転生狐のお話。(題名は仮) (虧月 蓬)
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1話

これは、主の気まぐれで書いてる物です。
続くか分かりませんが、読んでくれる方がいたら続くのかもしれません。

タグはその場その場で追加します。


私は、人間だった。

だけど人間じゃなかった。

人間社会に属してる筈なのに

自分の事も他人事のように思えて。

私は人間が嫌いだった。

人間は醜い。

くだらない事をきっかけにくだらない争いをする。

それでも。

私は、人の創るものが好きだった。

特に好きだったのは物語だった。

自分のいる世界とは、まるで法則も常識も違う世界。

不可思議な力を使い、戦ったり平和に暮らしてたり。

私は、そんな物語を読むだけで

自分のいる世界から切り離された感覚に魅力された。

そしていつの日か、「そんな世界で暮らせたら」なんて思い始めた。

いるだけで疲れる現実に疲れきってたんだと思う。

私の唯一の楽しみの世に残る不可思議な記録を読んだりして、「もし、そんな物語の世界に行けたら」なんて、自分の願望を纏めたようなな存在を作り上げた。

まぁ、あの頃はどうせ叶うはずのない物だと思って、直ぐに引き出しにしまったのだけれど。

少し話は変わるけど、私は傍観者だ。

現実から逃げる為に物語を読んでいて、気が付いたら

現実ですら、自分の事も含めて傍観するようになった。

我ながら、かなり酷いと思う。

だけど。

もし、自分に力があって

目の前に、苦しんでる人がいたら

どうしますか?

私は多分だけど、どうしても

救おうとしてしまうと思う。

傍観する事をやめてでも。

例え、それが物語の登場人物だとしても。

 

…………………………………

 

私は、多分死んだんだと思う。

意識が覚醒して最初思った事はこんな事だった。

死んだ原因は、高齢の運転手の起こした車の事故だった気がする。

 

・・・あれ?なんで私はこんなにも冷静なんだろう?

 

少し考えたけれど、ひとつの結論に至った。

 

それは、実感が無いから。

自分の事なのに、まるで他人事のような。

そんな感覚。

 

・・・あぁ、でも昔からこんなだったなぁ・・・

 

そう思いながら、私は自分の身体の事に対して興味を向けた。

1度は死んだ身、なれば姿形は異なるものなんだろう、そう思ったからだった。

 

まず姿は人間に近いそれだった。

人間が死んだらてっきり別の生き物、獣畜生になると思っていたから少し驚いた。

服装も、なんというか巫女服?に近い服で

後ろの部分に違和感を感じた。

なんだろう、まるで尻尾が生えたような

そんな感覚。

でも、それは自分の目線からでは見えないから、今は諦める事にした。

 

自分の身体の事をある程度知った後に、漸く自分の現在地を調べる事にした。

 

でも、私の見える先は全て闇。

明らかに私が住んでいたような場所ではないと確信した。

 

そこからしばらく周りの様子を見ていると、少し先で光が灯っていた。

まるで、私を待っていたかのように。

 

少しだけ近づくと、それは形を変え

人型の、だけれど背中に羽が生えていた。

そして、私の姿を認めると

「目が覚めましたか?」

と一言私に声をかけてきた。

 

「あぁ、つい先程目が覚めました。」

と、返事をしたことで気が付いた。

声が身体が変わる前より、少し高かったから。

少し驚いたけれど、そんなことより聴きたい事があった。

 

「ねぇ、ここは何処で、私はなぜ姿が変わってここにいるの?」

と。

 

「・・・それは私にも分かりません。

私もこのような異常な空間を発見し、修正するために来たのですから。」

どうやら、光っているそれは私がここに生まれた理由が分からないみたいだった。

 

「推測ですが、ここは貴方の為に創り出された空間だと思われます。」

と、それは言ってきた。

 

「確かに、心当たりはある。

意識が覚醒した時に、この場所は心地良さがあったから。」

 

そう、こんな何もない場所でただひたすらに闇が広がっている空間で感じたのは心地良さだったのだ。

でも、

「そうだとしても、この空間は直さなきゃいけないでしょ?」

私は、そう問いかけた。

 

「はい、貴方の意識が覚醒した今、この空間の目的は果たされたのだろうと、私は思います。」

そして、それはそう答えた。

 

「・・・そっか。ならもうさよならしないとね。」

そう言い、それに近づいた。

 

「意外と決断がお早いのですね。

少しは迷うと思っていたのですが。」

私の切り替えの速さに少しだけ困惑しているそれがそう言った。

 

「私は、2度目の生を与えられた。

それが誰による施しかは分からないけれど、その生を享受出来るのなら私は、楽しませてもらう。」

もう、前のように人間社会に馴染まなくても良い。それを私は確信していた。

 

「分かりました、では行きましょう。」

そう言って、それはワープホールみたいな円を出現させた。

 

「行くって言ったのはいいんだけど、何処に行くの?」

疑問に思ったため確認をした。

 

「あぁ、すみません。

そうですね、貴方はどんな所に行きたいですか?」

 

「え、それを私に聞くの?

