貞操逆転世界旅行 (貞操逆転すこすこ侍)
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Take001

 人すら歩かぬ深夜、燃え盛るビルの屋上で二人の男女が対峙していた。

 男は転落防止の鉄柵へ背をまるでソファ代わりにする様にもたれつつ、相対する相手に対して妖艶な笑みを浮かべている。

 

 男にしては髪が肩に触る程長く艶やか、そして和人形を思わせる黒髪ぱっつん、顔の彫りも良く言えば女性的。身長は172cmとこの世界の男性としては高く、月光と焔に照らされる頬はスクリーン越しに見ても唾液を飲むのを忘れる程情欲を掻き立て身に纏う白いスーツは煙に汚されることは無く月明りの下で輝きを放っている。

 そんな彼が手に握るはスターム・ルガー、撃鉄を起こし銃口は相手に向けていた。

 

「このビルはもう崩壊する。……お前も早くこちらに来い」

 

 相対する女が声をかける。

 180cmはあろうモデル体型に内腿を大胆に露出させたダメージジーンズが健康的な脚線美を彩り、臍出しのタンクトップでは隠しきれない豊満な乳房と女性にも関わらず割れた腹筋が自己主張していた。

 ミディアムストレートに纏められた茶髪と頬は煤に汚れ、手には50AEデザートイーグルが握られており、それを握る右手は力なく下に垂れている。

 

「勿論答えはNo。別に聞かなくても分かるんじゃないかい?」

「…………」

「あははははッ! 無言は肯定と受け取るよ。もしだ、もし私のことを従えさせたいのなら……そうだな」

「なんだ?」

KISS MY ASS(私のケツにキスをしな)

 

 男は銃口を下げた瞬間、鉄柵から身を乗り出した。女が男の元へと走り、後ろ向きに落ちる男と女の視界が交差し男の名前を叫びながら手を伸ばした。しかし彼の身体へ指が届くことはなくその手は宙を切った。

 

「かひゅぅッ!!」

カットッ!!

「大丈夫かい!? スタッフ! スタッフッ!!」

 

 ハーネス型の命綱によって宙にぶら下がった男から変な鳴き声が出た。

 先程の張り詰めた雰囲気とは打って変わりおろおろと駆け寄る女と風通しが良い足元に漏らしそうになる男、その光景を尻目にカメラ越しに満足げな妙齢の女監督。この映画が歴代最高興行収入を叩き出し世の中の女性のあらゆる性癖を塗り替える事を男はまだ知らない。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 貞操概念逆転。それがこの世界と前世との大きな違いだった。

 女性は働き男性が家を守る物。漫画雑誌では女海賊が変な実を食べて海へと駆け出し、また別の作品では女の刀士が弟を背負い鬼を倒すのがどうやら流行っている。

 日曜日朝に流れている幼子鉄板の某看板アニメはプリンスキュアだそうな。深夜アニメでは死に戻りスキルを持ったJKと蒼髪の執事とのラブコメが放映され、スマホゲームも男アイドルを集めて画面を叩く音楽ゲームもあれば競争馬と男を混ぜ合わせたウマ息子クールダービーなるものが流行っている。

 しかし前世のようなサブカルチャーが存在しつつも共通して違うところがあった。

 

 スマホを手に取りインストールしてあったアプリを開く。それは投稿型のイラストサイト、前世からお世話になっていたサイトを開き検索履歴からR-18タグをクリック。そして出てきたのはありとあらゆる性癖が詰め込まれた多種多様なエロ画像……ではなく美術のデッサンを思わせる男の裸の画像。

 

「やっぱつれぇわ」

 

 どの分野においてもこの世界、どうにもアダルトコンテンツが発達していない。その気分といえば意気揚々と検索をかけた瞬間、「今まで読んでいたエロ漫画は!?」と夢から覚めるような……いや実際は前座すら無いのだから最初からラーメンを食べてるのを見ている気分である。

 様々な属性に染まった愚息は美術部のデッサンでは抜けないと自信満々に言うのだから我ながら困りもの。

 

 スマホのアプリを落とし、手元にあったジッポーを手に取り役柄に染まるために手を出した煙草を口に咥え火を灯す。ジッポー特有の音と共に火をつけたタバコから煙吸込み肺に満たして一吐き。与えられた個室の控室に紫煙が舞う。

 

「ぶへぇッ」

 

 タバコの匂い染み付いておらず、むせる。

 

 遅ればせながら名前は黒木(くろき)(ゆう)

 小さい頃から守りたくなるよう可憐に可愛らしく、そして凛とした大和撫男(やまとなでしお)として育てられた二十歳のプリティマン。

 

 どうしてそんな時代に生まれて前世の記憶があるのかと言われればトラックに轢かれた事や都合良く神様転生等という事もなく、高校卒業後夢である世界一周旅行の最中に気が付けば記憶が甦りという次第である。

 いやそれもまた大分都合の良いことなんだが、神様は気が利いた導入が考えられなかったんだろう。記憶が甦り小銭稼ぎとして細々とアメリカで短期アルバイトに励んでいたら、映画の役者を探していたらしい監督の目に止まり、あれよあれよと台本を覚えさせられて俳優デビューさせられそうなのが今の現状である。

 

 そんなよくある自己満足小説宜しく都合の良い現状と世界のエロ要素が無い事に対してどうするべきか考えた事もあった。

 考えた結果、エロがないなら全世界の女の性癖を開拓しようぜ作戦である。モロ出しはNGでぎりぎりのラインを少しずつ開拓する。

 

 撮影で行った事例として内腿と尻の損傷が激しいダメージジーンズを用意し履いていないを演出する、実際には紐のような下着を履いているのだが効果は岩・地面モンスターに対するハイドロポンプくらい抜群だった。

 監督とスタッフの視線は鼠蹊部に釘付けであるし、相方の女優も顔と鼠径部を視線が行き来しつつ台本通りにセリフが出て来ないという事態。前世で何回お高い風呂屋に通ったと思ってるんじゃい、男の羞恥心を舐めるんじゃないとそんな事態を楽しむように台本を無視し見せつけながら演じれば何とダメ出し無しで許可が出てしまう。

 

 この映像が世に出回ると世界には新しくHAITENAI(履いてない)という物が爆誕するのである。

 

「いいかな」

 

 むせてから吸う気を無くしたタバコを指でこねくり回してるとトビラを三度ノックされ流暢な英語で声をかけられた。

 

「どうぞ」

「失礼するよ」

 

 こちらの声を聞き入ってきたのは茶髪の巨乳お姉さん、名をアンジェリーナ。一応映画の相方である。

 第一印象はクールで取り付く島の無い外見だが裏では随分とやんちゃなエロい女、背中に入れ墨が入っており海辺で男漁りしてそうなイメージであった。だが実際軽く話せば冷淡な雰囲気は奥手であり初心で何を話せばいいかわからなくなるからであり、背中に刺繍を入れてそうなイメージとは裏腹に世話を焼くのが好きな女性だった。

 

「監督が呼んでいたんだ。これから出来上がった作品の試写会をするよってね」

「一緒に行こうって訳かい?」

「そうだね、そうなる。嫌かな?」

「構わないよ」

 

 火のついたタバコを灰皿に押し付けて椅子から立ち上がる。

 

「さて、行こうか? アンジェ、エスコート頼むよ」

「勿論だとも」

 

 そう呟いて彼女の差し出された手を受け取った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

この予告wwwwww

 

1:名無しの映画監督 ID:stE8ozAjC

エロすぎ

 

2:名無しの映画監督 ID:+WXVPSL8d

>>1 わかる

 

3:名無しの映画監督 ID:3CYv7wn+u

>>1 わかる

 

4:名無しの映画監督 ID:AnXSKxLvX

>>1 やばいわ

 

5:名無しの映画監督 ID:xafvkfj1U

よく映倫R-15で通したよなと

 

6:名無しの映画監督 ID:hHyAdtVXc

そんなエロい? まだ見てない

 

7:名無しの映画監督 ID:NT0FuyTRO

>>6 はよみろ

 

8:名無しの映画監督 ID:UpCS8cJR8

・カーテン越しのシャワー→見えてないのエロい

・汗かいてる脇→いい匂いしそうでエロい

・撫でまわしたい尻→絶対柔らかそうでエロい

・髪を結ぶ紐を口で咥えるの→エロい

・見下されてる状態で舌なめずり→エロすぎ

・顔→くっそ可愛い

 

9:名無しの映画監督 ID:4Q5WfWl5r

>>6 えろい

 

10:名無しの映画監督 ID:FGcD+595n

>>6 抜けるぞ

 

11:名無しの映画監督 ID:g94qPT/55

主演は誰?

 

12:名無しの映画監督 ID:eRUwpmx48

>>10 アンジェリーナと、誰?

 

13:名無しの映画監督 ID:drKW+xYw3

>>8 キモすぎ

 

14:名無しの映画監督 ID:BufOqYSJU

>>10 公式見たら黒木優だってさ

 

15:名無しの映画監督 ID:E2tsQ9Kef

知らない

 

16:名無しの映画監督 ID:6maLcfNdq

>>8 は? 靴を脱ぎたての足裏見せつけもエロいだろ

 

17:名無しの映画監督 ID:iKSUP7oVF

>>6 生半可な覚悟で見るな 戻れなくなるぞ

 

18:名無しの映画監督 ID:bSeFoX274

この人可愛い結婚したい

 

19:名無しの映画監督 ID:Tclf5xRTi

黒木って誰?

 

20:名無しの映画監督 ID:v4cceC9Ax

新人じゃない?

 

21:名無しの映画監督 ID:zIZQVVKq+

そんなのはどうでもいいんだよ

問題はエロいこと、あそこまでエロい存在は初めてだわ

 

22:名無しの映画監督 ID:oYUDBVeFG

ふぅ…………

 

23:名無しの映画監督 ID:JyxUOfKEF

主演の男 どちゃクチュなんだが

 

24:名無しの映画監督 ID:oNzslQWVj

脇とか足とか興味なかったんだがあそこまでエロく見せられるとやばいな

 

25:名無しの映画監督 ID:vCnDwiy26

>>24 ただ見せつけてるだけなんだが、見せ付けようとする発想がやばい

 

26:名無しの映画監督 ID:7zb0SzyGH

>>19 wikiが無いから新人じゃないかな

 

27:名無しの映画監督 ID:FKHow0omW

これアメコミの実写化ってことだよね?

元ネタこんなにエロかった?

 

28:名無しの映画監督 ID:cQovdYczV

>>27 元ネタはエロくないんだよね、寧ろグロい ブラックジョークの塊だし

汚れ仕事はしないが銃の腕は天才っていう女の傭兵?と、拷問と殺害大好きな男の傭兵?のラブコメ

 

29:名無しの映画監督 ID:9EtSgG99i

>>28ラブコメ要素どこ……?

 

30:名無しの映画監督 ID:7yguL7qIj

>>29 一応ナンバリングタイトル?で2からラブコメ要素はある

1は顔合わせみたいなもの

 

31:名無しの映画監督 ID:hEAvbdUEE

>>30ネタバレ希望

 

32:名無しの映画監督 ID:2v82eNwkD

>>31漫画見ろ

 

33:名無しの映画監督 ID:Zn0i6utLn

まずこんな演技をしようと思った男もぶっ飛んでるし台本作った脚本家と撮った監督も狂ってるし本当ありがとうございます

 

34:名無しの映画監督 ID:exNAKsHvY

PV再生数エグすぎ草

 

35:名無しの映画監督 ID:twnPWKKAj

公開から1日で1000万再生とか笑えませんわ

 

36:名無しの映画監督 ID:ADYVVt0qE

>>5 全裸ではないからじゃないの?

 

37:名無しの映画監督 ID:3AnjfvOFd

コメントが海外ネキの欲望だだ漏れで草ですよ

 

38:名無しの映画監督 ID:y8Joni9L0

>>36 全裸じゃなくても仕草の全てやばい

 

39:名無しの映画監督 ID:d2NO+lryb

やっぱりエロいのは万国共通なんやなぁって

 

40:名無しの映画監督 ID:W4NaXoOfZ

原作ファンだけど両方とも持ってたイメージ以上の役者で期待してしまう

 

41:名無しの映画監督 ID:Y73jW8o/L

これってあれ?

1では同じターゲットを守る側と殺す側で、2からは同じ依頼主で

 

42:名無しの映画監督 ID:jBp5sAqV4

>>41ネタバレやめろ

 

43:名無しの映画監督 ID:O3t02lQ4B

>>41磔にするぞ

 

44:名無しの映画監督 ID:drhR5d88d

まぁアメコミ好きなら知ってるやろ

 

45:名無しの映画監督 ID:6RyGNdrcw

最近スーパーウーマンとかスパイダーウーマンとか、バットウーマンとかリメイク多いしな

これはマーブル作品じゃないけど

 

46:名無しの映画監督 ID:MAKA98/Cr

でも新しいスーパーウーマン噂じゃレズになるんじゃなかった?

 

47:名無しの映画監督 ID:HzMT08T0o

ヒーローを汚すな定期

 

48:名無しの映画監督 ID:n/RG/ECJ2

ヒーロー映画に恋愛は求めてないのよ

 

49:名無しの映画監督 ID:q+eRszMal

上映日いつ?

 

50:名無しの映画監督 ID:YaUqV+/5V

とにかく映画が楽しみだわ



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Take002

「あの時、映画の神は私に微笑んだの」

 

「彼との出会いはそうね、脚本家から送られた台本に目を通した時のこと。台本で描かれる男性の役柄が余りにも常識から逸脱したというか……人間味のあるサイコパス。とても複雑なのよ、そんな男を演じられる役者が居るのかと頭を抱えたのよね」

「このままではこの作品がCGで誤魔化した上出来のホームビデオ、B級作品のようになるなんて嘆いていたんだけれど、ふふ……失礼。それでハリウッドの街を歩いていたらね、居たのよ彼が。優がね」

 

「笑みを振りまきながらホットドッグの売り子をしていて彼の可愛さ目当てで並んで居る人に向けられていた呆れていても軽蔑していない視線っていうの? 男が女性に向ける心底嫌そうな感情が含まれていないのを見て、思わず声をかけたの。君をスターにさせてくれない?って」

 

「そして彼は私の手を取ってくれた。神は私と彼の出会いを祝福してくれただけじゃなくて、彼の事も溺愛してくれていた」

「実はこの作品の登場人物で彼が台本通りに喋った事は一言も無かったわ。もっとこう話した方がより魅力的だと、彼は私達に新しい扉を開いてくれた。彼のセリフの時だけ台本はトイレットペーパーに変わったの。艶やかで謎のエロスを感じさせるカメラワーク、男性の新しい魅せ方。彼は天才的よ」

「天才で小悪魔で、そして美しく優しい俳優」

「彼は必ず映画界に名を残すでしょうね」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「……彼の第一印象? ……御伽の国から来たの?かな」

「君達はやれ可愛いだ美しいだの、外見ばかり気をとられてるけれどね、彼の本当の良さは内面だよ。休憩の時に微笑む彼が堪らなく素敵なんだ、私が知っていた俳優といえば君は危篤患者なのかいってくらい皆の前に顔を出さない、出したとしても一瞬愛想笑いすらない、撮影が終わったらそそくさと帰る。そんな無愛想な人ばかり」

 

「でも彼は違ったんだ」

「お昼ご飯は必ず誰かと食べてスタッフが買ってきたドーナツを頬張り、木陰で昼寝なんて日常茶飯事。打ち上げの飲み会ではウイスキーをラッパ飲み。彼とのお昼ご飯は一日のルーティンと化していたよ。愛想笑いではない本当の笑顔を皆に見せてくれたんだ」

「役柄としての彼もとても強く、素敵だった。ただ私がセリフを飛ばした瞬間笑わせようとボケに走るのは尚早過ぎると思うんだ、思い出す事もあるかも知れないじゃないか? 君はどう思う?」

 

「ん? 彼が好きかって?」

「……ふふ、うん好きだよ、どちら側でも。次回作が楽しみだね」

「あぁ、それでは予告を見てほしい。因みに予告は2種類あるから、両方見てくれ。一つは真面目な予告と、もう一つは私も好きな予告だよ」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『1分で分かるアメコミ映画化』

『とある予告に声を入れろというミッションを問答無用で受けさせられたのでそこそこ頑張ってみようと思うんだけれど』

『そんな私の今回のお仕事は脂でぬったぬたになっている、この食器用洗剤で洗いたくなるハゲデブおっさんを殺すこと』

 

『それなのに、この茶髪のデカパイちゃんは邪魔をするわ。おっさんの部下の雑魚は湧いてくるわでもう大変。殺しても殺しても涌いてくるとかゴキブリかよって言いたくなるくらい』

『さてさて……濡れ場が来たぞぉ。透け透けのシャワーシーンだけど御代を請求されたくない人は目を閉じとけ。私の柔肌は少々高いんだ。ん? 見た? ではそうだね』

 

御代は9mmで宜しいか(殺そうか)

 

『正直濡れ場以外の見せ場なんてこの映画にはありません。今出ている戦闘シーンはミステイク』

『これもミス。それもミステイク。本編という名のミステイク。あ、ほらほらこの返り血浴びて笑顔をキメてる私最高に可愛いくない?』

『あらあら そんな私の様子気になっちゃった? じゃあこの映画見るしか無いでしょ、性癖歪んじゃっても良いなら見ちゃっても良いんじゃない?』

『それでは皆さん。See you again(ではまたね).Have a nice die(よい永眠を)

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 新作映画予告。鉄板演出の映画泥棒。

 そして製作会社のロゴが現れてスクリーンを見つめる観客の期待は高まっていった。有名作品の映画化、ファンの期待を裏切ることのない戦闘シーン、原作以上とも言えるヒロイン俳優の存在、役柄が映画弄り予告とも言えない宣伝を行う新しい告知の仕方と視聴側の興奮は見る前から擽られていたのである。

 しかし開始して1分、映画都内有数の巨大スクリーンは音も無いまま暗闇に包まれていた。数名が首を傾げて固唾を呑んで行く末を見守ると、ふと……暗闇の中で布切れが擦れる音が鳴る。そしてその音と共に金属同士が擦れる音が静寂な座席に鳴り響いた。

 

さてさて

ハサミに弓ノコ、ノミにドリル。メスと……あとは半田ゴテも用意しようかな

まぁこのような準備でいいでしょ

さてさてお楽しみの拷問の時間だ、……こんな素敵な女性に色々してもいいなんて思わず勃起してしまいそうだよ

……あぁおはよう。お目覚めかな?』

 

『目隠しをしているんだ、何も見えないだろう。まぁ辞世の句代わりに私の御尊顔を拝ませてやるのも悪くはないが、今はこっちの気分でね。雇い主から君を痛めつけて殺すようにお願いされている』

 

 重い鈍器を思わせるぐもったモーター音が、喧しく鳴った。

 

『今手に持っているのは木工ドリル。それをだ』

『足の指に突き立て』

『回す』

 

 再びモーター音が鳴り響くと血肉が削られ弾け飛ぶ音が歓声を上げ、固形物をキリが削り取る音が拍手を鳴らした。口に含まれた布切れを食い千切る勢いで肺を空にして鳴く声はモーター音に比例して大きくなる。それの大きさを表すようにガタガタと拘束されている椅子が軋みコンサートを彩る。

 

『あぁ……その顔とても素敵。正直イキそうだよ』

『指に穴を空けたら次は君の子宮を取り出そう』

『そして膣をしごいてあげる』

『何人もの娼夫をそれで咥えた事はあるけれど、実際に膣をしごかれたことはないだろう?』

『君ならイケるんじゃない? もしかしたら逝くかもしれないけど、簡単に逝かないでくれよ? お願いだから』

 

 まるで耳元で囁かれたその囁きは次第に遠くなり、シーンはネオンに照らされたタイムズスクエアに飛んだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 場面は代わりニューヨークのオフィスの一角。木彫のデスクを挟み茶髪の女性と金髪の妙齢の女性が話し合っていた。ソファにふんぞり返るように深く座り、金髪の女性が胸元から1枚の写真を取り出す。写真に写っていたのは五十路近くの頭髪が寂しくなった小太りの男性。その写真を机を滑らせ相手の元へと差し出した。

 

『この写真の男を護衛しろってこと?』

『そうだ』

『それにしては随分と金を出すのね、金払いが良い客は嫌いじゃないけれど…………こうもキナ臭いと勘ぐってしまって夜も8時間しか寝れないね』

 

 写真を見つめていた茶髪の女性の視線が、相手を射抜く。固くなった雰囲気を柔らかくするようにアメリカンジョークを交えてみたが、それに気づかずか相手の顔は苦虫を噛み潰した様子のまま。

 

『ぐッ……ここだけの話、別の組織がそいつの殺害をとある奴に依頼したんだ』

『とある奴?』

『こいつだ』

 

 再び胸元から1枚の写真を取り出された。机へ投げ捨てられたそれに映っていたのは舌を出してウインクしている一人の東洋人。

 

 黒髪、黒目、癖が無いストレートというだけでニューヨークの街では珍しい、それに可愛げもある。しかし写真の様子ではネロとブービエ・デ・フランダースを連れ去った愛くるしい天使などではなく破滅に誘う悪魔のような存在なのかもしれない。

 無言で想像というコニーアイランドを泳ぐ彼女を肯定するように、写真を投げた相手は上を見上げ煙草を咥え火を付けると紫煙を大きく吐き出した。

 

『ただのヒットマン(殺し屋)……なら良かったんだが、殺害と拷問を専売にしている気狂いの(イカれ野郎)だ。一度だけ見たことがあるが外見は最高なくせに中身は肥溜めも吐き捨てるくらい汚れてやがる』

『ふゥん?』

『対象が男なら出会ってすぐに股間に鉛玉ブチ込んでくる。噂じゃあそいつは男には興味が無いらしくてね、女性が好き……らしい。あくまで噂だ』

『そいつに気に入られるやつは前世でどんな悪行をしたんだか……』

『ファザー・テレサも笑顔で殴る所業だろうよ』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 男にとってブランドとパーティーは切ろうにも切れない存在らしい。命を狙われているのに悠長な物だと、視界の隅で活きの良さを見せ付ける男を捉えつつ女は内心独り言ちた。安物のチョコレートを口に含みウイスキーを一口含む。人工的に作られた甘ったるい味をアルコールとスモーキーな匂いが胃の中へと導いてくれた。

 

『やぁファッキンヴァージン(美しい女性の方)

 

 突然、丸椅子が軋む音が聞こえ振り向けば件の男が柔らかな笑みを浮かべてそこにいた。白いスーツに黒髪という注目を集める出でたちではあるが周りが興味を示した様子はない。女の直感が警鐘を鳴らすが男は気にしていない様子で横の丸椅子へと腰を掛ける。彼の手にしたグラスに浮かぶ氷が音を立て琥珀色の液体に沈む、しかしその音は周囲の喧騒に飲まれていった。

 

『お前は……』

『私のことを調べているのは知っているよ。随分お熱じゃないか。嬉しいね美人に私生活のことも調べ尽くされるなんて。……サインは要るかい?』

 

 脇に固定されたガンホルスターに自然と女の指が伸びる。

 

『待って。ここでドンパチするつもりはないよ、発情したら屋外だろうと交尾をおっ始める犬畜生とは違う。勿論私は純粋(童貞)だしね』

 

 彼女が銃を構える素振りに対してウイスキーを嚥下する男。身体を回し向き合うように見つめ返せば視界で二人の男が非対称に自己主張している。こちらに微笑みながら腹に何を隠してるかわからない男と五指に指輪を嵌めて醜く財を見せ付ける男。天地も差があるそのコントラストを視界に収め続けながらゆっくりと彼女の唇は開かれる。

 

『どうして殺しを専門にしているんだ?』

『童貞なんて意外かい、って答えも用意していたのにスルーされたようで残念。そうだねぇ……気持ちがいいから?苦痛でも快楽でも何でもいいんだ、女性が私の手で顔を歪めさせられる、美人であれば美人であるほど……それが堪らなく気持ちよくて、射精しそうになるんだよ』

 

 彼女の眉間の皺が濃くなった。

 

『まぁ嘘なんだけど』

『馬鹿にしているのか』

『お生憎様、明け透けにするほど私の風通しはよくはない』

 

 そう男の吐き捨てる様子に深く息を吐きながら女は肩をすくめる。

 

『……』

『それに男はミステリアスな方が素敵じゃないか』

 

 その様子を玉を転がすように笑み、男はもう話すことはないと椅子から立ち上がった。

 

『それではね、また会おう』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 ビルのエントランスで男女は互いに背を向けて大勢の男に手に持った拳銃の銃口を向けられたまま囲まれていた。五十路の男が青筋を立てて中二階の手摺を掴んでいる。木製のそれは握られる度に軋み悲鳴を上げるが男はそれに気が付かない。鼻息の荒らさに比例して男の部下も、銃を握る指先に力が入る。

 

『これだから! 女は信用出来ないんだ!!』

『だそうだよ?』

『うるさい』

『貴様もだサノバビッチ(売男)!!』

 

 男女の片割れはホルスターに仕舞われたデザートイーグルに指を掛けながら見下ろす男を厳しい視線で睨み付けていた。もう片割れは唾を散らしながら叫ぶその様子を見ながら肩をすくめる。

 

『おぉ怖い怖い。ねぇ今だけ手を組まない?

なに?随分弱気なんだね

 

 肩をすくめつつもう一人にだけ聞こえる声色で、二羽の鳥は囀ずり合った。猿の怒号、トリガーに指がかかり樹脂が軋む木々のざわめき、森林には似つかわしくない無機質な広場ではあるが二人には周りの喧騒は聞こえていない。

 

頑張るというのはあんまり好きじゃないからね。ベッドの上でも腰を振ってもらう方が好きだよ、私は下から眺めているだけ

良い身分だこと

肉体労働は専門外なんだ。弾を出すのは任せて、得意だからさ

お前のことは信頼はしていない。でも……その腕は信用はしている

お褒めに預かり恐悦至極、目を閉じて耳を塞いで

 

 すくめていた手を下げられた瞬間、男のコートの中から筒状の物が二人の前へと落ちていった。そのまま耳へと這わされた男の右手の小指にはピンが引っ掛かられており、それを周囲がスタングレネードだと気付くのは爆発してからの事であった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『さて……今回は内容が内容だ、ターゲットが死んだことは見逃そう。第一責める人間はこの世には居ないからな。次からの依頼だが、とある人間とペアを組んでほしい』

『ペア? 』

『かなりのじゃじゃ馬でね、マンデーサイレンスもびっくりの気性の荒さだ。私だってこいつと話すときは尻に氷柱を突っ込まれてる気分になる』

『嫌な予感がするんだけれど』

『入ってくれないか?』

『やぁこんにちは。おや茶髪のお姉さん(ド腐れ処女)じゃない? 元気にしてた?』

Oh……ジーザス(神は私を見放したか)

『出会った頃から口調が安定してないね、キャラクターがぶれぶれだ。満月にはまだ早いんじゃないかな?』

『誰のせいだと思っているんだ、小悪党の捨て台詞を吐いて消えた癖に』

『怒っちゃダメ。血圧上がっちゃうから。乳酸菌摂ってる?』

『仲良く頑張ってくれよ……ヴァージン共』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 観客の反応は様々だった。恍惚とした表情でスクリーンを見つめ余韻に浸る者。未だに子供のように目を輝かせている者。空になったポップコーンの容器を持って席を立とうとする者。心底疲れたと溜め息をつく者。多様な反応ではあるが、その中に作品に対して嫌悪感を露にする者は居なかった。

 黒の背景を背にし流れ始めるエンドロール。ポツリポツリとクレジットに興味を示さない観客が立ち始めた時の事だった。スクリーンが明るくなり中央で自己主張していた文字の羅列が画面端へと追いやられる。再生されたのは冒頭のワンシーンだった。

 

 

『今手に持っているのは木工ドリル。それをだ』

『足の指に突き立て』

『回す…………回す…………回す』

『スタッフさんこれバッテリー切れてない?ちょっとお願いします』

すみません切れてました

『……あ、切れてた? ごめんなさいお待たせ』

 

 

『あぁその顔とても素敵。正直イキそうだ』

『指に穴を空けたら次は君の子宮を取り出そう』

『………………ごめん中身飛んだ。あー……膣をしごこうだねOKOK』

 

 

『あぁ……その顔とても素敵。正直イキそうだ』

『指へ穴を開けたら次は君の子宮を取り出そう』

『そして膣でしごいてあげる』

……んん? ごめんごめん、私に膣はないね』

膣があったらびっくりだけど

アンジェうるさぁい

 

 

『やぁファッキンヴァージン(美しい女性の方)

『………………やぁ

『今夜空いてる? セリフが飛ばないように耳元で囁きながら昇天させようか?』

『魅力的な提案だけれどね。それを受けたら私は夜道を安心して帰れなくなる。ごめんごめん、もうワンテイク』

 

 

『童貞なんて意外かい、って答えも用意していたのにスルーされたようで残念。そうだねぇ……気持ちがいいから?苦痛でも快楽でも何でもいいんだ、女性が私の手で顔を歪めさせられる、美人であれば美人であるほど……それが堪らなく気持ちよくて、射精しそうになるんだよ』

『まぁ嘘なんだけどね』

ぶふッ ごめん、ごめんなさい。本当にふふ』

『今吹き出す要素あった?』

『お……思い出し笑いで

止まるまで休憩にしましょうか

 

 

お前のことは信頼はしていない。でも……その腕は信用はしている

お褒めに預かり恐悦至極、目を閉じて耳を塞いで

『あッ……ごめんピンごと吹っ飛んだ』

『ドンマイドンマイ』

『これ指を奥まで入れたら抜けなくなるんだよね……』

 

 

KISS MY ASS(私のケツにキスをしな)

『…………かひゅぅッ!!』

『カットッ!!』

『大丈夫かい!? スタッフ! スタッフッ!!』

『おえッぷ。……見て見てティンカーベル。……嘘!冗談!カメラ回してないで早く助けて!!

 

 

先程までの真剣な演技とは違うコメディアンのような素の雰囲気に観客達は声を上げて笑ってしまう。だがそれを咎める者は観衆には居ない、皆が皆そのエンドロールを楽しんだのだった。



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Take003

「それでは公開を祝しまして、乾杯!

「「「乾杯ッ!!」」」

 

 映画公開初日の動員人数がギネスの記録を軽く飲み込んだ。やはりエロの力は偉大であり、エロは世界を救うのだと思い知らされる。

 

 作品のダーティーポイントを見つけてはケチを付ける自称映画評論家からは戦闘シーンの出来がいいアダルトビデオと酷評されたが、エゴサーチしても炎上に繋がる大きな批評は表には出なかった。

 

 批評の中でも声が大きかったのは思春期女子の性に対する影響が著しい、男性を性の対象にするなと云うもの、発言元は前者がPTAとTwitterパパ様、後者がおマスキュ様である。こちらとしては火種になる故に公式アカウント開設は行っていないが批評の生まれる比率として3:1の具合。

 性の対象云々は私の方向性とは真逆故に触れないが、性癖を歪めるということは悪いことではないと私は思う。

 

 おねショタという属性が存在する。お姉さん×ショタという構図なのだが、この性癖は数多の性癖がある中でも肉体改造、奇乳よりも現実的にもかかわらず実現出来ない性癖である。

 考えてほしい、お姉さんとショタとして行為をしたい、または行為してほしい、そう考えて願う時点で此方はショタになれるのかという問題点。若返るなど不可能なのだ。

 

 であればだ、ショタと称される年齢の時におねショタを発現した場合にはどうなるか。精通していないという問題はさておき、それはもう云うまでも無く幸せであろう。

 NTRでなければ抜けない教、男の娘でなければ立たない教、そのような強者宜しく子供の頃におねショタ教に改宗させられる代償こそあれど忘れられない経験を夢見ることになるに違いない。

 この世界におねショタの代わりとなるお兄さん×ロリ、略しておにロリという概念は存在しない。おにロリを浸透させ今のお姉さん世代におにロリという概念を植え付けることで、その性癖を一般化させ幼女をおにロリに導く。

 おにロリを植えられた者が育ちエロスを引き継いでいく。

 新しい時代を創るのは、老人ではないのだ。熱く語ってしまったが以上が性癖を歪めても良しとする理由であった。私的な感情を交えると映倫でR15指定されてる時点で色々と察しろ。

 

 個人的おにロリ先進国家はやはり祖国日本。HENTAI国家日本にはエロスで世界を引っ張ってもらわなければならないと考えている。

 これには勿論理由もあり平安時代からホモ臭く、江戸時代にはタコ×女性の春画とぶっ飛んでいる我らがHENTAIジャップに比べアメップは近年同性嗜好を受け入れつつあるが年下嗜好は犯罪者のレッテルが貼られる。

 ケツの穴ゆるゆるな癖にそこ厳しいアメップさぁ。しかしイキ過ぎる者は犯罪者として淘汰されるのは必然である、イエスロリータノータッチとはよく言った物だ。

 関係ないけどアメップのケモナー信仰はヤバい。

 

 そして、話を現実に戻せば氷山がぶつかって沈んだ船を津波の如く飲み込んだ偉業を達成した為に改めて祝賀会をしようと皆で集まった次第だった。

 不参加と思われるのは数多くいたボランティアの方々のみでアシスタントからデザイナー、化粧係まで全員参加。

 

 そうなってくると「嫁があれでこれでして」と断れないのが日本人としての性、日本人は社交辞令に弱い生き物なのである。

 

 どのような所でパーリナイしているかと言われればハリウッド郊外の小洒落たバーであった。今回の飲み会は立食式、カウンターで飲み物を頼み立って飲みながら話すというスタイル。そのスタイルは問題無いのだがツマミが肉or揚げ物オンリーなのは正直キツい。ビールのお供に枝豆とたこわさが恋しくなるのは仕方ない事だと言えよう。

 

 さて今回の映画で世に産み落とした演出した属性だが先の説明にあった「履いてない」と「透け」、「足裏」、「脇」である。

 

 透けについては俗に言う濡れ透けではなくシャワーカーテンの内部で光を身体に浴びせながらシャワーすることで、カーテン越しに身体の輪郭を透けさせる見えない構図を演出させてもらった。

 私は念のために競泳水着を身に纏ってシャワーを浴びたのだが、それを知らないスタッフからはとてもとても好評だったとだけ伝えておく。

 

 脇も別段問題はなく好評だった。汗をしっとりかいたそれを見せ付けるように万歳、髪紐を口で摘まみ結い上げただけである。

 カメラの視線が自分の脇に注がれ体験したことのない恥ずかしさに背筋を撫でられたが、これも問題なく終わった。流石に意味もなく脇見せのポーズをするほど私の胆は大きくはない。

 

 問題は足裏である。きのこたけのこアルフォート戦争のように足裏フェチの種類は千差万別。選定する素材に迷った。

 

 王道宗教素足教、王道の良いところも取り入れたが牙城を崩されつつあるタイツ教、タイツから独立を果たしたストッキング教。

 神聖な領域を求め続けるニーハイ教とそれに従いつつも転覆を狙うニーソ教、異教徒の戦闘集団足袋教、甘酸っぱい青春に魂を縛られているソックス教。

 様々な宗教に別れ、また各宗教の中でやれデニール派、黒派だ肌色派だ、サイハイはニーハイではないだの、紺ソよりもスニーカーソックスだのと争っている。

 更には蒸れ加減だのエジプト型だのとその宗教戦争に終わりは見えないだろう。余談であるが私のはギリシャ型であった。テンプレートのような形にほくそ笑んだのは言うまでもない。

 

 そんな修羅の時代から悩みに悩んで選出された今回の靴下は白のスニーカーソックスである。メインとなった服装の白いスーツに白いソックスであれば逆に映えないという点。

 映えないからこそ、靴を脱ぐ瞬間に動作をアップで撮らせる事により靴を脱いだ足にスポットが当てられる、という理由。

 靴を脱ぐ動作、脱いだ後のほんのりとした湿り加減、それを見せ付けるようにソファで体育座りをし裏を見せ付けつつ足の指を動かす様子をカメラに収められた感想としては、普段気にしてないとはいえ敢えてソックス越しにでも足の裏を見せ付けるというのは実に恥ずかしかったと言っておこう。

 しかしこの見せる行為に楽しさを感じるのも事実、これが裏垢女子の気持ちだったのか。

 

 ところでアメリカ国民性としては主役、ヒーローが兎に角好きだ。いくつになってもヒーローになることを夢見ていると言っても過言ではない。身近な存在がそのような偉大なことをすれば諸手を上げて我が身の如く喜んでくれる温かい国民性である。当の本人がもう勘弁してくれと根を上げてもだ。

 

「YEAH!! 飲んでるッ!?」

「お陰様で」

「ペース遅いんじゃないのー?」

「それなりに頂いてるよ、ありがとう」

「ゲータレード掛けてもいい?」

「ダメです」

「隅で飲んでないで主役なんだから真ん中おいで?」

「大丈夫です」

「Hooooo!!」

 

 居酒屋でチビりチビり飲む日本人としては真ん中に引っ張り出され揉みくちゃにされる感覚が慣れない。

 日本ではお酒を注ぐという文化があるのだがそれがなく、代わりにウエイターが注ぐか自分で注ぐ。今回はバー形式であるから隅の方で嗜んでいたい心情ではあるが周りがそれを許さない。

 

 空いたグラスを交換しようとカウンターの隅に来るとグラスを交換する時間をくれないまま腕を優しく掴まれて真ん中へ引き戻される。強引にではない点とハグを強いないその動作に気配りを感じるが、気配りしてほしいのはそこではないのだ。

 

「お疲れ様、日本の飲み会ってどんな感じなの?」

 

 空いたグラスのまま他愛のない雑談の終わり際、隙を見計らった様に背後から声を掛けられた。

 振り返れば頬に酒気を滲ませたアンジェリーナが居り、手には口の付けられていないラガーが二つ。片方は私の分だろう、彼女からの好意を受け取りつつカウンターの正面に移動する。

 

「日本の飲み会のベースはご飯とお酒を楽しむ、かな? 騒いだりすることもあるけれど、やっぱり食べ物がないと」

「日本の食に対する執念って凄いと思う」

「毒があってもどうにかして毒を抜いて食べるからね。毒があるから食べないって選択肢がない」

 

 そんな会話をツマミに彼女を見ながら口の乾きをエールで潤しているとカウンター越しに人の気配を感じた。

 視線を動かすと若いウエイターが色紙とサインペンを持ち緊張した面持ちでこちらを見ている。するとアンジェリーナは何かを察したようで手に持っていたグラスをカウンターへと置いた。

 

「ファンなんです!! お店に飾るのでサイン貰えませんか!!」

 

 そういうのは会計の後では、という疑問を吐き出す前に興奮ぎみにお願いしてきた彼女から同時に色紙とサインペンを渡された。

 

 突然の出来事で生憎だが洒落乙なサインなんて考えていない。先にそれらをアンジェリーナに渡すと彼女は笑顔で色紙にサインを書く。

 彼女のサインは筆記体で中央左に書かれた、それを示す意味は右は私という事だろう。

 

 こういうファンサービスは大事なものだ、応援してくれるファンはどの界隈でも大事に扱っている。彼女が主に恋したのは対面している私ではなくスクリーンに映る私。であれば、役柄の私らしいサインを書かないといけない。物事にはタイミングが大事ではないのかという質問は飲み込むことにする。

 

 色紙とペンをアンジェリーナから受け取ると一度それをカウンターの上においた。そして胸元からリップを取り出しアルコールで濡れた唇を舌で拭い薄く唇へ走らせる。

 唇同士を擦り付け満遍なく塗れたことを確認し、サインを上辺を合わせ同様に走らせた。完成したそれに対して相手が礼を言うのと同時に、色紙を持ち名前の下の空いた隙間に唇を落とす。水音すら鳴らない小さな動作だが、リップのお陰か色紙には私が付けたマークがくっきりと浮かんでいた。

 

「これでいい?」

「「「「「Hoooooooo!!」」」」」

 

 それを彼女に渡すと見守っていた観衆が叫び上がる。

 周りから勢いよく背中と肩を叩かれ、隣にいたアンジェはハグしそうな勢いで肩を回し頭を撫でながら頬にキスを落としてきた。

 前世に置き換えれば若い男がいきなり女に肩を回して頭を撫でて頬にキスってアウトでは? さてはそれを判別できないくらい酔ってテンションが上がっているのだろうか。

 

 色紙を渡された相手は「OhMyGod…」と連呼しながら涙目で口許を押さえている。すかさず手を差し出して握手するファンサービス。流石にハグはね、カウンター越しでは難しいから仕方ないね。やり過ぎてしまったと焦っているわけではない。

 誤魔化すようにラガーを胃に注ぎ、バーボンのジガーを受け取るとそれを一気に呷った。酒気が胃から鼻に抜けて喉が熱く焼ける。それを眺められて歓声が沸く、負のループだ。腹を決めて焼ける喉を潤すカクテルを頼んだ。

 恐らく私の記憶と意識は間もなく無くなるだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

【公式が】名前でもうエロいあの映画を語るスレ7【病気】

 

 

950:名無しの映画監督 ID:u4Zj74MlK

【悲報】某映画評論家 AV呼ばわり

ソース↓

https://news.nhoooo.jp/pickup/691919

 

951:名無しの映画監督 ID:Peid+i3JD

 

952:名無しの映画監督 ID:O2/YvF5NQ

 

953:名無しの映画監督 ID:BQnyv+2OD

ワイにはわかる、こいつは思い出し妄想オナニーしとる

 

954:名無しの映画監督 ID:YgCyD7cpO

「上映時間が180分と長い割には主演俳優の扇情的な仕草が愚娘の情欲を掻き立てるばかりで肝心な行為シーンと思われる濡れ場が一切無く、戦闘シーンの作りは素晴らしいが、それに凝ったアダルトビテオの域を出ない。主観で見下ろされる視点等映画に対する新しい技法が見受けられたが作中の人物として感情移入するだけで問題の作品としてのテーマは頭に一切入ってこなかった」

 

十分に楽しんでるんだよなぁ

 

955:名無しの映画監督 ID:+s+Trp/KT

批評しか書かない奴だけど、絶対こいつファンやろ

 

956:名無しの映画監督 ID:GxXW14YfS

このオスガキのどこがいいのかわからない

ただ下品なだけ

 

957:名無しの映画監督 ID:98ozMcckA

実際他の映画じゃ見たことない見せ方ばっかりで凄いわ

 

958:名無しの映画監督 ID:zgl9ZQKHc

>>956おマスキュさんチッス

 

959:名無しの映画監督 ID:Npzeu8XV/

・意味もなく指先で優しく身体をなぞる

・脇見せからの髪結い

・無造作な上着の脱ぎかた

・見えてないシャワーシーン

・靴脱ぎからの足裏見せ

・真面目に話してる時の不意打ち舌ペロ、舌チラ

 

これがワイが感心した新しい見せ方やわ

 

960:名無しの映画監督 ID:A5+jXU4n3

>>956世論が下品と思うなら数に現れないんだよなぁ

ギネス破られないし

 

961:名無しの映画監督 ID:rDv88EXES

アアアアイイイィィィ

エンダアアアアアア

 

962:名無しの映画監督 ID:56/qfE06R

>>961違うとか睾丸からやり直したら?

 

963:名無しの映画監督 ID:D7hm1iBTp

これは下げ狙いの男を装ったステマ

 

964:名無しの映画監督 ID:29SRkL53t

>>959エロばかりやないかい!

 

965:名無しの映画監督 ID:3yH+6fejm

>>950豚切りすまん 次スレよろ

 

966:名無しの映画監督 ID:4KtDIwwaT

実際見たことないやり方ばっかりで凄い

 

967:名無しの映画監督 ID:ha6y9KwuK

ワイはSM苦手だから主観で見下ろされるのは合わなかったわ

同じ主観なら抱き付かれたい、そしてそのまま鯖折られたい

 

968:名無しの映画監督 ID:7G3pbP8gh

ワイはエンドロール派

 

969:名無しの映画監督 ID:5ymIGiwtK

作品が作られる現場ってギスギスしてるって思ってたわ

 

970:名無しの映画監督 ID:aazYMen8b

こいつのせいで職場の男スタッフの足に視線行く様になったんやが

 

971:名無しの映画監督 ID:ZanH1amPw

アンジェリーナが真顔でモブと話してるのに見えないところでカメラ目線で踊り出すのすこすこのすこ

 

972:名無しの映画監督 ID:erdzPFXoU

>>970おまわた

 

973:名無しの映画監督 ID:OFD11D9AI

電車とかな、靴ガン見してしまう

 

974:名無しの映画監督 ID:s5I5jIWbF

>>956実際あの作品にキレてるのマスキュカスとPTAだけだろ

 

975:名無しの映画監督 ID:o+o2jRVP/

金を払わされて無理に見せられてる訳じゃない

嫌なら見るな定期

 

976:名無しの映画監督 ID:/fekqPC+2

足はないわ、脇だろ

 

977:名無しの映画監督 ID:SqFASITEB

優家の玄関マットになりたい

 

978:名無しの映画監督 ID:kkcLfOylY

アンジェリーナとか絶対匂い嗅いでそう

 

979:名無しの映画監督 ID:lxzDIweRq

見損ないましたアンジュロ・カトリアンヌのファンやめます

 

980:名無しの映画監督 ID:dnT9azkJp

違う節子、それVや

 

981:名無しの映画監督 ID:Ge5EzpjOX

V豚は巣に帰れ

 

982:名無しの映画監督 ID:AmOnAP9Z/

Vで思い出したがつぅでぃすりぃでぃの海賊の男?が熱く語ってたな

 

983:名無しの映画監督 ID:HLG0Vob2E

>>982サム?

 

984:名無しの映画監督 ID:cF1RxAZ50

携帯から、ちょっと手間取ったわ

【正直】名前でもうエロいあの映画を語るスレ8【コロされたい】

 

985:名無しの映画監督 ID:ebQ4Q0xCS

つぅでぃすりぃでぃで海賊とかサムやろ

色々ポーズ取って真似してた

ずっと映画について話してるのよな

 

986:名無しの映画監督 ID:nEy56UgC+

開かないが

 

987:名無しの映画監督 ID:MOmvTCJM8

お姉さんリンク忘れてますよ

 

988:名無しの映画監督 ID:bdLLbP27p

字面だけだと海物語で草

 

989:名無しの映画監督 ID:NlhnLEA6B

筋肉モリモリマッチョマンと優とかてぇてぇ

 

990:名無しの映画監督 ID:ayjCUDGj8

うるさいですね

 

991:名無しの映画監督 ID:VY+godGiA

スレチしね

 

992:名無しの映画監督 ID:q++nMPphF

優くん男には興味ないんだよなぁ

 

993:名無しの映画監督 ID:vghEk+Oe/

わからんやろがい!!

 

994:名無しの映画監督 ID:ydWiBkMnx

次スレは?

 

995:名無しの映画監督 ID:IxpkW8BZQ

【速報】2が制作決定 撮影は今冬

 

996:名無しの映画監督 ID:J9UrDkFiM

マ?

 

997:名無しの映画監督 ID:9Oxyvxa/s

マ?

 

998:名無しの映画監督 ID:4vqS79cP4

おーい

 

999:名無しの映画監督 ID:NPcJbQ8Cu

制作決定早いな、まだ公開して1ヶ月経ってないぞ

 

1000:名無しの映画監督 ID:gPACHtScU

1000なら優くんと結婚出来る

 

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Take004

 映画やネットに出てから私生活が激変したという成り上がりストーリーに憧れた事はあるだろうか。人生がガラリと変わる切っ掛けを手にし億万長者となる、そんな夢物語だ。

 

 しかし私の現実は映画に出たからと言ってそう甘くはなく、そも旅行の小銭を稼ぐ為に売り子をしていた風来坊だった故貯蓄と云えるお金がない。

 

 映画の結果はどうあれ当初は無名の新人ということで前払いの配給は無く、ビザの更新及び切り替え費用と当面の賃貸料を含めた生活費は情けないことだが監督のポケットマネーから借りていた。ロス郊外のレンガ造りの1DKのアパートで質素倹約に生活しているのが今日までの現状である。

 

 季節は夏の夜風が身を震えさせる寒さに変わるかというところ、当の自分はといえば風でサッシが軋む部屋の中で服を着替えながら顔を綻ばせていた。

 第一四半期の映画の歩合興行収入の支払いが行われたのだ。

 

 金額こそ不明だが監督から期待してもいいよと声を掛けられている。我ながら笑みが止まらない。

 偉い人は言いました、中国人のメスガキに頼れるものは金と銃、この二つがありゃ天下太平だと。幾らかのお金と銃があれば世の中何とでもなるんです。

 

 因みにやってみろよと言われても現実では永住権がないので銃は購入出来ず、何とでもなっていない。護身用に所持しているのは股にぶら下がるコルト・パイソンが一つのみだ。顔と一物が合ってないと一瞬でも思った奴は至急ケツを出すように。

 

 この世界の男性の服装といえば基本的に上半身下半身共に腕や太ももを人目に付かないよう肌の露出が極限まで無い物が主流である。要は長袖長ズボンにタートルネック、冬なら問題はないが夏であれば暑い、熱が逃げない、蒸れる、肌に張り付くと悪いことこの上無い。

 短パンとアロハシャツで夏を過ごしていた前世に比べると大変煩い。しかし女性物はやはり選り取り見取り、一見女性物とわからないものも存在する。

 

 私の服装は中は鎖骨まで見える白のボートネックに上はウサギの耳付き黒色パーカー、下は黒いショートパンツだ。耳無しのを選択するとアメリカのコンビニ強盗の服装となるため泣く泣く断念した。

 皆まで言うな、既に二十歳の男がするには大分キツい服装と前世に染まった価値観が訴えている。

 だがこの世界は貞操が逆転した世界、行っている女装は置き換えれば男装、二十歳の可愛らしい女性が男装していると考えればギリギリ行けるのではなかろうか?

 

 気持ちを切り替えアパートの扉からを出て、ルンルン気分でタクシーで銀行に向かう。周囲の目が気になる事はなく、今は幾ら口座に入っているのか気になって仕方がないのだ。

 タクシーを降りて銀行に入りバンキングカードを差して残高確認を行う。口座開設はビザ切り替えのときに作ったもの、画面に表示される桁を一つずつ目で追いながら骨董品が鑑定される番組のように数えていった。

 

「一十百千万……十万……百万……二百万。おぉ凄い……二百万円」

 

 口座には2,100,000USDと記載されていた。

 タッチパネルを操作し口座から数百ドルを引き出す。どうやら今日の晩御飯で漸く少しの贅沢が出来るらしい。笑みを浮かべる頬を隠すようにフードを被るとそのまま足早に銀行を後にした。

 

 前世の記憶が混ざったことで円換算など無縁であった金勘定に侵食されている自覚がないまま、口座の中身とそれに対する税金がとんでもないことになっていると気付くまであと四ヶ月と少々。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 帰宅後、寝台でうつ伏せになりながらネットの海を泳いでいると携帯の通知音がなる。直ぐ様内容を確認するとアンジェからのメッセージだった。

 

『アメリカのテレビ会社からインタビューの依頼が私の元に届いてるけど、どうする?』

 

 メッセージを見て下唇を指で撫でながら唸りながら悩む。

 役柄としての私がセクシー路線に務めているにすぎず現実の私はそうではない、多少ガードが緩そうな男性を演じているに過ぎないのである。アメリカとお茶の間に放映される手前、どのようなスタンスで行けば良いのかわからなかった。そのままで良いのなら気は楽になるが、それは追々考えるとして取り急ぎ了承の旨を彼女へと伝えた。

 

『因みに全米に放映されるから楽しみにしていて』

 

 こちらの考えはわからないであろうアンジェから追い討ちが届く。借金の一括返済を含めて立ち回りを監督に相談しようと一人頭を抱えたのだった。

 

 

 日は幾つか流れ全米インタビューの日。日に日に胃痛を感じたが、それも間もなく解消されるだろう。

 楽屋で身支度を整えアンジェリーナと合流し共に放送局のスタジオに入る扉を開けばスタジオの中央には赤い絨毯の中に三つの豪華な椅子とサイドテーブル、それを囲むように何十台のカメラが設置されていた。

 

「うお゛ぇ……」

「ちょっと、大丈夫かい」

「胃酸が上がっただけ。吐きはしないから」

「世界にシャワーシーンを見せ付けた男とは思えないよ……」

 

 撮影の時は数台だっただろうと脳内で悪態をつけば、別の箇所の扉が開かれる。

 そこから現れたのはアイシャドウの強さを感じる黄色のドレスに身を包んだ黒人の美しい女性。目があった彼女は微笑むと此方に向かって歩み始め、傍まで近付きアンジェリーナとハグをした。

 

「はぁいアンジェ。久しぶりね」

「やぁオべラ。確か……三回目かな?」

「前の映画の時以来ね、今日は来てくれてありがとう」

「どういたしまして」

 

 続いて柔らかな笑みのまま、こちらに視線を合わせ私に右手を差し出してきた。私も微笑み返すと彼女の右手を握る。手の甲凄くスベスベしてるやん、やばと声を漏らしそうになったが寸前で飲み込んだ。

 

「ミスタークロキ。お会いできて大変光栄です。今日は来てくれて本当にありがとう。貴方と話せるのが楽しみ過ぎて、昨日の晩御飯もステーキが1ポンドしか喉を通って行かなかったの」

「こちらこそ貴女にお会いできてとても嬉しいです、ミスオベラ。私も楽しみで昨日の夜だって7時間しか寝れなかったんだ」

「貴方と何を話そうか、聞きたいことはいっぱいあるのよね。ではそろそろ準備を始めましょうか。席に座ってちょうだい?」

 

 手を離し彼女がそう囁くとスタジオの中央に案内された。彼女に促されて椅子に座ると周りのスタッフがバタバタと慌ただしく動き回るのが目に入り、その動作で撮影が始まるのだと嫌でも思い知らされ胃がキリキリと悲鳴を上げる。

 待つこと数分、漸くその時間が来た。

 

「こんばんは。オベラ・ウェンフィ・ショーへようこそ。司会は私オベラ・ウェンフィが務めさせて頂きます」

 

 開始を知らせるカウントダウンの終わりと共に、撮影は始まった。笑顔で挨拶する司会者、正直私自身笑顔でいられているのか不安に駆られてしまう。 

 

「最近話題の映画がございます。何でも公開して初動動員人数でギネス記録を更新し、最高興行収入を塗り替えるのは確実と噂されていますね。今日はその映画に主演されている二人に来ていただきました」

「どうも、こんばんは」

「……えっと……こんばんは?」

 

 あ! だめだわ。これは絶対笑えていない。場面慣れしていない故に震える声とカタつく奥歯、映画の私はそこそこやれるのに現実の私はどうして肝っ玉がミジンコなのかと自己嫌悪を通り越して奇声すら上げたくなる。

 

「まずはそうね、何から話そうかしら」

「やっぱり映画の主役はこっちじゃないかな?」

 

 しかし黒木に電流走る。現実の私がダメならば映画の役柄になりきればいいじゃない。因みに監督はやりたいようにやるのがいいと笑顔で言っていた。

 

「映画だって、あそこまで売れたのは優の色気のお陰と言っても過言ではないでしょう」

「では、そうね。ミスタークロキに質問なのだけど撮影するに時に羞恥心や嫌悪感は無かったの? 色々と新しい物を見させてもらったけれど」

「全然? お触りは厳禁だけれど見られるのは別に何も思わないよ。寧ろ抜けるものなら抜いてみろって内心笑ってるくらい」

 

 インタビューを受けるのは役として、そう考えるとスラスラと言葉を紡げられた。

 

「それに私が身体で新しい色気を表現することで、それに呼応するように新しい文化が生まれる。それに対して勿論需要が発生する。テレビでも雑誌でも需要を満たすように供給を作ったら新しい流れが出来上がるんじゃないかな。決して悪いことではないと思うよ」

「では例えば、現状どのような需要が生まれそう?」

「私が映画で際どい格好をしたように、男の際どい写真集とかはどうかな? 私としてはアダルトビデオが世に存在するのにギリギリを攻めたビデオも雑誌も何故存在しないのか不思議で堪らないよ。見えてないのだから良いじゃないって思うね」

 

 予想外の答えだったのか、司会の動きが一瞬固まった。

 

「どうギリギリを攻めるのかしら」

「そうだね、まず直接的に見えてなければセーフという前提でだけれど」

 

 そう彼女に断りを入れると椅子から立ち上がる。そのまま両手を身体の目の前で拡げた。

 

「私が全裸だとする」

 

 尻たぶが見える程度にその場で身体を斜めに曲げた。そして足を閉じて前に出ている太ももを鼠径部を隠すように上にあげる。そして手のひらを胸と股間に重ねた。

 

「手のひらで隠す」

 

 そのまま彼女へ微笑みかけ問い掛ける。

 

「見えてないでしょ?」

「さ……流石にそれはアウトじゃないかしら? 見えてないとはいえ貴方は裸なのよ?」

「被写体側に問題が無ければ、撮影自体は可能。それに対して世間の需要とこれを良しとするか、天秤にかけられるね。カメラマンさんは撮影したい?」

 

 お前達は既設の良心と価値観を崩してもこれが見たいのかというわけだ。沢山のカメラマンへと視線を向ければ頷く者も居れば笑顔で親指を立てる者も居た。

 

「ふふ……カメラマンからの需要はあるようだけど。あとはこれをエロス、悪く言えば下品に感じるか、または芸術の延長線上にある類いのものだと思うとか? どっかの国に全裸の彫刻が無かった? あれが芸術でどうして私のが非難されるのか、これがわからない」

 

 今のポーズとは湯上がりにタオルを肩に掛けてそうなMRDS(モロ出し)の彫刻ではなくヴィーナスの誕生であるが、言わんとしてることは司会に伝わるだろう。しかし彼女は唸り気難しい顔をするばかりであった。

 

「固定観念に囚われてるんだ、さっきの別の観点で見てみてみようよ。これで私が全裸だとしたらどう。綺麗か汚いか、どちらか」

「綺麗だと思うわ」

 

 即答だった。

 

「それなら綺麗、でいいんだよ。それ以上でもそれ以下でもなくただただ綺麗。綺麗だから見ていたい、それでいいと思うよ」

 

 彼女は納得したようで、気難しい顔を崩し頬を綻ばせる。

 

「言いたいことは伝わったわ。けどそれが映像となると中々難しいのよね。既存の価値観が足を引っ張ってしまうの、いい考え方は無いかしら」

「新しい物を生むとはそういうこと、受け入れられない物は時間をかけて理解してもらうしかない、その為にはどちら側も努力しないといけない。焦ることなくゆっくりゆっくり浸透させる必要がある、理解してもらって良さを広めていかないとね」

「映画での色気もそれの一種ということ?」

「違いないよ」

 

 問答に終わりを告げるように彼女の肩の力が抜けた。それを見届けると後ろの椅子に腰を掛ける。興奮気味の頭を冷ますためにゆっくり肺へと取り込み、それを吐き出した。

 

「続編が決定してるわね、今からもう続きが楽しみで仕方無いわ」

「私としては期待していてと言っておこうかな」

 

 サイドテーブルに置いてあったグラスを掴んで口許へ運ぶ。乾いた唇を滑らせて口の中に流し込み、身体に溜まった熱を冷まそうとした。

 

「ところで二人は付き合ってるの?」

「ぶふッ!?」

 

 喉を通過したタイミングで予期せぬ質問を投げ掛けられて、流化していた水が逆流する。口内の水は霧となり喉を通っていた物は気管へと侵入した。

 

「え、いや……あの……そんなことは、ないのだが」

「えほッ!ゴホッ!……ゴホ! んん゛ッ! んんん゛ッ!! 付き合ってないから! アンジェとは付き合っていない! 私は天然物だから!!

