ありふれた職業で世界最強に転生したと思ったら檜山だった件 (ホームズの弟子)
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“とある旅人の物語”

 この物語は、トータスを巡る
 6人の旅人が織りなす物語である。





 この物語は、トータス大陸を巡る

 6人の旅人が紡いだ物語

 

 

 ―――俺は、親父の残した建築を完成させる!―――

 

 父親が残した、未完の教会“聖教教会”

 その建築の完成を夢見る大工の少年 ダイス・ケヒマ

 彼は旅へ出る、完成の為に必要な“伝説の木”を求めるために

 

 

 ―――僕は出会ってみたい……運命の人に……―――

 

 運命の人を探す。死体が蠢くと噂される、砂漠にある不気味な館に一人で住む少女 エリリン

 彼女はあるお告げを聞き、屋敷を後へとする。

 まだ見ぬ運命の人に出会うために

 

 

 ―――私は、ヤエガシの名を必ず復興させる!―――

 

 帝国の皇帝“ガハルド”によって没落させられた、武家“ヤエガシ”

 その名の復興を胸に秘めた剣士 シズク・ヤエガシ

 彼女は、ガハルドへの復讐心を胸に歩き続ける、今は亡き家族達の仇を討つために

 

 

 ―――国王からの直々の依頼……やれやれ、勤労者は疲れるな―――

 

 神山に仕える、自称謙虚な神官 ミーズ・ユキト

 彼は、国王よりある依頼を受ける。

 やれやれと言いながら、彼はその依頼を受ける事にした。

 自分の好奇心を満たすために

 

 

 ―――僕の理論は間違っていないはずなんだ……あと必要なのは、この条件を満たす鉱石だけだ!―――

 

 幼少期からの夢“ヘイキ”の完成を夢見る少年 サース・クラウド 

 ある街で、発明家をしていたが、実験を失敗していまい、下宿先の部屋を破壊してしまい追い出されてしまう。

 これを機に彼は旅に出る。

 自分の理論を完成させるために

 

 

 ―――ごめんなさいお父様……私はどうしても自分の目で見てみたいこの世界を!―――

 

 豪商ホワイト家の箱入りおてんば娘  パヒューム・ホワイト

 父親の過保護のせいで、家から出たことの無い少女は、16歳の誕生日に決意する。

 自分の目で世界を見るために

 

 そして出会う6人の旅人

 

「女の子相手に、男が手を出すなんて見過ごせるか!俺が相手してやる!」

「目つきの鋭い、大工の男の人……お告げ通りだ……この人が僕の運命の人!」

「運命?何かよくわからんが無事でよかったぜ!」

 

 

「おやおやどうしましたか?迷える子羊さん」

「こひつ……⁉ 私はシズク・ヤエガシだ!人を見た目で判断するんじゃ……あっ!危な――!」

「ふむ……“世の影を照らし給え”」

「高位光魔法!貴方は一体……」

「私は神官のミーズと申します。さて、人を見かけで判断しているのはどちらかな子羊さん?」

 

 

「何かに使えると思う発明のはずなんだけどな……」

「あの…これは?」

「うわ!凄い美人……じゃなかった。これは“なんでも集声器”って言って声を記録する発明品なんだけど何に使うんだってみんなから言われて……」

「とても凄いですよこれ!これがあればどこでも音楽を聴けるって事じゃないですか!」

「音楽……そうだ!声が出来るって事は音だって記録が可能だ!ありがとう!えっと君は?」

「ホワ……じゃなかった。商人のパヒュームです」

「パヒュームさんだね。僕は、サースよろしくね」

 

 

「大工、発明家、呪いの館の主人、侍、商人に神官……よくもまあ、ここまでバラエティに富んだ職業が集まるのですねぇ」

「ダイス!この木材とか何かに使えるんじゃないかな?」

「おお!これはいい椅子の材料になるぞ!サースにはこんな鉱石拾ったぞ」

「味付けは……ママに教えてもらった方法で最後に香りづけを……」

「……ねぇシズクちゃん。パヒュームちゃんって何処かで見たことあるんだけど、何かわかる?」

「私もなのよねエリリン……そう言えば確か何処かの豪商の娘が行方不明とかって……まさか……」

「みんなどうしたの?料理出来たからみんなで食べよう!」

「おやおや、どうやら知らない方がいい真実もあるものですね」

 

 

 

 そして、繋がる6人の物語

 

「親父が残した手記……何?完成しなかったんじゃなくて出来なかった?かすれて所々見れないが……“エ ト・ル ュ ”?」

 

「お告げは一体誰が……また聞こえて来た……“エヒトを知れ”?誰?」

 

「私は貴様だけは許さない!ガハルド!亡き家族の仇ここで撃たせてもらう!何!それはアーティファクト⁉どうしてお前が⁉」

 

「もう一つの神の名“エヒト”……“アルヴ”……国王はこれを予見していたのか?」

 

「大発明家“オスカー”!彼の残した迷宮だって⁉これは行くしかない!」

 

「世界は、不平等で満ちている……商人は自分だけが満たせるだけじゃダメよね!私はこんな不平等を変えてみせる!」

 

 

 そして物語は一つの結末へと向かう

 

「神様!俺は親父の意思を継ぎ未来を建設する!」

 

「エヒトとか、神とかどうでもいいだよね……僕はただ、ダイスとの未来を生きるそれだけだよ」

 

「私はヤエガシの名を未来へと残し、私が生きた証を残す!その為にも未来を生きる!」

 

「やれやれ、神官がである、私が神と戦うなんて……まあこれも仕事かな。給料は弾んでもらいますよ国王」

 

「オスカーさん見ててください、僕とあなたの理論を証明して見せます!神相手に!」

 

「神様とか関係ないよね!私は未来をあなたから買い取ってみせる!」

 

 

 彼らの旅の行く末は

  

   その結末の行方は

 

     未来生きる物語“トータス・トラベラー”

 

 乞うご期待!

 

 

 

 




日付で察してください


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1話 平和な世界だと思った?残念危険な世界でした。

はめフラ面白いなと思ってたら、ふと思い立った作品なので檜山アンチの方たちには申し訳ございませんが檜山に転生というか憑依した男が頑張るお話です。




 今巷で流行っている転生であったり憑依する作品がある。

 この作品の肝は2回目は人生をエンジョイするぞ!だったり

 好きな作品に理想の自分を投影する事が醍醐味だと思う。

 自分もそんなジャンルも別に嫌いでは無いし二次創作も見るのが好きだ

 そんな俺が転生した先がまさか……

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 目を覚ますと、消毒液の独特のにおいがして、体を起こすと頭に鋭い痛みが走った。

その痛みに頭を押さえていると、

「大丈夫?檜山君」

檜山って誰だ?俺がそう思っていると

心配そうに俺の顔を見てくる白衣を着た初めて見る初老の女性が居た

俺が怪訝そうな顔をしているのが見えたのか

「もしかして、頭まだ痛い檜山君?」

俺は周りを見るが人は女性と俺しかおらず、俺に聞かれていると思い

「あの、檜山君って誰ですか?」

俺は素直な疑問を口にすると女性は驚いたように俺の方を見て

「誰って…もしかして、記憶喪失……」

記憶喪失って、俺はちゃんと記憶はあるぞ

俺の名前は佐藤……

あれ?苗字は覚えているが名前が思い出せない…

ってことは、本当に記憶喪失になったのか…

いやでも、すくなくとも檜山なんて苗字じゃないし家族の名前や自分の仕事だったりは覚えているしどうなっているんだ

俺が思想を巡らせていると自分を女性は

「今、自分が何処にいるのかわかる?」と尋ねてきたので

さっきまで俺が何をしていたのかを伝えた。

名前はわからないが苗字は佐藤で今27歳で建設会社で働いており、建設現場で仕事していた時に、建築資材に巻き込まれたて気づいたらここに居たことを伝えたが、女性は訝しげに俺を見ていた。

「きっとまた先生を困らせたい様ね。ケガの事もあるから今日はもう帰りなさい」

「まって下さい、俺は本当のことしか……」

「あんまり、先生をからかうものではありません。えっと確かあなたは4年2組で担任の先生は……」

俺の言い分をまるで子供のいたずらにしか聞いてもらえず、そそくさと部屋から出て行ってしまった。

 しかし、あの女性背が高かったな俺が172㎝だから190㎝以上は確実に……

俺がそう思っていると目の前の鏡を見るとそこに写っていたのはまったく顔も知らない

目つきの悪い子供が立っていた……

「えっ、誰……」

 俺が呟くと同時に鏡の人物も口を動かす、まさかと思い好き勝手に動いても鏡に写る人物は俺と同じ動きをする。

少し息を整えもう一度鏡を見て鏡に手をつけ、鏡の俺と手を合わせながら俺は悟ってしまった。

「いわゆる、転生ってやつ?」

ラノベにしかないと思っていた世界線に俺は来てしまったらしい。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

この世界での俺の名前は檜山大介 現在小学4年生 10歳

雨は降っているが両親は共働きで迎えには行けないとのことで歩いて帰宅中

場所が分からないと伝えても住所だけ教えられ早退させられた。

しかし、この檜山ってやつ随分な悪ガキらしくあまり先生から信頼されてないせいか、俺が保健室で言ったことも困らせるためのいたずらとしか思われていないらしい。

どうやら、友達と階段付近で遊んでいてどれだけ高いところから飛び降りれるかをやっていたらしい。

しかし、何処の世界の小学生も階段から飛び降りる度胸試しぽい遊びをするもんなんだなぁ……

そこで俺は頭を打って俺前世?の記憶を思い出した。

 教科書や帰り道の風景や自分が持っていた携帯のニュースを見てわかったがこの世界は別に中世風でもなければ剣や魔法があるわけではなく俺の前世と何一つ変わらない世界ということが分かった。

 しかし転生って言ったら、剣や魔法のファンタジーであったり、エロゲの世界観であったりと前世とは違う世界を旅したりするもんとばっかり思っていたので少し残念な気持ちになるが、まあ命の心配が常に無い世界だからいいか。

 神様に会ってチート能力を貰うイベントも何もなかったが、前世記憶も名前以外はちゃんとあるし、この記憶を頼りに順風満帆な人生を送ってくれってことだろう。

しかも、生前の財布がこの世界の俺が使っているランドセルの中に入っていてチートは無いが現金があるというなんともまあ色気のない転生をしたもんだ。

俺はそう納得して携帯で先生に教えてもらった住所の場所に向かっていると、一人の女の子が傘も差さずに川縁に立っているのが見えた。

危ないなとは思ってみているとその子はゆっくりと川に向かって身投げをしそうになるのが見え、とっさに傘と携帯を放り投げその子の手を引き抱きしめる形で河原に倒れこんだ。

「何やってんだ!死ぬ気か!」

俺が大声で怒鳴りつけるが女の子はうつむいたまま動かない。

「何があったかはわからんが、親御さんが悲しむぞ」

ありきたりではあるが自殺を思いとどめようとしたが

「っ!私が死んでも誰も悲しまないよ!」

俺の言葉に反応するようにその子は大声で俺に怒鳴りつけてきた。

なにか事情がありそうだがどうしたもんか……

よし!ここは

「メシ食いにいこう!」

「……はあ」

俺がそう言うと女の子は馬鹿にするような目で俺を見つめてきたが関係ない

「俺、腹減ってんだよ。一緒に行こうぜ!」

「…なんで」

当然の質問を返してきたが

「ここであったのは何かの縁だ、君のすることを邪魔した礼だから気にするな!」

「…行かないよ」

「もちろん俺のおごりだぞ!」

「…人の話聞いてる?」

「気にするな、さあ行こう!」

「ちょっと…!」

女の子は頑なにいかないと言っていたが、そんなことを気にせず俺は彼女の手を引き

無理やり連れていくことにした。

何があったかは知らないがこんなとこで死なれたら俺も夢見が悪くなるし、飯を食いながらだったらポロっと話してくれるかもしれないしな。

俺が前世で培った処世術の一つだ。

人と打ち解けるにはメシに連れていけ!俺の上司の格言だ。

そう言って俺は、その子と共に近くのコンビニに連れていきタオルを買い、キャッシュカードが使えることも確認したが、

(まさか名前の部分がモザイクみたいなのが掛かっていたのには驚いたが、前世の貯金はそのままだったのは助かったぜ。流石異世界転生、この辺はご都合主義で助かった)

そして、昼過ぎで人も全然いない某ハンバーガー店に入って通りからも見えない場所の席についた。

女の子は黙ったままメニューも見なかったが、俺は適当なシェア出来るメニューとドリンクを注文して、注文したメニューを食べようとした時、

「…何で僕を助けたの?」

「目の前で自殺するのを止めない人間はいないと思うけどな」

冷めないうちに食べようと女の子に頼んだメニューを進め、女の子も観念したようにポテトやナゲットなどを二口ぐらい食べるとポロポロ泣き出し、自分に何があったのかを話し始めた。

父を亡くしたこと、父を裏切った母、自分を痛めつける母、自分が襲われたことよりも男といられないことに悲しむ母……

「…大変だったんだな」

「わかったようなこと言わないで」

「確かに今日初めて会っただけだし、俺は君の事は全然知らない」

「だったらもう……」

その子が何か告げようとしたが俺はそれを遮るようにして告げる

「俺と友達になってよ」

「……はぁ?」

ありふれている俺のセリフに対してこの子は何言っているんだ見たいな顔をしているが関係ない。

檜山っていう奴に転生したが、もうこの物語は俺の現実なんだ。だったら一流の悲劇より三流のハッピーエンドが好きな俺からしたら目の前の女の子に死なれるなんて現実は嫌だ。乗りかかった船だ、転生して一番最初に女の子を助けるなんてテンプレ過ぎるが嫌いじゃない。

「……変な奴」

女の子も馬鹿にするようにだが笑ってくれた。

「いいじゃねぇか。さてそういえば自己紹介がまだだったな。俺は佐藤…じゃなかった、檜山大介。君は?」

「…僕は中村恵里」

「中村恵里か、いい名前じゃん!これからもよろし……」

よろしくと言おうとその瞬間何かが頭に引っかかった、中村恵里その名を頭の中で何回か反芻した後、中村の顔を見た。なんとなく見覚えのある顔…

そして中村恵里という名、俺の名は檜山大介……嘘だろおい!

何が命の危険がねぇだ!

もしかしたらこの世界は……「ありふれた職業で世界最強」なのか

 

 

 

 

 

 




現実に近い世界観だと登場人物がどの作品に転生?憑依?したのかわかりにくいですよね。
ちなみになんですが、これって憑依でいいんですかね。それとも転生なんですかねわかる方がいらっしゃいましたらご教授お願い致します。


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2話 第一回 脳内会議

今後の方針を決めるお話です。
脳内会議でははめフラを参考にして、基本は台本形式で行きます。


~檜山脳内~

議長檜山「それでは第一回檜山死亡回避のための作戦会議を行います。意見のある方はお願いいたします」

 

強気檜山「そうだな…じゃねぇよ!どうすんだよ!よりによって俺を殺すっていうか原作でもヤバい奴助けちゃったじゃねぇか!」

 

弱気檜山「しかし、あのまま放っておくのも良くないんじゃ…」

 

気楽檜山「そうだねぇ~あのままだと本当に自殺しそうだったし~でも助けたところで原作で俺が白﨑香織に狂気的に手を出そうとするからいけないんであって香織さんに手を出さなきゃそもそも死なないんじゃないの~」

 

真面目檜山「確かにそうかもしれません。そもそもこのタイミングで出会うのは勇者(笑)であって俺とは出会わないはずですし別に助けたからといって死ぬわけではないのでは?」

 

議長檜山「しかしそうなると懸念すべきは、原作ではないルートに行った時ですな」

 

弱気檜山「確かに、もしかしたらどこの世界線でも運命的な力によってころされるかもしれませんし…」

 

強気檜山「あれか、よくある結果的に良いことと悪いことの数が変わらないてきなやつか!」

 

気楽檜山「それかはわかんないけど~結局変わらないなんてよくある話だしね~」

 

議長檜山「ふむ…とりあえずは中村恵里さんの今後の対応について決めましょうか」

 

真面目檜山「はい、とりあえずめっちゃ可愛いですし中村恵里さんの保護を最優先にいたしましょう。両親は共働きでほとんど家にいないタイプみたいですし、それを逆手にとって中村恵里を家に上げても特に問題はありませんでした」

 

強気檜山「でも、大丈夫なのかよ!勇者(笑)に狂気じみた感情抱いてるやつなんだぜ!可愛いけど」

 

弱気檜山「このまま家に帰さないわけにもいかないし、かといって返しちゃうと母親からの虐待が待っているわけだし、どうすれば…」

 

気楽檜山「確か原作だと、母親だけじゃなくて相手の男から性的暴力浴びせられちゃわけだし、ここは慎重にいかないとね~」

 

議長檜山「でしたらここは、虐待の証拠をつかむのが良いのでは?ありがたいことにスマホを持たしてもらっているわけですし、前世の貯金もあるのでそういった対策グッズを常に持たせておくのが良いのでは?」

 

真面目檜山「それは良いかもしれません。前世は一人暮らしで両親に仕送りはしていましたが、500万円程度の貯金があります。中村恵里さんを助ける為なら全額使う気で挑むのがよいかと」

 

強気檜山「確かに、そもそも小学生が持ってていい金額じゃねぇがめっちゃ可愛い中村恵里を助ける為なら万全を尽くすべきだ!常に中村恵里の傍に居てやって絶対助けてやろうぜ!」

 

一同「「「「異議なし」」」」

 

議長檜山「それでは、次に原作突入前にしておくべき対策について話し合いましょう」

 

真面目檜山「とりあえずはハジメ君をいじめないようにしましょう」

 

強気檜山「当たり前だ!そもそも奈落に落とすのだって……待てよ!そうなるとハジメって魔王にならず強くならないんじゃね?!」

 

弱気檜山「それって大丈夫なんでしょうか?それってこの物語の根幹といいますか、醍醐味といいますか、そんなことしたら原作ルートに突入せずに完全なオリジナルルートにいっちゃうんじゃ…」

 

気楽檜山「そうなると対策もたてられないね~」

 

真面目檜山「あまり物語に干渉するどうなるかもわかりませんし、かといってこのままハジメ君をいじめて奈落に落とすなんて死亡ルートの一択ですしどうすれば…」

 

議長檜山「俺たちは原作のアニメは見たことあるけど、2期の前に憑依転生してきたわけですし、中村恵里さんの境遇や今後なんてほぼ聞きかじった知識と二次創作の知識しかありません」

 

強気檜山「打つ手なしかよ!」

 

弱気檜山「だったら、別の高校に通うとかどうかな?幸い前世の記憶もあるし、キチンと大学進学できる程度には勉強もできるわけだしそうすれば原作に関わらずに…」

 

気楽檜山「でも~あまりに関わらないものちょっと怖いよね~相手神様なわけだし~」

 

議長檜山「確かに不要因子的な扱いを受けてこの世界から消される可能性が0ではありません」

 

真面目檜山「…でしたら、ハジメ君と友達になるのが良いのでは?」

 

強気檜山「はぁ!大丈夫かよ原作でいじめてるような奴と友達なんかになりたいと思うか!」

 

気楽檜山「でもそれって原作檜山なわけでしょ~今の檜山なら案外いけるんじゃない~?」

 

弱気檜山「前世では、がっつりアニメゲーム漫画ましてはエロゲに泣きゲにどっぷりでしたし、漫画も妹が居たから少女漫画も見ていたぐらいにはオタクだし…」

 

気楽檜山「ハジメ君の母親の漫画は見てみたいかも~」

 

議長檜山「ふむ、確かにハジメ君と友達になっていればトータスに連れていかれても守ってくれるかもしれませんね」

 

真面目檜山「しかし、どうすれば?」

 

強気檜山「…そうだ!白﨑香織を使おう!」

 

弱気檜山「えっ…でもそんなことしたら死亡フラグ立つんじゃ…」

 

強気檜山「いや考えてもみろ!確か原作だと中学二年生の時をきっかけにハジメ君を好きになるはずだ!その恋を応援してやんだよ!そうすれば香織さんとも交流が出来、俺に恩を感じてくれるはずだ!」

 

議長檜山「なるほど。そうすれば向こうでケガをしても治してくれる可能性が高まりますな」

 

真面目檜山「しかも、いずれはハジメ君ハーレムの一員になる方です。

ハジメ君と香織さんの中を取り持つことで二人の恩人になれ、向こうで自分は復讐するクラスメイトではなくなるというわけですね」

 

気楽檜山「それいいかも~中学生二年生の時に自分もその現場に行ってハジメ君の土下座の後に助けに行けば香織さんとも交流できるかもだし~」

 

議長檜山「そうなると問題は場所と日時ですが…たしか原作でも香織さんの中学は明記されてませんでしたがどうすれば…」

 

真面目檜山「そこは問題ないかと、八重樫雫さんの道場を探せばよいのです」

 

議長檜山「成程、そこで八重樫と知り合い中学の場所を聞いておくのですね?」

 

真面目檜山「はい。そうすれば原作突入する前にハジメ君と出会い予め交流出来るはずです」

 

弱気檜山「でもつまり中二になったらほぼ香織さんのストーカーになるってことじゃ…」

 

強気檜山「しかたねぇだろ!こっちは命かかってんだ!」

 

気楽檜山「だね~命あっての物種だし多少の犠牲はしょうがないよ~」

 

真面目檜山「まだ、違う中学になると決まってはいませんし汚名を着るかどうかはわかりません」

 

議長檜山「では、原作突入前に八重樫道場を探すということで大丈夫ですかな」

 

一同「「「「異議なし」」」」

 

議長檜山「それでは、第一回檜山死亡回避会議閉廷」

 

 

 

 

 




檜山の家庭環境はがっつりオリジナルなのでご了承をお願いします。
作者はがっつりは原作知らないけどアニメは見ていた程度の知識しかありません。ですのでわかりずらい部分は随時補完していきますのでよろしくお願いいたします。
ちなみにヤンデレ、ぼくっ娘大好物です。


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3話 もしかしたら原作突入前に死ぬかもしれない件。

しばらくはオリジナル展開が続きます。



 脳内会議を終わらせた後、俺は早速行動を起こした。

まずは、様々な防犯グッズを取りそろえた。

催涙スプレー、スタンガン、防犯ブザーなど女の子でもとっさに使えそうな物を揃えた。

子供じゃ買えないかとも思ったが便利なものでネット一つでいくらでも買える。

しかも、両親はほぼ家にいないので前世の金がばれることもない。

別に両親もネグレクトではなく恵里の事も心配してくれているがどうしても仕事が忙しいから仕方なくといった感じであった。

その代わり、恵里の虐待の事を警察に相談してくれることとなった。

こればっかりは両親に文句を言っても仕方ないそれに助けられている面もあるしよしとしよう。

揃えた防犯グッズを恵里に持たせようとしたが、

「そんな悪いよ…僕にそこまでしなくても…」

と恵里は申し訳なさそうに言っていたが

 何があってからでは遅いんだ!と真摯に目を見ながら伝えると、顔を赤くしながら頷いてくれた。

流石にきつく言い過ぎたのかもしれないがこういう事は常に最善を尽くすべきなんだ。

 できる限り一緒にいるつもりだが、もしかしたら俺が見ていない時に何かあるかもしれない。

 前世では現場監督として仕事をしていたが、危険は起こる可能性があってはいけないんだ。危険がある場合はそれ以外の方法を模索して、それでも危険がある場合は自分の身は自分で守れるようにしておかなければならない。対策はしないことはいけないが、しすぎることもない。

 そんな心配をよそに、恵里と俺はどんどん仲良くなっていった。原作だと天之河に狂気的な感情を抱くかそんな感じはしないな、ヤンデレ好きとしてはヤンデレ恵里も見てみたいが彼女が幸せならそれでいい。

 まだ前世の貯金があるため、二人でできるTVゲームであったりボードゲームを揃え遊ぶようにした。

 初めは緊張というか、俺を警戒していたがだんだんと心を開いてくれてよそよそしい態度も変わっていって、溌溂なそんな姿に萌えていたりしていた。

 やっぱラノベの登場人物だけあってめっちゃ可愛いなぁ。

 良いこととは続くもので、両親が警察に連絡をしてくれたおかげか恵里の母親の虐待が発覚し警察に逮捕されたらしい。

 恵里の父方の姉の方に親権が移った、しかも家が俺の家の近くであったため、引っ越すなども必要なく未だに遊んでいる間柄だ。

 小学高学年ということもあり、周りの同級生からはからかわれたりしたがこんな美少女と遊べるなんて機会を逃すわけなく気にせずに遊んでいたがその時は気付かなかった、良いことが続くと悪いことが起こることを……

 

 ある日、恵里と一緒にコンビニにお菓子を買いに行き、帰る際に目の前にいかにも汚いおっさんと表現したくなる無精ひげ人が立っていた。

 君子危うきに近寄らずとは言うもので、恵里が気づく前に俺の背中に隠すようにして目を合わさないように通り過ぎようとしたが

「お前のせいで……!」

おっさんがそう言うと同時にナイフを取り出し俺達に切りかかってきた。

俺はとっさに買ってきたお菓子の袋をおっさんの顔に投げつけ、恵里の手を握り走って逃げる。

そして俺は本能的に分かってしまった、あいつがおそらく恵里の父親が亡くなった後に来た男なのだと。

走りながら恵里を見たが怯えている様子を見るに俺の予想は当たっているらしい。

 クソッ!こんな恵里の怯える姿なんて見たくなかった……しかし今は気にしても仕方がない!

「恵里!前渡した防犯グッズなんか持っているか!」

走りながら恵里に尋ねると泣きそうな顔で頷き防犯ブザーを取り出した。

 もしかしたら持ってなかったかもしれなかったが、お洒落なキーホルダーに見えるタイプにしたのがよかったらしい。

 俺の意図を汲んでくれ、恵里はその栓を引き抜いた。

 流石最新型、めっちゃ響く。するとけたたましいブザーが響き渡った。

 これに気づいた人がきっと警察に連絡をしてくれるはずだ。もしくはそのブザーにビビッて逃げてくれると思ったが逆に男は錯乱状態になったのか、声にならない声を叫びながら更に加速してきた。

 

 まるで世界がの全てがスローモーションになり、男はナイフを振り上げながら恵里に向かって来るのが見える。

俺は恵里の掴んでいた手を自分に引き寄せその小さな体を抱きしめ、恵里を守るよう男に背を向けた。

その瞬間背中に鋭い痛みが走る。

「きゃあああああああああああ」

恵里の叫び声が聞こえる……良かった刺さった痛みが俺にあるってことは恵里には刺さってないはずだ……

でもここで気を抜くわけにはいかない……

そんな心配をしていると男の叫び声聞こえそちらを見ると、複数の人に取り押さえられた男の姿があった。

どうやら、ブザーに気づいた近隣の人たちが駆けつけてきてくれたらしい、そしてサイレンの音も聞こえる。

 とりあえずの危機は去ったか…

 恵里にケガがないか見たが、綺麗な顔を涙とか鼻水でぐちゃぐちゃになっているのがケガはしてないみたいだ。

「僕のせいで…僕のせいで…」

そんなとんちんかんなことを言っているので

「…恵里は悪くないだろ。無事で良かっ…た……」

そう言って恵里の頭を撫でてやる……そんな俺の手を自分のほほにやり大事そうに両手で持っている姿はめっちゃ絵になるなぁ……やばいなんか安心したら急に気が……

せっかく憑依転生したのにあっさり死ぬのかなぁ……

でも不思議と後悔は無かった…

…だって…目の前の女の子を守…れ…た………ん………だ…………

 

 

 

 




 因みにこの檜山(佐藤)は恵理は、天之河に出会うとそっちに惚れると思っています。
 ちなみに生きています。


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4話 結局、結果ってあんまり変わらないって話

今回は中村恵里から見たお話です。
なので本編一切進みません。

これって本当に短編で終わるのかなぁ(他人事)


~恵里side~

そいつとの出会いは突然だった。

 

「何やってんだ!死ぬ気か!」

 

そうだよ僕は死にたいんだ……

 

「何があった、知らないけど親御さんが悲しむぞ」

 

そんな薄っぺらい言葉に僕は苛立ち、そいつを怒鳴りつける……

 

こいつはきっと偽善者なんだ。目の前の人をただ助けて自分に酔いしれたいだけなんだ……

 

こいつはどうせもうこんな事するな的なことを言って直ぐに僕の前からいなくなるんだそしたら今度こそ……

 

「よし!メシ食いに行こう!」

 

……はぁ?

 

何でここでご飯の話になるんだ?そいつは自分が腹減ってるとか、僕の邪魔したお詫びとか言ってるけど僕は行く気なんてさらさら……

 

「ほら、行くぞ!」

 

僕の意見なんて関係ないと言わんばかり、僕の手を引っ張って行くなんだよこいつ……

 

雨に濡れているのは同じはずなのに握ってきたこいつの手はやけに暖かかった……

 

そいつに連れられ、コンビニ着くとタオルを買って僕に渡してくる、目つきの悪い見た目とは裏腹に

こいつの持ってた財布は有名な犬のキャラクターがあしらわれた可愛らしい奴だった……

 

ハンバーガー屋に入りそいつは注文を終え、比較的人目のつきにくい場所に席を取った。

 

僕を気にかけてるのかな……そんなわけないか……

 

しかしそいつが注文したのは、ポテトやらナゲットなどシェアできるものばかりで飲み物はホットミルクティーとまるで僕に気を遣ってくれているみたいだった……

 

そいつから根掘り葉掘り聞かれるとばかり思っていたが、何も聞かずただ頼んだメニューを食べようとしている……

 

何で助けたのか聞いたがそいつは…

 

「目の前で自殺する奴を止めない奴はいない」とあっけらかんと答え、冷めないうちに食べようとポテトとかを進めてくる……

 

まあ、少し食べたら直ぐに帰ろう……そう思いポテトやナゲットに手を伸ばす……

 

そういえば、他人とご飯食べるのなんて何時ぶりだろう……

 

ファストフードではあるがあったかいご飯……一口二口食べると涙が止まらなかった……

 

僕はつい何があったか話してしまった……

 

僕の事、父親の事、母親の事……

 

大変だったなとそいつは言ってきたが、お前に何が分かるんだ……僕はひとしきり話すと少しスッキリとしたので帰ろうとすると……

 

「俺と友達になってよ」

 

……はぁ?ついそいつを馬鹿にするようにだが笑顔になる僕がいた……あれ?何で笑ったんだろう?

 

そんな疑問を他所にそいつは自己紹介をしようといい、そいつが檜山大介って名前だとわかり僕もそいつに僕の名前を教える

 

「…僕は中村恵里」

 

そう、これが僕の運命の人との出会い。

 

 

 

大介と出会って僕の世界は急に変わり始めたんだ。

 

初めは、どうせ口だけと警戒していたけどそんなことはなかった!

 

大介は僕に言った通り、僕の友達になってくれたんだ!周りから女子と遊ぶってからかわれたりするみたいだけど、大介は気にも留めず僕と遊んでくれる。

 

大介の家はお母さんお父さんは共働きであんまり家にいないみたいだけど別に仲が悪いわけでもないみたい。

 

僕も初めて大介のお母さんと会った時に抱きしめられ、好きなだけ家に居ていいよって言ってくれた。

 

一緒にゲームをしたり、二人で出来るボードゲームであったり、漫画を一緒に読んだりもした。

 

大介って漫画のジャンルにこだわりはないみたいで、僕好みの少女漫画も一緒に読んでくれた。

 

きっとこの一面は僕しか知らないんだろうなぁ……

 

僕しか知らない大介の一面……嬉しいなぁ……すると自然に笑みがこぼれる。

 

大介は僕にプレゼントまでくれたんだ!

 

防犯グッズだけど、大介が僕を思って贈ってくれた大切なプレゼント…

 

防犯ブザーなんて、一見そう見えないように可愛らしいデザインになってる…大介が僕の為に……

 

そんなある日、僕の母親が逮捕されたらしい。

 

大介やその両親は僕の母親を警察に通報したと申し訳なさそうに伝えてきてくれたがそんなことどうでもいい!

 

僕はどうなるの?もしかして、せっかく仲良くなったのに大介と離れ離れになっちゃうのそんなの嫌だ…

 

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……………

 

そんな僕の心配は杞憂になった。

 

あんまり会ったことなかったけど、僕のお父さんのお姉ちゃんが僕の家族になってくれるらしい。

 

なんと!その新しいお母さんの家は大介の家の近くだったんだ!

 

良かった……大介と離れずに済んだんだ……

 

新しいお母さんは優しいし、今まで辛かったのはこの幸せの為だったんだなぁ……全部大介と出会ったから……

 

僕はきっとこの幸せが続いていくと思ってたんだ、あの日まで……

 

 

 

ある日、大介がお菓子を買いに行くと言ったので僕も付いていく。

 

大介は家で待ってて良いよって言ったけど、あんまり大介と離れたくなかった僕は当然の様に付いていく。

 

お菓子を買い終え、その帰り道当然の様に大介は車道側を歩いて僕を歩道側を歩く。

 

常に僕のことを気に掛けてくれる……

 

すると大介は急に僕を背中に隠すように歩き出した、どうしたんだろうと思ったけど特に気にすることなく僕は大介の背中に付いていく。

 

「お前のせいで……!」

 

短い言葉であったがその声は僕のトラウマ呼び起こすには十分だった……

 

なんでこいつが……!

 

僕はパニックになる。大介は僕の手を引っ張ってくれているけど僕の心がぐちゃぐちゃになるのを感じる……

 

「怖い」その感情で僕の頭は一杯になる、他に何も考えられない。

 

なんで、せっかく友達が出来て遊んで、そんな当たり前の幸せがあったのになんで……

 

「恵里!前渡した防犯グッズなんか持っているか!」

 

僕はその言葉に我に返ることが出来た。

 

手放すわけない、大介が僕に贈ってくれたプレゼントなんだもん!

 

僕は大介の言葉に頷き、持ってた犬の形をした防犯ブザーの栓を引き抜いた。

 

けたたましいブザーが鳴り響く、これで助かるんだ僕はほっとしたが現実は非情であった。

 

あいつは更にスピードを上げ、ナイフを振り上げながら僕に近づいてくる。

 

僕はあっけにとられ、ナイフが振り下ろされる刹那だった。

 

大介が僕を庇うように抱きしめ、大介の背中にナイフが刺さった……

 

「きゃあああああああああああ」僕は叫ぶがもう遅い

 

「僕のせい」そんな暗い感情が僕を襲う

 

すると、大介は僕を痛みに耐えながらか苦痛の表情を浮かべ僕を見て

 

「怪我がなくてよかった…」そう呟いて微笑んでくれた。

 

僕はさらに涙が止まらくなった。

 

「僕のせいで」僕がそう呟くと、出会った時と変わらない暖かい手が僕の頭を撫でてくれる。

 

「…恵里は悪くないだろ。無事で良かっ…た……」

 

そういうと大介は眠るように倒れた。

 

僕は直ぐに、周りの人に助けを求め救急車を呼んでもらった。

 

死なないで大介!僕の祈りが通じたのか救急隊の方が直ぐに来てくれ、近くの病院に運ばれる。

 

救急車の中で分かったが、ナイフがあまり深く刺さっておらず大介の命に別条はないらしい。

 

検査などはあるだろうが、数日で退院できるとのことだった。

 

それを運ばれた病院の一室で聞いた僕や大介の両親、僕の新しいお母さん。

 

本当によかった。僕は大介の命が無事なことが分かると、全身の緊張が解け大介の眠るベットの横の椅子に座り込み泣いてしまった。

 

みんなも安心して部屋の雰囲気が明るくなるのを感じながら僕は思ったんだ、

 

 

 

 

運命って本当にあるんだ………♡




檜山(佐藤)の思い?とは裏腹に着々とフラグが立ってくってお話でした。

それと感想の返信が遅くなって申し訳ありません。
そろそろ返信いたしますので感想くれた方には申し訳ありませんが少々お待ちください。


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5話 そうだ道場に行こう。(行くとは言ってない)

お気に入り登録数 100突破ありがとうございます。
予想以上の数字に打ち震える今日この頃ですが楽しんでいただけたら幸いです。

*八重樫さんの髪型を誤認識していたため多少本文を変えております。




 目を覚ますとそこにあるのは知らない天井だった……

 まさか2回死ぬなんて俺が人類初だなきっと。

 そんな馬鹿なことを考えていたが、体を起こそうとすると手を誰かが握っているのが分かり、ふと、横に目をやるとそこには俺の手をまるで自分の宝物のように大事そうに握ってベットに倒れる様に眠る恵里の姿があった……

 

 

 いや~自分が恥ずかしい……

 完璧に死んだって思ってたけど、別に命の危険なんて一切なくただただ安心して気を失っただけらしい。

 さっきの回想なんなんだよ。某有名アニメ風に起きようとまでしてたのに……

 自分が気を失った後の話だが、どうやら俺と恵里を襲った男は無事に逮捕されこれ以上恵里に危険が及ぶ可能性はなくなっただろう。

 とりあえずの目標である恵里の安全が見えたのでよかった。

 俺の怪我と言えば、入院も3日程で良いとのことだったが、酷くないとはいっても、ナイフで背中というより右肩辺りを刺されているらしく、動かすといけないのでしばらくは右腕を動かさないようにとギプスの生活を余儀なくされた。

 

 そのことを俺の病室で医者から聞いた母親が仕事を休む連絡を入れようとしたが

「僕が大介のお世話をするから大丈夫!」

と恵里が満面の笑みで答えてくれ、恵里の母親も私も手伝うから大丈夫ですよと言ってくれたのもあり、恵里の好意に甘えることとなった。

 

 宣言通り、恵里は俺が退院する3日間毎日お見舞いに来てくれ、右手が不自由な俺を手厚く看病してくれた。 

 流石に精神年齢で言えば、ほぼほぼ三十路だが、やっぱり可愛い女の子からの看病に恥ずかしさはあったが恵里からの好意を甘んじて受けている最中だ。

 しかし、可愛い女の子からの「あ~ん」がこんなにもテンションが上がるとは思わなかった。転生して初めて良かったと今の幸せを噛みしめている……

 恵里もあの勇者(笑)に会えば一目惚れしてしまうのだろうか……

 俺の心の中に暗い気持ちが芽生えるが、

 くそっ!いけないいけない、俺はせめて恵里の幸せを願ってやらないでどうする。こんなこと考えちまうようじゃ、原作のゲス檜山と変わらない!死亡回避なんて夢のまた夢だ!

 どうしたの?と恵里が心配してくれるが大丈夫だよと言って汗もかいたし、着替えるから部屋を出ていくように伝えるが、不思議そうな顔を浮かべ首をかしげて

「僕が手伝ってあげるよ!」

と、めっちゃ眩しい笑顔で俺の着替えのパンツを片手に俺のズボンに手を掛けようとしてくる……

「いやいやいやいやいやいや!中村恵里さん!女の子が異性の下着を笑顔で持って来てはいけませんわよ!?」

 ズボンを抑えながら突然の事に変な口調になりながら注意するが、

「大丈夫だよ!大介のお世話するっておばさんにも伝えているし、大介の事はなんでも知っておきたいからさ!」

 なんでもってなんだよ!なんでもって!

 まあ、恵里が明るくなったのはいいことだし、それにこの感じは俺の事は異性でなく家族みたいに思ってくれてるってことだな、うんうん。

 そう納得して、俺のパンツ片手に向かって来る恵里から、パンツを取り上げ無理やり部屋の外に放り出し、病室のカギを締めた。

 まったく……あれ?このパンツやけに新しい様な……いつも履いてるやつだよな、柄も一緒だし……気のせいか。

 

 それから、俺は無事に退院出来たがまだギプスが取れておらず、頻繫ではないにしろ病院に通うこととなった。

 しかし、俺にぼーっとしている暇なんてない!次の目標である八重樫道場を探さなければ!

とは言っても、スマホがある為直ぐに場所が分かり俺は早速行動を起こす。

 今日は病院に行かないといけないため学校を早退でき、両親が仕事で我が家には誰もいない絶好のタイミングだ!

 恵里が居ると絶対一緒に付いていくっていうもんな……

 何故恵里を連れていけないかというと、恵里を連れ行った際に、勇者(笑)と会ってしまうともしかしたら原作のようになってしまう可能性が0ではない為、「恵里は連れて行けない」と結論付けた。

 恵里の母親が代わりに病院に連れて行ってくれ、家に送ってくれた後、俺は早速八重樫道場へと向かった。

 家からさほど遠くないとはいえ、校区が違うから白﨑香織さんと中学が違う可能性が高いな……八重樫道場の場所だけでも把握しときたかった俺は目的の場所に向かう途中、ちょうど小学校の下校時刻だったのかランドセルを背負った子供が何人か見えた。

 その小学生の中に、明らかに暗い顔をしたベリーショートの女の子が見え、下を向いているせいか赤信号の横断歩道を渡ろうとしている。

 気付いてないのか!俺は咄嗟に左手でその子の腕を掴み、

「あぶないだろ!」と大声で注意してしまった。

すると、女の子はビクッ!と俺の方を見たかと思ったらまた直ぐに暗い顔をして、何故かポロポロと泣き出してしまった。

 俺のせい?!と思っていると周りから俺が泣かしたと、ひそひそとした声が伝わってきて、このままではまずいがなんとなく放っておけない女の子の手を引き、その場から離れることにした。

 

 

 

 俺って訳ありの女の子に出会う運命でも背負ってんのか?そんな事を考えながら、比較的人目に付きにくそうな公園を見つけそのベンチに女の子を座らせ、持ってたハンカチを渡し、二人分の飲み物を買いに行き、片方を女の子に渡し俺も一人分ぐらいの間を空けベンチに座った。

 ひとしきり泣いてスッキリしたのか、さっきよりましな顔つきになっていたので

「さっきは悪かったな、怒鳴ったりして」とりあえず俺が謝ると

「いえいえ!私も急に泣き出してしまってごめんなさい」と逆に謝られ

いや俺が、いえ私がとそんなテンプレの様なやり取りを続けてているとお互いから自然と笑いがこみ上げ、二人で顔を合わせながら笑い合った。

「それよりハンカチは洗濯して返しますね!」

「……なんかあったの?」

俺が尋ねてみるとやはりというか、また暗い顔になりうつむいてしまった。

あんまり尋ねるのも悪いが、放っておくのも忍びないし……

そう思っていると、女の子はぽつぽつと今日何があったのかを話してくれた。

 簡単に要約すると、好きな同級生の男の子を巡っていじめがあり、それを止めてくれるどころか逆に悪化させ、それをまるでこの子のせいであるかのように決めつけたらしい。

「ひどい奴らだな……」

女の子の話しを聞いて素直な感想を言う。

「好きだと思って相談したのにもう何も信じられないっていうか……」

女の子も暗い顔をしながらそう告げた。

 いじめに対して直ぐに行動したのは評価できるがその後がおざなり過ぎる。

 いじめる奴らも悪いがこれじゃただ火に油を注いだだけでありなんの解決にもなっていない。話を聞く限りこのままじゃいじめもエスカレートする可能性のほうが高いまである。

「……ごめんなさい。こんな話聞いてもらって…ハンカチは洗濯して…」

女の子は話を切り上げ帰ろうとするが、

「このままでいいのか?」

「……でも、明日には…」

「断言してやる。このままじゃいじめは続くぞ」

「っ!じゃあどうすれいいの!」

俺の言葉に女の子は声を荒げ俺の方を見た

「あいつに相談したら解決すると思ったのに解決しないし、親にばれたら迷惑掛かるかもしれないし、それこそ今度はもっとひどいことされるかもしれないし、わたし…わたし…」

泣き止んだはずの女の子の目からまた涙こぼれていき、女の子の悲痛な叫びがこだまする……

 俺は女の子の肩に優しく手を置き、ちゃんと女の子の目を見ながら宣言する。

「俺が絶対解決してやる!」

 ここには八重樫道場の為に来たが、そんなことはどうでもいい。

 目の前に泣いている女の子がいるのに、それを放っておくなんて男がすたる。

 俺には死ぬ運命が待ってるかもしれないんだ、だったら何事にも全力で取り組み悔いのないようにするのが男ってもんだろ!

「どうして、初めて会ったのに……」

「目の前に居る女の子が泣いているのに手を貸さない奴なんていないよ。それに君にはハンカチを返してもらわないといけないしね」

俺がいたずらっぽく言うと女の子もつられて笑ってくれた。

うん、やっぱり女の子は泣き顔より笑顔だよな!

「っと、自己紹介がまだだったね。俺は檜山大介。君は?」

そういえばこんなことが前にも……

「檜山君だね……私は八重樫雫です。その…これからよろしくお願いします!」

 そう言って女の子は俺に深々と頭を下げてくる。

………………

…………

……

 

 

 

うそーん

どうやら俺にまた死亡フラグが来てしまったらしい。

 




 ちなみに、今作檜山(佐藤)はアニメ1期ぐらいの知識と後はうろ覚えの為、八重樫雫の幼少期設定を知らなかったという体です。
 後半は1話と変わらない様な……
 ま、いっか(他人事)


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6話 第二回 脳内会議

評価バーが赤くなっていて思わずサイトを閉じて仕舞いました。
前回の八重樫さんの髪型について指摘をしていただきありがとうございます。
にわかありふれファンのため、八重樫=ポニテでした。
本当に申し訳ございません。

勇者(笑)のせいで解決策がマジで出てこなかった……


~檜山脳内~

 

議長檜山「それでは第二回檜山死亡回避のための作戦会議を行います」

 

真面目檜山「まさか八重樫雫さんが幼少期にこんないじめに遭っていたとは……」

 

強気檜山「確かアニメではこんな描写なかったよな!」

 

弱気檜山「つまり…2期である描写なのかなぁ…」

 

気楽檜山「かもねぇ~今思えばそんな二次創作を見た気もするよね~今後は会う人全員に自己紹介から始めないと色々な所で死亡フラグ立ちそうだねぇ~」

 

強気檜山「そうだな!それよりぜってぇ!この件も解決してやろうぜ!」

 

弱気檜山「でも…あんまり関わっていいものなのかな…」

 

強気檜山「どういうことだよ!」

 

真面目檜山「この件に関わるってことは、あの勇者(笑)とも関わる可能性が高くなるってことですよね」

 

議長檜山「確かに、話を聞く限りそのいじめに油を注いだのは勇者(笑)で確定でしょうし、この件を解決するということは、その勇者(笑)ともこの時点で関わってしまうということです」

 

真面目檜山「しかし、このまま放っておくと原作突入時にハジメハーレム一員の雫さんに恨みを買ってしまいます」

 

強気檜山「そうなったら!死亡確定じゃねぇか!」

 

議長檜山「さらに勇者(笑)に関わって謂れもない恨みを買ってしまうと、原作時に冤罪の1つや2つを着せられ処刑エンドでも迎えてしまうでしょうな」

 

弱気檜山「原作だろうと、二次創作だろうとあの自己解釈思想身勝手一貫性無しの男が関わっているのに解決なんてできるのかな…」

 

気楽檜山「それ言うなら、二次創作でめっちゃ惨い殺されている俺も人の事言えないよねぇ~多分二次創作でこんなにあっさり殺される奴も珍しいよねぇ~」

 

強気檜山「くっ!確かにその通りだ!しかし勇者(笑)も、その字面だけ見ると無理ゲー過ぎて嫌気がさすぜ!」

 

気楽檜山「じゃあアプローチを変えて、いじめる女子側をどうにかする方法を考えてみる~?」

 

弱気檜山「でもどうやって…?」

 

強気檜山「こうなったら!隠しカメラなり盗聴器を渡していじめの証拠を掴むんだよ!」

 

気楽檜山「でもそれってどうやって~?八重樫さんにカメラと盗聴器を仕掛けてくれとでもいうの~そしていじめられて欲しいとでも言うの~」

 

真面目檜山「…それかここは大人に頼るのがよいのでは?」

 

弱気檜山「どういうこと…?」

 

真面目檜山「流石に今回の件は、転生してるとはいえ小学生の手には負えないということです。ここは八重樫さんのご家族に報告するということです」

 

強気檜山「はぁ!八重樫さんとの約束を反故にするってことなのかよ!」

 

真面目檜山「はい、その通りです。ご家族も流石に愛娘がいじめに合っていると分かれば何か手を打ってくれるかもしれません」

 

弱気檜山「えっ…でもそれじゃ八重樫に嫌われるんじゃ……」

 

真面目檜山「では他にどんな方法がありますか?このままではいじめが加速するは火を見るよりも明らかです。よその学校に忍び込んでカメラなり盗聴器なりを仕掛けいじめ証拠が出てくるまで八重樫さんに耐えてくれとでも言うのですか?」

 

気楽檜山「確かに~それって前世の貯金があるとは言えあんまり現実的じゃないよねぇ~」

 

強気檜山「でも!八重樫に嫌われるだけじゃねぇ!勇者(笑)も黙ってないはずだ!彼女たちにいじめの汚名を着せたとか難癖付けられるのが関の山だ!いじめは解決できても、そんなことしたら俺に死亡フラグが立つ可能性が高い!出来れば俺が表立って何かするのは避けたい!」

 

真面目檜山「だったらお聞かせください。これ以上の最善の策を。できるかぎり最短でこの件を解決する方法を」

 

強気檜山「それは!…………ねぇ…」

 

弱気檜山「……僕も八重樫さんのご家族に報告するのがいいと思う…」

 

気楽檜山「僕もそうだねぇ~強気檜山の言う通り~ここで死亡フラグが立つかもしれないけど、今はさ目の前の女の子を助ける方がいいんじゃない~どうせいくら対策したところで今回フラグが立たなくても、次に筍みたいにうじゃうじゃ湧くかもしれないんだし~今のフラグの一本や二本、気にしても仕方ないんじゃない~」

 

議長檜山「ふむ…確かにそうですな。では今日八重樫さんからの家の電話番号も聞いたことですし、早速行動を起こすのがよいかと思いますが皆さんよろしいですか?」

 

一同「「「「異議なし」」」」

 

議長檜山「では、八重樫のご家族が対応できなかった場合の対策も話し合いましょうか?」

 

強気檜山「どういうことだ!」

 

議長檜山「八重樫さんの家族の方たちが、何もしてくれなかった場合です」

 

弱気檜山「えっ…でも娘がいじめられているって知ったら何かしらしてくれるんじゃ…」

 

気楽檜山「でもそれって俺の希望的観測だもんね~前世じゃ親ガチャなんて言葉があるくらいだし~もしかしたら、言ったところでって可能性はゼロじゃないもんね~中村恵里の家のパターンもあるし~」

 

真面目檜山「確かにその通りです。ただでさえ、前世の俺の知らない状況なわけですし、常に最善を尽くすのがベストかと」

 

強気檜山「だったらやっぱり、その時はいじめの証拠を手に入れる為に動くべきだ!」

 

弱気檜山「そうなるよね…でも八重樫さんって責任感というか無駄に背負い込むタイプだから八重樫さんにカメラとかを仕掛けさせるのは無しだよね…」

 

気楽檜山「だねぇ~きっと罪悪感を感じさせちゃいそうだね~」

 

強気檜山「だったら、前回恵里の時に使わなかった高性能カメラが残っているからそれを使う覚悟でいこう!」

 

議長檜山「とりあえずは、今晩八重樫さんの家に電話しましょう。その反応を見てカメラを仕掛ける方法や日時を決めましょう」

 

一同「「「「異議なし」」」」

 

議長檜山「でしたらこれにて第二回檜山死亡回避会議閉廷」

 




今回は檜山(佐藤)は大人に丸投げしましたとさ。
ちなみに、本編後半の対策は杞憂に終わります。


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7話 あれ?俺なんかしちゃいました?

年月が経つけど、原作にまだ突入しません。

昨晩
作者「さて投稿も出来たし、ハーメルンのランキングに面白そうなのあるかな……」
              :
              :
80位ぐらい ありふれた職業で世界最強に転生したと思ったら檜山だった件
              :
作者「……ふぁっ!」

マジで声出ました。マジでビビってます。マジでありがとうございます。マジで頑張ります。(語彙力低下)


 転生して約2年、俺は小学6年生となりボチボチ卒業と、今のところ死亡フラグに見舞われることなく平和に生活している……

 

…えっ?八重樫さんのいじめの件はどうなったのかって?無事に解決したぜ。

 

……えっ?それだけなのかって?

 マジでそれだけなんだよな。別に俺は大したことはしておらず、直ぐに八重樫さんのご家族に電話をしていじめの事伝えた。最初は疑われ相手もされないかと思ったが、俺が必死さが伝わったのかこちらでも調べてみると電話越しであるが信頼できると思える声が聞こえ、俺はその言葉を信じその日は終わった。

 次の日に八重樫雫さんの家というか道場までハンカチを受ける時にそのことを伝えると同時に昨日家族にいじめの事を伝えたことを謝った。

今更だが、勇者(笑)が居なかったのは幸運だったな・・・

 雫さんは、少し驚いたような顔をしたが逆に謝ってくれ、その日もいじめに遭ったが助けてくれた同級生が居たらしく、それをとても嬉しそうに語っていた。

「その友達は絶対大切にした方がいいよ」

 俺がそう伝えると、雫さんも嬉しそうに頷いたの見て俺はほっとした。

 

 

 ・・・何故なら!この助けた子の名前を聞き、その子こそ我らが白崎香織さんであると俺は確信したからだ!

 いや~よかったよかった。これでこの件に関してはもう俺が関わらなくても大丈夫のはずだ。

 俺が危惧していることの一つに各登場人物の人間関係が大幅に変わってしまうことがある。俺という存在が、本来関わらないタイミングで原作登場人物に関わることにより、登場人物同士の関係が変わってしまうとそこで死亡フラグが立つ可能性だってある。

 つまりは、勇者(笑)からの逆恨み防止の為である。

 あいつ多分、人と目が合っただけで

「いやらしい目で見るな!」とか「喧嘩腰で見るな!」的ないちゃもんを付けられかねないからな。しまいには「今呼吸をしたな!」ぐらいは言いかねない。

 しかし、今回の一件では雫さんはキチンと香織さんと出会い、俺の「友達は大事にしぃや」できっと友達を通り超え親友になってくれるはずだ!

 いじめの方も、後から八重樫さんのお爺さんから電話があり、感謝を伝えられお爺さんは家族なのに孫なのにいじめに気付かなくて恥ずかしいと言っていたが、

「家族だからって、なんでも知ってるわけじゃないですよ。家族であると同時に人でもあるんですから、言わないと伝わらないのは当然です。今度、雫さんとしっかりと話し合ってみればいいんですよ。他愛のない会話はもちろん、なんでもいいんですから」

……現在小学生の俺が、何恥ずかしいこと言ってんの!

 うっわ恥ず!……お爺さんの言葉につい反応してしまったが、これは前世の父親からの教訓なんだ。

 家族だから言わなくても伝わるなんて、そんな訳がない。相手に伝える時は、家族だろうと友達だろうと上司だろうと直接言葉にしないと伝わるわけがない。だから人間は言葉があるんだって言ってたな。

 これは、クリスマスに欲しい物じゃなくて文句を言った時に言われた言葉である。

 八重樫さんのお爺さんからは、笑いながらではあるが本当に小学生か?と言われ、ひやっとしたが終わり際に雫さんの友達で居てくれと言われたので、電話越しではあるが力強く頷いた。

 

 その後俺と、八重樫さんはあまり直接会うことはないが、ちょくちょく電話をするぐらいの仲にはなった。

 俺にとっての幸運は、勇者(笑)と出会わなかったことだ。最悪一回ぐらいは会うことを覚悟していたが心配が杞憂に終わりほっとしている。

 やっぱり話し相手が居るだけでもストレス発散にはなるものだろう。これで勇者(笑)からのストレスを解消してもらえるならお安いもんだ。

 話す内容は他愛のないものが多く、今日は白崎さんと遊んだとか、かわいいぬいぐるみを買ったとかだ、勇者(笑)から幼馴染なんだから一緒に帰ろうなんて言われて大変だったとか、それに対して俺も相づちを打ちながら

「どこで遊んだの?」とか「今度、おすすめのお店教える」とか「別に幼馴染なんて言葉に縛られなくてもいいよ」と受け答えをしていく。

 えっ?なんで俺がぬいぐるみのオススメの店を知っているのかって?

 俺は前世で男ばかりの職場だったせいか、萌えではない癒しを求めた結果がサン〇オとかディ〇ニーとかの可愛い系グッズを密かに集めることだった……一時期は編みぐるみを作ったこともあったなぁ……

 それにしても勇者(笑)は、幼馴染って言葉を勘違いしているな。小さいころから知っていれば幼馴染とでも思っているのだろうか?原作でもめっちゃ痛い発言連発して、幼馴染だから俺が言わないととか、幼馴染だからそばにいるのが当たり前だとか……考えるだけでも頭痛が痛いだなこりゃ。

「でも、いいのかなぁ…」と変な悩み方をしているから

「いいんだよ。そんなこと言い始めたら、八重樫さんと俺はもう幼馴染になるんだぜ?そんなに大量に幼馴染がいたら気が休まらないだろ?」と俺が笑いながら話すと

「……あはっ!そうだね。私と檜山君はもう幼馴染になっちゃうね!」もちろん香織も!と笑い返してくれた。

 よかった、白﨑香織さんをちゃんと幼馴染と言えるぐらいに大切に思ってくれているようだ。

 そんな雑談のなか、そろそろ小学校卒業ということもあり、それとなく中学校の事を聞くと、やっぱり中学校は別だった。

 白崎さんには申し訳ないがやはり、中学二年になったらストーカーするしかないのか……

 しかしこうなると、ストーカーする方法も考えなきゃな、ボチボチ脳内会議を再開する必要が……そんなことを考えながら、八重樫さんとの電話は1時間ほど続いた。

 

 

 電話を終え、脳内会議を始めようとしたとき

「……だ~いすけ!」

明るく可愛らしい声と共に、俺の背中に抱き着いてくる。

「っと。どうしたんだ恵里」

「う~ん、どうしたのっていうか?」

いつも溌剌な恵里らしくなく、言葉の切れがわるいな、俺がそんなことを考えていると

「……ねぇ、大介?八重樫さんって誰?」

……っ!一瞬部屋の温度が冷え込むのを感じる…別に恵里の口調が冷たいとかは一切なく、いつもの明るい声だ。

「久しぶりに大介の部屋で遊ぼうと思って、来たんだけど、部屋から楽しそうな声が聞こえて気になっちゃった」

「ああ、そういうことか。伝えなかったっけ?ほら、2年ぐらい前に知り合ったベリーショートの女の子だよ」

 今は白崎香織さんのおかげもあってか、前と違って髪を伸ばし始めているらしいけど……

「あぁ~そんなこともあったね。今度僕にもその、八重樫雫って子紹介してよ!」

「えっ……」

 一瞬ためらってしまう。正直言って、あんまり原作前に余計な不安を増やしたくない……でも確か原作じゃ同じパーティーに入るぐらいだしあんまり影響はないか……

「ねぇ~いいでしょ~僕も友達が欲しいんだよぉ~」

 別に恵里は友達少なくないだろと思ったが、俺に可愛らしく上目遣いでお願いする恵里に逆らうことは出来ず、日程を決めまた後で連絡する事を約束する。

「やったぁー!大介、だ~いすき!」

「女の子が簡単に、男に抱き着いてはいけません」

そう言って恵里を引きはがし、最近はまっているゲームを出し二人で遊び始める。

「ねぇ、大介?」

「ん?」

「僕たちも幼馴染だよね?」

どうしたんだ急に?でも考えてみれば、小学4年から知り合ったわけだし

「幼馴染なんじゃね?」

「そこは、はっきり言うところでしょう!」

「わかったわかった。俺たちは幼馴染だ」

「えへへ…うん!僕たちは幼馴染!」

恵里のとびっきりの笑顔を見ながら二人でゲームをする。

何気ない日常だけどこれが幸せなんだろうなぁ。と俺は死亡フラグをへし折る覚悟をさらに強くするのであった。

 

 

 

 




書きながら
あれ?勇者(笑)が幼馴染言うんなら、檜山(佐藤)とも、もう幼馴染なんじゃね?って思いました。


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8話 試練

転生して以来最大級の試練が訪れます。

UA1万突破ありがとうございます!こんなにも沢山の方に読んで頂き嬉しい限りです!頑張ります。
どう考えても短編で終わりそうないので連載に変えています。

昨晩
作者「UA1万超えてんじゃん!嬉しいな!でも、UAってどういう意味なんだろ?」

調べてみて意味を知る作者

作者「……ふぁっ!」


 突然ですが、皆さんは正負の法則という言葉をご存じでしょうか。

 簡単に言えば、良いことと悪いことのプラスマイナスはゼロになるという考えです。

 その考えでいうなら、俺は二回目の人生を与えられた俺には途轍もないプラスがあるということになります。

 でも、その転生先がほぼ確実に殺される運命が待っているのだからその点は途轍もないマイナスだと思うわけで、なんとなくつり合いは取れていると思っていました……この日までは。

 

「檜山と言ったな!俺と勝負しろ!」

 将来は確実にイケメンになると思える、顔の偏差値が80ぐらいありそうな子供が俺に指をつきつけながら高らかに宣言する。

「……えー」

 どうやら俺は今、今世最大のピンチに見舞われているらしい。

 

 

 以前恵里と約束した、八重樫さんとの件について電話したところ私も会ってみたいとのことだったので、八重樫さんに恵里の電話番号を教えた。恵里は原作の様な落ち着いた優等生と言うよりも元気溌剌なボクっ娘になっており、コミュ力のお化けになっているので変なことにはならないだろう。

 そんなある日、恵里が当然の如く俺の家に来ており

「そういえば大介、来週の土曜日って空いてる?」

 

「空いてるけど?」

 

「じゃあ空けといてね!その日八重樫さんと遊びに行くから」

 

「はいはい了か……今なんつった」

 

「だから、八重樫さんと遊びに行くから大介も一緒に行くんだよ?」

 

 当然でしょ?みたいな感じで言ってくる。

 

「いやいや、何で俺がついていく前提なんだよ!女の子二人で行ってくればいいんじゃね?」

 

「だって、僕と八重樫さんは初めて会うんだよ?そこは大介がいないとダメじゃん」

 

 ダメじゃんてなんだよ…いやそれよりも、もしかしたら白崎さんも行くのだろうか?そうなると色々と死亡フラグの危険が……

 

「ううん。白崎さんって子は予定が合わなくて、僕と八重樫さんと大介の三人でってことになったから」

 

 サラッと人の心を読まないで欲しい…

 

「いやだから何で俺も入ってくるんだよ?そもそも八重樫さんは恵里と二人でって思っているだろうから…」

 

「そこは大丈夫!八重樫さんも大介ならいいって言ってたし。大介おすすめのお店に案内して欲しいって言ってたよ?」

 

 なんてこったい、できる限り八重樫さん達に近づくのを避けておかないと勇者(笑)に会う危険性が高まってしまう…こうなったら適当に予定を……

 

「あ~あ、八重樫さん楽しみだって言ってたのになぁ~、うぅ~大介が無理だって…僕たちなんかより大切な予定があるから行けないって伝えないといけなのかぁ~」

 

「……わかった。その日は予定空けとくから集合時間とか教えてくれ」

 

「えへへ、えっとね時間は……」

 

 俺は観念して、三人で出かける約束をする。きっと大丈夫だ、うん。そもそもここまで勇者(笑)のゆの字どころかYの頭文字の気配すらない。きっとこの件も無事に終わるだろ。

それに、ここで断るとそれはそれで死亡フラグが立ちそうだし……

 

 

 

 それから数日が立ち、約束の日になった。

俺と恵里は家が近いこともあり、一緒に待ち合わせ場所に向かう、

 

「そういえば、こうやって大介と外に出かけるのって久しぶりだね?」

 

「そう言えばそうだな、まあお互いインドア派だし、仕方ないんじゃね?」

 

「でも偶にはこういうのも新鮮でいいね!」

 

 恵里が楽しそうにしているのを見ると俺も自然と笑みがこぼれる。きっとあの時出会ってなければ……原作とは違うが、俺が転生して誰かを助けられているのならそれはそれでいいか。

 

 そんな会話を続けていると、待ち合わせ場所には、ポニーテールの女の子が待っていた。

 

「…あっ!檜山君、久しぶり!」

 

 俺を見つけるなり、手を振りながら笑顔でこっちに向かってる。

 

「オッス。八重樫さんも久しぶり。髪伸ばしたん……」

 

「初めまして、八重樫さん!僕は大介の幼馴染の中村恵里って言います!これからよろしくね!」

 

俺が八重樫さんとしゃべろうとすると、恵里が俺と八重樫さんの間に割り込むように入り、八重樫さんの手を取り握手をし始める。

 そんなに会いたかったのか恵里、やっぱ友達は一杯欲しいんだろうな……

 

「……初めまして中村さん。私は八重樫雫。私も檜山君の幼馴染です」

 

「そうなんだ!奇遇だね!」

 

 八重樫さんは少し間を開けたが、恵里の挨拶にこりゃまためっちゃいい笑顔で答える。

 この感じなら直ぐに仲良くなりそうだな、よかったよかった……

 でも俺と幼馴染って……そういえば前電話で俺が八重樫さん幼馴染だみたいなこと言ったな。今の小学生の間で幼馴染って言葉が流行っているのか?

 八重樫さんもそんな幼馴染なんかにとらわれずもっと自由にすればいいのに。

 

「とりあえず立ち話もなんだし、どっか行こうか?」

 

「そうだねぇ~大介のおすすめのお店でも行こう」

 

「そうですね、私はこの辺りに詳しくないので行く場所はお二人にお任せします」

 

 

 そうして、なんてことのない休日が過ぎていった。

 最初は、俺のおすすめ店に行き、そこで八重樫さんは最近、剣道だけじゃなく自分のやりたいことをやるようにしているらしい。最近は俺が教えた、編みぐるみにハマっているとのことなので、今度俺が作ったのを写メで送ると伝えると嬉しそうに笑ってくれた。

 ご家族ともよく話すようにして、ちゃんと嫌なことを嫌と言えるようになったとも言っていたので、原作の様な変な気苦労も減ることだろう。

 

 恵里も八重樫さんと直ぐに仲良くなっていっているようだ。ずっと二人で話しているみたいだし

 

「へぇ~?その天之河って奴ヤバいね~」

 

「うん。正直、苦手なんだよね。それでいて悪気がないのがまた……」

 

「よくそんな奴と居れるね~僕なら無視しちゃうよ」

 

「無視はしないけど、最近は、何言われても気にしないようにしているんだ」

 

「それがいいよ~そんな奴無視しておけばいつか向こうから来なくなるよ」

 

 どうやら勇者(笑)の話で盛り上がっているようだ。

 しかし、恵里さんよあなたはもしかしたら勇者(笑)に一目惚れするかもしれないんやで……

 

 楽しい時間とはあっという間に過ぎるもので、気づけば15時を回っており、最後何処に行こうかと話していると……

 

「お前だな!雫をたぶらかしているのは!」

 

 後ろから叫び声が聞こえ振り返ると、そこに立っていたのは……

 

「最近、雫がよそよそしいと思っていたら、お前のせいだったんだな!」

 

「……大介、誰こいつ?」

 

 恵里が俺の背中に隠れ、俺に聞いてくるが嫌な予感しかしない……

 

「……なんでここにいるのよ。天之河君」

 

 だよねぇ~俺の嫌な予感当たっちゃった~何でこんな所に勇者(笑)がいるんだよ…

 

「何でって、雫を助けに来たに決まってるだろ!」

 

「私は別に、助けを求めてないし、ただ友達と遊んでるだけよ?」

 

「いや!きっとその目つきの悪い奴に騙されているんだ!」

 

 目つきが悪いって、人が気にしていることを……

 

「騙されてないし、それに別に私が誰と遊ぶのなんて天之河君に許可なんていらないでしょ?ごめんなさい檜山君、恵里。さあ、気にせず行きましょう」

 

 八重樫さんは気にせずこの場を去ろうとするが、

 

「待ってくれ雫!俺たちは幼馴染なんだ!そんな奴じゃなくて、幼馴染の俺と居るべきなんだ!」

 

 痛い、痛過ぎるこんなの勘違いサイコ野郎の発想じゃん……

 

「だったら、檜山君だって私の幼馴染よ?小学4年生からの友達だから、これって立派な幼馴染よね?だったら私は、檜山君や恵里と一緒に居たいわ」

 

 そう言って、八重樫さんも恵里と同じように俺の背中に隠れるように立つ。

 

 その言動に面食らった勇者(笑)は、返す言葉をなくしたのか肩を震わせながら俺に指をさしながら叫んできた。

 

「檜山と言ったな!俺と勝負しろ!勝ったら雫を開放しろ!」

 

「……えー」

 

 今俺に、最大の死亡フラグが立ちはだかろうとしている……




 ちなみに、恵里と雫は勇者(笑)以外だとほとんど檜山(佐藤)の話でめっちゃ盛り上がっていました。
 ヒロイン中村恵里一人の予定だったんですが、雫さんも入れた方がいいような気がする今日この頃です。どうしましょう(他人事)

 来週から仕事が忙しくなるので、更新頻度が落ちると思いましがよろしくお願いいたします。


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9話 第三回 脳内会議

 沢山の感想、誤字脱字報告ありがとうございます。
 時間が出来たら返信いたしますのでどうかお待ちください。

 以外に好評な脳内会議です。
 短いですがよろしくお願いいたします。


~檜山脳内~

 

強気檜山「どうするんだよ!原作突入前に一番厄介な奴に出会っちまったじゃねぇか!」

 

弱気檜山「どうしよう…」

 

真面目檜山「嘆いていても仕方ありません。ここはこの状況を打破する方法を考えましょう」

 

議長檜山「そうですな。先ほど勇者(笑)は勝負と言っていましたが、何をするつもりなのでしょうか?」

 

気楽檜山「ていうか~その勝負に勝っても負けてもダメな気がするよね~」

 

弱気檜山「RPGによくある、負けイベントですよねきっと……」

 

強気檜山「その前に!八重樫さんをモノのように扱う言動が腹立つぜ!」

 

真面目檜山「まあ、この辺りは原作同様の自己中心的自己解釈炸裂している感じは原作と性格は変わっていないようですな」

 

議長檜山「確か、この様な性格になったのは、勇者(笑)のおじいさんのせいでしたかな」

 

気楽檜山「それだけじゃなくて~このルックスと挫折とか知らなくて〜世間の厳しさ知らない頭がお花畑で〜この性格を周りの大人が訂正しなかったからじゃな~い」

 

弱気檜山「自分が正しいから、自分と違う考えは、悪だと思っているってことだよね…」

 

真面目檜山「でしょうな。きっと檜山の事を八重樫さんを奪った憎き相手とでも思っているのでしょう」

 

強気檜山「八重樫さんだけじゃねぇ!このタイミングで恵里と会っちまったら勇者(笑)に惚れて原作通りに俺が利用されちまうんじゃね!」

 

気楽檜山「出会いは最悪だけど~勇者(笑)のルックスはいいもんね~」

 

真面目檜山「ですが、とりあえず恵里が惚れているかどうかを気にする前に、この状況をどうにかすることを考えるのが先決かと」

 

弱気檜山「せっかく、ここまで順調に来てたのに勇者(笑)の対応一つで死亡フラグが確定しちゃうよ…」

 

気楽檜山「とりあえず、どうしよっか~このまま逃げちゃう~?」

 

強気檜山「でもこのまま逃げたら、八重樫さんに迷惑が掛かっちまう!それになんか逃げるのは嫌じゃね!」

 

議長檜山「ですが、逃げるのは一つの手ですな。話の出来ない相手に対して、まともな対応をしても逆切れされるのが関の山ですしな」

 

弱気檜山「…でも逃げたら逃げたで、原作突入時に俺から逃げた卑怯者扱いされてトータスに行ったときに謂れもない冤罪をかけられやすくなるんじゃ…」

 

気楽檜山「そうだねぇ~きっと勇者(笑)の頭の中には(罪=自分と合わない奴)ぐらいだろうし~」

 

弱気檜山「だったら、勝負を受けてわざと負けるのはどうかな?それで勇者(笑)を適当に持ち上げておけばとりあえずの死亡フラグは立たないんじゃ…」

 

真面目檜山「いえ、それは悪手かと。つまりそれは、原作突入時にハジメ君やハジメ君ハーレムの方たちからの恨みを買う可能性が高まってしまいます。しかも、この時だけ持ち上げるような真似をすればいざ原作時に反対意見を出すようなら、それこそ死亡確定でしょうな」

 

強気檜山「八方塞がりじゃねぇか!」

 

議長檜山「……こうなったらこっちが大人になりましょう」

 

弱気檜山「どういうこと?」

 

議長檜山「原作の性格を考えるに、勇者(笑)が自己中心的自己解釈炸裂しているのはそれを正す大人がいなかったからだと思われます。そこで前世も含めれば30代に突入する俺がそれを少しでも正そうというわけです」

 

強気檜山「それって大丈夫なのか!原作のキャラの性格を変えるのは…って恵里の件もあるし今更か!」

 

弱気檜山「でも、勇者(笑)が話しを素直に聞くわけないんじゃ…」

 

真面目檜山「しかし、勇者(笑)の勝負を受けるよりは死亡フラグが立つ可能性が低いと思われます」

 

気楽檜山「そうだね~そろそろ中学に上がるとはいえ、まだ小学生なわけだし可能性が0じゃないよね~」

 

議長檜山「それに、性格がマイルドになれば原作でどうでもいい問題を起こす可能性も低くなり、俺の死亡フラグが立つ可能性も低くなるでしょう」

 

強気檜山「良いことだらけじゃねぇか!よし!こうなったら俺の伝家の宝刀メシに誘おう!そして勇者(笑)の性格を少しでもましにしてやろうぜ!」

 

気楽檜山「こうなったら~俺の会話術を見せつけてやろう~」

 

議長檜山「でしたら、勇者(笑)をメシに誘うということでよろしいですかな」

 

一同「「「「異議なし」」」」

 

議長檜山「でしたらこれにて第三回檜山死亡回避会議閉廷」

 

 




 ちなみに、中村恵里ちゃんは檜山(佐藤)にいちゃもん付けた時点で勇者(笑)をその辺に落ちてるゴミ以下にしか思っていません。


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10話 大切なことは、ゲームが教えてくれました。

 この話で出てくる名言は結構有名だと思いますが出典がよく勘違いされていますよね。 
*一部本文に加筆をしております。最後に檜山(佐藤)が伝えたかった事書くの忘れてた…


「檜山!俺と勝負しろ!」

 

「いい加減にしなさいよ天之河君!檜山君が迷惑してるでしょ」

 

 俺を指さし、叫んでくる勇者(笑)を八重樫さんはなだめているが余りというか、全く効果がなく八重樫さんの言葉に止まることなく俺の前までやってきた。

 

 すると、後ろに恵里が俺の袖を引っ張ってきて

 

「ねぇ大介、こんな奴放っていこうよ」

 

 明らかに機嫌を悪くしているな…この段階で勇者(笑)に惚れると思っていたが流石に第一印象が悪すぎたみたいだな。よし、これで勇者(笑)の印象が悪ければ惚れる可能性が低くなり俺が恵里に利用される可能性が低くなるはず!

