スター・ウォーズ 〜腐り目は宗教法人の武力団体に加わる〜 (テクロス)
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さらば地球よ、初めまして銀河

まずはこの作品に興味を持ってもらってありがとうございます。
作者の知識不足や解釈違いがあるかもしれませんがその時はコメントにご指摘下さい。


皆さんは星空を眺めた事はありますか?

夜の街中で辺りを見渡すと大人達は下か目の前を見て歩いて居ることでしょう。

スマホ、電光掲示板、もしくは若い娘かイケメン。

どんなに嫌な事があっても絶対に変わらないのは星空だけ。

米粒にも満たさないように見えるそれはもしかしたら自分の住む地球より遥かに大きいかもしれないと想像したら胸が踊りませんか?

 

今宵そんな夜空を見上げる独りぼっちの少年がいます。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「はあ〜…」

 

少年の口から吐き出された白い息は空気中に溶けていく。嫌な事があった時公園のボロいジャングルジムに登って星空を見上げるとどんな嫌な事も一時的に忘れられる。太陽が登ってその星の光を遮ってしまうまでは…。

 

「俺はお兄ちゃんだからな…」

 

そう自分に言い聞かせてジャングルジムを飛び降り家に向かう。帰路の途中で愛飲しているマックスコーヒーと午後の紅茶をなけなしの小遣いで購入して手の平だけでも暖をとりながらチビチビと飲んでいく。

 

「ただいま」

 

「プン!」

 

そっぽをむいている愛妹。

小町は頬を膨らませている。

 

「これやるから許してくれないか?」

 

「午後ティー!!」

 

それをひったくってグビグビと飲み干していく。

どうやら機嫌は取れたようだ。

 

「まったく…ごみぃちゃんは小町を一人ぼっちにするから悪いんだよ!」

 

「ごめんな…これからは()()()()()()()まっすぐ帰ってくるから」

 

「うん!」

 

にぱーと笑う妹と合わせて微笑む。

これが求められている兄の在り方なのだ。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「八幡!今日遊ぼうぜ!」

 

「ゴメン…今日も妹に構ってやらないといけないんだ」

 

「んだよ!折角誘ってやってるのに!」

 

「ゴメン…また今度「もうお前なんか誘わない!」……」

 

走り去っていく元友達の背中を力なく見つめる。()()()()()()()()()()()に内心焦って走って家まで帰る。

 

「小町ー?」

 

恐る恐る家の中に入るも小町は家にいない。靴が無いからだ。

 

「まさか…家出か?」

 

心臓の鼓動が再び跳ね上がりまた外に飛び出す。町内の小町が行きそうな所を駆け回るととある公園に聞き慣れた笑い声が聞こえた。

 

「きゃはははは……」

 

「でねでねー……」

 

幼稚園の友達だろうか、仲睦まじく遊ぶ妹の姿が見えた。二人の視線はおびただしく動いていた自身へと向く。

 

「なーに?あの人、小町ちゃんの知り合い?」

 

「……ううん、知らない!」

 

友達に見えないようにしっしっ、と手で追いやる小町。その様子に安堵して家に戻る。今度は走らずに下を向きながら。

 

空は暗くなり小町は既に夕焼けには帰って来た。共働きの両親も帰って来て自宅の安全が確認できたら外に繰り出す。声一つ掛けられないのにも慣れていつもの公園に向かいジャングルジムに登る。

 

「はあ…」

 

どれだけ落ち込もうと白い息は空に溶ける。

 

「どうして俺が……」

 

友達との絆を犠牲にしても小町が喜ぶ訳では無い。なんなら邪険にされるだけだ。すぐに収まるであろう心から湧き上がる怒りを実感していると経年劣化しているであろう遊具達はギィギィと音を立てる。

 

「ん?」

 

いつもと変わらない筈の星空に一筋の光が走る。目を凝らしてやっと見えるその光は高速で星空を走る。

 

「まさかUFO!?」

 

そのシルエットは夜に慣れた目でもしっかりと追うことができるようになった。段々と近づいて来る一種の戦闘機のようなそれは静かにすぐ近所の山に不時着した。今の技術では有り得ない程静かに着陸した為、この事に気が付いているのは自分一人しかいなかった。

 

本当は行ってはいけない。

心では分かっているけど本能が叫ぶ。

 

(今行かなかったら一生後悔する)

 

そう思った瞬間走り出していた。

小学校の持久走より早く、遅刻しそうになった朝の登校よりも。

 

「いてて…やってしまった…」

 

プスプス…と小さく煙を上げる戦闘機?UFO?(この際宇宙船と呼ぶ)の付近でウロウロしてるローブを羽織った中年の男性が困ったような声を出していた。

 

「ピロピロピー!」

 

するとその男性の近くにロボットがやって来て電子音を出していた。

 

「直せそうか?R2D3」

 

「ピュー」

 

「そうか、頼む」

 

一連のやり取りを草むらから眺めている。息を潜めて影に徹する。今自分は存在しないと言い聞かせて一人と一機を観察する。

 

「バレバレだぞ」

 

不自然に自分を中心に草むらが何かに掻き分けられ、その居場所がバレてしまう。潔く両手を上げる。なんなら右手に白いハンカチを持ってヒラヒラとさせる。

 

「潔いいな、丁度いい、ここはどこなんだ?」

 

「??」

 

さっきからこの人が何を言っているのかがよく分からない。英語でもフランス語でもないような言葉だ。

 

「通じないか…$€%#?・"$+^>>'$^##||\\'*#?」

 

他の言語を話しているのだろうが余計分かりづらい。

 

「仕方ない……」

 

そうするとその男性は身振り手振りでコミュニケーションを計った。どうやらここに不時着してしまってここが何処かも分からないらしい。

 

(ここは地球です)

 

(チキュウ?俺は知らないぞ)

 

(そんな事言われてもここの人達はここ以外の星を知りませんよ)

 

(とんだ辺境の星に来てしまったな…)

 

(侵略しに来たんですか?)

 

(違う、ハイパードライブの計算中にクシャミをして間違えてレバーを入れてしまいここに来てしまった)

 

(よく分からないけど、バカなんですか?)

 

(まぁ、そう思われても仕方ないな)

 

傍から見たらおかしくてしょうがないジェスチャーでのやり取りから得られた情報によるとこの人は【サイフォ・ディアス】というらしくて銀河の平和を守るなんちゃらの騎士らしい。

 

(所で家族はどうしたんだ?子供がこんな時間にいたら危ないだろう)

 

(……別に、心配してくれませんよ)

 

(……なるほど、大体分かった。それならハチマン、孤独に生きるか私に着いてくるか、どっちがいい?)

 

「え?」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「じゃあもう一回だ」

 

「こ、こんにちは…俺の名前わハチマン・ヒキガヤです」

 

「よし、粗方喋れるようになってきたな。ここいらで飯にするか、ハチマン、今日はコッペパンにしよう、イチゴとマーガリンの奴だ」

 

サイフォと宇宙船に乗ったハチマンは惑星コルサントにあるジェダイ評議会に着くまでの間地球から持ってきた大量の食料を土産にサイフォから銀河の共通語とドロイド語を学んでいた。

 

「確認の為もう一度説明するぞ。そのジェダイ評議会で君をジェダイ・イニシエイトに推薦する。それがパスさえすればジェダイになる為の必要な技量と知識をそこで学んでもらう。ライトセーバーも自分のを作るから楽しみにしてろよ」

 

「はい、マスター」

 

ぎこちない返事を返すハチマン。

その返事にサイフォは満足そうに頷いた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

ー惑星コルサントのジェダイ評議会ー

 

「それで、お主がサイフォ・ディアスが見初めたハチマン・ヒキガヤじゃな」

 

「は、はい……」

 

「ワシの顔に何かついておるかの?」

 

「い、いえ、何も…」

 

目の前に腰掛ける緑色の小さな老人、マスター・ジェダイ・ヨーダをまじまじと物珍しそうに見つめるハチマン。

 

「すみません!マスター・ヨーダ。この子は世の理に疎くて…」

 

「そうじゃったか…むぅ」

 

すっと目を閉じて唸るるヨーダにハチマンは疑問を抱いていた。

 

「マスター、あの人何してるの?」

 

「お前の心を読み取ってるんだ」

 

「え…」

 

心にプライバシーとか関係ないの?と不思議に思いつつ黙っていると暫くしてヨーダは目を開けた。

 

「マスターヨーダ、どうでした?」

 

隣に座る浅黒い肌が特徴のマスター・メイス・ウィンドウが訪ねる。

 

「孤独への恐怖、未知への畏怖が彼の心に見えた」

 

「では彼は…」

 

「いや、彼はこれらを抑えられる理性を兼ね備えている。先を見通す力も兼ね備えている…うぅむ、認めよう。彼はジェダイ・オーダーの未来に大きく関わるかもしれん」

 

「では…!」

 

「イニシエイト・ハチマン。ジェダイ・アカデミーでフォースやこの広い銀河を学ぶのじゃ」

 

「それが終わったら私のパダワンとしてみっちり鍛えてやるから覚悟しておけよ」

 

「はい!マスター」

 

背筋を伸ばして礼をするハチマン。

その様子を他のジェダイ・マスターより深く見つめていたのはヨーダでもサイフォでもなく…ウィンドウだった。

 

「それとハチマンよ、時間があったらお主の故郷の【桜】とやらを見せてくれんか?」

 

「別にいいですけど…」

 

「うむ、それとそれまでにその目付きを直しておくことじゃ…儂とウィンドウ以外のマスター・ジェダイが萎縮しておる」

 

「生まれつきです…」

 

家出感覚で銀河に飛び出たたった一人の地球人のハチマンはサイフォ・ディアスに見初められジェダイの見習い訓練生であるるジェダイ・イニシエイトに加わった。

 

 




如何でしたか?
少し短いでしたが今回はここまでとさせていただきます。
感想は頂けば頂くほど作者のやる気に繋がるので良かったらお願いします。


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ダークセーバーと戦争に備えて


まず最初に、すみませんでした。



感情はなく、平和がある

高ぶる感情に平和は宿らない

 

無知はなく、知識がある

知識は欲を産み心を知りたがる

 

熱情はなく、平静がある

平静は死を表し熱を欲す

 

混沌はなく、調和がある

混沌は悲しみを、調和は刺激を求める

 

死はなく、フォースがある

死はある、フォースは俺といてくれるか?

 

35BBY ハチマン・ヒキガヤの教科書の落書きより

 

Ⅲ IV Ⅶ Ⅷ

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「どうした?イニシエイト・ハチマン。ライトセーバーを早く出さないのか?それとも始める前から降参か?」

 

目の前でニヤニヤと笑いながら青いライトセーバーを構える同じイニシエイトで少し年上の男は100パーセントの悪意をこちらに向けていた。その理由は自分の悪い目付きとこの手に握っているセーバーのせいだろう。てゆーか、こいつダークサイドの素質あるんじゃないのか?

