東方異世界生活記 弍 (ジシェ)
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慧音編
クラフト1


これは同じタイトルの小説の弍になるので、霊夢達自機組が見たかったら同じ小説タイトルの壱を探して下さい。


「――それじゃ、初期装備として一式揃えといたから。一人一つずつね。」

「つるはしに斧、剣と…シャベル。…これは?」

「ステーキ。」

「……何故ステーキを…」

「この世界では満腹度ってのがあるのよ。貴女達の空腹感に合わせて元のゲームとは少し違うけど…」

「あの子達はすぐに食べてしまうぞ?」

「収穫も難しくないし、自分達で育てなさいな。そこにルールブックもあるんだから。」

「るー…る?」

「『説明書』。基本は普段と変わりないわよ。ただ色々ゲームっぽいだけ。…ログアウトの出来ないバーチャルゲームで無人島生活よ。」

「……何を言ったんだ?」

「『考えるより慣れろ』よ。その本読みながら頑張りなさい。」

「あ、紫……はぁ…行ってしまった…」

 

まだ聞きたいことはあったのだが…

 

―――――

 

私は上白沢 慧音。

紫の思い付きで異世界で暮らすという話し、それに私はあまり乗り気ではなかった。

しかし生徒の妖精、妖怪の子供達は、幻想郷の『外』というものに興味津々だった。

つまり私は、保護者というわけだ。

なので来たはいいものの…周り全てがやたら角張った平原。

村も無ければ人の気配もない無人島ときた。

動物らしきものはいるのだが…あれは一体…

 

「近づいても大丈夫だろうか…?」

『もぉ~』

「……牛なのか。」

 

生物すらも四角い。

前途多難な始まりだ。

 

―――――

 

「そろそろ『チルノ』達が着く頃か…」

 

保護者として来た以上、安全の確保は最優先。

なのでまず説明書通り、持っていたつるはしで洞穴を作った。

不思議なことに、壁はおろか、天井が崩れることもなく、つるはしで何度か叩けば四角く掘れる。

インベントリなる物の中に、取り出すことが出来る『物』として回収される。

一つの四角が一つの物として。

最初に支給されたつるはしなどもここにあった。

取り出すのも押すだけで済むので、元の世界より便利かもしれない。

視界にいくつもの表示があり、押すことで開くことが出来るので、ある程度は分かりやすい。

緑の線が一本、肉の形のものが十個、その右に二個のボタン。

視界に常に表示されている。

その片方を押すと、インベントリが開けるのだ。

もう一つはレシピなるものらしいのだが、これはまだ分からない。

しかしとりあえず分かっておくべきことは大体平気そうだ。

あとはチルノ達に同じことが出来るのか。

この世界に来る面子は、チルノ、大妖精、ミスティア、ルーミア、リグル、私の計六人。

同じ説明をしても、ルーミアとチルノには理解出来そうにない。

来るまでに考えておかなければ…

 

―――――

 

しかし時は早いもの。

考える間もなく皆来てしまう。

果たして無事に理解してくれるのだろうか…

 

「わーー!」

「広いのだー!」

「何だか普段と違う気が…」

「チルノちゃん走ったら危ないよー…」

「…虫がいない…」

「………」

 

世界を渡って早々、妖精達を野放しにしてはいけないことを理解した。

これから早速授業の開始だ…

 

 




原作一話で出すのも『隠す気ないだろ?』とか言われそうなんで…分からない人には分からない程度で一話は区切っておきます。短くてすまんの…次回からは…逆に区切り分からなくて長くなるかも…


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クラフト2

ワクチン三回目で死んでました…三日も38度越えてたよ…


「…大妖精…もう…後は任せてもいいか?」

「はい…大丈夫です。」

 

教える教えない以前に、話自体聞いてくれない。

近くに砂漠もあったし、初めて見るものに心を奪われている。

説明を聞いてくれたのは大妖精とミスティアだけだ。

チルノとルーミアは砂漠で走り回っているし、リグルは虫がいないことにへこんでいる。

痛みはあるのに、何故か暑さは感じないために、チルノが溶けずに砂漠を歩けるのはいいことかもしれない。

そもそも説明も聞かずに扱い切っている。

子供の方が理解するのは早い…

 

「大妖精はチルノ達の監視と…出来れば説明も頼む。」

「はい。」

「ミスティアはリグルのことを励ましてやってくれ。」

「は、はい。」

 

子供達の監視を子供に任せるのもまずいとは思うが、夜は危険というのも本にある。

多少この穴を広げて、明かりを作る必要もあるだろう。

私はルールブックのクラフトのページを開いた。

蝋燭やランプなどがあるかもしれない。

 

―――――

 

「…まさか…松明をそのまま使うとは…」

 

明かりはこれしかなかった。

材料は石炭(または木炭)と棒。

木ならいくらでもあるし、幸いにも石炭も地表に点々と埋まっている。

回収までに驚くことも多かった。

クラフトの画面を開くと、四つのマスと右矢印、先にはマスが一つ。

そこに一つ木を置くと、木材が四つ、それをさらに四つのマスに一つずつ置くと、作業台が出来る。

こんな簡単に道具が出来るなど、現実ではあり得ない。

作業台を置くと、その上には九つのマス。

本にある通りに木材と棒(木材二つ)を置くと、なんとつるはしが出来る。

便利を通り越している。

物理法則無視だ。

石炭はこれで取れるようで、とりあえず壊れるまで石炭を掘った。

まさか壊れると思ってなくて驚いたが…まあ十分採れたのでよしとする。

それを棒と一つずつクラフトの画面で置くと松明になる。

その松明を置くと明かりになる。

当然暑さもなく、置く場所にも困らない。

とにもかくにも広さ、明かりは解決した。

夜が近いので、私は子供達を呼びに外へ向かった。

 

―――――

 

(そういえば…夜に何かあるのか?)

 

危険と本にあるが、妖精や妖怪に夜など危険なことなど欠片もない。

強いて言うなら…同じ妖怪に襲われたり…

 

「うわぁ!」

「痛っ!」

「リグル!?ミスティア!?」

「慧音先生!」

 

緑色の…人?に二人が襲われている。

やはり襲われるから危険なのか。

 

「二人共とにかく洞穴に…!」

 

少し離れた所から爆発音。

砂漠方向…チルノ達が向かった方向だ。

 

「チルノ!く…二人は洞穴で待て。そこまで走って土で埋めるんだ。」

「は、はい…」

「うう…皆がいたら…」

 

一体二体ならまだ倒せる。

だが、多い…多過ぎる。

十体はいる。

袋叩きにされたらひとたまりもない。

急いで連れ戻さなければ…

 

―――――

 

チルノ達は既に囲まれていた。

中には人以外にも骸骨や緑色の…何だあれは!?

 

「三人共!こっちに何とか来られるか!?」

「慧音先生ぃ…」

「うわぁぁ!緑の来んなぁ~!」

 

囲まれて逃げられない三人は、そのたま緑の何かに爆破された。

 

「な…!?さ、三人共!無事か!?」

「うぅ…」

「痛いのだー…」

「よか………チルノ!?チルノはどこに!?」

「え…?…チルノちゃん!?」

「いないのだー…」

 

爆発のおかげで空いた隙間から合流は出来た。

しかしチルノがどこにも見当たらない。

まさか衝撃で吹き飛ぶなどもないだろうし…

 

「…とにかく二人は洞穴まで行け。チルノは私が探す。」

「わ、分かりました…ルーミアちゃん。」

「行くのだー」

 

一体どこに行ったんだ、チルノは…

 

―――――

 

日が昇る。

どうやら朝のようだ。

チルノは見つからない。

何かあれば紫が回収してくれるだろうが…何もないということは…

探すのを諦めるわけにはいかない。

私はあの子達の保護者なのだから。

 

「チルノーー!」

 

朝になっても探し続ける。

一時間程、誰かに声をかけられた。

声をかけたのは…チルノだった。

 




原作…原作?…元?を知ってる人には分かるけど…皆のトラウマ兼マスコットの登場ですね~。チルノ?…モードによっては還らぬ人に…人じゃないか。


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クラフト3

皆前の回忘れてるかな…?忙しくて睡眠時間も少なかったんよ…apexもモンハンも出来てない…すみません…


「…チルノ…?」

「慧音先生!」

「大妖精…チルノは…どこにいたんだ?」

「それが…」

 

―――――

 

『うわぁぁ!緑の来んなぁ~!』

 

緑の変なのに爆発されて、死んだと思った。

でも、何故か体が引っ張られる感覚があって…

 

『チルノ何でここに!?』

『先生が探しに行ったんじゃ…?』

『……??』

 

気が付いたら平原に座ってて、目の前にはミスチーとリグルがいて…

 

『――!』

『………』

 

先生の声がした。

自分を呼んでいた。

 

―――――

 

「それで来たのか…」

「あの…さっき本を読んでたんですけど…ページが追加されてたんです。」

「何?」

「もしかしたら、誰かの体力がゼロになったら追加されるように…」

 

―――――

 

表示されるハートがゼロになると、最初にこの世界に現れた場所、または最後に眠ったベッドの周囲に復活(リスポーン)する。

その時アイテムは全て周囲に飛び散り、五分以内に回収出来なければ消滅する。

ハートはモンスターの攻撃、空腹度の減少、窒息などの要因で減少する。

空腹度が満タンの状態、または回復薬(ポーション)の使用で回復することが出来る。

 

以上。『MineCraft ルールブック1』

 

尚この本は一冊目であり、続きが二冊ある。

次の2の場所はここより南にあるジャングルの奥、『森の洋館』のボスが所持している。

必要な情報は随時更新する。 紫より。

 

―――――

 

このように丁寧に図まで書いてある。

次からも何ページが追加されており、防具や武器などのクラフトレシピも書いてあった。

どうやら追加される前までのページには、生活を始めるのに必要最低限の情報しか載っていなかったようだ。

 

「……紫め…生徒に怖い思いをさせるなど…教師として許せん…!」

「け、慧音先生落ち着いて下さい!」

「本当に死んじゃうと思った…」

「…ああ…無事で良かった……」

 

抱きつくチルノを、私から抱き返した。

 

―――――

 

「方針は決まった。」

 

先の一件から、まずは安全な拠点が必要だと痛感した。洞穴では足りない。

少なくとも周囲一帯…そうだな…百マス程は安全にしなければ、この洞穴でさえ危険だ。

それから防具。

見るに鉄や石炭程度なら少し掘れば見つかるようだ。

全員分鉄の装備を一式揃える。

松明があればモンスターは現れないらしいので腐る程松明を作る。

安定した食料源…畑や農場を作る。

以上は早急に手を付けなければならない。

それが安定し始めたら、次にやるのはルールブックの回収。

どうやら森の洋館なる物が南にあるようだ。

ボス…というものは気になるが…万全の準備が必要だろう。

それら準備には子供達にも協力してもらおう。

皆で協力すれば、きっと生きられるはずだ。

 

―――――

 

「………」

「どうした大妖精?」

「いえ…危険なんですけど…あのりすぽーんを利用すれば、どれだけ遠くでも帰れると思って…」

「!……地形把握には使えるな…しかし大妖精。だからと言ってむやみやたらに死ぬんじゃないぞ?」

「大丈夫ですよ。今だって空腹度には気を付けて……」

 

『うわあぁぁ体力減ってるー!』

『あれ!?ルーミアちゃんも!?』

『早く何か食べさせないと!』

 

「………」

「……拠点より食料が先か…」

 

前途多難だ。

 




チルノはしおらしいの似合わないですね。てことで本当に死ぬと思った時は弱々しくなるのがここのチルノだと思って下さい


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クラフト4

熱い…


少し掘れば石炭や鉄は見つかる。

そう考えていたのが甘かった。

少なくともつるはしが三本壊れる程掘り続けたが、鉄は64個どころか23個しか取れなかった。

そこまでの重労働ではないが、二十分程でこれでは、全員分揃えるだけでかなり時間がかかる。

子供達には葉を刈ってもらい種を集めてもらった。

大妖精には木を集めてもらい、当面の緊急食糧としてリンゴも集めてもらっている。

 

「まずは畑か…」

 

食糧難が本当に辛い。

度々が空腹度が減り、その度に食べていては足りないのも当然だ。

しかも全員分…ステーキなど64個あったのが既に20個しかない。

種を植えてしばらくすれば小麦に、3個並べればパンになる。

これさえ出来れば、食糧難は解決出来る。

全員分の鉄装備、一人分が24個、計144個の鉄が必要になる。

剣を鉄にした方が戦闘も楽になる。

採掘など鉄のつるはしでなければ取れない鉱石も多い。

何よりも鉄の道具なら効率が段違いだ。

なので少なくとも装備分の鉄と、追加で20個は獲得したい。

 

「先生ー!結構集めて来ましたー!」

「こっちもです!」

「おお…!」

 

ただ遊んでいるルーミアとチルノを除き、他三人は真面目に動いてくれて助かる。

種も木も多く確保出来た。

後は水場の近くを耕すらしい。

 

「……石でいいか…一応バケツも…」

 

バケツには鉄を3つ消費する。

石は驚く程集まっているから使い放題だ。

 

「よし…私はこれから畑を作る。大妖精とリグルはこの松明を…出来れば、均等に地面に並べていってもらえるか?」

「置いたら敵が出ないんですよね?」

「ああ。ただどれだけ明るければいいのかも分からないからな…三マス程開けて置けば丁度良いんじゃないか?」

「分かりました。」

「じゃあ大ちゃんそっちから置いて―」

 

松明を置く作業は二人に任せ、私は少し離れた川の側を耕した。

家を作ったら、後から畑は移動する。

だからあまり巨大なものは作らない。

それでもしばらくの食糧源ではあるので、30マス程を耕し、種を植えた。

 

「……」

 

なぜだかこの世界では温度や疲労は感じない。

しかし味覚や痛覚はそのまま…食糧がパンだけというのは子供からしたらまずいのではないか?