「そ……そこまで必死にならなくても」

「水を飲んだ瞬間変なこと聞かれれば誰でも焦るわ!!」

 

 タイミングが良すぎて狙ったのかと小一時間問い詰めたい気分になったが落ち着かせる様呼吸を繰り返しサイドテーブルにグラスを戻す。口から垂れた水を袖で拭い、彼女の言葉を待った。

 

「キスもしたことないの?」

 

 一度素で口調も砕ければ、役柄としてのスイッチが切れてる事に気が付いた。彼女が狙ったのかは定かではないが先のような緊張は無い。

 

「ふう……。お、セクハラか? 彼女無い歴と年齢はイコール。焼肉屋で出会った牛さんがファーストキス。ファーストキスの味は塩胡椒味だったよ」

「あらあらまぁまぁ」

「大体のアメリカ人って婚前交渉禁止の宗教を信仰してるのにエグいこと聞いてくるなぁ……」

「二人は相手に言いたいことはあるの? 例えば撮影の時の文句とか相手に言ったことはない内容が一つや二つはあるんじゃない?」

 

 映画の相方だったアンジェリーナ。良い匂いがする、豊満な乳房を持っている、スタイルもいい、気配りも出来る、よこしまな感情を視線に乗せてこちらを見ない、おっぱいも大きい、軽はずみなボディタッチもしない、尽くしてくれる、おっぱいが大きい。彼女のプライベートに此方から踏み込んだことはないが、撮影以外でも何かと気を利かせてくれる彼女へ感謝はあれど不満はなかった。

 

「アンジェに特に不満とかはないよ。寧ろ感謝でいっぱいさ」

「……あ、私はあるね」

「え゛ッ」

「何々……! 何かしら!?」

 

 ちょっとこらそこ、目を輝かせて質問しない。内容によっては私の心にヒビが入るから。

 

「撮影の日は朝に道すがら車で迎えに行くんだけどね、時間ギリギリまで寝ているんだよ」

「それはダメね、ジェントルマンの朝の支度は時間がかかると聞くわ。もっと早く起きないと」

「あぁギリギリまで寝ているのは私も余裕持って行くからいいんだけどね。家にいるときに半裸なのはどうかと思う」

 

 空気が凍るという表現があるが、私は生まれて初めてそれを体験した。

 

「失礼なことを聞くけど、寝るときはどんな服装なの?」

「……下は下着、上は着ない」

「…………その上には?」

「……着ないし履かない」

「ごめんなさい、私の想定よりもっと酷かった……」

 

 いたたまれない空気の中、アンジェリーナはオベラへと謝っていた。誰も居ない家で下着に裸で何が悪いのだと不満を露にするが彼女らはそれを理解してくれてはいない。彼女が言う半裸とは恐らくドアを開け少し待ってとお願いする格好が半裸とのことだろう、生憎とその格好は短パンにTシャツだ。

 

「……家での服装は?」

「短パンに肌着のシャツ」

「Oh……」

 

 オベラはゆっくりと手のひらを目の上に乗せて、天を仰いだ。何が悪いのかさっぱり理解できず、なのに常識を知らない男扱いをされ正直今すぐに帰りたい気分である。

 

「ミスタークロキ、貴方は紳士なんです。紳士がそんな格好をしてはいけません」

「誰かに見せる訳でもないし、家だから良いじゃない?」

「いけません」

 

 紳士とはなんたるか、彼女のありがたい演説がスタートする。私のSAN値の減少と反比例し冷えたスタジオは温もりを取り戻すのだった。そして私の人生初のテレビ出演はお説教で幕を閉じた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 放送が無事に終わり司会のオベラと別れ、アンジェと二人並んで楽屋に歩き始める。Tシャツと下着で過ごすのが裸族認定されたのは本当に驚きだった。全くその自覚は無かったし、何なら前世の裸族という少数民族は部屋の中でもっと開放的に過ごしている。全米に裸癖が放映される腹いせに隣を歩く元凶の脇腹を人差し指で突いた。

 

「ひんッ!?」

「アンジェひどい。私のこと痴男扱いしてる、全米放送されるじゃん。私の渾名はその日から裸族の人だよ」

「あ、いやそういう意図はないんだよ。違う。その何て言うか……ね?」

 

 身振り手振りで慌て弁明する彼女がスンと真顔になって、くしゃりと笑みを作る。

 

「優のそういうところ見られたくないと云うか……ふしだらな男で居て欲しくないと云うか。えっと……そうだね、直したら君はもっと素敵に輝くと思うからさ」

 

 こういう臭いセリフをサラりと言える辺り彼女は本当の意味で女優なんだろう。弄ろうとしたこちらが恥ずかしくなってくる。頬の火照りを誤魔化すように彼女の脇腹を人差し指で撫でた。

 

「ちょッ! ストップ! 脇を小突くのはやめてッ」

「誉めても何も出ないんだが?」

 

 映画の続編の制作が決まったと先程言っていた、近いうちに連絡が来るだろう。あの役をこなせるのは世界に私一人だ、言い切れる自信がある。次はどのような性癖を織り交ぜるか、今から楽しみであった。

 

 



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Take005

 続編映画の中身について初めての打ち合わせの時のこと。

 その打ち合わせに集まった面子は前回制作の時の面子と少々異なり、監督と脚本家と、その他撮影を通じて顔見知りとなったスタッフの方々という前回の顔ぶれの他にその場で初めて会う人が三名居た。

 

 一人の男と二人の女、年齢は全員四十路近い、ラフな服装が多いスタッフとは対照的に3人の服装はスーツであった。しかしこちらの顔を見るなりひそひそと密談を始めて時折こちらを眺められるのを繰り返されると少し気分が悪くなる。

 

 打ち合わせは監督と脚本家の挨拶で始まり、続いて本作を読み解いていきましょうという流れになったときに事件は起きた。続編としての本作のテーマの解説の途中、三人の内一人の女性が手をあげたのだ。

 

「スポンサーとしての要望で幾つかお願いしたいことがありまして。一番の要として作品のラストは夕日をバックに二人で重なるようキスして欲しいのです」

 

 突然の提案に打ち合わせ会場の空気が凍る。少しの間をおいて神妙な顔付きになった監督が口を開いた。

 一年前までは到底浮かばなかった発想だろうに金の匂いを感じるとすぐこれだ。キスをする側でないからといとも容易く伝えられる辺り、こちらのことは何も考えていないのかと勘ぐりたくなる。

 

「何故?」

「キスをする予備動作を予告に入れれば、その方が間違いなく数を稼げます。キスシーンなんて映像、他の映画にはありませんから間違いなく一作目より動員人数を大幅に稼げますし」

 

 恐らくその場に居たスポンサーを除いたスタッフの大半が心の中で溜息をついただろう。第一作品目をどう数を稼ぐかなど一切考えず、どう視る側を楽しませるか一喜一憂しながら皆で作り上げた側としては協力者が金のことしか考えていないのは聞いていて辛いものがあった。

 

「貴女方は日本語は話せますか?」

 

 周りから一言も出ないお通夜のような場の雰囲気に我慢できず思わず口を開いてしまった私がいた。

 

「いえ、全くできません」

「そうですか、それは残念」

 

 小さく肺の空気を出し、相手へ視線を合わせて微笑む。

 

「これがスポンサーがしゃしゃり出てって、作品が壊れるってことね」

 

 笑顔で日本語で吐き捨てるがこの場に居る全員が私が何と言っているか理解できないだろう。この行為が失礼極まりない行為だとは理解している。

 

「日本語で何と言ったのですか?」

「あぁすみません、独り言です。取り敢えず質問なのですがキスをするとなった場合、私には幾ら払われるのですか?」

「私達はあくまでスポンサーであり、出資先は制作会社になります。それ以降の動きについてはこちらは把握しておりません」

「わかりました、ありがとうございます。それではキスをする私からは反対ですと言っておきます」

「……理由を教えてもらっても?」

「私がそこまで身体を張る理由がない。対価が見合わない。私の原作キャラクターはキスをするような人物ではない。一般向けの作品におけるキスは恋愛要素の最上位に当たる行動であり安易に行うべきではない。作品で特定の人物とキスをすると当該人物と恋仲であると認識され、ファンの想像を制限する可能性がある。……取り敢えずパッと出るのはこの程度ですね?」

 

 処女厨という言葉がある。アニメキャラクターなどの架空の存在やアイドル、声優などの現実の女性にまで処女であることを過剰に求める人たちだ。処女信仰過激派と言ってもいい存在だが恐らくこの世界にも童貞信仰は存在するだろう、その過激派の童貞厨も下手をするともう発生しているかもしれない。

 

 映画で故意に一度でもキスをしてしまうと、恋愛要素におけるそれ以降の私の立ち位置はフリーの男からキスをした相手の男という物に変化する。そうなると視聴者が私と登場人物との関係性を想像する自由が無くなる。

 キスだけで童貞を失う訳でないのだが、キスもするなら性行為もと考えてしまうのは必然である。そこに童貞信仰が混ざると悪い結果になるのは想像に難くない。何よりアンジェのキャラクターにも勿論ファンは居る、私とそのような行為をすると彼女のキャラクターにもヘイトが向くだろう。それを演じたアンジェリーナ本人にもだ。

 

「出来るか出来ないか聞かれたらアンジェとキスは出来ますよ、それをやるかやらないかで私はやりませんを選びます。物語と現実は違いますからよしんばプライベートで彼女とキスするなら役者同士の恋愛と認識されてまだ良いとしても、映画で演出としてキスをするのは一部の熱狂的なファンに対する裏切りに値するかと」

「一部のファンを失望させたとしてもより多くの新規のファンを獲得出来れば問題ないのでは?」

「その辺りはお互いの価値観が違うので平行線ではないでしょうか、私は一部のファンも失望させたくありませんし、何よりそれでファンが獲得出来るとも思えません。拒否権があるなら断りたいのですが、ありますか?」

「契約として成立している以上拒否権はありません」

 

 どうやら要望という言葉を使っていたが決定事項らしい。取り付く島は無い様だった。

 

「ではお願いがあるのですけど、指示された内容を間違えては困りますので具体的な指示は書面で頂けますか?」

「わかりました、上に掛け合ってみます。続いての要望ですが……」

 

 今日の帰りはハリウッドサインで好き放題叫んでから帰ろう。それに会話を聞いてげんなりしたのは私だけではないらしい、大半のスタッフが肩を落としていた。そのままスポンサーの要望を聞いて打ち合わせはお開きとなった。

 

 

 そして後日届いた内容がこちらである。

 一つ、どこかで半裸になっているシーンを入れよ。

 二つ、飲食シーンを使うときは当社の物を採用せよ、

 三つ、サービスシーンを多用せよ。

 四つ、映画の最後にキスシーンを入れよ。

 五つ、キスシーンを予告に使え。それらを守っていれば好きにしてもいいとのお達しだった。

 

 台本のこのシーンに、こういう演技をしろ、このような格好をせよ、と具体的な指示ではなかったのが救いではあるが、それを知らされた日に再び打ち合わせをすることになる。

 因みにその時スポンサーへの連絡は省かれた。打ち合わせと冠してるが中身はスポンサーへの罵倒大会である。そしてなるようにするしかないかと、溜め息混じりに呆けていた時に誤って口を滑らせてしまった。

 

「私今回は頑張るけど、次こういうの来たら続編出るの考えるなぁ……。……俳優やめたら何になるかな」

 

 私の言葉に深い意味はなく子供の頃の将来の夢は何だったかという勢いで吐き出した言葉だったが周りはそうは捉えてくれなかったようで、どうやら監督は制作会社へ直談判しようとしていたらしく、葬式のような雰囲気になった打ち合わせの次の日に制作会社へと赴いていった。

 

 その日の内に制作会社より原作者へ状況が通達され、一作目の出来が想像をしていたよりも何倍も良かったと感じたらしい原作者の意向を確認すると、撮影側の好き勝手やってくださいと原作者のバックを得られたのだった。

 

 戻ってきた監督が吹っ切れて「あのくそったれ共との縁は今回で切れるから。経営陣もキレてたわ」と大声で笑っていたのが印象的だ。

 経営側の人物に叩き上げと作品のファンが居るようで、事前に大金を落としたから今回は要望を汲み取らない訳にはいかないだけで、作品に対して口出しをするなら次からはもう必要ないと切り捨てるつもりだそうな。

 

「好き勝手やってもいいんだよね?」

 

 アメリカにおける原作者とスポンサーのパワーバランスはわからないが、監督の嬉しそうな表情から察するにそういうこと何だろう。現場の人間もその様子を見てから熱意が戻ったようで、今ではどう仕返ししようかと息を巻いているくらいだ。

 

「ええ。常識から外れてもいい、言われたことを守って守銭奴共に従いつつ……好き勝手やりましょう。キスに関してはしなくてもいいわ。上の連中は君を守ると決めていたの。君を守ってナンバリングタイトルを出した方が良いと判断したみたいね」

「それについては、責任持ってキスシーンは作るさ。でもキスはするけどしない。アンジェには結構悪い事はするけど良いやり方を思い付いたんだ」

 

 そうして続編の撮影は悪乗りをする方向で漸くスタートし、再燃した熱意を保ったまま半年後には続編の撮影を終えたのだった。余談ではあるが一作目の総観客動員数はギネス記録のダブルスコアを叩き出し、無事新しいギネス記録に認定された。

 

 予告が公開されればスポンサーから怒りの抗議の電話が間違いなく来る、その対応は製作会社と監督に放り投げるとして全てが落ち着いたら日本に一時帰国しようと思った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

やぁおまえら!

『ハイウェイラジオの時間だぜ! 今日も今日とてイケてる情報を届けていくんだが、まず最高にクールな情報が世界に届いたんだ! 例の映画の続編の予告がついに公開されたんだよ! 運転中のおまえらは見ることは出来ないだろうが、気を利かせた私が音声だけを届けてやる! 感謝してくれよ! じゃあ、耳の穴かっぽじって聞いてくれよな!』

 

 

『昼から飲んでないで働け。ペアを組まされてから仕事が少ないんだけど、もう少し悪評を無くすよう心掛けたらどうなの?』

『スポンサーでも集めようか? じゃばじゃば金を落としてくれる素敵なスポンサー様』

 

 

『仕事の際はこの服装でお願いいたします』

『車は当社のロゴの入ったこちらをお使いください』

『仕事の始業と終業の際は打刻して頂きたいのですが』

『やっぱ口出ししてくるスポンサーって糞だわー……』

 

 

『今回君たちにはとあるターゲットを護衛してほしい。これが飛行機のチケットだ』

『場所はどこさ?』

『イギリスだ』

 

 

『ターゲットが二人雇った、白豚とイエローモンキーだ。ターゲット共々殺せ』

 

 

ちょッ。二人で狭いとこに隠れたって胸元に都合よく顔埋める人いる?

済まない、本当に済まない。わざとじゃないから

顔動かさないで、擽ったいから。諦めて私の匂いでも嗅いだら?

…………良い匂いなのが腹が立つ

うわぁ……本当に深呼吸しやがった

 

 

『こんな良い男を集団レイプしようとするなんて悪い人達』

『でも嫌いじゃないよ。美人だからね』

『ほらケツを出せ、鉛玉ブチ込んでやる』

 

 

『悪いけれどこんなのでも彼は今、私のパートナーなんだ』

『クソッタレな男だって、守らないと女が廃るわ』

 

 

『…………恥ずかしいから、見つめないでくれない?』

 

 

『イギリス料理って不味いらしいけど、案外いけるじゃん』

『お客様、こちらはフランス料理になります。イギリス料理をご所望ですか?』

『………………何これ』

『ウナギのゼリー寄せになります』

『……ごふッ!? ……まっず

 

『以上だ! 何がやべぇって映像でカーチェイスもしてるしキメ顔最高過ぎるし、一番は黄昏ていい雰囲気になってる二人のシーンがあってマジお前ら何する気だよ? もしかしてやっちゃうの!? マジどうなるのか本当に気になっちまうよ! HAHAHAHAHA!! 私は動画を見てるから伝わってるけど、おまえらはセリフだけじゃあ何が何だかさっぱりだよな! 兎に角やべぇんだよ! 今すぐ路肩に止めて動画を見てほしいくらいだぜ!! 上映は今年の秋だってよ!! あとで中身については熱く語るとして次の話題だ! 続いてはだな…………』

 

 



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Take006

 少しだけ、クソの役にも立たないシリアスな事を話そう。時々ふと思うのだが前世の記憶が甦り、それに従い続けてアメリカを過ごした私は、前世の私なのか、今世の私なのかわからなくなる。今世の方が身体への定着年数は多いが、今の私を突き動かしている主人格は間違いなく前世の私だった。

 

 先日、今世の記憶を頼りに国際電話で実家に電話をかけた。「元気にしてる?」と明るく声をかけたが私を待ち受けていたのは今世のパパ上とママ上のお説教。

 信じて送り出した息子が異国の文化にドハマリしてキメ顔ダブルピース映画を撮影するなんて……という状態の両親には私も同情するし、ごめんごめんと笑いながら謝るくらいには両親のことを想っているのだが、その程度の想いしか湧かなかった。

 

 困ったことにそれ以上の愛情が今世の家族に湧かない。下手をしなくてもアンジェリーナの方が大事と思えるくらい達観していた。日本に帰りたがっていたのは今世の私としての感情なのかもしれない。

 

 愛情と対を成すのは無関心。前世の私にとってこの二人は赤の他人である。家族への愛情に赤の他人に対しての無関心が上書きされたのか、その無関心と愛情が合わさり二つに分けられて、愛情が薄れてしまったのだろうか。どちらにせよ前世の私が突き動かしているのが影響しているかもしれない。

 

 今世の私はどのような人物だったのだろうか。時折、口調が今世の口調に引っ張られ女々しくなることもある。世間の男もそうだ、前世で言う男らしい、男気がある男性などは存在しない。全てが女へと置き換えられ、かの塾長も女塾の塾長だ。

 何気ない褒め言葉でさえ、前世の価値観で考えると混乱する。男性に使うべき言葉が女性へ使われている、その逆も然り。

 

 口から出る言葉が合っているかと考えると頭の中で前世の人格と今世の人格が対抗しショートするのだ。不便なく日常生活を送るなら良い部分だけを汲み取ってどちらかを切り捨てるしかない。この世界の男らしさを残しながら、だ。

 だから俺は、いや私は…………脳内に蔓延っていた今世の私から汲み取るだけ汲み取り、出し殻を切り捨て、今世の皮をかぶって生きることをその時の一瞬のうちに決めた。

 

 残り続けていた家族への情が少しずつ飛散する。完全には切り捨てきれていないのだろう、未だ興味が持てないという状態まで沈んだそれを声に出さぬよう努めて説教を受けていたが、そんな今世の外見の皮をかぶった私の雰囲気を感じ取ったのか、次第に両親の説教の口数は減っていき、何も言わなくなった。

 そして両親だった男女は何かを察したようで別れ際、真剣な声色でこう囁いた。

 

「私達は貴方が何になっても貴方の両親なの。達者に暮らしなさい」

 

 どこでボロが出たのかと心臓を握られた気分になる。それを聞いて私が出来た事と云えば「今度帰るから」と動揺を隠せないまま、ぎこちなく笑って呟いただけだった。

 

 さて、私はコメディ映画に今まで高めていた熱を壊すようなシリアスが入るのが大嫌いだ。楽しみたいからコメディ映画を見る、重い設定判別もお涙頂戴展開も必要ない、ただただ気持ちよくゲラゲラ笑いたいからそれを見るのだ。犬の餌にもならないシリアスなどは捨て置いてしまえ。

 長々と独白したが要は今世の癖が抜けていないが前世として顔がどちゃくそ可愛いのを利用して好きに生きるから宜しく、ということだ。楽しく生きるために利用出来るものは都合よく利用しないとね。

 

 話題を変えて件の問題になったキスシーンを解説しよう。スポンサーからの要望を踏まえて撮影の際に急遽修正された台本を抜粋するとこうだ。

 

『○夕方撮影、空港バック

    アンジェリーナ微笑む。

 アンジェリーナ『では、帰ろうか』

    アンジェリーナ空港へ向き、足を踏み出す。

    優肩を掴み振り向かせ顎を掴んでキスをする。

    アンジェリーナ惚ける。』

 

 このシーン以外の表記はキャラクター名でしっかりと書かれており、キスシーンのみA4のぺら紙で台本の末尾に挟めていた辺りに脚本家のやけくそ具合が伝わる。撮影の際、心配そうにこちらの顔色を窺うアンジェリーナにはそのシーンはキチンと行う旨を伝えていた。そして出来上がったシーンがこれであった。

 

 

『では、帰ろうか』

 

 女は男に目もくれず空港を向くと、足を踏み出した。男はそれを急ぎ追いかけ女の背に立つと、彼女の肩を掴んで自身の方へと強引に振り向かせる。互いの視線が交差する瞬間、恥ずかしさに耐え切れず男が視線を逸らした。頬はうっすら桃色に染まっている。

 

『…………恥ずかしいから、見つめないでくれない?』

 

 そう男が囁くと左手で女の視界を遮る。そのまま互いの顔が吐息が肌に触れる距離まで近づいていく。そして唇が触れそうになる瞬間、男は唇と唇の間に右手の人差し指と中指と差し込みそれを彼女の唇へと触れさせた。すぐさま触れていた指を離し、腕を降ろして視界を遮っていた手を解く。

 

『……あ』

 

 男は驚きと羞恥に染まる彼女の横をすり抜けると、そのまま空港へと向かい始める。振り返り彼の背中を見つめる彼女を背に、男の口元は笑みに染まっており、唇の隙間から舌先が出された』

 

 

 キス、接吻とは別に唇同士重ねるだけではない。定義的に言えば手や頬に唇を重ねるのもキスだろう。

 撮影を終えて映像を確認するまでこちらに視線を合わせることなく自身の指先で唇を撫でていたアンジェリーナはとても可愛らしかった。撮影した映像を確認し、件の瞬間を確認した瞬間こちらを驚きの表情で見た彼女の反応も見事である。

 

 すぐさま酷くないか? と肩を組んで絡んでくる彼女へ、こちらから視線を外した隙に頬に唇を落としてあげたので閻魔様にはそれにて罪の勘定をチャラにしてほしいところだ。こちらも流石に悪い事をしたなと思っている。

 因みに唇以外は全てカウントから除外され未だ回数はキスカウントは零のままだ。安易には決してしないけれどもね。

 

 そんなこともあってか彼女との距離は急激に近くなった。正式にお付き合いをしている訳でもないが、彼女から付き合ってほしいと告白があっても十中八九断るだろう。

 理由は先に説明したファンのアンチ化を防ぐためだ。今世の性観念はまだまだ不十分にもかかわらず先駆者として役割を放棄するには、生憎だが私はまだ若い。それにやりたい事もまだまだある。物語の途中でルート変更するわけにはいかない。寝取られ文明を開化させるのは、一番最後でいいのだ。

 

 何故映画が上映されてないのにも関わらず物語の最後の出来事を説明したかと言われるとだ。

 

 彼女に元気がなければ、彼女の耳元に唇を寄せて「大丈夫? おっぱい揉む?」と囁いたり、役者としての身体作りに汗をかきながら腹筋をする彼女の視線の先にしゃがんで軽く足の間を開き「頑張れ頑張れ」と見せ付けながら語尾にハートマークを付ける勢いで応援したり。

 思い出せばキリがないが、目の前でさくらんぼの柄を舌で結んだこともあれば、冗談半分で彼女に人差し指と親指で輪を作らせそこに私の中指と薬指を差し込んで指を曲げて何かをかき混ぜる動作をしてみたりと彼女のことを弄り倒していた訳だ。

 

「ねぇアンジェ」

「何だい?」

「ちょっと耳貸して」

 

 今日も今日とて撮影スタジオにいた彼女の名前を呼び、こちらに向けてくれた彼女の耳に唇を寄せた。

 

ふぅ……

んん゛ッ!?

「なははははッ!! 」

 

 吐息を耳に吐きかければ彼女は身悶えて耳を押さえてこちらを涙目で睨む。しかしゲラ笑いした時、ついにアンジェがキレたのだ。

 

このッ……!!

「ぐへッ……!?」

 

 彼女は顔を赤紅く染め腹部にタックルする勢いでこちらに突進し、お腹に抱き着くや否や腰に手を回すとお米様抱っこしてきた。

 

ちょッ!? ちょっちょっとどこ連れてくの!?

「もう怒った、そこまでするなら今日はもうデートしてもらうから」

「え? このまま? 担がれたまま?」

「そうだよ、黙って担がれていて」

「マジ? これだいぶ恥ずかしいんだけど」

 

 彼女は本当にこのまま連れていく気で、私を担いだままスタジオを出て街へと歩き始めた。そして米俵宜しく観衆にプリティヒップを見せ付けながらロサンゼルスの中央へと向かっているのが今の現状である、回想終わり。

 道すがらスタッフから投げかけられた苦笑いに愛想笑いで返していくが次第に彼女の肩が腹部へと食い込み、苦しくなっていく。

 

「いつも私にしていることに比べればこんなの全然じゃない?」

「お願い下ろして。逃げないから、頼む、降ろして。若干お腹圧迫されてるから」

 

 彼女の肩で腹部が圧迫していることを伝えるとむすっとした表情でその場に降ろしてくれた。

 

「意外と強引だなぁ。こう強引に行動を起こされるとは思わなかったよ」

 

 彼女の隣に歩み寄って肩が触れるくらいまで近寄った。そのまま歩幅を合わせて街へと歩んでいく。前世の価値観であればこんなことしてくる女性はこっちに気があるだろと思うのだが彼女は何か自分なりに思っているのか、それとも恋愛チキンなのか、告白してくる気配がない。

 私としても断らないといけないので告白は無い方が嬉しい限りではあるが、その決意を裏切らないためにも落ち着いたら一度腰を据えて話さないといけないと思う次第である。

 

「さて、アンジェの財布空っぽにするまで食い散らかすかぁ」

「……食べるの限定だった? 私としては好きな物買ってあげても良かったんだけど」

 

 訂正。早急に腰を据えて話し合おう。

 

 余談ではあるが、告白して恋人関係となる文化が欧米には無いことを当時の私は知らなかった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

【殴られたくなる】名前でもうエロいあの映画を語るスレ94【あの笑顔】

 

 

456:名無しの映画監督 ID:pf7Q5Tn7I

なぁ原作見てないんだけどざっくりこの先の事教えてくれない?

 

457:名無しの映画監督 ID:xmVexRbdN

>>456

原作と映画はめちゃくちゃ似てるようで違うからな?

具体的に優君のキャラクターがほんま頭おかしいんよ

 

458:名無しの映画監督 ID:TqS3Kz4S8

ワイ映画からファンになって漫画見たウーマン。死ぬほど後悔

 

459:名無しの映画監督 ID:YbRQ5/E7I

原作には原作の良さもあるが

映画と原作は別ベクトルにネジが吹き飛んでいるからな

 

460:名無しの映画監督 ID:pf7Q5Tn7I

>>457

>>458

>>459

分かりやすく頼む、あとシリーズやっぱり知りたい

ネタバレしない範囲で流れだけ教えて

 

461:名無しの映画監督 ID:ilvep5+RN

1.二人で殺し合う

2.二人で海外で殺し合う

3.一人増えて三人で殺し合う

4.男離脱して女同士殺し合う

飛んで6が4の離脱した男の話で7が3と4の間の閑話in東京

6の男の話も4で離脱して別で動いてたって感じ

取り敢えずここまで、続きは気になったら自分で見てくれ

 

462:名無しの映画監督 ID:pf7Q5Tn7I

どこまで見ればいいんだ?

 

463:名無しの映画監督 ID:mZe4x9/Ei

正直7まで 8はクソ

 

464:名無しの映画監督 ID:BDB3qlEc2

全部見ろ

 

465:名無しの映画監督 ID:g/9zLe94S

気になるなら7まで見ればいいと思うよ

 

466:名無しの映画監督 ID:pf7Q5Tn7I

8はどう糞なの?

 

467:名無しの映画監督 ID:0+fwIt1MI

映画の流れで言えばアンジェリーナと優君がペアを組まない話

そして物語の主人公はあくまでアンジェリーナだ

あとは察しろ

 

468:名無しの映画監督 ID:nw+t0U1bN

>>457映画だとコミカルに描かれているけど、本来なら正義と悪の対比だからな

同じコミックでも映画でもバットウーマンは敵対関係で、この作品がペア組んでいるだけで

 

ちょっと映画だと仲良すぎると言うか

対比になってないのが気になるわ

 

469:名無しの映画監督 ID:n1EJ8AhdJ

あの映画でも実際そうやろ、アンジェのキャラクターは殺害描写は無い

 

470:名無しの映画監督 ID:FMBkT/kLl

殺害していってるの優君だけだしな

 

471:名無しの映画監督 ID:IGKImGIDn

そういう面で対になっているのか

 

472:名無しの映画監督 ID:x+RCt8RnI

でも8はクソ 勧善懲悪で原作者が今までの関係ぶっ壊すのは萎えた

 

473:名無しの映画監督 ID:VVs3VetzK

>>472流石に映画化はしないだろ

アメリカでの人気凄いから暴動が起きるわ

 

474:名無しの映画監督 ID:pf7Q5Tn7I

>>461ごめん3で加入するのは何人?

 

475:名無しの映画監督 ID:a7xbte7qv

原作だと社会主義の犬やで

 

476:名無しの映画監督 ID:JiErtifWa

ロシア人と言ってやれ

 

477:名無しの映画監督 ID:mpk5756a

ソ ビ エ ト 社 会 主 義 共 和 国 連 邦だ、二度と間違えるなクソが

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

726:名無しの映画監督 ID:2Nru7TVsW

【速報】激おこだったスポンサー様の商品 まさかの優君商品レビューで全米で売り切れ続出

 

優君「案外いけるわ。これも美味しいやんけ。馬鹿にしててごめんやで」

スポンサー「なんかめっちゃ売れとる。まぢ神。こちらこそあの時は無茶言ってごめんやで」

優君「ええんやで」

 

以下ソース

https://amexnews.jp/pickup/1145141919

 

727:名無しの映画監督 ID:jypL59lnU

記事が英語で読めないけどタイトルで大体わかった

 

728:名無しの映画監督 ID:QKiUTU195

やさしいせかい

 

729:名無しの映画監督 ID:pJyHi/gn1

手の平ドリルかよ

 

730:名無しの映画監督 ID:vSPG8LQMf

>>726実際問題何かやらかしてたの?

 

731:名無しの映画監督 ID:0c/qxk3ur

ワイらにはわからない何かがあったんだろ

じゃなきゃワイの優君はご飯を食べない

 

732:名無しの映画監督 ID:JEq2wHbV0

>>731お前の優君はアンジェの隣で寝てるよ

 

733:名無しの映画監督 ID:L92P84CYE

商品レビューして株価上昇は草ですよ

 

734:名無しの映画監督 ID:crZWd/IVn

爆上がりしとる

 

735:名無しの映画監督 ID:naB5nC9an

綺麗なチョモランマ

 

736:名無しの映画監督 ID:LkYlTYO2b

>>731木かな?

 

737:名無しの映画監督 ID:bFKJwXBDL

「映画の見所? 全部だけど強いて言えば(ゴクッ」

「何これうま。見所はやっぱり私のセクシーシーンでしょ、スポンサーのお願いに答えようと思ってくっそ脱ぎ散らかしたんだから(チビチビ」

「…本当に美味しいんだけどこれなに?(グビグビ」

 

映画の番宣なのに食レポしてて草 強引過ぎるやろ

 

738:名無しの映画監督 ID:hti3gCnqf

>>726セリフがくどい

 

739:名無しの映画監督 ID:M9NkcJP9E

有名人が物食べるだけでこんなに売れるんすね

 

740:名無しの映画監督 ID:cQjgYpaZe

>>737テーブルにパッケージないからスタッフが置いて、素で言ったんやろなぁ

 

741:名無しの映画監督 ID:XWr+lqyct

これを国営放送のインタビューでやる勇気よ

そして何故オンエアした

あと食レポは関係なく感じるの私だけ?

 

742:名無しの映画監督 ID:5cXLW+FsM

面白いから、ヨシ!

 

743:名無しの映画監督 ID:epgcwZPHO

これアメップお布施代わりに買ってるやろ

 

744:名無しの映画監督 ID:IpJvKouZi

脱ぎ散らかした()

 

745:名無しの映画監督 ID:6PNYUWyrG

ガチのお願いならほんまよくやったわ

 

746:名無しの映画監督 ID:I+nL+S6Np

今年のコミケの脱稿見てると優君多いなぁと感じる

 

747:名無しの映画監督 ID:mOOXhXss0

優くんはお願いしたら脱いでくれるのか

 

748:名無しの映画監督 ID:TGIewIFrJ

閃いた

 

749:名無しの映画監督 ID:dYztvdrkX

通報した

 

750:名無しの映画監督 ID:fRTiJqTqh

「同人誌書いても良いですか」

原作者「だめです」

制作会社「だめです」

優君「勿論私はOK、私で抜けるなら抜いてみろ」

制作会社「じゃあこいつだけOKで」

 

751:名無しの映画監督 ID:FhjL3Ntq2

公式SNSから一部だけを認める許可声明出たからな

 

752:名無しの映画監督 ID:fnQr1KdhA

実際映画が一番抜けますし

 

753:名無しの映画監督 ID:9wTJHBLrH

ゆうて扱いやすいし

 

754:名無しの映画監督 ID:Opir/cJOd

頼んだらやらせてくれそう

 

755:名無しの映画監督 ID:PfobEg8Kz

優くんモチーフのエロ画像が多くて捗る捗る

 

考えるとほんまこの映画って本当凄いわ

エロ画像といえば全裸が当たり前だったのに、今じゃあ映画抜粋したように色々あるんだもんなぁ

 

756:名無しの映画監督 ID:1TUJ1DGQy

>>754実際アンジェリーナと付き合ってるんじゃない?

発表されても驚かんぞ

 

757:名無しの映画監督 ID:oQwRWqD2+

【緊急速報】PV第二弾アップロード

https://www.mytube.com/watch?v=ponponpain

 

758:名無しの映画監督 ID:fDozVNQyN

>>756

しね

優君は童貞 誰とも付き合ってない

 

759:名無しの映画監督 ID:W6Qzj6FB0

>>755

尚モデルは同一人物な模様

 

760:名無しの映画監督 ID:egRNsqMpC

あぁ^~たまらねぇわ^~

 

761:名無しの映画監督 ID:UjbVb/BNk

>>758最近こういうやつ多いよな

 

762:名無しの映画監督 ID:FQW/shd72

>>757有能

 

763:名無しの映画監督 ID:WsjoNckp+

う~んw これはアダルトビデオw

 

764:名無しの映画監督 ID:0nhLqA1Li

映像にアンジェ一秒も映ってないんだが

 

765:名無しの映画監督 ID:q6X+HvH5K

寝起きシーンで朝日に照らされてるガチで眠そうな顔を写すのもヤバイし、窓の方見てるから前は写ってないけど上半身裸だから背中モロ見えなのもヤバイ

男の着替えシーンから入れるのも頭おかしいし服を着る動作で足と手だけ写して他が見えてないのも変な想像してしまうからヤバイ

足と手が綺麗なのが何よりエロい

 

766:名無しの映画監督 ID:AI2436AhS

相変わらず頭のネジぶっ飛んでるなぁ

 

767:名無しの映画監督 ID:y3D6siCgB

ナレーションも優君とか一作目のセルフオマージュ?

 

768:名無しの映画監督 ID:AEQnfrihI

タバコの火舌で消してるけどどうやってんの?

 

769:名無しの映画監督 ID:e2qOTH0uB

>>767セルフオマージュっていうかこっちのが極まってるだろ

 

770:名無しの映画監督 ID:jVEIlVy5d

戦闘シーン 一切無し

予告の全てセクシーシーンとか頭おかしいから

 

771:名無しの映画監督 ID:Tqh8VDjiS

クチュリティ高い

 

772:名無しの映画監督 ID:atp0XcwwC

右下に「本編の内容とは一切関係ありません」とか出続けてるの草なんだ

 

773:名無しの映画監督 ID:QbH6y8y0v

関係無い映像でPVを作るなふぅ……

 

774:名無しの映画監督 ID:RK1/tRshS

おそろしく早い手淫 私でなきゃ見逃しちゃうね

 

775:名無しの映画監督 ID:W3eBglsNh

エロいから、ヨシ!

 

 



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Take007

 夏に終わりが見え始めハリウッドの山々も季節の移り変わりらしく黄色くなり始める頃、続編映画の公開まではあと1ヶ月を切った。

 そして映画の今後の展開を制作会社から聞いた監督はその事柄をスタッフと共有すべく、撮影スペースに設置された会議室に主演の私達を含む製作スタッフを呼んだのだった。

 隙間なく押し込まれた部屋、人を掻き分けて椅子が並べられている中央へと腕を掴まれて導かれる。……ちょい? 今誰かケツ触ったか?

 

「まず映画の興行収入だけれど上の見立てでは一作目を越えるそうよ、素晴らしい出来だからね。伴って第三作目の制作も行われる。というか今のうちから徐々に行うわ」

 

 監督が壇上に現れ初めのその言葉と共に全員が沸き立つ。やはり作られた作品が売れるというのは嬉しいことだ。笑みを浮かべてアンジェリーナに拳を向けると、彼女も拳を作り笑みを浮かべたままこちらの拳に合わせてきた。

 

「それで、アンジェリーナと優。二人にはお願いしたいことがあって」

 

 しかし、歓声が止んで監督の次の発言を待ってみれば彼女の口から私達の名前が出る。何事かと首をかしげれば、監督は笑いながら言葉を続けたのだった。

 

「三作目で主演が増えるんだけど、そのオーディションを近々するから手伝って欲しいの。共演者としてこの人としたいとか、判断して欲しいのよ」

 

 そう言われればアンジェリーナと目を合わせる。困ったように肩をすくめれば、彼女は笑って監督へと唇を開いた。

 

「私達に決定権を与えられても困るよ」

「最終的な決定権は私よ? ただこの人とはしたくないって思う人と共演させるわけにはいかないじゃない? 判断っていうけどそこまで深く考えなくてもいいわ」

 

 本来なら私ら主演者にオーディションで人を選ぶ権利など無いのだが、している演技が演技だからか、監督は困ったように笑っていた。それもわだかまり無く作品を作ろうとする監督の思いなのだろう。

 

「それなら、まぁ……」

 

 肯定を口にして、アンジェリーナもそれに頷くと監督の顔も明るくなる。いつ行うかは未定とのことだった。何度も篩にかけ、私達が判断するのは最終オーディションかららしい。正直言えば美人だと嬉しい、どのような人たちが応募してくれるのか今から楽しみである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 男女の貞操観念が逆転したこの世界に於けるエロ同人誌とは、男と女の純愛物が主流。無理矢理するのは犯罪という意識があるのかイチャイチャと無糖珈琲が欲しくなるような甘いハッピーエンドしか日の光を浴びなかった。

 

 そんな暗黒時代に映画が公開される。そして、新しく世に生まれたのは男が女に搾り取られるレイプ物だ。公式の許可はさておき、映画が公開された後の同人誌は私がアンジェに搾り取られる本が作られた。

 

 女が主体のこの時代、やはり作られたのは騎乗位で私が搾り取られる本。しかし、前戯そこそこに入れてハメるだけという内容でも新しい展開が生まれたのは僥倖といえよう。計画的犯行ではあるがね。

 

 しかし正直言えばもっと欲しい、私だってハメたい。とっととハメたろう。前戯だって体位だって種類がある。因みに前世の騎乗位は正常位と呼ばれ、前世の正常位という概念は意外にも存在しない。エゴサーチをしても殴られたい、靴になりたい、踏まれたいとのコメントはあるが犯されたいというコメントは殆んど見受けられない。

 種の保存という神聖な行為では、やはり優位に立っている存在が行為の主導権を握りたいというのは必然的なのだろうか。

 

 搾り取られるばかりで男性優位になる正常位が無いのは大変遺憾である、このままでは種付けプレスもだいしゅきホールドも、杭打ちピストンすらも産み落とされないのだ。訴訟も辞さない。

 しかし映画が一般向けである以上その演出は映画では出来ない。イラストをかけるほど絵心が有るわけでもない。配信者として動画を配信するほど機械にも詳しくはない。

 

 打つ手無しかと思われてたが、ふと掲示板のとあるリンクを目にする。開いてみればそれは有名同人誌作者のSNSリンクであった。夏のコミケではこの本を出しますと告知されていた、既出の本表紙をじっくりと眺める。

 

「本人として作者にシチュエーション伝えたらワンチャン書いてくれるんじゃね?」

 

 思い立ったが吉日。直ぐ様SNSのアカウントを開設し、公式申請を出す。フォロワーすらいない生まれたばかりのアカウントを操作し初めての呟きをした。

 


 

黒木優 @kurokiyuu 5秒前

sns始めました

 


 

 格好付けて火種になりたくないからと言っていたけど、やっぱりエロには勝てなかったよ。

 

 通知を全てオフにし、そしてメッセージをこちらがフォローしている者かこちらから送った場合のみ以外では送れないようにして、スマホの画面を滑らせる。作者に伝えるのはアカウントが浸透してからでもいいだろう。

 

 自分が有名人になったらこういうことをしたいと前世で妄想していたシチュエーションがある。コスプレをしている人の前でご本人様降臨、出演している作品の同人誌を手ずから購入し作者の反応が見たい、という承認欲求を満たすためのクソのようなシチュエーションだ。これがついに叶えることができると考えると涎が出てくる。

 

「女性が男性を犯すのがレイプだから逆レで、……こうなって……よし」

 


 

黒木優 @kurokiyuu 10分前

sns始めました

 


 

黒木優 @kurokiyuu 5秒前

拙者逆レすこすこ侍

性的に搾り取られる展開はあれど、一方的に搾り取られ為るは遺憾にて、ついては某が食い散らかしたく候

 


 

 世間の反応が実に楽しみである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 会議から一週間後、三作目の女優の公募がされ、その三週間後続編は上映された。前作の動員人数を更新し順調な滑り出しを見せるが現場は既に三作目への準備へと進んでいる。公開から1ヵ月後の熱気冷めやらぬ時期に主演女優のオーディションは行われたのだった。

 

 ギネス記録を更新したこのシリーズは後世に語り継がれる映画として君臨するだろう、そんな映画の主演を務める事は映画女優の夢に近い。送られた応募は幾度となく篩に掛けられ、最終選考を経て新しい仲間となる主演が決まった。

 

 因みに最終選考で特筆すべきことは最終選考で演じられたのが仲間となる新しいキャラクターであること。一人を除いて全員がキャラクターを()()()()()のにもかかわらず、残された一人がその場に居る人全員の度肝を抜く程、役へハマっていたくらいか。

 役にしてはあまりにガチ過ぎて思わず鳥肌が立った。語ったところで一人しか残らない、残酷な世界だ。

 

 そんなガチな演技をキメて主演を務める事になったのはロシア人のリュドミーラ。腰にまで付きそうな程長いプラチナブロンドの髪で身長はアンジェリーナと同じ程度、つまり180cmだ、この世界の女って背が高すぎでは?

 因みに胸はない、皆無である。ケツも小さい。プリケツちっぱい青目が素敵なロシア風の女性。銀髪で青目とかアニメの中の存在じゃないのかと思い知らされた次第である。身長が高い故にズボン越しにもわかる健康的な太ももに視線が行ってしまう。

 

 彼女の性格は主演が決まった後の出会い頭に手を握られ、更には感極まってハグをしてきたクソ陽キャ。その際はハグを解こうにも抜けられず逆に無意識にそのまま抱き締められ鯖を折られそうになった。触った感触はこいつも恐らく腹筋がヤバい。

 

 アニメでテンプレート化したイメージはロシア人は静かでアメリカ人は金髪で片言日本語のよく喋るキャラクター、性格が逆ではないかと混乱したのはご愛敬。余談だが私が呼ぶ略称がミラーシャで、アンジェがリューシャと呼ぶのには何か理由があるのだろうか。

 

 そんなこんなで親睦を深めるため彼女の現場への挨拶のあとに三人で喫茶店に来た訳だ。アンジェリーナと対面で席に座るとミラーシャは私の隣に腰を下ろした。珈琲を3人分注文すると待ち時間を利用してかミラーシャがこちらとアンジェを交互に見て笑いながら口を開く。

 

「ねぇ()()()付き合っているの?」

 

 この手の質問は本当に多いが、いつも否定している。その度にアンジェは悲しそうな顔をするんだが、そういえばアンジェリーナと腰を据えてこの話題について深く話したこともないか。それならこの辺りでキチンと説明しないといけない。

 

「付き合ってないよ。日本ではね、「好きです、付き合ってください」って告白して、それに対してOKを出して初めて恋人になるんだ。だからOKを出さない限り私は付き合っていないよって答えるよ」

「アメリカでは珍しいのね?」

「まぁ私日本人だし? 曖昧よりもはっきりする、良い風習だと思うけど」

「じゃあ()()()キスも、愛する二人の内緒の行為も、付き合わないとしないんだ?」

 

 お前は異性になんちゅうことを聞いてるんだ、セクハラやぞ。

 

「そうだよ。そういうのは全部付き合ってから」

「そんなルールがあるなんて知らなかった……」

「あら私はてっきり()()()出来てるって思ったから、良いこと聞いちゃったかも」

 

 ガックリ肩を落とすアンジェとクスクスと笑うミラーシャ。対称的だが正直絵になる光景ではある。

 

「因みに今は誰とも付き合う予定はないよ? 既にパートナーが居るって訳じゃないけど、叶えたい夢があるんだ」

「え……?」

「あら」

「だから今は付き合えないけど、私が夢を叶えたときにまだ私のこと好きなら迎えに来てよ」

「早い者勝ちってことね?」

「それまでは?」

 

 話に熱を帯びてきた頃、同じく熱を帯びた珈琲がテーブルへと届く。カップを手に取り湯気が舞うそれを吐息で払い除けるとゆっくり口内に流し込んだ。

 

「早い者勝ちって訳じゃないんだけどね? 言われたからってOK出す訳じゃないし。関係だって、今と同じ感じ? 友達以上恋人未満ってこと」

……それも悪くないけど、やっぱね

「ふゥん…………細かい所は大体一緒か

 

 小さく呟いた様だがバッチリ聞こえている。世にはこうやって略奪愛が生まれるのか。

 

「ねぇユーシャ」

「ん? ユーシャ?」

「優だから、ユーシャ。ユーシャは恥ずかしくないの? 女の子に素肌見せて」

「恥ずかしくないよ。寧ろ嬉しい」

「どうして?」

「異性が自分に虜になってくれるって、嬉しくない?」

「ふふふ……確かに。虜になってるかも」

 

 珈琲片手にミラーシャと仲良く談話していると靴先を何度か小突かれる。覗いてみればアンジェリーナの靴が私の爪先に当たっており、見上げてみればそっぽを向いて顔には不満ですとかかれた表情。

 アンジェってこんなに可愛い女性だったか? 普段のさっぱりした女性と弄られると女の子になるギャップが絶妙だったのだが、やきもちを焼いて且つそれを敢えて伝える一面があるとは思わなんだ。

 

「なぁリューシャ」

「何かしら」

 

 アンジェに呼ばれた瞬間先程までの私に向けられた笑みがぶっ飛び無表情ながら反応を返すミラーシャ。やっぱこいつロシア人だわ。あまりの様変わりにアンジェの頬も引きつっている。

 

「呼ばれた瞬間無表情になる理由ってあるの?」

「笑顔を見せるのは家族と好意的に捉えてる人と知り合いにだけ。私が笑顔を作って知り合って間もない彼女の方を見てたら何か()()()()みたいでしょ? だから何も裏はないって顔をするの」

「それで無表情か? ……知らないと勘違いされそうだな」

「まぁ民族性だろうね」

「私は仲良くなりたいって思ってるんだけど」

 

 そんな会話をしつつ私の靴先をリズムよく小突くアンジェ、見えない尻尾が見える見える、まるで大きな犬である。仮にこれがエロゲなら机の下で淫らな行為が始まるんだよなと妄想する。

 

「あ、そうそう。ロクに何もしてないけどSNS始めたんだよ。良かったらフォローしてくれない?」

 

 一人増えた事で演技と日常にどのような変化がもたらされるのかは定かではないが、このような日常がいつまでも続いてくれればと切に願う。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 時は幾許か遡る。件の俳優のアカウント開設の報は世界中を駆け巡り、そして彼が前世のノリで呟いた何気無いコメントは日本を混乱させた。

 日本のテレビ局のインタビューを受けようとしない彼が第一に発した言葉だ。テレビ局は視聴率を取ろうと必死になるのは必然だった。翌朝には特番が組まれ、彼の言葉の真意をコメンテーターが考察を始める。どのテレビを開いてもコメントに対する感想発表会が放映されていた。

 

『本日は警察庁性犯罪防止課の原政(はらまさ)麗子(れいこ)氏、人物鑑定専門家の剣内(けんとうち)(がい)氏をお迎えしてお送りさせて頂きます』

『宜しくお願いします』

『宜しくお願いします』

『早速ですが、昨日SNSにて発表されました黒木氏のコメントにはどのような意図が含まれているかと思われますか』

『そうですね、重要なのは彼がどの立ち位置から発言したかということです。アメリカでは映画のインタビューを受けて役柄ではなく役者本人としての顔も知れ渡っておりますが、日本のテレビ局に対してはインタビューを受けたことはありません。そしてこのコメントが日本語であることも考えると俳優としてではなく役柄として受け取って欲しいと考えるのが妥当であるかと』

『では、そのような彼がいの一番にこのようなコメントをしたということは?』

『何故戦国時代のような言葉なのかは不明ですが……性の問題は声を大にして言える物ではないですから、彼なりの気遣いかと思いますね』

『性的に搾り取られるというのは強姦、レイプを示していると思われます。逆レとは恐らく逆レイプ、男性が女性を強姦するという意味合いになり、映画の中で黒木氏の役柄は男性にもかかわらず女性に優位に立っている存在ですから、役柄を考慮すると逆にレイプするという表現で間違いはありません』

『では食い散らかすというのは?』

『食い散らかすというのは作品での殺害の隠語と思われます。私はレイプされる側ではなく、する側の存在だ。する側は殺してしまえ。少々過激になりますが、このようなコメントになるのではないかと思いますね』

『黒木氏のコメントは役柄を通じて昨今の性犯罪に対して警告しているということですか?』

『そういうことになります』

『なるほど、ありがとうございます。それでは黒木氏について更に詳しく解説していきましょう』

 

 余談だが彼が日本のテレビ局のインタビューを受けない理由は彼へと届いたインタビューオファーの殆んどが彼一人に対してであるからで、アンジェリーナと共に依頼が来るなら彼自身は受けるつもりでいた。二人セットの依頼もあったが先にインタビュー依頼を伝えられたアンジェリーナが難色を示し、インタビューは流れたのである。彼に単独インタビューをする肝っ玉はまだ存在しない。

 

 



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Take008

『私はリュドミーラ。本名をリュドミーラ・ロスチティラーヴォヴナ・プルシェンコ。前の職業は映画のスタッフの雑用、渡米する前はロシア軍人、最終階級は軍曹。

 

 私の運命の人であるユーシャとの出逢いについて話そう。

 あれは映画好きの同僚がとある映画について話したことが全ての始まりだった。何でも良く言えば守りたくなる、下品に言えば屈服させたくなるヤポンスキー(日本人)が出ている映画が世間では人気らしく、語る相手が欲しいから興味があるなら見てくれよと誘われ、インターネットの情報から好奇心に負け劇場に足を運んで見たことが私の人生の分岐点になった。

 

 スクリーンで写される艶めかしい彼の姿を見ていると、心の中でロシア人男性で構成された私の男性観が音を立てて崩れていく。

 今思えば体格の良い、愛想の良いだけの男を何故良い男と考えていたのかわからない。

 彼の仕草が私の心を撫でる度、何故そんな男に媚びていたのかとそんな自問自答を繰り返す心が慰められる。彼の仕草は私の男を知らない心と身体を濡らし、濡れる喜びと渇きという苦痛を与えてくれた。

 

 殴られたい、蔑まれたい、都合良く使われたい、その状況に陥っている私は惨めでなんて脆弱な存在なのだろうか。被虐嗜好とでも言えばいいのか。

 

 私も映画で殺害された人物のように、彼に生殺与奪の権利を握られたい。心から屈服したい。人間の女から獣のメスに堕とされたい。為す術なく押し倒されて冷えた銃口を頭に突き付けられて、それに見合う冷たい視線に見下ろされたい。

 一般的に淘汰されるべき欲求を認めてしまえば、驚くほど頭は冴え胸に痞えていたわだかまりが消える。それに比例して身体の奥はグツグツと煮えたぎるように熱く濡れそぼっていく。

 

 私が彼に対して思った感情は同僚が抱いた物とは真逆の物だ。これは恋であると私の勘は囁いている。

 

