奴隷遊びもほどほどに。 (ウェットルver.2)
しおりを挟む
変態だって常識はある。
”聖地マリージョア”
惑星を分かつ“赤い土の大陸”の頂にある都市。
ここでは数多の奴隷が世界貴族に従属し、いつ死ぬか、もしくは死ねるかもわからない日々を繰り返しながら、叶うはずもない自由を夢見て眠り続ける。
いずれ“無敵奴隷”と呼ばれる存在が現れるまで、彼らの残虐性は「斬ったら死ぬ」「刺したら死ぬ」程度の奴隷では満たされず、傲慢にして自由気ままな日々でも我慢しなければならないほどの「奴隷の脆さ」について、彼らは頭を悩まされていた。
すきなだけ残虐に扱いたくとも、死ねば代わりがいるとはいえ限度がある。
いちいち聖地マリージョアから出て、あらためて奴隷を買うなど面倒だ。
大量の奴隷を購入するとしても、たかが人間ごときを飼育するための食費だの排泄物の処理だのだって大変なのだから、もっと頑丈な種族の奴隷を購入するほうが楽だろう。
魚人だえ、いいや巨人だえ、いやいや手長族と足長族はどうかえ!
なにせ
このように、彼らなりに娯楽を極めようとする中で。
めずらしくも「奴隷を虐待しない娯楽」をみずから作り、世に売り出し。自分からは奴隷を購入しなかった世界貴族の少年が、愛する両親からプレゼントされた女奴隷を前にくつろいでいた。
「ご主人さまァン♡」
「………どうしたの、ぇ。」
くつろいでは、いた。
ゆっくりと読書にふけり、コーラを飲みながら。
ひきつりかけた頬を誤魔化すように、そっと本で顔を隠す。
「下々民の、負けてばっかりの……ワタシにぃ♡」
ふかぶかと額を床に近づけ、土下座をして畏まる女奴隷を見つめながら、
「そう、ご主人さまの奴隷にぃ♡」
やけに自分の靴との距離が近い、女奴隷の顔を見つめながら、
「すてきな敗北と、屈辱を、ん~~っ、ちょおだいっ♡」
「………もう、新しいゲームに挑戦してみたいの? ……かぇ?」
「もちろんっ♡ 勝っちゃってぇ♡」
やたらとあまい声で懇願する女奴隷に、ドンびきした。
「……………たすけて。」
そう、くつろいでなどいない。
くつろいでいる態度をとりながら、本の世界へと現実逃避しただけである。
“天竜人”世界貴族がひとり、スタイン・カルーン聖。
おもに「カルーン聖」と呼ばれる少年は、天竜人然とした態度を演じながらも、平静を装いながらも、内心……漫画表現的には吹き出しの中で、頭を抱えて泣いた。
―――”人が空想しうる全てのことは 起こりうる現実である”
異世界人が死に、生まれの異世界では空想とされるものを現実とする”別の異世界”へと転生する、奇妙奇天烈で意味☆不明な現象。
通称、異世界転生。
この現象により、高貴なる“スタイン家”の子息として転生した男がいた。
名をカルーンと改め、世界貴族なる地位に甘んじながらも、前世での価値観とスタイン家の価値観の間で惑い、「世界貴族らしく奴隷を持つこと」を内心躊躇はしていた。
表向きは言葉も話せない頃、奴隷解放運動……カルーン聖の世界では”聖地マリージョア襲撃事件”と呼ばれるのみの過去において、奴隷や魚人の怒号が記憶に残っているからだ、ということにしてはいるが。
そんな記憶が実際にあろうとも、前世で培った価値観や人生観から覚悟を終えようとして、その価値観と人生観ゆえに決断しきれぬ日々を過ごしていたのである。
ひとは彼の心を”良心”と呼ぶのだろう。
そんなある日のこと。
カルーンの父、“スタイン・フランケ聖”は子カルーンを案じた。
……息子の趣味を把握していないわけではない。
いちいち“下々民”のグラビア写真が貼られた雑誌を二部ずつ集めては、興味を持てた女の写真を切り取り収集し、「どこの国の女なのか」「どういう国なのか」を記録しているのだから。
世界各国の王族の姫君、女王の顔写真、あるいは女海賊の手配書も同じく。
暖かな目で見守れるほどの、自分と同じ女好き。
そうであるがゆえに………父フランケ聖は、あせった。
「我が息子は、なぜ好みの女奴隷を求めないのかえ?」
どこにでもいる人間、すなわち彼らの世界の“下々民”にとってみれば、世界貴族の奴隷になった瞬間に「人間としての人生が終わる」ことを宣告されたのも同然だ。
………と、認識されている。
彼らの認識を把握したカルーン聖からしてみれば、奴隷を得るなど言語道断ではあるものの、家族の(世界貴族の社会においての)体面と命を守るためであれば、いたし方なくとも最低ひとりは“飼育”したうえで愛玩し続けよう………と、覚悟を決めていた。
そう、フランケ聖が急がずとも、カルーン聖は奴隷を飼うつもりだった。
とはいえ、カルーン聖の前世は“下々民”と同等である「一般市民」でしかない。
あたりまえのように持つ権力が、あたりまえのように明日も通ずるとは信じなかった。
では、どのような奴隷を飼うべきか。
たとえば「美しい女である」以外に、なんの才能も必要とはしないのか。
彼の人生設計としては、なんらかの要因で聖地マリージョアが壊滅しても、せめて家族か自分だけは生きるため、ある程度の知恵が認められる奴隷を求めていた。
もちろん信頼してもらう気などない。思いつく限りの利用価値を搾り取り、俗称である“天竜人”らしく、相手の命を使い潰すことも視野に収めるつもりだ。
そう、カルーン聖は、前世が何者だからと家族を見捨てる気などなかった。
ろくでもない所業を両親がしていても、それもこれも世界貴族の社会で生きるための常識であって、まったく従わなければ理解されない弱者でしかない。そもそも聖地マリージョアでの娯楽なんて種類が少ないのだ、奴隷虐待を娯楽にする傾向も理解はできる。
なんだかんだ、自分がボードゲームを作っては、たびたび遊んでくれる両親だ。
どんな性格で世界貴族らしくふるまっているのかは、さすがに把握した。
ゆえに、できれば両親には生きてほしい………当然の情である。
が、そんな深謀遠慮を抱えて読書にふける息子の内面など、正直に言わねば理解はされないものだ。傍からみれば、彼の姿は次のように見える。
『スケベ心こそ持ちながら、女を求めず。
ずっと部屋の奥で読書ばかりをする、むっつりスケベ。』
また親からすると、さらに次のように見える。
『
父は奮起した。
かならずや、息子の趣味にかなう美女を捕まえて、彼の奴隷にしてやろうと。
「家の中で毎日、本を読んでは売れるゲームを作ってばかり!
……いや、おなじ世界貴族として誇らしい息子ではあるえ。わえがひっぱる家族旅行であれば外出はするえ。しかし、社交するための奴隷は絶対必要だえ。
ましてや『こもりきりで』『奴隷を虐待せぬ』など笑われてしまう……!
いくら“ひきこもり”生活から大儲けしようと、理屈でメンツの問題は誤魔化せないえ!
