ボロボロの神様 (kusaihana)
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プロローグ

初めての投稿となりますkusaihanaと申します。
この作品は、自分のことについて考えていた時にふと思いついたことをもとに書いております。おそらくほとんどの確率で人の世に流れるという事はないと思いますが、一部の男子高校生が普段妄想しているようなことが実現したらどのような物語になるのかといったことを意識して書きました。
もしよければぜひ見ていってください。


 

ジジジ...

 

「今朝、千葉県の四街道市在住の30歳、会社員の平坂容疑者が殺人未遂の疑いで逮捕されました。情報によると平坂容疑者は、私はやっていないと容疑を否認している様子です。また、平坂容疑者は、家族関係が上手くいっておらず、...」

 

ブチッ

 

 

 

 

 

「被告は2024年4月9日に千葉県の四街道市の自宅にて、妻と口論の末台所にあった包丁を用いて殺人目的で妻に傷を負わせた...間違いないな」

 

「確かにその日は酔いつぶれて家に帰宅して何も覚えていなかった、それに妻との仲もあまりよくなく口喧嘩はしょっちゅうだった...だけど、私は違う。妻を傷つけてなんか...」

 

「まだ言うか、実際に被害者の妻本人が言っているんだぞ、それに見ての通り腕と背中に深い傷を負っている」

 

私は妻の方をみた、そこにはニヤニヤしながら腕を上に挙げ腕の傷を見せびらかしている妻と、裁判所の雰囲気に圧倒されているのか今にも泣きそうな表情を浮かべながら震えている娘がいた...そうだ、これは冤罪なんだ、すべて妻に仕立て上げられた。私は妻の手のひらで踊らされている、妻はさぞ気持ちがいいだろう。

 

「私は...私は...」

 

「いい加減諦めて罪を認めたらどうなんだ、このまま粘っても罪が重くなってくだけ」

 

裁判官が呆れたように言う

 

「はい...私が...やりました...」

 

 

 

違う   違う   違う  違う 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う

 

 

 

そう心の中では思っていた。しかし私は何も言い返せなかった。私が罪を認めたとき娘は一層悲しそうな顔をしていたような気がした。確かに私は夫としてあまりいい人ではなかった。特に夫婦の仲が悪くなってからは毎晩のように酔いつぶれるまでお酒を飲み家では暴力をふるっていた。今回の事件はそのことも災いしたのだろうか。

 

「懲役7年だ」

 

裁判官が待ってましたかというように言った。

妻もその瞬間とてもうれしそうにしていた。

 

 

私はいつからかすべてのことが上手くいかなくなっていた。いつから道を踏み外したのだろうか...妻との関係が悪くなってたからだろうか。

 

 

いや、もっと前から

 

 

ふとあの時の記憶が脳裏によみがえった。

忘れもしない、唯一の友人を失ってしまったあの時だ。

 

 

 




最後までご視聴ありがとうございます。
とても短いプロローグとなってしまいましたが今回はここまでです。

今後も不定期にはなると思いますが、どんどん続きを書いていこうと思います。
どうかよろしくお願いいたします。


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1-1 降臨

「おはよう」

 

珍しく私は勇気を出して言ってみた

 

「...」

 

やはり誰も挨拶を返してくれなかった。

 

 

別にうちは毎朝朝ご飯を調理してくれるし家庭崩壊を起こしているわけではなかった。

しかし、夫婦の関係が冷え切ってしまっているのだろうか。夫婦間の会話は数えるほどしか行われないし夫婦喧嘩もしょっちゅうだった。

だからだろうか、私は無口だった。

 

「...」

 

「...」

 

いつも通りの無言の朝食が始まる。そう、いつも通り。

私は、そう胸に言い聞かせていたのかもしれない。

 

 

ガチャ

 

いつもの通学路をいく。高校2年間いつも通っていた道だ。

 

「キーンコーンカーンコーン」

 

いつもの踏切だ。

私はいつもの日常が続くと思っていた。この時までは

 

「プァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

警笛が鳴りやまなかった。

 

「グシャ」

 

嫌な音がした。

初めて人が死んだのを見たのはこの時だった。

 

「嘘...だろ」

 

私は現場を見て思わず声を出してしまっていた。

 

轢死体からは血がどんどん流れていく

 

「ピーポーピーポー」

 

救急隊員が遺体を運んでいく。

素人目にもわかる。この人は助からないと。

それでも救急車は病院を目指して一目散へと患者を運んで行った。

 

 

 

お昼になって学校のチャイムが鳴っても全くお腹がすかなかった。

そりゃ朝あんなものを見たのだ。

 

「どうした?考え事か?」

 

「あぁ、友介か。」

 

唯一の友人でもあるオカルト好きの友介だ。

 

