水月のヒーローアカデミア (ヒバナ)
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U.A.FILE/SPECIAL:雨宮水月

名前:雨宮水月

個性:水

誕生日:8月1日

身長:170cm

血液型:B型

出身地:愛知県

好きなもの:甘いもの、オシャレ

性格:カワイイ系男子

入試実技:1位

個性把握テスト:1位

CV:村瀬歩?

 

人物

カワイイを信条とする男子。基本誰にでもフレンドリーに接する。そのためあまり人を嫌わないが、清潔感がない人は苦手。

一人称は「僕」で言動は明るい(芦戸みたいな)。だが、敵と対峙する際はその明るさも鳴りを潜め冷静に対処する。

尚本人のセンスも含めて様々な部分で姉の柚月の影響(英才教育)を受けている。

目上以外の人を呼ぶときは「〇〇(なまえ)ちゃん」と呼ぶ。

 

外見

肩までかかるセミロングで水色の髪を三つ編みポニーテールにしているが、気分によって髪型を変えている。

髪と目が水色(遺伝)で、服装のカラーリングも青系統にしている。

ミスコン優勝者の姉譲りの美形でカワイイお顔。たまに女の子と間違われる。自分の顔がいいことを自覚して(自覚しないことは水月の顔が最高にカワイイと言っている姉の冒涜になる)おり、それを最大限生かせるファッションやメイクを日々研究している。

私服はボーイッシュ系ファッションをメインに、たまにフェミニン系も着ている。私服を着ていると大体女の子と間違われ、これまで何度かスカウトを受けた。

 

個性「水」

水を生み出し、水を操り、水を吸収する。

生み出せる量は無際限であり、ほぼ不可なく生成できる。生み出すときは基本体から15cmほど離れたところから発生させるように生み出すが、体内から水を生成しているわけではない(水の出どころは不明)。そのため、体からある程度離れたところから生み出すこともできるが、体から1mくらいまでが限度。

 

水の操作は量が少ないほど精密に操作できる。コップ1杯くらいの量なら指より精密に操作できる。

操作できる量には許容上限があり、それを超過すると操作してる間体力をごっそり消耗してえげつないほど疲れる。許容上限はバス2台分ほどの体積。

また、生成した水以外の水も操れるが、コーラやファンタなど炭酸水は現状ムリ。

 

吸収はよほど汚染された水じゃない限りはいくらでも吸収できる。しかし、吸収と言っても体内に水が入っていく感じはしないため、本当に吸収なのかは自分でも微妙。

 

 

ヒーローコスチュームα

青いノースリーブに二の腕から手の甲までを覆う長袖(要は肩出し)、スパッツとニーソックスに腿から下を切り取った感じのロングスカートとショートブーツ。

これは姉の柚月が水月のために最高傑作としてデザインしたコスチュームであり、多少柚月の性癖が入っている(作者は「キングダムハーツのアクアの衣装を見たとき『これだ!』と思いました」と言っているが、別段作者の性癖というわけではない)。

 

 



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U.A.FILE/SPECIAL ver.2:雨宮水月

名前:雨宮水月

 

【挿絵表示】

 

個性:アナザー・ワン・フォー・オール

 

ヒーロー名:アクア

 

誕生日:8月1日

 

身長:172cm

 

血液型:B型

 

出身地:愛知県

 

好きなもの:甘いもの、オシャレ

 

性格:カワイイ系?男子

 

雄英体育祭1年生の部:2位

 

1学期期末テスト筆記:1位

 

CV:村瀬歩?

 

 

人物

かわいらしい顔立ちに、水色の髪をポニーテールにしている少年。

 

入学当初は割とやたらめったらにいろんな人とワイワイ話していたが、様々なことを経験し、良い感じに落ち着いた。

 

それでもB組の中ではかなり明るい方で、何かとクラスの中心にいることが多い。

 

取蔭と付き合ってる。

 

 

コスチューム

α

U.A.FILE/SPECIAL:雨宮水月を参照

 

β

上半身は白いボディスーツ、下半身はひざ下までがダボッとした黒いズボンにブーツ、青い腰布。

 

 

個性

個性は『アナザー・ワン・フォー・オール』。

彼が持っていた「個性再現」と、彼の遺伝子に宿っていた「ワン・フォー・オール」が奇跡とも言える現象によって一つになり、発現した“個性”。

 

能力そのものは「“個性”の譲渡」「力のストック」と、オリジナルのワン・フォー・オールとさほど変わらない。が、オリジナルに比べ最大出力が少し劣り、オリジナルとはストックされた“個性”が違う。

 

ちなみにオリジナルでは緑谷が9代目だが、AOFAでは水月が7代目となっている。

 

・超パワー

今まで水月の体でバックグラウンドで稼働し続けていたため、水月の体になじみ、約15%程度までならデメリット無しで行使できる。

尚、デクとは違いほぼ最初からフルカウルの感覚に辿り着き難なく使っていた(オリジナルより出力が低い、というのもあるが)。

 

・「発勁(はっけい)

三代目継承者の“個性”。一定の動作を繰り返して運動エネルギーを一時的に身体に蓄積し、任意のタイミングで放出できる。AOFAのパワーに上乗せして使える上、自壊のリスクがないのでかなり重宝している。

 

・「信号(シグナル)

五代目継承者の“個性”。現在は詳細が判明していないが、自身の思考やメッセージを他者に発信している場面がある。

 

・「(みず)

水月自身の“個性”。水を生成し、水を操り、水を吸収する。入学時より格段にパワーアップし、より大量の水を操作できるようになったほか、複雑な操作もできるようになった。

 

尚、これまでAOFAを保有してきた人間は初代、二代目、三代目、三代目の娘、卯月の父親、卯月、水月の7人。

 

 

 

余談

AOFAの発現に伴い、今まで以上のトレーニングで体がだんだんがっしりしてきたことで「カワイくなれないんじゃないか」と悩んでいたが、柚月から「色気(エロス)方面にも進んでみたら?」と言われたことで少し揺らいでいる。

 



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雄英高校入学編
No.1 受けろ雄英高校


 目が覚めて、スマホから鳴り響くアラーム曲を停止した。

 

浅く伸びをして、着替えを済ませ、1階へ降りていく。

 

「あ、おはよう水月。朝ご飯できてるよ。」

「おはよー。ありがとね母さん。」

 

1階へ降りると、母さんが朝ご飯を作って待っていた。父さんはもう出たっぽい。

 

「いただきまーす。」

 

「どうぞ召し上がれ。あ、水月、準備ちゃんとできてる?」

「もちろん。昨日終わらせてるよ。」

「よかったぁ。今日は大事な日だもんね。私まで緊張してきちゃった。」

 

そう、今日は大事な“高校受験”の日。万全の準備を整えてきた。

 

「ごちそうさま。おいしかったよ。」

そういって身支度を終えると、僕は玄関に行った。

 

「それじゃ水月。受験、頑張ってね。応援してるよ。行ってらっしゃい。」

「ありがと。行ってきます。」

 

挨拶を済ませ家を出て、深呼吸した後、駅へと走っていった。

 

 

 

 

 

ことの発端は中国・軽慶市の「発光する赤児」が生まれたというニュースだった。

以降、各地で超常が発見され、原因も判然としないまま時は流れる。

 

いつしか、超常は日常に。「空想(ゆめ)」は「現実」に。

 

世界総人口の約八割が何らかの特異体質である超人社会となった現在。

混乱渦巻く世の中で、かつて誰もが空想し憧れた、ひとつの職業が脚光を浴びていた。

 

 

超常に伴い、爆発的に増加した犯罪件数。

法の抜本的改正に国がもたつく間、勇気ある人々がコミックさながらにヒーロー活動を始めた。

 

超常への警備、悪意からの防衛。たちまち市民権を得たヒーローは、

世論に押される形で、公的職務に定められる。

 

彼らは活躍に応じて与えられるんだ。国から収入を。人々から名声を。

 

 

現在ヒーローは誰もが憧れ目指す職業となり、それに伴いヒーローを養成する学校も全国各所に設立された。

 

そう、僕がこれから受験する高校もそんなヒーローを育てる学校のひとつ。

国立雄英高等学校ヒーロー科。偏差値79、倍率300倍というヒーローを育てる学科の中でもトップレベルの狭き門。

 

トップレベルなだけあり、現在活躍中のトップヒーローの多くをこの雄英高校が排出してきた。

 

 

そんな雄英高校の敷地に、今、足を踏み入れた。

「やっぱりおっきいなー校舎。」

校舎の大きさに見とれていると、目の端に転びそうな少年を見かけた。

 

文字通り あっ、という間に、近くにいた少女が触れると、彼はふわふわと浮いた。

「へー。浮かせられるんだ。面白そうな“個性”だね・・・。」

 

“個性”

世界総人口の約八割が生まれ持つ超常能力。火を噴く、モノを飛ばす、氷を操る、など多岐にわたる

いわば「超能力」のようなもの。

 

え?そういう僕の“個性”は何かって?それは後のお楽しみだよ。

 

 

「受験生のリスナー。今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

 

 

シーーン!!

 

 

 

「こいつはシヴィー。なら受験生のリスナーに実技試験の内容をサクッとプレゼンするぜ。

アーユゥレディ!?」

 

シーーン!!

 

 

僕は今雄英高校ヒーロー科の試験説明会場にいる。

 

さっきからやかましい司会の人は確かボイスヒーローのプレゼント・マイク。

雰囲気からわかる通りDJ風のヒーローでテンションがバカ高い。

 

ちなみに筆記試験は余裕だった。まあ模試もA判定だったからね。僕は頭がいいんだよね!

 

「入試要項通り、リスナーはこの後、10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ!

持ち込みは自由。プレゼン後は、各自指定の演習会場へ向かってくれよな!オゥケーイ!?」

 

シーーン!!

 

ちなみに僕の演習会場はAだった。

Aってなんか強い人がたくさんいそうなアルファベットだよね(バカ)

 

 

そこからの説明で、会場には仮想敵というロボットが複数配置されており、

その仮想(ヴィラン)には1,2,3のポイントが割り振られていて、(ヴィラン)を行動不能にするとそのポイントをゲットできる。

 

要は(ヴィラン)を倒してポイントGetガンバ!ってことね。

 

「質問よろしいでしょうか!!」

 

突如、声が響いた。

 

「オーケイ」

 

とプレゼント・マイクが言うと、さっきの声の主がスポットライトで照らされた。

眼鏡をかけたなかなかガタイのいい真面目くんって感じの人だ。

 

「プリントには、4種の(ヴィラン)が記載されております。

誤載であれば、日本最高峰たる雄英において、恥ずべき痴態!

我々受験者は、規範となるヒーローのご指導を求め、この場に座しているのです!

 

ついでにそこのちぢれ毛の君!先ほどからぼそぼそと、気が散る!

物見遊山のつもりなら、即刻!ここから去りたまえ。」

 

 

わお。言動まで超真面目。というかついでであの子を公開処刑する必要あった?まいっか。

 

 

「オーケーオーケー。受験番号7111君。ナイスなお便りサンキューな。4種目の(ヴィラン)は0ポイント。

 

そいつはいわば“お邪魔虫”。各会場に1体、所狭しと大暴れしているギミックよ。

 

倒せないこともないが、倒しても意味はない。リスナーには、うまく避けることをオススメするぜ。」

 

「ありがとうございます!!失礼しました!!」

 

 

「俺からは以上だ。最後にリスナーへ、わが校“校訓”をプレゼントしよう。

 

かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。

真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えてゆくもの」と。

さらに向こうへ Plus Ultra(プルスウルトラ)

それでは皆、よい受難を。

 

 

 

というわけで、演習会場Aに来た。会場おっっっきいわぁ、受験者たーくさんいるわぁで、アガってきた。

準備運動は済ませた。あとはもう開始の合図を待つだけ だけど、試験官っぽい人見当たらないんだよねぇ。

ただ、なんとなくこの実技試験の意図はわかった気がする。

 

『はいスタートォ!!』

 

瞬間、僕はその掛け声を理解して門へ街中へ駆け出した。正確には、僕ともう一人、見覚えのある少年だった。

 

『どーしたァ、実践にカウントダウンなんて―――』

背後で響くプレゼントマイクの声を尻目に、僕ともう一人の彼は眼前に発見した1Pの仮想的に向かっていった。

 

「君も気づいたの?この試験の意図。」

「あ?んだテメェ。んなもん分かるに決まってんだろうが。」

ぶっきらぼうに言い捨てると、彼は手のひらから爆発を起こし、敵に急接近していった。

 

「死ねェ!!」

彼が右手を敵に向けた直後、その敵は水に吹っ飛ばされ、彼の右手は空回りした。

 

「ってめェ、横取りしてんじゃねェ!!」

 

「だってこれ、そういう試験でしょ?あと君、どっかで見たことあると思ったら、

1年前のヘドロ事件の爆轟勝己ちゃんだったんだ。」

僕の言葉に激おこな彼を置いて、僕は次の敵に向かった。

 

あ、自己紹介を忘れてたね。

僕は雨宮水月。個性は「水」だ。




水月「次回 勝己ちゃんがツンデレ!?
さらに向こうへ!Plus Ultra!」

最後まで読んでくださりありがとうございます。
拙い文章でしたが少しずつでも改善していきたいと思っています。


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No.2 突破しろ試験

 僕は発見次第、仮想(ヴィラン)をどんどん破壊していった。水をそのままぶつけたり、水で敵を持ち上げてぶんぶん回してほかの敵ごとぶっ壊したり、薄く長く刃状にして切ったりといろいろ。

 

そんなこんなで残り時間3分を切った時、僕は勝己ちゃんとはちあった。

 

「あ、勝己ちゃん!今何ポイントくらい稼げたの?」

「あ゛?なんでテメェに教えなきゃなんねェんだよ水野郎!」

 

 

「いいじゃーん。ちなみに僕は数え間違いがなければ今んとこ60ポイント。」

「ハッ!俺ァ65ポイントだ。俺の勝ちだ!」

 

教えてくれるんだ。ひょっとして勝己ちゃんチョロい?

 

「すごいねぇ。でもまだ試験は終わってないよ。」

僕がそう言い終わった直後、激しい音が鳴り響いた。

 

「「!!!」」

 

音のした方へ振り向くと、そこにはプレゼントマイクが「ギミック」と言っていた0ポイントの仮想(ヴィラン)がいた。

 

 

「あれが0ポイントねぇ。ま確かに逃げるのをオススメするって言ってたけどさぁ、

 

 

いくらなんでもデカすぎない!?」

 

 

そう、マジでデカい。全長がビルほどもある巨躯のロボットがずっし、ずっしとこちらに歩み寄ってくる。

 

ほかの受験者はみな一目散に逃げていった。勝己ちゃんも例外ではなかった。

 

 

「さっすがに僕も逃げた方がいいね。あんなでっかいのどうしろってんだか。」

 

と、踵を返そうとしたとき、聞こえた。悲鳴が。0ポイント敵の足元付近にいる、逃げ遅れた受験者たちの悲鳴が。

 

 

あんなデカいロボット相手になにかしようって方がおかしい。

 

逃げることは間違ってない。なんならそっちの方が賢い。

 

普通に考えればわかること。そう。逃げるのが当たり前のことなんだ。

 

それでも、僕は

 

 

 

 

 

 

考えるよりも先に、体が動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

まず受験者を水で覆った。そして急いで水ごと受験者を僕の方へ引き寄せ、水から出した。

 

「あ、ありがとな!」

「お礼はいいから!僕があれを足止めしてる間に!早く逃げて!」

 

そう言って僕は大量の水で敵を完全に覆いつくした。

 

「でも、おめぇも逃げなきゃ―――」

「ほかに逃げ遅れてる受験者がいるかもしれない!君たちは早く!」

 

って逃がしたはいいけど、マジでヤバイ。

 

僕の個性「水」は水を無際限に生成してそれを操れるけど、その操る量にも許容上限がある。大体バス2台分だ。

それくらいの水なら単調な操作しかできないが操るのに体力はほぼ消耗しない。

 

 

しかし、それを超える量の水は操っている間体力がゴリゴリ削られる。

 

そのため、バス2台分なんか余裕で超過してるこいつを止めてる時点でだいぶ体力の限界

 

 

「あ・・・やばい」

体力が尽きて集中力もなくなり、ぶっ倒れた。もちろん敵を覆っていた水もバシャバシャ落ちてきた。

 

 

そして倒れている僕という格好の的を敵が見逃すはずもなく、

 

「タオレテルヤツ、ハッケン」

「ブッコロセー!!」

 

めちゃくちゃ物騒なこと言って敵が迫ってくる。が、立ち上がるどころか水を操る集中力すら残っていない。

 

「あー・・・大丈夫かなこれ。生きて帰れるかなー。」

 

 

 

「死ねェ!!!」BOOOM!!!

怒号とともに、僕に接近していた3体の敵が破壊された。

 

 

「・・・あれ、勝己ちゃん。いいの?逃げなくて」

 

「バカかテメェは。時間だろ。」

 

 

『試験、終了ー--!!!』

 

プレゼントマイクの声が響き、サイレンが鳴ると、0ポイントの敵はぴたりと動きを止めた。

 

「あぁ・・・そっか。時間だったんだ。でも、なんで僕を助けてくれたの?」

「助けたワケじゃねェよ。あの時点でほとんどの(ヴィラン)は狩りつくされてた。そんでたまたまテメェの近くに(ヴィラン)を見つけて、あの0ポイントの移動時間と試験の残り時間的に殺っても踏みつぶされる心配がなかったからあいつらをぶっ殺した。テメェはたまたまそこに転がってただけだ。」

 

おお・・・結構理路整然としてる。でも

 

「勝己ちゃんってさ、よくツンデレって言われない?」

「あ‶ぁ!?何抜かしてんだテメェは!ぶっ殺すぞ!」

 

・・・これどっちかっていうとツンギレだね。

 

 

「はいはいお疲れ様。みんなお疲れさま。グミをお食べ。」

 

そういって小柄なおばあちゃんが歩いてきた。妙齢ヒロイン・リカバリーガール。個性“癒し”によって対象の自然治癒力を超活性化させ、傷を癒す。雄英の屋台骨。

 

「あらまぁ、どこをケガしたんだい?」

 

「あー、これはケガじゃなく、個性のキャパ―オーバーが原因の、その、疲労です。」

 

「そうかい。起き上がれるかい?」

 

「多分ムリです。動かそうと思ってもギリギリ指が動く程度で、集中できないせいで個性も使えません。」

 

 

「なるほどね。それじゃ、ウチのベッドで少し休んでいきなさい。」

 

「ありがとうございます。じゃあね、勝己ちゃん。雄英であえるの楽しみにしてるよ。」

 

「ケッ。とっとと失せろ。」

 

 

 

そんなわけでベッドで休んで体力回復もばっちり、帰宅しましたとさ。

 

 

2週間後――――

 

 

あれから2週間。多分今日にでも合否の通知が来る。気がする。

 

「受かってるといいね。

ううん、きっと受かってるよ!お母さんはそう思う!」

 

「ありがとね母さん。僕も・・・受かってると思う、多分。ごちそうさま。おいしかったよ。」

 

朝食を済ませ、自室に戻った。

 

「筆記は自己採点でも問題なかったからいいけど、実技大丈夫かな。あのときの判断が間違っていた、とは思わないけど、あのときちゃんと逃げてたら多少なりポイント稼げてたかなぁ・・・」

 

 

ピンポーン

突然のチャイムに驚き、急いで玄関に行くと、郵便配達だったようで、母さんが封筒を受け取っていた。

 

 

「水月、これ、雄英から・・・。」

 

母さんから封筒を手渡され、早鐘を打つ心臓を感じながら、再び自室に戻り、封筒を開けた。すると、

 

「手紙、と・・・映写機?」

 

映写機を机に置くと、映し出されたスクリーンには小動物のようなモノが映っていた。

 

「映し出されたのは、ネズミなのか犬なのか熊なのか、かくしてその正体は

 

 

校長さ!

 

根津校長!?

 

わお。校長先生自ら合否判定を通達してくださると。すごい。

 

「さて、それじゃあ本題に入るとしよう。

 

筆記の方は、合格点を余裕をもって超えているから、問題ないね。

 

実技の方は、(ヴィラン)ポイントが60Pだが、ひとつ、君たちに行っていないことがあってね。実技試験の採点基準は(ヴィラン)ポイント、そしてもう一つ、救助(レスキュー)ポイント。このふたつで採点していたのさ。」

 

「え?ええ!?救助(レスキュー)ポイント?なにそれ!?」

 

と戸惑う僕を無視して根津校長が続けた。これ録画だね。当たり前か。

 

 

(ヴィラン)ポイントは試験前に説明したとおり、仮想敵を行動不能にすると、それぞれに割り振られていたポイントをゲットできて、その合計を採点する、というもの。

 

そして救助(レスキュー)ポイントとは、文字通り、他者を救助したものを審査して与えられるポイント。我々雄英が見ていた、もう一つの基礎能力。その二つを合計したポイント数が、そのまま順位となるわけさ。

 

というわけで、これが今回の実技試験の上位者10名なのさ。」

 

 

そう言って映し出された表には、実技試験の敵ポイント、救助ポイントの合計ポイント数上位10名の名前とポイントがあった。

 

「雨宮水月、(ヴィラン)ポイント60P、救助(レスキュー)ポイント70P、合計130ポイント!実技試験1位通過!

 

そして爆豪勝己、敵ポイント77P、救助ポイント3P、合計80ポイント!実技試験2位通過!

 

雨宮君、君の、勇気ある数十秒の行動は、決して無駄ではなかった。

 

その証拠に、気づいていなかったかもしれないが、君が助けた彼らも、逃げ遅れたほかの受験者を助けに行ったのさ。

 

強大な(ヴィラン)を倒すヒーローも確かにすごい。でもね、私は、

 

 

困っている人を助けたいと思う、その心こそ、ヒーローにとって大事な素養だと思うのさ。」

 

 

 

 

 

 

僕は、心のどこかで、ひょっとしたら、あのときの行動は間違っていたんじゃないか って、ずっとくすぶっていた。

 

彼らを助けずにほかの敵を倒した方がよかったんじゃないかとか、そう思っていた。

 

 

でも、その行動がほんの少しでも、報われた、彼らの助けになったんだと思うと、うれしかった。

 

それに、勝己ちゃんも、ああは言っていたけど、助けてくれてた。やっぱりツンデレじゃん。

 

 

 

「おいでよ。雨宮水月君。ここが君の

 

 

ヒーローアカデミアさ。」

 

 

 

こうして、僕の物語は、始まった。

 

 




爆豪「次回 水野郎の姉貴が出んぞ
さらに向こうへ Plus Ultra!」

たぶんかっちゃんは敵を倒すどさくさになら救助ポイントがカウントされると思うんですよね。


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No.3 雨宮水月:オリジン

 そんなわけで雄英への入学が決まった僕は、駅前である人を待っていた。

 

 

「ごめん水月ー。遅くなっちゃった。」

「大丈夫だよ。僕もさっき来たばっかだし。」

 

その待ち人がこの人。

「うん。水月は今日も最高にカワイイね!」

「お姉ちゃんも、最高にカワイイよ!」

 

僕の姉、雨宮柚月だ。

 

 

なぜお姉ちゃんと待ち合わせしてるのか、話は2日前にさかのぼる

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「さて、雄英に合格したはいいけど、問題は・・・通学時間だね。」

 

そう、僕の実家は雄英から割と遠い。入試の時は開始の時間が遅かったため、

 

少し早めに家を出てれば大丈夫だったけど、このまま実家から通うとなれば、遅刻は必定・・・

 

 

「僕としたことが、こんな大事なことを見落としてたとは・・・」

 

 

「水月ー、荷造りの準備しておきなよー。」

 

「え?荷造り?引っ越しでもするの?」

 

「だって水月ここから雄英に通学したら時間かかるでしょ?もう柚月にもオッケーもらってるから、

柚月のとこに引っ越してそっから雄英に通いなよ。」

 

 

「母さん、なんというか・・・すごいね。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

ということで、今日を以て僕はお姉ちゃんの住むマンションに引っ越すこととなった。

 

「遅くなっちゃったけど、水月。雄英合格おめでとう!」

 

「ありがとう、お姉ちゃん。」

 

「それにしても、正月に会ったばっかなのに、水月のカワイさにさらに磨きがかかってるね。」

 

「お姉ちゃんのおかげだよ。そういえば、お姉ちゃんが住んでるっていうマンションってどのあたりにあるの?」

 

「ん、これ。」

 

 

わお。近いとは聞いてたけど、駅から徒歩数分ってめちゃ近。

 

「ほら、入るよ。」

 

お姉ちゃんに連れられてエレベーターに乗り、これから過ごすことになる部屋に入っていった。

 

 

「うわああああああああ、広っ。」

 

マジで広い。リビングだけでも家の2倍くらいある。

 

「まあね。これでもお姉ちゃん、新進気鋭の凄腕デザイナーだから。」

 

「この前の特集見たよ。相変わらずセンスの塊だよね。」

 

雨宮柚月。お姉ちゃんはサポート界隈において今破竹の勢いで名を馳せているデザイナーだ。

 

雄英高校サポート科OGで雄英スペシャルデザイン賞を3年連続受賞し、

 

雄英ミスコンでも3年連続グランプリを受賞したカワイイの化身。

 

「そう、自慢の姉なのです!!!」

 

「うれしいけど、誰に向かって言ってるの?」

 

「うーん、リトル水月とか?」

 

「何それウケる。」

 

その後やってきた引っ越し業者さんと荷運びし、荷解きに取り掛かった。

 

 

 

「あ、そうだ、お姉ちゃん。ちょっと手伝ってもらっていい?」

 

そう言うと僕はあるプリントを姉に渡した。

 

「これは・・・被服控除?」

 

「うん。」

 

被服控除。入学前に「個性届」「身体情報」を提出すると、学校専属のサポート会社がコスチュームを用意してくれる便利システム!

「要望」を添付することで便利で最新鋭のコスチュームが手に入る!らしい。

 

「せっかくだから、プロのお姉ちゃんにも意見をもらおうかなって思って。」

 

「・・・フフフ。アハハハハハハハハハハ!!!」

 

「え、急にどうしたの?」

 

「ごめんね。ちょっと取り乱しちゃった。そっか。ついにこの時がきたか。」

 

「それ、どういうこと?」

 

「ちょっと待ってて。」

 

そういうと姉はどこからかスケッチブックを持ってきた。

 

「私ね、デザイナーになろうって思った時、最初にやったのが

 

水月のヒーローコスチュームを考えることだったの。」

 

「え、そうなの?」

 

「うん。小さいころにさ、水月がヒーローになりたいって言った時、水月のコスチュームをたくさん想像したんだ。

 

こんな感じかなー、あんな感じかなー、って。その時は、お絵描きみたいなつもりだった。

 

でもね、水月が本気でヒーローを、夢を目指すって知った時、私も、本気で自分の夢を追いかけたいって思ったんだ。それで、いつか水月がヒーローになった時、私がデザインしたコスチュームを着てもらえるように、すごいデザイナーになろうって決めたの。」

 

「お姉ちゃん・・・」

 

「はいこれ。」

 

お姉ちゃんから渡されたのは、1枚のスケッチだった。ところどころよれていて、拙い絵だけど、とても惹かれる何かがある。

 

「それが、私の原点(オリジン)。そして、これ。」

 

次にお姉ちゃんから渡されたスケッチには、とても洗練された、美しい衣装が描かれていた。

 

「それが、今の私の最高傑作。わりかしいろんなヒーローのコスチュームをデザインしてきたけど、今のところそれを超えるデザインは思いつかない。水月のためのコスチューム。」

 

「・・・これ、使っていいの?」

 

「もちろん。そのために描いたんだから。」

 

「ありがとう。このコスチュームに恥じない、立派なヒーローになるよ。」

 

 

「・・・ねえ、水月。昔私が言った約束、覚えてる?」

 

 

「―――――――――――うん。忘れるわけないよ。」

 

 

 

 

4歳のころ、僕の個性が発現した。

 

水。汎用性が高く、伸ばせば強力になる「個性」。

 

ヒーローにあこがれてた僕はとても喜んだ。

 

 

 

「ヒーロー!がんばれー!!」

 

「水月はヒーロー、好き?」

 

「うん!だいすき!」

 

「じゃあ、お姉ちゃんと約束しよ!水月はいろんな人を笑顔にする、最高のヒーローになってね!」

 

「うん!やくそくする!おねえちゃん!ぼく、さいこうのヒーローになる!!」

 

 

とても些細な、小さな出来事だった。それでも、僕にとってそれは、

 

ヒーローを本気で目指すようになった、そう

 

 

原点(オリジン)だった。

 

 

 

 

「――――ねぇ、お姉ちゃん。約束、少し増やしてもいいかな?」

 

 

「・・・うん。いいよ。どんな約束?」

 

 

 

「僕は雄英に入学して、いろんなことを学んで、いろんな力を身に着けて、

 

たくさんの人を助けて、たくさんの人を笑顔にできる。そんな

 

 

 

 

最高のヒーローになるよ。

 

 

 

 

 

4月。桜舞うこの日。僕は、雄英高校に入学する。

 

 

 

 

 




なんとなくお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、水月はシスコン、柚月はブラコンです。

柚月「次回 ブラドキングの理解が早い?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.4 Let's B組 GoGoGo!

 華の高校生活が始まるこの日、僕は早速道に迷ってた。校舎内で。

 

「いくらなんでも広すぎる~。さすが雄英って感じ?ってやってる場合じゃないよね。

 

あ!ここか!ここだよね?B組だし。」

 

僕はでかでかと「B」と書かれている扉にたどり着いた。

 

「てか扉おっきいなー。バリアフリーってやつ?まいっか。」

 

扉を開くと、もうすでにみんな来ていたようで、座っていた人も話してた人も一斉に僕の方を見た。

 

「あー!お前は!!入試んときの!!」

 

大声をあげて、いかつい顔の人がきた。

 

 

「お前、入試んときに俺やほかの奴を助けてくれたよな!ありがとよぉ!俺はまだしも、ほかのやつがぺしゃんこになるとこだったぜ!

 

俺は鉄哲徹鐵だ!よろしくな!」

 

「はじめまして徹轍ちゃん。僕は雨宮水月。よろしくね。」

 

「あ、俺も実はお前の水に助けてもらったんだ。俺は泡瀬洋雪。よろしく。」

 

「よろしくね洋雪ちゃん。」

 

さっそく仲良く話してると、めっちゃガタイのいい赤い人が入ってきた。

 

「全員席に着け。よし、欠席はいないな。

 

今日からこのクラスを担任する、ブラドキングだ。みんな、よろしくな!

 

早速だが、これから入学式がある。全員、名簿順に廊下に並べ。」

 

 

その後は普通に入学式、ガイダンスとなった。ある1点を除いて。

 

(ねぇ洋雪ちゃん)

 

(なんだ雨宮)

 

(・・・ヒーロー科ってA組もあるよね?)

 

(そのはず、なんだがな)

 

『えー、大変申し訳ありませんが、ヒーロー科1年A組は担任の都合により入学式およびガイダンスの出席を辞退する運びとなりました。ご了承ください。』

 

さすが雄英・・・で済ませていいのかな?

 

 

入学式とガイダンスが終わり、下校時間となった。

 

「おーい雨宮!!」

 

おっきい声の徹轍ちゃんと洋雪ちゃん、旋ちゃんが走ってきた。

 

「聞いたか雨宮。なんかA組、入学早々個性把握テストやったらしいぜ?」

 

「え?入学式とか無しに?なにそれ。」

 

「で、なんか最下位のやつは除籍とか言われたらしい。」

 

「ええ!?除籍!?」

 

「まあ結局は嘘だったらしいが、なんかもう雄英やべえな。」

 

「・・・いや、案外不思議じゃないかも。」

 

「どういうことだ?」

 

 

 

「お姉ちゃんが言ってたんだけど、雄英は生徒に絶え間なく壁を用意して、それを乗り越えさせるんだって。

 

ほら、校訓にもあるじゃん。

 

さらに向こうへ PLUS ULTRA って。」

 

「うわー、きつそうだな。」

 

「きつそうって、お前他人事じゃないからな。」

 

「キツイ?バカ野郎!その方が燃えるじゃねえか!!」

 

 

僕は入学早々できたこの愉快な友達と、家路をたどった。

 

 

翌日、ブラドキング先生の意向で、自己紹介をすることになった。

 

先生曰く「今日から同じクラスの仲間として過ごすのだから、互いのことを知るいい機会になる!」だそう。

 

自己紹介では、名前、個性、目指すヒーロー像、好きなこと、みんなにお願いしたいことの5つを発表するらしい。

 

洋雪ちゃんの自己紹介が終わった(みんなとゲームがしたいらしい。)。次は僕の番だ。

 

 

「僕は雨宮水月です。個性は『水』。水を生み出したり操ったりできます。目指すヒーロー像は、たくさんの人を助けて、たくさんの人を笑顔にできる、最高のヒーローです。

 

好きなことはオシャレとスイーツを食べること、みんなにお願いしたいことは・・2つあります。

 

1つ目は、僕のことはできれば『水月』と名前で呼んでほしいです。2つ目はお願いというかは微妙ですが、もしヘアスタイルで悩んでいる人がいたら、僕のところに来てください。

 

カワイイでもカワイイ以外でも、最高にオシャレな髪にしてあげます!以上です。」

 

「ひとついいか?なんで名前で呼んでほしいんだ?」

 

ブラド先生が質問してきた。

 

「僕、人を呼ぶときは名前で呼ぶようにしてるんです。苗字で呼ぶと、『その家の人』って言ってる感じがして。

名前だと、家とか関係なく『その人』ってちゃんと言ってる感じで、うまく説明できないんですけど、そんな感じです。」

 

「なるほど、つまり家にとらわれずにそいつ個人として呼ぶようにしてるわけか。よし、それなら俺も、お前を『水月』と呼ぶようにしよう。」

 

「ありがとうございます!」

 

 

その後自己紹介も終わり、いよいよ個性把握テストの時間になった。

 

「個性把握テスト、文字通りお前たちの個性を把握するためのテストだ!

 

各々、持てる力を全力で使い、PLUS ULTRAの精神で臨め!」

 

 

「「「はい!」」」

 

「ひとつ質問良いですか?」

 

「なんだ泡瀬。」

 

「最下位は除籍とかって、その」

 

「そんなことをやるのはイレイザーくらいだ。俺は除籍なんぞせん。」

 

イレイザー・・・A組の担任、抹消ヒーロー・イレイザーヘッドか。廊下ですれ違ったけど、僕とは正反対な感じの人だったな。

 

 

そこからはみんな文字通り個性的に「個性」を使い、常人離れした結果を出していった。

 

ちなみに僕の突出していた種目は握力、ハンドボール投げ、長座体前屈。

 

握力は水で握って105kg、ハンドボール投げはボールを水で包んで遠くまで運ぶ感じで(途中でめんどくさくなってやめて)5km、

 

長座体前屈は67.8cm。長座体前屈にどう水を使ったかというと使ってない。完全に僕の身体能力のたまもの。体柔らかいんだよね!

 

 

というわけで結果が出ました。1位は僕。次いで2位は茨ちゃん、3位は一佳ちゃん・・・って感じで20位は漫我ちゃん。

 

「よかったね漫我ちゃん。除籍が無くて。」

 

「くぅー!最下位とか悔しいぜ!」

 

「きっと来年はもっと伸びるよ。」

 

 

個性把握テストが終わり、翌日から通常の授業が始まった。

 

そう、拍子抜けするくらい普通の授業。

 

昼は食堂でランチラッシュの極上メニューを安価でいただける。

 

「白米に落ち着くよね!最終的に!」

 

「うまい!」

 

そして午後、ヒーロー基礎学の時間。

 

私が~

 

 

普通にドアから来た!!

 

 




ブラドキング「次回 鉄哲は寒くないらしい!
さらに向こうへ Plus Ultra!」

水月が名前呼びをするようになったのは姉の影響です。


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No.5 戦・闘・訓・練

私が~

 

 

普通にドアから来た!!

 

クラス中が沸き立った。なんてったってあのオールマイトだ。すごい。テレビで見たまんま、なんかもう、画風が違う。

 

「私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目だ。単位数も最も多いぞ。早速だが、今日はこれ!

 

戦闘訓練!!

 

何人かが「おお!」と声を漏らした。

 

「そいつに伴って~~~こちら!」

 

と言ってオールマイトが手元のリモコンを操作すると、教室の左側の壁から棚のようなものがせり出してきた。こんな機能あったなんて知らなかった。

 

「入学前に送ってもらった個性届と、要望に沿ってあつらえてもらったコスチューム!」

 

おおおー--!!と声が上がった。

 

「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ。」

 

ついに、お姉ちゃんがデザインしたコスチュームを着ることができる、そう思うと、テンション爆上がりだった。

 

 

 

オールマイトが待つグラウンドβに、コスチュームを着たみんなが続々と入っていった。

 

「恰好から入るってのも、大切なことだぜ、少年少女!

 

自覚するんだ。今日から自分は、ヒーローなんだと!

 

 

いいじゃないか皆。カッコいいぜ!!」

 

 

 

皆より少し遅れて、僕もグラウンドβに入った。

 

「わお!みんなすごいコスチューム!」

 

「おお!水月!お前のコスチュームも・・・なんつーか!こう――」

 

「very cuteデース!とても似合ってマース!!」

 

「ありがとねポニーちゃん。君のコスチュームもvery cuteだよ。」

 

 

僕のヒーローコスチュームはノースリーブに二の腕当たりから手の半分ほどを覆う長さの袖、スパッツと腿から下の前部分を切り取ったようなロングスカートにニーソックスを履いたものになっている。

 

まさに最高のヒーローコスチュームだ。

 

「ていうかがっつり背中空いてるけど、寒くないの?」

 

「一佳ちゃん、徹鐵ちゃんのコス見てないの?」

 

「俺は寒くないぜ!」

 

などという雑談も終わり、いよいよ戦闘訓練の時間が始まる。

 

「さ、戦闘訓練のお時間だ。(ヴィラン)退治は主に屋外で見られるが、統計でいえば、屋内の方が、凶悪(ヴィラン)出現率は高いんだ。監禁・軟禁・裏商売。このヒーロー飽和社会・・ウオッホン、

 

 

新の賢しい(ヴィラン)は闇に潜む。君たちにはこれから、敵組とヒーロー組に分かれて、屋内戦を行ってもらう。

 

ただし、今回はぶっ壊せばオーケーなロボじゃないのがミソだ。」

「勝ち負けはどうやって決めるんすか?」

「チーム分けはどうやって?」

「捕まえた場合はどうなります?」

「あぁ、敵になってしまうだなんて・・・」

「うううー-ん聖徳太子ぃ~~!!」

みんな一斉に聞きすぎだよー。

 

 

「いいかい?」

そう言ってオールマイトは カンペを取り出した。

オールマイトの説明(カンペ)によると、要は「(ヴィラン)がアジトに隠してる核兵器をヒーロー側が処理しようとしてる」という設定らしい。

そして勝利条件はそれぞれ

ヒーロー側:(ヴィラン)を確保or核を確保

(ヴィラン)側:制限時間まで核を守るorヒーローを確保

となっている。硬成ちゃんが「設定アメリカンだな」と言ってたけどどの辺がアメリカンなのかよくわからなかった。

ちなみにチーム分けはくじらしい。

 

「さーて僕は誰とかなー・・・えーっと、G?」

 

「あ、アタシGだよ。よろしくね。」

そう言って来たのは、紫の鱗のようなボディースーツに身を包んだ取陰切奈だった。

「切奈ちゃんとのチームか!よろしくね。」

 

「最初の対戦相手は~~~こいつらだ!

Gコンビがヒーロー!Bコンビが(ヴィラン)だ!ほかの者は、モニタールームに向かってくれ。」

「「「はい!」」」

 

(ヴィラン)チームは先に入ってセッティングを。5分後に、ヒーローチームが潜入でスタートする!」

「「はい!」」

 

「鉄哲少年、鱗少年。(ヴィラン)の思考をよく学ぶように。これはほぼ実践。怪我を恐れず、思いっきりな。度が過ぎたら中断する。」

「「はい!!」」

 

 

「相手は徹鐵ちゃんと飛竜ちゃんか。ふむ・・・」

「水月、なんか作戦とかある?」

「切奈ちゃんの“個性”って確か」

「『トカゲのしっぽ切り』。体をバラバラにできて、自由に操作できる。今んとこ、バラバラにできんのは30個くらいが限界だけどね。」

「やっぱすごいね。でも、そこまで多くなくていいよ。両目だけでいい。」

「っていうと、なんか作戦あるんだね?」

 

 

 

「・・・屋内戦で、中に(ヴィラン)しかいないから使える、まあ、なかなか、えげつない作戦がね。」




鉄哲「次回 取陰が赤くなる!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」

今回水月のヒーローコスチュームが明かされたのでいい機会だと思い水月のデータも作りました。


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No.6 泳げ敵アジト

 「にしても(ヴィラン)役をやるってのは何つーか変な気分だな。本来倒さなきゃなんねーのによ。」

「だからこそだろ。ここで敵の思考を学んで、今後敵とこういった状況になった時に対策を立てられるようにするんだよ。」

「鱗、お前頭いいな!」

「いや鉄哲、これ割と誰でも考え付くぞ」

駄弁っている鉄哲と鱗。彼らはトラップを仕掛ける系の個性ではないのでそういった準備はしていない。

『それでは、GコンビvsBコンビによる、屋内対人戦闘訓練、スタート!!』

 

「おっ、始まったか。」

「よし鱗、お前はここで核を見張ってろ!俺はヒーローどもをぶっ倒しに行く!」

「あ、待て鉄哲!作戦通り俺とおまえ二人で核を守った方が」

「大丈夫だ!あっちは取陰が近接に弱えはずだ!」

「そういうこと聞いてんじゃなくて!」

と呼び止める声もむなしく、鉄哲は階下へと駆けていった。

 

「あいつマジかよ・・・でもまあ仕方ない。こうなったら俺一人だけでも核を守らないと―――なんだあれ?」

鱗の見た先には、宙に浮かぶ目玉があった。

 

「・・・まさか、取陰の“個性”か!!」

とっさに鱗は腕からウロコを飛ばすが、すぐさま避けられてしまう。

 

「クソっ!!場所が割れちまった!早く核を移さねえと―――今度は何だよ!?」

鱗は足元から響く音を聞いた。ザバァー、ザバァーと響く音を。

 

「・・・マジで何なんだよこれ!?」

そう叫んだのも束の間、鱗のいる部屋に大量の水が押し寄せてきた。

「うえええええ―――――――――――――――――――――――!!!!!!??????」

そのまま鱗は押し寄せてきた水に飲みこまれた。

 

「いがっばびがっぼぎべんだ(一体何が起きてんだ!?)」

パニックになった鱗のもとに泳いで?現れたのは、水月だった。

「いうい!?ぼばえば(水月!?おまえが)」

水月は鱗を一瞥した後、すぐさま核のもとへ行き、タッチした。

 

 

『ヒーローチーム、WI―――――――――N!!!』

放送の後、水月はビルにあふれていた水をすべて吸収した。

 

 

「どお?びっくりした?」

「・・・びっくりも何も、何が起きたんだか。」

何が起きたか、それは5分前に遡る

 

 

 

5分前

 

 

「それで?アタシの両目だけでいいってのはどういうこと?」

「まず端的に言うと、僕の作戦は『水没』だよ。」

「水没?」

 

「僕の個性『水』は、水を生み出し、水を操り、水を吸収する。まず一つ目に、生み出せる水はほぼ無際限。この水でビルを水没させる。」

「水没させるったって、核の回収とか敵の確保とかはどーすんの?」

「そこで二つ目、水を操る。これで僕の周りの水だけを操作して超高速で泳ぐように移動する。これで核まで一直線。それに徹轍ちゃんと鱗ちゃんの個性なら僕の水への対策はできないはずだよ。」

「一直線って、核の場所分かってるの?」

「そのための切奈ちゃんだよ。」

「え?アタシ?」

 

「核は多分1階より上にある。見取り図を見た感じ、1階以外で窓がない部屋はほとんどない。つまり、核が部屋にあるかは窓を見ればわかる。核がなかったとしても、窓がない数部屋を総当たりすればいいだけ。」

「・・・なるほど、その核があるかを判断するためのアタシの眼ってわけね。」

「切奈ちゃんは念のため外で待機していて。無いとは思うけど核を持っていったん外に出る可能性も無くはないから」

「わかった。その作戦で行こう。」

 

『それでは、GコンビvsBコンビによる、屋内対人戦闘訓練、スタート!!』

「始まった。じゃあ、作戦通り、切奈ちゃんは窓から核のある部屋を探して。」

「りょーかい!そっちも水、頑張りなよ!」

 

開始の放送後、作戦通り切奈ちゃんは両目を分離・操作し、窓を片っ端からのぞいていった。

 

 

「さーて、それじゃあ・・・」

僕はまず入り口に水の壁を張った。せっかく出した水が外に出ちゃもったいないからね。

 

「水族館にしちゃうよ!・・・変かな?まいっか。」

意を決して大量の水を生成する。瞬く間にビルが水で満たされていく。

 

(一応顔周りに通信するときの呼吸用の空気用意してるけど、これコスチューム改良とかでなんとかできるかな?)

とりあえずそれは後回しにして、念のため1階をささっと見てきた。

 

(やっぱり1階に核はないか。となると、切奈ちゃんの報告を待った方がいいか・・・いや、ここは僕も2階から部屋を見て回る方がいいかも。窓がない部屋に核があるかもだし。)

 

というわけで2階に移動すると、

 

 

『水月!核あった!核あったよ!5階の真ん中の部屋!鱗いたから気を付けて!』

『ナイス切奈ちゃん!今行く!』

 

5階に急行すると、報告通り飛竜ちゃんがいた。

(やっぱり飛竜ちゃんじゃこの水没には対処できなかったみたいだね。)

僕はそのまま核に近づきタッチすると、

『ヒーローチーム、WI―――――――――N!!!』

と、ヒーローチームの勝利を告げる放送がした。

 

(なんとか作戦通り行けたね。さて、後片付けしないと)

僕はビルを埋め尽くしていた水をすべて吸収した。吸収とは言うけどこの水が僕の体内に入ってる感じはしないんだよね。

「う‶ぇっほげっほ!ぶっ、やべぇ、死ぬかと思った!」

「ごめんね飛竜ちゃん。苦しかったでしょ。」

「ああ、マジできつかったわ。てかお前、水中にいた割に全然濡れてねえな。」

「あ、それは僕の個性で濡れたとこから水分飛ばしたからだよ。飛竜ちゃんにもやってあげる。」

 

その後僕たちは講評のためにモニタールームへ向かった。

 

「今回のMVPは、まあみんなわかってるだろうが雨宮少年だ!ただ、今回ヒーロー側がやった作戦にも欠点がある、何かわかるかな?」

「人質がおらず、(ヴィラン)の個性が判明している状態で、なおかつ僕の個性が通用する環境でないと破綻する、ですよね?」

「おお!わかっていたのか雨宮少年!」

「というより、その条件が整ってたからこの作戦を思いついた、という感じです。もし毒ガスが充満してたり、(ヴィラン)に電気系の個性持ちがいたら通用しないです。」

「うむ!欠点をしっかり把握することで今後の訓練に生かせる!これからも、その姿勢を大事にな。」

「はい!それと、切奈ちゃんがいなかったらこんなに円滑にできなかったと思います。」

 

「そうだな!取陰少女のような的確なサポートも戦闘において重要となる。どのように立ち回ることで味方を援護できるか思案するのを忘れぬように!」

「はい!」

 

「鱗少年は状況設定に応じて立ち回ることはできていた、が、相手の個性への対策やどのような作戦で来るかの予想も大事に。」

「はい。」

 

「鉄哲少年、気合を以て望むこともとても大事だが、仲間との連携や作戦も同じくらい大事だぞ!今後、気を付けよう!」

「はい!!!」

 

その後も戦闘訓練は滞りなく行われ、一佳ちゃんが寧人ちゃんを殴り飛ばしたり、旋ちゃんと洋雪ちゃんが見事な連係プレーを見せたり、唯ちゃんがとんでもない個性の使い方を披露したり、二連撃ちゃんが見た目とは裏腹の俊敏な動きを見せたり、なんやかんやあって戦闘訓練は終了した。

 

 

 

そして僕らは放課後、訓練の反省会をしよう、ということになった。

「にしても今回の訓練で一番やばかったのはやっぱ水月だよなー。」

「あんなのやられたら誰だってなすすべがないノコ。」

「俺たちの中で対処できんのって塩崎とか物間くらいじゃね?あとギリギリ回原とか。ほら、足ぐるぐる回して、スクリューみたいに。」

「それやれても水中じゃろくに戦えないだろ。それに水月って水操れるんだろ?水中の時点で詰みじゃん。」

「いや、それほどのあれじゃないよ。」

 

「どういうことなの水月?」

「簡単な話だよ一佳ちゃん。僕が操れる水量は大体バス2台分が限界。それ以上は体力も集中力もごっそり持ってかれるの。その証拠に、戦闘訓練のとき僕徹鐵ちゃんと飛竜ちゃんの位置水中でもわかんなかったし。」

「へぇー。結構大変なんだね。」

「てか、一佳ちゃんもすごかったじゃん。あのパンチ!ドーンって!」

「いや、たまたまいい位置に物間がいたってだけだよ。」

「拳藤、きみの女子らしからぬパワーは対敵においてかなりの脅威になるだろうねぇ!」

「むー。寧人ちゃん、ダメだよ、そういう言い方。一佳ちゃん女の子なんだから、言うとしてももうちょっとオブラートに包みなよ。」

「いいって。慣れてるし。」

「そう?でも気を付けなよ寧人ちゃん。」

 

「あ、そうだ。切奈ちゃん。」

僕は切奈ちゃんの方を振り向いた。

「ありがとね。切奈ちゃんのおかげであの作戦がうまくいったし。すごい個性だね。」

「いいって。アタシはあんたの作戦に従っただけだし。」

「それでもだよ。僕はとっても助かった。ありがとうね。」

「・・・どういたしまして。アタシの方こそ、ありがと。」

「うん。どういたしまして。」

 

切奈ちゃんがふいっと顔をそらした理由を、このときの僕はまだ知らなかった。

 

その後は反省会とは名ばかりのおしゃべり会になったけど、こういうのもいいと思う。だって高校生だもん。




取陰「次回 飯田が変なあだ名で呼ばれる?
さらに向こうへ Plus Ultra!」

水月は息を吸うように他人を褒めます。
姉のおかげで抵抗がないんだね。


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No.7 いいぞガンバレ一佳ちゃん!

 「君!オールマイトの授業はどんな感じですか!?」

「えっ!?かっ、くぁっ・・すみません、僕保健室に行かなきゃいけなくて!」

「平和の象徴が教壇に立っている様子を聞かせてくれる?」

「よ、様子!?えっとー・・・筋骨隆々!です!」

「教師オールマイトについてどう思ってます?」

「最高峰の教育機関に在籍しているという事実を殊更意識させられますね。威厳や風格は勿論ですが、ほかにもユーモラスな部分など、我々学生はその姿を常に拝見できるわけですから、トップヒーローとは何をもってしてトップヒーローなのかを直に学べるまたとない―――」

「すみませーん!オールマイトについて――ってあれ?君ヘドロの時の!」

「ッ!やめろ・・・!!」

 

朝から校門前にものすごい人だかりだ。まあ当然と言えば当然かなぁ。なんたってあのオールマイトが雄英の教師に就任したんだもんねぇ。

「あ、ねえキミ!」

「?何ですか」

「教師としてのオールマイトはどのような印象を抱きますか!?」

「えーっと、ちょーかっこいいです。それじゃ。」

僕は報道陣を後にして教室に行った。

 

「昨日の戦闘訓練、みんな、ご苦労だった!VTRと成績を見たが、どのバトルも非常に良かった!全員、今後の訓練に生かすように!」

「「「はい!」」」

「さて、今日のホームルームでは

 

 

委員長を決めてもらう!

 

「「「学校っぽいのキター――!!!」」」

委員長 普通科では雑務ってイメージでやりたがる人はいなさそうだけど、ことヒーロー科においては

「はい俺!俺がやるぜ委員長――!!」

「僕がふさわしいよねえ!!!」

「私がやるノコ!」

「私の出番デース!」

こんな感じで集団を導くっていうトップヒーローになるための素地を鍛える役目でもあるんだよね。

 

「まあまあみんな落ち着きな。ここはひとつ、投票で決めてみない?」

「おいおい拳藤、まだみんな会ってから日が浅いってのに、投票なんか意味あんのか?」

「それこそ、自分にいれるぜ俺は!」

「だからこそじゃない?ここで票を勝ち取ったやつが真に委員長としてふさわしいってこと。」

「なるほど、一理ある・・・」

「どうします?ブラド先生。」

 

「うむ!お前たちが自分たちで何かをなそうという姿勢、感服した!納得いくまでやるといい!」

 

 

ということで投票になったんだけど

「拳藤2票で、水月が3票!」

 

「では!委員長が水月!副委員長が拳藤だ!」

 

「あ、ちょっといいですか。」

「む、なんだ水月。」

 

「僕は、一佳ちゃんが委員長がいいと思います。」

「なんでだよ水月!」

「せっかく委員長になったってのに!」

「うん、僕に入れてくれたのはありがたいんだけど、僕としては、一佳ちゃんがこのB組を引っ張っていくのにふさわしい人だと思うんだよ。うまく言えないけど、なんていうか、ダメなことをした時にちゃんと叱ってあげられるっていうか、そういうものが委員長には大事だと思うんだ。

だから、一佳ちゃんが委員長で、僕は副委員長・・・で、許してもらえないかな?」

 

 

「アタシはいいと思うよ?現・委員長様のご指名だし。」

「俺も賛成だぜ!拳藤はアツいからな!」

僕の杞憂とは裏腹に、一佳ちゃんを委員長に、という案は割とすんなり受け入れられた。

 

「えー、では改めて、委員長が拳藤!副委員長が水月だ!」

こうしてB組の委員長と副委員長が決まった。

 

 

「それにしても、僕に3票も入るなんてびっくりだよ。」

学食で白米をほおばりながら言った。

「3票?自分に入れた分除いた2票の間違いじゃないの?」

柔造ちゃんが聞いてきた。

「いや?僕は最初から一佳ちゃんに票入れたよ。」

「そうだったの!?私はてっきり水月は自分に入れたのかと」

「自分にいれるような人がわざわざほかの人を委員長にはしないでしょ?僕は本当に一佳ちゃんが委員長に相応しいと思ってたんだからね。」

「じゃあ、水月にいれたのは誰ノコ?」

「簡単だよ希乃子ちゃん。切奈ちゃんと柔造ちゃんと旋ちゃん、この3人は自分に入れてないから消去法で僕にいれたはずだよ。一佳ちゃんのは一佳ちゃん自身と僕ので2票だからね。それにしても柔造ちゃんが僕に入れたのは意外だったな。一緒に組んだ切奈ちゃんや流されやすそうな旋ちゃんはまだしもねぇ。」

「水月、お前割とさらっとディスるんだな。」

「?何が?」

 

「俺がお前にいれたのはお前が拳藤に入れたのと同じだよ。」

「というと・・・」

「お前がB組を引っ張っていくのにふさわしいと思ったからだよ。お前自身の考えは俺とは違ったっぽいけど、俺は俺自身の考えも間違ってるとは思ってない。」

 

ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!!!!

 

 

「警報!?」

『セキュリティーⅢが突破されました。生徒の皆さんは、速やかに屋外へ避難してください。』

「なんかヤバいっぽいね」

「とりあえず、早く入り口に行こうぜ!」

「いや、やめた方がいいよ。」

「なんでだ!?避難しろっていってたろ?」

「きっとみんな同じこと考えて入り口いくからとんでもない渋滞になる、だろ水月?」

「そゆこと。切奈ちゃん!」

「なに!?」

「窓の外見れる?」

「やってみる!」

 

切奈ちゃんの返事を聞いた直後、僕は見覚えのある2人を見た。入試の時の、浮かせる子と、眼鏡の真面目ちゃんを。

 

「外からマスコミが入ってきてる!」

「そーゆーことね!一佳ちゃん!僕の足持ち上げられる?」

「できるけど、なんか作戦思いついたの!?」

「『信頼』って作戦をね!」

僕は一佳ちゃんに“個性”「大拳」で足を持ってもらい、人混みが一望できる高さについた。当然、あの真面目ちゃんも見える。

「真面目ちゃん!!」

「君は・・・!?」

「話は後!どこ行きたいの!?」

「出口付近だ!」

「オッケー、踏んばってね!!」

そう言って僕は水で真面目ちゃんを包み、超特急で出口付近まで運び、真面目ちゃんが入り口の上のパイプをつかむと同時に個性を解いた。

 

 

「皆さん、大丈――――――――夫!!!

 

ただのマスコミです!何もパニックになることはありません!

 

大丈――――――――夫!!!

 

ここは雄英!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!

 

「・・・すごいね。予想以上だ。」

 

その後は真面目ちゃんの演説を聞いた全員が落ち着き、警察の到着もあって学食に平穏が訪れた。

 

 

「真面目ちゃん。」

「む、君はさっきの!」

「すごかったね。まるでヒーローだ。」

「ありがとう。ヒーロー科の生徒として、その言葉、ありがたく受け取ろう!それと俺の名前は真面目ちゃんではなく、飯田天哉だ。」

「天哉ちゃんか。僕は雨宮水月。水月でいいよ。天哉ちゃん。」

「あー!さっきの飯田君運んでたかわいい人!私は麗日お茶子、よろしくね!」

「あ、ぼっ、僕は緑谷出久です!それにしてもさっきの“個性”、水で飯田君を運んでたように見えたけど、運べる重量の制限なんかがあるのかな。いや、それを抜きにしてもただ水をぶつけられるだけでもそれなりのダメージを与えられるし飯田君くらいの人を運べるなら救助の際もかなり有用な“個性”に」

「デク君、ほら。ちょい引いとるよ。」

「あっ、ああゴメン!」

「えっと、お茶子ちゃんとデク?ちゃんね!僕は雨宮水月!水月って呼んでね。」

「わー、なんか梅雨ちゃんみたい!」

「つゆちゃん?」

 

「ねえ水月。」

「なぁに切奈ちゃん?」

「さっきほら、『信頼』が作戦って言ってたけど、あれどういう意味?」

「あー。あの2人さ、実は入試会場で見たんだよ。実技の会場は別だったけど。天哉ちゃんの方はちょっと真面目過ぎるんじゃないかなーって思ったんだけど、お茶子ちゃんは入試会場でデクちゃんを助けてたのを見たことがあったからさ。

そのお茶子ちゃんが天哉ちゃんを信じて何かをやってるんだったらさ、ちょっとは信じて手伝ってもいいんじゃないかなーって思ってね。」

「ふーん。『信頼』かー。・・・アンタはアタシのこと『信頼』してんの?」

「もちろん!とっても『信頼』してるよ!」

「・・・そ。」

 

その後はA組の天哉ちゃんたちも加えて昼食を楽しんだ。

 

「今日のヒーロー基礎学だが、A組との合同授業に加え、俺とイレイザー、オールマイト、そしてもう一人の計4人体制で見ることになった!」

「はい!何するんすか?」

 

災害・水難 なんでもござれの救助《レスキュー》訓練だ!




飯田「次回 緑谷君が照れるぞ!
さらに向こうへ Plus Ultra!」

言い忘れてましたがヒロインは特に決めてないです。もしかしたら投票とかで決める・・・かも?


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USJ襲撃事件編
No.8 未知との遭遇


 「災害・水難 なんでもござれの救助《レスキュー》訓練だ!」

「救助か!これぞヒーローの本分って感じだな!燃えてきたぜー!」

「大変そうだけど、なんかちょっと楽しそうだよな。」

「静粛に!今回コスチュームの着用は各々の判断に任せる。中には活動を妨げるコスチュームもあるだろうからな。訓練場はここから少し離れたところにあるためバスで移動する。以上だ。準備開始!」

「「「はい!」」」

 

 

僕たちがコスチュームに着替えて外に出ると、そこにはすでにA組がそろっていた。

「今回はよろしくねA組。」

「ああ、こちらこそよろしく頼む!」

「あれ?デクちゃんコスチュームは?」

「あぁ、その、前の戦闘訓練でボロボロになっちゃったから、サポート会社の修復待ちなんだ。」

「へぇー。ねえお茶子ちゃん、デクちゃんのコスチュームってどんな感じだったの?」

「えっとねー、緑色で、マスクをつけてて、あ!あとうさ耳がかわいかったよー!」

かっ、かわいッ////

「え!ほんと!?見たかったなー。修復が終わったら、見せてもらっていい?」

「うん、いいよ。」

 

などと会話を弾ませていると、見覚えのある髪の子を見つけた。

「あー!勝己ちゃん!へーそれが勝己ちゃんのコスチュームかー。ザ・蛮族!って感じだね。」

「ンだとコラテメェ誰が蛮族だ!」

「水月くん、かっちゃんと知り合いだったの!?」

「入試の時にね。てかデクちゃん、その呼び方いいね!僕もそれで呼ぼっかなー。かっちゃん♪かっちゃん♪」

「カッチャカッチャうるせェぞコラァ!」

 

ピィー―――――!!!と天哉ちゃんのホイッスルが鳴った。

「1-A 集合!バスの席順でスムーズに行くよう、番号順に二列で並ぼう!」

「飯田くん、フルスロットル・・・!」

「じゃ、私たちもそろそろ乗ろっか。」

「そだね。1-B集合ー。バスに乗るよー!」

 

そんなわけでみんなバスに乗りましたとさ。

「天哉ちゃん大丈夫かな。席順で並んでもこの座席じゃ意味ないかも。」

「水月、お前A組の委員長と知り合いなのか?」

「お昼にトラブルがあった時に食堂で知り合ってね。非常口してた。」

「非常口・・・?」

「そういえばさ―――」

僕は後ろの座席の方へ振り向いた。

「寧人ちゃんの個性って、獣郎太ちゃんとか尖ちゃんみたいな異形型の個性をコピーしたときって、見た目もコピーできるの?」

「僕の個性でコピーできるのはあくまで『個性』だけ。宍田の『ビースト』みたいに獣化する個性は個性発動時の見た目もコピーできるけど、鎌切みたいに外見が個性と関係ない場合は見た目まではコピーできないよ。」

「そうだったんだ。」

「ところで、なんでそんなことを聞いたんだい?」

「え?あー、僕をコピーした場合ってカワイさも僕そっくりにコピーできるのかなって思って。」

「さすがにそれは無理な注文だね。」

「まあ『かわいい』って物間からはかけ離れた言葉だからなー。」

「おい誰だいさらっと失礼したのは」

「もう着くぞ!準備しろ!」

「「「はい!」」」

 

 

『みなさん、待ってましたよ。』

 

「スペースヒーロー13号だ・・・!災害救助で目覚ましい活躍をしている紳士的なヒーロー!」

「わぁー・・・!私好きなの13号!!」

テレビで見たことあるけど・・・

「予想以上に体おっきいんだなぁー。」

『早速中に入りましょう』

「「「よろしくお願いします!」」」

 

 

「うぉあーすっげー・・・USJかよー!!」

『水難事故、土砂災害、火災、暴風、etc...あらゆる事故や災害を想定し、僕が作った演習場です。その名も

ウソの災害や事故ルーム 略して

USJ!』

 

ほんとにUSJだった。というか13号先生、そのコスチュームでその姿勢を維持できる体幹はマジでヤバい。

「13号、オールマイトは?ここで待ち合わせるはずだが・・・」

「どこにも見当たらないぞ?」

『先輩方、それが・・・通勤時に制限ギリギリまで活動してしまったみたいで、仮眠室で休んでます。』

「不合理の極みだなオイ」

「だがまぁ、念のための警戒態勢だイレイザー。仕方ない。始めるぞ。」

 

『えー、始める前にお小言を一つ二つ、三つ四つ五つ六つ―――』

どんどん増える~

 

『みなさんご存じとは思いますが、僕の個性は「ブラックホール」。どんなものも吸い込んで塵にしてしまいます。』

「その個性で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね!」

お茶子ちゃんがものすごい速さでうんうんしてる

『ええ。しかし、簡単に人を殺せる力です。みんなの中にもそういう個性はいるでしょう。』

 

『超人社会は、個性の使用を資格制にし、厳しく規制することで、一旦成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えば容易に人を殺せる、行き過ぎた個性を個々が持っていることを忘れないでください。

 相沢さんの体力テストで、自身の力が秘めている可能性を知り、

 オールマイトの対人戦闘訓練で、それを人に向ける危うさを経験したかと思います。

この授業では、心機一転、人命のために、個性をどう活用するかを学んでいきましょう。

君たちの力は、人を傷つけるためにあるのではない。

助けるためにあるのだと、心得て帰ってくださいな。

以上。ご清聴、ありがとうございました。』

一斉に拍手が起こった。僕自身、13号先生の演説がとても気に入った。

「うーし、そんじゃまずは」

 

 

 

その時、異変が起こった。

 

照明はショートし、噴水は途切れ途切れになる。

 

 

「・・・!一塊になって動くな!」

「13号!生徒を守れ!」

 

「なんだありゃ、もう入試ん時みたいな、もう始まってんぞパターン?」

「動くな!!」

 

「イレイザー・・・あれは」

「ああ、ブラド。

 

 

敵《ヴィラン》だ。」

 

 

 

 

奇しくもそれは 命を救える訓練の時間に 僕たちの前に現れた

 

 

 

途方もない悪意

 

 

 




イレイザーとブラドの共闘、アニメで見たいなぁ・・・

緑谷「次回 八百万さんが誇らしげ!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.9 思い知れ敵

 「敵ンン!?バカだろ!?」

「ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

「先生!侵入者用センサーは!?」

『もちろんありますが・・・!』

「現れたのはここだけか、学校全体か・・・なんにせよセンサーが反応しねぇなら、向こうにそういうことできる“個性”がいるってことだな。

校舎と離れた隔離空間 そこに少人数が入る時間割・・・バカだがアホじゃねぇ これは

なんらかの目的があって、用意周到に画策された計画だ。」

 

「13号避難開始!学校に電話試せ!センサーの対策も頭にある敵だ。電波系の“個性”が妨害してる可能性もある。

上鳴お前も“個性”で連絡試せ」

「ッス!」

「先生方は!?たった2人で戦うんですか!?あの数じゃいくら“個性”を消すって言っても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ!ブラドキングも1対1が基本、あんな数相手に正面戦闘は・・・・・・」

 

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん

 

13号!任せたぞ。行くぞブラド!」

「応!!」

 

飛び出していったイレイザーヘッドとブラドキングは個性を消してからの捕縛布を用いた近接戦闘や、血を爪状にしてバッタバッタと切り裂いていった。

 

「とりあえず早く避難しよう。」

「そうね。」

皆で出口に向かって走ると、USJの中央にいた黒いモヤみたいな敵が突然現れた。

 

「させませんよ

はじめまして。我々は敵連合。せんえつながら・・・このたびヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは

 

平和の象徴 オールマイトに

 

 

息絶えて頂きたいと思ってのことでして

 

 

は?

 

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ・・・ですが、何か変更あったのでしょうか?まあ・・・それとは関係なく・・・私の役目はこれ」

 

そのとき、かっちゃんともう一人が前に飛び出した。

 

BoooooooooM!

 

「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」

 

「危ない危ない・・・・・・そう・・・生徒といえど、優秀な金の卵」

「ダメだどきなさい、二人とも!」

 

「散らして

  殺す」

 

モヤ敵の黒いモヤが一気に広がり、みんなを包み込んだ。

とっさに僕は、支配ちゃん、唯ちゃん、レイ子ちゃんの3人を水で押し逃がした。

 

 

「皆は!?いるか!?確認できるか!?」

「散り散りになっているがこの施設内にいる」

「・・・・・・!」

「物理攻撃無効でワープって・・・!最悪の“個性”だぞおい!!」

「・・・・・・委員長!」

「は!!」

「君に託します。学校まで駆けてこのことを伝えてください。

警報鳴らず、そして電話も圏外になっていました。警報機は赤外線式・・・先輩・・・イレイザーヘッドが下で個性を消しまわっているにも拘らず無作動なのは・・・恐らくそれらを妨害可能な“個性”がいて・・・即座に隠したのでしょう。とするとそれを見つけ出すより君が駆けた方が早い!」

「しかし、クラスを置いていくなど委員長の風上にも―――」

「行けって非常口!!

外に出れば警報がある!だからこいつらはこん中だけで事を起こしてんだろう!?」

「外にさえ出られりゃ追っちゃこれねぇよ!!お前の足でモヤを振り切れ!!」

 

「救う為に“個性”を使って下さい!!」

「食堂の時みたく・・・サポートなら私超出来るから!する!!から!!

お願いね委員長!!」

 

「手段がないとはいえ、敵前で策を語る阿呆がいますか。」

「バレても問題ないから語ったんでしょうが!!」

 

 

 

モヤが晴れると、僕は山岳地帯にいた。

「ヒャハハァ!死ねぇ!!」

「ッ!!」

突然目の前に現れた敵を水で吹っ飛ばした。周りを見ると、敵に囲まれていた。

「・・・なるほどね。そういう感じかぁ。でも、この程度なら冇問題!」

僕は水を生み出し、敵をまとめて包み、巨大な水球で捕縛した。

 

「えっ、ちょ、コレどういうこと!?」

振り返ると、ポニーちゃんとA組の人らしき3人がいた。多分僕と同じようにここに飛ばされたんだと思う。

「4人ともケガはない?」

「ケガはありませんが、その、どういう状況ですの?」

「僕がここに来た時にこいつらが襲って来てね、一応捕縛しておいたって感じ。」

「一応って・・・サラッと言ってっけどお前すげぇな!」

「Yes!水月サンはvery strongデース!」

「それはとりあえず置いといて、ちょっと、気になることがあるんだよね。」

「気になること?何ですの?」

「手段だよ。」

 

この程度なら冇問題!って言っておいてなんだけど、本当にこの敵たちそこまで強くない、路地裏のチンピラ程度の敵だ。

でも、あのモヤ敵は「オールマイトを殺す」って言ってた。けど、こいつらじゃあまりに戦力としては弱い。多分、僕たちを殺す用の駒だ。

モヤに包まれたほかの生徒たちもそれぞれ施設内のどこかに飛ばされて、こんな感じの敵と戦っている、って感じかな。

だとすれば・・・

 

「ねえ、敵さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」

「なっ、なんだよ・・・ガキに話すことなんざ無ぇよ!」

「『オールマイトを殺せる手段』って何?」

「ッ!!」

「あのさ、なんでそんなこと聞くの?」

「あのモヤ敵はオールマイトを殺すって言ってたよね?」

「ええ。そう言ってましたわ。」

「数で押してくるのかと思ったけど、ほとんどがこの人たちみたいにチンピラ程度だった。なら、あそこまで自信をもって殺害宣言をできる根拠って、なんだと思う?」

「・・・分からねぇ、何なんだよ。」

「それを今から聞くとこ。というわけでさ」

僕は敵に顔を近づけた。

 

「教えてくれないかなぁ。」

「フン!誰が教えるかよ。」

「う―――ん・・・ねえだれか!くすぐる道具持ってない?」

「ヤオモモなら作れんじゃない?ブラシとか。」

「わかりましたわ。今作ります。」

「作る?」

僕が首をかしげてると、あっという間に腕からくすぐりブラシ的なものを創った。

「え?ええ!?作っ、作った!?え?ウソ!?なにそれすごい!!!」

「わたくしの個性ですの!」

「すごいよすごいよ!!」

誇らしげな彼女からくすぐりブラシを受け取り、敵をくすぐりまくってみた。

「あひゃひゃヒャハハあははアア!!!わっわかッた分かった!言うから、言うからやめてくれェ!!」

「うまくいったみてーだな!」

 

「ハァ、ハァ・・・死柄木さんが言ってたオールマイトを殺せる手段ってのは、脳無とかいう黒くてデケェ野郎だ。」

死柄木?あの手がいっぱいついてたリーダーっぽい奴かな。それよりも・・・

「その脳無ってのが、どうしてオールマイトを殺せるの?」

「詳しいことは分からねぇが、なんでも、めちゃくちゃに強いらしい。」

 

「なるほどねぇ。とりあえず」

 

僕は後方にいた髑髏をかぶった敵を水で捕縛した。

「とり逃しがいたみたいだね。危ない危ない。」

「縄を創ります。一応全員縛っておきましょう。」

敵を全員縛り終えて、一旦みんなで落ち着いた。

 

「で、これからどうすんの?」

「まずは飛ばされたみんなを助けに行く。それが今の最善手だと僕は思う。」

「異論無しですわ。」

「賛成デース!」

「俺も!」

「じゃあ一応、みんなの名前と個性を教えてくれないかな。まだ名前知らなかったし。

僕は雨宮水月、水月でいいよ。個性は“水”。」

「私は角取ポニーデース。個性は“角砲《ホーンホウ》”!」

「ウチは耳郎響香。個性はイヤホンジャック。」

「私は八百万百。個性は“創造”です。」

「俺は上鳴電気。個性は“帯電”だけど、水月・・・」

「なに?」

「お前って、男、だよな?」

「正真正銘、男だよ。」

「だよな!ちょっと自信なかったわ。」

「ウチもちょっと気になってた。」

「恥ずかしながら私もです。その、お綺麗でしたので。」

「水月サンはvery very cuteデース!!」

「とっても嬉しいけど、今はそれは置いといて、早くみんなを助けに行こう!」

「「「おー!!!」」」

 

 

 

「くっ、キリがない!」

火災ゾーンで孤軍奮闘する尾白。ヒット&アウェイで凌いではいるが、この火災の中での消耗戦はあまり得策ではない。、

「熱っ!やっぱキツイな・・・」

「見つけたぜェ…!」

「しまった・・・!」

尾白に切りかかろうとする敵は、突如飛んできた水に吹っ飛ばされた。

「尾白!無事か!!!」

「上鳴!」

尾白のもとに水月たちが駆けつけた。

 

「このエリアにいるのは君だけ!?」

「多分そうだ!ほかの生徒は見当たらない!」

「オッケー!それじゃ逃げよっか!」

「敵と戦わねーのか!?」

「ここは視界が悪いからね!わざわざここで戦う必要はないよ!それに確か隣は水難ゾーン、もし追ってきたとしてもそのエリアでなら僕に負けはない。」

「とりあえず、escapeデース!Hurry up!!」

ポニーちゃんの一声で、僕たちは水難ゾーンへ駆け出した。

 




分かれてやる集団戦って難しいですね。

八百万「次回 切島さんが外しますわ!
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.10 オールマイト

 中央の広場では、イレイザーヘッドとブラドキングが敵の集団と戦闘を繰り広げていたが、リーダー格と思しき手を体中に着けた敵がイレイザーの方へ駆けて行った。

「23秒」

「本命か!」

捕縛布を伸ばすイレイザー。それをつかみさらに接近する敵。

「24秒 20秒」

「!!ちっ」

「17秒」

瞬間、つかんだ腕ごと敵を引き寄せ肘打ちを繰り出すイレイザー。

「動き回るのでわかりずらいけど 髪が下がる瞬間がある。

1アクション終えるごとだ。 そしてその間隔は段々短くなってる。

 

無理をするなよ イレイザーヘッド。」

しかしその肘は掴まれ、崩れていく。敵を殴り距離を取るがほかの敵もその隙をつくように襲ってくる。

「ちっ、ブラド!こいつが親玉だ!・・・おいブラド!」

イレイザーヘッドが振り返ると、そこには腕を折られ、血だまりの中にいるブラドキングがいた。

(・・・ブラド!?あいつがここまで・・・一体誰に―――)

 

 

「その“個性”じゃ・・・長期決戦には向いてなくないか?普段の仕事と勝手が違うんじゃないか?君が得意なのはあくまで『奇襲からの短期決戦』じゃないか?

それでも真正面から飛び込んできたのは 生徒に安心を与える為か?

 

          かっこいいなあ

                        かっこいいなあ

 

   ところでヒーロー

 

 

 

本命は俺じゃない

 

 

 

 

「13号、災害救助で活躍するヒーロー。やはり・・・戦闘経験は一般ヒーローに比べ半歩劣る」

USJ入り口付近、スペースヒーロー13号 個性“ブラックホール”どんなものでも吸い込み塵にしてしまう。

 

「自分で自分を塵にしてしまった。」

黒いモヤの敵は13号のブラックホールをワープゲートによって13号自身の後ろへつなげていた。

「先生―――!!!」

「飯田ァ走れって!!!!」

「くそう!!」

入口へ駆けていく飯田。しかし、

「散らし損ねた子供・・・教師たちを呼ばれてはこちらも大変ですので。」

ワープゲートは先回りしていた。

「行け!!」

そのワープゲートを障子が覆い、飯田を逃がす。

「早く」

「くそっ!!」

再び駆け出す飯田。それを今度はモヤの敵本体から黒いモヤを伸ばし捕まえようとする。が、

「理屈は知らへんけど、こんなん着とるなら、実態あるってことじゃないかな・・・!!!

