廻る『世界』 (一般人A)
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あらすじという名のプロローグ

まず、この作品に目を止めさらに見て下さる方々に最大限の感謝を。
しかしながら、こちらはあくまでもプロローグです。それをご理解の上でご覧ください。処女作ですので…


それは長きに渡るジョースター家とDIOとの因縁の始まり。  

 

 

 

 

 稲光が空を駆け雷鳴が鳴り響き雨礫が激しく打ちつける中、ぬかるみに肢を取られた馬が雄叫びを上げながら崩れ落ち、馬車は幽谷に落ちる。御者は尖った岩々が後頭部を貫いており絶命していた。

 馬車に乗っていたのはイギリスの貴族のジョースター家の現当主のジョージ・ジョースターとその妻メアリー。メアリーは美人薄命を体現するかのように息を既に引き取っていた。しかしその手には生まれて間もない赤ん坊が抱かれており、それは女性が庇ったことを意味していた。

 事故を発見したダリオ・ブランドーは発見するや否や、財布や他の金品を盗む。自身を正当化し行うこの行動はのちにその息子ディオの言う「醜くってずる賢い」行為そのものだった。だが、幸運にもせっせと指輪を取る行為は目を覚ましたジョースター卿の目には自身を介抱してくれたと映ったのだ。それがジョースター卿だけでなく一族の不幸の始まりとは露知らず、ジョースター卿は彼を手厚く扱った。

 これから始まるジョナサン、ジョセフ、その孫の承太郎、そして承太郎の娘の徐倫と続く因縁はここから始まったのだった。

 

 

そして約120年後の

1988年1月17日 エジプト/カイロ

カスル・アル・ナイル橋

 

「ナ、ナニィィ、バ、バカなぁこのDIOが

 このDIOがァァ!!!!!!!!!!!」

橋上灯に照らされた燻べ顔と共に響く夜の街を劈く悲鳴。その吸血鬼の体は爆散し辺りには血の雨が降る。

 この日ジョースター一行とジョセフの孫〈空条承太郎〉によって長きにわたるDIOとの因縁は断たれた…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               かに思われていた。

 

 

 

 

 

1984年 大西洋アフリカ沖カナリア諸島

 

 海面で揺れ動く一艘のクルーザーには三人の男がいた。少ない人数にも関わらず騒然たる状況にあるのには理由があった。

 

「や、やった遂に引き上げたぞ。百年前に沈んだ宝の箱を‼︎」

 

 激しい勢いで飛び散る水滴を伴いながら引き上げられたその鉄の箱は、海藻とフジツボが多数付着していながらもそれらを感じさせないほど綺麗な状態を保っていた。

 太陽光の反射で輝くその箱を発見した男達はこじ開けようと試みる。しかし内側から鍵がかけられており開けることができない。

 

「おい、バーナー持ってこいバーナー」

 

 男は内側から鍵がかけられていたことを不思議に思うが、夕暮れ時で開錠できなくなることを恐れているのか少し強い口調で指示する。仰がれた男は気忙しく対応し、アセチレンバーナーを渡した。

 一人の男は箱を固定しその瞬間を、その隣の男は怒号を飛ばし急かすようにバーナーで焼き開ける時を待った。

 そして男達はその箱を開けてしまった。いや

開けると定められていたのかもしれない。

〈DIO〉と書かれたその箱を…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハハハハハハハーーーーッ」

けたたましい笑い声が重い空気の中一点の曇りもない星々が輝く空に響き渡る。その空はまるで悪の帝王の復活を祝福しているようだった

 

 

 

               To be continued…




短めで、読点の位置もぐちゃぐちゃです。単調な文章ですが次回も見て下さると作者が喜びます。誤字脱字についての報告はいつでも受け付けております。



 

次回作は承太郎のオラオラでどこかに吹き飛びました。


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レール

文章がぐちゃぐちゃで自分で読んでて酷いと思った今日この頃


いつだっだだろうか復活に歓喜したのは、

いつだっだだろうか違和感を感じ始めたのは、

いつだっだだろうか再び目覚めることに恐怖を覚えたのは……………

 

 

 

 目が覚める

 