 彼の女性に対する尊大な心はウラル山脈のように気高く、そしてモスクワの冬の様に冷たいものだ。それを皆は自身の熱で包み込み溶かそう、支配しよう、或いは共存しようとする。人間は自然に勝てる筈がないのにだ。

 彼を屈服させたいなんて微塵も思わない。その偉大な存在の前に屈服すべきは私達の方だ。その凍てつく寒さで私の心を、温もりを閉じ込めたまま凍り付けて欲しい。

 

 女としての恥と、国を守るべき軍人としてあるまじき感情を彼へと抱いて、その感想を同僚へ伝えるとカフカス地方に現れたビッグフットを見るような視線を向けられた。

 

 映画を見た後、直ぐ様上司に断り長期休暇を取って海外旅行へと赴いた。全ては彼のような男性を探す為に。北欧、南欧、中東、南アメリカ、南アジア、東アジア。趣味らしい趣味もなく溜め込まれた全財産を吐き出しつつ世界各所を回ったが彼の代わりになるような存在は現実には居なかった。

 

 そうなると嫌でも気付く、私は彼のような男性を探しているのではなく、彼を探して欲しているのだ。

 それに気が付けば早々に帰国し上司に辞表を叩きつけて長期滞在ビザを取得し、彼が居るロサンゼルスに赴いた。そして映画のスタントマンを志して彼の勤めているところとは別の製作会社の扉を叩いたのだった。

 全ては彼の近くで働くために。少しでも使えると判断して貰うために。使えない存在だと思われたくない、だから使い物になってから彼の元で私の全てを捧げようとした。

 

 しかし転機はすぐ訪れた。続編公開の前に行われた三作品目の主演女優オーデションの募集。オーディションに受かるよりメガ・ミリオンズに当選する方が簡単だろう。直ぐ様応募し天と彼に祈りを捧げる。

 全ては私に味方し書類選考を通過、一次選考、二次選考と駒を進めついには最終オーディションにまで参加することが出来た。そして最終オーディションで求められた演技は原作を参考に練り直された映画の新しい役割。ユーシャが演じるキャラクターを尊敬(に屈服)している「頭のネジが飛んだ存在(彼に全てを捧げた者)」だった。

 

 なんだそんな物かと思った。私は彼の本質を正しく理解している、緊張を隠せない有象無象の中で私一人が笑う。

 

 記憶にあるのはスタッフに案内されて審査員がいる会場に着き、審査員(有象無象)の中に(存在理由)を発見した所まで。そこからの記憶は無い。気が付けば先に演技した者と会場に立っており、困惑した私の名前が監督に呼ばれ、呆けていれば審査員から拍手が送られた。 

 受かったのかと、現実味の感じない夢見心地を泳いでいると彼が手を差し伸べてくれる。そこからは身体は止まれなかった。彼の手を握り、そして彼を思い切り抱きしめる。有象無象彼以外の何かが私を引き剥がすまで、私は天と私を選んでくれた彼に心から感謝した。

 

「ただいま」

 

 彼と仕事するようになってから、玄関を開けると壁に張り付けられたユーシャが私に微笑んで出迎えてくれる。彼がいるロスでの生活が最高としか言い様が無かった。

 

「貴方は今日も最高に素敵だったわ」

 

 冷たく見下ろすユーシャ。笑顔を向けるユーシャ。いやらしげに微笑むユーシャ。焔に照らされて格好良さを感じるユーシャ。ミステイクで素顔を晒すユーシャ。私の家では様々なユーシャが居てくれている。私のことを見守ってくれている。壁に背を向けて私のことだけを見てくれている。私の為に意識を向けてくれている。

 なんて幸せで、それでいて、なんて申し訳無いのだろう。

 

「拝金主義の国の泥水なんて飲めたもんじゃないって思ってたけど、貴方と過ごす時間はどんなものも最上に変えてくれるのね。この国の珈琲も好きになりそう」

 

 今日彼が私と飲んでくれた珈琲の味が忘れられない。思い出すだけで頬と身体の奥が熱くなる。壁にもたれてこちらへ微笑みかける彼の首筋を撫でる。

 

「やっぱり、貴方が誰かと付き合う訳が無いのよね。皆勘違いしてるの」

 

 彼と付き合うなんて身分違いも甚だしい。彼と有象無象が同列な訳がない、故に付き合うなんて発想自体が度し難い。求められたら身体でも、何でも、差し出すのが彼への誠意であり愛である。

 私の身体を命を、弄んで食い散らかしてくれる。一時の楽しみとして彼の脳裏に思い出として刻まれる。それの幸せたるや想像するだけで濡れる。

 

 ()()にありもしない恋愛事情を聞いた時は、事実無根の内容から思わず笑みを浮かべてしまった。その頬に作られている笑顔は彼に向けられる笑顔とは別物である。私のその笑みは彼に向けられるべき物ではない。

 彼へのみに捧げる物は作られたものではなく、心から愛に染まった物でなければならないの』

 

 

 そこまで音読しミラーシャは文字が綴られた紙を机へと置いた。

 一応〆として下の方に『次回 優死す』と書いてはいたが、彼女はそれを読むことはなかった。

 

「どうその小説、良くできてるでしょ」

「ユーシャはユーモアに溢れていて素敵だと思うわ。どうしてこんなリアリティに溢れる妄想が出来るのか不思議ね?」

「前世で取った杵柄ってやつかな」

「ふふ。なにそれ」

 

 彼女が最終オーディションで口走っていた言葉と本名を参考に、過去も経歴も全て捏造して作った小説をミラーシャへと捧げた。作成時間、3時間程度。使用機材はエクセル。

 

 こういう設定を寝る前の妄想として考えると、いつの間にか寝落ちして安眠できる。

 実際の人物がこんな設定なら性癖詰め込んでんなとドン引きな上、よくあるSS投稿サイトでこんな妄想を一話使って見せつけられれば、早く話を進めろとキレ散らかすけれども、考える分には私は好きだ。

 

 因みに繰り返すが、彼女が書いていた日記などではなく私がただ書き殴ったものである。()()()()()()()()()()()であり、実在する人物とは、目の前でニコニコと微笑む()()()()()()()()()()()()()

 

「私はモスクワでお仕事ばっかりだったけど、前の職業なんて軍人じゃなくて()()()警備員だし? 確かにロシアで一年間軍にいたけど、それは国民の義務だからね?」

「ロシアには従軍? 兵役しないといけない決まりがあるんだ?」

「そういうこと。それに私の部屋に写真なんて貼ってないわ。写真に微笑むよりこうやって貴方とお話した方がいいじゃない」

「ミラーシャのオーディションのあれ、こう……ぶっ飛んでたからさぁ。それを元に作っただけ、深い意味はないよ」

「ふふ、これでも私は演技得意なの」

「まぁこれは私の妄想だからね。じゃあ、監督呼んでたから行くわ」

「はーい、またあとでね」

 

 ミラーシャの前頭部を指先で鋤くように撫でた後、頬へと指を這わせればしおらしく彼女がしなだれる。名残惜しそうに唇へ這わせ色気のある下唇に触れてその場を去った。

 彼女のオーディションの狂気に染まった台詞はキャラクターというより素だと感じた故の行動ではあるが外れたようで()()()だった。

 アンジェリーナも、捏造したラブレターを目の前で音読したらどのような反応をするのかと今から楽しみである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「行ったかしら」

「……出来はいいけれど、惜しいわね。貴方の心はウラル山脈ではなくエルブルス、見る側によって暖かみも冷たさもある。カフカスの土地はその二面性に誰もが魅了されるの」

 

『あッ……あぁ……。 私と出逢ってくれてありがとう、この世に生まれてきてくれてありがとう。私は貴方に殺される為に生まれたの。殺される為に今まで生きてきた。泣き叫びたいところが見たいなら腹を切り裂いて手を入れてかき混ぜて、見事に鳴いて楽しませるように頑張るから。銃口を突き付けて引き金を引いてくれてもいい、綺麗な花を咲かせるわ。だから殺したいなら私を殺して。殺すのが億劫なら好きに使って。首を掴んで、体重を掛けられて苦しくなって、魚のように開けられた唇に、舌を捩じ込んでもいい。貴方の好きに使われたい。貴方に私の全てを握って欲しい、お金なんて物じゃない、私の全て。私の人としての権利も、命も。ありとあらゆる物全て。私は全て貴方に捧げたいの。心から屈服して、尊厳を取り上げられて貴方の所有物になりたい、人でなくなってもいい、貴方の物になれるなら何でもいい、頭からつま先まで必要とされたい。女として必要としてくれても私は貴方に心から服従するから。貴方の言いなりになって食い散らかされたい、貴方の気が済むまで中で受け止めたい、貴方の子を孕みたいなんて身分不相応な失礼なことは言わないわ。もし孕んでしまったら必要なら生むし、必要ないなら下ろすから。ただただ私は貴方に必要とされたいの、必要無くなったら私を殺して。そんな私の死すらも貴方が必要としてくれるのは最高なの。貴方の思い出になるように好きに殺して欲しい』

 

「あぁ……これね。オーディションの初めての、愛の囁き。ふふ……これで過去を想像してくれたんだ」

「レコーダーも役に立つのね。クレムリンになんてもう戻らないから貰ったままでもいいかしら」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 三作品目の制作はつつがなく始まっている。制作といってもセットを作ったり小道具が作られる期間であり、撮影自体は行われていない。

 私達は台本とドーナツを手に作品への理解を深めるだけだ。セットが作られているのはニューヨーク。ニューヨーク……どこ? 猿が登った大きなビルがあるくらいしか記憶にない。ロサンゼルスから2,800マイル? キロで言え、ヤーポン滅ぶべし。

 

 ロサンゼルスからニューヨークまでは片道5時間、ぶらり飛行機の旅である。

 あらかたのセット設置完了の報を受けて、ニューヨークへと向かうために身支度を済ませたのが昨日、手荷物は大きいキャリーバッグ。よしみんな、真水は持ったな。

 

  人生二回目の長距離航空、長時間航空処女を散らしたのは続編撮影時のイギリスだ。その際の閑話については後日語らせてもらおう、映画の中身についても語ってないからね。取り敢えずイギリス料理は不味いと噂されていたがそこまで悪いものではなかった。ビジュアルが悪いものが多いだけで味自体は悪くはない。

 ハギスがそれだ、見た目の割には悪くはない、しもつかれみたいなもの。因みに私はしもつかれを食べたことはない。フィッシュアンドチップスも、ソースがない白身フライ。パイとローストビーフ、紅茶は日本より美味しかった。ただウナギのゼリー寄せだけは絶対に許さない。

 

『当機の操縦は私、ハンナ・ウルリッヒ・ルッツ。副操縦士はピエレッド・セドリック・ボナン。ニューヨークまでの空の旅をごゆるりとお過ごし下さい』

 

 ニューヨークまで向かうためにロサンゼルス国際空港から飛行機へ乗り込む。乗り込んだのは私とアンジェ、ミラーシャと数名のスタッフ。ファーストクラスに案内され、パーテーションで区切られた半個室の椅子へと腰を掛ける。

 

 キャビンアテンダントの男性が話していたが機長は元軍人のベテランパイロットで、副操縦士は新人。機体の名前はDC-10だとかなんとか、彼らは直前にレバノン料理を食べたらしい。

 副操縦士が新人らしいが機長が元軍人のベテランパイロットなら安心できる要素が備わってる。

 

「起こさないでくれ、死ぬほど疲れてる」

 

 冊子へと視線をやる彼女らに声を投げ掛けておく。短い返事の後、窓際から外を眺めればアスファルトで舗装された滑走路とロサンゼルスの街並みが見えた。長時間座り続けるのは正直辛い、早々に寝てしまおうと寝心地いいポジションを探す。

 

「ニューヨークには何があるの?」

「サンドイッチと、ホットドッグだ」

「他には?」

「無い」

「アメリカで一番の都市なのに、食べ物は不自由なのね? 女神様が持ってるのはワッフルコーンかしら」

 

 隣の席での姦しい声が脳裏に響く。ニューヨークチーズケーキとか他にもあるだろと、突っ込んだら負けだ。

 

 しかし、彼女らも私から見れば最初はギスギスとしていたのに随分と仲良くなった物である。前世の思考で考えれば男女のペアに男が割り込んだ形、発生するのは三角関係、寝取り展開である。私とアンジェリーナは出来てないので寝取りもクソもないが……。

 

 因みにこの世界には、男女比が崩れているので一夫多妻です、優良男子はハーレム作っても構いませんな法律、孕ませたらお金が貰えます、チンポのスペックによって地位が変わりますなんて都合の良い物は存在しない。元より一夫多妻が合法となってる国は定かではないが、まず日本とアメリカは一夫一妻である。その辺りは前世と変わらない。

 

 チンポの大きさが男は小さくなっています、性欲も無くなってます、立ちませんなんて言葉も聞かない、というか厳密には調べてない。野郎の性欲の強さなんて興味ないからだ。置き換えれば女はお猿さんなのは間違いないだろうが、前世の眼鏡があるからか女の猥談は卑猥に見える。

 …………思えばチンポの大きさが変わらないならBBCは生まれているのか? しかし男の立ち位置と人種的な歴史要素と色々混ざりあって、その意味自体が肉便器のような意味合いになってそうではある。

 

 そんな事を考えていれば離陸直前のシートベルト装着のタイミング、姦しい喧騒も消え夢への誘いがやってくる。独自のスラングも調べなければいけないなと思いつつ、機体が飛び立つよりも一足先に私は夢の世界に飛び立った。

 

 故に監督からの『ニューヨークに来るのがリークされた。覚悟しといて』というメッセージは電波の喪失より先に安眠へと旅立った私へは届かない。それに気が付くのは搭乗口に降りてからのことである。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『私は優の事が好きだ。

 

 私が優に恋をしていると自覚したのはいつだろうか、などという茶番染みた自分語りをするつもりもない。あの時私は監督は随分と綺麗な東洋人を連れてきたものだと感心し、彼の演技を見て、惚れた。

 彼の情欲を撫で回すような演技に呼吸を合わせて役として彼に溺れて彼へと恋をした。こちらの心を擽るような彼の素の愛らしさと優しさで愛して包み込んでほしいと思ってしまった。

 

 私を困らせる彼の悪戯が恥ずかしくて、おかしくて、君との時間がとても楽しくて。君と話してると頬が、身体が、奥が、火照る。

 

 好きだよ、優。愛してる、告白しなかった私を誉めてくれ。いつも浮かべる笑顔のまま頭を、頬を撫でて誉めて欲しい。良い子だと耳元で囁いて、脳髄まで蕩かして強く抱きしめて欲しい。私の名前を囁きながら唇を塞いで欲しい。

 

 君が話していた事をちゃんと覚えていたんだ、ファンを大事にしてるって。だから告白はしなかった。私は君を家族に紹介しなかった、私のパートナーだって。君が他の女を紹介した時だって私は其れを受け入れた、君が笑顔になるのが好きだから。社会主義者の犬になんてくれてやらない、君は私の物で私は君の物だ。

 映画と同じように現実も私のことをパートナーと思って欲しい、バディでは嫌なんだ。私は君と、君の人生のパートナーになりたい。

 

 君の笑顔が好きなんだ。愛してるんだ。私は君が笑顔になるならどんなことでもしよう。どんな物でも捧げよう。

 君を迎えに行くのは私の役目だ、いつまでも待っているよ。だから私以外に振り向かないで。愛してるよ』

 

 ()()()()()恥ずかしい。指先に力が入り、窓際で寝息を立てている彼が書いたラブレターがくしゃりと音を立てる。手早くそれを折り畳むと()()お守り代わりに愛用している手帳の中へとしまい、それを胸元へと納めた。

 

 彼が私に宛てて綴ってくれた物ではなく、彼の中に居る想像の私が彼に宛てたラブレター。

 どうしてそのような物を書こうと思ったのか、そしてそれを何故私に渡したのか、それらは彼でなければわからないが、これもいつもと同じようにしょうもない物(彼の愛情表現)なのだろう。

 

 恋人として付き合える訳でもないのに、人の好意を増長させる様な理不尽(有意義)で、下品で(魅力的で)私の反応を楽しむだけの(私を一番に考えてくれている)行為が(彼を)、私は苦手だ(愛してる)

 

 成人した男としてはあまりにも軽率で、行為を誘ってるとしか思えない雰囲気をばら蒔き、女を勘違いさせる為に生まれてきたと言っても過言ではない言動、常識という常識が欠損している彼。

 ニューヨークは無名の頃から居たロサンゼルスとは違う。

 だから私が彼を守らないといけない。彼は男で、愛する人で、アメリカの……世界のスーパースターなのだから。



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Take009

 ロサンゼルスの生活は快適といってもいい。席に座るだけでいつも注文するものが出てくる顔馴染みの喫茶店、何を買っても無愛想に雑誌を読み続け帰り際にまた来いよと声を投げ掛けるコンビニの店主、肉を買うと気持ちおまけしてくれる精肉屋etc。

 そんな日常が当たり前であると思っており、私自身の立ち位置、私が世界にとってどのような者なのか本当の意味では理解してなかった。

 

 ロサンゼルス発の飛行機の搭乗口から降りて、待ち合いロビーに出た瞬間にその理解をしていない意味を身に分からされることになる。好奇心を押さえられず先頭を歩いていたのだが自動ドアが開いた瞬間、目が眩む程の光を浴びた。咄嗟に手で遮るが時はすでに遅く、視界全体に残像が残る。

 

「まぶッ……!?」

 

 顔を背けるが視界に光の残像が残りロクに目が見えず、咄嗟に何かを掴もうと周囲に手を伸ばす。そして何度か指先が虚空を切った後に、その手を誰かが掴み、指先を絡ませてくれた。

 

「ユーシャ」

「ごめん、見えない。ごめん」

「手を握って。ついてきて」

 

 どうやら手を掴んでくれたのはミラーシャらしい。玉虫色の残像に染まった目を細めれば、それが薄れた視界の隅にカメラが見える。

 彼女の手に引かれて移動し、さっきの光が一斉に焚かれたフラッシュだと気が付いたのは、続けて空気を震わせる怒声のような歓声で頭を殴られたときだった。

 

 歓声が頭に響き、耳を塞ぐことの出来ない状況で引き続き連続して焚かれるフラッシュ。ロビーを出てからどこを歩いてるのかもわからない。しかし、間髪を容れず視界の中央を塗りつぶすように埋まる光と、周囲の喧騒から庇うように黒い影がカメラと私の隙間に入る。

 

「反応を返さず、そのまま。手も振らないで」

 

 隙間に入ってくれた影の正体はアンジェだった。少しずつ残像が薄れ、周囲を確認する余裕ができてくる。進む道に沿うように設置された柵から身を乗り出す人と、それを抑え込むボディーガードの壁。

 ロビーを埋め尽くす程のヒトの群れと、波のようにうねるプラカードとメッセージ。顔には歓喜と興奮を露にして、その熱は私達に向けられている。

 

 何がどうしてこうなったのかと疑問が生まれる。そして『ニューヨークへ来るのがリークされた』という監督からのメッセージを思い出した。それだけでこうも人は集まるのかと、驚きが隠せない。

 

 しかし、これは自分の起こした事象である。

 新しい文化を、性癖を生むという行為を甘く見ていた結果。画面越しにスレの住民の性癖が変わるのを眺めていただけ、画面越しに褒め立てられるだけで承認欲求を満たしていただけ、近しい者を身勝手に弄んでいただけ。

 私は人の性欲というもの、三大欲求の強さと、それから来る関心というのを軽んじていた。

 

 私らが居なくなってもその歓声は止むことはない。通路を歩き三人揃って黒塗りのリムジンに押し込まれ、ボディーガードが人の波を掻き分けて車が飛行場から出たときに、漸く熱気から解放されたのだった。

 

「はぇ……すっごい」

 

 身体の中のこもった熱気を吐き出すように余りの出来事に対して思ったことを呟けば、それは無意識に日本語として言葉が漏れ出る。あまりにも強烈過ぎて、それがまた予想外で、小学生並みの感想しか出てこないが心臓はうるさく鳴り響いてる。

 

「ヤバい。ヤバすぎ。何あれ? まだ目がチカチカするし。あんなん聞いてないってマジで」

 

 同意を求めるように彼女らの方を見るとミラーシャは首をかしげ、アンジェは苦く笑っていた。

 

「あー……すまない。日本語だと何を言ってるかわからないんだ」

「あ、ごめん」

 

 無意識に日本語で呟いてしまっていたかと、直ぐ様英語で謝罪を呟く。

 

「ロスでは、ああはなってなかったけど、あれは何?」

「ロスでの生活が変なのさ」

 

 その言葉に首をかしげれば、アンジェリーナは深くため息をついた。

 

「普通ならパパラッチは来る、ファンから付き纏われる。間違っても喫茶店に行って珈琲を落ち着いて飲めたりはしない、スーパースターっていうのはそんなものだよ」

「スター? 私が? それもスーパー?」

「君がスーパースターじゃないなら、皆は演技が上手い一般人かな」

「ユーシャはロスではあんなことは無かったから戸惑うのも仕方無いと思うけどね」

「ニューヨークじゃあ常識なんだよ、ってことね」

「いやニューヨークじゃなくても。兎に角優はニューヨークでは一人で夜は歩かない方がいいよ。本当に何があるかわからないから。本当ならロサンゼルスの方がパパラッチは多いんだけど、無名の頃から街をうろちょろしてるから皆が目を光らせてるのかな?」

 

 自分自身がスーパースターである自覚と実感はない。ロスでの生活が快適で、一切の煩わしさがなく、前世のハリウッド俳優のようにパパラッチに悩まされることが無かったからだ。

 しかし、出会い頭に顔を激写され大人数に囲まれて歓声を叫ばれれば納得はしないがそうなのだと思わざるを得ない。

 

 そこまでするほど、私は魅力的なのだろう。新しい性癖、未知の嗜み方が生まれてそれを体験する側はああも突き動かされる物なんだろう。

 前世では性癖というのは物心付く頃にはネットに根付いており、新しく生まれる物は既存の改変か延長線でしか無かった記憶だ。

 

「いや、そうだね。ちょっとわかったかも」

「あら本当に?」

「私がしようとしてたことのヤバさ(偉大さ)加減」

 

 決して私はナルシストではないが、この俳優という職業はナルシストでなければやっていけないと思う。自分の良さと強みと武器を理解して正しく前に押さないといけない、そうして成り上がっていく、役に使ってもらう、楽しんでもらうのだ。私の武器は羞恥心の無さ、恵まれた顔、前世の知識。それらを前面に押し出さないといけない。

 

「じゃあ外を一人で歩きたいから、ロサンゼルスとニューヨークの偉い人にお手紙書くわ」

「は?」

「え?」

「しゃぁ! 私の本気、見せちゃうか」

 

 貴女方が追い求めるスーパースター様の頭のネジはぶっ飛んでるってところを見せ付けてやる。全ては受取人次第ではあるが。兎に角パパラッチをどうにかしないといけない。自力で自分を防衛しつつ、偉い人に撮影を止めてもらうようにお願いするのだ。

 

 

◆◆◆◆◆ 

 

 

「こんな写真、使えるわけないじゃない!」

 

 例の俳優らが撮影のためにニューヨークに来た。その情報はニューヨーク中のパパラッチの元にすぐ伝わり、誰もが一攫千金を狙って撮影を試みる。

 しかし、撮影は成功すれど掲載できる写真は一枚もない。全ては彼が着ているシャツのせいだ。

 

「『男の器はチンポの大きさに比例する』、『ポークビッツにチン権はない』、『大きいは正義』、『最強雄筋肉チンポバトル』、『ロスの県北にある川の土手の下で盛り合おうや』……こいつ本当頭おかしいんじゃない?」

 

 机の上にぶちまけられた写真は全て英語で男性軽視した文字が記されたシャツを着た彼の写真。撮りたいだけ撮れよと見せ付けている様子を何故撮ってしまい、そしてそれに対して何故金を払って買ったんだと頭を抱える。

 本当に唯一使えるのは腹の上に日本語で『正正正一』と書かれたシャツを着た写真くらいだ。

 

 雑誌として男性の一部と心に対して殴りに行ってる写真を使う訳にはいかない。私達も使えば最後、その界隈から集中砲火を受ける。アメリカの男性権利団体の力は強い。

 既に先日、『BBC』とデカデカと文字を書かれた写真を使った出版社が吹き飛んだところだ。何の隠語か、理解出来なかった故の安易な行動。翌日『ビック・ブラック・コック』と書かれたシャツを見て単語の意味を理解した。その写真を使用した出版社は男性権利団体と黒人権利団体の双方から集中砲火を受けている。

 事の発端はアイツだろうに、何故我々が攻撃されないといけないのか理解不明だ。

 

「もっとこう、ないの!? 普通の! 普通の写真!!」

「両手に中指立てた物なら」

「ファック!」

 

 『私のコックは凶暴です』、『コックは見えているか』は表現が下品過ぎて使えない。突然日本語で『惑わされてて草』『やーい出版社さん見てる?』なる文字が書かれても私達は日本語が読めないので、この言葉の意味を解読できない。下手に使って放火されても困る。

 

「ないの!?」

「ないです」

「あああああぁぁぁぁぁッ!! あのマンチキンがよぉッ!!」

「編集長、落ち着いてください」

「大人しく脱ぎ散らしてりゃあいいんだよクソッタレ!!」

 

 私達の苦悩は続くかに思われた。しかし、一人のあるカメラマンがスマホを片手にドアを蹴り開ける。

 

「やばいことになってるわ!!」

 

 彼女が見せ付けてきたのはとあるSNSのコメント。そのSNSを見た瞬間、その場にいた全員がスマホを手に取った。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 


 

黒木優 @kurokiyuu 1ヶ月以上前

sns始めました

 


 

黒木優 @kurokiyuu 1ヶ月以上前

拙者逆レすこすこ侍

性的に搾り取られる展開はあれど、一方的に搾り取られ為るは遺憾にて、ついては某が食い散らかしたく候

 


 

黒木優 @kurokiyuu 3日前

I'm in trouble if the paparazzi doesn't work properly.

I will have a photo session.Think about the pose.

There is no NG.

Stop voyeur. At least call out.

 

(自動翻訳:ちゃんとしてくれないパパラッチがうるさいので、撮ることを許可する撮影会やります、写真は売ってもオカズにしても構いません

撮りたいポーズ考えといて下さい、希望あるならポーズとるので

NGポーズはありません

だから盗撮するのはやめて、撮りたいならせめて声かけて)

 


 

黒木優 @kurokiyuu 3日前

For example, this pose.

↓Click here for details.

https://coo...

撮影協力:映画監督とカメラマン

 

(自動翻訳:真面目にふざけて撮ったポーズサンプル

↓詳細はここ)

 

添付: エロ蹲踞 ジャックオーチャレンジ 脇見せのポーズ 足つま先差し出し

 


 

黒木優 @kurokiyuu 3日前

The number of people is 100.

 

(自動翻訳:言い忘れてたけど100人くらいで)

 


 

黒木優 @kurokiyuu 2日前

I wrote 100 signatures. With a kiss mark.

 

(自動翻訳:因みに100枚サイン書いたから

私のキスマーク入りね)

 


 

黒木優 @kurokiyuu 1日前

The number of applications is 25 million, which exceeds the number of citizens of New York. What's wrong?

 

(自動翻訳:応募数2500万とかニューヨーク市民の数のトリプルスコア越えてるんだけど

なにこれ?)

 


 

黒木優 @kurokiyuu 12時間前

Stop applying from outside the United States. I'll just send you the autograph.

 

(自動翻訳:アメリカ以外で応募するのやめい

サイン送りつけるだけになるけどいいの?)

 


 

黒木優 @kurokiyuu 5秒前

まじ?

 


 

 

◆◆◆◆◆

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ873

 

 

777:名無しの映画監督 ID:xUC5DlZpd

応募した?

 

778:名無しの映画監督 ID:Ng7BQsD1l

映画の残虐なイメージが壊れちゃう

 

779:名無しの映画監督 ID:Mzb2CKgfw

しないやつおりゅ?

 

780:名無しの映画監督 ID:koJWLbJd2

おらん

 

781:名無しの映画監督 ID:nrK0Hnuiq

おりゃん

 

782:名無しの映画監督 ID:tyHA9mcWK

ただの紙やん、アホくさすぎ

 

783:名無しの映画監督 ID:M8tLnw+7W

>>778もう崩れてるからセーフセーフ

 

784:名無しの映画監督 ID:Mk8cJWn7g

>>783サイコ要素がないだけでほぼ変わらないんだよなぁ

 

785:名無しの映画監督 ID:xEf3kZ59N

真面目な話100万は出せる

 

786:名無しの映画監督 ID:EN8W91hYZ

「世界に100枚」しかなく「世界的俳優直筆」の「本人のキスマーク入り」のただの紙やぞ

 

787:名無しの映画監督 ID:VZihU5VU4

>>783リアルサービス精神たっぷりとか恥ずかしくないの?

 

788:名無しの映画監督 ID:sj3b7qb7d

寧ろリアルの方がいい

 

789:名無しの映画監督 ID:oIHxmMK+N

>>785そんなはした金で買えるわけないやろ

アメリカの人気もヤバいけど、中東の人気がエグい

 

790:名無しの映画監督 ID:GHLjRxff6

当たったら顔に座ってもらう

 

791:名無しの映画監督 ID:jVSBWo5sq

顔隠しててガードも固すぎる男を相手にし、それで満足してた石油女王の発狂っぷりよ

 

792:名無しの映画監督 ID:eHxe07TaU

ファンの連中共(石油女王・資産家)で来てくれたときのために家を作ろうとしてるのは正直笑った

 

793:名無しの映画監督 ID:ZTh/9OcCk

家(800坪)

 

794:名無しの映画監督 ID:nqkPvjRlJ

学校のグラウンドかな?

 

795:名無しの映画監督 ID:em7ob9lRz

今見たら5000マソ突破してるし

英語だったのに日本語で呟いとる

 

796:名無しの映画監督 ID:cvb8XOtU/

使わない時は超高級ホテルとして計画してるのも最高にアホ

金持ちってこう、金の使い方が上手いっていうか単に貢ぐだけじゃないっていうかアホ

 

797:名無しの映画監督 ID:9II5/3nvx

>>787ないです

 

798:名無しの映画監督 ID:erzQLoyDt

世界人口の1%に自撮りエロ画像を周知された男

 

799:名無しの映画監督 ID:eeAu9duUW

【速報:ニューヨーク市長緊急会見】

 

800:名無しの映画監督 ID:DFabCpMIL

なんでや! 健全やろ!

雰囲気はどちゃクソエロかったけど

 

801:名無しの映画監督 ID:yUimSfbWJ

>>799無能

 

802:名無しの映画監督 ID:z1GcPzHfA

アンジェリーナのSNSに昼飯写っとるし

 

803:名無しの映画監督 ID:ZnqI74Rmb

朝食:砂糖たっぷりカフェオレ、固形物基本無し

昼食:肉オンザ肉ウィズ肉

夕食:軽食

 

804:名無しの映画監督 ID:86vJDamrq

100/50000000だから1/500000?

 

805:名無しの映画監督 ID:fMugLgZAs

ジャップ男「チンポの長さで器は決まらない! 男性軽視だ! 男性の性的搾取反対!」

アメップ白男「チンポが大きい俺達は器が最高に大きいってことか、言うじゃんブラザー。あ、女性が言うのはセクハラで」

アメップ黒男「BBC? 器と同じくらい大きい自慢のチンポさ。女性が言うなら黒人差別で」

イギップ男「アイツら何やってるんだ」

 

この対応の差よ

 

806:名無しの映画監督 ID:JlFXkn/Z6

宝くじかよ

 

807:名無しの映画監督 ID:dIklburpy

>>799無能ですわね

https://www.mytube.com/watch?v=ponponpainpain

 

808:名無しの映画監督 ID:qjC9aEyp+

乙ですわよ

 

809:名無しの映画監督 ID:YSASy0HIZ

全ての元凶が堂々と君臨してるのにアメリカだと何で叩かれないの?

 

810:名無しの映画監督 ID:EBorneI8M

「ニューヨーク市としては混乱を防ぐために路上での写真撮影、他迷惑行為の取り締まりを一時的に厳しくする方針である」

「尚私が希望するポーズは、上目遣いで手を握ってほしい。色紙は自宅に飾る予定だ」

 

811:名無しの映画監督 ID:I7uBpJrGd

お前も応募しとるんかーい!

 

812:名無しの映画監督 ID:96f9Oczay

>>809

アメリカは兎に角ヒーローが好き

女も男もヒーローが好き

女性にただ搾り取られるだけの存在から何を訴える訳でもなく言葉と身体だけで男の立ち位置を女と同格に変えてくれたヒーローなんじゃない?

 

813:名無しの映画監督 ID:T1HxH4pWj

アンジェリーナのSNSに写ってるロシア人誰かわかる?

 

814:名無しの映画監督 ID:79oRuuTfL

はぇ なるほどわからん

 

815:名無しの映画監督 ID:gtH8vm4qb

たぶん新しい主役

 

816:名無しの映画監督 ID:EBorneI8M

挨拶飛ばしたけどたぶんマジ、会場爆笑してる

「尚ロサンゼルス市長とも電話にて会談し、ロサンゼルスでは特定の人物に対するプライバシーの侵害については厳しく取り締まると共に市条例として何かしら定める方針である」

「ロサンゼルス市長は椅子になりたいそうだ」

 

817:名無しの映画監督 ID:HtD1WRcH8

ついにロシアも堕ちたか

 

818:名無しの映画監督 ID:Pcx7PQPhO

>>816アメリカ人ってユーモア挟めないと生きていけないの?

 

819:名無しの映画監督 ID:+zb/ub1gL

あやつは四天王の中でも最弱

 

820:名無しの映画監督 ID:x63QWHDXm

よくやった、同志スターリンもお喜びになるだろう

 

821:名無しの映画監督 ID:0o1L74hKa

冷戦かな

 

822:名無しの映画監督 ID:15wKMBQSq

どっちが好みなのか気になる

 

823:名無しの映画監督 ID:EUgs3LX78

アメリカ(巨乳筋肉娘)vsロシア(貧乳筋肉娘) ファイ!!

 

824:名無しの映画監督 ID:zegrPSLbv

ソ ビ エ ト 社 会 主 義 共 和 国 連 邦だ、二度と間違えるなクソが

 

825:名無しの映画監督 ID:EoXNIIxOp

日本政府も声明だそうや

 

826:名無しの映画監督 ID:FCvSfifS6

アメリカで宜しくやってんじゃねぇ、てめぇ日本人だろ

って首相に言わせたい

 



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Take010

 好きな写真が撮れないから勝手に撮ろうとするだけで、撮れるようになるなら日頃の行動を見つめ直せるだろうと提案した撮影会。えぇえぇ、こんな大事になると思ってませんでした。

 

 世界各国から募集が集まり応募数はとんでもない数字のまま現実逃避をしていたら最終的に7000万ちょっと程度となった。

 流石に未だに増え続けてるのはヤバいと感じ応募を締め切ったが、さてどう抽選しよう。本人に発送を以て発表する? 発送を以て発表とするって本当にやったのか怪しくない? そんなつまらないことはしない。

 7000万まで抽選出来るアプリを作ってもらい、抽選するのを動画に撮ってSNSに投稿しよう。

 

 暇そうにしている制作のスタッフに頭を下げたら、7000万人数えるのをポンとくれたぜ。ちゃんと作成料でお金は支払ってるので安心してほしい。

 そして抽選の動画を何個かに分け、発表し少しの月日が経ったのち、撮影会の日はやって来た。因みにこの頃になると既に撮影は始まっており、この日はわざわざ朝から休みを入れて撮影会に来ていた。撮影会の日はいくつかに分けられ、今日は6日目だ。

 

  ニューヨークのエンパイヤーステートビルを複数部屋間借りして作られた撮影スタジオ。海辺、雪、砂漠、森と本物に比べれば簡素なセットではあるが制作元は映画会社、様々なロケーションで好きな格好で撮ろうというものだ。因みに協賛は募っていない、全てポケットマネーだ。

 

 抽選はガチ抽選であり作為的な選別は行っていない。なのにもかかわらずやたらとプレゼントが多い。別に何も求めたわけではないんだが、異性にプレゼントを送り喜んでもらうというのは万国共通なのか?

 それとあんまり皆撮影してくれない、一人辺り30分で既に70人くらい捌いたが撮影してくれたのは半数だ。撮影よりも握手して、ハグして、椅子になるから座って、踏んでなんて注文が多い。

 座るくらいまでなら問題はない、座りながらお尻を動かして背中にお肉を押し当てるくらいのサービス精神はあるが流石に踏むのはちょっとキツい、というか恥ずかしい。

 

 ちゃうねんちゃうねん、カメラに見せるのと足を触れられるのとでは訳が違うんだよ。まぁちゃんと踏ませて貰ってたけど、最初の数回で踏むのに飽きて途中から私は椅子に座って足置きになってもらっていた。

 

 さてプレゼントでいえば正直スポーツカーの鍵を渡されるよりペットボトルのお茶の方が嬉しいが、私も自称プロ。そういうのは顔には出さない、好意だけでも嬉しいからである。因みに車は3台増えました。キャディラック、ランボルギーニ、フェラーリ。

 キャディがお好き? 結構。

 プレゼントの質で、当たり前だが優劣は付けない。お金持ちから送られた宝石の指輪でも幼子からの手作りの紙のブローチでも、何を貰ってもどちらも嬉しいプレゼントだ。

 

احب ذلك. أرجوك تزوجيني(私と付き合って貰えないだろうか)

「すまねぇアラビア語はさっぱりなんだ」

 

 そんなこんなで六日目の正午一発目。

 遊びにやってきた白い服に身を包んだ如何にもアラビアンな方からスタートした。連れの女性を引き連れた彼女は出会い頭にアラビア語と共に何かを渡そうとバッグを漁っていた。何故一人ではないのだろうか。

 

انها هدية(貴方にプレゼントを捧げるよ)

「何この箱? プレゼント?」

سيبدو رائعًا(とても似合うだろう)

「くれるの? ……ルビー? 真っ赤で綺麗。イヤリングだ」

 

 アラビアンプリンセスが笑みで渡してきたのは金色の箱。

 その蓋を開ければ鑑定書なのか冊子と、中央に飾られた銀色の宝飾が施された赤い宝石と青い宝石のイヤリング。宝石自体の大きさは小指の爪より小さい大きさだ。ピアスは耳に穴を空けたことがないのでイヤリングなのがありかたい。

 

「ねぇ付けて?」

「付ける、恥ずかしい、ダメ」

「英語喋れんのかい。ほらはよ」

 

 それを取り出して嫌々と首を振る彼女の手に握り込ませる。そして髪を掻き分けて耳を突き出し、自身の耳を指差した。

 

「輝く宝石より貴方。似合う綺麗、光らない宝石ダメ。ダイヤモンドダメ。ブルー、レッドダイヤモンド、光る」

「貴女私に、くれた贈り物。責任取る、貴女。耳、宝石付ける。役目、女性」

 

 アメリカ人と話すような流暢な物ではなく単語を呟き、身ぶり手振りで彼女の手の中の宝石を指差し耳へと指差せば、赤くなった顔が痙攣するように上下に揺れる。

 

「わかった」

 

 恐る恐るといった様子で彼女は私の素肌に触れずに、指を震えさせ両耳にイヤリングをつけてくれた。人生初のイヤリングである。

 

「綺麗」

「ありがとうってなんて言う? アラブ語で」

「シュクラン」

「ふふ……シュクラン」

 

 初々しい彼女を見れば少しからかいたくなるのが本音である。しかし、こちらへ抱き寄せようと細い腰に手を伸ばした瞬間彼女に逃げられた。

 

「アッラー、お許しを……。辛い、彼の好意、断る」

「え? ……あ、ごめん、ごめんッ!」

 

 よくよく聞けば異性と単独で会うこと、ハグやキス等の男性に深く触れる事は宗教的に禁じられているらしい。お国の法律ならここはアメリカやぞ? 我俳優やぞ? サービスやぞ? で通じる可能性はあったが、宗教的問題なら仕方無い。イヤリングを付けて貰うのもそれを聞けばギリギリだったのかもしれない、危ないところだった。

 ボディタッチはNGらしいので撮影で頑張って頂く。彼女はこちらが導かずともとても張り切っていたと言っておこう。ただ宗教的要素はどうしても発生し、露出は殆ど無い写真が出来上がった。さては貴女らは着衣ハメ派だな?

 

「これダイヤモンドって言ってたけど、贈与税発生するのかな? 鑑定書もあるし……。赤と青のこの世のダイヤモンドって綺麗だね」

 

 彼女らが名残惜しそうに去ったあと独りごちる。取り敢えず全て終わったら会社の担当の人に貰ったプレゼントの件は投げとくかと思った次第だ。価値も一切わからないからね。

 

 続いての人物は中国人、その次はアメリカ人、カナダ人。続いて欠席による不在が2人、フランス人、アメリカ人と続く。

 不在による欠席の場合は国際便にて色紙を送りつける予定だ。因みに色紙にはサインの他にキスマークが添えられているが、書いた色紙に数字を割り振る行為、事前に相手の名前をいれる行為はしていない。必要であれば名前をいれる行為はスタジオに来てくれたときに行っている。

 

 名前を入れてしまえば、これがオークションに掛けられた際にそれを本当に欲しいと思った買い手が買いづらくなるからで、色紙の転売が云々は知ったこっちゃない。折角当たって価値あるものを手に入れたのだ、お金欲しさに売りたければ売ればいい。これが公式グッズ、チケットとなると話は別だが、私が個人で書いたものだ、そこまで気にすることもないだろう。何ならまた書けばいいのだ。

 

 そして本日最後の人物はアジア人だった。黒髪の30歳くらいの女性、雰囲気は日本人だろうか? 日本で見掛ける中国人は区別がつくがニューヨークで見掛けるアジア人の区別はぶっちゃけつかん。

 

Hi.(やぁ)Thank you for coming today.(今日は来てくれてありがとう)Were you looking forward to it?(楽しみにしててくれた?)

「あ、どうも」

「あッ……すみません」

「日本語でもいいですか?」

「大丈夫です」

 

 突然の日本語を聞いた瞬間自然に浮かべられた笑みが営業スマイルに変わる。相手が鞄から名刺ケースを取り出すとこちらも胸元に入れていた名刺ケースを取り出し右手で一枚、指で掴む。

 

「日本でOLをしてます山田と申します」

「頂戴します。俳優をしております黒木優と申します、宜しくお願いします」

「頂戴致します。宜しくお願いいたします」

「えっと…………ん? なんで名刺交換」

「あ、すみません。癖で」

「いやごめんなさい。私も釣られた」

 

 身体に身に付いた癖というのは凄い。一切疑問を持たずに身体が動いてしまった。

 

「山田さん手玉に取るなんてやってくれるね。嫌いじゃないよ? まぁ取り敢えず座りましょ」

「あ、はい。失礼します」

「いや面接じゃないんだからもっと楽にしてよ」

「はい、わかりました」

 

 彼女を椅子へと促して座らせるが表情と姿勢は硬い。それはもうちゃいなマーブルくらい硬い。ここは一つ下ネタでも言って和ませるしかあるまいて。

 

「そんな緊張してるけど、ここは風俗の待合所じゃないからね?」

「風俗の待合所……? ぶふッ!?」

 

 どうやら理解してくれたようだ。

 

「よしよし笑ってくれた、例えがわかってくれたようで嬉しいよ。行ったこと無いけどパネル見て選んで男の人が来るのを待合所でタバコ吸いながら待ってる素人処女散らす前の大学生だったもん、行ったこと無いし私童貞だからわからんけど」

「めっちゃ喋るやん……」

「ん、喋らない方が良かった?」

「映画の雰囲気とは違うなぁって思いまして?」

「あぁ映画の私が好きならごめんね? こう、イメージ壊しちゃって。まぁ映画の私も私だし、こっちの私も私だからさ」

「いえいえいえいえ……! 両方好きです!」

「ふふ ありがと。私も好きだよ? 愛してくれるファンの人」

 

 そう言い彼女を見てクスリと笑えばほんのり頬が紅くなる。

 

「じゃあじゃあ早速写真撮影する? 握手とか何かしてほしいことあったらするけど? どっちでもいいし、両方してもいいし。身体まさぐるのはダメだけど、そういうのは彼氏君と、ね? あ……色紙に名前追加しちゃってもいいよ」

「あ、それならお願いしたいことがありまして」

「なになに? 出来る事なら頑張っちゃうよ」

「撮ったらネットにアップしてもいいですか? 色紙と、可能ならツーショットも。名前書いてくれるの嬉しいです」

「勿論OK。SNSにあげてもいいしブログでも、掲示板とか? 何にでも。使い道は山田さんの自由だから」

「ありがとうございます」

「んー……ちょっと私の名刺貸して? サインするから。したことないから誇っていいよ?」

 

 そう言って先程彼女に渡した名刺を一旦返して貰うのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ902

 

 

176:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

ニューヨークなう

 

177:名無しの映画監督 ID:ZEGCwfJJW

嘘乙

 

178:名無しの映画監督 ID:3SIGHQswf

もしかして当たったの?

 

179:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

添付: 色紙

 

添付:写真1

添付:写真2

 

180:名無しの映画監督 ID:K1yuBlfDy

はあ?

 

181:名無しの映画監督 ID:UIP4H5sDI

山田しね

 

182:名無しの映画監督 ID:0UJVOVU1M

しね

 

183:名無しの映画監督 ID:j1la9xYu9

マジかよ山田やるやん

 

184:名無しの映画監督 ID:UXKGuM+nB

しねよ

 

185:名無しの映画監督 ID:yDNIa+fky

かんそうはやく、やくめでしょ

 

186:名無しの映画監督 ID:oW+9VQrWo

抱き着いてツーショットとか最高かよ

 

187:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

まず出会って癖で名刺交換しちゃった

 

188:名無しの映画監督 ID:yLKPBfrMI

 

189:名無しの映画監督 ID:/KgWCH/0M

草だわ

 

190:名無しの映画監督 ID:LhAJMGjye

社畜がよぉ

 

191:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

釣られて優君もしてた

添付:写真4

 

192:名無しの映画監督 ID:DPOU+jiHV

ワイ家具、取り敢えず脱いだ

 

193:名無しの映画監督 ID:rjbY82rnN

>>191直筆サイン入りの本人の名刺wwwwwww

 

194:名無しの映画監督 ID:DqZy8qrCo

これもしかしてその場で書いてもらった?

 

195:名無しの映画監督 ID:BFmgaiO9S

>>179 2枚目の下から覗き込むの何? 腹の縦線丸見えやんけ

 

196:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

ツーショット撮ってって頼んだら書いてくれた

名刺にサインはしたことないって言ってた

 

197:名無しの映画監督 ID:iqhkmH1bh

なに頼んでるんだやまだぁ!!

 

198:名無しの映画監督 ID:YjVzEbpLf

>>196 200万で私に売らない?

 

199:名無しの映画監督 ID:MjP56mGj

本気でしたことないなら世界に一枚しかない名刺やん

 

200:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

めっちゃ甘い良い匂いした

写真撮影するときずっと深呼吸してた

 

201:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

>>195優君いわくローアングルだって

お腹出して覗き込めるようにって撮ってくれた

その先は目で見えなかった

 

202:名無しの映画監督 ID:fhFnQXBkN

見てたら私刑

 

203:名無しの映画監督 ID:8mOGbBBhz

>>201見てたら木を全部伐採して原田にしてた

 

204:名無しの映画監督 oJ8p7NDMe

すっごい話すんだよね、こっち見てニコニコしながら話すの止まらないの

めっちゃ雰囲気最高でヤバかった、あと映画みたいに時々下ネタ?混ぜてくる

あとお尻すっごく柔らかかった

 

205:名無しの映画監督 ID:EkxeHlriA

おい

 

206:名無しの映画監督 ID:TFQjoYw36

通報した

 

207:名無しの映画監督 ID:sU3i/q9m+

なんだァ てめェ

 

208:名無しの映画監督 ID:xx9iRvEhD

許さんからな

 

209:名無しの映画監督 ID:oDn4l/m+1

何触ってんねん

 

210:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

ツーショット撮るときに腰に手を回してって言われて、腰のくびれ?を触ったんだけど、こう恐れ多くて近づけなくて

そしたら「女は度胸でしょ。それでも卵巣ついてんの?」って耳元で言われて、身体密着されてこっちの手の平掴んでお尻の横に触れさせられた時にふにょんって

 

211:名無しの映画監督 ID:3WHM1TtJn

ご褒美やん

 

212:名無しの映画監督 ID:8r4pvgoC3

ああああああああ!!!! 羨ましいいいいいいい!!!!

 

213:名無しの映画監督 ID:GpYctr3ET

耳元でそんなこと言われたらイケる自信ある

 

214:名無しの映画監督 ID:1LZCxtRf+

映画でも言ってないぞ、そんな台詞

 

215:名無しの映画監督 ID:mpj6pjpjm5

お前が家具ならゴミに出していた

 

216:名無しの映画監督 ID:GzSZSB6kr

>>191待て 写真4って、3はどこだ?

 

217:名無しの映画監督 ID:RTmhrMeaN

>>216君のような勘のいいガキは好きだよ

 

218:名無しの映画監督 ID:LELJy4V2G

やまだぁ!!

 

219:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

写真3は、終わった後に出来れば見せないでくれってお願いされたんだけど

 

220:名無しの映画監督 ID:e/bbb5XHl

Do it!! JUUUUUST DOOOOO ITTTTTTT!!!!!

 

221:名無しの映画監督 ID:Io3JpaHdg

山田くん、貴女の座布団全部捨てといて

 

222:名無しの映画監督 ID:gpptEt5o8

これはなにぃ~?証拠物件として押収するからねぇ~?

 

223:名無しの映画監督 ID:oJ8p7NDMe

わかった

 

優君はおっぱいハート?だって

今回は服は着るけどって言ってた

添付:写真3

 

224:名無しの映画監督 ID:NNrrlkkao

なんやこれ

 

225:名無しの映画監督 ID:3StOniGVP

服は着るけどって、え? 着ない選択肢有るの?

 

226:名無しの映画監督 ID:neiwTuzsI

>>223その言い方だと本来は着ないってこと?

 

227:名無しの映画監督 ID:D+XvxSusG

あたおか(褒め言葉)

 

228:名無しの映画監督 ID:ibTTUxChg

服来てなかったら見えるやん

 

229:名無しの映画監督 ID:jml0ThiZd

天才と馬鹿って紙一重っていうか同じなんやなって(褒め言葉)

 

230:名無しの映画監督 ID:ZXJSlbHJT

これでガード固いとか無理あるでしょ

 

231:名無しの映画監督 ID:wMTwbJ/36

サービス精神はさておき優君の貞操観念の固さは家具の中では有名では

 

232:名無しの映画監督 ID:VOTEGOShz

踏まれたい・座られたい熱狂的なファンが多いからってファン全体を家具って言うのやめーや

ワイは純愛派や

 

233:名無しの映画監督 ID:g+JEABTn+

熱狂的なのは専スレ立てたら? ここ一応映画スレやぞ

 

234:名無しの映画監督 ID:BhVLlu67R

一部ファンが自称するのは良いけど、ファン全体の呼び名としてはNG

 

235:名無しの映画監督 ID:v2EitPVX5

寧ろ四つん這いの優君に座りたい

腕がプルプルしてるところを見たい

 

 



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Take011

このエンターテイメントは、(夜も更けてまいりました。) ステレオHi-Fiで録音されております。(ご近所の迷惑にならぬよう、) 大音量でお楽しみください(音量を下げてお楽しみください)

 

『じゃんじゃん じゃんじゃん だかだかだかだか じゃんじゃん』

『ぱんぱかぱーん ぱぱぱぱぱぱ ぱんぱかぱぱぱぱぱぱぱぱぱ ぱんぱかぱーん』

『てれれれーん てっててー てれれれーん てっててー てれれー てれれれーんッ』

 

『ロサンゼルスから、アイツがやって来た』

『弾けろ筋肉 飛び散れ汗』

『これがザ・肉体派女優アンジェリーナの真髄だ』

『車に轢かれても、飛行機から落ちても、ビクともしねぇ。ロスの女優はタフネス設計、なお当社比』

『アンジェリーナちゃんは約束します』

『一つ、超現場主義の徹底』

『二つ、テロリストの撲滅』

『愛する私を救うため、一人、敵のアジトに殴り込み』

『その強さは、もう、どうにも止まらない。全員まとめて、かかってこんかい』

『力こぶれ。肉密度1000%』

『プレデターvsコマンドーvsダークライ ロサンゼルスSOS』

『尚翻訳はご覧の通り内容には一切関係がありません』

『木曜洋画劇場は、このあとすぐ』

 

 

「こんな感じで良いですか? もっとふざけて欲しいならふざけますけど……?」

『いえいえ! 某ファンファーレも、配給会社が違うから出る筈がないのに口で最後まで言ってるところとか、タイトルも全然違いますし、話されている内容と映像が一切関係ないのも役柄がそのまま出てて今回も、もう最高です!』

「ありがとうございまーす」

『ではこれに見合う物に更に修正しますので折り返しご連絡いたしますね?』

「はい、宜しくお願いします。失礼します」

 

 電話の先で相手が受話器を置くのを聞き届け、こちらもそっと受話器を置く。ベッドの前に広げられたパソコン、そこで開かれた窓を閉じそのまま仰向けでベッドに倒れ込んだ。

 

「ちかれた」

 

 日本で続編の地上波放送が行われるらしい。初放送を今回ももぎ取った木曜洋画劇場のテレビ会社、テレビTKから製作会社経由で予告のボイスオファーが来た。内容は私なりに全力、真面目にふざけて欲しいというもので依頼通り予告の音声はそれなりにふざけさせてもらったわけだ。

 流石に地上波で流す故に下ネタを言うわけにはいかず、有名なネタをパクらせて引用させて頂いた。

 

 実はこの会社、処女作の放映の予告からとそこそこ縁が長く、私が交流のある唯一の日本のテレビ会社だ。インタビュー、バラエティの出演は一切無いがネット経由で私が出演した映画の地上波放送予告、劇場版吹き替えとは違う放映オリジナルのアフレコを行っている。

 

 他の会社からも依頼は来るのだがまぁこっちに挨拶に来い、撮影したいから現地に来い、日本のスタジオで録音するから、冒頭にインタビューを入れさせろ、バラエティーに出ろ等割と面倒なのである。使ってやるという認識なのかと勘ぐってしまうが、じゃあやらないわと答えられる環境に私は居る。日本の俳優のように形振り構わず出てるわけではない。

 

 その逆にテレビTKは何も言わない、最初に現状バラエティーやラジオ、ドキュメンタリーに出る予定はないと伝えて以降は撮影を含む出演オファーをこちらに送ることなく、こうして遠距離で声当ての仕事をくれている。

 そこまで律儀に守られると少しくらいならテレビTKの何かに出てあげてもいいかなと思ってしまう、なんてのは甘い事なのだろうか? よくよく考えればそれが日本での出演は初めてになる、初めてを散らすなら仲の良いところを選ぶのが必然であろう。

 

 時計を見れば時間は夜の21時。ニューヨークと日本の時差はざっくり14時間、向こうは次の日の朝9時ということになる。

 こんな朝早くから話してたのかと感心する一方で出来はどうかと気になるところ。寝るには少し早い。DVDをPCに読み込ませて続編映画を見ることにする。アフレコに気になる点、修正事項があるなら伝えた方がいいだろう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

…………ん

 

 とある部屋の一室で、上半身裸の一人の男がベッドに眠っている。カーテンの隙間から溢れた朝陽が男の顔を照らし、微睡む男が寝返りを打つ。しかし日差しに夢から醒めさせられたようで、眠たげに瞼を閉じたまま上半身を起こした。

 

………………ねむ。んッ……。んんッ…………』

 

 男は逆光に照らされたままゆっくり両腕を上げて身体を伸ばす。太陽へ胸を向け背中で語るその様は神秘的と表現されても不思議ではなかった。筋肉の伸縮と共に眠たげな瞳のまま口を大きく開けて溢れ出てくる声を吐き出す。

 

『んぁ……あ゛ぁぁぁ』

 

 そして男が振り向き、胸板が見えそうになる瞬間に舞台は暗転した。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 夜のとある教会の一室に二人の男がいた。片方はサプレッサーがつけられたスターム・ルガーを手に握ったまま目の前の床に転がる男を見下ろしている。転がる男の手足は撃ち抜かれており、溢れる血液が歴史を感じさせる木彫の床を赤黒く染めていた。

 

『主神は貴様を許さない。必ず地獄へと落ちるだろう』

『聖職者が子供の身体を売るのは流石にクソ。まぁ、お先に地獄で懺悔してな』

 

 銃口が見上げる男の眉間に向けられて、引き金が引かれる。銃声と共に男の身体が一瞬跳ね上がると、男の意識は黄泉に落とされた。それを見届けて銃口を向けていた男は手に握っていたそれを脇にあるガンホルダーへと戻し、胸元から煙草を取り出すと唇で咥えて火を灯す。

 

『……ふぅ……。私は良い男だが、流石に童貞食べるほど腐ってもいないんだ』

 

 口から吐き出された紫煙が部屋を漂う。男は目の前で捨てられている男だった存在の眉間に出来た火消し穴へとタバコを差し、その場を後にする。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 ニューヨークのボロアパートの一室。一組の男女が思い思いの行動をしている。バーボンのボトルを持ち口内のチョコレートをアルコールと唾液で溶かしながらテレビを見て笑ってる男。電卓を叩きながら男へと視線を投げる不機嫌な女。対称的な様子の二人だが、思い詰めている様子の側で笑い転げているのに我慢できず女が男へと話し掛けたのだった。

 

『昼から飲んでないで働け。ペアを組まされてから仕事が少ないんだけど、もう少し悪評を無くすよう心掛けたらどうなの?』

『ん? そういうことは私より稼いでから言ってくれ。穀潰しの甲斐性無し、ヒモ女、女として生きてて申し訳無いと思わないの?』

『ここは私の拠点なんだが?』

『役立たずの廃棄物。食べて糞するだけの動物以下のミドリムシ。ろくに仕事もこなせない社会不適合者。お前のお母ちゃんは可哀想だな』

『誰のせいだと思ってるんだ!!』

『そっちのトーク力がないからだろうに。じゃあスポンサーでも集めようか? じゃばじゃば金を落としてくれる素敵なスポンサー様』

 

 女の怒気を笑って流す男。女の溜め息は虚空へと消え、その視線は酒気を吐く男へと注がれるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 先程までの狭いボロアパートのソファに数名の女が腰を下ろしていた。アストライアも裸で逃げ出すような六法全書宜しく分厚い契約用紙と事務的な心を持ち合わせた女らは件の男女と対面している。男女はといえば一切の興味を持ち合わせていないようで、現実から目を背け明後日の方向へと顔を向けていた。

 

『仕事の際はこの服装でお願いいたします』

『車は当社のロゴの入ったこちらをお使いください』

『仕事の始業と終業の際は打刻して頂きたいのですが』

『残業代は基本給に含まれてまして』

『やっぱ口出ししてくるスポンサーって糞だわー……』

 

 男は立ち上がると、未だ言いたげな女らに何かを言わせる前に帰らせる。不満げな顔を浮かべても男の行動は止まらない。

 

『ほら帰った帰った』

『まだビラ配りしていた方がマシじゃないか』

 

 女らが入り口の扉を潜ると茶髪のアメリカ人女性が口を開いた。すると閉じられていた扉が開き別の一人の女性が入ってきた。

 

『はぁい、調子良い?』

『ファック』

『何しに来た?』

 

 視線を合わせず暴言を口にする男と用を尋ねる女。その多様な対応にも入ってきた女性は気に止める様子はない。

 

『財布事情が寂しい君達に仕事をと思ってね』

『そう言って変なことを押し付けるんだろう? 騙されんぞ』

『変なことじゃないさ。ちょっととある人を守って欲しいんだよ』

『風呂入ってくるわ』

待てや!!

