ぐと、俺はベットにもたれかかった。

 

「ったく、冗談きついぜ。いきなりあんな話を聞かされるなんて………またクラスで噂されるだろうな。でも、今はそんな事どうでもいいか。今日は本当に疲れた……」

 

 

 

 

 

 

「あれ…………ここは?」

 

「あら、クロ君。やっと起きたのね」

 

気がつくと俺は横になっていて俺の上には宮本がいた。

 

「宮本………なんで俺の部屋に?」

 

「クロ君が心配になって、私も早退して来た。小咲にも協力してもらって。で、家に入ったらクロ君のおばあちゃんに『クロ君の様子がおかしいから見てもらえる?』って頼まれたから、部屋に入った」

 

「成る程な。事情はわかったよ」

 

「後、小咲も早退したわよ。一度家に帰ってお見舞いの品でも持って来たから来るっていってたわ」

 

この2人って本当にいい奴だよな。……それにしても、この妙に柔らかいのは何だ?おれ、寝るとき枕とかしてたっけ?…………枕?

 

「………宮本、お前俺になにしてるんだ?」

 

「何って、膝枕だけど」

 

「当たり前に答えてるんじゃねえよ!なんでこんなことしてるんだ!」

 

「だって、部屋に入ったらクロ君が死体のような感じで座って寝てたから。しかも、濡れた服から着替えてないし。とりあえず、このままじゃ風邪引きそうだったから掛け布団かけて、枕はみつからなかったから、私が代わりに」

 

そうだったのか。でも、俺って寝るとき枕使わないんだよな。

 

「それは悪かったな。重たかっただろ?」

 

「重たくないって言ったら嘘になるけど、クロ君のためだと思ったらそんなにだったわよ」

 

「そ、そうか………何か照れるな」

 

俺は起き上がって、宮本の隣に座った。

 

「で、鶫さんと何があったの?あの時のクロ君は怖い顔してたわよ」

 

「………………」

 

「あ、ごめん。おもいださせちゃったかしら?無理に話さなくてもいいわよ」

 

「いや、いい。話すよ。実は俺の親父の話なんだけど…………」

 

そう言うと、宮本の顔は一気に暗くなった。だが、それに構わず俺は話を続ける。

 

「親父が殺したのが、鶫をよくしたってくれた人なんだってよ」

 

「えっ?」

 

「驚いたよ。そして、何より悲しかった。これから同じクラスで顔を合わせるのにそいつとは絶対仲良くなれないと思うと涙が出そうになった。ったく、どっちがクソ野郎なんだよ、あの親父は」

 

「……………」

 

「まぁ、仕方ねえよな。親父の事件以来、普通の生活を出来ないって事くらいわかってた。むしろ、宮本達と一緒にいれるのが不思議がぐらいなんだよ」

 

「クロ君………」

 

「心配すんな。俺はもう大丈『ちょっと怒っていいかしら?』うぇ」

 

大丈夫と言おうとしたのに宮本に両頬を摘ままれたせいで変な風になってしまった。

 

「私と小咲が一緒にいるのが不思議?何バカな事言ってるのよ。その変なこというのはこの口か!」

 

「いふぁいいふぁいいふぁい!なにすんらよ!」

 

両頬を思いっきり引っ張られてるため、言葉が変になる。

 

「うるさい!このまま話聞きなさい」

 

「ふぁ、ふぁい」

 

「私と小咲はあなたの事が本当にいい人だと思ってるから一緒にいるの。親がどうとかそんなの関係ないわ!!大体、私達からしたらクロ君を責める奴の方がどうかしてると思うわよ!」

 

「…………みやほぉと?」

 

宮本は摘まんでいた手を離して、俯いた。

 

「……それに言ったでしょ。『周りの事なんか気にしなくてもいい。そんなに不安なら私があなたの友達になって、あなたのそばにいてあげるわよ』って。私はここまでクロ君が大事だと思ったのに、クロ君は私が一緒にいる事が不思議だと思ってたの!!」

 

「いや、そんな事は…………」

 

「じゃあさっきのは何なのよ!!私の気持ちはそんなに甘くないの!言い直してくれないと本気で怒るわよ!」

 

………そうか。親父がどうとか、他のみんながどうとか気にしなくていいのか。俺にはこんなに大切に思ってくれる友達がいるんだから。

 

「悪い、宮本。俺間違ってたわ。宮本が一緒にいるのが不思議じゃなくて、宮本が一緒にいてくれるのが当たり前だと思わねえといけないんだな。ホントごめん!」

 

「本当よ。私がっかりしたわよ。クロ君にそんな風に見られてたと思うと」

 

「いや、本当にごめん!もう二度とこんな事言わないから!」

 

「………わかればいいのよ」(今思い返したら、私、友達になんて恥ずかしい事いってるんだろ………)

 

「どうかしたのか?」

 

「べ、別に。何でもないわよ」

 

「でも、お前顔赤いぞ」

 

「赤くない!!大丈夫だから、ほっといて!………って、クロ君こそ顔赤いけど大丈夫?」

 

「ん?宮本に頬引っ張られたからだろ。何の問題もねぇよ」

 

「……そ、そうだったわね」

 

思い返して罪悪感を覚えたのかどうかわからないけど、宮本はまた俯いた。

 

「はぁ、言うだけ言ったらスッキリしたよ。悩みも言いたいことを言ったしな。ありがとな」

 

「どういたしまして。……にしても、小咲は何してるのかしら」

 

………………そういえば、学校早退したのキョーコ先生に何も言ってないけど大丈夫かな。不安だよ。

 

「こんにちは〜。クロ君、来たよ」

 

「おー、小野寺。お前もありがとな。俺のためにわざわざ」

 

しばらくすると、手にビニール袋を持って私服姿の小野寺が部屋に入って来た。

 

「ううん、別にいいよ。それに落ち込んでたクロ君を元気づける方が私にとったら大事はことだし」

 

「ね、だから言ったでしょ。小咲も私と同じなの」

 

宮本の言った通りだな。この2人には本当に迷惑かけた気がする。これからはこんな事ないようにしねぇとな。

 

「あぁ、そうだな。悪かった、小野寺」

 

「えっ?何で謝ったの?というか、クロ君元気になった?」

 

「おぅ!おかげさまでな」

 

「よかった〜。あ、家からお菓子持って来たんだけど食べる?」

 

ビニール袋から和菓子やらその他色々でてくる。

 

「お、いいね。お茶持って来るからちょっと待っててくれ」

 

そう言って俺は部屋を出た。そして、ドアを閉めてドア越しに言った。

 

「宮本……本当にありがとよ。…………好きだよ」

 

今はまだこの気持ちが伝わらなくてもいい。もう少し大人になってから伝えるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クロの気持ちはいつ伝わるんでしょうね。
感想と訂正があればお待ちしております。


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第12話 リンカン学校

「ねぇ、クロ君、るりちゃん!今日は林間学校だよ!」

 

「うん、知ってる」

 

「楽しみだよね〜」

 

やたらとテンションの高い小野寺といつも通りのるりと一緒に学校へ向かっていた。そう、今日は凡高の林間学校の日である。カレー作りや肝試しなどイベント盛りだくさんの学校行事だ。

 

「目的地にはバスで向かうみたいだな………そういえば、バスの座席はどうなんだ?俺知らねえぞ」

 

「あ、そういえばそうね。多分この前早退した時に決めたんじゃないかしら?」

 

ああ、あの時に。……だとしたら俺達の座席は一体誰が……

 

「まぁ、バスに乗る時に確認したらいっか」

 

 

 

 

 

 

バスの中。俺達のクラスはみんな荒れていた。中でも一番後ろの座席。右から鶫、桐崎さん、楽、小野寺、宮本と何とも楽にとってはハーレム展開のご様子だ。ちなみに俺は集と城野崎と一緒にワイワイ騒いでる。

 

「なるほどな、あれは集が手を回していたのか。いつもながら流石だな」

 

「だろ〜。あの席半端ないくらいに面白いぜ。見ろよ、楽の顔」

 

俺達が楽の表情を見ると何とも顔が真っ赤になっていた。

 

「でも、何であそこに宮本を置いたんだ?」

 

「何だ、クロ。愛しのるりちゃんは俺の隣がいいってか?」

 

「ばっ!何言ってんだよ。はっ倒すぞ、城野崎」

 

俺は顔を赤くしながら隣にいる城野崎をしばこうとする。ちなみに、城野崎も楽の小野寺の関係を知っている。

 

「冗談だよ。いや、あそこに宮本を座らせたら、小野寺に何かしそうだったから」

 

なるほど。小野寺のために宮本が……確かにそれは十分にあり得る。てか、絶対しそうだ。

 

「まぁ、俺達三人はあいつらの様子でもみときながらお菓子でも食って遊ぼうぜ」

 

「そうだな〜。ところで、クロ。この写真500円でどうだ?」

 

「うぉ!!何だこの写真!買うぜ」

 

「毎度〜」

 

はっ!しまった、また小野寺と宮本の写真に……まぁ、いいか。

 

「…………でも、どうせなら宮本の隣に座りたかったな」

 

「ん?何か言ったかクロ」

 

「いや、何でもねぇ。今から何する?」

 

「そうだな……まぁ、無難にウノでもしようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間くらいすると、やっと目的地に到着した。

 

「ふぅ、やっとついたぜ。バス疲れたな〜」

 

「それは俺のセリフだっつーの。バスでこんなに疲れたのは初めてだ」

 

俺がバスを降りて伸びをしていると、後ろからバスに乗ってただけなのにどっと疲れた顔をした楽が降りてきた。

 

「おぉ、お疲れ。どうだ?楽しかっただろ」

 

「んなわけあるか!!鶫は理不尽なほど俺に切れて来るし、宮本はカーブになったらこっち側に倒れて来るし、横が小野寺で緊張するし!」

 

「ドンマイ。てか、最後のは別にいらないだろ」

 

少しキレ気味に俺に訴えて来る。まぁ、俺も宮本の隣なら緊張しただろうけどな。

 

「まぁ、いいじゃねぇか。それより、俺達って誰と一緒なんだ?」

 

「えっと…俺と集とクロ。あと、宮本と小野寺と桐崎との6人班だな」

 

楽がしおりを見ながら言う。城野崎が一緒じゃないのは残念だけど。

 

「結局、いつも仲良しメンバーか。まぁ、それの方が話しやすいし別にいいけど。てか、鶫はどした?」

 

あいつも一緒だと思ったのに……

 

「よーし、じゃあ今からこの前決めた班でカレー作ってもらうからな。

怪我とか火傷しないように気をつけて作れよ」

 

『はーい!!』

 

俺はその時楽が「何、カレーだと!?」と言ったのは見逃さなかった。

 

「クロと宮本と小野寺は薪をとって来てくれ。桐崎は俺が指示するから大人しくしてろよ」

 

楽も苦労してるな。俺が鶫と決闘したあと楽は鶫と色々あったらしい。

楽も鶫と決闘したり、鶫と買い物に行ったり。それから鶫の様子はおかしくなったが。あと、桐崎さんは小野寺レベルで料理ができないらしい。楽が風邪をひいて、お粥を作ってもらった時にえらいことになったって聞いた。

 

「何してるのクロ君。早く薪を取りにいきましょうよ」

 

「あっ、悪いな。すぐ行くよ」

 

宮本に呼ばれて俺はすぐに小野寺と宮本の方に向かった。

 

「るりちゃん。薪ってこんな感じやつがいいのかな?」

 

「えぇ、それでいいと思うわよ」

 

小野寺は薪を集めていく。すると、宮本は俺の方に来た。

 

「クロ君。林間学校の肝試しって知ってるかしら?」

 

「ん?知ってるよ。夜にやる恒例行事みたいなやつだろ」

 

小野寺に聞こえないくらいの音量で話しかけてくるので俺もそれに合わせる。

 

「それでね、あの肝試しって男女ペアていくのよ。だから……」

 

「小野寺と楽を一緒にしてやりたいと」

 

宮本は無言でコクリと頷く。

 

「でも、どうするんだよ。確かあれってくじ引きなんだろ?」

 

「私がもし一条君と一緒になれる番号をひいたら私はそれを小咲と交換する。だから、クロ君は小咲と一緒になれる番号をひいたら一条君と交換して欲しいの」

 

「なるほどね。まぁ、ほんの少し確率が上がるだけだけど。やらないよりはマシだな」

 

「えぇ、だからそれをお願いしてもいいかしら?」

 

俺はそれを了承した。どうでもいいけど宮本は女子の中では身長は低い方だ。俺は170はあるから宮本と静かな声で話し合う時は正直俺が大変だ。腰を曲げないと聞こえない。

 

「…………フン!」

 

「ぐはっ!いきなり何すんだよ!」

 

「何か今すごく失礼な事を言われた気がするわ。背が小さいとか」

 

…………こいつ何か能力もってるんじゃねぇのか。

 

「……まぁ、いいけど。小咲、充分集まったと思うからそろそろ戻りましょう」

 

「あ、うん。わかったよ!」

 

俺達は薪を集めてキャンプ場に戻った。その後、桐崎さんが色々やらかしていたけれどカレーを作っておいしくいただいた。…………宮本は誰と一緒に肝試しを回りたいんだろうか。

 

 

 

 

 

 

カレーを作った後、俺達は宿舎の部屋に来た。

 

「うわぁ、部屋広いな……」

 

集が一番最初に入ってそう言う。ちなみに部屋はカレーを作った班に鶫が入った7人だった。

 

「言っとくけどこっち側私たちだけど覗いたら殺すだけじゃすまないわよ」

 

るりは集にそう忠告した。やっぱり、集の事は嫌いなのか?

 

「さてと、まだ風呂には時間あるみたいだしー。みんなでトランプでもしない?何かしらの罰ゲームありで」

 

「罰ゲームってどんな?服脱げとかだったらはっ倒すぞ」

 

「そんなんじゃない。ただ、自分のスリーサイ……嘘です、すいません」

 

スリーサイズと言うとしたが、宮本に肩を掴まれ素直に謝った。

 

「じゃあ、今日下着の色を」

 

宮本が集を殴る。

 

「じゃ、じゃあ自分のセクシャルポイントを」

 

宮本が集を殴る。

 

「ま、まず身体を洗うならどこから」

 

宮本が集を殴る。こいつどこまで正直なんだ。宮本があんな暴力ふるってんの初めてみたぞ。てか、俺あいつ尊敬するわ。別の意味で。

 

「じゃ、じゃあ初恋のエピソードを語るって事で」

 

「まぁ、そのくらいなら…………」

 

「「「「「えっ!?」」」」」

 

ちょっと待て。初恋のエピソード?俺の初恋って宮本だぜ。……状況整理だ。初恋のエピソードを負けた奴が語る。負けたら宮本の事を話す。場が気まずくなる。下手したら宮本に嫌われる。それだけはさせないと。このゲーム……負けられない!

 

みんなで円になって座る。俺から右に鶫、小野寺、楽、桐崎さん、宮本、集となったが。

 

「ちょっと待て!何故私が神崎クロの横なのだ!」

 

「は?いや、仕方ねえだろ。そうなったんだから」

 

「嫌だ!私はこんな奴の横なんて拒否します!」

 

やっぱり俺こいつに嫌われてるんだな。まぁ、仕方ねえか。

 

「仕方ないわね。鶫さん、私と交代しましょう。それなら問題ないでしょ?」

 

「宮本様……ありがとうございます」

 

鶫が宮本と交代したため俺の横に宮本が来ることに。……なんかちょっとハッピーだ。

 

「じゃあはじめるぞー。ゲームはババ抜きなー」

 

集からはじまったババ抜き。俺が集のカードを引き、宮本が俺のカードを引く。…………あ、それジョーカーだぞ。

 

無言でカードを見て小野寺にカードを引かせる。小野寺がカードを見た瞬間、一瞬で驚愕した顔になった。

絶対小野寺ジョーカー引いたな。

 

「は、はい一条君」

 

小野寺、すげえ顔が強張ってるよ。楽がどのカードを取ろうか迷っている。そのうちの一つを取った瞬間、顔がきらめいた。それを見た楽は他のカードを取ろうとすると落ち込む。そして、元のカードを選ぶとまた顔がきらめいた。わかりやすいな!

 

楽もわかっているはずなのに、何故か顔がきらめいた方のカードを取った。

 

次は桐崎さん。やけに真剣な顔をしてカードを選んでいる。カードを取ると、さっきの小野寺と同じように顔が驚愕した。もう、こいつらとババ抜きしたら勝てる気しかしないぜ。

 

「おい、桐崎。これババ抜きなんだからポーカーフェイスしろよ。今のじゃ丸わかりだぞ」

 

「えっ、そ、そうね。ポーカーフェイスね」

 

そう言って桐崎さんはポーカーフェイスをするが、これはポーカーフェイスというよりただ不思議な顔だった。一つ言えるのはこれはポーカーフェイスとは言えない。桐崎さんを見て小野寺と鶫もポーカーフェイスをするが、小野寺は可愛い顔がさらに可愛くなった。一生懸命やろうとしてるのが伝わる顔だった。鶫はよくわからない。みんなポーカーフェイス頑張れよ。宮本を見習え。ポーカーフェイスの達人だぞ。

 

「クロ君、また失礼な事考えたわね」

 

「滅相もございません」

 

本当に超能力でもあるのかよ。何でこんなに宮本に考えが読まれるんだ?

 

そのままトランプは続き最終的に残ったのは小野寺のジョーカーを全部わざと取った楽と、その楽のジョーカーを素で全部取った桐崎さんだった。この二人仲良いな。

 

楽は桐崎さんのジョーカーじゃない方を取ろうとしたが、何を考えたのか楽はジョーカーを取った。そして、桐崎が2枚のうちの1枚を取った瞬間……

 

「こらー!!いつまで遊んでる!もうとっくに集合時間は過ぎてるだぞーー!!」

 

キョーコ先生がドアをバン、と開けて入ってきた。やば、もうそんな時間だったのか。

 

「…………よかったな」

 

楽はカードを床に落としながら部屋を出た。床に落ちたカードはジョーカーじゃない。つまり、桐崎さんはあの時ジョーカーを引いた。あのまま続けてたら楽が買っていただろう。ある意味おめでとう、桐崎さん。

 

そう思いながら俺は部屋を出て集合場所に向かった。




この話書くのに物凄い時間かかったぞ。
何故だ?
この後はお風呂ですが、書くかどうか考え中です。
あと、早く万里花を出したい。
るりちゃんも大好きですが、万里花も好きな
ブリザードです。


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第13話 罠だったオンセン

更新遅れてすいませんでした。



「楽ー、風呂に行こうぜ」

 

「おぅ、少し待ってくれ。何か俺フロントから電話で呼ばれてよ」

 

「わかった。じゃあ、ここで待っとくよ」

 

楽はフロントの方へ小走りで向かった。でも、楽に電話って何だろうな。そんなに急ぎで言うことって……まさか、楽の親父に何か!!

 

「クロー、今戻った。悪いなまたせちまって」

 

「いや、いいけど……お前親父に何かあったのか?」

 

「は?」

 

「もしそうなら急いで帰って親父の様子を見にいってやれよ!じゃないと親父さんが……」

 

「いや、さっきからなにいってんだ?フロントに行ったけど誰からも電話かかってなかったんだよ」

 

「…………つまり、ただのいたずらか?」

 

「まぁ、多分そうだろうな」

 

何だよ、てっきり親父さんが病気になったのかと思ったぜ。

 

「じゃあ、いいや。さっさと風呂に行って女子風呂でも覗こうぜ」

 

「…………1人でやれよ」

 

俺と楽は男と書いてあるのれんの方に入った。これが罠だと言うことに気がつかずに…………

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、いい湯だな。なぁ、楽」

 

「そうだな………こんな時に小野寺と一緒にいた…………!!?」

 

「あぁ、俺もこんな時に宮本がいたらどんなに幸せ『しっ!!静かにしろ!』なんだよ?」

 

楽が俺の口を無理矢理防いで入口の方を指差す。すると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー、凄い!!いい景色だね」

 

身体にバスタオルを巻いた桐崎さんや小野寺や宮本がいた。

 

「「な、な、何故だー!!!」」

 

それほど、大きくない声で俺たちは叫んだ。

 

「おい、どういうことだよ、何で桐崎さん達が!」

 

「知るかよ、大体俺たちは男子ののれんの方に………………あいつか!」

 

「あいつって誰だよ!とにかく、女子が全然いないうちにここから逃げ出さないと…………」

 

俺達は周りを見渡す。すると、温泉に入ってきたある人物と目があってしまった……

 

「クロ……君?」

 

…………はい、詰んだー。俺の学園生活おわったよ。…………いや、諦めるな!宮本なら俺を助けてくれるはずだ!

 

「先生を呼んでくるわ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

「いやよ。変態、すけべ、ゲス男」

 

「そこまで言うのかよ!」

 

いや、今はそんな場合じゃない。

 

「聞いてくれ宮本。事情は後ですべて全部話すし、お前の言うことを何でも聞く。だから、今俺を逃がすのを手伝ってくれ!」

 

「…………何でも?」

 

「あぁ、何でもだ!!だから、頼む!この通りだ!」

 

「…………わかったわ。とりあえず私の後ろに隠れて。あと、私の裸を見たことは一生許さないわよ。てか、私だけじゃなく小咲まで見てるはずよね。もう絶対許さないわ」

 

「すまん、恩に着る」

 

今は許されなくてもいい。これは俺達が悪いんだから……

 

宮本の後ろに隠れてもう一度周りを見渡す。やばい、女子達が増えてきた。てか、タオルくらい巻いてくれよ。

 

「……ゲス男、何か逃げる方法はみつかった?」

 

「いやダメだ。全然見つからないって、ゲス男はひでえよ!」

 

てか、楽はどうなったんだ!?いや、今はあいつに構ってる暇はない。普通に出ることが無理なら、水中はどうだ?

 

俺は潜って辺りを見渡す。…………やべ、女子の足とかがめっちゃ見える。…………ん?あんなところに穴が……まさかあそこに行けば男子の方に繋がってるかも……

 

「ぷはっ。宮本、なんとかなるかもしれねぇ。そのために俺を隠しながら移動することって出来ないか?」

 

「…………出来ないことはないわ」

 

「じゃあ、頼む」

 

俺は宮本の動き合わせて穴の方へ向かう。

 

「ねぇ、宮本さん。私ずっと聞きたいことがあったんだけどね」

 

クラスの女子の一人が近づいて来て宮本に言う。

 

「神崎君と宮本さんって付き合ってるの?」

 

「えっ!?」

 

宮本が驚いて動きを止めた。

 

「私ずっと思ってたの。宮本さんと神崎君の関係はただの友達同士の部活仲間には見えないなぁって」

 

「あ、それは私も思ってた」

 

「あたしもあたしも」

 

やばい、どんどん宮本の方に女子が寄ってくる。このままじゃ………

 

「私とクロ君はただの部活仲間で私の親友。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

親友…………嬉しいな。

 

「えぇ、つまんない」

 

「面白い話を期待するなら私より小咲の方がいいと思うわよ。ねぇ、小咲」

 

「ふぇ!?そんなのいきなり降らないでよ」

 

「で、どうなの、小野寺さん?」

 

宮本の方に寄っていた女子達は標的を変えて小野寺にロックオンした。

 

「ほら、今のうちに」

 

「あ、あぁ、サンキューな!」

 

俺は無事に男子の方へと通じる穴に入って男子の温泉の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「ぶはっ!!」

 

「うぉ、クロ!?一体どっから出て来てんだよ!」

 

「いや、ちょっと潜りたかった気分なんだ」

 

ふー、何とか助かった。後でちゃんとお礼言わないとな。

 

「ぶはっ!」

 

「うぉ!!今度は楽かよ!」

 

おぉ、楽もなんとか無事だったか。

 

「…………とりあえず、どういくことか説明してもらうぞ。お前なんか知ってるだろ」

 

「…………わかった。お前には全部話すよ。こっち来てくれ。これあんまり話さない方がいいんだよ」

 

身体や頭を洗いながら楽の話をすべて聞いた。楽と桐崎さんの家の関係。楽と桐崎さんは付き合ってなくて嘘の恋人同士をしてること。それを疑ってるクロードって奴が楽を目の敵にしていて、今日のこれもクロードのせいだと言うこと。なんのために鶫がこっちに来たのかと言うこともすべて。

 

「なるほどな。よーく、わかった。だが、一つ。何で集に話して俺に話してくれなかった?」

 

「いや、集は余計なこといいそうだから最初に説明しとかないとめんどくさくなると思ったからだよ」

 

つまり、俺はなにも言わないから説明しなかった、と。

 

「…………はぁ、まあいいけどよ。この後さ、宮本に今日の事を話さないといけないんだ。すべて、話していいか?」

 

「宮本に!?…………やめて欲しいんだけど」

 

「おまえのせいでこうなったんだぞ!俺にも話す権利はあるはずだ!」

 

「むぅ………わかった!ただし、宮本だけだからな!」

 

「あぁ、サンキュー」

 

俺達は温泉から上がって部屋でゆっくりしていた。

 

「クロ君、ちょっと来て」

 

宮本が温泉から戻って来ると同時に俺を呼び出した。やばいよ、怖いよ宮本さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出て俺は宮本に楽に教えてもらったことすべてを話した。その間宮本はずっと腕を組んで俺の話をきいている。

 

「って事だ。本当にすまん!俺だってこんなことするつもりなんかまったくなかったんだ!」

 

「そんなことわかってるわよ。てか、もしわざとだったら蹴り飛ばしてるわよ」

 

「はい、すいません」

 

「…………まぁ、今の話を聞く限りクロ君があまり悪くない事は認める。けど、私や小咲の裸を見たのは確かなんだから責任とってもらうわよ」

 

「あぁ、わかってる」

 

「じゃあ何でも言うこと聞くって言ったの聞いてもらうわよ」

 

うっ、一体どんなお願いをされるのだろう…………何か怖くて仕方ない。

 

「じゃあ、まず一つ。私の事を名前で呼んでくれない?」

 

「……えっ、そんな事でいいのか?もっと怖いお願いをされるのかと」

 

「私を何だと思ってるのよ。何か2年間一緒にいるのに私は名前で呼んでるのに、クロ君は呼んでくれないのは何か嫌なの」

 

いや、名前で呼んでくれって頼んだのは俺なんだけどな。

 

「はい、じゃあ早速呼んで頂戴」

 

「わかったよ」

 

………………

 

なんか2人きりだし、めっちゃ緊張する。

 

「どうしたの?」

 

「いやなんでもない。じゃあ言うぞ」

 

「えぇ」

 

「…………る……り」

 

「何でそんなギクシャクしてるのよ。はい、もう一回!」

 

くそー、なんで名前を呼ぶのがこんなに緊張するんだよ。

 

「…………るり」

 

「はい、合格。とりあえず今日はこれでいいわ」

 

「えっ、今日はってまだあるのかよ!」

 

「えぇ、だって回数何回とか言ってないもの」

 

そんなのいったら俺が生きてる限りずっとじゃねえのか?

 

「まぁ、いいよ。今日はありがとな」

 

「えぇ、じゃあおやすみ」

 

るりは俺に手を振って先に部屋に行こうとする。

 

「あ、そうだ。るり」

 

「ん?」

 

仕返しになるような気がするけど俺は満面の笑みで言った。

 

「…………やっぱり、るりはメガネ外したら可愛いな」

 

「つっ!!」

 

「じゃあな、おやすみ」

 

そう言って俺は部屋に戻った。

 

 




感想と訂正があればお待ちしております


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第14話 運命のクジビキ

あぁ、るりちゃんと万里花もいいけど
春ちゃんと風ちゃんもいい。

最近そう思うブリザードです。

お気に入り600突破ありがとうございます!
これからもがんばって行きます!


楽の知り合い?のせいで女子風呂に入って酷い目にあった次の日、林間学校二日目。

 

「なぁ、二人とも。今日山から帰ってきたら、毎年恒例の肝試しをやるんだったよな?」

 

「そうよ。だから、小咲。あんたは何としてでも一条君のペアになりなさい」

 

「ブフォ!」

 

俺とみやも………るりと小野寺で朝食を食べていた。その時にるりが肝試しの話をすると、小野寺が飲んでいたお茶を吹き出した。

 

「でもあれってくじで決まるじゃ」

 

「根性で何とかしろ!!」

 

「そんな無茶苦茶な事言ってやるなよ、るり」

 

「クロ君は黙ってなさい!」

 

いや、でもそんな無茶苦茶な事うまくいくのかよ………多分無理だと思うぞ。

 

「もし、私が一条君と同じ番号だったら交換してあげるし、クロ君があんたと同じになったら一条君と交換してもらうように手は打ってあるから。これで少しは確率が上がるでしょ」

 

「るりちゃん………」

 

「ペアになれたら暗がりで押し倒しちゃえ」

 

「変なこと言わないでよ!!」

 

るりの言葉に一瞬感動した小野寺だったけど、余計な事を言ったせいで小野寺はるりに怒る。

 

「……………じゃあ、もし私がクロ君と同じ番号だったらそれをるりちゃんに交換するね」

 

「なんで私がクロ君とペアにならないといけないのよ!!」

 

「痛いよ、るりちゃん…………」

 

仕返しのつもりかどうかはわからないけど小野寺がるりをからかうと、るりは小野寺の頬を引っ張る。

 

「…………俺はるりとペアになりたいけどな」

 

「はぁ?」

 

「だって、俺小野寺とるり以外に仲良い女子いないもん。で、楽が小野寺なら俺はるりしかいないじゃん」

 

本音を言うと、俺はるりの事が好きだからなんだけど……まぁ、これはまだ言わない。

 

「あ、そ、そういうことね……まぁそうよね………」

 

「ん?どうした。あからさまに落ち込んだような顔をして」

 

「な、なんでもない!とにかく、余計な気遣いは無用だからね、小咲」

 

そう言ってるりは朝食が乗っていたトレイを返却口に持って行った。

 

「…………何だ?」

 

「……ねぇ、クロ君。さっき思ったんだけどるりちゃんの事下の名前で呼んでなかった?」

 

「ん?あぁ、ちょっと色々あって昨日からそう呼ぶことにしたんだ。何か変だったか?」

 

「ううん、全然変じゃなかったよ」

 

「そうか?なら、いいんだけど」

 

……てか、よく考えたら昨日あの中に小野寺もいたんだよな。意識したら何か緊張して昨日の事がフラッシュバックしてくる……ダメだ!何も考えるな。

 

(るりちゃん、いいな。したの名前で呼んでもらって……私も頼んでみようかな)

 

「……あのクロ君『わりぃ、そういや俺、集に呼ばれてたんだった。悪いけどもういくな』えっ……あ、そうなんだ」

 

「ほんとわりぃな!また後で」

 

俺は小野寺と別れ集の方へ向かった。てか、さっき小野寺何か言おうとしてなかったか?

 

「…………言えなかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

山登りも終わったという事で夜。とうとう今日のメインイベントが始まろうとしている。

 

「とうとう来たぜ。この時が!!」

 

そう言って意気込むのは城野崎。今は女子がくじを引いてる。その時、俺と楽と集と城野崎は一緒にいた。

 

「なぁ、集。お前は誰と一緒になりたい?」

 

城野崎は耳打ちで集に聞いていた。

 

「ん?そんなのクラスの女子なら誰でもいいに決まってるだろ?何を当たり前な事をいってるんだ、城野崎君は」

 

「さ、流石は舞子隊長だな……楽とクロは小野寺と宮本だよな?」

 

「ま、まぁな」

 

「ちょ、別に俺は小野寺と………」

 

「心配すんな。俺が小野寺か宮本と同じ番号ひいたらお前に譲ってやるから」

 

「「城野崎…………」」

 

くっ、これが熱い友情ってやつなのか。俺はお前に感動したぜ、城野崎」

 

『次、男子の人ひいてくださいー』

 

「じゃ、じゃあいってくるな」

 

楽がくじをひきに向かった。楽はくじびきの箱の前で止まる。その時……

 

『小咲は12番なんだ。小咲はー12番ー』

 

宮本が遠くの方で小野寺の番号を叫んでいた。小野寺は12番。……宮本は?

 

「なぁ、クロ。楽の奴見てみろよ」

 

集に促され楽の方を見ると引いた番号を見て驚愕していた。あれは12番をひいたな。小野寺もるりの肩ブンブン振って喜んでるし。楽がにやけた顔をしながらこっちに来る。

 

「楽、よかったな。早くペアのところに行ってやれよ」

 

「あぁ、サンキューな」

 

楽は小野寺の方へ向かった。………あ、次俺だ。

 

「じゃあ、行って来るな」

 

「おぅ、頑張れよー」

 

俺はくじの箱の目の前で止まる。俺がくじを引こうとしたその時

 

『あ、そうなんだ!!るりちゃんの番号って14番だったんだね。ふーん』

 

さっきの仕返しなのか今度は小野寺がるりの番号を叫んでいた。番号を言われた本人は今まで見たことないほどに驚いている。

 

「………まぁ、番号知ったからってその番号を引けるほど俺の運はよくない」

 

番号 14番

 

…………母さん、俺神様に見放されてなかったみたい。

 

 

 

 

 

 

 

「どういうつもりよ、小咲!なんで私の番号叫んだのよ!」

 

「るりちゃんだって、私の番号叫んだでしょ!あれ結構恥ずかしかったんだから!」

 

「私も恥ずかしかったわよ!」

 

うわっ、二人がケンカしてるの見るのって結構レアだな……そろそろ止めに入らないとまずいか。

 

「はいはい、ストップ。いい加減にやめような」

 

二人の間に入って喧嘩を止める。

 

「まぁ……サンキューな。お前が番号叫んでくれなかったらるりと同じ番号引けなかったかもしれないし」

 

「ううん、別にいいよ。ねぇ、るりちゃん」

 

「…………まぁ、クラスで全然喋らない人となるよりは100倍ましだけど」

 

るりは少し顔を赤くして顔をそらしながら俺と話す。あれ、俺なんかるりにしたっけ?

 

『12番の人達二人は準備してくださーい』

 

「ほら、小野寺の番だぞ」

 

「あ、ほんとうだ。じゃあいって来るね」

 

小野寺は楽の方へ走って行った。

 

「…………そういえば、この肝試しって手繋いで行動するのよね?」

 

「ん?あぁ、まぁな。でも、大丈夫だろ。もっと恥ずかしい事とかるりはしてるんだから」

 

「もっと恥ずかしい事?」

 

心当たりがないのか頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。

 

「あぁ、例えば……膝枕とかさ」

 

「つっ!!///」

 

一瞬で思い出したのか俺が言った瞬間顔を真っ赤にさせた。おい、そんなに睨むなよ。可愛い顔が台無しだぞ。…………ってあれ!?

 

「何だ、楽が小野寺を捨ててどっか走りに行ったぞ!」

 

「どういうことかしら?」

 

あ、小野寺がこっちに来た。

 

「小咲、一体どうしたの?」

 

「何か、千棘ちゃんがお化け役になったんだけど、どっかで迷子になっちゃったみたいで。……まぁ、一条君がいるから大丈夫だと思うんだけど」

 

『次ー、14番の人達来てください』

 

でも、代わりに小野寺は肝試しにいけない…………か。それなら。

 

「なぁ、るり。許してくれるよな。俺とるりと小野寺の三人で肝試しまわること」

 

「……まっ、仕方ないわね」

 

「よし!そうと決まれば………」

 

俺達を呼んだ女の子に事情を話して特別だが3人でまわることを許可してもらえた。

 

「と、いうことだ。行くぞ、小野寺」

 

俺は小野寺とるりの手を引いて肝試しへ出発しようとする。

 

「えっ!?でも、いいの?せっかく二人っきりになれるんだよ?それに千棘ちゃんが……」

 

「私は別にクロ君と二人っきりでいることを望んでないわよ。千棘ちゃんは一条君に任せたらいい。それに、あんたはクロ君に言いたいことがあるんでしょ?」

 

「うっ、でも!!」

 

「あー、もうじれったい!あんたは私たちとまわりたいの?まわりたくないの!?」

 

「………ま、まわりたいです」

 

「なら別にいいじゃない。ほら、さっさと行くわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

肝試しを三人でまわることになったけどね今俺凄い状態だな。右に小野寺。左にるり。これがまさに両手に花って奴か。

 

「にしても、結構みんなクオリティ高いな。いったんもめんやら傘おばけやら。二人とも大丈夫か?」

 

「私は全然平気よ」

 

「あ、あの時の映画に比べたら全然大丈夫……」

 

あの映画のことをまだひきづってたのか!!そろそろ吹っ切れよ!

 

「…………で、小咲。何か言いたい事があるんでしょ?」

 

「それってここで言わないとダメ?」

 

「ダメ」

 

「即答かよ……」

 

小野寺と握ってる方の手に少し力がはいった。

 

「あの!クロ君はるりちゃんにだけずるいと思うの!」

 

「…………はぁ?」

 

いきなり何を言い出すんだ、小野寺は。何か俺ひいきとかしたっけ?

 

「えっと、だからその…………」

 

小野寺が足を止めたので俺たちも歩いている足を止めた。そして、小野寺の方に向き合う。

 

「わ、私のことも……下の名前で読んで欲しいの!!」

 

「…………えっ?どうして?」

 

イマイチ理解ができなかった俺だった。

 

「どうしてって、私とるりちゃんは同じ時期にクロ君と友達になったんだよ。そりゃ、るりちゃんとは同じ部活だからいる時間はるりちゃんの方が長いけど………でも、るりちゃんだけ下の名前で呼ぶのは不公平だと思うの!」

 

えーっと、つまり。俺がるりの事だけ下の名前で呼ぶのを嫉妬したって事なのか?

 

「……わかった。確かにそれは一理あるよ」

 

「クロ君……」

 

「これからもよろしくな、小咲」

 

「…………うん!!」

 

小野寺は元気良く返事して俺に微笑んだ。……やべぇ、すげえ可愛い。

 

「……よかったわね、小咲」

 

「うん、ありがとうるりちゃん、クロ君も!」

 

一件落着、というわけで俺は二人の手を握ってまた肝試しの出口の方へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………こんなところでいちゃついてんじゃねえよ!!!)

 

偶然その近くを通りかかった一条楽と桐崎千棘。そして、脅かそうと思っていたお化けの考えがシンクロしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢ーーー!!心配しましたよ!」

 

「一条君、大丈夫だった?怪我とかしてない?」

 

「おぉ、小野寺。さっきは本当に悪かったな」

 

「ううん、別にいいよ。クロ君とるりちゃんと私の3人でまわったし、それに………」

 

(クロ君に下の名前で呼んでもらえるようにもなったから)

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、クロ君。一ついいかしら?」

 

「ん?どうした?」

 

肝試しから戻って来て少し疲れたので木を背もたれにして休んでいるとるりが俺の隣に座って来た。

 

「何で小咲はあんな簡単に下の名前で呼んだのに、私ではあんなに緊張してたの?」

 

「あぁ、それか?何でだろうな。俺にもわかんねぇ」

 

「はぁ?」

 

「けど、もしかしたら」

 

「もしかしたら?」

 

「………いや、なんでもない。いずれわかったら話すよ」

 

「……何それ」

 

俺の曖昧な言葉にるりは笑った。

 

本当はわかってる。小咲もるりも好きだけど、るりには友達以上の感情があったから。ただ、それだけだろうな。

 

「まぁ、なんだ。これからもよろしく頼むよ、るり」

 

「…………えぇ」

 

俺の気持ちは一体いつになったら伝えられるんだろうな。




感想と訂正があれはお待ちしております。
……もうすぐ、万里花が出せるぞー。


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第15話 友達のためのオイワイ

すいません。鶫のラブレター話を飛ばします。
いきなり、千棘の誕生日編に入ります。
一応、形だけ話に入れました。
後、この話から少しオリジナル設定です。



林間学校が終わり、しばらく日がたったある日……

 

「おーい、楽ー!」

 

楽は小野寺に話しかけようとしたが、桐崎さんによってそれが遮られた。

 

「この日誌ってどこに持っていくんだっけ?」

 

「あ?さっき先生が準備室って言ってたじゃねえか」

 

「あー、そっかそっか、ありがと」

 

桐崎さんは準備室の方へ向かって歩き出した。

 

「おい、千棘!理科室の方の準備室だぞ。また、音楽室の方と間違えるなよ」

 

楽が注意すると、桐崎さんは了解と言わんばかりに手を振って歩いていた。

 

「…………名前」

 

「ん?あぁ、そっか。いや、最近下の名前で呼び合う事になってよ。結構長く付き合ってるのに下の名前で呼んでないのはおかしいみたいな事を友達に言われたんだと」

 

「………ふーん」

 

下の名前で呼び合ってる事に疑問を感じた小咲は楽に聞いて事情を納得していた。

 

「でも、そういう小野寺と宮本だってクロに下の名前で呼んでもらってるよな?」

 

「それは二人に頼まれたんだよ。中2の頃から仲良くしてるんだから、そろそろ下の名前で呼んでくれてもって」

 

これは余談だが、下の名前で呼び出した事をクラスの女子にばれて『クロ君の本命はでらちゃん?それとも、宮本さん?どっちなの』って質問されて少し困った。まぁ、何とかなったんだけど。

 

「おい、一条楽。お嬢を見ていないか?」

 

教室のドアを開けて出て来たのは桐崎さんのボディガード、鶫だった。

 

「ん?ハニーならさっき理科準備室に行ったぞ」

 

「おぉ、それはちょうどよかった。ちょうど皆さんもお揃いのようですし」

 

「集がいないぞ?」

 

(あと、ついでに言うと城野崎も……いや、あいつは少し違うか)

 

「皆さんお揃いのようですし」

 

どうやら、鶫は集をいつも一緒にいるメンバーだと思っていないらしい。

 

「実は今日お嬢の誕生日なんです。それで、お嬢に楽しんで欲しいので私達はサプライズパーティーを計画しているのですが、ぜひ、皆さんもそのパーティーに招待したいのですが」

 

「へぇ、そうなんだー。私は行くよー」

 

「私も」

 

小咲とるりが承諾する。なるほど、桐崎さんの家でサプライズパーティー。つまり俺は……

 

「悪い、俺パス」

 

「えっ?何でだよ。お前も来ればいいじゃん。千棘もそっちの方が喜ぶぞ」

 

「こっちにも色々事情があるんだよ。とにかく、俺は遠慮しておくよ」

 

そう言って俺は教室の中に入って行った。入る時に一瞬後ろに向いた時の三人の女子の目がすごく痛かったが無視して扉を閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

放課後になると、俺はすぐに家に帰ろうとしたが、鶫に呼び止められた。

 

「神崎クロ………その、すまないな。本当は誘ってやりたいのだが」

 

「わかってるよ。どうせ、あのクロードって奴がいるからなんだろ?あいつのいる家に入ったら、俺、何されちまうかわからねぇよ」

 

そう言うと、鶫は下を向いて黙り込んだ。まぁ、これでよかったんだろ。こいつにとっても、俺にとっても……

 

「…………あと、もうひとつ。私はおまえの事を少し誤解していたようだ」

 

「誤解?」

 

いきなり改まって何のつもりなんだ?

 

「その、昼休みに決闘した時の事だ。あの時は復讐の事しか頭になかったが……今はお前を違う感情で見れるようになった。だから……あの時は悪かった」

 

鶫は俺に頭を下げて謝った。ちょっと待ってくれ。いきなり、そんな事されたらこっちが悪いみたいじゃねえかよ。

 

「いや、別に気にすんな。あん時のことならるりと小咲のおかげで助かったから」

 

「しかし!」

 

「その代わり、二度とあんな事しないでくれよ。あんな思いはもうしたくねえんだ」

 

もし、これでるりと小咲がいなかったらと思うと……

 

「………すまない、感謝する。では私はパーティーの準備があるから、これで」

 

鶫は俺と別れて廊下に出て行った。あの、鶫があんな簡単に謝るとはな………ラブレターもらってから何かあいつは変わった気がするぞ。

 

ため息をついて、俺は教室を出た。その後、キョーコ先生とすれ違ったり、集と城野崎にちゃかされたりしたが、特に何てこともなく校門についた。すると、校門前で一人の女子生徒に話しかけられた。

 

「クロ君、ちょっといいかしら?」

 

「……鶫の次はるりか。帰りながらでもいいか?」

 

るりはコクリと頷いて二人で並んで帰る。

 

「で、何の話だ?まぁ、だいたいわかってるけど」

 

「何で、千棘ちゃんのパーティー断ったの?」

 

やっぱりか。………そういえば、るりには一回あいつの事話してなかったっけ?……まぁ、いいか。

 

「鶫の親的存在の奴が俺の事をすげぇ憎んでるんだよ。俺の親父が鶫の仲間を殺したって話のやつで。ほら、俺と楽を女子風呂に入れさせたやつ」

 

「あぁ、その人が」

 

「そっ!だから、俺はあいつに出会わないようにするためにも桐崎さんのパーティーに参加するわけにはいかねぇの」

 

本当はすげぇ行きたいんだけどな……どれもこれもあのクロードって奴のせいだ。

 

「そう………それは残念ね。でも」

 

るりはいきなり俺の手を取って前を歩き出した。いきなり手を取られた俺は顔が赤くなる。

 

「おい!一体どうした!?どこ行くんだよ」

 

「デパートよ。パーティーに参加できなくてもプレゼントを買いに行くくらいはできるでしょう?買ったのを私が渡しといてあげるから」

 

「プ、プレゼント!?そんなの俺なに買ったらいいかわかんねえよ」

 

「そのために私がいるんでしょ。私も一緒についていくから、一緒に選びに行くわよ」

 

そう言って歩いていた足を速めて歩くるり。てか、いつまで手握ってんだよ。これじゃまるで、デートみたいじゃねえかよ………

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、ついたわ。時間もあまりないし、はやく選びに行きましょ」

 

「お、おぅ………」

 

デパートに入ってからでも、手を握ったままでいるるり。そろそろ、恥ずかしいから離して欲しいんだけど。

 

「うーん……千棘ちゃんって何が好きかクロ君知ってる?」

 

「さ、さぁ……でも、お菓子とかそういうのあげたらどうだ?女の子ってそういうのが好きなんじゃないのか?てか、そろそろ手離してくれない?」

 

「あら、ごめんなさい………それもそうね。じゃあ何か和菓子でも」

 

「なぁ、そういえば小咲の誕生日ももうすぐだったよな?ついでだし小咲のも買わないか?」

 

小咲の誕生日は6月15日。今日から一週間後くらいだ。

 

「……クロ君ナイスアイディア。まぁ、小咲には適当におかしなもんあげたらそれでいいわよね?」

 

適当におかしなもん。確か去年はゴキブリのティッシュケースだったか?それ見て確か気絶してたような……

 

「今年は何あげようかしら?」

 

「たまにはまともなもんあげてやれよ。……お、こんなのどうだ?クジラのストラップ」

 

「ダメだわ。面白みにかける」

 

もう何を言っても聞きなさそうなのでもうるりに任せることにした。

 

「あぁ、悩んでても仕方ないしな。俺、これにしようかな?」

 

選んだのはネコが三匹ついてるストラップと犬のぬいぐるみ。何でか?そんなの単なる思いつきだよ。

 

「ネコが桐崎さんで犬が小咲かな」

 

「………クロ君、何か面白くないわ」

 

「うるせぇ、ほっとけよ」

 

「さて、私は一体何を………あら、これは…………面白ものを見つけたわ」

 

うわ、るりの目つきが変わった。きっとまたとんでもないものを選んだんだな。小咲の誕生日まで見ないでおこう。

 

「これで小咲のは買えたわ。あとは千棘ちゃんのね。どんな和菓子がいいかしら?」

 

「うーん……饅頭とかでいいんじゃねえのか?」

 

饅頭といえば小咲の家の饅頭うまいよな……今度買いに行こうかな。

 

「でも、饅頭ってありきたりじゃないかしら?もっとマイナーなとこを責めたいわ」

 

「もうるりの勝手にしてくれ。どんだけ意外性を求めてるんだよ」

 

「冗談よ。じゃあ、はやく饅頭を買いに行きましょう」

 

「あぁ、そうだな。あ、先に桐崎さんの誕プレは渡しとくな。ちゃんと渡してくれよ」

 

「えぇ。でも、よく考えたら一日遅れでもいいから、自分で渡すのもありなんじゃないかしら?」

 

おいおい、それできるならわざわざ帰りに買いに来る意味あったのか?まぁ、そのおかげで小咲の誕プレも買えたんだけど。

 

「手渡しの方が喜ぶんじゃない?」

 

「うーん。どっちでもいいと思うんだけどな。まぁ、それでいいなら自分で渡すよ」

 

「そうしてちょうだいな。………あ、饅頭屋発見。ねぇ、どの饅頭がいいと思う?」

 

るりは店にあるガラスで守られた見本のやつを見つめる。

 

「これなんかどうだ?六個入りで結構お手軽な安さだぞ」

 

「私はこれなんかいいと思うんだけど。ちょっと高いけど十二個入りの高級そうなやつ」

 

二人で饅頭を見て決める。てか、十二個入りっていくら桐崎さんが大食いだからってそんなに食えるか?

 

「間をとって十個入りのこれは?見た目結構うまそうだぞ」

 

「………そうね。これにしましょう。すいません、これ一つ下さい」

 

…………よく考えたら、十個も十二個もそんなに変わらないんじゃ……まぁ、いいか。

 

「よし。これで誕生日プレゼントは買えたわ。後は、千棘ちゃんの家に行くだけね!」

 

「お疲れー。じゃあ、また明日だな」

 

「えぇ。…………クロ君、本当にいいの?」

 

「いいんだよ。もう、仕方のねえことなんだから。ほら、早く行かないと間に合わないぞ。家帰って着替えもしねえといけないんだろ?今からだと走らないとやばいから」

 

なかなか家に向かおうとしないるりを俺は早く行かせようとする。

 

「ごめんね、クロ君。じゃあ、また明日」

 

そう言って、宮本は走って行った。さて、俺も帰るかな。…………ん、電話?

 

「もしもし?あぁ、ばあちゃん。どうしたの?」

 

『もしもし、クロちゃん?今あなたにお客さんが来てるの。悪いけど、早く帰って来てくれないかしら?』

 

「俺に客!?一体誰だろ。わかったすぐ帰るよ」

 

俺は電話を切ると走って俺の家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー、ばあちゃん。今帰ったよ!」

 

「あ、クロちゃん。おかえりなさい。悪いとは思ってんだけど、あなたの部屋で待たせているから。早く行ってあげて」

 

「わかった。ありがとう」

 

おれは靴を脱いですぐに二階へ上がった。そして、一応ノックをして部屋に入る。

 

「お待たせしました。神崎クロですけど………」

 

「クロ様……クロ様なのですね!お久しぶりです。私のことを覚えていらっしゃいますか?」

 

そう俺に話しかけたのは栗色の髪に花の髪飾りをつけている、いかにもお嬢様のような格好をした女の子だった。だが、俺はこの女の子を知っていた。るりよりもずっと昔に会った人物。ちょうど、親父が鶫の仲間を殺した数日後に仲良くなった俺の数少ない友達の一人。

 

「マリー………マリーなのか!!」

 

「はい!そうです!!」

 

マリー。橘 万里花。それがこの少女の名前だった。

 

 




ということで、マリーをだしました!
どんな関係なのかは次の話で!
感想と訂正があればお待ちしております!


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第16話 オモイデ話

何とか今日中に2個投稿出来たぞ。
一日に2個投稿出来たの初めてだ。

はい、というわけで今回は過去編です。
自分は九州弁が一切わからないので昔のマリーなのに
口調が全然違います。ですが、お許しください。



橘万里花。俺の数少ない友達の一人。……なんで俺は女子に友達が多いんだ?