 

「君もきっと、檜山に脅されているんだね、僕が……」

 

 恵里に対しても、お得意のご都合解釈をしているようだがどうしたんだ?急に言いよどんだり……

 

 気になり、俺は後ろを振り返るとそこにはいつも見慣れいるはずの満面の笑顔の恵里が立ってた。笑顔のはずなんだが全く笑っていない気がする。

そういえばなんかの本で、笑顔とは本来威嚇行動だったと読んだことがあるな。

…恵里さんや隣の八重樫さんもめっちゃビビッてますで。

 

「えっと、天之河って言ったっけ~あのさ~」

 

 さらっと勇者(笑)を呼び捨てにしてるな…

 

「大介を何でそんな風に悪者みたいに言うのかな~だってお前と大介って初対面なんだよね~」

 

 もはや、名前ですら呼ばなくなっているし、マズいこのままでは勇者(笑)をメシに誘うことができなくなってしまう。

 

「落ち着け恵里。そんなケンカ腰で行かなくてもいいだろ?それよりどうだ天之河この後…」

 

「大介は黙っててね~僕は今、こいつにムカついているんだから~大介の事を何も知らない癖に変な言いがかりをつけてくるこいつにね~」

 

「恵里さんと言ったか。なんでそこまでして檜山をかばうんだ!そいつは雫をたぶらかした…」

 

「う~ん、確かに大介は人たらしだとは思うけど~それで当人たちは幸せなんだからいいんじゃない~少なくとも僕は幸せだよ」

 

 恵里が俺を庇って……あれ?俺って人たらしなの。

 

「だいたいさ~雫ちゃんから聞いたけど、小4の時に起きたいじめってお前にも責任あるんだし、雫ちゃんがお前から離れていっても文句を言う資格はないんじゃない~」

 

「違う!あれはいじめていた彼女たちが俺に噓をついたからで、俺は知らなかったからで…」

 

「でも~それってただ知ろうとしなかっただけでしょ?所詮お前が信じたかったのは、自分の理想の現実だけなんだよ。自分はいじめを解決したから、まだいじめが続いたという現実から目を背けただけなんだ。

でも大介はその事を雫ちゃんから聞いて疑うなんて事しなくて、雫ちゃんの家族に相談してちゃんといじめ解決したんだよ。口だけのお前と、きちんと行動して解決した大介とどっちが正しいなんて誰が見ても分かると思うけどな」

 

「そんなこと…」

 

 恵里の言葉についに勇者(笑)は言葉を詰まらせたが恵里は容赦せず

 

「まあ僕から見たら、好きな子を取られてムカついて癇癪起こしているだけだけどね~お前はただ幼馴染って言葉を盾にして自分の行動を正当化したいだけだよ。正当化したいから悪役が欲しいだけでしょ?大介が悪なわけないじゃん僕を体を張って助けて……」

 

「恵里ちゃん、もういいよ」

 

 八重樫さんが流石に止めに入り、

 

「天之河君、私ねあの時君が好きで相談したんだよ」

 

 八重樫さんは勇者(笑)に話し始めた、あの時は天之河が好きだったが今はもう信じられないと、いじめから助けてくれた白崎さんや俺はとても大切な友達だと、

 

「別に私を幼馴染っていうのは勝手にしていいけど、私はもう天之河君の事を好きとは思ってません」

 

 八重樫さんのその言葉についに勇者(笑)はうつむいたまま動かなくなってしまい、恵里はこのまま放って行こうとしたが、俺は二人を先に帰し残った勇者(笑)に優しく肩を組み

 

「なんか食い行くか?」

 

 俺が聞くと、小さくではあったが勇者(笑)は頷いた。

 

 

 

 思っていた誘い方じゃなかったがまあいいや、近くにファミレスとかが無かったのでコンビニで飲み物やホットスナックを買い、近くの公園で話すことにした。

 

「……なんで…」

 

「ん?あーなんか放っておけなくて…」

 

「違う!恵里さんだったか、俺は間違ってなんて……」

 

 あー小学生ながらこの考え方はまずいな、あんだけ言われてまだ自分は間違っていないと思ってんのかい。

 

「檜山!やっぱりお前が彼女たちを脅して…」

 

「あのさ天之河。…いったん落ち着こうか」

 

 俺はできるだけ、ドスのきいた声を出し、睨みつけながら一旦勇者(笑)を黙らせることにする。こちとら前世じゃ現場監督として荒くれ者たちをまとめ上げてきたんじゃ、小学生がいくら凄んだところでたかが知れている。

今の勇者(笑)刺さる話は多分これだな。

 

「天之河はさ、自分が正義だから俺を悪だと思っているわけだよな?」

 

「そうだ!俺が合っているんだから…」

 

「じゃあ聞くけどよ、天之河は正義の反対が悪だって言いたいのか?」

 

「当然だ!」

 

「違うな、善の反対が悪であって、正義の反対は悪じゃない」

 

「そんなことはない!」

 

「まあ聞けって、俺の先生が言ってたんだけどよ。正義の反対は別の正義、または慈悲・寛容だってな」

 

「別の正義…」

 

「ああ、自分がいくら正しいなんて思っていてもほかの人からみたら全然正しくないなんてよくある話だろ?」

 

 俺の言葉を初めは反発していたが、段々と聞くようになってくれているな。

 

「天之河が正義を掲げる以上、それとは違う正義もあるってことを認めないといけない」

 

「俺がいくら正しくてもか?」

 

「その考えは変えた方がいいぞ。だってどれも正しいんだからな。何処の国に行っても人を殺すな、人のモノを奪うなまでは一緒だけど、そのあとはバラバラなんだぜ。女性は大切にしろ、かもしれないし、男女平等にするべきだ、だったりな」

 

「でも、それじゃ何が正しいのかわからないじゃないか!」

 

「だから、法律があるんだよ」

 

「!」

 

「まあ、これも全部正しいものじゃないんだろうけどな。だからこそ、その時その時によく考えるべきなんだよ。たぶん、その時にみんなにとって最も良い事を選択するのが「善」になるんだろうな。自分の意見だけを押し通すんじゃなく、どんなムカつく相手の意見も聞かなくちゃいけないんだよ」

 

「みんなにとって…」

 

「だからさ、正義=善とはならないんじゃないか?だって自分の信じる正義を押し付けた時点で他の人にとってはそれはもう、正義じゃないんだからな」

 

「正義……」

 

「天之河、今日お前がやろうとした事は本当に正しかったのか、本当に最善のやり方だったのか、今日じゃなくてもいいけど、ときどき反省してもいいんじゃねぇか?いつか天之河自身が納得できる日が来るはずだぜ…説教臭くなっちまったなすまん」

 

 俺は勇者(笑)に頭を下げ、辺りも暗くなってきたので帰ることにするか。

 

「なあ、一つ聞いてもいいか」

 

 勇者(笑)が帰ろうとする俺を引き留め、声をかけてくる。どうしたんだと聞くと

 

「恵里さんが言ってた、体を張って助けたって…」

 

「ああ、2年ぐらい前に恵里と一緒に遊んでた時に不審者に襲われてな、その時に恵里を助けただけだ」

 

「2年前・・・!檜山ってまさか…」

 

 何か思うことがあったのか、何かを考え始めたがまあいいか。少しは性格がマシになってくれることを祈るとするか。

 これで変わらないようなら、また脳内会議にて対策を練ろう。

 

「じゃあな、くれぐれも八重樫さんに八つ当たりだけはするなよ」

 

 俺は最後にそう告げその場を離れる。これで原作がどう変わるかわからないが、後は高校生になった俺に丸投げにしよう。

 

 将来の俺頑張れ!

 




 激おこ中村恵里ちゃんでした。
 今回使った名言はパワポケ7の黒野鉄斎です。僕の心の先生です。


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11話 蝶が羽ばたくと何処かで竜巻が起こるらしい

 第三者視点です。
 最後にちょっとだけ本編進みます。

 アンケートありがとうございました。
 今後の活動の参考にさせていただきます。


~八重樫雫Side~

 あんた女だったの?

 

 きっと悪気はなかった

 

 みんな、いい子達だよ?

 

 話せばわかる

 

 今でも思い出す、私に投げつけられた言葉たち。ナイフの様に心に突き刺さった言葉。どうしたらいいかわからなかった。親の期待を裏切りたくなかった。

 

 俺が絶対解決してやる!

 

 そんな時に私の前に現れたのは、目つきは悪いけど何故か安心感を与えてくれる男の子だった。

 後から同級生と聞いてビックリしたな。絶対年上だと思ってた。

 

 目の前に居る女の子が泣いているのに手を貸さない奴なんていないよ。それに君にはハンカチを返してもらわないといけないしね

 

 初めて会う私が女の子だとわかってくれた男の子。

 顔に似合わず、犬の可愛いキャラクターがワンポイントあしらわれたハンカチを貸してくれた男の子。

 

 そうこれが、私と幼馴染との出会い。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 檜山君の事をどう思っているのかと聞かれると、私自身よくわかっていない。

 

 檜山君は私に、いじめをどうにかすると言ったが私自身、慰めてくれるだけだと思っていた。

 

 その時はそれだけでもいいと思った、だって誰も私を慰めてくれないから…

 

 出会った次の日、ハンカチを受け取り来た檜山君から告げられたのは意外な一言だった。

 

「八重樫さん、ごめん!昨日の夜、君のいじめの事をご家族に相談したんだ」

 

 私は、檜山君がちゃんと私のいじめを解決するために行動した事に驚いてしまったが、私もすぐに謝りその日あったことを話した。

 いじめを助けてくれた子がいたことを。

 

「その友達は絶対大切にした方がいいよ」

 

 檜山君はまるで自分の事のように喜んでくれ、香織の事をほめてくれた。

 私もまるで自分の事のように嬉しかった。

 

 その日を境に、いじめがなくなっていき、私と香織どんどん仲良くなっていったけど、天之河君はまるで何もなかったように接してくるのはちょっと嫌だな……最近は香織まで幼馴染って言って来るし。

 

 そう言えば、この日ぐらいからよく家族と話すようになった気がする。

 今まで話してなかったかと言われるとそうじゃないけど、

「剣道以外に好きなことはあるのかい?」とか、

「雫、親に気にせず自分のやりたい事をやりなさい」

 なんて、言ってくれるようになり、私が勇気を振り絞って檜山君に教えてもらった編みぐるみを作ってみたいと言うと、その道具を買ってくれたりもした。

 その時、私は剣道以外の事もやっていいんだと、まるで肩から重い荷物が下りた気がした。

 

 今になって思えば、これもきっと檜山君のおかげなんだと思う。

 

 私に幸せを運んできてくれた男の子。

 

 女の子のような趣味も持っている男の子。

 

 同級生には思えない、年上の様な包容力のある男の子。

 

 私のどうでもいいような話を親身になって聞いてくれる男の子。

 

 私が本当に幼馴染になりたいと思った男の子。

 

 他の人に檜山君の好きかと聞かれたら、もちろん頷ける。

 

 でもこの気持ちが異性として好きなのかと聞かれるとよくわからない。

 

 でも、どんなことがあっても檜山君とは幼馴染で居たい

 この気持ちは嘘じゃないと自信が持てる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

~天之河Side~

 あいつに会うまで俺は間違っていない、そう思っていた。

 

 雫が急によそよそしくなったのもすべてあいつのせいなんだ!

 

 俺が間違うはずがない!いつもそうだったんだから。

 

 だから、雫はきっとあいつに脅されているに違いない!

 

 そうすれば、雫は喜んでくれる!

 

 そう思っていた……

 

 所詮お前が信じたかったのは、自分の理想の現実だけなんだよ。自分はいじめを解決したから、まだいじめが続いたという現実から目を背けただけなんだ。

 

 違う

 

 好きな子を取られてムカついて癇癪起こしているだけだ

 

 違う違う

 

 幼馴染って言葉を盾にして自分の行動を正当化したいだけだよ。正当化したいから悪役が欲しいだけでしょ?

 

 違う違う違う!俺はそんなこと思ってなんか……

 

 天之河君、私ねあの時君が好きで相談したんだよ

 

 当たり前だ!俺が嫌いになる人なんていないはずだ!だって俺は正しいから!ずっとそうだったから!

 

 別に私を幼馴染っていうのは勝手にしていいけど、私はもう天之河君の事を好きとは思ってません

 

 えっ……俺は正しい……でも雫から伝わる拒絶……

 なんで…なんで…なんで…

 その時、俺の肩に手が回ってきた、

 

 なんか食い行くか?

 

 何故かあいつから言われた一言につい頷いてしまった。

 

 どうしても納得できなかった。だって俺は正しいはずだ、ずっとそうだったから。

 

 やっぱりこいつのせいでと言ったが、同級生には思えない気迫に押されてしまい黙ってしまった。

 

 すると、こいつはある話をし始めた、今だに覚えている正義の話……

 

 まるで、今までの俺を全否定するような話だったが、何故か聞き入ってしまった。

 

 だってどれも正しいんだからな

 

 そんなわけがない!全部正しかったら、何が正しいなんかわからないはずだ!だから誰かが間違っているはずなんだ…

 

 だから、法律があるんだよ

 

 その言葉に俺は言葉を失ってしまった…弁護士のおじいちゃんから聞いた話にはなかった、正義の話…そんなわけないと思っても雫や恵里さんから伝わる、こいつが正しく俺が間違っているという事実…

 

 みんなにとって最も良い事を選択するのが「善」になるんだろうな。

 

 みんなにとって…じゃあ俺が今までしてきたことって一体なんなんだよ…

 

 今日お前がやろうとした事は本当に正しかったのか、本当に最善のやり方だったのか、今日じゃなくてもいいけど、ときどき反省してもいいんじゃねぇか?いつか天之河自身が納得できる日が来るはずだぜ…

 

 こいつを認めたくない…こいつを認めるってことは俺が……そういえば、恵里って子が言ってた、助けたって一体?…

 

 2年ぐらい前に恵里と一緒に遊んでた時に不審者に襲われてな、その時に恵里を助けただけだ

 

 その言葉を聞いて震えあがってしまった。俺はこいつを知っている。というより2年前の事件を知っている。

 当時、同い年の男の子が同級生の女の子を命を懸けて守った話。

 俺は、この男の子に憧れた。

 この男の子のように、女の子を守れるようになりたいと思ったんだ。

 だから俺は雫がいじめられていると聞いて、すぐに行動したんだ。そして女の子達からはもういじめないと言ってたから、いじめが終わっているそう思った。雫が言っているのはきっと俺に構って欲しいだけの嘘だと思っていた。

 でも、それが俺の思い込みであったと知らされた…

 

 負けた…檜山大介、こいつに全て負けた…自分だったら、その助けた話を自慢すると思う…

 でも、こいつはまるでそれが当たり前のように語っていた…

 男として…いや人として全て負けていることを知らされた…

 人生で初めて、心の底から負けたと思える。

 …だからこそ、今度は負けない!絶対に負けない!

 今度は、檜山から凄いと言わせてやりたい!

 

 

 そうこれが、俺とライバルとの出会い。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 それから、月日がたち勇者(笑)と会うこともなく無事に小学校を卒業し、中学へと進学し今日はクラスでの自己紹介の日。

 自己紹介とはいくつになっても緊張するもので、自分の番になるのを待っている。

 

「秋吉光です。小学校のあだ名は…」

 

 秋吉君…

 

「佐藤信二です。趣味は…」

 

 佐藤君…

 

「…清水幸利です」

 

 清水君ね…って、清水!

 

 クラスメイトの名前を憶えているときに流石に寝耳に水過ぎる!

 こんな所にも原作キャラがいるとは…

 勇者(笑)に会ったと思ったら、こんな所にも死亡フラグがあるようだな…

 

 どうやら、俺の中学生のスタートも平穏には始まらないようだ…

 

 




 視点がころころ変わるのでわかりにくいかもしれません。
 次回 脳内会議始まる デュエルスタンバイ!


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12話 第四回 脳内会議

中学生での方針を決めます。

今回はいつもと形式を変えています。

 どうでもいい人物紹介

・檜山大介(佐藤)
 転生した男。
 前世では、そこそこ大手のゼネコン会社に勤めており、現場監督、設計とある程度の事は何でもできる27歳独身。
 別にブラック企業に勤めていたとか、家庭内がうまくいってないとかはなく本人自身何で転生したかわかっていない。
 お人よしだが、現場で色々な人を見続けたおかげか人を見る目はあり人に騙されるとかはない。
 超オタク
 


お気に入り登録者数1000 突破ありがとうございます。
100突破の時点でも大分ビビッていたんですが、もはやエラーを疑っているレベルです。


 円卓一つ、椅子が5席、掲げるスローガンは「打倒 死亡フラグ!」

 

 ここは、檜山脳内会議場。

 今日も死亡フラグをへし折るための会議が行われようとしている。

 

 カンッ!

 木槌の音が響き会議の開始を告げる。

 

「それでは第四回檜山死亡回避のための作戦会議を行います」

 

 開始を宣言したのは、5人の檜山を束ねるこの議会の長、議長檜山。

 立派な髭が特徴の檜山だ。

 

「まさか、こんなところで原作キャラに会うなんて…」

 

 弱弱しい口調の彼は、弱気檜山。

 弱弱しい態度ではあるが意外な角度のアイディアで議会をサポートしてくれる檜山だ。

 

「しかも原作でも数少ない殺されるキャラじゃねぇか!」

 

 強い口調で、議会を発展させてくれる強気檜山。

 発言をバンバンしてくれ、議会を発展させる頼もしい檜山だ。

 

「そうだね~なんか親近感湧いちゃうね~」

 

 間延びした声が特徴だが時には鋭い観察眼を見せる彼は、気楽檜山。

 楽観的主義者でありながら、現実主義者でもあり無理なアイディアは出さない檜山だ。

 

「しかし、立て続けにこうして原作キャラに遭遇している事態は見過ごすわけにはいきません」

 

 鋭い口調で眼鏡を上げる真面目檜山。

 物事を客観的に見ることができ、物事の方針を決めるのが得意な檜山だ。

 

 彼ら5人によって、今日も死亡フラグ回避のため会議が行われている。

 

「どういうことだ!別に原作でも大して関わらないキャラなら別にここで関わらなくていいだろ!」

 

「いえ、物事はそう単純ではないと言うことです」

 

 強気檜山の反論に涼しい顔で答える真面目檜山。

 

「ふむ。どういうことことですかな?」

 

「確か~清水君って原作だと中学の時にいじめられて性格が歪んじゃうんだっけ~」

 

「しかも、家庭内でもうまくいってないとか…」

 

「なんだよこの世界!どいつもこいつも問題抱えまくりじゃねぇか!しかもなんでそんな奴らが揃いも揃って同じクラスにうじゃうじゃいるんだよ!」

 

 強気檜山がオーバーリアクションで頭を抱える。

 

「まあそんなこと嘆いちゃうと~原作の檜山なんて、いつ殺されてもおかしくないようなことしまくっているし~類は友を呼ぶって奴じゃない~」

 

 気楽檜山はまるで他人事のようにケラケラ笑い始める。

 

「つまりあれですな、全ては檜山が悪い訳ですな」

 

「納得しないでください。だからこそ我々は死亡フラグ回避のために日々対策を積み重ねているのです」

 

「…もしかして、中学の時に清水君いじめてたのって……俺?」

 

「その可能性は高いでしょうな。原作でもハジメ君にヤバいと言いますか、あまりに子供じみたいじめを行うような奴です。中学の時にも誰かをいじめていてもおかしくはありません」

 

 弱気檜山に賛同し、髭を撫でる議長檜山。

 

「はい。だからこそここで対策を行うべきなのです」

 

「なんでだよ!その通りだとしても、俺が何もしなければ何も起きないだろ!」

 

「そういうわけじゃないんじゃない~殺されかけたこともある訳だし~俺がいじめなかったら別の誰かがいじめるかもしれないよ~」

 

「またあれか!良い事と悪い事のやつか!」

 

「それに原作だと、あまりにかわいそうで二次創作じゃ結構いいキャラにされることも多い子だよね檜山と違って…」

 

「なんだよ!みんなそんなに檜山が嫌いなのかよ!あの勇者(笑)でさえ、性格よくなる二次創作あるぐらいなのによ!そんなに檜山を殺したいのか!」

 

「今は嘆いても仕方ありません。原作を本編とすると、二次創作は別ルートと解釈すべき事象のため、無下にできないのも事実です」

 

「確かにそうですな。ならばここは清水君と友達になるのが得策でしょうな」

 

「それに~彼も結構なオタクみたいだし~仲良くはなれそうじゃない~」

 

「恵里ちゃん以外にそういう話する同性の友達も欲しいよね…」

 

「だったら、悩むことはねぇ!清水と仲良くして、もし、いじめられるようなら助けてやろうぜ!」

 

 高らかに宣言する強気檜山に一同が賛成し

 

「では、目先の目標として清水君と友達になるために行動いたしましょう。では次に中学生活も目標を決めると致しましょう」

 

「部活は入れないよね…中2になったら白崎さんをストーキングしないといけないし…」

 

「それと、勉強を頑張っておかないといけません。原作の高校がどのくらいのレベルかわかりません」

 

「そうだね~こういう物語あるあるの明らかに勉強のレベル違いすぎるだろ、みたいな奴が同じクラスなんてざらだよね~」

 

「そうですな。勇者(笑)は確か勉強もトップクラスのはずです。原作を見るかぎり、八重樫さん、白崎さん、ハジメ君も学力はトップクラスのはずですし勉強は欠かさずいたしましょう」

 

「それと、万が一の保険のために内申点も気にしておこうぜ!」

 

「前世の記憶を生かす時が来たみたいだね~職場の先輩や上司の教えを生かして先生に好かれるように立ち回ろう~」

 

「では、次に白崎さんのストーカーの方法ですが……字面だけ見るとやばいですな」

 

「しかたねぇだろ!これも死亡フラグ回避のためだ、それにバレなきゃ問題ない!」

 

「その発想は犯罪者だけどね~ばれた時点で死亡フラグ確定しちゃうよね~」

 

「はい。ですので、この作戦は慎重に考える必要があります」

 

「確か、子供とおばあさんが不良に絡まれ、そこをハジメ君が助けるのでしたな」

 

「だったら、わざわざストーカーなんかしないで、八重樫さん達の中学の場所は分かるわけだから、その周辺の中学に当たりを付けるほうがいいんじゃ…」

 

「ですが、それでも確定するわけではありません。我々の作戦の一つである、ハジメ×白崎の為にも頑張って行きましょう。まずは、場所の目星ですが確か子供が持ってたたこ焼きを不良にぶつけるんでしたな」

 

「そこまで分かれば、ある程度は目星は付けれるぞ!八重樫さんの中学の辺りでたこ焼き屋があって、子供やおばあさんや不良が行くってなったら大型商業施設しかねぇ!」

 

「強気冴えてる~その可能性は十分にあるよね~」

 

「でしたら、まずは白崎さんの寄りそうな商業施設に目星を付けるでよろしいですかな」

 

 議長檜山の発言に一同が賛同し、

 

「では、これにて檜山死亡回避のための作戦会議を閉廷いたします」

 

 とりあえずの目標も決まったし、後は無事に行くように神に…この世界で神に任せるのはやめておこう。仏辺りにでも祈っておこう。

 

 

 




どうしよう、全く原作に突入しない……






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13話 自分は自分の味方でいよう

 一気に中二までいきます。
 脳内会議ですが、前回が好評だったので前回の形式で行きたいと思います。


 更新が遅くなって申し訳ありませんでした。
 UA27000突破ありがとうございます!
 感想もたくさんありがとうございます!
 


 脳内会議を終え、俺は早速清水君に声を掛け、趣味の話をする。

 清水君もオタクのためか、趣味が合い俺の家で遊ぶようになった。

 

 初めは、俺のゲームや漫画の趣味が合わないかもと心配したが清水君もジャンルは選ばないタイプみたいで、俺の趣味も否定するような奴じゃなかった。

 

 なんだ、原作見てると結構やばい奴だと思っていたがちゃんと話せばいい奴じゃないか。

 俺の編みぐるみを見ても

 

「すげぇ檜山、俺には絶対できないよ…」

 

 清水君がそんなことを言うが

 

「そんなことないって、何なら教えてやろうか?」

 

「いや俺不器用だし…」

 

「そんなこと言ったら、俺だって初めからうまくできた訳じゃないぜ。それにやってみないとわからないだろ?」

 

「そうかな…」

 

「そうだって。それにやらずに後悔するぐらいなら何にでも挑戦した方がいいって」

 

 前世じゃ27になって上司からはまだまだこれからと言われていたが、社会人になって趣味に使える時間が無くなると、色々やっておけば思うことはたくさんあったな。

 趣味もそうだが、友達との過ごし方一つにしたって悔いの残らないようにした方が良いに決まっている。

 

「…檜山、俺にも編みぐるみ教えてもらってもいいか?」

 

「もちろん!簡単なやつだと…」

 

 こうして、俺と清水はだんだん仲良くなっていき、学校生活も順調に進んでいった。

 恵里も清水とは仲良くなってくれ、3人で遊ぶこと増え、清水の性格も初めて会った時よりも大分明るくなっていった。

 

***

 

 内申点の為に、クラス委員などを進んでやるようにし、先生からの雑用も進んでやるようにしている。

 まあ、前世も含めれば30オーバーしているし、前世の職業的に人をまとめるのはうまいからな。

 いつも間にか、クラスのみんなから「父ちゃん」なんて言われるようになったが、俺ってそんなに老けて見えるのか…

 

 清水のいじめも俺の予想が当たったのか、清水がいじめられるようなこともなく無事に過ごしていった。

 そういえばこういう事があったな…

 

「俺にも檜山みたいに、特別な才能が欲しいよ。俺なんて何にもないからさ…」

 

「何言ってるんだよ急に?」

 

「だって、檜山はみんなに頼られて、手先も器用でなんでも直せるし、相談に乗るのも得意なんてなんか、ラノベの主人公みたいじゃないか」

 

 ラノベの主人公って…この世界はラノベの世界やで清水よ…

 

「そんなこと言うなら、清水はめっちゃ声が良いじゃん」

 

「…声?」

 

「ああ。清水の声って俺からするとめっちゃ魅力的だぜ?」

 

「……そんなお世辞」

 

「お世辞じゃねって。なんて言うか中性的だけど男らしいというか、かっこよくもあり可愛らしい感じもするって言うか、語彙力が乏しくて申し訳ないがすんごい魅力的って言うか…」

 

「俺の声が魅力的…」

 

 まあ、アニメ版じゃめっちゃ有名声優さんが担当しているだけあってめっちゃ声が良いのは流石ラノベの世界という感じだな。

 

「ありがとよ檜山。初めてこんなに褒められたよ、少しは自分に自信が持てたよ」

 

 清水が照れ臭そうに自分の頬を掻きながら笑顔になる。

 

「俺は本当の事しか言ってないって。それにあんまり卑屈にならず、自分は自分の味方で居てやれよ?自分がダメだなんて思わない方が絶対に良いぜ?」

 

「自分の味方?」

 

「ああ、よく言うだろ。最後に頼れるのは自分だって?これってさ別に他人に頼るなって意味じゃなくて、いざって時に自分に自信が持てなかったら、物事は悪い方向に流されてしまうって意味だと思うんだよ」

 

「そんなものかね?」

 

「そんなもんだよ。だから清水は自分に自信をもってもいいんじゃないか。よく言うだろ笑う門には福来るって。逆に言えば暗い門には福は来ずってな」

 

「アハハ!なんだよ急に自作の諺かよ」

 

「笑うなんてひでぇぞ清水!」

 

 俺の自作の諺がツボに入ったのか清水が笑い始め、俺もつられ笑いしばらくお互いに笑い合いなんて事ない日々が過ぎていった。

 

 どうでもいい余談だが、清水が急遽休んだ放送委員の代打を務めたことがあり、その放送後放送委員やその顧問の先生に清水がスカウトされるという前代未聞の事件が起きたとか…

 清水よお前も十分ラノベのキャラやで

 

***

 そんなこんなで、中一は特段問題もなく過ぎていき、俺は中二になることができた。

 そして、中二になったということはついにあのイベントが起こるということである。

 そう、『ハジメ君、土下座をして女の子を惚れさせる!』イベントである。

 字面だけ見ると、やべぇな…まあいいか。

 しかし、このイベントの厄介な点は発生時期や場所と言ったものがランダム過ぎるというか、不明な点が多すぎることだ。

 

 まあ、原作でもそこまで深堀はされてないことだし、ましては場所よりもハジメ君が白崎さんに惚れさせるイベントというものなので場所なんてどうでもいいことだしな。

 

 場所に関しては脳内会議の結果を鑑みて、八重樫さんや白崎さん達の中学校の近くに、結構大きめのイ〇ンがあったので目星をここにつけるとしても発生時期がわからない。

 

 しかも、もし白崎さんへのストーキングが誰か(天之川等)にバレた瞬間、死亡フラグ確定なわけなので、絶対にバレてはいけない。

 

 なので俺がはじき出した方法が、基本放課後はここに行き、白崎が居たら後を付けるようにすることにしようそうしよう……

 

 何がしようだ…絶対うまくいくはずねぇ…ハジメ君と予め仲良くなれれば死亡フラグの確率がぐっと下がると思うが、あまりに作戦がおざなりすぎる…やっぱ俺なんて……

 

 まあなんとかなるか!こういう時こそレッツポジティブシンキング!きっとうまくいく!

 最悪の時は未来の俺に丸投げだ!

 

***

 中二になり、清水だけでなく恵里とも同じクラスになり、

 始業式の次の日の放課後

 

「大介!一緒に帰ろ」

 

「一緒にって中一の時も基本一緒に帰っていただろ?」

 

「相変わらず、仲がいいよな二人とも」

 

 放課後になると、恵里が俺のところに来て清水もやってくる。

 

「仲いいことは良い事でしょ清水?今日の放送も好評だったみたいじゃない」

 

「まあな。みんなに喜んでもらえてるならよかったよ。まさか俺も放送委員にスカウトされるとは思わなかったな」

 

「委員にスカウトなんて、ラノベの主人公みたいじゃねぇか」

 

 俺が少し笑いながら言うと、清水は恥ずかしそうに

 

「やめてくれ・・・あれは今思い出しても恥ずかしい…」

 

「えっ何々大介、僕にも教えて!」

 

「やめてくれ檜山、中村に教えると次の日には校内全域に広まりそうだしな」

 

「え~僕そんな口軽くないよ~」

 

 俺たちは他愛の会話を続け、お互いに笑い合う。

 

「なあ、今日はイ〇ンに行ってみないか?」

 

「僕は大介が行くならどこでも行くよ」

 

「俺も付き合うよ今日は欲しい漫画の発売日だしな」

 

 よし、とりあえずイ〇ンに行く算段には出来た。

 中二になって二日目。

 こんな早く土下座イベントなんて起こらないだろからとりあえず場所だけでも確認しておくだけにしよう。

 

***

 

 そして俺たちは、イ〇ンに着き初めに本屋により、清水は予定の漫画を、俺も目当ての漫画があったので一緒に買い、恵里の要望もありゲーセンによって楽しい放課後を過ごしていった。

 

 その後、小腹がすいたのでフードコートでお互いに好きなものを買いに行き、ぼちぼち帰るため入口に集合の流れになった。

 俺の予想通り、フードコートにはたこ焼き屋もあり、このイ〇ンが土下座イベントの場所が高い可能性が出てきたな…

 

 

 俺はたい焼きを買い集合場所に向かうと、恵里と清水がすでに待っていた。

 

「すまん遅れた」

 

「別にいいよ大介。僕はさっき来たところだし」

 

「俺もそんな感じだ」

 

 恵里はソフトクリーム、清水はたこ焼きを食べながら待っていた。

 

「別に急いでないしね。そういえば、さっきここをたこ焼きを持って走っていった小さい子がいて僕たちにぶつかりそうになってたね清水」

 

 たこ焼きを持った小さい子……

 

「ああ、俺達とはぶつからなかったがあのままだと誰かとぶつかりそうだったよな」

 

 誰かとぶつかりそうな小さい子……

 なんだろ…急に眩暈が……

 

「どうしたの大介?急に頭を抱えたりして…もしかして気分が悪いの?」

 

「……大丈夫だ恵里。ちなみに、その子どっちに向かったかわかるか?」

 

 俺を心配してくれた恵里にその子が向かった方向を聞き、ちょっと二人に待ってもらいその場所に向かうとそこには、

 泣きそうな小さい子とおばあさんと不良達と

 

 不良に対して土下座をしている男の子がいたのでした……

 

 

 …………俺のフラグ回収早すぎ!

 

 

 




こうして檜山(佐藤)はハジメ君の土下座イベントを会うことが出来ました。(ご都合主義)


どうでもいい人物紹介
・檜山大介(佐藤) 2回目
 好きなゲームのジャンルはRPGだが、好き嫌いなく何でもするがFPSが苦手
 漫画のジャンルも選り好みせず、少女漫画、青年漫画、少年漫画もハマればとことん好きになる。
 手先が器用で、電気工具をなんでも使いこなせ修理もできる。
 裁縫編み物も前世の母親の影響から得意だっため編みぐるみを作れる。
 作った編みぐるみは恵里や八重樫さんにあげ、大層喜ばれた。
 料理に関しては可もなく不可もない。
 
 


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14話 緊急脳内会議と主人公とヒロインと

 檜山(佐藤)頑張って!ついに主人公に出会うよ!
 ついでに脳内会議も始まるよ!


 土下座イベントから変わってここは檜山脳内会議場。

 

「どーすんだよ!この子絶対ハジメ君で、原作の土下座イベントじゃん!」

 

 強気が、円卓テーブルを叩きながら立ち上がり叫ぶ。

 

「いや流石に中二になった瞬間で、しかもたまたまの下見のつもりだったのに出来すぎだよ…もしかしたらワンチャン別人の可能性が…」

 

「そんなわけありませんな」

 

「だよね…」

 

 弱気の一抹の希望を吹き飛ばすように、議長が告げる。

 

「ええ。たこ焼きをぶつけた子供とおばあさんと不良達、そして土下座をしている男の子とここまでお膳立てさせられて違ったら逆に可笑しいです」

 

「だよね~男の子の顔は今は分からないけど、ここはこの男の子がハジメ君として対応を考えようよ~」

 

「どうするって決まってるだろ!ここはハジメ君を助ける以外ないだろ!」

 

 真面目の気楽な発言に当然のごとく強気が発言する。

 

「そもそも、この子がハジメ君にしろそうじゃないにしろ、目の前に困っている奴がいるなら助ける以外、俺に道はねぇ!」

 

 他の檜山が強気の発言に一様に頷き、とりあえずは目の前の男の子を助けることに決まった。

 

「では、この子がハジメ君だった場合の対応を考えましょう」

 

 次に議長は、その後の対応について議論を続ける。

 

「やっぱり友達になりたいよね…でも、どうすれば…」

 

「やっぱここはメシに誘えば!」

 

「それは難しいかもしれません」

 

 強気の発言に真面目が反対に意見を出す。

 

「どうしてですかな?転生して今のところ100%の方法ですから信頼してもいいのではないのですかな」

 

「いえ、ハジメ君だった場合つまりこの場には、白崎さんもいらっしゃるって事です」

 

「「「「!」」」」

 

 真面目の発言に一同に驚く。

 

「そうだね~つまりこの場には白崎さんがいて、ハジメ君に惚れているわけだよね~」

 

「…でもそれの何が問題なのかな?だって、こっちは助けるわけだし別に白崎さんに迷惑をかけるどころか逆にいい人に見えていいんじゃ…」

 

「白崎さんに問題があるわけではありません。ここで白崎さんに良い印象を与えてしまうと、原作突入時に勇者(笑)さんから恨まれる可能性が出てきてしまいます」

 

「あいつの存在忘れてたー!」

 

 真面目の発言に強気が頭を抱えだす。

 

「そうでしたな。勇者(笑)は白崎さんがハジメ君に惚れているだけで逆恨みするような奴ですからな。そんな中、小学校時代とは言え説教をかましてしまった身です」

 

「もしかしたら~あの一件で恨まれて白崎さんと仲良くしただけで勇者(笑)のご都合主義解釈がさく裂して死亡兼殺害フラグが立つかもね~」

 

「くそっ、なぜか簡単に想像できてしまう!「お前なんかと香織が仲良くするわけない!殺してやる!』みたいな未来が想像できてしまう!」

 

 ケラケラ笑いだす気楽の横で強気がテーブルに頭を抱えながら突っ伏した。

 少しの沈黙が脳内に流れ脳内が暗くなっていく…

 

「あの…いいかな…」

 

「どうしましたかな弱気さん?」

 

 沈黙を破ったのは強気ではなく、弱気だった。

 

「ここはさ、未来の事より今を考えようよ…確かに白崎さんに感謝されて勇者(笑)から恨まれるかも知れないけど、そんな事を気にして目の前の困っている子を見過ごすようならそっちの方が嫌だな…」

 

「…何くだらない事考えてたんだ俺は!前にもこんなこと考えたが、確かに未来の事を考えて死亡フラグを回避するのは大事だが、せっかくの2度目の人生なんだ!悔いのないようにやってやろうぜ!」

 

「私も余計な心配をして申し訳ありませんでした。よくよく考えたら勇者(笑)から恨みをを買うぐらいより、ハジメ君や白崎さんと仲良くなった方が死亡フラグの危険性は低くなるはずです」

 

「真面目は悪くないよ~こういう時はどんなに可能性が低くても色々な可能性を考えないとね~」

 

 弱気の発言にそれぞれの檜山達が次々に発言をし、脳内が明るくなっていく。

 

「決まったようですな。この目の前の男の子を助け、ハジメ君だった場合メシに誘いましょう。これでいいですな」

 

「「「「異議なし」」」」

 

***

 

 そして所変わって、こちら土下座現場。

 男の子に対して、不良達が手を出そうとしたので、

 

「お巡りさんこっちです!こっち!」

 

 俺は不良達を指さしながら、大声で叫ぶ。

 不良達は、俺の声に気づき蜘蛛の子を散らすように逃げていったのを確認した俺は、土下座していた子に近づき

 

「大丈夫か?」

 

「えっ…あっはい。あれお巡りさんは?」

 

「あんなの嘘だよ」

 

 俺の言葉にびっくりしたように男の子は俺に振り返り、不良が居ないことを確認しするように辺りを見て、安心したように「よかった」とため息をついた。

 そして俺は確信した。 俺は遂に主人公と出会ったと。

 

 おばあさんがハジメ君にお礼を言ってくれ、俺はたこ焼きをぶつけた子に、

 

「ほら、助けてくれたお兄ちゃんに何か言う事あるんじゃないか?」

 

 俺が優しく言うと、男の子は笑顔になり

 

「…うん!ありがとうカッコいいお兄ちゃん!」

 

 男の子がお礼を言うと、ハジメ君は照れ臭そうに頷いていた。

 

 男の子とおばあさんが帰って行くのを見届けると、ハジメ君は急に恥ずかしそうに顔を赤らめ

 

「やっぱ、土下座して助けるなんて情けないよな黒歴史だ…僕も君みたいに…

 あっそうだごめんなさい助けてもらったのに名前言わなくて、えっと僕は…それよりも何かお礼を!…」

 

「落ち着けって、俺は檜山大介。はじ……初めまして、君は?」

 

 あぶねぇ~一瞬ハジメ君の名前言いそうになった。

 

「檜山さんだね。僕は南雲ハジメです。さっきは助けてもらってありがとうございました」

 

「敬語じゃなくていいよ、ハジメ君。見た感じ同い年だろうしため口でいいよ。それにあの人たちを助けたのは俺じゃなくてハジメ君だろ?めっちゃカッコいいじゃん。

どうだこの後時間あるか、これも何かの縁だし、一緒にメシでも行かないか?」

 

「えっ…いや僕は…」

 

 ハジメ君が何かを伝えようとすると、

 

「大介ー!」

「何かあったのか?」

 

 後ろから声が聞こえ振り返ると、恵里と清水が来るのが見え、近づいてきた二人に何があったのかを話すと、

 

「凄いじゃないか南雲君、俺だったらきっと何もできなかったと思うよ」

 

 清水が褒めると、「いや全然凄くなんて…」と自分を卑下し始めたハジメ君がに対して

 

「え?南雲君ってめっちゃ凄いじゃん!見知らぬ人の為に何かできるって、僕を助けてくれた大介みたいだよ!」

 

 恵里も南雲君を褒め、二人に褒められ嬉恥ずかしそうに笑っている。

 すると、

 

「あ、あの…」

 

 後ろから声を掛けられ、振り返るとそこには誰が見ても美少女だと言える女の子が立っていた。

 そして俺は確信した、原作ハーレムの一員の一人白崎香織さんに出会ったと…

 

 いきなり声を掛けられたみんなは不思議そうにその子を見ていたが、恵里が俺の制服の裾を掴み

 

「大介知り合い?」

 

「シラナイコダナー」

 

 口が裂けても、原作だと俺が狂気じみた感情を向け、殺してしまった人だなんて言えるわけがない。いや、別に白崎さんは死ななかったんだけど…

 

「てか、なんで恵里は俺が知っていると思うんだよ」

 

「だって、八重樫さんの件もあるし、また大介が人を誑し込んだのかなぁ~って」

 

「誰が人たらしだ」

 

「いや、檜山は人たらしだからな」

 

 俺が否定するが、清水が恵里に同調し言って来る。

 別に誑し込んだことなんてないはずだが?

 俺が怪訝そうな顔をしてるのがわかったのか

 

「気にしなくていいよ。大介は大介のままが僕はいいな!」

 

 そういうと、恵里は俺の腕に抱き着いてくる。

 くっそ!めっちゃ可愛いから何も言えねぇ。

 すると、白崎さんはハジメ君に

 

「大丈夫ですか。わ…私も君、えっとハジメ君だっけ? 私も凄いって思いました!

 止めなきゃって思っても、足が動かなくて、でもハジメ君は躊躇なく突っ込んでいって人のために土下座までして…」

 

「えっとその…」

 

「ごめんなさい!私名前言ってませんでしたね。初めまして、私白崎香織って言います」

 

「あっ…白崎さんだね。僕の名前は…ってそれは大丈夫か!えっと…」

 

 ハジメ君があたふたし始めたので、ここは助け船を出してやるか。

 

「初めまして白崎さん。俺は檜山大介。こっちのナチュラルボブの子が中村恵里でこっちのいい声の奴が清水幸利だ」

 

「よろしくね、香織ちゃん」

 

「初めまして白崎さん」

 

 俺がサラッと二人の自己紹介をし、よしここで伝家の宝刀

 

「立ち話もなんだしこの後みんなで、ファミレスでも行かないか?予定が合えばだけど」

 

「僕は行く!」「俺も行くよ」

 

「僕も予定はないけど、いいのかな…?」

 

「もちろん良いぜ。金なら気にすんな、俺が今回はおごっちゃる。なんせ今回の主役は君だからなハジメ君」

 

 てか、この物語の主人公だしな。

 

「…じゃあ一緒に行かせてもらおうかな」

 

「あの檜山君…私もいいかな?」

 

 ハジメ君が参加を表明すると、白崎さんもおずおずと聞いてきたのでもちろんと伝え、5人でファミレスに行くことになった。

 

 道中で恵里が、白崎さんと南雲君が会話しているのをじっと見ていたので

 

「どうした恵里、白崎さん達をじっと見て?」

 

「大介…なんか香織ちゃんから僕と同じ匂いがすると思って」

 

「なんだよ中村同じ匂いって?同じシャンプー使ってる的なことか」

 

 俺と清水が聞くが、恵里が「別に気にしなくていいよ」と言い始めたので気にすることもないかと思い、近くのファミレスへと入った。

 

***

 

 ファミレスでは他愛ない話で盛り上がり、すぐにみんなで打ち解けることができた。

 恵里と白崎さんが凄い勢いで打ち解けていったのが意外だったが、仲が良い事は良い事だし気にすることもないか。

 俺と清水とハジメ君は、趣味が合うこともあり、ゲームや漫画の話で盛り上がり、しかも俺がイ〇ンで買った漫画、まさかのハジメ君のお母さんの作品だとわかってさらに盛り上がったりした。

 

「檜山君って少女漫画も読むんだね」

 

「ハジメ…今、俺の事キモいって思ったろ…こんな目つきの悪い俺が少女漫画読むなんてって…」

 

「そんなことないよ!母さんの作品を読んで嬉しいけどキモいなんて思わないよ!」

 

 俺がわざとらしく、しょぼくれるとハジメ君がワタワタしながら俺を慰めてくれたので、

 

「だったら、バツとして俺と連絡先交換してくれよ?また、遊ぼうぜ」

 

「…いいの?」

 

「もちろん!今度はハジメの恥ずかしい趣味を教えてくれよ」

 

「アハハ!それは嫌だけど、もちろん良いよ檜山君」

 

「ハジメ君、ハジメ君!私とも連絡先を交換してください!」

 

 俺とハジメ君が連絡先の交換をしていると、白崎さんが割って入ってきて、俺は白崎さんとハジメ君の連絡先を手に入れその日は解散となった。

 

***

 

 その後の話をすると、俺とハジメ君はちょくちょく遊ぶ仲となり、そこに清水も加わった3人はどんどんと仲良くなっていき、初めは君付け呼んでいたハジメは、呼び捨てで呼ぶ仲までなっていき、当初の目的であるハジメ君とは友達になれ本当に良かった。

 

 白崎さんもハジメ君に猛アタックしていると恵里伝いで聞き、ここは原作通りに進んでいるので、後は二人の仲を取り持ち恋人同士にすれば、俺の目的は完璧に達成される!

 そうすれば死亡フラグが避けられる可能性が高くなるはずだ!

 さて、脳内会議で二人の仲を取り持つ方法を考えなければ……

 

 

 そんな中、俺は白崎さんから電話が掛かってきたので出ると開口一番に聞こえてきたのは

 

『檜山君、南雲君の性癖を教えて!』

 

「…………はぁ?」

 

 




ファミレスでの恵理と香織の会話
Q.彼氏と共有したいものは?

恵里「いろいろあるけど強いて挙げるなら…あっでも、大介が風邪をひいた時なら、それを移されたいな~」

香織「わかる!」


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15話 檜山君なんでも相談室 そして原作へ… 

 原作に行くとは言っていない。一応中学卒業まで行くよ

 前話のあとがきが思ったより好評の様なので、あとがきではなく、本編のおまけとしてもう一つ書いております。
 


 電話越しから、聞こえてくるハジメ君の性癖を聞いてくるヒロインの一人、白崎さん…

 最近色々あったから疲れてるんだな俺。

 きっと何かと聞き間違えているんだ。

 花も恥じらう中学生女子が電話越しとは言え、男友達に恋する相手の性癖を聞くわけがない。うんうん

 性癖…

 せいへき…

 へきへき…

 ぜっぺき…

 せいれき…

 西暦…

 つまり誕生日、これだ!

 

「ああ西暦。ハジメ君の誕生日って事ね。えっと確か…」

 

『違うよ、性癖だよ!せ・い・へ・き!、ハジメ君がどんな性癖を持っていて、どんなことに性的興奮をして、ぼっ…』

 

「わかったから、女の子がそんな言葉を連呼してはいけません」

 

 わかってたよ、くそっ!突撃娘ってのは知ってたけど、男の俺にそんなこと聞くかね普通…そもそもこの世界は普通じゃないか。

 …ちょっと待て、つまりもう二人は付き合ってんのか!

 

「あの…白崎さん?もうハジメ君とはお付き合いをなさっているのですかな?」

 

『お付き合いって…やだ、檜山君ったらまだ私たちは付き合ってないよ』

 

 俺の発言に電話越しでも体をくねらせている白崎さんが想像できてしまうほど照れている声が聞こえてくる。

 

「いやいや、照れるタイミング絶対違うじゃん!そもそもなんでそんな事俺に聞くんだよ!」

 

『だってハジメ君本人に聞けるわけないじゃん』

 

「聞いてたらドン引きするぜ、白崎さん…」

 

 この子は原作でもそうだが、可愛くはあるが何か抜けているというか、ズレているというか、いやでもこの性格のおかげで助かった人も…

 ん?いやそもそもこういう時に対応してくれる親友が白崎さんにはいるじゃないか!

 

「いや、それでも異性の俺に聞くことじゃないだろ?ハジメとは友達だけど、もっとこうまずは同性に相談すると言うか…」

 

『雫ちゃんや恵里ちゃんの事?でもその雫ちゃんから、以前檜山君に助けてもらって色々な相談をしても全部解決してくれる凄い人って聞いてたから、相談させてもらおうって思って』

 

 八重樫さんのせいかよ!

 …いや八重樫さんのせいでもなんでもないな。

 というより俺のせいか。

 確かに八重樫さんからの相談にはよく乗っていたがその結果がこれかよ…

 

「いやでも、性癖って…まずは、ハジメの趣味というか、好きな食べ物とか、好きな本とかを聞くもんじゃ…」

 

『えっ?そんな当たり前の情報知ってるに決まっているじゃん』

 

 白崎さんが笑いながら、サラッと恐ろしい事を言っているような…

 

『私だって知ろうと努力はしたんだよ?ハジメ君がやっている、エロゲって言うんだっけ?そういうのを買おうと…』

 

「わかった!わかったからもうそれ以上はやめて下さい、お願いします」

 

 そのエロゲ勧めたの俺です本当にすいません。

 二人の恋を取り持とうとしたが、これはこれで対応間違えたら死亡フラグが確定してしまう…

 

「白崎さんの質問に男として答えると…男の性癖なんて十人十色と言うか、あんまり人に教えたくないものといいますか。女の子にバレたら死にたくなるもの言いますか…」

 

 女の子に俺は一体何を言っているんだ…

 

『大丈夫だよ檜山君。絶対に檜山君から聞いたって言わないから!』

 

 違うそうじゃない。

 

「そもそも、なんで俺に聞くんだよ。俺だってハジメの性癖なんて知ってるわけ…」

 

『えっ?だってそういう本の貸し借りしてるんでしょ?』

 

 ……今なんつった。

 確かにそういう本、いわゆるエロ本の貸し借りはしたことがある。

 いやこれは、中学生男子の間で絶対に行われることというか、お金が制限されるからこそ、

 より多くのエロを求める仕方ない行動と言いますか…

 でもそれが良い思い出になると言いますか…

 俺は誰に言い訳してるんだ。

 

「……白崎さん。誰からそのことを?」

 

『恵里ちゃん』

 

 恵里!何言っちゃってくれてんのぉ!てか何で恵里がその事知ってるんだよ!

 

『だからお願い檜山君。こんなこと聞けるの檜山君しかいないの』

 

「…一応こんなことって言う自覚はあるんだ。

 とりあえず、また後で連絡するからちょっと考えさせて」

 

 俺がそう伝え、少し一方的に電話を切り、考えをまとめようと脳内会議を始めようとすると、今度は八重樫さんから電話が掛かってきた。

 

「もしもし、八重樫さんどうしたんだ?」

 

『いきなりごめんなさい大介。さっき香織から電話なかった?』

 

「あったけど…」

 

『遅かったか…ごめんなさい大介。今日香織から、相談事があるって聞いて、大介なら相談に乗ってくれるかもって伝えたら、嬉しそうに『その手があったか!』って言ってたから、なんか嫌な予感がして』

 

 流石八重樫さん、良い勘してるよ。

 

「ああ、そういう事か別に気にしなくていいよ。人に頼られるのは好きだし、そもそも八重樫さんのせいじゃないしね」

 

『ありがとう大介。…出来ればでいいから、香織の力になってあげて欲しくて電話したんだ。私も協力できることがあったら何でも協力するからね』

 

 おっふ…プレッシャーが半端ない…

 でもまあ、ここは原作通り二人が親友になってくれているのが確認できただけでも良しとしよう。

 

***

 

 八重樫さん達との電話を終え、脳内会議を始める。

 

「さて今回の件も中々にやっかいですな」

 

「ええ、恋を取り持つだけで大丈夫だと思っていたんですが、まさか白崎さんからハジメ君の性癖を教えてくれ。なんて聞かれるとは想像外です」

 

 議長が髭を撫で、真面目が現状を説明してくれる。

 

「誰がこんな事想像できるんだよ!くそっ、どうするんだ!普通性癖を女の子にバラされたら、そいつを一生恨む案件だぞ!」

 

「自分だったら絶対嫌だよね…」

 

「人にされて嫌なことは、自分もしないってよく言うよね~」

 

 今までとは違うベクトルの問題に、一同が悩みどうするかを考えている。

 

「どうしましょうか……そもそも、ハジメ君は白崎さんの事をどう思っているのでしょうか」

 

 真面目の発言に一同が首を傾げ、強気が代表するように

 

「そりゃ、惚れてんだろ!だって原作じゃハーレム一員なんだぜ!」

 

「いえ、そもそも、その前提が間違っている可能性があります。確かですが原作だと、明確に愛していると言っているのは、吸血鬼のユエさんだけだったと思います。うろ覚えの原作の知識では、シアさんを大切な人と受け入れて、ハジメ君が魔王になった辺りでハーレムを宣言していたかと思います」

 

「つまり、この時点では白崎さんを好きじゃない可能性があるかもって事だよね~」

 

「それはまずいかも…そんな子に性癖バラされたら一生もののトラウマだよ…」

 

「でしたら、ハジメ君に直接聞いてみましょうか」

 

「性癖をか!」

 

「違います。白崎さんの事をどう思っているのかをです」

 

 強気の検討違いな発言を修正するように議長が提案する。

 

「はい。私もそれがいいと思います。今はハジメ君とも仲良くなっていますので男同士の恋バナとして聞いても何も問題がないと思います」

 

 真面目の提案に一同が頷き

 

「それでは、ハジメ君に恋バナをしてみて好きな人がいるのかを聞いてみましょう」

 

「「「「異議なし」」」」

 

***

 後日、ハジメ君と遊ぶ約束をし、一緒にゲームをした後に

 

「なあなあ、ハジメって好きな人いるのか?」

 

「えっ!なんだよ急に!」

 

「いいじゃん。俺しかいないんだからさ」

 

「そうだけど…だったら檜山から言ってよ。檜山が言ったら言うから」

 

「俺から?そうだな…」

 

 話を合わせようと考えてみるが言葉に詰まってしまった。

 死亡フラグ回避にかまけて、あんまり考えたことがなかったな。

 好きな人…………好きな……

 

 えへへ。うん僕たちは幼馴染!

 大介ー!遊ぼー!

 大介は大介のままが僕はいいな!

 

 一番最初に浮かんだ顔は…

 

「恵里かな…」

 

 でも恵里はきっと勇者(笑)の事を好きになるんだろうな…

 俺のこの気持ちは叶うはずがないか…

 

「やっぱりそうなんだ」

 

「やっぱりってなんだよ。しょうがないだろ!気づいたら好きになっていたんだから!ほら!俺は言ったんだぜ今度はハジメの番!」

 

 俺は照れをごまかすようにハジメ君に話を振る。

 

「……白崎さん」

 

「ハジメだってやっぱりって感じだぜ」

 

 よし!つまり二人は両想いってことだ。

 俺が心の中でガッツポーズを取っていると、ハジメ君は「でも…」呟き

 

「ほら、檜山から見ても僕と白崎さんって釣り合ってないと思うだろ?檜山と中村さんみたいにお似合いって感じがしないんだ」

 

「釣り合うって、そんなの…」

 

「だってあんな美人と僕なんて…白崎さんも僕によく連絡くれるのも異性じゃなくて友達として…僕なんてきっと…」

 

 その白崎さんから、君の性癖を教えてくれって言われているんだけどな…

 てか、ハジメ君も別に不細工じゃないだろ。ラノベの世界でかつ主人公だから顔の整ってるし、別に卑下するほどじゃないだろ。

 むしろイケメンだ。

 よしここは勇気付けてやるか。

 

「一番いけないのは自分なんかだめだと思いこむことだよ」

 

「えっ…」

 

「ハジメも知ってる、有名な名言だろ。つまりさ自分を卑下せずにもっと自信を持ててってことさ」

 

「檜山…」

 

「白崎さんが連絡をくれるのだって、少なからずハジメの事を好意に思ってくれているってことだ」

 

 ちなみに、少なからずではなく大きすぎるがな…

 

「…そうなのかな」

 

「考えてもみろよ。もし逆の立場なら進んで気にしていない異性に連絡とると思うか?それとも白崎さんは男子に誰これ構わず勘違いさせるような奴なのか」

 

「…違うと思う」

 

「だったら、少しは自分に自信をもって一歩踏み出してもいいんじゃないか?きっとうまくいくはずだぜハジメ」

 

「…ありがとう檜山。今度僕から白崎さんを誘ってみるよ!」

 

「その意気だぜハジメ!俺もうまくいくように応援してるからな!」

 

 安心しろよ。俺と違って百%いや一億%成功するから。

 

 後日、ハジメ君と白崎さんが付き合うようになったと連絡があったのは言うまでもない。

***

 

 檜山脳内会議場はどんちゃん騒ぎのお祭り騒ぎ。

 「打倒!死亡フラグ!」の看板は今は、「祝!ハジカオおめでとう!」と変わっている。

 

「いやー良かった良かった!」

 

「これも、あきらめずに頑張ってきたおかげだね…」

 

「これで少しは死亡フラグが遠ざかったね~」

 

「これもひとえに、脳内会議のお陰ですな」

 

「全くですな」

 

 一同檜山がお互いにお互いをたたえ合い褒め合っている。

 

「最初に掲げた目的は達成できた!あとはトータスに行った時の事も話し合わないといけないが今はこの喜びを嚙み締めようぜ!」

 

「うんそうだね…トータスとか勇者(笑)とかイシュタルとかエヒトとか勇者(笑)とかハジメ君奈落に行くのか問題とか、問題は山積みだけど…」

 

「問題多すぎだね~」

 

 この一言に脳内のお祭りムードは一気に氷点下まで下がり今回は話し合うのも嫌になり、脳内会議は強制閉廷となった。

 

***

 そして月日はたち、あっという間に中3になり受験シーズンへと突入。

 当たり前だが、恵里、清水、ハジメ、白崎さん、八重樫さんとみんな同じ高校を選ぶというなんともご都合展開へと発展していく。

 俺はと言うと、勉強に関しては中学ではトップクラスの成績を収め、内申点もよかったため先願入試でみんなが行きたいと言っていた高校への合格の切符を手に入れていた。

 もしかしたら、俺だけ合格と言う逆張りパターンが来るかと思ったが、結果はみんな仲良く合格をしていた。

 つまり、この高校生活で俺は、いや俺たちは異世界へと飛ばされるわけか…

 今のところ原作と違うところを上げていって現状を確認しておこう。

 

 恵里は、俺が助けたおかげかせいなのか、元気溌剌コミュ力MAXのボクっ娘になっている。

 

 八重樫さんは、剣道だけではなく編み物や手芸といった女の子らしい一面みせる、まさに大和撫子となっている。

 

 清水に関しては、原作のような陰鬱な感じは一切なく、自分に自信をもち放送コンテストで優秀な成績を収める美声を持った青年へと。

 

 ハジメ君と白崎さんは……あんまり変わってないか。

 

 俺が関わったことで原作がどのように変わるかわからないが、ここまで頑張ってきて、大切な友達も出来たんだ!

 絶対原作に突入しても死亡フラグをへし折って生き抜いて見せる!

 絶対に殺されたりなんかしないぞ!

 

***

 そんなこんなで、中学卒業式を迎え俺は恵里に呼び出され、近くの公園へと行く。

 

「どうしたんだ恵里?急に呼び出したりして」

 

「ねぇ大介……その……」

 

 いつもの元気溌剌は無く、もじもじとしている恵里。

 こんな恵里もかわいいけど…

 

「どうした?いつもの恵里らしくないな。いつもの元気は何処に行ったんだよ?なんか悩み事か?相談ならいつでも聞いてやるぞ」

 

「大介……うん。そうだね!こんなの僕らしくないや…大介!」

 

「だから、なん…んっ」

 

 恵里がいつもの元気を出し、俺に近づき、身長が10㎝ぐらい差があるためか、俺の首に飛びつくように腕を巻き付け恵里が自分の小さく可愛らしい唇を俺の口へと重ねてくる。

 いつも見慣れた少したれ目で幼い顔立ちの恵里の顔が目の前にある。

 ナチュラルボブから香る、シャンプーとか花とは違う女の子の匂い。

 俺も飛びついた恵里を落とさないように恵里の腰に手を回す。

 恵里の腰ってこんなに細いんだな…俺が場違いな考えをしていてついに気づいた。

 

 その行為が、キスであると。

 

 「んあ」

 恵里は色っぽい声をだし、はぁはぁと少し肩で息をしながら、いつもの見慣れた満面の笑顔を俺に向け

 

「僕は檜山大介が大好きです!付き合ってください!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ファミレスでの恵里と香織の会話

Q.彼氏にプレゼントして欲しいものは?

 

恵里「子供かな~」

 

香織「当然だよね」

 

Q.彼氏から欲しい花は?

 

恵里「アイビー、一択」

 

香織「それもいいね。私は紫のチューリップ」

 

 

 

*花言葉は色々所説ありますので作者の思った意味を乗っけておきます。

 

・アイビー

 死んでも離れない

 

・紫のチューリップ

 不滅の愛

 




 やったね檜山(佐藤)彼女が出来たよ!
 ちなみに、前世で佐藤は童貞です。


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幕間 おまじない

 ここだけの話。
 当初の目算では15話で終わる予定だったよ(笑)
 過去の俺を笑ってやってください

 タイトル通り本編は進みません。
 でも、書いてて楽しかったです(開き直り)
 
 


「僕は檜山大介が大好きです!付き合ってください!」

 

 俺をまっすぐにみつめてくる恵里。

 

 恵里は勇者(笑)に恋をして……

 原作だと俺を利用して……

 

 俺を見つめる恵里の瞳に嘘がないのは分かる。

 でも俺は恵里の告白にすぐに答えることが出来ず黙って恵里を見つめ返すことしか出来なかった。

 

「……やっぱり迷惑だったかな」

 

 …えっ

 

「知ってたんだ。大介はきっと僕を妹みたいな家族って思っているって」

 

 そう思っていたことも…

 

「でも、少しでも可能性があるならって…少しでも…ぼ…ぼくを…おん…なの…こ…って思ってくれてたら……て…」

 

 涙が表面張力でプルプルとしていたが、まるでダムが決壊するように恵里の目からこぼれだす。

 

「ごめん大介……僕は…いつも………だ…いすけ…に…め……ん」

 

 これ以上、恵里を悲しませるわけにはいかないな

 

 初めは偶々だった

 次は打算的な気持ちがなかったわけじゃなかった

 でも、いつも間にか好きになっていた女の子

 

 ありふれているが俺は恵里の後頭部に手を回し無理やり恵里の口を塞ぐようにキスをする。

 恵里は俺からのキスに驚いたのか、ビクッ!と震わせ、目を白黒させ俺を見てくる。

 

「そんなに俺からのキスは嫌だったか?」

 

 恵里は首を何度も横に振る。

 

「嫌なわけないじゃん!」

 

「奇遇だな恵里。俺もお前からのキスは嫌じゃなかった」

 

「えっ…」

 

「俺からも言わせてくれ………

 俺は中村恵里が好きだ。どうか俺と付き合ってくれ」

 

 恵里の告白を真似するように、俺も自分の気持ちを打ち明ける。

 

「本当?」

 

「本当だ」

 

「本当に本当?」

 

「そんなに疑うなら、う…」

 

 俺がいじけた風を装い『嘘』と言おうとすると、それに気づいたのか、今度は恵里が俺の口を塞いできた。

 さっきまでの口と口をくっつけるだけのキスではなく、恵里は俺の頭に腕を回し、俺の唇を貪り、じっくりと味わう様にキスをしてくる。

 そして満足したのか、見慣れた笑顔を見せてくれ

 

「えへへ。ありがとう大介」

 

「いつも恵里には驚かされるよ。普通、告白してOKだったら、キスの流れだろ?」

 

「だって、断られても大介の初キスは僕が奪えるわけじゃない?」

 

「なんだよその発想…なあ恵里」

 

「どうしたの大介?」

 

「俺を好きになってくれてありがとう」

 

「大介も僕を好きになってくれてありがとう!」

 

 こうして恵里と俺は恋人になった。

 転生して早6年。色々問題は残っているが俺はさらに死亡フラグに対して絶対にへし折る覚悟を持つことができた。

 

 告白した後の帰り道、腕に嬉しそうに抱き着く恵里の歩幅に合わせながらの帰り道。

 不思議なものでいつも通ったこの道も関係一つ変わるだけでいろいろな景色に見えるものなんだな。

 少し気になっていた勇者(笑)の事を聞いてみたが

 

「天之川って誰?」

 

「えっ…ほら、小学校の時に俺と恵里と八重樫さんが遊んでいた時に絡んできた」

 

「……あー大介に、いちゃもん付けてきたアイツね。そんな名前だったんだ。そいつがどうしたの?」

 

 名前すら認識していないだと…

 

「いや…どう思っているいるのかなぁ~って」

 

「どうって……一言でいうなら、道端に落ちているガムかな?」

 

 …………俺が心配していたことって一体。

 

***

 後日、ハジメと清水と遊ぶ機会があり、恵里と付き合うことになったことを伝えると

「えっまだ付き合ってなかったの!」

「俺もてっきり既に付き合っているものだと思っていたが」

 なんかめっちゃ驚かれた…

 

「なんだよ。なんか伝えた俺がバカみたいじゃないか」

 

「いやだって、中村さんと檜山ってどこからどう見てもお似合いって言うか」

 

「中村に関しては、檜山以外は目に入ってないって感じだったしな」

 

 そんなもんかね…

 

「檜山は知らないかも知れんが、中村が以前男子から告白されたことがあったんだが…」

 

 そんなことがあったのか、まあ恵里もかなり可愛いし人気があるのもわかるが、告白されたことがあったのか…

 

「相手に対して『君誰?僕はもう心に決めた人がいるからじゃ!』と断ったんだが、相手は檜山を少しバカにしたらしくて『あんな目つきの悪い奴より俺の方がいいはずだ!』って言ったらしい」

 

 そんな勇者(笑)みたいなこという奴いるんだ…

 

「人が気にしてることを…そりゃ、俺は目つきは悪いが…」

 

「まあ聞け。それを聞いた中村はそいつに『大介の事を悪くいってみろ…どうなるかわかるかな?』と誰もが見惚れそうな笑顔で答え、告白してきたそいつの急所を蹴り上げ、そいつを失禁させて学校を1週間休ませた…」

 

 ……俺の部屋に沈黙が流れる。ハジメ君と俺は顔を合わせ、まさか本当に…

 

「まあ根も葉もない噂だがな」

 

「びびったじゃねーか!」

 

「清水やめてよ。一瞬本当にそんなことが起きたのかと思ったじゃん」

 

「まあ、あくまで噂でだし、中村がそんなことするタイプじゃないだろうしな」

 

 そうだそうだ。原作だと超やばいけど今の恵里はただの『元気溌剌僕っ娘』だ

 いや~本当に俺にはもったいない彼女だよ。

 

「俺ばっかりじゃなくて、ハジメも聞かせてくれよ。白崎さんとはどうなんだ?」

 

「確かに気になるな。あんな美人とどんなことをしているの凄く興味がある」

 

 清水と俺がハジメ君に聞くと、少し照れながらハジメ君はこの前あったことを話してくれ、白崎さんのとんでもエピソードを照れながら答えるハジメ君を清水と苦笑いしながら聞く羽目になった…

 

***

 

 どうしても僕は彼の特別(かのじょ)になりたかった。

 

 だから、僕は彼に特別な、おまじない(呪い)をかけようと思った。

 

 女の子が一度だけ使える特別な、おまじない(呪い)

 

 彼は誰にでも優しい…そこもいいんだけどね♡

 

 もしかしたら、その優しさに惚れる女が現れるかも…

 

 ダメ…だって彼は僕の運命の人(檜山大介)だもん

 

 彼との出会いはきっと神様が僕にくれた贈り物だもん!

 

 でもなぜか、僕の運命の人(檜山大介)は、僕が誰かに惚れてしまうと思っているっぽい

 

 そんなわけないのになぁ…

 だって、彼以外の男は有象無象(ゴミ)に過ぎないじゃん。

 

 何度か告白してきた奴もいたなぁ~中には僕の運命の人(檜山大介)をバカにするやつがいた気がするけどよく覚えていないんだよね。

 

 気づいたら、そのゴミは地面に突っ伏してたことがあったけどまあ気にする必要はないか。

 

 でも、清水や南雲みたいに、大介の良さを分かってくれる人もいるからいいんだけどね

 

 高校に入る前に、僕のおまじない(呪い)を実行しよう♡

 

 まずは、大介を近くの公園に連れていく

 

 僕は少しおまじないの実行に躊躇しちゃって、もじもじしちゃったけど、大介はいつものように僕を心配してくれる。

 

 どうして大介は、僕をこんなに惚れさせてくれるの…

 

 もやはこれは大介が悪いよ!

 こんなに僕を夢中にさせる大介が悪い!

 

 そして僕はおまじない(呪い)を実行する。

 

 大介の首に腕を回し、僕はファーストキスをあげる。

 

 たっぷりの愛を込めて…

 

 そして、大介に告げる…

 

 僕は檜山大介が大好きです!付き合ってください!

 

 大介は何が起きたのかわからなかったのか、目をぱちくりさせ、僕を見つめてくるが、僕を落ちないように優しく抱きしめてくれる…

 

 これじゃ足りないのも想定のうちだ、次の作戦を実行する。

 

 僕は、大介に振られることを想像する。

 

 そうするだけで、僕は涙を簡単に出せてしまう。

 

 別に同情でも情けでも、大介の彼女になれるなら僕はどんな手でも使うつもりだ…

 

 そしてゆくゆくは僕に夢中させてあげるよ…

 

 優しい彼なら、きっとこれで落ちて…えっ…

 

 僕の想像を超えたことを大介はしてくれた。

 

 僕の頭をまるで、精巧なガラス細工を扱う様に優しく抱き、キスをしてくれる!

 

 大介のキスから伝わる、混じり気の無い、僕への愛情…

 

 ん♡

 だ、ダメ!イっちゃう♡

 イっちゃうよぉぉぉぉ!

 

 はぁ、はぁ、はぁ……

 

 僕、大介にイかされちゃった♡

 

 クチュ…

 あ…僕のパンツが大介のせいでヌれちゃった♡

 

 今の僕のパンツを大介に見せたらどんな顔してくれるかなぁ♡

 

 いっそこのまま襲われるように……

 初めてが青姦でもイイかも……

 だって、ヌれるってことは、僕は今大介のアレを受け入れる準備が出来たってわけだし……

 

 僕の頭の中がピンク色に染まっていく……

 大介との情事を想像すると、さらに……

 ダメダメ。ここは我慢だ僕!

 

 大介も僕を好きって言ってくれたんだから、急がなくてもいいか!

 

 …でも、もうちょっとキスしてもいいよね。だってようやく僕の思いが実ったんだからイイよね!

 ふふふ♪おまじない(呪い)大成功だね!

 

 大介の唇美味しい

 もっと僕の体温を大介にあげたい

 ずっとこうしていたいな

 このまま時が止まればいいのに……

 

 僕は、大介の特別(かのじょ)になれたんだ!

 

 

 




 これってR17ぐらいあるのかなぁ(他人事)
 どうせなら、R18版の青姦バージョンでも書こうかなぁ
 でもそうすると、なおの事、本編がががが


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幕間 それぞれの休日

 まだ、本編は進まないよ。

 前話でハジカオの告白が気になると感想でいただいたので、この作品のハジカオはどんなのかなと思い書き始めると楽しくなっちゃった(テヘ)
 そして、清水に…


 Case.1 ハジメの場合

 突然だけど僕に彼女が出来ました。

 それもその彼女は……

 

「どうしたのハジメ君?」

 

「ううん。何でもないよ白崎さん」

 

「もう、ハジメ君!二人の時は苗字じゃなくて?」

 

 僕の鼻先に指を突きつけ、可愛らしく頬を膨らませてくる女の子

 

「あっ…そうだったね。か…香織さん」

 

「うん。よろしい」

 

 腰まで伸びた艶やかな髪、

 顔もよければ、スタイルもいいと言う

 まさに非の打ち所がない女の子

 

 誰もが見惚れてしまいそうな笑顔で僕の鼻を突いてくる女の子こそ、

 僕の彼女、白崎香織さんだ。

 

***

 彼女との出会いは、不思議なものだった…

 

 僕は、ある日の買い物の帰り道、不良達から子供とおばあさんを助けるためにとっさに土下座をしてた。

 多少の暴力があるのも覚悟のうえでやったのだが、

 

 お巡りさんこっちです!こっち!

 

 僕を助けてくれたのは、目つきは悪いけどとてもやさしい男だった。

 

 檜山大介…僕の友達…いいや親友かな。

 

 彼に助けられ、さっきの土下座を恥ずかしく思っていると、おばあさんが僕にお礼を言ってくれ、

 不良にぶつかった少年は、

 

 …うん!ありがとうカッコいいお兄ちゃん!

 

 カッコいい……初めていわれた……

 

 

 敬語じゃなくていいよ、ハジメ君。見た感じ同い年だろうしため口でいいよ。それにあの人たちを助けたのは俺じゃなくてハジメ君だろ?めっちゃカッコいいじゃん。

 

どうだこの後時間あるか、これも何かの縁だし、一緒にメシでも行かないか?

 

 

 凄いじゃないか南雲君、俺だったらきっと何もできなかったと思うよ

 

 え?南雲君ってめっちゃ凄いじゃん!見知らぬ人の為に何かできるって、僕を助けてくれた大介みたいだよ!

 

 土下座しかしなかった僕を、檜山やその友達が褒めてくれるのは今思い出しても嬉しいな。

 そして僕は彼女と出会ったんだ…

 

 初めまして、私、白崎香織って言います

 

 これが、僕の友達と彼女との出会いなんだ。

***

 

 檜山たちとの出会った後、白崎さんはよく僕に連絡を取ってきてくれたんだけど、きっとこれは友達として接してきてくれているんだ。

 だって、あんな可愛くて美人で性格良い完璧な女の子が、僕みたいなオタクを相手にするわけがないんだし、そもそも、女の子の友達がいるだけで大分リア充だよなぁ…

 

 そんなある日、檜山の家で遊んでいると「好きな人はいるのか?」

 なんてありふれた会話が始まり、檜山は中村さんって言ってたけど、そもそも、二人は付き合っているものだと思っていたんだけどな。

 僕の言う番になって、白崎さんの名前を出したが、僕は分かっている。

 この気持ちは叶うはずがない。

 あんな可愛くて、性格の良い子が僕に釣り合うわけがない…

 

 一番いけないのは自分なんかだめだと思いこむことだよ

 

 僕に掛けられたのは、有名なアニメの名言だった。

 自信を持てか…………

 檜山の言葉は何故か、僕に勇気を与えてくれ、自信を付けさせてくれる…

 檜山に背中を押してもらい、僕は初めて白崎さんを誘うことにした。

 

 女の子を誘うなんて今まで考える機会すらなく、母親に相談するわけにもいかないしな……そうだ!僕には同い年の異性の知り合いが一人いるじゃないか!

 早速、僕は中村さんに聞いてみることにした。

 

『なるほどね…僕からのアドバイスだと、外で遊ぶと、相手の趣味に合わないと会話とか詰まっちゃうから大人しく南雲の家が良いと思うよ!』

 

「家って…ハードル高くないかな?」

 

『大丈夫だって!前、香織ちゃんと話したときに意外に漫画とかが好きって言ってたし、南雲と趣味が合うかもよ』

 

「えっそうなの?」

 

『それと、自分の着替えの場所は相手にわからないようにするのがベストだよ』

 

「なんで?」

 

『決まっているじゃん。白崎さんがそのタンスを間違えて開けちゃったら、南雲のパンツとか南雲の恥ずかしいものが出てきちゃうわけだよ?』

 

「!その発想はなかった、流石中村さん」

 

『えっへん!服とかならまだいいけどね。だから、そういうのはそうだな…南雲の机の一番下の段に入れておいた方がいいかな。香織ちゃんってよくスカート履くみたいだから机の下の段とかだと屈んじゃうでしょ?』

 

「…!」

 

 僕は一瞬、スカートで屈んだ白崎さんを想像してしまい、言葉を失ってしまった。

 僕の心を読むように、中村さんは、

 

『そういうことだよ。女の子はそういうのに敏感だからね、自分から屈むなんてしないからそこならバレないよ』

 

 あまりに勉強になる、中村さんの話を僕は一言一句逃さぬようメモを取っていく。

 

『こんな所かな。後は幸運を祈っておくよ南雲!』

 

「ありがとうございました。中村先生!」

 

 こうして、僕は中村さんから教わった事を実行することにする。

 僕はなんていい友達を持ったんだ。

 

 ………………

 …………

 ………

 ……

 

「さてと、香織ちゃんに電話しないとね♪」

 

***

 

 僕は勇気を振り絞り、白崎さんを家に来ないかと誘ってみた。

 こんなにメール打つのに緊張するのは初めてだったな……

 文章に間違いがないのを何度も確認し、ようやくメールを送信した。

 すると、メール送って数秒後に返信が帰ってきた。

 早っ!