行けええ!!!飯田くーん!!!」

そして今度こそ、飯田は入り口をこじ開け、校舎へ向かった。

「・・・・・応援を呼ばれる・・・・・ゲームオーバーだ。」

 

 

 

 

 

一方、場面は戻り、中央

イレイザーヘッドは、巨躯の敵に敗れていた。

「対・平和の象徴 改人“脳無”」

ベキベキと音を立てて折られる腕。まるで、小枝でも折るかのように。

「“個性”を消せる 素敵だけどなんてことはないね 圧倒的な力の前では つまり ただの“無個性”だもの」

左腕、そして頭蓋を続けざまに砕かれるイレイザーヘッド。

 

「死柄木 弔」

「黒霧 13号はやったのか」

「行動不能にはできたものの、散らし損ねた生徒がおりまして・・・一名逃げられました。」

「・・・・・・・・・は?」

 

「は―――――・・・

 

はあ―――――――

 

黒霧 おまえ・・・おまえがワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ・・・

 

さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない ゲームオーバーだ。あ―あ・・・今回はゲームオーバーだ。帰ろっか

 

けどもその前に 平和の象徴としての矜持を少しでも

 

 

へし折って帰ろう!

 

 

 

 

死柄木が駆け寄った湖。そこには緑谷、蛙吹、峰田の姿が。死柄木の手が蛙吹の顔へ迫る。瞬間、緑谷の脳内へフラッシュバックのようによみがえる光景。

イレイザーヘッドの肘に触れる手と、崩れ落ちる肘。

 

だが、蛙吹の顔は崩れなかった。

 

「本っ当かっこいいぜ イレイザーヘッド」

イレーザーヘッドが死柄木を“視て”いた。

直後、緑谷の拳が死柄木へ迫り、強大な一撃を放つ。しかし、それは死柄木へ届くことはなかった。緑谷の前にいたのは 改人“脳無”。

「いい動きをするなあ・・・スマッシュって・・・オールマイトのフォロワーかい?まぁ いいや君」

緑谷の腕を掴む脳無。緑谷へ舌を伸ばす蛙吹。蛙吹と峰田へ手を伸ばす死柄木。恐怖に怯える峰田。

 

 

 

 

そのとき 轟音が響いた。

 

 

 

もう大丈夫

 

 

 

私が来た

 

 

あ―――――・・・・コンティニューだ

 

 

次の瞬間、中央にいた敵たちが蹴散らされ、イレイザーヘッドのもとにオールマイトがいた。

「相澤くん、すまない。」

そして、鋭い眼光と共に緑谷、蛙吹、峰田を救出し、イレイザーのもとへ運んだ。

「皆 入口へ。相澤君を頼んだ。意識がない。早く!!」

 

外れた手を再び顔へ付ける死柄木 その目はオールマイトを強く見ていた。

 

「オールマイトダメです!!あの脳みそ敵!!ワンフォ―――僕の腕が折れないくらいの力だけど、びくともしなかった!きっとあいつ・・・」

「緑谷少年

大丈夫!!」

ピースサインをしたオールマイトは脳無へ接近し、

「CAROLINA  SMASH!!!」

クロスチョップを繰り出すが

「ムッ!!マジで全ッ然・・・効いてないな」

腹部にパンチをするも、オールマイトの言葉通り、まるで効いているように見えない。

 

「効かないのは“ショック吸収”だからさ 脳無にダメージを与えたいなら ゆうっくりと肉をえぐり取るとかが効果的だね・・・それをさせてくれるかは別として」

「わざわざサンキュー!!そういうことならやりやすい!!」

オールマイトは脳無の背後に回り込んでぐるっと体を掴むと、爆発が起きるほどのバックドロップを決めた。

 

しかし

「っ~~~~!!そういう感じか・・・!!」

地面には黒霧のワープゲートが発生しており、脳無の上半身をオールマイトの腹部を掴める位置にワープさせていた。

「オールマイトォ!!!!」

緑谷が駆け寄る。が、目の前には黒霧のワープゲートが。

 

しかし

どっけ邪魔だ!!デク!!」

そこへ爆豪が割り込み黒霧を確保した。

そして同じく来た轟によって左半身を凍らされる脳無。

「てめェらがオールマイト殺しを実行する役とだけ聞いた。」

「だあ―!!」

切島の攻撃をかわす死柄木。だが、側面から高速で飛んできた水に吹っ飛ばされた。

「よくもブラド先生を―――許さないよ・・・!!!」

「かっちゃん、轟君、水月君、切島君・・・!!」

 

轟の氷結が効いたのか、脳無の拘束が緩み、オールマイトが脱出する。

「平和の象徴は、てめェら如きに殺れねぇよ。」

 

「出入り口を抑えられた・・・・・こりゃあ・・・ピンチだなあ・・・」

「このウッカリヤローめ!やっぱ思った通りだ!モヤ状のワープゲートになれる箇所は限られてる!そのモヤゲートで実体部分を覆ってたんだろ!?そうだろ!?

全身モヤの物理無効人生なら、『危ない』っつー発想は出ねぇもんなあ!!!」

「ぬぅっ・・・」

「っと動くな!!『怪しい動きをした』と俺が判断したらすぐ爆破する!!」

「ヒーローらしからぬ言動・・・」

 

「攻略された上に全員ほぼ無傷・・・すごいなあ最近の子供は・・・恥ずかしくなってくるぜ敵連合・・・

脳無 爆発小僧をやっつけろ 出入り口の奪還だ」

死柄木の命令とともに、氷結された状態でワープゲートから出る脳無。氷結されている部分が割れ、崩れ落ちる。

「体が割れてるのに・・・動いてる・・・!?」

「皆下がれ!!なんだ!?ショック吸収の“個性”じゃないのか!?」

 

「別にそれだけとは言ってないだろ これは“超再生”だな」

 

欠損した部位がみるみる再生していく脳無。

「動くな。お前は、これ以上、動くな。」

その脳無を水で拘束する水月。しかし

 

「その程度で止められると思ってるのか?脳無はオールマイト、お前の100%にも耐えれるよう改造されたサンドバッグ人間だぜ?」

「・・・!!!なんっっって馬鹿力!!!っダメだ、抑え・・きれない・・・っ!!」

水の拘束を破り、爆豪へ急接近する脳無。そしてそれをかばい殴り飛ばされるオールマイト。

 

「・・・・・・加減を知らんのか・・・」

 

「仲間を助ける為さ しかたないだろ?さっきだって ほらそこの・・・あ―――――地味なやつ

あいつが俺に思いっ切り殴りかかろうとしたぜ?誰がために振るう暴力は美談になるんだ そうだろ?ヒーロー?

俺はなオールマイト!怒ってるんだ!同じ暴力がヒーローと敵でカテゴライズされ 善し悪しが決まる この世の中に!!

何が平和の象徴!!所詮抑圧のための暴力装置だおまえは!暴力は暴力しか生まないのだと お前を殺すことで世に知らしめるのさ!」

「めちゃくちゃだな。そういう思想犯の眼は静かに燃ゆるもの

自分が楽しみたいだけだろ、嘘つきめ。」

「バレるの 早・・・」

 

「3対6だ。」

「モヤの弱点はかっちゃんが暴いた・・・!!」

「とんでもねぇ奴らだが、俺らでオールマイトのサポートすりゃ・・・撃退できる!!」

「ダメだ!!!逃げなさい」

「・・・・さっきのは俺がサポートはいらなきゃやばかったでしょう。」

「手のやつとワープゲートは僕たちで対処できます。」

「オールマイト、血・・・それに時間だってないはずじゃ・・・ぁ・・」

「それはそれだ轟少年!!ありがとな!!しかし大丈夫!!プロの本気を見ていなさい!!」

「脳無 黒霧 やれ 俺は子供をあしらう クリアして帰ろう!!」

駆け出す死柄木とかまえる緑谷達。

「おい来てるやるっきゃねえって!!」

 

 

そして彼らは目撃する

プロヒーローの 平和の象徴の 本気を

 

ぶつかり合うオールマイトと脳無 拳と拳

「ショック吸収って・・・さっき自分で言ってたじゃんかよ」

「そうだな!」

繰り広げられる打撃戦

「真正面から殴り合い!?」

「うぅっ、くっ、すごい風圧・・・近づけない・・・!!」

「“無効”でなく“吸収”ならば!!限度があるんじゃないか!?

私対策!?私の100%を耐えるなら

 

さらに上からねじふせよう!!」

 

血を吐くほどのラッシュ。一発一発が すべて 100%以上の 連撃。

 

「ヒーローとは常にピンチをぶち壊していくもの!

敵よ こんな言葉を知ってるか!!?

 

 

さらに向こうへ PLUS ULTRA!!!」

 

 

一撃

その一撃は 悪を砕き 人々に希望と平和をもたらすもの

 

USJの壁を突き破り、吹き飛ぶ脳無。

「・・・コミックかよ。ショック吸収をないことにしちまった・・・究極の脳筋だぜ

デタラメな力だ・・・再生も間に合わねぇほどのラッシュってことか・・・」

 

 

「やはり衰えた。全盛期なら5発も撃てば十分だったろうに

300発以上も撃ってしまった。

さてと敵。お互い早めに決着つけたいね」

 

「チートが・・・・・・!」

 




切島「次回 猫のおまわりさん!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.11 各々の胸に

 「衰えた?嘘だろ・・・完全に気圧されたよ よくも俺の脳無を・・・チートがぁ・・・!

全っ然弱ってないじゃないか!!あいつ・・・俺に嘘教えたのか」

 

「・・・どうした?来ないのかな!?クリアとか何とか言ってたが・・・

出来るものならしてみろよ!!」

「うぅおぉおおおぉぉおおおぉおおぉお・・・!!」

オールマイトの眼光に戦慄する死柄木たち。

 

「さすがだ・・・俺たちの出る幕じゃねぇみたいだな・・・」

「そうだね。ほかのみんなを助けに行こう。」

「緑谷!ここは退いた方がいいぜもう。却って人質とかにされたらやべェし・・・」

 

 

「さぁどうした!?」

ボソボソと呟く死柄木と黒霧。

「主犯格はオールマイトが何とかしてくれる!俺たちは他の連中を助けに・・・」

「緑谷」

ブツブツと呟く緑谷

 

「――――何より・・・脳無の仇だ」

オールマイトに迫る死柄木と黒霧。

 

そのとき

緑谷が飛び出した。

「な・・・緑谷!!?」

「オールマイトから 離れろ」

が、ワープゲートを通り、死柄木の手が緑谷に迫る。

「二度目はありませんよ!!」

 

瞬間、死柄木の手に撃ち込まれる弾丸。

「!!!!」

「来たか!!」

 

「ごめんよ皆、遅くなったね。すぐ動けるものをかき集めて来た。」

 

「1―Aクラス委員長 飯田天哉!!

ただいま戻りました!!!」

 

 

「あーあ来ちゃったな・・・ゲームオーバーだ そろって出直すか 黒霧・・・ぐっ!!!」

死柄木を銃弾が襲う

「この距離で捕獲可能な“個性”は―――――・・・」

「僕だ・・・!!」

13号のブラックホールが黒霧もろとも死柄木を吸い込もうとする。

 

「今回は失敗だったけど・・・

今度は殺すぞ 平和の象徴 オールマイト」

 

「・・・・・何も・・・できなかった・・・」

「そんなことはないさ。あの数秒がなければ、私はやられていた・・・!

また助けられちゃったな。」

「・・・・・無事で・・・よかったです・・・!」

 

 

 プロが相手にしているもの・・・世界。それは 僕たちにはまだ早すぎる経験だった。

 

この襲撃は後に起こる大事件の始まりだったんだけど この時の僕たちには知る由もなかった。

 

 

 

「終わった・・・のかな?」

「さあ?どっちにしろ、教師陣が来たなら大丈夫だろ。」

「そうだね・・・。」

「お――い!!安否確認したいからゲート前に集合だってさ!!」

「わかったよ。行こう。」

 

 

僕たちは安否確認のためUSJの外に集合していた。

「36・・・37・・・38・・・・・・

両足重症の彼を除いて・・・ほぼ全員無事か。」

 

「水月サン、無事だったデスか。It was really good.」

「ごめんねポニーちゃん。途中で行っちゃって。みんなは大丈夫だった?」

「チンピラばっかだったし、A組の人たちもいたからなんとかね。」

「よかった・・・。あ、すみません、刑事さん!ブラドキング先生は、どうなりましたか・・・?」

「相澤先生も・・・」

『ブラドキングは右腕の粉砕骨折と両足骨折、肋骨3本骨折、イレイザーヘッドは両腕の粉砕骨折と顔面骨折・・・幸い脳系の損傷は見受けられません。ただ・・・眼窩底骨が粉々になっていまして・・・眼に何かしらの後遺症が残る可能性もあります。』

「だそうだ・・・」

「・・・・・。」

「ケロ・・・・」

 

「13号の方は背中から上腕にかけての裂傷が酷いが命に別状はなし。オールマイトも同じく命に別状なし。彼に関してはリカバリーガールの治癒で十分処置可能ということで保健室へ。」

「デクくん・・・」

「緑谷くんは・・・!?」

「緑・・・ああ、彼も保健室で間に合うそうだ。私も保健室の方に用がある。三茶!後頼んだぞ。」

「了解」

「猫だ」

「犬じゃないんだ」

 

 

翌日は臨時休校となったけど、全然気持ちは休まらなかった。

そして翌々日

 

「ホームルーム、誰がやるんだろうね。」

「さすがにあのケガじゃブラド先生ムリだよな。」

「普通科の先生とか来るんじゃない?」

 

「おはよう!!!」

「「「ブラキン先生復帰早えええ!!!」」」

「ケガ大丈夫なんすか!?」

「しばらく車いす生活というだけだ!お前たちが無事なら安いもんだ!!」

「「「ブラキン先生・・・!!!」」」

「それよりも、戦いはまだ終わってないぞ!」

「それって・・・」

「まさか・・・」

「敵が・・・!!」

 

 

「雄英体育祭が来る!!!」

 

「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!」」」

 




次回予告で「未指名の」キャラを指名し続けるのは普通にムリなので既指名のキャラも指名します。アレです。「アニメの方の次回予告」みたいな感じです。
次回から雄英体育祭編がスタートします。

三茶「次回 雨宮君は詳しいぞ
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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雄英体育祭編
No.12 そういうことだよ 切奈ちゃん


 「ちょ、待ってください!敵の襲撃があったばっかりなのに開催して大丈夫なんですか!?」

動揺した一佳ちゃんがブラド先生に尋ねた。

「だからこそ、逆に開催することで雄英の危機管理体制が盤石だと世に示す、という考えだ。その証拠に、警備も例年の5倍に強化される。

なにより雄英体育祭はお前たちにとって最大のチャンスだ!中止という選択肢はない。」

 

「雄英体育祭。日本における一大ビッグイベントの一つ。かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ日本中が熱狂したけど、今は規模も人口も縮小し形骸化しちゃった。

現在の日本に於いて、『かつてのオリンピック』に代わるのが、雄英体育祭。ですよね、ブラド先生。」

「その通りだ。詳しいな水月」」

「毎年楽しみにしてましたから。」

「全国のプロヒーローもスカウト目的で来るんだよな。」

「そっからスカウト受けて卒業後に事務所にサイドキック入りってのもあるわけだし。」

「独立しそびれて万年サイドキックって人もいそうだよね。」

「当然!名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も段違いだ。そのチャンスは年1回!計3回のみだ!

皆!気を引き締め、全力で臨め!俺も応援しているぞ!!」

「「「はい!!!」」」

 

「体育祭、燃えて来たぜ!」

「今年どんな種目なんだろうな。」

「毎年ランダムなんだよな。」

「でも第3種目は例年形式が違えどサシの対決だったよな。」

「1体1かー。ウチだと水月と宍田とか、あと拳藤や塩崎なんかが強そうだよな。全員派手だし目立つよなー。」

 

 

「だってよ、拳藤。水月。」

「てかそれ、第3種目まで勝ち残る前提の話じゃん取陰。」

「いいんじゃない?どっちにしろ、僕は優勝目指すわけだったし。」

「へぇ、結構ガチなんだね。」

「切奈ちゃんはガチじゃないの?」

「そりゃまぁ、アタシもがんばるつもりだけど、さすがに優勝は無理でしょ。個性的にも、力的にも。」

「取陰、別にそこまで弱気にならなくても・・・」

 

 

「『常にトップを狙う者とそうでない者・・・そのわずかな気持ちの差は、社会に出てから大きく響く』

数年前の体育祭で根津校長が言ってた言葉だよ。

僕は、お姉ちゃんとの約束を・・・『最高のヒーローになる』って約束を果たさなきゃいけない。

そのためにも、僕はこの体育祭で躓くわけにいはいかない。

 

悪いけど、手加減も手抜きもしない。ほかの人たちも、

同じB組のみんなを蹴落としてでも、勝ちに行く。

本気で、全力で、優勝を目指す。」

 

「・・・・・。」

「ごめんね切奈ちゃん、変なこと言っちゃって。でも、本気で優勝を目指してるから、生半可な人たちに負けるつもりはないよ。」

「水月・・・。」

 

「すごいね、水月。アタシじゃそこまで本気で優勝目指せないわ。でも・・・

 

だからって、アタシも負ける気ないから。

それに、さっきの水月のアレで、火点いちゃった。

 

やっぱり、アタシも優勝目指す。」

「―――ふふっ。やっぱり切奈ちゃんはすごいね。ところで・・・」

僕は一佳ちゃんの方を振り向いた。

 

「一佳ちゃんはどうするの?17位とかで満足しておく?」

「っ、そこまで言われちゃ引き下がるわけにはいかないよね。わかった。

私も優勝目指す!負ける気はないから!」

「そう来なくっちゃ。というわけで・・・」

僕は立ち上がって教室全体を見渡し、声を響かせた。

 

「みんなはどうする!?そこそこのがんばりで、そこそこの結果に終わっておく?上位をA組に、下手したら普通科の人たちに明け渡しちゃう?

 

違うよねぇ!!ヒーロー科なら!トップヒーローを目指す者なら!!この体育祭、優勝を目指さなきゃ、意味ないよね!!!」

 

「そう・・だな。」

「敵作るのはウラメシいけど、負けるのはもっとウラメシいよね。」

「おう!俺ははなから優勝目指してるぜ!!」

「しゃーない、俺らもいっちょ頑張るか!」

 

「みんな!体育祭!!がんばろー!!!」

「「「「「お――――――!!!!!!!」」」」」

 

 

「ひょっとして、アタシたちへの質問って、前フリみたいなものだった?」

「まぁ、半分そうだね。でも僕は嘘はついてないよ。本気で優勝目指してるから。」

「そ。ならよかった。言い出しっぺのアンタがやる気ないってんなら、期待外れだし。」

「ご心配せずとも、期待以上の全力を見せてあげるよ。」

 

 

「ただいまー。」

「おかえりお姉ちゃん。ご飯もうできてるよ。」

「ありがとー。てか水月、体育祭いつだっけ?」

「2週間後だよ。」

「よかったあってたー。有休取ったから、当日見に行くよ!」

「ほんと!?ありがとー!!これは一層、優勝しなきゃいけないなぁ。切奈ちゃんたちにも言っちゃったし。」

「あっ、そういえば。めっちゃ今更だけどさ、水月、友達出来た?」

「ほんとに今更だね。うん。たくさんできたよ。切奈ちゃんに一佳ちゃん、寧人ちゃんにポニーちゃんに徹鐵ちゃん希乃子ちゃん柔造ちゃん茨ちゃんレイ子ちゃん唯ちゃん旋ちゃん洋雪ちゃん・・・」

(やっぱり女の子の友達多いなぁ。ヒーロー科って女子少ないって聞いてたけど―――)

「ちゃんにかっちゃんに天哉ちゃんデクちゃんお茶子ちゃん百ちゃん響香ちゃん電気ちゃん・・・?お姉ちゃん、どうしたの?」

「ううん。やっぱ私の弟だなーって。」

「誉め言葉、でいいの?」

「うん。ちょー褒めてる。さすが私の最高にカワイイ水月。」

「ありがとう。お姉ちゃんも最高にカワイイよ。」

 

 

「さーて、と。」

夕食を終えた僕は自室にいた。

「本気で優勝を目指すからには、ある程度は対策をしておかないとねー。まず一番わかりやすいのは・・・」

僕はPCを起動した。

「第3種目の1体1だよねー。ここまで勝ち上がる人はB組だけならなんとなく予想できるし、A組でも何人かはわかる・・・」

 

まずここまで勝ち上がる可能性が高いのは入試の時に実技上位10名に入ってた人たち。

そしてそれ以外で勝ち上がる可能性が高いのは推薦組、B組は切奈ちゃんと柔造ちゃん、A組は確か百ちゃんと焦凍ちゃんだっけ。

他に可能性があるのは獣郎太ちゃん、ポニーちゃん、飛竜ちゃんあたりかな。

「この中で特に強そうなのは・・・かっちゃんと焦凍ちゃん、鋭児郎ちゃんと徹鐵ちゃん、百ちゃんと天哉ちゃんあたりかな。」

爆破のかっちゃん、氷の焦凍ちゃん、硬い鋭児郎ちゃんと徹鐵ちゃん、未知数の創造の百ちゃん、スピードの天哉ちゃん。

 

「かっちゃんと焦凍ちゃん以外の4人は正直遠距離攻撃で勝てる可能性が高い。問題はやっぱりこの2人だね。

特に焦凍ちゃんはほかと違って遠距離範囲攻撃ぶっぱしてくるかもしれないから、氷対策どうしようかな・・・・・あ!!!」

天啓 そう、文字通りの天啓。かはわからない。ただ、ひらめいた。もしくは思い出した。

「そうだそうだよ、つい4ヶ月前やってたじゃん!とりあえず、あれができれば焦凍ちゃんの氷対策はバッチリだ。」

 

どんな対策かって?それは  実戦でのお楽しみ。

「そして残るは・・・一番厄介なかっちゃんか。

正直、かっちゃんの個性って割と何でもできるよねー。でも、その中でも群を抜いて厄介なのが、

 

機動力だよね。」

爆破を推進力にした立体的で素早い移動。これに攻撃手段としての爆破が加わることで厄介さが倍増する。しかも頭の回転も速いと来た。

「あれに対抗するにはこっちも機動力がないとね・・・仮に遠距離攻撃やっても全部かわされるか防がれて接近してくるよね。

う~~ん・・・機動力・・・何かいい手はないかなぁー。」

水の噴射・・・もいいけど、細かい方向調整が難しいよね。

・・・ちょっと休憩しよっか。」

 

 

「どしたの水月?浮かない顔して。」

「うん、ちょっとね。個性を何かしら応用して機動力が欲しいんだけど、いいアイデアが浮かばなくて・・・。」

「そういうときには、別のことやって気分転換した方がいいよ。ふと思いつくかもしれないからね。スマブラやろ。スマブラ。」

「・・・うん。やろっか。」

そんなわけで、スマブラをやることになった。が、そういえばお姉ちゃんはめちゃくちゃゲームがうまいのであった。そう、僕のボロ負けである。

「あーっはっは。楽しー。」

「お姉ちゃん強すぎない?」

「まぁねーお姉ちゃんだし。はーあっつい。ちょっとビール持ってきてくれる?」

「はいはい。」

僕は水を操作して座ったまま冷蔵庫からビールを姉のもとに持って来た。

「ありがとー。」

「どういたしまして。

 

 

 

 

あ」

 

天啓

文字通り、天啓と言っても過言ではない、それでいてなぜ今まで思いつかなかったのか不思議に思うようなひらめきだった。

 

「なに?その『なんで今まで思いつかなかったんだろう』って感じの顔?」

「そう・・・そうだよ、まさにそれだよ!!!なんで今まで思いつかなかったんだろう!!!ありがとうお姉ちゃん!」

「えっ、どこ行くの?」

「僕の部屋!今少しでも練習したい!!」

そう言って僕は部屋へ駆け出して行った。

 

 

「・・・やっぱ私の弟って天才かも。って当たり前か。私の最高にカワイイ弟だし。」

柚月はビールをくいっと喉に流し込んだ。

 

 

2週間後

 

ついに 体育祭 当日。

 




当初プロット書いてた時点で水月はここまでB組を奮い立たせる感じの動きするキャラじゃなかったので、自分で作っといてなんですが水月をこんなにした柚月の影響力に驚いてます。姉パワー恐るべし・・・
それと天啓の使い方があってる感じがしない。

水月「次回 焦凍ちゃんはズルい!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.13 うなれ体育祭

 「Costumeを着るのはno goodなんデスね。」

「公平を期すためだと。」

「やべぇ・・・緊張してきた。」

「わかる。俺ももう心臓がやべぇ。」

ここは1―Bの控室。入場を待つ生徒たちが緊張と昂ぶりでそわそわする場所。

 

「水月、拳藤。」

「なぁに切奈ちゃん。」

「どしたの取陰。」

「・・・優勝するのはアタシだから。」

「―――あははははっ!よかった。この期に及んで切奈ちゃんが日和ってやっぱやめるとか言わなくて。もちろん、優勝は僕のものだよ。誰にも譲らない。」

「私も負ける気はないから。」

「俺も負けねぇぞ!!!」

「私もノコ!」

「ククク・・・刻み甲斐があるぜェ・・・」

 

 

『雄英体育祭!!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!

どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!?敵の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!

ヒーロー科!!1年!!!A組ぃぃぃ!!!』

1―Aの生徒が入場していった。いよいよだ。

 

『そして!!同じく困難を乗り越えた不撓不屈の魂!!!

ヒーロー科!!1年!!!B組ぃぃぃ!!!』

「めっちゃ持ち上げるじゃん。」

「はぁ・・・このプレッシャー、やっぱウラメシい・・・。」

「うお―――!!!やるぞ―――!!!」

 

「いいねぇ。アガってきたよ。」

 

『B組に続いて普通科C・D・E組…!!サポート科F・G・H組も来たぞ―!そして経営科I・J・K組!!』

 

 

「選手宣誓!!」

「おお!今年の1年主審は18禁ヒーロー『ミッドナイト』か!」

「校長は?」

「校長は例年3年ステージだよ。」

「18禁なのに高校にいてもいいものか。」

「いい。」

「静かにしなさい!!選手宣誓!!

1―B 雨宮水月!!」

「え?水月なの?」

「あいつ一応1位通過だからな。」

()()()()()()入試な。」

あ、僕なんだ。事前通知とかもなくいきなり・・・でも、選手宣誓か。だったら、言うことはひとつだけ。

 

『宣誓

 

 

僕が優勝する。』

 

「「「はぁあああああああああ!!!???」」」

「調子乗んな!!」

「負けろ!!」

「何故品位を貶めるようなことをするんだ!?」

「水月君そういうキャラだっけ!?」

 

もちろん僕は、決して自信過剰になり驕り高ぶってるわけじゃない。優勝を本気で目指すために、自分で自分を追い込んでいる。

 

「さーてそれじゃあ早速第一種目行きましょう!」

「雄英って何でも早速だね」

「いわゆる予選よ!毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!!さて運命の第一種目!!

今年は・・・・・・コレ!!」

ディスプレイに映し出された文字は・・・『障害物競走』

「計18クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4km!

わが校は自由さが売り文句!ウフフフ・・・コースさえ守れば()()()()()()構わないわ!

さあさあ位置につきまくりなさい・・・・・」

 

『プー』

いよいよはじまる・・・

『プー』

蹴落とし、蹴落として勝ち上がる・・・

『プー』

体育祭が・・・

『プー』

「スタ――――――――――――――――――――ト!!」

 

『さぁて実況してくぜェ!!解説アァユーレディ!?ミイラマン!!』

『無理矢理呼んだんだろうが。』

『早速だがミイラマン!序盤の見どころは?』

現在(いま)だよ。』

 

「って、スタートゲート狭すぎだろ!!」

つまりスタート地点(ここ)がもう

「最初のふるいってことだね。」

焦凍ちゃんが氷を生成して足場を凍らせ進んでいった。

「ってぇー!!何だ凍った!!動けん!!」

「寒みー!!」

「んのヤロォォォ――!!」

 

「甘いわ轟さん!!」

百ちゃんが棒で飛び

「そう上手くいかせねえよ半分野郎!!」

かっちゃんが爆破の推進力で飛んだ。

じゃあ僕は何してるか。僕は

「そうだよ!君にトップは渡さない!!」

水で空を飛んでいた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

2週間前

 

「お姉ちゃん、ちょっと見て。」

僕はそう言って 浮いた。

「ちょ、え、それどうなってんの!?」

「簡単なことだったんだ。僕の水は物を運べる。それにヒトだって運べる。

だったら、()()()()()()て当たり前なんだよ。」

「あ、たしかに。」

「今までほかの物(ぼくいがい)しか持ち運んだことがなかったから気づかなかった。」

「なるほどねー。で、それってどういう仕組みなの?」

「仕組み自体は単純。それは―――」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

()()()を持ち運ぶ。」

ただそれだけ。言ってしまえばアクアボードで空を飛ぶようなもの。つまり、方向転換も、姿勢制御も、すべて僕の体幹頼り。

それでも乗りこなしてみせてのヒーロー志望だよね!!そしてこれの名前は

「アクア・フェアリー。うん、大丈夫、行ける。」

ちなみにこれはお姉ちゃん命名(なんか飛んでるところがティンカーベルみたいだから)。

 

「ヒーロー科連中は()()として、思ったより避けられたな・・・」

「轟の裏の裏をかいてやったぜ、ざまあねえってんだ!

くらえオイラの必殺!GRAPE〘WHAM!!===

みねたがふっとんだ。

「峰田くん!?」

 

〚ターゲット・・・大量!〛

「入試の仮想(ヴィラン)!!?」

 

『さあいきなり障害物だ!!まずは手始め・・・第一関門 ロボ・インフェルノ!!』

「入試の時の0P(ヴィラン)じゃねえか!!!」

「マジか!ヒーロー科あんなのと戦ったの!?」

「多すぎて通れねぇ!!」

「一般入試用の仮想(ヴィラン)ってやつか。」

「どこからお金出てくるのかしら・・・」

 

「・・・クソ親父が見てるんだから」

そうつぶやくと焦凍ちゃんは圧倒的巨躯の仮想(ヴィラン)をあっという間に氷結させてしまった。

 

「あいつが止めたぞ!!あの隙間だ!通れる!」

「やめとけ。不安定な体勢ん時に凍らしたから・・・倒れるぞ」

焦凍ちゃんの言葉通り、氷結が砕け、仮想(ヴィラン)が倒壊した。

『1ーA轟!!攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィ―――!!!

すげぇな!!一抜けだ!!アレだな、もうなんか・・・ズリィな!!』

 

「おいおい誰か下敷きになったぞ!!」

「死んだんじゃねえか!?死ぬのかこの体育祭!!?」

 

 

「死ぬかぁー!!」

残骸から鋭児郎ちゃんが突き出て来た。

『1―A切島、潰されてた―!!』

「轟のヤロウ!ワザと倒れるタイミングで!俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

 

「・・・A組のヤロウは本当嫌な奴なんだな・・・俺じゃなかったら死んでたぞ!!」

「B組の奴!!」

徹鐵ちゃんも突き出て来た。

『B組鉄哲も潰されてた―!!ウケる!!』

「個性ダダ被りかよ!!」

鋭児郎ちゃんが駆け出した。気持ちはわかる。僕も初めて鋭児郎ちゃんの個性見たとき「徹鐵ちゃんとダダ被りじゃん。ウケる。」って思ったもん。・・・いやほんとごめん。

 

「良いなアイツら・・・潰される心配なく突破できる。」

「とりあえず俺らは一時協力して道開くぞ!」

と飛竜ちゃんが一時協力の音頭をとる一方で

『1―A爆豪、下がだめなら頭上かよ――!!クレバ――!!』

 

下を行く者、上を行くもの、それぞれがいる。僕が執るべき行動は――――――

 

「真ん中行こうか正面突破!!!」

 




水月のアクア・フェアリーを思いついたイメージは常闇の「黒の堕天使」です。
「黒影は常に浮遊状態→黒影が常闇を抱えれば飛べる」と似ていて
「水月は水を操ってモノを持てる→水で足を持って運べば飛べる」て感じです。
飛び心地はキングダムハーツのグライドやスーパーグライドみたいな感じです。

轟「次回 相澤先生がうれしいこと言うぞ
さらに向こうへ Plus Ultra」


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No.14 みんな個性的でいいね

 『一足先行く連中ヒーロー科が多いなやっぱ!!』

「他の科も決して悪くはない!ただ・・・」

『立ち止まる時間が短い。

上の世界を肌で感じた者、恐怖を植えつけられた者、対処し凌いだ者。各々が経験を糧とし、迷いを打ち消している。』

うれしいこと言ってくれるじゃんイレイザーヘッド。だったら僕も

「真ん中行こうか正面突破!」

目の前に立ちはだかるのは入試の時の0P仮想(ヴィラン)、ロボ・インフェルノ。デカくてかたい。それを水で突破するには・・・あれがいい。

僕は水を大量に生成して、まず水を球状にして、空気を間に挟む形で外側から水の膜で球状の水を覆い、膜を縮めていった。

(水自体を圧縮することは不可能でも、空気を媒介に水を高圧状態にはできる!そんで――――)

仮想(ヴィラン)に面している水の膜の一部を消すと、加圧された水はものすごい勢いで仮想(ヴィラン)に風穴を開けた。

「ウォータージェットの要領で即席でやった割にはうまくいったね。」

僕はあけた穴から第一関門地帯を通過していった。

 

 

僕が通り過ぎた少し後、百ちゃんは大砲を創造し仮想(ヴィラン)を沈めた。

「チョロいですわ!」

うわぁ・・・えげつないことするねぇ。

『第一関門チョロいってよ!!じゃあ第二はどうさ!?落ちればアウト!!それが嫌なら這いずりな!!

ザ・フォ――――――ル!!!』

「ここははっきり言って余裕というか、なんか僕だけズルみたいだね。」

そう、飛んでるからここはガン無視できる。

『戦闘は一足抜けて下はダンゴ状態!上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずに突き進め!!

そして早くも最終関門!!かくしてその実態は―――

一面地雷原!!怒りのアフガンだ!!地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になってんぞ!!目と足酷使しろ!!』

「はっはぁ俺は関係ね―――!!」

戦闘を歩く焦凍ちゃんにかっちゃんが追いついた。

「てめえ宣戦布告する相手を間違えてんじゃねえよ!」

『ここで先頭が変わった――!!喜べマスメディア!!お前ら好みの展開だあああ!!!』

互いを妨害しあうかっちゃんと焦凍ちゃんを尻目に僕が通過する。

「悪いねお2人さん!先行かせてもらうよお‶ふ‶ぅ‶っ‶っ‶!!??

「先行かすかよ水野郎!!」

かっちゃんに足掴まれて地面に落ちた。

「やっっったねええ!!?」

立ち上がりかっちゃんに反撃する。

「邪魔だ。」

焦凍ちゃんが僕たちに妨害し、先行しようとするが、

「行かせないよ!!」

「どけや半分野郎!!」

三者三様、三つ巴の戦闘争いとなっていた。

『後続もスパートかけて来た!!!だが引っ張り合いながらも・・・戦闘3人がリードかあ!!!?』

そのときだった。

 

BOOOOOOM!!!!

 

『後方で大爆発!!?何だ あの威力!?偶然か故意か、A組緑谷、爆風で猛追―――――・・・っつーか!!!

抜いたああああああ―――――!!!!!』

「デクちゃん!!?」

マジ!?後ろでなんか爆発したと思ったらデクちゃんが降ってきた!?

「デクぁ!!!!!俺の前を行くんじゃねぇ!!!」

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ・・・!」

かっちゃんと焦凍ちゃんがデクちゃんを抜かそうとしてる。

『元・先頭の2人、足の引っ張り合いをやめ、緑谷の後を追う!!共通の敵が現れれば人は争いを止める!!争いはなくならないがな!』

『何言ってんだお前。』

「やっばい出遅れたっ。・・・!?」

出遅れを取り戻そうとアクア・フェアリーをやろうとした僕の目に映ったのは、乗ってきた鉄の板を頭上に振りかぶってるデクちゃんの姿だ。

(・・・まさか!!?)

瞬間、僕は僕の全身に水の膜を纏うこととデクちゃんの体を水で掴むことを同時にやった。

その直後、デクちゃんは鉄の板を地面に大きく振りぬいた。

 

BOOOOOM!!!!!

 

地雷の大爆発が起きた。

『緑谷 間髪入れず後続妨害!!なんと地雷原即クリア!!イレイザーヘッド!!お前のクラスすげぇな!!どういう教育してんだ!』

『俺は何にもしてねぇよ。奴らが勝手に火ぃ付け合ってんだろ。』

『さァさァ序盤の展開から誰が予想出来た!!?『無視か』

今一番にスタジアムへ還ってきたその男―――――――・・・

緑谷出久の存在を!!』

 

デクちゃんが一位で通過した。一方僕は爆発直前のとっさの機転で爆風の勢いに乗るデクちゃんを水で掴んで引っ張ってもらったけど、煙で前が見えずに途中で落っこちた。その後なんとか体制を立て直してアクア・フェアリーを全速力で使い、結果は2位だった。

 

「はぁっ、はぁっ・・・。1位おめでとう。すごいねデクちゃん、まさか爆風に乗ってくるとは思わなかったよ。」

「ほんとにすごいねデクくん!1位すごい!悔しいよチクショー!!」

「いやぁ・・・また近い////

「この“個性”で後れを取るとは・・・やはりまだまだだ僕・・・俺は・・・!」

 

 

「ようやく終了ね。それじゃあ結果をごらんなさい!」

1.緑谷2.雨宮3.轟4.爆豪5.塩崎6.飯田7.骨抜8.飯田9.常闇10.瀬呂

11.取陰12.切島13.鉄哲14.拳藤15.尾白16.泡瀬

17.蛙吹18.障子19.砂藤20.麗日・・・・・42.青山

 

「予選通過は上位42名!!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!!

そして次からいよいよ本戦よ!!ここからは取材陣も白熱してくるわよ!キバリなさい!!

さ―て第二種目よ!私はもう知ってるけど~~~~~何かしら!!?言ってるそばから、これよ!!!!」

ディスプレイに表示された文字は『騎馬戦』

「個人競技じゃないけどどうやるのかしら?」

「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ!基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど一つ違うのが・・・先ほどの結果に従い各自にポイントが割り当てられること!」

「入試みてぇなポイント稼ぎ方式か。わかりやすいぜ。」

「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくると!」

「あんたら私がしゃべってんのにすぐ言うね!!!

ええそうよ!!そして与えられるポイントは下から5ずつ!42位が5ポイント、41位が10ポイント・・・といった具合よ。そして・・・

 

1位に与えられるポイントは   1,000万!!!!

 

上位の奴ほど狙われちゃう、下剋上サバイバルよ!!!」

 




「次回 物間お前話が長ぇ
さらに向こうへ Plus Ultra」


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No.15 策策策

 「上に行くものにはさらなる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるわよ。これぞ、Plus Ultra(プルスウルトラ)!予選1位通過の緑谷出久くん!!持ちポイント1,000万!!」

 

 

「制限時間は15分。割り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示された“ハチマキ”を装着!終了までハチマキを奪い合い保持ポイントを競うのよ。

取ったハチマキは首から上に巻くこと、取りまくれば取りまくるほど管理が大変になるわよ!そして重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!」

 

「てことは・・・」

「42名からなる騎馬10~12組がずっとフィールド上にいるわけか・・・?」

「シンド☆」

「いったんポイント取られて身軽になるってのもアリだね。」

「それは全体のポイントの分かれ方見ないと判断しかねるわ三奈ちゃん。」

 

「“個性”発動アリの残虐ファイト!でも・・・・・・あくまで騎馬戦!!悪質な崩し目的での攻撃などはレッドカード!一発退場とします!

それじゃこれより15分!チーム決めの交渉スタートよ!」

「「「15分!?」」」

 

 

みんなそれぞれチーム決めの交渉やらなんやらを進めている。

「さぁて、どうしよっかなー。」

 

「切奈ちゃん、僕と組まない?」

「・・・アンタと組めば間違いなく勝てると思う。」

「じゃあ一緒に「でも、」」

「障害物競走でアンタがすごい結果を残してるのに対して、アタシはそこそこの結果に終わった。それに、あれだけアンタから『僕が優勝する』って言われた以上、アタシも負けてらんないんだよね。だから、

 

アンタに挑戦するよ。」

「私も、水月に挑戦しようと思う。取陰と一緒に!」

「ぼっこぼこにしちゃうノコ!!」

「気を付けなよ?私たちが組んだ騎馬、かなりウラメシいから。」

 

「・・・・・。

 

 

やりすぎちゃってたかなあ・・・。」

あんだけ僕が優勝するって言っておいてなんだけど、正直、断られると思ってなかったから軽くショック。

軽くだよ?軽く、軽く・・・・・

 

「おう!何浮かない顔してんだよ!!」

「徹鐵ちゃん・・・いや、ちょっとね。ショックなことがあ」

「なあそれより!俺と組もうぜ!?」

「・・・え?」

「あ、俺もいい?」

「柔造ちゃん・・・?」

「わたくしも、あなたの力が必要だと感じています。」

「茨ちゃん・・・。」

 

「いいの・・・?僕がチームで・・・。」

「ったりめーだろ!?お前障害物競走2位じゃねぇか!!それになんかこう、すごそうな作戦考えそうじゃねぇか!!」

「前に言っただろ?“お前がB組を引っ張っていくのにふさわしい”って。俺はお前を信じる。蹴落としたりとかは第二種目に勝ってからでも遅くないだろ?」

「あなたの力と素質に期待しているのです。私の命を懸けられるくらいには。」

「さすがに命はかけないでね!?」

「で、どうすんの?俺たちでチーム組んでもいいの?」

 

「うん!大丈夫だよ!それと、ありがとう。僕を信じてくれて。」

「いいってことよ!」

「頑張ってこーぜ。」

「主の恵みに感謝しましょう。」

「で、水月。作戦とかある?」

「・・・・・・一度、全員の個性の詳細を確認してもいい?」

 

 

 

「俺の“スティール”は体全体を金属にできるぜ!」

「俺は“柔化”。触れたモノを柔らかくできる。もう一度触れると解除できる。」

「わたくしは“ツル”。この髪は伸縮自在のツルとなっており、コントロールできます。切り離して盾などにもできます。」

 

「なるほどね・・・。」

「水月、お前の個性も一応確認していいか?」

「あ、うん。僕の個性は“水”。水を生み出し、水を操り、水を吸収する。―――――ちょっと待って、ちょっと待ってて。」

「ちょ、おい水月!どこ行くんだよ!?」

「聞きたいことがあった!!」

「聞きたいことォ?」

僕はミッドナイトのもとに行った。

 

「ミッドナイト、ひとつ、聞きたいことがあるんですが・・・。」

「あら?どうしたのかしら雨宮君?」

「この騎馬戦―――――・・・」

 

 

 

「お、戻ってきた!」

「水月さん、一体何を伺ってらしたのですか?」

「あとで説明するよ。それよりも、作戦ができた。」

「・・・なるほどな。その作戦に必要な何かを聞いてきたってことか。」

「そーゆーこと。で、その作戦なんだけど―――――」

 

 

『さあ起きろイレイザー!15分のチーム決め兼作戦タイムを経て、フィールドに12組の騎馬が並び立った!!』

『・・・・・なかなか、おもしれえ組が揃ったな』

『さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!

よぉーし組み終わったな!!?準備がいいかなんて聞かねぇぞ!!いくぜ!!残虐バトルロイヤルカウントダウン!!』

「水月」

「なぁに寧人ちゃん。」

「恨みっこなしだからな。」

「わかってるよ。」

『3!!』

「水月!」

「切奈ちゃん・・・」

『2!!』

「アタシたちが勝つから。」

「・・・わかった。」

『1!!』

「徹鐵ちゃん、柔造ちゃん、茨ちゃん。」

 

「いくよ!!!!!」

『START!!!!!』

どのチームも一斉にデクちゃんのチームを狙って動き出した。

 

一方、僕はしょっぱなから一佳ちゃんの騎馬に狙われた。

「ちょおおっとこれは予想外!!茨ちゃん!」

「哀れな子羊よ、退きなさい!!」

茨ちゃんのツルが壁となって一佳ちゃんの騎馬と距離を取った。

「仕方ない!作戦開始だ!柔造ちゃん!!」

「了解!」

僕の合図と同時に、柔造ちゃんが柔化を発動し、フィールド一帯の地面を柔らかくした。

 

「うおおっ!何だこれ!?」

「地面が・・・」

「踏んばれない!!」

 

「茨ちゃん!!」

「了解しました。」

次の合図と同時に、茨ちゃんが僕たちの騎馬の周りにツルの壁を張った。

「それじゃ、行ってきます!」

「おう!」

「行ってら。」

「ご武運を。」

 

 

『さ~~~まだ2分も経ってねえが早くも混戦混戦!!各所でハチマキ奪い合い!!1,000万を狙わず2位~4位狙いってのも悪くねぇ・・・って、なんだアリャ!!?

B組雨宮、飛んでハチマキ奪ってやがるぞ!!!騎馬から離れてるけどいいのかアレ!!?』

「雨宮君は事前に聞きに来てたけど、騎馬から離れてハチマキを奪ってもオッケー!!地面に足ついたらアウトだけど!」

「おい葉隠、取られてる!!」

「うっそ――!?」

(ハチマキが分かりやすくていいけど、あれ服着てないの?)

 

『やはり狙われまくる1位と、猛追を仕掛けるA組、そして雨宮、ともに実力者揃い!!現在の保持ポイントはどうなっているのか、7分経過した現在のランクを見てみよう!

 

・・・・・あら!!?ちょっと待てよコレ・・・!!A組緑谷以外パッとしてねぇ・・・ってか爆豪あれ・・・!?』

 

 

「単純なんだよ、A組。」

そう言うと寧人ちゃんははかっちゃんのハチマキを奪った。

「んだてめェコラ返せ殺すぞ!!」

「ミッドナイトが“第一種目”といった時点で予選段階から極端に数を減らすとは考えにくいと思わない?」

「!?」

「だからおよその目安を仮定しその順位以下にならないよう予選を走ってさ、だいたい40位以内に。後方からライバルになる者たちの“個性”や性格をは」

「話が長いよ寧人ちゃん。」

僕は話に夢中になっていた寧人ちゃんのハチマキを根こそぎ奪っていった。

「!?」

「ってあいつ確かB組の・・・!」

「おい待てやコラそいつは俺の獲物だァ!!!」

「はいはいつかまえてごらーん。それと寧人ちゃん。」

「なんだい?」

「僕はわざと順位調整するような人には負けないよ。」

「死ねェ!!!」

かっちゃんの攻撃が当たる寸前で徹鐵ちゃんが飛び出て来た。

「大丈夫か水月!!!」

「みんな!作戦通りだね。いったん離れるよ!!」

 

「しかし存外すげぇなこの作戦!」

「“水月が飛んでハチマキ奪取、俺たちはある程度離れずついてきて防御”なかなか思いつかないな。」

「少し穢らわしい行いのようで気が引けますが・・・」

「仕方ないよ!これが一番勝率高そうだからね。 ・・・!」

ついにデクちゃんと焦凍ちゃんが相対した。

 

「水月、あの二人のスキを狙って取るとかできるか?」

「僕もいまそれやろうか考え・・・!?」

僕はいまさっき聞こえてきた焦凍ちゃんの騎馬のやり取りに衝撃を受けた。

『八百万、ガードと()()を準備』

『ええ!』

『上鳴は・・・』

『いいよわかってる!!しっかり防げよ・・・』

 

焦凍ちゃんの言った「ガード」「伝導」、電気ちゃんの「しっかり防げよ」・・・

「・・・まさか!!?」

僕は急いで徹鐵ちゃんたちの下に水の足場を形成して大急ぎで浮かせた

「茨ちゃん!下ガード!!!」

「?かしこまりました。」

その直後

 

無差別放電 130万V(ボルト)

 

 

電気ちゃんの放電によってほとんどの騎馬が感電した。

「残り時間6分弱、後は引かねえ。悪いが我慢しろ。」

焦凍ちゃんは百ちゃんに渡された棒を介して地面を氷結させた。

「あっっぶな!()()ってそういうことだったのね!!」

直前で浮上して防いだおかげで徹鐵ちゃんたちはなんとか被害を防げた。

 

『何だ何した!?群がる騎馬を轟一蹴!』

『上鳴の放電で()()()動きを止めてから凍らせた・・・さすがというか・・・障害物競走で結構な数に避けられたのを省みてるな。』

『ナイス解説!!』

そしてついでかのようにほかの騎馬のハチマキを焦凍ちゃんが奪っていった。

「あ―――ハチマキ!くっそぉお!」

「一応もらっとく。」

マジでついでなのね。

 

「とりあえず焦凍ちゃんたちを追っかけ「待てやコラぁ!!!」っ!?」

すっ飛んできたかっちゃんの爆破をなんとかかわした。

「クソデクの前にまずはテメェからだ・・・。」

「・・・厄介なのに絡まれちゃった。」

 

 

 

『残り時間約1分!轟フィールドをサシ仕様にし・・・そしてあっちゅー間に1,000万奪取!!!

とか思ってたよ5分前までは!!緑谷なんとこの狭い空間を5分間逃げ切っている!!』

 

 

 

残り約1分、ここまでの約5分間、僕はずうっとかっちゃんからの猛追に対処していた。

「おらァッ!!!」

「くっ!!!」

別に舐めてたわけじゃないけど、正直予想以上だった。アクア・フェアリーでほぼ常時飛んでる僕相手にここまで俊敏な空中移動と攻撃ができるなんて。しかも・・・

「なんかスピード上がってない!?」

「うるせェ!!死ねェ!!!」

「ああもうしつこい!!」

その時だった。僕のストレスが蓄積され、一瞬集中が乱れたそのタイミングで、狙っていたかは定かではないが、高速で僕の背後に移動し、僕の奪って来たハチマキをすべて持って行った。

『ああー-っとここで爆豪、雨宮のハチマキ奪取!!』

「次ィ!!デクと轟んとこだ!!」

「―――――最終段階だ。」

「あ‶!?」

僕は洪水のごとく水を生成し、かっちゃんを押し流した。

「水月!大丈夫か!?」

「第三種目には進める。でも、そんなの僕らしくない。だからこそ、これで決める。」

「作戦会議んとき言ってた()()か!!」

「なら、塩崎も準備しとけよ?」

「万事滞りなく。」

 

すべてのハチマキを奪取された僕を狙う騎馬はいない。だからこそできる、集中観察。

時間は残り少ない、だからこそ、チャンスを逃さないために冷静に、集中して。

そのとき、焦凍ちゃんの騎馬が超高速で前進し、デクちゃんの1,000万を奪取していった。

 

『な―――――!!何が起きた!!?速っ速――――!!

飯田 そんな超加速があるんなら予選で見せろよ―――!!!』

「飯田!何だ今の・・・」

「トルクと回転数を無理矢理上げ、爆発力を生んだのだ。反動でしばらくするとエンストするがな。クラスメートにはまだ教えていない裏技さ。言っただろ緑谷くん。

君に挑戦すると。」

ライン際の攻防!その果てを制したのは・・・逆転!!!轟が1,000万!!!そして緑谷、急転直下の0P―――!!!』

「突っ込んで!!」

「上鳴がいる以上攻めでは不利だ。ほかのポイントを取りに行く方が堅実では・・・」

「ダメだ!ポイントの散り方を把握できてない!ここしかない!」

「よっしゃ!取り返そうデクくん!!絶対!!!」

「麗日さん・・・!!」

『さあさあ残り時間もう20秒!!どうなるんだァ――――!!?』

緑谷が1,000万ポイント奪取のために接近し、轟は死守しようと(ひだり)を使おうとする。

 

「油断大敵、だよ。」

そのとき、豪雨が降ってきた。

 




本当はもっとずるい作戦もあったんですが、水月の性格的にやらなそうと思ったので止めました。

物間「次回 プレゼント・マイクの実況が逸れる?
さらに向こうへ Plus Ultra」


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No.16 騎馬戦決着

 緑谷、轟、両者の騎馬に豪雨が降りかかった。

「っっ!!?」

「なんだこれは!雨か!?」

「デクくん大丈夫!?」

「どうなってる!?」

全員が動揺する中、轟は耳元に囁きを聞いた。

「油断大敵、だよ。」

 

そして数秒降った豪雨は止んだ。

「何だったんだ!?」

「とりあえず緑谷くんから距離を取ろう!」

「・・・!?轟さん!ハチマキが少ないです!」

「!!?」

急いで確認する轟だが、彼の首に1,000万のハチマキはなかった。

「1,000万がない。」

「さっきの雨の時に緑谷くんに取られたか!?」

「わかんねぇ。」

 

「とにかく、1,000万取り返そう!デクくん!」

「いや、緑谷、ここは退くぞ。」

「常闇くん!?でも―――」

「緑谷、これを見ろ。」

「・・・!!それ、どうやって」

「話は後だ。退くぞ!なぜか知らんが氷の壁もなくなっている。」

「ほんとだ!!よし、逃げよう!!」

『そろそろ時間だカウント行くぜ!エヴィバディセイヘイ!

10!9!8!7!6!5!4!3!2!1!

TIME UP!!!

早速上位チーム見てみよか!!

・・・っておいおいマジかよいつの間に!!!?

 

雨宮チ―――ム!!まさかの1,000万を取って1位―――――!!

2位、爆豪チーム!!3位・・・緑谷チーム!!そんで4位、轟チーム!!

以上4組が最終種目へ進出だァ――――!!!

 

1時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜじゃあな!!!オイ、イレイザーヘッド、飯行こうぜ・・・!』

『寝る』

『ヒュー!!』

 

 

「いけねぇ・・・これじゃ・・・親父の言う通りじゃねぇか・・・」

 

「なあ水月くん、どうやって轟くんの1,000万を取ったんだ?」

「ん、天哉ちゃん、百ちゃん。知りたい?じゃあ教えたげるよ。って言っても割と単純というか・・・

雨降らせて取っただけなんだよね。君たちの頭上に水を集めて、豪雨みたいに降らせて、動揺している隙に取ったってわけ。」

「方法は分かりましたが、どうして轟さんがあの位置に1,000万のハチマキを巻いていると分かったんですの?私の声が聞こえていたわけでもありませんでしょうし・・・。」

「ああ、僕、集中して見てたから。天哉ちゃんの超加速の直前くらいから、ラストアクションをミスしないように。

あとはもう、雨でみんなが油断する数秒の隙にばばっと。こんないい天気で、しかも興奮しているときに雨が降ってきたら、誰だって油断するよね。ただ、僕も油断してたみたいだけどね。」

「どういう意味だ?」

「焦凍ちゃんの1,000万を取る前、僕自分の持ちポイントの715ポイント持ってたんだよ。でも、1,000万を奪取した後にはなくなってた。そしてデクちゃんたちは715ポイント持ってた。つまり、あの数秒で僕の隙を付いた子がいたってこと。多分踏陰ちゃんかな。」

「なんと・・・抜かりないですわね、常闇さん。」

まあ何とか本戦に出場できたからいいんだけど、それにしてもちょっと気になることがあるんだよね。この第2種目の参加者、つまり第1種目を突破できる定員は42人、今回みたいにヒーロー科全員が突破した場合でも2枠はあく。

今回その2枠の片方はデクちゃんと組んでたサポート科の子・・・まああの子はサポートアイテムがあったから突破できたと思うんだけど、もう1人の紫色の髪の彼、騎馬戦で二連撃ちゃんと組んでた。あんまりこういう事考えたくはないけど、二連撃ちゃんってああいう素性が分からない人とは組まなそうな感じだけど・・・あとで組んだ理由とか聞きに行こうかな。

 

「何にせよ、第2種目を突破できたわけだし、第3種目もお互い頑張ろ!」

「ああ!」

「望むところですわ!」

 

 

2人と別れた後切奈ちゃんと一佳ちゃんのもとに行った。

「あ、水月。おめでと。いやー、負けちゃったね。」

「正直、本気で勝ちに行ってたってのもあるかもしれないけど・・・やっぱ悔しいね。」

「―――――2人の分も、第3種目勝って、優勝するよ。約束。」

「約束、かー。・・・そだね。アタシたちに勝ったんだから、これで優勝できなかったら許さないから。」

「私らの分も、ぼっこぼこにして来いよ!」

「うん、約束する!」

 

「おなかすいたし、昼食べに行こ!」

「ほら水月も行くよ。」

「うん。何食べよっかなー。」

「カツ丼とか?」

「拳藤、アンタ結構安直なんだ。」

「いいじゃん、水月の勝利を祝って、的な!?」

「未来完了形になってるよ。まだ最終種目すら発表されてないのに。」

「いいんだよ細かいことは。」

結局その後僕はカツ丼を食べさせられた。

 

 

場所は変わり、観客席

 

「いやぁすごいね雄英体育祭!やっぱこの熱気と緊迫感は生じゃないと味わえないわ!てか柚月、さっきの第2種目1位の生徒って、あんたの弟じゃなかったっけ?すごいね!?」

「茜。私の弟なんだから、あれくらいの結果は当然。なるべくしてなった結果なの。」

「ホントは?」

「水月の頑張ってる姿視られただけで大満足!!!てかヤバくない!?障害物競走2位って!騎馬戦1位って!!マジなんであんなにスゴいの~!!?もうチョ――――自慢の弟!!!」

(わかりやすいくらいブラコンだよね~)

 

 

そして昼休憩も終わり、午後の部へ

 

『最終種目発表前に予選落ちの皆へ朗報だ!あくまで体育祭!ちゃんと全員参加のレクリエーション種目も用意してあんのさ!』

グラウンドに入った僕たちを待っていたのは

『本場アメリカからチアリーダーも呼んで盛り上げ・・・・・ん?アリャ?』

マジで?って感じの光景だった。

『なーにやってんだ・・・?』

『どーしたA組!!?』

A組女子がチアガールのコスチュームを(ご丁寧にポンポンも持って)着ていた。

「峰田さん上鳴さん!!騙しましたわね!?」

・・・言動から察するに、あの峰田って子と電気ちゃんが共謀して百ちゃんたちを嵌めたって感じ・・・かな?

そんでどうやらマジでチアガールをやるっぽい。すごいね。

「僕もやろっかな・・・」

「やりなよこれこそアンタの見せ場でしょ笑」

「そうだよねそりゃ僕がやった方がいいよねって切奈ちゃあん!!?」

「いいんじゃない?なんなら私らも一緒にやろうよ!せっかくだし!」

「僕もやるの?」

「「当然。」」

どうしようかと迷ってきょろきょろすると、観客席にお姉ちゃんを見つけた。ちゃんと来てくれてたんだ、と一旦安心したのち、僕もチアをやった方がいいかジェスチャーで聞いてみると、サムズアップしてきた。

(これはつまり・・・“やれ”ってことだね。)

僕は覚悟を決め、うなだれる百ちゃんに近づいた。

「百ちゃん。チアガールのコスチュームあと8セット作って。」

「水月?あ、B組の人たちもやってくれんの!?」

「ありがたいけど、B組の女子って7人やなかった?ひとつ余分やけど。」

「何言ってるの。僕の分に決まってるでしょ。」

「ええ!?水月くんもチアやってくれるん!!?」

「とーぜん!最高のカワイさを表現するのにこれほどうってつけの機会はそうそうないからね。それに・・・」

僕は百ちゃんの肩にポンと手を置いた。

「困ってる女の子は放っておけないよ。 お姉ちゃんに怒られちゃうからね。」

「水月さん・・・分かりましたわ!こうなったら、最高のチアを披露して峰田さん達をぎゃふんと言わせてやりますわ!!」

「いいね。その意気だ。」

 

『っとお、実況が逸れちまったぁ。気を取り直し・・・いやちょっと待て、なんかチアガール増えてねえか!?B組もかよ!!てかおい、アレ雨宮じゃね!!?男子ひとり混ざってんぞ!!?』

『また逸れてんじゃねぇか・・・』

「え、あの子男なの?」

「あの三つ編みの子?」

「えー可愛いじゃん!」

「・・・イケる。」

 

「うん、みんな似合ってるよ!」

「なんだかんだ、アンタが一番しっくりくるけどね。」

「Junior high schoolを思い出しマース!」

「なんだか楽しくなってきたノコ!」

「ん。」

「ちょっとウラメシいけど・・・たまにはこういうのもいいかも。」

「お!水月もチアやってんのか!!」

「まァなんとなくやりそうな感じはしたけどね。」

「徹鐵ちゃんと柔造ちゃんもやる?」

「俺は遠慮しとくよ。そういうタイプじゃないし。」

「俺も!レクリエーションやる!!から!!」

「そう?」

 

 

『今度こそ気を取り直して、みんな楽しく競えよレクリエーション!それが終われば最終種目!進出4チーム総勢16名からなるトーナメント形式!1対1のガチバトルだ!!』




正直チアのくだりは書いててめちゃくちゃ楽しかったです。
水月はこういうことめっちゃノリノリでやりそう。

プレゼント・マイク「次回 芦戸は気になる!!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.17 奮え!チャレンジャー

 「トーナメントか・・・!毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ・・・!」

「去年トーナメントだっけ?」

「形式は違うけど例年サシで競ってるよ・」

「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションをはさんで開始になります。

レクに関して進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね。

んじゃ、1位チームから順にくじ引いてね。」

 

 

「というわけで、組はこうなりました!」

骨抜vs瀬呂、緑谷vs轟、雨宮vs八百万、上鳴vs塩崎

切島vs鉄哲、飯田vs発目、常闇vs芦戸、麗日vs爆豪

 

「轟くんと・・・。」

「水月さんですか。」

「へぇー百ちゃんとかぁ。」

「よろしくな瀬呂。お手柔らかに頼むよ。」

「おお。あ、でも手加減はできねえよ?」

「冗談だって。俺も手加減するつもりはないし。」

「相手常闇かー!よろしくね!」

「相手にとって不足なし・・・。」

「麗日?」

(ヒイイ―!!!)

「飯田ってあなたですか?」

「ム?いかにも俺は飯田だ!」

「ひょ――良かった実はですね・・・」

 

 

『よーしそれじゃトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間!楽しく遊ぶぞレクリエーション!!』

その後はレクリエーションに参加するものをチアボーイ?としてみんなと応援した。

「ファイト!ファイト!U!A!ファイトぉ―!!」

「あ!丁度いい!水月、一緒に来てくれ!」

「電気ちゃん。どうしたの?」

「おお、借り物競争のアレだ、コレ!一緒に来てくれよ!」

そういって電気ちゃんが見せたカードに書かれた文字は『かわいい人』。僕はちらっと響香ちゃんの方を見た。

「ちょっと待ってて。」

そういって僕は響香ちゃんに近づき腕を掴んだ。

「響香ちゃん。」

「え、なになに?どうしたの水月、いきなり腕掴んで。」

「これから電気ちゃんがもしも失礼なこと言っても許してあげて。アホなだけだから。」

「えっ?なに、どういうこと!?」

僕は響香ちゃんを電気ちゃんのところに連れて来た。

「こちら、今僕が最もカワイイと評価する子です。」

「え!?」

「っちょっと水月!?なに言ってんの////!!?」

「いいからほら、行って!」

僕は響香ちゃんの背中を押して、電気ちゃんのもとに行かせた。

「ちょっ水月、あとで覚えてなよ!!」

その後電気ちゃんと言い合いながらゴールしていった。

 

「ねぇ水月、いまのはどういうこと?」

「なんでちょっと怒ってるの切奈ちゃん。」

「別に起こってないけど?」

「そういうとこだよ水月。まああれだよ、要はなんで耳郎を最カワとして推し出したのかってこと。」

「あっそういうことね一佳ちゃん。まあ、あれだよ。響香ちゃんが電気ちゃんを憎からず思っているくらいは僕も知ってるんだよね。」

「そうだったんデスか―――!?」

「多分A組の何人かは気づいてると思うよ―!」

「三奈ちゃんはそういうの好きそうだもんね。」

「てかさ―、そういう水月は気になる人とかいないわけ――!?すっごい気になるんだけど!この中にいるとか!?」

「そ―れは――・・・秘密!」

「えーー!!気になる気になる!!!」

「さあほらチアガールズ!動きが止まってるよ!ちゃんと応援しないと!

ファイト―――!!!」

 

 

そしてあっという間に時は過ぎ

「オッケーもうほぼ完成。」

『サンキューセメントス!

ヘイガイズ!アァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜガチンコ勝負!!頼れるのは己のみ!ヒーローでなくてもそんな場面ばっかりだ!分かるよな!?心・技・体に知恵知識!!総動員して駆けあがれ!!』

1回戦、コワモテ推薦入学者!1、2回戦共に成績上位!!骨抜柔造!!

(バーサス)

優秀!!優秀なのに拭い切れぬその地味さは何だ!瀬呂範太!!

「ひでぇ。」

「ほんとだな。」

「まああんま否定はしねぇけどさ・・・」

『START!!』

範太ちゃんがテープを柔造ちゃんに伸ばした。

「つって負ける気もね――――――!!!!」

そのままテープで柔造ちゃんを拘束し、場外を狙った。

『場外狙いの早技この選択はコレ最適じゃねぇか!?正直やっちまえ瀬呂―――!!!』

「まあ、普通ならそう来るよな。」

柔造ちゃんは範太ちゃんが巻いたテープに触れ、ドロドロにした。

「ッ!!そんなら手ェ封じるけどな!!」

範太ちゃんが再びテープを伸ばすが、柔造ちゃんはテープの先端に触れドロドロにしていき、接近していった。

「言っとくけど至近距離とか当たりに来てるようなモンだぞ!」

再びテープを伸ばそうとしたとき、範太ちゃんは突然体勢を崩して尻餅をついた。

「ッ!マジかよ!!」

範太ちゃんのいたところは柔造ちゃんの柔化で軟化していた。立ち上がろうとするも、個性を解除したのか手も足も地面から出てくる気配がない。

「ま、そんくらいしなきゃお前には勝てなさそうだからな。」

「・・・参ったよ。」

「瀬呂くん戦闘不能!骨抜くん2回戦進出!!」

手に汗握る初戦に会場が沸き上がった。

『YEAH!短かったが白熱した良い勝負だったぜェ!!!』

 

「あ、柔造ちゃんお疲れ。すごかったね。」

「ありがとな水月。正直焦ったよ。予想はしてたけど思ったよりテープ早かったし。」

「ふふふ。それでも君がA組に勝利したことに変わりはないのさ!!」

「物間お前そういうキャラだったのか。」

「にしてもすげえよ骨抜。さすが推薦。」

「ま、推薦ってことなら、次もそうだけどな・・・。」

「そうだね。焦凍ちゃんとデクちゃんか。」

「水月、お前はどっちが勝つと思う?」

「うーん・・・デクちゃんはUSJで見た感じかなり強力な攻撃ができるみたいだけどこの体育祭で一度もそれっぽいの見たことないから、何か条件でもあるのかなあ。なんにせよ、今のところ焦凍ちゃんが勝つと思うよ。」

「だよなぁ。」

 

『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!まさしく両雄並び立ち今、緑谷(バーサス)!!START!!!』




芦戸「次回 エンデヴァーは親バカ!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.18 轟焦凍:オリジン

 「緑谷(バーサス) START!」

開始直後、焦凍ちゃんの氷結がデクちゃんを襲う、が、同時にデクちゃんもデコピンの風圧で氷結を砕く。

『おオオオ!!破ったあああ!!!』

(遠いからよく見えないけど・・・指がものすごく腫れてる。)

再び焦凍ちゃんが氷結を放つも、同じように人差し指のデコピン風圧で粉砕した。

『ま―――た破ったあ!!!』

(強大な威力と引き換えの体の犠牲・・・)

氷結を放つ焦凍ちゃんと、デコピン風圧で粉砕するデクちゃん。

そのとき、焦凍ちゃんがデクちゃんに接近していった。

『轟 緑谷のパワーにひるむことなく近接へ!!』

氷結を足場に飛んで氷結攻撃をされるが、すんでのところでデクちゃんが避ける。避けたデクちゃんを狙って再び氷結を放つ焦凍ちゃんをデクちゃんが左手パンチの風圧で吹っ飛ばす。

「もうそこらのプロ以上だよアレ。」

「さすがはNo.2の息子って感じだ。」

(さっきから守りのためにばかり攻撃してるけど、デクちゃんもしかして弱点探してる感じなのかな?確かに焦凍ちゃんの攻撃って一撃必殺って感じだし・・・)

 

『圧倒的に攻め続けた轟!とどめの一撃を―――――・・・』

「どこ見てるんだ・・・!」

そのとき、焦凍ちゃんの氷結をデクちゃんが()()()()()粉砕した。

「なんでそこまで」

「震えてるよ、轟くん。個性だって身体機能の一つだ。君自身冷気に耐えられる限度があるんだろう・・・?で、それって、左側の熱を使えば解決できるもんなんじゃないのか・・・・・・?

・・・・っ!!皆・・・本気でやってる。勝って・・・目標に近づく為に・・・っ一番になるために!()()の力で勝つ!?まだ僕は君に傷一つ付けられちゃいないぞ!

()()でかかって来い!!

 

何を言ってるのか、ちゃんとは聞こえなかった。けど、その気迫に僕は気圧された。

その後焦凍ちゃんがデクちゃんに接近するが、さっきまでに比べて動き出しが鈍くなっていた。

(動きが鈍ってる・・・氷結の影響・・・?体が冷却されてるって感じなのかな・・・?)

そのとき、焦凍ちゃんの氷結よりもほんの少し早く、デクちゃんのパンチが焦凍ちゃんのおなかにヒットした。

『モロだぁ―――――――生々しいの入ったあ!!』

「轟に・・・一発入れやがった!!」

「どう見ても緑谷の方がボロボロなのに・・・。」

「ここで攻勢に出るなんて・・・!」

 

ボロボロのはずなのに攻めに出るデクちゃん

優勢なはずなのに追い詰められているように感じる焦凍ちゃん

氷結と粉砕の応酬 気迫と畏怖が入り混じる

「なんでそこまで・・・」

「期待に応えたいんだ・・・!

笑って 、答えられるような・・・かっこいい人に・・・・・()()()()()()

だから全力で!やってんだ皆!君の境遇も君の()()も、僕なんかに計り知れるもんじゃない・・・・・・・でも・・・・・

全力も出さないで1番になって完全否定なんて、フザけるなって今は思ってる!」

「だから・・・・・僕が勝つ!!君を超えてっ!!!」

 

「親父の―――――・・・「君の!

力じゃないか!!!!!

 

 

 

 

会場に燃え盛る炎 それを見たとき 僕はなぜか お姉ちゃんを思い出した。

 

『これは―――――・・・・!?』

(ひだり)・・・!!」

 

「勝ちてぇくせに・・・・・・ちくしょう・・・敵に塩を送るなんて、どっちがふざけてるって話だ・・・

 

俺だって・・・ヒーローに・・・・・!!

 

 

 

 

「焦凍オオオオオオ!!!やっと己を受け入れたか!!そうだ!!いいぞ!!

ここからがお前の始まり!!!俺の血を以て俺を超えていき・・・

俺の野望をお前が果たせ!!!」

 

無視したのかどうかはわかんないけど、焦凍ちゃんは全く反応しなかった。

『エンデヴァーさん急に“激励”・・・・・・か?親バカなのね。付き合いねーから意外だぜ。』

 

 

「凄・・・・・・」

「何笑ってんだよ。その怪我で、この状況でお前・・・・・・イカれてるよ。どうなっても知らねぇぞ」

 

構える2人。氷結を放つ焦凍ちゃんと飛躍するデクちゃん。

止めようとするセメントスとミッドナイト。

右手を構えるデクちゃんと、左手を構える焦凍ちゃん

 

「緑谷

 

ありがとな」

 

直後、とてつもない爆風が会場全体に吹きすさんだ。

僕は高速で水の壁を限界まで張り巡らせ、観客席の一部を守った。でも・・・

「いくらなんでもヤバすぎるよ・・・。」

『何今の・・・お前のクラス何なの・・・』

『散々冷やされた空気が瞬間的に熱され膨張したんだ。』

『それでこの爆風て、どんだけ高熱だよ!ったく何にも見えね―、おいコレ勝負はどうなって・・・』

 

「緑谷くん・・・・・場外、轟くん―――――・・・二回戦進出!!」

勝ったのは焦凍ちゃんだった。

「緑谷の奴、煽っといてやられちまったよ・・・。」

「策があったわけでもなくただ挑発しただけ?」

「轟に勝ちたかったのか負けたかったのか・・・。」

「なんにせよ恐ろしいパワーだぜアリャ・・・。」

「気迫は買う。」

「騎馬戦までは面白いやつだと思ったんだがなァ。」

 

 

「・・・すごかったな。」

「もうなんか言葉が出ねえよ。」

「鬼気迫るっていうのか?気迫がすごかったよな。」

「お前の予想通りだったな水月。・・・あれ?水月は?」

「水月ならさっき行ったよ。次試合だから。」

「そうか、次八百万とだもんな。」

「激励の言葉でもかけとけばよかったかなあ。」

 

 

 

ドキドキしてきた。大勢の人の前で初めて1対1か・・。

「やっほー水月。」

「え、お姉ちゃん!?え、こっち来たの?」

「頑張る弟の激励にねー。・・・水月。」

「・・・なぁにお姉ちゃん。」

「私はいつも『女の子を傷つけるのは絶対に許さない』って言ってるよね。」

「うん・・・。」

「・・・今回は無視して。水月の勝ちたいって思いを邪魔するほど私も無粋じゃないからね。それに、手加減されて勝っても相手の子もきっとうれしくないから。」

「―――わかった。全力で行ってくるよ!」

「あ、でも顔は駄目ね。顔は女の子のとっても大事なところだから。」

「もちろん。顔を狙うなんてことはしないよ。」

「よし!いってらっしゃい!!」

「行ってきます!!!」

 

 

僕はステージに歩き出していった。

 

 

『さァステージ修復も終わったところで第3試合と行こうぜぇ!

 

2位1位と凄すぎんぜオイ!有言実行チアボーイか!!?ヒーロー科、雨宮水月!!

(バーサス)

万能創造!推薦入学とあって、その才能は折り紙付き!ヒーロー科、八百万百!!

 

 

さあて、どうしようかな。百ちゃんは時間さえあれば面倒なもの作りそうだから、

『第三試合 START!!』

「これでいいかな。」

僕は拳くらいの大きさの水を次々生成し、銃弾のように百ちゃんに向かって打ち出した。当然、百ちゃんは盾を創り防いだ。盾にはじかれた水が後ろに飛び散っていく。

『おおっとォ!開始直後から雨宮の水の弾丸ラッシュ!!!八百万、防戦一方――!!』

(くっ!!ですが、創れましたわ。ネットを射出する銃が!)

百ちゃんが銃を構えようとする が、銃を持つ腕は動かない。

「これは・・・水!?いつの間に―――」

「君がはじいた水だよ。」

腕を拘束する水に気を取られている百ちゃんに接近し、全身を水で覆った。

 

「百ちゃんが弾いた水、全部後ろに行ったでしょ?普通なら百ちゃんの前にも飛び散ってないとおかしいのに。」

「・・・なるほど。弾かれた水を操作して腕を抑えたということですわね・・・。」

「そーゆーこと。じゃあね。」

僕は百ちゃんを場外へ運んだ。

 

「八百万さん場外、雨宮くん2回戦進出!!」

 

「・・・・・・」

「・・・百ちゃん。」

「・・・なんですの?」

「もし君が開始即ダッシュで盾と槍を創って突撃してきてたら、僕は負けてたよ。」

「・・・そうですか。」

 

そのあと僕は何も言えないままフィールドを後にした。




エンデヴァー「次回 アドバイザー芦戸
さらに向こうへ Plus Ultra」


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No.19 勝ち負け

 僕は百ちゃんとの試合が終わり、とぼとぼと観客席に戻っていた。

「お、お疲れ。」

「水月!お前アレだな!速ぇーな攻撃!!」

「うん。」

「水月、八百万となんか話してたっぽいけど、何話してたの?」

「うん。」

「・・・水月。」

「うん。」

 

 

いきなり切奈ちゃんが僕の顔を両手で引き寄せて来た。

「ふぁふふぃ!?おうふぃはおふぇふあふぁん?」

「・・アタシだって、アンタの悩み聞くくらいはできんだよ。」

「――――。」

「話してみな。」

 

「・・・僕、百ちゃんに勝って、それで・・・百ちゃんは落ち込んでた。勝負に負けて落ち込むのは当たり前っていうか、普通っていうか、僕もそういう事はあるから、慰めようと思って、言葉をかけようとしたんだ。

でも、思ったんだ。もし僕の言葉で、この人が傷ついてしまったら、僕を拒絶してしまったら・・・って。

どんな言葉をかけてあげればよかったのかな、って。それが分からなくてさ。」

「・・・・・・。」

 

 

「水月。」

僕は切奈ちゃんの眼を見た。

「八百万が水月に負けたことをどう思ったかはアタシにはわかんないけど、少なくとも、嘘にまみれた慰めの言葉よりも、アンタの本心を言った方が八百万は喜ぶと思う。

アンタもそうでしょ?」

そう言って、切奈ちゃんは優しく微笑んだ。

 

 

僕は自分のほほを両手でパン!と叩いた。

「ありがとう、切奈ちゃん。僕ちょっと行ってくる!」

「・・・行ってらっしゃい。」

僕は階段を上っていった。

 

「取陰~いいの?水月が八百万に取られちゃっても。」

「ちょっ!いや、そういうんじゃないから。ってか・・・拳藤、

アイツはそういう風に考える奴じゃないよ。」

「ふ――ん。」

 

「百ちゃん!!」

A組の観客席に来た僕は百ちゃんを探したが、呼び声にビクッと反応したのですぐに見つかった。

「な、なんですの!?」

「言わなきゃいけないことがあった!」

僕は百ちゃんの前に来た。

「百ちゃん、君は強い。それに強くなる。きっと!絶対!間違いなく!!だから、落ち込まないで。」

百ちゃんは呆気にとられていた。

「ヤオモモ。多分試合の後ヤオモモが落ち込んでたの気にしてるんだよ。」

「そうなんですの?芦戸さん。」

「わかんないけど、きっとそうだよ。水月いい子だし。」

 

「水月さん、私が不甲斐ないばっかりに、ご迷惑をおかけしました。」

「ううん。落ち込むのは何も悪いことじゃないよ。勝ちたいって本気で思ってたってことだし。でも、百ちゃんは笑っていた方がいいよ。その方が絶対カワイイ!」

「!!」

「あ、お邪魔しました。」

僕はぺこりと一礼し、B組の席に戻っていった。

「誉めてもらえてよかったねヤオモモ。絶対カワイイだってよ。」

 

 

『さァ行くぜ第4試合!