 

「うわー!!久しぶりだな!でも、どうして俺の家がわかったんだ?」

 

「それは………クロ様に会いたいがためにちょっと家の力を使って」

 

「……おい、それ少し犯罪みたいだぞ」

 

橘万里花は警視総監の娘のためそれができるのは不可能ではないはずではあるけど。

 

「実はわたくし凡矢里高校に編入することになって、試験を受けたのです。で、クロ様が凡矢里中学の方を受けたのは知っていたものなのでもしかしたらと思って、思い切って先生に聞いてみました。神崎クロという生徒はいますか?と。そしたら」

 

「ドンピシャだったわけだ。なるほどな…………ん?じゃあ、マリーはこれからうちの学校に通うのか?」

 

「えぇ。まぁ、試験の結果次第ですけど、おそらくは大丈夫なはずです。ですから、これからは一緒の学校ですよ、クロ様!!」

 

そう言ってマリーは俺に抱きついてくる。ちょ!待って。二人っきりとはいえど恥ずかしい。

 

「クロちゃん。お茶が入ったわ………よ……」

 

なんというタイミング。まさか、ここでばあちゃんが入って来るなんて。てか、ノックしてよ!

 

「ごめんなさい。お邪魔のようでした」

 

ばあちゃんはお盆を俺の机の上に置いて、謝って俺の部屋のドアを閉めた。

 

「ちょっと、待って!今のは誤解だから!」

 

ばあちゃんは一階へ降りていった。

 

「さぁ、クロ様!折角ですし、わたくしと昔話でもしましょう!」

 

「ん?あぁ、そうだな。いやー、マリーと話すの久しぶりだから何か緊張するな」

 

こうして、俺達は昔話をし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が出会ったのは親父が鶫の仲間を殺した数日後。母さんが親父の事で警察に呼ばれた事から始まりだった。当時、三歳だった俺は母さんが事情聴取を受けてる間、子供部屋で遊ばさせられてるところだった。その場所には俺と当時三歳のマリーがいた。だが、俺達は特別話すこともなくただ、別々に遊んでるだけだった。

 

だが、数十分経った頃にマリーは一人で遊ぶのが飽きたのか、俺の方へやって来た。

 

「ねぇ、いっしょにあそびましょう」

 

俺はその時、大きく頷いた事は覚えている。それから、俺達は色んな事をいっしょにした。ツミキやシャボン。絵本などをいっしょに読んだりした記憶がある。

 

数時間経った頃に、母さんとマリーの父親がやって来た。

 

「あら、クロ君。お友達ができたの?すいません、うちの子がお世話になっちゃったみたいで」

 

「いやいや、こちらこそ。すいません。マリーの遊び相手になってもらってしまって。ほら、マリー。帰るぞ」

 

母さんは俺の手を、マリーの親父さんは俺の手をとった。

 

「あなたのなまえ、くろ?」

 

俺は頷いた。

 

「あなたはまりー?」

 

マリーはその時頷いた。本当の名前は万里花だと知ったのはまだ先だった。

 

「またね、くろ」

 

そうして、その日は俺達は別れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達が次にあったのは一年後の保育園だった。一年たった頃には母さんも親父がした事に少しは落ち着きを取り戻して、その時は俺のために必死に働いてくれた事を覚えてる。

 

「くろ?くろではありませんか?」

 

その時、いきなり話しかけられて驚いたけど、顔を見た瞬間マリーだとわかった俺は喜んだ。また、マリーに会うことが出来たのだから。

 

俺は保育園にいた頃、マリーがいる時はほとんどの時マリーと一緒にいた。何故なら、他の子が俺に話しかけようとしなかったから。今思えばこの時から親父のした罪のせいで俺は友達ができなかったのかもしれない。

 

保育園に通い出してある日の頃。俺は突然マリーにこんな事を聞き出した。

 

「マリーはすきな人はいるの?」

 

何故この時俺はこんな事を聞いたのかわからない。だって、こん時四歳だぜ。マジで、なんでだろ?

 

「わたしはくろのことはすきですよー」

 

「ほんとに?ぼくうれしいよ!」

 

この好きは今になっても友達で好きなのか、男として好きなのかはわからない。でも、この時すごく喜んだのは覚えている。

 

それからもマリーとはずっと一緒にいた。時々休みがちだったから心配だったけれど。

 

そうして、また一年間と数ヶ月が経ち、もうすぐ小学生になろうとしていた時。

 

「くろは小学校どこに行くの?」

 

「ん?ぼくは◯◯小学校だよ」

 

「えっ、じゃあ小学校は別々になっちゃいます」

 

マリーは見て分かるくらいに悲しんでいた。もちろん、俺だって悲しかった。だから、俺は。

 

「じゃあ、一ヶ月に一回。マリーのいえにあそびに行くよ。これでいい?」

 

泣きそうになったマリーを励ますためにできるかわからないことを俺は口に出して言った。

 

「じゃあ、約束ですよ?」

 

そう言って、マリーは小指を突き出してくる。

 

「うん。約束だ!」

 

俺も小指をだして指切りをした。そうして、俺の保育園の生活は終わった。それからが俺のひどい日々の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

小学校

 

「おい、お前人殺しの息子なんだってな!」

 

「そんな奴が俺達に近づくな!」

 

「お前に触ったら汚れちまうよ!」

 

一年生の頃からそんな事を毎日言われ続けてきた。男子も女子も先生も俺の敵だった。その学校に俺の味方は誰一人いなかった。

 

「苦しいよ、マリー。マリーに会いたいよ」

 

小学校に入学して一ヶ月。毎日そう思うようになった。マリーとの約束はちゃんとできるようになってる。一月の第二日曜日に母さんがマリーの家まで行ってくれた。マリーに会うたび気が楽になった。マリーに心配をかけないため俺がいじめられてる事はだまっておいたが四ヶ月たったある日………

 

「くろ?どうしたの。凄く顔が疲れてるよ?何かあったの?」

 

その時にはもう小学校が耐えられなくなっていた。だが、マリーに心配かけないためにも俺は誤魔化そうとした。

 

「別に……何もないよ」

 

「嘘!くろは今わたしに嘘をつきましたわね?」

 

マリーに俺の嘘を見透かされた。俺は耐えられなくなってマリーに全ての事を話した。小学校に入って何が起きたのか。それを聞いたマリーは。

 

「くろ。大丈夫ですわよ。誰が何と言おうとわたくしはあなたの味方。だから、わたくしの前では見栄を張らず泣いたらいいのです」

 

俺はこの時初めて友達の素晴らしさを知った。俺はマリーに抱きついて泣きじゃくった。その間マリーは俺の頭をずっと撫でてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ありがと」

 

しばらく泣いていた俺だったが泣き止んだ時に急に恥ずかしくなってマリーから離れる。すると、マリーはくすくすと笑った。

 

「別にいいですわよ。さぁ、めいいっぱい泣きましたし、今日は何をしてあそびますか?」

 

その日はいつも遊んでいるより楽しく思えた。俺達は色んな話をした。マリーの本名が万里花だとこの時初めて知ったし、マリーの体が弱い事も、話したりした。

 

ここまでの話から俺はマリーを好きになってもおかしくないのに、何故かマリーを恋愛感情で見ることはできなかった。小学生だったからだろうか?理由はわからない。

 

その後も小学校ではいじめられてきたけどマリーがいてくれたおかげで俺は学校にも通えた。マリーがいなかったら俺は今頃どうなっていただろうか。こうして、るりや小咲に会うことだって出来なかったかもしれない。

 

小学校二年生になった頃。いつものようにマリーの家に遊びに行った。

その時に、らっくんという俺と同じ学年の人物の話を聞いた。その日はマリーはずっとそのらっくんの話をしてたような気がする。そして、マリーがそのらっくんを好きなんだろうということも理解した。

 

「あ、ごめんなさい。くろとは関係ないのにらっくんの話ばっかりを……」

 

「いや、大丈夫だよ」

 

「わたくしはらっくんが好きだけどくろも好きだよ」

 

爆弾発言。俺はそう思った。しかも、めっちゃ顔赤らめていたような気がする。まさか、いきなり好きとか言われるとは思っていなかった俺は

 

「あ、えっと、その、ごめん、トイレ」

 

その場から逃げだした。どうやら、俺は想像絶するほどのチキン野郎だったようだ。戻ってくると、マリーはいつものように戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

四年生になった頃。(一応、ここから口調が変わりだしたということで)また、いつものように遊びに行くと、マリーは何か色々と変わっていた。髪型や髪飾り。そして、口調。すべてらっくんのためだと言っていた。本当に俺のことは好きなのだろうか?

 

それからは特になく毎月遊びに行くだけだった。変化が起きたのは中学の頃だった。中学に上がっても俺たちは別々の学校に通っていた。中学になると、遊びに行くのを二週間に一回にした。そして、中学になると、何故かマリーもいじめられるようになった事を聞いた。まぁ、対して気にしてはいなかったみたいだが。

 

中二の五月頃。いつものようにマリーの家に遊びに行った。いつものように二週間で何があったのを話していた。そして、俺はマリーには話したくなかったが、話さないわけにはいかないので話した。

 

「マリー、聞いてくれ」

 

「はい?いきなり、改まってなんでしょうか?」

 

「実はさ、俺引っ越しして別の学校に移ることになったんだ。だから、お前とはこれからは会えない」

 

「なっ………………」

 

マリーは絶句した。俺はそれにも構わず話を続ける。

 

「凡矢里中学っていってさ。結構ここから遠い所。俺を今まで育てて来てくれた母さんに少し楽になって欲しいんだ。だから、向こうのばあちゃんとじいちゃんの家に住むことにしたんだ。だから、ごめん……」

 

「………………それでは仕方ありませんね。わかりました、クロ様。クロ様とのお別れは悲しいですが、わたくしはそれを受け止めます」

 

「マリー……本当にごめん!」

 

「謝らないで下さい。………その代わりといってはなんですが、目を閉じてもらえますか?」

 

「えっ、あ、うん」

 

言われた通りに目を閉じる。すると、数秒後に頬に何かが当たった。

 

「これはわたくしのお別れのプレゼントです。うけとってくれますよね?」

 

顔を真っ赤にさせて、笑うマリー。てか、今のって…………

 

「クロ様。わたくしはクロ様に会えないのはさみしいですが、二度と会えないわけではありません。ですから、また会えるとこを楽しみにしてます」

 

「マリー…………俺もだ。だから、中学になってもって感じだけど、また会うことを約束のため指切りしないか?」

 

そう言って、俺は小指を出す。

 

「……ふふっ、中学生にもなって子供ですね」

 

笑いながらもマリーも小指をだした。

 

「じゃあな、また会おう」

 

「えぇ、また会いましょう、クロ様」

 

しっかり指切りをして俺は引っ越した。それが、俺達の最後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今思えばわたくし達はずっと一緒でしたわね」

 

「……あぁ、そうだな。でも、本当にマリーがいてくれたおかげで俺は助かってたよ。ありがとう、マリー」

 

「わたくしはお礼をされるような事はしていませんわ」

 

俺達は見つめあって、ぷっ、と吹き出して笑った。

 

「さて、わたくしはそろそろ帰らないとなりません」

 

「あ、送ってくよ。もう夜遅いしさ」

 

「心配には及びません。車を用意させてありますから」

 

マリーは立ち上がって俺の部屋から出ようとした。

 

「あ、クロ様。一つ忘れてました。クロ様は一条楽様を知っていますか?」

 

一条楽?それって…………

 

「そいつ、俺のクラスメイトだぞ」

 

「まぁ!なんということでしょう。それはとても嬉しいことですわ。実は昔話していたらっくんという子は一条楽様なのですよ。では、クロ様。ごきげんよう。学校であったらよろしくですわ」

 

それだけ言い残してマリーは家を出た。だが、それを聞いた俺は立ち尽くしていた。楽が?マリーの言ってたらっくん?

 

「マジかよーーーーー!!!!」

 

俺の絶叫はすげえ近所迷惑だと後から後悔した。

 




これ書いてて思ったけどるりちゃんより
フラグ立ててないか?
クロとマリーの方が長くいるのになんでるりちゃんを
好きなっちゃったの?なんでマリーと
付き合ってないんだ?
って思う人たくさんいると思います。
なんか本当にすいません。
感想と訂正があればおまちしております!


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第17話 林間学校のシャシン

マリーがこの学校に来ると聞いて1日が経った。俺は教室でマリーが来てくれる日を楽しみに待っていた。

 

「はぁ、マリーと一緒に学校へ通えるのか。幼稚園のとき以来だからな。楽しみだな〜。早く来ないかな、マリー」

 

「クロ君、おはよう…………って、何そんなにニヤニヤしてるの?気持ち悪いわよ」

 

「あ、るりじゃねえか。はよ〜」

 

てか、俺そんなにニヤニヤしてんのか?まぁ、俺自身楽しみで仕方ねえんだけどな。

 

「…………本当に大丈夫?保健室行った方がいいんじゃ……」

 

「いや、大丈夫大丈夫。それより、誕生日会どうだったんだ?楽しかったのか?」

 

「えぇ、美味しいものがたくさんあってとっても楽しかったわ」

 

美味しいものいっぱい食べれたって……そういや、るりって見た目に反して大食いだったな。あんなに食べてんのになんでこんなにちっこいんだ?

 

「…………ふんっ!!」

 

「ぐはっ!!」

 

いきなり鳩尾すんなよ……いくらなんでも酷すぎる。てか、なんでいつもいつも俺の心を読むんだ。

 

「ったく、酷いよ…………お、ラブラブカップルのご登場だ」

 

教室のドアを開けて、桐崎さんと楽が入ってきた。あれ?何で桐崎さんは微妙にギクシャクしてるんだ?

 

「キャ!」

 

楽が恋人の(フリ)をしようとして楽が桐崎さんの肩に触れた瞬間、桐崎さんは顔を赤らめて可愛い声をあげた。

 

「…………おい、何赤くなってんだよ」

 

「なってない!適当なこと言わないでくれる!!」

 

いや、実際赤くなってますよ、桐崎さん。…………あ、桐崎さんの誕生日プレゼント渡さないと。

 

「おはよー、桐崎さん、一条君。今日も朝から熱いねー」

 

「ハッハッハ!そうだろ?なんたって俺たちはラブラブカップル」

 

「ははっ、そうね」

 

えっ、マジでどうしちゃったの、この二人?昨日の今日で一体何があったんだ?……まぁいいか。

 

「あのさ、桐崎さん」

 

「あ、えっとー…………神崎君?」

 

……今の間は何だったの?もしかして俺、桐崎さんに覚えられてなかった?

 

「はい、これ。誕生日プレゼント。一日遅れだけどね。あと、俺はクロでいいよ。上の名は嫌いなんで」

 

俺はプレゼントが入ってる小さな箱を桐崎さんに渡す。

 

「わぁ、ありがとう!!中身開けてもいい?」

 

「別にいいけど」

 

なんか恥ずかしいな。てか、学校でプレゼント渡したのって俺初めてかも。しかも、彼氏持ちに。偽物だけど

 

「うわー、可愛いストラップ!それも三つも!どっかの誰かさんとは大違いね」

 

桐崎さんは楽を睨む。楽、お前は一体何を渡したんだ。あとで、聞いてみよ。

 

「本当にありがとう!大切にするわ!」

 

さっきとは違って上機嫌で自分の席へと座った。…………てか、何だ?さっきから窓の方から妙な視線を感じる。

 

「…………自分の席へ戻ろ」

 

俺は自分の席へと戻った。授業に始まってからも妙な視線を感じたが俺はそれが何かわからないままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…はーい、注目〜。林間学校での写真が焼きあがって掲示板に貼り出されてるからな〜。各自、欲しい写真の番号を書いて提出する事。OK?」

 

各自で適当に返事をする。

 

「あと、恥ずかしくても好きな奴の写真はちゃんと選んどけよ。アドバイスな」

 

この先生なにいってんだ!?でも。るりの写真か……一枚くらい買ったってバチなんか当たらないよな。

 

(クロ君の写真………一枚くらい買おうかしら。一枚くらい買ってもバチなんか当たらないよね)

 

この時俺たちがまったく同じことを考えていたなんては知らなかった。

 

「……わ〜〜。これ好きなの買っていいの?」

 

桐崎さんは掲示板に貼ってある写真をみて目を輝かせる。

 

「そーだけど、あんま買いすぎんなよ。これ1枚100円とかだからな。だから、厳選して……」

 

楽は注意したが、その時既に桐崎さんは鶫と共に写真を選びに行っていた。さて、俺も探すとするかな。

 

「私るりちゃんとクロ君と写ってる写真が欲しいな」

 

「あぁ、俺も欲しいわ」

 

「私は別に」

 

「「えっ!?」」

 

予想外の反応に驚く俺と小咲。欲しくないってそんな…………

 

「まさか、俺達のことが嫌いに……」

 

「そんなー!るりちゃんは私達の写真欲しいよね!」

 

「…………そんな事より、私とクロ君と小咲が写ってる写真あったわよ」

 

そう言って指差した写真は楽が度アップで写っていて、俺達は三人は下の方で小さく写ってる写真だった。てか、これ楽の写真じゃねえか。……そうか、小咲のために。じゃあ俺も。

 

「おい、るり。そんなんじゃダメだ。小咲に楽。この写真はどうだ?」

 

俺が指した写真は小咲と楽が顔を真っ赤にさせながら手を繋いでる写真。当人達は顔を真っ赤にさせながら凄く欲しそうにしていた。

 

「おやおや、どんな写真がお好みで?」

 

「こちらにも写真があるのでどうぞご覧ください」

 

集と城野崎が手をすりすりさせながら俺達の方にやって来た。その後ろには大量の写真とその写真を眺めてる男子達。こいつらは何をしているんだ?

 

「何?私達のHな写真を売ってるの?最低、クズ、変態、死ね」

 

るりが二人に罵倒を言う。だが、二人は涼しげな顔で答えた。

 

「いやいや、そんなんじゃないよ。てか、罵り方が酷いな」

 

「モロにHな写真など俺達の主義に反する。俺達が求めるのは絶妙に恥ずかしい写真だ」

 

いや、こいつらドヤ顔でそんなこと言ってるけどやってること最低だからな。

 

「というわけで、るりちゃんと小野寺にお一つ」

 

るりと小咲は写真を見た。すると、るりは髪の毛が逆立って集達に近づく。小咲は顔を真っ赤にしてビリビリに破りさいた。

 

「どうどう?きにいって………ギャーーーーーー!!!」

 

「舞子ーー!!え、そんな俺ま…………ぐああぁぁぁああ!!」

 

るりは集と城野崎をボコボコに殴った。うん、お前達は男だ。立派に戦った。

 

「……そういえば、楽とクロにはこんな写真が」

 

ボロボロになった集に手渡されたのは俺とるりと小咲が三人で手を繋いで肝試しに行こうとしてるとこ。そして、るりと小咲の寝顔の写真。

 

「「いくらだ?」」

 

「1枚500円」

 

「「買った!!」」

 

俺達は声を揃えて集にお金を手渡す。いやー、いい買い物をした。宝物にしよう。

 

「ふー、こんなもんでいいかな。るり?お前はどうだ?」

 

「つっ!クロ君!?」

 

「なんでそんなにビックリしてんだよ?」

 

「な、何でもないわ!」

 

るりは顔を赤らめてそっぽ向く。俺はるりが見ていた方を見るとそこに俺とるりが二人っきりで写っている写真を見つけた。

 

「お、これも買おう。いいよな、るり?」

 

「…………す、好きにすればいいじゃない」

 

俺はその時一瞬るりが笑ったような気がした。気のせいかもしれないけど。

 

 




少し短かったですね。
それによくわからない終わり方を……
感想と訂正があればお待ちしております。


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第18話 シュラバ?

題名で何が起きるかわかるかもしれません。
そして、キャラ崩壊起きます。
すいません。


林間学校の写真を選んだ後、俺達は部活に行った。何故かるりはその日凄くご機嫌だったの。そして、いつも通り俺はるりと一緒に買い食いとか帰った。

 

「そういえばさ、もうすぐ転校生が来るんだぜ。知ってたか?」

 

「知ってるわけないじゃない。てか、何でクロ君がそんな事知ってるのよ」

 

帰り道に買ったコロッケを頬張りながらるりは話す。

 

「…………お前口の周りにコロッケの衣ついてるぞ」

 

俺はハンカチを取り出しるりの口の周りを拭いてあげた。

 

「これでよし!きれいになったぞ」

 

「……クロ君のくせに生意気ね」

 

「何でだ?……まぁ、いいか。話戻すけど実はこの前、俺が転校する前のただ一人の友達が俺の家に来てさ。凡矢里高校に来るからこれからよろしくって伝えに来てくれたんだよ」

 

ビクンッ!!

 

その話を聞いたるりは後ろから誰かにおどかされた時のように驚き俺を睨んで来た。

 

「…………クロ君の幼馴染?男子?女子?」

 

「女子だけど……橘万里花っていって俺はマリーって呼んでる」

 

「クロ君の幼馴染が女の子……しかもあだ名で呼ぶなんて。いつからの友達なの!?」

 

「幼稚園入る前から俺が転校して来るまで…………って、いきなりどしたんだ!!」

 

手に持っていたコロッケを落として地面に膝をついて落ち込む。俺そんなにやばい事いったのか?

 

「私より付き合い長いじゃない……そんな子が私達と同じ学校に」

 

「何だよ、なんかやばいのか?」

 

返事がない。ふと、前を見ると俺の家の前まで来ていた。そして、そこには日傘をさして立っている女の子が一人。

 

「あ、るり!あの子だよ。あそこに立っているのが俺の幼馴染のマリー」

 

俺が説明するとるりはパッと顔を上げてマリーを見た。すると、マリーもこちらに気づいたようで、俺の方に向かって走って来る。

 

「クロ様ー!!会いたかったですわー!」

 

そして、俺に飛んで抱きついてきた。

 

「マリー、いきなりそんなに飛びついてきたら危ないぞ」

 

「それは大丈夫です!クロ様が受け止めてくれる事はわかっていたので」

 

いや、そういう問題じゃないと思うんだけどな。

 

「ところで、そちらにいる私を睨んでいる方はいったい誰でしょうか?」

 

見ると、るりは思いっきりマリーを睨んでいた。待って、こんなに怖いるりもあんまり見た事ないんだけど!

 

「しょ、紹介するよ。この子が俺を救ってくれた二人目の恩人で今俺の一番の友達で部活仲間の宮本るり。

で、こっちがさっきも言ったけど俺の幼馴染で俺の第一の恩人の橘万里花ことマリーだよ」

 

「あら、初めまして。クロ様の手紙の方で色々聞いていました。私、クロ様の『幼馴染』の橘万里花です。どうぞ、よろしくお願いします」

 

何故か幼馴染を強調して自己紹介をするマリー。あれ、なんかやばくね。

 

「……どうも、クロ君の『親友』の宮本るりよ。よろしくね、橘さん」

 

「えぇ、よろしくお願いしますわ、宮本様」

 

……おかしいな。俺の目にはマリーとるりの後ろに龍と虎が見える。しかも、何か火花散ってるし。

 

「そ、それでマリーは今日どうしてここに?」

 

「あ、そうでしたわ!実は明後日から凡高で通うことになったのです。というわけで、その報告をと思って」

 

「うわ、ホントかよ!これからよろしくな、マリー」

 

マリーも凡矢里高校か。これでさらに学園生活が楽しくなりそうだよ。

 

「………ねぇ、橘さん。クロ君にくっつきすぎじゃないかしら?そろそろクロ君から離れてくれない。クロ君も迷惑だと思うの」

 

「あら、失礼しましたわ。ですが、クロ様はきっと、迷惑だと思ってませんよ。ですよね、クロ様?」

 

「あ、あぁ。別に迷惑じゃねえけど」

 

途端、宮本の方から凄まじい殺気が放たれた。やばっ、今のは流石にやばかったか。てか、この二人仲良くしてくれよ。何で、仲良くしてくれないんだ?

 

「ところで、クロ様と宮本様はどういう関係なのでしょうか?下の名前で呼び合ってるようですし……もしや、二人は付き合って…………」

 

「「付き合ってない!!」」

 

「そうですか。では、このままいても問題ないですね」

 

このままじゃなくて、逆にくっついてきてるんだけど。もうやめて、るりが本当に怖いから。

 

「ちょっと。いくら幼馴染だからってくっつきすぎでしょ。やっぱり、もうちょっと離れるべきだわ」

 

「あら、親友程度が口を挟まないで下さる?それに幼馴染と言ってもただの幼馴染ではありませんわよ。私はクロ君を抱きしめた事があります」

 

「それなら、私だってクロ君に膝枕してあげた事だってあるのよ」

 

その事でこの前からかったら真っ赤にして怒りそうだったじゃねえか。何故、今はいいんだ?

 

「むっ、やりますね。ですが、私はクロ様と二人で海に行った事があります」

 

「そ、それなら私だって部活でクロ様と一緒にプールで泳いでるわよ」

 

「くっ…………ですが、私は!」

 

えっ、何この自慢試合大会。俺すげぇ恥ずかしいんだけど。しかも、ここ俺の家の前だしやめてほしい。

 

二人は俺のことで自慢しあって息をゼーゼーさせている。そこまでする事なのかよ。

 

「こうなったら、奥の手です!私はクロ様にキスをしました!これならどうですか、宮本様!!」

 

「う…………嘘に決まってるでしょ、そんなの」

 

ドヤ顔でいうマリーにたじろぐるり。

 

「嘘ではありませんわ。それにクロ様に聞けばいい事です。ねぇ、クロ様」

 

そこで俺に振るのかよ。やめてくれよ本当に。この後の展開がおおよそ読めるから。

 

「…………転校する前に頬に……」

 

「…………サイテー」

 

「いや、ちょ、待っ!!」

 

そこから俺の意識は飛んでいてその後何が起きたのか俺は知らない。

 




感想と訂正があればお待ちしております


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第19話 転校生のレンアイ事情

普通の日本語から九州弁に言い換えるサイト
発見した!というわけでマリーの口調を
九州弁にできました。


マリーが転校してくる当日。

 

殴られた俺はあれから夜に意識が戻ったようでずっとるりとマリーが付き添っていてくれたらしい。二人は相変わらず険悪な感じだったけど。

 

そして現在。いつもの朝…………と思いきやえらいことが起きている。マリーがクラスで軽く自己紹介をして、数秒後、マリーは楽に抱きついた。

 

「はあぁ……!!?」

 

いきなり抱きつかれた楽はビックリしているが、何より小咲がビックリしている。

 

「なんだなんだ!?転校生が一条に抱きついた!」

 

隣で声でけえよ城野崎。

 

「ちょ、ちょっと待て!な、何すんの、いきなり!!」

 

「あぁ、申し訳ございません楽様。私、この瞬間をずっと夢見ておりまして」

 

「………あのー、橘さんはもしかして楽と知り合いか何か?」

 

集がピシッと手をあげて質問する。その質問にマリーは満面の笑みで答えた。

 

「はい!楽様は私の許嫁でございます」

 

『許嫁ーーーーー!!!???』

 

えっ、許嫁?…………俺楽とそこまでの関係なんて知らなかったぞ。てか、許嫁ってなんだ!!

 

「マリー!許嫁ってどういうことだよ!」

 

「あ、クロ様!クロ様も会いたかったですわ!!」

 

クロ様もって何だ?なんかついでみたいだな。

 

「えっと、橘さんはクロとも知り合いなのか?」

 

「はい!クロ様は私の幼馴染でございます…………特別の」

 

『幼馴染だとーー!!??』

 

クラスのみんなが一斉に俺と楽に野次を飛ばす。俺は楽のよりはマシなみたいだ。いや、そんな事より小咲とるりは!!

 

「……………………」

 

ブンブンブン

 

楽とマリーの関係を知った小咲がボーッとしている。るりが手をブンブンさせても全く気付いていないみたいだ。でも、何故だろう。るりは小咲のために手をブンブンさせているはずなのに何かに怒りをぶつけているようにも見える。

 

「ええい、貴様!一条楽から離れろ!そいつはお嬢の恋人なんだぞ!!」

 

「恋人……?」

 

おぉ、鶫。確かにそうだ。でも、許嫁がいたのに恋人がいるって最悪だな。

 

「そ、そうなのよ。実は私達付き合っていてさ」

 

桐崎さんと楽が肩を寄せ合う。これが本当の修羅場だな。マリーは一体どう出るんだ?

 

「……こんなゴリラみたいな女性より私と付き合った方が幸せにできますわ」

 

…………マリー、俺はお前を心から尊敬するよ。なんせ、あの桐崎さんにはっきりとゴリラって言うんだから。

 

「貴様!お嬢になんて無礼な事を!」

 

鶫がマリーに向かって銃を向ける。…………って

 

「ダメだ、鶫!今すぐ銃を下ろせ!じゃないと大変なことになる!」

 

俺はマリーと鶫の間に入る。

 

「何だ、神崎クロ。私の邪魔をするつもりか」

 

違うんだ。もし、マリーに銃なんか突きつけたら。

 

「突入!!」

 

その声と共に武装した警官隊が出てきて俺たちを守るように盾を構えた。そして、鶫にも銃が向けられる。

 

「だから言ったのに」

 

「……お騒がせしてすいません。実は私のお父様が警視総監に務めておりまして。そのうえ、とても過保護な物ですから」

 

中学の頃、一度マリーと一緒にデパートに買い物へ向かった時の事。そのデパートで俺と同じ中学でいつも俺をいじめてくる男子生徒三人にあった。その時は、マリーが一緒だったため、俺はさらにいじめられるかと思っていた。ところが、俺がそいつらに殴られそうになった時、先ほどと同じように大量の警官が俺達を守るように来てくれてその時は助かった。でも、その次の日から俺はあいつらを見ることは一切なかった。

 

「あぁ、どうしましょう。興奮してしまったせいか目眩が……私身体がとっても弱いのです。楽様、クロ様、どうか私を保健室に連れていってくれませんか?」

 

マリーはわざとらしくしんどそうにする。きっと、楽と俺に話しがあるからだろう。このまま気づかない振りをして普通に連れて行くのもありだろう。けど、ここはあえて……

 

「なるほどー。つまり、マリーはしんどいから抱っこして保健室まで運んでくれ。そういうことだな?」

 

「ふぇ?」

 

そうかそうか。なら仕方ないな。じゃあ遠慮なく。

 

「よっと。楽ー、保健室行こうぜ」

 

俺はマリーをお姫様抱っこをして持ち上げた。その時、周りから黄色い声援が起こる。

 

「ク、クロ様!!なんぼなしけんもそいは恥ずかしかたい!」

 

「いや、でもしんどいんだろ?だったら無理する必要はない。じっとしてろ」

 

そう言って俺は廊下に出た。俺のことをずっと睨んでいる人物がいるのを、その時俺は忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小咲、つけるわよ」

 

「え、でも授業が……」

 

「いいから!!!」

 

「はい…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、これで大丈夫だろ。で、俺に抱っこされた感想はどうだった?」

 

「…………次からはあのような事をしないでくださいまし」

 

保健室に来た俺達は取り敢えずマリーをベッドの上に座らせ、俺達は椅子に座った。

 

「……クロと橘は本当に幼馴染だったんだな。普通ならそんな事できねえよ」

 

「そういうお前も許嫁がいるならどうしていってくれなかったんだよ。俺ビックリしたぞ」

 

「仕方ねえだろ。それを知ったのも昨日だったんだから!」

 

そして、楽はマリーに向き直った。

 

「すまん、何ていっていいか。それに俺あんたの事覚えてねえんだ。今でも昔会ったことなんて信じられないし……あんたはそうじゃねえのか?10年も前に会ったっきりなんて知らないのと同然だ。普通そうだろ?それに、あんたには昔からクロがいたんだろ。普通だったら俺よりクロを好きになると思うんだが」

 

楽の言いたいことはわかる。でも、それを決めるのはマリーだと俺は思う。

 

「………はい。確かに私はクロ様の事は好きですよ。……しかしそれは幼馴染として……友達としてです」

 

「えっ?」

 

「私はクロ様と4歳の頃から一緒にいました。だから、クロ様の事を私は大好きです。楽様と同じくらいに。ですが、クロ様への感情はあくまで幼馴染、という感情です」

 

あれ?じゃあちょっと疑問が出てきた。

 

「なぁ、マリー。何で俺の頬にあの時キスをしたんだ?」

 

あの時というのは転校する前だ。

 

「それはまた会う約束って事と、一生友達という事でしたのですが、迷惑でありましたか?」

 

「いや、迷惑ってわけじゃないけど」

 

じゃあ、あの時は恋愛感情ではなくあくまで友達としてって事だったのか。

 

「ですが、今はです。もしかしたら私の感情が変わる事があるかもしれませんよ?気をつけて下さいね、クロ様。クロ様を思う人もいるようですし」

 

俺を思う人?一体誰の事だ?

 

私は楽様が大好きです。親に決められたからではなく10年間ずっとあなたの事を思ってきました。あの約束の事もはっきり覚えています。というわけで楽様、私と結婚しましょう!!」

 

マリーは楽に飛びついた。楽のすぐ隣にいた俺も巻き込まれる。

 

「さぁ、楽様!衣服をお脱ぎになって。何ならクロ様も!」

 

「うおぉ、ちょっと待て!!」

 

「マリー、落ち着け!落ち着けって!!」

 

くそっ、マリーをどうにかしないと、って楽は何、マリーと俺を押し倒してんだよ!しかも、俺はシャツのボタン全部外れたぞ。ズボンもチャックが!

 

「こらー!!あんた達なにやってんのよ!!」

 

いきなり、扉を開けて桐崎さんが入ってきた。…………あれ、これやばくない?今の状況を整理すると。

 

楽が俺とマリーを押し倒している。マリーは何ともないが俺はシャツのボタンが外れてスボンのチャックが下ろされてる状態。

「……獣、ゲイ」

 

「違うって!!さっき色々あってこんなことになっちまったんだよ。てか、俺はゲイじゃない!」

 

楽が必死に弁解しようとする。てか、そう思うなら押し倒している俺をどうにかしてどいてくれ。

 

「死ねカス、ホモ」

 

「カス!?てか、ホモでもねえよ!!」

 

「………………(ものすごい悪口)」

 

「え、ごめん。今なんて言った!?」

 

鶫とるりまで楽を罵倒する。しかも、るりに至ってはなにいってるのか全くわからない。

 

「お!小野寺、話を聞いてくれ!俺は断じて何も……」

 

いつもならここでフォローをかけるのは小咲の筈だが、今回はあまりにビックリした事で身を引いてしまった。

 

「ハレンチもやしは……滅殺!!」

 

「ぎゃああぁぁああ!!!」

 

「なんで俺までぇぇぇ!!」

 

俺と楽は桐崎さんのとんでもないお仕置きをくらってしまった。くそっ、最近マジで殴られてばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ふーっ、何とか助かった。俺は楽よりマシだったみたいだな」

 

「それはどうかしら?」

 

いきなり、後ろから声をかけられ振り向くとそこにるりと小咲が立っていた。

 

「あれ、二人ともどうしたんだ?あ、もしかして俺を心配してくれたのか?」

 

そうだよな。こんだけボロボロになった奴を心配しない奴なんていないよな。でも、それにしてはやけに殺気が立ってるような…………

 

「えぇ、そうね。確かに心配したわ。ただの幼馴染に対して一緒に押し倒されたり、お姫様抱っこしたり。あれは一体何の遊びかしら?」

 

「え…………いや、そのー。……小咲助けて!」

 

「………ごめん、クロ君。るりちゃん止めようとしたんだけどダメだった」

 

「そんな…………」

 

その後の事はご想像にお任せしよう。一つわかるのは俺の顔がとんでもないことになったということだ。

 

 




ニセコイの漫画全部読んだらますます好きな
キャラが増えてしまった。るりちゃんに万里花に
小野寺姉妹に風ちゃん。何てことだ。
風ちゃんメインの話やらないかな……
感想と訂正があればお待ちしております。


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第20話 小咲のパーティ

現在俺は俺の部屋でるりと二人でいる。その理由は…………

 

「なぁ、るり。どんな風にしたらいいかな?」

 

「…………クロ君の好きにすればいいと思うわよ」

 

「そんな事言われてもよー。俺わかんねえよ。女子がどうしたら喜ぶかなんて」

 

「でも、小咲のためなのよ。何かしら案は出てくるでしょ」

 

そう。明日は6月15日。何があるかと言うと小野寺小咲の誕生日だ。俺はその日にサプライズパーティを計画しようと考えたのだ。

 

「うーん、じゃあいきなり俺の家に来てもらうように言って、俺の部屋に入ってきた瞬間、クラッカー鳴らしておめでとー!っていうのはどうだ?」

 

「悪くはないと思うけど、小咲の誕生日なのよ。普通小咲の家でやるのがセオリーだと思うんだけど」

 

うっ、そう言われると確かにそうだ。でも、中1までは俺の誕生日はいつもマリーの家で済ませてたからな。

 

「なら、私達が着ぐるみを着て夜に小咲の家に行っておめでとーっていうのは?」

 

「……それは経験から語るとおそらく不審者にしか見えないぞ。あと、この夏に着ぐるみは暑いだろ」

 

「……それもそうね。じゃあこの案は却下ね」

 

うーん、何かいい案はないだろうか………

 

「じゃあ、小咲のお母さんとかに頼んであらかじめ小咲の部屋に入っておいて帰って来たところにおめでとーっていうのはどうかしら?」

 

「お、それいいな。あ、でも、俺小咲のお母さんとまともに話したことないんだけど」

 

「大丈夫よ、私はあるから」

 

「それならいいや。じゃあ今から頼みに行ってみようか。無理だったら他の案を考えればいいし」

 

そうと決まれば早速準備しねえとな。

 

「るり、先に外で待っててくれ。自転車とって来るから」

 

俺は簡単な荷物だけ持つと、外に出て裏においてる自転車を取りに向かった。ママチャリだから二人乗り出来るな。本当はしたら危ないけど。

 

「ほら、るり。後ろ乗れよ。この方が早いだろ?」

 

「え、いや、でも…………」

 

ん?なんで顔赤くなってんだ?チャリ乗るの誘っただけなのに。

 

「どうした?自転車が嫌なら走って行くけど。どうする?」

 

「いや、いいわ。じゃあ遠慮なく後ろに乗らせてもらうから」

 

るりは俺の後ろに座り、俺の肩に掴まる。こんなにるりが近くにいると思うと何か緊張するな。

 

「よし。じゃあ、行くぞー。目指せ小咲の家へー」

 

「…………レッツゴー」

 

るりの掛け声と共に俺は自転車を走らせ小咲の家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

「…………ついたな」

 

自転車で5分くらい走ると小咲の家に着いた。小咲の家に来たのは久しぶりな気がする。

 

「失礼しまーす」

 

「こんにちはー」

 

「あ、いらっしゃいませー。って、るりさんじゃないですか!!お久し振りです」

 

店の中に入ると、小咲に凄く似ている女の子が一人でいた。どうやら、店番をしていたみたいだ。

 

「久しぶりね、春。小咲はいるかしら?」

 

「お姉ちゃんなら今お母さんと買い出しに行ってます。で、今日はどうしたんですか?てか、そこにいるのはもしかして…………るりさんの彼氏ですか?」

 

「か、彼氏!!?」

 

俺ってそんな風に見えんのか。てか、お姉ちゃんって。じゃあこの子が小咲が前言ってた小咲の妹か。

 

「彼氏じゃないわ。この人は神崎黒君。私の友達よ」

 

「神崎黒だ。上の名前で呼ばれるのは嫌いだから下の名前で呼んでくれると嬉しい。えっとー……」

 

「あ、紹介が遅れましたね。私は小野寺春っていいます。今は中3で女子校に通ってます。明日お姉ちゃんが誕生日なので土日の間だけ帰って来たんですよ。普段は寮で生活してるんですよ」

 

「へぇ……そうなんだ。よろしくな、春ちゃん」

 

中3から寮暮らしって大変なんだな。そんで、姉思いなんだな。しかもや小咲の妹ってこともあって小咲に似て凄ぇ可愛い…………痛っ!!

 

「るり、俺の考えてること読んで足踏むのやめてくれ!!」

 

「クロ君が春にデレデレした顔をしてるのが悪いのよ」

 

(彼氏じゃないって言ってたけど結構いいとこまで言ってるんじゃ)

 

「てか、それどころじゃなかった。小咲が帰って来るまでに要件済まさないと」

 

「あ、そうだったわね。春、ちょっと相談があるんだけどいいかしら?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「明日小咲が誕生日でしょ。だから、私達サプライズパーティがしたいのよ。それでちょっと小咲の部屋を貸して欲しいなって思って」

 

「具体的にはどうするんですか?いくらるりさんの頼みでもクロさんがいる以上説明してもらわないと。はい、どうぞといくわけにはいきませんから」

 

まぁ、そりゃそうだわな。男の俺が小咲の部屋に無断で入るのはだいぶやばいことだし。

 

「まぁ、春が適当な理由をつけて小咲を外にだすの。で、そのスキに私達が小咲の部屋に入って、帰って来たところにおめでとー!って感じ。どうかしら?」

 

「うわぁ!それ凄く面白そうですね。それ私も参加していいですか?」

 

「別にいいわよ。ね、クロ君?」

 

「あぁ、人数多い方が絶対楽しいだろうし。第一小咲の部屋を貸してもらうんだから参加してもらわないわけにはいかないだろ」

 

「やった!ありがとうございます」

 

これでサプライズは何とかなりそうだな。後は飾り付けとかかな?

 

「クロ君。取り敢えず、今日は帰りましょう。小咲が帰って来たら怪しまれるかもしれないし」

 

「あ、あぁ、そうだな。春ちゃん、一応メアドだけ教えてくれない?知っといた方が何かと便利だろうし」

 

「はい、わかりました。じゃあ赤外線で…………」

 

「……よし、登録できた。じゃあまた時間とかはメールするから」

 

「はい。じゃあまた明日お願いします」

 

俺達は店を出て小咲達にばれないように急いで帰った。明日が楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「昨日、春ちゃんに15時から始めるって言っといたから。14時半くらいに小咲を一回出かけさせる。だから俺達は14時半すぎくらい行けば大丈夫なはずだ」

 

現在時刻は14時。後、30分何をするか…………

 

「……そういえば、クロ君は高校卒業したらどうするつもりなの?」

 

「卒業したら?…………そういえばそんな事全く考えてなかったな。どうするかな。るりは決まってるのか?」

 

「えぇ。もう行く大学は決めてるから」

 

「マジかよ!?早すぎるな」

 

まだ高1なのにもうそこまで考えるるりって……やっぱりるりは凄いやつだったんだな。

 

「………高校卒業して、別々の大学に行ったらもうこんな事は出来ないのかしら……」

 

「えっ…………」

 

そうか……別々の大学に行ったら今はずっと一緒にいるけど、会う機会が少なくなっちまうかもしれないしな。

 

「るり。例え違う大学に行っても俺達はずっと友達だ。だから、そんなこと出来なくなるなんてきっとないさ。それに俺はるりも小咲も楽もマリーもみんなの友達以下の関係になりたいとか思ってない。てか、思いたくない。そういう気持ちがあるならこれからもきっと大丈夫さ」

 

「…………なんか妙に説得力あるのが腹立つわ」

 

「酷っ!!るりを励まそうと思って行ったのにどうしてそんなこと言うんだよ!」

 

「わかってるわ。だから、冗談よ。ありがとう、クロ君」

 

るりは笑って俺に礼を言う。その瞬間俺はさっきの話もあったせいなのか俺の中で一つの決意が決まった。

 

「あ、あのさ…………」

 

「どうしたの?顔赤くして」

 

「もし、るりが良かったらなんだけど……」

 

俺は右手でるりの手を握る。その瞬間るりの顔も赤くなる。

 

「もし、よかったら俺と『ピリリリ!ピリリリ!』なんだ!?」

 

いきなり俺の携帯が大きい音で鳴りだした。誰だ!こんなKYな事をしたの!?

 

『あ、もしもし。クロさんですか?ちょっと早いんですけどお姉ちゃんに買い物へ行かせました。なので、今から来てくれると嬉しいです』

 

「……あ、はい。わかりました。るり、今から小咲の家に来ても大丈夫だって」

 

「…………了解」

 

俺は電話を切り、小咲の家に行く準備をする。今の俺達はお互いに顔が真っ赤だった。

 

「…………クロ君、さっき何言おうとしたの?」

 

「えっ?いや、その……今度よかったら俺と二人で遊園地に行かないかって誘おうとしただけ。ほら、たまには二人だけでも遊びたいなって思って」

 

「あ、そう…………二人きりで」

 

ふー、誤魔化せて良かった。勘の鋭いるりだから絶対何かあると思ったんだけどな。危ない危ない。

 

(さっきのってもしかして…………いや、ないない。クロ君が私に……うん。ありえないわ。そんな事ない)

 

 

 

 

 

 

 

 

「春ちゃん、来たよー」

 

「あ、こんにちは。るりさん、クロさん。どうぞ上がってください。お姉ちゃんの部屋はこっちです」

 

俺達は春ちゃんの了承を得て小咲の家へ上がる。

 

ダメだ。さっきの事思い出すたびに顔が赤くなる。なんで俺はあのタイミングであんな事を言ったんだろう。

 

「ここがお姉ちゃんの部屋です。私は今からケーキをとって来るので二人は飾り付けとかしといてもらえませんか?」

 

「わかった」

 

「了解」

 

春ちゃんが部屋を出て行った。俺達は家から持ってきた飾り付け道具を次々と部屋につけていく。

 

やばい、会話が全くない。何だこれ。気まずすぎる。まぁ、俺のせいなんだけど。

 

(さっきのこともあってクロ君になに話したらいいかわからない。どうしよう)

 

結局、春ちゃんが来るまで俺達は一切喋らずにもくもくと飾り付けをしていった。

 

 

 

 

 

 

 

『ただいまー、春いるー?』

 

飾り付けが終わって小咲の部屋で三人でゆっくりしていたら、小咲が一回の方から春ちゃんを呼んだ。どうやら帰ってきたみたいだ。

 

「いるよー!!お姉ちゃんが帰ってきました。二人はクラッカーを準備しててください。私呼んで来ますから」

 

春ちゃんは下におりていった。

 

『お姉ちゃん。ちょっとこっち来て』

 

『えっ、春?いきなりどうしたの?』

 

『いいから、いいから。早く早く』

 

階段を蹴る音が聞こえる。少しすると、小咲の部屋のドアが開く。完全に開いたのを確認して俺達はクラッカーを鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

小咲side

 

「お姉ちゃん、ちょっとこっちに来て」

 

「えっ、春?いきなりどうしたの?」

 

「いいから、いいから。早く早く」

 

何か今日の春はおかしいような気がする。何かいきなり私に買い物頼んでくるし。今日私誕生日なんだよ。ゆっくりさせてくれてもいいと思うんだけどな。それにるりちゃんとクロ君。私の誕生日覚えてないのかな?

 

「さ、お姉ちゃん。どうぞ」

 

「どうぞって、ここ私の部屋だよ」

 

「知ってるよ」

 

やっぱり今日の春はおかしい。絶対何かおかしい。

 

私は扉のドアノブに手をかけ扉を開ける。完全に開けた瞬間、パンっ!という音が部屋の中で響いた。

 

 

 

 

 

 

 

クロside

 

「えっ…………」

 

「小咲、誕生日おめでとー!!」

 

「おめでとー」

 

俺達がクラッカーを鳴らすと、小咲は驚いたような顔をする。サプライズパーティ大成功だな。

 

「えっ?どういうこと?」

 

「何とぼけてるのさ、お姉ちゃん。今日はお姉ちゃんの誕生日だよ」

 

「ほら、いつまでも座ってないで早く座れよ」

 

「あ、うん」

 

小咲はケーキの置いてある机の前に座る。まだ、実感がわかないのか小咲は若干ギクシャクしている。

 

「えっ、今日の朝から春の様子がおかしかったのって?」

 

「サプライズパーティが楽しみだったから」

 

「じゃあ、クロ君とるりちゃんが昨日から全く私に連絡とかなかったのは?」

 

「サプライズパーティが台無しになったらあれだからな」

 

「それじゃあ、今日誕生日なのに春が私にいきなり買い物へ行かせたのも」

 

「「「サプライズパーティを準備するために」」」

 

全ては小咲のためだ。まぁ、小咲も驚いてくれたし、これは成功だろ。

 

「ほら、さっさとジュースついでお祝いしようぜ。時間がいつまでもあるわけじゃないし、もったいないから」

 

俺は適当にジュースを手に取り、コップについでいく。

 

「そうね。ほら、小咲はこれ被って。春、ケーキを切る包丁ってある?」

 

「あ、忘れてました。すぐとって来るんで待っててください」

 

るりは小咲にキラキラした三角帽子を被らせ、春ちゃんに包丁を持って来るように頼む。

 

「クロ君、るりちゃん…………ありがとう!!二人はずっと私の友達だよ」

 

小咲が涙目になりながらも言う。

 

「何を当たり前のこと言ってるんだよ。なぁ、るり」

 

「…………えぇ、そうね」

 

なんだ?まだ大学に行った後の事心配してんのか?

 

「るりさん、とって来ましたよ」

 

「あ、あぁ。ありがとう」

 

パン切り包丁でケーキを四等分していく。ワンホールケーキを四等分だから一つ一つの量が大きい。でも、大丈夫か。残したらるりが食べてくれるしな。

 

「よし、じゃあ改めて。小咲の誕生日を祝ってー……カンパーイ」

 

「「「カンパーイ」」」

 

四人でグラスを当て合いジュースを飲む。それから俺達は色々なことを話した。春ちゃんの学校や友達の事や、俺とるりと小咲の関係などを。

 

 

 

 

 

 

「さてと、じゃあそろそろ渡すか。はい、小咲。誕生日プレゼント。直感で選んだから気に入るかわかんないけど」

 

俺は誕生日プレゼントが入った紙袋を小咲に渡す。

 

「わぁ、ありがとうクロ君。開けてもいい?」

 

「あぁ、別にいいよ」

 

紙袋の中に入っていた箱を取り出す。そして、その包装を丁寧に外していく。やっぱ、ここらへんは女子ということなのだろうか。凄く几帳面だ。

 

「うわぁ!ぬいぐるみだ。ありがとうクロ君。大切にするね」

 

「よかったね、お姉ちゃん」

 

「うん!…………で、もちろんるりちゃんもあるよね、プレゼント」

 

「えぇ、あるわよ。はい」

 

るりは小咲にプレゼントを手渡す。

 

「うぅ、るりちゃんのプレゼントって何か怖い。去年の事、まだ覚えてるから」

 

「…………そういえば、あれ使ってるのか?」

 

去年のプレゼントとはゴキブリのティッシュケースである。

 

「うん。一回のリビングにおいてるよ。今でも、まだビックリする時あるけど」

 

「使ってくれてるんだ。……まぁ、それより私のも開けて見てよ」

 

「う、うん……」

 

小咲は俺の時と違って恐る恐るという感じで開けていく。今年は一体何が出て来るんだろうか。

 

「じゃ、じゃああけるよ……」

 

「やっちゃって、お姉ちゃん」

 

「…………え、えい!!って、あれ?クマの人形?」

 

中から出てきたのはクマのぬいぐるみだった。るりにしては凄く以外なチョイスだった。

 

「…………なに、気に入らなかったの?」

 

「えっ、いや、そんな事ないよ!すごく嬉しい!」

 

小咲はそのクマのぬいぐるみを抱きしめる。そんな小咲を見ているとクマの背中に何かのボタンがあるのを見つけた。何だろう、押したいのに押したらやばい気がする。どうしよう……………………よし押そう。

 

俺はこっそり小咲に近づき背中のボタンを押した。すると…………

 

ビョ〜〜〜ン!!!