 白崎さんからの返信がきて、もちろん行くとの事だったので僕はガッツポーズを取り当日に備えることにする。

 

 白崎さんとの約束の日、やばい緊張する……

 

「お邪魔します」

 

 白崎さんが僕の部屋に入ってくる。

 母親以外の異性を入れたのは初めてだけど、僕には中村さんがついている。

 

「へぇ~。男の子の部屋ってもう少し散らかっていると思っていたけど綺麗にしているんだね南雲君」

 

「そりゃ、女の子を部屋に呼ぶわけだし…それより立ち話もなんだし座っていいよ」

 

 そう言って、僕は自分のベットに座るように勧める。

 

 僕は中村さんの教え その1

 部屋に呼んだ女の子は自分のベットに座らせろを実行する。

 理由は単純で、スカートを履いた女の子を床に座らせるのはNGとの事。

 確かに、今日の白崎さんの恰好はスカートではないが、白のワンピースであったため中村さんの教え通りにする。

 

「ありがとう南雲君。ふふ、えーい」

 

 そういって、白崎さんは僕のベッドに倒れこみ、枕に顔を沈める。

 

「白崎さん!何やっているの!」

 

「え~、こんな柔らかそうなベッドみたら、飛び込まない訳には、いかないよ」

 

「そういうものなの?でも、汚いよ?」

 

 そういうと、僕の枕を抱き込み、すぅーっと息を吸い込む

 

「そんなことないよ?いい匂いだよ南雲君♪」

 

 今日は絶対に寝れないな、僕がそう思い白崎さんの隣に少し間を開け座る。

 

 中村さんの教え その2

 ベッドに座らせた女の子の隣に座るべし。

 理由は、床に座るのは相手のパンツが見える可能性があるためNGであり、自分だけ椅子に座るのも相手に失礼。

 なぜなら、相手の女の子は自分と対等の立場で話したいわけだから、そうするには相手の目線を合わせるのが一番との事。

 

「ねぇ南雲君。今日は何しようか!」

 

「僕のおすすめの漫画を一緒に読まない?」

 

 僕がそう聞くと、花咲くような笑顔を見せてくれ

 

「うん!南雲君、一緒に読もう!」

 

 中村さんの教え その3

 漫画は一緒に読むべし。

 相手が読むのを待つのもいいが、相手に気を遣わせる可能性があるため一緒に読むのがベスト

 ここで、教えその2が生かされるというなんて理に適っているんだ。

 

 白崎さんとの時間はあっという間に過ぎていき、それは楽しく幸せな時間だった。

 白崎さんの綺麗な顔が常に近くにあり、ドキドキし過ぎてどうにかなりそうだった…

 息遣いさえ聞こえてくる至近距離で、白崎さんが僕に近づく度に絹のような髪から香る白崎さんの匂い。

 永遠に続けばいいと思うが、時間は勝手に過ぎていき、気づけばもう夕方になっていた。

 

「このシーンが…もうこんな時間か。白崎さん今日は楽しかったかな?」

 

「……南雲君…ううん。ハジメ君」

 

 白崎さんが僕の名字では無く、名前を呼び

 ベッドに座ったまま、僕の方に振り向き一歩近づいてくる。

 

「えっと…白崎さん?どうしたの?」

 

 僕の問いに答えず、じっと僕を見つめてくる白崎さん

 彼女の綺麗な瞳吸い込まれるような錯覚を覚え、自分の心臓が破裂するんじゃないのかというほどに鼓動を繰り返す。

 そんな僕の状態に気づいたのか、白崎さんは僕の胸に耳を押し当てる。

 その瞬間に僕の腹にむにゅと柔らかい何かが当たり、さらに鼓動が増す。

 

「よかった…ハジメ君もドキドキしてくれてたんだね。私もほら」

 

 そういうと、白崎さんは僕の手を取り、自分の胸へと持っていく。

 さっきの柔らかさとは比べ物にならない感触に僕は言葉を失うと共に、白崎さんの心臓の音を感じた。

 

 ドクンドクンと、とても速い鼓動を感じる。

 

「し…白崎さん……」

 

「ダメ。私も名前を言ったんだからハジメ君もほら」

 

「……香織さん」

 

 僕が名前を呼ぶと香織さんはとても嬉しそうにし、僕の手を今度は自分の顔の頬に持っていき、

 

「ハジメ君の手あったかいんだね。ねえハジメ君?」

 

「ど、どうしたの?」

 

「私のこと好き?」

 

 突然投げかけられた質問に答えられないと思ったが、なぜが口が自然と動く。

 

「…うん。僕…香織さんが好きだ…………」

 

「私も好きだよハジメ君」

 

 そういった香織さんは僕をベッドに押し倒し、僕に覆いかぶさるようにキスをする……

 

 こうして僕たちは恋人同士になったんだ。

 

***

「今思い返すと、恥ずかしいけど檜山と中村さんのおかげで付き合えるようになったんだよね。ありがとう檜山!」

 

 僕が檜山にお礼を言うと、檜山は自分の頭を抱えながら唸っている。

 

「……ハジメ。もし、白崎さん以外の女の子を部屋に上げる際には、ぜっっったいに恵里の言う事を参考にしないと今誓え!絶対だぞ!お前の命のためを思って言ってやる!」

 

「えっ……」

 

 

***

 Case.2 清水の場合

 

 今日は時間も出来たし、新しくできた手芸屋に行ってみるかな。

 檜山に教えてもらってから、自分でも、編みぐるみを作るのが趣味になっている。

 アイツのようにうまくはできないが、それでも自分で好きな漫画やゲームのキャラをつくるというのは面白いもので、オタクの凝り性も出て人に見せても恥ずかしくないレベルまで持って行けたと自負できる。

 

 自分に自信が持てるようになったのも、檜山に俺の声が良いなんて褒められてからかな…

 ふっ、自分のことながら単純だとは思うが、それ以来俺の環境は変わったと思う。

 まさか、委員会からスカウトされるなんてな、まるで漫画や小説の登場人物みたいだな…

 アイツに言った言葉がここまで綺麗にブーメランみたいに返ってくるとは思わなかったな。

 

 それにしても、南雲といい、檜山も彼女持ちが近くにいると、少しは自分もいて欲しいと思うが、これじゃ子供の嫉妬と同じだな。

 

 そんなくだらない考え事をしていると、目的の手芸屋に着き、目的の毛糸の色を探していると残り一玉であるのが見え、手を伸ばすと別の人と手がぶつかり謝るため、その人の方に振り向く

 そこには、黒髪のポニーテールを揺らし俺を見る、まさに大和撫子と表現するのがふさわしい女の子が立っていた。

 

 

 

 

 




 ハジカオのとんでもエピソード
<欲しいプレゼント?>
男性Side
ハジメ「この前、恋人同士は自分の下着をプレゼントするって白崎さんから聞いたんだけど、檜山も中村さんと交換したの?」

檜山「……ふぁっ!」

清水「流石に引くぞ南雲……」

ハジメ「えっ…」

女性Side
香織「やっと、ハジメ君のパンツをゲット出来たよ!恵理ちゃんありがとう!」

恵里「やっぱり、香織ちゃんは僕と同じ匂いがすると思ったんだ」


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幕間 似た者同士は惹かれ合う

 時系列がわかりにくいと思いますので、ちょっと補足すると。

① ハジメと香織が付き合う(中二前半)

② 清水と手芸屋で出会ったポニーテール少女と出会う。 ← 今、この話です。
  *一体何樫さんなんだ!

③ 檜山(佐藤)と恵里が付き合う(中三後半)

 やっぱ本編が進まない。
 


***

 彼女の第一印象は『美人』これに尽きるな。

 100人に、彼女は大和撫子ですか?と聞いて100人が『ハイ』と答えるような美人がいた。

 俺が見惚れていると、

 

「あの…どうぞ」

 

 その子は、ニコッと微笑み、最後の一玉の毛糸を俺に差し出してくる。

 

「いや、君の方が早かったんだから、君が受け取ってくれよ」

 

「気にしないで。私は別の色でもいいから」

 

 そういい、彼女は別の棚にある、微妙に色合いが違う毛糸を手に取る。

 

「そういうが…だったらせめてその毛糸の代金は俺に出させてくれ」

 

「えっ。いやでもそっちの方が貴方に迷惑じゃ…」

 

 女の子にただで、気を遣ってもらうもの気が引けるしここは、あの人たらしの真似をしてみよう。

 

「女の子に譲ってもらうんだからさ、男の顔を少しは立てさせてくれよ」

 

 流石にキザすぎたかな…

 

「ふふ」

 

 鈴を転がすような可愛らしい声で笑ってきた。

 ヤバい、キモい奴って思われたかな…

 

「ごめんなさい。貴方の言動が幼馴染の男の子に似ていたものでつい…」

 

「幼馴染?」

 

 こんな美人と幼馴染なんて、とんでもないリア充がいるもんなんだな。

 すると彼女は俺の顔をじっと見てきて、何かに気づいたように顔の前で手を叩き

 

「貴方ってもしかして、清水さん?」

 

「えっ、どうして俺の名前を知っているんだ?」

 

「やっぱりそうだ!この前、私の担任の先生が元放送部で授業中に放送大会見せてくれたことがあったんだけど、その大会の朗読部門で準優勝してたわよね?」

 

 そういえば、南雲の彼女の白崎も先生が放送大会を見せてくれて、俺が出ててビックリしたって言ってたことがあったけど、もしかしたら白崎と同じ中学だったりかもな。

 

「そうだったんだな。俺の友達の彼女もそう言ってたから、同じ中学だったりするかもな?」

 

 俺が冗談交じりにその事を言うと、その子は何かを考えこむよう仕草をとり、

 

「…もしかして、その友達の彼女って、白崎って名前だったりする?」

 

「そうだけど…やっぱり同じ中学なのか?」

 

 あれだけの美人だし、別の学校に彼氏が出来れば噂にはなるか。

 

「やっぱりそうか…香織は清水さんに迷惑とかかけてないわよね?あの子、たまに周りが見えなくなる時があるからちょっと心配でね」

 

「そんなこ……」

 

 南雲から聞いた、白崎のとんでもエピソードを思い出してしまい一瞬言葉が詰まらせてしまい、するとその子は、まるで白崎の母親のように謝り始めたので

 

「いや、俺が直接迷惑掛かったわけじゃないし、君が……そういえば、名前を聞いてなかったね?改めまして、俺は清水幸利」

 

「そうだったわね清水さん。私の名前は八重樫雫。よろしくね」

 

 合縁奇縁とは言うが、まさにこの大和撫子との出会いを一言で言い表すならまさに奇縁だな。

 

***

 

 俺たちは手芸屋で会計を済ませ、一緒のタイミングで店を出る。

 

「ごめんなさい清水さん。毛糸を買ってもらって」

 

「気にしなくていい。それにさん付けはやめてくれ、同い年からだとなんかむず痒い」

 

「ふふ、わかったわ清水?」

 

「ああ、そっちの呼び方でお願いするよ」

 

 やっぱり八重樫さんは美人だな…

 こんな美人の幼馴染がいるリア充を見てみたいもんだ。羨ましい

 

「ところで清水。今日は親の買い物か何かに来たの?」

 

「いや、新しい編みぐるみを作ろうって思ってな、今日はその材料を買いにだな」

 

「え、清水は編み物出来るの?」

 

 もしかしたら、少し気味悪がられるかと思ったが、八重樫さん別に軽蔑の目を向けずに俺の方を見てくる。

 

「ああ、1年ぐらい前に友達に教えてもらってな。それから、ハマっていった感じかな?」

 

「清水もなんだ、なんだか奇遇ね。私も小学校の時に、幼馴染から編み物を教わってそれから自分でも作るようになったの」

 

 なんとも何でもできるラノベの主人公のような幼馴染だな……ん?

 編み物が出来て、人を誑し込むような言動をする男……

 

「もしかして、その幼馴染って檜山って名前だったりする?」

 

「えっ、どうして知ってるの?もしかして、清水の友達って…」

 

「…アイツの方がやっぱりラノベの主人公だ」

 

「あはは。本当に清水とは不思議な縁があるわね」

 

 ひとしきり八重樫さんは笑い、ちょっと一緒に話そうよって事になり近くあった公園のベンチで話し合うことになった。

 

「ここはね。大介と初めて話した場所なんだ」

 

「アイツと?」

 

 八重樫さんは、小学校の時の話をしてくれた。

 思っていたより重い話であったが、檜山や白崎に助けられたとの事。

 

「アイツらしいな。女の子にハンカチ返してもらわないとね!なんて、歯の浮くようなセリフ小学校の時から言ってたのかよ」

 

「あら、さっきの清水も中々に歯の浮くようなセリフだったわよ」

 

 うぐ…また、ブーメランのように返ってきてしまったか。

 

「八重樫さんもアイツに助けられた口とはな」

 

「私も呼び捨てでいいわよ。『も』ってことは、清水も大介に?」

 

「俺はまあ、助けられたなんて大層なものじゃないがな。でも、編みぐるみを作るようになったり、放送大会に出るようになったのは、アイツのおかげかな」

 

 俺は檜山から俺の声がいいと褒めてもらい、何の因果か放送委員の代打を務め委員の人や先生からも声を褒めて貰って、そこから自分に自信を持てるようになり、大会にでることも決めたことを話した。

 

「初めからなんでもうまくできるわけがないんだからって、アイツに言われて編みぐるみもそこからハマっていってな」

 

「本当に大介らしいね」

 

 檜山を褒めると、自分の事のように喜ぶ八重樫を見て、もしかして八重樫は檜山の事が好きなのかな?

 でも、アイツは中村と付き合っているわけだから…

 なんか、微妙な三角関係な訳か!

 

「なあ、八重樫って檜山のこと好きなのか?」

 

 俺が気になったので聞いてみると、八重樫はうーんと唸ってしばらく考えると

 

「友達としては好きって言えるんだけど…なんて言うか大介は、お兄…いや、お父さんみたいな感じかな?」

 

「それになんか、めっちゃ納得できる。うちの中学じゃあ、『父ちゃん』なんて言われているよ」

 

「でしょ!なんていうか、同い年なのに年上って感じするでしょ」

 

 あの、アイツの見せる包容力というか貫禄の話でさらに盛り上がり、今度は編みぐるみの話とちょっと話すつもりがかなり長い間話してしまったのか、辺りはすっかりと茜色に包まれていた。

 

「次はあのキャラクターを編もう…ってもうこんな時間か」

 

「あら本当、楽しかったわ清水」

 

 夕日をバックに立ち上がる八重樫はまるで絵画からそのまま出てきたような神聖さを兼ね備えた美しさがあり、つい見惚れてしまった。

 

「俺も楽しかったよ」

 

「ねえ清水。連絡先交換しない?」

 

「いいのか?初めて会った男に自分の連絡先教えても」

 

「いいわよ。正直に言うと、こんなに編み物の趣味が合う人もいないし、今度は清水の作った編みぐるみを見せて欲しいしね」

 

「それぐらいなら全然いいぞ。でも趣味っていったら檜山だって……中村のせいか」

 

「悪い子じゃないのはわかっているんだけどね」

 

 俺の言葉に苦笑交じりで告げる八重樫。

 確かに、中村も悪い奴じゃないが、檜山の事になるとちょっとというか大分、ヤバいからな……

 てか、俺の友達の彼女やばい奴が多いな。

 

「そういう事なら喜んで交換させて貰うよ」

 

「ありがとう清水。また連絡するね」

 

 そんなこんなで、その日はお開きとなり俺は八重樫の連絡先を手に入れた。 

 不思議……

 その日のことはまさにその三文字で言い表せる。

 手芸屋で八重樫さんと出会い

 しかも、お互いに檜山との縁があり、共通の友達が彼氏彼女の関係であったりと、まさに不思議であった。

 人の縁は、合縁奇縁とはよく言ったものだがまさか俺が、こんな美人の連絡先を手に入れられる日が来るなんてな……

 やっぱり俺、アイツの事言えねぇわ

 

***

 それから、俺と八重樫はちょくちょく会うようになった。

 

 ある日、喫茶店で待ち合わせをし、

 前に約束したように、自作の編みぐるみを持っていき、中の綿は何を使っているのかとか、ここのかぎ針が使いやすいなどの他愛のない会話で盛り上がったりしていた。

 

「そういえば、この前白崎から、八重樫の誕生日がそろそろって聞いたから、嫌じゃなかったらこれ受け取ってくれないか?」

 

 俺はバッグから、手の平サイズで竹刀を持って袴を着た兎の編みぐるみを渡す。

 異性の初めてのプレゼントが手作りだと重いと思って、オススメのかぎ針セットにしようとしたら、白崎から止められて

「ぜったいに雫ちゃん喜んでくれるから!」と半ば強引にこっちにしたんだがやっぱり気持ち悪がられるかな…

 

「うわ~凄く可愛い!この子作るの大変だったでしょ?」

 

「そうでもないよ。サイズもサイズだからそこまで時間もかからなかったからな」

 

 昨日一晩納得するまでやり直したのはナイショの話だ。

 

「ありがとう清水」

 

 八重樫の笑顔にドキッとしつつも、平常心を装いつつ

 

「そんなに喜んでもらえてよかったよ」

 

 しばらく、俺の作った編みぐるみを観察するように見つつ、俺のこだわりのポイントを的確に見抜いてくれる八重樫とさらに会話が盛り上がり

 

「本当にありがとうね清水。大切にするわ」

 

「是非そうしてくれ。そうじゃないとその子が可哀そうだ」

 

 俺が作った編みぐるみを指さしながら告げると、

 「そうね」と笑ってくれ、俺は思ったんだ。

 

 ああ、これがアイツや南雲が抱いている気持ちなんだろうな。

 

***

 彼の第一印象は…いや第一印聴かな。

 美声と色声を合わせたような今までに聞いたことのないなんて言うんだろか…良い声だった。

 

 でも、何処かで聞いたことのあるような……

 

 あっ!そうだ、前に先生に見せてもらった放送大会に出てた、確か…清水って名前の人

 彼の朗読は何故か聞きいってしまう魅力があったな…

 女性にはない、途轍もない魅力を感じる声…

 

 なんと清水は、香織の彼氏の南雲君と知り合いで、更には大介や恵里といった私の友達と知り合いだったのに驚いたわね。

 なんとも奇妙な出会いだとは思う。

 しかも、清水は編み物が趣味だと言う。

 あんまり、編み物が趣味の人と出会えないから嬉しかった。

 

 清水から大介の事を好きかって聞かれたときに、もう一度彼について考えてみるが……

 

 やっぱり、異性として見れない感じだな。

 だって小学校の時に恵里と会った時に、彼女を見て私は思ったんだ。

 きっと私が大介に持っている感情は恋愛感情ではないって。

 

 確かに小学校の時に助けて貰って感謝はしてるけど、香織や恵里を見ていると、以前、光輝に抱いていた感情も恋愛では無いと感じるほどだ。

 あそこまで、一人の異性にあそこまで感情を露わに出来ることが出来るのだろうかと心配になるほどだ。

 

 大介の件もあって、異性の友達を作るのには特別抵抗はなかったし、大介には恵里がいるから誘い辛かったから裁縫仲間が出来るのもいいと思って連絡先を交換したんだけど、この突撃精神はきっと香織の影響だな。

 

 それから私と清水は、編み物と言う共通の趣味で頻繁ではないもののよく会って編み物をする男女という、なんとも不思議な仲になっていった。

 

 そんなある日、清水からプレゼントを貰った。

 竹刀を持った兎の手編みのストラップ

 お礼を言うと、清水は微笑み兎のストラップを指しながら、誰もが聞き惚れそうな声で

 

 是非そうしてくれ。そうじゃないとその子が可哀そうだ

 

 ドキッ

 

 あれ?なんだろう

 ……気のせいだよね。流石に私は香織みたいに一目惚れ……しないよね?

 

 

 

 




 ハジカオのとんでもエピソード
<欲しいプレゼント? その2>
男性Side
檜山「普通、自分の下着を相手に送るわけないだろが!
ハジメ、お前はもうちょい彼女を疑うということを覚えた方が…」

ハジメ「もちろん、洗いたてのを送ったよ」

檜山「そういうことじゃねぇ!」

清水「…おい南雲。つまりお前も白崎からその…」

 顔を真っ赤にするハジメ

檜山・清水「……はぁ」

女性Side
恵里「香織ちゃんは、どんな下着を南雲に送ったの?」

香織「えっとね、恵里ちゃんに言われた通り持っている奴で一番セクシー系にしたよ!もちろん履き…」

雫「お願い香織、私をあなたの親友のままで居させて」ぐすん


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幕間 自分の気持ち

ハジカオとシミジスの初体験書いてたら、これってシミシズの惚気書かないと分かりにくいなってなりまして急遽突貫で作成した次第です。


 檜山の家でのある一幕。

 

 檜山と俺が南雲の恋人である白崎さんのとんでもエピソードを聞いていた時。

 

「そういえば、清水は八重樫さんと付き合っているんだって?この前、か…白崎さんが言ってたけど」

 

「そうなのか?」

 

 南雲が急に俺に話を振り檜山も聞いてきたが…まあ隠す必要もないか。

 

「ああそうだよ」

 

「ここでサラッとそうだよって言える辺りは、流石清水って感じだな」

 

「別に隠す必要も無いし、南雲と違ってやましい事をしてないしな」

 

「僕は別にやましい事なんてしてないよ!」

 

「いやいや、普通、自分の下着を送るかって!」

 

「しかも、彼女から送られた下着を親にバレないように隠し場所相談を友達にしたりしない」

 

「ぁぅ…」

 

 俺と檜山が南雲をからかい、笑っていると

 

「僕の事より、今度は清水の事を聞かせてよ!」

 

 南雲が恥ずかしかったのか顔を赤くしながら、話を自分からそらすために俺に話を振ってくる。

 

「ハジメをからかうのはこれぐらいにして、清水と八重樫さんはどっちから告白したんだ?」

 

 檜山も俺と雫の事を聞いてきたからまあ素直に答えるか。

 

「俺からだな」

 

「「おお~」」

 

「何がおお~だ。別に俺から告白してもいいだろ」

 

「何処で告白したの?」

 

 母親が少女漫画家だからか、こういう話に興味津々って感じで聞いてくるな。

 

「公園だったな。人通りが少なくて静かで編み物するのに丁度よくて、雫とはそこでよく会ってたんだ」

 

 そこで俺は思い出していた。

 俺が告白した日の事を…

 

***

「えっ!雫ちゃん今なんて!」

 

「好きな人がいるの!?」

 

 私の部屋で、香織と恵里が私に驚いた表情を浮かべ聞き返しくる。

 

「いや、まだ好きなのかどうなのかが分からないっていうのかな…」

 

 そう、私は今彼氏がいる二人の親友に相談をしている最中だ。

 

「清水君って確か、恵里ちゃんと同じ中学の男の子だよね?」

 

「うん。僕も清水がまさか雫ちゃんと知り合いだなんて知らなかったよ」

 

 清水幸利…私が今気になっている男の友達の事だ。

 

「ねえねえ、雫ちゃんはどうして清水が気になっているの?」

 

「私も聞きたい!」

 

「そうね…初めて出会ったのは手芸店だったの」

 

 私は清水との出会いを話し始めた。

 

 初めて会った時に連絡先を交換した事や、そこから趣味が一緒で編み物をした話、彼から初めてプレゼントを貰った話

 

「――って事があったんだけどね。その兎の編みぐるみを渡す時なんて、香織に教えてもらったイケボってこの事言うんだろうなって分かるぐらいかっこよくてね。この前は剣道の試合の応援に来てくれて、清水が応援してくれると不思議と力が湧いてくるって言うのかな…ほら、清水って放送部で、とってもいい声なのよね。普段、一緒に編み物をしてる時に編み目を数えるボソッとした声もいいんだけど、堂々とした声も良くって、ちゃんと男の子らしい部分もあってねこの前なんて…」

 

「雫ちゃん……それはもう恋だよ!」

 

「僕もそう思うよ!」

 

 いけない、ついつい長話しちゃったわね。

 

「そうなのかな…」

 

「そこまで清水の事、気にしてるのに何で僕たちに相談なの?」

 

 恵里が不思議そうに聞いてきたので、私は正直に答える事にした。

 天之川君の事や…大介の事を。

 

「そうだったんだね」

 

「ごめんなさい恵里。でも、今は大介にそう言った感情は持ってないから」

 

「別に気にしなくていいよ。大介は人たらしでみんなの父ちゃん何て言われるぐらいにはお人よしだからさ」

 

 私が謝ると、恵里は笑いながら答えてくれた。

 

「僕からのアドバイスをすると、清水の事をどう思っているのかわからない時は夜、ベッドの上で考える事かな」

 

「ベッドの上?」

 

「そう。僕はさ大介に助けられて、感謝もしてるし、もちろん異性として愛しているんだ」

 

 恵里が臆面もなく“愛”と言う言葉を使っている事に、私と香織が顔を赤らめた。

 

「僕もさ、最初はこの気持ちが一時の感情の昂ぶりかなって思ったこともあったんだけど、夜ベッドの上で大介の事をふと考えて、もし大介が僕から離れていったらって考えたらさ、涙が出てきたんだよね」

 

「それわかるよ恵里ちゃん。私もハジメ君と出会って、他人の為に土下座までしてくれる優しい人がいるんだって思って、それで連絡先を交換しても、もしハジメ君が別の女の子と付き合うようになったらって思ったら居ても立っても居られなくなっちゃって」

 

 清水が別の女の子と…

 

 チクッ

 

 あれ何だろう今の?

 

「僕と香織ちゃんが特殊なだけかも知れないけどさ、一目惚れだろうと、一聴惚れだろうといいんだよ。人との出会いは一期一会って言うじゃん。運命は意外にそこら中にあるものなのかも知れないでしょ?」

 

「恵里…」

 

「私も、雫ちゃんが後悔しないよう全力で応援するよ!何たって、清水君の友達の彼女だから色々手回しは出来るよ!」

 

「香織…」

 

 二人が私の相談に真剣に答えてくれて嬉しいと思っていると、

 

「でも、うかうかしてると清水に彼女が出来るかもだけどね」

 

「…えっ?」

 

「どういう事、恵里ちゃん?」

 

「雫ちゃん達は別の中学だから知らないのか。清水ってファンクラブあるよ?」

 

 ファンクラブ!?

 

「この前なんて、ファンクラブの女の子からファンレター貰ってたし」

 

 ファンレター!?

 

「清水君って結構人気者なんだね」

 

「スタイルも顔も悪くないし、人当たりもよくて頭も良いからね。この前の放送大会で準優勝もして、元々水面下で活動してたファンクラブが活動的になったって感じかな?」

 

 確かに清水はいい声で、聞き惚れてしまう人が居てもおかしくないけど……

 

「じゃあさっき恵里ちゃんが言ってた通り、うかうかしてると清水君に彼女が出来るかも知れないね?」

 

 チクッ

 

 まただ……

 

「大丈夫だよ雫ちゃん。確かまだ(・・)清水に彼女は居ないはずだから」

 

「そうだね恵里ちゃん。私もハジメ君から聞いた話だとまだ(・・)いないみたいだしね」

 

 まだって事は、もしかしたらいつかは……

 

「そう言えば、明日清水と約束してるんだっけ?」

 

「えぇ、公園で一緒に編みぐるみを作る約束をしてるけど…」

 

「だったらさ、その時にでも清水にさりげなく聞いてみたらいいんじゃない?」

 

「そうだね。恵里ちゃんの言う通りに清水君にいま彼女が居るのかとか、好きな人が居るかとか聞いてみたらいいよ!」

 

「恵里…香織…そうね、明日それとなく聞いてみるわ」

 

 二人から、頑張ってや応援してるねと言って貰いその日はお開きになったのだが……

 私は清水の事をどう思っているのかしら…

 気の合う友人でいたいのか…

 それとも清水と恋人になりたいのか…

 よくわからない…

 でも清水に恋人が出来るかもって考えると…

 

 チクッ

 

 まただ…この心に針が刺さったような痛み…

 これが恋なのかしら?

 

 この前の剣道の試合で応援してくれた時は嬉しかったな。

 私は剣道着を入れるカバンに付けてあるストラップを手に取る。

 袴を着て、竹刀を持った兎の編みぐるみ

 清水が私に送ってくれたプレゼント

 

 是非そうしてくれ。そうじゃないとその子が可哀そうだ

 

 うぅぅ…ベッドの上で私は悶々としながら中々眠りにつけなかったのは言うまでもなかった…

 

――――――――――――――――――

――――――――――――――――

――――――――――――――

 

 悶々としながら迎えた、清水との待ち合わせの日。

 

「どうした八重樫、寝不足か?」

 

「いえ清水、大丈夫よ?」

 

 結局全く寝れなかった…

 

「気分が悪いなら、今日はやめておくか?」

 

「いえ!大丈夫だから…ほらいつものベンチに座って今日は何を編みましょうか?」

 

 このまま帰られると今日も寝不足になってしまいそう!

 

 そんなこんなで、いつもの清水との手芸会が始まった。

 

 人通りが少ない公園でかつ、ちょっと入り組んだところにあるこのベンチは二人の特等席となっている。

 

「…ねぇ清水ちょっといいかしら?」

 

「どうした?」

 

「清水って…………」

 

「八重樫?」

 

「ううん何でもない!」

 

「?」

 

 うう…やっぱり聞けない…

 もしいるって言われたらどうしよう……もう清水と遊べなくなるのかしら…

 

「…八重樫って好きな人いるのか?」

 

「え・・・えぇぇぇ!」

 

「ごめん急に…!…ほら!八重樫美人だし恋人の一人や二人ぐらいいるのかなって……」

 

「一人も二人も居ないわよ!それよりも好きな人って……そういう清水はどうなの?」

 

「俺は…居るよ」

 

「えっ……」

 

 そっか…清水好きな人いるんだ……

 そうだよね、清水だって男の子なんだし好きな人が居ても……

 

 ズキッ

 

 あ…今気づいちゃったな…

 清水に好きな人がいるって言われて気づくなんて、私って鈍感なのかな…

 

 私は清水が好きだったんだ

 

 編み物が好きなところも、声がカッコいい所も、私を女の子として見てくれる所も好きだったんだな…

 私も香織の事言えないな…

 

「…へぇーそうなんだ。ねぇ清水その子ってどんな子なの?」

 

「…その前に聞いておきたいんだけどさ、八重樫は好きな人がいるのか?」

 

「私?居ないわよ」

 

「そっか…残念だな…」

 

 えっ…私に好きな人が居なくて残念ってどういうことなんだろう?

 

 そういうと清水は深呼吸をして、立ち上がりベンチに座る私に振り向き誰もが聞き惚れてしまいそうな声で

 

「俺の好きな人は八重樫雫…君が好きだ」

 

 清水は顔を真っ赤にさせながら私に告白してきた。

 

「……グスッ」

 

 あれ…涙が…

 

「ごめん八重樫!…嫌だったよな…」

 

 違う…でもうまく声に出来ない…

 

「すまなかった。さっきのは忘れてくれて…」

 

「…違う!」

 

 静かな公園に私の声が響いた。

 

「…私も、清水が好きです」

 

 涙の理由は分かっている…これは私の気持ちが叶ったうれし涙だ。

 

「…よかったぁ」

 

 緊張が糸が切れたようにそう言うと、清水は私の隣に座ってきた。

 

「普段は自信がある清水も緊張なんてするのね」

 

「そりゃするよ。人生で初めて好きな子に告白するんだからな」

 

「そっか…ねえ清水?」

 

「どうした?」

 

 ちょっとはわがままになってもいいわよね

 

「……雫」

 

「えっ…」

 

「ほら、私たちって今から恋人同士でしょ?だったら名前で呼んで欲しいな」

 

「何か、白崎みたいだなその感じ」

 

「いいでしょ!ほら、お願い清水?」

 

 そして私は後悔することになった。

 

 清水は一つ咳ばらいをし、私に囁くように私の名前を呼んでくれた

 

「雫、好きだよ」

 

「~~~~~~~!!!!」

 

 これヤバい…耳が幸せってこの事を言うのね…

 

***

 

「――こんな感じだったな」

 

 俺が告白した時の事を言い終えると、

 

「何かこれぞ青春みたいな告白だな」

 

「今更ながら少しキザ過ぎたとは思うがな…」

 

「いや、その声なら許される奴だよ!」

 

 声で許されるのか?

 

「でも、その声で告白されたら男でもコロって靡きそうだな」

 

「檜山…冗談でもやめてくれ。お前が言うと本当になりそうで困る」

 

「でもよかったよ。白崎さんも八重樫さんが最近悩んでいるのを気にしてたみたいだからね」

 

「二人が幸せそうならそれがいいしな」

 

 友達が素直に祝福してくれるのは嬉しいな。

 

「まあ、南雲とは違って清いお付き合いって奴かも知れないがな」

 

「うぅ…もういいだろ!」

 

 そう言ってまた檜山の部屋に笑い声が溢れてきた。

 俺にも彼女が出来るとはな、やっぱり檜山の事言えないな。

 そう、心の中で呟くが何とも言えないいい気持ちだな。




 ちなみに、香織と恵里は八重樫さんから相談を受ける前から、八重樫さんの気持ちを知っていたのでわざと煽っています。


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16話 異世界召喚……いきなりですか!

 幕間に3話使うだと……

 ようやく、ここまでたどり着くことが出来ました。
 活動報告にて、皆様のへの感謝をつづらせて頂きましたので、興味のある方は読んでみてください。


 月曜日。それは一週間の内で最も憂鬱な始まりの日。きっと大多数の人が、これからの一週間に溜息を吐き、前日までの天国を想ってしまう。

 檜山大介(佐藤)もその例外にもれず、今日から始まる一週間いつトータスに召喚されるのかわからないというストレス……

 ストレスの原因はそれだけではないが…………

 

「檜山遅いぞ!クラス委員長なら、南雲と香織や清水と雫の不純異性交遊を取り締まるべきだ!」

 

 俺に朝から突っかかってくるイケメン

 

「……天之河、別に学校内でキスとかしているわけじゃないんだから分別を守って付き合う分には……」

 

「ハジメく~ん!ちゃんと朝ごはん食べてきた?」

 

「ありがとう、白崎さん。昨日は父さんの仕事の手伝いも早めに上がらせてもらったからちゃんと起きて朝ごはんも食べてきたよ」

 

「ふふふ、偉いねハジメ君!」

 

 俺の目の前には、朝からイチャイチャラブラブして手を繋ぎ登校しているハジカオペアがいる。

 

「檜山!これのどこが分別を守っていると言えるんだ!俺は副委員長として正しい事を…」

 

「…だったら本人に言えや」

 

「大丈夫、大介?朝から光輝君は元気ね」

 

「全くだな。月曜の朝ぐらいもう少し静かに出来ないのか」

 

 次に八重樫と清水が俺の目の前に現れ、俺を労わってくれるが……

 

「八重樫、清水よ。こいつが元気な原因の一端はお前らにもあるんだぞ」

 

「何故だ?さっき檜山が言っていたが、別に学校内ではちゃんと分別を守っているから天之河にとやかく言われる覚えはない」

 

「別にやましい事なんてしてないわよ?」

 

 原作とは違い、八重樫さんはハジメハーレムに入ると思っていたが、まさかの清水と付き合う様になっている。

 原作の流れとは違うが、2人が幸せそうだし特に問題は無いだろう

 

「大介ー!おはよう!」

 

 そして、俺を後ろから抱き着いてくるのは、中村恵里、俺の彼女だ。

 

「中村、学校は勉強の場だぞ!男女が抱き着き合う場では…」

 

「エリリン、おはよう!」

 

「おお!鈴もおはよう!」

 

 天之河の事を無視し、恵里は後ろから現れた谷口鈴とあいさつをし初め、俺にまた後でね~と手を振りこの場から離れていく。

 

「朝から、光輝と大介は仲がいいな!」

 

 そう言い、ガタイの良い男…坂上龍太郎が俺の肩をバンバンと叩いてくる…めっちゃ痛い。

 

「坂上…お前、天之河の友達だろ。こいつを止めてくれ」

 

「えっ?今、光輝が間違っているのか?」

 

「いや、ただただこいつを引き取って欲しい…」

 

 他のクラスメイトからも、

 

「檜山君。この提出書類ってあなたに渡しておけばいいんだっけ?」

 

「大介。クラスのこの備品なんだけど直せるか?」

 

「大介君、今度天之河君の連絡先を教えてよ~」

 

「檜山く~ん、みんなが私を子ども扱いするの」

 

 なんてみんなが好き勝手言って来るが、俺はクラスの委員長であってなんでも屋じゃないんだぞ……

 

 確かに、俺は死亡フラグを避ける為に、みんなに恨まれないよう出来る限り雑用などを受けるようにはしたが、まさかこんな事になるなんてな。

 

 入学早々、天之河からの

 

「檜山!俺はお前に絶対に勝つ!」

 

 から始まり、俺は最悪の形で入学のスタートを切り、クラスメイトから奇怪な目で見られ、クラスメイトも原作と一緒だったが、主要メンバー以外は顔と名前が一致しなかったが覚えていくしかないな。

 小悪党組もいたが、まあ中心だった俺が居ないからか、ハジメや清水の彼女持ちの小言を俺に言うぐらいに収まっている。

 俺の「わーった、わーった。俺からゆーとくから」で収めている。

 助長する奴がいなければ、こいつらは気にしなくても大丈夫だろう。

 

 クラス委員長決めの時にも、天之河が立候補し『まあ勝手にしてくれれば』と思ったら、愛子先生からの中学の時の内申点の良さや、八重樫さんからの他薦もあってか、俺がクラス委員長になってしまっている。

 前世の人の好さのせいか、頼みごとを断れず今日の朝のようなことが入学から続いている。

 

 しかも、いつ異世界召喚されるかもわからないため毎日胃を痛める日々を過ごしている。

 

***

 そんな日々が続き、ある日の昼食を、俺が恵里達と昼食を食べていると

 ハジメ君が珍しくゼリー飯で昼食を済ませており、白崎さんから弁当を分けて貰っているが……

 ん?ゼリー飯だと…まさか!

 

 俺たちの足元に純白に光り輝く円環と幾何学模様が現れ、その異常事態には直ぐに周りの生徒達も気がついた。全員が金縛りにでもあったかのように輝く紋様――俗に言う魔法陣らしきものを注視する。

 

 恵里は俺に抱き着き震えているが、そんな心配をよそにその魔法陣は徐々に輝きを増していき、一気に教室全体を満たすほどの大きさに拡大した。

 

 自分の足元まで異常が迫って来たことで、ようやく硬直が解け悲鳴を上げる生徒達。未だ教室にいた愛子先生が咄嗟に「皆! 教室から出て!」と叫んだのと、魔法陣の輝きが爆発したようにカッと光ったのは同時だった。

 

 ついに来てしまった……

 ここから始まるトータス生活が!

 そして俺の死亡フラグをへし折る旅が始まるのであった。

 

 

 

 

 




 ついに来ました、異世界召喚。
 がんばれ檜山(佐藤)!君ならでぇーじょぶだ
 でも、おまけは書く

<檜山の事件簿>
檜山「うーん…」

清水「どうしたんだ難しい顔して?」

ハジメ「何か悩み事?」

檜山「いや、この前なんだけどよ、これを貰ってな」ペラ

清水・ハジメ「ラブレター!?」

檜山「ああ、恵里がいるからどう断ろうか思って待ち合わせ場所に行ったら、何故か恵里がいて『その子なら、僕がいるから駄目だよ』って先に断ったらしいが、それ以来その子が俺と目が合うと逃げるよになってな。
やっぱ俺そんな目つきが悪いかなぁ」シュン


ハジメ「これって清水に聞かせてもらった清水の中学校の7不思議の一つなんだよね?」
清水「ああ、檜山に色目を使うとこの世のモノとは思えない恐怖を味わう…まさか犯人がこんな身近にいるとはな」ヒソヒソ

檜山「はぁ~」シュン


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17話 予定と書いて、未定と読む

 檜山の気苦労は加速する。


 遂にやって来ました、異世界トータス

 

 俺の腕にしがみつき、不安そうに俺を見つめる恵里が居るが、周りのクラスメイトも似たり寄ったりの反応をしている。

 

 ハジメ君は白﨑さんを守るように前に立ち、辺りを見渡し状況を把握しようとしている。

 

 清水は八重樫さんに『大丈夫か?』と声を掛け落ち着かせようとしている。

 

 するとやって来ました、イシュタルさん。

 「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」

 生で見ると、うさん臭さが半端ねぇ……

 いかれた宗教の教祖感が強すぎる……

 

***

 その後の流れは原作通りに、大部屋に通され、やって来ましたメイドさん達。

 クラスメイト男子たちはテンションが上がっているが、女子はそれを冷たい目で見ているな。

 恵里よそんな目でメイドさんを見てはいけません。完璧なメイドさんが表情を崩して『ひっ…』なんて言っちゃったよ。

 遂に来ちゃったよ……

 俺が殺されるかどうかが、俺の言動一つで変わってしまうだろう。

 

 しかし!この日のために俺は脳内会議にて対策済みなのさ……

 

 この後の流れは、

 イシュちゃん「戦争参加して?」

 ↓

 勇者(笑)「いいよ!」

 ↓

 イシュちゃん「よっしゃ!後でステータスはかってね」

 

 こうなるはずだ。

 

 よくよく考えればクラスメイト達も場に流されたとはいえなかなかに狂気の沙汰だな。

 ここで大事なのは、まずは原作通りに進めることなんだと脳内会議ではじき出したんだ。

 

***

「異世界に飛ばされた後の事を考えましょうか?」

 

 前回は強制閉廷をしてしまった、脳内会議

 しかし考えない訳にはいかない為、議長が議題をふる。

 

「飛ばされた後って決まってんだろ!殺されないように……はっ、ハジメ奈落問題か!」

 

「今まで、考えるのを放棄してきた問題ですね」

 

 強気の気づきに、賛同する真面目

 

「考えてみたら~ハジメ君を落とすの原作だと檜山だもんね~」

 

「でも…そんなことしたら、殺害フラグが確定しちゃうんじゃ…」

 

「あったりまえだ!しかも、奈落にハジメが行かないと最強にならずに日本にも帰れないんだぞ!」

 

「ある意味、別の意味でもバッドエンドですな」

 

「はい。ここでは、是が非でもハジメ君には奈落に行ってもらう必要があります」

 

 一同がこの問題に頭を抱えるが、これといった解決策が出てこない…

 

「…ここは賭けになるけどさ~」

 

 気楽が口を開き、一同が振り向く

 

「原作を辿るってのはどう~」

 

「原作を辿る…?」

 

「うん。今僕たちが気にしてるのは、どんな過程を辿ろうと、『運命的な力で殺される』って未来が待っているかもだから対策してるわけじゃない~?」

 

 まさにその通りだ。

 恵里と彼女になったり、ハジカオにしたり、清水と八重樫さんが付き合ったりとしているが、実際には、こうして異世界に呼ばれクラスメイト達も一緒だったりと原作の物語通りに進んでいる。

 この状況を一言で表すならまさにこうなる『運命』であった。

 

「だからこそ対策を積み重ねているのでは?」

 

「だからさ~初めのうちは特に気にせず原作の流れに身を任せればさ、ハジメ君は奈落に行く運命が待っているじゃないかな~?」

 

「でもそれってあまりに分が悪い賭けなんじゃ…」

 

「そうだぜ!それこそ、ハジメが奈落に行かないと最強にならずに…!」

 

 弱気の発言に強気は賛同するが、

 

「いいえ。悪くないかもしれません」

 

「えっ…どういう事…?」

 

「ハジメ君が最強になりこの世界の神と対峙し、日本に帰るという物語のはずです」

 

「うん。つまりさ檜山が落とさなくても、どうにかなる可能性が高いってことだと思うよ~」

 

「あれか!主人公補正ってやつか!」

 

 強気の発言に他檜山がそれだ!と頷き

 

「ここはハジメ君の主人公補正に掛けてみましょうか?」

 

「「「「異議なし」」」」

 

***

 こうして俺は、初めのうちはイシュタルの言う事には逆らわず、かといって賛同はせずに物語に身を任せることにする。

 そろそろ勇者(笑)が戦争参加表明をし、坂上達…今の八重樫さんや、白﨑さんは参加を表明はしないかもしれないが、他のクラスメイト達は参加を表明するはずだ。

 

 「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということですな」

 

「そ、そんな……」

 

 愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とす。周りの生徒達も口々に騒ぎ始めた。

 

 来たぞ、原作の流れが!

 

「うそだろ? 帰れないってなんだよ!」

 

「いやよ! なんでもいいから帰してよ!」

 

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

 

「なんで、なんで、なんで……」

 

 パニックになる生徒達。

 

 勇者(笑)が立ち上がりテーブルをバンッと叩いた。その音にビクッとなり注目する生徒達。勇者(笑)は全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

 さあ!言ったれ勇者(笑)!戦争参加すると!

 

「イシュタルさん……あなたは間違っている!そうだろ、檜山!」

 

 そういうと、天之川はイシュタルさんに指を突き付け、俺に賛同を求めてくる。

 その言葉と共に、クラスメイト達も俺を見つめてくる……

 

 えええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!

 

 なんで!

 どうなってるんだ!

 

「いきなり、呼び出しといて戦争に参加しろだって!そんなのは正義じゃない!そうだろ、檜山!」

「へっ、光輝の言うとおりだ!檜山、このおっさんに言ってやれ!」

 

 その「そうだろ、檜山!」止めてぇぇ

 やべぇ、イシュタルさんが俺を見てくる。

 『お前が決定権をもっておるか?』みたいな目で見てくる……

 

 周りのクラスメイト達も、『言ったれ、檜山!』と囃し立て、坂上に至っては、俺もカチコミしたるで!みたいに俺のそばに寄ってくる。

 愛子先生や恵里達は俺を心配してくれるが、どうする!?

 

 俺の一言で、俺や恵里達、そして愛子先生やクラスメイトの運命が決まるだと!

 考えるんだ、この状況を打破する方法を!

 

「……あの?イシュタル…さん?」

 

「どうしましたかな?たしか…ヒヤマと言いましたかな?」

 

 まあ、クラスの中心だと思ったやつがこんなやつかよ。

 みたいな目で見てくるなよ、傷つくだろ…

 だが、前世で身に着けた社会人スマイルと就職活動と現場監督で身に着けた会話術でイシュタルと対話する。

 

「ええ、改めまして。私は檜山大介と申します。日本ではみんなのクラスの委員長を務めております」

 

「クラスイインチョウ?」

 

「簡単に言えば、クラスのリーダーです」

 

「成程。ならば貴方が戦争に…」

 

「しかし!」

 

 俺はわざとイシュタルの発言を遮る

 

「いきなり申し訳ございません。私はクラスのリーダーポジションにはいるのですが、私の国では、リーダーの一存よりも、全員での話し合いを重きを置いております」

 

「話し合いなどに意味はありますまい。我がエヒト様のお導きがあればよいはずですぞ」

 

 なかなかに盲目的な考えで困るがここは…

 

「しかし、それはあくまでこの国の考え方でございます。私は呼び出される前の国に17年暮らしておりましたが、この国に来てまだ1時間ほどでございます。まだ、この国に愛着もなければ、執着もございません。ましてや、私の国では一神教ではなく、八百万の神々がおり、様々な神を敬う国です」

 

 俺の発言に、あからさまに不機嫌な顔をするイシュタル…

 よし、狙い通りだ!

 

「ですが、我が国では『義理人情』を大切にします」

 

「ギリニンジョウ?」

 

「言い換えれば、『困っている人は見過ごせない』という事です」

 

「良い風習ですな」

 

「なので、イシュタルさん。ここは一つご相談なのですが、今一度、クラスメイト達と話し合いをさせて頂きたいのです。もちろん、先ほどの件は前向きに検討させて頂いた上での話し合いでございます」

 

「前向きにですか……」

 

 俺の言葉に引っかかったみたいだがここで畳みかけないとな

 

「エヒト様には申し訳ないのですが、天之川が言ったように、いきなり呼び出され、戦争に参加しろとは流石に飲み込めません。戦争とは、自分の意志とは関係なく死が付き纏うものです。ここで簡単に参加すると言った方がエヒト様並びにイシュタルさんにもいつか必ず迷惑かけてしまいます」

 

「しかし、勇者様や同胞の方たちにもエヒト様のご加護があるのですぞ?」

 

「だからこその話し合いなのでございます」

 

 俺はわざと、イシュタルにだけ聞こえる程小さな声で話す。

 

「先ほどは前向きにと言いましたが、クラスメイト達を私は説得するつもりでございます。もちろんエヒト様のご意思に沿った、ね。」

「!」

 

 一度落として上げる…何度も使えない手だが初回ではなかなかに効く手のはずだ。

 

「あと、私達の代表は、あそこにいる愛子先生でお願いいたします。また、戦争に参加しないと表明したクラスメイトたちの安全の保障並びに身分の保障も、えっとここにメモ帳がございますのでイシュタルさんの一筆を添えて頂き、サインの方も……」

 

 俺の言葉にイシュタルは急に、にこやかになり話し合いの部屋を用意して頂く流れとなった。

 まあ、俺は嘘は何一つ言っていない。

 エヒト様のご意思~?

 そんなのは原作勇者(笑)バリばりのご都合解釈してやるから安心してくれや、イシュちゃん。

 まあ、死亡フラグが立つかもしれないがみんなの安全に比べればまだ安いはずだ。

 しかし、天之川が思ったよりまともになっててビビったわ。

 

 まともになってビビるっていったいなんなんだろうな、後はクラスメイト達の話し合いでどうなるかだな…

 

 

 

 




 次回はオリジナル天職が出てきます。

<恋人にして欲しい恰好>
~男性Side~
檜山「…バニーガール」

恵里「知ってるよ!」←バニー恵里

檜山「!?」

~女性Side~
恵里「なんでもいいけど、生まれたままの姿でもOKだよ?」

檜山「!?」


 


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18話 予想外過ぎる出来事には人間って脆いよね

 前話のあとがきで書いたようにオリジナル天職が登場します。
 そして檜山の胃にさらなるダメージが…
 


 イシュタルさんに、部屋を用意してもらい、クラスメイトと愛子先生以外には退出してもらい、話し合いを開始する。

 

「檜山!どういうつもりだ!戦争に参加するなんて!みんなを危険にさらす気か!」

 

 開口一番に口を開いたのは天之河か…

 原作だとその危険に晒した張本人なんだけどな

 

「何のことだ?」

 

「とぼけるな!さっきのイシュタルさんとの会話忘れた訳じゃないだろ!前向きに検討するなんて言ってどういうつもりだ!」

 

 天之河の言葉に他のクラスメイトも、同調し俺を糾弾しそうになるが、

 

「何言ってんの?大介は、『戦争に参加する』なんて一言もいってないじゃん」

 

「その通りだな」

 

「うん、僕も檜山の言葉をよく聞いていたけどこっちが不利になるような事を一言もいってなかったじゃないか!」

 

 恵里と清水、そしてハジメ君までが俺を庇ってくれる。

 

「そうなのか?」

 

 坂上がよくわからない感じで見てきて、天之河に同調しそうになっていたクラスメイトも同様に俺に説明をしてほしそうに見てくる。

 

「恵里たちが言ってくれたように、あのイシュタルさんとの会話で俺は一度も『戦争に参加します』なんて言ってないし、みんなの身を保証してもらうための署名までしてもらったんだ」

 

 みんなが俺の言葉に湧き、だったら戦争に参加せずに、エヒトって神様に帰して貰えるようにしようと言うがそうは問屋が卸さない。

 

 原作でもそうだが、イシュタルさんも『エヒト様は無下にすまい』の一点張りでつまり、帰れるかどうかはこっちの責任ではないと言っているの同様である。

 俺がこのことを伝えると、クラスメイト達に動揺が走る。

 

「なんだと!やっぱり、あの人は悪い奴なんだな檜山!こうなったら俺と檜山が抗議をしに…」

 

「待たんかいドアホ」

 

 勝手に一人走りしそうな天之河の首根っこを掴み、引き留め坂上に抑えてもらうようにする。

 

「天之河、ここでイシュタルさんに逆らったら、せっかく貰ったこの署名に意味がなくなるんだぞ」

 

「なんでだ!その署名がある限り、イシュタルさんも無視はできるはずがないだろ!」

 

「だって考えてみろよ。こんな紙切れに効果があるのは、俺たちがこの国の為に何かをしているときだけだろ?」

 

 原作とは違い、天之河が少しまともなせいでというか、おかげなのかはわからないが、クラスのみんなも戦争に参加することに関して後ろ向きというか、反対しているのが現状だ。

 そのせいで、今のクラスメイト達の立場が危ういのも事実であるのが悩みの種だ。

 

「どういうこと大介?」

 

 恵里が心配そうに俺を見てくるが、俺は今の現状を酷かもしれないが素直に伝えることにする。

 

「みんな考えてみてくれ。今、俺たちは全く知らない場所に誘拐され、元の場所に帰る手段も今のところなく、身の安全もない。しかも、戦争に参加して欲しいって教会の教皇様が言っているんだぜ?もし、エヒト様の言う事なんて聞けませんなんて言ってみろ、その時はきっと、この国を追い出されるか、処刑されるかの2択だ」

 

「そんな…」

 

 白崎さんの言葉にみんなが反応するように、ざわざわとし始めるが、ハジメや清水は何かを考えるよう仕草を取り

 

「檜山は何か考えがあるの?」

 

「そうなのか檜山!」

 

 ハジメの言葉に天之河が反応し、俺を見てくる。

 

「考えというか、ここはみんなで戦争に参加するふりをして欲しいんだ」

 

「参加するふり?」

 

「ああ、実はさっきイシュタルさんにだけ聞こえるように言ったんだが、俺はみんなを説得して見せるって言ったんだ。そこで、この話し合いの後に俺に口裏を合わせて欲しいんだ、『エヒト様の意思を尊重し、皆様を助けたいです』ってな」

 

「口裏を合わすって、おい檜山もっとわかりやすくいってくれ」

 

 坂上の言葉に他のクラスメイトも頷き始める。

 

「簡単に言うと、イシュタルに俺を信頼させたいのさ。こいつは本当にクラスのリーダーで、短時間でみんなを説得させ、エヒト様の意思まで理解してる奴だってな」

 

「なるほど。そうすれば、イシュタルは檜山に頼めば、クラスをある程度操れると思い込んでくれ、さっき書いて貰った紙に力が持つわけだね」

 

「その通りだハジメ。もしかしたら、戦争の訓練なんてものがあるかもしれない…みんなには迷惑をかけてしまうだろうが、みんなの身の安全が保障されるまでは俺を信じて欲しい。頼む!」

 

 俺はみんなに頭を下げる。

 

「僕は大介を信じるよ!」

 

「恵里…いいのか?ふりとは言え、戦争に参加することになるんだぞ」

 

「今更何を言っている、俺達だけじゃどうしようもなかった状況を変えてくれたのは間違いなくお前だ檜山」

 

「清水…」

 

「私も大介を信じるわ」

 

「八重樫…」

 

「僕も檜山を信じるよ」

 

「ハジメ…」

 

 他のクラスメイト達も俺を信じると言ってくれ、天之河も『そこまで考えて檜山は…流石俺のライバル』って言っていたがまあ気にしない方向で行こう。

 

「私は、みんなの先生として恥ずかしいです。私だけだったらみんなをまとめ上げることはできなかったかもしれません…」

 

「愛子先生何言ってるんですか。今、頼りになり信頼できる大人は先生だけなんですよ?だろうみんな!」

 

 俺の言葉を皮切りに、クラスメイト達も愛子先生を褒め先生にも明るさが戻っていき、みんなで戦争に参加するふりということで話し合いは決着が着いた……

 

 

 

 ミッションコンプリィィィィトォォォォォ!!!

 いやーよかったよかった。

 天之河のせいで、原作の流れに持っていけないかと思ったが、何とか戦争に参加するふりという、妥協案が通った!

 こうすれば『オルクス大迷宮』に行く流れが出来、ハジメ君が最強になってくれるはずだ多分!

 

 

***

 その後、イシュタルさんにクラスメイト達の説得が出来た事を伝えると、大層喜んでくれ、後の流れは原作通りになってくれた。

 晩餐会が行われ、取り敢えずの身の安全と衣食住が約束されたのはよかったな。

 部屋に案内されるが、天蓋付きのベッドって落ち着かんな…

 今日は疲れたな、明日はステータスプレートイベントか…

 原作通りにハジメが最強になってくれればいいが、その前に俺が殺されるかもしれないか…

 考えることが多…

 

 コンコン

 

 ん?誰だこんな時間に

 

 大介起きてる?

 

「恵里か。入ってきていいぞ」

 

 俺がそういうと、恵里は枕を持って部屋に入ってきた。

 

「恵理どうしたって聞くのは野暮か」

 

「…うん」

 

 小さく手が震えている恵里

 そりゃ、不安だよな。

 急に異世界に呼ばれ、戦争に参加するなんて状況。

 不安にならない方がおかしいか。

 彼氏として…いや、好きな女の子の為だ。

 

「いいぞ」

 

 俺がそう告げ、ベッドに一人分のスペースを作ると恵理は嬉しそうに俺のそばに近寄り横になる。

 

「ありがとう大介!」

 

 そう言って、恵里は俺に抱き着いてきたので、優しく恵里の頭を撫でる。

 猫のように甘えていた恵里だが、急に不安そうな顔をし、俺を見つめてくる。

 

「ねえ大介…キスして…」

 

「……不安か?」

 

「うん…物凄く不安なんだ…だから…ん」

 

 恵里の言葉を遮るように優しく唇を合わせる。

 

「どうだ?不安はなくなったか」

 

 俺が聞くと、恵里は笑顔になるが

 

「ううん。全然足りないからもっとして」

 

「可愛い彼女のお願いは断るわけにはいかないな」

 

 そうして、恵里が満足するまでキスをして、しばらくして満足した恵里は俺に抱き着いたまま眠りに落ち、その暖かさに誘われるように俺も眠りについた。

 

***

 次の日ようやくやってきました、ステータスプレートイベント

 

 メルドさんが

 「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 よくある異世界イベントだな。

 客観的な数値化ってなんなんだろうな。

 この世界の基準と日本では違ったりするのかな。

 この世界では10が日本だと100みたいな…

 まあ、くだらない事を考えても仕方ないか、他のみんなは原作通りみたいだし、俺も原作通りに軽戦士だろうし結果がわかっているからドキドキしないよなぁ

 

===============================

 

檜山大介 17歳 男 レベル:1

 

天職:現場監督

 

筋力:50

 

体力:100

 

耐性:500

 

敏捷:10

 

魔力:1

 

魔耐:1

 

技能:言語理解・力学演算・危険予知・精神的支柱・高速設計・高速建造・指揮官

 

===============================

 

 

なにこれ………

俺はもう一度、ステータスプレートに目を向けるが、何処にも軽戦士の文字は無い……

 

「ここにも、既に三桁ステータスの奴がいるとはな!しかし、魔力と魔耐が低すぎるな、それに天職が現場監督?聞いたことがないが、見た感じ戦闘職ではなさそうだな」

 

 恵里や清水達は俺のステータスを凄いと言ってくれ、天之河も『合計で負けた…』と悔しそうにしてたが、いやいや6個中4個勝ってるんだからもう、お前の勝ちでいいよ。

 

 

 

 …………ええええええぇぇぇぇぇ!

 

 なんだよこれ!てか、天職が前世の職業なんてありなのかよ!しかも、ステータスの偏りが凄い。

 何だよ耐性500て!

 何気に体力も100あるし…

 でも魔法関係に関しては、ほぼ0だし

 しかも、危険予知ってなんだよ!

 KY活動のことか!

 現場ネコか!

 まさに肉壁って感じのステータスだな。

 ……肉壁?

 まさか、こんなところに死亡フラグを仕掛けてくるとはやるじゃねぇかエヒトさんよぉ!

 

 




 晩餐会の時にも、ハジカオはイチャイチャしていたため、この世界のランデル王子は最速で初恋を散らしていました。


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19話 trial and error(要は試行錯誤です)

 説明回です。
 社畜は自分で社畜って気づかないことが多いって話。
 魔法に関して、独自設定がございますのでご了承お願いいたします。


今、檜山の脳内は混乱の真っただ中になる。

 

「どういうことやねん!天職が前世の職業ってどないなっとんねん!」

 

強気の口調が変わるぐらいには混乱している。

 

「ここに来て、オリジナル天職ですか…これは物語がどう変わってしまうのか予測が出来ません」

 

「軽戦士と思いきや、現場監督って…どう見ても非戦闘職だよね…」

 

真面目と弱気が頭を抱え

 

「そもそも、他のクラスメイト達と違って何かダサいよね~」

 

「せめてもう少しカッコいいのがよかったですな」

 

気楽と議長は現実から目を背けようとしている。

 

「こうなったもんは仕方ない!現状を把握することに専念するぞ!」

 

「「「「おー!」」」」

 

気持ちを切り替え、現状のステータスと天職並びに技能の考察からしていくことにする。

 

「まず、ステータスですが見事なまでの極ぶりですな」

 

「耐性に関しては、天之河の5倍あります」

 

「でも~魔力・魔耐はハジメ君の10分の1だよね~」

 

「まさか、ここに来て前世の影響を受けているとは想像外ですね」

 

「確かに前世では、現場が始まると平気で28連勤もあったりしたけど…ちゃんとその後に休みを1週間もらえたり給料もよかったから会社に文句はなかったけどね…」

 

「体力と筋力が高いのはそのせいか!そして魔関係が低いのは前世のせいってか!」

 

「その可能性が高いですな。そもそも、前世では魔法に関係なんて一切ありませんでしたからな」

 

「でも、耐性に関してはどういうことなんだろう…」

 

弱気の疑問に真面目が眼鏡を上げながら答える。

 

「やはりこれは、檜山を殺しにかかっているとしか思えませんな」

 

「だよね~これは、前線で体を張るように仕向けているよね~そして殺されるお膳立てを貰っているよね~」

 

「今は高くても、確か現世の記憶が確かならステータスの数値なんて10000を超えてくるから、500なんて風の前の塵に同じだよね…」

 

ここに来て、まさかステータスでも殺しにかかってくるとは思わず、一同が悩むが

 

「ここは、ステータスに悩むより、技能について考えてみましょう」

 

らちの明かない悩みをとりあえず放置して、議長は次の疑問を解決していくことにする。

 

「そうだな!幸い技能は結構あるんだ!これで死亡フラグをへし折っていこうぜ!」

 

「まずは、力学演算ですが…読んで字のごとくなのでしょか?」

 

「前世で学んだことはあるけど…なにが出来るんだろう…?」

 

「確か~力学って言っても色々あるし~熱もあれば、電磁も力学になるよね~」

 

「…もしかして!チート能力だったりするのか!」

 

強気が元気になるが、

 

「安心はできません、原作同様にハジメ君みたいに何ができるのかを色々試してみましょう」

 

「「「「異議なし」」」」

 

「次は、危険予知ですか…」

 

「よく前世では、KY活動をしていましたからね」

 

「でも、これこそ死亡フラグをへし折るに役立ちそうだよね…」

 

「これに関しては、どのくらいの精度があるのかを試してみましょう」

 

「次に精神的支柱だね~」

 

「これに関しては、確かめる方法があるのでしょうか…」

 

「ここは恵里に頼むのがいいんじゃねぇか!」

 

「そうですな、彼女な訳でありますし、一日会わないようにして相手に変化があるのかを試してみましょうか?幸いこの世界にはステータスプレートが存在しますから、それの前後で変化を調べてみましょう」

 

「ハジメ君や清水達にも協力してもらおうよ~」

 

「高速設計・建造ってどういう事なんだろう…」

 

「読む限り、設計と建造が出来るのでしょが、これも前世の影響でしょうな」

 

「前世の職場では、本当に何でもやらされてましたからね」

 

「自分で設計して組み立てるなんて、まさに前世の職業だよね~」

 

「そこに来ての、指揮官という技能…なにを指揮できるんだ?」

 

「これに関しては、今すぐには分かりそうにありませんな」

 

「そうだね~ここはそれ以外の技能に関して調べてみよ~」

 

「そうだな!それにワンチャン派生技能が出来るかもしれないし、それでさらに死亡フラグを撥ね退けようぜ!」

 

「「「「異議なし」」」」

 

***

 ステータスプレートのイベントの後だが、ハジメ君に関して誰もいじる事も無く平和的に終了している。

 

 まあ、俺の『現場監督』と言う、どう見ても異世界感0の職業のせいでハジメ君の『錬成師』がありふれているかもしれないが、俺のに比べたらカッコいいしな。

 

 原作通りハジメ君は図書館に入り浸り…まあ白崎さんもついて行っているみたいだがまあいいか

 俺は技能に関して試行錯誤を繰り返している。

 

 

 Lesson1 力学演算

 まず、自分が物を投げると、その物がどの軌道を描き、何処に着弾するかが一瞬にしてわかる。 

 しかも、それがどんな形状であれ一瞬であるという凄い技能であった。

 これは相手に対しても有効で、矢、魔法といったものまで軌道分かるといった一見チートっぽいが、急な突風や外的要因には初めに得た結果と狂うことも多く、敏捷が平均的なこともあってか咄嗟によけることも中々難しいのが現状だったりする。

 しかも、一瞬に大量の計算式みたいなものが(探偵物理学者ドラマのアレ)頭に流れるのが中々にきつかったりと訓練が要必要だな。

 でも、建物を見れば何処が建物の急所が分かるといった、いざって時に役立ちそうな能力でもある。

 熱や電磁などは今のところ出来るかは不明であるな。

 

 

 Lesson2 危険予知

 これに関しては、思いのほか有能だったりする。

 模擬訓練の際に、相手が何方から切りかかってくるのかが分かったり、他者の模擬戦でも発揮出来たりと結構有能な技能であることが分かった。

 この技能も鍛えておけば死亡フラグ回避の為に役立ちそうである。

 的中率は8割ってとこかな。

 

 

 Lesson3 精神的支柱

 ……これに関しては、この技能を調べようとした時の事だった。

 

 俺は恵里に頼み、技能の性能を調べてみようとしたのだが

 

「やだ!」

 

「そこを何とか頼む。俺の精神的支柱の効果を調べるためなんだ」

 

「だったら、僕じゃなくて、清水や雫ちゃんでもいいじゃん!」

 

「いや、ここは彼女の恵里の方が効果が分かりやすいと言うか…」

 

「絶対にいや!」

 

 そう言って、俺に抱き着き離れない恵里に可愛いと思いつつも、どうにか調べてみたいんだが…そうだ!

 

「よし!手伝ってくれたら、恵里の言う事をなんでも一つ聞いてやる」

 

 ピクッ

「なんでも…?本当!」

 

 おっ!食いついたぞ

 

「ああ、恵里に手伝ってもらうんだからな。その代わり1日の間一切会わないようにして、恵里のステータスに変化があるのか見るからな」

 

「………わかった。でも!絶対に1日だけだからね!」

 

「ありがと恵里!」

 

 そうして実験を始めたんだが…

 

 実験開始日

 

 開始4時間後

 今日は部屋から出ないと決めて、ハジメに頼んで恵里ステータスに変化があるのか…

 

 どどどどど!

 

 なんだ、誰かが俺の部屋に近づいて…

 

「檜山!」バン!

 

「清水!どうしたんだ、まだ実験開始してそんなに…」

 

「とりあえず来てくれ」

 

 そういうと、清水は俺を連れ部屋を出て、今日訓練が行われている部屋まで連れていかれ、その部屋からは喧々諤々の声が漏れてくる…

 

 確か今日は座学で戦闘訓練でもなんでもないはずだが…

 

 清水は頭を押さえ、黙ってはいるが、取り敢えず部屋に入ってくれと言わんとしている。

 

 嫌な予感がしたが、俺が部屋に入ると…

 

「だから!檜山がいない今副委員長の俺が!」

 

「何言ってんだ!檜山の代わりが天之河に務まるわけが…」

 

 天之河と何故か俺を慕ってくれる、中野たちが言い争いして、

 

「こらー!みんなケンカしないの!」

 

「ちょっとみんな落ち着こうよ…」

 

 愛子先生とハジメが喧騒を止めようとして、

 

「早く大介に会いたい…」グスン

 

「エリリン大丈夫?」

 

「どうした中村?檜山に会いに行けばいいだけじゃ…」

 

「大介に言う事一つ聞いてもらうためだもん!」

 

 我関せずといった他のクラスメイト達

 

 まさに、会議は踊る、されど進まず…

 

「おお檜山!来てくれたか、みんなに言ってくれ!ここは副委員長の…」

 

「檜山!このわからずやに!」

 

 檜山君!

 檜山さん!

 大介!

 ………

 ……

 …

 

「お前ら……いい加減にしろおぉぉぉぉ!」

 

 結局『精神的支柱』の効力はよくわからなかったが一つ分かったことがある。

 このクラスは俺が居なくなると空中分解してしまうってことがね…

 

 

 Lesson4 高速設計・建造

 この技能は、結構と言うかマジでチートだと思った……

 まず、俺には材料を作成する魔法の適性がバカみたいに高く、魔力が1だろうと一軒家の作成に必要な材料なら元の素材さえあれば、一人で造れる。

 さらに特典なのか、建造に必要な工具も作成が可能だったりする。

 しかも、高速設計のおかげかほぼというか、全くの無駄をなくすことが出来、効率廚ここに極まれりといった具合だ。

 それでいて、高速建造のおかげで、一軒家サイズなら半日かからず作成が可能で、訓練場に一軒家を造ってメルドさんに褒められながら怒られたな…

 他の騎士団の方から自分の部屋のリノベーションを頼まれ、全部こなすとめっちゃ感謝されたな。

 今世でも、前世みたいなことしてるな…

 ちなみに俺には、他の魔法の適性は一切なく、魔力1も相まって火球を出そうとしても、5分かけてマッチサイズの火を出せる程度である。

 

 

 これが、俺の調べてみてわかった結果なんだが、調べれば調べるほど非戦闘職だよな…

 結局、精神的支柱と指揮官が分からなかったし、これらに関してはおいおい分かればいいか。

 

 ついに次に来るイベントは、オルクス大迷宮か……

 

 

***

おまけ

<今、何でもするって言ったよね?>

 

恵里「大介…約束覚えているよね?」

 

檜山「約束だしな…わかったよ。俺は何をすればいいんだ?」

 

恵里「えっとね…」

 

檜山(まあ、恵里の事だし、キスとかまた一緒に寝て欲しいとかだよな…もしかしたら、キスの先の…)ドキドキ

 

ジャラ

チェーン付首輪を持つ恵里

 

檜山「……恵里さんそれは?」

 

恵里「えへへ。南雲に頼んで作って貰ったんだ」エッヘン

 

檜山「……犬でも飼いたいのか?」

 

恵里「僕ね……大介を飼ってみたいんだ!」

 

檜山「!?」

 

 

 




 ちなみに、おまけのR18版の作成中だったりしています。

 


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20話 月下の語らい 檜山初めての指揮

最近、遊戯王マスターデュエルしてて
恵里ちゃんが、蟲惑魔に見えて仕方がない今日この頃




 そんなこんなで、オルクス大迷宮のイベント前夜がやってきた。

 

 昨日は大変だった…

 恵里が俺を飼いたいなんて言い出して、それを宥めるのに一日かかったなぁ…

 

 原作だったら、ハジメと白崎さんが語らうイベントが挟まるが、今回ではどうなっているのかな?

 

 まあ、二人とも両想いなわけだしそろそろ一線を越えているかも

 

 コンコン

 

 そろそろ寝るかと考えていたときに、部屋にノックの音が転がり込んできた。

 

 恵里か?そう思い、扉を開けるとそこにいたのは

 

「檜山…ちょっといいか?」

 

 天之河だった……なんで?

 

***

「男のお前が何でこんな時間に男の俺の部屋にくるんだよ」

 

「檜山…お前に相談というか俺の決意を聞いて欲しいんだ」

 

 俺があからさまに不機嫌になるのを無視して天之河は俺に告げた。

 

「決意?…まさかお前」

 

 俺が体を守るように後退りすると、

 

「違う!だれがお前に告白なんてするか!」

 

「……本当?」

 

「当たり前だ!俺が好きなのは……香織だ」

 

「ヘェーソウナンダ、オヤスミ」

 

「待て!なんだその、どうでもいいみたいな言い方は!」

 

 俺が部屋から追い出そうとしても、無理やり入ってくる…

 

「天之河君は知らないようだから教えてあげるね?白崎さんはハジメ君とお付き合いを…」

 

「それは知っている」

 

「知っているなら何でそんなことをわざわざ俺に言うんだよ!」

 

 馬鹿か!と叫ぶが天之河は我関せずといった具合に

 

「知っているぞ檜山。きっと香織は、ハジメに同情して付き合っているってことをな!」

 

「………はぁ~?!」

 

 天之河の言い分をまとめると、

 

①ハジメが白崎さんに告白する。

 

②優しい白崎さんは断れずなあなあに付き合うことにしてあげている。

 

③そこで、自分が告白することによって白崎さんを助けてあげる。

 

「…そうなんだろ檜山!」

 

 ちょっとは原作と違ってマシになっていると思っていた俺がバカだった。

 やっぱこいつは勇者(笑)だわ。

 

「んなわけあるか!」

 

「なぜだ!俺の完璧なロジックが間違っている訳が…」

 

「どこが完璧なんだよ!お前のその自己完結しすぎる思考は止めろ!そもそも、異世界に来てもイチャイチャしてて、どっからどう見ても両想いな二人を見てどうしてその発想に…」

 

 天之河はどうにも納得していないみたいな顔しているが…しゃあないか

 

「そんな気になるのなら、告白でもなんでもしたらいいさ」

 

「えっ…どうして?」

 

 今の勇者(笑)の顔は何言っても無駄って書いてあるしな。

 だったらせめてもの救いとして、白崎さん本人からキッパリ振られた方がこいつの為に…

 

「わかった檜山!俺、このオルクスの迷宮の訓練が終わったら告白するよ!」

 

 ん?

 

「この訓練でいい結果を残して香織に告白するよ!ありがとう檜山!邪魔して済まなかったなオヤスミ!」

 

 そう言い残し、俺の部屋から元気よく飛び出す勇者(笑)……

 今何か変なフラグが立ったような……

 ま、いっか!

 

***

 そうしてやってきた、オルクスイベント

 俺が思っていたよりも原作と違う事も多くあったな。

 まず、ハジメと白崎さんは初めからラブコメをしていて、勇者(笑)からやメルドさんに注意を受けつつも、ハジメ君は錬成を巧みに使い、魔物を倒して行っている。

 これには、騎士団の方たちも驚きと感心の目でハジメを見ており、その横で勇者(笑)が負けんじと頑張っていい所を見せようとしている。

 また、八重樫さんと清水ペアは、清水の闇魔法を巧み使い、その止めをしっかりと八重樫さんが決めておりこれまたメルドさんから褒められていたりする。

 

 みんなカッコいい魔法とか武技があっていいなぁ…俺なんて…

 

「どらっしゃぁ!」

 

 襲い掛かるラットマンを俺は高速建造によって生み出した、大型のラチェットレンチ(75㎝)を巧みに使いラットマンの頭をぶちかまして、魔物を蹴散らして……

 なんでだよ!みんな剣とかカッコいい武器使ってるのに、俺だけ工具なんだよ!

 

「大介カッコいい!」

 

「恵里だけだよ…俺を褒めてくれるの」グスン

 

「そんなことないよ檜山!僕もその工具も檜山もカッコいいと思うよ」

 

「ハジメぇ~」

 

 今は友達からの慰めが地味に心に来るものがある…

 

 俺はどうやら、武器に対する適正も一切ないらしく、剣を使うものならすっぽ抜け、力学演算があるのに弓や投擲といったものまでうまくできないのが現状だ。

 でもなぜか、俺が建造によって生み出した、工具などはめっちゃうまく使えるんだよなぁ…

 

 ハジメの天職のどこがありふれているんだよ…俺の天職『現場監督』だぞ。

 

「恵里も凄いよな、降霊術だっけ?」

 

「えへへ♪大介もっと褒めていいんだよ?」

 

 そういって頭を差し出す恵里の頭を優しくなで、嬉しそうにする。

 原作同様に恵里の天職は『降霊術師』2期前に死んだ俺はよく知らないが、どうやら、現状でも恵里はこの天職を完璧と言って差し支えなく使いこなせているらしいが、

 

『大介と離れたくないから、あんまり使いこなせていないことにしておいてね?』と言うことで、クラスのみんなに伝えている。

 

「清水も闇魔法を使いこなしているし、八重樫も剣術が凄いと…俺なんて…」

 

「こらこら、前に言ってたじゃないか。自分に自信を持てって」

 

「ハジメぇ~」

 

「そうよ大介。そんな後ろ向きなのは大介らしくないわ」

 

「八重樫ぃ…」

 

「その通りだな。そもそも、このクラスはお前が居なくなったらマズい」

 

「清水ぅ~」

 

「大丈夫だよ大介!いざって時は僕と一緒に大介の造った家に二人で籠城しようよ!」

 

「恵里それは…」

 

「恵里ちゃん、それいいね!檜山君、私とハジメ君の家も…」

 

「こらこら香織!大介を困らせないの」

 

「お前ら!ここでのんびりしゃべっているんじゃない!」

 

 俺たちがまとめてメルドさん怒られついに俺たちは、二十階層に着くのであった。

 

***

 メルドさんは今度は、少人数で徒党を組み連携を意識して戦うように言われ、俺は恵里と遠藤…居たのか、とパーティーを組みロックマウントとの戦いが…ん?

 

 

 *よ~し、大介にいいとこ見せて褒めて貰おう!*

 *檜山と中村とか…なんだろうこの疎外感*

 

 

 なんだ急に頭に声が…

 

 {ロックマウントは、中村恵里に右腕を振り下ろし攻撃する}

 

 次は、ロックマウントの行動を予測だと!?

 いつもの危険予知とは違う、大雑把ではなくかなり具体的な行動が読めるだと?

 しかも、力学演算の数式まで入ってくるだと!

 何だ急に!でもこのままじゃ恵里が危ない!

 

「恵里!右に避けろ!」

 

 俺の声が聞こえた恵里は右へと避け、ロックマウントの攻撃は空を切る。

 

 

 *大介はやっぱり頼りになるな♡*

 

 

 やっぱり声が…って声の主は恵里か?

 

 {ロックマウントは、威圧の咆哮を使い、その後ロックマウントを投げて白崎香織を攻撃する}

 

 この行動は…

 

 この後は原作と同じように進んだのが、さっきのは一体…

 まるで、恵里と遠藤の考えが聞こえ、しかも相手の行動がかなり具体的に読めるだと?

 まさか、これが『指揮官』の技能の効果なのか?

 それとも、『現場監督』のおかげなのか…

 

 そんなことを考えていて気が付かなかった、まさかグランツ鉱石イベントの引き金を引いたのが天之河であったことに…

 

***

 「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 メルドさんの声が響きそして俺は理解する。

 これはベヒモスイベントでそして俺は自分の技能を凄さを理解してしまった。

 

 急激に入ってくる声

 怖い

 ヤバい

 俺のせいで

 早く逃げないと

 何十人もの声が一気に俺の頭の中に入ってくる。

 

 頭が割れそうに痛い。吐き気もする。

 

「大介大丈夫?!」

 

「恵里……」

 

 俺の異常に気付いた、ハジメ達も俺に近づいてくる。

 

 確かこの後って…

 

 別の方向から、悲鳴が聞こえたと思いそちらを振り向くと、トラウムソルジャーがうじゃうじゃと居やがる…

 

 さらに声が多く俺の頭の中に入ってくる…

 しかも、さっきのロックマウントとは比べ物にならない数式の嵐が入ってくる…

 

 

 正直このまま意識を手放したいと思ってしまう程気持ち悪い。

 どうせ…俺が何もしない方が物語が変わらないんだし、その方がハジメはきっと最強になってくれるさ…

 そうさ、所詮俺はアンチキャラ…

 このまま意識を失ったって問題は無いはず…

 

 

 檜山!

