お姉ちゃんのお姉ちゃんによるお姉ちゃんの為だけのヒーローになる、です (珱瑠 耀)
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渡我反榴:オリジン

見切り発車です。
トガちゃん推しなので書きました。

ちなみにオリ主の変わった敬語はデフォルトです
やべー性癖を持ってるオリ主が無理な方は閲覧をお控え下さい(次のお話くらいからやべー)。


前世で好きな漫画の、好きなキャラは「敵」サイドの子だった。

 

 

血液愛好(ヘマトフィリア)で血を吸った人に変身して、ストレートな愛情と刃物で場を掻き乱した子。

 

 

笑い方や価値観が気持ち悪いと親に叱責されて自分を閉じ込めたけど、爆発して相手を切りつけてしまい警察に追われてしまう事になった子。

 

 

世間一般的には歪んだその感情を隠す事なく、むしろ堂々としているあの子。

 

 

私はその子の価値観を小さな頃から否定された事が気に入らなかった。

 

いや、こんな良すぎる作品を作られた作者様に向かってそんな事を言うのもあれだけどもさ。

 

普通にしなさいって、綺麗に笑いなさいって言われ続けて摩耗していく心に、彼女は実際耐えられなかった。

 

そんな押し付けを言われ続ければ、殺人犯になって歪んでしまうのは解っていただろうに。

 

そんなことが無ければ、もっと彼女は良い方向に生きられた筈なのに。

 

敵にならないで幸せになって欲しかった、なんて思いが湧いては沈む。

 

 

 

―――あぁ、いっその事。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()―――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……ハルちゃん」

 

「どうしたのですか、お姉ちゃん」

 

パジャマを纏った二人の少女が、ベッドに寝転び向かい合う。

 

物欲しそうにこちらを見つめる()に、私は至極普通そうに返事をした。

 

 

 

―――突然だけど、私は転生した。

 

世界人口の8割が"個性"と言う特異的な能力を持つこの世界。

 

始まりは中国で光る赤子が産まれた事らしいが、それはそれで。

 

私には正直、漫画の中でしか聞いたことが無いような荒唐無稽なものだった。

 

ていうか、()()()()()()()()()()()

 

残りの2割が"無個性"という落ちこぼれの中、憧れたプロヒーローのようになりたいと仲間と切磋琢磨していくお話。

 

私はこの世界に産まれる前から、この世界の事を知っていた。

 

 

そう、ヒロアカだ。

 

 

よりにもよって彼等の存在する世界に転生とは、なんの因果かどんな林檎か。

 

そんな私は小さい時に今世最大のくしゃみをした衝撃で、前世と個性の2つを思い出した。

 

今世の名前と前世の名前、そして数十年という途方も無い記憶の濁流に2日ほど寝込みながらだが。

 

 

 

そして、反榴(はる)という名前。

 

今世の両親に付けられたこの名前は、自分の個性とも相まって割と気に入っている。

 

その両親とは、最近は殆ど話していないが。

 

「……ハルちゃん、どうしたの?」

 

と、ちょっと回想に耽っていたら姉が再度声を掛けた。

 

その少し下がった目尻に悶えそうなのを必死に我慢して、私は姉に悟られない様に返答する。

 

「なんでもないのですよ、お姉ちゃん。所で、今日も()()ですか?」

 

―――飲む、という言葉を聞いた途端に姉の閉じ掛けていた目がぱっと開き、

 

「……いいんですか?」

 

という呟きを零す。

 

とても小さくて切れてしまいそうな声だったが、私はそれを聞き逃さなかった。

 

衝動を抑えようと苦い顔をする姉に私は慈愛でたっぷりの笑顔を向ける。

 

 

「良いのですよ」

 

 

うずうず、と布団の中で手が動く。

 

 

「私の身体は、」

 

 

チキチキ、という金属音に加えてか細いのに荒い呼吸。

 

 

「お姉ちゃんだけのモノなのです」

 

 

―――その言葉を最後に、姉と私は獣になった。




言っておきますがR-18ではありません。
そういったお話はまた別に書きますが(皆さんからの需要があればですが)。


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渡我反榴:オリジン 2

百合大好物です。

同士よ来たれ(迫真)。


獣、とは言うがそこまで過激なものでもない。

 

ただ―――

 

「は、むっ……!―――っ、はっ、ふっ―――」

 

「っぎ―――ぁっ、っ()……」

 

お姉ちゃんが一心不乱に、傷から滴る私の血を吸っているだけだ。

 

許可してすぐに私の腕に跳びついた姉がカッターで私の手首を切り、ぷっくりと出てくる血を痣が出来るくらいに吸う。

 

ぢゅうぢゅうと痣が出来そうなくらいに吸い付く唇に一瞬だけ顔を顰めたが、それもすぐに霧散した。

 

傍から見たら、血液愛好(ヘマトフィリア)が自分の妹の血を飲むかなり危ない光景に見えるだろう。

 

―――そんな行為を一切の抵抗をせずに受け入れる私は姉よりも危ないのかもしれないが。

 

舌を這わせ、腕を掴みはするが先程よりもゆったりと行為を続ける姉の頬を、私は何と無しに撫でる。

 

「んむ、んふふ……」

 

「ん、ぃ"っ」

 

擽ったそうに顔を捩り、照れ隠しか腕を噛まれた。

 

そこに家族だからという容赦は何処にも無く、まるで固い豚肉を噛み千切らんという位の強さが含まれている。

 

 

―――痛い。

 

 

―――刺さるように痛い。

 

 

―――傷が熱を持って、ジンジンと痛む。

 

 

だが、それすらも()()()()()と感じられる。

 

 

―――こんな私は、きっと苦痛愛好(アルゴフィリア)だ。

 

 

姉からの痛み()すらも快感へと変える被虐性欲(マゾヒスト)

 

 

「んぁ、む―――っ」

 

「っ……ふ、ぅ―――ぁぎっ」

 

はふ、という吐息の後に強い痛覚。

 

ぷちりと掌の皮が無理矢理剥がされ、そこから溢れる血が姉の口内へと入る。

 

 

―――あぁ、痛い、痛い、気持ち良い、もっとして欲しい。

 

 

目を細め、荒い鼻息のままで舌を傷へと押し付ける姉を見て、狂おしい程の愛おしさと手から伝わる痛みにお腹の奥が疼く。

 

「っ、あぁ……お姉ちゃん、おいしいです?」

 

普段は細められている自分の目を姉の為()()に開き、その深い琥珀色の瞳いっぱいに彼女を映す。

 

「んっ、んく……えへへ、おいしいです」

 

その質問に少し慌ててコクリと喉を鳴らす姉。

 

割と多い量を口に含んで味わっていたのだろう、吐いた息は鉄の匂いがした。

 

「……っ」

 

 

―――その鉄は私の身体から出たもの()で。

 

 

―――それ(私の血)は、先程まで姉が赤子の様にこくこくと飲んでいた。

 

 

―――さらに考えてしまえば、今姉の中には少なくない量であろう私の血が入っている事に気が付く。

 

 

「……ふふ、にへへ」

 

姉の身体の中を現在進行系で汚していると理解したとき、私の頬はだらしなく緩み熱を持つ。

 

それに併せて息も荒くなり、頭がぼうっとして、ぞくぞくと背中が震えた。

 

姉の顔も笑みが深まっている辺り、今の私は()()がするのだろう。

 

「お姉ちゃん……こっちも、です」

 

爆発しそうな本能を押し流してもらう様に、私はいそいそと首元に貼られたガーゼの下を露出させる。

 

姉がごくりと喉を鳴らすそこは、今までに何百回と同じ事をされていて跡の絶えない噛み跡。

 

私達の最初の()で、永遠の証でもある首元の傷。

 

跡が消えて欲しくない、と願うのは私のちいさな我儘。

 

だから毎日の様に絆創膏で誤魔化し、そして毎日の様にそこをどろどろに汚してもらうのだ。

 

「よ、い……しょ」

 

肘を支点に少し起き上がった姉の、すぐ真下に位置するようにごろりと転がる。

 

そのまま姉の頬を両手で挟むと、先程噛み千切られた右手から微かな痛みが。

 

「ん……」

 

ぴく、と反応した私に姉は極めて優しく笑い、上から覆い被さる。

 

ぎしりとベッドが軋み、至近距離で姉の明るい琥珀色と私の暗い琥珀色の視線が交わった。

 

その瞳には、私しか居なくて。

 

私の瞳にも、姉しか居なくて。

 

その事にお互いどうしようもない幸福感を感じ、だんだんと上気した吐息が絡んでいく。

 

 

 

―――そして。

 

 

 

「………―――きて?」

 

 

 

吐息と絡んだ私の言葉が、姉の顔を引き寄せた。




ちゅーまでは行きます。
そこから先はR-18です。

……その先も書いたほうがいい?


※2/6追記
R-18版幕間「溺れた柘榴」を投稿しました。
こちらも読みたければご覧下さい。
https://syosetu.org/novel/278901/


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入学試験:プロローグ

続いてます、トガ姉妹百合。
百合よ増えろ(暗示)


3年間着慣れた制服を身に纏い、蝶結びのリボン(テープ式)をくっつけた私は、鏡に映る自分の姿を見てよしと頷いた。

 

私―――渡我反榴(トガハル)がこの世界に産まれて15年。

 

前世も合わせれば45年と我ながら若干ロリババアな気分だが、この年度末近い時期のどきどきは何時になっても褪せないものだなと常々思う。

 

今日は雄英高校の入学選抜がある日だ。

 

昨日の夜まで復習をしていた私に筆記は敵ではないだろう、姉の夜食もあったし。

 

そんな事を考えながら、鏡の前で微笑む自分を見る。

 

姉と同じ金髪はふんわりしたボブにし、姉にしか見せていない虹彩は暗い琥珀色。

 

それが小さい顔に付いていて、身長的な問題が若干……いや、かなり著しい。

 

15歳にもなって身長が124cmから伸びないのは前世からの影響なのだろうか。

 

そして首元と腕、手首とお腹etc…に付いている傷跡は昨夜絆創膏を付けていた為に、隠せないメンヘラ感が漂う。

 

首元の噛み跡を慈しむように撫でると、私の笑みはだらしなく深まった。

 

「ハルちゃん、ご飯出来てますよ」

 

「あ、今行きます」

 

そんな私を呼ぶエプロン姿の姉―――渡我被身子(トガヒミコ)

 

一つ上の姉であり、()()()()敵である(ヴィラン)連合の構成員になる人だ。

 

そんな彼女がどうしてエプロンを付け、るんるんと料理をしているか、だって?

 

その答えは単純明快。

 

私が姉の欲求を全て受け止めていたからだ。

 

親から普通にしてなさいと言われ続けてきた姉は、このまま行けば中学3年の最後の日に欲求が爆発して好きな男子を切り付ける筈だった。

 

そうなる前に私は動き、姉の性欲と衝動の捌け口として多くの生傷を負うことにしたのだ。

 

切られ、吸われ、噛まれとされていくうちに自分が被虐性愛(マゾヒスト)である事に気付いたのは驚いたが。

 

「〜〜♪」

 

だが、それだけだ。

 

そうなったお陰で、姉は原作と違い非行に走る事の無い、明るく優しい人になった。

 

そんな姉を見られるなら、苦痛愛好(アルゴフィリア)だとか被虐性愛(マゾヒスト)だとかは喜んで抱えようと思う。

 

その代わり、私も両親から疎まれる事になってしまい家に帰って来ることもほぼなくなったが。

 

 

 

「「ごちそうさまです」」

 

「今日は雄英高校の入試でしたけど、大丈夫ですか?」

 

朝食を片付けて弁当を手渡した姉が聞く。

 

「筆記は多分行けますけど……実技がどうなるかで決まるかなぁ、と思うです」

 

筆記は前世の復習(チート)があるから大丈夫なのだが、実技に関しては直前まで知らされてない為に不安要素が多いのだ。

 

「それなら、ハルちゃんはきっと受かりますよ。トガの大切な妹ですもん♪」

 

そんな私を抱き締めて額に唇を落とした姉がふわっと微笑む。

 

それだけで、不思議と私の不安が吹き飛んだ。

 

「……ありがとう、です」

 

「えへへ、それじゃあ行きますよ!トガもバイトですし」

 

用意するので待ってて下さーい、と自分の部屋に走っていった姉の背中を見送り、私は思考を巡らせる。

 

 

 

―――雄英高校に入学するのは、姉と平穏に暮らす事とは別にもう2()()理由がある。

 

今回の試験は可能な限りのポイントを獲得するつもりだ。

 

それは討伐P然り、()()P()()()

 

そうしてA組に入ったとき、私という通常では存在する筈の無かった()()と姉の居ない(ヴィラン)連合がどう変わるのか。

 

欠番のままか、それとも私の知らない()()が代わりに入るのか。

 

そして、その(ヴィラン)連合―――もとい、AFO(オール・フォー・ワン)が、私の事を緑谷達と同列―――要注意人物とするか否か。

 

人口の8割が個性を持つこの異世界で、私はどこまで未来を変えるのかを知ってみたいのだ。

 

「お待たせしましたよ!」

 

と、考えを断ち切るタイミングで姉が戻ってきた。

 

短すぎない黒のスカートと黄色いパーカー、その上に着た大きめで灰色のジャケットに白のショルダーバッグ。

 

似合い過ぎてて鼻血出そう。

 

「確か……駅まででしたよね」

 

「うんっ、そこまでは一緒です!」

 

そう言って手を繋いで、にぱぁっと。

 

笑顔を見せた姉に、私の心は溢れる程に満たされたのだった。




トガちゃんコンプレックス、略してトガコンです。

ちなみにトガちゃんのバイト先は精肉店です。
理由は解体が楽しいのと、血が見れるから。

※前話のイチャイチャの続きを書いたR-18作品「溺れた柘榴」を投稿しました。
えちえちいちゃいちゃ見たいなら是非。↓
https://syosetu.org/novel/278901/


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入学試験:プロローグ 2

渡我家と雄英高校の位置が全く測れない事に今更ながら気が付く作者

やべぇどうするよって事で
渡我家→愛知県の都心寄り
雄英高校→都内
という事にしました。

誰か有識者、情報プリーズ


両親から自立した、というか極端に帰ってこない渡我家は一応愛知県内にある。

 

まぁその中でも都心寄り、といった所だ。

 

そして私がこれから向かう国立雄英高校は都内にあり、私は電車でいくつか乗換を経て向かうことになる。

 

割と遠いが、登校出来ない訳でもない。

 

早起き?姉妹揃って大得意ですがなにか。

 

しかし、これとは別にさらに驚くべき事がちゃんとある。

 

それが、雄英高校は偏差値79、さらに合格倍率が300倍もあるとの事。

 

うん、

 

 

 

お か し い で し ょ こ れ

 

 

 

きっとおかしいと思ったのは私だけじゃない筈。

 

前世でも私の友達がこの倍率はやばいって言っていた気がするし。

 

かく言う私も前世じゃ「はっは、何コレw」って笑い飛ばせたけど、いざ転生してこれを目にした時は素で「まじ?」と零した位だ。

 

原作キャラ達良く受かれたよね、上鳴とか芦戸とかそこら辺が特に。

 

と、そんな逡巡をしているうちに目的の駅に到着、いつの間にか満員になっていた列車が停止した。

 

ホームを出れば、通りはもう既に雄英を受ける生徒でごった返している。

 