 憎っくきジョースターの末裔である承太郎の手によって殺された私は再び目覚めた。それも変わりのないだだっ広い海上で。

 私は何者かにもう一度機会を与えてくれたことに対して我が人生において初めて感謝した。だがそれと同時に、その何者かが私をチェスの

ポーンの駒のように動かすことに憤りを感じた。いずれその座から引き摺り下ろすと。

 

 

 

今でも決意したことをはっきりと覚えている。

 

 

 

 

 目が覚める

 

 三度目の目覚めに私は最初に疑問を抱く。 

「これはなんだ」と「この復活現象はなんだ」と、それは嬉しいことに変わりはないが何者かになんの目的があるのか、どんな利益があるのか疑問は尽きなかった。しかし、そんなことよりも承太郎に対しての怒りが疑問を上回り、考えは脳の奥深くに沈んでいった。

 

 

目が覚める

 

 キリのいい50回目の目覚め。いい加減ウンザリしてきたところだ。承太郎に殺され続けることが繰り返された世界はまるで殺されることが運命づけられているようで少し気味が悪い。あの小僧に私の運命でも見てもらおうか、あいにく小僧は既に再起不能となっているので次回の目覚めになりそうだがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は天国へ行かなくてはならない。真の勝利者に頂点に立たなければならない。人間が安心を得るために生きるように、私も安心を得、ほんのちっぽけな恐怖をも持たぬ存在になるために生きる。私の人生は恐怖を克服するため人生であると言える、それは後にも先にも変わることはないだろう。いくら吸血鬼の不死身の肉体を得ても、最強のスタンドを得ても、莫大な富を得ても、太陽やジョースター家といった天敵のいる世界では安心した生活を送れる可能性は皆無に等しい。だからこそ私は天国へ行かなくてはならない。

 

 

 目が覚める

 

 今回もエンヤ婆が提案が挙げられる。ジョセフの娘ホリィの暗殺だ。これでこの質問も計70回目となるが、私は以前と同じ解答を返す。

 女の力を馬鹿にしては危険である。私の人生の中で幾度となく邪魔をするのはいつもエリナのような聖女だった。彼女のような強き者こそ敵に回しては厄介なのだから。それに大切なものの死はジョースター一行の士気を下げるどころかジョースターを成長させ、助長させる結果になることが目に見えているからだ。

 私の考えに納得したエンヤ婆はズルズルと服を引きずりながら去っていった。

 

 

 目が覚める

 

 何故今まで忘れていたのか、自身の愚かさに憤慨した。小僧に運命を見てもらうのではなかったのか、自然と目つきが鋭くなる。私は小僧に聞くために足を早めた。

 小僧を見つけたどうやら兄と一緒のようだ、

声をかける。弟の名はボインゴ、兄はオインゴというらしい。部下の名までも忘れているとは、目覚めるたびに記憶がすり減っているのだろうか。

 ボインゴのスタンド《トト神》は本人曰く 

「本体の近くで起こる運命を100%の確率で未来予知し、漫画に映し出す」能力らしい、《トト神》は古代エジプト神話の知恵の神であり、時を支配する力を持っており、我がスタンド『世界』に近しいものを感じる。

 よくよく考えてみると違和感を覚える。何故私はボインゴに自身の運命について聞くことを忘れていたのか、これはただ私が忘れていたとも取れるが、重要なのは次で何故この復活現象に繰り返された世界について私は誰にも話さなかったのか、疑問が尽きることはない、確かにエンヤ婆等に話そうものならひと蹴りされて話は終わりにされそうだが、プッチは話せば少しは信じてくれるのではないだろうか。我ながら浅はかな考えではあるが、少しでもこの情報を共有しておきたいのだと心に言い聞かせておく。

 

 

 結局ボインゴとは話せなかったが、プッチとの対談で良い情報が入った。いや、捉え方によっては悪い情報とも言えるものだが。私はプッチと話せなかった。対談はできたが、繰り返されている世界について話せなかったのだ。究極的に考えれば話せると言える。しかし話そうとすると強烈なまでの嫌悪感を覚えるのだ。脳をシェイクされているような吐き気を催す嫌悪感。これは何者かが繰り返されている世界(これからは『ループ』と略称する)に対しての他者への情報伝達を阻止していると捉えられる。

 

 

 そして私はたどり着いてしまった。その恐ろしい考えに、このDIOは総毛立ち慄然とした。

 

 