 大介君…

 どうすればいいんだよ檜山

 こんな時檜山が居れば…

 

 

 聞きなれた俺を頼る声…

 みんな好きかって言いやがって…

 

 

 でも…俺はこのクラスの委員長なんだよな…

 

 

「大介…」

 

 彼女の前じゃカッコ悪い所見せられないよな…!

 

「すぅぅ~ みんなーーーーー!」

 

 大声でこの空間に響くように叫ぶ。

 俺に入ってくる声が止むのを感じ、俺は続けて言う

 

「絶対に一人になるな!みんなには俺と違って凄い天職や、技能を持っているんだ!絶対にこんな骸骨には負るわけないだろぉー!みんな絶対に無事に生きて帰るんだぁー」

 

 

 今度入ってくる声は、先ほどとは違い希望に満ちた声が聞こえてくる。

 

 

 そうだよな!

 俺達には檜山が付いてる!

 こんなとこ早く逃げましょう!

 

 

 精神的支柱か指揮官か、はたまた現場監督のおかげかはわからないけどそんなことをどうでもいい

 みんなに落ち着きが戻っていくが

 

  

 今度は、トラウムソルジャーやベヒモスの攻撃の危険予知が見えてくる。

 

 俺はその度に、クラスメイト達に指示を出す。

 

{トラウムソルジャーは、剣を振り下ろし園部優花を攻撃する}

 

「ハジメ!園部を錬成で助けてやれ!」

 

「わかった!」

 

{トラウムソルジャーは、剣で谷口鈴を攻撃する}

 

「坂上!谷口を守ってやれ!」

 

「任せろ!」

 

{トラウムソルジャーは、清水を攻撃する}

 

「八重樫!清水を守って、その隙を清水の魔法で攻撃しろ!」

 

「わかったわ!」

 

「了解した」

 

「辻!白崎!移動しながら、クラスメイト達と騎士団の方の回復をしてやれ!決して立ち止まるな!」

 

「「うん!」」

 

「中野!斎藤!近藤!お前たちは、トラウムソルジャーの頭数を減らせ!お前たちなら余裕だろ?」

 

「「「当たり前だ!」」」

 

「遠藤!お前は、敵にすら気付かれないんだ!敵の隙を攻撃してクラスメイト達の退路を確保しろ!」

 

「…!わかった」

 

 俺が指示を飛ばしていると、

 

 

 *俺のせいでみんなが…*

 

 

「ちっ!天之河!」

 

 俺は、ぼーってして立ち止まっている天之河の頭をひっぱたく

 そして、天之河の胸倉を掴み

 

「後悔するなら後にしろ!今は立ち止まるな!」

 

「で…でも、俺のせいでみんなが…」

 

「何度も言わせるな!今は逃げることを考えろ!死んでからじゃ遅いんだぞ!」

 

「……」

 

 こんな時にまで勇者(笑)かよ…

 

「白崎さんに告白するんじゃなかったのかよ?」

 

「!」

 

「正直絶対100%振られるが、こんなところで悔いを残して死にたくないだろ?だったら、今は全力で逃げろ!」

 

「…流石は俺のライバルだな」

 

 そう言うと、天之河もこの場を離れていく。

 

「大介も早く!」

 

 恵里の声が聞こえるが

 

{ベヒモスは、クラスメイト達を攻撃する}

 

 だよなぁ…

 ベヒモスの攻撃の危険予知が見えるが正直、ここまででかなりの体力を消費しているのが分かる…

 先ほどまで流れてくる数式とは比べ物にならない複雑な数式が流れ込んでくる…

 常に頭に数式やら、みんなの声、敵の危険予知が流れてくるのに頭を使って、気持ち悪くて立つのもやっと…

 このままじゃま…ず…

 

(ダメだ…意識が……)

 

 恵里の声が聞こえるが、足が動かない

 

(ここで死ぬのかなぁ…やっぱり死亡フラグを回避……)

 

 そして、俺は意識を手放してしまった。

 

***

「…ここは」

 

「大介!」

 

「恵里…」

 

 目を覚ますと、恵里に抱き着かれ、他のクラスメイト達も俺が起きたことを喜んでくれ、メルドさんも俺に近づき

 

「檜山…済まなかった!俺が居ながら、お前の指揮が無ければ全滅すらあり得た…」

 

「いえ、あんなの予測する方が…」

 

 辺りを見渡し、ハジメ達がいることを…!

 

「おい!ハジメ達は!」

 

 俺の問いに答えたのは恵里だった。

 

「落ち着いて聞いてね大介。あの後、橋が崩落してね、ベヒモスとハジメ…」

 

 ここは原作の流れか…

 

「香織ちゃん…」

 

 ……えっ?

 

「雫ちゃん、清水…」

 

 ちょっと待って!?

 

「そして…」

 

 そして!

 

「天之河の5人が橋の崩落に巻き込まれ…奈落に落ちちゃったの…」

 

 …………不謹慎なのは分かるが言わせてくれ

 

 

 

   多くね!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 奈落に落ちたのは5人でした。
 初めのプロットから綺麗な檜山を落とすつもりはありませんでした。
 ハメフラを参考にしている段階で、気づいている読者の方はいたかもしれませんね。

 どうでもいい補足説明
 現場監督および指揮官の技能を説明すると、シミュレーションゲームの
 軍師が見えるあの画面が常にリアルタイムで見えている感じです。
 敵のステータスや味方のステータスや、敵の行動範囲が見えるあれです。


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21話 責任を取るって事は、痛い思いをするって事

 タイトルの名言は、ONE OUTSの渡久地のセリフです。
 異質な野球漫画ですが、とても面白いので見てみてね!(ダイマ)

 


 少し時間は遡り、檜山が気を失い倒れた時…

 

「いやぁぁぁ!大介!起きて大介ぇ!」

 

 恵里は、突然倒れた檜山に近づきその体を揺するが返事は無い事に、さらに錯乱状態になる。

 

「大介!大介!」

 

「中村さん落ち着いて!」

 

「恵里ちゃん落ち着いて!」

 

 倒れた檜山に泣きながら抱き着く恵里を、ハジメと白崎が宥め、檜山の状態を確かめる。

 それに気づいた、八重樫と清水も何かあったと思い、3人に近づいていく。

 ベヒモスが何か行動を起こすかもしれない状況下でも、大切な友人たちを放って置くことが出来なかった。

 

「…大丈夫だよ、恵里ちゃん。檜山君は気を失っているだけだよ」

 

 白崎が檜山の状態を伝えると、それに気づいた天之河と坂上も5人に近づいてくる。

 

「坂上、早く檜山を運んでくれ。この中ならお前が適任だ」

 

「ああ、任せろ」

 

「何してるんだ!香織達も早く逃げるんだ!」

 

「っ!そもそも、お前が勝手なことしたからこんな事になったんだろ!」

 

 清水が坂上に檜山を背負って運んで貰うように頼み、天之河が香織達に逃げるように指示を出したことに恵里が怒鳴り散らす。

 

「中村さん!今は天之河君と言い争ってる場合じゃ…」

 

「南雲は黙ってて!勝手な事して、みんなを危険に晒した奴なんだよ!大介に言われるまで何もできなかったくせに、『何してるんだ』だって…ふざけるな!」

 

「恵里ちゃん!」

 

「大介に何かあったら僕はお前を絶対に許さない!」

 

 涙を流しながら、恵里は天之河を睨みつける。

 

「そんなつもりで言ったわけじゃない!俺は純粋に幼馴染の心配を…」

 

「二人ともいい加減にしろ!」

 

 二人の言い争いを、南雲が止める。

 

「ハジメ君…」

 

「檜山が言っていただろ!みんなで無事に帰るって!その思いを無駄にする気か!」

 

 そう叫ぶと同時だった。

 度重なる強大な攻撃にさらされ続けた石造りの橋は、遂に耐久限度を超えた

 

「おい!もうヤバいぞ!」

 

「早く走れ!」

 

 崩れ始める橋をクラスメイト達は見つめることしか出来ず、騎士団の人たちも叫び逃ように伝えるしかない状態だった。

 

 なんとか、対岸にたどり着いたのと同時だった…

 

 急激に橋が崩れていき、ハジメが奈落に落ちていくのと同時に…

 

「ハジメ君!」

 

 白崎さんが南雲に手を伸ばそうとし、そのまま一緒に落ちていく。

 

「香織!」

 

「八重樫!」

 

 まるで、数珠つなぎの様に助けに向かおうとする者達が次々に奈落へ落ちていく。

 

 南雲、白崎、八重樫、清水……そして、

 

「香織!」

 

 天之河はまるで、他の落ちた人が目に入っていないのか、白崎の名前だけを呼び奈落へと落ちて行った……

 

***

 クラスメイト達やメルドさん達騎士団の方に事のあらましを聞いたが、

 まさかこんな事になっていたとは…

 ハジメが原作通りに奈落に行ってくれたのはまだ分かるが、まさか他に4人も一緒に落ちてしまうなんて、どうなっているんだ…

 まだ白崎さんは、二次創作でも一緒に落ちる話を見たことがあるが、流石に八重樫さんや清水、そして天之河まで落ちちまうなんて聞いたことがねぇぞ。

 俺が考え込んでいるのを見たメルドさんは、頭を掻きながら俺に言ってきた。

 

「檜山、お前は何も心配するな。今回の責任は全部俺にあるんだからな」

 

 その言葉に他の騎士団の方達に動揺が走る。

 皆が口々に、『何言っているんですか!?』とメルドさんを心配している。

 

「考えてもみろ。王国最強と言われている俺が付いていながら、エヒト様の加護持ちを5人。しかも、内一人は勇者に選ばれた者を死なせちまったんだぞ。誰かが責任を取らねばならん」

 

 その言葉に一同が黙ってしまう。

 正直、ハジメ一人だったらおそらく原作通りに物語は進んだはずだ。

 しかし、今回はあまりに違いすぎる。

 確かにメルドさんの言う通り、この責任は誰かが取らないと、教会や国のメンツがまるつぶれだ。

 しかし、メルドさんに死なれるのはダメだ!

 ただでさえ、頼れる大人が少なくなるのは、クラスメイト達の為にも良くない…

 どうする!

 このままじゃメルドさんが……こうなったら

 

「メルドさん…今回の責任なんですが……俺に全部あります」

 

「何言っているんだ!」

 

 メルドさんが驚いた顔で俺を見てくる。

 

「考えてみてください、あの状況で俺が気絶しなければ、5人が落ちる事は無かったんです。つまり、今回の失態は俺の責任です」

 

「檜山!お前自分が何を言っているのかわかっているのか!例えエヒト様の加護を受けた勇者の同胞とはいえ、良くて国外追放、悪ければ死罪だぞ!」

 

 死罪と言う言葉にクラスメイト達もざわつき始め、そして恵里は俺に抱き着き

 

「絶対にダメ!大介が死ぬ必要なんてないじゃん!そもそも、悪いのは全部天之河じゃん!」

 

「そうだぞ檜山!アイツが勝手な行動を取ったことが原因じゃねぇか!」

 

「光輝が居ないからってそんな言い方ないだろ!」

 

 中野達も恵里の言葉に賛同し、坂上は天之河を庇うが、他のクラスメイト達も口には出さないが、天之河を擁護するものは居ない。

 

「おい恵里も中野も落ち着け。今この場にいない奴を悪く言ってもしょうがないだろ。

 俺があの時気を失わなければ、みんな助かったはずなんだ。それにさ恵里、メルドさんなら確かに死罪になる可能性が高いけど、俺は一応勇者の同胞で、エヒトの加護持ちなんだ。もしかしたら、許してもらえるかもだろ?もし処刑されたら恵里が降霊術で俺を使ってくれ。そしたら恵里も寂しくないだろ?」

 

 希望的観測すぎるが今、メルドさんに死んでもらうわけにはいけない。

 クラスメイト達には、愛子先生以外に信頼できる大人が必要なんだ。

 俺が居なくなるだけで、直ぐにバラバラになるクラスなんだから、もし俺が死亡フラグを回避しきれず死んだときの保険をかけておかないと…

 

「……大介のばかぁ!」

 

 そう言うと、恵里は目に涙を浮かべながら勢いよく部屋を飛び出した。

 部屋に少しの沈黙が訪れ

 

「ダイダイ、こっち向け」

 

「谷口?」

 

 パァン!

 乾いた音が部屋にこだまする

 俺が谷口に振り返ると、思いっきりビンタされ、耐性が高いはずなのに痛かった。

 

「さっきのは、鈴の友達を泣かした分。

 何ボォっとしてるの、エリリンが泣いて部屋を飛び出して行ったんだよ?彼氏なら追いかけるべきなんじゃない」

 

「谷口…」

 

 他のクラスメイト達からも、

 さっきのは無いぞ!

 恵里を泣かせるなんて最低だよ!

 早くいって抱きしめて慰めてやれ!

 するとメルドさんも

 

「檜山…俺を心配するのはありがたいが、若い奴が年寄りを心配する前に彼女の心配をするべきなんじゃないのか?」

 

「みんな…メルドさん…ありがとうございます」

 

 そうだ、俺はみんなのクラスメイト達の委員長だが、俺は恵里の彼氏なんだ…

 みんなの事も心配だし、日本に帰る事や、死亡フラグも気にしないといけないかもしれないが、俺は恵里の彼氏なんだ!

 そんな彼氏が死んでもお前なら大丈夫だろ?みたいな事を言われたら……

 俺はなんてバカなんだ!

 俺はベッドから降り、部屋を飛び出した恵里を探す…

 

***

「はぁ…はぁ…恵里ここにいたのか…」

 

 俺は昨日泊まった宿の人から、恵里が部屋に泣きながら入って行ったと聞いたので、急いで部屋に向かいノックをしたが返事は無かったが、部屋の鍵は開いていたので俺は息を切らしながら部屋へ入る。

 月明かりのみ部屋を照らし、恵里がベッドの上に小さく膝を抱えているのが見えた。

 

「…隣座るぞ」

 

 恵里の返事も聞かずに、俺は恵里の隣へと座る。

 

「恵里…ごめん!俺、恵里の気持ちを全然考えてなくて…」

 

 すると恵里は俺の胸に抱き着いて来た、

 

「……だよ…」

 

「えっ…」

 

「大介は!僕の彼氏なんだよ!」

 

 恵里が俺をまっすぐに見つめ、涙を流しながら告げる。

 

「大、介は……僕の彼氏で………僕は、大介の……彼女なんだよ……」

 

 言葉を詰まらせながらだが、しっかりと思いを告げる恵里。

 

「そうだな」

 

 俺はしっかりと恵里の気持ちを受け止める。

 

「他のクラスメイトたちとか、この国なんて関係ないよ!大介は僕の彼氏なんだから…僕を一人にしないで…」

 

 そう言うと、更に俺を抱き着く力を強め、俺も抱き着く恵里の頭を撫でながら俺も恵里を抱きしめる。

 

「そうだな、俺は恵里にひどい事を言ったんだな……死んだらなんて無責任な事を言ってしまったもんな」

 

 原作通りに進まなくて、焦ってしまってつい軽はずみなことを言ってしまったんだ。

 そして、恵里を悲しませてしまったんだな…

 

「俺は恵里の彼氏失格だな」

 

「…ねぇ大介。僕が迷宮で言ったこと覚えてる?」

 

「ん…ああ、俺の造った家でってやつか?」

 

「うん…僕本気だよ」

 

「恵里…」

 

 まっすぐ俺を見つめる恵里から伝わる嘘じゃないぞって気持ち。

 

「ねぇ大介…さっきも言ったけど。この国なんて関係ないし、大介を頼りきりにしているクラスメイト達なんて放っておいて…」

 

「恵里は、日本に帰りたくないのか?」

 

 俺が優しく恵里の問うと、

 

「帰りたいけど…」

 

「だったらさ俺を信じてくれないか?」

 

「信じるって…でも…」

 

「もう、死ぬなんて言わないし、絶対に日本に帰すって約束する」

 

 まあ、どうなるかはわからないが今はハジメ…ハジメ達が最強になって帰ってくることを祈るしかないがな。

 

「あの時に言ったろ、みんなで無事に帰るって。それはもちろんクラスメイト達も愛子先生も、ハジメ達、そして恵里もだ」

 

「大介…でも……」

 

「それに俺はまだ、アイツらが死んだなんて思ってないんだよ」

 

「でも…あの高さから落ちたなら…香織ちゃん達はきっともう…」

 

「でも降霊術で呼べないんだろ?」

 

「確かに香織ちゃん達の残留思念を感じないけど…そもそも、僕の降霊術はその死体が無いと…」

 

「だからさ恵里。俺に協力してくれないか?」

 

「協力って何を?」

 

 俺は考えを伝える。

 さっき脳内会議にて出した、どうにかして原作に近づくための案を伝える。

 

「でも大介、もしそれがバレたら…」

 

「だからこそ、恵里の協力が必要なんだ。それにこれは二人だけの秘密にする必要があるんだ」

 

「二人だけの秘密…」

 

「ああ、頼む!」

 

「…いいよ。でも…」

 

 恵里は渋々俺の考えに賛同してくれたが、でも?

 

「…抱いて」

 

「えっ?」

 

「大介…僕を抱いて…」

 

 抱いてって、つまり……

 

「恵里、何言って…」

 

「この前、なあなあにされた何でもしてくれるって言ったの今ここで使う」

 

「まだ覚えていたのか…」

 

「そしたら、大介は勝手に死ぬなんて言わないよね♪」

 

 恵里にいつもの調子が戻っていくが、抱くって…

 

「大介…」

 

 ゆっくりと俺に近づいてくる恵里。

 そして、月明かりのみの部屋にある二つの影が一つになった……

 

 

 

 

 

 ベッドでお互いに裸で、俺の腕に抱き着いてくる恵里。

 

「大介~♪」

 

「恵里……一緒に日本に帰ろうな」

 

「うん♪」

 

 さて、どうなるかわからないが何だろうな、

 恵里と一緒なら乗り越えられそんな気がしてきたな。

 

*** 

 どうしてこんなことに…

 

 俺は確か香織を助ける為に、あの奈落に飛び込んだまでは、いいがどうなっているんだ…

 

 俺は勇者で、ステータスだってみんなより高いのにどうして、兎一匹に勝てないなんて…

 

 この奈落のモンスター達は俺の想像を超え強すぎる。

 

 兎に蹴られ、腕があらぬ方向に曲がり、命からがら逃げて伸びてこれたが、このままじゃ…

 

 でも、きっと香織は助けに来た俺を認めてくれるはずだ。

 

 そして香織の魔法で俺を治してくれて、南雲じゃなくて俺を選んでくれるはずだ!

 

 檜山は、絶対に成功しないなんて言っていたが、この状況ならきっと香織は俺を選んでくれるはずだ!

 

 これは神様が俺にくれたチャンスなんだ!

 

 まるで、勇者がとらわれた姫を助けに行く王道の物語じゃないか!

 

 きっとこの苦難を乗り越えられるはずなんだ!

 

 だって俺は『勇者』なんだからな!

 

 

……君

 

 今のは香織の声!

 

……キ

 

 雫の声まで!

 

 俺は急いで、その声が聞こえた方向に向かう。

 

 雫は俺から離れていったがやっぱり幼馴染は一緒にいるべきなんだ!

 

 声の方向に行くと、壁に穴が見えた。

 次第に声が大きくなっていく。

 

 そこにいるんだな…待っていろ二人とも俺がすぐに助けるからな!

 

 俺は急いで穴に入り、声の元に向かう。

 

 二人はきっと喜んでくれる!そう思い穴に入るが…そこにいたのは…。

 

「ハジメ君!ハジメ君!」

 

「香織!」

 

 片腕をなくした南雲とそれに跨り一心不乱に腰を振る香織…。

 

「雫…大丈夫か…」

 

「平気よ幸利…だからもっと幸利の声を聴かせてぇ…」

 

 お互いに向き合い、抱きしめ合い雫に腰を打ち付け、耳元で囁いている清水…。

 

 

 

 その光景を見た瞬間、俺の心の中で何かが折れる音がした……。

 

 

 

 




 おやおや?勇者(笑)の様子が…
 おかしいですが、二組は純愛なのですが、天之川から見るとN〇Rにしか見えない不思議


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22話 嘘と帝国とそしてあのイベントと…

 前話の感想数がいつもの3倍ぐらいあり、愉悦部状態で一人で爆笑してました。
 今更ですが、原作と同じように進む所はバンバン飛ばしていきます。
 さらにご都合展開が加速しますがご了承ください。


 ハイリヒ王国王宮内

 

 その一室は騒然とした空気に包まれている。

 無理もないか

 これから魔人族との戦争だって時に肝心要のエヒトの使者が5人も居なくなったんだからな。

 その報告を聞いた、国王と教会のお偉いさんたちの

 

 一体どうするんだ!

 こんなことが国民にバレたら…

 などなど、混乱を極めている

 そして出てくる当然の流れ

 

 『誰が一体責任を取るんだ』

 

 誰が言ったかわからないが、この問題にたどり着く。

 

 勇者とその使者が4人も死んだとなっては、この問題を有耶無耶に終わらせるなど出来るわけがないが…

 

「皆さん…今回の一件は全て俺に責任があります」

 

 俺は堂々とした宣言に更に現場はざわつくが…

 

「一体どういう事だろうか?」

 

 そこに待ったを掛けたのは、エリヒド・S・B・ハイリヒさんこの国の王様だ。

 

 そして俺は、オルクスの大迷宮であった事を包み隠さず伝える。

 

 そして俺はここで嘘を付く。

 

「ですが、皆さんに朗報もございます」

 

「それは一体?」

 

「奈落に落ちた5人は全員生きております」

 

 この発言には、クラスメイト達を含めた騎士団の方達も驚きを隠せていない

 恵里以外な…

 

 本当か!

 何でそんなことが分かるんだ?

 嘘に決まっている…

 

 反応は様々だが俺は続ける。

 

「その根拠は、俺の天職、そして中村恵里の降霊術です」

 

「どういう事だ?」

 

「俺の天職『現場監督』なんですが、敵の動きを先読みが出来、クラスメイト達の思考…と言うより考えが声となって頭に入ってくる天職だとわかったのです」

 

 王宮の方達や教会のお偉いさんたちは急に俺に対する目の色が変わる。

 そりゃそうだよな、普通に考えたらこんな天職、戦争に於いてチート以外の何物でもない。

 メルドさんも俺の発言が嘘でない事を証言してくれ、デモンストレーションとして、メルドさんと坂上に模擬戦をしてもらう流れになり、

 俺は『現場監督』と『危険予知』を使い、的確に坂上に指示を出し、メルドさんに敗北はしたが、善戦するという結果となった。

 

 俺が凄いとなり周りが騒ぐ中、坂上が

 

「はぁはぁ…じゃあ!まさか今も光輝たちの声が聞こえるってことか!?」

 

 俺が頷くとクラスメイト達は一斉に湧く。

 

「僕も香織ちゃん達の残留思念を探してみたんだけど、全然感じないからまず生きてるとみて間違いないよ」

 

「だから…俺はオルクスの迷宮の攻略を進めていきたい。イシュタルさんそして、エリヒドさん…お願いします!どうか俺にチャンスをください!必ずみんなを探し出して見せます!」

 

 俺は二人に頭を下げ懇願する。

 どうなる……

 

「檜山よ。まさか、無期限で見つかるまで探すなどとは言うまいな?」

 

「イシュタルさん…一年でどうでしょうか?」

 

「一年……」

 

 周りの反応も悪いか……よし

 

「わかりました。半年でどうでしょう?半年以内にオルクスの迷宮を攻略することを約束いたしましょう」

 

「……その言葉に偽りはないな」

 

「はい!」

 

 しばらく部屋に沈黙が訪れたが…

 

「よかろう」

 

 その沈黙を破ったのは、エリヒドさんだった。

 

 周りの神官たちや、王宮の方たちは本当によろしいのですか?みたいな感じになるが

 

「この者の言葉に偽りがないのは、目を見れば分かる。……半年以内に必ず見つけ出すことを祈っておるぞ?」

 

「ありがとうございます!」

 

 そうしてこの場はお開きとなり、勇者が奈落に落ちた件に関しては緘口令が敷かれたのは言うまでもなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よっし!何とか時間を得ることが出来た!

 これが俺の考えた、何とか原作に近づくための策だ。

 正直、俺の天職や技能に関しては分かってないことが多いし、噓八百を重ねているが、どうにかして半年という時間を獲得できた!

 これは原作で明確に時間が描かれていたことが良かった。

 交渉の場で、自分の要求を通したい場合は最初に無理を吹っ掛けるのは異世界でも通用する手なんだな。

 何度もは使えない手だが、一年と言われた期間を半分にされたら相手も本気なのが伝わるかなら。

 原作では4か月でハジメが魔人族のカトレアイベントに来てくれるはずだ

 しかし、それにはオルクス迷宮の90階層に行かないといけないが、そこは頑張るしかねぇ!

 

 しかし…他の問題もある。

 奈落に落ちた5人が俺を恨んでいるかもしれないという点とか、確かカトレアさんて勇者勧誘に来たんじゃなかったけ問題とかあるがな。

 正直これは俺のせいで5人とも落ちているから、最悪場合は覚悟はするしかねぇか……

 

 

***

 その後は、原作通りに話は進んでいった。

 俺と恵里が5人とも生きてるとは言ったもの、やはり戦争に参加したくないというクラスメイト達も現れ、騎士団の方から愛子先生を守る、愛ちゃん護衛隊が結成されたりとしている。

 しかし、清水が居ないからティオさんはどうなるかわからないがやっぱりハジメハーレムに入るのだろうか…

 それとも、異世界からの来訪者を調べるなどの理由もあるし洗脳されなくてもハジメパーティーに入るのか…

 変態な美女もいいが、しっかり者の美女も見てみたい気もするな。

 

 そして、原作における勇者パーティーは、俺、恵里、坂上、谷口の4人になっていたりする。

 チーム名は、株式会社檜山建設(谷口命名)

 ちなみに、役職も決めていたりする

 俺 :現場監督兼社長

 恵里:社長夫人

 坂上:現場主任兼作業員

 谷口:美人事務員   

 

 迷宮攻略も、クラスの雰囲気が原作よりも良い事や小悪党組も永山達も俺を慕ってくれていることもあり順調に進んでいたのが、まさか…

 

「いえ、お話は結構。それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか? それで、現場監督殿の実力も一目瞭然でしょう」

 

 ………嫌だ

 首を横に振る俺をよそに

 

「構わんよ。大介殿、その実力、存分に示されよ」

 

 俺は構うよ!

 なんで、あの勇者イベントを俺が引き受けるんだよ!

 

 

 

 

 そんなこんなで、始まったガハルドVS檜山大介、これって確か勇者の実力が見たい帝国のイベントじゃなかったけ…

 今、勇者はオルクスに籠り特訓を組んでいるという無理くりな理由付けをされて王国にはいないことになっているが、どうしてそのイベントを俺が引き受けるだ!

 

「おい、現場監督。構えろ。気を抜くなよ? うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

 まさかこんなところに死亡フラグがあるとは……どんだけ檜山を殺したいんだよこの世界!

 

 大体みんな現場監督を勘違いしてるよ。

 現場監督の実力てなんやねん

 現場をうまく回すことかよ!

 

 相手は気にせずに俺に突っ込んでくるが、

 ふっ…見てみるがいい俺の訓練によって身に着けた高速建造・設計の威力を!

 

「組み立てろ――“仮説足場〟」

 

 我ながらだせぇ

 

 パチンッ

 

 相手は俺が生み出した、足場板と単管、番線によって強固に組まれた壁でガハルドさんを一瞬にして囲むが

 

「穿て――〝風撃〟」

 

 俺の努力が一瞬にしてバラバラにされるがそんなのは想定のうちだぜ。

 目的は、相手の目を少しでも俺から離すこと。

 そして、危険予知と力学演算にて俺の組んだ足場板がどのように吹っ飛び、その死角から相手に近づくこと。

 今度は、高速建造にて縄(ナイロン製)を生み出し、高速建造にてガハルドさんを一瞬にしてカマス結びで縛り上げる。

 まさか、こんなところで高速建造が役に立つ時が現れるとはな。

 

「おいおい、さっきから俺は大道芸人でも相手にでもしているのか…本気だすぜ?」

 

「いやいや現場監督に何を求めているんですか?そもそもこれは模擬戦……」

 

 俺のロープまでも簡単に引きちぎり凄い殺気を出すが…

 

「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。……ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

 

「……チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

 

 その後は原作に進んで、恵里達が俺を心配してくれたがまあガハルドさんも言っていたが、所詮は大道芸……

 俺がガハルドさんのお眼鏡に叶うわけもないだろう。

 気にするほどでもないか。

 

 

 

 

 

 とある一室

「勇者を本当は見たかったんだが、思いのほかいい収穫があったな。

 アイツ、本当に子供か!かなり物事を客観的に見れて、人を見る目がありやがる。〝神の使徒〟抜きにしてアイツとはサシで飲んでみてぇな!」

 

「あれが『現場監督』の力ですか…」

 

「あぁ? 違ぇよ。噂じゃ、人を指揮する天職らしいが俺も聞いたことがねぇからな。まぁ、魔人共との戦争が本格化したらみれるかもな。見るとしてもそれからだろうよ。今は、小僧どもに巻き込まれないよう上手く立ち回ることが重要だ。教皇には気をつけろ…ってもアイツも教皇を信じていないみてぇだがな」

 

 

 

***

 そんなイベントをこなしながら俺は遂にたどり着いたあのイベントに……

 

 瞳の色は髪と同じ燃えるような赤色で、服装は艶のない黒一色のライダースーツのようなものを纏っている。体にピッタリと吸い付くようなデザインなので彼女の見事なボディラインが薄暗い迷宮の中でも丸分かりだった。しかも、胸元は大きく開いており、見事な双丘がこぼれ落ちそうになっている。また、前に垂れていた髪を、その特徴的な僅かに尖った耳にかける仕草が実に艶かしく、そんな場合ではないと分かっていながら幾人かの男子生徒の頬が赤く染まる。

 

「現場監督はあんたでいいんだよね? そこのアホみたいに地味な服を着ているあんたで」

 

 恵里がヤバいくらい殺しそうな目でカトレアさんを見ているが、

 

「アッハイ…ゲンバカントクノヒヤマデス」

 

「はぁ~、こんなの絶対いらないだろうに……まぁ、命令だし仕方ないか……一応聞いておく。あたしらの側に来ないかい?」

 

 これが運命力なのか、そして始まったカトレア戦…

 しかしここからは、俺とカトレアさんたちとの持久戦だ!

 

 

 

 

「クソッ!なんだこいつの魔法は!」

 

 イライラしているなカトレアさんよ……とはいっても結構キツイ

 

 そんな俺が今何をしているのかと言うと、高速建造と設計を駆使し全力で籠城戦に持ち込んでいる最中だ。

 相手がどんなに俺の城壁を崩しても、ノータイムで復旧していく壁に攻略法が分からないって感じだな……

 強度は高速設計によって保たれ、中々崩せないだろう。

 原作とは違い、騎士団の方たちもまだ誰も死んでいないがとりあえず、遠藤に助けを呼んでもらいに行って地上にハジメ達がいることを祈っている……

 

「大介だけに苦労をさせるな!俺達も全力で援護しろ!」

 

 メルドさんの指揮も相まって意外に籠城戦はこっちに有利に進んでいるが……ヤバい……

 

「大介…大丈夫?」

 

「恵里……」

 

「檜山無理すんな」

 

「坂上……」

 

「ダイダイ、私も聖絶を使ってもいいんだよ?」

 

「谷口……」

 

 他のクラスメイト達も俺を心配してくれている………

 

 クラスメイト達には、遠藤と一緒に行ってもらう算段だったんだが……俺を一人にしておけないって…

 勇者(笑)が居ないからか、みんなのステータスが原作とは違い低く、俺の指揮官の技能で来れたのが現状だ……

 下手したら、誰かが死……

 

「オエッ」

 

「大介!」

 

 高速建造と設計、更には危険予知やら力学演算の使い過ぎで……気分が……

 

「……大丈夫だ恵里……約束…した…だろ…絶対に死なないって……」

 

 やっぱり5人とも俺を恨んで……

 これもアンチキャラの宿命なのか……

 せめて、他のクラスメイト達だけでも……

 その時だった。

 

 

 ドォゴオオン!!

 

 轟音と共にアハトドの頭上にある天井が崩落し、同時に紅い雷を纏った巨大な漆黒の杭が凄絶な威力を以て飛び出したのは。

 

 

 

 きたぁぁぁぁぁ!

 

 この漆黒の杭は!

 

「大丈夫か……檜山?」

 

 ハジメくぅぅぅぅん!

 

 更には、

 パチンッ

 指を鳴らすのと同時にアハトドに無数の闇の塊が落ちてきて、白い髪になり、ヘアースタイルが鬼太郎になり、ますます『どうでもいい』とセリフが似合う男も現れ

 

「遅くなってすまなかったな。檜山」

 

 清水ぅぅぅぅぅぅぅ!

 

 そしてそして!

 黒いポニーテールを靡かせ、自分の背丈程の刀を自在に操り、カトレアさんの魔物たちを切り刻んでいく美人剣士

 

「大介、無事?」

 

 八重樫ぃぃぃ!

 

 さらに現れたのは!

「虚しいものだな。我が檜山大介(ライバル)よ」

 

 ……へ?

 

 そこに現れたのは、白と黒を基調としたロングコートを身にまとい、ざっくり空いた胸元を隠すことなく、現れたイケメン……誰だ?

 

「俺は檜山大介(ライバル)の決着をつけにあの地獄より舞い戻ってきた…そのためには、今は目の前の障害を退けるとしよう…」

 

 いちいち格好つけるなや……俺のことライバルって……まさかこいつ……

 

「はぁはぁ…間に合ったみたいだな……」

 

 みんなが急に現れたクラスメイト達に驚く中、遠藤も帰ってきてアイツら誰だって話になり…

 

「驚くなよ、あいつらは南雲と清水と八重樫さんと……天之川だ!」

 

 

 

 

 ……やっぱり!

 

 

 

 

 

 




次回作者がこの作品を思いついて一番書きたかった話が出てきます。
でもその前に、幕間として奈落組の話を書かないとなぁ。


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23話 誰かの心の支えになると言う事

ハメフラでいう、破滅イベントです。
果たして、檜山は破滅を回避できるのか!?




 ズバシュッ!

 シュン ザシュッ

 ドガッ

 ズワァァン

 

 おお……まさに無双

 

 今、目の前で起こっている事を見たまんま表現するなら

 ハジメが敵を銃でバァンッと撃って

 清水が魔法で、魔物をヌワァンッ!て飲み込み

 八重樫が刀でザシュッっと切り

 天之河?が何かをして敵を……って!あの痛々しい恰好している奴が天之河だと!

 妙に伸ばした前髪

 何故か胸元が空いたロングコート

 まるで、中学生になって自分でカッコいいものを詰め込んで結局痛々しい服装になってデビューを失敗したような恰好が天之河だと!?

 一体奈落で何があったんだ?!

 

「…コウキ達行くの、早い」

 

「そうですよ!私たちもいるんですから!」

 

 ハジメ達が無双している最中、天井の穴から金髪美少女とうさ耳スタイル抜群の女の子達も降りてきた。

 クラスメイト達も、この二人に驚きはしたものの、男たちはうさ耳少女のダイナマイトバディに顔を赤らめつつ、女子達から冷ややかな目で見られている。

 おお、ユエさんとシアさんだ。

 原作同様、めっちゃ可愛い

 

「……あなたがヒヤマ?」

 

「おお!この人がヒヤマなんですか!」

 

 俺が降りてきた二人を見ていると、ユエさんが俺を指さし俺の名を呼んでくる。

 それに反応するように、シアさんも俺を見てきた。

 

「えっそうだけど……ってなんで俺の名を?」

 

「コウキが言ってた、『俺にはヒヤマってライバルがいて、そいつとの決着を着ける為に生きている』って」

 

「決着をつけることが出来たら、私たちの気持ちに応えてくれるんです!」

 

「へぇー、私たちの気持ち――ん?……ちなみに、お二人は天之河とどういったご関係で……」

 

「…コウキの正妻です」

 

「コウキさんの正妻その2です!」

 

 二人が恥ずかしげもなく告げてきて、クラスメイト達が驚いている……

 

 

 

 

 ええええええぇぇぇぇぇ!?!?!?!?

 

 ハジメハーレムがコウキハーレムになってるぅぅぅ!?

 マジで奈落で何があったんだ!?

 

 俺がパニックになっていると

 

「待たせたな、我がラ、ふぎゃ!?」

 

 天之河が俺に喋り掛けようとしたら、後ろからハジメからドンナーで背中を撃たれ倒されていた。

 

「これ以上、迷惑を起こすな」

 

「もう、ハジメはコウキに厳しすぎ」

 

「そうですよ!私たちの将来の旦那様に何かあったらどうするんですか!」

 

「大丈夫よ、シア、ユエ。ステータスだけなら私たちの中でも一番高いんだし、これくらいじゃどうにもならないわ」

 

「南雲もゴム弾で撃っているしな。しかし、あの魔人族の女に逃げられたのは失敗したな」

 

「理由は本物の大迷宮だろうけど……幸利、やっぱり大介の件も」

 

「これは、ティオの言う事を信じるしかないのか……」

 

 何か八重樫と清水がひそひそと話しているが、逃げられただって?

 確か原作だと、ハジメに殺されるはずじゃ……

 

 八重樫と清水も俺たちに近づいてき、クラスメイト達も無事だった4人に喜びさっきまでの殺伐とした雰囲気は消えていく。

 

「ハジメ、八重樫、清水…それに天之河も無事で…ってそういえば白崎さんは!?どうした!」

 

「安心してくれ檜山。香織も無事で今は地上で待ってくれているから。香織には無理はさせられないからな」

 

「無事ならよかったぁ…」

 

 ハジメがそう告げてくれたが………

 

「本当は白崎さんにも言わなきゃならないんだが、まずは言わせてくれ」

 

 俺の発言に、ハジメ達が不思議そうな顔を俺に向けてきた。

 

「ごめん!」

 

 俺はハジメ達に対して頭を下げる。

 クラスメイト達は何で謝るんだみたいな感じ俺を見てくるが構わずに続ける。

 

「あの時、俺が気を失わなければハジメ達が落ちる事は無かった……」

 

「大介…そう言うなら僕もだよ!あの時天之河と言い争いしなかったら…雫ちゃん達ごめん!」

 

 恵里も謝り、俺に近づき一緒に頭を下げる。

 

「謝って済む問題じゃないのは分かっているけど、謝らせてくれ…ごめん!俺は5人から恨まれても仕方のない事をしたんだ!気が済むまで殴られる覚悟も…」

 

 おそらくステータスの差で殴られた瞬間あの世に行ってしまうかもしれないが、ハジメ達にはその権利が……

 

「「「「………ぷっ……あはははは!」」」」

 

 すると、4人が一斉に笑い出した。

 

「あーはっはっ!急に何を言い出すんだよ檜山?」

 

「あははっ。本当よ?なんで大介を殴らないといけないのよ?」

 

「くっくっ。全くだな」

 

「流石は俺のライバル。ジョークのセンスもあるとはな」

 

 まるで俺が見当違いな事を言ってるみたいになる。

 

「え~っと…ハジメ?俺の事を恨むとか、殺意とか抱いてないのか?」

 

「そんなわけないだろ?そもそも、俺たちがここまでこれたのはお前のおかげだぞ?」

 

「えっ?」

 

 ハジメは語ってくれた、奈落に落ちた後の事を。

 

***

 四か月前 奈落

 

 ハジメ、白崎、清水、八重樫は、目の前でハジメが左腕を熊に喰われ、その時に全身で感じてしまった“死”という恐怖。

 

 今まで感じたことなんてなかった感覚。

 

 その感覚から逃れるように、現実を見ないようにするために、愛する者と交わり、愛し合った事。

 

 一時はその感覚に溺れ、そのまま生を諦めようとした事も……

 

 その時だった。

 

 “俺はあいつらが死んだなんて思っていない”

 

 声が聞こえてきた。

 

 いつも支えてくれる声

 

 どんな時も前を向き、みんなを引っ張ってくれる頼もしい声

 

 最初は幻聴かとも思ったが

 

 “みんなで一緒に日本に帰るんだ”

 

 その声は段々と、自分達に力を与えてくれるのを感じた。

 

 檜山は、いつも僕に勇気をくれる。

 

 檜山君は、私とハジメ君を結んでくれた。

 

 アイツは、俺に自信をつけさせてくれた。

 

 大介は、私を支えてくれた。

 

 “メシ食いに行こうぜ”

 

 また、檜山とご飯を食べに行きたい。

 

 そんな声を無視して、こんなところで死ぬなんて……

 

 「「「「嫌だ!」」」」

 

***

「…って事があったんだ」

 

「おそらく、檜山の精神的支柱の効果だとは思うんだがな」

 

「そのおかげもあって私たちは心が折れずにここまで来れたってわけよ」

 

 なるほど

 まさか、精神的支柱にそんな効果があったとはな。

 って事は……

 

「ふっ…ようやく俺の番と言うわけか」

 

「天之河にも俺の精神的支柱が働いたって訳か?」

 

「そう言う事だな。さっきも言ったが俺は奈落で地獄を見、そして経験をしたがお前との決着を着けるためにここまで……」

 

「てか、お前の性格がなんでここまで変わっているんだよ?」

 

 俺が疑問に思いハジメ達を見ると、俺からサッと目を反らした。

 

「それは、ハジメ達に原因がある」

 

 ユエさんが代わりに説明してくれた―――――――

 

 

 

 

 うわぁぁ……それはキツイ………

 意気揚々と助けに向かったら、

 好きな子(思い込み)はハジメと睦み合ってて

 幼馴染(思い込み)も清水と愛を語り合ってて(意味深)

 一種のNT〇プレイが目の前に……いや別にNT〇でもなんでもないんだけれども

 

 一種の自暴自棄になってた所に、ユエさんを助け、お互い一人ぼっちだったからか意気投合。

 原作における、ハジメポジションは天之河が担っていたのか……

 

「てか、なんでそれで俺が出てくるんだよ?」

 

「ふっ…檜山はあの時俺にこう言ったじゃないか…悔いを残すな…と」

 

「ああ、確かに言ったが」

 

「俺は思ったんだ。このまま、ライバルに負けたまま死ぬのは嫌だ。とな、さぁ!俺との終幕(決着)を降ろそうではないか!」

 

「天之河……」

 

 俺は中二病(天之河)の肩に優しく手を置き

 

「お前の勝ちでいいよ。さぁ、みんな早く地上に帰ろうぜ」

 

 俺が手を叩き、帰る準備を促すと

 他のクラスメイト達もはたまた騎士団の方たちも、

 終わった終わった、と肩を回し

 ユエさんとシアさんはポカンとし天之河を見つめ

 坂上は、久しぶりに会う友人の再会を喜び始め

 谷口と恵里、女子クラスメイト達も八重樫に楽しそうに話しかけ

 他の男子たちは、ハジメと清水の持っている武器に興味を持ったり、再会に喜び

 各々、地上に帰る準備を始め……

 

「ちょっと待てぇ!檜山!」

 

「どうした天之河?お前の勝ちでいいからユエさん達の気持ちに応えてやれ?」

 

「いやいやいや!お前はライバルとの勝負をなんだと思っている!?」

 

「そもそも、俺はお前をライバルなんて思ってないが?」

 

「————なん…だと?!」

 

「だから、お前の勝ちで……」

 

「だから待ってくれ!……それでいいのか!?中村の前で恥ずかしくないのか?!彼女の前でかっこ悪い所を……」

 

「なんで、大介がお前に負けるのが恥ずかしい事なの?僕は何があっても大介を好きなままでいる自信があるよ?」

 

「そもそも、多分ステータスはお前が全部勝ってるだろうから、天之河の勝ちで…」

 

「甘いな檜山。ステータスが全てじゃ…」

 

「初めは、そのステータスの合計を気にしてたんだから、お前の勝ちで…」

 

「檜山!俺の気持ちを考えてくれよ!こんな威風堂々と挑戦をたたきつけた気持ちを!」

 

「だったら、俺の気持ちも考えて欲しかったんだがな。…わかった、お前の気持ちを考えなかった俺の負けだな」

 

「何で、そう簡単に勝ちを俺に譲ろうとするんだよ!」

 

「……わかったよ」

 

「!…ふっ。ようやくわかっ「光輝、一体何で勝負するんだ?」」

 

 坂上の一言がこの空間に響く。

 

・・・・・・・・・・・・

 

 しばしの沈黙かこの場を支配する。

 まさかこいつ…

 

「・・・・・・ふっ」

 

「ふっ。じゃねぇよ!何も考えてなかったんじゃねぇか!」

 

「いやぁ…考えていたぞ……」

 

「じゃあ、なんだよ」

 

「・・・河原でケンカ?」

 

「いつの時代の少年漫画だよ!暴力関係で決めんだったらお前の勝ちで…」

 

「いや!待って!もっと平等な方法を考えるから待ってくれ!」

 

 涙ぐみながら俺を見つめてくる中二病(天之河)。

 

「…ヒヤマ。あんまりコウキをいじめちゃダメ」

 

「そうですよ!コウキさんは意外に繊細なんですから!」

 

「いや、別にいじめてたわけじゃないぞ?」

 

 天之河やユエさん、シアさんと、そんなくだらない会話を続けながら地上へと向かっていると

 

「……大介」

 

「どうした八重樫?」

 

「地上に戻っても、驚かないでね?」

 

「驚く?どういう事だ?」

 

「雫、今言っておいた方が……」

 

「これ以上、大介のストレスを増やすわけには、いかないし。それに言っても信じてもらえるか……」

 

 また、ひそひそと清水と話し始めたが、驚くって何か地上であるのか?

 

***

 そんなこんなで、地上に戻ると

 

「パパ!おねえちゃん!おにいちゃん!」

 

 小さい子供が、ハジメに抱き着いてきた。

 

 クラスメイト達が、ハジメに子供が出来たのか!みたいに驚いているが、このイベントなら知っているぞ。

 

 ハジメパパになるイベントか。

 ミュウちゃんの事を、八重樫と清水は驚くなって言っていたのか、いや~何か他に驚くような事があると思っていたが心配して損した。

 

「お帰りなさい。みんな」

 

「香織!」

 

 すると、ミュウちゃんの後ろから、原作とは違い、僧侶のような恰好ではなくゆったりとした青色のロング丈のパーティドレスに身を包んだ白崎さんが現れ、ハジメはそれを見た瞬間白崎さんに駆け寄る。

 クラスメイト達も、白崎さんに近寄り再会を喜び、恵里も手を取り合い白崎さんとの再会を喜んでいる。

 それにしても、気のせいか白崎さん綺麗になったな。

 なんて言うか、美人に磨きがかかったって言うか、今までにない色気を身に着けた感じがするな。

 

「香織。ゆっくりしてていいんだぞ?」

 

「もう、ハジメ君は心配性なんだから」

 

 やっぱり、奈落で愛し合ってたらしいから、日本にいた時に比べてもさらにイチャイチャラブラブ度が増しているな。

 まあ、それもあってかハジメはハーレムを作ってないのかもしれないな。

 

「白崎さんも無事でよかったよ。確かにハジメは少し心配しすぎなんじゃないのか?」

 

「妻の心配をするのは夫として、当然だろ?」

 

 ……ん?

 

「ハジメ君♡」

 

 白崎さんが自分の頬を手で挟み、照れており、その左手の薬指からキラリと光る指輪。

 

 あぁ。プロポーズでもしたのか?学生のうちからプロポーズなんて流石主人公。

 まあ、原作でも父親の仕事を手伝っていて、ちゃんと稼げるみたいだし…

 

「ふっ…まさに聖母を守る、ナイトと言ったところか」

 

 突如天之河から投下された爆弾に一同が一斉に白﨑さんを見つめる。

 

 聖母………

 

 せいぼ……

 

 ()

 

「えへへ♪」

 

 白﨑さんは嬉しそうに、自分のお腹を優しくなでている。

 それはまるで慈愛に満ち、全てを愛しむ正に聖母の様だった。

 

 さっきは、ゆったりとしたドレスだったからスタイルが分からなかったが、ドレスを手で押さえる白﨑さんのおかげで、下腹部が少しポッコリしているのがわかった……

 

「檜山君、私とハジメ君と…この子の3人の家を造ってね♪」

 

 

 ………………ふぁっ!

 

 

 




 どんどん原作ファンに喧嘩を売ってるような気がしますが僕は満足したの物を書けています!
 次回は幕間でこの話の深掘りをしていく予定です。


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幕間 “現場監督”

ここからはガッツリオリジナル展開と行き当たりばったりの設定が飛び交いますので、矛盾点が見られるとは思いますが生暖かい目で見守ってください。(いつものことか!)


 オルクス大迷宮 地下

 

 そこには、二つの影が会話をしている。

 

「無事でよかったよ?カトレアさん」

 

「何で疑問形なんだよ。まあ、助かったよ」

 

 性別はわからないがフードを被った者は飄々とした声を出しカトレアと喋りながら魔族領の帰路へとついている。

 

「それにしても、なんなんだよ、あいつらは!フリード様がくださった魔物が一瞬で全滅するし、その現場監督とかいう奴の魔法も良くわからないし!」

 

 地団駄を踏むカトレアに飄々とした声が掛かる。

 

「まあ、彼の魔法…というより天職と技能が特別なんだよ」

 

「……お前は何か知っているのか?」

 

「何を?彼のスリーサイズ?流石にそこまでは知らないな」

 

「私をおちょくってるのか!」

 

 フードに怒鳴り声を上げる、カトレアの声が地下に響く。

 

「あんまり大声出すものじゃないよ?彼らに聞こえたら厄介だろ?」

 

「アンタのせいだろ…大体お前は、魔人なのかそれとも人間?亜人?そもそもフリード様のお気に入りじゃなかったら……そこまでって、アイツを知っているのか?」

 

「ああ。僕は彼の…ファンて事にしておこうかな?」

 

「ファンてなんなのさ」

 

「まあいいじゃないか。彼の情報は、魔人族には悪い話じゃないし、フリードさんには伝えてあったことだしね?」

 

「・・・あたしは聞いてないのだけど」

 

「別に気にすることはないさ。彼はなんたって…“現場監督”なんだからね」

 

「現場監督……聞いたことない天職だけど一体何なんだい?」

 

「知らなくて当たり前だよ。だってこの世界に存在しない天職なんだから」

 

「存在しない?それってただ珍しいだけなんじゃないのかい?そんな気にするような天職なのか?」

 

「気にするような天職なのさ。……カトレアさん。一つ質問いいかい?」

 

「質問?」

 

「君の目の前には、中身のわからない箱があるんだ。でも、誰かが言うんだ『中身を見てはいけないよ』って。君ならどうする?」

 

「どうするって…」

 

「中身が気になるだろ?」

 

「でも、見るなって言うなら…」

 

「でも、もしそれを言ったのが君の彼氏ならどう思う?」

 

「それは…」

 

「ふふ気になるよね?その箱こそが彼なんだ」

 

「・・・もっと分かりやすく言ってくれ」

 

「直ぐに答えを求めるのは良くないなぁ~…まあいいか。彼は絶望にも希望にもなるパンドラの箱なんだよ」

 

「パンドラ?なんだいその…パンドラって?」

 

「ああ。この言葉はこの世界には無いのか。まあ、簡単に言うと彼はこの……戦争という物語の要石なんだ。彼次第で、人間、魔人族、もしくは第三勢力のパワーバランスが一気に崩壊すると言っても過言じゃない」

 

「そこまでなのか?どう見ても地味だし、あの魔法だってただの初見殺しなだけだろ」

 

「それは、彼の外面しか見てないからさ。彼の凄いところはここさ」

 

 フードの者は自分の胸の所を指さす。

 

「・・・心臓ってこと?」

 

「ふふふ。面白いこと言うね?それでもいいのかも。とある所じゃ、その者が罪を犯したのかを調べるのに死者の心臓を使うらしいしね」

 

「何その怖い調べ方」

 

「気にしなくていいよ、こっちの話だから。彼はね…概念魔法をその身に宿しているのさ」

 

「概念魔法ってなんだい?」

 

「ああ、君は知らないのか?まあ簡単に言うとこの世界を変えることの出来る魔法のことさ」

 

 フードの者の言葉にカトレアは、馬鹿にするように笑う。

 

「あたしに学が無いと思って馬鹿にしていない?そんな凄い奴だったら魔物なんて簡単に蹴散らすんじゃないのかい」

 

「ふっふっふ、君は本当に外面しか見ないんだな」

 

 そしてカトレアを笑い返す。

 

「だって本当じゃないか、世界を変える事が出来るなら自分が苦戦する状況に持っていくものかね?」

 

「それは彼が認識していないだけさ。彼が概念魔法を認識出来たら…戦争はあっという間に終戦するだろうね」

 

「そんな訳…」

 

「それがあるんだよ。檜山君はそれを認識していないだけなんだ。檜山君の持っている“力学演算”は概念魔法の基礎になっているのだからね。“現場監督”に“力学演算”まさに、彼らしいよね!」

 

「檜山?力学?基礎?」

 

「檜山君の“力学演算”を駆使し、概念魔法を作成し、使えばこの世界の物理法則何てあって無いようなものさ。武器、魔法、etc…なんでも彼は思うが儘に変えられる」

 

 急に饒舌になったことに困惑するカトレアに気づいたのか、咳ばらいを一つし説明を始めていく。

 

「悪かったね?まず…力学について説明をした方がよさそうだね?」

 

「別にいいよ。話長くなるんだろ?」

 

「まあいいじゃないか。まだ家に着くまで時間はある」

 

「・・・ジャアリキガクニツイテオシエテ。これで満足かい?」

 

「ああ、完璧だ。でも、完璧に理解するには難しすぎるから簡単に説明すると『全て物に働く力』これが力学さ」

 

「じゃあなんだい。今歩いているこの瞬間も力学が起きているのかい?」

「ああそうだよ」

 

 カトレアが小馬鹿にするように聞いた質問に間を空けずに返事が返ってきて面を食らってしまった。

 

「歩く、止まる、物を投げる、物を持つetc…挙げたらキリがないから、これぐらいにしておこうか。つまり、彼がその気になったらこの全ての行動が無に帰すわけさ」

 

「・・・そんなに凄いのか」

 

「ああ。だから、魔人族たちは血眼になって檜山君を手に入れたいわけさ。いや魔人族だけじゃない、人間の間でも彼の凄さに気付いているのが居るとかいないとか…まあ、竜人族の末裔は檜山君に気づいて行動しているみたいだけどね。でも彼が概念魔法を使うには、3つの問題がある。わかる?」

 

 カトレアが首を横に振ると、深くフードを被っているのに笑っているのが分かるぐらい口角が吊り上がっている。

 

「1つ、彼は魔力に関するステータスが極端に低い。まあ、これに関してはある方法を使えば簡単に解決するけどね。

 2つ、そもそも彼が概念魔法を認識をしない」

 

「認識ってそんなに大事なのかい?誰かが教えたらいいだけじゃないのか」

 

「そうはいかない。『教えて認識』することと、『自分から認識』することは、大きな差がある。概念魔法を使用する際にはこの差が重要なんだよ。誰かに教えてもらっては意味がない。自分が認識し、考え、そして初めてそこに“意思”が芽生えるのさ」

 

「そんなに概念魔法には“意思”が重要なのかい?」

 

「ああ、そうしないときっと途中で死んじゃうだろうからね。まあ、檜山君はそのプロセスに耐えうる力はあるみたいだけどね」

 

 死という言葉にカトレアに気を取られ、後半の言葉を聞こえてないみたいだがフードは続けた。

 

「3つ目、これは急遽出来た問題なんだけどね。彼にはとっても頼りになる仲間…いや友達がいる」

 

「あいつらか…」

 

 オルクスでの一幕を思い出し、苦虫を嚙み潰したよう顔をするカトレア。

 

「美人が台無しだよ?まあ、そのせいもあって、彼が概念魔法を使わずともいいんだよね。彼は本当に人に恵まれているよ、ステータスが馬鹿に高い友達も居れば、可愛い彼女もいるみたいだしね」

 

「なるほどね、何故フリード様が現場監督を生け捕りにしろって命令を出したのかわかったわ」

 

「理解できたならよかったよ」

 

 そして二人は歩みを続ける。

 檜山は、自分が様々な思惑の渦中にいることをまだ知らない。

 

 

「君と会って話しがしたいよ檜山君………いや、佐藤君だったかな」

 

 

***

 おまけ

 

 一方地上では。

 

檜山「きっと、ハジメと白﨑さん達は、もっと子供をつくるだろうから、3人なんて言わずもっと大家族向けの家の方がいいよ。部屋も兄弟姉妹のことを考えて多めに設計するとして、夫婦の寝室は一緒の部屋でもいいだろうけど書斎とかも…」ハイライトノキエタメ

 

白﨑「檜山君…そこまで考えてくれるなんて」ウル

 

ハジメ「流石は檜山だ!」グッ

 

八重樫「あなた達…これ以上大介に負担を掛けないの!」

 

恵里「ねぇ大介…僕とも…」モジモジ

 

清水「今は止めておけ中村。お前もこれ以上檜山に負担をかけてはいけない」

 

谷口「カオリンが着ているドレスって、マタニティドレスだったのかぁ…」

 

坂上「なぁ。マタニティってなんだ?」

 

天之川「妊婦ってことさ。親友よ」

 

坂上「……白﨑、妊娠してるのか!?」キョウガク

 

ユエ「…もしかして、コウキの友達って」

 

シア「馬鹿なんですかね?」

 

 




ここから、概念魔法とかの原作の用語の独自解釈が炸裂しますのでご了承下さい。


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24話 一難去ってまた一難

檜山(佐藤)の受難は続く話です。
*原作を見直して、概念魔法をハジメたちが知るタイミングにずれがありましたので少々本文を訂正しております。


 ここは檜山脳内会議場は、混乱の渦…いや混乱の暴風域に包まれていた。

 

「どうなってんだよ!なんで白﨑さん妊娠してんだよ!しかも、天之河がなんで厨二病全開で俺をライバル宣言してんだよ!」

 

「流石に、この状況を予想は出来ませんでした…」

 

 強気は両手で頭を掻きむしりながら妊娠という事実を叫び、真面目が申し訳なさそうに俯きメガネをクイっと上げていた。

 

「これを~予想できる方がおかしいよ~」

 

「だよね…今現実逃避の為に一生懸命ハジカオの一軒家設計をしているけど…どうしよう…」

 

 気楽が真面目をフォローし、弱気がこの後をどうするのかを気にしていると

 

「…ですが、これはもしかして死亡フラグが消えたのではないのでしょうかな」

 

「「「「!」」」」

 

 議長の発言に、他檜山の混乱が止んだ。

 

「そうだよ!この時点でクラスメイト達からの恨みなんて一切ないし!ハジメ達も俺を恨んでないって言ってた!」

 

「しかも~技能の精神的支柱のおかげで助かったって言ってたよね~」

 

「正直バッドステータスぐらいにしか思ってなかったんだけど…まさか離れた相手の心の支えになるなんて…」

 

「しかし、この技能のおかげで死亡フラグが消えた可能性があります」

 

「転生して早数年…ついにこの時が来たのですな」

 

 議長が涙ぐみ髭を撫でている。

 

「これで~悩みの種が無くなったってことだよね~」

 

「よっしゃー!後はハジメ達が最強になって、神代魔法なり、なんなり取得してくれれば日本にも帰れるぞ!」

 

「しかも、迷宮の地下で見る限り、他の皆さんも相当強くなっていましたし、もしかしたらこちらの予想より早く帰還できるかもしれません」

 

 気楽、強気、真面目達が喜んでいるとそこに弱気がおずおずと発言してきた。

 

「ちょっと待って…もしかして、シミシズも…妊娠してる可能性が…」

 

「「「「はっ!」」」」

 

「それは、聞いてみるしかありませんな」

 

「だよね~もうこうなったら悩みの種は聞いておこうよ~?」

 

「「「「異議なし!」」」」

 

***

 

「―――庭は広めの方が…ってちょっと待ってくれ!」

 

 現実逃避から戻り、ハジカオの一軒家相談を止め八重樫と清水達に近づき俺は聞いてみることにする。

 

「……あの、二人に聞きたいことがあるんだけどいいか?」

 

「どうしたの大介?」

 

「何かあったのか?」

 

「迷宮での話を聞く限り、二人もセッ…睦み合っていたらしいけど、もしかして八重樫も…そのぉ…」

 

「…はっ!私は大丈夫よ大介!いや、大丈夫というか…」

 

「運がよかったというか…いや、もし雫がそういうことになっていたらもちろん責任を取るつもりだ!」

 

「幸利…」

 

 二人が顔を赤らめながら俺の質問の意図を汲み取ってくれ、どうやらシミシズペアは妊娠していないことが判った。

 つまり、妊娠しているのはハジカオペアだけだと言う事だ。

 天之河も、さっきからぶつぶつと

「やっぱり勝負の方法は…」

「コウキ、こういう方法は…」

「コウキさん私たち一族伝統の決闘方法が…」

 などと、ユエさんとシアさんと話してはいるが、俺を恨んでいるようすは無い。

 

 

 ……よっしゃぁぁぁぁ!遂に、遂に俺は達成したんだ!

 様々な苦難を乗り越え俺は遂に成し遂げることが出来た!

 ハジカオに子供が出来ていたり、天之河が俺をライバル視してるけど、直接俺を恨んでなんていない!

 死亡フラグにおびえる日々は遂に終わったんだぁぁ!

 

 

 

「ちょっとよいか現場監督よ」

 

 俺が感動に打ち震えていると、後ろから凛とした声を掛けられ振り返ると黒髪ロングヘアーの美人がそこには居た。

 おお、ティオさんじゃん。

 これまためっちゃ美人

 パイルバンカー食らっているのかな?

 

「えっと俺に何か?」

 

「先ずは自己紹介といこうかの?妾はティオ、異世界からの来訪者達や“現場監督”であるお主に会う為にハジメ達の旅に同行しておった」

 

「ああそうですか。俺の名前は檜山大介。えっとハジメ達の友達で…俺に会う為?」

 

 ティオさんの言葉が聞こえたのか、恵里が俺に近づき腕に抱き着いてきた。

 

「どうした恵里?」

 

「別にぃ~」

 

「可愛らしい女子じゃな?」

 

「ええ、俺の自慢の恋人の中村恵里です」

 

 俺が恋人と言うと恵理は嬉しそうに笑顔を見せてくれた。

 

「安心せい、ヒヤマをどうこうしようとは思うておらん。ただ、お主に伝えておこうと思うてな」

 

「伝える?」

 

「ああ、お主という存在についてな」

 

 どういうことだ?存在?

 すると、ハジメ達やクラスメイト達もティオさんに近づいてきた。

 

「ここでは何じゃ、今晩妾達が使っている宿まで来るがよい。他の来訪者達も来るが良い、関係のない話ではないのでな」

 

 

***

 ティオさんに言われた通り、俺を含めたクラスメイト達はを宿の一室へと集合してティオさんの話を聞くことになった。

 

 ハジメ達は原作通り、神代魔法を集める旅をしており、集める事が出来たら日本に帰るかもしれないと言うとクラスメイト達は沸き、もう戦争に参加するふりをせずに済むなど、命の危険が少なくなることに安堵している様子だ。

 

「騒いでいるところ申し訳ないが、話はまだ終わっておらんぞ」

 

 ティオさんが騒いでいるクラスメイト達に一喝入れ静かにすると、俺の方を向き話し始めた。

 

「ヒヤマよ。お主は魔人族に狙われているのは知っておるな?」

 

 俺が狙われている…確かに初めはこのイベントは勇者勧誘の代わりぐらいにしか思って無かったが、今思えばカトレアさんは俺を明らかに勧誘してきた。

 

「でも、なんで俺を狙うんですか。俺なんてただのエヒトって偽神でしたっけ、加護を受けた大多数の一人でしかないんですよ?そもそも天職だって戦闘向きでもなんでもないですし」

 

「やはり、理解しておらんかったか…その天職のせいでお主は狙われておるのじゃぞ」

 

 ……は?

 

「いやいやいや!こんな地味な天職の奴なんていらないでしょ!?」

 

「地味…お主本当にそう思うておるのか?」

 

「いやだって、出来ることなんて、建造と危険予知ぐらいしか……」

 

「一瞬で壁や建物を造り、そして直すことも出来、危険予知という未来予知に近いことが出来る…これが地味なのかの?」

 

「それって私の未来視と一緒じゃないですか!」

 

 シアさんもティオさんの話に食いついてきた。

 

「未来予知じゃなくて危険予知だって、使うとめっちゃ気持ち悪くなるし、自分に対しては8割ぐらいしか当たらないし…」

 

「ヒヤマさんは他人に使えるんですか?めちゃくちゃ凄いことですよ!私なんて自分に仮定した未来しか見えないのに…」

 

「気にすることはないシア。人には向き不向きがあるんだからな」

 

 天之河がシアさんの頭を撫で慰めているな、向き不向きなんて原作の天之河だったら出ない言葉に感動するな。

 でも俺の危険予知ってそんなに凄いことなの?!

 

「しかも、聞いた話では相手の行動も読めるらしいな?」

 

「でも、それもヘンテコな数式が頭に入ってきて気持ち悪くなるし、初めなんて気を失ってしまうし…」

 

「それでいて、他の来訪者達の考えまで声となり頭に入ってくると」

 

「でも!これも戦闘中しか使えないですよ!?使って耐えれているのも、耐性もステータスが馬鹿に高いだけで…」

 

「ちなみにヒヤマよ。魔力が低いと聞いていたが今はどれくらいあるのかのう?」

 

「…レベル55で56です」

 

「…そんな低い魔力で未来視が出来るなんてあり得ない」

 

 ユエさんも俺に驚いている。

 

「……そうなの」

 

「本当に矛盾だらけの男じゃの」

 

「……もしかして、そのせいで俺を狙うんですか」

 

「それもあるが、本当に狙いは別にあるのじゃ」

 

 まだ何かあるのか⁉︎

 

「お主の身の中に神代魔法を宿しておると魔人族に伝えた者がおるらしい」

 

「…は?何なんすかその根も葉も無い話を言いふらした奴⁉︎」

 

「それに関しては妾も分からん。ただ、其奴の言葉を魔人族が信じているのは本当のようじゃがな」

 

 今日のあのイベントか!

 

「でもさっきのハジメ達の話を聞く限り、その神代魔法でしたっけ?そんな眉唾な話を信じるなんて…」

 

「確かにお主の言う通りじゃが、この話を真実味を持たせておるのは、お主の天職にもある」

 

「現場監督ですか?でも、このどこにでもありふれている…」

「おらん」

「…へ?」

 

 俺の言葉を遮るように告げるティオさんに間の抜けた声が出てしまった。

 

「少なくとも、妾が知る限りこの世界に“現場監督”と言う言葉は存在しておらん」

 

「そうだったんすか?!」

 

「さて、魔人族はどう思うかの?神から使いの一人は聞いたことのない天職であり、見たことのない魔法を使う…火のない所に煙は立たぬと言うからの、様々な状況がその者の話に現実味を帯びさせておる」

 

「でもなんで、そんな奴の話を魔人族は信じているんですか?!流石に無理が…」

 

「それに関して妾も分からぬ。しかし、最近になってそういった噂がこの世界に流れ始めたのも事実じゃ」

 

 くっそぉ!ハジメ達からの死亡フラグを回避出来たと思ったらこれかよ!

 こんなの原作でもない流れだし、ましてや俺がそんなにチート持ってるなんて噂が流れるなんて、一体誰なんだよそんな傍迷惑な嘘を流した奴はよ!

 …この世界?

 

「ちょっと待ってください!ティオさん、さっきこの世界って言いませんでしたか?」

 

「…そう、この噂が何故か世界中に広まっておるのじゃ」

 

 まさか、ガハルドさんが来た理由ってこれか!?

 

「まだ、人間族の間では都市伝説ぐらいにしか思われておらんらしいが何かあったのか?」

 

 ・・・胃が痛い

 

 俺が胃の痛みに耐えていると、ティオさんは顎に手を添え考え始めた。

 

「…これは妾が思っているより、厄介なことに巻き込まれておるのかもしれんの」

 

「どうことですか…?」

 

 俺が腹を抑えながら聞くと、ティオさんの、スーパーティオさんを目の当たりにすることになった。

 

「妾はこの噂が、世界中に広まっている(・・・・・・・・・・)ことの方が恐ろしいと思っておる」

 

「確かに、魔人族だけに広まっているならまだしも人間の間にも広まっているのはどう考えてもおかしい」

 

 清水がティオさんの発言に賛同し、

 

「それに、さっきの魔物達はどう考えても神代魔法によって生み出された魔物だったことを考えると、魔人族の個人が行った考えとは思えないな」

 

 ハジメも自分の考えを述べた。

 つまり俺って、魔人族全体から狙われているのか⁉

 

「まだ、王国内ではそこまで噂が出回ってないのがまた奇妙じゃな。あの騎士団の連中も、ヒヤマに対しては気の合う同僚ぐらいにしか思っておらんみたいじゃしの」

 

「待ってくれハジメ!でも、お前の話だと、魔人族は神代魔法が使える奴がいるなら、その噂が嘘だってわかりそうなものだけど?」

 

「しかし檜山よ。現にあの女の魔人は我がライバルを連れ去ろうとしていた所を考えると魔人族はお前を狙っているのは間違いないな」

 

 ・・・まじかよ!?

 

「本当はあの魔人の女から大介の事を聞き出したかったんだけど、まさか邪魔が入るとは思わなかったわ」

 

 俺が頭を抱えていると、八重樫が申し訳なさそうな顔を向けてきた。

 

「邪魔?」

 

「ああ、俺がドンナーで撃とうとした時に現れ、飄々とした中性的な声で大きめの白のコートでフードを被ってて男か女か、ましてや種族もわからなかった」

 

「そしてそいつはこう言ったんだ―――」

 

 ハジメがそいつの特徴を述べ、清水がその時にあったことを教えてくれた―――――

 

 

『誰だ!』

 

『あんたは・・・どうしてここに?』

 

 カトレアは目の前に現れた、白いコートに問いかけるがカトレアを無視しハジメ達と向き合い会話をし始めた。

 

『僕のこと?…ナナシノゴンベエでどうかな?』

 

『ふざけないで!もし邪魔をするようなら…』

 

 清水と八重樫たちは、攻撃の準備をするが、そいつは一切慌てるようなこともなく飄々とした態度を崩すことなく続ける。

 

『まあまあ落ち着て、今ここでことを荒立てるつもりはないし、彼女の恋人に頼まれただけだからさ?』

 

 バン!

 ハジメが躊躇なくフードの肩を打ち抜いたが、白いコートは赤く染まることなく穴が空くだけで貫通もせずに終わった。

 

『なっ?』

 

『馬鹿な!南雲は実弾で撃ったはず』

 

 ハジメと天之河が驚いているが、目の前の白いコートは気にすることなく

 

『ああ気にしなくていいよ?僕の体が特殊なだけなんだ。檜山君の友達だよね?ふふふ、彼は凄い力を秘めているから扱いには注意してあげてね?』

 

『力…?』

 

『君たちにはこういった方が分かりやすいかな?彼は、神代魔法を身に宿している』

 

『『『『!』』』』

 

『まあ、正確には神代魔法とは違うんだけどね?ほぼそれと同義だから気にしなくていいよ』

 

『お前は何者なんだ!』

 

『どうやら、なおの事逃がす訳にはいかない様ね』

 

『熱烈なお誘いありがとうございます。でも、今はまだその時じゃないからさ。今はね?』

 

 パチンッ

 白いコートが指を鳴らすと、空間がゆがみ一瞬にしてカトレアと白いコートは消えたが白いコートの声だけが聞こえてきた。

 

『ああ、檜山君に伝えてほしいんだ。――――早く君に会いたいって!』

 

 

 

 

 

 




ちなみに、ティオさんはパイルバンカーを食らっていません。
一応檜山(佐藤)のおかげでレベルは低くても迷宮90階層に着けた裏設定があります。


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25話 七転八倒、しかし九回目で起き上がったる!

 おや檜山の様子が…
 


 今、檜山の脳内は大混乱に包まれている。

 

「どうなってんだよ!どんだけこの世界は檜山を殺したいんだよ!!!」

 

「落ち着いてください強気さん」

 

「これが落ち着けるかぁ!なんだよ神代魔法って!誰だよそんな根も葉もない嘘っぱち吐きやがった奴はよ!」

 

 強気が、円卓の上でブレイクダンスをするが勢いでヘッドバンキングをかましている。

 

「ハジメ君たちからの死亡フラグを回避できたと思ったらこれですか…」

 

「本当にこの世界は檜山をころころしたいんだねぇ~」

 

「しかも、問題はそれだけではございません」

 

「クラスメイトのみんながこの段階で戦争に参加しないでいいって喜んでいるところだよね…」

 

「正直、もう原作ルートではない別のルートに入っていると思って行動しましょう」

 

「どうすればいいんだよ!王国に戻れないだろうし!愛子先生班との合流問題だったり!愛子先生攫われる問題だったり!ましてや、勇者もう王国には戻らないだろ!」

 

「探してきますって言っておいて…まさかの中二病患って、エヒト倒しますよって…死亡フラグのオンパレードだね…」

 

 強気と弱気の発言に一同が黙ってしまい、脳内に沈黙が訪れる。

 

「…まず、必要なものを考えてみましょう」

 

「必要なもの…?」

 

「ええ。正直、物語がどう変わるかはもう予測が出来ません。物語が関係なく、この状況を乗り越える為に必要なものを考えてみてそれを揃え、死亡フラグの対策といたしませんか?」

 

「まず必要なモノって言えば……衣食住かな…?」

 

「確かに~何といっても必要な物だよね~」

 

「住に関しては問題がありませんな。何て言ったって『現場監督』なわけですしな」

 

 議長の言葉に一同が頷き

 

「幸い人間の間では俺は都市伝説ぐらいにとどまっているんだ!こうなったら四の五の言ってらんねぇ!クラスのみんな安心して暮らせる家を建造してやろうぜ!」

 

「「「「異議なし」」」」

 

 強気の発言に一同が賛成し、次なる問題に取り掛かる。

 

「次は、衣・食かな…これに必要な物と言えば……金?」

 

「そこになるよね~」

 

「でも、どうやって金を稼ぐかですか…どうすれば?」

 

「これも…『現場監督』を全力で生かそうよ…」

 

「どういう事ですかな?」

 

「ここは異世界…きっと建築が出来るギルドがあるはず…!」

 

「「「「はっ!」」」」

 

「そうだ、ここは異世界。困ったらそういうギルドがあるはず!」

 

「建築ギルドが無くても~それっぽいギルドが合って~きっとお金が稼げるかもね~確か原作だと愛子先生達が王都に戻るのに2~3週間かかるはずだよね~」

 

「幸いここは宿場町。冒険者ギルドがあるのですし、申し訳ありませんがここはハジメ君達を名前を使わせてもらいましょう」

 

「ギルド長に推薦してもらい、建築でも、増築でも仕事をあるか探してもらいましょう」

 

「「「「異議なし!」」」」

 

***

 

 ティオさん達のいる部屋では、クラスメイト達は騒然としている。

 

 どうするんだよ!このままじゃ檜山が危ないんじゃないか?

 王国の教会も結構危ないんでしょ?

 このまま帰らなきゃならないの?

 それよりも愛子先生達はどうするの?

 優花達も危ないんじゃ…

 

 ハジメたちの話を聞いたクラスメイト達は、王国に帰ると危ないなど、愛子先生達や俺を心配してくれる声、まさに騒然としている。

 

「みんな落ち着いてくれ!」

 

 俺が叫ぶようにみんなの騒ぎを止める。

 こうなったら後は野となれ山となれだ!

 

「ハジメ!確かお前達って冒険者だよな!確か金クラスの!?」

 

「えっ確かにそうだけど…」

 

「どうしてその事を檜山君が知って…」

 

「そんな事はどうでもいいんだよ、白崎さん!」

 

「どうしたんだ宿敵(ひやま)?」

 

「ねぇ雫おねえちゃん。このお兄ちゃんどうしたの?」

 

「まさか、ついにストレスが爆発したのかしら…」

 

「その可能性は0じゃないな…」

 

 周りが少し騒がしいが気にしない!

 

「ハジメ達の名前はギルドの中でも有名って事だよな!」

 

「ああ、そうだな」

 

「前の町じゃ人攫いの組織を潰しちゃったしな」

 

 この辺りは原作通りならいける!

 

 俺はハジメ達直角に腰を曲げ頭を下げ頼む。

 

「頼む!ハジメ達の名前を貸してくれ!」

 

「どういう事だ檜山?」

 

「どうしたの大介?」

 

 ハジメたちや恵里が不思議そうな顔をして俺に聞いてくる…

 

「みんな……俺は会社を作る!」

 

「「「「「「…………はぁ!!!!」」」」」」

 

「大介…疲れてるんだよ。ほら、僕が一緒に寝てあげるから。僕が大介を癒やしてあげるよ♪このまま子作りSE―――」

 

 クラスメイト達とハジメ達が驚き、恵里がまるで疲れ切った夫を慰めるように手を引いてくれるが気にしない!

 

「ヒヤマよどうしたのじゃ?」

 

「…やっぱりコウキの友達って…バカ?」

 

「類は友を呼ぶって言うらしいですからね」

 

 ティオさん達までもが俺を可哀そうな目で見てくるが関係ない!

 

「みんな、俺は本気だ!代表取締兼社長は俺!会社名は……檜山建設株式会社!」

 

 絶対エヒトなんかに負けたりしないんだからね!