私は問題ない。

そもそも不作の時は食べないことも少なくなかったのだから。

しかしこの子達は当然飽きるだろう。

せめて肉がなければ…野菜も…パンだけでは健康的にも…

 

「むぅ……」

「先生?」

「……」

「先生!」

「!?ああ…すまない…どうかしたか?大妖精。」

「松明256本置き終わりました。段差とかあったけど…少し整地しながら置いたので敵は大丈夫だと…」

「おお…」

 

考え事をしていたらそんなに時間が経っていたか。

 

「お疲れ様。もう特にやることもないから、皆で遊びに行っていいぞ。チルノ達の監視も必要だし…」

「あはは…」

 

大妖精のおかげで安全確保もある程度は出来た。

食糧もよし、安全な拠点よし、これからは鉄集めが主流になる。

本には洞窟を探せば効率良く鉱石が集められるとある。

ただし敵も多い。

そんな危険を味わうのは私だけでいい。

 

―――――

 

「それじゃあ大妖精、留守は任せるぞ。チルノ達が死なないように見張りと…小麦の収穫…大変ですまないが…」

「大丈夫です。ミスティアちゃんとリグルちゃんは手伝ってくれるし…チルノちゃんとルーミアちゃんも、危ないことはしないと思い…ます。」

「不安な間があったな…まあ三人に任せるよ。」

「はい!」

 

大妖精なら安心出来る。

さて…洞窟探しに出掛けよう。

 




熱中症には気を付けてね~


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クラフト5

原作名どうせ皆分かってるしここで書きます。
『Minecraft』まあ一話で分かるね~


拠点から東に向かいおそらく百マス程、洞窟を見つけた。

いくつか小さい洞穴は見つけたが…全て数歩歩けば終わる程度のものだった。

石炭も鉄も十程確保出来たが、まだまだ足りない。

この洞穴は洞窟へと繋がれていればいいが…

 

「!」

『ヴァアアア』

「敵がいるなら…少しは広がっているのか?」

 

石の剣を右手に取り出し、つるはしを左手に取り出した。

実は両手に道具を持つことが出来るよう枠があった。

近づくと強制的に拾われるが、この枠に入れれば両手に持つことが出来る。

 

「私に剣の心得はないからな…恨まないでくれよ?」

 

―――――

 

時間にして一、二分、三体程ゾンビを倒した。

幸いにも剣で叩くのも素手で叩くのも、変わりない動きでダメージを与えられた。

しかし不可解にも、後ろから更にぞろぞろと現れる。

これはほとんど間違いないだろう。

 

「スポナーか…」

 

洞窟に行くのだ。

準備は怠っていない。

当然洞窟の危険なことも調べてある。

注意すべきは二つ。

ゾンビやスケルトンが無限に涌き出る『スポナー』。

毒蜘蛛が無限に現れる『廃鉱』。

それ以外なら溶岩に注意するが…大きく分けてこの二つ。

つまりこの先にスポナーがあるのなら破壊、もしくは松明を置けば涌かなくなるモンスターの特性からして、松明で増殖を止められるだろう。

これがゾンビでよかった方だろう。

スケルトンなら、四方八方から矢の雨だ。

防具のない私には一溜まりもない。

 

「しかし運は悪くないな。」

 

何故ならスポナーがある場所は、高確率で洞窟に繋がっている。

入り口は小さくとも、その内は迷宮のように広いことだろう。

私は松明を置きながら奥へ進む。

予想通り洞窟は広がっており、鉱石も少なくない量が収穫出来た。

しかしとんだ落とし穴があったものだ。

 

「ここはどこだ…?」

 

目印などを置いても、分かれ道が多過ぎて意味がない。

鉱石を掘るし、度々クリーパーが爆発するせいで違う洞窟に出てしまう。

流石にうかつだった。

モンスターに追われたり、爆発して地形が変わったり、迷う要素はいくらでもあったのに。

迷う程広くはないだろうと高を括ってしまった。

しかしここは洞窟、解決策はいくらかある。

真上に掘れば地上に出るし、一つ一つ道を塞げば出口以外は埋まる。

 

「スポナーがあって助かったな。」

 

スポナーの近くには箱がある。

中には物資が少なからずある。

おかげで鉄のつるはしも手に入った。

この場所から出入り出来るよう階段状に掘ろう。

 

―――――

 

「……」

 

黙々と掘り続け早数分…つるはしが壊れた。

もうつるはしはなく、作る木もない。

仕方なく素手で掘り進めている。

一定叩けば取れるだけ良心的だろう。

妖怪本来の力でも、この厚さは砕けない。

そもそも幻想郷で同じ掘り方をすれば、天井が崩れるだろう。

しかし時間がかかる。

生徒達にいらぬ心配をかけたくもないし、何より私が心配だ。

急がなければ。

 

―――――

 

「やっと地上か…」

 

とはいえまだ終わりではない。

これから拠点を探さなければならないのだから。

幸い陽は登りモンスターもいない。

まずは洞穴を作ったちょっとした山を見つけなければ。

高い目印はそれぐらいしかない。

いくら探索したとはいえ、精々二百マスも移動してないだろう。

ここに何か建てて、仮拠点として四方に進もう。

そのまま松明を置いて拠点まで帰れば、ここまでの道のモンスターも現れない。

安全地帯を広げることが出来る。

帰ったら塔か何か…目印になるものを作らなければ遠出も出来ない。

今後の課題が見つかった。

帰っらすぐにとりかかるとしよう…

 

 




先生ポンコツと思った人マイクラ初めてやる人見て下さい。慧音さん引っ掛かってんの初心者あるあるばっかりだから。むしろ初心者もっと酷いから!


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クラフト6

ダンカグ終わって燃え尽き症候群みたいになってました…配信名前の最後まで見てましたw自分凛でやってたけど…名無し多かったですね~


拠点から東に百マスで洞穴に入る所から探索は始まった。

地下のスポナーから地上に出て土で辺りを囲う。

そこを始点にまず西に向かう。

当然位置がずれてるため、ただ西に戻ろうと拠点はない。

松明を起きながら二百マス程だが、三マス毎に計百近くの松明を消費した。

同じことを四方に行うとすると、最低でも四百本は松明を消費してしまう。

残念なことに石炭は百もない。

三方までは問題なく足りるが、もし拠点や洞穴が見つからなければまた穴を掘って石炭を探すしかない。

 

「先は長いか…」

 

―――――

 

次に西へ向かい真っ直ぐ行く。

今度は五十マス程の地点で、砂漠に入った。

拠点も洞穴も、平原から外れてはいない。

砂漠に出た時点でこの方角は違う。

しかし拠点の近くには砂漠があった。

幸いそこまでの距離ではないのだろう。

次に南に向かったが、そちらは森に繋がっていた。

高い木が多かった上に見知らぬ実…カカオ?があったので、また違う区域なのだろう。

南にあることからおそらくここがジャングルだ。

ここの探索はまた今度に。

最後に北へ、西に使った松明が少ないため十分足りそうだ。

しかし問題が一つ…夜が来た。

防具もなく歩けば、数分の内に死亡してしまう。

鉱石が集まっている今、失うには惜しい持ち物だ。

安全のためにもう一晩、洞窟に潜るしかない。

 

「今度は一本道を作ろう。」

 

道を見失うことは、この世界では最も恐ろしい。

 

―――――

 

「先生大丈夫かな…」

 

先生が出てから二日、幸いこちらは何事もなく暮らしている。

チルノちゃんとルーミアちゃんは牛や羊に乗って遊び、リグルちゃんは虫がいないことに悲嘆したのも束の間、二人と遊ぶか私達を手伝ってくれる。

ミスチーと私は畑の整備や木材の確保、本に書いてあったからこの二日で牛と羊を集めて柵で囲った。

餌やりや世話をしたら松明で拠点範囲を広げる。

動物の世話はチルノちゃん達がある程度やってくれるから、敵に気を付けてさえいれば問題ない。

 

「でも先生いないと不安…」

「あの二人も自由だもんね…」

「大ちゃん小麦ちょーだい!」

「くれなのだー」

「はーい。」

 

―――――

 

「…あの松明は…」

 

置いた覚えのない松明が平原に広がっていた。

おそらく大妖精が置いたものだろう。

洞窟に続く洞穴ではなく拠点に直接たどり着いたようだ。

しかし穴を掘った少し高い丘は少し距離がある。

そのうえ牛や羊が囲われた区画があり、チルノ達が遊んでいる。

私のいない間に随分と拠点を広げてくれたようだ。

 

「あ、先生ー!」

「おかえりなのだー」

「ああ。ただいま。大妖精達は?」

「あっちにいるよー!」

 

どうやら羊達の世話はチルノ達がしているようだ。

聞けば本の通りに色々やってくれたようだし、私もサボるわけにはいかない。

拠点の洞穴に二、三日ぶりに帰り、かまどを作る。

残念なことに石炭が少ないため、大妖精達の集めた木材を燃料に鉄鉱石を焼く。

後で私が集めに行こう。

焼けた鉄を使い装備を、つるはしや剣を、バケツを作り、私達は更に安全性を高めた。

 

「しかし鉄で全身を覆うのは…かなり重いだろうな…」

「身の守りには仕方ないですね…」

「キラキラだー!」

「…あれ?チルノ…重くないのか?」

「?重くないぞ?」

「……」

「本当…重くない…あ、先生。ミスチーが見つけてくれたんですけど、持ってる道具とか装備とか、不可視化出来るみたいです。」

「そうなのか?」

 

鉄の装備や道具整え、遂に私達はジャングル探索の段取りを組み始めた。

 

 




ルーミアのキャラ原作よく知りません…すみません。なのでゆっくりとかのそーなのかーキャラにします。てか二次でもよく見るしイメージ付けやすいんで。まあ…一番イメージ難しいのリグルですけどね…


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クラフト7

ジャングル前編…そう決めてから早2ヶ月…長編ゲームに手を出してすみません。不定期に月単位で投稿しないのどうにかしたいです…


拠点(子守)をミスティアとリグルに任せ、大妖精と私でジャングル探索へ出発した。

ジャングルに到達した私達は、まずちょっとした拠点を作ることにした。

と言っても土で壁作るだけ。

天井まで貼って壁を埋め立て、松明を挿したら完成。

外から見たらまるで豆腐だ。

茶色でとても不味そうな豆腐だな…

 

「この辺りも松明を広げるんですか?」

「いや…ジャングルには洋館を探しに来ているし、本拠点を移すつもりもない。この中さえ安全なら大丈夫だろう。」

「それじゃあ…」

 

大妖精は四隅と中央に一つずつ松明を設置した。

これで外敵が中に発生することはないだろう。

いつの間に製作方法を知ったのか木のドアも付けている。

ドアがあるだけで機能性は十分だろう。

ゾンビスケルトンに壊されなければいいが…

 

「ジャングルに何があるか詳しいことは書いてなかったな?」

「はい。何度読んでも何も変わってなかったです。」

「そうか…ありがとう。ならとりあえず拠点の場所を分かるようにするために…拠点の壁に松明を配置するか…」

「少しくらい木を採ってもいいと思います。」

「ああ。後は方向を見失わないよう、目印でも建てるか…」

「そうですね…同じ景色が続いてて危険ですし…夜は敵も出ますからね…」

「そう考えるとただ直線に移動するのも危険だな…何か良さそうなものは…」

 

何かないかと本を開く。

アイテムの中に何かないかと思ったが…

 

 

「……!コンパスがあるじゃないか!」

「でもレッドストーンっていうのがなくて唯一作れなかったものですよね?」

「ああ。洞窟の探索中に相当数確保出来た。以前は作れなかったが…」

「えっと…この世界に来た時、最初に入った場所に向かって赤い針が向かうみたいです。」

「……確かに拠点の方向に指しているな。これがあればどこまで行っても、時間さえかければ必ず帰れるわけだ。ほら大妖精の分だ。」

「これなら…別れて探索をしても平気そうですね。」

「そうだな…少し探索して、平気そうなら別れよう。くれぐれも無理はしないようにな。敵が来たら迷わず逃げろ。」

「はい!」

 

―――――

 

「………」

「どうした?」

「えっと…あれが気になって…」

「あれ?」

 

辺りを見ても怪しい所はない。

強いて言うなら…木が浮いていることか。

 

「確かに気になるな…」

「はい…」

「適当に積んで上がるにも…この木の上は流石に高いからな…気にしない方がいいだろう。」

「そうなんですけど…」

 

この世界は能力が使えない。

つまり空を飛ぶことも出来ない。

妖精の羽もただの飾りになってしまう。

積んで上に上がることは出来るが、落ちれば最悪落下死。

だから気にはなるが、ああいった高所の作業は諦めていたのだ。

 

「まあ目印にはなるだろう。自然にあの木が消えることはないし、存在もしないようだしな。」

「ですね…」

 

―――――

 

「そういえば敵どころか牛や羊も見当たらないな。」

「木が多くて見落としてるだけじゃないですか?」

「そうかもしれないが…聞き覚えのない鳴き声みたいなものをさっき聞いた気が…」

「近くに何かいるんでしょうか…」

「ふむ…そろそろ日が暮れるし…一先ず仮拠点に帰ろう。鳴き声は明日探索ついでに探してみるとしよう。」

「じゃあ…あっちですね。」

 

ジャングルは広大…探索にはじっくり時間をかける。

今は安全を優先し、ゆっくり探索するとしよう。

 

 



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クラフト8

もはや何も言いませんよ…


大妖精と仮拠点に戻り数時間…外が明るくなってきた。

朝が来たようだ。

もっともジャングル内はそこまで明るくはならないが。

幸い仮拠点付近には敵はいなかった。

代わりにおかしなものが飛んでいたが…

 

「あれは…」

「鳥…ですね…」

 

私達以外が角ついたこの世界にしては鳥だと分かるだけましだが、種類までは分かりそうにない。

まあ多少角ついていても、動物は癒されるものだ。

 

「………あ!ありました!」

「本にあったのか?」

「この世界だと鳥は鶏か、オウムしかいないらしいです。鶏の説明に少しありました。」

「オウムか…人の言葉を真似るらしいが…」

 

なつかせれば何かに役立つかもしれない。

そうでなくても子供は好きだろう。

この世界の動物の寿命や世話の仕方などは詳しく知らないが、牛や羊の世話が可能なら問題ないだろう。

 

「しかしどうなつかせるか…牛や羊は小麦だったな?」

「はい。この本だとオウムの詳しいことはないですね…鶏は種でなつくみたいですよ。」

「種か…試してみるか。」

 

草などそこら中にある。

いくらか壊し、種を入手した。

食べればそれが餌なのだろう。

 

「……!」

「食べましたね…!」

「このままあげたら……」

「先生?」

「…牛や羊と同じなら…こいつも餌に着いてくるはずだ…」

「……まさか…」

「この世界でのペットの基準は分からないが…もしかしたらなつかないのかもしれない。」

「着いてこないなら…オウムはここ限定の生き物にしか…役立ちそうだったけど…」

「飼えない以上は仕方ない。探索を続け…」

「待って下さい!」

 

珍しい大妖精の叫び。

それは危険を知らせる警笛のよう。

それが何か、分かるのに時間はいらなかった。

 

「!ゾンビの声か!」

「しかも近いです!」

 

もはや真下…あるいは真横に…

そこで私が声の方に顔を向けると、その声はゾンビのものであり、ゾンビのものではなかった。

オウムの声真似…ゾンビの声は、このオウムから出ていた。

 

「まさか…こいつが…?」

「声真似…もしかして私達の言葉じゃなくて、この世界固有の生物の、単調な声を真似るんじゃないですか?」

「ゾンビの真似をするとは…たとえそれだけでも恐ろしいな…飼わなくて正解だったか…」

「そうですね…本当の敵襲が分からなくなる所でした…」

「ん?」

 

そう結論付けて移動しようとした時、オウム以外のゾンビの声がした。

間違いなく地中から。

 

「これは…」

 

ニマスだけ掘ったら、すぐに小さい空洞が現れた。

しかもゾンビのおまけ付きだ。

奥には骨もいる。

そして後ろのオウムはと言うと…

 

「骨の歩く音…?」

「ふむ…もしや近くの敵の声を真似るのか?」

「!それなら連れて帰りましょう!」

「拠点の安全には役立つな…!問題はどうすれば連れて行けるか…」

「うーん…」

 

苦し紛れに本を捲る。

鶏のところ以外に何か情報がないか。

そういえば狼のページがあったはず…

 

「!大妖精、種を集めよう。」

「はい?もっと餌やりを…?」

「これを見ろ。狼は骨をやるとなついて付いてくるらしい。該当動物にオウムの名前もある。」

「猫もいるみたいですね…」

「オウムのように何か出来るかもしれないな…猫の餌といえば…魚か?」

「集めてみますか?」

「…いや…今日はオウムを仲間にして仮拠点に戻ろう。私達は蘇るが、オウムは分からない。危険を持ち歩く必要はないさ。」

「じゃあ種集めてきます。」

「ああ。私は木でも集めてよう。オウムは見ておく。」

 

その後大妖精の持ってきた種を十程やったら、餌を食べなくなった。

それからは私に付いてくるようになった。

可能なら全員分連れて帰りたいが、そう簡単に見つかるはずもなく、私達は仮拠点に帰宅した。

この程度の探索では、洋館を見つけることは出来なかった。

 

 




寒暖差アレルギーは脳を止めるよ…鼻水止まんねぇ…暑いの苦手…


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クラフト9

やっぱり夜に仕事帰ると編集の気分なくなるよ…年内に投稿出来て良かったです。来年は…もう少し早く投稿するのを抱負としますか…とりあえず目標は1日投稿ですかね…


「今どの程度探索したんでしょうか…?」

「さて…正直広さはかなりのものだし…外側から見た範囲からして砂漠より広いだろう。」

「そうですね…」

「…しかし洋館というくらいなら紅魔館程度の大きさはあるだろうに…ここまで見つからないとなると…まだ一割の探索も出来ていないのかもしれないな。」

 