そしてよく見れば原作でも見た事のある面々がちらほら居たり居なかったり。

 

「多いですねぇ……―――ん」

 

そんな感想の後に鳴ったスマホを持ち、身長差と密度に揉まれそうになりながらも道の端に寄った。

 

『ハルちゃんはもう到着ですか?』

 

通知欄から飛んだメッセージアプリには、姉からの一言とデフォルメされた可愛い猫が首を傾げているスタンプがあった。

 

もう猫も可愛いけどお姉ちゃんも可愛いです。

 

だんだんと増えていく人に流されながら、私は至極普通そうに返事をした。

 

『こっちは今正門前です。人が多すぎて自動で流れていけますよ』

 

『やっぱりヒーロー育成校は違うんですねー』

 

『ですねー』

 

ゆっくり流れていた人混みも和らいだところで、正門を通る。

 

うーんこれはまたデカい。

 

もう説明すら不要。

 

敷地もだけど校舎もやばい。

 

間近で見るそれに圧倒されていると、不意に後ろから声が掛かる。

 

「止まってるけど、大丈夫?君」

 

「ほぇ?あ、えっと……だ、大丈夫です」

 

突然の事に驚いて振り向くと、オレンジ色のサイドテールで少しサバサバした印象のある女子。

 

身長が高くて羨ましいが、この子は確か―――

 

「あ、私は拳藤一佳(けんどういつか)。そっちは?」

 

そう、拳藤さん。

 

確か原作ではB組だった、手がでかくなるという増強系の個性を持っていた筈。

 

「ご丁寧にありがとうです〜…私は渡我反榴って云うんです、よろしくですよ」

 

「よろしく……で、あのさ。良かったら教室まで一緒に行かない?」

 

お互い一人だから丁度いいかなってさ、と早速お誘いをしてくれるあたり男勝りというかきっぱりしているというか。

 

まぁでも、否定する理由はない。

 

「はいっ、喜んで、です!」

 

そう言って横に並び、流れで手を繫いで歩く。

 

「……―――ん?」

 

「……んぇ?」

 

そしてピタリ、と同時に足を止めた。

 

そして自分の左手を見、拳藤さんの顔を見た私の顔は茹で蛸の如く真っ赤に染まる。

 

「……―――あ、ご、ごごごめんなさい!あのそのえっと、お姉ちゃんとおでかけする時がいっつもこうで、えっとその癖と言いますか流れでと言いますかあうあうあう」

 

「あぁあぁ落ち着いて落ち着いて深呼吸深呼吸はい吸ってー吐いてー」

 

恥ずかしさと混乱でしどろもどろになったり必要のない情報を出してしまい更に混乱したところを、拳藤さんが背中を擦って落ち着かせてくれた。

 

ふぅー、とお互いに一息つく。

 

「…………ごめんなさいです、お見苦しい所を……」

 

「良いの良いの、私もなんか緊張解けたし」

 

そう言う拳藤さんの顔はふわりと緩んでいた。

 

すっごい、男前だこの人……

 

「ほら、行こ?うちらも行かないと遅れちゃいそうだし」

 

「です!」

 

そう締め括って再び歩き出す私達の間には、もう既に「顔見知り」という壁は無くなっていた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

―――午前を使った筆記試験はかなり楽だった。

 

流石前世の記憶(チート)、今回ばかりは感謝である。

 

そして筆記を全て終えた私は、荷物として持っていたリュックを背負って講堂に行く。

 

がやがやとざわめきと足音に飲まれ掛けた私は、再び拳藤さんに助けられた。

 

その時にちっちゃいねと言われて若干凹んだが、それは良いとして。

 

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバヒセイヘイ!!!!』

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

ぱちぱちぱち……って、え?

 

「……あれ?」

 

『いい反応してくれたのはお前だけだぜミニガール……』

 

説明前のプレゼント・マイクさんが、ただただ可哀想だったという事だけはここに残しておく。

 

っておいコラ、ミニガール言うなし。

 

私まだ成長途中だし……




次のお話でようやくハルちゃんの個性紹介になるかなぁなんて思っていたり思っていなかったり。
流石人生二週目、流石原作知識という事でかなりぅゎょぅι゛ょっょぃしてます多分きっと恐らくメイビー(保険掛けまくり)。

尚チートではありますが万能ではありません。


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実技試験:インバージョン

実技試験のはじまりはじまりー。
きっとオリ主ならやってくれると信じているぞ。

拳藤さんとの絡みは完全オリジナルです、はい。


「仮想(ヴィラン)、ですか……」

 

「沢山出るんだね」

 

隣同士で座った私と拳藤さんは、説明を聞いて小さな声で話す。

 

―――実技試験の概要は原作と同じ。

 

1P、2P、3P、そして0Pの仮想(ヴィラン)を倒していくポイント制だった。

 

「……本当に、それだけでしょうか……?」

 

「ん、どうしたの?」

 

「あ、いえ。なんでもないです」

 

そう、これだけじゃない。

 

きっと、というか確実にこの中には救助ポイントという項目も存在している筈。

 

敵の殲滅だけじゃヒーローは務まらないぞ、という事だろう。

 

それを一般開示しない辺り流石だと思う。

 

……あ、飯田さんが質問してる。

 

やはりまだそんなに介入してないから、原作通りなのだろう。

 

緑谷さんが黙らせられるまでちゃんとセットだ。

 

「……あの緑の人、凄い洞察力ですねぇ」

 

「え、あぁ……さっきのブツブツって」

 

「はい、場面設定とか規模とかを考えてる様ですね」

 

半分適当だが、間違ってはないだろう。

 

どうせ雄英だし、この都市部というステージもデカいのだ。

 

いやデカいしいくつかあるんだけど。

 

そうしてる間にも、プレゼント・マイクの説明は続いていく。

 

『―――ってことで、俺からの説明は以上だ。最後にリスナーの君達へ我が校の校訓を贈ろう。

 

 

 

―――かの英雄、ナポレオン・ボナパルトは言った。

 

 

 

真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていくもの!

 

 

 

更に向こうへ(Plus Ultra)

 

 

 

それでは皆さん、良い受難を!』

 

原作通りの口上に拍手を送り(今度は皆もやってくれた)、わらわらと講堂から出ていく。

 

此処からは拳藤さんと別々に、それぞれ試験を行う。

 

拳藤さんはA会場で私はB会場。

 

確かA会場は緑谷さんとかが居た気がするなぁ、とか、私がA組に入ったら誰が抜けてしまうのだろうか、とかいう予想とかをもやもやと巡らせながら、拳藤さんと(いつの間にか)繋いでいた手を離す。

 

頑張ってと激励を送り合って別れ、私は三度人波に流された。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ぐいぐいぐい、と揺られながら進み、その人混みが晴れた所で私も息を吐く。

 

やはりデカい。

 

向こう側が見えないとかどんなステージですか。

 

いや試験のステージだったわ。

 

「さて、確か……」

 

一息ついた私は再度リュックと竹刀入れを背負い、ガチャッと重そうな音を鳴らす()()を見やる。

 

棒達と言ってもゴルフフラグ―――アイアンとかパターとか普通の鉄パイプとか、要らなくなったものを掻き集めただけなのだが。

 

その音を聞いた周りの人が怪力でも見るような目でこちらを凝視してくる。

 

すぐに解りますよ、と頬を若干膨らませていると。

 

 

『はいスタートー』

 

 

その気の抜けた声と共に私は個性を使用し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「〜〜♪」

 

先程まで怪力を見るような視線を送っていた人達が、今度はぎょっとして私の背中を見送る。

 

私を見て急いで走り出す人達も居るが、それはそれ。

 

姉の料理中によく聞く歌を口遊みながら、後方の集団をぐいぐいと離していく。

 

『どうした、試験はもう始まってるぜ!走れ走れ!実戦じゃあカウントダウンなんてねーんだぞ!』

 

と、プレゼント・マイクが催促して漸く後続が走り始めた。

 

個性で飛んだり滑ったりして早くポイントを取ろうとする、が。

 

 

―――もう遅い。

 

 

「えーいっ♪」

 

個性を発動して誰も居ない方向に向かって拳を突き出せば、私の身体が文字通り()()()()

 

「よいしょっと……こっちですね♪」

 

着地の瞬間に個性を使用して墜落を防いだら、再度発動してパターを2Pへと投擲。

 

豪速で飛んでいくそれは後ろに居た3体くらいをゆうに巻込み、纏めて停止させた。

 

「ええええなんだなんだあの娘怖い怖い怖い」

「なんだあの動きやばっ!?」

「満面の笑顔が逆に怖いんだけど!!」

 

こんなにアクロバティックな動きをしてはいるが、これはれっきとした一つの個性だ。

 

個性で飛んで、投げて、たまに仮想(ヴィラン)の装甲を個性で剥がしたりして着々とポイントを稼ぐ。

 

これには受験生には勿論、教師陣も驚いているだろう。

 

 

―――その途中。

 

 

「うわぁぁっ!!……あ、あれ?」

 

「大丈夫ですか〜?」

 

「あっ、え、と……」

 

「大丈夫そうですね、ですが念の為これを持ってて下さいね〜」

 

「えっ、絆創膏!?って行っちゃったし……」

 

仮想(ヴィラン)の群れに運悪く追い込まれた受験者を助けたり。

 

「そこ擦り剥いてますねぇ、ちょっと失礼しますよ〜」

 

「っ痛……ごめんね、ありがとう」

 

「いえいえ、お互い様ですよ〜」

 

制圧が完了した区域で負傷者の介護にあたったりもしていた。

 

リュックを持っていて良かった気がする。

 

多分普通は取られるだろうけど、私のリュックには竹刀入れが縫い合わされているのだ。

 

先程中身を見られたけど、あの量の棒類を手で持って行かせるのは流石に駄目だと思ったのだろう。

 

教師陣には感謝だ。

 

 

 

『残り1分!ラストスパート、まだまだ頑張れ!』

 

―――と、運び込まれていく負傷者に処置を施していれば、ラストスパートになっているのにも気付けなかった。

 

「確か、0Pが出るんでしたよね」

 

「そっ、そうだけど……まさか行くとか、無いよね?」

 

近くにいた腕が翼になっている女の子の受験生にそう聞くと、体格差からだろうか心配されてしまう。

 

 

「ふふふ……ヒーローは、一芸だけじゃあ務まらないんですよ?」

 

 

何時かのアングラ系ヒーローが言っていた言葉に、心配していた女の子は止めようと口を開く。

 

そんな彼女の口に持ってきた携帯食料を突っ込んだ私は、モゴーッ!!と叫ぶ彼女を無視して会場の中央へ吹っ飛んだ。

 

周りの人も何か言ってるが、無視無視。

 

途中でパンチやキックを駆使して高度を調節しながらその問題のロボットを見てみれば。

 

「実際に見るとほんとヤバいですね」

 

今まで出てきた仮想(ヴィラン)のどれよりも重厚で、頭にでかでかと0という文字が書かれたロボット。

 

一歩踏み出せば建物が崩れ、軽い地震が発生する。

 

まるでMt.レディの巨大化位はありそうなパワーと大きさだ。

 

「こう見ると、リアル『人がゴ○のようだ』ですよぉ」

 

そんな感想を零しながら、逃げ惑う受験生の流れに逆らって0Pの目の前に着地。

 

「まぁでも、私にとっては好都合なので……

 

 

 

―――お姉ちゃんの為に、壊れてもらいましょうか?」

 

 

 

細められた目のまま、私はにっこりと微笑んだ。




ぅゎょぅι゛ょっょぃ(白目)(←作者)
ちなみにタイトルの「インバージョン」は「反転」の英訳です。

そしてオリ主の無双タイムに合わせて、渡我反榴ちゃんのプロフィールを書きましたのでどうぞ。


――――――――――――――――――――――――


HERO NAME:未定
NAME:渡我 反榴(トガ ハル)
AGE:15
BIRTHDAY:8/6

"個性":「反転」
身体のどこかに触れたものに関する事を反転させられる。
例:このゴルフプラグは軽い(反転)このゴルフプラグは重い、パンチによる風圧が弱い(反転)パンチによる風圧が強い 等

十年近い特訓により、「AはBである」という固定観念の反転も可能。
例:自分には感電が効く(反転)自分には反転が効かない、個性を使うとドーピングが出来る(反転)個性を使うと身体が弱る 等

尚使い過ぎると精神力が尽きて気を失う。


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実技試験:インバージョン 2

個性の解説もした所で、このお話は『何を』反転させるかも掲載します。
どうぞよしなに。


数えてみても、制限時間は残り30秒もない。

 

なのでさっさと頭の中でルートを構築し、ニタリと笑った。

 

「はいっと!」

 

早速一歩踏み出したロボットから逃げるように跳び、『自分のジャンプ力が低い』をベースに"反転"させる。

 

するとあらびっくり、普通じゃ1mも飛べなさそうなちんちくりんが0Pと同じくらいにまで跳び上がったではないか。

 

飛ぶときに勢い余って一回転したが、パフォーマンスと思えばそんなに悪くもないかなぁなんて。

 

「えい……やっ!」

 

そんな事を思いながら、私は背中から取り出した鉄パイプと竹刀を0Pに向かってぶん投げた。

 

勿論個性は使っており、今回は『投げた2つがロボットの首元を跳ね飛ばさない』と『投げた2つのスピードが遅い』の2つを反転。

 

すると今度は、2つの棒がなまじ私の腕から振るわれたと思えない速度で真っ直ぐにロボットへ向かい、一切の減速も無しにそれの首を挟み込む様に壊す。

 

飛んでいく途中に風の音がしっかり聞こえてきたのでかなりの威力だろう。

 

「ふむ……4つ、ですか。まぁ妥当ですね」

 

そう呟きながら自由落下する自分自身に『落下速度が上がっていく』を反転させて着地したと同時に、ガギャンという耳を劈く音を聞いた。

 

「……っとと。処理を忘れる所でしたね〜」

 

ホッとするのは一瞬。

 

首と胴体の落下に備えてもう一度跳躍した私はさっさと0Pに触れ、『下に掛かる重力が弱い』を反転。

 

「ぴゃっ」

 

瞬間、地面へと向かう圧力が限り無く高まった0Pが地面にヒビを作りながらも潰れ、めり込んだ。

 

すっごい拷問でも出なさそうな音が出たので軽く変な声が出てしまったが、誰も聞いてないから良しとしよう。

 

 

 

『終ーーー了ーーー!!!!』

 

 

 

あ、終わった。

 

ちょっとふらつく頭に手を添えて、ため息を一つ。

 

個性の頻発で精神力が削られているのだ。

 

まぁ実際移動+攻撃+強化でほぼフルバーストだったから、当然っちゃあ当然というか。

 

気を張ってないと目眩を起こして倒れそうだけど、家に帰るまでぐっと我慢。

 

家でお姉ちゃんにどろどろになるまで愛してもらいたい、と私の本能が叫んでいる。

 

……いやしかし、そうしてもらうのは合格が決まったらでも良いのではないか?

 

私は雄英高校に受かったのとお姉ちゃんに愛されるので嬉しい、お姉ちゃんは私がヒーローになれる道に立てたのと私を愛せるので嬉しい。

 

これはまさかWin-Winの関係!?