大切な息子を、ブザマだと笑われたくはないえ!!!」
男フランケ聖、恋愛結婚で嫁を得た男ゆえに、家族への情は本物であった。
こっそりと息子のスクラップ帳のひとつを手にし、息子に奴隷探しであることを悟られぬように“結婚記念日”として妻と外遊しながら、たまたま風の強い日に奴隷候補をみつけて確保し、あとでインペルダウンの獄卒長と知るも「世界政府の関係者であろうと知ったことではない」と強権まかせに帰宅。
そのようにして両親からプレゼントされた奴隷こそ、今、カルーン聖の眼前で屈服する女奴隷であり、前世の彼にも見覚えがある女性サディなのである。
”獄卒長”サディちゃん
残忍。嗜虐。海兵にすら容赦なく。
あらゆる犯罪者のなかでも特筆するべき悪行をなした犯罪者たち、彼らを収容する大監獄“インペルダウン”獄卒の頂点に立つ、所属と業務内容を問わなければキャリアウーマンと呼べる女傑のひとり。
モットーは「攻めなきゃ人生じゃない。」……そんな彼女が。
奴隷になってからの数日間で、あっさりと。
被虐的な悦びをもとめる、サディストとは正反対のマゾヒストになっていた。
「………なんで?」
「はァン♡ はやくぅ、次のゲームを♡
どんな負け方で負けちゃうのっ?♡ どんな罰ゲームなのぉっ?♡」
「……マジで言ってるのかコイツ?」
またしてもドン引きする、カルーン聖。
彼がおこなった罰ゲームは、どれもが本当に地味なものだった。
奴隷への虐待をよく知るものからすれば、信用に足らない世界貴族の戯れだったとはいえ、「いざ負けてみればたいしたことのない罰だ」と安心してもらえるはずだった。
人間椅子。
(※ひざまずいてもらう)
空気椅子。
(※座らせてもらう)
通常の奴隷とほぼ変わらない、
(※手やひざ、足の裂傷を防ぐための衣装を与えたうえで。通常は支給しない)
石抱き。
(※載せるものは石ではなく辞書数冊、床には絨毯)
あと、鼻にわりばし。
(※ただのネタ切れ)
どれも肉体にダメージを与えすぎないよう抑えた代物である。どれもやろうと思えば相手の肉体を破壊できる拷問になる代物でもある。
つまり、ほかの世界貴族にみられても問題がない罰ゲームだったのだ。
次は「わたしは奴隷です。」と直筆させた板を首にくくりつけさせ、そのへんを連れ歩くだけのものを予定していた。いまさら当然のことを公言されても、世界貴族や奴隷からすれば虐待のレベルが低すぎて「は?なにあれ?」としか思われないであろうが。
ぶっちゃけ、焼き印がわかる姿で歩き回るよりはマシ……の、はずである。
たとえば、「わたしはご主人さまの靴を舐めました。」、あるいは「わたしはペットです。」と書かせた板をくくりつけさせるよりも、はるかに精神的苦痛は弱い。
前世で言えば、「わたしは庶民です。」なんて板を首にくくりつけて街中を歩いたところで、意味が分からないと観衆は首をかしげるのと同じだ。マリージョアでの下々民は、奴隷か下僕のどちらかだけ。いっそすがすがしいまでの身分証明でしかない。
なので、なんの問題もない……はずである。
奴隷であることを再確認するからといえ、へんなことを考えなければ。
聖地マリージョアでは風習である奴隷への虐待なんて、まったくやっていないのに。
きわめて好待遇、かつ高待遇のはずなのに、「へんなことを考えなければ。」
「え、ええと……はい、ボクの勝ちだね、ぇ。
それじゃあ、とりあえず、ベニヤ板を首にかけてもらうから、そこに貼りつける紙に直筆で書いてほしいんだよね、ぇ。『わたしは奴隷です。』って、ぇ」
「はぁんっ!
そんなの、そんなのっ……ん~~っ、最高っ♡
それを焼き印だけじゃなくて、『自分でも』なのねぇっ!?」
「………あっハイ。」
そう、余計なことを考えなければ。
べつに奴隷になったからといって、人間をやめたわけではない。
人間扱いされない地獄の道ではあるが、人間であることに変わりはなく。
世界貴族からすれば、そもそも奴隷もまた人間であり、世界貴族こそ「人間ではない」と自称できる特別な存在だと自負している。
そのあたりの認識の違いは、すでに彼が彼女に語って聞かせた。
……………が、問題がひとつ。
彼女は獄卒長ではあったが、おもな方法は肉体破壊ばかり。
罰ゲームを含めた“精神攻撃”に特化した虐待については、未経験だったのだ。
だれに虐待された、だれに拷問された、という経験ではなく。
だれに虐待したでも、だれを拷問にかけたという経験でもない。
どのようにすれば屈辱と精神的苦痛を与えられるかの実践が、である。
なにひとつ肉体を傷つけずに、心だけを折りにかかる“罰ゲーム”など。
彼女は知らなかった。生まれて初めて、知ってしまった。
「ああっ、みないで、もっとみちゃってぇんっ♡
ワタシが書いた、ワタシの人間失格の証っ、ん~♡ みられちゃうゥンっ♡」
「どっちの罰ゲームだか、わかんねぇよ……ぇ…………!」
まるで、自分を家具のように扱われ。
馬か犬かも判別がつかない家畜として歩かされて。
かつて獄卒長であった自分が拷問され。女の顔すら歪められ。
とどめを受けて。
さらなるダメ押しで、自分から「人間ではない」と書いた板を持ち。
公衆の面前で歩き回るなど、耐えられるわけがない。
攻めてこその彼女の人生ならば。
より苛烈に攻め続ける、世界貴族のカルーン聖こそが「人間」。
攻められる今の自分など、「人間」ではなかった。
彼女は、自分が「人間」の生を歩んでいると思えなかったのである。
カルーン聖から冷静な理屈を説かれていても。
「あ、ああ、腰が、あがらなっ♡」
心の内側から熱を帯びて目覚めたものが、これまでの人生を否定し続ける。
カルーン聖へ、カルーン聖の攻めへ陶酔し、己の立場を再確認し、またもや陶酔する。
砂の城がたやすく自らの重さで崩れるように、彼女のアイデンティティこそが彼女自身を攻めたて、ひとつ、またひとつと奴隷として屈服するたび、虐待されるたびに胸の高鳴りが早まっていく。
今となっては。
攻められ続けてこそ、ひとならざる彼女の幸せ。
「………背負わないからね? ぇ。」
「はひっ♡ ん~~っ♡
わ、ワタシっ、最後まで“奴隷”としてっ……歩きますっ♡」
よほどの喜悦に腰が砕けたのだろうか、座りこんだまま奴隷であることを誓うサディ。
冷静に彼女の心が折れた理由を推察し、思わずため息がでるカルーン聖。
「休憩してもいいけど、示しがつかないから座らせてね、ぇ。
後ろで手を組んで。腕を座面にするから……そうそう、ごめんね、ぇ」
「いやんっ、背筋がのばされてっ……抱いた板が、よく見えちゃうゥン♡」
「無敵なのキミ?」
あくまでも冷静に努めようとする、体裁を気にした世界貴族に対して、
(肩もほどよく攻められて、背中を丸めないと、はずれちゃっ、くうぅっ!
でも、重さで背筋が伸びて、隠れるはずの板がみえちゃって♡
「隠そう」って気持ちが、ひとの誇りが、また攻められちゃう♡
ああ、まだ残っていたのねっ? ワタシっ、女のプライドぉ♡
ん~~~♡ 最後のひとかけらまで、こんな、こんなっ!)