 もしもボインゴのスタンドが予知ではなく、かつて起こった事を知る能力だとしたら、未来は未来であると同時に過去であったとしたら、それはどんな強力なスタンドを持っていたとしても変えられない。私がたとえ世界を支配し、どれほど強くなろうとも、結局のところそれはあらかじめ仕掛けられたストーリーでしかなく、我々はただの演者で、《神》の動かす操り人形なのではないかと、私はどうすれば良いのかわからなかった。

 この世界は繰り返されている、ループしている。廻り続けている。私が海底から目覚め空気を吸い、そして承太郎に殺される事象が廻っている。私が勝利することは決してない、真の勝利を願うことすらできない。運命が円環を成し、循環することを体験し続けることは恐怖でしかなかった。

 

 

 

この時に既に私が頂点に立つ資格などなかったのだろう。向上心を失った私はただの生命を宿すただ人形として動くだけの死体だったのだ。

  

 

 

目が覚める

 

 吸血鬼にとって瞬き程度の時間であっても、塵が積れば山になるように積もるにつれ膨大な時間となる。

 考える時間はいくらでもあった、何故繰り返しているのか自問自答する。しかしいずれの時も答えは出ず殺され、再び目覚め、自問自答を繰り返す日々が続いていている。

 

 

「じ、承太郎。ワシの方へ近づくんじゃあない

 ヤツのスタンドの正体は時間じゃ、時間を止

 めるスタンドなんじゃ‼︎」

 

 額から汗を流しながら承太郎に向かって老体似合わぬ声で叫ぶジョセフ。DIOの射程距離内という名の支配下に置かれる中で放った言葉は承太郎に確かに届いた。

 

 

 回想に耽る中で耳に届くジョセフの声。おそらく承太郎に我がスタンド能力について教えているのだろう。私がジョセフとその孫の会話を断ち切ることはできない。その会話が定められた《運命》であるからだ。私が死ぬという真実に到達することはない、私達は人形で物語の登場人物。物語は繰り返し読まれ、その都度私達は演じ続ける。記憶があるのは私だけ、いつまでも終わらない因縁を再び断たれるため私は今回も……

 

 

 

          -『世界』-

 

ーー

ーーー

ーーーーー

 

 

 

 ジジイが死んだ。この旅の中で俺は何人もの刺客を再起不能に落としてきたが、目の前でしかも血族が死ぬというのは経験したことがなかった。周囲に靄がかかり辺りが薄暗くなり、人々が三々五々に散らばる中俺はこの元凶を睨む。

 

「花京院のヤツは既に始末してやった」

 

 諭すようでどこか馬鹿にした口調で語るDIOに俺の拳に力が入るのを感じる。花京院はクレバーで一見物静かなヤツだが、寛大で思いやりのある仲間だ。花京院との思い出が脳裏を駆けまわる。

 

「ポルナレフはどこに潜んでいるかは知らんが

 承太郎、のこりはキサマただ一人だ。」

 

 俺に花京院のような気高い精神はないと思う。だがしっかりとお前のバトンを取らせてもらうぜ、花京院。

 

「どうするというのだ?敗北の二文字が決まったその運命を、頼れる奴もいないこの状況を、どう打破するというのだ、承太郎ォ…」

 

 前へと踏み出した俺にさっきとは異なる口調で語りかけるDIO。動揺を誘っているのだろうと当てをつけた、どうやらDIOは予想以上に慎重だったようだ。

 それにその問いに対しての解答は俺の中では既に出ている。

 

「てめぇが何考えてんのかは知りもしねぇが、運命ってぇのは変えられない、変えられるって話しじゃなくてだな、運命ってのは自らの意思で切り開いて、堂々と突き進むものだぜDIO」

 

 少しの既視感を感じる言葉。しかしそれは事実だ。親が敷いたレールの上を進むことは確かに安定した道のりだろう、けれどもそれじゃあただの人形だ、何より脱線した時にいつまでも親の力を借りれるわけじゃないんでな。ジジイの場合は娘離れが済んでなかったらしいが。

 いずれは自らのレールで進んで、途中の壁をぶっ壊さなきゃならねぇ。ただそれが今だっただけの話だ。だから俺は…

 

「テメェをブチのめして俺は突き進む‼︎」

 

 DIOの目が変わった気がした。

 

               To be continued…

 