 

『ベロベロバーーーー!!!』

 

「っっっっっつつつ!!!」

 

いきなりクマのぬいぐるみの頭が空中に飛んで、代わりに体の中からビックリ箱のようなピエロがでてきた。てか、これはビックリ箱じゃなくてビックリクマか?

 

「プククッ…………」

 

なるほど。ただで終わるわけはないと思ってたけどまさかこう来るとは予想外だった。

 

「って、何クロさんは納得したような顔をしてるんですか!!お姉ちゃんが大変なことに!」

 

小咲はいきなりの事すぎて驚いて泣きそうになっている。てか、失神仕掛けてるように見える。

 

「本当だ!?るり、一体どうするんだよ!」

 

「簡単よ。私が魔法の言葉で小咲を復活させてあげるわ」

 

るりは小咲のすぐとなりに近づき耳元で囁いた。

 

「……………こんにゃく」

 

「きゃっ!!こんにゃくは嫌!」

 

おぉ、マジで復活した。てか、こんにゃく嫌いなのは知ってたけど、こんにゃくって言葉だけでも弱いのか?

 

「うぅ…………いつか絶対るりちゃんに復讐する」

 

涙目になってるりを睨む。睨まれたるりは私は何も関係ないというような顔をしている。

 

「まぁまぁ、落ち着けよ小咲。るりもお前のためだと思ってやったんだしさ」

 

「…………でも、こんなの許せないよー」

 

「それに今のは俺にも悪いところがあったんだしさ。許してやれよ」

 

「まぁ、クロ君が押してなかったら私が押してたけど」

 

「「るり(ちゃん)!!!」」

 

せめて、謝るくらいはしてやれよ。

 

 

 

 

 

 

 

夜遅くなって来たという事と、明日からまた春ちゃんは学校があるという事で小咲の部屋を片付けてお開きということになった。春ちゃんは学校が間に合うか心配だったが、小咲のお母さんが送ってくれるから大丈夫らしい。

 

「今日は楽しかったよ。ね、春」

 

「はい。本当はもっとるりさん達と一緒にいたかったんですけどね」

 

「夏休みに入れば、またいつでも遊べるさ」

 

「女子水泳部は合宿あるからいつでもってわけにはいかないけどね」

 

男子水泳部は全員合わせても5人しかいないため合宿はないのだ。せめて、後三人入ってきたらいけるのだけれど。

 

「まぁ、仕方ないさ。まぁ、夏休み入ったらまた遊ぼうよ」

 

「はい!今度は友達も連れて来るんで。その時には遊園地とかに行きましょうね」

 

春ちゃんと約束をして、小咲の誕生日会は終わった。夏休みが待ち遠しいな…………

 




はい、というわけで春ちゃん登場しました。
今回はるりちゃんが少しマイナス思考に。
でも、まぁ元気でしたね。
そして、クロ君とるりちゃん!
付き合うかと思いきや全然そんな事は
ありません。付き合うのはいつになるやら。

そして、お気に入りが700を突破しました。
お気に入り登録してくださった皆様
ありがとうございます。

これから俺の凡高の日常をよろしくお願いします。


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第21話 友達の家へホウモン

遅くなってすいません!
これからも時々投稿があいてしまうかも
しれませんが、お許し下さい。


「というわけでクロ様。明日私の家に来てもらえますか?」

 

「はい?」

 

今日の最後の授業が終わり、その授業でわからなかったところをるりに聞いていると、マリーが楽を連れて俺の席まで来た。

 

「いや、なんで明日俺がマリーの家に?」

 

「お父様にクロ様の話しをしたら久しぶりに会いたいと申されましたので。楽様も今日私の家に来ることになっているのでよければ一緒にどうですか?」

 

「どう、って言われてもなぁ……」

 

俺は明日部活があるし、るりと一緒に帰る約束もしたから、すぐにわかりましたと返事をしにくい。

 

「…………別にいいわよ」

 

「えっ、いいのか?」

 

るりが机に肘をついて、窓の方を向きながらいった。

 

「何回も言わせないで。顧問の先生にもちゃんと休む理由を言っといてあげるから」

 

怒ってるな、これは。2年の付き合いで感じ的にわかる。

 

「……………へぇ」

 

マリーが何かを察したようにるりを見ている。マリーもるりが怒っているのがわかったのかな……

 

「では、クロ様。また明日」

 

「じゃあな、クロ。おい、橘。何故、俺を引っ張る」

 

「別にいいじゃないですか」

 

楽の腕を引っ張って、二人は教室を出て行った。

 

「…………すまん、埋め合わせはちゃんとするから」

 

「じゃあ、今日の帰りにアイス奢って頂戴。それで許してあげるわ」

 

「了解、それにしてもるりってホントアイス好きだよな」

 

そんなジト目で俺を見るなよ。ちょっとビビるじゃねえかよ。

 

「別にアイス好きなのを悪くいったわけじゃねえよ。ただ、そう思ったから言っただけだ」

 

「ならいいけど」

 

「それより、さっきのわからなかった問題を教えてくれよ。マリーが来たから曖昧になったから」

 

さっきの問題を教えてもらってそれから、少し勉強をした後俺達は帰った。俺達が勉強してる間周りの奴は嫉妬のような目で俺達を睨んでたから勉強しにくかったけど…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「はぁ、何でまたこんな事に」

 

「そんな顔するなよ。こんなに可愛い子の家に招待してもらえるんだぜ」

 

「可愛いだなんて、クロ様はお上手ですね」

 

俺達は昼頃に集合して、マリーの家へ向かっていた。

 

「俺が言ってるのはそういうことじゃなくてだな。………はぁ、千棘には無茶な事言われるし」

 

こいつも大変だな。

 

「楽様、クロ様。ここが私の家でですよ。このマンションの最上階フロアのすべてが私の家です」

 

マンションのフロア全部って……どんだけぶっ飛んでるんだ、こいつの家。でも、楽と桐崎さんも似たようなもんか。

 

「ところで、橘『まぁ、橘なんて。どうぞ万里花とお呼びください』…………橘の親父さんってどんな人なんだ?確か警視総監なんだよな?」

 

「とんでもありませんわ。父はとってもお優しい方ですよ。いつも私の事をマリーと呼んで、いつも私の事を気遣ってくれるのです」

 

楽は納得したような顔をしていた。そう言うけどマリーの親父を見たら、ビビるだろうな。俺も8歳くらいになってあの人の外見にちょっとビビってたからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう、帰ったかマリー。早かったな」

 

「あら、お父様。ちょうど今呼びに行こうと思っていたところなのです」

 

うわー、変わってねえなこの親父さん。転校する前と変わらずすげぇ怖い顔。楽も驚愕してるし。

 

「お父様。この方が私の許嫁の一条楽様ですわ。素敵でしょ?」

 

「え、あ、はい。あの…どうも初めまして。俺、いや。僕は……」

 

楽、テンパりすぎたよ。いくら顔が怖いからといえもう少し落ち着けよな。親父さんに失礼だろ。

 

「ほぅ、君があの一条のせがれか。大きくなったな。父親にだいぶ似てきたんじゃないか…………ん?」

 

マリーの親父さんが俺に気づいたのかこっちに来た。

 

「親父さん、お久しぶりです。俺の事覚えてますか?」

 

「おぉ、覚えているとも。お前も大きくなったな、クロ坊」

 

俺は昔から親父さんにクロ坊と呼ばれて親しまれていた。何か、この感じ懐かしいな。

 

「まぁ、座ってゆっくり話そう。親父さんは元気か?」

 

「は、はい。もちろん」

 

「…………この傷」

 

親父さんは自分の額から目を通って頬までかかる傷を親指で指す。

 

「えっ、あぁ、カッコいいですね。お仕事中に受けたんスか?」

 

「うむ………この傷は昔君のお父さんに傷つけられたものでな。君を見ていると親父さんを思い出して来て傷が疼いてくるのよ」

 

うわっ、楽の親父さんなんて命知らずの事をしてるんだよ。下手したら一瞬で殺されるかもしれないのに。

 

「ふん、まぁ、そんなつまらん話しはどうでもいい。マリーも結婚出来る歳になったか。君もマリーの事を大切に想ってきてくれたと思うが」

 

「え、いや、まぁそれは『楽様は私の事を忘れてしまわれたそうですけど』どぅおい!!!」

 

「忘れてた?……おい、そいはどがん言うことと?」

 

あ、やべぇ親父さん切れた。切れるとマリーと同じで九州弁になるんだよな。楽が可哀想。

 

事情説明中

 

「……なるほど、それで君は婚約の話しを聞かされてなかったわけか。……あんのクソヤロウ。男と男の大事な約束を忘れやがって。今度会ったらただじゃおかねえぞ」

 

ふむふむ。直訳すると、楽の親父さんが昔、マリーの親父さんと二人の結婚の約束をしたのに、その約束を楽の親父さんが忘れてしまっていたと。

 

「しかし、そうなると一つ疑問が……お前さん、もしかして好きな女の子でもいるんじゃないだろうね?」

 

「えっ、それはまぁ『彼女がいますわ』っどおおぉぉぉぉい!!!」

 

「……彼女?……わいは彼女ばおる身でこげん所挨拶に来よっとか?」

 

「わーーー!!待って待って!!」

 

「お父様、落ち着いて。楽様が悪いわけではないのです。……それに私はそれでも構わないと思ってます。私はその彼女から楽様を奪って見せると決めたのです。そうしなければ楽様と結ばれる資格なんてありませんわ」

 

「…………ふん、お前がそういうなら別に構わんが」

 

「ところで、君はいつもそうやって娘とくっついているのかね?」

 

見ると、マリーは楽の腕をとっていた。てか、なんで俺は二人の婚約の話しを聞いてるんだ?俺いる意味なくね。

 

「ご、ご安心ください。僕らはとっても清廉潔白な関係で『まぁ!楽様ったら照れなくてもよろしいのに…もうキスも済ませましたのに』だからお前はそういうことを!」

 

「……君ィ……そういうことはもう少しお互いば理解してからすっべきなんじゃなかとか?」

 

楽、ご愁傷様。俺の方を見たってなんも解決しないんだぞ。

 

「……あら、いけませんわ。私としたことがお茶も出さずに。すぐ、ご用意しますわ。一人じゃ不安なのでクロ様も手伝って下さいますか?」

 

「ん、おぉ、別にいいぞ」

 

俺とマリーは部屋を出て、台所の方へ向かった。楽……グッドラック!!

 

 

 

 

 

 

 

「で、本当の理由はなんなんだ?」

 

「何の事でしょうか?」

 

紅茶を入れる準備をしながら、俺はマリーに聞く。

 

「なぜ、ここでとぼける。楽とマリーの親父さんを二人っきりにした理由があるんだろ?」

 

「まぁ、流石クロ様ですわ!それをわかってたんですね!!」

 

いや、あのタイミングで二人っきりにするって事は何か考えがあるって事くらいはわかるだろ………

 

「……まぁ、理由という理由はないですが、強いて言うなら、楽様の本音をお父様に伝えて欲しいって感じですね」

 

「そんなにうまくいくか?あの楽のテンパり方で」

 

「えぇ、きっと大丈夫です。楽様ならきっと………」

 

マリーが楽とあった頃の話しは少し聞かされていた程度で詳しくは知らない。でも、これだけはわかる。

 

「お前、本当に楽の事が大好きなんだな」

 

「………はい、とっても大好きですよ」

 

マリーはこっちを向いて満面の笑みでそう答えた。そんな風に思われてる楽が少し羨ましい。

 

「もちろん、クロ様も大好きですけどね」

 

「…………ありがとう」

 

なんでマリーはこんなに大好きという言葉を簡単に口に出来るんだよ。

 

「クロ様、一ついいですか?」

 

「ん?なんだ?」

 

「クロ様は宮本様の事が好きなのですか?」

 

どぅおっせええぇぇぇええいい!!

 

「は、いきなりなに言ってるんだマリーは。好き?俺が?るりの事を?てか、どうしてそう思うんだ?」

 

「だって、クロ様と宮本様がとても仲良くされてる様に見えますし、それにクロ様が宮本様と話すとき、あからさますぎてなんだかすごくわかりやすいですよ?」

 

「え、マジで」

 

「マジです。で、どうなのですか?」

 

これは嘘ついてもバレそうだな。マリーなら別に話しても大丈夫か。

 

「…………確かに俺はるりの事が好きだ」

 

「そうですか。告白はしないのですか?」

 

「するつもりだけど、中々機会が見つからない。あと、告白をしにくい」

 

「どうしてですか?」

 

「もし、俺とるりが付き合ったら、小咲がかわいそうだろ?俺達今まで三人で仲良くやってきたのに、それが崩れてしまいそうでさ。逆に、もし付き合えなかったらその後の関係がギクシャクしそうで怖いんだよ」

 

小咲の誕生日に告白しようとしたけど、やっぱり、やめてしまったのもそれが原因でもある。

 

「……まぁ、クロ様がそうおっしゃるなら何も言いません。しかし、心配はしなくてもいいかもしれませんよ」

 

「えっ、どういうこと?」

 

「話しはこれで終わりです。早くお父様と楽様に紅茶を持って行きましょう」

 

「あ、おい!!」

 

一体どういうことだ?心配しなくていいって……余計に不安になってきたんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、何か大変だったな。親父さんは楽に切れまくるし、マリーのよく分からない事いってくるし」

 

俺と楽はしばらくマリーの家でゆっくりした後、帰らせてもらった。楽は用事があると言って走っていったので今は俺一人でのんびり帰ってる。

 

「あれ、クロ君」

 

「ん?おぉ、小咲じゃん。こんな所でどうした?」

 

後ろから声をかけられて、振り向くとそこには私服姿の小咲が立っていた。

 

「私はちょっとした用事。クロ君は?」

 

「俺はマリーの家に行ってて今はその帰りだよ」

 

「へぇ、そっかー…………」

 

そう返事をすると、会話のネタがなくなってしまい黙ってしまった。

 

「あの、クロ君」

 

「どうした?」

 

小咲が俺に話しかけてくる。何故か小咲は緊張してるみたいだし、顔を少し赤くなってる。

 

「私と………付き合って欲しいんだけど……」

 

……………………………………え?

 

 

 




感想と訂正があればお待ちしております。


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第22話 週末にオネガイ

小咲の突然発言の後だと言うのに今回
短いし、特に面白いことも書けなかった。



「私と付き合ってくれないかな?」

 

そう小咲に言われた俺は硬直していた。いきなり、付き合ってくれとか言われて落ち着いて奴なんて中々いないだろう。

 

「え、いや、その、えっと……」

 

「一条君の家に用があるんだけど一人じゃちょっと入りにくくって」

 

「え?」

 

あれ、イマイチ把握できない。

 

「えっと…………付き合ってくれって言ったのは、小咲が楽の家に行きたいから?」

 

「う、うん。そうだけど……なんか変だった?」

 

あー、つまりあれか。俺はただ、一人で付き合ってくれの意味を勘違いしてただけか。びっくりしたよ。小咲にガチの告白されたのかと思った。

 

「まぁ、それはいいけどよ。楽に用事って?」

 

「うん。えっとね、週末にウチの従業員の人が来られなくなって、それでお母さんがなるべく料理の得意な人を一日バイトでいいから、連れて来て欲しいって。私、友達で料理得意なの一条君くらいしか知らないから。それで、バイトに誘うなら早い方がいいかなって思って一条君の家に行こうと思ったんだけど、一人じゃあの家に入りにくくて…………」

 

「なるほどね…………小咲さ、もしかしてるりになんか言われた?」

 

「どうしてそこでるりちゃんがでてくるの?」

 

「いや、だってるりになんか助言されないと小咲から楽を誘うなんて事ないだろうなって思って」

 

いつも楽と話す時に緊張してる小咲が誰の助言もなしにそんな事をするなんて俺には考えられない。

 

「違うよ!今回は自分から考えたことなんだからね!」

 

「ふーん…………まぁ、これを機会に楽にアタックでもしてみなよ」

 

「うん。ありがとう、クロ君」

 

「なんなら、仕事中に押し倒しちゃえば?絶対楽の奴喜ぶぜ」

 

「…………だんだん、クロ君がるりちゃんに似て来た気がする」

 

「なんだそれ?まぁ、そういうことなら早く楽の家に行くか」

 

俺達は楽の家に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、楽ー。いるかー?」

 

家の見張り人?みたいな人に事情を説明して、俺と小咲は家に入れてもらった。

 

「ん、クロ?さっきぶりだな。俺になんか用か?」

 

「いや、用があるのは俺じゃなくて小咲がさ」

 

「こんにちは、一条君」

 

「うぉっ!?小野寺!?ちょっと待ってろ。すぐにお茶出すから!!」

 

「待って待って!すぐ済む用事だから、わざわざそんな事しなくて大丈夫だから!」

 

あぁ、この2人見てるのって本当に面白いな。何度見ても飽きないわ。

 

「………………ていうわけで、週末にバイトを頼みたいんだけど、いいかな?」

 

それを聞いた瞬間、楽はジャンプしながら喜んだ。どんだけ、嬉しいんだよ。…………まぁ、好きな女の子家で一緒に仕事出来るんだもんな。

 

「引き受けてくれてありがと。じゃあ、私達は行くね。行こっ、クロ君」

 

「おぅ。じゃあな、楽。週末頑張れよ」

 

まぁ、まだ一週間もあるけどな。俺はその時何をしてるのだろうか。…………よく考えたらその日部活だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今までで一番短いです。
そして、皆さんが思ったとおり、小咲がただ
クロにお願いをしただけでした。
次はもっとちゃんと書きます。

感想や訂正があればお待ちしております。


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第23話 ウソツキ発見器

こんな夜中に投稿。夜更かししちゃったぜ!


一学期の終業式を終え、夏休みに入りかかった頃、俺達は楽の家で勉強会をする事になった。

 

「いやー、楽の家で勉強会すんのこれで二回目か。でも、なんでこの時期に勉強会?」

 

「俺じゃねえよ。鶫が発案したんだ」

 

今ここにいるメンツはこの前一緒に勉強した俺達六人に、鶫、マリー、城野崎を加えた9人。この大人数で勉強する事になったんだが…………

 

「鶫、なんだそのヘンテコっぽい機械は?そんなもの勉強に使うのか?」

 

「ち、違うぞ神崎クロ。これは勉強の合間のレクリエーションにでも使おうと思ってだな」

 

…………まぁ、期末テストとかそういうのじゃなくて、ただの、宿題だからそういうことをするのもありだと思うが……

 

「鶫、あんた何か変な事考えてるんじゃないでしょうね?」

 

「ははっ、そんな事考えてないですよ」

 

桐崎さんが鶫に聞く。鶫はその答えを笑って返したが次の瞬間…

 

ビーー!!!

 

いきなり、その機械から音がなった。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、それはたまたまネット通販で買えたものなの?」

 

「えぇ。嘘発見器です。勉強の合間にやりましょう」

 

「いいね、面白そう!」

 

…………なんか嫌な予感しかしない。どうしよ、俺とるりの事とか聞かれたら。何か音がなる気しかしない………

 

なんやかんやで最初は鶫がやる事に。

 

「私ですか。じゃあ、どなたか私に質問してもらえますか?」

 

「じゃあ、私がしていいかな?」

 

「小野寺様?」

 

トップバッターの鶫に小咲が手を上げた。まぁ、小咲だしそんな変な事を聞いたりは…………

 

「鶫さんは今好きな人はいますか?」

 

「ぶふっ!!小野寺様!いきなり何を!?」

 

前言撤回。まさか、こんな事を聞くとは微塵も思わなかったのに……

 

「前に話した通り、私に好きな人はいませんよ」

 

ビーーー!

 

「やっぱり!」

 

「違います!!!」

 

顔を真っ赤にして、嘘発見器を否定する。

 

「まぁ、嘘発見器なんて元々あてになるようなもんじゃありませんし、そもそも、質問がいけなかったのかもしれません」

 

「うーん…………あ、じゃあ!」

 

「鶫さんは恋をしてますか?」

 

「だからしてませ『ビーー!!!』

 

「おかしいな?うん、この嘘発見器は壊れてるに違いない。そうだ、壊れてる」

 

…………必死だな、鶫。なんか惨めでかわいそうだよ。

 

「あ、じゃあ俺から鶫に質問してもいいか?」

 

次に手を上げたのは城野崎。……何かエロい事を聞きそうな気がするぞ。

 

「じゃあ、聞くぞ」

 

「鶫は今誰かと付き合『しつこい!!』」

 

「私の事はどうでもいいんですよ。一条楽。次はお前がやるんだ」

 

「えっ、俺!?」

 

「そうだ。お前はお嬢を本気で愛している?イエス、ノー?さぁ、答えろ」

 

てか、絶対それを聞きたいがために今日それを持って来ただろ。クロードとかいう奴に命令されたのか?

 

「そ………そんなもん、イエスに決まってんじゃねぇか」

 

シーン………

 

「ど、どうやら本当のようだな」

 

あれ?なんで反応しないんだ?楽が好きなのって小咲だろ?この嘘発見器不良品なんじゃねえのか?

 

「楽様、私も質問していいでしょうか?」

 

今度はマリーが楽に質問をしようとする。

 

「楽様はこの中で誰が一番可愛いと思う女の子はどなたですか?」

 

「えっ!?…………そ、そりゃハニーじゃねえか」

 

フニョンフニョン

 

「……少しメモリが反応してるな」

 

「うぉっ!!知らん知らん。俺はしらんからな!!てか、なんで俺ばっかりなんだよ。はい、次クロ!!」

 

「えっ、今度は俺かよ………」

 

「じゃあ、私から質問させてもらいます」

 

俺の番になると、とっさにマリーが手を上げる。妙な事は聞かないでくれよ…………

 

「楽様と同じ質問です。この中で一番可愛いと思う女の子はどなたですか」

 

なんでそんな事聞くんだよ。俺は楽みたいなハーレム野郎じゃなくて、るり一筋男だぜ。

 

「……………………るり…………」

 

シーン…………

 

「まぁっ!!どうやら本当の様ですね!よかったですね、宮本さん」

 

名前を言われた本人は顔を真っ赤にしながらこっちを睨んでる。なんだよ、俺の本心を述べたまでだぞ。俺も恥ずかしいんだからな。

 

「はーいっ!じゃあ、次俺が質問する」

 

「あ、その次俺な」

 

集と城野崎が手を上げる。こいつらにも質問されたくねぇな。

 

「ぶっちゃけた話、クロとるりちゃんってどこまで

 

バゴォン!!!

 

「変な事聞いたら殴るわよ?」

 

「もう、殴られてます」

 

明らかに人を殴ったような音じゃないのが聞こえた気がする。

 

「じゃあ、次俺な。実はクロって背の小さい女の子と仲良くするのがいいって思って

 

ドゴォン!!!

 

「聞いていい事と悪い事があるって知ってるかしら?てか、今明らか私を罵倒した感じに聞こえたんだけど?」

 

集と城野崎が部屋の隅の方でノックアウトしている。ご愁傷様だな。

 

「じゃあ、次誰がやる?」

 

「それでは、私が」

 

今度は、嘘発見器をマリーが持つ。

 

「私は楽様を愛しているか?答えはイエス!」

 

「えっ、お前一人で何してんの?」

 

「そして、私はクロ様が大好きですか?これもイエス!」

 

「お前マジで何がしたいの!?」

 

一人で質問して一人で答えるマリー。まぁ、自分の本心を改めて自覚するということで。

 

「あ、じゃあ私から質問。あんたが

ダーリンにキスしたっていうのは本当?」

 

「それはもちろん、本当ですわ」

 

シーン…………

 

「一条楽、貴様どういう……」

 

「うおぉっ!待て、誤解だ!!」

 

えっ!?いつの話!!俺と楽がマリーの家に行った時か!?それとも……俺の他にも集、城野崎、るり、鶫はこの事を知らなかったようだ。

 

「へぇ、楽にキスしたんだ。俺にもしてよ」

 

「地球が爆発しても嫌ですわ」

 

「じゃあ、俺なら?」

 

「宇宙が消えてなくなっても嫌ですわ」

 

ボロクソだな、おい。

 

「次は……小野寺さんとかどうですか?」

 

「えっ、私!?」

 

「あ、じゃあ俺が!ずばり、小野寺のバストはC以上?それとも、以下?」

 

ドグシャ!!

 

「わー!ちょっとタンマ。冗談だって…………ギャーーー」

 

……集も懲りないな。

 

「……………………………………い………………い…………」

 

「そこ頑張らなくていいから、小野寺!!」

 

顔を真っ赤にして必死に答えようと頑張ったが、途中で楽に止められた。ちっ、もう少しだったのに。

 

「小咲をあのバカのような目でみたらいくらクロ君でも怒るわよ?」

 

「…………イエッサー」

 

またここ読まれた。いい加減それはやめて下さいよ…………

 

「はい、じゃあ次るりちゃん!」

 

「えっ、私もやるの?」

 

「はーい、じゃあ俺が質問するー」

 

城野崎。マジで変なこと聞いたら殺されるぞ。もうやめとけよ。

 

「えっとー、宮本ってこの中の男子なら誰が一番好み?」

 

「つっ!!あんたね………………」

 

「はい、ストップ。この質問は楽もクロも答えたんだから宮本も答えるべきだ」

 

「くっ!…………………………クロ君よ」

 

シーン…………

 

マジかよ、すげぇ嬉しい。でも、よく考えたら楽は(偽)彼女持ちで他2人はるりがかなり嫌ってそう。結果的に俺は選んだ……という風にも考えられなくはないな…………

 

「ふーっ!これが両想いってやつじゃないんですか、ねぇ、舞子隊長」

 

「そうだな、城野崎隊員。そして、俺からも一つ質問。俺的にるりちゃんはBカップもなさそうに見えるがそこのところ

 

バゴォン、ドゴォン、ドグシャ

 

「あんたマジで殺してあげてもいいのよ?てか、殺すわよ。そこの隊員と共に」

 

「ずみまぜんでじだ」

 

「ったく、はい、千棘ちゃん」

 

「え、私も!?」

 

「あ、それなら私が。桐崎さんは楽様とキスをすませましたか?」

 

何でこんな恋愛話しにしかならないんだよ。もっと違うことがあると思うんだけど……

 

「い、いや、それはまだ……わたしたちはピュアな付き合いを…………はっ」

 

ビーー!!

 

『えぇーー!!?』

 

「してないしてない、断じてしてない。もう!はい、鶫!」

 

「はい、じゃあ俺!」

 

…………もう本当に死んでも知らないぞ集。

 

「実は前々から気になってたんだよ。普段は目立たないが、俺は実は誠士郎ちゃんはクラスの中でもトップクラスだと思う。教えてくれ、誠士郎ちゃんのバストは少なくともEカップ以上…………答えは如何に」

 

「あんたはそういうことしか聞けないのか!!」

 

「そ……そ……そんなにあるわけないだろうが!!!」

 

ビーービーー!!!

 

「鶫ーー!!?」

 

「もーー!!!」

 

(E以上ってどのくらいだ?)

 

(私だってこう見えてもE以上)

 

(E?Eって?)

 

「ごめんごめん。じゃあ今度はもっとマシな質問。俺と楽と城野崎なら誰が一番好み?」

 

「はい?」

 

「おい、待て集。なんでそこに俺をまぜなかった?」

 

「まぁ、いいからいいから。で、答えは?」

 

「…………だ、誰も好みじゃない」

 

ビーーー!

 

「えーー、今のどういうこと?」

 

「こんなものはもうやめです」

 

…………結局、この日の勉強会は全く勉強にならずに終わってしまった。ただ、俺としてはるりが何で俺を選んでくれたのが疑問に残っていた。

 

「…………クロ君」

 

「ん?どうした、るり」

 

「…………その、私をあの中で一番可愛いって思ってくれてありがとう」

 

「………………おう」

 

まぁ、今はわからなくてもそれでいいかな、と思う自分がいた。

 




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第24話 エンニチでの祭り

少し時は遡り終業式の日。

 

「るり、小咲。もうすぐ縁日だろ?その日の祭り一緒にまわらないか?」

 

「うん!別にいいよ!」

 

「……男子と一緒に行かずに私達を誘うなんて………クロ君、男の友達っているの?」

 

いきなり失礼だな、おい!

 

「別にいないわけじゃないけど、もし行くなら、集と城野崎だぜ?何しに行くかわかったもんじゃねぇよ」

 

「…………ごめんなさい。クロ君はあの二人とは違うからそんな心配しなくても大丈夫よ」

 

あの二人と違うってどういう風にかよくわからねえけど……

 

「じゃあ、縁日の前の日にまた連絡するからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

縁日

 

「って、言ったのに何で小咲がいないんだよ」

 

「知らないわよ。いきなり、ちょっと行けなくなったからクロ君とるりちゃん二人で楽しんできて、って言われたから」

 

祭りに来た俺とるりは二人で色々まわっていた。るりは片っ端から食べ物を買っていて、俺はすっかり荷物持ちになってたりとする。

 

「にしても、るり。お前去年同様可愛いな」

 

るりの今の姿は祭りということで浴衣である。るりが着ている浴衣は非常に似合っていてピッタリだった。

 

「なっ!?いきなりなにいってんのよ!!」

 

「俺がそう思っただけなのに、なんでこんな仕打ち!?」

 

褒めたつもりなのにいきなり蹴られた。確かにいきなり可愛いとか言ったのは悪かったが、何も蹴ることなんか…………

 

(何でクロ君は不意打ちのように言うのよ。…………よく考えたらこれってデートなんじゃ…………)

 

「おーい、るり?あっちにわたあめあるけどいるか?」

 

「いる!!」

 

俺達は二人でこの縁日を楽しむことにした。……にしても、小咲に限って用事って…………

 

 

 

 

 

 

 

「るりちゃん、クロ君。二人で楽しんできてね。あわよくば、そのまま…………」

 

「楽様と桐崎さん。二人の邪魔をしてあげましょうかしら?」

 

「ダメだよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、クロ君は恋結びのお守りは買いにいくの?」

 

恋結びのお守り。それを持っているだけでとてつもない恋愛成就を発揮すると言われている。販売直後、すぐさま売れるほどの人気らしい。

 

「別にそんな予定はないけど……るりはどうなんだ?もしかして、欲しいのか?」

 

「私がそんなもの買う人に見える?……まぁ、小咲のために買いに行こうかなとは思ってたけど」

 

あぁ、今日来れない小咲のために何か土産?という事と、後、楽とうまくいくようにってためにか。

 

「じゃあ、買いに行くか?一通りこの食べ物食べてから。すぐ売り切れるらしいからなるべく早く」

 

今俺の手にあるものだけでも、焼きそば、たこ焼き、イカ焼き、フライドポテト、ラムネとたくさんある。そして、今のるりの手にはチョコバナナがあるし。

 

「それもそうね。クロ君もその中の欲しいやつ食べていいわよ?」

 

「いや、俺は別に…………」

 

ぐ〜

 

「………………もらいます」

 

「………………ぷっ、変なの」

 

「わ、笑うなよ…………」

 

俺達はすぐ近くにあったベンチに座って荷物を置く。俺はどれしようか迷った結果、焼きそばを選んだ。

 

「じゃあ、いただきまーす」

 

「…………どうぞ」

 

買った後、しばらく放置してしまっていて、少し冷めてしまっていたが、それでも普通に美味しかった。

 

「これうまいな。るりも食べるか?」

 

そう言って俺はるりに焼きそばを渡そうとする。

 

「そうね。一口もらおうかしら」

 

チョコバナナを食べ終えたるりが、俺の焼きそばを取って、口に入れた。

 

「これ、美味しいわね。どこで買ったやつだっけ?」

 

「確か、ガラの悪そうな男の人が作ってた所だと思う。ちょうど、楽の家に住んでそうな感じの」

 

「また後で、行ってみようかしら」

 

「俺は別に構わないぞ。どこに行くかはるりに任せるよ」

 

るりから焼きそばを受け取り、もう一度、食べようとする。

 

…………よく考えたらさっきのって間接キスじゃないのか?それに今俺がしようとしている事も。るりは何も気にせずイカ焼き食ってるし、俺も気にせず食べた方がいいのか?

 

「………………まぁ、いいか。気にしてる方が負けな気がするし。るりもそんな事気にする女の子じゃないだろ」

 

「何の話し?」

 

「いや、別に」

 

うん、やっぱりこの焼きそばは普通に美味しいわ。後で、俺も買いに行こ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと。一通り食べたしそろそろ恋結びを買いに行きますか」

 

「えぇ、そうね。あの恋結び凄く人気みたいだし早く行かなきゃだし」

 

俺達は恋結びが売られる方へ向かう。

 

「…………多っ」

 

「これ売り切れてるんじゃ………」

 

それほどに人は多かった。行列とか関係なく、ただの集団というような感じだった。

 

「どうしよう、何か売り切れてる気しかしない」

 

「まぁ、行くだけ行ってみようぜ」

 

そう言って、俺はるりに手を出す。

 

「えっ?」

 

「えっ、じゃないだろ。こんな人混みなら離れ離れになる確率、ほぼ100%だろ?だから、手繋がないと。お前、ただでさえちっこいんだから」

 

「ちょ、ちっこいって!!」

 

俺をしばこうとするるりの手を掴み、人混みの中へと入る。はぐれないようにしっかり手を握って。

 

「るり、大丈夫か?」

 

「………………」

 

返事がないから、後ろを向くと下を向きながらもついて来ていた。

 

「………………あぁ、やっぱり売り切れてたわ」

 

「……そう、じゃあ仕方ないわね。戻りましょう」

 

今度はるりが俺の手を引いて人混みから脱出しようとする。

 

「はぁ、小咲へのお土産どうしよ」

 

「そうだな。まぁ、小咲の事だし何かお面とかでも喜びそうだけど……………………あれ?小咲?それに…………楽?」

 

俺が偶然向いた方向に楽とその楽におぶってもらってる小咲を見つけた。何であの二人がここに…………

 

「まさか、楽と小咲のやつとうとう…………」

 

「いや、あの状況からしてそれはないでしょ。とりあえず、あの二人を追いかけるわよ」

 

「りょーかい」

 

人混みからの脱出を試みながらも、俺達は二人を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

「何かあの二人いい感じだな?」

 

「えぇ。もしかして、あの二人のどっちかが恋結びを買う事に成功したんじゃない?」

 

「…………かもしれねえな。あ、楽がいきなり走り出した」

 

「何かあったのかしら?」

 

「まぁ、小咲に聞けば解決するだろ。てか、何で小咲はここに?あいつ、用事があるんじゃ」

 

「それも聞けばわかるわよ」

 

俺達は小咲にそっと近づいた。近づいていることに小咲はまだ気づいてない。

 

「一条君行っちゃった。でも、まぁ今日はたまたまとはいえおんぶしてもらえたし、よかったのかな?」

 

「あぁ、よかったんじゃねえの。楽も喜んでたみたいだし」

 

「そうだよね。うん!」

 

えっ、まだ俺達に気づかないの?

 

「それより、あんたは今日大事な用事があるんじゃなかったの?」

 

「大事な用事?それって一体……………………るりちゃん、クロ君?」

 

「やっと気づいたか」

 

「私達と祭りに行く約束をしたのに、それをすっぽかしてでもしないとダメな用事って何か教えてもらえるかしら?」

 

「る、るりちゃん。顔怖いよ……」

 

どうやら、るりはかなり怒ってるようだ。今にでも小咲に何かをしそうな様子である。

 

「えっと…………ごめんなさい!用事って言うのは嘘なの!!……実は橘さんから『今日の祭りは二人で行かせてあげて下さいまし』って真剣に頼まれたから、断ろうにも断れなくて。もちろん、私も悪いってわかってるから明日ちゃんと謝ろうと思ってたよ!」

 

…………何故、マリーが俺とるりを二人っきりに?理由がわからない。

 

「つまり、わざとじゃないのね?」

 

「う、うん。わざとじゃない」

 

「…………はぁ。それなら別にいいわ。明日、橘さんには理由を問い詰めるけどね」

 

うわー………マリー、マジでドンマイ。るりの尋問は正直大変だぞ。今から合掌しとこうか。

 

「小咲、あなたまだ時間あるの?」

 

「うん。まだ大丈夫だよ」

 

「そう。それなら今から三人で行きましょ。クロ君、さっきの焼きそばが食べたいわ」

 

「おう。なら、さっさと行こうか」

 

俺とるりは焼きそばの店に向かって歩き出した

 

「………………ねぇ、るりちゃん。言うタイミングわからなくて中々言えなかったんだけど、何でクロ君と手繋いでるの?」

 

「「えっ?」」

 

手を見ると確かに俺達は手を繋いでいた。もしかして、恋結びの時からずっと?何の違和感もなかった。

 

「もしかして…………二人は付き合いだしたとか?」

 

「ち、違う!それは違う!!」

 

「そうだぜ。これは恋結びを買いに行こうとしたけど、人が多すぎてはぐれそうだったから手を繋いだだけで。るり、ちっこいし」

 

「………………だから!!!ちっこいって言うな!!!」

 

「ぐはっ!!!」

 

るりの右ストレートが見事に俺の鳩尾に決まり、俺は膝をついて倒れた。

 

「小咲!!さっさと行くわよ!」

 

「えっ、でも、クロ君が」

 

「いいから!!!」

 

「はい。ごめんね、クロ君」

 

小咲と怒ったるりは先に行ってしまい。俺は一人取り残された。しばらく休んで歩き出した時にはるりと小咲はもう帰ってしまったので、俺も家へ帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、小咲に聞いた話だが。集と城野崎が怒っているるりにナンパして二人は本気でぶん殴られたらしい。集と城野崎もあれだが、二人には本当に悪い事をした気がした。




感想と訂正をお待ちしております。


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第25話 海で改めてジッカン

夏休みに入りしばらく経った頃、この前の勉強会で行ったメンバー全員で海へ来ていた。

 

「にしても、よくこんなビーチ近くの民宿を取れたよな」

 

「知り合いがキャンセルするって言ったからな。安く譲ってもらったんだ。みんなの予定が空いててよかったよ」

 

この海へ遊びに来れたのは集のおかげなのだ。こういう時、人望がいい人間ってホント助かるよな。

 

「私日本の海って初めて。ノースカロライナ以来かな?」

 

「私は見るだけですがモルディブ以来でしょうか?」

 

うわー、桐崎さんもマリーも金持ちかよ。羨ましいな…………

 

「あー楽しみ楽しみ……わたしいっちばーん!!」

 

桐崎さんがいきなり走り出した。

 

「キャアアアー!!!うっっっっみ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『おい、なんだあの美女集団。レベルたっけ…………』

 

『芸能人?見たことないけど……』

 

『どこの雑誌の子だろ…………』

 

俺達がビーチでパラソルを立てていると、周りの視線が一斉にこっちに集まった。まぁ、こうなる事は何となくわかっていたけど。なんせ、桐崎さんにマリー。小咲も鶫もそこらへんの女子とは比べものにならないから。俺が一番可愛いと思っているのはるりだけど。

 

「おや?誠士郎ちゃん。今日は珍しく水着なんだ?」

 

「いつもと違う誠士郎ちゃん。凄くいいと思うぞ」

 

鶫の珍しい格好に集と城野崎が注目する。

 

「うぅ……私はスーツでいいって言ったのにお嬢が…………」

 

「海にまで来て何言ってるのよ。観念しなさい」

 

…………にしても、鶫の胸って大きいな。マジでEカップ何だろうか……

 

「鶫さんの目に注目しているそこの変態さん?まず、どこの指から折って欲しいのかしら?」

 

「冗談にきこえないからやめてくれよ、るり。後、あの胸は男子からしたら反則だ」

 

俺の後ろから手を取って指を握るるり。いや、本当に冗談に聞こえない。

 

「何よ…………クロ君は胸が大きい人の方が好きなの?」

 

「いや、別に。大きいなと思って見てたけど俺は巨乳好きじゃないぞ。別に小さくても気にしない」

 

「そ、そう…………」

 

「よかったね、るりちゃん」

 

何が良かったんだ?小咲の言ったことがイマイチ理解できない。

 

「…………るり、お前の胸は小さいが別にそのままでいいんじゃねえの?いきなり胸がでかくなったら逆に俺はやだぞ」

 

「私が一体いつどこで胸を大きくしたいといったのかしら?大体あれは泳ぐ時に邪魔になりそうだからいらないわ」

 

「あ、そうですか」

 

胸を大きくしたいんじゃないのか?まぁ、るりのあの泳ぐスピードの速さは胸が小さいおかげかもしれねえな。知らねえけど。

 

「…………A……B……B………C……B…………B………お!あそこにEカップが!」

 

「おい、舞子隊長!あそこにGカップがいるぞ!俺生でGを見たの初めてだ!ふぅ!やっぱり夏のビーチはこうでなくちゃな!」

 

それを聞いた瞬間、るりが瞬間移動のように集と城野崎の背後を取り金属バットを構えた。言いたい事は色々あったがとりあえず……敬礼。

 

「ねぇねぇ、君達どっから来たの?よかったら俺達と一緒に遊ばない?」

 

「えっ」

 

「えっとー……」

 

まずい!桐崎さんとマリーのピンチだ!!桐崎さんは楽がいるからいいとしてマリーは…………

 

「すいません。それはもしかしてナンパというやつですか?そういうことなら一瞬で警察呼びますよ?」

 

「えっ…………」

 

…………うん、何の問題もなかった。ノープロブレム!!…………あ、楽が空中へ飛んだ。楽、ご愁傷様。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、夜の食事当番を決めようか。夜はバーベキューセットを借りることになってるから」

 

「おぉ、さっすが舞子隊長!」

 

どうでもいいが、集のアダ名は舞子隊長で定着したのか?集の方が呼びやすくていいような気がするが。

 

「「げ」」

 

「おぉ、恋人同士で当番か。よろしく頼むぞ、楽」

 

「なんで私があんたと…………」

 

クジ引きの結果、夜の食事は楽と桐崎さんになった。……桐崎さんって料理できるのか?まぁ、バーベキューだし大丈夫か。

 

「さーてと、それじゃあ泳ぎに行くかな。小咲もどうだ?ってよく考えたら小咲は泳げないんだな」

 

「うん。でも、大丈夫だよ。私、海に来たらああいうの作って楽しんでるから」

 

小咲が指差す方向にはいつの間にか作られた砂のお城があった。他の人もあまりのクオリティに写真を撮るものがたくさんいる。

 

「小咲がいいなら、それでいいや。るりー、泳ぎに行こうぜ」

 

「えぇ。じゃあね、小咲」

 

「うん。二人ともがんばってねー」

 

小咲と別れて俺達は人があまりいない水が深い方に来た。水泳部の俺達からしたらこれくらいは造作もない。……にしても、暑いな。このままだったら日焼けして肌がやばいことになりそうだ。日焼け止め塗ればよかった…………

 

「…………そういえば、クロ君。ここへ来る時、小咲から聞いたんだけど今度、春が一緒に遊びに行きましょう、って言ってたらしいわよ」

 

「えっ、ホントか!?」

 

「なんで嘘つく必要があるのよ。友達もつれて来るから遊園地に行きたいです、って言ってたそうよ」

 

「へぇ、それは楽しみだな。ちゃんと予定空けとかないとな」

 

それだけ会話をかわすと俺達は自由に泳ぎ始めた。クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライと様々。るりの方は泳ぐ準備が万端だったようで海の中へ潜ったりして遊んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れた。なんか飲みもん買って来るわ。何がいい?」

 

「ラムネでいいわ。私はここで待ってるから、よろしく」

 

散々泳いで疲れた俺達は一旦ビーチに戻り飲み物を買うことにした。この暑さだしやっぱりいつもより疲れるのが早く感じるな。

 

『ラムネ二つですね?300円になります』

 

さて、早く戻らないとな。るりに怒られたらやだし。………………あれ?

 

『ねぇ、いいじゃん。俺達と遊ぼうぜ』

 

「いや、私は…………」

 

『誰か待ってるの?そんなのほっといてさ。俺達と遊ぶ方が楽しいぜ』

 

あー、あれか。これはさっきのと違う奴だけど、ナンパだよな。

 

「あのー、すいません。ちょっといいですか?」

 

『『あん?』』

 

るりに絡んでいた二人が俺の方を向く。うわっ、いかにも不良って感じなやつだ。嫌だな、こういう人と話すのって。

 

「いやー、ごめんなさい。この子俺の彼女なんですよ。だから、手を離してもらえませんか?」

 

「か、彼女……///」

 

るりが照れて顔を赤くする。すまん、るり。こうでも言わないと引いてくれなさそうだし。

 

「あぁ。彼氏いたんだ。じゃあ彼氏さん、俺達君の彼女借りるけど大丈夫だよね?」

 

手をポキポキならしながらだんだん近寄って来る。なんでこういう公共の場で暴力とか振ろうとして来るのかな…………

 

「いやー、それは困りますね。知らない男に彼女が連れてかれるのは黙って見てられませんので」

 

あまり事を大きくすると、部活の方にも影響でるかもしれないから、嫌なんだけど…………

 

「好きな女の子が他の男に取られるのはもっと嫌なんでね」

 

今は彼女設定だからこういうことをいってもまぁ大丈夫だろ。

 

「じゃあ、さっさと殴られ『あ、クロ様!!こんな所にいましたか!舞子様が呼んでおられますよー!』あぁ!?」

 

俺が殴られそうになった瞬間、マリーが俺の方へ走って来た。

 

「あら、どうされましたか?」

 

「いや、こいつらがるりを連れ去ろうとしてたから止めようとしてた」

 

「まぁ!!さすがクロ様!お優しいのですね!!」

 

いや、女の子が連れ去られそうになったら誰でもそうすると思うけど。

 

「おい、てめぇ。何俺達を無視してくれてんだ?」

 

「彼女いるって言ってたくせにまた女の子が来たぞ。あれか、お前二股してんのか?」

 

「…………なぁ、マリー。こいつらどうにかしてくれねえか?もうあれ呼んでもいいから」

 

「わかりました。それなら遠慮なく」

 

「さっきから何二人でゴチャゴチャ話してんだよ!!!」

 

また男が俺に殴りかかって来る。

 

パチン!

 

とマリーが指で音を鳴らした瞬間。例のごとく、俺とマリーを取り囲むように警察の方が来てくれた。

 

「はっ?」

 

「その二人を連れて行って下さいますか?」

 

『かしこまりました』

 

そう返事をして、警察の人達は不良男二人を何処かへ連れて行ってしまった。

 

「ふー、何とか事を大きくせずにできた。サンキューな、マリー」

 

「礼には及びません。それより、宮本さんを心配してあげて下さい。私は先に向こうへ戻りますから」

 

「おぉ、わざわざありがとう」

 

もう一度マリーに礼を言って、俺はるりの方へ近寄る。

 

「大丈夫だったか?」

 

「えぇ。ありがとう、助かったわ」

 

あれ、思ってたより元気そうだな。まぁ、それはそれでよかったんだけど。

 

「ねぇ、クロ君。さっきの言ってた事ってどうなの?」

 

「さっきの事?」

 

「好きな女の子が他の男に取られるのはもっと嫌なんでね、って」

 

…………何で今それを聞くのかな。何か卑怯じゃないか?いや、確かに好きだけどさ。

 

「あれは咄嗟に思いついて言っただけだよ。何だ、俺に惚れたのか?」

 

「…………そんなわけないでしょ。ほら、早く戻りましょ」

 

ここで好きだって言ってもよかったかもしれないけど、やっぱり俺は理想な告白の仕方で告白したい。この前はつい口を滑らせかけたけど。

 

「あ、るり。これお前の分のラムネ」

 

「…………ありがとう」

 

「おぅ!!じゃあ行くか」

 

俺達は自分達のパラソルへ戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

るりside

 

「私を守るためとはいえ好きって言われた」

 

ラムネを飲みながら、前を歩くクロ君をじっと見る。クロ君は中2の時からの友達。転校して来て、最初は凄く暗い人だったけど、だんだんそれがなくなってきて今では本当に明るい人になった。小咲と比べたら一緒にいる年数は少ないかもしれないけど、部活が一緒だから共にいる時間は結構長い。でも、彼と一緒にいるのは本当に楽しい。小咲がいればもっともっと楽しい。

 

クロ君は私に優しすぎる気がする。私もクロ君には優しすぎる気がする。時々、蹴ったりしたりはするけど……。けど、私に優しくしてくれる彼が。

 

いつも私と一緒にいてくれる。私の頼みは基本的に聞いてくれる。私のために色々付き合ってくれる。小咲と一条君の事を協力してくれる。私が困ってる時はいつも助けてくれる。私の悩みも聞いてくれた。時々、私の事をバカにしてきたり冗談を言って困らせて来る時もある。そして、さっき。私の事を体を張って守ってくれようとした。

 

私は一条君や小咲ほど鈍感じゃない。口ではいつも誤魔化してるけど何となくわかる。クロ君はおそらく私に友達以上の好意を持ってると思う。これで外れてたら悲しいけど。

 

そして、今日改めてわかった。さっきの事で改めて実感できた。私、宮本るりは神崎クロ君のことが本当に

 

 

好きだ、って事が。




るりちゃんが自分の気持ちに気づいちゃった!!
これはまさか…………もうすぐなのか!?
感想と訂正があればお待ちしております!


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第26話 モヤモヤをカイケツ

ニセコイ2期決定マジ嬉しい!!!
るりちゃんはもちろん小咲や万里花にも期待!
春ちゃんと風ちゃんもでてきて欲しいな……



「…………聞いてくれ、楽隊員、城野崎隊員、舞子隊長。これはかなり重要な事なんだ」

 

海での旅行二日目。俺達は来ている男子全員で集まっている。

 

「どうした、クロ隊員。お前から話しを切り出して来るなんて珍しいな」

 

「舞子隊長。これはとうとうクロの奴も目覚めたってことなんでしょう」

 

「その隊員とか隊長とかやめねーか?」

 

集と城野崎はノリがいいが、楽は悪い。隊員とか隊長をやめる?はっ、天下の舞子集様に何て事を!!………話しを続けよう。

 

「俺の重要な事…………それは」

 

「「「それは?」」」

 

「………………昨日の夜から」

 

「るりの様子がおかしい」

 

「よーし、城野崎隊員。今からナンパにレッツゴーだ!!」

 

「了解であります!舞子隊長!」

 

「ちょっと待てえぇぇぇぇ!!」

 

俺の悩みを無視して集と城野崎がナンパに行こうとした。そんな二人を楽は呆れた目で見ていたが。

 

「いや、本当におかしいんだよ!俺が昨日の夜、バーベキューの串を渡したら目線逸らしながら受け取るし、あのるりがバーベキュー全然食べてなかったし、喋りかけたら返事しかしないし、何かもう夜から避けられてるし!」

 

「え、それはおかしいな」

 

「あぁ、おかしい」

 

「確かに。あの宮本が」

 

「「「夜ご飯を全然食べなかっただと!!?」」」

 

「一番はそこなのかよ!!」

 

なんだ、こいつら。俺の悩みを真剣に聞いてくれる気はあるのか?

 

「まぁ、冗談はこれくらいにして。昨日何があったんだ?クロが何かしないとそんな事にはならないぞ」

 

俺が昨日るりにした事……いっぱいありすぎるような気がする………

 

「えっと……海に着いて、るりの胸の話しをしただろ。クジ引きをした後るりと一緒に海の深い方へ行って泳いで、その後は………疲れたから俺がラムネ買いに行って帰ってきたらるりが不良に絡まれてたから俺が助けた。そんなもんか?」

 

「…………クロ、最後のやつもっかい言ってくれ」

 

「だから、るりが不良に絡まれてたから俺が助けた。その後なんだよな。るりの様子がおかしくなったのって」

 

((いや、惚れた男に助けられて様子がおかしくならない奴なんかいるかよ!!こいつどこまで鈍感なんだ!))