「こんなぁ、はぁんっ♡
ご、拷問んっ………初めてぇええっ!♡」
肉体と精神を同時に攻め立てる、いささか精神面への攻めが強い拷問……たとえそれが罰ゲームの範疇であれ、天竜人らしい虐待であれ、奴隷である彼女にとっては新鮮すぎる刺激ゆえに脳内麻薬を際限なく分泌させられてしまう。
だらしなく、厚ぼったい唇からこぼれるように垂れる舌が蠱惑的ではある。
「夢なら醒めてくれよぅ……ぇ……」
あのサディが、己の名に反した被虐的嗜好へと耽溺していく。
そんな様子を見続けたカルーン聖は、うすうすと自覚していた前世からの
いくらなんでも、自発的に虐待を求める奴隷とか。
意味不明なものを実現させた己に対して、これからのまわりの態度が心配だと、先行きの怪しくなった未来に、思わず眉間を揉み始めた。
☆“世界貴族”スタイン・カルーン聖
名前の由来は、小説「カーミラ」作中の地名カルンスタインから。
吸血鬼カーミラのモデルとも噂される「エリザベート・バートリー」は、拷問器具か処刑器具かも区別がつかない器具「アイアンメイデン」を所持していたとされる。
前世ではボードゲームを愛好しており、今生では転生先に存在しないボードゲームを広めることで世界貴族としての地位とは別の収入を得つつ、うまいこと奴隷虐待とは別の娯楽を聖地マリージョア全域に広められないか挑戦中。
両親の公開処刑ショーは苦手だが、そこまでやる気持ちは共感できる。
☆“世界貴族”スタイン・フランケ聖
名前の由来は、小説「フランケンシュタイン」から。
フランケンシュタイン博士によって生み出された怪物は、みずからをアダムとして製造された経緯からか、孤独心からか、イヴに相当する新たな女怪物を求めた。
かなりの女好きながらも、最愛の妻のために女奴隷を愛玩することが多い。
どういう意味かというと、そのくらいのすさまじい男なのである。
さすがに女奴隷の扱いもよく、明確に虐待をした奴隷は海賊を含む罪人ばかりで、罪がなければ異種族だろうと荷物持ちや馬車馬(※人力車の車夫)として重用する。
「価値観は人間寄り、やることは天竜人」といった父親なので、ほかの世界貴族からは微妙な顔をされているが、ゆえに独自の奴隷運用に関しては一目置かれている。
☆“世界貴族”スタイン・イザベッタ宮(※未登場)
名前の由来は、血の伯爵夫人とも称される「エリザベート・バートリー」。
正義感が強く、ことあるごとに「自分の家族が同じ目にあったら」と考えて行動するほどの愛の強いひと。下々民に称賛されることを好み、創造主の末裔として海賊を公開処刑したり、いちいち舞台劇の悪役にしたてあげて公開処刑したりの役者肌かつ残虐。
「スタイン家の奴隷になったら見世物にされて死ぬ」なる噂の出どころ。
結婚前から同じ調子であるため、水も血も滴る美しき淑女としてのマリージョア人気は相変わらず。
なお、買う奴隷は犯罪者ばかりで、できれば一般市民を奴隷にしたくない。
へんに感情移入をしてしまうせいであり、「価値観は天竜人、やることは人間」。
……なのだが、今回は息子のために嫌悪感を耐え、サディを奴隷にした。
それなりに罪悪感はあるものの「だってうちの子、心配だし」と割りきって、彼女の人権問題をガン無視するあたりは、やはり天竜人なのである。
正義感が強いのに人権軽視、というと矛盾しているように思えるかもしれないが、残念ながら人間のやることとは”そういうもの”である。現代でもSNS上で公開処刑(※晒し)が娯楽として成立するように。
☆“奴隷”サディ
かつてインペルダウンの獄卒長だった“サディちゃん”、
罰ゲームによる地道な(意図せぬ)尊厳破壊、彼女のモットーを上から踏みにじれる地位、己の延命手段でもある(と勝手に思い込んだ)ゲームでは知恵で負け続ける、ほかの天竜人とくらべると良心的ではあるが「もしも捨てられたらどうなるか」が転売後の待遇悪化と明確であるなど、へたな天竜人による肉体的虐待よりも屈辱的な精神的虐待にドS心が折れられていき。
じわじわと熱湯の中の蛙のように攻め立てられて、マゾになった。
興が乗ったら続きを出すかもしれません。
こういう世界貴族がいても変じゃないよね。転生問わずで。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
天竜人だって友情はある。
聖地マリージョアにて。
娯楽と呼べる娯楽が数少ないとはいえ、それなりの土地面積を誇るマリージョアを移動する手段が奴隷であれば、移動速度に難があるために道中の娯楽を求めるのが天竜人の
当然、いちいち、それぞれの家庭に、専門的な料理や洋菓子を用意できる料理人を用意するなど、どれだけの広大な屋敷や際限の見えない資金を持つ天竜人であっても無茶があった。
特定の料理を楽しむためだけに特定の食材を常時調達して保存するなど、運送業がどうしても海運業ありきになりがちな大海賊時代での一家庭でやるものではない。
ましてやソフトクリームのためだけにソフトクリームづくりの達人を奴隷として飼って屋敷に常駐させるなど、原材料がマリージョアまで運び込めなくなれば意味がなく、たかがひとりのために原材料を大量に運び込んで腐らせては天上金の無駄遣いになってしまう。
よって、どれだけの飲食業に携わる奴隷を飼ったとしても、けっきょくは露店というかたちで出店させ、ほかの世界貴族にも楽しませ、できるかぎり材料費のもとを取ろうとするのが基本的な奴隷運用となるのも自然な話であった。
そして、この男の父親もまた、自分の子供の奴隷にソフトクリーム屋を出店させ、そこで自分の子供の望み通りにソフトクリームを楽しませる、マリージョアに生きる世界貴族としては真っ当な判断を下した父親であった。
当の息子は、いちいちソフトクリームを食べるために表に出なきゃならないなんて意味がわからないとしか思っていなかったが、最近はこう思っている。
「むふーん。ソフトクリーム最高だえ!」
友達を待つ間、青空のもとで。
高級ソフトクリームに舌鼓をうつのも悪くない!
彼の名はチャルロス聖。知る人ぞ知る、近い未来のシャボンディ諸島で「麦わらのルフィ」に顔面を殴り飛ばされる代表的な天竜人のひとりである。見た目が肥満体の中年男性のようにしか見えないが、これでも御年22歳と若い青年だ。
彼からすれば、御年15歳のカルーン聖は可愛げのある弟分も同然である。
ゲーム開発において目まぐるしく活躍を繰り返す、という、ちょっと嫉妬心を覚えなくはない親友ではあるが、そんなものは普段の必死さを知っていれば鳴りを潜める。
ゲームづくりと何時間にもおよぶテストプレイの都合上、どうしても時間管理を真剣にやらざるを得ず、いざゲームをして遊ぼうと約束すると何が何でも時間通りにこようと自分の足で走ってでもチャルロス聖の家にくるのがカルーン聖である。
そんな彼の様子を醜悪と呼ぶ友達は多いが、チャルロス聖は笑わない。
以前、自分が無茶を言って自分から時間を遅らせたせいで、最後まで遊べなかったゲームもいくつかあったのだ。カルーン聖にとっての時間の大切さは、チャルロス聖も身に染みて理解できている。あれは自分も悔しかったと内省する。
ただ、今日はめずらしく、いつまで待ってもやってこなかった。
普段なら約束通りにカルーン聖はくるのに。
「いつになく不安だえ。だいじょうぶかえ?