「今朝、人が亡くなるのを見てしまってな」

 

「それは、災難だったな」

 

いつもだったらここでオカルトトークを炸裂するであろう友介もさすがにこの返しは想定外だったのだろうか。それだけ言って黙り込んでしまった。

 

「なんか、面白い話ないのか」

 

普段はオカルト話なんてそこまで聞きたくなかったであろう。でもこの日は違った、どんな話でもよかった。とりあえず人と話したかったのだ。

 

「えっと、半年ぐらい前からある都市伝説なんだけどね。あることをすると女神様を呼び出すことができるって言う噂があってね。」

 

こんなに消極的な彼を見たことがなかった。

 

「あることって?」

 

「いろんな説があるんだよね...。結構有名な話だから様々なサイトにあるんだけどサイトによって書かれていることが違うんだよね。ただ、有名なのだと、赤い絵の具でこのサイトのような魔方陣を描いたりだとか、赤い絵の具で降臨って書いたお札を部屋中に張ったりだとか、その両方をしたりだとか。」

 

友介はあいまいなことが嫌いだった。だから渋ったのだろう。

 

 

 

「ただいま」

 

やはり返事はなかった。

 

朝のことがあり、あまり現実味を帯びていなかった私は急に現実に引き戻された感じがした。

 

その後しばらくの間自室で読書をしていたが、やはり何か落ち着かなかった。

その時ふと昼の話を思い出した。普段は絶対そういう事をするたちではないしましてや今回はあの友介すら信じ切れていない話だ。でも、それでもやってみたいと思えるほど私は何か落ち着かなかった。

 

そこで私は自室のクローゼットから絵の具を引っ張り出し例の儀式を行ってみることにした。

 

とりあえず私はお札を部屋中に張ってみることにした。

 

「シーン」

 

何も起こるわけがなかった。

分かっていた、分かっていたんだ。それに多分ほかの方法を試してもきっと女神様なんて降臨しない。それもわかっている。しかし、何かやらずにはいられなかった。

 

そこで私はついでに赤い絵の具で魔方陣を描いた紙を床に置いてみることにした。

 

「シュゥゥゥゥゥぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

何やらけたたましい音とともに魔方陣から光が放たれた。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 

思わず声を出してしまった。

 

そう、そこに今さっきまで存在しなかった少女がたっていたのだ。

その少女は全身にあざがあり、所謂神様のような見た目ではなかった。

でも私は確信した、この人こそ私が召喚した女神様なんだと。



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1-2 神様の居る日常

「どうしたの?」

 

母親の声だ

 

私の頭は真っ白になった、親になんて説明しよう...自分ですら理解できていないのに...ましてやうちのような家庭でどう説明すれば...

 

「ガチャ」

 

母親が入ってきた。

 

もう終わりだと思った。

 

「おや、妹ちゃんじゃない。もうちょい静かにね。」

 

母親は当たり前のように神様を受け入れていた。

 

「ガチャ」

 

扉が閉まった。

 

「...これが神様の力。これで私の存在を君と関わりがある人すべてに認識してもらえる。」

 

神様は続けて言った。

 

「ところで、何かかなえてほしいことはないか? なんでもいい。貴方の願いを一つかなえてやろう。」

 

「ない、私は...今のままで大丈夫だ。」

 

もちろん私は今の生活に満足しているわけではなかった。しかし、何をしてほしいのか、何に満足していないのか、思いつくことができなかった。

 

「...そうか」

 

神様は少し悲しげにそう言った。

 

「...」

 

「...」

 

「そっ、そうだ!そういえばさ、名前とかってあるの?」

 

さすがの私もこの気まずい雰囲気に耐えかねて、聞いてみた。

 

「私には名前がない。なのでそなたに名前を付けてもらおうと思う。」

 

神様ははっとした後にまた何かを読むかのように言った。

 

「じゃあ、ひかりっていう名前はどうだろう?かわいくていいと思うんだけど。」

 

「良き名だ。その名を名乗ることにしよう。」

 

少女はとてもうれしそうに言った。

 

私は少女の態度にイラついたが、ここはじっと我慢することにした。

 

「...」

 

「...」

 

その後は互いに無言のまま夜になった。

 

「...おやすみ」

 

その一言だけ放って、少女は自分の部屋へと向かった。

 

少女を見送った後私ははっとした。そういえば、彼女の部屋などあっただろうか?

