祈本里香と八九寺真宵は地獄にて。 (角刈りツインテール)
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001 Fall in Hell

映画『呪術廻戦0』を観てたまらず書いてしまいました、『物語シリーズ』と『呪術廻戦』のクロスオーバー小説でございます。多分2、3話で終わると思いますがよろしくお願いします!

映画は三輪さんが出てきて嬉しかったです。ちゃんと役に立ってるじゃん!やったね!


「あれ…?どこなの、ここ…」

薄暗い闇の中、不安げな表情を浮かべ1人歩く姿があった。

 

名を、祈本里香という。

「ゆ、憂太…」

彼女は静かに、かつて将来を誓い合った想い人の名前を口にする。それだけで心が満たされ、先へ進む勇気を貰えた。

 

 

『うん!約束だよ!』

 

 

『里香———力を貸してくれ!』

 

 

『失礼だな———純愛だよ』

 

 

『愛してる、里香』

 

 

憂太と共に過ごした生前、そして死後の記憶と共に切なさが増大してじわりと涙が浮かぶ。

 

ここは———地獄なのだろうか、と里香は考える。

まぁ何であれ少なくとも天国ではないであろう。当然だ。私は憂太のためとはいえ、今までいっぱい他人を傷つけてきたのだからそれくらいは覚悟していた。

 

していたんだけど…。

「誰もいないの…?閻魔さ…」

閻魔様、と言いかけてそれがあまりに幼稚な発言だと気がつきぶんぶん頭を振る。こういうときこそ、大人に、冷静に、だ。

 

———ぴちょん

 

「ひぅっ…!…な、なんだ、ただの水かぁ…」

あはは、と弱々しく笑ってみせる里香。

そしてすぐにその声はため息へと変わった、

自分が思い描いていたところとは随分と違う。昔見た絵本の中の地獄はもっと、色んな所に血の池があって、いっぱい人がいて———悪い意味で華やかな場所だったのに、歩けど歩けど暗闇が広がっている。終わりなんてないのかもしれない。そう思うと形容し難い気持ちになった。

 

 

「おーい!誰かぁ!」

 

 

里香はたまらず声を上げる。だが返ってきたのはこだまだけで、空間があまりに広いことがわかっただけだった。

木霊———木に宿る呪霊。

「…ではないよね」

もしかしたら、そういう地獄なのかもしれない。

ずっと1人で、孤独にいなくちゃならない地獄。

ずきり、と心が痛んだ。

 

 

あぁ、寂しいよ。

寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。寂しい。

会いたい。

 

 

「寂しいよ…憂太…!」

「———おや、大丈夫ですか?」

突如前方から聞こえたその声に里香は俯けていた顔を上げる。

「誰…」

 

影が現れた。

ぴょこぴょこ、という擬音が似合いそうな歩き方と共に暗闇の中から何者かがやってくる。

 

えーっと…ツインテールで…えっ何あの大きなカバン!?凄いな…。

そしてその影はみるみる色を持ち始め、最終的には里香の目と鼻の先までやってきていた。

 

 

 

「ふふふ、私一度言ってみたかった台詞があるんですけどいいですか?」

この場所に似合わない明るい声色だった。言いたいこと…まぁいいけど。

「いいよ」と素直に返す。

「ありがとうございます。では———」

 

 

 

「———なんだかんだと聞かれたらッ!」

 

 

 

♦︎♦︎♦︎

 

「どうもどうも、八九寺真宵と申します」

「あっはい…祈本里香です」

最初と最後の温度差がとんでもなかった。びっくりしたよ、急にクールダウンし始めるんだもん。

にしても…何者だろうか、この子。

良く言えば明るい子。悪く言えば…変な人。加えて場所が場所なのでそのコントラストが不気味にさえ思えてしまう。だけど。

今の私には、この女の子を頼るしか道はない。そう決意を固めて私は手を出した。

「えっと…あぁ、握手ですか」

少し迷ったのち私の意図に気がついたらしくガシッと手を掴み「よろしくお願いしますね」と一言。里香のよろしくね、と返した。

「———で、一つ聞いてもいいかな…ここはどこなの?」

「見て分かりませんか?———ここは地獄ですよ。英語にしたらヘルですね」

何が減るんでしょうか、と真宵ちゃん。別にそういう意味じゃないと思う。

それに、見たところで辺り一面黒しか広がっていないのだからどうしようもないんだけど…これ以上何を減らせばいいのだろうか。この子には地獄と呼ぶに値する何かが見えてるのかなぁ、とモヤモヤしてしまう。