事実朝から探索を続けて既に日が沈み始めている。

二日丸々掛けて探索して、館という巨大な建造物が見つからないのだ。

高い木に囲まれた状況で、巨大とはいえ建造物を探すのは…とてもじゃないが難しい。

かといって上に登れば落下の危険、樵っていくには多過ぎる。

地道に探すにしても仮拠点が遠くなると危険が増す。

 

「…よし。大妖精、ここにも拠点を作ろう。」

「そうですね…ここまで広いとやっぱり…」

 

簡単な話だ。

地道に探すしか手段がないなら、安全な場所を増やせばいい。

単純に拠点を造りながら探索する。

基本的に真っ直ぐ進み、松明か何かで道を作る。

ある程度離れたら拠点を造る。

この繰り返しで探索する。

あまりに広かった時に考えていたやり方だ。

しかし…あまりやりたくなかったのだ。

安全の代わりに時間は掛かる。

後の安全やオウム、猫を探すのにかなり便利になるが、可能ならそちらを主目的として来た時に行いたかったのだ。

どれだけの時間が掛かるか分からない以上、他のことは出来なくなってしまう。

それにあまりチルノ達を放っておくのも心配だ。

館を見つけるまで、可能なら五日も掛けたくない。

 

「……んしょっと…これで平気ですか?」

「ああ。」

「このまま進めれば見つかるでしょうか…?」

「さて…紫のことだ。例えば埋まっているかもしれないし、崩れているかもしれない。」

「紫さんでもそれは…」

「チルノを怖がらせたこと、私はまだ許していない。」

「……」

 

私にとっては何よりも大切なことだ。

だからこそ…早く帰りたいのもある。

正直に言って紫の考えていることは分からない。

いつも表立って行動しない上、内々に秘めた考えも明らかにしない。

今もチルノ達に何かしてないかと…疑いの気持ちは当然ある。

 

「……」

(やはり大妖精だけが頼りなのは…しかしチルノやルーミアがこういった事を言うとおり出来るとも…リグルにも手伝ってもらうのはチルノ達が…)

「先生?」

「………」

「先生!」

「!すまない。少し考え事をしていた。先へ進もう。」

 

―――――

 

それからというもの、その手法で探索を続け丸四日。

とうとう森は終わり、逆側に出ることになった。

逆側は山になっていて、地面はほとんど砂利だった。

そこの探索はまたにし、私達は森に戻った。

道中館は発見出来なかった。

つまりこの縦軸には存在しないということだ。

となると出来るのは横に向かうこと。

ギリギリ見える程度に拠点を建てて歩いたことで、拠点同士の距離は凡そ二十。

設置数は…最初のも合わせて計三十八。

単純計算で七百以上の直線距離。

数えながら戻っていき、半分の位置から左右へ私達は別れた。

この木の多さ、暗さから敵には十分警戒していたが、これまで遭遇したのは十にも満たない数だった。

なので左右に別れても問題なしと判断し、私達は別れて探索を開始した。

何かあれば真っ直ぐ移動すればいいだけだし、今更時間を気にしても仕方ない。

とにかく安全にこのジャングルを探索出来れば構わない。

そう割りきることにした。

 




仕事中にもちょくちょく話考えてて(あ、考えても覚えてられんしメモ出来ない)て現実に戻ります。


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クラフト10

最近マイクラでドラクエmodやってるんてすよね~……何も…言わないで下さい…


左右に分かれ探索始め早数時間…館という程に巨大な物が全く見つからない。

もはやこちらにはないのだろうか…

一応あの本には『南の森』と記載があった。

この森にあるのは間違いない。

ただしそれは、紫の情報を信じるならだ。

残念ながら彼女に信頼はない。

というか全てが怪しいのだ彼女は。

まあその上子供を危険に晒したのだ。

むしろそれだけで信頼を無くすにも十分だ。

実際危険がなくとも、命を軽んじる行いは…私が最も許せない行為だ。

……とにかく本を信じて散策するしかない。

 

―――――

 

森を抜け、砂利の山が現れた。

つまりこちら側に館はないということだ。

となれば大妖精の方にあるのだろう。

あとは考えたくはないが…紫がやりそうなことでもあるが…南は南でも更に離れた森の可能性。

正直考えたくはない。

森を越え砂利山を越えた先に、更に別の森など考えたくはない。

だが……

 

―――――

 

「慧音先生…」

「その顔は…やはり洋館はなかったか…」

 

考えたくはなかったのだが…

それに大妖精も思ったようだ。

 

「あの紫のことだ…南に本当にあるのだろう。ただし…この森以外に…」

「……流石にこれ以上の遠出はチルノちゃん達が…」

「そうだな。すでに分かれてから一日経ってるし、リグルとミスティアに任せるにも(大妖精が)限界だろう。」

「はい…」

「…仕方ない。散策はまた今度にして今は帰ろう。」

「はい…」

 

しかし洋館はなくとも収穫はあった。

仮拠点の乱立、オウムの捕獲、少なくともこの森の安全はかなり確保したと言っていい。

木材の伐採にも困らなくなるし、また近い内に来るだろう。

石と木の安定供給はとても助かる。

今は拠点作りに集中しよう。

洋館探しはその後でも遅くはない。

 

―――――

 

「…あ!おかえりー!」

「おかえりなのだー!」

「ただいま。何か変わったことはあったか?」

「あ、そういえば牛達の柵の中に別の生き物が…」

「別?」

「近くにこの紐も落ちてて…」

「紐?…動物を抑えとくリードか…しかし何故…?」

「とにかく行きますか?大ちゃんはチルノ達見ててよ。」

「うん。」

 

リグルに言われるままに牛と羊のいる柵まで来た。

その中には、確かに見たことのない動物がいた。

羊…に似てなくもない程度の者が二匹。

羊と同じ体と、少し長い首の生物…少なくとも幻想郷にはいない。

 

「本にも何も書いてないから…どうしようかと…」

「成る程な…何か危険があったわけじゃないんだな?」

「はい。まあ何これ?って叩いたらつば吐かれましたけど…ハートは減らないです。」

「そ、そうか…まあ危険じゃないならこのままにしておこう。この世界の動物は何かしら役に立つ場合が多いしな。」

「分かりました。」

「柵は分けておこう。」

「羊の横に作りますね。」

「頼む。…しかし動物は地上で我々は地下か…」

「先生?」

「…よし。この際拠点を発展させよう。せめて地上で暮らせるよう家を建てるか…」

「え!?でもそんな専門知識なんて誰も…」

「必要ないさ。私と大妖精は既にやったが、ただの四角なら難しくない。過去野宿した時なんてもっと…」

「…先生?」

「…いやすまない関係なかったな。まあとにかく日の当たらない生活は健康に悪い。この世界の物理法則は何もかもデタラメだが、いつ崩れるか分からない洞窟で暮らす必要もないだろう。」

「じゃあ折角だし皆で色んな家作ってみませんか!?」

「ん?」

「ちょっとしたお祭りですよ!思えばサバイバルばっかりで遊びはあんまりしてないですからね…」

「…そうだな。何事も楽しむのは大事だ。」

「じゃあ皆に伝えてきますね!どうせなら家以外も整えますか…!牧場とか畑とか!」

「それでは村じゃないか…」

「じゃあいっそ村作りましょう!そしたら…蟲も集まるだろうし…

「リグル?」

「何でもないですよ~とにかくそうしましょう!」

 

珍しく勢いの強いリグルに押され、皆で村を作ることになった。

次に紫が見る頃には…一体どんな拠点になっているだろうか…

 

 




分かると思うけど商人のラマです。つば吐いたの。商人はどこへ行ったんでしょうね~


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幽香編
1狩り


平和な話を一つ、物騒な話を一つ、出すのは確定でも書くのは難しかった…どっちもゲームだから実際やらんと…お待たせ!


「―それじゃ、頑張って―」

「待ちなさい。」

 

私は帰ろうとする紫の肩を力強く掴んだ。

当然だろう。

雪山に一人置いて帰ろうとしたのだから。

 

「痛い痛いってば幽香!」

「あんたがふざけたことするからでしょう?」

「だってこの前言ってたじゃない!」

「はぁ?」

 

―――――

 

「貴女はどんな世界に行きたい?」

「どうせ選択肢なんてないでしょう。」

「ふふ…でも以外ね?貴女も興味があるなんて…」

「……外の花はどんなものか…興味あるのはそれだけよ。」

「そうね。貴女はそうだものね…」

 

―――――

 

「雪山に放置しろなんて一言も言ってないけれど?」

「だから知らない花のある場所に連れて来たのでしょう?」

「……」

 

私は辺りを見渡した。

確かに周りに植物は生えていた。

植物は。

 

「確かに花以外も植物は好きだけれど…」

「あ、因みにそこにあるのは雪山草ね。」

「へぇ…普通の花はあるのかしら?」

「普通にあるわよ。それと…貴女の好きなのもたくさん♪」

「?」

 

直後辺りに響く轟音。

何か大きな者が走るような地響き。

その正体は―

 

『―――!』

 

手なのか翼なのか難しい前足。

鋭い牙からは涎を垂らし、今にも飛びかからんと身を屈める化け物。

 

「…あれは?」

「貴女の好きなものよ♪」

「そう…殺って(狩って)いいのね?」

「どうぞ。」

 

『――!』

 

紫が姿を消した瞬間、その化け物は私に飛びかかる。

獰猛な生物…しかも私を餌と認識しているようだ。

 

「なるほどね…私の好きなもの…ね…」

 

飛びかかる化け物を、私は傘の一振りの元叩き伏せた。

化け物は怯んで、頭を回している。

間髪入れずに翼のような手を傘で突き刺す。

追い討ちに傘から妖力を放―

 

「?」

 

妖力が使えない。

隙に気付いた化け物は、凄まじい跳躍を見せ、その場から立ち去った。

 

「あ…待ちなさ…?何で…」

 

空を飛ぶことすら出来ない。

素の腕力はそのままだし、紫が細工して人間にされたわけでもなさそうだ。

彼女ならそれぐらい可能だろう。

妖力だけが封じられている。

 

「能力なら使えないわよ~」

「紫…」

「他も大体使えないわ。どの世界も幻想郷程自由じゃないのよ。」

「……この傘も能力のものだけれど?」

「頑張れば多少は使えるし、そもそもそれは私が上げたのでしょう?」

「能力で覆って姿を変えているのよ。自分が渡した物の柄すら覚えてないの?」

「生憎とそんな昔のことなんて忘れたわ。」

「…違いない。」

 

笑みを溢しながら傘の柄を元に戻す。

 

「あら?解くの?」

「ええ…これで多少は使いやすくなるわ…」

 

傘の柄がピンクから、紫色に変わる。

いつ貰ったかも分からないけれど、私の記憶にずっと残る物。

 

「いつ見てもらしくない…」

「ふふ…そうね。」

 

―――――

 

「私は帰るわ。他にも行かないといけないし、中々忙しいのよ。」

「どうせ終われば寝るくせに…」

「それとこれとは話が別よ♪」

 

言い残して紫は姿を消した。

ある程度説明を受けて、まずは人の村を探すことにした。

 

「……」

 

まずは人の村へ?

いいえ違う。

まずは…逃げた獲物を狩る。

 

「どこへ行ったのかしら?」

 

―――――

 

雪山をしばらく散策していると、猿のような者が三匹現れた。

頭部を力強く叩くだけで、いとも容易く倒れる。

獲物とは程遠い弱さだ。

あの大物はこんなものではない。

 

『――!』

「邪魔よ。」

 

猿に興味はもうない。

猪が突進しようが、二本足の獣が飛びかかろうが、私が求めているのは化け物のみ。

小物は無視して獲物を探す。

 

―――――

 

どれ程歩いただろう。

気付けば雪山を下っており、既に緑地が広がっていた。

いるのは逃げる草食獣と、探し求めた獲物。

食事中のようだ。

 

「…見つけた。」

 

傘を構える。

今度こそ逃がさない。

その思いは、横合いからの砲撃によって邪魔された。

 

「今度は負けないぞー!」

 

同じ獲物を狙う狩人…邪魔者だ。

 

 




鳴き声は文字起こし諦めました。幽香の性格は…原作だと弱いものいじめ好きってあったのが二次創作合わさって好戦的に…つまりは…まあ…『好きなもの』=『獲物』です…
幽香の傘は設定ありませんでした。二次からの引用です。


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2狩り

突然現れた人間の子供は、見慣れない筒を持っている。

その先端から打ち出されたものは、油断していた化け物の頭部を撃ち抜く。

傷の一つも付かなかったが。

 

「やっぱり硬いなー…」

 

どちらも私に気付いていない。

茅の外というものだ。

ふざけるな。

 

「……!」

「!?うぉ…!」

 

私はその人間に飛びかかった。

持っている筒もろとも破壊する勢いで。

その攻撃は、弾く程度に留められた。

 

「…いきなり何するんだよ!てか何でこんなとこに…」

「邪魔をするな。」

「え……て、後ろ!」

 

怒りによって周りが見えていない?

そんな状態は三流のやることだ。

 

「あんたは少し…待ってろ!」

 

後ろから飛びかかる化け物を、頭を殴って叩き伏せる。

動きが単調なのは獣の性か。

とても頭を狙い易い。

しかしお前の番は後だ。

まずは…この邪魔者を排除する。

 

「ちょちょっと待ってくれ!」

「待たない。」

「あいつ行っちゃうって…」

「は?」

 

ふと化け物を見ると、いざ飛び立つ瞬間だった。

 

「……殺す。」

「俺!?」

 

いざ殴る直前、緑の煙幕が立ち上った。

 

「!?」

 

晴れる頃には、人間の姿はなかった。

 

(逃げられた…?)

 

まあいいだろう。

元々標的は他なのだ。

そちらを追うことにしよう。

当然、あの人間も次見つけたら殺す。

 

―――――

 

少し登った場所に洞窟があった。

あの化け物が通るにも十分な大きさがある。

もしかしたらこの中にいるかもしれない。

徐々に奥に進んで行く。

道は三つ。

一つは光が射し込む坂の上。

恐らくは山頂に出る。

残り二つは洞窟の奥のようだ。

山頂にいたことは知っている。

なのでとりあえず山頂に向かい、いなければ山を下る。

その前に洞窟を通るとしよう。

 

―――――

 

最初に通った道を全て通ったが、奴の姿は見つからなかった。

私は洞窟まで戻り、洞窟の奥へ向かった。

 

『――!』

「はぁ…雑魚が多いわね…」

 

逆に考えれば、奴の餌も多いということ。

もしかしたら、奥で食事をしているかもしれない。

 

「……」

 

だとしたら相当嘗めてる。

あの人間も、まだ狙っているとしたら来るかもしれない。

少し急ぐことにした。

いなければもう山にはいないだろう。

それなら仕方がないので、人間の村にでも向かうとしよう。

いれば狩る。

確実に…もう絶対に逃がさない。

 

―――――

 

「……」

 

洞窟の奥に、その巨体は転がっていた。

食事中どころか睡眠中だった。

どこまでも嘗めくさっている。

まあ…容赦はしない。

 

「…ふっ!」

「――!?」

 

頭部に傘を振り下ろす。

二度三度と振り下ろす。

この傘で、しかも私の腕力を耐えるこの体は確かに硬い。

しかしどれだけ硬い装甲も、永遠には耐えられない。

走り出そうとする化け物は、頭部への殴打で止まる。

壊れるまで何度でも。

何度でも何度でも何度でも。

私の腕は止まらない。

咆哮をしようと尻尾で叩き付けられようと、私の傘が止まることはない。

尻尾を突き刺し手を突き刺し、頭を殴り腹を蹴る。

数分後には、化け物はピクリとも動かなくなっていた。

 

「…ふふふ…」

 

これ程に愉しい相手がいる世界なら…もっと愉しめそうだ。

血みどろの手をした妖怪は、満面の笑顔で笑う。

 




いやー…なんかサイコパスみたいだわー…幽香ファン様ごめんなさい!