 

「んな訳ないだろ…!」

 

バシュ…!!

 

俺の手に握られていたセーバーの柄から伸びた光、否、闇の刃は何が出るか分かっていても驚きの声を挙げるイニシエイト達の困惑に包まれた。

 

「異端め…行くぞ!!」

 

訓練用にと出力が調整されていても当たるとめちゃくちゃ痛いし刃が至近距離に感じると熱さを感じる。

 

なぜそれが分かるかって?

 

「ああぁぁああッ……!!!」

 

結論、俺が負け続けた結果知り得た情報だからだ。フォースの訓練もセーバーの扱いも特に劣ってはいないと思えるがどうしても誰かと試合をすると思うように体が動かない。

 

「そこまでだ!イニシエイト・ハチマンは医務室にて治療を、その他は次の座学に向かえ!…」

 

冷たい地面の感触を十分に堪能した後にムクリと起き上がり医務室に入る。医務員は在室しておらず、棚には治療用の道具が一頻り揃っていた。

 

「はぁ…」

 

何度目か分からないため息を吐いて服を脱ぐ。

地球とは違うその布は慣れていなかったがここに来てから4ヶ月で大体慣れてきた。

 

セーバーが当てられた部分に火傷用の軟膏を塗りたくりその上に湿布を貼り包帯を巻く。一連の作業を終わらせて部屋を後にして静かな廊下を歩く。宇宙地理の座学はもう始まっており、全員モニターを眺めていた。

 

「遅れました」

 

「始まったばかりだ、すぐに席に着け、イニシエイト・ヒキガヤ」

 

「はぁ……」

 

ため息か返事かも分からない息を吐いて端の席に座る。

 

「それでは今日はタトゥイーンに住み着くタスケンレイダーから話します……」

 

何の捻りも無い座学は終わりを告げ、放課後を告げる鐘が鳴る。

 

「帰るか…」

 

寺院の近くに俺達が暮らすアパートのようなものがある。ここコルサントで共に引っ越してきた家族の元へこっそり帰る者もいる。はいそこ執着、いやまあ見逃すけどさ…家族が恋しいのは誰にだってある。

 

「家族…ね」

 

別に地球の家族が恋しいわけではない。

未練はない…と思う。

 

「4ヶ月は耐えた方だと思うぞ」

 

「どぅわあっ!!」

 

「そこまで驚くなよ、悲しくなるだろ」

 

「マスター・サイフォ、どうかしたんですか?」

 

ヘラヘラと夕日の射す廊下にて待ち構えていた彼はこっちへと向かって歩いてくる。

 

「いやなんだ、噂の“2本目”を是非お目にかかりたくてな」

 

「……どうぞ」

 

腰に下げていたセーバーを渡そうとするとマスターは渡されるのを手で制した。

 

「安易にセーバーを渡さない事だ、もし私が裏切り者だったらお前には自分を守る術が無くなるぞ」

 

「すみません、分かりました」

 

忌々しいセーバーを起動させてその闇の刃を見せる。

普通のライトセーバーとは違う高い振動音を発しながら漆黒の刀身はぼんやりとした白い光に包まれ、不気味な輝きを放っている。

 

「伝説のセーバー、ダークセーバーの2本目か…本物についてはどのくらい知ってる?」

 

「教科書に書かれてるくらいの事は…」

 

「座学については成績が良いと言われているのは本当のようだな」

 

マスター・サイフォに連れられて寺院の廊下を歩く。

そこから下を覗くと空飛ぶ車は慌ただしく往来しており、星々の輝きはその光に呑み込まれていた。

 

「今日の星はどうだ?」

 

「すぐ下の光が強くて…あまり綺麗ではありませんね」

 

「遠ければ綺麗に見えても近くなるとそうでも無いことがある」

 

「…それってジェダイ評議会の事ですか?」

 

「こら、あまり広い所で言うな」

 

「すみません…」

 

そのまま真っ直ぐ歩くのかと思ったらマスターは寺院の端っこに位置するそこそこ広い空き部屋に入っていった。

 

「偽善者まみれのフォース狂いの多い職場だからな!」

 

「ちょっと…マスター?」

 

「広い所で言うな、と言ったんだぞ?言葉の表面に騙されないよう今後気を付けることだ」

 

「…はい!」

 

少し暗いそこは子供だからか謎の恐怖心を駆り立て、バッとマスターの後ろに身を潜める。

 

「ところでハチマン、座学については良く分かった。しかしライトセーバー技術の方は少々心許無いようだな」

 

「……このセーバー、重いんですよ。トレーニングを増やしてもてんでダメです」

 

「きっとそれは、お前がそのセーバーに持たれているからじゃないのか?」

 

「?」

 

「抵抗があるんだろう?戦う事に」

 

「…っ!!」

 

「いいんだ、ハチマンの星を一通り見たが戦争なんてのとは縁がない、平和に感じた。そんな所で育ったんだ、気持ちは分かる。お前は優しいんだって事が身に染みるよ」

 

「ありがとうございます…」

 

だがな、とマスターは続ける。

 

「優しさは心を癒すが決して腹は膨れないし争いが無くなる訳じゃない。何事にも優しさと力が要求される」

 

「そうですか…」

 

「フォースが…私に未来を見せてくれた…そう遠くない内に戦争が始まる。銀河を巻き込む愚かな戦争だ。それを知った私には備えが必要だがどうにも評議会達は容認してくれない。まぁ、平和を重んじるのだから分かってはいたが…」

 

「戦争…ですか…」

 

「一応手は打ってあるがどうにも心許無い…だからハチマン…それを持つお前が勝利に導いてやるんだ」

 

「俺が…ですか?」

 

「そうだ、それを高らかに掲げ皆を先導し、銀河を平和にしてくれ…俺との約束だ」

 

小指を出してくるサイフォ・ディアス。それに吸い寄せられるように俺は自分の小指を巻き付けた。まるで新しい希望に縋るように。

 

「一つ、決して殺しに快楽を感じるな。一つ、決して仲間を見殺しにするな。一つ、食い物は食える時に食え。一つ、学はいつでも助けになる」

 

「一つ、決して殺しに快楽を感じない。一つ、決して仲間を見殺しにしない。一つ、食い物は食える時に食べる。一つ、学はいつでも助けになる」

 

四つの誓いを繰り返し唱えて心に刻む。

「よし、ならば特訓だ!セーバーを構えろ!俺が1人前にしてやる!ジェダイが無くなっても賞金稼ぎとして食ってけるような1人前に!!」

 

「はいマスター!!」

 

「リミッターなんて外すんだ、命を奪う武器への緊張感を常に感じるんだ」

 

太陽が沈んできた頃に始まった鍛錬は月が傾いてきた頃まで続いた。セーバーを取り扱う際に型というものがあるがそれを1から叩き込まれた。

 

寺院で学んでは放課後にマスターとの鍛錬に打ち込む。そんな毎日が続いているある日にマスターは口を開いた。

 

「ブラスター…買いに行くぞ」

 

「え、急にどうしたんですか?ていうかジェダイはブラスターとかの所持が禁止されてませんでした?」

 

「シャラップ!掟に縛られてたらお先真っ暗だぞ!」

 

「それには同意しますけど…お金とかあるんですか?」

 

「ふふん、我、ジェダイぞ?クレジットならたんまりある」

 

「マスター、何処へとも着いて参ります故甘味が堪能しとう御座います」

 

「よろしい!ならば着いてこい!!全軍進軍せよ!」

 

「2人しか居ませんけど…了解!」

 

部屋を出てコルサントの街へ繰り出そうとしていると廊下側の向こうから待ち構える二つの影があった。

 

「甘味ですか…同行しましょう」

 

「クワイ=ガン…それとパダワンの…」

 

「オビ=ワン・ケノービです。はじめまして、マスター・サイフォ・ディアス。それとパダワン候補のハチマン・ヒキガヤ君も」

 

「はじめまして…ハチマン・ヒキガヤです」

 

クワイ=ガンと呼ばれた髭を蓄えた男性は出口を塞ぐようにオビワンさんと立っていた。

 

「その子が例の?」

 

「まぁな、今から彼と腹拵えに向かうのだが…着いてくるのかね?」着いてくるな)

 

「えぇ、マスター・サイフォからは師匠の話を聞きたくてございまして」面白そうですから、着いていきます)

 

「分かった、いい店を知っているんだ。着いてくるといい」

 

そのままマスター・クワイガンとマスター・サイフォはドゥークーと呼ばれる人の話を熱心にしていた。どうやらマスターとそのドゥークーさんは仲がとても良かったらしいが評議会を抜けてしまったらしい。

 

「8歳ですか…良く評議会が容認しましたね」

 

「まぁ、マスター・ヨーダも彼に何かを感じたのだろう。もし次それなりの年齢の子供が連れてこられたら彼が良き前例として機能してくれるだろう」

 

そんな話が聞こえてくる中、俺はオビワンさん並んで後ろを歩いていた。

 

「君はもしジェダイになったら何がしたいんだ?」

 

「俺は…さぁ、考えた事もありませんでした」

 

実際、戦争が始まるのだからそれに備えているだけでハッキリとした目標はない。

 

「そうか、それを探すのが目標だな」

 

「はい…」

 

「「…………」」

 

「オビワンさんは…もう実戦を?」

 

「まぁ、何度か経験してるよ」

 

「やっぱりその、人を?」

 

「やむを得ない時はね…」

 

「着いたぞ」

 

マスターに誘われて甘味が楽しめる店に入る。各々がそれぞれの甘さを楽しんだ後にコーヒーを飲んで落ち着こうとする。

 

「苦い…」

 

「ハチマンは甘党だもんな」

 

「マスター達はよくブラックで飲めますね」

 

「大人の味って奴だ、お前も成長したら分かる」

 

「マスターもハチマンも極端なんですよ。丁度いいのが1番味を生かすんですよ」

 

「丁度いい…ね」

 

ミルクと砂糖を大量に入れたコーヒー?に口を付けて啜る。

 

(ハチマン…聞こえるか?)

 

「マスター?」

 

「?、どうした」

 

(俺がコイツらを引きつける、その間に好みのブラスターを買ってくるんだ)

 

「俺、もうすぐ閉まっちゃうお店で買いたいものがあるので行ってきます」

 

「分かった、お小遣いをやろう。これで買ってくるんだぞ」

 

「ありがとうございます!」

 

足早に店を出る。受け渡されたカードを見てみると一緒に小さく折りたたまれた紙があり、簡単だが分かりやすい地図がある。

 

「ええと…大通りの3つ目を右の…すぐ左の路地裏で…?どうなってるんだ?」

 

何度も確認した道は間違っていないはずなのにそこは行き止まりだった。試しに壁をトントンとノックしたり押したりしても何のカラクリもありやしなかった。

 

「君が…サイフォの弟子か」

 

「!!」

 

振り向くとそこには長身の男が立っていた。白髪と白髭を生やしていても背筋は伸びており、貴族を彷彿とさせる服装をしていた。

 

「貴方は?」

 

「私はドゥークー、サイフォと古い友だ」

 

この時俺はこの人と深い関係になる事を思ってもいなかった。





最後に、すみませんでした。


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肩乗りドロイドの記録

遅れました!
いやー、スターウォーズは奥が深くて大好きです!