「ここは賽の河原です。まぁ簡単に言わせてもらうと———親より先に死んだと言う罪を償う場所、ですかね?」真宵ちゃんは顔を傾けた。

「あぁ、なるほど…」

親より先に死んだ罪。あぁそれなら納得だ、と頷く。

 

私は11歳の若さで死んでしまったのだ。

 

不運としか言いようがなかった。

 

死因は、交通事故。トラックに轢かれ、それはもうぐちゃぐちゃになって、凄惨な死を遂げ、そして生前以上の時間を、憂太と一緒に過ごした。たとえそれの正体が呪いであって私にとっては魔法も同然だ。何せもう二度と会えないと思っていた憂太と再び話すことができたのだから。感謝してもしきれない。

そういえばこの子はどうしてここにいるのだろうか。彼女の言から察するにこの子も『母より先に死んだ罪』で地獄に落ちたようだけれど…流石に聞きにくいかなぁ———そう思ったけど気になるものは気になるので遠回しに尋ねてみる。

 

「ところで真宵ちゃんは———何者なの?」

「見ての通り私はただの八九寺真宵ですよ?現世では死んでからずっと怪異なるものをやってましたけど」

怪異…呪霊のことかな。私は自分のなかで疑問を解決させてから再び問いかけた。

「里香も()()だったんだよ!奇遇だね」

「でしたか、なら積もる話もありそうですねぇ」

久しぶりに仲間を見つけました、と嬉しそうに言う八九寺。地獄なのに、なかなか強かな子だ。

でも、こんな子が呪霊になるなんてあるのかな。呪いっていうのはつまり人の負の感情で———真宵ちゃんはそんなものとは無縁そうだ。

気の迷いとかも無さそう。

なんちゃって。

「どうして真宵ちゃんは呪れ…怪異になっちゃったの?」

「ふふふ、やっぱり気になりますか…話すと長くなりますよ?」

待ってました、という風にあぐらをかいて座りだした。どうやら本当に長話をするつもりらしい。呪霊になった理由というのは死因とニアリーイコールなはずだよね?トラウマとかになってないの?いや、そのほうが 私にはありがたいんだけど…。

「それでは」真宵ちゃんは息を深く吸い込んだ。「東西東西、お立ち合い!」

 

♦︎♦︎♦︎

 

「…えっと、それだけ?…あ、ごめん悪い意味はなくて」

「いえいえお気になさらず。本当にそれだけですよ」

この子、誇大表現する上に寛大で、何もかもが大きい…なんならリュックサックも大きいし。

なのに説明だけは15秒で終わってしまった。

 

それは置いておいて、どうやら真宵ちゃんも交通事故で死んだらしい。

 

離婚して遠くへ行ってしまった母の元へ、母の日に会いに行った。

 

なんてロマンチックなんだ———そう思ったのも束の間、その道中でトラックに轢かれたらしい。

 

その時の信号機は。

明らかに青色だったそうだ。

 

「ですけどね」真宵ちゃんは嬉しそうに切り出した。

「最初こそなんで私が〜なんて日和ってましたが今は死んだのも悪くないかなぁと思ってまして」

大事な人にも、会えましたし、と。

それは過去を懐かしむような声色だった。

「大事な人って…?」

「そうですね、折角なので里香さんにもお見せしましょう」

お見せするって、動物園のイルカじゃあるまいに…とつい苦笑いしてしまいその後すぐ違和感に気がついた。そんな簡単に会えるのであれば『大事な人』について話すときの哀愁は何だったのだろうか、ということである。一体どういうことなのだろうか。まさか私にも憂太と会える方法があるんじゃないか———その考えを閃き口を開こうとしたがそれは叶わず、それよりも先に真宵ちゃんが声を出した。

 

「あ、あれです」

真宵ちゃんの顔は。

上を向いていた。

 

「上……?」

 

何事かと思い恐る恐る見てみると——————

 

 

 

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

断末魔。

 

 

 

「———え!?」

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 




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002 a Day in Our Life:Reborn

時は巡り 日をめくり 君はとっくに どこか遠くに
あー想い届かない君はもう来ない  でも忘れないALL NIGHT


「…えっと、大丈夫なの?」

「えぇ、100%目を覚ましますよ」

不死身の名は伊達じゃありません———真宵ちゃんは何故か自慢げに胸を逸らしてそう言った。

目の前のこの男性は、彼女曰く吸血鬼らしい。

名前は阿良々木暦さん。

珍しい名前だなぁと思いながら彼を見つめた。

目が隠れるほど伸ばした髪。

お世辞でなく世間一般の『カッコいい』男性に分類される顔———まぁ憂太には及ばないけどね。

なんちゃって。あはは。

 

…うわ、恥ずかし。

 