 

「クロ、お前って鈍感なんだな」

 

「「お前が言うな!!」」

 

「えぇ!?何で俺こんなに怒られてんの!!」

 

確かに楽だけには鈍感なんて言われたくない。でも、るりの事は本当にもやもやする。好きになった女の子があんな様子なのを俺は黙って見てられない。てか、俺が鈍感ってどういうこと?

 

「クロ隊員。別にお前が心配する事じゃないと思うぞ。少ししたらるりちゃんはいつものるりちゃんに戻るさ」

 

「集がそういうなら信じるけどさ。でも、やっぱり心配なんだよな」

 

「大丈夫大丈夫。今頃、宮本の親友が何かアドバイスとかしてる頃だろーよ」

 

 

 

 

 

 

るりside

 

「小咲、橘さん。少し困ったわ」

 

「いきなりどうしたのるりちゃん?」

 

「宮本さんが悩み事なんて珍しいですね」

 

二日目も砂遊びをしている小咲とパラソルの中で本を読んでいた橘さんに声をかけた。

 

不良に絡まれてるのを助けてもらってから、自分の気持ちにはっきりとわかった私は、クロ君とまともに話せなくなってしまった。

 

「もしかして、昨日の事を気にしていらっしゃるのですか?」

 

「………………うん」

 

「昨日の事?」

 

「昨日、クロ君が私を不良から守ってくれたのよ。まぁ、追い払ってくれたのは橘さんの警察?の人なんだけど。でも、助けてもらってから自分の気持ちがはっきり理解できちゃって。それからは、クロ君とどう接したらいいかわからなくなったのよ」

 

「それで昨日の夜からるりちゃんの様子がおかしかったんだ」

 

コクン、と無言で頷く。

 

「でも、今まで通り、普通に接したらいいんじゃないかな?」

 

「それはわかってるのよ。でも、いざクロ君と向き合ったらどうしたらいいのかわからなくなって……」

 

「重症なんだね」

 

小咲に重症って言われた。私からしたらあなたと一条君の方が重症に思えるわ。何で、付き合わないのよ!

 

「……でしたら、一度二人っきりで話してみるのはどうでしょうか?」

 

「「二人っきりで?」」

 

「はい!幸い、舞子さんが夜は花火をすると言っておりました。ですからその時に二人っきりになれば何か話す事もできましょう」

 

「いや、何を話したらいいかわからないって言ったのに、二人っきりで話せるわけないじゃない」

 

「いえ、二人っきりならきっと話せます!私が小学生の頃、クロ様と遊んでいる時はいつでも二人っきりでしたわよ?」

 

「いや、そういう問題じゃなくて」

 

「とにかく、私と小野寺さんでそういう場面を作りますから、とりあえず、頑張ってください!!」

 

「るりちゃん、私もできることは精一杯協力するから頑張って!!」

 

「………………わかったわよ」

 

そんなにうまくいくのかしら?私には成功する気がしないんだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

クロside

 

「お、ついたついた。やっぱり最後は花火だよな」

 

「そうだな。昨日今日と本当に楽しかったよ」

 

二日目の夜。花火をする事にした俺達はいろんな種類の花火で遊んでいた。結局、俺は今日るりと話していない。

 

「私、こういう花火は初めてで……小野寺さん、鶫さん、舞子さん、城野崎さん。向こうでこの花火のやり方を教えてくれますか?」

 

あれ?なんで俺とるりの名前が呼ばれなかったんだ?

 

「モッチローン!!万里花ちゃんの頼みとあれば。なぁ、城野崎?」

 

「おう!クロもこい『城野崎、早く行くぞ!!』えっ、おい舞子隊長!なんで引っ張るんだよ!』じゃあな、クロ。後は頑張れー」

 

集は俺にウインクをしてマリー達の方へついていった。何故か、小咲もこっちを向いてガッツポーズをしている。

 

………………あれ?俺、今るりと二人っきりじゃん?楽と桐崎さんはどこかへ行ってしまったし。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

気まずい。果てしなく気まずい!何これ、俺いじめられてるのか?いじめられてるのか?

 

「…………花火、きれいだな」

 

「…………そうね」

 

マジで助けて!!この空気から俺を出してくれええぇぇぇぇ!!!

 

「………るり、俺なんかお前に悪いことしたのか?」

 

「えっ?」

 

「昨日の夜から俺に対するお前の態度が凄く不自然だ。なんというか、ギクシャクしてる。でも、それをする根拠が俺にはわからないし、るりのそんな様子も見たくない。だから、頼む。お前のその態度の原因を教えてくれよ」

 

「…………別にクロ君が悪いんじゃなくて、私が」

 

「そうだったとしても、思い悩んでる友達をほっとくのは俺にはできない。俺に協力できることはなんでもする。頼むよ、お前の調子悪いのが俺のせいだとしても、るりが原因なんだとしても相談してくれよ。俺達、親友だろ?」

 

俺の今思ってる気持ちすべてをるりに伝えた。二人っきりだから言えることを全部吐いた。これで、るりが戻ってくれたら…………

 

(…………そうか。彼を好きだと思うから、こんなに緊張してしまうんだ。彼は私を励まそうとここまで考えてくれている。彼が私をどう思っているとか気にしなくていい。今はまだ私達はただの親友。それ以上の事はまた、これから考えていけばいいんだから)

 

「………………クロ君、ありがとう。今の事もだし、不良からも助けてくれて。あの時、クロ君がいなかったら、私がどうなってたかわかったもんじゃないわ」

 

「いいさ。大体、あの場面で(好きな)女の子を助けない男がいてたまるかよ」

 

「それもそうね(でも、そんなクロ君を私は好きになってしまったのよ)」

 

「…………あ、るり!今流れ星流れたぞ」

 

「えぇ、私も見たわよ」

 

(どうか、いつかるりと付き合う事ができますように)

 

最初に浮かんだお願い事はそれだった。恋愛は自分の力で叶えるものだろうけど、別にお願いするくらいはいいだろう。

 

「るりは何をお願いしたんだ?」

 

「秘密よ。クロ君が教えてくれるなら教えてあげてもいいけど」

 

「えー。いいじゃん、教えてくれよ!!」

 

「嫌よ。それより、花火なくなっちゃったから舞子君のところに取りに行きましょう」

 

「ちぇ、わかったよ」

 

俺とるりは集達から花火をもらえるため歩き出した。

 

(いつか、この人と………クロ君と恋人という関係になれますように)

 




前の話と今回でだいぶ話が進みました。
次はオリジナルです。自分が大好きなキャラ
四人+クロでいきます。


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第27話 ミンナト遊園地

ニセコイの題名考えるのって難しいですねww
まじで思いつきませんでした。


手を繋いでいるカップル、子供を連れて一緒に歩く家族、空の方から聞こえる女の子の絶叫、寄ってくる子供達に風船を渡すマスコット。

 

小咲の誕生日に春ちゃんと約束した。夏休みに遊園地に行こうと。その約束を果たすために俺は…………

 

「あれ?クロ先輩。どうかしたんですか?何か顔色が悪いですよ?」

 

るり、小咲、春ちゃん、そして春ちゃんの親友の風ちゃんという超美人な女子四人と遊園地に来ていた。何これ。俺下手したら楽より幸せもんなんじゃねえのか?

 

『何あれ、どっかのアイドルグループ?』

 

『あの二人姉妹だよな?うわー、二人ともスゲェ可愛い』

 

『一緒にいるあいつ誰だ?……まさか、あいつはあの四人全ての子を自分の物にしようとしてるんじゃないのか!?』

 

どっかのスケベ主人公と一緒にするんじゃねえよ!!……でも、さっきから周りからの視線が凄く痛い。

 

「…………そういえば、俺達はまだ自己紹介してなかったよな。俺の名前は神崎クロ。苗字は嫌いだから名前で呼んでくれると嬉しい」

 

「私は小野寺小咲。知っての通り春のお姉ちゃんだよ。よろしくね」

 

「宮本るりよ。よろしく、風ちゃん」

 

「こちらこそよろしくお願いします。クロ先輩、小咲先輩、宮本先輩」

 

一人ずつ自己紹介をしていくと、風ちゃんは深々と頭を下げた。

 

「さて、紹介も終わりましたし早速どこか行きましょう!!どこか行きたいところとかありますか?」

 

春ちゃんが俺達に聞く。まぁ、一番最初に行くと行ったらあそこだよな。

 

「私はお化け屋敷以『『お化け屋敷に行こう!!』』二人とも!?」

 

小咲が言おうとした事を俺とるりの声が遮る。小咲の事だからお化け屋敷以外って言おうとしたんだろうがそうは行かないぜ。

 

「ちなみに、小咲に拒否権はないわよ」

 

「もう、酷いよるりちゃん!!」

 

「なるほど、お化け屋敷ですか。面白そうですね。私もそれに賛成〜」

 

風ちゃんもOKを出してくれた。残りは春ちゃんのみだ。

 

「まぁ、確かにお化け屋敷は楽しそうですが…………こんな状態のお姉ちゃんを裏切る事は出来ないんですけど」

 

小咲は涙目になりながら春ちゃんにしがみついている。そこまで嫌なのお化け屋敷。

 

「小咲、心配するなって。たかが遊園地のアトラクションだぜ。そこまで怖いわけねえよ」

 

「ウゥ……ホント?」

 

「おう!それに…………」

 

(きっと楽とデートする事になったらこういうところにも行くんだ。今のうちにならしとけ)

 

俺は小咲に耳打ちをした。聞いた瞬間小咲の顔は真っ赤になったが、しばらく考えた後、コクンと頷いた。

 

「よし、決定。レッツゴー!!」

 

小咲の承諾を得て、お化け屋敷に行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お化け屋敷内

 

『ウワアアァァァァアアア!!』

 

「キャアアアァァァァアア!!」

 

なんだこれ。凄いデジャブ。小咲がビビりすぎて悲鳴あげてる。ずっと、春ちゃんにしがみついてるし。俺が想像した以上にクオリティ高かった。

 

「だ、大丈夫お姉ちゃん?」

 

「も、もう無理だよ……ねぇ、春、ここから出よ?」

 

涙目+上目遣いで春ちゃんを見る小咲。あれは強烈だろうな。あれなら多分気絶するな。…………るりも一回ああいうことしてみたらいいのに。

 

「も、もう少しだから頑張ろ、お姉ちゃん!」

 

「…………は、春がそういうなら」

 

『アアアァァァアアア!!』

 

「イヤアアアアァァァァ!!!」

 

「お姉ちゃん、落ち着いて!!」

 

…………何か姉妹の関係がひっくり返ってるような気がするぞ。

 

「………………あの、クロ先輩。ちょっと聞きたい事があるんですけど?」

 

小野寺姉妹が前を歩いているのを見守ってる中、風ちゃんが俺に話しかけてきた。ちなみに、俺達は脅かして来るお化けをスルーしている。ただ、あの小咲を見たかっただけだからな。

 

「ん、質問か?いいよ。何でも答えてあげるぜ」

 

「では遠慮なく…………クロ先輩の本命は小咲先輩ですか?宮本先輩ですか?」

 

「ぶふっ!!!」

 

いきなり何てことを聞いて来るんだこの子は!!

 

「いや、本命!?それはその……」

 

困り果てた俺はるりをじっと見た。

 

「私も気になるわね。クロ君の本命。私かしら?それとも小咲?(この虚取り方はやっぱり…………)

 

るりまで悪ノリをしてくる。くそー、俺に味方はいないのかよ!!

 

「えと…………そうだ、このお化け怖くないか?なぁ?」

 

「話し逸らしたわね」

 

「逸らしましたね」

 

「うっ………………小咲、春ちゃん。早く出口に向けて行こうぜ」

 

「逃げたわね」

 

「逃げましたね」

 

そんなの言えるわけないだろ。俺の本命は俺の隣を歩いているやつなんだからよ。そうだよ、俺はチキン野郎だよ!!

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、怖かったよー春ー……」

 

「お疲れ様、お姉ちゃん」

 

最初からこんなに疲れていて最後まで持つのだろうか?お化け屋敷を出た後、ベンチで小咲は春ちゃんにもたれかかっていた。

 

「さて、疲れてる小咲はさておき『置いとかないでよ!!』次はどこへ行くのかしら?」

 

「あ、だったら次は私が提案してもいいですか?」

 

風ちゃんが手を挙げる。

 

「風ちゃんどっか行きたいところあるんだ」

 

「はい。私が行きたいところ……それは…………」

 

 

 

 

 

 

 

「ジェットコースターです!」

 

というわけで、お化け屋敷で疲れ果てた小咲をおぶってきた俺達は(この時るりにスゲェ怖い顔で睨まれた)ジェットコースターの列に並んでいた。

 

「おーい、春ちゃん。小咲はジェットコースターとか大丈夫なのか?」

 

「ひゃ、ひゃい?」

 

…………あれ?春ちゃんの様子がなんかおかしいぞ?

 

(風ちゃん。私がジェットコースター嫌いっていうの知ってて連れてきたでしょー!!)

 

(別にそんな事ないよー。私は春の味方だもん)

 

「おい、そこの二人ー。目で会話するなー」

 

てか、小咲とるりもそうだけど人って目で会話できるんだな。今度俺も城野崎にできるか試してみよ。

 

「…………もしかして、春ちゃんってジェットコースター苦手?」

 

「そ、そんな事あるわけないでしょ。クロ先輩は何言ってるんですか。大体、私がお姉ちゃんを守らないといけないんだからこれくらい余裕です!」

 

春ちゃん。そう思ってるならそのガクガクしている足の震えを止めるんだ。明らかに不自然だ。

 

「るりはこういうの大丈夫なのか?」

 

「私がこういうのをビビる人に見えるかしら?」

 

「…………全く見えないな。ずっと涼しい顔してそうだな」

 

ジェットコースターに乗ってても普通に誰かと会話できそうな感じだもんな。

 

「…………そういうクロ君はどうなのよ?」

 

「俺は親父が事件起こしてからは母さんが忙しくて、こういう所には来たことがなかった。遊園地に行ったのは俺とるりと小咲で来たのが初めてで、ジェットコースターは今日初めて乗るんだ。だからわかんねぇ」

 

「そう。じゃあ、これを楽しめるといいわね」

 

「そうだな。楽しめるといいんだけどな」

 

『次の方達どうぞ〜』

 

30分ほど並んでやっと乗れる事となった俺達。背中で休んでいた小咲を起こして春ちゃんの右に小咲を。左に風ちゃんが乗って、その後ろに俺とるりが乗り込んだ。

 

『それでは、お楽しみください!』

 

係員の人がそう言うと、コースターは出発した。へぇー。ジェットコースターってこんな感じなんだ。

 

「ジェットコースターってこんな感じなんだーとか呑気な事思ってると舌噛むわよ」

 

「わかってるよ。この坂を登りきったら一気に下に降りて速くなるんだろ?」

 

「…………クロ君は初めてって言ってたから」

 

そう言って、るりは俺の手を握る。

 

「手くらい握っててあげる」

 

「る、りいいぃぃぃぃいいいい!!」

 

ジェットコースターが完全に登りきり一気に下っていく。

 

「イヤアァァァアア!!」

 

「キャアアアァァァアアア!!」

 

「キャーー!!」

 

「うわーー」

 

春ちゃんと小咲が悲鳴をあげて、風ちゃんは楽しそうにしている。るりは棒読みの悲鳴をあげていた。そして俺は………………

 

「………………キモヂ悪」

 

酔っていた。

 

 

 

 

 

 

『楽しい一時を過ごせたでしょうか?また、お待ちしております』

 

終わってみると酷いものだ。5人のうち3人が瀕死状態なのだから。春ちゃんと小咲は何とか歩けているが、俺は平衡感覚を失ってまったく歩けない状態になっていた。

 

「クロ君、大丈夫?」

 

「目が、目が回る〜〜」

 

「ダメね。このままじゃ埒があかないわ。風ちゃん、ちょっと手伝って」

 

「わかりました」

 

風ちゃんとるりに肩を貸してもらい俺はひきづられながらどこか空いているベンチに座らさせられた。

 

「私達飲み物買ってくるから3人はここで休んでてね」

 

るりと風ちゃんが飲み物を買いに自販機へ向かった。

 

「も、もう、二度と、ジェット、コースターなんか、乗らない」

 

「春の、言う通りだよ。私も、もう乗らない」

 

「ど、同感、だな」

 

三人揃って全滅していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

るりside

 

「ねぇ、宮本先輩。一ついいですか?」

 

ジュースの何を買おうか迷っている時に風ちゃんに話しかけられた。

 

「…………何の質問かしら?」

 

「るり先輩はクロ先輩の事が好きなんですか?」

 

…………何となく予想はしてた。この子はこういう事を聞いてくるんじゃないかとは思っていた。

 

「えぇ、好きよ」

 

自分の気持ちに嘘はつかない。それに春の友達というなら嘘をつく必要がない。

 

「やっぱりですか。何となく見ててわかりました。まぁ、クロ先輩鈍感っぽいですからね」

 

たった数時間でここまで見抜けるこの子はが私はすごいと思うわ。

 

「告白とかしないんですか?」

 

「…………私からするのは遠慮しておくわ」

 

「どうして?」

 

「だって………………」

 

「私から告白したら何だか負けな気がするもの!!!」

 

「ま、負け?」

 

「えぇ!確かに私から告白することだってできるわ!でも、それって何かおかしくない!?あんな鈍感なクロ君に自分から告白するなんて、私が負けを認めてるような感じなのよ!だから私からは絶対告白しない!!」

 

(うわー、この人頑固だなー)

 

「とにかく、私からは告白しない!」

 

「まぁ、るり先輩がそう決めたらいいんですけど」

 

ジュースの半分を風ちゃんに渡して私達はベンチの方へ戻る。

 

「戻ったわよ。三人とも大丈夫?」

 

「ほら、春。飲み物だよー」

 

「あ、ありがとうるり」

 

「るりちゃん、ありがとう」

 

「風ちゃんも助かったよ」

 

疲れ果てた三人にジュースを渡して、しばらく休憩した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(でも、るり先輩とクロ先輩が……何か面白そうな気がする。ちょっと協力でもしてあげようかな?)

 

疲れ果ててるクロの背中を揺するるりを見て、風はクスッと笑った。

 




風ちゃんのキャラがいまいちつかめない。
ちゃんと、原作を読まなければ……
感想と訂正があればお待ちしております!


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第28話 キヅイタ気持ち

遅くなってすいません。新しく投稿し始めた方と並行してやっていると
中々、進まなくて。麻雀描写って難しいな。


しばらく休憩した俺達は次のアトラクションへ向かい歩いていた。まだ、少し気持ち悪いが。

 

「次はこれに乗りましょう!!」

 

春ちゃんが指差すのはコーヒーカップ。春ちゃん、頼むから俺の事も考えて。あんだけ酔ったのにさらに目を回させるなんて君はドSなのか?俺がどうなってもいいのか?

 

「あの、ごめん春ちゃん。俺は乗らないでおくよ」

 

「えっ!?どうしてですか?」

 

「いや、どうしてって言われても…………」

 

「先輩は私と一緒にコーヒーカップに乗りたくないんですか!?」

 

春ちゃんが訴えるような目で俺を見る。違うんだ。別に春ちゃんと乗りたくないわけじゃない。頼むから悟ってくれ!

 

「違うよ、春。先輩は春と乗りたいわけじゃないんだよ」

 

「えっ?そうなの?」

 

風ちゃん、ナイス!ナイスフォローだよ!!

 

「先輩は私と一緒に乗りたいんですよね?」

 

前言撤回。それはフォローであるけどフォローじゃないよ。どっちにしろ俺にはメリットがないような気がする。……まぁ、女子とコーヒーカップなんてシチュエーションは充分メリットになるけど。

 

「…………わかった。じゃあ乗ろうか、コーヒーカップ」

 

「えっ?私とですか?」

 

「違うよ、私だよ」

 

春ちゃんと風ちゃんが俺に詰め寄って来る。そんな二人で俺に詰め寄ってこないでよ。周りを見てごらん。非リア充と思われる方々が俺の事を睨んできてるじゃないか。

 

「み、みんなでのろうぜ!なっ?」

 

「……クロ君、実は私達四人を虜にしようとする鬼畜ハーレム野郎だったのね?」

 

「ちょ、なんでそうなるんだよ!!」

 

「……冗談よ」

 

なんだ、冗談か。よかった…………

 

「3割わね」

 

「残りは!残りの7割はどうなんだ!?」

 

「…………ほら、早くコーヒーカップに乗りましょう」

 

「おい待て!話を逸らそうとするな!!」

 

「ほら、クロ先輩も早くいきましょ」

 

春ちゃんが俺の腕を引っ張ってコーヒーカップに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「結局、こうなるんじゃん」

 

俺、るり、小咲、春ちゃん、風ちゃんの順で円になって座る。気のせいか、風ちゃんが少し俺にくっついてる気がする。

 

「じゃあ、回しますよー!」

 

春ちゃんがコーヒーカップをクルクルと回し始める。………………やっぱり、乗らない方が良かったかも。

 

「…………クロ君、大丈夫?』

 

こんな時でも冷静でいるるりは回りながらも俺の顔を覗き込んで来る。

 

「だ、大丈夫だ!問題ない。うりゃああぁぁぁ!」

 

そんなるりの顔を見た俺は一発で酔いが覚めた気がして、調子に乗り、春ちゃんと一緒にコーヒーカップをクルクルと回し始めた。

 

 

 

結果

 

 

 

「おぇっ、やっぱり乗らなければよかった。なんで遊園地に来てこんなに酔わないといけないんだよ」

 

「クロ君、大丈夫?何処かで休む?」

 

今度は小咲が柵にもたれかかってるおれの顔を覗き込んで来る。うぅ、女子に心配される俺って一体…………

 

「だ、大丈夫だから。ちょっと休めばすぐに良くなるはずだから。ほら、俺男だし」

 

「うん。体調さらに悪くなったら言ってね?」

 

…………うん、小咲。お前はやっぱりいいやつだよ。ここまで俺の事を心配してくれるなんて………

 

「クロ先輩、お姉ちゃんはあげませんよ」

 

「と、とらねぇよ」

 

春ちゃんに睨まれて俺はたじろぐ。

 

「春、そんな事絶対ないから大丈夫」

 

「えっ?どうして?」

 

「だって、先輩にはるりさんがいるもん」

 

「ぶふっ!!!」

 

酔い覚ましに飲んでいたお茶を思わず吹き出しそうになる。この子は一体何を言ってるんだ!?

 

「あぁ、そういえばそうだよね」

 

「何、春ちゃんも簡単に納得してんの!?てか、今のるりは聞いてねえよな!!」

 

「るりさんはクレープ屋を見つけて、ダッシュで買いに行っちゃいましたよ」

 

「そっか、良かったー…………」

 

(この感じからすると、おそらく先輩はるりさんの事を…………なるほど。これはフォローのしがいがあるもんですね)

 

?、何か風ちゃんが納得したような顔をして頷いている。俺なんか変なこと言ったっけ?

 

「みんな、クレープ買ってきたけど食べる?」

 

クレープを買いに行っていたるりが戻ってきたようだ。手には色とりどりのクレープがある。

 

「うわー!ありがとうございます!はい、お姉ちゃん!」

 

「ありがとう。るりちゃんもありがとね」

 

「ありがとうございます、るりさん」

 

春ちゃん、小咲、風ちゃんの順でクレープを渡していく。最後に俺の方にやってくる。るりの手に握られてる残りのクレープの数は3つ。

 

「サンキューな、るり」

 

「何言ってるの?クロ君の分はないわよ?」

 

「………………why?」

 

「3つとも私が食べるの」

 

何!?3つともるりが食べるのか!?そんな…………俺達の友情はそんなちっぽけなものだったのかよ!!

 

「てか、そんなに食ったら太るぞ」

 

俺が思うにるりの脳内イメージって食事が4、水泳が3、読書が2、その他1だろうなと思う。うん、ってあれ?

 

「クロ君、殴るわよ。てか、殴っていいわよね?」

 

手に持っていたクレープを小咲に預けて俺に近づいてくる。

 

「いや、ちょっと待って」

 

俺は他の3人に助けを求めようとすると、3人は咄嗟に目線を逸らした。くそ!俺に味方はいないのか!!

 

「…………すいませんでしたー!!」

 

結局、俺は殴られた。

 

 

 

 

 

 

 

「次言ったら本気で怒るわよ」

 

「は、はい」

 

「時間もあれですし、次で最後にしましょうか」

 

「そうだね」

 

「じゃあ、遊園地で最後に乗るものと言えばこれだよね!」

 

あたりが暗くなってきた俺達は観覧車の近くまで来ていた。…………そういえば、今日は酷い目にあってるな。ジェットコースターとコーヒーカップで酔って、るりに殴られて。そろそろ、良いこと起きてもいいと思うんだけどな。

 

「どうします?5人で座りますか?それとも、別々に座ります?」

 

「あ、じゃあクジ引きで決めましょ」

 

どこから取り出したのか、風ちゃんが手に5本の棒を持っていた。

 

「この中に赤は2本、白が3本あるのでそれで別れましょう。じゃあ、まず私から引きますね」

 

 

 

 

 

 

 

「結局、こうなるのよね」

 

観覧車の中、俺はるりと向かい合わせで座っていた。風ちゃん、春ちゃん、小咲の順でクジ引きを引いていくと、3人共、白だったので俺達は引く意味がないということになり、こういう結果になった。

 

「………………」

 

「なぁ、まださっきのこと怒ってんのか?」

 

「別にもう怒ってないわよ。ただ、景色がきれいだなぁ、って思って見てただけよ」

 

「そうか…………るり、ありがとう」

 

「い、いきなりなのよ…………」

 

「いや、お前がいなかったら小咲と春ちゃんと風ちゃんと仲良く遊園地に行くなんて出来なかっただろうなって思ってさ。だから、そのお礼」

 

「べ、別にいいわよそんなの」

 

るりは照れたのか顔を赤くしながら横に向く。そんなるりを見てドキッとした俺はいきなり変な事を言ってしまった。

 

「隣座ってもいいか?」

 

「つっ!!?」

 

驚きのあまりるりは顔が少し歪んでいた。

 

「悪い。今のは忘れてくれ」

 

「………………いいわよ」

 

「えっ?」

 

「隣に座ってもいいって言ってるの!!ほら、こっち来なさい!」

 

何故かるりは怒りながらも、隣に座れる分くらいのスペースを空けてくれた。俺は戸惑いながらもその横に座る。

 

「………………ねぇ?」

 

「ん?」

 

「クロ君って私の事どう思ってるの?」

 

「えっ?………………」

 

何を聞かれたかしばらく理解できなかった俺は数秒時が止まるような感じになった。そして、質問の意味を理解した俺は…………

 

「え、あ、いや。どうって言われても、俺はるりの親友?だと思うぞ」

 

顔を真っ赤にして、テンパりながらもるりの質問に答えた。すると、るりははぁ、とため息をついた。

 

「やっぱり、クロ君って意気地なしよね」

 

「はぁ!?何でそんなこと言われるんだよ!!?」

 

俺の何処が意気地なしなんだ?まったく、そんな事はないと思うんだけどな。

 

「クロ君は意気地なしでデリカシーがなくて、すぐ人をからかってくる意地悪な人よ」

 

なんで俺こんなボロクソ言われてるんだろう?

 

「でも、私はそんなクロ君が」

 

その言葉と同時に遊園地で花火が上がり、

 

「好きだから」

 

ボソッと言った言葉は花火の音と共に消えてしまった。

 

「今なんて言ったんだ?俺の事が?」

 

「なんでもないわよ。ほら、もうすぐ下に着くから降りる準備しないと」

 

「いや、俺的には今の事を聞かないとスッキリしないんだけど?」

 

「じゃあ、スッキリするまで観覧車に乗っていたらどうかしら?」

 

「それは勘弁したいな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地を出た俺達は4人を家まで送り、家に帰りベットの上に寝転がった。

 

「しかし、あの時るりはなんて言ったんだろう…………気になって、なかなか寝れない」

 

『俺さ、るりちゃんとクロって絶対クラスで1番最初に付き合うと思っていたんだけどな』

 

『クロと宮本ってお似合いだと思うぞ』

 

『うーん……2人の中に入ってもいいなら別にいいけど』

 

何故か、この時俺は集と城野崎と小咲に言われた言葉を思い出した。あれ、なんかひっかかる。何だろう…………

 

『クロ君は私の事をどう思ってるの?』

 

『でも、私はそんなクロ君の事が…………』

 

「………………もしかして、るりって俺の事が好きなのか?」

 

俺はふと、そう思ってしまった。




ついにクロもるりちゃんの気持ちに気付いてしまった。
ここから、話はどう動いていくのか。
感想と訂正があればお待ちしております。


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第29話 イショウの採寸

遅くなってすいません。受験と課題とテストに
追われてました。…………言い訳ですね。
これからも頑張っていきます。
あと、お気に入り800越えありがとうございます!



夏休みが終わり、2学期に入った。遊園地の日から俺とるりは何事もなかったように仲良くしてるが、俺は内心ずっと気になっている。るりがあの時何て言おうとしていたのかを。

 

そして、現在。悩みがあるとはいえ俺たちにはやらなければならないことがある。それは………………!

 

「……おお、愛しのジュリエット。僕の瞳にはもはや君しか映らない」

 

「まぁ!嬉しい……私もですわロミオ様!早速結婚致しましょう!」

 

「文化祭。頑張らないとな!」

 

「えぇ、そうね。特に小咲には頑張ってもらわないと」

 

凡矢里高校文化祭である!秋といえば文化祭。俺たちのクラスは舞台でロミオとジュリエットをする事になった。主役のロミオは楽が。ヒロインのジュリエットは桐崎さん………と思いきや、何故か辞退して小咲がジュリエットをする事になった。放課後になった今、小咲と小咲が休んだ時のためにマリーもジュリエットの練習をしている。

 

「あっちは楽しそうだな。それに比べて俺たちといえば…………」

 

「模擬店の宣伝だもんね。今は本当にやる事なくて死にそう。てか、もう死んじゃうわね」

 

「死ぬなよー。頼むから死なないでくれよ」

 

2人、椅子に座って喋っていた。模擬店の宣伝を任された俺たちは特にやる事もなく、2人で本も読みながら喋っている。正直、暇だ。

 

「…………そういえば、最近の千棘ちゃんをクロ君はどう思う?」

 

「桐崎さんか?そういえば、2学期に入ってから楽と話してるところを全然見たことないな。なんかあったのか?」

 

2学期に入ってから楽は1学期のように桐崎さんと絡むわけではなく、俺や集と一緒にいる事が多かった。それは桐崎さんも同じで、楽ではなく他の女子と話している。

 

「一体、2人に何があったんだろうな?」

 

「さぁね。………でも、私には何か嫌な予感しかしないわ」

 

るりの予感はなぜかよく当たる。本当に悪いことが起きなければいいんだが…………

 

「あ、練習今日は終わりみたいだな」

 

集が手をパンパンと叩きみんなを散らばらせる。どうやら、今日の練習はここまでのようだ。

 

「クロ、るりちゃん。ちょっとこっち来て〜」

 

「…………何かしら。これも嫌な予感しかしないわ」

 

集が俺とるりを呼ぶので集のとこまで駆け寄る。

 

「はい。宮本さんはこっちね」

 

「へっ?ちょ、なんの話!?」

 

他の女子にるりが連れ去られる。『そこは女子が着替え中。男子は絶対に入るな!』と書いてある。

 

「…………何だ?」

 

「今から楽と小野寺と誠士郎ちゃんの衣装の採寸なんだー」

 

「ちょっとしたサプライズもあるからここでちょっと待っててくれ」

 

集と城野崎が俺の方をポンポン叩いてくる。一体何をするつもりなんだ?

 

「うおおおおっ!すっげぇ、これ本当に手作りか?」

 

楽が衣装に着替えて出てきた。……やばい。初めて楽がかっこよく見えるぜ。

 

「クロ、今失礼なこと考えなかったか?」

 

「気のせいだ」

 

すると、今度は女子のカーテンの方から声が聞こえてくる。

 

「………どうしよう。つぐみちゃんの服、胸が留まんないんだけど」

 

「どうして?採寸したんでしょ?……まさか、この短い期間にさらに。何を食べたらこんなに……ええい、仕方ない!おっぱい増量よ増量。布もっと持ってきて!」

 

「そんな事、大声で言わないでください!!」

 

どうやら、鶫の服が採寸したはずなのにサイズが合わなかったようだ。隣で楽が顔を真っ赤にしてる。

 

「え〜〜〜?何故、私の衣装がないのですか?」

 

「だって、橘ちゃんは寺ちゃんの代役だもん。丈は寺ちゃんに合わせるから」

 

今度はマリーの声が聞こえてくる。すると、女子のカーテンの一つが開けられた。そこにいたのは衣装に着替えた超可愛い小咲だった。

 

「………………………………」

 

あまりの可愛さに言葉も出ない。衣装を着る土台が可愛いからだろうけど、この衣装を考えた手芸部員が俺は凄いと思った。

 

「あ、クロ君。衣装どうかな?」

 

「…………え?あ、あぁ。似合ってるぞ」

 

「そう?よかった〜。でも、クロ君には違う人を褒めてあげないとね」

 

「え?それはどういう…………」

 

どういうこと。そう俺は聞こうとしたが、俺はまた言葉を失った。何故ならその後ろにるりが立っていたから。それも、ジャージではなく小咲とはまた違う衣装を着たるりが立っていたから。

 

「………………え…………と……これはどういう?」

 

「寺ちゃんの服を作った時に生地が余ったから作ってみたの。宮本さんって背丈小さいから作りやすかったし。どう、神崎君。可愛いでしょ?」

 

手芸部員の1人が俺に説明してくれる。いつもくくっている髪の毛を解いて、メガネも外している。そして、顔を赤くして俺を見てくる。やばい。これは惚れてる事もあるからだろうけど、小咲のよりも強力だ。本当に可愛い。付き合ってたりしたら抱き締めてたかも…………

 

「ほら、クロー。ちゃんとるりちゃんに言わないといけない事があるだろ?」

 

「え…………あ。そうだな…………似合ってるぞ。すごく可愛い」

 

「つっ!…………」

 

お互い、顔を真っ赤にして背ける。集や城野崎はニヤニヤしながら俺たちを見ていた。

 

「ちなみに、2人は模擬店の宣伝係だから、宮本さんはこれを着て宣伝してもらうね?」

 

「ちょ、そんなの聞いてな………」

 

「危ない!!」

 

るりの視力は壊滅的なほどに悪い。俺も一回、るりのメガネをかけさせてもらった事があるが正直かけてるだけで疲れるくらいだ。そして、今はメガネをかけてない。手芸部員に掴みかかろうとしたるりは周りが見えなくて、こけそうになる。俺はそれを助けようるりを抱きとめた。

 

「ふぅ……危な。るり、大丈夫か?」

 

そう声をかける俺とるりの顔は凄く近くにあった。あと数センチ動けばキス出来そうなくらいに。集と城野崎はニヤニヤしているが、他の全員は顔を真っ赤にして俺たちを見てる。

 

「……………………ば」

 

「ば?」

 

「バカーーーーーー!!!!」

 

「ぐはっ!!!」

 

そんな俺の顔をるりは全力でぶん殴り、俺を引き剥がした。殴られた俺は数秒空中に浮き、そして、落下した。

 

「助けたのにこんな仕打ちは……」

 

そして、俺は気絶した。その後の記憶は俺にはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、るりと小咲と俺の3人で帰って今は俺の家にいる。俺は今正座している状態だ。あれから、るりは俺に口をきいてくれず、ただ正座と言われて正座させられているのだ。

 

「るりちゃん、そろそろ許してあげたら?クロ君だってるりちゃんを助けようとしてああなっただけなんだしさ」

 

「嫌。私にあんな恥ずかしい思いをさせたのよ。まだ、許さないわ」

 

「そんな事言わずにさ。ね?」

 

怒って、俺のベッドに座って俺を見下しているるりを小咲が必死に説得してくれようしている。しかし、効果はないようだ。

 

「なぁ、るり。そろそろ許してくれ。俺の足も限界だ。かれこれ30分は正座してるんだぞ」

 

「あと、30分はそのままよ」

 

「鬼か!!!」

 

「……何か言ったかしら?」

 

「いえ、なんでもございません」

 

どうにかしてこれから助かる方法はないものだろうか。小咲に目を向けるが、小咲も横に首を振る。もう作戦は何もないのだ。

 

「クロちゃん!ちょっときて!今すぐ」

 

ばあちゃんが下の階から俺を呼んでくれる。ナイスだ!これで逃げることができる!

 

「悪い、2人とも。少し部屋から出るな。説教は後で聞くから!」

 

「あ、ちょっと、待ちなさい!」

 

正座してて足は痺れているが、ばあちゃんからの呼び出しだ。これはちゃんと答えないと。

 

「ばあちゃん?どうしたの?」

 

「こっちよこっち。はやくはやく」

 

ばあちゃんが俺の手を引いて玄関へ連れて行く。すると、そこに立っていたのは……

 

「クロ、久しぶりね。元気にしてた?」

 

「か、母さん!!?」

 

中学2年の頃から別々に暮らしていた母さんが立っていた。

 

「どうして?てか、もう大丈夫なのか?」

 

「えぇ、おかげさまで。それより、クロ。今日は母さんからお願いがあって来たの」

 

「お願い…………?」

 

「そう。あのね、クロ………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう1度母さんと九州の方で暮らさない?」

 

その言葉に俺は絶句した。

 

 




どうでしたか?クロのお母さん出てきました。
何故、いきなり出てきたかは次回に!
感想と訂正があればお待ちしております!


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第30話 2つのセンタク

PS-vitaでニセコイのゲームがあるそうですね。
面白いんでしょうか?


あれから大切な話があるといい、るりと小咲には帰ってもらい、今は俺と母さんとじいちゃん、ばあちゃんとさっきのことを話していた。

 

「で、さっきのはどういう事だ?何でまた九州の方で暮らそうだなんて」

 

俺の母さん、神崎翠は親父と離婚してから俺の事を1人で育ててくれていた。その時は母さんが自ら働いてくれて苦しい生活をなんとかしのいでいた。俺と辛かったが一番辛いのは母さんだろうと思い、俺は何も言わずに頑張って生活していた。

 

だが、その生活も俺が中2の頃に終わりを告げることになる。母さんが過労やストレスなどで倒れてしまったのだ。母さんを病院に連れて行き、診断された結果、命には別状ない。だが、しばらく安静にしとかないとまた倒れてしまう可能性がある。だから、しばらくは何もせず、別々に暮らして落ち着くのが一番だろうとなり、俺と母さんは別々に暮らし始めた。母さんは九州の家に残り、俺はばあちゃんの家に引っ越して来て今の生活に至るのだ。正直、母さんと別れるのは辛かったが、ばあちゃんやじいちゃん。るりや小咲や楽達のおかげで何とか安心して暮らせているのが今の現状だ。

 

「母さんの体調もだいぶ落ち着いたのよ。そろそろ、クロとまた一緒に生活しても大丈夫かなって」

 

「いや、でもまた倒れたらどうすんだよ!!」

 

「大丈夫よ。もう、あの時みたいな無理な生活はしないように頑張るわ。クロも大人になったんだし。ね?」

 

「でも………………じゃあ、こっちで生活するのは?じいちゃんとばあちゃんと俺と母さんの4人で」

 

「それも考えたのだけど、おばあちゃんもおじいちゃんももう歳なのよ。あまり無理はさせたくないの」

 

「いや、だからって…………」

 

確かに、母さんとまた生活できるのはすごく嬉しい。だけど、九州の方で生活する。ということは今の生活が台無しになってしまう。楽や集、城野崎、鶫、桐崎さん。マリー、小咲。そして、るり。このみんなと別れてしまう。今の俺にはそれは辛いことだ。

 

「………………まさか、クロ。あなた……好きな子でも出来たの?」

 

「んなっ!?いきなり何を………」

 

「言わなくてもいいわ。私はあなたの母親よ。母さんにはあなたの事をなんでもお見通しよ。相手は………マリーちゃんでしょ?」

 

「違う!マリーではない!」

 

「マリー『ではない』?やっぱり好きな女の子は出来たんじゃない」

 

「くっ………………母さん性格悪いぞ」

 

「よく言われるわ」

 

母さんがふふふっ、と言って笑う。昔から母さんはそうやって俺をからかってくる。小学校の時もマリーの事ばかり聞いてきて…………

 

「クロ。別に今すぐ答えを決めろとは言わない。もうすぐ、凡矢里高校の文化祭があるんでしょ?その時まで母さんこの家に泊まるから。文化祭終わってからまた話しを聞くことにする」

 

「母さん……………………」

 

「私文化祭行くなんて大学生以来だわ。どんなものがあるのかしら?」

 

母さんとばあちゃんとじいちゃんが笑いあっている。俺は親父が事件を起こしてから母さんが時々夜遅くに泣いてたのを知ってる。だから、俺は母さんの悲しい顔はあまり見たくない。かと言ってもみんなと別れるのも辛い。

 

俺は一体どうするべきなのだろうか?……………………

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「ん…………母さんの手料理久しぶりに食べたな。美味しいよ」

 

「本当!?よかったわ。落ち着いてから少し料理の勉強もしたのよ。文化祭までは毎日私が作るからおばあちゃんはゆっくりしててね」

 

「助かるわ、翠。ありがとう」

 

あれから、昨日の夜はどうするべきだとずっと考えていたせいであまりちゃんと寝れていない。

 

「ふぅ……ごちそうさま。じゃあ、学校に行ってくるよ」

 

「いってらっしゃい。気をつけて行くのよ?」

 

「わかってるよ」

 

そう言って俺は家を出る。そして、いつものように口の中にFRISKを2粒口に放り込み学校に向かった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ…………どうしよう」

 

「クロ様?朝からため息などついてどうされたのですか?」

 

学校に向かっている途中、ふと声をかけられ後ろを向くとそこにはマリーがたっていた。

 

「おはよう、マリー。体調は大丈夫なのか?」

 

「まぁ!心配なさって下さるのですね。ですが、心配にはございません。マリーはこの通り元気ですから」

 

「それは良かった」

 

…………待てよ。マリーなら俺の悩みをちゃんと聞いてくれるんじゃ。小咲に相談して泣かれたり、楽達にはこんな事言いにくいし。るりはなんか一方的に嫌われてるし。こんな時にマリーと会う俺って運が良いのかな?

 

「あのさ、マリー。今日の昼休みって時間ある?」

 

「時間ですか?今日の昼は楽様にアタックしに行こうとしていたのですが、何か私に用でも?」

 

…………楽、お前も大変なんだな。俺からしたら羨ましいけど。

 

「いや、忙しいならいいんだ。ただ、ちょっと言いたい事があって」

 

「あら?まさか、私にプロポーズでも?」

 

「いや、なんでそうなる!!」

 

「冗談ですわ。しかし、なにやら訳ありのようですね………………」

 

顎に手を当てて考えるマリー。

 

「…………わかりました。今日の楽様へのアタックは中止します」

 

「助かるよ。できれば、2人っきりで話せるところで飯を食べながらがいいんだけど」

 

「でしたら、本田の車の中などはどうですか?昼休みに車の用意をしとくように頼んでおきます」

 

「ありがとう。そうしてくれると助かる」

 

そうこうしているうちに学校に着いた。昇降口には楽の姿が。

 

「楽様ですわ!すみませんクロ様。昼休みに私の席まで来てください。それでは!!」

 

楽様ーー!!会いたかったですわー!と叫びながら走っていった。相変わらず、楽LOVEなんだな。

 

教室につき自分の席に着く。るりは相変わらず本を読みながら小咲と話している。小咲は俺が来たのを見ると、手を振ってくれた。

 

「小咲、今日の昼休み一緒に飯食えないから」

 

「それは別にいいけど……何か用事でもあるの?」

 

「そんな感じだ。だから、先に謝っとく。悪いな」

 

「いいよ別に。今日はるりちゃんと千棘ちゃんと食べるから」

 

るりは俺と喋ろうともしない。やっぱりまだ俺の事を怒ってるようだ。早く仲直りしないと……ヘタしたら喧嘩したまま離れ離れになるかもしれない。そうなったら俺は…………

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「それで、私に話しとは一体なんですか?」

 

朝の授業はちゃんと受けたものの、内容はあまり頭に入ってこなかった。現在、本田さんの車の中で弁当を広げてご飯を食べようとしている。

 

「実は……………………俺、また引っ越しする事になるかもしれないんだ」

 

そう言うと、マリーはご飯を食べようとする手を止めた。そして、箸を置き俺を真っ直ぐした目で見る。

 

「それは、嘘とかじゃないんですか?」

 

「うん。昨日の夕方に母さんが来てさ」

 

「お母様が!?体調の方は?もう大丈夫なのですか!?」

 

マリーが俺の方を掴み聞いてくる。

 

「あ、あぁ。本人は復活したって言ってたよ。昨日も色々なこと話した。話しを戻すけど、母さんが俺に訪ねて来た理由は九州に戻ってまた俺と一緒に暮らさないか?って事だったんだ」

 

「お母様が…………それでクロ様はOKしたのですか?」

 

「まさか。今は決められないって言ったよ。そしたら、母さんは文化祭が終わるまでこっちにいるって。それまでに決めろって言われた」

 

「文化祭終わるまで。後、1週間くらいでございますか?」

 

「…………俺、どうしたらいいのかわからなくてさ。そりゃ、俺はみんなといたいよ。九州にいる頃より学校は楽しいし、大切な友達が出来た。マリーとも一緒に過ごせて凄く楽しいんだ。でも、母さんも悲しませたくない。きっと、俺がこっちに残るって言ったら母さん凄く悲しむと思う。そんな姿も見たくない」

 

俺はいつの間にか涙を流していた。だが、その涙を拭わずマリーの方に向く。

 

「なぁ。俺どうするべきだと思う?多分、自分じゃ決められないんだ」

 

話しを聞いているマリーの顔も少し辛そうだった。

 

「………………私はクロ様がまた遠くに行ってしまうなんて事は嫌でございます。あの時のような思いはもうしたくありません」

 

あの時。それはおそらく俺が九州からこっちに引っ越して来た時の事だろう。確かに、俺もあの時辛かったが今はそれ以上に辛い。マリーも今こういう気持ちなのだろうか。

 

「ですが、引っ越しするしないはクロ様自身が決める事です。私から何も言えません」

 

そう言って、マリーは自分の指で俺の涙を拭ってくれる。そして、マリーは俺の方にもたれかかってきた。

 

「どういう結果になろうと、私はクロ様が決めた事には否定しません。他の誰がどう言おうと、私はクロ様に味方です」

 

「マリー………………ごめん」

 

「なぜ謝るのですか?クロ様は何も悪い事を言っていませんよ?」

 

「うん…………ごめん。ありがとう」

 

もう一度マリーに謝って俺もマリーの方にもたれかかった。昨日、あまり寝れてないせいか。そのまま俺は目を閉じて寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クロ様?………………寝てしまわれましたか」

 

隣で私にもたれかかってくるクロ様の頭を優しく撫でる。

 

「けど、クロ様がまた引っ越しですか………………私にはもう何もできません。今できることが精一杯です。…………小野寺さんと宮本さん。特に宮本さんがどうするかによって、クロ様がどうするかが変わっていきそうです」

 

クロ様。どんな結末になろうと1人で抱え込んではいけませんよ。前とは違い、今回は私だけではないのですから。




どうでしたか?
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第31話 3人のホウカゴ

放課後

 

「クロ君、どこ行ってたの!?午後の授業もこなくって、橘さんもいなくなって心配したんだよ!!」

 

「うんうん。るりちゃんの不機嫌度が明らかにあがってぜ。本当何してたの?」

 

「ごめんごめん。ちょっと、マリーと話ししてたらそのまま俺が眠っちゃってさ」

 

俺は車の中でマリーに寄りかかり寝てしまい、そのまま放課後なっていた。その間にマリーも眠たくなってしまったようでマリーも俺に寄りかかり寝てしまったようだ。2人揃って午後の授業をサボった俺たちはキョーコ先生にみっちり怒られ、教室に戻ってきて小咲や集に何があったのか問い詰められている。

 

「なんだークロ。お前、万里花ちゃんに手でも出したのかー?」

 

「んなっ!!そんなことするわけねえだろ!俺とマリーはただの幼馴染で……………………」

 

城野崎が俺をからかってくる。まったく、マリーにそんな事できるかよ。俺にはそんな勇気なんか……

 

「昼休みにクロ様にこんな事やあんな事までされてしまいましたわ……私の体と心はクロ様に…………」

 

「待てマリー。頼むからのらないでくれ。男子たちが嫉妬の目で俺を睨んできてるから!」

 

マリーが悪乗りしたせいで楽と集以外の男子全員が俺を睨んでくる。やべぇ、本気で怖い。

 

「まぁ、冗談はそのくらいにして。そろそろ文化祭の練習始めようぜ」

 

「と言っても、俺とかるりはする事がないんだし、何を『パシーーーーン!!!』………………え?」

 

突然の音に驚いて俺はそっちの方を向く。その音は廊下からしていて何が起きたのか一瞬わからなかったがすぐに理解した。桐崎さんが楽の頬を思いっきりしばいたのだ。

 

「い、一条君?」

 

「悪い小野寺。ちょっと俺抜けるわ」

 

そう言って楽は歩いて何処かへ行ってしまった。桐崎さんも早足で反対の方向へ歩いて行った。一瞬の出来事をだったため、2人に何が起きたのかわからない。

 

「ど、どうしたんだ?桐崎さん」

 

「一条君もあの感じは普通じゃなかったよ」

 

「でも、最近あの2人の様子おかしいよね?」

 

「1学期の時はもっと2人が一緒で仲よかったぞ」

 

みんなが楽と桐崎さんの関係のおかしさにおどおどしている。なんとかしようと思った俺は集に声をかけた。

 

「おい、集。これどうにかできないか?」

 

「まっかせとけ!!みんな、ちょっと聞いてちょうだいな」

 

集がみんなの注目を集めるように声をかける。そして言った。

 

「今のことなんだけど、実は最近楽がドM体質に目覚めたんだ。だから、何も心配する事はない。オールOKだ!」

 

「いや、誰がそんな事信じるんだ」

 

「へぇ、そうなのか。一条がドMに」

 

「それなら納得だよね〜」

 

「一条ってドMっぽいもんなー」

 

「嘘だろ!!?」

 

「流石は舞子隊長だな」

 

集の説明にがっかりしたが、その説明に納得したクラスメイトに俺はがっかりした。そんな事あるわけないだろ普通…………

 

「まぁ、何があったかわからないけどあの2人なら大丈夫でしょ」

 

集が勝手にうんうんと頷く。

 

「………………るりに俺が引っ越す事言ったらさっきと同じ事になるのかな?」

 

「ん?クロ、なんか言った?」

 

「いや、なんでもない。ただの独り言だ」

 

とにかく俺が引っ越すにしろ、しないにしろ早く決めないとな。ギリギリに言ってもるりが怒るだけだろうし。そのためにも早く機嫌を直してもらわないと。

 

 

 

 

 

「るりー、小咲ー。一緒に帰ろうぜ」

 

「…………………」

 

「う、うん。いいよー」

 

練習が終わり、俺がそういうと小咲は了承してくれたがるりは1人で教室を出ようとする。仕方ない…………

 

「あー、そういえば今日ってデパートにあるクレープ屋の新作クレープが販売される日だよなー」

 

わざとるりに聞こえるようにでかい声で言うと、るりはピタっと足を止めた。

 

「しかも、販売初日だけそのクレープを買うと、もう一個無料でもらえるんだよ。小咲、一緒に行かねえ?」

 

「へ………………あ、うん。私も行きたい」

 

「よっしゃ。じゃあ行こうぜ」

 

俺たちは自分の鞄を持って教室を出ようとする。

 

「………………たしも…………」

 

「えっ?なんだって?」

 

「私も行くって言ってるの!!本当にクロ君性格悪いわね!!」

 

俺に激怒しながらもるりはデパートに行く事を了承してくれた。るりの機嫌を。特に向こうが一方的に怒ってる時に機嫌を直す時は食べ物が一番だ。

 

「わかった。じゃあ行くか?昨日の事もあるし、今日は奢るよ」

 

「当たり前よ……………」

 

(もしかしたら、クロ君って私よりるりちゃんの事理解してる?)