そう思って部屋を出てみると、隣に新たに部屋が誕生しており、妹の部屋と書かれた札がドアに掛けてあった。これも神様とやらの力なのだろうか。

 

 

 

 

 

「おはよう」

 

淡い期待を抱きつつ私はそう言った。

 

「おはよう。遅かったじゃないの」

 

母親が言った。

 

「おはよう」

 

続けて妹と父親も言った。

 

「どうしたのさ、突っ立って。早くおいで朝食できてるわよ。」

 

母親が言った。どうやら私は呆然としていたらしい。

 

食卓には白ご飯とほうれん草のお浸し、卵焼きが並んでいた。

 

「おいしい、おいしい」

 

そう言いながら私はご飯をかきこんだ。

 

 

 

ガチャ

 

いつもの通学路をいく。

 

「お兄待って、今行く」

 

妹の声が聞こえた。

 

そっか...一人じゃないんだ。

そう思いながら家を出ていった。

 



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1-3 広い街

「あれ?お兄どうしたの?」

 

私は学校までの通学の途中ずっと考え事をしていた。

この子は何者なのか、本当に神様なのか...そして、なぜこんなにボロボロなのか。

 

「?」

 

じっと彼女の方を見る。

 

今は厚着をしているためよくわからないが腕や首元、足には紫色に変色した無数のあざがあり、手首には切り傷のようなものが見えた。

昨日は信じられないことが目の前でたくさん起きていたためあまり気にしていなかったが、改めてよく考えてみると...いや、よく考えなくても明らかにおかしい。

 

俺は思い切って彼女に聞くことにした。

 

「その...傷はどうしたんだ?」

 

「...」

 

彼女は黙り込んでしまった。

そりゃそうだ。どう考えたって昨日会ったばかりのほぼ初対面のような人に、しかもそんな軽々しく聞かれて答えるわけがない。

 

「いずれ...わかります」

 

彼女はそう言った。

いずれという教える事なのだろうか? 私には意味が分からなかった。

 

 

 

 

 

 

「今日も妹さんと一緒にお昼食べるのかい?」

 

友介にそう言われた。

どうやら妹といつも一緒に食べているという設定になっているようだ。

 

「そ、そうね」

 

思わず動揺して、つっかえてしまったけどバレテナイきっとバレテナイ

そう心に言い聞かせて話を続ける。

 

「せっかくだから友介も一緒に食べないか?」

 

妹とはまだ出会って二日の仲だ、さすがに二人で食べるのは気まずかった。それに、友介に聞きたいこともあった。

 

 

 

 

「お兄と...友介さんですね?」

 

妹は少し混乱したような顔をしていた。二人で食べるのを想定していたのだろう。

 

ただ、さすがは友介。初めはかなり気まずい空気だったものの、最終的には得意のオカルトトークで場を和ましていた。

 

「もしかして...あの子って」

 

二人で教室に帰る途中急に友介が口を開いた。

友介はかなり勘が鋭かった。

 

「そうだ、昨日話してた方法を試したらいきなり現れたんだ。」

 

「まさかそんな...」

 

友介は驚いていた。そりゃそうだ、現実味のない話で馬鹿げてる。

自分だって、内心は相当驚いてた、内心は...

 

 

 

「さようなら」

 

ふと後ろから声が聞こえた。

 

「さよう...なら...」

 

私は、驚きのあまり途切れ途切れに返事をしてしまった。

そう、友介の声ではなかったのだ。

ふと後ろを振り返ると、クラスメイトの太田真が教室から出ていくのが見えた。

 

この時からだろうか、クラスメイトに頻繁に声を掛けられるようになったのは。

 

 

「お兄、帰るよ」

 

後ろを振り向くと帰りたそうにしているひかりがいた。

 

私はひかりと共に無人の教室を出た。



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1-4 助からぬ命

この日は朝から胸騒ぎがしていた。

 

『また、目の前で人が死ぬ瞬間を見ることになるのではないか』

 

何故かそんな気がしていた。

 

「キーンコーンカーンコーン」

 

踏切の音が聞こえた。

何故か私は確信していた。

きっと今走らなければ後悔する。と

居てもたってもいられなくなった私は走り出していた。

 

「やめて」

 

ひかりの声が聞こえた。

それでも私は走った。

 

「お兄、ほんとにやめて。お願い」

 

ひかりはそう叫びながら私の手をがっしりと掴んでいた。

彼女の力はその華奢な体からは想像できないほど強かった。そして...彼女は震えていた。

 

私はふと我に返った。

前を向くとおばあちゃんが踏切内に残されていた。

 

「踏切におばあちゃんがいるんだ、助けなきゃ」

 

私は叫んだ

 

「お願いだからやめて。あなたが犠牲になる。」

 

ひかりは言った。

 

「そんなのわからないだろ」

 

私は言った

 

「わかるよ...」

 

小さい声でひかりは言った。

 

「そ、それに非常停止ボタンも押されてるでしょ」

 

ふと踏切の方を見てみると何やらボタンを押している人がいた。

 

「プワー---------ン」

 

長めの警笛が聞こえる。

 