 

 男は話を聞くつもりは無いようで奥のシャワールームへと姿を消す。リビングに残されたのは女性が二人だけだ。しかしそれに対して慣れているのか気分を害することはなく、女性は話を続ける。

 

『今回君たちにはとあるターゲットを護衛してほしい。これが飛行機のチケットだ』

『場所はどこさ?』

『イギリスだ。………ところであいつはどこ行った?』

『本当に風呂入りに行ったぞ』

 

 茶髪の女性が男を追い掛け、シャワールームの閉じられた扉を勢いよく開ける。

 

『おい、イギリスだと。すぐ準備を』

 

 開けられた扉の中では男がシャワーを浴びていた。シャワーカーテンの隙間から男の太ももと素足が見え、カーテン越しに生まれたままの姿であることを強調させる。カーテンの上部は男の胸元で切れており、湯に濡らされた黒髪、濡れる肩と軽蔑を露にした男の視線が女へ深々と刺さった。

 

『シャワー浴びてるときにそれを言うか普通。裸見たいだけかお前』

『……すまん』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 場面は変わりイギリスの料理店。先程の男女がそこに居た。酒よりも食気と運ばれてくる料理に舌鼓を打ちながら幸せそうに咀嚼する男、女はといえば料理を楽しみつつもその様子を肴にワインへと手を伸ばしていた。

 

『イギリス料理って不味いらしいけど、案外いけるじゃん』

『お客様、こちらはフランス料理になります。イギリス料理をご所望ですか?』

 

 料理を運んでいたウェイターの要らない言葉によりその場を何とも言えない空気が支配する。男が視線を泳がせながら首を縦に振れば直ぐ様イギリス料理が運ばれてきたのだった。

 

『………………何これ』

『ウナギのゼリー寄せになります』

 

 男がスプーンですくえば透明なゼリーと皮付きのウナギが光に照らされる。恐る恐るそれを口へと運び、男はゆっくり味わうように噛み締めるのだった。

 

『……ごふッ!? ……まっず

『お客様、食べる際はこちらのソースをおかけください』

『ん。……ウナギをここまで不味くできるのは一種の才能だな』

『お褒めに預り光栄に御座います』

『誉めてねぇよ馬鹿』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『ターゲットが二人雇った、白豚とイエローモンキーだ。ターゲット共々殺せ』

 

 ビックベンの針が真上を差す夜、ロンドン市内のパブにて三人のイギリス女性が酒を飲んでいた。エールを口に含み一人が二人へと獰猛な笑みを浮かべて口を開く。話し掛けられた女の一人は静かにエールを傾ける。もう一人は下卑な笑みを浮かべて笑っていた。

 

『男の方は別に犯してからでも構わないよな』

『死ねば何でも構わん』

 

 女の了承の言葉を心地よく思ったのか、一気にエールを煽る。その酒会は朝まで続いたのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『……ん? 後ろ二人、付けられてないか』

『お熱なファンだねぇ。スターにでもなった?』

 

 ロンドンの人気の少ない路地を歩いている二人。女が背後に佇む不審な気配を感じて声に出せば男がおちゃらけたように呟くが、顔を振り向かずともその視線は流し目で後ろの存在へと向けられる。辺りを男が軽く見渡せばお目当ての物はあったようでそちらに向けて歩みが進められた。

 

『馬鹿言え』

『隠れる場所は、あぁこっち』

 

 男が指差したのは脇道に設置された清掃器具用のロッカー。扉を開ければ清掃用具は使用中だったのか持ち出されており、二人が身を寄せれば問題なく入るスペースがあった。

 

『ちょっと……狭くないか?』

『黙って入る。ほら脇に手をいれて』

 

 男が先にロッカーへと入ると、女を手招きする。女は覚悟を決め男の両脇に両手を差し込み抱き抱えるようにロッカーへと入った。

 

ちょッ。二人で狭いとこに隠れたって胸元に都合よく顔埋める人いる?

済まない、本当に済まない。わざとじゃないから

顔動かさないで、擽ったいから。諦めて私の匂いでも嗅いだら?

…………良い匂いなのが腹が立つ

うわぁ……本当に深呼吸しやがった

 

 抱き抱える男の胸元に女が深く顔を埋める体勢になってしまった男女。足音がロッカーを通り過ぎるが、ある程度離れるのを待って出る様子。男が彼女の耳元に唇を寄せると、両手を女の後頭部へと回し、頭を抱きしめ胸を彼女の顔へと押し当てた。そのまま髪を櫛で鋤くように指を絡ませて女の頭を撫で上げる。

 

男の匂いを堪能するのが好きな変態だとは思わなかったよ

あっ……髪を撫でないで!それと頭を抱き寄せるもだめ!!

後できっちり請求するから心配しないで

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『ここはキャバレーじゃないわ。代金は身体と命で支払って貰おうかしら』

『こんな良い男を集団レイプしようとするなんて悪い人達。でも嫌いじゃないよ。美人だからね』

 

 廃工場の一階の作業室で一人の男を十人の女が囲んでいた。男の脇には銃がしまわれているが、それを出して一人を撃つ頃には男は他の女に滅多打ちにされるだろう。しかしその様子でも男の顔には笑みが浮かべられており、虚勢でもない様子に囲っている女達の気性を逆撫でる。

 

『ほらケツを出せ、鉛玉ブチ込んでやる』

『殺るわよ』

 

 囲っている一人の女が男へと飛び出した。掴み掛かろうとする女と、それに対して笑みを浮かべる男。男の手が自身の腰に伸びる。そして何かを掴んだその手は、女の顔目掛けて下から上へと振り上げられるのだった。

 掴み掛かっていた女の顔が、掴もうとしていた手足を置き去りにして突然固まる。顎から鼻まで斧を丸太のように受け止めた女が後ろへと倒れた、その様子に他の女も驚きを隠せない。動かないのを良いことに、足元で活きの良さを見せ付ける丸太に手斧を振り下ろす。手斧が下ろされた丸太は辺り一面に薪をばら蒔いた。そして手斧を持った男が場に似つかわしくない笑い声がその場を支配する。

 

『ふふ。私殴り合うの苦手だから、許して?』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 時を同じくして同じ廃工場の二階に設置されたコントロールルームにイギリス人女性と茶髪のアメリカ人女性が二人。相対している両名とも脇のホルダーに銃があるが、どちらとも未だそれに手を伸ばそうとしない。一触即発な空気がその場に孕み、殺し合いの産声があがりそうになる。

 

『今頃モンキーはレイプされてるだろうよ』

『あぁ調子乗ってるところ済まないね。悪いけれどこんなのでも彼は今、私のパートナーなんだ。クソッタレな男だって、守らないと女が廃るわ』

『お熱いねぇ。揃ってカラスの餌にしてやる』

 

 イギリス人女性が足元のガラス片を蹴りあげ、それが撃ち合いの合図に変わる。宙に舞うそれがアメリカ人女性の顔へと弧を描き飛んで行くが、女は横に転がる事でそれを避けた。避けた体勢のままホルダーから50AEデザートイーグルを抜き、銃口を合わせるが相手は既に距離を取っている。二人の舞踏会は始まったばかりであった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 二人の女性による硝煙の匂いを振り撒きながら奏られる協奏曲が、先程まで囲われて居た男が参入してきたことによって交響曲へ変わる。機材が置かれている柵を背にし男は女性に向けて引き金を引く、手に持つスターム・ルガーから放たれた銃弾がイギリス人女性の側に着弾し火花を散らし戦いを彩っていく。

 

『このイカレ野郎共が!!』

『なッ!?』

 

 イギリス人女性が男の元へと側にあった小型の消火器を投げた。直線で顔前に近付くそれを驚きの表情を浮かべながら柵から背を乗り出し避けるが、バランスを崩した男は銃を手から離し虚空に存在する何かを掴もうとして手を伸ばす。

 

『えッ? あ。ちょッ』

 

 柵から乗り出された背中は戻ることはなく、そのまま男は二階から下へと落下して行った。下に残置してあった機材に背中を打ち付け、重力に従い床に叩き付けられる。

 

『……ぐッ!? ……う゛ッ! …………ん゛ぇッ……』

 

 背中から叩きつけられたことで呼吸が出来ず苦しそうに溢れる呻き声が場を支配する。落ちた瞬間に驚愕の表情を浮かべたアメリカ人女性だったが、呻き声を確認すると顔には安堵の表情が浮かぶ。しかし直ぐ様イギリス人女性を鋭い視線で捉えて、顔に怒気を溢れさせた。

 

『よくも』

『フンッ』

 

 その様子に誇らしげに鼻を鳴らすイギリス人女性。その行為が女の苛立ちを増幅させる。エピローグは直ぐそこまで迫っていた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『では、帰ろうか』

 

 女は男に目もくれず空港を向くと、足を踏み出した。男はそれを急ぎ追いかけ女の背に立つと、彼女の肩を掴んで自身の方へと強引に振り向かせる。互いの視線が交差する瞬間、恥ずかしさに耐え切れず男が視線を逸らした。頬はうっすら桃色に染まっている。

 

『…………恥ずかしいから、見つめないでくれない?』

 

 そう男が囁くと左手で女の視界を遮る。そのまま互いの顔が吐息が肌に触れる距離まで近づいていく。そして唇が触れそうになる瞬間、男は唇と唇の間に右手の人差し指と中指と差し込みそれを彼女の唇へと触れさせた。すぐさま触れていた指を離し、腕を降ろして視界を遮っていた手を解く。

 

『……あ』

 

 男は驚きと羞恥に染まる彼女の横をすり抜けると、そのまま空港へと向かい始める。振り返り彼の背中を見つめる彼女を背に、男の口元は笑みに染まっており、唇の隙間から舌先が出された。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 本編自体は問題ないのではなかろうか? これなら来年開催されるアカデミー賞も期待できる筈である。因みに一作目も取るには取っている。

 

 この世界では演者とは女性の花形職業で男優が主演を務めることは今までにない。

 この世界のアカデミー賞とは主演女優、助演女優、監督へ送られる物で男優へ送られる賞は存在しない、他の賞は割愛する。

 

 前に招待状は来たが、出る価値がないと判断した故にそのアカデミー賞自体には不参加である。

 アメリカアカデミーの運営には不参加の連絡として招待状へ「映画界の発展を望んでる癖に男優への賞がないとか退廃的だな」とメッセージを添えて送り返した。男優への賞を作ってから誘って欲しいところだ。

 

 ただその際に珍しくアンジェリーナに出席を懇願されたのは記憶している。一緒に出よう、アカデミー賞は名誉なんだと何度も誘われたが結局はそれも断り通した。

 今回はどうなるのか、設立されるのかと今から楽しみである。しかし真面目な話、もし男優への賞が作られないなら映画業界の男性の未来は暗いものになるだろう。

 

 キーボードを叩きエンドロールを流す。あぁそういえばあったなと、実際にスクリーンで流れたミステイクを見ながら懐かしさを感じるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『…………ん。………………ねむ。んッ……。んんッ…………。んぁ……あ゛ぁぁぁ。…………あ? …………なんで居るの?』

『ストップ! ストップストップ!! 見える見える! 前隠して前!! 使えなくなるから!!』

『……あーごめんごめん。あれ、私寝坊した?』

『この映像使えるか? いや……監督が寝起きの映像を撮って来いって』

『だからって寝室に突撃してガチ寝起き撮るか普通。男だからってカメラマンも大変だね』

『全くだ。君もよく身体張るよ』

『今回ばかりは違うけど。珈琲飲んでく?』

『頂くよ。でも噂通り寝るときは本当に裸なんだ』

 

 

『昼から飲んでないで働け。ペアを組まされてから仕事が少ないんだけど、もう少し悪評を無くすよう心掛けたらどうなの?』

『ん? そういうことは私より稼いでから言ってくれ。…………えぇごめんカット!』

『カット』

『いやぁ案外悪口って出ないもんだね。困った』

『ポンポンでたら困るよ』

『……参ったな、あんまり浮かばんぞ』

 

 

『昼から飲んでないで働け。ペアを組まされてから仕事が少ないんだけど、もう少し悪評を無くすよう心掛けたらどうなの?』

『むっつりスケベ。生き遅れ女。薄皮卵子。孫の顔は見れない。膣にクモの巣張ってそう。即イキ女。両親が可哀想だ』

『……え、そこまで言うの?』

『カット!』

『え? あらごめんごめん。ちょっと言い過ぎた。ごめんね』

 

 

『おい、イギリスだと。すぐ準備を』

『シャワー浴びてるときにそれを言うか普通。裸見たいだけかお前』

『すまん』

『……カットッ!!』

『…………ほらタオル』

『タオルくれるの嬉しいけど視線さぁ。チラチラ見るくらいならガン見しようよ。見たいなら頼めばいいのに』

『変態みたいに言わないで……』

『お、なになに? 優君は頼めば見せてくれるのかな?』

『見たいなら監督でも見せてあげるけど、続きはアダルトサイトのスパム宜しく別料金だよ』

 

 

『ん。……ウナギをここまで不味くできるのは一種の才能だな』

『お褒めに預り光栄に御座います』

『誉めてねぇよ馬鹿。………………うぇ待ってこれ。まっず。本当に不味い、不味すぎ。不味くする天才。ソースかけても泥の臭み消えないんだけど』

『ちょっと食べさせて?』

『ほらアンジェあーん』

『食べさせられるのは恥ずかしいんだけど』

『二人ともカメラ回ってたんだけど?』

『あ、済まない。ん……うんまぁ…………随分個性的な味だね』

『絶滅させるくらい蒲焼きにして食べるから日本に全て輸出してほしいわ。素材の味の自己主張半端ない』

『よし、もうワンテイクいこうか』

『……え? 食べ直さないとだめ? 監督嘘でしょ?』

『だーめ。ほら味わって食べて?』

『ひぇ』

 

 

ちょッ。二人で狭いとこに隠れたって胸元に都合よく顔埋める人いる?

済まない、本当に済まない。わざとじゃないから

顔動かさないで、擽ったいから。諦めて私の匂いでも嗅いだら?

…………良い匂いなのが腹が立つ

うわぁ……本当に深呼吸しやがった男の匂いを堪能するのが好きな変態だとは思わなかったよ

あっ……髪撫でないで!それと頭を抱き寄せるもだめ!!

後できっちり請求するから心配しないで

『…………カットッ!! 何その絵面! 台本にないけど最高ッ!! これ絶対使うからッ!!』

『え』

『アンジェドンマイ?』

『それは……恥ずかしいんだが……。あとそろそろ離してくれない? ……ちょっと優、ヘルプ? ヘルプ。離して』

『え、面白いからいやだ』

『いいよいいよ! ばっちり撮るから!!』

『やめて、お願い。離して、お願い』

『真っ赤になって可愛いなぁ』

『だから胸を押し付けながら頭撫でたらああぁぁ』

 

 

『えッ? あ。ちょッ……ぐッ!? ……う゛ッ! …………ん゛ぇッ……』

『よくも』

『フンッ』

『…………カットッ!! ちょっとスタッフ急いで!!』

『大丈夫!?』

『……………ぁ……ぅ゛……ぅ゛ぅ、ふッ……すぅ……ふぅ……すぅ』

『担架!』

『……いや、いい。いいから。大丈夫……大丈夫。大丈夫だから。……あ゛ああぁぁぁめっちゃ痛かったんだけど!!』

『優、本当に大丈夫か?』

『……済まない。私の演技のせいだ』

『……ひぃ……いっちぃ……。大丈夫大丈夫、気にしないで。私が驚いてバランス崩した、それくらい良い演技だったよ。まだ背中じんじんするし。あー……ちょっと休ませて。撮り直すのは待って。あーぶね……落ちたときに足からじゃなくて良かった』

『ねぇ正直言うとこの映像使いたいわ。本気で痛がってる良い顔してる』

『そりゃまぁ本気で痛かったから。おっけー……。後で見させて』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 同時刻、ニューヨーク州市庁舎にて。

 

「彼の演技はいつ見ても良い演技だとは思わない? でもこのミステイク集が、最高なのよ。ラストまで飽きさせない最高の演出が堪らないわ」

「市長、もう24時近いんですが」

「それに見てみて、このポストカード。ポストカードにサインとは、本当洒落てるわよね。見てくれない? 世界に1枚のサインよ」

「件の俳優のですか? 話はそこまでにしてもう帰りません?」

「ええ、ついこの前。手紙をくれて、その中に入ってたのよ」

「市長?」

「彼はとても魅力的。なのに残念、実に残念だわ」

「何がですか? 因みに残業代は計上させて頂いてますので」

「ロスの市長が言ってたのよね。アカデミー賞が変わらずに開催されるそうなの」

「変わらず開催されることは良いことでは?」

「開催されるのは良いことなのだけれど、アカデミー賞には男優賞が無いのよね。由緒ある物の伝統を守るのは素晴らしいこと、けど伝統を守るだけが由緒ある物の後世への伝え方という訳ではない。伝統は時代に合わせて発展するのも大事な事なの」

「私は今、男性がアカデミー賞を受賞するのは反対ですね」

「へぇ? それは何故?」

「他の男性に素晴らしい演技を出来る方が居ないからです。賞が作られれば受賞するのは間違いなく彼でしょう。……彼が受賞しなければロサンゼルスでは大規模な暴動が起きますね。彼の地元も、受賞会場もロサンゼルスですし」

「それで?」

「今その賞を作っても彼の為の賞にしかならない、突出した才能で男優界の頂点に立っていますが、足元のすぐ近くに他の者が居るのではなく他の者はそこにすら辿り着いていません。賞とは競い合うべきかと」

「だけれど何かしらの待遇を示さなければ、男優の世界に未来は無いわね」

「それか発破を掛けられ他の男優がいきり立つかですか。ですが何かを渡そうにも彼の気難しさはその界隈では有名ですし、一昨年でしたか? 彼が出席を断ったの」

「リムジンから降りてきたのはアンジェリーナと監督だけだったからね。あれには驚かされたわ」

「映画が作品賞、監督賞と主演女優賞、脚色賞、撮影賞、視覚効果賞、音響賞の七冠にも関わらず不参加だったとか」

「そう、翌日のインタビューすら音信不通。曲がりなりにも出てる映画が偉業を成し遂げたにも関わらず一切興味を示さない」

「普通なら喜ぶ事なのでしょう」

「私もそれは思ったわ。でも本人じゃないから何考えてるのか、さっぱりわからないけど何か考えでもあるんじゃない?」

「まぁいいでしょう。ではお先に失礼します」

「あぁ私も行くわ。残念ながら今回は落ちてしまったけど、彼を市議に呼んだら来るかしら?」

「来る筈がないかと」

 

 



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Take012

 今日も今日とて撮影日和、変わらない普段の日常である。撮影自体は前回同様、そつが無く進んでいる。本日の業務は世界各地に飾られるポスター予告の打ち合わせ。

 

 予告といえば一つ変更点を思い出す。今までは映画はアンジェリーナと私による戦闘シーンやシナリオを乗せた予告、私のみしか映らない映画のストーリーには一切関係ない予告の2種類が作成されている。

 そして三作品目から主要キャラクターが増えたことでそれらを完全に分けてしまおうという議題がこの前打ち合わせで上がった。私なりに色々と頑張っているんだが公式公認お色気担当となってしまった訳である。

 

 それに伴い映画のポスターも分けられた、撮影されたポスターは二種類。

 一つ目はニューヨークのビル郡を背景に両手でゴツい銃を構えるアンジェとそれを背にしてドラグノフのスコープを覗くミラーシャ。正直実に格好良い、羨ましい限りだ。

 二つ目はほぼ全裸でポールダンスをし、それを背に自室で着替えているというシーン。もう一度言う。

 私が全裸でポールダンスをしているシーン。

 

 映画のカットでダンスクラブに潜入してポールダンスをするシーンがあるのだが、それを予告に使うという上の思い切った発想。技の種類はキューピットという技だ。そのワンシーンを背に短パンの私が靴下を履いているというローアングルの写真が私のポスターである。

 

 着替えのシーンとポールダンスの構想で、という通達を聞いたとき、私が導びく事もなく上は染まってしまったのだと誇らしさ半面寂しさと悔しさを感じた。なので勝手に脱いだ、脱がせて頂いた。

 

 本来ならポールダンスの正装となっているバニー服を着る予定だったのだが、この世のバニー姿は前世のような女性が着るウサギを模した物ではなく男性用、燕尾服のような物だ。

 それがバニー服と言われる由縁は後ろのヒラヒラがウサギの尻尾を模したように丸くなるからだとかなんとからしい。

 だが、所詮色気や露出が無い訳である。前世のバニー服は網タイツ、流石に脱ぐのに慣れたといえど履くのに抵抗がある。

 

 じゃあ上の度胆を抜くにはどうするか。答えはギリギリまでストリップショーをしよう、である。

 

 風俗として性行為が出来るソープや淫らな行為が出来るヘルス、淫らな行為は出来ないが飲み屋として君臨するキャバレーがあり他にクラブとショークラブがある。

 クラブは歌を、ショークラブには麗しい男性のダンスを肴に飲みましょうというもの。この世に脱ぎながら見せ付けられる身体を肴にして飲みましょうなんて卑猥なお店は存在しない。

 ポール上で上半身は裸になり、下半身はボクサーパンツのようなスパッツ一枚で技を決めている姿はカメラマンの方にとても好評だった。そのシーンの時は男性しかスタジオに居なかったと明記しておこう。因みに胸は腕と重なるよう上手いこと隠してある。

 

 余談だがカメラマンの殆どは私の身体に下品な視線を向けることはない。男性女性問わずその視線は芸術を撮り逃さないよう別ベクトルに熱く注がれる。性欲の全てが映像と写真を撮ることに注がれるその仕草は私としてはとても尊敬でき、そしてつい熱に誘われてやり過ぎてしまう。

 

 ローアングルで撮影された着替えのシーンも本来であれば脱ぐ必要はない。しかし撮られた物は上半身は裸、カメラに右足を向けて白い靴下を履きつつ、胸は膝に隠れて股間は右足に添えられた既に靴下を履いている左足で隠されている。

 性癖を詰め込んだそんなワンシーンに寄せられたポスターだ。因みに足の裏は見せすぎて人に見られても抵抗がない、寧ろ見たいなら見せてやろうか、ん? という具合。踏んであげるのにも抵抗はない、流石に足首掴んで嗅ぐのはご勘弁。

 

 そんなポスターに映像を合わせるために映画のダンスのシーンを脱ぎながら撮り直すという出来事はあったが、女性の反応は大変良い。ミラーシャに至っては何処に飾るのかは不明だがポスターの焼き増しを願い出ていた。

 

 しかしこう、それらが並べられると内容の落差が凄い。

 打ち合わせにて二つのポスターが並んだのだが、片や銃を手にもって格好よくポーズをキメた女性、片やほぼ全裸でポールダンスをして着替えを見せつけている男。

 どんな映画かわからないだろう初見さん。

 

 そんなカロリーを使いそうな打ち合わせを済ませればお腹も空くのは当然である。女性二人はお昼にサンドイッチとハンバーガーを買っていたらしく残された私一人、打ち合わせ会場を出て街へと繰り出したのだった。

 例の市長さんが条例を出して以降、強引なパパラッチにお尻を追い掛けられる事はない。カメラを片手に声をかけてくる善良なパパラッチには笑顔を向けてしっかりとサービスしてあげている次第である、流石に抱き締めたりはしていない。

 

 服装といえば変装用のキャスケットをかぶり、スキニーに灰色のパーカーという格好。サングラスを掛ければ意外と気が付かれない物である。

 ビルから一歩、ニューヨークに出れば人の海。祭りでもやっているのかという程人が多く歩いている。どの人も忙しなく歩き回りニューヨークは忙しい街であるというイメージを肯定させる。

 

 人を避けるように歩き回り、目にはいるのは道端のホットドッグの屋台。ホットドッグは如何であるかと、自身のお腹へ問い掛ける。

 

『ホットドッグはどう?』

『No! No! No!』

 

 どうやら私の胃袋はパンとソーセージとケチャップでは満たされないらしい、あまりそそられる感覚を感じない。再び足を進ませ中央街から外れ一本脇にはいるとステーキハウスの看板が見えた。

 

『今日はステーキな』

『No! No! No!』

 

 今日のお昼は満場一致でステーキを食べることに決まった。Yesといえば胃袋は従うしかないのである、私がステーキといえばステーキなのだ。

 店に入り店内を見渡せばお昼時故にか席が埋まっており、既に待っている人が10人程。帽子を取り順に待っている客の後ろに立つと、その場に居た人の視線が私の顔に集まる。

 

「男が一人でステーキを食べに来たら珍しいかい」

 

 笑いながら視線へと言葉を返せば食べているグループも何名かこちらに気付いた様で、手を止めてこちらを見始める。

 

「お会いできてとても光栄です、ミスター」

「ありがとう、私も貴方と会えて嬉しいよ」

「私ずっとファンです。握手してもらえませんか?」

「全然いいよ?」

「光栄ですミスター優。どうしてここに?」

「新鮮な野菜を食べに来たように見える?」

 

 一度握手をすると私もと次々続くのがファンであり、アメリカの国民性としてここで断るのはヒーローではないと判断される。ヒーロー主義なのも困り者だ。騒ぎを聞き付けたウェイターがその場に来るまで私の手はステーキが胃袋を掴むより先に彼らに掴まれることになる。

 

「当店をご利用頂き誠にありがとうございます。ご案内致しますが」

「待て待て。私は最後尾だから最後でいいよ。そういう特別扱いは良くない、一番最初に並んでたあっちを案内してあげて」

 

 最初に並んでいたのは小学生くらいの幼女と恰幅の良い両親と思われる男女。

 有名人だからと優先的に案内されるのは、順番待ちをするのが当たり前な日本人の胃にとって少々辛いものがある。視線をその家族へと飛ばせば白い野球帽を持ったおどおどとした幼女が母親に背中を押されて前に出てきた。

 

「こんにちは。ミスター、私もファンです」

「ふふ、ありがとう。お嬢さんが見るにはちょっぴり刺激的だと思うけど楽しんでくれてるなら何よりだよ」

「今日は仕事ですか?」

「そうそう。ポスターの打ち合わせの合間に来たんだ」

「それならお先に食べてくだい」

「んん゛ッ……幼女の好意で抑え込むのはやめようよ……。ウェイター、ペンを貸してもらえない?」

 

 ウェイターは察してくれたのかサインペンを持ってきてくれた。チップは弾むから視界の中で色紙を振るのをやめてくれ、あとからサインはちゃんと書くから。

 

「ちょっと失礼?」

 

 断りを入れて彼女が手に持っていた帽子を受け取ると帽子のつばのところにサインを書き込む。生地の具合的にキスマークは付けられない、サインだけで勘弁してもらおう。

 

「お名前教えて?」

「ジェシカ」

「ジェシカちゃんね。心優しいジェシカちゃん……へっと。ほらどう?」

 

 腰を落として帽子を幼女へ手渡す。すると幼女は玉を転がすような笑みを浮かべた。そこまで喜んでくれるならこちらも書いた甲斐があるというものだ、まぁ私は譲られた側なのであるが。

 

「わぁ! ありがとうございます」

「どういたしまして」

 

 そのまま彼女を抱き寄せて頬にキスをする、なんてことはしない。イエスロリータ、ノータッチ。それをしてしまうとヒーローから変質者にジョブチェンジしないといけなくなる。幼女の頭を撫でる程度にしておいた。

 ちょっとお母さん羨ましそうに見るのやめませんか、奥さん、ねぇ奥さん。念が通じたのか定かではないが件の幼女は母親に抱きつくと、その頭をくしゃくしゃに撫でられていた。

 

「ではお先に失礼するね。御厚意をどうもありがとう。このお代は新作映画で払うから、期待してて」

 

 譲ってくれた家族と横入りする形になってしまったその後ろの方々に謝罪を入れておく。今の雰囲気なら軽口を言ってみても問題ない雰囲気だろう。その証拠にサムズアップで答えてくれる。

 そのままの流れでウェイターに案内される。案内されたのは窓際の席、椅子へと座ればウェイターが目の前に採譜を広げてくれた。

 

「ご注文は如何しますか」

「リブアイを12オンス、焼き方はミディアムレア。付け合わせにマッシュポテトとセットにスープを。それと食後酒にグラッパ……は仕事してるからだめか。グラッパは無しで、ノンアルコールで楽しめる物を食後と食前に」

「承知いたしました」

 

 そのまま窓からニューヨークの人の波を見詰める。撮影は佳境に入る、ニューヨークとはもう少ししたらお別れとなるのだ。食べ納め、見納めしなければいけない時期が近々来るだろう。そのようなことを考えつつオーブンの中で踊るステーキに恋心を通わせるのだった。

 因みにこのステーキハウスへはしっかりと帰り際サインを書かせて頂いた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 そして時は流れ同年秋口、三作品目の撮影が終了した。予告の方は今冬、クリスマスから世界に動画投稿サイトより公開される予定だ。キャスト及びあらすじについては公式サイトにて公開がされている。

 それまでは身体を休ませる時間として大幅な休暇を頂いていた。ハロウィンにクリスマスと今年は純粋に楽しむことが出来そうだ。

 

 撮影の終了と共に本来ならばセットが撤去されニューヨークを離れるのだが、今回ばかりは少し事情が違う。というのも監督から許可を取り日本からテレビを呼んだ、公開直前インタビューというやつである。

 例の仲の良いテレビ局、テレビTKに「ニューヨークにぃ、凄い映画のセット、あるらしいっすよ。撮りに来ない?」と連絡したところ、電話口にて即決された。上に確認することなく案件に食い付いた営業マンは流石である。テレビに出演は日本初で且つ公開前インタビューは世界最速となった。

 

 取れる視聴率は大変凄いと思われるが間に挟まれるCMについて口出しさせて頂いた。三十分に一本の高頻度でCMを入れるな、入れるなら一時間に一回にしろ、良い所にCMを挟むことで視聴者を煽るな、である。折角初めてテレビに出て、口出しする程度の影響力があるんだ、視聴者は楽しんでほしいと思う。

 それすらも快く聞き入れてくれたテレビTKには頭があがらない。

 因みに局から製作会社への金の動きは定かではないが、テレビ局の私担当になった女性からは今回の枠に挟まれるCMの広告料は30秒辺り8桁になると聞いている。凄さがよくわからん。

 

 そんなこんなで私とそれに付き合ってくれた過保護で愉快な仲間たちはニューヨークに残り、今の私はジェーン・F・ケネディ国際空港でカメラマンらを待っている。成田発の国際便が到着したアナウンスを聞き、出迎えのロビーにて秋用の私服のまま仁王立ちだ。出来ればこの瞬間からカメラを回していただきたいところである。

 

 私に気付いた観光客がスマホを手に取り撮影するが、今のタイミングでサービスするとコミケのレイヤー宜しくカメコに囲まれることになる。それだけは避けたい。

 そうこうしているうちにゲートが開く、そして機材を抱えた局の人と思われる人が目の前に現れた。カメラは肩に担がれており、バッチリ回ってあることを自己主張している。周囲に出来た人だかりから私の存在に気付くと直ぐ様カメラがこちらを向き、女性インタビューアーの顔が歓喜に染まる。

 

「本物! 本物の黒木優さんです!!」

「YOUは何しにニューヨークへ?」

「へッ?」

「YOUは何しにニューヨークへ?」

「あの、番組が違うんですが……?」

「あれ、局違った?」

「合ってますけど……」

「15点! 失格!」

「えぇ!?」

 

 同じ局の人気番組のノリで尋ねてみたがあまり良い反応は貰えなかった。カメラ向けてサムズアップし点数を呟いておく。しかしこの女性インタビューアー、実に良い反応だ、弄り甲斐を感じる。私より頭一つ低い身長とショートボブのリスのような小動物雰囲気に癒しを感じてしまう。しかし別の長身の女性が手にバツを描く、するとカメラマンは担いでいたカメラを操作した後にそれを下げた。

 

「あ、はいカットで」

「それって何?」

「撮影の時と撮影していないときを示すジェスチャーです。えっと分かりやすく言いますとカメラが担がれているときはこちらの女性がジェスチャーするまでは回し続けてますってことですね」

「うん? 私は取り敢えず回ってる時も回ってないときも普通に接してればいいんだよね?」

「ええっと……まぁそういうことになりますね?」

「じゃあ取り敢えずようこそニューヨークへ。今日は休む? 12時間のフライトは身体に堪えると思うし」

「ありがとうございます、いえいえお気遣いなく。私たちは大丈夫ですよ。取り敢えず今日の予定はですね……」

「まぁそれは向かいながら話すとして、行こうか?」

「あ、今の流れ撮影したいんですがいいですか?」

「おっけー」

 

 そうインタビューアーが呟くとカメラが担がれる。すると先程ジェスチャーを出した人が今度は丸を作る。それが撮影開始の合図だろう。

 

「よし、じゃあパブに飲みに行こう」

「えッ? え? えぇ?」

「ちょっカットカット」

「良いの良いの回したままで。ほらカメラ上げる。予定とか一杯引っ掛けてからでいいからいいから」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ1015

 

 

638:名無しの映画監督 ID:oSX5ZYe+0

おい始まるぞ

 

639:名無しの映画監督 ID:fJVdUKYO5

何が始まるんです?

 

640:名無しの映画監督 ID:I2KcP0F7k

大惨事大戦だ

 

641:名無しの映画監督 ID:LhCR8efGm

俳優として出るのか役として出るのか

どっちにしろマトモにインタビュー受けるとは思えない

 

642:名無しの映画監督 ID:G7xrCrP/v

普通の男は映画のポスターで裸見せつけない

 

643:名無しの映画監督 ID:AFMmNeRrF

最近は日本のドラマや映画でも他の俳優が色々チャレンジしてきて嬉しい

 

644:名無しの映画監督 ID:eT7xWIKLX

普通の男は映画のポスターで着替えを見せつけない

 

645:名無しの映画監督 ID:lwy+tNsWm

>>643表情はやっぱりぎこちないけど頬は真っ赤で可愛い

だけど頂点の強さが別格過ぎて皆二番煎じと化してんのな

 

646:名無しの映画監督 ID:190DQCpUy

まぁ優君やし

 

647:名無しの映画監督 ID:XdBTiCKvD

確かに真似たりしてる俳優は増えた。でもなんか違う

優の仕草はどんな時も自然。演じているが演じられていない

他の俳優はあくまでも演じている

 

648:名無しの映画監督 ID:u1nvp2A7N

日本の頂点=世界の頂点だから、素人とプロを比べるのも

 

649:名無しの映画監督 ID:GpDLYJeWL

皆プロやんけ

 

650:名無しの映画監督 ID:ebZ5MO1BS

エロスの権化

 

651:名無しの映画監督 ID:+tmPANqIh

ダメ女製造機

 

652:名無しの映画監督 ID:I3VykRuu5

赤ちゃん製造ミルクタンク生産工場長

 

653:名無しの映画監督 ID:BXe4GsrMk

始まった

 

654:名無しの映画監督 ID:atRDKVxId

>>647などと申しており

 

655:名無しの映画監督 ID:R8Dq81Hdj

>>652なんだそのひっどい渾名

 

656:名無しの映画監督 ID:Edeyw7e6h

めっちゃ囲まれとるやん

 

657:名無しの映画監督 ID:HTqV6vSJ2

ドア開いた瞬間目の前で仁王立ちは草生える

 

658:名無しの映画監督 ID:O5uwolVyg

別番組のセリフをパクッて反応が良くないと一刀両断する勇気

 

659:名無しの映画監督 ID:FebvrmNTl

女性アナキョドり散らしてるやん

 

660:名無しの映画監督 ID:cq/swm4G/

平常運転! ヨシ!

 

661:名無しの映画監督 ID:1/FPYC3VF

昼間から酒飲み! ヨシ!

 

662:名無しの映画監督 ID:U6ZUxboKF

ヨシじゃないが

 

663:名無しの映画監督 ID:Bj4Gnql00

ディレクターの目が死んでて笑う

気合い入れて台本書いたら破り捨てられたような顔

 

664:名無しの映画監督 ID:nlBbmv8tB

あれ、こんなフリーダムな男なの?

 

665:名無しの映画監督 ID:5zffm9BYn

はよ脱げ、寒い

 

666:名無しの映画監督 ID:rDONWYiMD

>>664

台本通りにしないプロデューサー泣かせの男やぞ

 

667:名無しの映画監督 ID:1yeiX6szu

空港から人が少ないパブに視点変わって昼間からエールキメるとか日本じゃ考えられないな

 

668:名無しの映画監督 ID:I51Spk4gp

>>664常識に囚われてたらあんな演技出来んやろ

 

669:名無しの映画監督 ID:HB6akQ3Ac

黒木「今知り合いにこっち来るよう言ったから」

アンジェリーナ・リュドミーラ「「やぁ」」

 

670:名無しの映画監督 ID:3HKeDafrq

台本壊れちゃ~う

 

671:名無しの映画監督 ID:ofMetYV45

二人とも何食わぬ顔で現れて飲み始める辺り奇行に慣れてるんやな

 

672:名無しの映画監督 ID:J/fLNZK9n

固まり具合見るに予想してなかったっていうか、本当に台本にないんやろ

 

673:名無しの映画監督 ID:prh2uJTTS

アナ「主演の二人が来るって聞いてないですけど!!」

黒木「予定って何だっけ」

アナ「セットを見て収録のインタビューと、縁のある地を撮影したり…」

黒木「あぁ監督には明日になるって言っとくから飲みながら裏話聞いて?」

アナ「でも仕事中……」

黒木「飲もう?」

アナ「あっはい」

 

674:名無しの映画監督 ID:2W7XDibmj

どうしてこいつ凄く偉そうなの?

ただの俳優でしょ

 

675:名無しの映画監督 ID:rIYJhMhJH

戸惑う女アナの頭を胸元に抱き寄せ色気で黙らせるの好きです

 

676:名無しの映画監督 ID:kIoPjck6v

>>674影響力が段違い

 

677:名無しの映画監督 ID:Wq1cifgSK

色気(物理)

 

678:名無しの映画監督 ID:hpzIgufJP

>>674

相手の影響力とネームバリューが違う

まず日本の男優が作品に対しての持つ、現実への影響力は無いに等しい、この俳優が出てるから大勢の人がこぞって見るとはならんだろ 仮にファンが見ても数百万程度にしかならない

この男は数百億、映画一本で見ると数千億、出演した二つの作品を合わせると1兆を軽く稼いでる

 

日本じゃ局の方が偉い、女優も男優もプロデューサーに逆らえない、あくまでそれは各界に与える影響力が無いから 影響力を与えられるテレビ局がトップにいる

アメリカでも勿論局は偉いんだが相手は映画一つでアメリカの国家予算の約10分の1を稼ぐ男

 

679:名無しの映画監督 ID:LDD59ZubN

日本くらいだよな、炎上するの

出る杭は打たれるっていうか

 

680:名無しの映画監督 ID:hpzIgufJP

>>678追記な

行った店は客足がめちゃくちゃ増えて、着てる服自体がブランド化して品切れになる

間違ってもこれ使ってる食べてるなんてテレビで言ってしまえば売り場からその物が消えるくらい人気がヤバい

 

偉そうなんじゃなくて偉い

動作一つが大金に繋がる影響力は映画業界じゃなくても絶対的

コスメや色んな業界が気に入られれば潤い、気に入られなければ吹き飛ぶんだ

 

681:名無しの映画監督 ID:sUw2K3awX

寧ろイエスマンなら体調を心配するまである

 

682:名無しの映画監督 ID:/bFQM+L06

尊大過ぎてやっぱり好きにはならないわ、調子に乗ってる

 

683:名無しの映画監督 ID:ZV2HpLdOQ

チンさんは今日も生き生きしてるなぁ

 

684:あぼーん

あぼーん

 

685:名無しの映画監督 ID:P9jAFQ5y4

男なら黙って酌してろ

 

686:名無しの映画監督 ID:rknMqgHO2

続きはヲチスレにしてくれ

 

687:名無しの映画監督 ID:gPO0tdV4+

日本のチンさんは今まで大和撫男なんて称されてたけど実態は陰湿というか、外見は良いんだろうけど近年心が醜い

 

688:名無しの映画監督 ID:+v7KlghbE

テレビの話どころじゃなくなってるんだが

 

689:名無しの映画監督 ID:YRGuxxzBO

温室育ちの、女に育てられた百合の花達には女に踏まれて育った茉莉花の気持ちなんて分かるわけないだろ

 

690:あぼーん

あぼーん

 

691:名無しの映画監督 ID:CwJ+DtzJz

マスキュ団体がこぞって男性軽視だ、性的搾取はやめろ、男性差別反対って叫んでるときに映画が出てドスケベ演技で世界の女性の心を掴んだからね

女に向いてた世界のヘイトが飛んだ

 

692:名無しの映画監督 ID:bQYe20vxT

お? にわかか?

 

693:名無しの映画監督 ID:xJXbEhzH2

世界のヘイトは向いていない、ヘイトを向けたのは自称権利団体だけ

そして日本にはそれと合わせて童貞拗らせた男が多いだけ

 

寧ろ海外では作中の女性と平等に扱われる態度と現実の最先端突っ走る一切媚びない姿に狂信者が居るくらい人気やぞ

 

694:名無しの映画監督 ID:IWHzTqZv6

チンポの時もそうだけど、日本と海外の権利団体は噛み合わない

 

695:名無しの映画監督 ID:YLSvSl4Ih

取り敢えず飲みながら撮影の裏話聞けて良かった

ハリウッドスターの裏話なんて普通聞けないからな ミステイクはその一面なだけで

 

696:名無しの映画監督 ID:5ivCXT5iz

私もあんな現場で働きたいわ…

 

697:名無しの映画監督 ID:LVi0YTHzA

日本→男性が生活しやすい国に

海外→男性らしくという女性の価値観を押し付けないでくれ

海外の本物の権利団体と日本の自称権利団体とじゃ求める物が違う

 

698:名無しの映画監督 ID:cHOx0l3++

男女平等は良いけど都合いい時だけそれ求めるのはな

平等とか言いつつ親権は男、殴ったら暴行 DV、肉体労働は女

 

699:名無しの映画監督 ID:KWUh29sEf

男はミルク出ないやろ

 

700:名無しの映画監督 ID:jwAuIM3L1

チンポから出るやん

 

701:名無しの映画監督 ID:RXE5ghpwc

優「男女平等に○すから安心して♡」

 

702:名無しの映画監督 ID:k+EoQac4D

股間に銃弾撃ち込みそう

 

703:名無しの映画監督 ID:veDO4iJ1K

子宮には既に撃ち込まれておりまして

 

704:名無しの映画監督 ID:yV4PRW5+N

三作品目の予告は流石に出ないか

撮影のセットを見せてくれたのは凄く勉強になる、映画の裏側ってわからんもん

 

705:名無しの映画監督 ID:rxc0+9Aef

公式が情報出していない以上、流石にね?

 

706:名無しの映画監督 ID:lUpEFoyb+

アンジェリーナとの絡みもいいけど正直新しいキャラクターとの絡みも凄く気になる

 

707:名無しの映画監督 ID:SEG4pDV1p

>>704まぁあと数ヶ月やし、大人しく待とうや

 

708:名無しの映画監督 ID:BmptIwH2d

ロクにインタビュー受けないだろって思ってたけど二日目は普通に案内して教えてくれるのな

初日がぶっとんでただけで、ちゃんと視聴者のこと考えてるの好き

 

709:名無しの映画監督 ID:WyNa94iA9

アナ「新しい映画はどんな映画なんですか?」

アン「コンプライアンス的に詳しく言えないけど、戦闘シーンは激しいよ」

リュ「撃ち合いも頑張っているわ」

アナ「もっと、少しだけでも情報を」

優「前回より脱いだ」

 

やったぜ

 

710:名無しの映画監督 ID:WPdi9VkG+

信頼と安心の脱ぎ宣言

 

711:名無しの映画監督 ID:Uz4aPP7w3

脱いだは本当に脱いでるから安心できる

 

712:名無しの映画監督 ID:jZk11zC2C

世界で活躍してるのに祖国の同性が一番叩いてるとか悲しいな

 

713:名無しの映画監督 ID:ni1qU9zKX

初日の酒飲みで間違いなくスタッフと俳優の距離は縮まったから、ぶっちゃけ選択肢としては正解だったと思うよ

 

714:名無しの映画監督 ID:TQw5CXSYV

まぁ畏れ多くて普通なら敬語になるけど、肩合わせて酒飲めばそりゃ距離も縮まるわな

 

715:名無しの映画監督 ID:QYiO1qT7B

ハリウッドのガチモンのカメラマンと日本のカメラマンがあれこれ話してるのを撮ってるのが一番面白かった

絶対人生の良い経験になってる

 

 

 



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Take013

 アメリカのハロウィンとは、良い大人が酒を飲むための催しである。

 という嘘か本当か定かではない情報はさておき、子供らがトリック・オア・トリート(お菓子をくれないと悪戯するぞ)と大人を公的に脅迫しても問題ないとされる行事だ。

 

 神無月の末日、アメリカではハロウィンが開催される。

 ロスへと戻った私も今年のハロウィンは参加しようと思い、賃貸アパートを人質に取られお菓子を要求されたときの為に何かしら作ろうと思った訳なのだが、当然素人が作れる物は少ない。

 はぁ餅米は無ぇ、抹茶は無ぇ、あんこは甘過ぎ大不評、煎餅焼け無ぇ、洋菓子作れ無ぇ、女子力無さ過ぎぐーるぐる。オホン、作れるとしたらチョコレートを溶かして固めるだけという単純作業しか出来ない。勿論形なんてグチャグチャになるだろう。

 

 悩んだ挙げ句ロクに決まらないまま家の近くの食料雑貨店へと赴いていくのだが、その行き先は良く言えば地元密着系、悪く言えば近所の人しか買いに来ない出会う人が顔見知りなんてこともある寂れた店。

 大きさ的にはコンビニエンスストアとスーパーの間くらいだ。そちらに行って眺めてれば何かしら浮かぶだろう精神である。

 

「いらっしゃい……うわでた」

「客に対してなんちゅう態度だお前は」

 

 その店の敷地に入るや否や屋外へ設置されたカウンターでもたれながら本を読んでいた店員の女性と目が合う。しかしこちらを見て呆れるような、延々と同じCMを何度も見せられて見飽きたようなそんな表情を向けられた。

 

 目元まで綺麗なパツキンの20代前半のアメリカン女性という今は亡き前世の洋モノ好きの諸兄らならば歓喜すること間違いないのだが、この世界に来て汚れてしまった私は既に見飽きてしまった。何、貴様は赤髪そばかす元気娘一派だと? えぇい出会えぃ出会えぃ。

 

 しかし本番禁止の3Dカスタムゲームのような世界で自慢のマイリトルポニーは妄想していたシチュエーションが叶えられ過ぎてしまいマイビッグサラブレッドへと進化している、ちょっとやそっとではビクともしない存在になったのだ。その佇まい様は正に関羽の赤兎馬、慶次の松風、ラオウの黒王号、G1レース7冠間違い無し。

 

 前世で置き換えれば二十歳くらいのザ・アメリカ人青年がザ・コンビニしていると思って頂きたい。何かしらの映画であれば主人公ポジ間違い無しである。オーナーは別の妙齢女性なのだが、店員らしい存在は彼女しかこの店では見たことは無い。

 

「早く辞めてもっと可愛い子雇って、顔見飽きた」

「こっちだって雑誌でもニュースでも見飽きた顔しか出て来なくてうんざりだわ。ところで映画がバカスカ売れてスッゴく儲かってんでしょ? 食べ物買ってるうちに取り敢えず金を落とすべきじゃない?」

「早く潰れろ、私は家の近くにコストコが欲しい」

「ファック、おとといきやがれ」

 

 字面であれば罵り合いに近いのだが、かといってお互いに嫌ってる訳ではない。相手が突っ掛かってくるから言葉を返す、それだけのことである。その証拠に彼女のカウンターの前にある丸椅子へと腰かければ喫煙しても構わないと、無言でカウンターの上に灰皿が置かれた。

 

 この世のタバコ事情は前世のロサンゼルスのあるカルフォルニア州ほど喫煙者の肩身は狭くない。流石に公共の場、人の往来がある場所での喫煙はマナー違反とされており吸っていると白い目で見られるが、世界が禁煙に染まる気配は一向に無い。喫煙者にとっては天国と言えるだろう。

 

 スーパーの中は基本的には禁煙、私も中では流石に吸わない。屋外だから、所有者の許可を得ているから吸う。ヤニカス万歳。今更であるが、私が飲んでいる銘柄はアークロイヤルだ。バニラの香りが好きなのである。

 

「セレーナ、珈琲頂戴。そっちも飲む?」

「もち。珈琲代は10万ドル」

「ん」

 

 彼女のいるカウンターに彼女の分も含めて1()0()()()紙幣を置いた。暫くして湯気が立つトールサイズのマグカップを二つ手に持って彼女が現れる。珈琲の相場はトールサイズで高くて一杯4ドル程度、2ドルはおまけ、謂わばチップだ。悔しいが味も悪くなく肥えた舌が美味しいと判断するくらいにはここの珈琲は美味であった。

 

 セレーナというのは彼女の名前である。

 時に、私がこの世で学んだ女性を誉める場合の一番手っ取り早い方法は名前の意味を理解して相手をべた褒めすることだった。そうあれと願いを込められた名前の意味のまま誉めればまぁ女性の機嫌はよくなる。アンジェリーナは天使、リュドミーラは親愛と人々。セレーナはといえば月の女神。まぁ……名は体を表すというのは一部例外がございますが。

 

 そんな普段煽り合う彼女の耳元で臭いセリフを囁いたらどうなるのか、気になって囁いたことはあった。立場を最大限に利用した人生を謳歌してる者の悪戯である。今でも覚えている、「セレーナって名前のように女神みたい綺麗だよね」だ。

 ここで奥さま、ワンポイントアドバイス。誉めたら顔を見て一々相手の反応を確かめるな。何気なく囁いて興味無さげに立ち去るか何事もなかったかのように話を続けろ。

 

 永らく相方をしている某女優とパリピロシアン女優で試行錯誤を繰り返し、一番刺さると理解したその仕草。成功なのか、その日はそれ以降紅くなって一言も喋る事はなくなり次の来店以降から3割増しくらいで煽られるようになった。

 可愛い可愛い照れ隠し、私を煽る様子は好きな子に強く当たってしまうそれ。夜に昼間は強く当たりすぎたとベッドの上で足をバタバタと動かして後悔してるのだと私のエロゲブランドはCGを描写する。

 その話題だけで五千文字くらいは文章が書けそうであるが、本作品は全年齢用であり、本日のメインイベントはハロウィンである。

 

「ねぇハロウィンでお菓子作るんだけど何か良いものないかな?」

「えぇ優がお菓子を作るの? ちゃんと食べられるものよね?」

「吸殻は口の中で良いんだっけ?」

「冗談冗談。そうね、飴とかはどう?」

「飴? 私飴細工職人じゃないから、べっこう飴くらいしか作れないけど」

「べっこう飴が何なのかわからないけどさ、果物の飴とか。ジュース溶かすだけじゃない?」

「果物の飴ねぇ」

 

 果実といえば、果物を搾るんじゃなくて溶かした飴をぶっかければ縁日の飴で売ってるくだもの飴になるんじゃね? 雑に作ってもおしゃんテイストなお手軽スイーツに早変わりである。

 

「イチゴ置いてる?」

「置いてるけど今の時期のイチゴは甘くないわよ。酸っぱさの方が強いからケーキ用かしら」

「イチゴ飴なら串に差して飴垂らすだけで沢山作れるか。イチゴ2パック包んで、砂糖は何使えばいい?」

「グラニュー糖とか?」

「それも包んで」

 

 カウンターの上に財布から取り出した10ドル札を10枚くらい置き、彼女から渡された珈琲を一気に煽った。彼女から紙袋に入れられた商品を受け取ると自宅へと向かう。

 

「ちょっとお釣り! あと多過ぎ!!」

「釣りは要らない! セレーナマジ天使最高に可愛いよ!!」

「道端で叫んでんじゃないわよ!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 さてさてイチゴ飴も出来た、それなりに仮装もした。それらを手に持って関係者が開催したハロウィンパーティーの会場にタクシーで向かった。そこまではいい。

 メッセージでアンジェリーナとミラーシャへメッセージを飛ばすと入り口で彼女らが出迎えてくれる筈であった。そして彼女らはどんな可愛い、美しい仮装なのかと期待していた私が居た。

 

 そして意気揚々と会場の扉を開けて目の前に現れたのは灰色のツナギを来た180cmの白塗りのマスクと赤緑のセーターを着て帽子をかぶり手に鉤爪を付けた顔の半分が焼け爛れた女性。