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3狩り

一月ぶりの更新…最近は面白いゲーム多いよぉ…


化け物を狩った私は、かかった血を流すために水場を探した。

確か山を降りた辺りに川を見た覚えがある。

…あの人間がいた場所だ。

 

―――――

 

何かに使えると思い、化け物の死体も一緒に運んだ。

化け物の死体ごと川まで向かい、服を脱いで水に浸かる。

服も洗わなければ跡になる。

乾いた後で人里へ向かうとしよう。

 

「………」

 

浅瀬に入ったはずなのに魚が多い。

それも大小合わず色合いも違う。

邪魔もいいところだ。

中には金色の魚もいくらか、巨大な魚も少なくない。

道中の花や実、生物、その全てが幻想郷とはかなり違う。

 

「異世界ね…」

 

―――――

 

水浴びを終え、乾いた服を着る。

服が乾くまでは剥いだ化け物の皮を纏っていた。

多少解体をしたことで、化け物について分かったことがいくつかある。

例えば皮、並みの妖怪の皮膚や…金属類よりも硬い上、纏った限りでは薄皮一枚がその程度。

牙や爪、尻尾の硬さは胴体の比ではない。

しかしその分重く、普通の生物があの速度で動ける重さのはずがなかった。

 

「これを運び続けるのは…難しいわね…」

 

紫の話では近いところに里はあるらしいが、これを運ぶとなると時間がかかる。

ならば…

 

「貴方も手伝いなさい。」

 

数分前から人間の気配がしていた。

確実にあの人間だろう。

一人で難しいなら手伝わせればいい。

とは言え役に立つとは思っていないが。

 

「ば…ばれてたのか…」

「人里まで運ぶのを手伝いなさい。」

「…ちなみに断ったら…」

「……」

「無言の圧力が…!?」

 

断ったら当然命はない。

そもそも邪魔をされたことを水に流すわけがないだろう。

 

「邪魔をしたことは許す。代わりに運べ。」

「はい…」

 

中々に素直だ。

馬車馬の如く働いてもらうとしよう。

 

―――――

 

「――ん、よし。これで全部だな…」

「便利な猫がいたものね。」

「人間より数多いからなー。アイルーならこういう人手の必要な作業を安心して任せられるんだ。」

 

狩人の組合のようなものから依頼を受け、こいつはここにあの化け物を狩りに来たらしい。

依頼達成で連絡すれば、その組合から回収に来て、確認が取れ次第報酬が支払われる。

化け物は解体され、素材は狩人に渡される。

 

「だから俺達ハンターは、狩りに専念出来るんだ。まあアイルーも一緒に狩りをしてくれるし、頼ってばかりもいられないけど…」

「……あの持って行かれた素材、後で帰ってくるのかしら?」

「基本は。でも手間賃で鱗何枚かとか…後駄目な部位はギルドに没収される。ハンターには必要ないしな。」

「…そう。それより早く人里に案内しなさい。」

 

化け物の情報を得るにしろ、植物についてを調べるにしろ、拠点は必要だ。

それに紫の話では、この世界特有の道具も数多くあるようだ。

それなら早めに人里には向かっておきたい。

そして化け物を狩るために情報を得るなら、組合に登録するのが一番手っ取り早いと紫に聞いた。

少なくとも『ギルド』なる場所への登録と、多少の金銭の獲得。

まずはそれを進めよう。

 

―――――

 

「待たせて悪いな、行こう。」

 

こいつが荷物をまとめるまで待っていたが、武器がやたらと大きい。

化け物に効くかどうかは別として。

馬車(?)に乗り人里へ向かうが、存在感がやたらと大きい。

その分車内は広いから邪魔ということはないが。

 

「それで?どの程度で着くのかしら?」

「んー…よく分からんけど…ここはどの狩場よりも近いからな…一時間もあれば着くんじゃないか?」

「そう。ならその間に色々と聞こうかしら…まさかあの程度で、許されたとは思っていないでしょうね?」

「……はい…」

 

 




何気にオリキャラって『異世活』ではこのハンター含めて全二人しかいないですね~…これからオトモも出るから計三人(?)か。


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4狩り

不定期更新に更新の早さは求めないで…一月空けてごめんなさい…


人里に向かう馬車の中、いくつか化け物の生息地を聞いた。

私のいた雪山、真逆の火山地帯、沼地など、この世界ではどこにでもあのような化け物が闊歩している。

中にはあの化け物…『ティガレックス』以上に強い者もいるらしい。

更に上の者だと、天候や地形さえ変える『古龍種』という存在もいる。

それらと戦うなら、武器がこれだけでは心もとない。

道具の購入や武器の整備や強化、情報入手や取得物の保存。

そういった意味でも、人里に居を構えるのも合理的だ。

 

「なあ、あんたは何であんなとこにいたんだ?」

「答える必要があるのかしら?」

「いや…俺も似たような境遇だったから…」

 

こいつは村に向かう途中、あの雪山を通ったそうだ。

その時にティガレックスに襲われ、気絶した所を救われた。

なんとも情けないが、装備もまともにない人間なら、生きていただけ上等だろう。

 

「だから色々心配でさ…もしそんな感じで困り倒してたんならさ…まあそんな心配いらなかったけど…」

「だから戻ってきたのね…生憎と他人に心配される生き方はしてないわ。」

「つくづく実感したよ…」

 

―――――

 

「ここが…」

「ようこそ『ポッケ村』へ!」

 

凡そ一時間程の時間を経て、雪山の麓の村…ポッケ村に到着した。

麓とはいえ雪も多く、気温も低いために厚着の人間が多い。

見回せばアイルーも多くいる。

店番すら猫がしている光景は、どうにも幻想郷に近い常識外れのような感覚になる。

 

「さてと…とりあえずギルドに登録するのを始めにした方がいいか…そうすればギルドの施設が使えて、宿泊も出来るから。」

「そうね。あの素材も返してもらわないと…」

「……あの……」

「?何かしら?」

 

罰が悪そうにこいつは話す。

 

「登録してないハンターが狩ったモンスターの素材だと…没収される場合もある…ます…」

「……は?」

 

つまり素材は返ってこない可能性も大いにあるということ。

そして素材を受けとるのはクエストを受けた者…つまりこいつだ。

そして素材の受け渡しは原則禁止となっている。

ハンターとしての実力が分からなくなり、依頼者や本人の活動の妨げになりかねないためだ。

要は身の丈に合わない物を持つなという話だ。

 

「…もし返ってこなければこの村を滅ぼす…」

「本当に出来そうだからやめて!」

 

ギルドの登録を私が終える頃には、なんとか交渉して素材をもらうそいつの姿があった。

 

―――――

 

「――登録は完了です。カッチャさんお疲れ様でした。」

「はい……」

「…それで…依頼は何があるの?」

「えっと…色々ありますね…今の風見さんのランクは1なので…これらですね。」

 

四十枚程の依頼書が提示される。

見る限り1から3までの難易度の依頼を受けられるようだ。

討伐以外にも採取や捕獲などもある。

 

「新人ですし、『ドスギアノス』などがお薦めですね。歯応えを感じたいなどなら『ダイミョウザザミ』や…『ババコンガ』などですね。勿論採取を受けられるのもこちらとしては有難いです。」

「……」

「あー…レックスクラスなら『リオレウス』とかが満足出来るかも…」

「…そう…ならそのリオレウスというのに行くわ。」

「え…あの…カッチャさん。失礼ですが大丈夫なんですか?その…装備も普段着みたいだし、武器も…」

「…むしろこれでレックスを倒しているんですよ…」

 

人間どもの会話に興味はない。

依頼を受けすぐに村を発つ。

次なる獲物を求めて…

 




ティガ出たし原作もう皆分かるよね?
『モンスターハンター2g』が原作です。正直ライズにキリンいないから自分やる気にならなくて…ワールドや2gやってるんですよね~…キリン追加早よ。
あとカッチャの意味は狩りって意味です。


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5狩り

獲物を求めて移動する。

以前は雪山だったが、今回は密林のようだ。

この世界では、様々な環境に応じた数多くの化け物…モンスターが存在する。

今の標的は『リオレウス』と呼ばれる飛竜だ。

詳細は聞かないで来たために、飛ぶことしか分からない。

まあ…

 

「リオレウスは空の王者って呼ばれててな。火竜の名前通り火を吹くんだ。絶対に気を付けなきゃいけないのは爪。爪には毒がある。だから解毒薬は必須で…」

「何故貴方もいるのかしら?」

「へ?いや案内も兼ねて依頼を受けたから…」

「……邪魔をしたら殺す。死にたくなければ戦うな。」

「中々聞かない脅しだな…心配しなくても戦わないよ…モンスター二体相手出来るかよ…」

 

まあ妖怪は人間から見れば化け物だろうし今回は許そう。

人間…カッチャは元の馬車に戻る。

しかし竜となると、ティガレックスと比べて面倒な相手だろう。

今の私は空も飛べない。

弾幕も弱い。

対空手段は投げつけるくらいか。

火や毒程度はどうとでもなる。

 

「……」

 

手頃な石を持ち、その辺の獣に叩き付ける。

一撃で倒れる草食獣。

これは撃ち落とすのに使えるか…?

そう考え幾らか投擲物を回収した。

まあそもそも拠点…キャンプの青い箱。

支給品の中には投げナイフがあった。

どこぞのメイドも使っていたが、これが中々に面白い。

投擲物も岩やナイフがあれば十分だろう。

遠距離での戦闘よりも近距離の方が楽しいのだから。

肉を潰し骨砕く感触が…音が…なんとも心地良い…

 

―――――

 

「赤い体…草食獣の三、四倍の体躯…あれね。」

 

標的を見つけた。

池の水を飲む巨体の獣。

その姿はとても王者とは言えない姿だった。

勿論不意討ちでは面白くない。

全てを叩きのめし、絶望の中死に追いやる。

それが最高に楽しい時だ。

軽く石を投げる。

自分に敵対する者に対し、全てを獲物と見るその姿勢。

獣の王としては一級だろう。

もっとも…喧嘩を売る相手を見極める頭もない獣畜生に、王の称号は過ぎたものだが。

すぐに吠える。

耳を塞がなければ弱い人間なら死んでしまうかもしれない程の轟音。

ティガレックスもそうだが、モンスターは獲物を見つけると吠えるのか。

大きな隙だと何故分からないのか。

 

「煩い。」

 

傘を横に振る。

顔面を強打されたリオレウスは怯み、咆哮も止まった。

しかし王だけあり、すぐに羽ばたき火を吹いた。

ティガレックスなら動きが止まったことだろう。

火は一直線に私の頭上に。

 

「そんな炎で…この傘が焼けるとでも?」

 

傘を広げて防ぐ。

身で受けても問題はないが、服が焦げてしまう。

勿論獣に学習能力などない。

炎を二度三度と吐き続ける。

広げた傘は、一発たりとも逃すことなく弾き続ける。

ふとリオレウスのいた場所を確認すると…

 

「!いない…?」

 

どうやら火を吹きながら移動したようだ。

そしてその移動場所は…

 

「…!」

 

私の後ろだ。

迫り来る爪と傘を組み合い、振るって退かす。

 

「獣にも学習能力くらいはあるのね…」

 

背後からの奇襲…むしろ狩りをする獣だからこその思考だろうか。

 

(火は回避かしらね…向かって来るなら…)

 

全て叩き落とす。

それこそが…狩りだ。

 



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6狩り

「さあ…ここからは防がないであげる…精々楽しませなさい?」

「――!」

 

リオレウスの空からの襲撃。

当然こんなノロマの攻撃が当たるはずはない。

私に…避けるつもりがあるのなら。

 

「―!?――!―!」

「防がないって…言ったわよね?」

 

迫る爪を掴み、瞬時に捻じ切った。

引っこ抜けるような抜け方をし、その爪のあった場所からは血が吹き出していた。

かなりの痛みだろう。

それでも私を攻撃に来る辺り、存外捨てたものではないかもしれない。

不意に掴まれ爪が抜かれ、体制を崩したリオレウスは、そのまま地面に墜落。

思いの外早く起き上がり、足の痛みなどないように走り来る。

平凡な突進だ。

これも避けるのは苦でもないだろう。

当然避けることはないが。

 

「ふっ!」

 

頭目掛けて傘を振る。

刺々した鱗が剥がれ落ちる程、当然体制を崩してそのまま倒れる。

それも目を回したように起き上がる気配もない。

モンスターにも脳震盪はあるようだ。

 

「…これで終わりなんてね…」

 

この程度が王ならば、空の獣にまともなものはいないだろう。

 

「さようなら…少しは楽しめたわ…」

 

倒れたままのリオレウスの首に、渾身の力を込めて傘を振るう。

切れはしない。

しかし潰すことは出来る。

喉を潰してしまえば、大抵の生物は死ぬことだろう。

まあ妖怪には効かない者も多いが。

私は二度三度と首に傘を振り下ろす。

やがて体と首は両断され、ピクリとも動かなくなった。

討伐完了だ。

 

―――――

 

「……」

「…何?」

「いや…ティガで分かってたから死体もってきたのは分かるけど…何で頭と体が別れてんだ…」

「とどめを刺しただけでしょう?」

「あー…うん…そうだな…それで…満足出来たか?」

「…正直残念ね。あれが竜の王だとしたら、もう空に期待出来ないわ。」

 

結局ほぼ地面付近だったために、折角用意した投擲物も意味なかった。

 

「飛竜に期待出来ないってことか?なら安心してくれ。あれ以上の個体も確認されてる上に特殊な個体もつい最近発見された。」

「へぇ…」

「少なくとも。その傘と腕力だけでごり押せる相手でもない。せめてまともな武器持つべきだな。」

「そう…それは…」

「…そうやって笑うと…何だか悪魔みたいで怖ぇよ…」

 

しかし傘が壊れることは…気に入らない。

多少の強化は必要だろう。

 

「なら村に帰るわよ。」

「え?ちょっと待って…ちょっ…待機中…」

 

無視して村へ帰ろうとする。

どうせ死体はギルドが運ぶだろう。

早く着けば、その分早く武器を造れる。

 

―――――

 

「うーん…傘の強化か…」

「無理かしら?」

「いや…そうだな…例えば開く部分をコーティングしたり…部分的な改造ならともかく…形状も変えずってのは…」

「…そう。ならティガレックスやリオレウスの武器は?」

「それなら出来る。あんたの腕力なら大剣が向いてるだろうしな…素材は十分だ。」

「なら作りなさい。」

「あいよ。」

 

カッチャに聞いた鍛治屋に向かい、作れる武器を誂える。

やはり傘を武器として使うには相手が硬い。

強化にしても、傘を改造するのは気に食わない。

 

「まあ素手でも十分ね…」

「十分じゃない…何でそんなに傲慢なんだ…」

「…傲慢?」

「モンスターの中には接近さえ命取りな奴もいるし、やたら硬い奴とかも平気でいる。ティガやレウスはいけたかもだけどあれも弱い個体なんだ。」

「弱い個体…ねぇ…?」

「だからそんな笑み浮かべないでくれよぉ…」

 

聞けば難易度によって強い個体やモンスターの依頼をうけられるとのこと。

果ては本当のハンターだけがなれるG級があると…

この世界はまだまだ楽しめそうだ。

 

「幽香の笑顔って…悪意と殺意の塊だよな…」

 

離れた場所で、カッチャは一人呟いた。

 




モンハンのキャラは村長とかも違う人にします。口調とか流石に分かりません。そもあまり話かけないから教官や鍛治しか分からない…


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7狩り

デジモンワールド1クリアしましたー♪(二日)…マナケミア一ヶ月近くやってたけどね…嵌まる程クリア早いのよ…23も買ったからしばらくデジモンワールドしかやらない…編集は…気分かなぁ…