…そして、首筋に覗く二つの穴。これがおそらく吸血鬼に噛まれた跡なのだろう。簡単に納得するべき話ではないのかもしれないが、そもそも私が()()()()であることもあり、それをすんなり受け入れることができた。私が幽霊だった以上真宵ちゃんの言を信じないわけにはいかないし…随分と慣れてしまった。ここで肩を抱えて丸まるのが『可愛い』女の子なのかなぁ…だとしたら私は…いや、そこまで悪くはないよね、うん。大丈夫大丈夫。

 

「———はっ!」

突然ものすごい勢いで目を覚ました。痛みに耐えるような、恐ろしい眼光…だがそれも一瞬にして消え失せ、少し前の私と同じように呆然とした表情を浮かべた。

「あれ、ここどこだ…」

「目を覚ましましたか」真宵ちゃんが間髪入れずに語りかける。

彼は真宵ちゃんに目を向け、更に目を丸くした。

「え……」

そして目を潤ませる。それを見て私も思わず涙ぐんでしまう。仕方ないでしょう。真宵ちゃんの話を聞く限りものすごく大事な人らしいし…それこそ、私と憂太みたいな、そんな関係なのだろう。

2度と会えないと思っていた2人が今ここにいる。

これを感動の再会と言わずして何と言う。

 

はぁ、私も憂太に会いた———

 

「八九寺いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!」

 

———え。

 

♦︎♦︎♦︎

 

え、何。

「もっと抱かせろ揉ませろ舐めさせろーーーーーー!!!」

「ぎゃー!ぎゃー!ぎゃー!」

何何何何何何何何何何何何何何何何!?!?

怖い!

私の目の前で今何が起きているの!?

スキンシップ———というにはいささかやりすぎているような…むしろセクハラのような気配を感じる…あっ、真宵ちゃんが阿良々木さんの腕を噛んだ…。

「いてぇ!何すんだ!!」

「…………。」

それはどっちの台詞なのかなぁと思わず苦笑うと、その気配に気がついたのか阿良々木さんがこちらを振り向く。

「おい八九寺、この方はどちら様だ」

「それを含めて説明しようとしたらあなたが邪魔してきたんですがね」

「全く、少しぐらい我慢しろよお前も」

「100%阿良々木さんに罪がありますよ。地獄に落ちてください」

「あ、あの!」

2人だけの空間に居心地が悪くなった私はついに自分から声をかける決意をした。両者同時に振り向き、私はつい怯みそうになったが勇気を振り絞って声を出す。

「わ、私は、祈本里香です…」

「へぇ、里香ちゃんって言うのか。いい名前だな!」

俺は阿良々木暦だ———彼はそう言って快活な笑みを浮かべた。他人への適応の速度が異常すぎる。これも吸血鬼故なのかな。

ていうか…。

「あのさ真宵ちゃん」私はひそひそ声で尋ねる。

「はい、なんでしょう?」

「これ…阿良々木さんは死んだってことでいいの?」

「まぁそういうことになりますね」

「じゃあ、どうして?どうして平気でいられるの?」

大事な人が死んだとなればもっと取り乱してしまうのが普通であろう。実際、憂太だって相当沈んでいた。何度も何度も自殺を試みようとしていたし、私は何度も何度もそれを止めた。

身近な人の死は、自分の命さえ奪いうる。

だが彼女の表情を見る限り去勢を張っている様子ではない。むしろ久しぶりに出会えた喜びでウキウキしているようだ。流石にそれは強かすぎやしないだろうか…。

「いえいえ、そういう訳ではありませんよ」真宵ちゃんはにこりと微笑んだ。「さっきから言っているじゃないですか———()()()()()()()()()()()()()()()ってね」

不死身。つまり。それは。

「生き返る…ってことなの?」

「えぇ、阿良々木さんにとってこれはちょっとしたおつかいみたいなものなのですよ」

「ちょっと待て八九寺。お前が僕をどういう人間だと思っているのかしらないけど僕はどんな事情があってもそんな気分で地獄には落ちない」

阿良々木さんが早口で捲し立てて突っ込んだ。

「……。」

間違いない。

この人、突っ込むのに慣れている。

「?別に間違った評価はしていないと思いますよ?変態でロリコンでマゾでゴ」

「だからそれが間違ってるんだって。僕は変態でもロリコンでもマゾでもない。あとお前今ゴミって言いかけた?」

「まぁそんな細かいことは置いておいて」

「そんな大事なことを雑に置くな」

「まず、ここがどこかという説明をしましょうかね…」

 

そうだった、あまりにラフな空気に本題を忘れていた。

ここは地獄で。

阿良々木さんに、おつかい?を頼まなければならない。

まぁ何にせよ、全て真宵ちゃんに任せてついて行くしかあるまい。

 