・・・そうだね、この世界がどんな場所か分からないけど、地球みたいな場所が良いな。」

そう答えた。

地球の様々な場所で撮った写真集を見てたことを思い出した。

 

「分かりました、第97管理外世界ですね。

その場所なら、比較的に平和に過ごせるでしょう。」

それはそう言った、気になるような、何処かで聞いた事があるような言葉も含めて。

 

「ねぇ、その第97管理外世界って何?」

それが言った、気になる言葉の事を聴いた。

 

「この世界には、様々な世界があります。

詳しい事はいつか調べて欲しいので言いませんが、時空管理局という組織がその様々な世界の管理を、つまりは警察のような事をしてるのです。

そして、管理外世界というのはその管理局の手が届いていない場所を管理外世界と呼んでいます。」

手短に、だけどわかりやすく説明をしてくれた。

 

「教えてくれてありがとう。

詳しい事は、私も気になったら調べるようにするよ。」

そう言っていつか調べようと、心にしまった。

 

「そうですか、それなら良かったです。

では、そろそろ行きましょうか。」

この空間で、長く喋っていたからだろうか

それとも、この空間の主である私がこの場所から離れようとしてるからか、空間が少しずつ揺れ始めているように感じた。

 

「あぁ、そうだね。」

私は、更にそれに近づいた。

そして、1度振り向き

「ありがとう、こんな私の為に創り出されてくれて。

おかげで、私は2度目の生を享受出来る。

二度と来れないだろうけど、感謝してる。」

私が産み落とされた、空間にお礼をした。

そう応えるかのように、空間の揺れは更に強まった。

 

「それでは、転移します。」

そう言って、それと私は強い光に包まれて

この空間を後にした。

 

 

…………………………………

 

光が完全に消えた後に、最初に目に見えたのは自然だった。

 

「ここが、地球なんだね。」

「えぇ、そうです。

今はまだ人間は発展している途中のようですが。」

それは、なぜが人間の事を私に教えてくれた。

 

「なんで、私に人間の事を教えてくれたの?」

そう聴くと、

「何となく、ですかね。」

そう答えてくれた。

 

「ふーん、ありがとうね。」

と感謝の意を示した。

 

そして、ずっと気になっていた事をそれに確認した。

 

「そういえば、今の私の容姿ってどんな姿に見える?」

先程、自分の身体の確認出来なかった部位の事を思い出して、それに聞いてみた。

 

「容姿、ですか?

そうですね、一言で言うならば

巫女服を纏った九尾。

とでも言いましょうか。」

と、私の容姿を簡潔に説明してくれた。

 

それを聞いて私は、もしかしたらと

死ぬ前に、精神的に追い詰められていた時に書いていた生き写しのキャラの事を思い出していた。

 

「そっか、私は望んだ姿で2度目の生を享受していいんだ。」

そう零した。

 

「貴方が、これまでどんな生活をしていたのか私には分かりませんが、せっかくの2回目です。

自由に楽しんでみてはどうでしょう?

魔力ではないですが、戦いに身を置けるほどの、何かしらの力をお持ちのようですし。」

 

「そうなの?私は、私が望んだ姿だけだと思っていたのだけれど。」

私は望んだ姿になれた為か、それだけで満足していたからこそ、そう言った。

 

「えぇ、私ももうそろそろ去らないと行けないのですが、少しだけ感覚を教えることは出来るでしょう。」

そう言いながら、私の手を握った。

 

すると、握られた手の方から暖かい何かを感じ取れた。

 

「分かりますか?それが貴方の持つ力です。この世界に魔力以外は存在しないと言っても過言ではないですが、貴方の発言から見るに、別世界、文字通り別の場所からやってきたのでしょうから、不思議ではないと思います。」

握った手を離して、それは話を続けた。

 

「さて、私はそろそろ失礼いたします。

あまり、長居は良くないですかね。」

 

それは、別れの言葉だった。

 

「うん、ありがとうございました。ここまで連れてきてくれて。

貴方がいなかったら、私はきっとあの空間で過ごして何も感じずに生きていたと思う。」

実際そうなっていただろう、あの空間は私にとって都合が良い場所であり、何も考えず、何も感じずに過ごせただろうから。

 

「それは良かったです。

・・・あぁ、そういえばまだお互い名乗っていませんでしたね。」

 

と、私を正面に捉えてそれは言った。

 

「また会えるか分かりませんが、私の名前はタンティス、忘れても構いませんよ?」

タンティスと名乗るそれは、優しい雰囲気を纏いながらそう言ってきた。

 

「私の名前は・・・」

 

そう私も続いて名乗ろうとした時、少し止まった。

どうせなら、名前を変えて生きて行こうと。

 

私の見た目は九尾みたいな感じとタンティスは言ってたから、私が知っている妖怪の名前を使わせてもらうかな。

 

「・・・私の名前は天狐。

天狐って、呼んで。」

 

「ふふっ、天狐ですね、覚えました。」

背を向けて、ワープホールを展開しながら言葉を続けた。

「また会えた時は、それまでに経験した出来事を教えてくださいね。」

 

「うん、待ってるから。

それまでにたくさん話が出来るようにしてるから。」

 

次に会える確証もないけれど、私達はそんな約束を交わした。

 

「えぇ、それではさようなら。

・・・貴方の幸せを、私は祈っていますよ。。」

そう言って、タンティスはワープホールの中に消え、いなくなった。

 

・・・誰かと話したのもいつ以来だっただろうか。

タンティスがいなくなった場所を眺めながらそう思った。

 

(・・・・・ありがとう、タンティス。

貴方のおかげで、2度目の生の生きる目標が生まれた。)

 

そんな目標は、自分なりの幸せを見つけて

暮らして行く事だった。

その目標を掲げながら、私はタンティスに教えて貰った人間の事を観察してみようかな。

 

この世界は、なんだか私が見てきた物語の世界に少しだけ似てるような気がしたから。

 

そんな事を考えながら、私はその場を後にした。

 

もし、この世界が私の知る物語の舞台なら

私は見つけてしまうのかもしれない、その舞台の人たちを。

・・・その時、私はどんな行動を取るのだろう。




表現が分かりにくかったり、情報が少なくて理解しにくかったりした場合、遠慮なく報告下さい。
読者が読みやすくなるのも、私自身が書きやすくなるのもいいことですからね。


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