約束の時間からどれだけ経ってると思ってるえ、もう10分すぎたえ!」
「あ。いたいた、おーい。」
どこか気だるげな呼び声。
その声の主が誰なのかを悟り、チャルロス聖は振り返る。
「遅いえ!
カルーン聖、やっと来たのか……えっ……?」
叫びかけて、チャルロス聖は自分の目を疑った。
ついうっかり高級ソフトクリームを落としかけるほどには、ありえないものを見てしまったからだ。ありえてほしかったものを見たとも言うべきか。
思わず自分が嫁にしたくなるような、顔も肢体もよい女奴隷に跨りながら。
奴隷嫌い、奴隷恐怖症などと噂されてしまう、年下の友達がやってきたのだ。
あれだけのゲームを開発した、世界貴族の名高い才児が。
奴隷への恐怖心を忘れたかのように、奴隷に跨りながら来たのだ。
世界貴族としての
「えっ!?
カルーン聖、奴隷に乗っても平気かえ!?」
「ああ、うん。この子ならね……ぇ。
驚きを隠せず、思わず近寄ってしまう。
なにせ、あれだけ奴隷に忌避感を持つ年下の友達が、自分が子供だった頃は赤ちゃんだったカルーン聖が、あの可愛かったカルーン聖が、あの頃に染みついた「あの事件」へのトラウマを克服したとは、にわかに信じがたかったからだ。
本当であれば喜ばしく、無理をしているのであればやめてほしい。
チャルロス聖はそう思いながら、カルーン聖の様子をうかがう。
「カルーン聖、もう奴隷怖くないえ……?」
「なんか
御父上様から無理やり渡されたけど、もうだいじょうぶだよ……ぇ。」
「むふーん。友達が奴隷慣れしてよかったえ!
……それにしても、」
チャルロス聖は
手足や膝には裂傷をさせないための豚足じみたサポーターが目立つ。
カチューシャ、つけ鼻を含めて、いくら外観が豚を模したものだとしても、まるで奴隷を痛みつける気がないかのような衣装は珍妙に映った。
「ちょっと手ぬるすぎないかえ?」
「……うーん?」
言われてみれば確かに、はたから見れば違和感がある。
そう考えたカルーン聖は顎に手をあて、ほんのすこし思慮にふけると、それはそれで違和感が出るな、と気づいて首を傾げる。
「かわいい
そんなに世界貴族らしくはないの、かぇ?」
「え、いや、そう言われると……あれっ? 普通だえ……?」
ちょろい。ちょろすぎる。
変わらぬチャルロス聖の純粋さに面食らいながらも、カルーン聖は続ける。
「どこを足蹴にしてもヨシッ」
「あんっ♡」
かかとで蹴れば鳴き叫び、
「乗馬用の鞭で軽く叩いても、ヨシッ!」
「あっ、ちょっと物足りな、ぃ、あっ、ああっ……!?
こんなこと思う私の
鞭で尻を鳴らせば、屈辱を覚えて悲鳴をあげる。
「どこも変なことはしていないぞー……ぇ。」
「いや変だえ。」
なお、そのすべては嬌声である。
チャルロス聖、奴隷の嫁を12人も抱える男ゆえ、さすがに気づいた。
(これ、おかしいのは奴隷のほうかえ?)
飽きれば嫁を捨てる男とはいえ、飽きるまでは嫁を弄ぶ男でもある。
そんな彼は嬌声を聞いて嬌声であると認識できないほど、(※天竜人としては)無垢というわけではない。もちろん強引にことを為せば毛嫌いする素振りをみせ、(※あくまでも彼の傲慢だが)
どんな奴隷もいたぶれば痛がるのが普通だ、そう理解している。
それなのに。
目の前の友人の奴隷は責められると、
「従順すぎて気味悪いえ。」
「そのあたりは初心者だから、わからないかな…………ぇ。」
そう言いながら、鞭で
尻は尻でも際どい箇所に当たったのか、
「……あっ、ごめん。
まあ、ほかに奴隷は要らないかもね……ぇ。」
無意識に間違えた鞭打ちに気がつき、カルーン聖は鞭を持ち直す。
かぼそくも深い呼吸を始める
「ここまで満たしてくれる
優越感や嗜虐的な悦びを隠しきれない、深い笑みをも含めながら。
品のある笑い声にも似た、幸福感を隠しきれない吐息をこぼす。
そんなカルーン聖の様子を見て、「代わりの奴隷なんていくらでもいるのに」などと変人かのように思いながらも、そこまで奴隷と幸せそうに生活する友達がほかにいただろうか、と思い返して、チャルロス聖は気づく。
「あいかわらず、言葉が苦手なのかえ?」
「そりゃあ、ねえ。
ゲームづくりのためとはいえ、さ。
下々民の本のほうが数と種類は多いし。
なれちゃったから、ぶっちゃけ大変だ………ぇ。」
世界貴族らしい言葉遣いだけは苦手な親友。
完璧に近い彼は相変わらず、やけに勉強熱心だな、とも。
「うーん、もったいないえ。
うらやましいのに、偉大さが足りないえ。」
ゲーム産業で一躍時の人となったカルーン聖は、聖地を出ても下々民の子供が身の程を忘れて喜んで駆け寄るほどに(チャルロス聖の主観では)えらい。
どこに行っても恐怖と畏れの対象でしかないチャルロス聖にとって、下々民が直接、具体的に世界貴族のひとりを讃えるなど新鮮な経験であった。
ゆえに、チャルロス聖は認める、カルーン聖はえらい。
ゲームを作り、下々民に讃えられ、現代の偉業を為したと認められる男。
それがどれほどの重みがあるのか、ひょっとすれば自らの父であるロズワード聖よりも実感していたのかもしれない。友達なのだから、なおさらに。
「えらくて、もっとえらいのに、威厳がないえ。」
聖地でしか認められない偉業を、数多の勲章として持つ己の父。
聖地でも下界でも称賛される、ひとつも勲章を持たない自分の友達。
どちらが真にまぶしいのか、チャルロス聖には結論がつけられないが、どちらをみても惜しいなあ、もったいないなあと思えてしまう。
そう思えるように、ほんのわずかに心が育っていた。
「チャルロス聖は優しいね……ぇ。」
正確には、わずかに優しくなった、が正しいのだが。
残念ながら物語での彼しか知らないカルーン聖にとって、チャルロス聖の優しさは同じ天竜人に向けるものでしかないのだろう、としか思えていない。
チャルロス聖の成長に気づけていないのは、当のチャルロス聖がなにひとつ、新しいなにかを成し遂げようと夢に挑むわけでも、奴隷に温情を向けるわけでもないためだ。
「そういえば、この前のゲームの話だえ。」
「お、どのゲーム? ……ぇ。」
「それ無理やりすぎるえ。
この前に公開した魔女狩りゲーム、あれ面白いえ!」
ぴくり、と、
「下々民が魔女に殺され続けるから、だれが魔女なのかを当てるゲーム!
全員でカードを出しあい、ターンが進むたびに魔女のカードで下々民役が死ぬ!
つまり、ターンが終わるまで誰が死んだのかがわからないまま、どんどん下々民が死にまくる残酷なゲームだえ! 斬新なんてものじゃ足りないえ!