「待たせたな!こいつがリオレウスの大剣…『レッドウイング』だ!」

「おおー…」

「へぇ…」

「こいつは謂わば原点…もっと強いリオレウスを狩ってくれば、レアな素材も手に入る。それで更に強化出来る。」

「すげー!やっぱり格好いいよな~俺も欲しいな~」

「そのためにはもっと強くならねぇとな。」

「耳が痛い…」

 

まるであの飛竜の翼のような剣。

傘よりも重く振りが甲斐もある。

潰す感触がなくなるのは残念だが…細切れも悪くない。

 

絶対録でもないこと考えてるぞあの笑みは…

「何?」

「何でも。とりあえず次の狩り行く前に砥石でも買い行かないか?」

「そうね。」

 

傘と違い、磨いたり洗ったり以外にも、刃を手入れしなければ使い物にならなくなってしまう。

 

(……逆にそれも…)

 

「切れ味悪ければ潰すのも楽しめるとか思ってないだろうな?」

「…随分と生意気になったわね…?」

「ひっ!いやいや!俺は狩りの効率考えてな…?」

「まあいいわ…砥石はどこで買えるの?」

「(ほ…)買い物はあそこしかないよ。あの果物とか色々置いてる場所。」

「そう…」

 

そもそもこの村はかなり小さい。

この通りは鍛冶屋や雑貨屋、依頼の受付くらいしかない。

ギルドを除けば、建物は民家一つだけ。

少し離れた所が居住域だろうが、その数も十に満たない。

 

(ここに来たのは運が良かったのかしらね…)

 

増える程面倒なのが人間だ。

扱い易いのが数人いれば事足りる。

戦は好むが、つまらない諍いに興味はない。

拠点としては最高だ。

 

「……」

「?どした?」

 

カッチャが一番の成果なのだろう。

 

「…人間も悪くないわね。」

 

改めて今を見たからこそ、そんな言葉が出るのだ。

だからこそ…私は笑みを浮かべたのだ。

 

―――――

 

「ドドブランゴの討伐をお願いします!」

「……」

 

依頼を見ていた私達に、ギルドの長たる者が、突然深々と頭を下げながら頼んできた。

余りの突然さに声も出ない。

 

「失礼しました。風見さんの実力は十分承知です。なのでこのような依頼もこなして頂きたいのです。そうすれば、ギルド側としても優秀なハンターを腐らせずに済みますし、本部からの心証も良い。どうかこの『救助依頼』を受けて下さい!」

 

煩いからカッチャに詳しい話を聞かせた。

聞けばハンターが単独雪山での採集依頼の末、行方不明となったらしい。

連絡が付かず、捜索に人を送ったが、ドドブランゴの存在を確認して撤退したらしい。

この村に今いるハンターは、カッチャと私、そして同時期にハンターになったのが一人。

ドドブランゴは強大、場所も雪山と難あり。

必然的に私に白羽の矢が飛んだわけだ。

 

「……」

「まあどうせ幽香は救助なんて興味ないだろ?だから俺も同行する。幽香が狩って、俺が助ける。亡くなっていたら…遺品運びくらいはしてくれな…?」

「まあいいでしょう。」

「あ、俺が先にドドブランゴ見つけたら、ペイント当てて逃げるからすぐ来てくれよ?」

「ペイント?」

「『ペイントボール』。当てると独特な匂いがする玉だよ。どんなに離れても、薄れるまでは分かる程強い匂いだ。」

「へぇ…不思議な物があるわね。」

「まあな。とにかく作戦はこれだけ。でも頼むからさ…先に遭難者見つけたのに無視とかは勘弁してくれよぉ…?」

「保証はしない。」

「知ってる…」

 

―――――

 

雪の止まぬ場所にて…

 

『旦にゃ…さ…ま…』

 

伸ばした手は、求めた者に届くことはない。

か細い声は雪の中に消えて行った。

 

 

 




モンハンの村って居住スペース描かれませんよねー…ここでは採集のとこの反対は居住スペースにします。何回出るか知らんけど


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8狩り

更新しようとは思うんですけどね…何故か新しいゲームに手を出してしまいます。イルルカでマジェス作るまでやってしまったよ。


「さて…もう一度確認してから向かってくれよ…遭難者の反古が先!狩猟は後!いいな?」

「何度目よ…分かったから…いい加減抉るわよ?」

「何を!?」

 

一体私を何だと思っているのか。

幻想郷で暮らす前ならいざ知らず。

今の私は仮にも人里の出入りを許される程度には人に優しく接している。

あの頃は花を取りに来る人間ばかりだったが、ただ見に来る者や種を欲しがる者ばかりになった。

それだけで私の心証は大きく変わったのだ。

私の前で、私の気に入った物を踏みにじる者以外には、基本的には温厚に済ませるのだ。

 

「遭難者がいたらキャンプに連れ帰ればいいのでしょう?分かったから、早く行くわよ。」

「あ…死体ならせめて埋めてやってくれよ…」

 

―――――

 

「ふっ!」

 

ポポという草食獣に、大剣を振り下ろす。

傘とは違い体を両断する。

これならティガレックスの尾くらいなら一振りで裂けそうだ。

あの鍛治師もいい仕事をするものだ。

 

(…そういえばカッチャも何か作って…)

 

カッチャの持つ新たな武器に興味を持ちつつ、私は山を登っていった。

 

―――――

 

「ここにもいないわね…」

 

とりあえず地図に区分けされた場所は大方探した。

未だにモンスターも遭難者も見つからない。

カッチャからの激臭も漂ってこない。

 

「後は山頂くらいね…」

 

ここにいなければいないのだろう。

 

―――――

 

「白い体毛に人と似た巨体…あれがドドブランゴね。」

 

見た所近くに遭難者の影もなし…

崖からでも落ちたか、はたまた欠片もない程貪られたか。

いずれにせよこの雪山に人影はなかった。

なんならカッチャと会うこともなかった。

どこにいるかは知らないが…

 

「遭難者の影はなし…狩りを始めていいわね?」

 

そう判断し、私は猿に飛びかかった。

もったいないが救助優先…僅かに生まれた私の人間性が、そう考えた。

故に即殺。

その体の硬度がどれ程あろうと、一撃で仕留めるための渾身の振り…

それは中心を外し、牙を折るに留まった。

 

「外した…?」

 

そうじゃない。

私の姿を見てもいないのに、回避行動を取ったのだ。

牙を折られた猿は、少し離れた場所でこちらを伺っている。

痛みや恐怖などないように、こちらを獲物と見るように。

 

「退屈しないわね…さあ…楽しませなさい。」

 

一際大きい雄叫びの後、体制を左右に振りながら迫る。

振りを構えた瞬間に横に飛び、振り抜いた瞬間飛びかかる。

ティガレックスとは比にならない知性…その動きは、隙を付く人間の動きそのものだ。

その上巨体と人体にはない腕力、不規則な動きと不意にくる攻撃。

知性ある相手のなんと…

 

「つまらないわね…」

 

知性があればあるほど、痛みに対する恐怖は、相手に対する警戒は、死に対する絶望は、戦いを恐れる要因となる。

故に、ここにあるのは対等な戦いや本気の殺し合いではない。

生きるために逃れる獲物と、目的のために対象を狩る…

正しく狩猟の光景だ。

私が求めるのはこうじゃない。

純粋な殺し合いだ。

 

「――!」

「……」

 

地面から氷を剥ぎ、塊にして投げつける。

その氷を、片手で受け止め投げ返す。

当然避けるだろう。

そして、どう避けようと…

 

「簡単に間に合うわ。」

 

足に狙いを定めて剣を振り下ろす。

綺麗に両足を捉え、相当な量の血飛沫を上げる。

もうろくに動けないだろう。

これで終わりだ。

剣を頭に向けて本気で振り抜く。

ドドブランゴの巨体は、完全に両断された。

狩猟完了だ。

 

―――――

 

しかし遭難者は全く見つからない。

やはり崖から落ちたか…もしかしたらカッチャが見つけているかもしれない。

一度キャンプに…そう思った時、猿の体から何かが転がしまり落ちた。

…腕だ。

指の方向から右腕だ。

見れば体内に肉片が見える。

やはり既に喰われていたようだ。

 

「…帰りましょうか。」

 

腕でも持っていけば証拠品には十分だろう。

私はキャンプへ帰ることにした。

その時だ。

雪が崩れる音と共に、上から何かが落ちてきた。

雪を弾き、その者を軽く受け止める。

 

「猫…アイルー…?」

 

 




本当ごめんなさい自分ゲーム好きだから手放せないです。


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9狩り

旦にゃは書き辛い…


(………ここ…は…?僕…生きてる…?)

 

確かに僕は襲われた。

だんにゃ様に着いて狩りに来て、予想外の敵に襲われた。

でもどうして…

ここは間違いなく誰かのマイルーム。

全く知らない誰かの…

襲われて、しかも覚えてる限り雪山で倒れて…意識は朦朧としていたけど、崖から落ちたはず。

これで生きられるなんて…奇跡にも程がある。

 

(…誰か話してる…?)

 

僕はその声に耳を澄ました。

 

―――――

 

「それで…ドドブランゴの体の断面から腕が転がり落ちたと?」

「ええ。」

「お前は…どうやってあの大猿を真っ二つに…いや、幽香に出来ないわけないか…」

「そうね。でもいくら私でも、上から猫が降ってくるのは想像してなかったわ。」

「そりゃそうか…まあギルドには報告したし、どうなるかすぐ決まるだろ。それまで寝かしといてくれよ?」

「私は逆鱗に触れない者には比較的優しいわよ?」

「………おう。」

「早く行ってきなさい。私はしばらくここにいるわ。」

「…全然優しくない…

「早く行け。」

「…はい。」

 

カッチャはすぐに部屋を出ていき、辺りは静寂に包まれた。

まあそれもすぐに終わった。

 

「…ぅぅ…」

 

どうやら少し前から目が覚めていたようだ。

寝息の音程が変わっていたから気付いていたが、声すら出せない疲弊具合のようだ。

 

「気付いたようね。私はここの住人。話せるとは思えないけれど聞きなさい。貴方は遭難者を探して雪山にいた私達が、偶然見つけたのよ。」

 

聞いているのは間違いないが、目は虚ろで声も出ない。

これでよく生きているものだ。

幻想郷の猫でもこんな生命力はないだろう。

ハンターと共に行動する以上、適した進化をしたのだろう。

 

「まあ貴方のことはギルドに任せる。けれど…」

 

こんな便利なペットはそういなかろう。

 

「貴方が望むなら、貴方の主人を殺したモンスター。私が狩ってあげるわ。」

 

懐柔して従える。

アイルーの便利さは確認済み。

こいつの生命力、そして忠誠心は今…確認出来る。

虚ろな目で、出もしない声で、ただその猫は頷いた。

これで契約は成立した。

 

「なら早く話すことね。体を治すも生き残るも、意思が弱ければそれで終わり。精々死なないよう気合いでも入れてなさい。」

 

―――――

 

「おーい幽香ー」

「……」

「医者連れて来たぞー」

「ご苦労様。」

「え…労った…?」

「そんなに死にたい?」

「ごめんなさい。とりあえず猫の治療で許して下さい。」

 

そう言ったカッチャの後ろから、大きい鞄を背負う老婆が現れた。

見覚えはあった。

村の入り口によく見る老婆だ。

猫が集まっているとは思ったが、まさか医者とは思ってなかった。

老婆は猫の傷口を探し、その傷口に軟膏のようなものを塗ったり、回復薬とよく似た薬をゆっくり飲ませたり、他にも色々と施していた。

正確に何をしたのかは分からないが、半月も安静にしていれば治るようだ。

狩りにでるには一月はかかるようだが。

その老婆…猫婆はアイルーの治療だけして帰って行った。

 

「薬だらけね…」

「そんなヤバイ状態だったのか…助かってよかった。」

 

包帯でもはや顔も見辛い程覆われている。

カッチャの言い方からして、やはりアイルーの中でもしぶといようだ。

 

「しばらくはここで寝かしといてやれよ?」

「さっきも言ったでしょう?」

「……はい…」

 




ここの猫婆は猫の専門家としてアイルーのことだけは誰よりも知ってるということにしました。モンハン世界…医者ってRIZEにしかいないし…
猫紹介:名前:アミコ
意味は友
白黒半々四足茶色の三毛猫
これ以外は作中出します。これだけ忘れないようにです自分が。ちなみに雌ですよ?僕っ子です。


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にとり編
digital1


今回は結構絶望的スタートかもしれない。捕らえ方によりますけど。てことで弐 三人目!どぞ!…ちなみに今回短いです。


「ふっふっふ…」

「随分ご機嫌ね。」

「そりゃそうだよ!紫の能力を解析出来る機会なんてそえないからね!使えるようになればどれ程楽しいか…うへへ…」

「あんまり変なことに使わないでね?にとり。」

「大丈夫大丈夫~紫程変なことには使わないって~」

 

科学者特有の独特な雰囲気。

自覚出来る程度にはハイになっていたと思う。

止まれなかったのが全ての原因だろう。

解析が終わって機器の製作中、見事に失敗した。

おかげで場所も、世界も、訳の分からない場所に、境界を伝って飛ばされてしまった。

 

「ここどこー!?」

 

飛ばされたことより製作途中で投げ飛ばされたことの方がよっぽど辛い。

おそらく紫の境界を下手に扱ったために、予想の付かない世界への境界が開かれてしまったのだろう。

しかも紫のいない場所でやったために救助も期待出来ない。

偶然見つけてくれるか覗き見してたかを期待する他ないだろう。

とにかく生き延びるために人のいる場所を探すのが先決だ。

 

「…せめて工具が欲しかったなー…」

 

私は唯一持っていたスパナを抱えて散策に出た。

 

―――――

 

どういうわけか空も飛べない。

どころか体にかなりの違和感がある。

歩く疲労がないし、飛ばされる前に何徹かしたはずなのに、眠気の一つもない。

しかも…

 

「……あれ妖怪?」

 

白黒の模様の角の生えた小さい獣。

紫色の手足の短い羽の生えた鳥…?

警戒心は当然ある。

とはいえ科学者として、未知のものに興味を示すのは当然だろう。

そんな私が、背後を警戒しているはずもなく…

 

『――!』

「ヒュイ!?」

 

不意に襲われる。

能力も使えなければ道具もなく、身体能力に自信もない。

いわば絶体絶命の状況だ。

 

(まずい…!)