 

そう言って、るりは教室を出た。俺と小咲もそれについていくように教室を出て行った。

 

 

 

 

 

デパートのクレープ屋

 

「それでは、ごゆっくり」

 

クレープ屋にやってきた俺たちは適当に飲み物とクレープを頼み席に座った。少し気になるのはいつも俺の隣に座るるりが今日は向かい側に座っていること。完璧に許したというわけではないのかな?

 

「ねぇ、クロ君。今日橘さんと何話したの?」

 

「ん?大したことじゃないよ。今日はただ、マリーと2人きりで飯を食いたかった気分だったんだ。で、2人で話してるうちに眠たくなってそのまま放課後に。悪いな、本当」

 

「……………………嘘ね」

 

「え?……いや、嘘じゃねえよ」

 

マリーと2人で話したかったっていうのは嘘じゃない。これは本当。

 

「自分で気づいてたか知らないけど午前中のクロ君、いつもの違って凄くおかしかったわよ。でも、それが放課後になってからはマシになってたわ」

 

「昨日は何か眠れなくて疲れてただけだって。で、昼休みにマリーと寝たらそれが治っただけだよ」

 

「朝のクロ君は疲れとは別の事を抱えてるように見えたんだけど」

 

「私も思った。今日のクロ君、凄くどんよりしてたよ」

 

俺ってそんな表情に本心出すようなやつだっけ?自分じゃよくわからねえ。

 

「いや、気のせいだって」

 

「ふーん…………本当かしら?」

 

「悩みとかあるなら言ってね。私、力になれるように頑張るから!」

 

「ありがとう小咲。でも、俺大丈夫だから。そんな事より、小咲は愛しのロミオ様との練習はうまくいってるのか?」

 

「い、愛しの!?ち、違うよ!一条君はそういうのじゃなくて」

 

これ以上、俺の話題で引っ張られるのは嫌だからとっさに小咲に話題を振る。すると、小咲は顔を真っ赤にして否定した。

 

「あれ?小咲は楽の事が好きじゃないのか?」

 

「いや、好きだけど愛しいって言うのとはちょっと違うくて……えと、その…………るりちゃん〜」

 

自分ではうまく説明できずに、挙句涙目になりながらるりに助けを求めた。

 

「わかってるわよ。小咲がいいたいのは……………………一条君を私のものにしてめちゃくちゃにしたいって事よね」

 

「それクロ君が言ってることより悪化してるよ!!」

 

「なるほど。小咲って見かけによらず大胆なんだな」

 

「もう!2人でからかわないでよ!」

 

なんか久しぶりに小咲をからかった気がする。やっぱり、小咲は面白いな。

 

「………………こんな日が一生続けばいいんだけどな」

 

「クロ君、なんか言った?」

 

「いや、なんでもない」

 

その後も俺たちはクレープを食べながらいろんな話をして時間を過ごした。その時、俺を時々るりが鋭い視線で睨んできていたのを知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

3日後の放課後 るりside

 

「舞子君。悪いけど今日私と小咲用事があるから休むわ」

 

「えっ?るりちゃん、私用事なんて…………痛っ!!」

 

余計な事を言おうとする小咲の足を思いっきり踏んづける。小咲が涙目になっていたが私は無視した。

 

「小野寺休むのか!?そろそろ劇の仕上げをしたかったんだけど………仕方ないなー。万里花ちゃん、代役よろしく〜」

 

「待ってましたー!!さぁ、楽様!私とともに最高のロミオとジュリエットになりましょう!」

 

「いや、おいちょっと待て!待てってー!!」

 

「………………悪いわね一条君。じゃ、行くわよ小咲」

 

「行くってどこに?」

 

「決まってるでしょ。クロ君の家よ」

 

 




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第32話 初めてタイメン

今回クロは全く出てきません。
では、どうぞ〜


「最近のクロ君、絶対何か隠してるわ。それも多分とても大切な事を」

 

私は劇の練習のある小咲を無理矢理連れ出して2人でクロ君の家に向かっている。

 

「う、うん。それはなんか見ててわかる。けど、私達がそれを直接聞きに行っても…………」

 

「わかってるわ。小咲を巻き込んだ事も自分勝手な事も」

 

「だったら、なおさら……」

 

「…………ただ、黙ってるだけの自分なんて嫌なの。それに…………」

 

「それに?」

 

「親友を……………私の好きな人を助けてあげられないのは自分として許せない。それが例え間違っていたとしても。自分がそれで傷ついたとしても」

 

小咲の前だから私の気持ちを正直に告白した。はっきりと。すると、小咲は驚いた顔をして私を見ていた。

 

「るりちゃんがやっとクロ君の事を好きって認めた。私夢でも見てるのかな?夢なら覚まして欲しい」

 

「じゃあ、覚まさせてあげるわ」

 

私は歩いている足を止めて、小咲の方を向いて、頬をギュッと引っ張った。

 

「ほら、夢ですか?これは夢ですか?」

 

「いふぁい、いふぁい。いふぁいからこれはゆめじゃありまふぇん」

 

小咲の引っ張っていた頬を離す。引っ張ったせいで小咲の頬は真っ赤になっていた。

 

「もう、酷いよるりちゃん!何もここまでしなくても」

 

「あんたが変なこと言うのが悪いのよ!私は正直に言ったのに」

 

「…………あのー」

 

小咲と言い合いをしているといきなり声をかけられそっちの方へ向く。そこには女性が立っていた。でも、この人どこかで見たことあるような…………

 

「ごめんなさい。さっきの話が聞こえていたから声をかけちゃって。一つ聞いてもいいかしら?」

 

「なんですか?」

 

…………ちょっと待って。さっきの話を聞いてたって。じゃあ、私の好きな人がこんな誰かもわからない人に聞かれたってこと!?

 

「その、さっきから時々名前が出てくるクロって…………神崎黒の事?」

 

「つっ………………なんでそれを?」

 

「あ、やっぱりそうだったの。じゃあ自己紹介しないとね」

 

自己紹介?一体何のことかしら?

 

「私、神崎黒の母の神崎翠と言います。クロがいつもお世話になっております」

 

え、今なんて?母?この人がクロ君のお母さん?

 

「となると、あなた達は…………小咲さんとるりさんね。クロが最近帰ってくるといつもあなた達の事を話してるわ。特に、るりさんの事を」

 

「クロ君、怒るわよ。そんなに人のこと話さないでよ。しかも特に私の事って何!恥ずかしいじゃない!」

 

今ここにはいないクロ君を怒る。でも、そんな事をしても意味があるわけがないわね。

 

「でも、どうして…………クロ君のお母さんは別々に暮らしてるって」

 

「翠でいいわよ。立ち話もなんだしとりあえず家にいらっしゃい。お茶くらいは出しますから」

 

そう言ってもらったので、私達はクロ君の家に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで今日はどんな用で来たのかしら?あ、これお茶ね。あと、お菓子も」

 

「「ありがとうございます」」

 

クロ君の家に上がり、私と小咲が隣同士。翠さんが私達と向かうように座る。…………このお茶菓子、とても美味しそう。

 

「色々聞きたい事はあるんですけど、今一番聞きたい事は、最近学校でのクロ君の様子がおかしいんです?」

 

私が聞きたい事を小咲が代わりに聞いてくれた。…………このお茶菓子、本当に美味しわね。

 

「クロの様子がおかしい?」

 

「はい。なんかいつもと違って少し避けられてるというか。今までお弁当食べるのも一緒だったのに最近は1人で食べるとか言ってて。うまく説明できないけど、クロ君何かおかしいんです」

 

「小咲、クロ君何かおかしいは親の前で言うことじゃないわよ」

 

「はわっ!そ、そういうつもりで言ったわけじゃないよう!!」

 

クロ君何かおかしいって、クロ君が変な人って言ってるみたいじゃない。

 

「……………そう。クロの様子がおかしいの。あの子そういう事は顔にあまり出さない子なのに。2人に話すのはそんなに苦しいのかしら」

 

「やっぱり、何か知ってるんですか?」

 

「もし、知ってるなら教えてください」

 

私と小咲2人で翠さんにお願いする。

 

「…………わかったわ。わざわざ来てくれたんだもの。2人には話すわ。ただし、これを聞いてクロを嫌いにならないでね」

 

「「わかりました」」

 

「じゃあ、話すわ」

 

それから私達は翠さんの話に驚きながらもしっかり聞いた。翠さんがクロ君のお父さんの事件のショックとそこから、クロ君を中学まで1人で支えてきて過労になって倒れた事。医者にしばらく無理はしないほうがいいと言われ2人で別々に暮らし始めた事。そして、今年になってやっと身体や生活が落ち着いて来たため、もう一度クロ君と暮らさないかと提案するためこっちに来た事。

 

「…………ということなの。あの子も何か考えがあってのことだと思うの。言わなかった事はあまり責めないであげてね」

 

私達はその話を聞いて何も言えなかった。小咲も私もただ驚いているだけだった。

 

「にしても、クロったらこんな可愛い子2人を悲しませちゃって。しかも、1人はクロの事を好きだって言ってくれてるのに」

 

「なっ!?」

 

「まぁ、その原因を作ったのは私なんどけどね」

 

やっぱりあの話聞かれてたんだ……しかも、知らない人じゃなくてクロ君のお母さんに。

 

「あ、大丈夫よ。別にクロに言いふらしたりはしないから。むしろ、あなたの恋を応援するわ。頑張ってね!」

 

「…………ありがとうございます」

 

応援してもらえるのはありがたいけどもしクロ君が九州に行くって言ったら、うまく付き合えたとしても意味ないんじゃ………………

 

「……って、私何考えるのよ!」

 

「るりちゃん!?」

 

いきなり声をあげた私にびっくりする小咲。

 

「…………そろそろクロが帰ってくる時間だわ。2人はもう帰った方がいいんじゃないの?クロを呼ばずにうちに来たのは理由があるんでしょ?」

 

「あ、そうですね!るりちゃん、行こっ!!」

 

「え、えぇ。ありがとうございました」

 

「いえいえ、また来てね」

 

私達はクロ君と会うわけには行かないので急いでクロ君の家を出た。そして、私の家くらいまで来ると歩いていた足を止めた。

 

「………………ねぇ、るりちゃん。クロ君の事どうするの?」

 

「どうするって言われても……引っ越す引っ越さないを決めるのはクロ君だわ。それを私達が口出しする権利はないわよ」

 

「でも、このままじゃとクロ君と別れちゃう事に。私、そんなの嫌だよ。まぁ、引っ越ししない可能性もあるけど…………」

 

「そんなの私も嫌に決まってるわよ。でも、どうしようもないじゃない。確かに、クロ君が引っ越さないっていうならそれが私達にとっては一番いいわよ。だけど、私達から『引っ越ししないで』とか言ってもクロ君のためにはまったくならないわ。だから、私達には何もできない。

 

そう言うと、小咲は黙り込んだ。私もそれ以上の事は何も思い浮かばなかった。

 

「………………もし、クロ君が引っ越しすることを決めたなら私はクロ君に告白をしないし、向こうから例えされたとしても付き合わないわ」

 

「えっ………………ど、どうして!!?」

 

「そんなの後が辛いからに決まってるじゃない。私はそれに耐えられる気がしないからよ」

 

「…………けど、いいの?そんな嫌な別れ方になったとしても」

 

「別に。後から辛くなるくらいなら私はそうした方がマシだわ。引っ越しするならどっちにしろ辛いんだから。………………それじゃ」

 

私はそう言って家の中に入った。

 

「クロ君、このまま別れるなんて絶対に嫌よ」

 

そう言うと、小咲の前では抑えていた感情が一気に溢れ出して来て自分ではもうどうしたらいいかわからなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私達は文化祭本番を迎える事になった。

 

 

 

 




どうでしたか?
るりちゃんと小咲の中ではクロが完全に引っ越しするみたいになってますけど
そんな事は全くないですからね。最終的に決めるのはクロです!
あと、クロのお母さんが悪役みたいな気がするのは気のせいでしょうか?www
感想と訂正があればお待ちしております


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第33話 黒のケッシン

ニセコイ第2期、2015年春に放送決定!!
マジで嬉しい!春が楽しみだな〜



文化祭本番。とうとう練習してきたロミオとジュリエットをみんなに見せる時が来る1時間前。その時、俺とるりは

 

「俺たちのクラスで飲食店やってまーす。ジュースやケーキ、お菓子もあるのでどうぞきてください〜」

 

「………………来てください」

 

宣伝用の服に着替えて2人でクラスの宣伝をしていた。るりはこの前の格好にメガネをかけた姿で、俺は楽の衣装を改造したような感じ。ロミオとジュリエットの衣装はこんな感じですよ、と見せるような感じだ。

 

『ねぇ、あの子可愛くない?』

 

『うんうん!すっごく可愛い。何組だろ?』

 

『でも、その隣にいるのって神崎クロだぜ。…………恐ろしい』

 

おい、恐ろしいってなんだ!!いい加減俺見てビビるのやめろよ!

 

「クロ君は相変わらずね」

 

「まぁ、仕方ねえよ。そういうるりはいつもと違う格好して校内を歩き回ってるけど、どうなんだ?」

 

「別に。いつもと雰囲気が少し違うだけよ。それ以外、何もないわ」

 

「そーですか」

 

最近、るりと小咲の様子がおかしい。あまり、向こうから俺に話しかける事がなくなってしまった。最近俺が少し2人を避けているように、2人も俺を避けてきている気がする。

 

「…………今日、本番なんだもんな。終わったらちゃんと言わないと」

 

「何か言ったかしら?」

 

「いや、何でもないよ。宣伝の続きしようぜ」

 

ここまで先延ばしにしてきたのは完全に俺のミスだ。どんな結果になってもみんなにはちゃんと言わないと。楽や集、マリーや小咲やるりには悪いけど。俺は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

九州に帰るって事を…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

『1年C組神崎黒君。1年C組神崎黒君。担任の先生がお呼びです。すぐに体育館裏に来てください。繰り返します…………』

 

「あれ、俺呼ばれた?何でだ?」

 

「さぁ?何かあったんだと思うわ」

 

「まぁいいや。じゃあ、悪いけど少しの間宣伝頼むな」

 

「はっ?ちょ、クロ君!!」

 

宣伝用の看板をるりに渡して俺は小走りで体育館の方に向かった。後ろで何故か起こったるりの悲鳴を無視して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじゃましまーす。先生、本番前に何か用ですか?」

 

「おっ、来たか。ちょっとこっちでトラブルがあって小野寺が足をくじいたんだ」

 

「小咲が!?大丈夫何ですか?」

 

「ただの捻挫のはずだから大丈夫。普通なら橘が代役で出るんだが、あいにく風邪をひいて休みなんだ。とりあえず考えがまとまるまで一条に小野寺を見てもらってたんだけど、少し前までいきなり一条が見ていたんだけどいきなり走ってどっかに行ったから急遽お前に来てもらったんだ。じゃあ、小野寺のことよろしく」

 

キョーコ先生がどこかに行ってしまったので、俺は床に座って俯いている小咲の横に座る。小咲を心配するようにもう1人女の子がこっちに来た。

 

「……大丈夫か?」

 

「…どうしよう。私のせいでみんなで頑張ってきたこの劇ができなくなっちゃう。この衣装も台詞もみんなちゃんと考えてくれたのに私のせいで」

 

「違う、寺ちゃんは悪くない。私のせいなの。私が無理して飾り付けしようしたから脚立から落ちて…………それで」

 

「違うよ。愛音ちゃんは悪くない。悪いのは私なの。私が…………」

 

中村愛音。髪型がポニーテールの同じクラスの女の子。どうやら、この子を助けるために小咲は足をくじいたようだ。

 

「とりあえず、2人でどっちが悪いとかいうのやめろ。中村はクラスのためにやろうして、小咲は中村を助けようとしてこうなっただけだ。どっちが悪いとかいう事じゃない。気にする事じゃねえよ」

 

「「でも!」」

 

「本番前だからって絶対アクシデントが起きないとは限らない。今回はそれがたまたま起きただけ。問題はその後どうするかって事だ。俺は悔やむなら次の事を考えた方がいいと思うぞ」

 

俯いて涙を流す小咲と中村を見て俺は慰めるようにゆっくりと小咲の頭を撫でる。……にしても楽の奴、小咲を置いていきなり走ってどっかに行くなんてあいつ何考えてるんだ。

 

「…………ふふっ、神崎くんって以外と優しいんだね。みんなが事件の事言うから私も少し怖かったんだけど」

 

「言われてる方も辛いんだぞ。後、俺はクロでいい。上の名前は嫌いだ」

 

「うん、わかったクロ君。ありがと。何か少し楽になったよ」

 

「礼をされるほど良いことを言ったつもりもないけどな。…………小咲、中村、見てみろ。劇も何とかなりそうだぞ」

 

俺が見ている方を2人は見る。そこにはロミオの役だった楽とその横に桐崎さんが立っていた。

 

「ち、千棘ちゃん!?千棘ちゃんがジュリエット役やってくれるの!?」

 

「うん。こいつが泣いて土下座するから仕方なくね」

 

「なっ!!俺はそんな事してねえぞ!」

 

「…………??」

 

何があったか知らないけど、2人は無事に仲直りしてみたいだ。これで劇は何とかなりそうだな。良かった。

 

「中村、劇は何とかなった。だから、次は小咲に助けてもらったその体で何かするべきだと思うぞ。もちろん、次は無茶しないようにな」

 

「………………うん!なんか元気でた。ありがとう、クロ君!」

 

そう言って中村は劇の準備をするために走っていった。

 

「……さてと、じゃあ俺は宣伝の方に戻りますか」

 

「ちょっと待って!!」

 

宣伝に戻ろうとして立ち上がろうとしたら小咲に服の袖を掴まれ止められた。

 

「どうした?まだなんか用があるのか?」

 

「うん。でも、ここではちょっと…………」

 

何の用なんだ?ここでは話しにくいって事はとても大切な事なのかな?

 

「わかった。とりあえず外に行こう。そこで話せばいいだろ?」

 

小咲は黙って頷いたので、小咲のくじいた足を気にしながら俺たちは外に出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、話ってなんだ?」

 

「うん………………あのね、クロ君はこのまま転校してもいいと思ってるの?」

 

…………………………え?ちょっと待って。なんでその事を小咲が知ってるんだ?俺まだこれをマリーにしか話してないぞ。なのになんで?

 

「この前、私とるりちゃんが用事で放課後の練習抜けたでしょ?」

 

「あ、あぁ」

 

「あれね、本当は私とるりちゃんでクロ君の家に行ってたの。最近のクロ君の様子が明らかにおかしいからるりちゃんがクロ君の家に行ったら何かわかるかもって。それで向かったらクロ君のお母さんにあって」

 

「母さんに話しを聞いたって訳だ。ったく、母さんは……余計なこと喋らなくてもそれくらい自分で言うのに」

 

「うん。だから、今聞かせて欲しいの。クロ君はどうするつもりなの?」

 

「………………小咲達には悪いけど俺は九州の方に引っ越す事に決めた。俺はもう母さんが悲しむ顔を見たくないんだ。だから……ごめん」

 

本当なら文化祭が終わって楽や集達みんなが揃ってるところで言いたかったんだけどな。聞かれた以上答えるしかない。

 

「そうなんだ…………………クロ君がそう決めたなら仕方ないよね」

 

それだけ言うと俺たちは黙ってしまう。

 

「………………ねぇ、クロ君。もう1つ聞いていい?」

 

「なんだ?と言っても大体聞きたい事はわかる。るりの事だろ?」

 

小咲は黙って頷く。

 

「最初は告白して去ろうと思ってたんだけどな。やめとくことにした」

 

「どうして!?」

 

「告白して向こうも好きだったとしたら?それなら俺たちが余計に苦しいだけだ。引っ越しするならどっちにしても苦しいんだしさ」

 

俺が向こうに行くことを知ったらきっとるりも悲しむだろ。それなら、この気持ちは胸の中にしまっておいた方がいいに決まってる。……って

 

「小咲?もしかして……泣いてるのか?」

 

小咲が手で顔を抑えている。俺は泣いてるのかと思った小咲の顔を覗き込もうとした瞬間。

 

「ふふっ、やっぱりクロ君とるりちゃんはお似合いだね!」

 

小咲は笑っていた。俺が転校すると言って悲しいはずなのに、なぜか笑っている。てか、お似合い?

 

「笑ってごめんね。クロ君のさっきの台詞ね、るりちゃんと全く同じだったよ。クロ君のお母さんから話しを聞いた日にも同じ事言ってた。そう思ったら何かおかしくて」

 

「なっ!!?……………………そっか、るりも俺と同じ事を。お互いそれをわかってるなら別に気持ちなんか伝えなくても」

 

「クロ君は本当にそれでいいと思ってるの?」

 

さっきは笑っていたのに、今度は真剣な顔をして俺を見ていた。

 

「私なら嫌だよ。例え、離れ離れになるにしてもそんな別れ方するならやだもん。もし、一条君が転校するってなったら私、絶対告白する」

 

「そ、それは小咲だったらの話だろ。俺とるりは違うよ」

 

「嘘!るりちゃんもクロ君もそんな事絶対思ってない。私もるりちゃんと中学からずっと一緒だし、クロ君共一緒だったんだよ。それぐらいわかるよ!」

 

「…………違う。俺は小咲の考えるような事を考えてない」

 

俺が俯いてそう言うと小咲は俺の手を両手でギュッと握ってきた。

 

「ねぇ、クロ君。自分の気持ちに正直になってよ。お母さんの事とかそういうのなしにしてクロ君の本当の気持ちはどうなの?クロ君はるりちゃんの事をどう思ってるの?」

 

「俺がるりを………………」

 

小咲にそう言われて俺は心の中でゆっくり考えてみる。いや、考えてみる必要なんかない。もう自分でも十分理解している。

 

「俺はるりが好きだ。それは俺が転校しても……何があっても変わらない」

 

俺はるりの事が本気で好きなんだ。だけど、母さんの事ばかり考えていたからその事をちゃんと意識してなかった。

 

「でしょ?だったら、告白するだけした方がいいんじゃないかな?私だったらしない方が後から絶対後悔すると思うよ。

 

「それで、向こうが俺の事を友達としか見れないって言ったらそれはそれで俺が告白できてよかったで済む。けど、もし向こうが好きだったらどうすんだよ。俺はそっちの方が間違いだったって気しかしないぞ」

 

「その時はその時だよ。それにクロ君はどう思ってるか知らないけど私達が一生会えないわけじゃないんだよ?」

 

「………………確かに」

 

お金はかかるだろうけど、俺が自分からるりに会いに行けばいいんだ。もしかしたら、小咲とるりがこっちに来てくれるかもしれない。

 

「それに…………前者の方には絶対にならないしね」

 

「ん?なんか言った?」

 

「ううん、何でもない。じゃあ、クロ君、決心した?」

 

「あぁ。色々ありがと。俺ちゃんと告白する。小咲のおかげで目が覚めたよ」

 

「うん!私も応援してるから頑張って!」

 

「サンキュー!でも、その前にロミオとジュリエットを見よう。折角の楽の晴れ舞台だ。ちゃんと見ないともったいないしな!」

 

そう言って俺はまた体育館裏に戻った。それが終わったらちゃんと自分の気持ちを伝えよう。結果どうなったとしても俺はそれをちゃんと受け止める。そう決心したから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小咲side

 

「はぁ、何か私生意気なこと言っちゃったかな?私も人のこと言えないのに。一条君に告白………………後でるりちゃんに怒られるだろうな」

 

「おい、小野寺。そろそろ時間だぞ」

 

「ふえぇ!!」

 

振り向くとそこに城野崎君が立っていた。いきなりの事で私は叫んじゃったけど。

 

「おい、びっくりしすぎだろ。……にしてもクロが転校か。まぁ、あいつも昔色々あったみたいだしな」

 

「もしかして、全部聞いてた?」

 

「あぁ。劇がもうすぐ始まるって言おうとしたら、お前らがここで話してるの聞こえたからさ。聞くつもりはなかったけど思わず……………」

 

「そうなんだ。まぁ、城野崎君にならきっとクロ君も許してくれるよ」

 

「そう言われるとありがたい。とりあえず、早く戻ろうぜ。もう劇始まるからな!」

 

「うん、そうだね!」

 

クロ君、頑張ってね。るりちゃんもちゃんと気持ちに答えてあげてね。クロ君が決心した結果なんだから。

 




どうでしたか?
オリキャラを出しました。このタイミングでって思った人もいるかもしれないですがww

感想と訂正があればお待ちしております!


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第34話 劇のホンバン。そして……

「お、始まった始まった。凄いな桐崎さん。あんだけしか時間なかったのによくあんなにすらすら台詞を言えるもんだ」

 

少ししか時間がなかったのに桐崎さんは台詞を覚えて見事にジュリエットを演じている。

 

「……あれ?次の台詞なんだっけ、ロミオ様?」

 

観客が全員ずっこけた。さすがに全ての台詞は覚えられなかったみたいだ。

 

「……おいコラ、ジュリエット!その台詞は大事なところだろうが!」

 

「しょうがないでしょ!出たしっからこんなまどろっこしい台詞を覚えられないわよ!」

 

「台詞にケチ付けんな!」

 

グダグダだ。こんな様子じゃ観客の様子なんて全然ダメだろうな。

 

『なにこれ、ギャグなのかな?』

 

『おもしろいねー』

 

…………以外に受けは良かったようだ。

 

「よ、よ〜〜〜しジュリエット。緊張してるのはわかるからとりあえず一から仕切り直しだ!」

 

「もっ、もちろん!バッチこいよ!」

 

「ジュリエットはそんな事言わねえよ!」

 

なんだ、このロミオとジュリエット。これじゃあロミオとジュリエットっていう題名のただの漫才じゃねえか。……まぁ、観客の受けはいいからいいと思うけど。

 

『屋敷から抜け出そうとするロミオ。召使いの制止を聞かず、ジュリエットの元へ行こうとします』

 

「本当に行ってしまうのですか?キャピュレット家の者があなたの命を狙っています」

 

「例えどれほど危険でも私は行かなければならないのだ。今も彼女はあのバルコニーで私も待っている」

 

『止まらないロミオ。しかしここで召使いはある決意をするのです』

 

ん?と動きを止める楽と召使いの鶫。オリジナル設定か?

 

『実はこの召使いはロミオに恋をしていたのです』

 

「はぁ!?」

 

『召使いはこれが今生の別れとなると思いロミオに告白するのであった笑』

 

あ、笑い声が聞こえる。集のやつ本気で面白がってやってるな。

 

「あ、あの……ロミオ様。私はロミオ様の事が…………好………………って言えるかバカ者ーー!!!」

 

『おぉっと、この召使い。存外恥ずかしがり屋だったようです。告白失敗です!!』

 

鶫が文句を言いながらもこっちに戻ってきた。何だ、これは。

 

「お待ちください!」

 

「……ん?」

 

今度、突然現れたのは顔を真っ赤にしたマリー。あれ?マリーって風邪で休みじゃなかったっけ?

 

「私の名は……ジョセフィーヌ。私はロミオ様の…………本当の恋人ですわ!!」

 

『なんと〜、ここでまさかのロミオ二股疑惑!なんということでしょう。これが事実なら純愛どころではありません。女の敵です!』

 

「えぇっと、ジョセフィーヌ。君は何か誤解をしているようだ」

 

「まぁ!まさか忘れたとおっしゃるので?私にあんな事までして……結婚の約束までしましたのに!」

 

『2人の中は思ったより進んでいたようだ!』

 

なんか楽しそうだな。俺も出てみたいなぁ…………って、

 

「城野崎?なんで俺の背中を押している?」

 

「どうせこれが最後の大イベントだ。お前も舞台に出て行ってこい!」

 

城野崎は笑って俺の背中を押してきた。そのせいで俺まで舞台に出ることになってしまった。突然の事に観客もマリーも楽も驚いている。……こうならやけだ!!

 

「私の名前はマルゴリッヒ。私はマリー…………じゃなかった。ジョセフィーヌの恋人だ!」

 

『おぉっと、突然出てきたマルゴリッヒ!ジョセフィーヌの恋人発言だー!!』

 

「私の愛する恋人を奪うなど言語道断!まして愛する女性がいるというのに…………どういう事か説明してもらうぞ、ロミオ!!」

 

『ロミオ、愛する女性がいるというのにマルゴリッヒの恋人を奪うという行為にまで行こうとしていた。最低です。人間のクズです!!』

 

すまん楽…………でも、こんな感じでいいのだろうか?

 

「何を言ってるいるのだ、ジョセフィーヌ。君は昔からそう言って僕を困らせる。結婚なんて出来るわけないだろ?だって、僕らは……血の繋がった兄妹なのだから!!」

 

『なんと衝撃の事実!2人は兄妹だったー!!』

 

「そういう事だ、マルゴリッヒ。君の彼女は僕とは結婚できない。だから、君がもらってくれ」

 

くっ、咄嗟にそんな設定が思いつくとは楽も中々やるな。

 

「…………私はマルゴリッヒ様の事も大好きです。しかし、ロミオ様の事は本気で愛しています。愛する心にそんなものは関係ありません。ロミオ様、結婚しましょう!!」

 

『ジョセフィーヌ止まらない!!兄を健気に思うジョセフィーヌ。ロミオは。そして、マルゴリッヒはどうするのか!!』

 

マリーも楽も止まらないな。どうしたらいいんだろう。

 

「………わかってくれ、ジョセフィーヌ。僕が進む道は両家を巻き込む血塗られた道だ。そんな道に体の弱い可愛い妹を巻き込みたくないんだ。だから、君はマルゴリッヒと幸せな家庭を築いていってくれ」

 

楽がマリーの両手を握ってそう言った。すると、マリーは目をハートにさせてそのまま倒れてしまった。

 

「そういう事だ。後は頼んだぞ、マルゴリッヒ」

 

「…………君がジョセフィーヌを奪おうとしたのには変わらない。後でしっかり罰を受けてもらうからな。それまで死ぬんじゃないぞ」

 

俺はマリーをお姫様だっこをしてそのまま舞台裏へと歩いて行った。

 

「お疲れクロ」

 

「お疲れ様クロ君」

 

「なんかすごかったね、クロ君も橘さんも」

 

戻ってきた俺に城野崎、小咲、中村の3人が俺に声をかけてきた。

 

「おう。城野崎、後で覚えてろよ」

 

「何のことかわからないな。それより、先に橘さんを保健室に連れて行ってあげるべきじゃないのか?」

 

マリーも見ると、顔を真っ赤にしてしんどそうにしているがとても幸せそうな顔をしている。楽に言われた一言がそんなに聞いたのだろうか。

 

「それもそうだな。じゃあ、俺は保健室行ってくるから。あとはよろしく」

 

「おう。しっかり決めてこいよ」

 

「クロ君、頑張ってね」

 

どうやら城野崎と小咲には俺が保健室に行った後、何をしようとしているのかがわかってるようだ。

 

「おう。2人とも、サンキューな」

 

マリーを抱っこしたまま俺は保健室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しまーす。って、誰もいないのか?」

 

俺は誰もいない保健室に入り、マリーをベットに寝かせる。

 

「…………マリーも色々ありがとう。俺行ってくるから」

 

「………………がんばってください、クロ様」

 

「起きてたのかよ。本田さんはちゃんと呼んだから後できっと来てくれるからな」

 

「わかりました。ありがとうございました、クロ様」

 

「うん。それじゃあ!」

 

俺は保健室を出て走り出した。るりを探すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れた。なんで私があんな目に遭わないといけないのよ。何かやけ食いしてやろうかしら。これも全部クロ君のせいだわ」

 

「俺のせいなのかよ。呼び出したのは先生なんだぞ」

 

「うわっ!!」

 

るりの後ろからいきなり声をかけたせいでるりはびっくりして後ずさる。そして、いつものように俺を睨んでくる。こんなやり取りはもう何回目だろうか。

 

「どうしたの?もう先生の用は終わったのかしら、マルゴリッヒさん」

 

「聞いてたのかよ。…………そうか、放送で全部流れてたからな」

 

「えぇ。あなたが橘さんをそういう風な目で見てることもしっかりね」

 

「待て誤解だ。あれは劇に合わせてそう言っただけだ」

 

「さぁ、それはどうかしら?」

 

いつものように俺をからかってくる。こんなやり取りをしたのももう何回目かわからない。るりと出会って楽しい事も苦しい事もいっぱいあった。だから、そんな体験をさせてくれたるりにちゃんと気持ちを伝えないとな。

 

「るり、今から暇か?」

 

「この通り、1人でやってた宣伝の仕事も変わってもらったから今は1人ですごく暇よ」

 

「そうか。じゃあさ…………俺と文化祭まわらないか?」

 

「…………1人で仕事をさせた罰よ。何か奢りなさいよ」

 

「……了解しましたよ、お姫様」

 

そう言って俺とるりは歩き出した。

 




どうでしたか?
感想と訂正をお待ちしております。


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第35話 伝え合う気持ち。それはコクハク

メリークリスマス!!ですね。
はい、題名通りです。

注意、作者は恋愛経験はゼロです。
あと、るりちゃんのキャラが少し崩壊?かもしれません

コーヒーの準備はいいでしょうか?
もちろんブラックですよ!

では、どうぞ〜


奢りなさいよ。そう言われたから食べ物や飲み物を奢ってるわけじゃないが、今るりと俺の両手には縁日の祭りの時のように食べ物がたくさんあった。そして、俺は財布はというと………………

 

「あぁ!俺のたくさんあった英世さんが!行かないで!行かないでくれ〜!!」

 

最後の英世さんが尽きようとしていた。いくら何でもこれはやりすぎではないのだろうか?

 

「何か言ったかしら?」

 

「なんでもございません」

 

るりと2人で出かける時はもっとお金を用意しておこう。そう決心した俺であった。…………まぁ、そんな日があるかどうかはわからないが。いや、あると信じよう。

 

「なぁ、るり。そんなにいっぱい食べ物持ってるならどっかで休もうぜ。俺、劇出てから走ってお前探しててちょっと疲れてんだよ」

 

「……はぁ、仕方ないわね。どこがいいの?」

 

「そうだな………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、屋上に来たと」

 

「いいじゃん。文化祭に屋上に来るやつなんてどうせいないだろうし、静かだしさ」

 

屋上の扉を開けると、そこには校外てやってる模擬店や小さなステージの声が聞こえるだけで誰もいないいい場所だった。

 

「なっ?ここならゆっくり食べられるだろう?」

 

「……まぁ、確かにね。風も気持ちいいしいい感じね」

 

俺たちは適当な場所に座り、荷物を自分の足元に置く。

 

「はぁ、やっと休める」

 

「………何、その私と一緒にいたら疲れた〜、みたいな言い方は」

 

「事実そんなもんだよ」

 

「サイテーね。そんな事を平気で言うなんて」

 

「嘘だよ。冗談に決まってるだろ?」

 

「……………」

 

俺の一言に怒ってしまったのか、るりは無言で食べ物を食べていく。

 

「ったく……2年……3年か?るりと一緒にいてきたがお前は全然変わらないよな」

 

いつでも冷静なとこも、背が小さい間だって事も、怒ったら無言で飯食うとこも、全部全部俺が引っ越してきてから変わらないことだ。

 

「それクロ君も一緒よ。あなたが私と出会った時、鬱だったこと以外は何も変わらないわよ」

 

「そうだな。でも、その鬱だった俺をるりは助けてくれた」

 

「別に助けたつもりはないわ。ただ、ちょっとアドバイスをしただけよ」

 

「『私はあなたのその真面目なとことか優しいところとか結構好きよ。周りの事なんか気にしなくていい。そんなに不安なら私が友達になって、あなたのそばにいてあげるわよ』がか?これをるりはアドバイスって言うんだ?」

 

「っつ!!…………何で一言一句間違えずに私の言ったこと覚えてるのよ!」

 

「あれが俺の運命を変えた言葉だったから、かな?」

 

「……自分で言っててそれ恥ずかしくないの?」

 

「別に。2人っきりだし何も恥ずかしくねえよ」

 

「そう…………でも、私は恥ずかしいわ」

 

「それは悪かったよ」

 

いつものように普通にいつも通りの会話をしていく。けど、俺自身いつ言おうか迷っていた。自分の気持ちを言葉にするタイミングを。でも、先延ばしにして行ったら結局さっきの小咲の時みたいにダメな方なルートになってしまうかもしれない。まぁ、あれは結果オーライだったけど。だから、俺は決めた。

 

「……あのさ、俺今だから言えるんだけど、この学校に来てもしるりがいなかったら小咲を好きになってたと思う」

 

「!?……いきなり何の話?」

 

「いいから。ちょっと聞いといてくれ。だってそうだろ?あんな可愛くておっちょこちょいで優しいやつなんだぞ。俺からしたら惚れない奴がいない方がおかしい気がするよ。

でも、そんな事あるわけないんだ。小咲がいて、マリーがいて、楽がいて、集や城野崎がいて、桐崎さんや鶫がいて、そして……るりがいる。それが俺たちの今いる当たり前の日常だ。1人でも欠けたら日常じゃなくなる。俺はそんな気がする。

そして、俺は小咲がある日常で過ごしてきた筈なのに、俺は小咲を恋愛的な意味の方で見ることは出来なかった。どうしてだと思う?」

 

「…………さぁ、わからないわ(本当はわかってる。今ので理解してない方がおかしい)」

 

「まぁ、るりなら意味理解してるだろうし、その上で言うけど、それはるりがいたからだ。もし、あの時の言葉を小咲が言ったとしても俺は多分小咲を恋愛的な方で見れなかったと思う。冷静で時々毒舌で、食べ物めっちゃ食って、俺や小咲の事をちゃんと考えて行動してくれて、お前が気にしているその身長だって俺は今なら全て受け入れられる。だって俺は…………」

 

ずっと言いたかった。けど、言えなかった言葉を今ここで口にしよう。

 

「俺は………………るりの事が………………好きだ!だから、俺と付き合ってくれ!!」

 

俺ははっきりとそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

るりside

 

ここに来てからなんとなく予想はしていた。クロ君が私に告白してくるじゃないかって思ってた。そして、それが予想通りに行われた。クロ君が私に告白したんだ。…………でも

 

「クロ君が勇気を出して告白してくれるのは嬉しいわ。けど、あなたの気持ちに答える事は出来ないわ」

 

私だって本当は気持ちに答えたい。

 

「どうして!?」

 

「理由は2つ。まず、あなたが九州の方に引っ越しすると思ったから」

 

「………………やっぱりか」

 

九州に引っ越しするとか本当はそんなのどうでもいい。でも、本当の事を言うと余計に悲しくなる。そうに決まってる。

 

「小咲から聞いたよ。お前ら2人で母さんに会ってきたらしいな」

 

「えぇ。言ってくれなかったのはちょっと悲しかったけど、でも仕方ないと思って受け止めたわ。そしてクロ君なら多分引っ越しするだろうって事もわかってた」

 

言えるなら行かないで、って言いたい。

 

「そうか……悪かったな言えなくて。俺も少し考える時間が欲しくてさ。決まったのはいいけどいつ言おうかってタイミングも測れなくてそのまま今日まで…………」

 

「いいわよ。そんなに気にしてないから」

 

だけど、それはクロ君の決心を鈍らせる事になるかもしれない。

 

「それで、もう1つのは?」

 

「もう1つは………………」

 

言いたくない。これは言いたくない。でも、言わないといけない。

 

「私は…………クロ君の事を」

 

友達としてしか見れないなんて言いたくない。私もあなたの事が好きだから本当の事を言いたい。

 

「クロ君の事を…………友達」

 

違う!私が言いたいのはそんな事じゃない。けれど、言わないとクロ君が…………私が…………

 

「友達と…………しか……見れ」

 

「るり?どうして泣いてるんだ?」

 

「えっ?」

 

私はそう言われて自分の頬に手を当てる。すると、そこは濡れていた。私の涙で濡れていた。

 

「あれ、何で…………?私、泣くつもりなんか別になかったのにどうして……」

 

涙は拭いても拭いても溢れ出てくる。自分の力じゃ止める事なんかできなかった。

 

「やだ、どうして……………つっ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クロside

 

「友達と…………しか……見れ」

 

その瞬間るりの瞳から大粒の涙が流れはじめた。自分で言うのもなんだけど俺と離れるのがそんなに嫌だったのか、理由はわからない。

 

「るり?どうして泣いてるんだ?」

 

「えっ?」

 

俺がそう聞くとるりは自分の頬に手を当てた。その時、初めて自分が泣いてる事に気付いたようだ。

 

「あれ、何で…………?私、泣くつもりなんか別になかったのにどうして……」

 

るりは涙を拭うが、何度拭っても涙は溢れ出てくる。しばらく涙は止まる気配などまったくしない。けど、俺はそんなるりを見て

 

「やだ、どうして………………つっ!!?」

 

俺はるりを優しく抱きしめた。いきなりの俺の行動にるりもびっくりしている。

 

「ちょ、クロ君!いきなり何してるのよ。離して」

 

「やだ」

 

「ちょ、本気で離さないと怒るわよ!」

 

そう言われるが、俺は抱きしめる力を強くした。そんな俺をるりは俺の肩を叩いてくる。

 

「わからねえ。わからねえけど、今のるりはどうしてもほっておけない。今るりが何を考えてるのかわからないけど…………泣きたい時は泣いた方がいいと思うぞ」

 

「つっ!!………………クロ君のくせに生意気よ」

 

「そうだな。でも、俺はるりが好きだから。今のるりは絶対ほっとかない」

 

「……………………バカ」

 

叩いていた手を離して、るりは黙って泣き出した。その時、俺は思った。俺はおふくろを1人にしたくないが、るりも1人にしたくないと、そう思ってしまった。

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

 

「えぇ………………ありがとう」

 

「どういたしましてだ」

 

俺達はもう1度、屋上の床に座る。るりは俺の肩に頭を乗せ、もたれかかってきている。文化祭は終わろうとしているのか、下から聞こえる声はほとんどなくなっていた。

 

「なぁ、俺さ。今日、本当は告白するつもりなんかなかったんだ」

 

「えっ?」

 

「俺はこう思ってた。告白した方が絶対辛いって。もし俺たちが両思いだったら?それじゃあ、これから会えなくなって余計辛いだけだ。そう思ってたから」

 

(私と同じ事考えてたんだ………)

 

「けど、さっき小咲に言われたんだ。クロ君は本当にこのままでいいのか?ってさ。俺はそれでいいって思ったんだ。どっちにしろ悲しいならるりが余計悲しむ顔なんて見たくなかったから。でも、小咲には見破られたよ。俺がそれを望んでる事じゃないって」

 

「小咲も結構カンが鋭いのね」

 

「かもな。それでも俺はまだごまかそうとしてたんだ。そしたら小咲が俺にこう言ってきたんだ。『自分の気持ちに正直になって』って」

 

「自分の気持ちに?」

 

「うん。俺の母さんの事とか、引っ越しするとかそういうのを全部抜きにして、俺自身の気持ちはどうなんだ。俺はるりの事をどう思ってるんだ、って。そう言われた」

 

「そう………………小咲のくせに生意気な事を言ったのね。小咲のくせに」

 

何故か2回言ったことが少し気になったが俺は話を続けた。

 

「そう言われて目が覚めたよ。俺の本当の気持ち。そんなの自分が1番理解してる。俺はるりが好きだ」

 

るりの方を見つめて俺はもう1度そう言う。すると、るりは顔を赤らめて顔を背けた。

 

「小咲に言われたから俺はそう思う事が出来た。だから…………教えて欲しい。るりが俺の事をどう思ってるのか。俺の母さんの事とか、引っ越しの事とか考えなかったら俺の事をどう思ってるのか聞かせて欲しいんだ」

 

俺はるりの本心が聞きたい。その本心がさっきと同じだったとしてもちゃんと聞きたかった。

 

「私が本当に思ってる事…………そんなの決まってるじゃない。最初はあなたの鬱だった状態をどうにかしてあげたかった。私も小咲も見てるのがしんどかったから。それから友達になって色んな事をしていくうちにクロ君と離れるのが嫌と思うようになったわ。それが3人で過ごすのが本当に楽しいからだと思っていた。

だけど、違った。高校に入学してからあなたと小咲が一緒にいると嫉妬する事が多くなった。その時は理由がわからなかったけど、海であなたに助けてもらって実感する事が出来た」

 

「私は………………私はクロ君の事が好きなの!!だから、クロ君が引っ越しするかもって聞いて、どうしたらいいかわからなかった。九州の方に行って欲しくない。だけど、止めたらクロ君の決心を鈍らせるかもしれない。そう思って私も気持ちを伝えず別れるつもりだった。でも、自分の本心は隠せない。私はクロ君に引っ越しして欲しくないの!引っ越しせずにこれからも一緒に学校に通いたい。それが私の本当の気持ちよ!!!」

 

るりは俺の方を向いて、涙を流しながらそう言った。るりの本心、それは俺の事が好きだったって事。それを聞いて俺はすごく安心した。

 

「そうか………………るりも俺の事が好きだったのか」

 

俺はるりの涙を指で拭い、頭を撫でる。

 

「ありがとう。本当の気持ちを言ってくれて。俺もるりが好きだ」

 

「もうこれで4回目よ。もう聞き飽きたわ」

 

「そうか。じゃあ、もう1度聞く。るり、俺と付き合ってくれるか?」

 

俺はるりの手を握ってもう1度告白した。

 

「…………バカね。今こんな事言われたばかりなのに断れるわけないでしょ」

 

るりも俺の手を握り返して言った。

 

「私もクロ君の事が好き。だから、私はクロ君と付き合うわ」

 

俺たちは両思いだった。俺たちが告白して付き合った時には、空が夕日が輝いてとてもきれいだった。




どうでしたか?
うまく書けてるか不安です。
あと、書いてる時少し自分が恥ずかしかったwww

感想と訂正があればお待ちしております


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第36話 オレタチはどうしていくか。

いよいよです。2人はどうなるのでしょうか…………
では、どうぞ〜


「で、これからどうするつもりなの?クロ君は引っ越すつもりなんでしょ?」

 

「…………母さんとちゃんと話し合うよ。だから……るりも来てくれないか?」

 

付き合う事にした俺たちは文化祭が終わったのを確認して、屋上を出た。俺たちは手を握る…………なんて事はるりが恥ずかしいから嫌だという事で別に恋人らしい事もせずに普通に屋上を出た。ただ、さっきの事を思い出したのか、るりの顔は少し赤くなっていた。

 

「それはいいけど……どうして?」

 

「るりは嫌かもしれないけど、母さんに自分からちゃんと紹介したいんだ。付き合って初日でおかしいかもしれないけど」

 

「…………わかったわ。でも、その前に小咲に会いに行くわよ。あの子にはお礼言いたいし」

 

「そうだな。じゃあ、そうするか」

 

そう決めた俺たちは教室に向かう事にした。

 

『…それでは皆の衆…!カーーンパーーイ!!』

 

俺たちの教室の前まで来ると、廊下まで集の音頭の声が聞こえてきた。俺たちは後ろの方の扉から入る。入った瞬間、椅子に小咲が俺たちに気づいて手を振ってくる。

 

「クロ君、るりちゃんお疲れ。……うまくいったんだね?」

 

「あぁ。小咲には迷惑かけたけど無事に付き合う事が出来たよ。な?」

 

「えぇ。一条君にまともに告白もできない小咲に色々説得されたのは癪だけど、今回は本当に助かったわ。ありがとうね、小咲」

 

「どういたしまして」

 

「でも、私達がうまくいったんだから小咲もちゃんとやりなさいよ!」

 

「うっ………………はい」

 

俯いて返事をする小咲を見て俺たちは笑った。それに続いて小咲も笑う。

 

「ク〜〜ロ!!文化祭、お疲れー!」

 

いきなり後ろから襲われた衝撃に驚き後ろ向くと、城野崎が俺に飛びついてきていた。

 

「城野崎かよ。びっくりさせんな」

 

「まぁまぁ、いいじゃねえか。それより、うまくいったのか?」

 

「おかげさまでな」

 

俺にしか聞こえないくらいの声で耳打ちしてきた質問を返す。すると、ますます城野崎のテンションが上がった。

 

「マジかよ!?おーい、みんなー!!クロとるりちゃんが付

 

バコンッ!!!

 

「あなた、言っていい事と悪い事があるって知ってる?てか、クロ君もほいほい喋らないで頂戴」

 

「ぎょ、御意」

 

殴られて一発でKOした城野崎をみて俺はコクコクと頷く事しか出来なかった。マジ怖い…………

 

「………さてと。じゃあ俺たちは行くよ。小咲も来る?てか、来て頂戴か」

 

「行くってどこに行くの?」

 

「もちろん、クロ君の家よ」

 

「小咲にも母さんをちゃんと紹介したいんだ。自分の口でさ」

 

るりは俺の恩人で今日彼女になった事。小咲は今日の事を含めて助けてくれた最高の友達だという事をちゃんと報告したかった。

 

「それはいいけど…………私足挫いちゃったからちゃんと歩けないよ」

 

「大丈夫。俺が背負っていくから」

 

………………って、簡単に言ったけどミスった。俺、るりと付き合ってるんだ。怒るだろうな……

 

「そうね。クロ君に小咲を任せるわ」

 

あれ、怒らない?そんなるりの様子に小咲も驚いている。

 

「何?何でそんな私をびっくりしたような目で見てるのよ」

 

「いや、るりの事だから睨んできたりするかと思ったから。なぁ?」

 

「う、うん。私もそうすると思った」

 

俺は小咲をおんぶして教室を出る。それにるりも付いてきながら言った。

 

「…………私ももうそんな事で嫉妬したりなんかしないわよ……」

 

「どうして?」

 

「だって…………クロ君が私を好きだって言ったから。クロ君は私の事を裏切らないって事をわかってるからよ」

 

それだけ言うと、言ったのが恥ずかしかったのか、るりは早足で廊下を歩いて行った。そんなるりの様子に俺はただ、顔を赤くして立ち止まる事しか出来なかった。

 

「クロ君、行こ?」

 

「え?あ、あぁ。そうだな」

 

俺は小咲に声をかけられ、意識がはっきりし歩き始めた。

 

「るりちゃん、変わったね」

 

「……変わりすぎて俺が1番びっくりしてるよ」

 

あんなるりを見るのはこれが初めてだった。これからあと何回あんな様子のるりを見ることが出来るのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま〜。母さん、いる?」

 

「あら、クロちゃん。お帰りなさい。るりちゃんと小咲ちゃんもいらっしゃい。翠なら今買い物に行ってるわ。何か用なの?」

 

「…………母さんと話しをする。だから、居間を空けといてくれるかな?」

 

「………………そう。決心はついたの?」

 

「それをちゃんと話し合うよ。るりと小咲の事も紹介したいし」

 

「わかったわ。こっちに来て」

 

頷くとばあちゃんは今の方に歩いて行った。俺たちもその後に続くように居間に向かう。

 

「待っててね。今、お茶を用意するから」

 

「ありがとう、ばあちゃん」

 

俺たちが居間に入ると、ばあちゃんは台所の方へ向かった。ばあちゃんは俺の事をどう思ってるのかな?俺と一緒にいたいのかな?