野次馬の叫ぶ声も聞こえる。

 

「グシャッ...ガリガリがりがりガリガリ」

 

この日。私は人が亡くなる瞬間を見た。

二度目だった。

 

 

 

 

お昼、私たちはいつものように友介とひかりと三人でご飯を食べていた。

今日の朝の出来事をすべて友介に言った。

 

「そりゃさいなんやな~ お祓いとか言った方がいいんじゃね?」

 

友介は軽い感じで言った。

でも私は真剣にとらえていた。

 

『こんな短期間で二度もこんな目に合うなんて、おかしいよねやっぱり』

 

そんな感じのことを考えていた。

 

 

「ひかりの正体って何なの?」

 

教室へ帰る途中に友介に聞いてみた。

 

「さぁ?それこそ彼女に聞いたら?」

 

「そうだよね」

 

朝のことがあってから私は彼女に不信感を抱いていた。

 

『どうせ聞いても嘘つかれて終わりだよな』

 

そう考えていた。

 

 

 

今朝、四街道市の踏切で80歳の女性の遺体が見つかりました。

 

『踏切の事故をニュースで放送するなんて珍しいな』

 

そんなことを考えていた。

 

腹部には多数の刺し傷が見つかっており、女性を殺害後に踏切に持っていき踏切事故を装った他殺とみており...

 

「他殺?」

 

私は耳を疑った。

「あのおばあちゃんはあの時はもうすでに死んでいたってこと...?」

 

驚きのあまり声が漏れていた。

 

「そうだよ」

 

ひかりはいつもと違う低いトーンで言った。

 

「君が助けようが助けまいがあのおばあちゃんは救えなかった。それに私が止めなかったら君も死んでいた。」

 

私は真っ青になった。

 

『もしあの時ひかりが止めていなかったら』

 

あの時はおばあさんを助けることに夢中になっていて頭が回っていなかったが、今考える恐ろしかった。

 

「だからお願いだ、わたしの言う事をある程度聞いてほしい。」

 

いつもと違うひかりに怯え私は何も反応できなかった。

 

「あの」

 

「何だ?」

 

「あなたは、何者なんですか?」

 

勇気を振り絞って聞いてみた。

 

「いずれ分かる。いずれ...」

 

そういってひかりは自分の部屋に戻っていった。



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1-5 疑い

「おはよう! お兄」

 

妹はいつも通りだった。

 

「おはよう」

 

『昨日のことは全部夢だったんだ。』

 

そう自分に言い聞かせた。

 

「身元確認の結果、昨日四街道市の踏切で遺体で発見された女性は近所に住んでいた平坂朋美さんと推定されており...」

 

食堂からテレビの音が聞こえる。

 

『やっぱりほんとだったんだ、昨日の出来事もひかりも...』

 

「早く下りてきなさい!朝ご飯できてるわよ」

 

母親の声が聞こえる。

 

いつの間にか私は廊下で立っていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

その日の帰り道のことだった。

私は久しぶりに友介と帰っていた。

 

「ねえねえ、せっかくだし寄り道しない?」

 

ひかりが言った

 

「おいおい、今日は二人じゃないんだぞ?」

 

またいつものわがままが発動した。そう思っていた。

 

「おーねーがーいー」

 

「はぁ、じゃああそこのダイエーにでも行くか」

 

俺は指をさした。あそこのダイエーが八日町周辺の学生の憩いの場であった。

 

「ごめん、自分は遠慮しようかな」

 

珍しく友介が断った。

 

「なら回り道していかない?」

 

ひかりはむっとしながらそう提案した

 

私はひかりの思考が分からなかった。なぜそこまでして友介を寄り道させたいのか。

 

「...分かった。」

 

友介は仕方なさそうに応じた。

 

「ぷわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

長いクラクションの音が響いた

 

次の瞬間

 

「どぉぉぉぉぉぉぉん」

 

何かがぶつかる音がした。

 

音のする方向に行ってみるとトラックが道端のお地蔵様と衝突していた。

 

私はすぐに理解した。ひかりの不自然な行動は友介がトラックと衝突するのを避けるためなんだと。

 

そして友介の居ない日常を想像して鳥肌が立った。

 

良かった、助かった。

 

この言葉が頭の中を渦巻いていた。

 

 

 

 

 

 

「なぜ、友介を助けたんだ?」

 

私は妹に訪ねた。

 

「なぜって...そりゃ助けれる命だったし」

 

妹は戸惑いながら答えた。

 

「ならなぜ...なぜ...踏切事故のおばあさんは助けれなかったんだ。予知能力があれば...おばあさんの殺害を防ぐこともできたんじゃないのか...?」

 

「あのねぇ、私は慈善事業で人を...」

 

妹ははっとした。妹はやっと私が聞きたいことを理解したようだった。

 