 

「……―――オイ」

 

と、そこまで思考を巡らせて再び個性で飛ぼうと思った私の背中に、低くて男らしい声が掛かった。

 

「―――ほぇ?なんですか?」

 

その声の方に振り向くと、爆発したようなツンツンの髪を持った男子生徒。

 

彼は確か、爆豪勝己。

 

緑谷さんの幼馴染で開いた口が塞がらない位の戦闘センスを持っている、いわゆる問題児。

 

そんな彼が、一体どうして私に?

 

「お前、どうしてソレ(0P)に挑んだんだよ」

 

そうして顎で指す先は、先程壊した0P。

 

その質問に、あぁと少し納得した。

 

殆どの受験生は討伐ポイントのみを稼ぐ為に1P〜3Pを壊していく。

 

だが私が最後にやった0Pはただのガラクタ、壊すメリットもポイントも何もないだけ。

 

なのにどうしてわざわざコレを手を向けたのか、彼は一番気になるだろう。

 

「う〜ん……強いて言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からですかね」

 

口元に指を添えて逡巡した答えをそのまま言うと、彼はそうかよ、と短く返してそのまま飛んでいってしまった。

 

そういえば彼も爆破で飛べたなぁ、なんて思いながら私はちょっと小走りで負傷者の集まっていた区間へと向かった。

 

 

 

あの後戻ると翼の生えた女の子からは泣かれて怒られた、ごめん。

 

流石に単身凸は無謀すぎだよばかばかばか、と抱き締められたまま胸元を殴られた、ほんとごめんね。

 

まぁ心配させたのは本当なので、謝って優しく頭を撫でたらすぐに立ち直ってくれたが。

 

その後すぐにリカバリーガールが来て、負傷者の傷が処置されていた事に驚いていたのは余談だ。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

鍵を開けて家に入ると同時にリボンを外す。

 

個性の反動と電車の揺れで眠気が酷く、何回寝落ちたことかとため息を吐いた。

 

「ただいまですよー」

 

「おかえりなさい〜!」

 

そんな私に満点の笑顔で包丁を片手に抱き着いて来る姉。

 

危ないけど扉は閉めているしちゃんと誤爆しないように配慮してるから秒で許す。

 

「試験どうでした?」

 

至近距離で微笑みながら聞く彼女に、私は。

 

 

「―――きっと、上手く行きましたよ」

 

 

唇を優しく奪ってそう言うのであった。




途中でしっかりいちゃいちゃ宣言してます。
このセリフ、覚えといてくださいね(黒い笑顔)。


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逢引:フライアスター

逢引、つまりデートです。

オリジナルなお話なのでちょっとゆるめ(いつでもゆるい気がする)。


入学選抜の終わった次の日は土日という事で、まず土曜は二人でごろごろいちゃいちゃして過ごした。

 

そして次の日の始まりは姉のこの一言。

 

 

「デートしましょう!デート!!」

 

 

という言葉に即同意して、私と姉は都内に出向く事に。

 

姉が何を言っているか解るだろうか?

 

私には解る、受験を終わらせたご褒美という事だ。

 

まぁご褒美の本番は合格したら、だろうけども。

 

「……それで、最初はどこに行くです?」

 

「まずは服屋ですよ!ハルちゃんに似合うやつたくさん買いましょ!!」

 

絡められた手を引っ張られて服屋を探す。

 

―――あぁもう、手から伝わる体温が愛おしくて堪らない。

 

姉は前を向いているから解らないと思うが、多分今の私が蕩け切った顔をしているであろう事はしっかり解った。

 

 

 

入試のように人混みに流されそうだったけど、姉が先導してくれるお陰で逸れる等のイベントもなく無事に大手の服メーカーの店に入る事ができた。

 

やはり都内という事で店内はかなり広く、多彩な服が展示されたりしている。

 

店員がその店の服を着ているのも好みだ。

 

………だが、服の値段が高そうなのは見ない事にしよう。

 

ゼロが一つ多い気がしたけど私は何も見ていない。

 

……あ、安いのもあるんですか?

 

そっちはオーダーメイドだから……あぁ、そうだったんですね。

 

 

閑話休題(話を戻して)

 

 

そんな店員さんからの微笑ましい視線を浴びながら、やってきたのは春服のコーナー。

 

「う〜ん……ハルちゃんはやはりパーカーな感じですねぇ」

 

「そうですか……?」

 

入ってすぐに姉からそう言われた私は、ふと今までの私服を振り返ってみる。

 

えーと、姉と遊園地に行った時、姉とゲームセンターに行った時、姉とお部屋でいちゃついた時……

 

「……ですね、私基本パーカーでした」

 

「ハルちゃんは萌え袖がカァイイからねぇ」

 

そこまで思い出して、そういえば殆どの洋服がパーカーにキュロットだったなと解った。

 

多分、緩い感じの服が自分には合っているのだろう。

 

「あ、これ着てみてもいいですか?」

 

「ふぅむ……それならこれと合わせましょ!」

 

そうしてパステルカラーのパーカーに姉が合わせたのは、私があまり履いた事の無いスカートタイプのもの。

 

ベージュという落ち着いた色合いがパーカーによく合うのもいいチョイスだ。

 

勿論、それを着ない選択肢等ない。

 

「じゃんっ、です!どうですか?」

 

しゃっとカーテンを開けて姉に聞いてみれば、大して間も置かずにサムズアップが返ってくる。

 

その口が楽しげに歪んでいるのは、きっとこの後も色々着せるからだと思う。

 

きっとそうだろう。

 

「じゃあ、次はこれを合わせて……あっ、こっちも!」

 

……姉の両腕に抱えられた数セットの服が無くなるのは、昼を過ぎる頃になりそうだ。

 

 

 

 

 

「週末のお買い物みたいな量になっちゃいましたね」

 

「全部ハルちゃんに似合ってたのが悪いですよぅ」

 

「二時間以上着せ替えた理由がそれですかぁ……まったく、そんな事を言う口はこうですよぉ!」

 

ひゃふぇへぇ〜(やめてぇ〜)!」

 

―――あの後、いつの間にか来ていた店員さんも参加して着せ替えられてしまい、気付けば午後2時を優に過ぎてしまっていた。

 

両手には上下合わせて20着はありそうな服がずっしりと入った紙袋。

 

新しい服を着て姉とデートできると解ればすぐさま嬉しさで一杯になれた。

 

そんな私はかなりチョロいんだと思う。

 

「それにしても、やはり混んでましたねぇ」

 

「でも30分待ちした甲斐があったと思うですよ」

 

その買い物の後に向かったレストランは、週末という事でかなり混み合っていた。

 

私は牡蠣フライ定食、姉は麻婆豆腐をそれぞれ頼んだのだが、これが結構美味しい。

 

食前に見たパスタやカツ丼なども美味しそうで、目移りしてしまったのは内緒だ。

 

……うん、作って欲しいし今度牡蠣買って来ようかな。

 

「美味しかったのは否定しないけど……なんか悔しい気分になります……」

 

「ふふっ、私はお姉ちゃんの料理が一番好きですよ」

 

「……んにぇへへへ、今晩は何にしよっかなぁ」

 

「ン"ン"ッ」

 

にへーと笑顔になる姉がやばい程に可愛くて鼻血が出そうになったが、これをかなり頑張って堪えた私は偉いと思う。




お昼ごはん時には店員さんに「お子様ランチじゃないんですね」と真顔で言われて凹むオリ主が見たい(懇願)


ちなパーカーをよく着るのは脱ぎ着が楽だからです。
だぼだぼで萌え袖なハルちゃんかわいい(迫真)


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逢引:フライアスター 2

トガちゃんかわいいよトガちゃん(優しい笑顔)

リア友が雀魂にハマったので漢気麻雀を布教した結果、段位戦をやらなくなりました(やったぜ)


突然だが、姉の嗜好について少し語ろうと思う。

 

私の姉は重度の血液愛好(ヘマトフィリア)で、血に関する事が好きで好きで堪らない猛獣になる程のレベルだ。

 

それでも私の血を吸えない時なんかは多くあり、何もしないでいれば暴走なんて事も(何回か経験した)。

 

だから、どうにかしてその衝動を抑えないといけない。

 

そんな姉が吸血以外にその欲を抑えられる事になった手段というのが、ゲームだ。

 

それもゴリッゴリの流血系ゲーム。

 

バイオ○ザードとかゾン○シューターとかSI○ENとか、ぐっしゃぐしゃに敵が血を吹き出すタイプのゲームで血をたっぷり見て、衝動を抑えている。

 

まぁ結局私が帰ってきたら気持ちが爆発して吸っちゃうんだけどね。

 

毎回飛び付くから怒らないとって思うけど噛まれた痛みと姉の暖かさですぐ許しちゃう。

 

どうしてこんな話を突然したんだ、って?

 

 

「あっははは!!ハルちゃん右ぃ!!」

 

「ですーっ!あっ、お姉ちゃん上も」

 

「にゃははははは!!」

 

 

今、現在進行形で姉の欲を抑えてるから。

 

駅前をぶらついていたら姉が暴走しそうになった中、こんな大衆の前で血を吸わせるなんて恥ずかしい事はできない。

 

……え、被虐性欲(マゾヒスト)だから大丈夫だろうって?

 

何を言ってるの、私が被虐性欲(マゾヒスト)になるのはお姉ちゃんと二人きりの時だけだよ?

 

そもそも私自身被虐性欲(マゾヒスト)とか苦痛愛好(アルゴフィリア)とか言ってるけどそうなったのは全部お姉ちゃんへの愛があったからだしそれを他の人に見せ付けたりするのは性に合わな―――あ、聞いてない?

 

 

……閑話休題(ン”ッンン”ッ(咳払い))

 

 

まぁそういう訳で、私は現在姉の一時の平穏を守る為に慣れないビー○トバス○ーズをやっているのです。

 

たまに弾を外しながら、リロードの時間に姉の方をちらりと見る。

 

「うらららららららっ……ありゃ?弾切れ……」

 

「ン"ン"ッ」

 

トリガーハッピーしていたらいつの間にか銃がカチカチと鳴らされるだけになってしまい、ほぇ?と呟いていた。

 

可愛い。

 

あっ鼻血出そう、でも今出したら抑えた意味無くなっちゃう。

 

「リロードリロー……あ」

 

「あっ」

 

そんな間にも迫ってくるゾンビを私達は対応しきれず、3ステージ中2ステージ目での撤退を余儀無くされた。

 

「うむむ……もうちょっと連射性が高ければ……」

 

「まぁゲームですから……」

 

ドゥーンという重低音と共に浮かび上がるYOUR DIEDの文字とぼやく姉に、私はえぇ…と苦笑い。

 

だが、これで姉の欲もかなり収まっ

 

「他にも沢山ありますけ」

 

「えいっ」

 

「へ?」

 

―――てはなかったみたい。

 

振り向けば、既に姉はコンテニュー分の料金を払っていた。

 

カーソルをさっさと合わせてクリックし、すぐにカウントダウン。

 

「んに"ゃっ、待っ用意が!?あっ、あーーーー!!」

 

この後更に4回死に、その度にコンテニューする事になった。

 

だけどボスを倒した時の弾けんばかりの笑顔が途轍もなく可愛かったのでもう全部許す。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……あれ」

 

「ハルちゃん、それは?」

 

お互いに凹んだり喜んだりして残りの時間を過ごし、もう午後4時に差し掛かる頃。

 

晩ご飯に足りない物を買い足して鼻歌を歌いながら家に戻ると、ポストに見慣れないものが。

 

「雄英高校からですね」

 

「おぉ〜…合格通知?受かってるかなぁ……」

 

「それにしては些か嵩張るといいますか、重いといいますか」

 

触った感じ、ゴツゴツしてて硬く、小さな機械の様だ。

 

実物を見るのは勿論始めてだが、ここからオールマイトがホログラム出でくるってなると、前世よりもテクノロジーが発達していると言ってもいいのかもしれない。

 

「んー……ま、先に夜ご飯ですね」

 

私はそう言うと、姉の手を引っ張って家に入った。

 

「うんっ、今晩はペペロンチーノですよ〜♪―――んっ」

 

扉を閉じてすぐ、彼女が唇を重ねる。

 

所謂おかえりのキスだ。

 

どちらからともこれをやると決めた覚えは無いが、一緒に帰ってくると毎回してくれる。

 

あまりディープなものをするとお互いにスイッチが入ってしまうので我慢だが、そうならないようにと大義名分を立ててフレンチを何回もしてしまうのがオチだ。

 

だってお姉ちゃん可愛いんだもん、しょうがないよね?

 

そんな自問自答を繰り返しながら、ちゅっちゅっと姉に唇を啄まれ続ける。

 

……が、そろそろ姉のスイッチが入りそうなので、中断させる事にした。

 

「んっ―――はぁ……お姉ちゃん、続きは後で……ですよ?」

 

「―――ぅ、ん」

 

7回目のキスをしようと顔を近付ける姉の唇に人差し指を置き、微笑んでそう制止すると彼女は寂しそうな表情をしてすごすごと離れる。

 

それを見て、姉に犬耳と尻尾があったらしゅーんと垂れているだろうな、なんていけない思考をし始めてしまい頭を振る。

 

「お姉ちゃん」

 

「……?」

 

もうちょっと見ていたいけどそうしたら夜ご飯が遅くなってしまうので、至極優しい声で姉を呼ぶ。

 

 

そして、

 

 

「後で、」

 

 

甘い吐息と共に、

 

 

「たぁっぷり、」

 

 

()()の付近を撫でれば、

 

 

 

「―――下さい、ね?」

 

 

 

姉は、この上なく悦ぶのだ。




フフフ……フフフ……(ポマエラ期待してろよって顔)



こう見るとハルちゃんは誘い受けって言葉が合うかもしれない
やっぱり被虐愛好(マゾヒスト)苦痛愛好(アルゴフィリア)だからね!!


※2/6追記
R-18版幕間「溺れた柘榴」にて、このエピソードの続きを投稿しました。
こちらも良ければどうぞご覧下さい。
https://syosetu.org/novel/278901/


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入学:レクリエーション

入学。

某トガちゃん×ジェダイオリ主二次創作を書かれておられるあの方の更新が無くて最近になってなんと4周目に到達しました。
百合はきっと世界を救うのだから(悟)


「やっと、着きましたね―――雄英高校」

 

家から電車を使って数十分、そして通学路の人波に流されて数分。

 

雄英高校の制服に身を包んだ私は、この広すぎる敷地に建つ雄英高校の校舎を震える脚を押さえて見上げていた。

 

「しかし、首位ですか……まぁ、解ってはいましたが

 

そう、私はこの入試を首位で通過していた。

 

まぁ筆記は前世の記憶があったから解るが、問題は実技だ。

 

「それでも、()()P()3()2()()()()P()5()5()は……流石に、やり過ぎたですね」

 

合計して87P。

 

原作での爆豪さんの77Pを10も上回る結果となっていた。

 

しかも爆豪さんとは同じ試験会場だった為に、恐らく原作よりも爆豪さんのポイントは低くなってしまっているだろう。

 

 

……―――待てよ?

 

 

まさかこれはもしや、体育祭の宣誓とかなんか色々やらされる?

 

その他色々なイベントが盛り沢山なこの高校でなんでもかんでも首位に任せられてしまう?