B組からの刺客!!きれいなアレには棘がある!?塩崎茨!!

(バーサス)

スパーキングキリングボーイ!上鳴電気!!

「申し立て失礼いたします。資格とはどういう事でしょう。わたしはただ勝利を目指してここまで来ただけであり」

『ごっごめん!!』

「B組にもこういう感じいるのね。」

 

「茨ちゃんらしいね。」

「塩崎ああいう感じの言い方引っかかるタイプだからね。」

「水月はこれどっちが勝つと思う?」

「茨ちゃんでしょ。」

「即答・・・。」

「まあ今回はどっちもちゃんと個性を知ってるっていうのもあるけど、1対1で茨ちゃんに勝てる人ほぼいないんじゃないかな。機動力か範囲攻撃ある人なら別だけど。」

「水月は勝てるの?」

「それは2回戦で見せてあげるよ。」

 

『すっSTART!!』

体育祭(コレ)終わったら飯とかどうよ俺でよけりゃ()()()()。」

「・・・・・?」

「多分この勝負、一瞬で終わっから。」

 

 

瞬殺!!

あえてもう一度言おう!

瞬・殺!!!

 

「ウェ・・・ウェイ・・・」

「2回戦進出、塩崎さん!!」

「ああ・・・与えられたチャンス無駄にせず済みました・・・」

 

「まぁ予想通りだったね。」

「マジで瞬殺じゃん。」

「今回は塩崎の個性が上鳴に相性よかったってのもありそうだよなァ。」

「えーっと、次は鉄哲と切島か。」

「俺この勝負どうなるか予想付かねぇわ。」

「俺も。個性ダダ被り組だもんな。水月は?」

「僕もちょっとこれはわかんないなぁ。2人とも個性も性格もいろいろと似てるからねぇ。」

 

 

『個性ダダ被り組!!!鉄哲VS切島、真っ向勝負の殴り合い!!制したのは――――』

 

「両者ダウン!!引き分け!!

引き分けの場合は回復後、簡単な勝負・・・腕相撲等で勝敗を決めてもらいます!」

「実力もほぼ同じかよ。」

「いーねああいう暑苦しいのは。士気上がるしサイドキックに欲しいかもなー。」

「こういうこともあるんだ。」

「でも腕相撲でも勝敗予想付かなくね?」

「たしかに。」

 

「次はちょっと気になるかも。」

「へぇー。えっと次は、飯田と・・・発目?」

「発目って誰だっけ?」

「デクちゃんと組んでたサポート科の子だよ。」

「あー、あのベイビーとか言ってたやつか。」

「これに関してはもう飯田の勝ち確だろ。」

 

『さァ―――どんどん行くぞ頂点目指して突っ走れ!!

ザ・中堅って感じ!?ヒーロー科飯田天哉!

(バーサス)

サポートアイテムでフル装備!!サポート科発目明!!

「どんな戦いになるんだ・・・?」

「つーかなんだアリャ・・・」

「飯田もサポートアイテムフル装備じゃねえか!?」

「ヒーロー科の人間は原則そういうの禁止よ?ないと支障をきたす場合は最初に申請を」

「は!!忘れておりました!!青山君もベルトを装着していたのでいいものと・・・!」

「彼は申請しています!」

「申し訳ありません!だがしかし!彼女のスポーツマンシップに心打たれたのです!!

彼女はサポート科でありながら、『ここまで来た以上対等だと思うし対等に戦いたい』と、俺にアイテムを渡してきたのです!この気概を俺は!!

無下に扱ってはならぬと思ったのです!」

「青くっさ!!!ひゃーそういう青臭い話は好きよ!!飯田天哉のサポートアイテム装着を認めます!」

『いいんかい・・・』

『まァ双方合意の上なら許容範囲内・・・でいいのか・・・?』

 

「フフフフフフ・・・」

『START!!』

開始と同時に天哉ちゃんが駆け出した。

『素晴らしい加速じゃないですか飯田くん!』

『は?』

「え?」

「マイク?」

『普段よりも足が軽く上がりませんか!?それもそのハズ!!そのレッグパーツが着用者の動きをフォローしているのです!

そして私は「油圧式アタッチメントバー」で回避もラクラク!』

明ちゃんがその油圧式アタッチメントバー?とやらで天哉ちゃんをかわした。切り返した天哉ちゃんが再び突撃すると、またアタッチメントバーが作動してかわした。

『全方位センサーを装備しているので、背後からの攻撃にも対応可能です!』

「どういうつもりだ・・・」

『飯田くん鮮やかな方向転換!!私の「オートバランサー」あっての動きです!』

『ナニコレ・・・』

『売込根性たくましいな・・・』

『レッグパーツは着用者の脳波を予測して作動するので、タイムラグの心配は全くありません!』

再度突撃した天哉ちゃんを難なくかわす明ちゃん。

『オートバランサーは32軸のジャイロセンサーを搭載!着用者の意図しない転倒を必ず防いでくれます!』

「くっ、対等に戦うのではなかったのか!?」

天哉ちゃんがそう言って突撃すると、明ちゃんは靴の力で大きく飛んだ。

『フフフ・・・どうですかこの軽やかさ!エレクトロシューズは左右の靴を電磁誘導で反発させ、瞬間的な回避行動を可能にしています!!』

「着地するタイミングで・・・!」

着地狩りに行った天哉ちゃんは明ちゃんが持っていた銃から射出されたネットに絡めとられた。

「なっ、なんだ!?」

『対(ヴィラン)用の捕縛銃です!!捕縛用ネットはカートリッジ式で、なんと5発まで発射可能!

それらのアイテムを開発したのは・・・この私!発目明です!!!サポート会社の皆さん!発目明、発目明、発目明を、どうかよろしくお願いします!!!

 

それでは次のサポートアイテムの説明です!!』

 

10分後

 

「ふ―――・・・すべて余すことなく見ていただけました。もう思い残すことはありません!!」

「は、発目さん場外!!飯田くん2回戦進出!!」

「騙したなああああああああ!!!!!」

 

「すいません。あなたを利用させてもらいました。フフフフ・・・。」

「嫌いだぁあ君――――――――!!!!!!!」




芦戸「次回 ドンマイ骨抜!
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.20 VSVSVS

 『立て続けに行くぜェ!第7試合!!

黒影(ダークシャドウ)を従える暗きサムライ!ヒーロー科常闇踏影(とこやみふみかげ)!!

(バーサス)

その角からなんか出んの?ねぇ出んの!?ヒーロー科芦戸三奈(あしどみな)!!

「・・・・・。」

「水月はこの試合どうなると思う?」

「聞きたがりだね柔造ちゃん。僕は踏影ちゃんが勝つと思う。黒影(ダークシャドウ)のリーチはかなり長いから。」

「なるほどな。」

『START!!』

開始とともに踏影ちゃんは黒影(ダークシャドウ)を出して三奈ちゃんに襲い掛かった。三奈ちゃんも持ち前の身体能力でかなりしのいだけどそれでもすべては避けきれず、食らった先からなし崩しに攻撃され、場外になった。

「芦戸さん場外!常闇くん2回戦進出!!」

「意外と呆気なかったな。」

「個性の相性が悪いとこういう事もあるんだよ。でも三奈ちゃんの身体能力は見誤ってたなぁ。あんなに動けたとはね。というか僕は次の試合がちょっと怖い。」

「あ―・・・麗日と爆豪だっけ。」

「確かにあいつとの試合ってなると麗日がちょっと不憫というか・・・な。」

「ま、たとえ女の子が相手でもかっちゃんは手加減はしないと思う。」

 

 

『第1回戦最後の第8試合!

中学からちょっとした有名人!!堅気の顔じゃねえ。ヒーロー科爆豪勝己(ばくごうかつき)!!

(バーサス)

俺こっち応援したい!!ヒーロー科麗日お茶子(うららかおちゃこ)!!

 

「お前浮かすやつだな丸顔。」

「まる・・・」

「退くなら今退けよ。「痛ぇ」じゃ済まねえぞ。」

 

「水月これ、麗日に勝ち目あるの!?」

「一応あるよ。」

「え、あんの?」

「お茶子ちゃんの個性は入試会場や食堂、この体育祭での動きを見た感じ、触れた対象を浮かせる個性だと思う。だから、事故でも何でもかっちゃんに触れさえすればほぼゲームオーバー。いくらかっちゃんに空中での機動力があったとしても、それは重力下での話。無重力下ではまるで勝手が違う。それでも対応してくる可能性はゼロじゃないから、仕掛けるなら―――」

『START!!』

「速攻一択。」

僕の読み通り、お茶子ちゃんは開始と同時にかっちゃんに走っていった。

「避けるとしても触れられるかもしれない。だからかっちゃん的には迎撃が最善主だろうね。」

(そんでたぶんお茶子ちゃんもその辺はわかってるはず。でも・・・)

詰め寄ってきたお茶子ちゃんを、かっちゃんは何の加減もなく爆破した。

「うわぁモロ・・・!!」

「女の子相手にマジか・・・・・・」

 

「じゃあ死ね」

漂う煙幕の中でかっちゃんはお茶子ちゃんのジャージを見つけた。

「ナメっ・・・」

とかっちゃんが爆破しようとしたとき、背後からお茶子ちゃんが現れた。かっちゃんが爆破しようとしていたのは脱ぎ捨てたジャージだった。

『おお!!上着を浮かせて這わせたのか!!よー咄嗟にできたなあ!!』

かっちゃんに迫るお茶子ちゃん。しかし

BOOOOM

「わ‶っ!!!」

かっちゃんの振り返り爆破で吹っ飛ばされてしまった。

「うわまじかよ・・・見てから反応しやがった。」

「・・・かっちゃんの反射・反応速度は異常だよ。」

僕は騎馬戦でそのことを身に染みて理解していた。

「麗日の“個性”は触れなきゃ発動できねえからな・・・」

「こりゃ結構分が悪いな。」

『麗日、間髪入れず再突入!!』

「おっせえ!!」

BOOOOM

「おらあああああああ!!!!!」

BOOOOOOM

「これは・・・・」

 

「まだまだあ!!!」

『休むことなく攻撃を続けるが・・・これは・・・』

「・・・・・あの変わり身が通じなくてヤケ起こしてる・・・」

「アホだね・・・あいつ・・・」

「なァ止めなくていいのか?大分クソだぞ・・・」

「・・・・・・」

 

「見てらんねぇ・・・!」

プロヒーローと思しき観客が立ち上がった。

「おい!!それでもヒーロー志望かよ!そんだけ実力差あるなら早く場外にでも放り出せよ!!女の子いたぶって遊んでんじゃねーよ!!」

「そーだそーだ!!」

『一部から・・・ブーイングが!しかし俺もそう思〘SWAK〙わあ肘っ』

『今遊んでるっつったのプロか?何年目だ?』

「!」

『シラフで言ってんならもう見る意味ねえから帰れ。帰って転職サイトでも見てろ。

ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してるんだろう。

本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断もできねえんだろうが。』

 

「そろそろ・・・か・・な・・・

ありがとう爆豪くん

 

 

油断してくれなくて

「あ・・・?」

お茶子ちゃんが両手の指を合わせた。

「爆豪の距離ならともかく・・・客席にいながら()()()()ブーイングしたプロは恥ずかしいね。

低姿勢での突進で爆豪の打点を下に集中させ続け・・・()()()()()()()。そして絶え間ない突進と爆煙で視界を狭め、悟らせなかった。」

「勝あああああつ!!!」

かっちゃんに降り注ぐ石の流星群。

『流星群―――!!?』

『気づけよ』

「そんな捨て身の策を・・・麗日さん!!」

「水月、!これなら麗日、もしかするんじゃない!?」

「・・・お茶子ちゃんはかっちゃんが『油断しない』と信じた。そして予想通り、油断せず、お茶子ちゃんは作戦を悟らせなかった。これがお茶子ちゃんの勝ち目だね。」

「なら

BOOOOOM!!!!

 

「『勝ち目』はあっても、勝てるとは限らない。」

 

「デクのヤロウとつるんでっからなてめェ。何か企みあるとは思ってたが・・・」

「・・・・・・一撃て・・・・」

『会心の爆撃!!麗日の秘策を堂々―――正面突破!!!』

「危ねぇな・・・」

「うう‶・・・」

「いいぜ、こっから本番だ、麗日。」

構えるかっちゃんと、駆け出すお茶子ちゃん。しかし

 

「ハッ・・・ハッ・・・んの・・・体・・いうこと・・・きかん・・・まだ・・・・・父ちゃん・・・!!」

 

「・・・・・麗日さん行動不能。2回戦進出、爆豪くん!!」

『ああ麗日・・・ウン。爆豪1回戦とっぱ』

『ちゃんとやれよやるなら』

『さァ気を取り直して、1回戦が一通り終わった!小休憩挟んだら早速次行くぞ!!』

 

 

 

『あーオォ!!今、切島と鉄哲の進出結果が!!』

「んんんんんんんんんんん!!」

「んんんんんんんんんんん!!」

「ガァ!!」

『引き分けの末切符を勝ち取ったのは切島!!』

「ぐおおおおお金属疲労が・・・!もおっと鉄分を取っていれば・・・。」

「良い…勝負だった!」

「ケッ」

『これで2回戦目進出者が出そろった!!つーわけで・・・そろそろ始めようかァ!!』

「柔造ちゃん。頑張ってね。」

「ああ。ちょい勝ち目ねえけどな。」

「それでも応援してるから。」

「ああ。」

 

 

『さァやっていこうか2回戦第1試合!

推薦入学者同士の対決!!骨抜(ほねぬき)(バーサス)(とどろき)!!

 

「入試ん時は負けたけど、今度は俺が勝つ。」

「・・・・・」

『START!!』

開始とともに焦凍ちゃんは氷結を放った。

「ま、そう来るよな。」

柔造ちゃんは氷を柔化し、そのまま地面も柔化した。

『おおっとこれは!!轟相性が悪いかァ!!?』

「炎で来られたら勝ち目無かったけど、使わないんなら勝てる。その状態じゃ動けないだろ?」

 

 

「・・・舐めんな」

焦凍ちゃんはなんと、柔造ちゃんごと会場の3割ほどを覆う大氷結を放った。

「は・・・反則級だろ・・・」

「骨抜くん・・・動ける・・・?」

「無理です・・・範囲がデカすぎて柔化できない・・・」

「骨抜くん行動不能!!轟くん3回戦進出!!」

その後柔造ちゃんの不憫さを憂いたのか、観客席からドンマイコールが響いた。

 

「おお骨抜!なんか・・・ドンマイ!!」

「ドンマイ。」

「さすがにあんなのやられるとは思わなかったよ。ってか水月と塩崎いねぇ・・・あ次あいつらか。」

「B組でも実力面じゃどっちも強いからな。どんな勝負になるんだろうな。」

 

『さァサクッといくぜ第2試合!B組対決雨宮(あまみや)(バーサス)塩崎(しおざき)!!』




骨抜「次回 塩崎が水月に喰われる?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.21 いざ決勝

 『START!!』

開始と同時に茨ちゃんはツルで自分の防御と僕への攻撃を同時に開始した。

「哀れな子羊よ・・すぐに苦しみから解き放って差し上げます。」

「別に今苦しくないけどね。」

僕にツルが迫り、巻き付く・・・と誰もが思った。

そのツルは嚙み千切られた。

「・・・それは!!」

『雨宮、水でなんか鮫みてえなの作ってツルを噛み千切ったァ―――!!そういうのもできんのかよ!!』

 

「ぱくぱくしちゃうよ―」

僕は鮫の形にした水でツルをどんどん噛み千切っていった。

「くっ、なんて罪深い!!」

茨ちゃんが鮫をツルで掴もうとする。が、そのツルは鮫をつかめずすり抜けた。

「そりゃそうだよ。水なんだから掴めるわけないよ。」

そのまま鮫は茨ちゃんに接近した。

「いよいよメインディッシュだね。いただきまーす!」

BITE!

『喰ったあああああああ!!?』

茨ちゃんを丸呑みし、そのまま鮫を場外で解除した。

「塩崎さん場外、雨宮くん3回戦進出!!」

 

『まさかのジョーズ的アレだったな!』

 

 

「水月、塩崎、おつかれ。」

「いやー正直ビビったぜ。まさか塩崎を食っちまうなんてな。」

「円場、言い方よ。」

「まさかあのような獣まで飼い馴らすとは・・・不覚です。」

「飼ってるんじゃないけどね―。今鋭児郎ちゃんと天哉ちゃんだっけ?」

「実況聞いてなかったのか?今もう常闇と爆豪やってるぞ。」

「ええ早!?」

「まあ飯田が切島引きずって速攻場外だったからな。」

「ひゃあー。それで今かっちゃんと踏影ちゃんなんだよね。どんな感じ?」

「ああ、常闇が押されてる。」

「意外。踏影ちゃんは結構いい感じだと思うのに。」

「常闇くん降参、爆豪くん3回戦進出!!」

『これで準決勝進出する4人が決まったァ!!』

「あ、行かなきゃ。」

「来たばっかなのに忙しいな。」

「まあね。」

 

 

『準決勝第1試合!お互いヒーロー家出身のエリート対決だ!轟 焦凍(とどろきしょうと)(バーサス)雨宮 水月(あまみやみづき)!!』

 

「雨宮?誰の息子だっけ?」

「あのリヴァイアサンの息子らしいぞ。」

「リヴァイアサン!?No.12ヒーローじゃんか!!」

 

「あいつそれ言ってた?」

「いや、まったく言ってない。」

「水月のことだし言い忘れてたんじゃない?」

「確かにありそう。」

 

『START!!』

開始即来た氷結で僕は凍った。

『おおっとこれは瞬殺かぁ!?』

 

「・・・」

「雨宮くん、動ける?」

「・・・・・」

 

 

「雨宮くん行動不能、轟くん準決勝進し」

 

そのとき、氷結が()になった。

 

「あっぶなぁ。ギリギリだった。」

「!!!」

『マジィ!!!?轟の氷が溶けたァ!?』

 

「どうなってんだ・・・?」

「知りたい?でもいまは教えない。」

僕は焦凍ちゃんにゆっくり近づいた。

 

再び氷結が来るが、同じように僕は水に変えた。

 

「・・・っ!!」

「フフフフフ。」

その後何度も氷結を放つも、すべて水に変わっていく。

 

「クソっ、キリがねえ・・・。」

「ちなみに焦凍ちゃん、足元がお留守だよ。」

「・・・!!」

今まで溶かした水で地面全体が濡れている。その水で焦凍ちゃんの足を拘束して宙ぶらりんにした。

 

「・・・一体、なにをした。」

「氷って、水が状態変化したものだよね。僕の個性は水を操れる。そして集中すれば水分子を操ることもできるんだよ。氷は水分子でできてる。ここまで言えばわかるよね。」

「・・・分子運動を活発化したってことか。」

「大正解!」

そういって焦凍ちゃんを場外に飛ばした。

 

「轟くん場外、雨宮くん決勝進出!!」

『最初は瞬殺かと思ったが、轟の個性が雨宮と相性悪かったな!!あんだけ強ぇ個性でも相性負けとかあんだな!!』

 

「ただいまー。」

「おうお疲れ。」

「水月、アンタなんでリヴァイアサンの息子って黙ってたの?」

「ああ、言い忘れてた。」

「ほらね。」

「聞かれなかったからね。」

「それにしても御父上があの水竜ヒーロー・リヴァイアサンとはすごいですなァ!!」

「うん。最強の父さんだよ。」

 

 

『体育祭も残すところあと2試合!!どんどん行くぜェ!!

不良少年と真面目眼鏡!正反対だがどちらも実力は折り紙付き!!

飯田 天哉(いいだてんや)(バーサス)爆豪 勝己(ばくごうかつき)!!

START!!』

 

開始とほぼ同時に天哉ちゃんはかっちゃんの目の前に来ていたが、なんとかっちゃんはそれに反応して爆破した。

「なんだと・・・!」

「死ね」

爆煙に隠れてかっちゃんは天哉ちゃんの背後に移動していた。

「そこか!!」

「遅ェ!!閃光弾(スタングレネード)!!」

それは爆破・・・というよりまさに閃光だった。

「くッ・・・!!」

「死ねェ!」

大きな爆発の煙幕が晴れた後、フィールドには天哉ちゃんを押し倒したかっちゃんがいた。

「レシプロだか何だか知らねえが、そんだけの速度出るって事ぁ時間制限かなんかあんだろ。」

「・・・・・参った!」

 

「飯田くん降、爆豪くんの勝利!!」

『よって決勝は!雨宮対爆豪に決定だアアア!!!』




塩崎「次回 爆豪さんがお部屋を間違えます。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.22 決勝戦 雨宮VS爆豪

 「ふぅ―・・・緊張してきた・・・。」

僕は心を落ち着けるために選手控室2にいた。気休めにしかならないだろうけど、やんないよりはましかなと思った。

コンコン

突然のノックにビクッとしたあと、「どうぞ」と言うと、切奈ちゃんと一佳ちゃん、柔造ちゃんが入ってきた。

「みんな、どうしたの?」

「その、なんていうか・・・う‶っ」

言い淀む切奈ちゃんに一佳ちゃんが肘打ちした。

「激励だよ激励。」

「取蔭が行くって言うからせっかくだし俺たちも行こうと思ってさ。」

「ゲキレイ・・・。」

 

「アンタなら爆豪に勝てるよ。アタシはそう信じてる。」

「俺を倒した轟に勝ったんだから、このまま優勝しちまえよ。」

「そうそう。有言実行!約束も守る!できたらすごいしさ!」

 

「ありがとう、みんな。

僕は恵まれてるね。こんなに僕のことを思ってくれる友達ができたなんて・・・。

 

必ず、勝って金メダル持っていくよ!」

バアン!

すごくいい雰囲気の中、ドアを蹴り開けてその男は入ってきた。

「あ?」

「「「「え?」」」」

「あれ!?なんでてめェらがここに・・・控室・・・あここ2の方かクソが!!」

「かっちゃん。」

 

「君は強いよ。でも  僕が優勝する。」

「あ?」

かっちゃんはズンズンと僕に詰め寄ってきた。

 

「てめェが何しようが、優勝するのは俺だ。

 

だから今まで見たいなナメた戦い方じゃねェ、全力で来いや。

それを俺が上からねじ伏せてやる。」

それだけ言うとかっちゃんはズンズンと部屋から出ていった。

 

「なんだったんだ?」

「喧嘩売るだけ売って行っちゃった。」

「なんにせよ、爆豪が相手でも水月なら大丈夫でしょ。絶対勝てる。」

「雨宮くん、そろそろ時間だ。」

「わかりました。」

 

「それじゃあね。」

「水月」

切奈ちゃんが僕の腕を掴んだ。

 

「頑張って。」

「・・・うん。」

 

 

 

『さァいよいよラスト!!雄英1年の頂点がここで決まる!!決勝戦!!雨宮(あまみや)(たい)爆豪(ばくごう)!!今!!

START!!!

開始と同時に大量の水の弾丸を生成、かっちゃんに射撃した。が、すべて避けられ、接近してくる。

『開始からガンガン攻める雨宮!!しかし爆豪難なくかわし詰める!!』

「っぱ避けられるよねぇ!!ならこれはどう!?」

僕は茨ちゃんの時と同様の鮫を水で作り、かっちゃんを喰わせた。

『おおっとこれは!塩崎戦で見せた鮫かァ!!これは爆豪為す術無しか!!?』

しかしかっちゃんは内側から大量爆発を起こして鮫をぶち壊した。

「まじぃ!?めちゃくちゃすぎるでしょ・・・。」

「ちまちましたモンばっかやりやがって・・・!ぶっ殺すぞコラ!」

爆破の推進力で急接近してきたかっちゃんをアクア・フェアリーでギリギリかわしあけど、追撃を食らってしまった。

「くっそ・・・!」

急いで水の壁を生成し、その隙に水の弾丸を生成しようとしたが、その隙も無くかっちゃんは水の壁を突破してきた。

「危なっ!!」

アクア・フェアリーで距離を取ろうとするも、かっちゃんにあっという間に追いつかれ、爆破を食らった。

『雨宮、最初の攻めがウソかのように防戦一方――!!』

『爆豪の爆破は攻撃・防御・移動のすべてが「爆破」の一工程だけで済むが、雨宮は手数が多い代わりに水の生成を最初にしなきゃならない都合上、どうしてもワンテンポ遅れる。その辺をわかったうえで恐らく爆豪は近接戦に持ち込んだんだろうな。現時点で雨宮(アイツ)は近接戦闘で誰かに勝ったことはないからな。』

『ホウホウ』

ああそうだよ。おっしゃる通り僕の弱点は近接戦闘だ。かっちゃんとの戦いで間違いなく近接戦になるだろうから対策としてアクア・フェアリーを講じたけど・・・

あまりにも、今の僕じゃかっちゃんのスピードに対応しきれない!

「くっそ!」

僕は騎馬戦のように大量の水でかっちゃんを押し流そうとしたが、上に避けられ、そのまま襟をつかまれ投げ飛ばされた。

 

「どしたァ!てめェの全力そんなモンじゃねぇだろうが。ブッ殺すぞ!!俺が取んのは完膚なきまでの1位なんだよ!!舐めプのクソカスに勝っても取れねェんだよ!デクや半分野郎より上に行かねぇと意味ねえんだよ!!

全力出せねえなら俺の前に立つな!!優勝するっつったのはテメェだろうが!!何でここに立っとんじゃクソが!!!!」

 

 

 

ああ。たしかに僕はこの体育祭 いや、それどころか、この雄英高校に入学してから一度も全力で個性を使ったことがない。

今までも、個性を全力で使おうとすると僕は、荒野のような見たこともない場所にいて、そこには無数の星があり、その星に触れた瞬間、僕の体に()()()()()()()()()があふれるような感覚に陥る。

 

だから僕は、個性を全力で使うことが 怖い。

 

それでも・・・

 

今、僕の目の前に立つ、彼が、僕の全力に、全力で立ち向かってくれる。

だったら、僕は・・・

 

「水月!!!」

 

「・・・せ・・つな・・・ちゃん・・・・・」

 

 

「がんばれ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――再現(リプロダクション) “水竜”」

 

 

直後 水月の体から巨大な『水の竜』がうまれた。

 

「なあアレって・・・。」

「ああ、リヴァイアサンの創る竜にそっくりだ。でも・・・」

「あんなデカかったか・・・?」

 

「どうしたのデクくん・・・?」

「どうかしたんですか?オールマイト・・・。」

突然立ち上がった緑谷出久とオールマイト。彼らは雨宮水月の中に、彼が宿しているはずのない、

 

ワン・フォー・オールの継承者のような面影を見た。

 

 

 

 

「かっちゃん、君の全力を信じるよ。君のために。友達のために。何より、

 

僕自身のために。」

 

「いいぜ・・・来いや水月!!!!!」

 

 

かっちゃんが爆破を推進力に高速回転する。僕は“個性”で生み出した水竜をかっちゃんに向けて構えた。

 

 

 

「リヴァイア――――」

榴弾砲(ハウザー)――――――」

 

 

 

 

「インパクト!!!」

着弾(インパクト)!!!!!!!!」

 

 

衝突する水竜と爆破   爆風と水飛沫が会場を包む。

 

『麗日戦で見せた特大火力に勢いと回転を加え、まさに人間爆弾!!雨宮は水で特大の龍を生み出し、正面からぶちかましたが、果たして――――――』

 

「ハァ・・ハァ・・・クソッ、痛ェっ・・!アイツは・・・」

 

 

 

勝利の女神は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆豪勝己に微笑んだ。

 

 

限界   許容上限と  もう一つの何かを超えた雨宮水月は  倒れた。

 

「雨宮くん戦闘不能!!よって――――――・・・

 

爆豪くんの勝ち!!!」

 

『以上ですべての競技が終了!!今年度雄英1年体育祭優勝は―――・・・

 

A組 爆豪勝己!!!!!』




爆豪「次回 水野郎ひでぇ顔だな。 
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.23 休め振替休日

 「それではこれより、表彰式に移ります!」

雄英1年体育祭は、1位:爆轟勝己 2位:雨宮水月 3位:轟焦凍・飯田天哉 という結果になった。

 

「3位には轟くんともう一人飯田くんがいるんだけど、ちょっとお家の事情で早退しちゃったのでご了承くださいな。」

「飯田ちゃん張り切ってたのに残念ね。」

「メダル授与よ!今年メダルを贈呈するのは勿論この人!」

「私が――――

 

メダルを持っt「我らがヒーロー オールマイトォ!

 

プルプルしてるオールマイトに「カブった」と謝るミッドナイト。

 

「今年の1年は良いなァ。」

「オールマイトに見てもらえてんだよなー。」

 

「轟少年、おめでとう。

緑谷少年との戦い以降、(ひだり)を使わなかったのには、何かわけがあるのかな。」

「緑谷戦でキッカケをもらって・・・・・・分からなくなってしまいました。あなたが奴を気にかけるのも、少しわかった気がします。

俺もあなたのようなヒーローになりたかった。ただ・・・俺が吹っ切れてそれで終わりじゃ・・・ダメだと思った。生産しなきゃならないモノがまだある。」

「・・・顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ。君ならきっと清算できる。」

「・・・はい。」

オールマイトは焦凍ちゃんを深く抱きしめた。

 

オールマイトは僕の前に立った。

「雨宮少年、おめでとう。

爆豪少年との戦い、とてもよかったよ。」

「・・・それでも・・・優勝を、大切な友達との約束を・・・果たせませんでした・・・。」

「―――君はとても強い。今回の体育祭で敗北を経験した君はきっとさらに強くなる。

君の成長と、来年の体育祭、とても楽しみにしているよ。」

「―――ありがとうございます。」

オールマイトは優しく僕を抱きしめてくれた。

 

「さて、爆豪少年。優勝おめでとう。

決勝戦で言った通りの、完膚なきまでの1位をとったな。」

「・・・ったりめーだ。俺はあんたをも超えるヒーローになんだからこの程度通過点なんだよ。」

「うんうん。相対評価に晒され続けるこの世界で、普遍の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。

君もきっと強くなるだろう。来年の体育祭も楽しみだよ。」

「来年も俺が優勝すンだよ!!」

「HAHAHAHAHA!とりあえず今はこのメダルを“勲章”として胸に刻んどけよ。」

メダルを首にかけ、力強くかっちゃんを抱きしめた。

 

「さァ!!今回は彼らだった。しかしみなさん!

この場の誰にも()()に立つ可能性はあった!1ご覧頂いたとおりだ!!競い!高め合い!さらに先へと昇っていくその姿!!

時代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!てな感じで最後に一言!皆さんご唱和ください!!せーの―――

プル    プルス

ウル・・えっ?

 

おつかれさまでした!!!」

 

プルス     

プルスウル
   プ
ウル

 

 

「そこはプルスウルトラでしょオールマイト!!」

「あぁいや・・・疲れたろうなと思って・・・」

 

 

 

 

「皆!!体育祭!お疲れ様!!!

水月!惜しくも2位で終わった。が!お前が全力で挑んだこと、俺はとても誇らしく思う!!!」

「・・・・・・・・・」

 

水月は机に突っ伏して腕をだらんとぶら下げていた。

「教室戻ってからずっとアレだな。」

「わかりやすいくらい沈んでるな・・・」

「2位がコレかぁ・・・」

 

「ウォッホン!あー、明日明後日は休校だ!しっかり休めよ!そして休み明けにプロからの指名などをまとめて発表する!心して待て!これにて今日は解散!!!」

 

 

 

皆が帰った教室、水月以外は取蔭、拳藤、骨抜だけが残っていた。

 

「おーい水月ー、生きてるかー・・・?」

「・・・・・・」

「元気出しなよ。2位だよ2位。十分すごいよ。」

「・・・・・・」

 

ズンズンと取蔭が水月に近づき、水月の肩を持ち顔を上げさせた。

「ちょっ、おい取陰!」

「・・・・・ひっどい顔だね。」

水月の顔は涙と鼻水でぐずぐずに濡れていた。

 

「・・・せ・・・づな・・・ぢゃん・・・っ・・・ぼく・・・ゆ‶う・・しょう・・・できながっだ・・。

やぐぞく・・・まも‶れ・・・ながっだ。・・・・・ごめん・・・ぼく・・・。」

 

 

 

取蔭は     雨宮の顔を優しく    胸に引き寄せた。

 

 

 

「せつな・・・ちゃん・・・?」

「・・・アンタが全力で戦ったんなら・・・それでいいでしょ。

 

でも、今のアンタの気持ち・・・アタシにも分かるよ。だから・・・今くらいは、

アタシの胸で・・気が済むまで泣きなよ。」

 

 

 

 

僕は   切奈ちゃんの胸で    情けないくらいに泣いた。

 

 

 

 

拳藤は骨抜を連れて教室を出た。

「・・・拳藤はいいのか?慰めなくて。」

「・・・骨抜。今は・・・今だけは・・・2人きりにしてあげようよ。」

 

骨抜は、教室に顔を向けている拳藤の頬を水が伝っていくのを、見なかったことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・ありがとうね。切奈ちゃん。なんか君には助けられてばっかだね。」

「いいんだよ。アンタに泣かれてると、アタシまで落ち込んじゃうじゃん。」

「ふふっ。切奈ちゃんらしいね。それと・・・」

僕は扉の方を向いた。

「一佳ちゃん。柔造ちゃん。もう戻ってもいいよ。」

 

一佳ちゃんと柔造ちゃんが教室に入ってきた。

 

「・・・水月、もういいの?」

「うん。もう大丈夫。それとも、2人も僕を抱きしめてくれるの?」

「私は良いかな。」

「そう?俺はやっとくかな。3回戦負けた者同士。」

そういって柔造ちゃんは僕にハグしてきた。

「・・・そういうことなら私も抱きしめとこっかな。」

「うん。おいで。」

一佳ちゃんも僕にハグしてきた。

「・・・水月の体ってなんていうか・・・ふわふわもちもちしてんだね。」

「正直俺はハグしてて気持ちよかった。」

「そう?じゃあ皆でハグしよっか。体育祭おつかれさま的に。」

最後は4人全員で抱き合った。

 

 

「さて、オールマイトが言った通り、僕は負けた!かっちゃんに!完膚なきまでに!

でもこのままでは終わらない。この敗北を糧に、次は絶っっっっ対に勝ああああああつ!!!」

「そうだね。それでこそ水月ってカンジ。」

「俺も負けてらんないわ。」

「私も、来年こそは優勝目指す!」

 

初の敗北  完膚なきまでの負けを経験した僕は

 

しかし気持ちは晴れやかに   友達と帰路を共にした。

 

 

 

 

翌日

 

「あ、これもいいかも。」

僕は木椰区ショッピングモールに来ていた。最近あまりファッション店に行けてなかったから久しぶりのお出かけです。ただ、やはり雄英というべきか、来る途中めっちゃ話しかけられた。覚悟はしていたけどやっぱり対応にちょい疲れる。

「ふんふん・・・へー、こういう組み合わせもアリだねー。」

 

 

「あの、すみません。もしかして雄英の、雨宮さんですか?」

「あっ、はーい、そうで・・・・・え?」

 

 

「ふふっ。久しぶりだね、みーくん。」

「みーちゃん・・・・・?」

 

 

 

 

 

「見たよ体育祭。惜しかったね。」

「うん。勝てると思ったんだけどね。」

「それにしても、みーくんがまさか準優勝なんてね。ヒーローへの憧れは知ってたけどあんなバチバチにやり合うなんてね。」

「まあね。お姉ちゃんとの約束を果たすためだから。」

「そういえば、柚姉は元気?」

「うん。ちょー元気だよ。」

 

「―――あれ、水月じゃん。アンタも来てたんだ・・・え?」

「あ、水月も来てたの?って、そっちの人は?」

「ねえみーくん、その人たちは?」

「みー・・くん・・・?」

「あー、えっと・・・。」

 

 

「では改めて、こっちの2人は取蔭切奈ちゃんと拳藤一佳ちゃん。僕のクラスメート。」

「よろしくねー。」

「まあ、よろしく(この人さっき『みーくん』って言ってた?)。」

「で、こっちは菜爪美咲(なつめみさき)ちゃん。この人は」

「みーくんの幼馴染でーす。」

「おさなっ・・・!?」

「え!?水月幼馴染とかいたの!?聞いてないよ!?」

「聞かれなかったから…。」

「あははっ!みーくんそういうとこ変わんないね!」

「からかわないでよみーちゃん・・・。」

「みー・・・ちゃん・・・。」

あっやばっちょおっとすいません水月借りますね!ほら水月こっち来て!!」

「えっちょ一佳ちゃんなに!?」

水月は拳藤に柱の陰に連れていかれた。

 

 

「ちょっと水月!あの菜爪って人とどういう関係なの!?」

「えっ、どういうって・・・。」

「あの子彼女とかなの!?」

「かっ彼女!!?いやいや、そんな違うよ!」

「あ、そうなの?」

「いや、まあ、その・・・ちっちゃいころに『旦那さんにしてあげる!』っては言われたことあったけど・・・それくらいだよ。」

「・・・・。」

拳藤は柱の影から菜爪をちらっと見た。

 

(うーん・・・ちょっと判断に困るけど・・・たぶん大丈夫かな・・・?)

 

拳藤と水月が陰から戻ってきた。

「おまたせー。ごめんねいきなり席を外しちゃって。」

「ううん。気にしてないよー。」

「ねえ水月。もう昼食べた?」

「食べてないけど、どうして?」

「アタシらもまだだから、一緒に食べない?」

「いいけd」

「よし決まり行くよー。」

「ねえ、私も一緒に行っていい?取蔭さん。」

「・・・いいよ。あと、取蔭()()じゃなくて、取蔭でいいよ。」

「そう?じゃあ私も菜爪でいいよ。なんならみーちゃんって呼んでくれてもいいよ?」

「いや、今はまだ菜爪で呼ぶよ。」

「ふーん。ま、いつでもみーちゃんって呼んでくれていいからね。」

 

 

「すーごい僕を置き去りに話進めるなぁ…。」

「んー・・・なんか、同情するよ水月。」

「そういえば、結局一佳ちゃんたちは何しに来てたの?」

「あぁ、取蔭が新しい服欲しいって言ったから付き合ってたの。」

「新しい服かー。」

「せっかくだし、水月が選んであげたら?」

「え、僕が?」

「ほら、水月の方がファッション詳しそうだし。ご飯終わったらでいいから。」

「なるほどね。そういう事なら張り切っちゃおっかな。切奈ちゃんにどんなカワイイが似合うか僕もちょっと気になってたから。せっかくだし一佳ちゃんにも見繕ってあげるよ。」

「えっ、いや、私はいいよ。第一、私かわいいって柄じゃないし・・・。」

「何言ってるの?一佳ちゃんはめちゃくちゃカワイイじゃん!それとも僕の腕じゃ一佳ちゃんをカワイくできないとでも?」

「・・・そう?なら、任せてみようかな~なんて。」

「お任せあれ。」

 

「水月ー、拳藤ー、何してんのー?早くいくよー。」

「そうだよー。せーちゃんもうおなかペコペコだってよー!」

「ミサキチが割引券持ってる店あったからそこ行くよー!」

 

「・・・あれ?なんか仲良くなってない?」

「・・・ま、女はなんか知らないうちに仲良くなってるものだからね。ほら、私たちも行くよ。」

 

 

 

 

「女の子ってやっぱ難しい。」




これで雄英体育祭編は終了です。つかれた。
菜爪は今後も登場しますが、ヒロインではありません。異性の友人です(鋼の意思)。
次回からは職場体験編になります。果たして水月はどのヒーロー事務所に行くのか。オリジナル敵も出ます。

水月「次回 ブラキン先生センスないって。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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職場体験編
No.24 名前を付けてみようの会


 体育祭から2日開けての登校日、空はあいにくの雨模様だった。にもかかわらず、

「あれ、雨宮くんじゃない?」

「あ、ほんとだ!」

「すいません、握手してもらってもいいですか!?」

「君、将来うちにサイドキックとして来ないかい?」

朝からいろんな人に話しかけられた。一昨日もそうだったけど、さすが雄英って感じだね。

「おはよー。」

「おう水月!おはよう!!!」

「お前も来る途中話しかけられたか?」

「もうたっくさんね。」

「俺は子供にいきなりドンマイコールされたよ。」

「ドンマイ。」

「おはよう!!みんな席に着け!!」

 

「みんな!今日のヒーロー基礎学、ちょっと特別だぞ。」

(ヒーロー関連の法律やら手続きやらただでさえ難しいのに・・・)

(いきなり小テストとかか?勘弁してくれよ・・・。)

 

 

 

「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ!!!」

「胸ふくらむヤツ来たああああああああ!!!!!!」

 

「静かに!!

えー、というのも、先日話した『プロからの指名』」に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2、3年から・・・

つまり!今回来た指名は将来性に対する“興味”に近い。卒業までに興味がそがれたら、残念ながら一方的にキャンセル、ということもある。」

「キチいよな・・・。」

 

「指名がそのまま自分へのハードルとなる、って感じすか。」

「そうだ。そして、今回のドラフト指名の結果は・・・こうだ!!!」

 

B組指名件数

雨宮:4,130

塩崎:400

骨抜:326

徹鐵:118

取蔭:37

拳藤:35

小森:21

柳:16

物間:5

 

 

「例年はもっとバラけるが、今年は水月に指名が偏ったな。」

「だー!白黒付いた!」

「水月すげえなオイ!!」

「まあ、決勝戦であんなすげえの見せられたら興味沸くわな。」

「でも塩崎たちも結構指名来てんな。」

 

「これを踏まえ、指名の有無関係無く・・・いわゆる『職場体験』に行ってもらう!!」

「「「!!」」」

「お前たちは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に経験して、より実りのある訓練をしようということだ!」

「それでヒーロー名っスか!」

「楽しみになってきたノコ!!」

「ただし!仮ではあるが適当なものは」

「付けたら地獄を見ちゃうよ!!!

このときつけた名が、そのまま世に認知され、プロ名になっている人多いからね!!」

「「「ミッドナイト!!」」」

「まあそんなわけで、俺一人でも十分なんだが、どうしても心配だということでミッドナイトにも手伝ってもらうことになった!」

「だってブラド、あんたネーミングセンス皆無じゃん。」

「!?い、いや、俺だってそこら辺のセンスは・・・」

「だってアンタのヒーロー名考えたの山田じゃん。」

 

職員室

「Achoo!!」

「プレゼント・マイク、風邪ですか?」

「んーにゃ、きっとリスナーが俺のこと噂してんだろうゼ!YEAH!!」

「・・・Bress you.」

「おお!エクトプラズム!サンキュー!!」

 

「それじゃ気を取り直して、ブラド。」

「あ、ああ。将来自分がどうなるのか、名をつけることでイメージが固まりそこに近づく。それこそが『名は体を表す』ということだ。

 

『オールマイト』なんかはその代表例だな。」

 

ヒーロー名・・・。

 

 

15分後

 

 

「じゃ、そろそろ、できた人から発表してね。」

(((発表形式かよ!!)))

 

「・・・・・。」

僕は立ち上がった。

 

「雨宮くん、もうできたのかしら。じゃあ前に立って発表してもらうわ。」

 

 

「12年前・・・」

僕に“個性”が発現した頃・・・

「4歳の時に、お姉ちゃんがつけてくれた・・・」

僕の原点(オリジン)

 

『アクア』。これが僕のヒーロー名だ。」

 

 

 

 

「水そのものを体現するヒーロー名ね。うん。まさにあなたにぴったりのヒーロー名よ。」

「ありがとうございます。」

「さあ!みんなもどんどん続きなさい!!」

 

「んじゃ俺。中学の頃からこれって決めてた。『マッドマン』。」

「なるほどね。個性の柔化と掛け合わせての『泥の男』というわけね。なかなかいいじゃない!」

「ありがとうございます。」

「次、アタシ。『リザーディ』。」

「個性の性質と同じ名前は憶えやすくてグッド!」

「じゃ私も!『バトルフィスト』です!」

「好戦的なヒーロー名ね!近接戦闘に強い貴方にぴったりだわ!」

その後もみんなのヒーロー名発表は続き―――

『リアルスティール!』『ファントムシーフ』『ヴァイン』『シーメイジ!』『ロケッティ!』『ジェボーダン!』『・・・ベンタブラック』『マインズ』『ツブラバ』『スパイラル』『ウェルダー』『龍帷子(ロンウェイヅゥ)』『・・・ルール』『コミックマン!』『・・エミリー』『ジャックマンティス!』

 

 

 

「というわけで全員のヒーロー名発表が終わったわね。みんな、自分のヒーロー名に自信と誇りを持ってね!」

 

「ヒーロー名も決まったところで、職場体験は1週間実施される。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から行き先を選べ。そして指名の無かった者、安心しろ!あらかじめこちらからオファーした全国40件のヒーロー事務所がある!お前たちはこの中から行き先を選べ!」

 

 

 

「職場体験どこ行くかなー・・・。」

「俺はエクスレス事務所行くかな。」

「う~ん迷うノコ!」

「40件もあると迷うな。」

 

「水月、どこ行くか決めた?」

「フーム・・・ちょっと迷ってる。切奈ちゃんは決めたの?」

「私はマジェスティックヒーロー事務所に行こうかなーって。」

「!!?」

「え・・・どうしたの?いきなり立ち上がって・・・。」

「あ、いや、その・・・。」

無い、とは思うけど、念のために忠告しておくかな。

「切奈ちゃん、そいつ、女の子大好きだから、お尻とか触ってきたら遠慮なくぶん殴っていいからね。」

「え・・・どしたん?なんかマジェスティックに嫌な思い出とかあるの?」

「・・・僕の叔父さんなんだよ。母方の。」

「マジで?」

「しかもこのオジサン僕にも指名入れてきてんだよね。女性しか採らないくせに。ちょっと何考えてるかわかんなくて怖いよ。」

「・・・まあ、なんかあったら連絡するから。」

「お、二人とももう決まった?

「まだだよ一佳ちゃん。そっちはもう決めたの?」

「一応ウワバミヒーロー事務所にしといた。」

「ウワバミ!?よかったじゃん!話題性抜群じゃん!」

「骨抜は塩崎とシンリンカムイのとこ行って、鉄哲はフォースカインドのとこ行くらしいよ。」

「水月、アンタもそろそろ決めたら?こんだけ候補あるんだし、よりどりみどりじゃんか。」

「そうだなー・・・うん、決めた。ここにするよ。」

「・・・へー、いいじゃん。」

「なんなら私より話題性ありそうじゃん。」

 

 

 

 

 

職場体験 当日

「よし、全員コスチュームは持ったな!!」

「「「はい!!」」」

「うむ、くれぐれも職場体験先に失礼のないように!それでは解散!!!」

 

「それじゃ、切奈ちゃん、一佳ちゃん、柔造ちゃん。お互い頑張ろう!!」

「「「おー!!!」」」

 

 

 

そんなわけで僕が体験先に選んだヒーロー事務所がある満打呂(まんだろ)市にやってきた。

「っと~ここから徒歩20分か―。」

 

「キャァァァァーーー!!!」

きょろきょろ街中を見渡していると突然悲鳴が聞こえた。振り返ると、10メートルほどもある異形型の(ヴィラン)が女性を襲っていた。

「!!」

僕は水で女性をこちらに引き寄せて逃がしたが、今度は別の人を襲い始めた。

「ああもうこんな時に!!!」

公の場での免許未取得者の個性行使は認められていない。だから今個性を使って助けているのも割とギリギリの行為なんだけど、そうも言ってられない。

「くっそ!」

僕はアクア・フェアリーで(ヴィラン)の注意をひきつけ、その隙に周囲の人を避難させた。が、その間も僕に執拗に攻撃を続けてくる。

「ああもうしつこい!!」

そう叫んだとき、僕の目の前に(ヴィラン)の拳が迫ってきた。急いで水の壁を生成するも、大きさが足りず吹き飛ばされてしまった。

「やっば・・・!!」

 

 

 

 

「チャージ満たん 出力30 ねじれる波動(グリングウェイブ)!!!

そのとき、どこからともなくぐるぐるにねじれた光線のようなものが飛んできて、(ヴィラン)を一撃で倒した。

 

「!!?」

「あれ?ねえねえキミ。」

上空からヒーローらしき女の子がふわりと降りて来た。

 

「それ雄英の制服だよね?不思議!今授業中だよね。なんでこんなとこにいるのかな?」

「え、ああ今僕職場体験先に行く途中で」

「ねえねえ男の子なの?男の子なのに女の子みたいに髪が長いの?不思議!」

うわあああああ質問責めええええええええ

「こらこらねじれ、あまりその子を困らせないの。」

「ねえねえでもリューキュウ、不思議じゃない?」

「ハイハイ不思議ね。ごめんね水月くん。この子いつもこんな感じで。」

「はぁ、そうなんですか・・・。ってそれより、リューキュウですか!?」

「ええそうよ。今回の職場体験、ウチを選んでくれてありがとね。」

 

僕の職場体験は、この衝撃的な出会いと共に始まった。




ブラドキング「次回 水月とリューキュウに意外な接点?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.25 いざリューキュウ事務所

 「というわけで改めて、リューキュウ事務所へようこそ。水月くん。今日から1週間よろしくね。」

「はい。よろしくお願いします。」

僕は職場体験先にリューキュウ事務所を選択した。リューキュウ事務所は何というか、全体的に中華風な内装をしていた。

「私のことはもう知ってるだろうからいいけど、この子を紹介しておかないとね。この子は波動ねじれ。あなたと同じ雄英高校からインターン生としてこのリューキュウ事務所に来ているわ。」

「インターン?」

「君が今日からやるのは職場体験、つまりこの事務所でヒーローとしての現場をある程度経験してもらうだけだけど、インターンはここで働いている人たちと同じ待遇で労働するわけ。」

「なるほど・・・。」

「ねえねえ水月くん、君はどんな個性なの?気になる。」

「あ、僕の個性は“水”です。水を生成し、操り、吸収する個性です。」

「・・・それだけ?」

「・・・?はい、そうですけど。」

「・・・・・」

「ねえねえなんでコスチューム着ないの?職場体験なのに。不思議。」

「・・・そうね。とりあえずコスチュームに着替えてきて。」

「わかりました。」

 

 

 

 

「着替え終わりました。」

「ねえねえ、なんで男の子なのに女の子みたいなコスチュームなの?」

「僕のお姉ちゃんがデザインしてくれた、最高傑作だからです。」

「そうなんだー。不思議~。」

「ハイハイ二人とも注目。ねじれはサイドキックと一緒に、水月くんは私と一緒にパトロールよ。」

「「はい!」」

「じゃあね水月くん。」

「はい、いってらっしゃい。」

「それじゃ水月くん。私たちも行こうか。」

「わかりました。」

 

 

そんなわけで、リューキュウと共に町へパトロールに繰り出した。

「この町って犯罪発生率高いんですか?」

「そうね、都市圏レベルで、とは言わないけどそれでも毎日数件、多いときは数十件以上発生するわね。」

「うわぁ・・・。」

やっぱりこのくらいの規模の町となると(ヴィラン)犯罪もそれ相応の件数発生するのね・・・。

「そういえば、ヒーロー名を聞いて無かったわね。どんな名前にしたの?」

「『アクア』です!お姉ちゃんが4歳の時につけてくれたヒーロー名です。」

「そう、思い入れのあるヒーロー名なのね。それにしても、君と会うのは15、6年ぶりくらいかしらね。」

「――――え?」

「まあ、覚えてないのも無理ないわね。あの時の君は赤ちゃんだったからね。」

「・・・え、知り合い・・・でしたっけ?」

「あら、言ってなかったかしら。あなたのお父さん、水竜ヒーローリヴァイアサンね。私が雄英生のときのインターン先のヒーローだったのよ。つまり私の上司だったの。」

「・・・・・えええ!!?」

聞いて無い聞いて無いそんな話一度も!

「知らなかった・・・。」

「あの人聞かれなきゃ言わない人だからね。懐かしいわね~。あれからもう15年、私もいっぱしのヒーローになって、元上司の息子を受け持つことになるなんて・・・。ほんと、人生何が起きるかわからないモノね。」

「そうですね。マジでびっくりしました。」

 

と話し込んでいると、遠方から爆発音が聞こえてきた。

「アクア!行くよ!」

「・・っはい!」

急にヒーロー名の方で呼ばれて焦ったけど、そういえばこういう時のためのヒーロー名だね。

と思った直後、リューキュウがドラゴンへと変身し飛んでいった。そういえばリューキュウの個性は“ドラゴン”だっけ。

僕もアクア・フェアリーを発動し、リューキュウについていった。

街道沿いに(ヴィラン)が見えたと思ったら、次の瞬間には急降下攻撃でリューキュウが(ヴィラン)を取り押さえていた。

「早い・・・!」

「アクア、拘束系の技使える?」

「はい。取り押さえます。」

数分後、警察が来て(ヴィラン)を連行していった。

「それじゃ、お願いしますね。」

「確保、感謝します。」

「いえいえ。」

 

「現場が初めての割には動きがよかったね。って、そっか。(ヴィラン)との対峙は初めてじゃなかったっけ。」

「そうですね。USJで一度・・・。」

今思えば、あの襲撃で心を病んでもおかしくなかったのに、今こうして健康でいられるのはたぶん幸運なことなんだろうね・・・。

その後3件ほど(ヴィラン)犯罪に対処し、事務所に帰ってきた。

「皆今日も頑張ったわね。大きなトラブルもなく無事に終わってよかったわ。今日はここまで。お疲れ様。」

「「「お疲れさまでした!!」」」

「あ、水月くん。」

「なんですか?」

「せっかくだから、ねじれを駅まで送ってあげて。いつもは私が送ってるんだけど、いい機会だし、雄英ビッグ3の一角から話を聞いてみたら?」

「雄英・・・ビッグ3?」

「あ、まだ聞いて無かったの?ねじれは現雄英生のトップの『雄英ビッグ3』の1人なんだよ。」

「え!?ねじれ先輩ってそんなすごい人だったんですか!?あれ、でも過去2年間の雄英体育祭でねじれ先輩の名前聞いたことないけど・・・。」

「まああの子はもともと優秀だったけど、インターンに来てから化けたタイプだからね。」

「そうなんですか。」

「インターンに来てから化ける子は割といるわよ。ねじれから話を聞いた感じ、ビッグ3のほか2人もインターンに行って化けたタイプらしいからね。」

「・・・インターンってそんなにすごいんですか・・・。」

「そうね。今の水月くんがやっている職場体験はあまり前線に立たせないようにしてるけど、インターンはサイドキックなんかと同様に前線に立って動いてもらうから、得られる経験値も段違いになるわね。」

「ねえねえリューキュウ!早く帰ろうよ!」

「ねじれ、今日は私の代わりに水月くんが送ってくわ。」

「どうして?リューキュウの代わりに水月くん?不思議!」

「たまにはいいじゃない?あなたも雄英の先輩としてなにかアドバイスしてあげて。」

「ふ~ん。いいよ!それじゃ一緒に行こっか!」

「あっはい!」

「水月くん。」

「なんですか?」

「もう知ってるだろうけど、ねじれの話し方は独特だから、頑張ってね。」

「え?」

 

 

独特なのは今日の始めですでにわかってたけど、予想以上だった。

「ねえねえ、水月くんの水はどこから出てるの!?」

「吸収した水ってどこ行くの!?」

「コスチュームがかわいいのはなんで!?」

「なんでリューキュウのところを選んだの!?」

もうこれすごいよ。ねじれ先輩1人としか話してないのに聖徳太子気分だ。

「あの!」

「?どうしたの。」

「ねじれ先輩はどうしてインターン先にリューキュウの事務所を選んだんですか?」

 

 

「・・・私ね、体育祭でぜんぜん勝てなくて、ちょっとだけ、落ち込んでたの。指名も全然なかった。でも、リューキュウは私を選んでくれたの。私をちゃんと見てくれて、どうやったら強くなれるか教えてくれた。私、うれしかったの。だから、インターンもリューキュウのところがよかったの。」

「・・・リューキュウを信頼してるんですね。」

「うん!私ね、リューキュウが大好きなの!」

僕にとってのお姉ちゃんが、ねじれ先輩にとってのリューキュウなのかな。そう思ってると、駅に着いた。

「ありがとね!」

「はい。それじゃ、さようなら。」

「あ、まって水月くん!」

「・・・?」

 

「あしたもがんばろ!」

「―――はい!がんばりましょう!!」

 

 

 

 

 

僕たちが何も知らず話しているときにも、悪意は蠢いていた。




リューキュウ「次回 ねじれが水月くんを照れさせる?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.26 想い

 「アクア!避難誘導を!」

「はい!」

職場体験2日目、今日はリューキュウに加えねじれ先輩も一緒に行動していた。

「ウガァァアアアアアアア!!!!」

(ヴィラン)がリューキュウに抵抗し、近くのビルの看板が外れ、下の人に向かって落ちて来た。

「う、うぁあああ!!?」

「危ない!」

僕が水で下の人を助けるより早く、ねじれ先輩の波動が看板を吹き飛ばした。

「ねえねえ大丈夫!?ケガしてない?」

「あぁ、大丈夫です!ありがとうございます!!!」

「アクア!この人をお願いね!」

「わかりました!」

ねじれ先輩が助けた人を安全な場所に避難させている最中、僕はこの2日間の職場体験ですでに「プロヒーロー」とそれに近い「インターン生」、その二者と「学生」の僕との差を実感させられた。その最たる差は「速さ」。

何かが起きてから、いやむしろ、起きる前にすでに行動を起こしてる。単純な反応速度の話じゃなく、おそらく経験をもとにした予測をしてるんだ。それに、さっきの僕がねじれ先輩の位置にいたら、おそらく僕はさっきの人が悲鳴を上げるまでそこにいたことに気づいてすらいない。見えている範囲・・・()()()()()が違う。それをこの2日間でいやというほど叩きつけられた。

でも、僕も少しはこの職場体験で成長ができた。

 

『リューキュウ!白駒四丁目に(ヴィラン)出現!至急対応を!』

「「「了解!」」」

僕は2人の飛行と並んで飛行できるようになっていたし、

「アクア!後ろ!」

「リヴァイアインパクト!」

僕の背後にいた(ヴィラン)は僕の手から生成された水竜に弾き飛ばされた。

「やるね!不意打ち対応!!」

「はい!」

僕が体育祭で意図的に全力?を出したおかげで、この水竜をある程度調整できるようになった。不思議なことに、この水竜は追尾性能のようなものを持っていて、今回みたいな僕を不意打ちしようとしている(ヴィラン)にノールックで水竜を当てられる。

ただ、少し変なのは、この水竜を生成したり操ったりする感覚が、いつも個性を使っているときと()()

「ねじれ。アクア。そろそろ昼休憩にするわよ。」

「はい!」

まあでも多分、個性の成長とかかな。この2、3ヶ月で今までと比にならないくらい個性使ってるし。

 

 

 

同時刻 リヴァイアサンヒーロー事務所

 

「・・・・・・。」

 

PCで動画を見るリヴァイアサンを、離れたところからサイドキックの2人が見ていた。

「リヴァイアサン、何見てんだ?」

「多分、体育祭の水月くんの戦闘だよ。昨日も同じの見てたし。」

「親バカ…的なやつ?」

「まあ、あの人なら有り得る。」

 

 

2人の話している通り、リヴァイアサンはずっとある動画を見ていた。雨宮水月が決勝戦の最後に放った、リヴァイアインパクトのシーンだ。

(俺のリヴァイアインパクトを水月自身の個性で模倣した・・・?いや、それにしては、動きがあまりに生物的すぎる。俺の水竜と遜色ないほどに。まさか俺の“個性”を・・・)

「リヴァイアサン!そろそろ昼休憩終わりますよ!」

「・・・ああ、わかった。」

(考えすぎか。おそらく水月の個性も成長しているんだろう。)

 

 

 

 

「水月くん。今日の動き、よかったわよ。」

「え?そうですか?」

「ええ。昨日より動きに無駄が少なかったわ。早速職場体験を物にしてるって感じかしら?」

「そうそう水月くん!今日のアレ!竜!水の竜!私を助けてくれたやつ!リューキュウみたいにかっこよかったよね!」

「かっ・・・///かっこよ・・・///」

「あら?照れてるのかしら?かわいいわね。」

「そのー・・・カワイイってのは言われ慣れてるんですけど・・・かっこいいは・・・あんま慣れてなくてですね・・・その。」

「そうなの!?たしかに水月くんかわいいもんね!じゃあ逆にかっこいいっていっぱい言ったらどうなるのかな!?

かっこいい!かっこいい!かっこいいよ!」

「―――ッ!!!////そっ、その・・・あんまり、連呼は・・・/////」

「かっこいい!かっこいい!かっこいい!あはは!」

「ハイハイそのへんにしときなねじれ。そろそろ休憩も終わりだから。さ、行くよ。」

「はい!」「はーい!」

 

 

その日の夜、世間を賑わせていた「ヒーロー殺し」ステインが逮捕されたが、この時の僕たちはそれを知る由もなかった。

 

 

「リューキュウ、見ましたか?」

「ええ、見たわ。エンデヴァーがヒーロー殺しを確保したんですってね。」

「それもなんですけど、ネットにアップされていた動画・・・ヒーロー殺しの主張を謳ったもの・・・っていいますか。アレを見て、僕・・少しわからなくなっちゃって。

『ヒーローとは見返りを求めてはならない 自己犠牲の果てに得うる称号でなければならない』・・・。見返りを求めちゃ駄目、自己犠牲を果たさなきゃ駄目。たしかに、それがヒーローなのかもしれないけど・・・

でもそれじゃあ、そのヒーローを大事に思っていた人は、生きてほしいと思っていた人たちの気持ちはどこに向かえばいいのか、それが分からなくなっちゃって…。」

 

 

 

「ねえねえ二人とも、なに話してるの?」

「ねじれ先輩・・・。」

「・・・ねぇ、ねじれ。」

「ん?なにリューキュウ。」

「ねじれは、ヒーローは自己犠牲じゃなきゃダメって思う?」

 

「うーん・・・私はそうは思わないかな。ねえだって、犠牲ゼロでみんなを助けた方が絶対すごいと思うの!!そう思わない!?ねえ思うよね!」

「ねじれ先輩・・・。」

「まあ、私もねじれと意見は同じよ。自己犠牲とか見返り無しとかそういうのも分かるけど、ヒーローにとって一番大事なのは、誰かを助けることだと思うの。もちろん、それを意識してやってないヒーローだっているわ。でも、意識してやっていなくても、それが結果的に誰かを助けて、その人にとってのヒーローになることだってあるの。

あなた自身がなりたいヒーローを目指すことが、私はとても大事なことだと思うわ。」

 

リューキュウとねじれ先輩の言葉には、今適当に言っただけじゃない、これまでの成功や失敗、人生、ヒーローとしての想いが宿っているように感じた。

 

 

「―――ありがとうございます。少し、頭がすっきりしたような感じがします。」

「それはよかった。あなたの助けになれたなら、ヒーロー冥利に尽きるわ。」

「ねぇ!よかったね!」

「リューキュウ!三丁目大通りに(ヴィラン)出現との通報が!」

「わかったわ!行くわよ二人とも!」

「はい!」「はーい!!」

 

 

ヒーロー殺しの悪夢は  まだ終わっていない。




ねじれ「次回 ヒーロー殺しの影?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.27 潜み、蠢き、忍び寄る

 5月某日 20時25分頃 満打呂市にてプロヒーロー1名が重傷で発見される。

翌日 20時43分頃 同市にてプロヒーロー1名が重傷で発見される。

いずれも人目の付かない路地裏での犯行であり、また、被害者の刺創と切創から刃渡り10~15cmほどの刃物を用いての犯行だと思われる。

 

 

「・・・・・。」

「・・・水月くん、気分が悪いなら今日はもう帰っていいわよ。無理する必要なんてないから。」

「あ、いえ。大丈夫です。・・・大丈夫じゃないですけど。」

この事件の被害者の第一発見者はリューキュウ事務所、いや・・・僕だ。夜のパトロール中に(ヴィラン)が出現したためその対処に当たっていたが、(ヴィラン)を警察に引き渡しているとき、ふと視線を感じて路地裏を振り返ると、そこには血塗れで横たわる人がいた。

その翌日、リューキュウのサイドキックが路地裏で同じような人を発見した。

警察の話によると、どちらも重症ではあるものの、命に別状はないそうだ。

 

そう、命の危機は無かった。見つけるのがあと数時間遅れていれば分からなかったそうだが、それでも、どの傷も急所は外れていたようだ。しかし同時に、どの傷も急所のすぐ近くだった。

僕が被害者を発見してその傷を見たとき、最初に感じたのは、痛そうとか、怖いとか、そんなもんじゃなかった。

 

この傷をつけた者の、こいつを苦しめたい、こいつを死なせず、生きたまま苦しめ続けたい、そんな意志を感じてしまった。

でも、だからこそ、この人を傷つけた(ヴィラン)に対して怒りを覚えた。

「・・・捜索しましょう。」

「え?」

「この事件の犯人を、捜しましょう。」

「水月くん、別にあなたが捜索する必要はないわ。この事件は職場体験としては不適切よ。あなたを巻き込むわけにはいかない。」

「それでも、僕はこの事件の犯人を許せない!」

「ねえねえ水月くん!違うよ!やっちゃだめだよ!私たちヒーローは(ヴィラン)」を裁くようなことはしちゃダメなんだよ!?」

「そうよ水月くん。私たちヒーローに逮捕や刑罰を行使する権限はないわ。私刑は、(ヴィラン)のそれと何ら変わりないわ。」

 

「違いますよ。リューキュウ。ねじれ先輩。僕はなにも(ヴィラン)に私刑を執行したくて捜索したいんじゃないですよ。

 

この事件の犯人、明らかにヒーロー殺しを意識している。事件現場、凶器、被害者。どれもヒーロー殺しと共通している。それらにどんな意図があるのかはわからない。

でも、このままじゃヒーロー殺しの悪夢は終わらない。多くの人が恐怖や不安に苛まれる。僕はそれが許せない。

だから、ヒーローとして、その(ヴィラン)を倒して、警察に引き渡し、司法の場に立たせて、しかるべき刑罰を受けさせる。僕なんかの私刑よりも、司法の下に下される罰の方が、被害者の人たちの気持ちも少しは軽くなると思います。」

「「・・・・・。」」

 

 

「ふぅ。とりあえず。あなたがちゃんとヒーローとしての心構えを持っていることが知れてよかったわ。」

「ね!ちょっと怖かったからね!」

「それじゃあ・・・」

「ただし!」

 

「捜索は他事務所とのチームアップの上行います。すでにチームアップ要請は受理されてるわ。詳しいことは18時からの作戦説明時に。わかったわね?」

「はい!」「はーい!」

 

 

そして18時・・・

 

チームアップ要請に応じたのは、エンデヴァー事務所の面々とラビットヒーロー・ミルコだった。

「今回はチームアップに応じて頂き、感謝します。」

「挨拶はいい。さっさと始めるぞ。」

「わかりました。では、今回の作戦を説明します。今回我々が追う(ヴィラン)は、これまでの傾向を踏まえると、ヒーロー殺しを意識した犯行を行う可能性が高いです。そのため、ヒーロー殺しの主な事件現場である路地裏に現れる可能性が高いです。そのため、各事務所から2人ずつのペアを作り、路地裏を巡回してもらいます。この事務所にサイドキックを残しておくので、そちらからの定期連絡には必ず応じてください。連絡がなかった場合は近くのペアがそのペアのところへ行ってください。また、目的の(ヴィラン)を発見した際は即時全体連絡を。以上です。」

「私は1人でいいぞ!ほかのヤツがいても足手まといだからな!」

「わかりました。」

 

「水月くんは私とねじれの3人で捜索に当たるわよ。」

「わかりました。」

 

 

夜も更ける18時・・・僕とリューキュウ、ねじれ先輩は一丁目の路地裏を回っていた。

「二人とも、くれぐれも気を付けてね。」

「はい。」

「ねえねえリューキュウ、(ヴィラン)は夜にしか犯行してないんだよね?」

「ええ。現状はどちらも日が沈んでからの犯行よ。」

確かにそこは少し疑問に思っていた。ヒーロー殺しは日中でも犯行に及んでいたにもかかわらず、今回の(ヴィラン)の犯行はいずれも夜に行われている。単純に闇に紛れて犯行に及ぶ方が見つかるリスクは低いんだろうけど・・・

 

 

「・・・・・?」

 

視線を感じた。

 

「水月くん、どうしたの?」

 

 

「・・・・・・・・」

 

僕は背後を振り返り、水を生成した。が、そこには誰もいなかった。

 

「ねえねえ水月くん、誰かいたの!?」

「水月くん、何か察知した?」

僕の異変に気付き、辺りを警戒する2人。

 

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 

僕は目をつぶった。そして聴覚に神経を集中させた。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャポン

 

「そこか・・・!」

と気づいて水の壁を生成するも遅く、右腕にナイフが付きたてられた。

 

「ッ!!」

僕はアクアフェアリーで急いで空中に退避して叫んだ。

「リューキュウ!!ねじれ先輩!!見つけました!!!こいつは・・・・・・」

 

僕を襲ったその男は、()()()()()()()()()()、僕を下卑た目で見つめ、不気味に嗤った。

 

「地面・・・いや、()()()()(ヴィラン)です!!!」

 

「ハーハハハァアァ・・・・」




ステイン「ハァ・・・次回、俺の贋物か・・・。」

今後の活動報告を書かせていただきました。時間があればお読みください。
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=275158&uid=315039


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No.28 水と竜とねじれる光

 「地面、いや、()()()()(ヴィラン)です!」

僕がそう叫ぶと同時に、(ヴィラン)は再び陰に潜った。

「また潜った・・・!」

「アクア!あなたは隣接しているビルを調べて中に人がいないか確認してきて!!」

「っでもリューキュウ!あなたの個性じゃこの狭い路地裏は―――」

 

「そのための避難確認です・・!」

その言葉を聞いた僕は、急いで路地裏を抜け、隣接しているビルの中を調べて回った。

「ねじれ!アクアが戻ってくるまで時間を稼ぐわよ!」

「うん!オッケー!!出力10%!グリングウェイブ!」

ねじれの波動が(ヴィラン)に向かうが、ねじれるためスピードが出ず避けられてしまった。

「ねじれ!地面を狙って!」

リューキュウの声に従い、地面には同を撃つねじれ。しかし、これも避けられる。

「なぁ・・・プロヒーローってのは、こんなにも情けねェモンなのかい・・・?

たかだか一介の(ヴィラン)にてこずるってのはァ・・・」

「むぅ・・・!!」

苛立ちで頬を膨らますねじれとは裏腹に、リューキュウは何かに気づいたのか冷静だった。

「あら、あなた、自分が逃げ場のない(ヴィラン)だってわかってて言ってるの?」

「逃げ場・・・?ハァァ・・・分かってないのはお前の方だなァ・・・。

俺にとっては、この夜の闇のすべてが逃げ場なんだよォ・・・。お前たちこそ逃げ場がねェんじゃないか・・・?

殺しはしねェから安心しろよ。飽きるまでじっくりたっぷり苦しめていたぶってやるからなァ・・・。」

「趣味悪いね。」

 

直後、(ヴィラン)の頭上に水竜が降り注いできた。

「チッ・・・!」

「さすがに避けられるか。リューキュウ!」

リューキュウが僕の方を向いた。

「隣接ビルとその他周囲のビル避難完了です!これでいいんですよね。」

「ええ。十分よ。」

そう答えるとリューキュウはドラゴンへと変身した。

「ねじれ!アクア!離れて!」

僕とねじれ先輩は即座に上空へ避難した。

「ウイングスラッシュ!」

リューキュウの鋭い羽が舞い踊り、隣接していたビルを倒壊させた。

僕は水で即座に瓦礫を取り除いた。

 

「ハァ・・・、雑だな。障害物がなくなったところで俺の逃げ場は―――」

「チャージ満たん!出力20!グリングウェイブ!」

ねじれ先輩のねじれる波動が(ヴィラン)の近くの地面を抉り取る。

「だから、攻撃が雑だと」

「デュオ・リヴァイアインパクト。」

(ヴィラン)が避けた先に僕の放った水竜が襲っていった。しかし、すんでのところでよけられた。

 

「ハァ・・・!バカめが!外れてんだよ!!」

「そりゃ、当てる気ないからね。」

「・・・!!!!」

僕の水竜を避けた(ヴィラン)に待っていたのは、リューキュウの鋭く大きな爪だった。

「ドラグーンパニッシュ!!!」

 

リューキュウの攻撃を受けた(ヴィラン)は、大きく吹っ飛ばされて後方のビルの壁に激突した。

僕は(ヴィラン)を水で覆い、宙に浮かせた。

「・・・ハハァ・・・、無駄だ。俺の個性は“影潜り”。たとえ水だろうが影さえあれば俺にとっては何の障害にも」

「ねえねえ知ってる!?影ってね、光で照らすとなくなるんだよ!?」

ねじれ先輩は(ヴィラン)を覆っていた水をねじれる波動でぐるぐると巻いた。確かにねじれ先輩の波動は光ってる。これじゃ影もできない。

 

 

 

数分後、駆けつけた警察に(ヴィラン)の身柄を引き渡した。

 

僕は、どうしても聞きたかったことがあったため、警察に連行されている(ヴィラン)に声をかけた。

「ねえ、ちょっとだけ聞いてもいい?」

「・・・ァ?」

「・・・なんで、こんなことしたの?被害者の傷跡を見たけど、明らかに急所を意図的に避けて攻撃したように見えた。なんでそんなことを・・・?」

 

「・・・ハァ・・、いや、もうこんなモノマネする意味はないな。」

「え、モノマネ?」

「いいかかわいこちゃん。教えといてやるよ。なに、単純な話さ。俺がこんな騒ぎを起こしたのは―――――

 

 

ただ、人の苦しむ顔が見たかったからさ。」

 

 

 

「は?」

 

 

「人の苦しむ顔が見たい。ただそれだけさ。致命傷を避けたのも、死なずに苦しんでもらうため。わざと生かしたのも、今後の人生で俺のことを思い出して苦しんでもらうため。

こんなモノマネをしたり犯行を奴に似せたのも、一度終わったと思った恐怖が再びやってきて苦しむ民衆の顔が見たかったからさ。」

 

 

「なにか、つらかった過去があったの?人の苦しみを喜ぶようになってしまったきっかけとか・・・。」

 

 

「ああ、そうだな。あれは俺が学生の頃         

 

 

 

 

 

同じように人が苦しむ顔が大好きだったなあ。法律にギリ触れねぇラインで、人が苦しむさまを見るのが最高に幸せだった・・・!!!