私の個体番号はBD-8am。

コルサントの露天商の品物として他のガラクタ達と共に陳列している。この忌々しい制御ボルトさえなければ今すぐにでもこの店主を始末して“自由”を確認できるだろう。

さて、私のこれまでの経緯を整理しよう。

 

賞金稼ぎ等のアクティブな主人向けに製造されるBDシリーズ。その体はR2ユニットより小型で主人の肩に乗れてしまうくらいだ。

 

私もそんな兄弟達と共に主人の肩乗りドロイドになっていたであろうがそうなる事は無かった。

 

これは後から記録した事だが裏で進行していた暗殺ドロイドの製造計画用の高度な演算を可能にするCPUやそれを運用するAIが開発された。しかし出来上がったそれは共和国にバレた時に開発者はあろう事か私のパーツと交換して言い逃れしたのだ。しかしそれでもやって来た追ってにスピーダーで逃亡するも事故を起こして死亡した。事故直前にスピーダーに振り落とされた私はそこから持ち主を転々とした。

 

買われた私はその恩義で主人の望み以上の事をして利益をもたらしたものの私を気味悪がった主人達は私をその肩に乗せることなく売り飛ばした。

 

BDシリーズの望みは主人に利益をもたらし、その肩に乗せてもらう事。きっとこんなAIさえなければ今頃私は凸凹した地面をこの足で走ることなく、主人の肩に乗りこのセンサーでその横顔をスキャン出来た事だろう。

 

……何故、私だったのだろうか。

 

目の前を過ぎ去っていく客達。たまに立ち止まったかと思えばR2ユニットやプロトコルドロイドを購入していく。

 

視界センサーの橋から立派な髭を蓄えたスラリとした紳士風の老人と年端もいかない少年がやってきた。

 

その少年は何といっても目が奇々怪々だった。今までスキャンして来たどの目と形状は酷似していてもどこか異様さを放っていた。

 

そんな目が私の視界センサーの中央と視線が交差した。

 

「ドゥークーさん、少し寄り道してもいいですか?」

 

「うむ、構わん」

 

その少年は真っ直ぐ私の元へ歩み寄ってくる。

 

やめてくれ…どうせコイツも私を気味悪がるだけだろう。

 

「店主、このドロイドは?」

 

「?、あぁ、売れ残りのガラクタだ。何度も売られては買われてを繰り返してるからろくでもないドロイドなんだろうよ!」

 

ペシペシと私の頭を叩く。

分かっていた、私もここに並んでいる時点でガラクタなのだと…。

 

「コイツはガラクタじゃない…良ければ買わせてくれないか?」

 

「坊主も変わってるな…300クレジットだ」

 

「マスターの金は別として…丁度かな」

 

「ハチマン、私が金を出してやろうか?」

 

「ドゥークーさん…いえ、俺がコイツを見つけたんです。俺が買わなきゃ意味が無い…」

 

「毎度あり、これがボルトのスイッチだ。解除はこのボタン、電流を流すのはこのボタン…離れたらBON!だ」

 

「ありがとうございます…」

 

ハチマンと呼ばれた新しい主人は一つボタンを押した。加虐趣味の主人は以前にいたがコイツもか、と思っていたらいつまでたっても電流が流れる事は無かった。

 

その代わりカラン、と体に着いている異物が取れた。

 

「ほら、来いよ」

 

腕を私に伸ばす主人。

おそるおそる足をその手に乗せても振り払われる事は無い。全身乗せた私は肩を目指してゆっくり腕を伝う。

 

「少し擽ったいな」

 

生まれて初めて肩に乗った私は低出力に調整したレーザーで地面に自身の個体番号を記す。

 

「BD-8am…これがお前の名前か、俺の名前はハチマン・ヒキガヤ、宜しくな」

 

「ッ…ピポパっ!!」

 

「おいおい、何目から流してるんだよ…」

 

濡らしてしまった肩にヤレヤレ、と言いながら少年はドゥークーとやらと歩を進めていく。

 

ピピピピピピ……

 

●REC…開始

 

私はこの横顔を生まれて初めて忘れたくないと思った。メモリを消されても、ハチマン・ヒキガヤ…彼の顔を、この光景を絶対に忘れたくない。

 

私の名前はBD-8am…

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

新しい相棒を肩に乗せて目的の店へ向かう。どうやら隣で歩くドゥークーさんはマスター・サイフォと昔からの友達で元ジェダイらしい。その佇まいや言葉遣いはどこか貴族らしさが漂う。

そうそう、さっき知り合ったばかりのマスター・クワイガンの師匠らしい。ビックリ!

 

「歩き疲れてはいないか?」

 

「それ、3回目ですよ?俺は大丈夫ですから…全く、おじいちゃんでもないのに」

 

「!!、も、もう一度言ってくれないか?」

 

「えぇ…お、おじいちゃん…これでいいですか?」

 

「………ジェダイとして活動してた故、結婚とは無縁と思っていたが、素晴らしい物だな」

 

「単語一つでそこまで感動するんですか…」

 

「執着を捨てる…ジェダイの教えは人の心すら捨てさせるものだからな」

 

「確かに…少しやりすぎ、というか違和感はかんじますね」

 

「疑心はジェダイを転落させるらしいぞ?」

 

「げー、マスター・ヨーダが言いそうですね」

 

「ふっ、先生も昔口を酸っぱくして言っていたな」

 

驚きの新事実、ドゥークーさん、マスター・ヨーダの弟子だった。

 

驚きしかない会話をしていると目的の店に着いた。

 

「ガンショップ山猫…ここがブラスターの専門店なんですか?」

 

「そうだ、コルサントでここの右に出る店は無い」

 

カランカラン…と鈴の音と共に店に入る。壁やショーケースには拳銃のようなブラスターから固定砲台のようなブラスター?まで揃っている。

 

「らっしゃい」

 

「この子に一丁「シー、シーシー」……」

 

その店主はドゥークーさんと似た背格好をしていたがウエスタン風の服装を身にまとい、カシャ、カシャ、と歯車の着いた靴の音を鳴らしながら。俺に近づいてきた。そして腰まで届きそうな白髪をなびかせながらこちらを見つめてきた。

 

「ピポポ…」

 

BD-8も少し体を縮めて警戒してる。

 

「伯爵よ、外で待ってるんだな」

 

「どういう事だ?」

 

「それが聞けないなら注文は無しだ」

 

「…ハチマン、襲われたら迷わずセーバーを使え」

 

こくり、と返すとドゥークーさんは外に出ていった。

 

「気取った貴族は気に入らなくてね、いらっしゃい、御要望は?」

 

「えと、ブラスターが欲しくて」

 

「子供がブラスターか?世も末だな」

 

「戦争に備えてね、マスターが買ってけって」

 

「じゃあアンタの初めては俺か…嬉しいね」

 

何か他意を感じるが一々気にしてたらキリがなさそうだ。

 

「OK、家の店は少々特別でね、ブラスターは勿論売るがそれは顧客が組み立ててからだ。面倒だからって組み立てないバカもいるからその時はガラクタを売りつけるがな」

 

「………」

 

「安心しろ、お前が組み立てさえすれば問題ない」

 

店に設置されてる作業台へと案内される。

 

「お前の癖に合わせたブラスターを作ろうか。安心しろ、俺が手取り足取り教えてやるからな。先ずは…どんな性能を目指す?」

 

どんな性能か…子供である俺にはよく分からないな。

 

「…威力と射程に優れててそれ以外は平均でいいかな」

 

「難しい要望だな…射程は伸びても精々20mかそんくらい…」

 

少し難しい顔をして店主はこちらを見つめた。

 

「さっき戦争って言ったな、本当か?」

 

「マスターはつまらない嘘は着いても悪質な嘘は着きませんから」

 

「そうか…なら、今後の店のお得意様になるかもしれない訳だな。最高の一丁を作ろうじゃないか」

 

制作は無骨なオートマチックピストルをベースにして始まった。

 

「外に配線を剥き出しにしてみろ、すぐ傷付いてトラブルを起こす。おいおい…それじゃリロードに支障をきたす、こうするんだよ」

 

「成程…」

 

「余り構造を複雑にしすぎるとメンテナンスが面倒になる。最低限に最高のパフォーマンスが出来るように頭を使え。ドロイドも手伝ってやれ」

 

「ピポ!?」

 

手取り足取り指導を受けながら順調?にそれは進んでいった。

 

「やっと…できた」

 

「ようやくだな…いいセンスなんじゃないのか?」

 

代金を追加で支払い、黒革のホルスターを購入して左側にそれを付ける。

 

「お前左利きだったか?」

 

「いや、セーバーを使うのは右手だから」

 

「なるほどな…またなんかあったらうちに来い、歓迎しよう」

 

「そうさせてもらいます…では、また今度」

 

「次なんて…来ないといいな…」

 

ボソッと聞こえたそれをわざとスルーして店を出るとドゥークーさんとマスターが立ち話していた。

 

「終わったか、ハチマン。どれ、見せてくれ」

 

「はい、ところでマスター・クワイガンは?」

 

「俺も逃げてきたからもしかしたら追ってくるかもな」

 

「ほう、なら私はもう失礼しよう。また会おう、ハチマン」

 

「はい、ドゥークーさん」

 

去っていくドゥークーさんを尻目に俺のブラスターをマジマジと見つめるマスター。

 

「ま、必要な物も揃ったし…行くか!!」

 

「行くって…どこに?」

 

「“戦場”だ、ハチマン。道具は揃ったし技術の基礎は教えた。後はお前が発展させる番だ。2年間だけでいいから実戦を実践してみよう」

 

いきなり迎えた“本番”。

俺は有無を言わせてもらえずマスターのシャトルに乗せられた。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━

━━━━━━━━━━━━━━━

 

〜あれから2年の時が過ぎた〜

 

「戦闘終了、BD-8はリロードを頼む」

 

「ピポ!」

 

BD-8から伸びたワイヤーは器用に左腰に着いているブラスターにマガジンを差し込んでリロードさせる。

 

「くそッ…ガキに殺られるなんてェ…!!」

 

「………」

 

生き残りを見つけた。

地面に転がってるブラスターを手に取ろうと足の無い体を引きずっている。

 

バシュウ……

 

独特の振動音を発しながら右手から伸びた黒色の刃はユラユラと動いてその男にゆっくりと近付いていく。

 

「ひ……」

 

切り離された頭からはこれ以上言葉が発される事は無かった。

 