 

……ぇ

 

 人間って恐怖を感じると声って本当に出なくなるんだと初めて身体で理解した。顔の前に現れた限りなく本物に近い威圧感を放つ、気合いの入りすぎた仮装に腰が抜けそうになる。

 性別こそ違うが二人の衣装は記憶にあるマイケル・マイヤーズとフレディ・クルーガー。私はこれからメメント・モリされるんだ、プリティな鬼ごっこゲームみたいに。一回も肉フックに吊られた記憶はない、恐らく奴はジュディスの墓石を背負っている。

 

「わぁ…!! 優、素敵! 似合ってる!!」

「うん、とても似合ってると思うよ」

 

 やめてくれ、その術は俺に効く。どう見てもお前らの方が最高じゃないか。映画の特殊メイクのスタッフにお願いしてメイクを施して貰うのは卑怯だ、ずるい。

 それに対してこちらの題材は雪女改め雪男。ペラッペラな着物の裾に氷の模様が書いてあるだけのお安いコスプレである。

 

 雪駄と足袋を合わせてAmazonのようなサイト、Nairuで二万円ぽっきり也。

 私は心の中で敗けを認める。完敗だった。

 

「トリック・オア・トリート」

「……手持ちがない」

「流石に今は私も」

「宜しい、ならばトリックだ」

 

 こちらの敗北感を誤魔化すようにハロウィンで親の顔より見たトリック・オア・トリートを呟く、もっと親のトリック・オア・トリートを見ろ。

 手に持っていた巾着袋からお手製のイチゴ飴ちゃんを取り出し彼女らへと手渡した。食料雑貨店で買ったイチゴを溶かした砂糖でコーティングした手製のイチゴ飴、食べやすいように竹串に刺してある。

 

「手作りだよ」

「あ、美味しそう」

「ふふ、ありがとう」

「取り敢えず挨拶してくるから、席取っといて」

 

 一人一人にイチゴ飴を渡すお時間のスタートである。

 その度に顔のトリック・オア・トリートの親を見ていく。もっと親の顔をトリック・オア・トリートしろ。

 いかん、親顔トリック・オア・トリートがゲシュタルト崩壊してきた。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 飴配りから戻ってくれば空いた長椅子にミラーシャが飲み物を持って腰掛けていた。彼女の横に腰を掛ければ手渡されたのは赤ワインに果物が浮いたホットサングリア。口に運べばアルコールの風味と共に果実の香りが鼻腔を支配する。聞けばアンジェリーナは温かい食べ物を取りに行ったそうだ。

 

「映画の撮影、どうだった?」

「そうね……? 実感がわかない、かな?」

「何の実感?」

「貴方と仲良くなれたって実感」

「ふむ?」

 

 言われてみればアンジェリーナとは二人きりでよく動いていても、ミラーシャと動いていたことは少ない。腰をしっかり据えて話したこともない。これを気に話してみるのも良いだろう。

 

「私と、もっと仲良くなりたい?」

 

 彼女の目を見据えて真剣な顔持ちで問い掛ければ彼女の顔からも笑顔が消え、鋭い視線と私の視線が交差する。アンジェリーナくらい仲良く、とは言わない。女と真面目な恋話をしてるのに他の女の事を口に出すのはナンセンスだ。

 

Да(ええ)

Да(ダー)は肯定だよね。私は男らしくはないよ?」

「私は男らしさなんて求めていない」

 

 真剣な顔のまま私から視線を外すと彼女は手に持っていた飲み物を口に含んだ。周囲の喧騒が聞こえないその空間で彼女の喉を通る音が聞こえる。

 

「最初は映画の貴方に惚れた、なんて素敵な男性だろうって。尽くしたい、身を捧げたいと感じた」

「でも、現実の貴方はもっと素敵だった」

「女性の扱いを理解している魔性の男。こんな人と人生を歩めたらと思って手を伸ばした」

「でも届かないの」

 

 一言一言噛み締めつつ吐き出される彼女の言葉から目が離せない。アルコールが血中に溶け出すように、耳から入った言葉は頭の中へと溶けていく。

 

「星は輝いてるから綺麗ね」

「でも手を伸ばしても届かない」

「アンジェリーナと二人で話したことがあったわ。貴方を靡かせるにはどうしたらいいか」

「結果がこれよ」

「何を渡しても、どんな表情を向けても、どう距離を縮めようとも」

「貴方の視界には誰も写っていない。貴方が何を視てるのかさっぱり分からない」

 

 彼女のブルーの瞳が此方を覗き込むように向けられる。こちらに向けられた瞳には見透かそうという思惑が感じられた。

 

「でも、それが良い」

「それで折れる程、薄い恋をしてるんじゃない」

「手が届かなければ届かないほど、熱くなれる」

「私は彼女ほど貴方と長く居ないけれど私だって、同じくらい。いえ、彼女より貴方が好きよ」

「彼女は恥ずかしがり屋だから好意は口に出さないけど私は伝えるわ」

「好き、大好き、愛してるわって」

 

 彼女の独白はそこで途切れた。こうは言っては何だが彼女から好意を貰う覚えがない。アンジェリーナならまだ、長く居た理由もあり理解できる。三人になってから二人には普通に接し、同じように弄っていただけである。人はこうも好意を寄せるのか、それとも男性とは女性に敷かれる存在が当たり前なこの世界の男性観に反する存在が彼女へと嵌まったのか、私にはわからない。

 

「受けとるつもりは今はないよ」

「知ってるわ、前に言ってたし。でも言うのは自由でしょ。愛してると私は伝える、アンジェは伝えない。それだけ」

「ふむ」

 

 男と生まれたからには、誰でも一生の内一度は夢見るハーレム、ハーレムとは酒池肉林をめざす倫理観を無視した妄想垂れ流しのことである。エロゲなら二人は侍らされてた。ガチの恋愛、好意を直球でぶつけられることなんて無いから私にはそれが耐えられない。シリアスからコメディに逃げさせてもらおう。シリアスなんてなかった、いいね。

 

 こちとら前世はお高いお風呂で童貞散らしてんだ、顔は普通とはいえ出会いなんて無かったから彼女無しやぞ。イチャイチャ程度の悪戯は慣れたが求愛してくるガチモンのラブチュッチュッは勘弁してくれ、心臓とピュアピュアな心に悪すぎる。

 そういう薄い本はお世話になったが身に振りかかってくるのは初めてなんだ。因みに最終マイフェイバリット性癖は機械姦と隠姦である。

 

 仮に私がミラーシャを選ぼう。アンジェリーナに殺される、あいつは殺る、何故私ではないんだと悲しい顔でやってくる。此方を抱き締めて、そのままポッキリ鯖を折って後追い自殺をキメてくる、そんな雰囲気しかない。ニトロマイナスと120cmで育った私にはわかる。

 アンジェリーナを選ぼう。するとミラーシャにぶち殺される、こいつも殺る、笑顔で私じゃないんだと殺ってくる。こいつは意気揚々とぶち殺した後にホルマリン漬けにして飾るタイプだ。私は家具の一部へと生まれ変わってしまう、そんな雰囲気しかない。ワッフォとクロックダウンで育った私にはわかる。

 

 忌々しい記憶が蘇る。ジャケ買いしたゲームで沼り、純愛第一主義がダークサイドへと引きずり込まれた前世。引き摺り込まれた先にいたのは女装なる山脈と海峡、そして退妖忍のようなキマってる存在と、それを抜けた先で同人ゲームで当たりを探す終わりなき虚無の境地。

 ソフトホームキャラのシチュエーションに命を救われていなければ私はどうなっていただろうか。

 

 二人を侍らせるハーレムを選択する。私の社会的立場は終了する、BADEND一直線、セーブなんて出来ません、既にデータは壊れています。こっちの世界はエロゲやファンタジーの世界じゃないんだ、困ったら取り敢えずハーレムルート行っとけという選択肢はない。行けるなら行きたい、しかし世界がそれを許さない。

 私の倫理観もそうだが二人の倫理観もそれを選ばないだろう、たぶん。二人が許可しても私が嫌だ。下手をしたら私は物理的に半分に分けられる。おい、そこ、マジンガーZに居そうとかやかましいわ。

 

 二人では無い誰かと行為に及んでも同様だ。どうして私ではないのだと、私のチン生と人生は闇に葬られる。

 

 ヤベ、これ割と詰んだ。

 どっちを選んでも死ぬ未来が見える。というか片方を選ぶと残された片方への罪悪感がパナい。しかし、割と童貞は捨てたい。しかししかし、童貞を散らせば死ぬ。

 こんな世界、人生イージーモードと思って生きてきたがよくよく考えれば割とハードなのでは? セフレ、セフレはありか? 本命を作らないでクズを行くスタイルだ。

 

 彼女の顔を見る。綺麗である、目はガチ、表情もガチ。こっちを真顔でガン見している。こいつにセフレはどう? なんて言えるわけないわ。

 私が四足歩行ならカモシカのように可愛らしくプルプル震えていただろう。しかし残念ながら私は二足歩行ヒトオス、走るヒト生はヒト息子ダーティダービー。童貞か生かが天秤にかけられ、秒で勝ったのは生きることだった。

 

「死にとうない」

「え? えぇ!? どういうこと!?」

「お待たせ。ん? どうした?」

 

 戻ってきたマイケルと慌てるフレディ、中心で目を回す雪女風の男。仮装会場の一角が混沌と化す。袖の中に入れていた携帯が震えるがそれどころじゃあない。私は明日を幸せに生きなければならんのだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『2019年度 私立黒薔薇白百合学園卒業生へ同窓会のご案内

 

幹事をさせて頂く姫組の姫乃(ひめの)星太(せいだ)です 覚えてますか?

 

この度黒薔薇白百合学園卒業生で同窓会をしようと企画させて頂きました

参加費は一人6500円程を予定しています

場所は当学園の近くの駅前の居酒屋を予定しています

日程は勝手ながら11月24日(日曜日)とさせて頂きました

 

懐かしい知り合い、顔ぶれに出会えるチャンスです

きっと良い思い出になると思います

 

皆さんの参加お待ちしています』

 

 

 

 

 

 

< 姫乃

 

 

 こんにちは、お元気ですか

 

既読 知らん、忘れた 

既読 今そっち何時? 

 

 お昼です

 

既読 こっちは夜中2時じゃボケ 

 

 す、すみません

 同窓会来れますか?

 

既読 こちとらアメリカやぞ 

既読 出てやるからロサンゼルスに来い 

 

 来れないと困ります。皆優君に会いたがってるんです

 

既読 Fuck off♡

既読 You,Father fucker♡ 

 

 

 

 

 



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Take014

< アンジェリーナ、リュドミーラ

 

 

既読2 お願い♡  

既読2 一生に何度かあるくらいのお願い♡  

既読2 飲み会があるからナンパされたときの壁になって♡  

既読2 私がナンパされてもいいんか? おん?  

 

アンジェリーナ

  言い方。まぁ、私は行っても構わない

 

リュドミーラ

  私も行くわよ、されたら困るし!

 

既読2 ありがと~  

 

リュドミーラ

  場所は?

 

既読2 JP  

 

アンジェリーナ

  ロスじゃないの?

 

既読 2日本だよ~ 此方来いってさ  

 

リュドミーラ

  ヤポンスキーって凄いわね

 

アンジェリーナ

  私らでもそんなこと頼めないぞ…

 

既読2 飛行機は借りた  

既読2 アラブの女性のメル友  

既読2 タダでいいって言われたけど断った、額が額だし  

 

リュドミーラ

  アラブ人?

 

アンジェリーナ

  待て。その話、後で詳しく

 

既読2 アラブの女性? 前の撮影会後に意気投合でメル友?  

 

アンジェリーナ

  日時は?

 

既読2 2週間後~  

 

アンジェリーナ

  ビザ間に合う?

 

リュドミーラ

  無理…かな?

 

既読2 まいっちんぐ  

 

 

 

 +  Aa           

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

「でっかいなぁ……」

 

 霧が出て来たロサンゼルス国際空港、その空港に停泊中のボーイング747-206B型。とにかくデカぁぁぁい、説明不要ッ!!

 

 おっぱいでもお尻でも飛行機でも、大きいものが好きな男としてはこのデカさは堪らない。細い葉巻のような飛行機しか見なくなった世界で馬鹿デカい飛行機、ジャンボジェットには特別な憧れがある。一応エアバスにもA380だかジャンボはあるにはあるのだが日本の知名度でいえばボーイングの方が有名ではなかろうか。

 私も個人的にはボーイングの方が顔が好みだ。貧乳派は心に正直になれ。

 

 撮影会で来てくれたアラブ人より借りたこの旅客機、チャーター便の手配が付かず来年必ず行くから! とお願い倒したら飛行機を貸してくれました。

 

 燃料費と停留料も気にしなくていいよと言われたが流石に良い金額になる、いくら原油のお風呂に入ってそうな石油大国とは言え金勘定だけはしっかりしておきたい。そして少しの問答の結果こちらが払うのは羽田への着陸料だけとなった。

 停留料と燃料費は出すから来る際に期待しとくよとのことである。

 

 重量が400トン弱で1トン辺り2400円、90万くらいかな? 停泊料とUAEからLA、HNDまでの往復燃料費を考えたら一億は行きそうなのだが、押し切られてしまったものは仕方ない。

 まぁ着陸料も領収書を切って幹事に請求するからいいか。

 

 そういえば件のダイヤモンドだが彼女に返そうと努力した。しかし、それは君にあげた物で気にしなくていいと受け取ってくれませんでした。税金に困るからであり遠慮しているわけでは無い、おかげさまで他のプレゼントを含めて数十億の税金を払うことになったんだが、まぁ……ギャラに比べたら微々たる物であるけれども。

 

 そして私はチャーター機専用のエントランスへと置かれた小型機に囲まれているジャンボ飛行機を搭乗前に眺めている。ジャンボ機の真横にもう一台ジャンボ機があるが、恐らくこれも別のチャーター機だろう。パンアメリカ? 知らない子ですね。

 因みにアンジェとミラーシャはビザが間に合わなかったので一人での来日、飲み会の誘いは半年前に誘おうね。勿論メディアでの公表もない、バレたら息抜きにならない。

 

 飛行機を一人で眺めていると背後のドアが開く。振り返れば肩に金モールをつけた50歳くらいの銀髪の女性が居た。欧州の生まれだろうか、こちらではあまり見かけないシャープな出で立ちで視線は鋭いが、視線が合えば笑顔を浮かべるその女性。

 私に用があるのだろうか?

 

「失礼、ミスタークロキ。お会いできて光栄です」

 

 海外で見られる握手文化、貞操観念が変わったこの世界でも勿論行われる挨拶である。基本的なルールとして左手握手はNG、目上の人が相手の場合は右手を差し出されるのを待つというものがある。

 またブンブン振らない、両手で握らない。前者は驚かせてしまうため、後者は初対面なのになんだこいつとなるからだ。

 あとは女性から男性へも手を差し出さず、男性が差し出すのを待つと言うものがある。仕事のツテであれば容赦なく握って所構わず私も差し出すのだが、誰だこいつとなるような完全に初対面であれば私も用心してしまう。

 

 メーデー、メーデー、メーデー、こちら目上女性、目上女性、目上女性、男性が目下の場合どっちが出せば良いか、メーデー、目上女性、オーバー。知らん、私はマナー講師じゃない、その場のノリと雰囲気で何とかせよ、オーバー。

 

「こちらこそ、初めまして? 私に何か御用ですか?」

「挨拶をと思いまして。機長を務めますヤーコブ・フェルトハイゼン・フィロメナ・ザンテンです」

「あ、機長さん? わざわざすみません、よろしくお願いします」

 

 なんとびっくり機長さんだった。急いで()()()()()()()()()()とその手を握って微笑んでくれる。この場合は彼女の雇い主の友達である私は目上へ該当する、と思った故の行為である。特に目立った仕草がない故正解だったようだ。

 

「世界のスターを乗せて空を飛べる事はありませんから、家族に自慢できますよ」

「スターだなんて、私はザンテンさんの方が凄いと思うけどな。ところでここから羽田までどれくらい?」

「5500マイルですね。航空時間は13時間と思って頂ければ問題ありません」

「教えてくれてありがとう」

「いえ、それでは私は準備しますので。これで失礼します」

「はい、またあとで」

 

 エントランスに一人残される私。私も早く飛行機に乗り込んでゆっくりしたいところだ。

 

「ヤーポン法は悪い文明」

 

 しかしマイルじゃあ距離がわからん、やはりヤードポンドは滅ぶべし。さて今のうちに真水を買わねば。

 漬け込めば大抵は何とかなる、我らの大事な聖水である。

 

 そして実はこれっぽっちも日本へは行くつもりはなかった。理由は、何故声をかけ続けたのか、何故そこまでして行かせたいのか、それを考えればいい想像は出来ない。恐らく私は広告塔、客寄せパンダだ。

 

 であれば何故行くのか。私の身体が行きたがっているからだ、なんて三文芝居染みたつまらない事は言わない。

 まぁ言ってしまえば良くも悪くも私には当時の記憶があまり無い、つまるところだ、日本の男性と女性が実際のところどんなものか見当がつかない。

 日本にはこれからドスケベ国家として世界を指揮して頂かないといけないのに、流行らせる本人がその国の人を知らないのは困る訳である。

 

 恐らくはナンパされる、いやされてみたい、OK出したら死ぬが。そしてお持ち帰りを考える愚か者もいる。だが、これぞ好機。日本女性の性癖をまさぐるチャンスである、例えそれがそこまで美人ではなかったにしてもだ。

 

 要は茶髪と銀髪もいいけど黒髪の大和撫子探しもええやんなということだ。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

< 姫乃

 

 

既読 Fuck off♡  

既読 You,Father fucker♡  

 

  優君、頼むよ

 

既読 私クッソ可愛い女性とイチャイチャするのが好きだから  

 

  えっと可愛い人は多いよ?

 

既読 私のとこ、これでもハリウッドやぞ  

 

  頼む、お願いだ

 

既読 ロスから成田までのお金出してくれるの?  

 

  頑張る

 

既読 本当に出せる? 普通の飛行機には乗らないよ?  

 

  出す

 

既読 ふぅん? それならまぁええか  

既読 じゃあ飛行機手配するから  

 

  ありがとう!

 

既読 手配ついた  

既読 年の瀬前だからチャーター埋ってたのよね  

既読 この前アラブ人の女性と知り合ってアドレス交換して  

既読 今度必ず行くから飛行機貸してってお願いしたら  

既読 喜んで貸してくれるって、良かったね  

 

  アラブ人? チャーター??

 

既読 当日飛行機のお金はどうしたら良いの?  

 

  現地で払うよ

 

既読 小切手か?  

既読 なんでも良いけど着陸料かかるからね?  

 

  取り敢えず了解

 

既読 今から乗る  

未読 ついた  

 

 

 

 +  Aa           

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 飛行機は滑走路でぶつかることもオーバーランすることも、ピトー管が凍ることも、機長がタイタニックすることもなく羽田空港に着いた。私はしっかり後部座席に座っておりました。

 航空中、真水を使う時点でもう既にアウトなのでは、と願掛けにすらなっていないことに気が付いたのは私のみ知るところ。

 

 到着ロビーの自動ドアをおっかなびっくり開ける、完全ニューヨークの出来事はトラウマだ。現れたのは誰もこちらに興味を抱いていない普通の光景、安心できる。

 入国審査係には大変驚かれ、何度も本人か尋ねられたがウインクしながらオフだからと鶴の一声で黙らせた。

 格好はといえば擬態を兼ねて男らしい露出の少ない衣装にしてある。時期は早いがダッフルコートに地味なチノパン、中はしまむらで売ってそうなシャツ。ロングのウィッグと帽子をかぶり、サングラスをつけて変装度合いは完璧である。

 

 羽田での光景は他人に気にされない事はこんなにも幸せであると噛み締める瞬間だった。誰も私を認識していない、実に嬉しい。

 そして何より数年ぶりの日本語、あちらでは基本話すことが無かったので一周周って新鮮であった。

 

 アメリカではお尻を拭うくらいしか使い道がなくなった100ドル札数枚を円へと両替し、ロビーから出てJRではなくタクシーへと乗り込む。その行き先は都内のお高いホテルである。

 

「ようこそいらっしゃいませ」

 

 都内の景色を眺めつつ乗ること一時間、ホテルへとたどり着いた。タクシーから降りればホテルの入り口にはホテルウーマンが立っている。

 ホテルウーマンは手早くタクシーから荷物を下ろす、流石は高級ホテル。お高いだけのことはある。

 

「いらっしゃいませ」

「予約してた黒木です。えっと……はい、クレジットカード」

 

 受付で帽子とウィッグを取るも受付係りの男性の顔色は変わらない。反応がないということに心底安心する。彼にクレジットカードを手渡す、すると微笑みながら首を傾げられた。

 

「黒木様、チェックアウト時のお支払になりますが、チェックイン時にお支払なされますか?」

「あ、そうなの? まぁ出しちゃったからお願いします」

「かしこまりました。この度は当ホテルのご利用、誠にありがとうございます」

 

 因みに余談だが予約したのはスイートではなく普通の個室である。長期滞在でもなく、飲んで帰るだけなので安い部屋を予約しておいた。

 ホテルウーマンに案内されたのは気持ち広めの客室、窓からは東京都内が見渡せる、眺めのいい部類に入るだろう。チップを固辞するホテルウーマンの胸ポケットに諭吉さんを捩じ込んで、一人ベッドに横になる。

 

 携帯を見ても例の男からは連絡がない。記憶を漁ってもその学園に通ってた記憶はあるが、友達らしい友達は少ない。私はボッチだったのか。今さらそんなボッチに何の用だと思いはするが、まぁここまで来てキャンセルするわけにもいかないだろう。

 そうこうしていると空の疲れが癒えていないのか、少しだけ眠くなる。

 少しでも疲れを癒すために、布団に身体を擦り付けながら眠りに落ちるのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 起きたのが飲み会の2時間前、シャワーを浴びて着替えを済ませフロントにタクシーの手配をお願いする。ウィッグは部屋に置き身支度を済ませてタクシーに乗り、それほど上がらないテンションのまま飲み会場へと向かった。

 

 飲み会と言われれば基本パブを貸し切りかバーの貸し切り、パーティーといえば大人数でわちゃわちゃしてても皆知り合い。ロサンゼルスでの私の酒飲み事情はそれが基本である。ビジネスタイムだとか、そういう雰囲気での飲み会はしたことがないので割愛する。

 

 会場だと指示された店の前で降りる。会場は個人経営の居酒屋のようだった。店の脇にある看板と道端のポップには質の良さを訴えつつも安さを強調させる文言が記載されている。

 このときの私の顔は半笑いだった。

 

「同窓会の参加者だけど」

 

 無理矢理愛想笑いを浮かべつつ、店の扉を潜って帽子を取れば店員女性から戸惑いと歓声があがった。それを避けるように奥へと進めば、既に集まっていた人の視線を一身に受ける。どうやら最後の方だったらしく見渡しても誰もいない席は少ない。湧き出る歓声についてはキリがないので無視させて頂こう。

 すし詰めと言ってもいいだろう。小上がりのテニスコート二つ無いくらいのスペースにかなりの人が座っている。そんなに人が多いならホテル貸し切って立食パーティーにすればいいのに。

 

「ありがとう優君! 来てくれて嬉しいよ!」

 

 男が右手を()()()()()()()。それを握り返すと彼は嬉しそうに右手を添えて上下にブンブンと振った。

 私の愛想笑いにヒビが入る。

 

「姫乃だよ、本当に覚えがないかい?」

 

 てめぇか。てめぇかよ。えぇ? 笑ってるね、その心笑ってるね。

 ふぅ。さて頭の記憶の引き出しを漁ってみるが、友人の項目にはヒットしない。類似検索で探してみれば、……なんか居たわこんなの。前世の眼鏡で見たら女の子にヘコヘコしてた男としか記憶ない。

 

「覚えてない」

「そ、そっか……」

「人混み嫌いだから末席でいいよ」

「優君の席はあそこだよ」

 

 彼が指差したのは人混みの中のど真ん中。正直人が居すぎて空いてる席が確認できない。

 視線を回せば玄関に一番近い席が空いていた。

 

「末席でいいよ。そこは他の人に座らせて」

 

 彼に手を振ってそちらのスペースに移動する。周囲の視線を引き連れているが反論がない辺り多少強引なくらいが何も言われずに済みそうだ。

 空いてるスペースに腰を下ろすと、隣の男と目が合う。キノコ頭の眼鏡かけたこの男は知っている、検索にすぐヒットした。友達の……えー……確か名前は中尾(なかお)獅子(れお)だったか。

 

「よ」

「久しぶり。優君、雰囲気がガラッと変わったよね」

「でしょ? 褒めても何もでないよ、飛べばドル札は出るかも。試しに振ってみる?」

…………ここだけの話、姫乃君は優君をダシに参加集めてたよ。見る?

 

 中折れ君が耳に唇を寄せて小さく囁いた。

 男にそれされてもやっぱりときめかないな。

 

「客寄せパンダね。パンダって笹ばっか食っておつむが弱そうだけど肉食なんだよね。それは興味ないから見ないわ、私もおつむ弱いから見たらどうにかなりそう」

ちょっと声大きい……!

「そこは君が弱いのはおつむじゃなくておむつじゃないかい? はははッ、じゃない?」

ちょっと!

「OKOK。後で姫乃は股カチ割っとくから安心して、文字通り姫にするから」

捕まるからダメだって!

「いやジョークじゃん」

 

 どうやら彼には冗談というものが通じないらしい。

 

「よ……よく喋るね?」

「そう?」

 

 長らく会ってなかった旧友との久しぶりの会話は一分で終わってしまった。

 

「優君は何飲む?」

 

 そのタイミングで机を挟んで突然名前を呼ばれ、振り向けば知らない女性。一瞬いきなり名前を呼ぶとか馴れ馴れしいなと思ってしまった、済まない。

 

「ん? んー……ビールがいいな」

「おっけー」

 

 そして配られるジョッキ。皆手にもって掲げたままでいる辺りそろそろ乾杯の音頭が始まるのだろう。そう思っていれば先の(姫乃)が立ち上がる。

 

「えー……皆さん本日はお集まり頂きありがとうございます。卒業した皆がこうして再び集まれたことに僕は喜びを隠せません。思い出せば在学中、皆さんと沢山の交流があって今日までこうして――」

「めっちゃ長いやん」

 

 ベラベラと止まることが無い彼の口上に、ジョッキを一度置いて、ベルの側にあった灰皿を手に取って引き寄せる。そして胸元からタバコを取り、火をつけて煙を吐き出した。

 すると携帯が震え誰かからメッセージが飛んできたことを知らせる。口上を聞くのもと思いそれを取り出して画面を見た。

 

 

 

< アンジェリーナ、リュドミーラ

 

アンジェリーナ

  楽しんでる?

 

リュドミーラ

  お土産よろしく!

 

 

 

 +  Aa           

 

 

 寂しさを感じた時にそんな事言われれば少しばかりキュンとしてしまう。もう一口、タバコを口に含み紫煙を吐き出した、決してロスへの恋しさを誤魔化したつもりはない。

 

 

< アンジェリーナ、リュドミーラ

 

 

アンジェリーナ

  楽しんでる?

 

リュドミーラ

  お土産よろしく!

 

未読 ベッド暖めといて♡  

 

 

 

 +  Aa           

 

 

 ヤッベ。待った。流石にやり過ぎた。

 

< アンジェリーナ、リュドミーラ

 

アンジェリーナ

  楽しんでる?

 

リュドミーラ

  お土産よろしく!

 

既読2 ベッド暖めといて♡  

 

未読 嘘だよ、おかげさまで愉しんでる  

未読 色々買ってくから待ってて  

未読 ちょい? 見ろ? へい  

 

 

 

 +  Aa           

 

 

「――そして本日はアメリカからわざわざ優君も来てくれました」

「あ?」

 

 突然名前を言われ呆けてスマホから呼ばれた方へと視線を戻すが、時は遅く全員の視線が注がれていた。

 取り敢えずタバコを吸おう。

 

「……ふぅ。ごめん、何も聞いてなかった」

「アメリカからわざわざ来てくれてありがとう! 同じ学友として世界で活躍してるのが誇らしいよ!」

「はぁ。口上まだ終わらないの? ビール温くなるんだが」

「皆の前で一言良いかい?」

「……いいよ、ほら貸して」

 

 立ち上がって彼からマイクを受け取ると、皆の方を見据える。

 

「代わりましたが喉が乾きましたので皆さんグラスをお持ちください」

 

 そう音頭を取れば一斉に持ち上がるグラス、ほら見ろ、やっぱり長いって思う人居るじゃん。

 

「乾杯」

「「「乾杯ッ!!」」」

 

 泡が消えたビールへと口をつける。うん、まぁ……ビールだわ。アメリカより香り薄いけど。

 不機嫌そうな表情を隠さずマイクの電源を切って彼に手渡せば、件の彼は何か言いたげだった。元々二次会は行かないつもりだったが、断固として行かないに変化した瞬間である。

 彼の面子を考えない失礼な行動をしている自覚はあるが、締めならまだしも開始の口上が長すぎるというのは頂けない。そんなことしてたら会社だと社長さんに怒られちゃうよ。

 

 あ、そういえば領収書忘れてた。

 

「ほい、これ」

 

 胸元の財布から領収書を取り出す。アラビア語と英語が併用され書かれたそれには金額もきっちり記載されている。

 

「……100万ッ!? 嘘でしょ!?」

「誰か空港に勤めてる人居る?」

 

 周辺の人に問い掛ければ何人かちらほらと職員が居た。皆意外と良いところ勤めてるのね。荷物はすっからかんでも残り燃料のこと忘れてました。

 

「B747で羽田に着陸。着陸料は100万、妥当?」

「随分と凄いので来たんだね? 着陸料ならビジネスジェットとかか? でも機体でかすぎ。停泊料はいいの? 」

「まぁそれくらいでしょ」

「停泊料は大丈夫。妥当だってさ」

 

 顔を青くする姫乃君。

 

「私を日本に呼び出しといてそれはクッソ安いぞ」

 

 テレビTKならまだしも他の会社なら10億でも動かない、動くのが面倒だからだ。そして彼は恐らく払わない、払えないだろう、まぁそれは構わない。彼がこれで懲りてくれれば十分である。

 

 ところで大和撫子からのナンパはまだ? エッチなことに一切興味ありませんみたいなどちゃくそ可愛い人から下心隠してるの匂わせながらナンパされたいんだけど。

 早く来てほしいんだけど、断るから。

 



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Take015

 さぁ始まりました第一回下心を隠して俳優をお持ち帰り出来るのは誰だ選手権、司会進行は私黒木優が勤めさせて頂きます。

 私からは絶対お持ち帰りされないという強い意思を感じますが、暴力的な乳房と黒髪大和撫子の組み合わせでは陥落しそうになる欠点がございます、しそうになるだけでお持ち帰りされたらロサンゼルスには帰れなくなりますから陥落は致しません。

 

「ねぇねぇ優君は彼女居るの?」

 

 出ました、皆が一番気になることを遠回しではなく直球で聞いてくる空気を読めないようで読んでるタイプ。この手のタイプは意外とヤりたい欲は無いような雰囲気を出して純粋に気になったから聞いたパターンを装ってるが頭のなかではお持ち帰りを考えている奴ですね。

 ここで速報ですが意外と実況は煩わしかったのでこの辺で終了とさせて頂きます。ご視聴ありがとうございました。

 

 さて、言い出してきた彼女を見るが雰囲気は前世で言えばギャルだ、可愛くない黒ギャル。彼女が動く度にキツい香水の匂いがこちらに漂う。

 この世でチャラ男ヤリチンの風貌がギャルであるなら、前世の海や温泉に行ってNTRされる展開はギャルに食べられるシチュエーションに変わり、大人数での行為はただのハーレムに変わるのか。何だその天国は。羨ましすぎる、ただ美人に限る、そのようなシコシチュ、此方も抜かねば……無作法というもの……。

 

 そうなるとやはり単純なNTR文化の頂点に君臨する黒人筋肉モリモリマッチョマンの変態が繰り出すBBC文化がどうなるのか、私は気になって夜は愚息をおっ立てることしか出来ません。

 デカチンの対義語はなんだ? ガバマン? いや、絶対違う、キツマン? キツマンが印象的な民族って誰よ。

 

 取り敢えずだ、目の前のギャルが仮に抱き締められたいなら身嗜みをしっかりしろと言いたい、香水をつけろとは言わないから普通の匂いを放てと言いたい、そして清潔にしろ。深い意味で抱かれたいならおたまじゃくしからやり直してこい。

 

 そしてこの質問に対して、私が居るって言ったらお通夜になるのは理解しているのだろうか。私だってそれくらいはわかってる。

 周囲の視線のギラつきが増しているような気がした、いや実際増したんだろう。これがアメリカなら虜にした人は世界中に居るかなHAHAHAと答えていた。

 

「いないよ」

「どんな人が好み?」

 

 勿論胸が大きい、お尻も大きい美人な人。低すぎる身長は勘弁だ、幼女趣味はない。ロリ巨乳よりもお姉さん巨乳の方がいい、古事記にもそう書いてある。これがアメリカなら君みたいな人だよHAHAHAと答えていた。

 

「包容力があって素敵で……大人びてる人とか?」

「ねぇねぇこの中なら誰が一番好み?」

 

 ドストライクのドスケベボディの美少女とかこの中に居るわけないだろ。居たら隣に座って全力でアタックしてるわ。安心しろ、ワンチャンもない、だから変に期待するな。これがアメリカなら、いやこれはアメリカでは聞かれないわ。

 

「んーと……こう見えて恋愛経験無いからあんまり? いきなりそういうこと言われてもわからなくて?」

「またまたぁ……? じゃあ映画の台詞言ってみて!」

 

 ブスめが殺すぞ。これでいいか。

 

「突然言われてもな?」

「お願い!」

 

 しゃあない、出来るだけ意味わからないように愛想笑いしとこうか。

 

Start over from tadpoles(おたまじゃくしからやり直して)

「ぶッ……!?」

「英語わからないけど格好いい!!」

I'm not interested.(私は興味ないから)Look in the mirror, (鏡を見てきて) it's not balanced(釣り合わないよ)

 

 聞こえてて理解してしまって吹いたのは1人か。黒髪、容姿端麗、微乳、委員長っぽくて可愛い。アイドルやれるくらいの可愛い部類には入るだろう。だが、微乳である。

 

「黒木くんって、良い性格してるね」

 

 視線に気付いたのか彼女は苦く笑いながら囁いた、いきなり名前呼びでない辺りも加点される。彼女の第一印象はとてもいい、私の目がロサンゼルスで立派に肥やされ、そして魂を縛り付けられていなければ靡いていたかもしれない。

 だが残念かな、彼女の双子山は控えめである。私はグレートキャニオンよりもデナリの方が好きだ。富士山とまでは言わないが御嶽山くらいは欲しいところ、つまりところバインバインのムッチムチを所望している、上から下まで赤石山脈はNGでお願いします。

 

「伊達に俳優してないよ? Get this whore off me quickly(このメスを早く剥がしてくれ)

「あー……ねぇ、そうだ。さっき山本くん呼んでたわ、行ってあげたら?」

「あ。本当? 優君またあとでね」

「はーい」

 

 仮称黒髪さんのアシストにより残念ギャルは何処かへ去っていく。実にナイスなアシストだ、夜のワールドカップを目指せるだろう。玉転がしとは言得て妙だ、決して玉蹴りではない。

 

「……えっとお疲れ様?」

「最初から見てたでしょ。早く助けて?」

「ごめんなさい、こう……躊躇っちゃって」

「聞き入ってたの知ってる」

 

 今日の癒しは彼女であったか。名前も知らない、一期一会の出会いではあるが脳内のスクリーンショットに焼き付けてしまおう。

 

「誰かと寝たらロスに帰れなくなるわ」

「寝るってそんな」

「ふむ、日本人は指摘されても人前では認めないと」

 

 卑猥な話題に顔を紅くする彼女であったが、何か違う。男を知らない女へ分からせ棒で身に刻む、その瞬間の恥じらいのような、初心に反して期待してしまっているときの恥ずかしさを期待していたが黒髪さんは正直満更でもない。

 

 やっぱり前世の男が童貞を捨てることに人生をかけているように、この世の女も処女を散らすことへ人生をかけているのだろうか。男性は魔法使い、では女性は……?

 

「黒木くんってお給料どれくらいなの?」

「給料? ……考えたことなかった」

「考えたことないって?」

「じょばじょば増えてくから、税金は全部税理士? 会社の人にお願いしてるし。残高とか、幾ら貰ってるとか別に調べたことないかな? 高額な変なのも買わないし家賃やっすいし?」

 

 私の家は1DK、家賃は月々11万円。皆からどうしてもっと良いところに済まないんだと総ツッコミを喰らうが生憎立地と良い感じの狭さが意外と気に入っている。

 

「じょ……じょばじょば」

「月収だと日本円で一億は少なくてもあるんじゃない? 今は休んでるけど、わかんない適当に言った」

「よくわからないけど凄いね……」

 

 私にもわからん。本当に申し訳ない。

 貯金の額がドルであることと、円でいうと幾らだと初回の出演料の時に考えたのが間違いである。増える貯金、貰えるお給料に比例して税金が掛けられるのを私は知っている。こういう時だけ仕事早いんだよな、役人共って。

 お給料から発生する税金がどうとかプレゼントから発生した税金がどうとかは制作会社の担当の方にぶん投げている。私が知っているのは貯金がいっぱいあるということだけだ。

 

 黒髪さんとの会話もそこそこに、断りを入れ席を立って姫乃君のところへと向かう。私はこれから姫乃君を姫にしないといけない、取り敢えず付いてるタマタマは二つ共ペーストにしてしまう方向で行こう。

 

「やぁチェリーボーイ、生きてる?」

「どうしよう……払えない」

 

 彼の横に座れば青白く染めた顔を変わらず保った彼がいた。彼がにらめっこしていたのは先に渡した領収書である。

 

「え、真面目に払うつもりしてた?」

 

 彼が真面目に悩んでいるとは思いもよらなんだ。正直なところ、ごめん無理だわと帰り際に言われる予想をしていた。

 

「一応は……出すって言ったし。でもこんなにお金が口座に無くて」

「あら? ごめん、ちょっと見直したわ。別に払わなくていいよ?」

「本当?」

「まじ」

 

 何を考えたかちょっと暴走しただけで根は良いやつなんだな姫乃君、見直したよ。まぁダシに使われているのは、正直なところ俳優として働いている以上慣れてはいる、ダシの塊である私は昆布だ。これから各所で色々な味がつけられ、世界に様々な風味が生まれるのである。

 

「有名税で普通の飛行機に乗れないから。懲りたら私を利用して色々するのはやめようね」

「ごめん、本当にごめん。友達のことを利用しちゃって、優君も来るからおいでって言って、本当にごめん」

「いいよいいよ、利用されるの本当に苦手なら俳優してないし」

「優君が来ると思って婚活パーティーセッティングしようとしてごめん」

「待て? それは聞いてない」

「あとその後合コンもセッティングしようとしてごめん」

「ちょい? 行かないからな、行けないから。明日日本発つし」

 

 ちょっと興味あります、それ、参加したい。今度日本に来たら参加してみよう。

 

「でも罰は罰ね」

「え?」

 

 タマ潰しという我々の業界ではギリギリご褒美です、でも飴もくださいとなる行為はさておき、日本男子がこの世でどう扱われているのかを私は知らない。

 前世でいえばセクハラ、マタハラ、パワハラ、スメハラ? 何たらハラスメントなどの問題もあればそれに伴って専用電車に専用スペースなども設置されていた。今世での日本社会の男性への配慮がどうなっているのか、気になるところではある。

 

「まずお兄さん仕事は」

「正社員だけど?」

「男女比教えて」

「半々くらい?」

「セクハラってあるの?」

「あるよ、凄くある」

 

 こっちの世界にもやっぱりセクハラはあるのか。

 お前さっき私達が着替えてる時チラチラ見てただろとか、見たけりゃ見せつけてやるよなんて羨ましい事をしているのか、けしからん。

 

「例えば?」

「例えば、呼ぶときに肩叩かれたりとか」

「うん?」

「後ろに立たれて匂い嗅がれたりとか? 同じエレベーターに乗ってくるとかも」

「嘘やん」

「本当だよ? それくらいウチの会社はセクハラが酷いんだ。他にも、何か伝える時とか後ろから覗き込んでくるし、重いものを持たせようとするし、お茶出しの仕事押し付けるし、会社のトイレ掃除もさせられる」

「それってセクハラなの?」

「当たり前だよ」

 

 それは果たしてセクハラなのか? スマホを取り出し、先程盛大にやらかした二人へのメッセージを開く。

 

 

< アンジェリーナ、リュドミーラ

 

 

アンジェリーナ

  楽しんでる?

 

リュドミーラ

  お土産よろしく!

 

既読2 ベッド暖めといて♡  

 

既読2 嘘だよ、おかげさまで愉しんでる  

既読2 色々買ってくから待ってて  

既読2 ちょい? 見ろ? へい  

 

アンジェリーナ

  私のベッド、キングサイズに買い換えるから待って

 

リュドミーラ

  поезжай со мной в россию

 

既読2 待て待て待て  

既読2 ジョーク  

既読2 イッツジョーク  

既読2 ジョークアベニュー  

 

既読2 おい  

既読2 話があるんだ  

 

アンジェリーナ

  弄んだな

 

リュドミーラ

  Вы едете в Сибирь?

 

既読2 アメリカとロシアで女性が男性の肩を触る  

既読2 後ろに立って匂いを嗅ぐ  

既読2 同じエレベーターに乗る  

既読2 これセクハラ?  

 

アンジェリーナ

  許されない

 

リュドミーラ

  シベリア行きのチケット取っといたから

 

既読2 恋愛チキン共がよ  

既読2 好き愛してる言えるならそこも格好よくしろ  

 

アンジェリーナ

  取り敢えず、落ち着いた

  基本了承を得てないタッチやハグはアウトだ

  嗅ぐも故意ならアウトかな? 訴えられたら負けそう

  故意じゃないならたぶん大丈夫

  線引きはあまりわからないないけど

  エレベーターは流石にセーフ

 

リュドミーラ

  ロシアも同じかな

 

既読2 なるほどありがとう  

既読2 OK.触ったら二人が何故情けない顔するかわかった  

 

 

 +  Aa           

 

 

 被害妄想なのか、この世のセクハラなのか、彼の中ではセクハラなのか、わからない。

 セクハラというからお尻を撫で回されたり、股間をまさぐられたり、そういう痴女シチュエーションを想像してたのだが期待していた想像とはかけ離れていた。

 

「電車に男性専用車輌ってあるの?」

「勿論。安心できるよ」

 

 加齢臭臭そう。絶対ピチピチな女性専用車輌に入る方がいい。

 

「実際電車でお尻触られたりあるの?」

「あるよ。身体に鞄を押し当てられたり、匂いを嗅がれたり、後ろに立たれたり」

 

 鞄をケツに当てられただけでセクハラ扱いか。

 前世の価値観だと本当情けないなお前ら。悔しがりながらメスガキに腰ヘコするワンちゃんみたいじゃないか、こんなのが今の日本男子だというのか。

 

「そっか、色々大変なんだね」

「アメリカはセクハラはないの?」

「無いかな?」

 

 一般男性がセクハラだと思うものは私にはセクハラではない、一切気にならん。ハグ大好き民が多いから寧ろこちらから抱き付くくらいだ。この世でこれは明らかな強みと言える。

 ケツを撫でられるのはさておき、軽いボディタッチはコミュニケーションの一種である。とはいえ此方にいきなり触ってくるような猛者は基本現れない。現れて常識をまだ理解していない子供くらいだ。

 

「羨ましいなぁ」

 

 しかし、映画でそのようなセクハラを女性側から演出するのは、次回からは少しやめた方が良いかもしれない。私はセクハラはカムヒア ダイターン3、涙はなく明日に微笑みながら、大胆にも奥深くもセクハラはバッチ来いではあるが、その演出で男性側から批判が出ても面倒だ。

 作品が長くリリースされる為には大きな問題事を起こしてはならない。作品へ一番影響ある役者交代と監督降板に繋がる物は避けるべきだろう、女性側からセクハラをするとおマスキュ様が獲物を見つけたTレックスのように雄叫びを上げて好き勝手食い荒らそうとする可能性もある。

 

 個人的には人間様の世の中であるから捕食しようとするTレックスなんてぶち殺したいところではあるが、そうすると今度は動物愛護団体から苦情が届きそうだ。と冗談はさておき、性的搾取される程ちやほやされる外見でもないマスキュからの声を無視できない。

 火種が新たな火種を生む悪循環にしかならない、であれば穏便にしておく他あるまいか。

 

 しかし、日本男女のリアルに触れられただけでも来た甲斐はあった。スレの中でもやはりわからないことはある、次は観光と婚活パーティーに来ようと静かに心に決めた。

 といいつつその前に時期を見つけて、約束を守るためにUAEには行かないといけないのだが、まぁ今くらいはゆるりとお酒を飲んでてもいいでしょう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ1130

 

 

576:名無しの映画監督 ID:p7kffnxALc

【緊急速報】優君お忍び緊急帰国

ソースはSNSトレンド

写真:お酒飲んでる姿

写真:タバコ吸ってる姿

 

577:名無しの映画監督 ID:0lqlMEqNn

 

本物やん

 

578:名無しの映画監督 ID:p7dpIxALc

まじ? 行く

 

579:名無しの映画監督 ID:TsLJKw42E

飯食ってるとこ盗撮は草

sns民やばすぎ

 

580:名無しの映画監督 ID:LDFX4ZjOQ

リアルでもタバコ吸ってるのか

 

581:名無しの映画監督 ID:+UlLBEe59

ちょっとワイもタバコ吸い始めるわ

 

582:名無しの映画監督 ID:5j39sgIzi

これはちょっと流石に笑えんぞ?

 

583:名無しの映画監督 ID:zXOM2Hlej

タバコマイスターのワイにはわかる、あの色はキャメルシガーや

 

584:名無しの映画監督 ID:jH3oCbppD

>>583普通のアークロイヤルかアークロイヤルスイートだろ

 

585:名無しの映画監督 ID:zXOM2Hlej

ヤベ! 本物来たからワイは逃げるわ!

 

586:名無しの映画監督 ID:ONwDwjmW5

精一杯服は地味にしてるけどこの顔は隠せないわな

 

587:名無しの映画監督 ID:u8wHWCSQl

世界にチンポと胸以外見せた男やし

 

588:名無しの映画監督 ID:emppNsGXK

でも何故来日?

 

589:名無しの映画監督 ID:YDk7VSYXT

ツーショット撮って自慢、イベントの時に撮るならまぁまだわかる

有名人補正って凄いな

 

590:名無しの映画監督 ID:JwD7vfDZt

通ったけど野次馬とカメラマン多いな、集まるの早すぎ

駐車多くて渋滞起こしてるぞ

 

591:名無しの映画監督 ID:xSN5x4Y1l

地方住みのワイ、低みの見物

 

592:名無しの映画監督 ID:cqnmXoipK

カメラ叩き割るに一票

 

593:名無しの映画監督 ID:73KDsiCCS

中々人生攻めますね

 

594:名無しの映画監督 ID:HbB0o7qRb

>>591おまわた 都内住みは羨ましいわ

 

595:名無しの映画監督 ID:jkW5zVTlt

流石に手は出ないやろ

アメリカでも手は出してないぞ、度が過ぎるのは黙って警察呼んでたけど正面からお願いしたり交渉してるパパラッチには普通に撮影してたし

 

596:名無しの映画監督 ID:KaK7Aah1W

ss速報:ワイ「ゆ、優くん! おまんこ激しくしないで!」優「うるさいんだけど……」クチュクチュクチュクチュ

 

597:名無しの映画監督 ID:pY/tV08XX

キモすぎ

 

598:名無しの映画監督 ID:jR2uWMSoF

>>587冷静に考えると男としての人生捨ててて笑う

結婚相手も相手が世界に身体見せてるとか嫌だろ

 

599:名無しの映画監督 ID:dal55SAFsf

>>596

優「じゃあ死ぬ?」クチュクチュクチュクチュ

これやろ 満面の笑顔なの想像できる

 

600:名無しの映画監督 ID:XMkC37qm7

>>598は?

 

601:名無しの映画監督 ID:wad59+jGb

現地付いた 人やばいわ

 

602:名無しの映画監督 ID:l5ob3jUPW

>>598てめぇは私を怒らせた

 

603:名無しの映画監督 ID:8W5/CqZKu

これの方が好き

ss速報:リュ「ありゃー…優とうとう死んじゃったか」

 

604:名無しの映画監督

 ID:q5lTBaMSV現地民実況よろ

 

605:名無しの映画監督 ID:8W5/CqZKu

ss速報:やる子が傭兵をするようです

 

606:名無しの映画監督 ID:BVpVsF+A0

駅前だから仕事帰りに目の前通ったんだけど、報道陣の数と人の数エグい

 

607:名無しの映画監督 ID:DasrfKOVN

2Dふぁんで二次創作増えてて嬉しい

 

608:名無しの映画監督 ID:Rv/bLaAtz

あちゃぁ

 

609:名無しの映画監督 ID:YflsNqQjP

取り敢えずテレビ付けた

 

610:名無しの映画監督 ID:zj5r4+QeZ

>>598じゃあ私が貰ってくわ

 

611:名無しの映画監督 ID:KT9mUkFWG

取り敢えず脱いだ

 

612:名無しの映画監督 ID:dMIFi4PON

ワイは手が出ないのを祈っとくわ

 

613:名無しの映画監督 ID:gnOjzk3Ps

>>607オススメなのおしえて

 

614:名無しの映画監督 ID:ugTVGBT3N

原作再構築と年齢変化とか?

 

615:名無しの映画監督 ID:8fPU+frwE

魔改造が最高

 

616:名無しの映画監督 ID:KyFR40jVv

2Dふぁんもいいけど幻想卿もおすすめ

 

617:名無しの映画監督 ID:4EZ/XGyYw

テレビTKは平常運転だな

 

618:名無しの映画監督 ID:K3WcS8pS2

やめて、対応ミスったらヤバいことになる

せめて頼むから変なコメントはやめて

 

619:名無しの映画監督 ID:WtTwqbYUe

>>613やっぱ原作知識無しオリ主、憑依で知識有りもいい

 

620:名無しの映画監督 ID:ZbzNhx20D

条例出ても追い掛け回したアメップのパパラッチ相手に中指立ててキレた前科あるからな

 

621:名無しの映画監督 ID:FvyTn/5Nf

JR遅延は勘弁してくれ

 

622:名無しの映画監督 ID:2svwunY5c

>>598世界に見せつけてる身体で汚してもらうのがええんやろがい!

 

623:名無しの映画監督 ID:wad59+jGb

 

624:名無しの映画監督 ID:gi3Sppevu

通話したと思ったら黙って通報してたパターンが好きなんやが

 

625:名無しの映画監督 ID:jw/6b++S1

店から出て来た

 

 



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Take016

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ1130

 

 

628:名無しの映画監督 ID:o0EbHdgKX

出たぁ

 

629:名無しの映画監督 ID:65ni4bLnN

一瞬戸惑って察して溜め息付いてら

 

630:名無しの映画監督 ID:kEhs7/xAj

ワイJR乗車中、テレビ見れないので文字おこし希望

 

631:実況ネキ ID:BEk5czRc4

しゃあないな これでいいな

 

632:実況ネキ ID:BEk5czRc4

「黒木さん! どうして日本に帰国したんですか!」

「何故帰国したのですか?」

「突然帰国した理由をお聞かせください!」

「メディアに出演しない理由は何なんですか!」

「やば、本物!」

「サインお願いします!」

「握手してください!」

 

優「え? Oh…」

 

633:名無しの映画監督 ID:V08mghAxH

キレてなくて安心

 

634:名無しの映画監督 ID:jn/dsrhul

呆れる姿も絵になるなぁ

背景が居酒屋の看板じゃなければもっといい

 

635:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「うるさいんだけど。もうちょっと静かに出来ないの?」

 

636:名無しの映画監督 ID:mO3IzjAlU

やっぱりオブラートに包まないんだな

 

637:実況ネキ ID:BEk5czRc4

マ「「「インタビューをお願いします!!!!」」」

 

638:名無しの映画監督 ID:8tLnpppVY

あっ

 

639:名無しの映画監督 ID:vZI8FBZdD

まじ? 受けるの?

 

640:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「猿山みたい♡ くっさ♡」

 

641:名無しの映画監督 ID:8tLNhBpVY

はぁ~^↑

 

642:名無しの映画監督 ID:Cvp30Bh+T

こいつ分からせてぇ

 

643:名無しの映画監督 ID:DS2Q1wjZU

一瞬でマンイラしたわ

 

644:名無しの映画監督 ID:SLbx/pMHG

これはプロの男

 

645:あぼーん

あぼーん

 

646:名無しの映画監督 ID:zx0R6/s+R

実際「♡」とか無いけど感じる感じる

オスガキってどっかで呼ばれてたけどまさにその通りだわ

成人してるけど

 

647:名無しの映画監督 ID:iQ50qa9Qa

事務所通すように徹底拒否する事もなく、かといってインタビューに答えるわけでもなくカメラとリポーターおちょくってる辺りアメリカみを感じる

 

648:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「すまねぇ猿語はさっぱりなんだ。よし、じゃあお先」

 

649:名無しの映画監督 ID:19M7DJeWM

じゃあ、じゃないが

 

650:名無しの映画監督 ID:KI6Th+L4e

ああ逃げられない!!(マスコミ)

 

651:名無しの映画監督 ID:SqtuozDBe

逃げる気ないやろこのムーヴ

 

652:名無しの映画監督 ID:dPo6CZBRa

優君大好きワイ、生優見て心臓止まった

 

653:名無しの映画監督 ID:+z2BLiWPB >>657

ファンは取り敢えず無視なんやな

 

654:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「触ったら警察呼ぶから。ほら捕まりたくないなら逃げろ逃げろ」

 

655:名無しの映画監督 ID:u5IKQdkY0

はいはい成クレあ~かわいそ

 

656:名無しの映画監督 ID:OATgCruvZ

囲むマスコミに突っ込んでいくの好き

 

657:名無しの映画監督 ID:sIe72DGM8

>>653相手したら流石に警察出動してくるぞ、今でもやばいのに

 

658:名無しの映画監督 ID:cJav4Bk+2

警察呼んだ事例知ってるんだ

マスコミ触らない様に避けてるけど

でもまぁ付いてくるよね

 

659:名無しの映画監督 ID:C3lqGpkRE

見入っててコメント少ないなぁ、まぁ打つのは見れない人と語り合いたい人くらいか

 

660:名無しの映画監督 ID:DysSNlQJb

現地人民や

20人くらいで囲って半数叫んでるけどガン無視でカニ歩きさせてる

移動に合わせて全員が動いてるわ

 

661:実況ネキ ID:BEk5czRc4

あ止まった

 

662:名無しの映画監督 ID:8P+60YJXB

何かあったの?

 

663:実況ネキ ID:BEk5czRc4

いきなり止まって、5秒くらい経ってまた歩き出した?

 

664:名無しの映画監督 ID:dP1LCB0an

ん? どゆこと

 

665:実況ネキ ID:BEk5czRc4

また止まった

 

666:実況ネキ ID:BEk5czRc4

今度は振り返ったわ、それで歩き出して

 

667:名無しの映画監督 ID:DNKFeEyrj

くっそwwwwww

 

668:名無しの映画監督 ID:SKktGKfVB

カメラ振り回されて酔うんだが

 

669:実況ネキ ID:BEk5czRc4

踏み出す→マスコミ歩き出す

足を止める→マスコミも止まる

振り返る→マイクとカメラ向けるために逆側に行く

また振り返る→また逆側に行く

歩き出すフリをする→何人か釣られる

 

670:名無しの映画監督 ID:y+AePd33T

笑い過ぎてお腹いたい

 

671:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「あははははは、やば、おもしろ。今釣られた人失格ね?」

 

672:名無しの映画監督 ID:982gxOmT7

カメラ酔いネキはもっと自律神経鍛えて

 

673:名無しの映画監督 ID:vFot6hy1D

ワイらはデビューから色々追っ掛けてるからリアルでも頭のネジがイカれてるの知ってるけど

普通の人ってこれ見てどうなの?