 

その時だった。

蝙蝠の超音波程ではないが、超高音の鳴き声が辺りに響き渡った。

辺り全ての未知の生物達は、その音の効果なのか金縛りあったかのような止まり方をした。

まあその範囲に私もいたので私も同じだが。

 

『こっち!』

「誰!?」

『早くー!』

 

金縛りが緩和された直後手を引かれる感覚があり、声に従い移動する。

他の生物も動き始めたが、体の大きさの差は大きいだろう。

追い付かれることなく逃げ切れた。

 

―――――

 

「はぁ…はぁ…」

「ここまで来れば安全だよ。」

「はぁ…ありがとう…」

 

声のする方を見ても何もいない。

 

「こっち~」

「?」

 

下を見ると、耳のたれた子犬のような生物。

どうやらこの子に助けられたようだ。

 

「……君もあいつらと同じ生物なの?」

「うん。僕『プロットモン』。デジモンだよ~」

「デジモン…?」

「ねぇねぇ、君どうやってタワーから出て来たの?」

「タワー?」

「うん。人間が集まるとこ~」

「あー…えっと…ちょっとした事故でね…?」

 

どうやら人間はいるものの、場所は一ヶ所だけらしい。

つまりこの世界は、この『デジモン』という生物が主に活動する世界ということだ。

それからプロットモンに様々なことを聞いた。

ここはどこなのか。

どうやって助けてくれたのか。

解剖していいか(駄目でした)

本当に様々な情報を得られた。

気付けば…というよりも、一時間も経たない内に日が暮れてきた。

その頃には、デジモン達が集まる街に着いていた。

 

 




デジモンではあります。しかしどの作品かはまだ教えません。しかし…特に意味はありません。


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digital2

「ようこそ!『はじまりの街』へ!」

 

プロットモンに案内されて着いた先は、どう見ても人の手が加えられた建物群。

少なくともプロットモンや平原にいた奴らで作れる規模でも形でもない。

 

「ここに人間がいるの?」

「この道真っ直ぐ行くと見えるタワーにたくさん!」

「あれか…」

 

あそこから元の世界には多分戻れない。

しかし幻想郷の外の世界にはたどり着けるかもしれない。

つまり紫…もしくは以前聞いた…宇佐見(?)だかに出会えれば、経由して幻想郷に戻れる。

でも…

 

(繋がりはあるみたいだけど…イレギュラーが世界間を移動出来るとも思えない。)

 

「プロットモン。あそこから人間の世界には戻れるの?」

「うーんとね…普通は戻れるけど…今は受付もいないし…うーん…」

「もしかして…今あそこ機能してない?」

「うん。でもちゃんとやっててもにとりが戻れるとも思えないの。だってにとり、生身みたいだもん。」

「生身?」

「人間ってね。何だか薄いっていうか…肉がないっていうか…とにかく肉体がないの。」

「肉体がない…?」

 

つまり人間は霊体のような姿で存在している?

それはつまり…精神だけで移動している?

だとしたら、私が帰る方法はこの街にはないだろう。

 

「とりあえずジジモンのところに行こう!」

「ジジモン?」

「この街の村長さん!デジタルワールドについてのほとんどのことを知ってる物知りおじさん!」

「……デジタル…ワールド?」

「あれ?言ってないか。この世界はデジタルワールドって言って、全部がデジタルで出来てる世界なの。」

「……」

 

デジタル…電子的な生物や生成物。

つまりここは、実験の失敗で別の世界に来たのではなく、むしろ私の製作途中の機械に入り込んだのだろう。

そこから派生している別の世界の電子空間に来たとしたら、単純に別世界の別世界…二重移動となる。

紫なら突っ切って来れるだろうが、見つけるのには相当時間がかかるだろう。

ここが私の機械の中ならよかったが、デジモンなど私は作っていない。

せめて電子世界から現実世界へ戻れなければ、最悪見つからない可能性も…

そうとなればじっともしていられない。

ジジモンとやらに会いに行こう。

 

―――――

 

「ジジモン…」

「看板でっかいよね。」

 

ジジモンと書かれた看板がでかでかと張られた一軒家。

ここがジジモンの家らしい。

 

「ジジモーン!」

「何じゃプロットモンか。平原に行ったのでは……人間!?」

「あ、初めまして…」

「何故じゃ!何故人間がこうもデジタルワールドに来る!お主含めてもう四人目じゃぞ!?」

「え?人間が他にも来てるの?」

「お主が平原に行ってからものの数分での。」

「それって…!」

「何を考えているか手に取るように分かるぞい。元の世界に帰りたいのであろう?」

 

どうやらこの世界に迷い込んだ人間全員がジジモンの家に来たらしい。

そして全員が元の世界に帰りたいと…つまり誰も帰還法は分からない。

とはいえそれなら私も協力出来る。

目的は同じなのだから。

 

「全く…最近のこの世界はどうなっておるんじゃ…」

「最近?何かあったの?」

「うん。最近この街からデジモンもいなくなるし、各地の『メモリアルステラ』も機能停止してるみたい。」

「この世界の異変は、留まることを知らんのじゃ。その上人間が来るというのは、なんとも不可解じゃな。」

「…ジジモン。私も何か協力出来る?」

「なぬ?」

「僕も僕も!」

「お主ら…しかしよいのか?儂らとしては喜ばしい限りだが、お主が帰るのが遅くなるやもしれんぞ?帰る方法も分からぬのじゃ。無理に協力せんでも…」

「むしろ異変が起きているならそのせいで来たのかもしれないし、解決すれば帰れるかも。」

「可能性はあるやもな。あい分かった。では可能な限り儂もサポートしよう。」

「じゃあこれからにとりと僕はパートナーだね!」

「パートナー…うん…よろしく!」

 

プロットモンが一緒にいるのは心強い。

幻想郷でも異変解決は大抵の問題解決にもなっていた。

目指すは異変解決。

 

 




にとり個人的にかなり友好的なのが多いと思う。だから今回は異変解決に協力して頂きましょうかね。


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digital3

バイト重なったけど書く気力はあったんですよ。残念なことにエルデンリング縛りが終わる前で…すみません忘れて遊んでました。


「お主ら以外の人間は、皆『メモリアルステラ』を調査しに向かったぞい。」

「メモリアルステラ?」

「地区ごとにデータを纏めた…謂わば管理端末のようなものじゃ。此度の異変に関係するかは分からぬが、噂によれば、既に機能が停止しているようじゃ。」

「それを治して歩くの?」

「可能ならばの。しかしまずは他の者と合流してはどうじゃろうか。お主、『デジヴァイス』は持っとるかの?」

「…デジヴァイス?」

「持ってないか…人間は皆持っとるものかと…連絡を取ることは出来ないようじゃな。出来ればお主は、他の者と常に共に行動してもらえるかの?」

「ん。分かったよ。平原のメモリアルステラに皆向かったんだよね?」

「うむ。お主も向かえば、合流することも出来よう。」

「分かったよ~行こニトリ!」

 

プロットモンは私を置いて先に行ってしまった。

流石に犬のような姿なだけに、結構な速度で走ってしまう。

見失う前に追わなければ。

 

「のうニトリとやら。」

「?まだ何かあるの?」

「いやの…デジモンはパートナーの有無により、成長の度合いが変わる。そしてパートナーのいるデジモンは、互いの感情や絆により、その姿を無限に変化させる。」

「……私次第ってこと?」

「うむ。どうか…あの者を立派に育ててくれ。あの者は神聖デジモンとして生まれたが、光として成長することが決められておらん。とても不安定な者なのじゃ。どうか…あの者が闇に飲まれぬよう、導いてやっとくれ。」

「…うん!」

 

―――――

 

「ニトリー!早く早くー!」

「待ってプロットモン~そんな早く走れないって…」

 

平原に出たはいいが、プロットモンの興奮が止まらない。

凄い速さで置いて行かれる。

 

「あれ?これ何~?」

「プロットモンも分からないの?」

 

そこにあったのは、缶が詰められた四角い箱。

横には厠があった。

 

「何だろうね?」

「ねー?あ、ニトリニトリ!あっちにも何かあるよ!」

「あっち?」

 

プロットモンの向く方向には、特に何もない平原の景色だ。

見渡しても何もない。

 

「どこ?」

「あっち!着いてきて!」

 

着いて行った先には、明らかに重要そうな石碑のようなものがあった。

召集厠からここまで見えたとなると、プロットモンの視力は相当いいほうだ。

 

「?何か落ちて…」

「!ニトリ危ない!」

「え?ぐぇっ!」

 

プロットモンに突飛ばされて転げた。

私のいた所を見ると、巨大な爪が地面をえぐったような跡と、小さいデジモンが佇んでいた。

 

「あれ…きっとメモリアルステラだよ!あの小さいのが原因だったんだ!」

『―――!』

 

威嚇されているようだ。

あまり迫力はないが、地面の爪跡が危険を警告している。

 

「ニトリ指示して!あんなの放置出来ないよ!」

「うん!」

 

―――――

 

「『パピーハウリング』!」

 

私を助けてくれた時の超音波のような鳴き声。

しかし聴覚がないのか、こいつには全く効果がない。

 

「嘘…」

「プロットモン!」

 

先の攻撃が再び襲うが、今度は私がプロットモンを抱えて飛び退いた。

 

「ありがとう。」

「ううん。」

「うー…攻撃が効かないんじゃ…僕には…」

「諦めないでよー!まだ何か…」

 

考える時間を与えてくれる程、優しい相手でもなかった。

何度も攻撃を連発してくる。

爪跡のようなものは爪ではなく、尻尾から出た衝撃波だった。

まるで車輪のように回転しながら、その衝撃波は連発される。

私達は避けるだけで精一杯だ。

何か手を考えなければ、やられるのは時間の問題だ。

 

「プロットモン!とにかく何でもいいから攻撃しよう!何か効くかも!」

「うん!」

 

プロットモンは引っ掻きや噛みつき、私はスパナで叩く。

正直私の攻撃など全く効いていない。

この時ばかりは貧弱な科学者である自分が恨めしい。

私達はとにかく攻撃し続けた。

いつか倒せると願って…

 

「はあ…はあ…全然効いてないのかな…」

「…ううん…向こうも攻撃が遅くなったから…全くの無意味じゃないと思う…」

 

しかし膠着を破る方法はない。

諦めて帰ってくれれば有難いのだが…それも叶いそうにない。

しんな長い戦いの末続いた膠着は、第三者の手によって終わることとなった。

 

『アグモン!』

『ベビーフレイム!』

 

背後から放たれた火球は、一直線に敵に当たった。

そしてその一撃で、そいつは倒れることとなった。

 

「よかった~ジジモンから聞いて急いでよかった…」

「タイガ~あんまり前に出たら危ないよ~」

「ごめんアグモン。」

 

彼らがジジモンの言っていた人間のようだ。

とりあえず…

 

「助かったー…」

「ふへー…」

「だ、大丈夫!?」

 

安堵と疲労から、私とプロットモンはその場にへたりこんでしまだた。

 




メモリアルステラ出たしもういいかな?隠す意味ないし未定だし…原作は『デジモンワールドRe.digitize』
尚decodeか無印かは未定です。個人的には無印が一番やりこんだゲーム(1000時間超え)だけどdecodeの方が話伸ばせるんですよね~その内決めます。


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digital4

ドラクエもffも新作クリアしてきましたー…やり込み要素長いしくどい!宝探し疲れたすてみパンチゲー飽きた…


私を助けた人間の横には、黄色い二本足の獣が構えていた。

彼らは倒れた敵と私達の間に割って入るように立っている。

 

「!まだ動くよ!」

「アグモン!全力だよ!」

「うん!『ファイヤータワー』!」

 

奴の真下から炎の柱が巻き起こる。

その炎は敵を確実に捕らえ、焼きつくさんと燃え滾る。

炎が晴れた頃には、倒れた奴の姿があった。

 

「やっと倒れた…?」

「!ニトリ下がって!」

「!あぅ…」

 

再び起き上がった敵は、最後の反撃と言わんばかりに、尻尾を振るう。

その攻撃は空振りに終わるが、逃げる隙を作るには十分だった。

紫の隙間のような物を開いたそれは、すぐさま飛び込み逃げ出した。

 

「何だったんだろう…」

「タイガー何かあるよ?」

「?何これ?」

「データの塊かな?」

 

 

奴の消えた場所には、黒くて四角い物体が転がっていた。

三人にも分からないようで、とりあえず回収することにした。

ジジモンなら分かるかもしれないからだ。

それをタイガと呼ばれた少年が拾った時、正面にある柱のようなもの…『メモリアルステラ』が動き始めた。

能力が戻ったように光り始めたのだ。

 

「これが原因なんだ…」

「?タイガのデジヴァイス、メール来てるよ?」

「本当だ。」

「…それがデジヴァイス?」

「え?君持ってないの?」

「うん。」

「……手に入れる方法なんてあるのかな?」

「とりあえずメール見てみようよ。」

 

めーるとやらを開いた彼は、内容を読んで首を傾げた。

覗き込んでみると、確かに意味の分からない文言が連なっているだけ。

 

「何かなこれ?」

「ジジモンに聞けば分かるかも!」

「あ、待ってプロットモン…」

 

そう言って走り始めた。

しかしその速度はそう保たれなかった。

急にふらついて倒れたのだ。

 

「プロットモン!?」

「!ケガしてるよタイガ!」

「えーと…絆創膏は…」

 

彼はデジヴァイスを操作して何かを探す。

すると巨大な絆創膏が手元に現れた。

 

「え!?何で!?」

「ほらプロットモン。」

 

その絆創膏はプロットモンの体に張るでもなく、触れた直後に消え去った。

そういえばこの世界はデジタルの世界…もし彼らも…私さえデータの集合体だとしたら…

 

「絆創膏のデータを取り込んだの?」

「うん。僕も最初は驚いたけど、食べ物とか薬とか、全部データで出来てて、デジモンは触れれば取り込めるんだ。」

「ふーん…それ人間は大丈夫?」

「詳しくは分からないけど、戦うのがアグモン達だからね…ケガとかは少ないだろうし、この世界に来てから空腹感もないしね。」

「確かに…」

 

しかしデータの塊である以上、保管方法がなければ持ち歩けない。

デジヴァイスにこんな機能があるとは…ジジモンがデジヴァイスを持った人と行動するよう言うのも頷ける。

 

「ん…」

「プロットモン!」

「いや~思ったより疲れてた~」

「プロットモン元気になって良かったー」

「うん。これでジジモンのとこに戻れるね。」

 

何故か彼のデジヴァイスに地図が入っており、それを辿ってはじまりの街に帰った。

そういえば人間は他にも二人いたのでは?

 

 

 

 

 



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digital5





アグモンの加勢もあって、無事街に戻ることが出来た。

報告も兼ねてジジモンの家に向かう。

 

「ジジモーン、メモリアルステラの復旧してきたよー」

「おお!お主ら!無事戻ったようで何よりじゃ。何か分かったかの?」

「それが…」

 

―――――

 

「成る程…となると原因は其奴にありそうじゃな…」

「倒すにもすぐどっか行くし…」

「僕とプロットモン二体がかりでもギリギリだったよ。」

「ふむ…他の二人にも協力を仰いだらどうじゃ?」

「そういえば他にも人間が来てるんだよね?会えないの?」

「僕らは一度会ってるけど…今どこにいるかは…」

「とにかく探してはどうじゃ?戦力は多いに越したことはない。それとプロットモンよ。」

「何~?」

「お主が強さを求めるなら、ジムに行くがよい。散々遊び呆けたのじゃ。そろそろ頑張る時ではないか?」

「……うん。そうだね。ニトリ、僕ジムで鍛えるよ。その間に他の人間と話してみてね!」

 

プロットモンは勢いよく部屋を飛び出し、そのまま走り去ってしまった。

 

「ふぅ…あやつめ…そそっかしいのう…ニトリ殿、お主も行ってやってはくれぬか?」

「え?でも…」

「あそこのトレーニングは一人よりも指示する者がいる方が効率がよいのじゃ。お主が行けばトレーニングの効果もぐんと上がろう。」

「行ってあげて。他の人間と会えたら、ジムに向かうよう伝えとくから。」

「…じゃあ行ってくるよ。そっちは任せるから。」

 

―――――

 

ジムの場所を聞いて入ってみたら…プロットモンが爆発していた。

当然何があったか分からない私は、呆気に取られて眺めてしまった。

そんな中、ジムの管理人のトゲモンから声をかけられた。

 

「そんな所でどうかしたトゲ?」

「え…?いや…え?」

「?…ああ。『爆弾避け』トレーニングに驚いたトゲね。」

「驚きっていうか…あれは拷問じゃ…」

「罰ゲームレベルの弱い爆弾トゲ。強い爆弾ならとっくにジムは粉々トゲ。」

「それは…そうだけど…」

 

よく爆弾を正面から臆さず見られる。

デジモン全員がこうなのかもしくは…

 

「…プロットモン。」

「?あれニトリ?何で…わぎゃ!」

 

こっちを向いた瞬間、プロットモンは爆弾によって弾かれた。

 