「ピピピ…」

 

「生体反応無しか…帰ろう」

 

「ピポッ!!」

 

胸ポケットにしまってた記録用ホログラムを起動させると予め記録されていたホログラムが映し出された。

 

「お疲れ様だ、先にお前はコルサントに戻りマスター・ヨーダに挨拶しに行ってくるんだ。俺は先に向かってる…この2年、本当に頑張ったな」

 

「さ、報酬を受け取ったらシャトルに乗ろう」

 

この2年間色んな星を飛び回り賞金稼ぎみたいにお尋ね者を捕まえたり、傭兵として紛争に派遣されたりしていた。マスターが依頼を受けて俺がそれを達成するといった形だ。

 

『次は惑星コルサント』

 

何百回と聞いたアナウンスを聞き流して窓からコルサントを眺める。2年ちょい前にマスターに連れてこられて以来だから本当に懐かしい。

 

不思議な紋様の浮かぶその惑星に降りたってその街を歩く。これといって変わった様子は見受けられず、本当に2年空けていたのかが疑わしい。

 

「マスター・ヨーダはどう言うんだろうな」

 

「ピポ…」

 

「褒められはしないだろうな」

 

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「考えたな…!マスター・サイフォ!」

 

「何の事かな…マスター・メイス君」

 

ジェダイ・テンプルの廊下にてゆっくりと歩くサイフォの元へメイス・ウィンドゥが駆け寄った。

 

「とぼけるな!道徳観の未成熟な子供を戦場に送って殺しを慣れさせるなんて…!人のすることじゃない!」

 

「大声を出すなよ…これも未来の戦争の為なんだ。それにハチマンはしっかりと考えて行動している。同意の上だ」

 

「他の選択肢を見せてなかったら強制と同じだ…!」

 

「何故怒る?いつもなら脱走したイニシエイト一人を気にも留めないくせに…なぜあの子に拘る?」

 

そう、ジェダイになる訓練は相当過酷な物で夜な夜な脱走する者は少なくない。評議員はそれを脱落者として見放している。

 

「それは「当ててやるよ」……」

 

「ダークセーバーを持ってるからだろ!?あってはならない2本目を作り出したからお前達は恐れてるんだよ!もしハチマンが手元から離れたら、シスの暗黒卿にでもなったりしたら気が気じゃないからどうしても不安要素から遠ざけたいんだろ!殺しの快楽を覚えられたらと夜も眠れないんだろ!?」

 

「その通りだ、それを知っていながら戦場に駆り立てるから貴様は評議員の立場を追われたのだ!その過激な思想はどうにかならないのか?!」

 

あまり感情を表に出さないメイス・ウィンドゥも額に青筋を浮かべていた。あの目とダークセーバー、出身から生い立ちとハチマン自身の型に囚われない思想も相まってジェダイ評議員は以前から懸念していた。

 

「今は俺一人がお前たちで言う『過激』で結構だ。だがお前達も否が応でも『過激』に染まることになる」

 

「………」

 

「もし私に何かあったら…あの子を頼んだ。本当に優しい子なんだ」

 

そう言い残してサイフォは去っていった。メイス・ウィンドゥはその背中を見つめることしか出来なかった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「よくぞ帰還した、イニシエイト・ハチマン」

 

「お迎えなんて勿体ないです。こちらから向かおうと思っていました」

 

「最近運動不足での…少し歩きながら話さないかの?」

 

緑の小柄な老人、ジェダイ・オーダーを取り纏めるマスター・ヨーダはヨチヨチと歩きながら2年間行方を晦ましていたハチマンと歩いていた。

 

「この2年…戦地に身を置いてどうじゃった?」

 

「……別に、どうと聞かれてもそう答えるしかありません」

 

「ふむ、と言うと?」

 

「仕事はマスターが持ってきて、それを俺が取り掛かるって流れですから。あぁ、でも仕事内容に社会情勢が関係してきたりしました」

 

「そうではない、お主がどう感じたかが疑問点じゃ」

 

「すみません、よく分かりません。まだ10歳の子供ですし」

 

嘘だった、暴虐非道の男を殺す仕事でヘマをし首を絞められ、初仕事でこの子供は死にかけたのだった。薄れる意識の中、BD-8の電子音で保てた意識と咄嗟に押したセーバーのボタンで仕事を達成することが出来た。初めての殺しは彼の中で何かが弾ける音を発させた。快楽にも苦悩にも取れるソレはそれからの彼の行動を最適化させたのだ。フォース、ダークセーバー、ブラスター、BD-8に自分自身。身に付ける信頼できる道具と目に映る小道具を使いこなして淡々と人の命を摘み取っていった。

 

「……それもそうじゃな」

 

ヨーダと歩を進めていく内に寺院へと足を踏み入れた。

 

「戻ったのはいいんですけどこらから俺はどうすれば?」

 

「うむ…お主はまだまだ子供じゃ。正式にパダワンとなるにはここで学ぶべき事がまだまだ残ってる筈ではないかの?」

 

「そう…ですね」

 

「では部屋に戻るとよい…その後また話がある」

 

言われるがままマスター・ヨーダと別れて懐かしい部屋に戻る。二人一部屋の筈だが全体数が奇数で俺一人使い余した部屋へと。

 

「?、手紙?」

 

テーブルの上に置かれた紙切れを手に取る。埃は積もってない為、つい最近置かれたのが見て取れる。

取り敢えずBD-8の充電ポートや机の上にブラスターやセーバーのメンテナンス道具やら証明を設置する。

一通り済ませたら古びたスプリングを軋ませてベッドに腰掛け手紙を読む。

 

親愛なる弟子へ

 

顔を見せてやれなくて残念だ。急用が入ったもんでカミーノに向かう為暫く顔を出せなくなった。お前のマスターとして教えられる事は全部教えられた気がする。あーすまない、手紙なんて書くのは初めてなんだ、箇条書きになるかもしれないが許してくれ。取り敢えず今後の課題としてセーバーの技術とブラスターの命中率をもっと上げておけ。他には…誓いは忘れないでくれ。他には、えと、生き延びろ、何があっても。

ごめんな、こんな師匠で…お前といられた二年ちょっとは本当に楽しかった。俺の事忘れないでくれよ…ありがとう。

 

お前のマスターサイフォ・ディアス

 

「なんなんだよ…これ…まるで…遺書じゃないか」

 

「ピピ…」

 

「あぁ、こんなに不安になったのは初めてだ」

 

その2週間もしない内だった。

 

 

マスターが死んだ



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予言の子との対峙

遅くなりました!


「……………」スッ

 

「ピポ」パシャ

 

「……………」スッ

 

「ピポ」パシャ

 

「……………」スッ

 

「ピポ」パシャ

 

銀河最大規模を誇るジェダイ・アーカイブにて黙々とホロクロンをBDユニットに撮影させている影が一つあった。

 

「一通り終わったかな」

 

「ピポパ!」

 

虚ろな目で天井を仰ぎ、自身の身長より高く積み上げられたホロクロンの山をフォースのテレキネシスを用いる事で効率よく元あった場所へと戻す。

 

「ここにいたか、イニシエイト・ハチマン」

 

「マスター・プロクーン…どうかしましたか?」

 

「彼らはここを去るようだ」

 

「…そうですか、きっとそこまでの奴らだったんでしょう」

 

「君は…変わったな…戻ってくる前の君なら君を嘲笑った者達を完膚なきまでに叩きのめす事はしなかっただろうに」

 

「さあ、再戦を申し込んできたので誠心誠意応対しただけです」

 

「腕を折ったりしなければ君の言い分は良い方向に認められていたかもしれないのに…勿体ない」

 

「……それは、頭に血が上って…」

 

「まぁ、君の問題行動のお陰で教鞭を執る者達のイニシエイト達への仕打ちが明確になり問題も解決できた…ありがとう」

 

素直に頭を下げるプロクーン…彼がここまで誠実なのはジェダイ・マスターとして人気の理由だった。

 

「ところで何を見ていたんだ?」

 

「ダークセーバーの歴史や調査記録です」

 

「ダークセーバー…か…」

 

大昔マンダロリアンのター・ヴィズラによって製作された()()()はまたとなかったセーバーだ。その製法は謎に包まれており、今現在ハチマンの持っているそれは奇跡的にギリギリで扱える代物になっただけだった。

 

「セーバーに問題が見つかったのか?」

 

「えぇ、カイバークリスタルの素質が謎に包まれていて何となくでセーバーの回路に無理矢理直結させたんですけどイマイチ出力が弱くて…直接肌に対して使うなら問題ないんですけど如何せんアーマー越しだと切れ味が悪くて…もしかして柄に問題が…」

 

「そうだったのか…それでホロクロンを漁っている…と」

 

「当時の技術レベルを吟味しても現代で作れない事は無いと思うんですけど…どうなんでしょう」

 

「確か昔、ジェダイ・テンプルに短期間ながら保管されていたと聞いた。その際に多少なりとも調べてはいるだろう。その節の者に心当たりがあるから問い合わせてみよう」

 

「御協力ありがとうございます…」

 

「うむ…その代わりBDユニットに保存したデータは3日以内に消去する事だ」

 

「っ……了解」

 

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マスターの死を受け止めきれずに心に秘めて新しい日常を再開したハチマン。その朝は早かった。

 

「起きろBD-8、行くぞ」

 

「ピッ!!」

 

太陽が顔を出し始めた頃には慌てて飛び起きるBD-8を肩ではなく背中のフードに入れて外に出る。

 

トレーニングルームまで静かな廊下を走り向かうのだがそんな彼に付き纏う影が一つあった。

 

「今日も早いな!ハチマン!」

 

「ヘッド…今日もか」

 

ニカッと笑うハチマンより体格の大きいその子供はハチマンと並び走る。彼の名はアシャラド・ヘッド。右も左も分からなかったコルサントでの暮らしをハチマンにある程度教えた人物でもある。

 

「おう!1人より2人で特訓した方が楽しいだろ!」

 

「別に変わらないと思うけど…」

 

始業のチャイムの鳴る10分前までトレーニングルームにてセーバーによる打ち合いやフォースの扱いについてアドバイスし合う。

 

「そういえばハチマンはフォースセンスは訓練しなくていいのか?そこも評価基準だぞ?」

 

アシャラドの言っている評価とは、パダワンになる為の通過儀礼であり、ライトセーバーによる剣舞やフォースとの共鳴を多くのジェダイに見せることによりパダワンとして認めてもらう催しだ。マスター亡きハチマンもそれに参加するようになったのだった。

 

「その必要があるようだが…ヘッドは大丈夫なのか?」

 

「まぁ、同期にはパッとしない奴が多いから楽勝だ。悪いな、一足先にジェダイになってくる。先で待ってるぜ?」

 

「その時は頼むよ、先輩」

 

「おう!」

 