プロット書いててこの出来ってマジか


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変化

課題の所為で投稿が遅れてしまいました。すいません。
書きながら疑問に思ったんですけど承太郎とDIOって最終決戦の際にそら飛んでますよねあれ、OVAの方ではスタンドが地面を蹴って飛んでるんですけどそれにしても飛びすぎですよね。やっぱり『凄み』が原因なんでしょうか。


 奴の動きと呼応する様に私の足が動く。意識せずとも前へと進み、スタンドを出現させる。

承太郎とはこのループする世界の中で数百回、数千回と闘い続けた。承太郎は知らぬだろうが私は奇妙なことにジョナサンと似た尊敬の念まで承太郎に感じている。その青みがかった瞳は炯眼としており、気後れなどは一切感じさせない。

 

 どんな強力なスタンドでも運命を、世界を否定することはできないというのに、何故そこまで堂々としていられるのだろうか。貴様が私と同じ立場に立ったとしても同じ言葉を言えるのか。徐々に承太郎との距離は狭まっていく。

 だが不思議なことに私には承太郎やジョナサンが否定している姿が見えない。同じ言葉をちゃっちゃと言う姿が容易に想像できる。恐怖に屈服しない勇気と他人を思いやる優しさ、いかなる困難をも跳ね除ける精神力、所謂『黄金の精神』でも持っているのだろう。自身の宿命を潔く受け入れながらも抗うその矛盾した意思。私の人間を否定することとは正反対の肯定……

 どうやら私にも臭い人間らしい言葉を吐く程度の人間らしさは持っていたらしい。

 

 

 

 たとえ『運命の奴隷』であってもいい。だが

誓おう抗おうと。身体が朽ちたとしても、この世界から私という存在がなくなろうとも、全てが無駄になろうとも、抗うと…………

 

 

ーー

ーーー

ーーーーー

 

「近づかなきゃテメーをブチのめせないんでな」

 

 石畳と靴が触れメトロノームのように音楽を奏でる。俺は思考を早める。DIOのスタンド能力は時間、時間を止めるスタンド。それはジジイが伝えてくれたバトン。恐ろしいぜ、もしも俺たちが一斉にDIOへ攻勢に出ていたならば、死んでいただろうな。しかしヤベェな、時間を止めるといっても何秒だ?いや最低でも3秒ってところか。それ以上止められるならジジイどころか俺もまとめて始末されているだろうからな。

 しかしなどうする、このまま何も考えずに突っ走って攻勢に出たところで俺の首が飛ぶだけだ。やれやれ厄介なスタンドだぜ。

 時間が止められるってことは自分だけの世界を創れるってことだ。つまり俺がその時間に、世界に入門して来たと誤認させることが出来れば、少しは時間を稼げるかもしれねぇ。時間を止められる相手に時間を稼ぐってのはおかしなもんだが。

 

 

 

───そしてその思考直後 即発‼︎────

 

 

 

 

承太郎のスタープラチナがDIOの顔面に叩き込もうと拳を振る。だがそれよりも早く『世界』の拳が承太郎の頭部目掛けて振り下ろされる。承太郎の脳裏に『死』の一文字が浮かぶ。

 ところがそれは人間に残る野生の本能か、瞬時に行動を起こし『世界』の拳をスタープラチナで防ぐ。両者とも油断はしない。孤軍奮闘の闘いである。

 

 

 

 

 危うく殺られるところだったぜ。だがわかったことがある。それはDIOのスタンドは時を止めなくとも俺のスタンドと張り合えるほどのパワーとスピードを、遠距離には行けないがそれを補う精密的な動作力を持っていること、そしてなにより重要なのは俺と同じタイプのスタンドであることだ。このタイプのスタンドは今までの敵の中でも見たことがなかった。

 つまりだ、俺のスタンドは特殊な能力を持ってないスタンドかと思っていたが、あいつと同じ時を止めれる可能性があるということだ。しかし俺は未だに時が止まった感覚を感じれてねぇ。感覚を掴むことができたなら勝利の目が見えてくるんだが。こればかりはあいつが慢心してくれることを祈るしかねぇ、挑発に乗って頭に血が上ってくれればいいが……

 

 

「きさまよりどのくらい『世界』のスタンドパワーが強いかちょいとためしてみたかったが」

 DIOの傲慢らしさが滲み出たように腕を組み、横柄な口調で話す。嘲笑う様子は一見油断を感じさせるが、一切の隙はない。

 