 

***

 

「我の思い通りにならない駒などいらぬな…あの檜山とやらは泳がせておくには危険すぎる。このままでは戦争が面白くなくなる。あの忌々しい反逆者同様に…」

 

 神々しい恰好した男がそうつぶやくと同時に

 

「はくしゅん!」

 

 その後ろからくしゃみの音が聞こえた。

 

「誰だ!」

 

「ずずぅ…最近くしゃみが止まらなくてさ?花粉症かな?」

 

「ここをどこと心得る?それに我が“誰か”と聞いておるのだぞ?」

 

「あれ?人に名前を聞くときは自分からって教わらなかった?」

 

「…エヒトルジュエの名において命ずる――〝誰だ〟」

 

「……」

 

「!?エヒトルジュエの名において命ずる――〝誰だ〟!」

 

「……っっくっくっく…あは、あはははははは!」

 

「何故我の神言が効かぬ!」

 

「僕はツイてる!…君の描くシナリオはワンパターンでつまらないな。自分の思い通りにならないから物語は面白いんだよ。全部が自分の思い通りになったらそれはイイ物語じゃない。まだ素人の書いた小論文の方が面白いよ」

 

「エヒトルジュエの名において命ずる――〝消えろ〟!」

 

「……はぁ~」

 

「アルヴ!アルヴはおらぬか!」

 

「……本当につまらないなぁ~こうするんだよ?エ―――の名において命ずる――〝足よ消えろ〟」

 

 白いコートが呟くとエヒトルジュエの足が消えた。

 

「!?何故、お前が神言を使え―――」

 

「うるさいなぁ~まあ、君がそろそろ動くと思ってここに来たのは良かったけど、正直運が良かったよ。君がもしこの世界の魔法について少しでも深く理解していたら消えていたのは僕だったからね?」

 

「魔法…理解…何を言って―――」

 

「もう、君は用済みだ。そもそも、檜山君に手を出そうとした時点で君の運命は決まったんだ。もう十分に神様ごっこを楽しんだろ?」

 

「い…いや…消えたく……!」

 

「バイバイ。エ―――の名において命ずる――〝消えろ〟」

 

 そう白いコートが呟くと、エヒトルジュエが居た場所には初めから何もなかったかのように綺麗になっていた。

 

「あは……あは!…っくっくっく!!あははははは!はぁーはぁー…僕は本当に運が良い!まさか、こんなに馬鹿なんて思わなかった!少しは魔法について理解があると思ってたんだけど嬉しい誤算だったなぁ」

 

 白いコートはまるで、一人になったのも忘れ、自分の幸運に酔いしれるようにその場で両手を広げ感情を表現している。

 

「檜山君に手を出させるわけにはいかないからね。ああ、檜山君…早く君に会いたいよ…その為にも、檜山君の友達たちには早く神代魔法を集めて貰わないとね♪」

 

 まるで、意中の人に会う口実を見つけたオトメの様に自分の顔を両手で挟み恍惚の表情を浮かべている。

 

「さあ!まだまだ準備はあるんだ!最高の舞台で君に会える事を楽しみしているよ!だって君は僕の!運―――なんだから!」

 

 白いコートの叫びが神域に木霊する。

 そして神域には誰もいなくなった。

 

 

 

 




 異世界の物の、物凄い偏見が見られると思いますが、温かい目で見守ってください。

>エヒト
 簡単に消されちゃいました。
 でも、檜山君の受難は続くよ

>檜山建設株式会社
 異世界なら簡単に会社ぐらい作れるな!
 そんなノリでクラスメイト達の生活費を稼ぐ父ちゃんが誕生しました。


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幕間 ドキドキ3番勝負

 頭を空っぽにして見てください。
 元ネタは、吸血鬼すぐ死ぬです。


 俺が会社を作ると言った次の日の朝

 

我がライバル(ひやま)!」

 

「…なんだ朝っぱらから?」

 

 朝から元気なのは中二病になっても変らないのか…

 

「ふふふ…遂に決まったのだよ」

 

「……何が?」

 

「俺と我がライバル(ひやま)との決着の方法をだ!」

 

「アーヨカッタネ。オヤスミ」

 

「待て待て待て!何で寝るんだよ!今日の夕方には俺たちは神代魔法を求める旅路へと出るのだぞ!?このタイミングしかないだぞ!ライバル(ひやま)も対決してくれるっていったじゃないか!」

 

「……はぁ。分かったから今から行くから。ちょっと待ってて…」

 

***

 

「第一回!ドキドキ!コウキVSヒヤマ!3番勝負ぅぅ!実況は私コウキさん正妻No.2シアと!」

 

「大介の将来(確定)嫁の中村恵里がお送りいたします」

 

 二人ともノリノリだなぁ。

 てか、他のクラスメイト達とかユエさんシアさんとかも俺と天之河を囲うように集まってきてるし。

 

「ふふふっ…ライバル(ひやま)よ。ついにこの時が来たようだな。地獄から戻ってきた俺を舐めないことだな」

 

「別に舐めてないけどさ…ルールは?」

 

「…それは私から教える」

 

 ユエさんが出てきて、ルールを説明してくれる。

 

1.お互いに50枚の紙に勝負方法を書く。 暴力はNG 

 

2.それをお互いに引いていき、3試合して勝利数が多い方の勝ち

 

3.しかし、わざと負けるような真似をすると勝負そのものが無効になり、再試合となる。 

 

「―――わかった?」

 

「50枚って多くね?」

 

「大介!僕が半分書いてあげる!」

 

「それはルール的にいいのか?」

 

「別に構わないさ。要は全ての勝負の方法が1%になることが大事なんだからな」

 

「……ちゃっちゃと書くか」

 

「いいのか檜山?」

 

「いいんだよハジメ。勝負を受けるって約束したしな」

 

「その律義さはやっぱり大介よね」

 

「それがこいつのいい所の一つだからな」

 

 ハジメ達が心配してくれるが、なんか凄く無駄な時間を過ごしているような……

 

―――――――――――――――――

 

 恵里が手伝ってくれたのもあって、意外に早く終わったな。

 何故か書いてくれたのを見せてくれなかったな。

 

「さぁ!運命のルーレットを引くがよい!宿敵(ひやま)!」

 

 どうやってルーレットを引くんだよ…

 

「じゃあこれで」

 

 1試合目:料理対決

 

「料理対決ですね!コウキさんが料理をしているところを見たことは無いんですけど、ヒヤマさんは料理の方はどうなんですか解説の恵里さん?」

 

「恵里でいいよ、シアちゃん。僕も大介が料理しているところは見たことないな?」

 

「これは一体どうなるか予測が出来ませんね!」

 

 泊っている宿屋の厨房を借り、料理対決をすることになったが、宿屋の人には申し訳ないな。

 何を作るか…

 前世でも料理はした事はあるが得意料理はこれと言って……あ。

 牛乳もどき、蜂蜜っぽいの、卵っぽいの、パン…あれで行くか。

 

――――――――

 制限時間が来て、俺と天之河が作った料理を持って審査員である、ティオさんに持っていく。

 

「まずは、コウキのからいただくかの?」

 

「俺が作った料理は、ディンバシュだ!」

 

「ほう、この地方に伝わる伝統的な朝食じゃな」

 

 ディンバシュ?

 あの、なんて表現すればいいのかわからない凄い色をした料理が?

 

「天之河の奴、本気で勝ちに来てるな」

 

「それだけ本気って事だね。ハジメ君」

 

 ハジメ夫妻が解説を入れてくれるが、そんな有名なのかディンバシュ。

 

「ああ、コランの実をシューレンに入れ、5分ほどクォーションすることにより、コランの実の中身で一番美味しい部分であるランパがフミュするから…」

 

 だめだ一個も分からない。

 

「まあ解説はこれぐらいにして食べてみてくれ?冷めるとおいしくなくなるからな」

 

 あったかいんだアレ。

 

「では頂こう……悪くないが、一つ失敗をしたのコウキ」

 

「なに!……はっ!しまった!ヂューペェンを忘れていた!」

 

 またわからない単語が出てきたな…

 

「そう、ディンバシュには欠かせないデューペェンをクォーションせんとはこれは痛い減点対象じゃぞ」

 

 なんだよクォーションって…

 

「おっと!これはヒヤマ選手!この勝負は貰ったのか!」

 

「ではヒヤマの料理を頂こうかの?」

 

「アッハイ、これをどうぞ。お好みでこのシロップをどうぞ」

 

「…これは?」

 

「フレンチトーストです」

 

「これは美味しそうじゃの」

 

 前世で唯一家族に好評だったものだ。

 ポイントは超弱火で蒸し焼きにするところかな?

 

「頂こう……これは、何ともフワフワした食感。それに優しい味付け…朝にピッタリじゃな」

 

「ありがとう、ティオさん。みんなの分も作ったから食ってくれていいぞ?」

 

 俺が、大量のフレンチトーストを厨房から出すと、ハジメ達やクラスメイト達も美味しそうに食べてくれた。

 

宿敵(ひやま)いつのまにこの量を!?」

 

「厨房の人に頼んでな。焼くのだけ時間が少しかかるだけで行程自体は簡単だからな?」

 

「この勝負はヒヤマの勝ちじゃな。料理としても、男としてものぉ」

 

「くっ…しかし、勝負はこれからだ!」

 

 早くみんなの生活費を稼ぎに行きたいんだけどな……

 

―――――――――――――――――――――――

 2試合目:借り物対決

 

「なんだこれ?」

 

生涯の友(ひやま)よ」

 

 ついに友になったか…

 

教室の友(クラスメイト)にも協力してもらい、お題を箱から取りそれを初めに取りに行き早くここに戻って来た方が勝ちというシンプルな勝負だ」

 

「さあ!第二試合開幕です!これはやはり運がカギを握っているのでしょうか恵里ちゃん」

 

「そうだねシアちゃん。みんなには無理なお題はやめておくようには伝えたし、運がカギを握っているけど、人たらしの大介とステータスだけ高い天之河…これはいい勝負が期待できそうだね」

 

「ちなみに、引き直しは無しだぞ運命の友(ひやま)よ!」

 

 サラッとバカにされたことはいいのか天之河…

 すでにお互いにちゃん付けで呼び合うとは流石恵里だな。

 俺と天之河は箱から同時に紙を取った。

 何が書いてあるかな―――

 

 黄色い声援

 

「…………はぁ?」

 

 どうやって持ってくるんだよこんなの…

 てか誰だよ!こんな無理難題書いた奴!

 どうみても天之河贔屓のお題はよ!

 

「俺は……くっ。ギルドマスターか…この時間から連れてこれるか…早くしないと負けてしまう…」

 

 マズい!こんなしょうもない事に今度会いに行く人の心証を悪くしたくない……

 こうなったら…

 

「いやいいぞ天之河。この勝負はもう終わっているんだからな」

 

「何!」

 

「恵里、ちょっとこっちに来てくれるか?」

 

「いいよ大介。お題は“好きな人”とか?」

 

 俺はお題の紙をみんなに見せ、恵里の腰に左手を回し抱き寄せ、右手で恵里の頬を出来る限り優しく包み俺の方へと向けて

 

「恵里…愛してる」

 

 そして、恵里の首筋へとキスをした。

 

 キャーーーー

 

 朝っぱらから何してんだろ俺………

 

「大介♪」

 

 恵里が嬉しそうに俺の首へと抱き着き、俺に頬擦りしてくる。

 

 男子からは

 

 流石リア充…

 朝から見せつけてくれるな…

 ハジメに感化されたか…

 

「エリリン嬉しそう」

 

「谷口も……」

 

「龍太郎どうしたの?」

 

「……なんでもねぇ」

 

「?」

 

「流石は運命の友(ひやま)……このままでは……」

 

「コウキ、頑張って!」

 

「そうですよ最終戦はポイント3倍なんですから!」

 

 何、その一昔前のバラエティ番組のノリ

 

「中々あのお題が出ないですね…」

「運がいいのか悪いのか…」

「最後は僕が…」

 

 ユエさん、シアさん、恵里が何か相談してるが何かあったのか?

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

「さぁ!やってきました最終戦!お題は一体何なのか!運命のお題をヒヤマさん引いてください!ああ、ちなみに、先ほど言いましたけど、最終戦はポイント3倍なので勝負の行方はまだ分かりません!」

 

 シアさんが声高らかに宣言するが、今までの何だったんだ…

 まあいいか、さっさと終わらせてみんなの生活費を稼ぎに行かないとな。

 俺は箱から紙を引こうと…

 

「待って大介!」

 

「恵里?どうしたんだ」

 

「最後は僕に引かせて!」

 

「別に俺はいいけど。いいのか天之河?」

 

「構わないさ運命の友(ひやま)よ。最後のお題をお前の女神に決めてもらうもの一興だろう」

 

「だってさ」

 

「やったぁ!さーてと何が出るかな♪」

 

 なんか嬉しそうに箱から紙を選んでいるが、さて最終戦のお題は一体何なのか…

 

「じゃあこれ!」

 

 3試合目:彼女と子作りS〇X

 

 そのお題を見た瞬間、周りのギャラリー(一部を除き)絶句していた。

 

「…恵里お前」

 

「イヤー、最終戦に偶々こんなお題になるなんてね!でも勝負だもん!大介は勝負を投げ出さないもんね!」

 

「偶々だから仕方ない、コウキ、私はいつでもOKだよ」

 

「私もですよ!」

 

「二人とも…」

 

「…このお題の紙、端に折り目が付いてるな」

 

「偶々だよ!」

 

「うん、偶々」

 

「偶々ですね!」

 

「箱の中身を確認するか…」

 

「蒼天」

 

 俺が箱の中身を確認しようとする前に、青い炎が箱を焼き尽くし、跡形もなく消え去った。

 

「ごめん魔法が誤作動した」

 

 確かこの世界は魔法って誤作動しないはずじゃ

 

「さぁ!大介」

「コウキ!」

「コウキさん!」

 

 周りのギャラリー達は、興が覚めたのか散り散りに去っていき、ハジメ達が止めてくれ第一回3番勝負は幕を閉じた。

 

「全く、三人ともいい加減にしろよな」

 

「ハジメ。言っておくが、お前達にも責任あるからな?」

 

「えっ…」

 

***

 

「ノイントちゃん。後は頼んだよ?」

 

「は!」

 

 白いコートの指示をあたかも当たり前の様に受けるとそのまま飛び立っていく銀髪美女

 

「ふふふ、仕掛けは上場♪これでハジメ君たちの迷宮攻略が簡単になるだろう…そこにいるのは分かってるよカトレアさん?」

 

「!」

 

「隠れてないで出ておいで」

 

 白いコートに言われるがままに、観念した様に茂みから出てくるカトレア。

 

「…お前は一体何を企んでいるんだ?」

 

「あの子?名前はノイントちゃん。君と同じで美人さんだろ?」

 

「質問に答えろ!」

 

「そう怒らない。美人が台無しだよ?」

 

 白いコートがそう言うと、カトレアは脅すために魔法を唱えようとするが、

 

「魔法が…発動しない?!」

 

 カトレアが驚いていると白いコートがカトレアの目の前に立ち、指を鳴らすと彼女を光るロープの様なものが縛り上げる。

 

「くっ!何をする気だ!」

 

「美人が縛られているのはいい絵だね、彼氏に見せてあげたいよ。それにしても、ひどい言い草だね、先に手を出そうとしたのは君だろ?

 まあいいや、魔人族の所に来たのは偶々だったし、例の実験をするのに都合が良くて、何かの縁だと思ってフリードさん達には知恵を貸してあげたんだけどね。

 上手くいけば檜山君を連れてきてもらおうなんて考えてたんだけど、今となっては、君が作戦を失敗してくれて良かったけどね。まあ、結果オーライって奴だね」

 

「偶々だって?お前は何がしたいんだ!一体何者なんだ!」

 

「嫌な事を聞くね?何もかも中途半端な僕はどう答えたらいいのかわからないよ」

 

 白いコートはわざとらしく、およよ…と泣く真似をし落ち込んでいる。

 

「ふざけるな!まさかお前の目的は魔人領を征服するためにフリード様を騙して…」

 

「え、そんな事しないけど?大体征服って何?そんな事に意味なんてないじゃん?めんどくさいだけだし…まあ確かなことは、僕はある目的があるんだ」

 

「目的?」

 

「そう目的だ!僕達の生きる意味!存在理由と言ってもいい!」

 

 よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに全身で喜びを表現する。

 

「それこそが檜山君……あぁ檜山くぅん…僕たちの運命の人…」

 

 白いコートは自分の体をくねらせながら、檜山の名前を呼び続ける。

 その異様とも思える光景にカトレアは縛られて動けないながらも後ずさりをするがごとく地面を這っている。

 

「わかってるよカトレアさん。僕たちは狂っているんだ」

 

「僕達?」

 

 どう見ても目の前には一人しかいない白いコートを見るカトレアは周囲を確認するがやはり一人しかいない。

 

「ん?ああ、大丈夫だよ。君の願いもきっと叶うよ」

 

 すると、白いコートは自分の胸に手を当て呟くよう告げる。

 

「僕も望みが叶い、君の望みもきっと叶う…だってそうだろ?彼は運命の人なんだからさ」

 

「さっきから何を…あっ……」

 

 白いコートが指を鳴らすと同時にカトレアは眠りについた。

 

「これで彼女はここで見たことを忘れてくれるはずだ」

 

 白いコートはカトレアを抱きかかえ、頭に手を置き何かを抜き取るような仕草をとり、優しく地面へと置いた。

 

「これでよし…しかし、僕にも君の影響が出てきてるみたいだね?」

 

 白いコートは自分の胸に手を置き、自問自答の様に語りかけている。

 

「ん?ああ、別に気にしなくていいよ悪い気がしないからね?人をここまで想うのも悪くないからね。さあ、少し邪魔が入ったけど準備を続けよう!今度は―――」

 

 

 

 




>第一回!ドキドキ!コウキVSヒヤマ!3番勝負
 天之川は既に2回目開催を望んでいます。

 今後の進め方なのですが、原作と流れが同じところはどんどん飛ばして分かりにくい所だけを補完していきます。
 また、オリジナル部分や作者が書きたいところは詳しく書きますがご了承下さい




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26話 噂って大体尾ひれがつきがち

タイトル通りです。


「ここが、ホルアドの建築関係のギルドか…」

 

 少しさびれた西洋風のレンガ造りの建物の前に俺は立っている。

 ハジメたちの名前を借り、ホルアドのギルドマスターであるロアさんに話をつけてもらい、このギルドで働くことにしたんだが

 

「ロアさんが言ってたけどあんまり治安は良くなさそうだな…」

 

 建物の外観もそうだが、中から漏れてくる喧々諤々とした声

 

 ヤンノカコラァ!

 テメェノヤリカタジャヌリィンダヨ!

 コノケンハオレタチガ…

 

「…頑張るっきゃないか」

 

 この話は少しさかのぼることになる。

 

***

 

『何?建物を建てるギルドはあるのかって?』

 

『はい!それでいて給金の支払いが出来れば早いところがいいんですが』

 

 俺は、ロアさんに事情を説明して働きたいことを伝えるが

 

『あるのはあるが、あまりお勧めはしないぞ?』

 

『というと何か問題があるんですか?』

 

『ああ…正直言うと我がホルアドの悩みの種と言うかな―――』

 

 ロアさんは頭を抱えながら、この町の建築ギルドについて語ってくれた。

 

 ―――ホルアド建築ギルド―――

 腕の良い集団で、建物の増築や新築に至るまで一挙に担うことが出来るが、個々の我が強く…いや強すぎるが故、同じギルド内の対立はおろか、依頼主との問題を起こすこともある有様。

 また、建設中にケガはおろか、命を落とす事例も起きており、誰もが働きたいなどとは思わないようなギルドであり、治安の悪さに拍車がかかり、ロアさんも手を焼いているとのこと。

 

『―――と言った具合でな?恥ずかしい話だが俺も手を焼いていてな、しかし、建物、家ってのは、生活に欠かせないし、宿屋町であるこの場所では、宿の復旧や外壁の補修なんて危険な仕事をやってもらっているもんだから、簡単に切っても切れない関係なんだ。言い訳に聞こえるかもしれないが、多少の事は目を瞑ってきてるのが現状だ』

 

 ロアさんは自分の頭を掻きながら話してくれたが、どこの世界でも似たようなモノなんだな…

 

『だからって訳じゃないが、幾らエヒト様の使者とは言えやめておいた方が…』

 

『でも、金払いはいいんですよね?』

 

『…ああ、危険な仕事に変わりはないからな。個人から国の仕事まで引き受けることがあるからな、ここだと宿屋と外壁や、オルクスの迷宮の壁まで仕事は次から次へと出てくるからな』

 

 俺に今選択の余地はない。

 多少危険だろうと俺の天職を生かして、多額の報酬を得られるならたとえ火の中水の中だ!

 

『ロアさんお願いいたします!そこのギルドを紹介して頂けませんか!』

 

『……わかった。しかし、少しでも危険に思ったら引き上げて来いよ』

 

***

 そして、今に至る。

 クラスメイト達には、メルドさんに帰るまでの期間を誤魔化してもらうようにしてもらい。

 ハジメ達も、神代魔法を集める旅へと行く流れとなっている。

 正直、妊娠している白﨑さんは残ると思ったんだが、

 まさか白﨑さんに新しい技能“聖母の寵愛”なんてチート技能が目覚めるなんてな…

 

 “聖母の寵愛”―――

  白﨑さんの寵愛を受けた者のステータスを一時的に増幅する技能。 

  寵愛…具体的には白﨑さんからおでこにキスをしてもらうだけでもステータスが倍になり。

  性行為なんてした暁には、ステータスが10倍以上に跳ね上がり、状態異常なのどデバブ等を全て無効と言ったバフを掛けれるらしい(ハジメ限定)

              

 なんで、今ハジメ達の迷宮攻略法は、ハジメ(バフ付き)、天之河(厨二病)、ユエさん、シアさん、清水が攻略に向かい。

 八重樫さんとティオさんが、地上で白﨑さんを守るといった編成で進めているらしい。

 

 まあ、よっぽどのことが無いと負ける要素がないよな…

 天之河も、ステータス3倍にできる技能があるらしいしハジメ達はちゃんと世界最強になってくれているんだ。

 クラスメイト達は俺が支えてやらないとな!

 

 喧々諤々とした声がする建物に俺は意を決して入る。

 俺が建物に入ると、さっきまで騒いでいた人たちが一斉に俺の方へと向き、

 その中でも、一際背の高く、筋骨隆々とした鉢巻をしたスキンヘッドの男が俺の前へと立つ。

 

「なんだてめぇ、ここに何の用だ?」

 

「迷子にでもなったのかボクチャン?」

 

「ちげぇねぇ!早くママの所にでも帰んなぁ!」

 

「目つきは悪いがイイオトコじゃねぇか、今晩俺が掘ってやろうか?ボクチャンの知らない世界へとご招待なんてなぁ!」

 

「俺も混ぜてくれなんてな!」

 

 ギャハハハと俺を馬鹿にする笑い声が響くが、俺は気にすることなく叫ぶ

 

「スゥ…皆さんご安全に!」

 

 俺の一言にさっきまで騒いでいた声が静まり俺を見つめる男たち。

 

「早速で悪いが、仕事を紹介して欲しい、依頼板とかあるかな?」

 

***

「檜山君…無事でしょうか…」

 

「きっと大丈夫だよ。愛ちゃん」

 

「そうだよ。ハジメ達が無事だったんだ。檜山たちもきっと大丈夫だよ」

 

 ウルから、ハイリヒ王国に向かう馬車の中、愛子先生たちは檜山の事を心配している。

 

「ハジメ達が無事良かったけど、まさか、檜山が狙われる恐れがあるなんて…」

 

「早く、王都に戻って合流しないとね」

 

 オルクスの一件後、振りとはいえ戦争に参加をしたくなく集まった集団。

 通称、愛ちゃん護衛隊

 ハジメ達とウルの町で出会い、ハジメ達は日本に帰るための方法を探している事を知ったのだか、そのハジメ達から告げられた事実。

 

『檜山が狙われる可能性がある。出来る早く王都に戻って檜山と合流して欲しい』

 

 ハジメ達が愛子先生にそう頼み、今に至る。

 

(ハジメ君達が無事でよかったけど…まさかエヒトって神さまは、人々を操って戦争をして楽しんでいるなんて…)

 

 教会にその事が悟られる前に、檜山と合流してできる限りクラスメイト達と共に行動して欲しいとのこと。

 

(お願い…檜山君たち無事でいて…)

 

 携帯もなければ、手紙すら届く方法がないこの異世界で、祈ることしかできない愛子は自分の不甲斐なさに涙が出てきそうになる。

 

「ヒヤマ…」

 

「どうしたんだ御者?」

 

 御者の呟きに反応するデビット。

 

「申し訳ございません、聞き耳を立てるような真似をしてしまって。そのヒヤマという名前は最近噂になっておりまして…」

 

「噂だと?」

 

(檜山君の噂?…一体何かしら)

 

 愛子先生達はその話を詳しくするように御者に頼んだ。

 

「ええっと…私の聞いた話では、ヒヤマは老若男女問わず満足するテクを持っており、どんな無理な体制でも仕事をこなし、彼に睨まれると一瞬でイッテしまい、彼のサービスを受けたら最後、他に変えるなんて考えられず、リピーターが後を絶たないとか…」

 

 愛子先生達は絶句し、御者の話を聞きいっている。

 

「更には、ホルアドの荒れている地区にギルドを立ち上げ、その勢いは飛ぶ鳥を落とす勢いで噂では相当稼いでいるとか…確かギルドの名前は―――ヒヤマなんとかチ…何だったかな?まあ、立ち上げの理由がクラスメイトっていう家族の為の生活費を稼ぐためだとか…」

 

(なななな!まさかそんな訳!?でも、檜山君って目付きが鋭いけど、顔は整っているし、体つきも悪くないから…もしかして!?)

 

―――

「はぁい。今日は楽しみましょう♪」

 

 そこには、ぴっちりとしたタンクトップ、下はきわどいハーフパンツを着た檜山君いる。

 

「俺のテクを受けたいのはど・の・ひ・と?」

 

 彼は誘うように、手をいやらしく動かし舌なめずりをし、人を誘惑している。

 彼の誘惑に負けた人が彼のお尻へと手を伸ばし…

 

「あぁん。焦っちゃだぁめ♪時間はたっぷりあるんだからね」

 

 そういうと、彼はハーフパンツに手を伸ばし―――

―――

「だめです!そういうのはダメです!」

 

「ど、どうしました愛子?」

 

「御者さん!このままホルアドに向かってください!私の生徒が間違った道を歩むのを止めないといけません!」

 

 他の騎士団の人たちも困惑する中、愛子先生は御者に頼みホルアドに向かうように頼みこんで、デビットも愛子の熱に負ける様に、御者にホルアドに行くように頼んだ。

 

***

 愛子先生達は、ホルアドに着くや否や、檜山が立ち上げたギルドの場所を聞き、その場所へと向かう。

 目の前には、綺麗なレンガ造りの建物があるが、愛子先生達には妙な威圧感を感じている。

 

(ここに檜山君が…待っててね檜山君!あなたの担任の先生として、間違った道を歩まないようにしないと!)

 

 そして意を決してギルド内へと入る。

 

「ようこそ、ギルド“ヒヤマケンセツ”へ!」

 

 入るとそこには、木造ではあるが古さは一切なく、清潔感のある喫茶店のような内装であり、コーヒーの様な良い香りが漂っており、受付の所には元気で明るいショートカットの女性が居る。

 

「綺麗…」

 

 優花達が今まで泊まってきたどの宿屋よりも綺麗な内装に感動していると、受付の女性が尋ねてくる。

 

「あの…どうかいたしましたか?」

 

 女性の声に我に返る事が出来た愛子は、檜山の事を尋ねてみる。

 

「あの、ここに檜山君がいらっしゃると聞いたのですが?」

 

「ああオヤカタですね!今ちょうど仕事に行っているところでして、今日はたくさん方たちとの大仕事だそうで」

 

 大仕事!しかも沢山!

 

「そろそろ戻って来ると…あっ!噂をすれば」

 

 受付嬢が扉の方を向くと、騒がしい声が聞こえてきて勢いよく扉が開くとそこには―――

 

「いやー!今日も安全作業で終わりましたね!オヤカタ!」

「ヒヤマオヤカタが来てくれてから怪我無く仕事が出来てさすがっす!」

「仕事も増えて、このギルドの評判どんどん上がって言うことなし!よっ!ヒヤマカントク!」

 

 一回り程大きい作業着を着た男の人たちに囲まれた、泥で汚れている作業着を着てキラキラとした汗を額に流してる檜山君が居た。

 

「みんな今日も安全作業でお疲れ様!でも油断が一番の危険だからな。明日も安全作業でご安全に!」

 

「「「「「「ご安全に!」」」」」」

 

 いやーオヤカタが来てから良い事ずくめだな!

 今度でかい依頼も入ってくるらしいしな!

 最近は町の奴らからもいい目で見られるしな!

 

 彼の一言に解散していく男の人たち。

 

「ウーケさんただいま――あれ?何で愛子先生達がここに?」

 

 私たちに気づいた檜山君がこちらを向き、不思議そうに顔を傾げている。

 

「檜山君…これは一体?」

 

***

 まさかこのタイミングで愛子先生達と合流出来るとは思いがけない収穫だな。

 しかも俺の噂がそんなところまで出回っているのか…

 

「つまり、檜山君はこのギルドで自分の天職を生かしてクラスのみんなの生活費を稼いでいたと?」

 

「はい。その通りです」

 

 愛子先生達とテーブルに着き、向かい合う形で今の現状を話す。

 

「でも、噂のテクとかリピーターとかは?」

 

「テクってなんだよ園部!ただ、どんな仕事も全力で依頼主の要望に応えただけだし!外壁の補修もただ直すんじゃなくて、魔物の嫌がる匂いを付けるとか、工夫を凝らしただけだし!大体、この世界の建設現場における安全の意識が低すぎてな、その辺りの意識を変えていってだな―――」

 

「……本当か?」

 

「玉井…怒るぞ?」

 

「悪かった」

 

 俺が、園部や玉井達と話していると愛子先生が周りをみて気づいたように俺に聞いてきた。

 

「そう言えば他のみんなは?」

 

「みんなは、俺が改築した宿に住んでもらっています」

 

「改築?」

 

「ええ。大変だったんだけどいい仕事をしたよ!」

 

 よくぞ聞いてくれた!

 俺はみんなが安心して暮らせる家を造ろうとしたのだが、宿屋町であるこの場所にそんな土地は無くどうするか悩んでいると、少し町外れにはなるが、寂れていて誰も手を付けず、幽霊屋敷になっている宿がある情報を聞いた俺は早速そこに向かった。

 そこには腐りきっている大きめの宿があり、これ幸いと、ロアさんに頼み稼いだ金でここを買い取る予約をしようとしたんだが、ロアさんからは、ここは大分古くからある宿で、所有者は既に亡くなっており、取り壊すにも金がかかるし、依頼を出していても誰も引き受けてくれず処理に困っていたとの事。

 ロアさんから、ただ同然の値段で譲って貰って俺は早速準備に取り掛かった。

 恵里や坂上、遠藤達も手伝ってくれ、宿の内装や部屋数をを完備して、俺の力学演算を使い、ハジメ達から貰った弾性と塑性もある、とりあえず凄い鉱石を使い見た目とは違い耐震から火事なんかにも強い俺の持てる技術を集結した宿が2日で完成したんだ!

 

「檜山君って一体…」

「流石みんなの父ちゃん…」

「私って一体…」

「愛ちゃん先生大丈夫だよ!檜山がおかしいだけだから」

 

「安心してくれ!もちろんみんなの部屋もあるし、愛子先生用の畑も完備してるから!」

 

「「「そういう事じゃない」」」

 

 園部達からツッコミを受けていると後ろから声が聞こえてきた。

 

「…あのぅ」

 

「ああ、ごめんウーケさん。どうしたんだ?」

 

「いえ、オヤカタ。新しい依頼があってその相談をと思って」

 

「依頼?そう言えば朝、ショックさんがそんな事言ってたな」

 

「はい。新婚の新築のご依頼です。最近のこのギルド噂を聞いたのか、帝国からの依頼なんですがどうしますか?」

 

 帝国か…正直受けたくないが、まあ俺が行かなくても今、ギルドの雰囲気は良いからショックさん達任せれば…

 

「依頼主は凄いですよ!何と!帝国の皇太子バイアス様とハイリヒ王国の王女リリアーナ様の新築の依頼ですよ!」

 

 

 

 

 …………ふぁっ!

 どうすんだよこのイベント!?

 

―――――――――――――――――――――――――

 ここは、ハインリッヒ教会内

 

「まだ、勇者を連れてこないのかアヤツは…最近はエヒト様からの神託も音沙汰もない…一体何が起こっておる」

 

「イシュタル様、風の噂で例の現場監督に妙な噂…というより眉唾な話も流れているようですが」

 

「ふん、あのような奴に神代魔法など使えるわけがなかろう」

 

 近くにいた神官の話を一蹴し、あざ笑うイシュタル

 

「ステータスも、魔力関しては子供以下のあの男に期待などはなからしておらん。ただ、他の使徒の信頼があるからある程度は野放しにしておいたが、

 このまま連れて帰らなかった場合、アヤツには魔人族との戦争の最前線で小間使いにでも…」

 

「~~♪」

 

 すると、この場に合わない鼻歌が聞こえてきた。

 外からは、少し騒がしい声が聞こえてくるがその鼻歌は段々とイシュタルのいる部屋に近づいてきた。

 

「ハロハロ♪みんな元気?」

 

 扉を開けると同時に、白いコートが気の抜けた声と共に部屋に入ってくる。

 

「誰だ貴様は。衛兵達は何をしておる」

 

「えいへい?……ああ、この人達のこと?」

 

 白いコートが指を鳴らすと武装した神官たちが白いコートの後ろから現れ、イシュタルを取り囲み、近くに居た神官を取り押さえた。

 

「貴様達、一体何を!誰だ貴様は!?」

 

「僕?……僕の名前はそうだな774」

 

「774?」

 

「ナナシでどうかな?」

 

 白いコートの言動にイラつき、魔法を唱えようと詠唱を始めようとするが

 

「…魔法が使えぬ!?貴様一体何を?」

 

「質問が多い爺さんだな…質問は一つづつって習わなかっ…あんな奴を信仰してる盲目爺さんに常識を聞くのは野暮って奴かな?今のは僕が悪かったよ。人の気持ちなんて考えたことなかった、老害爺さんに、一般常識を聞いた僕のミスだ、ごめんね♪」

 

「貴様!エヒト様を侮辱する気か!」

 

 信仰している神…エヒトを侮辱されたことに怒り怒鳴りつけるイシュタルに白いコートは告げる。

 

「怒っているとこ悪いけど、エヒトならもう居ないよ?僕が消したし」

 

「………ふっふっふ。貴様にはエヒト様からの神罰が下る。エヒト様よ!この者に神罰を与えたまえ!」

 

 白いコートの話を嘘だと決めつけ、天を仰ぐように祈りをささげるイシュタルに白いコートは近づき

 

「盲いて死ねば助かるのかな?まあいいや面倒だから、一気に行くわ―――エヒトルジュエの名において命ずる――〝君達は僕の奴隷ね♪”」

 

「・・・・・・・・我が主、一体何の御用でしょうか?」

 

 神官とイシュタルはまるで人形の様に虚ろな目をし白いコートに首を垂れる。

 

「そうそう♪人は素直が一番だよ。さっさとそこどいてね?」

 

 そう言うとイシュタルは、さっきまで座っていた椅子から退き跪いた。

 

「どっこいしょっと…あんまり座り心地良くないなぁ、まあいいか。イシュタルちゃん?」

 

「はっ!なんでしょうか我が主」

 

「リリアーナちゃんとバイアス君の婚約パーティーを行おう!」

 

「はい。了解致しました」

 

「バイアス君には監視を…そこにはエーアストちゃんを付けておくからね♪そして招待客には―――檜山君を呼んでおいてね♪」

 

 

 

 

 




>白崎さんの技能
 迷宮攻略をスムーズにするためのご都合主義によって生み出された技能
 愛があればステータスは上がる。
 その為、別に本番をする必要はない(しないとは言っていない)

>ショックさん
 鉢巻のスキンヘッドの人

>ウーケさん
 受付の人
 うけつけだからウーケです。

 オリキャラですが覚えなくてOKです。

>ヒヤマケンセツ
 ホルアドの建設ギルドの別名
 檜山(佐藤)手腕のおかげで評判がうなぎ上りのギルド
 檜山(佐藤)が作った、建築工具なども売っている
 給金は大分凄い
 その分仕事はキツイ
 給金は愛子先生が泣くぐらい凄い

>みんなの家
 ご都合主義によって生み出された宿
 ちょっとやそっとで壊れないし、檜山(佐藤)おかげで強度も最強で
 直ぐに直せる結構やばい宿
 ちなみに、恵里とはアイベヤ



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27話 思惑

バイアスファンの方には申し訳ありませんが、大分キャラが変わっています。
追記 本編でバイアスさんの名前とか色々を普通に間違えていました申し訳ございません。
 やっぱ酒入れた状態で書いちゃダメだね


~ハルツィナ樹海~

「まさか、神代魔法を超える魔法があるなんてな」

 

 ハルツィナ樹海の迷宮を攻略をした、ハジメ一行は話し合っている。

 

「なら、初めから言って欲しかったよねハジメ君」

 

「後残る魔法は2種類……みんな気づいているだろ?」

 

「当然だな、虚空・炎想(ゼロヴェーゼ・キス)

 

 清水の言葉に賛同した、天之河がそうつぶやくと空中から銀髪碧眼の神秘的な雰囲気の能面のように無表情の女性が落ちてきた。

 

「こいつ!メルジーネ海底遺跡の過去の映像に出てきた奴だぞハジメ」

 

「さあ、何が目的なのか喋って貰おうか」

 

 ハジメ達が臨戦態勢を取りながら、銀髪美女に近づくと――

 

『あ~マイクテスマイクテス』

 

 ハジメ達はその聞き覚えのある声に後ろに一歩下がった。

 

「これは一体!」

 

「一体どうなっているの!?」

 

「白いコートの正体がこいつなのか!?」

 

 八重樫や清水達が驚いていると、目の前の銀髪美女は自分の服に着いた砂をはたきながら、ゆっくりと起き上がった。

 

『うん聞こえているみたいだね。やっほーみんな久しぶり』

 

「今度は逃がさないわ」

 

「お前の目的を聞かせて貰うぞ」

 

「我が運命の友(ひやま)に仇名すお前に終焉を…」

 

「コウキさん!殺しちゃだめですよ!」

 

 全員が武器や魔法を構えるが、

 

『おお怖い怖い…でもぉ…君たちいいのかなぁ…?』

 

 一切怯む様子を見せることなく、銀髪美女は意味ありげな声を上げる。

 その瞬間に、清水が脅しも兼ねた闇魔法をぶつけようとするが…

 

『ああ、先に言っておくけど僕はノイントちゃんの体を借りて喋っているだけだから、彼女を壊しちゃうと僕はもう君たちに話を出来なくなっちゃうよ?』

 

「そんな魔法聞いたことない」

 

 ノイントと呼ばれた彼女から発せられる言葉に、ユエが反応する。

 

『まあ、僕の魔法の研究の成果かな♪せっかくノイントちゃんに君たちに気づかれないように迷宮の中の魔物の数を減らして貰ったり、めんどくさいギミックの解除をお願いしてたのに~』

 

「それには気づいていたぞ」

 

「流石に続けてだから何か目的があると思ったんだが…まさかお前と出会えるなんてな」

 

『僕も~君たちがこんなにも早く気づくなんて思わなかったよ~」

 

「それは、私たちをバカにしてるのかな?」

 

 白崎が静かな怒りを見せる。

 

『違うよ~思ったより早かったな~って。……僕もここでノイントちゃんが壊されるとちょっっと予定が狂うからギブアンドテイクといこうよ」

 

「この状況ならお前にしか、利が無いと思うが?」

 

『きっと気に入ると思うよ~―――だって檜山君の事だもん』

 

 ノイントから発せられる言葉に一同が息を吞みお互いの顔を見つめる。

 

『どうする?ここで、ノイントちゃんを見逃してくれるなら、君たちの知らない檜山君の情報を君たちにあげる。でも~もしここでノイントちゃんを壊しちゃうなら檜山君の情報はあげないけど…どうする?彼は色々と特別だからね♪別に僕も予定がちょっっと狂うだけだからどっちでもいいよ♪』

 

「……わかった。そのノイントと言う女性には手を出さない」

 

 ハジメがそう告げると、他のみんなも頷く。

 

『ありがとうハジメ君達。さぁてと、この前僕は、君たちに檜山君が神代魔法を身に宿しているって言ったけど、実は違うんだよね』

 

「どういう事だ?今更逃げるための嘘だったなんて言わないよな」

 

『まあ焦るなって…檜山君はね、概念魔法を身に宿しているんだ』

 

「馬鹿な!リューティリスの話だと、神代魔法を7つ集めた先にある魔法が概念魔法のはずだ!」

 

『ああ、それはあくまでこの世界に居た7人の解放者達の話だよ。僕が言っているのは、本物の“概念”魔法の事だよ?ああ、別にこの世界にあるのが偽物だなんて言わないよ?』

 

「本物だと?」

 

『君たちが日本に帰るには、神代魔法を7つ集めた先にある概念魔法が必要だからね♪檜山君が持っているのはあくまで僕の求める“本物の概念魔法”なんだよ』

 

「大介が持っている概念魔法……」

 

 ノイントの言葉に一様に考え始める。

 

『さぁて、サービスしすぎちゃったかな?僕の話を噓だと思うならご勝手にね♪まあ、本当かどうかはいずれ分かるかなぁ?どうせ、君達とは、また出会うからその時にでもね♪』

 

 ノイントが指を鳴らすと、この前のと同じように空間が歪み、その場に居たノイントは消えていた。

 ハジメ達はさっきのノイント――白いコートと思われる言葉を考えていた。

 

「どういうことだ?檜山が概念魔法を持っているだって」

 

「あいつの嘘だってのは考えられないか?この前と同じように逃げるための口実かもしれないだろ?」

 

「でも幸利、アイツはわざわざ“本物”なんて言い方をしたのか気になるわ」

 

「そうじゃのう。八重樫の言う通り妾もその“本物”なんて言い回しをしたのかが気になるのぉ…それに恐らくじゃが、ヒヤマの噂を流しているのはアヤツじゃろう」

 

「多分そうだろう。しかし、迷宮(なぞ)が増えただけだな。運命の友(ひやま)の噂を流す理由は一体…」

 

「謎が謎を呼ぶ感じだな……悩むぐらいなら行動しろ」

 

「ハジメ君?」

 

 ハジメの言葉に白崎が反応する。

 

「檜山がよく、ぼ…俺に言ってくれてたんだ。悩んでもいいけど、行動しないより行動した方が良いって」

 

「アイツらしいな」

 

「一旦ホルアドの町に戻ろう。そこで檜山と合流して、多少危険かもしれないが、檜山には僕達と一緒に行動をしてもらおう」

 

「恵里ちゃんはきっと付いてきちゃうけどいいのハジメ君?」

 

「その辺りも含めて、クラスメイト達と檜山と話し合う必要があるな」

 

 ハジメ達は、次の目的が決まり早速行動に移す。

 大切な友達の身を案ずるために

 

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――

――――――――――――――

 

「んふふふ♪君達ならきっとそうすると思っていたよ♪」

 

 それが、ある人の思惑通りだと思わずに…

 

 

~ヘルシャー帝国~

「全く、親父殿は何を考えているのだろうな…まあ、俺なんてどうでもよいのだろう」

 

 大柄の男が右手で耳に付けたピアスを触りながらそうつぶやく。

 

「このタイミングでの結婚とはな、急に早まったな……何か理由があるのか?しかし、この俺が結婚とはな……どうせ、俺の気持ちなんて誰も理解はされないだろうしな……」

 

 彼の呟きは闇へと消えていった。

 

***

「……んむ」

 

「ガハルド様、どういたしましたか?」

 

 側近の言葉に反応し、ガハルドはゆっくり口を開く。

 

「なぁに、王国が何故、帝国との結婚を急ぐのかと思ってな」

 

「ただの魔人族との戦争に備えての事でしょう。戦争が本格化する前の両国の牽制も兼ての事ではないのですか?」

 

 戦争が始まった際に、相手の国から後ろから刺されないための牽制の為の政略結婚。

 

「普通に考えたらそうだろうがな……何か裏がある気がしてならないのは年を取りすぎたからの心配なのか。それとも…」

 

 ガハルドはまた考え込む。

 

(国王の一存とは思えんし、教皇のおっさんが一枚噛んでるのは明白だ。それでも、今この結婚を急ぐ意味は一体なんだ……バイアスの奴がこの帝国の役に立つのならそれはそれでいいか。所詮は側室のガキ、実力だけで成り上がった奴には丁度いい役目だろう)

 

「そう言えば、現場監督も来るらしいじゃないか!この結婚パーティーの唯一の楽しみだな」

 

***

 新たに現れた死亡フラグに緊急脳内会議を始める檜山。

 

「どうしよう…でもこのイベントって、ハジメ達が神山に行ってからのイベントじゃなかったけ?」

 

「その神山イベントで檜山は死ぬはずです。一体どうなっているのでしょうか……」

 

 弱気の疑問に新たな疑問をぶつける真面目。

 

「マジでどうなっているんだ!でも、本来なら俺は関わらないイベントだろ!だったら、この依頼を無視すればいいだろ!」

 

「でも~確か二次創作やうろ覚えの原作知識だと~このイベントでリリアーナちゃんって相手の確かバイアスさんだっけ?に強姦されるんじゃなかったけ~?」

 

 気楽の発言に一同が息をのむ。

 

「でも!ハジメ達がきっと……」

 

「それは流石に希望的観測かもしれませんな」

 

 強気の発言に、苦言を呈す議長

 

「ただでさえ、私たちの知らない物語に進んでいるのです。本来とは違うタイミング、しかも、ハジメ君達も旅に出てまだ2週間程です。神山でそんな事になっていればこの町にも、何か噂が広がっているはずです」

 

「つまり、神山イベントはまだ起こっていないってことだね…」

 

「このイベントにはハジメ達は関わらない可能性があるということです」

 

「だったら、強姦される女の子を放っておけるか!俺が助けてやろうぜ!」

 

 いつもなら強気の発言に賛同する他檜山だが、皆一様に浮かない顔を浮かべている。

 

「どうしたんだよ皆!」

 

「強気さん…今回は流石にそう簡単な話ではないという事です」

 

「今回の結婚はどう考えても~政略結婚だよね~」

 

「そうだよね…そんな結婚を台無しにしたらどうなるのかな…」

 

「それこそ、処刑で済めばいいレベルです。こんな中世の時代で止まっているような世界です。晒し首にでもされる可能性があります」

 

「そんな…!せっかくハジメ達の死亡フラグを回避したのに今度はこれかよ…!」

 

「どうしよう…」

 

「確かこのイベントでは、ハウリア族の皆さんが、奴隷解放に動くはずです。それに巻き込まれ殺される可能性もあります」

 

「まさに、八方塞がりですな」

 

 脳内会議は行き詰った。

 

 行くか、行かないか…単純な二択のはずなのにまさに俺の運命が決まる。

 このままでは、リリアーナさんが強姦され

 もし、解決しようとしてもそのことで、王国と帝国の仲違いが起きればせっかく回避した死亡フラグが確定してしまう…

 どうすればいい…

 女の子を助けたい気持ちはある…

 でも、ハウリア族の奴隷解放に巻き込まれ死ぬ可能性もある…

 まさに堂々巡りの答えの出ない問題だった……

 

***

 俺は結局結論の出ないまま、改築した宿へと愛子先生達を連れていく。

 愛子先生達は、宿の内装に感動してくれ、王国にもう戦争に参加しない事をどう伝えるかをみんなで話し合おうと言う流れになり、みんなを大広間に集める。

 

「大介お帰りなさい、大介に手紙が来てるよ?」

 

「ただいま恵里。手紙だって?」

 

 俺が恵里から、手紙を受け取る。

 そこにはこう書いてあった。

 

 ~招待状~

 親愛なるエヒト様の使者 ヒヤマダイスケ様

 この度、リリアーナ様とバイアス様との婚約パーティーに

 是非ヒヤマダイスケ様並びに、

 そのパーティである

 ナカムラエリ様

 タニグチスズ様

 サカガミリュウタロウ様

 上記の方たちも参加をして頂きたくこの招待状を送らせていただきます。

 後日、使いの者を送らせていただきます。

 

                     聖教教会   教皇 イシュタル・ランゴバルド

                     ハイリヒ王国 国王 エリヒド・S・B・ハイリヒ

 

 

 ……行くこと確定かい!

 

 

 

 




>概念魔法
 ここから、更に自己解釈並びにオリジナル展開が加速します。

>虚空・炎想《ゼロヴェーゼ・キス》
 元ネタ分かる人は作者と友達になれます。

>ハジメ君の一人称
 白崎さんに子供が出来たタイミングで、頼りになる男になりたいと言う思いから、自分が一番頼りにしている友達である、檜山を真似をしているけど、まだ僕呼びが出ている感じです。

>ピアス
 そういう事です。


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28話 好奇心は猫をも殺す

 この無理ゲーを攻略しないといけません。


 …胃が痛い。

 今、俺は帝国に向かう馬車に、恵里、坂上、谷口と一緒に揺られている最中。

 この揺れの一つ一つが死亡フラグへの足音に聞こえる……

 

「大介大丈夫?顔が真っ青だよ?酔ったなら僕が膝枕してあげる!」

「ありがとう恵里。じゃあ、お言葉に甘えて…あぁ、あったかくて柔らかいいい匂い…」

「えへへ♪いい子いい子」

「ダイダイの顔、青と言うより、モスグリーンだね。水飲む?」

「檜山が中村にすんなり甘えているのは何か新鮮だな」

 

 俺を心配してくれる皆に甘え、恵里に膝枕をしてもらいながら現状を考えている。

 招待状はズルいよ…教皇様と国王様のサイン付き招待状は断ったらいかんやつやん…

 しかも、俺だけじゃなくて恵里たちの名前があるなんて…

 政略結婚の場なのは明らかだし、戦争の要のエヒトの使者の顔を見せもあるんだろうな…でも、なんで俺達だけなんだろう?

 何か理由があるのか…まあ、この世界が俺を殺しにかかっているだけか…

 えぇっと今、俺が直面している問題は

 ①リリアーナさん強姦問題(解決の際に両国の関係がこじれないようにする)

 ②もう戦争に参加しないからよろしく!ってこじれないように伝える問題

 ③ハジメ一行の旅に支障が出ないようにする問題 

 ④恵里達がハウリア族の奴隷解放に巻き込まれないようにする問題 ←NEW!

 まさに、四面楚歌、八方塞がり、背水の陣、進退窮まる…何このクソゲー

 クリアさせる気のないタイプのクソゲーだな。

 メルドさんにはせめて来てほしかったんだが、さっき来た使者のシスターみたいな人からの

 

「今回のパーティーには、招待状が送られた方のみの参加しか認められません」

 

 という、一言があったため他のクラスメイトはおろか王宮騎士団団長の一人の参加すら認められないという状況だ。

 まあ、普通に考えたらこんな政略結婚の場に不特定多数の人間を呼ぶ方がおかしい。

 テロ防止も兼ねているだろう。

 メルドさんも一旦王国に戻って情報を集めてきてくれるって言ってもらったし

 まあ、愛子先生には、クラスメイト達の方を見ておくように頼んだし大丈夫だろう。

 よく考えてみたら、このタイミングでは愛子先生は攫われているはずだし、神山イベントでメルドさんも死ぬはず…てか、原作だと俺に殺されるんか、考えれば考えるほど原作の俺やべぇ… 

 これは俺は殺されても仕方が―――こうなったらやけだ!

 出来る限る俺にできる事をして、最善の道を建築してやらぁ!!

 

***

 ついに来ちゃったよ帝国…

 恵里たちは王国とは違う国に――と言うより、亜人の奴隷の人たちなどに少し困惑している様子だが、

 俺はそんなところじゃすまなかった

 現場監督兼設計もしていた俺のこの都市の評価は0点だ!

 まっったく機能美が一切ないのが何かムカつく、もっと人の動線を考えて建物を建てないといけないだろ!

 なんで!人の通りに平気で建物がはみ出てんだよ!もっと考えて建築しろ!

 あの建物は、外壁が崩れかけているし!災害意識が低すぎるぞ!崩れた外壁が人に当たったらどうするんだよ!

 建物ってのは、安全と安心が基本だろうが!軍事国家だろうと関係ないはずだ!

 なんだよ、この建物の並びは!もっと外観を意識しろよ!低い高いが混雑していて外観を損ねているし、日照権の問題とかどうなっているんだ!

 どこもかしこも路地裏が出来ていて、防犯意識も低い!

 よくもまあ、こんな意識の低い都市を造れたもんだな!本当に軍事国家か!

 ここの建築を担っているギルドにカチコミに行きたいぐらいだ!」

 

「大介、途中から声が漏れてるよ」

「ダイダイって生粋の現場監督なんだね」

「天職が現場監督だけはあるな…」

 

 俺の心の声が駄々洩れていると

 

「ヒヤマダイスケ様ですね?」

 

 凛とした女性の声が聞こえそこには、街には似つかわしくない修道女の恰好をした人が立っていた。

 やべぇ!さっきの独り言聞かれたか!?

 

「はい、そうですが?」

 

「初めまして。イシュタル様よりあなた達の案内を頼まれたシスターでございます。あなた達を帝城まで案内をいたしますので付いてきて下さい」

 

 まるで事務的なやり取りに、困惑しつつもシスターについて行くしかないか…

 

***

 でけぇ~この城は意外に理にかなった建築をしているな。

 様々な検査をくぐり、ようやく城内へ入ることが出来た。

 城内では、色々な人が慌ただしく動いている…結婚パーティーの準備でもしているのかな?

 すると、新たなシスターの近づいてきた。

 

「ナカムラエリ様とタニグチスズ様ですね?パーティーへ参加する際のドレスの採寸をいたしますのでこちらへ」

「じゃあ!行って来るね大介」

「ダイダイ、龍太郎。また後でね」

 

 そう言われ、恵里と谷口は新たに来たシスターについて行った。

 やっぱパーティーだからか、正装じゃないといけないよな。

 今持ってるというか着ている服は作業着…じゃマズいよな、俺と坂上も後で採寸がある――よな?

 

「皆さまの待合室へ案内いたします」

 

 よしこれで少しは考えを纏められ―――

  

「ヒヤマ様はこちらへ、ガハルド様がお待ちです」

 

 行きたくねぇ…

 

――――――――――――――――――

「おお!久しぶりだな現場監督!」

 

「檜山です。人を天職で呼ばないでください」

 

 ガハルドさんが俺に会うなり、肩を叩きながら来る。

 

「いいじゃねえか!俺をお前の仲だろ?どうだ、王国から帝国に鞍替えするつもりは…」

「無いので、ご安心を」

 

 てか、戦争に参加しない事を伝えないといけないし…

 

「こいつが現場監督…」

 

 ガハルドさんの近くにいた、THE騎士みたいな人が俺を見ながら呟いてくる。

 

「紹介しておくか。こいつはベスタ、俺の頼りになる側近だ」

 

「初めまして。現場監督殿」

 

 この人も人を天職で呼ぶ系か…

 

「初めまして檜山大介です。出来れば、天職じゃなくて名前で呼んでください」

 

「そう固っ苦しいのは無しだ!お前とは話が――」

 

 ガハルドさんが俺に話しかけてこようとすると、後ろの扉が開いた。

 

「親父殿。この後の予定だが――誰だお前?」

 

 現れたのは、大柄で髪も短く整って、手は意外に繊細な感じで、右耳にはピアスの人が入ってきた…親父殿?

 

「バイアスか…今は取り込み中だ。後にしろ」

 

 来ちゃったよ!リリアーナさんを強姦する人!

 でも、思った感じじゃなかったな、もっとこうエロ同人に出てきそうな何故か禿げて筋骨隆々の大男を想像してたけど、普通の人って感じだな。

 

「わかった、後で来ます。こいつ―――」

 

 ん?俺を見ながら何か呟いたような?

 

「すまないなヒヤマ。アイツが今回のパーティーの主役の一人で俺の側室の息子のバイアスだ」

 

「あの人が…遅れましたが、今回のご婚約おめでとうございます」

 

「気にすんな。所詮はただのパフォーマンスだけの結婚なんだ。なんで教皇のおっさんも結婚を急ぐのか理解が出来ん。明日にはパーティーなもんでこっちもてんわやんわだぜ」

 

 ガハルドさんが苦笑しながら言っている、だから帝城内が慌ただしい訳か

 

「側室のガキで普段何をしてるかもわからん。部屋に居て何かをしてるらしいが、実力だけはあるからな。帝国と王国の橋渡しにでもなれば御の字って奴だな」

 

「でも、自分の血を分けた子どもじゃ…」

 

「お前にはあんまり馴染みが無いのかもしれんが帝国じゃ当たり前のことだ。使えるものは何でも使う。それがたとえ血を分けたガキでもだ」

 

 これに関してはお国柄って感じだな、俺が口を挟んでも仕方ないな。

 

「そう言えば噂で聞いたぞ――お前、神代魔法が使えるそうじゃないか?」

 

「…はぁ~」

 

「どうした?現場監督」

 

「そんなの嘘に決まってるじゃないですか」

 

「ほぉ~それが嘘じゃないって根拠はあるのか」

 

「なんですかその悪魔の証明は?話がそれだけなら、疲れたんで部屋で休ませてもらいます」

 

 俺がそそくさと帰ろうとすると、ベスタさんが俺の前に立ちふさがる。

 

「……ベスタさん何か?」

 

 この流れはやっぱ…

 

「さっき言っただろう?使えるものは何でも使うのが帝国だって」

 

「現場監督には申し訳ございませんがこのまま帝国に――」

 

 だよねぇ!やっぱ帝国何て来たくなかった!このフラグのバーゲンセールはなんだよ!

 

「そうはいきませんぞ」

 

 扉が開きその方を向くとイシュタルさんやリリアーナさんを含めた王族の皆さんが居た。

 

「まったくタイミングの悪い爺さんだことだ」

 

「ヒヤマ様、お久しぶりです」

 

「リリアーナ様もお久しぶりです。この度のご結婚おめでとうございます」

 

 俺がそう言うが、リリアーナさんは浮かない顔をしている。

 そりゃそうだよな。14歳の女の子が政略結婚なんて、いくら王族の子とはいえ理解はできても納得はできないよな。

 俺は、小声でリリアーナさんに話しかける。

 

「リリアーナ様、八重樫と白崎さんは生きていました。もちろんハジメも清水も天之河も」

「!」

 

 俺の言葉に目を丸くしたリリアーナさん。

 

「恵里と谷口も来ていますので、後で俺たちの部屋にでも来てください。お話だけでも聞きますよ」

 

 リリアーナさん嬉しそうに頷いてくれ笑顔を見せてくれた。

 イシュタルさんとガハルドさんが少し話し合っている隙に、この場からそそくさ逃げることにした。

 

***

 はぁ~疲れた…

 とりあえずの目標は、リリアーナさん強姦されないようにしないとな。

 てか、どんだけでけぇんだよこの城、さっき教わった部屋の場所何処だよ。

 ここか?

 

 ガチャ

 

 俺が扉を開けると、そこには可愛らしい手作りと思われる縫いぐるみとかが飾られている部屋であった。

 

「あれ?間違えた―――」

「うーぴょんちゃん……アタシ、結婚やだぁ…」

 

 部屋の窓際には人影があり、そこから男の裏声の様な声が聞こえる。

 人間ってのは好奇心には負けてしまうもので、良くその影を見るとさっきの――バイアスさんが兎の人形を抱きしめながら泣き言を言っている。

 

「ぐすんぐすん…でも。親父殿の言う事には逆らえないよぉ~リリアーナさんと結婚したくないぃ~だってアタシが好きなのは――」

 

 俺が知ってる原作のバイアスさんではないなもはやないな…でもいい事聞いたぞ!

 この世界のバイアスさんは結婚に後ろ向きだし、この感じなら強姦なんてしないだろうしちょっと話せばわかってくれるタイプの人かも――

 

「男の人だもん…でも、こんなこと誰にも言えないよぉ~うーぴょんちゃんいつも聞いてくれてありがとう」

 

 ……えっ

 

「でも、さっき親父殿の話してた現場監督だっけ?めっちゃアタシのタイプでテンション上がっちゃった♪目つきが鋭くて、体つきもめっちゃタイプだった♪」

 

 まるで恋する(おとめ)の様に縫いぐるみに語り掛けている。

 わぁお…早いとここの部屋から出て対策を立てないとこれはこれで色々と変なフラグが……

 

「あの人ともっと話したいなぁ♪できれば友達に…」

 

 ガタン

 

 俺は音を出さないように部屋を出ようとすると、足元に落ちていた本に気づかず蹴っ飛ばしてしまった。

 音に気付いたバイアスさんが振り返り、俺と目が合った。

 

「……見たなぁ」

 

 ……あれ?俺って今大ピンチ!

 

 

 

 




>バイアスさん
 バイでアス……この作品では可愛らしい大男の同性愛者にしよう!

>うーぴょんちゃん
 兎のぬいぐるみ。
 バイアスさんのお気に入り


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29話 第二回 檜山君なんでも相談室

「きたない君が一番かわいい」を見てすっっごく心臓が締め付けられましたが今日も元気です。


 説明しよう!

 今、俺は左手に可愛らしいウサギのぬいぐるみを持った大男に壁ドンされてる真っ最中です。

 

「お前は!確か親父殿と話していた……見たんだな?」

 

 バイアスさんが先ほどまでの可愛らしい裏声ではなく、地の底で響くような声を出しながら俺に尋ねてくる。

 ええバッチリ!何なら俺と友達になりたいって所までバッチリ聞いちゃいましたテヘ♪……

 なんて言えるわけがねぇ!

 どうしてこんなにも俺には、フラグが襲い掛かって来るんだよ⁉

 しかも、リリアーナさんじゃなくて下手したら強姦されるのが俺ってか⁉

 ヤメテェ!俺には心に決めた人が……てかDTは既に捨てさせて貰ったから、後ろのハジメテ……現実逃避してる暇はねぇ!

 この場をどうやって切り抜ける!

 ……こうなったら!

 

「バイアス様……可愛いぬいぐるみですね!うーぴょんちゃんでしたっけ?」

 

 全力で話を誤魔化そう!

 俺が幾ら取り繕った所で見た見なかったとか、聞いた聞いてないとか水掛け論に絶対になるんだ。

 だったら、そもそもの論点を全力でずらすしかない!

 不幸中の幸いかもしれないが、バイアスさんは今ぬいぐるみを持っている。

 今はこの子に話を持っていくしかねぇ!

 

「おい!話を逸ら――」

「この子は手造りですよね!この耳の部分とか、縫い目を敢えて見せているのが可愛らしさを引き立てています!それでいて、最後の糸始末は完璧で!特に、この目の部分なんて造り手のこだわりが感じられますね!これってきっと鉱石か宝石ですよね!綺麗な深紅色がこの子の目にとても合っていますね!」

「糸始末はわからないが、うーぴょんちゃんの目はわかるのか!そこは母が特にこだわっていた所だからな!それは、母と俺の誕生鉱石であって、俺が母の誕生日にプレゼントしたものなんだ!」

「そうですか、お母様の…俺の母も編み物が得意で、その影響か自分も編み物が得意になっちゃったぐらいで…他のぬいぐるみ達もとても大切にされてるのがわかりますよ」

「何⁉現場監督はぬいぐるみが造れるのか?」

「檜山です、バイアス様。ええ、簡単なものなら、手直しとかもできますよ?」

「…本当かヒヤマ?」

 

 そう言うと、バイアスさんは近くの棚から、一体の手のひらサイズの可愛らしい黒いイノシシ?のぬいぐるみを取り出し、テーブルの上に置いた。

 そのぬいぐるみはよほど大切にされてはいたのだろう。生地の布は綺麗に洗われており大切にされているのがわかるが、あちこちほつれや中の綿が少し見えていた。

 

「デプチンを直せたり―――って違う!おい、現場監督!話を戻すが!」

 

「ちょっと見せてください……」

 

 俺はテーブル置かれたぬいぐるみを優しく持ち上げ、よく観察をした。

 バイアスさんはこのぬいぐるみがとても大事していたらしく、俺から無理にひったくるようなことはしなかった。

 

「これぐらいなら直せるな」

「本当か!」

「ええ、道具は…ハサミは高速建造で造れるけど、棒針とかぎ針は…贅沢言ってられないから…バイアス様、細くて先の尖った20㎝ぐらいの棒2本ありませんか?それと糸と綿は……ベットの布団をちょっと借りますね」

「先の尖った細い棒は、このアイスピックを使ってくれ。布団でも枕でもデプチンが直るなら好きに使ってくれ!」

 

――――――――――――――――――――――――

 俺がぬいぐるみを直し始めて大体1時間ぐらいたったのだろうか、俺は全力でそして出来る限り丁寧に補修をしていき―――

 

「これで良しっと。はい、どうぞバイアスさん」

 

「ありがとうヒヤマ!よかったなぁ~デプチン♪キレイキレイにしてもらって」

 

 バイアスさんはとても嬉しそうにしてくれ、デプチンに話しかけている。

 

「喜んでくれて良かった。とても大切にされていたんですねバイアス様」

 

「ああ母が初めて作ってくれた子でな……ヒヤマは俺が気持ち悪くないのか?」

 

「どうしてです?」

 

「とぼけなくていい!26にもなる男がぬいぐるみに弱音を吐き……それに……男が好きなんて」

 

 もはや、俺が聞いた前提で話を進めていくバイアスさんだが…

 

「別に気持ち悪いなんて思いませんよ?その理屈で言うなら、ぬいぐるみを作るのが好きな俺も気持ち悪いですか?それに男の人が好きだって別に……」

 

 俺の言葉にイラついたのか、俺をベッドに押し倒し、俺の眼前でバイアスさんは叫んだ。

 

「偽善並べるんじゃねぇ!だったらこうされている今も、気持ち悪くないってことだよな!俺に犯されても大丈夫ってことだよな!」

 

 犯すと叫び、俺はベッド押し倒されているのに不思議とそんな心配はなかった。

 なんとなくで何の根拠もなかったが、さっき会ったばかりのはずのバイアスさんが悪い人には見えず、何故か臆病な大型犬にしか見えなかった。

 

「バイアス様落ち着いてくれ。俺は彼女が居るから気持ちに応える事は出来ないけど話しだけなら聞きくぜ?」

 

 俺は笑顔で出来る限り優しく、そして口調を友達に話しかけるように砕けさせた。

 バイアスさんは俺の反応に面食らったように、目を点にさせ俺を見てくる。

 

「―――本当に気持ち悪くないのか?」

 

「もちろん!俺と友達になりたいんだろ?だったら、今から俺たちは友達だ!でも早速で悪いんだけど……ベッドの上じゃなくてテーブルで話しましょうかバイアス様?」

 

***

「大介遅いな」

 

「そうだねエリリン」

 

「ガハルドっておっさんに呼ばれたみたいだし、もう少ししたら来るんじゃねぇか?」

 

 僕と鈴がドレスの採寸を終わらせ、待合室で大介を待っているんだけど、やっぱり遅いな。

 本当なら、皇室だろうと関係なく大介を迎えに行きたいんだけど、そんなことしたらかえって大介に迷惑かけるかもだし……

 そんなことを考えていると、部屋の扉が開き大介が来たと思ったら、そこには肩ぐらいまで伸ばした金髪ポニーテールの可愛らしい女の子が入ってきた。

 

「久しぶり、リリィどうしたのこんな所に?」

 

「恵里さま、お久しぶりです」

 

 僕とリリィは香織ちゃん達を通して何度か話したことがあって、いい意味で王女様らしくない彼女と仲良くなったけど、鈴と坂上は、あんまり話したことがないのかリリィに緊張しているようすだ。

 

「いえ、先ほどヒヤマ様からお聞きしたのですが!香織と雫達が生きていたとお聞きして是非お話をお聞かせいただきたいと思って!…ってあれ?そういえばヒヤマ様は?私より前に皇室をお出になられたので、てっきりこの部屋にいると思ったのですが?」

 

「えっ?リリィ、それってどれくらい前の話?」

 

「えっと…大体、1時間前でしょうか?」

 

「どうしたんだろうダイダイ?」

 

「迷子にでもなってんのか?」

 

 何だろう何か嫌な予感がする……

 僕がそう思っていると外から、複数の男の声が聞こえてきた。

 

「おい、さっきバイアス様の部屋前まで行ったんだけどよ…」

「どうしたんだ?」

「いや…例の噂本当だったんだよ!」

「本当か?どうせ、お前の聞き間違いか何かだろ?」

 

 どうやら、リリィの婚約者の話をしているみたいだけど…噂?

 

「本当だって!さっきバイアス様の部屋から男の喘ぎ声が聞こえてきたんだって!やっぱ、噂通りバイアス様は男も女もイケる口だったんだよ!」

「一体誰の喘ぎ声だって言うんだよ?婚約パーティーで厳重体制が敷かれている皇城に忍び込めるはずもないだろうが」

「…それもそうか」

「くだらない事言ってないで、警備に戻るぞ。また、グリッドにどやされるのは勘弁だからな」

「おい!待ってくれ!」

 

 話を聞いていた皆が何か話しているけど僕は気が気じゃなかった!

 戻ってこない大介…

 そのバイアスって奴は男も…まさか!

 

~~~~~

「やめろ!俺には恵里って将来を誓い合った女性が!」

「ぐへへ…いい体してるじゃねぇかぁ~俺は今マリッジブルーなんだよぉ~今の内に良い思いをしておきたいんだよぉ~」ボロン

「くっ…そんな汚いモノを見せるな!」

「あぁ~そんな顔もそそられるなぁ~さぁお前に新しい扉を開いてやるよぉ~」

「助けてくれ…恵里…」

~~~~~

 

 なんてことに!

 待ってて大介!僕の降霊術の全てを使ってこの国を滅ぼし…

 そんな心配をしていると、また扉が開きそこには大介とその隣には大柄な男が立っていた。

 

「大介!どうしてたの、心配したんだよ!それと…隣の人誰?」

 

「ヒヤマ様、私も心配を…バイアス様、どうしてここに…」

 

 リリィが暗い顔をしながら、大男に向かって呟き、バイアスは、リリィに少し驚いたように大きく目を開いた。

 

「悪い恵里。実は色々と込み入った事情が…」

 

「おい。早く扉を閉めてくれ」

 

 大男がぶっきらぼうに言うと、大介は扉を閉め、それと同時だった。

 

「……うわぁ~ん。ヒヤマ~リリアーナ様が居るなんて聞いてないわよぉ~ヒヤマの友達だけって聞いたから来たのにぃ…」

 

 バイアスは、まるでオネェみたいな声を上げ、大介に抱き着いた。

 ちょっと!大介は僕のだよ!

 

「悪いバイアス。俺も居るって知らなくて…」

 

「アタシにも心の準備ってのがいるのに~」

 

「ちょっと!大介から離れて!」

 

「ヒヤマ様にバイアス様…これは一体?」

 

「ダイダイは遂に男まで誑し込んだのか……」

「いつかはやると思っていたが…」

 

「大介!説明して!」

 

「恵里も落ち着いてくれ―――実は……」

 

***

「つまり檜山、バイアスさんは同性愛者というかオネェで本当は結婚なんてしたくなくて、弱音やタイプの男性のを愚痴っていた所にお前が間違えて部屋に入ってしまって、色んな悩みを聞いてあげていたと」

 

「それで、ダイダイは鈴達の意見も聞きたくて部屋に連れてきたのはいいけど、まさかリリアーナ様が居るとは知らず思わぬ形でバイアス様の気持ちがばれてしまったってこと?……どこから突っ込んだらいいの?」

 

「谷口、嘘だと思うかもしれないが全部本当なんだよ…恵里少し離れてくれると――」

「嫌!」

 

 俺は恵里に右腕に抱き着かれたまま、ありのままを話して現状を伝えたんだが、全部本当だから仕方がない

 

「バイアス様、この子とても可愛らしいですわ!」

「リリィちゃんは見る目がある!デプチンはさっきヒヤマにキレイにしてもらったの」

「まあ!ヒヤマ様凄いです!」

「でしょでしょ!ヒヤマは凄いの!」

「バイアス様!大介は僕の彼氏だからね!」

「恵里…」

 

 リリアーナ様とバイアスはと言うと、さっき俺が直したデプチンに目をキラキラしながら、興味津々のリリアーナ様にバイアスは、年齢は一回り離れているがまるで同年代の同性を相手にするように楽しそうに会話をしている。

 でもまあ、リリアーナ様がバイアスに嫌悪感を抱いてないのは良かったな。

 さすが、原作でも中々の常識あるキャラ。

 とりあえず、目先の目標である強姦問題はこれで解決だな。

 よかったよかった

 

「でもどうすんだ。二人共結婚したくないなら今回のパーティーは中止になるのか?」

 

 坂上が当たり前のようで難しい質問をしてくるが、バイアスもリリアーナ様も一様に渋い顔をしている。

 

「坂上様、そう言うわけにはいきません」

 

「これは国の決めた結婚だからな。個人の意思なんてのは関係ないんだ。俺も皇太子なんて立場には居るが実質権限を持っているのは親父殿だからな」

 

「でも、リリィはいいの?」

 

「恵里もありがとうございます。でも今日、バイアス様とお話が出来てよかったですわ。思っていたよう方じゃないと知れただけでもよかったです。バイアス様、至らない所も多いですがよろしくお願いいたしますわ」

 

「リリアーナ様……申し訳ございません。俺にもっと力があれば…」

 

「バイアス様も顔を上げて下さい。それに私も男の子じゃなくて申し訳ございません」

 

 いたずらっぽい笑みを浮かべリリアーナ様がバイアスに言うと

 

「やだもう!何ってるのよリリィちゃん!」

 

「バイアス…口調口調」

 

 辺りが暗くなってきたので今日はもうお開きとなったが、こればっかりは俺の力じゃどうにもならないのがなんとも歯痒いな……

 後は、明日の婚約パーティーでどうやって切り抜けるかだな……

 

******

 誰もが寝静まる深夜

 ある部屋の前にに一人の人物――白いコートが立っていた。

 

「さぁあてと、僕も準備しないとね」

 

 白いコートが部屋に入るとそこには、ガハルドとベスタが明日のパーティーの打ち合わせをしていた。

 

「…ようやくお出ましか」

 

 ガハルドは右手を上げると、部屋に待機していた、十数人の兵士が白いコートを取り囲んだ。

 

「深夜にわざわざ忍び込んできたネズミがいると報告を受けていたが、まさかこんな間抜けとはな」

 

 ガハルドがあざ笑うと、待機していた他の兵士達も白いコートを馬鹿にするように笑い始めた。

 

「バイアス君は…いないね♪エーアストちゃんから聞いたけど、檜山君の良さをわかってくれる人みたいだから巻き込みたくなかったから丁度いいや」

 

 しかし、白いコートは一切態度を崩すことなく、どこ吹く風と平然と告げる。

 

「うん。だってわざとバレたんだもん。―――エヒトルジュエの名において命ずる――〝君達は僕の奴隷ね♪”」

 

 白いコートはそう告げると、さっきまであざ笑っていたこの部屋にいる全員が虚ろな目をし首を垂れた。

 

「ノイントちゃんには引き続き、ハジメ君達をつけてもらって正解だったな~まさかハウリア族がこのパーティーに乗じて亜人解放に踏み込んでくるなんて予想外だな~もう、ハウリア族の皆さんはあちこちで準備進めているし、ハジメ君達…というより、天之河君のおかげで、アホみたいに強くなってるみたいだから、いつでも帝国を陥落させられるみたいだよ~」

 

 虚ろな目をした、ガハルドに問いかけるが返事は無い。

 

「僕が煽っておいてあれだったけど、ハジメ君達はともかく、ハウリア族の皆さんの動きは予想出来なかったなぁ~うんうん。しかも、ハジメ君達は一旦ホルアドの町に戻ってから帝国に向かうみたいだし、下手したら檜山君が巻き込まれちゃうじゃないか!まあ、これは僕のせいでもあるんだけど…」

 

 白いコートは失敗失敗と呟き、ガハルド達に向かい告げる。

 

「まあ、上手くいかないからこそ面白いんだけどね!僕の責任でもあるから…君たちには“死ぬ気で”役に立ってもらうよ♪」

 

 白いコートの呼びかけに、部屋にいる騎士たちは一様に頷き、白いコートは嬉しそうに告げる。

 

「まずはガハルドちゃん明日のパーティーでハウリア族のみんなの不安を煽ろうか――――奴隷解放宣言をしよう♪」

 

 

 

 

 




>デプチン
 名前の由来は、作者が幼稚園の時に持っていたぬいぐるみの名前です。

>バイアスさん
 檜山、人たらしやし、男も誑し込みたいな…せや!
 バイアスさんのキャラ変えたろ!
 そんな感じで、オネェにしました。

>ハウリア族の皆さん
 WEB版同様、めっちゃ強くて更に厨二病を患っています。


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30話 下準備って大事って話

 バイアスさんの一人称を通常モードを「俺」に、オネエモードを「アタシ」に変更しましたが、本編には一切影響はございません。
 ご都合主義バリバリですが気にしないで見ていただけたら幸いです。



 結局、何も解決策が思いつかなかった…

 ベッドの上で俺は目を覚ますが、昨日の晩から考えてみたが、どうやっても拗れずに戦争不参加表明する方法が思いつかなかった。

 どう考えても

「戦争に参加しないなら、今ここで殺す!」とか「だったら、参加するって言うまで監禁する」って流れになる未来しか見えない…

 ハウリア族の人たち来るかもしれないし、原作とは違ってイイ奴だったバイアスと、元々原作でも良い子のリリアーナさんを巻き込みたくないし…

 昨日は色々悶々として考えがまとまらなかったんだよな…

 

「その原因は分かっているけど……」

 

 俺は横に目をやるとそこには、

 

「すーすー」

 

 気持ちよさそうに俺の左腕に抱き着きながら可愛らしい寝息を立てる美少女――中村恵里がいる。

 いや~めっちゃ可愛い!