奴隷にやらせて
心底楽しそうに笑うチャルロス聖。
彼の説明が足りていないので補足すると、おたがいに駒を動かして屋敷の中を移動したり、屋敷の外で作業をしたりするゲームなので、もうすこし複雑である。*1
なお、そのゲームのテストプレイに付きあった
カードを配られたときの偶然の結果とはいえ、かりにも天竜人に近い魔女役を割り振られてサディズムを沸き立たせるチャンスを与えられても、まさかスタイン家の面々、カルーン聖の両親の奴隷を含めたプレイヤー全員が脱落するより前にカルーン聖から「犯人はおまえだ!」と名指しで魔女狩りされて完敗してしまったのである。
あげて落とされてまた調教された思い出のゲーム。
またしてもドSな獄卒長としての矜持と尊厳を踏みにじられたゲーム。
ぶるりと身を震わせると、
もちろん、かつての獄卒長としての矜持や尊厳からではない。
市民の安心と安全を守るため、世界中のならずものを幽閉していたインペルダウンの獄卒としての矜持や、奴隷になる前は同じ市民であった尊厳からではない。
カルーン聖の
そこに「サディちゃん」と呼ばれた人間の気位はなく、どこまでも自らのサディズムから自分の痴態を自ら内心で責めたてるマゾ豚の
かろうじて残っていた獄卒長の矜持すらすり潰されるように、自分が開発に携わったゲームで市民が恐怖を味わいながら死んだ過去を聞かされながら、快楽にふけり堕ちていく実感を味わいながら、
そんなことなど露知らず。
自分が眼前の奴隷の調教の一助を担ってしまった自覚もなく、ゲームの想い出にひたるチャルロス聖に対して、カルーン聖は気を逸らすように
「………あー、うん、そっち
いや、チャルロス聖、君が普通に遊んでくれるなら一番なんだよ。
ただほら、奴隷を死なせるのに使うのは、
怒気と諦観と呆れを交えながら、苦笑をこぼしてカルーン聖はたしなめた。
しょせんは天竜人か、いや他人のことは言えなくなるかも、などと思いながら。しかし、そこはチャルロス聖、素直にうなずいて返事をする。
「わかってるえ。
わちしも馬鹿じゃないえ、パーティで○○聖がやってただけだえ。」
「マジか。あいつかぁ………ぇ………」
名前を聞かされて、げんなりとするカルーン聖。
友人のひとりがゲームを遊ばせた様子を思い返しながら、チャルロス聖は退屈そうに耳の穴を掻き、軽くごみを吹こうとして、「あ、ひとの奴隷にやるのは失礼だったえ。」とだけつぶやき、明後日の方向に吹き飛ばした。
「確かに、奴隷にやらせて殺すのも楽しかったえ。
ただ、だんだんルールを忘れて殺しあうやつが出てきたえ。
そういうのも面白いけれど、やるなら最後まで遊んでくれたほうが楽しいえ。」
「………チャルロス、」
ゲームを楽しむことから、酔狂というものを学んだのか。
わずかに「むふーん」とチャルロス聖は友達に笑みをかける。
「そのほうが、
『生き残って喜ぶ瞬間』に殺すのも楽しいえ!」
「………チャ~、ルゥ~、ロォ~、スゥ~、さぁ~………!!!」
その友達がマジ切れする内容だったことを思い出すのに、もうちょっと頭の回転が間に合えば、体裁であろうと自制や反省であろうと言わずにすんだのであろうが。
残念ながら、最後まで格好つけられるほど、チャルロス聖の配慮はまだつたない。
というよりも、つい言った自分自身でも「奴隷がもったいないえ!?」と思う所業を口にしていたことに気がつくのが遅れていた。衝動的すぎたのである。
「あ、いや、やったわけじゃないえ!? やるわけないえ!
思いついただけだえ! やらないえ、お小遣いがもったいないえっ!」
「そうしてよ、ホント。
奴隷買うのに使ったお金!
あれ全部が闇に流れるから余計に海軍の仕事が増えるんだよっ!」
頭を抱えるカルーン聖の言葉が、かつて説教された内容だったと思い出して顔を青くするチャルロス聖。いちいち下々民への配慮を欠かさないところはどうなのかと思いはするが、めぐりめぐって世界貴族のためになると言われたら文句は言えない。
15年前の襲撃事件は、当時7歳の子供だったチャルロス聖とてトラウマになった。
いつか天竜人のばらまいた金を軍資金に、また同じことを聖地で起こされるかも……などと言われてしまえば、さすがのチャルロス聖も真剣になる。
なるほど、そうなのか。
いくら世界貴族がえらくても、やるやつはやるのか、と。
「悪いやつが悪いことしやすくなるし!
ボクらで旅行するのも大変になっちゃうんだからさぁ~っ!
………ぇ。」
「無理して直さなくてもいいえ?」
「ありがと。」
つまるところ、真面目に自分たちのことを心配してくれているのだ。
そう解釈するチャルロス聖は、口癖の悪い友人を馬鹿にしない。できない。
「むふーん。
わちき、嫁を“そう”したいえ。でも、奴隷の教育ってむずかしいえ。」
「そう言われても。なんか馬が合ったというか……ねえ?」
そこから顔の中央にかけて伸びる革帯をカルーン聖がなぞると、
「……い、いちおう聞くえ。
なんで、カチューシャと豚のつけ鼻が繋がってるんだえ?」
「仕組みがあるんだけど、それ聞きたい?」
「どんな仕組みだえ?」
「つけ鼻の中にフックがあってね。
革帯と繋がっているから、革帯を引くと中にある鼻が、」
「あ、もういいえ、聞くだけで鼻が痛そうだえ……」
「痛くはさせないよ、そこの微調整はできるようにしたし。」
「そういう問題じゃないえ!」
前言撤回。
そういえば、たいがい自分の友達も変だった。
いや、世界貴族でもまれにみるほどの、ソフトなドSだった。
「つけ鼻が豚なだけであれ、任意で『中も豚になる』のが効くんだろうね。
へんに晒すと屈辱的すぎて心が折れちゃうかもしれないけど、こうやってあえて隠しておけば、外面どころか中も豚になるのは調教師と奴隷だけが把握できて、できるだけ周囲に醜態を晒さずに調教内容を共有して、じっくりと羞恥心をかきたてることが―――」
「わかったえ、わかったから待つえ!