…本当について行っていいのかな、これ。

 

 

 

 



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003 Love Situation

いつか誰だって 願い叶うって
めぐる季節を繰り返し
夕陽眩しくて 街に広がってそして君に会える La La La
僕の鼓動が 胸を突き抜け
風に乗って降り注ぐよ


「地獄です」

「はい?」

「地獄の中でも最下層の地獄——阿鼻地獄です」

 

♦︎♦︎♦︎

 

「地獄…?」

真宵ちゃんに全てを説明された後、阿良々木さんは私と同じような反応をとった。

困惑。

加えて私も困惑していた。聞く限り阿良々木さんは想像を絶する死に方でここに来たらしいのだ。何しろ、日本刀でバラバラにされたと言うのだ。

炒飯のようにバラバラに。

パラパラ殺人である。

到底日本だとは思えない事件だよなぁ…いや、たしかに日本刀を使っている時点で明らかに現場は日本なんだけど…この人、どんな波乱な人生を送っているのだろうか…現世で真宵ちゃんと関わりがあり、更には自身も吸血鬼という話から呪霊———怪異との関わりは深いみたいなんだよね…こんなポジティブの塊みたいな人が呪いと関係しているなんて到底信じられな…いや、五条先生がいたんだった。そっかそっか、なら納得だね。

 

「で、ここは何地獄なんだっけ?」

「蟹地獄です」

「いやさっきと違うじゃねぇか。なんだよ蟹地獄ってそれもう北海道じゃねぇの?もうちょっとお洒落な名前だったろ」

「寝起きの癖に我儘が多いですねララバイさん」

「僕の名前を子守唄みたいに言ってんじゃねぇ。僕の名前はあらら」

「でしたね。失礼、噛みました」

その言葉を聞いて堪えきれなくなった阿良々木さんは、じわりと涙を浮かべた。

 

———いや、なんで?

 

「ち、違う、わざとだ…!」

「…神はいた…」

「この場面で言うと深みが違う!」

いや、いくらなんでも慣れすぎでしょ… どれだけ同じ内容の会話をしてたらこんなにスムーズな流れができるの?それに泣きながらでもこの一連の流れを遂行しようとする意志も凄い。

怖い怖い。

怖いですよ、お二人さん。

「あの、真宵ちゃん」

私は彼女の耳元に駆け寄って尋ねた。

「はい?なんでしょうか」

「これからどうするの?」

「安心してください。全て私に任せていただければなんとかなります」

なんでも知っているおねーさん監修の計画ですしね、と真宵ちゃん。なんなのその人。本当に信じていいの?そんな胡散臭い異名持っているお姉さんを?

 

「では行きましょうか」

私の疑問は置いてけぼりにしてスタスタと歩き出す真宵ちゃん。その歩みに迷いはないようだ。なんちゃって。

…ていうか、どこに行くの?

「え、どこに?」

阿良々木さんも私と同じ疑問を抱いていたようで、私も思いを代弁してくれた。しかし真宵ちゃんは「ふふ」と不敵な笑みを浮かべて笑うのみで———

「どこに行く、だなんて面白いことを言いますね阿良々木さんは。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「は?いやどういう———」

ことだ、と言いたかったのだろうがそれは叶わず、言葉に詰まる。

絶句。

衝撃。

そんな言葉が似合うであろう表情を阿良々木さんは見せていた。かく言う私も鏡を見たらきっとこんな顔をしているはずだ。まぁ、この場面では当たり前の反応だと思う。そりゃあいきなり()()()()()()()()()()()()誰だって腰を抜かす。

「ま、ま、ま、真宵ちゃん、ここど…きゃっ!?」

言葉を必死に紡ぎながら真宵ちゃんに現在地を確認しようとして、しかし先程の阿良々木さんと同様に言葉に詰まってしまう。

それは何故か。

私の前には真っ赤な何か———なんてぼやかしてもそう簡単に恐怖心は消えないだろうけど———うん、諦めて現実を見よう。

 

———血だ。

 

血が一本の線となって、奥へと続いている。

終着点はどこだろうか、と前方を確認し、今度こそ声を我慢

 

「きゃあああああああああああああ!!」

 

できなかった。

視線の先には、金髪の女性が倒れていて。

四股が千切れていた。

切断面からドクドクと血が溢れ出しているのを目の当たりにしてしまう。

我慢なんて無理だ。むしろ限界まで張っていた緊張感が爆発して、より大きな悲鳴を上げてしまった。

だって、仕方ないじゃん。

真宵ちゃんがいたおかげですっかり忘れていたけど、ここは地獄なのだ。血で血を洗って穢れを祓うような、そんな場所。

思い出してしまった。呪霊ではなく、人間だった頃の恐怖心を。

「あぁ….」

私は怖くて、蹲ってしまう。

怖い。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

誰か助けて。

憂太。

 