 

あぁでもそれだとお姉ちゃんに見てもらえるからそんなに悪い訳でもないって思っちゃう……

 

顎に指を添えてぐっと考える。

 

「……ま、その時はその時です。……それにしても、うん」

 

……だがすぐに考える事をやめ、袖口の辺りを見やった。

 

そんなに気にしたい訳でもないが、これは―――

 

「あれ、渡我さん?合格してたんだ、よかった」

 

「ほぇ?―――あ、拳籐さん」

 

思考が引き戻されると、そこには同じく雄英高校の制服を着た拳藤一佳さんが。

 

「拳藤さんも合格してたんですね、良かったです〜♪」

 

ぴょこぴょこと駆け寄って隣に立ち、ばっと左腕を上げる。

 

いぇーい、と二人でハイタッチをしてお互いの健勝を称え合った。

 

「うん、お互い行けてよかったよ……んで、所でなんだけど」

 

「はい?」

 

ソレ(制服)、デカくない?」

 

そう言われて、ぴしりと固まる。

 

拳籐さんは言わないでいてくれると思ってたのに、一瞬でフラグを回収されてしまった。

 

―――そう。

 

どういう訳か、今の私に合うサイズの制服が何故か無かったのだ。

 

二周り大きいサイズの制服は私の小さい体躯をふかぶかと隠し、スカートは折り込んで短くして手首に至っては完全な萌え袖となっている。

 

一言提言しよう。

 

 

ど う し て こ う な っ た

 

 

「ですよね……凄く、大きいです……あはは……手が、見えないですねぇ……」

 

「あぁあぁほら飴あるから落ち着いて?ね?ほらいちご味だからきっと気が紛れるし」

 

「もご」

 

あはは、と半笑いで落ち込む私の口に丸くていつの間にか包みの剥がされた甘い球体が半ば無理矢理突っ込まれる。

 

いちごおいしい……というか今どこから飴出したの?

 

ありふぁほれふ(ありがとです)……うん、元気出ました」

 

「良かった、ほら行こっか」

 

私の隣に差し出された手をナチュラルに繋ぐ。

 

また繋いじゃってるなぁ、と歩き始めてから気付いたが、まぁいいやと考えるのを止めて私は鼻歌を歌いながら拳籐さんと校舎に入っていく。

 

なんだか周囲が煩かったけど、当の私は飴の美味しさで頭がいっぱいだったのでそんなに気にならなかった。

 

 

 

 

 

「扉、でっかいですねぇ」

 

直前に拳籐さんと別れてA組の教室の前で首を上げた私は、そう呟いた。

 

天井までありそうな高さの扉は、私をひぃ、ふぅ、みぃ……五人分は優に並べられそうなほど。

 

そんな重そうな扉をよいしょーと開くとそこは。

 

「失礼しま」

 

「おい、君!机に足を乗せるんじゃない!その机を作った製作者の方に失礼だと思わないのか!?」

 

「ああ!?思うわけねぇだろモブが!てめえどこ中だ!?」

 

「俺は聡明中だが……」

 

「……いやまぁ解っては居ましたけども……

 

一触即発、とはこの事を指すのだろう。

 

入試の時に少し話した爆豪さんが机の上に足をドンと乗せていて、飯田さんがそれを咎めている。

 

このタイミングという事は、原作主人公の緑谷さんはもうすぐ来る辺りなのだろうか。

 

しかしこの会話かぁ……と思わず眉間に手を当ててしまった。

 

「……?やぁ、お早う!はじめましてだな、俺は飯田天哉という!これから宜しく頼むぞ!」

 

と、この光景に立ったままで居た私に向かって飯田さんが私に気付いて話しかけてくれた。

 

彼は凄く律儀というか、カクカク動くというか、兎に角見てて面白いのだ。

 

その挨拶に釣られて大声になりそうになりながら、自己紹介を―――

 

「あっ、はい!渡我反榴って―――」

 

「オイチビ女ァ!ンでテメェまでA組なんだゴラァ!!」

 

「ぅぇふん」

 

―――出来なかった。

 

というか爆豪さん?貴方入試で話し掛けた時の冷静さはどこに行ったんですか?

 

「……その、なんでと言われましても……受かったからとしか言えませんよ?」

 

「……チッ!!」

 

「なんだいその態度は!?……あ、渡我さんの席はあそこだな!」

 

その尊大な態度に、えぇ……と苦笑いして、飯田さんの案内を受ける。

 

座席は瀬呂さんの次で常闇さんの前。

 

番号でいうと、ひぃ、ふぅ、みぃ……13番目だろうか。

 

そして、この間にさっと周囲を見回して確認する。

 

「(砂藤さんの席が障子さんになってますね……砂藤さん、南無)」

 

ここには居ないスイーツコック(私が勝手にそう呼んでいるだけだが)に向かって、心の中で合掌をしておいた。

 

「おはようございます〜」

 

「おう、おはよう」

 

「おはよう」

 

「よいしょっと……あら」

 

前後の二人に軽く挨拶をして席に座ると、丁度緑谷さんと麗日さんが来たところだった。

 

そんな緑谷さんは飯田さんと爆豪さんが居る事に顔を青くし、その後案の定絡まれてしまう。

 

周囲はなんだか疲れたようにため息をついたりしている人も居る事から、ずっとこんなだったのだろうか。

 

「HR始まるぞ。お友達ごっこがしたいならよそへ行け、ここはヒーロー科だぞ」

 

と、爆豪さんがヒートアップしそうになったタイミングで割り込む声が。

 

私は座高的な意味で見えないが、恐らく相澤先生が寝袋で寝転がっているあのシーンだろう。

 

あ、起き上がった。

 

無精髭に生気の感じられない目、伸びっぱなしの髪となんとも不安になる容貌にクラス一同が困惑する中で自己紹介を終わらせた相澤先生は、周囲のその視線を物ともせずに言い放った。

 

「早速だが、机の中に君達の分の体操服が入っているはずだ。それを着てグラウンドに集合。10分で支度しろよ」




という事で、今作で不在にされた砂藤君に謝罪と合掌を。
口田君とで迷いましたが、性格的に合いそうだった口田君を残す方にしました。

(ぶかぶかにさせたのは作者の欲望です。
ただただサイズの合わない制服を着せたかっただけです。)
※作者より再追記
感想から制服のサイズについて革新的とも言える設定を提言してくれた方がいらっしゃったので、その設定を起用します。


ハルちゃんのぶかぶか制服は将来を見越してお姉ちゃんがサイズを設定したよ!!!!


遅い気がしますけど、こうさせてください。(懇願)


次回、お着替えシーン……つまり、そういう事さ(察せよ)


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入学:レクリエーション 2

ハルちゃんのお身体、御開帳〜(クソ軽ノリ)

作者、凄い良い笑顔してます。


相澤先生の10分は絶対だ。

 

遅れただけで除籍、なんて事も有り得る。

 

だって除籍147回だもの。

 

早く行かないと駄目だよねぇ、と頷いて体操着を手に椅子から飛び降りる。

 

ここ大事。

 

私の身長だと座っても床に足がつかないので、これはしょうがない事なのだ。

 

そう自分に言い聞かせて、飯田さんの誘導の下私達は更衣室へと足を向ける。

 

なんか凄い微笑ましい視線を感じたが、あまり気にしない事にした。

 

 

 

 

 

更衣室、広い(驚愕)。

 

雄英ってここまで全部が広いってことあったっけ?(困惑)

 

いやあるか、だって雄英だもん(察し)。

 

「ロッカーも割と高い位置に……ふんっ」

 

「あ、踏み台あるよ?」

 

ロッカーでさえかなり高い位置にある事に少々の苛立ちを感じながらも格闘していると、横から踏み台が渡される。

 

「ふぇ?わ、ありがとうです〜♪えと、あなたは……」

 

渡してくれた彼女―――白目が黒く染まり、肌が桃色で角の生えた同級生に礼を言う。

 

確か彼女は―――

 

「アタシは芦戸三奈(あしどみな)!そっちはなんて言うの?」

 

「私は渡我反榴って言うのです、よろしくですよ〜……ぷはっ」

 

「うん!お互い宜し―――え?」

 

お互いにYシャツを脱ぎながら軽い自己紹介……おっと。

 

「あ、シャツも脱げちゃいましたね」

 

「いやいやいやいや!待って待ってなにその傷跡!?」

 

芦戸さんのその一言で、女子の興味が一瞬で私に集まる。

 

正確に言えば、私の身体に付いている夥しい数の傷跡だが。

 

「ふぇ?あ、これですか」

 

「アタシは良く解んないけどっ、なんでそんなに絆創膏が……?」

 

ぺたぺたと腕やお腹、終いには足元を見てこんな所にも……!と息を呑む彼女を見て、そういえばこれは誤解されちゃうよなぁと内心苦笑いを浮かべる。

 

「ねぇ、私蛙吹梅雨っていうの。梅雨ちゃんって呼んで」

 

「あ、はい梅雨ちゃん。どうしたのですか?」

 

そんな私に次いで話しかけたのは、猫背のままでこちらを見る少女。

 

彼女は先程も言ったように蛙吹梅雨。

 

確か個性は……蛙っぽい事が出来るとか言ってたっけ?

 

「私、思った事を正直に言ってしまうの。……渡我ちゃん、虐待とかされてないかしら?」

 

「あぁ、そう見えちゃいますよね」

 

そんな彼女が申し訳無さそうに言った事に、私はまぁそうだよねと返す。

 

でも。

 

「私、お姉ちゃんが大好きなのです。お姉ちゃんも、私が大好き。だけど、お姉ちゃんの愛情表現は皆さんから見たら"変わっている"のですから、皆さんには誤解されてしまうかもです……でも、これは私とお姉ちゃんの愛の証……だから、これはなんの問題も無いですよ?ただ、表現方法が()()()()()()()()()()で」

 

淀みなくそう言い切った私は、無意識に肩を撫でていた。

 

そこはガーゼで隠れてはいるが、毎日姉が私を一番愛してくれるばしょ()

 

着替えは、既に終わっていた。

 

「まぁこの学校にはリカバリーガールという凄い治癒師さんがいらっしゃるということで、もし治癒されたらこの傷跡は殆ど無くなってしまうかもですけど……私とお姉ちゃんは相思相愛なので、明日にはまたこうなってますよ?断言できるのです」

 

「わーお……」

 

そう言った私に返ってきたのは、服だけが浮いた透明な娘。

 

この娘は葉隠透だった筈。

 

自身が透明になる個性で、そのせいか声音と動きによる表現が大きい。

 

それでもまだ皆の不安は拭えない……―――あ、それなら。

 

「もし信じられないのでしたら、少々過激ですけど今夜のコレ(吸血)を撮影して―――」

 

 

「「「「駄目駄目駄目駄目!!」」」」

 

 

「ぅにゃん」

 

止められた、っていうか被せられた。

 

叫んだのは芦戸さんと葉隠さん、そして……麗日さんと耳郎さんだ。

 

八百万さんはそんな破廉恥な事を……!とプンスコ怒って(怖くない)いて、梅雨ちゃんは仲がよろしいのね、良かったわと冷静に理解してくれた。

 

「解り易いと思ったんですがねぇ……」

 

「いやいやそれって絶対アレな展開入っちゃうやつでしょ!?」

 

「いやそれは……」

 

羞恥心から再起動した芦戸さんに捲し立てられ、思わず考え込む。

 

吸血だけで終わった日って多分あったよね……?

 

きっとあった……いや、あった、か…………?

 

……………………―――うん、無い!

 

「……そうですね、毎晩()()まで行ってま」

 

 

 

「「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」」

 

 

 

「ぴゃふん」

 

また被せられた、しかも今度は先程よりも大声で。

 

あぁ、皆が皆混乱してるよ、梅雨ちゃんだけ凄い冷静だけど。

 

「まさかのほほんとした渡我ちゃんが一番大人だったなんて……」

 

「そこまでって??まさかそういうこと……??」

 

「あわわ、あわわわわわわわわわわ」

 

「ふぉー……やっば、すっご」

 

「反榴ちゃんはお姉ちゃん想いなのね、凄く良いと思うわ」

 

「えへ、そうですか?嬉しいです♪」

 

傍から見たらこんなの地獄絵図とも見紛うのだろう。

 

葉隠さんは解らないけど、叫び声を上げたもれなく全員(それに加えて八百万さんも)が顔を真っ赤にして慌て、ぶつぶつと独り言を零し続けている。

 

その隅で梅雨ちゃんとのほほんと会話をした私は、頭の片隅でそれとなく皆に向けて合掌をしておいた。

 

「……あのぅ、そろそろ行かないと遅れるですよ?」

 

だが、いつまでもそんな惨状を続ける訳にもいかない。

 

この騒動の発端である私が言うのもどうかとは思うが、そう口を出す。

 

イレイザーヘッド……もとい相澤先生はかなり合理主義だ。

 

1分でも遅れたらその日のテンションはきっと、いや確実に下がる。

 

「そっ、そうだね!取り敢えず反榴ちゃんは大丈夫だって言うし、早く運動場行こっか!」

 

その意図を察したのかただただこの変な雰囲気から脱したいだけなのか、芦戸さんが声をかなり張り上げて全員の移動を促した。

 

その間、梅雨ちゃんと私以外の女子は例に漏れず顔が真っ赤だった事をここに残しておく。




※この作品は全年齢対象です。R-18版の作品は別に存在しております。※

かなりヤベェ事を口にしてますが、渡我姉妹にとっては普通の事だという認識です。
ヒミコちゃんの吸血衝動が彼女にとっての普通である様に、ハルちゃんの傷身思考が彼女にとっての普通であるという事です。


なお、この話で出てきた微笑ましい視線については後のお話で。


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体力測定:アクセラレーション

測定。

はてさてハルちゃんの記録や如何に。


私が運動場に来た時、男性陣は漏れなく驚きを(あらわ)にしていた。

 

言われずとも解る、この腕やら肩に付いた絆創膏の事だろう。

 

そのうちの誰かからすっごく悲しそうな視線を感じたけど、残念ながら今回もスルーさせて頂いた。

 

―――で。

 

「「「個性把握テストォ!?」」」

 

という事だ(どういう事だ、と言うのは野暮である)

 

まぁ私としてもここの学校の校長の話が長いというのは知ってたし、相澤先生が半端ない程の合理主義なのも解っていたので軽くほほーと呟くだけだったが。

 

「渡我」

 

「はい?」

 

「ソフトボール投げの記録っていくつだったか覚えてるか」

 

ソフトボール投げ……中三の時は確か、

 

「6mです」

 

刹那、背中に感じる女性陣の視線が微笑ましいものになった事に、私は気付かなかった。

 

「じゃあコレ持って投げろ。個性を使ってもいい。円から出なければ何してもいい」

 

そう言って投げ渡されたボール(金属製だが割と軽い)を投げようとして、はたと動きを止める。

 

私が投げたら漏れなくそうなってしまうのだが、念には念を入れて、だ。

 

「これって地面に落ちる見込みが無かったらどうなるんです?」

 

「ある程度の所で指示する」

 

「わかりました〜」

 

短く返答した相澤先生に返事をし、私はメーターとは逆―――つまり皆の方を向く。

 

そして、何をしているのかと困惑する皆の前で個性を発動。

 

ボールに向けて、『ボールが重力の影響を受ける』と『投げるボールの速度が遅い』、そして『投げたボールのベクトル』の全て反転させ、優しく、皆の居る方向の地面へ()()()

 

 

「えいっ♪」

 

 