それ一個ほしいけどカルーン聖の
エロいけど気持ち悪すぎて本当に豚に見えるえ……あ、いや聞かなかったことにするえ、するんだえ、わちきの言ったことに興奮するんじゃないえってあああそうだえコレわちきの奴隷じゃなくってカルーン聖の奴隷っ……!」
はごっ、はごぉ、と、鼻からの鳴き声を誤魔化さなくなる
いつか彼らのような仲睦まじい関係になれる嫁がほしいと思いつつも、そんなものを実現してみせた年下の親友へと微笑む。
こんな日々が続けばいいと。
自分が彼のように、下々民から讃えられずとも。
若者の中では、えらい世界貴族でも特にえらい彼と、いつか疎遠になるにせよ。
この友情が、ずっと続けばいいな、と。
☆“
元・“獄卒長”サディちゃん。名前負けしてマゾヒズムに
豚を連想させる衣装は、ボンテージ服も相まって情操教育に悪い。
四つん這いの状態では身長差が身長差であるため、軽く腰かけた状態で蹴りあげると意図的にやわらかな箇所をもてあそぶことができる。
無敵奴隷とは別の意味で無敵すぎて、前屈みになる男の世界貴族は数知れず。
こんなふうになるまで虐待した(※した覚えがない)カルーン聖が「母親譲り」だと言われるまでにそう月日はかからず、奴隷への教育の巧さではなく奴隷へのマゾ豚調教の巧さと彼女の醜態ばかりがプライベート面で有名になるのも時間の問題だった。
マゾ豚にされた当の彼女は(愛称としての)
☆スタイン・カルーン聖
なんか愛着が湧いてきて奴隷をあまやかし始めるゲーム開発者。
とはいえ綺麗な肢体に傷を与えずに精神的屈辱を与えることに特化した攻めを選ぶため、世界貴族の奴隷虐待基準ではあまやかしているが下々民基準では十分すぎる奴隷虐待……というよりは、ただのSMプレイである。
乗馬用の鞭を持参するようになったものの、あまり強くは叩かない。
見る者が見ればわかる残虐さは、ほとんど精神的屈辱を与えつつ尊厳や矜持を手のひらで転がすように弄ぶ喜悦によるものであり、肉体的苦痛による悲鳴に興味がない。
そのため、あんまり性癖が共感されない。
☆チャルロス聖
下界旅行に精を出す、劇場版作品のFILM REDでも大活躍の天竜人。
実は「マリージョア襲撃事件」当時は7歳という、奴隷に対しては幼少期にトラウマを抱いてもおかしくはない境遇の持ち主である。
自分の妹のシャルリア宮と年齢が同じカルーン聖には情があり、年下の親友である彼のトラウマを妹までもが抱かなくて安堵する、わざわざカルーン聖とのゲーム遊びに妹を加えようとするなど、なんだかんだ(世界貴族の範疇に限るが)いい兄ちゃんをしている。
本編の世界よりは顔つきがマシ。でも中年の肥満体にしかみえない。
ほのぼの(衆人環視の中で公開SMプレイしながら豚扱い)
念のためR-18に変更しました。
目次 感想へのリンク しおりを挟む
しおりを挟む
貴族令嬢だって恋はする。
ロズワード聖一家の屋敷、応接間にて。
シャルリア宮。
カルーン聖とは同い年で、幼馴染の、世界貴族の少女。
実の兄と仲が良い男友達なので、それなりに深い関係がある。
……と、いうわけではなく。
実際には兄チャルロス聖の(※男子特有の)話題に少女シャルリア宮は混ざれず、やきもきする時間が多かったために、あまり思い切った態度ができていないのが実情だ。
奴隷に関する話題とはいえ破廉恥な話題を兄が出し、それとなく話題を流しながら愛想笑い……少女であるシャルリア宮からすれば見てわかる程度の「苦笑い」……を、カルーン聖がやる。そういった会話が目立つため、なかなか輪に加わりにくいせいもある。
共通の話題を探そうにも、カルーン聖は年頃の男子にしては風変わりだ。
奴隷を持たず、女奴隷を嫁にせず、同年代の青少年でも特に大人びている。
しかも、自ら開発したゲームを売り、齢15にして自分でお小遣いを確保した。親から与えられる天上金のおこぼれとは話がちがう。自由に使える自分だけの財布がある。
カネを持つこと、というより。
カネを得る「力」がある、という特異性が異彩を放つ。
ひょっとすれば同世代ではだれよりも優れているかもしれない男友達には、チャルロス兄さまとの間にわかりやすい格の差とでも呼ぶべき“なにか”の壁がない。
勲章の有無もあるのだろうが、友達関係に上下がないのだ。
そう思いながら、シャルリア宮はふたりが遊ぶ様子を離れて観ていた。
「むふーん、このゲーム、わちきの勝ちだえ!」
「え? ……げっ、うっそでしょ?
こんなのあり? こんな裏技できたの!?」
チャルロス兄さまが打つ妙手。
どうも想定外の遊び方らしく、ひさしぶりにカルーン聖が動揺していた。
ソファーが囲うテーブルのうえには、軍艦と海賊船を模した駒と、海域を模したゲームフィールドが置かれている。今度発表する予定の海戦型シミュレーションゲームで、なんでも海軍が旅行中の天竜人を守るための防衛戦をする、という商品らしい。
「あ、これ、わざとじゃなかったのかえ?
でも、なんの問題もないはずだえ。これいいのかえ?」
きょとんとした顔で、カルーン聖に問いかけるチャルロス兄さま。
何度か唸り、目をつぶり、虚空に指を回させながら、「これがダメだとあれとあれもダメで、そーするとゲームの裁定全体がぁ……」と、ぼやくカルーン聖。
しばらくすると、まるで意を決したかのような目で盤面を指さす。
「んー……面白いから、ヨシッ!」
「ならば喰らうえ、バスターコール発動だえ!」
「だああっ、ちくしょうこれボクの負けだ~っ!」
だんだんとテーブルを叩きながらも、勝敗を覆さず笑うカルーン聖。
「あはは、ひどいや
おなじ天竜人を特攻させて強制バスターコール?
うっそだろキミ、あんな状況にさせて
「むふーん、どうだえ
すごく悪いけど悪くない方法だえ。
ゲームの勝敗は世界貴族の駒が死ぬことじゃないえ、旅行中の世界貴族の駒全員が死ななければ海兵が何人死んだっていいルールだえ。
だったら、ひとり世界貴族の駒が死んでも問題はないえ。」
「ちくしょう、そりゃそうだよっ! やられた!
ってか、あくまでバスターコールは再現性を高めるためと、海軍側のプレイヤーが戦力不足になっても巻き返せるようにするための、ただの逆転のルールだったのに……!
それを! キミ、『勝負の詰めに使う』だってぇ……!?」
「むふふん、わちき天才っ! 大天才だえ!」
頭を抱えながらも、からからと笑うカルーン聖。
自信満々、余裕綽々な笑みを浮かべて自画自賛するチャルロス兄さま。
とても朗らかだ。ゲーム開発者としての富と名声を得た幼馴染と、プレイヤーでしかない自分の兄、どうしようもない
世界貴族としての格の差など知らぬと言うかのように、二人の笑い声が響く。
そんなことを言えば。
同い年の自分こそが、この場に居合わせられるはずがないのだが。
「ちゃ、チャルロス兄さま。
こんな勝ち方、いくらなんでも残酷すぎるアマス!」
こんな進言だって、通るはずはないのだが。
どちらも笑い声を絶やさず、シャルリア宮に振り返る。
「なに言ってるえ、これゲームだえ?
それに家族を守るためなら、この駒もきっと本望なはずだえ!」
「チャルロス兄さま……」
確実に家族を生還させるためならば、みずからの死も辞さない。
なるほどそうかもしれないが、さすがに残酷な打ち手すぎないだろうか。
そう思いながら、しかし「チャルロス兄さまもそうするのかも」と前向きに、好意的にとらえたシャルリア宮は、本当にそうなったときの離別をも連想し、複雑な気分を誤魔化せずに表情を暗くさせる。
「うーん、チャルロスの手がありなら、か。
……そうか任意で自爆特攻してバスターコールを起こせるのか。
とりあえずルールブックに、『世界貴族の駒を海賊の駒に近づけて、バスターコール・ルールを適用する遊び方はルール違反ではありません』って文を足そう。
海軍が苦戦する最中、世界貴族の自己犠牲で発動が許されるバスターコール。
……………うん、残酷っていうより、ドラマチックかな?」
大真面目に検討して、手帳にペンを走らせるカルーン聖。
「当事者からすれば、たまったものじゃないだろうけど。
自己犠牲って、残された家族の悲哀を忘れなきゃできないし。
シャルリアの気持ちもわかるかな……まあ、」
ぱたんと手帳を閉じて、シャルリア宮へ微笑む。
「ゲームは自由であってこそじゃない?