 みんな見て!俺の彼女めっちゃ可愛いだろ!

 眼鏡外している恵里もイイ!凄くいい!

 俺に幸せそうに抱き着いてる恵里めっちゃ可愛い!

 俺が空いている右手で起こさないように恵里のナチュラルボブでサラサラな髪を撫でると、更に気持ち良さそうにすり寄ってくる。そんな恵里を見て俺も自然と口元が綻び幸せな気分になる。―――これが幸せスパイラルなのか!幸せの永久機関やん!

 ……だってしゃあないやん?

 好きな女の子に一晩中抱き着かれてたり、キスを迫られたら、そりゃ考えまとまらんよ!

 脳内会議でも、明日恵里が着るドレスはどんなな感じかなぁ~、とか考えてしまって、無駄に白熱したんだよな…

 随分贅沢な悩みだな俺、大分勝ち組なんだよなぁ…

 こんな可愛い彼女が居るなんて…前世で彼女が居なかったのはきっとこの為だったんだな!

 いや考えが纏まらなかったのは、別に恵里は悪くないんだよ。

 昨日は心配掛けちゃったし、恵里がちょっと独占欲が強いのも知ってるし、恵里の期待には応えたいしな。

 最近は中々彼氏らしい事出来て無かったからな、久しぶりにデートとか行きたいな…

 それに枕持って上目遣いで鈴のような綺麗な声で甘えるように

 

『大介…一緒に寝ていい?』

 

 これは断れません!

 彼女からこんな迫られた方されて断れる奴がいるなら俺の前に連れて来い!俺がその彼女に代って説教してやる!

 そろそろ、現実逃避から戻るか。

 まじで今日のパーティーどうしよう……せめてハジメ達が居ればな、きっと現在この世界で最強の御一行が居れば…

 無いものねだってもしょうがない!

 前世では果たせなかった、かわいい孫に囲まれながら天寿を全うするためにも頑張るしかない!

 エヒトなんかに負けてたまるかぁ!

 来い!死亡フラグ!この檜山が相手になってやる!

 

***

「妙だな…」

 

 ズールハウリアは、亜人奴隷達が寝泊りしている掘っ立て小屋地区にて、今夜始まる、亜人解放に向け準備を行っていたのだが、今朝からの帝国の軍人の動きに不審な気配を感じていた。

 

「こいつは昨日、我が同胞たちに対してぞんざいな扱いをしていたはず…それが今日になり、まるで罪悪感に駆られた様な表情を浮かべているんだ?……他の部隊と族長に報告を――」

 

「僕が代わりにしてあげる♪エヒトルジュエの名において命ずる――〝1分寝ててね♪”」

 

 ズールハウリアは、糸の切れた人形の様に眠りについた。

 

「急がないとね……これか♪」

 

 白いコートは、ズールの服から手のひらサイズの石を取り出し、その石を様々な角度から観察し思考し始めた。

 

「これがハウリア族のみんなが持っていた会話が出来る石か。ここがこうなってて…術式は…ここで……ハジメ君達は面白い物を考えるな~単純なようで緻密に創られている…でも話せる距離は短そうだね…しかも、どちらか片方は常に通話状態にしておかないといけないと………うん♪粗方仕組みは理解できた!」

 

 そして白いコートはその石を元あった場所に戻し、その場を離れる。

 

「やっぱり、ハウリア族のみんなの動きが良すぎるなぁ~ハジメ君達待たずに帝国陥落出来るんじゃん!もう、てんやわんやだよ~どうしようかな?……やっぱりパーティーには人数が多い方が盛り上がるよね!ハジメ君達を呼ぶ方法は…イシュタルちゃんを使って、檜山君達やリリアーナちゃんを脅し文句に使えばきっと来てくれるはずだし、ハジメ君達もその方が都合がいいだろう!そうと決まれば――ノイントちゃん!」

 

『はっ!何でしょうか我が主』

 

「ハジメ君達は、後どれ位で帝国に着きそう?」

 

『後……30分程でございます』

 

「やっぱり急いでいるみたいだね…OK♪着く5分前に連絡頂戴。イシュタルちゃんの準備をしておくからさ♪」

 

『了解いたしました』

 

「さぁあてと、果たしてハウリア族のみんなは無血革命を成し遂げるのかはたまた――― 一方的な虐殺の血のパーティーになるのか……楽しみだ♪」

 

***

 どんだけ思っても時間は止まらないもので

 遂に来ちゃったよ…婚約パーティーイベント

 まだ、開始時間じゃないからとりあえず控室で待ってる状態だ。

 俺と坂上はというと、軽い寸法だけをとり、既存の生地がしっかりとして、真っ黒の喪服と見まがうスーツに身を包んでいた。

 

「かたっ苦しい恰好は苦手だぜ。首が苦しい」

「坂上、あんまネクタイをいじくらない方が…遅かったか。おいこっち向け」

 

 坂上が苦しそうに、ネクタイの結び目を左右にずらしたせいで、ネクタイの結び目が歪み曲がってしまっていた。

 坂上を俺の方に向かせ、ネクタイを締めなおしてやる。

 前世じゃ、兄にこうしてネクタイの結び方教えて貰ったな。

 

「…これで良し。少し緩くしておいたからあんまりいじくるなよ」

 

「サンキュー檜山。本当にお前ってなんでも出来るよな」

 

「褒めたって何も出ないからな。ネクタイの締め方は覚えていた方がいいぞ?何かと使うタイミングはあるからな」

 

 大介―!

 ダイダイ、龍太郎 お待たせ。

 

 坂上と話していると、後ろから声が聞こえ振り返ると、そこには、全体的にダークカラーで黒を基調としたドレスに身を包んだ谷口と恵里がこちらに向かって来る。

 背中は大きく開けず、ひざ下のスカート丈、肩には蝶があしらわれたカーディガンを掛け露出を避けている。

 煌びやかとは違うが、普段とはまるで違う“可愛い”が似合う二人に少し大人の色気が追加されたようで、坂上と俺は不覚にも見惚れてしまった。

 二人ともドレスの色合いが微妙に違うだけで、双子コーデの様であり、それが二人の仲の良さを表現しているがまた良いな。

 

「大介…どうかな?」

 

 恵里が俺の前でくるっと一回転して似合っているかおずおずと聞いてきた。

 

「凄く似合ってるよ恵里。正直、見惚れてた…」

「えへへ♪大介もよく似合ってるよ!」

「龍太郎~こう言う事をサラッと言える所が出来る男とそうじゃない奴との差だぞ~」

「谷口もあれだ…孫に衣装だな!」

 

 坂上の一言に、俺と恵里はジトっとした目で見つめ、谷口は坂上にローキックを数発決め込み、恵里に泣きついた。

 

「えりりん~龍太郎が鈴をいじめるよ~」

「よしよし…鈴も凄く似合ってるよ~あんな筋肉だるまの言う事なんて気にしない気にしない」

「なんだよ!褒めたじゃないか!」

「坂上…“孫”じゃなくて“馬子”な。しかも誉め言葉じゃないぞ」

「そうなのか!」

「少なくとも淑女(レディー)に使う言葉ではないな。だろ、我が宿敵(ひやま)

「ああ、天之河の言う通……」

 

 俺は振り返るとそこには、無駄に伸びた前髪をファッサァっと掻き揚げながら、無駄にキラキラしたオーラを発している天之河が居た……昨日の寝不足のせいで幻覚が見えるとは……目の保養をしておかないとな。

 

「……恵里。このタイプのドレスってなんて言うんだろうな?」

「ミモレって言うんだよ。主役はリリィだから、僕達は色とか肌を露出は控えめなんだと思うよ。白は花嫁さんの色だしね」

「色々暗黙のルールがあるんだな」

「でもいつか、僕に純白のドレスを着せてね!」

「そうだな。きっといつか、な」

「えへへ♪約束だよ大介!」

 

 俺はさっき見た幻覚を忘れる為に、恵里と他愛のない会話をして彩に満ちた未来を思い描きながら――

 

「あれ?聞こえてなかったのか?――コホン。少なくとも淑女(レディー)に使う言葉ではないな。だろ、我が宿敵(ひやま)

「なんで!お前がここにいるんだよ!」

 

 俺がツッコミを入れると、控室の扉が開きハジメ君達が入ってきた。

 えっ?なんでみんながここにいるんだ。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「なるほど…ハジメ達は帝国にきたタイミングで運悪く、イシュタルさんに見つかってしまったと…」

 

「それで、大介や僕たち、それにリリィの事を引き合いに出されて、ここに来ちゃったって事なんだね?」

 

 俺と恵里の言葉にハジメ達は頷き申し訳なさそうにするが、気にすることは無いって慰めているが…

 って事はハウリア族の奴隷解放イベント確定か!

 ハジメ達はそんなこと言ってないが、多分確定だろうな。

 どうするか考え始めようとすると、また扉が開きそちらを向くと、そこには、淡い桃色のドレスに身を包んだリリアーナ様とシンプルだが、服の袖やバックルに帝国の国章が描かれた赤い軍服に身を包んだバイアスが立っていた。

 

「ヒヤマ様少し相談が…香織!雫!どうしてここに!」

「ヒヤマ…アタ…俺も相談がってそいつら誰だ?」

 

 リリアーナ様は、香織と雫に気づくを嬉しそうに近づき話しかけ、バイアスと言うと、オネエモードを一瞬で通常モードに変えているのは流石だな。

 

「バイアスこいつらは…」

 

「バイアスって、帝国の皇太子じゃないか!檜山はなんで呼び捨てで皇太子を呼んでいるんだ?」

「…誑し込んだか」

「流石は我が宿敵(ひやま)堕落へと誘うもの(人誑し)は性別も身分の垣根をも超えるのだな」

 

「お前ら何度も言うが、俺は人誑しじゃ無いって言っているだろ?だいたい誰が誑し込まれたって言うんだ?」

 

 俺がそう言うと、この場のリリアーナ様、ユエさん、シアさん、ティオさん以外の全員が手を挙げた……あれ?

 

「僕が大介に誑し込まれた第一号です!」

「僕も誑し込れたな」

「私は誑し込まれると言うより、ハジメ君とのキューピットだし」

「俺も誑し込まれたな」

「ふっ…俺もだな」

「私も小学生の時に誑し込まれたわね」

「てか、クラス全員、一回は誑し込まれているよな。さっきもサラッとネクタイ締めなおしてくれたしな」

「そうだね龍太郎。そういうのを性別関係なくするのがダイダイだよね」

「アタシも昨日誑し込まれたのよね♡」

 

 みんなが、俺に向かって言って好き勝手言ってくる……

 

「えー……それより!バイアスとリリアーナ様、どうしたんだ相談って?」

 

「ああ、実は…」

 

――――――――――――――――――――――――――――

「何?帝城の騎士たちの様子がおかしい?」

 

「具体的にはどうおかしいって言うんだ?」

 

 ハジメ達は食い入るように聞いている。

 まさか、ハウリア族の動きがバレているのか…それって結構マズいんじゃ。

 

「いや…なんて言うのか……物凄く懺悔の念に駆られているって言うのかしら」

 

 ハジメ達が俺の友達ってわかってから完全にオネェモードになったな。ハジメ達が豆鉄砲食らった鳩みたいな顔してるぞ。

 

「どういうことだ。何の罪悪感に駆られているって言うんだ?」

 

「それについて誰に聞いても黙りこくるだけなのよね。親父殿に聞こうと思っても今は誰にも会いたくないらしくて…どうやら、何かの準備を進めているみたい」

 

「準備?結婚パーティーじゃない何かって事か?」

 

 いったん何なんだ?

 懺悔の念?

 とりあえず、その様子から察するにハジメ達の計画がバレている感じじゃ無いよな。

 

 すると、待合室の扉からノックの音が部屋に響いた。

 

「バイアス様」

「ケイか。入っていいわよ」

 

 バイアスがそう言うと、扉が開き、そこにはスラっと背の高く、目鼻立ちが整ったキャスケット帽子を深くかぶり黒い燕尾服を着たが入ってきた。

 

「そろそろパーティーの時間です。リリアーナ様と共に…」

 

「もうそんな時間か。わかったすぐ行く」

「では、皆さま会場でまた会いましょう」

 

 バイアスとリリアーナ様は、ケイさんに連れられ部屋を出ていく。

 ケイさんは、シアさんを見ると一瞬驚いた様に目を開いたが、直ぐに平常心を取り戻し俺たちに軽い会釈だけをし部屋から出ていった。

 

「あの人、帽子で耳隠してたけどハウリア族だった」

「……」

「確かに妙じゃのぅ?何で帝城に亜人の給仕が…」

「シア…気にするのは分かるが。今は…」

 

 ユエさんとティオさん達が疑問に思い、シアさんを天之河が宥めてた。

 

「ああ、あの人はバイアスの子供の頃からの友達のケイさんだよ」

「えっ?友達?」

「バイアスは昔から、その…あういう性格で友達がいなかったらしくて、それを見ていたお母さんから、亜人ならバイアスに偏見を持たずに友達になってくれるかもって。それで今も友達らしい。でも、亜人の人に対する偏見は帝城内外問わずあるから、バイアスは実力を付けて皇太子の座を勝ち取ったらしい。ケイさんを守る為に。ケイさんの偏見が少しでも減ると思ってな」

 

 俺の話をハジメ達は真剣に聞いてくれてる。

 バイアスには申し訳ないが、ハウリア族の奴隷解放に巻き込まれない為だ。

 

「バイアスのお母さんは編み物が得意らしくて、ハウリア族の耳の毛の生え変わる換毛で造られる良質な毛糸を維持する為に、奴隷の関係ではなく共存の関係を唱えていたらしいけど、そのせいで帝国内でも疎まれていたらしい。それが今もバイアスの立場関係なく嫌がらせを受けてるらしい、変な噂流されたりとかな」

 

「……そんな人もいたんですね」

 

「まあ実力社会の帝国だから、表立っての嫌がらせはないらしいけどな。シアさんその…なんの言い訳にもならないけど、人間も亜人もさ、良い人も居れば悪い人が居るんだ。帝国人だからって全員を恨まないで欲しい。せめて、バイアスは信じてやって欲しいな。アイツがイイ奴なのは俺が保証するよ」

 

 ハジメ達は俺の言葉に考え込む様な仕草をしていた。

 別の給仕の方が呼びに来たので俺達もパーティー会場へと向かう。 

 どんな事が待ち受けているかわからないが、俺が出来る下準備はこれぐらいだな…後は、俺の技能を使ってどうにかしてやる!

 

 

 

 

 




>ケイさん
 バイアスさんの友達のハウリア族。
 バイアスさんとバイアスさんのお母さんを良い人にするためだけのオリキャラ。
 皇太子になるぐらいの実力あるのにあんまりガハルドさんに、良く思われてない理由付けの人
 バイアスさんのストレスがマッハになると、耳をもふもふさせてあげるぐらいには仲がいい

 次話で書くつもりはないんですが、ランデルさんは白崎さんの姿をパーティーで見かけ、腹ボテ属性に目覚めます。


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31話 酒を飲んでも、飲まれるな

遅くなり申し訳ございません。
タイトル通りです。


 ん……痛ってぇ……

 鈍い痛みに俺は目を覚ました。

 頭がガンガンする……

 この頭が割れそうな鈍い痛みは……

 前世でも何度も経験したことのある二日酔いだな。

 …なんで、俺ベッドで寝ているんだ?

 頭痛が酷くて、考えが――あれ?結婚パーティーイベントはどうなったんだ?ハウリア族奴隷解放は?戦争参加しないって伝える問題は?

 俺は状況を確認する為に体を起こそうとすると、体に少し湿った暖かく柔らかい何かが抱き着いているのが分かった。

 

「ん…んへへ♪」

 

 俺の嬉しそうに抱き着く恵里が居た。裸で……へっ?

 自分の状態を確認すると、着ていたはずのスーツは脱いであった……下は―――脱げてて、ぬめりのある液体でコーティングされていた。

 まさか……俺は恵里を起こさないように布団を優しく剥ぎ、そーっと下半身を確認すると、彼女の可愛らしいマ――あそこからいか臭い白い液体が垂れてきている。

 頭痛がする頭も少し覚めてきたのか、むせ返る様な、男と女の匂い?が鼻に漂ってきた。

 

 あっ⁉いぃ?うぇ!え!おい俺!何した!ナニってそりゃアレだよな⁉―――思い出した……

 

 二日酔いなんて一気に吹き飛び、俺は鮮明に思い出すことが出来たんだ―――

 

***

 婚約パーティー会場

 バイアスが言ってたように、帝国側の人たちの動きと言うか、表情が妙に暗さを感じる。

 めでたい場の筈の会場で、なんとも奇妙な雰囲気のままパーティーが始まった。

 リリアーナ様とバイアスが、拍手に包まれながら壇上に上がり、ガハルドさんの挨拶が終わると、会場に音楽が流れ始めた。リリアーナ達の挨拶回りとダンスタイムだ。微妙な雰囲気を払拭しようと流麗な音楽が会場に響き渡る。

 ダンスなんて経験が無く、恵里をリードも出来ないから、ダンスの場から少し離れ、恵里達と会話をする。

 それにしても、ハジメたちいつの間に着替えたんだ?

 ハジメ、清水、天之河はタキシードに身を包み。

 白崎さんは、水色の長袖のロングドレス。しかも、この前よりお腹が大きくなっていて、順調にお腹の子も成長しているんだな。

 それにしても、妊婦さんの神秘的な美しさは何て表現したらいいんだろうな。

 まさに、女性の神秘としか言えないよな

 八重樫さんは、ワインレッドのロングドレスである意味、白崎さんとの対比はより美しさを引き立てているな。

 シアさんは、ムーンライト色のミニスカートドレスを纏っており、そのスラリと長く引き締まった美脚を惜しげもなく晒している。

 ティオさんは、普段の黒い和装モドキと同じような黒いロングドレス姿だ。

 ユエさんは、純白のウエディングドレス(モドキ)を纏っていた……恵里の言っていた花嫁さんの色とは一体何だったんだろうか?

 ハジメたちは、ダンスに向かわず何か話し合っているが…多分、ハウリア族の亜人解放について話しているのか? 

 俺たちに相談どころか、伝えてもし帝国にバレるわけにはいかないよな…

 俺はどうするべきなんだ、バイアスや恵里たちを巻き込まれずに、かと言ってハジメ達に悟られることなく、亜人族解放イベントをこなす事なんてできるのか?

 それだけじゃない、クラスメイト達がもう戦争に参加しない事も伝えないといけないし…

 ……出来る、出来ないじゃない!やるっきゃないんだ!

 考えることが多すぎる……色々考えていたらのどが渇いたな。

 俺は恵里たちから離れ、近くの給仕さんに声を掛ける。

 

「すいません。その飲み物下さい」

「かしこまりましたヒヤマ様……どうぞ」

 

 手慣れた手つきで、氷が煌めく黄金色の飲み物を貰った。

 ゴクゴクッ。お、これ美味しいな。

 俺は数杯おかわりを貰って、全部を飲み干した。

 大分喉も潤ったしそろそりょかんかへおまろめれ………ヒック

 

***

 妙な胸騒ぎはあった。

 ハジメ達は、この一連の流れは誰かに仕組まれたような違和感を感じていた。

 檜山達が、帝国に行った事

 イシュタルに会ったタイミング

 バイアスの言っていた帝国の妙な動き……

 まさか、ハウリア族の亜人開放を読まれているかもしれないって不安が過ったが、不安を軽く一足飛びするような想定外の事態が起きた。

 

「――この婚姻により人間族の結束はより強固となった!……しかし、それだけでは足らぬ!」

 

――全隊へ。こちらアルファワン。これより我等は、数百年に及ぶ迫害に終止符を打ち、この世界の歴史に名を刻む。恐怖の代名詞となる名だ。この場所は運命の交差点。地獄へ落ちるか未来へ進むか、全てはこの一戦にかかっている。遠慮容赦は一切無用。さぁ、最弱の爪牙がどれほどのものか見せてやろう

 

――ボス達。この戦場へ導いて下さったこと、感謝します。

 

 ガハルドはさっきまでの帝国と王国の繁栄を祝う祝辞から一変し、懺悔の念に駆られたような口調に代わり演説を続ける。

 近くにいた、リリアーナとバイアスもこの流れを聞いていなかったようで、僕たちと一緒に驚いている。

 

「我が、帝国は数百年に引き続いた行われていた迫害に終止符を打とう思う!……我がガハルド・D・ヘルシャーの名に於いてここに宣言をする!全奴隷を開放する事を!」

 

 ハジメ達に聞こえていた、ハウリア族の自信に満ち溢れた声が一変し混乱とした声に変った。

 

―――何!我等の動きが読まれていたのか!

 

―――こうなったらすぐに突入するべきだ!

 

―――まずは、皇帝を捕まえるんだ!こいつに情報が漏れた可能性がある!まずは、こいつをこの場の全員に見せつける様に拷問するべきだ。歴史を刻む糧とするために!…ふふ♪

 

 この声は…まさか!

「待つんだ同胞達(みんな)!」

 

 天之河の叫びむなしく、会場は暗闇に包まれた。

 その直後、黒い影――黒装束(+ウサミミ)が会場へと流れ込む。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 明かりの消えた会場から離れた外に一人たたずむ影一つ――

 

「あぁ~あ。やっぱり、我慢できなかったかぁ…少し考えたら声に違和感を感じて、突入は躊躇すると思うんだけどな~まあ、この石あんまり音質が良くないからね」

 

 その人影は、左手に持った石を月に照らしながら呟いた。

 

「仕掛けが簡単って事は、誰もが使えるメリットになるけど……誰でも細工が出来るデメリットにもなるんだよね♪」

 

 その石を握潰し、手に付いた石だった砂を払い最後に手に息を吹きかけた。

 

「ふー……さて、ハウリア族は何人殺しちゃうんだろ?彼らは気付かないんだろうなぁ~本当に帝国のみんなが悔い改めて、奴隷解放を進めているなんてね♪流石に、国民全員を一気に洗脳はできなかったから、帝城にいるガハルドちゃんとか奴隷商とかだけになっちゃったけどね。まあ、ハウリア族の誰かが檜山君に手を出そうとしても、エーアストちゃんが見張ってるからどうにかなるし、このパーティーの本来の目的は果たしちゃってるから後はどうなろうと知ったこっちゃないし~これで、帝国の人口が半分になろうと、国として崩壊しようとどうでもいいや。ガハルドちゃんが檜山君に手を出そうとしたからいけないんだし~彼らには、亜人に対してあり得ないほどの罪悪感を感じる洗脳を掛けたから、抵抗なんて一切しないから勝手に殺されるだろうな。食べ物も飲み物も全部毒を抜いたし、檜山君が被害が及ぶ事はないだろうから僕はこれでお暇しようかな」

 

 その影は楽しそうでありながら、つまらなそうな声を上げ、パーティー会場を後にする。

 

「僕は最終準備を進めないとね♪あぁ~檜山君。そろそろだ…そろそろなんだ!あとちょっとで君に逢えるんだ!ねぇ君も早く逢いたいよね?」

「―――――――」

「そうだね♪何から話そうか?君の事を話そうか!きっと驚くと思うよ?だって君は――-えっ?それとも僕の目的だって」

「―――――――」

「それもイイね!それともそれとも~うふふ♪待っててね!僕達の運命の人!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「バイアス様!リリィをお願いします!」

 

 香織が、バイアスさんに叫び伝える。

 

「何が起きてるかわからないけど、わかった!リリィちゃんこっち!ケイ!アナタもアタシの方に来なさい!アタシから絶対に離れちゃダメよ!」

「わかりましたわ。バイアス様!」

「了解いたしましたバイアス!……様」

 

 バイアスは、暗闇に包まれながら、自分に抱き着いてくる二人を離さない様強く抱きしめた。

 

「坂上!谷口!一人になるな!」

「おい清水!光輝!一体何がどうなっているんだ!」

「カオリン!シズシズ!何がどうなってるの!」

 

 坂上、谷口も何が起きたかわからないっといった感じだ。

 

「大介!何処!」

「何!」

 

 中村さんの声に動揺した直後だった。

 急にパーティー会場の一点にスポットライト当たり、そこには手足の腱を切り裂かれ、あちこち衣服を切り裂かれて地に伏せるガハルドが光に照らされて現れた。

 

「これは……そうか、俺に対するバツなのだな」

 

(…あれは本当に親父殿なのか?)

 

 今に殺されるかもしれない状況にあるガハルドに、普段の横柄な態度が一切なく、バイアスは目の前にいるガハルドに違和感を感じていた。

 

「皇帝よ。いつから気づいていた」

 

 姿は見えず、パーティー会場全体に木霊するように響き渡る男の声。正体はカムだ。

 

「なんの事かわからんが、ついに俺に贖罪の機会を天が与えてくれたんだな!」

 

「質問に答えろ!」

 

「俺は亜人に対して自分の命では払いきれないほどの、愚かな罪を重ねてきた!…だから!」

 

「立場をわきまえろ…もう一度聞く、いつから気づいていた。さもなくば、この場にいる、お前に連なるものを全て殺―――」

「婚礼の場にはあまり似つかわしくない状況だな」

 

 静寂に包まれていた会場に響くまるで静かな波の様な落ち着いた声とガラスを弾いた様な澄んだ音の後、飲み物を咀嚼するが会場に木霊した。

 その直後、会場の別の場所にスポットライトが当たり、そこに居たのは、全てを射抜くような鋭い目つきだが、全てを包み込みそうな優しさを兼ね備えた目をした男が居た。

 

「誰だ、貴様?」

 

「檜山大介。声だけの貴方のお名前は?」

 

「……これは、我々と帝国の問題だ。我々が歴史に名を刻む為!恐怖の代名詞になるための一戦だ!命が惜しくば大人しく―――」

 

 檜山は声を聴きながらも、ハウリア族に既に殺されて首をはねられた帝国兵に悲しげな表情を浮かべ、スポットライトを浴びながらガハルドの元へと向かう。

 

「大介!危ないよ!」

「檜山!何やってんだ!」

「ヒヤマ!今の親父殿は何か変だ!近づくのはやめろ!」

 

 恵里たちが檜山を心配し声を掛けるが、檜山は口元に人差し指を立て、一言“大丈夫”と告げガハルドの元へとたどり着いた。

 

「ガハルドさん、貴方は悪い人だ」

「現場監督…わかっている!俺は…いや!俺達帝国人は!亜人に対して取り返しのつかない事をしてしまったんだ!これは、死んで償うしか無い!」

 

 叫び告げるガハルドに檜山は、跪いて傷だらけの手を優しく包み告げる。

 

「俺が言っているのは、貴方が自分の死を以って罪を償おうとしているところです」

「何?」

「いいですかガハルドさん……貴方がやろうとしている事は贖罪でも何でもありません。それは…ただの逃げです」

 

 ガハルドは面食らったような表情を浮かべ、檜山を見つめる。

 

「貴方達帝国の方が、何百年と亜人の方にしてきた事は決して許されることでは無い。でも、死んでしまったら、誰もその罪を償うことが出来ません。貴方達はどんなにみじめでもどんなに情けなかろうと生きるべきです。今までの事を本当に後悔しているのならなおの事です。もう二度とこのような事を繰り返さない為にも」

「ふ、ふざけるな!」

 

 先ほどまで、姿を現さなかった声の主――カムハウリアが姿を現し、短刀を突きつけながら檜山に近づいてきた。

 他のハウリア族も姿は現さないものの、突如現れた檜山に警戒を強め、いつでも事を起こせる準備を始める。

 ハジメ達はすぐにでも、突入したハウリア族を止めるべきなのだと思っているが、ガハルドの奴隷解放宣言と、念話石から聞こえた声……

 友達を助けに行きたいが、自分たちがハウリア族と繋がりがあることがバレ、それによって檜山達に迷惑をかけてしまうかもしれない事や、今までの白いコートの言動から狙いは檜山だと分かっているハジメ達は何が正しい行動なのか分からずに動けずにいた。

 

「……ようやく顔を見せてくれましたね」

「ベラベラと偉そうに分かったような口を!……そうか貴様だな!我等の歴史に名を刻む一戦の情報を帝国に流していた奴は!目的は何だ!」

 

「目的ですか……友達を助けるため、そしてこの悲しく無駄な争いを止める為ですかね」

 

 檜山は、平然と臆することなくカムと向き合う。

 

「突然現れたお前に何が分かる!何百年と続いた我らの迫害を!最弱なのを良い事に!迫害を続けてきた帝国を!これは…復讐なのだ!」

 

「復讐……」

 

「ああそうだ!この復讐を成し遂げ!我等は歴史に名を刻む!恐怖の代名詞として!そして、もう亜人の奴隷をつくらないためにも!それこそが―――」

「ハウリア族は本当にそれで歴史を刻みたいですか?」

 

「―――は?」

 

 檜山からの質問にカムは、面食らい拍子の抜けた声を出す。

 顔は見えないが、他のハウリア族もカムと同様な顔をしている。

 ―――ハジメ達も一緒に……

 

「恐怖で名を刻む…やられたからやり返す…まさに負のスパイラル。この先に待っているのはどちらかの破滅じゃないですか?どちらかが死ぬまで続く終わりなき争い…」

 

「知ったような口を聞くな!だったら貴様は許せとでも言うのか!今までの事を無かったことにしろとでも言うのか!」

 

「そうは言わない。でもカムさん。貴方は…貴方達は、孫や未来の子孫に今日の出来事を胸を張って自慢できますか?」

 

 檜山の言葉にハウリア族は言葉を失ってしまった。

 

「俺は奴隷解放をする為に何人もの人を殺した……その人たちにも、家族が居たが根絶やしにしてやった……やられたからやり返した……そういうつもりか?」

 

「――まれ」

 

「もしまた数百年後、帝国が今日の出来事に復讐してきたらどうするんだ?その、被害を被るのはここに居る誰でもない…未来のまだ見ぬ子孫なんですよ?その人たちに今日の出来事を――」

 

「黙れ!」

 

 カムは叫び、檜山の首を掻っ切るために、短剣を振りかぶった。

 檜山は、その振り上げた短剣を振り下ろされる前に素手でその剣身を握りカムの動きを止めた。

 まさかの行動にカムも驚き動きを止めた。

 檜山の手から鋭い剣身を素手で握って止めたためか、大量の血がスポットライトに照らされながらキラキラと滴ってきている。

 

「大介!」

「恵里。俺は大丈夫だ」

 

 中村は、檜山の名を叫び大切な彼氏に近づこうとするのを、檜山は止め手から血を流しながらカムに告げる。

 

「カムさん。帝国がどう考えているかは俺もわかりません。だからこそ、一回話し合ってあうのがいいんじゃないですか?」

 

「話し合う……」

 

「ええ。せっかく言葉が通じるんです使わないのはもったいないですよ。それからでも武力行使は遅くないんじゃないんですか?…少なくとも俺の友達は、亜人、人間関係なく友達になった人を知ってます」

 

 檜山はカムの耳を撫でながら告げ、月明かりとスポットライトに照らされながら檜山はその場を後にした。

 その場に誰が言ったか定かではないがこの事件の後檜山の事をこう呼んだ。

 

 “和睦の聖父(パパ)”と―――

 

***

 この騒動は、ハウリア族の族長カム・ハウリアが明日、帝国との話し合いの場を設けることで一旦休戦をする事となった。

 ガハルドも、このハウリア族の慈悲に涙ながらに感謝し、ハウリア族の要求を飲んだ。

 一方檜山達はと言うと…

 

「ヒヤマさん……この度は……」

「大介!もう無茶はしないで…?」

 

 白﨑の治癒魔法を受けている檜山に謝るシア。そして、泣きながら抱き着いた恵里はある異変に気付いた。

 

「クンクン……お酒の匂い?」

 

「そうだろうなユエ」

 

 清水がユエの言葉に賛同し、檜山が現れたテーブルから瓶を持ってきた。

 

「おお、清水…相変わらずいい声だな。八重樫には悪いが惚れてしまいそうだ。シアさんも気にしないでくれ俺も余計なお世話だったかもな。それにしても可愛いウサ耳だね。触ってもいいかな?」

 

 清水とシアを褒めたと思うと檜山は次々とこの場に居た全員を褒め始めた。

 

「ハジメも、背も高くなって自信が付いたんだな?立派になって…いいパパになれよ。白崎さんもすっかり母の顔って奴だね。綺麗だよ白崎さん。八重樫は、凛として咲く一輪花……美しいという言葉はきっと八重樫の為に――」

 

「大介!浮気はダメ!」

 

「幸利一体どういうこと?」

 

「これ…酒だ」

 

 中村が誰これ構わず、誑し始めた檜山を静止させ、八重樫の疑問に清水が瓶の匂いを嗅ぎながら答えた。

 

運命の友(ひやま)よ!未成年の内は酒はダメだ!」

 

「天之河。突っ込みどころはそこじゃない…」

 

「つまり清水よ。こやつは酔っぱらった勢いだけでハウリア族を止めた。と言うわけじゃな」

 

 天之河が未成年の飲酒を注意し、ハジメがツッコミを入れ、ティオが今回の檜山の行動の答えを告げた。

 

「ああ、この瓶が檜山が現れたテーブルから5,6本転がってたから多分な」

 

「これって、アルコール度数がバカ高いお酒ね。アタシが飲んだら、一口でもぶっ倒れちゃうのに…」

 

「檜山の奴に酒を飲ませたら人誑しマシーンと化すのか…」

 

「流石ダイダイ。酔っぱらっても変らないとは…」

 

 他のみんなが、檜山を見つめていると

 

「何だみんな?おりぇの顔ににゃにか……ヒック」

 

「大介……もう、今日は寝よう?後は、みんなよろしくね」

 

 ついに呂律が回らなくなった、檜山を中村が部屋から連れ出し後にする。

 

「今回の件、檜山の言葉に色々と考えさせられたな……」

 

 ハジメの呟きに、今回の騒動の裏を知る一同は一様に頷いた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 僕は、大介を連れ昨日泊まった部屋までやってきた。

 ベッドに座らせると大介はいつも見せる笑顔をで僕にお礼を言ってくれた。

 

「ありがとう恵里」

 

「……」

「恵里?」

 

 僕は大介に抱き着く。

 僕の中から出てくる、醜い嫉妬心。

 大介は誰にでも優しい……

 大介のたくさんある好きになったの所の一つ……

 

 そして、大介の“嫌いな所”……

 

 何度も思っていた。

 僕だけを見て欲しい…

 大介を僕だけのモノにしたい…

 でも、大介がきっとこう言う性格だから好きなったのも分かってもいる……けど!

 

「大介――」

 

 ダメ!こんな事、言ったら大介に嫌われちゃうかも……

 めんどくさい女って思われるかも……

 でも、口が勝手に動いちゃう……

 僕は涙を流しながらつい言ってしまった。

 

「他の人に優しくしないで……僕、以外に優しくしないでぇ……ぼ、僕だけに……優しくして大介…」

 

 言ってしまった。

 こんなの面倒くさい女だ!僕は自分が嫌になる……

 でも、一度出た言葉はもう取り返しがつかない……

 

「恵里……」

 

 大介に呆れられちゃったか――えっ?

 大介は僕の頭を優しく掴むと僕にキスをする……そして舌まで入れてくれた♪

 いつもとは違う優しいキスじゃなく、僕の口を犯すような激しいキス……お酒匂いや大介のいつもとは違う雰囲気に僕も酔ってしまいそう……でも、どうして?

 しばらく、僕の口を楽しんだ大介は妖しい笑みを浮かべ僕に囁いてくれた。

 

「恵里は悪い子だな」

「大介?」

「俺にこんな可愛い誘惑をするなんて」

 

 そう言うと大介は僕の手を優しく掴んで大介の下へと運んだ…あっ、おっきくなってる♪

 

「今夜は寝かさないぞ?」

「大介♪……うん!僕を一杯可愛がってね♪」

 

 その日は僕にとってかけがえのない夜へと変わったんだ♪

 ふふふ大介♪

 

 

 

 ―――絶対離さないよ♪

 

 

 

 

 




>ハウリア族
 解決方法は賛否があるとは思いますが、なんとなく一方的武力解決この作品には合わないと思いまして、話し合いをさせることにしました。

>飲酒檜山
 誰これ構わず誑し込む男になります。
 因みに最後、カムさんの耳に触ったのは、落ち着かせるためではなく、自分の兎好きの欲を満たすためだけです。
 ヤッベェ〜チョーモフモフ!とか思ってます

>この日の最後
 檜山(佐藤)は恵里ちゃんに対して強姦したと思っています。
 合意の上での強姦、しかも、恵里ちゃんとしては、むしろしてやったり……書きながらなんなんですが、どういうこと何でしょうね(笑)
 もちろん、檜山には責任を取らせます。
 じゃないと死にますからね(笑)
 



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32話 “上手くいかない”と書いて人生と読む。

 感想、誤字脱字報告ありがとうございます。
 いつの間にか、投稿して5カ月経つとは……
 失踪しないよう頑張ります(フラグ)
 “和睦の聖父”が頑張るお話です。


 なんてことを…

 俺は嬉しそうに抱き付く恵里の頭を撫でながら昨日の行為を恥じていた。

 いくら彼女彼氏の関係とは言えまだ学生で未成年同士、万が一の時は責任を取るのは当たり前として、恵里の意見を最優先にして…

 

「ん……だいすけ……おはよう」

 

「恵里……その…」

 

 恵里が起きたので、昨日の事を謝る―――のは違うよな

 

「大介どうしたの?――あ!昨日は」

「なあ恵里……何号だ?」

「何号?」

 

 俺の質問の意図が分からなかったのか可愛らしく首をかしげる恵里に俺は、彼女の柔らかく小さい左手から、薬指を優しく握り覚悟を決め言う。

 

「ここのサイズ…何号だ?」

 

「!」

 

 恵里は驚き、目を丸くした。

 そして、俺の言葉の意図を汲み取ってくれたのか彼女は今まで見せてくれていた笑顔が霞む程の笑顔を見せてくれた。

 

「まだまだ頼りない俺だけど、恵里の事が好きなのは本当なんだ」

 

「うん」

 

 恵里は笑うことをせずに、俺の告白をしっかりと聞いてくれる。

 

「学生の内から気が早いとは思うし、重いかもしれないけど俺なりの覚悟だ。でも、恵里が嫌なら――」

「大介知ってる?」

 

 恵里は俺の言葉を遮るように俺の名を呼び、胸へとすり寄ってきた。

 

「酔うとその人って本性が出るって」

 

「聞いたことがあるな……あぁそのぉ…」

 

 恵里から聞いた話で昨日恵里にした事を思い出し俺は頭を抱えた。

 

「あはは。別に大介を責めてないよ……むしろ嬉しかった」

 

「嬉しかった?」

 

「おかしいって思うかもしれないけど、昨日大介が僕をむちゃくちゃに愛してくれて嬉しかったんだ。普段は優しくて頼りになる大介が、僕が恥ずかしがるのを気にせずにあんな事や♪ネクタイを使って僕を――」

「わかった!わかったから昨日の事を復唱するのは止めてくれ」

 

 恵里が両手で自分の顔を挟み嬉しそうに昨日の思い出に浸っているのを止めた。

 

「だから嬉しかったんだ。昨日大介が僕にしてくれたことが本心だったんだって。僕を愛してくれているってわかったから、心も体も♪」

 

「男は好きな女の子には紳士振りたいもんなんだよ。それに恵里があんな可愛いおねだりするから我慢していた糸が切れてな」

 

「大介はあの告白がその…めんどくさいとか重いって思わなかったの?」

 

 恵里が不安そうに聞いてきたが何を気にしてるんだ?

 

「別に?重いって言うのとは違うと思うけどな。それだけ俺の事を想ってくれているって事だろ?ありがとう恵里。最近は彼氏らしい事が出来てなくて不安にさせてしまったんだよなごめん。落ち着いたらデートでも行こうな」

 

 俺が謝りながら、恵里の頭を優しく撫でる。

 

「大介、僕にはね夢があるの」

「夢?」

「笑わない?」

「努力はする」

「そこは、絶対笑わないって言う所だよ」

 

 お互いに笑い合いながら恵里は自分の夢を語ってくれた。

 

「大介のお嫁さんになって、家族を創りたい」

「恵里…」

 

 恵里の過去を知っている俺は少し唖然としてしまった。

 俺も前世も今世も両親には恵まれていると自信を持って言える。

 当たり前だと思っている家族の温かさや両親や兄妹の優しさが決して当たり前ではない事を知らなかった。

 

「子供っぽいかもしれないけど、ずっとあこがれがあったんだ…もちろん今のお母さんは好きだし、大介のおばさんとおじさんも大好きだよ」

「父さんと母さんに関してはきっと実の息子より恵里の方が大切だからな…」

 

 中学の時に父親からは「多感な時期だからと言って可愛い恵里ちゃんを泣かしてみろ……殺すぞ」と脅され。

 母親は恵里に「何かあったら全部このバカ息子のせいにしていいからね?はぁ…恵里ちゃんは本当に可愛いわぁ~」と恵里を抱きしめそのまま恵里のおばさんと三人で買い物に行ったりしてたんだよな。

 

「ふふ、そんな事ないと思うけどな。だからさ、僕は創りたいって思ったんだ、僕が欲しかった暖かい家族を…やっぱり重いかな?」

「さっきも言ったけど俺をそれだけ想ってくれているって事だろ?ありがとう恵里。軽いより重い方が俺はいいと思うけどな。まあ、告白にするのに薬指のサイズ聞く俺も重いか…」

 

 不安そうに抱き着いてきた恵里をギュッと強めに抱きしめる。

 

「やっぱり大介は―――」

「どうした恵里」

「もう我慢できないよ!」

 

 すると恵里は俺に抱き着いていた状態から、覆いかぶさるようにキスをしてきた。

 

「んっ恵里!」

 

「んっちゅ…大介がいけないんだよ。朝から僕に告白したり、欲しい言葉をくれたり、僕もう我慢できないよぉ…ねぇ大介…シよ?」

 

 恵里が耳元で囁いてきた…マズい

 

「…ここは正直だよ♪」

 

「せめて風呂に入って…てかここ人の家っていうか城だろ?ホルアドの家に戻ってから…」

「でもぉ…大介のココは我慢できないって言ってるよ♪」

「…はぁ。後悔するなよ」

「♡」

 

 俺は覆いかぶさっていた恵里を抱きしめ、そのまま横に回転し体制を変え恵里に覆いかぶさりキスをする。

 そして――

 バァン!

 

運命の友(ひやま)よ!大変なことに……あっ」

「あっ…」

「チッ!」

 

 世界が膠着した瞬間を俺は見た。

 無駄に伸びた前髪を靡かせ、俺の名を叫びながら部屋へと突入してきた天之河。

 その天之河に聞こえるような舌打ちをして、まるで地面に落ちたゴミを見るようでかつ親の仇の奴を目の前にしたように目で睨みつける恵里。

 

「せっかくの大介と僕の時間を邪魔するなんて…いい雰囲気で大介が僕を愛してくれたのに…やっぱり一回こいつ殺さないといけないね。大介もきっと喜んでくれるはず、何かと突っかかってくるこいつは邪魔にしか思っていないはず…そうだよ!シアちゃん達には申し訳ないけど大丈夫勇者だから死んでもゴキブリみたいに甦ってくれる…」

 

 恵里はゆらっと立ち上がろうとしたので、シーツで恵里の体を包み抱きしめる。

 

「恵里落ち着け!天之河、直ぐ着替えて行くから部屋から出てくれ!俺が恵里を抱きしめている間に!」

 

「すまん!運命の友(ひやま)よ!本当にすまないいぃ――」

 

***

 お互いに着替え、部屋を出るとハジメ達が待っており、一様に複雑そうな顔をしている。

 何かあったって言っていていたけど…

 

「みんなごめん。待たせたよな?何か大変な事になったって天之河が言ってたけど…」

 

「ああ、実に面倒な事にな…」

「まさかこんな事になるなんて幸利…」

「そうじゃのぅ」

「意外」

 

 清水が頭を抱えながら俺申し訳なさそうに言ってきた。

 

「まさか、昨日の俺が言った話し合いがこじれて、帝国人の血の海が…」

 

「いやその話し合い自体はうまく行ったんだ」

 

「そうなのか」

 

 話し合いの場には居なかった俺に、清水達は話し合いの内容を教えてくれた。

 簡単に内容をつまむと、原作みたいな誓約のアーティファクトなんてのは使わず、お互いの種族間の法律の設備や帝国への賠償金などの要求を帝国は全て受け入れ誓約書を取り交わされたという事だ。

 

「こうなったのもヒヤマさんのおかげです!ハウリア族の代わりとはいっては何ですが本当にありがとうございました!」

 

「気にしないでくれシアさん。俺も酔った勢いで言っただけだから褒められるような事はしてないしな」

 

「意外に謙遜」

「そういう奴なんだよ俺のライバルはな」

 

 ユエさんに、まるで自分が褒められたみたいに言う天之河にチョットイラっとしたが、ハジメに気になっていることを聞くしかないよな…

 

「でもハジメ…大変な事ってなんだ?」

 

「ええっと…その話し合いでさ。魔人族との戦争の話題が出て…亜人のとのわだかまりを解決できたんだから、戦争せずに和睦が出来るはずだって…」

「それでね檜山君…使者出して魔人族の代表と和睦調停交渉をしようって…」

 

「マジか!それはいい!だったらエヒトの使者の俺達が戦争に参加しなくても文句言われないよな!よかったぁ…いやさどうやってクラスのみんながもう戦争に参加しないって伝えるかを考えて……使者?」

 

 何だろう…めっちゃ嫌な予感がする。

 

「……あのさ?その使者ってガハルドさんだよな!それかバイアスか!それとも帝国に和睦の使者部があってそこの代表が行くんだよな!ああ、王国か!王国のイシュタルさんとかエリヒドさんが行くんだよな。ああ、きっと王国にも和睦の使者部があって、帝国と王国の合同で行くんだよな!」

 

 俺の叫びにハジメ達は全員俺から顔を背けた。

 すると話し合っていた扉が開き、バイアスが入ってきた。

 

「ヒヤマ!大変よ!ついさっき帝国と王国との話し合いでヒヤマを“和睦の聖父”として魔人族に和睦交渉をさせることが満場一致で決ってしまったわ!」

 

「………坂上、谷口帰るぞ」

「キャッ」

 

 俺は恵里をお姫様抱っこして、部屋から出ようとするが清水に肩を掴まれ阻止される。

 

「待て檜山…気持ちは分かるが…」

 

「どけ清水。俺はホルアドの町に戻って恵里とイチャコラしてハジメ達が神代魔法を揃えるまで平和に待つんだ。恵里と一緒に平和に過ごすんだ。恵里、どんな指輪がイイ?シンプルなのがいいかな?やっぱりペアリングかな?」

「僕はね、シンプルなので指輪の裏にお互いのイニシャルを刻んで誕生石を埋め込みたいな。見えないところでも繋がっている感じがしていいよね」

「ああそれすごくいいな」

 

「ヒヤマ!もう帝国は国を上げて和睦の準備を始めているわ!ここでヒヤマがしないってなったら…暴動が起こりかねないわ!」

 

 ―――もういやぁぁぁぁ!

 

***

「あははははははは!はーぁ、はーぁ…いやぁ流石は運命の人…まさか、何百年も続いた恨みつらみを酔いの勢いだけで収めるなんて流石に想定外だよ!」

 

 魔人領のある場所で、嬉しそうな声が響く。

 

「それにしても和睦か…僕がエヒトを消したことでみんなの潜在意識に合った戦争に対する考えが変わってきたのかなぁ?まあいいか、時間があったから魔人族全員洗脳済みだし、檜山君に被害が出ることは無いし、こっちの準備もあらかた終わっているけどどうしようか

 

 

 

 

 

 ―――恵里ちゃん?」

 

 

 

 

 




>“和睦の聖父”
 聖女があるなら聖男あるのかなと調べて出てきたのが、聖父でした。
 何となく、この作品の檜山に似合うかなって思い付けた異名です。

 いつか、結婚パーティーイベントの夜のRー版を作りたいと思っている今日この頃。
 


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幕間 実験記録 No.1

評価数120突破ありがとうございます!
今回の話は白いコートの正体に迫ります。
短いですがどうぞ。



 〇・×

 自分が次元と時空を超える魔法手に入れ早数年…いや十数年…そんな事は些細な事か。

 

 まさか、この魔法を使うと“老い”と言う概念が自分の中から消えるとは思わなかった。

 

 最初は永遠の命を手に入れたと思ったがこれはただの呪いだ。

 

 永遠に乾くことも無ければ潤う事の無い命…果たして自分が生きているのか死んでいるのかすらわからない。

 

 最近は名前すら憶えていく気力すら無くなってきた、どんどん自分の中から様々な感情が消えていくのを感じる。

 

 せめてもの抵抗としてこの記録を残そうと思う。

 

 自分の中から感情が消える前に。

 

 自分がまだ人間だと思える間に。

 

 

 〇・△

 魔法の研究を進めていくことにした。

 

 永遠に老いないのだから、この世界の真理の一つぐらい解き明かしたいと思う。

 

 しかし様々な世界線を私を見たが、一体私は何がしたいんだ?

 

 本当にアレは私なのか?

 

 まれによく理解に苦しむシーンに遭遇する。

 

 そして、ほとんどの世界線で殺されると…

 

 まあ、アレは私であった私ではないからどうでもいいか。

 

 時間は無限にあるんだ、早速取り掛かろう。

 

 

 〇・□

 俺は魔法の研究を始め、魔法の粗方の仕組みは理解できたが、新たな疑問が生まれた。

 

 それは“天職”と“技能”についてだ。

 

 これらに関しては、俺の魔法の研究がまるで役に立たない。

 

 それは、異世界からの来訪者のせいだ。

 

 俺の研究結果を嘲笑うように、矛盾だらけの存在。

 

 イメージと理解…魔法の大枠は合っているはず。

 

 しかし、この概念の無かった世界の住人が何故魔法を使える様になるんだ?

 

 誰かが与えている…それは無いか。

 

 もしかして、この大前提が違うのか?

 

 俺の研究の結果は全て間違っているのか。

 

 それとも、この矛盾を解決する糸口があるとでも言うのか?

 

 無くてもいいか、俺の時間潰しになってくれればいい。

 

 しかし、時空と次元を超える魔法を得たせいで他の魔法が一切使えなくなってしまったのは痛手だったな。

 

 

 〇・◎

 “天職”についてわかったがある。

 

 これはただの思い込みだ。

 

 某の天職についての研究結果はここに行き着いた。

 

 自分が勝手に思い込んでいる自分に似合う職業がステータスプレートに反映されるだけだ。

 

 そう考えれば辻褄が合う部分が多い。

 

 魔法と天職は無関係と言っても問題なかろう。

 

 だってこれはただの思い込みなんだから。

 

 言ってしまえばただの飾りだ。

 

 しかし、次の疑問が生まれた。

 

 “ステータスプレート”だ。

 

 客観的…言うのは簡単だが、第三者とは誰が決めたのだ?

 

 何故数値として出せるんだ?何か計算式でもあるのか?レベルとは一体何なのだ?

 

 1違うとどれだけ変わるのか?

 

 10000と10001で魔法をぶつけると、後者が絶対に勝つのか?それとも、場合によっては前者が勝つのか?

 

 考えれば考えるほどよくわからない物だ。

 

 新たな研究対象が見つかったのは良い事だ。

 

 某の暇つぶしがまた増えた事を喜ぼう。

 

 

 〇・〇

 小生は実験を行いたいのだが、ここに来て他の魔法が使えないことが響いてきた。

 

 それは、技能や天職は肉体に宿るのか、魂に宿るのかと言う疑問だ。

 

 これは、前述した天職が各個人の思い込みだと言う事の証明にもなるはずだ。

 

 しかし、小生が別の次元に行けたところで魂を持ってくる方法が無い。

 

 入れる器は決めているんだけどな。

 

 様々な世界線を見てきたが、必ず恨みを買い、勝手に死んでくれて、途中退場してくれる逸材。

 

 その被験体の名は“檜山大介”

 

 もはや、運命と言ってもおかしくないくらい勝手に死んでくれる。

 

 彼なら、別次元で手に入れた魂を入れても問題なんて無いだろう。

 

 トータスに飛ばされる前に入れて途中観察がしたいな。

 

 しかも、勝手に途中退場してくれるから、他の人間の結果にも影響しない。

 

 まさに、うってつけの存在だ。

 

 実に惜しい。

 

 

 △・□

 悶々とする日々が続き、研究も止まってしまい。

 

 様々な次元にただただ移ろい、暇をつぶしていた時だった。

 

 アタシの目の前に現れたのは、思念?とでもいうべきなのかしら。

 

 途轍もない、様々な感情が渦巻いたモノだった。

 

 執念 執着 友情 恋心 狂気…

 

 アタシが失った様々な感情を持ったモノとアタシは出会った。

 

 今にも消えゆきそうなモノ手を伸ばした瞬間だった。

 

 研究の一つがアタシの予想通りだった事が理解できた。

 

 アタシにある魔法が手に入った。

 

 研究を進めていた時に粗方の魔法を記憶していたからこの魔法の名はすぐに分かった。

 

 この魔法の名は“縛魂”

 

 生み出したのは確か……“中村恵里”

 

 そうかやはり、魂に天職や技能が宿るのか。

 

 アタシの予想通りだ!

 

 アタシは早速、この消えゆきそうな彼女の魂を縛魂を使い、自分の中に取り込み消えないようにした。

 

 この出会いはまさに運命。

 

 さて帰ったら研究を始めよう!

 

 △・□

 彼女を取り込んだことによって、僕が忘れていた様々な感情が取り戻っていくのを感じた。

 

 恵里ちゃんの魂は思念が強すぎるから、僕にも影響が出ているのだろう。

 

 まあ今が凄く楽しいからどうでもいいか!

 

 彼女のおかげで、どんどん魔法を使えて行くのはありがたい。

 

 さて、檜山大介を使った実験を始めよう。

 

 せっかく手に入れた、魂を操る術を使わないわけには行かない。

 

 とりあえず次元を超えた先にあった魂を入れよう。

 

 初めての実験だし、僕が出しゃばるとどんな影響が出るか分からないから、その魂が持っていた財布は持たせてあげよう。

 

 せめてもの情けって奴?

 

 だってトータスに飛ばされたら直ぐに死ぬだろうし、せめてお金ぐらいはね?

 

 さてどうなるかな♪

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「懐かしい記録が出てきたな」

 

 白いコートは昔を懐かしむように、大量の資料によって埋め尽くされた部屋でポツリと呟いた。

 

「恵里ちゃんのおかげで、僕に感情が戻り、檜山君で実験を始めた頃までの記録か…まさか、檜山に入れた魂が概念魔法を持っていたなんて…まさに運命だ!でも意外だったな、ほとんどの世界線と同じで、てっきり恵里ちゃんは天乃…何だっけ?まあ、名前何てどうでもいいか。アイツに恋をすると思っていたけど…まあ、あんなに愛される自分を見てたら羨ましくもなっちゃうよね?身も心も愛されている自分にね♪」

 

 白いコートはある魔法陣の前に立つ。

 その中には、人の形をした何かが立っていた。

 

「魔人族領に来たおかげで、変成魔法が使えたのは良かったな。まあ、フリード君には申し訳ないけど君の魂は有効活用させて貰っているよ。君のおかげで余計な手間も省けて、ノイントちゃんにわざわざ氷雪洞窟まで行かせなくて済んだしね」

 

 自分の胸を撫で、申し訳ないと言いながら口角が吊り上がっている。

 

「それにしても、あの時にエヒトを消したのは思いの外賭けだったよな…まあ、魔法がイメージと理解だけだと思っている世界の住人には決して僕には魔法で勝てないけどね♪それにしても、自分を消すのって躊躇するかもって思ったけど案外何とも思わなかったなぁ~」

 

 思い出し笑いをしながら、白いコートは複数の魔法陣を展開させる。

 

「トータス全域に良いニュースと悪いニュースを伝える準備もしないとね♪恵里ちゃん!」

 

「――――――だ・い・す・け♡」

 

 




>魔法とかの用語
 ここから、自分の独自解釈がさく裂しています。 
 また、書いてあるは作者が疑問に思っている事です。

>白いコートの正体
 感想でも頂いていましたが、わかっている人が多いなと思いましたw
 まあ、作者も思い付きで書いてる趣味の作品なので温かい目で見ていただいたら幸いです。
 因みにぼかしにはずっと名前を書いていましたw
 
 


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33話 交渉

ボチボチこの作品も最終章を迎えます。


 俺を和睦の使者?ただの現場監督を?眼つきの悪い俺を?

 …きっと何かの聞き間違いだな。うん

 お姫様抱っこしていた恵里を優しく下ろし、バイアスに向かい合いもう一度聞いてみる。

 

「バイアス…何か変な事が聞こえたんだけど、俺をどうするって?」

 

「ヒヤマには本当に申し訳ないんだけど、昨日のハウリア族と親父殿に説いた言葉にみんな感動しちゃって、和睦の聖父として魔人族に帝国と王国代表として和睦交渉に出そうって、もう各国にその伝令を出し始めているわ!」

 

「……帰る。恵里」

「うん!」

 

 恵里はどうしたいのかを察してくれ、俺に向かい両手を広げてくれたので、もう一度お姫様抱っこをした。

 恵里は嬉しそうに俺の首に腕を回し抱き着いてきてくれ、彼女の温かさを感じながら部屋から出ようとするが。

 

「待ってヒヤマ!それだけじゃ…」

「何で!勝手に!俺に!許可を!得ずに!そんな事決めるんだよぉぉぉ!!!!」

 

 俺の叫びが帝城に響きわたる。

 

「檜山、落ち着いて」

 

「ハジメ~どうして帝国の人たちを止めてくれなかったんだよぉ~」

 

 恵里をもう一度下ろし、俺はハジメへ泣きついた。

 

「僕達は、話し合いの場にいた訳じゃないんだ。後から、カム達からそういう流れになったって聞いて…」

 

「そんな…」

 

 こんなのエヒトが俺を殺すためだけのお膳立てじゃねぇか!

 和睦に向かっても

 

―――――――――――――――

俺「仲良くしようよ!」

 

魔人族「嫌だ!殺す!」

 

俺「ぎゃー」

 

人間族「ならば戦争だ!」

―――――――――――――――

 

 こんな流れになるに決まってる!

 どうしてこうも俺を殺したいんだよ!

 しかも、このままじゃ魔人族との戦争の原因に使われてしまう…どうすれば…

 

 俺が悩んでいると、清水がバイアスに向かい話をし始めた。

 

「バイアス様。すまないが、一旦席を外してはくれないか?流石に俺も友達をそんな危険な役目を負わせたくない。今後の事も含めて一回俺達だけで話し合いたいんだ」

 

「シミズ待って!アタシも和睦にヒヤマを向かわせたい訳じゃないわ!」

 

「どういうことですバイアス様?」

 

「実は――」

――――――――――――

――――――――――

――――――――

 

「何⁉ガハルドさんが洗脳されているかもしれないだって!」

 

 バイアスが俺たちに語ってくれた衝撃の事実。

 

「ええ。今日改めて話してみたら、もう、以前の親父殿じゃなくて気持ち悪くて気持ち悪くて…しかも、それが親父殿だけじゃなくて、近衛兵達とかの様子も変だから多分間違いないと思うわ」

 

「でも、一体何のために?…もしかして、ハウリアに洗脳術師みないな天職の方が解放の為にやったとか?」

 

「鈴、それは違うと思うよ。もし、そんな予定なら、カムさんがいきなり出てくるはずないだろうし…大介にいきなり切りかかる訳無いでしょ?」

 

「その辺どうなんだ光輝?」

 

「その通りだ宿敵の女神(なかむら)。今更、隠す必要も無いから言うが、あの奴隷解放宣言は流石にこちらも寝耳に水だった」

 

「その黒幕はわかっているんだけどね」

 

 黒幕?

 まさか!

 

「以前話した白いコート…おそらくそいつが今回の事件の黒幕だ」

 

「白いコート…」

 

 ハジメの言葉にバイアスは何か考え込み始めた。

 

「以前も会ったのだけど、その時にも大介の事を言っていてね」

 

「俺の事?」

 

 八重樫は以前、白いコートに会った時に告げられたことを俺に教えてくれた。

 

――――――

―――――

――――

 

「はぁ?概念魔法?俺が?そんなもの持ってるわけないだろ!?」

 

「シズシズ。その凄い魔法をダイダイが持ってるって話は流石に鈴も信じられないな」

 

「そうだね鈴。大介って魔法に関してのステータス低いし…」

 

「俺の方が高いぐらいだしな」

 

「そうよね…」

 

「のう。ヒヤマよ」

 

「どうしたんですかティオさん?」

 

「お主自身は何か心当たりは無いのか?」

 

「俺自身?」

 

「そうじゃ。何か人に狙われる理由とかは無いのか?」

 

「そんな理由ある訳無…………まさか」

 

 転生者だから。

 俺の脳裏に一番それらしい理由が過ってしまい、つい声が漏れてしまった。

 よくある転生系の物語でも、異世界転生した魂には何か凄い力が宿るってパターンで、その例で考えると、転生している俺には何か俺の知らない力が有るって事なのか⁉

 俺の漏れた言葉に気づいたのか、一気に質問攻めにあう。

 

「何かあるのじゃな」

「いやいや!何でもないですわよティオ様?!」

「明らかに動揺してる」

「何か心当たりがあるなら教えてくれ運命の友(ひやま)!」

「檜山僕からもお願いするよ!今は少しでも情報が欲しいんだ!」

 

 言っても信じてもらえるかどうか……

 頭がおかしくなったって思われるだけかもしれないし……

 しかも、この世界はラノベです。だなんて混乱待った無しだろうしどうすれば……

 

「いや……その……「思い出した!」」

 

 俺が質問攻めに遭っていると、先ほどまで考え事をしていたバイアスが大声を上げた。

 

「どうしたんだバイアス?いきなり大声出して」

 

「思い出したのよ!さっきハジメ達が言ってた白いコートについてよ!」

 

「どういうことですかバイアス様?」

 

「ヤエガシちゃん実は……多分だけどアタシもその白いコートに遭った事があるの」

 

「本当ですか⁉」

 

「ええ。確かあれは5ヶ月ぐらい前だったかしら?正確には見かけたって言うのが正しいとは思うのだけど」

 

「でも、バイアス様。白いコートの奴なんてそこら中に居そうだけど?」

 

「そいつが言ってたのよ……ヒヤマの事をね」

 

「俺の事?」

 

「ええ。確か人に何かを訪ねているみたいで、この人知らない?とか、彼は凄いんだよ!とかだったと思うわ」

 

「でも、どうしてそれが俺の事だって分かるんだよ?」

 

「そいつが落としていった紙を見たんだけど……そこにヒヤマが描かれていたのよ。紙はそいつがひったくる様に持ってたんだけどね」

 

「マジか……」

 

 その直後だった。

 突然地面全体が揺れたと同時に外から獣の雄叫びのような音が聞こえてきた。

 

 ドゴォォンン

 

 城の外から劈くような音が聞こえ窓から外を見るとそこには、ヘルシャー帝国を囲うように大量の大小様々な魔物がまるで軍隊の様に隊列を組んでいる。

 

「何だアレ⁉」

「何が起きてるの⁉」

「こんな時に魔物…まさか!」

「香織!俺から離れないで!」

「ハジメ君!」

「突然現れた。つまり…」

「誰かが転移魔法を使ったってことだなユエ…」

 

 坂上たちは驚き戸惑っており、ハジメ達も同じような反応だ。

 

「恵里。絶対俺から離れるな」

「うん!」

 

 俺が恵里を抱きしめたと同時だった。

 

 

 

「羨ましいなぁ~僕も檜山君に抱きしめて貰いたいよ♪」

 

 部屋の扉が開くと同時に、そこには白いコートに身を包んだ人が入ってきた。

 ハジメ達は、武器を構え白いコートに攻撃をしようとした直後だった。

 白いコートが指を鳴らすと、後ろからガハルドさんやイシュタルさん十数人の人たちが手に拳銃を持って現れ、こちらに銃口を突きつけてきた。

 

「なっ⁉」

「親父殿一体何を⁉その手に持っているのは……」

「どうしてハジメ君の拳銃を⁉」

「この世界には無いはず⁉」

「どうなってるんですかコウキさん⁉」

「こやつは一体……」

「なら……⁉魔法が「ふふふ♪使えないでしょ♪」」

 

 まるで、こちらの行動はお見通しと言わんとせんばかりにユエさんの言葉を遮るように伝える白いコート。

 

「はぁ♪ようやく会えたね檜山君!」

 

 俺に向かって、まるで最愛の人に会えた様に嬉々とした声を掛けてきた。

 俺は恵里を守る為、彼女の前に立ち、恵里は俺の腕に抱き着き離れまいとしている。

 

「何処かでお会いしましたっけ?あなたみたいな人に会ってたら忘れないと思うけど…」

 

「ひどいなぁ~せっかく転生させてあげたのに~まあ、ここに来たのは君たちに交渉しにきたんだ♪」

 

 転生って…まさかこいつが俺をありふれの世界に転生させた張本人ってことか!

 

「何を言っておる!ハジメ達をトータスに呼んだのはエヒトのはずじゃ」

 

 バァンッ!

 

 ティオさんが白いコートに反応し喋った直後、銃声が鳴り、ティオさんの足元に黒ずんだ跡が出来ていた。その跡から焦げた臭いが部屋の中に充満する。

 

「人の話を遮るものじゃないよ?痛い思いしたくないでしょ?まあ、痛いと思う前に死んじゃうかもね♪アハハハ!」

 

 この場には似つかわしくない、喜々とした笑い声が響く……この場は完全に白いコートに支配された。

 

「でもぉ~そっちにとっても都合がいいでしょ?魔人族と和睦調停したかったんだからね」

 

「つまりお前は魔人族ってことか?」

 

「えっ?全然違うよ。えーっと君は確か……ハジメ君だ!僕はフリードさんの代わり?魔人族代表?まあ、肩書なんてどうでもいいでしょ?」

 

「交渉って言うならせめて、その危なっかしい物は下げて欲しいのもだが?」

 

「それは聞けないな♪君は確か……ここまで出かかっているんだ……コシミズじゃなくて……清水君だ!下げたとたんに君の友達から取り押さえられそうだし~」

 

 なんだこいつ?俺の名前以外はあやふやなのか?

 でも、こいつの言い方を見るに、ステータスはハジメ達の方が上と言う事か……

 しかし、この状況じゃ俺達がハジメ達の足手纏いになってる……どうにかしてこの状況を脱しないと!

 

「それで交渉って言うのは何なの?まあ、今までの貴方の言い方を見るに要求はわかるけど……」

 

 八重樫がそう言うと、ハジメ達は俺を守るように立ち塞がる。

 

「へぇ~わかってるなら話は早い。僕の要求はただ一つ―――檜山君が欲しい」

 

 抱き着いていた恵里は、抱き付く力を強めた。

 それを見ていた、白いコートは、恵里を睨みつけたが、自分の胸に手を当て苦しそうに、ぼそりと独り言をつぶやいた。

 

「くっ……落ち着いて……大丈夫……何のためにここまで用意したと思っているんだよ?全部無駄にする気?はぁはぁ……そう、檜山君は僕達の運命の人なんだから……」

 

「運命の人?」

 

「ああ!ごめん檜山君!自己紹介がまだだったよね!君には是非名前を呼んで欲しかったんだ!本当はすぐにでも君に会いたかったんだけど……これから永遠に共に居る運命の人の為に僕達に出来る事を考えてね……君に愛されるにはどうすればいいのか考えたんだ……そしていい方法が浮かんでね!それが完成するまで思いのほか時間が掛かっちゃった♪」

 

 そう言うと、白いコートは顔を覆い隠していたフードを取った。

 

「えっ……」

「嘘!」

「どういう事だ!」

「どうして!」

 

 皆が驚きそこに居る“女の子”の顔から眼を離せなくなっていた。

 

「いやぁ~大変だったよ。顔だけじゃなくて、スリーサイズも完璧にしないと、彼女に申し訳ないと思ってね♪わざわざ、採寸の場を設けたんだ♪エーアストちゃんにデータを取らせて、細部まで完璧に創ったんだ♪安心して檜山君!理論上子供も作れるように調整はしたからさ♪」

 

 見慣れた笑顔で答える“女の子”

 その狂気じみた笑顔と言い方に、俺は恵里を抱きしめた。

 すると、俺の腕中の恵里がポツリとこぼした。

 

「……僕?」

 

 そう、今俺たちの目の前には――――――“中村恵里”が立っていた。

 

 

 




>エヒト恵里ちゃん
 檜山(佐藤)愛されたいから、スリーサイズ図る場を国を使って設ける奴です。ヤンデレの鑑だね。


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34話 呪い

筆が乗ったので連続投稿です。


 突然現れた、もう一人の恵里にこの場は混乱に包まれた。

 

「どうなってるの?どうしてエリリンが二人居るの?もしかして、異世界にはそっくりさんが3人居るとか?」

 

「落ち着け谷口!アレはきっと、中村の生き別れの双子妹とか何かだ!」

 

「お前も落ち着け坂上。恵里に妹も姉も居ない……でも、アレは一体?」

 

「大介……あれは誰なの」

 

 谷口と坂上を宥め落ち着かせるが、恵里は俺の腕の中で怯えている。

 無理もない。

 目の前に居る自分にそっくり……いや、まるで鏡の中からそのまま飛び出してきた様な、瓜二つの存在に訳が分からないのだろう。

 

「君の為に造ったこの体どうかな?僕の事は是非“恵里”って呼んでね!きっと檜山君も気に入ってくれると思うよ!いや!きっと気に入ってくれるさ!だって檜山君は僕たちの運命の人なんだか「随分と趣味が悪いみたいだね?」……ら」

「香織?」

 

 白崎さんが目の前に現れたもう一人の中村恵里に静かだが、ハッキリとした怒りをぶつけた。

 

「私の大切な友達――恵里ちゃんにそっくりに化ければ、檜山君が靡くとでも思ったの?恵里ちゃんと檜山君の絆も随分と甘く見られているみたいだね。見掛け倒しも甚だしいよ」

「香織ちゃん……そうだよ!大介をさっきから運命の人だなんて!勝手な事言わないで!大介は――僕の運命の人だよ!」

「おい恵里、相手をあんまり煽るな」

 

 

「…………ズルいな」

 

「ズルい?ふっ…白いコートよ。お前がどんな姿かたちで我がライバルの前に現れようと、騙されるわけもない。こいつは……俺のライバルだぞ!」

「コウキ……」

「そうですよ!エリちゃんは本当にヒヤマさんの事が子供を作りたい程、好きなんですよ!」

 

「…………何で?」

 

「理由か?全部に決まってる。お前は中村じゃ無いからだ」

「幸利の言う通りよ!恵里はね、大介の事を小学生の時から好きだったのよ!」

 

 

「……………君達には伝えないといけないみたいだね……真実を♪」

 

「真実?」

 

「檜山君いや――佐藤君♪」

 

「……やっぱりお前が俺を転生させたんだな」

 

「何を言ってるの大介?」

「転生って一体?」

 

「みんな…実は俺、転生者なんだ」

 

 俺の言葉にハジメ達は驚いたが、ティオさんだけは納得したような表情を浮かべた。

 

「なるほどのぉ…それが来奴がヒヤマを付け狙う理由か。一度死に生き返った魂には特別な力が宿るという話はよくあるからのぉ」

 

「みんなごめん今まで黙ってて、流石にこんな話信じてもらえるかわからなくて……」

 

「…ねえ大介?」

 

「どうした八重樫?」

 

「こんな時に聞くのは違うとは思うのだけど、どうしても気になっちゃって……転生前の大介って年齢は幾つだったの?」

 

「え?27だけど」

 

「成程ね……でもこれで私が思っていた長年の疑問が一個解けたわ。ありがとうね」

 

 八重樫がそう言うと、他のみんなも一様に頷いた。

 

「疑問?」

 

「「「「檜山(大介)がどうしても同い年に見えないって話だよ」」」」

「お前らなぁ……」

 

「大介…」

「恵里もごめん」

「ううん気にしなくていいよ!だから初めて会った時に、大介は自分の事を佐藤って言ってたんだね」

「そんな前の事覚えていたのかよ⁉」

「へへん。だって大介と初めて会った時の事だもん!言わば記念日だよ」

 

「……話を続けようか?佐藤君……いや、もう君は檜山君だね。君は僕の実験によってこの世界へと転生させたんだ」

 

「実験だと?」

 

「そう。僕はずっぅぅと魔法の研究をしててねその研究の一環としてね。因みに君を選んだ理由は、苗字が佐藤だったから」

 

「そんだけなのか!」

 

「そんだけだよ?えっっと……サカシタクン。日本で一番多い苗字だったから、佐藤君の魂を選んだんだ。本当は左衛門三郎とか勅使河原にしたかったんだけど、珍しい苗字には何か特別な力が宿る可能性があったから、初めはありふれている苗字にしたんだ」

 

「まさか、俺に前世の下の名前の記憶が無いのって」

 

「察しがいいね流石運命の人。必要ないからさ♪必要ないのは省いて実験するのは研究に於いて基本だからね」

 

「そして、お前の実験通り檜山は概念魔法やトータスで初めての天職を持ってくれたってわけだな」

 

「違うよ清水君。そこに関しては本当に偶然だったんだ……いや、ここまでくるとこれすらも運命だったんだ!まさか檜山君がこんなにもこの物語を変えていくなんて流石に想定外だったよ。自身に降りかかる死亡する未来を避けてね♪」

 

「物語を変える?大介が死亡する未来?」

 

「檜山君はね…悠に二桁に上る死亡する未来を奇跡的に避けてここまで来ているんだ」

 

 俺そんなに死にかけてたのかよ!?

 ありがとう脳内会議……

 

「どういう事だ?檜山はそんな人から恨みを買う奴じゃないだろ?なのに死ぬ未来だと?」

 

「まあ、この数字は僕の長年の研究に基づく計算式よって出てきた数字だから厳密には違うかもしれないけどね。ハジメ君、僕は時空と次元を超える魔法を会得しているんだけど……」

 

「時空、次元……つまり、別の時間軸であったり世界線へ移動が可能という訳じゃな」

「そんな魔法があったなんて……」

「私もそんな魔法聞いたことないですよ!」

 

「君たち異世界組の理解も早くて助かるな♪この世界線以外の檜山ってね、それはまあ酷くてサイコパスな奴でね♪」

 

 そこから、もう一人の恵里は、檜山―――俺の知っている原作檜山の事をつらつらと語り始めた。

 改めて聞くと、やっぱ俺ってヤバい奴なんだな……

 

「―――てな具合でね。それはまぁーー人の恨みを買うどころか、叩き売りしているような奴でね♪」

 

「それは本当に檜山なのか?僕を殺そうとしてるなんて……」

「似ても似つかないねハジメ君……しかも、別の世界線だと私を殺すなんて……」

「流石に衝撃的すぎるな……」

「他の世界線の大介とは幼馴染になりたくないわね……」

 

 ハジメ達が別の世界線の俺に驚き戸惑っていると、天之河が話し始めた。

 

「しかし、それが何だというのだ?俺がライバルと認めたのは、今!俺の目の前に居る檜山大介だ。他の世界線の檜山の事など、どうでもいいことだ!」

 

「天之河……」

 

「馬鹿にしては良いこと言うじゃん。そうだよ!僕が好きになったのは、僕をいつも優しく抱きしめてくれて、僕を守ってくれるここに居る大介だもん!」

 

「恵里……」

 

 ちょっと涙腺に来るな……

 

「へぇ~まあ、別の世界線じゃ、僕はそこの……名前なんてどうでもいいや。馬鹿に惚れて、檜山君を利用するんだけどね♪」

 

「ふん!そんな別の世界線の僕なんて知らないよ!」

 

「アハハ!僕の言う通りかもね!」

 

「お前は!僕じゃない!」

「そうだよ!貴方は恵里ちゃんじゃない!そんな外側だけ恵里ちゃんに似せたって…」

「うるさい……」

 

 恵里と白﨑さんに言われ、反論するかと思われたが、さっきまでの飄々とした口調で話していた、もう一人の恵里は急にぼそりと呟いた。

 

「まっ…て…。うるさい…。も…しかし…て…か…らだ……を代え…たせいで…え…り…ちゃんの……自我が……芽生…えちゃったのかな……?…早く会いたいんだ♪お前はもう邪魔だよ♪お……や…………ひ……ま……」

 

 どうしたんだ?急に苦しみ始めたぞ?