 

 

いいか小僧、社会に甘ったれた幻想を抱くのはいいが・・・後悔すんなよ?」

そして高笑いを上げながら、パトカーに乗せられていった。

 

 

「水月くん、あまり考えすぎない方がいいわよ。アイツの言ってることに一理あっても、あなたまでその考えに賛同する必要はないわ。」

「・・・あぁ、いえ。僕も別にアイツの意見に賛同する気はないですよ。ただ、(ヴィラン)って何かしら、過去に問題を抱えて、それがきっかけで犯罪に手を染めてしまってると思っていたものだったので、自分の見識の浅さを実感しました。」

「・・・そうね。(ヴィラン)(ヴィラン)で多種多様。つらい過去の経験から犯罪に手を染める者もいれば、アイツみたいに純然たる悪もいる。人間ってそういうものなのよ。」

 

 

 

「ねえねえそれよりさ!水月くんよくわかったね!私のやりたいこと!」

「そういえばそうね。最後の一撃だって失礼だけど君に何も言ってなかったのに。」

「あー・・・あいつが影に潜る敵だってわかった時点で、捕まえるにはねじれ先輩の光とリューキュウの重い一撃が必要だって考えまして、多分それはリューキュウもわかってるだろうから、あくまでサポートに徹しました。リューキュウは広所でなければ全力出せないだろうからビルを壊す準備をして、アイツの逃げ場を減らすために瓦礫を撤去、ねじれ先輩の波動はスピードが遅いから逆にリューキュウが一撃当てやすい位置まで誘導するために利用させていただきました。」

「すごいすごいね!私リューキュウのところまでは考えてなっかったよ!!」

「逆にその前までは同じように考えてたんですか・・・。ねじれ先輩もすごいですね・・・!」

「えへへー。」

「まあ、何はともあれ事件は解決したわ。お手柄よ2人とも。」

「はい!」「はーい!!」

 

 

こんな事件があった後も職場体験は滞りなく進み、ついに最終日、お別れの日となった。

「本日をもって、職場体験が終わります。リューキュウ事務所の皆さん、未熟な僕を指導してくださり、本当にありがとうございました。

この1週間で得た貴重な経験を糧にして、もっともっと強くなります!」

「1週間お疲れ様。水月くん、本当によく頑張ったわね。前半も、あの事件の後も、きっちりヒーローの卵として動けていたわ。」

「ありがとうございます!」

「卒業したらウチに来ない?君なら優秀なサイドキックとして、ねじれとツートップになれると思うわ。」

「あのね、それとってもいいと思う!だってツートップだよツートップ!わたしとおんなじくらいすごいよ!!」

「じゃあ、考えておきます。」

「ええ。ぜひ前向きに、ね。」

「それでは、1週間、お世話になりました!」

僕はリューキュウたちに見送られ、事務所を後にした。

 

 

 

翌日

 

 

「職場体験つかれたぁー!!」

「俺パトロールばっかだったわ。」

「俺も。一応(ヴィラン)との交戦もあったけど、ほぼ後方支援とか避難誘導。でもまぁ、悪くなかった。」

「鉄哲はA組の切島とだっけ?」

「おう!みっちりしごかれたぜ!」

 

「水月、大丈夫だった?ニュース見たけど。」

「一佳ちゃん、別に大したことないよ。僕サポートと(ヴィラン)の誘導してたくらいだし。まあでも、すごく貴重な経験はできたかな。てか一佳ちゃん、CM見たよ。ちょーカワイかったね!」

「いやー、あれはその、恥ずかしかったってゆーか、私の柄じゃないってゆーか・・・そう、それより!取陰はどうだった!?」

「ん?アタシ?別に普通だったよ。」

「大丈夫?切奈ちゃん、あのオジサンからセクハラとかされてない?」

「まあ大丈夫だったよ。勝手に『俺の見込んだ女』とかいってきたのはさすがに引いたけど。」

「・・・うん、まあ、あのオジサンそういうとこあるから、スルーしといて。」

「・・・水月はどうだったの?職場体験、いい感じだった?」

「うん。すごくいい感じだったよ。リューキュウ優しくて強かったし、ねじれ先輩も天然でカワイくて、でもとっても強かった。」

「へー。楽しかったんだ。」

「うん。それに、あの人たちのおかげで、

 

 

なりたい自分がちゃんと目指せそうな気がするんだ。」




シャドウ・ダイバー「次回 大口の割に大したことねェ奴がいるなァ・・・。」

今回で職場体験編は終了となります。
次回からは期末試験編となります。


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期末試験編
No.29 備えろ期末テスト


 時は流れ、六月最終週―――――・・・

期末テストまで残すところ一週間を切っていた。

「全く勉強してね―――!!!」

徹鐵ちゃんの悲鳴が教室にこだました。

「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!」

鉄哲 19/20位

「確かになァ・・・。」

円場 15/20位

 

「中間はまあ、入学した手で範囲狭かったし、そこまで苦労はしなかったけど。」

回原 9/20

「行事が重なったってだけじゃなく、中間と違って期末は実技演習があるからな・・・。」

 

「普段からちゃんとやっとけば特段困んなかったろ。」

骨抜 2/20位

「怠け者がバカを見るとはよく言ったものだよ。」

庄田 6/20位

「お前らめっちゃいうじゃん。容赦なしかよ。あそこにもっとヤバいのがいんのに。」

鱗 16/20位

 

「フフ、フフフ・・・。僕たちは、A組に勝たなきゃいけないんだ。A組に。フフフフ・・・。」

物間 20/20位

 

 

「物間が勉強できないってやっぱ意外だよな。」

吹出 17/20位

「バカはバカバカしく刻まれるだけだぜェ。」

鎌切 18/20位

 

「鎌切も大概人のこと言えないノコ。」

小森 11/20位

「そ、そうだな・・・。」

黒色 12/20位

 

 

「みんな暗いよ、元気だしなって!期末まで1週間あるんだから、まだどうにかできるよ!」

雨宮 1/20位

 

「それに僕もちょっとなら教えてあげられるし。」

「マジ?水月すまん、ちょっと二次関数教えてくんね?」

「私も、分子配列がちょっとウラメしくて・・・」

柳 13/20位

「頼む!俺にも教えてくれ、水月!!」

 

「うん、いい・・・あ、ちょっと待って。」

僕はスマホを取り出し、チャットアプリで連絡を取った。

 

 

「よし、みんな。A組の百ちゃんが勉強会開くらしいからみんなで行こ!」

「マジ!?行くぜ!」

「A組と勉強かー。なんか新鮮だな。」

 

 

 

昼休み

 

 

 

「筆記の方は問題ないけど、実技演習の方がまだわかんないよね。」

「ん。」

小大 10/20位

「あ、それ私先輩から聞いたんだけどさ、実技演習って例年入試ん時みたいな対ロボットの実践演習らしいよ。」

拳藤 4/20位

「へー。そうなんだ。それならまだ大丈夫なんじゃない?」

取蔭 5/20位

「というか一佳ちゃんサラッと言ってたけどヒーロー科に先輩いたんだね。」

「あー、中学同じなんだよ。ってか水月こそそういう先輩いそうだけど、いたりしないの?」

「あーえーっと・・・」

僕の脳内にはねじれ先輩の姿が浮かんだ。が、あの人に聞いた場合の返答は―――

「えー?期末試験の実技演習!?うーん、覚えてないかな!!」

「期末試験の実技演習!?ねえねえそれね、私、ロボットいっぱい倒したの!!」

この2択かなー・・・

「・・・半々、かな。」

「それどういうこと?」

「だが拳藤、よくやったよ!これで僕らB組はA組に対し情報アドバンテージを得ているという事さ!A組の奴らが吠え面書くのが今から楽しみ・・・おんやぁ?」

寧人ちゃんの視線の先にはデクちゃんたちがいた。

「ちょっと行ってくるよ。」

「あっこら物間!」

その後寧人ちゃんがなんかやらかしたのか、ダウンしている寧人ちゃんを一佳ちゃんが引っ張ってきた。

「寧人ちゃんまたなんかやらかしたの?」

「こいつまたA組あおってたんだよ。」

「変わんないね。」

「あ、そうだ、一佳ちゃんたちも百ちゃんの勉強会来る?」

「八百万勉強会やんの?どこ情報?」

「百ちゃんにチャットで『勉強会的なのやらない?』って聞いたら百ちゃんも同じこと考えてたみたいで、一緒にやることになったんだよ。」

「いつの間に八百万と連絡先交換してんの・・・・。」

「職場体験で会ったときに。一佳ちゃんは知ってるでしょ?」

「あー、そういや水月と八百万2人でなんかやってたね。」

「ふーん・・・。ま、アタシもいこっかな。」

「僕は何があっても行かないさ!A組と勉強だなんて、僕が最も嫌悪する行為だからねぇ!!」

「あー大丈夫だよ。寧人ちゃんは柔造ちゃんがスパルタ指導するって言ってたから。」

「アハハッ!!物間、頑張んな!」

「ハハッ・・・楽しみだなぁ・・・。」

 

 

一週間はあっという間に過ぎ、筆記試験・・・そして、実技試験当日!!

「それでは、演習試験を始めていくぞ!!」

僕たちはグラウンドに来ていた。

「この試験でももちろん赤点はあるぞ!林間合宿に行きたければ情けないヘマはするなよ!!」

 

「なんか先生多くない・・・?」

「お前たちなら事前に情報を仕入れて、対策をしてきているんだろう!感心だ!」

「入試みたいなロボっすよね?」

「ま、あれなら楽勝だわな。」

 

「残念!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

ブラキン先生の背後から校長先生が飛び出してきた。

「校長先生!」

「変更?」

「それはね・・・」

 

 

数日前 会議室

 

 

(ヴィラン)活性化の恐れ、か・・・。」

「もちろんそれを未然に防ぐことが最善ですが、学校としては万全を期したい。これからの将来、現状以上に対敵戦闘が激化すれば・・・ロボとの戦闘訓練は実践的ではない。

そもそもロボは、『入学試験という場で人に危害を加えるのか』などのクレームを回避するための策。」

「無視しときゃいいんだそんなモン。言いたいだけなんだから。」

 

 

 

 

「これからは対人戦闘・活動を見据えた、より実践に近い教えを重視するのさ!というわけで諸君にはこれから・・・

 

 

二人一組(チームアップ)で、ここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

「先生と!?」

「ペアの組と対戦する教師はすでに決定済みだ!動きの傾向や成績、親密度・・・諸々を踏まえて独断で組ませてもらった。では発表する!まず、骨抜と物間!お前たちは俺とだ!

そして水月と拳藤!!お前らがペアで―――」

 

 

「相手は―――私が、する!!」

僕と一佳ちゃんの前に、高い壁(オールマイト)が立ちはだかる。

 




物間「次回 小大がちょっとけなされる?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.30 水+拳VS最強

 「協力して勝ちに来いよ、お二人さん!」

「それぞれステージを用意してある!10組一斉同時にスタートだ!試験の概要については各々の対戦相手から説明される。移動は学内バスだ!迅速に行け!」

校長VS小大・鎌切

13号VS塩崎・角取

プレゼント・マイクVS円場・吹出

エクトプラズムVS回原・鱗

ミッドナイトVS小森・柳

スナイプVS取蔭・黒色

セメントスVS鉄哲・宍田

パワーローダーVS泡瀬・庄田

 

バス内にて

「水月、どうする?なんか作戦ある?」

「・・・・・あるにはある。」

「にしても私たちとオールマイトが・・・あの、すみません!」

「なんだい、拳藤少女?」

「私たちがペアになった理由って何ですか?」

「それは―――――」

 

 

数日前

「組の采配ですが、まず小大と鎌切、鎌切は直情的な性格すぎる。小大はコミュニケーションに少々難がある。しかし二人とも連携できればかなりの今日になる。よって!緊急時のコミュニケ―ションを取らせるために校長先生の頭脳で追い詰めて頂きたい。」

「オッケー。」

「次に物間。こいつは頭は回りますが実力にムラがあります。おまけに“個性”の影響で初見の相手、特に手練れであれば苦戦は必至。そこで、状況判断や対応に優れる骨抜とのペアで、アイテムがなければ負傷することでしか発動できない“個性”の俺が相手します!」

「異議なし!」

「次に雨宮と拳藤ですが、こいつらは戦闘力、コミュニケーション力、状況判断力など、総合力がB組においてかなり高い。よって、どこまでやれるかをオールマイトに見定めて頂きます!」

「ああ、わかったよ!」

 

 

「―――というわけだ。」

「なるほど・・・。」

「私がB組内で総合力高いって・・・ちょっと過大評価過ぎないですか?」

「HAHAHA!ブラドキングが君たちをかわいがっているのは知っているが、彼の評価は極めて正当だよ!君たちの評定は私たち全員でしっかり確認しているからね!っと、そうこうしている間に着いたな!」

 

 

「さて、ここが我々の戦うステージだ。」

「あの、すいません。戦うって、まさかオールマイトとですか?ちょっとそれ、現実的に考えて無理筋っぽい気が・・・。」

「消極的なせっかちさんめ!ちゃんと今から説明する。」

 

「制限時間は30分さ!

君たちの目的は『このハンドカフスを私に掛ける』or『どちらか1人がこのステージから脱出』!」

「『逃げ』がアリなのかァ・・・?」

「うん。」

 

 

「なにしろ戦闘訓練とはわけが違うからな!!相手は、チョ―――――――――――格上」

「格上?」

「なんっかイメージ沸かねぇ・・・。」

「ダミッ!ヘイガイズ!ウォッチャウユアマウスハァン!!?」

 

 

「今回は極めて実践に近い状況での訓練。僕らを、(ヴィラン)そのものだと考えてください。」

 

「会敵したと仮定し、そこで戦い勝てるならそれでよし。だが」

 

「実力差が大きすぎる場合、逃げて応援を呼んだ方が賢明だ!」

 

 

「戦って勝つか、逃げて勝つかってことですね。」

「そう君たちの判断力が試される!けど、こんなルール逃げの一択じゃね!って思っちゃいますよね?そこで私たち、サポート科にこんなもの作ってもらいました!!

 

超圧縮お―も―り―!

 

体重の約半分の重量を装着する!ハンデってやつさ!古典的だが、動きづらいし体力は削られる!あ ヤバ思ったより重・・・・・

ちなみにデザインはコンペで発目少女のが採用されたぞ。」

「・・・・・。」

 

 

『皆、位置に着いたね。それじゃあ今から雄英高1年期末試験を開始するよ!レディ――ゴォ!!』

「なっ!」

「言イ忘レテイタガ・・・我々教師陣モ諸君ラヲ・・・本気デ叩キ潰ス所存。」

 

 

「一佳ちゃん。とりあえず作戦通りで。」

「わかった。逃げを第一優先にして、次善で―――」

THOOOM!!!!!

 

「「!!!?」」

圧倒的。拳をふるう風圧だけで、ステージの端から中心(ここ)まで衝撃波が来るって・・・。

 

「町への被害などクソくらえだ。」

 

何だ・・・

 

「試験だ何だと考えていると痛い目見るぞ!」

 

何だ!

 

「私は(ヴィラン)だヒーローよ。」

 

何だ、この・・・

 

「真心こめてかかって来い!」

 

 

威圧感は!!!

「一佳ちゃん!!」

迫るオールマイトを目の前に、僕は水で一佳ちゃんを水で横道へ弾き飛ばした。が、直後

 

SMASH!!

オールマイトの一撃によって、僕は大きく吹っ飛んだ。

「ガハっ!!!」

重い。今まで受けたどんな攻撃よりも、一撃が重すぎる。

「どりゃああああ!!!」

弾き飛ばした一佳ちゃんがオールマイトに飛び掛かるが、顔面を掴まれ、投げ飛ばされた。

「・・・ッ!デュオ・リヴァイアインパクト!」

二対の水竜をオールマイトに放つが、一撃で粉砕された。

「その程度の攻撃じゃあ、私に傷一つ付けられないぞ!」

「・・・くっそ!!」

僕はできる限りの大洪水を発生させ、一佳ちゃんを持ち上げて退避した。

 

「フム、一時撤退か。悪くない!だが、いつまでも逃げられるわけではないぞ?」

 

 

一佳ちゃんを持ったまま、路地裏に避難してきた。

「はあ、はあ・・・。一佳ちゃん、大丈夫・・・?」

「うん・・・。私は大丈夫。それよりも水月の方が」

「僕は大丈夫。それよりも・・・どうしようか。」

「正直これ勝ち目無い気がするよ。逃げるのもあのスピード相手じゃ、どっちかが囮になったって逃げられないし、カフス掛けるって言っても、あんなの相手にどうやってかけるのよ。全然そんな隙ないし・・・。」

「・・・・・・一佳ちゃん、今なんて?」

「え?いやだから、全然隙無いって・・・。」

 

「いや、あるよ。オールマイトにカフスをかけられる隙が・・・。」




小大「・・・次回 物間がやらかす・・・。
さらに向こうへ・・・Plus Ultra。」


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No.31 試験ズ

 『骨抜・物間ペア 実技試験 開始。』

「物間、作戦とかあるか?」

「あるよ。とても単純。それゆえに強力な作戦がね。ただ、この作戦のメインは骨抜、お前だ。」

「俺?」

「ああ。詳しくはブラド先生を探しながらだ。行くぞ。」

ブラドキングを探しに走る骨抜と物間。

 

「で?なんで俺がメイン?」

「ああ。まず今回の試験、僕はそこまで貢献できない。なんせ個性のコピー元が2つに限られているからね。お前とブラド先生の2人。ブラド先生の個性をコピーすれば練度で負けるし、骨抜の柔化は、失礼だけど決定打に欠ける。」

「マジで失礼だな。事実だけど。」

「そういうわけだから、僕は今回『選択肢を増やす』っていう点に回る。ブラド先生の判断力をそいで、その隙にお前の柔化で足止め、カフスをかけて拘束が安定だと思うね。」

「・・・なるほどな。」

「ほうほう。いい作戦だな。」

「「!!!」」

後ろに飛び退く物間と骨抜。しかし

「だが、考慮し忘れていることがあるぞ。」

ブラドキングは即座に自らの血で物間と骨抜を拘束した。

「くっ!!」

「今回の(ヴィラン)は『ヒーロー側の個性を知っている』。」

「そっスか!!」

血を柔化で和らげ拘束を脱する骨抜の腹部に一撃を食らわせるブラドキング。

「カハッ・・・!」

「・・・ほう!やるな骨抜!」

骨抜は殴られると同時にブラドキングの腕の籠手を柔化した。

「物間!!」

「ああ!」

コピーしたブラドキングの個性を使い拘束を試みる物間。しかし

 

 

「発動しない・・・スカか!?」

「いや違う。」

ブラドキングが急接近して物間に強烈な一撃を食らわせ、大きく吹っ飛ばす。

「物間お前、(ヴィラン)、いやそれ以前に俺の個性をちゃんと知らないだろ。」

「ご冗談を!もちろん知ってますよ。『操血』、自分の血を操る個性!」

「どうやって血を出すんだ?」

「それは・・・・・・その・・・・・」

「『自分の血』を操る以上、何らかの方法で自分の血を体外に出さにゃならん。だから俺は自傷行為をせずに血を出せるこの籠手を装備しているんだ。いいか物間!!相手の個性をコピーできるということは、必然!その個性は相手の方が圧倒的に練度は上!その相手にいかにして勝つかを予想し!戦略を素早く練る!相手の個性でどのようなことができるか観察し、自らに生かす!!お前にはそれができる素質がある!お前ならできる!!」

「・・・・・・ブラド先生!!」

 

 

「話し終わりましたか?」

ガチャン

「「!!?」」

ブラドキングの足にカフスが掛けられた。

 

『骨抜・物間チーム 条件達成』

 

『報告だよ。最初に条件達成したチームは、骨抜・物間チーム!あとブラドは終わったら説教さね。』

「なんと!!?」

 

「なにをしたんだ?骨抜。」

「いやー、あんまりにブラド先生が話に夢中で隙だらけだったから、避けられる可能性を考慮して地面を柔化して潜って、そのまま近づいて足にガチャンしただけだよ。つかブラド先生、教育熱心なのはいいけど、油断しすぎ。」

「むぅ・・・、すまん。」

「あと物間さ。」

「なんだい骨抜。」

「時間なかったから言及しなかった俺も悪いけど、さすがにブラド先生の籠手の件は俺も知ってたってか、個性が自分の血を操るものならそういうアイテム使うってなんとなく想像つくだろ。」

「・・・ハハ。面目ないね。」

 

 

「チッ!!刻んでも刻んでもキリがねェ!」

「ん・・・。」

場面変わって鎌切・小大ペア。相手は根津校長。

「・・・逃げ場・・・なくなってきてる・・・。」

「マジか!!?」

小大の言う通り、校長は自らの個性“ハイスペック”を活用し、重機でビルを破壊、破壊されたビルが隣のビルを破壊し、連鎖的な破壊をおこし、出口への逃げ場が刻一刻となくなってきている。

 

「・・・こっち。」

「どっちがゴールかわかんのか!?」

「ん。なんとなく・・・。」

「ッシャァ!そうと分かれば、片っ端から刻むぜェ!!」

「ん。」

駆け出そうとする鎌切を制止する小大。

「なんだよ!これ刻みゃあいいんだろ!!?」

「ん、・・・・それじゃあ・・・ばれる。」

「バレるって・・・何がだよ。」

「・・・逃げ道。」

「あ―――・・・よくわからねえが、そこまで言うんならお前がどこ刻むか指示寄こせ!!」

「ん。」

その後は無口な小大とうるさい鎌切との意外なグッドコミュニケーションによって、なんとかゴールに到達し、試験をクリアした。

 

『鎌切・小大ペア 条件達成』

 

「やあお二人さん。試験クリアおめでとう!」

「ハハァ!!俺らにかかれば楽勝だぜぇ!!」

「ん。・・・質問。」

「なんだい?小大さん?」

「・・・先生の個性、・・・逃げる私たち・・・封殺できたはず・・・。」

「そうだね。今回の私は本気の2割も出していなかったから、君たちが逃げられたわけだね。」

「・・・なぜ・・・?」

「そうだね・・・。今回私が見ていたのは、君たちのコミュニケーションさ。もし迷路対決をするんであれば、それこそ雨宮くんや骨抜くんを組ませたさ。でも、失礼だが今回はコミュニケーションに難がありそうな君たちを組ませてコミュニケーションの如何を見させてもらったよ!結果は上々!古代さんの的確な指示に、鎌切くんはしっかり従った!よかったよ!」

「つまり俺らすげえってことだなぁ!」

「ん。」

 

 

 

『取蔭・黒色ペア 条件達成』

「難なくクリアしたな。正直もっと苦戦すると思っていたが、さすが推薦、といったところか。」

「まあ、黒色の援護がなきゃ割と危なかったですけどね。」

「いや、俺は・・・注意を引いただけだし・・・」

(ヴィラン)の注意を惹く、というのも重要な役割だぞ黒色。こと実践では特にな。」

「・・・・・・。」

 

「雨宮たちが心配か?」

「・・・はい。・・・って、え!?いや、なんで水月たちを・・・!!?」

「ブラドからお前たちは仲が良いと聞いているからな。まあ、無理もない。相手はあのオールマイトだからな。あの人にも俺と同じく体重の半分の錘がつけられているが、それでも俺があの人と戦えと言われたら断る。勝てるイメージが湧かないからな。そういう面では、雨宮たちには多少なり申し訳なさを感じている。」

「・・・勝ちますよ。水月と拳藤なら、きっと。」

「信頼しているんだな。」

「・・・はい。」

 

 

 

 

 

「水月、カフスをかけられる隙ってどういうこと!?オールマイトにそんな隙あるの!?」

「あるよ。けど、はっきり言って最終手段だ。これは第一優先にしてやると失敗する可能性がある。クリアが危うくなって僕らが疲弊したときの最終手段としてやる。一応説明しておくけど、僕としては最初と同じ逃げを取るべきだと思う。僕が足止めするから、一佳ちゃんがその隙に。」

「わかった。」

 

 

水月たちが逃げを選択すると予想し、ゴールに向かうオールマイト。

「どこ見てんのさ!!!」

その背後に現れた水月。

「背後だったか!」

「ブッ飛べ・・・デュオ・リヴァイアスパイラル!!!」

2匹の水竜が螺旋を描きながら地面を抉りオールマイトに迫る。

「そんな攻撃じゃあブっとばないな!DETROIT(デトロイト)・・・SMASH(スマッシュ)

オールマイトの一撃によって水竜が跡形もなく消し飛んだ。が、水月の姿はなかった。

「・・・いない!!」

「ここですよ。」

オールマイトが振り返った先には、全長20メートルほどの水の球があった。

「いくらオールマイトでも、この距離で食らったら・・・多少なり痛いでしょ。アクア・レーザー!!!」

水球から放たれた超高圧の水がオールマイトに直撃する。それも()()()()に。

「Oh・・・!!!」

「・・・あれ?思ったより効いてる・・・?」

その直後、水月は仰向けにぶっ倒された。

「!!?」

「かなり痛かったが、リタイアするほどじゃないね。それじゃあ君は少し厄介だし・・・眠ってもらおう!」

オールマイトは水月の腹部に拳で衝撃を与え、水月は白目を剥いた。

「よし!拳藤少女を追うか!」

 

ゴールゲート付近、水月を心配しつつ、着実に拳藤がゴールへと近づいていた。

「水月・・・大丈夫だよね・・・!!」

後ろを振り返ると、すぐ目の前にオールマイトが来ていた。

(!!水月は!!?いや、こうなったら・・・!)

拳藤はカフスを構え、オールマイトをしっかりと見据えた。

「・・・今!」

オールマイトの右手の一撃が来る直前に、左手に向けてカフスを掛けようとするが、拳藤の反応速度を超える一撃でカフスが粉砕される。

「嘘・・・!!?」

「さあ・・・終わりだヒーロー!!」

「・・・・ッ水月!!!」

 

拳藤の呼びかけを聞いて後ろを振り向くオールマイト。その目の前には、3匹の水竜を従えた水月がいた。

「早いな!!なんというタフネス!だが、安直すぎるんじゃあないか!?」

「安直でもこれがラストチャンスなんですよ!!」

 

拳を構えるオールマイト。そして、()()()()()()()()水月。彼の腕には、3匹が重なり合って一つになった水竜がいた。

 

 

DETROITSMASH(デトロイトスマッシュ)!!!」

「トリニティ・リヴァイアスマッシュ!!!!」

 

圧倒的パワーによって繰り出される一撃と、三体がひとつになった水竜をまとった拳の一撃

強大な衝撃波と風圧、水飛沫が飛び散る。

 

 

「・・・良い一撃だ。だがさっきも言ったようにその程度じゃ私を倒せはしないぞ?」

 

 

 

 

 

 

「いや、僕たちの・・・・勝ちですよ。」

 

 

「・・・・・Oh my goodness!!!まさか条件を()()()()クリアしちまうなんてな・・・!!!」

オールマイトが水月を振り返ると同時に再び駆けだし、衝撃波と風圧を追い風にゴールゲートを通過した拳藤。

そして、オールマイトの腕に掛けられたハンドカフス。

 

 

『雨宮・拳藤チーム 条件達成』




物間「次回 鉄哲がぶっ飛ぶ!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.32 むけろ一皮

 『雨宮・拳藤チーム 条件達成』

「やるじゃないか。お二人さん!」

「水月!」

ゴールゲートから水月の方へと拳藤が駆け寄った。

「やったよ水月!ねえ私たちクリアしたんだよ!」

「うむ!それも『二つとも』だ!」

「二つって・・・あ!確かにその腕のカフス!でもいったいいつ・・・。」

 

「・・・さっきだよ。」

息を切らしながら水月が言った。

「僕が言ってたオールマイトの隙、それは『攻撃の瞬間』。いくらオールマイトと言えど、攻撃のインパクトの瞬間に腕に何かされてもどうしようもないだろうからね。まあ、相手が生徒で体重の半分のカフスをつけてるってハンデありでやっとって感じだけど・・・。」

「それでも私の一撃に真っ向から立ち向かったことは称賛に値するさ!!」

「そうだよ!あのオールマイト相手にやってんだからさ!」

「そっか・・・それなら・・・よか・・・った・・・・・。」

 

「水月!?」

倒れ込む水月を拳藤が受け止めた。

「ちょっ大丈夫!!?」

「おそらくキャパシティを超えたんだろう。リカバリーガールの下に連れて行かねば。」

 

 

 

「・・・うん・・・?ここは?」

僕は目が覚めると 見知らぬ天井を見上げていた。

「あ、起きた!」

「ちょっと心配だったけど、だいじょぶそうだね。」

「・・・一佳ちゃん、おはよう。って、切奈ちゃんもいるの?」

「一応俺もいるんだけど。」

「あ、ごめん柔造ちゃん。で、みんな何してるの?」

ベッドから降りた僕の目の前には、一面モニターが並んでいた。

「ほかの皆の試験見てるとこ。だったけど・・・」

「だったけど?」

「今クリアできてないのが鉄哲と宍田のコンビだけなんだよね。」

「確か相手って・・・」

「近接タイプだと相性最悪のセメントス先生だ。」

「あ――・・・。確かに難しいね。」

 

 

 

「うおおおおおおおおおお!!!」

「鉄哲氏!このままではジリ貧ですぞ!!!」

セメントスの展開するセメントを真正面から破壊していこうとする鉄哲と、それを制止しようとする宍田。かれこれ20分間これが繰り返されている。

「クソッ!キリがねえ!どんだけ生えてくんだよ!!!」

そのとき、ついに鉄哲のスティールが解け、素の拳でコンクリートを殴ってしまった。

「ッッッ!!!!痛ってぇ――――!!!!」

「マズいですなァ・・・!!」

「消耗戦に極端に弱い。 いいかい、戦闘ってのは、いかに自分の得意を押し付けるかだよ。」

 

 

「こうなったら・・・鉄哲氏!」

「・・・!?なんだよ宍田!!」

「スティールはあとどのくらいできそうですか!?」

「・・・正直あと5分ぐれぇが限界だ!!」

「それだけあれば十分!いいですか鉄哲氏!!今からあることをします!鉄哲氏は何があってもスティールを解かないで維持するのですぞ!!」

「なんだかわからねぇが、わかったぜ!どんとこい!!!」

その言葉を聞くと、宍田は鉄哲をひょいと持ち上げた。

「行きますぞォーー・・・・・スティールロケット!!!!!

宍田は鉄哲をセメントスに向かって全力で投擲した。とっさにセメントの壁を展開するセメントスだが、“ビースト”の全力をもって投擲された鉄哲は、セメントの壁をぶち抜いてセメントスに衝突した。

「ぬぅおッ!!!」

「今ですぞ!!」

宍田の呼びかけに答え、鉄哲がカフスをセメントスに掛けた。

『鉄哲・宍田ペア 条件達成』

 

「驚いたよ。まさか鉄哲君を投げ飛ばしてくるとはね。」

「しかし、セメントス先生のおっしゃっていらした『自分の得意を押し付ける』ということはあまりできませんでした。私の個性をそのまま押し付けるのではおそらく勝てないだろうと感じ、鉄哲氏の得意である『硬さ』を押し付けた形になってしまいますが・・・。」

「ああ、私は『いかに自分の得意を押し付けるか』とはいたけど、はっきり言ってこれは状況によって二転三転するものだよ。私の個性だって、都市圏ではかなり得意の押し付けができるけど、地方、特に自然豊かな場所では何もできないからね。

自分だけでなく、他者の得意を押し付けるために力を尽くす、というのも大事なことだよ。」

「なるほど・・・素晴らしい考えですな!!!」

「あんまちゃんとはわからねえが、とにかく協力は大事ってことか!!」

「まあ、そういう事だね。」

 

『これで全組が条件達成。期末試験、これにて終了だよ。お疲れ様。』

 

 

一歩進んだ者 新たな課題にぶつかった者

 

悲喜交々の中、期末実技試験が終了する一方

 

ヒーロー殺しの意思を受け 奴らが三度 動き出そうとしていた

 

 

とあるビル内 バーにて、死柄木弔は、一枚の写真を見ていた。

 

「死柄木さん。()()()じゃ連日アンタらの話題で持ちきりだぜ。なんかでけえこと始めるんじゃねェかって」

 

「で そいつらは?」

写真を崩壊させる死柄木。その視線の先には、ツギハギ顔の青年と、高校生らしき少女がいた。

「生で見ると気色悪ィなあ・・・。」

「うわぁ手の人。ステ様の仲間だよねぇ!?ねえ!?私も入れてよ!(ヴィラン)連合!」

 

退ける度に 力を増して

 

 

 

「いやぁ疲れたな。」

「まさか先生方ガチでくるとはな。」

「そいや骨抜、お前らの相手ブラキン先生だけど何があったんだ?リカバリーガールが説教って・・・。」

「あー、まあ、端的に言うと生徒相手に超油断してた。」

「・・・なるほど。ブラキン先生の場合、それは無い、とは言い切れないな。」

「予鈴が鳴ったぞ!席に着け!」

ドアを開けたブラキン先生の一括で、僕らは席に着いた。

 

「えー、今回の期末試験、みんなよく頑張った!!

 

 

 

 

だが、残念ながら赤点が出た!」

ざわざわする教室。そりゃそうだ。気づいてる人も何人かいるけど、この期末実技試験、何を隠そう採点基準が一切明かされていないのである。

つまり、条件達成、とは言われたけど、試験をクリアした、とは一言も言われていない。自分が落ちている可能性もあるのだ。

 

 

 

「よって、林間合宿に行けないものは―――――――

 

 

 

 

 

 

 

いません!!全員行くぞ!!!!

 

 

 

「「「「マジかあああああ!!!!!」」」」

 

 

 

「今回の期末、筆記、実技共に物間のみ赤点だ!」

「マジかよ物間・・・。」

「骨抜、あんた物間に教えてたんじゃないの?」

「ああ、ちゃんとビシバシやったよ。ただ、こいつマジで勉強ができなさすぎる。普段の頭の良さとはかけ離れてんだよ。」

「物間ァ!お前はやればできると信じている!!だからこそこの林間合宿でお前は人一倍頑張らねばならない!

あと林間合宿は実技面の強化。お前は筆記も赤点だから、林間合宿までの間、補修地獄となる!覚悟しておけよ。」

「ブラキン先生、物間の魂がもぬけの殻です。」

旋ちゃんの言う通り、寧人ちゃんはすっかり魂の抜けきった顔をしてる。

「・・・あとでもう一度言うとしよう。」

 

「何はともあれ、全員林間合宿に行けてよかったな。」

「一週間の強化合宿ってなると、結構な大荷物じゃね?」

「そういえば僕水着持ってなかった・・・買わないと。」

「それならさ、明日休みだし、B組みんなで買い物行かない?」

「一佳ちゃん名案!何気にそういうのなかったもんね!」

「なんかワクワクしてきたな。」

「よし、明日はみんなで買い物だ!」

 

 

 

「というわけでやってきました!

県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端!木椰区ショッピングモール!

体が毛でふっさふさのあなたも!鱗が乾燥しがちなあなたも!きっとみつかるオンリーワン!」

「これ誰がしゃべってんだ?」

 

「あ、あれ雄英1年生じゃね!?体育祭ウェーイ!!」

「相変わらずの認知度だな。」

「俺アウトドア用の靴ねえわ。」

「私も新しいbagが欲しいデース!」

「目的ばらけてっし、時間決めて自由行動にしようぜ。」

「賛成。」

 

「水月、アンタ何買うの?」

「アウトドア用の服一式と靴、あと水着かな。」

「水着かぁ。ビキニ?それともワンピース?」

「なんで僕が女性用の水着着る前提なの・・・。」

「取蔭、水月はスク水派なんだよ。」

「一佳ちゃんなに言ってんの・・・。そんなに僕に女性用の水着着せたいの?」

「まあ」

「正直」

「「見てみたい」」

「変なとこでハモんないでよ・・・。僕もう行くよ。」

「あごめんちょい待ち。ちょっと水月に付き合ってほしいんだけどさ。」

「・・・仕方ないなあ・・・。」




鉄哲「次回 水月の水着だああああああ!!
さらに向こうへ Plus Ultra!」

鉄哲の予告通り、次回は水着回となります。やったね。


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No.33 エンカウンター

 「で、付き合ってほしいとは言われたけどさ・・・

 

なぜ水着選びに!!?」

「いいじゃん。水月自己紹介の時にオシャレ好きって言ってたし。今こそその時でしょ。」

「そーそー。それに、お願いすれば髪型もやってくれるって言ってたしね。」

「オシャレが好きとは言ったけどさ、水着は専門外だよ。僕が何とか出来るのは普通のファッションだけで・・・。」

「細かいことはいいからさ!ほら、これとかどう?」

 

更衣室のカーテンを開けた取蔭はオフショルダービキニを着ていた。

「っい、いいんじゃない・・・////?」

「・・・ふ~ん?ところでさぁ・・・水月、なんで顔赤くなってんの?」

「いやそれは、その、目のやり場に困るっていうか・・・」

「ちょーっと困るな~。似合ってるかちゃんと確かめてもらわないと困るんだしさぁ・・・。ほら。ちゃんと見なって。」

「ちょっ、近い////」

「え~いっつもこのくらいの距離感じゃ~ん。」

「・・・どういう・・・状況・・・。」

ぐいぐいと詰める取蔭と縮こまる水月。これまで見たことがないシチュエーションにたまたまいた小大が困惑の声を漏らす。

「?あぁこれ?今水月に水着を見繕ってもらってるの。唯もやってもらわない?」

「・・・・・・ん。」

「まじかよ・・・。」

水月が漏らした言葉にどのような意図があったのか、そんなものなど露知らずその後も続々とB組の女子は集まり、どういうわけかB組女子水着披露会のようなものになっていた。

 

「―――おわっ!?水月お前どうなってんだ!?」

「柔造ちゃん・・・!!」

たまたま通りかかった骨抜に駆け寄る水月。

「何があったんだよ。」

「それが・・・。」

 

 

「・・・なるほどな。つまりお前はみんなの水着を見るのが恥ずかしいと。なんか意外だな。そういうの慣れてるイメージだったわ。」

「僕はあくまで普通の服は得意だけど、水着はなんか・・・いけないモノを見ているような・・・感じがして。」

「うーん・・・お前の場合それは致命的になるから後々治すべきとして、どうするかな・・・。」

数秒の思案、そして

 

「あ。そうだな。」

「なにかいい案が!?」

 

 

「お前さ、水着としてみるからそうなってるんだよ。アレを普通の服として、ちょっと露出が多めの服としてみればいいんじゃね?」

「いやそんなことできるわけ」

 

恐る恐る女子の方を振り返る水月

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――あ、なんか大丈夫っぽい。」

「マジかよ。」

提案しといてなんだけど、上手くいくのかよ。と思う骨抜であった。

 

「ちょっと待ってて。情報収集する。」

そういってスマホをポチポチする水月。数分後・・・

 

 

「よし、もう大丈夫。

 

まず切奈ちゃん!切奈ちゃんはオフショルダービキニよりハイネックビキニの方が体のラインとらしさが出て自然になる。

 

一佳ちゃん!一佳ちゃんは逆にオフショルダービキニでデコルテラインを出して普段とのギャップを演出するといい感じ。

 

唯ちゃんはワンピース水着!それが一番王道で似合うと思う。

 

ポニーちゃんはビキニがいいね!フレッシュな感じがよりよく出てくる。

 

希乃子ちゃんはフリルビキニだね!普段の私服と系統が似ているから一番合う。

 

茨ちゃんはハイネックワンピースだね!体のラインを崩さずにカワイさが出てくる。

 

最後にレイ子ちゃん!モノキニで普段とのギャップを出すと破壊力抜群だよ!」

 

と、いうわけで、B組女子全員の水着が決まった。

 

「ふぅー。やりきったー・・。」

「お疲れ水月。次はアンタの番だね。」

「へ?」

「だってアタシたちの水着決めたんだから、次はアタシたちが水月の水着を決める番でしょ?」

「なんかちょっとワクワクしてきた。」

「面白いの着せるノコ!」

「骨抜、水月を捕まえといて。」

「へいへい。」

逃げようとする水月を骨抜が取り押さえた。

「柔造ちゃん!何すんだよぉ!裏切り者!!」

「悪いな水月。俺もちょっとお前の水着見てみたい。」

「僕の水着ったって、サーフパンツかスパッツタイプくらいしか種類無いでしょ!?」

「いや、アイツらの口ぶりからして、女性用水着着せるっぽいぞ。」

「・・・うそでしょ?」

「ま、たまにはいいんじゃね?」

抵抗むなしく、水月は女子たちの選ぶ水着を次々着せられた。

 

 

 

「というわけで、第一回『水月の水着を選ぼうコンテスト』最優秀賞は・・・

 

 

唯の選んだ『オフショルダー』に決定~!!」

「いやーまさか『ビキニスカートをつける』って選択肢があるとはねー。」

「でも正直、女性用水着来てても何の違和感もないとか超ウラメしい。」

「どこからどう見ても女の子にしか見えないノコ!」

「そろそろ終わりにしてやんねえか?水月完全に爆発してるぞ。」

骨抜の言う通り、水月は頭から煙を出してうずくまっていた。

 

「ごめん水月、悪かったって。」

「・・・もう、お婿に行けない・・・。」

「水月なら大丈夫だよ。多分。」

 

 

その後、同じくショッピングモールに来ていたデクちゃんが死柄木と接触、捜査のため、一時閉鎖となり、僕らはその場を後にした。

 

 

 

「・・・とまあ、そんなことがあって、(ヴィラン)の動きを警戒し、例年使わせていただいてる合宿先を急遽キャンセルし、行き先は当日まで明かさない運びとなった!」

「「「ええ――――!!!?」」」

「もう親に言っちゃったよ。」

「だからこそ、ですな。どこから情報が洩れるかわかりませんし。」

「合宿自体をキャンセルしねぇの英断すぎだろ!!」

 

 

こうして

 

あまりに濃密だった前期は 幕を閉じ

 

夏休み 林間合宿 当日!!




水月「次回 一佳ちゃんナイス!
さらに向こうへ Plus Ultra!」

これで期末試験編は終了となります。
次回から林間合宿編です。ここから水月の物語が加速し、彼の“個性”の秘密が明かされていきます。


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夏の林間合宿編
No.34 ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ


 「え?A組補修いるの!?つまり赤点取った人がいるってこと!?ええ!?おかしくない!?おかしくない!?A組はB組よりずっと優秀なハズなのにぃ!?あれれれれれぇ!!?」

「寧人ちゃんってもしかして何かしらの疾病に罹患してたりするのかな・・・。」

もうよくわかんないメンタリティの寧人ちゃんを一佳ちゃんが手刀でダウンさせた。ナイス。

「物間、怖。」

「まあ体育祭じゃなんやかんやあったけど、よろしくねA組。」

「ん。」

 

「デクちゃん、期末でかっちゃんと一緒にオールマイトと戦ったんだってね。お疲れさま。」

「あ、うん。ありがとう。っていうか、水月くんもオールマイトと戦ったんだよね。お互い大変だったね。」

「オールマイト、手加減してたとはいえおっそろしい威力だったよねぇ。今までで一番重かったよ。」

「A組のバスはこっちだ!席順に並びたまえ!」

「あ、僕行かなきゃ。」

「いってらっしゃい。」

「水月、アタシらも行くよ。」

「うん。」

 

 

「一時間後に一回止まるぞ!そのあとはしばらく」

「音楽かけろよ!夏っぽいやつ!スポだスポ!」

「夏っつったらT.M.だろ。」

「プリッツくれない?」

「扇風『き』。」

「き、き、君が『よ』。」

「君が代ってwww渋っ!!」

「何分くらいかかんだ?」

 

 

 

「・・・・・・。」

「どしたの水月?テンション低いじゃん。」

「あ、いや、ちょっとね。何でもないよ。」

 

 

昨日

 

 

「水月。ちょっといいか?」

「なに父さん?」

「俺の部屋に来てくれ。」

「?うん。わかった。」

 

 

「で、なんか用?」

「聞くのが遅れてしまったが、水月。体育祭の決勝戦、そして職場体験でも使ってたっていう“水竜”・・・」

「ああ、あれね。」

「あれは、()()()()()()()()んだ?」

「え、どうやってって・・・」

「言い方を変えよう。あれは、お前の“水”で作ったのか?」

「・・・そういわれると、なんか、あの水竜はいつも使ってる水とはなんか、こう、感覚が違ってたんだよね。」

「感覚が違う、というのは?」

「うーん・・・言い方が難しいっていうか、信じてもらえるかわかんないんだけど、なんだろう・・・()()()()()使()()()()()みたいな・・・。」

「・・・そうか、わかった。もう大丈夫だ。」

 

 

 

「―――っと!ちょっと水月!大丈夫?」

「――っえ?あ、ごめん切奈ちゃん。ボーっとしてたみたい。」

「しっかりしなよ。これから合宿だっていうのに。」

「合宿、そうだ・・・せっかく選んだ水着が無駄に・・・。」

「合宿終わった後に海とか行けばいいでしょ。」

「・・・それもそうだね。」

 

 

一時間後

 

「休憩だ!」

「―――あれ?ここパーキングじゃない・・・?」

「え、A組のバス先行っちゃってたけど。」

「合宿は合宿でも、()()()合宿だからな。」

「ようブラド!」

「ご無沙汰です!!」

「きらめく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「ワイルド・ワイルド・プッシ―キャッツ!!」」

 

「今回お世話になるプッシ―キャッツの皆さんだ!」

「プッシ―キャッツ・・・お姉ちゃんの上司がコスチュームをデザインしたプロヒーローチーム!」

「あら、キミのお姉さん、奏の部下なのね。」

「はい。僕が4歳の時にお姉ちゃんがプッシ―キャッツのコスチュームをカワイイ!ってたくさん言ってました。」

「うれしいこと言ってくれるじゃない!」

「あれ?水月って今年で16だよな。」

「うん。だからキャリアは12年くらい」

「心は18!」

「ぼフ」

「・・・心は?」

「・・・18」

「ここら一帯は私らの所有地なの。あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね。」

「「「遠っ!!?」」」

 

「なんでこんな中途半端なところで・・・。」

「いや、まさかな・・・。」

「よし、バス戻ろうぜ。」

「今はA.M.9:20。早ければ12:30くらいかしらん?」

「Get away!Hurry up!!」

「12時半までにたどり着けなかったキティはお昼抜きね。」

僕はとっさに水を展開し、繭のようにB組全員を覆った。

 

「悪いな皆。合宿はもう、始まっているのだ!」

 

ピクシーボブが地面に触れると、地面が、土が隆起して波のように水月たちを押し出した。

 

「私有地につき“個性”の使用は自由だよ!今から3時間!自分の足で施設までおいでませ!

 

この、“魔獣の森”を抜けて!」

 

水の繭に覆われていたおかげで、B組の面々は特に土まみれになるなどもなかった。

 

 

 

ただし

 

「―――痛っったい・・・。」

 

 

焦って水の繭に入れ忘れてた()()()()を除いて。

 

 

「ちょ、水月大丈夫!?なんで水に入ってないの!?」

「焦って入り忘れてた。」

「バカなの・・・?」

 

「てか、魔獣の森って・・・」

「ドラクエめいた地名だな。」

「雄英こういうの多すぎだろ。」

「仕方ないですぞ。早く施設に行かねば・・・。」

 

その時、前方から()()が出て来た。

「「マジュウだァァ―――!!!?」」

 

 

「しかし無茶苦茶なスケジュールだねブラド。」

「仕方ないですよ。通常2年前期から習得予定のモノを、前倒しで取らせるつもりの合宿なんでどうやっても無茶にはなります!

 

緊急時における“個性”行使の限定許可証、ヒーロー活動認可資格、その“仮免”。

(ヴィラン)が活性化し始めた今、1年生(かれら)にも、自衛の術が必要だ。」

 

魔獣は、水月の水の弾丸に貫かれ、粉々に砕け散った。




拳藤「次回 ピクシーボブは焦ってる?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.35 地獄?の林間合宿

 「あの魔獣を瞬殺かよ!すげえな水月!」

「いや、まだだよ。」

水月の言う通り、四方八方から魔獣の唸り声や羽ばたく音が聞こえてくる。

「おいおい・・・一体何匹いやがんだ!?」

「どうする?逃げるノコ?」

「いや、12時までに施設着かなきゃ昼飯抜きだ・・・逃げてちゃ間に合わねえ。」

「なら、ここ突破して、最短ルートで施設目指すっきゃないね!」

「「「ああ!」」」

 

「柔造ちゃん、フォーメーションを考えてくれる?」

「りょーかい。つか、もう考えてある。

鉄哲、庄田、回原、宍田、鎌切、拳藤は前線で魔獣の迎撃とメイン火力。

水月、取蔭、黒色、物間は索敵、物間は取蔭の個性をコピーしろ。

ほかの奴らは背後からの魔獣の対応と前線のサポート。俺もそっちだ。全員良いか?」

皆思い思いの返事をした。

 

「あと水月!」

「なに?」

「お前は索敵と同時に、危ない奴のサポートと、デカい魔獣の対処を頼みたい。いけるか?」

「おっけー。任せといて!」

こうして僕たちの魔獣の森進撃が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

P.M.5:30

 

 

「―――お、やーっと来たにゃんね。」

「ずいぶん遅かったね~。」

ピクシーボブの視線の先には、ボロボロに疲弊しきったB組の面々がいた。

ある者は全身ずぶぬれ、ある者は拳がボロボロ、ある者は皮膚がガサガサと、それぞれが個性の酷使によってボロボロの状態だった。

 

 

「とりあえず、お昼は抜くまでもなかったわね。」

「・・・何が『三時間』ですか・・・。」

「腹減った・・・死ぬ。」

「悪いね。私たちならって意味。アレ。」

「実力差自慢のためかよ・・・。」

「ねこねこねこ・・・でも正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。いいよ君ら・・・特に」

ピクシーボブは僕を指さした。

「そこのポニテの君。躊躇の無さは()()()によるものかしらん?

三年後が楽しみ!ツバつけとこ――!!」

そういってピクシーボブは僕に近づきつばを吹きかけて来た。

「うわ、ちょ・・・!」

「マンダレイ・・・あれは・・・。」

「ああ、彼女適齢期的なアレでちょっと焦ってるの。」

 

「まあとにかく、お前ら!よく頑張ったな!バスから荷物を降ろして部屋に運んだら、食堂で夕食だ!その後は入浴して就寝!本格的な訓練は明日からだ!ゆっくり休め!」

 

 

 

「いただきます!」

部屋に荷物を運んだ後、食堂でみんなと夕食を取り囲んだ。

「女子部屋普通の広さなんだね。」

「男子部屋って大部屋なんだっけ?」

「遊びに行ってもオーケイデスか?」

「いいよ。おいで。」

「肉魚野菜・・・いくらでも食えるな!」

「うまい!うまい!うまい!」

「鉄哲うるせえな。でも確かにこれうめえ!」

鉄哲の背後を土鍋を持ったピクシーボブが通り過ぎる。

「土鍋・・・土鍋ですか!?」

「うん。ってか君A組の子と全く同じ反応するね。仲いいの?」

 

 

 

夕食 のち 入浴

 

 

 

「ッハァー・・・。やっぱ温泉って良いもんだなー・・・。」

「ああ。一日の疲れが取れてくぜ~・・・。」

「お前ら爺臭いな。」

「ですがお二人の意見も最もですぞぉ~。」

「宍田が濡れネズミみたいになってら。」

 

「・・・あれ?水月いなくね?」

「ちょっと遅ぇな。」

「おまたせー。」

男子たちがその声の主の方を振り向くと、みな目を見開いた。

そこには、水色の髪をまとめた、美しい顔立ちをした人が立っていた。

 

 

「ごめんねー。髪結うのにちょっと時間がー・・・?みんな何唖然としてるの?」

「・・・えっっとー・・・あの、ここ、男湯、です・・・よ?」

「・・・?なに言ってるの硬成ちゃん。僕だよ。水月。」

「「「ええ!!?」」」

驚愕の声が男湯に響いた。

「えっ、あ、水月!?」

「マジかよ・・・普通に女の人が来たかと思ってめっちゃ焦った・・・。」

「なんで?」

「いやだって、その・・・髪がさ、ほら。」

「・・・?ああ、そういうことね。確かにいつもは三つ編みポニテにしてるし、髪型違うしね。」

そう言って湯船につかる水月。

「しかしあれだな。こうして湯船につかってんの見ると、マジで女子にしか見えないなお前。」

「・・・旋ちゃんのエッチ。」

「いやっちが、そういう意味で言ったんじゃ・・・!」

「もー、冗談だよ。わかってるって。」

 

 

 

 

一方 壁一枚隔てた女湯

「・・・ねえ、気になんない?」

「まあ、ちょっとね。」

「何がデスか?」

「角取、たぶん水月のこと。」

「Oh!となると、あれデスか。ジャパニーズ・NOZOKI!デスか!?」

「ちょっ角取!声デカイ!」

「Oops・・・sory.」

「で、結局やっちゃうの?覗き。」

「・・・1っっっっっ回、だけ、やってみる?」

「・・・まあ、ちょっとやってみたくはある。」

「私もちょっと興味あるノコ。」

「じゃあ、こうしよう。アタシの眼を上に飛ばして、大丈夫そうだったら角取の角で持ち上げて一人ずつ、で。」

「オッケー。」

よくわからない緊張と高揚に飲まれ、B組女子たちは男湯の覗きというわけのわからない行動をとり始めた。

 

“トカゲのしっぽ切り”で切り離した目を壁の上に移動させ、覗いても大丈夫かを確認する取蔭。

「ど、どう?大丈夫そう?」

「あ・・・、うん。・・・!!?」

突如目を見開き、壁の上に移動させていた目を戻した取蔭。

「どうしたの取蔭!?」

「・・・やっばい。」

「え?」

「いや、消去法的にあれが水月何だろうけど、マジでやばい。」

「どうやばいの?」

「いいから、早く角取、角!」

「わ、ワカリマシタ・・・!」

促されるとおりに“角砲(ホーンホウ)”で女子たちを壁の上に運ぶ角取。

「「「!!?」」」

 

その後は女子たちが「やばい」とばかり呟いて、林間合宿1日目は幕を閉じた。




ピクシーボブ「次回 雨宮くんが暴走!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」

今回の男湯覗き作戦は、この話を執筆している最中に思いついたので今までで一番ライブ感で書きました。おかげで私にも訳が分からんことになってます。
「やばい」って便利な言葉ですね。


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No.36 二日目

 「うぁ・・・」

「ふあ~・・・。」

欠伸をする旋ちゃんと切奈ちゃん。それもそのハズ。ただ今の時刻は早朝5時30分。健全な高校生はまだお休み中の時間である。

「“個性”を伸ばす!?」

寝ぼけてガクリと倒れかけていた希乃子ちゃんを支えて、一佳ちゃんが言った。

「A組はもうやってる。早くいくぞ。」

 

「前期はA組がいろいろ目立ってたが、後期は我々B組の番だ!いいか?A組ではなく我々だ!」

(先生・・・!!不甲斐ない教え子ですまねぇ・・・!!)

「突然“個性”を伸ばすと言っても・・・20名20通りの“個性”があるし・・・何をどう伸ばすのかわかんないんスけど・・・」

「具体性が欲しいな・・・。」

 

「筋繊維は、酷使することにより壊れ、強く、太くなる。“個性”も同じだ。使い続ければ強くなり、でなければ衰える!

すなわち、やるべきことはひとつ!

 

限界突破!!

 

 

そこはもう、爆破やら炎やらテープやら出しまくり殴り合い阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

 

「なんだこの地獄絵図・・・!!」

「もはやかわいがりですな。」

「許容上限のある発動型は上限の底上げ。

異形型・その他複合型は“個性”に由来する器官・部位のさらなる鍛錬。

通常であれば、肉体の成長に合わせて行うが・・・」

「まァ時間がないんでな。B組も早くしろ。」

飛竜ちゃんの魂が抜けてる。

「でも私たちも入ると40人だよ。そんな人数の“個性”を、たった6名で管理できるの?」

「だから彼女らだ。」

「そうなのあちきら四位一体(よんみいったい)!」

 

 

煌めく眼でロックオン!!

猫の手手助けやってくる!!

どこからともなくやってくる・・・。

キュートにキャットにスティンガー!!

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」」」

(フルver.)

 

「クソがァ!!」

 

「あちきの“個性”『サーチ』!この目で見た人の情報100人までまるわかり!居場所も弱点も!」

「私の『土流』で各々の鍛錬に見合う場を形成!」

「そして私の『テレパス』で一度に複数の人間にアドバイス!」

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ・・・!」

(色々ダメだろ・・・。)

「クソがァ!!」

 

「単純な増強型の者!我の下に来い!

我ーズブートキャンプはもう始まっているぞ。」

(古)

そこには一心不乱に体を動かすデクちゃんがいた。

「さァいまだ撃って来い。」

「はっ!5%デトロイト・スマッシュ!!」

デクちゃんの一撃を体を柔軟にそらせて虎が避けた。

「よぉしまだまだキレキレじゃないか!ぬぅん!」

「ぎゃっ!!」

逆に虎の猫パンチでデクちゃんが吹っ飛ばされた。

「筋繊維が千切れてない証拠だよ!」

「イエッサ!」

「声が小さい!!」

「イエッサァ!!」

(ノリ怖ぇ!)

「プルスウルトラだろォ!?しろよ!ウルトラ!」

「イエッサァ!!!」

(あの人だけ性別もジャンルも違うんだよなぁ・・・。)

 

 

「雄英も忙しい。ヒーロー科1年だけに人員を割くことは難しい。」

「この4名の実績と広域カバ―が可能な“個性”は、短期で全体の底上げをするのに最も合理的だ。」

「A組に後れを取るな!B組、行くぞ!」

「「「はい!!」」」

そんなわけで、地獄の林間合宿が幕を開けた。

 

 

 

 

「ああああああああ!!!」

「くっ・・・!これはなかなか!!」

「キシャアアアアアアアアアアア!!!」

鉄哲徹鐵 切島と共に尾白に尻尾で打ってもらい、個性強度を高める特訓

 

庄田二連撃 尾白と共に切島・鉄哲を攻撃し、個性の威力を向上させる特訓

 

鎌切尖 尾白、庄田と共に切島・鉄哲を刃鋭で攻撃し、強度と鋭さを増す特訓

 

「っ!!これは・・・。」

物間寧人 複数の個性をコピーして素早く切り替え、瞬時の判断力と対応力、個性出力を伸ばす特訓

 

「うおおおおおおおお!!!」

鱗飛竜 鱗を生成したそばから射出し、生成速度と射出速度を伸ばす特訓

 

「あああああああああああ!!!」

「バン!ガン!ドカン!ゴーン!!」

円場硬成 肺活量を鍛え凝固速度と硬度を向上させる特訓

 

吹出漫我 同じく肺活量を鍛え、より大きな擬音を出す特訓

 

「おららららららああ!!」

拳藤一佳 大拳で壁を殴り、強度と威力を上げる特訓

 

「ぬうううっ・・・!!」

「はぁっ・・はぁっ・・・。」

骨抜柔造 柔化と解除を素早く行い、柔化スピードの向上と範囲を広げる特訓

 

塩崎茨 ツルを素早く伸ばし、生成速度と操作性を上げる特訓

 

 

「うおおおおおお!!!!」

泡瀬洋雪 素早く溶接を繰り返し、完了までのスピードを上げる特訓

 

「ノコぉ・・・・・。」

「んん・・・・・!!」

小森希乃子 胞子を放出する量とスピードを上げる特訓。

 

小大唯 物の大きさを素早く変化させ上限と速度を伸ばす特訓

 

「Oooooohhh・・・・!」

「ふんっ・・・っ!はぁっ、はぁっ!」

角取ポニー 角を生やす速度を上げる特訓

 

取蔭切奈 切り離す部位を徐々に増やす特訓

 

「・・・・っ!」

「はぁっ、はぁっ・・・。」

黒色支配 溶け込める黒の明度を上げる特訓

 

柳レイ子 個性で操る速度を伸ばす特訓

 

「よぉし!伸ばせ千切れヘボ個性を!!」

「「イエッサァ!!!」」

宍田獣郎太・回原旋 単純な増強型個性のため虎ーズブートキャンプに参加

 

 

 

「・・・・・・・。」

 

雨宮水月 水を次々と生成し、操作許容量上限と生成速度を上げると同時に、水竜を操りより精密な操作ができるようにする特訓

 

 

 

 

響き渡る騒音と 阿鼻叫喚の悲鳴 その中で雨宮水月は いつの間にか無意識の内側にいた。

 

 

 

暗い 深い 無意識の世界に

 

 

「―――あれ?ここは?」

気が付くと、そこはプッシ―キャッツの私有地の森ではなく、真っ暗な場所だった。

 

「お――い!誰か――!誰かいな――い!!?」

 

自分の声がこだまするだけで、何も帰ってはこなかった。

 

 

 

「・・・ん?あれって・・・」

水月の視線の先にあったのは、水の球に覆われた、真っ黒い()()()だった。

 

「これって・・・」

水月がその水の球に触れると、水の中にあった黒い()()()が突然吹き出て、水月の体を覆いつくした。

 

「!!?」

抵抗しようともがくが、それもむなしく水月の意識は黒い()()()に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

ラグドールが異変を感じたのは、雨宮水月の“個性”が突然()()()()()()()時だ。

「にゃ!?マンダレイ!大変にゃ!」

「っどうしたのラグドール!?」

「雨宮くんの“個性”が()()()()にゃ!!」

「そんな・・!!っ!!」

 

『イレイザー!ブラドキング!緊急事態!ラグドールが雨宮くんの“個性”が見えないって!』

「「!!?」」

 

きづいたときには もうおそかった

 

 

水月の操っていた水が突如竜巻のように荒れ狂い、水竜も暴れ出した。

 

「イレイザー!!」

「・・・ッ!ダメだブラド!水が邪魔で水月(あいつ)自身が見え―――ッ!」

水月の個性を「抹消」しようとしたイレイザーの気配を察知したのか、水月の後方にいたにも拘らずピンポイントで水竜が襲って来た。

 

「チッ!」

捕縛布で対処しようとするイレイザーだが、水竜は体が水でできているため、何の意味もなさなかった。

 

「虎!ほかの生徒を避難させるよ!」

「相分かった!」

イレイザーとブラドが足止めしている間、プッシ―キャッツが生徒を避難させた。

「何があったの!?水月!!!」

「はやく!避難して!」

 

 

「操血」で水月を拘束しようとするブラドだが、凝固する前に水に溶かされてしまい拘束に失敗。ピクシーボブが土を操作し水月を覆いつくそうとするも、水の壁に押し返され、土がバラバラになってしまった。

 

「クソッ!どうする・・・!」

 

「俺に聞くなブラド!とにかくこうなれば応援を呼ぶしかない!マンダレイ!」

 

「了解!すぐに援護要請を―――」

 

 

 

 

 

 

≪たすけて≫

 

 

 

 




水月「次回 僕の“個性”の話だ。
さらに向こうへ Plus Ultra。」


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No.37 お前の“個性”の話だ

 荒れ狂う水と水竜、それを鎮めようと奮闘するブラドとイレイザーだが、拘束や抹消をしようとしたタイミングで不自然に防がれる。まるで、攻撃がそこからくるとわかっているかのように。

 

「くっ・・・!どうなってやがる。」

イレイザーヘッドの個性「抹消」は直接相手を視認しなければ発動しない。視認しようとした瞬間や、あえて発動をずらそうとしてもことごとく水の壁で遮られる。

「おいイレイザー!まだ消せないのか!?」

「消そうとしてる!だが不自然に視界が遮られるんだよ!」

 

イレイザーがブラドに怒号を上げた直後、二匹の水竜が彼めがけて突っ込んできた。   が

 

 

 

「―――――リヴァイアインパクト」

 

一匹の水竜がそれを防いだ。

 

「―――アンタ、何故此処に」

「話は後だ。イレイザー、俺が水竜を退ける。お前はその隙を狙え。」

突如現れた水竜ヒーロー・リヴァイアサンはそう言うと水月の放った水竜を自らの水竜でいなし、イレイザーはその隙を狙って水月を視認した。

 

「―――――ッ・・・・・。」

個性を抹消された水月は空中から落下し、ブラドがそれを受け止めた。

「おい水月!しっかりしろ!ここが分かるか!?」

「―――うん・・あれ、ブラド先生?なんで・・・僕、寝て・・ましたか?」

「・・・何があったか、覚えてないのか・・・?」

「・・・何があったんですか?」

 

 

その後安全確認ののち、A・B組ともに個性伸ばし訓練が再開された。ただし、イレイザー、ブラド、リヴァイアサンと共にいる水月を除いて。

 

 

「水月、どこまで覚えている?」

「えっと確か・・・特訓の最中に、気づいたら真っ暗な場所にいて、周りを見てたら、水の球の中に黒いモヤのようなものを見つけて、それに触れた途端黒いモヤが僕を覆いつくしてきて・・・そこからの記憶はあいまいです。」

「・・・そうか・・・。」

「・・・あ、でも、1回だけ、明確に意識を持ってやれたことはあります。」

「何をやったんだ?」

 

「―――『たすけて』って言いました。」

 

「―――なるほど、合点がいった。」

「どういうことですか、リヴァイアサン。」

 

「・・・それを話すためには、まず、水月の“個性”について説明する必要がある。」

「水月の“個性”・・・?」

 

 

 

 

「水月の個性が発現したのは、こいつが4歳の時だ。なにもないところから水を出したから、病院に連れて行ったら、『水』という個性だった。おそらく俺の『水竜』が昇華された個性だろうということだとみんな思った。

 

だが、違和感に気づいたのは、あの体育祭の時だ。」

「体育祭・・・?」

「体育祭決勝戦、水月が爆豪という生徒に撃ったあのリヴァイアインパクト・・・。

初めて見たときは俺へのリスペクトのようなものだと思ってうれしかった。だが改めて見返したとき、初見じゃ気付けなかったある違和感に気づいた。それは、水竜の動きが生物的すぎるという点だ。」

「生物的、というと。」

「水月が準決勝と決勝で見せたあの鮫は、水月自身が動かしているのが分かりやすかった。余計な動きが少ないからな。だが、水竜の方は細かい余計な動作が端々に見受けられた。決勝の、あんな場面でそんな動きを水月がさせるとは思えない。それに、その余計な動きは、()()()()()()()と酷似していた。」

「要領を得ませんね。簡潔に話していただけませんか?」

 

「―――水月の水竜は、『俺の個性』で生み出していると考えられる。」

「・・・はい?」

 

あまりに唐突な発言、はっきり言って僕も信じられ・・・・・る。そう、信じられてしまうんだ。僕があの水竜を生み出すたびにひそかに抱いていた違和感、その正体は、もしかしたら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう一つ、簡潔に言おう。

 

 

 

 

水月はおそらく個性を()()持っている。」

 

 

 

「「!!?」」

 

 

水月が抱いていた違和感は、これで明かされた―――――

 

 

「ちょっと待ってください。雄英に提出された個性届では、雨宮の個性は『水』のみのはずです。もし個性が2つあるのだとしたら、その証拠を見せていただかないと。」

「証拠はまだない。というより、用意する時間がなかった。なぜなら、俺がこの考えに至ったのがつい昨晩だからだ。

 

水月が水以外の個性を使うような場面を見たことがなかったもので、その発想自体がこれまでなかった。

 

12年前に個性を診察してもらったのは小さな病院、もしかしたら漏れがあったのかもしれない、そう思って今週末水月を大学付属病院に連れて行こうと考えていた。

 

そしたらつい十数分前、突然脳内に水月の声が響いた。≪たすけて≫と。その声のする方向に直行したら、あの場面だったというわけだ。」

 

「なるほど・・・。して、その過程がもし正しいとして、水月の持つもう一つの個性とは一体・・・?」

 

「これは俺の想像だが、水月の『水』が俺から遺伝した個性だとすれば、もう一つの個性は、おそらく『個性再現』だと思われる。」

 

「個性・・・再現?」

 

「俺の妻の個性だ。妻に聞いた限りでは、『遺伝子に宿る「個性」を再現』できる個性らしい。ただ、自分と強いつながりを持つ人の個性でないと使えないとかなんとか言っていた。その証拠に、妻の卯月も父親の個性『信号(シグナル)』しか再現できなかったらしいからな。脳内に響いた水月の声に即反応できたのも、それが卯月から発信されてくる『信号(シグナル)』と同じ感覚だったからだ。」

 

「複合型個性、という可能性は?」

 

「恐らくないだろう。複合型なら、不自然なほど今までの水月の人生で個性再現を使われていないからな。おそらく、水竜も俺の個性を再現して生み出したものだろう。ただ、今まで全く使っていなかった個性を許容範囲を大幅にオーバーした出力で発動したから、終わった後にぶっ倒れたんだろうがな。」

 

 

「しかし、それならどうするか・・・。」

 

「・・・二つの個性、どちらも伸ばすしかないだろ。」

 

「とりあえず、この合宿中は『水』と『個性再現』、どちらの個性も伸ばす、という方針でいいか、水月?」

 

 

「・・・はい。」

 

「プッシ―キャッツには俺から説明しておく。“個性”のことをほかの生徒たちに聞かれた場合の判断はお前に任せて大丈夫か?」

 

「わかりました。」

 

「よし、なら訓練に戻るぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

――――――わけではない。水月自身も知らない、自身に隠された秘密は、未だ明かされていない。




水月「次回 寧人ちゃん良かったね。
さらに向こうへ Plus Ultra!」

水月の個性について
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=275960&uid=315039



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No.38 The beginning of a nightmare

 個性の暴走を起こした僕を待っていたのは、当然の如く、質問責めだった。

「水月さっきの何だったの!?」

「大丈夫なのか水月くん!怪我はないのか!?」

「さっきのあれ、とんでもねえ威力だったな。」

「ブラド先生たちとなに話してたの!?」

 

「あ、うん、ちょっと待って。まずその前に

 

 

 

ごめんなさい。」

僕はみんなに深々と土下座した。

 

「僕が暴走を起こしたせいで、皆さんの特訓の時間を奪ってしまいました。ごめんなさい」

 

 

「顔上げろよ水月!」

徹鐵ちゃんが僕の肩を持ち上げて来た。

「誰も怪我した奴いなかったんだ!それでいいじゃねえか!!」

「そーだぜ!もしかしたらお前以外にも暴走する奴いるかもしれねえからな!そういう事が起こるかもって知れたんだし!」

鋭児郎ちゃんに続き、ほかの皆も次々僕に励ましの言葉を贈ってくれた。

「みんな・・・ありがとう。迷惑かけたのに、逆に励ましてくれて。」

「困ったときはお互い様だろ!!気にすんなって!」

「もう気は済んだか?いつまでも感傷に浸っていられるのは非常に合理性に欠ける。さっさと各々の特訓に戻れ。」

「「「はい!!」」」

イレイザーの呼びかけで皆それぞれの特訓に戻っていった。

 

「水月。」

1人を除いて。

 

 

「・・・切奈ちゃん。」

「説明してよ。何があったの?」

「・・・今はちょっと話せない。夜になったらできる範囲で話すよ。」

「わかった。絶対話してよ。」

そう言い残して、切奈ちゃんは特訓に戻っていった。

 

 

「僕も特訓に戻ろっか。」

 

 

 

 

「昨日言ったわね『世話焼くのは今日まで』って!!」

「己で喰う飯は己で作れ。ほれ。お前ら若者が好きなカレーだ。」

「「「い、イエッサ・・・。」」」

「ウフフ。全員もうグッタリね。でも雑なカレー作っちゃダメよ?」

 

「きちいけど、みんなでカレー作るってのも楽しそうだよな。」

「確かにそうだな。たまにはいいか。」

「よぉーし皆!最高のカレー作ろうぜ!」

「「「おー!!!」」」

 

 

 

「水月ー。水ちょうだい。」

「?いいけど、汲みに行かないの?」

「だって鍋に水入れたら運ぶの大変じゃん。すでに体ヤバイのに。」

「確かに。」

僕は納得させられ、鍋の中に水を生みだした。

「おぇマジ!?水月こっちにも頼むわ!」

「こっちにもおねがーい!」

結局全員の鍋に入れることになった。

 

 

「はぁ、やっと終わった。」

「―――水月、野菜切るの終わっ・・・!!?え!?ちょ、なにやってんの!?」

「え、何って、野菜切ってるんだよ。そりゃみんなの鍋に水入れて遅くなっちゃったけど」

「いやそうじゃなくて、なんで水で包丁持ってんの!!?」

一佳ちゃんの言う通り、僕は水で包丁を持って野菜を切っていた。

 

「ああ、これ?この量の水なら手よりも精密に動かせるし、怪我の心配もないから。」

「あぁ、そういうアレなんだ。」

 

 

 

「「「いただきまーす!」」」

「うめえ!」

「店のと比べるとあれだけど、みんなで作ったってのも相まってうめ――!!」

「Very delicious!」

「なんか前喰った同じカレーよりも気持ちルーがうまい気する。」

「皆の“個性”を活用したからじゃないかな?」

「あーそれあるかも!」

 

 

 

「水月、ちょっと時間ある?」

「うん。約束通り話すよ。」

僕と切奈ちゃんは夕食後、とある木陰に来ていた。

 

 

「で、昼間の暴走って結局、何が原因だったの?」

「・・・直接的な原因はわからないけど、心当たりがある原因が一つあって・・・。」

「その心当たりは何なの?」

「驚くなって言うほうが無理な気がするけど・・・その、端的に言うと、

 

僕、個性が2つあったんだ。」

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

「僕の昼間の暴走の原因は、その2つ目の個性に原因があるって思ってる。」

「え、いやいや、ちょっと待って、その・・・個性が2つ?」

「うん。」

「――――――マジぃ・・・?」

「たぶんマジ。」

「え、個性『水』って言ってたよね?」

「うん。ただ、父さんが言ったことが確かなら、僕の“個性”の診断をしたのが小さな病院だったらしくて、もしかしたら漏れがあったんじゃないかって・・・。

それで、その2つ目の個性の方が、たぶん母さんから遺伝した『個性再現』って個性みたいでさ・・・。」

「・・・まぁ、とにかくその『個性再現』が何かしらのきっかけで暴走しちゃったってわけね。」

「・・・もういいの?」

「んー・・・あんま理解が追いつかないけど、今んとこはこれで納得してあげる。」

「ごめんね。ちゃんとしたことがまだわからないから、教えられることも少ないんだ。」

「いいよ。アンタも大変な思いしてるだろうし。それに、まずはこの合宿を乗り越えないと。」

「・・・そうだね。ありがとう切奈ちゃん。おかげで元気出て来たよ。」

「・・・・・ホント、そういうとこだよ。」

 

 

 

3日目 続・個性を伸ばす訓練!!

「補習組、動き止まってるぞ。」

「オッス・・・!」

「すいません、ちょっと・・・眠くて。」

「昨日の“補習”が・・・。」

通常の就寝時間は22:00。だけど、補習組の就寝時間は2:00。しかも起床時間は通常と同じ7:00。

「だから言ったろキツイって。」

確かにこれはキツイ・・・。

 

一方こっちもこっちで・・・

「物間!休むなァ!動きが止まってるぞ!」

「すみません・・・ただ、やっぱり2:00就寝はキツくてですね・・・。」

「お前の期末における気のゆるみと分析の甘さが招いた結果だ!しっかり受け止めろ!!」

「は、はい・・・。」

 

「気を抜くなよ。みんなもダラダラやるな。

何をやるにも原点を常に意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。

 

何のために汗かいて、何のためにこうしてグチグチ言われるか、常に頭に置いとけ。」

 

 

僕の原点・・・・・。

 

 

『――――水月は水月はいろんな人を笑顔にする、最高のヒーローになってね!』

 

 

 

そうだ。こんなところで躓いていられない。最高のヒーローになるんだよ・・・。そのために今ここにいる・・・!

 

 

 

「ねこねこねこ・・・それより皆!今日の晩はねぇ・・・クラス対抗肝試しを決行するよ!

しっかり鍛錬した後はしっかい楽しいことがある!ザ!アメとムチ!」

 

 

「ああ・・・忘れてた!」

「怖いのまじヤダぁ・・・。」

「闇の饗宴・・・。」

「イベントらしいこともやってくれんだ。」

「対抗ってところが気に入った・・・。」

「というわけで、今は全力で励むのだぁ!」

「「「イエッサァ!!!」」」

 

 

 

「さて、

腹も膨れた!皿も洗った!お次は―――」

「肝を試す時間だ―――!!」

「その前に

 

大変心苦しいが、補習連中は・・・

 

 

 

これから俺と補習授業だ。」

 

「ウソだろ!!?」

 

 

あぁ・・・、さっき寧人ちゃんがブラド先生に連れてかれてたのはそういう・・・。

 

「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたので()()()を削る。」

「「「うわあああああ堪忍してくれえ試させてくれえええええ!!!」」」

あゝ無念・・・君たちの分まで肝試してくるから・・・。

 

 

 

「はいというわけで、脅かす側先行はB組。A組は二人一組で3分置きに出発。ルートの真ん中に名前を書いたお札があるからそれを持って帰ること!それじゃあB組の皆は各自持ち場について!」

 

そんなこんなで僕はラグドールがいる中間地点の手前で待機することになった。ラグドール曰く『雨宮くんはわかりやすく出てきてほしいにゃ!そうすればあちきが飛び出てくるなんて思わにゃいでしょ!?』らしいけど、そんなんで驚くような人って相当なビビりもいいとこじゃない?