 

「はい、お茶とお茶菓子ね。るりちゃんこの前このお茶菓子たくさん食べてたから多く買っといたわよ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ばあちゃんがお茶とお茶菓子をテーブルの上に置くと早速るりはそのお茶菓子を食べだした。あんだけ食べたのにまだお腹空いてたのか?

 

「じゃあ、私は向こうでいるからごゆっくりね」

 

「あ、ばあちゃん!」

 

「ん?どうしたの、クロちゃん

 

「いや、その………………ばあちゃんはどう思ってるのか聞きたくて。俺にいて欲しいのか、それとも引っ越しした方がいいと思ってるのか」

 

「そんなの私はクロちゃんにいて欲しいわよ。翠のたった1人の息子なんだもん」

 

即答だった。俺が質問するのを見越していたのか、俺の表情から何が言いたかったのかを読んだのかはわからない。

 

「でも、するかしないかはクロちゃんが決める事よ。クロちゃんが決めた事なら私は反対しない。引っ越ししたら寂しいし、しないならそれはそれで嬉しい。きっとおじいちゃんもそう思ってるわ」

 

「そっか…………ありがとう」

 

「うん。じゃあ私はあっちに行くからね」

 

そう言って、ばあちゃんは居間から出て行った。マリーもばあちゃんも同じ事を言った。引っ越しするかしないかは俺の自由だって。

 

「……そうだな。俺のやっぱりそれは俺が決める事だよな」

 

「クロ君?」

 

「いや、何でもない。母さん早く帰ってこないかな?」

 

俺も少しお腹が空いてきたからお菓子を取ろうとした。すると。

 

「おい、もうお菓子なくなりかけてるじゃねえか。お前今の会話てどんだけ食ってんだよ!!」

 

「仕方ないでしょ、お腹空いてたんだから!!」

 

「逆ギレかよ!しかもあんだけ食っていた奴が何言ってんだよ!!」

 

「ふ、2人とも落ち着いて」

 

俺とるりが睨み合って喧嘩するのを小咲が止めようとする。まぁ、こんなしょうもない事で喧嘩しても仕方ないよな。

 

「……まぁいいわ。お菓子補充してるからちょっと待ってろ。ったく、多めに買っといたって言ってたのにどうして『その必要はないから大丈夫よ』」

 

俺が立ち上がり台所に向かおうとした時、今の扉が開いた。すると、扉の前には両手に買い物袋を持った母さんが立っていた。

 

「もしかしたらと思って買っといて良かったわ。はいこれ、お茶菓子ね」

 

「あ、あぁ。ありがとう、母さん」

 

俺は母さんからお茶菓子を受け取り、テーブルにそれを広げる。母さんはにっこりと笑って居間の中に入り、正座して座った。

 

「じゃあ、クロ。あなたがどうするつもりなのか話してくれる?」

 

「うん。でも、その前に俺から2人の事をちゃんと紹介したいんだ。母さんは1度会ってるだろうけど」

 

俺を真ん中にして左にるり、右に小咲か座布団の上に座り、それに向かい合うように母さんが座っていた。

 

「クロ。あなた今、両手に花って感じね」

 

「べ、別にどうでもいいだろ。そんな事は」

 

母さんの冗談を軽く流して、俺は一呼吸して話し始める。

 

「まず小咲から。小野寺小咲。るりの次に出来た友達で中2の頃からずっと一緒にいるんだ。優しくておっちょこちょいで俺の悩みとかたくさん乗ってくれて、本当にいつも助けてもらってきた」

 

「お、小野寺小咲です。よろしくお願いします」

 

「小咲とは喧嘩とか1回もした事なくて、俺とるりが口喧嘩した時にいつも止めに入ってくれるストッパーみたいな感じで、今では俺の1番の友達で仲良くしてるよ」

 

「で、こっちが宮本るり。るりも中2からずっと一緒で鬱だった俺を助けてくれたんだ。冷静で時々毒舌で食い意地はってるけど凄くいい奴なんだ」

 

「宮本るりです。別に食い意地はってるわけじゃありません」

 

「そんなお茶菓子食べながら言われても説得力ないんだけど」

 

お茶菓子を食べながら自己紹介するるり。せめて飲み込んでから喋れよな。

 

「るりとは時々喧嘩するけどすぐ仲直りするし、部活も一緒の水泳部でさ。俺たち中学の頃から結構大会で賞とったんだぜ。なっ?」

 

「えぇ。そのせいで変な異名みたいなのがついたんだから。『凡高のマーメイド』って何なの?」

 

「それ別にいいじゃん。俺とか『マーメイドの嫁』とか言われてるんだぜ。別に悪い気はしないけど」

 

(今のクロ君からしたらマーメイドの嫁ってピッタリの2つ名じゃないのかな?)

 

小咲がこっそりそんな事を思ってる事は俺は知らない。

 

「で、引っ越しの事なんだけど……俺、引っ越ししようと思ってた」

 

「しようと思ってた?」

 

「うん。今日終わったらそういうつもりだったんだ。俺はもう母さんを悲しませたくなんかなかったから。子どもの頃から俺を1人で育ててくれた母さんに恩返しがしたかった。だから、どんな目に合うかわからないけど九州の方に戻るつもりだったんだ」

 

「つもりだった。て事は、気が変わったの?」

 

「……………………うん。学校に通って好きな人ができたんだ。最初はその子に告白するつもりなんかなかった。告白してもし両思いだったら互いが辛くなるだけだと思ったから。でも、そう思ってた俺を小咲が後押ししてくれたんだ。クロ君は本当にそれでいいのか、って。小咲の言葉で目が覚めて俺は今日告白した。それが………………」

 

隣にいるるりの手をギュッと握る。

 

「るりなんだ。告白したらるりも俺の事が好きだって事しってさ。俺、スゲェ嬉しかったんだ。でも、同時に1つ俺の中で悩みが生じた。確かに母さんの事もほっとけないけど、るりの事もほっとけないって。そう思った。だって、俺のために嘘までついて自分の気持ちを隠そうとしてくれたんだぜ。正直、ほっとけないって思った。だから…………」

 

正座したまま母さんに頭を下げる。

 

「ごめん!俺引っ越ししたくない。小咲と………………るりともっと一緒にいたいんだ。せめて、高校終わるまでは一緒にいたい。高校卒業したら、九州の方に行ってちゃんと母さんに恩返しをする。だから、お願い!俺をこのままこの家に住む事を許してくれ!!」

 

これが俺の文化祭前とは全く違う気持ち。るりに告白したから。るりと付き合う事が出来たから俺の気持ちは大きく変わった。

 

「クロ…………」

 

「…………あの、翠さん。私からもお願いします」

 

「るりちゃん?」

 

俺の握っていた手をるりもギュッと握り返してきて言う。

 

「私も最初はクロ君が告白してきても嘘の返事をしようとしていました。理由はクロ君と同じ。私も付き合ったりした方が辛いと思ったから。だけど、クロ君の事を考えたら嘘をつく事もできなくなって、結局自分の本心を彼に伝えました。そしてその時わかった。私は彼と離れたくないって。

…………自分勝手な事はわかってます。だけど、私も彼と一緒にいたいんです。お願いします!彼と一緒にいさせて下さい!」

 

るりも俺と同じように頭を下げて母さんに頼んだ。俺は今驚いている。極力、自分が恥ずかしい思いをする事をあまり言わないるりが母さんにここまで言ったから。

 

「………………2人とも、顔を上げて頂戴」

 

俺たちは顔を上げる。母さんは立ち上がり俺の所まで来ると、ギュッと俺を抱きしめた。

 

「えっ?」

 

「バカね。子どもの幸せを喜ばない親がいるわけないでしょ」

 

俺の事を抱きしめながら母さんは話を続ける。

 

「私ね。あなたが今日の決断で断る事が何となくわかってた」

 

「ど、どうして?」

 

「だってクロ、私がこっちに来てからあなたの話しの8割が小咲ちゃんとるりちゃんの話だったわよ。残りがその他の友達とか学校の事とかね」

 

学校であった事をそのまま話してるつもりだったが、いつも小咲とるりといっしょにいたせいか大半が2人の話しになっていたようだ。

 

「それを聞いてる時、私は本当に嬉しかったわ。九州にいた頃は学校から帰ってきても、その時の話しはほとんどしなかったもの。それがこっちに来てからは学校で起きた話ばっかり。話聞いてて母さん泣きそうになった事もあったわ。

父さんや母さんからも聞いたのよ、あなたの話し。九州にいた時みたいにいじめられてるのかと思ったから引っ越しの提案出してみたんだけどその必要はなかったみたい」

 

「じゃ、じゃあ…………俺が向こうに引っ越しする話は嘘だったのか?」

 

「別に嘘だったわけじゃないわ。あなたが私と向こうに戻りたいっていうならそうするつもりだったわ。まぁ、九州に戻るって言ったら本当にそれでいいのか、って聞くつもりだったけどね」

 

「でも…………いいのか?俺と向こうで暮らした方が母さんはきっと楽で楽しく暮らせるはずなのに……。それにばあちゃん達の事も」

 

「母さん達にはあなたが学校に行ってる間にちゃんと相談しといたわ。それにさっきも言ったでしょ?子どもの幸せを喜ばない親なんていないの。私はあなたが幸せで楽しく暮らしていけるならそれで良いの。私はあなたの母さんなのよ。あなたの幸せな顔を見れただけで十分よ」

 

「でも『それに!』」

 

「あなたにはこれからも一緒に過ごして行く友達と彼女がいるでしょ?」

 

「あっ………………」

 

そうだ。今の俺にはるりと小咲がいるんだ。母さんの事も大事だけど、小咲を………………るりの事も大事だから。

 

「ねっ?こんなにあなたを思ってくれる友達と彼女がいるの。もし、彼女怒らせたら、母さん九州から飛んできてあなたを叱るからね」

 

「う、うん…………わかった」

 

「よし。…………小咲ちゃんとるりちゃんもありがとね。これからもクロの事をよろしくお願いします」

 

「こ、こちらこそクロ君にはいつもお世話になりっぱなしですから。これからもちゃんと仲良くします」

 

「…………私も。これからもクロ君とは仲良くやっていきます」

 

「えぇ。よろしくね…………はぁ、それにしても学校かー。羨ましいな。私も高校生に戻りたいわ。私ね。昔は国語の先生になりたかったのよ。それで、教育系の大学に行ったの。そこで、蒼と出会ったのよ。あの時は優しかったのに、なんであんな事になったのかしら?」

 

「…………母さんはまだ親父の事が好きなのか?」

 

俺は九州にいた頃にずっと聞きたかったことを今聞くことにした。その時は母さんがその事で辛かっただろうから聞かなかったけど。

 

「ううん。別にそんな事はないわ。ただなんであんな事をしたのかだけ知りたくてね」

 

「俺も知りたかった。中3の時1人で会いに行ったけど、暴言言われたから帰ったよ」

 

「……………そう。誰かわかる人はいないのかしら?」

 

「そうだな………………やば!もうこんな時間だ。小咲を家におくっていかないと!」

 

「あら?小咲ちゃんどうかしたの?」

 

「今日足くじいたから俺がおぶっておくらないといけないんだ」

 

「そう。じゃあ玄関まで見送るわ」

 

俺たちは立ち上がり、俺は小咲を背負い玄関まで向かう。その時、何故かるりは顎に手を当てて何か考え事をしてるように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあね、小咲ちゃん、るりちゃん。もうしばらくこっちにいるからいつでも遊びに来て頂戴」

 

「はい。ありがとうございました」

 

「……………………」

 

小咲は俺におぶられてる状態でお辞儀し、るりは何も言わずぼーっとしている。どうかしたのかな?

 

「…………母さん、ありがとう。理由はどうあっても母さんがこっちに来てくれたから俺はるりと付き合う事が出来たんだと思う」

 

「そんな事をないと思うわよ。小咲ちゃんがクロにアドバイスをして、そのアドバイスを受けて、クロがるりちゃんに告白してるりちゃんはクロをOKした。それだけよ」

 

「…………母さん。俺大人になったら絶対母さんを楽にさせてあげる事をここで約束するよ。だから、それまで待っててくれるかな?」

 

そう言うと、母さんは口に手を当てて驚いた。そして、目から涙がボロボロと流れてくる。

 

「……えぇ、それまで待ってるから。でも無理はしないでね?」

 

「もちろん!約束するよ」

 

俺は母さんと約束した。俺の背中で小咲が泣いてるのがわかった。そんなに感動したのかな?

 

「じゃあ、小咲をおくってく『クロ君、翠さん。ちょっといい?』どうかしたのか?」

 

今までずっとぼーっとしてたるりがやっと口を開いた。

 

「翠さんはまた向こうに戻るつもりなんですよね?」

 

「えぇ。そのつもりだけど」

 

「で、向こうに戻ったら仕事をしながら独り暮らしすると?」

 

「そうよ」

 

「その仕事はさっき言ってた国語の先生なんですよね?」

 

「そうだけど……それがどうかした?」

 

なんの質問をしてるのか俺にはよくわからない。小咲を首を傾げていた。

 

「だったら、こっちに引っ越して来て先生をする事は出来ないんですか?」

 

「え?……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっ!!」

 

「それだったら、翠さんがクロ君のおばあちゃんとおじいちゃん養えるし、クロ君とも一緒に暮らせるんじゃ……………………」

 

「あっ!!」

 

「確かに……」

 

なんでこんな単純な事に気付かなかったんだ?母さんが無理に向こうに仕事する必要なんか………………って、あれ?

 

「俺、確か母さんが案出してきた時にこれ言ったよな?母さんがこっちに引っ越して来て4人で暮らしたらって」

 

「いや、あの時はクロが学校でどんな生活送ってるか知らなかったから」

 

「でも、母さんはじいちゃんとばあちゃんと話し合ったんだよな?」

 

「………………ごめん。3人で話し合った時にその案は出なかって忘れてたわ」

 

「……てことは、1番最初に話し合った時は無理だったけど、今ならそれが可能だと」

 

「そういうことになるわね」

 

俺は思わずその場でずっこけそうになってしまった。小咲もるりも母さんに呆れている。じゃあ、今までの俺たちの悩みは何だったんだ?

 

「えっと………………ごめんね。クロ、これから母さんもここで住むことにするからよろしく」

 

「………………まぁ、母さんといっしょに暮らせるなら俺は嬉しいからいいよ」

 

結局、俺たちの悩みはなんだったのか。母さんはこっちで暮らす事になった。母さんはああ言ってたが、母さんが来てくれたおかげで俺とるりは付き合う事が出来たと思ってる。るりもそう思ってるかもしれない。それだけは本当に感謝しないといけない。だから、俺はいつか母さんに恩返しをする事もう1度決意した。

 

 

 

 

 

 

 




多分今までで一番長いです。

次で文化祭編最後になるわけですが、
もしよろしければ自分の活動報告をみてください。

とてつもなく自分勝手なアンケートをします。
そして、重要です。是非見てください。
協力お願いします!!

感想と訂正があればお待ちしております。



12月29日13時現在 アンケート数

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第37話(終) 俺のボンコウでの日常

ストーリー最終話です。どうぞ〜


文化祭が終わり数日経った。あれから母さんは九州の方に戻ってこっちに来る手続きをすると言って向こうに一時的に帰っていった。

 

「おはよう、ばあちゃん、じいちゃん」

 

「おはようクロちゃん。今日は起きるの早いのね」

 

「うん。今日からこの時間に起きる事にしたから。朝ごはんできてる?」

 

俺はあいかわらずばあちゃんとじいちゃんと仲良く暮らしている。母さんに恩返しすると言ったが、2人にもちゃんと恩返ししないといけないと最近思うようになっていた。

 

「いただきます」

 

ばあちゃんが焼いてくれたパンを一口かじる。うん、美味しい。

 

「クロちゃん、今日からこの時間で起きるって言ってたけど、それは何か理由があるの?」

 

「う、うん。まぁね」

 

「…………もしかして、るりちゃん?」

 

「ぶふっ!!」

 

ばあちゃんの言葉に俺は飲んでいた牛乳を吹き出しそうになる。

 

「……何でわかったの?」

 

「うーん……おばあちゃんのカンかな?」

 

これが女のカンならぬ、おばあちゃんのカンというやつなのか?なんというか恐ろしいな…………

 

「まぁ、そういうことだから今日からちょっと早起きするから。……ごちそうさまっと」

 

朝ごはんを食べ終わると、制服に着替えて学校に行く準備をする。

 

「よし、準備オッケー。じゃあ行ってきます!」

 

靴を履きいつものようにフリスクを2粒口の中に放り込み外に出る。外に出ると、眩しい日の光が射し込んでくると同時に、1人の少女の姿が俺の目に映る。その目に映るのは文化祭で俺の彼女となったメガネをかけた

背の低い女の子。

 

「おはよう、るり」

 

「おはよう。何か今失礼な事考えなかった?」

 

「気のせいだろ。それじゃ行こうぜ」

 

いつものように俺の心を読んでくるるり。これはエスパーだ。そうとしか言いようがない。

 

俺たちは付き合う事になったが、恋人らしい事は何一つしていなかった。手を繋ぐわけでもなく、腕を組み合うわけでもなく、付き合う前と一切変わらない生活をここ数日おくっていた。流石にこれは男としてどうかと思った俺は昨日の夜、るりに電話で明日から一緒に学校に行かないか?と誘ったところオッケーをもらいこれから一緒に登校する事にした。

 

「今日も良い天気だな〜」

 

「そうね。最近こんな天気が続き過ぎて面白くも何ともないわ。いっそのこと雪でも降らないかしら?」

 

「……この辺の秋に雪降ったら流石に笑えないぞ」

 

「…………それもそうね」

 

いつも通りのよくわからない話を2人でする。だが、こんな話をできるほど今平和なのだから幸せなもんだよな。…………でも、こうやってただ歩いて学校に通っててもやっぱり何か面白くない。手とか繋いだらだめかな………

 

「…なぁ、るり。手繋がねえか?」

 

「へっ?」

 

…………しまった!!つい本音が出ちまった!るりがこういう所で手繋いだりするのあまり好きじゃないの知ってるのに。何でこんな事を。

 

「…………わよ………に」

 

「ん?なんか言ったか?」

 

「……手繋いでも、別にいいわよ」

 

るりは顔を赤くしながら俺に手を出してくる。やばい、すげぇ可愛い。

 

「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」

 

俺はおそるおそるるりが出してきた手を握る。いわゆる、恋人繋ぎという繋ぎ方で。そういえば、これまで結構るりと手を繋いだり握ったりしたけど、あんまり意識的にやった事をないかも。………女の子の手ってこんなにすべすべで柔らかいんだ。なんかすげぇいい感じ。

 

「クロ君、今絶対変な事考えたでしょ?」

 

「なっ!何言って…………」

 

「誤魔化しても無駄よ。今の顔は絶対そういうこと考えてるような顔だった」

 

「な、なんだよそれ!俺はそんな事考えてないからな!!」

 

「嘘ね。絶対考えてたわ」

 

「考えてない!」

 

軽く口喧嘩をしながら俺たちはまた学校に向いて歩いていく。俺たちを後ろの物陰から見ていた人物に気付かずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校まであと100mくらいってとこらへんにまで来ると俺たちは繋いでいた手を離して学校に向かった。何だか名残惜しい気分だが、これからは毎日こういう事が可能だろうと思い気分を切り替え教室に向かう。

 

「……そういえば、そろそろ席替えの時期じゃね?去年のこのくらいの時期にしただろ?」

 

「あぁ、確かに」

 

「俺やだぜ。小咲とるりと席離れちゃうの。それに、俺あの席が好きなのに」

 

「もう席替えなんかやらなくてよくないかしら?」

 

「だよなー。俺もそう思うよ」

 

どうやら、るりもあの席から席を変えたくないみたいだ。俺もるりもおそらく小咲も3人で仲良く話せるあの席が一番いいと思ってるのだろうから。

 

「はぁ、どうにかしてあの席になる方法は『おめでとー!!!』……は?」

 

俺とるりが教室に入った瞬間、クラスにいる全員からおめでとーを言われた後クラッカーを鳴らされた。え?なにこれ?

 

「2人付き合いだしたんだろ?よかったなぁ。いやー、これで一条と桐崎さんに続き2組目のカップルかー」

 

「いいなー。私も彼氏欲しい」

 

「え?じゃあ俺と付き合わない?」

 

「そうね。もしも、地球が爆発する事なんかがあれば考えてあげてもいいわ」

 

クラスにいるみんなワイワイと騒ぎ始める。

 

「ちょっと待て!何の話だ?俺たち付き合ったりなんか…………」

 

「しらばっくれんなよ。さっき舞子が『クロとるりちゃんが恋人繋ぎで手繋ぎながら登校してるのを見たんだ。他のクラスの奴にも言ってくるー』って言って走って行ったんだからよ」

 

「集はどこだ?今すぐ殺す」

 

「待って。殺すだけじゃ足りないわ。その後焼却炉に放り込みましょう」

 

俺とるりで集を殺害する事を決定した。さぁ、集はどこだ?マジで殺してやる。

 

「ただいまー。おぉ、クロとるりちゃん。2人ともおめでとー!いやー、俺も友達として鼻が高いぜ」

 

俺とるりの怒りは知らずに集は何もなかったかのように抱きつく。それで俺の怒りは頂点まで膨れ上がった。

 

『舞子(君)、ご愁傷様』

 

「ん?何の話…………って、クロ?俺を羽交い締めして何のつもりだ?」

 

「るり、俺もやりたいが先を譲るよ」

 

「ありがとう、クロ君。じゃあ舞子君。どの指から折って欲しい?あ、それとも腕がいいかしら?」

 

「あれ?クロ、るりちゃん?何で俺をそんな怒ってるの?」

 

「「お前(あんた)が付き合った事を言いふらしたから!!」」

 

「ギャアアアァァァアアア」

 

その時、集の悲鳴が学校中に聞こえ渡った。その日の授業、集は保健室で寝込んで全く受けられなかった。

 

「最悪ね………まさかこんなに早くバレるなんて」

 

「まったくだ。でも、これで楽と桐崎さんの気持ちがなんかわかる気がする。あいつらも苦労してるんだな」

 

「そう思ってくれるんなら何よりありがたいよ」

 

「るりちゃん、クロ君と付き合ったんだ。おめでとー!」

 

自分の席に座った俺たちに楽と桐崎さんが話しかけてくる。後ろには鶫とマリーの姿も。

 

「ありがとう、千棘ちゃん」

 

「おめでとうございます、宮本様。私的にはこのような男は宮本様にはふさわしくないと思いますが」

 

おい、鶫、俺にるりはふさわしくないってどういう事だ。

 

「あら、そんな事はありませんわよ。クロ様と宮本さんの相性は抜群にございます。クロ様と幼い頃からずっと一緒だったマリーが言うのだから間違いありません!それと……」

 

マリーは俺に近づいてきて耳打ちする。

 

「クロ様、おめでとうございます。私はクロ様とまだ一緒にいられる事が何よりも嬉しいですよ」

 

ふふっ、と微笑み俺から離れるとつぐみとマリーが睨み合う。

 

「そんなの俺だって一緒だ。マリーと一緒にいれる事が本当に嬉しいよ」

 

俺は鶫と言い合いしているマリー見つめながら言った。

 

「……そういえば、クロ。城野崎が文化祭の打ち上げでカラオケでも行かないか?って言ってたぞ」

 

「カラオケ?カラオケか……いいなそれ。いつやんの?メンツは?」

 

「明日だ。土曜日だしな。メンツは俺に千棘、小野寺に橘に鶫、お前と宮本と集と城野崎と後何故か中村も入ってたな」

 

「中村も?」

 

俺が女子数人と喋っている中村の方に目を向けると、中村もこっちに気づいたのか軽く手を振ってくる。俺もそれを振り返した。

 

「でも、それ面白そうだな。俺は行くよ。るりはどうする?」

 

「私も行くわ。小咲と一条君をくっつけるチャンスだし」

 

「る、るりちゃん!?」

 

「そうだな。それにもちゃんと協力しないとな」

 

「クロ君まで!?もう!!」

 

楽は何の話しかよくわからないというような顔をしてる。楽は知らなくて良いことなんだ。俺たちが勝手にやるから。

 

「何の話してるんだ…………と、先生来た。じゃあ、そういう事だから」

 

急いで席に戻る楽に手を振り、俺は鞄から筆箱を取り出す。

 

「よーし、HR始めるぞー。とその前に言うことがあったな。神崎、宮本。お前ら付き合いだしたんだって?おめでとうな」

 

「「ぶふっ!!」」

 

なんで先生まで知ってるんだよ。わけわかんねえよ。

 

「いやー、これで2組目だな。他の奴らも青春しろよ。じゃあ、出席とるぞー」

 

「これでこの学年にはほとんどの奴に知られたわけだな。メンドクセー」

 

「別にいいじゃない。これで脇目も振らず、堂々とイチャイチャする事が出来るわよ?」

 

「え?」

 

るりがそんな事を言うなんて思いもしなかった俺は素直に驚く。だけど、思考をすぐ切り替えた。

 

「…………あのなー。お前はそういう事するの嫌いだろうが」

 

「そうだけど。まぁ、とにかくもうバレちゃったものは仕方ないわ」

 

「……それもそうか」

 

キョーコ先生の事だし、他の先生にバラしたりするだろうなと思いつつ俺は黙ってキョーコ先生のHRを聞き続けた。

 

「1限目は数学か。寝よ……」

 

キョーコ先生のHRが終わると、授業の事を思い出し、俺は寝る事にした。これはただ寝てるわけじゃない。睡眠学習だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

「何か後で職員室来るように言われた」

 

「当たり前でしょ」

 

「クロ君、数学と国語の時間いつも爆睡してるよね」

 

「数学は勉強しなくてもある程度点数は取れるからな。わからなかった問題があればるりに聞くし。国語は文章読めば余裕だ」

 

何故か数学の怖い先生に職員室に来るように言われた。俺は勉強という名の睡眠学習をしていただけなのに何故こんな事に。不愉快だ!

 

「で、次の授業は?」

 

「国語ね」

 

「おやすみ」

 

俺は次の授業も寝ることにした。

 

 

 

 

 

 

「あとで職員室来いって言われた」

 

「あんた留年しても知らないわよ」

 

「授業はちゃんと受けるべきだよ」

 

国語の先生にも職員室行きを命令された。俺は睡眠学習をしてるんだ!

 

「留年したらるりが先輩で春ちゃんと風ちゃんと同じ学年が……ありだな!」

 

「留年したら、クロ君と別れるから」

 

「え………………」

 

「何その、そこまでするのみたいな顔は。別れたくないなら留年なんかしない事ね」

 

「またまたー。どうせ、いつもの冗談なんだろ?」

 

「本気よ」

 

「冗談だろ?」

 

「本気よ」

 

「冗談『本気よ』……留年だけは阻止だな!!」

 

これから必死に勉強しないと大変な事に……頑張らなければ!

 

「…………あ、明日のカラオケ。待ち合わせ場所まで一緒に行こうぜ」

 

「いいわよ。小咲も行きましょ」

 

「えっ、でも……」

 

何故か遠慮をしようとする小咲。……あ、そうか。そんな事気にしなくてもいいのに。

 

「あのな。俺たち付き合ったからって遠慮しなくていいんだぞ。俺たち仲良し3人組だぞ」

 

「そういう事。あなたがいる前では極力私達もイチャイチャしたりしないわよ」

 

「…………うん、ありがとう」

 

今の言い方だと小咲がいない前だったらイチャイチャするつもりなのか?俺はその方が嬉しいんだけど。まあいいか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

「昨日の夜は何だったんだ?」

 

カラオケの約束をしていた俺は1人で待ち合わせ場所に向かっていた。何故るりはいないのか。それは昨日るりがいきなり夜に『明日は1人で待ち合わせ場所に向かって頂戴』とか言って来たから。集や城野崎を誘おうとしても電話は繋がらない。仕方ないから1人で向かうことにした。

 

「ったく、小咲とるりの裏切り者め。何が仲良し3人組だ。1人で向かってる俺がバカみたいじゃねえかよ!!」

 

俺は1人街の中叫ぶ。少し恥ずかしい気もしたが気にすることはないだろう。

 

「待ち合わせ場所ってこの噴水場だよな?……まだ誰も来てないのか?」

 

待ち合わせ場所の噴水場まで来ると誰もいなかった。遅めに来たはずなのになんで誰もいないんだろう。そう思ったが、みんなそのうち来るだろうと思いベンチに座る。

 

「みんな遅いな。俺もしかして時間が場所間違えたのか?」

 

携帯で約束した待ち合わせ場所と時間をチェックする。場所も時間もあっていた。

 

「おかしいな。なんでだろ?」

 

「……………………クロ君」

 

「お、るりか?遅かったな。みんなは………………ど…………した?」

 

俺の上から声がかかり上を向く。おそらくるりだろうと思い上を向く。俺の予感は正しくるりはそこに立っていたがいつもと雰囲気が全然違うるりが立っていた。だが、このるりは何度か見たことがある。

 

「おま、その格好?」

 

いきなりのことで俺は立ち上がった。

 

「似合うかしら?この格好だと周りからいっぱい注目は浴びて嫌になりそうだわ」

 

麦わら帽子を被り、いつもポニーテールにしてまとめている髪を今日は解き、ロングにしている。そして、いつもメガネをかけているのに今日はかけていない。文化祭前に見た衣装の採寸の時に見たるりだ。いつもと違ったるりの雰囲気とあまりの可愛さに俺は顔を赤くしてしまう。

 

「これ、小咲と中村さんがやってくれたの。カップルになって初めて遊びに行くんだから決めないとって2人がね。まぁ、2人で遊びに行くわけじゃないけど。それで、感想は?」

 

「どう…………って言われても可愛いぞ。凄く可愛い」

 

「あなたは可愛いしか言えないの?」

 

「だって本当にそう思うんだよ。可愛いし、すごくきれいだ。何かすごく大人っぽく見える」

 

「それは私が今まで子供っぽいって言いたい訳?」

 

「そ、そうじゃなくて!本当に似合ってるよ。こんなるり初めて見たから緊張してなんて言ったらいいのかわからない。けど、これだけはわかる。多分、今まで見てきた女の子の中でお前は今1番可愛い」

 

「つっ!………………そこまで言われると流石に照れるわ」

 

るりも顔を真っ赤にする。それ以上何を言ったらいいのかわからなくなりテンパる。

 

「そ、そういえばこ、小咲達は?そろそろ時間だろ?」

 

「あの子達なら先に向かったわ。あなたに嘘の待ち合わせ場所を報告したの」

 

「はぁ?なんで?」

 

「なんでって、そりゃあ、この私の姿をあなたに見せるためでしょ?」

 

「あ…………そっか」

 

「まぁ、あなたにこの姿を見てもらえてよかったわ。じゃあ、元に戻すわ」

 

麦わら帽子を脱いで髪の毛に手をかけようとする。おそらく、ポニーテールにしようとしてるのだろう。

 

「ちょ、ちょっと待った!」

 

「…………何?」

 

「もう少しそのままでよくないか?せめて、カラオケ場に着くまで」

 

「どうしてよ?」

 

「俺が……俺が今の姿のるりをもっと見ていたいから。ダメか?」

 

自分で言ってて恥ずかしいセリフをるりに伝える。すると、るりはまた。いや、さっきよりも顔を真っ赤にする。

 

「……はぁ、カラオケ場までだからね」

 

髪の毛にかけようとしていたのを放して、麦わら帽子をかぶる。

 

「じゃあ、行きましょ。コンタクトって初めてしたからなれないの。早く取りたい」

 

「ようするに早くカラオケ場まで行ってコンタクトを取りたいと。了解しましたよ」

 

俺は出された手を握り歩き出す。

 

秋になったというのにまだ夏を感じさせるくらいに暑い。現に俺は半袖だし、るりもワンピースを着ている。けど、俺たちが今感じてる暑さは別の意味もある気がした。俺も多分るりも付き合って初めて出かけた事でこうして手を繋ぎ歩く事に緊張して体が熱くなってるのかもしれないと思う。少なくとも俺はそう感じる。あきだから一応上に着る服も持ってきてるが。

 

「なぁ。るり。俺今が本当に幸せだよ。小学中学では本当に味わえないほど楽しい事が出来た」

 

「……そうね。でも、きっとこれからもっと楽しくなると思うわよ」

 

「そうだな。じゃあ、今日もめいいっぱい楽しまないとな!」

 

「えぇ」

 

俺は幼い頃は酷い目にあってきた。小学校からいじめにあい苦しい思いをしてきたのに中学では母さんが倒れて俺はこっちに引っ越して来た。けど、俺を支えてくれたばあちゃんやじいちゃんや小咲やるりのおかげで俺はここまで楽しい日常を得ることが出来た。こっちに来なければ楽や集達に会うこともなかっただろう。あっちに残ったままだったらこうしてマリーと学校に通う事なんて出来なかった。こっちの学校に来れて本当に良かった。親友と彼女も作ることが出来た。本当に感謝しているわ、

 

「…………今を大切にしていかないとな」

 

「何か言ったかしら?」

 

「なんでもねえよ。行こうぜ。みんな待たしてるだろうし」

 

「ちょ!いきなり……もう!」

 

今の日常を大切にする。そして、俺に出来た最高の彼女も大切にする。絶対るりを悲しませたりしない。俺はそう心に決め、るりの手を引っ張り走り始めた。るりも俺に合わせて走り出した。2人手を繋いで。

 

 

 

 

 

 




はい。という事で無事ハッピーエンドを迎える事が出来ました!最終話にもっとイチャイチャさせるのもありかなと思いやってみました。若干、るりちゃんっぽくなかったかもしれませんねwでも、かいててすごく楽しかったです。この小説を書き始めたのは5月27日なのでほぼ7ヶ月でストーリーを書き上げた事になりますね。1ヶ月くらい休んだりした時もありましたが…………でも、無事に書き終えることが出来ました。皆さんの応援のおかげです。ありがとうございました!!

そして、アンケートにご協力下さった皆さん。本当にありがとうございます。投票の結果、2の小咲と春のダブルヒロインの小説を進めて行くことにします。もう小説自体は書き始めているのですが、冬休み終わると忙しくなるかもしれないので書き貯めしとこうと思ってるので1月半ばくらいに投稿しようと思っています。

俺の凡高での日常はストーリーは終わりましたが番外編は書いて行くつもりです。具体的には原作で自分が書きたい話を書いて行くつもりです。『セキガエ』や『フンシツ』などなど番外編はまだまだ書いていきます。クロとるりちゃんをイチャイチャさせまくると思うのでその時はブラックコーヒーの準備をお忘れなくwww

今年の最後に登校できて本当に良かったです。来年またこの小説や次の小説を応援してもらえる事を期待して待っています。頑張って書き貯めして早く投稿出来るように頑張りますのでよろしくお願いします。

感想と訂正があればお待ちしております。

ではみなさん。良いお年を!


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番外編1 メガネのフンシツ

番外編1はフンシツです。
2〜3週間に1回を目処に投稿しようと思います。


文化祭が終わって2週間が経ったある日の出来事。それは突然起こった。

 

「なぁ、るり。ちょっといいか…………ってあれ?メガネは」

 

廊下で棒立ちしているるりを見つけて声をかけると、こっちに振り返った。ただし、いつもつけてるメガネを何故かつけてない。

 

「あ、クロ君。ちょうどいいところに来た。ちょっとお願いがあるの?」

 

「いや…………そっちに俺いないんだけど。こっちだぞこっち」

 

全く逆の方を向いて俺に話しかけてくる。

 

「あ、ごめん。メガネかけてないから周りが見えないの」

 

「まぁ、いいや。それでお願いって?」

 

「うん。実はメガネをなくしちゃったみたいなの」

 

「メガネを?」

 

水泳とか何か特別なことがなければいつもメガネをかけているるりには珍しい事だった。もしかしたら、そんなのこれが初めてかもしれない。

 

「さっきメガネの汚れに気づいて教室にメガネを拭きを取りに行ってそのあと戻ってきたら……」

 

「無くなってた訳か。でも、メガネが勝手に動くわけなんかないしそんななくなるわけ…………」

 

「うん。だから、今から中庭に探しに行こうと思って。ついてきてくれない?」

 

「るりの頼みならお安い御用だ」

 

るりの頼みを了承して中庭に向かおうとする。

 

「じゃあ、早速…………」

 

ビターン!!

 

るりが歩こうとした瞬間、何もないところで転んだ。

 

「…………るり、大丈夫か?」

 

「問題ないわ」

 

何事もなかったかのように起き上がりそのまま廊下を歩き出す。

 

「そっち、昇降口とは逆の方向だぞ」

 

「あ、そうだった。ごめんなさい」

 

狂って反転して歩き出した。るりは反転したつもりだったのだろう。だが、それは540度回転して歩き出したため今度は壁に激突した。

 

「だ、大丈夫なのか?」

 

「なんともないわ」

 

「いや、でも」

 

「今はメガネを探しに行くのが最優先だわ」

 

「あ、うん。そうだな」

 

今度は転んだりしないように俺がるりの隣をピッタリついて歩いていく。

 

「階段だぞ。転ぶなよ」

 

「えぇ、わかって」

 

「って、言ってるそばから躓いてんじゃねえか!!」

 

階段まで来て下の階に降りようとすると、るりは階段で躓いた。俺はそんなるりを助けるためるりを自分の方に抱き寄せ俺が下になるように体を反転させて庇った。庇うために階段から落ちて俺の背中が床に激突する。

 

「ぐっ!!」

 

「えっ?」

 

るりは何が起こったかわかっていないようだった。

 

「ちょ、クロ君!?大丈夫!!」

 

「あ、あぁ。なんとかな。そういうるりは?」

 

「私はクロ君が守ってくれたからなんともない」

 

「そうか……それは良かったよ」

 

日頃から鍛えていたのが功を成したのか、背中から激突したのに体に以上はなんともなさそうだった。

 

「ったく、そんなに視力が悪いのなら先に言っといてくれ。るりが怪我でもしたら悲しいだろうが」

 

「だからってクロ君が怪我するかもような行動しなくても」

 

「アホ。こういう場面は彼氏が彼女を守るもんなんだよ。俺は鍛えてるけど、るりはそんな事全くしてないんだからな」

 

俺は背中に走る激痛を我慢しながら起き上がりるりに手を出す。

 

「ほら、行くぞ。このままだと俺の命がいくつあっても足りないからな。さっさとメガネ見つけようぜ」

 

「え、えぇ…………」

 

るりは俺の手を握って起き上がった。

 

「ちなみに、このまま行動してまた転んだりしたら俺が傷つくからこれから手繋いで歩くからな」

 

「……わ、わかったわ」

 

あれ?いつもなら『嫌よそんなの!』っていうところなのに、今日はやけに聞き分けがいいんだな。どうしてだ?

 

「ほら、早く行くわよ」

 

「あ、あぁ」

 

俺はるりの手を握ってそのまま歩き出した。その間、るりはずっと俯いていた。…………それにしても背中痛いな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうするか」

 

「ここにないならどこにあるのかしらね」

 

数十分探したが、結局メガネを見つける事はできなった。

 

「るり、今日はコンタクト持ってきてないのか?」

 

「あ、あれは特別な時にしかつけないわ。だから、今日は持ってきてない」

 

「特別な時って?」

 

「それはその………………クロ君とで、デートする時…………とか」

 

顔を真っ赤にしてぼそりと言う。付き合いだしてからるりは時々こういう恥ずかしい事も言うようになった。そして、こういう事を言う時のるりはすごく可愛い。まして、メガネをかけてない状態なのだからその威力は壮絶だった。

 

「いや、その……そうか、コンタクトないのか」

 

「え、えぇ」

 

お互い何も言えなくなってしまう。るりも顔は真っ赤だが、俺もおそらく赤くなっているだろう。

 

「ど、どうするか。このままだと日常にもさしつかえるしな」

 

「そうね」

 

「るり、予備のメガネは?」

 

「あるにはあるけど、ここ最近ぐっと視力が落ちて。あのメガネじゃないと視力が合わないのよ」

 

そういえばあのメガネ以外のメガネをかけてるところは見たことがなかった。

 

「そうか…………じゃあ、楽や小咲に頼んでもっかい探すとするか」

 

「そうするわ」

 

「それでは教室に向かいましょうか、お姫様」

 

「その言い方はなんか癪だけど、まぁ、エスコートよろしくお願いするわ、王子様」

 

文句を言いつつ俺の悪ノリにちゃんと乗っかってくる。うん、いつものるりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?宮本メガネなくしたの?」

 

「そうみたいなの。クロ君に頼んで中庭まで一緒に探してもらったんだけど見つからなくてね」

 

教室まで戻り小咲と喋っていた楽に声をかける。小咲もこっちに耳を傾けていた。

 

「そりゃそうだろ。いくら、クロがいるからってメガネがなきゃ探しにくいだろうし………………わかった。それ探すの手伝うよ」

 

「私も手伝う。るりちゃんにはいつもお世話になってるしこれくらいしないと!」

 

「かたじけないわね」

 

小咲も楽もメガネを探す事に了承してくれた。

 

「他に手伝ってくれそうな人は…」

 

「なになにー、メガネなくしたの?俺も探すの手伝う〜」

 

「あんたには頼んでないから結構よ」

 

「……仕方ない。じゃあ、俺が協力するか」

 

「あんたにも頼んだ覚えはないわ」

 

集と城野崎は両断、と。

 

「「……いや、待った!!」」

 

両断された集と城野崎がるりを止める。

 

「何よ?」

 

「やっぱりメガネを探しに行くのはやめよう」

 

「そうだな。俺も城野崎に賛成だ」

 

「どうして?」

 

「メガネをかけてないるりちゃんも素ー

 

バゴォン!!

 

「お前はメガネをかけてない方がきっといー

 

ドゴォン!!

 

るりは集と城野崎の首を思いっきりチョップして2人も倒してしまった。なんかすげえ可哀想だな。

 

「こんな2人はほっといて私達だけで探しましょ」

 

るりは1人で廊下に出ようとする。

 

「あ、おい!そんな1人で行ったら」

 

ガン!

 

案の定るりは閉まっている扉におでこをぶつけた。おでこをさすりながら扉を開け教室から出ようとすると、今度は躓いてこけた。

 

「「宮本(るりちゃん!?)」」

 

「だから言ったのに」

 

倒れているるりを抱き起こす。幸い怪我とかはしてなさそうだった。

 

「ここ最近でぐっと視力が落ちてね。私クロ君と中庭に向かうから一条君先に行っててくれない?」

 

「そいつは俺じゃねえ!!」

 

目が見えないせいか、一条ではなくこの学年の男子生徒に声をかけるるり。どこまで視力が悪いんだ。

 

「まぁ、とりあえずるりは俺が連れて行くから小咲と楽は先行っててくれ」

 

「あ、あぁ」

 

「るりちゃん、気をつけてね」

 

楽と小咲は並んで先に中庭に向かった。

 

「これで少しは2人っきりだ。何か進展があるといいんだが」

 

「これで2人の仲が深まるならもう付き合っててもおかしくないと思うんだけど」

 

「………………それもそうか」

 

何かいい方法はないもんかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、2人に進展はないまま中庭でるりのメガネを探す事となった。

 

「うーん…この辺に落ちてんならすぐ見つかりそうな気がするけどな」

 

「………あっ……あった!」

 

「えっ!?」

 

「違った。ただの上履きだわ」

 

「るりはそれを一瞬でもメガネに見えたのか!?」

 

るりが手に取ったのは田中と書かれたすごくボロボロの上履きだった。てか、なんでそんなものがこんなところに。

 

「……ハッ!」

 

「それはただのペットボトルだよ!」

 

「……ハッ!」

 

「それはダルマ…………何でこんなところにダルマが!!?」

 

「……ハッ!」

 

「それは水筒だよ!!」

 

「あ、それ俺のなくした水筒」

 

「お前のかよ!!」

 

るりは次々とメガネとは関係のないものを手に取っていく。そのたびに楽は突っ込んでいた。

 

「……しかし見つかんないな」

 

「ここじゃないならどこなんだろう」

 

「さぁな。でも、学校でなくしたんならきっと見つかるはずだ。楽のペンダントも1週間経った後でも見つかったんだしな」

 

そう言うとるりはいきなり閃いた、という顔をした。何か思い出したのか?

 

「もしかしたら……あそこにあるのかもしれない」

 

「何か他に心当たりがあるの?」

 

「特別棟の裏にね、めったに人が来ない薄暗い茂みがあるの。さっき私はそこに行って頭ブンブン体操をしていた。メガネはそこで落としたのかも」

 

頭ブンブン体操って一体なんなんだ!!

 

「悪いけど、私は目がこれだから小咲と一条君で探しに行ってくれない?」

 

「えっ!?その話マジなの!」

 

小咲と楽を2人っきりにしたいのはわかるが説明がいきなりすぎる。そんなの信じる奴いないだろうよ。

 

「てか、それはクロと2人で行けばいいんじゃないのか?」

 

「嫌よ。めったに人が来ないって言ったでしょ?襲われたらどうする気よ」

 

「少なくとも俺はそんなことするわけないけどな」

 

「わからないわよ。そこに行ってクロ君が覚醒するかも」

 

「しねえよ。俺はるりが好きだからるりを悲しませる事は絶対しない!!」

 

ってしまった。勢いに任せて俺はなんて事を…………

 

「クロ君…………」

 

「るり…………」

 

「小野寺、なんかあの2人の背景に花畑が見えるんだけど」

 

「うん、私も見える。とりあえず私は職員室行ってくるね」

 

「はっ?ちょ、待ってくれよ、小野寺!!」

 

小咲は楽を置いて職員室に行ってしまった。

 

「………………なぁ、クロ、宮本」

 

「ん?どした?」

 

「何?」

 

「いきなりなんだけど…………小野寺って誰か好きな人いるの?」

 

…………………………。

 

「何であなたにそんな事教えなくちゃいけないの?」

 

「ご、ゴメンナサイ」

 

こいつどこまで鈍感なんだ。まぁ、それが楽のいいところなのかもしれないけど。

 

「……つくづくあなたは何も見えてないのね。メガネをかけてない私よりも見えてない。もう少しあなたのそばにいる女の子の事を考えてあげたら?」

 

「…………千棘の事か?」

 

「小咲の事よ!!」

 

だんだんるりが怒ってきている。ここまで鈍感なら仕方ないかもしれないけど。

 

「わからないハズないのよ。あの子の事をもう少し……あと少しだけ見てあげたら」

 

「なんの事だよ。俺はちゃんと見てるぞ」

 

「見えてないのよ」

 

「なんだよ。もうちょっとわかりやすく言ってくれ」

 

「だから…………小咲が好きな人は………あなー」

 

「ヤッホー、メガネ見つかったー?」

 

「暇だから来てみたぞー」

 

るりが楽に小咲の好きな人を言おうとした瞬間、集と城野崎がるりに話しかけた。いきなりの事で2人とも驚いたような顔をしている。

 

「集、城野崎。何やってんだよ」

 

「いやいや、2人の姿がたまたま見えたからさ。声をかけてね」

 

「俺は暇だったからな」

 

「……ここでなにやってるの?別に手伝って欲しいなんて言ってないわよ」

 

「やだなー、手伝うつもりなんてないよ」

 

「俺も。また殴られるのはやだし」

 

「…………あれ、舞子君、城野崎君」

 

職員室に行った小咲がこっちに戻ってきた。

 

「小野寺、どうだった?」

 

「ううん。なかったよ」

 

「そうか………じゃあ、俺たちは上の方を探してくる」

 

「おう。頼んだぞ、2人とも」

 

楽と小咲に手を振って見送った。さてと…………

 

「で、たまたま見えたから声かけたとか、暇だったからとか嘘なんだろ?」

 

「ありゃ、さすがクロ」

 

「ばれてたのか」

 

「当たり前だ。話しかけてくるタイミングが良すぎるだろ。まぁ、来る事わかってたから俺も止めなかったんだけどな」

 

この2人が来なければるりは楽に小咲の好きな人を伝えてそれで楽は告白して付き合えたかもしれない。

 

「るりちゃん、助けてあげることは親切だ。でも、最後の最後に勇気を出して告白するのは、やっぱり当人達じゃないと」

 

「なぜ?結果は同じなのに?」

 

「同じように見えて違うのさ。感情論だけど自分の力で手に入れるものと人に力を借りて手に入れるものでは重さが違う」

 

「多分、宮本が小野寺にクロの好きた人を聞いてたら告白してただろ?」

 

「まぁ、わからないけど多分……」

 

「それで付き合えたとしてもきっと文化祭の時みたいな感動は絶対得られなかったと思うぞ。あれは2人が互いに気持ちが知らなくて、でも2人は想いあってたからあれほどの感動を得られたんだよ」

 

集と城野崎が説得するようにるりに話す。集も城野崎も言うことはすごく正しいと思う。

 

「…………知ったように言うのね。2人とも人を好きになんてなった事をないくせに」

 

「いや、俺は今好きな人いるよ」

 

「ちなみに、俺もな」

 

「うぇっ!?」

 

集の好きな人は知ってるけど、まさか城野崎にも好きな人がいるなんて思わなかった俺は素直に驚いた。

 

「なんだよ、クロ。俺に好きな人がいたらおかしいか?」

 

「いや、おかしくないけど。ただ以外でさ」

 

「それはさておき、俺にとっては親友にそういうハードルをキチッと乗り越えて幸せになって欲しいのさ」

 

「…………そんなの私だって」

 

「おーい、宮本ー!メガネあったぞー」

 

楽と小咲が手にメガネを持ってこっちまでやってきた。何故か2人とも服がボロボロになっていた。

 

「どうしたの、楽?ボロボロじゃん」

 

「いやー、まさかあんなところにあると思わなくて」

 

「まさに盲点って感じだったね」

 

「そうそう。メガネならではって場所にさ」

 

「どこにあったのよ」

 

いろいろあったが、無事にるりのメガネが見つかってよかったと思ってる。これで、るりは2人のことをじっと見守ってくれたらいいんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無事にメガネ見つかってよかったな」

 

「えぇ、2人には感謝しないと」

 

メガネを見つけた俺たちは小咲と別れた後、2人で手を繋いで下校している。

 

「…………クロ君、ちょっと我慢してね」

 

「ん?何が………………痛った!!」

 

いきなりるりは立ち止まり、繋いでいた手を離したと思ったらその手で俺の背中を思いっきり叩いてきた。

 

「い、いきなり何すんだよ!!」

 

「今日、私を庇って背中打ったところ、痛いんでしょ?クロ君、気づいてたか知らないけど背中を曲げる事ずっと避けてたわよ」

 

「………………まじか」

 

確かに俺は今日、強打した背中の痛みをずっと我慢してるりのメガネを探していた。あまり、かがんだりすると背中が余計に痛いだろうから曲げなかったけど。

 

「そうか…………気付いてたのか」

 

「これでも、あなたの彼女よ。ちゃんと見てるわ」

 

「まぁ、大丈夫だ。これでも体は強い方だしな」

 

また歩き出そうとするとるりは俺の手をギュッと握って俺を引き止めて来る。

 

「るり?」

 

「……クロ君言ったわよね。私に何かあったら悲しいのは俺だって」

 

「あ、あぁ。そう言った」

 

「私も同じなのよ。もし、クロ君の身に。まして、私のせいで何かあったら悲しいのは私だって同じなんだから」

 

「るり…………」

 

「お願い。今回は私の不注意でこうなったけど、自分の身を削ってまで、私の事を守らないで」

 

どうやら、るりは内心では今日自分が庇われた事を気にしているようだった。確かに、あれはかなり危なかった。けど…………

 

「ごめん、そのお願いは多分聞けない」

 

「どうして!?」

 

「だって、俺はるりの事が好きだから。好きな女の子を守れなかったら俺は一生後悔することになるから」

 

「でも、今日あんなに危ない目にあったのよ」

 

「そうだな。これから何回ああいうことがあるかわからない」

 

「だったら!」

 

「でも、俺は例えるりを守るために自分が傷ついても絶対に骨折したり、入院したりしない気がする」

 

「どうして?」

 

「それは…………俺がお前とずっと一緒にいたいって思ってるからだよ」

 

そう言って俺はるりを抱き寄せた。

 

「ちょ…………いきなり何を!」

 

「俺がそう思ってる限り、絶対大丈夫な気がする。なんか不思議とそう思うんだ」

 

こんなのただの約束にもならない。でも、俺は不思議とそう思うことができた。

 

「………………バカ。そんなの誓うことにはならないわよ」

 

「そ、そうかな?」

 

「えぇ。…………でもそんなクロ君がもし怪我をしたら私が治さないとね」

 

「じゃあ、今日から早速お願いしようかな。背中に湿布貼って欲しいんだよ」

 

「わかった。場所は?私の家でいい」

 

「いいぞ。早速行こうぜ」

 

抱き締めていた体を離してるりの家に向かった。俺はこんなに優しい彼女を持てたことを幸せに思う。




新たに春&小咲のダブルヒロインの作品を投稿しました。
よろしければご覧ください。

感想と訂正があればお待ちしております


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番外編2 マラソンで死闘!