「分かった。特別にこの仕組みを教えてあげよう」

 

口調が変わった。

 

「この世界には均衡というのが存在している。この均衡というのは様々なものに存在していて、その一つが生と死なんだ。常に生と死の関係というのは釣り合っていなきゃいけないのだ。この均衡が大きく崩れると世界は全く違うものに収束する。つまりだ、何が言いたいのかというと救える命と救えない命が存在するのだ。」

 

「そして...」

 

ひかりはさらに何か言い加えようとしたがやめた。



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1-6 助かる命

「えー、本日の休みは友介君だけですね」

 

友介は休みだった。友介が休むのは高校生になって初めてだった。

昨日のことがあったからだろうか、なぜか胸騒ぎが収まらなかった。

 

「先生!」

 

思い切ってい聞いてみることにした。

 

「お どうしたんだね平坂君」

 

「どうして、今日友介は休んだんですか?」

 

「確かに珍しいよな...彼の母親曰く風邪らしいけど」

 

「そうで...すか...」

 

私は違和感を感じていた、直感が違うと告げていた。

ただ、どうしようもなかった。

 

「おにい!」

 

その時だった。

 

ひかりの呼ぶ声が聞こえた。

 

「どうしたんだそんな慌てて」

 

「友介君は...今日学校に来てた?」

 

真剣なまなざしで聞いてきた。

 

やはり何かある。そう確信した。

 

「いや、いなかったけど」

 

「やっぱり」

 

ひかりが小さい声で言った。

 

「今すぐ友介の家に行かなきゃ」

 

「え、でもがっk」

 

「いいから行くよ」

 

そういって無理やり俺を校外へと連れ出した。

 

さすがはひかり、すでに早退届も二人分提出していた。

 

 

 

 

 

 

友介の家に行くのは久々であったが自然と道は覚えていた。

 

「ピンポーン」

 

「はーい、少々お待ちください」

 

「もぅこんな昼間に誰かs...あら健一君久々じゃない。学校はどうしたの?」

 

友介の家には何度かお邪魔したことがあり、母とは顔見知りであった。

 

「友介君が心配で、早退してきました」

 

「あら、申し訳ないわね。でも彼、別に体調悪いわけではないのよね。なんか今日行きたくないって朝駄々こねだして...今までそんなことなかったのにどうしたのかしら。」

 

どこか寂しそうに母親が言う。

 

「まあいいわ、友介呼んでくるわね」

 

そういって母親は家の奥へといった。

 

ガチャ

 

「申し訳ないね、心配させちゃって」

 

そう言いながら友介が出てきた。

 

「どうして今日学校来なかったのさ」

 

「なんか体がだるくてね」

 

友介は言った。

 

違和感を覚えた。友介は今までどんなにつらくても学校に来ていた。それが体がだるい程度で休むだろうか。

 

ただ、そう言うならそうなんだろう。私は信じるしかなかった。

 

「じゃあな。元気になったらまた学校来いよ!」

 

だるいと言っている人とそのまま立ち話をするわけにはいかなかった。とりあえず早々と話を切り上げることにした。

 

「まって」

 

ひかりが言った。

 

「その、せっかくだしもしよかったら一緒に街探検してみない?」

 

「あのな、友介はだるいって学校まで休んだんだぞ?」

 

「でも...」

 

ひかりは今にも消えてしまいそうな声で抵抗した。

 

「分かった。 友介はそれで大丈夫か?」

 

ひかりが抵抗するときは大体何かある。今までの経験がそういっていた。

 

「うーん、まあ妹ちゃんの頼みなら...仕方ないか」

 

かなり気が進まない様子だった。

 

 

 

 

 

 

「ねえねえ!ここのお店行ってみない?」

 

そういってひかりが指さしたのはいかにも怪しげなお店だった。

 

「こ、ここは...」

 

「ねえねえ行ってみようよ!」

 

そういいながらひかりは店内に入っていった。

 

ひかりは好奇心旺盛だった。何にも興味がない自分にはとても羨ましかった。

 

「ねえねえこれ買わない?」

 

そういってひかりが手に取ったのは、マグカップだった。

 

「いいけど...こんなんでいいのか?」

 

そのマグカップは信じられないほど質素だった。

 

「うん!これを三つ買おうよ。記念になりそうじゃない?」

 

そういった彼女の顔は、うれしくも、どこか寂しそうであった。

 

「分かった分かった。」

 

そういいながら私はお会計を済ませた。

 

『もしかしたら今の自分は最高に幸せなのかもしれない』

 

みたいなことを考えてる時だった。

 

「ゴン」

 

鈍い音がした、

 

振り返ると、友介が床に倒れていた。



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1-7 神様システム

「ねえ知ってる? 実はイザナミノミコトとイザナミノミコトが生と死を生み出したのは嘘なんだって」

 