 

674:名無しの映画監督 ID:xNhh/Vrni

取り敢えず映画知らん家のお茶の間は凍りそうだな

 

675:名無しの映画監督 ID:YibYt0uiy

関係無い、優君が楽しそうで何よりだ

カメラマンを殴るくらいの覚悟はしてた

 

676:名無しの映画監督 ID:uVL9CAnXC

取り敢えず家のテレビで見てるけど

娘と息子は大爆笑で夫は凄い顔で見てる

 

677:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「どこまで付いてくる? 一緒に風呂入る? 誰も入ったことないヴァルハラだよ?」

マ「質問に答えてくれたら居なくなりますから!」

優「事務所通した?」

 

678:名無しの映画監督 ID:56usLhrdX

これ見てる両親の気持ちを代弁せよ

センター試験に出せるな

 

679:名無しの映画監督 ID:th9+bsxpA

お、ついにそれらしい会話始まったか

 

680:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「ここまでしつこく来るって事は勿論事務所は通ってるんだよね?」

優「勿論ギャラも払ってるんだよね?」

優「私をダシに視聴率集めて、CMで金稼いでるんだからちゃんとお金も払ってるんでしょ?」

 

681:名無しの映画監督 ID:aqGFcxxz+

会話になってねえよ、マスコミの叫び声消えたぞ

 

682:名無しの映画監督 ID:+faqQUlzh

放送事故では?

テレビ日本はスタジオにカメラ戻したが

 

683:名無しの映画監督 ID:A0dAC7DyG

街頭インタビューにマスコミが金払うわけないわな、相手が映画俳優でも

 

684:名無しの映画監督 ID:iVfqlGBEP >>688

一本一億!

 

685:名無しの映画監督 ID:XML3l+W9j

マグロかよ

 

686:名無しの映画監督 ID:JlW78eeU4

マグロか、良いと思います

 

687:実況ネキ督 ID:BEk5czRc4

優「ちょっと喉乾いたからお茶飲みたいな。一番早くくれた人の質問、一個真面目に答えちゃうかも」

 

688:名無しの映画監督 ID:IPoHOYTRh

>>684CM15秒な

 

689:名無しの映画監督 ID:dBFGc259f

喉が渇くの可愛い、対価がさておき

 

690:名無しの映画監督 ID:bc5vYh3B+

150円で何でも一つ質問できるんだぞ?

テレビ局なら利率100000000%くらい

 

691:名無しの映画監督 ID:KDWULg3nT

150円あればお願い出来るのか

 

692:あぼーん

あぼーん

 

693:実況ネキ ID:BEk5czRc4

マ「どうぞ!」

優「ありがとう、御馳走様。局と貴女の名前教えて?」

優「ほら皆バッチリ写して、変な質問じゃなければ答えるから」

 

694:名無しの映画監督 ID:i7pqJDFqR

インタビューアーの顔もカメラへ写させる、いともたやすく行われるえげつない行為

絶対にこいつは逃がさないという凄みを感じる

 

695:名無しの映画監督 ID:pAyru3Wlz

まぁ知ってた

 

696:名無しの映画監督 ID:XxMJnciR2

笑顔も全てどちゃくそ可愛い

でも腹の中は真っ黒にもなるとかもうギャップ

 

697:名無しの映画監督 ID:o4Sk4ACFg

もう逃げられないゾ♡

 

698:名無しの映画監督 ID:1RJmMMuGT

ちょ

 

699:名無しの映画監督 ID:aKfe+Y0Ey

 

700:名無しの映画監督 ID:0znkjyn86

まじか

 

701:実況ネキ ID:BEk5czRc4

マ「……アサヒテレビの山岸です」

優「アサヒテレビの山岸さん。質問をどうぞ?」

マ「映画における過剰な演技について多くの男性から性的搾取だという意見もありますが、どのようにお考えですか?」

 

702:名無しの映画監督 ID:aCixnX4r/

聞いたときは終わったと思いました

 

703:名無しの映画監督 ID:ylaUz4XyI

いやこれ、どう?

 

704:名無しの映画監督 ID:cQP2uYYdS

う~んw ちんぽ!

 

705:名無しの映画監督 ID:gwhYaKCUM

優君にこにこやん?

 

706:名無しの映画監督 ID:8RScgPoZ8

据わってね? 目

 

707:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「えぇ…とっても気分良いのに水差すこと聞いちゃうの? もっと別の話題にしよ?」

マ「黒木氏の過激すぎる演技が男性を軽視させる一因になっている、また男性としての権利を失わせ性癖に搾取される存在に陥れているt

 

708:名無しの映画監督 ID:HbTeCY+0C

実況ネキどうした?

 

709:名無しの映画監督 ID:5m2ZaT3vJ

レスが途絶えたけど

 

710:名無しの映画監督 ID:aCnQNRuA6

びびった、鳥肌立ったわ

 

711:名無しの映画監督 ID:SSLObeRnm

チビる

 

712:名無しの映画監督 ID:V6LT1cZiQ

ぽわぽわしてた雰囲気が一瞬で吹き飛んだ

 

713:名無しの映画監督 ID:SZBG7XWuT

リアルか演技かわからん

 

714:名無しの映画監督 ID:sbCTlrCgf

インタビューア大丈夫か? テレビ越しでも背筋震えたぞ

 

715:実況ネキ ID:BEk5czRc4

ごめんビビリ散らかしてる

 

716:実況ネキ ID:BEk5czRc4

マ「黒木氏の過激すぎる演技が男性を軽視させる一因になっている、また男性としての権利を失わせ性癖に搾取される存在に陥れていると

優「どうしてお前は気分をぶち壊すような事を聞く?」

 

717:名無しの映画監督 ID:1WhnlXD8r

なんや映画で言いそうな台詞やん 余裕余裕

 

718:名無しの映画監督 ID:VmAuGRQxH

距離詰められて逃げられない様に背中に両手を回された状態で

おでこ同士付きそうなくらいの超至近距離から言われた模様

 

719:実況ネキ ID:BEk5czRc4

続き

優「何故?」「言え」「吐け」「おい」

マ「すみません、すみません、すみません」

優「質問変えるか?」

マ「どうして日本に来たんですか?」

 

720:名無しの映画監督 ID:1eElMKSqm

言う度にぐいぐい来るの怖すぎ 目力強まってるんだけど

 

721:名無しの映画監督 ID:v/40LIVvQ

インタビューアー女性本気で怯えてるやん

ガン泣きしてる

 

722:名無しの映画監督 ID:j2MrzyGDh

あ、離れた

 

723:名無しの映画監督 ID:WmyAWfOrL

テレビ初出演でお茶の間を混乱させて凍らせた男

 

724:実況ネキ ID:BEk5czRc4

優「お酒が飲みたくて来ちゃった♡」

 

725:名無しの映画監督 ID:rXL3WLzcJ

笑顔かぶり直してももう遅い

 

726:名無しの映画監督 ID:at5687An

ガチの俳優の演技力って人が変わるんだな、やばいわ

 

727:名無しの映画監督 ID:d44rCTY7l

カメラ越しにでもわかる現場の冷え加減で逆にニコニコ笑っていられるのが怖い

 

728:名無しの映画監督 ID:ewX52qOZC

どっちが素だと思う?

笑顔が素なら詰め寄ったのは演技?

詰め寄ったのが素なら笑顔が演技?

 

729:名無しの映画監督 ID:DznuDHy6q

詰め寄ったのはビビらせる為の演技やろ

 

730:名無しの映画監督 ID:uVL9CAnXC

うちの息子ドン引きしてる…

 

731:名無しの映画監督 ID:fij1DHwdw

あ、タクシー乗った

 

732:名無しの映画監督 ID:TrZuiT+gN

アメリカのときは感情が表に出てたと思うから詰め寄ったの演技だとワイは思う

 

733:名無しの映画監督 ID:4qVo4sinE

やっぱり?

 

734:名無しの映画監督 ID:I7UiOUbI4

明日の一面はこれやね

 

735:名無しの映画監督 ID:k9Hmim97W

私は両方素だと思う

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

< てれびTK 小森アナ

 

 

  撮影ありがとうございました!

  また機会がありましたらよろしくお願いします!

 

既読 こちらこそ!また来てね?  

 

今日

 

  黒木さんすみません、今お時間宜しいですか?

 

既読 はい?  

既読 どうしたの?  

 

  まずは本日は日本のメディアが無礼を働き申し訳ありません。

  お休みのところお騒がせしました事、深くお詫び致します。

 

既読 別に気にしてないよ?  

既読 ご飯食べてる時も追い掛け回されたから全然?  

既読 でも演技上手かったでしょ  

 

  その件でご連絡致しまして

 

既読 何も気にしてないから、普段通り?  

既読 話してくれると?  

 

 

  ありがとうございます

  先程上から連絡が来まして、黒木さんに状況を説明しろと、

  多局にて明日の朝イチで特番が複数組まれるそうです。

  出演に権利団体の方や専門家が出るそうで

  恐らく先程の件もですが、演技の件にも解説が入ります。

  放送されれば黒木さんのイメージダウンに繋がり

  当局としても懇意にしていただいております方のイメージダウンを

  避ける為に特番を組む予定です。

 

既読 それで?  

 

  誠に恐縮なのですが、朝の特番にご出演頂けませんでしょうか。

 

既読 30分お時間を、シャワー浴びて考えます  

既読 お待ちください  

 

  御検討いただきありがとうございます

  出演料に関しましては上の方からお望みの額をと言われております

既読 只今戻りました  

既読 出ましょう  

既読 出演料は要りません  

既読 ただ炎上覚悟で話したい考えがあるんです  

既読 必ず燃えますので上に確認願います  

 

 

 

 +  Aa           

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『おはようございます、月曜日朝モーニング・ジャパンのお時間です』

 

『本日ですが放送は八時までを予定しており七時から特別ゲストをお迎えして急遽昨日起きました出来事についてお話していく予定です』

『ではまず昨日のニュースからお伝えしましょう』

 

『まずは、ご存知の方もいらっしゃるとは思いますが俳優でアメリカロサンゼルスにて活動中の黒木優氏が緊急来日いたしました』

『まずはVTRをご覧ください――……

 

『七時になりました、それでは本日特別ゲストをお呼びして昨日ありました黒木氏についてお話していくのですが、いえ……年甲斐もなく緊張しておりまして、申し訳ありません。テレビには今は映っていませんが、私の目の前にはもう既にいらっしゃいますから。正直私も動悸が凄いです』

 

『ではゲストをお迎えいたしましょう。こちらへどうぞ』

『どうも、おはようございます』

『ええ……本日は黒木優氏御本人にゲストとして御越しいただきました。本日はどうぞよろしくお願い致します』

『はい、こちらこそよろしくお願いします』

 

『緊張なさってます?』

『全米に放映された時に比べたらそれほどでもないですね? ただ、役ならまだしも素の口調をおあつらえ向きに作るのは苦手でして』

『なるほど、確かにこのような番組に出られるのは初めてとお聞き致してます。楽にお話して頂いて構いませんよ?』

『流石にこう、ニュース番組の雰囲気の中、一人だけコメディアン演じるわけにもいかないですし。これがもっとふわふわな番組なら私も砕けますが、今日はこのままでも構いませんよ?』

『わかりました、ありがとうございます』

 

『ではまずご質問なのですがこちらのVTR。……………………ご覧になって頂いたのは昨日の映像ですね。まず日本に帰国されました理由というのは何か深い意図があるのでしょうか』

『本当に深い意味は無いんですよね。同窓会に誘われて、ロサンゼルスから飛行機で来ただけ、私としては飲みに来ただけなんです。それで居酒屋で飲んで出たらこのような場面に出くわしたので、どこでバレたのかと考えたくらいです』

『でしたら公表も?』

『公表したら空港が大変な事になると思いましたので。映画の撮影ならまだしも、ちょっと家から飲みにいくだけでテレビ局に伝えます? 距離は遠いですが、そんな感覚ですよ?』

『な、なるほど……? では、今ネットでも噂されております男性問題についてお聞きしたいと思いますが――……

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 男性権利、男性軽視はさておき、性的搾取は私の叶えたい願いである、この世に様々な性癖を生むという物と真っ向から対立する。

 コンテンツに向けられる視線が自身に向けられる可能性に拒否反応を示す性的搾取問題と、新しい性癖を生み性的消費を発生させ男性への性的な視方を増やす私のしたいことは分かり合えない。

 性癖増やしたいという考えはアンジェ、ミラーシャにも伝えていない事であるためテレビで放送するつもりはないが、私とは分かり合えないという態度は早々に取っておきたい。そういう態度を取ればあとは勝手に騒ぐだけ、最悪日本は切り捨てないといけなくなる可能性は孕んでいるが。

 世界まで燃え移らない事を私は祈ろう。

 

「男性をエッチな目で見ちゃいけませんなんて生き物なんだから普通では? と私は思うよ」

 

「性犯罪を促してる訳じゃないから、強姦なんかは犯罪。でも女性は男性をエッチな視線で見る、男性だって女性をそういう目で見る。それは生き物として普通な事では?」

 

「そもそも映画は男性搾取だっていうけど、それなら映画で搾取されているのは私であって問題提起する男性じゃない、他人がなに言ってるの。アニメもゲームも全部そう。私は良いんだからいいでしょう」

 

「私に向けられる視線をこちらに向けられたくないって、私に自己投影してそういう目線で見られたくないって人は悪いけど、私から言わせてもらえれば自意識過剰が過ぎる」

 

「私は顔だけで魅せてる訳じゃない、仕草も雰囲気もそういう見せ方も全て、使える物全て完璧に仕上げてる。私は世界で一番女性を魅了できる、断言できるよ。そういう自負を持ち合わせてる」

 

「そこまで仕上げてる存在に向けられる視線を、その方向に一切努力していない男性が同じ視線を向けてもらえると思わないでほしい、勘違いも甚だしい」

 

「私はその方向に人生をかけて歩んでいる。本気でこんなこと思ってなかったら普通に考えて映画であんな演技できないから」

 

 この件でテレビTKは何故私と手を切る事を選ばなかったのか、なぜ放映することを選んだのか、私には局の上の考えはわからない。だが、まずは放送が終わるまでは考えを伝えよう。どの程度炎上するか少し不安ではあるが、取り敢えず日本でのホテル住まい御延長だ。

 またこの件については、流石に独断で行うわけには行かず、所属してる会社にも確認を取った。そちらの方も問題はないそうだが、何を考えてるのかは定かではない。

 二人には色々謝り倒さなければいけない。……こちらが倒されることはないよな、ないよな?

 

 



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Take017

 男性への性的搾取問題、私が発言した内容は自分でいうのも憚れるが燃えた、大変燃えた、予想通りアメリカのセントラリアも燃え尽きるくらい燃やされた。日本は権利を主張する男性の間とアンチ、そして一部女性間で広く浅くという形で燃え盛っている。

 

 一方で世界の方はよくわからない方向へと進んでいた。ローマやロンドンの大火のように燃え盛っているのは男性性的搾取反対団体(搾精属性NGマン)と女性の権利撤廃を求める過激派男性権利団体(マスキュリスト)。そして過激派マスキュリストで主に燃えてるのはアメリカだった。

 暴動にまで至ってはいないがロサンゼルスではプラカードを持ってるデモ隊に私の画像が燃やされてるという次第である。

 そしてそれら過激派と性的搾取に異を唱える反マスキュリズム団体(搾精属性バッチ来いマン)。これらが私のセクシー風画像を掲げて対抗デモを行っている。

 浅く広く燃えているのが日本、局所的に激しく燃えているのが世界である。

 

 ぶっちゃけいっぱい種類があってよくわからん。そして私は反マスキュリズム団体筆頭になっている、らしい。

 私は正直なところ搾精は有りだと思うがメイン属性はM男向けを据えていただきたい、搾精は付け合わせだ。

 

 私も整理するために、一からざっくり説明しよう。映画が出る前の世の中には搾精NGマン(三擦り半)とマスキュリスト、男性解放団体(メンズリブ)がいた。

 

 三擦り半は見抜きNGと見抜きの元となる表現自体NGを掲げている団体。

 マスキュリストは過激派と穏便派に別れ、過激派マスキュリストは男女の性差別からなる女性の権利の剥奪と男性権利の増強を掲げている、何を剥奪したいのかは知らん。

 穏便派は女性ばっかり優遇しないで取り敢えず男性の権利も認めてクレメンス。

 一番マトモな男らしく家を守るより自分らしく仕事したいんだけどと男らしさからの解放を訴えるメンズリブ。

 

 そしてその三つ巴の時代に私の出てる映画が生まれて新たな思想が生まれた、それが反マスキュリズム。

 断っておくが私が広めたわけでもないし、作ってもいない、存在もさっき知ったばかりだ。いつの間にか出来ており、崇めたてられていた。

 セクシー画像を掲げられて私のドスケベボディが世界に知らしめられる時点で私もある意味被害者である、全裸ではないからセーフという訳ではない。

 今さらではとかいう突っ込みは拾わん。

 

 でだ、映画の私のように従来の男の枠に囚われずに自分らしく生きる、その姿はメンズリブの心を掴んだらしく、曰く男らしく生きるというのは自分という存在に対する裏切りらしい。ワケワカンナイヨーッ!

 ただここでの男らしく生きるというのは前世の男らしさとは違い家庭を守る等の意味となる。前世の女性らしさを想像した方が分かりやすいか。

 

 次に男という存在は権利を求めなくてはいけないほど弱い存在ではないとの主張、自分を正しく魅せれば権利など必要なく本来の自分を表すことができる。そしてこの考えと映画と、何故か私のプライベートに感化されて合流したのが穏便派マスキュリスト達。

 がっつり女性にサービスしてた件は触れず黒木優という存在らしさで片付けられたのは不満ではある。ただ反マスキュリストではないと言ってしまうと私の人生は終わる、全方位から集中砲火をくらう。

 

 そんなわけでアメリカ、世界では三擦り半とおマスキュ連合VS反マスキュリズムという構図が出来上がり、バッチバチに争ってるらしい。

 私の発言は男性の権利を陥れる発言と考える者と、自分らしさの表れであり権利を陥れるどころか女性と男は対等であると示していると考える者で争ってる、らしい。

 先程かららしいと連発してるが、私に言わせてもらうとどっちもようわからん。そういう思想の考えは幾ら話しても平行線ではなかろうか、どちらの思想でもないのだから私に理解せよと言われても無理な話だ。

 

 要は世界の方は暫く放っといても何とかなりそう。何とかとかなりそうだな、ヨシ! 問題は日本である。

 

 何故日本では浅く広く燃えているかというとだ、まず朝の八時まで放送した内容に対して他のテレビ局が全て批判へと回った。

 権利団体の人と専門家を呼び、私の発言を取り上げて、叩き上げられる。やれ自尊心の塊だ、ナルシストだ、自意識過剰はどちらだと映画の告知を行っていた番組の手のひら返しようときたら怒りを通り越して笑えてくる。

 まぁまだそれはいい。その時その時の時勢がある、それは許そう。

 しかし性的搾取へのコメントを悪意ある編集で男性権利への言葉へとすり替え、それを勘違いした大勢のマスキュリストが燃料を持って燃やしに来た。マスコミと新聞社によるものだ。

 

 男性への三擦り半、……早漏。早漏とは殴りあっても良いんだがマスキュリズムとは困る、そも前提として日本でも世界でも私はその辺りは一切否定どころか触れてすらいないし、権利を訴えるのは正統性があり変な要求でなければ良いと思う派である。

 協調性がありすぎるのか、出る杭は打たれる文化なのか反マスキュリズムという思想は日本に生まれていない。つまりヘイトを此方に向けるマスキュリストの相手も私がしなければいけない。

 

 そして気が付けばテレビTKの入り口は男性のデモ団体が現れパネルを持って占拠される。ホテルへと戻ることが困難になり、私はそれを貸し出された部屋でタバコを吸いながらテレビを眺めている状態。字面では大人しくしているが、割とストレスは我慢の限界である。

 言ってしまえばキレそう。

 

 飛行機に関しては放送の朝のうちにアラビアンな女性に断りを入れて、飛んでいってもらった。その際に事の顛末を説明すると力になって欲しいことがあったら言ってと言われたが、正直この問題では頼りたくないというのが本音である。

 

 そんなストレス故か口の悪さも八割増し。デモ隊の様子をカーテンの隙間から見れば参加しているのは身綺麗とは言えない男性ばかりだ。歳は若者から中年まで幅広い。

 ハゲ、ブサイク、チビ、デブ。こんなのは本人の努力でどうにもなる。ハゲは往生際悪く残さずスキンヘッドか坊主にしたらいい、ブサイクとチビは兎に角愛想よく性格よく振る舞え、デブは痩せろ。それだけだ、それに向かって努力するだけである。

 努力もしないで訴える存在なんて醜い事この上無い。

 

「男性権利侵害反対!」

「「「反対!!」」」

 

「男性軽視反対!」

「「「反対!!」」」

 

「黒木は即刻謝罪せよ!」

「「「謝罪せよ!!」」」

 

 女性に勝てないポークビッツが調子に乗ってんなオイ。……いかん、いかんいかん我慢である。私が出たって良いことにならない。

 その様子を撮影しているテレビ局。お前らのせいだからな。

 

『黒木さんは何もアクションを起こさないままです』

『そうですか、どう思います?』

 

 我慢、我慢である、こんなときはエッチなことを数えるのが一番だ。

 

『男性権利について発言しといて何も言わないとか本当酷すぎですよね』

「失礼します。黒木さん、お昼は何を召し上がられますか?」

 

 テレビから聞こえた些細な一言。堪忍袋の緒を緩めた瞬間に聞こえた声。そしてギリギリまで溜まっていたものがプツンと弾ける感覚だった。

 

「は?」

「黒木さん?」

「はあぁ?」

「え、ちょっ。ちょっと! だめです! 止まってください!! 皆止めてー!!」

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『聞こえますか?』

『黒木氏が滞在しているテレビTKの前ではデモが行われております、ご覧ください』

 

『本当黒木氏からは何かアクションはないんですね』

『今のところは。報道陣が詰めかけてまして……えぇどこもスタジオと話してるようですが、あ! 黒木氏、黒木氏がテレビ局から出てきました』

『カメラさん! カメラさん写せます!?』

 

『手には何やら……あれは、拡声器でしょうか? 拡声器を持っているようです。ちょっ、私達もあっちへ行きましょう。黒木さん』

『お願いします』

 

『あ、黒木さんはデモ隊に近付いて行っています! 正面からデモ隊に向かって歩いていっています! 何やら話があるようです。黒木さん! 黒木さん! 黒木さんすみません』

 

『じゃかあしいッ!!』

 

『ひゃっ!?』

 

『どら本人来たったぞ! 言うてみぃや!』

『目の前まで来たるか? ほらはよ言えや!!』

 

『……あの』

 

『さっきまでの威勢はどないした!』

『舐めとるなら出るとこ出たるぞ!!』

 

『……すみません』

 

『おどれゃ吐いたツバ飲めんぞ、わかっとんのか!』

 

『……すみません』

 

『さっさと謝らんかい!!』

 

『すみません』

 

『………………はぁぁ』

 

『……え。あ、黒木さんがこっちに来ました』

 

『今スタジオに繋がってんの?』

『あ、はい。それで黒木さんにインタビューがありまして』

『民放で捏造報道して楽しいか?』

『……あの』

『お前私のコメント知ってる?』

『はい……知ってますけど』

『私男性軽視とか男性権利とか言ってた?』

『あ、いえ……』

『じゃあなんでどうしてここに居るの? トンチキなデモ撮って何したいの?』

『……すみません』

『男性虐めて食う飯は美味いか?』

『……すみません』

『スタジオはなんて言ってんの?』

 

『…………失礼いたしました。音声が乱れましたことを深くお詫び申し上げます』

『続きましてですが――……

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ1130

 

 

36:名無しの映画監督 ID:liVQCaM8L

【速報】ヤマネ屋で放送事故

https://www.mytube.com/watch?v=1145141919

 

37:名無しの映画監督 ID:XugiSSlCi

生きてた、嬉しい

 

38:名無しの映画監督 ID:RZ37oMZRJ

元気で良かった、ぶちギレてたけど

 

39:名無しの映画監督 ID:ugHmhOFXu

デモ隊は地声なのに拡声器で、本気でキレ散らかしてるの笑っちまった

しかも目の前で叫んでるし

 

40:名無しの映画監督 ID:uBQoix/RO

少し痩せた?

 

41:名無しの映画監督 ID:qKT7Wyyl4

しかも本気で叫んでる

 

42:名無しの映画監督 ID:vighlLI3a

優君って関西なんだ

 

43:名無しの映画監督 ID:GChNbHlA0

いつも思うけど、やること為すこと男らしくないよね

かといって女らしくもない、貶してる訳じゃないよ

 

44:名無しの映画監督 ID:cG0vFLK1l

こないだ都内で同窓会してなかった?

 

45:名無しの映画監督 ID:+1ZtIceLl

あれ? 何故関西の言葉?

 

46:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

よせやい照れるぜ

 

47:名無しの映画監督 ID:ba2HHJPNF

まま、ええわ

 

48:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

ちな初カキコ

 

49:名無しの映画監督 ID:m0WlmlbRl

ん?

 

50:名無しの映画監督 ID:yoprJxxBS

なんやこのオスガキ

 

51:名無しの映画監督 ID:bl2XqiQxg

しかしスタジオに向いた瞬間切るとか中々やることじゃない

 

52:名無しの映画監督 ID:l+kVCcESk

本物?

 

53:名無しの映画監督 ID:2IgbRAMtl

マジ?

 

54:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

おらよ ちゃんとID入れてやったぞ

保存しとけ

 

写真:盗撮風

 

55:名無しの映画監督 ID:jeyW2nDHw

え? 本人?

 

56:名無しの映画監督 ID:Jph5gMBx9

マジかよ

 

57:名無しの映画監督 ID:fdGgIAaRM

ID以前にこの頭の悪いアングルの撮り方は本人の証拠

 

58:名無しの映画監督 ID:rv9TzQlsc

股下から覗き上げて顔見せながらピースして手間にズボン越し股間アップとか馬鹿じゃん頭おかしい、本当天才かよ

 

59:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

股間とか言うなや、見せてないんだからズボンと言え

ズボンならいくら見せて構わん

 

てなわけで今からテレビ局に片っ端からリア凸するわ

 

60:名無しの映画監督 ID:1ZxrET69v

男優が過去に真似して写真撮ってたけどやっぱり写真の雰囲気が別格

世界よ、これが日本の俳優だ

 

61:名無しの映画監督 ID:QfSv5W/n3

比べるのも烏滸がましいわ、もっと下さい

 

62:名無しの映画監督 ID:v15VayLfX

足裏お願いします

 

63:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

話聞けや処女がよぉ

テレビ局に凸するって言ってんじゃん

 

 

 

 

 

 

でもサービス精神いいからあげちゃうんだな、これが

写真:足裏

 

64:名無しの映画監督 ID:fnE6WePBq

最高

 

65:名無しの映画監督 ID:AShppN8kF

言葉と裏腹に心底嫌そうな顔してるのが堪らない

 

66:名無しの映画監督 ID:giCgBeFLN

これどうやって撮ったの?

 

67:名無しの映画監督 ID:D/MsFYZPB

ネットで口悪い男、リアルでどちゃクチュ天使、映画で王様とか

好き大好き愛してる優くん結婚しよ

 

68:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

床にスマホ置いて靴脱いでセルフタイマーでピースして顔見せ

お前はバイブと結婚してろや

 

行くのは富士テレビ、アサヒテレビ、テレビ日本、TTBS

最初の行く場所は安価>>95

 

NTKは中立だから行かない

持ち物は拡声器と身体

 

69:名無しの映画監督 ID:bc9sBYmD3

何が始まるんです?

 

70:名無しの映画監督 ID:W27qh4bIU

知らんのか

 

71:名無しの映画監督 ID:3ZF7m6QAR

私にもわからん、本当に申し訳ない

 

72:名無しの映画監督 ID:bacYKVmP/

あー俺ファンになっちゃったよー

 

73:名無しの映画監督 ID:vLPGaKihk

御本人降臨でテレビ局に凸実況とか祭りか?

 

74:名無しの映画監督 ID:yL+tfe1Nr

他スレに言い触らしてこい

 

75:名無しの映画監督 ID:GzckPkjiN

祭りか、久しぶりだな

 

76:名無しの映画監督 ID:8GJxDZpn4

どこから行くの?

 

77:名無しの映画監督 ID:9m6x4zKu4

記念パピコ

 

78:名無しの映画監督 ID:rdZHmsl2O

まぁSNSの女性は味方やし

荒れてる女は正直ネカマ臭い

 

79:名無しの映画監督 ID:P73MQG1tC

行き先安価かい

 

80:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

取り敢えず上の連中引っ張り出して謝らせる

生放送してるならスタジオに乗り込んで問い詰める

まぁ門前払いされると思うけど、ちゃんと正面から行くからね

アポイントメントはないけど

 

因みにテレビTKのチャンネルで全て着いたら生映像を流すよ

 

81:名無しの映画監督 ID:ukhRtSRo+

行動力と思い切りが男のそれじゃない

 

82:名無しの映画監督 ID:hF2zcBqAS

普通は正面から凸しないし、テレビTKも頭おかしい

 

83:優くん(ほんもの) ID:TK3UzvWvl

デモ隊見てたらテレビ局の前に行っといてくれ

どっちの雄チンポが優れているか勝負しようぜ

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 テレビTKのスタッフと共に向かった富士テレビ。テレビ局の正面入り口には掲示板の情報を確認しただろうデモ隊と、それを抑えるように警官が待ち構えている。

 ロケ車から降りて正面から堂々と近づいていけば抗議の声は大きくなるが、こちらも負けじと拡声器を構えて声を張り上げた。

 

「男性の皆さん! こーんにちはー!!」

 

 元気よく声をかけたが生憎返事はない。挨拶代わりの抗議の言葉を聞いて、警官が抑えるデモ隊へと近付いていく。

 

「デモの発起人出てこーい!」

 

 声を荒らげる集団に拡声器で訴えると、一人その集団から身体を出す。中年の痩せている髭面の男、身長は私より高い。ぶっちゃけダンディーなおっさんである。

 

「私です」

「言いたいことがあるんでしょ? テレビの前で話そう?」

「……テレビは」

「ネットで叩くのは良くて、現実で一人だと怖くて話せませんってことはないでしょ」

「……わかりました、話します」

 

 そうして、全国放送されているだろうテレビTKのカメラの前に私と男性が立つ。

 

「それで、何がダメなのか教えて?」

「男性の性的搾取はよくないと思います」

「何故?」

「自分にその視線が向けられることに耐えられない」

「気持ち悪いとか無理とかそういう感情論じゃなくて、れっきとした意見あるの偉いじゃん」

 

 生理的に無理、気持ち悪い、そういう女性を叩きたいだけで動かされていないだけで私としては嬉しい。確固たる理由があるのなら、私もおふざけしないで答えないといけないだろう。馬鹿にしながらは流石に性根が悪い。

 

「それに対する私の、私に向けられる視線を向けられることはないって理論聞いてどう思った?」

「100%向けられないにしても、少しでも向けられるのが嫌です」

「でも、ぶっちゃけそれってさ。……どうしようもなくない? 社会が間違ってるとか、思想がどうとかじゃなくて、男に生まれた以上どうしようもないことだと思うけど」

 

 前世で男と女は切っても切れない仲だったように、今世もそれは変わらない。女には男が居ないと生きていけない、子孫を残せないように、同様に男も女が居ないと生きていけない。

 人類史に遺伝子を残さない選択肢もあるにはあるが、早めに人生に見切りをつけて諦めてその選択肢を選ぶ者は少ないだろう。選ばざるを得ない場合はさておき。

 

「確かに私の影響で視線は強くなるかもしれないけど決して0%にはならないと思うよ。神は女を作り、釣り合うように男を作り出した。女と男は一心同体みたいな物だね。まぁ0%に近づけるために私にやめろっていうのは間違ってはいないと思うけどさ」

 

 彼らにも思うことはあるのだろうか、その言葉を聞くと雰囲気も落ち着きを見せ、気持ち静かになる。私自身私の言葉が正しいとも思わないし、個人の考えの範疇だがそれに耳を傾けてくれるだけでもありがたい。

 しかし、抗い続けるよりも受け入れた方が人生スッキリすると思うのだがどうだろうか。

 

「貴方はどうして女性のいやらしい視線に耐えられるんですか?」

「んー……良い男だから?」

「良い男?」

 

 彼が神妙な顔のまま私へと問いかけた。

 

「良い男って言うのは何ですか?」

「それは自分で見つけるもの。良い男とは何か、男の美学とは何か」

「男の美学」

「女性にモテろってことじゃなく、もっと男として輝く。こんなところで自分の価値を落とさないで、自分が惚れるくらい良い男になろうよ。因みに私の中での良い男っていうのは、男性にも女性にも惚れられる存在……? 新しい時代を作る、そんな存在かな」

「自分の価値…………女性にモテるにはどうしたらいいですか?」

「んー……男にモテないやつは女にもモテない。まずは男にモテよう。頑張っておじさんもなろう? ちやほやされる男を目指すんじゃなくて、喉から手が出るほど真剣に求められる、そんな良い男」

 

 それを聞き届けた彼はデモ隊を解散させる、するとポツリポツリとデモ隊は居なくなり、最後は私達と警官だけが残った。警備という仕事への労いを警官にしっかりとして、テレビ局へと入っていく。

 

 入り口で門前払いされると思ったが、テレビ局のエントランスホールにお偉いさんと思われる方は居てくれた。

 その場で相手側から行われる謝罪と発言の撤回を受け取る。やっぱりいつの時代もごめんなさいとちゃんと謝るのは大事だ。掲示板では皆から言われていたが賠償金云々、辞任云々を求めるつもりはない。

 

 賠償金をくれるくらいなら性癖を広めるのを手伝ってくれ。伝えてないが求めるのはこれだけである。

 先の男との問答とテレビ局の上の人が全国放送で謝るのを見て、燃えている問題も鎮火されるだろう、鎮火されると思いたい。

 

 余談ではあるが全てのテレビ局を回り謝罪を受け取った後、テレビTKの社長へ感謝を伝えたところ縁を切らなかった理由は義理人情からではなく、成功したときのリターンが果てしなく大きいから、燃えると判断したのは男性の一部だけであり大多数の男性と女性の大半が傍観すると考えたことから活動停止まで追い込まれる事はないと考えていたからと教えてくれた。

 詰まるところお金のためである、今回の騒動の中でも独占出来た事によるスポンサー料のリターンは相当だったとのこと。

 

 正直なところ、それを聞いて安心した。義理人情であれば大きな借りが出来たと思ってはいたが、一連の騒動を付き合いのあるテレビ局が金稼ぎに利用してくれたのなら借金の負債を背負った気分も軽くなる。借りには変わりないので何処かで返済しないといけないけれどもだ。

 

 その翌日。私は鎮火を見届ける前に東京からロサンゼルスへと飛び立った。そして、到着してから土産の類を購入してないことに気が付いたのだった。

 

 



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Take018

「優くん、大ファンです。ハグしてもらえませんかぁ?」

「あ、はい……」

「やったぁ嬉しい、愛してます。これからも応援してるから、頑張ってね?」

「あはは……ありがとう……」

 

 ロサンゼルスへと帰って来てから三日経過した。

 

 羽田発の飛行機はテレビ局が用意してくれたロサンゼルス行きの普通の便。その飛行機のファーストクラスで帰って来たわけだが空港についたら色々と大変でした。一言で言うならニューヨーク以上に()()()揉みくちゃにされた。

 

 帰ってきてからの事について一から順に話したいのだが、ぶっちゃけ困り事はナンバーツーはこれ。

 

「握手してもらえませんか……?」

「はい……。応援ありがとう……」

「嬉しいです……! ありがとうございます! 大好きです!」

 

 字面だとモテモテだろ? これ皆男なんやで。

 私より一回りも大きい、筋肉モリモリマッチョマンの変態が腰をくねらせて握手とハグを求めて来てるんやで。

 

 おかしくない?

 何故?

 私悪いことした?

 どうして?

 どうしてホモくせぇ男からモテないといけないんだ? 日本で言った男にモテろってそういう意味じゃねぇよ馬鹿、どうして性的な意味になるんだよ。

 

 若い頃のショワちゃんやドゥェインジョンソンのような男がノッシノッシ歩いてきて、ハグをせがんで手を差し出すんだ。そしてこいつらやっぱり手の力がおかしい。腕なんて丸太のように太い、胸筋もパツンパツンである。

 抱き付かれられたらもう恐怖でしかない。ちょっと良い匂いするのも悔しい。

 

 良い身体してるんだからもっと男らしく、いや女らしくになるのか? なよなよしないでハキハキ話せや。

 ファン故に無下に扱う事も出来ないのも、胃がやられる一方である。物理的にケツを狙われている訳でないが精神衛生上宜しくないのが困り事一つ目。

 

 二つ目の前に、例の性的搾取問題は長らく引っ張った結果、世界と日本は何とかなりました……が完全に鎮火は出来てません。

 

 日本の方は火種は小さくなった、テレビ中継が効いたのかはわからないが同様に男のホモくせファンが増えた。

 っていうかこっちの方が頭が悪い、SNSでエゴサしたところ私のケツの穴の話をしてたのでガチだと思う、もう暫く日本には行かん。

 残ってるのは真に女性嫌いな男と私のアンチ。まぁあとは知らん、母数減ったから無視である。アンチ零の全肯定ご都合主義になるわけない、ファンタジーではないからね。

 

 さてさて問題は世界、というかアメリカロサンゼルス。

 ロサンゼルスは二つに、いや九対一くらいに分かれた。多いのは反マスキュリズム。正直外を出歩けるのかと不安であったが、前世の女性によるデモ宜しく男性による暴行はない。専らこの世界で暴行を行うのは女性であるのが起因するだろう。

 

 正直油断は出来ないがロサンゼルスはお膝元。制作会社からの通達で無視でとの指示を頂いているので、私は無視する。私は、だが、私の教徒が許すかな。

 とまぁ世界情勢はこんなことろ、目下の話題を無視すれば無事映画も公開できそうで何よりである。

 

 三下の捨て台詞のような冗談はさておき次に日本のテレビ局だが、私がドラマ出演やテレビ出演があったときは他局でも収録が行われることになった。受けるかはさておき他局も撮影する権利をもらった訳である。

 

 これは客観的に見てテレビTKが独占を手放したことになるが、風の噂ではお国のなんちゃら省から独占し過ぎはいけませんよと遠回しに言われたらしい、これは大本営発表である、戦略的撤退である。

 要は今回のでちょっと、がっぽり稼ぎ過ぎちゃったとのこと。

 今回で作られた私のテレビTKへの貸しは優先的に収録して欲しいという扱いで撮影を行える立場にする、ということに落ち着いたが今までの付き合いがあるのだからそれくらいは、というところではある。まぁ無くなった物は抱えなくても良くなったので肩の荷は降りた。

 

 個人的にボロクソ言ってくれたコメンテーターに笑顔で手の平ドリルかよと突っ込みを入れたいが出禁になりそうなのでやめておこう、第一に暫くはゆっくりと過ごしたい。

 

 そして困り事ナンバーワン。土産楽しみにしてたミラーシャとアンジェ。

 

 アメリカへ入国の翌日、制作会社のリラックスルームで人の顔を見るなり土産は? と言ったミラーシャと何食わぬ顔でおかえり、土産は? と言ってたアンジェリーナ。

 お土産のことなどすっかり忘れ去ってしまっており、ヤベッと汗をかいたのと共にベッド云々忘れてて良かったと安堵した。

 

 今回の件を制作会社に確認する際に、電話口で二人が彼女らなりに真剣に情報収集と火消しに回ってたのかを聞いて二人のそれが冗談なのだと理解している。

 

 買うのを忘れていた件について、埋め合わせとして個別にデートを求められ、それは二つ返事で引き受けた。

 アンジェが12月24日、ミラーシャが1月7日。12月24日はクリスマスイブで理解できるが1月7日はなんぞや。まぁ二人ともセッティングするとの事なので楽しみである。

 私はクリスマスにはケンタッキーが食べたい、アメリカにその文化があるかは知らん。

 

 さて当の私はそれまで暇である。収録も無い、仕事があるわけでもない、趣味という趣味があるわけでもない。何かしてないと本当価値のない生活を送ってるなと自棄になりそう。

 

 そういえば最近髪が伸びてきていた。家にある鏡で確認すると肩に触れていた髪は今では肩甲骨くらいまで長くなっている。正直、前世から言わせてもらえれば丸坊主にしたい、ソフトモヒカンくらいまで刈り上げたい。

 

 繁々と自分の顔を見るが中性的な出で立ちを通り越し6:4から人によれば7:3で女性寄り。

 お高いリンスのお陰か黒髪は艶っ艶であるし水平に切り揃えられた前髪は和人形を思わせる。分かりやすく言えば女装物の男の薄い本位出てそうな顔、初月くんとかそこらへん。前世なら女装物コスプレで天下取れた。

 

 しっかし自分でもエロい顔してるなぁと見るが、自分の顔なんだよな。自分の顔で性的興奮はしない、生まれたくてこの顔であるわけでもなく、自分でキャラクリしたわけでもない。

 ナルシストではないのだが、エロ同人やCG集に居そうな顔だとちょっとこう、ね?

 

 因みに、海外ではむだ毛を処理するのはエチケットというかマナーである。そして私も勿論処理している、方法はブラジリアンワックス。上も下もツルンツルン、初回はどちゃクソ程痛かった。泣きそうになるほど痛かった。

 

 そして冒頭で説明したムキムキの男性が女の様にくねくねしたりする理由、それは女装はオシャレであるという価値観が浸透しているからと思われる、決してホモなわけでは無いと思いたい。

 前世で女性が男装をするようなものだ。逆に一般的に女性による男装は変態という烙印が押されている。男装女子をメスへと分からせ物、良いのにな。

 

 男装ではないが前世の男のようなボーイッシュ女子は問題なく存在する、代表的な例がアンジェリーナだろう。

 彼女は女性の象徴たる胸が大きいだけで顔付きは完全にボーイッシュのそれ。ミディアムストレートの髪型だが毛先を遊ばせて胸を張る様に立てば身長の高さと脚線美、腹筋と相まって今世では実に女らしい。

 女らしさは前世の男らしさとは強さの表れであり、それに近づけるボーイッシュ系女性は人気のビジュアルテーマ位置に居座っている。

 なのに彼女は中身初心であり、そのことのギャップが個人的にはたまらないのである。

 

 それに対を成すような美しい系も存在しミラーシャが該当するだろう。

 強さよりも男性を受け入れるような包容力を強調させる出で立ちもビジュアルテーマとして中間に位置していたが彼女の手によって上から数えた方が早いまでに押し上げられている。

 包容力という強さと対成すものでありながら高い人気があるのは当の本人の中身はパリピの皮を被った脳筋野郎だったから。

 

 片手で腕立て伏せってなんだよ、逆立ちして片手で支えるって何だよと突っ込みを入れたくなる彼女の所業。彼女の腹筋を撫でさせて貰ったのだが板チョコもびっくりなくらいバッキバキだった。

 蹴りでバットをへし折るのもおかしい。

 個人的には縦線があるくらいが好きなのだが、どうして周りの女はゴリラなのか。

 

 もう少し脂肪をつけてまな板といっても過言ではない胸に還元してほしいところではあるが、本人の前で言うとサンバだかマンボだかという格闘術をかけてくる、本人は一応少しは気にしてるらしい。

 

 しかし需要はしっかりとあり、二人の人気は凄まじい。間違ってもこの映画は私で支えてるんだわなどとは言えないし言うつもりはない。皆で出来上げた代物である。

 すまん、一作目は正直思ってます。皆で作ったけど、あれ私が脱いだからじゃね?って思ってます。

 

 さて何の話だったか、そう私の髪の話。

 煩わしいので後日切りにいかないと行けないだろう。

 

 であれば今日は何をするか。

 こんな日は昼間から呑むに限ると私の肝臓が訴えている。昼間から酒を呑んで酔っぱらえるという至福の時間、前世では考えられない。精神的に疲れてるから、呑んだくれて爆睡したい、そんな気分。

 

 クラフトビールの缶を開けると、脳汁と唾液が出る音が聞こえる。開いたそれを口につけてチビりチビり呑みながらパソコンのカーソルを滑らせた。馬鹿みたいに酔いたいときは馬鹿になれるコンテンツに限る。

 選ばれたのは、vtuberでした。

 

 馬鹿って言ってごめんなさい。違うんです、vtuber総統閣下が馬鹿なのではなくて何故性癖が未発達なのにお前ら居るんだよって意味です。

 小説は二世代前のサイトで、エロゲだって純愛しかないのにどうしてvtuberなる者が居るのか、これがわからない。

 一応調べるが前世のvtuber程稼ぐ者も居なければスパチャも中々飛ばない、あまり開拓できてない証拠だろう。

 

 取り敢えずなんだ、色々言うとするならば。

 男同士の絡みはてぇてぇくないです、ただのホモです。

 

 狂ったように流れるてぇてぇコメントに白い目を向けるのは私だけ。若干私によって狂わされつつあるvtuber界の猥談はシコシチュ語りではなく好きな体型であったが、その対象も男。

 語れるほど性癖が無いのだから仕方無い、生み出してはいるが全て私に対してなのはよくない傾向だ。第二、第三の私も現れて欲しいところである。

 そして男が男の好きな体型を話してるのは何も面白くないです、だがそれがいい。

 

 現実から逃げるためのお酒のツマミにはそんな目を背けたくなるくらい雄臭い物でいいのだ。

 

 視聴ページを開くと画面の中央に赤い髪の男と、保育園で働いてそうなお兄さん、角生えたオスガキ、男性教師が現れた。とてもキャラクターが濃い。

 

『最近良いなぁって思った人いる?』

『小生はぁ……やっぱり優くんであるな』

『『『わかるぅ』』』

 

「わからんで良い」

 

『もう、再認識した。マジイケメン、小生は優くんになら舐められても構わない。寧ろ小生がしゃぶりたい、金払うから舐めさせて欲しい』

『優くんって意外とこう、さ。押しに弱そうだよね』

『押し倒したら潤んだ目で見て来そう』

 

「ちょっと、やっぱり本当に頭おかしいなこいつら」

 

 正直男の娘なら全然あり。女装してドチャクソ可愛いのもイケる。ガチなのと掘られるのは勘弁願いたい、あと口に入れるのもちょっと……。

 イカンイカン、馬鹿過ぎて酒が捗る。でも…………こいつらに赤スパ投げたらどんな反応するだろうと、脳内の悪魔が囁いてしまう。

 アカウントにクレジットカードを紐つけてスパチャをぶん投げてみる。

 

「SNSで投稿…………っと、五万行ったれ」

 

 彼らのコメント欄に赤いチャットが表示された。

 

『わ、凄い赤スパありがとう』

『えー……ロサンゼルス住みの俳優(ほんもの)さん』

『え゛?』

『ははは。冗談だろ冗談』

『私ノンケやぞ? SNS見てみ、だって』

『えー………………黒木優公式アカウント投稿30秒前!! 私はノンケやぞ!!』

『終わったあああぁぁぁ!! ま゛あ゛あああぁぁぁぁ!!』

『なんで!? なんでなんでなんで!? なんでこんなの見てるの! こんなのッ!!』

『い、いえーい。優くん見てる?』

『こら! こら!!』

『認知されたあああぁぁぁ!!』

 

「……くそおもしろ。追い銭しよ」

 

 そうして、ちょっぴり投げ銭に沼ってしまうのは別のお話。クリスマスまではこうしてゆるりと過ごしていたい。

 

 

 

 



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Take019

 アメリカと日本のクリスマスは違う、ロシアと日本のクリスマスは時期が違うだけで似てる。

 優先順位が日本は恋人優先なのに対してアメリカは家族や親戚優先である。なのに何故アンジェリーナは私を優先したかというとつまりまぁ、そういう意思表示だ。

 

 1月7日はロシアでのクリスマスの日程だった。ロシアのクリスマスが違ったのは初耳である。

 ミラーシャも新年とクリスマスは祖国に帰らないでロサンゼルスに居た。家族よりこちらに居ることを選び私と居ることを選択したのも、つまりまぁ、そういう意思表示である。

 

 新年は三人でという話になり、結果年末年始は集まったのだがそれはまた今度話すとしよう。

 

 因みにこの話は二人とのクリスマスイベントが終わった後の回想であり、現在日時は1月の15日。映画が公開され順調な滑り出しを見せたので筆を執らせていただいた。

 

 まずは時系列に沿ってアンジェリーナから話していこう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 12月24日。最低が10℃程度から最高気温20℃と比較的温暖なロサンゼルスである。その日の九時にアンジェリーナとは待ち合わせをした。

 

 待ち合わせ場所は喫茶店。口コミで美味しいとのことだったので利用してみようかという次第である。

 服装は気負わず普段通りでというお互いの意見の合致から私も普段と変わらない服装。といってもアメリカじゃあ目立ちたくない時以外は白いズボンに薄いピンク、白のカッターなどしか着ない。

 今日は別に目立っても構わない日だ。

 

 食事も済ませる為に早めに行き、カフェオレを呑みながら景色を眺めているときに彼女は来た。

 ハイウエストの青いジーンズに真っ黒い革ジャン、中は白のノースリーブ。そして青いキャップにサングラス。

 

 あいつ普通におしゃれして来やがったな。

 

「気負わなくていいとか言いながらめちゃくちゃ決めてきてない?」

「い……いや、普段これくらいは」

「嘘つけ、普段の服装ってお腹出してるタンクトップと、ホットパンツの上からクラッシュジーンズの裾履きましたみたいなジーンズじゃん?」

「そういうジーンズもあるけど、今日はほら。気分転換で」

 

 わたわたしながら慌てるアンジェ。

 まぁ気持ちはわかる、異性の前で良い服装で格好良く思ってほしい気持ちはわかる。

 

「あれもあれで格好良いと思うけど、アンジェは今も格好良いよ」

「…………ありがとう」

「紅くなるにはまだ早いぞぉ」

「ふぐ……耳が痛い……」

 

 落ち着かせる為に溜め息をついては席に腰を下ろす彼女。

 

「お先にカフェオレを頂いてるよ」

「……では、私も珈琲を」

 

 朝の静かな時間で二人で珈琲を飲む。これといって目立ったことはないのだがそれに幸せを見出だせることはとても幸せなのかもしれない。

 

 朝食もそこそこに、飲み終えた後は二人で彼女の案内のまま、ショッピングと洒落込んだ。買ったものといえばお洋服。新しい服である、試着して彼女に似合うか見てもらいつつ選んだわけだ。

 露出のある服があるなら着替えて顔を紅くしてもらうのもありなのだが如何せん男性物で露出の多い服は少ない。

 

「開けて良いよ」

「ん……ちょっと!」

「どう?」

「前ッ! 隠して! 透けそうだから!」

 

 出来ることといえば精々透け気味なシャツで胸を透けさせるくらいだ。今世の男が胸を露出させるのは前世の女の胸と同様、性的ではあるが公衆の面前で行われるものではない。

 普通なら恥ずかしいことであるが、それくらい余裕なのが前世の男。海水浴場では上半身裸だからね、へっちゃらへっちゃら。

 

 彼女は必死に顔を紅くして背けるが視線は私の胸へと注がれている。若干……透けてるかな?くらいでこの反応である。

 

「アンジェのエッチ」

「私が悪いのか……?」

「私の胸は高いぞ?」

「1000万ドルまでなら、ポンと出すかな。それ以上は要交渉。ふふ、冗談だよ」

「冗談に聞こえない。そこまで高くもないしね」

 

 彼女を弄りつつショッピングを済ませお昼ご飯。彼女が予約したレストランで舌鼓を打つ。

 

 出てきた羊肉がとても美味しい。語彙力がないが、取り敢えず食べれれば何でもいいという人種なのでどんなのを食べてるのか上手いコメントは勘弁願いたい。間違っても食レポなんて出来ない人種だ。

 

 個人的には牛の肉であれば日本の食ったらとろける肉よりアメリカの食べごたえしか考えてない肉の方が好きだ。アメリカのお高いところは基本熟成肉だったり別ベクトルで大変美味しい。

 

 そんなこんなで、食べた後はミュージカルを見たりまた何処かで落ち着いたりとゆったりとした一日を過ごさせていただいた。彼女とミュージカルを見てる際に手を繋がせて頂いたのだが、手汗でしっとりするくらい彼女は緊張していたとお伝えしよう。

 

 ミュージカルはしっかりと静かに見る、マナーだからね。

 なのでこれといって説明することはない。二人で彼女の家で晩御飯を食べた後まで何も目立った事は無かった。

 

 先にネタバレすると諸兄が期待しているようなエッチな展開は二人ともありません。私は身綺麗なままである

 

 晩御飯はケンタッキーフライドチキンではなく、七面鳥の丸焼きを食べさせて頂いた。想像していた丸焼きとは違い鳥のお腹の中までパンパンに身を詰めたものだ。

 ベイビーサイズだったがそれでも4人前程度とよく見る大きさであるのに、本来なら10人くらいで食べるらしい。そこまで大きな七面鳥はあるのだろうか。

 

 とまぁ彼女の一人で住むには大きな家で、そこそこな量のお酒を呑みながらゆるりとしていたのだが。まぁ正直な話、酒も入れば眠くなる。

 

「ねぇアンジェ」

「なんだい?」

「眠いから泊まるわ」

 

 帰るのが面倒な訳だ。男友達の家で宅飲みしたようなつもり、このまま床で寝てしまいたい。

 

「え゛……?」

「エッチなのは無しな」

「うん……」

「残念がらない」

「残念なんて思ってないから!」

 

 シャワーを先に借りて、彼女のシャツを借りる。私のお洋服はお洗濯中である。意図せず裸Yシャツならぬ裸シャツになってしまった。因みに下着は付けている、残念だったな。

 

 続いて彼女が神妙な顔付きでシャワールームに入り、出てくればチャームポイントの髪はしっとりと濡れていた。

 

 髪を乾かせば普段通りなのだが、普段見ない姿は妙に艶っぽく、正直情欲を掻き立てられる。

 

「私はソファで寝るから、ベッド使って……?」

 

 おい、口調がメスになってんぞ。

 寝る際に彼女が伝えたことである。いやぁ期待させといてそんなことを言わせてしまうのは悪い。

 流石に悪男過ぎる。ちょっとくらいはご褒美をあげてもいいかもしれない、見方によっては拷問であるが。

 

「ベッドにおいで? 一緒に寝よう?」

 

 おらぁ! 半裸の男と添い寝やぞ! 喜べ!

 その言葉を聞くと彼女は彫刻のように固まった後、ロボットのようにぎこちなく口を開けた。

 

「一緒に」

「エッチなのは無しね、本当に無しだから」

「寝させて」

 

 そしてベッドに二人揃って寝た後に電気が消される。

 真っ暗の部屋の中、ベッドで寝る私とアンジェ。普通なら悪戯したくなるよね?