 

 

 

と思っていたけど、これが案外効くのなんの。僕が髪を解いて貞子スタイルでわぁーっ!ってやってちょいビビるかビビらないくらいで油断してるところにラグドールが飛び出してくるのはけっこう強かった。なんとあのかっちゃんと焦凍ちゃんすらビビったんだから。「「おっ」」だってぷぷぷ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ

 

 

 

突然後ろから、鈍い音がした。その直後、ドサッ、と何かが倒れるような音がした。

 

 

「―――ラグドール・・・?」

 

 

 

恐る恐るラグドールの方へ歩み寄った。そして見てしまった。

 

 

 

後頭部を何かで殴打され、血だまりの中うつぶせで倒れているラグドールを。

 

 

そして、その背後に浮かぶ・・・あぁ、忘れもしない。USJ襲撃事件で僕たちを覆いつくした・・・

 

 

黒いモヤ状のゲート・・・(ヴィラン)連合の黒霧―――

 

 

 

僕は即座に水でラグドールの後頭部以外を包み、僕の方へ引き寄せた。

 

そして、叫んだ。力の限りに。

 

 

 

 

 

(ヴィラン)だあああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

ヒーロー社会を揺るがす大事件 その序章が 始まった




物間「次回 サスガボクラノブラドセンセー!
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.39 狼煙

 「カッカッカ。小大、お前の脅かし、今んとこ全員ビクッてなってんぞ。」

「体張るねぇ唯!」

「ん!」

「爆豪と轟超ウケたな―!」

 

 

 

『『お』』

 

 

「って!!」

「てかちょっとさ・・・さっきから微妙に焦げ臭くない?」

「あ―――?そういえば急に煙っぽいのが・・・。爆豪たちビビって個性ぶっぱなしちまったんじゃ・・・・・・」

突然骨抜が倒れる。

「骨抜!?―――っ!!唯!!吸っちゃダメこの煙―――有毒!!」

「ん!?」

小大の上半身を大拳で握る拳藤。

 

 

(ヴィラン)だあああああああああああああ!!!!」

「水月!?」

遠くで水月の声が響いた。

 

(ヴィラン)の襲撃?何がどうなって・・・いや、今は骨抜と唯を避難させないと・・・!」

 

 

「飼いネコちゃんは邪魔ね。」

「なんで・・・ばんぜんを期したハズじゃあ・・・!!何で・・・なんで(ヴィラン)がいるんだよォ!!!」

 

 

「さァ 始まりだ。地に堕とせ。

 

(ヴィラン)連合“開闢行動隊(かいびゃくこうどうたい)”。」

 

 

「迂闊でしたね。まさかすぐ近くに生徒がいたとは・・・。」

黒霧は呟きながら、僕の方へモヤを伸ばし始めた。僕は一気に上空へ上がり、周囲を見渡した。

「まさかこんなところに(ヴィラン)連合が・・・何あれ?」

視線の先には、燃え盛る火と、森を覆うガスがあった。

「一体・・・何が起きてるの・・・?」

 

 

「あうう・・・私たちも肝試ししたかったぁ・・・。」

「アメとムチっつったじゃん!!アメは!?」

「サルミアッキでもいい・・・アメをください先生・・・」

「サルミアッキうまいだろ。

 

今回の補習では非常時の立ち回り方を叩き込む。周りから後れを取ったっつう自覚を持たねえとどんどん差ァ開いてくぞ。広義の意味じゃこれもアメだ。ハッカ味の。」

「ハッカはうまいですよ・・・。」

 

 

「あれぇおかしいなあ!?優秀なハズのA組から赤点が5人も!!?

B組は1人だけだったのに!?おっかしいなァ!!!」

 

「どういうメンタルしてんだおまえ!!」

 

「昨日も全く同じ煽りしてたぞ・・・。」

「心境を知りたい。」

「ブラド、今回は演習入れたいんだが。」

「俺も思ってたぜ。言われるまでもなく!」

 

≪皆!!!≫

 

突如脳内に響くマンダレイの声。

 

「マンダレイの『テレパス』だ。」

「これ好き―――ビクッてする。」

「交信できるわけじゃないからちょい困るよな」

「静かに。」

 

(ヴィラン)二名襲来!ほかにも複数いる可能性アリ!動けるものは直ちに施設へ!会敵しても決して交戦せず撤退を!!≫

「は・・・?なんで(ヴィラン)が―――・・・?」

「ブラド、ここ頼んだ。俺は生徒の保護に出る!」

 

「バレないんじゃなかった!!?」

部屋を駆け出て施設の外に向かうイレイザーヘッド。

(考えたくないな・・・!)

「!・・マズいな」

外に出たイレイザーヘッドを待っていたのは、燃え盛る森と異臭。そして―――――

 

「心配が先に立ったかイレイザーヘッド。」

「―――――ブラド

 

叫び終わるよりも早く、イレイザーはその男―――荼毘が放ってきた蒼炎に包まれた。

 

 

「邪魔はよしてくれよプロヒーロー。用があるのはお前らじゃない。」

 

 

マンダレイの言っていた(ヴィラン)二名は、突如現れピクシーボブを襲い、彼女を地に伏せていた。

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!我ら(ヴィラン)連合開闢行動隊(かいびゃくこうどうたい)!!」

(ヴィラン)連合・・・!?なんでここに・・・!!」

「この子の頭潰しちゃおうかしら?ねえどう思う?」

「させぬわ このっ・・・!!」

「待て待て早まるなマグ姉!虎もだ落ち着け。

 

生殺与奪は全て、ステインの仰る意志に沿うか否か!!」

「ステイン・・・!()()()()()連中か・・・!」

「そして アァそう!俺は そうお前、君だよ()()()()!保須市にてステインの終焉を招いた人物、申し遅れた。俺はスピナー。

彼の夢を紡ぐ者だ。」

そう言ってスピナーはベルトやチェーンで巻き纏められた何本もの刃物からなる大剣を取り出した。

「わっ・・・!」

「何でもいいがなあ貴様ら・・・!」

 

 

「その倒れてる女・・・ピクシーボブは最近婚期を気にし始めててなあ、女の幸せ掴もうって・・・いい年して頑張ってたんだよ。

 

 

そんな女の顔キズモノにして 男がヘラヘラ語ってんじゃあないよ

 

「ヒーローが人並みの幸せを夢見るか!!」

「虎!!『指示』は出した!ほかの生徒の安否はラグドールに任せよう!私らは2人でここを抑える!

 

皆行って!いい!?決して戦闘はしないこと!委員長!引率!」

「承知しました!行こう!!」

「・・・飯田くん先行ってて。」

「緑谷くん!?何を言ってる!?」

「緑谷!!」

「マンダレイ!!僕、()()()()()!!」

 

 

 

「ゴホッ・・・」

拳藤はガスが漂う森の中を、骨抜を背負った小大を大拳で覆いながら移動していた。

「拳藤!」

「鉄哲!茨!何そのマスク!?」

塩崎を抱える鉄哲、二人ともガスマスクを着けていた。

「A組の八百万が近くにいて創ってもらった!泡瀬がB組らの待機位置を教えて救助に当たってる!ガスマスク(これ)使え!沢山もらった!」

「ありがと!早く施設に戻ろう!(ヴィラン)がどこにいるかもわからないし危ない・・・。」

「いや!俺は戦う。塩崎や小大の保護頼む。」

「は!?交戦じゃダメだって・・・。」

「お前はいつも物間を(たしな)めるが・・・心のどこかで感じてなかったか!?A組との差・・・俺ァ感じてたよ・・・!同じ試験で雄英入って同じカリキュラム。何が違う?明白だ!奴らにあって俺たちになかったもの・・・ピンチに立ち向かう精神だ!USJでもそうだった!

 

奴らはピンチ(そいつ)をチャンスに変えていったんだ!当然だ!人に仇為す連中にヒーローがどうして背を向けられる!!

止めるな拳藤!1年B組ヒーロー科!ここで立たねばいつ立てる!見つけ出して必ず俺がぶっ叩く!」

「・・・・・・。」

 

 

数分前 相澤・荼毘接触直後

 

「・・・まァ、プロだもんな。」

荼毘の炎に包まれたはずのイレイザーは、炎を回避しており、玄関の屋根にいた。

炎を放とうとする荼毘。しかし

「出ねえよ。」

イレイザーはすでに荼毘を視て個性を抹消しており、捕縛布を伸ばして荼毘を拘束して引き寄せ、そのまま顔面に膝蹴りし、うつぶせに組み伏せた。

「目的・人数・配置を言え。」

「なんで?」

疑問の直後、イレイザーは荼毘の左腕を折った。

「―――っ!!」

「こうなるからだよ。次は右腕だ。合理的に行こう。()()()()()()()護送が面倒だ。」

「焦ってんのかよイレイザー?」

荼毘が炎を放とうとすると、前言通りイレイザーが右腕を折った。

それと同時に、森の方で爆発音とともに火災が起きた。

「!何だ・・・。」

「先生!!!」

「!」

森の方から飯田達A組の数人がやってきた。と、そちらに気を取られた隙に荼毘がイレイザーを払いのけ、体勢を立て直した。

(ダメージが・・・そろそろ()()()()・・・。)

「さすがに雄英の教師を務めるだけはあるよ。なあヒーロー。生徒が大事か?」

再び荼毘を引き寄せようと捕縛布を引くイレイザー。しかし捕縛布は、荼毘の体を通り抜けた。まるで、荼毘の体が急激に脆くなったかのように。

「!?」

(さっきの発火が“個性”じゃないのか!?)

「守りきれるといいな・・・・・・また会おうぜ。」

そう言い残すと荼毘の体はドロドロに崩れてなくなった。

 

「先生、今のは・・・!?」

「・・・中入っとけ。すぐ戻る。」

 

 

 

「あ――――ダメだ荼毘!!お前!やられた!弱!!ザコかよ!!!」

「もうか・・・弱いな俺。」

ハァン!?バカ言え!!結論を急ぐな、お前は強いさ!この場合はプロがさすがに強かったと考えるべきだ。」

「もう一回()()()()()トゥワイス。プロの足止めは必要だ。」

「ザコが何度やっても同じだっつの!!任せろ!!」

 

 

 

「もう・・・すぐそこだ。」

「おい!あれ!」

「先生!!」

 

森の中を移動していたイレイザーを呼び止めたのは、マンダレイの従甥・出水洸太を背負う緑谷だった。

「緑・・・」

自分を呼び止めた緑谷の姿を見るや、イレイザーは顔をしかめた。

目の前にいる緑谷の両腕はボロボロ、満身創痍の状態だった。

「先生!よかった!大変なんです!伝えなきゃいけないことがたくさんあるんです・・・けど」

「おい」

「とりあえず、僕マンダレイに伝えなきゃいけないことがあって・・・洸太くんをお願いします!水の“個性”です。絶対に守ってください!」

「おいって・・・」

「お願いします!」

「待て緑谷!!!」

洸太を引き渡すや否や再び駆けだそうとする緑谷をイレイザーが引き留めた。

 

「その怪我、またやりやがったな・・・。」

「あっ・・・いや、でも「だから」」

 

「彼女に()()伝えろ。」

 

 

「あーんもう近い!アイテム拾わせて!!」

(此奴、我のキャットコンバットを読んだ動きを・・・!!)

「しつこっ・・・」

「い・・・のはお前だニセ者!とっととシュクセーされちまっ」

飛び上がって切りかかるスピナー。しかし彼の大剣は、突如やってきた緑谷の飛び蹴りで破壊された。

「えぇ!?」

「マンダレイ!!洸太くん無事です!!」

「君・・・」

「い゛っ!!!っ!!!相澤先生からの伝言です!テレパスで伝えて!!」

 

 

(あの言い草は完全に生徒がターゲット・・・ならやむを得ないだろう、生存率の話だ!自衛の術を―――!後で処分受けんのは―――俺だけでいい)

 

 

 

 

 

「A組B組総員―――

 

プロヒーロー・イレイザーヘッドの名に於いて

 

戦闘を許可する!!!」

 

 

 

(こんな訳もわからんままやられるなよ、卵ども!)




ブラドキング「次回 鉄哲!拳藤!よくやった!
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.40 ブチ込む鉄拳!!!

 混乱渦巻く森の中を、緑谷から託された出水洸太を抱えながらイレイザーが走っていた。

(緑谷にすぐ戻るよう伝え忘れた・・・マズイな ホウレンソウのホの字も無ぇ・・・今あの負傷で動いてられんのはエンドルフィンドバドバ状態だからだ、目的達成しちまったら落ち着いちまって動けなくなるぞ。)

「おじさん・・・あいつ大丈夫かな・・・」

「うん?」

 

「僕・・・アイツの事殴ったんだ・・・なのに・・・!あんなボロボロになって助けてくれたんだよ・・・!僕まだごめんも・・・ありがとうも・・・言えてないんだよ!あいつ大丈夫かな・・・!!」

「・・・大丈夫。アイツも死ぬつもりなんかないからボロボロなんだろう。―――でも大人(おれ)はそれを叱らなきゃいけない。

 

だからこの騒動が終わったら、言ってあげてくれ。できれば、ありがとうの方に力を込めて。

 

 

(いいんだねイレイザー?)

≪A組B組総員―――戦闘を許可する!!≫

「伝達ありがと!でも!すぐ戻りな!その怪我!尋常じゃない!!」

 

「いやっ・・・すいません!まだ!もう一つ・・・伝えてください!

 

 

(ヴィラン)の狙い、少なくともその一つ―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水月くんが狙われてる!!テレパスお願いします!!

 

 

「水月・・・雨宮くんの事!?待ちなさいちょっと!」

 

「やだこの子・・・本ト殺しといたほうがいい!」

森へ駆ける緑谷に接近しようとするマグネだが

「手を出すなマグ姉!」

「!?」

スピナーがナイフを投げ、マグネを牽制した。追手がなくなった緑谷はそのまま森へ入っていった。

「ちょっと何やってんの!?優先殺害リストにあった子よ!?」

「そりゃ死柄木個人の意思」

「スピナー!何しに来たのよアンタ!!」

 

「あのガキはステインがお救いした人間!つまり英雄を背負うに足る人物なのだ!俺はその遺志にシタガ!!

「やっとイイの入った!」

会話に夢中になっていたスピナーにマンダレイが蹴りを食らわせた。

(仕方ないー--とりあえず伝えなくっちゃ・・・!)

 

(ヴィラン)の狙いの一つ判明―――!!生徒の「雨宮水月」くん!!≫

「雨宮?」

「水月が!?」

「水月・・・!!」

≪分かった!?雨宮くん!!雨宮くんはなるべく戦闘を避けて!!単独では動かないこと!!≫

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

 

「聞いたか拳藤!?ブン殴り許可が出た!」

「待てって鉄哲!お前わかってんの!?このガス・・・それに水月が」

やべえ・・・・・ってんだろ?俺もバカじゃねえ。」

バカ!!

 

マンダレイ、ガスの事触れてなかった。つまり、広場から目視できるところには広がってない。変なんだよ。このガスは一定方向にゆっくり流れてる。フツー拡散してくだろ?留まってんだよ。

で、見ろよ。さっきいた場所よりここのが少しガスが濃くなってる。」

「つまり・・・・・・なんだ?」

「発生源を中心に渦を巻いてると思う。台風的なさ。つまり、その中心にガスを出してて且つ『操作』できる奴がいるってことにならない!?」

 

「拳藤おめェ・・・やべえな!!」

「だろうと思って私だけついてきたんだよ・・・も~・・・。

で!中心に向かうほどガスの濃度も上がるなら時間も問題だ。ガスマスクのフィルターにも限度があって、濃度が濃いほど機能する時間も短くなる。つまり―――」

 

「濃い方に全力で走って!全力でブン殴る!!!だな!!」

「んん・・・まァそうだけど・・・。」

(なんちう単細胞っぷり。・・・でも―――)

「塩崎やクラスの皆がこのガスで苦しい目に遭ってんだよ!嫌なんだよ!腹立つんだよ!!こういうの!頑張るぞ!!拳藤!!!」

 

「うん!」

(嫌いじゃないよ。そういうとこ!)

 

 

 

ガスの渦巻きの中心に、その少年はいた。

 

「・・・・・・」

学生服にガスマスクを装備したその少年―――(ヴィラン)名・マスタードは、徐に胸ポケットに右手を突っ込んだ。

(まっすぐこっちに向かってるのが3・・・2人かな?やっぱ気づくやつも切り抜ける奴もいるんだね。さすがは名門校だよなあ・・・)

 

「でも哀しいね。どれだけ優秀な“個性”があっても」「―――ぃぃぃいいい

いいいいいたあああああ!!!!!」

 

「人間なんだよね。」

マスタードが懐から取り出した拳銃から放たれた銃弾は鉄哲に命中した・・・が、鉄哲は「スティール」を発動し銃弾を弾いた。

「ああいたね。硬くなる奴・・・銃効かないか―――・・・まあでも関係ないよ。このガスの中、どれだけ息を止めていられるかって話になるからね。」

銃弾は鉄哲自身を傷つけるには至らなかったが、彼のガスマスクを破壊するには十分な威力だった。

 

(拳銃とかマジかよ・・・!!しかもマスクを狙い撃ち・・・しかもなんだこのチビ!学ラン・・・!?同年(タメ)か年下くらいじゃねえか!?ナメやがって!!!)

「んぬお!!!」

「ターミネーターごっこ?」

鉄哲の突進は再び放たれた銃弾によって止められた。

「硬化とはいえ突進とか勘弁してよ。名門校でしょ?高学歴でしょ?考えてくんない?じゃないと・・・殺りがいない。」

マスタードの左側から出てきた拳藤に向けて、銃弾が撃たれたが、直前に察知した鉄哲がすんでのところで弾いた。

 

「鉄哲!!」

「ダメだ・・・退いてろ・・・!!」

「アッハハハハハ!!2対1で一人は身を隠して不意打ち狙いね!?アハハハ!!浅っ あっさいよ底が。

このガスはさァ、僕から出て僕が操ってる!!君の動きが()()()として直接僕に伝わるんだよ!つまり筒抜けなんだって!!

何でそういうの考えらんないかなぁ・・・雄英生でしょ?夢見させてよ・・・それだからこんな襲撃許しちゃうんだよ・・・」

 

「鉄哲・・・血が・・・」

「・・・・・!!んむあああ!!」

「バッ ちょ待っ・・・」

「バァカ。」

突進した鉄哲のこめかみに銃弾が撃ち込まれる。

 

「さっきより柔らかくなってない?金属の疲労的なやつ?息も続かなくなってきた?踏んばりきいてないね?硬度は踏んばり如何?

 

硬化やらの単純な奴らって得てして体力勝負的なとこあるもんねぇ。そういうの考えず突っ走るってさあ。」

「てッ・・・!!」

「ねえ・・・君らは将来ヒーローになるんだろ・・・?僕、おかしいと思うんだよね・・・君みたいな単細胞がさァ!学歴だけで!チヤホヤされる世の中って!!正しくないよねェ!!」

まくしたてられ、次々と撃たれ、しまいには蹴り飛ばされ、鉄哲の体力と「硬化」は限界に近づいていた。

 

(っべぇ・・・息が!息っ!!眼ぇ・・・!っべぇ・・・色消える・・・!!)

鉄哲の視界はだんだんぼんやりしてきた。

 

「鉄哲!!」

飛び出してきた拳藤だが、動きを察知しているマスタードに避けられる。

「だからその挙動も全部筒抜けだって」

しかしその直後、拳藤は「大拳」を発動し、マスタードを殴った。

「っだ」

「動きだけわかっても意味ねえんだよ!!」

「そんなしょぼい個性でドヤ顔されてもなぁ!!」

マスタードはよろけながらガスの中に逃げ込んだ。しかし

「しょぼいかどうかは、使い方次第だ!!」

拳藤は大拳を大うちわのように使い、ガスを飛ばした。

 

(ガスが飛ぶ・・・!なんてパワーしてんだあの手!!!)

「バカはお前だ学ラン。拳銃なんか持ってよ、そりゃ喧嘩に自信がないって言ってんのと同じだよ。」

「っこの・・・!?」

拳藤に向けて構えた拳銃は、上空から放たれた水の弾丸によって弾き飛ばされた。

(水!?いや、それより・・・ガスが薄くなったせいで()()()()――――)

マスタードは背後から接近する鉄哲に気づかなかった。

 

「なにより雄英の単細胞ってのはな、普通『もうダメだ』って思うようなとこを―――」

 

ん゛ん゛っ!!!

 

「更に一歩超えてくるんだよ。」

 

 

鉄哲渾身の一撃によってマスタードのガスマスクは破壊され、彼自身も完全にノックアウトされた。

それによって、マスタードの個性が解除され、ガスが霧散していった。

「!ガスが霧散していく・・・。」

「ガス使いがハァーーーガスマスクッしてりゃ そら――――っ壊すわな、馬鹿が・・・!!

俺らのっハアァ・・・合宿潰した罪、償ってもらうぜ、ガキンちょ・・・。」

 

「鉄哲ナイス・・・ってかそれより、さっきの水―――」

 

「二人とも大丈夫!?ケガはない!?」

「水月!!」

水月は空中から降りて来た。

「水月あんた狙われてるって・・・ってかその人ラグドール!?頭怪我してる・・・!!」

「一佳ちゃん、ラグドールをお願い。こっちの道をまっすぐ行けば合宿施設に着けるから。じゃ。」

「ちょっとまって!!」

拳藤の呼びかけよりも先に、鉄哲が水月の足を掴んだ。

「オイ水月ぃ・・・ハァ、お前、狙われてんだろ!?だったら、ハァッ・・・俺らと一緒に行った方がいいだろ!なあ!?」

「鉄哲・・・。」

 

「悪いけど、僕は徹鐵ちゃんたちと一緒には行けない。やるべきことがある。」

「やるべきこと?」

 

「今この場所(もり)で一番自由に動けて、(ヴィラン)の注意を引き付けられるのは僕だ。だからほかの(ヴィラン)の注意がみんなに行かないようにして且つ、逃げ遅れてる皆を救助しなきゃいけない。だから行くよ。」

それだけ言うと、水月は急上昇していった。

「水月!!」

「クソッ!拳藤!追いかけるぞ!!」

「・・・いや、空中で移動できない私たちがついてくとかえって足手まといになる。それに水月は私たちより強い。だから水月に任せるしかない。私たちは早く施設に行こう。」

「―――っ分かった・・・!!」

 

 

 

 

数分前

 

 

(何だ今の音・・・銃声!?みんなどうなってる・・・!?水月くんはどこだ!?早く探さないと・・・)

森を駆けまわる緑谷の下に、黒影(ダークシャドウ)の手が迫ってきた。

「!?」

しかし、激戦後の痛みで体が反応できず、避けられなかった。

「っあ・・・!!」

しかし・・・

 

「障子くん!?」

避けられなかった緑谷を障子が助けていた。

「その体・・・もはや動いていい体じゃないな・・・友を助けたい一心か。あきれた男だ・・・。」

「今のって・・・」

「ああ。(ヴィラン)に奇襲をかけられ()()()()()・・・しかしそれが、奴が必死で抑えていた“個性”のトリガーとなってしまった・・・。ここを通りたければまずこれをどうにかせねばならん。」

 

 

障子、緑谷の視線の先には、荒れ狂う黒影(ダークシャドウ)に吞み込まれながらも必死に抑えようともがく常闇の姿があった。

「俺からッ・・・離れろ・・・死ぬぞ!!」

「常闇くん!!」




鉄哲「次回 常闇ヤベエぞ!!
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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Alter No.40 僕のヒーロー

 最初に行っておくと、この話は本筋とほぼ関わりがありません。
それでもいいよって方、どうぞ。


 最初の出会いは最悪だった。

 

 

「適齢期と言えば―――」

「と言えばて!!」

「その子はどなたかのお子さんですか?」

「ああ違う、この子は私の従甥だよ。洸汰!ほら挨拶しな!一週間一緒に過ごすんだから・・・」

 

挨拶?ふざけてるのか。

 

「あ、えと僕、雄英高校ヒーロー科の緑谷。よろしくね。」

ただ気持ち悪く、ただむしゃくしゃした。ヒーローになりたいなんて奴と話すことが嫌だった。だから、きんたまを殴った。

 

 

「きゅう・・・」

「緑谷くん!?おのれ従甥!なぜ緑谷くんの陰嚢を!!」

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえよ。」

「つるむ!?一体いくつだ君!?」

ヒーローなんて  大嫌いだ。

 

 

 

最初の出会いはひどかったけど、僕にとってこの子は、なぜか、放っておけない子だった。

 

 

「落下の恐怖で失神しちゃっただけだね。ありがとう。イレイザーに『一人性欲の権化がいる』って聞いてたから見張ってもらってたんだけど・・・最近の女の子って発育良いからねぇ。」

「とにかく、なんともなくてよかった・・」

「よっぽど慌ててくれたんだね。」

 

―ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねえよ―

 

「洸汰くんは・・・ヒーローに否定的なんですね。」

「ん?」

「僕の周りは昔からヒーローになりたいって人ばっかりで・・・あ、僕も・・・で、この年の子がそんな風なの珍しいな・・・って思って。」

「そうだね。当然世間じゃヒーローをよく思わない人も沢山いるけど・・・普通に育ってればこの子もヒーローに憧れてたんじゃないかな。」

「普通・・・?」

「マンダレイのいとこ・・洸汰の両親ね、ヒーローだったけど、殉職しちゃったの。」

突如入ってきたピクシーボブから告げられた信じがたい事実に、僕は間の抜けた声を出してしまった。

 

「え・・・・・・。」

「二年前・・・(ヴィラン)から市民を守ってね。ヒーローとしてはこれ以上ないほどに立派な最期だし、名誉ある死だった。

 

でも物心ついたばかりの子供にはそんなことわからない。親が世界のすべてだもんね。『自分(ぼく)を置いて行ってしまった』のに、世間はそれを良いこと・素晴らしいことと、褒め称え続けたのさ・・・

 

私らのことも良く思ってないみたい・・・けれど、他に身寄りもないから従ってる・・・・・・って感じ。洸汰にとってヒーローは、理解できない気持ち悪い人種なんだよ。」

 

 

―救えなかった人間なんていなかったかのようにヘラヘラ笑ってるからだよなぁ―

 

とても無責任で他人事な言い方になるけど、色々な考えの人がいる 立て続けに聞く価値観の相違に僕は何も言えなかった

 

 

 

 

 

二日目の夕食・・・みんなで作ったカレーを食べてるとき、視界の端に洸汰くんをとらえた。

「何が“個性”だ・・・本当・・・下らん・・・!」

 

 

 

「・・・・・・」

「お腹すいたよね?これ食べなよ。」

「!!?てめェ!何故ここが・・・!!」

「あ ごめん、足跡を追って・・・!ご飯食べないのかなと・・・。」

「いいよ、いらねえよ、言ったろ、つるむ気など無ぇ。俺のひみつきちから出てけ。」

「ひみつきちか・・・!」

 

「“個性”を伸ばすとか張り切っちゃってさ・・・気持ち悪い・・・そんなにひけらかしたいのかよ“力”を。」

 

「君の両親さ・・・ひょっとして水の“個性”の『ウォーターホース』・・・?」

「・・・・・マンダレイか!!?」

「あ、いや、えっと、あ―――――ごめん!うん・・・なんか流れで聞いちゃって・・・情報的にそうかなって・・・

残念な事件だった。おぼえてる。」

 

「・・・・・・うるせえよ 頭イカレてるよみーんな・・・バカみたいにヒーローとか(ヴィラン)とか言っちゃって殺し合って・・・“個性”とか言っちゃって・・・・・・ひけらかしてるからそうなるんだバ――――カ。」

 

 

ヒーローだけじゃない・・・“個性”・・・超人社会そのものが・・・

 

「もう用ないんだったら出てけよ!」

「いや・・・あの・・・え―・・・友だち・・・僕の友だちさ!・・・親から“個性”が引き継がれなくて。」

「・・・・・・は?」

「先天的なもので稀にあるらしいんだけど・・・でもそいつはヒーローに憧れちゃって、でも今って“個性”がないとヒーローになれなくて、そいつさ、しばらくは受け入れられずに練習してたんだ。

 

物を引き寄せようとしたり、火を吹こうとしたり・・・“個性”に対して色々な考えがあって一概には言えないけど

 

 

そこまで否定しちゃうと、君が辛くなるだけだよ。」

 

 

「・・・・・っ。」

「えと・・・だから・・・」

「うるせえ!!ズケズケと!!!出てけよ!!」

「・・・・・ごめん・・・とりとめのないことしか言えなくて・・・カレー置いとくね。」

 

 

「うるさい・・・どいつも・・・こいつも・・・。」

 

 

 

そして 悪夢は 始まった。

 

 

「なんで・・・万全を期したハズじゃあ・・・なんで・・・なんで(ヴィラン)がいるんだよォ!!!」

「ピクシーボブ!!」

「やばい・・・!!」

マンダレイのその言葉で、僕は気づいてしまった。

「―――――!!」

洸汰くん!!

 

 

「皆先行って!!良い!?決して戦闘はしないこと!!委員長、引率!!」

「承知しました!行こう!!皆!!」

 

「・・・・・飯田くん、先行ってて。」

「緑谷くん!?何言ってる!?」

「緑谷!!」

「マンダレイ!!僕、()()()()()()()

 

 

 

そして、ひみつきち

 

 

≪洸汰・・!洸汰聞いてた!?すぐ施設に戻って!!私、ごめんね、知らないの。あなたがいつもどこへ行ってるのか・・・ごめん洸汰!!助けに行けない!!すぐ戻って!!≫

 

しかし、彼にそれはできなかった。

 

「見晴らしの良いところを探して来てみれば、どうも 資料になかった顔だ。なァところで、センスのいい帽子だな子ども。俺のこのダセェマスクと交換してくれよ。新参は納期がどうとかってこんなオモチャつけられてんの。」

「うあ・・・」

恐怖心のあまり、逃げ出す洸汰。

「あ、オイ。」

しかし

「景気づけに一杯やらせろよ。」

その(ヴィラン)は圧倒的スピードで回り込むと、左腕に、筋肉のような筋を張り巡らせた。

 

 

それは、あまりに残酷な事実を、出水洸汰に叩きつけた。

 

 

―「ウォーターホース」・・・素晴らしいヒーローたちでした。しかし二人の輝かしい人生は1人の心無い犯罪者によって立たれてしまいました。―

 

暗い部屋で見た、両親を殺した(ヴィラン)の顔

 

―犯人は現在も逃走を続けており、警察とヒーローが行方を追っております。―

 

 

「おまえ・・・!!」

 

 

―“個性”は単純な増強型で非常に危険です。この顔を見かけたら、すぐに110番及びヒーローに通報を・・・―

 

お父さんとお母さんを殺した犯人・・・今筋強斗、(ヴィラン)名:血狂いマスキュラー・・・。

 

 

―尚、現在左目に―

 

 

今目の前にいる男の左目は

 

 

―ウォーターホースに受けたと思われる傷が残っていると思われ―

 

 

大きな傷跡と 義眼

 

 

「パパ・・・!!ママっ・・・!!!」

 

 

 

マスキュラーの振り下ろした拳は、地面を割るほどの威力だった。だが、その拳が洸汰に当たることはなかった。

 

済んでのところで、緑谷出久が彼を助けた。

 

 

 

 

「ぐあっ!っつ・・・!!」

急いで救出したから、洸汰くんを抱えたまま転げまわってしまった。

「なんで・・・!!」

「んん?おまえは・・・()()()にあったな。」

「ゲホッ、ゴホッ、ハァ・・・。」

(ヴィラン)と接触させないために来たのに・・・ピンポイントで(ヴィラン)がいるなんて・・・!クソッ!今のでケータイ壊れた・・・!!

 

皆に()()を知らせずに来ちゃった・・・となると前みたいに増援は期待できない・・・一人だ・・・僕一人・・・!一人で何とかこの(ヴィラン)を・・・!!

洸汰くんを守りつつ―――・・・やれるかどうか―――

 

 

   不安と望み薄な現状を危険視し、どうすべきか、ふと、後ろの洸汰くんを振り返った。

 

   洸汰くんの顔は涙と不安でいっぱいになっていた・・・。

 

 

 

―――――じゃない!!

 

 

「だいっ・・・大丈夫だよ洸汰くん・・・」

 

 

 

やるしかないんだ 今

 

 

「必ず助けるから」

 

 

僕 一人で!!

 

 

 

 

「必ず助ける・・・って?はぁははは・・・さすがヒーロー志望者って感じだな。どこにでも現れて正義面しやがる。

緑谷ってやつだろ、お前?ちょうどいいよ。お前は率先して殺しとけってお達しだ。

 

じっくりいたぶってやっから 血を見せろ!!

 

 

 

 

 

 

圧倒的な速度 圧倒的パワーで まともに反応できず 横から殴り飛ばされた

 

「あ いけね。そうそう、知ってたら教えてくれよ。」

 

マスキュラーは僕に接近してきた。

 

「雨宮ってガキはどこにいる?一応仕事はしなくちゃあ・・・」

水月くん―――――!?

「よ!」

「ふっ」

来るとわかっている攻撃を今回は避けられた。けど、目的は水月くん!?なんで―――・・・

 

「答えは“知らない”でいいか?いいな?よし、じゃあ・・・遊ぼう!!」

「!!?」

僕は今しがた2mほど先にいたはずのマスキュラーに蹴り飛ばされた。

 

「はっはは!血だ!いいぜ、これだよ楽しいや!なんだっけ!?

 

必ず助けるんだろ!?なんで逃げるんだよ!?オッカシイぜお前!!」

 

 

「ぐっ・・・」

ダメだ今は水月くんのことは考えるな・・・!あの筋みたいな“個性”なんて速さ・・・!なんて威力・・・!集中しろ!目の前の敵に!

 

「5% デトロイトスマッシュ!!」

 

僕の一撃は、あっけなく、あっさりと受け止められた。

「なんだ?それが“個性”か!?いい速さだが、力が足りてねえ!!」

「ぐあっ!!!」

 

 

「俺の“個性”は筋肉増強!皮下に収まんねえほどの筋繊維で底上げされる速さ!!力!!

何が言いてぇかって!?自慢だよ!

 

つまり、おまえは俺の―――

 

 

完全な劣等型だ!!分かるか俺の今の気持ちが!?笑えて仕方ねえよ!!

 

必ず助ける!?どうやって!?実現不可のキレイ事のたまってんじゃねぇよ!

 

自分に正直に生きようぜ!!

 

 

 

コン

 

 

僕を殴るために右手を振り上げるマスキュラー。しかし、彼の後頭部に小石が投げつけられた。

 

「ウォーターホース・・・・・パパ・・・ママも・・・そんな風にいたぶって・・・殺したのか!」

「・・・・・!!」

 

「ああ・・・?マジかよヒーローの子供かよ?運命的じゃねえの。

 

ウォーターホース この俺の左眼()を義眼にしたあの二人だ。」

 

「おまえのせいで・・・おまえみたいな奴のせいで

いつもいつもこうなるんだ!!!」

 

「・・・ガキはそうやってすぐ責任転嫁する。よくないぜ。俺だって別にこの眼のこと恨んでねぇぞ?

おれは“殺す(やりたい)”ことやって、あの二人はそれを止めたがった。お互いやりてぇことやった結果さ。

悪いのはできもしねえことをやりたがってた・・・

テメェのパパとママさ!!

 

 

っとなったら

 

そう来るよな!?ボロ雑巾!!」

 

 

悪いの

 

 

お前だろ!!!

 

スピードも劣る ダメージも与えられない!こいつは強い!!救けは来ない!!なら―――・・・

 

僕は左腕をマスキュラーの右腕の筋繊維の間に滑り込ませ、固定した。

 

「これで、速さは関係無い。」

 

(折れて使えない腕を筋繊維に絡めて・・・!!)

「で、なんだ?!その力不足の腕で殴るのか!?」

 

「できるできないじゃないんだっ・・・ヒーローは!

 

 

命を賭して キレイ事実践するお仕事だ!!

 

(なんだ!?さっきまでと様子が・・・)

 

「ワン・フォー・オール 100%

 

デトロイトスマッシュ!!!!!」

 

 

 

ワン・フォー・オール100%、その圧倒的威力は、強大な風圧と衝撃波を巻き起こした。

 

「うわあ!!わっ、うわあああ!!?」

その風圧で落下しかけた洸汰くんをすんでのところで口でキャッチした。

 

「ご()んっ・・・ふっおあひえ(ふっとばして)・・・・・!!」

「あ・・・ありが・・・!」

 

「ハァ・・・ハァ・・・施設に行こう・・・こっからは、近・・・・・・」

そのとき、マスキュラーが倒れ込んでいる壁から音がした。

 

振り返ると、そこには全身を筋繊維で覆ったマスキュラーが立ち上がっていた。

 

「ウソだ・・・ウソだろ・・・100%だぞ・・・!?」

 

 

オールマイトの―――――・・・力だぞ!!?

 

 

「テレフォンパンチだ。しかしやるなあ!緑谷・・・!」

マスキュラーは全身を覆っていた筋繊維を仕舞い、ゆっくりと近づいてきた。

「くっ、来るな!」

「やだよ、行くね。俄然。」

 

ダメだ・・・!どうしよう考えろ・・・考える時間・・・!!

「なっ、あ、何がしたいんだよ!!(ヴィラン)連合は何が・・・!!」

「知るかよ。俺ァただ暴れてぇだけだ。ハネ伸ばして“個性”ぶっ放せれば何でもいいんだ。

覚えてるか?さっきまでのは遊びだ!俺言ったよな!?遊ぼうって!!な!?言ってたんだよ!!

やめるよ!遊びは終いだ!!お前強いもん!こっからは・・・・

 

本気の義眼()だ。」

 

 

マスキュラーはポケットから義眼を取り出すと、無理やり左眼の部分に捻じ込んだ。

「洸汰くん掴まって!!」

「え・・・・・」

 

洸汰くんを背負って急いで飛び退いた。直後、轟音がとどろいた。

さっきまでと比べ物にならない・・・!速さも力も・・・!!遊びだったんだ・・・本当に―――

 

遊び感覚で・・・殺そうとしてたんだ

 

「ぶわ!!」

「あ、クソ。勢い余った。」

「ぐっ・・・!!」

マスキュラーの攻撃を避けたはいいものの、この負傷でこれ以上は持たない・・・

 

ダメだ・・・!!ビビるな!!今!ここで!!戦って勝つしか!!!お前に道はないんだ緑谷出久!!

救けるんだろ!!?おまえの原点を   思い出せ!!!

 

 

「下がってて洸汰くん。離れすぎると的になる・・・・・うん・・・・7歩・・・くらい・・・で、()()()()()()全力で施設へ走るんだ。」

「ぶつかるって・・・お前・・・まさか!!?ムリだ!お前の攻撃効かなかったじゃん!!それに・・・・・両腕、折れて・・・」

「大丈夫」

 

ワン・フォー・オール 100%!

 

「デトロイトスマッシュ!!」

 

 

強大な力と力のぶつかり合い   しかし

 

「~~~~~~ってぇええ どうしたああ

 

 

さっきより弱ぇぞ!!!」

 

 

 

「――――――・・・じょうぶ・・・

 

 

大丈ぶ!!

 

 

()()()()後ろには絶対行かせない!!

 

からっ・・・   走れ!!

 

 

 

 

走れェ!!!!!」

 

 

 

絶ッッッッッ対に   行かせない

 

 

 

「んのガキが てめェェ

 

 

最っ高じゃねぇか!!!!」

 

 

 

マスキュラーの腕が 筋肉が 僕を圧し潰さんとする

 

 

 

 

 

「う゛う゛・・・

 

 

っる

 

 

せえええええええええ!!!!!!

 

「なんで・・・・・・・」

 

 

 

「血ィイイイイッ   見せろやあああ!」

 

 

―ヒーローとは 常にピンチをぶち壊していくもの!!―

 

 

ごめんお母さん!!

 

 

お母さんごめん!!

 

オールマイト!!

 

 

オールマイト!!!

 

 

 

オールマ

「潰れちまえェェエエエエエエ!!!!!!」

 

 

 

そのとき マスキュラーに水が  出水洸汰の水がかけられた。

 

 

 

「水!?」

 

「やっ、やめろおおお!!」

 

 

洸汰くん・・・!!

 

 

 

「後でな!な!?

後で殺してやっから待っ――――――・・・」

 

 

 

重い衝撃と共に、マスキュラーの腕・・・全身に幾重にも、幾層にも張り巡らされていた筋繊維がブチブチと音を立てて切れていった

 

 

(気を取られた一瞬に・・・いや、しかしパワー・・・)

 

「上がってねえか!!?」

 

 

「ころっ

 

 

させてええええええ

 

 

 

!!!!!!!」

 

 

5%

 

 

 

 

8%

 

 

 

10%

 

 

 

15%

 

 

20%

 

 

45%

 

―ヒーローとは―

 

 

100%

 

 

―常にピンチを―

 

 

1000%

 

 

―ぶち壊していくもの!!!―

 

 

10000%

 

 

さらに向こうへ

 

100000%

 

 

Plus Ultra!!!

 

 

 

 

ワン・フォー・オール

 

 

1000000%

 

 

 

 

「デラウェア

 

 

 

デトロイト

 

 

 

スマアアアアッシュ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

―洸汰、あんたのパパとママ・・・ウォーターホースはね―

 

 

―確かにあんたを遺して逝ってしまった。でもね―

 

 

―そのおかげで守られた命が確かにあるんだ―

 

 

「・・・・・・何も知らないくせに・・・・!」

 

 

―あんたもいつか、きっと出会う時が来る。そしたらわかる―

 

 

「何で!!!

 

 

何も・・・知らないくせに―――・・・」

 

 

 

―命を賭して、あんたを救う―

 

 

 

―あんたにとっての―――――・・・―

 

 

 

 

「何でっ・・・・・そこまで・・・・・・・!」

 

 

 

 

 

僕の―――――――・・・

 

 

 

 

 

 

Alter No.40 僕のヒーロー




 今回の話について
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=276313&uid=315039


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No.41 発足雨宮護衛部隊

 「どっ、どういうこと!?障子くん」

 

慌てて問いただす緑谷をいさめ、障子が答える。

 

(静かに。マンダレイのテレパス、(ヴィラン)襲来・交戦禁止を受け、すぐに警戒態勢をとった。

直後、背後から木々を割く音が迫り、(ヴィラン)に襲われた・・・変幻自在の素早い刃だ。俺は常闇を庇い、、腕を掻っ切られつつも草陰に身を隠した。)

(腕・・・!?)

(なに。傷は浅くないが失ったわけじゃない。俺の「複製腕」は、複製器官も複製が可能。切られたのは複製の腕だ。しかし、それでも奴には耐えられなかったのか・・・)

「抑えていた“個性”が、暴走を始めてしまった。」

 

 

彼らの前には、夜の暗闇で荒れ狂う黒影(ダークシャドウ)がいた。

 

 

 

「闇が深いと・・・制御が効かない。こんなピーキーな“個性”だったのか・・・・・・つっ!」

痛みに身を疼かせる緑谷を気遣い、ゆっくり体勢を変えようとする障子。

(その上、恐らく奴の義憤や悔恨などの感情が暴走を激化させている・・・奴も抑えようとしているが・・・)

そのとき、障子が枝を踏み、パキッ、という音を立ててしまい、それに反応した黒影(ダークシャドウ)が瞬時に腕を伸ばし、寸でのところで障子が避けた。

(動くモノや音に反応し、無差別に攻撃を繰り出すだけのモンスターと化している。)

 

 

「~~~~~~~!!

 

俺のことは・・・・・いい!・・・ッ!!他と合流し・・・!!他を助け出せ!!

沈まれッ・・・黒影(ダークシャドウ)・・・!!」

(光・・・施設か火事へ誘導すれば鎮められる。緑谷、俺はどんな状況下であろうと、苦しむ友を捨て置く人間になりたくはない・・・。お前は雨宮が心配でその体を押してきたのだろう?まだ動けるというのなら、俺が黒影(ダークシャドウ)を引き付け、道を開こう。)

(待ってよ、施設も家事も距離がある、そんなの障子君が危な――――――・・・)

 

緑谷が言い終わる前に、黒影(ダークシャドウ)の腕が伸び、木々を薙ぎ倒した。

 

 

(分かってる。助けるという行為にはリスクが伴う。だからこそヒーローと呼ばれる。)

「このまま俺と共に常闇を救けるか、雨宮のもとに駆け付けるか・・・お前はどちらだ?緑谷・・・。」

 

「・・・・・・ごめん障子くん・・・。」

「?」

 

 

 

数分前、爆豪・轟サイド

 

 

 

「くっそ・・・!」

「このガスも(ヴィラン)の仕業か・・・他の奴らが心配だが仕方ねえ。ゴール地点を避けて施設に向かうぞ。ここは中間地点にいたラグドールに任せよう。」

「指図してんじゃね・・・!?」

ガスを防ぐため口を手で覆っていた爆豪の眼に映ったのは、真っ黒な装束に身を包んだ、人。そして、気付いた。

 

「・・・おい、俺らの前、誰だった・・・!?」

 

 

「きれいだ   きれいだよ   ダメだ仕事だ   見とれてた   ああ いけない   」

 

 

「常闇と・・・、障子・・・!!」

その男の足元には、肘辺りから切断されたであろう腕が転がっていた。

 

 

「きれいな肉面   ああ  もう  誘惑するなよ

 

 

仕事しなきゃ」

 

 

 

「交戦すんなだぁ・・・!?」

 

 

 

≪A組B組総員―――戦闘を許可する!!≫

 

(ヴィラン)の狙いの一つ判明―――!!生徒の「雨宮水月」くん!!分かった!?「雨宮」くん!「雨宮」くんはなるべく戦闘を避けて!!単独では動かないこと!!≫

 

 

「不用意に突っ込むんじゃねえ!」

「チッ!!グソがぁ!!」

激昂した爆豪が突っ込むと、黒装束の(ヴィラン)―死刑囚「ムーンフィッシュ」は自らの口から飛び出した“個性”「歯刃」を枝分かれさせ、爆轟の顔面に向けて刃を伸ばしたが、ギリギリで爆豪が避け、轟が氷で防御する。

 

「地形と“個性”の扱い方が上手ぇ・・・。」

「見るからにザコのヒョロガリの癖しやがってんのヤロウ・・・!!」

(相当場数踏んでやがる・・・。)

 

 

「肉  見せて」

 

 

 

「ここででけえ火使って燃え移りでもすりゃあ火に囲まれて全員死ぬぞ、わかってんな!?」

「喋んなわーっとるわ。」

(退こうにもガスだまり・・・こりゃあ、わかりやすく縛りかけられてんな。)

 

 

 

 

 

その後も爆豪・轟とムーンフィッシュとの激闘は続き・・・

 

 

「クソッ・・・ガスが晴れたはいいが・・・!!」

「近づけねえ!!クソ!!最大火力でブッ飛ばすしか・・・」

「だめだ!!」

「木ィ燃えてもソッコー氷で覆え!!!」

「爆発はこっちの視界もふさがれる!!仕留めきれなかったらどうなる!?手数も距離も向こうに分があるんだぞ!!」

 

 

「いた、氷が見える!交戦中だ!」

 

 

少し遠くで、気が薙ぎ倒されるような音が響いた。

 

「!?」

「あ・・・・?」

 

 

視線を向けた先には、緑谷を背負って走ってくる障子と、その後ろから迫ってくる得体のしれない巨大生物がいた。

「爆豪!轟!どちらか頼む―――・・・」

「肉」

「光を!!」

 

次の瞬間、爆轟と轟を追い詰めたムーンフィッシュは、黒影(ダークシャドウ)の一撃であっけなく地に堕ちた。

 

「障子、緑谷と・・・常闇!?」

「早く光を!!常闇が暴走した!!」

 

障子の言葉通り、黒影(ダークシャドウ)は森を蹂躙しながら近づいてくる。

「見境なしか。っし、炎を」

「待てアホ。」

 

 

「肉~~~~~~駄目だぁあああ   肉~~~にくめんんんんんん駄目だ駄目だ許せない   その子たちの断面を見るのは僕だああああ!!横取りするなああああ!!!」

歯刃を使って立ち上がり、反撃しようとするムーンフィッシュだが、黒影(ダークシャドウ)は実体がないため刃が通らず、完全に掴まれた。

 

 

「強請ルナ  三下!!!」

 

「見てぇ。」

 

 

一振り。その一振りで森の木々が次々と薙ぎ倒されていき、掴まれていたムーンフィッシュは再起不能のダメージを負った。

 

 

「アアアアアアア暴レ足リンゾオオオオオオ!!!!!」

 

 

直後、爆豪と轟の炎によって黒影(ダークシャドウ)は縮んだ。

「ひゃうん」

 

「てめぇと俺の相性が残念だぜ。」

「・・・・?すまん、助かった。」

「俺らが防戦一方だった相手を一瞬で・・・」

「常闇、大丈夫か!?よく言う通りにしてくれた!」

 

―常闇くん!抗わないで!黒影(ダークシャドウ)に身をゆだねて!―

 

「障子、悪かった。緑谷も。・・・俺の心が未熟だった。複製の腕がトバされた瞬間、怒りに任せ、黒影(ダークシャドウ)を解き放ってしまった。闇の深さ・・・そして俺の怒りが影響され、奴の凶暴さに拍車をかけてしまっていた・・・結果、収集もできぬほどに増大化し、障子を傷つけてしまった・・・。」

「そういうのは後だ・・・と、お前なら言うだろうな。」

 

「・・・そうだ!(ヴィラン)の目的の一つが雨宮くんだって判明したんだ!」

「雨宮・・・なぜ狙われて・・・!?」

「みんな大丈夫!?」

 

噂をすればなんとやら、上空から水月が降下してきた。

 

「水月くん!?なんで施設に向かってないの!?」

「逃げ遅れたほかの生徒の避難と(ヴィラン)の引き付け。多分この場で一番動けるから。皆避難したけど、まだお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが見つかってない。」

 

「まじいな。二人も見つけつつ雨宮を施設に向かわせねえと。」

「それなら僕に考えがある。障子くんは移動しつつ索敵をお願い。もし(ヴィラン)が現れても轟くんの氷結による牽制とかっちゃんの爆破、そして常闇君さえよければ制御手段(ひかり)を備えた無敵の黒影(ダークシャドウ)・・・これで麗日さん達を捜索しつつ、雨宮くんを施設に送り届ける。この面子なら正直、オールマイトだって怖くないんじゃないかな・・・!!」

「いや僕も空から」

「てめェはだぁってすっこんでろ!保護対象が前に出てくんじゃねェ殺すぞ!」

「えぇ・・・。」

「雨宮お前中央歩け。」




常闇「次回 早速雨宮がピンチだ。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.42 がなる風雲急

 黒影(ダークシャドウ)沈静化のちょい前

 

 

「・・・・・!」

「お茶子ちゃん、腕大丈夫?」

「ん!ん―――浅い少ない!」

 

出血している腕を抑える麗日と彼女を気遣う蛙吹、彼女たちの前にいるのは血の付いたナイフをまじまじと見つめる不気味なマスクを身に着けた女子高生のような(ヴィラン)だった。

 

 

「急に切りかかってくるなんてひどいじゃない。何なのあなた。」

「トガです!二人ともカァイイねえ。麗日さんと、蛙吹さん!」

「「!!」」

「名前バレとる・・・。」

「体育祭かしら・・・何にせよ情報は割れてるってことね。不利よ。」

「血が少ないとね、ダメです。普段は切り口からチウチウと・・・その・・・吸い出しちゃうのですが・・・。」

そう言いながらトガは背中からチューブに繋がれた注射器を取り出した。

「この機械は刺すだけでチウチウするそうで、お仕事が大変捗るとのことでした。

 

 

刺すね。」

 

物騒なことを言い放ち、トガが走り出した。

「来たぁ!!」

「お茶子ちゃん!!」

蛙吹は麗日を瞬時に舌で森の方へ投げ飛ばした。

「施設へ走って。戦闘許可は『(ヴィラン)を倒せ』じゃなく『身を守れ』って事よ。相澤先生はそういう人よ。」

「梅雨ちゃんも!!」

「もちろん私も・・・つっ!!」

麗日を投げ飛ばしている隙に、蛙吹の舌をトガが切りつけた。

 

「梅雨ちゃん。」

「レロ・・・」

「梅雨ちゃん・・・梅雨ちゃんっ!カァイイ呼び方!私もそう呼ぶね!」

「やめて。そう呼んで欲しいのはお友達になりたい人だけなの。」

「や――――じゃあ私もお友達だね!やったあ!」

「!!」

森に逃げようとした蛙吹の髪がトガの投げた注射器で木に固定され、拘束される。

 

「梅雨ちゃん!!」

「血ィ出てるねえお友達の梅雨ちゃん!カァイイねえ血って私大好きだよ!」

「離れて!」

蛙吹に迫るトガを引き離そうと近づく麗日にナイフを突き出すトガだが

 

(ナイフ相手には!!

 

片足軸回転で相手の直線状から消え、手首と首根っこを掴み

 

おもっくそ押し!引く!

 

職場体験で教わった近接格闘術!

 

G・M・A(ガンヘッド・マーシャル・アーツ)!!

 

麗日がガンヘッドの下で学んだG・M・Aによってトガを抑え込んだ。

 

「梅雨ちゃん、ベロで手!拘束!できる!?痛い!?」

「すごいわお茶子ちゃん・・・!ベロは少し待って・・・」

 

「お茶子ちゃん・・・あなたも素敵。私と同じ匂いがする。」

「?」

 

「好きな人がいますよね?」

「!?」

突然の質問に困惑する麗日。

 

「そしてその人みたくなりたいって思ってますよね。わかるんです。乙女だもん。」

 

(何・・・この人・・・)

 

 

「好きな人と同じになりたいよね。当然だよね。同じもの身に着けちゃったりしちゃうよね。

 

でもだんだん満足できなくなっちゃうよね。その人そのものになりたくなっちゃうよね。しょうがないよね。

 

あなたの好みはどんな人?私はボロボロで血の香りがする人大好きです。だから()()はいつも切り刻むの。

 

ねえお茶子ちゃん楽しいねえ。

 

 

恋バナ楽しいねえ!

 

 

プス、とトガの上に跨っていた麗日の足に注射器が刺された。

「お茶子ちゃん!?」

「  チウ  チウ  」

注射器から麗日の血が抽出されていく。

 

 

「麗日!?」

「障子ちゃん!!皆・・・!」

森の方から障子たちが飛び出してきた。

その姿を見るや、麗日の下にいたトガが抜け出し、森の方へ向かった。

「あ、しまっ・・・!」

 

「人増えたので殺されるのは嫌だから、バイバイ。」

去り際、トガは緑谷を一瞥した。

 

「待っ・・・!」

「危ないわ!どんな“個性”を持てるかも分からないわ!」

「何だ今の女・・・。」

(ヴィラン)よ。クレイジーよ。」

「麗日さんケガを・・・!!」

「大丈夫、全然歩けるし・・・っていうかデク君のほうが・・・!」

「立ち止まってる場合か。早く行こう。」

「とりあえず無事でよかった・・・そうだ、一緒に来て!僕ら今水月くんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ!」

「・・・・・・ん?」

「水月ちゃんを護衛?

 

その水月ちゃんはどこにいるの?」

 

「え?何言ってるんだ。水月くんなら後ろに・・・」

 

 

だが、緑谷達の後ろには、水月はおろか、常闇の姿も無かった。

 

 

「彼なら、俺のマジックで()()()()()()()。」

「「「!!」」」

 

その声の主―――シルクハットと茶色いトレンチコートに身を包んだ仮面の(ヴィラン)は木の上に立っていた。

 

「こいつぁヒーロー側(そっち)にいるべき人材じゃねぇ。もっと輝ける舞台へ俺達が連れていくよ。」

「―――!?返せ!!」

 

 

 

「返せ?妙な話だぜ。雨宮くんは誰の者でもねぇ。彼は彼自身のモノだぞ!!エゴイストめ!!」

「返せよ!!」

「どけ!」

轟が氷結を放つが、仮面の(ヴィラン)はひらりとかわした。

 

「我々はただ凝り固まってしまった価値観に対し、『それだけじゃないよ』と道を示したいだけさ。今の子たちは価値観に道を選ばされている。」

「・・・!雨宮だけじゃない・・・常闇もいないぞ!」

(後ろ2人を音も無く攫ったってのか・・・どういう“個性”だ・・・?)

「わざわざ話しかけてくるたァ・・・舐めてんな。」

「元々エンターテイナーでね、悪い癖さ。常闇君はアドリブで貰っちゃったよ。」

 

右手でビー玉のようなものを弄りながら言った。

「ムーンフィッシュ・・・『歯刃』の男な、アレでも死刑判決、控訴棄却されるような生粋の殺人鬼だ。それをああも一方的に蹂躙する暴力性・・・()()()()と判断した!」

「この野郎貰うなよ!!!」

「緑谷落ち着け。」

 

「てめクソがァ!!」

爆豪が爆破で近付き、(ヴィラン)の手の部分へピンポイントで爆破をしたが、さらりと避けられた。

「おおっと危ない。さすがエリート校、勘づくのが早い。」

「半分野郎ォ!!」

「麗日こいつ頼む!」

「え、あ、うん!」

轟は背負っていた円場を麗日に託し、氷結を放ったが、これも避けられてしまう。

 

「悪いね俺ァ逃げ足と欺くことだけが取り柄でよ!ヒーロー候補生なんかと戦ってたまるか。

 

 

開闢行動隊!目標回収達成だ!!

 

短い間だったがこれにて幕引き!!予定通りこの通信後5分以内に“回収地点”へ向かえ!」

「幕引き・・・だと。」

「ダメだ・・・!」

「逃がすかクソが!!!」

「させねえ!絶対に逃がすな!!」

 

 

「おい荼毘!無線聞いたか!?テンション上がるぜ!!Mr.コンプレスが早くも成功したってよ!!遅ぇっつうんだよなあ!?眠くなってきちゃったよ!!」

「そう言うな。よくやってくれてる。あとはここに戻ってくるのを待つだけだ。予定じゃ此処は炎とガスの壁で見つかりにくいハズだったんだがな―――・・・ガスが晴れちまってら。予定通りにはいかねぇモンだな・・・」

「そりゃそうさ!予定通りだぜ!!っと!忘れてたがよ荼毘!!脳無ってやつ呼ばなくていいのか!?お前の声にのみ反応するとか言ってたろ!?とても大事なことだろ!!」

「ああいけねぇ。何のために戦闘に加わんなかったんだって話だな。」

「感謝しな!土下座しろ!!」

「死柄木からもらった、()()()の怪物・・・一人くらいは殺し―――っ!?」

 

彼らが今まさに話していた怪人・脳無は彼らの目の前にいた。

「・・・ネホヒャン」

水浸しで複数の錘のようなものと接合した状態で。

 

「おっわマジかよ!!これ脳無じゃねえか!!これ大丈夫なのかよ!?問題なし!!」

「水・・・。目標(ターゲット)にやられたか。勿体ねぇ。」

 

 

 

「ちょっとスピナーあなたのせいよ!」

「うるさい!」

マグネは“個性”「軟体」で腕を縄のようにした虎によって拘束された。

「誰かのせいというなら・・・悪事を働いた己の所為だ。」

「そういうことよ、(ヴィラン)のスピナー君。」

「ええい!離れろ不潔女!ちくしょう・・・!!ステインは甦る・・・!いいか!?意思が!ここでだ!俺によって!!俺はてめえら生臭ヒーローとメガネ君を粛清しなきゃいけねぇんだ!」

「意味わかんない。それにしてもアンタ“個性”を一切見せなかったわね。」

「うるさい!!どけ!!」

 

「そう・・・・・お二方とも少し」

「「!!」」

 

 

「どいていただきましょう。」




水月「次回 すごいねかっちゃん。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.43 転転転!

 「待てやマスク野郎ォ!!」

 

「ちくしょう速ぇ!あの仮面!」

「爆豪が追いつければいいが・・・!!」

「くっそ飯田くんもいれば・・・!」

 

 

 

(意外と大したこと無いなヒーロー科・・・これなら―――っと)

「うおっ!?」

「テメェ避けてんじゃねぇクソが!」

爆破による推進力を利用してMr.(ミスター)コンプレスに追いついた爆豪がコンプレスへ攻撃を仕掛けるが

 

「ほいっ。」

「氷ッ・・・っぱそういう感じか!!」

コンプレスが指を鳴らすと爆豪の目の前に氷塊が現れた。

「クソッ邪魔だ!―――ッ!?どこ行った・・・。」

氷塊を爆破で砕くと、そこにコンプレスの姿は無かった。

 

(アイツの“個性”か?これまでの行動から考えれば・・・ヒトやモノをビー玉みたいなモンに仕舞う――いや、「圧縮」したっつーべきか?ってこたァ・・・)

爆豪が下の森に目を向けると、予想通り、コンプレスが森の中を移動していた。

(ヤロウ・・・自分を「圧縮」したんか・・・ナメやがって・・・!)

 

合宿での“個性”酷使、さきほどまでのムーンフィッシュとの戦いで森林という環境も相まってほぼ“個性”を使えなかったこと、相手が自分の嫌いな、飄々としている搦め手タイプであること・・・さまざまな要因が重なり、爆豪のフラストレーションは限界まで来ていた。

 

そしてそれが逆に、爆轟の新たな可能性を引き出した。

 

(周囲は森、派手な爆破は使えねぇ。アイツを攻撃しようにも、接近戦での爆破は森に燃え広がる。手間取ってもまたアイツに反撃の隙与えちまうだけだ。つまり、爆破での直接ダメージ無し且つ一撃で決める必要がある・・・だったら)

爆豪はコンプレスの真上に行くと、手のひらを後ろに向けた。

(ハウザーみたいな広範囲高火力じゃねぇ、一点特化瞬間火力、爆速ターボをベースにッ!)

爆破で真っ直ぐ真下に急降下し、コンプレスを狙う。

 

 

新技・爆速ターボ鉄杭(バンカー)!!!

「うごぉッ!!?」

 

真っ直ぐに急降下し足での貫くような一撃は見事コンプレスの背中をとらえ、撃墜した。

 

「ハッ!ザコが!!」

「マジかよお前・・・!」

 

 

 

爆豪新技の少し前

「このままじゃ(ヴィラン)はおろか爆豪ちゃんにも追いつけないわ・・・!」

「・・・諦めちゃ・・・ダメだ・・・!っ・・・!追いついて・・・取り返さなきゃ!」

「しかしこのままでは離される一方だぞ。」

「・・・麗日さん、僕らを浮かして!早く!」

「!」

「そして浮いた僕らを蛙吹さんの舌で思いっ切り投げて!僕を投げられるほどの力だ!すごいスピードで飛んでいける!

 

障子くんは腕で軌道を修正しつつ、僕らを牽引して!麗日さんは見えている範囲でいいから奴やかっちゃんとの距離を見計らって解除して!」

「成程、人間弾か。」

「待ってよデクくん!その怪我でまだ動くの・・・!?」

(確かに・・・こいつもう気を失っててもおかしくねえハズだぞ・・・)

「お前は残ってろ。痛みでそれどころじゃあ・・・」

 

「痛みなんか今知らない  動けるよ・・・早くっ!!!」

「・・・・・!デクくんせめてこれ・・・!

 

いいよつゆちゃん!」

「必ず3人を助けてね。」

 

「おっおおおおお・・・

 

 

 

おおおおおおお!!!?」

 

緑谷の言った通り、蛙吹の舌で投げられた緑谷・轟・障子はとてつもないスピードで飛んだ。

 

 

 

 

「あれ?まだこんだけですか?」

森の中・・・回収地点に来たトガは荼毘とトゥワイスを見いて軽く驚いた。

「イカレ女、血は取れたのか?何人分だ?」

「1人です。」

「1人ィ!?最低3人はって言われてなかった!?十分じゃねえか!!」

「仕方ないのです。殺されるかと思った。」

「つーかよ、トガちゃんテンション高くねえか!?なんか落ち込むことでもあったのか!?」

「♪お友達ができたのと、気になる男の子がいたのです!」

「それ俺!?ごめんムリ!!俺も好きだよ。」

「うるせえな黙って・・・!?」

 

荼毘たちの前にMr.(ミスター)コンプレスと、その背中を踏む爆豪が落ちて来た。

「ハッ!ザコが!!」

「マジかよお前・・・」

そしてそのすぐ後に

 

「麗日さん!」

「了解・・・解除!」

緑谷、障子、轟も落ちて来た。

「知ってるぜこのガキ共!!誰だ!?」

 

 

 

時は遡り水月が狙われているとテレパスされた頃

 

「ダチが狙われてんだ頼みます!行かせてください!!」

「ダメだ!」

「敵の数が不明ならば戦力は少しでも多い方が!」

「戦えって相澤先生も言ってたでしょ!!」

「ありゃ自衛の為だ。みんながここへ戻れるようにな。」

 

そのとき、玄関が開く音がした。

「相澤先生が帰ってきた!直談判します!」

「・・・・・や・・・・・待て、違う!

 

ブラドの読みは当たり、扉の向こうから青い炎が放たれ、近くにいた生徒をブラドが押し避けた。

「皆さがれ!」

「さっきやられてた・・・(ヴィラン)!!?」

峰田の言った通り、さきほど相澤にやられたはずの荼毘が目の前にいた。

その荼毘が再び炎を放とうと右腕を構えるが、それより早くブラドが荼毘を壁に叩きつけた。

 

「遅いわ!」

ブラドが「操血」を発動し自らの血で荼毘を瞬く間に拘束する。

「こんなところにまで考え無しのガン攻めか。随分舐めてくれる・・・!」

(三秒も経たねえうちに・・・!)

「『操血』・・・強ぇ!」

「サスガボクラノブラドセンセー!」

 

「そりゃあ舐めるだろ。思った通りの言動だ。後手に回った時点でお前ら負けてんだよ。」

「―――――・・・!」

 

 

「ヒーロー育成の最高峰 雄英と平和の象徴オールマイト・・・ヒーロー社会において最も信頼の高い2つが集まった。ここで信頼の揺らぐような案件が重なれば・・・・・その揺らぎは社会全体に蔓延すると思わないか?例えば―――・・・

 

何度も襲撃を許す杜撰な管理体制

 

挙句に生徒を犯罪集団に奪われる弱さ。

 

 

「てめ―・・・まさか雨宮を・・・・・・!」

「そういうことかよ!?ざけんじゃねえ!」

 

「見てろ・・・極々少数の俺たちが、お前らを追い詰めていくんだ・・・」

「無駄だブラド」

突如横から現れたイレイザーが荼毘の頭を蹴った。

 

「こいつは煽るだけで情報出さねえよ。」

イレイザーは捕縛布で荼毘を縛り上げると、ドゴバキズンガンと音を出して荼毘を踏み散らした。

「抹消ヒーロー相澤先生!」

「それに見ろ、ニセモノだ。さっきも来た。」

イレイザーの言う通り、散々踏みつけられた荼毘はドロドロの液状に溶けていた。さきほどイレイザーが対峙した荼毘と同じ状態になった。

 

「イレイザー!お前何してた!」

「悪い。戦闘許可を出しに行ったつもりが洸太くんを保護してた。預かっててくれ。俺は戦線に出る。ブラドは引き続きここの護衛を頼む。」

「待てイレイザー!またどれだけ攻めてくるかも分からん!」

「ブラド1人で大丈夫だ。このニセモノ見ろ。二回ともコレ一体だ、強気な攻めはプロ(俺ら)の意識をここに縛るためだと見た。“人員の足りない中で案じられた策”だこりゃ。」

(ヴィラン)が少ないなら尚更俺も・・・!」

「ええ!数に勝るものなしです!」

「ダメだ!プロを足止めする以上狙いは生徒、雨宮がその一人ってだけで他にも狙っているかもしれん。情報量じゃ依然圧倒的に負けてんだ。

俺たちはとりあえず、全員無事でいることが勝利条件だ。」

 

 

 

んで現在―――・・・

 

 

「知ってるぜこのガキ共!!誰だ!?」

「てめデク!何来とんじゃバカが!」

Mr.(ミスター)、避けろ。」

「!了解(ラジャ)

荼毘はコンプレスに呼びかけると、青い炎を放った。

「バッカ冷たッ!!」

「うあ゛ッ!!!」

「ぎゃっ!!!」

荼毘の炎は緑谷、障子の左腕に直撃、轟、爆豪は回避し、コンプレスのいたところは丸い窪みができ、いなくなっていた。

「死柄木の殺せリストにあった顔だ!そこの地味ボロくんとツンツン頭とおまえ!いなかったけどな!」

「チッ!」

氷結を放つ轟だが、ギリギリでトゥワイスに避けられる。

「熱っつ!」

 

 

荼毘の炎を食らった緑谷は直後トガの投げた注射器を避けた。

「トガです!出久くん!」

しかし、満身創痍の彼は駆け寄ってくるトガに押し倒され、ナイフを振り下ろされる、

「さっき思ったんですけどもっと血出てた方がかっこいいよ出久くん!」

「はぁ!!?」

ナイフが出久に当たる前に障子がトガを突き飛ばし、なんとか事なきを得た。

 

 

「てめェ死ねカス!」

荼毘の炎を避けた爆豪はそのまま荼毘へ突撃していった。

「単純すぎんだろ。」

突っ込んでくる爆豪に掌を向ける荼毘。

「そりゃてめェだバァカ!!」

爆豪は不規則な爆破で飛ぶルートを瞬発的に変え、背後から迫った。

「死ね―――・・・」

 

 

パチン、と音が鳴り、爆豪のポケットから突然氷塊が現れた。

「ッチ!こっちは()()か!!」

「いやぁ、危なかったな荼毘。」

 

 

そのとき、黒いモヤ・・・黒霧のゲートが現れた。

「ワープの・・・」

「合図から5分経ちました。行きますよ、荼毘。」

「ごめんね出久くん、またね。」

現れたゲートにトガとトゥワイスが入り込んでいく。

 

 

 

「いやぁ、見事!ポケットに入れといたビー玉を持ってくとは!おそらく俺の『圧縮』に気づいたんだろうが、惜しいな。

 

マジックの基本でね。モノを見せびらかすときってのは・・・・・・

 

 

 

見せたくないモノ(トリック)があるときだぜ?」

 

コンプレスが仮面を外して口を開けると、その中にビー玉が2つ入っていた。

 

 

「!!?」

「氷結攻撃の際に『ダミー』を用意し、右ポケットに入れておいた。右手に持ってたもんが右ポケットに入ってたらそりゃ閉じ込められた仲間だって思っちゃうよな。」

Mr.(ミスター)、確認だ。解除しろ。」

了解(ラジャ)。」

 

コンプレスがビー玉を荼毘に渡してパチンと指を鳴らすと、彼らの目の前に雨宮水月と―――・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷塊が現れた。

 

「「!!?」」

Mr.(ミスター)、もう一人は?」

「・・・いや、マジか。俺がミスするとかそんなことありえ――・・・」

 

 

「惜しいのはてめェだマスク野郎。」

そう言った爆豪の下には、()()()うずくまっていた。

 

「常闇!」

「マジかよいつの間に・・・!!」

「てめェを堕としたとき口元からビー玉が一つこぼれたからそいつを拾って右ポケットに入れてあったヤツを転がしといた。そっちを常闇だと勘違いして口に入れたんだろうよ。俺はてめェが氷結を圧縮してポケットに入れるのをきっちり見てたからな。それはそれとしてー--・・・

 

 

逃がすと思うかクソがァ!!!水野郎置いてけやァ!!!」

 

 

 

「・・・まぁいい。回収目標は達成したんだ。撤退するぞ。」

「チッ・・・せっかくのショウが台無しだぜ。」

 

「水月くん!!!」

「雨宮!!」

「水野郎ォ!!!」

 

 

 

「デクちゃん・・・かっちゃん・・・

 

 

 

 

来ないで。」

 

 

 

そして、(ヴィラン)連合・開闢行動隊は 黒い霧の向こうへ消えた。

 

 

 

「あ・・・・・」

「・・・・・ッ」

 

 

 

 

 

 

「―――――っ・・・ああ!!!

ああああああああああああああ!!!!!!!」

「―――――・・・・

ッソがァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」




爆豪「次回 ギザ歯泣きすぎだ。
さらに向こうへ Plus Ultra.」


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No.44 敗け

 

 

 

 

 

 

 

完全

 

 

 

 

 

 

 

敗北

 

 

 

 

 

 

ブラドキング先生が通報してたみたいで・・・(ヴィラン)が去った15分後、救急や消防が到着した。生徒40名のうち、(ヴィラン)のガスによって意識不明の重体15名。

 

重・軽傷者11名、無傷で済んだのは13名だった。そして・・・行方不明1名。

 

プロヒーローは6名のうち2名が頭部を強く打たれ重体。

 

一方、(ヴィラン)側は3名の現行犯逮捕、彼らを残し・・・他の(ヴィラン)は跡形もなく消え去った。

 

 

僕らの楽しみにしていた林間合宿は、最悪の形で幕を閉じた。

 

 

 

 

翌日 雄英高校

 

 

(ヴィラン)との戦闘に備えるための合宿で襲来・・・恥を承知でのたまおう。

 

(ヴィラン)活性化の恐れ”・・・・・という我々の認識が甘すぎた。奴らはすでに戦争を始めていた。ヒーロー社会を壊す戦争をさ。」

「認識できていたとしても防げたかどうか・・・これほど執拗で矢継ぎ早な展開・・・“オールマイト”以降組織だった犯罪はほぼ淘汰されていましたからね。」

「要は知らず知らずのうちに平和ボケしてたんだ俺らは。“備える時間がある”っつー認識だった時点で。」

 

「己の不甲斐無さに心底腹が立つ・・・彼らが必死で戦っていた頃私は・・・半身浴に興じていた・・・っ!!!」

 

「襲撃の直後に体育祭を行う等・・・今までのような『屈さぬ姿勢』はもう取れません。生徒の拉致・・・雄英最大の失態だ。奴らは雨宮と同時に我々ヒーローの『信頼』も奪ったんだ。」

「現にメディアでは雄英の非難でもちきりさ。雨宮くんを狙ったのはおそらく体育祭での優勝宣言を取ったにもかかわらず優勝(それ)果たせなかったことかと思われるね。もしこれで雨宮くんが(ヴィラン)側に懐柔でもされればそれこそ最悪のシナリオ。教育機関としての雄英はおしまいさ。」

 

「信頼云々ってことでこの際言わせてもらうがよ・・・今回の件で決定的になったぜ。

 

 

 

いるだろ。内通者。

 

合宿先は教師陣とプッシ―キャッツしか知らなかった!怪しいのはこれだけじゃねえ!ケータイの位置情報鳴使えば生徒にだって―――・・・」

「マイクやめてよ。」

「やめてたまるか!この際洗おうぜてって―的に!!」

「そういうお前は自分が100%シロだという証拠を出せるか?ここの者をシロだと断言できるか?」

「Ummm・・・」

「お互い疑心暗鬼となり内側から崩壊していく、内通者探しは焦って行うべきではない。」

「少なくとも私は君たちを信頼している。その私がシロだとも証明しきれないワケだが。とりあえず学校として行わなければならないのは生徒の安全保証さ。内通者の件も踏まえ・・・かねてより考えていたことがあるんだ。それは・・・」

 

 

『で―ん―わ―が―――――来た!』

粛々とした空気に響く着信音は、オールマイトのケータイから発せられていた。

「すみません電話が。」

「会議中っスよ!電源切っときましょーよ!」

(着信音ダサ)

 

 

「ハァ・・・。」

『来た!』

 

(・・・教え子すら救けられず・・・・・何が平和の象徴か・・・!!

 

何が・・・ヒーローか・・・!!)

 

「・・・すまん、なんだい?塚内くん。」

『今イレイザーとブラドの2人から調書を取っていたんだが、思わぬ進展があったぞ!

 

 

(ヴィラン)連合の居場所、突き止められるかもしれない!

 

二週間程前、部下が聞き込み調査で“顔中ツギハギの男がテナントの入っていないはずのビルに入っていった”という情報を入手していた。20代くらいだというので過去の犯罪者を漁ってみるも目ぼしい者はおらず、又ビルの所有者に確認したところいわゆる隠れ家的バーがちゃんと入っているという話だった為、捜査に無関係だと流していたんだが、今回生徒をさらった(ヴィラン)の一人と特徴が合致した!