刹那、キュンッという短い音と同時にボールがメーターの方向へ消える。

 

クラスメイトの皆は何が起こったのか理解できてないようだ。

 

「渡我、そろそろ止めとけ」

 

―――と、ここで相澤先生がストップを掛けた。

 

「はい〜」

 

そうしてボールに掛かった個性を解除し、先生の提示する記録を見れば。

 

『∞』

 

「「「うぇぇぇぇぇやばぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」「∞とか見た事ねぇよ!?」「個性思いっきり使えるとか面白そう!」

 

それまで静かにしていた皆がどっと湧く。

 

だが。

 

「面白そう、か……ヒーローになるための三年間をそんな腹づもりで過ごす気でいるのか?」

 

瞬間、相澤先生の目が威圧感を持ち、クラス一同を黙らせた。

 

「……よし、トータル成績最下位のものは見込みなしと判断し、()()()()としよう」

 

髪を搔き上げたその顔は笑みを浮かべているが、纏う雰囲気からは除籍は絶対だという意思も見える。

 

……まぁ、原作を知っている私はこの後の展開も大体解るのだが。

 

だが、それを知らないクラスメイト達は騒然となる。

 

流石相澤先生、生徒の焚付が上手いと素直に感心した。

 

そしてここから除籍(笑)を掛けた個性把握テストが行われる訳だが、ここは短く見所に絞ってご覧頂こう。

 

 

 

――50m走――

 

 

 

「番号順ですから……常闇さんですね」

 

「あぁ、宜しく頼む」

 

ちらちらと私……の腕に視線を向ける常闇さんと並ぶ。

 

後で男性陣の皆さんの誤解も解いたほうが良いですねぇ、と呑気に考えながら、合図を待つ。

 

「用意、スタート」

 

「えいっ」

 

そして一歩。

 

飯田さんが最速なのは最初の方に走ってくれた事で解っていたので、『私の足は飯田さんよりも遅い』を反転。

 

先程の3つ重ねがけよりも多めに精神力を消費したが、10年近く精神力の増加を続けてきた私には造作もない。

 

記録、2秒52。

 

勢い余ってスピードを下げる時に常闇さんの周囲をぐるぐると走ってしまったのは不可抗力だ。

 

だからそんな怖い目を常闇さんに向けないで峰田さん。

 

 

 

――握力――

 

 

 

割と純粋な力を試されるこの種目だが、ここでも私は個性が活きる。

 

だが、ここで『私は握力が弱い』を反転してしまうと、この時点でかなりの精神力を消費してしまうことになる。

 

この後の種目の為に精神力は温存しておきたい所だが、ならばどうするか。

 

答えは簡単。

 

『私が手を握る時の圧力が弱い』を反転すればいいのだ。

 

何故、と思う方に説明しよう。

 

この2つの事象については決定的に違う点があり、それは『対象が()()()()()()()()()()か』である所だ。

 

私の個性は対象が自分に近ければ近い程に消費する精神力が増える。

 

自分自身と自分が作る圧力では、この場合後者の方がローリスクになるという事。

 

屁理屈になりそうだが、これで個性がちゃんと発動出来てるので良しとしよう。

 

記録、左672kg/右684kg/平均673kg。

 

八百万さんに次ぐ2位だった、やはり万力には勝てない。

 

 

 

――立ち幅跳び――

 

ここは少々代償が張るが『私のジャンプによる距離が短い』を反転させて飛ぶ。

 

記録、20m43cm。

 

八百万さんの揺れるお胸を見て、あれ位あったらお姉ちゃんも悦ぶかなぁと思っていたら後ろから耳郎さんが、

 

「大丈夫だよ……渡我さんもまだ成長期が始まったばかりなだけだから……きっと……」

 

と遠い目をして話しかけてきた。

 

私が数日寝込むというデメリットを介するならば理論上は可能だ、という言葉をぐっと飲み込んで、耳郎さんの背中を擦っておいた。

 

なお身長的な問題で耳郎さんには屈んでもらった。

 

(周囲からの生暖かい視線が)解せぬ。

 

 

 

――前屈――

 

 

 

ほぼ梅雨ちゃんと八百万さん、轟さんの戦いだった。

 

梅雨ちゃんは舌を伸ばし、八百万さんは鉄の棒を手から出し、轟さんは手から氷を出しと。

 

私?平均ですがなにか?

 

記録、15cm。

 

 

 

これでテストの半分が終わり、あと残っている種目は……反復横跳びに上体起こし、ボール投げ(私は除く)と持久走。

 

多分大丈夫だけど、不安なのは持久走かなぁ……

 

順位を保つ為に個性の使用はほぼ必須だし、それに持久走はラストだ。

 

これは使い方を考えなければいけなさそうだ。

 

……所で、上体起こしのペアって誰だろう?




よろこぶ、の漢字が違う?いいえ、間違っていません(鋼の意思)


やはりこう見るとかなり万能ですよね、反転。
しかし握力で説明したように、(例として挙げますが)『自分のパンチ力を反転する』と『自分のパンチで起こる圧力の弱さを反転する』では後者の方が圧倒的にコスパが良いんです。
同じパンチでも後者の方が楽に扱えるし、遠距離攻撃としても使えるという点もありますがね。


そして豊胸ですが、これは事実。
現在の精神力を数値化したときに18000だとするならば、豊胸は大体25000必要になります。
前に感想であった様に性転換も出来るには出来ますけど50000は軽く超えます。

はい、確実にぶっ倒れコースですね。

毎日ぶっ倒れて精神力を増やしているにも関わらずそれでも足りないとなると『胸の大きさ』や『性別』といった概念に関わる反転はかなりのハイリスクであることが解るかと。


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体力測定:アクセラレーション 2

オリジナル展開と原作相違点入ります。

ハルちゃんの恍惚とした表情を想像するのだいすきです(末期)


10分の休憩を挟んでいる間。

 

「なぁ」

 

木陰に座って休んでいる私に向かって、声が掛かる。

 

「はい、なんですか〜?えっと……」

 

「……轟焦凍」

 

赤色と白色の髪が真ん中できっちり別れ、左目の周囲を火傷痕でいっぱいにした物静かな少年。

 

かなりの闇を抱えた結構な曲者がなぜ突然私に……?と思うが、まずは自己紹介。

 

「轟さんですね、私は渡我反榴です!」

 

「渡我か」

 

「……」

 

「……」

 

そうして訪れる居心地の悪い沈黙。

 

お願い早く喋って、この空気耐えられないの。

 

「……その、なんだ。()()()、か?」

 

「―――はぇ?……あー」

 

そう言って、轟さんと自分の間で視線をうろうろ移動させて、そういう事かと思い至る。

 

確か彼は個性婚によって産まれた子で、父であるエンデヴァーに強い憎悪を持ち。

 

母からは「お前の左側が醜い」と煮え湯を浴びせられてしまうという過去を持っている。

 

その過去と私のこの傷跡を見て、どこかシンパシーを持ったのだろうか。

 

「うーん……お前も、というと轟さんにも何かが?」

 

「………まぁ、な」

 

その言葉に、私は驚かない。

 

「……深くは聞かねぇんだな」

 

「いえ……どうせ他人が介入してどうこうとなる話題ではないと思うですもん。かと言って何も言わない訳でもないですが……」

 

そこではぁ、と一息置いて。

 

「……私のお姉ちゃん、重度の吸血愛好(ヘマトフィリア)なんです。そして、それに応ずるように私も被虐愛好(マゾヒスト)で」

 

隣で、小さい呼吸の音が聞こえた。

 

「以前まで両親はお姉ちゃんを非難して私を溺愛してましたけど、私が()()だと解った瞬間に二人共家に帰らなくなってしまいまして」

 

「……お前、それ」

 

轟さんの短い言葉にあははと笑いながら頷く。

 

「育児放棄、ってやつですね。11年間、私とお姉ちゃんは親の顔を写真でしか見てないです」

 

その言葉を発した一瞬だけ、風が強くなった気がした。

 

「轟さん。そうして家に帰らなくなった親を見て、果たして私はどう思ったか……解るですか?」

 

と、ここで休憩時間の終わりが差し迫っている事に気付いて立ち上がる。

 

よいしょっと、と短く呟いて、轟さんの方を向く。

 

 

「―――『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()』、ですよ」

 

 

きっと私の顔は、恍惚としたものとなっているだろう。

 

しかし轟さんは何も言わず、私の話に耳を傾ける。

 

「私は私の事を愛してくれているお姉ちゃんの為に、お姉ちゃんにだけ向ける愛と本音をお姉ちゃんにだけ曝け出して、私の大好きなお姉ちゃんの為だけにヒーローになるのです。とても不純で、自己中心的でしょう?―――でも、それが私の『なりたいもの』なのです」

 

みんなが集まって来ているから、この話もそろそろ終わりにしようかな。

 

「轟さんは、()()です?……って、所ですかね」

 

「……あぁ」

 

「ほら、集まってますし私は行くですよ〜?」

 

さっさと話を終わらせてつったかたーとその場から離れる。

 

 

 

「………」

 

その後ろで、轟は小さく歩きながら思案した。

 

個性婚へ対する親父(エンデヴァー)への憎悪と母への哀しさが混ざり、絡まった糸のようになって脳内を搔き乱す。

 

そんな頭の中をリセットするようにため息をつくと。

 

「………―――なりてぇもん、か」

 

誰にも聞こえない声量で、そう呟いた。

 

 

 

 

 

―――とまぁ、若干のイベントはあったが、気を取り直して個性把握テストだ。

 

反復横跳びと上体起こしは正直な所特筆すべき所も無いのでカット。

 

……あ、記録?

 

反復横跳びが17回、上体起こしが18回だった。

 

うん、平凡。

 

そしてその後のボール投げも、一部を除いて普通な感じではあった。

 

緑谷さんが個性を抹消されて二回目の投げで人差し指をバキバキにしながらも爆豪さんの記録と並んだり、麗日さんが二人目の∞を記録したり。

 

いやでも八百万さん、大砲は流石に。

 

まぁ個性で創ってるから駄目なわけではないけどもさ、なんか一人だけ違う事してるのよそれはもう。

 

流石推薦入学者と言うべきか、笑うしかねぇと言うべきか。

 

あぁでも良かった持久走は皆思い思いに走って―――

 

 

「「「バイクだぁぁ!!?」」」

 

 

「え、免許は……????」

 

―――いや一人だけ別の事してる人居たよ。

 

いやまぁ酸で滑ったりエンジンで速度上げたりしてる人も居るけども、流石にそんな文明の利器が突然出ると思う?

 

出てきたんだよねぇ……

 

緑谷さんがぼやいていたけど、ほんとに免許は大丈夫なの??

 

あっ、一応原付の免許持ち?家に保管してある原付バイクを模した?

 

それなら大丈夫だね!(思考停止)

 

「―――じゃなくて、です」

 

「はっ、はい!?」

 

グリンッ、とホラーゲームさながらの回転速度で前の八百万さんから緑谷さんへと顔を向けた。

 

突然話題を振られた彼が固まったまま走るという奇妙な芸当を見せたところで、話を続ける。

 

「緑谷さんは大丈夫なのです?その指、中身がボロボロなんですよね?」

 

「ゔ、それは……その……はい……

 

真っ向から指摘された彼が萎びた風船みたい(イメージ)に縮んでいく。

 

私と指を負傷している緑谷さん、そして峰田さん等最下位組はかなり先発と離されている。

 

だからこの中でも必死に最下位争いが起こっているのだが、何をどうしようと峰田さんは私と緑谷さんの後ろ―――つまり最下位に居る。

 

どうしてだよぉぉぉ、と後ろで叫んでいるが考えないことにした。

 

 

閑話休題(話を戻して)

 

 

ここで私が緑谷さんの個性(ワン・フォー・オール)について喋ってしまっても良いが、それだと機密を知ってるとかいう感じで普通にアウトだ。

 

だからこういう場合は―――

 

「増強型……それもかなりの自傷デメリットですか?」

 

「うっ、うん……上手く行けばその自傷もなくせるんだけど、まだ使いこなせてなくて……」

 

「ほぉー……でしたらやはり、地の強化と制御イメージの確立が最優先ですね」

 

こうして、それとなくアドバイスをする。

 

「うんっ……トレーニングは毎日欠かさずやってるけど、イメージの方はまだ全然……」

 

イメージ……電子レンジの中の卵、だったっけ?

 

「……参考程度に、どんなイメージですか?」

 

「…………電子レンジの中の卵が、爆発しな」

 

「その人教えるのに向いてないですね」

 

「ゔッッッ」

 

おっと、本音が。

 

 

 

 

 

―――ちなみに、除籍はちゃんと嘘だった。

 

順位は私が5位で残りは原作とそう変わらなかったのと、合理的虚偽って言う時の先生のしてやったり的な顔が印象的だった事を残しておく。




原作との違いは
・轟君がヒーローになろうとした理由について考え始めるのが早い(普通は体育祭の1v1の途中位から)
という点です。

元々身体に傷だらけだったハルちゃんに、どこかシンパシーを感じた轟君が話しかけそうだったので、ここにブチ込ませて頂きました。
ですけどこの会話を介してもそんなに大きく変わる訳ではないです。
ジャンプですから、殴り合わないと解らない事だってあるんですよねきっと。



ちなみに二人が峰田君よりも前を走り続けられたのはハルちゃんがこっそりと『峰田さんは私と緑谷さんよりも走る速度が速い』を反転していたからです。
正直ここで峰田君が持久走最下位になろうが緑谷君の総合最下位はほぼ確定なので、それならちょっと位ちょっかいかけてもいいよねーというハルちゃんの悪戯思考ですかわいい。


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帰宅:マイスイートホーム

珍しく二話構成ではないです。

相澤先生のおはなし。


放課後、1-A担任である相澤消太は書類を纏めた後に小さく息を吐いた。

 

生半可な覚悟でヒーローになられても良くない、"最高峰"から一度でも落とされる経験を糧に二度とブレない意志を持って這い上がってきて欲しい。

 

そんな思いを(口には出していないが)ぶつけ、校長から除籍の権限をもぎ取り、去年度はクラス全員を除籍処分にした。

 

今日のテストだってそうだ。

 

彼は本気で除籍処分にするつもりだった。

 

だが、ソフトボール投げの時の彼―――緑谷出久。

 

オールマイトから受け継いだワン・フォー・オールという、彼にとっては()()()()()()の個性。

 

全力でやれば腕や指を確実に使い物にならなくさせるような個性を、彼は贔屓しなかった。

 

だから、だ。

 

 

『先生……まだ、やれます……!!』

 

 

『――――――()()()

 

 

「…………ガキか、俺は……―――いや」

 

あの時の(緑谷)が、()()()()()()()()()()

 

洗練されていた理解速度と発展思考力、そして活用能力。

 

オールマイトからまとめノートとやらを聞いたときは若干引いたが、これが良く出来ている。

 

幼馴染と言われる爆豪の個性でさえ極限まで解析されていた。

 

俺のもあったのは流石に引いたが。

 

いや中身の事はどうでもいいのだが、無個性だった彼が()()()()見て、あの一瞬で()()()()()考えたのだ。

 

……まぁ、途中聞こえてきた「電子レンジの中の卵が爆発しないイメージ」とかいう素人感満載なアドバイスはどうせオールマイト案だろうが。

 

―――兎に角。

 

あの瞬間、彼は俺の考えの向こうに行ったのだ。

 

そう、P()u()l()s() ()U()l()t()r()a()

 

そんな瞬間を見た奴の誰が彼を除籍にできる?