 

 私に対して遠慮してか、距離を取る彼女。その閉じられた太ももの隙間に足の爪先を差し込むと一瞬震えるが抵抗なくそこへと入ってしまう。入れて、足を絡ませ抱き付く。

 身体全体を彼女の元に寄せれば、彼女の湿っぽい吐息が頬へと当たるが真っ暗なので彼女がどんな表情なのかはわからない。

 

 まぁお詫びに頬くらいならキスしてもええかと、後頭部に手を回し抱き寄せるように顔を近付け頬へとキスを落としておく。

 雛鳥が啄むように数回キスを落とし彼女の頬へと頬擦りし、離れれば再びキスを頬に、そして汗をかいた首筋にも落とす。耳元へ唇を寄せて吐息を吐き、耳の後ろへと唇を寄せて深呼吸したこともあった。

 だが私が記憶してるのはいつの間にやら彼女の両手が私の腰へと回されておりお互い強く抱き締め合う形であったことと、彼女が手中に納めて肌から必死に離さないように抱き締め、私の頬に名前を囁きながら同じようにキスを落としてたことだけ。

 残念ながらそれ以降の記憶はなく恐らく私はそのまま本気で寝てしまったのだろう。

 まぁエッチなことはするつもりはないから仕方ない、据え膳が存在するのは前世だけである。

 

 そして朝、目が覚めれば両頬に柔らかい触感。ゆっくり目を開ければ彼女の豊満な乳房が視界に映る。要は抱き締められて彼女の胸に顔を埋めて寝ていたわけだ。こっちの方が嬉しい。

 

 視線を上げれば微睡む私の視線と彼女の視線とがあった。彼女の目は少し充血し、瞼も眠そうに閉じられようとしているが必死にそれに抗っている様子。

 

「おはよう」

「……おはよう」

 

 そんな雰囲気を察すればゆっくり頭も覚醒するが、再び彼女の視線へと目線を絡めると視線を反らされてしまう。

 

「寝てないな」

「あれで寝れると思う……?」

「……無理かなぁ」

「ごめん。あの、それと……」

 

 彼女が言い淀む。それが不思議で必死に目を背ける彼女へと私は身体を押し付けた、押し付けてしまった。

 

「何?」

「……だめ……あの、離れて」

「なんで?」

「その……当たってるから……」

「何が?」

「ごめん、言えない。とにかく離れて……」

「えぇいやだな」

「お願い……、当たってるから」

「だから、何が?」

「……………下半身」

「下半身? ……あ」

 

 自らの分身を感覚で動かせば、まぁ男ならわかる生理現象が下半身では起きていた。いや申し訳無い、これは不可抗力である。逆セクハラで訴えられませんように。

 

「あー……うんまぁ、生理現象だから許して?」

 

 後に調べると朝のコンニチハ! はどうやら男性にとってとてもとても恥ずかしいことらしい。諸兄らも添い寝して押し付けてしまう展開には注意されたし。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 さて、年が明けて次はミラーシャとのクリスマス。ミラーシャの方にどのような展開が待っているかと言えばだ。

 朝は同様に喫茶店で待ち合わせをした。アンジェと待ち合わせした場所とは違う喫茶店である。

 

 私の服装は同じ、割愛する。同じように彼女のことを待ち、待ち合わせ時間の三十分前に彼女はやって来た。

 

 白いタイトズボンとニットソー。羽織るようにカーディガンを肩にかけている。サングラスや帽子の類は身に付けていなかった。

 

「ユーシャ早いね? 待たせちゃった?」

「私朝はスイッチの入りが遅いから、先に来てスイッチ入れとこうと思ってね」

「ふふ、なるほど。何飲んでるの?」

「お先にカフェオレを頂いてるよ」

「じゃあ私は紅茶を飲もうかな」 

「でも、また服装決めて来たね?」

「だって好きな人とデートよ? ばっちり決めない人なんて女じゃないわ」

 

 やはりその辺りは前世とも変わらないだろう。

 

「今日はロシアを知ってもらおうと思って、昨日料理したの。…………それと聞いたわよ? アンジェのおうちに泊まったって」

「いや淫らなことはしてないから。エッチなのはNG、私とはそういうのはだめ。……というかよく喋ったね?」

「お願いして流れは吐いて貰ったわ、だってフェアじゃないと。彼女がしてないことを私がするのもなぁって思ったし、チキンだから出来てないなら遠慮なくするけどね? ……じゃあそういうことは無しで、色々期待しておこうかな?」

「期待するのはやめてくれ」

 

 喫茶店を出てからお昼までの流れはアンジェと変わらなかった、同様にお買い物のお時間である。

 違いがあるとすれば選ぶ服装と嗜好だろう。アンジェリーナは明るい服をチョイスしていたがミラーシャが選ぶのは暗めな色である。

 

 同様に彼女の前でマネキンになりながらショッピングをしたのだが、それが終わり次第私はミラーシャの家へと向かってた。

 彼女の家でご飯を食べようという訳である。

 

 レンガ作りの、またアンジェ同様に一人で住むには大きい家に住んでいたミラーシャ。全く、私の賃貸が物置に感じる広さである。

 

 お昼ご飯に出てきたのは甘い粥、クチャという料理。

 ナッツやらケシの実やら小麦を蜂蜜で味付けしたものであるが、甘さ控えめで美味しかった。彼女曰くロシアのクリスマスの伝統らしい。

 

 それを食べた後は二人でテレビを見ていた。

 

「ユーシャ、料理どうだった?」

「美味しかったよ? ミラーシャ料理上手いんだね」

「嬉しい。小さい頃、これで男を仕留めろってお父さんに教えて貰ったんだよ?」

 

 私と彼女の体勢はソファにもたれる私より身長が高い彼女の足の間にすっぽり収まるように座らされて私は足を伸ばしている。

 

 彼女はといえば私の腹に手を回し背後から抱き締めてる形であるが、さっきから頭を私の背中にグリグリと押し付けたり、うなじに鼻を埋めたりしている。両足も彼女の足が絡まされて正直逃げ出すことはできない、勿論逃げる気はさらさらない。

 

 本来なら匂いを嗅いだり、うなじに顔を埋めるのはセクハラで一発KOかもしれないが私は別に構わない。嗅ぎたければ嗅げばいいのだ。アンジェリーナも彼女の貪欲な姿勢を見習ってほしいところである。

 問題ないと認知されてからは絡まされた足の甲を彼女の足の爪先で撫でられたり爪先同士くっ付けたりとしたい放題、こう……もう少し胸があれば言う事ないのだが。

 

 そして今更気が付いたのだが、誰にも邪魔される可能性が無い場所で二人きりになるとパリピの仮面が外されハロウィンのようなド直球で好意を伝えてくる、本来の姿が現れる。

 自分で言うのも憚られるが、ブラックコーヒーが欲しくなる。

 

「大好き、ユーシャ」

「はいはい」

「ユーシャ」

 

 耳元で名前囁くのは勘弁してくれ。くすぐったい。

 

「何?」

「愛してる」

 

 艶っぽい声色で耳元で囁くとか、こいつ本気で堕とそうとしてきやがる。

 

「私のこと見て?」

「見てるよー」

「足りないの、もっと私を見て? 私の全部あげるから」

「うん今度ね」

「あぁ。ユーシャ好き。大好き」

 

 彼女の湿っぽい吐息が耳の中を濡らすので非常にくすぐったい。抱きしめられているので逃げようにも逃げられない。

 そりゃ本気で嫌がればやめてもらえるだろうが、これ自体気分が悪くなるものではない。

 

 だが、やられっぱなしは癪に障る。夜、覚えとけよ。

 

 夕方近くまでゲロ甘な空間を作り出しつつ、その日の晩御飯は二人で作るロシア料理。作ったのはガチョウのロースト、ヴィネグレットという酢と油で和えた赤いサラダが晩御飯。鶏肉よりもクセのあるガチョウは私の舌に合った、ヴィネグレットという酢の物もドイツのザワークラウトのようにさっぱりしていて美味しい。パンと一緒にもぐもぐさせて頂きました。

 鴨やガチョウ、七面鳥はチキンに比べて食べなれてはいないが存外美味しいものである。やはり鳥に外れはないだろう。

 

 さてご飯も食べたし酒も飲んだし後は帰るだけなのだが、こいつだけは絶対分からせないといけない。

 男のプライドをコケにするとは良い度胸、悶えさせて舐めた事を後悔させないといけない。と、いうことはだ。

 

「今日泊まるから宜しく」

「……ふふ、ありがと? かな? あぁ勿論手は出さないから安心してね?」

「シャワー借りていい?」

「ええ、勿論。案内するわ」

 

 お先にシャワーを浴び、同じように彼女のシャツを借りる。続いて笑顔のミラーシャがシャワーを浴びて、寝る準備は整った。

 彼女と共にベッドへと入り電気が消えるのだが、アンジェとは違い大胆にも彼女は自ら私のことを抱き寄せた。

 私の腰へと手を回し、痛くない様に優しくも力強く。胸元に抱き寄せられ彼女の吐息が私の頬に当たるのだが、今日の私は一味違う。

 

 思い出せ、前世で何を聞いていたか、どんなAMSRを聞いていたか。M男、女性向けの性感ボイスはどんなものだったかを。

 

 暗闇の中、彼女の後頭部に腕を回し顔を抱き寄せる様に身を寄せるが抵抗は無い。そのまま耳元に唇を寄せて反撃スタートである。

 

「…………リュドミーラ

「なぁに?」

「……可愛い

 

 彼女からの返答はなく、返されたのは小さな身悶えと吐息だけであった。

 小さく耳元で吐息を吐きながら呟き、彼女の耳たぶを甘く噛む。そして彼女の耳に噛み跡が付いたのを唇の触感で感じるとその跡へ舌先を這わせる。

 

襲ったら本当に嫌いになるから

昼間の仕返し

どうして顔蕩けてるの

…………ざっこ。ざぁこ、弱すぎ

腰震えてるよ? どうしたの?

お腹を私に押し付けちゃってるし

……もしかして

 

 

 身悶えする彼女だがこれは仕返しである。私を堕とそうとするなど十年早い。

 彼女には取り敢えず夜中の3時くらいまで付き合って頂き、私はそれから寝させてもらった。勿論エッチなことなんてしてない、私はずっと耳元で囁いていただけである。

 

 朝起きれば、眠たげな目をしつつ、蕩けた顔を向けているミラーシャと目があった。こちらの瞼が開くのを確認すると、何故かこちらに顔を寄せる。

 どんどんと距離は近付いて、私と彼女の唇の間は1cm程しかなくなってしまう。

 

「おはようミラーシャ」

「………ユーシャ……おはよ

 

 語尾と瞳にハートマークが付きそうな雰囲気で、彼女がどのような状態なのか、察して頂けるだろうか。

 貞操の危機を感じる。

 

 結論から言わせてもらえれば何もなかったのだが、耳元で囁く事の威力は凄いものだと改めて実感する。

 そういう催眠ボイスを売れば、人気出ること間違い無し。エッチなことは一切してないのにエッチであるというのはやはり強い。

 

 今回の出来事を経て二人は二人きりになれば頬にキスをせがむよう抱き締めて私の頬に鼻先や自分の頬を擦り付けたり、片や抱き締めて耳元へキスを落とし仕返しをせがんだりと犬のような仕草をするようになった。

 

 ……私はメアリー・スーではないのだが。

 



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Take020

 三作品目の世間の初日評価は二作目同様好評であるが、件の男性問題から見る客層へ変化があった。

 40代50代の男性が少し離れ、二十代三十代の男性が少し増えた。

 

 総体的には増減無しであるがこれを成功したと捉えるか、現状維持は衰退であり残念な結果であると捉えるかは人それぞれである。

 私は当事者であるが後者だ。だがまぁ原因の十割が私による物なので偉そうな事は言えない。

 十分お前は偉そうだという諸兄にはトゥイズラーとチェリーコークを箱で送り付ける。車のタイヤを食べながら油性マジックで喉を潤しておけ。

 

 初週興行人数は更新出来たか出来ないかだろう、総興行人数と総興行収入での更新を期待しよう、と公開当初は考えておりました。

 

 作品としてのナンバリングは次作で折り返しといったところ。腕輪物語然り、トイズストーリー然り大体三作品目で終わっている。

 トイズストーリー4? 有りません、そんなものはありません、トイズストーリーは誰が言おうと3で終わりだ。アメップでは4は人気だけども。

 

 まぁナンバリングタイトルが作られるなら目指せハニー・タッカー。私が出来るものはエクスタシーアームズ、理性解除呪文、マジカルチンポか何かか? けしからん呪文だ、グリフォンドールに一万点。

 しかし色気は抜きにして後世でも語られる名作として名を残したいところ。

 取り敢えずアメリカで雑に人気出したいならサメとナチスとゾンビを出せば何とかなる。こいつらそれ好きだし。ナチスのゾンビがサメに乗って襲ってくる物なら売れること間違いない

 

 ……なんてアホ臭いことを呑気に考えてたのだが二日目、女性の人気が爆発した。

 

 とまぁ映画について評価の話はそこそこに、映画に含まさせてもらった性癖の話を交え語ろう。爆発した原因はただ一つ、ストリップ要素を含んだポールダンス。

 

 ストリップでは男の脱衣と裸なのに肝心な頂きは見えてない、見えないというのをメインに演出させてもらったが他にも性癖はあったりする。

 様々なポーズを取れるのでギリギリを責めてみたのだが、結果として責めすぎてしまった、インパクトがありすぎた。

 

 しゃがみ開脚、脇見せのポーズ、淫リンボー、見せつけくぱぁ? あとは男ではあるが下腹部に淫紋のようなタトゥーシールを貼ってみたり背中に羽根を彩ったタトゥーシールを貼ってみたりとやりたい放題。

 しゃがみ開脚のポーズは、まぁどのポーズも説明しなくてもわかるだろう。一連の流れでも軽く説明しよう。

 

 ダンスがスタートすると撮影していたカメラに向かってしゃがみ、そのままゆっくり開脚、勿論見せ付けるように。

 因みにその際の服装は下着ではなくシーン用に履いていた薄いズボン。

 

 腰を突きだしリンボーダンスのようにカメラに見せ付けつつ、その流れで股間部に指でハートマークを作る、丁度ナニがあるところにである。

 

 服を捲って腹を見せれば竿をもじった淫紋が下腹部に現れ、ゆるくピストンするように腰を動かしつつ、股間の布地を押さえるように肌に当てがう。形がわかりそうになった瞬間にやめてしまうのがいいのだ。

 

 そして笑顔でその場に立ち上がってカメラにお尻を向け、ケツを振りながらズボンを下げるが、カメラは下着になったお尻ではなく足元に落ちたズボンと足の爪先を写し、一枚一枚脱ぎながらポールダンスをしていく。

 

 字面で言えば短いのだが作中でのポールダンスは実に20分程の枠を割かれている。そのシーンの人気が群を抜いて凄まじいらしい。

 一応足フェチネキ、踏まれたいネキや履いてないフェチネキ、拙僧シャワーシーンすこすこ尼さんの為にそのシーンは毎度のこと撮影しているのだか、ポールダンスのインパクトが強すぎて霞んでしまう。

 

 初日はさておき初週については一度見た女性が脳裏に焼き付けるために足繁く通い、どの時間も満員、予約すら取れないという珍事が起きて初週興行人数は無事更新できた。

 場所によってはこの映画の為に4スクリーンも使って映す映画館もあったが何と全ての時間帯で満席である。

 二作目より公開される母数が増えているのだから常に満員であれば増えるのは必然だった。

 

 時に、男が布越しにでも局部を見せつけるのはくぱぁでいいのか? 開いていないので擬音的にはぼろんとか、ずむっとかそういうのになると思うのだが何と名付けられるのかは楽しみである。

 

 腰振りまでは少々下品が過ぎるかな? と思っていたのだが、まず他の性癖と比較してこの動きが下品だと判断できるほど性癖の下地が存在しない。

 「エッチするときの動きとか下品でドスケベやん」ではなく「エッチするときの動きとかドスケベやん」で終わってしまっていることも人気に拍車をかけた。

 因みに私は見る分には下品ドスケベでも一向に構わんが、ザー◯ンゲップ・ザーメ◯ジョッキを置き換えるととても悲惨なことになるだろう、絶対にしないからな、冗談ではないぞ。

 

 さてさて、そんな動き恥ずかしくないの? という質問はあると思うが、何というべきか。

 

 シーンを演じているのは私ではなく私の役であると思い込んで行っている故に恥ずかしさはそれほどない。映像として素面で見返すと時折少しの羞恥に襲われることもあるが、まぁ後悔はない。

 後悔なんてしていたらたぶん生きていけない、おたまじゃくしからやり直さなければいけないレベルでやらかしている。

 

 寧ろ明るいうちに淫らなお店が軒を連ねる雑居ビルに入る方が恥ずかしい、あいつこんな昼間から抜きに来てるぞとヒソヒソされる方が嫌だ。

 

 何故か同性のガチ恋勢も件の問題で増えたのだが今回の件で異性のガチ恋勢が著しく増えた、今なお増え続けている。

 因みに異性のガチ恋勢には映画の私に引っ張られてかマゾ気質な者がとても多い、日本では何故かその者は家具と己を自称している。つまり座られたいということだろう。

 

 しかし、その過激な内容の弊害は勿論存在し一部の国では上映中止になる噂も流れる。

 お国と宗教柄、異性との交流が厳しい一部の中東と一部アジアである。諸国については暴動が起き今回は上映中止は免れたが次は自重しないといけないだろう。

 日本では当映画が映倫によってレイティングが引き上げられることはなかったが、これの上はPG18+、つまりR18である。流石にこれは踏んではいけない、客足が遠退く。

 にも関わらず上映は満員御礼であるのだから、やっぱエロって凄いんやなと思わざるを得ない。目の前で腰振っておきながら今の指定はR-15なんだぜ。JKとか性癖破壊されるだろ。

 

 だが正直なところ、これはこれで大変困る。

 タイトルを更新するごとにどんどんエロくなる演出であるのだが、ぶっちゃけ次回作でこれを越せる自信がない。

 

 いよいよ胸くらいは見せるべきなのかと思うが、こちらの考えとして胸を見せたら負けだとも思う。

 全裸がエロいのは当たり前であり、私が育てたいのは全裸や局部モロ見えという全能的なエロスではない。

 故に見せたら負けなのだ。

 

 誰かに相談したい気持ちもある、前世と繋がれるなら「貞操観念が逆転した世界で男優してるけど質問ある?」なんてクソ安価スレを立ててやりたいところだが、そんな都合良いこともない。

 

 まだ時間はありそうなので、それは追々考えて行くとしよう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 話は変わるようで変わらないのだが、クリスマスの時のように女性の脳みそをデロンデロンに蕩けさせるというのはこちらとしては実に楽しい。

 

 何が楽しいかと言われれば、蕩けさせられる前は相手は人間の女性、ヒトのオンナなのだ。

 

 それが耳元で言葉を、命令を、愛を囁かれ脳みそを少しずつ溶かされれば男性の下半身に血が通いナニが大きくなるように女性の中も濡れそぼってしまう。

 まだしない上に何処をとも言わないが、囁きながら腹越しにほぐすように、お腹の上からマッサージしてあげるというのも効果は抜群である。耳元でどんな状況か逐一実況してあげるとなお良い。

 

 身体を密着されて腰を震わせながら耐えつつも、背筋を撫で上げる様に押し寄せる快楽へ抗えなくなってしまう過程。

 人間の女性をやめさせられるスイッチを勢いよく入れられてしまう様な、快楽を身体と心が受け入れてしまったメスに堕ちる瞬間。

 こちらの支配欲が一瞬にして満たされるメスの顔、その仕草がまぁ最高に楽しい訳だ。

 

 そして私はこれをミラーシャにしかしていない。仲間外れは良くないね、そうだと思わないか。

 同士ジョージィ・ワシントンもお喜びになるだろう。騙されんぞとは思っても途中で居なくならないはずだ。

 

「ねぇアンジェ、この後暇?」

「ん……? 何かあったの?」

「お願い? お願いなのかな? ちょっと試したいことあって」

「なんだろう? 取り敢えず空いているよ」

 

 熱心に会社のジムスペースで身体作りに励んでいるアンジェに声をかけておく。その場にミラーシャが居れば日を改めなければいけなかったのだが、その場に居なかったので遠慮なく誘わせていただく。

 アンジェにやったことをする代わりに、ミラーシャには代わりに頬にキスを落としておこう。

 

「じゃあ終わったら声かけて」

「いや丁度休憩をと思ってたんだ、今からでも構わないよ」

「腰砕けになっても知らないけど?」

「へ?」

 

 変に期待するなよと釘を差し、彼女と共に仮眠室へと赴く。窓を遮光カーテンで遮られた個室にはマッサージチェアのような椅子が一つ。そちらに彼女を座らせて扉と鍵を閉める。

 

「おお見えない」

「え……何されるの?」

「ちょっと待ってね」

 

 暗闇の中、彼女の座っていた椅子がある方向に手を伸ばし椅子の背もたれへと触れる。

 そして椅子に座る彼女の正面へと移動し、彼女の膝の上へと座らせて頂いた。所謂対面座位という形である。

 

「ちょっ!?」

ほーら

 

 驚いて背中を起こす彼女の後頭部へと手を回し、頭を撫でながら身体を押し付け覆い被さると彼女は私を受け止めた。

 彼女の腕が私の背中と腰に回される。

 

ほら、アンジェ

「…………まだ、昼」

 

 言葉で黙らせるのではなく黙らせるのは行動で。

 未だ抵抗する彼女の頬に唇を重ねて、耳元に這わせリップ音も鳴らせる。ミラーシャ同様耳を甘く噛むと私を抱きしめる手に力が入る。

 そういえば耳レイプか? もっと吐息混じらせてしたらどうなるのだろうか。

 

 甘く噛み耳のフチを舌でなぞり、彼女の耳の中へと吐息を吐きかける。

 

「…………ぅぁ

 

 彼女の艶声を無視して、舌先をすぼめて音を立てて耳の中を舐める。耳フェラではなく……えー……只今命名耳クンニ。

 

アンジェ

 

 声色にも吐息を込めて彼女の耳元で囁けば、彼女は私のことを真似する様に頭へと手を回して私の耳元に唇を寄せた。

 

なに

ふふ、可愛い

あッ……だめ

 

 名前を隠してASMRを売りにして配信するのはあるかもしれん。それで新しい性癖も生まれるだろうし、顔が分からないのだからド直球なことも話すことが出来る。

 ボイチェン使えばバレることはないのではなかろうか。

 

腰上げて押し付けて可愛いね

ほらもっと私を感じて

あぁごめん、腹筋撫でようとしたら手が滑った

腰震えてガックガクだよ?

良い子良い子、よしよし……

 

 たっぷり溶かすこと3時間。生まれたての小鹿のような足腰になってしまい、ロクに立てなくなった彼女。

 落ち着きと理性を取り戻した時に顔を真っ赤に染めて泣きながら私の胸元にキスマークを、首筋に噛み跡を思い切り付けるのだが、それが彼女の仕返しのマーキング行為にしか感じられず頭を撫でてしまう程非常に可愛かったとだけ伝えよう。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

黒木優 単語

クロキユウ

 

 

黒木優とは、日本男性俳優・リアルインキュバス・現代のオム・ファタール 変態 馬鹿天才は紙一重を体現する男である。

 

 

□概要

・生年月日不明、公式からの発表はない

妄想 世界 東京都出身

血液型O型 

・特技:特に無し(公式) 女性を本気にさせるRTA世界最速記録保持者女性の扱い選手権世界チャンピオン

・愛称:優くん 優様

ダメ女製造機

赤ちゃん製造ミルクタンク生産工場長  もしかして→  排卵

黒木家具店 ロサンゼルス本店 代表取締役

 

 

 ロサンゼルスホットドッグの売り子をしていた所を監督ティンときたらしくその場でスカウト、そして俳優としてスタートする。

 

 出演した作品が初週興行人数、総興行人数、最高興行収入のギネス記録を塗り替え続ける中で彼自身も「世界で一番多くの人に肌を見せた男性」という非常に 恥ずかしい 誇らしい記録も塗り替えている。

 当の本人はギネス記録アカデミー賞も興味を示さない辺り本当に 気性難 無欲なのだろう。

 

 本人の性格は作中と違いとても明るく同様に頭のネジが外れていて、サービス精神が良く同様に女性に対して非常に好意的で、感情の起伏が激しい同様に気性難。

 

 彼の気性の荒さを印象付ける有名なエピソードとして

・日本のテレビ局5局中4局にて注文が面倒だからと出演拒否

インタビューも面倒くさいからと基本拒否

・映画へ贈られる可能性があったアカデミー賞授与席の出席をバックれる

・無理難題を言った映画のスポンサーを作中で扱き下ろす

性的搾取問題 (当該記事参照) 時に生放送でテレビ局リア凸実況

・パパラッチに中指を立てる

・息を吐くように台本を無視する

などがあげられる。

 尚、現在では他のテレビ局でも 大人の事情 独占を自重するような指摘から出演可能となり他局でもインタビューも受ける意向を示している。 示しているのとするのとは別問題

 また彼の台本無視は表現方法をよりセクシーな物にする典型的なパターンであり、作品の展開を変える物ではない。言ってしまえれば彼が台本を無視し続けていなければ世界に新たな性癖は生まれていなかった。

 

 マスメディアに対しての気性こそ荒いがファンへのサービスの良さは世界の著名人の中でも一番と称され、男性にもかかわらず

握手

ハグ

ツーショット撮影

・ツーショット撮影時には彼から密着

・ポーズ取り

と対応可能なものは多岐にわたる。

 

 また彼のサインにはキスマークが落とされることも有名である。一回目に行われた本人開催公式のサイン会では撮影可能人数100人に対して7500万近い応募が殺到した。首都圏の人口の2倍、日本の人口の6割が応募したと考えればその人気は尋常ではないことが窺える。

 

 

 彼の演技の魅力は言葉では表現できないのだが、強いて言うならばエロい。ただただエロい。女を夢中にさせる仕草以外は腹の中に置いてきましたというレベルでエロい。

 彼が魅せるその全ては新しく、そして奥深く、気が付いた時には丁寧にこちらの脳は破壊されている。魅了されたが最後、彼が居ない世界などもう考えられないだろう。

 

 現に静画を含む全てのイラストサイトの使われる成人向けタグのうちヌードを除く全ては彼の演技から生まれたものである。

 未成人向けタグも8割が彼によって生み出されている。

 

 文章を見て作品をまだ見ていない、興味を持ったという人は是非、彼の出演している映画を見て頂きたい。

 彼を頭で感じるな、子宮で感じろ。

 

 

□主な出演作

 

□映画

・作成中

 

□テレビドラマ

・作成中

 

□CM

・作成中

 

 

□関連人物

アンジェリーナ

 

 相方一人目、アメリカ人女性。実生活でも彼女とパートナーなのではないかと長らく噂されているが、公式の声明として恋人関係ではないことが発表されている。しかし実は付き合ってましたと言われても驚かないほど二人の仲は親密であり、どれほど親密かは彼女のSNS (外部リンク) を参照されたし。

 後述のリュドミーラを含んだ三角関係ではないかというのがファンの想像である。

 

 

リュドミーラ

 

 相方二人目、ロシア人女性。後から二人の仲に合流した形ではあるが彼女との関係も良好を通り越しアンジェリーナに並ぶほど親密である。また彼女とも公式の声明として恋人関係ではないことが発表されている。どれほど親密かは彼女のSNS (外部リンク) を参照されたし。

 前述のアンジェリーナを含んだ三角関係ではないかというのがファンの想像である。

 

 

アンジュロ・カトリアンヌ鈴鹿詩男竜胆誠群道逞鐘

 

 つぅでぃすりぃでぃ所属のvtuber。4人揃って12月の男子会で気になる男性として彼の名前を出し、性癖まで語っていたところを偶然視聴してしまいユーシャ 怒りの赤スパ連打。 アーカイブを見るに反応楽しんでるだろこれ。

 その日に彼が投げた額は総額385万(全て上限で投げられ、1回の赤スパ上限は5万なので77回)。

 御本人様に認知され てしまっ たことで放送は阿鼻叫喚となり上限の赤スパで永遠に死体蹴りされるという良くわからない光景が繰り広げられた。

 しかし現在は緊急アップデートが入り1日で1アカウント5万までしか投げられない様に修正された。

 恨むなら彼を恨むといい。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 1月末、四作目の作成も上の方針決まり、製作にかかわるスタッフ全員に招集が掛かる。揃って監督の元に皆が集まるのだがそこで発言された内容は私を酷く驚かせた。

 

「四作目は日本で撮るから! 舞台は東京!」

「え……えぇ……」

 

 もう暫く行きたくないと言っていた場所にまた行かないといけないのかと項垂れながら、私は乾いた笑みを浮かべた。



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Take021

 2月某日、東京。気温は6℃、ロサンゼルスに比べると肌寒い。

 北の、試される大地だと夜は-15℃と人が生きるには適さない温度まで冷え込む、信じられん。

 流石北海道、生きることを試されてる。

 

 寒いのが苦手な私とアンジェはもこもこのダウンジャケットにマフラー、帽子と完全防寒で東京にやって来たのにミラーシャはシューバなるコートしか着ていない。見た目はもふもふだが寒そうである。

 彼女曰くモスクワの方が寒いらしい、だからってコート一枚で大丈夫というその理論はおかしい……と思うのだがどうだろうか。

 

 LAからFND、失礼間違えた、HNDへ向かいスタッフ一同を空港で出迎えたのは大勢のファンと報道陣。またリークされとるやん。

 

 自動ドアが開くと一斉に焚かれるフラッシュと歓声にももう慣れた物。今でも移動の際の自動扉が開く瞬間は身構える。

 アンジェリーナとミラーシャはファンへ手を振りサインを書いていた。

 

 さて私はといえば何もしていない。トランクケースが乗ったカートにもたれ二人がサインするのを眺めつつ、サインをせがむファンに対して手を振っているだけである。

 自身の唇同士を擦り合わせ唇の具合を確かめるが残念なことに表面は乾燥している。今リップを塗ってサインの度にキスマークを落とすと私の唇は割れてしまうだろう。

 

 未だに頭を悩ませている、ポールダンスを越えるエロティックシーンとは何か。これが解決しないとスッキリ出来ない、出しきれていない残尿感のようなものだ。

 

 サインをするようになってから帽子や服へのサインはさておき、色紙に対してはサインとキスマークはセットで行うという自分ルールを作った。

 キスマーク入りのサインが本物であり、キスマークが無いサインは偽物だと判別してくださいという事。キスマーク入りの偽物は生まれるだろうが、無いサインを一蹴出来る強みがあるのかなと思った次第。

 

 サービス精神の良さをアピールすると己の唇を酷使することにはなるのだが、ハグや握手ならまだしも自分をあまり安売りしたくはない。

 キスマーク無しのサインを書きまくるというのはサービスが良いと判断されるが、マーク入りサインがデフォルトであるため無しのサインは安売りである。

 私のサインは特別であるという価値を付けたい、サービス精神があるのと安売りしてるのとでは違う。

 

 とまぁ私という名前のブランドはもっと高めておきたいと思っている。

 第二第三の存在が出ても、波に飲まれても、あの人は良いと思ってもらえるようにだ。

 新しいAV女優が出てもやっぱりあいつには勝てんなと、過去のAVを再生する諸兄らならわかるだろう。

 

 

 ん? ………………では次の映画で脱がないとどうなる? 観客は期待したエロスがないと怒るのか?

 それを上手く躱すことが出来れば、それは焦らしに繋がり五作目へのエロスへの欲求は爆上がりするのでは? ……ポールダンスを超えなくてもポールダンスに並ぶものであれば満足させられる筈。

 

 それやんけ。私の映画はプレミアムドスケベにしたい。

 顧客を焦らしドスケベ欲求を煽り散らす。与えられるだけが性癖じゃない。

 

 ねだるな、勝ち取れ、さすれば与えられん。いや……やっぱり私から勝ち取るのは勘弁、エロスは奪うものではない。

 エロスとは相手と育む物だ。一方的な育み? それは調教だ、調教はいいぞ。

 身体よりも精神的な調教がすこ、変化する過程が堪らんのだ。

 

 それでまぁ、兎に角今回は脱がない、敢えて脱がない。脱がないエロスを追求するのだ。

 脱がないからな、絶対に脱がないからな。

 

 日本といえばWABISABI。わびさびとは何ぞやという質問には専門家ではないので詳細に答えられないが、まぁそんなようなエロスを目指していきたい。

 

 わびさびエロスを考えだし、実践あるのみである。

 

 わびさびを感じるエロスで、具体的にいえばチラリズムだろうか? むむ、ほとばしるパトスを抑えられない。

 手をついつい伸ばしたくなるようで届いてはいけない、届かない、そんなチラリズムとはそんなエロスである。

 

 チラリズムの良さは見えないところ。見えないとどうなるか、想像してしまう。想像してしまうと、興奮する。

 またチラりと一瞬でも視界に写してしまうこと。生物は性的欲求に繋がるそれを求めて目で追ってしまう。

 がっつり見えてしまえばそれはチラリズムではない、いつも通りのエロスである。

 

 夏に腹を一瞬でもアンジェとミラーシャに見せれば彼女らの視線は服に隠れた腹を想像し私の腹部へと視線を向けてしまう、または次は脳裏に焼き付けようと腹部に視線を向け続けてしまう。

 無意識に理性が性を求めてしまう入り口、それがチラリズム。

 こらそこ。調教済みなら当たり前やん、とか言わないでくれ。私の身を犠牲にした賜物なのだ。

 

 薄着であるだけでこちらの肩に自分が着てる服をかける、そんな気を利かせるイケメンならぬイケマン女共を墜落させるのがどれだけ大変だったかを聞いてほしい。全て語れば七千文字程度では済まない。

 

 思えば私が薄着であるのが普通である、ネジが吹っ飛んでいるのが常識であるという認識を作り出すのも大変だった。

 何せ母親の如く注意してくる、チラチラ見てるくせにだ。

 そしてチラチラ見ても別に構わないという、己の罪悪感を無視させ性に対して素直になってもいいという認識を生まれさせるのもまた大変だった。

 

 まぁそんなファンに手を振ってサインを書いている二人には今回も反応を得るための犠牲になってもらい、好評なら監督に指示を仰ごうと思う。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 東京についた翌日、一人で訪れたのは銀座の着物店。

 店構えこそ、よくロスの街中でもありそうな高級な服屋。しかし中に入ると古風な着物店で店員が座るところは一段上がり畳が敷かれている。どうみても敷居が高い。

 

「黒木様、いらっしゃいませ」

 

 店員という風格を超える若女将のような女性がこちらに笑みを向けて礼するが、正直世界が違い過ぎて萎縮してしまいそうだ。

 

 さてさて日本らしい服と言えば着物なのだがこの世に日本の男性の夏の服、甚平は残念なことに存在しない。男性の夏の服として存在するのは作務衣である。

 半袖半ズボンが甚平で長袖長ズボンが作務衣という認識で構わない。夏以外で作務衣を着る人も居るようだが、冬に着る人は稀だろう。

 

 理由としては忘れがちであるが、本来の価値観であれば男性は手足を露出させることを良しとせず、着る素材も透ける可能性のない厚手の物が多い。

 

 私はそのような事は無視して半袖半ズボンにもなれば生地の薄い服も着たりする。そのような私のファッションを真似してか最近では男性の露出……もとい私から見れば普通の男性の服装は増えてはいるが、伝統的な衣装にはそのような風潮は見られない。

 

 おう、無いなら作ろうや。スケベな着物の着方ってやつを。

 肩出し花魁のように着物を着崩すのも良いのだが今の季節は冬、夏であるなら日本らしい服を着るのにまっこと残念である、気温が低いとかやってられない。

 冬でもミニスカ生足で登校する旧JKのような根性は私にはないのだ。

 

 やはりスケベな着方にはスケベに作られた着物だろう、しかしそんな淫らな着物は無い。なのでオーダーしに来た次第である。

 

「着物を作りたくて」

「誠にありがとうございます。御作りになられる物は夏物でしょうか? 冬物でしょうか?」

「夏物で、普段着として使いたいんです。三着ほど頂けると」

「かしこまりました。生地はご希望はありますか? 見本をお持ち致しますが」

「生地より形状に要望があるんです」

「なんでしょう」

 

 私が着物を誂えるのにオーダーしたのは以下の点。

 一つ、鼠径部までの深いスリットが入っている見た目であること。

 二つ、着物の中に着る白い着物、長襦袢を必要としないデザインになること。

 三つ、重い生地にならないこと。

 四つ、着付けが要らないほど帯を含めて気軽に着れる様にしてほしい。

 以上である。

 

 普通なら門前払いされそうな内容であるが若女将は嫌そうな顔せず対応してくれた、とてもありがたい。しかし一日で決まる物では無いらしく数パターンをデザインして見ますのでお日にちをくださいとの事。

 私としても新しい性癖を作り出すスタートでもあるし、吟味して考えたい。焦らずに十分待つつもりである。

 

 連絡先を交換してその日は終えたのだが意外と待ち遠しい。応用ではなく零から何かを生み出すときに感じる世界がどう変わるのかという期待と楽しさ、久方ぶりに味わう感覚である。

 そしてその感覚に背中を震わせながら私は帰路へと着いたのだった。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ1193

 

 

812:名無しの映画監督  ID:O5pQyk23z >>820

まだ見てないんだけど三作目の評価どう?

 

813:名無しの映画監督  ID:6cO3YpLEN

優くんはホモじゃないから

ノンケだってそれ一番言われてるから

 

814:名無しの映画監督  ID:BXMZWk1ut

SKB部以降ホモネタ多いな

 

815:名無しの映画監督  ID:AXYW/dE1i

ポールダンスしか頭に入らん

 

816:名無しの映画監督  ID:jLlcSmCMI

男同士はてぇてぇ

 

817:名無しの映画監督  ID:ABz8ORIOz

今回は今までの足してエロさ5倍にしたくらいエロい

 

818:名無しの映画監督  ID:uaxkaMPt0

本当に頭おかしいくらい疼く

 

819:名無しの映画監督  ID:9zgfbE/QH

チケット80枚買ったわ、一日一回ナイターで見てる

日課や

 

820:名無しの映画監督  ID:FX/uOji89

>>812卵子脳が沸くくらい頭おかしいぞ

あんなの入っててアクション映画とか無理あるだろ

 

821:名無しの映画監督  ID:PcSsoI9xo>>825

知ってるか? あれでガードクッソ固いんだぜ

 

822:名無しの映画監督  ID:a0gc2aDA4

80枚買うとか宗教?

 

823:名無しの映画監督  ID:icSwPOovK

ベッドに座ってるところの目の前でしゃがまれて

腰振られて誘われたいんじゃぁ^~

 

824:名無しの映画監督  ID:H5YdkiTr3

映画の出来はいいんだが今回の映画から特にSNSでにわか評論家湧いててうざい

あと本来なら見れないJCが語りだしたりしてるのもくそうざい

JKの卵子脳化もめっっっちゃうざい

 

825:名無しの映画監督  ID:FjetWmpmd>>836

>>821彼氏にしたい男ランキングNo1は伊達じゃない

 

826:名無しの映画監督  ID:dczhWG64W>>827

エロ解説?

 

827:名無しの映画監督  ID:For/7XVD+

>>826そうそう

 

828:名無しの映画監督  ID:ymehcjZ2s

あのランキングは完全に出来レースだから

面子見ても対抗馬居なかったやん

 

829:名無しの映画監督  ID:OREAAwbfE

ぶっちゃけ解説物は萎える

 

830:名無しの映画監督  ID:TnxaYKMaF

Mytuber解説

完全に乗っかってる、訴えられればいいのに

 

831:名無しの映画監督  ID:j7+K7L/9P

世間の男が

こぞって真似してるのが面白い

 

似合ってねぇよボケ

 

832:名無しの映画監督  ID:+nnVja8JP

奴以外の存在が2位で全体の3%獲得出来ただけでも凄い

 

833:名無しの映画監督  ID:oQqi7i3Qn>>835

取り敢えず戦闘シーンのアンジェリーナとリュドミーラは凄く格好よかった

ワイは男やからあれだけど

あのポールダンスはマジでいらない、気持ち悪すぎ

 

834:名無しの映画監督  ID:tDs+riuOu

二番煎じ

 

835:名無しの映画監督  ID:BQpcnZJJD

>>833

わかる、自分の股間見せつけるってなんだよって思った

二人の格好いいシーン楽しみにしてるのに萎えるんだわ

 

836:名無しの映画監督  ID:4hNkpaRXn

>>825全部20000票あって全体の90%獲得してるのは流石に笑ったわ

 

837:名無しの映画監督  ID:10KbRRmss

男やがしゃぶりたいぞ

 

838:名無しの映画監督  ID:RwXeQNeWy

邦画で似たような事した男居なかったか?

 

839:名無しの映画監督  ID:iYSrtn1Q1

事務所の方針なんだろ、真似してるの

 

840:名無しの映画監督  ID:7cIoklyFx

雰囲気がない、作り出す雰囲気が事務的過ぎる

 

841:名無しの映画監督  ID:tA6ny0uSH

エロくないし

 

842:名無しの映画監督  ID:vk3DnKwIC

優よりアンジェリーナがイケマンなのがすこなんだが

 

843:名無しの映画監督  ID:qmya7ED4y

我々は目が肥えすぎた

 

844:名無しの映画監督  ID:Hjfy3zFn/

同士スターリンも悲しんでおられるだろう

 

845:名無しの映画監督  ID:ErOOKIUTr

でも新作でるから、今東京でも撮ろうとしてるから

 

846:名無しの映画監督  ID:ZT9Dx1QM2

同士スターリンも喜んでおられるだろう

 

847:名無しの映画監督  ID:sUqfLPl7G

取り敢えず男にはやっぱり不評か

まぁダンス? 脱衣シーンが私で抜いてくれって言ってるような物だからな

 

848:名無しの映画監督  ID:zgeqJCMNG

スターリン「此方も抜かねば、無作法というもの」

 

849:名無しの映画監督  ID:TcMwLI6Md

手のひらドリルかよ

 

850:名無しの映画監督  ID:oeeA/NsA5

正直に言うともうアダルトビデオで興奮しない

 

851:名無しの映画監督  ID:VNN3cYCTh>>853

ワイ男、リュドミーラ氏好き過ぎて辛い

あの腹筋にキスしたい

 

852:名無しの映画監督  ID:qugI/EbKj

同士ジョージィ・ワシントンも喜んでおられる

 

853:名無しの映画監督  ID:O5GXNjPYb

>>851自撮りはよ

 

854:名無しの映画監督  ID:qP1v33dOG>>861

性的搾取の塊なんだよ、優は早く俳優やめるべき

映画史に悪影響を及ぼしてる

 

855:名無しの映画監督  ID:azcp6QWQ7>>862

単純なアダルトビデオで抜けんくなった

 

856:名無しの映画監督  ID:kLc/hksme

チンさん生き生きしてるなぁ

 

857:名無しの映画監督  ID:R1vrn+F4x

どうあろうと数は正義

売れてる時点で需要あるとしか言えない

 

858:名無しの映画監督  ID:Ze8OgEOty

ワイはアンジェリーナ派

イケマンなのたまらん

 

859:名無しの映画監督  ID:dDfkk0gyi

SNSの一部ではまた燃え上がってたし

モテない男の嫉妬

 

860:名無しの映画監督  ID:HyYtYXAfy

優が羨ましいわ

そこ代われと言いたい

 

861:名無しの映画監督  ID:nX99ECIVi

>>854最低映画と判断されるならラジー賞送られるやろ

送られなかったらそういうことや

 

862:名無しの映画監督  ID:q/cVrCg9H

>>855

アダルトビデオ見るくらいなら映画で抜くわ

 

863:名無しの映画監督  ID:Jixe8+yPH

マジで性癖破壊した責任とって欲しい

旦那さんで許すから

 

 

 

 

 



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Take022

 さて、日本での生活を始めて一週間。前に来たときは日常に目を向ける余裕は無かったのだが、改めて日本を見れば前世と色々変わっていることが多々あった。

 

 まずお国のトップ、女性である。

 これを知ってネットで調べた限りでは男性の首相はスウェーデン、フィンランド、アイスランド他にも何ヵ国かあったが少数である。前世で男性首相であった国は女性、女性首相だったのが男性ということになるか。

 

 今思えばロサンゼルスとニューヨークの市長が女性だったときに少し調べれば良かった。

 女性だから外交が下手、という訳でもなく単純に性別が変わっただけである。

 

 テレビに目を向ければCMが何かおかしい。というのも男の髭剃りのシェーバーやシェービングクリーム、男性用シャンプーのCMが一切流れない。

 代わりに増えているのは女性用のシャンプー、女性の産毛等の無駄毛処理シェーバー、クリームのCM。

 またCMに起用される男性の数も少ない。五分の内に流されるCMが十種類あったとして、男性が映るのは二つか三つ。CM業界、テレビやメディア自体の出演も男性は少ないのだろうか。

 

 バラエティー番組に目を向ければ、雛壇に座る男性と女性の比率もやっぱり逆転している。芸人は基本女性であるし、男性芸人は見るからに少ない。

 麗しい女性が芸人をしているという美醜逆転ならまだしもそのような要素はこの世にはない。つまり芸人をしているのはまぁその、お美しくない方が多いのである。

 

 テレビで芸人を見る際のネタの面白さは本人が築いたネームバリュー補正が大いに影響する、つまりあまり今世のコントに面白さは見出だせなかった。

 寒いギャグで会場に笑いが起こるのは中々見ていて辛いものがある。

 

 そうなるとだ、暇やんな。見るテレビも無ければやることもない、かといって出掛けるのも用事がない。

 生憎と撮影は始まっておらずセットや小道具を現在作っている最中である。女性二人に関しては肉体の維持に忙しくホテルに設置されているトレーニングルームで汗を流している毎日。

 

 何か面白いことはないかと、スマホを開くのだがソシャゲの類もやっていない。

 知ってる人に聞いてみようか? 面白いこと。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

< てれびTK 小森アナ

 

 

今日

 

 

既読 何か面白いことない?  

 

 

  え!?

  面白いことですか?

 

 

既読 いえす  

既読 どちゃくそ面白いこと  

 

 

  な、ないです…

 

 

既読 こもちゃん、今日飲みに行かない?  

 

 

  行きます!

  仕事あってもいきます!

 

 

既読 飲んでるとこ撮影しよう  

 

 

  ええ!?

 

 

既読 そして放映する  

既読 飲んでるだけの番組  

 

 

  上に聞いてみます…

  お待ちを…

 

既読 流石こもちゃん 

既読 期待しかしてないからよろすこ  

 

 

  許可出ちゃいました

  費用も番組持ちです…

 

 

既読 ひゃっはーっ! ただ酒だァ!  

 

 

 

 +  Aa           

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

『皆さんこんばんは。本日のゲスト、俳優の黒木さんと待ち合わせしてるのはこの辺りなんですが……』

『あ』

『LINEが来ました』

『えっと……あ、目の前のこのお店に既にいらっしゃるようです』

 

 

『失礼します……?』

『あ、来た来た。先飲んでっから』

『あ、……え? えっと黒木さんこんばんは』

『こもちゃんこんばんは。大将に撮っていいって許可貰ってるから』

『あ、ありがとうございます』

『ほらどうぞどうぞ、座って座って……あ、カメラさんも久しぶり! ロス以来だね!』

『どうも、ご無沙汰しております』

『飲むでしょ?』

『いえ仕事ですから……』

『えぇ飲もうよ。飲んだってバレないから』

『ばっちり撮ってますので』

『ならホッピーは? あれアルコール入ってないし』

『では、それでお願いします』

 

 

『こもちゃん何飲む? 取り敢えずビール?』

『あ、では私はビールを』

『はーい。大将ー! ビールとホッピー、ホッピーのはお酒は要らないからー!』

『あいよ!』

 

 

『んじゃあかんぱーい』

『『乾杯』』

『んッ……ゴグッ……ふぅ。黒木さん、黒木さんは何故この番組を思い付いたんです?』

『ぶっちゃけていい?』

『どうぞ』

『テレビつまんない』

『ぶ……ぶっちゃけますね?』

『だって面白い番組ないんだもん』

『それはうちの局も、……ですか?』

『おうたりめぇよ』

『ぶっちゃけてますね……』

『いやヨイショしてもね? あ、大将おかわり』

 

 

『黒木さんにとって面白い番組ってなんです?』

『次も見たいなぁってなる番組』

『あー……なるほど』

『こうさ、一回で売れさせるのは簡単じゃん? 簡単でもないけど、何曜日の何時にはあれやるからさっさと家帰ろうってなるくらい楽しいのがいいよね』

『ドラマじゃないと難しいんですよねぇ……』

『あ、こもちゃんもぶっちゃける?』

『ぶっちゃけていいです?』

『どうぞどうぞ』

『うち人少ないから無理なんですよね、バラエティー複数やるの。なのに上の人はコキ使うんですよ』

『ぶふッ!? 本当にぶっちゃけるね……?』

『ドラマのADとかプロデューサーもあれ外注ですし。新卒の人って入りませんし、皆他局が取るんですよ、野球のジャイアンツかって思います。外注のプロデューサーは私達のこと考えてくれませんし、どうしてそんな人起用するのかわかんないですね?』

『…………これ、いいの? カメラさんこれオン出来る?』

『うちの上、頭のネジ吹っ飛んでますから大丈夫かと』

『言い方よ言い方』

 

 

『じゃあお次のお店に行きましょか』

『次はどちらに?』

『決めてないよ、見つけたら突撃して放送許可取る、無理だったら次の店』

『なるほど』

『大将ごちそうさまー』

 

 

『あ、あそこどう?』

『立ち呑みですか?』

『ハリウッド俳優が立ち呑みとか面白いでしょ』

『行きましょう』

 

 

『お邪魔しまーす』

『いらっしゃい! ……えぇ!?』

『嘘、黒木やん』

『なんでこんなとこきてるの?』

『ねぇ女将撮っていい? テレ東でロケしてるんだよね』

『どうぞどうぞ!』

『ありがと、失礼しやーす。女将生二つとホッピー。お姉さんもうちょい詰めて』

『あ、すみません』

 

 

『あいよ生とホッピー』

『どーも。ほいじゃ乾杯』

『『『『乾杯!』』』』

『なして黒木さんここに?』

『ハリウッド俳優が朝まで飲んでる番組ってどう思う?』

『ぶっちゃけ見たい』

『だべな』

『今それ撮ってる』

『お、こっから朝まで飲むんです?』

『飲むよぉ』

『録画予約しないと』

『ほらほらテレビこっち、何か言いたいことある?』

『え、いいんです?』

『いいよいいよ、言って。全国に見られるけど言っていいよ』

『え、じゃあ……職場の山本君、好きです! 私と付き合ってください!!』

『あはははははは!! 乾杯ー!』

『『『『乾杯ー!!』』』』

 

 

『やる、全国放送で告白とかやる、よくやるわ』

『ありがとうございます!』

『たぶん山本君は惚れた、これ放送されたら次の日には告白待ちだね』

『黒木さんもされたらOKやります?』

『私なら世界放送で笑顔で断り返すわ』

『『『だはははは!』』』

 

 

『黒木さん黒木さんハグしてハグ!』

『酒臭いけどいい?』

『全然! それがいい!』

『カモンベイビー』

『……あッやば……。めっちゃ良い匂いするし、めっちゃ柔らかい』

『次私! 私したい!』

『あの……感想を全国放送に乗せるの勘弁して』

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ1199

 

 

42:名無しの映画監督 ID:9svBxsqPS

【速報】テレ東にて黒木優×小森による酒呑み番組緊急放送

 

43:名無しの映画監督 ID:OZ23mOdmj

取り敢えず脱いだ

 

44:名無しの映画監督 ID:UuPg8k7qJ

脱ぐのが遅い!

 

45:名無しの映画監督 ID:7O66NxQKc

放送時間が21時からとか晩酌タイミング狙ってない?

 

46:名無しの映画監督 ID:Ef5W0iPaX

家で呑みながらここ見てたから助かるラスカル

 

47:名無しの映画監督 ID:XyFIPwFjY

始まったで

 

48:名無しの映画監督 ID:aJOOoWqSK

酒のおかずにしろってことか

 

49:名無しの映画監督 ID:QsfQX9EkR

おかず()

 

50:名無しの映画監督 ID://F0Rmpwd

まぁもう夜のおかずになっとるし

 

51:名無しの映画監督 ID:8x4KkLeUW

なんで先に一人で飲んでるんですかねぇ

 

52:名無しの映画監督 ID:R1A4QJAOu >>71

大ジョッキ3杯とかもうできとるやん

 

53:名無しの映画監督 ID:2uTY57dKj

ほうもつ煮ですか……大したものですね

 

54:名無しの映画監督 ID:99R7XmveH

もつ煮は酒との相性がきわめて高いらしく仕事の終わりに愛食する呑兵衛もいるくらいです

 

55:名無しの映画監督 ID:Di7JHvkt/

それに冷奴に揚げ出し豆腐

これも酒呑みにかかせないつまみです、しかも枝豆もそえてバランスもいい

 

56:名無しの映画監督 ID:SmNsc9E88

なんでもいいけどホッピーってなんぞ?

 

57:名無しの映画監督 ID:Yv4eXCmoh

酒のんでる優の喉エロい

 

58:名無しの映画監督 ID:P1Bqpi8AN

ホッピーはビール味の飲み物のことや

アルコールは入っとらん

 

59:名無しの映画監督 ID:syP+SFChJ

しかもプリン体もないぞ

 

60:名無しの映画監督 ID:1CunXoMbO

痛風にいいぞ

 

61:名無しの映画監督 ID:rp5bRB5u8

優「テレビつまんない」

 

富士アサヒ日本TTBS「…………」

TK「雑魚乙www」

 

優「おまえもやぞ」

TK「…………」

 

62:名無しの映画監督 ID:LppVcRKbW

容赦ねぇなw

 

63:名無しの映画監督 ID:1aB3OLUa9

小森アナのひきつった顔よ

 

64:名無しの映画監督 ID:sKsrinefX

媚びない姿勢が良いわ

 

65:名無しの映画監督 ID:WIyFnQ3eD

小森「マジ他局がよぉ」

優「え、大丈夫これ?」

カメラ「うちの上馬鹿なんで」

優「えぇ」

 

66:名無しの映画監督 ID:zi7XQGlSQ

珍しく押されてるw

 

67:名無しの映画監督 ID:MnI0qeaQj

しっかし居酒屋でもハリウッド俳優なら映えるな

めっちゃ新鮮

 

68:名無しの映画監督 ID:2kLrllGPo

押されるのに慣れてなくて戸惑ってるの可愛い

 

69:名無しの映画監督 ID:foOjBjNGO

他局もやろうと思えばこれできるんやで

 

70:名無しの映画監督 ID:A+PInupsr

尚俳優とを直接繋ぐパイプが存在しない模様

 

71:名無しの映画監督 ID:kaWohN9Tt

>>52ワイ道民札幌在住やけどあれは中ジョッキやぞ

 

72:名無しの映画監督 ID:8NtZkW7CG

そう考えると自局のアナウンサーがハリウッド俳優とLINE交換してるのはエグいアドバンテージやん

 

73:名無しの映画監督 ID:QoF52kwGb

エグいで効かないでしょ、アメリカのメディアでも直通のパイプ持ってないんじゃない?

 

74:名無しの映画監督 ID:1vdKvCsui

ただ酒を飲んでる映像だけど

割と肴になる

 

75:名無しの映画監督 ID:0rEIGQl0E

お、次は立ち呑みか

 

76:名無しの映画監督 ID:5Z4luAlkm

まぁ目立つわな、気にも止めてないけど

 

77:名無しの映画監督 ID:sj4QZAkYS

立ち呑みかぁ

ハリウッド俳優が立ち呑みなんか

 

78:名無しの映画監督 ID:qYrIx+FP9

酔ってる素振り見せないの凄いわ

 

79:名無しの映画監督 ID:NKq0i0qUA

アメリカの方が度数高いっていうかビール大国だし

あっちに比べたら水みたいなもんなんじゃない?

 

80:名無しの映画監督 ID:lkcSSe6a8

ドイツ「せやな」

 

81:名無しの映画監督 ID:N2GBvaWKG

ちょっとビール開けてくるわ

 

82:名無しの映画監督 ID:HxIZ/7K5U

告白www

 

83:名無しの映画監督 ID:mlJnKDHKd

YMMTー!!!!

 

84:名無しの映画監督 ID:G3S+iYiGp

これ全国放送やぞ

 

85:名無しの映画監督 ID:kKFO13NCN

酔っぱらいって凄いわ

 

86:名無しの映画監督 ID:rr/TAZvZH

山本息してるかー?

 

87:名無しの映画監督 ID:SLQHVNMre

私が男なら明日出社出来んぞ

 

88:名無しの映画監督 ID:3ca3V4OCH

男じゃなくてもまともに出社出来ない

 

89:名無しの映画監督 ID:kSoVV5Fpp

はぁなんでこの日に飲みに行かなかったんだろ

 

90:名無しの映画監督 ID:fOPp1wNzz

何抱きついとんねん!!

 

91:名無しの映画監督 ID:Mhq4Dj9Yy

代われ!