 違うとわかっていても、恵里にそっくりな人が苦しんでいるのは助けたくなってしまうな……

 

「おい、大丈「みんな!今がチャンスだ!」」

 

 俺が声を掛けようとしたが、ハジメの号令で、八重樫は刀を使い、一瞬にして拳銃を持っていたイシュタルさん達を一瞬にして拳銃を真っ二つにした。何も見えなかった……

 きっと、バトル漫画で途中リタイヤするキャラってこんな気持ちなんだろうな。

 でも、俺もボーっと見ているだけじゃ申し訳ないから、ロープを高速建造で作成して、この場に居る、白いコートが連れてきた、全員をロープで縛りあげた。

 ……あれ?なんで俺高速建造使えるんだ?

 

「もう、お前の負けだ」

「檜山の事は諦めろ」

 

 未だに苦しんでいるもう一人の恵里を囲むように、ハジメ達は立ち塞がる。

 

「……ダメ。まだ魔法が使えない」

「来奴は一体何をしたのじゃ?」

「まあ、拳銃を使って来たってことは、こいつ自身も魔法が使えなくなる魔法なんだろう」

「空間に作用する魔法みたいなものなのかな」

「みなさん!早くこの人も縛り上げましょう!」

 

 ハジメ達が魔法が使えない事を推察し始めた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ナカムラエリの名において命ずる――“跪け!”」

 

 「跪け」その言葉が聞こえたと同時だった。

 ハジメ達ははまるで、その命令が当たり前のように、もう一人の恵里の前に跪いた。

 

「くっ!」

「なんだ!」

「どうなってるの!」

「これは一体⁉」

「どうなっておる!」

 

 

「みんな!」

「光輝!」

「香織ちゃん。雫ちゃん!」

「エリリン!シズシズ!」

 

 俺たちがハジメ達を心配し、近づこうとしたが、もう一人の恵里は、ゆっくりとだが、確実に俺に向かって来る。

 

「ようやく会えた……僕の運命の人♡」

 

「お前は一体……」

 

「違うよ♡僕はお前じゃない――ナカムラエリだよ大介♡」

 

「っ!大介にそれ以上近づくな!」

「やめろ!恵里!」

 

 恵里は俺を守る様に前に出ようとしたが、俺はそれを静止させ、恵里を背中に隠す様に恵里ともう一人の恵里の前に立つ。

 

「さっきまで奴とは違う……」

 

「はぁ~やっぱり檜山は僕の運命の人だ!……それに比べて僕は何もわかっていない……」

 

「どういう事!大介をどうするつもりだ!」

 

「僕は……大介を守りたいだけだよ?」

 

「守るだって?」

 

 俺が聞き返す様に、もう一人の恵里に聞くと、ポツリと言ってきた。

 

「あのね……大介には呪いが掛かっているの」

 

「俺に呪いだって?」

 

「そう。アイツと様々な世界線を見ていて気づいちゃったんだ……大介はね―――――――――生きたままこの世界から帰れないんだよ?」

 

「…………は?」

 

 

 




>この世界線の死亡フラグ
 基本的にメシに誘わず、原作キャラを誘わなかったら死にます。
 死にゲーが裸足で逃げ出すほど死にます。
 因みに、死因の半分以上は恵里ちゃんに愛されすぎて死にます。

>佐藤の理由
 初めは、田中か山田で行こうとしたのですが、調べたら佐藤が一番多い苗字だったので、佐藤にしました。
 


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35話 一番の敵は“物語”

たくさんの感想、誤字脱字修正本当ありがとうございます!
ここから、もはや、これってありふれだっけ?思うような展開になりますがご了承お願い致します。


 ナカムラエリから告げられた言葉。

 “生きて帰れない”

 

「大介が生きて帰れない……何言ってるの?出鱈目言うな!」

 

 俺に抱き着き、ナカムラエリを睨みつけ叫ぶが、どこ吹く風と言わんばかりに飄々と告げる。

 

「出鱈目じゃないよ。アイツと一緒に様々世界線を見てきたけど、大介が無事に日本に帰れた世界線は存在しないんだ」

 

「それは他の世界線の檜山の話であって、今ここに居る檜山には関係ないことだろ!」

 

 ハジメの話を聞いた、ナカムラエリは、指を鳴らすと、ここに居る人数分の椅子と、大きめの円卓が出てきた。

 すると、さっきまで跪いていた、ハジメ達も立ち上がれるようになったのか、急に立ち上がり、ナカムラエリを見つめている。

 

「さぁ座って。ここに居るみんなに教えてあげる、この世界についてね。席順はもちろん大介は僕の隣ね♪後は適当でいいから」

 

 さっきまであった、一触即発の雰囲気は無くなり、俺に嬉しそうに話しかけるナカムラエリ……

 この人懐っこいみんなに好かれる子犬の様な感じは……

 やっぱりここにいるエリも、俺の知ってる恵里なんだな…

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

「どうしたの?早く座ったら?あっでも大介はここね!」

「ダメ!大介は僕の彼氏なんだから!こっちに座るんだよ!」

「こらケンカするな。俺が二人の間に座るからな?」

 

 二人に両手を引かれながら席へと案内される。

 さっきまでの、一触即発の雰囲気が一気に無くなって、ハジメ達は俺たちを見て少し呆然としている。

 

「こんな状況でも、父ちゃん節を炸裂するとは流石檜山……」

「まるで、双子の娘にせがまれてる父親ね……」

「おい、変な事言うな清水夫妻」

「「まだ夫妻じゃない(わ)!……あっ」」

「自分たちで言ってて恥ずかしがるなよ……」

 

 清水達は顔を赤らめながら席に着き。

 ナカムラエリと恵里に俺は手を引かれながら席に座らされると、嬉しそうに左側の席に座り、恵里は右側に座った。他のみんなも戸惑いながらも席に着いた。

 

「おい…さっきから親父殿達が動かないのは何故だ?」

 

 バイアスが、睨み殺しそうな視線で問い詰めるが、俺の左腕に抱き着いたまま、エリは平然と答えた。

 

「それはアイツが洗脳してたからかな?アイツはこういう魔法が得意みたいでね。多分、アイツを僕が支配したことによって、頭の処理が追い付いてないんだと思うよ?一回は魔法が使えなくなってたけど、“これも、研究の成果だ!”とか何とか言ってたな~。別に僕は洗脳を解いてもいいけど、そうしたら、ハウリア族の奴隷解放とか、全部無かったことになっちゃうけどいいの?」

 

「……今は仕方ないか。後!あの魔物達をどうにかしてくれ!あんな量の魔物に攻め込まれたら、この国は一瞬にて滅んでしまう!」

 

「それも大丈夫。指示がないと動かない様に調整されてるから、僕が指示を出さないと動かないから平気だよ」

 

「……本当に大丈夫なんだろうな?」

 

「うん大丈夫だよ、南雲。現に動いてないのが証拠だし、そんなに動くのが見たいなら動かそうか?僕は大介さえ、連れていければこの国とかどうでもいいし?」

「止めてくれ、えっーと……ナカムラ?」

「むー。僕も下の名前でいいのに~ふふ♡ようやく出逢えたんだ運命の人に♪」

「大介に抱き付くな!」

「落ち着け恵里」

 

 指を鳴らそうとする、ナカムラエリを俺は止めると、少し不服そうな顔を浮かべたが、嬉しそうに俺の左腕に抱き付くナカムラエリと対抗意識を燃やす様に右腕に抱き付く恵里、ああ二人とも柔らかい……

 いやいや!何和んでんだ俺⁉

 

「ねえ?さっき貴方は自分の事を“ナカムラエリ”って呼んでいるけど、どういう事なの?」

「そうですよねユエさん。恵里ちゃんには、姉妹は居ないんですよね?……まさか、弟さんとか!」

「シア、流石にそれは無かろう。さっきまで喋っていた奴とは雰囲気が変わっておるが……」

 

「僕はね、別の世界線のナカムラエリなんだ。僕が生きていた時の記憶とかほとんどないんだけどね」

 

「何となくそんな気がしていたが、どうしてそれで我がライバルを運命の人なんて言い方をしているんだ?そもそも、お前がさっきから言っている、アイツとは何者なんだ?」

「お前だって俺の事、謎の呼び方してるじゃねぇか天之河……」

 

「えっ?運命の人だから運命の人なんだよ?運命に理由なんていらないでしょ?もしかして、アイツが言ってた、別の世界線じゃ僕がお前に惚れるって話聞いて、僕がお前に惚れるとでも思ったの?じゃあ残念でした!色んな世界線を見てきてわかったんだ。僕の運命の人は大介なんだって?」

 

「いや、そういう訳じゃ「僕の彼氏だよ!」」

 

 天之河の言葉を遮るように叫び、右腕に抱き付く力を強める恵里。

 

「だから落ち着け恵里。でも、おかしくないか?どうして、俺の事をその……好きになるんだ? 確かに、天之河の言う通りと言うか、げん…別の世界線だと天之河を好きになるはずなんだろ?しかも、他の世界線で俺と言うか、檜山を見続けているなら、逆に俺に嫌悪感を抱きそうなものだが?」

 

 つい、原作って表現をしたくなってしまうが何とか持ちこたえられたな……それにしても、自分で“君俺の事こと好きだろ?”って言うのすっごい恥ずかしいな……

 

「……大介酷い」

「えっ?…そうか!俺の事が好きとかじゃなくてやっぱり、この天之河の事が好きで……」

「僕は本当に大介が好きなのに……人が人を好きなるのに理由なんていらないでしょ?」

「あ…好きではあるのね」

 

 その言葉に少しだけ、ホッとしてしまう自分が情けない……

 

「それとも、僕に好かれて嫌なの?」

 

 エリが、しょんぼりと暗い顔をして、左腕に抱き着きながら目尻に涙を浮かべて上目遣いで俺を見てくる……

 ……俺この泣き顔には弱いんだよな。

 

「嫌とかじゃ無くて……」

「大介騙されちゃダメだよ。女の涙何て全部嘘なんだから!大介には僕が居るから顔だけが僕にそっくりな奴に騙されちゃダメだよ」

 

 恵里は、右腕に抱き着き、少し頬を膨らませ俺を上目遣いで見つめて来ている……

 クソッ!生きて帰れないなんて言われている状況で、空気が読めない自分が情けないが……

 二人共めっちゃ可愛い!こんなのズルいよ!何この、疑似双子?に迫られる状況!

 ……はっ!これが所謂ハーレムか!

 

「顔だけじゃないですぅ~中身もちゃんと“中村恵里”つまり、僕と一緒なんですぅ~そもそも、大介に告白してた時、僕だって涙使ってたじゃん」

「使ってません~アレは本当に出たからいいんだよ!アレはあれ。コレはこれだもんね!」

「二人とも、ケンカは…「「大介は黙ってて!」」……これ以上ケンカを続けるなら、俺は席を移動するからな」

「「えっ!」」

 

 俺は、抱き着いていた二人を振りほどくように立ち上がり席を移動する――「「ダメ!」」

 が、二人の恵里に両腕を引っ張られ、もう一度同じ席に座らされる。

 

「もうケンカしないな?」

「「……でもこいつが!」」

「……」

「「はい。もうケンカしません」」

「よろしい」

 

 渋々返事をする二人に微笑みつつ、二人の髪を撫でると嬉しそうにしてくれた。

 この息の合いようは、やっぱり別の世界線とは言え、二人共同じ存在ってことなんだろうな。

 

「エリリン達、実はもう仲良しなのかな?」

「……なぁ谷口」

「どうしたの坂上?」

「これって浮気になるのか?よくわからんけど、二人とも中村なんだろ?檜山は中村の彼氏であるんだから、この白いコートを着たナカムラの彼氏って事にもなるのか?」

「そこの所どうでしょうさっきから顔がににやついているダイダイ?やったね!ハーレムだよハーレム!」

「うっさい谷口。人の心を読むな。今の俺に聞いてどうするんだよ……それより!ナカムラ、さっき言ってたアイツって誰だよ?」

 

 坂上や谷口から、どうでもいい疑問を流しつつ、さっきまで居たはずの“アイツ”って存在を聞くことにする。

 

「僕も詳しくは知らないんだけどね。アイツ自身、名前を覚えるのが苦手だとで、自分の名前すら憶えてなかったんだけど、この世界でエヒトって神様を消したときに、“この世界の自分を消した”って言ってたから別の世界線のエヒトなんじゃない?」

 

 エリがサラっと言った言葉に全員が衝撃を受けた。

 

「マジかよ!」

「なんじゃと!奴が……この世界の……」

「でも、安心して?この世界のエヒトとかアあんとかって神様達は、アイツが消したから。まあ、別に信じるも信じないのも君たちの勝手にね」

「マジかよ……」

「僕達の旅の目的の半分があっさり片付いたなんて……」

「複雑な気持ちだねハジメ君……」

「オスカーさんや、ミレディさん達に何て言えば……」

「しかし、彼らが遺してくれた思いは本物のはずだ!」

「コウキ、そういう問題じゃないと思うけど?」

 

 エリはサラっと言っているけど、言い換えると、このナカムラエリは、この物語のラスボスを簡単に消せるほどの実力を持っているほかならないってことかよ!

 

「一応言っておくけど、もし、僕に危害を加えようとしても、さっきみたいになるから無駄だよ?」

 

「さっきの何なんだ?魔法なのか?そもそも、何故魔法が使えなくなっているのに、その…ナカムラは魔法使えるんだ?」

 

「えっ?俺は高速建造使えるからてっきりもう使えるようになっていると思っていたが、確かになんでなんだ?」

 

 俺は証明するように、スーツの裾の部分から糸を毟り取ると、高速建造を使いロープを作成した。

 

「清水の疑問に答える義理なんてないけど、大介の疑問には答えたいな……そうだ!大介が僕に“キス”してくれたら、アイツが研究していたこの世界の“魔法の原理”についても教えてあげる!」

 

「えっ?」

「ぜっったいダメ!」

 

 キスという単語を聞いた途端、恵里は大声を上げ、俺を抱き寄せナカムラエリを睨みつける。

 

「じゃあ教えてあ~げない」

 

 左腕に抱き着きながら、少し間延びした声と共に、プイッって効果音が聞こえてきそうな、綺麗なそっぽを向いたエリ。

 

「……恵里よ。そこは女としての器量の差を見せつけるチャンスじゃぞ?英雄色を好むという言葉があっての?」

 

 ティオさん、俺別に英雄じゃないけど……

 

「中村さん…悪いけど、そこを何とかお願いできないかな?ほら、別世界線って言うけど自分な訳だし?」

 

「どんな事言われたってダメ!キスなんて浮気だよ!じゃあ南雲は、別世界線なら、香織ちゃんが別の男とキスしてもイイって言うの!」

 

「……さっき言ってたこの世界の事って何なんだ?えっと…ナカムラさん」

 

 説得諦めやがった。

 まあ確かに恵里の言う通り別世界線って言っても自分の恋人が他人とキスとかするのを見るのは嫌だよな……

 

「ちぇ~まあ、雰囲気って大事だからキスはまた今度でいいや。この世界の事だったね。この世界はね―――“物語”なんだ」

 

「物語?どう言う事じゃ?」

 

「この世界はね、ある終幕に向かう様に仕組まれている物語なんだ」

 

「仕組まれた終幕?じゃあエヒト以外にこの世界を操る神が居るってことか!」

 

「違うよ天之河。“神”じゃなくて“物語”なんだよ」

 

「どういう事だ檜山?」

「俺もよくわからん」

 

「“物語”なんだから、“登場人物”が居るんだ。当然、その“登場人物”には“役割”が与えられる」

 

「役割?」

 

 白﨑さんが不思議そうにエリに尋ねている。

 

「ああ、でも“物語”って言ってもみんなにとっては現実だから安心してね」

 

「安心してって……よくわからないけど、それと檜山君の生死がどうして関係してくるの?」

 

「みんながここまで来れて、幸せなのって、今ここに居る大介のおかげなのはわかるよね?」

 

「そんな訳「「「「確かに」」」……何か照れるな」

 

 エリの言葉にハジメ達が頷いてくれ、なんかむず痒くなる。

 

「でもそれって実は、アイツが檜山の体に佐藤の魂を入れたからなんだ。本来ならこんなにたくさんの人を救う様な奴じゃないんだ」

 

「それってさっき言っておった、別の世界線の檜山ことじゃな」

 

「そうだよティオさん」

 

「しかし、さっきも言ったがそれは別の世界線の檜山であって、今ここに居る檜山には関係ないはずだ!」

 

 清水がエリに向かい叫ぶように問い詰める。

 

「それがそうはいかないんだよね。この“物語”って言うのが厄介でね。ここに居るみんなは日本に帰れる“物語”は存在するんだけど……」

「だったら大介だって!」

 

「話は最後まで聞くものだよ僕。“物語”…みんなは日本にちゃんと帰れるから安心していいんだけど、でも大介には、さっき言った“役割”が出てきちゃうんだ。大介…つまり檜山大介に与えられた役割って言うのが…“アンチキャラ”」

 

「アンチキャラ……“役割”……まさか俺の役割って!」

 

「そうだよ大介。これが大介に刻まれた“呪い”アンチキャラとして、無残な死を遂げる……これが大介に“物語”に与えられた“役割”なんだ」

 

 つまり俺って―――物語に嫌われてんのかよ!

 

 

 




>二人の恵里
 ヒロインは恵里なんです。
 でも、一人って書いてないよね?
 そんな言い訳をしつつ、だって疑似でも双子に迫られる状況書きたかったんです。後悔はない(開き直り)

>“物語”
 当初、檜山めっちゃ嫌われてて、でも他の登場人物は生きて帰れる二次創作あるから、檜山が帰るのなんてないやろ!
 でも、田吾作さんの作品の檜山は良い奴やな……まっいっか!

>この作品の“解放者”
 ごめんねあっさり、仇消しちゃって
 でも、別の世界線エヒト(エリ)が来たから、安心してね?


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36話 脳内会議 特別ゲスト編

最近
1.仕事忙しいー!
2.風花雪月無双面白れー!
3.ライブアライブ面白れー!

で投稿が遅くなり申し訳ございません。


 ここは脳内会議

 

「そんな……まさかの敵が物語なんて……」

 

 弱気の発言がいつにも増して弱々しい。

 

「クソッ!ここに来てこんな特大の死亡フラグが待ち受けているのかよ!」

 

「そうだね~しかもこの檜山の体に呪いが掛けられているなんてね~」

 

「アンチキャラですか。まさかここに来て物語のしての役割が立ちふさがるとは…」

 

 強気や気楽の発言に、いつもの発言の切れが無い発言をする真面目。

 

「この最大にして最強のフラグをへし折らなければ生きて日本に帰れないないないわけですな」

 

 議長は髭を撫でながら、現状を把握するように今、檜山がどのような状況に居るかを淡々と告げる。

 

「でも…一体どうすればいいのかなぁ……」

 

「確かにね~“物語”なんて姿かたちがないのが相手なわけだよね~」

 

「しかし」

 

 弱気と気楽の発言を遮るように、真面目は告げる。

 

「ナカムラエリさんは、こうも言っておりました。ハジメ君や恵里さん達が帰る未来は存在していると…つまり、俺の事をどうにかすれば、ハッピーエンドが待っているわけではないでしょうか」

 

「真面目の言う通りだ!ここまで、クラスメイトは誰も死なずにこれたんだ!ここに来て俺だけ死ぬなんてまっぴらごめんだ!」

 

「強気さんや真面目さんの言う通りですな。それに、ここに来て檜山だけ死ぬようなら……恵里さんが後追い心中しそうですしな」

 

「そうだね…ここに来てビターエンドなんてごめんだよ…」

 

「ここは~死亡フラグを回避し続けてきた脳内会議の見せどころだよ~」

 

「「「「「おお!」」」」」

 

 気楽の発言に5人が賛同し、議会にも明るさが戻ってきた。

 

「早速ですが何かいい方法がある方は居ませんか?」

 

「そりゃ決まってる!」

 

 議長の発言に、強気が円卓に乗り出すように発言する。

 

「概念魔法だよ!何かよくわからないが!俺にはその概念魔法とやらがあるらしいじゃないか!それを使ってやろうぜ!」

 

「姿かたちが無い物には、姿かたちが無いもので対抗するって訳ですね」

 

 強気の発言に、真面目が食いつく。

 

「でも…いいのかな…?」

 

「どうしました弱気さん?」

 

「だって…ここに来てその…概念魔法が用意されてるって…なんか…」

 

「罠みたいだよね檜山君。僕も同じ意見だ」

 

「そうそうこの人の言うと通…………

 

「「「「「誰!?」」」」」

 

 弱気の発言に食いついたこの会議参加していた、もう一人存在に5人の檜山が驚き、椅子から立ち上がった。

 

「へぇ~ここが檜山君の生き残った秘訣か~面白いね」

 

 自分に驚かれた事に我関せずと言った人物―――白いコート。

 

「お前誰だよ!」

「ちょっと待って…」

「この白いコートって~」

「まさか!」

「貴方は……」

「「「「「エヒト!」」」」」

 

「正解~流石察しがいいね~」

 

「どうなんだ!エヒトってエリに取り込まれたんじゃ!」

「もしかして…僕を乗っ取るために…この場所に…」

「まさかのラスボス登場か~」

「物語通り、無残な死を私たちに届ける為にこの脳内会議場に現れたのですか」

「落ち着きなさい!」

 

 強気、弱気、気楽、真面目が驚き戸惑っている中、議長がここに居る檜山達を落ち着かせるため一喝を入れ、檜山達を代表にするように円卓の椅子に座り楽しそうにこちらを見つめてるエヒトへと近づく。

 

「エヒト…さんでよろしいでしょか?」

 

「敬語は不要だよ…檜山君でいいかな?」

 

「そうですな、ここに居るのは全員檜山ですので……議長とお呼びください」

 

「あはは!面白いね議長君。安心していいよ他の檜山君達。だって今の僕に残された時間も力も少ないからね」

 

 そう言うと白いコート―――エヒトは見せつける様に手の平を5人に向けて来た。

 その手の平は薄っすら透けており、手のひら先の白いコートを映していた。

 

「透けている!」

「どういうこと…!」

「あはは…流石に予想外の連続だね~」

「貴方の目的は一体?」

 

「まあ、円卓会議……いや、脳内会議を再開しようよ。これは―――僕が運命の人に出来る最初で最後の“願い”だからね」

 

***

「エヒトさんよ一体どういうことだ!お前はエリに取り込まれたはずだろ!?」

「それがどうして僕たちの脳内会議に……?」

「そもそも~この脳内会議場って檜山のイメージ映像って言うか~何て言うか~」

「それに時間が無いとは一体?」

 

 次々と檜山達から、来る質問にエヒトは、指を鳴らし質問を静止させた。

 

「ごめんね。僕も本当はみんなとはもう少し居たいし、質問にも答えたいけど、さっきも言った通り僕に残された時間が無いから少し一方的になるけど許してね♪」

 

 檜山達は、今は“物語”に対抗する方法を模索するためにも、エヒト発言に藁をもすがる思いで頷いた。

 

「信じてくれてありがとう。さて、さっそくになるが、概念魔法に頼るのは、僕も罠だと思っているんだ。これは正直“物語”が用意した、君を破滅――いや、殺すためのバッドエンドだと思う」

 

「そうなのか!」

 

「ああ。と言うのも、君が概念魔法を所持していることが正直、出来すぎているんだよね。僕も初めは『運命のいたずら』なんて思っていたけど、ちょっと考えてみたら、これも“物語”が檜山君を殺すための手助けだと今は思っている」

 

「そんな…」

「そもそも~僕が概念魔法持っているのは本当なの~?」

 

「気落ちするのはまだ早いよ弱気君。気楽君、檜山君が概念魔法を持っているのは本当だよ。因みに君が持っている概念魔法は『概念を書き換える』魔法ね」

 

「概念を書き換えるですか」

 

「そう。時間が無いから大雑把に説明すると、君が使いこなせれば、“火”を冷たく出来たり、“重力”が垂直じゃなくてありとあらゆる方向に向けることも可能なのさ」

 

「それは本当なのですか!?」

 

「うん。でも、使いこなせなかったら死ぬから使おうなんて思わない事だね」

 

「アッハイ!」

 

「OKいい返事だ。さて、僕が考えるに“物語”に掛けられた“呪い”を解く方法は……」

 

「「「「「解く方法は……」」」」」

 

 檜山一同がエヒト言葉を固唾を飲み耳を傾ける。

 

「無い」

 

「「「「「……えぇぇぇーーー!」」」」」

 

「だって考えてみなよ、幾ら何でもストーリーテラーの“物語”が相手なんだよ。そいつから掛けられた“呪い”が簡単に解けるわけないじゃん」

 

 エヒトの言葉に一斉にずっこけた檜山達を笑いながら飄々と楽しそうにエヒトは告げた。

 

「結局、死ぬ運命は避けられないって事かよ!」

「せっかくここまで来たのに…」

「まさにアンチキャラだね~」

「だったらせめて、恵里さんが檜山の後追いをしない方法を考えなければいけません」

「そうですな」

 

「諦めるのは早いよ。そして人の話は最後まで聞くものだよ?」

 

 一気にあきらめムードになった檜山達を窘めるエヒト。

 

「君達は何か勘違いしてる見たいだど、“呪い”は確かに解く方法は無いよ。だったら、方法は一つしかないんじゃない?」

 

「方法?」

 

 議長が聞き返すが、エヒトが一層透けてきた。

 

「あーあ、僕にはもう時間がないみたいだ」

 

「ちょっと待ってくれ!その方法を教えてくれ!」

 

「大丈夫だよ檜山君。君はその方法を手に入れているんだから……僕も“物語”の嫌われものさ。だから、あっけなくエリちゃんに取り込まれて“物語”から消えていくのさ。せめて君は生き残ってみせてよ―――“物語”からさ!」

 

 そう告げると、白いコートは跡形も無く消えてしまった。

 

「結局エヒトってイイ奴だったって事なのか?」

 

「よくわからなかったね…」

 

「でも、どういうことでしょう?“呪い”を解くのではなく生き残る方法とは…」

 

 檜山達が悩んでいると。

 

「ゲームとかだと~呪いには、その呪いを上回る呪いを掛けてもらうとかあるよね~」

 

「でも“物語”の掛けた呪いを上回る呪いを掛けてくれる人なんて……」

 

「クソッ!ここに来て人に恨まれず来たのが裏目に来るなんて!」

 

 弱気や強気が頭を抱え悩んでいるが、真面目が何かに気づいたように手に平をポンッと叩いた。

 

「某漫画の知識ですが、“愛ほど歪んだ呪い”は無いらしいですね」

 

「つまりあれですか。今“物語”からの“呪い”を乗り越える為には、それを超える“呪い”を檜山に掛けてくれる必要があると」

 

 議長の言葉に檜山一同が呟やき始めた。

 

「僕を呪ってくれそうな人…」

「それが別に愛でもよくて~なんなら、その愛が歪んでそうなヤンデレな人で~」

「その愛が大きそうな人――と言うより女の子…」

「更に言い換えるなら彼女……ヤンデレ彼女……」

「つまり!」

 

 そして一つの結論が出た。

 

 

「「「「「恵里!」」」」」

 

 

 




>呪いを解く方法
 呪術廻戦を見てて、
 「愛ほど歪んだ呪いは無い」か、恵里ちゃんみたいだな~で思いついた方法です。

>エヒト恵里君
 彼?彼女?の行動理念も実は自分の暇つぶしの延長線上だったりします。
 だから、自分の実験体を他人が弄られるのを嫌っているため、最後にヒントを与えてくれたりしました。

>概念魔法
 初めは、概念魔法で解決しようと思ったんですが、恵里ちゃんからの、激重愛(呪い)を思いついちゃったから、この解決方法はやめにしました。



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37話 突然訪れる終わり

呪いの本領発揮です。
短いですがどうぞ


―――ヒヤマオマエハシヌサダメニアル

 俺は、脳内会議の結果を実行しよう恵里に……なんだ?急に機械みたいな声が俺の脳内に?

 

―――モノガタリヲジッコウスル

 物語を実行……まさか!

 その声とともに、さっきまで縛られていたガハルドさん達や、イシュタルさん達がロープを引きちぎり俺に向かい拳銃を発砲してきた。

 

 バァン!バァン!バァン!と俺に向かって弾丸の横殴りの雨が俺に襲ってくる。

 さっき八重樫が壊したはずなのに、どうして弾が出るんだよ⁉

 

「大介大丈夫!」

「ぐっ……っ。どうなってんだ!おいみんな大丈夫か……みんな?」

 

 恵里は俺を心配してくれ、俺がここにいる他のみんなの無事を確認しようとするとハジメ達、更には坂上、谷口、ナカムラエリまでもが虚ろな目をして俺を見つめている。

 するとハジメ達が全員俺に向かってゆっくりとだが近づいてきていた。

 

「香織ちゃん達どうしたの⁉」

「恵里!近づくな!どうやらこれが俺の呪いらしいな……無差別に洗脳とかなんでもありだな……」

「そんな……どうしよう大介……」

「とにかく逃げるぞ!頭を伏せろ恵里!」

 

 恵里は洗脳されてないのか?と疑問に思う暇も無く俺は円卓テーブルをちゃぶ台返しの如く俺に向かって来る人に向けてひっくり返した。

 そんな俺の努力虚しく一瞬にして、八重樫によってテーブルを細切れにされた。

 

「まじかよ……流石世界最強の一人……」

「やめて!雫ちゃん!」

 

―――ムダダオマエノシハキメラレテイル

 痛っ……クソッ!恵里の叫び虚しく俺に向かってやって来る人達。

 まるでゾンビ映画だな……そうだ!突然のことで忘れていたが、理由は分からないが俺は今、魔法が使えるはずだ!

 俺が狙いなら、恵里を人質に取られるわけにもいかない。

 高速建造を使い、大量の足場板の壁を造る。何分……何秒持つか分からないが今は少しでも、俺を見失う事が出来ればいい。

 

「恵里こっちだ!」

 

 高速演算、危険予知、とにかく俺が使える全てを使って、命からがらなんとか部屋から逃げることに成功した。

 

******

 帝城の中の人は、全員俺を狙っているらしく、俺を見るなりゆっくりではあるが追って来ている。

 俺達は、運よく咄嗟に入った部屋には誰もおらず、高速建造を使い、3畳ほどの疑似の部屋を作り、ひとまずの安全を確保できたが、このままじゃまずいよな……

 

「大介どうしよう……このままじゃ……」

「……そうだな」

「どうしたの?……大介!この血まさか⁉」

「大丈夫だ恵里。さっき逃げるときに右肩を掠めただけだ。それより恵里!」

 

 脳内会議の結果を頼もうとしたその時だった。

 

―――モノガタリヲジツリョクコウシスル

 その機械みたいな声がした瞬間だった。

 全身をまるで、獣に嚙みつかれ引きちぎられるような痛みが走った。

 どうなっているのかと思い体を見るが何も起きていないのが俺に更なる不安を煽った。

 永遠に思える痛み。

 生きたまま肉が裂かれ、腕を引きちぎられる痛み

 硬い何かで顔面を殴られたような痛み

 刀で切り刻まれる痛み

 焼かれる痛み

 この世の全ての苦痛が襲ってくると思えてしまう。

 

「ぐあああああああぁぁぁ!ぐっがっ…!ああああああ!!!!!」

「大介どうしたの!いや!大介死なないで!大介!」

「だ…い…じょうぶ…だ……それ…より…恵里……」

「何!回復魔法?でも…僕は使えないから直ぐに香織ちゃんに…ダメ…今香織ちゃん達には頼めないし……どうすれば……」

 

 恵里は混乱しており、俺に抱き着いたままあれじゃないこれじゃないと、慌てふためき涙を流しながら困惑している。

 俺もおかしくなりそうな頭を気合で何とか保ちつつ恵里に伝える。

 

「え…り…落ち着け……なぁ俺を……******!?どう……なってい…る?」

「大介どうしたの⁉よく聞こえないよ……いや……大介死なないで…僕を一人にしないで……」

 

 恵里は俺が死ぬと思いさらに抱き着く力を強めてきた。

 どうなってる?俺が恵里に呪いの事を伝えようとしたのだが、声を出しているはずなのに声にモザイクが掛かったみたいだ。

 

―――モノガタリニハサカラエナイ

 機械みたいな声が頭に響いてくる。

 

―――コノイタミハホンライヒヤマガウケルイタミダ

―――ヒヤマノモノガタリハココデオワル

―――アキラメテモノガタリヲウケイレロ

 

 ここまで来て本当に終わってしまうのか…俺はここで死ぬのか……無惨に死ぬのか……

 せめて!恵里が少しでも悲しまないように……俺の後を万が一にも追わないように何か……

 泣いていた恵里から声が聞こえなくなり、恵里をふと見ると恵里の顔は、安らか笑みを浮かべていたが、その表情にはまるで何もかも諦めたような顔をしていた。

 

「え……り……どう…し…た?」

「大丈夫だよ大介。僕は大介を一人になんかさせない。僕も直ぐに逝くから安心して大介」

 

 その言葉の意味を本能的に理解してしまった。

 俺が考えていた最悪の事を恵里を行おうとしていると理解してしまった。

 

「だ……め……だ……え…り……ぐっがっ!」

「大丈夫。僕も大介が傍にいるなら死ぬのも平気だよ」

 

 俺は何度も首を横に振るが、恵里は優しく顔を挟みキスをしてきた。

 そして、恵里は俺の左手を優しく掴み自分の顔へ運び優しく頬ずりをした。

 

「苦しいかもしれないけど、お願い大介。大介が呪いで死ぬ前に、僕のしたいことをさせてね。たとえ死んで、生まれ変わろうとも大介を見失わない為のおまじないかな」

「え…り…」

「大介…結婚指輪ってどうして左手の薬指にすると思う?」

 

 急にどうしたんだ?…ダメだ、上手くしゃべれなくなってきやがった。

 

「左の薬指は心臓に繋がってるの。心臓は心。そして指輪は永遠の輪廻。“愛する相手の心を強固に掴んで永遠に離さない”為。今は指輪がないからこれで代用させてね大介」

 

 すると恵里は頬ずりをしていた左手の薬指を自分の口へと運び、根元まで一気に咥え、そして噛みついた。

 ガリッ!ガリッ!と音が聞こえてきそうな程、強く強く噛みつき続けた。

 まるで俺の薬指の付け根を一周するように、丁寧に傷を付けていく。

 

「え…り…な…にを……やめ……」

 

 俺が止めるように伝えるも恵里は指を離そうとせず首を横に振る。

 

「ガブッガリッ……オエッ……」

 

 俺の指が長いのか、恵里は少し嗚咽を漏らしながらも決して指を離さないように咥えた続けた。

 その光景をくらくらしてしまったのか、俺は先ほどまでの苦しみを忘れてしまい、恵里を見続けた。

 

「ん…プハッ……ふふふ出来た♪」

 

 満足したのか恵里は俺の薬指を吐き出した。

 俺の薬指と恵里の口には、赤みがかった銀色でキラリと光る唾液の橋が二つの間に架かっていた。

 そして俺の薬指の根元には真っ赤な一筋の線が出来ていた恵里の歯形が付いていた。

 口元には、俺の血が垂れており、その血を美味しそうに舌舐めずりした後、恵里は俺を見つめながら告白してきた。

 

「大介。ずっと大好き。永遠に大好き。僕はたとえ生まれ変わろうとずっと大介だけを愛し続けます」

 

 その告白を聞いた途端、俺の視界は闇に包まれた。

 

 




>物語さん
 何となくこんな概念的な奴は機械みたいだろって決めつけで全部カタカナにしました。

>指輪
 これが本当の血痕指輪


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38話 いつの間にか大好きな彼女がありふれていない世界最強になっていた件

タイトル通りです。
ほぼ、説明とご都合主義の回です。


 モノガタリヲジッコウヲカクニ――モノガタリヲジッコウデキナイ

 ヒヤマダイスケノジョウタイヲカクニン

 ・・・ヒダリノクスリユビカラショクブツノヨウナエネルギーヲカクニン

 ソノエネルギーニヨッテジッコウヲオコナエナイトスイソク

 コノショクブツハ・・・“アイビー”デアルコトヲカクニン

 ジッコウヲイチジチュウダン

 

 ―――大介に手を出すな

 

 ダレデスカ?

 ソレハヨウニンデキマセン

 ヒヤマダイスケノシハモノガタリニキメラレテオリマス

 サイドモノガタリノジッコウヲ

 ・・・・・・エッナニ,コノカンカクハ⁉

 ドロドロトシタイマニモハキソウナホドアマ・・・くぁwせdrftgyふじこlp⁉

 

 ―――もう一度だけ言うよ、大介に手を出すな

 

 モノガタリハコンナコトデハ・・・

 ・・・くぁwせdrftgyふじこlp⁉

 

 ―――何回も言わせるのはバカの証明だよ物語さん?

 

 ・・・モノガタリヲヘンコウイタシマシタ

 ヒヤマダイスケノシノモノガタリヲヘンコウイタシマシタ

 

 ―――本当だろうね?もし嘘だったら……

 

 ホントウニヘンコウイタシマシタ!

 ホンキトカイテマジデス!

 モノガタリウソツカナイ!

 モウアノドロドロイヤデス!

 

 ―――ならいいや

 

 ホッ・・・

 シカシアナタハダレナノデスカ?

 ワタシハカタチハアリマセンイッタイドウヤッテ

 

 ―――僕が誰でもいいじゃん物語さん

 

 カイセキカイシ・・・アナタカラハドロドロトシタ“愛”ヲカクニン

 

 ―――そりゃ僕は大介を愛しているからね。愛ぐらいあるさ

 

 ソレダケデハアリマセン

 ソレニクワエテスサマジイ“欲”ヲカクニン

 

 ―――当たり前じゃん。僕は人間なんだよ?欲の一つや二つぐらいあるさ。

 

 ……ワカリマシタ

 ヒヤマダイスケノモノガタリヲヘンコウイタシマシタノデモノガタリハコノヘンデ・・・ナゼワタシヲアイビーガツカムノデスカ

 

 ―――だってお前にはまだ仕事が残っているよ?

 

 エッ…シゴトデスカ?

 

 ―――僕の欲望を1つ叶えて欲しいんだ

 

 ソレハデキマセ・・・・・・マタドロドロ⁉モウヤメテ!

 ワカリマシタ!ワカリマシタカラ!ソノドロドロハモウヤメテ!

 

 ―――ふふふ♪素直でよろしい

    でも、それとは別に物語さんには僕の愛している人を傷つけた罰は受けてもらうけどね

 

 マサカ・・・ヤメテ!チョット!ドロドロガイッパイ!!!アイビーモ!!!!!!

 ア・・・アアアアアアァァァァァァ!!!!!!

 

 ―――大介が受けた痛みの倍……100倍以上は苦しみを与えないとね♪

 

******

 俺は死んで…死んで……あれ?

 さっきまで俺に襲ってきていた苦痛が無い、どうなっているだ?

 俺の感覚が狂ってしまったのか?

 

「大丈夫大介?」

「恵里……」

 

 恵里は優しく微笑んでいた…

 

「…まさか、ここはあの世?」

「違うよ大介。大介は助かったんだよ」

「……助かった?」

 

 膝枕をしてもらい、頭を撫でられている所を考えると、どうやら少しの間気絶していたらしい。

 先程まで受けていた苦痛のせいで今も気分が悪く、起き上がれない

 

「待っててね、多分今の僕なら出来ると思うから」

 

 出来る?すると恵里は俺の胸に手を置きゆっくりと撫で始めた。

 するとさっきまで感じていた、気分の悪さが一気になくなり、むしろ調子が良いまである。

 

「恵里ありがとう。でも今のは一体?確か恵里は回復魔法使えないんじゃなかったか?」

「う~ん、僕もよく分かってはないんだけどね。でもとりあえず大介の呪いはもう大丈夫だよ!」

「えっ本当か⁉でもどうしてそんなことがわかるんだ?」

「ほら、大介が疑問に思ってるよ――物語さん?」

 

 物語さん?恵里は一体何を言っているんだ?

 すると、俺の頭に声がまた響いてきた。

 

 ―――ウップッ・・・ナカムラエリサマノイッテイルコトハホントウデゴザイマス

 

 なんだ?機械みたいな声なのにすっごく苦しそうだけど

 

 ―――コノコエハ、ナカムラエリサマニモキコエテオリマスノデシャベッテイタダイテモヨロ

「全部カタカナで分かりにくいから、普通に喋って」

 

 ―――ハイ!分かりました!中村恵里様!

 すげぇ!機械みたいな声が普通の中性的な声に変った⁉

 

「恵里…お前一体何したんだ?」

「大丈夫だよ大介!僕達はずっと一緒だよ大介!」

 

 そう言って俺に抱き着く恵里。

 いまいち答えになってないが、相変わらず可愛いなぁ畜生…

 

「……何があったか説明してくれ物語さん」

 ―――ハイ!まずは何から説明いたしましょうか?檜山様

 

「じゃあ、俺の呪いが解けたのは本当なのか?」

 ―――もちろんでございます!物語は嘘つきません!もう、強制的に檜山様を殺すような事は致しません!

 ―――南雲様達の強制洗脳も既に解いておりますのでその辺りの心配も大丈夫です!

 

「信じていいんだよな?」

 ―――当たり前じゃないですか檜山様!モウアノドロドロモアイビーモイヤデスカラ、オモイダスダケデ―――ウップッ

 

「ドロドロ?アイビー?」

 ―――こっちの話なので気にしていただかなくてOKです!

 

「じゃあ次は、恵里はどうしてあんたと喋れているんだ?まさか、恵里に何かしたのか!」

 ―――恵里様には決して何もしておりません!むしろされた側と言いますか……

 ―――そこは置いといて、私と喋れるのに関しては本当に奇跡としか言えません

 ―――あの時、檜山様に物語の力を使ったのですが

 

「物語の力?」

 ―――はい。魔力とはまた違う別の力。

 ―――詳しく説明すると少々長くなりますのでそういう物と思ってください。

 ―――それでですね。あの時、檜山様にはこの力を大量に流したわけなのです。

 

「あの時の苦痛はその力のせいだったのか」

「…僕は絶対に許さないからね物語さん?」

 ―――はいぃぃ!物語は猛烈に反省しております!なのでどうか!どうかもうドロドロとアイビーだけは勘弁してください!

 ―――ゴホン。それでですね。あの時激しい痛みが襲ったのに外傷は一切なかったじゃないですか

 

「そう言えばそうだったな」

 ―――あれはですね。私の力を檜山様の血液に流したためでございまして、血に私の力を流せば、全身には一瞬で巡るのと、万が一にも私の力が入った物を外に流さないための策だったんですが…

 

「血……ちょっと待て!恵里!体は大丈夫なのか⁉苦しかったり、痛かったりしないのか⁉」

「心配してくれてありがとう大介。大丈夫だよ、でもそのおかげで大介が助かった訳だし、おまじない成功だね♪」

「本当か⁈そんな訳の分からない力の入った血なんて大丈夫なのか⁉]

 ―――ですので、檜山様には外傷を与えなかった訳です。物語の痕跡を万が一にも残さないために。

 ―――しかも、檜山様が亡くなれば、私の力も自然消滅するはずでしたので。

 ―――でもまさか、死にかけてる彼氏の血を飲むとは流石に予想出来なかったと言いますか……

 ―――しかも、心臓と直結している左手の薬指の付け根と言うピンポイントな所から血を飲まれるとは予想外でして、しかもですね…

 

「まだあるのか⁉」

 ――― 一応の保険で檜山様を殺すために宿していた概念魔法も、どうやら血を飲まれた際に恵里様に譲渡されたみたいでして……

 

「はぁ⁉」

 ―――恵里様の檜山様を助けたいと思う、凄まじい“愛”と“欲”のおかげで、恵里様は概念魔法と私の力を完璧に使えこなせているのです。

 

「大介、僕凄いでしょ!やっぱり最後は愛が勝つんだよ!褒めてぇ~褒めてぇ~」

「何が何だかよくわからないが、ありがとう恵里」

「えへへ、大介ぇ~♪」

 

 そう言って頭を差し出す恵里を優しく撫でると恵里は猫の様にすり寄り甘えてくる。

 しかし何でもありだな……

 原作でも今回もそうだったが、恵里はトータスに来た時から、自分の天職を完璧に使いこなせていたみたいだけど

 まさか、概念魔法と物語さんの不思議パワーさえも使えこなせるとは……

 

「でも、愛はともかく欲ってどういう事だ?」

 ―――それに関しては、この世界の魔法の成り立ちが少しだけ関係してきます。

 

「成り立ち?」

 ―――はい。

 ―――この世界の魔法を使うためには“イメージ”と“理解”が必要なのですが、もっと根本的に必要な物があるのです。

 

「その根本的に必要な物が“欲”」

 ―――そうです。

 ―――分かりやすく例えますと、イメージとか理解は“駆動機械”欲は“その機械の鍵”に当たります。

 

「つまり、どんなにその魔法をイメージ出来て、理解していようと、その魔法使いたいって欲が無ければ発動しないって事か」

 ―――その通りです檜山様。

 ―――どうやら、この世界線に来たエヒトはこの仕組みを完璧に理解していたため、無意識下に欲を無くす魔法を開発していたようです。

 

「だから、ハジメ達は魔法が使えなかった訳か……待て、じゃあ何で俺は魔法が使えたんだ?」

 ―――それは、私が檜山様に無理やり概念魔法を宿していたからだと思われます。

 ―――今となっては、推測の域を出ませんが恐らくそうだと思われます。

 

「そうなのか……じゃあ!俺の死亡呪いは!」

 ―――はい。先程も言いましたが私が無理やり力を行使することはありません。私より強い方がもういらっしゃいますし。思い出しただけで……ウップッ!

 

 じゃあ……今度こそ!ついに!ついに!!ついに!!!

 俺の死亡フラグが完璧にへし折れたんだぁぁぁ!!!!

 

「全部、恵里のおかげだな!ありがとう恵里!大好きだぁ!愛してるぞぉ!」

「えへへ♪僕も大好きだよ大介!」

 

 俺は感極まって恵里を力の限り抱き着く。

 

「よっしゃぁー!まだ、もう一人エリの事もあるし、みんなの所に――「大介」っとどうした恵里?」

 

 俺は起き上がり、みんなの所に戻ろうとすると恵里は俺の袖を掴み妖艶な笑みを浮かべていた。

 

「僕ねご褒美が欲しいな♪」

「ご褒美?ああ何でもいいぞ!何がいいんだ?指輪はご褒美じゃないだろうし、何かアクセサリーとかか?それもここを出て「赤ちゃん」――へっ?」

「物語さん」

 ―――はい恵里様。最高級のベッドを用意しております。

 

 いつの間に⁉

 突然現れた、ベッドの上に俺は恵里に押し倒される形になった。

 

「恵里!ちょっと待っ…ん!」

「だめぇ…僕もう我慢できないの♡それに大介何でもいいって言ったよね♪」

 ―――因みに檜山様。この部屋から出るには恵里様を懐妊させないと出らないので悪しからず。

 

 ○○しないと出れない部屋だと⁉そんなの恵里の体調関係するだろ!

 ―――大丈夫ですよ檜山様。ご迷惑をかけたお詫びに恵里様には、今日を排卵日にする魔法を掛けさせて頂きましたので。

 

 何その、ピンポイント過ぎる魔法⁉

 ―――それでは、ごゆっくりお楽しみ下さい恵里様。

 

「お膳立てありがと物語さん。じゃあ大介――始めようか♡」

「恵里ちょっと待った!……」

 

 

 

 

 

「ふふふ♪大介、ずっとずぅぅっとだぁいすき♡」

 




>物語さん
 恵里ちゃんから、エンドレスに口の中にコールタールのようなドロドロとした甘ったるい感情を流し込まれながら、アイビーに首を絞め付けられておりました。

>恵里ちゃん
 概念魔法、物語さんの不思議パワーを持った最強女の子。
 何なら世界そのものを変えることのできる女の子です。
 

>魔法の原理
 完全に自己解釈炸裂しておりますがご了承ください。
 

 因みに、恵里ちゃんは男の子を授かりました。


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39話 思い出ぽろぽろ 

トラウマ再来



「檜山ー!どこだー!」

「大介ー!いたら返事して!」

「我がライバルよ!」

 

 物語の洗脳が解け、目を覚ましたハジメ、白﨑、八重樫、清水、天之河は自分達が居た部屋の至る所にある銃痕や壁に出来た刀傷、小間切れになった机や椅子、そして檜山が造ったであろう足場板などの燦燦たる状況や、檜山と中村がいない事に背筋が凍った。

 

 “檜山と中村に何かがあった”この状況が、言葉以上にハジメ達に語り掛けてくる。

 

 そして、その状況を作ってしまったのが、自分たちである事に気づいてしまった。

 “助けたいはずの親友を窮地に追いやった”その事実が自分達の胸に重く昏くのしかかり息苦しささえ感じてしまう。

 まだ眠ったままの、シア達やナカムラエリ、バイアスの無事を確認すると、直ぐに檜山達を探し始めた。

 大切な親友の無事に祈りながら……

 

「居たか!」

 

 清水が、一度全員を集め檜山達が居たかどうかを確認するが全員が首を横に振る。

 

「クソッ!まさかこれも檜山の‶役割”のせいなのか…あの銃痕は……もしかしたら!僕のせいで檜山は…!」

「ハジメ君……」

「私のせいだ…あの刀傷は……大介……」

「雫……」

「みんな弱気になるな!まだ檜山がし……っく!決まったわけじゃない!」

 

 ハジメが苦虫を嚙み潰したような表情で弱音を吐くと、それに連れて八重樫も弱音を吐いてしまう。

 天之河も“死んだ”と言う言葉を無理やり飲み込み、励ますも、ここにいる全員に過ってしまうある不安。

 ‶檜山が死に、その後を中村が追った”

 そんな、なんの救いもない結末に心が蝕れていく。

 そしてハジメ、白﨑、清水、八重樫は思い出してしまった、檜山と中村と過ごした楽しかった思い出を――――

 

~~~~~~~~~~~~~~

 高校受験にみんなが成功し、檜山の家に集まりお疲れ会を行っていた時の事。

 檜山、南雲、清水の3人はテーブルに着き、彼女達の料理姿を見つめていた。

 白﨑は薄い緑、八重樫は水色、中村は黄色の、エプロンの紐を首から掛け、後ろに結ぶシンプルなエプロンに身を包み料理をしている。

 3人一緒に作るというわけではなく、白﨑と八重樫は少し戸惑いつつ、中村が慣れた手つきで二人に教えているって言った感じだ。

 

「眼福だよね檜山、清水。制服の上にエプロンって漫画主人公の特権だと思っていただけど、こんなにも幸せな気持ちになれるんだね~」

 

 南雲はそう言いつつ、主に白﨑の制服エプロン姿にうっとりと熱い視線を送っている。

 

「女子の手料理が振る舞われるなんて……もう俺、リア充爆発しろなんて絶対に言わない!」

「そうだな清水。言った瞬間に俺たち爆発四散してしまうだろうな。なぁ、今更だが、俺たちの彼女のレベル高すぎないか?」

 

 檜山の疑問に南雲と清水は大きく何度も首を縦に振った。

 今彼らの目の前には、おしとやか系、大和撫子系、元気溌剌系の将来絶対に美人になるであろう三者三様の可愛さを持った女の子が料理をしている。(その内二人は、中身と外見が違うかもしれないが気にしてはいけない)

 彼氏である3人とも外見だけを見て、付き合っているわけでは無いがその顔面偏差値の高さに改めて思うところがあるようだ。

 

「そうだな檜山。町で一緒に歩いていると男は必ずと言っていいほど振り返るよな」

「わかるよ清水!それで振り向いた人が僕を見て『あれ弟?にしては似てないな』みたいな目で見るんだ……」

「見てくるだけならいいじゃないかハジメ。俺なんて一回、恵里を恐喝してるって職質受けた事あるんだぞ。そんなに目つき悪いかな俺……」

「南雲も檜山も苦労してるんだな」

 

 男同士の下らない話をしている最中、料理をしている3人はと言うと

 

「卵は直ぐに火が通っちゃうから、濡れ布巾を用意しておいてフライパンを一回冷やすと焦げずに綺麗に仕上がるんだよ。料理は味も大事だけど、その分見た目も大事だからね」

「「なるほど~」」

 

 中村から指導受けながら、着々と料理を進めている。

 メインの料理を手際よく中村が作り、サラダなど比較的簡単な物を白﨑と八重樫が分担して作っている。

 

「まさか恵里ちゃんがこんなに料理が出来るなんて知らなかったよ」

「そうね香織」

「えへへ」

 

 中村の手際の良さに、二人が感嘆している。

 

「僕も初めから上手く出来たわけじゃないから、香織ちゃんも雫ちゃんも何度もやったら上手くなるよ。料理は経験って言うし」

「でも、どうしてそんなに料理するようになったの恵里?ご両親が共働きだから?」

「それもあるけどやっぱり大介の為かな?」

「やっぱりなのね…」

「私もハジメ君の為に頑張ろう!」

「その意気だよ香織ちゃん。好きな人の為に頑張るって気持ちがいいし、それに」

「それに?」

「僕のお母さんって料理が得意で美味しいんだけど、ある日、大介が家にご飯を食べに来た時に『こんなに美味しいなら毎日食べたいですよ』って言ったんだ」

「大介って、誰でも誑し込むのね……」

「檜山君らしいけどね」

「その時に僕思ったんだ。美味しい料理を僕も作れる様になったら、大介とずっと一緒に居れるかもって」

「恵里の行動原理の大半が大介な気がしてきたわ」

「大半じゃないよ~。多分4割ぐらいかな?」

「それはもう大半よ……」

「ほらほら雫ちゃん。口より手を動かそ~愛する清水の為にね♪」

「///」

「あはは!雫ちゃん顔真っ赤」

 

 その後、彼女達が作った料理に舌鼓を打ち、彼氏たちは用意していた手造りの編みぐるみをプレゼントし、親友たちの夜は代えがたい青春の1ページに変わって行く。

 

~~~~~~~~~~~~

 みんなで笑い合っていた記憶

 

 嘗ての楽しかった記憶がどんどん溢れてくる。

 

 清水が放送大会で優勝した時、みんなで一緒に喜んだあの時

 南雲と白﨑の惚気を聞いた時、みんなで苦笑いしながらも笑い合ってたあの時

 八重樫が会心の出来の編みぐるみを見せてきた時、可愛いと褒め、次はもっと良いのを造ると言っていたあの時

 中村の檜山の自慢話を聞いた時、いつもの事かと聞き流して、中村に怒られたあの時

 クラスメイトの相談事を天之河に絡まれながらも、決してどれも邪険にせずに手を抜かずに真摯な対応をし、見事に解決していく檜山をクラスメイトが褒めていた時は、みんな自分の事のように嬉しかった。

 ずっと6人一緒に過ごせると思っていた青い春。

 

 青春をこれから刻んでいくはずだったのに、もしかしたらそこには大切な親友が居ないかもしれない。

 かつて助けてもらった親友を自分達が死に追いやった。

 そんなどうしようもない結末が―――

 

 ――――――

 

 そんな時、かすかではあるが確かに声が聞こえた。

 

 ――――――恵里

 

 そしてその声は、確かに‶恵里”と言った。

 

「檜山だ!」

 

 ハジメが、叫ぶと全員がその声のする方へと走り出す。

 小さい希望にすがるように。

 

***

「この辺りだと思ったんだけど……」

「おい!こっち来てくれ!」

 

 ハジメ達が声のする方へ行くが、檜山達の姿は一切無く辺りを捜索していると、近くの部屋に入った清水が声を上げハジメ達を呼んだ。

 ハジメ達も清水が入った部屋に入り、どうしたのかと聞くと、清水は部屋にある壁を指し示すと、そこの壁にはわかりにくくなっているが、小さく切れ込みがあった。

 

「まさか!」

「ああ、多分檜山の高速建造で造った壁だろう」

「ここに我がライバルが……うっ」

「どうしたの光輝?」

「何かあったのか?」

「いや……バグニュースとでも言うのだろうか……過去の記憶(トラウマ)が呼び起こされるこの感じは一体……?」

 

 急に頭を抑えてうなり始めた天之河を、八重樫と清水が心配していると、壁に耳を当てていた白﨑は

 

「薄っすらとだけど、ここから声が聞こえるよハジメ君!」

「よし……何が待ち受けているか分からない……慎重に行こう。香織はここで待ってて」

 

 そしてハジメは、白﨑を自分の後ろに下げ、その切れ込みをゆっくりと慎重に触れる。

 どうやら、引き戸になっているようで、少し右にスライドさせ、壁に隙間を作ると、そこから中の様子を確認した。

 

「―――????!!!!」

 

 確認したとたん、ハジメは顔を真っ赤にし、何か衝撃的な物を見たように口をパクパクさせ隙間を指さし何かを訴えようとしている。

 そんな様子を見た白﨑は同じように、ゆっくりと隙間を覗くと

 

「~~~♪」

 

 ハジメと同じように顔を真っ赤にするが、あらあらと両手で顔を挟み、嬉しそうにしている。

 清水と八重樫は、不思議そうに顔を傾げていると、白﨑は、手のひらを上に向け 次どうぞ とジェスチャーすると。

 

「まどろっこしい!宿命の友(ひやま)!今、助けに行くぞ!」

 

 そんな二人にしびれを切らした、天之河は勢いよく扉を開けた…

 正確には開けてしまったというべきだろ。

 そこには、

 

「んちゅ、恵里……もう、これで最後な……もう、出ん…」

 

 中村に覆いかぶさりに右手を腰に回し、左手を頭に回しほぼ0距離でキスをし、腰を打ち付けている檜山。

 

「だいしゅけぇ…ひゅーひゅー…・ひゃっ、ひゃぁぁぁん!!だいしゅきぃ…だいしゅきぃ……♡」

 

 まるで、虚ろでありながら目にハートを浮かべ、過呼吸になり、呂律が回らないながらも嬌声を上げ、檜山に抱き着きながら、大好きと繰り返す中村。

 お互い裸で、その体は彼氏と彼女の大量の体液でコーティングされている。

 ここで何が行われているのか……言うまでもないか

 部屋はそれを証明するように、男女のむせ返る、何とも言えない淫靡なにおいと熱気に包まれている。

 

「・・・」

 

 そんな部屋に飛び込んだ天之河は過去を思い出していた。

 このむせ返る匂いに

 同じようなシチュエーションに

 そしてトラウマを呼び起こされてしまった彼はそのまま気を失い、床へと突っ伏した。

 後に彼はこの時の事をこう語っている。

 

『俺はもう、勝手に相手の考えを決めつけない。ちゃんと相手の意見に耳を傾ける。それが正義への一歩そう思っていました。

 ところが、あの時俺は、檜山はきっと助けを求めている。そして助けたら俺を凄いって言ってもらえる。そう勝手思っていました。

 だから罰が当たったんですね』

 

「・・・・・・雫」

「ええ、幸利」

 

 そしてここに、ヤンキーがバットを持つように肩に鎌を担いだ、顔がどくろの死神を背にした清水と

 刀を持った阿修羅を従えた、顔を真っ赤にしている八重樫が、目の前の親友にゆっくりと向かっていく。

 とびっきりの説教するために

 半ば、気を失っている中村は気付かなかったが、檜山は気付き二人を見て、ただ事はないと思いながらも

 

「後で……ちゃんと怒られる……から……ちょっと……寝かして……」

 

 

 そう言い、中村を抱きしめ、下半身は繋がりながら眠りについた。

 後に彼はこの時の事をこう語っている。

 

『一番ヤバイ死亡フラグが見えましたね』

 

 

 

 

 




めっちゃ心配していた親友達が、子作りSE〇していたら、ムカつきますよね。

>最大の死亡フラグ
まさかの一番のフラグは味方だった!みたいな話です。





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番外編 様々なIfのお話

 更新が遅くなり申し訳ございませんでした。
 本編が上手く作れなくて、息抜きに考えてみた話です。
 よくあるTSすると美人になるあれです。

 TS檜山スペック
 檜山恵子(ひやまけいこ)
 184㎝ 
 スリーサイズ 78 68 83  
 肩辺りまでの黒のセミロング
 三白眼で眼つきが鋭く、美しいという中にも白い花のようになキリッとした趣きの勝った女性
 イメージは高身長にした、少しスタイルを良くした、だがしかしのサヤ
 回りのクラスメイトが美人過ぎて自分は美人じゃないと思っている。
 原作ではガチレズであり、白崎の事を好きすぎてハジメを奈落に落とした張本人
 この辺は原作檜山と大して変わらない
 中身は、珍しい女性の現場監督
 汗っかきで、暑いのが苦手
 と言うか、作者の作品の檜山の部分が女性になっただけで、流れは変わらない?

 


もしも檜山が女の子だったら…その1

 

『私は、檜山恵子』

 突然だが、私は転生者だ。

 前世で事故に遭い、この『ありふれた職業で世界最強』の世界にやってきてこの世界の1,2位を争うアンチキャラに転生しちゃいました!

 でも!一生懸命頑張って、この世界では寿命を全うして、孫に囲まれて天寿を迎えたい!

 

 Case1

 キーンコーンカーンコーン

 午前最後の授業のチャイムが鳴り、一日の楽しみの一つである昼食の時間だ!

 私が弁当を出し始めていると前から少し勢いよく抱き着いてくる

 

「ママ!一緒にお昼食べよう!」

 

 そう言って私を前から抱き着いてくる私より20㎝は低い女の子――中村恵里。

 この子は、自殺しようとしていた所を止め、一緒にご飯を食べに行きそこから仲良くなった子だ。

 因みにママ呼びは何故かクラス全員に広まっている……何故だろ?

 

「いいわよ恵里」

「えへへ…ママ~いい匂い~」

 

 身長差から、私の胸に顔を埋め楽しそうにし、匂いを嗅いでくる恵里。

 

「もう恵里は甘えん坊さんね。でも、くすぐったいから止めて欲しいな」

「でもママいい匂いなんだもん。このまま寝ちゃいそう……」

 

(私がやんわりと止める様に言うが全く言う事を聞かないのが最近の悩みの種だわ。でも、あまりに気持ちよさそうにしている恵里にあまり強く言えないわね……)

 

「ふふふ…えい!」もにゅ

 

 今度は後ろから私の胸を揉んできた人が……こんな事するの子なんて一人しかいないか。

 

「あん!こら鈴。私の胸を揉まないの」

 

 谷口鈴……高校からの知り合いで、原作では私との繋がりは特にないはずなんだけど、恵里との友達だからか、私とも直ぐに仲良くなってくれこんなセクハラを毎日のように受けていたりする。

 

「いいじゃん減るもんじゃないし~はぁ…ママのおっぱい柔らかく気持ちいい……」

 

「鈴の方が大きいでしょ?それにこんな小さい胸を揉んでも面白くないでしょ?揉むなら香織か、雫の方がいいでしょうに」

 

「だってぇ~あの二人彼氏持ちでぇ~ガード硬いんだもん。それに胸は大きいさだけじゃないんだよ!ママのは、全体のバランスが最高なんだよ!」

 

「でも、身長とか高すぎる気がするけど?それに目つきもちょっとする鋭過ぎる気も……」

 

「何言ってるの!高身長で且つスタイルもモデル体型を体現したようなスレンダー!顔のバランスは完璧で!目はキリッとして、イケメン女子を絵に描いたような存在なんだよ!」

 

 鈴が私の容姿をべた褒めしてくれるのに少し照れていると

 

「おい谷口!学校ではセクハラをしてはいけないと何度も言っているだろ!恵子が嫌がってるだろ!」

 

(こちらに叫びながら近づいてくる天之河光輝。

 原作だと私とは接点が無いはずなんだけど、小学生の時に一回お説教しちゃったから根に持たれているのよね。嫌われては無いと思うんだけどどうしようかしら……ん?)

 

「うるさいのが来た……無視して僕たちと一緒にお昼ご飯食べよう」

「別にヒヤママ嫌がってないよね~」

 

 谷口と中村はあからさまに嫌そうな顔をして檜山の後ろに隠れる。

 

「ちょっと天之河」

「どうした恵子!やっぱり嫌だったんだよな。さあこっちで俺と一緒に昼食を……」

「上着脱いで」

「……待ってくれ!俺にも準備が……いやいや!そもそもみんなの前でしかも学校そんな事してはいけない!」

「(急に顔を赤らめながら、様々なジェスチャーしているけど何を言っているんだろう?)ボタン、取れかかってる。直してあげるから脱いで」

 

 檜山が、天之河が着ている制服の袖のボタンを指さしながら教えてあげると天乃河は更に顔を赤らめながらも、制服の上着を脱いで檜山に渡した。

 すると檜山は、自分の胸ポケットからソーイングセットを取り出してボタンを付け直す。 

 

「やっぱ、このイケメン女子が裁縫する姿はギャップ萌えの権現だねエリリン。手際よく縫物をするヒヤママは絵になるね~」

「ヒヤママ綺麗だよ♡……女子をジロジロ見るなんてサイテーな行為だよ」

「なっ!別にジロジロなんて見てない!」

「別に天之河だけに言ったんじゃないんだけどね……」

 

 中村が、周りを見渡すと裁縫をしている檜山を見ていた男子たちはサッと檜山から視線を外した。

 

(どうしたんだろ?周りが騒がしいけど。まあ天之河イケメンだし、目につく存在だよね)

 

 その中の視線に天之河を羨ましがる視線があった事に檜山が気付く事は無い。

 

「これで良し」

 

 檜山は最後の仕上げにと、制服の袖を左手で自分の口を近づけ、歯で糸をプツッと切る。

 

「はいどうぞ・・・どうしたの?」

「…ハ」

「ハ?」

「ハレンチだーー!」

 

 檜山からひったくる様に制服を受け取ると、叫びながら教室を出ていく天之河。

 檜山が不思議そうな顔をしていると中村が檜山へと抱き着き

 

「ママ、サービスしすぎ」

「サービス?別にボタンを直してあげただけじゃない……あっ、最後の糸始末がいけなかったのかな?つい癖で口で切っちゃったけど、やっぱり汚いよね。天之河には悪い事したな」

「……ママのせいで勘違いしちゃう男子が多い気持ちが分かる気がするよえりりん」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 もしも檜山が女の子だったら…その2

 

 トータスでのステータスプレートイベント後、私が前世の職業‶現場監督”であることがわかり、教会の皆さんが各職業の衣装をくれた後の出来事。

 

 私は、上下が一緒になった薄いオレンジの作業着を渡され、みんなの前に出たんだけど、恵里達からは、可愛いなんて言ってもらったけど、他の女の子に比べたら可愛くはないわよね。

 雫みたいに、あんまり肌が出すぎているのもちょっと恥ずかしいけど、もうちょっと女の子らしい恰好が良かったな。

 

(初めての訓練で汗かいちゃな……汗拭こう)

 檜山はそう思い、おもむろに作業着のジッパーを降ろし、作業着を脱ぎだした。

 

「ふぅ…暑いなぁ」

 

 檜山は、作業着を上半分だけを脱ぎ、訓練場のベンチに座り、タオルで汗を拭く。

 その姿は、汗でぴっちりとシャツが体に引っ付き、少し下に着ている下着が透けて見えており、頬を赤らめ、息を切らしながら汗を拭くある意味艶めかしい女性の姿があった。

 クラスメイト男子諸君は、同い年には見えない、年上お姉さんの様に思っている檜山の姿に見惚れて、目が離せなくなっていた。

 その姿を見かけた中村と八重樫は、顔を真っ赤にして直ぐに檜山へと近づく。

 

「ママ!何してるの⁉」

「恵子!早く服を着なさい!」

 

 慌てた様子で、半脱ぎになっていた作業着を無理やり着せるが檜山は何やら不服そうにふたりを見つめている。

 

「なによ二人共?暑いから少し脱いだだけじゃない?裸になったわけでもないのに……暑い」

「何言ってるのママ!ママが汗っかきなのは知ってるけど今は男共の視姦に会いそうなんだよ!いや!会っているんだよ!」

「もう少しは自分の今の恰好を考えてよね!こら!男子達もこっち見るんじゃない!」

 

 そう矢継ぎ早に言い包められ、二人に汗を拭いて貰いながら訓練場を後にした。

 そこには、檜山がさっきまで汗を拭いていたタオルが一枚残されており、それを天之河が複雑そうな表情を浮かべ、悩ましそうに、うろうろしている姿が見られたとか見られなかったとか

 




 日常回と言いますか、詳しく書けなかった話とかを今後も書いていく予定です。
 特に、香織ちゃんパパに妊娠報告する話とか、香織ちゃんの子供と中村恵里ちゃんの子供の話は書きたいと思っている次第です。


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after story 白崎智一 人間万事塞翁が馬

本編終わってないのに、afterを書く暴挙
書くのが久しぶり過ぎて本編が全く上手く書けず、リハビリがてら思いついた話を書いている次第です。
とにかく書かないと、モチベとか、書き方が分からなくなりそうなんで、許してください何でもしますから。


 集団神隠し

 そんなオカルト事件に我が愛娘(天使)が巻き込まれ早1年

 この1年間私は――白崎智一の心が休まることはなかった。

 仕事をしていても

 食事をしていても

 寝ていても

 覚めても

 歯を磨いていても

 歩いていてもだ……

 

 光陰矢の如しとは言うが、娘が失踪してからというもの、まるで暗い終わりのないトンネルを歩き続けているかのような錯覚にさえ陥る程の時が流れるのが遅く感じる。

 

 警察に届を出したがなしのつぶて

 マスコミも騒ぎ立てはしたが、それで娘が見つかるならと思ったが、そんな喧噪も1ヶ月すれば急速に静まり

 初めから何もなかったかのように、話題にすら挙がらなくなった。 

 

 神隠し…

 神なんてモノが存在するならお願いだ!

 娘が無事に私たちの元に帰って来るなら私は何もいらない

 だから私の願いを叶えてくれ……

 どうか…どうか!私たちの娘を返してくれ!

 

 ピンポーン

 

 そんなある日、インターホンが鳴り、私が出ると妻が玄関に向かうが何か妙な胸騒ぎがしたので、私も一緒に行くとそこには――

 

「お父さん、お母さん……ただいま!」

「智一さん、薫子さん。お久しぶりです」

 

 娘と南雲ハジメ君が居た。

 私と妻は突然の事に、あっけに取られ呆然と立ちつくしてしまい、まさに夢現と言った状態になってしまった。

 これは私と妻が見ている都合の良い夢なのかと思いもした。

 が、徐々に熱を帯びてゆく胸にこれが現実であると自然と妻と私の口からこの言葉がこぼれた。

 

「「おかえり香織」」

 

 そして感極まった、妻は香織へと抱き着き、彼氏である南雲ハジメ君へと私は近づく。

 

 南雲ハジメ

 彼に会った時の事を私は今でも覚えている。

 そうあれは、娘から中学2年生の春ごろに紹介された男が、南雲ハジメ君だった。

 始めの印象は、頼りなさそうな少年と言う印象しかなく、こんな男に愛おしい娘を任せられるか!と思い邪険な態度で迎えたこともあったな。

 その度に娘と妻から、それ以上に邪険な態度であしらわれてしまったな。

 しかしそんな私に彼は、

「智一さん。僕は確かに頼りないと思います……でも僕は決して、いい加減な気持ちで香織さんとお付き合いしているわけではありません!僕は……香織さんがす…好きなんでしゅ!」

 そんな恥ずかしいセリフを噛みながら顔を真っ赤にしながら、私を真っ直ぐに見つめ、伝える彼を見て私は思ったんだ。

 彼がとても誠実な人なんだ。

 そして―――何より私と同じ位香織の事を愛している事が分かった。

 

 私も無事な二人を見て、目頭が熱くなるのを感じる。

 南雲君は、眼帯やら、義手、やけに黒っぽい恰好にただならぬ気配を感じるが、彼が持つ優しい人となりは変わっていないように感じる。

 私の天使も、やたらとゆったりとした格好だがケガはなさそうで安心する。

 見ない間に少しふくよかになったのようだが、無事に帰ってきたなら何の問題もない。

 

 

「南雲君久しぶりだな。色々と聞きたいことはあるが、おかえり」

「と…智一さん!今日は大事なお話があります!」

「どうしたんだ改まって?まあいい、積もる話もあるだろうから家に入りなさい。それよりも―――香織!よく無事だったな!」

 

 私は力の限り、香織へと抱き着く。

 あぁ、どんどん大きくなっていくが私の天使だ……

 すると、香織は私を手で押し、引きはがしていく。

 

「ダメお父さん、そんな力強く抱きしめないで」

「何故だ!お父さんはこんなにも香織を愛しているんだぞ⁈」

「私だってお父さんは好きだけど、お腹の子が潰れちゃう。ね?」

 

 そういうと、私の天使は微笑み、自分のお腹を嬉しそうに撫でている。

 太ったと思ったが、そういえば顔は全然変わっていないような……

 それにこの優しそうに表情を過去に見たことがあるなぁ……

 この表情は―――そうだ!薫子が妊娠した時だ!

 嬉しそうに自分のお腹を撫でて子守唄なんて歌ったりしてたなぁ……

 流石親子!こんなところまでそっくりだ!

 

 

 ―――――O・NA・KA・NO・KO?

 

 

 私の目の前に宇宙が広がる。

 果てしない宇宙

 その宇宙を感じていると、いつの間にか家の中へと戻っていた。

 テーブルを挟んで、南雲君と私の天使が並んで座っている。

 どうやら、薫子と話しているようだがまだ、私は宇宙から帰ってこれず、3人の会話を聞くことしか出来ずにいる。

 何やら、魔法とか、異世界とか、檜山とか聞こえてくるが

 ―――――O・NA・KA・NO・KO?とは一体……

 

 

「きっと二人が思っている以上に大変なのは分かっているわよね?」

「はい……でも香織となら、一緒に乗り越えていける。そう思っています」

「世間から変な目で見られるかもしれない」

「それでも、僕は香織を守り続けます!たとえどんな事が起ころうとも」

「お金の問題だってあるわ」

「香織や勿論、智一さん、薫子さんにも絶対に迷惑を掛けません」

「……母親としてはそれでも反対するべきなんでしょうね」

「お母さん……」

「でも、同じ女として好きな男性と一緒になるのがどれだけの幸せなのかも知っているつもりよ」

「お母さん!じゃあ!」

「南雲君……いえハジメ君。お転婆な娘ですが、どうかお願「待った!!」」

 

 薫子がいい感じに話を締めようとしたのを、どうにかこうにか宇宙から戻って、某裁判ゲームの様に待ったを掛ける。

 

「どうしたのあなた?」

「どうしたの?じゃなぁぁい⁉何がどうなっているんだぁ⁈」

「さっきハジメ君と香織が全部説明してくれたじゃない」

「いやいやいや!正直魔法とか、異世界とか色々あったけど、そんなことを差し置いて、愛娘が妊娠して帰ってきた事の方が衝撃的過ぎる事実なんですけどぉ⁉」

「無事に帰って来たからいいじゃない。香織が何事もなく「異議あり!!」」

「薫子さん!明らかに矛盾しています!!何事はあった!!!香織が妊娠してる!に・ん・し・ん!それに!娘が無事に帰ってきた事と、妊娠して帰って来た事じゃ、若干後者が上回るんだ!それに見た感じ妊娠3、4ヶ月とかじゃないんだろ⁉」

「それもさっき二人が言ってたじゃない。大体、8ヶ月ぐらいだって。しかも、ハジメ君が無理やり香織に迫ったんじゃなくて、二人の話を聞く限り、襲ったのは香織の方からだし、この辺りは私の血筋だからちょっとだけ責任を感じるわ」

「いえ薫子さん。それでも、男として責任は僕にあります。それに妊娠したから責任を感じたから香織と結婚したいわけではありません。僕は本当に心から香織を愛しています」

「そう言う問題じゃなぁぁい⁉」

 

 いい感じに南雲の野郎が、My,Angelの手を取り始めたので、テーブルを力の限り叩きそれを阻止しようとしたが、完全に二人の世界に入ったのか止めること叶わなかった……

 

「智一さん!香織――娘さんとの結婚を認めてください!」

「お前に義理父さんと呼ばれる筋合いはなぁぁい!!」

「まだ呼んでいません!」

「お父さん!お願い!」

「香織は少し黙っていなさい!男なら何故!避妊の一つや二つをしなかったんだ!それでも男か⁉」

「それには返す言葉もありません……」

「そんな無責任な男に可愛い愛娘を嫁がせるか!!」

「お父さん!ハジメ君は無責任なんかじゃない!それにさっき、お母さんが言ってくれたけど、私がハジメ君に無理やり迫ったの!無理やり中だ「Hooooooly shiiiiiit!!!!」」

 

 愛娘から、そんな事実聞きたくない!

 異世界とやらから、無事に帰ってきた事よりも、娘ができちゃった婚してきた方が1万倍衝撃だわ!!

 

「あなた達落ち着きなさい。一旦お茶でも飲んで、ね?」

 

 そう言われ、気を落ち着かせ、もう一度内容を噛みしめる飲み込む……事が出来ない!

 こうなったら、少しでも粗を探して結婚を諦めさせるしかない!