さらに意識が戻ったラグドールが水月くんを『サーチ』で見ていたおかげで、水月くんがそこにいることも確認済みだ!事態が事態だ。裏が取れ次第すぐにカチ込む!これは極秘情報、君だから話してる!今回の救出・掃討作戦、君の力も貸してくれ!』

「・・・・・・」

『オールマイト?』

 

「―――・・・私は・・・素晴らしい友を持った・・・。奴らに会ったらこう言ってやるぜ・・・・・。

 

私が 反撃に 来たってね。」

 

 

 

 

一方――病院・・・

 

 

「鉄哲ー、来たよー。」

「おう!皆!よく来たな!」

「撃たれたってのにもうピンピンしてんな。」

「あんぐらいダイジョーブだ!」

「はいこれ、お見舞いのフルーツ。」

「お!サンキュー!」

 

 

「塩崎たちのほうにはいったのか?」

「うん・・・。ガス食らった皆はまだ意識が戻ってないって。あと、水月の情報も・・・まだ。」

「そうか―――・・・クソッ!あんとき俺が、アイツの足にしがみついてでも引き留めてれば・・・ッ!!」

「やめてよ鉄哲・・・そんなこと言ったら私の方が・・・水月を行かせたのは私の所為みたいなものだし・・・。私がちゃんと水月を引き留めてれば」

「もうそれ以上言わないでよ二人とも!!」

「「!?」」

突然取蔭が叫んだ。

 

「どうしたの取蔭、いきなり叫んで・・・。」

「そうだぞ、一応病院なんだし静かに―――」

「鉄哲と拳藤はそばにいたけど、水月に追いつけなかったから仕方ないじゃん・・・でも、私は空中でも追いつけた。それなのに、アイツを止めるどころか・・・一緒に行って助けようともしなかった。水月に『施設に戻って』って言われたのを素直に聞き入れてた・・・。アイツを助けられたのに、アイツが大変な思いしてるって知ってたのに・・・!!なんで、アタシは―――」

取蔭は大粒の涙を流しながら座り込んだ。

 

「取蔭・・・。」

「・・・。」

 

 

「―――こういう時、水月なら何て言うんだろうな。」

「回原・・・。」

「・・・『切奈ちゃんに涙は似合わないよ。笑顔でいた方が絶対カワイイ!』って言うんじゃないかな。」

「―――そうだ、そうだぜ取蔭!拳藤の言う通りだ!水月だってお前が笑ってた方が喜ぶに決まってらぁ!俺たちは救出された水月が安心できるように、笑ってどっしり構えてよーぜ!」

「・・・っ、ごめん皆。私ばっかつらいわけじゃないのに。」

「いいって取蔭。あんたが一番水月を心配してんだろうし。」

 

 

 

一方―――

 

「あ――!?轟なんでいんの!?」

「おまえこそ。」

「俺ァ・・・その・・・何つーか・・・家でじっとしてらんねー・・・つーか・・・。」

「・・・そうか。俺もだ。」

「!?てめェら、なんでいやがんだ!?」

「爆豪!!」

「お前も来たのか・・・。」

「あァん!?てめェと一緒にすンな半分野郎!!」

「病院では静かにしろよ爆豪・・・!」

 

 

「八百万の部屋、ここでいいんだよな・・・?」

「・・・?あいてんぞ。」

「誰かいんな。」

 

三人が病室を覗くと、中で八百万、オールマイト、塚内の三人が話していた。

「あれってオールマイトと・・・」

「・・・合宿とUSJん時来てた警察の人だな。」

 

 

「―――B組の水月さんと泡瀬さんに協力していただき、脳無と思しき(ヴィラン)の一人に発信機を取り付けました。これがその信号を受信するデバイスです。捜査にお使いください。」

八百万は小型の端末をオールマイトに渡した。

「―――・・・この前相澤君は君を『咄嗟の判断力に欠ける』と評していた。素晴らしい成長だ!ありがとう八百万少女!」

「―――水月さんの危機に・・・こんな形でしか協力できず・・・悔しいです。」

「その気持ちこそ君がヒーローたりうる証だよ!後は私たちに任せなさい!」

 

 

「・・・なぁ、ひょっとして、あの受信機を俺達にも作ってもらえば・・・。」

「俺達も雨宮を救けに行ける、ってことか。」

「ハッ、バカ言ってんじゃねえ。プロヒーローの出番にセミプロですらねェ卵の俺ら(たかだか16のガキ)が何できるってんだ。」

「それでも・・・なんかできんだろ!このままじゃ引き下がれねえよ!」

「おい切島・・・」

「おやおや、何をしてるのかな少年達。」

「「「!!!」」」

彼らの目の前にオールマイトが立った。

「―――っ、オールマイト!俺らも一緒に戦わせてください!」

「敵の戦力が分からない可能性がデカいんなら、数いた方がいいでしょう。」

「・・・。」

「フム・・・。爆豪少年の意見は?」

「・・・気乗りしねェ。相手がUSJん時の(ヴィラン)連合のクソカス共なら、俺らが行っても問題なかっただろうよ。だが今はあのステイン(イカレ野郎)に当てられた連中が入ってやがる。しかも今回は少数、しかもそこそこやれるヤツが来てやがった。俺はまだしも、コイツらを行かせんのは賛成しねェ。」

「爆豪ッーーー!」

「・・・残念ながら、爆豪少年の言う通りだ。今回の(ヴィラン)連合は、今までと違って油断できない。保須での事件もある。脳無が量産されている可能性も高い。そんな現場において君たちは・・・言い方が悪いが足手纏だ。」

「―――そうですか。」

「問題無い!今回の雨宮少年の奪取作戦は、トップヒーローを集結させて挑む!心配いらないさ!」

「オールマイト、それ極秘情報だ。」

しまっ・・・ウォホン!この件は内密にしてくれるかな?」

「・・・はい。」

「わかりました。」

「極秘をベラベラ喋んなや。」

「す、すまない。」

 

 

 

某所ビル内―――

「オールマイト、エンデヴァー、ベストジーニスト、エッジショット・・・そうそうたる顔ぶれが集まってくれた。さァ、作戦会議を始めよう。」

 

 

 

 

 

―――――そして起きる。

 

 

覚えてるかな?USJ襲撃の時に書いた―――――・・・

 

 

 

「早速だが、ヒーロー志望の雨宮水月くん。

 

 

 

俺の仲間にならないか?」

 

 

 

 

“後に起こる大事件”

 

 

 

 

 

「冗談キツいねぇ。」




取蔭「次回 ありがとうブラド先生。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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神野区の悪夢編
No.45 嵐の前


 「―――こんなことって・・・。」

自宅の部屋でテレビの画面に目を奪われる取蔭。その画面にはスーツに身を包んだ根津校長とイレイザーヘッド、そして、ブラドキングが映っていた。

 

 

『この度――我々の不備からヒーロー科1年生27名に被害が及んでしまった事、ヒーロー育成の場でありながら敵意への防衛を怠り社会に不安を与えた事、謹んでお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした。』

 

『NHAです。雄英高校は今年に入って4回、生徒が(ヴィラン)と接触していますが、今回、生徒にご被害が出るまで、各ご家庭にはどのような説明をされていたのか、また、具体的にどのような対策を行って来たのかお聞かせください。』

「・・・知ってるくせに言わせんのかよ・・・。」

記者の質問に憤りを感じながら拳藤が拳を強く握った。

 

『周辺地域の警備強化、校内の防犯システム再検討、“強い姿勢”で生徒の安全を保障する・・・・・と説明しておりました。』

 

 

「不思議なもんだよなぁ。

 

何故奴ら(ヒーロー)が攻められてる!?」

両腕を大げさに広げながら死柄木が問う。

 

「奴らは少―し対応がズレてただけだ!守るのが仕事だから?誰にだってミスの一つや二つはある!『お前らは完ぺきでいろ』って!?

 

現代ヒーローってのは堅っ苦しいなァ  雨宮くんよ!」

 

「守るという行為に対価が発生した時点で、ヒーローはヒーローでなくなった、これがステインのご教示!!」

 

「人の命を金や自己顕示に変換する異様。それをルールでギチギチと縛る社会。敗北者を励ますどころか責め立てる国民。

 

 

俺たちの戦いは『問い』。ヒーローとは、正義とは何か。この社会が本当に正しいのか、一人一人に考えてもらう!俺たちは勝つつもりだ。

君だって、勝つのは好きだろ?

 

荼毘、拘束外せ。」

「は?」

突然の命令に、素っ頓狂な声を出す荼毘。

 

「暴れるぞこいつ。」

「いいんだよ。対等に扱わなきゃな。スカウトだもの。それに・・・

 

 

この状況で暴れて勝てるかどうか、分からないような男じゃないだろ?雄英生。」

「・・・・・・。」

死柄木の問いに水月は沈黙で返した。

 

 

「トゥワイス、外せ。」

「はァ俺!?嫌だし!!」

拒否の意を示しつつトゥワイスは素直に拘束具のカギを外し始めた。

 

「強引な手段だったのは謝るよ・・・けどな、我々は悪事と呼ばれる行為にいそしむただの暴徒じゃねぇのはわかってくれ。君を攫ったのは偶々じゃねえ。

 

ここにいる者は事情は違えど、人に、ルールに、ヒーローに縛られ・・・苦しんだ。優しい君ならそれを分かってくれるんじゃないか?」

 

死柄木は水月に歩み寄り、そっと手を差し伸べた。

 

 

 

「君なら  俺の手を取ってくれるよな・・・?」

 

 

 

「・・・なんで、そうなの?」

「・・・・・は?」

 

「なんで、僕を攫ったの?」

「・・・そりゃ、君は体育祭、2位で終わっちまったからな。優勝するって宣誓しといて結果はあの様。しかも優勝した爆豪ってガキ、入試だとキミのが勝ってたそうじゃないか。」

「・・・・・。」

「なぁ、悔しいだろ?今までずぅっと頑張ってきたのに、最後は結局ああいう奴が勝つんだ。理不尽だよなあ?君みたいに頑張る奴がなぜ報われない。しかもこれでヒーローになったって、一回でもミスすれば世間から総叩き、罵詈雑言の嵐だ。君は一生懸命頑張ったのに、世間からは所詮、『雄英体育祭2()()の男』。なんて勝手なんだ。こんな世界間違ってると思わないか?」

死柄木は僕と肩を組み、仰々しく語ってきた。

 

 

「・・・俺たちと手を組まないか?きっと君が思いっ切り力を使える舞台に出られるはずだ。」

 

 

「―――僕は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・無いね。」

「!?」

僕は肩を組んでいる死柄木を突き飛ばした。

「聞いてなかった?僕最初に言ったよね。『冗談キツイ』って。」

「死柄木・・・!」

 

 

 

「僕はさ、最初は、お姉ちゃんとの約束を果たすためにヒーローを目指した。でも今の僕は、たくさんの人に助けられて、守られて、ヒーローを目指して生きてる。いろんな人との繋がりが、思いが、今の僕を作ってる。たくさんの人を救けて、笑顔にするために。

 

だからこそ、『ヒーローになる』、その芯だけは、何があろうと揺るがない。だからはっきり言うよ。

『無い』って。」

 

 

「・・・・・お父さん」

 

 

 

 

 

『生徒の安全、と仰りましたが、イレイザーヘッドさん、事件の最中、生徒に戦うよう促したそうですね。意図をお聞かせください。』

『私共が状況を判断できなかったため、最悪の事態を避けるべくそう判断しました。』

『最悪の事態とは?26名もの被害者と1名の拉致は最悪と言えませんか?』

 

『・・・・・・私があの場で想定した“最悪”とは、生徒が成す術無く殺害されることでした。』

『被害の大半を占めたガス攻撃、敵の“個性”から催眠ガスの類だと判断しております。拳藤さん鉄哲くんの迅速な対応のお陰で全員命に別状なく、また、生徒らのメンタルケアも行っておりますが、深刻な心的外傷などは今のところ見受けられません。』

『不幸中の幸いだとでも?』

『未来を侵されることが“最悪”だと考えております。』

 

『攫われた雨宮くんについても同じことが言えますか?』

 

『・・・!!』

 

『世間からの印象では、「明るく何でも前向きにこなす好印象の少年」ですが、そういった人物にこそ、精神的未熟さなどから内面的な問題を抱えていることは珍しくない。もし彼が「体育祭宣誓で優勝宣言をしたにも関わらずそれを果たせなかったことによる心的ストレス」などに目を付けたうえでの拉致だとしたら?言葉巧みに彼をかどわかし、悪の道に染まってしまったら?

 

未来があると言い切れる根拠をお聞かせください。』

 

 

(マズいな・・・分かってはいたが攻撃的な質問・・・生徒が危険に晒された不安と危機感を抱えているブラドが感情に任せて下手な発言をすればそれに任せてあることないこと書かれるぞ・・・。

耐えろよブラドーーー!!)

 

 

 

『イレイザーヘッドに戦闘許可を出させたこと、雨宮を拉致されたこと、総じて私の不徳の致すところです。心よりお詫び申し上げます。』

 

ブラドキングは深々と頭を下げた。それを見た記者は、少し不満げな顔をした。

 

 

 

 

『ただ、

 

体育祭での『優勝宣誓』も、彼自身の、雨宮水月という人間の「トップヒーローを目指す」ための意志の強さ、誰よりも強く、勇猛であろうとする気概。それらを象徴する行動であり、

 

彼はその行動が示すだけのヒーローを目指す強い意志を持っている、この数ヶ月、彼を間近で見続けた私はそう信じております。』

 

 

『根拠になっておりませんが?感情の問題ではなく、具体策があるのかと伺っております。』

 

『―――我々も手を拱いているワケではありません。現在、警察と共に調査を進めております。

わが校の生徒は必ず取り戻して見せます。』

 

 

 

「ブラド先生、うれしいこと言ってくれるね。

 

・・・そういうわけだよ(ヴィラン)連合さん。」

いくら少数精鋭とはいえ7人で生徒を襲撃しておいて成果は僕一人、死柄木やほかの(ヴィラン)の発言から推測するなら、いわば僕は人質であり「利用価値のある重要人物」。

そうそう簡単に殺しにきたりはしないはず・・・相手は7人・・・僕の拒絶でこいつらの気が変わらないうちに

 

 

大暴れしてこの場所晒す!!

 

 

「言っとくけど、僕はまだ戦闘許可解けてないよ?」

 

「自分の立場良く分かってるわね・・・小賢しい子!」

「刺しましょう!」

「いや・・・バカだろ。」

「その気が無ぇなら懐柔されたふりでもしときゃいいものを・・・やっちまったな。」

「どーせそ―いうふりしたって見破るでしょ?それに、そんなキショい真似死んでも嫌だね。」

 

 

 

 

 

 

そのとき 死柄木の覇気を帯びたような目が 手の間から 僕を真っ直ぐに見据えた

 

 

 

「手を出すなよ・・・お前ら こいつは・・・・・・大切なコマだ

 

出来れば  少し耳を傾けて欲しかったな・・・

 

 

キミとは分かり合えると思ってた・・・」

 

 

「言ったでしょ。『無い』って。」

 

 

「仕方ない ヒーローたちも調査を進めていると言っていた・・・

 

悠長に説得していられない

 

 

先生」

 

 

 

 

『力を貸せ』

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・良い

 

 

 

判断だよ

 

 

死柄木弔」

 

 

 

 

 

 

 

「なんで俺が雄英の尻拭いを・・・こちらも忙しいのだが。」

「まァそう言わずに・・・OBでしょう?」

「雄英からは今ヒーローを呼べない。大局を見てくれエンデヴァー。

 

今回の事件はヒーロー社会崩壊の切っ掛けにもなり得る。

 

総力をもって解決に当たらねば。」

 

 

都内の某所に名だたるヒーローたちが集結していた。

 

「ラグドールの『サーチ』と生徒の一人が仕掛けた発信機とを照らし合わせ、アジトは複数存在すると結論付けられた!

 

拉致被害者の雨宮水月いる場所へ主戦力を投入し、被害者の奪還を最優先する!同時にアジトと思われる場所を制圧し、完全に退路を断ち、一網打尽にする!」

 

 

 

「俊典。俺なんぞまで駆り出すのはやはり・・・」

「“なんぞ”なんぞではありませんよグラントリノ!

 

ここまで大きく展開する事態・・・()も必ず動きます!」

 

「オール・フォー・ワン・・・」

 

 

「今回はスピード勝負だ!(ヴィラン)に何もさせるな!

 

先程の会見、(ヴィラン)を欺くよう校長にのみ協力要請しておいた!さも難航中かのように装ってもらっている!

 

あの発言を受け、その日のうちに突入されるとは思うまい!意趣返ししてやれ!さァ反撃の時だ!

 

 

流れを覆せ!!ヒーロー!!!」




ブラドキング「次回 流石だオールマイト!
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.46 GEKITOTU

 「先生・・・?あんたがボスじゃないのか。拍子抜けだな。」

「黒霧、コンプレス、また眠らせて仕舞っておけ。」

「ここまで人の話聞かねーとは・・・逆に感心するぜ。」

「聞いてほしかったら自首でもすれば?」

(洪水で一気に片を付けたいけどワープの個性・・・黒霧が邪魔すぎんね・・・どーにかして脱出する手考えないと・・・)

 

 

そのとき、後ろのドアをノックする音が聞こえた。

 

 

「どーもォ。ピザーラ神野店です―――」

 

 

 

 

 

SMASSSHHH

 

 

突然横の壁からオールマイトが殴り込み、突入してきた。

 

「何だぁ!!?」

「黒霧!!ゲート・・・」

「先制必縛

 

ウルシ鎖牢!!!」

 

 

続いて突入してきたシンリンカムイのウルシ鎖牢によって(ヴィラン)連合の面々が全員拘束された。

 

「木ィ!?んなもん・・・」

荼毘が自らを縛る木を燃やそうとするが

「逸んなよ。」

グラントリノが素早く頭部を蹴り意識を飛ばした。

「おとなしくしといたほうが・・・身のためだぜ。」

 

「さすが若手実力派だシンリンカムイ!!

 

そして目にも止まらぬ古豪グラントリノ!!

 

もう逃げられんぞ(ヴィラン)連合・・・何故って!?

 

 

我々が 来た!!!」

 

 

 

「オールマイト・・・!!あの会見後に、まさかタイミング示し合わせて・・・!

「木の人引っ張んなってば!押せよ!!」

「や~~~!!」

 

「攻勢時ほど守りが疎かになるものだ・・・ピザーラ神野店は、俺達だけじゃない。」

施錠された扉を紙のように薄くすり抜けたNo.5ヒーロー・エッジショットによって扉が開錠され、機動隊が次々と入り込んできた。

 

「外はあのエンデヴァーをはじめ、手練れのヒーローと警察が包囲している。」

 

「塚内ィ!何故あのメリケン男が侵入で俺が包囲なんだ!!」

「万が一捕り漏らした場合、君の方が視野が広い。」

「シャ!!」

 

 

「怖かったろうに・・・よく耐えた!ごめんな・・・もう大丈夫だ、雨宮少年!」

「・・・待ってましたよ。オールマイト。」

 

 

「せっかく色々捏ね繰り回してたのに・・・なんでそっちから来てくれてんだよラスボス・・・。」

(全員抑えられた・・・簡単には逃げ出せない・・・)

「仕方がない・・・俺達だけじゃない・・・そりゃあ、こっちもだ。黒霧。

 

持ってこれるだけ持ってこい!!!」

 

(脳無だな!!)

死柄木が黒霧に脳無を転送するよう叫ぶ。だが

 

 

 

 

「・・・・・・」

脳無が出てくる気配はなかった。

 

「すみません死柄木弔・・・所定の位置にある筈の脳無が・・・ない・・・!!」

「!?」

 

「やはり君はまだまだ青二才だ、死柄木!!」

そういいながらオールマイトは水月の肩を掴んだ。

 

「あ?」

 

(ヴィラン)連合よ、君らは舐めすぎた。少年の魂を。警察のたゆまぬ捜査を。そして・・・」

 

 

同じく神野・とある倉庫を、Mt.レディが破壊した。

 

「脳無格納庫 制圧完了。」

 

 

「我々の 怒りを!!

 

おいたが過ぎたな。ここで終わりだ死柄木弔!!」

 

 

 

「オールマイト・・・これがステインの求めた・・・ヒーロー・・・。」

 

「終わりだと・・・?ふざけるな・・・まだ始まったばかりだ

 

正義だの・・・平和だの・・・あやふやなモンでフタされたこの掃き溜めをぶっ壊す・・・

そのためにオールマイト(フタ)を取り除く・・・

 

 

仲間も集まり始めた ふざけるな・・・ここからなんだよ・・・

 

黒ぎッ」

 

死柄木が黒霧を呼ぼうとしたその瞬間、黒霧の体を何かが貫いた。

 

「うっ・・・」

「・・・・・・え・・・?

 

 

キャアアアアやだだぁもおお!!見えなかったわ!!何!?殺したの!?」

「中を少々弄り気絶させた。死にはしない。」

黒霧の体から「紙肢」で薄く細くなったエッジショットが出て来た。

「忍法千枚通し!この男は最も厄介・・・眠っててもらう。

 

君の友、爆豪くんが過去に暴いた弱点を参考にしたよ。」

「え?・・・あぁ、USJの時のかっちゃんの・・・。」

「さっき言ったろ。おとなしくしといたほうが身のためだって。

 

引石 健磁(ひきいしけんじ) 迫 圧紘(さこあつひろ) 伊口 秀一(いぐちしゅういち)

 

渡我 被身子(とがひみこ) 分倍河原 仁(ぶばいがわらじん)

 

少ない情報と時間の中、おまわりさんが夜なべして素性を突き止めたそうだ。わかるかね?

 

もう逃げ場はねぇってことよ。なぁ死柄木、聞きてぇんだが、おまえさんのボスはどこにいる?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 

―誰もたすけてくれなかったね・・・辛かったね・・・・・志村転弧くん―

 

 

「ふざけるな こんな・・・こんなァ・・・」

 

 

 

 

 

―「ヒーローが」「そのうちヒーローが」そうやってみんな君を見ないふりしたんだね―

 

 

―いったい誰がこんな世の中にしてしまったんだろう?―

 

―君は悪くない―

 

 

「こんな・・・あっけなく・・・

 

 

ふざけるな・・・

 

失せろ・・・消えろ・・・」

 

 

 

()は今どこにいる!死柄木!!」

 

 

「おまえが!!」

 

 

―もう大丈夫―

 

 

「嫌いだ!!」

 

 

 

―僕がいる―

 

 

 

死柄木の怒号と共に、空中に溢れた黒い液体から二体の脳無が出現した。

 

「脳無!?何もないところから・・・!あの黒い液体は何だ!?」

「エッジショット!黒霧は―――」

「気絶している!こいつの仕業ではないぞ!」

「どんどん出てくるぞ!!」

 

「シンリンカムイ!絶対に離すんじゃないぞ!」

「ぼぉっ!!?」

今度は水月の口から黒い液体が溢れ出した。

 

「!!!雨宮少年!!No!」

「何っこれ・・・体・・・飲まれる―――」

黒い液体は水月の体を呑み込み、オールマイトが掴もうとしたときには、水月はもういなかった。

 

「Noooo!!!」

(まさか―――)

「エンデヴァー!!応援を―――・・・」

シンリンカムイが下へ振り返ると、エンデヴァ―達が黒い液体から次々現れる脳無に対処していた。

「塚内!避難区域広げろ!」

「アジトは二ヶ所と捜査結果が出た筈だ!ジーニスト!そっち制圧したんじゃないのか!?」

無線機に呼びかける塚内だが、ジーニストからの応答は無かった。

「・・・ジーニスト!?」

 

「俊典こいつぁ・・・」

「ワープなど・・・持っていなかったハズ・・・!!対応も・・・早すぎる・・・!」

(まさかこの流れを・・・・・・)

 

 

「先・・・・・・生」

 

 

 

2分前

 

 

 

「うえぇ~~~これ本当に生きてんのォ・・・?こんな楽な仕事でいいんですかねジーニストさん。オールマイトの方行くべきだったんじゃないですかね?」

「難易度と重要性は切り離して考えろ新人。機動隊、すぐに移動式牢(メイデン)を!まだいるかもしれない、ありったけ頼みます!」

ベストジーニストを筆頭とした別動隊は、繊維を自在に操るジーニストの“個性”「ファイバーマスター」の力もあり、迅速に任務を遂行へ導いていた。

 

「・・・待て、誰か来る。」

 

ギャングオルカの言う通り、奥の暗闇から誰かが歩いてくる音が聞こえる。

 

「止まれ、動くな。・・・連合の者か?」

「誰かライトを・・・」

 

 

 

 

「いやぁ、最近のヒーローはすごいなぁ。

 

 

場所が割れたとはいえ、こんなにも迅速だなんて。」

 

 

 

 

ジーニストは、歩いてくる男を“個性”で拘束した。

「ちょ、ジーニストさん、もし民間人だったら・・・」

「状況を考えろ。その一瞬の迷いが現場を左右する。

 

(ヴィラン)には、何もさせるな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せっかく弔が自分で考え、自分で導き始めたんだ。できれば邪魔はよして欲しかったな。」

 

 

一瞬

 

一瞬でその男は 目の前のすべてを吹き飛ばした

 

 

「さて・・・やるか」




オールマイト「次回 雨宮少年、まさかキミは・・・
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.47 3rd:アヴェンジ

 「ぼえ!!!」

水月が消失した直後、連合の面々も次々と黒い液体に呑まれていった。

「!!?」

「マズイ!!全員持っていかれるぞ!!」

「おんのれ私も連れてけ!!」

オールマイトとグラントリノが駆けだしたが、それを待たずに黒い液体は全員を消失させた。

 

「すみません皆様ァ!!!」

「お前の落ち度じゃない!俺たちも干渉できなかった。黒霧の『空間に道を開く』個性じゃなく『対象のみを転送する』系と見た!」

「オールマイト!!」

転送されてきた脳無が一斉にオールマイトに覆いかぶさる。

 

Oklahoma(オクラホマ)・・・

 

 

SMASH(スマッシュ)!!!」

 

 

オールマイトは超高速で空中回転し、覆い被さった脳無たちを吹き飛ばした。

 

「景気のいいぶっ壊しっぷりだな・・・!」

「事が事だからだ!(ヴィラン)に集中しろ!」

「こいつら・・・()()()から流れてきてるのか・・・!?」

「ジーニストらと連絡がつかない!おそらくあっちが失敗した!」

「グダグダじゃないか全く!」

「エンヴァー!」

エンデヴァーが振り返るとバーの所にオールマイトがたたずんでいた。

 

「大丈夫か!?」

「どこを見たらそんな疑問が出る!?さすがのトップも老眼が始まったか!?行くならとっとと行くがいい!!」

「ああ・・・任せるね。」

 

 

 

 

 

 

「さすがNo.4!!ベストジーニスト!!僕は全員消し飛ばしたつもりだったんだ!!みんなの衣服を操り瞬時に端へ寄せた!判断力、技術・・・並の神経じゃない!!」

ジーニストらを吹き飛ばしたその男は拍手と共に賛辞を述べながらジーニストに歩み寄っていった。

「・・・・・こいつ・・・」

 

―連合にはおそらく・・・いや・・・間違いなくブレーンがいるそいつの強さはオールマイトに匹敵する。そのくせ狡猾で用心深い・・・己の安全が保証されぬ限り表には姿を見せない。今回は死柄木らの確保から奴の補足までを可能な限り迅速に行いたい。―

 

(話が違う・・・!!

 

から何だ!!)

ジーニストは自らのジーンズの繊維を操り反撃を画策した。

 

(一流は!!そんなモノを

 

 

 

 

失敗の理由

 

 

 

 

 

反撃に出たジーニスト、だがその瞬間、彼の腹部が抉り飛ばされた。

 

 

 

「相当な練習量と実務経験故の“強さ”だ。君のは・・・いらないな。

 

 

 

弔とは

 

性の合わない“個性”だ。」

 

 

男の下に黒い液体が出現し、そこから次々と連合のメンバーが出現してきた。

 

「また失敗したね弔

でも決してめげてはいけないよ。またやり直せばいい。こうして仲間も取り返した。」

 

 

「うぇ゛ほっげほっ!何これ臭っさい・・・何がどうなって・・」

液体に呑まれていた水月も出現した。

「彼もね。君が『大切なコマ』だと考え判断したからだ。

 

いくらでもやり直せ。そのために僕がいるんだよ。

 

 

全ては 君のためにある。」

 

 

 

 

 

 

「・・・おまえは・・・」

 

 

水月はその男を見て、認識して、感じて、あることに気づいた。

 

 

 

今 初めて見たこの男 これまで見たことも 聞いたことも 会ったことも無いこの男へ対して

 

 

 

 

 

 

体の奥底から憎悪が溢れ出す

 

 

 

だが 水月にとってこの憎悪は

 

 

 

まるで自分のものではない感情のように感じられた

 

 

憎い

 

憎い 憎い

 

 

 

 

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 

 

 

 

 

 

 

―リーダ―!!―

 

 

―おまえは・・・おまえたちは退避しろ!!俺がこいつを止める・・・!―

 

 

―ダメだあんたじゃ勝てねぇ!!!―

 

 

―・・・だから、おまえ(次代)に託す―

 

 

 

―・・んぐっ!?リーダ―!あんたまさか―

 

―仙田、こいつを頼む―

 

―・・・はい!―

 

 

 

 

―・・・っリーダー!俺はまだ、あんたに何も返せてッ・・・!!―

 

 

 

 

 

 

―任せたぞ ()()()

 

 

 

 

 

 

「―――偶然か、運命ってやつか・・・数十年、いや、百年は経ったか。何にせよ、またお前と見えるとはな。オール・フォー・ワン(死に損ない)

 

「・・・?」

(何だ?突然人が変わったかのような言動・・・いや、それより、彼の、こいつの気配を僕は知っている・・・)

 

 

「・・・・・ふふ、ふふふふ。

 

 

 

 

あっははははははは!!!これは傑作だ!!まさか君とはな!

 

 

ワン・フォー・オールを託されたにも関わらずむざむざとこの僕に殺された愚かな三代目(負け犬)!!

 

 

時を超えまた殺されに来たのかい?」

 

 

 

「どこまで生き汚いんだAFO(おまえ)は・・・!」

 

 

 

 

「・・・先生、こいつが何なんだ・・・?」

「いやぁ、すまないね弔。だが、もう少し待ってもらおうか。

 

 

やはり来ているな。」

 

 

 

 

上空からオールマイトが襲来し、AFOと組み合った。

 

「すべて返してもらうぞ、オール・フォー・ワン!!」

 

「また僕を殺すのか、オールマイト。」

 

 

「ずいぶん遅かったじゃないか。」

二人が互いに押し飛ばし合い、その場にクレーターを作るほどの衝撃波を発生させた。

 

「・・・ッ!」

 

「バーからここまで5km余り・・・僕が脳無を()()優に30秒は経過しての到着・・・衰えたねオールマイト。」

「貴様こそ。何だその工業地帯のようなマスクは!?大分無理してるんじゃないか!?」

吹っ飛ばされたオールマイトの肩に水月・・・もとい三代目が手を置いた。

「・・・お前が現代か?いや、・・この感じ、すでに譲渡したか。」

「雨宮少年!君はすぐにここから離れ・・・ッ!?」

(どうなっている・・・雨宮少年からワン・フォー・オールを・・・歴代継承者のような感覚を感じる・・・!!?)

「君・・・本当に雨宮少年か?」

「・・・三代目、と言えば分かるか?」

「!!!」

「詳しい説明は後だ。とりあえず今の俺はワン・フォー・オールを使えるってことがわかってればいい。」

 

「ふむ・・・少しマズいな。」

「先生・・・!」

「弔・・・ここは逃げろ。黒霧、みんなを逃がすんだ。」

そう言うとAFOは指から黒い線のようなものを伸ばし、それを黒霧の体に突き刺した。

「ちょ!あなた!!彼やられて気絶してんのよ!?よく分かんないけどワープを使えるならあなたが逃がしてちょうだいよ!!」

「僕のはまだ出来立てでねマグネ。転送距離はひどく短いうえ・・・彼の座上移動と違い僕の元へ持ってくるか僕の元から送り出すかしかできないんだ。ついでに・・・送り先は()、馴染深い人物でないと機能しない。」

AFOの持つ「個性強制発動」によって黒霧のワープゲートが開いた。

 

「さぁ行け。」

「先生は・・・」

 

その直後、オールマイトがAFOに殴りかかる。

「逃がさん!」

「常に考えろ弔。君はまだまだ成長できるんだ。」

 

「行こう死柄木!あのパイプ仮面がオールマイトを引き付けてくれてる間に!」

コンプレスは荼毘を圧縮した。

()()持って」

言い終わらないうちに、コンプレスは殴り飛ばされた。

 

「・・・10%でこれか。出力が上がっているな。」

コンプレスを殴り飛ばしたのは三代目だった。

「!!こいつ、こんなパワーだったか!?」

 

「そのコマは諦めるんだ弔。それはもう君たちの手に負えるコマじゃない。」

 

「・・・ッ逃げるぞ死柄木!」

スピナーは死柄木をワープゲートへ引っ張った。

 

「待て・・・ダメだ、先生!!

 

その体じゃあんた・・・ダメだ・・・

 

 

 

俺 まだ―――・・・」

死柄木は (ヴィラン)連合と共にワープゲートの先へ消え去った。

 

 

「弔

 

 

君は戦いを続けろ。」

 

 

直後、AFOにグラントリノが突っ込んできたが、「転送」で三代目が間に置かれ、蹴りを肩代わりされた。

 

「誰だ君は!!?」

「・・・蹴った相手に聞く態度か・・・。お前はあの金髪小僧(OFA)の仲間か?」

「・・・誰なんだお前。」

「今は三代目、とだけ言っておく。詳しい話は後だ。アイツをやるぞ。」

オールマイトとAFOの殴り合いに二人は急いで加勢しに行った。

 

「僕はただ弔を助けに来ただけだが、戦うというなら受けて立つよ。」

殴りかかるオールマイトの前に今度はグラントリノを「転送」し、そのうえで「衝撃反転」でオールマイト、グラントリノ両者へ攻撃した。

「すみません!」

 

「なんせ僕はお前が憎い。かつてその拳で僕の仲間を次々と潰し回り、おまえは平和の象徴と謳われた。僕らの犠牲の上に立つその景色・・・さぞや良い眺めだろう?」

AFOの一撃を、DETROIT SMASHで強引に打ち消したオールマイト。

「君も忘れちゃいないさ、三代目。」

「!!」

AFOの背後から攻撃しようとした三代目を先ほど以上の威力の一撃で吹き飛ばした。

(ッ左腕を犠牲にした出力全開の一撃で敗けるか・・・!!)

 

「心置きなく戦わせないよ。ヒーローは()()よなぁ・・・

 

 

守るものが。」

 

 

「黙れ」

 

「!!」

 

 

オールマイトがAFOの左腕を掴み、強く握りこんだ。

 

「貴様はそうやって人の心を弄ぶ!

 

壊し!奪い!付け入り支配する!

 

日々暮らす方々を!理不尽が嘲り笑う!

 

私はそれが!!

 

 

許せない!!!」

 

 

 

回避をつぶしたうえでの強大な一撃をまともにくらい、AFOは倒れ込んだ。

 

「俊典・・・!」

(活動限界が・・・!!)

だがそれと同時に、オールマイトがマッスルフォームを維持するのにも限界が近づいていた。

 

 

「いやに感情的じゃないかオールマイト。

 

同じような台詞を前にも聞いたな。

 

 

 

ワン・フォー・オール先代継承者 志村菜奈(しむらなな)から」




水月「次回 ワン・フォー・オール。」


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No.48 ワン・フォー・オール

 「ワン・フォー・オール先代継承者、志村奈々から・・・」

「貴様の穢れた口で・・・お師匠の名を出すな・・・!!」

 

―誇れ俊典!最初(ハナ)持ってる奴とじゃ本質が違う―

 

 

―お前は“力”を勝ち取ったんだ!―

 

 

「理想ばかりが先行し、まるで実力の伴わない女だった・・・!ワン・フォー・オール生みの親として恥ずかしくなったよ。実にみっともない死にざまだった。・・・どこから話そうか・・・。」

「Enough!」

 

拳を構えたオールマイトを複数個性を併用した押し出しで空中に吹っ飛ばし、AFOはのっそりと立ち上がった。

 

空中に放り出されたオールマイトのすぐそばに報道ヘリが飛んでいたが、ギリギリマッスルフォームを維持した左半身側が運よく向いており、グラントリノが急いで回収した。

「俊典!」

「ゴホッ・・・邪魔を・・・ッ」

「逃がさねえよ。」

三代目が立ち上がったAFOを殴り飛ばしたが

「チッ・・・ガードしやがったな・・・。」

「弱い拳だなぁ。肉体が伴わなければ例えワン・フォー・オールが二つあってもまるで脅威にならない・・・。」

「・・・てめェ・・・。」

 

 

「六年前と同じだ。落ち着け!そうやって挑発に乗って!奴を取り損ねた!腹に穴をあけられた!!お前の駄目なとこだ!奴と言葉を交わすな!」

「・・・・・はい・・・。」

「前とは戦法も“個性”もまるで違うぞ。正面からはまず有効打にならん!虚を突くしかねぇ!まだ動けるな!?限界超えろ!正念場だぞ!」

「・・・・はい!」

 

 

『悪夢のような光景!突如として神野区が半壊滅状態となってしまいました!現在オールマイト氏が元凶と思われる(ヴィラン)と交戦中です!さらに現場には誘拐された雄英高校の生徒、雨宮水月と思しき少年の姿も見えます!

信じられません!(ヴィラン)はたった一人!町を壊し!平和の象徴と同等に渡り合って・・・』

 

(潰された!・・・塚内君・・・オールマイト!)

 

 

「何これやば」

 

「オールマイトボコられてなかった?」

 

「うわめっちゃやられてんじゃん!」

 

「神野ってどこだっけ?」

 

「明日パパ会社休みかも」

 

「わぁ!」

 

「ほかのヒーローは何やってんだ!?」

 

「最近(ヴィラン)暴れすぎじゃね?」

 

「たるんどる!!なんつって。まーでも実際あると思うわ」

 

「むしろヒーローがやられすぎな気ィする―――」

 

「いやぁしかし結局今回もオールマイトが何とかするっしょ!」

 

 

 

「「「水月・・・!!」」」

 

 

 

「弔がせっせと崩してきたヒーローの信頼・・・決定打を僕が打ってしまってよいものか・・・でもねオールマイト。

 

君が僕を憎むように、僕も君が憎いんだぜ?僕は君の師を殺したが、君も僕の築き上げてきたものを奪っただろう?

 

だから君には可能な限り醜く惨たらしい死を迎えて欲しいんだ!」

 

 

話し終わる同時に、AFOの左腕が肥大化した。

 

「でけえの来るぞ!避けて反撃を―――

「避けて良いのか?」

 

 

 

オールマイトは 動かなかった。

 

「おい!!!」

 

「君が守ってきたものを奪う。」

AFOの左腕から地面を抉るほどの一撃が放たれた。

 

「ぐっ・・・!!」

 

「まずは怪我を押して通し続けた、その矜持・・・惨めな姿を世間に晒せ

 

平和の象徴

 

「ガラ空きだ。」

驚異的な一撃を放った直後の無防備なAFOの背中を三代目の拳がとらえた。が

 

「そんなバレバレの不意打ち、僕が気づかないとでも思ったのかい?」

三代目の拳はAFOの背中に届くことはなく、右手に掴まれた。

「―――は?」

「しばらく眠っているといい。哀れな三代目。」

 

AFOはオールマイトに放ったものと同等の一撃を三代目に放った。

「・・・がッ・・・!」

そのまま三代目は吹っ飛ばされ、動かなくなった。

 

 

 

「邪魔はしないでくれよ 今 いいところなんだからさ」

 

 

ほくそ笑むAFO・・・その後ろには、痩せこけ骸骨のような姿になったオールマイトが立っていた。

 

 

「え・・・?」

 

「お・・・」

 

「なんだ、あのガイコツ・・・?」

 

 

『えっと・・・何が・・・え・・・?皆さん見えますでしょうか?オールマイトが・・・しぼんでます・・・』

 

 

「そんな・・・ひみ・・・つ・・・」

 

 

 

「頬はこけ、目は窪み、貧相なトップヒーローだ!!恥じるなよ?それがトゥルーフォーム(本当のキミ)なんだろう!?」

 

嬉しそうに喋るAFOをオールマイトは強い眼光で睨みつけた。

 

 

「・・・・・そっか。」

 

「体が朽ち衰えようとも・・・その姿を晒されようとも・・・

 

私の心は依然平和の象徴!!

 

一欠片とて奪えるものじゃあない!!」

 

 

「素晴らしい!まいった、強情で聞かん坊なことを忘れていた!じゃあ()()も君の心には支障ないかな・・・あのね・・・・・

 

 

 

 

 

死柄木弔は志村菜奈の孫だよ。」

 

 

 

 

先程の眼光が噓かのように オールマイトは目を見開いた。

 

 

 

「君が嫌がることをずぅっと考えてた。

 

 

君と弔が会う機会を作った。君は弔を下したね。何も知らず、勝ち誇った笑顔で。」

 

 

「ウソだ・・・・・・。」

「事実さ。わかってるだろ?僕のやりそうなことだ。

 

 

あれ・・・おかしいなオールマイト。

 

 

 

 

笑顔はどうした?」

 

 

AFOはわざとらしく頬を親指でくいくいと引き上げ、笑顔のようなポーズをとった。

 

 

―人を助けるってつまりその人は怖い思いをしたってことだ―

 

 

―命だけでなく心も助けてこそ真のヒーローだと・・・私は思う―

 

―どんだけ怖くても「自分は大丈夫だ」っつって笑うんだ―

 

―世の中笑ってる奴が一番強いからな―

 

 

オールマイトの脳裏に 在りし日の “笑顔”を教える師匠の顔が過ぎった。

 

 

「き・・・・・さ・・・ま・・・・!!」

 

「やはり・・・楽しいな!一欠片でも奪えただろうか。」

 

 

(お師匠のご家族――――――・・・彼が!!)

 

 

「~~~~~~~ぉおおおおお――――――・・・!!!」

 

(私は  なんということを――――――・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けないで・・・

 

 

 

オールマイト お願い・・・

 

 

 

救けて」

 

 

 

 

「オールマイト・・・・」

 

「・・・やばくない!?」

 

 

 

「――――――・・・て」

 

 

「そんな・・・いやだ・・・・・・・」

 

「オールマイト・・・!」

 

「あんたが勝たなきゃ、あんなの誰が勝てんだよ・・・」

 

「姿が変わってもオールマイトはオールマイトでしょ!?」

 

「いつだって何とかしてきてくれたじゃんか!」

 

「オールマイト!ガンバレ!」

 

「まっ負けるなァオールマイト!!」

 

「頑張れえええええ!!」

 

 

 

「勝って!!」

「勝てや!!」

「「オールマイトォ!!!!」」

 

 

 

時代が 人々が 救けを求める限り

 

 

「お嬢さん、もちろんさ。」

 

 

 

ヒーローは 何度でも

 

 

 

「ああ・・・!多いよ・・・!ヒーローは・・・守るものが多いんだよ。

オール・フォー・ワン・・・。」

 

立ち上がる

 

 

 

「だから 負けないんだよ」

 

 

 

 

―限界だ―って感じたら思い出せ―

 

―・・・思い出す・・・―

 

―何の為に拳を握るのか―

 

―・・・何の為に・・・―

 

―原点ってやつさ!そいつがお前を限界の少し先まで連れてってくれる!―

 

 

『みんなが笑って過ごせる世の中にしたいです。そのためには・・・“象徴”が必要です。』

 

 

(まだ動けるな!?限界超えろ!)

「痛・・・っ」

 

 

(あれほどの大規模攻撃を何度も相殺した・・・とうに活動限界を迎えている・・・右手のみのマッスルフォーム・・・その歪な姿が物語っている―――・・・)

 

 

「渾身   それが最後の一振りだねオールマイト。手負いのヒーローが最も恐ろしい。腸をまき散らし迫ってくるキミの顔、今でもたまに夢に見る。二、三振りは見といたほうがいいな。」

右腕を肥大化させるAFOだが、突如襲ってきた炎をその右腕で振り払った。

 

「―――!」

「何だ貴様・・・

 

その姿はなんだオールマイトォ!!!」

 

 

その声の主は炎を放った張本人・エンデヴァーだった。傍らにはエッジショットもいた。

 

 

「すべて中位(ミドルレンジ)とはいえ、あの脳無たちをもう制圧したか。さすがNo.2に上り詰めた男。」

 

貴様(オールマイト)・・・」

 

(貴様を超えるために研鑽を重ねて来た・・・!重ねるほどに痛感する。貴様との差が・・・貴様の背中が・・・!!絶望が!!俺を―――・・・)

「なんだそのっ・・・情けない背中は!!!」

 

「応援に来ただけなら、観客らしくおとなしくしててくれ。」

再び右腕を肥大化させようとするAFOをエッジショットがかすめた。

「抜かせ破壊者。俺たちは救けに来たんだ。」

 

続けて現れたシンリンカムイが倉庫襲撃チームを救出していった。

「頑張ったんだなMt.レディ・・・!」

「我々・・・にはこれくらいしか出来ぬ・・・貴方の背負うものを少しでも・・・」

「虎・・・!」

 

「フっ・・・!」

AFOの背中を三代目の放った衝撃波がとらえた。

「・・・今度は当たったか。」

「へぇ・・・まだ立つか。」

「―――っ当然だ・・・。この程度・・・お前の全盛(あの頃)に比べれば屁でもない・・・!」

 

「あの邪悪な輩を・・・止めてくれオールマイト・・・!!皆あなたの勝利を願ってる・・・!!どんな姿でもあなたは皆のNo.1ヒーローなのだ!」

 

 

多くのヒーローに助けられるオールマイトの姿を見て、グラントリノは盟友との会話を思い出していた。

 

『八木俊典?』

『面白い奴だよ。イカれてる。いわく・・・犯罪が減らないのは国民に心の拠り所がないからだと。この国には今“柱”が無いんだって。だから自分がその“柱”になるんだって。』

 

 

「みんなあなたの勝利を

 

願っている!」

 

 

 

「煩わしい・・・。」

AFOは地面に衝撃波を放ち周囲のヒーローを吹き飛ばした。

 

「精神の話はよして、現実の話をしよう。」

 

そう言ったAFOの右腕はどんどんと形を変貌させていった。

 

 

「『筋骨発条(バネ)化』『瞬発力』×4『膂力増強』×3『増殖』『肥大化』『鋲』『エアウォーク』『槍骨』今までのような衝撃波では体力を削るだけで確実性がない。

 

確実に殺すために、今の僕が掛け合わせられる最高・最適の“個性”たちで

 

 

 

君を殴る。」

 

 

 

AFOの右腕は変貌を繰り返し、異形を通り越して人の腕の持つ姿ではなくなった。

 

 

(先ほど手合わせをしてようやく確信したよオールマイト。君の中にもうワン・フォー・オールはない。君が今使っているのは余韻・・・残りカス・・・譲渡した後の残り火だ。そしてその火は使うたびに弱まっている・・・もはや吹かずとも消え行く弱々しい光・・・)

 

 

緑谷出久。譲渡先は彼だろう?USJ、体育祭、保須事件、林間合宿・・・まるで制御できてないじゃないか。存分に悔いて死ぬといいよオールマイト。

 

先生としても、君の負けだ。」

 

 

全力のAFOと、残り火のオールマイトとの激突・・・その壮大さは、上空数十mまで届くほどの衝撃波が物語っていた。

 

 

(「衝撃反転」君の放った力は全て君に返って―――・・・)

「そうだよ」

「!?」

歴然とした力の差。しかしオールマイトは一歩たりとも引かず、AFOの拳を押し返していた。

 

「先生として・・・導かなきゃ・・・ならんのだよ!

 

私が   導かなきゃならんのだよ!!」

 

 

「・・・成程、醜い。」

(吹かずとも消え行く、弱々しい残り火―――・・・抗っているのか。

 

役目を全うするまで絶えぬよう、必死で抗っているのか。)

 

 

―限界だーって感じたら思い出せ―

 

 

(“象徴”としてだけではない・・・!!お師匠が私にしてくれたように・・・私も、彼を育てるそれまでは―――・・・)

 

 

「そこまで醜く抗っていたとは・・・誤算だった。」

 

 

まだ 死ねんのだ!!!!

 

 

オールマイトの左の一撃がAFOに命中した。

 

「―――――っ!!」

 

『正面からはまず有効打にならん!虚を突くしかねぇ』

(最後の一振り・・・!右腕のパワーを左腕に・・・!右腕を囮に使った!だが―――・・・!)

 

 

「らしくない小細工だ。誰の影響かな。浅い。」

そう言ったAFOの左腕が急激に増大していく。

 

 

「そりゃア・・・

 

 

腰が!!」

 

オールマイトが右手を強く握り 構える

 

 

 

「入ってなかったからなァ!!!!」

 

 

 

 

―何人もの人がその力を次へと託してきたんだよ―

 

 

―みんなのためになりますようにと・・・一つの希望になりますようにと―

 

 

―次はお前の番だ―

 

 

 

 

 

―頑張ろうな 俊典―

 

 

 

 

 

さらばだ  オール・フォー・ワン

 

 

 

 

UNITED STATES OF(ユナイテッド ステイツ オブ)

 

 

SMAAAAAAAAAAAASH(スマアアアアアアアアアアッシュ)!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

さらばだ

 

 

 

 

ワン・フォー・オール

 

 

 

 

 

 

 

瓦礫の荒野  オールマイトは

 

 

 

静かに  拳を上げた

 

 

「――――・・!!」

(ああ・・・)

 

 

「「「オールマイトォ!!!」」」

 

 

(ヴィラン)は―――・・・動かず!!勝利!!オールマイト!!!

 

勝利の!!スタンディングです!!!』

 

 

「な・・・!今は無理せずに―――・・・」

「させて・・・やってくれ。」

 

―この国には今“柱”が無いんだって―

 

―だから自分がその“柱”になるんだって―

 

 

「・・・仕事中だ。」

 

平和の象徴・・・

 

 

No.1ヒーローとして 最後の―――・・・

 

 

「―――やったぞ。見てるか、リーダー。あいつが・・・あの小僧が・・・やり遂げたぞ・・・。」

 

 

 

 

「この下!二人います!!あっちにも!」

 

「了解!急げ!」

 

「オールマイトの戦闘中もヒーローによる救助活動が続けられておりましたが、死傷者はかなりの数になると予想されます・・・!!

 

元凶となった(ヴィラン)は今・・・あっ今!!移動式牢(メイデン)に入れられようとしています!オールマイトらによる厳戒態勢の中、今・・・!」

 

 

オールマイトはテレビカメラを一瞥すると、それに指を差した。

 

 

 

『次は

 

 

 

君だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――・・・いつまでも使っていても申し訳ない。そろそろ(これ)を彼に返すとするか。」

 

水月の体は一瞬脱力すると、次の瞬間には体を持ち直していた。

 

 

「―――っあ・・・もう・・・いいの?」

≪あぁ。今俺がすべきことは・・・もう終わった。≫

「そう・・・なら・・・よか・・・っ」

 

水月は意識を失い、その場に倒れた。

「!?っおい小僧!大丈夫か!?―――意識がねぇ・・・。」

(そりゃそうか。聞けば合宿だか何かで攫われてからそのまま、急にワン・フォー・オールを使い出してバッキバキになってAFOの攻撃をまともに受けてんだ。)

「おまえさんも、いまはゆっくり休んどけ。おい!こっちだ!怪我人がおる!早く来とくれ!」

 

 

 

 

後に「神野の悪夢」と呼ばれるこの激闘は、こうして幕を閉じた。




オールマイト「次回 みんなでお話だ。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.49 始まりの終わり 終わりの始まり

 

一夜明け 世間は騒然としていた

 

「捕らえた脳無はいずれもこれまでと同様、人間的な反応がなく、新たな情報は得られそうにありません。保管されていたという倉庫は消し飛ばされており、彼らの製造方法についても追って調査を進めるしかありません。」

「そもそもその倉庫というのもフェイクじゃねえのか?生体実験なぞ行える環境じゃねえし場も安易すぎる。バーからも連中の個人情報は上がってねえんだろ?」

「現在調査中です。」

「・・・・・・ん―・・・。」

「大元は捕らえたものの・・・死柄木をはじめとした実行犯らは丸々取り逃した・・・とびきり甘く評価したところで・・・痛み分けといったところか。」

馬鹿野郎。平和の象徴と引き換えだぞ。

 

オールマイトの弱体化が世間に晒され、もう今までの“絶対に倒れない平和の象徴”はいない。

 

国民(われわれ)にとっても、(ヴィラン)にとってもな。」

「たった一人にもたれかかってきたツケだァな・・・。」

「馬鹿も集まりゃここまでできると・・・全員が知った。俺は恐れているよ。

 

最初期のプロファイリングでは子供の癇癪とまで言われていた、主犯格・死柄木弔の犯行計画は、数を重ねるごとに回りくどく・・・世間への影響を見据えたものになっている。

 

死柄木は考え成長している。そしてオールマイトが倒れ以前にも増して抑圧がなくなろうとしている状況・・・連合は失敗する度力をつけていく。こうも都合よく勢力拡大の余地が残っていくものかね?」

「手の内だと?結果論じゃないか?ネガティヴにとらえすぎでは?」

「わからん・・・ただ、一つ確実に言えるのは・・・奴らは必ず捕らえなきゃならん。

 

我々も“(ヴィラン)受け取り係”などと揶揄されている場合ではない。改革が必要だ。」

 

 

 

 

「私の中の残り火は消えた。“平和の象徴”は死にました。」

病室で自らの左手を見つめ、オールマイトが言った。

「しかしまだやらねばならぬことがあります。」

「死柄木弔。志村の孫・・・・・・か。」

(AFO)の発言だろ?根拠が薄くはないか?二人とも、その先代の家族とは面識がないのか?」

「ああ・・・。志村は夫を殺されていてな。わが子をヒーロー世界から遠ざけるべく、里子に出している。俺や俊典には『私にもしもの事があってもあの子には関わらないで欲しい』と・・・。」

「故人との約束が逆に・・・やるせないな。」

「お師匠が攻めて平穏にと決別した血縁・・・!私は死柄木を見つけなければ・・・見つけて彼を・・・」

だめだ。

見つけてどうする。お前はもう奴を(ヴィラン)として見れてない。必ず迷う。素性がどうであれ奴は犯罪者だ。死柄木の捜索はこれから俺と塚内で行っていく。おまえは雄英に残ってすべきことを全うしろ。平和の象徴ではいられなくなったとしても、オールマイトはまだ生きているんだ。」

 

「・・・はい。

 

それと、もう一つ、確認せねばならないことがあります。」

「ああ、例の彼か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――・・・・・・ん・・・んう・・・」

静かに目が覚めると、真っ白な天井が映った。

 

 

「――――・・・・ここ・・・どこ・・・病院・・・?」

「・・・水月?」

右から声がしたので顔をゆっくり向けると、切奈ちゃんがいた。

 

「せつ・・・な・・・ちゃん・・・?」

「――――――ッあああああああ―――――!!!!!」

切奈ちゃんは泣きながら僕に抱きついてきた。

「水月・・・っ水月!みづぎぃぃぃ!!よがっだぁ・・・いぎででよがっだぁぁ。」

「ふっお・・・切奈ちゃん・・大丈夫?」

「っうぐ・・・だいじょぶじゃない!!あぁっ・・・ああぁぁあ・・・・。」

「・・・ダメだよ。そんなに泣いちゃ・・・顔がぐずぐずになってる。今拭いてあげるから・・・」

「うるざい!うるさいよぉ・・・!」

「―――!!先生、201号室の雨宮さんの意識が戻りました!!」

 

 

 

その後はお医者さんを連れて戻ってきた看護師さんが泣きじゃくる切奈ちゃんを介抱し、後からやってきた父さん、母さん、お姉ちゃん、そして何故かいるオールマイトと共にお医者さんから今回の怪我について説明された。

「―――君の怪我は腕の内側から爆竹が破裂するみたいな衝撃が生まれてそれによって腕がぶっ壊れてる、みたいな感じなんだよ。今回はリカバリーガールの治癒でなんとかなったけど、今後こういった怪我がもし続けば、下手すれば腕が使えない生活になる可能性があるからね。そこんところ気を付けて。」

「・・・はい。」

「あと、お父さん、例の“個性調べ”の件ですが―――」

「水月、本当に大丈夫?もう痛くない?」

「大丈夫だよ母さん。ほら、この通り。だからお姉ちゃん、そろそろ僕の背中から離れてもいいんじゃない?」

「・・・駄目。もう少し・・・。」

お姉ちゃんは僕の背中にぴったりと張り付いていた。

「許してあげて。柚月、水月の事ずぅっと心配してたんだから。あ、あと、あの子もそうね。お医者さん行ったからもう入っていいよ。いらっしゃい切奈ちゃん。」

母さんが呼ぶと、病室に切奈ちゃんが入ってきた。

 

「感謝しなさいよ?この子、水月が入院してからずぅっとあなたのそばで見てたらしいんだから。」

「いえ、雨宮さん、私はそんな・・・。柚月さんの方が私なんかよりずっと・・・」

「こんなカワイイ子が看てくれてるなんて、お姉ちゃんちょっと嫉妬しちゃったかも。」

切奈ちゃんを取り巻く会話の中、僕はそこまでほわんほわんとしていられなかった。

 

 

「水月、お客さんだ。」

父さんがドアを開けて言うと、その後ろにはオールマイトと小さいおじいさん、デクちゃん、刑事さんがいた。

 

「あっ、え?オールマイト!?」

「初めまして。お邪魔してしまい申し訳ありませんが、少々、雨宮少年とお話がありまして・・・。」

「機密事項なので、席を外していただけないかと。」

「あ、わかりました。」

「・・・じゃあね水月。」

「うん。じゃあね切奈ちゃん。」

三人が病室を出て、部屋には僕、父さん、オールマイト、デクちゃん、おじいさん、刑事さんの6人がいた。

 

「・・・それで、お話というのは・・・。」

「・ああ、話、というのは、君の“個性”の話だ。君が寝ている間、君のお父さんに君の個性“個性再現”の話は聞かせてもらったよ。」

「さっき医者と話していたのは、お前のその“個性再現”についての調査結果についてだった。

 

 

 

 

 

結論から言うと、今のお前に“個性再現”は無い。」

「・・・・・・え?」

完全に想定外の返答が来た。

「えっと・・・え?でも父さん、合宿の時言ってたよね?『水』が父さんから遺伝した“個性”で、母さんから遺伝したのが『個性再現』だって!」

「落ち着け。確かにあの時点では俺はそう思っていた。というか、恐らくあの時点での俺の予想は正しかった。『あの時点では』な。」

「あの時点って・・・。」

「お前が攫われる前の時点だ。それと・・・無い、といったが、厳密には、“個性再現”という“個性”は確認できなかったらしい。」

「どう違うの?」

「“個性再現”は確認できなかったが、それらしき別の個性は確認されたそうだ。」

「それらしき・・別の?」

「ああ。それで驚くべきことに、その“個性”は、お前の『水』の個性因子を呑み込んでいるらしいんだ。」

「は?」

「そこからは私が話そう。」

≪いや、僕から話そう。≫

突然室内にいた全員の脳内に声が響いた。

「誰だ!?」

「さっきの声、ここにいる誰の声とも声質が合致しないぞ!」

≪ああ、驚かせてしまってすまないね。≫

その直後、僕の肩にポン、と誰かが手をのせた。しかし、今室内にいる全員は僕の目の前にいる。じゃあ一体誰が・・・。

 

 

 

 

振り返ると、背後に白髪で細身の男が立っていた。

「うわあああああ!!?」

「水月くん大丈夫!?」

突然椅子から転げ落ちた僕を心配してデクちゃんが背中を持った。すると

「え、ええええええ!?」

デクちゃんも驚愕の声を上げた。

「で、デクちゃんも見えてるの?」

「水月くんも?」

「おいおい君たち大丈夫か?」

刑事さんが僕の手を掴んで引っ張り立たせるが

 

「・・・あれ、刑事さんは見えてないの?」

「何のことだか分からんが、それより今の声の主を探すぞ。」

≪その心配はないよ。今君の目の前にいる。≫

「!!?」

刑事さんがバッと身を構えた。

「・・・本当にいるのか?」

「はい・・・います。」

≪八木くん、君も水月(かれ)に触れてくれ。≫

「・・・何故私の名を。」

そう言いながら僕に触れたオールマイトは、どうやら僕やデクちゃんのように白髪の男性が見えているようだった。

 

 

 

「というか、あなたは誰なんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

≪僕は死柄木与一。君たちが言うところの、ワン・フォー・オールの初代だ。≫

「「「「!!?」」」」

((わんふぉー・・・おーる?))

 

 

 

 

「・・・えーっと、つまり、あの(ヴィラン)・・・オール・フォー・ワンの弟であるあなたが、AFOに『力をストックする』“個性”を与えられて、それがもともと持ってた『個性を譲渡する』“個性”と混ざり合って『ワン・フォー・オール』っていう“個性”が誕生して、それがAFOとの戦いの中で何代にもわたって継承されていって、その8代目がオールマイトで、9代目がデクちゃんだと・・・。」

 

≪そういうことだよ。ワン・フォー・オールは元来、兄さんに対抗するための個性だけど、八木君がそれを果たしてくれた。≫

「でも、なんだってその初代のあなたがここに?」

 

≪端的に言えば、君にもワン・フォー・オールが発現したからなんだ。≫

「なんですと!?」

オールマイトが喀血しながら驚いた。

「ワン・フォー・オールは譲渡する意思の下、DNAの摂取による譲渡のはず・・・それがどうなって雨宮少年に発現したというのです!?」

 

 

≪・・・それは俺から話そう。≫

与一さんの隣に黒いバンダナのようなものを巻いた男が現れた。

 

 

「あなたは?」

≪俺は三代目だ。≫

「ではあなたが・・・!!」

オールマイトが反応した。僕もこの人はなんというか・・・体が知ってる。

 

 

≪驚くかもしれないが、冷静に聞け、水月。≫

三代目は僕を指さした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪お前は俺の子孫だ。≫

その一言で、その場にいた全員が息をのんだ、

 

 

「え?そうなの?」

事の凄さを理解してない当人()を除いて。

 

「雨宮少年が・・・三代目の子孫!?」

「・・・どうやって生き残ったんだか。」

「そこは確認しておきたい。」

 

≪俺はリーダーからOFAを継承した後に子供を産んだ。そして妻と四音を当時まだAFOのコマが殆どいなかった海外へ逃亡させた。おそらくその子孫がお前だ。≫

「その時にはもうAFOの協力者が海外にもいたのか?」

≪ああ。おそらく今はもう世界各地にアイツのコマが潜んでいるだろう。≫

 

 

「僕が三代目の子孫って言うのはわかったけど、それがOFAの発現とどう関わるの?」

≪与一が言っただろう?OFAはDNAを摂取することで譲渡されると。≫

「うん。」

≪譲渡する意思が皆無だったからはっきり言って想定外だったが、OFAはどうやら譲渡の意思の有無関係なく、子孫にも継承されるらしい。≫

「子孫にも・・・継承。しかし、三代目、あなたは子供を産んでから四代目へ譲渡したという認識でよろしいでしょうか?」

≪ああ。≫

「それでしたら、あなたのお子さんへOFAが譲渡され、四代目へ譲渡する前にOFAが潰えてしまうのではないですか?」

 

 

≪説明が難しいが、それが最も予想外だった点だ。継承、と言ったが厳密にはコピーのようなモノらしい。≫

「コピー?」

≪ああ。俺やリーダー、そして今の緑谷や八木のように代々譲渡の意思の下継承されてきたオリジナルとは違う。だからなのかは分からないが、水月(こいつ)が発現させるまでは、OFAに発現の気配はなかった。ただ、発現はしなかっただけで、OFAの本来の能力である「力のストック」と「個性の譲渡」自体は動いていた。≫

≪緑谷くんに譲渡されたワン・フォー・オールと違い、、このOFAはいわばバックグラウンドで動き続けていたようなものだね。≫

 

「バックグラウンドで、か・・・。ん?でもじゃあなんで僕の中のOFAは発現したの?」

≪ああ、それは多分、お前の「個性再現」と・・・俺の所為だ。≫

「三代目の?」

≪お前の「個性再現」は、遺伝子に宿る“個性”を再現できる、そうだろう?≫

「うん、父さんに聞いた話では。」

≪その「個性再現」が遺伝子に宿るOFAと接触できたこと、そして・・・恥ずかしい話だが、OFAに宿っていた俺の意思が、お前がAFOと邂逅したことで今までに無いほどに表層化し、それが「個性再現」と接触した結果、バグのような現象が起き・・・お前の「個性再現」を乗っ取る・・・いや、触媒のようなカタチで利用し、発現したと、俺は考えている。≫

 

「・・・だいぶ偶然の連続みたいな感じだったんだね。」

「偶然どころか・・・“個性”の歴史上でも類を見ないほどの奇跡のような現象だ。」

≪まぁ、ワン・フォー・オールの成り立ちそのものが奇跡のようなモノだからね。≫

 

 

 

 

「私や緑谷少年に譲渡されたオリジナルとは違う・・・

 

言うなれば、アナザー・(もう一つの)ワン・フォー・オール』か・・・。」

 

「・・・そういえば、与一さんと三代目はなんで僕たちと話せてるの?」

≪それに関しては、君の「個性再現」によってOFAに宿っていた僕たちの意思が引き出されたから、といった感じかな。ちなみに水月くんや緑谷くん、八木くん以外とも話せているのは、アナザー・ワン・フォー・オールに宿っている“ある個性”のお陰だよ。≫

「その“ある個性”って」

≪おっとそろそろ時間だ。いきなり長時間こうして話しているとキミへの負担が大きい。続きはまた次の機会にだ。≫

「えっちょ・・・」

 

 

それだけ言うと与一さんと三代目の姿がモヤのようにフッと消えた。

 

「・・・とんでもない情報だったな。」

「まさかこの小僧が三代目継承者の子孫だったとはな。」

「俺を含んでいない、ということは三代目との血縁は母さん(卯月)の方か。」

「―――まぁ、大分話がそれてしまったが、つまり君の『水』はAOFAに呑み込まれている・・・正確には()()()()されている。」

 

「とにかく、君には後日事情聴取を受けてもらうから、今はしっかり休んでくれ。それでは、私はこれで。」

「俺も行く。」

「俺の方も、そろそろ休憩が終わる。それじゃ水月、大事にな。」

「うん・・・。」

 

こうして部屋には僕とデクちゃん、オールマイトの三人だけが残った。

 

 

「・・・これで君はワン・フォー・オールのことを知ってしまった訳だが、私から一つお願いがある。」

「お願い?」

「どうか、このことは内密に頼む。もし緑谷少年が私からワン・フォー・オールを継承したことが知られれば、社会に混乱をもたらしてしまう。それだけでなく、ワン・フォー・オールを狙う者も現れるだろう。・・・無論、君の持つアナザー・ワン・フォー・オールも例外ではない。」

そのとき、部屋のすぐ外で何かが落ちる音がした。

「誰だ!!」

 

オールマイトの声が響いたのち、その人物は病室に入ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「切奈ちゃん!?」

「あぁー・・・その・・・どうも。」

切奈ちゃんはリンゴが入ったかごを持っていた。さっきの音は多分これが落ちた音だ。

「・・・どこから聞いていたんだ?」

「えっと、その・・・入ろうと思って病室に言ったら刑事さんたちが病室から出ていくのが見えて、ちょうどいいやって入ろうとしたら中から話声が聞こえて、急いで壁に隠れて・・・大体わん・ふぉー・おーるがどうこうって辺りから・・・。」

「そうか・・・知ってしまったか。」

「オールマイト・・・。」

「いや、すまない。油断していた私の責任だ。」

「いえ、そんな・・・。」

「取蔭少女、一旦外へ。一応事情を話しておこう。ともかく雨宮少年、今はゆっくり休みたまえ。」

「はい。」

こうしてオールマイトと切奈ちゃんも部屋を出て、今は僕とデクちゃんしかいない。

 

 

「大変だったね、水月くん。怪我はもう大丈夫なの?」

「あ、うんそれはもう。明日にでも退院できるって。・・・ねえ、デクちゃん。」

「ん?なに?」

「OFAは、譲渡された“個性”なんだよね。」

「うん、そうだよ。」

 

「デクちゃん自身の“個性”は何?」

 

 

「―――僕、“無個性”なんだ。」

 

 

「―――――え?」

「珍しいよね。この超人社会・・・ほとんどの人が何かしらの“個性”を持ってるって言うのに、僕はそれが無かったんだ・・・。」

「・・・ごめん。きっと、たくさんつらい思いをしてきたよね・・・。」

「ううん、いいんだ。それに、今の僕は、憧れの人に導いてもらって、僕を支えてくれるたくさんの人たちがいる・・・むしろ、恵まれてるよ。」

「―――強いね、デクちゃんは。」

 

 

 

 

 

 

「・・・ところで、デクちゃんは継承してからどのくらい経つの?」

「えーっと・・・雄英受験の日に髪の毛を食べたから・・・大体半年くらいかな。」

「髪の毛・・・ってことは、オールマイトの髪食べたの?」

「うん。ちょっとすっぱかった・・・。」

「そ、そうなんだ・・・。」

オールマイトの髪の毛もそうだが、それ以上に気になることがあった。

 

「まだ、継承して半年なんだ・・・。」

「・・・うん。だからまだまだ全然使いこなせてないんだよ。」

「仕方ないよ、たった半年でいきなり個性を使いこなせとか無理があるもん。それに、僕も発現したばっかりだし・・・。」

「そうだね。お互い、立派なヒーローになれるよう頑張ろう!」

「・・・うん、そうだね。頑張ろう!」

そしてデクちゃんも帰り、ついに僕だけになった。

 

 

 

「・・・激動だったな。」

林間合宿からの神野の悪夢・・・オールマイトの引退も含めて、とても濃密な4日間だった。時計を見ると、すでに4時を過ぎていた。

「もうこんな時間か。」

窓から差し込む夕日に目を向けると、ドアをノックする音が聞こえた。

 

 

「水月。」

「切奈ちゃん?」

 

 

 

「ちょっと、一緒に屋上に来てくれない?―――伝えたいことがあるの。」




水月「次回 切奈ちゃんが伝えたいこととは―――
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.50 伝えるオモイ

 切奈ちゃんに連れられ、僕は屋上に着いた。この病院の屋上は庭園になっていて、草花のやわらかい香りが漂っていた。

 

 

「それで切奈ちゃん、伝えたいことって―――・・・」

「・・・ん、ちょっと、こっち来て。」

切奈ちゃんに誘われ、庭園の端に来た。

 

目の前に、鮮やかな夕日が広がっていた。

「・・・・・・。」

「――――――

 

 

 

 

はぁー。やっぱダメだわ。」

「?」

「なんかこう、ロマンチックなこと言おうと思ったけど、私じゃ無理だわ。だから、もうストレートに言うね。

 

 

 

 

 

 

 

水月が好き。アタシと―――付き合って。」

 

 

 

 

 

「え?」

僕の心臓がドクンと大きく動いた。

 

 

「正直恥ずいから言えなかったって言うか、気付かないフリしてたけど・・・でも、今回の事件で分かったんだ、アタシ。

 

もしかしたらアンタが明日いなくなっちゃうかもしれない。二度と会えなくなるかもしれない。アタシの思いが、水月に一生届かないかもしれない。

 

 

そんなの絶対やだ。だからもう、自分の気持ちに嘘はつきたくない。」

 

 

 

「――――――・・・」

言葉が出なかった・・・。

 

 

 

「・・・えーっと、できれば何か返事とか欲しいんだけど・・・。」

「あ、ごめん!その、あまりに突然だったから・・・。」

「突然じゃない告白ってあるの?」

くすくすと笑いながら切奈ちゃんが聞いた。

 

 

 

 

 

 

「―――僕でよければ、ぜひ、お付き合いさせてください。」

 

 

「じゃあ、これからは彼氏彼女・・・ってことで。」

「・・・なんか照れくさいというか、不思議な感じ。」

「いつもの『切奈ちゃんカワイイよー』って感じはどーしたんよ。」

切奈ちゃんが笑いながら僕の脇腹を小突いてきた。

 

「あ、でもちょっと・・・。」

切奈ちゃんが僕の手を握って言った。

 

「・・ちょい恥ずいから、他の皆にはまだ内緒で。」

「はいはい、わかったよ『カワイイ』切奈ちゃん。」

 

僕たちは淡い空気に包まれながら屋上を後にした。

 

 

 

 

 

 

『ヒーロービルボードチャートJP!

 

事件解決数 社会貢献度 国民の支持率など諸々を集計し毎年二回発表される現役ヒーロー番付!!

 

不動のNo.1がまさかの!!日本のみならずヒーローの本場アメリカでも騒然!

 

オールマイト本当の姿 体力の限界!!事実上のヒーロー活動引退を表明!!

 

そしてNo.4ヒーロー・ベストジーニスト!一命はとりとめたものの長期間の活動休止!!

 

一夜にして多くのヒーローたちが大打撃を受けた“神野の悪夢”!!これからどうなる日本!そしてヒーローよ!以上、今日のクイックニュースでした!続いてはお天気!木原さーん』

 

 

「その身を犠牲に多くを救ってくれた。国民 ヒーロー そして校長として、感謝してもしきれやしない。」

雄英高校、その校長室にて、根津校長がオールマイトに離していた。その隣には、イレイザーヘッド、ブラドキングもいた。

 

「ただ・・・世間では君が雄英教師を続けるのに少なからず批判意見も出ている

 

『元はと言えばオールマイトが雄英に赴任したのが問題』『戦えない体になった今こそ再び子供たちが巻き込まれるのでは?』・・・

 

 

皆不安なのさ。だからこそ今度は我々で紡ぎ強くしていかなきゃならない。君が繋ぎ止めてくれたヒーローへの信頼をね。」

 

「あの一件で気付かされました。あなた一人に背負わせてしまっていたこと。背負わせていたものの大きさ。」

胸に手を当て、懺悔するようにブラドが言った。

 

「脅威はまだ拭いきれていない。これからはより強固に守り育てていかなければならない・・・そこで兼ねてより考えていた案を実行に移すのさ。私はブラドと被害の大きかったB組へ、オールマイトとイレイザーヘッドはA組へ・・・

 

よろしく頼むね、家庭訪問。」

 

 

オールマイトとイレイザーが校長室を出ていく中、ブラドキングが好調に聞いた。

「今回の家庭訪問、やはりそう簡単に行くとは思えませんな・・・。」

「そのくらい覚悟の上さ。僕たちには生徒の安全と育成を保証する責任があるからね。特に雨宮くんの家庭は苦労するだろうから、お互い頑張ろう。」

 

 

 

「全寮制の話か。いいだろう。」

「・・・え?」

予想していなかった父さんからの快諾にブラド先生が驚いた。

二人は今ちょうど僕と姉さんが一旦帰省しているということもあり、実家の方に家庭訪問に来ていた。

「ブラド先生、校長先生、お茶お持ちしましたよー。」

「おお、ありがとう雨宮・・・。」

「ちゃんと校長先生の分は紅茶にしてありますよ。」

「気が利いてるのさ。」

 

「あ、先生方、お菓子とかどうですか?ちょうど私が昨日作ったクッキーがあるんですよ。」

「ありがたくいただくのさ。」

母さんも手作りのクッキーを待ちわびたかのように持ってきた。

「えーと、それで、よろしいのでしょうか・・・?」

「え、あ、はい!大丈夫です。

 

水月は小さいころからずっとヒーローに憧れてて、でも周りからは個性の強さだったり、龍水さんの息子ってところばっかり取りざたされてた時があって・・・

でも、この子入学してからメールやチャットで、たくさん学校の話をしてくれたんですよ。友達となになにしたとか、先生に練習付き合ってもらったとか、写真だってたくさん送ってくれて・・・。

たしかに水月は怖い思いをたくさんした。でも、私は、雄英の先生方は水月をちゃんと導いてくれるって、あの会見を見て思いました。」

「俺も同じ意見だ。水月を最大限成長させられるのは雄英しかないし、雄英のセキュリティは並みの高校にはないものだ。なにより・・・

 

雄英OBの俺の感が言ってる。根津校長(あなた)は、この状況から前に進める存在だ、ってね。」

「元“雄英ビッグ3”にそう言われたら、こっちもがんばっちゃうしかないのさ。」

 

こうして、家庭訪問はつつがなく終わった。

「ブラドキングさん!」

玄関先でブラドキングが呼び止められた。

「あなたは確か・・・?」

「水月の姉の柚月です。その・・・

 

水月のこと、よろしくお願いします!

私の大切な弟の事、頼みます。」

柚月は深々と頭を下げた。

 

「柚月さん、言われずとも、弟の水月くんは、私が責任を持って!しっかりと!教え導いて見せます!」

ブラドキングはドン、と胸をたたいて言った。

 

 

 

 

 

こうして、僕のこれまでの“普通”の生活は終わり

 

そして始まる

 

 

雄英での

 

 

新生活が!