 

居るわけ無いだろう。

 

あのとき芽生えた可能性を摘むなど、プロヒーローの風上にも置けない。

 

 

 

―――そこまで思案して、大きく溜息をつく。

 

首をぐるぐると回し、ゼリー飲料の蓋を開けた。

 

……と、そういえば。

 

ヂューと勢いよくゼリー飲料を飲みながら、とある資料を探す。

 

引き出しの中にファイリングされた、今年のクラスの名簿。

 

しかしその中には、()()()()()()()()も記されている。

 

その中をペラペラと捲り、ある地点で止める。

 

そこは彼女―――『渡我反榴』のページ。

 

身長が124cmとかなり小柄で、それに合わない制服のサイズは姉の指定。

 

理由は将来の成長の為だが……来るのか不安になる所。

 

そして、その下の欄……入試成績を見、再三溜息をつく。

 

 

「(……なんなんだ、()()()()()()とか)」

 

 

国100点数150点英150点理100点社100点の600点、それを上限きっかり。

 

そんなの見た事が無い。

 

何度間違いかと思ったか。

 

何度模範解答と筆記解答を見比べたか。

 

何度校長に確認を取ったか。

 

しかし、信じるしかないのだ。

 

彼女が推薦入試を抜きにしても国内最難関の高校入試を首席合格したことを。

 

……というか、なんだあの腕の夥しい傷跡。

 

俺でさえ二度見したぞあれ。

 

顔と雰囲気からして虐待とかそういう類のものではないとは思われるし、女子の反応もそれとは違いそうだ。

 

むしろなんであんな赤面してたんだ女子は。

 

そしてその中心であろう渡我本人は何故そんなに平然としてられるのか。

 

しかしそれを本人に聞き出すのも教師としてどうかとなる為、聞けないのが現状。

 

爆豪緑谷轟とやべぇやつらをA組に組み込んでしまったが。

 

 

―――お前もか、渡我。

 

 

ついた溜息の数はもう、数えないようにした。

 

 

 

 

 

―――そんな、『NEW A組のやべぇやつ』と先生から断定された渡我本人は。

 

 

「おねぇちゃぁ〜〜ん♥」

 

 

「はるちゃぁ〜〜ん♥」

 

 

自宅で姉とこれでもかという程にいちゃつき始めていた。

 

帰ってきて早々お帰りのキスを何回かし、その後欲が爆発しないように程々にしながら姉と抱き合う形でリビングへドナドナされる。

 

「ハルちゃんは今日何をしてたんです?」

 

よっこいしょ、と姉の膝の上に座って向かい合い、適切な距離(個人差)を保った私は今日あったことを思い出す。

 

「うんと……個性をつかって体力テストをしましたね」

 

「個性を使って!成績は、どうだったの!?」

 

目をキラキラさせながら顔を近付けてくる姉にドヤ顔を崩さず―――いやちょっと崩して、

 

「5位でした……やはりみんな凄かったですよ〜」

 

そこからは、クラスメイトの個性の話題になった。

 

八百万さんが創り出す個性で万力を作って握力計を壊したり、峰田さんが葡萄みたいな個性で反復横跳び一位だったり。

 

それで、一番の話題が。

 

「ボール投げの時、お姉ちゃんが好きそうな人居たですねぇ」

 

「なにそれ誰!?」

 

勿論緑谷さんのことなのだが。

 

この話をした途端に姉の顔はさらに近付き、鼻が触れるほどにもなる。

 

これは見えてないなぁ、と即座に理解した私は姉の唇をちゅっ、と塞ぎ、

 

「お姉ちゃん、まずは落ち着くですよ〜?」

 

そうすれば、姉は顔を真っ赤にして適切な距離(個人差)に顔を戻す。

 

「ぅ、はい……」

 

はーーーーーーー可愛い。

 

可愛すぎて心がきゅんきゅんしてぴょんぴょんしてます。

 

今すぐちゅっちゅしてもっといちゃいちゃしたい。

 

―――じゃなくって。

 

「えっとですねー、その人の個性は増強型なんですけど―――」

 

 

 

 

 

「……ハルちゃんは、トガの好みを良く解ってるのです」

 

そんな子にはデザートにプリンがありますよ、という続きに、やったぁ〜と両腕を上げる。

 

「……あ、そうでした」

 

「?」

 

と、プリンに現を抜かすのも良いのだが。

 

「お姉ちゃぁん……私の制服、とってもおっきかったんですけどぉ……?」

 

珍しく目を開いてジト目を作り、薄笑いで姉を見る。

 

「……えっとー……」

 

「ぶかぶかだったんですよ〜?なんでか教えて欲しいですね〜?」

 

目を逸らした方向に身体を向けながら袖をばっさばっさと振り、左を向いた姉に追従し。

 

ねー?と問い掛けながらあっちにうろうろ、こっちにうろうろ。

 

「……ハルちゃんのぶかぶかな制服、カァイイじゃないですか」

 

「許します」

 

「やたー!!」

 

そして口を割った瞬間に手の平コペルニクス的転回。

 

原作の緑谷さんさながらだな、これは。

 

「えへへ、ぶかぶかハルちゃんカァイイよぅ♪」

 

「んみゅぅ、むふふ」

 

―――しかしまぁ、ほんとに勝てないものだ。

 

頬紅くして恥ずかしがりながら言われたらそりゃ許さざるを得ないでしょ。

 

にまにまと笑みを浮かべる姉に両頬を弄ばれながら、私はうんうんとその話を自己完結させた。

 

さて、今日の夜ご飯は……あっ、シチューだ〜♪




相澤先生の気苦労(主にA組のやべーやつら)と、そのほぼ中心にいるであろうクソレズ合法ロリオリ主のお話でした。

たぶん相澤先生が考えるシーンとかは作者様によって個人差が出るんではなかろうかと思われるこの頃。
ハルちゃんは前世の知識チートがあるので筆記など軽々ですね、本人は間違いがあると勘違いしてるようですが。


ところでもちもちのほっぺっていいですよね。


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授業:ルベライト

授業。

ランチラッシュのカツ丼が食べたいです。


雄英高校の授業は、基本的に午前と午後で大きく分かれる。

 

午前は国数英など必修科目とその他科目の通常授業。

 

今日は現代文と英語だ。

 

先程セメントス先生が担任の現代文が終わり、現在はプレゼント・マイク先生が担当する英語なのだが。

 

『んじゃ、次の英文で間違っているのは……ヘイミニガール!』

 

「これ以上ミニガールって呼ぶなら発言しないですよ?」

 

『アッハイ……じゃあ、渡我ガール』

 

まったくもう…………4番ですね」

 

『オゥイエス!ここの文だけ関係詞の位置が一個前にズレてるぜ、見間違えんなよ!』

 

「「「「(普通だ)」」」」

 

かなりテンションが高い以外には特筆することのない至って普通の授業だったと記録しておく。

 

 

 

その後は昼食。

 

学食はランチラッシュが特性の食事を作ってくれるとのことだが、生憎と私には姉から貰った愛情たっぷりのお弁当がある。

 

が、ランチラッシュのご飯はかなり気になるのが正直な所。

 

―――という事で。

 

「7人分の席、空いてるかなぁ……」

 

「ランチラッシュの学食、とんでもなく美味しいって噂だからねぇ」

 

「お姉ちゃんのとどっちが美味しいんでしょうか……」

 

「私の家のコックとも……あら渡我さん、涎が垂れてますわよ」

 

「うにゅう」

 

A組女子全員集合、in学食だ。

 

というか、ひっろいのだここの学食。

 

ワイワイガヤガヤと談笑する声の中、割と広めの席を頂いた私は取り敢えずみんなを待つ。

 

私は行かないのか、と聞かれるが私は何故か皆から分けてもらえる事になったのだ。

 

皆から貰うと思うとなんだか申し訳ないが、皆から気にしないでと言われたので有り難く頂くことにする。

 

はい閑話休題。

 

皆が食事を取りに行っている間、私がやる事と言えば姉との通話かメッセージ。

 

どうやら今日はメッセージのようだ。

 

今はクラスメイトと学食です、と送れば『後で写真送って〜』という返信と共にだらけた猫のスタンプが。

 

「うにゅうえへへ……」

 

やばい頬が緩む、愛おしすぎておかしくなりそう。

 

地面に着かない脚をぶんぶんと振って落ち着かせる。

 

「そろそろ戻ってきてもいいんですがね……あ、来ましたね」

 

「ただいま〜!」

 

と、ちょうど良いタイミングで皆がお盆を持って戻ってきた。

 

芦戸さんは生姜焼き定食、麗日さんと梅雨ちゃんはそれぞれ焼鮭と焼き鯖定食、耳郎さんはチキンカツ定食、葉隠さんはラーメン、八百万さんはサラダに弁当。

 

ここからでもいい匂いが漂ってくるのは反則だと思う。

 

「すごいおいしそうです……」

 

「あぁまた涎が」

 

「むにゅう」

 

「だねぇ、ほんとに美味しそうやね!」

 

「それでそれでっ、反榴ちゃんのお弁当も!」

 

そうだった、早く開けなきゃ。

 

芦戸さんに急かされて桃色の弁当箱、その蓋をいそいそと開ける。

 

小さい箱の中の半分を占める白米と、残り半分に詰められた卵焼きに野菜。

 

そして―――

 

「ハンバーグだ!凄い手が込んでるねぇ……」

 

わぁっと声を上げた葉隠さんの言うとおりだと思う。

 

ソースに絡まれたパスタが良い色になっているのも乙だ。

 

「今日も朝から焼いてたですねぇ……すっごく美味しそうです」

 

「えっ、それ昨日の残りとかじゃないの?」

 

「むふふ……昨日の夜ご飯はシチューだったのですよ、耳郎さん」

 

「うはー……家庭的というか、万能というか」

 

そう、私のお姉ちゃんは凄いのだ。

 

自分の事ではないが、とても嬉しくなる。

 

「反榴さんのお姉さん、料理がお好きなんですね」

 

「ですです。それにしても、八百万さんのお弁当も凄いですねぇ」

 

「ふふ、反榴さんがお姉さんを自慢するように、私もシェフを自慢するのですわよ」

 

隣に座る八百万さんが、慎ましく胸を張る。

 

動作が可愛い。

 

「ささ、食べよ食べよ!アタシからはお肉を一枚〜♪」

 

と、皆で褒める時間は終わり。

 

あまり長く話しても時間が押してしまう為、私達は手を進める事にした。

 

「私も私も!ラーメンあーんしたげる!」

 

「わぁ〜い♪」

 

ランチラッシュの美味しいご飯とお姉ちゃんの美味しいお弁当を頬張りながら、鯖ってあったかなぁ、と私はふと思った。




姉とのメッセのやり取りででろでろに頬を緩める合法ロリのハルちゃん
ヤオモモに涎を拭かれる合法ロリのハルちゃん
クラスメイトからのあーんで嬉々とする合法ロリのハルちゃん

今回はこの三本立てでお送りいたしました。(小並感)


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戦闘訓練:バーチカル

戦闘訓練。

多分最初期のヒロアカの中で二番目に書きたかったところです。
一番目?体育祭ですがなにか()


午後。

 

 

「わーたーしーがー!!

 

 

普通にドアから来た!!」

 

という元気な決め台詞と共にやって来たオールマイトの指示により、ヒーロー基礎学が始まる。

 

今回は最初の科目という事で、オールマイト主導の元戦闘訓練をすることになった。

 

そして押されるボタンと共に壁から迫り出される戦闘服(コスチューム)

 

入学前に要望されたものを元に製作された服の入ったケースがぎっしりと詰まっており、ここにも雄英のハイテクノロジー感を覚えさせられる。

 

「着替えたら順次グラウンドβに集まるんだ!」

 

その一言でオールマイトはさっさと戻っていってしまう。

 

その姿はどこか急いでいるようで。

 

まぁ私はその理由も大体解るのでほーんと呟くだけだが。

 

まぁそれよりも、だ。

 

「要望通りですかねぇ〜♪」

 

そんな呟きを残し、コスチュームを障子さんに取ってもらった私はスキップで更衣室に向かうことにする。

 

障子さんからの優しい目はもう、気にしない事にした。

 

 

 

 

 

―――急いで着替えたと思ったのだが、もう既に男子の何人かはそこに到着していた。

 

「あらら、皆さん早いです〜」

 

「ムッ、渡我か…………よく似合っている」

 

「ありがとうございます〜、障子さん!」

 

そのうちの一人、障子目蔵さんが私に気付いて複製した口を伸ばす。

 

この複製腕、とても便利である。

 

索敵と俯瞰はお手の物、腕にもなるし口にもなる。

 

チェンジャーでもつけたらかなり幅も広がりそうな気もする。

 

そして短く褒められた私の戦闘服を見やる。

 

この服装はいわゆるクラシカルロリィタという種類で、その中でも黒をベースにしたものに。

 

服の胸元は縦に白くタックは真ん中に3列あり、金色の刺繍がされた襟の先には胸元で蝶々結びにされた黒ベースネクタイ。

 

真ん中以外黒い部分は白い部分とはボタンでくっついており、裾の方には小さく黒いリボンがあしらわれ、下に着ている(というかくっついているというか)パニエがスカート部分の膨らみを強調している。

 

長袖の先は少し余裕を持たせてぶかぶかの萌え袖にした。

 

ハイソックスとブーツは真っ黒で、これも服に合わせてだ。

 

それにプラスして、頭には修道服に付いているベールを被っている。

 

クラシカルロリィタと修道服の夢のコラボレーション、一度やってみたかったのだ。

 

着換えた後すぐに写真は撮っておいたので、帰ってからお姉ちゃんに見せる予定である。

 

と、そんなことを考えているうちにクラスメイトが揃ってきた。

 

私もぽてぽてと小走りで皆の元へ。

 

「麗日さんの戦闘服(コスチューム)可愛いですね〜」

 

「そ、そうかなぁ……私のすっごくぱつぱつだし……でもっ、渡我ちゃんのも可愛いよ!」

 

「ほんとほんと!小説のお姫様みたい〜!」

 

「悔い改めましょう……みたいなですかね?」

 

そう言って両手を組めば、芦戸さんと葉隠さんがきゃーと可愛い声を上げる。

 

「めっちゃ様になってる」

 

「ですわね……実用性はどうなのでしょうか」

 

「ふっふっふ……それは訓練でのお楽しみです♪」

 

そんな話をしていると、私達の前に巨漢の男性が。

 

そう、オールマイト。

 

「―――さぁ!始めようか、有精卵共!!戦闘訓練のお時間だ!!」

 

 

 

 

 

そんな訳で、訓練が始まる。

 

その前にオールマイト先生がカンペを読んで説明をし、聖徳太子を羨んだりと一悶着はあったが、それはそれで。

 

チーム分けの時間だ。

 

私は砂藤さんの代わりに来たけど、誰となるのかはまだ謎だ。

 

原作では口田さんだったが―――

 

「…………宜しく頼む」

 

「先程振りです、障子さん!」

 

今回は先程より何かと縁のある障子さんとのBチームだった。

 

父と子みたいな身長差だなぁ、と自分で言ってて凹んだのは内緒だ。

 