「痛た…それで何でここにいるの?人間探しは?」

「タイガに任せたよ。ここの特訓は二人の方が効率いいんだってさ。だからここからは私が指示出すよ。」

「それがいいトゲ。プロットモン一人じゃ『アミダ』も『サイコロ』も出来ないトゲ。パートナーが居てこそトゲよ。」

「パートナー…うん!ニトリお願い!タイガ達来るまでトレーニングだ!」

「…馬鹿にされてるよプロットモン…」

 

―――――

数時間の間トレーニングをし続け、トゲモンが誉める程強くなったようだ。

とはいえ私には全く分からない。

これが長年の観察眼なのか。

 

「しかしタイガ遅いな…」

「もしかしたら平原に行っちゃったのかも!探しに行こ!今なら全然大丈夫だよ…!」

「こらこら…君はまだ成長期トゲ。平原には同じ成長期くらいしかいないトゲが余裕はないトゲ。」

「…成長期?」

「?ニトリはデジモンの進化を知らないトゲ?」

「うん。」

「デジモンには『幼年期』『成長期』『成熟期』『完全体』『究極体』の五段階の進化があるトゲ。」

「…!」

(プロットモンの不安定ってそのことか…)

「プロットモンは成長期。私は成熟期。完全体は…今は街にはいないけど、ジジモンが究極体トゲ。」

「ジジモンが!?」

「実は結構強いトゲよ。それにデジタルワールド創世記から存在している超高齢者トゲ。」

「ジジモンが…」

「いつか究極にまで至れるよう、プロットモンも頑張るトゲ。」

「うん!」

 

それからタイガが来るまで、更に二時間が過ぎた―

 




確かゲームのどれかにこんなトゲモンいたはず…分かりやすいので語尾これで。


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digital6

喋り方に特徴ないよね…ニトリって…なんか書いててむしろ勇義感あると思ったし…難しい…


タイガがジムに来て、ジジモンの家で集合する旨を伝えてくれた後…

 

「ねえねえニトリ~♪僕強くなれたかな?」

「うーん…正直見た目じゃ分からないかな。」

「むう…」

「プロットモンはちゃんと成長してるトゲ。むしろ出来てなかったらうちのジムの沽券に関わるトゲ。自分を信じるトゲ。」

「んー…ニトリ!平原で実戦しよ!戦えばもっと強くなれる気がする!」

「え!?ちょっと待っ…」

 

そう言ってプロットモンは走り去ってしまった。

これからジジモンの家で集合と伝えたのに。

トゲモンの反応を見るに、あまり心配はいらない程度の実力は手に入れたみたいだが…早く連れ戻さなければ…

 

「トゲモン…少し頼まれてくれない?」

「構わないトゲ。」

 

察しが良くて助かるよ…

 

―――――

 

「プロットモンどこ行った…?」

 

あの子は仮にも犬型…足の速さは人より速い。

妖怪とはいえ私はそこまで走りは速くない。

飛ぶことも出来ないし、追い付けるかどうか怪しいものだ。

 

「おや?何か困り事ですか?」

「へ?」

 

周りをキョロキョロしていたせいか、困ってるように見えたのだろう。

目の前にはずんぐりむっくりの人型ロボットがいた。

 

「人間とは珍しい。それで…何かお探しで?ワタシはガードロモン。街の案内役をしています。」

「あ…プロットモンを探してて…」

「プロットモン?それなら肉畑の方向…東へ向かいましたよ。」

「本当かい!?いやー助かったよ!ありがと!」

「いえいえ。お気をつけて。」

 

……やっぱり機械のが正確なのかな?

 

―――――

 

「……いない…まあ平原に行ったのが妥当か…」

 

見る限り畑しかない。

というか何故肉が畑に…今更の疑問だが。

まあ絆創膏の件もあるし、不思議ではない。

番をしているのがプロットモンより幼いことの方が不思議だろう。

 

「……どうしたの?」

「あ…ごめんごめん。ついまじまじ見ちゃって…」

「ふーん…人間は皆、肉が畑で採れてるのに驚くね。」

「まあね…そうだ。プロットモン見なかった?」

「プロットモン?見たよ。真っ直ぐ平原の方行っちゃった。また遊び呆けてるんじゃないか?」

「あはは…ありがと!えっと…」

「タネモンだよ!これからよろしく!この街の食料は基本的にここのお肉なんだ!今度は買いに来てね!」

 

なんだか宣伝までされて送り出された。

あの幼さで商魂逞しい。

まあやはりプロットモンは既に街を出たらしい。

どこまで行ったのだろうか。

 

―――――

 

「プロットモーン!…プロットモーン!」

 

平原に視界を遮る物はほとんどない。

あるのはよく分からない鉄塊だらけ。

 

(なんだろこれ…赤と青に点滅してる…?こっちは…多分レール。守谷ロープウェイのと似てる。となるとこれは…乗り物?下の車輪が嵌まりそうだし…)

 

「…てこんなことしてる場合じゃなかった!」

 

幻想郷にないものについ目を奪われてしまった。

危ない…特に一人の時はデジモンに襲われるかもしれないのに…

プロットモンを見つけてから調べよう。

 

―――――

 

それから鉄塊が多い場所を歩いていると、やっとプロットモンを発見出来た。

蝋燭のようなデジモンと一緒に。

 

「襲われてる!?」

 

しかも余裕で負けてる。

アグモンが使った炎の柱。

どうやらそれのせいで近づけないでいるようだ。

確かにプロットモンは突進や声くらいでしか戦えない。

戦い方を知らない子供だ。

なんとか攻略しようにも難しそうだ。

 

(こんな時のための私か…)

 

「プロットモン!こっち!」

「!ニトリ!」

 

プロットモンは一目散に私の下へ。

蝋燭も止めようとするものの、炎の柱は出が遅い。

足の速いプロットモンと合流するのは簡単だった。

 

「よかったよ…まだ無事で。」

「むー…あいつにくらい勝てるよ!」

「負けてたよね?」

「ぐう…」

 

そんなやり取りを見逃す程、甘い敵もいないだろう。

私達の間から炎の柱が立ち上る。

逃がすつもりはないらしい。

 

「あいつ…!」

「プロットモン。指示するから戦ってくれる?」

 

デジモンははっきり言って強い。

生物としての性能が、人間より遥かに高い。

今の能力を封じられた私では対処が出来ない。

プロットモンにさえ勝てないだろう。

だがプロットモンは視野が狭い。

周りが見えてないから、真っ直ぐ過ぎるから弱い。

 

「上手く指示出すから…信じて。」

「……うん!行くよ!ニトリ!」

「頑張れプロットモン!」

 




本家では指示系統決まってるし言うこと聞かないけど…まあこっちはゲームじゃないので!技もアニメと同じく普通に使えるということで。


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早苗編
monster1


壱は四人でしたし、弐も四人分の章作ります。ついでに言うと予定してた各原作はこの八つで終了です。正確には後三つ程…ネットの友達からですけどアイデア貰ってましたが!人数多い……ので終わりです。全員終わりいつになるか分からないけど終わったら書くかもしれませんね~…


昔から不思議な物や変な物や…とにかく大きい物だったり、少年みたいなものが大好きだった。

女の子らしい物も可愛いと思う物も好きだったけど、RPGみたいな敵とか、ロボットアニメとかがとにかく好きだった。

だから紫さんから話をされて、希望があればって言われて、私は…

 

(何でこんな場所から…?)

 

可愛いかったり格好いいモンスターとかと一緒に戦う世界がいいって言ったのに…私は箱に入っていた。

しかもたくさん似た箱が積んであるということは、多分物置か何かだろう。

 

「うーん…でも何か…見覚えある気が…」

 

箱から出て見て回っていると、階段の上から足音が聞こえてきた。

 

『―シャルロットちゃん?どこに行くの?』

「……」

 

確かこの後隠れる展開の『ゲーム』で…

 

「…とりあえず隠れて…」

 

階段から姿を現したのは、白いモフモフの毛玉。

小さい手足と黒の羽、悪魔のような尻尾の獣。

 

(!思い出した…確か…)

 

思い出して声を上げそうになるが、寸前で止めて縮こまる。

まあ意味はない、どうせ見つかるのだから。

 

「きゃああああ!」

「……」

 

やっぱりだ。

幻想郷に来る以前、友達からハードごと貸されてプレイしたゲームだ。

『DQMJ2』…ドラクエのモンスター育成ゲームだ。以外に嵌まって結構やったな~

一番好きだったのはスライダークロボ。

 

(となるとこの後は…)

 

隠れていたのが見つかり、『飛行船』の全員が集まる。

ゲームでは見つかった後、船員として働くのだ。

当然この流れは原作通り、外さないために乗った理由も同じにした。

『世界一のモンスターマスター』になるという理由で。

船長の『セブンス』は、凄いいい人だ。

叱るでも通報でもなく、仕事を与えて願いも叶える。

そんな人だ。

というか登場人物一人除いて大体いい人達だ。

だから出来れば怪我もさせたくないが…これから先起こることは、未来にも影響する。

残念だけど、原作通りの運命を辿ってもらう。

 

(ごめんなさい…)

 

―――――

 

新しく船員になった私の最初の仕事は、船内の人全員への挨拶。

船長のセブンスさん始め、機関士の『ホーガン』さん、乗客の『ルボロー』さん『ピスカ』ちゃん『ゴルッテ(GJ)』さん『キストーラ』さん『シャルロット』ちゃん(モーモン)。

全員への挨拶を終えてセブンスさんのもとへ戻った。

 

「全員に挨拶してきたな?」

「はい!」

「なら次は――」

 

原作だとこの時点でイベントが始まるのだが…やはりゲームとは違い、色々と仕事をしてからイベントに突入した。

関係ないがこういう仕事は始めてだから少し新鮮だった。

さて…原作のイベントだが…

 

「くそ!この…!ん?お前さんか!セブンスに伝えてくれ!機関がダメージを受けた!緊急避難の準備だ!」

「わ、分かりました!」

 

原作通りだ。

ホーガンさんの修理も追い付かない程の故障。

そしてセブンスさんのもとへ戻ると…

 

「―すまない…もう舵もきかないんだ…」

 

そのまま飛行船は墜落した。

名も無き島へ、導かれるように…

ゲームは…ここから始まるのだ。

 

(死にませんよね?)

 

墜落する飛行船で、その不安はどうにも拭えなかった。

 

「ひゃあああ~~!」

 




原作知ってる設定は早苗さんしか出せんですたい。ロボット系統は自分が知りません。ちなみにこのゲームまじで攻略知らなきゃモンスターコンプ出来ない。その意味で早苗です。


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monster2

デジモンサヴァイブラスボスムゲンドラモンではめられたわ。まだやってるから更新まだ遅れますすみません。


「うう~ん……ここは…あ!」

 

ストーリー通り墜落した飛行船は、既に壊れて動かなくなっていた。

その上ゲームと違い、周りには初めからモンスターだらけ。

スライムやカバシラーのような弱いものでも生身で受ければ重症…まではいかないなりに無傷ではすまないだろう。

可能な限り見つからないよう、私は飛行船に乗った。

パイプは折れ、箱は荒れ、椅子もぼろぼろ。

当然誰もいなかった。

 

(ここにはいない…原作通りなら…)

 

飛行船を出て辺りを見渡す。

本来ならホーガンさんが来るはず。

この世界がゲームではなく現実である以上、イベントスイッチなんてものはない。

しかしホーガンさんが無事に飛行船を確認に来るのは変わらないだろう。

しばらく待ってみよう。

 

―――――

 

……来ない。

一時間程待っても誰も現れない。

あまり飛行船に留まる時間もないのだ。

原作通りなら船長は……

とにかく急ぎ船員を探さなければ、最悪誰も助からない。

ストーリーを知ってる私は最悪どうすればいいか分かる。

しかし他の皆はそうはいかない。

平原にあるモグラの巣穴…

彼らの中でそこにたどり着く可能性があるのは、かろうじてルボローさんだけ。

既にいるであろうGJさんは私(主人公)が急がなければ捕らえられるだろう。

まあ原作通りならドン・モグーラが解放してくれる…ことに賭けよう。

あそこに行かなければ私でさえ島の脱出は出来ない。

何より…機械が使えなければ、モンスターを仲間に出来ない。

正確には出来るが、管理出来ずに反乱が起きるのが関の山だろう。

あの施設は餌やりや環境調整もしてくれるのだから。

生身で島の探索は無謀この上ない。

やはり誰かと…ホーガンさんか船長のどちらかと合流しなければ、私にさえ希望がない。

 

「……」

(ホーガンさん…)

 

巫女らしく、神頼みしか私には出来なかった。

 

―――――

 

幸い食糧は飛行船の箱にかなりあった。

数ヶ月なら食糧の心配はなさそうだ。

それと一つ幸運なことがあった。

原作でもそうだが、モンスターが一匹だけ残っていた。

しかし原作とは違い、残っていたのは…

 

「モーモン…?…シャルロットちゃん!?」

 

そのモンスターはシャルロットだった。

キストーラさんが可愛がっており、ストーリー中勝手に出歩き回る問題児…

そしてこの島に来た元凶…といっても本人は悪くない。

それに来たことはこの世界の人々にとっては幸運なことだ。

しかしシャルロットがここにいるということは、キストーラさんは雪原で、一人危険な放浪をしているということ。

 

(あれ…?そういえばシャルロットちゃんって…)

 

ゲーム上レベル20同士の同名モンスターを配合すると、強モンスターという個体が出来る。

更にその上、レベル50で強モンスターを配合すると、最強モンスターという個体が生まれる。

スライムやキメラのように、下級の中でも最弱の部類の限られたモンスターのみ、この個体になれる。

しかしその性能はかなりの変化が生まれる。

それこそ名の通り最強に…

このシャルロットというモーモンは、キストーラさんのペットというだけでなく、最強モーモンだったはずだ。

仲間になれば、この子程頼もしい存在もないだろう。

皆のために…キストーラさんのために、力を貸してくれないだろうか。

 

「…シャルロットちゃん…ううん。――。力を…貸してくれる?」

 

この子はキストーラさんの横にいた。

ただここに待避しただけなら、システムの影響もない。

出入りも自由に出来るはず。

本人の意思によるが…『彼』は協力してくれるようだ。

 

「よろしくお願いします。」

 

誰かが戻った時のために書き置きだけして、私はシャルロットとともに密林に向かった。

まずはルボローさんを…ホーガンさんを助ける。

 

「行きましょう!」

『キューッ!』

 

 




一応ネタバレ防止の――です。シャルロットについては原作知らないと分からないですからね。


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monster3

まず手始めに、船の外にいたスライムと戦い、シャルロットちゃんの実力を確認した。

 

数値化などはないために正確な数字は分からないが、噛みつき一撃で倒してしまった。

 

同じくカバシラーにも攻撃してもらったが、体当たりで散らしただけなのに、それだけでピクリとも動かなくなった。

 

しかも体当たりの風圧は魔理沙さんのホウキに乗った時の強さと変わりなし。

 

風圧だけで無双出来るかもしれない。

 

やはり最強の称号は伊達じゃないようだ。

 

 

 

「やっぱり凄い強いですね!」

 

「キュ~」

 

 

 

本来の姿ならいざ知らず、仮の姿でこの強さ。

 

彼が残っていてくれて本当によかった。

 

これなら十分相対出来そうだ。

 

 

 

「それじゃあ…行きましょう!最初のダンジョン…密林へ!」

 

 

 

―――――

 

 

 

原作ではルボローさんがいるはず。

 

ホーガンさんも本来なら…

 

 

 

「…まだ無事ですよね…?」

 

 

 

出来る限り急いで進む。

 

ホーガンさんがいなければ、危険なのはルボローさんの方だ。

 

この島の危険を誰より知っているために、普段以上に心配性になってしまう。

 

 

 

―――――

 

 

 

密林にいたモンスターは原作通り、今私は、オオニワトリのすぐ近くにいる。

 

 

 

「本当に大きいですねー上には…やっぱりトーテムとガオンも…つたなんて登れますか…?」

 

 

 

考えると一介の女子高生が断崖を登ることなど出来るのだろうか?