また友介のオカルト話が始まった。

そう思っていた。

 

「実は、天使と悪魔がいて、天使が生を、悪魔が死を生み出してるんだって。」

 

私はその時はいつものオカルト話が始まったと思って聞き流していた。

 

しかし、今、ひかりが全く同じ話をしている。

 

私は耳を疑っていた、ひかるの力は本物である、身を持って体験していた。だから、その話を信じるしかなかった。

 

「...にいちゃん」

 

「お兄ちゃん? 聞いてるの?」

 

「あぁ、ごめんぼーっとしていた。でも大丈夫、話は大体わかった。」

 

私はその話が本当のことだと受け入れられなかった。私は天使だの悪魔だのそういった話を信じてこなかった。どの話も信じるにはあまりにも現実味がなさ過ぎた。

 

「そう、分かったわ。」

 

ひかりは投げ捨てるように言った。

 

「それで、ここからが本題なんだけど。一昨日話した話って覚えてる?」

 

「えっと、確か、救える人と救えない人がいる...みたいな」

 

「そう、その話。」

 

ひかりは食い入るように言った。

 

「じつは、救える人と救えない人には特徴があって、救った場合長生きする人は救えなく、救っても長生きできない人は救えるようになっているんだ。」

 

その言葉が示すように彼...友介は昨日病院に運ばれたが、死亡が確認された。死因は脳卒中だそうだ。

 

「だったらなぜ...なぜ彼を救ったんだ...それこそ君には何の利益もないはずじゃないか。」

 

友介を救ったという事はどちらにしろ友介の命が長くないことをひかりが知っていたことになる。だからこそ腑に落ちなかった。

 

「それは...」

 

ひかりが珍しく言葉に詰まっている。

 

「あなたを...あなたを救いたいんだ...あなたはこのままだとだめになる...暴力も振るうようになる...そして...」

 

ひかりははっとして、話すのをやめた。

 

「とにかく...そんなあなたを救いたいんだ...」

 

ひかりは力強くいった。

 

「だとしてもなぜあなたが...」

 

私には皆目見当がつかなかった。なぜそこまで私を助ける事に執着しているのか、私を救って彼女になんの得があるのか。

 

「...」

 

ひかりは黙り込んでしまった。

 

「まあいいや、それでなぜ、救える人と救えない人が存在するんだい?」

 

何故だか私はこのことに何か重要な理由がある気がした。

 

「...この世界の生と死の比率というのは決められている。それを保つためには、人を助けた分誰かを殺さなければならない。そしてもう一つの規則として、救う前の世界と同じ世界に戻さなければならないというのが存在する。つまりだ、救った時間が多ければ多いほど元に戻すのに苦労することになる。そこで悪魔は、長生きする予定であった人であればあるほど複雑に殺害をしようとし、複雑な救済対策を行おうとする。だから救える人と救えない人が存在...というのは少々言い過ぎかもしれないが救う事が容易な人と困難な人が存在する。」

 

「だから...」

 

私は言いかけた

 

「友介は助けたしおばさんは助ける事ができなかった...というわけだ。」

 

ひかりはすべてを察したかのように言った。



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1-8 狂信者

「ねえ、君ってオカルト信じてる?」

 

これが彼から初めてかけられた言葉だった。

 

私...太田真は昔からオカルト好きだった。高校に入ってからいじめられるのが怖く隠していたがすぐにばれた。

不思議な物でこういったうわさはすぐに教室中を駆け巡り、同じオカルト好きであった友介の耳に届いた。

友介...堺友介はとても人当たりの良い人物であった。そしてすぐに人と打ち解けるような性格の持ち主であった。

そんなこともあってか私と友介はすぐに意気投合し、一緒にオカルト研究会に入部していた。

 

オカルト研究会の中でも友介は異質な人物であった。

オカルト研究会といってもオカルトを信じている人というのはほとんどいなかった。

しかし友介は違った、インターネット上に書いてある情報を信じて疑わなかった。実際にそうであると思っていた。

彼はオカルトファンではなくオカルト狂信者だったのだ。

そんな性格が災いしたのだろうか。友介からはどんどん人が離れていき、友介とつるむのはついに私と彼...平坂健一のみになっていた。

 

 

そんなある日だった。

 

「おいおいこれ面白そうじゃね?」

 

『神様降臨の儀式』 そう書かれたサイトだった。

 

そのサイトには神様の降臨の儀式が書かれていた。一見するとよくありがちなエセサイトだが、このサイトの文は妙に生々しかった。

さらに調べてみると方法は違えど同様のことについて書かれたサイトがいくつも見つかった。

 

私からしたらどう考えても嘘であるのだが熱狂的な狂信者である彼は違った。

 