「ま、ためすほどでもなかったようだがな」

 

 

 

「ほぅ、俺の目が腐ってなきゃ俺にはためすってよりかは殺すように見えたんだが、随分と臆病だなDIOさんよ」

 承太郎も負けじと口を開き口論する。口論の中、承太郎の脳内ではDIOを倒すために必要な条件が箇条書きに書かれる。

 

 俺がDIOに勝つ為に必要なことは3つ。DIOが能力を発動させ時間が止まる感覚を覚え、そして尚且つその停止時間に生き残ること。停止時間内を生き延びる為にDIOの世界に俺が入門して来たと誤認させることだ。成功するか失敗するかはわからねぇ、だがそんなことはどうでもいい成功させる。成功しなきゃ死ぬだけだからな。

 

「ふん殺すように見えただと? ただ私はここで始末できれば僥倖だっただけだよ。ジョースターの血統は侮れないからな、まぁ所詮は質の良い猿にしか過ぎんがな」

 

「しかしどうしてこうジョースター家というのはここまで負けず嫌いなのだ。残念だがそんなわかりやすい挑発には私は乗らんぞ承太郎ォ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

 このループには一つの大きな特徴がある。それは運命の流れに深く関係のない事柄は、本来の流れを無視して行動できるという特徴だ。

 これはループについて「言及してはいけない」条件があることと同じく一種のルールの様なものだろう。例を挙げるならば先程の承太郎と私の掛け合いだ。本来の流れ、一巡目の世界では承太郎と私は互いに煽り合いをした。この『煽り合い』が運命の流れである。要するに『煽り合い』という流れから逸脱する行為ができないのだ。

 このルールを守ればある程度の行動と会話が可能であるのだ。しかし私は抗うと決めたのだ、鮭が川の上流に向かうように運命の流れに逆らうと。もちろんルールがなければ嬉しいことこの上ないがな。

 

 

 

「「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄   無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」」」

「「「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ」」」

 激しいラッシュ。それは別に強大なスタンドパワーの影響で宙に浮くわけでもないのにも関わらず、まるで浮いているように見えてしまう。互いの魂のぶつかり合いがそう見させているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 しかしながら以前と違うな。磁石はつけられているだろうが、私の身体には傷一つ付かん。それにこの目でスタープラチナの拳の動きが少し読める。忘れていたな、久々に感じるぞ闘いの高揚感を。フフフ運命への反骨精神が私の力の糧になっている感触がある。今に見ていろ承太郎、貴様を今度こそ完膚なきまでに殺してやろう。

 

 

「「「無駄無駄無駄無駄無駄ァーッ」」」

 ボディに『世界』の一撃がヒットし、血反吐を吐き、大きく仰反る承太郎。DIOは追撃を喰らわそうとするがそれを許す承太郎ではなかった。この間数秒の攻防である。

 承太郎は平静さを保てないでいた。それはDIOがなんらかの思量を働かせていたことに感づいたからでもあったが、最もな原因は仲間の死であった。DIOに会うことも叶わなかったアブドゥルとイギー、抵抗虚しくも殺されたであろう花京院、そして祖父ジョセフの死。背中に背負う斃れた仲間達の魂が承太郎に重くのしかかっていたのだ。

 

 

「「「(油断はせん!)───『世界』───

      時よ止まれェーーーーーッ」」」

 世界から音が消えた。車が走る音や空気を風が切り裂く音も聞こえない無音のDIOだけの世界である。

 

 

 

 

「フフフ、承太郎貴様「同じタイプのスタンド」などと抜かしていたな」

「この世界の中で見えていようと聞こえていようと関係はないが……」

 DIOは承太郎の右手に自身の左手を近づける。すると承太郎の右手が動いたが、DIOの顔に動揺の二文字は存在していなかった。それは彼が承太郎が動けないと知っているからに他ならない。

 

「ラッシュ比べの際に私の手に磁石をつけていたな、自身の手の磁石と反応する強力なヤツを

仕込んでいたんだよなぁ承太郎ォ」 

 承太郎にその死神の声は聞こえない。策が見破られていることに気づいていない。そして彼の願いは儚く散った。 

 

「忌々しき承太郎よ、さらばだ」

 『世界』の鋭い蹴りが承太郎の腰椎めがけて放たれた。

 