ボッチを貫いているハチマンにとってアシャラド・ヘッドは数少ない交友であった。

 

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「マスター・クワイ=ガンが死んだ?」

 

「あぁ、ナブーでの戦争でシスの暗黒卿に殺された」

 

ジェダイ寺院にて読書に明け暮れているとマスター・メイスがやってきてクワイ=ガンの悲報を告げた。ナブーでの戦争はガンショップ山猫で聞いていたから知ってはいたがまさか知り合いが派遣されていたなんて。とハチマンは複雑な気持ちを抱いていた。

 

「……葬儀はやりましたか?」

 

「まだだ、ナブーで執り行われるらしい。…貴様も来るか?」

 

「なんで俺も?」

 

「メイスの分も弔ってやるといい…心残りも軽くなるだろう」

 

最近暗い様子のハチマンを見兼ねてメイスは少しでも暗黒面に引き寄せられないように気配りをしたのだった。

 

「…是非行かせてもらいます」

 

シャトルにヨーダとメイスとハチマンの3人で乗り込みナブーへと向かう。水の綺麗なその星には戦争の跡があり、凄惨な戦いが繰り広げられたのが誰の目にもよく分かった。

 

「どうも、マスター・ヨーダにメイス殿」

 

「これはパルパティーン最高議長、自らお出迎えとは感謝する」

 

「いやはや、優秀なジェダイが亡くなられて…残念だ。して、その子は?」

 

白髪のパルパティーンと呼ばれた男は戦争の跡を見回しているハチマンへと注目した。まるで何かの素質を感じたかのように…

 

「イニシエイト・ハチマン、こちらは元老院最高議長のシーヴ・パルパティーン様だ、自己紹介をするんだ」

 

「ハチマン・ヒキガヤです…よろしくお願いします」

 

「ほお、君が噂の…確認なんだが、持っているのかね?」

 

「えぇ、護身用に、肌身離さず…」

 

「君には個人的に興味があるんだ、後で話でもどうかな?」

 

「…機会があればぜひ」

 

そんな話をしながら火葬場へと向かう。そこには沢山の人がいた。どこかの偉い人に奇抜で変な格好をしたお姫様に無能臭がする変な生き物。そんな人々に囲まれたクワイ=ガン・ジンだったもの。

 

「ハチマン…君も来たのか」

 

「マスター・メイスに説得されて…マスター・サイフォの分も弔うようにと」

 

「そうか、マスターも君に送られて幸せだろう」

 

「お悔やみ申し上げます…偉大な人だったのに」

 

「あぁ、本当に…そうだな」

 

オビワンに迎えられ…星の煌めく夜の下でクワイ=ガン・ジンは燃やされた。鼻腔を擽る人の肉が萌える匂いは2年間嫌という程嗅いできたのにどうしてか今夜の匂いはいつまでも忘れることが出来なかった。

 

「ハチマン」

 

「どうかしました?オビワンさん」

 

「今度ジェダイ・イニシエイトにこいつが加入するんだ。歳は近いと思うから色々と教えてやってくれないか?ほら、挨拶をするんだ」

 

「僕はアナキン・スカイウォーカー、君は?」

 

「…ハチマン・ヒキガヤです。よろしくお願いしましゅ」

 

自然豊かな星空の元、その子供達は出会った。

運命に翻弄されるアナキン・スカイウォーカーとハチマン・ヒキガヤ。握手を交わす2人を側で見つめるオビワンと遠くから眺めているパルパティーン最高議長、否、暗黒卿ダース・シディアス。

 

銀河を揺るがす出会いがここに起こったのは今は誰も知ることが無かった。

 

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「ねぇ、なんでそんなに早起きなの?」

 

「いや、別に…鍛錬したいから」

 

「真面目なんだね…パドメみたい。彼女も故郷の為に頑張ってるんだよ、僕も彼女を守れるジェダイになれるかな」

 

「頑張りゃなれるんじゃないのか?ていうかその話、これで68回目だぞ?他に会話のボキャブラリーは無いのか?」

 

「だってハチマンがあまり喋らないから僕がずっと喋る羽目になるんだよ?」

 

「それは……すまない、言いすぎた。長い会話は得意じゃないんだ」

 

「ううん、時間はまだあるからゆっくり話そうよ」

 

ハチマンは絶望的にコミュ障だった。

アナキン・スカイウォーカーへの教育はある程度上手くいっていたがプライベートでの会話は二人の出自のせいもありできていなかった。

 

元奴隷のアナキンはそのフォースセンスをクワイ=ガンに見出されジェダイ・イニシエイトへとなったものの歳の近い友達がいなかった為、どう接すれば分からないのだ。

対するハチマンもサイフォに才能を見出されジェダイ・イニシエイトになったが目付きやダークセーバーが彼を孤独にした。尊敬するマスターも死に、自分に残ってるのはサイフォとの誓いだけだった。

 

「あー、飯、食いに行こうか?」

 

「美味しいなら行くよ」

 

コルサントの街へ繰り出した2人は工業区位置するデックス・ダイナーという店に腰を下ろす。適当な飯を注文し談笑しながら料理に手をつける。

 

「それでポッドレースで優勝できた訳なんだ」

 

「ポッドレース…面白そうだな…」

 

「今度一緒に作ろうよ!ポッドじゃなくて…スピーダーとかスターシップとかさ!」

 

「作るって…出来るもんなのか?」

 

「お金さえあれば…なぁなぁでいけるんじゃない?」

 

「随分と曖昧だな…どこから手を付ける?」

 

「うーん、パーツなら大人になってからでいいから、設計から初めてみようよ!」

 

「おチビちゃん!お喋りで折角の飯を冷ますなら次は家畜の餌を出すぞ!!」

 

「「す、すみません!!」」

 

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ハチマン・ヒキガヤは狂っている。

 

ジェダイ・テンプルでの差別やダークセーバー、彼を狂わす要素はそこらにあった。

 

1番の要因は2年間の戦争経験…そしてサイフォ・ディアスが彼に運命付けた戦争の切り札としての役割が彼を狂気へと陥らせた。

 

怒りも悲しみも薄く、感情のコントロールに長けている。もしかしたら現在するジェダイの誰よりも感情をコントロール出来ていると予想する。

 

戦場での彼の様子は私の耳によく入った。

 

とある星を脅かそうとする分離主義勢力へのゲリラ攻撃。並の賞金稼ぎを言わせても見事な射撃。それでいてセーバーの扱いも並より良でる。7つある型の良い所を吸収、アレンジし独特な型を作りつつあるとの事。

 

会話をしてみれば実弾の銃にも興味を示しており、新しい弾薬の制作を試みてるとの事。

 

前例に囚われず、己が道を作りつつある新世代。

マスター・ヨーダは認めないだろう、ここが漬け込み所だと考える。

 

彼が暗黒面に染まった時はそうだな…ダース…何がいいだろうか。楽しみだ。

 

ベイダー…ルーイン…ペインは安直な気がするのう…

 

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「自身の方はどうなんだ?」

 

「平気だ、出来ることを最大限やるだけだ」

 

「珍しく気合いが入ってるな、ハチマン」

 

ニカッと笑うアナキンにフッと笑みを浮かべるハチマン。成長した2人はローブの色以外はお揃いの衣装を身にまといジェダイ・テンプルを歩いていた。

 

「今回の評価には前代未聞のメンツが来る。パルパティーン最高議長にマスター・オビワンとアシャラド。それとこれが1番驚いたんだけど…僕が来るらしい!」

 

「そっか、それは…緊張するな」

 

反応薄くない?とツッコミながらもアナキンは話を続ける。

 

「オビワンもハチマンを弟みたいに可愛がってるから気になるんだろうね」

 

「は〜、気疲れしてきた」

 

「ほら、会場はもうそこなんだから、頑張って!その間BD-8は預かっておくよ」

 

「ピポ〜〜」

 

「嫌じゃないよ!BD!ハチマンに迷惑かけないの」

 

BDを大人しくさせながら観客用の入口に向かったアナキンを尻目にハチマンは控え用の部屋に入った。照明の消えているその部屋の椅子に座り携帯食をポケットから取り出して貪る。

 

『イニシエイト・ハチマン、時間です』

 

アナウンスに従い入場用のゲートを潜る。明るい照明の元、出てきたハチマンを取り囲む様に上から見守る多くのジェダイと少ない観客達。アナキンや

 

「よし…やるか」

 

その呟きが引き金になったからのように周りに訓練用ポッドが10機程取り囲む。

 

「ちょっと、多くない?」

 

いつもなら5、6機の筈だと思いながらセーバーを起動させる。

 

バビュン!

 

正面のポッドから発されたビームをセーバーで難なく跳ね返すと直撃したポッドは黒煙を上げながら落ちていった。その様子から実弾である事を察したハチマンはフォースを用いて少し先の未来を見通し、セーバーを握る手を強め、構えの体制をとる。

 

「実弾なんて…誰が指示を…」

 

観客席にてヨーダに耳打ちするメイス。ヨーダの顔にはより一層懸念の皺が浮かぶ。

 

「悪意によるイタズラか…単なる手違いか…今はハチマンを見届けよう」

 

「ですが…余りにも多すぎます」

 

「ハチマンはアナキンに並ぶ実力者。それでやられるのならそれまでだったということじゃ…それに見ておれ、冷静に捌いておるじゃろう」

 

視線をハチマンに移すメイス。そこには顔色を変えずにレーザーを打ち返すハチマンが居た。フォースによってポッドを引き寄せ左手に掴み同時に飛んでくる別方向からのレーザーの盾に用い、壊れたそれを別のポッドに投げ飛ばし体制を崩した所を駆け寄り、蹴り飛ばし壁に激突させ破壊する。

 

「あんな戦い方があるのか…いつ見ても思うがあれじゃ獣だ」

 

観客席にいるオビワンが心配そうに零す。

これはハチマンの将来を心配しての小言だった。

 

「ですがマスター、獣というのは理性の無い生き物です。ハチマンには強い理性がある、怒りも憎しみも別腹とよく言ってましたよ」

 

アナキンが得意気に説明する。

それを盗み聞きしながらパルパティーンは微笑ましそうにハチマンを眺める。

 

客席とハチマンのいるステージを隔てる壁を走り、己を囲ませない。まるで機会を伺う狩人のように目を鋭くさせたハチマンは追ってくるポッドの群れの前列をフォースで止めることによって止まれない後続を衝突させる。落ちたポッドにトドメを刺す為に地面に降り、切り返しポッドの元に走る。セーバーを地面に走らせながら再始動しようとするポッドを次々と刻む。

 

「これで最後」

 

残り一機をダークセーバーで突き刺す。バチバチ、という焼けた電子音が響く中、観客はただ黙ってハチマンを眺めていた。

 

「この中に彼、ハチマン・ヒキガヤをパダワンとして受け入れる事を申し出る者はおるか」

 