『きっとこれらの中に本物がある。』

 

そんなことを考えていたのだろう。

 

 

 

それから数日後のことだった。

 

「なぁ、健一に妹なんていたっけ?」

 

急に友介からそんなことを聞かれた。

 

「急に何言ってんだよ?あの仲良し兄妹だろ?有名じゃないか」

 

健一の兄妹といえば仲良し兄妹で有名だった。

妹の方は才色兼備であり、多くのお昼のお誘いがあるにもかかわらずそれを断って兄と昼を共にしていた。

 

「しかしよ、健一の妹に関する記憶があまりにもなさすぎるんだ。」

 

「何言ってんだよ、いっつもお昼に...」

 

私は言葉を止めた。健一の妹について何一つ思い浮かんでこなかった。確かに私は健一とは全くかかわりはなかった。にしてもあの有名な妹に関する話を何一つ聞いたことがないというのはあまりにも不自然であった。

 

「確かに...ちょっと不自然かもな...でも」

 

「でしょ?」

 

友介が遮るように言った。

 

「だから俺、健一にいろいろ聞いてみようと思うんだ。」

 

そういって友介は健一の机へと向かった。

 

 

 

 

部室に行こうとしている時だった。

 

「おい、やばいかもしれないぞ」

 

友介は焦っているようだった。

 

彼の話を聞く限り健一の妹は実際にあのサイトに書かれていた方法を使って降臨させたものであるとのことだった。

 

「何がやばいの?」

 

話が全く見えなかった。

 

「彼女は...神様なんかじゃない。命を貪る悪魔なんだ...」

 

そのサイトには続きがあった。この方法が生まれた経緯だ。そのサイトによると未来でとある思いを持った少女が願いを叶えるために他人の命と引き換えに悪魔として現代に降臨するとのことであった。そしてこの儀式とは本来悪魔を召喚する儀式であったのだ。

 

「でも...仮に100歩譲って妹が召喚されたとしても...悪魔とは限らないのでは?」

 

「それはそうかもしれない。ただ事態が起きてからでは遅い」

 

「健一の妹を殺すんだ...健一を守るために」

 

彼の言ってる事はあまりにも支離滅裂であった。

 

 

とりあえず友介の言っていたことが本当なのか平坂に聞いてみることにした。

 

ある日の放課後の事だった。

運よく教室に残っているのは私と平坂の二人のみであった。

 

「さようなら」

 

とりあえず挨拶することにした。

 

「さよう...なら...」

 

相手は明らかに困っていた。そりゃそうだ、いきなり話したことない人に挨拶されたら誰だって混乱する。

 

一度深呼吸をして、例のことを聞こうとしたその時だった。

 

「ガチャ」

 

ドアを開ける音がした。

平坂の妹だ。

 

気まずくなった私は教室を出ることにした。

 

 

 

それから一か月後半後のことだった。

 

友介が、亡くなった。



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1-9 遺作

「起きて...兄ちゃん...起きて」

 

妹が珍しく起こしに来ていた。

ふと時計を見るともう8時を回っていた。

昨日あんなことがあったからだろうか。とにかくこの日初めて寝坊したのだ。

 

「あら、友介おはよう。朝ご飯いる?」

 

「いや、大丈夫。」

 

眠い目をこすりながら私は言った。

 

「行って...きます」

 

重い足取りで家を出ていった。

 

 

 

 

 

『キーンコーンカーンコーン』

4限のチャイムが鳴ったその時だった。

 

「そういえば今日も友介休みなんだな、珍しい」

 

そう話しかけてきたのは同じクラスの太田君だった。

その瞬間とてつもない罪悪感が私を蝕んだ。

 

 

私は知っていた。友介が昨日亡くなったことを。

私は知っていた。昨日友介を外に連れ出すべきではなかったことを。

なのに私は  私は  私は  私は  私は  私は  私は  私は 私は 私は 私は 私は 私は 私は 私は 私が 私が 私が 私が 私が 私が 私が 私が 私が 私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が私が

 

「お兄、どうしたの?...」

 

声のする方を見るとひかりがいた。太田君はもういなくなっていた。

 

「いや...何でもない」

 

「...そっか」

 

私は一体この時どんな顔をしていたのだろう。

 

「あ、それと屋上でご飯食べない?」

 

ひかりはいつものように屋上に誘った。

それだけでも少し救われた気持ちになった。

 

 

 

 

放課後のことだった。

先生がついにあの話を始めた。

そりゃあ当然だった。クラスメイトが亡くなったのだ。先生に伝わらないはずがなかった。

そして最後に、

 

「健一君、後で妹と職員室に来るように」

 

そう言われた。

 

 

 

 