 

…先のことには目を瞑ろう…

 

 

 

「…あのベビーパンサー…あそこですね…」

 

「キュ~」

 

「シャルロットちゃんも分かりますよね?あの跡…『タイラントワーム』の這い跡です。言葉は通じないと思います…巨大モンスターとの対話は諦めて下さい。」

 

「…キュ~キュ~…」

 

 

 

彼も分かっていたようだ。

 

自分の声など届かないと…

 

それが例え、かつての自分の配下だとしても…

 

とにかく原作通りなら、昼の今はあのミミズが通る時間。

 

警戒するにこしたことはない。

 

そう思っていた矢先に…

 

 

 

「!?キュー!キュー!」

 

「シャルロットちゃん?…!?」

 

 

 

突然の振動。

 

まるで巨大な何かが近づいてくるように、揺れが徐々に強くなる。

 

周りのモンスターも皆逃げ、視界に映る洞窟から現れたのは…

 

 

 

「タイラントワーム…黒色ですね…」

 

 

 

原作は無印とprofessionalの二つ、見分ける方法は、このミミズの色。

 

ピンクは無印、黒はprofessional、つまりこの時点で、ある国も危機に瀕していることが分かった。

 

 

 

「とにかく過ぎるのを待つしかないですね。」

 

「キュ~」

 

 

 

その巨大のせいか、私達に気付くことは全くなく、ただ目の前を通過していった。

 

流石にシャルロットちゃんだけで勝てる相手でもなし、安心して探索に戻れそうだ。

 

しかしここまでの道中で、いくつか問題が発覚した。

 

まず一つはステータス確認と回復のなさ。

 

ゲーム程薬草が落ちてもなく、回復の柱もなかった。

 

しかもステータスは目算…しかも仲間は増やせない状況。

 

唯一の救いはゲーム以上の行動範囲へ広げられることのみ。

 

はっきり言って今のまま、タイラントワームと対峙出来るとも思えない。

 

せめて回復出来るなら、シャルロットちゃん一人で倒せるとは思うが…

 

最後に一番重要なゲームとの違い…ルーラがない。

 

移動は全て徒歩になる。

 

つまりそれは、回復ボトルやまんたん、ラナもいざないもないということだ。

 

それらは全てルーラと同じ石碑で入手出来るスキルだから。

 

とにかく冷静に状況判断が出来た結果、あれ詰んでるということに気が付きました。

 

どうかせめて…二人共無事に合流出来ることを願います。

 

その思いで、私達は密林を進んで行った。

 

 

 

 




早苗編が一番救いないかもしれない…


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monster4

辺りはすっかり暗くなり、帰り道も分からなくなっていた。

それでも密林を進んで行くと、ぐんたいアリの巣穴を見つけた。

落ちればドラキーとリップスがいる。

 

「それじゃあ道なりなら…あれ?」

 

原作通りで行くと、いざないの扉がある。

しかしルーラがない時点でないことは確定…していたのだが…

 

「…扉…もしかして…」

 

いざないの扉は機能を停止してそこにあった。

原作通りひし形の物が浮いていて、触れたらそれが沈み光を放つ。

いざないの扉は機能を回復し、本来なら使えるはずだ。

いざないルーラがあればだが。

当然石碑はなく、特技も何も見つけていない。

ここまでルボローさんとホーガンさんは見ていないし、タイラントワームに挑む意味も…

 

「……」

 

既に手遅れなら?

二人が既に食べられていたら?

ゲームと違って二人が消化される可能性もある。

時間制限があるとして今向かわなければどうなる?

 

「…シャルロットちゃん。」

「キュー?」

「正直…タイラントワームに勝てますか?」

「キュ!?キュ~……キュ!」

 

言葉は分からない。

しかし考えた末頑張るという結論を出したのは分かる。

 

「頼りきりでごめんなさい…でも行かないと。」

「キュ!」

 

いざタイラントワームの寝床へ。

 

―――――

 

原作通り蔦から下に降りる。

正直こんな重労働何回もしたくない。

降りた先を見ると、夜だからかタイラントワームは眠っていた。

本来周りを周って行けば石碑があるが…やはりない。

やはり特技の習得方法はないようだ。

そのまま顔の方へ行く。

大口開けてぐっすりお休みなタイラントワームの正面顔だ。

原作通りなら…

 

(…入る?これに?)

 

体内に入る。

行き止まりにホーガンさんが倒れていて、パラサキスとのボス戦が始まる。

体内のビジュアルは中々にきついものがあるが…人の命には変えられない。

無駄足だったとしても…精神的に疲労するだけだ。

意を決して入る。

その瞬間足元はぶよっとする舌の感触。

目の前にはやたら多いモンスター。

壁を見れば不気味な目玉と視線がかち合う。

今すぐに出たい。

そんな願いを込めて急ぎ奥を目指す。

 

―――――

 

一本道の体内で迷うこともなく、最奥まですぐに着いた。

そこには原作通り倒れるホーガンさん…の姿はなく、ルボローさんがいるわけでもなかった。

プレートだけが放置されていた。

しかしボス戦は変わらず…パラサキスに背後を取られる。

 

「完全な無駄骨でしたね…シャルロットちゃんお願いします。」

「キュー!」

 

ボスといえど最初のボス。

ばくだんベビーがいれば余裕で勝てる相手。

サポーターとはいえ最強の一角…シャルロットちゃんが苦戦するはずもなく…

 

「キュ~♪」

 

体当たり一つで瞬殺。

経験値から考えて彼のレベルはまだ1だろうに…

これからレベルが上がるだろうから…バトルGPまでは一人で十分だろう。

しかしとんだブラックになってしまう。

バトルGPではもういなくなるし…

何とか仲間が欲しいところ。

しかし今は考えることじゃない。

何せ今は…

 

「あぁ…やっぱり…」

 

パラサキスを倒したことで、体内で暴れる異物の存在に気付いたタイラントワームに、勢いよく吐き出される。

 

「あう…」

「キュ…」

 

体を震わせて威嚇体制…ゲームなら何故かタイラントワームは逃げてくれるが…

 

「キュー…」

「正面から戦うしかないみたいですね…シャルロットちゃん。今日一番の強敵です!お願いします!」

「キューー!」

 

 

 

 




最強モーモンのレベル1ステータスって…確か最低でも魔王相当なんだよなぁ…ぶっ壊れなんだよなぁ…タイラントワームレベル10もあれば余裕なんだよなぁ…


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monster5

夏終わって今度は猫が布団に入ってくる…鼻水止まらない…本気で助けてほしいです…


タイラントワームの攻撃方法は至極単純。

体を大きく振り回すのみ。

後はドルマ系統の魔法だが…

 

(レベルが低い個体なら…ドルマ以上はないはず…)

 

あの巨体が全身をうねらせて攻撃してくるこの光景は、リアルに見たくない物だった。

ミミズの気持ち悪さとかではなく、圧倒的恐怖感と、体格差による絶望感。

まあ見慣れてるシャルロットちゃんからすれば、回避も難しくないのだろう。

それに基本的に大きい分遅いのだ。

引いてから振るまでに三秒、到達までに二秒…五秒もあればどうにでもなる。

シャルロットちゃんは飛べる上、体が小さい分避けやすい。

彼が戦う以上、私は離れていればいい。

援護兼囮として少しでも攻撃(投石)していれば、あの最強のモーモンは…

 

「キュー!」

 

必ず倒してくれる。

モーモンの攻撃手段は噛み付くだが、巨大な相手には効果はなかったのだろう。

最初からずっと体当たりしていた。

魔法はない。

技もない。

なら小さい体で出来る攻撃は体当たりのみ。

しかしてその威力は普通じゃない。

渾身の体当たりを繰り返し行うことで、ついにタイラントワームの体は倒れ込んだ。

 

「やった…?」

「キュー…」

 

『仲間』を倒さざるを得なかったからか、彼は黙祷を捧げていた。

 

「…お疲れ様でした。」

「キュー~…」

 

疲労に崩れるモーモンの身。

彼はマダムの愛玩動物。

故にレベルは1だったはずだ。

その身でタイラントワームと戦ったのだ。

いくら普通のモーモンじゃなくても、流石に保たないだろう。

 

「ゆっくりお休み下さい。本当に…お疲れ様でした。」

 

彼の事情を知っているからか、無意識にそんな風に言っていた。

ただただ、彼の哀愁纏う姿を支えたいがために―

 

―――――

 

眠るシャルロットちゃんを抱え、慎重に飛行船へ戻る。

正直休みたいし、単独での行動はかなり危険だが、そうも言ってられなくなった。

タイラントワームの目覚めが予想以上に早かったのだ。

この世界のモンスターは、一個体一個体が実に強い。

基本的にモンスターの死亡はないのだ。

例外は勿論あるし、必要なら留めを刺すが、こんな巨体は、留めすら刺せない。

だからタイラントワームもただ気絶していただけで、時間が経てば目覚める。

それは分かっていたことだ。

しかし早かった。

少なくともシャルロットちゃんより早かった。

一刻も早く逃げなければ、倒された恨みを晴らすべく、道の真ん中で戦闘を行う必要がでてくるかもしれない。

密林から近いとはいえ、飛行船は頑丈。

タイラントワームが来ても、なんとかはなるだろう。

そもそもそれぞれのエリアを担う巨大モンスターが、エリアから出ることはない。

その設定が生きているなら、きっと大丈夫だろう。

そう祈りながら、声にならない悲鳴を上げ、私は全力で

密林を駆け抜けた。

 

―――――

 

道中あらゆるモンスターに追い立てられた。

幸いなのは私の走る速度に追い付けるモンスターがパンサーだけだったことだ。

ベビーパンサーなら石ころでも怯んでくれる。

キラーパンサーは運よく遭遇しなかった。

とにもかくにも私達は飛行船にたどり着くことが出来た。

 

「はぁ…はぁ…ぜぇ…やっと…着いた…」

 

道中ほぼ全力疾走。

しかもモーモン抱えて走るなど、何の修行だろうか。

因みにモーモンの平均体重など知らないが、猫くらいはあった。

一日の疲労とは思えない程に疲れた私は、飛行船の椅子にシャルロットちゃんを置き、倒れ込むようにして自分も椅子に身を投げた。

 

―――――

 

「…ん…ん…?あれ…?もう朝に…!?」

 

辺りが明るくなったと思ったが、私がいたのは飛行船ではなかった。

見覚えのある一室、椅子に腰掛け本を読む男性、ごちゃごちゃとした物置小屋のような店。

 

「香林堂…?」

 

いつの間に私は帰ってきたのだ。

いやそもそも何故ここなのだ。

 

「おや?目が覚めたかい?」

「は、はい…何で私はここに…」

「ここに来たのは君で『四人目』だ。流石に説明が面倒だねぇ。」

「えっと…」

「省くつもりはないよ。それじゃあ説明しようか。」

 

―――――

霊夢編十八話参照

―――――

 

「それじゃ、何をご所望かな?」

「と言われても…」

 

あるのはガラクタばかり…一応ここにあるのは私に必要なものだけらしいが…数が多い。

しかしそこには私にとって絶対に必要なものも混ざっていた。

 

「!これは…!?」

「ん?その指輪かい?それは…」

「『スカウトリング』!」

「…どうやら、一番必要なものは見つかったらしいね。」

「はい!流石にこれは絶対必要なので…」

「そうかい。じゃ持っていくといい。改めて聞くけど、それでいいんだね?」

「はい!」

「では…またね。」

 

そう言い彼は香林堂ごと姿を消した。

いや…私の意識が消えたのだろう。

急に視界がぼやけて倒れたようだ。

目が覚めるとそこには、私の顔を覗き込むシャルロットちゃんがいた。

 




説明長いので香林堂については霊夢編参照で。端的に言うと物々交換でアイテム貰える店です。


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monster6

スカウトは次の回で。あと自分今ドラクエ11やってます。これが何を意味するか…分かりますね?(更新遅れるかもごめんなさい)


「シャルロットちゃん……じゃああれは夢…?」

「キュ?」

 

ふと右手を見ると、緑に輝く宝石が嵌まった指輪が着いていた。

香霖堂で貰った『スカウトリング』だ。

原作ではこれを掲げ使用することで、仲間モンスターにアピールさせ、モンスターを仲間にする。

使用法は調べなければだが、これさえあればいずれモンスターを仲間に出来る。

 

「ホーガンさんがいれば…」

 

使い方を教えて貰えたのに。

そんな無い者ねだりしてもしょうがない。

密林の次は平原へ…それが原作の流れ。

そして平原にはGJことゴルッテさんがモグラのアジトにいる。

まあ原作通りならモグラは味方だし、捕まっても問題はないだろう。

 

「シャルロットちゃん。もう体は平気ですか?」

「キュ!」

 

確かに回復しているようで、心なしか体も一回り大きく…

 

「本当に大きくなってません?」

「キュ~?」

 

昨日よりも明らかに大きい。

昨日は小脇に抱えて走れるくらいの大きさだったはずが、もう私の胴体より大きい。

これは…

 

「もしかして…レベル上がったんですか?」

 

この大きさはモーモン本来の大きさだ。

最初見たときからシャルロットちゃんは明らかに小型だった。

レベルが上がり、成体になったのかもしれない、

 

「でもシャルロットちゃんが平気なら別にいいですね。そろそろ行きましょうか。」

「キュ~」

 

いざ平原へ!

…問題は、原作ではワールドマップのカーソル移動…道が分からないことだ。

 

―――――

 

幸い方角は分かる。

ワールドマップからしたら飛行船から密林を真っ直ぐ抜けた地点。

多少の樹海を抜ければ…

 

「やっと…着きました…」

 

開けた場所に出る。

原作と全然違うところから出ると思ったが、同じ場所からのようだ。

見覚えのある景色が広がっている。

原作でもそうだが、入り口の横は全て石壁になっている。

川を越えたすぐが平原となっていて、壁で完全に断絶されている。

ゲームでは分からないが、密林はもしかしたら石壁に囲われた地形なのかもしれない。

地形が同じならゲーム内のマップは完璧に分かる。

すぐに見える洞窟から、反対側に出られる。

でもまずは…

 

「ここでいいから…少し休憩しましょう…」

「キュー…」

 

シャルロットちゃんはまだ平気そうだが、密林を…昼から日が暮れるまでノンストップは辛い。

ここはFFのテントよろしくその場休憩させてもらいます。

 

―――――

 

まあモンスターは襲ってこないだろう。

当然のことだ。

ゲーム通りならこの辺のモンスターは星四つのパーティーで十分逃げるはず。

シャルロットちゃんのレベルは分からないが、タイラントワームの経験値は少なくないはず。

道中倒した敵の数からして合わせて15程度はあるはず。

塵も積もればというやつだ。

10もあれば最強モーモンは一体で星四つにはなるだろう。

正確には分からないが。

 

(でも最強とはいえシャルロットちゃん一体でどうにかなるほど、簡単じゃない…)

 

やはり仲間が必要だ。

だからこそ、モグラのアジトの…『ハイゴナ』の存在は絶対に必須。

そのためには、スカウトより先にアジトへ向かうべき。

体力は回復した。

もう普通に動ける。

夜にはなってしまったが、今から…

 

「…しまった…速く洞窟に行くべきだった…」

「キュ…」

 

夜は…奴の時間だ。

巨大な翼をはためかせる音…獰猛な猛獣が吼えるような咆哮。

平原の主…『ウイングタイガー』

しかも平原入り口にいたため、洞窟は少し遠い。

その上洞窟を理解しているのか偶然か、原作とは違い私達と洞窟の間に浮遊している。

 

「ゲームだと飛んでくくせに…こんな所でボス戦ですか…」

「キュー…!」

「シャルロットちゃん!お願いします!」

「キュー!」

 

 




今更ですがここで出たモンスターの姿は検索でもしてください。自分には形容する文は書けません。


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