———1人は怖いよ。

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

「あ………」

まさか憂太か、と思ったが勿論そんなはずはない。ここにいる男性は阿良々木さんしかいないのだから。

憂太はまだ、死んでなんかいないのだから。

次に出会えるのは60年後か70年後か、もっと先か。そう思うと切なさが増大する。

 

 

 

 

(いや。違う。そんな事ではダメだよね)

むしろそうであってほしい、と。長寿と幸せを願わなければいけない。人生を全うして、いつかまた会えたら憂太の思い出話をいっぱい聞くんだ。

それまでは何としてでも我慢しなくちゃ。

好きなものは後に残しておくタイプだしね。…あんまり関係ないかな?

「…はい、大丈夫です」

「そうか。立てる?」

そう言ってすっと手を差し伸べてくれた。有り難く力を借りて、起き上がる。そしてふと思う。

この手の温もりに憂太を感じてしまったのは気のせいなのかなぁ。なんて。

はは。気のせいに決まってるのに。

…会いたいな。

 

「それにしても…なぁ八九寺。これは一体何なんだ?」

私が見た血塗れの人物の正体は。

倒れているのは、四肢を切断された瀕死の吸血鬼。

凄惨なるありさまの、伝説の吸血鬼。

鉄血にして熱血にして冷血の吸血鬼——キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードだったのである。

 

と、いうのは後から聞いた話だ。

 

「幻ですよ」

真宵ちゃんがパチンを指を鳴らすと同時に、あれほどリアルだった光景がみるみる闇に溶けこんでいき、やがて真っ黒な世界に元通りになる。

 

 

「これから阿良々木さんには、貴方の過去を振り返ってもらいます」

ようこそ阿良々木博物館へ。

真宵ちゃんはキメ顔でそう言った。




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004 still…

車輪が回り出したら 旅は始まってしまうから
もうはぐれないように
過去をそっと 抱きしめる

♦︎♦︎♦︎

お久しぶりですね!!!!更新できなくてほんっっっっっっっっっとうにごめんなさい、この場を借りて謝罪します。土下座します。焼き土下座します。
いや、実は僕、今年受験生でしてなかなか時間が取れなくて、はい。完結はさせますのでご安心ください!そんな感じで第四話、よろしくお願いします。


それから私たちは阿良々木さんの過去を、人生を見ながら前へ前へと歩みを進めた。

 

地下鉄での吸血鬼———キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードとの出会い。

 

地獄のような春休みが終わりを告げ。だがそれはただの始まりに過ぎず。

 

羽川翼———猫。

 

戦場ヶ原ひたぎ———蟹。

 

八九寺真宵———蝸牛。

 

神原駿河———猿。

 

千石撫子———蛇。

 

阿良々木月日———不死鳥。

 

阿良々木火憐———蜂。

 

もしも彼らを助けていなかったらどうなっていたのか、なんて考えながら阿良々木さんは———私も真宵ちゃんのガイド、もとい副音声を聴きながら、同じような感情で歩いた。ただただ変わりゆく景色の中を、歩き続けた。

「………。」

それを見ながら、何故か同時に自分の人生を振り返らずにはいられなかった。

 

邂逅。

 

指輪。

 

死。

 

そして———始まり。

 

殺戮。

 

出会い。

 

共闘。

 

そして、二度目の終わり。

 

 

 

『ずーーっと、一緒だよっ!』

 

 

 