そんな私達に、(ヴィラン)としてJチームが相対する。

 

どうやら轟さんは砂藤さんのいたところに入り、Fチームになったらしい。

 

ほへぇそうなったの、と思いながら、障子さんの元へ向かい作戦会議を早速始める。

 

無論、一番最初に始めようと移動したA対Dの戦いを見ながらだ。

 

「昨日の把握テストでお二人の個性は割と解ってるのですが、障子さんから見てあの二人ならどういう戦法を取るでしょうか?」

 

今回私達はヒーロー側だ。

 

それを踏まえて、二人なら何ができるかをざっくり考える。

 

「…………瀬呂のテープを対象の周囲に張り巡らせ、その後二人で出撃が妥当かと思われる」

 

「やはりそうですね。ではこの際、窓も閉じられると思って良いかもです」

 

あぁ、と短く頷く彼を見て、更に続ける。

 

「恐らく型は切島さんがタンク兼アタッカー、瀬呂さんが遠距離の妨害」

 

「……俺はこの複製腕と…………渡我、お前の個性は一体?」

 

と、ここで私ははっとする。

 

「あっ、言ってませんでしたね。私の個性は「反転」というのですが―――」

 

 

 

「―――というわけです。()()を使って狙ってみましょう」

 

「心得た」

 

そうして話し終えた私は、両手に持った()()をとある場所に仕舞い込む。

 

これは、恐らく私達を勝たせてくれる要だから。

 

 

―――そうしてオールマイト先生の号令が響く。

 

 

結果は、Aチームの勝利だった。




この作品の障子君、割と喋ります。
原作ではチームメイトの轟君との会話はほぼなしだったのですが、今作は合法ロリというオリ主の存在、しかも障子君に物怖じしないという事で少し心を開くのが早いです。
ロリコンではなく、庇護欲というか父性というか。
優しい目線も一部は障子君だと言うことも発覚しました。
残りの一部?後々解りますよきっと。


衣装イメージは皆さんのご想像にお任せします。
でも可愛い事は確定です。
なので誰か描いて下さいお願いします(懇願)。


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戦闘訓練:バーチカル 2

この戦法、かなりよくできたものだと自負しております。

良ければ皆さんもどうやったのか予想して見てくださいね。


ヒーロー側と(ヴィラン)側はそれぞれ5分のインターバルを要し、その後号令を聞いて開始する。

 

「では……早速行ってきますね、お願いします〜」

 

ぽてぽてぽてぽてとビルに沿うような感じで()()()()()へと早速走り出した私を、複製腕の一個が見送った。

 

その間に他の腕は耳になり、壁にくっついたり色んな方向に伸ばしたりして周囲を探る。

 

その間に私は()()を終え、5分が経つ前には戻ってきた。

 

「ただ今戻りました〜!中はどうでしたか?」

 

「…………見たところ、最上階の角にある大部屋を拠点としているようだ。二人分の足音と会話も、先程の作戦とほぼ変わらずだな」

 

「目の方も大丈夫でしたか?」

 

「あぁ、窓にもテープが付いていた」

 

そこまで予想と同じならば、こちらとしてはこの上ない好都合。

 

「それであれば……はい、障子さん」

 

私はポケットに潜ませた袋を外し、障子さんに渡す。

 

「…………それか」

 

「えぇ、これに引っ掛かれば実質勝利です」

 

多分、目は開いていなくとも今の私は悪い顔をしているだろう。

 

それはそうだ、今からやるこの戦法はかなりトリッキーで驚かれる。

 

ギャラリーから個性含めてどう言われるか、楽しみだ。

 

「っとと、これでも便宜上ヒーローなのですから、表情はちゃんとしないとですね」

 

と、カメラがあることを思い出して頬をぐにぐにと解す。

 

私は爆豪さんじゃないですし、と続けたら障子さんが少し吹いた。

 

 

 

『スターート!!!』

 

 

 

そんな話をし終わったと同時に、オールマイト先生の号令が掛かったので、さっさと中に入ることにした。

 

障子さんを前にして私はその後ろを、足音を出さずに進む。

 

体格的にも、障子さんで遮られて誤魔化せるからだ。

 

『―――そろそろ来る、約3秒』

 

「了解です、手筈通りに」

 

通信機から来る声に短く頷き、障子さんが右腕を振りかぶる。

 

道は一直線で天井が高すぎず低すぎずの丁度良い位で、細道もなく窓もない。

 

向ける先は、今はまだ()()

 

「ほっと」

 

私が数歩バックステップをしたと同時、障子さんが袋を高く投げた。

 

その、2秒後。

 

「ッ、発見したぞ!!」

 

「了解っ!」

 

右の角から切島さんと瀬呂さんが順に出て、下と上からそれぞれ攻めようと迫る。

 

 

―――そこに。

 

 

「―――猫の爪(ショット=ネイル)

 

 

ヒュッ、という短い音と共に()()()()()繰り出される小さい物体。

 

それは手首から出て障子さんの左脇を通り、飛ばされた袋に吸い寄せられるように進み―――

 

ぱぁんっ、と茶色の中身を派手に弾けさせた。

 

「んなッ!?」

 

「っ、少し掛かった……砂?」

 

そう呟く瀬呂さんに、してやったりとニヤける。

 

後は、これだけ。

 

 

「では、二名様御案内です……座標反転(スイッチ)

 

 

「な、何―――」

 

「うおっ、待―――」

 

刹那、二人の姿が目の前から()()()()()

 

同時に出てきたのは、同じ砂。

 

自由落下運動に従いパサッと落ちた砂を見て、障子さんと目配せする。

 

「終わりです、核を取りに行きましょうか」

 

「了解した」

 

これまた短くやり取りを終え、迅速に建物を駆け抜ける。

 

―――と、遠くで男子二人の叫びと思われる声と、何かが派手に落下する音が聞こえた。

 

「…………成程、()()()()()()か」

 

「えぇ、大正解ですよ♪」

 

この音だけでどうやったかを察することの出来る障子さんは凄い。

 

そう感心しながら、私達はさっさと核に触れた。

 

 

 

『ヒーローチーム、WIIIIN!!!!』

 

 

 

 

 

試合後、地下のモニタールームにて。

 

「―――さて、今回のMVPは誰だと思う!?」

 

オールマイト先生の言葉に元気溌溂なヒーローチームと細かい擦り傷が目立つヴィランチームを見やり、満場一致で。

 

 

「「「「渡我さん(ちゃん)です(だな)」」」」

 

 

障子さんもうんうんと頷いて応える。

 

「何やってるのか解んなかったけど、積極的に障子に話し掛けてたって事は多分渡我の案じゃね?」

 

「始まる前に何してたのかとかも含めてそうだと思う!」

 

「うん、そうだね!私も今回のMVPは渡我少女だと思う!……して、これはどういった作戦でどのような事をしたのか、良ければ説明をしてもらえるかい?」

 

上鳴さん、芦戸さん、オールマイト先生の順でそう言い、私に繋がれる。

 

はい、と短く頷いて少し言葉を選ぼうと考えた。

 

「そうですね……今回の作戦では、『制圧』することではなくより安全に核を『回収』することを視野に置いたのです。それを含め、瀬呂さんと切島さんペアは前者が妨害と遠距離攻撃、後者は近距離と防御という比較的バランスの取れたチームでした」

 

その言葉に、クラスメイトがうんうんと頷く。

 

「きっとお二人はテープで部屋と核を守り、その後攻めてくる筈です。ではそのバランスをどう崩すか……という点ですが、それが開始前のあの行動でした」

 

「ウーム……それがだね渡我少女、実はそこ、カメラが回りきってなかったからあまり解らなかったんだ!何をしていたんだい?」

 

それを聞いて、そうだったんだと理解する。

 

それなら解らなくて当然だ。

 

「核のあるビルから約4軒離れたビルに(トラップ)を仕組んだのです。最上階の一個下の広場に座標を置き、ビルの材質に『どんな衝撃が掛かってもこのビルは崩れない』という要素から個性を使用し、特大の檻にしました」

 

ここで半分のクラスメイトが感嘆し、もう半分が疑問を持つ。

 

「話の腰を折って申し訳ない、渡我君の個性は一体何なんだい?」

 

「あ、そうでしたね飯田さん。言うのを忘れてました」

 

と、ここまで話してきて肝心なことを忘れていた。

 

頬をぽりぽりと掻きながら私は話す。

 

「私の個性は『反転』。色々なものの色々なことを反転させられるのです……例えば、オールマイト先生」

 

「ム、なんだい!?」

 

突然話を振られた先生は軽く驚くが、すぐに落ち着いて応答する。

 

「この砂を手に持ってもらってもいいです?」

 

「あぁ、構わないよ!」

 

そして彼から離れたところに砂の山を盛り、少し離れる。

 

「これは応用した個性の極一部ですが……座標反転(スイッチ)

 

刹那、砂の山とオールマイト先生の位置が逆転する。

 

「おぉ!?」

 

先程も見た光景だが、皆はこれでも未だに現実味の無さを隠せなさそうな顔をする。

 

それは驚くだろう、何せこれは擬似的な瞬間移動なのだから。

 

「この砂は私が事前に『この砂は個性の影響下に無い』という要素を反転させたもので、これを使うことである地点ともう一つの地点にあるものを砂を通じて反転させる事が出来ます」

 

「つまり、罠を仕掛けたビルにその砂を置いた後に彼らへともう一方の砂を掛ける。その後にその入れ替わりをすれば、(ヴィラン)は遠くに飛ばされ罠に掛かり、自分達は安全に核の回収が出来る訳ですね!」

 

「はいっ、そういう事です八百万さん!」

 

そこで計画の全容を理解した八百万さんがそう言い、クラス全体からおぉーという声が上がる。

 

相変わらず完璧な推理、感服します。

 

「つーか俺ら、障子しか見えてなかったな……」

 

「体格差で綺麗に隠れて全くわからんかったし」

 

「ふふっ、そこも計算済みです♪障子さんは目と耳で位置の把握と盗聴、更に砂を掛けるときの死角としてもお願いさせて頂きました!」

 

改めてありがとうございます、と感謝すれば、優しい目のままでうんと頷かれる。

 

「ウーン、体格差やそれぞれの個性を活かし、ビルや核に大きな損傷も無く極めて安全に立ち回れたね!悪い所のない完璧な作戦だった!勿論負けてしまった(ヴィラン)側の作戦やフォーメーションも良かったよ!という事で、この場の四人に拍手!」

 

そうしてわーっと喝采を浴び、私達の試合は終わりを告げた。




この身長差ペア、かなり良いなと思っております。

なおこの合法ロリオリ主、10年の修行で普通に必殺技を会得している模様。



余談ですが、左手首から出したものはBB弾です。
本編内でもあったように、座標指定にする砂を付着させる為に袋の中身を遠くでもぶち撒けるような仕組みを、という要望の元作られました。
手首を返した状態で標準を合わせて撃つ感じです。
こちらは投げた先にある袋を正確に当てられるように特殊な磁石が使われており、袋とBB弾以外には基本くっつかないように出来ています。

袖がぶかぶかな理由は半分がこれです。


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戦闘訓練:バーチカル 3

戦闘訓練、その後。

ぽてぽてっていう擬音で走るハルちゃん(戦闘服Ver.)をイラストにしてくれないかな誰か(願望)


―――あれから。

 

轟さんは左を使わないと決意させるようなコスチュームでビル全体を凍らせて勝利し、梅雨ちゃんと常闇さんのスキのない連携で青山さんと芦戸さんを終始圧倒させたりとそれぞれがそれぞれの戦法を駆使して訓練を続けていく。

 

その間、爆豪さんは何も言わずにスクリーンをじっと見つめるだけだった。

 

自尊心の塊である彼に、あの戦いは相当堪えたのだろう。

 

言葉を発さず、周囲の喧騒に一切の反応も見せずにただただスクリーンの一点だけを焼き切れそうな程に見つめる彼には、一種の信念さえ感じられる。

 

ナードと言い続けて下に見ていた緑谷さんに動きを読まれ、対決で負け、そこにプラスで八百万さんのあの酷評。

 

更に言えば轟さんのあの圧倒的な個性。

 

それを見せつけられれば、彼のちっぽけな自尊心など安易に砕かれる。

 

現在は上鳴さんと耳郎さんのペアがヒーロー側で、八百万さんと峰田さんのペアが(ヴィラン)側だ。

 

私は気付かれないように爆豪さんを見、そして彼にぎりぎり聞こえるように。

 

「麗日さん芦戸さん、これが終わったら放課後に反省会でもするです?クラスで色々な意見もあるので、今後に役立つと思うのですよ」

 

「あっ、いいね!アタシ他にやりたい人居るか聞いてみる!」

 

「ウチも参加しよっかなぁ……反省点多かったし」

 

「人それぞれですよ、私とてこういうのは初めてですし」

 

そぉ……?と凹む麗日さんをフォローする。

 

まぁ、私が言うのもどうかとは思うのだが、それはそれ。

 

私も完璧ではないのだ。

 

「さて、この試合も終わったし、あの四人に講評を伝えたら全員で入口に集合しよっか!」

 

そんな私達に、オールマイト先生から声が掛かる。

 

気付いたらあの四人も終わっている。

 

どうやら(ヴィラン)側の勝利で終わったようだ。

 

「―――お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我もなし、しかし真摯に取り組んだ!初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」

 

出口前、全員が集まりオールマイト全員の声に耳を傾ける。

 

やばい、後ろに来ちゃったから姿が見えない……!

 

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業……なんか拍子抜けというか……」

 

「真っ当な授業もまた私達の自由さ!……それじゃあ私は緑谷少年に講評を聞かせねば!着替えて教室にお戻り!」

 

呟いた誰かの声にしっかりと返答したオールマイト先生は、そう言うとさっさと戻ってしまった。

 

急いでいるように見えるのは、時間がないからだろうか。

 

この後リカバリーガールに怒られるんだろうなぁとか考えながら、私は更衣室へ向かう麗日さんと並んで。

 

「教室に戻ったら、先に反省会をしてもらってもいいですか?」

 

「ん?いいけど、どうしたん?」

 

戦闘服(コスチューム)に関する質問を相澤先生に聞きに行こうかなと」

 

目的はもう一個あるのだが、それは言わなくてもいいだろう。

 

「えっ、反榴ちゃんの戦闘服(コスチューム)ってあそこからまた変わるん?」

 

「今すぐにとはなりませんが……もう少し遠距離での手数を増やしたいなぁと思ったのです。砂だけだとまだ乏しいなぁって」

 

そうなんだぁ、と返す麗日さんに、更に続ける。

 

「右手首にワイヤーフックを付ければ、いざというときの逃げにも即席の命綱にもなるしで良いですもんねぇ……他にも近接武器を仕込んでおけば近付かれても割と対応出来ますし」

 

「もうそれ暗殺者やんけ!」

 

ブハッと麗日さんの吹く声にふふふと微笑み返し、私達は着替えを進めた。

 

 

 

 

 

放課後、用務員みたいな体型(トゥルーフォーム)のオールマイト先生を横目に相澤先生の元を尋ねる。

 

戦闘服(コスチューム)のサポートアイテム追加に関してはパワーローダーに一任してるからそっちに行け」

 

視界の端でタイピングに苦戦しているオールマイト先生がちらつく。

 

「……解りましたです」

 

特徴的な髪とぶかぶかな服とが完全に()()姿()になるために拵えたとしか言えず、違和感と実際見てみるとほんとなんでここにいるんだろうという困惑が頭の中を満たす。

 

「……どうした」

 

なんかもう我慢できないので、出来るだけ小さい声で、

 

「いえ、そのぅ……相澤先生、どうしてオールマイト先生があんなに痩せておられるのです?