 

 

 

 

 

「そして時は動き出す」

 解除と同時に承太郎は地面に叩きつけられる。地面には一つのクレーターが出来上がった。煙が舞い上がる中DIOはただ一点を見つめている。確実に殺したと思いながらもどこか不安を覚えているのは、今までの経験ゆえである。そして晴れて来た煙から見えたのは承太郎が確かに足を地につき立ち上がる姿だった。

 

 

 

 やはり死んでいなかったか。額に汗一つかかずに言い切れるのは吸血鬼ゆえか、承太郎がこの程度で死なないと知ってゆえなのか、DIOは考える。自身が本来の流れから異なる行動を取ったから承太郎も何かしらの異なる行動を取ったのではないかと。物語の終焉が決まった舞台でアクシデントが起こり演者がアドリブで物語を修正する様に、世界が運命通りにことが運ぶ様に世界の意思が働いたのではないかとDIOは考えた。

 

ーー

ーーー

ーーーーー

 

 

「見えていたのか」

 

 DIOが問いかけてくるがその言葉は承太郎には届かなかった。何故俺は生きているんだ。俺は間違いなくDIOに腰椎を蹴られた。DIOのスタンドパワーは俺のスタンドと同じかそれ以上だ。威力は俺の腰椎ごとへし折るには十分な筈、だが俺の身体は骨が一二本折れた程度で殺されちゃいねぇ。

 当初の目的の時間が止められた感覚は覚えられ、停止時間内を生き延びることもできた。このことも重要だが、それよりも何故生き延びれたかが重要だ。この理由が知れればDIOへの勝利にまた一歩近づける。

 

「見えているのかと聞いているのだ承太郎ォ」

 怒鳴り声で承太郎に詰め寄るにも関わらず覇気が感じられないのは、DIOも所詮聞いても意味がないと知っているからだろう。

 

「さあな、なんのことだかわからないなDIO」

 そう言うと承太郎はスタンドを出現させ、地面を蹴らせる。DIOから遠くへと離れるようにと。これは逃げたのではない、戦略的撤退である。

 

 

 

 

 

 脳が焼き切れそうなまでに思考を回転させ承太郎が至った答えそれは『無意識のうちにスタープラチナが守っていた』という現実味のないものであった。

 いい加減不味いな。DIOが近づいて来ている。もう少し近づかれたら間違いなく時を止められるだろう。しかし思いついたはいいもののいかんせん信じれねぇな。無意識のうちにスタープラチナが行動したことなんて今までで一度もなかった筈だ。だがこいつが一番辻褄が合う。残念なことにDIOに勝てる一歩もクソもなかったがな。

 助かったのは僥倖だったがもういい。感覚は覚えた。一瞬、パンチ一発分だけだろうが動ける。間違いねぇそう断言できる。根拠とかそうゆうのじゃなくて確固たる自信がある。作戦は立てた。上手くいくそう信じるぜ。

 

 

 

「追いついたぞ承太郎ォ‼︎──『世界』──止まれい時よォーーーーーーッ」

 

 

ーーーーー

ーーー

ーー

 

 奇妙な小僧よ承太郎。齢約17程度のガキがこの私と闘いそして勝ち続けている。こいつの青春が私との闘いで埋められると考えると笑いが出るな。思えばジョナサンと私の闘いも青春であった。ジョナサンとの闘いで私はさまざまな教訓を得た。ジョースター家の人間は爆発力を持っている。たとえ勝ったと確信してもなお油断できないものをもっているのだ。舐めてはならない、承太郎よ貴様の腹を貫かせてもらうぞ!!

 

 『世界』の一撃が承太郎の腹部へと吸い込まれた。しかしDIO思惑通りとはいかなかった。

 

「「「な、ナニィーーーーーッッ」」」

 DIOは驚く。承太郎は時が止まる前からスタープラチナを服の下に出現させており、『世界』の一撃を見事防いだのだ。DIOが気づくと同時に承太郎が動いた。スタープラチナがお返しとばかりにDIOの腹部へと強打を浴びせた。そしてDIOは大きく吹き飛ぶ。DIOは読み違えてしまったのだ、知っていたにも関わらず承太郎が闘いの中で急速に成長していることを。

 長い闘いはまだ始まったばかりだ。

 

            To be continued…




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