取蔭「次回 回原円場ほぼコス一緒。
さらに向こうへ Plus Ultra!」

初めての恋愛描写・・・トモダチと違う関係ってのは書くのが難しいデスね。


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プロヒーロー仮免試験編
No.51 編め必殺技


 

雄英敷地内 校舎から徒歩5分の築3日

 

“ハイツアライアンス”

 

ここが新たな僕の―――いや、僕らの家だ。

 

「でっっっか!!」

「うおおおおおおすっげぇ―――!!!」

 

はしゃぐ僕らを校舎から遠巻きに根津校長が見ていた。

(・・・今回の寮制は生徒の安全を確保するだけじゃない、以前拭えぬ脅威・・・内通者を見極めるものでもある。長く漂った不穏な空気を一旦断ち切る為、大っぴらな捜査は避け秘密裏に探っていく。教師だけでなく生徒にまで疑いの目を向けるのは・・・辛いことだが立場上仕方あるまい。

 

象徴の喪失・・・その影響は時を経るにつれ大きく表れるだろう・・・とにかく今は奮起・再興の流れが必要だ。少なくとも生徒(こども)らには明るい未来を指し示していかなくては―――・・・)

 

「なにはともあれ、1年B組!全員集まることができて何よりだ!」

「皆許可下りたんだな。」

「俺大変だったわ・・・。」

「ガスでdownしていた人は大変そうデース・・・。」

「先生も無事でよかったですよ。会見見たときほんと焦りましたよ。」

「心配するな拳藤!と、言いたいところだが、今回ばかりは驚いた。まぁ、色々な大人の事情ってモンがあったんだ。」

(下手に動かすより泳がせた方が尻尾が出る可能性はある・・・といった感じか・・・。)

「つかマジで一番ヤバかったの水月だろ!あんなのとやり合ってたんだからよ・・・!」

「そうノコ!もう体は大丈夫ノコ?」

「心配したぜ。ブラド先生から『水月は大事な話と安静の必要があるからなるべく会うな。』って言われてたからよ。」

「え?」

「アタシはブラド先生に許可貰ったんだよ。」

耳元で切奈ちゃんが囁いた。

 

「さ、世間話はここまでだ!寮について説明・・・の前に一つ!当面は合宿で取る予定だった、“仮免”取得に向けて動いていくぞ!」

「そういやあったなそんな話!」

「色々ありすぎて忘れてた!」

 

「よし!それじゃ、早速寮に入るぞ!ついて来い!」

ブラド先生が大手を振って寮へ向かった。

 

「・・・なにぼーっとしてんの?早く行くよ水月。」

「・・・うん、そうだね。切奈ちゃん。」

 

ここが今日から 新しい僕の家になる。

 

 

 

 

「1棟1クラス、右が女子棟、左が男子棟だ!ただし1階は食堂・風呂・洗濯の共同スペースとなっている!」

「広ぇええええ!!」

「中庭もあるのかよ!」

中は思った以上に広い。なんとなくホグワーツの談話室を思い出す。

「部屋は2階から1フロアに男女各4部屋の5階建てで、一人一部屋、エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きだ!」

「うっひょぉー贅沢!!」

「ベランダもある・・・。」

 

「部屋割りはこっちで決めた通り。各自事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってるぞ。詳細な連絡は明日するから今日はとりあえず部屋作ってゆっくり休め!以上解散!!」

「「「はい!!」」」

 

 

 

・・・というわけで、荷解きから数時間、やっと部屋作りが終わった。

「はぁーつっかれた・・・。みんな終わったのかな?」

なんて思ってるとインターホンが鳴った。この寮では各部屋にインターホンがついてる。

「・・・っと、切奈ちゃん、どうしたの?」

「・・・や、その。ちょっと手伝ってほしいかな~なんて。」

「いいよ。僕も丁度終わったところだし。」

 

そんなわけで切奈ちゃんの部屋に着いたわけだけど・・・

 

「うぉ・・・。」

まだ途中だからというのもあると思うけど、ごちゃごちゃしてた。

「切奈ちゃんってもしかして、片付けニガテ系とかのアレ?」

「い、いや、違うからね!?まっさらなトコに配置するのがアレってだけで・・・。」

なるほど、そういうアレか。

「任せといて。僕こういうの得意だから。“()()()ね。」

そこから僕は10分もかからずにいい感じの部屋に仕上げた。

 

「―――やば。」

「こういう大き目な物を動かすのは『水』の得意場だからね。」

「・・・ねぇ水月、もうちょっとここで」

「あ、いたノコ!水月、私と唯の部屋の家具動かすの手伝ってほしいノコ!」

「ん。」

「はいはい、今行きますよ。じゃ、切奈ちゃん、またあとで。」

「あ、うん。」

 

 

「―――もうちょいグイグイ行った方がいいかな・・・?」

 

 

 

そんなこんなであっという間に夜になった。

 

「ふぅー・・・。」

「水月、マジありがとな!」

「おつかれ。これ飲む?」

「あ、うんありがと。・・・うえぇ苦・・・。一佳ちゃんこれブラックコーヒー?」

「あれ?水月ブラック苦手なん?へぇー。けっこう子供っぽいとこあんだね。」

「子供じゃなくてもブラックは苦手だと思うけど・・・。」

「そうか?俺は普通にいけるぞ。」

「え?」

「俺も。」

「もう慣れたわ。」

「ウチも今は割と好きだけど・・・。」

「―――皆オトナだねぇ・・・。」

 

「水月。」

「切奈ちゃん。ごめんね皆。僕はもう席外すよ。」

「おう!ゆっくり休めよ!」

「元気にね。」

 

 

僕らは外に出て夜空を仰いだ。

「・・・長いようであっという間だったね、1学期。」

「そだね。アンタと戦闘訓練でビルを水没させたのが懐かしい。」

「あっはは。あったねそんなこと。あの作戦はさすがにもうできないかな。」

「あんたが体育祭優勝宣言して、皆それにつられてめっちゃやる気出してたよね。」

「切奈ちゃんもでしょ。ま、僕は優勝できなかったけど。いつかかっちゃんにはリベンジしたいな。」

≪勝てる算段はあるのか?≫

「そりゃもう今まで食らった技の対策は―――・・・」

僕は声の方を振り向いた。すると、あろうことか病室の時のように三代目が幽霊のように宙に浮いていた。下半身が白いモヤになって。

 

「うおびっくりしたぁ!!?え?三代目!?なんで!?」

「ちょっ水月、いきなり何大声出してんの?」

「・・・切奈ちゃん見えてない?」

「逆に何か見えてんの?」

≪俺や与一の姿はOFAを宿している者にしか見えない。≫

「・・・三代目がここらへんにいるんだけど、なんか、OFAがないと見れないとかなんとか。」

「三代目・・・あー、水月のおじいちゃんだっけ?そういうアレなんだ・・・。それで、その三代目はなんて言ってるの?」

「勝てる算段はあるのか、だって。」

「ある?」

「もちろん。ただ、やっぱ土壇場で普通に超えてきそうなんだよね・・・。」

「そこらへんのアドバイスは三代目はしてくれないの?」

≪すべてを教えるだけでは成長につながらない。≫

「・・・自分で考えろだって。」

「薄情なおじいちゃんだね。なんか孫に対して優しさとかないワケ?」

「切奈ちゃんさすがにそこまでは・・・」

 

≪――――≫

「え?」

 

「三代目はなんて?」

「・・・『自分の手札を再確認しろ』って。」

 

 

 

翌日

 

「おはよう!昨日話した通り、まずは“仮免”の取得が当面の目標だ!」

「はい!」

「ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ!当然、取得のための試験はとても難しい!仮免と言えどその取得率は例年5割を切る!」

「仮免で!?」

「そこで今日はお前たちに最低でも一つ、

 

必殺技を作ってもらう!!」

 

「「「学校っぽくてそれでいて

 

ヒーローっぽいのキタァアア!!!」」」」

 

 

「必殺!コレ スナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」

 

「その身に沁みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

 

「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

 

「詳しい話は実演と共に行う!コスチュームに着替え、体育館γに集合だ!」

 

 

 

体育館γ・・・通称―――・・・

 

トレーニングの(T)台所(D)ランド(L)  略してTDL!!!」

(((TDLはマズそうだ!!)))

 

「ここは俺考案の施設、一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ。」

「なーる。」

「ブラド先生、ちょいいいスか?」

「何だ泡瀬。」

「なんで必殺技なんですか?仮免取得に向けて動くんですよね?」

「順番に離すから待て。ヒーローってのは、事件、事故、人災、天災・・・あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ!取得試験では当然!その適正を検査されることになる!

 

情報力・判断力・機動力・戦闘力・コミュニケーション能力・魅力・統率力・・・多くの適性を毎年違う試験で試される!」

「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する!」

「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘能力を有していることになるんだよ。」

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ・・・水月クンノ“アクア・フェアリー”。水ヲ用イタ立体的デ自由度ノ高イ移動手段・・・空中トイウフィールドヲ統ベル事自体ガ有効トナル。」

「あ、あれ必殺技カウントなんだ。」

「なるほど。自分の中に『これさえあれば有利・勝てる』って方を作るってわけね。」

 

「そ!先日活躍したシンリンカムイの『ウルシ鎖牢』なんか模範的な必殺技よ。わかりやすいよね。」

「中断されてしまった合宿での『“個性”伸ばし』は、この必殺技を作り上げるためのプロセスだった。つまりこれから後期始業まで、残り十日余りの夏休みは、個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す―――・・・圧縮訓練となる!

 

尚、個性の伸びや技の性質に合わせて、コスチュームの改良も並行して考えていくように!Plus Ultraの精神で乗り越えろ!準備は良いか!!」

「「「はい!!!」」」

 

 

 

「そりゃッ!」

「フム・・・手ヲ回転サセ殴ル・・・言イ方ガ悪イガ、パットシナイナ。」

「・・・はい!」

(それつまり地味って事か。きちぃ・・・。)

 

「Fire!」

「ソノ角ハ2本ズツシカ射出デキナイノカ?」

「・・・試したことないデース!」

「デハ、ヤッテミセロ。」

言われた通り角を2本射出した状態で再び生えた角を試しにやってみたところ・・・

「Oh!できましたデース!」

「デアレバ、何本カ角ヲ射出シタ状態デ多角的ナ攻撃ヲ試シテミルゾ。」

「OKデース!」

 

 

「・・・お、そうだ、水月!」

「?なんですか。」

早速必殺技を試そうとした僕の所に、ブラド先生がなんか封筒を持ってきた。

「これがお前あてに届いていた。差出人は「雨宮柚月」と書いてある。」

「お姉ちゃんから?」

受け取った封筒を開けてみると、中には手紙が入っていた。

 

『水月へ 

いきなりの連絡でごめんね。ほんとは実家で渡したかったんだけど、やっぱり完成度を高めたくて結局遅れて郵送になっちゃった。

 

でも、これが今の水月に合わせた、最適最カワ最高設計図なの。今の私にはこれくらいしか出来ないけど、応援してるから頑張って。

柚月』

 

 

 

「・・ブラド先生!コスチューム改良ってどうすればいいですか!?」

 

 

 

そんなこんなで四日後―――・・・

 

体育館γ トレーニング真っ最中

 

 

「やあブラド。必殺技の進捗はどうだい?」

「オールマイト。ちょこちょこ、必殺技がカタチになってきたものがいます。」

 

「キャストアウェイ!」

取蔭が体を分裂させた。なんとその数は42個だった。

「四日前ト比ベ、各段ニ分裂数ガ増エタナ。」

「はい、おかげさまで。」

 

「エアプリズン!」

円場が朽ちの前で手を四角く構え、空気を凝固させた。

「硬度モ向上シテイル・・・ヤルナ。」

 

 

「スタイルが定まってきた者も、複数の必殺技を習得した者もいます。」

 

 

「お!回原、おまえその指のやつなんかいいな!」

「おう円場。お前の方はあんまり変えてないんだな。」

「俺は個性の方伸ばしたからな。」

 

「二人ともコスチューム割とかぶってるよね。」

「しっ取蔭。あんまりそういうこと言わないでやんなよ。気にしてるかもしれないんだから、特に回原。」

「聞こえてるぞ。」

 

 

「ヒャハハァ!」

鎌切がエクトプラズムに切りかかり、エクトプラズムがひらりと交わしたが刃の勢いが止まらず、そのまま岩を切り裂いた。

 

 

「・・・!ヤベッ」

鎌切が切り裂いた岩がそのままオールマイトの頭上に向かって落ちて来た。

「オールマイト!」

「マズい・・・!」

 

 

その時、岩が何者かに殴り砕かれ、その破片が水で覆われた。

 

 

 

「ケガはないですか、オールマイト?」

 

 

「早いな。雨宮少年。」




回原「次回 水月の新コスチューム!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」

TDL使ってんのA組が先だろとか言われそうですが、そこらへんはブラド先生が時間とかスケジュールとかなんかうまいこと調整してくれました。さすが!


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No.52 心浮かぶ

―四日前―

 

 

『コスチュームの改良について、専門外の事は考えても分からん。もし何か弄りたくなったら、校舎一階にある開発工房へ行き、専門の者に聞くように!』

 

というブラド先生の忠告通り、僕は開発工房に向かった。

「ここが開発工房・・・。」

物々しい室名の通り、扉が他の教室と比べ明らかにゴツい。

 

「よし、

 

 

―――失礼しま」

BOOOOOM!!!!

 

分厚い鉄の扉を開けた僕を出迎えたのは、大爆発だった。

 

 

 

「回原、なんかコス改良しに行くのか?」

「ああ、ちょっとただ打撃戦とかだけじゃなくて、もっと俺の『旋回』を生かせる感じのサポートアイテムが欲しくてな。そういう骨抜は何しに行くんだ?」

「俺は全体の抵抗力上げてもらって、柔化した地面泳ぎやすくしてもらうつもり・・・ん?あれなんだ?」

二人の視線の先には、室内とは思えないくらいの爆煙が立ち込めていた。

 

 

「フフフフ・・・いたたた・・・・。」

「ゲッホゲホッ・・・!お前なァア・・・。思いついたものポンポン作って爆発させんじゃないよ。お前は爆豪か。」

「フフフフ・・・失敗も爆発も努力の一つですよパワーローダー先生。かのトーマス・エジソンも仰っていますよ、『天才とは、1%のひらめきとと99%の努』・・・」

「それ真偽定かじゃないだろ!というかいい加減ちゃんと俺の話を聞きなさい!発目!!!

 

パンパン、と発目の脇腹を何かが叩いた。

「おや?」

ふぉふぉい・・・ふぉふぉいんふぁへふぉ(重い・・・重いんだけど)。」

水月が発目の下敷きになっていた。

「あなたは・・・誰ですか?」

「・・・ふぁひはふぉ(マジかよ)。」

 

 

 

「突然の爆発失礼しました!!発目明です!お久しぶりですね!え―――と・・・全員お名前忘れました。」

「・・・ヒーロー科の雨宮水月だよ。」

「俺は骨抜柔造。」

「あ、俺は回原旋。ってかおい水月・・・」

 

旋ちゃんは僕の肩を引き寄せてひそひそ話した。

「なァ水月、ぶっちゃけどうだった?」

「どうって、何が?」

「とぼけんなよ!お前の顔面、あの発目って娘の・・・おっぱいの下敷きになってただろ!?実際どうだったよ!」

「・・・汗臭かった。そんくらい。」

「ハァ!?そんだけかよ!!」

「ちょっうるさい。」

(切奈ちゃんにバレたら殺される・・・)

「旋ちゃん、間違ってもさっきのアレは誰にも話さないでよ。」

「ああ、分かった。」

 

 

「では私!ベイビー開発で忙しいので!」

「あ、ちょ、コスチューム改良の件でパワーローダー先生に相談が」

「コスチューム改良!?

 

興味あります!!

「うあ近。」

「発目・・・。」

部屋の奥からパワーローダー先生がのっそり出て来た。

 

「寮制になって工房に入り浸るのはいいけど・・・このまま荒らしっぱなしのままだと出禁にするぞ・・・くけけ・・・・。

 

ブラドキングから聞いてる。必殺技に伴うコス変の件だろ。入りな。」

 

パワーローダー先生に案内され、僕らは工房の中に入った。

 

 

「うわぁ・・・。」

「すげー・・・秘密基地ってカンジだな!テンション上がる~!!」

 

「じゃぁコスチュームの説明書見せて。ケースに同封されてたのがあるでしょ?俺許可証(ライセンス)持ってるから、それを見て弄れるところは弄るよ。」

 

その後のパワーローダー先生の説明をまとめて言うと、

・小さい修繕とかは雄英(こっち)でできる。

・大きな改良はデザイン事務所に依頼する。

・その場合大体3日でくる。

らしい。

 

「あ、僕一応姉から新しいコスチュームの設計図をもらったんですけど・・・。」

「どれ、見せてみ。」

パワーローダー先生に封筒を渡すと、慣れた手つきで設計図を取り出した。

 

「ふむふむ。」

その声は、

「はいはい。」

僕の体をひたひたと触る

「なるほど。」

明ちゃんから発せられた言葉だった。

 

「・・・何してんの明ちゃん?」

「フフフ・・・体に触れているんですよ。

 

はいはい、見た目より少しがっしりしてますね。そんな貴方には・・・

 

とっておきのベイビー、パンチラッシュスーツ!」

 

「えっと・・・。」

「着用者の疲労を無視して無縁にパンチを繰り出せるスーパーベイビーです!」

「いやだから僕設計図があ―――」

僕が続きを言おうとしたその時、僕の両腕が交互に連続パンチを繰り出し始めた。

 

「うおっすご・・・!」

「連続パンチとか脳筋だな。」

 

「ん・・・あれ?」

異変に気づいたのはすぐだった。

 

「ねぇ、このパンチとまらないんだけど。」

「え?お前の意思とかで止められるんじゃないのか?」

「そのベイビーはバッテリーが持続する限り理論上無限にパンチし続けます!」

とんでもないことを口走ったなこの子。

 

 

「ちょっ、まって、ほんともう、止まんない、腕が、もうっ・・・引き千切れれれれれれれ」

「水月!?」

「装着者の腕への負担を考慮していませんでしたね!ごめんなさい!」

明ちゃんは不敵に笑いながらベイビーの電源をオフにした。

 

「新しいコスの依頼に来たのに・・・腕を引き千切られそうになるなんて・・・。」

「自動操縦にすれば警備用ベイビーとしては使えそうですね。」

「その運用も十分危険だわ。」

 

 

「あの~すんません、俺、自分の“個性”を生かせる腕とかのサポートアイテムが欲しいんですけど・・・」

「そういうことなら」

明ちゃんがシャフ度みたいな体勢で旋ちゃんに顔を向けた。

「このベイビー!

腕に装着し、指から小型ミサイルを放てるガントレットです!」

「いやあの、俺の“個性”腕とか回転できる近接タイプのやつで・・・」

「スイッチオン!」

「話を聞けぇぇぇぇえええええええええ!!?

旋ちゃんの腕のベイビーから小型()()()()が撃ち出され、その反動で旋ちゃんは後方へ吹っ飛ばされた。

 

 

 

「俺()()()()()って言ったよねェ!?」

「フフフフさっき聞きました。でもですねぇ私思うんですよ。

 

近距離タイプは遠距離タイプにもなれるんですよ!」

「何言ってんだお前!?」

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

天―――

 

 

「いい加減にするんだよ。」

「暴力ッ!」

「マジで出禁にするよ?」

 

 

 

 

いや、まだ、何か・・・

 

天啓に至るには、まだ何かが足りない。

 

 

「すまんね。彼女は秒的に自分本位なんだ。」

「体育祭でよくわかってます。」

「ただまァ君らもヒーロー志望なら彼女との縁を大事にしておくべきだよ・・・きっとプロになってから世話になる。」

 

そこで柔造ちゃんはあるモノに目が行った。

「あの、アレって・・・?」

「ん?・・・あぁ、あの隅のゴミ山・・・あれ全部発目が入学してから作ったサポートアイテムさ。学校が休みの日でもここへ来て何かしら弄ってる。今まで多くのサポート科を見て来たけど発目はやっぱり特異だ。

 

なんとなくだけど、雨宮くん、君の姉の柚月を思い出すよ。」

「お姉ちゃんを・・・?」

「あの子もこことは違うデザイン室みたいなところに入り浸って、スケッチやらデッサンやら色々と常人とは比にならないほど作り出してきた。」

「そんなことを・・・。」

 

“常識とは18歳までに身に着けた偏見である”

 

アインシュタインの残した言葉だ。彼女は失敗を恐れず、常に発想し試行している。

 

イノベーションを起こす人間ってのは、既成概念に囚われない。」

 

 

 

 

 

―お前は俺の子孫だ―

 

 

―言うなれば、『アナザー・ワン・フォー・オール』か―

 

 

ああ

 

 

 

 

―まだ、継承して半年なんだ―

 

 

―自分の手札を再確認しろ―

 

 

 

天啓

 

 

 

「そっか・・・そういうことか、三代目・・・。」

 

「どうしたんだ水月・・・。」

 

 

「・・・そろそろ本題に戻るが、骨抜くんと回原くんのコス改良の方は明日にでも出来上がるけど、雨宮くんのほうは完全新規コスチュームだから事務所依頼で数日かかるよ。」

「うっす。」

「了解です。」

「分かりました。」

 

その後柔造ちゃんと旋ちゃんは工房を後にした。

 

「あ、雨宮くん。」

「ん?なんですか、パワーローダー先生。」

「帰ったらでいいが、柚づ・・・君のお姉さんに伝えといてくれ。

 

『いいモン作ったな。』って。」

 

「―――わかりました!」

 

 

 

 

「・・・ねぇ、三代目。」

≪なんだ?≫

「僕は、アナザー・ワン・フォー・オール使えるの?」

≪・・・使える。ただ、AOFA(それ)自体の最大出力はオリジナル(OFA)の最大出力の6、7割程が限度だ。≫

「・・・三代目の個性は?」

≪使える。≫

「なんで?」

≪・・・一つは、俺が神野でお前の体を使ったことに対する贖罪として使用を認めていること。もう一つは、お前の体で個性を使用したことで、お前の体が俺の“個性”・・・「発勁」の使用感を覚えているからだ。≫

「なるほどね。・・・『自分の手札を再確認しろ』って、こういうことだったの?」

≪・・・昨日言った通りだ。「すべてを教えるだけでは成長につながらない」。≫

「はいはい。助言ありがとねおじいちゃん。」

 

 

 

 

そして、現在―――

 

 

「ケガはないですか、オールマイト?」

 

「ああ。・・・早いな。雨宮少年。」

 

 

「水月お前普通に岩ぶっ壊したよな!拳で!?」

「お前そんなパワーあったっけ!?」

「あーえっと、あれだよ。『個性再現』で色々と、こう・・・ね。この四日間で破壊力を上げたんだ。」

「へぇー・・・よく分かんねぇけど、すげえな。」

 

(おそらく雨宮少年はこの訓練が始まってからの四日間しかAOFAを使っていない・・・。つまり彼は、緑谷少年のような考えて出力を調整するのではなく、私のような感覚で調整するタイプだったか。神野で三代目が体を借りていたから使用感が分かっているとはいえ、かなりのハイスピード習得だな。)

 

「オールマイト、危ないんであまり近寄らないように。」

「いや失敬!鎌切少年、すまなかった!」

「次から気を付けろォ!」

 

 

 

(“気を付けろ”か・・・。

 

“ケガはないですか”“危ないんで”・・・分かったつもりではいたが、

 

皆の意識下ではもう私、守られる側か・・・。)

 

 

 

「水月、コスチューム完全に前と変わったね。柚月さんのデザイン?」

「そうだよ切奈ちゃん。全体的に動きやすさ重視で近接も中距離も対応できる感じになってる。ただ、前よりも上半身のボディーラインが分かりやすいのはちょっと恥ずかしいかな。」

「それボディースーツ(アタシのコス)の前で言う?」

「アッはいそうですねすみません。」

「分かればよし。」

 

 

 

「ねえねえ拳藤。」

「ん、どしたの小森?」

「水月と取蔭、あの距離感ってもう付き合ってるんじゃないノコ?」

「それワタシも疑問デース。」

「うーん・・・普通の男だったらあれもう彼氏彼女の距離感なんだけど、如何せん相手が水月だからねぇ・・・。」

「水月は結構距離感がバグってるノコ。」

「だったらカマかけてみる?」

「なんか策でもあんのレイ子?」

「なんか回原が円場に話してるのがうっすら聞こえてただけだけど、水月がサポート科の女子とうんたらって・・・。」

「・・・ちょっと証言取ってくるわ。」

 

拳藤は回原の下に向かった。

 

 

 

 

 

「ねえちょい耳貸して取蔭。」

「ん?なに拳藤。」

一佳ちゃんが切奈ちゃんと何やらひそひそ話してる。

≪これはただの勘だがお前今すぐ逃げた方がいいぞ。≫

「へ?」

なんか途轍もなく嫌な予感がしてきた。

 

 

「ねぇ水月―――」

切奈ちゃんが突然僕の両肩をがっしりと掴んできた。

 

 

 

「サポート科の

 

発目って女子の

 

おっぱいに

 

顔面密着って

 

どういうことかな?」

 

 

僕はがばっと旋ちゃんの方を振り向いた。

 

 

 

 

「ワリッ」

 

 

ワリッじゃないよぉぉおおおおおおお!!!!!!

 

 

 

「ねぇ水月ィーーー聞いてんだけど・・・どういう了見なの・・・?」

「いっいや、違うよ切奈ちゃん!?あれはふか不可抗力、そう!工房で爆発が起きて、それで明ちゃんが吹っ飛んで来たときにたまたま僕が下敷きに」

「言い訳すんの?」

「そうじゃなくてっ・・・そ、そうだ、柔造ちゃん!」

僕は水で柔造ちゃんを持ってきた。

 

「柔造ちゃんもあの場にいたんだ!ほら柔造ちゃん!真実を言ってよ!あの時僕の顔におっぱいなんて乗ってなかったって!」

 

柔造ちゃんはこういう時穏便に、柔軟に解決するために多少ごまかしてくれる!そうきっと

「いや、お前さっき自分で『たまたま僕が下敷きに』って言ってたじゃんか。」

「―――」

 

 

「あ、逃げた。」

「待ちなよ水月・・・まだ話は終わってないよ!」

 

「お前達ィ!!そういうのは終わってからにしろォ!!!」

 

 

 

 

「いやぁ~今日も疲れたなぁ―。」

「ところでさ、アレ何?」

「取蔭のお仕置き。『取蔭をのっけて腕立て伏せ200回+水でコーラとマンガ置き場』の刑。」

「あー成程。だからコーラとマンガが浮いてるのか。」

 

 

「58、59、60・・・ねぇ、切奈ちゃんっ・・・これもう終わりでいいんじゃ、ないかな・・・?」

「さっさとやれー。」

切奈ちゃんが僕の尻をペシンと叩いた。

 

「完全に尻に敷かれてんじゃん。」

「あれはもう付き合ってるって解釈でいいのか?」

「いいんじゃない?回原と骨抜が証明してくれたわけだし。」

「ザッツ・ファインプレー。」




水月「次回 まさかのあの子と再開!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」

久しぶりに12巻を見てゴーグルを外した発目の可愛さに腰を抜かしました。
今回の発目のおっぱいのくだりは以前の男子風呂覗き事件と同じノリで描きました。ええ加減にせんと・・・。

あと今回発お披露目となったコスも含めて現在の水月の情報を次回か次々回あたりにFILE.2として出す予定です。


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番外編:Summer-No.1 夏の海でらんららん

今回は番外編です。せっかく水月が選んだ水着を完全に忘れてたので夏が終わらないうちに海に行きます。番外編なので細かいことは気にしない。というわけで水着回だ―――!!!


事の発端は雨宮柚月からのメッセージ。

 

「せっかくの夏なんだし海行ったら?」

 

「・・・・・・忘れてたあああああ!!!!」

 

 

そこからの行動は早かった。

「みんな!海行かな――い!?」

「「「行く―――!!!」」」

「A組の奴らも誘わね?」

「「「いいね―――!!」」」

 

「ブラド先生!海行ってもいいですか!?」

「フム、プロヒーロー同伴ならいいだろう。確認してくる。」

 

 

その数分後

 

「イレイザーからの許可も(めちゃくちゃ呆れられてたが)下りた!そしてマイクやミッドナイトも行きたいそうだ!」

「「「わ―――!!!」」」

「よしお前達!海へ行くぞ!!!」

「「「お―――!!!」」」

 

 

そんなこんなでA組と一緒に電車に乗って数十分・・・

 

 

「着いた!ナウでヤングな若者たちが集まる海水浴場!多古場―――!!!」

「ウチ泳げるかちょい自信ないんやけど・・・大丈夫かな梅雨ちゃん。」

「ケロ、大丈夫よお茶子ちゃん。私がちゃんと泳げるように手伝ってあげるわ。」

「俺ビーチバレーのボール持って来たわ。」

「ここってバレーネットあったっけ?」

 

「お前達!はしゃぐのはいいが雄英生としての自覚をちゃんと持てよ!そして準備運動は入念に!怪我に気を付けろ!以上!楽しんで来い!!」

「「「はい!!」」」

 

「あー、ブラドと同じだ。あんまハメ外しすぎんな。仮免も控えてる。後の事も考えて行ってこい。」

「「「はい!!!」」」

 

 

「・・・なあ、円場だっけ、お前も見てんのか?」

「上鳴!?びっくりさせんなよ・・・何をだよ。」

「とぼけんなって、決まってんだろ!?女子の水着だよ。あの更衣室から出るとこ見るためにここ構えてんだろ?」

「・・・まぁ、それを言うんなら俺だけじゃなくて回原や泡瀬、鱗もあそこにいるし、なんならお前のすぐ横に峰田がいるしよ。」

「うおっ!?びっくりしたわ峰田お前いつの間に・・・!」

「ったりめーだろ・・・おれがこんなビッグチャンスを見逃せるわけねーだろ!A組の女子に加えて、B組もいんだぞ!?よりどりみどりじゃねえかよ・・・!!」

「お前もいい加減にしとかないとそろそろやべえぞ。」

「うるせえ瀬呂!お前もここにいる以上同類だろうが!」

(くっそ否定したくてもできねえ・・・!)

「あ、おい!誰か来たぞ!!」

 

彼らの視線の先には更衣室。その中から出て来た、長い水色の髪の人物は――――――

 

 

「・・・君らそこで何してんの。」

「「「「水月かよぉおおおおお!!!!」」」」

水月だった。

「さてはあの更衣室からくる女子を見ようとしてここにいたの?」

「悪いかよ!」

「悪くはないけど、普通に後で見れるのにここで構えて見ようとする必要ある?」

「お前わかってねぇな!更衣室から出てくる瞬間が一番良いんだろうが!!」

「一理ある。」

(ダメだ僕にはわからない・・・。)

 

「あ、おい、誰か出てくるぞ!」

「誰だ?」

水月の次に更衣室から出て来たのは、麗日と蛙吹だった。

「お、麗日と蛙吹かあ。」

「結構いい感じじゃね?」

 

「麗日くん!蛙吹くん!君たちも着替え終わったか!」

「あ、デクくん!飯田くん!」

「飯田ちゃんは海パンと帽子スタイルは崩さないのね。」

「うむ!たとえ海であっても相澤先生が仰っていたように羽目を外すといかんからな!」

「麗日さんも蛙すっ・・・梅雨ちゃんもとても似合ってるよ!」

「あ、ありがとデクくん。・・・デクくんも―――おぉ、意外といいカラダしとるんやね。」

「あ、えと、それほどでも・・・////」

 

「ケッ!青春しやがって・・・!」

「まぁまぁ言わんでやれよ峰田。」

「また誰か出るぞ。」

 

麗日たちの次に出て来たのは、八百万と耳郎だった。

「耳郎さん、とても似合ってますわ!」

「ヤオモモにそう言われたら喜ばないわけにはいかないけど・・・。」

「どうかなさいましたか?」

(やっぱり発育の暴力・・・!)

 

 

「うっひょおおおおやっぱりヤオヨロッパイの破壊力は抜群だぜぇぇぇ!」

「まぁ、確かに。」

「耳郎も結構よくね?」

「上鳴ィ・・・お前の眼は節穴かぁ?」

「いや峰田、さすがにそりゃ失礼だろ。」

「おい二人とも、また誰か来るぞ。」

次に来たのは・・・宙に浮かぶビキニだった。

 

「「「???」」」

「あ、あれ葉隠じゃね?」

セロの言った通り、その水着を着ていたのは葉隠、それに続いて出て来たのは芦戸だった。

「葉隠ほんとにビキニ浮いてるね―!やば!」

「すごいでしょ!?」

「すごい!」

 

「いいな。」

「ああ。」

「健康的なエロスってやつか。」

「あの腰つき・・・たまんねぇ!」

「あ、ちょっと男子!」

 

影から見ていた峰田たちを芦戸が発見した。

「なーに覗いてんの!」

「やっべ逃げろ~!」

隠れていた男子たちは一目散に逃げていった。

 

「まったく・・・ん?水月は逃げないの?」

「逆になんで逃げると思うの三奈ちゃん。」

「一緒に覗いてるのかと思って。」

「ね!その割にめっちゃ堂々としてるからびっくりしちゃった!」

「もし覗きみたいに見えてたならごめんね。」

「そういえば、水月くんって林間合宿の時くらいまで三つ編みのポニーテールだったよね確か!今なんで普通のポニテにしてるの?」

「あ、そういえばそうだ!なんで?」

「あ~、まぁ、色々あってね。心境の変化かな。」

「へ~。水月もそういう事ってあるんだ。」

「あ、忘れてた!なんでここで見てたの?」

「あー。実ちゃんたちがわざわざここで隠れて見るほどみんながすごく見えるのかなって気になって。」

「へぇ~。で、結果は?」

「いつもと変わらないカワイさだった。」

「・・・分かってはいたけど、ほんとなんの照れもせずカワイイっていうよね。」

「それが僕だからね。」

「てめェは誰にでも言ってやがんだから価値も暴落してんだろ。」

いつの間にか僕の後ろに勝っちゃんがいた。

 

「うおかっちゃん!!?いつの間に後ろに!」

「いつの間にじゃねェわ今さっき来たばっかだわカス。」

「そう、なん・・・だ・・・・・・・。」

「あ?」

僕の視線はちょっとずつ下がり、かっちゃんの水着に目が映った。

 

「かっちゃん、水着ルーズタイプなんだ。」

「ンだてめェなんか文句でもあんのか?」

「勿体無いなーって・・・かっちゃんならブーメランパンツ絶対似合うのに。あと面白そう。」

「ナメとんのかぶっ殺すぞコラァ!」

「あ、三奈ちゃん。」

「無視してんじゃねェぞ!」

 

「B組の皆はまだ?」

「あ、もうすぐ来ると思うよ!私たちが先に更衣室に入ってたからB組の皆が遅れちゃってて。」

「なるほどね。」

「なになに?やっぱ気になる~?」

「そりゃあね。僕が選んだ水着がいざここで似合うか確かめないとね。」

「え?B組の水着、水月が選んだの!?」

「そうだけど・・・なんか変だった?」

「い、いや、何でも・・・。」

 

「ねえ葉隠。」

「うん、分かってるよ三奈ちゃん。」

「水月って結構プレイボーイってか・・・ね。」

「ね。」




いざ番外編を書いてみた結果、ほぼ全女子分の水着への反応を考えなければならない→かなり時間がかかるということに書き始めてから気付いてしまい、結果的に番外編を分けて行うことになりましたすみません。なんとかして3パート以内に終わらせます。

あと八百万の水着に関しては轟の反応を書こうかと思いましたが下手したら「いつもとあんま変わんねえな(露出度的な意味で)。」とか言い出しそうだったのであらかじめ水月が黙らせておきました。


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番外編:Summer-No.2 サマーバケーション

三奈ちゃんの言った通り、B組の女子たちもその後すぐに出て来た。

「おまたせ水月。」

「・・・あれ?」

以前期末試験後に僕がみんなの分の水着を選んだにも拘らず、みんな僕が選んだのと違う水着を着ていた。

「皆、僕が前に選んだ水着は?」

「ああ、アレ?アレは水月に水着を着せるための作戦。行く前にみんなで話し合ったの。」

「なん・・・ですと・・・。」

「ま、アレもアレでよかったんだけど、あの後皆で普通に水着選んだんだよ。で、どう?アタシの水着。」

切奈ちゃんは普通にビキニを着ていた。

「・・・正直なこと言っていいの?」

「正直なこと言っていいの。」

 

 

「―――すごくかわいい。似合ってるよ。ほかの人に見せるのがもったいないくらい。」

「ふ~ん。独占欲ヤバヤバじゃんか。」

「・・・嫌いになった?」

「んー・・・ドリンク買ってきたら許してあげる。」

 

 

「アイツらも青春しやがって・・・!」

「峰田お前血涙流れてるけど大丈夫か?」

 

その後はとても楽しい時間が過ぎていった。

皆で泳いだり、ビーチバレーしたり、ご飯を食べたり、とても満ち足りた時間だった。

 

「ヘイヘイ注目―――!!!」

電気ちゃんが大声でみんなを呼びつけた。

「今から、A組B組対抗水泳対決を開催しまーす!!」

「水泳対決?」

「ここの浜辺からスタートして、あのポールの所まで泳いでからここまで戻ってくる!以上!」

「良く分かんねぇけど、楽しそうだな!」

「ハッ!くだらねェ。お前らだけで勝手にやってろ。」

かっちゃんが僕たちに背を向け、去っていこうとしてる。

「なあ!水月ってやっぱ、泳ぎ速いのか!?」

「んー、普通に泳ぐ分だとそこそこ早いくらいだけど、個性使っての泳ぎで敗けたことは無いよ。」

「へー!そうなると、やっぱ爆豪より速いのか!?」

「・・・!そう!僕はかっちゃんより断然速いよ!もうかっちゃんとかカタツムリだよ!」

「ンだとこらてめェ俺の方が速いに決まってんだろブッ殺すぞ!」

「ふーん?ほんとに爆豪って水月より速いの?」

「ったりめーだギザ歯ァ!俺が最速に決まっとるわ!」

「じゃ、どっちが速いか決めようよ。」

 

「おぉ!体育祭1位2位の水泳対決か!」

「切島、お前はどっち勝つと思う!?」

「俺ぁ爆豪に賭ける!鉄哲お前は?」

「俺は水月!水がある勝負でアイツが負けるとは思えねぇ!」

「デクくんはどっちが勝つと思う?」

「普通に考えれば水月くんが勝つと思うけど水月くんの水の操作には許容上限があるらしいから海みたいに水の量が膨大な場所ではかえって操作の範囲や操作する範囲の切り替えなんかも煩雑になっておぼつかなくなる可能性が高い・・・いや、今回は戦闘じゃなく『水泳』っていうポイントに着目するなら、自分の周りの水だけ操作すればいいわけだからそうなれば大規模の水を操作するよりも操作性・スピード共に上がるわけだから水月くんの方が優勢か・・・いや、かっちゃんも個性伸ばしで爆破の威力や操作、スピードも上がっているはずだからかっちゃんが勝つ可能性も」

「おおう・・・梅雨ちゃんは?」

「私は水月ちゃんだと思うわ。爆豪ちゃんの爆破や『爆速ターボ』のスピードはかなりのものだけれども、緑谷ちゃんの言う通り、今回は戦闘ではなく水泳対決。爆豪ちゃんと水月ちゃんの水泳対決となると、爆豪ちゃんは万が一海に落ちた時点でほぼ敗けが確定、その一方で水月ちゃんはアクア・フェアリーでの空中移動に加え、水を操っての水中移動も可能・・・そういう点で見ると、水月ちゃんが勝つ可能性が高いわ。」

「なるほど・・・。」

「そろそろ爆豪くんと水月くんの対決が始まるぞ!」

 

 

みんなが浜辺についた僕とかっちゃんの周りに集まった。

「よし、二人とも、準備は良いか?」

「出来てらァ。」

「準備オッケーだよ。」

「それじゃ、位置について、よーい・・・ドン!」

 

 

一斉に飛び出した僕たちは、“個性”を使うことも無く、水中にバシャリと落ちた。

 

「え、どうなってんの?」

「おい、大丈夫か?」

「なんで落ちたの・・・?」

 

「どうなってるの?『水』が使えない・・・!」

「・・・チッ!」

 

「おいお前ら!そろそろ時間だ!着替えて荷物まとめろ!」

「相澤先生!」

「なんでですか!?」

「あと数十分で電車の時間だ。」

「あ。」

「仕方ないが、皆!後始末を迅速に済ませ、帰宅するぞ!」

 

「・・・かっちゃん。」

「あ?」

 

「―――次は勝つよ。」

「―――次も俺が勝つ。」

 

 

 

「はぁー。もっと遊びたかった。」

「ま、来年また海に行けばいいよ。切奈ちゃん。」

「・・・絶対だよ?」

「うん。絶対。」




次から本編の続きとなります。


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No.53 THE 試験

訓練の日々は流れ―――・・・ヒーロー仮免許取得試験当日!!

 

「着いたぞ。みんな降りろ。

 

試験会場 国立お台場競技場だ。」

 

「ふぅ~緊張してきた・・・。」

「会場お台場なんだな。」

 

「気張れよお前達!この仮免試験に合格すれば非常時の個性使用が許可される!気合い入れろ!」

 

「「「はい!!」」」

 

「あっという間に仮免試験当日だね。」

「受かるかな・・・。」

「みんなあれだけ訓練こなしたんだから、きっと受かるよ。」

「それもそーだね。」

「あ、おーい!」

 

声を掛けられ、振り返ると、そこには

「久しぶりだね、みーくん、せーちゃん。」

みーちゃんこと、奈爪美咲がいた。

 

 

「みーちゃん!?」

「ミサキチ?なんでここにいるの?」

「なんでって、そりゃ私もここで仮免試験受けるからだよ。」

 

「お、水月、何その子。知り合い?」

「え、あ、うん。」

 

「奈爪、あまり一人でウロチョロするな。」

「はいは―い。ごーめんなさい。」

 

「みーちゃんもここで受けるってことは、なかなか厄介な相手が来たね。」

「厄介な相手?ミサキチが?」

「みーちゃんもだけど、多分、他の人たちも。」

 

 

「なあおい、あの制服って・・・。」

「うおマジか!とんでもねぇとこ来てんじゃん・・・!」

 

「東の雄英、西の士傑。その2つに匹敵する、数あるヒーロー科の中でも指折りの難関校―――

 

国立逢魔学園(こくりつおうまがくえん)。」

 

 

「すみません、ひょっとして、雄英高校の皆さんですか?」

「はい、そうですけど。」

「そうですか。申し遅れました。私、逢魔学園の角楯縁螺(かくだてえんら)と申します。」

「これはご丁寧にどうも。僕は雨宮水月です。」

「ええ。()()()()()()。」

「・・・?そうですか。」

 

「じゃ、みーくん。またあとで。」

「・・・みーちゃん、僕の事、あの人に何か言ってた?」

「ううん。言ってないよ。」

「そっか・・・。またあとで。」

 

みーちゃんは手を振って先に会場に入っていった。

 

 

「・・・『知ってますよ』か。」

 

 

僕たちはコスチュームに着替え、会場に入ったが・・・

 

 

「多い。」

「多いね。」

会場内はとんでもない人数の受験者でぎゅうぎゅうになっていた。

 

「静粛に!これより、ヒーロー仮免許取得試験についての説明を開始します!今回の試験を担当するヒーロー公安委員会の目良です!

 

それでは、いきなりですがこの場にいる受験者、合計1502人一斉に、勝ち抜けの演習を行ってもらいます!

 

現代はずばり、ヒーロー飽和社会と揶揄されており、ヒーロー殺し・ステインの逮捕以降、ヒーローの在り方に疑問を呈する向きも少なくありません。

 

しかし、彼の思想、精神などの指標ははっきり言ってオールマイトという絶対的な象徴にしか通用しません。みなさんは彼のような絶対的な存在ではありません!それを念頭に置いて今回の試験に臨んでください!

 

さて、話が逸れましたが、現代は多種多様なプロヒーローたちが日々切磋琢磨していった結果、事件発生から解決までの流れは、尋常ではないほど迅速となっております!

 

この仮免取得試験を通過し、ヒーロー仮免許を取得した方々はその流れに身を投じることになりますが、それについていけない方は、はっきり言って厳しいでしょう。

 

よって!今回の仮免取得試験・第一次試験において試されるはスピード!

条件達成者()()100名を通過とします!

 

 

「「「!!!?」」」

 

「おい待てよ!1502人いるんだろ!?5割どころじゃねえぞ!?」

「社会に色々あったので!時の運だと思って下さい!」

「マジか・・・!」

 

「そして、第一次試験にて使用するのが、この2つ!ボールとターゲットです!」

目良さんはオレンジ色のボールと黒い円が中心にある的のようなアタッチメントを取り出した。

 

 

「受験者はこのターゲットを3つ!体の好きな場所に取り付けてください!ただし、常にさらされている場所に、です!脇の下や足裏などは駄目です!

 

そしてこのボールを6つ携帯します!ターゲットはこのボールが当たった場所のみ発光する仕組みで、3つ発光した時点で脱落とします!

 

3つ目のターゲットにボールを当てた人が“倒した”こととします!そして()()倒した者から勝ち抜きます!ルールは以上です!

 

それでは()()()、ボールとターゲットを配布、全員に行きわたってから1分後にスタートします!」

「展開後?」

 

その言葉通り、会場の天井やら壁やらが倒れ、USJのような広大なフィールドが広がった。

 

 

「―――あ、そういうことか。」

「なにが?」

「あの逢魔学園の角楯って人が言ってた言葉だよ切奈ちゃん。『知ってますよ』って。」

「あーそういえば言ってたね。だけどそれがどうしたの?」

 

「あれ、アドバイスだったんじゃないかって。まぁ、僕の察しが悪いせいで気付くの遅くなったんだけど。」

「どういうこと?」

「ほら、僕たちって全国放送で雄英体育祭の生中継されてたじゃん?だから僕たちの事知ってるのは当たり前だよね。」

「うん。」

「で、さっきの目良さんの言った試験内容だと先着合格なら同校同士で協力し合っていくのが現実的な勝ち筋になってくる。そうなると必然的に他行も同じ考えに帰結するから、個vs個じゃなくて学校単位での潰し合い構図になる。じゃあ次はどこを狙うのかってわけだけど、ここでさっきの話。」

 

そうして話しているうちに、ボールとターゲットが渡されてきた。

「さっきの話・・・まさか!」

「そ、全国の高校が競い合う中、唯一、『“個性”不明』っていうアドバンテージを失っている。“個性”もスタイルも弱点も晒されている。」

「・・・ぞっとしないね。」

 

「みんな!」

B組全員に聞こえるように声を響かせた。

「今回の試験、できるだけ固まって動くよ!多分他校も学校単位で行動するハズ!」

「散らばった方がまとまった的にならなくていいんじゃねえの?」

「僕らは皆体育祭で“個性”が割れてる。つまり―――」

 

 

『START!!!』

 

そのとき、僕らの周りに一斉に他校の生徒が現れた。

 

「―――恰好のターゲットだ。」

 

「悪く思うなよ!!」

僕たちに向けてオレンジのボールが雨のように降りかかる。

 

 

(でもまぁ―――)

 

 

 

星の水剣(オルガノン)

 

水が円の軌道を描き、その軌道上に作られた剣型の水によってボールが次々に切り落とされた。

 

 

(結局、やることは変わらないよね。)

「行くよみんな!」

「「「ああ!!!」」」




奈爪「次回 角楯センパイマジえぐいって。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.54 白熱!各々の実力

色々バタバタしてて投稿遅れてしまい申し訳ありませんm(_ _)m


仮免許取得試験第一次選考!様々な要素を取り入れたフィールドでボールをぶつけぶつけられ!

受験者は3つのターゲットマークを好きな場所にセット!ボールは6つ所持!

3つのターゲットにボールを当てられると脱落!

二人脱落させた者!先着100名が試験を通過できる!

 

 

 

「先着、ということで攻め得のような印象を受けますが・・・。」

「まぁそういう受け取り方をしたなら、まんまと乗せられている、という感じでしょう。団結・連携・情報、この3つが重要な要素になるでしょうね。」

 

 

「おいおい、いくら雄英とはいえ、アレ全部弾くかよ・・・。」

「水月お前今のすげぇな。いつの間にあんな必殺技―――」

「旋ちゃん警戒!第2波来るよ!」

 

予想通り、“個性”を使ってボールを投げる準備をしてる受験者が何人かいる。

「させねぇよ!エアプリズン!」

硬成ちゃんが吹いた空気は投げる準備をしていた受験者たちを四角く覆うように固まった。

「ナイス円場!」

「おう!」

 

「やべぇぞ!急いで追加攻撃!」

やられる前に、とほかの受験者たちも次々ボールを投げてくる。

「甘ぇ!」

「哀れな子羊たちよ・・・その礫は徒に罪を重ねるのみです。」

「多すぎ――ほんとにウラメしい・・・。」

飛竜ちゃんと茨ちゃん、レイ子ちゃんが飛来するボールをすべて撃ち落とした。

 

(よし、ここは―――)

「柔造ちゃん!希乃子ちゃん!茨ちゃん!行くよ!」

僕の呼びかけと呼ばれた面子を察してか、三人は一斉に個性を発動し、周囲の人を拘束したり、姿勢を崩した。

「水月!トドメ!」

「かしこまりっ!」

僕は上空に飛び、上から周囲の状況をある程度把握、拘束されてない受験者たちを補足した。

 

水の羽(ケリードーン)

 

僕の体からいくつもの水が極太レーザー上になり補足した人たちに着弾した。

「アクア・コクーン。」

直後、着弾した水が体を覆うように広がり、拘束した。

「何だこれ!?くそっ!抜け出せねぇ!」

「これで結構確保できたんじゃない?」

 

その後、柔造ちゃんたちと拘束した受験者たちをひとまとめにして、一佳ちゃんが人数を数えた。

「何人だった一佳ちゃん?」

「あーそれが、すごい言いにくいんだけど・・・19人。」

「・・・マジで?」

「アタシも今確認終わったけど確かに19人だわ。」

「妖怪1足りない・・・。」

「誰を残す?」

「うーん・・・」

「物間でいいんじゃない?」

「はっははぁぁ――拳ンン藤!君は何か僕に恨みでもあるのかなァん!?」

「物間うるさい。」

「・・・いや、僕が残る。」

「良いの水月?」

「うん。この中だと多分単独でこの選考を突破できる可能性が一番高いのは僕だからね。」

「言うようになったな。」

「まぁね。・・・ごめん自分で言っておいてちょっと恥ずかしくなってきた。」

「でも、水月なら多分大丈夫じゃねぇか?」

「そうだな。この中じゃ一番強そうだし。」

 

なんやかんやで、僕を除いたB組計19人は一次選考を突破した。

「それじゃ、頑張れよ。」

「うん。」

「水月。」

切奈ちゃんが僕の腕を掴んだ。

「落ちたら許さないよ。」

「大丈夫。絶対追いつくから。」

 

 

と、言ったはいいものの・・・

「うーんおっかしいな・・・他の受験者がなかなか見つからない。まだそこまで開始から時間たってないはずなのに・・・。」

走りながらそう呟いていると僕の目の前を何かがものすごいスピードで飛び去って行った。

「!?」

「やぁ、ここにいましたか。」

声の主は、黒いスーツに身を包み、僕の左の方から歩いてきた。

彼の後ろには、何人もの受験者が緋色の半透明なパイプのような何かで拘束され横たわっていた。

 

 

「あなたは確か、逢魔学園の―――」

 

「覚えてくださいましたか。そうです。逢魔学園の角楯縁螺です。」




角楯「次回 菜爪について語ります。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.55 逢魔学園・角楯縁螺

「角楯さん、ですか。それで、僕に何か御用でしょうか。」

「ええ。とはいっても、何もいきなり戦いを始めようというワケではありませんよ。あなたとお話したいだけです。そのためにここら一帯の受験者をあらかじめ片付けておいたんですから。」

 

・・・え?ここら一帯?

 

「あの~・・・つかぬことをお伺いしますが、ほかの逢魔学園の人たちは・・・?」

「あぁ、彼らならもうこの選考を突破しましたよ。」

・・・マジで?

「えっと、それじゃあなたはどうして・・・。」

「例年の仮免許試験の傾向的に、この一次選考は違いましたが、二次選考は高確率で救助演習になると考えられます。」

「はぁ、そうですか。」

「そして当たり前ですが、救助演習での受験者同士での戦闘行為はまずありえないでしょう。」

「そりゃそうですね。」

「つまり、君と戦うにはこの一次選考しか機会がないということですよね。」

「へ?あー、そうですね。

 

 

いやなんで!?」

「何がですか?」

「なんでそこまでして僕と戦いたいんですか!?」

 

「そういえば言ってませんでしたね。いいですよ。教えてあげます。

 

あれは3ヶ月ほど前―――」

「あ、できれば短めでお願いします。」

「わかりました。では簡潔に言います。

 

奈爪の推している君がどういう人なのか知りたいからです。」

「・・・なるほど(?)ん、あれ?でも会場の前でみーちゃんに聞いたときは僕の事あなたに何も言ってないって・・・。」

「ええ。彼女は君の事、ほとんど私に言ってませんよ。ただね、彼女―――

 

 

分かりやすすぎるんですよ。」

「というと?」

「スマホの待ち受けやSNSのアイコン、いろんな箇所にあなたの写真が使われているんですよ。それだけなら仲が良かったんだな、という程度なんですが、問題は、今年の体育祭ですよ。」

「体育祭?」

「体育祭のキミの部分だけ異常なほどリピートして見ているんですよ。」

「は、はぁ・・・。」

「そういうわけで、気になって一度聞いたんですよ。『雨宮くんは君の彼氏さんかい?』と。そう聞いたら彼女、『いえ、彼氏じゃなくて、「推し」です。』と答えました。満面の笑みで。」

「―――」

 

 

「・・・大丈夫ですか?」

「―――はい。大丈夫・・・です。」

まさか3年間一緒に過ごしてきた友達からそんな感情を向けられているとは思わなかった。

「そっか。推しかぁ・・・。」

「まぁ、そういうわけなので、有望株の彼女が期待、というか推すほどのキミがどれほどの強さなのか気になりましてね。」

「・・・というか、角楯さん、異常に大人びてますよね。」

「よく言われます。というか、そのせいでしょうかね。彼女に対して、年頃の娘を相手にする父親のような感情になるのは・・・。」

「はぁ。それで、どうします?やるんですか?」

「・・・ええ。奈爪が推しているということを抜きにしても、雄英体育祭2位の実力者とお手合わせしたいですからね。しかし、ただ戦うだけではあなたに旨味がない。なので、私と戦って勝っても負けても後ろにいる方にボールを当てて行っていただいて構いません。」

「それはありがたい。でも、手加減はできませんよ?」

「結構。もとより手加減など不要です。」

 

「そうですか、それじゃ・・・水の羽(ケリードーン)!」

僕は角楯さんに6本の水のレーザーを放ったが、いともたやすく防がれた。

 

緋色の半透明なシールドに。

「それが角楯さんの“個性”ですか。厄介だなぁ・・・。」

「えぇ。『シールド』といいます。」

角楯さんは見せびらかすようにドーム状にシールドを広げていった。

「君の水は私のシールドを突破できますかね?」

「突破するっきゃ・・・ないでしょ!」




菜爪「次回 角楯センパイの実力やいかに!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.56 その程度

角楯さんに水の羽(ケリードーン)を防がれた直後、僕は第二射を放った。

水の羽(ケリードーン)!」

再び放つも当然シールドに防がれる。

「単調ですね。その程度ですか?その程度なら、次は私の番です。」

「私の番?」

そう言うと、角楯さんは両手にフリスビー大の円盤状のシールドを展開し、それを投擲してきた。

「円刃。」

僕はギリギリでそれを避けられたが、高速回転する円盤の端が僕の頬をかすめ、血が流れた。

 

「え・・・シールドが飛ぶとか、そんなのアリですか!?」

「別に飛ばせないとも言っておりませんよ。」

角楯さんは両手に触手のようにシールドを展開し、それ伸ばして僕を掴んだ。

「触手!?これもうシールドとかそんな次元じゃないでしょ!?」

「そういえば言っていませんでしたね。私の“個性”は便宜上『シールド』と呼ばれているだけで、本質は形状変化が可能な実体型エネルギーの生成・操作ですよ。」

「!?」

 

これは予想外だった。わざわざ「シールド」なんて言うものだから、防御寄りの個性かと思ったけど、全然そんなことないじゃんか・・・!

「自分の個性の詳細言っちゃっていいんですか?」

「ええ。貴方がた雄英高校の生徒の方々は雄英体育祭で“個性”を知られているわけですから、これくらいしなければフェアじゃありませんよ。」

「成程。それじゃ僕もそのフェアに則りますよ。」

丁度、実践で通用するか試したかった。

「僕、“個性”複数持ちなんですよ。」

 

 

直後、僕は体を拘束している角楯さんの触手上のシールドを腕力で解いた。

「!?」

「『水』、そして―――」

僕は即座に角楯さんの背後に回った。

「増強型の“個性”です。」

角楯さんは背後の僕に反応し、シールドを展開した。

(アナザー・ワン・フォー・オール10%)

アクアスマッシュ!!

僕の拳は角楯さんのシールドを破壊した。

「ッこれは・・・!」

角楯さんは即座に後ろに飛び退いたが、僕はそれに追撃する形で再び攻撃した。しかし、

「―――マジですか。」

角楯さんは僕の拳に()()()()()()()シールドを展開してきた。

「君のパワーは確かに強いですが、ピンポイントで対処すればさほど脅威ではありませんね。」

さほど脅威ではない―――とか言ってるけど、この人がやってることってボクサーのジャブに即座にミットで対応してるようなモノでしょ!?しかもほぼ素人が。

「・・・化け物級の技術(バケテク)かよ。でもッ!」

 

 

僕はアクア・フェアリ―で距離を取って浮遊した。

さっきので大体だけど角楯さんのシールドの耐久度はわかった。おそらくシールドは展開面積と耐久度が反比例する。

要はシールドを広げるほど脆くなる。だから触手で拘束された時はAOFAを発動していたとはいえ腕力だけで拘束を解けたし、アクアスマッシュの時も余裕でシールドを破壊できた。

そしてさっきのピンポイントシールドを考慮すると、下手すればあと3分程度で僕の攻撃は角楯さんに完全に対策される可能性がある。だったら・・・

「次で決めるのが最適手(ベスト)だね。」

 

 

 

私のピンポイントでのシールドで防がれてから、雨宮くんは空中で両腕を曲げ伸ばししている。

(彼があの行動を無意味にやるような人間には思えない。体育祭で確認した個性の性質とそこから予想される成長後の運用方法、そしてもう一つの個性の使い方から考えても、あと3分もあれば彼の攻撃には対応しきれるだろう。そして多分彼もそれはわかっているはず。私のシールドの耐久度も既に感じたであろうから、あの動作はエネルギーの蓄積などの意味合いがあるのだろう。であれば、次で決めに来る可能性が高い。)

「いいでしょう。君の力、見せてもらいましょうか。」

 

 

 

「準備完了。」

僕はアクア・フェアリーで角楯さんに一気に接近し、右腕を振りかぶった。

「アクアスマッシュ〘五重(クインティ)

 

せーのッ!!

 

僕の拳が角楯さんのシールドに接触し、とてつもない風圧を起こした。

「・・・―――」

「意外ですね。()()()()ですか?」

「・・・は?   これで終わりなワケないでしょ!!」

僕は左腕を振りかぶると同時に水の羽(ケリードーン)を放った。

「もいっちょ―――

 

アクアスマッシュー〘五重(クインティ)〙!!」

 

左の拳もピンポイントシールドに当たる。が、角楯先輩の背後に僕が放った水の羽(ケリードーン)が迫る。

()()()()?角楯さん!」

僕の両腕をピンポイントのシールドで防ぎながら、なんと角楯さんは水の羽(ケリードーン)を背後にもシールドを展開することで防ぎ切った。

「お言葉を返しますが・・・()()()()ですか?」

 

 

 

「はい。()()()()で、僕の勝ちです。」

「!?」

僕は両腕から生成した水と水の羽(ケリードーン)を構成する水を角楯さんを覆うように広げた。

当然、角楯さんは水を防ぐために球状に自分の周りにシールドを展開した。けど、それが僕の狙いだった。

 

「!?」

僕の水は角楯さんを覆うように展開されたシールドにぴったりと覆い被さり、そのままシールドを圧迫していった。

「これは―――」

シールドにひびが入り、そこから流れ込んだ水が角楯さんを包み込む。

 

 

「・・・成程。完敗です。」

水に包まれた角楯さんが僕に言った。

「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか。なぜ、最初から水での拘束をやらずに真正面から殴りかかったのですか?」

「・・・一つは、僕の力が今どのくらい実戦で通用するか確かめたかったからです。もう一つは、準備段階からこれを意識していると、角楯さんに防がれそうだったからです。あくまで保険として用意してた策だったので、ギリギリで成功してよかったです。」

 

「・・・そうですか。私も油断しましたね。」

 

『さあどんどん通過者出てます!残りあと45人!』

「あ・・・。」

「急がなければですね。さ、この人たちにボールを当てて通過してください。」

「ありがとうございます。」

 

角楯さんが用意していた人たちにボールを当ててる最中にふと気づいた。

この人たち、8人全員角楯さんのシールドで拘束されてる。おそらくシールドは“個性”の発動を解除すれば消滅する。

この人たちも拘束されている最中、拘束を解こうと抵抗していたはず・・・

 

つまり、角楯さんはこの人たちを拘束しているシールドを拘束を解かれない程度を維持しつつ僕と戦っていたってことか?

「・・・全然、本気じゃなかった。」

 

『おっと続いて通過者が出ました!残りあと43人!』

「終わりましたか?」

「はい。ありがとうございました。これで奈爪が君を推す理由もわかった気がします。」

「そうですか・・・。」

「次の科目も、もし縁があれば協力したいですね。」

「はい。その時はぜひとも、よろしくお願いします!」

 

こうして僕の仮免試験・第一次選考は幕を閉じた。




角楯「次回 雨宮くんのお友達が白熱?します。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


今回15回くらい水月に「角楯先輩」って言わせかけました。学校違うのに。


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No.57 仮免試験:幕間

「お、水月来たぞ!」

「ほんとだ、アイツすげぇな。」

遅れてきた僕をB組の皆が待ってたんだけど・・・

「せい。」

「むぐっ?」

切奈ちゃんからおにぎりを口にぶち込んできた。

 

「ほら、食べなよ。私はもう食べたから。」

ふぁふぃふぁほぉ(ありがとう)ふぇおあっふぃ(でもあっつぃ)。」

 

『只今の時刻を持って!100名の通過を確認したため!第一次試験はこれにて終了とさせて頂きます!』

 

「あ、丁度よく終わったじゃん。」

「ふん、んっ。そうだね。」

切奈ちゃんに詰め込まれたおにぎりを呑み込みながら返事した。

 

「っつーことは・・・」

「私たち―――」

「全員通過だああああ!!!!!」

 

「おつかれ水月。」

「あ、柔造ちゃんもお疲れ。」

「とりあえず全員通過できたな。」

「うん。でもまだ第二次試験が残ってる。角楯さんの話だと、二次試験は受験者同士で争う感じじゃないらしいけど。」

「角楯・・・あ、逢魔学園の人か。あったのか?」

「あー、うん、まあちょっとね。」

『えーそれでは、100人の皆さん!こちらをご覧ください!』

そう言ってモニターに映し出されたのは・・・

 

 

「フィールド・・・?」

「何だろうな。」

 

 

BOOOOM!!!

 

 

突然フィールドの各地で爆破が起きた。

(((――――なんで!!)))

 

『次の試験で最後となります!皆さんにはこの被災現場でバイスタンダーとして救助演習を行ってもらいます!』

「救助・・・。」

 

「バイスタンダーって何だっけ・・・。」

「現場に居合わせた人のことだって。授業でやったじゃん。」

『ここでは一般市民としてではなく仮免許を取得した者として!どれだけ適切な救助を行えるか試させていただきます!』

「ん?ちょっと待て!誰か人がいるぞ!」

「危ねぇじゃねえか!!」

『彼らはあらゆる訓練において今引っ張りダコの()救助者のプロ!』

「要救助者のプロ?」

『「HELP・US・COMPANY(ヘルプ・アス・カンパニー)」略して「HUC」の皆さんです!』

「色々なお仕事があるノコね。」

「まぁヒーロー社会だしな。」

 

『傷病者に扮したHUCがフィールド全域にスタンバイ中!皆さんにはこれから彼らの救出を行ってもらいます!なお!今回は皆さんの救出活動をポイントで採点していき!演習終了時に基準点を超過していれば合格とします!110分後に始めますので、トイレなどは早急に済ませておいてください!以上です!』

 

「ねぇ、みーくん。」

「ん?あ、みーちゃん。どうしたの?」

「いや、さっきの一次試験の時にさ、角楯先輩がちょっかい出してきたんでしょ?ごめんね。変なことに巻き込んじゃって。」

「ううん。気にしてないよ。それに、いい経験になったし。」

「そっか。ならよかった。次の試験、お互い頑張ろ!」

「うん。頑張ろう。」

 

ジリリリリリリリリ!!!!!

 

突然ベルが鳴り響いた。

(ヴィラン)による大規模破壊(テロ)が発生!規模は○○市全域!建物崩壊により傷病者多数!道路の損壊が激しく救急先着隊の到着に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーローたちが指揮を執り行う!一人でも多くの命を救い出すこと!』

 

そして、第二次試験が始まった。




円場「次回 めっちゃ怒られる。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


ちょっと残念なお知らせですが、色々とやることができてきてしまったため、次回から月曜投稿ではなく不定期投稿となってしまいます。申し訳ありません。


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No.58 救助演習

おひさしぶりです。かなり間が空いてしまい申し訳ありません。ちょっとずつ投稿頻度を上げていきたいと思います。


非常ベル アナウンスと共に、第二次試験「救助演習」が始まり、受験者は一斉に駆け出した。

 

(採点とは言っていたものの、基準は一切明かされていない・・・)

(基準が分からねえんなら、訓練通りにやるまで!)

 

「とりあえず、被害者数が多そうな都市部に行こう。受験者同士の争いがない分、チーム単位で動いた方が・・・っ!」

僕らの目の前に、大声で泣きじゃくる子供がいた。

 

わああああああん!!だれかぁあああああ!!おどうざんがああつぶされでぇええええ!!

「え、うお、マジか!?大丈夫か!?あ、ちょっと待ってろ、助けに―――」

なんだそりゃあ!減点だコノヤロォオオオオ!!!

 

真っ先に話しかけた硬成ちゃんが怒られた。

「!?」

「まず俺が歩行可能かどうか確認しろォオオオ!呼吸もおかしいだろ!?頭部もかなり出血してるぞ!!仮免持ちなら被害者の状態は瞬時に判断して動くぞ!!!」

(HUCが採点するのか!!)

「こればっかりは訓練の数が物を言う!周りを広く視ろォオ!」

 

 

「とりあえずここまで暫定危険区域に設定する!」

「了解!被害者の救助に当たる!」

「俺たちは道と発着場を作る!危ないから下がってろ!」

「救護所は控室に!」

「いや、被害規模がかなりデカイ!一時救出場の設定が先だ!」

「トリアージ俺やるわ!」

 

(さすがにこの辺は他の受験者には劣るな・・・。)

教え子たちを見つめながら、どうしようもない経験の差をブラドキングは惜しんだ。

 

「救出・救助だけじゃない、消防が到着するまでの間、その代わりを務める権限を行使し、スムーズに橋渡しを行えるよう最善を尽くす。ヒーローは人々を助けるため、あらゆることをこなさなきゃあならない。

何よりお前ら、俺たちは痛くて怖くて不安でたまらないんだぞ?掛ける第一声が『え、うお、マジか!?』じゃダメえだろう。頼りないにもほどがあるぞ。」

 

 

「―――!!」

 

薄々思ってはいたけど、これは多分、「神野の悪夢」の再演だ。

ヒーローとして、遍く多くの人々を助け、(ヴィラン)の脅威から守るためには、避けては通れない、大事な「通過点」・・・。

 

僕は一歩前に出て、被害者の前にしゃがみこんだ。

「もう大丈夫。安心して。君とお父さんは、僕たちが必ず助ける。」

「ああああ!おとうざんがぁあっぢでぇええええ!!」

「わかった。獣郎太ちゃん!一佳ちゃん!あっちに被害者がもう一人いるらしい!至急向かって!」

「了解しましたぞ!」

「あっちは任せて!」

「呼吸がかなり荒い、頭部も出血がひどい・・・君、歩けるかい?」

「あああいだい、いだいよおおお!!!」

(歩行は厳しいか。)

「二連撃ちゃん!この子をお願い!足を負傷してるからなるべく負荷をかけないように救護所に運搬して!着いたらきっと救護担当のヒーローがいるからそのヒーローの指示に従って!」

「最善を尽くそう。」

二連撃ちゃんが被害者の子供を持ち上げ救護所に向かった。

 

「柔造ちゃん、徹鐵ちゃん、茨ちゃんは一佳ちゃんたちとここに残って付近の他の被害者の救助に当たって!指揮は柔造ちゃんが!」

「わかった。」

 

「ほかの皆は僕とほかの場所での救助に当たるよ!」

「「「了解!」」」

 

 

 

「あ、君!けが人はあっちの一時救出場に頼む!」

「案内感謝します。」

怪我人を抱え駆ける庄田は、救出場に着いた。

「ここが・・・早くも多数の救護者がいるな。」

庄田の辿り着いた救出場は、一時的な物にも関わらず多くの受験者と怪我人がいた。

「!君、その子、症状は?」

「頭部の出血と足の負傷です。」

「わかった。それじゃあっちのスペースに運んで!終わったら他の怪我人の救助を!」

「善処します。」

この迅速さはやはり経験の差か、と庄田は改めて自分たち1年が受験していることの異常性を実感した。

 

 

 

「ふむ、そろそろか・・・。」

腕時計を確認し、試験管の目良はつぶやいた。

「それでは、お願いします!」

「―――了解した。」

 

 

BOOOM!!!!

 

 

「「「!!!?」」」

突如響く爆発音と共に、壁の一部が破壊された。

 

「!」

救助活動に当たっていた水月は、その爆音で()()()()を確信した。

(「神野の再演」・・・そう感じたときから薄々予感はしてたけど、やっぱりか。)

そう逡巡すると周囲の受験者に向かって声を張り上げた。

 

「皆!おそらくこの大規模破壊(テロ)の実行犯の(ヴィラン)だ!」

 

そう、ここまでは水月もある程度予測はできていた。

 

 

「!!?」

「おい、アレって・・・。」

「マジかよ!あんなのを相手に・・・!!」

 

 

 

No.11ヒーロー

リヴァイアサン

 

 

「父さん!!?」

「さぁ、始めるか。」

 

 




拳藤「次回 親子対決!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」

約3か月ぶり超久しぶりの投稿ですね。急にワンピースにはまってしまい投稿をさぼってました。これからもうちょい頻度を上げれたらなー・・・。


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No.59 チームワーク

この試験における審査の本質・・・力、魅力、すべてにおいて一級品であるオールマイト。彼とエンデヴァーの間には無視できないほどの圧倒的な差があった・・・

 

あれほどの存在はそう現れることはない。次の「オールマイト」を待つよりも、群として結束力を高めたヒーローたちが必要・・・か。

 

俺たちにも変化が必要なのと同じか、それ以上に、これから孵る彼らヒーローの卵にも「チームワーク」が求められる・・・。

 

(ヴィラン)が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は(ヴィラン)を制圧しつつ、救助を続行してください!』

「マジでぇ!!?」

「ヤバすぎでしょ・・・!」

「っとにかく、救助急げ!」

 

「プロでも高難易度の案件・・・仮免でこれをやるとは。いや、オールマイト(かれ)の引退を考えれば妥当と見るべきか・・・。」

 

 

さて、どう立ち向かう、ヒーロー?

 

 

 

「え、水月、あれってーーー」

「・・・父さんだ。」

(演習の内容的に(ヴィラン)役のヒーローが来ることはある程度想定してたけど、運命的なアレにもほどがあるでしょ。)

水月は内心毒づいた。

「しかも・・・」

 

(ヴィラン)役のリヴァイアサン含むプロヒーローたちが壁を破壊し出現した場所は、救護所付近だった。

「あんな近くに現れるって・・・!」

「マジで最悪じゃねぇかよ!!!」

 

 

この二次試験ではそれぞれに持ち点を設け、原点方式で採点している。

HUCが救助行動の成否を審査、そしてそれ以外・・・例えば自分の“個性”に適したポジショニングをしているかどうか等、俯瞰的な動きは・・・採点マニュアルと100名(かれら)のデータを網羅した我々公安職員100名が各自一名ずつ採点している。

 

持ち点が50未満になったものはその時点で不合格!各々正しい選択を期待していますよ・・・!

 

 

目良が見守る中、ついに(ヴィラン)へと動き出した者がいた。

 

 

水の羽(ケリードーン)!」

 

水月がアクア・フェアリーで急接近し水の羽(ケリードーン)を放った。が、

「薄いな。」

リヴァイアサンの放った水竜1匹にすべてかき消された。

 

「単独で出張るとは・・・早計だったんじゃないか、水月---いや、『アクア』?」

「・・・!」

水月はAOFAを込めたこぶしで殴り掛かろうとしたが、リヴァイアサンの胸部から出てきた水竜に拳を咥えられ、不発に終わった。

「おまえは会場にいる受験生の誰よりも対敵能力が高い自信でもあるのか?あぁ、それとも、この場で父子(おやこ)仲良く談笑でもしたかったのか?事務所(ウチ)でやるなら大歓迎だぞ。」

「ーーー星の水剣(オルガノン)!!!

「水月!」

 

水月が星の水剣(オルガノン)を放つと同時に後ろへと引っ張られ、剣は空を切り、代わりに()が飛来し、水月の拳を咥える水流の首を切断した。

「水月、大勢の(ヴィラン)に1人で突っ込んでどーすんの!援護がなきゃヤバかったでしょ!!」

「っ、ごめん、冷静じゃなかった。」

「そうだよみーくん。今は受験生みんな()()()()じゃなくて()()なんだから、頼んなきゃ損でしょ?」

「奈爪の言う通りですよ、雨宮君。」

巨大な緋色の壁を水月たちとリヴァイアサンの間に展開しながら、角楯が歩いてきた。

 

「角楯先輩・・・。」

「この試験の本質はおそらく、協力や連携といった『チームワーク』にあるでしょう。現に一次試験の『ボール当て』も、この二次試験の『救助演習』も、普通に考えれば協力するのが最も効果的に突破できるとわかる内容になっています。ならばーーー」

 

角楯が視線を送ると、奈爪は水月へ手を差し伸べた。

 

 

力貸すよ、()()()()

 

 

 

 

---あぁ、力貸してもらうよ。()()()()

 

 

 

「話は終わったか?」

そういうと同時に、角楯の「シールド」が水竜によって破られた。

 

 

「そろそろ本気で行かせてもらうぞ、ヒーロー?」

 

 

水月は自分の頬を叩いてリヴァイアサンに向き直った。

「切奈ちゃん、あいつらの攪乱をお願い!みーちゃん!周りの(ヴィラン)をお願い!角楯先輩!一緒に『リヴァイアサン』を!」

「了解!」

「承知しました。」

「久しぶりだね!」

 

 

周囲の(ヴィラン)が動き出すと同時に、取蔭がリヴァイアサンに向かって駆け出した。

「馬鹿正直だな。」

水竜が取蔭に突っ込むその時、取蔭の体が40以上に分割し、そのまま周囲の(ヴィラン)の方へ突っ込んでいった。

「キャストアウェイ!」

 

「さっすがせーちゃん!わたしも負けてらんない!」

そういって奈爪は両手を広げると、指先から爪が射出され、光弾のようになり(ヴィラン)に命中した。

「それがミサキチの“個性”?」

「そ!『爪装(そうそう)』って、爪をいろんなやつにできんの!」

 

 

 

 

「螺旋刃!!」

角楯のシールドが螺旋状に刃を展開しリヴァイアサンの水竜を崩壊させた。が

 

「如何せん、数が多いですね・・・。」

角楯の言う通り、彼を取り巻く水竜の数はゆうに20体を超えていた。

 

「アクアスマッシュ〘五重(クインティ)〙!」

水月の一撃は水竜に逸らされリヴァイアサン本人にはかすりもしなかった。

 

 

「お前の力も、思った程では無いな。」

 

 

 




水月「次回 親子対決に決着!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」



最初水月に「父さんにキッツいって思ったの初めてだ。反抗期かな・・・。」って言わせようと思いましたが やめました。

ちなみにリヴァイアサンこと雨宮龍水はクッッッソ不器用野郎です。彼の言動に不快感を覚えずかつ彼を好きでいたのは妻以外だとリューキュウくらいです。


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No.60 インテンシフィケーション&コンヴァージェンス

「当たり前だけど、そうそう簡単に当てさせてもらえないか・・・!」

「闇雲に攻撃してもまともに当たりませんよ。」

角楯先輩が周囲の水竜を迎撃しながら言ってきた。

 

「どうする?このまま俺の水竜と遊び続けるか?その隙に俺の部下が救護所を襲撃するぞ?」

父さ・・・(ヴィラン)「リヴァイアサン」は不敵な笑みを浮かべた。

 

「生憎と、そちらの心配は無用です。」

「ほう・・・?」

「アンタのサイドキックが強いのは当然だけど、切奈ちゃんもみーちゃんも強いんだよ。」

 

 

 

「おいおいなんだコイツ!!」

「こんなのが学生!?」

リヴァイアサンのサイドキック達は、飛び交う数十の光弾のような物体に四苦八苦していた。

彼らはリヴァイアサンのサイドキックというだけあり、優れた水系の個性を持ち、日々のヒーロー活動でそれを鍛錬していた。

そんなヒーローたちが一方的にやられている。一人の少女の“個性”で。

 

「ちゃちゃっと終わらせて、みーくんに合流しないとね!」

飛び交う()()の正体は、彼女の“個性”「爪装(そうそう)」、つまり()だ。

 

彼女の爪はもともと「爪を飛ばしたり、伸ばしたりできる」程度の“個性”だった。

しかし、彼女の「爪装(そうそう)」に対する理解力・応用力の高さと、東の雄英・西の士傑に匹敵する難関校「国立逢魔学園」という環境で鍛錬を重ねた結果、彼女の爪装は

 

 

「くそ!撃ち落とせねぇ!」

自由自在、精密精緻な操作性

 

「痛っ、痛い!痛ってぇ!」

爪のサイズの調整、飛行速度の高速化による威力の増加

 

「こういうのは、本体を狙うに限る!」

「―――と、思うじゃん?」

「っ?ぐあッ!?」

爪を巨大化、生育方向の変更による爪をナックル化しての近接攻撃

 

 

「・・・っすご。」

「そんなこと言ってー!せーちゃんもサポートばっちしじゃん!」

取蔭もまた、奈爪の爪装による射撃をより効果的にするための接触による引き付け、奈爪の射撃の後の追い打ちとしての「射出パンチ」、爪装のようなパーツの高速移動による視界の攪乱と、奈爪の攻撃を最大限活用できるようにするための補助が行き届いていた。

 

「この調子で片づけるよ!」

「オッケー!」

 

 

 

「・・・成程な。」

「だから言ったでしょう?心配は無用だと。」

「・・・ああ言った手前でいうのもなんだけど、みーちゃん強すぎないですか・・・?」

「一応彼女、今年の我が校の体育祭で優勝してますから。」

「・・・まあなんにせよ

 

 

 

俺がお前たちを片付けて行けばすべて終わるがな。

 

 

リヴァイアサンの体から水竜が濁流の如くあふれ出て二人に襲い掛かった。

「イチかバチか・・・!」

水月は水竜に手を向けぐっと握ると、水竜のうちの一匹がバシャッと霧散した。

「あ、いけた!」

「!」

「“個性”で水竜を破壊したか。で、それでどうなる?」

「―――雨宮くん、ナイスです!突破口が見えました!」

 

「どういうことですか!?」

「詳細はやりながら、今はとにかくあの水竜をすべて破壊してください!」

「・・・はい!わかりました!」

水月は言われた通り片っ端から水竜を破壊し、角楯も同じく破壊していった。

「どれだけ破壊してったとしても俺が水竜を生み出し続ける限り無駄だ。」

 

「・・・あ、そういうことですか、角楯先輩?」

「どういうことかは、君の判断に任せますよ。」

「了解です、じゃ、援護お願いします!〘水の羽(ケリードーン)〙!」

 

水月はリヴァイアサンが再び生み出した水竜に水の羽(ケリードーン)をぶつけ相殺していった。

 

「だから無駄だと―――」

「今だ!」

角楯はリヴァイアサンの足元からドーム状のバリアを展開した。

 

「バリアか。2秒持てば褒めてやる。」

リヴァイアサンの全身から水竜が出現し、一気に全方向へ飛び出た。

 

 

 

 

「――――解除。」

直後、バリアがふっと消滅した。

それによって衝突するものを失った水竜は勢いを止めきれずに飛んでいく。

「・・・ここだ。」

 

リヴァイアサンの背後には、右腕を構える水月が飛び込んできていた。

 

 

 

「まだ、甘い。」

恐ろしいほどの反応速度で水竜を一体生成し、水月に向かわせた。

 

(ッ!速い!)