 

92:名無しの映画監督 ID:WxfUYFr3G

【速報】優君は酔ってても良い匂いで柔らかい

 

93:名無しの映画監督 ID:ZQBulQW8q

絶許

 

94:名無しの映画監督 ID:va3sdOR0v

裏山

 

95:名無しの映画監督 ID:1ujgPEowP

抱きついて良いとか優君の分奢るわ

 

96:名無しの映画監督 ID:cXkc/dG+b

お金じゃ買えない価値がある、プライスレス

 

97:名無しの映画監督 ID:wGOW+18VQ

一緒に飲めるとか100万でも安いわ

 

98:名無しの映画監督 ID:1x0Vw+J80

何が柔らかいんでっしゃろ

 

99:名無しの映画監督 ID:NZFvjuGLr

そりゃ尻

 

100:名無しの映画監督 ID:cBsrBoYMj

優君はプリケツ

 

101:名無しの映画監督 ID:LyQO/Id5V

生優に抱き付けるとか人生の思い出になるわ

死んでもいい

 

102:名無しの映画監督 ID:nd4eHWhIw

飲んでたらふらっと来てくれそうなの期待しちゃう

ちょっと居酒屋通いするわ

 

103:名無しの映画監督 ID:t1mA0SAUl

特定班店名はよ

 

104:名無しの映画監督 ID:BdEEjusZc

取り敢えず東京?

 

105:名無しの映画監督 ID:8otagU4dT

あ沈んだ

 

106:名無しの映画監督 ID:k8OnHq0ZI

小森アナ潰れとるやん

 

107:名無しの映画監督 ID:+F6jOf78I

潰れた× 潰された◯

 

108:名無しの映画監督 ID:R9wXRn+rk

優君が酒豪というのはわかった

 

109:名無しの映画監督 ID:7pKZvyYFs

勝手に飲んで潰れただけなんだよなぁ

 

110:名無しの映画監督 ID:AJXUwt9OW

アンジェリーナとリュドミーラに鍛えられたか

 

111:名無しの映画監督 ID:5dOZQ3qcU

小森アナってリスみたいだけど胸そこそこあるよな

 

112:名無しの映画監督 ID:Iu4pwNSqh

目算Fかそこら

優君が背負ってるからあれだけど

 

113:名無しの映画監督 ID:oJYO2HIlM

潰れて終わりがぁ

 

114:名無しの映画監督 ID:i3LtnSib+

1時間じゃたりない

カットせず全部見せろ

 

115:名無しの映画監督 ID:GHm8EXC+V

足元覚束ないながらも背負ってるのすこ

 

116:名無しの映画監督 ID:SRfUUA0Yf

タクシーまでちゃんと送り届けるのすこ

 

117:名無しの映画監督 ID:tjZVvsDTH

背負われてるの羨ましい

私も酔うから背負って

 

118:名無しの映画監督 ID:UUdrWi1l9

来週もやってほしいんだが

やるよな?

 

119:名無しの映画監督 ID:zvmqeRTPr

日本に居る限りやるんじゃない?

 

120:名無しの映画監督 ID:99LRLuVyo

日本の俳優と飲んでるところ見たいなぁ

 

121:名無しの映画監督 ID:uhpGHykYg

これ今回限り?

 

 

 



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Take022.5

 2月14日、バレンタインデー。

 世界各国の風習はさておき現在の滞在地は日本。日本のバレンタインデーに従えば男性が女性へチョコレートを送る事になっていた。

 

 調べれば手作りチョコレートなんて物を渡されるというのは社会人でも意外と夢を見ているらしい、古事記にも書いてある。

 前世で言えば乳房にチョコを付けるというパターンもあるが、する側になってみればあんなものは出来ない。今思えばあれは妄想の産物だろう。絶対熱いと思う上に擽ったそうである、恥ずかしさは無い。

 

 そして当の私と言えば先のハロウィン宜しく手作り菓子を作ると言うのは得意ではなく、しかし久しぶりに餡子が食べたくなったのでネットにあるレシピを見ながらおはぎを作ったわけである。

 バレンタインデーにおはぎとはどうなのかとは思うが、チョコという世界各地で見飽きた物ではなく日本の菓子ということで振る舞えば反応も悪くないのではないかと思った次第。餡子自体は甘すぎるという烙印が押され、砂糖大国アメリカでの人気は下から数えた方が早い。

 

 バレンタインデーの前日の朝から小豆を煮込み作られたおはぎは粒あん、きなこ、青のりの三種類。おはぎの表面に塗されたきなこと青のりには砂糖を一切入れておらず、またもち米の方も甘くない。

 甘すぎる物に慣れていない人の為、というのはあくまでも建前。本音はそちらの方が好きであるからだった。

 

 それを重箱に詰めて撮影現場に持っていったのだが、正直言えばイチゴ飴ほど反応は良くなかった。

 甘いという理由で二個目に手を付ける者は少なく、手を付ける人は恰幅の良い人か甘い物好き、または日系アメリカ人。

 特に不評なのは青のりで、一番好きな味であっただけにショックである、海苔の風味が苦手という人も多かった。取り敢えず私も青のりのおはぎを四つ程食すことになったが、残ることは無かったので良しとする。

 

 ミラーシャは兎も角、アンジェも眉間に皺に寄せて緑茶を片手に食べていたので甘すぎるのだろう。

 しかし後日買ってきたイチゴ大福は美味しそうに皆食べていたのが記憶に残っている。

 イチゴ大福が許されておはぎが許されないのは許されないと思います。

 

 そんなリア充のための行事はさておき、週一で撮影と称された飲み会撮影を行いながらのんびり過ごすこと三週間。

 セット関係、小道具の準備が出来上がり、それが撮影の開始を知らせる合図になる。

 無論浴びるほど呑んでも、肉体の質を落とさないように筋トレに励んでも、撮影対象であるこちらはしっかりと台本を読んでいるために問題はない。

 

 しかし、いざ撮影をし始めようと少しずつシーンを撮り始めて説明を受けても、内心にてどのシーンもこれじゃない感が少しずつ積もっていく。女優二人と監督が何も言わないのであまり声を大にして言わないのだが、言ってしまえば別に東京でやる意味は無いのでは、という内容。

 撮影といっても冒頭も冒頭なのでこれからの展開次第でどうにも変わるのだが、変わらない展開にはある種のマンネリを覚えてしまう。

 日本に来たのだから私のセクシーポイントでせめて、日本らしさを導入したいところである。これ見よがしに日本らしさを押し出すのはあざとい、金でも握らされたのかと思えてしまうだろう。

 

 しかし、あざとくない程度の日本らしさとは何ぞや。

 

 わびさびエロス、チラリズムと言っていた物は性的嗜好の一種であり日本らしさではない。

 今回は脱がないという誓い(ゲッシユ)を立てただけに派手な事も出来ない。

 

 迷いどころである。

 

 そしてそんな悩みごとから撮影の合間に逃げるように街に出て、喫茶店から眺めればOLの群れ。性別が変わっても忙しなさは変わらない。

 お洒落な喫茶店でカフェオレ片手にそれを眺めていれば、ふと視界の隅にとある物が映る。

 

 それはアクセサリー。耳元で風鈴のように揺れるそれについていたのは日の丸を模した旗のような装飾。黒髪に結いられうなじを露出されるそれに幾ばくか心を奪われる。

 着物の納品は無理に無理を重ねてお願いしてある。

 

 着物はあざとい可能性もあるが、あのような小物で演出出来ないか。

 

 しかし生憎と簪で髪を留めた事などない、使ってヘアバンドである。やはりプロに聞くのが良い、着物屋に電話を掛けるべきであろう。

 そしてその際、着物屋の人に日本らしさとは何か価値観を聞いてみるのも良いかもしれない。

 

 口元に弧を描いているのが自分でもわかる。

 解決策を見つけられそうで、かつ新しいフェチが生まれそうなのだ。私としては大変心踊る展開である。

 

 日本で撮ってくれてありがとうと、日本のファンに言われるような作品に是非ともしたいものだ。

 

 



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Take023

 日本のJK、エロ過ぎ。チンコビンビンですよ神。

 

 何がどうしてエロいってまず服装。前世のJKとの違い、まず服装はセーラー服である、ここまでは同じ。

 しかしスカートの丈の長さで世界観が異なる事を感じる、この世界のJK人口はロングスカート派が少数である。

 

 踝上まで裾で隠されたスカートを敢えて捲りたい、スカートの中に潜り込みたいという腹の中に還りたい程暗い所が好きな諸兄ニキ達には悲報ではあるのだが、そのような性癖を持っているニキは健康的な太ももを見て癒されて頂きたい。

 

 小麦色活発少女、黒髪クーデレ少女、ニーソが似合うツンデレお嬢様。二次元にしか存在しないと分かってても追い求めてしまう、そんなThighs。

 

 スカートの裾が膝上の、超が付きそうなほどのミニが基本なのは勿論理由もあり、グーグル大学の知恵袋研究室曰く下着が見える点を無視すると動きやすい、蒸れないとの事らしい。

 

 そしてこの世界は貞操観念が逆転した世界、下着を見せることを憚られるのに考慮されてかあるパンツを皆が履いている。

 それが見せパン。見せるためのパンツ。

 

 パンツじゃないから恥ずかしくないもん! と云わんばかりにスカートの裾を風で靡かせては見せ付けるように様々なパンツが視界に映るのだが、それが何とも眼福なのである。

 ガチパンと見せパンの違いはよくわからない、ブリーフでもトランクスでもボクサーでもパンツはパンツだ。どう頑張ってもパンツはズボンにはなり得ない。

 

 価値観を変えてみれば腰パンに近いだらしなさを感じなくもないと想像出来そうだが、しかし世間の価値観としてはそれにだらしなさはない様子。

 見せる為の下着以外にも健康的な太ももとたゆんと柔らかみを感じる尻肉も荒んだ心を癒してくれるだろう。

 

 健康的な四肢というのはアンジェリーナ、ミラーシャで見飽きていたつもりではあったが歳下のそれを公然と眺めても不自然に思われないというのは素晴らしい世になったと再確認せざるを得ない。

 悪魔が微笑む時代とは良く言ったものである。微笑んでいるのは悪魔だけではなく天使と悪魔と両名であるが、通学ラッシュの時は珈琲片手に喫茶店でそれを眺めながら朝を迎える事が出来る。

 

 胸より上は特殊レンズによりモザイクがかかった状態なので安心してほしい。

 

 ……ふむ? 貞操逆転物鉄板の通勤ラッシュ、満員電車に乗るべし? 痴漢するのって専ら中年の小太り男性なイメージ、つまりは逆転している世界でもそういうことなのだ。香水漂わせるおばさんからされるなんて堪ったものではない。

 

 話を戻し、正直に言うと見せつけられる環境に前世も今世も居ない為に、見せパンは見慣れていない為に新鮮に感じるというのもある。

 

 アンジェリーナが見せパンなのか何なのかわからん紐パン、Tバックしか履かないのが原因である。

 しかしTバックのウエストを腰の骨の所まで上げて見せつけてるのは大変エッチチチチチチだとは思う。火の着火が遅いコンロのようだ。

 今度見せつけてるのを見たら思い切り持ち上げてみるか、引っ張ってみたいと思った次第。

 

 ミラーシャもミラーシャでおみ足なんて健康的を通り越し格闘家のように仕上がってるからエロスはあまり感じない、ストリートファイトしていないリアリティーある格ゲーキャラクターのように細い足してるのに蹴りでバットへし折るとかおかしいのよ。

 しかし敢えて股ぐらを蹴りあげられたいという上級者も居る前世、だがそれがいいとキメ顔で開脚しながら啖呵を切る者も居るから侮れない。

私も膝枕くらいならしてもらいたいところである。

 

 身内自慢のようなそれはさておき、であるなら前世のスカートの裾の長さの派閥争いは今世ではどのような扱いに変化しているのかも気になるところ。調べた結果男子高校生、DKの胸元のボタンで派閥争いが起きているらしい。

 

 清楚感じる全部塞ぎ、活発感を出す一個開け、色恋事になれた雰囲気を出させる2個開け、だそうな。

 正直ようわからん、因みに私の私服はパーカーなのでチャックだ。取り敢えず着とけば何とかなるパーカー、とても楽である。

 

 しかしスカートの裾がボタンとなるなら小学生が楽しんで行うスカート捲りは何処に行ってしまったのか。

 

 やはりこの世界の子供が行うセクハラは正面から鷲掴むナイスちんちんしかないのか。子供の頃からナイちんされたらそりゃ女性へビビりもするだろう、鷲掴みくらいならギリギリご褒美の範疇だが時と場合を考慮して欲しいところである。

 因みにナイスちんちんなる文化はこの世界には存在しないし、存在してはいけないだろう。お縄についてしまう。

 

 して、パーカーは女性が着るものと認識されていたのだがそれも変わりつつある。

 というのもパーカーに短パン。どちらかといえば外出用より部屋着とも言えるそれが私の私服であるが、誰を真似したのか知らないが世界では男性なのに露出をするというのは一大ブームとなっている。

 足を出すだけ、薄い生地のものを着るだけで露出という枠に入れられてしまうのは首を傾げてしまうのだが、考えるとそれを通り越して素足を惜しげもなく晒した私は何なんだろうか。

 

 しかし偉い人は言いました。

「脇と足は性器である。優秀なアーリヤ人はアダルトビデオのパッケージに騙されないが、Fanzaのレビューは信用できる。しかし、【こちらを購入した方は以下の作品も購入しています】というオススメは信用してはいけない」我が闘争より抜粋。

 

 脇と足は性器なのである、古事記にもそう書いてある。

 セックスで土地作って怪我してブサイクになったからと離婚したバツイチ子持ちがジャップの最高神なんだぜ、まぁギリシャ神話も中々業が深いとも思うが、日本人はそんなイカれた血筋の持ち主だと言うわけだ。

 

 血筋故か、そんな性器運動が実を結んでか。某画像投稿サイトに投稿される画像も足フェチ、脇フェチ、うなじフェチと様々な種類が増えて私としては大変喜ばしい限りである。

 貞操観念が逆転している為に被写体が全て男なのが非常に残念である、エロ画像を探してもBL向け画像しか出ないという感想はさておきだ。

 

 しかし性癖がアニメーション制作へは落とし込まれていないのか、はたまた中々エロスを感じる人物がいないのか、その被写体の殆どが私に近い、オマージュされたものなのは正直もっと捻りというかマニアックなシチュエーションを所望、いや……勘弁して欲しいところ。

 

 私はナルシストではない、自意識過剰でもない上に、その辺りの価値観は一般寄りだろう。

 だがこの商売、自分はナルシストであると思い込まないとやっていけない。前世でもドスケベ同人誌は女性の感じる顔やメス顔が丁寧に描写されているのが殆どである。

 今年のコミケの脱稿報告一覧を見てため息が出た。パケ絵でも絵化された自分のイキ顔が写ってるのは何とも言えない気持ちになる。

 自分からムラつかせるムーヴをするのとは違い、実際他人の性癖に巻き込まれるのを生で見ると困惑という感情しか生まれない。

 これは実際手に持ってみるしかあるまいて。

 

 さてさて冒頭から長々と失礼。時期は夏、東京での撮影も大詰めである。

 超がつく程の大がかりなアクション、背景が全てCGな物は一面緑の撮影ルームの中で撮影し終わっている。

 こちらとしては東京のトの字も感じなかったのだがちゃんと街中で撮影された物もあり、残されたそれは六割を占める日常的な映像。

 謂わばエロス、蛇足、茶番と言われる視聴者を笑わせ盛り上げるための映像。まぁ要は九割近くの撮影は終了しCGチーム頑張ってとなりつつ、修正を加えてちょこちょこ撮れば完成という訳だ。

 

 故に私らのような役者という存在は暇してる訳で、暇を潰すために街へと練り出すのだが日本の国民性なのか、日本人は取り敢えずスマホで撮影することが多い。

 ちゃんと警察の許可を取り一時の交通規制が掛けられたスクランブル交差点でもビルの中から、人混みを掻き分け、スマホを片手にぱしゃぱしゃと撮影するのだ。

 

 撮影されたそれはSNSにアップされる、映画の撮影風景なんて撮影してしまうとネタバレにならないのかと思うのだが、まぁ皆が良いなら良いんだろう。

 

 しかしご飯を食べに来た、酒を飲みに来た、お買い物をしに来た、それだけでレンズを向けられるのはあまり心地良い物ではない。

 取り敢えず握手を、隙あらばサインとねだる海外のファンに比べてどうにも日本人は陰キャ寄りである。

 個人的には握手をしようと突撃された方が負担が少ないのだが、それは当人にならないとわからないだろう。

 

 つまり何が言いたいのかと言えば、折角なので自分のエロ同人漁りにコミケに来ました、エロスの神様お願いですから()()バレて写真撮られませんように。

 私は有明の王様。この世界の王様は基本的に女性を示す言葉なので、有明の男王ということになる。あと一週間もしないうちに大百科に異名が書き加えられるのだろう、すまんな鹿島。

 

 自分が搾られているエロ同人誌……とは言わないが、有名人になってドッキリというのは誰しも枕に頭を置いて妄想したのではなかろうか。

 映画の衣装で、コスプレイヤーへ本人ドッキリするそんな内容を私はよく妄想した。

 

 実際のところそれを忠実に実現する度胸は無く、服装はそのままにサングラスに帽子とで関わらないでくれというオーラを周囲に振り撒いている。その為か近寄る者は居ないが、視線は集めてしまうのが難点だ。

 

 WABISABIと夏服の話はどうしたって? 今はコミケの気分なんじゃい。後々説明するから勘弁したもれ。

 

 まぁコミケが終わり夏の終わりが見えるころには撮影も終わり落ち着くだろう。撮影の話はその時にでも話させてもらおうか。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 1ヶ月以上前

 東京来た

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 5時間前

 コミケ行ってる、気付いても無視してください

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 1時間前

 帰宅

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 1時間前

 許可が下りた作家さんの同人誌感想を熟読して吟味しながら言っていきます

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 1時間前

 【作者:岩恵】

 ぷにぷにのぬっちぬちで目の保養になる。

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 30分前

 【作者:砂糖ライフ】

 医学界ではまだ発表されていないが

 ゲロ甘イチャラブ本からしか得られない成分

 これはまだガンには効かないがそのうち効くようになる

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 15分前

 【作者:烏賊壺屋】

 個人的には好きだぞ

 

 

 

 黒木優 @kurokiyuu 5秒前

 【作者:みこしろ偽人】

 流石にここまでデカくない

 でもシュールで面白い

 

 

 

 



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Take024

 日本らしさを感じるエロス、ドスケベ物語 IN JAPAN。

 わびさびを感じる日本らしさの演出な訳だが、今回の映画にて何をしたかと言えば大和撫男になった。

 大和撫男、大和撫子の男バージョン。ベースとなる大和撫子が具体化にどんな存在であるか、明確に言葉にするのは難しいが露出など一切行わず清く佇みながらも女性の一歩後ろを付いて歩き、着物姿で床に三つ指ついたお辞儀するような存在、SE(夢にしか出ない超絶尽くし系)I(だが本性はドスケベな)SO(顔面偏差値が高い黒髪の男)を演じさせてもらった。

 因みに演じたとしても七変化と十七変化はしない。

 

 過去作の影響もあり無知シチュ可能な清楚な存在は装えないに等しいが、守るべき存在である男性が一心に尽くすというのは中々そそられる物だろう。胸の大きさはさておき、黒髪の凛々しい美人女性が奥さんであるという妄想は日本人男性なら一度はしただろう、したよね? したよな。

 

 情報を得るために敵の元に侵入、給仕的な立ち位置で着物姿でがっつり御奉仕、勿論性的な意味は含みません。味方の元に戻ってきても気に入ったのか、その立ち位置のままラストまで立ち回らせてもらった。

 良妻賢母ならぬ良夫賢父と言わんばかり、お酌して酔っぱらいを膝枕、溶けたところを凛として佇みつつ甘やかすところはしっかり甘やかす。

 しかし艶めきではなく、芯があり凛々しさを感じる雰囲気。誰しもが一度は枕で想像した理想の日本夫。その本性が色に振り切った男性であることを知っているのは、観客と一部の役柄のみ。

 そんな女性にバブバブしてもいいシチュエーションなら、赤い彗星でなくてもバブみを求めてしまう、お前が赤ちゃんになるんだよ、バブみを感じてオギャれ。

 

 着ていた物も軽めの藍色の着物と和を感じさせる水引のイヤリング、水引とは帯紐のことである。着物は勿論男性用。通気性を上げる為と視角によるエロスを求める人の期待に答えるため浅めのスリットが入れられており、そこから脹ら脛と足先まではチラ見することができる。

 

 メイン軸には清楚系日本男性with着物を据え、添える物はスリットから見える足やうなじによるチラリズム。

 それが今回で表現した物である。

 

 ショップチャンネルが如くオススメしたいところではあるのだが監督は満面の笑みで撮影、ここまではいい、しかし相手役が本当に心から揺らいでいたかはわからない。役者はプロ、靡こうが靡かなかろうが役として心から墜落するのを演じなければいけない。地が出てもダメ、演じられなければ失格なのだ。

 

 アンジェやミラーシャ程仲が良ければ雰囲気である程度は察する事は出来るが、初見さん相手ではそこまで深く読み取れない。それを通して観客に馬鹿ウケなるかと言われれば手応えは不明だ。

 そのような物よりもストレートなエロスしか求めていないとなれば今回は失敗に終わると云えよう。

 ずっこけ二人組の反応は抜群に良かった、また敵役の評判も良かったので、及第点であると前向きに考えておきたい。公開が楽しみである。

 

 風情あるエロス。大事なのは服装と雰囲気であると私は考え、上記のような物をさせてもらった。

 日本での撮影の最重要課題、日本らしさを感じるエロスを考える為に世界のエロスも研究した。この場はその報告を兼ね、世界のエロスも語っていこうと思う。

 

 そんなことでまずはアメリカ。前世でアメリカらしさを感じる物と言えばやはり星条旗ビキニだろう。

 パツキンでグラマーなお姉さんが着た星条旗ビキニとカウボーイハット、そんなカウガールを見れば股間もときめき気分はアメリカン珈琲よりもアメリカン。

 長身長のお姉さんとくんずほぐれつする妄想をした男性は少なくない筈。

 

 この世界では下着という概念はそのまま、アメリカらしさを感じる物は星条旗柄のボクサーパンツ、トランクスとなっている。

 (純血)(勇気)の模様が一物で歪んでしまうのが滑稽だがジージャンを着た男性がこれを穿いて、見せ付けているのがアメリカらしさだ。  

 

 だがまぁ、実際のところはこんなの着てる人は居ないわけで。

 考えてみれば日常的に星条旗ビキニで出掛けている者は居たのか、これが答えである。以上のことからエロスというものは日常からかけ離れた理想、とも云えた。

 

 その代わりと言ってはなんだがアメリカのビーチでは女性の大半が強気に攻めたスリングショット、Vフロント水着をデフォルト装備。下手すれば上半身裸になっている人も少なくない。身持ちと布地が固い女性は少ないのだ。

 過去に男性水着は身体の凹凸が出にくい競泳水着のような布面積の大きいものが主流と説明したとは思う、故に某Hotなlimitな水着のような物を着れば物珍しさとアダルティーな様子から周囲の人気を集めること間違い無し。

 肉体美はセクシャルではなく格好良さである今世、これ見よがしにデカケツやナイスバディを見せ付けてくる絶景に三度の飯より洋モノが好きという男なら昇天出来るだろう。

 一人ならナンパの嵐、ファック・オン・ザ・ビーチ、ナイアガラも枯れるまでこってり搾られそうだ。

 

 して、ご近所さんの中国はと言えばやはりチャイナドレス。深めのスリットから見える生足、膨らみを主張する胸部、ボディラインが露になる流線型が素晴らしい。

 マーベラスという言葉はこの時の為に存在すると言っても、過言である。

 

 今世はそれが男性のチャイナ服に置き換わっている、カンフー映画で男がホワチャァしてた服をイメージして貰えれば幸いである。

 スタントマンの中国人女性曰く男性がその服を着ていること自体がエロいらしいのだが、こればかりは独特で理解し辛い。

 大和撫子がザ・日本な和服の寝間着を着て、まぁ色々透けているという感じなのだろう、そうに違いない。

 

 だが案の定これも実際も実在しない、幻の存在。現れるのはハロウィンの渋谷か映画の世界。「二次元に限る」という言葉があった様に、存在自体が空想の存在であるから良いという理論が真実味を帯びるだろう。いざ実現するとコレジャナイ感を感じることもある。

 

 個人的には男性のチャイナ服も足を出した方が受けは良いと思うのだが悲しいかな、若干世界、欧米の文化と噛み合わない。

 そもそも男性と女性の身体的特徴は前世と変わりない、世界の男性は毛深い人が多数だ。四肢を出さないのが当たり前の世界でも欧米、欧州等は体毛を無駄毛として処理する文化があるが、アジアには無駄毛を処理する文化は少ない。

 

 最近では誰の影響か、清潔さを求めてかは知らないが体毛をトゥルントゥルンに処理する文化がアジアにも生まれているが、その進展が一番遅いのは中国。体毛は無駄ではなく自然な物と考える中国文化と、無駄毛はバッドマナーと考える欧米、欧州等が噛み合わないのである。

 

 毛深いのとツルンツルンと、終わり無き戦争に見えるが結論としてはどちらもマーベラスに変わりはない。

 ツルンツルン属性が生まれなければ将来ぷにチンは生まれないだろうし、毛深い属性がなければ口に毛が付く等の少し下品な属性も生まれない。そして両者は終着点ではなくスタート地点、ロリと下品との出発点なのだ。

 個人的には両者とも世界に根を張ってほしいところある、毛根だけに。

 

 失礼。他にも細かく語りたいのだが正直、ドイツのオクトーバーフェストで麦茶を配るお兄さんの服装がスカートではなくズボンで胸元も押っ広げでエロいだとか、イギリスのキルトは女性が着る衣装、日本でエロサするとこんな程度しかヒットはしなかった。

 エロ画像で検索してもパソコンのモニターが鏡の代わりにしかならないのも問題点。

 やっぱり特定の男で抜いてるようなのはダメだな、次。次の話題。

 

 世界の性癖は引き続き弄んでいくとして、落ち着いたら中東に行こうと思っている。飛行機を貸してくれたり、色々と世話してくれた方への挨拶回りだ。長期的な滞在旅行(バカンス)ではなく休息を兼ねた息抜き(ホリディ)となる。

 初アラブであるが、初石油風呂にも入ってみたいところだ。アラブに美味しい食べ物はあっただろうか。

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 

名前でもうエロいあの映画を語るスレ1423

 

 

295:名無しの映画監督   ID:Emf9HPwV6

途中までかいてたけど、カードゲームの旬は過ぎたから消したわ

それで綴り直した訳なんだよな

 

296:名無しの映画監督   ID:N5oxtbwf9

おい世界一美しい男性ランキング発表来たで!れれ!!

 

297:名無しの映画監督   ID:vF8bXtfl4

受賞候補の発表やん

まぁでも去年も一昨年もランキング入ってなかったから今年こそは

 

298:名無しの映画監督   ID:hDQsYLgdk

顔立ちは綺麗、美しいより可憐、可愛いに分類され奥ゆかしさより健気さが主張されており

これが日本人の理想とされる大和撫男の凛々しさに結びつかず仮に候補に上がったとしても優勝は出来ないと思われ仮に優勝出来たとするならそれは地力ではなく経歴と出演作品が与える影響によるものだろう

 

299:名無しの映画監督   ID:71yMGNXBK

美しいランキングに入らないわけないと思うけどどうなの?

有識者ネキ

 

300:名無しの映画監督   ID:Kl5bnylCD

他の男見ても子宮が反応せんのよな、、、

 

301:名無しの映画監督   ID:N1tQmlFoQ

オタク特有長文キモ

 

302:名無しの映画監督   ID:U6o5ulrr0

キムチ牛丼食ってそうな感じ

 

303:名無しの映画監督   ID:HOIYnoQCy

面倒だから断ってる説、あると思います

 

304:名無しの映画監督   ID:N1cARBzLd

説って?

 

305:名無しの映画監督   ID:Kq67j3qQ+

ああ!

 

306:名無しの映画監督   ID:NotNVpXRT

本当あいつこういう事に乗り気ないよな

アカデミー賞とかもそうだけど

 

307:名無しの映画監督   ID:pDwATD78o

やる気無さそうに言いそう

 

308:名無しの映画監督   ID:1yIENTtCG

絶対に受賞したくないから毎年すっぽかす主演男優vs絶対に受賞させたいから毎年贈る日本アカデミー賞協会は正直好き

どっちが先に負けるか気になる

 

309:名無しの映画監督   ID:Dh0L1VArt

女を発情させて食う飯はうまいか?

 

310:名無しの映画監督   ID:du/0E+mgI

うまいやろなぁ

 

311:名無しの映画監督   ID:x0vUkX4bX

優くんの真似して炎上した俳優居たじゃん?

裏垢での呟きバレて燃えたやつ

 

候補にいるんだが

 

312:名無しの映画監督   ID:fqHCIy3ef

ファンとしては応援してる人が賞とか取るのも嬉しいんだ

 

313:名無しの映画監督   ID:bbB8jQUea

して候補におるんか?

 

314:名無しの映画監督   ID:5V4q29tco

お、お……

 

315:名無しの映画監督   ID:KuDi/mB78

我々は目が肥えすぎた

 

316:名無しの映画監督   ID:yYRHaYbhZ

究極(映画)の黒木vs至高(オフ)の黒木

 

317:名無しの映画監督   ID:0NVHTOnTf

美味ちんぽ?

 

318:名無しの映画監督   ID:UFTIVhiB7

おりゃん…

 

319:名無しの映画監督   ID:6EzcERYxs

3年連続で映画売れててその顔なのに候補に呼ばれない男性おりゅ?

 

320:名無しの映画監督   ID:3hFhMfljy

おりゅ!

 

321:名無しの映画監督   ID:XHCYpok3l

こういうのって嬉しくないのかね?

スポーツ選手とか賞もらったら嬉しいやん?

それと一緒じゃないの?

 

322:名無しの映画監督   ID:19QJ50pkp

美しいかと言われれば特別美しくはなくね?顔はまぁ良いけど

顔だけなら韓国の男優に余裕で負ける

ドスケベ男性ランキングなら優勝で、可愛いとかなら上位狙えるのでは?

 

323:名無しの映画監督   ID:81Ibwkxc3

いや、候補に居たら優勝じゃね?

 

324:名無しの映画監督   ID:K7jwfATaE

世界で一番美しいのは黒人男性だってそれ一番言われてるから

 

325:名無しの映画監督   ID:KwH1Vgy1j >>327

韓国の男が一番綺麗だわ

 

326:名無しの映画監督   ID:HkXEOjDoo

ここ数年で男の俳優の業界進出?が増えて良いことなんだけど

割りと供給と求める需要が噛み合ってないと思うんだが

 

二番煎じにしかならないし、ファンじゃなくても求めるレベルがね

要は目が肥えすぎた需要に供給元が達せられない

 

327:名無しの映画監督   ID:XwAGlciAk

>>325

韓国は整形大国だからね 文化が違う、日本は素材を生かすけど

個人的にはタイも良いんだが、やっぱりパツキン洋よ!

ガタイ♂のいい雄がたまらんのや

 

328:名無しの映画監督   ID:XjldmsNcb >>349

なんつうか奴はレジェンドで、所詮2位決定戦をしてるイメージ

ファンにとっては別枠

 

329:名無しの映画監督   ID:inXOzbmfn

そりゃ(素でサービス精神の塊の奴と演技で女にサービスしてるのを比べたら)そうよ

 

330:名無しの映画監督   ID:RxdPvfd57

タイとかパパだと思ったらママだったテンプレ国じゃん

 

331:名無しの映画監督   ID:ZjTtWzXI4

これがTSってやつですか?

 

332:名無しの映画監督   ID:AjvTHspBY

バ美肉おばさんをリアルでやる国だから

リアルならバ美肉おかあさんか?

 

333:名無しの映画監督   ID:CCQYwxX9t

そのうち日替わりアタッチメントとか着けそう

 

334:名無しの映画監督   ID:TfaW+933E

トッピングはイボ付、2本、ズル剥け、包茎

 

335:名無しの映画監督   ID:azebwqW1W

「トッピングいれますか?」

「長さマシ、固めマシ、太さマシマシ」

「私は全マシマシ、イボマシ」

 

336:名無しの映画監督   ID:4Oaot9SCp

そんな簡単に変えられたら困るわ

 

337:名無しの映画監督   ID:PoH6YS2gm >>341 >>342

女の身体に男のちんぽか、良い呼び名はないかな

 

338:名無しの映画監督   ID:GiYV/2BnY

人工おちんぽ人工タマタマってなんだよ

無いのにどうつけるんだよ

 

339:名無しの映画監督   ID:T8RvSVYln

チンポにゃ!

 

340:名無しの映画監督   ID:zm+VYgEbX

インポ! 包茎! 短小! 中折れ! 早濡! 童貞! 役満にゃ!

 

341:名無しの映画監督   ID:nWqwm1kxs

>>337

she(女性) male(男性)で

シーメールとかは?

 

342:名無しの映画監督   ID:EMFIwHi9q

>>337

二形でふたなり

 

343:名無しの映画監督   ID:sSLuGTfY7

優くんは意外と良い大きさのモノを持っていると予想

 

344:名無しの映画監督   ID:RORmjr1z4

中折れしてる段階で童貞ではないのでは?

 

345:名無しの映画監督   ID:ubJAN3PdK

人工ぺにすは手術して、子宮を摘出して

膣を少しずつ外にひねり出して竿?の部分に培養した筋肉を詰めるらしいぞ、亀頭はどうなってるのか知らん

だから入れれば感じるしって事らしい、射精はしないが

あと見た目が悪い

 

346:名無しの映画監督   ID:2JL1amPnc

タイに行った事あるけど生えてるのは基本居ないぞ

人工ちんぽ高くてまんこ取って終わりが基本やった

行為はぺニスバンド 超高級ニューハーフ風俗なら生えてるのが在籍してるけど、一回で10万飛ぶ

尚顔はやべぇいい

 

347:名無しの映画監督   ID:IGzSEkg4q

貴女忘れたの

ちんぽは指ではなく心で出すのよ

 

348:名無しの映画監督   ID:8GOQMwABd

心のちんぽか、胸が踊るな

 

349:名無しの映画監督   ID:Erh7OHmLA 

>>328

あんまり持ち上げ過ぎるのもどうかと思うぞ

 

350:名無しの映画監督   ID:lFlaxsRP4

風俗ならドイツがええぞ

ちな処女

 

351:名無しの映画監督   ID:ZI9uq9p5c

アンジェリーナと出来ちゃった婚してリュドミーラに刺される展開まだ?

 

352:名無しの映画監督   ID:gsUf0XKrb

アンジェリーナとリュドミーラですら友達であって恋仲ではないんだから無理やぞ

 

353:名無しの映画監督   ID:Sv++krOdG

欧米とか欧州?って友達の仲でパコれるんじゃないの?

相性確認的な 結婚前の身体の相性確認

 

354:名無しの映画監督   ID:nqGPNRCOm

つまり二人は、実はずっこんばっこん?

 

355:名無しの映画監督   ID:mwsoVpnVp

失黒フ辞

 

356:名無しの映画監督   ID:W3eWwuwJE

女がアメ公と露助でも男ジャップやんけ

本人が童貞宣言しとるやん

 

357:名無しの映画監督   ID:Syw+wJAXe

童貞は希少価値、ステータスなんやなって

 

358:名無しの映画監督   ID:IQ0uSkPwC

童貞宣言して沈火した件?

 

359:名無しの映画監督   ID:8powNRMdP

恋仲騒動でファンの嫉妬から二人がちょっと燃えたやつは草

 

360:名無しの映画監督   ID:PPwHlVsdj

靡いてる雰囲気ないからなぁ

 

361:名無しの映画監督   ID:UvAdjEsnV >>382

頼むから小森アナとの呑み番組終わらせないでくれ

生き甲斐なんだ

 

362:名無しの映画監督   ID:ZdZqmFo+u

世界に対して未性交宣言しないといけないとか罰ゲームか

 

363:名無しの映画監督   ID:r8vC6giio >>379

何故女の処女は馬鹿にされるのに男の童貞は価値があるんだ?

 

364:名無しの映画監督   ID:fAeCYUqx5 >>378

新作ってどれくらいで公開されるの?

 

365:名無しの映画監督   ID:Buttsbm/X

ワイはアン優、リュ優より小森優派なんだが

飲んでる雰囲気が一番の素なんやろ? 惚れるやん

 

366:名無しの映画監督   ID:mwnJaGmPb

酒呑みの時もだけど、良い男が黄昏てタバコ吸う姿ってなんであんなに良いんだろうな

 

367:名無しの映画監督   ID:jRKuSk4ao

愛煙家らしい

何でも役に寄せるために吸ってたらやめる気失せたって聞いた

 

368:名無しの映画監督   ID:Y5SEWNICx

地上波でプカプカ喫煙してるところ放送してくれ

 

369:名無しの映画監督   ID:8fwrpJnlV

酒も好きだよな

 

370:名無しの映画監督   ID:CGuugNsaA

ワイJDだけど喫煙所に居るわ

タバコふかしてる男

 

371:名無しの映画監督   ID:e3fU4y8W9

そんなちんぽって大体変なタバコ吸ってるのよな

彼女の影響で

 

372:名無しの映画監督   ID:GBLjvdAcv

ブラックストーン、ブラックデビル

アークロイヤル、ガラム

チェ、ジタン

 

373:名無しの映画監督   ID:I7zCj19W4

女は黙ってサッポロビール

 

374:名無しの映画監督   ID:Z9/q4S5YS

優くん愛飲のアークロイヤルを変なタバコと申すか

 

375:名無しの映画監督   ID:ZoNbQgL+4

個人的に役柄で吸うのは好きだけど、リアルヤニカスなのはちょっと

口臭が如何せん気になる

 

376:名無しの映画監督   ID:R8jvVXX5o

奴が普通だといつから錯覚していた?

 

377:名無しの映画監督   ID:SnWqYNAAU

すまん頼むから喫煙所でガラムはマジで勘弁

あれは喫煙者からしてもめっちゃ臭いんだわ

 

378:名無しの映画監督   ID:57VGnJYI2

>>364英語のトレーラー出てるけど来年度ってことしかわからん

2月とかじゃない?

 

379:名無しの映画監督   ID:bBnE9rGRY

>>363

一度も使った事のない剣と、一度も入れた事のない鞘とどちらが優秀だと思う?

 

380:名無しの映画監督   ID:od2W5zeX1

個人的に海外旅行とか見てみたいけど、小森&優の

 

381:名無しの映画監督   ID:p15Wnw84B

民放でフリーダムなところ見ているだけでお腹いっぱい

 

382:名無しの映画監督   ID:BaLUT5zaO

>>361木7時の看板番組だから、永遠に続いて欲しい

あの時間の裏は見る物無いんだわ

 

383:名無しの映画監督   ID:2xcSgcATJ

流石に旅行までスタッフ付きまとうのは気が休まらないんじゃないか?

それと金がかかるし

 

384:名無しの映画監督   ID:QbeRkMAaG

撮影ストック切れたら終わりかなぁ

 

385:名無しの映画監督   ID:w2fgI6GYk

前世オム・ファタールとか言われてもだろうなで終わる

 

386:名無しの映画監督   ID:qoQA3ev7c

2人と呑みは金夜じゃないのが乙だよな本当

旨そうに飲んでるの見ると次の日に飲みに行くかってなるもの

 

387:名無しの映画監督   ID:1xb1BHjSi

悲しむべきは全て東京近郊

 

388:名無しの映画監督   ID:7sG9fTYjb

北海道とか、九州とか、大阪とか?

そこら辺の地方都市に行ってるのも見たかったが

 

389:名無しの映画監督   ID:7QYApeUvy

あまり遠くに行けないからね、仕方無いね

 

390:名無しの映画監督   ID:OkbPdkVuN

日本のドラマに出てるのが見たい

日本に居続けてくれ

 

391:名無しの映画監督   ID:CxudkvBZE

強みを生かせないと思うんだが…

 

392:名無しの映画監督   ID:w3ko3xbUx

黒木、アラブにちょっくら遊びに行くってよ

 

393:名無しの映画監督   ID:5OtkMhkRS

YOUは何しにアラブに?

 

394:名無しの映画監督   ID:0trNxyHVG

アラブとかキャリアウーマン金子でしか見たことないけど?

 

394:名無しの映画監督   ID:652mgtgD

アラビアンな意図 を聞かせて

 

 

 

 

 

 



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Take025

 アラブ首長国連邦、UAEでの休暇は息が詰まるほど窮屈な物ではなかった。

 しかし今までの欲求に素直に従いながら過ごした生活とは正反対に禁欲を指示されるような物であった、衣装的な意味と性欲的な意味でだ。

 

 服装、アラブ国民の男性の殆どは宗教からかアバヤなる服で外では目元以外を隠している。

 目元しか見えない中東男性なんて日本人の感覚ではニュースで見る不審者にしか感じないのが辛い。

 男性は黒のアバヤ、女性は白のアバヤ。女性は顔を露にしているが、身体的な露出は少ない。

 

 外国人女性はそこまで身体の露出に対して縛りはないのだが、それでも外国人男性は露出度合いが高い服装はマナー違反らしい。

 アメリカで過ごしていた露出度の高い服装がここでは通用しない。

 ここでの露出度の高いとは淫らな服装という意味合いではなく中間期に家で着ているような短パンにシャツという服装である。

 

 太ももがこんにちはするだけでアウト、脇がチラ見するのもアウト。街中をTシャツで歩くものならお縄についてしまう。

 流石に宗教的、お国柄のマナーを城門突破し傾く気にはなれず長袖に長ズボンなど露出度の低い服装を着ていたのだがまたどうも不便、大不便者だ。

 

 正直な話アラブなんて際どいシースルー衣装で踊るベリーダンスと石油、某整形病院のCMというイメージしか無かった為に、別の国での文化なのかと吃驚したのは胸のうちに留めておく。

 

 しかし砂漠のオアシスで、目の前には小麦色に焼けた中東美女。

 ドスケベな要素しかないのにエッチな事を考えるなと云うのも無理な話。水を貯え続けるサボテン宜しく性欲は溜まる一方である。

 水を求めるようにスケベな事を求めるのは流石に飛躍し過ぎたが、実際玄奘三蔵でもなければシルクロード途中のオアシスで煩悩を捨てることができない。もしや緊箍児を付けたのは猿の頭ではなく亀の頭だったのか。

 

 とまぁ理不尽なのだが女性の服装と宗教的な禁則事項が悪い。

 女性用のアバヤはベトナムのアオザイ程ボディラインは強調されないが、それでもスタイルの良い女性が身に付ければ十分な破壊力。

 

 独身異性に対して単独で会うことは禁じられているため複数人で出迎えられる。ダイナマイトなボディのメリハリがエクスプローションなハーレム美女軍団に出迎えられれば、ナマヌルい毎日にサヨナラと言いたくなるだろう。

 幾ら普段デナリとツンドラに挟まれて鍛えられていようとも、マイリトルステートビルはブルジュ・ハリファになってしまう。

 

 まぁ実際のところおっ立てた訳では無い、例えばの話。

 石油女王に会っただけでムラついて勃起するとかアウトだろう、お天道様がまだサンサンと輝いているのにおテント様を立てる訳にはいかない、それくらい期待してしまったってこった。

 十分すぎる目の保養として血涙を流すしかないのである。

 

 そしてそんな中東美女軍団へ手を伸ばし触れてしまうと咎められるのは彼女達。触るのがダメなら触られるのは大丈夫という一休さんばりの頓智でも片付けられない。

 

 故に彼女らが歓迎したいように私はさせていた。歓迎の仕方は相手に任せたところ、案内されたのはまぁ馬鹿でかいホテル、それも滞在中は貸し切りである。

 大理石の床にエントランスにはデッカいシャンデリア、して最上階のデラックススイートルームはほぼワンフロアがエントランス並みの広さ。

 

 吃驚して語彙力も吹き飛びました、申し訳ないが要は金を注ぎ込みましたというホテル。

 何でもここへ遊びに来たときに此方を歓迎するためだけに建てたのだと。正直、金持ったガチ恋勢はヤバいと思いました。

 

 どうして性的ビジュアルにタブーがある国であんな映画が流行るんですか、という疑問はあるのだがまぁそれに突っ込んでも答えは神さまの思し召しだろう。

 

 そこに滞在し、案内されるがまま食っちゃ寝しては観光していたのだが最終日に問題が起きる。

 別れの際、再会を約束し代表からプレゼントされたのは滞在していたホテルの所有権とネックレス。

 

 そう、ネックレスはまだいい。じゃらじゃらした純金、散りばめられたよく分からない煌びやかな宝石やらで作られたアラビアンネックレス。

 それを受け取ると発生する問題である税金、これはまだ許される。関係各所に電話して現金を用意すれば良いだけである。

 休暇に行ったのに何故か数千万の支払い義務が発生するだけなのだが、問題は所有権。

 

 そんな物プレゼントされてもどう扱えばいいのか分からない上に手放そうとしても世間の視線がある以上手放せず管理も出来ない。

 

 是が非でも拒否しなければならず、その着地点は必死の攻防により永年デラックススイートの利用券に落ち着いたのだがプレゼント怖さでアラブへはもう行かないと心には決めた。

 某ラーメン屋同様に食後はもう行かないと拒否反応を示すが暫くすると行きたくなる、滞在する分には大変心地良い為にそうなりそうなのが怖い。

 実際一人で滞在している分には大変心地よかった。これがざっくりとしたUAE休暇の詳細である。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 そうして帰ってきた久しぶりの我が賃貸。ロサンゼルス郊外、1DKのサンクチュアリ、レンガ造りの安アパートが私の家だった。

 男独り身で格安アパートに住んでいる現状、会社の方からの金稼いだんだからもっと良いところに住めという引っ越し要請も散々無視を続けた結果、強制的に引っ越しさせられることになりました。

 住人の殆どがSNS映えとは無縁な老夫婦な事もあってか住所が晒される事もなく今日まで過ごせていた。それでも御上は心配なのだろう。

 

「独身男性の聖域で宝探しなんて良い趣味してるな。お宝は見つかったかな」

「どの宝箱もシケてるわね、聖域というより…………墓場?」

「差し詰め……私らは墓荒らしか?」

「振っといてあれだけどうら若き男の部屋を墓場呼ばわりは酷くね……? まぁ掃き溜めとか肥溜めとか言われないだけマシか」

「流石にそれはない」

 

 軽口も程々に、アンジェがタンスを引いては中の物をミラーシャに手渡し、手早く段ボールに詰めていく連携プレーが我が家で繰り広げられていた。

 強制的に引っ越しが確定し、嫌だ嫌だと駄々を捏ねていたところ二人が応援として押し掛けてきた訳である。

 

「別にこちとら引っ越さなくてもいいんだが」

「だってこうでもされないと引っ越さないだろう」

「男なんだし流石に不用心が過ぎるわ。どうして私たちより稼いでいて資産もあるのに安アパートの部屋を借りているの」

「居心地良いんだもん」

「ギルティ。アルカトラズにご招待」

「ラーゲリはどう?」

「二人とも洒落になってない、特にミラーシャ」

 

 新しい新居は現在の住まいから然程変わらない場所に位置する、物置小屋から電子的なセキュリティが入った上等な一軒家に変わるだけ。

 部屋数は増えるが、正直生活のテリトリーが然程変わらないのはありがたい。

 

 彼女達によってタンスは次々に開けられ、中身が段ボールに詰められていく。因みに下着などの彼女らに刺激の強い物は渋々だが作業直前に梱包させてもらった。

 私はといえば彼女らの行動を観察するという重大業務をしている。

 

 そんな二人が部屋に入った瞬間何をしたかといえば、バレないように深呼吸だ。

 女の子の部屋に入れば深呼吸をし、異性の香りを楽しもうとしてしまう男性と瓜二つ。人間やっぱりそういうことが好きなんだな、と再確認せざるを得ない。

 因みに彼女らの自宅にもお邪魔したことはあるが、鼻腔を擽ったのはうっすらとした香水の匂いである。

 

 私の部屋には消臭剤も無ければ香も焚かない。素の自分の匂いとはどういう匂いかはわからない、だが気になるからと深呼吸したことを弄り倒して彼女達に聞くことはしない。

 その点は優しさである。即ち私の匂いはバファリンと同じ、つまり私の匂いは痛みに効く。

 

 逆に考えれば独身女性の引っ越しを攻略対象の男二人が手伝うという謎シチュエーションであるが、乙女ゲームではよくある出来事なのだろう。

 密室に男二人と女、であれば何も起きないはずも無く……そんな事を考えながら彼女達の横顔を無心で虚空を見るように眺めていれば、二人は美人であると再確認してしまう。

 

 アメリカとロシアという表では仲の悪そうな国民同士だが二人の仲はとても良い。

 

 茶髪に銀髪、ショートヘアーにロングヘアー、巨乳に貧乳、安産型の尻に引き締まった尻。

 男性と比べても高めの身長と絞られた腹部等の共通点はあるが身体的特徴も真逆に近く、また恋愛面もお互い押されると弱いという共通点はあるが愛を甘く噛み締めるタイプに激しく貪って味わうタイプと真逆なのも面白い。

 

「二人って本当に美人だよね」

「流石にストレートに言われると照れるよ」

「ふふ、ありがと」

 

 そのまま甘露な雰囲気に変わりかけた瞬間、何を思ったのかアンジェがタンスから出てきた指輪ケースを開ける。

 中身は何のことはないただのダイヤモンドの指輪、熱心なファンからのプレゼントである。

 

「ダイヤモンドの指輪かな……?」

「あぁその指輪はプレゼントされたもの」

「ちょっとユーシャ、決して安くないんだからタンスに突っ込むのはやめてよ。せめて金庫にいれて」

「見れば分かるじゃん? 一万円の木製金庫、鍵はドアにサムターンがある」

 

 この部屋に金属製の金庫なんて物はなく、プレゼントされたアクセサリーの類は全て化粧箱に収納したままタンスに入れられている。

 総額数十億円はあるアクセサリーを溜め込んだ一万円のタンス、タンス冥利に尽きるだろう。

 

 次いでアンジェリーナがアラブ人から貰ったアクセサリーが入った箱を手に取り繁々と眺めている、その中身は蒼赤のダイヤモンドイヤリングセットだった。

 

「これは……二十四金の刻印入りか、もしかしてアンティークとか?」

「中身は?」

「……それはねぇ。……蒼と赤の宝石のイヤリング?」

「何の宝石なの?」

 

 アンジェが蓋に手を掛けミラーシャと共に中を確認した瞬間、二人から魂を搾り出したような溜め息が吐かれた。

 二人の顔には今日一番の疲労が浮かび上がる。それこそ映画の撮影が難航した時と同等の、これに並ぶ疲れた顔は久しく見ていない。

 

「あー両方ダイヤモンド、前に言ってたメル友の石油女王からのプレゼント。それ税金エグかったわ」

「……引っ越し祝いに私は金庫を送るよ、指紋認証出来るやつがいい。動かせないくらいが丁度良いかもね」

「……ママのお腹の中に常識を忘れてきたのかしら」

「まぁ強盗に入られたら大変っちゃ大変だよね」

「それはそうだし言いたいことはそうじゃないんだけど」

 

 結局彼女らのその疲れが響き、荷物の移動も含めて引っ越しを終えたのは次の日の夕方。

 そしてその翌日には重厚な金庫が家主に無許可で置かれ、持っていた貴金属は見届け人二名の同席の元、そこに保管されることとなった。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 ところで諸兄ニキらはVtuberなるものはご存知だろうか。

 

 動画と共にまるで生きてるかのように動く半ナマ物。

 現在日本ではそれらが大変人気らしく、某動画配信サイトを見ればそれに準ずる配信と切り抜きがおすすめに表示される事も少なくない。

 

 その半ナマ同士の絡みの中から生まれた言葉。

 『てぇてぇ』

 

 『てぇてぇ』それは尊いということ。

 人と人との一時の絡み合いに尊敬の念を抱き、感嘆の余りに口ずさむ言葉。人々に幸せを与え、明日を生きる活力を与えられたと示す事象である。

 そんなてぇてぇが生命に活力を与えすぎる為に、同性によるてぇてぇをタブーとする宗教も今尚存在する。イエス(Yes)もてぇてぇの前では駄目(ノー)としか言えなかった。

 

 男性Vtuberと男性Vtuberの絡みはてぇてぇか、否か。

 答えは『てぇてぇ』

 

 男性Vtuberと男性Vtuberによる可憐な絡みは果実のように甘酸っぱく、見ているだけで微笑ましく、時にこちらもその薔薇の香りに挟まれる情景を想像し悶えてしまうほど。

 

 雑談を仲睦まじく語り合い照れては恥ずかしがり、焦りを見せるその様子。人々はてぇてみを感じるだけで幸福感を得る。

 てぇてぇはDNAに素早く届く。

 

 ゲームで競い合いイキり負かされて悔しがり、勝てば誇らしげに笑い、最後には再戦を約束して認め合う。

 その様子に観客は子の成長を見届けた様な親愛と、スポーツ観戦と同様の熱狂を得る。

 てぇてぇは今まだガンには効かないがそのうち効くようになる。

 

 『てぇてぇ』それは何よりも美しく、かけがえのない物である。

 

 男性Vtuber、著作物の利用に関する包括的許諾契約、代表取締役としての力。この世のすべてを手に入れた某大手Vtuber事務所社長。彼女の就任に放った一言は、人々をネットの海へかり立てた。

『てぇてぇか? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世のすべてをそこへ置いてきた!!』

 女たちはグランドてぇてぇを目指し、枠を追い続ける。世はまさに、大てぇてぇ時代。

 

 えー……はい。そんな存在を眺めるだけ眺め放置した結果、この世界のてぇてぇの価値観は上記へと完璧に固定されてしまいました事をご報告致します。

 

 諸兄ニキらは動画配信サイトを開いたらポンコツAIにオス臭い語り合い本編と腐った幕の内弁当みたいな切り抜きをおすすめされる気分がわかるか? 

 前までは良かった、前といえば具体的に言えば日本で大炎上した直後くらいまでは、ちょっとホモ臭い男子高校の悪乗りを見ているようでまだ笑えた。

 

 しかし現在はやれ男同士でお泊まりだ、やれ一緒に風呂入っただ、裸を見た、あいつのちんぽが大きい、決め付けは男同士で可愛い好き好きだのとホモ臭いことこの上ない。

 そりゃ石を投げさせるのを止めるイエス(Yes)もホモてぇてぇの前では駄目(ノー)と言うわな。

 

 男性Vtuberと男性Vtuberの絡みはてぇてぇか、否か。

 答えは一切てぇてぇくない。生命に対する侮辱を感じます。

 

「どうしてこうなった」

 

 と……赤い再生ボタンが映し出される目の前で頭を抱えるのだがVtuber界隈が途端にホモ臭くなったキッカケはさておき、こうなることは必然であった。

 何故なら単純な話、性別を逆転させれば前世でもレズ営業は需要があり、てぇてぇてぇてぇと騒がれていたからである。

 

 需要も入れ替わり男性ライバーの需要が増え、百合(レズ)営業が薔薇(ホモ)営業に変わっただけ。

 アイドル箱は全員男、勿論彼女を匂わせるとユニコーンはフケります。

 ……童貞相手もユニコーン呼びは正解なのか果たして。

 

 この世界でも単独でエロ売りしても過激過ぎる物はチャンネルが爆発するか頭打ち、違う点はそれらをクリアしてもその上には高い壁()が存在するということ、結局のところ甘めな薔薇(ホモ)営業するしかないのである。

 

 この状況を見て思ったのは、貞操観念が逆転した世界でVtuberはやりたくないだった。

 私の女性にチヤホヤされたい欲求とホモ営業への嫌悪を天秤に掛けホモ営業への嫌悪が勝った、それだけの話。

 

 てぇてぇの価値観に話を戻せば、ここまで視聴者が調教されてしまえばもう修正は不可能であろう。向けたい方向は無いが()の開拓者としては勝手に耕されたのは悔しい限りだ。

 だがVtuber自体も貞操観念が逆転した世界で何が違うかと言われれば何も違わない。需要があるから供給(てぇてぇ)はあるのだ、部外者がとやかく言い過ぎるのはお門違いである。

 

 向こうは向こう、私は私。こちらはこちらで、世界規模でゆっくりと性癖を破壊していけばいいのだから。

 




語って欲しい要素、ネタあればください(切実)


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