ルールに従ってくれたから、こんなハラハラする決着だって起きるし。
ボクは嬉しかったよ、ぜんぜん想定通りじゃなかったからさ。」
そんなことを、そんな顔で言われたら、文句が言えない。
わずかに息を呑み、思わずゲーム盤へと目を逸らした。
「そうアマスか……」
唇を縮めて頬を膨らませると、シャルリア宮はチャルロス聖の隣に座る。
「お? なんだえ?」
「勝つアマス。だれも死なせずに!」
意気揚々と宣言し、ゲーム盤の駒を片付け整理するシャルリア宮。
海軍の駒を粗雑に集めて整理する最中でも、天竜人の駒だけは丁重に扱って、ゲームの最初の位置に置きなおしていく。
「ほーん……(海兵は死んでいいのね)……ぇ。
それじゃあ、今度はシャルリアの番ってことで。いい?」
含みのある笑みを浮かべながら、カルーン聖は問いかけた。
「えーっ!?
わちき、もっとやりたかったのに!
……とほほ、しょうがない妹だえ。」
文句を言いながらも、チャルロス聖は妹に席を譲って横にずれる。
「ふん!
絶対に認めないアマス、きっちりと正攻法で……!」
盤を睨み、海軍と海賊軍を見据え、対戦相手を見あげて気づく。
「正攻法、で……」
幼馴染の。
大人びた同年代の少年が。
「うん? どうしたの?」
固まった自分へ、不思議そうに。
自分の席の向かい側で、じっとこちらを見ている。
「……なんでもないアマス」
ほんのりと熱くなった頬は、さきほどの発奮のせいだろう。
そう誤魔化しながら、気づきながらも、特別視してしまうカルーン聖にゲームで勝つために、きっ、と目つきをするどくさせる。
「バスターコールなし。
それで勝ってみせるアマス!」
「……へ?
縛りプレイ宣言!?
マジか、それをやる子は初めて見たかも!」
「縛りプレイ? なんだえそれは!?」
わいわいとさわぐ天竜人のつどい。
そこから距離を離した場所で、放置された奴隷たちは私語を禁じられている。
チャルロス聖の女奴隷は四つん這いになったままの女奴隷を見て、ああ、彼女もおなじような立場の奴隷なのね、自由な恋愛なんてできなくされたのよね、と、同情的な目線を向け続けていたが……気づいた。
そんな言葉を聞いた瞬間から、呼吸が熱っぽく、発情したかのように変わっている。
当の“
ご主人様からは椅子としてすら扱われず。
豚のつけ鼻はそのままに、豚のような四つん這いのままで放置され。
なんのご褒美も貰えないまま、しかし「座っても、寝転んでもいいよ。」などと、そんなことをすれば今度こそ退屈から眠りこむ家畜、豚同然になる命令を授かり。
かろうじて残っていた羞恥心から、まずは四つん這いを維持しようとして。
そろそろ我慢ができなくなったので、お言葉にあまえて座ろうかと思い始めた。
それなのに、ああ、縛りプレイだなんて。
自分から自分の行動を縛り、苦しい状況を楽しむなんて!
まるで自分も、「奴隷である」という状況を悦んで楽しむためだけに、「家畜や豚のように寝転ぶ」という行動をとらず、今まで我慢していたかのようではないか、と。
ここで気位がわずかでも残っていれば、いいやそんなはずはないと抗えたが。
奴隷として屈し、天竜人という圧倒的な地位からの攻めを受け、カルーン聖という個人からの精神的屈辱に攻められ続けては悦び、ゲームの敗北すら悦び。
マゾ豚として扱われることを幸福に感じ始めていた彼女には。
サディストとしても、人権ある人間としても、己の美に自信がある女性としても。
さながら、「おまえは自分の意思から被虐を悦んでいる豚だ」と指摘されるような遊び方を客観的に俯瞰させられてしまっては、自覚し、認めるしかない。
自分は。
雌豚と呼ばれたから雌豚なのではなく。
雌豚と扱われたから、雌豚なのではない。
心の底から、どうしようもないほどに―――マゾの、
どろどろになるまで溶かされていた理性が。
とろとろと、こぼれ始めていた矜持が。ただでさえ屈していた心が。
ぱりんとガラス細工が砕けるように、サディと名づけられた人間が壊れて。
あふれだし、なにもかもが失われていく。
「……はぁん♡」
ぺたりと、
内なるうずきに耐えきれず、股の奥を抑えて悶え始める。
喜悦を誤魔化さず、我慢せず、そのままこてんと寝転がる。
あれだけいやがった家畜らしい、豚らしい行為を、自分から、あるいは無意識からも悦んでやり始める。残ったものは被虐を乞う心と、自虐で慰める悦びと。
人間としての醜態を晒すことへの、どこまでも
絶対的な攻めが約束された世界貴族だとか。
そんな地位とは関係なく。目の前のご主人様からの愛を求めて。
マゾの
「ン、あンっ♡ ……んぅ~~~っ!
……はあぁン、……あぁ、ご主人さまァんっ……♡」
そのとなりの。
名のあった誰かを見た女奴隷は、現実を信じられず
目の前の女奴隷は、もはや人間ではない。「奴隷」という生き物だったのだ。
魚人や人魚とおなじだ。
「奴隷」という種族の、メスでしかないのだ。
「ひ、ぃ、」
思わず悲鳴をあげる。
自分もこうなるのか? こうなってしまうのか?
自分の主である、かりにも夫であるチャルロス聖によって?
女の尊厳など忘れ去って、あんな飾り物をつけて、この場で、ひとがいる目の前で自慰や求愛を始めるような
いやだ。
いやだ、いやだいやだっ、こんなものになりたくないっ!
おねがいだから、だれかたすけて! だれか……!
否、ここは聖地マリージョア。
だれも助けになどこない。天竜人の巣窟なのだ。
そう思い出して、女は、
「なんなんアマス、さっきから!
うるさいアマスっ!」
思わず耳を塞ぐシャルリア宮。
もはや感情の区別がつかない
「なんだえ、コイツ。
悲鳴? 笑い声? とにかく声がうるさいえ、どうしたんだえ?」
その様子をみて、呆気にとられたチャルロス聖。
「あ~……
カルーン聖は。
それぞれを見渡し、サディの座る場所を確認して、彼女の痴態の結果を悟り。
はずかしいと顔を覆った。申し訳ないという感情を隠しもせず素直に謝る。
「ごめん、うちの
「え? なにがどうしたらそうなるえ?」
「目の前で
「はええええ!?」
「まあ下々民の矜持の問題だから。……ぇ。
「……え、それって……はぁンっ!?♡
んンン~~~っ♡ …………ひゃあいっ♡」
「またやるの!?」
カルーン聖は思う。
同じ境遇なはずの同性が人間辞めたら、そりゃあ心がもたないよ、と。
(チャルロスは『嫁扱い』はするから、まだ待遇だけで言えば他の奴隷よりマシだけど、チャルロスの問題は自由意思もへったくれもないってこと、だよなあ。
いや待てよ? そこをうまく突けば……。ふむ?)