ヨーダが声を上げる。

静まり返る観客席に一人立ち上がるジェダイが現れる。

 

「ふむ、メイス・ウィンドゥただ一人が立候補するか…ならばメイス、お主にイニシエイト・ハチマン改め、パダワン・ハチマンを任せる」

 

歓声が響く中、パルパティーンは席を立ちその場を去ろうとしていた。

 

「やはり予想通りマスター・メイスがパダワンを取る事になりましたか」

 

「彼奴の技はどちらかというとダークサイドに近い。より一層引き込みやすくなった」

 

控え室に戻ったハチマンの元に新しいマスターとなったメイスがやってきた。

 

「見事な戦いぶりだった…イレギュラーについては既に調査の手が回っている」

 

「評議員に裏切り者か…俺に対する私怨か…後者ですかね」

 

「どちらも後に分かる事だ、イニシエイトでは無くなっても私のパダワンになったのだ。これからはいつも以上の訓練になる、気を引き締めるのだ」

 

「…はい、マスター」

 

感情の起伏が少ないハチマンに己の秘技を伝授しようか悩むメイスを他所にハチマンは外に向かって行った。

 

「どこに行くんだ、パダワン・ハチマン」

 

「打ち上げに呼ばれていまして…アナキンとマスター・オビワンとアシャラドと一緒に飯を食いに…マスターもどうします?」

 

「……………美味いんだろうな」

 

かくして、ハチマンはメイス・ウィンドゥのパダワンとなった。サイフォの代わりを努めようと内心奮起するメイス。来たる戦争に向けて大きな一歩を踏み出したハチマン。アナキン・スカイウォーカーとの出会いを経て、今後どうなるか知るものは誰一人としていない。

 



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比企谷 八幡の帰還

 

「やっぱり搭載する兵器がちょいと不安だな…」

 

パダワンとなったハチマンは新しく製作を試みている戦闘機の研究をしていた。子供の頃からのアナキンとの目標であり、途中から参加していたアシャラドも一枚噛んでいた。

 

「山猫でも取り扱ってないもんな…どこなら…はぁ」

 

戦闘機を研究し尽くしていたりフィクションのアイデアが豊富な場所は一つしか心当たりが無かった。

 

「BD、今すぐ飛ばせる船はあるか?」

 

「ピポパ?」

 

「あれはまだ作ってないぞ…、それに出来ていたとしても勝手に使うとアナキンとアシャラドに怒られる」

 

正面の壁に飾られた図面『8式戦闘機スカイヘッド』。子供の頃から考えていても未だに構想段階であったが、一応の図面は出来たのだが如何せん要求パーツが1級品なものだからジェダイの仕事で材料費を稼ぐ必要がある。

 

「ピピピ!!」

 

「あったか、行くぞ…地球に」

 

マスター・メイスに当てた手紙を残してジェダイ専用の発着場に向かう。

 

「稀な休日に外出なんて珍しいな、ハチマン」

 

「マスター・オビワン、それにアナキン」

 

「僕達も休暇なんだけど落ち着かなくてね、良かったら着いてくよ」

 

「言葉が通じないぞ」

 

「翻訳家ならそこにいるだろう?」

 

「違いない」

 

3人で船に乗り込み宇宙に出る。

 

「場所は分かるのか?」

 

「えぇ、マスター・サイフォが図面に書いてくれてて…座標を打ち込んで、後は計算してからハイパードライブが…びゅん」

 

「ハチマンしか座標を知らないのか…」

 

「えぇ、いざという時にはここで隠居もできる」

 

座標の書かれたメモをヒラヒラとさせる。

 

「ハチマンは隠居なんてしないでずっと働いてる感じがするよ」

 

「ははははっ!なんやかんや言っても仕事はこなすからな!」

 

「よしてくださいよ…本当にありそうで怖いんだから…」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

デジャリックで暇を潰していたり日本語を軽く教えていると青い星が目の前に鎮座していた。

 

「あそこがハチマンの故郷か…綺麗な色だ」

 

「俺がジェダイ・テンプルに入ったのが8歳位で…それからもう9年だから今は春かな…高校2年位か…」

 

「こうこう?」

 

「学校の階級みたいなものだよ、タトゥイーンより田舎者だから上下関係には厳しいぞ」

 

「見た所海が広いがどこに着陸するんだ?」

 

「取り敢えず日本ていう国ですね。宇宙に進出してないから面倒事は嫌なのでステルスモードをオンにしますよ」

 

日本の千葉…サイフォと出会い、そして宇宙へと飛び出した思い出の山の中に宇宙船を止める。

 

「ここが地球か…空気の綺麗な所だ…」

 

「木がピンク色だ!?」

 

「あれは桜といって丁度この季節に咲く花だ。いつ見ても綺麗だな」

 

一応目立たないようにローブは脱いで町を散策する。

 

「新しい弾薬といっても…こんな平和そうな所で見つかるのか?」

 

「ここで探すのは情報です。ここにあれば完璧なんですけど…海外でしょうからね、どこにあるのかが分かれば…あの人がいいかな」

 

「「??」」

 

道を歩く人に向かって歩くハチマン。

 

「す、すみましぇん」

 

「?、はい?」

 

必死に笑いを堪えてるオビワンとアナキンを他所に話しかけた男性に手をかざす。

 

「そのスマホ貸してくれませんか?」

 

「…スマホを貸します…」

 

「あとパスワードも教えてくれます?」

 

「○○○○…です」

 

どうも、と言いながら慣れない操作で目当ての物を探している間にオビワンとアナキンは公園の遊具で遊んでいた。

 

「なんだこれは!?バンサの背中にいるようだ…うぷっ」

 

「回る牢獄…新手の拷問器具か?」

 

スプリング遊具で酔うアナキンと回るジャングルジムを分析するオビワンに若干呆れつつ調べたデータをBD-8に保存させる。

 

「こんなものか…ありがとうございます」

 

スマホを返し改めてやって来た街を見回す。懐かしい街並み、懐かしい公園、懐かしい空。帰ってきたという実感が全然沸かない。

 

「リムジンなんか走ってるのか…」

 

あからさまなセレブなんていたんだ、と思いながら見ていると少女の悲鳴にも近い声が聞こえた。

 

「ダメだよサブレーー!!」

 

路地から飛び出す犬とその道を走るリムジン。5秒先の未来は火を見るより明らかだった。

 

「ヤバいな」

 

フォースを使い犬を引き寄せ、尻尾スレスレで犬の命は助かった。

 

「すみませーん!!」

 

走ってくるジャージを着たピンク髪のお団子少女が駆け寄ってくる。

 

「アンタの犬か…」

 

「は、はい!」

 

「二度と離すなよ…死んだら戻りはしないんだから」

 

「あ、あの…さっきサブレが貴方の所へ飛んだように見えたんですけど…」

 

「愛犬が轢かれそうになったんだ、気のせいじゃないのか?」

 

ポカンとするピンク髪を他所にヒューヒューと遠目に茶化す二人の所に戻る。

 

「なんだよ…」

 

「別に?なんでもない」

 

若干のもどかしさを感じ、船の元へ戻ろうとするとさっきのリムジンが信号待ちで止まっていた。信号の関係上俺達も立ち止まっているとリムジン後方の窓が開いた。

 

「貴方、エスパーなのかしら?」

 

「…真実を知った所でアンタはどうもできないぞ」

 

「なんですって?」

 

黒髪の少女はしかめた顔をこちらに向けてくる。

 

「アンタは殻を破る事に固執し過ぎてる…その方法も知らないのに」

 

「貴方に何が分かるの?」

 

眉を顰める彼女を横目に足で地面をトントンと踏む。

 

「それを知ってどうする?俺に教えられてお前がそれを克服したところで今度は俺の殻に閉じ込められるんだぞ?」

 

「何が言いたいのかしら?」

 

「見つけたければ自分で見て気付かなきゃな」

 

アナキンとオビワンに船に戻るよう言って少し寄り道をしようとするとガチャ、と車のドアが開く音がした。

 

「お嬢様!?」

 

「体調が優れないと学校に伝えて頂戴、これはスピーチ用の原稿よ」

 

執事らしき人にそう伝えるとその少女はこちらに向かって来た。

 

「おめでとう、一歩全身だ」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

私が乗るリムジンが犬を轢きそうになった。

華々しい入学式で完璧なスピーチをする事で良い出だしを迎えようとしていたのに出鼻をくじかれる所だった。不思議な装いをした男が手を出すと犬がその男に引き寄せられるように中を浮き、間一髪で救い出した。

 

犬を飼い主に戻すと仲間と思われる男二人と去っていった。

他2人もそうだが犬を救った男の目は驚く程腐って…いや、死んでいた。まるで大量殺人鬼みたいに、鋭いのに何処か温かさを秘めていた。

 

敵わない…私以上に完璧の姉をもってしても彼の秘める得体の知れない物には敵わないだろう。

 

簡単に言えば興味が沸いた、私の心にあるものを言い当て、その解決策を見つけるように諭した。言わば、餌の与え方を教えず気付かせたのだ。謎の多い彼を知りたくなった。

 

「貴方は何者なの?」

 

「ここでは行方不明者」

 

「それじゃあそれ以外では?」

 

「宗教法人の武力団体」

 

「益々分からないわ…」

 

日本では珍しいタイプの甚平のようでそうではない服装。それでいて腰にぶら下げている白色の筒のような道具は得体の知れない違和感を放っていた。

 

「てかお前、学校は大丈夫なのか?時期的に入学シーズンだろ」

 

「殻には囚われないんじゃないのかしら?それと私の名前は雪ノ下雪乃よ行方不明者さん……ところで何処に向かっているの?」

 

幻滅の目を向ける。勿論本心ではない、口は達者なようだから少し試そうとしたのだ。

 

「アンタの面は確かに良いだろうが貧相過ぎる体じゃ元気な子は産めないな…一次成長期からやり直しだな」

 

プツン………

 

「で、どうしてららぽーとに?」

 

気が付いたらららぽーとにやって来ていた。後ろにはタクシーが控えている。どうやら体力切れを起こした私がタクシーに頼ったどのこと。車内でも長々と説教を垂れていたと彼は言っていた。

 

「資料を買いに来た」

 

「資料ですって?」

 

「船を作るからデザインと機能面のアイデアをパクリ、もといオマージュする為にな」

 

漁師の出となればこの服装にもやや納得はいく。

 

「それは分かったけど貴方、お金はあるのかしら?」

 

「スリをします」

 

「私は犯罪者と一緒なんて嫌よ、欲しいのがあるなら言いなさい」

 

「後で仮は返す…」

 

そうしてくれると助かるわ、と返してららぽーとを散策する。

 

「あのな、人酔いも方向音痴も酷いとかどう生きてくんだよ…」

 

「今後直していくつもりよ…」

 

欲しいと言っていた本(SFアニメの設定資料集やカメラ)を購入した私達は噴水広場にて休憩していた。

 