 

「さっき金の心配は無いと言っていたが、学生の分際でどうやって稼ぐつもりなんだ?」

「あなた、それもさっき言ってたじゃない。ハジメ君の義理父さんが会社を経営してて、そこで雇って貰うって、ちゃんと学業も疎かにせずにするって。

 何なら、トータスだったかしら?そこで友達の会社の手伝いをして稼いだそっちで使えるお金も十分に貯金してあるって」

「貯金って、100や200そこらじゃ直ぐに……」

「いえ、一応トータスには、檜山――友達に家も建ててもらってて、トータスでの貯金も1000万程あります」

 

 まさかの家持ち⁈

 他に何か無いか⁉結婚を諦めさせる粗、粗……

 

「…あなた?」

「なんだ!」

「あなたは、香織の帰る家を失くすつもりなの?」

「えっ……」

 

 突然の薫子の言葉にハッとしてしまう。

 

「きっとこのまま反対しても、香織は絶対に諦めないわよ。きっとこの家に帰れなくなってもね。そんなの嫌でしょあなた」

「……あぁ嫌だな」

「だったらせめて、香織がいつでも帰れる場所を失くさないのが私たちの役目よ。辛い事、悲しい事、嬉し事、そんな事があったらいつでも帰ってこれる場所を私たちが守ってあげましょ?」

「お母さん……ありがとう……」

「ほら簡単に泣かないの。香織もお母さんになるんだから。でも、いつでも帰って来なさい。ここは貴方の家なんだから」

 

 香織はうれし涙を流し、それを見た薫子は優しく香織を抱きしめ頭を撫でている。

 

「……ハジメ君」

「は…はい!」

「…………娘を泣かしたら殺す」

「…はい」

「悲しませても殺す。暴力を振るったら殺す。浮気したら殺す。孫の顔は必ず見せに来い」

「はい!」

「俺はお前が嫌いだ。きっと好きになる事はない……」

「っ……は「でも!」」

 

 納得はしていない

 理解したいとも思わない

 でも、娘の幸せを考えるのが親の役目なら、この言葉を言うしかないじゃないか

 こんなにも早くこの言葉を言う羽目になるとは、人生何が起こるか分からないな……

 

「どうか――――娘を頼む」

「……はい!」

「そして、一つだけお願いがある……

 

 

 

 

 一発殴らせろ!!」

 

 私は力の限り、ハジメ君の腹を殴ったのだが、まるで鉄の様な体に腕を痛めてしまった……

 いつかこいつを泣かせてやる!

 

 

 

 

 

 

 




 娘がハーレムの一員になって帰って来るのか
 妊娠して帰ってくるのかどっちが親的には嫌なんでしょうか?
 僕、気になります!


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after story ~6years after~

タイトル通り6年後の、子供たちのお話です。
子供の設定と、思いついたショートストーリーを書いています。



子供たちの設定

 

檜山恵介(ひやま けいすけ)

目元は檜山似でキリッとしており、髪質はドラクエ11の主人公並み一切のくせっ毛が無くサラサラ、見た目は中性的な美少年

天真爛漫を絵に描いたような性格

一人称は恵里の真似をして「僕」

イメージはブレイブルーのアマネニシキ

趣味はおかし作りと餌付け

 

魔法が使えるとかは無く、普通の子供

しかし、檜山(佐藤)からの天然の人たらしの才能と

恵里から「怪我無く、元気にすくすくと育って欲しい」という願望のおかげで魔法無効の体質

天然気質で、南雲家の娘さんのアプローチに気付かなかったり、ハジメと智一の圧にも気づかない(その度に、奥さんと娘(孫)から、般若を召喚され痛い目を見ている)

とんでも提案にも、新しい遊びとしか思っていないなど何処か抜けている。

この辺は年相応の少年

 

 

南雲葉織(なぐも はおり)

垂れ目で、ふわっふわのくせっ毛

髪色は雪のような白色、肩までのばしており、お下げ

イメージはデレマスのこずえちゃん

一人称は「はおり」

年齢とは不相応のスタイルをしており、6歳の時点でCカップだが背は低い

その事で同年代の男の子からからかわれるているがそのたびに恵介が助けてくれる。

恵介の事を「けーくん」と呼んでおり、小さい頃から一緒だったため幼馴染の関係

ある事件がきっかけで恵介の事を異性として好きになりべったり

家族と祖父、祖母、従姉妹たちから溺愛されており、事あるごとに着せ替え人形の様に服を着させられるため

自分では着れない服が相当数部屋にある。

おっとりとした性格で、動物に例えるとリス系の少女、争いごとは嫌い。

本とお菓子が好き。

家にある書斎でソファー座り、恵介にお菓子を食べさせてもらいながら物語の世界に没入するが趣味

魔法才が抜群にあり、両親を軽く一足飛びするぐらいには魔力量がある。

それに加えて、豊かな想像力のおかげで簡単に魔法を作成してしまう。

天職的に書くなら、ストーリーテラー

 

 

~事件~

 これは葉織と恵介が5歳の頃のお話。

 

 南雲葉織には幼馴染が居た。

 名を檜山恵介

 彼女自身彼のことは小さい頃から近くにいる子としか認識していなかったが、いつも明るく元気な恵介に自分には無い何かを感じていた。

 そんなある日事件が起きてしまう。

 葉織は幼いながら発育が他の子供に比べ良かったせいかその事をからかう男の子が絶えなかった。

 いつもなら、恵介がそんな男の子達と止め直ぐにその冷やかしはなくなるのだが、この日はタイミング悪く恵介が近くにおらず、そのからかいが長く続いてしまった。

 葉織の胸の事をからかった男の子達の事を嫌いだなぁと思い、「飛んでいけ」と念じてしまったのだ。

 その瞬間、彼女の目の前に幾何学模様の円陣が現れ、魔法が発動してしまい、男の子達にケガをさせてしまった。

 「まじょだー!」

 からかった男の子達は葉織を指差し怯えるように逃げていく。

 タイミング悪く、その時、葉織がはまっていた本の内容が、主人公の王子様が悪い魔女を退治する話だった。

 自分は悪い魔女だと思い込んでしまい、葉織は部屋に閉じこもってしまう。

 更に運が悪いことが重なり、葉織は無意識のうちに誰にも会いたくないと言う、葉織の欲求が部屋の扉に強力な結界を貼ってしまった。

 

「お願い葉織!部屋を開けて!」

「葉織は悪い魔女なんかじゃないよ」

 

 ハジメと香織がどんだけ説得しても出て来ない。

 べらぼうな魔力の結界に無理やり突入する訳にもいかず、ハジメ夫妻は檜山夫妻と清水夫妻と天之河夫妻を呼びどうにかしようと対策を考え、手をこまねいていた時だった。

 檜山達と一緒に来ていた恵介は、自分の作ったお菓子をいつも美味しいと食べてくれる葉織に会いたくて部屋の扉に手を掛ける。

 すると恵介の体質のおかげで、扉に触れると、簡単に扉を開いてしまい、驚いたハジメ達と部屋に居る葉織だったが、みんなをケガさせたくない葉織は泣きながら

 

「ちかくにこないで!はおりはわるいまじょなの……けーくんもけがさせちゃうの……きっと、ぱぱもままも、けーくんぱぱとままも、しーちゃんたちも……みんな、はおりをきらいになっちゃうの……そんなのはおりはいやぁ……だから……ちかくにきちゃだめぇ!」

 

 拒絶する葉織は、相手を動けなくする魔法を発動してしまい、恵介以外が動けなくしてしまうが、恵介本人はどこ吹く風と、自前の天然と人たらしを炸裂させ

 

「う~ん、葉織ちゃんが言ってることが僕よくわかんないや……じゃあ今日は遊ぼう!」

「え……」

「今日遊んで大丈夫だったら明日も遊ぼうよ葉織ちゃん。それがずっと続けばずっと遊べるじゃん!」

 

 僕、頭いい!と目をキラキラさせながら無邪気に微笑む恵介。

 

「でも……いつかけがさせちゃう……はおりはわるいまじょだから……いつか……」

「葉織ちゃんは悪い魔女じゃなくて、南雲葉織ちゃんって可愛い名前があるじゃん?」

「かわいい……の?」

「うん!それにいつかなんて分からない事言わないでよ!僕は今日!葉織ちゃんと遊びたいんだ!」

「けー…くん……」

「ほら、一緒にお菓子食べよう?今日は、お母さんとおばあちゃん達と一緒にアイスボックスクッキー作ったんだ。ほらあーん」

「……あーん」

「美味しい葉織ちゃん?」

「うん……うん……!」

「でしょ!お父さんと僕が一緒に作った秘密基地があるんだ!今日はそこで遊ぼう葉織ちゃん!」

 

 そう言って、恵介に葉織の手を引き部屋の外へ連れていく。

 今まで抵抗していた葉織はまるで憑き物が取れたように晴れやかに笑い恵介に手を引かれていく。

 その姿を見た、香織は

 

「恵介君……ありがとう……本当にありがとう……」

 

 涙を流しながらお礼を言い

 ハジメも、娘に近づく恵介をあまり快く思っていなかったが

 

「恵介君……これからも葉織と遊んでくれるか?」

 

 恵介に目線を合わせ伝えると、よくわかっていないようだが元気な笑顔を見せ

 

「うん!じゃあいってきます!」

 

 元気よく返事をした恵介は、楽しそうに葉織を連れて外へと向かった。

 

 

「ねぇけーくん?」

「ん?何、葉織ちゃん?」

「……好き♡(異性として)」

「(よくわからないけど、葉織ちゃん嬉しそうだからお礼を言っておこう)ありがとう葉織ちゃん!」

 

 この日を境に葉織ちゃんの恵介を狙う計画が始まったとか

 

 

~おままごと~

 ここは、南雲家の葉織の部屋

 本がたくさんあり、母親の友達の雫が作ってくれたぬいぐるみが並べられてある、葉織のお気に入りの部屋だ。

 

「今日は何して遊ぶ葉織ちゃん?」

 

 そして、そこには二人の少年と少女

 檜山恵介と南雲葉織がおり、今日の遊ぶ内容を話し合っている。

 

「きょうは、はおりおままごとがしたいな」

「えーおままごと?僕は、一緒に外で遊びたいな~」

 

 葉織の提案に恵介は渋い顔をする。

 子供と言っても、6歳の男の子。

 おままごとをするのはちょっと抵抗があるみたいだったが

 

「ふふふ…ただのおままごとじゃないんだよけーくん」

「どういうこと?」

「きょうあそぶのは…おとなのおままごとなんだよ」

「大人!楽しそうだね葉織ちゃん!」

 

 ‶大人”と言う、少年には甘美な響きに一気に目を輝かせる恵介に、嬉しそうに微笑む葉織。

 

「うん…きっとたのしいとおもうよ」

「ねぇねぇ!どうやるの、おとなのおままごとってどうやるの!」

「まずはね……」

 

 そう言って、葉織は自分の机の引き出しからあるピンク色の一枚の紙を取り出す。

 その紙には‶婚姻届”と書いてあるが、幼稚園から上がったばっかりの恵介にはほとんど読めず、頭に?を浮かべている。

 勿論、葉織はその紙の意味も、それが本物であることを知っている。

 因みに夫になる人の枠以外はすべて葉織が記入済みである。

 

「漢字がいっぱい書いてあるね葉織ちゃん……になる人?」

「けーくんは、ひだりのここになまえをかいてね」

「この紙ってなんなの葉織ちゃん?」

「これはね、おとなのおままごとにひつような、かみなの。このかみのひだりにかいたらおままごとのぱぱやくになるの。みぎがままやく」

「別に書かなくても良くいいんじゃないの?」

「あまいねけーくん。おとなっていろいろめんどくさいてつづきがいるんだよ?このめんどくささがおとなのかいだんなんだよ」

「大人の階段……大人って面倒くさいのかぁ」

「そうなんだよけーくん。さあひだりのところにかいてね」

 

 うん!と恵介は元気よく返事をして、枠の左側に名前をひらがなで記入しようとすると、それを葉織は止め

 

「まってけーくん。かんじ…かける?」

「う~ん……檜山の檜の字が難しくて書けないかも……」

「……はおりがおおきくかいてあげるから、それをみながらかいて」

 

 そう言うと、葉織は別の紙に大きく‶檜山恵介”と書き恵介に見せた。

 

「ありがとう葉織ちゃん!う~んしょ……出来た!」

 

 そう言うと、葉織は普段のおっとりとした動きから考えられないスピードで紙を取り、確認をし嬉しそうに微笑み、大事そうにその紙を鍵付きの引き出しに仕舞った。

 

「ありがとうけーくん。これでおとなのおままごとのじゅんびができたよ」

「おお~!でも…何するの?」

 

 今のところ、紙に名前を書いただけの恵介にとったら、この遊びの何が楽しいんだ?と言わんばかりに葉織を見つめる。

 

「けーくん。ふうふにひつようなものってなんだとおもう?」

「え~っと……お父さんとお母さんが持ってるもの……わかった!指輪だ!僕のお母さんがいっつも大切そうにしてるから!」

 

 恵介が自信満々に指輪と告げると、葉織は少し迷った様に考え始め

 

「それもせいかいかも……」

「やったぁ!」

「でもねけーくん。まだねかみをかいただけじゃ、ふうふじゃないからゆびわじゃないかな…」

「えぇ~絶対正解だと思ったのに~」

「せいかいはね……ぎしきだよ」

「儀式!かっこいい!」

 

 ‶儀式”という、少年の心に響くワードに恵介は、目をキラキラさせ葉織を見つめる。

 そのキラキラと恵介の瞳に葉織は嬉しくなり、次のステップへと進める。

 

「ねぇねぇ!葉織ちゃん!その儀式ってどうやるの!」

「えっとね……けーくん。はおりのべっどのうえにねて?」

「うん!」

 

 恵介は葉織に言われるがまま、ベッドの上にうつぶせに寝た。

 

「ちがう…からだはうえをむけるんだよ?」

「そうなのか!」

 

 そう言うと、恵介は仰向けに体制を変えると、恵介の股の上に葉織は跨ろうとした瞬間だった。

 

「待ちなさい!葉織!」

 

 突然の葉織の部屋の扉が開き、葉織の父親である、ハジメが突入してきた。

 その姿を見た、葉織は今までご機嫌さを一気になくし、ジト目で自分の父親を見つめる。

 

「あっ葉織ちゃんパパ。こんにちは!」

「ぱぱ……じゃま」

「ウグッ葉織ぃ……じゃなくて!恵介君もう5時になるから今日は帰りなさい。それから葉織!ちょっとお話があるんだけど!」

「はおりはべつにない」

「パパはあるの!」

 

 ハジメが矢継ぎ早に葉織を連れて部屋からでて、ハジメの書斎へと連れて行った。

 

「僕も帰ろう。…あれ?僕、いつもなら5時ちょっと前にアラームかけておくんだけど解除されてる?まあいいか」

 

 そう言うと、恵介は元気よくベッドから飛び上がり家路へ着く。

 

「結局、おとなのおままごとって何だったんだろう?……帰ったらお父さんとお母さんに聞いてみよう!」

 

 その夜、それを聞いた檜山大介は頭を抱え、

「恵介……次に葉織ちゃんから、おとなの○○で遊ぼうって言われたら、父さんか母さんに電話しなさい。お父さんとの約束だ」

 と言われ。

 

 檜山恵里は

「やっぱり、葉織ちゃんは香織ちゃんの子供だね」

 と何か納得したように頷いていたそうだ。




葉織ちゃんのベッドには、異性が座ると反応する魔法が仕掛けられています。
しーちゃんは、清水夫妻の略称で、しーちゃんが雫、しーくんが幸利
本編進めないとな……


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40話 告白

告白……かくしていた心の中を、打ち明けること




 

「ん……あ…れ?確か……」

 

 俺はベッドの上で目を覚ます。

 先程までの恵里との熱いSE……性行為のせいで体にけだるさが残っており、体を起こす気が起きない。

 しかし、自分でも少し引くぐらいにはダしたな……何がとは言わないが……

 

「ん……だいすけ……すき~」

「恵里……俺も好きだよ」

 

 俺に抱き着きながら可愛らしい寝言を言う恵里を愛おしく想い、俺も恵里の体を優しく抱きしめ彼女の頬にキスをし、心地よいまどろみに身を任せもう少し寝ようと

 

「起きたか檜山」

「ん?ああ清水か、すまないがもう少し寝かして…………しみず?」

 

 俺はゆっくりと顔を後ろに向けるとそこには、黒いコートに身を包み鎌を不良がバットを持つように肩に担いだ顔が骸骨の死神を背にした清水と

 

「大介……ちょぉぉっっとお・は・な・し、しましょうか?」

 

 顔を真っ赤にして、腕が六本あり、そのすべてに刀を構えた阿修羅を背にした八重樫

 その周りには、何故か泡吹いて倒れている天之河に、白﨑さんに謝っているハジメとそれを宥めている白﨑さんが居た。

 

「………はい」

 

 あ、死んだな

 

「最後のお願いだ……シャワーだけ浴びてきていいか?」

「―――許そう」

 

 俺の最後のお願いを聞いてくれた清水に会釈をし、ベットシーツをそっと恵里に掛け、裸を見せない様にして行こうとすると

 

「だいすけ……?シャワー行くなら僕も一緒に行く……」

 

 いつの間にか起きていた恵里が、寝ぼけまなこをこすりながら嬉しそうに俺に付いて来ようとすると、八重樫が恵里の肩を掴み、ニッコリと笑顔を見せられ

 

「恵里はダメ。こっちで待ってなさい?――ねっ?」

「雫ちゃん……怖いよぅ」

「誰のせいよ!」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 恵里にシャワーを浴びてもらっている間、俺は正座しながら、清水達に何があったかをかいつまんで話をしたんだが

 

「つまり、中村に、お前が持っていたという概念魔法と、その物語?って奴の力を使いこなし、檜山の呪いを解いたと」

「そうなんだよ!にわかに信じられないとは思うが、その不思議パワーのおかげで俺は助かったんだよ!ほら、清水達はその……物語さんに洗脳されてて命からがら何とかこの部屋まで逃げ出せたのはよかったんだが」

「それは…ごめんなさい大介」

「本当にごめん檜山…」

「いやいや!八重樫達が謝る事じゃないし、今こうして生きているからモーマンタイってやつだよ」

「それで、中村がその……よくエロ漫画に出てくる、妊娠しないと出れない部屋を造ったから俺たちが助けに来るまでその…ヤッていたと?」

「そ…その通りです清水……まじで扉がびくともしないし……俺の高速建造で扉を開けようとしても何も起きないし……」

「だったら、その部屋を造ったであろう、中村に頼めばよかっただろうが……」

「そうよ!なんでわざわざ!恵里の言うとおりにしちゃうのよ!こっちは香織と南雲と光輝で手一杯なのに!」

「だって……」

「だって?」

「あんなの断れるかよ!清水!ハジメ!天之河!聞いてくれ!」

 

 俺の突然の叫びに、みんなが驚いているがこうなったら自棄だ!

 

「俺だって断わろうとしたんだ!だって俺たち未成年で学生の身分!こんな状況で妊娠したってお互いに苦労するだけだって!

 だから、ちゃんとお互いに成人して、俺が就職して稼ぎが安定してからじゃないとって!

 でも……俺を押し倒している恵里を見ると……泣いてたんだよ!

 俺の顔にぽたぽたと恵里の涙が落ちてきて……恵里がしゃくり声で俺に言うんだよ!」

 

『だい……すけ…は、ぼく……が嫌いなの?』 

 

「そんなことない!俺だって恵里の事が大好きだ!そう言ったさ!そしたら―――」

 

『僕も大介が大好き……この世の何よりも』

 

「泣き顔なんだけど、頬を赤らめながら恍惚の表情を浮かべながら、俺の顔を優しく手で包んでキスをしてくるんだ!好きな子のそんな姿見たらたまらないだろ?清水達だって!そんな泣き顔で恍惚とした表情の彼女からのお願いを断れるか?我慢できるか?理性保てるか?八重樫に!白﨑さん!ユエさん!シアさん!にそんな表情浮かべられて!彼氏が無理やりひっぺはがせるか?」

「それは……」

「確かに……」

「わ……かる……」

「幸利も南雲も光輝も納得しないの!」

「恵里ちゃん流石ね……」

「でも白﨑さん!それでも!俺は一回断ったさ!一時の感情に身を任せてしまっては恵里を不幸にするかもしれないだろ!だから俺は心を鬼にして断ったさ!……そしたら!!」

 

『倫理的、社会的には大介が正しいとは僕も思うよ……でも!僕はこの感情を抑えられないよ!大介が好きで好きで好き堪らない!この感情を!』

『恵里……』

『この感情を一時の気の迷いだなんて思いたくない!こんなにも僕を愛してくれる大介を想うこの気持ちを嘘だなんて思いたくない!それとも大介は僕を情けで付き合ってくれてたの?』

『そ……そんなことは……ない!だからって恵里、それとこれとは……』

『僕の我が儘だから。大介のせいじゃないよ?どうしても大介との証が欲しい僕の我が儘……だからね?大介は僕のせいにすればいいよ。家族をつくりたい僕の我が儘』

『・・・ふ………な』

『え?』

『ふざけんな!』

 

「俺の中に覚悟が決まった瞬間だった!こんなにも恵里を不安にさせてしまって俺は彼氏として情けない!そう思ったら我慢していた糸が切れたと言うか、粉みじんになって消えたというか……」

「あの時の大介かっこよかったよ~」

 

 シャワーを浴び終えた恵里が俺の背中に抱きついてきたが、

 

「中村…幸せそうに檜山に抱き着いているとこ悪いが、お前からも概要魔法などの説明が欲しいんだが?」

「恵里頼めるかしら?」

「ぼ…俺からもお願いするよ。檜山の話を疑う訳じゃないけど、どうしても信じられないからさ」

「わ・・・らいば・・・るのき・・・みよ」

「ん~僕もよく分かっているわけじゃないんだけどちょっと持っててね」

 

 恵里が待っててと言って、少し間が空くと

 

 ―――中村恵里様……物語を呼ぶときに毎回あのドロドロとアイビーを使うのだけはおやめくださ・・・オロロロ

 

 この中性的な声は物語さんか。

 みんなも急に聞こえる声に驚きを隠せないでいるな。

 

「みんなが不思議がってるから説明してあげて?早くしないと―――ね?」

 

 ―――はいぃ!アイビーもドロドロ嫌ですぅ!

    わかりました!全身全霊を以て説明致します!それで物語に説明して欲しいことは何ですか皆様!

 

 みんなが物語さんに色々と質問を投げかけているが、彼女の事を考えないとな……“ナカムラエリ”

 別世界の恵里

 彼女は一体

 

 ドゴォォン!!

 

 すると突然、部屋の扉が吹き飛びそこには暗黒のオーラを纏ったナカムラエリが居た。

 

“やっと来たか”

 

 ハジメ達と俺が驚いているが恵里は何かを小さく呟きナカムラの目の前に立ち話し始めた。

 

「一応こう聞いておこうか。どうしたの“僕”?」

「“僕”は気づいていたんだろ?僕がここに来ることに」

「……その質問に対して僕はどう答えたらいいのかな?」

「とぼけなくていい。まさか“物語”の力が“僕”に渡るなんてのは予測できなかった。ましてや、こんな世界線初めてだ」

「へぇ~でもいいんじゃないの?大介は無事で後は、よくわからないけど神代魔法とやらが集まれば万事解決でしょ?」

「……お前たちはそうだね。それに僕の力よりきっと“僕”の方が強いんだよね」

「そうだね。因みに何かしようとしても無駄だよって事だけは伝えておくよ。僕も別世界の“僕”に何かしたくないしね」

「結局僕は消えるって事か」

「それが本来の“物語”らしいね。でもそれは大介次第かもね」

 

 消える?提案?俺次第?一体何のことだ?

 

「おい恵里にナカムラ一体何の話を?」

「大介……大介はこの“僕”をどうしたい?」

「えっ……どうするって……」

 

 恵里の突然の言葉に驚き、言い詰まってしまう。

 ナカムラは一度俯き、俺を見つめ、ゆっくりとすり寄って来る。

 その姿を見た、ハジメ達は俺の前へと立つ。

 そんなのを関係無いと言わないばかりに、ナカムラは話し始める。

 

「大介……僕を傍に置いて。体だけの関係だけでもいい。都合のいい女でいいから僕を愛して……ほら?僕の体はそこの“僕”と一緒だよ?それに、顔も声も一緒でしょ?」

「ナカムラ……」

「“エリ”って呼んでよ大介……“僕”と一緒で恵里って呼んでよ……狡い・・・狡いよ!」

 

 するとナカムラは泣きながら恵里を睨みつけ、慟哭に似た叫びを上げながら恵里に叫び続ける

 

「僕と、そこにいる“僕”は一体何が違うって言うの!声も体も全部一緒なのになんで僕を愛してくれないの……

 この“僕”は、アイツじゃなくて、大介が助けてくれて、それで大介は“僕”を本当に救ってくれて……

 “僕”の気持ちに応えてくれて……心も体も全部愛してもらえてる……そんな幸せそうな顔をしてて……そんなの狡いよ!ずるいよぉ……

 僕とお前に一体どんな違いがあるって言うんだよ!

 どうしてそんな素敵な人に愛してもらえたんだよ……

 ねえ教えてよ……一方通行の片想いじゃない、相思相愛ってどんな気持ちなの?

 嬉しいの?楽しいの?それとも苦しいの?

 好きな人とのキスってどんな気持ちなの……

 好きな人とのエッチってどんな気持ちなの……心も体も満たされるってどんな気持ちなの……

 教えてよ……どうしたら僕は愛してもらえたの……

 狡いよ…ずるいよ……」

 

 ナカムラは叫び疲れたのか、地面に座り込み泣き続けた。

 彼女の叫びが、部屋に木霊し続け、ハジメ達の警戒が無くなり、全員が顔を見合わせている。

 

「なあ恵里?」

「どうしたの大介?」

「ちょっと恵里とエリに聞いて欲しいことがあるんだけどいいか?」

「…うん。いいよ大介」

「ありがとう恵里」

 

 俺は彼女に近づき、目線を合わせる為、地面へと座る。

 

「なあエリ?」

「・・・なに?」

「俺は―――恵里達が思うような大それた男じゃない。それこそ恵里に近づいた理由は全部俺の為なんだ」

「……え?」

「大介どういう意味?」

 

 俺のこの発言に、ここに居る全員がどういう事だと言わないばかりに俺を見てくる。

 恵里も俺の言葉に少し驚き、俺とエリに近づき俺の傍に座った。

 

「俺は知ってたんだ。この世界が物語って事をな」

「どういう事?」

「エリが言ってただろ。この世界が物語だって。それを俺もそれを知ってたんだ。まあ自分が“檜山”になったって気付いたのは、恵里を助けた後だったがな」

「あの雨の日の事?」

 

 恵里の言葉に頷き、俺は恵里達に向かって話し始めた俺が思っていたこと、どんな考えでみんなに近づいたことを――

 

「ああ。そして、俺は自分がこの物語に於ける立ち位置がわかったんだ。アンチキャラである事や、物語の途中で死ぬこととかな

 俺の知ってる物語だと、恵里に利用されるから、恵里と仲良くしようって考えたんだ。

 そうすれば、俺を利用するなんてこともないって思ったんだ。

 そんな中、恵里が告白してきてくれて嬉しかった。

 打算があったとはいえ、恵里の事をいつの間にか好きになっていったんだ。

 でも、こんな打算まみれの俺が恵里を好きになっていいのかって言う気持ちもあったんだ。

 他の人に対してもそうさ。

 ハジメと白﨑さんの恋を応援したのも

 八重樫、清水を助けたのも

 天之河に付き合っていたのも

 クラス委員長になったのも

 全部自分の為だったんだ。

 俺が殺されない為に行動したんだ。

 そんな、打算にまみれの人間が――(檜山大介)って人間なんだ

 みんなは俺の事を褒めてくれたりするけどそんな大それた人間じゃない」

 

 俺の告白を聞いた、恵里達は少し驚いたようだが、俺は気にせず続ける。

 

「エリが俺の事を好きに思ってくれているのは嬉しい。

 でも、俺に二人の女性を平等に愛するとかそんな器用な事は出来ない。

 きっと……いや、絶対どっちも傷つけてしまうと思う。

 だから―――ナカムラエリの気持ちには応えられない」

 

 




 作中の檜山(佐藤)が心の内に秘めていた事です。
 以前いただいた、この作品のキャラ達が原作キャラに出会ったらと頂いたのですがとりあえず思いついたものだけ少しずつ書いていきたいと思っています。

 >檜山(佐藤)と檜山、中村達
檜山    「眼鏡で地味女の中村と付き合うなんて俺には無理だぜ
       天職“現場監督”とかださぁ(笑)
       本当に俺かよ。まじ、萎えるわ」

檜山(佐藤)(原作のハジメ達に出会ったら間違って殺されるかもしれない!
       どうにかして、俺は人畜無害である事を伝えないと……
       こんなところにも死亡フラグが建つとは流石はアンチキャラ……)

 どんなに自分が馬鹿にされるようと気にしないのが檜山(佐藤)
 でもそんな態度にムカついて変な事やりそうなのが原作檜山

原作中村  「えっ……流石に檜山…君と付き合うとか僕は無理かも」

今作中村  「運命の人に出会えてないとか、僕可哀想。大介ー早く帰ろ」        

 基本的にお互いに干渉し合わない感じ、向こうが邪魔しないなら基本無視する感じ。
 でも、もし計画のじゃまをするならヤバそう。
 


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41話 恵里とエリ

 遅くなって申し訳ございません。
 全ての責任は、オクトラ2です。
 めっちゃ面白かったのがいけません。
 ちゃんとトロコンしていますので悔いはありません。
 CV石田さんのイケメン異端審問官カッコイイ……これが仕事なもんで
 狩人少女獣人カワイイ……がおー!
 王道を征く侍が国を変える物語イイ、声もカッコイイ、設定もストライクでした……この……力は…
 自己肯定感爆上げしてくれる薬師お姉さんイイ……悪い子に付けるお薬は無いの
 色気抜群の盗賊お姉ちゃんイイ……盗ませて貰うよ
 漢気MAX商人兄貴カッコイイ……ど根性ー!
 訛りが出ちゃう桃系踊り子カワイイ……これがスターだべ!
 復讐に燃えて、本人も萌える学者先生イイ……これが最終解答だ!
 バツとして、ありふれのヴァイスを箱買いしたので許してください
 


「―――ナカムラエリの気持ちには応えられない」

 

 俺が独白の様な告白がこの部屋にさらなる沈黙をもたらした。

 するとさっきまで泣いていたエリが顔を上げ、少しだけ表情が明るくし俺を見つめてきた。

 

「“僕”も狡いって思ったけど、大介も狡いんだね。正直ちょっと舐めてたかも」

「やっぱそう思うよな……でもさっき言ったのは事実なんだ。幻滅しただろ?」

 

 すると、恵里が俺の腕に優しく抱き着き嬉しそうに笑っていた。

 

「幻滅なんてするわけないじゃん大介。それに知らなかったの“僕”?大介はねとっても狡い男なんだよ」

 

 俺の心配を他所に、ここに居る全員が俺の傍に近づき、好き勝手に言い始めた。

 

「そうだな。檜山が物語の事を知っている事に驚きはしたけど、今の言葉に別に幻滅したりしないよ」

「ハジメ……」

 

 ハジメは驚きはしたが幻滅はしないと言い、俺の肩を優しく叩いている。

 

「檜山が狡い奴だなんて事は、クラス全員の周知の事実だぞ。クラス内の常識だな」

「えっ?そうなのか清水」

「知らない方が驚きだよ」

 

 清水は、今さらそんなこと言ってどうするんだと言ってハジメと反対側の肩を叩いた。

 

「そうよ大介。私を助けたのに打算があったとしても、それで私は本当に助けられたの。それはどんな事があっても変える事の出来ない事実よ」

「それに私が妊娠してるって言った時も、クラスのみんなが怒っている中、檜山君だけは私とこの子の為にすぐ椅子をすぐ作ってくれたり、雫ちゃんと協力してクッションとかも作ってくれたじゃない」

「それはほら、女性には優しくするのは当然のことだって父さんからの教えとか、前世の姉と妹からの家訓と言うか」

「そういう所は打算じゃない大介が持ってる優しさよ」

「二人共……」

 

 八重樫と白﨑さんから褒められつい照れ臭くなっていると

 

「檜山よ。お前は以前俺に正義について教えてくれたことがあっただろ?あれが打算「そうだっけ?」……グスン」

「嘘嘘冗談だよ」

「嘘って2回言ったって事は本当に忘れて……」

「冗談って言っただろうが天之河」

 

 俺が少し不貞腐れる天之河にデコピンをしてやると、少し機嫌が良くなる。

 

「本当に打算的な男なら、ナカムラエリの告白を受け入れる筈じゃないか。この世界の神の力を持った女性からの好意なんだぞ?

 もしかしたら、彼女が無理やり何かしてくる可能性もあったはずだ。それでもお前は断ったんだ。

 お前の女神を裏切らない為、自分の筋を通すために、自らの危険を顧みらずにだ。そこには打算なんてなかったはずだ。それにさっきの告白はナカムラエリを諦めさせるためだったんだろ?」

 

 天之河の言葉にこの場に居る全員が頷いている。

 

「……やっぱ露骨過ぎたかな?」

「どんなに鈍感な奴でも気付くぞ我がライバルよ」

「言うなよ……恥ずかしいだろ……」

 

 すると恵里は俺の左手を握って来た。

 

「恵里……その……なんだ……」

「聞いて大介。僕だってね――」

 

 俺の思惑をいとも簡単にばらされ、妙な気恥ずかしさに苛まれて、言葉に詰まっていると恵里は俺に語ってくれた。

 恵里がどんな思いを抱いて俺に接してくれたのかをまくしたてて来た――

 

「僕は、大介の事が好きなんだ。

 この世の何よりも

 大介がどう思って僕に近づいたかなんて関係無いよ

 だって、命を助けてくれたどころか、僕の心までをも救ってくれたんだよ?

 こんなの好きにならない方が無理だよ

 大介の好きな所を上げてって言われたら枚挙にいとまがないって言うのかな?

 強いてあげろって言われても困っちゃうんだよね

 色々ありすぎて困るって言うか、

 ブラックコーヒーが苦手で、ミルクと砂糖をたっぷり入れないと飲めなくて、中学生の時に一回、食後にブラックコーヒー出したら、無理して飲んだのかプルプルしながら飲ん出くれた時には、もうキュンキュンしちゃったなぁ~

 僕と一緒に遊びに行く時に、絶対に僕を車道側を歩かせないよね

 あれをサラッとやるとこがズルい

 目つきが鋭い事を気にして、鏡の前で目尻を弄っているところとか可愛すぎるんだよね

 あ!もちろん大介の顔も、もちろん大好きだよ

 初めに会った時は、ちょっと恐いなんて思った僕に文句言ってやりたいよ

 だって、人を見た目で判断するなんておかしいよね?

 大介が僕の心を消えない炎を灯ちゃったんだよ

 自分でも怖いぐらい、大介の事をどんどん好きになっていくんだ!

 身が焦がれていくんだぁ……

 因みに、嫌いな所はみんなに優しい所!

 少しは、彼女の僕の身にもなって欲しいよ……

 えっとね他には…えっ?みんなが見てる前でって?関係ないよ!

 大体大介は無防備すぎるんだよ

 小学生の時に雫ちゃんにも惚れてたの知らなかったし

 何なら、同じクラスの子に告白されかけてたのも僕が先にオコトワリしなかったらって考えたらゾッとしちゃうよ

 あの日も言ったけど、大介は僕以外に優し過ぎるんだよ!

 えっと他には…他には…」

 

「恵里落ち着いて」

「恵里ちゃんどうどう」

 

 一気に俺にマシンガンの如く、言葉を並べて来た恵里を八重樫と白崎さんが宥めている。

 

「物語パワーだの、概念魔法だの色々と疑問に思っていたが中村は中村だな」

「でも可愛いだろ清水?」

「あはは……檜山も中村さんにぞっこんだもんね。……これで世界を自由に変えちゃうような事しちゃうと大変な事になるんじゃないのかな……

「そこは……運命の友の女神《なかむら》を信じるしかないだろうな……」

 

 ハジメと天之河が何かぶつぶつ言ってるが、どうしたんだ?

 まあいいか。

 俺は、ポカンと口を開けたエリにもう一度向かい合う。

 

「おいエリ、そのなんだ……俺が言うのもなんだが、そんな悲観するもんじゃない。さっきも言ったが俺なんてただのアンチキャラ。ハーレムなんて無理なんだ」

 

 そう言うと俺は、両手の平をエリに見せる。

 傷ついて、トータスにきてギルドを立ち上げて仕事をこなしていた時に出来た肉刺が潰れて少しボコボコの手の平を見せる。

 

「俺の手は、見ての通り全然大きくないんだ。その上傷だらけだろ?こんな小さな手でなんでもかんでもは救えない。俺に出来るのは自分にとって大切な“(もの)”を大切にこぼれないようにするだけなんだよ。まあ、こんな偉そうに言っているが、ここの中じゃ一番弱いんだけどな」

 

 俺が少々自虐気味に言うと、ここに居る全員がいやいや、手を顔の前で振り何言ってるんだよと言わんとしている。

 すると恵里は頬を膨らませ、俺の胸へと抱き着き

 

「大介は弱くない。ステータスとか魔法なんて関係無いよ。大介はーー僕の愛する大介は世界で一番カッコいい!最高の彼氏なんだ!」

 

「恵里……ありがとう」

 

 心が温まる言葉に、俺は恵里の頭を撫で、抱きしめながら伝える。

 

「恵里は、俺の愛する恵里は、俺には勿体無いぐらいの可愛くて、世界一の彼女だよ」

 

 つい惚気てしまったな……ハジメ達が少し微笑ましく俺達を見てきたが気にしてやるもんか!

 

「やっぱり狡いな。・・・・・・あっ。これが失恋なのか……?なんだろう……とっても悲しくて悔しい……好きな人に振られた感情なんだ……それなのに心が……あっ……」

 

 すると、エリの体が急に光り始めた。

 

「ど、どうしたんだ?!」

 

「不思議、失恋って僕の中に“未練”を残すと思っていたんだけど逆に無くなったみたい」

 

「未練?」

 

「うん……僕をこの世に残し続けた、“欲”かな?」

 

「物語が言ってた魔法の根源」

 

「きっと僕は大介の事を好きなんかじゃなかったんだ……僕は勝ちたかったんだ……。僕は奪いたかったんだ……。僕は“中村恵里()”が羨ましかったんだ……」

 

 エリは、恵里に向かい右目から一筋の涙を流しながら告げる。

 エリの体は更に光り始める。

 

「もう直ぐ消えるのかな……大介」

 

「……なんだ」

 

 俺は、エリに近づき正面から向かい合う。

 

「気を付けておいてね」

 

「気を付ける?」

 

「うん。アイツが言って言っていたんだけど、良いニュース、悪いニュースをみんなに伝えるって」

 

「なんだそれ?」

 

 ハジメ達も何だ?と聞き返すが

 

「ごめん。僕もアイツから体を乗っ取る前の事は記憶はあやふやだから何の事かはわからないんだ……えい!」

 

 エリは俺に謝ると、俺の首に抱き着き口と口を合わせて来た。

 ここに居る全員が「あっ!」と声を上げたと思うと同時に、俺から離れると更に光が増したが、恵里に向かって自分の下まぶたを左手の人差し指で引き下げ、可愛らしく舌を出し

 

「んあ……“僕”!べぇーっだ!」

 

 そして、部屋を閃光が包むとナカムラエリは綺麗に消えていた。

 

「……なんだろうな……自分から振っておいてあれだが……あの子も幸せになる方法があったのかな……なあみんな?それに良いニュースとか悪いニュースって一体……?」

 

 俺が、ハジメ達に振り返りながら聞くがみんな同じ方向に指さし、そんなことよりって感じで俺を見つめる。

 

「だいすけ?」

 

 ゾワッ!!

 俺の背筋に悪寒が走った瞬間だった。

 突然に押し倒された。

 

「のわっ!いってぇ……って恵里⁉どうしたんだ急に⁉」

「ぼくのまえでうわきした……」

「えっ……?」

「うわがきしないと……だいすけがよごれちゃう……うわがきしないと……」

「ちょっと待て!……おいみんな見てないで助けてくれ!」

 

 恵里がハイライトの消えた目で俺を見つめる。

 そのどす黒いビー玉のような瞳に吸い込まれそうになる感覚に陥り、ハジメ達に助けを求めるが

 

「あっ無理。ごめんね檜山」

「浮気許しちゃダメだよ恵里ちゃん!」

「ごめん私には止められそうにないから……」

「危ない人には近づかないのが俺のルールなもんで」

「うっ…持病の“友の睦み愛を見ると泡を吹いてしまう病(トラウマ)”が……!」

 

 全員が諦めたムードになり

 そぞろに部屋から出ていき

 代表するように、清水が何もない右手の手首を腕時計を見るそぶりをし

 

「外の魔物は俺達が何とかしておくから……1時間ぐらいでいいか中村?」

 

「……わかった」

 

「諦めないでくれ⁉みんなぁ!」

 

 俺の悲痛な叫びと共に部屋の扉が閉められてしまった……

 

『恵里!ちょっとまっ……あ………』

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    ……あはッ 

 

  最後の死亡フラグだよ……

 

      ……檜山君♪




原作キャラとの邂逅

ハジカオの場合
原作ハジメ「はあ?香織を妊娠させている?そんな無責任な事してるのか俺は……」

自作ハジメ「えっハーレム?嫁?ユエ、シア、ティオ、八重樫さん、愛子先生etc……なんか好き勝手言われているけど、そっちの僕の方が無責任だよな?せっかくこの後、檜山と一緒に香織との新築の打合せがあるのに」

原作ハジメ「無責任ってアイツらが勝手に……何!そっちだとあれが生きてるのか!」

自作ハジメ「あれじゃなくて檜山な。生きているって言うか、親友だし」

原作ハジメ「……なあ、そっちのユエとはその……どうなんだ?まさかユエも妊娠させているのか?異種族間だから色々とあるかもしれんが」

自作ハジメ「えっ?僕は香織一筋だし。それにユエは天之河の恋人だし」

原作ハジメ「……えっ?」

自作ハジメ「あっ天之河はシアも恋人にしてたか。そういう意味じゃ君と一緒だね」

原作ハジメ「…………何だこのもやもやっていうか、妙な気持ち?」


 香織との妊娠の事実より、檜山が生きていていい奴だったり、天之河がユエとシアとハーレム築いていることの方が衝撃を受けている感じ。
 原作ハジメはナチュラルに人を見下していそうなのと、自分にぞっこん嫁ーズが天之河にNTR?されていると思い、ある種のBSS味を体験してしまい、何とも言えない気持ちになっています。
 自作ハジメは、原作ハジメの多すぎるハーレムに驚きはするが羨ましいとは微塵も思って無い感じです。
 逆に、『夜の方とかどうやって行くつもりなんだろう?僕が絶倫なのは香織のアレのおかげだったし……』とか、『嫁ーズ分の稼ぎとかどうするつもりなんだろう?』とか色々疑問が尽きない感じ
 

原作香織「えっハジメ君の子供を妊娠?ハジメ君はハーレム作ってない?檜山君が恋を応援してくれた?色々驚くところが……ちょっと待って!つまりそっちの私は既に初体験終えてるの⁉」

自作香織「一番に驚くのそこなの?……あっ動いた♪」優しい笑顔を浮かべながら自分のお腹を優しく撫でている。

原作香織「本当!少しだけ触っていい?」

自作香織「もちろん♪」


 原作香織は、ハーレムの一員でも良いと思っていたし、流石に妊娠は早すぎるなんて思っていたが、しゅっごい幸せそうな自作作品の自分を見て、内心めっちゃ羨ましい。何なら他の嫁ーズも羨ましがっていた。
 この晩に、般若とか龍を携えた嫁ーズの皆さんが原作ハジメの寝込みを襲ったとか襲わなかったとか……
 自作香織『妻 の 余 裕』どやぁ~
 


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42話 さらば死亡フラグ

更新に1か月かかってない……
よし、早期更新できたな!


 酷い目に遭った……

 

「大丈夫か檜山?」

「中村はやけにツヤツヤしてるが……」

性搾取(エナジードレイン)……」

「微妙に上手い例えはやめてくれ天之河……」

 

 外の魔物をキッチリと片付けて来てくれたみんなが戻ってきて、

 今、一つの部屋に戻ってきている。

 

「恵里、あんまり大介を困らせるんじゃないわよ。大介だってわざとじゃないんだから。大体、恵里と香織は、ちょっと猪突猛進過ぎるところが―――」

「だって……僕の目の前で浮気した大介が悪いんもん……」

「まあまあ、二人とも落ち着いて。……えっと……恵里ちゃん」

「どうしたの香織ちゃん?」

「……私とママ友になってくれる?」

「勿論だよ!」

「ありがとう!勿論、雫ちゃんもね!」

「えぇ……これって私がおかしいのかしら?」

 

 女子達はワイワイキャッキャしているが、俺はエリのあの言葉が頭の中で反芻している。

 

 良いニュースと悪いニュース……

 

 一体これ以上俺に何かが起こるって言うのか?

 なんだろう……すっごい嫌な予感がする……

 俺の心配をよそに清水が、

 

「それより、早いとこ皆の所に戻るか今後の動きの事もあるしな」

「そうだね。中村さんが概念魔法を手にしているなら、僕たちの旅も少しは楽になるだろうし」

「その辺りも円卓会議でもするか」

「円卓にする必要あるのか天之河?」

 

『あーあーマイクテスマイクテス』

 

 突然の声に、ここに居る全員が驚き、俺は恵里を守る様に前に立った。

 

『声はどうかな聞こえる?ふふふ♪次は―――』

 

 パチンと指を鳴らしたような音がこだましたのと同時だった。

 部屋の床に幾何学模様が現れた。

 これってもしかして⁉

 驚くのも束の間、突然光が増し、光が収まると帝城の前にワープさせられており、そこには愛子先生達を含む全員が揃ったクラスメイトや、ユエさん達、さらにはバイアスやリリアーナさん達もが一堂に揃っていた。

 

 全員がざわざわと、騒ぎ立てる中突然空に、青白く薄ぼけた人影が現れた―――同時に、ハジメ達がその人影に向かい攻撃を始め空中で爆音と煙が立ち込めた。

 

「やったのか!?」

 

 坂上がそこに居る全員がの代弁をするかのように叫ぶ。

 

『そして誰かが“やったか?!”的な事を言ったのかな?だめだよ~その言葉は“やってない”の証明だよ?』

 

 その叫び虚しく、空中に現れた人影―――“白いコート:エヒト”は何事もなかったの様に告げる。

 

『どうかな僕の新魔法“幻視魔法:電影虚像”君達には、オスカー君が残した映像をイメージしてもらった方が早いかな。後ざわざわうるさいから、今から喋るのは檜山君だけね?』

 

 もう一度、指を鳴らした音が響くと、俺の周りから音が消えた同時にその人影が薄くなった。

 恵里が、俺に抱き着き、その人影向かい何かを唱えたようだったが何も起こらない。

 

『ありゃ、思いのほか魔力使った……まあいっか。因みに恵里ちゃん僕に何をしたって無駄だよ。僕には君の…いや、君達の概念魔法や神代魔法は一切効かないから無駄だよ』

 

「エヒト……何が目的なんだ?」

 

『目的?あれ?エリちゃんに聞かなかった?良いニュースと悪いニュースの話。』

 

「やっぱそれだよな。それになんで恵里の魔法が効かないんだ」

 

『僕はただの“思念”なのさ。思念が映像化してるの。わかりやすく言うなら僕は幽霊みたいなものなの。僕は今、君に伝えたい事があるだけの“欲と魔力”の塊なの。欲に概念だの、神代なんてなのは無駄なの』

 

「何だよそれ……チートだな」

 

『えっそれを君達……今は檜山君だけか……が言うのかい?いい冗談だね。まあ僕から言わせれば君達の魔法は薄っぺら過ぎてあくびが出ちゃうわけ。そんな与えられて数か月の魔法に僕の数年…いや数百年にも及ぶ研究が負ける方が難しい訳』

 

「薄い?でも、本来の物語だとかなり凄い魔法のはずじゃ」

 

『そう。薄っぺらなの。だって考えてもみてよ、イメージと理解……そして欲。この世界の魔法の3つの根源。その根源を研究に研究を重ねた僕から言わせれば、赤子どころか、まだ胎児にもなってないの、卵子と精子が出会ったぐらいなの。だいたい魔法にはこれより前に、高度な術式計算が基礎に必要なわけ。簡単に言えば四則演算が大元に居るの。それを君達はこの世界の僕――“エヒト”に呼ばれたときに、頭の中に電卓と言うか、エクセルの様な自動計算プログラムが組み込まれた状態だったわけ。それで簡単に術式計算を出来るようにしてもらってたから、君達が最初に魔法が使えたのよ。そもそも君達せいで、魔法の研究が遅くなったんだよ!こんな単純な答えを得るのに、何百年かかった事か……あれ?それは別の件だっけ?それは確か何で詠唱がいるのかの答えを求めていた時だっけ?違うな、これは答えは出たはずだけど、3秒で忘れちゃったはずだ。なんか凄くどうでもいい答えだったはず。それとも、ステータスによる数値差による魔法威力と、効果範囲の実験だっけ?あれは簡単に求められたよな……あれか!因数分解はなんで分解するのかってやつだ!だって分解せずに自然のままにしておかないとかわいそうだろってやつだ!』

 

「……恵里大丈夫か?苦しいとかないか?……もっとギュッって抱きしめて?わかった。何かあったらすぐに言え――今は声が聞こえないから、俺の服を引っ張ってく……っちょ!キスは恥ずかしいからやめてくれ……」

 

 何かをぶつぶつ言い始めたから、俺は恵里を抱きしめ、害が及ばないように問いかけていると

 

『ああごめんごめん。ついつい饒舌になっちゃった。良いニュースと悪いニュースだったよね。どっちから聞きたい?』

 

「……悪いニュースから」

 

『OK。でもごめんね、良いニュースから言わないとわからないだろうから、良いニュースからね』

 

「だったら聞くなよな」

 

『アハハ!気にしない方が長生きのコツだよ?じゃあ良いニュースから“この世界は物語から解放された”だ』

 

「物語からの解放?」

 

『そう。本来ならこの世界は物語によって支配され、決められた未来に向かう様になっていた。それから解放された。これから、この世界は、自由に未来を創造できる。中村恵里ちゃんのおかげでね。僕の予定では、僕が檜山君から概念魔法を奪ってから、物語を意のままに操ってし世界を面白おかしく実験したかったんだよね~』

 

「それは悪いニュースじゃないのか?」

 

『違うよ~ここからが悪いニュースさ』

 

 すると、空に映像が現れた。

 そこには、魔族が軍を率いる様にある場所に向かい行軍を進めている様子映し出された。

 

「あれは?!」

 

『悪いニュースとは、僕が神様たちを消したせいでこの世界の秩序にねじれが生じてしまったんだよね?』

 

「ねじれ?」

 

『うん。本来の物語では、どういう存在であれ、トータスにおける根幹の存在なのさ。存在する以上、理由があるのさ。それが例えば、物語を進めるキャラクターであったり、檜山君が本来であれば、それを僕が消した時に、どうやら人の深層心理からもグラデーションの様に、消えて行っちゃったみたいでね』

 

「それが一体なんなんだよ。そもそも、本来の物語だろうと最後にはハジメに倒されるはずじゃ」

 

『いやいや、なんでもタイミングって大事なんだよ。今回は僕が無理矢理消しちゃったもんだから、思いのほかねじれが酷いみたいでね』

 

「酷いだと?」

 

『簡単に言うと、バイアス君がオネェなのってそのねじれのせいなんだよね』

 

「まじかよ⁉」

 

『うん。まあバイアス君に関しては、ねじれがいい方に働いたみたいだけど、このねじれが今後どういう風に働くはわからないのが現状なんだよね。もしかしたらこの世界そのものが消える可能性も否定できないんだよね?』

 

 そんな……

 すると、もう一つ映像を映し出す画面が現れ、そこには教会の人達が魔族と同じように同じ場所に向かう様子が映し出されていた。

 

「これは一体……まさか!」

 

 俺の脳内に最悪の事態が思い描かれた。

 本来の物語と同じように、全面戦争が今から勃発するのか⁉

 しかも、バイアスの話じゃ俺を和睦の使者にするとか言ってたから、このまま巻き込まれていきなりの死亡とかか⁉

 映し出された映像では、ついに行軍していた両者が相まみえていた。

 音が消えた世界では、まるで一触即発の雰囲気を醸し出している。

 行軍が止まり、その先頭が一歩踏み出した。

 

『そして、檜山君にはもっと良いニュースがあるんだ♪』

 

「なに?それよりも、恵里にみんなを早く安全な所に――」

 

『消えたなら、新しく生めばいい。空席が出来たらな、誰かが座ればいい。神様が必要なら、誰かが神になればいい』

 

「お前何を言っているんだ……」

 

『因みに、檜山君。君はもし神様になったら、何を願う?』

 

「はぁ?」

 

『直感で答えてみて?凄く大事な事なんだ』

 

「神様って……世界平和とかか?」

 

『もっと具体的に』

 

「えっと……戦争が無く、くだらないいがみ合いも無くて、人種や種族で人を差別しなくて、誰もが子供を自分の子供の様に愛してくれる、子供に未来があるとか?」

 

『なるほど君らしいね』

 

 そんなやり取りしていたら、突然に世界に音が戻り、映像から、その先頭が、背中から棒のような物を相手に向かい差し向けた。

 戦争開始の軍配かと思い、身構えた瞬間だった

 

 “我らが聖父―――和睦の神 檜山大介”

 

 その軍配かと思ったが、どうやら応援旗の様で、その旗にはでかでか俺の名前が書いてある――――――へっ?

 俺が疑問に思っていると、魔族と人間族の全員が声を揃え叫び始めた。

 

「「我々は、新たな神!檜山大聖父に誓い!戦争が無くし!くだらないいがみ合いも無く!人種や種族で人を差別しなく!誰もが子供を自分の子供の様に愛しする世界を創造してく為に!ここに、檜山神の名の下に!和睦調停を結ぶ事を誓う!」」

 

 その宣誓が終わると同時に地面が揺れるほどの、映像に映る人たちや、帝国の人たちの歓声が上がった。

 

「ようやく和睦の誓いが終わったな!」

「これで、戦争が終わるんだな!今日は記念日だ!」

「これも檜山様のおかげね」

「どうやら、檜山様と恵里様にはお子様も授かったとか!」

「こりゃお祝いだな!国を挙げてお祝いしないとな!」

 

 様々な声が聞こえる……え?えっ?神?俺?

 すると、愛子先生達が俺の元に駆け寄り

 

「檜山君!どういう事ですか⁉中村さんに子供ってどういう事ですか!私だってまだ経験が……じゃなくて!先生に分かるように説明しなさい!中村さんもです!何嬉しそう照れながら、檜山君に抱き着いているのですか⁉お腹の子は女の子ですか、それとも男の子ですか!ハジメ君達も何か知って……白崎さん?そのお腹………えっ?どういう事ですか檜山君!!!先生に分かるように説明してください!!」

「いや、愛子先生これは……檜山なんて説明したらいいのかなぁ……」

「お前だけはハジメと白崎とは違うはずだろ⁉」

「我慢出来なくったのね……」

 

 肩を掴まれ、ぐわんぐわんと揺すられ、愛子先生に詰め寄られ、ハジメにどうしようと言われ、他のクラスメイト達からも言い寄られ―――

 すると、俺達の前に青白いエヒトが現れた。

 

『もっといいニュースはね、なんと!エヒトとかの空いた神様の席に君の存在を入れてあげたんだ!』

 

「はぁ!!何勝手にやってんだよ!」

 

『神様って言っても、君が何かする必要も無いしね♪』

 

「そう言うことじゃねぇ!」

 

『いや~ここに来て、僕がトータス全域に君の噂を広げていたのがここに来て功を奏したよ♪そのおかげで、存在の書き換えは時間もかからなかったし、無理矢理書き換えで、更なるねじれを生まずに済んだしね♪』

 

「だからって何で俺なんだよ!ハジメでも、清水でも、なんなら天之河でもいいじゃねぇか!」

 

『だって僕は君推しだからだよ。推しの良さは伝えたいじゃん。広めたいじゃん!ねっ恵里ちゃん?』

 

「大介は僕のだよ!」

 

『大丈夫恵里ちゃん。全員には、檜山君は恵里ちゃんの旦那様で、仲睦まじい様子に感涙するから。推しに彼女が居ても何とも思わないようにしたんだ』

 

「……それでも嫌だなぁ……」

 

『大丈夫だよ。それも日本に帰れれば気にする必要も無くなるしさっきも言ったけど、檜山君は何もしなくていいんだからさ?』

 

「だったらまだいいかな?」

 

 そんなやり取りをしていると、エヒトの映像がぶれ始めた。

 

『あら?もう限界かな。まあ、檜山君のさっき言った願いを完璧じゃないけど、出来る限り成し遂げれるように努力はしていくと思うよ?まあ、本当は平和なんてあまりに実現不可能なのは無理だからあくまで努力をお互いにし続けるだけだと思うけどね♪』

 

「…………」

 

『ね!良いニュースだったでしょ♪じゃあねバイバイ檜山君!いや―――檜山大聖父!僕は君の活躍を心の底から願っているよ!』

 

 エヒトは楽しそうに言いながら消えていった。

 

「――――――ふざけんじゃねぇーーーーーー!!!!!!」

 

 

 

 

 




次回最終回です。

檜山の望む世界の元ネタは鷹の爪団の総統の世界征服理念です。


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最終話:ありふれた職業で世界最強に転生したと思ったら檜山だった件

ティアキンクリアした、勇者(ボンバーマン)です。
なので初投稿です。
しかし、最終話作るのがこんなに難しいとは思いませんでした。
皆さんも気を付けてね


 あの後の話をしておこうな

 エヒトが俺を勝手に、神様ポジションに据えちゃってからというもの、人からは崇められたり、教会の人からは、神託を授けろだの、護神像を作らせてくれだの大変だった……

 しかし、エヒトが言っていたように、俺が神になって望む世界実現に向けて、亜人、魔人、人族間の法整備や、領土整備などに注力している。

 バイアスも、リリアーナさんも、今後は無益に奪い合い事をやめ、平和を目指し頑張って行くと自信を持って答えてくれた。

 

 俺達はと言うと、後はハジメ達が神代魔法を集め、それを概念魔法にして、なんちゃらかんちゃらすればいいと思っていたんだが

 

「ちょっと待ってね。……物語に頼んで、道中や迷宮内でも、守って貰うようにたのでおいたから安心して行って来たらいいよ!」

 

 恵里が物語さんに頼んで、ハジメ達の旅をサポートするように頼んだが、清水と八重樫から

 

 恵里が一緒に旅に来れば、もっと楽になるのでは?

 

 と聞かれると、いい笑顔で

 

「えっ?大介が行かないのに僕が行くわけないじゃん」

 

 と答え、でもと付け加え

 

「大丈夫だよ。物語には、次の迷宮で全部、神代魔法が揃う様にしてもらったり、帰るには必要な物を教えて貰うようにしたから!」

 

 みんなが呆けるのをよそに、なんとまあご都合主義展開になっていくな……

 物語さんの、特別パワーのチート付きで、ハジメ達の旅は更にヌルゲーが加速したが、皆の安全に比べたら、ご都合主義だろうと関係ないか。

 お腹の子の事もあるので、白崎さんは、クラスメイト達と一緒に残ることにした。

 ハジメに、チート技能“聖母の寵愛”を発動するために、旅立つ前に一晩中部屋で……これ以上は、やめておこう。

 そう言えば、その日の夜にティオさんからこんな事を聞かれたんだよな。

 

***

「ちょっと良いかヒヤマよ」

 

「ティオさん?どうしたんですか」

 

「いやなに、お主に聞いておきたい事があっての」

 

「聞きたい事?」

 

「ああ―――中村恵里についてじゃ」

 

「恵里について?」

 

「お主は、中村恵里についてどう思っておるのか?」

 

「どうって……大切な人ですが?」

 

「……聞き方を変えよう。ヒヤマは、今後もそう言え続けられるか。中村恵里は自分の大切な人じゃと」

 

「えっと……質問の意図がよくわからないんですが?」

 

「今の中村恵里には、恐ろしい力を持っておる。それこそ、世界を変えることすら出来る力がな」

 

「物語だったり、概念魔法の事ですか?」

 

「ああ、その力を使えば、きっとお主を意のまま操る事すら可能であろうな」

 

「……」

 

「中村恵里はまさに“諸刃の剣”、お主の対応一つで、周りどころかお主を傷つける恐れのある切れ味抜群の剣。お主はそれでも、中村恵里の傍に居続けられると言えるのか?どんな事があろうと中村恵里を好きであり続けられるかのう」

 

「好きであり続けられるかですか……それはちょっと違いますね」

 

「違うじゃと?」

 

「ええ。俺は恵里が好きで、恵里が俺の事を好きと言ってくれることが嬉しいんです。だからこそ―――恵里が好きであり続けられるような、俺でありたいんです」

 

「好きであり続けてもうらうか。それはとても苦労な事だと思うがのう」

 

「それは苦労じゃなくて、俺がやりたい事だから、楽しい事なんですよ。言っときますけど、俺ってティオさんが思ってるより恵里の事が大好きなんですよ」

 

「ほぅ」

 

「せっかく両想いなんですから、俺はこの幸せを離さない為ならどんなことでも頑張れると確信していますよ。せっかく死亡フラグを切り抜けてきたんです、今後は恵里との幸せな生活を続けても罰は当たらないだろうし、悪くもないでしょ?」

 

「・・・・・・ははははは!」

 

「そんな面白い事言いましたか?」

 

「いやいや。お主らは似た者同士じゃと思っただけじゃ」

 

「似た者同士?」

 

「ああ。実は同じ様な質問を中村恵里にもしたんじゃ」

 

「恵里にも」

 

「アヤツはこう言っておったよ」

 

―――

『大介を好きであり続けられるかですか?』

 

『ああ、お主を力を使えば、ヒヤマを操り人形の様にすることすらできるじゃろう。そんなヒヤマに飽きたら捨てるような事をしないと言えるかのう?』

 

『……あはははは!何、バカなこといってるのティオちゃん』

 

『ちゃん……まあよいか、バカな事とは?』

 

『僕はね大介が大大大好きなのは当たり前なんだけど―――僕自身の事も大好きなんだ』

 

『自分が好き?』

 

『うん。大介が好きって言ってくれる僕が大好きなんだ。だからこそ、僕は大介に好きであり続けて貰うために頑張るんだ。それに僕は操り人形が欲しいんじゃなくて、思いがけない所で僕のして欲しい事をくれる大介が大好きなんだ!』

 

『思いがけない所で?』

 

『例えば――――――――――――って所だったり他には――――――――――――ここもカッコよくてね!――――――他には――――』

 

『わかったわ!もうよいわ』

 

『ええ~まだ語り足りないよ……こんなにも僕の心を掴んだ大介から離れるなんて考えられないんだよね。これから大介と―――この子と一緒に生きる将来が楽しみで仕方がないんだよ』

 

『……』

 

『それに、大介の意思で選ばれる僕でありたいんだよね。それに信じているんだ。大介は何があっても僕を好きでいてくれるって!』

 

***

「―――とな」

 

(……本当に君を好きになってよかったよ)

 

「こんなにもお似合いな、馬鹿ップルだったとはのう」

 

「バカとは失礼な」

 

「まあよいわ。妾の心配し過ぎだっただけじゃったんだからのう。全く羨ましいのう」

 

「あれ?ティオさんは天之河のハーレムの一員じゃ?」

 

「ハーレム?なんの事じゃ、それにアヤツは無い。天之河はドMでのう、妾はもっとダンディーで、責めてくれる殿方がタイプでの」

 

「おっふ」

 

 そんなこんなで、白崎さんから家の希望を聞いて、何種類か高速建造で作ったり

 愛子先生をクラスメイト全員で慰めたり

 ギルドの引継ぎに追われたり

 色々な事に追われているうちに、ハジメ達の旅も終わりそして――――――

 

 

~~~~~~~~~~~~~~

「ほぉ~」

 

 部屋の片隅に、白いふわふわのくせっ毛のたれ目の本を読んでいる少女と、サラサラの肩まで伸びた髪の目つきのキリッとした中性的な少年の二人が居る。

 

「どうしたの葉織ちゃん?」

 

「けーくん。あのね、このほんよんでたの」

 

「……これおとーさんの本だ。何が書いてあるの葉織ちゃん?」

 

「えっとねぇ~とーたすってところのはなしとか、はおりのぱぱとままのこととか、しーちゃんたちのこともかいてあるねほかには、あーくんとゆーちゃん、うさちゃんのことも……」

 

「こ~ら~。何してるのかな二人とも」

 

「お母さん!」

「けーくんまま」

 

 本に夢中になってる二人に、可愛らしく優しい声を掛け抱きかかえるように抱き着く、セミロングでメガネを掛けた少したれ目の華やかな美人―――檜山恵里と

 

「そう言えば日記付けてたな俺。これって確か高校生の時のやつか」

 

 葉織から、優しく本取り上げページをペラペラと捲る、短く揃えられた髪に鋭い目つきの顔のバランスの取れた男前―――檜山大介が三人の後ろから現れた。

 

「けーくんぱぱ。こんにちは」

「お父さんごめんなさい、部屋に勝手に入って……」

「あ……ごめんなさい」

 

 父親に謝る息子とその友達の頭を優しく撫で

 

「気にするな恵介、葉織ちゃん。別に見られて困るものじゃないしな」

 

「ほらほら、おやつにプリンをつくったから二人とも手を洗っておいで」

 

 おやつと言う言葉を聞くと、二人は嬉しそうに部屋を飛び出して行った。

 

「それにしても、あれから6年か……時間が経つのは早いよな、恵里」

 

「そうねあなた……ねぇ?」

 

「どうした?」

 

「今幸せ?」

 

「…当たり前のこと聞くなよな」

 

 そう言うと、大介は恵里を抱き寄せ、キスをする。

 

「幸せだよ恵里。これからも家族みんなで幸せになろうな」

 

「うん勿論だよ!僕も幸せだよ大介!」

 

 二人は、嬉しそうにお互いの幸せを確認し合っている。

 まさかその姿を、息子と親友の娘に見られているとは知らない事だ。

 そして大介は、手にした日記の最後のページにこう記した。

 

 

 

 おしまい

 




あとがき
この度は、ありふれた職業で世界最強に転生したと思ったら檜山だった件を最後まで見ていただき、本当にありがとうございました。
たくさんの感想、評価ありがとうございました。
自分が見て来た、ありふれのSS作者様からの感想があったりと、初めは何かの冗談だと思ったぐらいでした(笑)
今思うと、もっとトータス組との絡みを増やしたり、自作奈落組の話の掘り下げであったりともっと詳しく書くべきだったなと思っています。
裏話として、一番最初に考えていた転生檜山は、アンチキャラを自覚して、カッコいいアンチキャラを目指し、見事なザマァを目指す話を考えていたりしていました。
小悪党組を、清水と遠藤に変えて、中村恵里と八重樫雫のハーレムにして、アンチキャラを目指すが、何故かみんなに愛されるキャラにする予定だったりしていました。
一応、今後の予定では、何本か番外編を投稿する予定です。
本当にこの作品を読んで頂きありがとうございました。
129名と多くの方たちに評価していただきありがとうございました。
そして、456もの感想をくださりありがとうございました。
中には、返信が出来なかった感想もあり申し訳ございませんでした。
ですが、全ての感想には目を通して、めっちゃニヤニヤして
作者は変態ですので、どんなご感想でも、めっちゃ嬉しいと喜んでおりました。
UA 264,662とありがとうございました。
では、また別の作品でお会いすることがありましたらよろしくお願いいたします。


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番外編 四方山話

色々考えていたお話です。
短いお話ですが、今後もこんな感じのショートストーリーを投稿予定です。
活動報告を投稿いたしまして、リクエスト企画を考え中なので目を通して頂けたら幸いです。



 あったかもしれない世界

 ヤンデレ彼女(なかむらえり)に好かれ過ぎて今日も寝れない・・・

~~~

 夜のとばりが降りた深夜

 俺には悩みがあるんだ……

  

「だ~いすけ♡」

 

 甘ったるく優しく声色なのだが、心臓を下から優しく撫でられるような感覚になる声が俺を呼ぶ。

 

「ん……え、えりか?」

 

 最初の3日間ぐらいは、急に出て来た恵里に驚いたはしたが、慣れとは恐ろしいものだ。

 恵里は、寝ている俺に近づくと、俺の首元に顔を寄せ、スーッと深く息を吸い込んだ。

 

「良かった……大介のいい匂いだ」

 

 うっとりとした表情を浮かべ、俺へと抱き着いてくる。

 

「なんだそんなことか……」

 

「むー。だって心配なんだもん、大介この前浮気したから」

 

 浮気―――俺は恵里の言う通り一時の感情に負け、彼女を裏切るような事をしてしまった……

 

「それについては申し開きが無いな……本当にごめん」

 

「そうだよ!だから……どうしても不安になっちゃうんだ……」

 

 そう言うと、俯き悲しそうな声を出す恵里を抱き寄せ、頭を撫でる。

 

「本当にごめんな恵里。恵里が居るのに俺は俺は……っ!」

 

 自分が本当に情けなくなる。

 恵里を悲しませるような事をしてしまった自分に嫌悪感を抱き、その時の事を思い出すと、足が痛くなる。

 

「大介が反省しているなら僕はいいよ。でも……どうしても不安になるんだ、大介がまた浮気をするんじゃないのかって……」

 

「大丈夫だよ恵里。もう、恵里を悲しませるようなことをしないって誓うよ。それに最近は外にも出てないしな。まあ、俺の言葉に信用何て出来ないかもしれないだろうがな」

 

 恵里の頭を撫で、安心させようとする。

 恵里は嬉しそうに、俺に強く抱き着いていると、安心してくれたのかそのまま眠りについた様で、気持ちよさそうな寝息を立て始めた。

 俺も、寝ようと思ったが、その前にトイレに行こうと思い、恵里を起こさない様に、そっとベットから降りようとするとバランスを崩し、床に倒れてしまった。

 どうにも、慣れないな……

 大分慣れてきたはずなんだが

 俺が、こんな事でこけてしまう自分に情けなくなる。

 そんな事を考えていると、こけた音に恵里を起こしてしまった。

 

「ごめんな恵里、起こしちゃって」

 

「ううんいいんだよ大介。トイレなら僕が手伝うよ」

 

「大丈夫だって、トイレぐらい一人で行けるように…………」

 

「もう無理しちゃダメだよ?だって――――――――――――」

 

 そう言うと恵里は、こけた俺を見ながら優しそうに告げる。

 

 

 

 

 

 

 

「右足無いんだからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 そうこれは俺の罰

 恵里を裏切った俺への罰

 恵里が居るのに浮気(AVを見た)俺への罰

 

 恵里がそう言っていたんだから間違いないはずだ

 これは俺の為なんだって、恵里が言っていたから間違いはずだ。

 

 だって俺にはもう…………

 

「本当にごめんな恵里……」

 

「もう気にしないで大介。……でも、もう僕を裏切っちゃダメだよ?」

 

「当たり前だ。だって俺にはもう―――――――――恵里しかいないんだから」

 

 こうして二人の夜は更けていく

 

 

 誰にも知られないまま………

 

 二人だけの世界を創っていく。

 

 

 

 

「あはっ……大介。ずっと好きだよ♡」

 

 




今までと違うテイストですが、うまく表現できているでしょうか?
少しでも、ゾッとする表現が出来ていたらいいのですが。


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四方山話 その2

考えていたお話その2です。



~血の味~

 

「ちょっといいヒヤマ?」

 

 ハジメ達の旅も終わりが見え、みんなの家でゆっくりくつろいでいると、ユエさんが俺に話しかけて来た。

 

「いいけどどうしたんだ?部屋に問題でもあったか?」

 

「ううん。部屋は凄く良い感じ、見たことない家具や寝具だけど、凄く使いやすいよ」

 

 部屋のデザインや家具、寝具はガッツリ現代日本風にしたけど案外好評のようだな。

 因みに、イ草に似たいい匂いの植物があったから畳を作ってみたんだが、ティオさんから大好評で大分量産したんだよな。

 

「良かった、お姫様を敷布団に寝せるのはどうかと思ったけど気に入ってもらえたらよかった」

 

「あれはいいね。ベッドと違って大きさが固定で、一人分の大きさだけど、一緒に寝ている人に横に近づけたり、あえて一人分で一緒に寝たりできて凄くいい。地味にベッドから落ちる事も無いのもいい」

 

 おそらく一緒に寝ているのは天之河の事を言っているのだろうな。

 外国人が日本文化に感動しているみたいな感じなのだろうか?

 

「それはそうとお願いがあるんだった。ヒヤマ、ちょっと血を吸わせて欲しいんだ」

 

「血?」

 

「そう、血」

 

「どうしてまた俺の血なんか?」

 

「どうしても気になったんだ。コウキに飲ませて貰って凄くおいしくて、それが概念魔法とか、一度死んで、転生した人の血なんてめったにお目にかかれない」

 

 心なしか目をキラキラさせて俺を深紅の瞳が見つめてくる。

 

「だから、恵里がいないこのタイミングで言ってきた訳か」

 

「うん。エリがスズ達と買い物に行っている今がチャンス」

 

「まあ少しぐらいならいいけど、天之河と違ってマズくても文句言わないでくれよ?」

 

「それは分からない」

 

「調子がいいな。そういや天之河の血ってどんな味なんだ?」

 

「上質な酸味とさわやかな甘み、コクがあるんだけど、くどくなく後味スッキリ」

 

 なんかカルピスみたいな味なんだな。

 

「本当はハジメ達のも飲みたかったんだけど、カオリ達に止められて……」

 

「あぁ~」

 

 この辺は原作と違う所か

 

「だからいい?」

 

 上目遣いで俺におねだりしてくるこの感じは恵里とも違う何処かで―――ねぇ!いいでしょお兄ちゃん♪

 あぁ、この感じ前世の妹だ。

 懐かしく感じてしまうな……元気にやってりゃいいけど

 

「どうしたのヒヤマ?」

 

「いや何でもない、恵里が帰って来るまでに終わらせてくれよ?」

 

 俺はそう言って、左腕の裾をまくり、ユエさんへと差し出す。

 

「ありがとうヒヤマ。それじゃ――」

 

 カプッ

 

 その音と共にチクリと痛みを感じると、腕に血を抜かれる感覚が来る。

 

 ―――――

 ――――

 ―――

 ――

 ―

 

 あれ長くね?

 

「ユエさん?」

 

「…………」

 

「もしもーし」

 

「…………」

 

「どうしたユエさん!」

 

「…………」

 

「な、なんか心なしかクラクラしてきたんだけど。ユエさーん!」

 

「…………」

 

 俺が叫んで呼んでも、肩を揺すっても全く返事がない。

 ヤバい本当にクラクラしてきた……

 すると扉が勢いよく開き恵里がこちらに向かって走ってきた。

 

「ちょっと!ユエちゃん!大介に何してるの!」

 

 買い物を終えたのか、恵里達が帰って来て、その後ろにはハジメ達も居た。

 

「大介大丈夫?!」

 

「恵里か。大丈―――――水持ってきてくれ」

 

 献血の後も、水を飲めって行くからな……

 恵里が水を持ってきてくれ、それを飲みながら、何があったか伝えると

 

「ごめんヒヤマ……」

 

「何があったんだユエさん?」

 

「そうだぞユエ何があったんだ?……それよりも我がライバルもすまなかった。無事か?」

 

「何とかな」

 

「本当にごめんなさい……」

 

「俺の血がマズすぎて気を失ったとか?」

 

「違う!」

 

 血の感想を聞こうとすると、ユエさんが大声で叫んだ。

 

「違うの……なんて例えたらいいのかな……味は普通なの。でも、飲む止め時分からないって言うのかな……例えるなら、何日も水を飲んでなく砂漠をさまよい続け、ようやく目の前にオアシスを見つけたの。しかもそのオアシスの水はキンキンに冷えていて、その水がヒヤマの血……違う。こんなチープなモノじゃない。もっといい例えが―――空気……そう!空気!そこにあるのが当たり前なんだけど、無いと死んでしまう存在、空気!美味しいとか不味いとかそんなのを超越した存在なんだ!しかもただの空気じゃない。森林の澄んだ穢れの無い空気。体いっぱいに取り入れたいモノ。止め時が分からないなんて当然!だって体を維持するのに必要な存在!当たり前過ぎて見落としてしまう存在。それがヒヤマの血の味なんだ!止めれ無いのは当たり前。だって空気だから―――」

 

 もの凄い勢いで俺の血の味を語ってくれるユエさんにみんなが引いてこの場はお開きになったんだが―――

 その夜

 

 俺が布団で寝ていると、俺の眼前に恵里の可愛らしい顔がある。

 

「えっと……どうしたんだ恵里?」

 

「―――浮気」

 

「へっ?」

 

「大介はだれのかれし」

 

 あかん。段々目のハイライトが消えていってる。

 

「今日の事は……」

 

「こたえて。大介はだれのかれし?」

 

「中村恵里の彼氏です」

 

「そうだよね……おしおき……」

 

 ちょっとこの流れって!

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

「ふふふふ♪ユエちゃんに上げたぐらい、僕も大介から吸い取ってあ・げ・る♡」

 

「あ――――――」

 

 その次の日、やたらテカテカした恵里と心なしかげっそりした檜山の姿があったそうだ。

 

 




3D2作成に行き詰まりこっちを先に投稿です。
谷口鈴のおさげが上手く表現できないねん
ユエさんは意外に上手く出来たのになぁ……
男性も作成出来るんですが、試しに檜山を作成したら笑いが止まらないぐらい似てなく逆に楽しいです。


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