「どうして君たちは昨日友介君を家から連れ出したんだ?」

 

これが職員室での第一声だった。

恐らく友介の親から聞いたのだろう。至極当然の問だった。

 

「すいません、どうしても友介と遊びたくって。」

 

ひかりが言う。

 

「なら別の日でもよかっただろ?何故昨日だったんだい?」

 

「それは...一緒に買いに行きたいって思ってた限定品が昨日までだったので...」

 

ひかりの回答はあまりにも無理があった。

 

「そう...か...」

 

担任の返答は明らかに不自然だった。

他の先生ならまだしも担任の先生はかなりの頑固者で知られていた。

その先生がこんなにすぐに折れるわけがなかった。

 

『神の力』

 

そう言われる力をひかりが使っていたことをふと思い出した。

もしかしたらこれはその一環なのかもしれないと思った。

 

 

 

 

『神』

 

最近その言葉が妙に引っかかっていた。

本当に彼女は神様なのだろうか。

そしてその力は本当に神様の力なのだろうか。

 

「神様 降臨 オカルト」

 

私は珍しくオカルトについて調べることにした。

驚くことに、神様の降臨方法について書かれた資料がたくさん見つかった。

 

その中に

 

『悪魔の降臨方法』

 

と書かれた記事があった。

 

 

 

「女神の降臨方法の実態について」

 

こんな書き出しから始まっていた。

私は鳥肌が立った...まるっきり私の例と同じだったのだ。

 

「私は、たまたま神様システムについて言及した資料を見つけた、そして気づいた。

神様システムは、嘘のシステムだったのだ。」

 

そこで文は終わっていた。

ふと作者欄を見ると『三神 友介』の字が載っていた。

またも鳥肌が立った。

彼の...遺作だったのだ。




更新が大変遅くなってしまって申し訳ございません。
学業の方が忙しく、あまりこちらに時間が割けなかったためこのようなタイミングでの投稿となってしまいました。これからも投稿までかなり時間がかかると思いますがどうかよろしくお願いいたします。


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1-10 作品

「えー、本日の休みは友介君だけですね」

 

珍しく友介は休みだった。

 

「あいつが休むなんて珍しいこともあるもんだな」

 

そんな程度に思っていた。

 

「おにい!」

 

その一言でその考えは打ち砕かれる事となった。

 

声の主は健一の妹だった。

会話を聞く限り今から友介の家に行くといった内容だった。

 

「やはり、間違いない。友介に何かあったのだ。」

 

そう思った真は放課後に健一の家に行くことにした。

 

 

 

 

「あら、どうしたの?久しぶりね。」

 

そういっていつも通り出迎えてくれたおばさん...友介の母親はどこかやつれているように見えた。

 

「あの、友介いらっしゃいますか? 様子を見に来たのですが」

 

「あら、申し訳ないね。友介は部屋で寝てるからまた今度にしてもらえるかしら?」

 

私は友介の母の言葉に違和感を覚えた。

 

「寝ていたとしてもせめて部屋にぐらいは通すのではないだろうか。」

 

「もしかしたら、見せたくない何かがあるのではないだろうか。」

 

俺はそう考えた。

 

 

 

 

 

昨日はそのまま帰ってしまったが明らかに昨日の友介の母の挙動は不自然だった。

まるで何かに口止めをされているような...そんな雰囲気だった。

 

「そういえば今日も友介休みなんだな、珍しい」

 

久しぶりに健一に話しかけることにした。

彼が何かしらの鍵を握っている気がしてならなかったのだ。

 

「...」

 

明らかに彼は動揺していた。

彼が関与していることは疑いのないことであった。

 

 

 

 

 

 

「まさか友介が亡くなるとは...」

 

今まで彼に無関心であったオカルト研の人たちもこの話題で持ちきりだった。

いつもオカルトなんてこれっぽっちも信じなかったオカルト研のメンバーが呪い殺されただの神の逆鱗に合っただの話し合っていたのはとても滑稽であった。

 

「あっ」

 

そんな中だった。

オカルト研中に驚きの声が響き渡った。

声を発したのは天岸唯だった。

どうやら友介の席の近くに紙袋があるのを見つけたらしい。

 

ただ他の人は呪いだのなんだのを怖がって触らなかった。

それもそうだ、急死をした上にいまだに死因はわかっていない。

ましてやあの友介だ、一つや二つ呪いにかかっていても何ら不自然ではなかった。

 

 

意を決して中身を見てみるとそこには一枚の紙きれとたくさんの資料があった。

そこには何かしらのURLが書いてあった。

 

URLを検索してみると

 

『悪魔の降臨方法』

 

そう書かれたホームページにつながった。

そこには降臨体験のようなものがずらずらと書かれていた。

 

そうだ、これは友介の体験日記だったのだ。



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