「もうお昼…」

 

「ほんと、学校は大丈夫なのか?」

 

「今更なんて事ないわ、それよりお腹は空いたかしら?」

 

「や、携帯食がある」

 

懐から取り出したグミみたいな物を口に放り込みもちょもちょと食べる。どこからどう見ても見た事も聞いた事もない食べ物だ。

 

「それ、一つ頂けるかしら?」

 

「口に合わないぞ」

 

それでも、と言うと不思議そうな顔をした彼は小さいのを一つ渡してくる。彼を見習って口に入れて舌の上で転がす。不味くはないが不思議な味がする。酸っぱいような甘いような…味わえば味わう程分からなくなる。

 

「美味くないだろ」

 

「そうね、『よく分からない』が素直な感想よ」

 

「俺も慣らすのに時間が掛かったな…」

 

懐かしむような表情をしている彼の顔を眺める。哀しくも嬉しい表情と表すのが適切なのだろう。

 

「あれ?雪乃ちゃーーん!」

 

初めて味わう時間の味を楽しんでいる所を急に現実に引き戻されてしまう。視線を声のした方に向けると姉とその取り巻きがいた。彼は姉をチラ、と見るも直ぐに視線を謎のグミに戻した。

 

「姉さん…」

 

「入学式サボったって話は聞いたけどまさかこんな所にいたんだね〜!もしかして、デートかな?」

 

「あれが陽さんの妹さん?可愛いッスねェ!!」

 

「やーーん!お人形さんみたーい!」

 

「すっげぇ綺麗な黒髪だァ!」

 

取り巻きの一人が近付いてくる。心底嫌いな部類の人間だ。吐息すら掛かるのに嫌悪感を抱く。

 

「すんません、連れにちょっかい出さないでもらえますか?」

 

「!!」

 

さっきまで蚊帳の外を決め込んでいた彼が口を開いた。

 

「は?何言ってんの?彼女ちゃんが取られそうになって怒っちゃってんの?」

 

「まぁ、怒っても良いんだぞ?」

 

腰に付けていた筒状の道具を右手に持ち彼は言葉を放つ。

 

「はったりかどうか…試してみるか?」

 

冷たかった。私の脅しや罵倒とはまるで違う冷たさだった。心も命すらも凍りつく様な…まるで人殺しの様な目をしていた。

 

「怒らせちゃった様ならごめんね?彼ったら、朝から少し嫌な事があって頭に血が上っちゃったの…だからさ、許してくれるかな?」

 

同じく彼の本質に触れたのか姉さんがフォローに入る。その横顔には一筋だけ汗が流れていた。取り巻き達を解散させて3人きりになれる場所に移動する。

 

「許すも何も…彼女に謝ったらどうなんですか?それとも、責めますか?私に全部押し付けたなって…」

 

「!!君、何者?」

 

その質問に賛同するように私も彼に視線を向ける。

 

「名前は比企谷八幡…銀河の彼方から来た………」

 

ぽつりぽつり、と自分の経歴を話す。宇宙から来た事、地球人だが宇宙に飛び出した事。今日は趣味の為に戻ってきた事。ジェダイという団体に属している事。

 

「にわかには信じがたいけど…嘘とも思えないわね」

 

「う〜〜ん、信じるとしてさ…一つ聞いてもいい?」

 

「どうぞ」

 

「どうして私の本音に気付いたの?」

 

「本音?」

 

私の反復に姉さんが頷く。

 

「俺のフォース・センス。簡単に言えば特殊能力なんですけど、それはある程度の考えを読み取る事。人だけじゃなくて動物も。例えば今雪ノ下姉は俺のコレに興味がある、とか」

 

「デタラメだね……」

 

「当たってるのね…」

 

その筒状の道具を持ち、スイッチを入れると光の刀身が不思議な音を出しながら出現した。

 

「当たればタダじゃ済まないと思ってくださいね」

 

姉さんと揃って唾を飲み込む。

姉さんはじゃあ、と言葉を続ける。

 

「私を宇宙に連れてってくれるかな」

 

「姉さん!?」

「ほう…」

 

「海外とかだと捕まると思って諦めてたけど…宇宙なら家の事なんて考えずに済むもんね」

 

社交的で完璧な姉も家の仕事に嫌気が差していた…その事に気付く。社交的ではない私に代わって姉さんは背負ってくれていたのだと思うと自分が嫌いになる。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

言っちゃった…頼っちゃった…得体の知れない人に。

 

「別に良いですけど…」

 

彼の了承も経て宇宙行きが確定する。

きっとこの提案で雪乃ちゃんは私の本音に気付き自己嫌悪に陥るだろう。

 

「雪ノ下…」

 

「何?」

 

「や、妹さんの方ね?分かってるでしょ?」

 

それにこの子、比企谷君は面白い子だ。中に抱えている物は私のより黒く重いだろう。それを知りたい好奇心があるのも理由の一つだ。

 

「何かしら…」

 

「お前も来い」

 

「何を言ってるのかしら?私には私の生活があるのよ?」

 

「黙って来い、6万3780円分の貸しがある。それを返すのに一々地球まで行く訳ないだろう」

 

強引だった。きっとほんの2、3時間での会話で雪乃ちゃんを理解したのだろう。ふぉーすせんすとかでは無く会話の中で。

 

「誘拐するのね…やっぱり私の体目当てじゃない」

 

「そうなるな、思わず美人2人誘拐する事になった」

 

「罪深いわよ、本当に、もう…」

 

雪乃ちゃんも、私も…チョロいね。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「どういう事だ?パダワン・ハチマン」

 

貨物船内でマスター・オビワンは頭を抑えていた。

 

「つい…」

 

「つい、で誘拐するな…!全く、連れてくにしても彼女達の生活はこれからどうするんだ?」

 

「彼女達の要望で俺の部屋に住み込みで働くらしいです…」

 

「ハチマンの部屋もこれから騒がしくなると思うと嬉しいやら悲しいやら」

 

「茶化すなアナキン。一応確認するが…惚れてないだろうな?」

 

「まさか」

 

ジェダイの掟とか、執着とか関係なくそんな心を持つはずがない。俺はマスター・サイフォが予言した戦争に勝たなくてはいけないのだから。そう思いながらオビワンに短く返し船を発進させる。

 

「ハチマン、僕とオビワンは少し休むよ。あの後沢山寄り道して歩いたから疲れた…今日は本当にありがとう」

 

「あぁ、付き合わせてすまなかったな」

 

休憩スペースに向かう2人を背中で感じていると両脇に攫ってきた2人が興味深そうにやって来る。

 

「座標はセットしたから後は待つだけだが…言葉が通じないのは不便だし…できるだけ教えるぞ」

 

サイフォに攫わせた日もこんな感じだったな〜と思いふけながら公用語から教える。

 

「3時間で覚えるのか…吸収早過ぎない?」

 

「あら、教えてなかったかしら?」

「自慢だけど頭いいんだよね〜、退屈させないでよね〜」

 

「とんでもないのを攫ったな…BD」

「ピポ…」

「充電ポートは死守してやるよ…」

 

こうして羨ましくも大変な美女2人を侍らせたパダワン生活が再スタートするのだった。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「エンジンは機首から離れると的がデカくなるよな…かつ機動力が高いのがいいよな」

 

「色んな同盟国から帰還したスターファイターの被弾箇所のデータを貰ってきたよ。参考にしよう」

 

「ミサイル対策にフレアをできるだけ搭載したいな…ブラスター砲は4門は欲しくなる…」

 

3人共有のガレージにて腕を組みながら各々の考えを共有している中、室内の中央にはある程度の骨組みを終えた戦闘機が鎮座していた。

 

「「「後はパーツなんだよな…」」」

 

「アナキンはパーツ集めはどうだ?」

 

「いいエンジンの目星は付いたよ…お金は次の任務で溜まるかな。アシャラドは?」

 

「今装甲を誠意製作中だ…完成までに必要なのは時間だな。ハチマンは?」

 

「故郷で良い資料を手に入れた…今『山猫』に制作依頼をして作ってもらってる。お得意様割引が適用されて金が余ったからアナキンの方に回せるぞ」

 

「だったら十分かな…作れるよ!」

 

とうとうこの時が来た。定食やで話し合ったあの時から作ってきたのがあと少しで完成しようとしている。

 

「勿論メインパイロット兼テストパイロットはハチマンだからね」

 

「俺か?」

 

「当たり前だろ、お前が提案して始めたんだからな!」

 

こりゃいつも以上に気合いを入れないとな…



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不名誉ジェダイ

やっぱマンダロリアンは面白いなあ!!


「やめろ!やめてくれ!!妻も子も居るんだ!金なら幾らでも払うから!」

 

「だったら、最初からこんなことをするべきじゃなかったんだ…あんたの天秤は家族より薄汚い欲に傾いたのが運の尽きだったな」

 

「あああ…あああぁぁぁ!!!」

 

「死ね」

 

白い輝きを放つ黒い刃は丸々太った異星人の首を跳ね飛ばした。焼けた断面からは血が出ない代わりに幾度となく嗅いだ異臭が鼻腔を突く。

 

「BD、周囲に警戒してくれ…帰るから」

 

「ピポッ!」

 

敬礼のようなポーズをとったBDは頭のセンサーを光らせる。それと同時に耳に付けていた通信機から音が出る。

 

『増援が来たよ、えーと5人かな?全員マンダロリアン。重武装で固めてるよ』

 

『援護が必要かしら?』

 

「いや、一人で迎え撃つ。観測頼みます」

 

『りょーかい』

 

『分かったわ』

 

入口からの扉が乱暴に開けられた音が鳴り響く。今いる部屋に入ってくるのはそう掛からないだろう。扉の目の前で俺は息を潜める。扉の前には5人分の足音が近付いてくる。

 

「ここに奴がいるんだnッ!!」

 

扉が吹き飛ばされる前にダークセーバーを扉越しに突き出すと予想通り敵の首に突き刺さったようだ。そのままだと蜂の巣になるのは必須だからセーバーを引き抜いて扉から距離をとる。

 

「テメェッ!!」

 

仲間が殺されたのに激高したのかバカ一人が扉を蹴破って入ってくる。それを見計らってソイツの首に腕を引っ掛けるように飛び付く。勢いでグリンと回るついでに近くにいる1人に蹴りを入れる。

 

「ゴブガギッ…!」

 

変な声と変な音を立てて一回転した首。着地し狼狽える1人に思い切り突進して他2人から距離をとる。ヘルメットの隙間に拳銃を突き付けて引き金を引く。

 

ヘルメットの中からスイカの弾けるような音がする。

 

「このぉ!!」

 

2人揃ってブラスターライフルを連射してくるも死体を盾にする。アーマーもある為貫通することは無いが衝撃が凄い。べスカーも無敵じゃないな。

 

「仲間3人も殺されたんだから大人しく引けばいいものをッ!!」

 