「———っ!」

「お、おい、里香ちゃん」

その言葉を思い出した途端に、いきなり涙が溢れ出してきた。

おっと、いけないいけない、つい泣いてしまった。二人を立ち止まらせてしまった。

馬鹿だ。

迷惑はかけられない、と涙を拭いながらゆっくり立ち上がる。

息を整えるべく棒立ちのままで10秒待つ。

落ち着け、落ち着け私。

よし。よし。もう大丈夫…うん。話せる。大丈夫。

「…ご心配をおかけしました。もう、大丈夫です」

「本当か?遠慮はいらないぜ、僕は女の子には優しいんだ」

「たしかに女の『子』には優しいですもんねアカギさんって」

「誰がロリコンだ。それと、人を突如現れた麻雀の天才みたいに言うな。僕の名前は阿良々木だ」

「失礼、噛みました」

「違う、わざとだ…」

「勝ちました!」

「倍プッシュか!?倍プッシュしたのか!?」

いや、コンビの相性が抜群すぎる…本当にアドリブなんだよね、これ?まるで前に打ち合わせをしていたみたいな軽快さだけど、地獄にいる人間と話すなんて出来ないしなぁ。

そんなことを思いながら、「本当に大丈夫ですよ」と言って再び歩き出した。

その間にも一幕、二幕と世界が移り変わっている。まるで異世界だ。

阿良々木さんの横顔の表情をちらりと窺う。悲しみ懐かしさ喜び怒り———あらゆる感情が入り混じったなんとも言えない表情を浮かべていた。まぁ阿良々木さんでなくても学校生活というものは一言で語りきれないものなのかもしれないけれど(私は行ったことがないから分からない)、この人にとってはその比ではないはず。葛藤とは絶望とか、きっと色々なものを乗り越えて今ここに立っているのだ。

ここ、地獄に。

なんて波乱な人生なんだ。…って、私もか。あはは。

憂太に出会ってからいつも一緒に遊んで幸せな日々を過ごして。

幸せで。

けど、死んじゃって。

不思議なことに気がついたら生き返っちゃってて。

憂太をずっとずっと見守っていた。

十分波乱な人生だ。

十二分に波乱だ。危険を孕んでいる所の話ではない。って、さっきも全く同じような回想をした気がするな。まぁ私からしたら何度振り返っても飽きることのない最高のラブコメディなのだから仕方ないじゃないか。好きなんだから。だから…少しくらいお付き合いしてください。

「なぁ、里香ちゃん」

不意に阿良々木さんに声をかけられる。もうこれ以上邪魔にならないように少し後ろを歩いていたのでまさか話しかけられると思っておらず「ひゃい!?」なんて変な声を出してしまった。

うー、恥ずかしい。穴があったら入りたい。…いや、地獄自体がもう既に穴みたいなものか。

もしくは仲間外れにされているからこそ気を遣って話しかけてくれたのかもしれないけれど。だとしたら申し訳ないなぁなんて思いながら阿良々木さんの言葉に耳を傾ける。

「僕、君の話を聞いていないのだけれど、どうして地獄にいるんだい?」

おぉう、急に核心を突いてきたな。いや、別に急ではないか。いきなり路上で泣き出したのは私だし、この場合気にならない方がおかしいと思う。

話すことには抵抗はないけど…どこから話そうかな。

時は現在、『恋物語』の真っ只中だ。貝木さん、とかいう不気味な目をした男の人が頑張っている。どちらかといえば、そちらに目を向けた方がいいと思うのだが…。

「いや、全然大丈夫。むしろ見たくない」

阿良々木さんは苦虫を噛んだような表情をこちらに見せてきた。そんなに嫌なのか。一体何をされたんだ、この人に…と思いかけたところで、丁度さっきこの男と、阿良々木さんの彼女の過去が明かされていたのを思い出した。そして納得。うん、そりゃ嫌いにもなるよ。私ですらなる。

「人をいっぱい殺したからです」

私は正直に、そう答えた。この人たちならきっと、私を嫌いになったりはしないだろうと思ったのだ。

「憂太を傷つける人間が恨めしくて苛立たしくて鬱陶しくて煩くて五月蝿くて気持ち悪くて死んで欲しくて殺したくて———殺して、しまいました」

当然の結果ですよね、と最後に弱音を呟いてしまったのは聞こえていただろうか。

分からない。だけど少なくとも、阿良々木さんはこう返した。

「僕もだ」

「え」

「僕も———人はいっぱい殺してる。吸血鬼だったから、なんて言い訳するつもりもない。ただ、吸血衝動のままに貪ったんだ」

僕は、僕のために人を殺したんだ。

傲慢にも。

軽率にも。

自分の欲のために、なんの罪もない人間を殺し続けた、あの悪夢のような春休み。

ふぅ、と深い息を吐き。

「でもな」そしてこう続ける。「君は誰かのために、殺したんだよ。誰がなんと言おうと、それは優しさだ。愛だ。僕はその差は———すごく大きいと思う」

驚いた。

 

 

それは、私が今一番必要としている言葉のように思えて———すとん、と胸に収まったから。

 




ちなみに春休みには人をいっぱい殺しちゃった阿良々木くんの設定は漫画版のものを採用しました。大暮さん、ご病気大丈夫でしょうか…。
きっと次が最終回ですので楽しみにしていてください!
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005 love so sweet ≪完≫

———きっとそっと、願い届く。

———明けない夜はないよ。

———信じることが、全て。


それからしばらくは本編とまったく変わらないことが続いているので省略することした。詳しくは『終物語・下』をご覧いただきたいのだが、一応簡単に説明しておく。

 

回想開始。

 