羞恥心よりも閃きが勝り、赤らみがひいた顔を露わにして振り向く。
「……チャルロス、優しくしてあげたら?」
「は? なぜだえ?」
「ほら、うちのコ、変態だから。
変態になれてない普通のコだと、けっこう精神的につらいんだよ。」
人間としては同情の余地はあるが。
発狂して理性を失った時点で、それはもう、本当にただの奴隷でしかない。
まだ
自分には理解できない
せまくて、夢を見すぎている。まるで幼女だ。
現実を受け入れて、なお夢を見ているわけではない。
世界を受け入れず、ひとを知らず、ただ夢想を妄信しているだけだろうよ、と。
カルーン聖は見切りをつけて、現実に絶望した奴隷への扱いを友に伝えた。
「むふぅ……そういう問題じゃない気はするが……そうかもしれんえ。」
チャルロス聖は奴隷に気を配り、近寄る。
「こら、
差し出したものは、自分が愛する高級ソフトクリーム。
下々民から天上金として巻きあげた税金によって作られた贅沢品。
ここでは、世界政府の圧政を暗喩する菓子のひとつ。
「ソフトクリーム食べるかえ?」
天竜人という恐怖から。
無理やり狂気から気を逸らされた女奴隷は、天竜人に人間扱いされたことに気づいて呆気にとられる。チャルロス聖は外道かつ強引だが、あくまで嫁にした奴隷は嫁だ。
振り払えば奴隷として虐げられる。
そのくせ、向けられたものは(奴隷の)嫁に対する温情である。
正気をみずから手放した彼女に、
目の前の天竜人に、嫁として扱われ、優しくされた。
たったそれだけのことに、麻痺した脳が安直な感情論へ従わせる。
彼女は高級ソフトクリームに手を伸ばし、そして。
チャルロス聖のそれを、なめた。
☆“
元・“獄卒長”サディちゃん。「自分はマゾ豚だ」と認識して絶頂中。
それもこれも「友達んちだから」「幼馴染の女の子がいるから」って女奴隷を放置して紛らわしいゲーム用語を口走ったカルーン聖が悪い。掃除中の無視も放置プレイだと解釈して絶頂した。
たとえ友達の家で遊んでいようと、奴隷を椅子にする程度の虐待をやっていれば話は変わったかもしれないが、そんな「何かあった未来」はなかった。
☆スタイン・カルーン聖
なんか奴隷が人間卒業して余所の床を濡らしたので呆れたゲーム開発者。
でも責める。なお攻める。幼馴染が
そのうえで放置してゲームを続行。
命令内容は「サディちゃんが嫌がると思って」罰として決めた。
結果、放置プレイで
チャルロス聖とは敬称ぬきで呼びあう仲だが、公衆の面前では真面目に敬称をつける。
友達に奴隷(第五夫人)への“シツケ”の提案をしたのは、「発狂した女奴隷がうるさいから」といった理由からであれ、チャルロス聖やシャルリア宮に射殺されるのは忍びないため。
☆チャルロス聖
ウタへの命令が意外にも(※天竜人基準では)紳士的かもしれない天竜人。
長年の付き合いにより、プレイヤーとしての腕と発想力がいい。妹の恋愛感情については気づいているので素直に席を譲った。とはいえ、発狂した女奴隷の第五夫人の内心についての理解はまったく追いついていない。
むしろ聖地襲撃事件の当事者である可能性が高いにも関わらず、なぜか聖地から積極的に、しかも劇場版では廃墟同然のエレジア国にまで(※ウタワールドでの出来事なので移動距離を無視できたとしても)家族同伴ではなく、SP同伴ながらも個人で外遊するほどの行動力があるため、(おそらく)遊びには真剣なほう。
カルーン聖とは敬称ぬきで呼びあう仲だが、さすがに公衆の面前では敬称をつける。
なお、仮に現実世界からわざわざウタのライブ会場まで来ていた場合、素直にSPのぶんを含めたチケットを買い天竜人だと悟られないように変装してから来たことになるため、(※天竜人基準では)ものすごく『空気が読める男』と言うことになる。
女性音楽家であるウタへの要望が「その美声で悲鳴をあげろ」ではなく、チャルロス聖らしい「嫁になれ」でもない「子守唄を唄え」
ちなみに、その際の仕草もどこか(※天竜人として見ると)風変わりで、なぜか初めて恋を知った子供が初めて告白をしたかのような所作にも見える珍妙なもの。どのような意味合いなのかは「視聴者の判断に任せる」ということなのだろう。
もっとも女性人魚への扱いが「ピラニア入りの水槽を泳がせる」であるため、そのあたりの人権意識は露骨にわかりやすく「人魚、魚人は魚類」。
☆シャルリア宮(15歳)
幼馴染に片想い中の、恋心を認められぬまま恋する少女になった天竜人。
猥談や奴隷についての話を繰り返す兄、商売自慢すらしないので話題がゲーム以外にまるでない幼馴染の会話に別の話題を出すなど難易度が高すぎて、まるで挙動不審で奥手な、どこか奥ゆかしさのある美少女にしかみえない世界貴族の御令嬢。
敬称ぬきで幼馴染を呼べた試しが今まで一度もないほど、距離感が掴めていない。
なお、無意識な恋の自覚からか、兄の奴隷夫人への扱いは良心的なほう。
原作とくらべて表情は、元の嗜虐性がうかがえる挑発的な表情ではなくなっている。
彼女たちのペットの犬「サルウ」は別室で待機させている。
あくまで幼馴染の試作品のゲーム盤へ粗相させず、家族の恥をかかないため。
自分がカルーン聖とより長く話すためではない。でも話題がほしいならサルウをわざと連れ込んで粗相させたほうが話題は作れた。(※天竜人基準では)家族思いのいいコなので、まさか自分の(※天竜人基準での)善性が原因で話題が今まで少なかったとは気づいてもいない。
☆第五夫人(奴隷)
もともとの気位が高すぎて、恋に無自覚な“夫”の妹の所作と、気位がなさすぎる
チャルロス聖の高級ソフトクリームを与える行為(好意)へ素直に甘んじてしまったため、隣の奴隷のようには堕ちないのだと確信して「心を開いてしまう」。
なお、
……つまり、人権が戻っている。
チャルロス聖をそそのかしたカルーン聖の手法こそ最低最悪だが、そもそもの女奴隷の境遇としては「チャルロス聖が飽きれば“夫人”から一般市民に戻れる」希望が残るだけでも、チャルロス聖の“夫人”以外の女奴隷や、他の天竜人の奴隷になった場合よりは悪い境遇ではない。(※FILM GOLDでの出来事を含め)
よって、カルーン聖の「死なせなければよかろう」の精神が、まだチャルロス聖の女奴隷の”夫人”を生かしやすい。表面上の態度は最低最悪に演じざるを得ず、最低限の疑われない手段で確実に助けられるだけマシ。(ただし彼女へ思ったことは冷徹。)
なお、そんな彼の奴隷である、自分から
特に第一夫人から第四夫人までの古株四人であれば堕ちなかったかもしれない。
チャルロス聖だけでもうちょっと話せるくらいにはRED面白かったです。
目次 感想へのリンク しおりを挟む