水竜が水月に迫り――――――

 

 

接触するより早く、横から角や鱗、岩が飛来して水竜を崩した。

突然の出来事であったがそれを思考から外し、そのままリヴァイアサンに向かっていく。

 

 

アクアスマッシュ〘五重(クインティ)

リヴァイア―――

 

 

 

せーのッ!!!

インパクト

 

 

 

 

 

 

ビィィィィィィィィイイイイイ!!!!!!

 

 

只今をもちまして!配置された全てのHUCが!危険区域より救助されました!誠に勝手ながら、これにて仮免試験全行程!

終了となります!!!

 

「えっ、終了!?」

『集計の後、この場で合否の発表を行います!怪我をされた方は医務室へ!他の方は着替えた上でしばし待機をお願いします!』

 

水月はとっさにAOFAを解除し、水で受け身をとった。

 

「ふむ・・・ここまでのようだな。」

「・・・そうだね。」

 

 

「雨宮くん!」

水月のもとに角楯が駆け寄ってきた。

「怪我はないですか?」

「はい。大丈夫です。」

「それはよかった。大技を打つ直前にブザーが鳴ったので心配しましたよ。」

「水月ーーー!!」

角楯に続き取蔭と奈爪も来た。

「水月、大丈夫!?」

「大丈夫だよ切奈ちゃん。そっちこそ、怪我はなかった?」

「ウチらは大丈夫だった。途中からほかのみんなが火星に来てくれたのもあるけど、ミサキチがマジで強かった、」

「えへへー。あ、でも、みーくんも超強くなってなかった!?中学どころか、体育祭でもあんな超パワーなかったじゃん!」

「あー、まぁその・・・いろいろあってさ。それより、早く着替えないと!」

「それもそーだね。よし、着替えにいこっか。」

 

 

「水月。」

取蔭たちと着替えに行こうと駆け出した水月を、リヴァイアサンが呼び止めた。

「なに、父さん?」

 

 

「―――強くなったな。個性だけでなく、心も。」

 

その時水月の胸の奥底から、えもいわれぬ感情が湧きあがった。

 

「・・・ありがとう。」

「だが忘れるな。学生(お前たち)プロヒーロー(俺たち)平和の象徴(オールマイト)とは違う。『最強の“1”』ではない。一人ですべてを解決しようとするな。お前には仲間がいるだろう。それを肝に銘じておけ。」

「うん。わかった。」

リヴァイアサンの言葉を受け、水月は仲間のもとへと走っていった。

 

 

「リヴァイアサン、お疲れ様です!」

「ああ。お前たちもよく頑張ったな。」

「それにしても、()()()()()()()()()があると動きづらいっすね。」

「まぁ仕方ないさ。学生相手にハンデ無しでやったら、それこそ試験にならないだろ。」

「・・・ハンデありとはいえ、お前たち、学生二人に相当手こずっていたようだな。」

「あ、それはその・・・」

「今日から一週間、各自通常業務に加えて自主トレーニングだ。わかったな。」

「「「了解!」」」

 

(―――拘束用プロテクター(ハンデ)有りとはいえ、私もあの二人相手に少々手こずってしまったな。あのまま試験が続いていればあるいは・・・私もトレーニングを強化するか。)

 

 

 

数分後、制服に着替えた受験生たちがわらわらとやってきた。

「俺大丈夫かなぁ・・・。」

「こういう時間ってマジウラメしい・・・。」

「こえーよなぁ“免許”の合否発表って・・・。」

 

 

そして時間は来た。

 

『皆さん!長時間の試験お疲れさまでした!これより合格者の発表を行います!が、その前に一言。

 

 

採点方式についてです!われわれ、ヒーロー公安委員会とHUCの皆さんによる、二重の減点方式で皆さんを見させていただきました!

 

つまり、危機的状況化において!どれだけ間違いのない行動をとれたかを審査しています!

 

では、合格者の発表に移ります!合格者は五十音順でこちらのリストに名前が記載されています!先ほどの言葉を踏まえた上でご確認ください!』

 

目良の背後のモニターにずらっと合格者の名前が表示された。

 

 

「結構合格者多いな。」

「あ、俺の名前!!よかったー!」

 

 

「あ、あ、あ・・・『雨宮水月』―――あった・・・!!!」

「と、『取蔭』・・・あ、ウチもあった!!」

「ほんと!?やったね切奈ちゃん!!」

「マジ受かってて良かったあ!!!」

「みーくんとせーちゃんも受かった!?」

「雨宮くんも取蔭さんも、おめでとうございます。」

「みーちゃんと角楯先輩は!?」

「もち、私たちも逢魔学園のみんなも合格ぅ!!!」

「少しひやりとしましたが、『終わり良ければ総て良し』ですね。」

「そっか、よかったぁ。あ、B組のみんなは大丈夫かな、それじゃ、僕たちはここらで!いこう、切奈ちゃん。」

水月はB組の面々の方へ向かった。

 

 

「・・・奈爪くん。」

「ん、どーしたんスか?角楯先輩。」

「雨宮水月・・・君が彼を()()理由が少しずつ分かった気がします。」

「やっぱり!?角楯先輩も見る目がありますねー!!!いつか私も、みーくんの横に並びたてるくらい強くなりますよ!!!」

「・・応援してますよ。」

(君の強さなら不可能ではないでしょうね。たとえそれが茨の道であったとしても。)

水月との戦いを思い出しながら、角楯は奈爪とともに水月を見送った。

 

 

「というわけで、みんなどうだった?寧人ちゃんは落ちてなかった!?」

「ッッッハァーーー水月ィ!君ってヤツはなかなかどうしてナチュラルに()ッつ礼だねぇ!!僕が落ちているとでもぉ!??」

「ごめん、一番やらかしそうだったから・・・。」

「安心しな水月。」

「一佳ちゃん、受かってた?」

「あたしと物間含め・・・

 

1年B組、全員仮免試験合格だよ!!!

 

「マジで!?すっごいじゃん!!!」

「これで!憎きA組の奴らにアドバンテージが取れるってもんさァHAHAHAHAぁぅっ」

「A組も全員受かってるかもしれんでしょ。」

拳藤の手刀で物間がダウンした。

『えー全員!ご確認いただけたでしょうか!続きましてプリントをお配りいたします!採点内容が詳しく記載されてますのでしっかり目を通しておいてください!』

 

スーツの人たちが受験生にプリントを配っていった。

 

「取蔭さん。」

「はい。」

 

「雨宮くん。」

「はい・・。」

 

水月は配られたプリントを見た。

「水月、何点だった?」

「切奈ちゃんは?」

「アタシは88点。」

「僕は92点。」

「マジすごいじゃん。減点要素何だったの?」

「・・・ざっくりいうと『咄嗟の判断や集団指揮は優れていたが、(ヴィラン)に対面した際に自分だけで何とかしようとする傾向が高い』だって。」

「へー、結構シビアなんだ。」

(父さんに指摘された点と同じ、か。やっぱり僕は仲間を頼ろうとしてないのかな。)

 

 

『合格した皆さんはこれから緊急時に限り!ヒーローと同等の権利を行使できる立場となります!すなわち!(ヴィラン)との戦闘!事件・事故からの救出など!ヒーローの指示がなくとも!君たちの判断で動けるようになります!

 

 

しかし!それは君たちの行動一つ一つにより大きな!社会的責任が生じるということでもあります!

 

皆さんもご存じの通り、オールマイトという平和の象徴が力尽きました。彼の存在は、ただそれだけで犯罪の抑制になるほど大きなものでした。

 

心のブレーキが消え去り、増長するものはこれから必ず現れます!秩序の均衡が崩れ、世の中が大きく変化していく中、いずれ皆さん若者が、社会の中心となっていきます!

 

次は皆さんがヒーローとして!規範となり抑制できるような存在であらねばなりません!今回はあくまで、()()ヒーロー活動認可資格免許!

半人前程度に考え、各々の学舎でさらなる精進に励んでいただきたい!』

 

 

(そうだ、僕たちはまだ半人前・・・もっと強くならなきゃいけない。)

水月は父との戦闘を思い出し、強く心に刻んだ。

 

『そして、不合格となった方々!

 

点数が満たなかったからと意気消沈している暇はありません!君たちにもまだチャンスは残っています!

 

三か月の特別講習を受講の後!個別テストで結果を出せば!君たちにも仮免許を発行するつもりです!』

 

「「「!!?」」」

会場にどよめきが走った。

 

『先ほど私が述べた「これから」に対応するには、より“質の高い”ヒーローがなるべく“多く”ほしい!

一次はいわゆる“落とす”試験でしたが、選んだ100名はなるべく育てていきたい!

 

そういうわけで、全員を最後まで見させていただきました!結果!決して見込みがないわけではなく!むしろ至らぬ点を修正すれば、合格者以上の実力者になる者ばかりです!

 

学業との平行で、かなり多忙になると予想されますが、それでも!一刻も早く!より多くのヒーローとなる者が現れることを祈っています!

 

以上!これにてヒーロー仮免許試験!終了となります!!皆さん、長時間お付き合いいただき!誠にありがとうございました!!』

 

 

 

こうしてまた一歩 彼らはヒーローへと近づいていく

 

 

 

「・・・ついに仮免許取得かぁ。」

仮免を夕日にかざしながら、水月がつぶやいた。

「疲れたね。夏休み全部これのためにあったようなもんだし。」

「ほんと、いろいろあったよ。でもこうやってみると、一歩一歩、ちょっとずつでもヒーローに向かって成長できてるって感じがするよ。」

「・・・そ。ならよかった。」

 

「おーい水月ー!取蔭ー!こっちで集合写真とろーぜ!記念に―!」

「あ、いいねそれ!」

「後で二人でも撮ろ。」

「それ最高だね。」

 

 

 

夜―――ハイツアライアンス1-A

「明日からフツーの授業だねぇ!」

「チョコチョーダイ。」

「色々ありすぎたな!」

「一生忘れられない夏休みだった・・・。」

「メール?」

「うん。」

 

緑谷がメールを打っていると、爆豪が近づいてきた。

「おい!」

爆豪に声を掛けられ、緑谷が委縮する。

 

 

「デク、後で表出ろ。

 

 

 

てめェの“個性”の話だ。




リヴァイアサン「次回 ワン・フォー・オールを巡るトラブルだ。
さらに向こうへ Plus Ultra!」


おまたせして申し訳ありません!!!これにて仮免試験編、終了!!!


とはいきません、すみませんが、あと1話(2話?)だけ続きます。
頑張って年内に終わらせるようにしますが、もし無理だったらオバホに解体してもらいます。

そんなわけなので、あともうちょっとだけお待ちください!


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No.61 五人

「かっちゃん・・・!どこまで行くんだよ、マズいよ、こんな夜中に出歩いて・・・。」

みんなが寝静まる夜―――緑谷と爆豪は静寂の道を歩いていた。

 

「ねぇ」

「・・・・・・。」

それぞれが抱く感情は違えど、その光景はかつての()()()()2人を思い起こさせる。

 

 

「ここって・・・」

二人が行き着いた先は・・・

 

「グラウンド・β・・・。」

「初めての戦闘訓練でてめェと戦って、負けた場所だ。

 

ずっと気色悪かったんだよ・・・

 

無個性で出来損ないのハズのてめェが、どういうわけだか雄英合格して、どういうわけだか個性発現しててよォ。」

 

―人から授かった“個性”なんだ―

 

―いつかちゃんと自分のモノにして、“僕の力”で君を超えるよ―

 

「わけのわかんねえヤツがわけわかんねェこと吐き捨てて、自分一人納得した面してどんどんどんどん登ってきやがる・・・

 

()()()ん時から・・・いや、()()()()()()が街にやってきたあの時から・・・どんどんどんどん・・・

 

 

しまいにゃ仮免てめェは受かって、俺は落ちた。なんだこりゃあ?なあ?」

「それは実力ってよりも―――」

黙って聞いてろクソカスが!!

ごめん・・・!!

 

「ずっと、気色悪くてムカついてたぜ・・・。けどなァ、神野の一件でなんとなく察しがついた。」

 

 

―“借り物(かりモン)”・・・自分のモンになったかよ―

 

 

ずっと考えてた

 

 

 

 

オールマイトから貰ったんだろ

 

 

その“個性(ちから)

 

 

 

 

 

(ヴィラン)のボスヤロー、あいつは人の“個性”をパクッて使ったり与えたりするそうだ。信じらんねぇが。

 

脳無とかいうカス共の“個性”複数持ちから考えて・・・信憑性は高ぇ。

 

オールマイトとボスヤローに面識があるかは確信できねぇが、画面(テレビ)超しに見たやりとり的にあるだろうとは予測できる。

 

“個性”の移動っつーのが現実で、オールマイトはそいつと関わりがあって、てめェの“人から授かった”っつー発言と結びついた。

 

オールマイトと会って、てめェが変わって、オールマイトは力を失った・・・。」

 

 

―次は 君だ。―

 

「てめェだけが違う受け取り方をした。

 

オールマイトは答えちゃくんなかった。だからてめェに聞く。」

 

 

 

緑谷は 拳を握り締め 沈黙した。

 

 

「否定しねェってこたァ・・・・・・そういうことだな、クソが。」

 

 

(“個性”の話と言われた時・・・もうわかってた。)

 

―幸い爆豪少年も戯言と受け取ったようだし、今回は大目に見るが、次はナシで頼むぜ!―

 

(言いつけを守らなかった報いだった。)

 

「聞いて・・・どうするの・・・・・・・・・・?」

 

「・・・・・・・・・・・

 

 

てめェも俺も・・・オールマイトに憧れた。なァ、そうなんだよ。

 

ずっと石コロだと思ってたやつがさァ、知らん間に憧れてた人に認められて・・・

 

だからよ

 

 

戦えや ここで 今

 

何で

 

緑谷が困惑の表情を浮かべる

 

「ええ!?待ってよ何でそうなるの!?

いや・・・マズいって!ここにいること自体ダメなんだし・・・!!

 

せめて・・・戦うっても自主練とかでトッ・・・トレーニング室借りてやるべきだよ・・・!今じゃなきゃダメな理由もないでしょ!?」

 

 

本気(ガチ)でやると止められんだろーが。

 

 

てめーの何がオールマイトにそこまでさせたのか

 

確かめさせろ。

 

てめェの憧れの方が正しいってンなら

 

 

じゃあ俺の憧れは間違ってたのかよ。

 

 

―どんだけピンチでも、最後は絶対勝つんだよなあ!!!―

 

 

―どんなに困っている人でも、笑顔で助けちゃうんだよ・・・―

 

 

「怪我したくなきゃ構えろ。蹴りメインに移行したんだってな。」

「待ってって!!こんなのダメだ―――」

緑谷の言葉を聞き終わる前に、爆豪は爆破で急接近した。

 

「かっちゃん!」

 

爆豪が右手を振りかぶろうとする。

(右・・・!いや!以前に破られている!違う!右はフェイント―――・・・)

 

 

 

が、緑谷の読みは外れ、爆豪は右の大振りで広範囲を爆破した。

「った・・・!!」

間一髪緑谷が上に飛び避けたが、右足が爆破に巻き込まれていた。

「深読みするよなてめェはァ・・・

 

 

来いや!!

 

 

マジでか・・・かっちゃん・・・!!

 

 

 

 

「待ってって!本当に戦わなきゃいけないの!?」

爆豪は体勢を立て直し、左手で小爆破をし始めた。

 

「間違ってるわけないじゃないか!君の憧れが間違ってるなんて誰も―――・・・!!」

またも緑谷が言い終わる前に爆豪が大爆破を起こし、緑谷も寸でのところで避けた。

「待ってってば・・・」

 

緑谷の言葉に、爆豪はかつての自分たちを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

―待ってよかっちゃん!―

 

 

 

いつも後ろにいやがったのに

 

 

―大丈夫?―

 

 

 

どんだけぶっ叩いても

 

 

いつも背中に張り付いてやがったのに

 

 

 

逃げんな!!!戦え!!!

 

 

 

同じ人に 憧れたのに

 

 

―言っとくけど自尊心ってのは大事なもんだ!!―

 

―君は間違いなくプロになれる能力を持っている!―

 

―分かるよ・・・緑谷少年の急成長だろ?―

 

―レベル1の力とレベル50の力・・・―

 

―成長速度が同じなハズないだろう・・・?―

 

 

何で

 

 

 

避けられたのを追撃しようと突っ込み左手を振りかぶる爆豪に緑谷は左肩を掴み防ごうとする。

が、爆豪は左足で緑谷の顎を蹴り上げ、そのままスタングレネードの構えに移行する。

 

その構えの隙に緑谷は倒れながら両手を地面についてブリッジから逆立ちをする形で蹴りを繰り出し、爆豪の構えを崩した。

 

 

 

何で

 

 

構えを崩された爆豪はそのまま後ろに躓き、尻餅をついて倒れた。

 

 

「って・・・!」

 

「だ・・・大丈・・・」

「俺を心配するんじゃねぇ!」

緑谷の差し出した手を爆豪は振り払った。

 

戦えよ!!何なんだよ!何で!!

 

 

何でずっと後ろにいた奴の背中を追うようになっちまった!!

 

 

クソザコのテメェが力をつけて!!オールマイトに認められて・・・強くなってんのに!!

 

なのに何で俺はっ

 

 

俺に負けた奴(水野郎)一人 救えなかったんだ!!

 

 

俺がマジシャン野郎に騙されてさえなきゃ!アイツはさらわれずに!

 

オールマイトが終わることもなかった!!!

 

 

オールマイトが秘密にしようとしてた・・・誰にも言えなかった!

 

考えないようにしてても・・・

 

フッとした瞬間湧いて来やがる!

 

 

どうすりゃいいか わかんねんだよ!!!

 

 

 

 

ずっと・・・抱え込んで――――――・・・!!僕なんかより・・・・・ずっと・・・!

 

 

考えてたんだ・・・悩んでたんだ・・・!!

 

 

―本当に戦わなきゃいけないの!?―

 

 

 

この戦いに意味なんてないかもしれない

 

 

 

勝ち負けにも意味なんてないのかもしれない

 

 

 

それでも僕はやらなきゃって思った

 

 

緑谷は接近した爆豪の顔を蹴り牽制した。

 

 

「・・・・・丁度いい・・・・・シュートスタイルが君に通用するかどうか・・・・・」

 

 

かっちゃんのこの気持ちを今受けられるのは

 

 

僕しかいないんだから

 

 

やるなら・・・全力だ

 

 

 

どうしようもない気持ちを

 

戦うことで発散させたいだけかもしれない

 

 

そうだとしても

 

勝手だと一蹴することはできなかった

 

 

思えば歪だ

 

 

幼稚園から小学校 中学 高校

 

 

「サンドバッグになるつもりはないぞ、かっちゃん!」

 

 

付き合いは長いけどこれまで僕らは

 

 

 

本音を()()()()()ことがない

 

 

爆豪は爆破の反動で上に飛び上がった。

 

(上!)

 

そこから手を背後の空に向け、爆破による急降下で緑谷に攻撃するがまたも避けられる。

 

「っぶな・・・!」

 

 

(考えさせるな!)

避けた緑谷を目でとらえた爆豪はグルグルと手をまわしながら爆破で接近し、遠心力による広範囲連続爆破攻撃で緑谷を追尾していった。

 

 

(着地までに距離を詰められる!マズイ!)

そのとき、爆豪が爆破の反動ではじかれた右手を勢いそのまま右の大振りにしようとする動きが見えた。

 

(手を弾いて・・・!)

爆豪の攻撃に蹴りで迎撃しようとする緑谷―――が

 

 

爆豪は弾いた右手で起こした爆破で斜め上に飛び空中で再度右手で爆破を起こし、緑谷の背後に着地、これを一瞬のうちに行った。

 

 

そのまま右の大振りで緑谷をとらえ、吹き飛ばした。

 

「ふっ」

受け身をとれず柵に激突した緑谷に爆豪が再度急接近する。

 

 

(息付く間もない!!)

 

後ろの柵をつかみ地面を蹴り上げて逆立ちし、爆豪の右手の攻撃をギリギリで避けたが、爆豪は即座に反応し、左手で緑谷の腕を掴みそのまま投げ飛ばした。

 

「がはっ!」

「って!?」

当然、受け身をとっていないので爆豪も柵にぶつかり、お互い一瞬攻撃が止む。

 

 

(動きを予測して行動を決める僕のやり方じゃ間に合わない・・・見てから動ける反応の速さ・・・!以前より確実に磨きがかかってる・・・!)

 

「当たり前だけど・・・強くなってる・・・。」

「何笑ってんだぁ!?」

爆破しながら迫りくる爆豪。

「サンドバッグにならねえんじゃねえのかよ!」

「ぐっ・・・!」

 

緑谷が駆け出した。

「ならない!」

爆豪が両手を右脇に構える。

「どうせまた何か企んでんな!」

 

 

閃光弾(スタングレネード)!!

 

「そういうのが気色悪かったんだ!

 

何考えてるかわからねえ!」

 

目をくらませた隙に接近し、緑谷を吹き飛ばす。

 

「どんだけぶっ叩いても張り付いてきやがって!何もねえ野郎だったくせに!俯瞰したような目で!!見てきやがって!

 

 

まるで全部見下ろしてるような、本気で俺を追い抜いて行くつもりのその態度が!

 

目障りなんだよ!!

 

 

「・・・・・・

 

 

そんな風に、思ってたのか・・・。

 

 

そりゃ普通は・・・バカにされ続けたら関わりたくなくなると思うよ・・・。

 

 

 

 

 

でも、今言ってたように、何もなかったからこそ・・・

 

 

嫌なところと同じくらい

 

 

君の凄さが鮮烈だったんだよ。

 

 

僕にないものをたくさん持っていた君は―――」

 

 

今度は緑谷が急接近した。

 

 

オールマイトより身近な、“凄い人”だったんだ!!

 

 

だから、ずっと・・・」

 

緑谷が蹴りの構えに入った。

(さっきより数段速ぇ・・・!)

 

 

感情が昂って 少しコントロールが乱れた

 

 

全身常時 身体許容上限

 

もうずっと フルカウル状態は5%の力を意識してた

 

 

自分の体がどれだけ鍛えられたかなんて

 

案外自分じゃ気づかない

 

 

(間に合わね・・・ガード・・・)

 

 

 

全身常時身体許容上限

 

8%

 

 

君を

 

 

 

追いかけていたんだ!

 

 

 

緑谷の蹴りは、ノーガードの爆豪の顔面を蹴り抜いた。

 

 

僕自身も想定外のスピード!

 

常時5%から8%!決して劇的な変化じゃない

 

しかしその僅かな差がかっちゃんを一瞬―――

 

 

―君を 追いかけていたんだ!―

 

(追い越したってか!!)

 

 

ああああああ!!!!

 

爆豪はすぐさま体勢を立て直し、右の大振りをかましたが

(っし!!)

緑谷は左足の後ろ蹴りで爆破を相殺し、後ろに飛びのいた。

 

 

(直当て間に合わなかった・・・!急にギア上がりやがっ・・・!!?)

 

んぬうううううう!!!

 

じたばたと足をばたつかせ、滑りながらも着地して緑谷が駆け出した。

 

 

こんなもんかよ!!

 

 

 

はああああああああ!!!??

 

 

 

これはさすがに気持ち悪いから君には言えないままだけど

 

“救けなきゃ”って気持ちより“勝たなきゃ”って気持ちが強いとき僕は

 

 

―勝って!超えたいんじゃないかバカヤローー!!―

 

―う゛う゛・・・っる せえええええええええ!!!!!!―

 

 

うっかり口が悪くなったりしてしまうんだ

 

 

そんなとこむしろ嫌いな部分のハズなのに

 

やっぱり僕ん中で

 

“勝利”のイメージが君になってるんだ

 

緑谷が空中に飛び出した。

 

(空中じゃ俺に分がある!)

 

 

意味もなく突進したワケじゃない 飛んだワケじゃない

 

パワーアップは想定外だったけど

 

馬鹿正直な突進→キックでかっちゃんの頭にはシュートスタイルが強く刷り込まれた

 

 

君の発散のケンカにただ付き合うほど僕はお人好しじゃない!

 

(5%!)

 

シュートスタイルは 腕を酷使しないための戦い方―――――・・・

 

 

 

 

使えないとは 言ってない!

緑谷は()()を構えた。

 

 

「勝利の権化」!!!悪いけど君に 勝ちたい!!

 

 

 

―次は 君だ―

 

 

僕を選んでくれたオールマイトに

 

 

 

応える為に!!!

 

 

 

右足の蹴りを予想していた爆豪の頬に緑谷のSMASHが直撃する

 

 

 

 

―“僕の力”で 君を超えるよ―

 

 

 

 

 

 

敗けるかああああああああ!!!!!!

 

 

爆豪は緑谷の左腕を掴み

 

 

 

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

 

 

そのまま反転して緑谷を下敷きに大爆破で急降下し、そのまま緑谷を組み伏せた。

 

 

 

「ハァッ ハッ ゲホッ ガハッ ハァ・・・

 

ゴホッ ハァ・・

 

 

俺の勝ちだ。

 

 

オールマイトの力・・・そんな力ァ持っても、自分のモンにしても・・・俺に敗けてんじゃねぇか。

 

なァ

 

なんで敗けとんだ。

 

 

「ゲホッ・・・ハァ・・・!」

 

 

 

そこまでにしよう二人共。

 

 

悪いが・・・聞かせてもらったよ。」

 

「デクちゃん・・・かっちゃん・・・。」

 

そこに現れたのは、オールマイトと雨宮だった。

 

「オール・・・」

「マイト・・・水月君も・・・。」

 

 

「気付いてやれなくて、ごめん。」

「・・・・・・・・今・・・更・・・。」

 

ふらつきながら爆豪が立ち上がった。

 

「・・・・・・何でデクだ。ヘドロん時からなんだろ・・・?何でコイツだ。」

 

「非力で・・・誰よりヒーローだった。

 

君は強い男だと思った。すでに土俵に立つ君じゃなく、彼を土俵に立たせるべきだと判断した。」

 

「俺だって弱ェよ・・・。あんたみてぇな強ぇ奴になろうって思ってきたのに!弱ェから・・・!あんたをそんな姿に!!」

 

「かっちゃんのせいなんかじゃない!これは僕が弱かったから・・・僕が敵連合(あいつら)にさらわれたりしたから―――」

 

「これは君たちのせいじゃない。どのみち限界は近かった・・・こうなることは決まっていたよ。君は強い。

 

 

 

ただね、その強さに私がかまけていた・・・抱え込ませてしまった。」

 

オールマイトが爆豪の頭を引き寄せた。

 

 

 

 

すまない。

 

君も 少年なのに。

 

 

爆豪は歯を食いしばり、オールマイトの腕を払いのけた。

 

「長いことヒーローをやってきて思うんだよ。爆豪少年のように勝利に拘るのも、緑谷少年のように困っている人間を救けたいと思うのも、どっちが欠けていても、ヒーローとして自分の正義を貫くことはできないと。

 

緑谷少年が爆豪少年の強さに憧れたように、爆豪少年が緑谷少年の心を畏れたように・・・気持ちをさらけ出した今ならもう・・・わかってるんじゃないかな。

 

 

 

互いに認め合い まっとうに高めあうことができれば

 

 

 

救けて勝つ

 

 

勝って救ける

 

 

最高のヒーローになれるんだ。

 

 

 

「・・・・・・・・そんなん・・・聞きてえ訳じゃねンだよ。」

 

爆豪はそう言うと座り込んだ。

 

 

 

「お前

 

 

一番強い人にレール敷いてもらって・・・敗けてんなよ。」

 

 

「・・・・・・強くなるよ。君に勝てるよう。」

 

 

爆豪は髪をくしゃくしゃといじりながらため息をついた。

 

「デクとあんたの関係知ってんのは?」

 

「リカバリーガールと校長・・・生徒では、君と雨宮少年、取蔭少女だけだ。」

 

「バレたくねェんだろ、オールマイト。あんたが隠そうとしてたから、どいつにも言わねぇよ。クソデクみたいにバラしたりはしねえ。ここだけの秘密だ。」

「秘密は・・・本来私が頭を下げてお願いすること、どこまでも気を遣わせてしまって・・・すまない。」

「遣ってねぇよ。言いふらすリスクとデメリットがデケェだけだ。

 

 

っつか、なんで水野郎とよく知らん女が知ってんだ。てめェは何でここいんだよ。」

「・・・さっき、急に目が覚めてさ。僕の中の“個性”(三代目)がデクちゃんの“個性”(OFA)が夜中なのに活性化してるって。」

「・・・・・ハァ?」

 

「こうなった以上は爆豪少年にも納得がいく説明が要る。それが筋だ。」

 

 

オールマイトはかっちゃんに話した。

 

巨悪に立ち向かう為 代々力が受け継がれてきたということ

 

その力でNo.1ヒーロー・平和の象徴となったこと

 

傷を負い、限界を迎えていたこと

 

そして後継を選んだこと

 

水月君が三代目の子孫だということ

 

その水月君を通して、歴代継承者とある程度の意思疎通が図れるということ

 

 

「暴かれりゃ力の所在やらで混乱するって・・・ことか。っとに・・・・・・何でバラしてんだクソデク・・・。」

「私が力尽きたのは私の選択だ。さっきも言ったが君の責任じゃないよ。」

「・・・・・・結局・・・俺のやることは変わんねえや・・・・・・。」

 

―俺はあんたをも超えるヒーローになる!―

 

「うん」

 

「ただ今までとは違ぇ、デク。」

(お前が俺や周りを見て吸収して―――強くなったように)

「俺も全部俺のモンにして上へ行く。“選ばれた”お前よりもな。」

「じゃっ・・・じゃあ僕はその上を行く!行かなきゃいけないんだ・・・!」

「・・・・・だからそのてめェを超えてくっつってんだろが。」

「いや、だからその上を行かないといけないって話で・・・」

「あ゛あ゛!!?」

 

僕とオールマイトと水月君、取蔭さんの秘密が 5人の秘密に

 

 

以前と違って まっとうにライバルっぽくなった。

 

 

 

「三代目からなんかアドバイスとかないの?かっちゃんに。」

≪・・・・・爆豪勝己、あの様子なら俺が何か言うまでもないだろう。だが、オールマイト(小僧)、お前という特異点を経たことで、緑谷出久(九代目)のOFAはかつてないほどの成長性を持っている。「爆破」(一代)OFA(九代)に追いついていくのは、そうそう簡単な話ではない。≫

 

「―――弁えております。三代目。」

 

「・・・いずれかっちゃんの方が()()()()()()()()になるかもってことか。」

 

 

 

 

こうして 長い長い夏休みが 終わりを告げた。




オールマイト「次回 いよいよ2学期の始まりだ!
さらに向こうへ Plus Ultra!」

何とか!年内に出せました!じゃあねオバホ!また近いうちに合うかもしれないけど!
そんなわけでついに夏休みを約半年かけて終わらせました。途中数か月ほどあけてしまいすみませんでした。
このデクVS爆豪の話は個人的にすごい好きな話なんですが、水月が敵連合にさらわれた時、ここの爆豪のシーンが完全に頭から抜けてました。マジでどうしようかと思いましたが、「完全勝利」を信条とする爆豪であればあの場にフリーでいて水月の誘拐を防げなかったことにも責任を感じていそうだったのでそこを突きました。

何はともあれ、今年1月から連載を開始してから約一年間、応援ありがとうございました。
これからも水月の物語を可能な限り続けていきたいと思いますので、片手間でもいいので、応援よろしくお願いいたします。

それではみなさん。よいお年を。


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ヒーローインターン編
No.62 後期始業式


あけましておめでとうございます!
今年も「水月のヒーローアカデミア」をぜひともよろしくお願いいたします!


「はぁ?謹慎!?」

『お静かに!声が大きいですわ!』

「あ、ごめん。」

『とにかく、緑谷さんと爆豪さんが夜中にグラウンドで喧嘩をなさっていたそうで、それの処分として、緑谷さんが3日間、爆豪さんが4日間の寮内謹慎になりましたの。』

「あー、やっぱりか・・・。」

『「やっぱり」・・・?もしかして知っていたんですの?』

「え、いや何でもないよ!それじゃ!」

『あ、ちょっとお待ちくだ』

八百万の制止を聞き終わらずに、雨宮は電話を切ってしまった。

 

「ふぅ・・・、ちょっと危なかった。」

「どしたの水月、誰かから電話?」

「うん、百ちゃんから。『緑谷、爆豪が謹慎』だって。夜に喧嘩して。」

「え?ケンカ?」

「あ、あとかっちゃん・・・爆豪もOFAの秘密を知ることになったから。」

「は?どういうこと!?」

「移動しながら説明するよ。」

 

 

「なんだアイツら、痴話喧嘩か?」

「馬鹿な事言ってないで行くぞ。」

 

 

「皆いいか!?列は乱さずそれでいて迅速に!!」

「・・!!」

物間が飯田を見つけると、悪い笑顔を浮かべて壁にもたれかかった。

 

「・・・また寧人ちゃんが何か余計な事やろうとしてる。」

「はぁ、アイツも学ばないなぁ・・・。」

 

 

 

「入学式出れやんかったから今回も相澤先生何かするんかと思った。」

「まー4月とはあまりに事情が違うしね。」

「聞いたよ―――A組ィイ!」

「!」

 

「二名!!そちら仮免落ちが二名も出たんだってええ!?」

「B組物間!相変わらず気が触れてやがる!!」

ついにA組にすらそう認知され始めたか、と雨宮は思った。

 

 

―B組は一人だけだったのに!?おっかしいなァ!?―

 

「さてはオメーだけまた落ちたな。」

ははーん、という顔で切島が推測する。

 

「ハッハッハッハッハッ。」

高笑いだけして物間は後ろに向き直った。

「いやどっちだよ。」

 

 

「こちとら全員合格。水が開いたねA組。」

 

「・・・・・・悪ィ・・・みんな・・・。」

「向こうが一方的に競ってるだけだから、気に病むなよ。」

うなだれる轟を切島が励ます。

 

「ブラドティーチャーによるゥと、後期ィはクラストゥゲザージュギョーあるデスミタイ、楽シミしテマス!」

「へえ!そりゃ腕が鳴るぜ!」

「つか外国人さんなのね。」

切島たちと話す角取に物間がこそこそと何かを伝える。

「ボコボコォにウチノメシテヤァ・・・ンヨ?」

「アハハハハハハ!!!」

「変な言葉教えんな!」

角取に変な言葉を教え、首を切るジェスチャーをする物間に拳藤が目潰しをした。

 

 

「ねえお茶子ちゃん、デクちゃん大丈夫そう?」

「あ、水月くん!」

「緑谷くんなら今頃爆豪くんと寮の掃除してるよ!謹慎!」

「そっか、ありがとう、透ちゃん。」

「デクくんがどうかしたん、水月くん?なんか用事とかあったん?」

「あ、いや、多分大丈夫だと思うんだけどね。」

 

 

―ねえねえ水月くん!もしかしてね!もしかしてだけどね!・・・―

 

 

(まさかとは思うけど、1年次からやったりはしない・・・よね?ねじれ先輩も2年生からだったわけだし・・・。)

 

 

「オーイ、後ろ詰まってんだけど。」

「すみません!さァさァ皆私語は慎むんだ!迷惑かかっているぞ!」

「かっこ悪ィとこ見せてくれるなよ。」

 

普通科の心操が急かし、皆グラウンドへ向かった。

 

 

 

「やあ!みんな大好き小型哺乳類の校長さ!

最近は私自慢の毛質が低下しちゃってね、ケアにも一苦労なのさ。これは人間にも言えることさ。亜鉛・ビタミン群を多くとれる食事バランスに」

 

 

ものすごくどうでもよくて

 

ありえないほど長い校長の話はしばらく続き・・・

 

 

生活習慣(ライフスタイル)が乱れたのはみんなもご存じの通り、この夏休みで起きた“事件”に起因しているのさ。

 

柱の喪失。あの事件の影響は予想を超えた速度で現れ始めている。これから社会には大きな困難が待ち受けているだろう。

 

特にヒーロー科諸君にとっては顕著に表れる。

 

2・3年生の多くが取り組んでいる“校外活動(ヒーローインターン)”も、これまで以上に危機意識を持って考える必要がある。」

「?」

 

「“校外活動(ヒーローインターン)”?」

「職場体験のパワーアップ的なやつじゃない?」

 

「暗い話はどうしたって空気が重くなるね。大人たちは今その重い空気をどうにかしようと頑張っているんだ。君たちにはぜひともその頑張りを受け継ぎ発展させられる人材となってほしい。

 

経営科も普通科もサポート科もヒーロー科も

 

皆社会の後継者であることを忘れないでくれたまえ。

 

挨拶を終え、校長が壇を降りた

「だいぶ短くまとめただろ?定石を覆したのさ。」

「さすがです。」

 

 

 

「―――それでは最後にいくつか注意事項を、生活指導ハウンドドッグ先生から―――――・・・。」

グルルル・・・昨日う゛う゛ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛ル゛

 

 

寮のバウッバウバウッ慣れバウグルッ生活バウ!!

 

アオーーーーーーーーン!!!

 

困惑する生徒たちをよそに息を切らしたハウンドドッグはブラドキングに交代した。

 

 

「ええと『昨晩ケンカした生徒がいました。慣れない寮生活ではありますが、節度を持って生活しましょう。』とのお話でした。」

 

(((((ハウンドドッグ先生何だったんだ・・・。)))))

「グルル・・・。」

 

「ブチギレると人語忘れんのか、怖すぎんな・・・。」

「つかA組緑谷と爆豪完全問題児じゃん。」

 

「それでは3年生から教室に戻って・・・」

 

始業式が終わり、ぞろぞろと生徒たちが教室に帰っていく。

 

 

「ねえねえねえ知ってるんだよ!ねえ聞いちゃったの聞いて!1年だって!1年A組ケンカの子!ねえねえねえ!知ってる?元気だよね。ねえ聞いてるーーー!?」

「・・・・・・・・ほほu「ねえってば!!」

 

 

 

「というわけで!今日からまた通常通り!授業を始めていこう!本当にこの夏休みはいろいろと大変だったが、各自、しっかり切り替えて頑張ろう!

と、言いたいところだが・・・。」

ブラドキングが言葉を止めた。

「校長のお話の中で気になった者もいるだろう。校外活動(ヒーローインターン)のことだ。」

「教えてくれるんスか!?」

「本来であればA組が今日先にやる予定だったんだが、緑谷と爆豪がやらかしたので、いったん先にB組がインターンの説明を受けるようになった!」

「なるほど・・・。」

校外活動(ヒーローインターン)とは、大雑把に言えば読んで字のごとく『校外でのヒーロー活動』だ。以前行った職場体験の本格版のようなものだ。」

「そんなのがあるノコね。」

小森、気付く。

 

「体育祭での頑張りは何だったノコ!?」

「いわれてみれば、インターンあんなら体育祭の時無理してスカウト稼がなくてもいいのかもな。」

「そう思うのも無理はない。が、まず前提として、

 

校外活動(ヒーローインターン)は体育祭で得た指名(スカウト)をコネクションとして使う!この活動は義務ではなく、生徒が自主的に行うもの、強制はない!

そして、指名(スカウト)を元手として使う以上、体育祭で指名(スカウト)を得られなかった者は活動自体が難しい。

もとは各事務所が募集するという形だったが、生徒の引き入れのためにイザコザが多発し、今の形になったのだ。

 

仮免の取得によって、より本格的・長期的なヒーロー活動へ加担できる。しかし、1年生での仮免取得はあまり例がないうえ、(ヴィラン)の活性化という不安要素もあるため、慎重になっているのが今の状況だ。この辺に関してはまた後日話す。というわけで、ここからは通常授業だ。待たせてすまなかったな、セメントス。」

「はい、ありがとうございます。それじゃ皆、現代文始めるよ。」

「・・・・・・。」

 

 

「はぁー疲れたわー。」

「やっぱ新学期一日目ってきちぃな。」

「つか大丈夫かな、インターン。」

「職場体験をより本格的に・・・きっと多くの受難が待ち受けているでしょう・・・。」

「ん。」

「そもそもアタシ達が職場体験先に選んだ事務所がインターン受け入れるとも限らないしねー・・・って、水月どしたの、そんな考え込んで?」

「ん?ああ、ちょっと、職場体験先のこと思い出してさ。」

(ねじれ先輩がインターンを始めたのは確か2年生から・・・そう考えると、僕たちが1年生からインターンを始める可能性が高いのって割とリスキーかもしれないな・・・。)

 

 

そんなこんなで考えてるうちに2日経過・・・

 

「皆おはよう!今日も一日元気に行こう!と、そのまえに、そろそろ本格的にインターンの話をするぞ!まあとはいえ、下手に例年の活動内容を俺が話すより、実際にやっている者たちから話を聞いた方が良い判断材料になるだろう!ということで、入ってきていいぞ!

 

扉が開き、三人の生徒が入ってきた。

 

 

「彼らは現在絶賛校外活動(ヒーローインターン)に励んでいる、現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名―――・・・

 

 

通称 ビッグ3の皆だ!




根津「次回 波動さんがはしゃぐのさ!
さらに向こうへ Plus Ultra!」

A組のみんなは緑谷が復帰してからでしたが、B組のみんなはそれより一足早くビッグ3のお話を聞く感じです。


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No.63 無敵

時間がたつのは早いもので、「No.1 受けろ雄英高校」の投稿からついに1年が経ちました。こうして続けられているのもひとえに皆さんがこの作品を読んでくださっているからです。本当にありがとうございました。

今年も「水月のヒーローアカデミア」をどうぞよろしくお願いいたします。


「「「雄英生のトップ・・・ビッグ3・・・!」」」

 

「そー言う感じの人たちがいる的なうわさは聞いたことあったけど・・・!」

「マジでいるんだな。」

「でもなんていうか・・・。」

「そんな感じしないよね。」

 

 

「とりあえず、自己紹介から頼む。天喰!」

「・・・。」

 

 

天喰、そう呼ばれた生徒の目がぎらりとB組全員をにらみつける。

瞬間、教室を覆いつくすほどの迫力がB組を襲った。

(ただの一瞥だけでこの迫力・・・雄英生トップってのは伊達じゃないな。)

物間が思案したそののち、天喰がぽつりぽつりとつぶやいた。

 

「駄目だ、ミリオ・・・波動さん・・・

 

ジャガイモだと思って望んでも・・・頭部以外が人間のままで依然人間にしか見えない・・・どうしたらいい、言葉が出てこない・・・。

 

「?」

 

「頭が真っ白だ・・・・・辛いっ・・・・!

 

 

帰りたい・・・・・・!

そうつぶやいた天喰は黒板に向き直り背を向けた。

 

(((ええ・・・!?)))

 

「え、先輩方・・・って、雄英のトップなんスよね?」

「あ、天喰くん!そういうのってね、あれだよ!あれ、なんだっけ?ねえ通形!」

「ん?ああ!確か『ノミの心臓』とか言「そうそれ!ねえねえ天喰くん!そういうのって『ノミの心臓』って言うんだって!人間なのにね!不思議!

 

彼はノミの『天喰環』、それで私が『波動ねじれ』。今日は郊外活動(インターン)について皆にお話ししてほしいと頼まれてきました。

あ!やっぱりいた!水月くん久しぶり!ねえどうだっけ、何ヶ月ぶりだっけ?」

「だいたい3ヶ月くらいですね。久しぶりです、ねじれ先輩。」

「うん!久しぶり!」

教室からざわめきが起こった。

「水月お前、ビッグ3と知り合いなのか!?」

「あ、うん。職場体験先がねじれ先輩のインターン先だったから。」

「水月の職場体験先って・・・確かリューキュウ事務所だよね。」

「うん。そこにねじれ先輩もいたんだ。」

 

「いや驚いたね!まさかねじれちゃんとお知り合いがいたとは!」

「ね!びっくりしたでしょ!かわいいでしょあの子!」

「確かに!」

「あれ?ねえあなたの髪って水をあげたら育つの?」

「はい、私が水を―――」

「骨抜くんだっけ?君の口ってストローでドリンク飲むときどうするの?」

「そのときはこう、いい感じに―――」

「鱗くんの鱗は生え変わる時期があるの?角取さんの角は何本でも生えてくるの?鎌切くんの口の刃は食べるときにも使うの?取蔭さんのコスチュームは切り捨てた部分はなくなっちゃうの?」

「うぉぉ・・・・。」

「なんか天然っぽいなー。」

「こどもみたい。」

(あーなんか懐かしいな。このかんじ。)

 

「そろそろ説明に移ってほしいぞ俺は・・・。」

「あっ、ご、ご安心くださいブラドキング!なんたってトリは俺なんでね!」

 

 

波動の質問地獄が終わり、金髪の通形という生徒が前に出てきた。

「前途ーーーーー!!?」

「「「!?」」」

(((ゼント?)))

「多難ーーー!っつってね!いやぁ俺もミスっちゃったかーーー!!!」

 

「なんかビッグ3っていう割に、なんか変ノコね。」

「全然それっぽくねぇな!!!」

 

「まあ何がどうなってるって感じだよね。必修ってわけでもない郊外活動(インターン)の説明に、突然現れた3年生だし、そりゃあわけないよね。

1年から仮免取得・・・うん、今年の1年ってすっごく元気だよね。よし、どうやら滑り倒してしまったみたいだし、

君たちまとめて俺と戦ってみようよ!!!

え・・・ええ~~~~!!?

 

「実際にやった奴から実際にやった経験を実践で体感した方がいいでしょう?ブラドキング!」

「ああ、いいだろう!」

 

 

そして、体育館γ

 

 

「え、マジでやるんすか?」

「ああ、マジだよ!」

「ミリオ、やめておこう・・・。形式的に『こういうことがあってとても有意義です。』と語るだけで十分だ。」

「遠い。」

 

皆が皆上昇志向に満ち満ちているわけじゃない。立ち直れない子が出てきてはいけない。

あ、聞いて?知ってる?昔挫折しちゃってヒーローあきらめちゃって問題起こしちゃった子がいたんだよ!知ってた!?大変だよねえ通形ちゃんと考えないとつらいよ?これはつらいよ~?」

 

「待ってください!俺たちは一応ハンデありとはいえ、プロとも戦っています!」

(ヴィラン)とも戦ったことがあるしねぇ・・・。」

「そんな心配されるほど、俺ら雑魚に見えますか!?」

「うん。いつどこから来てもいいよ。トップバッターは誰だい!?」

「じゃおれ「僕が行きます。

 

「水月!」

「お、ねじれちゃんの知り合いの子だね!」

(雄英トップ・・・手合わせできる機会はそうそうない・・・学生トップとどれくらいの力の差があるか、確かめたい・・・!)

 

「近接組!囲むよ!」

「うっし先輩!そんじゃご指導!

よろしくお願いしまーーす!!!

 

皆一斉に戦闘状態に入った。一方のミリオは―――――

 

 

 

 

()()()()()

 

 

 

 

 

いやぁぁぁーーーーーーー!!?

「え、は?今服が落ちたぞ!?」

「ああ失敬!!ちょいと調整が難しくてね。」

服を着直す通形、そこに雨宮が接近する。

(隙だらけ―――だけど・・・)

雨宮の蹴りが通形の顔面をとらえ、振り抜かれた・・・そう、文字通り。

通形の体をすうっと通り、振り抜かれた。

 

「っ『すり抜ける』“個性”か!」

「顔面かよ。」

 

息つく間もなく、通形の顔にあらゆる攻撃が降りかかるが、すべてすり抜けた。

そしてその場所には・・・

 

 

 

「!誰もいねえ!!」

 

 

「まずは遠距離持ちだよねえ!!」

「きゃあああああああ!!!!」

いつの間にか通形は柳の背後に回っていた。

「ワープしたのか!?」

「すり抜けだけじゃなく・・・どんな“個性”だよ!!」

 

 

(ミリオの“個性”は羨まれるようなものじゃない・・・違う・・・ひがむべきはその並外れた「技術」だよ1年坊・・・。

 

 

 

スカウトを経て あるヒーローの下でインターンに励み ミリオは培った・・・!)

 

 

―――5分経過

 

 

お前たち!油断せずやれよ!その男、通形ミリオは、俺が知る限り、

 

 

プロヒーローも含めて、最もNo.1に近い男だからな!




波動「次回 水月くんのインターン先が決まるんだって!
さらに向こうへ Plus Ultra!」

181cmのペコちゃん顔の男が気づいたら全裸で背後にいるって冷静に考えなくてもとんだホラーですよね。


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No.64 胎動!!EP:インターン

お待たせしました!色々ありまして(主にキーボードの破損が原因)遅くなりました!こっから巻き返したいと思います!


たった5分・・・ただそれだけの時間でB組の遠距離系“個性”持ちはほぼダウンした。「通形ミリオ」たったひとりの手によって。

「あとは近接主体ばかりだよね。」

 

「何したのかさっぱり分かんねぇ!」

「すり抜けってだけでも厄介なのにワープまでできるとか・・・それもうチートじゃないですか!?」

「よせやい!」

(チートか・・・。)

 

構えをとるミリオを遠目に、天喰は心の中でつぶやいた。

 

(その一言で君らのレベルは推し量れる。例えば―――…素人がプロの技術を見ても何がすごいのかすらわからないように・・・ミリオがしてきた努力を感じ取れないのなら、一矢報いることさえ)

「多分ワープじゃないよ。」

 

水月の発したその言葉にその場にいた誰もが目を向けた。

 

「みんなの攻撃を受ける直前にミリオ先輩は()()()ように見えた。もしかしたら『すり抜ける』“個性”の応用でワープしているのかもしれない。それか、『ワープ』の“個性”の応用ですり抜けているのか・・・どちらにしろ、攻撃手段が現時点で『近接攻撃』しか確認できてないから、それならカウンターでこっちからも攻撃できるかもしれない。わかってる範囲から推測して組み立ててこう。」

「オオすげぇ!水月冴えてんな!」

「探ってみなよ!」

そう言うとミリオは駆け出して―――()()()()()()

「うお!ほんとに沈んだ!?」

次の瞬間、ミリオは水月の背後に回っていた。

が、わかっていたかのように水月はそれに反応してバク宙でミリオの背後に飛び回りこんだ。

(反応した!?いやこの速度、おそらく俺が背後(ここ)に現れることを予測した!?)

 

「だが必殺!!」

ミリオは素早く背後の水月に右手を伸ばした。そしてその右手は水月の撃ったアクア・レーザーをすりぬけて水月の顔にまっすぐ向かった。

「!?」

ブラインドタッチ目潰し!!

 

ミリオの指は水月の閉じた目をすり抜けていき、完全に視界が閉ざされた水月の腹部にミリオの右ジャブが深々とヒットした。

「ぐふっ!?」

「ほとんどがそうやってカウンターを画策するよね。ならば当然!そいつを狩る訓練!するさ!!」

「水月!?」

叫ぶ骨抜の背後には笑顔を絶やさぬミリオがいた。

 

 

「通形ってさァーねえねえ聞いて天喰くん通形さー強くなったよねー。」

「ミリオは子供のころから強かったよ―――・・・ただ―――・・・・・・

 

加減を覚えた方がいい。

 

数分もしないうちに全員が腹部を抑えてうずくまっていた。

 

 

POWEEEEEEEEEEEEEEEEEEER!!!!!!

 

 

 

「ギリギリちんちん見えないよう努めたけど!!すみませんね女性陣!!とまァ―――こんな感じなんだよね!」

「訳も分からず全員腹パンされただけなんですが・・・。」

「俺の“個性”強かった?」

「強すぎっスよ!」

「どうなってんですか!?」

「すり抜けるしワープだし、水月みたいに複数“個性”持ちってことですか?」

 

「私知ってるよ“個性”ねえねえ言っていい?言っていい!?いいよね!トーカ。」

「波動さん、今はミリオの時間だ。」

 

「いや一つ!『透過』なんだよね!」

ムスッとするねじれに「ごめんて」とミリオが声をかけた。

「君たちがワープと言うあの移動は水月くんが推察した通りその応用さ!」

「応用ってことはわかるんですが、一体どういう原理でワープを?」

 

「全身“個性”発動すると俺の体はあらゆるものをすり抜ける!あらゆる!すなわち、地面もさ!!」

「じあ、じゃああの沈んでたのって()()()()()()()ってことノコ?」

「そう!地中に落ちる!そして落下中に“個性”を解除すると不思議なことが起きる。

 

質量のあるモノ同士が重なり合うことはできないらしく・・・()()()てしまうんだよね。

 

つまり俺は瞬時に地上へ弾き出されてるのさ!これがワープの原理。体の向きやポーズで角度を調整して弾かれ先を狙うことができる!」

「ゲームのバグみたいっすね。」

「イーエテミョー!!」

ミリオが吹き出した。

 

「攻撃は全てスカせて、自由に瞬時に動けるのね。やっぱりとっても強い“個性”。」

 

 

いいや、強い“個性”に()()んだよね。

 

 

発動中は肺が酸素を取り込めない。吸っても透過しているからね。同様に、鼓膜は振動を、網膜は光を透過する。

 

あらゆるものがすり抜ける。それは何も感じることができず、ただただ質量を持ったまま、落下の感覚だけがある・・・ということなんだ。

 

わかるかな!?そんなだから壁一つすり抜けるにしても、片足以外の発動→もう片方の足を解除して設置→そして残った足を発動してすり抜け。簡単な動きにもいくつか工程が要るんだよね。

 

「急いでる時ほどミスりそうだな・・・。」

「しかも何も感じなくなってるわけだから・・・動こうにも動けねぇよな。」

 

「そう案の定俺は遅れた!!ビリっけつまであっという間に落っこちた!!服も落ちた。

 

この“個性”で上を行くには遅れだけをとっちゃダメだった!!予測!!周囲よりも早く!!時に欺く!!何より『予測』が必要だった!そしてその予測を可能にするのは経験!経験則から予測を立てる!

 

長くなったけどコレが手合わせの理由!言葉よりも"経験"で伝えたかった!インターンにおいて我々は『お客』ではなく1人のサイドキック!同列(プロ)として扱われるんだよね!

 

それはとても恐ろしいよ。時には人の死にも立ち会う・・・!けれど怖い思いも辛い思いもすべてが学校じゃ手に入らない一級品の"経験"!

 

 

俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!怖くてもやるべきだと思うよ1年生!!

 

 

 

その場にいた全員がミリオの演説に呑まれた。

 

 

「話し方もプロっぽいな・・・。」

「3行で済むことを1話半も・・・。」

「『お客』かぁ。確かに職場体験の時はそんな感じしたな。」

「危ないことはさせないようにしてたよね。」

 

「よし!そろそろ戻るか!」

「ねえ・・・!私たちいる意味あった?知ってる?」

「何もしなくてよかった。ミリオに感謝しよう・・・。」

 

 

(行使するには大きすぎるデメリット・・・しかしそれを補って余りある()()を活かすために経験を積み、予測力を身に着けた。ただ強いだけの人が雄英のトップにいるわけじゃない・・・。努力でトップを掴み取った人、通形ミリオ先輩か・・・。)

水月は実践を通してミリオが培った"経験"をもとにした予測という力を身を持って実感した。

「「「ありがとうございました!!!」」」

 

 

「ムダに怪我させるかと思ってたの知らなかったでしょ!?でも全員けがなしで偉いなあと思ったの今。」

「いやしかし危なかったんだよねちんちn「だれか面白い子いた!?気になるの不思議。」

 

「最後列の敵から倒していく・・・俺の対敵基本戦法だ。ねじれちゃんのとこに職場体験したあの子・・・俺の初手を分析し、予測を立てた行動だった。サーが好きそうだなって感じだよ。」

「えーダメだよ!ねえダメなの水月くんはわたしとリューキュウのとこにインターン来るんだよ!もう約束してるの。」

「HAHAHA最終的にどこにするのかは彼自身が決めることなんだよね!」

「俺のとこには・・・できるだけたくさんは来ないでほしいな・・・。」

 

 

ハイツ・アライアンス 1-B

「結局インターンはどうなるんだろうな。1年はまだ様子見とか言ってた気ィするけど。」

「通形先輩のビリからトップにのし上がるってのはロマンあるノコね!」

「とりま、ブラド先生からのGOサイン待ちじゃない?」

 

「切奈ちゃんはどこにするか当てはあるの?」

「私?うーん、いけそうならまたマジェスティックのとこかな・・・。本人の性格に難ありだけど。」

「うんまぁ・・・叔父さんは人としてはアレだけどヒーローとしては一応ちゃんとしてるからいいとは思う。」

「そういう水月はどこにするの?」

「僕は―――・・・約束してたのもあるけど、リューキュウの事務所かな。」

 

 

 

インターンへの思いに浮かれるのをよそに、とある薄暗い倉庫にて、(ヴィラン)(極道)は邂逅していた。

 

「ゴホッ」

「話してみたら意外と良い奴でよ!!死柄木(おまえ)と話をさせろってよ!感じ悪いよな!!」

 

・・・とんだ大物、連れてきたな・・・トゥワイス。




ミリオ「次回 水月くんがリューキュウと再会かい!?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.65 拓く世界

原作No.125「オーバーホール」では今回の水月の物語の主軸とほっっっとんど関わらないのでテンポを落とさないため連合と八斎會の一触即発はだいぶ端折ることになりました・・・。
もうしわけなーい


「えー先日校外活動(インターン)の話をしたばかりですまないが、昨日ほかの先生と協議した結果、1年の校外活動(インターン)は多くの人が『やめとけ』との意見だった。」

「「「えええーーー!!??」」」

 

「マジかよ!先輩まで呼んでたのに!?」

「まぁでも全寮制になった経緯考えたら当然と言えば当然よね。」

「だが、今の保守的な保護下方針では強いヒーローが育たないという意見も出て、方針としては『インターン受け入れの実績が多い事務所に限り1年生の実施を許可する』という結論に至った。」

「妥当っちゃ妥当か。」

「俺んとこ行けっかなぁ・・・。」

 

 

 

 

 

数日後―――

「じゃ、アタシはここで。」

「うん。切奈ちゃんも気を付けてね。」

「ははっ。アンタの方が怪我しそうで心配だよ。ヤバいことに首突っ込まないでよマジで。ほんっとに。」

「あ、あはは・・気を付けます。」

B組のほとんどの生徒は事務所の受け入れが難しく、参加できなかったが水月や取蔭たち数名は無事事務所と雄英の許可を得て、校外活動(インターン)を実施できることになった。

 

「えっと・・・職場体験の時と同じだからここで合ってるよね、満打呂(まんだろ)市。」

そうこうして事務所を探している水月、すると少し遠くから騒音のような音がこっちに向かってきた。

 

「・・・ん?なにあれ?」

水月が目を凝らすと、その先にいたのは大きめのバッグから紙幣をこぼしながらドタドタと走ってくる覆面の4人組だった。

「ハァ、ハァ・・・クソッ!ここいらで警戒するのはリューキュウだけでいいっつってたろ!?」

「そんなこと俺に言われたてよぉ!あんなやばいのがいるなんて俺だって知らなかったんだよぉ!!!」

「!おい、あそこ、学生がいるぞ!」

「マジか!丁度いい、アイツを人質にしてうまいこと逃げ切るぞ!!」

 

覆面の4人衆は一斉に水月に向かってとびかかった。そのうちの一人が突進したままあることに気づいてしまった。

(え、こいつの制服・・・まさか雄英!!?)

だが気づいた時にはもう遅く、4人ともあっという間に水月に拘束されていた。

 

「・・・は?どうなってる!?なんで俺ら捕まってんだよ!!」

「おいガキ!さっさとこれ解け!!」

「そう言われても・・・おじさん達、(ヴィラン)でしょ?」

「ま、まぁ落ち着けお前ら。なぁ坊や、いくら君が雄英の生徒だからって、勝手に個性を使うってのはまずいんじゃないか?」

「その点ならご心配なく。僕仮免持っているので。」

「うっそー・・・。」

「へっ!そんなこと言ってられんのも時間の問題だ!あっちで俺らの5人目の仲間が戦ってる!それが終われば次はテメェだ!」

 

「―――その5人目って、もしかしてあの後ろの?」

「あぁ多分そうだ!そろそろ来る頃だろうと・・・へ?」

 

水月の視界の先には、身の丈20Mほどもある覆面の大男が今まさに倒れていっている場面だった。

「あ、見つけた!ねえねえ、何で逃げたの?まだお仲間さんいたのに!ねえもしかして、怖くなっちゃった?」

 

 

その声の主は、ねじれた光を足から放出して宙に浮いていた。

水月の職場体験先で先輩として一緒に活動し、つい先日校外活動(インターン)説明会でもあった少女。

 

 

「あれ?ねえねえ、もしかしてそこにいるの、水月くんじゃない!?ねええ、ひょっとして、校外活動(インターン)来てくれたの?」

「また会いましたね、ねじれ先輩。・・・なんかこのやりとり3回目くらいな感じがしますね。」

「えーそう?私ってば何回やってもいいと思うの!」

「ねじれ!逃げた(ヴィラン)は?」

ねじれと水月が話していると、ねじれの後方から大きな翼をはためかせ巨大なドラゴンが着陸した。

「って、あれ、水月くん!もう来てた・・・というか、捕まえてくれてたの?」

「リューキュウさんも、お久しぶりです。やっぱりなんかデジャヴって感じですね。」




リューキュウ「次回 意外な校外活動参加者?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.66 違い

そんなわけでNo.66はじまります。


街中で(ヴィラン)を捕縛した足で、水月はそのまま職場体験ぶりのリューキュウ事務所に訪れた。

「職場体験以来なのでしばらくぶりですね。リューキュウさん。今回のインターン、よろしくお願いします。」

「今回もよろしくね。正直、内心ほっとしてるのよね。これでもしインターンでうちに来てくれなかったら何かうちの事務所に思うところがあるんじゃないかって若干心配でさ・・・。」

「そうだったんですか・・・。」

「ともあれ!これでインターン生は全員そろったことだし、活動内容の説明に入ろうか!」

「そういえば、A組からのインターン生って誰なんですか?」

「もうすぐ来るわ。」

 

リューキュウの言葉通り、奥の扉からねじれがほかの参加者を連れてきた。

「リューキュウお待たせ!待ってた子たち連れてきたよ!」

そこにいたのは、A組の麗日お茶子と蛙吹梅雨の2人だった。

「失礼しまーす!あ、水月くんや!水月くんもリューキュウ事務所選んでたんや。」

「ケロケロ、久しぶりね、水月ちゃん。アナタもねじれ先輩に相談してここを紹介してもらったの?」

「ちょっと違うかな。職場体験をこの事務所でやってたからそのままって感じだね。」

「へー、水月くん職場体験ここだったんや。じゃあちょっとだけ先輩や。」

「はいはい、世間話はその辺でね。そろそろ活動の説明に入るわよ。」

水月たちは話を切り上げ、リューキュウの前に整列した。

 

 

「それじゃ説明に入・・・る前に、あなたたちは職場体験インターンの違いがわかるかしら?あ、ねじれは答えちゃダメよ。」

「はーい。」

他2人が思案している傍ら、一番最初に答えたのは蛙吹だった。

 

『活動における立場』かしら。私の時は(ヴィラン)がかかわったイレギュラーな事態が起こったけど、職場体験の時はなるべく危険な役割に就けさせるのをどこか避けているような話をみんなから聞きました。あれは多分『あくまで体験に来たお客さん』のような立場だったけど、今回のインターンは私たちも『サイドキック』に近いポジションで挑むことになるから、必然危険も増える・・・そういう立場の違いかしら?」

「へぇ、あなた『梅雨』ちゃんだったかしら。ものすごくちゃんと考えてるのね。そう、ほぼ正解、というか、基本的にインターンは教育信念上そういった部分を重視して教えているわ。ある種、学生と社会人とのもっとも明確な違いは『責任ある立場』かどうかだからね。」

蛙吹はリューキュウの言葉に真剣に耳を傾けていた。

次に回答したのは麗日だった。

 

「はい!その、こういうこと言うんもアレかと思いますけど、『お給料がもらえること』でしょうか・・・。あ、いや、職場体験ではもらえないからダメとかそういうんやなくって、お給料が発生することだからこそ、プロに近いという意識をもって仕事に当たらないけないというか・・・そう!さっきリューキュウが言ってた『責任ある立場』に立ってるっていう一番明確な証拠なんじゃないかなと、はい。」

「ふふっ。あなたは『お茶子』ちゃんね。別に遠慮する必要はないわ。私たちはプロであり、あなたたちもそれに近い立場になる。プロの仕事をするのにお給料をもらうことは何も引け目を感じる事じゃないわよ。お金は大事だもの。それと、さっき私が言った『責任ある立場』も、さっそく使ってくれてありがとうね。あなたの言う通り、お金が発生するということは、当然それに対しての責任を以って仕事に当たらなきゃいけないということ。そこもまた、職場体験との大きな違いね。それじゃあ後は―――」

 

 

 

リューキュウは水月の方を見た。

「水月くん。あなたはどうかしら。」

「・・・『戦力』、ですかね。」

水月が答え始めた。

「梅雨ちゃんも言ってましたが、職場体験の時は危険な役目に就かせないというお客さん扱い、言わば『戦力としてみていない』状態でした。まぁ、それは当然なんですけど、逆にインターンは僕たち学生も戦力の一つとして異常事態に対峙した際の現場での意思決定を要されることになる。そういうことだと思います。」

「・・・そうね。正直、私が真に言いたかったことには一番近いかもね。」

 

リューキュウは振り返って数歩離れ、再び水月たちに体を向けた。

「みんなが今答えてくれたことは全部正解!すごいね、やっぱり雄英生ってのもあるんだろうけど、皆しっかり考えたうえで私の問いかけに答えてくれた。

そう、『お金がもらえて、だからこそ責任ある立場になり、その分戦力としてカウントされる』。正しいこだけど、水月くんの答えを私が一番言いたかったことに近いって言った通り、私にとっての一番の違いとはある部分で違うの。なんだと思う?ヒントは、水月くんの答えの『意思決定』の部分。」

 

 

 

リューキュウの最期の問いに、3人はしばらく悩んだが、結局答えられなかった。

「まぁ、仕方ないよね。少し難しいし、何より3人とも初インターンだからね。

私が一番言いたかっったことっていうのは、『覚悟』の話。」

「覚悟、ですか?」

麗日が聞き返した。

「そう。お金をもらって責任ある立場になって戦力として見られて・・・って、結局全部外付けの外部からのモノなのよね。だからそこまで強く意識しなくても割とある程度達成できるようなものなの。

でも、意思決定、つまり実際に(ヴィラン)と対峙する等の非常事態に陥った時、果たしてちゃんとさっき言ったことを意識して動けるかしら?

あなたたちはいろいろとイレギュラーが重なってある程度(ヴィラン)への心構えが出来ているけど、普通のインターン生はそんな事態経験しないから、実際その場に居合わせるとパニックになって動けないこともざらにあるの。

インターン生として来たからには、そういう事態になっても冷静に動けるよう、非常事態への『覚悟』をしてもらいたい、私はそう思ってる。

 

来たばっかりなのに長々と付合わせちゃってごめんなさいね。」

 

 

「いえいえ、そんなことないです!確かに普通は非常事態なんてそうそう経験することないんやし、しっかり『覚悟』をしておくこと、大事やと思います!」

「そうね。客観的に考えることが多かったけど、それと同じくらい主観的な問題について考えておくことも大事だとわかりました。ケロケロ。」

「覚悟・・・。」

そういえば、と水月は思った。

(今まではヒーローとして当たり前みたいな感覚で活動していたけど、よく考えればこの仕事は「命懸け」なんだよな。)

 

「―――ありがとうございます、リューキュウ。心が引き締まりました。」

 

「さて、職場体験との違いはここまでにして、インターンでの君たちの活動内容について説明しなきゃね。」




意外な参加者とはだれだったのか
私もリューキュウに聞きたいですね。

お茶子「次回 何やら大きな計画が?
さらに向こうへ Plus Ultra!」


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No.67 リューキュウ事務所再び

水月たち3人はリューキュウからインターン活動内容の説明を受けていた。

「―――とまぁこんな感じで、主に担当地域のパトロール、事件発生時はまず私かねじれに連絡して、基本的に(ヴィラン)を倒すことより足止め・妨害をして、民間人の避難を優先。私たちが来るか現場にほかのヒーローがいた場合はそっちの指示に従うこと。ここまでOK?」

「「「はい!」」」

「よし、じゃあ早速二手に分かれてパトロールに移ろう!水月くんはねじれと、お茶子ちゃんと梅雨ちゃんは私と。準備して出発!」

 

「ほらほら水月くん!行くよ行くよ!」

「はいはい、ちょっと待てください。」

ねじれに急かされながら水月はパトロールを開始した。

「そういえばねじれ先輩、ビッグ3の他のお2人・・・通形先輩と天喰先輩はどの事務所でインターンをやってるんですか?」

「えー?確かね確かね、ミリオがナイトアイ事務所?で環がファットガム事務所だったよ!」

(ナイトアイは・・・確かオールマイトの元サイドキックだったっけ?ファットガムは関西圏では有名なヒーローだったよね・・・)

 

「なんていうか、逆じゃないんですね。僕はナイトアイは昔テレビで見たことがある程度ですけど鉄仮面て感じの人でしたし、逆にファットはいかにもな関西人ですよね。普通だったら通形先輩がファットガムのところで、天喰先輩がナイトアイの所属っぽいですけど・・・。」

「ね!不思議だよね!案外相性がいいのかもね!不思議!」

 

 

『ねじれ!アクア!三丁目大通りで(ヴィラン)による宝石店強盗が発生!近いのは貴方たちだから先に現場に行って!』

「聞いたアクア?三丁目だって!宝石強盗!速くいこう!!」

「はい、急ぎましょう!」

 

 

二人が現場に到着すると、目出し帽をかぶった5人の(ヴィラン)がちょうど車に乗り込んだところだった。

「アクア!私が車を抑えるから―――」

「中の(ヴィラン)を捕縛ですよね。了解です!」

水月の返答を聞くとねじれは(ヴィラン)が乗った車に波動を当て発進を妨害し、次の波動で車をぐるりと覆って浮かした。

その間に水月がドアを開け、水で中の(ヴィラン)を捕縛し、車から5人とも引きずり出した。

 

 

「よし、とりあえずこれであとは警察を待って―――」

『ねじれ!アクア!2丁目で(ヴィラン)による暴動!私たちは市役所前の(ヴィラン)に対応してるからそっちで対応お願い!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ヴィラン)グループ同士の抗争です!!巨大化個性が二名!!エスパ通りを巻き込み戦闘中!至急ヒーローを―――」

無線機で通信をしている警察官の横を水月が飛び過ぎていった。

2体の(ヴィラン)にめがけて飛んできた水月は両手から先端に大きな輪がある長い紐状の水を生成し、(ヴィラン)の間を通り抜けながら輪をそれぞれ首に掛けた。

「アクア・カラー・・・!」

 

そのまま水月が両手で引っ張ると(ヴィラン)たちはのけぞり、動きを止めた。

 

「ねじれ先輩!」

「おっけーおっけー!チャージ満たん出力30

 

ねじれる波動(グリングウェイヴ)!!

 

 

ねじれの波動を食らった(ヴィラン)たちはそのまま倒れこんだ。

「なンだァ!?」

「ねぇねぇ何でケンカするの?“個性”同じだから?変なのっ。

今だよー!二人共!!」

 

ねじれの合図を聞き、お茶子・梅雨の二人が接近した。

 

 

「「メテオファフロツキーズ!!」」

 

 

お茶子が「無重力(ゼログラビティ)」で浮かせた瓦礫を梅雨が舌で薙ぎ払うと同時に解除し、瓦礫の雨が(ヴィラン)たちに一斉に降り注ぎ、ダウンさせた。

その後倒した(ヴィラン)たちを警察が捕縛・連行しに来た。

 

 

「よかったよーねぇよかったよかったァ。キンチョーした!?」

「指示通り動けました!」

「ケロケロ。意外と落ち着いてやれたわ。」

「連携も上手いこと行きましたね。」

地上へ降りてきたねじれが水月たちのもとに来た。

「水月くんはもちろんのこと、ねじれが連れて来るだけあって二人とも筋が良いね。ねじれも転倒させるタイミング直ってきたよ。」

「採用していただきありがとうございます。」

「ハイハイ。」

「あ!ねぇリューキュウこの二人職場体験のヒーローだめだったの。1年生は実績多いとこじゃないとダメなの。知ってた!?言ったっけ!?」

警察への引き渡しのやりとりを終えたリューキュウも加わり、現場に出ている全員が揃った。

 

 

「学生と言えどインターンに来たからには立派に戦力!あなたたちなら"あの案件"も活躍できそうね。」

「アノアンケン?」

 

 

オールマイトの元サイドキック・ナイトアイからのチームアップ要請。

 

指定(ヴィラン)団体『死穢八斎會(しえはっさいかい)』の調査及び包囲

 

 

(ヴィラン)連合につながるかもしれない大仕事よ。




梅雨「次回 大事なお話よ。
さらに向こうへ Plus Ultra!」



そういうわけで今年もありがとうございました!
今年の投稿・・・6話!
やる気ないのかと言われると半分くらいはいそうですになります。
残り半分は「暗号学園のいろは」に夢中になりすぎていました。。。
多分来年もそんな頻繁な更新はないと思いますので
気が向いた時に読んでみてください。

では、来年もよろしくお願いします!


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