 

「!?」

 

「ぴっ!?」

 

言ったら相澤先生、問答無用で個性使ってきたんですが。

 

首がグリンって、90年代の3Dゲームみたいな動きしてたんですけどすっごい怖い。

 

「……どうしてわかった」

 

かなり小声なのに顔がすっごく怖いです先生。

 

「いえ、あのダボダボな服は増強型の典型的な悩みである『服にお金が掛かる』を体現してるのです。それで教員の中であの姿の人を誰一人見たことなく、髪型で予測できる人と言ったら……オールマイト先生、ですよね?」

 

オールマイト先生の個性は何か解らなくとも、シンプルな増強型であることは察しがつく。

 

それが身体全体に及ぶのであれば、オールマイト先生のあの痩せた身体にも合点が行く。

 

「……はぁ…………絶対、バラすなよ」

 

前世の知識と見た限りの推理を駆使して説明すると、押し殺したような声で釘を差される。

 

私はそれに頷くしかなかった。

 

やはりプロヒーロー、現実で実際に見つめられるとかなり迫力がある。

 

今はオールマイト先生に対し苦言を呈しているが、たった一挙でそんなに雰囲気変わるのか。

 

「…………まだあるのか?」

 

「あっいえ、ないです、すみませんです」

 

じっと見つめてたな、と思い早足で失礼しました、と職員室を後にする。

 

多分先生からの警戒レベル上がったな、と思いながら。

 

 

 

―――そして、戻って反省会に参加しなきゃ、と早足で教室に向かうその途中。

 

「ぷわっ」

 

「あァ?」

 

よりにもよって爆豪さんと鉢合わせた。




※この合法ロリオリ主も爆豪君の自尊心をブチ壊すのに一任していた事に彼女自身気付いていません。


合法ロリ+ゴスロリ+シスター+ダークってなんか良さそうですよね

良さそうですよね!!(圧)


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戦闘訓練:バーチカル 4

お久しぶりです、一次創作の方に偏っていました。

片方を詰めると片方が風に乗って何処かへ征く、私の悪いところです。


ツンツン頭に腰履きのズボン、そして苛立ちを隠そうともしない目付きの彼―――爆豪勝己。

 

ぶつかったのは、教室まであと数分もないところ。

 

そして爆豪さんの身体は教室に向いている。

 

ここから導き出される答えは……

 

「爆豪さんも反省会に」

 

「るっせぇな殺すぞチビ女ァ!!」

 

「ぴょえん」

 

なんでそんなに当たり強いの。

 

しかも被せられたし。

 

「うぅ……別に悪いなんて言ってないじゃないですか……」

 

ぶつくさ呟いたのが気に食わないのかなんなのか、すっごい形相で睨まれるんですけど?

 

「……チッ、オイチビ女」

 

そうしょぼんと凹んでると、不意に声が掛かる。

 

「……渡我ってちゃんと呼んでください」

 

「黙れ殺すぞチビ!」

 

「チビ言わないでください!!」

 

ねぇなんで毎回チビって言うの爆豪さんは??

 

マイク先生にもミニガール呼ばれてるのに更に追い打ちでも掛けるの??

 

と、思ってたら。

 

「……癪だが、お前は俺よりも強ぇ」

 

「ふぇ?」

 

え??

 

あの爆豪さん本人が、私を強い?

 

「アァ?何か文句でもあんのかよ」

 

いや、文句というか。

 

「……私って、爆豪さんよりも強いんです?」

 

「…………は?」

 

「…………」

 

「…………」

 

沈黙。

 

なんともいえない空気が、教室からちょっと逸れた廊下の辺りを包み込む。

 

「…………俺が強ェっつってんだから強ェんだよこのチビ!」

 

「にゃっ、だからチビって言わないでくださいって!」

 

「ハッ、どうだかな!本気なんか出してもねぇお前なんかチビで充分だろうが!!」

 

そう鼻で笑われてムカァッとなり―――ふと止まる。

 

「私ってそんなに本気出してないんですか?」

 

「お前自身の事なのに知らねぇのかよ殺すぞ!?」

 

「ぴゃう!?」

 

更にキレられた。

 

右手から小刻みに爆破を起こしているその姿はまさしくヴィラン……じゃなくって。

 

怒りで釣り上がりまくった目は直角に見え………でもなくって。

 

あぁもう、なんか爆豪さんの逆鱗に触れるようなことしか思い浮かばない。

 

「俺は!!……お前()越えて、一番になる」

 

そうして半ギレ(多分九割ギレ)の彼が一言大声を出し、その後落ち着き払ったトーンで私に向かって宣戦布告をした。

 

それを見て、あぁ、彼はちゃんと決意したんだな、と不意に納得する。

 

「……分かりました、それなら追いつかれないようにしないとですね」

 

「すぐにブチ抜いてやるよ」

 

方や満面の笑みで、方や獰猛な笑みで。

 

二つの有精卵は、教室の扉を開いた。

 

 

 

 

 

「ただいまですよおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」

 

「おっかえりなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」

 

いつもより遅い、午後7時に家の扉を開いた。

 

多分ずっと待っていたのであろう愛しい姉からの接吻をされるがままに受け、そのまま抱き上げられてリビングへドナドナ。

 

今日は鯖の塩焼きのようで、電話をした後に温めてくれていたのだろう、ほかほかと湯気が立っていた。

 

「戦闘訓練、とても有意義だったのですよ」

 

「よかったねぇ、ハルちゃん……んっ」

 

「ん、〜〜♪―――?」

 

姉の細められた瞼から覗く怪しい光。

 

その瞳に吸い寄せられるように再び、今度は深い口付けで互いの唾液を堪能する。

 

これは今夜も長いな、と察したところで、今日は玄関から鍵の開く音が聞こえた。

 

「今日は()()()でしたか?」

 

「うぅん、知らなーい」

 

突然来た来訪者にお互い首を傾げながらも、一旦と姉の膝から降りる。

 

リビングの扉を開いたのは、案の定父だった。

 

「…………居たのか」

 

「それはそうですよ?私とてご飯を食べなければ死ぬんですもの」

 

短く、無頓着そうにボソリと呟く父に律儀にそう返したら、背を向けられてリビングを出ていこうとする。

 

「食べないのです?」

 

「飲みだ」

 

「ですか……」

 

三文字。

 

先程のも含めれば七文字しか、実の父と言葉を交わしていない。

 

そんなことを考えている間にも、父はリビングから消えていく。

 

その時チラリと、「お前らみたいな異常者が俺達と同じ食事をしているだけで気持ちが悪くなる」みたいなことを目線で言われた気がした。

 

「―――ッ」

 

いや、きっと口に出していたのだろう。

 

そうでないと、姉の手からギリリなんて音が聞こえる筈がない。

 

そして、父が帰ってくるということは、同じ職場で働いている母もそろそろ帰ってくるということ。

 

「……冷める前に、食べちゃいましょうか」

 

「…………ん」

 

この後にも続くだろう出来事に、私は内心で深い溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

―――結局のところ。

 

二度目の扉の音が聞こえたのは、深夜の三時頃だった。

 

その時個性で強化した耳に入った音は、はふぅという満足そうな溜息。

 

少し遅く聞こえる足音。

 

多分足が震えているのだろう、足音が聞こえる直前に薄い擦れるような音が聞こえる。

 

冷蔵庫の扉を開け、水を一杯。

 

『ふぅ……やっぱり()の方が落ち着くわね』

 

そして、久しく聞いていなかった母の声だった。

 

その声も、何処か弾んでいる。

 

彼、とは誰だろうかと、考える間もなく察した。

 

―――浮気、又は不倫相手。

 

あんな声も、遠い昔に私達の名前を呼んだ時くらいだろうか、もっと前だっただろうか。

 

それとも、言われてなかっただろうか。

 

これは今度二人で()()しないといけないだろうな。

 

然るべき時に備え、然るべき武器を揃える為に。

 

二人で―――私達だけで、生きる為に。

 

そう思いながら、私は包まれている姉の体温と混ざるように目を閉じた。




渡我家の仕事やらなんやらについては全てオリジナル設定です。
二人の日々が砂糖よりも甘くなるには、まだ足りないから。

そういう意味も込めて、後半のエピソードとさせていただきます。
確認?後々すぐに解りますよきっと。


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始演:ヴィラニズム

トガちゃんかわいい。

作者はドルフロを始めたらしい(他人事)


翌日の、静かとはまた程遠い朝。

 

ガコンガガガガ、という大きな音で雄英高校の正門が閉じられる。

 

地面から反り立った障壁が踏み入ろうとしたマスコミを止め、校内と校外を隔てた。

 

「あ、危なかったですぅ……ありがとうです、相澤先生」

 

「気をつけろ……と言いたい所だが、今のは向こう(マスコミ)が悪いな」

 

マスコミの波に揉まれ、(身長的な問題があり)雄英バリアーに弾かれそうになった私の身体を引き寄せた相澤先生は、ゆったりとした動作で捕縛布を解く。

 

インタビューとかいう面倒極まりないものを避けるために個性を使って隠れていたのが悪かったかもしれない。*1

 

その間に、私は原作のこの後について考えを巡らせていた。

 

確かこの後は学級委員長を決め、昼時に死柄木さんによってセキュリティが突破される事態が起こる。

 

そしてUSJで襲われる……といった流れだった。

 

恐らくセキュリティが突破されたのは、私達がオールマイトと共に授業をする日程を把握するためだろう。

 

ワープゲートを持つ黒霧さんならそれは容易い筈だ。

 

ここで私が原作改変をしたとしても、恐らく―――

 

「……マスコミに話しかけられないようにと、個性を使ったのが仇になったです」

 

「良い使い方だが、デメリットもよく把握しておけ」

 

その後に続くであろう本音を押し留め、はぁいと相澤先生の言葉に了承した。

 

 

 

 

 

さくさくとした衣がくっついた鯖を、小さな口を開けて頬張り咀嚼。

 

時間が経ってもサクサク感の残る竜田揚げをご飯と一緒に飲み込み、もう一口。

 

「あむ」

 

「……ほんと、美味しそうに食べるよね」

 

「うん、やっぱり……愛情、なのかなー?」

 

野菜炒め定食を食べて一息ついた耳郎さんが誰となく呟き、その言葉に隣でサンドイッチを飲み込んだ葉隠さんが反応する。

 

水で喉を潤した私は、ですねぇと首肯。

 

「平日は毎日作ってもらってるですから、お姉ちゃんには感謝してもしきれないですねぇ……チウチウしてるので毎夜遅くなってしまうんですけど、溌溂と言いますかエネルギッシュと言いますか」

 

「ぶっ、げほっごほっ!?」

 

そうして続けた言葉に、耳郎さんが口に含んだ水を吹いた。

 

「あはは……反榴ちゃん、後半の言葉はあまり人がいる空間で言わないようにね?」

 

「?はい、です?」

 

……なんだかよく分からなかったけど、控えて欲しいならばそうしよう。

 

そんな私達のテーブルの隣では、丁度飯田さんが家族について話しているところだった。

 

そしてこの後、セキュリティが突破されて食堂は混雑するのだが。

 

「んー(どうやって回避したら良いですかね……)」

 

ざわざわと一斉に食堂から移動すれば、野菜炒めやサンドイッチは例に漏れず悲惨なことになるだろう。

 

私の弁当?ちょっとでも触れたら反転で吹き飛ばしますがなにか?

 

 

―――はい、閑話休題(話を戻して)

 

 

未来予知じみたものなんてやっても変に疑われるだけですしねぇ、と思ったが、ここでぽろっと一つだけ思い浮かんだ案が。

 

半分位無理矢理感あるけど、今更だしいっか。

 

「お二人共お二人共、なんだか嫌な予感がするのですよ」

 

「どうしたの?突然そんなこと言って」

 

「嫌な予感?ウチは何も感じないけど……」

 

「オトナの女の、(カ・ン)……なのです」

 

そんな風にめかして良い、とある事象を反転。

 

すぐさまがくっと精神力が削られるが、回復速度を底上げして意識を保ちながら続ける。

 

「―――今私とお話なさったお二人に、人が寄り付きにくくなるように個性を使いました。なので、このまま()()()()()()()()()()()()()()()()()()*2

 

「「??」」

 

突然の個性使用に二人が完全に固まるが、その理由はすぐにわかるだろう。

 

「ほら―――来ましたよ」

 

私がそう呟く直前に、セキュリティ3の突破を知らせるアナウンスが私達の耳を刺す。

 

そうして我先にと外へ出ようとする生徒達が()()()()()()()()()一方向に向かっていくのを見て、二人は唖然とし。

 

この空間を作った私は、二人へ小さく笑って人差し指を口に当てるのだった。

 

 

 

 

 

―――そうして原作通りにセキュリティが崩壊によって突破され、その後のHRで飯田さんが学級委員長になった後。

 

放課後を告げるチャイムが鳴る中、私の脚はとある場所へと向いていた。

 

「パワーローダーせんせー、いらっしゃるですかー?」

 

「勝手に入っとけよォー」

 

扉の向こうから聞こえる声にはいー、と返事を返して中へ。

 

校舎の一階にある工房、そこは掘削ヒーローのパワーローダーが管轄をしている。

 

その中にはあのアイテムベイビーガールな発目さんも入り浸っているのだが、今日は居ないようだ。

 

しかし……中々に厨二心擽られる秘密基地。

 

これは緑谷さんが感心するのも否定できない。

 

「さて……イレイザーから軽く話は聞いてっから、詳しく教えなさいな」

 

近くにあった椅子に座り、コスチュームについての資料を渡しながら口を開く。

 

「えっと……左手首にある猫の爪以外で攻撃に使えそうなものを一つ、右手首に潜ませたいのです」

 

戦闘訓練でも喋っていた、遠距離攻撃の不足。

 

それもあるが、接近されたときの対処とかも含めてそこは必要になってくる。

 

「遠距離かァ……射出型で良いのか?」

 

「出来れば、射出と装備両方あると嬉しいです」

 

ナイフを手首から出して遠距離からぶつけるもよし、手に持って近接戦闘するもよし。

 

普段は零れたり誤射しないようにロックを掛け、使用時にワンタッチで解除できるように出来ればそこらへんもどうにかなるだろう。

 

それになにより―――

 

「―――ゴスロリとナイフってギャップ、良くないですか」

 

「―――よォく……分かってんじゃねぇか……」

 

―――私達は、ガッチリと握手を交わす。

 

()()()()()の直前、このやりとりで私の計画は全て成ったのだった。

*1
今回は『渡我反榴はマスコミに気付かれやすい』を反転させていた

*2
今回は『私が個性を使用する直前に話していた二人の周囲に人が寄り付きやすい』を反転




春原さんを引こうと建造を回したのに何故か★5をすり抜けするという謎の運

多人数の同時反転はちょっとだけ精神力の消費が多いです。
そんながっつりという訳では無いが、「あぁ、今精神力の削れ方ちょっと大きかったな」程度。
でも塵も積もればエンヤコラ的なものがあるので、ハルちゃん本人はあまり積極的には使いません。


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