今まで、かつての過去を巡るようにして歩いてきた。

忍、羽川、戦場ヶ原、千石…。

もしも助けていなければ、どうなっていたでしょう、なんて感傷に浸りながら。同時に私も物思いに耽りつつ。

そして北白蛇神社———あくまで地獄の、である———に訪れ、そこに待っていたのは。

 

「こんにちは——阿良々木くん。待っていたよ」

 

不死身の怪異の専門家・手折正弦だった。

彼から事細かにことの詳細の説明を受け、ようやく地上へ戻る、となった。

地獄の天から延びる蛇。

これに掴まれば生き返られる。

 

「——でも、僕なんかが生き返っていいのかな」

 

その瞬間、阿良々木くんは自責の念に駆られる。

 

以上、回想終了。

 

 

 

 

……そう、帰れるのだ。

私や———真宵ちゃんとは違って、彼はまだ生きている。

仮に半分が吸血鬼だったとしても。

もう半分は疑いようもなくやはり人間で、生命で、怪異でも呪霊でもない。

ならばそれは生きているということなのだろう。

帰る場所が、あって。

羨ましいと思わないこともない。というか、ものすごく羨ましい。なんなら一緒に連れて帰ってもらいたいくらいで———だけど、そんなのを口にする勇気は私にはない。

真宵ちゃんが横で笑顔で別れを告げようとしているのに、私だけ泣くなんてことは無理だ。

「———いや」

だから。

「阿良々木さんは、帰らなくちゃいけません」

私も、笑顔で。

「……里香、ちゃん?」

「無関係な人間が一体何を、と思うかもしれませんが、第三者だからこそ言えることもあります。貴方を待っている人間が沢山いる。もし阿良々木さんがここに残ったりなんかしたら何人の人間が悲しむと思いますか。だから、駄目です。帰ってください」

そして、沈黙。

沈黙。

沈黙。

無駄に長い。

でしゃばりすぎた…だろうか、と心配になってきた頃になって、ようやく

「ありがとう」

阿良々木さんはそう言って、私の頭を撫でた。

優しい。なんとなく、心地よい感じがした。

「うん、そうだな———戦場ヶ原、だけじゃない。神原や羽川や火憐ちゃんや月火ちゃんや———色んな人を待たせてるんだ、僕は」

「そうですね。あの友達がいなかった阿良々木さんにも友達が」

「うるせぇ、ほっとけ」

はは、と笑いが溢れる。勿論私も笑った。

「んじゃま、ちょっと行ってくるわ」

そのまま、笑い続けた。

「はい。いってらっしゃい」

 

 

そして、阿良々木さんは蛇を掴んだ。

もう二度と地獄に落ちないよう、私たちに会わない———遭わないよう、がっしりと。

さてこれで終わった。いや、始まったのか。これから私は地獄で、罪を償わなくてはならない。

両親より先に死んだ———の方ではなく。勿論それも申し訳なく思っているけれど。

沢山の人を殺してしまった懺悔をするのだ。

大丈夫。

横には八九寺さんもいる。

だから、いつか憂太が来るまで耐え——————

 

「———ごめんやっぱ無理!!!」

 

——————え。

思考がまとまるよりも先に、私は———そして真宵ちゃんは遥か上空へ飛んでいた。

おそらく私も真宵ちゃんと同じような表情をしていたであろう。

困惑である。

心も身体も、フリーフォールである。

えええええええええええええええええええええ!?!?

「な、な、な、な、何やってるんですか阿良々木さん!?」

上を見ると、私たちの服はそれぞれ片足の親指と人差し指で掴まれていた。

「何って———徳を積んでるんだ」

 

こうして、私と真宵ちゃんは現世へ戻ることができた。

 

♦︎♦︎♦︎

 

「どうしましょう、阿良々木さんが息を取り戻しません」

「嘘でしょ!?」

地獄で見てきた阿良々木さんの過去の中で最後に現れた、手折さんがいた場所——北白蛇神社で私は目を覚ました。真宵ちゃんが一番最初に起きていたようで、私たちの起床を待ってくれていたようだ。

そして、阿良々木さんが息していない、か。

「いやいやいやいやいやいや!!」

嘘でしょ。

この流れで死ぬなんてことある?

「大丈夫、じきに戻ってくるさ」

そう我々を宥めたのは、なんでも知ってるおねーさんこと臥煙伊豆湖さんだった。

なんだか落ち着き払っているけれど、この人が阿良々木さんを切り刻んで地獄に落としたんだよね…?