番外編2です。
書いてて思った事。やっぱりこれも原作通り書きたいな〜

お気に入り1000突破ありがとうございます。
一つ気になるのは投稿した後、いつもお気に入り少し下がりますww
また上がりましたけど。
ではどうぞ〜。


「あー、だるい。なんでこんな寒い中でマラソンなんかしねえといけねえんだ?」

 

もうすぐ春を迎えるが。けど、寒い。そんな時期に何故この学校はマラソン大会なんてしねえといけないんだよ。しかも、体操服だから余計に寒い。

 

「文句言わないの」

 

「そうだよクロ君。マラソン頑張って。私ちゃんと応援するから!」

 

横で呆れた目で俺を見るるりと、キラキラした目で俺を見る小咲。

 

「それに男子ならやる気を出すところじゃないの?キョーコ先生にあんな事言われたら」

 

あんな事。それは昨日、キョーコ先生が明日マラソン大会と発表した瞬間男子達のモチベーションが一気に下がってしまった。そんな男子達を見てキョーコ先生は言った。

 

『じゃあこうしよう。明日のマラソン大会で1位になった奴は好きな女の子からのキスの権利、2位の奴はハグする権利だ。どうだ?やる気出ただろ?』

 

そんな事でクラスのやる気が出るわけがない。そう思ったが、結果は全然違いおそらく、俺以外の男子が全員マラソンで1位を目指そうという気になったのだ。そして、現在。男子達は目に炎を宿しきあいをいれている。

 

「確かにやる気が出るけど、俺が1位になったら選ぶ相手なんて決まってるだろ?」

 

「まぁ、そうね。てか、もし他の子選んだら別れるわよ?」

 

るりは冗談では済まない事を言ってくる。

 

「ま、まぁそういう事だ。それに1位の報酬はその……恥ずかしいし、2位の報酬はもうしちゃったからな。あんまり、モチベも上がんねえんだよ」

 

「そうね。1位は…………仮に、私が1位の報酬欲しいって言ったら?」

 

「全力で1位を目指しに行く」

 

「なんかそう言ってもらえるるりちゃんが私は羨ましいよ」

 

「そう思うなら小咲も早く一条君に告白する事ね」

 

「こ、こここ告白って!!?」

 

るりの一言に小咲は顔を真っ赤にする。きっと、告白の事を想像したんだろう。

 

「そそそそそんなの私にはまだ早、早いから…………だから」

 

「あー、はいはい。わかったわ。じゃあクロ君。私たちもう行くから。頑張ってね」

 

「おう。まぁ、あんまりやる気ないけど」

 

るりに応援されたら少しは元気が出てきた。とりあえず、頑張ってみるか。

 

「クロ君」

 

「ん?まだなんかあるのか?」

 

「その…………取れるなら1位、とってもいいわよ」

 

「…………へ?」

 

「それじゃあ!」

 

るりは小咲の腕をとってそのまま女子の方へ行ってしまった。……取れるなら1位をとってもいい。つまり。

 

「るりはちょっとは1位の報酬を欲しいと思ってるってことか?」

 

いや、まさかな。そんな事はないよな。でももし本当にそう思ってるなら…………

 

「なんかさらにやる気出てきた」

 

マラソン。頑張ろう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでは男子は位置について下さい』

 

アナウンスの人が声をかける。その声に男子がみんな反応して位置に着く。

 

「さて、頑張るか」

 

「おい、なんだ?神崎。やる気なのか?」

 

「そう見えるか?」

 

「まぁ、お前には宮本がいるしな」

 

クラスの男子が俺に声をかけてくる。

 

「そういうお前らは?」

 

「別に。キョーコ先生のあの言葉は信じられないしな」

 

「そうそう。だから俺たちは適当に済ますつもりだ」

 

「お前もそうしようぜ」

 

昨日とは全然違う態度。なんか怪しいな、こいつら。

 

「なぁ、クロ」

 

「ん?どうした城野崎」

 

「いや、クロはこのマラソンの意欲はどうなのかなって思ってさ。キョーコ先生にあんな事言われたし」

 

「俺か?俺は…………微妙だな」

 

嘘だ。るりにああ言われて結構やる気が出ていた。ちょっと1位を目指そうと思ってる。

 

「そうか。……じゃあさ、ちょっと協力しないか?」

 

「協力?何で」

 

「それは『位置について』くそ!走りながらでもいいか?」

 

「別にいいけど」

 

なんだ?今日の城野崎、様子が少しおかしいぞ?なんかあったのか?

 

「ヨーイ……ドン!!」

 

ピストルがなった。その瞬間、男子達が全力で走り出した。スタート地点に残されたのは俺と城野崎と何故か楽。

 

「くそ!あいつら、騙したな!!」

 

「ははははは!!一条!それに神崎。お前らには絶対勝たせねえからな!!」

 

楽は男子達を全力で追いかけ始めた。まぁ、こんな事だとは思ってたけど。

 

「で、なんで協力なんだ?」

 

俺と城野崎は全力ではないくらいなスピードで走りながら話す。周りから見ればあまりやる気のない、仲良く話す2人といったところだろう。

 

「クロはさ。俺に好きな人がいるのは知ってるだろ?」

 

「ん?あぁ、そんなこと言ってたな」

 

「実はさ。今日、1位とったら告白しようかなって思ってて」

 

「マジで!!??」

 

城野崎は照れてるのか少し顔を赤くしている。

 

「まぁな。相手は恥ずかしいから言わないけど、1位を目指したいんだ」

 

「だったら、普通に本気でやればよかったじゃん」

 

「……そうなんだよ。でも、そこで一つ邪魔なのか男子達だ」

 

「男子達?……あぁ、そういえばさっき言ってたな。俺には絶対1位をとらせねえとか」

 

まぁ、俺と楽が標的にされたって事は、女の子とイチャイチャしてるんだからお前達にはこれ以上何もさせねえとかなんだろうな。

 

「そう。今回のマラソン全力でお前と楽を邪魔するつもりなんだ。舞子隊長を筆頭に」

 

「なるほど」

 

「で、俺も本気で1位を目指してると絶対男子達に邪魔されると思ったんだ。だから」

 

「俺とお前が協力して男子達を突破する。そして、城野崎は1位を目指すと」

 

「あぁ、ダメか?」

 

きっと城野崎は告白する事を結構真剣に悩んでいただろう。だが、男子達に邪魔されてそれを目指しにくくなった。まぁ、それを乗り切ってこそ達成感があるような気もするが。

 

「……わかった。協力する」

 

「本当か『ただし!』」

 

「俺もそんな楽して1位になって告白させようとも思わない。だから、男子達の妨害を全力で乗り切ったら、お前と俺で一騎打ちだ」

 

「一騎打ち?」

 

「あぁ。男子達の妨害を乗り切ったらそれから俺たちは敵同士。本気で1位を目指すライバルって事だ」

 

城野崎にはるりに告白する時に色々助けってもらった。だからその恩返しはしたい。でも、楽に勝たせるのも俺は嫌だ。

 

「つまり、一時的な協力体制って事か」

 

「あぁ。それでいいな?」

 

「もちろん!俺も楽に勝ちたくない。2位になったら俺は告白しない」

 

「よし。じゃあ、やるか!!」

 

「おう!!」

 

「だが、その前に一つ。こいつは何してんの?」

 

こいつとは楽のことだ。落とし穴に頭から突っ込んで、その上生ゴミでグチャグチャになっている。

 

「さぁ?それより、行こうぜ。俺は表向きではクロを妨害する役目になってるから」

 

楽を無視して俺たちは走り出した。遠くに桐崎さんが見えた気がしたが気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな、後ろから神崎が来たぞ!」

 

「よし!一条および神崎シフト展開!」

 

そう言うと、男子達は俺を先に行かせないように散開した。めんどくせえな、みんな。

 

「山倉。舞子隊長に話があるから俺を通してくれ」

 

「城野崎か。いいぞ、通ってくれ」

 

城野崎が通れるように男子は少し間隔を広げた。

 

「今だ、行くぞ」

 

「おう!」

 

間隔が開いた瞬間、俺と城野崎は全力で走り出した。

 

「なっ!?」

 

第1関門突破。

 

「さてと、次はどんな指示が出て来るんだ?」

 

「確か……次はサッカー部3人によるら足引っ掛けの妨害だったな」

 

「なんだそれ?……あれのことか」

 

前を見ると男子3人が走るのをやめて待ち構えてるのが見えた。

 

「城野崎、どういうことだ。お前、俺たちを裏切ったのか!」

 

「協力した覚えはない」

 

「くそー!流石に2人を止めるのは不可能だぞ」

 

「神崎だ!とりあえず、神崎を止めろ!」

 

どうやら男子3人は俺を防ぐのに全力を尽くすらしい。仕方ない……

 

「おい、3人とも。あれを見ろ」

 

「なんだ?何かあるのか?」

 

俺を見つめながら聞き返してくる。

 

「あぁ。超美人のお姉さんがこっちを向いて手を振っている」

 

「「「何!!?」」」

 

「じゃ、お疲れさん」

 

男子3人が俺が指差した方向を見た瞬間俺と城野崎はさっきのように全力で走り出した。

 

「第2関門突破。次は?」

 

「確か……コースを外れるように誘導する作戦だ」

 

「また、意味わかんない事を……あれ?るり?」

 

前を見ると遠くの方にるりがいるのが見えた。

 

「クロ、あれが宮本ってわかるのか……目がいいのか、それとも愛の力なのか」

 

「バカ言ってんじゃねえ。おーい、るりー。そこで何してんのー?」

 

「クロ君……と、なんであなたがクロ君と一緒いるのかしら?」

 

相変わらず城野崎には冷たいるり。うん、いつも通りだ。

 

「それよりどうしてここに?」

 

「男子達が何かしらの妨害をしてきたら一条君やクロ君が勝てないからちょっと協力をね」

 

つまり、一部の女子も味方なのか。

 

「ちなみに、他に妨害してる女子は?」

 

「鶫さんが木の上から銃で男子達を撃ったって言ってたわ」

 

まじかよ。鶫のやつ怖すぎだろ。……何で俺と城野崎は狙われなかったんだ?

 

「まぁ、いいや。るり、鶫に伝えといて。俺と城野崎が来たら撃つなって」

 

「それはいいけど……どうして、城野崎君まで?」

 

「ちょっとした事情があんだよ。頼んだぞ!」

 

そろそろ男子達が追いかけて来る頃だろうと思い、俺は走り出した。城野崎も俺についてくる。

 

「まぁ、あれは大丈夫だとして、次は何してくるの?」

 

「次のやつは……クロの奴は知らねえ。楽は子猫で邪魔するって言ってたけど?」

 

「子猫で?よくわからないな」

 

よく見ると城野崎は少し息を切らせていた。俺は水泳をやってるからなんともない城野崎は違うようだ。

 

「給水所だ。これで水が飲めるな」

 

「本当だ。これは助かる」

 

給水所の前で立ち止まるとそこには数人の女子がいた。その中には小咲や中村がいる。

 

「あ、クロ君。お水どうぞ。私応援してるから頑張ってね!」

 

「あぁ、サンキュー」

 

水を一気に飲みほす。

 

「ぷはっ、ありがとな。じゃあ、俺らいくわ」

 

「うん!」

 

手を振って小咲と別れた。

 

「さて、もう邪魔がないならここからは敵同士…………って、城野崎!?どうした?」

 

隣で走ってる城野崎を見るとさっきとは違い明らかに元気になっていた。水いっぱいでそこまで変わるのか?

 

「ん?クロ、どうかしたか?」

 

「まぁいいや。とにかく、ここからは邪魔がないという事は俺たちはもう敵同士だ」

 

「そうだな。ここまでありがとな、クロ」

 

「いいさ。それにまだ勝負は終わってない」

 

「だな!こっからは真剣勝負だ」

 

俺も城野崎も1度気合いを入れ直す。

 

「じゃあ」

 

「ヨーイ」

 

「「ドン!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ!何でこんな差が開くんだ?」

 

同時に全力で走り出した。なのに、城野崎とはどんどん差が開く一方だった。俺だって足が遅いわけじゃない。体力ならこのクラスなら1番の自信がある。だけど、差はどんどん開く。

 

「これが愛の力なのか?くそ、このままじゃ」

 

…………てか、これなんだ?もうマラソンじゃなくなっている気がする。

 

「とにかく、追いつかないと!」

 

もう残りの体力とか気にしてる場合じゃない。これで追いつかないともう負けてしまう気がする。それは俺の気が許さない。そう思い俺はさらに足を速めた。

 

「このペースが、どこまで、持つか…………」

 

おそらく残りは後4分の1もないだろう。

 

「あれ?あいつらは……集か?」

 

城野崎のさらにその少し前に走っている3人が見えた。そのうちの1人は集のようだ。

 

「げっ!舞子、城野崎と神崎がもう追いついて来た」

 

「う、うーむ。それは予想外だ」

 

「とりあえず、舞子。お前は先に行け!ここは俺たちが食い止める」

 

男子2人が立ち止まって振り返り、集だけ先に行った。どうやら、2人が俺たちを止めるらしい。

 

「城野崎!神崎!お前らは俺達が止める!!」

 

「そうだ!これ以上お前らを先には!」

 

「2人にかまってる暇は……ない!!」

 

城野崎が2人に突撃して強引に切り抜けた。……あいつ凄いな。

 

「2人とも……ドンマイ」

 

倒れた2人に合掌して俺は走る。前では集と城野崎が何やら話し合っていた。

 

「城野崎隊員。君が裏切るのは俺は予想外だったよ」

 

「舞子体調、俺も、一つ、やりたい事が、あるからな」

 

話を聞く限り城野崎が大分消耗してるのがわかった。現に俺も2人に追いついた。城野崎のペースが少し落ちてるということだ。

 

「集!てめえは本当に!」

 

「おや、クロ。よく俺のところまで。まぁ、俺はお前なら俺に追いついてくると思って信じてたけどね」

 

「お前、よくここで、そんなセリフが言えるな」

 

俺も疲れているので息が絶え絶えになりながら話す。

 

「まぁ、ここからは俺たち3人の戦いだ。ここからは正々堂々と勝負だ」

 

「何か気にくわねえな」

 

「そう言うな。いいか、3、2、1、ドンで行くぞ」

 

集はカウントを取り始める。

 

「3、2……」

 

俺も城野崎もその様子に緊張する。

 

「1!!」

 

「て、てめえ!!」

 

1で走り出しやがった!よく考えたら集がそんなことを守るやつじゃなかった。

 

「くそ!待て!!」

 

「待てと言われて待つ奴はいないでおじゃる!!」

 

ダメだ。集はあんまり全力で走ってなかったみたいだけど、俺と城野崎は違う。また差が開いていく。

 

「くそ!集!!」

 

「ほほほほ、それでは〜……ぐは!」

 

集がいきなり横に吹っ飛んだ。正確には何かが当てられて横に吹っ飛んだ。

 

「これはおそらく……鶫だな」

 

「みたいだな。今回は鶫に感謝だ」

 

さてと……このマラソン?ももうすぐ終わりだな。

 

「クロ。本当にありがとな」

 

「礼ははええよ。まだ終わってねえぞ」

 

「……そうだな」

 

その言葉で俺と城野崎はラストスパートをかけた。これでもうどっちが勝つかわからねえ。

 

『やっと戻ってきました。1位は……同時です!今の所2人は拮抗しています!!』

 

俺たちが戻ってくるのが見えた瞬間、女子達が騒ぎ出した。

 

『さぁ、勝つのはどっちなのでしょうか!!』

 

俺は必死に走り続ける。もう息がゼェゼェ言ってるし、足も限界だ。それでも足を遅めるわけいかない!!そして、その決着はついた。

 

『ゴール!ゴールです!!先にゴールしたのは…………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、疲れた。マジで疲れたわ」

 

「お疲れ、クロ君」

 

校舎で人がいなくて、影があるところを探してそこにもたれかかるようにして座り込んだ。その隣にるりが座り込む。

 

「はいこれ。飲み物」

 

「お、サンキュー」

 

るりから缶ジュースを受け取る。

 

「…………負けちゃったわね」

 

「だな。悔しいよ」

 

結果、城野崎が1位。俺は2位となった。最初はやる気がなかったが、あそこまで本気になって負けたんだ。少し悔しい。

 

「何で負けたのかしらね」

 

「なんでだろうな」

 

最後手を抜いたわけではない。むしろ、さらに足に力を入れた筈だ。さらに足が速くなった筈だ。なのに、負けた。

 

「やっぱり想いの力なのか、それとも、俺の知らないうちに手を抜いたのか」

 

「どういうこと?」

 

「何でもないよ」

 

缶ジュースのスポーツドリンクを飲み干して、それを地面に置く。そして、ため息をついた。すると、るりは俺の方にもたれかかってきた。

 

「おい、やめとけよ。汗臭いだろ?」

 

「そんなことないわよ」

 

そうか、と返事をする。それで会話は終わったが、何か寂しくなりるりの右手を左手で握る。すると、るりも俺の手を握り返してくる。そうすると寂しい思いはなくなった。

 

「1位、なれなかったわね」

 

「ん?負けちゃった仕方ないだろ?それにキョーコ先生も俺たちを騙したわけだし」

 

1位と2位には報酬がある。だが、その報酬はクラスの女の子ではなく、飼育小屋にいた動物の女の子だった。その子とキスしたり、ハグしたりという事で終わったのだ。つまり、キョーコ先生は俺たちを騙した。

 

「まぁ、そうよね。期待していた私達がバカだったって事」

 

「だな。よく考えたらそんなわけないのに」

 

女子とキスやハグ。そんなの勧めてくる教師なんていない。キョーコ先生ならと思ったがそんな事はなかった。

 

「……なんかさ、こうしてると文化祭を思い出すな」

 

「そうね。あの時は屋上だったけど」

 

「もうあれから5ヶ月経つのか。早いよな」

 

あの時は俺が引っ越しするか、しないかで大変だったけど今思えばしなくてよかった思ってる。毎日がこんなにも楽しいのだから。

 

「クロ君……あ、ごめん。お邪魔だったかな?」

 

「小咲?別にお邪魔じゃないけど。どうかした?」

 

「うん。1位から3位の人は表彰があるからって先生が」

 

「まじかよ……メンドくせ」

 

「まぁまぁ。とにかく、そういうことだから」

 

そう言うと小咲は走って行ってしまった。まだ、誰かを探しているのかな?

 

「そういうことらしいから。俺行ってくるな」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

「ん?なん…………………」

 

俺は立ち上がろうとすると、るりに呼び止められた。何かと思って振り向こうとした瞬間、俺の頬に何か柔らかい物が当たった。いや、物じゃない。

 

「る、るり?今のは………………」

 

「きょ、今日頑張ったご褒美よ。それじゃ」

 

顔を真っ赤にしたるりがそのまま走って去っていった。俺の頬に当たった柔らかい物。それはるりの唇だった。付き合いだして手を繋いだり、抱きしめたりはしたが、頬にキスなどされた事はなかった。5ヶ月間一度も。つまり、あれはるりの初めての…………

 

「るり………………やっぱり俺はお前が大好きだ」

 

そこにはもういない彼女に俺の気持ちを呟いた。今の俺の顔はすごく赤くなっているだろう。

 

そこから俺が動くのに10分かかった。…………そういえば、城野崎のやつうまくいったのかな?




久しぶりに書いたせいか結構長いです。
楽ファンの皆様すいません。全く活躍なしでした。
なんかめちゃくちゃな気がしましたが城野崎の恋は
上手くいったのでしょうかね〜?ww

後、今回マラソン中の時話がところどころ原作と違うと思った人がいるかもしれませんが、あれは城野崎とクロが楽より先に進んでいたからです。城野崎とクロの後ろで楽は原作通りやってくれたでしょう。

そして、クロとるりちゃんの恋がまた進展です。
次は何の話書こうかな。

感想と訂正があればお待ちしております!


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番外編3 水泳タイカイ

こっちは久しぶりですね。

番外編3はセイエンです。

では、どうぞ〜。


「いよいよ明日だな」

 

「……えぇ、そうね」

 

今の季節は夏。明日、というのは夏の水泳大会の事だ。そのための練習で俺は日が暗くなるまでるりと一緒に残っていた。

 

「全国に行けるように頑張ろうな」

 

「……別に私は全国なんで興味ないわ」

 

「はぁ?水泳部に入ったなら大会で優勝する事を目指すのが普通なんじゃないのか?」

 

「水泳は私の趣味よ。元々泳ぐのが好きで健康にもいいって聞いたから始めただけ。私は水泳の勝ち負けなんて特に気にしてないの」

 

「……そう言うわりには中学の時に結構な数のトロフィーを獲得してたよな」

 

「それは……やるからには本気でやらないといけないからよ。手抜いたりしたら相手に失礼でしょ?」

 

「まぁ、そうだよな」

 

「……とにかく私は勝ち負けなんて気にしてないの。まして、全国なんて……」

 

この時のるりがいつもと違う様子だったと思うのはきっと俺じゃなくても気づくことができただろう。明日本番なのに大丈夫なのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会当日

 

大会本番のため選手や観客がガヤガヤと集まり出していた。大会は男子と女子が別々の場所で行う。といっても、そんなに離れているわけではないので、るりに会いに行く事はすぐできる。そして今、るりに会いに来たわけなのだが。

 

「……えへへ〜、来ちゃった」

 

俺たちの目の前には小咲がいる。小咲だけじゃない。楽や桐崎さんやマリーや鶫とみんないる。

 

「……応援いらないって言ったのに」

 

「だって、次の大会で優勝したら全国行けるんでしょ?だったら来るよ、応援」

 

「…私は別に全国なんて」

 

「まぁ、そういうなよ。応援ある方がきっと力が出せるからさ」

 

「別に応援で自分の実力が変わったりしないわ」

 

俺がるりに励ます言葉をかけてもるりはそれを否定してくる。ふと、横を見ると桐崎さんと鶫が何かの準備をしていた。

 

「見てるりちゃん。徹夜でこんなの作っちゃった」

 

「頑張ってください、宮本様」

 

「…気持ちは嬉しいけど」

 

桐崎さんと鶫が『がんばれるりちゃん!!』と書かれた手作りの布をるりに見せる。

 

「私はクロ様の応援に来ました。もちろんクロ様の彼女であるあなたも応援してあげますけどね」

 

「…ありがとう」

 

「サンキューな、マリー」

 

楽に抱きつきながらマリーは言う。

 

「…そしてなんであんた達まで?」

 

あんた達というのは集と城野崎の事だ。城野崎の横には中村もいる。

 

「いやぁ、そりゃあ。ねー?城野崎隊員」

 

「俺にとっても舞子隊長にとっても大事な大事な宮本のためですからな〜」

 

「帰れ」

 

相変わらず集と城野崎には冷たいるり。これはいつもと変わらない。

 

「城野崎君、るりちゃんをそういう風な感情で見ていたの?私、君の彼女なのに」

 

「えっ?や、これは……」

 

そう。城野崎と中村はマラソン大会が終わった付き合い始めていたのだ。あの時、1位になって告白したかった相手は中村で、告白したら中村にOKしてもらったらしい。例のごとく、それは集のせいで一瞬でクラスに広がってしまったが。

 

「酷い。城野崎君は私と遊びのつもりで付き合ってたんだね!」

 

そう言って中村は顔を手で覆う。一見泣いているように見えるがそれは違う。あれは絶対泣き真似だ。だが、それに気づかない城野崎はオロオロしている。

 

「いや、違うって。俺は、その……中村…………いや、愛音の事を大事だと思ってるから!!」

 

今まで苗字で呼んでいたのにいきなり名前呼び。城野崎は以外と男だったようだ。

 

「え、あ……そうなんだ。……嬉しいな」

 

いきなりの名前呼びで中村までパニクっている。まさか名前で呼ばれるとは思ってなかったのだろう。

 

「さて、こんなイチャイチャしてるカップルはほっといて。るり、そろそろ時間だろ?行こうぜ」

 

「えぇ。……小咲、応援は勝手にどうぞ」

 

「うん!」

 

俺とるりはみんなに手を振って別れた。

 

「私に付き添うのはいいけど、クロ君もそろそろ時間じゃないの?」

 

「まぁな。でも、もうちょい時間はあるから。るりと一緒にいてエネルギーを充電って感じだな」

 

「…………勝手にして頂戴」

 

最近俺が恥ずかしい事を言ってもるりは顔を赤くするだけでリアクションはあまり取らなくなった。もう慣れてしまったということなのかな?

 

「失礼。あなた凡矢里高校の方ですわよね?少し尋ねたいのですが…‘‘凡矢里高校のマーメイド”と呼ばれる選手は今日来てるのかしら?」

 

それはあなたの目の前にいます。そう突っ込みたい。てか、こいつは女子水泳大会の全覇者の四狩女学院、‘‘水上のバタフライ”こと蝶ノ内羽子じゃねえか。

 

「中学時代…あらゆる大会記録を塗り替えて来たと言われている宮本選手が今は弱小校の凡矢里高校に入ったと聞いて、私是非お会いして見たかったのですが」

 

「宮本なら私だけど」

 

「……ん?は?えぇ!?」

 

蝶ノ内羽子は後ろにのけぞりながら驚く。そこまで驚くことなのか。

 

「あなたが宮本!?‘‘マーメイドの宮本”!?なんというみすぼらしい肢体。貧困な胸、くびれのないボディ」

 

こいつなんて失礼な奴なんだ。なんか腹立ってきた。

 

「おい、黙って聞いてたらるりをボロクソ言いやがって」

 

「クロ君!?」

 

俺はるりを庇うように前を立つ。

 

「あら?あなたは……誰?」

 

「俺はこいつと同じ学校の男子水泳部の神崎黒だ」

 

「……ということはあなたが中学時代の大会にクロールで新記録を出した‘‘マーメイドの彼氏”ですか」

 

……改めて人にそう言われると恥ずかしい。なんか他の二つ名が欲しいよ。

 

「私は蝶ノ内羽子。‘‘水上のバタフライ”といえば少しは有名なのだけど」

 

「バタフライ?じゃあまさかあなた、次の自由形……」

 

そうだ。水上のバタフライと言われるほどの二つ名があるんだ。次の自由形はきっと……

 

「フフッ、それはもちろん……クロールで参加しますけど」

 

「バタフライじゃねえのかよ!!」

 

……ってヤバい。蝶ノ内と話してたら時間が。くそ、俺とるりの時間を邪魔しやがって。

 

「悪いな、るり。時間だからもう行く。予選が終わったらまたこっち来るから」

 

俺はるりに手を振って男子会場の方へ向かった。俺も頑張らないとな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだクロ。圧勝じゃねえか」

 

「凄いねクロ君」

 

「流石クロ様ですわ〜」

 

城野崎と中村とマリーが予選で1位通過した俺を迎えてくる。というか、予選は圧勝だった。どうやら男子は女子と違い強い奴がいなかったみたいだ。

 

「なんかもっと強い奴が来て欲しかった」

 

「そればっかりは仕方ないよ」

 

「そうそう。どうせ全国では強い奴が山ほどいるんだし、楽しみはそこで取っておけ。それにまだ決勝があるだろ?」

 

「……それもそうか。女子の方はどうなったんだろ?」

 

「予選は蝶ノ内とかいう人が1位で2位が宮本さんでしたわよ」

 

「何?」

 

るりなら1位を取れると思ったんだけど……昨日話してた通り、モチベが低いのかな?

 

「悪い、俺ちょっとるりの所に行ってくる!」

 

「えっ、ちょっと、クロ様!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「るり!いるか!?」

 

「つっ……クロ君」?

 

大急ぎで走ってきて、俺はるりのいる女子更衣室についた。………女子更衣室?

 

「クロ君、ここって女子の更衣室よ。何当たり前のように入ってきてるのよ」

 

「あだだだだ!すいませんすいません、わざとじゃないんです!」

 

女子更衣室に入ってるりに近づいた俺をるりは右手でアイアンクローを決めてくる。やばい、すごく痛い。

 

「ったく…………いつっ!」

 

「るり、どうかしたのか?………ってお前その足」

 

「大した事ないわ。ただちょっと足を捻っただけよ」

 

るりの右足が結構腫れていた。本当にちょっと捻っただけなんだろうか?

 

「……まさか、その足で決勝に出るのか?」

 

「どうしようか考えていたところよ。趣味で始めた水泳をここまで無理して頑張るか、それとも棄権するかどっちかをね」

 

俺としてはるりと一緒に全国に行って大会に出たい。そして、高成績を残したい。だけど、これでは……

 

「あれ、るりちゃん?どうしたのこんなところで。それにクロ君も」

 

「小咲」

 

どうしようか悩んでいるところにいきなり小咲の登場。……小咲に相談したらなんていうのかな?

 

「るりちゃん、決勝も頑張ってね!私次はも〜っと応援するから」

 

「いいっていってんのに。水泳はただの趣味だから、特に全国に行きたいわけでもないし。だから応援なんて」

 

そう言うと小咲はキョトンという顔をした。

 

「……私は全国の舞台で泳ぐるりちゃんを見たいけどな。だって、泳いでる時のるりちゃんすっごくかっこいいんだもん。見てたら応援せずにいられないよ」

 

…………やばい。天使だ。ここに天使がいる。これほど元気の出るような言葉はないだろう。流石は小咲。俺にもそれ言って欲しい。

 

「あ、もう時間だから行くね」

 

「………やれやれ」

 

「決意は決まったみたいだな」

 

「えぇ。本気で全国を目指そうって思っちゃったわ」

 

さっきとはまるで違う、本気で勝ちに行くような表情。

 

「その足でいけるのか?」

 

「………応援されちゃったからね」

 

「そうか………じゃあ俺もるりが元気の出るような事を言ってみるかな」

 

とんでもない死亡フラグのような気がするが関係ない。それでも俺は言う。

 

「この大会終わって、俺たち2人とも優勝したら…………」

 

「つっ!!」

 

これを言った後のるりの顔はトマトのように真っ赤になった。俺もそれは同じだろう。

 

「じゃあ俺行ってくるから!」

 

そして、俺もまた全速力で走って男子会場の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大会が終わりその帰り道

 

結果的に俺とるりは全国への切符を手に入れることができた。俺は一番得意なクロールで。るりはと言うとバタフライで優勝をもぎ取ったらしい。弱小とも言われた凡矢里高校がいきなり全国に行って大暴れする。とんでもないダークホースだ。

 

「はぁ、結局決勝でも強い相手はいなかったよ。俺、更衣室から全速力で走ってきて、疲れてたのにさ」

 

「いいんじゃない?別に」

 

今日は俺とるりの全国行きおめでとうパーティを楽の家でするらしく、夜にあっちに集合らしい。と言っても今が夕方なのでそんなに時間はないけど。

 

「いいよな。女子の方は強い奴がいっぱいいてよ」

 

るりは足をくじいてしまった事もあるので俺がおぶって家まで連れて行っている。

 

「………ちょっとクロ君の家に寄っていい?」

 

「ん?なんで?」

 

「私の足の治療とか」

 

「それはるりの家でもできるんじゃ?」

 

「と、とにかく行くわよ!」

 

「痛っ!なんで俺命令されてんの!……まぁ別にいいけど」

 

今日はばあちゃんとじいちゃんは旅行に行ってていないし、母さんも今の時間ならまだ仕事をしてるだろう。

俺の家が見えてきたので、家に入り俺の部屋へと向かう。そして、ベットの上にゆっくりとるりを降ろす。

 

「湿布と包帯取ってくるからちょっと待ってろよ」

 

「えぇ」

 

リビングへと向かい湿布と包帯を見つけてまだ俺の部屋に戻る。

 

「お待たせ。俺がやろうか?それとも自分でやる?」

 

「クロ君に任せるわ」

 

「りょーかい」

 

湿布をゆっくりと足の腫れているところに貼って、そして、包帯を巻いていく。

 

「………ねぇ、クロ君」

 

「んー?」

 

「なんで決勝前にあんなこと言ったの?」

 

「ぶふっ!!」

 

いきなりの発言で包帯を巻いていた手元が狂ってしまった。

 

「いや、なんでとか言われても」

 

この大会が終わって、俺たち2人とも優勝したら……キスしような。

 

「だって俺たちもう付き合い始めて9ヶ月だぞ。なのにさ……をした事ないんだしそろそろ次に進んだって…」

 

「まぁ、確かにそうだけど」

 

「でも、約束は約束だしさ。……いい…よな?」

 

まぁ、半強制的に約束させたみたいなもんだけど。

だけど、俺の言葉にるりは顔を赤くしながら無言で頷いた。頷いたるりを見て、俺はベットに座っているるりの横に座る。

 

「じゃ、じゃあ………俺初めてだから上手く行かないかもだけど」

 

「そ、そんなの私もよ。だから…」

 

るりは黙って目を閉じる。いつ来てもいいというゴーサインのようなものだろうか?

 

「い、いくぞ」

 

るりの肩をキュッと掴んで、顔を近づけてそっと、ただ単に触れるようなキスをした。

初めてのキス。俺たちがした初めての。俺はマリーから頬にされた事はあるけど、唇ではない。何秒、何十秒だったかわからない。ただ、お互いがお互いを離そうとしなかった。だが、いつまでもこうしてるわけにはいかなく、俺から唇を離した。とても名残惜しい気分になる。

 

「ど、どうだった?」

 

「よく……わかんなかった」

 

そう言って顔を背けたるりの顔は真っ赤だった。更衣室で俺がこの約束を言った時よりも真っ赤になっていた。

 

「るり、顔が真っ赤だな」

 

「それはクロ君もよ」

 

「そっか………」

 

それだけ言うと俺たちは何も話さなくなる。いつまでもこうしてるわけにはいかないので何か話さないと。

 

「と…とりあえず、この後楽の家に行かないといけないんだし一度るりの家に行こうぜ。俺送るから」

 

「そ、そうね」

 

もう一度るりを背負い、靴を履いて家を出る。

 

「クロ君」

 

「ん?」

 

「これからもよろしくね」

 

「………おう」

 




なぜここまで恋愛がうまくかけないんだろう。
彼女作ったら、こういうの上手く書けるのかな?
まぁ、彼女いない歴=年齢の私が言っても何の意味もないですけど泣

感想と訂正があればお待ちしております


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番外編4 クロクンの昔話

なんて題名なんだよ、無理やりにも程がある。
だが仕方ない。思いつかなかったんだ!!
ということで、黒の中学時代の話です。
今回はイチャイチャがないんです、ほとんど。
そして文字数発の一万越えです。パチパチー!!

ではどうぞ。


これは俺が中学二年の時。ちょうど俺が凡矢里中学に転校してきた頃の話だ。その時の俺は友だちというのは九州の頃にいたマリーしかおらずそれ以外はただの赤の他人。そんな風に見ていた。あの二人に出会い仲良くなるまでは……

 

 

 

 

 

 

 

 

中学二年の6月頃。俺は凡矢里中学転校してきた。特別友達なんて作る気はなかった。だから、自己紹介も適当にした。

 

「九州の学校から転校して来ました、神崎黒です」

 

「…………そ、それだけ?」

 

「他に何か?」

 

「いや………じゃあ神崎君の席はあそこだ。宮本さん、神崎君にこの学校の事を色々教えてあげて下さい」

 

俺は先生に指示された席に向かう。

 

『なにあれ、感じ悪……』

 

『もっと何か言えないのかよ』

 

周りから野次のようなものが飛んでくる。だが、俺にはそんなのは知った事じゃない。

 

「隣あんたか?」

 

「見たらわかるでしょ。宮本よ」

 

「……神崎だ」

 

「知ってるわ」

 

「あっそ」

 

これが俺と宮本るりの出会いだった。第一印象としてはクールな感じな女の子。あと、すごいちっこい。

 

「それでは、HRを始める。まずは………」

 

HR。そんなものはどうでも良かった。ただ、授業を聞いて、テストを受けて成績を取る。それさえできればなにも問題はない。そう思い俺はクラスを見渡した。特に変わった事はない。ただ、一人の女子を除いて。

 

「こいつ………すごいかわいいな」

 

俺の左斜め前の席にいる女の子。名前も知らないし、どんな性格なのかもしれないが第一印象は可愛いだった。すごいもてそうな気がする。

 

「………以上で、HRを終わる。1限目の用意をするように」

 

先生が出て行くとクラスは席を立ってどこかに行くやつや、みんなで談笑するもの。俺はぼっちだ。だけどどうでもいい。どうせあの事が知れ渡ればみんな俺から離れていく。気にする必要なんてない。そう思っていた。

 

「ね、ねぇ、転校生さん?」

 

オドオドしながら、一人俺に話しかけに来た。誰かと思い顔を上げると俺の斜め前にいるすごく可愛い女の子。さっきは斜めから見てたからわからなかったけど、正面から見ると本当に可愛いのがわかる。少し顔が近かった事から俺の顔は少し顔が赤くなるのが感じた。

 

「わ、私小野寺小咲っていうの。神崎君……だっけ。よろしくね」

 

「あ、あぁ。よろしく」

 

「私の後ろにいるのが宮本るりちゃん。私の一番の友だちなの」

 

「ちょ、小咲。恥ずかしいからやめて」

 

俺には関係ない話を話し出す宮本と小野寺。席を立ってどこかに行こうとしたがもうすぐ授業が始まるためにそれはやめておく事にした。

 

「……神崎君、放課後か昼休み時間あるかしら?」

 

「ん?なんで?」

 

「あなたに学校を案内するように先生に頼まれたからよ」

 

「あぁ………別にいい。勝手に覚えるから」

 

「そう?なら、いいけど」

 

それはただの大きなお世話だ。人の力なんか借りなくても俺は自分で覚える。

 

「え、えっとー……あ、神崎君は何か得意な事はないの?ほら、スポーツとかさ」

 

なんでいちいちそんな事を気にするんだ、小野寺は。そんなの聞いてもどうする事もないだろ。

 

「まぁ、しいていうなら水泳だな。昔から泳ぐのだけは得意だ」

 

「水泳!?水泳だって、るりちゃん。るりちゃんと同じだよ!!」

 

「わかるわよそんなの。私、水泳部なの。あなたも入る?この学校人数少ないから自由に泳げるわよ」

 

水泳か………元々部活はやる気なかったけど、じいちゃんとばあちゃんが心配だから。

 

「まぁ、見学くらいなら」

 

「そう。じゃあ今日の放課後。早速きてちょうだい」

 

こっちの予定は無視なのかよ。まぁ、幸い今日はなんもないから別にいいけど。

 

「わかった。けど、なんも用意ないぞ?」

 

「部室に新品のがあるから大丈夫よ」

 

………こいつ、なんで女子なのに男子の事情を知ってるんだ?

 

「こらー、着席しろ。1限目はじめるぞー」

 

先生が入ってきたのでみんなが席に着席する。1限目は……現国か。だるい。適当に聞き流すか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何一限から爆睡してるのよ。あなたいきなり先生に目つけられてたわよ」

 

「俺とした事が聞き流すつもりが寝てしまうとは……」

 

「神崎君……」

 

次こそちゃんと………次は数学か。聞き流そ。中二の数学なんてちょちょいのちょいだ。余裕余裕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた何寝てるの?やる気ないの?」

 

「……くそ、次はもっとうまく寝る努力をしないと」

 

「授業はちゃんと受けないとダメだよ、神崎君」

 

数学の時間、睡魔に襲われ、いつの間にか寝てたようだ。おかげで先生に怒られた。

 

「次はちゃんと受けるか」

 

次は社会だし、その次は理科だ。これなら大丈夫だろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、さっきまでのが嘘のように起きてたわね。どういう事かしら?」

 

「俺は数学は寝てても教科書読めば解けるんだよ。国語も文章読めばできるし。勘違いすんなよ、あれは睡眠学習だ」

 

「どうでもいいわそんな事。それよりあなたどうする?一緒に食べる?」

 

「いや、いい。一人で食う」

 

みんなが机をくっつけて食べる中、俺は一人鞄の中から弁当を取り出した。

 

「神崎君、一緒に」

 

「いいのよ、小咲。無理に誘わなくても」

 

「でも…………わかった」

 

なぜ、小野寺は執拗に俺に構うんだ。別に一人でいいのに。それに比べ宮本はいい奴だ。俺の事をよく理解してくれてる。俺は一人でいいんだよ。マリーが友達でいてくれるなら、それでいい。

弁当の中身を上げると、がんばれ、と白ご飯の上にある海苔で書いてある。ばあちゃんが俺のことを心配して作ってくれたんだろ。……ありがと、ばあちゃん。

 

「いただきます」

 

ばあちゃんの期待に応えたい気持ちもあるが、結局それが不幸になる可能性がある。てか、いずれそうなる。だから俺は友達を作らない。

 

「……ねぇ、神崎君」

 

「ん?」

 

「あなた、最初小咲を見た時、こいつかわいいな、とか思ってたでしょ」

 

「ぶふっ!!!」

 

「えっ!?」

 

お茶を飲んでいた時にそんな発言されたら、誰だって吹いてしまうだろう。俺は案の定、お茶を前方に撒き散らした。

 

「な、何言ってんだよ!!」

 

「最初に席に着いたあと、クラスを一通り見渡したら小咲を見た瞬間あなたの動きが止まったわ。おそらく小咲をかわいいなとか思ったんでしょ?って聞いてるの」

 

「ち、ちげぇよ!」

 

くそ、あの時の事見てたのかよ。最悪だ。

 

「この動揺っぷり。よかったわね小咲」

 

「何が!何がなの、るりちゃん!」

 

くそ、めんどくさくなってきた。今この場から去りたい。誰とも構わず屋上とかで一人のんびりしたい。

 

「わ、私の事なんてどうでもいいの!それより、神崎君はいえどの辺にあるの?」

 

「俺の家?なんで?」

 

「……なんとなく?」

 

よくわからない奴だ。そして、本当にどうでもいい。

 

「どの辺って言われても周りに何もないから説明できない」

 

「そっかー……じゃあ仕方ないよね」

 

そんなこんなでこの日の昼休みは過ぎていった。この日はそのまま授業を受けて放課後になった。

 

「やっと終わった。じゃあ帰るか」

 

「あなた、水泳部の見学くるんじゃなかったかしら?」

 

あ、そういえばそんな事を言ったのを忘れていた。

 

「悪い、忘れてた。じゃあ、さっさと行こうぜ」

 

「あなた…………まぁいいわ。小咲も来る?」

 

「いや、私は今日家の手伝いがあるから帰るよ。ごめんね、るりちゃん」

 

そう言って小野寺は教室を出て行った。て事は、宮本と二人か。会話が弾む気がしないな。まぁ、弾まなくてもいいんだけど。

 

「じゃあ案内するわ。こっちよ」

 

「よろしく」

 

俺も宮本のあとを追って教室をでた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなた、泳ぐの本当に速いのね」

 

「なんだよ、嘘だと思ったのか」

 

「いえ………私の想像をはるかに超えていたから」

 

「でも、そういうお前も速いじゃねえか。男子の俺と同等の速さってどういう事だよ」

 

俺は今水泳場で宮本と泳ぐ速さを競い合っていた。俺は水泳には自信があったため負けるわけなんてないと思っていたが、宮本は俺と同じくらいのスピードで泳いでいた。俺が少し速いくらいだ。

 

「私は元々泳ぐのが好きなのよ。要は趣味なの。健康にもいいって聞くしね。それより、入るつもりになった?」

 

「……いやいい。部に入る気は起こらなかったから」

 

「そう?まぁ、入りたくなったらいつでも私に言ってちょうだい」

 

「おう」

 

そんな事は一生ないと思うけどな。

 

「それじゃ俺先に帰るから」

 

「そう。わかったわ。また明日」

 

宮本に一言いい、俺は男子更衣室に入って体を拭き制服へ着替えた。久しぶりに泳いだから気持ちよかったな。そういえば俺が水泳が得意なの気付いたのってマリーのおかげだっけ。…………マリーに会いたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二週間後

 

俺が転校して来て2週間経った。最初の自己紹介がしょうもなかったせいか、教室に入っても誰も俺の事を気にしていなかった。おはようも言って来ない。二人を除いて。

 

「おはよう神崎君」

 

「おはようー。今日は授業寝ちゃダメだよ?」

 

そう、小野寺と宮本だ。転校して来てから一緒にいてくれるのはこの2人だ。なんで俺に絡むのが。他の奴らと同じように俺の事を無視すればいいのに。

 

「……おはよう」

 

「知ってる?今日の1限目体育で水泳をするのよ。男女混合で」

 

「そうなのか?」

 

て事は、転校初日以来になるのか。水泳をするのは。

 

「もしかしたら、あなたの水泳の速さでモテモテになるかもしれないわね」

 

「そんな事あってたまるか。てか、あったら嫌だし」

 

「あら、男子はモテモテになりたいのかと思ったのだけれど」

 

別にそんなつもりはねえ。俺は女の友達なんてマリーがいれば十分だ。

 

「……でもよかった。神崎君、なんか仲良くなれるか心配だったんだけど。喋ってくれる人でよかったよ」

 

小野寺が笑顔でそう言うが、俺は別に喋りたいと思ってるわけじゃない。ただ話すのに付き合ってるだけだ。仲良くしてるつもりもない。

 

「なんて言えないな。言ったらめんどいだろうし」

 

「なんか言ったかしら?」

 

「いや、なんでもない」

 

うん。この2人とは上辺だけの付き合いをしていたらいいだろう。いちいち絡む必要なんてない。

 

「そういえば、聞きたいことがある」

 

「なにかしら?」

 

「なんであいつはあんなに他の奴らからびびられてるんだ?」

 

そう言って俺が指差したのは、二人の男子のうちの一人。一人はクラスの中でもけっこううるさいメガネをかけた男子。もう一人はクラスのみんなにびびられてる男子。俺が指したのはもちろん後者だ。

 

「あー、一条君の事?一条君は実家がヤクザで、組長の息子なのよ。集英組っていう。そのせいでみんなにびびられている」

 

なるほど。て事は少し俺と似てるところがあるのかもしれないな。ハブられてるところだけだけど。

 

「よーし、みんな座れー。今からHRするぞ」

 

先生が入ってきたのでみんな自分の席に座る。

 

「みんなが知ってるように今日は一限目から体育だ。プールだからってはしゃいで怪我しないようにな。それじゃ出席確認をする。安藤……」

 

プール……楽しみだけど、めんどくさいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

「ねぇ、神崎君って水泳得意なの?」

 

「なんで速く泳げるの?私、教えてほしい!」

 

「私も私も!夏休み入ったら海とか行くし、それまでに教えてほしいな!」

 

…………なんか宮本の言う通りになった。今まで机の周りに何て誰もいなかったのに、今はどうだろう。水泳の授業を終え昼休みになると、女子が周りにいっぱいいる。

 

「別に普通だ。練習したらみんなあれくらいできるようになる」

 

「えー、無理だよー」

 

「そうそう。神崎君が凄いんだよ!」

 

俺から離れてほしい。むやみに絡まないでほしい。あの事が……あの事件がみんなに知れ渡れば、どうせ、みんな俺から離れるんだ。俺に絡むな。

 

「泳ぎなら俺じゃなくて、俺の隣の宮本に教えてもらえ。俺より泳ぐの早い」

 

そう言って俺は小野寺と弁当を食べてる宮本に指を指す。

 

「確かに、宮本さんもうまいけど、私は神崎君に教えてほしい!男子みんなを楽々抜いちゃう神崎君かっこよかったもん」

 

「私も私も!!」

 

これは何を言っても引き下がらないんじゃないかな。

 

「みんな……神崎君困ってるよ。そのくらいにしたら?」

 

困ってる俺を見て、小野寺が声をかけてくれた。それを見た女子たちは一瞬ムスッとしたが、すぐ笑顔に戻った。

 

「寺ちゃんも泳ぎ苦手なんだから教えてもらえばいいのに」

 

「私はいいよ。るりちゃんに教えてもらう事にする」

 

「………まぁいいけど。じゃあ神崎君。またよろしくね」

 

女子たちは俺から離れて自分の席に戻っていった。

 

「ふー、小野寺、ありがと」

 

「えっ、あ、ううん。気にしなくていいの。神崎君が困ってそうだったから」

 

「それでも助かったよ」

 

俺たちは互いに笑いあった。……あれ?なんで俺小野寺と友達みたいに笑いあってんだ?おれの友達はマリーだけで、他は別に………

 

「どうかしたの?」

 

「……なんでもない」

 

…………なんでだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後。

 

俺の恐れていた事が起きた。プールの件でしばらく俺は女子と喋る機会が多かった。もともと気にしていなかったが、それも終わりになるのだ。

いつものように教室に入る。だが、今日はいつもと違い、俺が教室に入った瞬間、俺の方にみんなが向いた。一瞬ビビったけど、俺は自分の席に座った。

 

「神崎君………」

 

「ん?どうかしたのか?」

 

「黒板……見て」

 

黒板?なんでそんなものを、と思ったが、黒板を見た瞬間理解した。何故みんなが一斉にこっちに向いたのか。何故、こんなに空気が重たいのか。

 

『神崎黒の父親は人殺し!』

 

黒板にでかでかとそう書いてあった。いつかはこうなる事は分かっていた。だが、分かっていてもやっぱり辛い。

 

「……やっぱりか。そうなるんだな」

 

俺は席を立ち黒板の前まで立って、黒板に書いてある文字を全て消した。そして、教卓の前に立つ。

 

「そうだよ。俺の親父は俺が小さい頃に人を殺した。で、どうだ?幻滅したか?引いたか?別に構わねえよ。いつかこうなると分かっていた。だから自己紹介もあんな風にふざけた。人とあまり関わらないようにした。

正直に言う、俺が水泳できたからって絡んできた女子。うざかったよ。俺は仲良くする気なんてないのに、いいように絡んできて。めんどくさかったよ。これを知ったからみんながどうするか知らないが、絡む気がないなら俺に絡まないでくれ」

 

教室がシン、静かになった。俺は自分の席へと戻る。俺の言葉がそこまで聞いたのかわからない。だけど、これで俺に絡むやつはいなくなる。九州にいる頃と同じだ。

 

「……………」

 

なぜか宮本が無言でこっちを睨んできている。

 

「ん?なんかあんのか、宮本」

 

「いえ、別に」

 

「あっそ」

 

それからというもの、こういう話は一瞬で拡散するものであり、俺の親父が人殺しだというのは3日もしないうちに学校中に広まった。おかげで俺は今スーパーぼっちライフを送ってる真っ最中だ。廊下を通る時はみんな俺を見ると避ける。整列する時は俺との間を少し開ける。俺を見るたびに噂話が広がる。そして………

 

「おい、神崎。ちょっと付き合えよ」

 

数人の男子がニヤニヤしながら俺のところまで来た。これも九州にいた頃にあった。

 

「……………」

 

「シカトかよ。おーい、聞こえてるんですかー?」

 

「………成績悪いバカたちに貸す耳なんてありません。どうぞお引き取り下さい」

 

あはははっ、笑っていた男子だったが俺の一言でそれが一転した。どうやら怒らせてしまったようだ。

 

「てめぇ、調子のってんじゃねえぞ」

 

「調子乗ってんのはどっちだ?男子数人で俺の前まで何するつもりだ?……あぁ、そうか。一人じゃ何もできないからって数で俺を圧倒しようってわけだ。集団引き連れて、俺強いアピールか?なるほど、成績悪い上にヘボいわけだ。残念なことですね」

 

うわ、調子乗ってるのって俺じゃん。これ言い過ぎたかも。

売り言葉に買い言葉とはまさにこのことなのだろうか。俺に突っかかっていた男子が拳を振りかぶった。

 

「あんまり人を怒らせるもんじゃねえぞ、神崎!」

 

男子が俺を殴ろうとしてきた。俺は躱す気もなく、それを受けようとした。

 

「ねぇ、隣でうるさいんだけど」

 

が、その拳は途中で止まった。

 

「ん?なんだよ宮本。これは俺らの問題だ。邪魔するな」

 

「聞こえなかったの?読書の邪魔だって言ったの。それにあなた、周りが見えてないの?他のクラスからわんさか人来てるわよ」

 

「なに?」

 

俺を殴ろうとした男子が辺りを見渡すと宮本の言う通り、確かに他のクラスから俺たちの様子を見に来た人でいっぱいになってる。

 

「………ちっ」

 

男子は舌打ちして俺から離れていった。

 

「…………ふぅ」

 

「あなた、なんで男子の喧嘩買ったの?」

 

「……別に。お前には関係ない」

 

「助けてあげたのにそれはないと思うんだけど」

 

「そうだな。じゃあ一応礼は言うよ。ありがと」

 

礼を言うと、宮本ははぁ、とため息をついて再び読書に戻った。てか、こいつは自分の読書のために助けたのか?それとも…………いや、考えるのはやめておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なにこれ。俺、小野寺が呼んでたっていうから仕方なく来たんだけど」

 

天気の悪い日。今にも雨が降りそうだ。俺が今いるのは体育館裏。一人の男子が小野寺が呼んでる。大切な用事があるから来て、と伝えてくれって頼まれたらしく、仕方なく来たんだけど………

 

「よう、神崎。この前はどうも」

 

この前絡んできた数人の男子たちがそこで待っていた。

 

「お前なら来ると思ったぜ。なんか知らねえけど、小野寺と宮本とは仲良いもんな、お前」

 

「いや、別に仲良くないし」

 

「でも正直びっくりしたぜ。俺の友達の親父が警察官でよ。神崎の話をしたら、何かその話を出してきてさ。それで知ったんだ。お前の親父は人殺しだって」

 

つまり、クラス内に俺の親父は人殺しだって広めたのはこいつのわけか。てか、なに友達の手柄なのに自分の手柄みたいに自慢してんのこいつ。

 

「俺はお前が気にくわないんだよ。ちょっと水泳ができるからって女子にちやほやされて。さらに、小野寺と宮本と仲良いお前がよ」

 

「だから仲良くねえし。てかそれただの嫉妬じゃねえか」

 

「………さっきからそのスカした態度もムカつくんだよ!!」

 

この前俺を殴ろうとした男子が、俺の胸ぐらを掴み、壁に押し付けてくる。勢いよくいったせいで背中を打ち呼吸が苦しくなった。

 

「転校初日から俺はお前が気に入らなかった。あの時の挨拶もそれからのお前の態度も全て、全て!!」

 

「いや、そんなこと言われても困るんだけど。俺にどうしろと?」

 

「なーに。少し痛い目にあってもらいたいだけだよ」

 

その男子の合図で俺を数人の男子が囲った。……これ九州にいた頃しょっちゅうだったな。結局誰も助けてくれないこの状況。もうなんかめんどくさいわ………殴られてもいいか。

 

「いいよ。殴れよ。それでお前の気がすむならな」

 

「……だから、その態度をやめろって!!」

 

「先生!こっちです!!」

 

殴られると思った瞬間、前と同じように誰かの声が聞こえ、殴ろうとした手が止まった。

 

「先生!はやく!」

 

「ちっ、またかよ!神崎、次覚えてろよ!!」

 

男子たち数人は走って俺から去っていった。その瞬間力が抜け俺は地面に座り込んだ。てか、また殴られなかったな。俺はついてるのか?