丁度打ち切ったのを見透かして遺体を両断して飛び出しサーベルで襲う。頭を掴んで首を切る。ナイフで応戦を試みる最後の一人をフォースで抑える。

 

「こ、このぉッ!!離せッ!」

 

「無理だな…」

 

そしてまた首を刎ねる。

 

「終わりました」

 

『了解、お陰で分離主義のタチの悪い政治家が居なくなり共和国の結び付きが強くなった。それで、君の頼みを聞こうか』

 

「ありがとうございます…パルパティーン議長」

 

通信を切る。一通りの掃除をして剥ぎ取ったマンダロリアン達の荷物を持ち、外に出るとレンタルしたビークルに乗った雪ノ下達が迎えに来た。

 

「お疲れ様、比企谷君。顔の血を拭きなさい、病気になるわよ」

 

「ありがとう、これを後で倉庫に入れてくれるか?」

 

「これは…マンダロリアンのアーマー?」

 

「あぁ、ベスカーは硬いからな…何かに再利用出来るかもしれない」

 

今日稼いだ金でやっとパーツが揃う…完成は今日になるだろう。

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「揃ったな…」

 

「やっとこの日が…!」

 

「泣くなアナキン!涙は完成した日まで取っておけ!」

 

「それじゃあ…組み立てるか」

 

一通りのパーツは揃った。ジェダイの服からエンジニア用のツナギを着て作業に取り掛かる。ボルトの一本に至るまでコストを度外視してロマンを追求した結果を今自分の手で組み立てていると考えると自然と込み上げてくるものがある。

 

「アナキン!ここの配線間違えてないよな?」

 

「うん、青い12って書かれた配線を赤い基盤の12って書かれた所に差し込むんだよ」

 

「サンキュー」

 

こういう機械に強いアナキンがいて本当に助かる。

 

「ハチマーン!エンジンとジェネレーターを取り付けるからクレーン操作頼むー!」

 

「はいよ」

 

アシャラドの底の無い明るさにはいつも助かる。

 

(どうか、この関係が続くと良いだろうな…)

 

「ハチマン!!少し右だ!!」

 

「す、すまん!」

 

「あはははは!ボーッとし過ぎだよ!」

 

「………//」

 

「皆お疲れ様ー!お昼持ってきたよー!」

 

新しい環境にやっと慣れてきた自称メイドの陽乃さんと巻き込まれたであろうメイド姿の雪乃が昼食を持ってくる。

 

「おっ!ありがとうございまーす!」

 

「どうも…」

 

明るく受け取るアシャラドとややパドメ議員以外の美女には興味の無いアナキンが受け取る。

 

「比企谷君もどうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

手袋を外して食べやすいよう作られたサンドイッチを頬張る。

 

「ねぇ、あのパーツは何?円盤みたいなの」

 

「ターボニック・ヴェンチュリ・パワー・アシュミレーター。最新のパーツで取り付ければピュー!銀河で12を争うくらい速くなれるよ」

 

それに、とアナキンは続ける。

 

「改造した亜光速スラスターと組み合わせてるからその気になれば追い付ける船なんて無いね」

 

「パイロットの腕が試されるピーキーすぎる機体になるけどな」

 

そこ辺りのパーツをアナキンは血眼になって集めていたのだから熱の入り具合が半端じゃない。

 

「それじゃ、続きやるぞ!」

 

「りょーかい!」

 

アナキンとアシャラドに続き取り掛かろうとすると雪乃に袖を引っ張られて止められる。

 

「?、どうした?」

 

「顔に煤が付いてるわよ」

 

「あとで纏めて洗うのにムグッ!」

 

反論しようとした所ハンカチで無理やり拭われる。

 

「行ってらっしゃい、比企谷君」

 

「あ、あぁ」

 

ヒューヒューと遠目からからかってくる2人に上から不要なナットをフォースで頭上から落として作業場に戻る。

 

「「いったぁ!!?」」

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「「「で、出来た…!」」」

 

夜も更けた頃俺たち5人の目の前には完成されたスターファイター。照明で輝く黒い外装に所々に走る黄色いライン。そのラインに被るように設置された小さなレール。その先の船頭には機銃が4門と丸い眼球の様な装置が10個程着いていた。

 

「テスト飛行はどうするの?」

 

「はっ、何万回シミュレートしたと思ってんスか…俺は帰るぞ、流石に疲れた…明日の訓練に遅れたらマスター・マリコスにドヤされちまう」

 

「ハチマン…僕もそろそろ帰るよ…明日は任務なんだ。ハチマンも任務でしょう?早く寝ときなよ…ふあぁ」

 

どっと疲れがやって来たのか目を擦る2人を見送って再びガレージに戻る。

 

「子供の頃から考えてたんでしょ?感想は?」

 

「溢れんばかりの達成感と…目標が一つ無くなった喪失感…早く飛ばしたい欲求…位ですかね。後疲れた…」

 

「ふーーん、じゃあじゃあ乗せてよ!」

 

「聞こえませんでした?俺、疲れたんですよ?」

 

「いーじゃない!フォースと根性でなんとかなさいよ」

 

かなりの横暴に困惑しつつ雪乃に目をやると

 

「わ、私も乗りたいと思うのだけれど…ダメかしら」

 

「はーい民主主義の勝ちー!」

 

「ま、まだだ!まだBDがいる!どうするBD?」

 

「ピポ!(乗りたいでやんす!)」

 

「うごごご…少数意見の尊重を求める…!」

 

「「「却下(ぴぽ)」」」

 

鍵であるBDを専用の台座にセットしてエンジンを点火させる。エンジンが綺麗に回る音が振動で伝わる。操縦席の両隣には複座が取り付けられておりそこに陽乃さんと雪乃が座る。

 

「じゃあ…飛ばしますか」

 

「レッツゴーーー!!」

「ご、ゴー…」

 

リモコンで開いたガレージを飛び出し上昇する。旋回速度も加速もかなり良く、視界も悪くない。

 

「ヒャーー!速い速ーーーい!」

「姉さん、少し静かにして頂戴、比企谷君が集中できないでしょ」

 

「BD、何かあったら必ず知らせろよ」

 

「ピポ!」

 

加速と上昇を繰り返し宇宙まで飛び出る。何回も見てきたけど今夜の星空は何か特別な感じがする。

 

「綺麗だ…」

 

「「あ、ありがとう…///」」

 

「何も違っちゃいないけども!今俺が見てるのは星空ね?」

 

「「「…………」」」

 

スカイヘッドのエンジンを切り、後ろのコルサントがさんさんと光る中俺達は無数に広がる星空を眺めていた。

 

「ねぇ比企谷君…」

 

「どうかしたか?」

 

「比企谷君の前マスターが言うには戦争が起こるのよね?種族単位のじゃなくて星同士のが…」

 

雪乃が不安そうな声で語りかけてくる。

 

「そうなれば比企谷君も徴兵されるのよね?」

 

「そうだな…その為に今まで生きてきた訳だし…その為にコイツを作ったから。まぁ戦争が起こらないのが1番なんだろうけどな」

 

陽乃さんが袖を静かに掴む。

 

「ちゃんと帰って来る…よね?」

 

「分かりませんよ…戦争ですし」

 

「「「………」」」

 

「こんな綺麗な星空があるのに戦争しようとする奴がいるなんてな…信じられない」

 

「悲しい時代がやって来るのね」

 

「だからこそ今を生きるんじゃないの?いつ死ぬかも分からないなら未来に過去を生きた証を残すのが私達の役目なのかも」

 

「生きた証…」

 

「比企谷君のマスターさんも死期を悟ったから君に託したのかもね…重すぎる使命だけど…」

 

「…………」

 

「重さで倒れそうになったら頼って頂戴、私も姉さんも喜んで力になるわ」

 

「…そうさせてもらおう」

 

エンジンを付けて家に戻ろう。

 

「ねぇ比企谷君、次の目標とか何かある?」

 

「宇宙戦艦ヤマトを作りたいなーって」

 

「怒られるわよ?」

 

やっぱりダメかな

 

━━━━━━━━━━━━━━━

 

「あ、明日休みだ…」

 

「わしもだ」

 

「よし来た、飲みに行こうぜ。久々に愚痴りたくなってきた」

 

「わしの部隊も連れてっていいか?」

 

「別にいいぞ、たまにはリラックスしても許されるだろう」

 

「て事だが、お主らはどうするか?」

 

「「「「行きまーーーす!!」」」」

 

「ならわしに続けぇ〜!!」

 

どこか聞き覚えのある声をした黒い男と隣に立つ俺。そして後ろを着いてくる白い兵隊のような人たち。

 

 

「はっ!!!」

 

目を開けるとジェダイ・オーダーの大庭。マスター・ウィンドゥの勧めで久しぶりの瞑想に耽ったがとんでもないのを見せられた。

 

「やぁ、ヒキガヤさん」

 

「どうも、パウワン」

 

ジェダイ・テンプルガードのパウワンが話しかけてくる。

 

「良かったらお昼でもどうかな?」

 

「構わないぞ…」

 

彼とはジェダイ・アーカイブの閲覧を強く拒まれて傷心していた所を模写したホロクロンの情報を見せた所仲良くなった。たまに食堂や大庭でたまに飯を食うのだ。

 

「テンプルガードってダブルセーバーじゃないとダメなのか?」

 

「そうですね、基本全員ダブルセーバーを採用しています」

 

「へ〜……なあパウワンさん」

 

「どうかしましたか?」

 

「ダブルセーバーの使い方…教えてくれる?」

 

「ええ!勿論です!未来のジェダイに指導できるのは光栄です!でもよろしいのですか?マスター以外の教えを受けても」

 

「幅広い戦術を得る為には必ずしも1つの教えだけが絶対という訳じゃない」

 

名言みたいですね、と微笑むパウワンと訓練室に入りダブルセーバーの心得や扱い方を一通り教えてもらう。これまた意外と難しい。

 

「あ、もう昼休憩が終わりですね、今日は有意義な時間をありがとうございました」

 

「おう、また頼むかもしれないから頼んだ」

 

元気に返事をしたパウワンを見送り寺院に戻る。

といっても特に仕事は無くただひたすら修行をする。

飛んでくるポッドに目隠しして狙撃又は斬撃を繰り出したり瞑想をして自身の戦術について考え直す。

 

「ピポポ!!」

 

「どうしたBD」

 

電子音と共にホログラムで投影された設計図。

自身をコアとした歩行戦車の設計案があった。

 

「ダメだBD、俺にはあってもお前に戦う理由はない」

 

「ピーポポー、ポポピパ!!」

 

「べスカーの流用…しかし加工法が全く分からんのだが…」

 

「ポピピッピ」

 

「1つアテがある?…やめろ、あの人はマズイ」

 

「ピーポー?」

 

「ジャンゴ・フェットか…でもあの人にしか頼めないんだよな」



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