「どうしますか」

「どうするって?」

「私と里香さん、どちらがキスをするかという話です」

「そこは人工呼吸って言ってほしいな」

なんだかヤラシイ話みたいになってしまっているじゃないか。まぁどのみち、私にはできないのだけれど。ほぼ初対面の人間にキ…じゃなかった。人工呼吸されるのはもしかすると嫌かもしれない。そうなるとここは真宵ちゃんがするべきではないだろうか。どちらにせよ犯罪的な匂いがするがこの場合は仕方あるまい。

「では私がするとしましょうか」

「うん、よろしく」

「はいじゃあチクッとしますからねー」

「真宵ちゃんの口は何で出来ているの…?」

真宵ちゃんは頭を振りかぶって勢いをつけて(振りかぶって勢いをつけて?)、阿良々木さんの唇に狙いを定めた———とその時。

「—————————はっ!」

阿良々木さんが突然目を覚まし、勢い良き起き上がった。

必然的に、二人のおでこはぶつかり合う。

「「いってーーーーーーーーーー!!!」」

馬鹿だ…。

「君は行かないのかな?オリカちゃん」

「オリカちゃん…って、行くってどこにですか?」

「決まってるじゃん」臥煙さんはニコリと笑った。「憂太くんのところだよ」

なんで憂太を知って———なんて質問は野暮だろう。何故なら彼女は何でも知っているのだから。

だけど———

真宵ちゃんと阿良々木さんを見る。二人もこちらを見た。

「お別れですね」

「あぁ、楽しかったぜ」

二人は笑った。

私も笑った。

「分かりました、では———!」

「あちょっと待って、移動費あげる」

そう言って阿良々木さんが財布からお金を取り出そうとしたので、「いえ大丈夫です」と手で止めた。

「ご心配なく。何故なら私は———」

特級呪霊、祈本里香なんですから。

「うぉう!?」

突如姿を変えた私に、尻餅をつく阿良々木さん。こういうの、耐性があるんじゃなかったのか。いや、ただ単に驚いただけなのだろうか。それとも、呪霊の怪異は本当は違うもの…?

「まぁ、何でもいいか」

憂太に会える期待だけで脳はいっぱいだ。今だけは余計なことを考えたくない。

 

「それじゃ、行ってきます!」

 

私は走り出した———というのは勿論のこと比喩で、本当は上空へ飛び上がった。先程阿良々木さんに捕まえられたときのように、いやそれ以上の猛スピードで、憂太のもとへ。

待っててね、憂太。

 

 

 

…….で、ここどこ?

 

♦︎♦︎♦︎

 

それから暫くして、私は海外のある場所にいる憂太を見つけることができた。

一体どうやってそんな遠くにいるのを見つけたのかというと———五条先生のおかげだ。

新潟からなんとか東京の呪術高専へ辿り着いたのだが憂太は不在。一体どこに———と思っていたところに、彼が現れてくれた。

「え、嘘戻ってこれんの(笑)」といつも通りおちゃらけた先生から憂太の居場所を聞き、一直線にそちらへ向かったのだ。今となってはそれすぇも懐かしく、うるっときたのはナイショの話だ。

 

「憂太」

 

地上へ降り立つと同時に、幼い人間の姿になった。

 

「里香、ちゃん…?」

 

感動の再会。

さて、何を話そうか。

ここにくるまで色々考えてきたが、それらは全て飛んでいってしまった。ならもう、自然に行くしかない。そう覚悟を決め、第一声を口に出そうとする。

「久しぶりだね、憂———きゃっ!」

が、突然のハグでそれもまた吹き飛ぶ。

「里香ちゃん、どうして……!」

憂太の肌に触れただけで、とうとう何も出来なくなってしまった。

視界が霞み、声がうまく出ない。

涙が止まらない。

「うぅうぅううぅうぅうう…!ああああああ!」

私は大声で泣いた。

憂太も、大声とはいかなくても私の肩で泣き続けた。

「また会えたね」私は笑って。

「うん…!」憂太も笑った。

 

これが、私の再会の話だ。私としては覚悟を決めたことだったので、80年後くらいになる話なのかな、なんて思っていたのだが、それでも寂しかった。時間で言えば短かったのかもしれないが、それこそ、80年くらい会えていないような感覚で。

ここまで来れたのはまごうことなく、真宵ちゃんや阿良々木さんのおかげだ。

いつかまた、会えたらいいなぁなんて思いつつ。

 

私たちの“0”が、始まりを迎えた。

 

 

 

                       《You are my Soul》is End

                        A•RA•SHI A•RA•SHI For Dream!




これにて今作品は終了になります!お疲れ様でした、自分。そして付き合ってくれてありがとうございます、読者の皆様。
それにしてもおかしいですね、呪術廻戦0が公開された頃にこの話を書き始めたはずが気がつけばこんなに時間が経っていました。まじで申し訳ございません焼き土下座させてください。そしてありがとう。よろしければ別の作品もお願いします。


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