って思ったら、ポツポツと雨が降り始めた。その雨は段々強くなり大雨にと変わった。

 

「やっぱりついてないな……」

 

「本当、ついてないみたいね」

 

上から声が聞こえ、顔を上げると、何故か、傘をさした宮本と小野寺が立っていた。

 

「なんで二人がここにいるんだ」

 

「たまたまよ」

 

「………たまたまで体育館裏に来るやつがいてたまるかよ」

 

そういえば、さっき聞こえた声も女の声だったな。おそらく、小野寺がこの状況を見てとっさに呼んだんだろう。いもしないはずの先生を。

 

「で、俺に何の用だ?用がないなら帰って欲しいんだけど」

 

「……そうするつもりだったんだけど、今のあなたを見てるとそうもいられなくなったわ」

 

「神崎君、はやく体拭かないと風邪ひいちゃうよ。その前にこれ以上濡らさないように傘を……」

 

小野寺は持っていたカバンから折りたたみ傘を取り出した。だけど、そんな事はどうでもいい。

 

「………なんでお前らは必要以上に俺に構うんだ?」

 

「え?」

 

「俺は殺人者の息子だぞ!怖くねえのかよ!俺が何かするかもとか思わねえのかよ!!」

 

「……………神崎君」

 

「最初からそうだった。お前らは俺に絡んできて。俺は別にどうでも良かったのに!俺はこの学校で友達なんて作る気はなかった。いや、友達なんていらない。どうせ、親父の事を知ればみんな俺から離れていくから!!今回も案の定そうだったよ。水泳ができるからって絡んできた女子はみんな俺から離れた!男子たちは怒りをぶつけるように、からかうように俺に突っかかるようになった。俺はそれでも構わなかった!そんなのは向こうの中学で慣れてたから!でも、どうして。どうしてお前らは俺を二回も助けた!なんでお前らは俺と普通に話そうとする。そんなのはいらないのになんで…………なんでだよ!」

 

溜まっていたものを吐き出すかのように俺は宮本と小野寺に怒りをぶつけていた。二人は悪くない。むしろ、俺を助けてくれたのに。

 

「もう俺に構わないでくれ………俺のせいでお前らにも何かあるかもしれない。だから…………」

 

「………………はぁ」

 

俺が言いたい事を全て言うと、何故か宮本がため息をついた。

 

「言いたいことはそれだけかしら?」

 

「えっ?」

 

俺にとっては予想外の返答だった。俺が驚いたのをほっといて宮本は話を続ける。

 

「あなたの気持ちは置いとくとして。あなたのお父さんは確かに人を殺した。それは私も自分で調べてそれを知ったわ。だから、あなたが今そういうことも言いたくなるのもなんとなくわかるわ。けど、一つ言わせて。

あなたは何をしたの?」

 

「つっ!」

 

「人を殺した?暴力をした?何か嫌われるような事をしたかしら?私はあなたが何もしてないと思うのだけど。まぁ、教卓で言ったことは多少怒らせる事だったかもしれないけど、あんな事されれば当然よね。けど、殺人者の息子だからってあなたは何も悪い事をしてないじゃない」

 

「そ、そうだよ。神崎君はただの被害者であって何も悪い事してないよ。なのに、男子がみんな………」

 

この二人は一体何を言ってるんだろう。俺が殺人者の息子。そんなのは全く関係ない。そう言ってるのか?

 

「それにあなたはこの前もさっきも。散々ひどい事を言った男子を殴ろうとしなかった。ただ、言葉で言い返すだけ。流石にこの前のは言いすぎだと思ったわ。でも、暴力をしないという事はあなたが優しい男だって事よ」

 

「な、何言ってんだよ。俺は」

 

「それにあなた。小テストとかいつも満点取ってるでしょ。あれだけテストで寝てるくせに。つまり、家で結構勉強してる真面目タイプ。違うかしら?」

 

あってる。てか、宮本のやつそこまで俺の事を観察してたのか!?恥ずかしいんだけど。

 

「そしてもう一つ。あなた友達なんかいらないとか言ったけど、あなたがそう言ってる時、とても辛そうな顔してたわよ。ねぇ、小咲?」

 

「うん。なんかその言葉を言うのが辛そうに見えて、こっちまで悲しくなっちゃうような」

 

「ち、違う!俺は友達なんかいらない!」

 

「それはあなたと友達になった子が離れていくからでしょ?」

 

「そ、それは………」

 

「あなたの本音は友達を欲してる。私はそう思うけど」

 

全て当たってる。まるで宮本に俺の心を見透かされてるような気分だ。最悪だよ…………

 

「………………そうだよ。俺は確かに一人は嫌いだよ。一人でいると親父の事とか、病気になった母さんの事を思い出すから。だけど、俺と友達になったやつはみんな俺から離れた。俺の友達やめて、いじめてきたやつもいたよ!そうなるなら、友達なんていらない!俺は友達を作らないし、誘われても断る!そうしてきたんだ!友達作っても作らなくても結果は同じ!事件の事を知れば俺から離れる!同じなんだよ!!!」

 

全てを見透かされて逃げ道がなくなった俺はまた二人にぶつけるように正直に吐いた。

 

「正直、二人はすごくいい奴だよ。友達になったら楽しいと思う。でも、俺と友達になれば他の奴らがお前らにちょっかい出すかもしれない。そうはしたくない。だから、俺はお前らとは友達にならない」

 

俺はきっぱり言い切った。これでいいんだ。二人とは友達にならない。それがいいに決まってる。

 

「…………何言ってるの?」

 

「……はい?」

 

「友達にならない?なんでそんなのあなたに決められないとならないのよ」

 

「な……何言ってんだよ。今の話聞いてたのか?」

 

「ええ。聞いたわ」

 

「だったら!」

 

「私と小咲はあなたと友達になりたいからここに来たんだけど」

 

「…………え?」

 

「ねぇ、小咲」

 

「うん。私、神崎君の友達になりたい!るりちゃんが男の人とあんなに話すの初めて見たし、私ももっと神崎君とお話ししたいもん!」

 

小野寺がニコッ、笑って俺に手を差し伸べて言った。

 

「私はあなたのその真面目なとことか優しいところとか結構好きよ。

周りの事なんか気にしなくてもいい。そんなに不安なら私があなたの友達になって、あなたのそばにいてあげるわよ」

 

宮本は俺の前にしゃがみ、小野寺の手に重なるように手を差し伸べて言った。

………何言ってるんだこいつらは。今日何回こう思ったか。いじめられてた俺を助けてきたり、俺の心をすべて見透かしたり、俺の友達になるとか言ったり…………本当に

 

「お前ら、意味わかんねえ。本当に意味……わかん…ねえよ」

 

俺はその言葉に感動して涙を流しながら宮本と小野寺の手を取った。降っていた雨がいつの間にか止んでいた事にその時気づいた。

 

「じゃあ改めて。私は小野寺小咲。るりちゃんの大親友です!」

 

「宮本るりよ。よろしくね」

 

二人は笑って自己紹介する。俺も涙を拭って、笑顔で言った。

 

「神崎黒だ。クロって呼んでくれな」

 

………母さん、マリー、ばあちゃんにじいちゃん。俺、友達ができたよ。男じゃないけど、この先すごく楽しみだよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそー……なんでいつもあんな邪魔はいるんだよ」

 

「なぁ、もうやめようぜ。俺別にあいつに恨みねえんだけど」

 

「うっせぇ!いいから次の手を」

 

「なぁ、お前ら」

 

「あん?なんだよ………ってお前!」

 

「そろそろやめねえと、神崎かわいそうだろ」

 

「うるさい!お前も口出しすんのかよ!!」

 

「ったく、めんどくさ『坊っちゃーーん!!遅いから迎えに来ましたぜー!って何だこいつらは』なんでこんな時にお前は来るんだよ!」

 

「坊ちゃんになんかあったら、お前らは…………ただですまさんからのう?」

 

「「「す、スンマセンでしたー!!!」」」

 

「あ、おい!……まぁいいか。帰るぞ、竜」

 

「ヘイ、坊ちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからというもの、何故か俺へのいじりが一瞬でなくなり、それからは宮本と小野寺と楽しく学校生活を送り始めた。入ろうと思わなかった水泳部に入り、宮本とともに男女で一緒に大会で優勝したり。花火大会やクリスマスや初詣に行ったりして楽しんだ。その時の宮本の格好にドキッ、としたのは言うまでもない。

文化祭の時に、俺の中で少し噂になった一条楽とその友達、舞妓集と仲良くなり、二人ともつるむようになった。でも、基本は宮本と小野寺と一緒にいる生活だった。

 

それから月日は流れて高校二年。今では、友達になろうと言ってくれたるりが俺の彼女となり、一緒にいる。小咲もいるし、マリーもいる。楽も集も城野崎も鶫も桐崎さんも一緒ですごく楽しい日々を送れてる。本当にあの時のるりの言葉がなければきっと俺は………

 

「クロ君、どうかしたの?」

 

「………いや、俺はやっぱりあの時からるりの事が好きになったんだなって思ってさ」

 

「いきなり何言ってるのよ!!」

 

顔を赤くしながら俺の鳩尾めがけてるりの拳が飛んできた。が、それは途中で失速した。俺の腹にあたる頃には拳が軽くあたる程度だった。

 

「るり?」

 

「………私だって……」

 

「なんて?」

 

「なんでもないわよ!!」

 

「ぐほっ!」

 

結局、俺の鳩尾にるりの拳がめり込んだ。

 

「痛え………」

 

「変な事言った罰よ。早くいきましょ、アイス食べたいわ」

 

「はいはい、了解ですよお姫様」

 

今なら言えるだろう。俺の彼女は色々な意味で最強だ。俺は今、最高の人生を送れていると。

 




どうでしたか?
これはまだ未定で原作の進み具合で決まるんですが
もしかしたら、次で本当の最後になるかもです。
多分その最後はわかると思うんですよ、るりちゃんメインの話なんで。
けれど、原作でるりちゃんメインの話が出ればまた書くかも。
次の更新はいつかわかりませんが次回もお楽しみに!

感想と訂正があればお待ちしております


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番外編5 イブのトクベツな1日

すいません、この前の話で次がラストになるって言ったんですが、そうはなりませんでした。何気なくニセコイキャラの誕生日を見ていたら、クリスマスイヴがるりちゃんの誕生日ではありませんか。見た瞬間これは書くしかないと思い、仕上げました。
というわけで今回はちょっと早いクリスマスイヴの話です。
ではどうぞ〜。


今日はクリスマスイブ。この日は朝から晩までとこの家庭でもお店でも大忙しだろう。ケーキを用意することに必死になるところもあれば、女の子に、または男の子に告白する子だって現れるかもしれない。もちろん俺にも忙しい事はある。今日は夜にクラスのみんなでクリスマスパーティだ。だけど、俺にはその事より大事な事がある。今日12月24日。クリスマスイブ。そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

るりの誕生日だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、クロ。今日は夜にクラスの子とパーティするって言ってたけど、家を出るのはずいぶん早いのね?」

 

「あ、母さん。うん、ちょっとね」

 

朝。目を覚ました後すぐ出かける準備をして家を出ようとする俺を母さんは呼び止めた。

 

「…………るりちゃんとデート?」

 

「ぶふぅ!」

 

「あら、図星だったみたいね。クロったらわかりやすい」

 

「母さんが直球すぎるんだよ!!」

 

ごめんね、と謝りながらも笑っている母さん。くそ、俺の事からかってきてる。

 

「まぁ、彼女だしクリスマスだからそういうことしたいのはわかるけど…………一線だけはこえちゃダメよ」

 

「母さん!!」

 

「じゃあね。今日は私も父さんたちと久しぶりに外食するから。ゆっくりしていきなさいな」

 

ダメだ。朝からこんなに突っ込んでたらテンション持たない。落ち着け。いつものようにフリスクを食べて。

 

「………よし!行くか」

 

俺は呼吸を整えてから、待ち合わせ場所である公園に向かった。

 

 

 

 

 

 

「着いた………10時半か。11時待ち合わせだし少し早かったかもな」

 

「そんな事ないわよ」

 

「うおっ!!」

 

後ろからいきなり声が聞こえ振り向くとそこにはるりが。背が小さいから見えな

い。

 

「何か考えなかったかしら?例えば背が小さいとか?」

 

「滅相もございません。ですので、アイアンクローはやめてください」

 

「……ならいいけど」

 

「ふぅ。怖かった。にしても……」

 

るりの今の姿を見ると、秋に文化祭してそれが終わった後に遊んだ時とは真逆の格好をしている。あの時はワンピースに麦わらぼうしだったのに、今はニット帽にマフラー、手袋ときた。まぁ確かに今日は寒いからな。

 

「……何まじまじと私の事見てるの?警察呼んで欲しいの?」

 

「違うわ!!文化祭終わった時とは真逆の格好だな、って思ってただけだよ!」

 

「……今日はメガネしてるわよ?」

 

「いや、そこは突っ込まなくていいだろ。というか何時くらいから待ってたんだよ?」

 

「さっき来たところ。けど、この公園を歩いている人がカップルばかりでなんというか一人は恥ずかしかったわ」

 

そう言われ周りを見渡してみる。確かに手をつないでたり、腕を組んだりしている男女ばかりだ。

 

「まぁ、それはいいだろ。俺たちもそういう事なんだしさ」

 

「それもそうね。で、今日はどこに連れてってくれるの?」

 

「んー、予定はちゃんと考えてきてないんだよな。でも、18時にあっち集合だから。買い物にでも行こうぜ」

 

「わかった」

 

返事をして、何故か両手にはめた手袋を外し出するり。

 

「なんで外してんの?」

 

「クロ君が手袋してないからじゃない。平等じゃないとかわいそうでしょ?」

 

「いや別にいいよ。コートのポケットに手突っ込んでたらいいだけだし。俺としてはるりの手が冷える方が嫌な事だしな」

 

「…………だったら………ない」

 

「ん?今なんて…………って、あぁ。そういう事ね」

 

「な、なによ?」

 

「いや、相変わらず素直じゃないな、って思ってさ」

 

ポケットに入れていた手を片方出して、その手でるりの手を握る。

 

「こうしたかったんだろ?」

 

「……………」

 

顔を赤くして無言で俯いている。これは図星という事だろう。相変わらずうちの彼女は可愛いな。他のカップルに向かってドヤ顔してやりたい。

 

「さて。るりの可愛い一面をたっぷり見れたところで買い物に行きますか」

 

「………やっぱり、手離してもいい?」

 

「すいません、まじ調子に乗りました」

 

「ならいいわ。さっ、行きましょ?」

 

結局主導権を握るのは俺ではなくるりだという事なんだな。

 

 

 

 

 

 

 

電車やら徒歩やらでやってきたデパート。デパート内は暖房が効いていたのと、人口密度が高いので暑かったから、るりはニット帽とマフラーを取っていた。

 

「で、どこからまわる?」

 

「とりあえずクリスマスパーティでするプレゼント交換のプレゼントを買いたいな。るりはもう買ってるのか?」

 

「えぇ。ちょっと面白いぬいぐるみを」

 

……こいつまた小咲の時みたいに変なプレゼント買ったんじゃないんだろうな?

 

「まぁそのプレゼントが小咲の方にまわるのを俺は祈っとくよ。そっちの方がおもろいし」

 

「あら、クロ君もなかなかゲスい男なのね」

 

「うるせえ。でもるりはぬいぐるみか……俺はどうしようかな」

 

「ぶらぶらしながら考えたらいいんじゃない?」

 

「いいのか?俺に付き合わされる事になるんだぞ?」

 

「別にいいわよ。私も少し見て回りたい事があるから」

 

見て回りたい事?なんか用事でもあるのかなぁ?るりの両親へプレゼントとか?

 

「にしてももうクリスマスって思うと早いよな。去年は俺とるりと小咲の3人でパーティだったっていうのに、今年はクラス全員でだからな。高校と中学は違うって事だよな」

 

「そうね。あれはあれで楽しかったから良かったし、今年もしたかったけれどクラスのやつに誘われたら仕方ないわよね」

 

「だよな〜。なら、明日とかどうだ?なんなら風ちゃんと春ちゃんも誘ってさ。楽しそうだと思わねえか?」

 

「いいわね。小咲がオッケーくれたらしてもいいと思うわよ」

 

「よしきた。パーティの時に誘ってみるか」

 

デパート内をウロウロしながら話を続けていく。

 

「にしても見つからないな、プレゼント」

 

「クロ君が深く考えすぎなんじゃないの?自分がもらったら嬉しいものとかでいいと思うのだけれど」

 

「それでるりはぬいぐるみか?」

 

「えぇ。もらって嬉しいものだもの」

 

そのぬいぐるみは本当にただのぬいぐるみなんだろうな?なんも仕掛けはないんだろうな?

 

「うーん……あ、これとかいいんじゃないかしら?」

 

そう言ってるりがさしたのは時計。それも人気のキャラクターの壁紙がついてる時計だ。

 

「おぉ、確かに。これなら男子や女子がもらっても嬉しいし、みんなが愛用してくれそうだもんな。流石はるりだ」

 

そう言って俺はるりの頭を撫でる。髪さらさらで気持ちいいな」

 

「……子ども扱いしないでちょうだい」

 

「とか言いつつ、嫌そうにはしてないみたいだけど?」

 

「そんな事ないわ。それよりお腹すいた。どこかに食べに行きましょ」

 

るりは俺の撫でていた手をパッと払う。てかもう14時だったのか。

 

「ん?もうそんな時間か。歩き回ってたから気づかなかった。何食べたい?」

 

「なんでも?クロ君の好きなものでいいわよ」

 

「じゃあハンバーガーとかでいいか?夜はどうせ豪華なものが出てくるだろうし」

 

「いいわよ。私いつものやつ頼む事にするし」

 

いつもやつとは。るりがファストフード店に来たらいつも頼むもの。ハンバーガーのハンバーグ8枚載せとか、ポテトのサイズとかがえげつないセット。普通の人は頼まない。

 

「…………なんであんなの食えるんだろ?お前人間じゃないだろ?」

 

「失礼ね。私はれっきとした人間よ」

 

「わかってるよ。ただ、その食った食べ物をもう少し身体にまわすことができたらな?こんなに背も胸もちっちゃくならなかっただろうに………はっ、しまった!つい本音が」

 

やばい。るりに殺される……

 

「クロ君………」

 

「るり………」

 

「覚悟はいい?」

 

やばい。俺死んだかも。

 

「…………いやー、少し待ってもらえると」

 

「……なら、私がいつも頼むやつ。あれをクロ君も食べたら許してあげる」

 

「はぁ!?ちょっと待て。あれの量どれだけすげぇと思ってんだ!お前ならともかく俺が食えるわけ『返事は?』イエス、マム!!」

 

「ならよし」

 

……俺、夜のパーティーで生きてられるかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、ハンバーガーのとんでもない量をなんとか食いきった俺は、今度はるりが買いたいものがあるというので、それに付き合って、買い物を終えるとちょうどいい時間になったので、パーティー会場の方へと向かっている。

 

「なぁ、何買ったんだよ?」

 

「なんでもいいでしょ?もう直ぐ分かることだし」

 

言ってる意味がよくわからない。

 

「まぁいいや。何時に小咲と待ち合わせだっけ?」

 

「17時よ。今から行けば全然間に合う。むしろ時間が少し余るくらいじゃない?」

 

「そっか。じゃあ変なタイミングだけど………はい、これ」

 

俺は鞄の中からラッピングされた箱をとりだしてるりに渡す。

 

「なにこれ?」

 

「いや、なにって。今日お前の誕生日じゃん。自分の誕生日忘れてたのか?」

 

「………そういえばそうだった」

 

「しっかりしろよな。でも、まぁ……誕生日おめでとうだ、るり」

 

「……ありがと。中身開けてもいい?」

 

「構わねえぞ。大したものは買ってないけど」

 

ラッピングされたリボンと包装を綺麗に取ってるりは箱の中を開けた。

 

「これ………ペンダント?」

 

「あぁ。小咲と選びにあった時に、るりなら絶対似合うだろうなって思って買ったんだ。嫌だったか?」

 

「……今の私としては、小咲と買い物に行った話を私は聞いてなかったのだけれど?プレゼントの事は伏せておくにしろ買い物に行くって一言言ってくれても良かったんじゃない?」

 

「うっ………それは」

 

るりはギロッと俺のことを睨んでくる。やばい。その事を考えてはなかった。

 

「はぁ……………クスッ」

 

「るり?」

 

「なんでもない。ありがと。すごく嬉しいわ。黙ってた事は怒ってるわけじゃないから気にしなくていいわ」

 

「ならよかった。喜んでもらえてなによりだ」

 

「えぇ。だから、そのお礼も兼ねてっていうのも何か変だけれど……」

 

るりは一度ペンダントを鞄の中にしまい、今度はるりが鞄の中から俺にラッピングされた箱を渡してくる。あれ、これって………

 

「1日早いけど、メリークリスマス、クロ君。私からのクリスマスプレゼントよ」

 

「……もしかして、さっき買ったのってこれなのか?」

 

「そうよ。クロ君にはいつもお世話になってるし、この機会に何かプレゼントしようと思って。あ、中身開けてもいいわよ」

 

まさか、サプライズをサプライズで返されると思ってなかった俺は数秒ポカンとしてしまうが、すぐに正気になり、プレゼントの中を開ける。

 

「…………マフラー?」

 

「そう。クロ君今日ずっと寒そうにしてたから。そのうち風邪ひきそうで心配だったしね」

 

るりは本当に俺の事をよく見ていてくれてる。外歩いてるときはるりがいてくれてるとはいえ寒くて、何度くしゃみしたかわからない。

 

「そっか………ありがとな。じゃあ、早速使わせてもらうよ」

 

「あ、ちょっと待って」

 

マフラーをつけようとした俺を止め、るりは俺の目の前に立つ。

 

「マフラー貸して」

 

「ん?ほい」

 

もらったマフラーをるりに一度渡す。するとるりは背伸びをして俺の首にマフラーを巻いてくれた。

 

「どう?あったかい?」

 

「…………あぁ。今寒いのが一気に吹っ飛んだよ。ありがとう、るり」

 

「当然ね。私の買ったマフラーなんだから」

 

「あはは………そうだ。俺もつけてやるよ、ペンダント」

 

「そう?ならお願いする」

 

そう言ってペンダントと渡してるりは後ろを向く。るりの髪の毛にかからないように気をつけてペンダントを首につける。

 

「………どう?似合うかしら?」

 

「……コートのせいでよくわからない」

 

「なっ……」

 

「でもきっと似合ってるよ。るり風に言うなら、俺が選んだペンダントなんだから」

 

「なら問題ないわね。ありがとクロ君。ペンダント大切にする」

 

「あぁ。こちらこそありがと。俺もマフラー大切にするよ」

 

お礼を言い合って、どちらからでもなく笑いあう。

 

「よし、じゃあ行くか。俺の今日の目標は終わったし」

 

「なに言ってるの?今からパーティよ。小咲に私のプレゼントまわすんだから」

 

「そういえばそうだった。じゃあ俺はそれを全力で応援だ」

 

「えぇ、頼むわよクロ君」

 

「任せろ」

 

これで本当にるりのプレゼント小咲に当たったら俺たちの運は神がかってるな、と思いつつ俺たちは小咲が待ってる公園へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのあとのパーティで楽が桐崎さんを連れて高級ホテルのスイートルームへ向かったのはまた別の話。




ブリザード大満足です。
イチャイチャかけて大満足です。
なんか時系列グチャグチャですけど気になさらないでくださいね。

感想と訂正があればお待ちしております


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番外編6前編 るりのジイサマ

お久しぶりです。
これからタイトル通りるりの実家の話に入るわけですが、原作では3話と長いので3つに分けることにしました。まずは前編です。中、後編はまだ出来てないので、いつになるかわからないですが気長にお待ちください。

あと、新しくDOG DAYSのSSも投稿し始めました。
よろしければどうぞ〜。


暑い夏の夜。俺は部屋でクーラーをつけながら1人アイスを食いながら、涼んでいた。すると、携帯から着信音が聞こえてくる。携帯には俺の彼女、るりの名前が。

 

「はい、もしもし?」

 

『もしもし、クロ君起きてる?』

 

「おう、起きてるぞ。どうかしたのか?るりから電話なんで珍しい」

 

『えと、その………ちょっとお願いがあるんだけど……』

 

「お願い?明日はるりは実家に帰るんだったよな?」

 

『うん。その事と関係あるの』

 

るりは実家に帰るという事を俺は事前に聞いていた。明日から少し寂しくなるな、と思っていたが、実家に帰る事と関係がある?

 

『その……詳しい事は明日話すから、明日から予定は空いてる?』

 

「明日から?そうだな………予定はないな。大丈夫だぞ?」

 

『じゃあ、明日私と一緒来てくれないかしら?泊りがけで』

 

「え……………………?」

 

明日?るりと一緒に?泊りがけで?るりの実家に?

 

「ちょっと待てるり。いくらなんでもそれは早いだろう。俺たちまだ高校生だぞ?いや、俺の母さんには確かにるりの事を紹介したけど、それは仕方なかったんだし、うん、早いと思うぞ?」

 

『ちがっ!いや、違わないけど……とにかく明日の朝9時にそっち迎えに行くから、よろしく!じゃあ!!』

 

怒られてブチっ、と電話を切られる。いったいなんだった?でも、るりの頼みだから断れないし…………

 

「とりあえず、準備するか」

 

泊りがけの準備をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、クロ君」

 

「お、おう。おはよう」

 

いつも通りのるり。今日は暑いためか麦わら帽子をかぶっている。

 

「じゃあ行きましょ?」

 

「おう。じゃあ母さん、行ってくるな」

 

「行ってらっしゃい黒。母さん応援してるわよ。あなたがるりちゃんの親族にしっかり『この子を愛してます。娘さんを僕に下さい!』っていう姿を」

 

「いわねぇよそんなこと!!」

 

突然のことで俺もるりも顔を真っ赤にしてしまう。でも、いつかそんな事を言う日が来るんだろうな………

笑顔で手を振る母さんには俺も手を振ってるりの隣を歩く。

 

「で、いきなりどうしたんだよ?実家に行くなんて?」

 

「私の実家遠いの。電車で数時間。だから電車で話す事にするわ」

 

「なんだよ、もったいぶらなくてもいいじゃん。俺気になって夜も眠れなかったぞ」

 

これは事実。いきなり恋人の実家に理由もわからないのに来てなんて言われたらそりゃドキドキして寝れなくなる。

 

「そう?じゃあ私が後で膝枕してあげるわ」

 

「え……嘘?」

 

「えぇ、もちろん嘘よ」

 

「ちょっと期待したじゃねえかよ!るりのバカ!!」

 

…………あ、膝枕してもらったことあるんだった。じゃあ別に……いや、でもやっぱりして欲しい。

 

「ほら、早く行くわよ」

 

「はーい……やっぱりして欲しいな」

 

「何か言った?」

 

「いえ、何も」

 

 

 

 

 

 

「実はね、私に曾おじいちゃんが、いるんだけど、もう歳が100歳なの」

 

「100歳!?すごい長生きだな」

 

電車の中で向かい合わせになって座り、なぜ俺が実家に行く羽目になったのか理由を聞く事に。

 

「えぇ。で、昨日私の実家から電話があって、おじいちゃんが死ぬ前に一度娘の彼氏の顔を見てみたいって。見せてくれなかったら、わしの歳の数の分だけ毎日電話するって聞かないらしくて。

 

おじいさんの歳の分………100回か。それを毎日…………

 

「耐えられないな」

 

「おじいちゃんは本当にそういうことしてきそうだから。だから、クロ君の写真を見せたの。それで納得してくれたらいいかな、って思ったから」

 

「写真…………どんな?」

 

「ただのクラス名簿よ。そんな事はどうでもいいの。

そしたら、その電話相手が明日その子を実家に連れてきてって。明日私が実家に帰るんだからちょうどいいだろうって言われて、それで……」

 

「こうなったわけか。納得だ」

 

「ごめんなさいね、迷惑かける羽目になっちゃって」

 

「いや、別にいいぞ。俺も最近お前と遊ぶか部活してるかでしかなかったからな。泊りがけで出かけたかったのもあるしちょうどいいから。それに、相手はるりだし」

 

「そういう恥ずかしい事は言わなくてもいいの」

 

とか言いつつも顔を赤くしているの。それは隠せないみたいだな。でも………泊りがけか。デートはしょっちゅうしてるけど、泊りがけは……

 

「初めてだな。楽しみだ」

 

「田舎だから何もないわよ?」

 

「いいよ。それじゃあ俺はるりの彼氏として、曾おじいさんにちゃんと挨拶させてもらうとするかな」

 

「余計な事は言わないでね?」

 

「りょーかい」

 

そこからは2人で何気ない話をして電車とバスの旅を過ごした。……膝枕はしてもらえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「でも、話聞いてると、るりの実家すごそうだな?」

 

「千棘ちゃんや一条君の家に比べれば全然よ」

 

「へぇ………………いや、どこが?」

 

確かに楽の家とは大きさが違う。それでもでかい。めちゃくちゃでかい。

 

「この辺りが大地主だったらしいから」

 

「……うちの学校、お嬢様多いな」

 

桐崎さん、マリー、るり。凡矢里高校三大お嬢様と名付けよう。うん。すごくいい感じだ。

 

「るりお嬢様〜、お待ちしておりました」

 

「…………親戚?すごく美人な方ですね」

 

「あらやだ。褒めても何も出ませんよ?女中の里中です。どうぞよろしく」

 

「あ、こちらこそよろしくお願いします、神崎黒です」

 

和服を着た女性。楽の家に近い感じなのか。すごく美人で綺麗だ。

 

「…………フンッ!」

 

「痛ぁ!何すんだよ」

 

「……別に」

 

俺が他の女性に色目つかってるから嫉妬したのか。本当にうちの彼女はかわいいな〜。

 

「おっかえり〜〜〜〜〜!!」

 

「げっ!!」

 

「マ〜〜〜イプリチィガ〜〜ル!るうぅぅぅりちゅわ『フン!』げぶぅ!!」

 

いきなり大声で飛びついてきたご老人にるりは思いっきり飛び蹴りを食らわした。

 

「ひどい、こんな幼気が老人に暴力なんて」

 

「幼気な老人は大声で叫びながら飛んでこないわ」

 

ごもっともです。てか、もしかしてこの人が?

 

「ここまで来るの大変だったでしょう?お話は家の中の方でなさいませんか?」

 

「あ、はい。そうさせてもらえると」

 

里中さんの提案で家の中に入って話をする事にした。

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、お見苦しいところ見せて申し訳ない。自己紹介がまだでしたな。わしが宮本るりの曾じいにあたる、宮本武蔵です」

 

「えっ!?」

 

「いきなり嘘つかないで。吉三でしょ、吉三。クロ君も真面目に反応しないで」

 

「あ、びっくりしたよ。本当なのかと」

 

「そちらがるりの彼氏さんか?名前を聞かせてもらっても?」

 

「あ、はい。僕が彼氏の神崎黒です。るりさんにはいつもお世話になってます」

 

俺とるり、そして吉三さんの3人でご飯を食べる事に。

 

「そうですか。最近は体を悪くしてしまって。るりの方に会いに行こうと動けませんので。もういつ死んでもおかしくない。あ、わしおかわり」

 

「はーい」

 

いや、後5年……いや、10年はいけると思います。ってつっこみたい。

 

「るりはどうかね?あんまり迷惑かけてないかのう?」

 

「め、迷惑なんてそんな。るりにはいつも助けてもらってばかりで。自分が中2の時にハブられてる自分を助けてくれたり、高校に入っても助けてもらってばかりで。恩を返そうにも返せきれないくらいで。優しいですし、可愛いですし、頼りになりますし。自分には本当にもったいないくらいで………あ、すいません長々と」

 

「ちょ、クロ君。恥ずかしいから変なこと言うのはやめてよ」

 

「それは良かった。るりは少し気難しいところもある子だからのう。…………それで、もうチューはした?」

 

「そういうこと聞くんじゃない!」

 

………ここで、はい。もうしました、って答えたら俺一体どうなるんだろ。少し試してみたい。

 

「そうかそうか。るりにこんなかっこいい彼氏ができる日が来るなんてのう。わしはもういつ死んでも安心じゃ」

 

「おじいちゃん」

 

「今日は泊まっていくんだろう?ゆっくりして行って下さい」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

3人で話をしながら、るりは時々切れて飛びかかっていたけど、楽しい話をしながら食事をとった。

 

 

 

 

 

 

「しかし、るりのおじいちゃん、本当に元気だな。いつ死んでもおかしくないなんて言ってたけど、全然そんなことなさそうじゃん」

 

「ないのよ、悪いところなんて」

 

「へっ?」

 

「昔から死ぬ死ぬって言って、ワガママし放題なの。おかげで私がどれだけ振り回されてきたから」

 

「でも、それだけるりのことが好きってことなんじゃ?」

 

「どうだか、からかいがいがあるってだけなんじゃない?…………あ、私一度部屋に戻るから、クロ君はあっちの客間で休んでて。後でお風呂案内する時に声かけるから」

 

「りょーかい」

 

るりと別れて客間を目指すことに。にしてもでかい。外観とは違い中に入るとどこにいるのかわからなくなってしまうほどに。

 

「ヘタしたら楽の家と同じくらいなんじゃないのか、ここ?」

 

あっちの客間と言われてそこに歩いていたが案の定迷ってしまった。

 

「どうしよう。とりあえず、適当に歩くか」

 

「神崎さんどうかしたのですか?」

 

適当に歩いて探そうとしたところ、里中さんが声をかけてくれる。

 

「客間ってどっちですかね?」

 

「あぁ、神崎さんが泊まる部屋なら、客間じゃなくて、椿の間です。そこの突き当たりを右に行ったところですよ」

 

「あ、そうなんですか。わかりました。ありがとうございます」

 

椿の間だな。突き当たりを右に……と。

 

「ここか」

 

椿の間って書いてあるしここなんだろう。ドアを開けて入ろうとする。

 

「…………え?」

 

なぜか着替え中で下着姿のるりが。

 

「……………………」

 

無言でドアを閉める。いや、実家だしそういう展開あるかもとかは思ったけど、まさかいきなり!?じゃなかった。

 

「すまん、るり。里中さんに客間の場所聞いたらここだって言われて……それで」

 

「…………怒ってないからいいわよ。それより入って」

 

「あ、あぁ。失礼します」

 

一応一言言ってから部屋に入ることに。そこには服を着て顔を真っ赤にしたるりが。

 

「その、えと、ごめん。わざとじゃない」

 

「いいわよ別に」

 

「お布団お持ちしましたよー。ってどうかなさったんですか?」

 

気まずい空気の中、里中さんが部屋に入ってくる。なぜか布団を持って。

 

「いや、なんでもない。それより、なんでクロ君がここにいるの?里中さん」

 

「あれ?だっておじい様が神崎さんは今日お嬢様の部屋に泊まるように、と」

 

「またあのジジィ!!」

 

「るり、言葉遣い言葉遣い」

 

でも、るりと2人で寝るのか。…………いいなそれ。

 

「俺は別に構いませんよ?るりが嫌じゃなければですけど」

 

「ちょっとクロ君!?」

 

「るりは嫌か?別に変な気起こすわけじゃないし。実家で起こす気もねえよ。俺も多分このままだと客間で1人で寝ることになるから、それは寂しいなって思うんだけど、どう?」

 

「いや、でも……」

 

「大丈夫だよ。るりの嫌がることはしねえから」

 

「…………わかった」

 

「おし。里中さん、布団はこのままでお願いします」

 

「はーい。にしてもお2人は本当に仲がよろしいんですね。安心しました…………お嬢様、神崎さんちょっとよろしいですか?」

 

笑って布団は床に置いた後、すぐに暗そうな顔をしてこっちを向いた里中さん。

 

「実はおじいさまのご容態が本当に良くありません。今日半ば強引に呼んだのもそのためで……今はお嬢様の前では気丈に振舞っておられますが、先生のお話ではもう長くないと……」

 

いきなりのことで俺もるりもすぐに言葉を言うことはできなかった。




どうでしたか?
感想と訂正があればお待ちしております。


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番外編6中編 トツゼンの事で

中編です。
今回クロとるりのイチャイチャばかり。
少し短いかも。
ではどうぞ〜。


「うそ……冗談でしょ?だって、あんなにピンピンして……」

 

「本当です。元々ずっと体調を悪くしておられたのですが、数日前に急に悪化して……」

 

いきなりの話に俺はついていけてなかった。あんなに元気そうにしているおじいさんがもうすぐ亡くなるなんて。

 

「長くないって、どのくらいなんですか?」

 

「…………先生には今日とも明日ともしれないと言われております」

 

「そんな…………」

 

「ですから、今日は来てくださってありがとうございます。お嬢様に会えてお爺様も本当に喜んでおいでですよ。特に、お嬢様に恋人ができたと聞いたときは、とても嬉しそうにしていらっしゃっていました」

 

一度おじぎをして里中さんはそのまま部屋を出ていった。でも、そんな事実どうやって受け入ればいいのか…………

 

「るり、大丈夫か?」

 

「…………えぇ。でも、突然のことだから頭が混乱してて……少し考えさせてくれる?」

 

「…あぁ。辛いなら言ってくれよ?」

 

「ありがとう、クロ君」

 

俺が床に座ると、るりは自然と俺の肩に頭をのせるように寄りかかってきた。俺もそんなるりを拒むことはせず、少しは気が楽になるようにるりの頭を撫で続けた。

 

「悪いわね。まさか私もこんなことになるなんて思ってなかったから……気遣わせちゃって」

 

「別にいいよ。俺も楽しい旅になればいいな、って考えてたけど、こうなっちゃったんだし。俺が出来ることならなんでもするよ。協力もする。なんたってるりのためだしな」

 

「………じゃあその行為に甘えるとするわ」

 

るりも俺が手伝うのに賛成してくれた。という事で、何か考えるべきだな。

 

「そうなるとやっぱりるりがおじいさんになにをしてあげるべきなんじゃないのか?」

 

「何かって?」

 

「それはるりが考えると事だよ。今まで面倒見てきてくれた事もあるんだし、その恩を返すって考えて、お礼にるりが何かしてあげたい事をするって感じかな?」

 

「何か……してあげたい事」

 

「例えば、おじいさんの好きなものをるりが作るとか、るりの手作りの料理をご馳走するとか、後は……るりの写真をたくさん撮らせてあげるとか?」

 

「とりあえずその最後の案だけは却下」

 

そりゃそうか。ていうか最後の案は俺がしてみたい事でもある。るり可愛いし…………そういえば

 

「なぁ、るりって料理できるのか?」

 

「な、なに突然?」

 

「いや、そういえばるりが料理してるのって家庭科の調理実習くらいでしか見た事ないし、どうなのかな、って思って」

 

「で、できるわよ!料理くらい!」

 

ムキになって俺に反抗するるり。こんなるりはあまり見ないから新鮮だな。

 

「そうか。じゃあ今度俺に作ってきてくれよ。るりの手作りの弁当」

 

「な、なんでよ」

 

「いや、料理くらいできるって言うし。俺も食べてみたいし。嫌か?」

 

「い、嫌じゃないけど………って今はそんな話してる場合じゃないでしょ!」

 

話そらされた………まぁいいか。るりの言う事も確かだし。

 

「とりあえず今日ゆっくり考えて、明日にまたそれを実行に移そう。今日は長い事電車に乗ってたから疲れた……」

 

「………… それもそうね」

 

「つーことで、俺布団敷いとくから。るり、風呂行ってきたら?」

 

「そうさせてもらうわ。ちなみに、覗いたりでもしたら殺すわよ」

 

ギラッとした目で俺を睨むるり。怖い。すごく怖い。

 

「んな事しねえよ。集でもあるまいし」

 

「そう。ならいいけど。それじゃあ、また後で」

 

「おう」

 

着替えを持って、風呂場に向かったるりを見送った後、俺は立ち上がりたたんである布団を敷き始めた。

 

「はぁ………にしても、この部屋広いな。下手したら俺の部屋より広いんじゃないのか?」

 

部屋を見渡す。あまり部屋には置いてないけど、2人で寝るなら十分に広い部屋だ。

 

「……よく考えたらここ、るりがいつも寝てる部屋なんだよな……」

 

るりの部屋。そう考えると自然に顔が赤くなっていくのを感じる。

 

「いかんいかん。こんな悪い考えはやめないと、うん。布団ちゃんと引いておとなしく待ってよう」

 

悪い考えを振り払い、るりが帰ってくるのをおとなしく待った。しばらくすると、るりも帰ってきて俺も交代で風呂に入り、疲れた身体を癒して部屋に戻りそのまま2人で寝る事にした。

 

「まぁ、俺から提案したとはいえ、やっぱり緊張するな。少し布団を離したとはいえ」

 

「私も同じ気持ちだから言わなくてもわかるわよ。まぁでも寝ないと明日も辛いしそろそろ寝ましょう」

 

電気を消して、布団に入る俺たち。寝ましょうっていきなり言われて寝れるほどそんなに甘くない。だって彼女と2人っきりで寝るのとか初めてだし。るりも多分同じだろう。

目を閉じてしばらく時間が経ったが、眠れない。身体は疲れてるのに。

 

「…………るり、起きてる?」

 

「……えぇ、起きてるわよ」

 

るりも同じで眠れないみたいだ。

 

「なにするか決まった?」

 

「とりあえず、おじいちゃんになにして欲しいか聞いてみるつもりよ」

 

「そうか……」

 

寝返りをうつと、何故かるりもこっちを向いていた。豆電球はつけてるからそれはわかる。

 

「クロ君?」

 

「な、なに?」

 

「………やっぱりいい。なんでもない」

 

るりは何か言いたそうにしていたが、俺の顔を見るとやっぱりやめて、とても不安そうな顔をした。そんなるりを見て俺は咄嗟にるりの手を取った。

 

「え、な、なに?」

 

突然の事でるりも驚いている。

 

「いや、その……るりが不安そうにしてたから………俺はそばにいるから心配しなくてもいいぞ、的な感じで」

 

とてつもなく曖昧な感じだが俺の気持ちを伝える。すると、るりはクスッと笑った。

 

「ありがとう、安心した」

 

「そ、そうか?なら良かった」

 

安心したのか、るりは俺の手をつないだまま目を閉じた。今日はこのまま寝ようって事なのか。

 

「………おやすみ、るり」

 

一言いって俺も目を閉じた。るりの手を握り安心したのか。俺もその後はすぐ眠りにつく事ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんで川釣りなんですか?」

 

次の日、るりがおじいさんに何かして欲しい事はないかと頼むと、何故か川釣りをする事になった。

 

「ほう、君エサをつけるのうまいのう。筋がいいぞ?」

 

「え、そうですか?ありがとうございます」

 

「おじいちゃん。本当にこんな事でいいの?」

 

「うん?ええんじゃええんじゃ。今日1日遊ぶのに付き合ってくれたらわしはそれで楽しいからのう」

 

おじいさんはるりと1日遊びたいとの事らしい。確かにこのまま重たい空気が続くのも嫌だし、俺も川釣りしたことないからしてみたかったしいい感じなのかもしれない。

 

「楽しいならいいけど」

 

川釣りの他に、セミ捕りをしたりみんなで昼食食べたりスイカ食べたり、思いっきり川に飛び込んだりして充実な1日を過ごすことができた。100歳まで生きてることあってなんでも知っているおじいさんには少しびっくりしたりもした。

 

「はぁ、遊んだ遊んだ。楽しかったなぁ」

 

部屋で1人で座ってゆっくりしていると、失礼しますと声の後里中さんが部屋の中に入ってきた。

 

「神崎さん、先にお風呂に入ってください。もう準備は済ませてありますので」

 

「あ、はい…………でも、るりを先に入らせてあげてください。あいつも今日1日遊んで汗かいたでしょうし、俺は我慢できますので」

 

「お優しいのですね。でも大丈夫です。るり様に許可を取ってありますので」

 

「そうなんですか?それなら………」

 

着替えを持って、風呂場に向かうことにした。だがその時の俺は里中さんが密かに笑っているのに気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、にしても疲れたなぁ。おじいさんがなんであんなに元気なのかも俺にはわからない……やっぱりこれはるりが来てくれたからなのかな」

 

カゴの中に脱いだ着替えを置いて腰にタオルを巻いて風呂場のドアをあける。

 

「…………なっ!?」

 

「へっ?」

 

何故か、浴槽の中にるりがいた。

 

「………………ちょっと待って。なんで?意味わからないんだけど」

 

「…………意味わからないのは、こっちのセリフよ!!!」

 

「ぶへぇ!」

 

風呂桶を思いっきり投げつけられた。

 

「どうして!なんでクロ君がここにいるの!」

 

「それはこっちのセリフだ!俺は里中さんに先にお風呂にって言われたから来たんだよ!」

 

風呂桶を顔面に当てられて物凄い痛いが俺はるりに反抗する。

 

「里中さんに?で、でも、カゴの中に私の着替えが入ってたはずでしょ!」

 

「いや、入ってなかったぞ、そんなの?」

 

「嘘、なんで?そんなはず…………もしかして、これも里中さんが?」

 

そうだ。俺も最初に気づくべきだったんだ。どうしてるりは部屋にいなかったのか。なんで、里中さんがわざわざ呼んでくれたのかを。

 

「全部あの人のせいか………ごめんるり、すぐ出る。大丈夫。お前の身体は何も見ていない。うん、見ていないから」

 

俺は背を向けて、扉のドアを閉めようとする。

 

「ちょ、ちょっと待って」

 

だがるりに呼び止められて俺の手も止まる。

 

「その………クロ君も今日たくさん汗かいたと思うし、そのままでいるの嫌だろうし、何より私が1人でいると色々考えちゃうし、1人でいるより楽なの。だから…………」

 

ちょっと待って。その続き言わなくていい。俺の理性が効かなくなるかもだし。そりゃ少しは期待もしたけど、それはまだ早いと思うし。だから………

 

「一緒に入らない?」

 

「……………………はい」

 

彼女との初めての混浴。断る?断らない?無論断れない。

 




どうでしたか?
久しぶりに書いて少し不安。
るりちゃん料理できるのかな?
あと、お風呂で何が起きますかねww

新しく活動報告をあげました。前回と同じくアンケートです。
ぜひお答えください。

感想と訂正があればお待ちしております。


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